衆議院

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第12号 平成20年5月9日(金曜日)

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平成二十年五月九日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 河野 太郎君 理事 高木  毅君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 谷口 和史君

      伊藤信太郎君    飯島 夕雁君

      猪口 邦子君    宇野  治君

      小野 次郎君    木原  稔君

      木村 隆秀君    塩崎 恭久君

      篠田 陽介君    杉田 元司君

      鈴木 馨祐君    牧原 秀樹君

      御法川信英君    矢野 隆司君

      山内 康一君    山口 泰明君

      北神 圭朗君    篠原  孝君

      田中眞紀子君    野田 佳彦君

      鉢呂 吉雄君    松原  仁君

      上田  勇君    笠井  亮君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   外務副大臣        小野寺五典君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   厚生労働大臣政務官    松浪 健太君

   会計検査院事務総局第二局長            小武山智安君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   鵜瀞 恵子君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 五十嵐邦雄君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久元 喜造君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 本田 悦朗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 田辺 靖雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小田 克起君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 猪俣 弘司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 羽田 浩二君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       上田 博三君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           木倉 敬之君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           間杉  純君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  石井 博史君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小風  茂君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    長尾 正彦君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  地引 良幸君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月九日

 辞任         補欠選任

  愛知 和男君     矢野 隆司君

  小野 次郎君     飯島 夕雁君

  篠田 陽介君     牧原 秀樹君

  中山 泰秀君     杉田 元司君

  御法川信英君     木原  稔君

  野田 佳彦君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     小野 次郎君

  木原  稔君     御法川信英君

  杉田 元司君     中山 泰秀君

  牧原 秀樹君     篠田 陽介君

  矢野 隆司君     愛知 和男君

  北神 圭朗君     野田 佳彦君

    ―――――――――――――

五月八日

 国際物品売買契約に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 千九百四十九年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約(アンティグア条約)の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千八年一月二十二日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 社会保障に関する日本国とオランダ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 国際物品売買契約に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 千九百四十九年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約(アンティグア条約)の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千八年一月二十二日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件、社会保障に関する日本国とオランダ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官鶴岡公二君、大臣官房審議官本田悦朗君、大臣官房審議官田辺靖雄君、大臣官房審議官小田克起君、大臣官房審議官猪俣弘司君、大臣官房参事官石川和秀君、大臣官房参事官羽田浩二君、領事局長谷崎泰明君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長鵜瀞恵子君、警察庁長官官房審議官五十嵐邦雄君、刑事局長米田壯君、総務省自治行政局選挙部長久元喜造君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官上田博三君、大臣官房審議官木倉敬之君、大臣官房審議官間杉純君、社会保険庁運営部長石井博史君、農林水産省大臣官房審議官小風茂君、特許庁総務部長長尾正彦君、防衛省地方協力局長地引良幸君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第二局長小武山智安君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷口和史君。

谷口(和)委員 おはようございます。公明党の谷口でございます。

 外務委員会に一年半ぶりに戻ってまいりまして、きょうは、トップバッターで質問させていただきます。

 きょうは条約三本ということなんですが、まず、社会保障協定の関係についてお伺いをしていきたいと思います。

 今回はオランダそれからチェコとの社会保障協定ということでありますが、私も、かつて民間にいたときに、海外で働こうかなという思いもありまして、実際は海外には行かなかったんですけれども、いろいろな年金とか健康保険とか、向こうの制度を調べたり、そういうことをしました。そういう中で、海外に行っている間、日本での年金の支払い、これもやっておかないと二十五年に満たなくなる可能性があるということで、そういうことを調べた中で、改めて、海外で働くというのはいろいろな不便というか障害というか、そういうものがあるんだなというふうに実感をしておりました。

 今回、オランダそれからチェコとの間で社会保障協定を締結ということになるわけでありますけれども、提案理由の説明の中にも、今回の締結により、年金制度それから医療保険制度等への二重加入等の問題の解決が図られ、保険料負担が軽減をされる、このことによって人とか経済の交流も促進をされていくというふうになっております。

 まず最初にお伺いをしたいのは、今回締結ができれば、加入期間が短くてもいわゆる掛け捨てがなくなる、こういうふうになっているわけでありますけれども、例えばオランダ、チェコそれぞれ、この締結がなされれば負担がどれぐらい減るかということで、オランダは、年間一人当たり三百二十五万円、大きな額ですね。総額にすると、人数を掛けると三十三億円程度。それから、チェコについては、こちらもやはり年間一人当たり二百六十万円、総額で十二億円ということで、一人当たりもそうですし、総額もかなり大きな負担の軽減ができるというふうに試算をされております。

 まずお伺いをしたいのですが、三十三億とか十二億とかいうこれだけ大きな、ある意味負担増であったわけでありますけれども、これまでの間、なぜこの二つの国についてもっと早く締結ができなかったのか、その理由についてお伺いをしたいと思います。

本田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、社会保障協定につきましては、社会保険料の負担の規模、在留邦人及び進出日系企業等の状況、経済界からの具体的な要望、二国間関係、相手国との社会保障制度の違いなどの諸点を総合的に考慮した上で、優先度の高い国から順次締結交渉を行ってきております。これまで、八カ国との間で締結、署名してきたところでございます。

 オランダとの間では、これまで締結、署名に至った国々との交渉で蓄積された経験をも踏まえまして、断続的に協議、意見交換を積み重ねまして、平成十七年十月に政府間交渉が開始され、本年二月に署名に至った次第でございます。

 また、チェコとの間でも同様に協議や意見交換を行いまして、平成十九年六月に政府間交渉が開催され、本年二月に署名に至った次第でございます。

 社会保障協定は、それぞれの国の複雑な社会保障制度を所与といたしまして、実際に機能する協力の枠組みを設定するという性格上、協議や交渉は困難なものとなることもございます。このような中で、先ほど述べた諸点を総合的に考慮いたしまして、優先度の高い国から順次交渉を行ってまいりました。オランダ、チェコを含め、現在まで十カ国との間で締結または署名に至っている次第でございます。

 今後とも、締結交渉を着実に進めまして、かかる取り組みを一層推進してまいりたいというふうに考えております。

谷口(和)委員 それで、オランダについてなんですけれども、オランダでは、二〇〇六年の一月から、オランダ国外に住んでいる人に対しては年金の給付を制限する、こういう法律があって、例えば、かつてオランダで働いていて、今、日本に住んでいる人は給付が受けられない、こういう状況になっております。ただ、今回の協定の中にはこれを解除するための規定も盛り込まれて、そしてなるべく早く給付が再開できるようにということで、交換公文によって既に四月一日から給付が再開をされているということを伺っております。

 具体的に、オランダのこの送金制限が解除されることによって日本で給付再開を、もう四月一日から受けているわけでありますけれども、受けられる人は何人いて、総額どの程度給付が受けられるのか、この辺についてお伺いしておきたいと思います。

本田政府参考人 お答えいたします。

 オランダにおきましては、委員御指摘のとおり、社会保障給付の外国への送金を制限する法律、いわゆるBEU法というものがございます。それが二〇〇六年一月から施行されておりまして、日本国内に居住するオランダの社会保障給付の受給権者は、オランダの社会保障給付の支給が制限されてまいりました。今般、本協定によりまして、かかる制限が解除され、オランダからの社会保障給付の支給が確保されることとなった次第でございます。

 日本で給付再開を受ける対象者の数や給付額につきましてはオランダ政府により決定されるべきものではございますけれども、対象者につきましては、在京オランダ大使館による調査、これは二〇〇五年に行われたものでございますけれども、百十一名であったというふうに承知しております。

谷口(和)委員 そこで、この二重負担ということについてもうちょっとお伺いをしたいんですけれども、二重負担の現状がどうなっているかということについては、二〇〇六年の十月に、経団連、日本在外企業協会、それから日本貿易会、この三団体が合同で現状調査をして、現地の企業、商工会議所等を通じて実態調査を行っております。民間がこういう形で試算をしているわけでありますけれども、私は、この社会保障協定というのは本当にすばらしい協定だというふうに思いますし、今後、どんどん、できるところから早く、もっと多くの国と締結を図っていくべきだというふうに考えるんですが、そうしていくためには、民間にお任せするのではなくて、やはり政府がきちっと現状をつかんでおかなきゃいけないというふうに思っております。

 例えば、日本は世界各地に、大使館百二十三、それから総領事館も六十四、政府代表部も七つと、当然、民間に比べれば多くのそういう在外公館というか、調べようと思えばできる、それだけの陣容は整っていると思いますので、今後、外務省が現状把握をしっかりしていくべきだというふうに考えるんですけれども、政府の見解をお伺いしたいと思います。

谷崎政府参考人 お答えを申し上げます。

 外務省が二重負担の問題について独自の調査を行わないのかという御質問でございますけれども、まず一般論として申し上げますと、外務省としましては、多数進出している国の社会保障制度等につきまして調査を実施しております。また、在留企業の関係者の数や各国の保険料率等の情報をもとにしまして、そもそも二重負担の問題が生じているかということや、あるいは負担がある場合にはどの程度の水準になっているかということの把握に努めております。もう少し具体的に申し上げますと、外務省として、特に社会保障協定の締結の必要のある国を中心に十数カ国で調査を既に実施しております。

 今後につきましてでございますけれども、特に経済界からの具体的な要望等を踏まえた上で、さらに締結可能性について検討していくという中において、必要な調査を行いたいというふうに考えております。

谷口(和)委員 ぜひ精力的に、この辺の現状把握、状況調査をしっかりと進めていただきたいというふうに思います。

 それから、あと、イギリスそれから韓国との社会保障協定に関してであります。

 イギリスとは二〇〇一年、それから韓国とは二〇〇五年に結んでおりますけれども、加入期間の通算規定が入っていないということで、ある意味これが大きな一つの目玉であるわけで、いろいろな事情はあるかと思いますけれども、この二つの国に関しては通算規定が入っていないということです。

 イギリスにしろ韓国にしろ、日本企業がたくさん出ていっているところでありますし、また向こうからも来ているという中で、イギリスについては、向こうにそういう通算をするという制度がないということ、それから韓国についてはまだ歴史が浅いというような理由があるようでありますけれども、今後、イギリスともしっかり交渉を重ねていただいて、この通算規定を何とか盛り込んでもらいたいと思います。

 それから韓国についても、歴史が浅い、スタートしたのが一九八八年ですか、ということで、まだ二十年ぐらいですから、確かに浅いといえば浅いわけですけれども、ここも、今後の日韓の人の交流、経済交流を進めていく上でも、やはりしっかりと通算規定というのは盛り込めるように頑張ってもらいたいというふうに思うんですけれども、これが可能になるのはいつごろになるのか、難しいと思いますけれども、この辺の見通しを確認させていただきたいというふうに思います。

本田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員おっしゃるとおり、イギリス、韓国との社会保障協定におきましては、加入期間の通算の規定は入ってございません。最近の社会保障協定にはすべて入っております。

 英国との協定におきましては、交渉当時、英国側が、保険期間の通算を認めると財政上の負担が生じるということで、二重加入の回避のみを協定の内容とすることを希望しておりました。日本側としても、通算規定について議論することによって交渉が長期化するよりも二重加入の回避に限定した協定を早期に締結する方が国民の利益になるということから、こういうふうな処理をした経緯がございます。

 また、韓国との協定につきましても、保険期間の通算に係る規定は置かれておりませんが、交渉当時、通算規定について議論することにより交渉が長期化するよりは二重加入の回避に限定した協定を早期に締結する方がやはり国民の利益になるということから、こういうふうな処理をした経緯がございます。

 しかしながら、同時に、交渉当時、保険期間の通算に係る規定を置くことにつきまして、今後その可能性を模索していくことで日韓間で意見をともにしております。したがいまして、同協定の締結後、時期を見まして意見交換を行っていくことを韓国との間で確認しております。

 こうした経緯もございまして、イギリス、韓国両協定におきまして、現時点においては再交渉の具体的な予定はございませんが、保険期間の通算の可能性につきまして、今後時期を見て相手国と意見交換をしてまいりたいというふうに考えております。

谷口(和)委員 ぜひ、イギリス、韓国については通算規定を入れられるように、しっかりと頑張っていただきたいと思います。

 この社会保障協定、私も、冒頭述べさせていただいたように、実際には海外に行かなかったわけですけれども、調べてみて、一つの大きなバリアというか負担増になっていることはもう明らかでありますので、ほかの国も二重とか四重とか結んでいるところもありますので、いろいろ手続上難しい点はあるでしょうけれども、ぜひ精力的に進めていただきたいことをお願いしたいと思います。

 次に、WTOの譲許表の修正について、二問ほどお伺いをしておきたいと思います。

 今回、一千百十品目の医薬品関連産品が追加をされるわけであります。これに従ってこれらの関税を撤廃するということになるわけでありますけれども、今回の見直しに関しては、日本以外の国では、譲許表の修正を待たずに関税撤廃を実施しているということを伺っております。製薬業界もグローバルな競争の中でやはり迅速な動きというかが要求をされておりますし、日本も、できれば迅速に、素早く関税の撤廃を行っていけるようにしていくべきだというふうに思うわけでありますけれども、この点についての政府の見解をお伺いしておきたいと思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 WTOのウルグアイ・ラウンド交渉の過程におきましてこの医薬品の関税撤廃についての合意があったわけでございますが、そこにおきましては、まず、自国の譲許表、WTO上の譲許表にこれを含めた上で国内の関税率表等での手当てを行うということとされておるわけでございます。

 これを踏まえまして、我が国におきまして、これまで二回、対象品目の見直しをやっておるわけでございますけれども、その際にも譲許表の修正ということを行っておりまして、今回の関税撤廃に当たりましてもこのような手続にのっとっておるところでございます。

 なお、このような方式によりまして、日本の場合には関税法があるわけでございますけれども、関税法におきましては、関税については条約中に特別の規定があるときは当該規定によるというふうに定めておりますので、関税法を改正する必要はなく、条約、つまり今回お諮りいたしておりますWTOの譲許表修正に関する確認書という形で行うことができるということになっておるわけでございます。

谷口(和)委員 続いて二つ目ですけれども、九四年のウルグアイ・ラウンドのときには、この医薬品の関税撤廃については二十二カ国が参加をして、今回の三回目の見直しに当たっては、たしか三十一カ国が参加をしております。

 この関税の撤廃ということに関しては、これはやはりもっと参加国をふやしていくべきだというふうに思うわけでありますけれども、実際は、参加しているのは主要先進国でありまして、輸入をできるだけ抑えて自分のところの国の産業を育成したいという国はなるたけ参加したくないというのも、それは当然理解できるわけでありますが、今後、しっかりと参加国をふやしていくべきだ、こういうふうに思うわけでありますけれども、政府の見解をお伺いしておきたいというふうに思います。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 医薬品の関税撤廃につきましては、現在、委員御指摘のとおり三十一カ国が参加をしておるところでございますけれども、この三十一カ国によりまして現在の世界の医薬品の貿易量の約九四%をカバーするという状態になっております。ということで、相当程度包括的な参加を得たものになっているというふうに認識しております。

 一方で、政府といたしましては、自由貿易の一層の促進という観点から、WTOの加盟作業がございますたびに、新しくWTOに加盟をする国々に対しては医薬品関税撤廃への参加ということを促しているところでございまして、今後とも、必要に応じまして、このような働きかけを続けてまいりたいと考えております。

谷口(和)委員 ぜひ、その参加国をふやす努力、しっかりと頑張っていただきたいというふうに思います。

 あと十分ほど残り時間がありますので、胡錦濤国家主席が来日をされておりますので、日中関係、また胡錦濤国家主席の来日に関連することについて少し質問させていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、ちょっと個別の問題から入っていきたいと思いますけれども、まず、東シナ海のガス田の問題であります。これについては、福田総理も首脳会談の後の記者会見で、これまで日中間で有益な議論が積み重ねられ、大きな進展があり、長年の懸案に解決のめどが立ったことを確認した、こういうふうにおっしゃられております。

 ガス田についてはこれまでいろいろな問題が取りざたされてきて、長い間の懸案であったわけでありますけれども、今回、大きな進展があり、解決のめどが立ったということを確認した、こういうこと自体に至ったということは非常に喜ばしいことであり、未来に対して明るい展望が示されたのかなというふうに評価をしております。

 そこで、ちょっとお伺いしたいんですが、まず、この大きな進展という中身なんですが、報道では、白樺ガス田の共同開発ということではないかという報道も一部、また複数で出てきておりますが、このことも含めて、大きな進展、この内容についてまず確認をさせていただきたいと思います。

小野寺副大臣 委員御指摘の、七日の福田総理と胡錦濤国家主席との首脳会談において、有益な協議が積み重ねられ、大きな進展があり、長年の懸案の解決にめどが立ったということは確認されました。また、今後さらに細目を詰めて、できるだけ早期に合意するということで認識の一致がありました。

 大きな進展や解決のめどが立ったということの趣旨でございますが、具体的な共同開発のあり方につき詰めの作業に入る段階に至ったということであります。この点につきましてはさまざまな報道がなされておりますが、本件をめぐる交渉はまだ終結しておりませんので、ここでのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

谷口(和)委員 ぜひ精力的に交渉を進めていただきたいと思います。

 それから二点目が、ギョーザの問題であります。

 私も地元を回っていると、時局講演会等を頻繁に今やらせていただいているんですけれども、大体質問会を、最近は、しゃべる方を控えて質問の時間を長くとって、皆さんからいろいろなお話をお伺いして答えさせていただく、こういうことをやっているんですが、やはりギョーザの問題、食の安全の問題というのは必ず質問の中に出てきます。

 今回、しっかり協力をして捜査を引き続きやっていくということでありますけれども、やはり国民の皆さんの関心は食べ物でありますし、それから冷凍食品というのは、私も、今、中一ですけれども、去年まで小学校六年生で、お弁当をつくるときとか、やはり冷凍というのは非常に便利な品物であります。最近は、解かさないで入れておくと昼ごろに解けてちょうどよくなるとか、こういうこともあって欠かせないものでもありますし、この冷凍ギョーザ問題については、日中間における捜査協力をしっかりと強力に進めて解決をしていっていただきたい、こういうふうに思うわけですけれども、見解をお伺いしたいと思います。

小野寺副大臣 御指摘のとおり、食の安全というのは日中両国国民の共通な関心課題でありまして、本件については、一刻も早く真相を究明して国民の不安を解消することが必要だと思っております。私自身も、我が家に当該の製品がありまして、長年食していた経験がございますので、この問題は早く解決していただきたいと思う一人でもあります。

 七日に福田総理と胡錦濤国家主席との間で行われた会談におきましても、胡主席より、食品の安全は国民の利益にかかわる問題として非常に重視しており、関係部門が粘り強く調査を続けてきた旨の報告がありました。福田総理より、一つ誤れば不特定の人命が失われた可能性がある旨を指摘しまして、うやむやにはできない旨を述べました。その上で、両国首脳は、この問題に関しまして、より一層積極的な取り組みを行うということで合意をいたしました。

 またさらに、首脳会談を踏まえまして日中間の当面の協力をまとめた日中両国の交流と協力の強化に関する共同プレス発表におきましても、一日も早い真相究明のために日中双方で捜査及び協力を一層強化していく旨を記述されたことを報告させていただきます。

 こうした首脳レベルの合意を踏まえまして、一刻も早く真相が究明されるよう、私ども外務省としましても最大限の協力を行ってまいりたいと思っております。

谷口(和)委員 ぜひ解決に向けてしっかりお願いをしたいと思います。

 時間がなくなってまいりました。通告を一問飛ばさせていただいて、大臣が来られましたので、今回の胡錦濤主席の来日について、二点ほどお伺いしておきたいと思います。

 まず最初に、今回の共同声明では、歴史を直視し、未来に向かい、戦略的互恵関係の新局面を開く、こういうことがこの共同声明でうたわれました。

 日中関係は一時期冷え込んでおったわけでありますけれども、安倍総理が二〇〇六年に氷を砕く旅と言って訪中をされ、それから温家宝総理が氷を解かす旅と言って去年の四月に来られて、そして去年の十二月には福田総理が迎春の旅というふうにして、そうやって日中の首脳間交流が図られてきました。

 今回は暖かい春の旅ということで位置づけられているわけでありますけれども、今回のこの日中首脳会談も含めて、胡錦濤主席が来日されたその意味合い、今後の日中関係の中でどういう意味合いを持っていくのか、大臣にお伺いしたいというふうに思います。

高村国務大臣 胡錦濤中国国家主席の訪日は、中国国家主席として十年ぶりの訪日であります。この重要な節目におきまして、両国首脳が長期的、大局的観点から率直に語り合い、大きな存在となった日中両国がその責任をかみしめ、絶えず相互理解、相互信頼を深め、互恵協力を拡大しつつ、アジア太平洋及び世界のよき未来をともにつくり上げていくとの日中関係の歩むべき方向性を示したことに大きな意義があると考えております。両首脳が懸案についても率直に話し合って、相互理解を深め、問題解決にともに取り組み、二国間あるいは地域や国際社会における協力を深めていくという日中関係のあるべき姿を身をもって示されていたと考えております。

 このように、日中関係に対する両首脳の考え方を「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明として発出したところでございます。こうした両首脳間の共通認識を踏まえ、さまざまな分野で交流、対話と協力に取り組んで、また懸案を解決していく考えでございます。

谷口(和)委員 戦略的互恵関係でありますけれども、これから大事なことは、この互恵関係、これをいかに目に見える形で具体化していくか、こういうことが大事だと思います。いわゆる共同宣言に魂を入れるというか、そういうことを具体的に進めていくことが非常に大事であるというふうに思うわけでありますけれども、この戦略的互恵関係、具体的にどうやって構築をしていくのか、最後にお伺いをしたいというふうに思います。

高村国務大臣 具体的には、協議及び交渉を通じて懸案の解決に取り組みつつ、五つの柱に沿って対話と協力の枠組みを構築し、協力していくことで一致をいたしました。

 第一に、原則として毎年どちらか一方の首脳が他方の国を訪問することも含め、頻繁に首脳会談を行い、政策の透明性の向上に努め、安全保障分野における対話及び交流も促進し、政治的相互信頼を増進すること。第二に、特に青少年交流の継続的な実施を中心に、多様な国民間の交流、文化、スポーツ交流などを推進し、両国民の相互理解を促進すること。第三に、エネルギー、環境分野、食品、製品の安全、知的財産権保護、貿易投資等幅広い分野での互恵協力を含め、共通利益を拡大すること。第四に、北東アジア地域の平和と安定の維持のための協力及び東アジアの地域協力等の推進を通じてアジア太平洋に貢献すること。第五に、気候変動問題、エネルギー安全保障、環境保護、貧困や感染症等のグローバルな課題にともに対処することであります。

 これら共同声明の五つの柱に沿って、より具体的な協力を記述した日中両政府の交流と協力の強化に関する共同プレス発表も発出いたしましたが、対話協力の項目は七十にも及んでおり、日中関係がいかに多くの分野で実務的な対話、協力を行っているかを示すものとなっております。これらの幅広い分野における広域な共通認識を着実に実施することによって、戦略的互恵関係を推進していきたいと考えているところでございます。

谷口(和)委員 もう時間が参りましたので終わりにしますが、今回の来日は、過去の歴史はしっかりと大事に、直視しつつも、どちらかというと、やはり未来に向けての話し合いができたというふうに思っています。そういう意味で、まだ終わっておりませんけれども、本当にすばらしい来日であったというふうに思っております。

 ぜひ、政府としても、しっかり、今後、日中関係、お隣同士友好関係を深めていけるようにさらに努力をしていただけることをお願いしまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。

 三条約の質疑ということでありまして、特にまた同僚委員の方が社会保障協定もやっていただけるということもありますので、私は譲許表改正を中心に質疑をさせていただきたいと思います。

 政務官もおいでいただきまして、ありがとうございます。

 条約に入る前に、やはり日中首脳会談について外務大臣にお伺いをしたいと思います。

 先般の日中外相会談が行われた折、当委員会で、その前も、外務大臣がおっしゃった、お互いにもう一山越えないとできませんので、お互いにさらに努力をしていくことを確認し合ったわけでございますと。これは日中ガス田協議についてでありますが、今回の日中首脳会談を経て、一山は越えたというふうにお考えなのかどうか。もし越えたとすればどういった山だったのか。この間、私は、共同開発の領域、海域と、それから中間線についての日中間の認識のそご、これを挙げたわけでございますが、お互いにもう一山越えないとできませんが、お互いに努力をしていくことを確認した日中外相会談を経て、今回の日中首脳会談で山を越えたということでよろしいでしょうか。

高村国務大臣 山を越えるめどが立ったということであります。まだ山を越えるに至ったということではございません。両首脳が、これは山を越えられるだろうなというめどが立った、こういうことでございますから、これからその一山を越えるべく全力を尽くしたい、こういうふうに思っております。

武正委員 日中の中間線についてなんですけれども、いろいろ報道を見ておりますと、これについてはお互いの認識が一致しなかったというような報道、あるいは、それにどこまで言及をされたのかということがあろうかと思うんですね。

 一部報道では、白樺の共同開発などが出ておりまして、先ほど副大臣は、いや、そうしたことについては言及できないというお話でありました。日本側の一つ主張というものが、この日中中間線、これはもう国際司法裁判所の判例で認められているんだというようなことがあるとすれば、もしこれを抜きにして共同開発の領域のみを確定ということになりますと、過去あったような、いわゆる棚上げ、日中中間線についても棚上げをして開発の合意を目指すとすると、それは山を越えるめどと今おっしゃられましたけれども、果たしてそれが山を越えていることになるのかどうか。

 私はその点が疑問なんですが、この日中中間線についての双方の認識を深める協議というものは今回の日中首脳会談で行われたのかどうか、また日本側としてそのことをはっきりと主張したのかどうか、これについてお答えをいただきたいと思います。

高村国務大臣 今最後の詰めを行っているところでありますので、交渉の詳細についてはここで述べることを差し控えさせていただきたいと思います。

 ただやみくもに隠しているというんじゃなくて、まさに日中双方で、お互いにこのことは発表できるまで言わないという約束がありますので、そのように御理解をいただきたいと思います。

武正委員 ぜひ、棚上げすることなく、国際司法裁判所で認められている判例に基づいて堂々と主張をして、詰めをしていただくように求めたいと思います。

 それから、前回もお聞きしたギョーザでありますが、報道を見ますと、お互いに捜査頑張りましょうというようなことが書かれているわけでございます。もう既に警察庁からもこの委員会でお話があったように、日本側はもう捜査はほとんど終えている、あとはもう中国側にボールがあるんだというようなことなんですが、いろいろと、表現を見ると、お互いに努力しましょう、捜査を進めていきましょう、こういうような書きぶりになってしまうのはそういう共同文書あるいは声明などの限界なのかもしれませんが、ボールは中国側にあるんだよということをきちっと言っていただいているのかどうか。これはお答えいただけるのかどうかわかりませんが、我々はやはりそういうことを期待しているわけですが、この点はいかがだったでしょうか。

高村国務大臣 これは、大事なことは、真相が究明されないと日中双方にとって不利益なんだということが両首脳によって確認された、その上で捜査をさらに強化しましょう、こういうふうにしたということでありますから、御理解をいただきたいと思います。

武正委員 なかなか機微に触れる発言はできないと。ただ、機微にも触れないところなんじゃないかなと思うほど、非常にガードがかたい外務大臣の委員会での答弁というふうにお見受けするわけでありますが、それだけ、やはり今山を越えるちょうどそのぎりぎりのところにいるというふうに理解をして、ぜひ、今言った認識を我々も共有しておりますので、一日も早い解決に向けて、特に関係省庁の協力、また、そうした関係省庁の力を特に外務省におかれましてはもっともっと活用していただいて、懸案の解決に御尽力をいただくよう、これも要請をしたいと思います。

 そこで、条約の審議に移らせていただきます。

平沢委員長 武正君、高村外務大臣が……。

武正委員 はい。どうぞ。

高村国務大臣 首脳会談に私も立ち会っておりましたが、このギョーザの問題について総理が言った言葉で、非常に強い言葉で言った、この問題はうやむやにはできないと。非常に強い言葉で言ったのは私に非常に印象的でございました。

武正委員 はい、ありがとうございます。

 それでは、条約の方に移らせていただきますが、お手元の方に、理事会のお許しを得て、資料を配らせていただいております。きょうは、厚生労働政務官もおいでいただきまして、ありがとうございます。

 このWTO譲許表改正は、マラケシュ協定にのっとって、医薬品の関税の撤廃、これを過去二度行って、今回は三回目ということで、これを行おうということと理解をしております。医薬品を、世界的に自由貿易の中で流通を促進していく、それがやはり世界の医療の向上につながるというような趣旨かというふうに見受けます。

 まず、資料の方に、持ってまいりました一ページ目をごらんいただきたいと思うんです。

 関税の撤廃によって日本側の流通も、そうした意味での利益をこうむる、要は価格が下がっていく、こういったことも、やはり世界的な流通が促進されれば世界的に価格も下がるわけですから、当然日本の流通価格も下がっていく、こういったことも期待されることだと思うんです。

 お手元の一ページをごらんいただきたいんですが、お願いをした予備的調査、国立病院機構における支出の契約内訳を見ますと、全契約、これは平成十八年度でありますけれども、総契約数一万一千七百二十四件のうち、一般競争入札五千六百五十六件。これは、今政府を挙げて、随意契約から一般競争入札への見直しということで、外務省を初め厚労省も当然取り組んでおられる、そういう中で、半分が一般競争入札に平成十八年度はなっている。十九年度、二十年度、一般競争入札の割合を、当然、厚労省さん、あるいは独立行政法人も同様に取り組むということであります。

 ただ、一般競争入札五千六百五十六件の内訳を見ますと、いわゆる予定価格と落札価格が一致をする一〇〇%の落札率が二割、それから九九%以上を加えますと六割、一般競争入札といってもこういった落札率になっているわけでありまして、これは、医療費三十三兆円のうち、医薬品が六兆円、それから後ほど取り上げます医療機器が二兆円、八兆円を占めておりますので、医療危機と呼ばれるような今の現状の中で、もしこうした医薬品とか医療機器で不適正な契約があるとすればそれを是正して、その分をやはり必要なところに回す、こういったことも必要ではないかなというふうに思うんですけれども。

 まず、一般競争入札の落札率九九%以上が六割を占めることについて、政務官、厚生労働省、御所見を伺いたいと思います。

松浪大臣政務官 お答えを申し上げます。

 国立病院機構の中で、医療機関という特殊性から、保存血液、放射性医療品など、供給先がもう本当に限定をされておりまして、競争の余地のないものというのがまずございます。その他に、随意契約によらざるを得ないものの内訳というものが、主に、例えばNHKのものであるとか、それから地方公共団体との取り決めによった一般廃棄物の収集処理業務、こういうものが十九件で七千九百万とか、そういうものを積み上げていきますとかなりの大きな額になってくるということでございます。

 当然、今申し上げましたような、放射性、それから公共料金等も入ってくるわけでありまして、これは今どんどんと減ってきているわけでありまして、今回、平成十八年度に、随契の中でも随分と数が減ってきているわけであります。

 ですから、今回、特に一〇〇%のものが多いということについては、前回の価格というものを、実勢価格が得られない場合は前回の価格がほぼ今回の入札額、予定価格になっているというものが多うございまして、その点が非常に、この上の部分、九九パー以上、一〇〇パーが多い原因となっているということでございます。

武正委員 一般競争入札をして、予定価格というものを発注者は持っているわけですけれども、それは公開するわけじゃないわけですね。それが一〇〇%一致をする率が二割を占めるというのは他省庁でもないんですよ。

 独立行政法人は、私も予備的調査を見ておりまして、確かに、参議院でも、あれは総務省の情報通信機構ですか、一〇〇%の落札率の問題点は指摘されていますが、二割も一〇〇%というのは異常だと私は思っておりまして、まして九九%以上が六割というのは、これはやはり何か契約の適正化を必要とするのではないかというふうに考えるわけですが、その点について再度お答えをいただきたいと思います。

松浪大臣政務官 今申し上げましたように、これは全体で落札価格が一〇〇%となっている理由なんですけれども、一般的に、地域における取引価格等の市場実勢価格の把握に努めるわけでありますけれども、市場実勢価格が得られない場合、そして市場実勢価格が前回の契約価格より割高になっている場合というのがあるんですね。その場合には、前回の契約価格を予定価格とするということがございます。

 今申し上げましたように、非常に医療というのは特殊な技術、特殊なものを使用する場合が多くございまして、そういった面から、もう取引先が一つに限られるとか、そういうことも多くあるわけでありまして、こうしたことから割合が高くなっているということでございます。

武正委員 政府を挙げて今取り組んでいる入札の適正化の中に、関係省庁連絡会議の中では、第三者機関をそれぞれ全省庁設けてより厳正な見直しを行おうというのが、去年十一月二日、総理の指示のもと行われております。ですから、今のような、医療は特殊だというふうに言われてしまうと、これは、全省庁を挙げてやろうという政府のそうした取り組みの中で、では、うちは特殊だからということになってしまいますので、果たしてそれでいいのかということになろうかと思います。

 本条約の趣旨も、多分、先ほど言ったように、世界的な医薬品の流通をより促進して、その価格を抑えて、世界的なそうした健康とか生命の維持や医療の向上、それにつなげようという趣旨だというふうに理解をしますので、それが国内においても同じような効果をもたらしていく、そして、やはり医療の費用が適正に配分をされる必要があろうというふうに思うわけであります。

 きょうは公正取引委員会もお見えですが、今こうしたやりとりを聞かれて、後ほど二ページ目にあるカテーテルとかステントとかペースメーカーについては公取さんあるいは会計検査院にもお話を伺いますが、一〇〇%の一般競争入札、これは会計法上は問題がないというふうに財務省さんは言われるわけなんですが、公取さんとしてはどのような認識を持っておられますか。

鵜瀞政府参考人 独占禁止法の観点から、一般論として申し上げますと、入札に当たりまして、事業者が、いわゆる入札談合でございますが、共同して受注予定者や入札価格を決定し、一定の取引分野における競争を実質的に制限することは、独占禁止法に違反する行為でございます。しかしながら、単に落札率が高いなどの外形的事実のみによっては、直ちに独占禁止法違反として問題にすることは困難でございます。

 公正取引委員会といたしましては、独占禁止法に違反する疑いのある具体的事実に接した場合には、今後とも必要な調査を行うなど厳正に対処することとしているところでございます。

武正委員 会計検査院さんもお見えですけれども、この一〇〇%落札率ということについてどのように認識をされているか。

小武山会計検査院当局者 一般論で申し上げますと、そういう、予定価格の算定方法がかなり公開されているケースもあったり、また、見積額をもとに積算されていたり、前年度実績額をもとに積算されているというようなこともありますので、一〇〇%近くになるもしくは一〇〇%になるということは起こり得ないことではない。ただ、余りそういう事態が頻繁に起こるということも考えづらいというふうに私どもは考えております。

武正委員 そこで、資料の五ページ以下をごらんいただきたいと思うんですが、これは、やはり国立病院機構の提出資料の中で、大阪南医療センターの発注あるいは入札調書、その写しを持ってまいりました。支出の相手先は株式会社バンドーということで、十八年の契約でございます。支出目的は五、六月分の医療用消耗品の調達ということで、一般競争入札ということで、金額は二百三十八万円ということでありますが、落札率一〇〇%の契約でございます。

 これは、五、六月分医療用消耗品の調達というのもよくわからなくて、このときは、六ページをごらんいただくと、こういうような形で公募をしている。全部で三千五百点ぐらいの、マスクとか、アイソフレックスリードというのは多分ペースメーカーに関係するところですかね、それから眼内レンズほかということで、一般競争入札だよということであります。

 ただ、この仕様書を見るとメーカーとかをかなり細かく指定しているものですからどうしても応札が限られていく可能性があるということも、これは指摘をされる場合には、公募のときの仕様書というものもやはり改善の余地があるのではないのか。これはたしか公取さんも指摘をされている事実だと思います。

 それから、次の七ページ目、八ページ目、これは入札の内訳書でありますが、名前をちょっと隠してありますのは、国立病院機構の方から、入札調書で、落札をしなかった会社名は開示しないんですということでありましたので、私もこれは自分で墨消しをしたわけですが、これも他省庁でみんなオープンにしているので、厚労省さんの認識、国立病院機構の認識は、私はやはりいかがなものかというふうに思います。これは指摘にとどめておきますが。

 ただ、これは、ペースメーカーとかこういうのがずっと出ていますけれども、全部一社単独の応札なんですね。「辞退」と全部出ています。全部一社しか応札しないで、しかも、予定価格と落札価格が一致をする一〇〇%落札であります。

 一社しか応札をしない、そうすると一〇〇%になり得る可能性というのはやはり高くなると思うんです。要は、一般競争入札で競争してこそ価格が下がっていくというふうに思うんですが、こうした一社応札というのも、いろいろ資料をいただくと非常に散見されるんですが、これについては厚労省としてどのような御所見を持っていますか。やはり一社じゃないとだめなんだ、ほかになかなか応札できないんだというようなことがあるのか、お答えをいただきたいと思います。

松浪大臣政務官 ただいま御指摘いただきました点、非常に大切な点かと思います。

 これまで、平成十六年から、医薬品に関しては流通における懇談会を開催してまいりました。特に、医薬品の中で未妥結、仮納入の問題等もございまして、そういうものに業界を挙げて取り組んでもらうように、厚労省としても、そういう懇談会とともにやってきたわけでありますけれども、今年度から特に医療機器においてもこうした問題に取り組んでいこうという話になっておりますので、こうした懇談会で、御指摘の点をしっかりと踏まえて対応してまいりたいと思っております。

武正委員 きょうは譲許表は医薬品についての点でありますが、今医療機器というお話もありまして、今ここに出ているようなペースメーカーとかカテーテルとか、こういったものは医療機器に当たるわけなんですね。ですから、私は後で、WTO譲許表にこうした医療材料とか医療機器なんかも加えていったらいいんじゃないかな、こういうような提案もさせていただこうと思っております。

 そこで、次の質問をちょっと先にさせていただきますけれども、今回、譲許表を見直すに当たって、過去二回見直しているんですが、過去二回見直した効果というのをどのようにまず外務省は認識をされているのか。私がさっき言ったように、薬の価格が下がる、こういう効果を見込んでこういう譲許表の改正をやっているんだと思うんですが、その効果があったのかどうかも含めてお答えをいただきたいと思います。

小野寺副大臣 御指摘の効果につきましては、統計上の評価はございませんが、既に我が国で承認を得ている医薬品については、その関連産品の関税が撤廃されることにより実売価格が低下した場合には、薬価改定の際に考慮されていると承知をしております。

 我が国で承認を得ていない医薬品につきましても、その原材料に係る関税が撤廃されることにより、各国で開発を行う際のコストが削減され、医療の進歩に貢献することができるというふうに考えております。

武正委員 厚労省さんはどのように見ておられますか。過去二回の条約の改正が、今言ったように、価格が下がってきているのかどうか、いろいろ細かく見ないとわからないでしょうけれども、条約の改正の影響、効果をどのように見ておられますか。

松浪大臣政務官 統計上の評価というのがないわけでありますけれども、我が国で承認を得ている医薬品については、その関連産品の関税が撤廃されることにより実売価格が低下をした場合には薬価の改定に考慮しているところでございまして、承認を得ていない医薬品については、原材料に係る関税が撤廃されることにより、各国で開発を行う際のコストが削減され、医療の進歩に貢献をするというふうに考えているところであります。

武正委員 各国のそうした価格が下がって、それが国内の流通価格に反映されないと、せっかく条約を改正しても我々国民あるいは国益につながらないとすれば、国内の流通にもし問題点がある、あるいは入札、応札、あるいは公募のそうしたやり方にもし問題があるとすればやはり改善しないと、せっかく条約を改正しても我が国についてのまずメリットというものが出てこない可能性があるということを指摘したいと思います。

 そこで、公取さんにお伺いしたいんですが、資料三ページ目で、平成九年に続いて平成十七年に医療機器についての指摘をされているんですが、手元に資料は持ってきておりますが、その概要をお知らせいただきたいと思います。

鵜瀞政府参考人 公正取引委員会では、従前から内外価格差の問題が指摘されていた医療機器につきまして、ペースメーカー、PTCAカテーテル、MRI及び腹腔鏡の内外価格差及び流通実態につきまして調査をいたしました。調査の結果、先生の資料にもございますが、ペースメーカーの国内価格は海外価格の約一・六倍、PTCAカテーテルにつきましては約二倍ということがわかりました。他方、MRIと腹腔鏡につきましては内外価格差は認められなかったところでございます。

 また、ペースメーカーとPTCAカテーテルの内外価格差の要因としましては、費用面での問題、医療機関の購入方法の問題、メーカーの販売政策の問題というような取引慣行上の問題が見られたところでございます。

 このような実態を踏まえまして、公正取引委員会といたしましては、独占禁止法上の考え方を示しまして、関係団体にも説明をしたところでございます。

武正委員 資料二ページをごらんいただきますと、ペースメーカーは、有名なように、やはり四倍ぐらい差もあるわけですね、その内外価格差が。これは過去の数字ですから、それは若干縮まっているのかもしれません。今公取さんの言うように、一・六倍なのかもしれません。

 ただ、こうした内外価格差が、今公取さんの資料三ページにあるように、独禁法抵触のおそれもあるということで、たしかこの四月一日から、ペースメーカーについては卸売業者さんの立ち会いというものを禁止しようということで各病院もやっているというふうに聞いているわけなんですけれども。

 どうですか、この医療機器、先ほども、これからも医療機器についてもやはり入札の適正化を進めるんだということを厚労省さんは言いましたけれども、ただ、公取さんのこの資料、調査によりますと、平成九年にも同じ指摘をしているんですけれども、他社の進出がふえていないという答えをしている卸売業者というのが五二・八%いるというわけですね。つまり、平成九年にも公取さんは指摘したんだけれども、このペースメーカーなりの医療機器の競争が進んでいないということなんです。

 それから、医療機関に聞きますと、見積もり合わせなどを行い購入しているが、いつも同じ業者が安い見積価格を提供してくる、または同じ業者しか応札してこないためという理由をするのがやはり六割近く、医療機関もそういうことを言っているというのが公取さんの調査なんです。

 この医療機器についても、やはり二兆円の市場でありますので、これも、先ほど見たように、資料の七ページ、八ページにあるように、これは大阪の医療機関でありますが、一社しか応札をしない。その理由が、入札の仕様書に、このメーカーですよと書いてあるわけです。これはきょう資料用意していませんけれども。いただいた、この六ページの仕様書というのはいっぱいありますので持ってきませんでしたが。メーカーを指定してしまうと、やはりどうしてもこういうような一社の卸売業者、場合によっては総代理店制度、あるいは場合によっては、メーカーが、この卸売業者しか扱っちゃいけないよと言う、そういうこともある、こういうようなことも公取さんの指摘にはあるわけです。

 ですから、ここはやはり、医療機器について格段の取り組みを一般競争入札の中でもしていただかないと、一〇〇%落札率というものも改善しないし、内外価格差も改善しないのではないかというふうに思うんですが、この医療機器の入札の適正化についてはどのようにお考えになられ、取り組みをなさいますか。

松浪大臣政務官 まさに先生おっしゃるような問題をはらんでおりまして、ことしの四月一日より、医療機関等における医療機器の立会いに関する基準を実施いたしました。具体的には、今まで、手術に対して医療機器メーカーの人間が立ち会うというのを四回ぐらいまでに絞りまして、それ以降は、やはり今までみたいなサービスだけじゃなくてちゃんとしっかりお金も取って透明性を図ろう、こういうことがないと、先生御指摘のように、人間関係での取引というようなものにもつながりかねないという危機意識を我々もしっかりと持っているところでございます。

 そして、こうしたことを踏まえまして、こうした医療材料の価格についても、これまでは格差、米、英、ドイツ、フランスの外国価格の相加平均の二倍以上というものを基準にしていたわけでありますけれども、今回の診療報酬の改定から一・七倍、次回については一・五倍にしていこうということで、どんどんとこれも厳しくしていこうというふうに考えているわけでございます。

 そのほかにもさまざまな業界の慣行というものが先生御指摘のところに結びついているというものもありますので、それをしっかりと変えていかなければならないと思っているところでございます。

 一方、使っている患者さんの声なんかを聞きますと、機器が余りに違うメーカーに変わると、家族の方が使い方がわからなくなってしまうんだというような場合もありまして、そういった点についても、できるだけ皆さん、仕様なんかも工夫をして対応すべきだと考えております。

 以上です。

武正委員 お医者さんにお聞きしますと、循環器のお医者さんでありますけれども、やはり医療機器の進歩も非常に激しいんですね。当然、お医者さんはやはりいい機械を使いたい、これはお医者さんの気持ちですよね。なれ親しんだメーカーとかなれ親しんだ卸売の業者さんとはそういう人間関係ができていますから、どうしてもそういったところを使いたがるのかもしれませんが、でも、やはりこれだけ技術が進歩していますから、他のメーカーでも使えると言うわけですよ、お医者さんの側から言えば。

 ですから、そこは、公取さんが指摘しているように、三ページでも書いてありますように、特に税金を使っている支出契約だけに、「医療機関は、高いコスト意識に基づく購入行動を採る姿勢を持つ必要。」というのをやはりとっていただかないといけないだろうということだと思うんです。

 会計検査院さんにもおいでいただいていますので、四ページに、これは会計検査院が、各府省等が締結している随意契約に関する会計検査の結果についての報告書ということで調査をまとめておられます。去年の十月です。また追加もやるんだというお話でありますが。ここで、競争契約における応札者数別の落札率の状況を見ると、当然、数が少なければ平均落札率、予定価格に対して、やはり一〇〇%に近づいていくわけですよね。これを見ても、複数の業者が、一般競争入札ですから、たくさん応募しないとやはりおかしいわけで、会計法上は、いや、公募もしているし、一社しか応募しなかった、それはしようがないんだというような整理かもしれないけれども、やはりここは改めていく必要がある。これはまた内閣官房が中心となっている関係省庁連絡会議にも求めてまいりたいというふうに思いますが。

 どうですか、この医療機器について、私は、今回のこのWTO譲許表に医療機器も加えていったらいいんじゃないかなというふうに思うんですけれども、これは、マラケシュ協定にのっとって医薬品についてはこれまでやってきたわけですから、どのような手続が必要なのかわかりませんが、ひとり日本の国内だけではないと思うんです。というのは、今政府が、国内の医材料とか医療機器のメーカーを世界的な競争力ある企業に育てていきたいというたしか五カ年計画も立てておられますよね。そういった意味では、やはり国際的に、そうした医療材料や医療機器も関税を撤廃するような、そんなことも日本として働きかけたらどうかなというふうに思うんですが、これについては、まず外務省、いかがでしょうか。

小野寺副大臣 重要な御指摘だと思っております。

 ただ、医療機器及びその部分品につきましては、本件、医薬品関連産品の関税撤廃の見直しとは別に、ウルグアイ・ラウンドの交渉の結果、我が国としては既にWTO協定上の関税を撤廃しておりますので、今後、また新しいこういう機材が出た場合には同様にこの撤廃の分類に入るというふうに思っております。

武正委員 私が言ったのは、輸出産業も、日本はこれから政府として五カ年計画で考えていますので、こういう協定を結んで世界の関税を撤廃させることはやはり日本にとっても利益になるのではないか、そういう視点もありますので、その点も踏まえていかがでしょうか。

小野寺副大臣 重要な御指摘だと思いますので、しっかり踏まえて頑張りたいと思います。

武正委員 厚労省さん、いかがでしょうか。

松浪大臣政務官 おっしゃる点、非常に重要だと思います。

 しかしながら、今、ペースメーカー等は、もともとの技術が日本の技術であっても、メーカーがいざというときの事故とかを怖がって、ほとんどが輸入、すべてを輸入に頼っているというような状況であります。ペースメーカーなんかは、テルモさんが国立循環器センターと組んだりしてそういうものを進めておりますけれども。

 ただ、医療機器を自由化するという点では、五カ年計画の話が出ましたけれども、やはり国力の中で医療機器についての審査体制等もしっかりとしていく必要がある。医薬品医療機器総合機構、PMDAの方でも、医薬品の方は非常に、審査料を倍にして、審査官を倍にふやすということが行われているわけでありますけれども、私どもの医療機器の分野は、二十九人からたしか三十五人ぐらいで、微々たる進み方だと思います。

 民主党さんにおかれましても、こうした独立行政法人についても、必要なところは必要だと言っていただいて、また我が厚生労働省におきましても、医療機器の分野におきましては、医療機器担当の部署というのがしっかりと確立もされていないところでございまして、かえって民主党さんの応援をお願いしたいと思うところでございます。

 以上です。

武正委員 独法の通則法の改正も出されて、我が党が主張してきたトップの公募というものも政府もようやく取り入れようということは評価をするところでありますが、ただ、我々は、やはり廃止、民営化というようなのが一つの軸になっております。もちろん、国に戻すべきものは戻すというのがその姿勢であることは申すまでもありません。

 外務大臣、今こうしてやりとりを聞いておられて、ぜひ最後に御所見を伺いたいんですが、条約締結というのが国内法に与える影響が大変大きいのはもう申すまでもありませんし、国内法よりもある面優先をするのが日本の法体系でありますが、ここの、例えば今の、国際的な競争を促進する、あるいは貿易の自由化を目指す、こうした譲許表についても、国内の流通過程に対してやはりプラスの影響を与えていく必要があるというふうに私は思うわけでありまして、そういった観点からこの条約の承認を求めているのかいないのか。

 これについて、外務大臣、今のやりとりを聞かれて、いや、これはもう厚労省の所管のことなんだというふうに言われるのか。国内の医薬品あるいは医療機器などの流通の改善によってその価格が下がっていくことにつながるのであれば、やはりそうした点も踏まえて、医療機器も含めて交渉をさらに強めていただきたいと思うんですが、御所見を伺いたいと思います。

高村国務大臣 国内のことは厚労省の所管ではありますけれども、オール・ジャパンとして、日本の国益になるように外務省としても関心を持っている、こういうことでございます。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 武正委員に続きまして、私の方は、日本・オランダ社会保障協定、日本・チェコ社会保障協定を中心に、また、私の方からも日中首脳会談について時間があれば質問させていただきたいと思います。

 改めてこの社会保障協定締結の意義を申し上げさせていただきますと、二重加入の問題の解消、保険料掛け捨ての問題の解消、この二点。この中で、保険料の本人負担が軽減をされ、事業所にとっても大きなメリットがある、こういうふうに考えておるわけであります。

 今回の日本・オランダ、日本・チェコの協定の内容はほとんど同じであるわけでありますが、ただ、年金の保険料掛け捨ての問題については、オランダは最低加入期間がない。つまり、最低これだけ入っていればもらえるということではなくて、少しでも入っていれば、こういうことだと思いますけれども、最低加入期間がないので、オランダから日本へ派遣されるオランダ人の方に大きな恩恵がある。これに対して、チェコに関しては、年金の最低加入期間が日本と同じ二十五年である。その意味で、チェコから日本に派遣されるチェコの方も、また日本からチェコに派遣される日本の人にとっても、双方に、保険料掛け捨て、こういう問題が解消されるということで大きなメリットがある。少しその差があるわけであります。メリットがあるわけでありますが、国によって差があるわけであります。

 そこで、質問させていただきたいと思います。

 こうした社会保障協定の締結、先般、刑事共助条約のときにもちょっと触れさせていただきましたが、こうした協約はもっともっと進められていいのではないかと思うところがあるわけであります。この社会保障協定締結についても、米国は既に二十一カ国、英国は三十六カ国、そしてフランスが四十九カ国、ドイツは三十カ国とそれぞれ結んでいるということであります。それに対して、我が国はまだ残念ながら八カ国、今回の二カ国を加えても十カ国としか社会保障協定を締結していないということであります。

 我が国の企業の海外進出も今後さらに活発になるわけでありますし、活発にしていかないといけないという状況の中で、年金保険料を二重負担することを回避するこの協定の役割は非常に大きいわけでありますが、我が国の取り組みが今申し上げたような他の主要国と比べておくれていると私は思うんですが、その理由はいかがなものでありましょうか。教えていただきたいと思います。

小野寺副大臣 この協定の重要さは、委員の御指摘のあるとおりでございます。

 我が国としましても、経済発展に伴う人的交流の活発化を踏まえまして、年金制度の二重加入問題等の各国との意見交換をずっと行ってまいりました。しかしながら、我が国と相手国の双方で年金制度の違いがあったり、あるいはまた大幅な改正等がそれぞれの国であったということで、最終的に、初めに合意できましたのが平成十二年のドイツということになります。これは御指摘のとおりだと思っております。

 今後、この社会保障協定、相手国との人的交流や経済交流を一層促進するという大変重要な問題になりますので、一層推進を懸命に努力していきたいというふうに思っております。

近藤(昭)委員 これから一生懸命推進をしていきたいと。ただ、先ほど触れさせていただいたように、非常に他国に比べておくれている。小野寺副大臣の方からも、そういうこれからのことについて言及はあったわけでありますが、私はやはり、先ほど申し上げた海外との経済交流の中で促進をする非常に重要な協定になってくると思うんですね。

 そういう意味で、改めて高村大臣、今後の決意といいましょうか、推進について、どうお考えでしょうか。

高村国務大臣 外国で働く日本の方が二重の負担を負うようなことがないように、やるべきことはきっちりやっていきたい、促進していきたい、こういうふうに考えています。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。大臣におかれましても、政府におかれましても、ぜひ積極的に推進していただきたい、こう思うわけであります。

 ただ、そういった協定交渉、これは物理的にも、それぞれ進めていく手続があるわけでありまして、一挙にできるわけではありません。そういう中で優先順位についてという関連で質問をさせていただきたいというふうに思います。

 これまで我が国が締結したドイツ、英国、米国、フランスなど、いずれも先進諸国ということでありますが、今後交渉日程に上がっている国も、スペイン、イタリアなど、欧州諸国がほとんどであります。その一方で、フィリピンからは一九九九年に交渉開始の申し入れがあるにもかかわらず、いまだに交渉が始まっていない。

 我が国とアジア諸国や中南米諸国との人的交流は非常に活発なわけであります。今、高村大臣もおっしゃったように、そういうところで二重負担をしている、こういう現状があるわけで、非常に協定締結のニーズがあるわけであります。そういう意味で、こうしたところの国との協定のネットワークを広げていくべきだと思うわけであります。

 二重負担の規模が大きいのはイタリア、二重払い規模は年間約四十五億円、こういうふうに聞いております。そしてブラジル、同約二十一億円。ここは、既に二〇〇三年に同国からは協定締結の申し入れがあった、ただ進んでいない、こういうふうに聞いておりますが、こういったことに対して、経団連等経済界からも協定の早期締結の強い要望があると聞いております。

 協定の締結交渉の優先順位についてはどのようなお考えでいらっしゃるのか、聞かせていただきたいと思います。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 社会保障協定の優先順位でございますけれども、私ども、検討するに当たりまして、幾つかの要素を総合的に勘案しております。

 具体的に申し上げますと、まず一番大事なのは、この二重負担の規模を決定づける要因となる相手国の社会保障制度の社会保険料負担の規模でございます。それから、在留邦人の数、進出日系企業の数等が重要な要素だというふうに考えております。また、御指摘のありました我が国経済界からの具体的な要望というのも重要な要素でございます。それからさらには、相手国との二国間関係というのも大事でございますし、さらには、やる上での、社会保障制度そのものの日本の制度との違いというのもよく研究した上で一つの要素としたいというふうに考えております。

 具体的に御指摘のありましたイタリアとブラジルでございますけれども、イタリアにつきましては、来る五月の下旬に第一回政府間交渉を開始する予定にしております。ブラジルでございますけれども、日本に約三十一万人のブラジルの方々がおられるという状況の中で、大変重要な相手だと考えております。日本の企業の方もブラジルに進出をしておりますので大事だというふうに考えておりますが、政府間の作業部会を開催しまして、まずは両国の制度を研究するという段階に今来ております。具体的に申し上げますと、予備的な意見交換の段階というふうに我々は位置づけております。

近藤(昭)委員 そうした五つほどの指標があるということであります。

 ただ、そういう中で、今ブラジルについては予備交渉のようなものをしている、こういう言及をいただいたわけでありますけれども、ブラジルについては、今申し上げましたように二十一億円、そして今お答えの中にもありましたように三十一万人、それは向こうからでありますが、ブラジルの人が日本で働いている。規模が非常に大きいということだと思うんですね。そういう意味では、予備交渉は始まっているということでありますが、いろいろと交渉をして、ぜひ積極的に進めていただきたい。

 あと、フィリピンについてはいかがでありましょうか。九九年から先方からは申し入れが来ている、こういうことでありますが、何か大きな障害でもありますでしょうか。

谷崎政府参考人 フィリピンの場合でございますけれども、フィリピン側から具体的に大きな要望というのは、御指摘のとおりございます。我が国の経済界の方の優先度というものにつきましても、割合優先度の高いところにございますので、我々としては、このフィリピンというものの情報をよく集めた上で、どういう段階で優先度を付して交渉に入ろうかということは考えていきたいというふうに考えている段階でございます。

近藤(昭)委員 もちろん、今お話しになられた五つの指標があるわけでありますが、先方からの申し入れもあるということで、ぜひ積極的にお取り組みいただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 ところで、多国間社会保障協定について、特にEUということでお聞きをしたいと思います。

 実務的にそれぞれ進めていくのは大変だということであると思いますが、日本とEUということで社会保障協定を締結するメリットは大きいのではないか、こういうふうに考えるわけであります。もちろんEUはそれぞれの加盟国があるわけでありますけれども、EUの中でも、EUとしてのそういった社会保障協定についての何らかの制度の統一というか、何かのレベルみたいなものがあると思うんですが、いかがでありましょうか。

本田政府参考人 お答えいたします。

 社会保障制度につきましては、各国がそれぞれの固有の事情を反映して設計しているものでございます。各国間の違いが小さくはございません。そのため、社会保障協定は、締結相手国の社会保障制度との違いを十分に踏まえた上で、政府間で交渉し作成されているものでございます。

 我が国は、EUのそれぞれの加盟国との間でも、このように相手国の社会保障制度の違いを踏まえた上で、相互に最大限の利益が得られるよう、個別に協定交渉を行ってきているところでございます。

 今委員御指摘のとおり、EUについて社会保障協定を締結してはどうかという御指摘でございますけれども、EU自体が、すべての加盟国に一律に適用される統一的な社会保障制度を有しているわけではございません。EU加盟国はそれぞれ独自の社会保障制度を有しているわけであります。したがいまして、現在のところ、我が国としては、EUとの間で社会保障協定を締結する考えは持ってございません。

近藤(昭)委員 現実的に障害があることを推進しろと申し上げるつもりはありません。ただ、今後、EUの中でもそうした社会保障協定のある種の統一が進んでいくのではないかなという予想もしながら、日本が積極的に経済交流をしていくために、そうした考え方も必要ではないかというふうに思うわけであります。

 続きまして、各国の社会保障制度がまだまだばらばらだというか違う、そういう中で、もしかしたら、まだまだ十分にそういった社会保障制度ができていない国もあるのではないか。そういうところとはなかなか結びつきにくい、こういう障害になるのではないかと思うんです。

 そういう意味では、年金等の社会保障制度が十分には整っていないと思われる開発途上国に対して、社会保障制度の構築に関する専門家派遣など、こうした貢献ができるのではないかと考えるわけでありますが、こうした社会保障制度に関する我が国の支援の現状と今後の方針についてお聞かせをいただきたいと思います。

小田政府参考人 社会保障制度に関する開発途上国の支援につきましてですが、社会保険、社会福祉、それから労働基準や雇用、こういった分野での専門家を派遣いたしまして、開発途上国の関係行政機関に対して政策立案に関する助言を行う、あるいは途上国の行政官を我が国に受け入れまして研修を実施する、こういった技術協力を実施しております。

 平成十七年二月に閣議報告されました政府開発援助に関する中期政策では、貧困削減のためのアプローチの一つとして、セーフティーネットの構築を支援する、このように定めております。

 こうしたことから、今後とも、途上国側の具体的なニーズを踏まえまして、社会保障分野における支援も実施していきたい、このように考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 簡単で結構なんですが、例えば、どれくらいの国からどれぐらいの人を受け入れているとか、あるいは、日本の専門官とかを何カ国にどれぐらい派遣をしているかというようなことを教えていただきたいんですが、いかがでありましょうか。

小田政府参考人 お答えいたします。

 全容を、今手元に資料がございませんので、例で申し上げたいと思いますが、例えば、中国におけます農村養老保険制度の基本情報に関する調査あるいは人材育成、こうしたことにつきましては、調査団をこれまで二次にわたって派遣しておりまして、第一次十一名、第二次十三名の派遣、こういうのがございます。

 それから、個別専門家の派遣でございますが、例えば、インドネシアやマレーシアで、ちょっと今手元に何名という数字はございませんが、労働政策関係のマスタープランづくりあるいはアドバイスのために専門家の派遣をしております。

 それから、タイにございますアジア太平洋障害者センター、こちらにつきましては、これまで、長期専門家を四名、短期専門家を年間五名から八名派遣しておりまして、あわせて本邦における研修も実施している、こういうことでございます。

近藤(昭)委員 短期あるいは長期でも人を派遣しているということでありますが、今後もこの方面については積極的にやっていかれるのかどうかということをお聞かせいただきたいと思います。

小田政府参考人 先ほども申し上げましたように、政府開発援助に関する中期政策で、セーフティーネットの構築を支援すると定めておりますので、私どもとしては、この方針に従って、途上国側のニーズを踏まえながら実施をしていきたい、このように考えております。

近藤(昭)委員 そういった中期計画の中でこうした面においても支援をいただいて、支援をすることによって制度が充実をしてくる、充実をしてくる中で日本との協定も進めていただきたい、こういうように思うわけであります。

 続きまして、関連をしてお伺いしたいわけでありますけれども、在日の外国の人たちに対する対策についてということでお聞きをしたいと思います。

 我が国では、日本に在留する外国の人にも年金への加入義務を課しているということであります。日本にいる外国の人の年金制度に対する理解向上のためにいかなる対策を講じておられるのか、このことについてお聞かせをいただきたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保険庁におきましては、外国人の方に対しまして年金制度を周知いたしますために、日本語以外の八カ国語でリーフレットを作成いたしますとともに、その内容をホームページ上に掲載してございます。

 また、このリーフレットでございますけれども、市町村それから社会保険事務所、そうした機関の窓口において、制度加入時の際の説明などに活用していただいているという状況でございます。

 リーフレットの中身でございますけれども、公的年金の概要、加入対象者、加入手続、それから、年金給付の種類、そして外国人に対します脱退一時金及び社会保障協定、そうした一般的な制度内容を記載いたしまして、それで、具体的な問い合わせといたしましても、社会保険事務所とか、あるいはねんきんダイヤルといった、その電話番号などをお知らせ申し上げているところでございます。

 そのようなことで、今後ともできるだけわかりやすい広報に努めていきたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 今お答えがあったような形でやっておられるということでありますが、これはどうでしょうか、十分に効果を上げているという御理解はされているのか、あるいは、そうした理解が進んでいるかどうかということについての調査といいましょうか、外国の人たちに対するヒアリングといいましょうか、何かそういった調査をしておられるのか、教えていただきたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員おっしゃるような、例えば外国の方に対するアンケート調査、そうした形のものは当面予定はしていないわけでございますけれども、しかしながら、昨今、要するにお仕事あるいは居住の関係で、外国の方の年金適用のあり方というものをいろいろな角度から検討しなければいけない、そういう状況に立ち至っているというふうに思っております。

 個々の例は挙げることは控えさせていただきますけれども、そういう事象というのは間々発生してございますものですから、そういうような事象を踏まえて、そのときには改善ということで思い切った手も打ちながら、今申し上げたようなリーフレットを中心とした広報の充実、そうしたものに取り組んでいきたいというようなことでやっているわけでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そういったアンケートはやっていないということで、アンケートというやり方にこだわるわけではありませんけれども、もちろん、説明を受ける側というか、当事者といいましょうか、かかわる側も積極的に知ろうという意思がなければ何をやってもなかなか進まないというふうには思うのでありますけれども、ぜひ、そこのところは、関係をしている人たちがどういう状況でいるのかということに何らかの方法でアクセスをしていただきたいなと思うわけであります。

 私が聞きましたところによりますと、浜松市が調査をしている、その調査によりますと、同市内の年金に加入していない南米系の外国人の人が理由として挙げた最大のものが、やはり、日本の公的年金がわからない、こういうことだったということなんですね。

 どうでしょうか。浜松市がしたりしているわけですが、例えば、そういった個別の自治体がやっている、あるいはどこかがやっている、こういうようなことがあるという御認識があるのか、また、そういったところのデータも参考にしていくというお考えがあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

石井政府参考人 お答えさせていただきます。

 委員おっしゃるように、実態把握というのはやはり非常に重要なことだというふうに思っておりまして、私どもの方も、市町村などの自治体ときちっと連絡をとりながら、どういうような取り組みを、それぞれにおいて、その実情に合う形でなさっているのか、そこのところの連携、情報の交換、そういったことについてはきちっと進めているつもりでございますけれども、今、具体的な例として特定の自治体の名前もお挙げいただいたわけでございまして、そのこともちょっと念頭に置きながら、さらにどういう形で実態把握に努めたらいいか、検討を加えながらしっかりと対応していきたいというふうに思います。

近藤(昭)委員 ぜひ、説明を受ける側も努力をしなくてはいけないと思いますけれども、やはり、できる限りわかりやすい、そういった方法で、また現状を把握しながらやっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 ただ、そういう中で、では、日本の年金制度がわかってきた、理解をしてきたというところで、また少し、障害といいましょうか、関連が出てくるのではないかなと思います。それは、いわゆる最低加入年数ということだと思うんですね。

 社会保険は、厚生年金と健康保険がセットで加入ということになっている。日本の年金制度でいうと、二十五年以上日本に滞在する予定のない在日の外国人にとっては年金保険料は掛け捨てになってしまう。そうすると、年金は加入しなくても健康保険だけに加入したいというニーズがある。こういうときには、実際には、掛け捨ての年金保険料を払うことを回避するために健康保険にも入らない、そして、いざ病気になっても病院に行けないというような事例も聞いたことがあります。あるいは報道されることもあります。

 こうした外国の労働者に対して、健康保険のみに加入できる、つまり厚生年金の適用は免除されるような特例的な措置が講じられれば、事業所の負担も軽減され、外国人労働者の健康も守られる、こういうふうに思うわけであります。もちろんこれがすべてではなくて、こういった現状に対して何かよい方法はないか、あるいは、一つの方法として年金の適用の免除ができないか、こういうふうに考えるわけでありますが、いかがでありましょうか。

間杉政府参考人 お答え申し上げます。

 二つ御説明をさせていただきたいと思います。

 厚生年金という制度でございますけれども、これは、老齢、年をとられるというふうなことのほかに、障害であるとかあるいは死亡というふうなことを保険事故として対応する制度でございます。

 したがいまして、御指摘ありましたような日本の滞在期間が短い外国人の方でございましても、不幸にいたしまして障害になられるあるいはお亡くなりになられるというときには、障害年金あるいは遺族年金というふうな形で、社会連帯というふうな考え方の中で保険制度でカバーをする、海外送金もする、こういった仕掛けになってございます。これが一つでございます。

 それからもう一つでございますけれども、確かに、今先生がおっしゃいますように、それにいたしましても滞在期間が短いというためになかなか老齢給付に結びつきにくいというふうな問題がございまして、こういった点につきましては、最終的には、きょうも御審議をお願いしてございます社会保障協定あるいは二国間の通算、そういったもので解決されるべき問題だというふうに考えます。

 しかしながら、こうした解決が図られますまでのいわば特例的な措置といたしまして、短期の滞在の外国人の方が帰国した場合には脱退一時金を支給するというふうな仕掛けを設けているところでございます。本人に御負担をいただきました保険料の額を基準といたしまして一時金を支給する、こんな仕掛けでございます。

 先生から御指摘ございましたように、やはりなかなか我が国の制度がわかりにくいという問題があるんだというふうな御指摘もございましたし、今、実務方の運営部の方にもいろいろ御注文がございましたので、私ども、ぜひこういった日本の制度の仕掛けというふうなものを外国人の方々にも十分に御理解いただくというふうなことで、あるいは事業主の団体等の御協力などもいただきながら、そういったことの正しい理解というふうなことに腐心をしてまいりたいと考えているところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 ただ、こうした年金あるいは健康保険という社会保険、保険というのは万が一のときのためにということで掛けるということであります。

 今ちょっと心配しているのは、亡くなったときの年金あるいは障害を受けたときの年金もある、こういう部分であれば、短い間であっても、二十五年住むことがなくても、入っていればそういったものがもらえるから入っておいた方がいいよということではあると思うんですが、制度としてのそういうものがどれだけ理解されるのかという問題。

 もう一つは、正直言ってだれもが、もしかしたら自分がそういった障害を負うあるいは死亡してしまうようなことに遭うということは、想像はするかもしれませんが、やはりそういうことはある意味でネガティブなことでありますからなかなか想像しにくいというところもあるんではないかと思いますし、そういったためにもより入りやすい制度にしていくべきだというふうに思うんです。

 そういう意味では二十五年というのは非常に長いということでありまして、この年数を短くするというような考え方もあるでしょうし、あるいは、今、一時金のこともお触れをいただきましたが、ただ、一時金は多分三年分ぐらいではないかなと思うんです。そうすると、逆に言うと、二十五年には達しないけれども、五年、十年、十五年と住んだ人からすると、十年、十五年あるいは二十年掛けて三年分ということでは、なかなか積極的な加入のインセンティブにはならないのではないかと思いますが、その点はいかがでありましょうか。

間杉政府参考人 お答え申し上げます。

 何点か、年金制度の根幹にかかわる問題についての御指摘かと存じます。

 確かに、我が国では、公的年金の資格期間、二十五年というふうな資格期間を設けているわけでございます。例えばこれを短くするということにつきましては、これは日本人も含めての全体的な問題になるわけでございますけれども、私どもとしては、やはり低額の年金者をふやすということになりまして、結果的に公的年金の機能が十分に発揮できないのではないかというふうな懸念も一つございます。

 それから、脱退一時金につきましても、三年上限というふうなことでございますが、この点につきましては、日本での在留期間が三年というふうなものが基本になされて、もちろん先生も御案内のとおり、特定活動というふうなことでそれよりも長いものもございます。それから、今の実態、これが平均的にはたしか一・八年ぐらいだったと思います。そういった社会的な実態、そういったものも踏まえて三年というふうなところで線を引いているわけでございます。

 本来は、年金制度としては、一時金ではなくて、できるだけ年金として受け取っていただくというふうなことでございますので、私どもとしては、御批判はあるかもしれませんけれども、一時金の方を充実を図っていくというよりは、むしろこういった国際的な通算的な措置というふうなもので、払った保険料はできるだけ年金でというふうなことに政策の力点を置いていきたい、かように考えている次第でございます。

近藤(昭)委員 どうもありがとうございます。

 そうした考え方をより具現化するという意味でも、繰り返しになりますが、どういった日本の制度であるかというPRということと、また、より入りやすいあるいは入ることのメリットが大きいということで、当事者の人たちの、関係者の人たちの声も聞きながら進めていただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 さて、余り時間もなくなってまいりましたが、もう既に何人かの方がお聞きにはなられておりますが、今回の胡錦濤国家主席の来日に伴っての首脳会談、この中で、「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明、また、気候変動に関する共同声明ということがあったわけであります。日本側ももちろんでありますが、中国側も環境のテーマについて非常に関心を持っていることが感じられるわけでありますけれども、そういう中で、今回の日中首脳会談における日中間の環境保護協力に関する合意について、高村大臣はどのように評価されているのかお聞かせをいただきたいと思います。

高村国務大臣 今回の胡錦濤国家主席訪日の日中首脳会談においては、昨年十二月の福田総理訪中時に表明した三年間で一万人の研修計画や省エネ・環境協力相談窓口等の具体的な環境協力案件の進捗を確認するとともに、中国の水汚染対策や黄砂の共同研究等の協力について意見交換をいたしました。

 その機会に発表した「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明におきましても、「エネルギー、環境分野における協力が、我々の子孫と国際社会に対する責務であるとの認識に基づき、この分野で特に重点的に協力を行っていく。」ということを確認いたしました。

 さらに、日中両政府の交流と協力の強化に関する共同プレス発表においては、水資源分野における協力の強化、植林、違法伐採の取り締まり強化、公害対策と気候変動の緩和を両立させるコベネフィットアプローチに関する具体的な協力促進等、さまざまな分野の協力促進について一致をしたところでございます。

近藤(昭)委員 大臣、ありがとうございます。

 そうした、いろいろと協定というか具体的な合意もなされたと聞いておるわけであります。ぜひ日中間で協力をして、日本にとっても中国の環境問題というのは非常に影響を与えるわけで、大きいわけでありまして、積極的に取り組んでいただきたい、こういうふうに思うんです。

 ただ、少し、どういうふうにとらえたらいいかなと思うことがあります。よく言われるように、今回の首脳会談によって京都議定書以降の枠組みに中国がどういうふうにかかわってくるのか。今回の首脳会談によって、枠組みの中には入っていないわけでありますけれども、やはり環境問題、地球温暖化は大きな問題ということで、中国が積極的に京都議定書以降の枠組みには参加してくる、こういうふうになった、こういうふうに見ていいのかどうか。

 大臣、いかがでありましょうか。

高村国務大臣 日中首脳会談におきましては、気候変動問題における協力の強化について話し合われ、この機会に発出した日本政府と中華人民共和国政府との気候変動に関する共同声明では、日中双方がバリ・ロードマップのもとで二〇一三年以降の実効的な枠組みを強化する交渉に積極的に参加し、二〇〇九年末に開催される気候変動枠組み条約及び京都議定書の締約国会議において結論を出せるようにするという共通認識を得たところでございます。また、我が国が国別総量目標の公平な設定の手法として提案しているセクター別アプローチについて中国側は重要な手段であると表明し、中国側から前向きな評価が得られたと考えております。

 我が国としては、これらを京都議定書の第一約束期間後の国際的枠組み構築に関する中国側の積極的な対応を確認したものと評価しているところでございます。我が国としては、本共同声明に従い、引き続き中国との協力を進め、中国を含むすべての主要経済国が参加する実効性ある枠組み構築を目指し、中国に対し、より責任ある対応を働きかけていく考えでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 日本の分野別アプローチに対しては非常にいろいろな意見もあった、そういう中で中国が評価をしたということは大きいと思うんです。ただ、そうすると、中国がそうした分野別のアプローチを認めたということは、将来的に中国も削減数値を、今回の中では中国の個別としては言っていないわけでありまして、そこはやはり気になるわけでありますが、削減数値を言っていないということについては、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。私はやはり中国も言ってほしかったなというふうに思うわけでありますけれども。

高村国務大臣 削減数値というのはどういう意味かよくわかりませんが、日本もまだ国別総量目標の数値は言っていないわけでありまして、これからみんながそれぞれ出していくということが必要になってくる、こういうことだと思います。

近藤(昭)委員 質問時間は終わりましたけれども、私も環境委員会で質問したときに、日本が個別的分野別アプローチをしていく、その中でやっていくということだと思うんですが、洞爺湖サミットに向けて日本は積極的にそうした目標を挙げていくべきだ。そういう中からやはり中国も、日本も頑張っている、こういった目標でというふうにやっていくんだと思います。そういう意味で、しっかりと頑張っていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原です。

 WTOの関係、医薬品有効成分の譲許表の関係について質問させていただきます。

 WTO農業交渉、私は長い間携わってきたわけですけれども、今回、医薬品の関係を見ますと、医薬品は素人でございまして、えらい違いにびっくら仰天したんですね。いまだもってWTOの農業交渉は米問題に、米、米、米、米というので、何か頭の上に石が載っかっているみたいな感じで交渉をやっているんですけれども、医薬品関係をちょっと見てみたら、そういうものはさっぱりないような気がするんです。

 このWTOの交渉と医薬品関係の関係というか位置づけというか、どうなっているんでしょうか。何にも問題になっていないような気がするんですけれども、その点はいかがでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 WTOのウルグアイ・ラウンド交渉の過程におきまして、主要医薬品生産国の間で医薬品及びその中間原料について関税を撤廃するという結論が得られたわけでございます。その後、関係国の間でこれまで二回にわたりまして対象産品の見直し作業が行われました。また、それに引き続きまして、二〇〇四年四月に今回の三回目の見直し作業が開始をされまして、二〇〇六年十一月に対象産品が取りまとめられて、今回、この確認書についてお諮りをしているということでございます。

 こういうように、医薬品関係の関税の見直しといいますのは、ウルグアイ・ラウンド交渉の合意の結果の後続いておるわけでございまして、現在行われておりますドーハ・ラウンドとは別の形で行われているということでございます。

篠原委員 よく聞いてもっと簡単に言うと、外務省のする仕事は医薬品関係については何もないということなんですね。ほとんどもめごとがない。定型的に、グローバライゼーションが進んじゃったので全部関税ゼロにしてやっていくだけという非常に恵まれた分野だな。こういう分野もあるとは私は知りませんでした。

 一つ、先ほども触れられましたウルグアイ・ラウンド交渉の中でベーシック・ヒューマン・ニーズという問題があって、よく、食料と医療、この分野は自由化ばかりするべきじゃないんじゃないか、よくない、国民の生命、安全を守るための非常に大事な分野だから違うルールが引かれてしかるべきだというのがあったんですね。

 その一つに、特許、TRIPsというのがあって、今もありますけれども、その中で、先進国ばかりが特許を持っていて、例えば簡単な例で言うと、エイズの薬は簡単にアフリカでもつくれる、それを莫大な特許料を払わなくちゃいけないからつくれない、そういうのは不合理じゃないかというようなので医薬品の分野で問題になっていたんですけれども、その後、この点については進展しているんでしょうか、特許の例外にしていくというようなことについては。

長尾政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から御指摘ありました関係でございますけれども、開発途上国におきまして、エイズですとか結核ですとかマラリア等々、感染症が拡大することなどによりまして緊急に医薬品の供給が必要となった状況におきまして、医薬品について特許権が認められている場合につきまして特許権者から実施許諾を受けられなくなれば、特許発明に係ります医薬品の供給ができなくなる可能性がございます。そこで、感染症の蔓延といった国家緊急事態の場合などにおきまして、特許発明の利用が必要な事態が生じた場合には特許権者の許諾を得ずに特許の実施を認める、いわゆる強制実施権の制度が国際的にも担保されております。

 一つには、知的財産に関する国際協定でございますWTO・TRIPs協定におきましては、三十一条におきまして、一定の条件のもとで、国家緊急事態その他の極度の緊急事態の場合などに特許権者の許諾を得ずに第三者による使用を認めることとしております。

 それから、国内におきまして、我が国特許法におきましても、これは具体的には九十三条でございますけれども、公共の利益のため特に必要があると認められる場合におきましては、特許権者との協議を経た上で政府が第三者による特許権の実施を認める裁定を行うことができる制度がございます。

 以上でございます。

篠原委員 何でも自由化、何でも特許というのの例外がちゃんとこういう分野であるというのを聞いてほっとしました。

 外務省の皆さんにお願いですけれども、食料の分野についても、ちゃんとこういった例外的なことを考えていくという柔軟な発想を持ってWTO農業交渉に取り組んでいただきたいと思う。農林水産省ばかり言っていると全然力がありませんから。

 特許の分野ではちゃんと、本当に必要な場合はそんな特許料なんか払わなくたっていい、国内でも海外でもそうやって柔軟に対応して、エイズに苦しんでいる人たちを救うという方法があるわけです。そういったことが特許の世界とか医薬品の世界で進んでいるんだったら、食料の世界でも、工業製品と全く同じように扱うということはやめていただきたい。これはちゃんと認識して交渉に当たっていただきたいと思います。

 考えていきますと、医薬品というのは総合化学産業であり、日本のような先進国の得意分野であってしかるべきだと思うんですが、我が国の医薬品市場はだんだん縮小している。薬をそんなに飲まなくなって、健康食品とかそんなところになって、一九九四年は世界の市場の二一%を占めていたのに、今は一〇%ぐらいになっているそうです。その供給体制というのは、私はいつも食料と比べちゃう悪い癖があるんですけれども、自給率、自給率と問題になりますけれども、医薬品の世界についても、タミフルは国内でどれだけ供給体制が整っているんだとか問題にされますけれども、薬も大事なものだと思いますけれども、これについてはどういうふうに今現状なっておりますでしょうか。そもそも、薬の世界において、国内のメーカーがこれだけつくっていなくちゃいけない、国内のメーカーはこれだけ維持していかなくちゃいけないというような考え方があるんでしょうか、ないんでしょうか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 医薬品につきまして、我が国の国民が必要とする医薬品の安定供給はやはりきちんと確保されていくべきものだというふうに考えております。

 そのために、医薬品の企業の特性としてはグローバル化がどんどん進んでおるということであろうと思いますので、内資、外資を問わず、必要な医薬品を、研究開発も進め、供給をしていただくべきものというふうに考えております。

 それで、国内におきまして今の現状を申し上げますと、国内の医薬品の売上高で、内資系の企業というのが、売上高で見ますと七八・七%、十七年度の数字でございます。それから、外資系の企業の売上高の占める割合が二一・三%、このような状況になっておるということでございまして、内資、外資を問わず、きちんと供給をしていただくような環境整備を行ってまいりたいというふうに思っております。

篠原委員 投資規制というのが問題になったりしていますよね。医薬品の世界もグローバル化が進んでいますというふうにあっさり答えておられますけれども、それだったら、日本は得意で、自動車産業界と同じように、トヨタとかホンダとかそういうのがあってしかるべきだと思うんですけれども、世界ランキングを見てみたら、二十位以内に二社ぐらいしか入っていないんですね。こんな状態でいいのかなという気が私はするんですけれども、国内の医薬品メーカーをバックアップしていくというようなことは本当に考えなくていいんでしょうか、投資規制だとか。

 何か、僕なんかからすると、空港の関係の会社の何とかなんてそんなところよりも、食料だとか医薬品の方がずっと大事なような気がするんですけれども、その点はいかがでしょうか。

木倉政府参考人 お答えを申し上げます。

 やはり日本の医薬品メーカーにも、きちんと国内で新しい医薬品をどんどん開発する力をつけていただきたい。あるいは、外国企業でありましても、日本に拠点、基盤を置いて日本の国民のための必要な医薬品を供給していくということであれば、それもまたしっかりとやっていただきたいということで、今、政府といたしましては、医薬品の研究から上市に至ります過程を一貫してきちんと、国内での研究開発から製造販売に至るまでの環境整備を図ろうということで、革新的医薬品・医療機器創出のための五カ年戦略というものを策定いたしまして、それを官民共同で推進しよう、そういうフォローアップをしていこうということで取り組んでおるところでございます。

 我が国の医療ニーズに対応した医薬品がきちんと国民に迅速にかつ安定的に供給されるような体制整備に今後とも努めてまいりたいというふうに思っております。

篠原委員 ちゃんとやっているからいいという話かもしれませんけれども、私は、見ていると、このままいくと、医薬品業界は繊維産業と同じになっていってしまうような気がするんですね、繊維産業の皆さんには悪いんですけれども。かつて花形産業だったのが、輸出の花形だったのが、ちょっと手を抜いている間に輸入の方がずっとふえてしまって、がたがたになってしまっている。医薬品の世界なんかも、日本の得意分野になっていいはずなのに、輸入と輸出を見たら、輸入が一兆円近くになっている、輸出は三千億円ぐらいにしかなっていない。医薬品なんというのは総合化学産業で、先進国でしか成り立たない産業だと思うんです。日本が一番力を入れてもいいはずなんですが、どうも入っていないような気がするんです。

 アメリカは、ナショナル・インスティテュート・オブ・ヘルスというのがBSEや何かのときにもしょっちゅう出てきますけれども、そこが非常に研究の拠点になっていて、研究開発も国が先頭に立ってやっている。日本みたいに、ばかの一つ覚えで官から民へ、官から民へ、そんなことばかり言っていませんよね。戦略的な研究はちゃんと国が金を出してやっているはずなんです。日本はそういう体制になっているんでしょうか。

木倉政府参考人 御指摘のとおり、やはり日本の医薬品企業は国際競争力をきちんと持っていただいて、国内における研究開発もですけれども、国際的にも新しい医薬品を供給していく力を持っていただきたいというふうに我々も考えております。

 先ほど申し上げました革新的な医薬品・医療機器の創出のための五カ年戦略に基づきます研究開発予算、これは国の方としてもしっかり力を入れて応援していこうということでございまして、各省庁と協力して取り組んでおりますが、関係省庁合わせまして、二十年度予算で申し上げますと、八百六十九億円というものを計上しております。

 国際的に単純に比較できるデータがなかなかないわけですが、ライフサイエンス、生命科学予算全体の数字で見てみますと、二十年度、我が国は三千三百十五億円ありますけれども、アメリカに比べますと、アメリカの十九年度の生命科学関連予算は約三兆円と言われておりますので、十分の一強程度であろうかと思いますが、世界で新薬を開発しておりますアメリカ、イギリス、日本というような国のイギリスと比べてみますと、イギリスの健康科学研究予算の三千四百億円、これと同程度の水準までの応援は何とかできてきておると思います。

 今後とも、関係省庁と連携をとって、医薬品産業の研究開発力の強化ということを応援してまいりたいというふうに思っております。

篠原委員 日本は、聞いていますと何かワンパターンのような気がするんですね。研究機関をみんな独立行政法人にする。私は、どこで線を引くかわかりませんけれども、電気製品は東芝だとか日立とかパナソニックでいいと思いますよ。しかし、農家は、種だとか栽培方法とか、そんな、研究できないわけです。それまで一緒くたに独立行政法人にして、民間から金を取ってやれとか、そんな、できるはずがないことをワンパターンでやっているわけですね。

 医薬品は医薬品メーカーがある、武田薬品がある、あるいは、山之内製薬と藤沢薬品が合併して何になったんですか、全然調べていないですけれども、アステラスですか、これが二大企業だと。こういうところは研究開発の能力はあるかもしれませんけれども、鳥インフルエンザがいつ人のインフルエンザになるかもわからない。この研究や何かはだれがするんですか、この新薬は。こんなのは国がやらなかったらどこもやらないのにもかかわらず、今のお答えにありましたけれども、アメリカは三兆円だ、日本は生命科学の分野は三千億だと。いや、イギリス並みだと。イギリスは人口は日本の半分以下ですよ。

 ちゃんと大事にしていかなくちゃいけないのに、やはり、どこに線を引くかというのを考えていただかなくちゃいけないんです。巨大な産業、メガファーマシーというのができ上がりつつありますね。その多国籍企業に完全にコントロールされたりすると、いざというときに必要な薬も手に入らないし、法外な値段を吹っかけられたりする。それは食料なんかと同じ、軍事も同じ、エネルギーも同じ、薬の供給も同じ。ある程度の部分というのは国内で供給する体制をつくっておかなければいけないと私は思うんですけれども、何かこのWTOの譲許表で、はい、何でも自由化で、全部関税ゼロにして、有効成分もゼロにしてと。それで輸入して、ちょっと調剤して、日本人は身長も低いし体重も少ないから、日本人向けに調合してやればいいんだ、そういうふうに安直なやり方でやってきているんじゃないかなという気がします。このままいったらがたがたになっていくという気がするんですけれどもね。

 その点では、一つのメルクマール、基準になるのが特許ですよ。特許の状況は難しいというのを聞いています。一般の特許と違って、一般の特許はいろいろなのがあってクロスしてやれるんでしょうけれども、医薬品は基礎特許というので、どこがどうなっているのか比較が難しいそうですけれども、日本発の薬というのはそんなにないんじゃないかと思うんです。それは、研究開発の手を抜いているという気がするんです。ほかの国と比べて、薬の分野における特許というのは、例えばアメリカと比べて、ほかの産業分野に比べて多いんですか、少ないんですか。

長尾政府参考人 お答えいたします。

 医薬品の特許関係の出願状況でございます。

 まず、二〇〇一年から二〇〇五年の間に日本企業が日米欧中韓、こういう五カ国・地域へ出願した医薬品の特許出願件数は、一年当たり大体七千件前後で最近推移しております。他方、この時期におけます米国企業におけます医薬品の特許の出願件数でございますが、やはり一年当たりで大体二万二千件から二万六千件程度ということで推移しております。これだけ見ますと、出願数ベースでいきますと、米国企業のおよそ三分の一程度が日本のシェアかなという感じがいたします。

 それから、御参考までに申しますと、欧州は、ちょっと国別のデータはございませんけれども、欧州企業全体で申し上げますと、大体同じ時期で一万一千件前後で推移しております。

 医薬品分野は以上でございますけれども、他の技術分野の比較でいきますと、例えば、日本が得意とされる電気・電子部品あるいは半導体分野でいきますと米国企業の大体二倍以上、あるいは光学、複写機分野でいきますと、同じ時期でいきますとやはり二倍以上ということで、分野によっては、技術分野におきましての出願状況は違いますけれども、医薬品関係というのは、先ほど申しましたとおりの状況でございます。

篠原委員 今の数字を聞いていますと、実態がだんだん明らかになってくるんですね。自動車産業が日本で一番でかい産業で、その次が電機産業ですか、その次が医薬品と機械、そして食品になっていっているはずです。

 特許の件数は、電気や何かの方はアメリカよりも多くて二倍だ、それに対して薬のシェアは三分の一だと。だから、もう皆さんお気づきだと思います、薬の名前はみんな、有効成分なんかは、「家庭の医学」なんかというものの附属についているもの、日本でやっても世界に売るためにわざと片仮名にしているのだろうと思いますが、片仮名名ばかりですし、多分外国なんです。外国オリジンの薬ばかり飲んでいて、日本オリジンの薬というのはそんなにないはずなんです。

 これは非常に情けないことで、こんな研究分野のところに金をつぎ込んでやっていくなんというのは大事なことですし、こういうのは絶対国が責任を持ってやる分野の一つじゃないかと私は思うんです。だから、いろいろな試験研究機関を独法化しましたけれども、国立感染症研究所というのは、国民の生命財産にかかわる研究所は、安全なところにかかわるのは国の機関ということで、警察庁の科学警察研究所とかいうのも国の機関になっていました。

 だから、薬の分野は、私は、国の研究機関をちゃんとつくって、そして国が重点的に新しい薬、それは鳥インフルエンザだけじゃなくてアルツハイマーとかそういった、日本は高齢化の超先進国ですから、それに関係する薬の開発に相当お金をつぎ込んでいるんです。それは結局、年金保険財政を、今の破綻状態に近づきつつあるものを助けることになるんですね。そういう観点からやっていただきたいと私は思います。

 それで、その関係ではもう一つ。全く違うものですが、ジェネリック薬品ですね、後発医薬品。その先発、特許の方と矛盾するというか、特許で先進的にやっていかなくちゃいけないというのがある。しかし、特許が切れた、安くつくれる後発医薬品の利用が、これまた日本は特殊で、人のふんどしで相撲をとってやっているというか、二番手ランナー、三番手ランナーで、安く、自分で開発努力をしないで、欧米の特許でもって大衆薬品をつくってもうけている。それだったらその延長線に徹すればいいのに、ジェネリック薬品については非常に利用率が少ないというのは、これはどういう理由でこうなっているんでしょうか。

木倉政府参考人 お答え申し上げます。

 ジェネリック薬品、後発医薬品でございますけれども、これの我が国の使用の状況というのは、欧米諸国に比べて、まだ一七%程度で低いということが指摘をされております。この後発医薬品の普及ということは、患者さんの負担の軽減あるいは医療保険の財政全体の改善というためにも資するものであると考えておりまして、政府としても、平成二十四年度までに、後発医薬品の数量シェアを今の倍程度、三〇%以上に高めていくという目標を掲げまして、推進を図っておるところでございます。

 しかしながら、今御指摘のように、後発医薬品についてなかなか伸びていない状況の背景として指摘されていることといたしましては、供給体制、医療の現場で必要とされるようなものがきちんとそろえられていないとか、あるいはそれに伴う医薬品の情報提供の体制が十分でないというふうなことが医療の現場からも指摘をされていることがありまして、医療関係者の方の信頼が必ずしも高いとは言えない状況にあるということもその要因の一つというふうに指摘を受けているところでございます。

 このために、後発医薬品の、患者の皆さんや医療関係者の皆さんの信頼感を高めていくために、昨年十月には、後発医薬品の安心使用促進アクションプログラムというものを策定いたしまして、この安定供給、品質の確保、情報をきちんと提供するということを国、後発医薬品メーカーともども取り組んでいこうという目標を定めてやっておるところでございます。

 また、診療報酬の面からもこれを推進していこうということで、この春の診療報酬改定から、お医者さんが処方せんを出されるときに、その処方せんの様式がありますが、それを変更する。後発医薬品に変更することはだめですよというときだけ署名を書いてください、従来、変更してもいいよというときに署名を書いてもらいましたのですが、今度、だめですよというときだけ書いてくださいと。ということは、逆に言えば、そういう署名を書かれないときには保険薬局の方では後発品を処方する、こういうことに努めなさいというふうな努力義務も置きまして推進をする。または、診療報酬の面からも応援をするということを図ったところでもございます。

 このような施策の効果を十分踏まえながら、この目標達成に向けて取り組みを進めてまいりたいというふうに考えております。

篠原委員 厚生労働省のやり方というのは、いろいろな役所のやり方であるんでしょうけれども、どうも現場の感覚とずれたのが多いんですね。高圧的に上からやって、こうやってやれというのが。だから、年金でも後期高齢者医療制度でも失敗するんですよ。現場のところをよく見て私はやっていただきたいと思います。

 安くした方がいいわけです。先ほど武正さんが指摘されていましたが、三十三兆円ですよ、医療費、どんどんどんどん伸びている。そのうち医薬品が六兆円。この部分が安いジェネリック薬品でもって三兆円になったりすればそれは楽になるわけですから、薬としての働きが同じだったら安い方がいいので、何でそういうふうにしていかないのかなというのが不思議なんですね。

 もちろんそれは、さっきちょっと触れられましたけれども、保険制度、日本は全部保険に入っている、アメリカなんかは保険制度がないから安いのでやらざるを得ない、だからアメリカが異様にジェネリック薬品の使用が多いというのはわかります。日本は保険で何でも見てもらえるから、そういうので、高い薬で、ブランド志向が薬にもあるんだろうと思います。やはりそういうのを改めていくというのをちゃんとやっていただきたいと思います。

 それで、せっかく農林水産省から来ていただいておりますので、今、WTOの農業交渉、何か新しいことを主張したりして、さっきの特許のところで、理屈に合った、特許特許と言っているんじゃなくて、大事なものについては強制実施権があって、それを取っ払ってやっちゃっていいんだというようなことが実施されているんです。それを、農業の分野では相変わらず自由化、自由化、自由化とそれ一辺倒のような気がするんですが、日本は日本の立場をちゃんと明らかにするような新しい提案をしたりされているんでしょうか。

小風政府参考人 WTOの農業交渉のことでございます。

 我が国は、今回、ドーハ・ラウンド交渉の中で、輸入国間の権利義務のバランスの回復、我が国は御指摘のとおり食料輸入国、こういう立場で食料安全保障の観点からいろいろ主張してきております。

 今回、委員御指摘ございましたけれども、最近、食料需給逼迫とか食料高騰、一部の国の中で輸出規制を行う、こういうような動きが出てきております。こういうことが食料高騰を招いて、貧しい途上国、そういうものを初めとして、食料輸入国の安全保障に大きな影響を及ぼしている、こういう状況でございます。

 一方、現行の農業協定、WTOの協定では、農産物の輸出規制あるいは制限措置について、必ずしも通報が明確な義務となっていないとか、あるいは実施期間に関する期限が定められていない、こういうちょっと不十分な点がございます。

 我が国は、今御指摘ございましたけれども、輸入国の立場ということで、四月の三十日でございますけれども、農業交渉の中で、現在、農業議長の改訂議長案、こういうものが出て議論を進めているわけですけれども、その中で、輸出規制について実効性のある規律強化を図るということで、輸出規制の発動に当たってのルールの明確化を図る、あるいは一定の場合に食料輸入国としての立場を表明できるような仕組みを設ける、こういうような提案を骨子といたしまして、スイスと共同で提案しております。

 こういう輸入国としての立場から、引き続きWTOの議論に積極的に参加していって、我が国の考え方を最終的なモダリティーに反映させるように努力していきたい、そういうふうに考えております。

篠原委員 頑張って交渉していただきたいと思います。

 それで、最後の五分間、私の訴えをお聞きいただきたいと思います。答弁は別に要りません。胡錦濤主席が今、来日されています。それに関係して、長野市民、長野県民の気持ちを代弁して、聖火リレーの関係もありますので、訴えを聞いていただきたいと思います。

 私は、この場でチベット問題のところでちょっときついことを申し上げましたけれども、中国の人たちに非常に感謝しています。長野県と中国というのは関係が深いんです。私の親戚にもいるわけですけれども、満蒙開拓団というのがいっぱい行きました。寒いところなんです。日本国政府は賢かったんです。鹿児島の人を寒いところにやったってやっていけませんから。長野県が一番多く行ったんです。そして、国策に対して非常に素直に従っているんです。

 長野県の大日向村というのは、外務大臣のお友達にもそういう名前の方がおられるようですけれども、村じゅうの半分が満州に行ったんです。一番北、そして一番ひどい目に遭うんです、ソ連軍が侵攻して。そして、私のところから行ったのは高社郷、ピストルで集団自決です。全部亡くなりました。一人、女性、高山さんという人が生き残るわけですけれども、ののさんになるんだよ、仏さんです、ののさんになるんだよと言って二人の子供をピストルで泣く泣くあの世に送って、自分もやったけれども生きていたので、中国人に助けられて、帰ってきて手記を本にしています。残留孤児もそうです。それはみんな中国人が助けてくれたんです。

 私の親戚が満蒙開拓団長で行きました。彼の話を聞いたりしたことがあります。満州開拓、列車に乗って近づいてきた、そうしたら、ほろをおろして、外を見てはいけないという指令があったそうです。みんなに見てはいけないと言った。本人は、なかなか立派な人なので、そうは言いつつ一人だけ外を見ていた。そうしたら、北へ北へ行く列車のわきで中国人がはだしで逆の方向に歩かされている姿を見たそうです。そして着いたら、全く新天地で開拓するという話だったのに耕した跡があるんです。これは違うじゃないかといって上層部に食ってかかったそうです、私の親戚の団長が。そうしたら、いやいや、中国人は、やったけれどもだめだからほったらかしにして逃げ帰ったんだと。そこで彼はうそを悟るわけです。追い払ってそこに日本人を入植させたわけです。

 私は、これは侵略だと思います、実際。それにもかかわらず、その生き残りの女性を、そして子供たちをちゃんと助けてくれた。ですから、私は、中国に対しては大恩がある。

 日中友好協会というのがあります。私の尊敬する井出正一さんがずっとその会長を務めておられる。私は大体正月なりの会合に必ず行っています。中国に対して敬意を払ってやらなければいけない、それは常に感じています。

 それで、そういう気持ちがありますから、聖火リレー、八百人を超えるボランティアの登録がありました。準備をしていました、日本と中国の小旗を四百ずつ用意して、そして振って、それから日本人独特の、中国の国旗の赤と日本の国旗の白、紅白まんじゅうを千個。こういうのをすべてぶち壊し。だれのおかげでしょうか。中国人留学生が山ほど訪れて、長野市民がお祝いしてやろうとしていたのを、近づけもしない。長野市民はかんかんですよ。

 そして、手前みそになりますけれども、ボランティア活動をオリンピック中にやってなれたせいか、日本陸連の方の話ですけれども、全国でマラソン大会がいっぱいあるそうです、このマラソン大会のボランティア活動を最もきちんとやり、進んでやってくれるのが長野県の人だそうです。私を見ていればおわかりいただけると思いますが、みんなまじめなんです。こういう人たちなんです。

 それを踏みにじったのは、私はやはりおかしいと思います。私の母校長野高校なら、留学生だそうですけれども、ああいうところへ来て罵声を浴びせ、チベット支持者に対してけったりしていました、現場を見ました。そういうことをしていたら、長野高校のルールは厳しくて、頭を丸坊主にして一週間停学です。私はこれは許せないことだと思います。

 もう一つ、最も長野市民、長野県民が怒っているのは何かというと、十八日に、仏教徒で云々ということですから、リレーの出発地点を善光寺が返上しましたね。私は、これは外務大臣や総理大臣はそういうことはできないし、今のところで友好関係を保つのでいいと思います、立場立場がある。しかし、善光寺は世界に向けて、日本にもチベットに思いをはせている団体があるんだよということを発したんです。インターネットで世界じゅうに広まっています。これは非常に、私はここでも申し上げましたけれども、さすが我が長野県の善光寺だと思います。

 ところが、許しがたいのは、それが十八日、そうしたら二十日の夜に、我々もいたずら小僧はいっぱいいました、落書きするのもいます、しかし、善光寺さんにそんなことをするというのは、我々からすれば信じられないんです。それが七カ所にわたってスプレーで落書きされている。もちろん犯人はわかりません。しかし、因果関係からいって、十八日にやって二十日ですから。善光寺は何も言っていません。しかし、私はこういうのは許しがたい行為だと思います。

 こんなのは何かの場所でぜひ私は言っていただきたい、わびがあってしかるべきだと思います。犯人は特定したりしていません。しかし、長野県民、長野市民のまじめな気持ちを今回の聖火リレーのところで相当踏みにじっているということ、これは私のお願いですけれども、胡錦濤主席に会われることがあったりしたらちょっと言っていただきたいというお願いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 超過して失礼いたしました。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、日本・オランダ、日本・チェコの社会保障協定に関連して質問いたします。

 今回のオランダ、チェコとの協定によって、我が国は、先ほどありましたが、十カ国との間で社会保障協定を締結したことになりますが、諸外国、特に欧米諸国と比べるとまだまだこれからだということがあったとおりであります。特にアジア諸国との関係でいきますと、我が国の企業等から一時的に派遣をされる被用者等はかなりおります。また、我が国にも特にアジア諸国からの入国者が非常に多いということでありまして、中国からは四十三万人など、在日外国人の約五六%を占めているという数字もありますが、アジア諸国との社会保障協定の締結というのは、そういう中で、まだ韓国との間だけというのが現状であります。

 そこで、大臣に伺いたいんですが、この社会保障協定のネットワークを広げていく意義、そして、それとのかかわりで、もちろん相手国の制度の問題はあると思うんですが、今後、とりわけアジア諸国との間で社会保障協定の締結を進めていくことについての基本姿勢について、どのようにお考えでしょうか。

小野寺副大臣 一般に、アジアの国の中では社会保障協定の締結の前提となります社会保障制度が十分に発達していない場合が多いことが、アジアにおいて現在韓国としかない背景にあると思っております。欧米諸国においても、アジア諸国との間で社会保障協定を締結している国は多くないと承知しております。

 社会保障協定については、相手国の社会保障制度における社会保険料の負担の規模、在留邦人及び日系企業の状況、経済界からの具体的な要望の多寡、二国間関係、そして我が国と相手国との社会保障制度の違い等を総合的に考慮した上で、優先度の高いところから順次締結交渉を行っております。

 政府としましては、この基本的な方針に照らしまして、アジア諸国における社会保障制度の成熟度や、我が国との経済及び人的交流の進展といったニーズを考慮しつつ、締結協定も視野に含めた検討を進めております。

笠井委員 大臣としても一言、こういうのを大いに、世界的にも広げていくという中でのアジアの位置づけというか、御決意、今後どういうふうに推進するかについてお願いします。

高村国務大臣 今副大臣から答弁しましたように、なかなか条件が整っていないところもありますが、こういう制度はできた方がいいに決まっているわけでありますから、そういう制度の整いぐあい等も考慮に入れながら、アジアだからやらないとかそういうことではなくて、考えていきたい、こう思っています。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

笠井委員 在外邦人の方々は、今回のような年金や医療保険の問題を初めとして、国、政府に対するさまざまな要求、要望を持っておられます。それにとっても大事だと思いますのは、在外邦人の選挙制度であります。

 私自身、昨年七月の参議院選挙公示直前でしたけれども、ロサンゼルスで開催されました政党討論会というのに出席する機会が各党議員とともにありまして、この制度の重要性の認識を改めて深めることができました。

 そこで、まず外務省に確認したいんですが、昨年夏の参議院選挙の時点で結構ですが、在外邦人の総数というのは大体どれぐらいいて、そして、うち有権者はどれぐらいいらっしゃるというふうに推計をしているでしょうか。

谷崎政府参考人 お答えいたします。

 外務省は、年に一回、海外在留邦人数調査を行っております。現在、一番最新なデータは平成十八年の十月現在でございます。十九年のは今集計中でございますので、十八年十月でございますが、その数は、百六万三千六百九十五名の方が在外におられます。このうち、これと対応します選挙の推定有権者数それから登録者数等でございますけれども、第二十一回の参議院議員通常選挙でございますけれども、そのときの推定有権者総数が約八十万人おられます。また、登録している方が約十万人というのが対応する数字でございます。

笠井委員 推定で約八十万人といいますと、例えば佐賀県とかそれから山梨県とか、恐らく有権者でいうとそれぐらいの数に匹敵する、かなりの規模だと思います。

 海外での国政選挙への投票というのは、一九九八年の公選法改正によって衆参両院選挙の比例区が制度化されました。在外投票制度の確立を求めて世界の十一カ国十三地域の日本人組織がネットワークをつくられて、署名活動や政府、国会要請行動を展開されました。選挙区選挙の実施については、国を相手取った訴訟も提起をして、二〇〇五年の最高裁判決で勝訴をするという形で、翌年の公選法改正で実現したものであります。

 私自身、八〇年代前半にヨーロッパに三年ほどおりまして、そのときはまだ一切、選挙権というか、投票できなかったものですから、悔しい思いをしたわけですが、隔世の感ということで、前進してきていると思います。

 そこで、総務省に伺いますが、昨年七月の参議院選挙の場合、在外選挙制度が始まってたしか六回目だったと思います、選挙区、比例代表の二つの投票ができるようになって初めての選挙でありましたが、在外選挙人名簿の登録者数は何人で、実際の投票者数、投票率は、比例代表選挙、選挙区選挙のそれぞれでどれぐらいだったでしょうか。そして、その結果をどう評価しているか。お答えをいただきたいと思います。

久元政府参考人 昨年の参議院議員選挙におきます在外選挙人名簿登録者数は十万二千五百五十一人でございました。投票者数は、比例代表選挙が二万四千百九十一人、選挙区選挙が二万三千六百十五人でありまして、投票率は、それぞれ二三・五九%、二三・〇三%というふうになっているところでございます。

 この数字についてでありますけれども、この登録者数につきましては、これは十七年の衆議院選挙から見ますと約二万人ほどふえております。また、投票者数につきましても若干ふえているところでありますが、投票率につきましては、これは十七年の衆の投票率二五・八二%を若干下回っているところであります。

 今委員御指摘になりましたように、在外選挙の対象となる有権者数は約八十万人でありますので、まだこの登録者数は必ずしも十分とは言えない。私どもといたしましては、まだまだ努力が必要だというふうに自戒しているところでございます。

笠井委員 せっかくできた制度でありますが、投票数はふえたけれども投票率は若干下がっているという傾向にあるというお話でした。そして、推定有権者比でいいますと三%弱という状況であります。

 私、昨年の政党討論会で、ロスでも実感したんですが、多くの在外邦人の皆さんが、日本の政治に対して、世界的視野というか、外国から見ながらも、関心と同時にいら立ちもある、そして期待とともに要求や注文をたくさん持っていらっしゃるという状況でありました。

 そして、在外公館も、大使、総領事を先頭にしてさまざまに努力をされて、そして、開票までに確実に日本本国に手便で外務省の職員の皆さんが持ってこられる、これは大変な神経を使われる仕事をしているという苦労も伺ったところであります。

 そうした在外投票を推進する上で、まだ課題が多いと言わなきゃいけないと思うんですね。

 関係者が一番問題だというふうに考えているのが、いろいろ聞きますと、海外での投票は、申請主義ということであるために、選挙人名簿登録をしなければ投票権を得られない。それを何とか簡素化できないかという問題もあります。また、投票所が、世界的にいうとたしか二百あったと思うんですが、在外公館でやる。それ以外郵便でもありますけれども。そういうところで投票所が限られている。それから、選挙公報も届かない、情報がなかなか来ないということがあるということでありますけれども、投票率の向上あるいは登録を進める、そしてこの制度を推進する上で、政府としてどういう努力が今大事だというふうにお考えでしょうか。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

久元政府参考人 在外選挙制度につきましては、これは平成十年に創設されましてから、制度の改善が行われてきております。先ほど委員が御指摘されましたこと以外に、例えば、平成十五年におきましては、これはすべての地域で郵便による投票を可能にする、それから平成十八年の改正では、三カ月の住所要件を満たしていなくても選挙人名簿の登録申請ができる、こういうような改正も行われております。

 私どもは、まずはこういう制度についてきちんと周知徹底を図っていくということが重要であろうと思います。昨年の参議院選挙におきましては、リーフレットを作成して配るなんというのは、これは当たり前のことでありますけれども、初めて総務省の特設ホームページを開設いたしまして、できるだけわかりやすい、選挙人名簿の登録それから投票方法の説明なども掲載いたしました。この総務省のホームページのアドレスを入れたメールも関係団体に送りまして、海外に事業所、事務所がある関係団体にも周知していただくような努力をしてまいりました。

 今後ともこういう努力を、外務省とも密接な連携を図りながら全力で行っていくということが基本的な考え方でございます。

笠井委員 さまざま努力ということもあったんですが、例えば登録の問題でいいますと、三カ月の住所要件を満たしていなくてもというところまでやったというふうになりますと、最終居住地、住所のある市町村あるいは区役所のところで転出の届けをする際に、例えば名簿登録にかかわる在外選挙人証の発行というのを、そこまでその時点でやるということだって検討し得るんじゃないかというふうに思うんですね。

 こういった問題を含めて、私は、今外務省とも連携しながらというふうに言われたんですが、大臣、ぜひ、在外にいらっしゃる皆さんあるいは在外公館の皆さんのやはり感じていること、意見や要望を最大限酌み尽くしながら、聞きながら制度の改善を図っていくということでは、大臣もそういう立場で臨んでいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

高村国務大臣 総務省とよく相談しながら、在外の人たちの意見等は総務省に伝えていきたい、こういうふうに思っています。

笠井委員 在外邦人の方々の日本の政府に対する要望、要求も多岐にわたるものがあります。

 昨年、政党討論会に行ったときも、多くの方々が不安を持って関心を示していた問題の一つが、いわゆる消えた年金、宙に浮いた年金、年金記録の問題であります。

 そこで、社会保険庁に伺いますが、政府はとにかくこの問題は一人残らず最後まで解決するという立場だということで、ねんきん特別便を送るというふうにしてきたわけですが、該当すると思われる在外の邦人の方々にもこれは送ったんでしょうか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御案内のように、基礎年金番号に統合されておりません五千万件の記録の問題につきましては、昨年七月五日の政府・与党の基本的な方針というものにのっとりまして、私ども、今組織を挙げてその解決に向けて取り組んでいるところでございます。

 今お話のありましたねんきん特別便の件でございますけれども、これは、そのような全体的な取り組みの中で主要な柱というふうに位置づけておりまして、何しろきちっと進めていく必要があるというふうに思っております。

 具体的に申し上げますと、この五千万件の未統合の記録と、それから基礎年金番号あるいはそのもとに結びつけられている二億五千万の健全な形での記録、これをコンピューターの中で突合するという作業をやって、その結果、五千万の方から結びつく可能性がある記録というものが浮かび上がった場合は、その方のところにその旨のお知らせをするという形でこの三月までやっております。(笠井委員「在外としてもやっている」と呼ぶ)

 はい。それで、海外に居住している受給者の方に対する取り組みでございますけれども、これも、お届けいただいている海外の住所地あてに送付をさせていただいております。

 それから、そういう形で記録が浮かび上がってこなかった方というのも一定数おられるわけでございますけれども、そうした状態の年金受給の方々に対しましても、これはこの四月から五月にかけましてでございますけれども、今まさに取り組んでいるわけでございますが、やはり、お届けいただいた海外の住所地あてにお送りをするということを進めておりまして、そういう点におきまして、国内に居住する方と特段異なる取り扱いはしていないという状況でございます。

笠井委員 在外の人にはどれぐらい送りましたか。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 手元の資料で申し上げますと、昨年の十二月からこの三月末までに送付した分でございますが、千五百六十四名ということになってございます。それから、四月から五月にかけて、それ以外の方ということでお送りする数でございますが、およそ二万人の見込みを持ってございます。

笠井委員 これは社保庁からいろいろ照会があれば、外務省も、在留届があると思いますので、大いに協力しながらやらなきゃいけない問題で、私はこの間この問題でもいろいろ聞きますと、厚生労働省、社保庁の対応というのは、海外だから特別のことをやらないんだというようなことであったんですね。とにかく、海外にいらっしゃると、この問題でも物理的にもいろいろな困難があるわけですから、とりわけそういう特段の配慮をしながらやらなきゃいけない。照合問題はさまざま問題になっていますけれども、この問題は、海外の方々も含めて徹底的にやるべきだということを強く要求しておきたいと思います。

 この際、防衛省に質問しておきたいことがあるんですが、去る五月二日に、米軍の横田基地で歯科補助職などとして勤務する日本人従業員が、国の診療放射線技師の免許を持たないままエックス線撮影をしているということが一斉に報道されましたが、この問題の経過について説明してください。

地引政府参考人 お答えさせていただきます。

 御指摘の駐留軍等労働者によりますエックス線撮影につきましては、平成十八年十月に、在日米軍担当官の方から、防衛省、当時の北関東防衛局に対しまして、在日米空軍横田基地歯科中隊におきまして、駐留軍等労働者の歯科補助職及び歯科衛生職にエックス線撮影を実施させる意向である旨説明がございました。

 これを受けまして、防衛省といたしましては、日米間で締結しております基本労務契約においてエックス線撮影は歯科補助職及び歯科衛生職の職務には含まれていないこと、また駐留軍等労働者の安全上の問題もあることから、平成十八年十一月に、防衛省北関東防衛局から在日米軍担当官に対しまして、エックス線撮影に従事させないよう申し入れたところでございます。

 その後、平成十九年十月に至りまして、在日米軍担当官から北関東防衛局に対しまして、駐留軍等労働者に対し訓練を開始する旨通報があったことから、先ほど申し述べました理由から、平成十九年十月に、防衛省北関東局から米側に対しまして、訓練等を行わないよう要請を行ったところでございます。

 その後、防衛省の各レベルにおきまして当該訓練の中止を申し入れたところで、五月七日に至りまして、当該訓練について、在日米軍司令部担当課長から防衛省の担当課長に対して、日米間の調整が終了するまで中止する旨の回答を得ているところでございます。

笠井委員 平成十八年十月というと一年半も前ですよね。そこから、向こうから話があって、その時点でこれはまずいよということを防衛省が言って、そして、去年の十月だから今から半年前に、にもかかわらず米軍はやるというふうに言ってきたわけですね。

 これ、米軍は、その日本の、防衛省の申し入れに対してどういう形で答えているんですか。

地引政府参考人 今申し上げた理由から累次訓練の中止等を申し上げている次第で、米軍からは、訓練の必要性についての御説明はありましたけれども、直接我々の申し入れに対しての回答はありませんでした。

 最終的には、日米間で調整があるまでの間は中止するという、五月七日に回答があったということでございます。

笠井委員 申し入れてまともに回答がなくて、それで黙っていたわけですか。それで、去年の十月でいうと、従業員に対して、従業員の安全に必要な措置を講じてきたので法律上の問題もないというふうに通達を出しているという話もあるわけですよね、米軍は。

 これは、私は余りに及び腰じゃないかと思うんですよ。在日米軍基地の日本人従業員というのは、日本側が雇用する形で、原則的に日本の国内法が適用されます。日本の診療放射線技師法では、被曝の危険があるために、放射線撮影というのは医師や歯科医師のほか国家試験に合格した技師に限られている。違反した場合には懲役や罰金が科せられるということで、当該の労働組合の方々も、明らかに違法行為だ、やめさせるように防衛省に要求したというふうにしています。

 それで、まだ研修中、訓練の段階というんですけれども、訓練を経て、ことし三月ごろからは、一部、実務訓練ということで実際に治療の中でそういう放射線の撮影もしていたということも言われているわけですけれども、そういう確認もしていないとすれば重大な話で、一昨年の段階から申し入れをしても結局はまともに回答も来なくてずるずる来て、向こうがやると言ったらまた申し入れて、ちょっとやめてくださいよということで、結局これは五月二日の日にNHKとかマスコミに一斉に出ました。そういう中で、この事態はまずいよというので、アメリカは、調整がつくまで中止というわけでしょう、やめますというんじゃないですよね。

 大臣、こんなことでいいのかということなんですけれども、やはり国内法できちっとそのぐらいは守らせなきゃいけないと思うんですが、この問題をどういうふうにお考えになりますか。

高村国務大臣 調整がつくまでやらないと言っています。そして、国内法に違反するような調整はいたしません。

笠井委員 これは本当に、私は当委員会でも米軍にかかわる問題を何度か質問してまいりましたが、在日米軍、米兵絡みの殺人事件や暴行事件、あるいは事故がある。果ては、米軍車両のほとんどが車庫証明を出していないという問題も発覚したりいたしました。国民から見たら、一体どうなっているのか。昨日もまた、沖縄で、海兵隊員二人が建造物侵入容疑で逮捕されるということもある。委員会をやるたびに米兵が何か起こしているという感じになっちゃうんですよ。いや、だから、これはもう本当に噴出している。

 まさにこんなことは大もとにかかわる問題だということで、この議論はまた次にやりますけれども、この際、日米地位協定の問題や、米軍に与えられているさまざまな特権の問題を含めて総点検をして、国民の理解が得られない法外な規定や実態というのは直ちに改めるべきだ、このことを強く主張して、質問を終わります。

平沢委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 まず初めに、特定の医薬品関連産品の関税を撤廃するためのWTO協定に含まれる譲許表を修正する確認書の締結承認に関連して質問をいたします。

 今回、関税撤廃の対象品目の追加として、医薬品の有効成分が六百四十五品目、医薬品の中間体が四百六十五品目、合計千百十品目が追加されるようですが、追加品目が決定されるプロセスが不明瞭であります。追加品目決定のプロセスについて、具体的にわかりやすく御説明ください。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の見直しは、ウルグアイ・ラウンド交渉の合意の結果を踏まえて行われたわけでございますが、これまで関係国の間で二回対象産品の見直し作業が行われまして、これに続きまして、今回三回目の見直しということでございまして、二〇〇四年の四月に作業が開始されまして、その作業のプロセスにおきまして、各国業界団体の要望も踏まえつつ議論が行われたわけでございます。その結果、二〇〇六年十一月に今回の対象産品が取りまとめられたところでございます。この決定過程におきまして、関係国との協議のプロセスを踏まえ、そのプロセスにおきましては、各国の業界団体の要望も踏まえて協議が行われたということでございます。

照屋委員 どのような医薬品の有効成分及び医薬品の中間体を追加するかということについては、結局のところ、各国の製薬メーカーが決定するんでしょうか。決定の過程において国はどのような関与をするんでしょうか。

田辺政府参考人 今回の対象品目の見直し作業は、日本政府を含めまして、この医薬品関税撤廃合意に参加している関係国の政府が主体となりまして、それぞれの各国の業界団体の要望も踏まえて、各国政府が直接協議を行って取りまとめられたということでございます。

照屋委員 そうすると、決定のプロセスに国が全く関与をしないというのはよくわかりますが、結局、基本は製薬メーカー、要するに、業界団体の意向というか利益というか要望が優先されるわけでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 もともと、医薬品の関税撤廃の合意、また一般的にWTOにおける関税削減あるいは撤廃についての交渉といいますものは、各国がそれぞれの利害関心に基づきまして要求を出し合って、交渉そして合意がなされるというものでございます。したがいまして、各国が要求を出し合うというときに、それぞれ各国で、いわば利害関係を持っている産業界などさまざまなセクターからの意見を酌み上げて、それが各国の要求として多角的な交渉のプロセスに反映される、そういう形態をとっておるということでございます。

照屋委員 くどいようですが、各国の要望を出し合う、これはよくわかるんです。だから、国の要望、要求が先なのか、あるいは製薬メーカーの要望、要求が先なのか、製薬メーカーの要望、要求があって各国政府間で調整をし合うのか、どっちなんでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 そのような多国間での交渉の場での各国の要求を策定するプロセスにおいて、各国それぞれ、その国々の事情があろうかと思いますけれども、その国内でのニーズを酌み上げて、それが国際交渉に持ち込まれるということでございます。

 日本の場合でいいますと、日本政府は、今回の見直し作業のプロセスにおきまして、国内の業界、具体的には日本製薬工業協会から要望を受けまして、その要望のあった医薬品の原材料である二十八品目について関税撤廃対象にすべく交渉をいたしました。そのうち、関係国の合意が得られて今回の対象になったのは十五品目になっておるということで、そのような形で、各国の産業界を中心とする利害関係者と各国政府がそれぞれの国内で調整をして国際交渉に臨んでおるということでございます。

照屋委員 特定医薬品関連産品の関税を撤廃するための追加品目について各国の要望を調整するINTERCEPTというのは、どのような性格及び機能を持った会議体なんでしょうか。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 INTERCEPTといいますのは、医薬品及びその中間体の関税撤廃に関する意見調整を行うために、アメリカ、ヨーロッパ、カナダ、日本などの製薬企業及び業界団体を中心に組織されました国際的な会議体であるというふうに承知をしております。

照屋委員 国際貿易ルールのもとでは、医薬品は他の工業品と同様に扱われるようです。製薬会社は往々にして世界じゅう同一の価格で医薬品を販売しているため、経済的に恵まれない途上国の人々は命を救うために必要な医薬品は高過ぎて手に入れることができません。途上国の人々にとって、必須医薬品の入手問題は大きな政治問題となっております。政府はその解決のためにどのような取り組みをしておられるのか、尋ねます。

田辺政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のような問題に関しましては、WHOにおきまして、途上国の医薬品へのアクセス、とりわけ必須医薬品へのアクセスという問題として議論されているところでございまして、我が国といたしましても、途上国において必要とされる医薬品アクセスの向上は国際的に取り組む重要な課題と認識しておりまして、WHOの種々の活動に協力してきておるところでございます。

 また、途上国が必要とする医薬品を提供するために、日本政府は、世界エイズ・結核・マラリア基金に対する約八・五億ドルの拠出を初めとする国際協力を実施しているというところでございます。

照屋委員 高村大臣に尋ねますが、国境なき医師団というのがあるようで、そこでも今回の確認書承認と絡んで医薬品問題をさまざま問題提起しているようですが、結核やマラリア、あるいは眠り病、リーシュマニア症などの感染性の熱帯病の治療薬の研究は、現在ほとんどなされていないようです。その原因は、製薬会社にとって熱帯病の治療薬は利益をもたらさないからだと言われております。人々の命を守るための医薬品が他の工業品と同じように扱われている現状にそのような問題が潜んでいるのではないか、このように私は思っておるんですが、高村大臣はどのようにお考えでしょうか。

高村国務大臣 委員が御指摘の感染症や熱帯病等の治療薬につきましては、おっしゃるように、製薬企業にとっては余りもうからない、そういう理由によって民間ベースの研究開発は活発でない、私もそういうふうに聞いております。一方で、厚生労働省によりますと、WHO関連の公的研究機関等によりこれらの疾患の治療薬の開発研究は行われているということでございます。

 政府といたしましては、医療品の研究開発や医薬品へのアクセスの向上は国際的に取り組むべき重要な課題であると考えておりまして、このような課題についてWHOを初めとする国際機関において扱われていると承知をしております。

 さらに、外務省といたしましては、途上国の人に医薬品を初めとする保健サービスを確実に患者へ届けるために、世界エイズ・結核・マラリア基金への拠出を初めとした支援を行っているところでございます。

 工業品と同じように市場原理でやる部分と、公的に関与していく部分と両方大切だ、こういうふうに思っております。

照屋委員 厚労省、今高村大臣の御答弁を聞いておったと思うんですが、感染症や熱帯病の治療薬はもうからないから余りつくらない、あるいは研究がおくれている。こういう状況の中で我が国が国際社会の一員として果たすべき役割、これを、大臣の御答弁ありましたが、厚労省としてはどのように考えておりますか。

上田政府参考人 確かに、途上国で必要な医薬品が必要な人に行き渡らないという問題がございます。しかし、これは我が国一国だけでは解決ができませんし、また、御案内のように我が国の医薬品メーカーは世界的規模で見ても非常に弱小なものが多いわけでございまして、そういう点では、大きな国際的な枠組みをつくってやる必要があるのでは、こう思っております。

 そういうことで、御案内だと思いますけれども、二〇〇六年五月のWHO総会において決議がなされておりまして、具体的には、途上国における患者ニーズに対応できる研究開発を重要項目として取り上げるようWHOの加盟各国に要請をする、また、WHO事務局及び国際的パートナーと協力して途上国に影響を与えている疾病に対する医薬品の研究開発を積極的に支援するよう加盟各国に要請すると。これを担保するために決議がなされておりまして、こうした事項に対して中長期的な国際的な枠組みをつくるということで、今政府間ワーキンググループ、IWGができております。

 この結果が本年五月のWHO総会にも報告をされるというふうに聞いておりますけれども、私どもとしましては、医薬品の研究開発において途上国のニーズに配慮することは非常に大事である、こう考えておりまして、今WHOの熱帯病研究特別計画というものが走っておりますけれども、これを初めとするWHOの活動への協力も行ってきたところでございますけれども、こういう国際的な枠組みの中で、また私どもの国内の医薬品メーカーができるだけ貢献できるように我が国としても支援をしていきたい、このように考えているところでございます。

照屋委員 今御答弁がありました二〇〇六年五月のWHO総会の合意を受けて、熱帯病はおいておいて、日本的に非常に重要なのは感染症の治療薬の研究開発、これとの関係では国内的な取り組みにどのように取り組まれるのか、それが一点。最後に、今回の医薬品関税撤廃の品目追加によって国民にはどのような具体的なメリットがあるのか。その二点をお答えください。

上田政府参考人 前段の方をお答えいたしますけれども、先ほど外務省からも御説明ございましたけれども、エイズ・結核・マラリアファンドに八・五億ドルが拠出されております。こういうものを活用しながら、必要な人に行き渡るような手法を我々も考えていき、そういう供給がされる中で、研究開発もそれぞれのセクターがそれぞれを支援していく、こういう形で実現をしていきたいというふうに考えているところでございます。

田辺政府参考人 後段の方の点についてお答え申し上げます。

 我が国が今回の確認書を締結いたしまして関税撤廃が実施されるということによりまして、国内で安価な医薬品の入手が可能となるというふうに考えております。また、各国の関係企業が医薬品の製造や開発を行う際の研究材料にかかるコストを削減することが可能となるというふうに考えておりまして、これによりまして医薬品及びその中間原料に関する国際貿易が促進されまして、最終的には医療の進歩にも貢献するという見地から、今回の関税撤廃は有意義なものであろうというふうに考えております。

照屋委員 終わります。

平沢委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定の譲許表第三十八表(日本国の譲許表)の修正及び訂正に関する二千八年一月二十二日に作成された確認書の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とオランダ王国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

平沢委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

平沢委員長 次に、国際物品売買契約に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件、千九百四十九年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約(アンティグア条約)の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣高村正彦君。

    ―――――――――――――

 国際物品売買契約に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件

 千九百四十九年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約(アンティグア条約)の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

高村国務大臣 ただいま議題となりました国際物品売買契約に関する国際連合条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、一九八〇年四月に採択されたものであります。

 この条約は、企業間等の国際物品売買契約について、その成立及び契約当事者の権利義務に関する事項を規定するものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、我が国企業の関係する国際取引における法的安定性を高め、もって取引実務を円滑化するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、千九百四十九年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の強化のための条約(アンティグア条約)の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成十五年六月にアンティグアで開催された全米熱帯まぐろ類委員会の締約国会合において採択されたものであります。

 この条約は、東太平洋におけるマグロ類資源の保存及び持続可能な利用を確保することを目的として、一九四九年のアメリカ合衆国とコスタリカ共和国との間の条約によって設置された全米熱帯まぐろ類委員会の任務を強化すること等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結することは、このような目的に積極的に協力し、及び我が国の漁業の安定した発展を図るとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とオーストラリアとの間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、昭和四十五年に締結されたオーストラリアとの間の現行の租税条約にかわる新たな租税条約を締結するため、平成十九年以来交渉を行いました結果、本年一月三十一日に東京において、私と先方スティーブン・スミス外務大臣との間で、この条約の署名が行われた次第であります。

 この条約を現行条約と比較した特色としては、投資所得に対する源泉地国課税の軽減、租税回避行為の防止措置等を盛り込んでいることが挙げられます。

 この条約の締結により、我が国とオーストラリアとの間での課税権の調整がさらに図られることになり、両国間の経済的交流、人的交流等が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とパキスタン・イスラム共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、昭和三十四年に締結され、昭和三十六年に一部改正されたパキスタン・イスラム共和国との間の現行の租税条約にかわる新たな租税条約を締結するため、平成十九年以来交渉を行いました結果、本年一月二十三日にイスラマバードにおいて、我が方小島特命全権大使と先方アブドゥラー・ユースフ連邦歳入庁長官との間で、この条約の署名が行われた次第であります。

 この条約を現行条約と比較した特色としては、投資所得に対する源泉地国課税の取り扱いの明確化及びみなし外国税額控除の廃止が挙げられます。

 この条約の締結により、我が国とパキスタン・イスラム共和国との間での課税権の調整がさらに図られることになり、両国間の経済的交流、人的交流等が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上四件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認いただきますようにお願いを申し上げます。

平沢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十七分散会


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