衆議院

メインへスキップ



第16号 平成21年6月17日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十一年六月十七日(水曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 河野 太郎君

   理事 小野寺五典君 理事 松島みどり君

   理事 松浪健四郎君 理事 三原 朝彦君

   理事 山中あき子君 理事 近藤 昭一君

   理事 武正 公一君 理事 伊藤  渉君

      安次富 修君    逢沢 一郎君

      猪口 邦子君    小野 次郎君

      近江屋信広君    大高 松男君

      篠田 陽介君    柴山 昌彦君

      鈴木 馨祐君  とかしきなおみ君

      徳田  毅君    中山 泰秀君

      西村 康稔君    原田 義昭君

      福岡 資麿君    安井潤一郎君

      山内 康一君    山口 泰明君

      若宮 健嗣君    池田 元久君

      後藤  斎君    篠原  孝君

      田中眞紀子君    鉢呂 吉雄君

      松原  仁君    柚木 道義君

      丸谷 佳織君    笠井  亮君

      辻元 清美君

    …………………………………

   外務大臣         中曽根弘文君

   外務副大臣        伊藤信太郎君

   外務大臣政務官      柴山 昌彦君

   外務大臣政務官      西村 康稔君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  山本 条太君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  土屋 喜久君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 舘  逸志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 湯元 健治君

   政府参考人

   (総務省情報通信国際戦略局次長)         谷  重男君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 高宅  茂君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   河相 周夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 平松 賢司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北野  充君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石井 正文君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小原 雅博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 兼原 信克君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田  彰君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山本 栄二君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           前川 喜平君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 木曽  功君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           二川 一男君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部長) 岡崎 淳一君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  石井 博史君

   外務委員会専門員     清野 裕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十七日

 辞任         補欠選任

  木原  稔君     若宮 健嗣君

  柴山 昌彦君     大高 松男君

  御法川信英君     とかしきなおみ君

  山口 泰明君     福岡 資麿君

  池田 元久君     柚木 道義君

  篠原  孝君     後藤  斎君

同日

 辞任         補欠選任

  大高 松男君     近江屋信広君

  とかしきなおみ君   徳田  毅君

  福岡 資麿君     山口 泰明君

  若宮 健嗣君     安次富 修君

  後藤  斎君     篠原  孝君

  柚木 道義君     池田 元久君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     木原  稔君

  近江屋信広君     柴山 昌彦君

  徳田  毅君     安井潤一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  安井潤一郎君     御法川信英君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百七十回国会条約第二号)

 投資の促進、保護及び自由化に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 社会保障に関する日本国とスペインとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 社会保障に関する日本国とイタリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

河野委員長 これより会議を開きます。

 第百七十回国会提出、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、今国会提出、投資の促進、保護及び自由化に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、社会保障に関する日本国とスペインとの間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とイタリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長河相周夫君、大臣官房審議官中島明彦君、大臣官房審議官平松賢司君、大臣官房審議官北野充君、大臣官房参事官石井正文君、大臣官房参事官小原雅博君、大臣官房参事官兼原信克君、大臣官房参事官山田彰君、大臣官房参事官山本栄二君、内閣官房内閣参事官山本条太君、内閣参事官土屋喜久君、内閣府大臣官房審議官舘逸志君、大臣官房審議官湯元健治君、総務省情報通信国際戦略局次長谷重男君、法務省大臣官房審議官高宅茂君、文部科学省大臣官房審議官前川喜平君、国際統括官木曽功君、厚生労働省大臣官房審議官二川一男君、職業安定局高齢・障害者雇用対策部長岡崎淳一君、社会保険庁運営部長石井博史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより質疑に入りますが、昨今、質疑時間が守られておりません。先ほど理事会でも御説明申し上げましたが、質疑終了のペーパーがお手元に届いて以降、答弁者の答弁は求めません。次の質疑者を指名いたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。猪口邦子君。

猪口委員 よろしくお願いいたします。

 本日議題となっています投資協定、そして社会保障協定につきまして順次質問いたします。

 まず、日本とウズベキスタンの投資協定でございますが、その意義について外務大臣にお尋ねいたしたく思います。

 ウズベキスタンは、言うまでもなく、中央アジアそしてまたその中央に位置していますし、ユーラシア大陸の非常に大きな東西回廊の重要なところに位置しています。また、中央アジアの国として人口最大国でありまして、対日感情も極めて良好、そして経済発展も順調で、GDP成長率、例えば過去三年ぐらいの間、七%ぐらいで推移していますし、二〇〇七年については九・五%の成長率を達成しています。我が国の資源外交にとっても極めて重要な国でありまして、ウラン生産量は世界で七位、金鉱石につきましては生産量は世界で九位、既に日本から十四社ほど進出していると聞いております。

 独立後間もなく我が国も大使館を開設してきたということでありまして、中央アジアの国と結ぶ初めての投資協定でございますので、その意義についてひときわ強いものをお持ちではないかと考えておりますが、政府はどのようなお考えから本国会に対して投資協定締結承認を求めているのか、その意義についてお伺いいたしたく思います。

中曽根国務大臣 ウズベキスタンは、今委員がお話しになられましたように、人口におきましてもアジア地域最大の人口を擁しておりますし、また、この地域における経済活動の中心地国として発展をしておりまして、お話ありましたように、経済成長率も非常に高いところであります。また、我が国企業の進出意欲も高い国でございます。さらに、ウランその他の種々の埋蔵鉱物資源等も有しておりますことから、我が国にとりましては、資源外交上も大変重要な国でございます。

 この協定は、投資の自由化、投資家の権利保護及び投資環境整備のための法的枠組みを提供することによりまして、投資家にとりましての予見可能性やまた法的安定性を高め、我が国とウズベキスタンとの間の投資を促進することを目的としているものでございます。

 この両国間での投資の促進は、我が国とウズベキスタン、さらには我が国と中央アジア地域全体との間での経済関係の一層の強化をもたらす、そういうことが期待をされているところでございます。

猪口委員 どうもありがとうございました。

 次に、恐縮ですが、ちょっと技術的なことをお伺いしたいので事務方の方でも結構なんですけれども、この全体の協定、自由化を求める形でとてもよくできているんですね。目的は、言うまでもなく、我が国の経済権益を推進すること、それから、先ほど申し上げました、既に存在するよい対日感情というものを維持していかなきゃならないということ、それから、やはり相手国の自立的な経済発展を促す、このような目的があると考えられます。

 そういう中で、この国に自由化という考え方を認めてもらって、そして投資の阻害要因となるようなことをできるだけ排除していく。例えば現地調達要求などを原則禁止としている、こういうところは非常に評価できるんです。

 ただ、限定的な留保項目というのがございまして、すなわちこれは、輸出したときに獲得した外貨、これを強制売却等の条項というんですけれども、そういうものなんですね。つまり、例えば、綿花につきましては一〇〇%、鉱物資源等につきましては五割も強制売却をウズベキスタンの銀行に対して行わなければならないという考え方なんです。具体的には、本協定の五条に特定措置の履行要求の禁止という留保条項がございまして、附属書1、ウズベキスタンの表におきます1(a)、(b)というところなんです。

 ウズベキスタンは、二〇〇六年六月に、政府の閣議決定で、国内企業が綿花の輸出によって獲得した外貨は一〇〇%中央銀行に、それ以外は原則として五〇%外国為替銀行に、それぞれ強制的に売却するということを義務づけている。つまり、輸出で稼いだ外貨を同国でしか使えない。現地通貨、スムというそうなんですけれども、それに換金しなければならない。ですから、本協定によって、我が国の投資家が所有するウズベキスタン国内の企業に対して、この条件が課せられてしまうことになるということなんですね。

 このことについて、いろいろな考え方ができると思うんです。一つは、やはりそのような自由度が制約されますので、我が国企業がその収益を自由に確保したり、活用する、運用する、そういうことができやすいような外交交渉努力というものはしていただけたのかということの質問が一つなんですね。

 しかし他方で、同時に、ウズベキスタンの側のことを考えれば、彼らがこのような要件を課すということはわからなくもない。例えば、綿花については一〇〇%ということは、これはモノカルチャーの経済構造をしていますので、そこから脱却する、そして、ほかのことについては五割にしていますので、そういうところを促しているということですね。外貨も獲得しなければならないから五割は強制売却してほしいというようなことで、強制売却の割合を差別化しているというところに彼らの工夫が見られます。

 さらに、日用品のようなもの、そういうものを生産している企業については強制売却は免除されるという構造になっているので、この国の発展ということがよく考え込まれた内容になっている。

 しかし同時に、我が国企業の投資活動の利益擁護という観点から、少しでも、もちろん、相手国の閣議決定の内容ですから難しいのかもしれないけれども、我が国にとって改善する交渉はなされたのか。それから、この国がほかの国に対して、これよりもよい条件を提供している場合があるか。もしそうであるならば、その品目はどうかというようなことをちょっとお伺いしておきたいと思います。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 政府としては、我が国民間企業にとっての良好な投資環境整備に資する、この協定の締結の目的でございますので、それを掲げてウズベキスタンとの交渉に鋭意臨んでまいったわけでございます。

 その結果、投資財産保護の要素に加えて、投資の許可段階における最恵国待遇や内国民待遇、特定措置の履行要求の原則禁止といった、ウズベキスタン側にとっては初めて受け入れることとなる、投資の自由化に関する規定を含む協定になりました。

 ただ、委員御指摘のとおり、輸出獲得外貨の売却義務という問題がございまして、この留保事項でございますが、これは確かに自由化約束の例外に当たるものでございます。ただ、同国の経済発展及び同国の国内の経済安定化にとっての重要な政策でございます。

 これに配慮いたしまして、まず、この義務が、我が国のみならず、ウズベキスタンが既に投資協定を締結したすべての国に対してひとしく適用されているということを確認いたしまして、さらに、この売却義務につきまして、附属書1に明示的に書きましたけれども、三つ条件がございます。

 一つが、協定発効時に存在する例外措置を維持することができるだけである、いわゆる現状維持義務を負う、六条の1の(b)でございます。それから二つ目が、当該例外措置を漸進的に削減をしまして、また撤廃するというふうに努めなくちゃならないという六条の5でございます。それから三つ目、当該例外措置の改正または修正の際には通報しなければならないという通報義務、六条の4の(a)でございます。この三点をこの協定において新たにウズベキスタンに義務づけて、その上でこの自由化の約束をしたという経緯でございます。

猪口委員 ということは、この投資協定を結ぶことによって、万が一にも相手国政府において、また別の閣議決定で我が国に不利なようなものがなされたとしても、この投資協定があるから、それ以上のことにはならないというふうに理解してもよろしいわけですね。

 それにあわせて、相手国の経済にとってよいということも考えながらこの協定を交渉したというその立ち位置については、今の答弁もございましたし、大臣の思いも語っていただきましたので、私は評価したいと思います。

 我が国においてもこのようなことについて理解があるんだということを、ぜひ外交当局から、ウズベキスタン側の政府、そして国民に対してもよく伝えていただいて、このような制度をまた活用して、自立的な発展に大いに努力するようにということをお伝えいただければと思います。

 先ほどの私の確認事項はよろしいでしょうか。事務方から一言。

兼原政府参考人 委員御指摘のとおり、現状維持義務がかかっておりますので、これ以上の義務は課すことはできないという協定の仕組みになってございます。

猪口委員 それでは、もう一つこれに関する質問なんですけれども、投資促進をするという場合に、我が国は、円借款を含めたODAでインフラ整備をしながら投資環境を整えてあげて、そして民間投資環境が同時に成熟するという方法を一般的にとってきました。

 ウズベキスタンに対しましては、さまざまな支援もしてきたと思いますけれども、最近、大型援助案件でありますタシケントの火力発電所というのがあって、そこの近代化事業、これの支援及びその進捗状況が十分であるのか、ちょっと不安があります。また、どのような理由かわからないんですけれども、円借が近年行われていない。

 としますと、民間投資環境をよいものにするという今までの我が国の手法がこのウズベキスタンのケースに十分に活用できるのかどうか、つまり、この投資協定の目指す投資拡大ということとの関係で問題とならないのかということについてお伺いいたします。

山田政府参考人 お答え申し上げます。

 ウズベキスタンに対する円借款事業であるタシケント火力発電所近代化計画は、御指摘のとおり、資材価格の高騰等の影響により、調達手続に時間を要しておりました。しかしながら、昨年末に本体工事に係る入札が成立しまして、現在本体工事の実施が始められたところでございます。

 また、新規円借款案件につきましても、ウズベキスタン側の要請を含めまして、現在具体的な検討が進められております。開発途上国の持続的な経済成長のためには、貿易・投資などの民間活動の活性化が重要であると考えております。

 そうした観点からも、政府としては、ODAを通じて、途上国のインフラ整備、貿易・投資に関する諸制度の整備や人材育成支援、さらには知的財産保護、競争政策などの分野における法制度整備支援などに取り組んで、そうした観点から民間企業の活動を促進する、応援するということを考えております。

猪口委員 ぜひそのようにしていただきたい。我々国会議員のこのようなことに対する強い関心を御理解いただき、インフラの整備とあわせて、この投資協定の予定する効果が十分に発揮されるよう期待したいと思います。

 もう一つ、資源外交を強化するためには、やはり非常に専門的な知識というのが必要ではないか。コモディティートレードの分野というのは、それぞれの産品について市場構造や競争環境、あるいは投資、収益の構造など非常に異なるものですから、例えば大使館の中に、広く政府、あるいは民間からも、そのような専門的な能力を持つ人を起用する、あるいは外務省の職員の方もそのような企業などに出向したり、いろいろな努力をして専門的な能力を高め、これによって本協定が予定する効果を民間を支援しながら高めていくということについて、人材起用あるいは人材育成についてお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 資源エネルギーのほとんどを我が国は海外に依存しているわけでありますけれども、そういう我が国にとりましては、国民の安定的な経済生活を維持する上では、まさに資源エネルギーの安定供給の確保というのは外交政策上極めて重要でございます。

 こういう観点からも、日本企業によります海外進出やそれから海外での事業活動、事業展開、こういうものが円滑に行われるように、環境整備と側面支援、これを行っていくということは、政府としての大変重要な課題の一つであると考えております。

 このような課題に取り組むに当たりましては、外務省といたしましては、今委員がお話しされましたように、外務省の職員だけではなくて、政府の内外から専門性の高い人材を幅広く活用するということは極めて重要である、そういうふうに考えておりまして、現にこうした人材をさまざまな形で任用して在外公館等で活躍をしていただいているところでございます。

 例えば、外務省は、民間企業からは任期つき採用や、それから官民人事交流法といったさまざまな枠組みを通じまして、石油業界の出身者の方々などを含めまして、専門性の高い人材に在外公館及び外務本省で仕事をして活躍をしていただいております。また、経済産業省からの出向者は八十名ほどおりますけれども、そういう方々を含めまして、各省庁から在外公館へのアタッシェを広く受け入れをしてきておりまして、派遣先の在外公館において、その持っておられる高い専門性、そういうものを生かして、貴重な戦力として活躍をしていただいております。

 こうした専門性の高い人材の活用に今後も積極的に取り組んでまいりまして、特に資源エネルギー分野におきましてもオール・ジャパンとして外交に取り組んでいきたい、そういうふうに考えているところでございます。

猪口委員 外務大臣、ありがとうございました。大変力強い御答弁をいただきまして、安心、また感謝申し上げます。

 それでは、日・ペルー投資協定の方に移りたいと思います。

 また大臣に意義についてお伺いいたしたく思いますけれども、ペルーは日本の三倍以上の非常に大きな国ですし、やはり高成長を順調に遂げている。それから、この国の特徴として、ラテンアメリカの国の中での一つの特徴として、財政規律が非常に維持されている。それから、日本からの最初の移民が到達したところでもある。それから、現在の日系人社会は世界で三番目に大きく、ブラジル、アメリカに次いで大きいというような特徴を持っている。そして、ことしはペルー移住百十周年の記念の年でもある。

 それから、この国はまた資源外交にとってとても重要な面がある。特に、非鉄ベースメタル、銅とか亜鉛の産地でありますし、最近よく日本でも議論されるレアメタル、金、銀、モリブデンなど、こういう産地でもある。

 投資協定としては、今回、ラテンアメリカの国とは初めてですね。でも、EPAをメキシコとチリとやっているわけで、私としては、この投資協定は、ペルーと将来に結んでいただきたいEPAの先行的なものであるというふうにも理解したいと思うんですが、大臣は、昨年APEC首脳会議の際にペルーを公式訪問もしてくださいまして、そして非常に重要な首脳会談を行われています。

 この投資協定の意義について、また、この投資協定が今後EPAに発展する可能性がどのぐらいあるのかどうか、そのようなお気持ちをお持ちでいらっしゃるか、あるいは先方と何かそういう御議論をされたか、お伺いできればお願いいたしたく思います。

中曽根国務大臣 ペルーは、今委員がおっしゃいましたように、鉱物・エネルギー資源が大変豊富でございまして、お話ありましたけれども、例えば亜鉛精鉱では我が国の輸入相手国としては第一位、銅精鉱では第二位の国でありまして、また天然ガスとか石油、エネルギー資源の開発も進んでいるところで、我が国投資家のまた一層の進出が見込まれているところでございます。

 また、ペルーの資源には、日本のみならずアメリカやカナダ、EU、中国、韓国なども非常に関心を高めておりまして、そういうペルーとの間で法的枠組みの構築を推進しながら、大型の投資を実施しているところでございます。

 我が国といたしましては、そういう他国に劣ることなくやはり必要な資源を確保する、そういう観点からも、ペルーとの間で速やかに投資協定を締結することが必要になっております。

 この協定は、先ほども申し上げましたけれども、投資の自由化、それから投資家の権利の保護及び投資環境整備のための法的枠組みを提供することによりまして、投資に当たりましての予見可能性や法的安定性を高めるものでありまして、ペルーとの間でこのような投資協定、投資の促進は、我が国と同国、さらには我が国と中南米地域全体との間での経済関係を一層強化する、そういう面においても期待がされているところでございます。

猪口委員 どうもありがとうございます。

 お伺いした上で、今後このような協定の交渉のスピードアップが必要ではないかということを御指摘申し上げます。

 例えばペルーの輸出先は、日本は四番目で、中国、アメリカ、EU、それで日本なんですね。この投資協定は、日本は三十三番目でありまして、ペルーは既に十カ国とEPAを結んでいまして、さらに中国とはEPAについて大筋合意に到達していると聞いておりますし、韓国も交渉に入っているということでございます。

 それで、大臣にお話し申し上げたいんですけれども、今、中南米全体とお話しくださいましたけれども、まさにラテンアメリカ全般を見渡しますと、四つの国で左派政権がございます。ボリビア、ベネズエラ、エクアドル、そして非常に穏健的なんですけれどもブラジル。そういうラテンアメリカ全体の政治環境の中で、やはりバランスの面でもペルーの経済発展と日本の関係強化は非常に重要である。率先してペルーのような国と協定を結ぶことは、例えばブラジル・ルーラ政権は、貧困撲滅など非常に成果を上げている政権でございまして、そういう国とのこの種の協定、投資協定ないし社会保障協定などを今後研究していったり、検討してさらに交渉に入っていくということの可能性を開くことにもなると思いますので、ラテンアメリカ全体の構造の中でも、このペルーとの投資協定は特別に重要である。そして、ペルーのみにとどまらず、ほかの、ペルーについてもちろんスピードアップして交渉していただきたく、それからEPAにもつなげていただきたく、そしてさらに、ビヨンドペルーで、今申し上げたような例えばブラジルなどとの交渉についても意欲的であってほしいと思います。

 次の質問なんですけれども、これは事務方でも結構なんですが、この委員会でよく議論するんですけれども、要するに、社会保障協定、まあ租税条約も一緒という議論もありますが、特に社会保障協定と一緒にこの投資協定というのは進めるべきじゃないか。例えばペルー、三十五社、二千六百人の邦人の職員がいます。社会保障協定を同時に交渉しないので、個々人のレベルの、人間レベルにおいて社会保障への二重加入それから掛け捨て問題、これが起こっているわけですから、解決してあげるのが政府としてよろしいんじゃないかと思うんですけれども、これはどうでしょうね、社会保障協定、やっていただけないですか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員からも御指摘ありましたように、投資協定それから社会保障協定、いずれも各国との関係を増進する上で非常に意味がある取り組みであると思います。特に、経済分野におきまして見ますと、投資協定については、投資環境の整備ということを通じての投資関係の強化ということが図られ、また社会保障協定につきましては、二重加入の問題の解消、掛け捨ての問題の解消ということを通じまして、相手国との人的交流それから経済交流を前進させるということに資するということで、私どもとしては、この両方ともの協定を前に進めるということでやっていきたいと思っております。

 具体的に進めるに当たりましては、社会保障協定であれば相手国の社会保障制度をよく詳しく調べて精査をする、そしてまた、日本から行っている方それから向こうから来られている方の実態などを見て、それぞれの、協定を締結することによりますいろいろな意味というものを目配りをしたいと思いますけれども、私どもとしても、この二つの協定、それぞれ前に進めていきたいというふうに考えているところでございます。

猪口委員 大変心強い御答弁、ありがとうございます。

 それで、この項目として最後のところなんですけれども、経済そのものじゃないんですけれども、ペルーは日本の思いの強い軍縮との関係でもとても重要な国でありまして、国連の軍縮センターというのが首都のリマにございます。各地域に一つずつ国連が設置しているセンターで、例えばアフリカだったらトーゴにあるとかそういう感じなんですけれども、ラテンアメリカはリマにある。国連地域平和軍縮開発センター、つまり、軍縮のような問題がどんどん進んで、地雷も除去され、小型武器の非合法の流出などもなくなり、そういう平和な大地が回復して経済が発展するというような考えがあると思います。

 それで、外務大臣は、本当に感謝申し上げたいんですけれども、クラスター爆弾の禁止条約に署名するなど、非常に熱心な取り組みを軍縮分野についてしてきてくださいました。さきの核廃絶についての十一の課題についての政策演説も非常に重要な演説で、このような思いもペルーという国と日本は共有できると私は感じております。まさにそのセンターもあるということで、今後、総合的なペルーとの関係強化についてお考えがあればお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 軍縮代表部大使をお務めになられた先生は軍縮の専門家でいらっしゃるわけでありますが、お話ありましたクラスター弾に関する条約につきましては、昨年の十二月にオスロにおきまして私が出席をしてこの条約に署名いたしましたけれども、条約の作成過程におきましては、我が国としては、ペルーのリマでの会合を含めましてすべての会合に出席をいたしまして、交渉にも積極的に貢献をいたしたところでございます。

 加えて、ペルーは、我が国が毎年国連総会に提出をしております核軍縮決議案の共同提案国ともなっておりまして、核のない世界に向けた我が国の取り組みに理解を示している国である、そういうふうに思っております。

 これまで軍縮分野において積極的な外交を展開してまいりました我が国といたしましては、そういうペルーとの間で幅広く関係構築を図っていく中で、御指摘の軍縮の分野につきましても、我が国の取り組みについて理解を深めてもらう、深めるべく今後も努力をしていく、そういう考えでございます。

猪口委員 大臣、どうもありがとうございます。

 それでは、社会保障協定の方をお伺いいたします。

 この意義についてはもう広く知られているところで、年金制度の二重加入回避、日本の企業から派遣されている社員が保険料の二重負担をしなくて済む、非常に有意義なものなんですね。

 それで、一つお伺いしたいのは、社会保障協定を結ぶときに、今回議題となっているスペインとイタリアは非常に重要な対象国で、なぜかというと、一人の負担する金額が平均で極めて大きい。例えばスペイン在留邦人は、平均で一人二百二万円なんですね。イタリア在留邦人、四百五十七万円ですね。それで、過去に既に社会保障協定を我が国が交渉して締結した国、例えばオーストラリアは九十四万円だったし、カナダの場合三十四万円なんですね、一人の負担が。

 それで、一人一人の負担の軽減にもう少し焦点を当てて、余りにも大きな負担を負っている国を優先的に交渉するということも、この時代の新しい、やはり人間個人の負担というところに外交も十分な目配りをするという意味で重要ではないかと思うんですけれども、どうしてスペインとイタリアが少しおくれたのかということをお伺いしつつ、また、御存じのとおり、イタリアとの協定には通算規定というのがない。これは日本側には不利にならないです。イタリアの方は通算規定も設けていないんだから掛け捨て問題は生じないんだけれども、でもイタリアの側としてはちょっと不利になっていると思いますので、これはイタリアの事情でそうなっていることはわかっているんですけれども、今後、通算規定を改定のときには盛り込んだ方がいいのではないかと私は思います。そういうちょっと技術的なことで申しわけありませんけれども、お伺いいたします。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今の御質問、二点あったかと思います。今後の社会保障協定の締結に向けての方針にかかわる部分、それからイタリアの部分ということで、私の方から前段の部分、お答えをさせていただきたいと思います。

 社会保障協定につきましては、私どもとしてこれをできる限り前向きに進めていくということで取り組もうということで考えておりまして、何点かのことを念頭に置きながら検討をしております。

 一点が、相手国の社会保障制度における社会保障料の負担の規模でございます。これはまさに今委員から御指摘があった点でございます。二番目の点といたしましては、在留邦人及び進出日系企業の状況ということ、それから三点目としては経済界からの具体的な要望の状況、それから四番目としては二国間関係、五番目としては相手国と我が国との社会保障制度の違いといったところでございます。

 先生今御指摘ありましたように、社会保障料の負担の規模の問題というのは非常に重要でございまして、私ども、具体的な各国との協定を進めるに当たりましては、その他の要因、例えば邦人の方々からの要望であるだとか、あるいは経済界からの要望というふうなところも踏まえて総合的に検討しているところではございますけれども、先生からの御指摘にありますように、社会保険制度の保険料の負担の規模ということは今後も重視して取り組んでいきたいというふうに思っております。

猪口委員 時間もないんですけれども、私からのコメントとして、せっかくこのような社会保障協定を結んでも、実際にはこれを要請するかどうか、その周知の問題があると聞いております。十分に活用してもらえているかどうか、今後当局において十分に検討していただきたいと思っております。

 では、時間が参りましたので、私の質疑はここまでといたします。

 委員長、どうもありがとうございました。

河野委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 まず最初に、北朝鮮の問題についてお伺いをしたい、こういうふうに思います。

 言うまでもございませんけれども、安全保障理事会は、六月十二日に、二度目の核実験を強行した北朝鮮への制裁を盛り込んだ安保理の決議一八七四、これを全会一致で採択いたしました。この一八七四では、北朝鮮の核実験を強く非難し、さらなる核実験やミサイル発射を行わないように要求し、さらに、北朝鮮に対して、六者会合への復帰、核拡散防止条約、NPTからの脱退撤回も求めております。また、一八七四に盛り込まれた制裁措置については、大量破壊兵器に関する資金、資産の移転などを禁じる金融制裁の導入、北朝鮮に出入りする船舶への貨物検査を国連加盟国に要請すること、また、北朝鮮からのあらゆる武器の輸出の禁止などが盛り込まれております。

 二〇〇六年十月九日の北朝鮮による最初の核実験を受けて決議された一七一八と比較をすると、格段に強化をされた内容となっているものと評価をしております。今後は、各国の決議の厳格な履行、これが重要で、我が国としても、一八七四を完全履行するよう、適切な対応を速やかに行うことが大切だと思います。

 そこで、まずお伺いします。我が国が安保理決議の採択のために各国に対して積極的に働きかけを行ってきたところでございますが、今回の一八七四号は十分満足のいく結果となっているのかどうか、政府の評価をお伺いいたします。

中曽根国務大臣 今月の十三日でございますが、今お話ありましたように、国連の安保理におきましては、決議の一八七四号を全会一致で採択いたしまして、北朝鮮の核実験を強く抗議し、非難し、また、北朝鮮及び各国がとるべき追加的な措置を決定いたしました。

 我が国は、五月二十五日の北朝鮮の核実験の実施発表後、直ちに安保理の会合の開催を要請いたしまして、その後も、追加制裁を含むできる限り強い内容の決議を迅速に採択することを目指して、米国や中国、ロシア、また韓国などの主要関係国との間で、総理や私自身も含めまして、さまざまな機会をとらえて精力的に協議を行ってまいりました。

 こうした外交努力も行いました結果、今般採択されました決議一八七四号は、決議一七一八号で定められました北朝鮮に対する制裁決議の強化に加えまして、今委員が御説明くださいました武器の禁輸とか貨物検査とか、また金融面での措置などにおきまして大変強い内容が盛り込まれることになったところでございます。これによりまして、北朝鮮に対して、挑発行為はみずからに不利益をもたらすだけである、そういうことをしっかりと示す強い決議になったと考えております。

 我が国は、他の国々と連携をしつつ、この決議を実効あらしめるように適切な対応を早急に行う考えでございます。また、北朝鮮に対しましても、国際社会の断固たるメッセージを真剣に受けとめて、これ以上の挑発行為を行うことなく、安保理決議を誠実にかつ完全に実施し、先ほど厳格な履行というお話もありました、拉致や核やミサイルといいました諸懸案の包括的な解決に向けた具体的な行動をとるように強く求めるところでございます。

伊藤(渉)委員 当初は、安保理各国が北朝鮮を厳しく非難をして、足並みをそろえて早期にこの決議の採択を実現する、こういうふうに思われましたけれども、私の印象としては、予想以上に交渉が長期化をして、決議の採択まで三週間程度を要しました。このことは、北朝鮮に対する国際社会の対応の難しさを改めて浮き彫りにしたものと考えております。この決議採択まで三週間程度を要した、この理由等についてお伺いをしたいと思います。

 また、決議採択に向けた交渉の際に、一部報道では、北朝鮮に配慮を示す中国との協議に時間を要したとの報道が見受けられました。日中間でどのような協議が行われたのか、事実関係を含めて、中国に対する我が国の評価、これもあわせてお伺いをいたします。

石井(正)政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮の核実験実施の発表を受けまして五月二十五日に我が国の呼びかけにより開催されました安保理非公式協議でございますが、ここで大事なことは、中国も含めまして、この場で北朝鮮の核実験に対して強い反対と非難を表明し、新たな決議につき直ちに作業するということで一致したということでございます。これを受けまして、我が国と常任理事国五カ国それから韓国との間で、二週間以上にわたり、具体的な決議の内容について精力的な協議を行ったところでございます。

 中国との関係でございますが、これは、ニューヨークでの交渉に加えまして、中曽根大臣とヨウケツチ外交部長が三度にわたり意見交換を行うなど、さまざまな機会をとらえまして、追加制裁を含むできる限り強い内容の決議を迅速に採択すべきという我が国の立場につき意見交換を行ったわけでございます。

 こうした関係国間の協議の結果、十三日に、決議第一八七四号は中国を含む全会一致で可決されたということでございます。

 時間がかかったということにつきましては、決議の内容をごらんいただければおわかりのように、相当具体的な措置に踏み込んでやっておりますので、各国ともそれぞれ考えるところがあったのではないか、詳細な交渉の経緯につきましては差し控えさせていただきますけれども、そういうことであろうと思います。

 したがいまして、結果として、でき上がったものというのは北朝鮮に対して国際社会の断固たるメッセージを明確に示すものになったというふうに、先ほど大臣が申し上げましたように評価をしておるところでございます。

伊藤(渉)委員 中国、日中、この協議の内容は非常に重要だと考えますので、引き続き綿密な調整、打ち合わせをお願いしたい、こういうふうに思います。

 河村官房長官は、六月十一日の記者会見で、北朝鮮に出入りする船舶の貨物検査に関しては何らかの法整備が必要である、こういう旨の発言をされましたけれども、この点に関して、今後、政府の対応についてお伺いをいたします。

石井(正)政府参考人 日本といたしましては、今般採択されました安保理決議第一八七四号を実効あらしめるように適切な対応を早急にとっていきたいという基本的な立場でございます。そういう観点から、現在、立法措置の要否も含めまして、政府全体として検討を行っているというところでございます。

 御指摘ありました貨物検査につきましては、例えば、検査を行う主体がだれであるか、どのような手続で検査をするか、検査の結果、対象となるような物資を発見した場合の措置をどのように行うかといった論点も含めまして、相当多岐にわたり精査をする点があると思います。そういうことにつきまして、現在、内閣を中心に関係省庁の間で鋭意検討を行っているところでございます。

 今の段階で個別の事柄について確たることを申し上げるような段階にはないことは御理解いただければと思います。

伊藤(渉)委員 アメリカのクリントン国務長官が、北朝鮮をテロ支援国家に再指定する検討作業に着手をした旨を表明しておりますけれども、アメリカの政府内には再指定に慎重な声もある、こういった報道もございます。

 アメリカが北朝鮮をテロ支援国家に再指定することは、拉致問題を抱える我が国にとっても極めて重要なことだと思います。再指定はアメリカが行うものではございますが、我が国においても再指定に向けたアメリカ政府に対しての働きかけを行っているものと思いますが、具体的な取り組み状況についてお伺いをいたします。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘のございましたクリントン国務長官の発言でございますが、米テレビとのインタビューにおきまして、御指摘のとおり、テロ支援国家再指定につきまして検討するという発言をしております。その一方で、再指定のためには手続がある、北朝鮮の国際テロに対する支援の最近の証拠に接する必要がある、検討を開始したばかりであり、現時点で答えを持ち合わせていないという発言もされております。

 北朝鮮をテロ支援国家として再指定するためには、アメリカの国内法上の要件を満たすことが必要でございます。具体的には、国際的なテロ活動を支援しているという証拠が必要と理解しておりますが、このような検討というのはアメリカにおきまして常に行われているのではないかと考えております。

 いずれにいたしましても、クリントン長官も北朝鮮に対しましては強い対応が必要だというお考えだと承知しておりまして、拉致、核、ミサイルといった北朝鮮の諸懸案の解決に向けた具体的な行動を北朝鮮から引き出すため、日米間で緊密に連携して取り組んでいくことに変わりはございません。

 ただいま御質問ございました具体的な働きかけ云々につきましては、北朝鮮をテロ支援国家に再指定することにつきましては、拉致被害者や御家族を初めといたしまして国内で強い要望があるということは十分承知をしております。政府といたしましても、北朝鮮による昨今の挑発的な言動は断じて容認できず、そのような要望も念頭に置きながら、米国に対して北朝鮮に対する圧力の重要性について働きかけてきているところでございます。

伊藤(渉)委員 中曽根大臣は、六月十二日の記者会見で、北朝鮮が三度目の核実験を準備している兆候があるとの一部報道に関して、そういうことにならないよう北朝鮮に働きかけねばならないと述べるとともに、万が一のときは必要な対応をしっかり行わなければならないとおっしゃっておられます。

 さらなる核実験などは言語道断でございます。平和を希求する国際社会に対する重大な挑発でございます。これを断固阻止するためにも、各国との連携、特にアメリカや中国などとの緊密な連携が重要になる、これは言うまでもございませんけれども、今後の方針、お考えについてお伺いをいたします。

中曽根国務大臣 北朝鮮は、四月の二十九日に外務省のスポークスマン声明といたしまして、核実験及び大陸間弾道ミサイル発射を行う旨の立場を表明いたしまして、また、五月の二十五日には実際に核実験を行うなど、大変挑発的な言動を繰り返しているわけでございます。

 この十三日に国連安保理におきまして、北朝鮮によります核実験実施を非難いたしますとともに、北朝鮮がさらなる核実験などを実施しないよう求める、先ほどからお話あります決議の一八七四号が採択されました。これに対しまして北朝鮮は、外務省声明を発出し、今や核放棄など絶対にあり得ないものになったなどとした上で、今後、プルトニウムの兵器化やウラン濃縮作業に取り組んでいく旨を表明しております。

 しかしながら、我が国を含む国際社会の声は、全会一致で採択されました決議の一八七四号に明記をされておりますとおりでありまして、北朝鮮に対してすべての核兵器及び既存の核計画の放棄を改めて義務づけると同時に、すべての核関連活動の即時停止を求めているところでございます。

 政府といたしましては、北朝鮮がこうした国際社会の声に耳を傾けて、そして安保理決議の義務を履行することが北朝鮮自身の利益になる、そういうふうに考えており、北朝鮮が、強硬路線を維持してさらなる孤立を招く道ではなくて、諸問題の解決に向けて具体的な行動をとることを求めたいと考えております。我が国といたしましては、これが実現するように、引き続いて、今お話ありましたような米国や中国などと緊密な連携をしていきたい、そういうふうに思っております。

伊藤(渉)委員 返す返すも、この一八七四の厳格な履行にまた全力を傾注していただきたい、こういうふうに思います。

 次に、日・ウズベキスタンの投資協定について一つお伺いをします。

 我が国とウズベキスタンとともに、両国間の貿易・投資振興を図るために、日本・ウズベキスタン・ビジネスフォーラム、こういうのを開催していると聞いております。また、外務省や経産省が日・ウズベキスタン投資環境整備ネットワークの構成メンバーとなって、両国の投資に関する政府側からの情報提供を行うなど、我が国はウズベキスタンへの投資促進に対する取り組みを行ってきているようでございますけれども、今のところ、ウズベキスタンでの我が国との共同事業で大きなものはなく、我が国からの投資が拡大されているといった話も聞いておりません。この理由は何か、問題点等も含めてお伺いをいたします。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 ウズベキスタンでは、近年、車両の製造それから通信分野等で日本企業の投資による事業が開始されたところでございます。また、既に幾つかの日本企業がウズベキスタンにおけるウラン開発を中心とした投資活動に関心を示し始めておりまして、本協定の締結によってウズベキスタンにおける良好な投資環境が促進されれば、我が国とウズベキスタンの投資の増大及び経済分野の交流の一層の促進につながることが期待されるところでございます。

伊藤(渉)委員 今回の投資協定が結ばれるとさらに拡大をしていく、そういうことですから、ぜひその方向で進めていただきたいと思います。

 次は、日・ペルー投資協定に関連してお伺いをします。

 現在、我が国では、二〇一一年七月二十四日の地上デジタル放送への移行を鋭意推し進めております。私も一方で総務委員会に所属もしまして、国内の地デジの推進に全力を挙げているところでございます。

 今回の日・ペルー投資協定に関連をして、現在、我が国が開発をし、海外にも広めようとしている地デジ放送のいわゆる日本方式について、ペルーのガルシア大統領が本年四月にペルーでの採用を表明されております。海外での日本方式の採用は、ブラジルに次いで二カ国目となります。

 国際標準化されている地デジの方式には、日本方式のほかに、米国方式、欧州方式の三方式があります。各陣営とも諸外国へ積極的に売り込んでいる、こういう状況でございます。

 日本方式は、二〇〇三年より我が国で放送が開始をされて、二〇〇六年にはブラジルが採用を決定。総務省では、現在、ペルーのほか、アルゼンチン、エクアドルで日本方式による試験放送を行っている。ちなみに、試験放送の実施済みはチリ、ベネズエラ、こういうふうに聞いております。

 他方、米国方式や欧州方式は、日本方式よりも五年早い一九九八年から放送を開始しておりまして、特に欧州方式は、早期に海外展開を図っていることから、欧州を中心に三十九カ国で推進が進んでおります。また、米国方式は、巨大市場であるアメリカのほか、中南米でも採用が進んでおります。

 日本方式は、ほかに比べて海外展開でおくれをとっておりますけれども、ほかの方式と比べて電波障害や干渉にも強く、ワンセグなどの最新技術の導入などと相まって最も技術的に進んだ方式であり、今回のペルーの採用によって、ブラジルと合わせて南米人口の実に約五七%、約二億人強でございますが、これが日本方式で視聴することとなります。これを契機に、ほかの南米各国で導入が進めば、地デジ中継局用の送信機や地デジ対応のデジタルテレビ、DVDレコーダー、さらにワンセグ対応の携帯電話などなど、需要が見込まれると思われます。南米市場での日本企業の躍進が期待をでき、国を挙げて大々的に後押しをするべきだ、こういうふうに考えております。

 そこで、これは総務省の方にお伺いをしますが、日本方式の海外展開が米国あるいは欧州におくれをとっていることについて現在どのようにお考えか、御答弁をいただきたいと思います。

谷政府参考人 お答え申し上げます。

 日本方式は、御指摘のとおり、実用化されたのが平成十五年、二〇〇三年でございます。三方式の中では最も遅いわけでございますけれども、ある意味では一番新しい技術というふうに今先生からも御指摘いただきました。混信に強い伝送方式、あるいはワンセグ放送など最新技術を取り入れた最もすぐれた方式であります。この優位性を持って、南米諸国を中心に積極的な海外展開を今推進しているところでございます。

 具体的には、今先生からも御指摘いただきましたようないろいろな検討している国々に対しまして、官民連携での働きかけを積極的に行っているところでございまして、これからの他の諸国での日本方式採択に向けて、こうした働きかけをさらに強化してまいる所存でございます。

伊藤(渉)委員 今、国内の景気のこともさることながら、やはり我が国は、資源がとれるわけでもありませんし、さまざまな技術、人の持つ力でここまでの国になってきた国でございます。そこで開発されたものを世界のマーケットに広げていくのはまさに国の重要な仕事でございますので、その点よくよくまたお願いをしたいと思います。

 重ねて、今回ペルーで日本方式が採用されることになった、これは大変な努力があったと思いますけれども、この点の経緯についてお伺いをしたいと思います。

谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ペルーに対する働きかけにつきましては、麻生総理からガルシア大統領に対して日本方式採用のお願いをいただくなど首脳レベルでの働きかけとともに、私ども総務省幹部も頻繁にペルーを訪問していろいろ働きかけを行う、それから官民連携でセミナーでございますとかデモンストレーションで日本方式を理解していただく、こういう活動を実施してきたところでございます。

 今回、日本方式の採用がペルーにおきまして決定されましたのは、こうした日本側の一連の働きかけの結果、先ほども御説明いたしました日本方式の技術的優位性に加えて、いろいろな機器の価格面を含めた経済的優位性がペルー政府、それからこれは重要なことでございますけれども、ペルーの放送事業者等の関係者に広く認められたものであるというふうに私ども認識しております。

 これからペルーでは実際にこの日本方式の導入という実施段階に入るわけでございまして、ペルーにおけます日本方式での地上デジタル放送の円滑な導入に向けまして、技術協力でございますとかあるいは人材の育成、こういったことも大事でございますので、こういった支援を実施していく所存でございます。

伊藤(渉)委員 ぜひ、これを皮切りに、南米諸国、ここに日本方式を売り込んでいく今は絶好の機会だと思います、重ね重ね、官民を挙げての取り組み、これが重要ですし、官と民が密接に連携をした戦略的な取り組みをしていかなければならない。

 重ねてお伺いをしますけれども、きょうまでのこの取り組み、そして今後の販売戦略とでもいいましょうか、日本方式の売り込みの見通しについて、いま一度お伺いをいたします。

谷政府参考人 お答え申し上げます。

 地上デジタル放送日本方式の海外への普及、これにつきましては、ICT、情報通信分野の国際競争力強化の重点分野に私どももしております。送信機、受信機及び携帯の端末等、デジタル放送関連機器の市場拡大及び南米諸国への日本企業の進出が非常に期待される、まさに先生御指摘のとおりだというふうに認識してございます。

 今般のペルーにおけます日本方式採用の決定というものは、これも御指摘いただきましたけれども、例えばアルゼンチンあるいはチリ、エクアドル等の他の南米諸国での日本方式の採用、これを大きく後押しするものというふうに考えておるところでございまして、引き続き、外務省初め関係省庁との連携、さらに御指摘いただきました官民連携、こういった、とにかく日本の関係者一丸となって積極的に南米諸国等への働きかけを行ってまいりたいというふうに思っております。

 ぜひ今後とも、また御指導、御支援のほどをよろしくお願いしたいというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 本当に重ね重ね、長い意味での我が国の景気を支えていく大切な財産でございますので、我々もまた頑張りますし、政府の方もぜひお力添えをお願いしたい、こういうふうに思います。

 次に、社会保障協定の方をお伺いしたいと思います。

 平成十九年、社会保障協定の締結に伴う社会保障制度の特例措置を一般的、包括的に定めた、社会保障協定の実施に伴う厚生年金保険法等の特例等に関する法律が成立をいたしました。

 包括実施特例法、これが成立するまでは、各国との社会保障協定を締結するたびに特例措置を定めた法律が国会に提出をされ、協定とともに審議することとなっていたために、政府は、協定交渉のみならず、それに合わせた立法作業も行う必要がありましたが、いわば一般法ともいうべきこの包括実施特例法の成立によって協定締結に伴う国内法の作成作業が不要となり、我が国の社会保障協定の締結交渉の迅速化が図られてきたところでございます。

 本日審議をしている日・スペイン及び日・イタリア社会保障協定を初め、今後も各国との協定が次々と提出をされてくることと思いますけれども、各国との社会保障協定締結に向けた交渉の現状及び今後の社会保障協定締結の予定をお伺いしたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、社会保障協定については何点かのことを念頭に置きながら検討を進めております。まず第一点といたしましては、相手国の社会保険制度における社会保険料の負担の規模、第二点といたしましては、在留邦人及び進出日系企業等の状況、第三点といたしまして、経済界からの具体的要望の多寡、第四点といたしまして、二国間関係、第五点といたしまして、我が国と相手国との社会保障制度の違い等の諸点でございます。

 このような諸点を総合的に考慮した上で、優先度の高いところから順次締結交渉を行っておりまして、これまで、ドイツそれからイギリス、米国を初めとして十カ国と締結をいたしておりまして、今回お諮りをしておりますスペイン、イタリアとのものが十一番目、十二番目のものとなります。

 現在の状況でございますけれども、現在、アイルランドと政府間交渉を開始しているところでございます。そのほか、スイス、スウェーデン、ハンガリー、ルクセンブルク及びブラジルとも関係当局間の協議を開始しておりまして、今後とも、ただいま御説明しました観点を踏まえまして、順次交渉協議を進めていきたいと考えているところでございます。

伊藤(渉)委員 これで最後にしますけれども、ちょっと、今の答弁を聞いていると、そういうことなのかなと思いながら聞いていましたが、いわゆる社会保障協定の二重負担の規模が大きい国、これはもう言うまでもありませんが、ブラジル二十一億円、ハンガリーが約三億円、スウェーデンが約二億円、フィリピンも約二億円、オーストリアが一億強などがあるというふうに承知をしておりますけれども、これらのうち、ブラジル、ハンガリー、スウェーデンとの間では保障関係当局で協議が行われている、こういうふうに聞いています。

 これらは交渉を進めていくんですけれども、一方、フィリピンやオーストリア、相手国からの締結交渉の申し入れがあるにもかかわらず、ちなみに、フィリピンが一九九九年、オーストリアが二〇〇四年に申し入れがあった。申し入れがあるにもかかわらず、意見交換等全く着手をしていない状況にあると認識をしております。違っていたら言ってください。

 フィリピンなど十年も棚上げしておくとはいかがなものか、協定締結の申し入れがある以上は、協議だけでも早急に開始すべきであると考えますけれども、この点の見解をお伺いしたいと思います。

伊藤副大臣 委員御指摘のとおり、ブラジル、ハンガリー、スウェーデンとの間では、今、社会保障協定締結の可能性を検討する協議というのが進められております。

 御指摘のオーストリア、これは本年下半期に当局間で意見交換を行う予定になっております。そして、フィリピンとの関係ですが、政府としても、委員御指摘のように問題意識を大変有しておりまして、実は、あすの日比首脳会談の機会もとらえて、今後の取り進めぶりについて両国間で鋭意調整しているところでございます。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

河野委員長 次に、鉢呂吉雄君。

鉢呂委員 おはようございます。民主党の鉢呂吉雄です。

 きょうは、投資協定について、投資協定の積極的な意義なり、また日本の取り組む戦略について、まずはお伺いをいたしたいと思います。

 きょうは、ペルー、ウズベキスタンの二国間の投資協定。私も勉強させていただきましたら、貿易に関するルールはWTO等があるんですが、投資については、このようなルールが世界的になくて、あるとすれば、投資紛争ワシントン条約というのが一九六五年に署名されたものがあるということですが、このため、二国間の協定を結び投資をしやすくするというような形で今日まで進んでおるということであります。

 二国間の協定ですから、多国間協定に比べて柔軟性を持った、機動的に対応ができるとか、あるいはまた日本からの投資で、日系企業が参入して現地生産で雇用を創出したり経済発展に寄与できるとか、また、経済関係の強化を通じて二国間関係が政治的にも非常に発展をするというように言われております。

 したがって、外務大臣、私、前の方に言ってしまったかもわかりませんが、この二国間投資協定の意義について、私がこういうふうにしゃべったことで、政府も同じような考えであるかどうか、簡潔でいいんですが、答えていただければと思います。

中曽根国務大臣 委員が御指摘のとおり、この二国間投資協定は、相手国の投資政策、それから関連の法制度、また相手国の産業の実態などを十分踏まえた形で、投資促進のための法的枠組みをまさに機動的かつ柔軟に提供することが可能でございます。その結果、投資家にとりまして良好な投資環境の整備を促進し、そして我が国と相手国との間の投資の拡大及び経済分野での交流の一層の促進につながることが期待できます。また、我が国からの投資は、お話ありましたけれども、雇用の創出等を通じまして、投資受け入れ国の経済発展にも貢献するものと考えております。

 このように、投資協定には、二国間経済関係の強化を通じまして二国間関係全般に好影響をもたらす意義があるもの、そういうふうに考えております。

鉢呂委員 私も、この数年、ヨーロッパ等を訪れても、旧東欧といいますか、チェコですとかハンガリーそれからポーランド、日本の企業が非常に積極的に参入して、ポーランドは五年ぶりに去年行ったんですが、数百社参入して雇用を創出して、大きく旧共産圏が変わっておる姿を見せていただいたところでありまして、そういう面では、非常に日本の投資というものが喜ばれておりますし、非常に重要であることは見てきたところであります。

 私は北海道でありまして、小樽選出でありますけれども、小樽は、去年からことしにかけて、中古車のロシアの受け入れの関税が急速に、こういった日本の車を輸入抑制するというような意味合いがあったのか、これが高関税になって、ロシアの皆さんも困ってデモ等を行っておる。日本も、急激に、この関係の業者が輸出できない。また、この二十年来、ロシアに変わってきてから、北海道の資本算入も、いろいろ極東ロシアに行ったんですが、乗っ取り等に遭って撤退せざるを得ないというのを見てきておるわけでありまして、そういう面でも、関税は投資協定とは違いますけれども、日本企業が参入して行う場合のこういった二国間の問題というのは非常に重要だ、こういうふうに思って、積極的な意義があるんだろうと思っています。

 同時に、いろいろ勉強させていただきましたら、最近、七年間で、日本の対外投資残高というのが約二倍以上になった。九九年に二十五兆四千億円の対外投資残高。それが二〇〇六年、七年後には五十三・四兆円ということで、まさに二倍以上の投資残高。したがって、二〇〇五年以降、貿易収支黒字額、物やサービスの貿易による黒字額より、いわゆる直接投資、証券投資による利子配当の所得収支黒字額がむしろ貿易収支黒字額を上回る。金額でいえば、二〇〇六年に、投資収支が十四兆二千四百億に対して貿易収支黒字額が十兆五千百億ということで、四兆円も、投資にかかわっての黒字が日本に貢献をしておる。こういった実態でございまして、まさに、これまでの貿易立国から、貿易とあわせて、投資立国としての日本の役割の重要性、また経済的な貢献をしておる、こういう姿を勉強させていただきました。

 こういった形で、この投資協定の重要性についても、大臣も同じような考えでいらっしゃるかどうか、御所見をいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 冒頭、委員がポーランドを初めとする地域の国々のお話をされましたが、私もたまたま日本ポーランド友好議員連盟の会長をしておりまして、一年置きぐらいに訪問していますが、行くたびに日本の企業数がふえている、特に製造業がふえているということでございます。こういうような進出意欲のある日本企業は我々としても積極的に支援をしていく必要があるだろうと考えております。

 今まで、投資協定というものは、我が国は十五の投資協定を結んでおり、またEPAに関しましては九カ国と結んで、署名をし、または締結をしているところでございますけれども、各国の様子を見ますと、ドイツとか中国とかスイス、またイギリス、イタリア、フランスなど、そういう主要国は各国とも百ぐらいの投資協定を締結しているわけであります。

 今申し上げましたけれども、それぞれの国々に進出する企業を支援するという意味におきましても、また経済関係をさらに活発化するという意味におきましても、また関係を良好なものにする上におきましても、この投資協定の締結などは大変意義のあるものだと私は思っておりまして、そういう意味におきましても、今後も、政府としては、相手国とのまた状況にもよりますけれども、一カ国でも多く締結をできるように努力していきたいと思っております。

鉢呂委員 今大臣も言われましたように、日本の締結状況は、投資単独で十五カ国、EPAを含めますと九カ国が署名して、今回二カ国が批准をする形の国会の審議と。

 主要国は、大臣も言われましたけれども、ドイツあたりは百三十五カ国と既に投資協定、中国も百十九カ国とやっておる。スイスも百十四カ国、イギリスが百三カ国、イタリーも百カ国、フランスも九十八カ国ということで、日本のこの二つ合わせても二十四カ国というのは極めて少ないわけでございます。

 もちろん、一九九〇年代は投資保護の協定という形で、先ほども議論がありましたように、ウズベキスタンとはいわゆる投資の自由化といいますか、向こうにおける、ウズベキスタンにおける最優遇策をとるとか、そういう投資自由化というふうに意味合いは変わってきておりますけれども、日本のこの協定化が非常におくれておるということは、私は非常に心配をしております。

 例えば、今のウズベキスタンについても、中国は一九九二年にもう既に、ですからもう十七、八年前に締結をしています。韓国も同じ一九九二年、ドイツ、イギリス、アメリカ、ほとんど九四年までに終えております。日本だけがなぜこの二〇〇九年までに持ち越してきたのか、ちょっと意味がわからないわけであります。四十九番目にウズベキスタンと投資協定という形になったわけであります。この理由づけについて、大臣、どのようにお考えになっておるか、ちょっとお聞きをいたしたいんです。

 きのう、私は事務方に聞きました。そうしたら、今までODA等のいわゆる政府間の協力関係を重点に、これは投資環境、環境整備ですね、インフラ等の整備をやるわけでありまして、先ほど大臣も言われましたように、ヨーロッパ等は日本の民間企業が積極的に既に入っておるという部分はあるんですが、それで支障がないという部分もあるかもわかりません。

 しかし、それにしても、さまざまな投資のいわゆる環境を整えるための協定というのは私は非常に重要ではないかと思う中で、ODAにかかわってきたからとか、いわゆる事務段階では地域課というところが具体的な協定の締結の交渉をやるようです。もちろん、経産省とかほかの省庁、そしてその元締めは外務省の経済局というふうに聞きましたが、現場の地域課の皆さんは、やはりもっともっとやりたいというような意向も強いようです。ウズベキスタンといったら、タジキスタンとかその周辺の中央アジアの諸国となぜ同時に、韓国は一年間で八カ国、国会に投資協定の条約批准の承認を求める案件を出した、一年間でですよ。そういう形であるにもかかわらず、日本は非常に手間取っておる。

 こういう状況で、大臣として、どこに原因があるのか、まずそこから聞かせていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほど委員がおっしゃいましたように、また私も申し上げましたように、ほかの先進国の中には我が国をしのぐ数の、はるかにしのぐと言った方がよろしいのかもしれませんが、投資協定を各国と締結している国もあるわけでございますが、しかしながら、我が国の場合は、主な直接投資先であり、また重要な経済関係を有する東アジア諸国との間で投資協定または投資章を含むEPA、経済連携協定をおおむね締結済みでございまして、各国ごとに異なる実際のニーズを離れて投資協定の本数のみを比較することが必ずしも適切であるとは考えていないところであります。

 数をたくさんやればいいということでなくて、実際に、それぞれの国との間の状況、また企業のいろいろな意欲とかそういうものも踏まえながらやっているわけでございますが、そういう意味では、実際のニーズにこたえることを主眼として今までやってきたものでございます。

 引き続きまして、やはり大事なのは戦略的に投資協定を締結するということだと思いますので、そういうような観点から今後も取り組んでいきたい、そういうふうに思っております。

鉢呂委員 これは、外務省の出した資料でも、我が国からの投資実績という中で一番やはり重要なのは、日系企業の現地法人数というものが二〇〇六年十月一日現在で出ています。中国あたりに日系の法人は二万二千七百八十四社、これは極端に多いです。上位、アメリカ、インドネシアと続いていくんですが、ペルーはちょうど五十六番目に日本企業の現地法人が多い。五十六カ国のうち、協定が結ばれていない未締結の相手国は三十五カ国もある。ペルーは今協定をするということですが、そのほかにも三十四カ国は結ばれていないわけでございます。

 これは余りにもやはり低い形でありまして、まずは大臣としてこれを積極的に、質の問題を今言われたかと思いますが、これだけ未締結の国があって、ペルーは今のところ二十六企業しか参入していません。五十六番よりもっともっと上位のところの国は、百社以上が行っている国が三十三カ国もあるわけでして、そういう形では、この投資協定の加速化というのはやはり日本政府の至上命題にしていく必要があるのではないか、私はこういうふうに思いますが、大臣の決意を聞かせてください。

中曽根国務大臣 今委員が我が国からの投資実績等の御説明がありましたけれども、どういう国とこのような投資協定を結んでいくかということにつきましては、やはり優先順位というものを持ちながら検討しているわけでありまして、そういう意味では、私どもとしては、今から申し上げますような要素を総合的に勘案して行っております。

 一つは、我が国からの投資実績とそれから将来の投資の拡大の見通し、それから二つ目は、投資環境整備の必要性とそれから我が国産業界の要望、三つ目が、エネルギーや食料その他、一次産品の供給元としての重要性、また四番目は、相手国政府の統治能力とかあるいは政治情勢、これらの安定性、そして五番目は、政治的な、外交的な意義、こういうものを踏まえて検討しているところでありますが、当面は、中東地域やあるいはアフリカ、中南米、そして中央アジアなどのいわゆる資源産出国や、また地域の拠点国などが重点的な検討対象になり得ると考えておりまして、今後もそのような観点から投資協定締結に向けて努力をしていきたいと思っております。

鉢呂委員 それは、外務省の去年の六月十日の戦略的活用という中で、優先順位を持って戦略的に検討していく、そして大臣の言われたような形でございます。私は、少し違うのではないかと。今これだけグローバル化になって、政府がこういう形を優先順位を持ってやるというよりも、もっと世界各国のように、日本は投資立国というふうに言われるぐらいの形ですから、むしろ、戦略的何とかと言っている前に、各国とやる必要があるのではないか。

 それだけの労力がかかるのならいいんですが、そうではないんです、大臣。例えば、今回のウズベキスタンの協定で、交渉開始を決定したのが平成十九年の十一月です。それから三回の交渉を持って、協定署名したのが、十カ月後の平成二十年の八月であります。このように、十カ月しかかかっていないんです。ペルーとの関係は、二〇〇八年の三月に交渉開始を決定して、その年の、去年の五月から九月まで三回交渉して、実質合意したのが十月です。ただ、麻生大臣がペルーに行かれるということで署名するのは十一月になったんですが、七、八カ月で署名までこぎつけておるんです。

 もちろん、外務省から聞きますと、交渉開始を決定するまでにいろいろな準備があるんだ、こういうふうな形でありますけれども、私は、二国間の特殊な問題もあろうかと思いますが、一つのひな形が出て、投資の自由化まで、そしてまた各国は日本の投資を望んでおるというのはどこへ行っても聞かれるわけですから、私は、韓国のようにもっと精力的にやる必要があるのではないか、これは大臣からそういう方向性を出していただいて、やることが必要ではないか、こういうふうに思うんですよ。

 例えば、産業界の要望と今言いました。日本経団連が昨年の四月十五日に「グローバルな投資環境の整備のあり方に関する意見」という文書を出していまして、この中で、欧米各国に比べて大きく日本はおくれをとっておる、投資保護を目的とする協定すら締結されていない投資先が多く残されており、グローバルに我が国の投資が拡大する中で速やかな対応が望まれる、こういうふうに産業界も言っておるわけですから、大臣のこの辺の大きな指導性といいますか、もっとやはり加速化するという形が、それだけのことは、日本の出先もあるいは各省も含めて、やれる体制にはなっているというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 私どもとしては、先ほどから申し上げておりますように、戦略的にも考えて、また産業界の意見も踏まえて、そして相手国の実情等、そういうものも考慮した上で、投資協定締結先というものについては検討しているところでございます。

 それは、基本的には一カ国でも多く投資が促進されるように、そしてその助けとなる投資協定であるということですから、これは締結していくということが望ましい、これは委員と同じだと思いますが、そういうふうに思っております。

 ただ、数ももちろん他国に比べれば少のうございますから、ふやすことは大切と思いますが、やはりそれなりの環境ができている、そしてこれが効果を発揮する、そういうところから優先的に行うのが基本的な考え方ではないかと思っております。

 しかし、今委員のお話ありましたような点も含めまして、今後、投資協定のあり方については、また検討しながら取り組んでいきたいと思っております。

鉢呂委員 今、交渉中あるいは交渉予定にしておる対象国、これは私の方から言いますけれども、投資協定については、サウジアラビアとカタールとカザフスタンとコロンビア、そして日中韓という、多国間といいますか、この投資協定について交渉しておると。EPAの投資章を含む協定という形になりますと、インド、オーストラリア等が入っておる。韓国あたりは今中断し続けて、ずっとEPA交渉が中断しておるという状況で、外務省自体も交渉中という中に入れておらないようでありますが、いずれにしても、これら七カ国、二つ合わせても七カ国程度でありまして、とても私は、戦略的にも優先順位を持ってやっておるという形ではないのではないかと。

 例えば、日本経団連の先ほどの資料の、必要性のある国、具体的に言っております。例えば、Aとして「投資が比較的多く、投資の保護・自由化の必要性が高い国」ということで十一カ国、ブラジル、南アフリカ、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ベネズエラ、コロンビア、ポーランド、チェコ、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア。いわゆる中南米と中欧といいますか東欧といいますか、そういう形で十一カ国を具体的に明示しております。

 大臣、聞いておいてください。大丈夫です、そんなに細かい話は聞きませんので。

 それから、Bとして「国益の観点から投資の保護・自由化を進めるべき国」ということで、これも十四カ国。これは、アルジェリア、ナイジェリア、イラン、クウェート、オマーン、バーレーン、カタール、ペルー、パナマ、ボリビア、ウクライナ、カザフ、イスラエル、アンゴラ。これはアフリカとか中東それから東欧。ペルーは今回入りましたが、こういう形で十四カ国を日本経団連が望んでおるわけでございます。

 先ほど言いましたように、五十六カ国を見ても、もう百社以上の企業が現地法人を出しておるという国もまだ未締結な国が大変多いわけであります。EUあたりは、私はもうそういう協定を結ばなくても十分やっていけるだろうと思いますが、こういう形で政府間協定があった方がいいということは経済界からも望まれておるし、大臣、今のままいけば、まだ十年近くかかってしまうんじゃないですか、二つ合わせて二十五カ国やるにしても。やはり加速化する必要はあるのではないでしょうか。

中曽根国務大臣 今委員が、これは経団連の「グローバルな投資環境の整備のあり方に関する意見」というところで表示をしている国々の名前を挙げられたのだと思いますけれども、私どもといたしましては、やはり、経済界とも、また関係省庁、民間企業、そういうところとも相談をしながら、また、そういう団体、企業等の参加も得て、対外投資戦略会議、こういうものを立ち上げているわけでありまして、そういう会議の中で、優先すべき分野とかあるいは候補国につきまして議論を重ねてきているわけであります。

 したがいまして、そのような多くの方々の意見を参考にしながら、また配慮しながら、実際のニーズにこたえることを主眼として、投資の実績とか見通しなどを勘案して、戦略的な優先順位を持って投資協定の締結を行っているわけでありまして、先ほど申し上げましたけれども、投資協定を結ぶには、やはりそれなりの環境が大事でございますし、ニーズも必要でございますし、そういう点を総合的に勘案しまして、基本的にはやはり多くの国とそういうような協定を結び、そして経済関係がますます強化し、我が国の企業の発展につながる、そういうことであるならば、多くの国と締結をしていきたいと思っております。

 確かに、なかなか時間がかかっているという点は否定できませんが、基本的にはそういう考え方で今後も進めていきたい、そういうふうに思っています。

鉢呂委員 先ほど言ったように、ペルーとウズベキスタンの交渉の経過を見ますと、非常に迅速に私はやられておると。その前の段階はあろうかと思いますが、私どもに提出された交渉経過というのは、一年足らずで両方とも締結をされております。私は、それだけの重要性は、各国とも、先ほど述べた二十五カ国はあるというふうに思います。

 それと同時に、もう一つは、既存の投資協定、これの見直しも日本経団連は強く要望しています。従来、一九九〇年代はいわゆる投資保護に重点を置いた協定だったんですが、質の高い内容、外資導入の自由化ですとか、投資活動の円滑化ですとか、投資家対国家の仲裁条項の確保などを実現する既存協定の見直しを切望しておるわけであります。その国として、例えば中国、ロシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ブルネイ、トルコ、香港、パキスタン、スリランカ、エジプト、モンゴルということで、いずれも日本にかかわりのある、先ほどの中国なんかは二万一千社以上企業が行っているということは、それだけ投資をしておるわけでありますから、その関係の、既存協定の質の高い見直し作業、交渉というものについて大臣としてどのように考えているのか、御答弁願いたいと思います。

中曽根国務大臣 二国間の投資協定につきましては、先ほどから申し上げておりますけれども、基本的に、相手国の投資の政策、関連の法制度、また産業界の要望、また相手国の産業の実態とか、また相手国が既に締結した他国との協定の内容など、そういう種々の要素を踏まえて交渉してきておりまして、投資家にとりまして大きな安心材料となる、既に行われた投資のそういう保護を図るための枠組みを提供いたしますとともに、近年では、投資の自由化についてのそういう約束も盛り込むなど、レベルの高い内容を目指した取り組みを行ってきているところでございます。

 いずれの協定につきましても、相手国の状況やそれからニーズ等の諸事情を踏まえて締結をされているものでございますけれども、政府といたしましては、こうした過去に締結をいたしました投資協定や、それからEPAの投資章につきましても、我が国企業の海外活動を法的側面から支える有効なツールとして機能し続けるよう、各協定をめぐる状況に応じまして、各国の投資環境整備や我が国企業による投資などの実態、そして我が国産業界からの要望、また相手国の意向なども踏まえまして随時必要な検討を行っていきたい、そういうふうに考えております。

鉢呂委員 大臣、今のは役所が書いた文章だと思いますが、聞いている限りは非常に積極性が感じられない、端的に言って。

 大臣も忙しいでしょうから、私どもが勉強した限りは、日本が投資協定でおくれをとっておる。中国あたりはどんどん本当に戦略的にやっているけれども、日本は何か、弁解のための言葉はあったけれども、本当に積極的に企業の皆さんが投資しやすいような環境をつくる。あれだけの投資配当というのが実際に日本の経済に大きなものとして返ってきておる、こういう形からいけば、大臣がやはり各経済局なりに、もっとやれと。韓国あたり、二〇〇六年に一年間で八カ国と締結をしたんですよ。ですから、その辺が、やはり大臣の生の声で、この場で積極的な締結に向けての御発言を聞きたいと思います。最後の質問です。

中曽根国務大臣 先ほどから委員の御意見も伺い、私どもの見解も申し上げておりますが、いろいろな状況を勘案して、それが一定の基準をクリアできるということであれば、積極的にどんどん締結交渉は行っていきたいと思っております。

鉢呂委員 終わります。ありがとうございました。

河野委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 引き続き、協定について幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 既に何人かの委員の方が、締結交渉に当たっての順番といいましょうか、あるいは積極性と申しましょうか、いろいろと御質問なさっておりますけれども、お聞かせいただきたいのは、こうした社会保障協定交渉の優先順位、及び社会保障制度が未発達の諸国、まだまだ社会保障制度が十分に整備をされていない、そういう国があるわけでありますが、そういう諸国等との協定締結の見通しということでお伺いをしたいというふうに思います。

 社会保障協定の締結交渉に当たっては、政府は五つの条件、相手国の社会保障制度における社会保険料の負担の規模、つまり、日本の働く人が現地へ行ってどれだけの社会保障料を負担しているのか、それが大きいところでは二重払いになった場合は大変に負担が大きくなる、こういうことだろうと思いますが、在留邦人及び進出日系企業等の状況、経済界からの具体的な要望、二国間関係、我が国と相手国の社会保障制度の違いの観点という五つの条件、こういうふうに挙げておられるわけであります。

 ただ、その観点から考えると、アジア諸国のように、我が国と社会保障制度の差異が大きいと言われる国々との間では、恐らく協定締結のめどが立ちにくいのではないか。社会保障制度が完備していない諸国との協定締結の可能性について政府はどのような方針を持って検討しておられるのかということをお聞かせいただきたいと思います。

伊藤副大臣 社会保障協定の優先順位については委員がお述べになったとおりで、重複は避けます。

 他方、御指摘があったように、相手国の社会保障制度というものが我が国のそれに比べて非常に違いがある、負担等いろいろな差がある、その場合にどうするかということでございますけれども、社会保障協定の締結によって我が国の国民が相手国の社会保障制度のみに加入することになる場合も生じるわけでございます。したがって、我が国の国民が相手国の社会保障制度による保護を十分に受けられるかどうかを確認することも大事でありまして、国民の社会保障を安定的に確保するという、そこをやはり重要視しているわけでございます。

 社会保障制度が必ずしも十分に整備されていない国との間での社会保障協定の締結の可能性を検討するに当たっては、そういった視点というものを十分に踏まえつつ、相手国の社会保障制度について十分に情報を収集し、意見を交換した上で、適切に検討していくという考えでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 日本の進出企業、そこで働く人、その人たちにとっての利便性というか利益といいましょうか、そういうことを考えてということだと思いますが、ただ、そうした優先順位に従っていくと、実際に外国政府、相手国から協定の申し入れがあっても、優先順位度が高くない、こういう国との交渉はなかなか入りにくいのではないのか、こういう危惧もあるわけであります。

 ルクセンブルクやブラジルとは政府間交渉にいつ入るかの予定はなかなか立っていない、また、フィリピンやオーストリアに至ってはいまだに話し合いのめどさえない、こういうふうに聞いております。申し入れがある、それに対して何らかの対応を行わないというのは、二国間にとってもマイナスの側面が出てくるのではないか。

 先ほどからもすべての委員が、日本にとって戦略的に海外との関係を構築していかなくてはならないと。こういう観点から考えますと、こうした対応を行わないというのは二国間にとってマイナスにはならないのか、そういった観点から、協定申し入れ国に対する政府の今後の対応策はいかがかお聞かせをいただきたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国に対しまして、社会保障協定、締結をしようじゃないかということで話がある幾つかの国がございます。その中で、アイルランドとは政府間交渉の段階に入ってございます。そのほか、スイス、スウェーデン、ハンガリー、ルクセンブルク、ブラジルとは関係当局間の協議を開始しておりまして、今委員からも御指摘がありましたオーストリアとの関係では、これは間もなく関係当局間の意見交換を行うということで準備を進めているところでございます。

 先ほど委員も御指摘されました幾つかの観点を踏まえまして進めていきたいというふうに考えておりますが、先方から要望がある、そしてまた、私どもとしては、二国間関係も考慮するということは一つの要素であるというふうには考えておりますけれども、先方からの申し入れの有無だけを基準としてやるということではございませんで、我が国との経済交流が活発で、双方に協定締結のニーズ及び利益があるか、それから、先ほど伊藤副大臣からも答弁をさせていただいた点ではございますけれども、相手国の社会保障制度のいかんによりまして、我が国の国民が相手国の社会保障制度による適用をどのような形で受けるのかというふうなところも見つつ、総合的に判断をしていきたいというふうに考えております。

近藤(昭)委員 我が国の関係者がきちっとそうした保障制度を受けられるかどうか、こういうことであると思うんですが、少し今のお話で申し上げますと、そうすると、相手国にとっても、日本に進出をしてくる、日本での社会保障制度、そこが逆に言うと充実したものになるんだというところかもしれません。相手国から見た場合に、こうした協定があった方がいい、こういうところも多いんだと思います。ただ、日本側からすると、なかなかそれは、決して十分ではない中では協定はと、優先順位は高くない、こういうところもあるんだと思います。

 ただ、今お答えにもあったように、二国間協定というのも大事だ、大きな戦略ということの中から考えると、そこはしっかりと御判断をいただき、対応していただきたいというふうに思うわけであります。

 では、次の質問に行きたいと思います。

 社会保障協定の効力の発生の時期のことであります。

 この時期についてはおおむね、両締約国がこの協定の効力発生に必要なそれぞれの憲法上の要件が満たされた旨を相互に通告する外交上の公文を交換した後、三カ月目の月の初日とされることが多いわけです。協定に署名し、我が国の国会における承認手続が終了しても、発効させなければ二重加入、掛け捨ての問題は解決されないわけであります。

 そういった観点からすると、協定承認後は速やかに発効しなければならないはずでありますが、昨年承認したオランダとの協定、チェコとの協定、それぞれ我が国の国会承認からどのくらいたってから発効になったか、お聞かせをいただきたいと思います。

 また、発効までに長い時間を要しているようでありますが、その理由は何か、可及的速やかに協定を発効させる手段はないのか。今回のスペイン及びイタリアとの協定も、お互いの国が協力して迅速に発効手続を進めることが望ましいと思いますが、いかがお考えでしょうか。

兼原政府参考人 お答えいたします。

 日・オランダ社会保障協定につきましては、昨年六月の十一日に国会で御承認いただきました。その後、両国における所要の準備を経まして、同年十二月十九日に同協定の効力発生のための外交上の交換公文を行っております。この協定の規定に従いまして、同月から三カ月後の月の初日である本年三月一日に協定が発効しております。国会での御承認から経過期間は約九カ月でございます。

 日・チェコ社会保障協定につきましては、同じく昨年六月十一日に国会で御承認いただきました。その後、両国における所要の準備を経まして、本年三月三十一日に同協定の批准書の交換を行っております。同協定の規定に従いまして、同月から三カ月の月の初日である本年六月一日に協定が発効いたしました。国会での御承認から約十二カ月を経ております。

 委員御指摘の、時間がかかるという問題でございますけれども、一般に社会保障協定につきましては、締約国双方が効力発生に必要なそれぞれの法律上及び憲法上の要件が満たされた旨を相互に通報するということを外交上の交換公文で行いまして、その後一定期間を経て効力を生じるということになっておる次第でございます。

 具体的には、国会で締結について御承認をいただくということに加えまして、非常に技術的ないろいろなフォーマットの調整等がございます。当局間での取り決めの作成、それから政省令の改正という準備を行う必要がある次第でございます。したがって、若干時間がかかるというところがあることは否めないと思います。

 委員御指摘のとおり、社会保障協定の速やかな発効は極めて重要と考えておりますので、締約国双方が迅速に発効に向けた手続をするべきことは言うまでもないことでございます。今回の協定の締結がもし御承認いただければ、速やかに政省令の改正手続等、必要な準備を進めたいと考えております。

近藤(昭)委員 九カ月、オランダとの協定、チェコとの協定、発効まで随分時間がかかっている。理由は今いろいろとお知らせをいただいたわけであり、相手国との制度の違いとか手続の違いとかいろいろあるんだとは思います。

 ただ、どうなんでしょうか、これはもちろんそれぞれ相手国があるわけでありますが、ほかの国と比べても、こういった発効までの時間というのは、日本の場合は長いんでしょうか、そうでないんでしょうか。

兼原政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保障協定になりますと、どうしても申請の手続のシステムの調整とか、あるいは書面の書き方の調整とかございますので、かかる時日としては一年たっておりますけれども、その間の調整は三カ月前、九カ月でございますので、一生懸命やっておりますけれども、日本だけが特段に長いということではないというふうに考えております。

近藤(昭)委員 せっかく協定を結び、そして働く人たちの便宜を図っていくということでありますから、ぜひ、できる限り速やかに発効するように御努力をいただきたいと思うわけであります。

 さて、日本における外国の人の年金の問題ということでお伺いをしたいというふうに思います。

 日本の年金制度は二十五年以上保険料を払わないと掛け捨てになってしまう、こういうことでありますが、これだとかなり多くの外国の人が、日本で仕事をしていても、社会保障協定がない限り掛け捨てとなってしまうと心配されるわけであります。

 そこで、ちょっと現状をお知らせいただきたいと思います。

 外国の人がこういった状況の中で二十五年に満たない場合は脱退一時金をもらわれるというふうに聞いておりますが、この数年間でこの脱退一時金をもらった方の状況、これをお知らせいただきたいと思います。また、このシステムについてどのように制度の周知徹底がされているのかということをお聞かせいただきたいと思います。

石井(博)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、外国人脱退一時金、これの受給者の状況でございます。

 数年ということでございますので、十七年度、十八年度、十九年度、三カ年程度でよろしければ、手元の資料でというふうに思います。

 件数と金額ということでございます。

 まず、制度、厚生年金保険の方から申し上げますと、十七年度の受給者の件数が二万六百三十三件、金額にいたしまして七十一億七千七百二十五万四千円。十八年度が、これは増加しております、件数として二万六千六百七十四件、そして金額は九十億五千百六十八万一千円でございます。それから十九年度、さらにこれは増加しておりまして、件数として三万八百十三件、金額、九十六億九千七百四十万二千円。

 国民年金の方でございますが、十七年度でございますけれども、百八十二件、そして金額の方は一千九百八十一万九千円、十八年度が二百六十五件、二百九十八万三千円、十九年度が二百九十六件、三千四百十八万。こちらの方も、件数は少のうございますけれども、件数、金額とも緩やかに増加しているという状況でございます。

 外国人の脱退一時金に関する周知の対策でございますけれども、幾つかの方法を講じてございます。一つには、日本におられます外国の方に対しましては、脱退一時金という制度を含めた年金制度についての周知を図るために、日本語以外の八カ国語でリーフレットを作成いたしまして、これを市町村あるいは社会保険事務所の窓口に備えつけ、説明の便に供すると同時に、社会保険庁のホームページにも掲載してございます。

 リーフレットの中身について簡単に申し上げれば、公的年金制度の概要、加入対象者、加入手続、年金給付の種類、外国人に対する脱退一時金の仕組み、それから社会保障協定、そういった一般的な制度内容を記載いたしまして、かつ、具体的な問い合わせ先といたしまして、社会保険事務所の電話番号とか住所、それから私ども、専用のダイヤルとしてねんきんダイヤルというものを設けてございますけれども、こちらの情報をお知らせしているというような状況になってございます。

 失礼いたしました。ちょっと私、今申し上げる中で一点言い間違いがあったようでございます。外国人脱退一時金の状況の方でございますが、国民年金の平成十八年度の金額でございますけれども、二千九百八十三万円ということでございます。失礼いたしました。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、お互いの国との信頼関係と申しましょうか、二国間の協定、日本の人が相手国に行っても不利益をこうむらないように、また諸外国から日本に来て働いている人たちにとってもきちっとこうした制度が運営されていくことを望みたいと思います。そのために御努力をいただきたいと思います。

 さて、日韓の関係でお伺いをしたいと思います。

 日韓社会保障協定のことであります。

 二〇〇五年に発効しております日韓社会保障協定においては保険期間を通算する規定はないということで、保険料掛け捨ての状況が続いている、こういうことであります。一九八八年に韓国の国民年金制度は施行されております。それから二十年以上がたち、我が国の年金の最低加入期間である二十五年の受給要件を満たす韓国の方も出てくる、こういう可能性が近くなっているわけであります。

 現在、日韓社会保障協定に保険期間の通算を規定することに向けた韓国との協議状況はあるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 韓国との協定でございますが、ただいま御指摘がございましたとおり、保険期間の通算に係る規定は置かれておりません。

 この協定の交渉当時、かかる規定を盛り込むことにつきましては日韓両国の間に主張の隔たりがございました。日本側としては、通算規定を含めるよう主張を続けることによって交渉が長期化するよりは、二重加入の回避に限定した協定を早期に締結する方が国民の益するところが大きいと判断した経緯がございます。

 しかし同時に、交渉当時、保険期間の通算に係る規定を置くことについて、引き続きその可能性を模索していくことで日韓間では意見が一致しております。時期を見て意見交換を行っていくということも確認をしております。日韓両国間では保険期間の通算に対するニーズがますます高まってきていると認識をしております。

 ただいまの御質問でございますが、日本政府といたしましては、通算規定を置くための協定改正の可能性につきまして、韓国との間で非公式な意見交換を行っているところでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 日韓の関係、往来をする方、またそれぞれ、日本から韓国、韓国からこちらで仕事をしておられる方は多いわけでありますから、ぜひ積極的に協議をいただきたいと思うんです。

 今非公式にそういった交渉をしているということでありましたが、先ほど私が触れさせていただきました、間もなく、あと五年ぐらいでしょうか、受給要件を満たすという状況が出てくるわけであります。一つの目標として、いつごろまでにそれをやるとか、何かそういった展望とか予想とか、その辺はいかがでありましょうか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 いつごろまでかということでございますが、ただいま両国の外交、厚生当局間で非公式な意見交換を行っております。問題意識は我々も共有しておりますので、先生のただいまの御指摘も踏まえて、鋭意、先方との意見交換を進めていきたいと思っております。

近藤(昭)委員 ぜひしっかりとやっていただきたいと思います。

 ところで、社会保障制度に関する開発途上国への支援ということでお伺いをしたいと思います。

 これまでもアジア諸国を含めた途上国に対する社会保障分野への支援を我が国もしているというふうにお聞きしておりますが、これまでの支援の状況、効果、そのあたりはいかがでありましょうか、お聞かせをいただきたいと思います。

伊藤副大臣 アジア諸国等のいわゆる発展途上国、こういった国は一般的に言って社会保障制度が十分に発達しているとは言えない、そういう国が多くないと承知しております。

 こういった中におきまして、我が国といたしましては、途上国への社会保障分野への支援というものを行う、このことは、基礎社会サービスの提供を通じて、ODA大綱が掲げる重点課題の一つである貧困削減の達成に大いに資するものであるというふうに考えております。こういった観点から、我が国はこれまで、アジアの諸国を中心に、社会保障を担当する行政官を対象とした研修を実施して、我が国の社会保障制度の紹介を行ってきております。こうした支援は、途上国における社会保障政策の整備及び向上に貢献しているというふうに考えております。

近藤(昭)委員 相互の信頼を高める上、また日本から進出し仕事をしておられる関係の方々、そういった観点からも、ぜひしっかりと支援と申しましょうか協力をしていっていただきたいというふうに思います。

 続きまして、投資協定に関する質問を幾つかさせていただきたいと思います。

 二国間の投資協定、これも先ほどから何回も質問には出ておるわけでありますが、ドイツ、中国、イギリス、フランス等は百前後の投資協定をしておる、我が国はそれに対して非常に少ない、こういう状況。

 そういう中で、外務省も昨年六月に、「二国間投資協定の戦略的活用について」と題する方針をまとめられた。それから一年がたつわけでありますが、投資協定の交渉の進捗状況はどのようになっているのか、また関係省庁等の協議はどうなっているのか、今後どういう方針を持って取り組んでいかれるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今まで我が国は、主要な直接投資先であり、また我が国と非常に重要な経済関係を有しているそういう東アジア諸国を中心に、ウズベキスタンを含みます十五の投資協定及び九つの投資章を有する経済連携協定を締結し、または署名をしているところでございますが、さらに中国、韓国それからサウジアラビア、カタール、カザフスタン、コロンビアなどとも今投資協定の交渉を行っているところか、あるいは今交渉開始について一致をしている、そういう状況でございます。

 我が国といたしましては、今後とも、この投資協定を積極的に推進し、かつ戦略的に活用していく。そのために去年の六月に、「二国間投資協定の戦略的活用について」につきまして発表したところでございますけれども、この発表に基づきまして、昨年の十二月には、経済産業省とともに、関係省庁及び関連の民間企業などの参加もいただきながら、対外投資戦略会議というものを立ち上げました。それ以来、地域ごとに、優先すべき分野とかあるいは候補国などについて議論を重ねてきているところでございます。

 今後も、我が国といたしましては、対外投資戦略会議のこのような御議論も踏まえまして、実際のニーズにこたえることを主眼として、投資の実績また見通しなどを勘案した上で、戦略的な優先順位を持って投資協定の締結に取り組んでいきたい、そういうふうに考えております。

近藤(昭)委員 大臣、どうもありがとうございます。

 先ほど申し上げた国々と比べてかなり数が少ない、そういう中で方針も立てられた、そしてこれから積極的にやっていくという大臣の御決意をいただいたわけであります。しっかりと戦略的にやっていっていただきたいと思うんです。

 ところで、そういう過程の中で、外務省、あるいは協力をする経済産業省等々さまざまな横のネットワーク、その中には民間の会社等々も入ってくるんだと思いますが、例えば現地の大使館等々では、そういう中でどのように役割を果たして、情報分析というか情報収集とか対応されているのか。あるいは、ほかにも、そういう先ほど大臣がおっしゃった戦略を立てている、その戦略を推進していく上で、どのような現地での調査あるいは現地でのネットワーク等々を活用されておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

平松政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御指摘のありましたとおり、特に現地におけるニーズというのは非常に大事でございますので、特に大使館が中心になりまして、現地にありますジェトロのオフィスだとかあるいは日本人会のいろいろな経済団体の集まり等を通じまして、どういうニーズがあるかということを恒常的に把握しております。そういった過程で、例えば、二国間の官民の合同会議というのもございますし、あるいは官民合同のミッションというのも時々派遣しております。

 そういった結果を踏まえまして、いかなるニーズがあるかということを十分反映いたしまして、その上で、先ほど申し上げました対外投資戦略会議の場で、いろいろな方の参加を得ながら、戦略的な投資協定の締結のあり方ということを検討しているということでございます。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、いろいろと情報を収集して、積極的にやっていただきたいと思うんです。

 そういう中で、経団連も、昨年の四月には「グローバルな投資環境の整備のあり方に関する意見」、こういうふうに提示をされておられるわけであります。海外投資を一層円滑化するため、相手国との間でビジネス環境整備を目的に官民合同の協議、対話、それは先ほどからお触れになっておられますけれども、それを推進する必要があるという共通認識のもとでこの提言が出されているわけであります。

 この提言に対して具体的にどのように検討を行われ、また、今後、この提言を受けられてどのように進めていかれるのか、改善をされていくのか、もう少し具体的にお聞かせいただきたいと思います。また、経団連からそういう提案があった、外務省としてはどこが窓口となってこうしたものを受けて具体化をしていくのか、お聞かせをいただきたいと思います。

平松政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御指摘がございました経団連の意見でございますけれども、我々も大変重要なものだと考えております。そういった意見も踏まえながら、先ほどから何度かお答えをさせていただいていますけれども、昨年六月に、関係省庁とも連携いたしまして、二国間投資協定の戦略的活用という方針を取りまとめました。その中には、当然、経団連の御意見も十分反映されているということでございます。

 いずれにいたしましても、投資を促進するためには産業界からの要望というのは非常に重要でございますので、投資協定の締結のみならず、二国間の対話とかあるいはODA等を通じました投資環境の整備、あるいは日本貿易保険、ジェトロ等の国内機関との連携など、多様な政策手段を駆使いたしまして、今後とも取り組んでいきたいというふうに思います。そのような観点から、先ほども触れましたけれども、二国間の官民合同会議あるいはミッションの派遣等で、官民合同で投資環境の整備ということを推進していきたいと思っております。

 我が国国内におきましても、まさに官民一体となって投資戦略をつくるということは非常に重要でございますので、外務省、経産省主催で、これも先ほど申し上げましたけれども、ビジネス団体、ジェトロ、国内機関等の参加も得まして、昨年十二月に対外投資戦略会議を立ち上げました。

 もう何回も議論を重ねておりまして、産業界の要望にこたえてどういうプライオリティーをつけるのか、あるいはどういう内容を投資協定に盛り込むのかということについて突っ込んだ意見交換をしております。当然、その中には、投資協定のみならず、投資環境の整備等を推進していくことも大事だと思っております。

 そういったことを踏まえまして、特に外務省の経済局が中心になりながら、全体的な方針を大臣の御指示を得ながらつくっているというところでございます。

近藤(昭)委員 ぜひ積極的にやっていただきたい。そういう中からこれからどんどん進展していくのかなというふうに思うわけで、期待をしております。

 先ほどの、昨年の六月、「二国間投資協定の戦略的活用について」と題する方針をまとめられた。また、今、経団連等々の提言にも沿って、いろいろと横の連携をしてやっていらっしゃるということであります。ただ、それから一年以上たつ中で、必ずしも十分に、今までよりはスピードアップされているのかなとは思いますけれども、まだまだ進んでいないところもあるのではないかと思っているわけであります。ぜひ積極的にお進めをいただきたいと思います。

 それでは、続きまして、ペルーの関係、ペルーとの投資協定について質問したいと思います。

 特定措置の履行要求の禁止ということの関連であります。

 ペルーとの投資協定では、投資を阻害する効果を有する特定措置の履行要求、いわゆるパフォーマンス要求の禁止が規定されているところであります。我が国とペルーの間において、これまでこのパフォーマンス要求が行われたことがあるのかないのか。また、日本・ウズベキスタン投資協定や日韓投資協定で規定されている雇用要求や一定レベルの研究開発の要求の禁止が、日本・ペルー投資協定のパフォーマンス要求の禁止の規定には盛り込まれなかった、その経緯また理由、そしてそれに対する経済界の何らかの評価があるのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

平松政府参考人 お答えいたします。

 特定措置の履行要求でございますけれども、これまでもペルーにおきましては、我が国の現地進出企業に対しまして、現地調達要求あるいは自国民雇用要求等、投資を阻害する効果を有する特定措置の履行要求がなされたことはございました。ということは我々承知しております。

 このような問題も踏まえまして、今回の日・ペルーの投資協定交渉におきましては、我が国としては、このような履行要求をできる限り禁止するよう交渉を行ったわけでございます。その結果、現地調達要求を含む多くの特定措置につきまして、履行要求の禁止に関する規定を盛り込むことができたわけでございます。

 他方、先生御指摘の自国民雇用要求につきましては、ペルーの国内法上、外国人の雇用というのは全体の二割以下に抑えるということが書いてございまして、そういう義務があるということがございました。それから、研究開発要求につきましても、ペルーが、今後の国家の発展ということだと思いますけれども、技術研究開発促進に非常に大きな関心を将来的に有しているということもあったものですから、種々交渉はいたしましたけれども、そういった国内的な事情がございましたので、最終的にはこれらの禁止を盛り込むことについて妥協が得られなかったということでございました。

 他方、この点につきまして何か経済界から特段の反応があったということは、現在のところございません。

近藤(昭)委員 それぞれの国との交渉の過程の中で、それぞれの国との個別の具体的な状況が出てくるんだと思います。ぜひ、我が国にとって投資環境が整えられてくるように、しっかりと頑張っていただきたいというふうに思うわけであります。

 そういう中で、このペルーとの投資協定の関係で申し上げますと、投資環境改善小委員会というものが設置されることになった、この経緯をお知らせいただきたい。また、今までの協定には設置されなかった、それはなぜかということであります。また、今後、新たに締結する投資協定においてはこの改善小委員会の設置に関する規定を盛り込む必要があると私は思うんですが、政府の方針としてはいかがされるつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。

平松政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来お答えしておりますけれども、官民の連携、官民の合同作業というのは非常に重要だと考えております。

 今回のペルーの協定におきましても、そういった、いかなる形で官民の協働の体制をつくれるかという観点から、ペルー側と協議をいたしまして、今回、投資協定におきまして、協定に関する、投資環境の改善に関する事項について情報を交換し討議できるようにという趣旨で、合同委員会の下部委員会といたしまして、投資環境改善小委員会を設置することができた。これは今回のペルー投資協定の大きな特徴だと我々は思っております。

 これまでの投資協定におきましては、既存の二国間経済対話の枠組み等も存在していたということも勘案しまして、投資環境改善小委員会の設置については特段盛り込んできていなかったというのは、先生御指摘のとおりでございます。協定上、合同委員会によって協定の履行のための議論を行うことができるということもございました。

 ただ、今後、新たに締結する投資協定につきましては、既存のいろいろな対話の枠組みもございますので、そういった役割分担を考えつつではありますけれども、同様の小委員会を設ける必要性につきまして、個別のケースごとに具体的に積極的に検討していきたいというふうに考えております。

 小委員会の参加企業につきましては、今後、相手国と相談しながら考えていきたいというふうに思っております。

近藤(昭)委員 投資の環境を改善していくということ、この委員会が設置されるに当たりましては、今のお答えの中にもあったと思いますが、日系の企業からかなりそういう希望があった。安心して投資を行える、そういう環境を特につくってほしいというような要望があったというふうに聞いております。ぜひ、日本の企業が安心をして投資し、そしてまた正しい権益が守られるようにしていただきたいと思います。

 小委員会、今後、それぞれの国との交渉でありますから、必ずしもいつもということにはならないのかもしれませんけれども、ぜひ、この委員会の趣旨、投資環境を守っていくということで御努力をしっかりしていただきたいと思いますし、そういう中でしっかりと日本の企業の意見をくみ上げていただきたい、こういうふうに思うわけであります。

 続きまして、日系人の離職者に関することについてお伺いをしたいと思います。

 本当に、昨年から、非常に急激な景気の悪化、そういう中で日系人の、もちろん多くの日本人、仕事を失っているわけであります、多くの人が仕事を失っているわけでありますが、多くの日系人の人たちも失業をしている。こういう方は、短期間で働く割合が高いわけであります。そういった観点からすると、失業保険などの社会保障を十分に受けられないケースが多くある。また、日本語の能力の不足などから、一たん離職した場合には再就職が困難である。こういう状況だというふうに認識をしております。

 こういう中で、ペルーやブラジルなど南米諸国に国籍がある日系人離職者の帰国費用を補助する帰国支援事業、こういうものが実施されているわけであります。これがこの四月より開始されているわけでありますが、その利用状況及び評価、これはどのようになっているか、お知らせをいただきたいと思います。

岡崎政府参考人 御指摘の日系人離職者の帰国支援事業でありますが、厳しい雇用情勢の中で、日本での再就職を断念し、かつ帰国費用等の面で困難がある方々について支援するということでございます。

 利用状況でございますが、六月十一日現在で、申請者が二千八百八十一人、それから、扶養者の方にも支援しておりますが、扶養者の方が千五百四十八人、合計しますと四千四百二十九人の方から申請を受けております。この二カ月間でこのくらいの利用者があるということから見ましても、それなりにニーズにこたえているのではないかというふうに考えております。

近藤(昭)委員 かなりのニーズがあり、それにこたえているということでありますが、やむを得ず帰る、帰らざるを得なくなる、その帰国の支援のニーズがある、そういう中でその事業が行われているということであります。

 一方で、日系人の就労準備研修事業、こういうことも行われていると聞いております。このことについての内容、利用状況、またどういった評価があるのかということをお聞かせいただきたいと思います。

岡崎政府参考人 日系人の方々につきましては、先生からも御指摘がありましたように、日本語の問題等もある、それから、従来から比較的不安定な雇用状況だったというようなことから、非常に厳しい状況にあるというのは御指摘のとおりでございます。

 そういう中で、ハローワークにおきましても、通訳を配置する等、いろいろな相談を受けて、事業所への職業紹介等にも努めているわけでありますが、ハローワークの状況を聞きますと、やはり、日本語能力に問題がある場合には、なかなか事業所の方も面接までも行き着かない、あるいは面接してもなかなか採用してもらえない、こういう状況でございます。

 それに対します一つの対応としまして、やはり、日本語を含めた日本の職場習慣その他もきちんと理解していただく、そういうことが必要ではないかということで始めたものでございます。予算額としましては今年度分約十億、それで、人数としては一応五千人を想定しております。当初想定しましたのは、三百時間程度の日本語を中心とした講習を受けていただいて、可能であれば、日本語能力検定でいけば三級程度まで行ければいいなということで始めたものでございます。

 ただ、地元の自治体等と話をする中で、三百時間までやるのはなかなか厳しいのではないか、日系人の方の方からも、そういう長い時間だけではむしろニーズがないのではないか、いろいろなお話もありましたので、少し短目のものを含めて現在実施をしております。

 準備の整ったところから始めておりますが、現時点で始まっているのは十一地域で、約七百名でございます。それから、七月までに始まる予定のところを言いますと、千三百名ぐらいにつきましては七月ぐらいまでに始められるということであります。そのほか、二回目、三回目も含めまして、予定した人数の分の研修をできるように努力してまいりたい。これを受けた後また、できれば職業訓練その他につなげるような形を含めて、できるだけ日系人の方が将来的に安定した仕事につけるような努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 そうすると、十億の予算を組んだ、五千人を想定している。今のところまだ、予想も含めると二千人ぐらいになるんでしょうかね。

 これからどうなんでしょうか。この研修事業の周知徹底といいましょうか広報をどのように進めておられるのか。また、これはニーズに比べて実際に、いわゆる潜在的ニーズに比べてどの程度来ているとか、そういった分析はいかがか、お聞かせをいただきたいと思います。

岡崎政府参考人 既に始めた地域におきましては、ほとんど定員いっぱいまで来ております。そういった意味におきまして、むしろ、私どもとしては、これは委託でやっておりますが、受託機関であります国際協力センターの方にも、できるだけ多くの講習コースをできるだけ早い時期にできるようにということで要請をしております。

 それで、周知につきましては、ハローワークに相当数の求職者の方が来ておられます。毎月、新規求職者が、一月、二月は五千人ぐらいおられましたし、その後も数千人ずつ来ているというような状況であります。主としてハローワークにおきまして、求職中の方々につきまして、日本語能力に問題がある方等にこの受講を勧めているということでありますが、一方で、地域社会の中での日系人の方々のネットワークもありますので、そういう中でも相当周知されているのではないかというふうに理解をしております。

近藤(昭)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

河野委員長 次に、松原仁君。

松原委員 きょうは、投資協定の議論と、また北朝鮮の問題に関してお伺いしたいと思っております。

 まず先に北朝鮮問題からお伺いをしたいと思っておりますが、今回、国連の決議が出されたわけでありまして、その経緯の中で、先般の外務委員会でも日米素案のことを私は申し上げていろいろと議論をしたわけであります。

 ちょっといろいろとお伺いしたいわけでありますが、北朝鮮はいよいよウラン濃縮ということをスタートしようとしているわけでありまして、ウラン濃縮に関しては従来から指摘がされました。パキスタンで核開発の父と呼ばれるカーン博士が核のやみ市場の存在を告白した、これはもう報道でもなされているわけであります。北朝鮮などに核関連技術や機材を売却したことを認めた、こういうことも既に報道で知られているわけであります。

 そこで、お伺いをしたいわけでありますが、パキスタンのカーン博士が北朝鮮を数次にわたって訪問しているというふうに報道されております、十数回ですね。こういったことに関する外務省の認識をまずお伺いいたします。

伊藤副大臣 委員御指摘のとおり、パキスタンの核科学者であるカーン博士は、数次訪れていまして、二〇〇四年二月、北朝鮮を初めとするパキスタン国外への核関連技術の輸出に関与したことを明らかにしたということは承知しております。

 我が国としては、いかなる形であれ北朝鮮等に対して核関連技術の流出があったことは、国際社会の平和と安定また核不拡散体制を損なうもので、極めて遺憾であり、我が国は、引き続きパキスタン政府に対して、輸出管理など核関連技術の拡散防止に一層厳格に取り組み、再発を防止するように強く要請していくという考えであります。

松原委員 我が国の安全保障を考えれば、カーン博士が北朝鮮に対して核技術の移転をしたということでありますから、我々の立場として、国益を守る立場でカーン博士に対する面談、接触というのは当然行われてしかるべきだと思っておりますが、今どのようになっておりますでしょうか。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 カーン博士の関与した核関連技術の流出の問題でございますが、ただいま副大臣からも答弁がございましたが、日本といたしましても極めて遺憾で深刻な事態だということで、まさにこれまでも日・パキスタン間でもこうした問題を取り上げてきております。

 例えば、最近では、本年四月のパキスタン支援国会合の際に行われました日・パキスタン首脳会談におきまして、カーン博士らによる行為を念頭に置いて、我が国は核不拡散に向けたパキスタンの取り組みを引き続き注目しているといったことをザルダリ・パキスタン大統領に伝えております。

 そうした大きな日本の基本認識に立ちまして、これはもう本当にいろいろな情報収集も含めて、関係国との間でもこれまでも緊密にこの問題についての情報共有等々やってきているところでございます。

松原委員 つまり、カーン博士と会う努力をしていたのかいないのか、具体的にカーン博士と会う努力を従来していたのかしていなかったのか、このことをお伺いしたい。

小原政府参考人 これは、まさにその情報の性格上、非常に機微な点にかかわるものでございますので、この場での私からの答弁は差し控えたいと思います。

河野委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

河野委員長 速記を起こしてください。

 この件については、理事会で後刻協議いたします。

 松原仁君。

松原委員 カーン博士のこの内容まで含めて、既にこれだけ米側から情報が出ているわけでありますから、日本側がインテリジェンスのゆえをもってこれを明らかにしないというのは逆におかしいと思います。

 そうした中で、今般、米国からの強い要請も受けながら、パキスタンへの大型支援を表明していると聞いておりますが、内容をお伺いしたいと思います。

中曽根国務大臣 核の不拡散につきましては、政府としては日ごろから情報収集を行っているわけでありますけれども、そういう具体的な方法を明らかにすることは、これはもう再三申し上げておりますけれども、政府の情報入手経路、そういうものが明らかになるわけでありまして、今後の情報収集活動に支障が及ぶおそれがありますために適当ではないということをまず御理解いただきたいと思います。

 パキスタンに対します経済協力のあり方につきましては、ODA大綱にのっとって、また同国の不拡散に向けた取り組みなども十分注意を払いながら検討していきたい、そういうふうに思っているところでございます。

松原委員 そうはいったって、国際社会というのはかなりそれぞれの国益を闘わせているわけでありますから、日本がパキスタンに対してODAを相当額出すということになれば、当然パキスタンに対して、カーン博士に、北朝鮮への核拡散をどのようにしたかというのを我々は国益上聞くべきだと思うんですよ。

 大臣、聞くつもりがあるかないかぐらいは、それはインテリジェンスの問題でなくて、アメリカだって聞いているんだから。聞くつもりがあるというのは当然想定される答弁ではありますが、聞くつもりがあるかないかをお伺いしたい、ODAを出すという我々の立場の中において。これはきちっと答弁してください。

中曽根国務大臣 先ほどの御質問もそうなんですが、会ったか会わないかとかそういうことは、先方、相手もあることでありますし、これはもう参考人から申し上げたことでございますので、やはりお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 パキスタンとの首脳会談が行われました際に、麻生総理との間でございますけれども、国際的な不拡散体制についても意見交換が行われたわけでございまして、日本は核不拡散に向けましたパキスタンの取り組みに引き続いて注目をしておるということで、輸出管理に向けたパキスタンの取り組みを支援していく、そういう考えを伝えたところでございます。

 ザルダリ大統領からは、パキスタンは日本の核不拡散及び核軍縮への取り組みを高く評価している、そういう話もありまして、また、その意図もよく理解しているということ、そして、パキスタンは国際社会の協力を得て、国際的な基準にのっとって核管理を行っている旨、説明がありました。

 そういうようなことで、我が国としては、政府間で、核の拡散防止につきましては協議といいますか話し合いを行っているわけでありまして、カーン博士に会う意向があるのかないのかということにつきましては、先ほど申し上げましたような理由でお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 何かこの外務委員会の質疑は常にお答えを差し控えるで、何かどこかでは記憶にございませんみたいな話もありますが、同じような議論で、インテリジェンスがあるからお答えを差し控えさせてもらいますとか、中身を云々かんぬんを報告しろというのになればそういった議論になると思いますが、マスコミ報道でもあるように、カーン博士は、北朝鮮に核技術を移転したと告白しているんですよ、そして売却したことを認めているんですよ。

 では聞きますが、日本の外務省は、北朝鮮にどれぐらいのウラン濃縮の工場があるか、その技術というか能力はどのぐらいあるか、聞かなくてもいいんだったら、当然知ってなきゃおかしいので、お伺いしたい。

小原政府参考人 恐縮でございますが、まさにその点もインテリジェンスにかかわる情報でございまして、これはもう日本といたしましても、米国初め関係国とは情報収集の点で協力をしてきておりますが、その具体的な中身につきましては答弁を差し控えたいと思います。

松原委員 北朝鮮がどの程度のウランの濃縮技術を持ち、どのぐらいの工場を機能させ、実際どれぐらいの核爆弾の製造過程にあるかというのに関して、憶測は当然外務省もあると思うし、マスメディアではいろいろな議論が既に出されているわけであります。外務省が、余りこの危機感をマスコミがあおるようだったら、実は違うぞということは言わなきゃいけないのであって、そうであるならば、このことに関するインテリジェンスを言う必要はあると思うんですよ。

 私は、少なくとも、カーン博士に会って聞くということに関して、外務省は意欲を持つぐらいの話は最低限この場でしてもらわなかったら、なかなか議論は進まないんですよ。大臣、必要なことじゃないですか。それは、北朝鮮のウラン濃縮の工場はどれぐらいあるかとか、いろいろなことを確認するために必要だと思う。

 聞いた情報は機密があるかもしれないけれども、ぜひ、会う決意があると。いや、会えないと思ってあえて防御線を張って言わないのかどうかわからないけれども、では大臣、会う必要があるかないか、どう思いますか。それだけ答えてくださいよ。会う必要があると思いますか。

中曽根国務大臣 まず、委員も再三、インテリジェンス、インテリジェンスで外務省は答えない、そういうふうにおっしゃっておられますが、新聞で報道されていても、あるいは他国からそのような情報等が出ていても、我が国の情報管理あるいは情報入手経路、そういうもの、また今後の情報収集活動に支障があると判断した場合には、やはり、仮に報道があってもそれは申し上げられないものは申し上げられないので、そういう点はぜひ御理解いただきたいと思います。何でもかんでもインテリジェンスと、そういうふうに申し上げているわけではございません。

 それから、カーン博士のことでございますが、これについては、今委員がおっしゃいましたように、御本人による告白とかそういうものを私たちも承知しておりますけれども、情報収集というのは日ごろからやっておりますので、ただいまの御質問につきましては、会うとか会わないとかいうことにつきましては、ちょっとお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 そうしたら、ちょっとお伺いしたいけれども、ここで中曽根外務大臣が会うべきだと思うと言って、実際会ったとして、どういうマイナスが発生するんですか。どういう外交上のマイナスが発生するというふうにお考えなんですか。そこはお答えいただきたい。会う会わないは言えない、会うつもりだとも言えないと。では、会った場合どういうマイナスが発生すると思うからそれを担保しているのか、お話しいただきたい。

 いや、大臣に。大臣、答えてください。

中曽根国務大臣 先ほどから申し上げておりますけれども、会った場合のマイナスという御質問でありますけれども、それも仮定の質問でございますし、私どもとしては、仮に会った場合、いろいろな、仮にでございますけれども会った場合のことについては、それはもちろん対外的に公表するものでもございません。

 しかし、さっきから再三同じ答えになって恐縮でございますけれども、会うつもりがあるのかないかということも含めまして、これはお答えは本当に差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 大体、私が申し上げたいのは、機密は機密で大事ですよ。しかし、国民が日本の国家に対する信頼を持つためには、一定の、事実やっていることを含めて明らかにすることが必要だと思うんですよ。北朝鮮の核問題について報道もなされていて、政府がそのことに対して真摯に向かっているかどうかということを考えた場合に、少なくとも、カーン博士には興味を持っている、そしてやはりそこから情報をとる必要は基本的にあると思っている、それぐらいのことを言わなかったら、何もしない外務省という認識をむしろ国民には知らしめることになりますよ。

 機密も大事だ、問題もあるといろいろと言うけれども、逆に、何も言えない、何も言わない、何もしないかのような外務省という印象を国民に与える方が、私はよっぽど国益上マイナスだと思うんですが、大臣いかがですか。

中曽根国務大臣 確かに、会えばそれなりの情報なり収穫といいますか、そういうものも得られるとは思いますけれども、会う必要があるとかないとか、そういうことについては外務省もいろいろ考えなくてはなりませんし、考えている考えていないということも申し上げられないんですけれども、そういうこともすべていろいろ外務省も考えた上で、会う会わないについては、大変申しわけありませんが、申し上げられません。

松原委員 僕は、非常にそれは、日本の外務省というか、問題だと思うんですよ。日本は外交上ほとんど自分の意見を自分から言い出さない国じゃないかという批評がよくあるんですが、例えば改正外為法をつくったときもそうですよ。あのときに日本の外務省は、三カ国以上の共同制裁というか行動する、もしくは国連安保理の決議があると。日本の国がみずから自発的に制裁をするということに対して物すごい抵抗感を、あのとき、あの議員立法は私も携わった一人でありますが、多くの外務省の人間が言っていたわけであります。おかしいじゃないか、何で自分で自分の意思を表明できないんだ。自分の意思を表明しないというのが日本の外務省の基本的な伝統で、ぎりぎりのところまで来たら初めて物を言いますみたいな、そういう姿がずっと続いている。

 カーン博士に会うか会わないか。会った方が情報収集できるのはだれが考えたって明らかであって、それをちょっと言えませんとかいうのでは、何も言わない外務省という話になってしまうと私は思うんだな。

 そういった意味では、日本が独立国であるということを僕は主張しているんだけれども、中曽根さんは、いや、どうも違う、我々はアメリカの言いなりで、そのらち内でしか行動しないんだというんだったらそういう議論もあるかもしれないけれども、やはり言うべきことは言わなきゃいけないし、国民に対する説明責任や国民に対して安心させるという行動からいって、今のカーン博士に会う会わないを言えませんとか、それはいろいろと関係が、問題が発生しますとかって、どう考えたって理屈がわからないというか、そういうふうなことをやっていたら、私は、日本国民は日本の外務省に対して十分な信頼を置くことはできないと思いますよ。これははっきりと言わせてもらう。

 何かありますか、大臣。

中曽根国務大臣 先ほど申し上げたんですが、仮に会えばそれなりの情報は入るとは、そういうふうには思います。しかし、会う会わないということにつきましては、これは当方が考えることでありまして、対外的に申し上げる必要はないのではないか、そういうふうに思っております。

松原委員 そうしたら、要望ですが、パキスタンに対するODA支援がきちっと行われる、その見返りとはあえて言いたくないけれども、まあ見返りでも結構ですよ、カーン博士と会って、北朝鮮のウラン濃縮の実態についてはぜひ確認をしていただきたい。要望を申し上げます。

 次に、これは記事にも載っておりますが、二十八日に日韓首脳が会談をするというふうに書いてあります。東京で麻生首相と李明博さんが会談する、米国が主張する対北朝鮮金融制裁等々について議題になる、こういう見通しを言っているわけであります。

 これは外務大臣は同席する予定ですか。

中曽根国務大臣 きょう現在、そのような会合が行われるというようなことにつきましては、最終的にこれは公表されておりません。

松原委員 これは報道でそう書いてあるということでありますね。報道どおりになるかどうかはそのときが来ればわかる、こういうことであります。

 私は、北朝鮮に対して、先般も言ったんですが、安保理決議で金融制裁的なものはもちろん入っているわけでありますが、十分かどうかというのは極めて、十全に機能するかどうかはわからないということを申し上げました。そのときに、日米素案で言ったところの大聖銀行と朝鮮貿易銀行ですか、この二つに関しては取引停止というのが、当初、それも公にはならないわけでありますが、かなり確度の高い、外務省関係者から私は聞いておりますが、これは日米素案の中に取引停止と入っていた。当然、中ロがこれに対して反発をして、その固有名称はそこから削除されたという話でありますが、日米韓ではそういった具体的な金融機関名まで挙げた金融制裁を特に日本の立場からはするべきだと思うんですが、外務大臣はいかがお考えでしょうか。

中曽根国務大臣 我が国は、安保理決議の一六九五号に基づきまして、従来から、北朝鮮のミサイル、それから大量破壊兵器計画に関するもの、すなわち十五団体、一個人ですけれども、これに対する資金移転の防止措置を講じてきております。

 さらに、このうちの三団体につきましては、もう委員も御承知のとおりでございますが、四月の北朝鮮によりますミサイル発射後の国連安保理議長声明を踏まえまして、北朝鮮制裁委員会により安保理決議第一七一八号の資産凍結の対象として指定をされましたことを受けまして、我が国といたしましても、この決議に基づく措置を講じたところでございます。

 また、今般の安保理決議一八七四号におきましては、決議採択後三十日以内に北朝鮮制裁委員会において、禁輸対象の品目やそれから資産凍結対象の団体、また個人等の指定を目指すということが確認をされております。

 今後の北朝鮮制裁委員会での対応につきましては、当然のことながら、我が国といたしましても、適切な団体や、また個人を指定することにつき合意が得られるように、建設的に議論に参加していきたい、そういうふうに考えております。

松原委員 やはり、大臣、生の声で語ってほしいんだけれども。それは、いいですよ。

 私が聞いているのは、北朝鮮の二つの金融機関名を出すような極めて具体的な金融制裁に対して、日米韓の連携を大臣は当然考えるべきだと、日米素案に入っていたと聞いているがゆえに言っているんだけれども。であれば、そのことに関してどういう所見を持っているかということを、もちろん安保理決議がきちっと実効性が担保されればいいけれども、そこまでいくかどうかわからない中で、そこまで踏み込むという決意を大臣には語ってほしいんですよ、二つの金融機関に対しては取引停止をすると。御所見をお伺いしたい。

中曽根国務大臣 今申し上げましたけれども、今後とも、各国との情報交換などを行いまして、そしてまた北朝鮮制裁委員会における議論なども踏まえまして、我が国としては、また新たな情報が得られれば、先ほど申し上げましたような団体、個人を追加指定することになりますけれども、そういう中におきましては、アメリカや韓国ともよく情報交換などを行いながら我が国の対応というものを考えていきたい、そういうふうに思います。

松原委員 日本は、拉致の問題、核の問題、最も被害を受けているわけですから、もう少しイニシアチブをとるということで踏み込んだ発言をしてもらえれば本当はありがたいと思うのであります。

 今般、日本の政府が北朝鮮に対して日本としての制裁を発動しました。中身を教えていただきたい。

山本(条)政府参考人 委員御指摘のとおり、今回、日本としての独自の追加的な措置ということを講じたわけでございます。

 これについて若干御説明をいたしますと、まず核実験につきましては、安保理決議違反、したがって、安保理による対応がまず重要であるということで決議採択に至ったことは御承知のとおりでございます。

 この状況を我が国の立場から見ますと、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の解決に向けて北朝鮮の具体的な対応が見られない、それどころか先般のミサイル発射、そして今回の核実験の実施、こういう状況があったわけでございます。そういう観点を踏まえまして、また、北朝鮮による核実験に対しまして強く抗議をするという旨の国会決議をいただき、その中で、政府としても断固たる対応が必要だという御指示をいただいたわけでございます。

 そういう観点から、今般、まず第一には、北朝鮮に対しますところの輸出の全面的な禁止、それから第二には、一連の貿易規制、金融規制に違反をいたしましたそのような在留外国人等につきましては、北朝鮮を渡航先といたします場合の本邦への再入国、これは原則として認めないという措置を講じることを決定したわけでございます。

松原委員 この輸出禁止というのは、私が先般米国を訪問したときも、ジャヌージなんかも、日本はやっていないじゃないかと向こうから指摘があったんですが、なぜこのタイミングなんだろうと私は思うんですよ。核とショートレンジミサイルが発射されたときに間髪入れず本来やるべきだったんですが、何でここまで、やるならばそのときに、鉄は熱いうちに打てという言葉があるけれども、やるべきですよ。国連安保理決議は決議として、国連安保理決議が出るまで待っていたということですか。では、一応時系列だけお話しいただきたい。

山本(条)政府参考人 今回の核実験の実施ということを受けまして、まず国際社会の連携が大切である、この旨につきましては、さきにいただきました国会決議の中で強調されているところでございます。そのような国際社会の連携のあり方といったものを我が国としても主導し、またそのあり方を見きわめていくという観点から、安保理決議作成にかかわる安保理の動き、その他国際社会の動きということを見きわめておったということは事実でございます。

松原委員 人の出入りというのは私は極めて重要だと思うのでありますが、昔の日本の、今から三十年ぐらい前のパスポートは、北朝鮮を除くそれぞれの国に行ける、こういうふうに書いてあったわけであって、北朝鮮は渡航先として入っていなかったわけであります。

 きょう、法務省が来ていると思いますが、それでよろしいですよね。お伺いします。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 旅券に北朝鮮は除くと書いてあったというふうに承知しておるんじゃないかと、これは外務省の所管になりますので。

松原委員 そうすると、北朝鮮を除くということが書いてあったわけでありますが、その間にも在日朝鮮人は北朝鮮と往来をしていたのかどうか、お伺いしたい。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 その件に関しましては、もともと入管法では、外国人が日本に入国する場合、再入国の場合も含めまして、旅券が必要であるとなっております。北朝鮮の方の場合、いわゆる有効な旅券を所持し得ないということで、当初は、再入国は認められないという状況になってございました。

 ただ、昭和四十七年ごろから、これは古いことですので詳細はちょっと確実ではないかもしれませんが、入国管理局長証明書という文書で再入国を認めるようになった。さらに、昭和五十六年には入管法の改正を行いまして、その改正で、旅券を所持できない人についても再入国許可書というのを旅券とみなすということで、そういう制度を整備したということでございます。さらに、平成三年には入管特例法が制定されまして、現在のように、在日朝鮮人を含む特別永住者の再入国許可については、特別永住者の本邦における生活の安定に資するという同法の趣旨を踏まえた運用をするということで、原則許可されているという状況でございます。

松原委員 そうすると、再入国が認められていなかったというのは、もう一回確認です、いつまで、北朝鮮籍の人が北朝鮮に行ったときは日本に戻れなかったんですか。それが緩和されたときの最大の理由というのは、何が原因なんですか。ちょっとお伺いしたい。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 古いことですのでちょっと正確ではないかもしれませんが、大体昭和四十年までは再入国はしていなかったようでございます。

 その上で、当方に残っている記録で一番古いものでは昭和四十一年ごろから再入国が若干ずつふえておりまして、先ほど言いました証明書というのは昭和四十七年からつくられております。さらに、昭和五十六年から、現在の入管法のように、再入国許可書というのを旅券を持たない人に対して発行する、これを入国に関してやるという制度になっております。

松原委員 昭和四十一年から徐々にふえ始めているとさらっと現象面だけ言われると困ってしまうので、それまでは再入国できなかったのが、何で昭和四十一年にそういうのが始まったんですか。

高宅政府参考人 この点につきましては、ちょっと正確にはよくわからないんですが、昭和三十年代から、やはり再入国したいという要望がありまして、それに対して、旅券がない人についてどうするか、これは当時、台湾の方の問題もあったわけですが、そういったものも含めて検討して、いろいろな制度をつくっていたというのが実情だと思います。

 それで、大体昭和四十七年ごろから非常にふえてきておりまして、昭和六十二年から一万人を超すような出入国があったと承知しております。

松原委員 私は、この再入国禁止というのは、やはり日本の持つ大きな切り札だろうと思っているんですね、北朝鮮に対し厳しい制裁をする場合の。当初、昭和四十年までやっていたというんだったら、これはひとつ検討に値するだろうというふうに思っております。

 それで、徐さんという人がいて、これは日本の方で家宅捜索を受けたどうだこうだという、ロケット技術、ミサイル技術の専門家というふうに聞いておりますが、彼は今回再入国禁止を受けているという話でありますが、このことについてわかりますか。

高宅政府参考人 個別の方についてはちょっとお答えできませんが、現在、措置で禁止しているのは、北朝鮮当局職員に該当する人間の再入国を禁止している、北朝鮮向けの再入国を措置しているということでございます。

松原委員 前にも、ロケット技術を持って北朝鮮に行って、例えばテポドンやそういったノドンの発射のときに、一カ月、二カ月長期滞在をしていたという、明らかに、慶弔とかお葬式で戻るとかそういうふうなことではない、技術移転を目途にして戻ったというふうに怪しまれた事例がこの徐さんの例であります。

 私は、やはりこの再入国禁止に関しては、これから我々は何らかの強い方向性を打ち出すべきだろうと思っております。

 外務大臣は、人の出入りについて、既に規制をしているといえば若干しているわけでありますが、こういった規制で日本からの技術移転を含めて十分に抑止できているという認識をお持ちかどうか、中曽根大臣にお伺いしたいと思います。

小原政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで日本政府といたしましては、先ほども紹介ございましたが、既に我が国の措置として、北朝鮮籍者の入国は特別の事情がない限り認めないという点、それから今回の新たな措置におきましても、例えば貿易・投資関係の違反をした場合に、そうした人の入国を認めないというような措置もとっておりますので、全体として極めて厳しい措置になっておると理解しています。

松原委員 あと、数字の把握だけしたいわけでありますが、今、北朝鮮に行って再入国する北朝鮮籍の人は年間どれぐらいおられるか、お伺いします。

高宅政府参考人 朝鮮の方で再入国許可をしている入国者数、総数は平成二十年で六千九百四十八人おるんですが、その中で北朝鮮に向かわれた方が何人かという統計はちょっと持っておりません。

松原委員 やはりそういうのは、六千九百人ですか、それは北朝鮮に全員が戻っているとは言えませんが、その辺の実数も把握してもらって、本来であれば、一年間に二回も三回も行く人はいないと思いますが、行くとするならばそれは何らかの政治上のミッションを持っている可能性があるわけであって、そういったことに関して今後一定の規制というものが、人の出入りに関しても必要になるだろうということを私は申し上げたいと思います。

 時間がありませんので、協定の方に入りたいと思います。

 中国は今、大変な資源外交を展開しているわけであります。国家戦略として胡錦濤国家主席、温家宝首相が先頭に立って資源確保のために首脳外交を行っていると。これは日経ビジネスオンラインの記事でありますが、アフリカにおける資源外交攻勢は欧米系の資源メジャーたちを慌てさせた、アフリカは中国によって強姦、略奪されているという、すさまじい表現ですね、こういう表現もしている。そして、アフリカ大陸に札束を持って国家主席を初め首脳陣が乗り込んできて大盤振る舞いで資源を囲い込んでいく中国に対し、メジャーたちが反発と恐れと危機感を強めている、こういうふうに書いてあります。

 これは一般論ですから、大臣、日本の政府としては、中国のこのすさまじい、これはアフリカだけではなくて全世界において資源獲得の国家戦略を展開しているわけでありますが、日本はこの中国の動きに対して危機感を持っているのか持っていないのか、まず冒頭お伺いしたい。

中曽根国務大臣 今委員が御説明されましたように、世界のいろいろなところにおきまして中国はいわゆる資源外交的な活動を行っていると、基本的には私もそういうふうに認識をしているところでございます。(松原委員「危機感を持っているかどうか聞いているんです」と呼ぶ)

 危機感といいますと意味が非常にデリケートな形になりますけれども、私どもとしては、よその国の活動も注目をしながら、我が国として必要な資源外交は積極的にやっていくということが大事ではないか、そういうふうに思っています。

松原委員 危機感を持ってほしいですね。

 それで、我が国の対ウズベキスタンのODAの支援額、累積、内訳、そして、このことに関する中国、韓国のウズベキスタンに対するODA、もしわかればお伺いいたしたいと思います。

伊藤副大臣 まず、我が国の方でございますけれども、我が国は、中央アジアの域内の最大の人口を有しておりますウズベキスタンに対して、市場経済化や持続的発展を支援するために、人材育成、制度構築、社会セクターの再構築、経済インフラの整備等の分野でODAを実施してきております。

 その額でございますが、二〇〇七年度までのODAの累積額は約千二百六十四億円でございます。内訳は、円借款九百七十六億円、無償資金協力約百八十九億円、技術協力約百億円となっております。具体例はいいですか。具体例も挙げましょうか。(松原委員「あと、韓国と中国」と呼ぶ)

 では、日本の具体例は省略いたしまして、韓国と中国でございますが、まず、韓国の対ウズベキスタンのODAについては、韓国政府のホームページによりますと、一九九二年から二〇〇七年までの累積額として約七千万ドルが計上されております。その内訳は、無償資金協力として約二千百万ドル、借款として四千九百万ドルとなっております。

 他方、中国の対ウズベキスタンのODAについては、これは、対外援助の予算が一元管理されていないという事情もありまして、また統計も整備されていないということで、明らかになっていないということでございます。

松原委員 七千万ドルということは七十億円ということですね、中身の問題もありますが。日本は韓国の約二十倍、十七、八倍のODAをしている、こういう理解でよろしいですか。もう一回確認します。

伊藤副大臣 ちょっと対象年度のずれが若干あるかと思いますが、概算的にはそういう理解になるのではないかなと承知しております。

松原委員 そして、ウズベキスタンと日本の間のこういった今回の二国間投資協定、これを見ると、韓国は一九九二年、日本は二〇〇八年。なぜこんな、ODAは韓国の二十倍弱も投下しているのに投資協定がおくれたのか。このことは極めて国益上マイナスだと思うんですが、御所見を大臣にお伺いしたい。

中曽根国務大臣 ウズベキスタンにはいわゆる朝鮮系の住民が多く住んでおると思いますし、また、ウズベキスタンが独立当初から韓国とは非常に密接な、特別な結びつきがある、そういうふうに思っておりますし、歴史的なそのような経緯もございます。

 中国につきましては、またウズベキスタンと近接もしているということに加えまして、先ほどお話ありましたように、中国側がエネルギーの資源確保に非常に積極的であった、そういうことも投資協定の締結に影響を与えたものと考えます。

 我が国は、きょうずっと委員会で御質問がありましたけれども、実際のニーズにこたえることを主眼として実際投資協定の締結等については判断、検討してきたわけで、投資の実績それから見通しなどを勘案いたしまして、かつ戦略的な優先順位、こういうものを持って締結に取り組んできたところでございます。

 ウズベキスタンにつきましては、そういう同国との関係が、我が国との関係が発展する中で、資源外交上の観点、それから、さらなる経済関係を強化したい、それが重要である、そういう認識から、この協定を結ぶということになったところでございます。

松原委員 全然答弁になっていないと思うんですよ。

 要するに、日本はこれだけのODAを拠出しているわけでありますから、ウズベキスタンに対して、ある意味では、中国、韓国よりも先んじてこういった協定をする資格を持っている国家の一つだと思うんです。ウズベキスタンもそれに対しては感謝しているはずなんですよ。

 それにもかかわらず、だから、ODAを日本がほとんどやっていない国なら別ですよ。これだけ、韓国の十七倍もやっていて、しかし韓国の方が十七年も早くこの協定を結ぶ。そして、既にウズベキスタン内におけるさまざまな事業というのは、韓国、中国がはるかに日本より先行する形で進んでいるわけであります。

 ナボイ空港の空港整備等でも韓国はかなり先駆けた形で進んでいるということも、既に情報として我々は持っているわけでありまして、なぜこれだけ、つまり、ODAというのは、日本の海外戦略、資源獲得戦略とは全く無関係にやるものだ、こういう認識を大臣は持っているということですか、大臣。

中曽根国務大臣 これは、ODAの相手の国の経済発展を支援すると同時に、我が国の企業等のまた経済的な強化、そして二国間の関係の強化がありますが、基本的には我が国の国益というものをしっかりと基本に見据えて行うものだと考えております。

松原委員 いや、これが全くそう見えないから問題なんですよ。もし、国益を考えるならば、先んずれば人を制すというのが日本語のことわざにあるけれども、先に行動するべきなんですよ。なぜこんなに遅いんだと。

 中国は、先ほど、冒頭言ったように、まさに血眼になって資源外交を展開している。日本は、大臣、たくさんの資源があるとお考えなんですか。それは答弁必要ないですよ。実際、資源がないんですよ。資源がない国が資源外交をしている中国のおくれをとって、どこで国益という言葉を言えるんですか。

 私は、中曽根大臣が大臣になる前の議論がかなりあるわけで、やはりこの間の日本の政治が、外交上、国益を極めて軽んじてきたということを、率直に言って指摘をしたいわけであります。ですから、そういった意味において、このウズベキスタンの問題も含め、またペルーの問題も含め、我々はきちっと対応しなきゃいけない。

 ペルーの、いわゆる公害対策支援、これはどういう内容か、お伺いしたいと思います。

伊藤副大臣 ペルーへの公害対策支援でございますけれども、我が国は基本的に環境保全ということと経済成長、これの両立を重視しているわけであります。したがいまして、ペルーとの間でも、投資協定やEPAの締結を進める一方、環境保全を援助の重点分野の一つとして位置づけておりまして、とりわけ大気・水質汚染対策や廃棄物処理、産業公害対策等に対する支援を進めております。

 具体的に申し上げますと、円借款による下水道整備、また鉱工業排水汚染対策等に関する研修等を実施しております。

 今後とも、ペルーに対して、こういう公害対策支援を含む環境保全に対する支援を積極的に実施していくという考えでございます。

松原委員 最後に、ブラジル、インドというのは、日本と極めて親近感のある国家であります。ブラジルは日系移民がたくさんいるし、インドは天皇陛下が日本で亡くなった場合半旗を掲げるというぐらいに日本に対する親近感を持っている国家であります。

 この二つの国との間の社会保障協定というのは、私は、いろいろと未整備な部分が先方にあるとか、なかなか平仄が合わないとかいう議論があったとしても、極めて日本にとっては国益上プラスになると思っておりますが、この進捗についてお伺いいたします。

伊藤副大臣 ブラジルについては、これまで社会保障協定の締結の可能性について検討するための前提として、両国間でそれぞれの制度を研究する、いわゆる社会保障作業部会というものを開催してまいりまして、昨年十月、第三回の作業部会において、社会保障協定締結を視野に入れた当局間の協議を開始することで一致したわけでございます。

 これを受けて、先週ですけれども、六月の八日から十二日、東京において当局間の協議が行われたところです。今後、できるだけ早く政府間の交渉が開始できるように、ブラジル側と精力的に協議を行っていく考えです。

 他方、インドについてでございますが、昨年十一月の公的年金制度の改正により、インド国民と外国人が異なる取り扱いをされるとともに、その内容や実施状況に不明確な点が多いと承知しております。他の先進国とも十分に情報交換を行い、両国間で、社会保障制度の調整をいかなる形で図っていくことが望ましいかについて、社会保障協定によって日印両国からの派遣者が社会保障による保護を十分に受けられるかどうか、こういった点も含め、適切に検討していくという考えでございます。

松原委員 以上で終わります。

河野委員長 午前中の質疑は終了いたしましたが、先ほど松原仁君から御質問のありましたカーン博士の件について、会って話した内容と、会ったことがあるかどうか、会う意欲が、あるいは意図があるかどうか、これはそれぞれ別物だと思いますので、本日の採決までに、なぜそれの答弁ができないのか納得のいく説明をしていただくか、あるいはきちんと答弁をしていただきたいと思います。これまで答弁したことがないというのは、当委員会では正当な理由にはなりません。

 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時四十八分開議

河野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、御報告いたします。

 本日の理事会において、「国連の信託基金における拠出残余金の取扱ガイドライン等」について、外務省から報告を聴取いたしましたので、委員各位の参考に供するため、お手元に資料を配付いたしております。

 この資料につきましては、本日の委員会議録に参照掲載いたします。

    ―――――――――――――

    〔資料は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河野委員長 質疑を続行いたします。篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原です。

 きょうは、条約というか協定の質問に入る前に、この前の積み残し、せっかく答弁を用意していただきましたので、悪いので、これに先に触れさせていただきたいと思います。

 例によって、この前お配りした資料をまたそのままお配りしてありますが、これを見ながらちょっと聞いていただきたいんです。

 ここに、一ページ目に各省庁の研究機関の一覧表を細かく書いてあります。左側の方、ちょっと違ったところもありますけれども、要するに何を申し上げたいかというと、日本国際問題研究所だけが民間になっていて、何でも民の方がいいという風潮が前の前の前、何代前か忘れちゃいましたけれども、内閣のときに盛んに言われましたけれども、ほかのところは大体官になっているわけですね。

 これは、行政改革のときに政策の企画立案と実施とを分けると。独立行政法人に、私はわかりませんけれども、農林水産省関係の研究所までそんなことをしたというのは絶対間違いだと思います。あんなところ、種の保存をするとかいうのを、そんなの、国がやらなかったらどこも金を出すところはないわけです。まあ、そっちはおいておきまして。それで、みんな国が政策研究はすべきだということで、ちゃんと昔からあったところはきちんと位置づけ、なかったところもどさくさに紛れて交通政策研究所なんてつくったんです。

 ところが、外務省はやはりそういうところはどんと構えておられるのか知りませんけれども、財団法人なり社団法人なり、どっちか忘れましたけれども、ともかくそういうので日本国際問題研究所のままにしておくと。

 下の方の国立社会保障・人口問題研究所なんというのは、いろいろなことを行われたんですが、格上げだったですね。民間の研究機関が統合することによって国の方になったりしているんです。

 私は、そういうことからすると、外交政策についてきちんと国が、外務省が責任を持って研究したりしていってしかるべきだと思いますけれども、このまま放置しておいたのか、これでいいと思っているのか、どちらかわかりませんけれども、ほかのところはみんな横並びで国が関与をして政策研究していこうとしているときに、外務省だけがなぜこのままでいいというふうに判断されたんでしょうか。

石井(正)政府参考人 先生御指摘の日本国際問題研究所は、二〇〇八年にはアメリカ以外のシンクタンクのトップテンにも選ばれました、日本を代表する国際問題の研究機関の一つでございまして、本邦で研究活動をするのみならず、アメリカの戦略国際問題研究所やイギリスの国際戦略問題研究所といった世界的に有力な海外の民間シンクタンクとも共催でセミナーを開催するなど、政府と離れた自由な立場から活発な研究活動を行っておられます。

 外務省は同研究所の主務官庁ではございますけれども、この研究所はあくまで独立した財団法人でございまして、外務省としてはその自主性を尊重したいというふうに考えております。

 外務省といたしましては、この国際問題研究所を含みます民間の研究機関や有識者の方々と自由に意見交換をいたしまして、双方高め合っていく、そういうことを重視しておるということでございます。

篠原委員 そういうところはあっていいんだろうと思います、そういうところは。しかし、なぜ外務省だけがそうじゃないかということですね。私は、経済一般の研究所なんて、はっきり言ってどうでもいいと思います。そこらじゅうに経済学者がごろごろしているわけです。いろいろなことを言っているわけです。国が責任を持ってやらなくたっていいんです。

 一番下を見てください、防衛研究所。人数も百三十四名で、研究職の人も八十一名。なぜでしょうか。防衛問題を民間で研究したりしているところはないです。それから、国際政治学とかあるいは政治学一般になったら、軍事問題、安全保障問題が中心なんですよ。ところが、日本は特殊な国でして、軍事とか安全保障とかいうことを大学で教えるのもはばかる。ですから、猪木正道さんとか高坂正堯さんとか、ほんのわずかしか安全保障問題をやってこなかったんですよ。そういう経緯があるんです。では、外交問題はどこでみんなやっているかというと、国立大学法学部の中に政治学科があったりして中途半端なんです。

 私は、こういう人たちとつき合いました。過去のことを言ったってしようがないんですが、内閣総合安全保障関係閣僚会議担当室という長ったらしい名前のところに一九八〇年出向させられました。だから、官邸のこの辺をうろちょろしていたんです。安全保障なんてだれもやる人がいなかったんです。

 では、一体どれだけ外交をきちんとやっている人がいるか。外交の中で、安全保障問題、北朝鮮問題とかいってプロがどれだけいるか。私は、防衛研究所と同じように国がちゃんと研究所、民間のはあっていいですよ、あっていいんですけれども、国がちゃんとやらなくちゃならない分野の一つだと思います。

 なぜかというと、もう一つ、農林水産政策研究所というのを見てください。ここは結構でかいんですよね。そして古くからあるんですよ。なぜかというと、一般の経済をやる人はごろごろしていますけれども、農業経済はマイナーですからやる人がいないし、国がやらなくちゃいけなかったんです。だから、東畑精一さんという立派な方が初代の所長で、そしていろいろ政策提言されました。だけれども、国の機関だからといってべったりじゃなくて、ちゃんと独立していたんです。東畑精一さんは吉田茂さんのときに農林水産大臣になってくれとか言われたりもしたんですよ。国だからといってべったりとかにならないわけです。

 それで、外務省には、なぜこれを申し上げるかというと、もったいない人材が幾らでもいるんです。今シーズンのこの委員会でも、私は、村田良平さん、それから孫崎さんと二人に、小倉和夫さんとか岡崎さんとかいっぱい、外交官をやりながら論文を書かれて、そして注目されて、そして非常にいいことを言っておられてという人がいるわけですよ。そういう人たちをほったらかしにしておくのは私はもったいないと思うんです。そういう人たちを一本化して、外務省の中にちゃんとした研究所を設けてもいいと思うんです。

 なぜかというと、袴田茂樹さんというロシアの研究者がおられます。私も安全保障をかじったことがあるので、それから西原さんと、ちょうど合宿みたいな形で一週間おつき合いしたことがあります、安全保障問題。それで嘆いておられました。ほかの国は、どこどこの国の専門家とかちゃんといるけれども、これは袴田さんがおっしゃっていたので私は事実かどうかわかりません、皆さんの方がわかっておられると思いますけれども、ロシアの研究者は先細りで、ほとんどいなくなってしまう、それをバックアップしたりする、支える体制がない、学者に自主的にやってくれみたいな感じで、この大学はここの地域の、国の担当だ、この大学はここだ、東アジアだ、アメリカだというふうになんかなっていないと嘆いておられました。

 私はそれは、外務省がその地域別の研究者を育成すべくちゃんとやるべきだと思います。日本国際問題研究所、二〇〇八年に立派な研究所だというふうに言われたというのは、それは知りませんでしたけれども、しかし、研究職十五名で、外にも発注しておられるのでしょうけれども、やはりだめですね。ぜひそういうことを考えていただきたいと思います。

 例えばロシア研究者、十分にいるんですか。第一人者の袴田さんは嘆いておられましたけれども、このままだとロシアのことを、危うい国のロシアをちゃんと研究する人がいなくなってしまうと言っておられるんですけれども、その点どうですか。

兼原政府参考人 外務省は研究、教育行政は所管をしておりませんので、一般論として述べさせていただきますが、ロシアはアジア太平洋地域における重要なパートナーでございます。これまでも幅広い分野において互恵的な協力を進めてまいりました。

 隣国であるロシアのこのような重要性にかんがみれば、現在、委員御指摘の袴田先生などすぐれた研究者がいらっしゃいますけれども、さらに、より多くの研究者が、ロシアとアジア太平洋地域の関係を含めて、幅広い視野から研究に取り組まれることを待望している次第でございます。

篠原委員 待望していたってだめでしょうね。お金を出したり研究費を与えてやらなかったりしたら。

 ですから、皆さんおわかりだと思いますけれども、日本というのは、本当に専門家を大事にしないところなんですよね。こんなことを言っちゃ悪いんですが、役所も、あっちの局こっちの局渡り歩く人たちだけが局長になって、長官になって、事務次官になっていく。しかし、そういう人がいてもいいんでしょうけれども、その道のプロというのも絶対必要なんじゃないかと思います。外交一般、それだけじゃだめですよね。ロシアの問題だったらこの人、ではアメリカの政治制度について、政治状況について、この人に聞くという人がいるのかどうか、私は知りませんけれども。

 アメリカだったら多分、日本の政治状況はどうか、政治はどうなっているかというのを、ジェラルド・カーチスさんという、すぐだれも思い浮かんで、その人のところにどうなっていますかと聞きに行くんだろうと思います。コロンビア大学に一つのグループがあって、そこで日本研究をして、ジャパノロジストが育っている。

 日本は一体どうなっているんだ。フランスの専門家、ドイツの専門家、イギリスの専門家、こんなことを言っては悪いんですが、文学者の延長線上でドイツの政治を、経済を、フランスの政治、経済を語っている、それが専門家になっている。そして、役人の皆さんは、あっちの大使館に行き、こっちの大使館に行き、数えてみたらフランス三回、四回勤務したという人はいないんじゃないでしょうか。プロ育成システムになっていない。私は、これではだめだと思うんですね。

 そういう点、今公務員制度改革をやっていますけれども、内輪話で恐縮ですけれども、菅さんなんか悩んでいますよ。脱官僚の時代というふうに御自分が代表のときにマニフェストを書いてやってきて、そろそろ、とらタヌですけれども、政権が近いということで、どうしたらいいんだ、官僚を本当に天下り禁止してどうやってやっていけるんだと私に深刻な顔をして聞いてこられました。

 私は、そういうときに、外務省は一番解決の道があると思います。長くおられるということ、それぞれの大使館に勤務したりして、おのずと専門領域ができているんだろうと私は思いますし、できてしかるべきだと思います。こういう人たちにせっかくの知識を生かして研究をやっていただくんです。

 それは、天下りと役人の一生を考えた場合、非常に美しいんですね、やめた後、学界、研究界で尽くせるというのは。ほかの省庁は簡単にはできないと思いますけれども、私は、外務省の皆さんは有能な方ですし、きょう申し上げた方々もおられます、ほかにもいっぱい、いろいろな大学の国際政治学だとか外交論、外交政策とかを教えておられる方はいっぱいおありになるんでしょうか。なるんじゃないですか。この辺をちょろちょろして適当にやっている役人は無理だろうと思いますけれども。しかし、そういう見識のある人はいっぱいおられるはずです。

 ですから、そういうところにインセンティブを与えるということで、例えば国の外交政策研究所に絶対一生の間に一回は行って三年間研究させる、そこで博士号とか何かを取ったり、取っていない人がいるわけですけれども、修士号を取ったりして学者になる資格を備え、そしてそういうマインドを持って外交をやっていただくというようなこと、こういうふうにしたらいいんだろうと思うんです。外務省が一番うまく対応できると思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。中曽根大臣のときにこういう大胆な改革をぜひしていただきたいと思っておるんですが。

中曽根国務大臣 最初に政府参考人の方から御説明申し上げましたけれども、この日本国際問題研究所は、CSISやIISSとともに共同的なセミナーを開催するなどされておりまして、これは大変活発な活動をやっておる、私はまずそういうふうに認識しております。そして、やはり、政府とは離れた自由な立場から活発な研究活動を行うというのも、これも大事なことではないかと思っております。

 委員がおっしゃいますように、この政策研究所を国の一つの機関として、あるいは内部機関として設置するということ、これもまた一つのあり方であるとも思いますけれども、現実問題として、非常に人的なものあるいは財政的な制約もありますし、外務省といたしましては、できるだけ民間の研究機関として活発な議論を展開するということ、そしてその成果を外交政策の企画立案に我々が活用する、そういう形でやっていくということが好ましい、そういうふうに思っているところでもございます。また、米国におきましても英国におきましても、私の知る限りでは、国の組織の中に、あるいは国務省なりの中にそのようなものを持っているということは聞いていないところであります。

 また、委員が今おっしゃいましたけれども、専門家の育成というのは、これはもう当然重要なことでありまして、外務省の中にも地域的あるいは国別の専門的な知識を有する者ももちろんおるわけでありますが、おっしゃいましたことは大変重要でもありますので、今後もまた、そういう専門家といいますか、そういうものの育成には、これは努力をしていきたいと思っております。

篠原委員 アメリカにないのは私もよくわかっています。アメリカは、リボルビングドアで、三千人の高級官僚が政権がかわると動く。それが大学に行き、研究所に行く。そして、そこで例えば八年間ずっと研究し、自分たちが政権をとったらこういうことをやろうといってためてためてためまくったものを、政権をとってそれを実行に移す。だから、政策が理路整然としていて一貫しているわけです。僕は、そういうのが外交にぜひ必要なんじゃないかと思っておるんです。

 ですから、日本国際問題研究所にけちをつけているわけじゃないんです。立派な人たち、外務事務次官の大物が理事長になってとか、それからそこそこのお役人も出向されていますよ。野上義二さんという事務次官になられた方も、何か研究に行ったわけじゃなくて管理だけに行っただけで、ろくな研究成果というのは、ろくな研究成果なんて言っちゃ悪いんですが、いろいろ書いているのは知りませんけれども。私は、若手の研究者で有能な人をそういうところへ連れていって目を開かせるということが必要なんじゃないかと思うんです。行政改革、天下り云々の先鞭をつけていただきたいんです。

 例を申し上げます。アマコスト大使。この方は、外交官、国務省の出身で駐日大使に久しぶりになられた方ですね。彼はどういう人生を歩んだかというと、コロンビア大学で日本のことをやっていた。修士号、博士号まで取って国務省に行き、日本に若いときに一度勤務しています。そして、国務省でずっと役人生活を続け、有能だったので日本大使になられました。その後どうしたか御存じでしょうか。外務省の皆さんはわかっておられますかね。スタンフォード大学のアジア太平洋研究所の研究員になられました。その後、ブルッキングス研究所の研究所長です。研究者としての、所長としてのマネジメント能力も当然、日本みたいな面倒くさいところの大使をやられたような方ですから、あるわけです。かつ、研究者を育成する。研究者になれるんです。

 私は、外務省にはこういう人がごろごろいると思うんです。ほかの省庁よりもそういうところはすぐれているんです。こんな国会答弁をごちゃごちゃ書いたりしたり、あっちに行ったりこっちに行ったりするだけですり減らすのには惜しい人材がいっぱいいるんです。ですから、そういう場所をぜひつくっていただきたい。

 財務省も、幹部によって違うんですが、財務総合政策研究所というのに名前を変えました。例がいいのか悪いのかわかりませんけれども、榊原英資さんなんかは、あそこに若いころに行ったりしていろいろ物を書いたりしてああいうふうになっていかれたんだろうと思います。そういう一つのきっかけを人事でもってつくるということが大切ですし、ぜひそういうことをしていただきたいという気がいたします。

 以上、この点はこれぐらいにいたしまして、本題に入らせていただきたいと思います。

 ちょっといろいろなことがありまして中座をしていたので、ダブらないようにと思って質問通告をしておいたんですけれども、ダブったら、恐縮でございますけれども、また答えていただきたいと思います。

 まず、投資協定の関係ですけれども、日本は、こちらのこういうのも、EPAとかいうので大事にしてきて、やろう、やろうとしてきたはずなんですけれども、ほかの国、日本と同レベルのほかの国と比べると、どうも投資協定は進んでいないような気がするんです。EPA、FTAもそうかもしれませんけれども、あれはEUでやっていたりするからしようがないんですけれども、この投資協定は何か各国別なんですね、EUの国も。ドイツが百三十五カ国と結んでいる。フランス、ドイツ、イタリアも百カ国となっています。日本が二十六カ国と少なかったのは一体なぜなんでしょうか。手を抜いていたんでしょうか。それとも、状況がそうだったんでしょうか。特別な事由があったんでしょうか。

伊藤副大臣 これまで、我が国は、十五の投資協定及び九つの投資章を有する経済連携協定の締結または署名をしております。今お話しのように、ドイツ、中国、スイス、英国、イタリア、フランスなどの他の主要国は、各国とも約百の投資協定を締結していると承知しております。

 我が国がなぜ少ないかという御下問でございますけれども、我が国の主な直接投資先であり、また、重要な経済関係を有する東アジア諸国との投資協定または投資章を有する経済連携協定の締結を優先的に進めておりまして、この地域の各国とは協定をおおむね締結、署名済み、または交渉中です。また、中韓両国、サウジアラビア、カタール、カザフスタン、コロンビアとも投資協定の交渉を行っているか、または交渉開始について一致しているところであります。

 一方で、投資促進のためには、この投資協定のみならず、経済対話やODA等を通じた投資環境の整備、租税条約、社会保障協定等、二国間の法的枠組みなど、多様な政策手段が存在しているわけであります。我が国としては、他国との比較では投資協定そのものの締結のみは低いわけですけれども、その締結のみで増加を追求するよりも、投資協定等の締結は鋭意進めると同時に、相手国ごとに異なる実際のニーズ、こういったものを踏まえながら、これらの政策手段を総合的に活用して対外投資を積極的に支援していきたいという考え方であります。

 いずれにいたしましても、委員の御指摘も踏まえて、我が国の企業の要望も踏まえながら、投資の自由化促進をこのように投資協定を含む多様な政策手段で後押ししていくことが重要と考えております。

    〔委員長退席、三原委員長代理着席〕

篠原委員 私は、絶対横並びで同じようにしなくちゃならないと言うつもりはありません、日本は日本で独自の考え方があったら、それはそれでいいんだろうと思います。

 それで、投資の関係ですけれども、私はちょっと勘違いしていました。

 きのう見ましたら、世銀なんかで、投資家保護指数、相手国が投資しやすいかどうかというのを指数化していました。それで、日本は余り高くないと思っていましたら逆で、そういう質問通告をしてしまいましたが、後で調べてみたら、ドイツなんかはいろいろな国と投資協定を結んでいるくせに、一〇ポイントで、高い方がいい国なのに、日本は七で、ドイツは五、イタリアは五・七、フランスは五・三。日本は高いということがあって、見ましたら、理屈がわかるなと思った。高い国は、ニュージーランド九・七、シンガポール九・三、香港九・〇、ほかの国からお金が、投資が来なかったらやっていけない国ですよね。そんなような国が高くて、先進国では、アメリカ、イギリスが高くて、日本が三番目で、アメリカが八・三、イギリスが八・〇で、そして日本が七・〇。そんなに低くもないと思いますけれども、これがどうなのかということ。

 もう一つ、私は投資のものと貿易のを比べてみておもしろいなと思ったんですが、貿易は、輸入制限、IQは絶対いけない、すべて関税化しろとかいって、WTOでぎちぎちやっている。それに対して、投資については、留保条件、これがだめであれがだめだというのを各国が勝手にやっていい。それで二国間協定ばかりでやっているんです。

 順序が通告と逆になりますけれども、日本は投資協定を結んだときに留保をいっぱいしていると思うんですが、どういう観点からどのような留保をしているんでしょうか。

平松政府参考人 お答えいたします。

 先生御承知のように、投資協定の中に、当然、その中の大きな柱として、いわゆる許可段階における内国民待遇の供与とか、あるいは広範な特定措置の履行要求の禁止を規定しております。

 一般論として申し上げれば、例えば外為法で、武器、航空機、あるいは原子力、宇宙開発等の分野の投資について、外国投資家に対して事前の届け出義務を課している等、国内法において種々の制限を課している分野がございます。そういったものにつきましては、国内法との整合性を保つために留保を行うということが極めて一般的に行われているということでございます。

 それから、もしよろしければ、今、投資家保護指数のことをおっしゃったので、あわせて答弁してもよろしいですか。

 投資家保護指数というのは、これはむしろ各国におけるそれぞれの国内の問題として、少数株主の保護の程度を示す指数でございます。基本的には国内における投資に関する問題であるというふうに承知しております。

 確かに、先生おっしゃったとおり、我が国の指数は十点満点中七点ということで、これは高いか低いか評価が分かれるところかもしれませんけれども、あくまで国内の投資家の保護がどれだけ行われているかということについての指標でございますので、必ずしも国際的な投資の流れをどういうふうにしているかということとはちょっと離れた議論になろうかと思います。その点だけ申し上げておきます。

篠原委員 それぞれの事情をみんな認めていっていいんじゃないかと私は思います。

 それで、見てみましたら、ペルーは、現状維持義務のかかる留保とかからない留保と二つに分かれているそうですけれども、留保条件がついている、この分野は投資したってだめだよ、これ以上は投資させないよというのがあって、航空輸送とか海上輸送とか、ほかにセキュリティーとか漁業とか、何個かあるんです。そして、それをペルーは三十二カ国とみんなやっているそうですが、頑と聞かずに、すべての国に自分の国の主張を通して、同じような投資協定を結んでいるというふうに聞きましたけれども、ペルーはどういう考えでこういうものを例外にしているんでしょうか。

伊藤副大臣 御指摘のとおり、日・ペルー投資協定では、ペルーは附属書において、航空輸送と海上輸送の分野について内国民待遇や最恵国待遇等の投資の自由化に関する約束に対する留保を行っております。ただし、この留保は、ペルーが現在とっている措置とは、協定上の義務との適合性の水準を低下させてはならないといういわゆる現状維持義務が課せられるものであります。

 これは、両分野においてペルーが自国民または自国の法人以外の者の参入を制限する国内法上の措置をとっていることを反映したものでございますが、両分野がペルーのといいますか、国家の基幹産業にかかわるものであるということを踏まえれば、完全な自由化が困難であることもある程度理解できるところでございます。実際、我が国も同じ附属書において、航空運輸業や水運業等の分野において国籍等に基づく参入制限等の措置をとっていることを反映した留保を行っております。

 また、ペルーは、第三国との間で締結している投資協定、FTAでも、御指摘のように同様の留保を行っており、我が国の投資家のみが特段不利な扱いを受けるというものではないと承知しております。

篠原委員 それでは、さっきちょっと触れましたけれども、不思議だなと思うのは、貿易については何でも自由化、自由化で、WTOで、国際機関で全部ルールを決めている。WTOでも、ウルグアイ・ラウンドのときに、海外直接投資というのとサービス貿易と知的財産権の分野は新分野ということで、ああでもないこうでもないといって、それなりのルールをまとめたわけです。

 ところが、投資協定については、二国間で結んで、二千六百だ七百だと言っている。不思議な気がするんですが、私なんかの素人の考えからすれば、貿易のルールはそういうふうにWTOで一本化して、二国間でみんながたがた全然違うのをやるなんというのは手間もかかるし面倒くさいと思うんです。

 投資協定、投資についての世界的な統一ルールをつくろうという動きというのはあるんですか、ないんですか。ないんだとしたら、なぜないんでしょうか。

伊藤副大臣 現在、世界には投資協定や投資章を含む自由貿易協定等が多数存在し、これらの協定の間の整合性について、委員のように問題点を指摘する方も、国もありまして、こともできると考えます。二国間の協定により、各国の事情に応じた機動的な対処が可能という面も他方あるわけでございます。

 こういう中において、例えば、OECDの投資委員会やUNCTADにおいて、こうした投資に関するさまざまな協定における規定の解釈、分析の作業も現在進められております。一九九〇年代後半にはOECDにおいて、また、WTOドーハ・ラウンドの交渉の初期段階において、多国間の投資ルールを策定しようという試みも行われました。しかし、当時は各国の意見が一致せず、実現しなかったという運びであります。

 現時点では世界的な統一ルールをつくるという動きが具体化しているという状況にはございませんが、OECD等の場において、改めて、多数国間の枠組みが必要となる条件について議論していくことも検討課題になるというふうに考えております。

篠原委員 それだったら、日本は二番手ランナーで、何周もおくれていて、百カ国以上と投資協定を結んでいる国をまた後追いで各国と外務省の皆さんが交渉しては協定を結んでいくというのは大変だろうと思いますし、この際、国際的なルールをつくっていく、そういうことを言っていく、何か提案していく国になってやっていかれたらいいんじゃないかという気がしますので、考えておいてください。

 それから、全然違う話になりますけれども、また資料をちょっと見てください。資料の二ページ目。いつもこんなことばかりして済みませんけれども、ペルー大使の経歴、この人たちをだめだとか云々じゃないですから、見ていただきたいんです。

 私は、その国の大使というのは、アメリカみたいに尊大な国は英語が共通語だからといって英語しかしゃべらない大使が来てもいいですけれども、イギリスはずっと日本に日本語がぺらぺらの大使が来ておられますね。私は、中南米諸国にも、やはりスペイン語でちゃんと語りかけられる大使がどこの国の大使にもなっていってほしいと思うんですが、どうもそうなっていないんですね。

 私は、この前の委員会で、中国語要員が、中国語の研修を受ける人が二人だけだ、もうこれだけ中国が大事になってきているのに、何でまたそんなことをしているんですかというので、米中比較という表を、きょうは持ってきませんでしたけれども、アメリカに留学する人が十人、イギリスが四人、中国が二人。そうしたら、スペイン語は一体何人なのかと。

 もともとスペイン語は、ポルトガル語のブラジルを除けば、中南米はみんなスペイン語ですね。今、多分外務省はロシア語の人が足りなくて困っていると思うんです。中央アジアの国がロシア語でみんな次々国になりましたから、それはしようがないんですね。だけれども、スペイン語は昔からあるんですよ。何でスペイン語の人をふやせないのか。おかしいなと思うんですよ。

 今、スペイン語の研修、1種の人で一体年何人、スペイン語研修をされているのか。そして、これをもっとふやすべきじゃないかと思いますけれども、この点についていかがでしょうか。

    〔三原委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤副大臣 現在、スペイン語を研修している職員は合計百八十八名おりまして、これは英語で申しますと七百五十三名、フランス語三百四名に次ぐので、決して少ないわけではないというふうに考えております。

 それから、新入省員のうち、今御質問があった1種の職員、昨年、以前の五年間を通じて二名であったところを、平成二十一年度から一名をふやして三名としております。また、専門職員は、過去六年間を通じて三名をもう維持しているところでございます。

 外務省といたしましては、引き続き、御指摘のあったスペイン語の重要性というのをよく踏まえつつ、スペイン語を解する職員の確保、育成に努めていくという考えでございます。

篠原委員 これも一度、林官房長のときに質問させていただきましたけれども、本当にどうしてこういう改革はしないのかなと思うんです。もっと簡単にふやせると思うんですよ。

 どういうことかというと、アメリカ、イギリスが十四人で二年だと。フランス、ドイツ、スペインとかこういう言語は、もう二人か三人と、うんと少ない。これはスペイン語だけで、あと英語の研修はしていないんです。大臣、これは御存じかどうか。後で聞いてみてくださいね。

 スペイン語だけやって、フランス語だけやって、ドイツ語だけやって、あと英語の研修を受けていないんですよ、そういう人たちは。韓国とかアラビア語とかいうと、もう一年英語があるんです。私はそれは英語もやってと。逆に、英語だけをやった人はもっとマイナーな言語をやって、けちなことを言わずに三年語学研修を受けさせるようにして、英語圏の人は一年マイナーな言語をやる、スペイン語、フランス語、ドイツ語をやった人は、二年間フランス語、スペイン語、ドイツ語をやって、一年は英語をやるというふうにしてやれば、もっともっと二カ国語ぐらい話せて当然だというふうになったりするような気がするんですけれども、済みません、この点については平松参考人に、個人的な経験も踏まえてこのアイデアについてどういうふうに思われるか、お答えいただきたいと思います。

平松政府参考人 ありがとうございます。こういう機会をいただいて感謝いたします。

 私の場合はスペイン語の研修でございまして、その当時から二年間の研修ということでございました。確かに、外交官にとって英語というのは基本なので、英語の勉強の機会があった方がいいなとは思いますけれども、他方、スペイン語の勉強をしつつ、あるいはその後の勤務等で、私としては十分仕事で使えるだけの英語力は確保できたというふうに思っておりますので、もちろん先生おっしゃるようなことがあればいいなとは思いますけれども、そうでなくても本人の努力で十分二つや三つの言葉はできると私は思います。

篠原委員 幹部になる人はさすがに答弁も立派で。ですが、かわいそうですよ、やはり英語をちゃんと研修する機会がないというのは。一年みんな研修をさせていただくと、そうすると、英語をやった人にスペイン語も一年やれとかいうふうになって、スペイン語ができる人がいたりしてというふうになっていくんです。それは簡単なことだと僕は思うんです。どうしてこういう改革ができないのかと不思議なんですけれども、ぜひそういうことをやっていただきたいと思います。

 それで、また投資の方に戻ります。これは大臣にお答えいただきたいと思います。

 グローバライゼーションというのを、そういうことばかり言ってきました。これは、小泉、竹中、ホリエモン路線がこういうふうにやってきて、その竹中さんというのは、さっき言いました財務総合政策研究所の研究員だったようです。ああいう人もできちゃうので、いろいろ問題ですけれども。投資を拡大していくというのを何でもいいことだ、外国の貿易量が拡大するのはいいことだというのは、私はこれはちょっと立ちどまって考える必要があると思うんです。

 よく聞いていただきたいんですけれども、では、投資が必要だ、工場が必要だ、仕事が必要だと思っているのは、一体、発展途上国なりそういう国だけでしょうか。日本の田舎が疲弊し切っているんですよ。日本の田舎の工場が、人件費が高いからといってつぶれて、そして中国に、東南アジアに、今度はペルーに、あるいはウズベキスタンにと、そういうふうに行ってしまうんですよ。私は、これはちょっと考え物だと思います。

 それは、あちらの方で雇用を拡大するのはそれでいいと思います。例えばペルー、今六万人の在日ペルー人がいるそうです。数字を聞いてみてびっくりしましたけれども。日系ペルー人が九万人だそうです。日本の六万人というのは家族も含んでいるだろうと思いますけれども、物すごい数ですね。日本に出稼ぎに来ているんですよ。そういうことを考えたら、ペルーのためには、ペルーで日本が投資して、日系人を優先的に採用するとかいうわけにはいかないでしょうけれども、日本になど出稼ぎに来なくてもいいような国にしてあげる、仕事をつくってあげる、私はこれは絶対必要だと思います。しかし、その前に今やることがあるんじゃないかと思います。

 例で申し上げます。アソウ木材とナカソネ木材、こういう会社があったとします。アソウ木材は、もう日本の山の木なんか切っていられない、量も少ない、品質もばらつきがある、だからカナダに投資し、インドネシアに投資し、あるいはロシアに投資し、そこで木をどんどん輸入してツーバイフォーで家をつくればいいじゃないかというふうにして、そして優良企業になっているとします。

 ナカソネ木材は、やはりそうはいかない、群馬県の山の中の木はどうなるんだ、中山間地が疲弊している、疲弊している原因は、農業にもともと向いておらず、昔は山の木がそれなりに売れていた、ところが二束三文で、売れなくなった、これを何とかしなくちゃいけない、銀行は金を貸してくれない、あちこち金策に走り回って一生懸命やっている。

 これを国民に訴えたときに、ではアソウ木材とナカソネ木材と、一体どっちをバックアップすべきだという答えが返ってくるんでしょうか。中曽根大臣自身、どういうふうにお考えになりますでしょうか。

中曽根国務大臣 実はうちの実家は材木屋でございまして、おじいさんのときから僕も製材工場で遊んだりして育ったこともありますが、それはそれといたしまして、今、日本の経済がこういう状況ですから、これはもう委員ももちろん御承知のとおりで、今経済危機対策ということで国内経済の活性化に政府としては全力で取り組んでいるところでございますけれども、海外投資という面におきましては、これは、進出日系企業のそういう活動が活発になる、また我々としてもそういうものを支援しなければなりませんが、そういう海外に進出した日本の企業が活発な活動をするということによりまして、またその国も発展し、そして世界的な投資というものが大きく膨らんでくるということによって、今度は我が国の方の経済の活性化にも資する、持ちつ持たれつではないかな、私はそういうふうに思っておるわけであります。

 その意味では、ちょうどロンドン・サミットでもいろいろ議論がありましたけれども、こういう国際投資というものの重要性というものも話し合われまして、そこで国内政策措置が貿易・投資に与えるいかなる悪影響も最小化するというコミット、これをしたところでございます。

 したがいまして、我が国といたしましても、引き続いて国際投資の拡大にやはり積極的に取り組んでいきたい、そういうふうに思っています。

篠原委員 それはわかるんですけれども、分けて考えていただければ簡単なんです。日本にない鉱物資源や何かについては投資していけばいいんです。それを、日本にある山の木を全く手をつけずに、外材でつくった方が安くできる、こういうのを放置しておいて、外国に投資して、外国に頼っていくというのは問題ではないでしょうかということを私は申し上げているんです。

 ぜひこういうことを考えて、ペルーは、物によって、自由に外国企業がどんどん入ってきてもいいですよというのもあれば、そうじゃないのもある。日本の場合も、僕はこんなことまでそんなふうにする必要はないと思いますけれども、この隣の隣の隣の人なんかは違うかもしれませんけれども、何か航空会社、空港のビルディングに投資するのをけしからぬとか言って、何を言っているかというんです。皆さん覚えておられると思います。そんなことにきりきりする必要はないと思います。国家の本当の存立にかかわるようなもの、鉱業権、土の下をほじくり返すとかいうのは留保がついているはずです。そういったものとえり分けていったらいいんじゃないかと思います。

 それから、投資協定で、技術移転要求、現地調達要求はないようにするんだというふうに書いてあって、これが手柄のように当たり前のように書いてある。僕は、これも間違っていると思います。それは五年、十年はいいと思います。日本が投資して、それででかい会社になっていく、現地の従業員を雇って。しかし、そちらで仕事があるということで、ペルーならペルーに一定の利益はもたらしていくんでしょうが、いつまでたってもペルー化しないと、これは問題だと思います。逆だと思います。これはゆがんだ投資協定だと思います。十年たったら技術を移転すべきだ、そしてその国が自立していけるようにというふうにするのが美しい投資協定だと私は思います。

 そういう自立的発展を、もしこのグローバル化でその国のためにもなるんだとしたら、そういうふうにすべきだと思いますが、そういうことなんか議論をされたりしたことがあるんでしょうか。しかし、ないんだろうと思います。なかったら、もっと大局的な見地に立って、それは先行者利得で、何年に区切るかは知りません、いつまでたっても、あんたら働く人、お金は日本に吸い上げていく、これではよくないんじゃないかと思いますが、この点についてのお考えは、大臣、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 我が国が近年締結をし、または署名をした投資の協定、そしてEPA、経済連携協定、これの投資章におきましては、今委員からお話ありますように、投資家及び投資財産の保護に加えまして、投資を阻害する効果のある特定のそういう措置をとるよう求めることを原則禁止する規定を盛り込んでいるところでございますが、これらの措置の中でも、現地調達要求につきましては、投資阻害効果があるものとして広く認識をされているところでありますし、また、投資の許可に際しまして投資受け入れ国への技術移転を条件づけるということにつきましても、投資阻害効果があるもの、そういうふうに考えているところでございます。

 投資は、投資を受け入れる、そういう発展途上国の持続的な成長にとって大変有益のものであるわけですが、より高いレベルの約束を含む投資協定の締結を通じまして良好な投資環境を整備するということ、これは、我が国からの投資の増大、そしてかつ経済分野での交流の促進につながるわけで、その国の経済発展に長期的にはより貢献するものと考えております。

 十年たったらそういうものを、技術移転の例えばそういう条件、こういうものも解除するようなと、そういうお話もありまして、私自身もプラント輸出などをやっておりまして、過去にはそのような契約も行ったことがありますが、これは双方でそのようなニーズといいますか、そういうものが一致してくれば、将来的にはそういうような形というものも考えられるんではないかと思います。

篠原委員 ぜひ、情け心を出してリードしていくという形で違ったことをやっていってもいいんではないかという気が私はします。

 それから、まことに済みません。資料をあと二枚つけてありますが、時間になりましたのでこの辺でやめさせていただきます。ちょっとだけ解説しておきますと、これは来週か今週金曜日かわからない、どっちかで最後の質問になりますので、ちょっと一言申し上げたいことがありまして、ただ、完璧じゃないもので、後で……

河野委員長 篠原君、質疑の時間が終わっております。

篠原委員 わかりました。この次にさせていただきます。

 以上で質問を終わらせていただきます。

河野委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 本日の案件である日本・ウズベキスタン、日本・ペルーの両投資協定、日本・スペイン、日本・イタリアの両社会保障協定の四本の条約については、いずれも賛成であります。

 まず、投資協定についてやりますが、今日、二国間の経済拡大を推進するための枠組みとして国際的に大きく広がっており、また、途上国の側も、全体として地位向上が図られて、自国の経済発展のために投資協定を積極的に望んできているという現実があると思います。

 そこで、まず中曽根大臣、今回の投資協定の相手国であるペルーとウズベキスタンですが、いずれもいわゆる資源産出国であります。外務省の「二国間投資協定の戦略的活用について」と昨年六月に出されたものを見ますと、「当面は中東、アフリカ、中南米、中央アジア等の資源産出国や地域の拠点国への我が国企業の投資について、保護及び自由化をBIT、その他の手段を組み合わせて、積極的に支援していくことが必要」となると指摘をしております。こういう中で、今日、ペルーやウズベキスタンのような資源産出国との協定を締結することについて、大臣はどう位置づけて、意義があるというふうに認識されているでしょうか。伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 ペルーは、鉱物・エネルギー資源が非常に豊富なわけでありますが、そういう意味で、我が国投資家の一層の進出が見込まれておるところでございますが、そのペルーの資源には、アメリカやカナダや、またEUや中国、さらに韓国など各国も高い関心を有しておりまして、ペルーとの間で法的枠組み構築を推進しながら大型の投資を実施していると承知しております。我が国といたしましても、他国に劣後することなく、必要な資源を確保する、そういう観点から、ペルーとの速やかな投資協定の締結、これが必要となっているところでございます。

 また、ウズベキスタンは、中央アジア地域最大の人口を有しております経済活動の中心地国としても重要でありまして、我が国企業の進出意欲がこれまた高い国でございます。さらに、御承知のとおりウランなどの鉱物資源が豊富でありまして、これは資源外交上、我が国にとってもまた重要な国であります。

 そういう両国との投資の協定というのは、投資の自由化、それから投資家の権利の保護、また投資環境整備のための法的枠組みを提供する、そういうことによりまして、投資に当たっての予見可能性や、それから法的な安定性を高めることになるわけでありまして、資源分野を初めとするこれらの国々への投資が一層促進されるということが期待されてくるところでございます。

笠井委員 二〇〇七年の九月に国連総会で、先住民族の権利に関する国際連合宣言というのが採択をされて、我が国も賛成をしております。また、ペルーも賛成国であります。この宣言の焦点の一つは、自決権及び土地、資源に対する先住民族の権利を定めた条項でありまして、さらに、先住民族の領域での資源開発に関して、自由でかつ情報に基づく事前の合意が必須条件という規定があります。

 近年、ペルーでは、アマゾン熱帯雨林での採鉱、石油採掘、森林伐採などの規制緩和をめぐって先住民と政府の間で大規模な衝突が発生をして、北部のバグアでは先住民と治安部隊との衝突で多数の犠牲者が出ている。OAS、米州機構は、去る六月八日に相互に対して過剰な武力行使を回避するように声明を出して、十日にはペルー議会がアマゾン開発規制緩和に関する法律を凍結したとも伝えられております。

 そこで伺いますが、我が国は、この国連の宣言を踏まえてどう対応しているのか。協定に基づいて投資活動を促進していくに当たっても、当然先住民族の権利を保障していくことが必要だと思うんですが、その辺についての政府の見解を伺いたいと思います。いかがでしょうか。

伊藤副大臣 二〇〇七年九月に国連総会において採択された先住民族の権利に関する国際連合宣言は、先住民族が集団または個人として有する権利及び自由について述べるとともに、それらを確保するための各国がとるべき措置等が記されているわけでございます。

 そこで、今回の日・ペルー投資協定では、ペルーは、附属書2において、先住民族等への権利の付与等に関する留保を行っております。投資協定と本件国連宣言は直接関連づけられるものではありませんが、ペルー政府が先住民に関連して投資を制限する措置をとることは協定上許容されており、我が国からの投資はそのような措置の範囲内で行われるということになります。

笠井委員 今日、世界でも有数の鉱物資源輸入国である我が国を含めて世界の各国が、中央アジアや中南米、アフリカなどの資源産出国の各種の資源獲得に向けて今猛烈に働きかけて、資源獲得、権益を競っている状況があります。

 ペルーは、参入してきたアメリカなど外国資本が乱暴に鉱山開発を積み重ねてきた、そういう典型的な国の一つであります。鉱山争議が各地で拡大をし、大気汚染、水質汚染、酸性水、廃滓ダムからの排出汚染など、深刻な環境汚染問題がかかわっております。日本企業も、三井金属鉱業、三井物産によるワンサラ鉱山やパルカ鉱山、三菱商事によるアンタミナ鉱山、住友金属鉱山によるセロ・ベルデ銅鉱山への資本参加など、決してこういう問題と無縁とは言えないと思います。過去にはワンサラ鉱山からの廃水が周辺河川に流されているなどの実態が現地で問題になったこともありました。

 そこで伺いますが、政府は、今回ペルーと投資協定を締結するに当たって、いわゆる鉱害問題について、ペルー政府との間で現況について、あるいは改善、是正の問題について、どのような協議を行ったのかどうか、今後どのような協議や取り組みをしていくのかどうか、お答えをいただきたいと思います。

平松政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、ペルーにおける鉱害問題は非常に深刻なものがございます。二〇〇八年三月に、そういうこともございまして、ペルーとの間で、両国の首脳間で署名した環境・気候変動問題に関する協力の一層の強化に関する共同宣言というものがございます。それを踏まえまして、鉱害対策を含む環境分野での協力を積極的に進めてきておるわけでございます。当然、今回の投資協定の過程でもこういった話は随分いたしました。

 具体的な協力といたしましては、ペルーにおける森林保全とか、あるいは廃棄物処理にかかわる協力のほか、廃鉱の汚染防止対策に関する制度強化の支援、これは技術協力でございますけれども、行っております。

 また、昨年新たに設置されたペルー環境省というのがございまして、その能力強化のために政策アドバイザーを派遣するということも決めました。さらに、先月には、我が国の招待によりまして、ペルーから環境大臣が訪日いたしまして、その際にも鉱害の問題、気候変動、生物多様性、森林保全等さまざまな問題につきまして我が国関係者と協議を行ったということでございまして、日・ペルー間で環境分野の協力はここ数年非常に進んでいるというふうに言えると思います。

笠井委員 日本とペルーの投資協定では、我が国の二国間投資協定では初めてと承知しておりますけれども、合同委員会の下部組織として投資環境改善小委員会を設置するとして、いわば今回の協定の目玉の一つというふうにされております。両国間の投資環境の改善が目的だというふうに私も理解をしておりますが、そういう中で、例えば、先方が持ち出せば、今答弁もありました鉱害問題の改善、是正の上でも、この小委員会というのは機能し得るのではないかというふうにも思います。

 そこで伺いますが、この小委員会の運営あるいは議題、情報交換や討議の内容、その結果などが、せっかくつくったんですから、広く公開されるなり、透明性が確保されるということが必要じゃないかと思うんですが、この点についてはどのように考えているでしょうか。

平松政府参考人 委員御指摘のとおり、投資環境改善小委員会というのは今回初めてつくられたものでございまして、今回の投資協定における非常に重要なパートだというふうに思っております。

 これは、投資の保護、自由化の促進という目的を効果的に達成するために、協定に関する、これは投資の環境分野でございますけれども、に関する事項について情報を交換し、討議するという役割を担っているわけでございます。当然、その中では、今委員の御指摘のとおり、鉱害の問題等についても議論をしていく場になると思います。

 そもそもこの委員会は、政府のみならず、民間関係者も当然入りますので、そういう意味で、官民挙げて透明性のある形で議論が行われるということは間違いないと思いますし、その結果につきましてもできるだけ多くの人に知ってもらえるような工夫が必要だというふうに認識しております。

笠井委員 次の問題ですが、若干質疑の項目、順序を変えますけれども、先ほどありました北朝鮮問題について幾つか聞きたいと思います。

 国連の安全保障理事会は、去る六月十三日に、北朝鮮による核実験の強行に対して、非軍事的、外交的対応を明確にした制裁決議を全会一致で採択いたしました。国際社会一致して北朝鮮に対して強いメッセージを送るとともに、道理ある冷静な対応をとったというのは、私、重要だというふうに評価したいと思います。

 そこで、今回の決議に対する外務大臣の所見をまず伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 去る十三日に、全会一致で国連安保理決議の一八七四号が採択されたわけでありますが、これは、二〇〇六年の、前回の核実験を受けて採択をされました決議一七一八号で定められました北朝鮮に対する制裁措置の強化に加えまして、武器の禁輸や、また貨物検査、そして金融面での措置などにおいて大変強い内容が盛り込まれております。これによりまして、北朝鮮に対しまして、挑発行為はみずからに不利益をもたらすだけであるということをしっかりと示す強い決議になったのではないか、そういうふうに考えています。

 我が国は、他の国々と連携をしながら、この決議を実効あらしめるよう適切な対応を早急に行う考えでございまして、また、北朝鮮に対しましても、国際社会の断固たるメッセージを真剣に受けとめて、これ以上の挑発行為を行うことなく、この安保理の決議を誠実に、また完全に実施をして、そして、拉致や核やミサイルといった、こういう諸懸案の包括的な解決に向けた具体的な行動をとるように強く求めているところでございます。

笠井委員 北朝鮮の今回の核実験というのは、国連安保理決議一七一八に対する明確な違反であって、私たちも、国際社会の対応としては、一定の制裁強化は必要となると思います。北朝鮮が、今回の決議に示された国際社会の総意を厳粛に受けとめて、六カ国協議に即時無条件で復帰をして、核開発、ミサイル開発を放棄するように強く求めたいと思います。

 そこで、この決議に対して北朝鮮はどう対応しているか、私もいろいろと調べたり見てみたりしましたが、ウラン濃縮活動の再開、それから新たに抽出したプルトニウムの全量兵器化、さらには封鎖時の軍事的対応などを発表しましたが、このような行為は核兵器開発を一層促進する軍事的挑発に大きく足を踏み出すことになる、絶対に許されないものだと思います。この点についての大臣の認識を伺いたいと思いますが、いかがですか。

中曽根国務大臣 今委員がお話しになられましたように、六月十三日の安保理の決議一八七四号に対しまして、北朝鮮は、同日六月十三日、外務省声明を発出いたしまして、お話ありましたように、核放棄など絶対にあり得ないものになった、また、プルトニウムの兵器化やウラン濃縮作業に取り組んでいく旨を表明しているわけでございます。

 我が国を含みます国際社会の声というのは決議一八七四号に明記されているとおりでございまして、これは全会一致で採択されたものでございます。北朝鮮に対して、すべての核兵器それから既存の核計画の放棄を改めて義務づけていると同時に、すべての核関連活動の即時停止を求めているものでございます。

 政府といたしましては、北朝鮮がこうした国際社会の声に耳を傾けて、安保理決議の義務を履行することが北朝鮮自身の利益になると考えておりまして、北朝鮮がこういう強硬路線を維持し、さらなる孤立を招くことがないように、諸問題の解決に向けて具体的な行動をとることを求めたい、そういうふうに思います。

笠井委員 北朝鮮の軍事的な挑発、暴発を抑えるためには、我が党も一貫して主張してまいりましたが、やはり国際社会が一致して事に当たることだと思います。

 そこで、今回の決議を見ますと、大事な点だと思いますのは、国連憲章第七章のもとに行動し、その第四十一条に基づいて措置をとるということを明記したことではないかと思うんです。

 そこで確認なんですが、この間、国連安保理ではこの問題をめぐっていろいろ議論があった、そして一定時間がかかったということも言われてまいりましたが、この北朝鮮の挑発行為に対して、国連憲章で言う第四十一条、つまり非軍事的、外交的措置という枠内で対応するということを改めて今回の決議では一致して確認し、決定したということで、それはよろしいんですね。

中曽根国務大臣 国連安保理が、国連憲章第七章のもとに行動して、国連憲章第四十一条に基づく措置をとることを今回の決議では述べているところでございます。これを受けまして、この決議では、本文におきまして、決議第一七一八号で定められました措置に加えて、もう御承知のとおりでございますが、武器禁輸や貨物検査、また金融面での措置など、強い内容が含まれることになりました。

 先ほど申し上げましたけれども、国際社会が協力をして、北朝鮮に対しまして、挑発行為というのはみずからに不利益をもたらすだけであるということをしっかりと示して、そして北朝鮮に行動を改めさせるということが一番大事ではないか、そういうふうに考えているところでございます。

笠井委員 私が確認したいのは、新たな内容が一七一八に加えて加えられたということでありました、武器の問題あるいは貨物検査の問題、さらには金融面ということですが、それも含めましてこの決議全体の性格なんですが、ここはいろいろ議論があった結果だということなんですけれども、この決議の前文の最後のところにありますが、今大臣も言われました、第七章に基づいて行動し、四十一条に基づいて措置をとるという、つまり、そこは非軍事的、外交的措置として全体がくくられている、そういうことなんですねということをちょっと確認なんですが。

中曽根国務大臣 はい。今委員からお話がありましたけれども、国連憲章第七章のもとに行動し、国連憲章第四十一条に基づく措置をとるということを述べているものでございます。

笠井委員 そうすると、そういう措置をとるということについて、そういう結果になった意義や重要性について大臣はどういうふうにお考えでしょうか。

中曽根国務大臣 今、このような措置をとるということを述べたということによりまして、安保理の、大変、北朝鮮に対する、核実験などの行為に対する強い決意というものを示したものと考えております。

笠井委員 強い決意とおっしゃいました。まさに今回の制裁措置というのは、非軍事的なものに限定する立場に立って、外交努力を通じて北朝鮮に核兵器の放棄を迫るということが、あるいはもう実験をしないということを迫っていくということが今回の決議に示された国際社会の総意であって、関係各国はそのために力を、努力を尽くすべきだということだと思います。決議に賛成した日本は、この立場で積極的に事に当たることが大事だというふうに私は申し上げたいと思います。

 そこで、これも改めての確認になりますが、今回の決議では、すべての加盟国に対して、決議一七一八に基づく義務の履行ということをたしか第七項で要請をし、その上に、大臣も今累次言われました、さらに幾つかの新たな措置を決めているということで成っていると思います。

 ということは、つまり、決議一七一八に基づく義務を、すべての加盟国が決めたことはきちっと履行すること自体がまずもって重要な措置だ、それに加えてということでありますが、まず一七一八に決めたことをちゃんとやろうよということはもちろん改めてここで確認したということでよろしいのかどうか。

石井(正)政府参考人 委員おっしゃいますとおり、まず、新たな措置に言及する前に、一七一八の実施を求めているということでございます。

笠井委員 そうすると、それをしっかりやった上に新たな措置ということであります。

 そこで大臣に伺いますが、今回の決議は、国際社会が一致して、今あったような、国連憲章四十一条に基づく非軍事的、外交的措置を通じて迫っていくというものになっておりますが、そういうときに、この決議の中で例えば貨物検査という項目があることを根拠にしながら、相手が核実験という許しがたい軍事的な対応をとったことに対してこちらの側も軍事的な対応をもってこたえていくとすれば、どういうことになるか。軍事対軍事のエスカレーションになって、国際社会の一致した努力に反して、事態をむしろ逆に危険な方向に導くことになってしまうのじゃないかというふうに思うんですが、そこのところの考え方について、大臣、どういうふうにお考えでしょうか。

中曽根国務大臣 この決議一八七四は別に軍事的な措置というものだけを規定したものではございませんし、この中におきましては、例えば主文三十一では、対話を通じた平和的、包括的な問題の解決についての言及もあるわけでございます。また、北朝鮮に対しまして主文三十の方では六者会合の言及もあるわけでございまして、そういう意味では、引き続いて対話と圧力のバランスに意を用いながら北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決を目指す、そういうものであろうかと思います。

 我が国としても、そのような方向で最大限の外交努力を行っていきたいと思っております。

笠井委員 ちょっと今の確認なんですが、この一八七四は決して軍事的措置だけを決めたわけではなくてとおっしゃったんですが、それは違いますよね。非軍事が全体ですから、軍事的なのは入っていませんよね。そこをちょっともう一回言っていただかないと、残っちゃいますので。

中曽根国務大臣 失礼いたしました。非軍事的な措置を定めたということでございます。

笠井委員 そうしますと、今の問題、この北朝鮮に対してのことですが、当然、大臣の認識としては、軍事に対して軍事ということで対応してエスカレーションというのはよくない、悪化させる、そういうことは決して望んでいないということはよろしいですね。

中曽根国務大臣 北朝鮮は、あのような、再三の自制を求めたにもかかわらず、核実験を再度行いましたし、過日は長距離弾道ミサイルも発射したわけでありまして、そういう意味では、北朝鮮に対しましては、先ほど申し上げましたけれども、圧力というものも必要でありますし、国際社会が一致してこういう強い決議を出すことによって、北朝鮮のこのような行為に対する非難を行い、また決議違反である、そして北朝鮮がみずから解決に向けて取り組むということを要請しているものでございます。

笠井委員 対話と圧力で、圧力一般ということではなくて、要するに、軍事ということで向こうがけしからぬ対応をしていることに対してこちらが軍事で対応するということになるとエスカレーションになって、それはまずい、そういうことは間違いないですね、そこは。

中曽根国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、この決議は別に軍事のことということでやっているものではございませんので、対話、圧力、両方でもって北朝鮮に対する決議を行ったということでございます。

笠井委員 ただ、この決議にある貨物検査などを根拠にしながら、では軍事の方向で出ていこうというようなことになって、相手が軍事的対応をするのにこっちも軍事で対応するという構図がさらにエスカレートすることになるということは、よくないし、あってはならないことだというのは、よろしいですね。

中曽根国務大臣 今、貨物検査のお話が出ましたけれども、貨物検査につきましては、我が国の場合につきましては、現在検討中ということでございます。

笠井委員 ですから、北朝鮮が軍事で対応するということで、核実験もやり、こういう形で挑発もやっていることに対して、日本を含めて国際社会の側が軍事で対応するということになると、これは好ましくないし、まずいし、さらに事態を悪化させることになりますね、そういうことを伺っているんです。

中曽根国務大臣 軍事で対応するというものではございません。国連の決議に基づいて検査なりを行うということでありますし、それにつきましては、今我が国としては検討中ということでございます。

笠井委員 国連決議ということに基づいて軍事の対応というのは、これは非軍事の決議ですから、できないということでよろしいですね。

中曽根国務大臣 そのとおりでございます。

笠井委員 北朝鮮が軍事的な挑発をしようとしているときに、貨物検査においても自衛隊を動員して軍事的な対応に踏み出す、ましてや敵地攻撃論などは、軍事対軍事で緊張を一層激化させるもので、とってはならないことだと私は思います。暴挙をやっている北朝鮮だから、こちらの側が道理をもって結束し事に当たるべきだ。そうしないと、相手に核兵器を捨てろと言う道理がなくなってしまいます。外交的手段を尽くして北朝鮮の核・ミサイル開発をやめさせる、それこそ一番強い対話なんだということを強調したいと思います。

 そこで、関連して確認しておきたいんですが、国連安保理決議一七一八では、第十三項だったと思うんですが、関係国は緊張を悪化させるいかなる行動も慎むという項目がありましたけれども、今回の決議一八七四にもその趣旨は盛り込まれているのか、あるとすれば、第何項にどういう表現でされているのか、その項目を読み上げて紹介していただけますでしょうか。

石井(正)政府参考人 先生御指摘のように、一八七四にも同様の記述がございます。これは主文三十一でございます。念のため読み上げさせていただきます。

 事態の平和的、外交的かつ政治的解決の約束を表明し、また、対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にし、また、緊張を悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控えるための理事国及びその他の加盟国による努力を歓迎するという記述がございます。

笠井委員 この項目が改めて盛り込まれていることについて、大臣はこの意味についてどういうふうに受けとめられるでしょうか。

中曽根国務大臣 今、政府参考人から主文三十一について説明がありましたけれども、これはまさに、対話を通じた平和的、包括的な、そういう問題の解決についての言及であると思います。我が国といたしましても、引き続いて、そういうところからも、対話と圧力のバランスに意を用いながら、この懸案の解決には最大限の努力を払っていきたいと思っています。

笠井委員 今回の決議を根拠にして軍事的対応を持ち出すというのが決議に反するということは明白だと思います。緊張を悪化させる行動を日本の側から起こすことは厳に慎むべきだと、この決議からきちっと銘ずる必要があると思います。

 さらに伺いますが、今回の決議は、六カ国協議、六者会合についてどのように述べているでしょうか。その項目と中身について紹介してください。

石井(正)政府参考人 事実関係でございますので、私の方から答えさせていただきます。

 一八七四号の主文三十におきまして六者協議への言及がございます。具体的には以下のとおりでございます。

 平和的対話を支持し、北朝鮮に対し、直ちに無条件で六者会合に復帰することを要請し、また、すべての参加国に対し、朝鮮半島の検証可能な非核化を達成し、かつ、朝鮮半島及び北東アジア地域の平和と安定を維持するために、中国、北朝鮮、日本、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国によって二〇〇五年九月十九日に採択された共同声明、並びに二〇〇七年二月十三日及び二〇〇七年十月三日の共同文書を完全にかつ迅速に実施するための努力を強化することを要請する。

 以上でございます。

笠井委員 この項目について、すなわちこれを含む決議ということで一八七四が採択をされたときに、理事国からも、態度表明ということでずっと各国がやっております。アメリカ、中国、それから日本、英国、メキシコ、ベトナム、リビア、ウガンダ、ロシア、それからフランス、ブルキナファソ、オーストリア、クロアチア、コスタリカ、トルコ、韓国ということで表明されていますが、態度表明を見ますと、共通して、やはりこの問題について、この三十項目でうたわれて今紹介があったようなことについて、こもごもやはりこの問題の重要性について述べていると思うんですね。

 大臣、この項目について、六カ国協議への即時無条件復帰を強く求めているわけですが、その重要性については改めて今の時点でどんなふうに考えていらっしゃるでしょうか。

中曽根国務大臣 今、政府参考人から、主文三十ですか、御説明がありましたけれども、やはり政府といたしましても、北朝鮮をめぐる諸懸案の解決には、すべての関係国が参加しております六者会合が最も現実的な枠組みである、そういうふうに考えているところでございます。

 そういう意味では、具体的な前進が得られますように、常に最善の方法を考えながら、六者会合のメンバー国であります米国や韓国などと緊密な連絡をとりながら、六者会合共同声明の完全な実施に向けて努力をしていきたい、そういうふうに思っております。

笠井委員 今ありました、まさにこの決議が強く求めているのは、六者会合への即時無条件復帰でありまして、制裁というのはその手段ということで述べられているわけで、それ自体が目的ではないと思うんです。平和的、外交的手段で解決することを基本に据えた今回の決議の方向で国際社会が一致結束することが平和解決を可能にする唯一の道だ、日本は外交において今こそイニシアチブを発揮すべきだというふうに思うんです。

 今大臣からも、あらゆる手だてを通じながらとおっしゃったんですが、今、北朝鮮がああいう対応をしていますので、なかなか大変だ、困難だ、そういう中で、これからどういくかということについては、今からにわかになかなか言いにくいのかもしれませんが、どのような見通しといいますか、あるいはどのようなことを具体的に乗り越えながら、そして、復帰に向けて国際社会が一致して、特に六者会合参加国が連携をとりながらやっていくのか。その見通しとイニシアチブについての、今おっしゃれる範囲での基本的な考え方といいますか、もうちょっと具体的に話を伺いたいんですが、どうでしょうか。

中曽根国務大臣 我が国といたしましては、何よりも、今般採択されました安保理決議一八七四号、これを実行あらしめるようにすることが大事だということがまず第一でございます。そして、我が国としても、この決議で決められたことをやはり実施に移していく、そして適切な対応を早期に行うということが大事であるわけでございまして、その対応方法については現在政府でも検討しているところでございます。

 さらに、先ほどからお話ありますように、対話と圧力、その中でも六者会合、これを有効に活用する。北朝鮮がこれにさらに、従前のように、このメンバーとして共同声明の完全実施に向けてともに努力をする、尽力をするという形になるように、我が国としては、米国を初めとする関係国と緊密な連携をとってやっていくということも大事だ、そういうふうに思っているところでございます。

笠井委員 日本は唯一の被爆国であります。言うまでもありません。そして、いわば北朝鮮からすれば海を挟んだ隣国でありますが、北朝鮮に核開発の放棄を迫って核兵器廃絶を求めていくという道義的な権利も責務もあると思うんですね。核開発をやめさせるために本当に国際社会が今努力しているときに、被爆国日本としての役割というのが外交でも非常に大きいと思います。

 今回の安保理決議一八七四の採択時の、先ほどちょっと申し上げました理事国の態度表明を見ましても、例えばメキシコは、その発言の中で、核兵器が拡散する可能性はそれらの兵器が完全に廃絶されるまで残るだろうと。ウガンダの発言では、朝鮮半島において不拡散を達成することは重要であるという理由で我が国は決議の総意に加わった、しかし、より安全な世界を創出するためにはすべての核兵器を廃絶することが重要だと信じると。それから、ブルキナファソの発言では、決議を支持する、この支持は核兵器のない世界を希求する我が国の願いから発したものであると。こういうふうに共通して言われています。オバマ大統領のプラハ演説もあった。

 そういう中で、世界的に核兵器のない世界を希求して、そして、拡散させない、あるいは北朝鮮に迫っていく上でも、核兵器廃絶をということで、やはり、より強い国際社会の一致した努力と活動が必要だし、そのことによって北朝鮮にも放棄を迫っていくということも大きいんだということがこもごも語られていると思うんです。

 そういう世界の流れを見きわめて、被爆国日本として、その政府として、その点でいうと何をやっていくのかということについて、大臣の見解を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員が御紹介されましたように、各国とも、やはり核軍縮、不拡散、核兵器のない世界の実現というのは、これは共通した目標であると思います。オバマ大統領の四月五日の演説もその一環で、大変前向きなスピーチをされました。

 我が国の方も、委員も御承知かもしれませんが、たしか四月の二十七日でしたけれども、核軍縮スピーチを行いまして、核軍縮のための十一の指標、そういうようなタイトルで考え方を表明させていただきました。その中では、核兵器国の措置について、また多数国間でとるべき措置について、またさらには原子力の平和利用などについて述べたものでございますが、さらに、来年の早々には我が国で核軍縮のための国際会議を開くという提案も行ったところでありまして、いわゆる唯一の原爆の被爆国として、このような国際的な核軍縮の機運、この機会に我が国も積極的にこれに取り組んでいくということが大事だと思っております。

笠井委員 まさに日本の役割は大事だと思うんですが、ただ、その際に、日本も、ではアメリカの核の傘にと依存しながら核抑止ということになりますと、これは本当に、相手に対しても迫っていく上でも、効果的なというか有効な説得力を持ち得ないというふうに思いますので、まさに被爆国は、本当にその点で文字どおり核兵器廃絶ということで、国際交渉をそのために、条約のためにやろうじゃないかということを先頭を切ってやるべきだと、改めて今の事態の中でも強調しておきたいと思います。

 最後に、社会保障協定について戻りまして若干伺っておきたいと思うんですが、日本とスペイン、日本・イタリアの両社会保障協定に関連してですが、先ほど来ありましたが、我が国の社会保障協定の署名状況を見ますと、今日のイタリア、スペインを含めて十二カ国ということになると承知しておりますが、これは欧米諸国に比べても大きく立ちおくれているということが当委員会でもたびたび指摘をされてきました。なぜ立ちおくれているのかについて、政府は、我が国が社会保障協定を各国と締結を始めたのが平成十二年のドイツとの締結が始まりだからという説明、私も何度か聞きました。もう九年もたっていますが、その結果がまだ十二カ国という到達点であります。

 そこで、改めて確認しますが、政府が社会保障協定の交渉を進めていく際に、その対象国についてどのようなことを基準あるいは考慮事項として検討しているのか。そして、これまでそうだったけれども、さらに促進する上では、それは改めてこの辺はこうする必要があるのかなというようなことがあれば、あわせて伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 社会保障協定につきましては、二重加入の問題、それから掛け捨ての問題を解消することを通じまして、相手国との人的交流それから経済交流を進めるということで、非常に意義のあるものであるというふうに考えております。

 我が国はこれまで、相手国の社会保険制度における社会保険料の負担の規模、それから在留邦人及び進出日系企業の状況、それから経済界からの具体的要望の多寡、二国間関係、我が国と相手国の社会保障制度の違いなどの諸点を総合的に考慮した上で、優先度の高いところから順次進めているというところでございますけれども、先ほど来御説明させていただいているところですが、現在、アイルランドとの政府間交渉、それから、スイス、スウェーデン、ハンガリー、ルクセンブルク、ブラジルとの当局間協議などを進めておりまして、オーストリアともこれを進めるということの方針でございまして、積極的に進めていきたいと考えております。

笠井委員 九年間かかって十二ということですが、基準は基本的に同じことで、もちろんその基準というのは大事な点だと思うんですが、さらに加速させるというような意味で、加味するようなこと、あるいは特別に手だてをとっていこうというようなことについては、考えはないんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもといたしましても、先ほど御説明させていただきましたように、この作業を加速してどんどん進めていきたいというふうに考えておりますけれども、実際に作業を進めるに当たりましては、各国の社会保障制度というのが、それぞれ社会政策、どのような考え方で進めていくのかというところも各国それぞれ考え方がございまして、社会保障制度のそれぞれの違いというものがございます。

 また、それが実際にどのような形で適用されているのか、日本からどういう方が行っておられて、相手国からどういうふうな方が来られているのかなどの事情を見きわめるということも必要でございますけれども、そのような事情の中、我々としては精いっぱい一生懸命やっていきたいと思っております。

笠井委員 昨年の当委員会で、我が国の企業等から一時的に派遣される邦人等が多いアジア諸国との社会保障協定締結が少ないということについて質問いたしました。

 そのときに、政府の答弁というのは、今説明があったことも関連があると思うんですが、アジアの国の中では、社会保障協定の締結の前提となる社会保障制度が十分に発達していない国が多いということでありましたが、同時に、その質問の中で当時の高村外務大臣は、いや、そうはいっても、「アジアだからやらないとかそういうことではなくて、考えていきたい」ということもあわせて言われました。

 そこで、伺いますけれども、現在、アジアの中で我が国と社会保障協定を結んでいる国というのは、改めて確認ですが、どこか。それから、交渉中あるいは検討中の国というのはそれ以外にどこの国あるいはどういうところがあるのか、言える範囲で伺いたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、我が国が社会保障協定を既に締結している国としては韓国がございます。そのほか、今後の取り組みということで申し上げますれば、フィリピンから社会保障協定を締結しようじゃないかということの申し出がございまして、日・フィリピン間での首脳レベルの討議というものも踏まえて、今後、私どもとして対応ぶりを検討していきたいというふうに考えているところでございます。

笠井委員 そうしますと、それ以外のところについて言うと、先ほど五つ言われたような基準というかクライテリアの問題、社会保障制度の問題などを含めて、相手国との関係も見て、なかなか、手の届くところというか、それぐらいの期間には難しいなと。さらに、相手国の関係あるいは制度の確立状況とかも含めて、しばらく様子を見ないと、なかなかその先は、アジアとの関係でいうとまだちょっと距離があるなということなんでしょうか。その辺の、実務的に、現場でのというか実際の状況について伺いたいんですが、どうでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 ややこれまでの答弁と重なる点もあろうかと思いますけれども、やはり各国の社会保障制度の状況をきちっとよく見ていくというところが大事であるというふうに考えておりまして、その中で公的な年金制度がどのような制度になっているか、その中で年金加入の義務が生じているか、また、制度は制度として、実際にそれがどのように実施をされているかというふうなところを踏まえながらやっていくということからしますと、今の先生の御質問との関連でいいますれば、まだ少し時間がかかっていくかな、そのような実感はございます。

笠井委員 最後に、大臣、今のことも含めてですが、人的交流がますます盛んになるアジア諸国との社会保障協定の必要性、あるいは、いずれにしても、それも含めて、世界各国との間の社会保障協定について先進国の中で我が国が立ちおくれているのは事実だと思うんです。

 そういう点でいうと、政府自身が積極的な、より積極的な施策をもって対処していくという必要があると思うんですけれども、その点についての政府としてのこれからの決意といいますか、方針というか方向についての答弁をいただきたいんですが、いかがでしょうか。

伊藤副大臣 確かに、アジアの諸国については、一般的に、協定の締結の前提となる社会保障制度の整備が必ずしも十分じゃないという国が比較的多いという事情があります。今報告がありましたように、ちなみに、韓国を除いて、欧米諸国との間で社会保障協定を締結している国は、日本だけでなくて、多くないとも承知しております。

 しかしながら、委員御指摘のように、今後は、これらの諸国の社会保障制度の成熟度や我が国のニーズを見きわめて、引き続き検討したい。そしてまた、先ほどの答弁で私も申し上げたとおり、必要であれば、社会保障部分について日本が協力できる部分があればしていきたい、そのような考えでございます。

笠井委員 今、基本的な話があったんですが、大臣御自身も何か一言その点に関連しておありになれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

中曽根国務大臣 今副大臣から御答弁申し上げましたけれども、各国のそういう社会保障制度の状況とかあるいはニーズ、そういうものを総合的に見きわめをしながら検討していきたい、そういうふうに思っています。

笠井委員 これは極めて大事な問題ですので、政府としても積極的な対応ということで進めてもらいたいと思います。

 以上で質問を終わります。

河野委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正でございます。

 条約について質疑を行わせていただきます。

 お手元の方に資料を今配付させていただいておりますが、過去の、ここに一覧表がありますが、投資協定を、ベトナム、カンボジアと、それからタイでしょうか、と比較をする。今回、ウズベキスタン、ペルーということで、今言った三つと、あるいは日本の従来型の投資協定とどこが違うのかという一覧表であります。

 この中で、上から七つ目の枠にありますのが汚職防止努力義務ということでありまして、自国の法令に従い、腐敗行為を防止するということで、今回のウズベキスタンについては第九条でしょうか、それからペルーについては第十条ということで、それぞれ条文がございます。

 昨年、カンボジアとの投資協定を当委員会で審議したときに、やはりこの汚職防止努力義務の条文というのが非常にユニークというか特徴的でありましたので、そこで伺いたいわけですが、ウズベキスタン、ペルーにはあるんですけれども、以前、カンボジアにはもちろんここにあるんですが、ベトナムになかった理由、これをお答えいただきたいと思います。

 また、カンボジアの投資協定、昨年この条文が入って発効をして、もう一年そろそろたちますが、それの抑制効果というんですか、これがどうなのか。また、これはそれぞれ国内法令にのっとってというふうに書いてあるんですが、一体カンボジアではどういう法令でこういう腐敗防止の法令があるのか、ちょっと承知しておりませんので、以上、まとめてお答えいただけますでしょうか。

伊藤副大臣 時系列から申し上げますと、ベトナムとの投資協定は二〇〇四年なんでございまして、カンボジアは御存じのように二〇〇八年でございます。

 投資協定の交渉に当たっては、これまでもその内容の向上に努めてきているわけでございますけれども、近年では、現地公務員等による汚職行為が我が国企業による投資活動にとって大きな阻害要因とならないように、それを確保することが非常に重要になってきているという歴史的な流れがまずございます。

 こういった背景から、投資等を含むEPAについて、二〇〇六年署名の日・フィリピンEPAにおいて初めて腐敗行為防止に向けた努力義務に関する規定が盛り込まれ、投資協定としては、昨年発効した日・カンボジア投資協定及び日・ラオス投資協定において同様に、初めて腐敗行為の防止に向けた努力義務に関する規定が盛り込まれたわけでございます。

 カンボジア政府は、みずからの開発戦略において、グッドガバナンスの向上を最優先課題として挙げておりまして、その中で汚職撲滅に取り組んでいます。このような取り組みの一環として、カンボジアは二〇〇七年九月五日に、腐敗の防止に関する国際連合条約、国連腐敗防止条約にも加入しております。また、汚職防止について国内の関係法令の整備を引き続き進めていると承知しておりまして、日・カンボジア投資協定の締結はこうしたカンボジアの努力を後押しする効果もあると考えます。

 なお、日・ベトナム投資協定は二〇〇四年でございますけれども、腐敗行為防止に向けた取り組みを協定上の義務として規定にはこの時点でしなかったわけでございますが、そのような取り組みの重要性については今ベトナムとも十分認識を共有できるものと考えております。

 また、カンボジアの国内法については、お許しがあれば参考人から答弁させていただきたいと思います。

武正委員 今のお話で、二〇〇六年ぐらいからスタートしたということでありますが、たしかベトナムは、例のカントー橋の崩落事故ということで、この間もやはり安全操業というか、安全を旨とした円借款の見直し、あるいは第三者的なチェック機関のあり方など、そうしたことも合意をしているようでありますので、やはりこうした条項もベトナムとも入れていく必要があるのではないかなと。これは指摘にとどめておきます。

 そこで、今回のウズベキスタン、ペルーも同様に、この条文、汚職防止努力義務があるんですが、ウズベキスタン、ペルーでこれに応じた国内法の整備がされているのか、あるいは先ほどの国際連合条約を批准しているのか、伺えればと思います。

伊藤副大臣 ウズベキスタンにおける腐敗行為防止に関する国内法令としては、ウズベキスタン刑法第五部、国家機関の機能、行政、社会組織の手続に関する犯罪における公務員の権利濫用第二百五条、収賄行為第二百十条、供賄行為第二百十一条、賄賂あっせん第二百十二条、買収第二百十三条、報酬の強要第二百十四条に係る罰則規定などがございます。

 なお、ウズベキスタンは、これは二〇〇八年七月二十九日締結でありますが、国連の腐敗防止条約の締約国でもございます。

 また、ペルーでございますが、このペルーにおける腐敗行為防止の国内法令としては、公共部門における利益誘導規制法、公務員の職務、給与に関する基本法を公布するための法令第二百七十六号、公務における倫理法などが挙げられます。

 なお、ペルーは、米州腐敗防止条約及び国連腐敗防止条約、これは二〇〇四年十一月十六日締結でありますが、締結国でもございます。

武正委員 そうはいってもと言うと怒られますけれども、どうもやはりODAなり、あるいは特に途上国へのこの後話が出る投融資、どうしても、さまざま今言われたような腐敗というものが必ずついて回るというか、あるいはそれがもう当たり前なんだというようなことが言われているわけなんですね。

 ここで、こういう条文で、「努力を払うことを確保する。」という書きぶりですから、当然、罰則規定もないわけでありますが、これをどうやって担保するかということだと思うんですね。

 カンボジアの例で、連合条約を批准し、国内法も整備していますよということなんですが、やはりこれを有効ならしめるために、我が国がせっかくこういう条文をこうやって投資協定で入れているわけですので、やはりその担保をする、その補完措置というんでしょうか、ここをどのようにお考えなのか伺えますでしょうか。

伊藤副大臣 カンボジアの例で申し上げますと、まずカンボジア政府は、みずから開発戦略においてグッドガバナンスの向上を最優先課題として挙げており、その中で汚職撲滅にも取り組んでいるわけであります。

 我が国としては、このカンボジア政府による汚職撲滅を含むガバナンス向上努力を支援するために、法整備支援、こういった部分などの技術協力を行っております。また、日本・カンボジアの投資協定の合同委員会においても、必要に応じて、汚職対策の重要性について指摘してまいりたい、そのように考えております。

武正委員 ウズベキスタン、ペルーはいかがですか。これからこれを批准した後、発効していくわけですが、何かそういうような、今のようなお考えがあるのかどうか、あれば伺いたいと思います。

伊藤副大臣 それぞれの国で個別事情があると思いますけれども、基本的にはカンボジアと同様の取り組みをするということでございます。

武正委員 もう既に出ておりますけれども、改めて、過去署名したEPA、FTA、租税条約、投資協定に腐敗防止条項はどの程度盛り込まれているのか、あるいはそういう方針が、あるいは、きょうも審議しております社会保障協定はちょっとそぐわないのかもしれませんが、政府としての考え方、何か統一性があるのかどうか、伺えればと思います。

伊藤副大臣 過去に署名したEPAでは、日・タイEPA、日・インドネシアEPA、日・フィリピンEPAにおいて、腐敗行為の防止に関する規定が盛り込まれております。

 また、投資協定については、今回御審議いただいている日・ペルー投資協定及び日・ウズベキスタン投資協定に加え、日・ラオス投資協定及び日・カンボジア投資協定にも同種の規定が盛り込まれているわけでございます。

 なお、租税条約につきましては、基本的には腐敗行為の防止に関する規定は設けておりません。

武正委員 例えば、腐敗防止条項を設けることを相手国が拒否をする、あるいはそれをためらうという事例というものはあるんでしょうか。

伊藤副大臣 個別の国について今お答えする資料がないわけでございますが、最後に御説明をした租税条約について、なぜ設けていないかという件に関しては、租税条約はそもそも二重課税の回避あるいは脱税の防止を目的として、締約国の課税当局間における課税権の配分や課税当局間の協力について規定することがその中心内容となっているわけでありまして、他方、腐敗防止に向けた取り組みというのは、税関とか財務省関係だけでなくて、政府職員全般にわたる問題であるということでございますので、これを踏まえれば、主に課税当局を規制する租税条約よりも、二国間の経済関係全般を広く扱うEPAや投資協定において、政府全体に課せられる義務として規定することの方がより適切であるという考えでございます。

武正委員 聞きたかったのは、租税条約じゃなくて、EPA、FTA、特に、これからもっと結びなさい、もっと短期間で結ぼうじゃないかということが、きょう委員会でほとんどの委員から出ているこの投資協定に、腐敗防止条項を盛り込むことが、何らか促進を阻害する、投資協定を結ぶことを阻害する要因になる可能性があるのかどうかを聞きたかったんです。

伊藤副大臣 ちょっと手持ちの資料で一覧表がないので、少し不正確になると。私の記憶するところでは阻害要因になるということはないと思いますし、この腐敗ということが貿易・投資のいろいろな重要な案件になってから、常にそのような条項を盛り込むという方向で日本の外務省は締約に向けております。

武正委員 ぜひそういう統一性を持って臨んでいただきたい。そして、あわせて、やはり相手国の理解を得られるような説明で、速やかに投資協定を多数の国と結んでいただくようお願いをしたいと思います。

 そこで、今回のウズベキスタン、ペルー、先ほど来、外務省さんからは大変豊かな鉱物資源というような御説明がありましたが、特に豊かな鉱物資源の獲得にこの両協定を政府、民間企業などはどのように活用していこうと考えているのか、また、JICAはどうなのか、外務省としてお答えをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 ウズベキスタン、ペルー両国とも、お話にありますように鉱物資源が非常に豊かな国でありますが、そういうところから、日本企業も、近年、ペルーの鉱物分野での活動を活発化させておりますし、また、ウズベキスタンの鉱物資源にも関心を示し始めているところでございます。この両国におきまして、この協定を結ぶことによりまして、日本企業にとりましては、一層安定的で、また予見可能性の高いそういう法的基盤に立って投資を行うことができる、そういうふうに考えております。

 我が国といたしましては、こういう資源やエネルギーの確保のために、両国のまずは政治的安定、それから市場の透明性の向上、また投資環境の整備、さらに資源輸送路の安全確保など、幅広い施策を進める必要がありますが、ペルーにおきましては、投資環境改善小委員会が設置されることにもなっておりますので、そのような委員会も活用しながら、両国との長期にわたる安定的な二国間関係を構築すべく、またお話ありましたJICAなどの関連機関とも連携をして取り組んでいきたい、そういうふうに思っています。

武正委員 民間企業がこの協定をどのように活用するのか、この投資協定によって、民間企業が特に鉱物資源の獲得に積極的に乗り出していく場合にどのようなことが期待されるのか、この点はいかがですか。

中曽根国務大臣 これは一番大事な点といいますか、民間企業の立場から見ますと、投資家の権利の保護とか、それから投資の自由化というものもあります。そして、投資環境整備のための法的な枠組み、これを提供するものでありますから、先ほど申し上げましたけれども、この協定を結ぶことによりまして、民間企業にとりましては投資を安定的に行うことができる、そういうことになると思います。

武正委員 そこで、来週閣議決定をする骨太方針に、JICAの投融資、これが盛り込まれるであろうということで、既に第二十二回の海外経済協力会議でそうした点が了解をされているわけでありますが、お手元の資料、二ページをごらんいただきたいと思います。

 これは株式会社日本国際協力機構が、この間、JAIDOが出融資をした案件でありまして、ここに今回の投資協定が結ばれたウズベキスタンとペルーが入っております。ペルーが平成五年、一九九三年、それからウズベキスタンは平成六年、一九九四年であります。

 ペルーについては水産加工ということでありまして、またウズベキスタンについては絹紡績ということでの投資案件でありますが、それぞれ出資をした額、五千九百万円あるいは四千二百万円ということでありますが、キャピタルゲイン、ロス、減損、貸し倒れ償却額、評価差額、配当累計等では、それぞれマイナス五千九百万円とマイナス三千六百万円というふうになっているんですけれども、それぞれの出融資、これがどういうものであって、結果、どういうふうになったのか、今回、ウズベキスタン、ペルーとの投資協定、そしてこれからまたJICAが出融資を行う可能性もあるという中で、やはりこれを参考にしていく必要があると思うんですが、それぞれお答えをいただければと思います。

伊藤副大臣 まずは前段に、JAIDOは、委員御指摘のように、株式会社として独立した経営を行う組織であって、個々の案件に対する出融資の判断を政府が行ったわけではございません。

 その前提で御説明申し上げれば、お尋ねのウズベキスタンの投融資事業については、年百二十トンの絹紡糸といいますか絹の糸の生産をして、主として日本向けに輸出することを目指して、日・ウズベキスタン合弁会社を設立し、JAIDOは同社に対して一九九六年に四千二百万円を出資した案件と承知しております。この事業は、原料供給にトラブルなどがあり、三千六百万円が償却される結果になったと承知しております。

 ペルーの方でございますが、ペルー投融資事業については、漁船が老朽化し非効率のものになっているペルーの水産業復興のために、サメ、イワシなどの捕獲、加工した上での製品を輸出して、外貨の獲得を目指して、JAIDOは日本・ペルーの合弁会社に対して一九九三年に五千九百万円出資した案件と承知しております。この事業は、漁船の操業不振などもあり、五千九百万円が償却される結果になったと承知しております。

武正委員 それぞれの事業は、その後も今も存続しているんでしょうか。

伊藤副大臣 ウズベキスタンの方でございますが、原材料にトラブルが生じ、為替の影響を受けて財務状況が悪化し、二〇〇二年に本事業から撤退したものと承知をしております。

 ペルーの方でございますけれども、やはりペルー沖におけるサメの漁などの操業不振が原因となって債務超過の状況となったことから、一九九六年に撤退したものと承知しております。

武正委員 今回、JICAの投融資機能を再開するということでありますが、JBICとJICAでどのように投融資を分けるのかというと、JICAの方がいわゆるリスクのあるものというようなことが言われているわけなんで、そうしますと、JAIDOについては、今、民間企業というふうなお話でしたけれども、ここにはOECFから六十三億円が投資をされて、うち四十六億円でしたでしょうか、これが債務処理されているわけでありまして、やはり、この案件の、どういう形でこれが選ばれたのか、そしてその結果がどうだったのかというのは、非常に参考になるというふうに思うわけです。

 これは、ざっと見ますと、それこそ、ウズベキスタン、ペルー、それぞれ今言ったように絹紡績と水産加工ということでありまして、どうも、この投資協定がねらっているような鉱物資源、両国の鉱物資源というようなお話がありましたが、鉱物資源についてJICAが投融資をするような分野というのは多分少ないのではないのかなと。リスクがあり、そしてなかなか民間企業が投融資をしないような分野にということになってきますと、やはりこうした非常にローテクというか、こういった分野が多分今も並ぶのではないのかなというふうに思うんですね。

 そのときにどういうような観点でこのJICAの投融資を考えていくのかということがこれから大変問われると思うんですね。過去の実施案件の成功例、失敗例や問題点を十分研究、評価するということを海外経済協力会議でも合意をしておりますので、この点についてどのような観点でこのJICAの投融資を考えていくのか、お答えをいただきたいと思います。

伊藤副大臣 人も国も機関もそれぞれ失敗から学ばなければならないと思います。

 JAIDOの件から先に申し上げますと、やはりこの人員体制、審査体制が不十分だった点というものがあるのではないかと思います。

 JICAの投融資業務についても、新たな制度、チェック体制を確立した上で実施することが重要だと思いますし、大変な毀損があったわけでございまして、JAIDOの債務状況が悪化して、結果として旧OECF援助出資金の多くが毀損する事態に至ったことは、まことに遺憾なことだと考えております。

 今後のJICAの投融資業務については、関係省及び第三者の知見をよく導入して、過去の実施案件の成功例そして失敗例等のことをよく十分に分析、研究、評価して、新たな制度、チェック体制を確立した上で実施することが必要である、そのように考えております。

武正委員 外務大臣にも伺いますが、経済財政諮問会議の骨太の方針にこれが盛り込まれるという報道がありますので、まだ二十三日の閣議決定前で、明言はできないのかもしれませんが、今そういう方向ということでありますが、やはりこのODAとこうした投融資あるいは民間の投資がうまく連携するような戦略的なODAというようなことで、このJICAの投融資も新たにスタートするというふうに聞いているんですね。

 ただ、鉱物資源の投融資に本当に結びつくのかというと、過去のこのJAIDOを見ても、どちらかというとローテク中心あるいはリスクがあるものというところもありますので、本来鉱物資源を開発するためのODAとうまく連携した投融資というところに本当に行くのかどうか、ここら辺もやはり踏まえていく必要があると思うんですが、外務大臣としての御所見を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 今お話ありましたように、資源のない国、我が国としては、そういうような鉱物資源、これは大変貴重でありますし、そういう点の獲得といいますか、そういうものを十分視野に入れながら、ODAにいたしましても投融資にいたしましてもやはり検討していくということが大事だと思いますし、今副大臣から御答弁申し上げましたけれども、JICAの投融資業務につきましても、過去の例というものを十分に検証して、今後新しい体制を確立していくということが大事だ、そういうふうに思っております。

武正委員 以上で終わります。

河野委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時三分開議

河野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。武正公一君。

武正委員 党首討論も終わりまして、引き続き、外務委員会、質疑を行わせていただきます。

 先ほど、JAIDOの件、やりとりをしておりましたが、ここで、資料二ページにありますタイのハイテクスクエア、やはり、この債務というんですか損失額が飛び抜けて大きいわけであります。四十六億円のJAIDOの債務処理の中で、ここで十四億七千万という額になっておりますので、これについて伺いたいと思います。

 そこで、資料三ページ目以下に、日本国際協力機構の清算第五期事務報告書がございます。この四ページ目、「タイ・ハイテクスクウェア事業の件および今後の方針」というのが出ておりますので、簡単にかいつまんで読ませていただきますと、本事業については、当会社は平成十三年三月に施主であるチュラロンコン大学、チュラ大より、プロジェクト未完成に係る損害賠償金として十四億九千万円の請求を受けました、支払い義務ない旨返答しておりますと。

 ただ、それについて破産裁判所の決定が出されたのが、中段にありますように、平成十七年四月にチュラ大の債権登録額の三割、五億一千万円相当を債権額として認めるとの破産裁判所の判断が出されたということであります。遅くとも本年中には決着させたいと考えておりますというのが、これが平成十八年の資料ということでありますが、これが結果どのようなてんまつになったのか、お答えをいただけますでしょうか。

伊藤副大臣 てんまつだけをお話しいたしますと、二〇〇六年八月、JAIDOとチュラロンコン大学との間で和解が成立いたしまして、JAIDOはチュラロンコン大学に千二百万バーツ、日本円にして約三千八百万円を支払い、本事業の清算を終えたものと承知をしております。

武正委員 三千八百万バーツでよろしいですか。

伊藤副大臣 千二百万バーツ、日本円にして約三千八百万円をお支払いし、本事業の清算を終えたものと承知をしております。

武正委員 このタイ・ハイテクスクエア事業が、結果、最大の債務になったこと、これについてどのように総括をされ、それこそJICAのこれからの投融資の参考にということもあろうかと思うんですが、どのように総括をされていますでしょうか。

伊藤副大臣 先ほどはてんまつだけをお話ししたんですけれども、このタイ・ハイテクスクエア事業については、建設工事の期間中にタイ国内における不動産市況の悪化の影響を受けて、建設工事の停止を余儀なくされ、その後、アジアの通貨危機の影響もあって、二〇〇〇年八月にチュラロンコン大学により本事業の基礎となる土地開発契約が解約され、本事業から撤退を余儀なくされたと承知しております。

 総括ということになりますけれども、党首討論の前にお話ししたペルーの件あるいはウズベキスタンの件と共通になりますけれども、やはり過去の失敗からよく学んで反省しなきゃならないと思いますし、全体として言えば、JAIDOの人員体制、審査体制が不十分だったということがやはり理由の一つでありましょうし、今後、JICAの投融資業務については、新たな制度、チェック体制を確立した上で実施することが重要だ、そのように考えております。

武正委員 本事業というのは、チュラロンコン大学の土地を一万坪借用して、そこに四十階建てと三十九階建ての建物を建てるという、総額二百八十億円のプロジェクトでありました。地元のタイの農業銀行グループとJAIDO、そして日本のゼネコンが出資をして、STC、サイアム・テクノ・シティーという会社をつくって、その合弁会社がこの事業を進めていったわけですが、要は、その出資者の中に破綻をした金融機関も入っていたりというようなこともあり、このSTCが結局は破綻ということで、事業が頓挫をしたというふうに承知をしているわけであります。

 こういったところも、やはり合弁会社あるいはパートナーの選定といったところにもかなり無理があったのかなというふうに思うんですが、その点はいかがでしょうか。

伊藤副大臣 委員御指摘の点も含めて、プロジェクトに関する選択、審査あるいは管理体制が、結果論からになりますけれども、不十分であったということは認めざるを得ないと思います。

武正委員 それでは、北朝鮮の今回の核開発を受けての国連安保理決議に移らせていただきたいと思います。

 今回の安保理決議が二〇〇六年との比較で一つやはり特徴があるのが、金融制裁が新決議案に盛り込まれたことだというふうに思います。バンコ・デルタ・アジア、これが二〇〇五年に二千五百万ドル全額凍結というようなことがあり、それが二〇〇七年三月に解除をされたわけでありますが、やはりこの金融封鎖というものが大変効果を上げたということが今回ここに盛り込まれた一つの理由だというふうに思うんです。

 具体的に金融機関名、これも挙げていくというやりとりがあったやに聞いておりますが、結局、その指定はなかったわけであります。今後、この金融制裁を効果あらしめるために、過去の二〇〇五年のバンコ・デルタ・アジアのこうした封鎖を参考にどのようなことが考えられるのか、お答えをいただきたいと思います。

中曽根国務大臣 今委員からお話ありましたように、今回の新しい決議におきましては、武器禁輸、貨物検査とともに金融面での措置が盛り込まれたところでございます。この決議におきましては、この決議採択後三十日以内に、北朝鮮制裁委員会におきまして、禁輸対象の品目や、また資産凍結対象の団体、個人などの指定を目指すことが確認をされているところでございます。

 我が国といたしましても、この北朝鮮の制裁委員会での対応につきましては、当然のことながら、適切な団体、個人を指定することにつきまして合意が得られるように、建設的に議論に参画をする考えでございます。

武正委員 ここで専門家グループを指名する、指定するということなんですけれども、七名ぐらいではないのかというふうに言われておるんですが、こういった専門家グループに日本から参加するということは検討されているのか、あるいはその可能性というのはあるんでしょうか。

中曽根国務大臣 御案内のとおり、決議文がまとまったということでございまして、それ以降のいろいろな、今の専門家の委員会等につきましては、今検討中ということと承知をいたしております。

武正委員 日本から参加の可能性というものもあるということでよろしいでしょうか。

中曽根国務大臣 現時点では何とも申し上げようがありませんが、その議論の結末等を見て判断をしてみたいと思っております。

武正委員 ぜひ、金融面での制裁、これがやはり効果を上げるということが衆目の一致するところでありますので、この点での積極的な取り組みを求めたいというふうに思います。

 そこで、今回、日米外相会談が、これは三月三十一日、あるいはまた五月二十五日の電話会談、それから日米首脳の電話会談、こういったことが相次いで行われたわけですが、その中で、日米外相会談でもそうでありますが、いわゆる核抑止についてのコミットメント、対日防衛コミットメントの明言は非常に効果的であったと中曽根外相がクリントン国務長官との面談でも述べておられます。また、日米電話外相会談でも、核の傘、日米安保条約上の義務の遂行に決意を持っている旨の表明が改めてあった。これは、日米首脳電話会談でも同様の、核の傘を含む米国の拡大抑止に関するコミットメントの表明がオバマ大統領から麻生総理に改めてあったということでありますが、この点の確認を、外務大臣、させていただきたいと思います。

中曽根国務大臣 オバマ大統領と麻生総理大臣、また私とクリントン国務長官との間での電話会談等におきましては、今委員がお話しされましたような核抑止を含む対日防衛のコミットメントがそれぞれございました。表明がございました。

武正委員 これは、やはり外務大臣の方からも求めたということでしょうか。

中曽根国務大臣 必ずしもこちらから求めたということではございません。まず北朝鮮のこの決議に関する話が行われた、その流れの中で先方からこのような発言があったということでございます。

武正委員 この間私も評価をした外務大臣の十一項目の核軍縮についての声明、講演、先ほど外務大臣もまた引用されたんですけれども、この中では、米国の核の傘についての付言、これはあるんでしょうか。

中曽根国務大臣 今委員が御指摘の核軍縮のための十一の指標の中には、北東アジア全体の安全保障等について述べたところはございますけれども、今おっしゃいましたような米国の核の傘についての記述というのはないはずでございます。

武正委員 必ずしも日本側から求めたことではないけれども、二〇〇六年の前回の核開発のときも、当時の麻生外相あるいは中川政調会長が核保有の議論は妨げないというようなことを言われたときに、当時、米国務長官でしたでしょうか、核の傘についての言及というものがあったやに報道されております。

 こういった中で、今回の核軍縮について、日米同盟に付随をする核の傘ということに触れないということはいかがなものかと思うんですが、これについてはどのように御所見をお持ちでしょうか。

中曽根国務大臣 私が表明いたしましたこのスピーチは、先ほども申し上げたところでございますが、大きく分けて三つに分けることができるわけです。一つは核兵器国の措置、それから二つ目は多数国間の行うべき措置、そして三つ目は原子力の平和利用についてであります。

 ただいま御指摘の件につきましては、先ほど申し上げましたが、北東アジア全体の安全保障、そのことについての話はありますけれども、いわゆる核の傘についての記述というものはございません。

武正委員 いや、だから、外務大臣として、このことに触れなくても、北東アジア全体の核軍縮の提案、提言で漏れているのではないのか、不備になるのではないのかというふうに思うんですが、そういった認識はないということでしょうか。

中曽根国務大臣 委員御案内のとおり、日本の近隣地域の状況というものは、北朝鮮との関係は御案内のような状況でございますし、また、あえて申し上げれば中国も軍事力を増強している、そういうふうに言われております。

 そういう中で、この地域の安全保障をどうするか、北東地域の安全保障をどうするかということ、これについて我々としては真剣に考えているところでございまして、これが核の傘について漏れているということではなくて、そういうような点も配慮をしながら核軍縮をやっていくことが大事であるというようなことを述べたところでございます。

武正委員 そこでお伺いしたいんですが、そうしますと、日本は米国の核の傘の下にあるという認識でよろしいでしょうか。

中曽根国務大臣 核の傘という表現が、これは公式的なものではないと思いますけれども、先ほどもお話ありましたけれども、日米安全保障条約に基づく核抑止力を含む米国の対日防衛、これによる我が国の防衛ということになるかと思います。

武正委員 核抑止力を含む日米安保条約に基づいた我が国の防衛というようなことだと思うんです。

 そうしますと、その核抑止力は一体どこに本拠地があって、日本がその核の傘あるいは日米安保の核抑止力に基づいた日本の防衛というふうに認識をされているのか、御所見を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 日本の防衛は、まず、我が国自身が自国の防衛のために努力するということが第一であろうかと思いますし、日米安全保障条約におきましては、核抑止力のみならず、米軍による我が国の安全保障上の防衛というものが決まっているわけでありまして、そういう総合的なものである、そういうふうに思っております。

武正委員 ただ、ことしの五月二十五日に、「クリントン長官からは、米国は、核の傘、日米安保条約上の義務の遂行に決意を持っている旨の表明が改めてありました。」、こういうふうに、中曽根外務大臣、日米電話外相会談の四項目のうちの三つ目の項目でありますね。それから、日米首脳電話会談でも、四つのうちの三つ目、「また、オバマ大統領からは、核の傘を含む米国の拡大抑止に関するコミットメントの表明が改めてあった。」ということが書かれているわけで、核の傘を含む米国の拡大抑止、あるいは、核の傘、日米安保条約の義務の遂行に決意を持っている旨の表明ということで、核の傘の位置づけというものが、外務大臣、総理の、それぞれクリントン国務長官、オバマ大統領との電話会談における位置づけというのは非常に重いものというふうにうかがえるわけですが、核の傘というものが具体的にどういう位置づけなのか、今の御説明ではなかなか理解がしづらいんですけれども、もう少し具体的にお話をいただけるとありがたいと思います。

 そしてまた、そうであれば、四人の事務次官が、共同通信でしたでしょうか、報道されておりますように、いわゆる沖縄密約、あるいは日米の密約というものの存在、そして核についての三原則、持たず、持ち込ませず等、これが実は破られているのではないのかということが懸念をされるわけでありますが、こういった点もやはり明らかにしていく必要があるというふうに思うんですが、外務大臣のあわせての御所見を伺いたいと思います。

中曽根国務大臣 先ほどからの、核の傘という表現をなさいましたけれども、核抑止力ということにつきましては、日米安全保障条約に基づく米国の対日防衛のコミットメントの中の重要な位置づけを占めているものである、そういうふうに思っております。

 密約のお話がありましたけれども、この委員会でも御答弁申し上げましたけれども、政府が従来から申し上げておりますとおり、御指摘のような密約というものは存在しないわけでありまして、この点は、歴代の総理大臣また外務大臣も、このような密約の存在は明確に否定しているところでございます。

武正委員 改めて四人の歴代事務次官の出席を参考人として求め、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

河野委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。外務省大臣官房参事官小原雅博君。

小原政府参考人 パキスタンのカーン博士によります核関連技術流出問題でございます。

 この問題につきましては、さまざまなルートを通じまして情報収集を行ってきているところでございます。内容の詳細及び情報ソース等につきましては、その性格にかんがみ差し控えますが、今後とも、カーン博士を含め、いろいろな形で情報収集に努めたいと思います。

 以上でございます。

河野委員長 質疑を続行いたします。辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 本日は、日本・ウズベキスタン投資協定、日本・ペルー投資協定、そして日本・スペイン社会保障協定、さらに日本・イタリア社会保障協定、四協定の審議で、社民党は賛成の立場です。

 投資協定や社会保障協定を結ぶに当たりまして、それぞれの地域との関係、それから、外国人労働者を日本もたくさん受け入れる時代になっております。それぞれの国、例えば日本人が、または日本国籍を持つ者が諸外国で働く場合もありますし、それから外国人の皆さんが日本に来て働く、グローバルな経済の中で日本も非常に変わってまいりました。そういう外国人労働者の問題なども含めまして、この社会保障協定について質問をしたいと思います。

 さて、その中で、まず最初に、日本・ウズベキスタンの投資協定についてなんですけれども、一昨日の十五日にも、中国、ロシアと、それから中央アジア四カ国が入った上海協力機構の首脳会議がロシアのエカテリンブルクで行われています。ロシア大統領や胡錦濤国家主席も出席してということになっています。

 この中央アジアを含めて、そこにロシア、中国と、非常に戦略的に連携、または、中国とロシアの中ではちょっとした覇権争いみたいなものも見受けるわけなんですけれども、それにしましても、この地域が固まって会議をこの間ずっと続けております。

 さてそこで、日本政府としては、この中央アジア四カ国も含めての上海協力機構とはどういうような連携をしているのか。それから、その中で、中央アジア四カ国、非常に地理的にも、後でちょっとアフガニスタンとの関係も伺いたいんですけれども、軍事上も、そして経済上も非常に重要な位置を占めております。

 ですから、まず最初に、おとといも会議がありましたので、どういう関係であるかを御説明いただけますか。

伊藤副大臣 御指摘の上海協力機構、SCOは、ロシア、中国及び中央アジア四カ国による地域協力の枠組みなわけでございます。

 我が国は加盟国ではありませんが、同機構が中央アジア及びその周辺地域の安定にどのように寄与していくのか、非常に注視しているわけでございます。

 この点に関して、本年三月、SCO議長国ロシアが主催し、SCOが後援するアフガニスタン特別会合が開催され、我が国もここに代表団を派遣し、アフガニスタンの安定に向け関係国と意見交換をしております。

 我が国が現時点でSCOに提起している問題は特にはありませんが、今後とも、このSCOが透明性を維持しつつ、地域の安定と発展に寄与していくことを期待しているところでございます。

辻元委員 おとといの会議にはインドとパキスタンもオブザーバーで参加していると聞いております。この中央アジア、中国、ロシア、そしてインド、パキスタンというのは、物すごい大きな、ユーラシアの一つの固まりになるわけですね。ここと日本が、やはり同じアジアの国ですから、どう連携をとっていくかというのはとても大事なことだと思うんです。

 今までは日米関係、もちろん日米関係は良好であらねばならないと考えておりますけれども、アジアの中で、この日米韓というのと、そして中国、ロシアを初め、中央アジア、そしてインド、パキスタンと。日本は、日米韓、これはずっと連携してやるんだという話だったんですが、やはり私、将来ここが対立してもだめですし、それから、インド、パキスタンという、先ほどから核の問題が出ていますけれども、核をNPTに入らずに保有している、そして、パキスタンは今政情不安になっておりますので、このおととい開かれた会議などに参加している国々と日本がさらにどう連携をとっていくのか、今、現状は御説明いただいたんですけれども、非常に重要な位置にあると思うんですね。

 アメリカは割かし、いきなりそこに入りにくいんじゃないかなと。ですから、日本のポジションはとても大事になると思うんですが、いかがでしょうか、大臣。

中曽根国務大臣 上海協力機構には、先ほど副大臣からも御答弁申し上げましたけれども、我が国も代表団を派遣いたしまして、アフガニスタンの安定に向けて意見交換を行っているわけであります。

 中央アジア地域の各国との関係それから日米韓の関係ということでお話がありましたけれども、日米韓はもう従来から、それぞれ、日米また米韓、安全保障の条約を結びながら、安全保障面のみならず、いろいろな面で緊密な関係を有しているわけですが、特に対中央アジア地域という面で考えますと、中央アジアというのは、ユーラシア大陸のまさに中央に位置する地政学上の要衝でもありまして、またエネルギーとか鉱物資源にも恵まれているわけでございます。

 したがいまして、この地域の安定と発展というのは国際社会全体の安定にとっても極めて重要でありますが、我が国は、こういう中央アジア各国との二国間の協力の強化に努めるということがまず一つ。

 それから、中央アジアプラス日本、こういう対話の枠組みを通じまして、中央アジア各国との対話、交流に努めるとともに、中央アジアの国々が自立的でまた安定した地域として発展するための地域内協力の促進にも努めておりまして、今後とも、このような方針のもと、この地域の諸国との関係発展にも努めたい、そういうふうに考えているところでございます。

辻元委員 この間、この委員会でも、アフガニスタンの問題、何とか出口戦略を見つけてアフガンを和平の方向に持っていくべきだと、前に安保委員会でも、大臣とも大分私も議論してまいりました。

 パキスタンが非常に今不安定な状況になっております。そうすると、特に私が心配なのは、アフガニスタンの軍事的な側面、オバマ大統領がどう戦略を変えてくるのか。しかし、日本としては、やはり民生部門、特に人道支援など、空爆もこの間ふえておりまして、これからますます必要になってくると思うんです。しかし、パキスタンの特にトライバルエリアというアフガニスタンと国境を接しているところが今非常に混迷を深めております。そうなると、中央アジアの諸国と連携しながら、北からの人道支援の物資の運搬とか、それから協力関係、そういうことが特に大事になってくると思うんですね。

 アメリカは、一たん米軍基地を引き揚げたり、また、オバマ大統領になって、米軍がそこを通行させてほしいというような交渉も始めているようなんですけれども、日本はアフガニスタンに対して、軍事面ではなく民生部門、特に人道支援で中央アジアと連携をしていくというようなリーダーシップをとるべきじゃないかと私は思っております。陸路でしかアフガニスタンは物を運べないんですよ。私たちも支援を今までいろいろしてきたわけですね。

 ですから、ぜひそういう働きかけも、投資協定をして経済的な協力、それから私はもう一つ、この中央アジア諸国も含めて上海協力機構といろいろな話し合いをしていただきたいですけれども、環境面ですね、温暖化対策であったり、日本の技術を利用した環境面での協力、それから、アフガニスタンなどに対する人道面での協力というような、多方面の働きかけをしてほしいと思うんです。

 大臣、アフガニスタンの和平交渉のリーダーシップをぜひ中曽根大臣にとっていただきたいと私はずっと言っておるわけですが、人道面でも中央アジア諸国と協力して、本当に子供やそれから貧困層の人たちが今苦しんでいますので、リーダーシップをとる話し合いを持ちかけられたらいかがでしょうか。

中曽根国務大臣 委員がおっしゃいますように、アフガニスタンのテロを初めとしたいろいろな諸問題の解決のためには、パキスタンやイランや、また今お話にありますような中央アジアの国々、この地域も含めた広域でのいろいろな対策あるいは連携協力が必要だ、そういうふうに思います。特に、隣接をしております中央アジア地域の平和と安定というものも極めて重要なわけであります。そのために、我が国は、先ほど申し上げましたけれども、特にアフガニスタンと中央アジア、この地域を一体としてとらえて支援を行うべきである、そういう考えにも立っております。

 こういう観点から、最近の例では、テロや麻薬などへの対策といたしまして、アフガニスタンと国境を接しております中央アジア諸国の国境管理能力の強化のために、OSCE、これは欧州安全保障・協力機構でございますが、これが実施をいたします関連事業の支援のために二百七十二万ユーロを拠出しているところでございます。

 また、まだ実現しておりませんが、中央アジア諸国との外相会合というものも私ども開催したいと思っておりまして、これについては、今後これらが開催できるように、そしてこの地域の平和と安定の問題あるいはアフガニスタンの問題のための議論をする、そういう会合を開催したいと今思っているところでございます。

 委員から、環境面、人道面、そういう面での協力、多方面的な協力というお話がありました。当然のことながら、これらも大事なことでありますし、特にアフガニスタンにおきましては、ここでは申し上げませんけれども、今までもいろいろな面で人道面的な支援を行っておるところでございます。

 また、隣のパキスタン、この地域に関しましては、御案内のとおり、四月に支援国会合を東京で開きまして、各国の協力もいただいたところで、プレッジの表明があったところでありますが、これは、今後どういうふうに具体的にやっていくかというのが大きな課題でありまして、こういう面でも積極的に我が国はリーダーシップをとっていきたいと思っています。

辻元委員 投資協定ということで、お互いに投資し合う、そして経済的発展をしていくという基本は、やはり信頼関係とか、それから、お互いにどれだけ一緒に物事を進めていくかということが基本だと思います。

 今会議を開かれるとおっしゃいましたので、選挙がありますので、その前ですか、いつ開かれるんですか。どなたが外務大臣になるのか、もうかわっているかもしれないので、総選挙が終わったら。いつ開かれますか。

中曽根国務大臣 ちょっと参考人の方から正確に述べさせたいと思いますが、できるだけこれは早期に開きたいと思っているところでございますが、先方、相手もあることでございますし、これは一カ国でございませんので、その辺の調整が今後必要だと思います。参考人からもう少し正確な、詳しい我が国の考え方を申し上げたいと思います。

兼原政府参考人 事実関係だけお答え申し上げます。

 中央アジアプラス日本の外相会合というものは、二〇〇四年八月に第一回目が立ち上がりまして、アスタナ、カザフスタンで開催いたしました。その後二回、二〇〇五年、二〇〇六年と高級事務レベルの会合をやっておりまして、二〇〇六年の六月に第二回の中央アジア・日本外相会合を東京で開催いたしました。その後、二〇〇七年、八年と高級事務レベルの会合を行っておりまして、今第三回目の外相会合を去年の末からずっと日程を調整しておりますが、なかなかちょっと日程が合わないという状況でございます。

辻元委員 そうしましたら、これはまたちょっと、アフガニスタンのことにつきましても、周辺諸国との協力体制ということで本委員会で質問したいと思いますので、次回に回したいと思います。

 といいますのも、次の社会保障協定関係で、先ほど申し上げましたように、二国間の、例えば年金の調整とか、そういうことはこれからますます出てくると思うんですね。しかし、それだけではなくて、日本から海外に働きに行く、そして海外からもたくさん来ていただくというような戦略をトータルにどういうようにつくっていくかという、日本は曲がり角に来ていると思うんです。

 この社会保障協定も、先ほどからも議論が出ておりますけれども、なかなか前に進まなかったり、それから、その話し合いをしてから随分時間がかかったというような指摘もございましたけれども、トータルな政策として、日本はこれからどんどん迎え入れていく側にもなるわけですから、どういうふうにしていくべきかということを、今の現状の検証と今後の展望ということで質問をしたいと思います。

 きょうは、内閣府の皆さんや、それから文科省の皆さんや厚労省の皆さんなど、関係の省庁の方も来てくださっています。それはやはり、特に外国人の日本への受け入れ体制というのは、これは外務省ももちろん関係しますけれども、トータルに日本がどういうような国を目指すのかということに関係してくる、かなり今の日本にとっては大テーマの一つだと思うんですね。

 その中で、まず最初に、経済財政改革の基本方針二〇〇八で、これは内閣府が取りまとめになったかと思うんですけれども、この中で、「これからは、「海外に出る国際化」だけでなく、「迎え入れる国際化」によるメリットを享受しなければならない。」というように方針をお示しになっております。この迎え入れる国際化によるメリット、迎え入れる国際化というのはどういうことを具体的におっしゃっているんでしょうか。まずお聞きしたいと思います。

舘政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生の方からも御指摘のありましたように、外に出るだけでなく、迎え入れる国際化ということが重要でございます。これは基本方針二〇〇八で記述されております。

 その趣旨は、これまで日本経済が輸出や対外直接投資で海外に出る国際化を進めてまいりましたけれども、その一方で、世界経済のグローバル化のメリットを完全に享受するためには、成長する世界の活力を受け入れて、ともに成長する経済をつくっていきたい、そういう趣旨で、こういう観点に立って、海外からの新しい発想、最先端の技術、また高度な人材の受け入れといった、迎え入れる国際化について言及したところでございます。

 具体的な内容といたしましては、EPAや投資協定等の締結促進、それから便利な空港、開かれた空路を目指す空の自由化、対日投資の促進、拡大、高度人材の受け入れ拡大といった施策を基本方針二〇〇八には盛り込んでございます。

辻元委員 そうしますと、実現するに当たってそれぞれの省庁が集まって具体的な話し合いを行っているようなんですけれども、その中で、外国人労働者問題関係省庁連絡会議が設置されていると思うんですが、今のような方針、迎え入れる国際化も含めて、今この会議ではどのようなことが課題として上がっているんでしょうか。問題点ですね。

 といいますのも、迎えるという方針なんだけれども、迎え入れる外国人の、例えば高度な技術を持った人とか働く人と言っていますけれども、後で一つ一つ検証していきたいんですが、今、経済危機を迎えて、実際に日本に来ている、働いている外国人の労働者が、生活や社会保障やそして子供たちの教育というところで非常に危機に直面している。それは、この半年、さらに深刻化しているわけですね。

 ですから、例えば、日本から外国に働きに出ていった人にむちゃくちゃな扱いをしていたら、外務大臣は怒って、その国に対して、ちょっと、ちゃんとやってもらわな困るじゃないか、こうなるわけですね。では、果たして日本は迎え入れている外国人に対してどうかしらと。

 特に、経済危機がありまして、派遣切りと言われる中には外国人の人たちもたくさんいるわけですね。その点についてこの間国会でもいろいろな委員会で問題提起がありましたので、経済危機と言われて半年以上たっておりますので、どのように対策したのか、また、補正予算などで何か対応しているのか、そういうことをきちんと確認していきたいと思います。

 そういう意味で、まず、この連絡会議で、そういう状況も踏まえて、外国人の働く人たちの問題はどこにあるというように認識されているんでしょうか。

土屋政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の外国人労働者問題関係省庁連絡会議でございますが、これは外国人労働者を中心といたしました外国人の受け入れに関する諸問題を検討するという場として設置をされておるものでございまして、最近においては、定期的に課長級の会議を開催して、幅広く外国人労働者をめぐるさまざまな課題あるいは施策の状況、そういったものを関係各省庁間で情報共有を図り、また意見交換を行っているところでございます。

 直近では、ことしの四月の二十四日に開催をいたしまして、六月、今月に設定をしておりますが、外国人労働者問題の啓発月間というのをやっております、これについての各省の取り組みを取り決めるとともに、また、雇用や教育の問題を中心とした施策の実施状況ないしは今年度の実施について関係省庁間で意見交換を行っている、こういう状況でございます。

 特に、先生御指摘のございました外国人のいろいろな雇用情勢等々を踏まえた議論につきましては、実は、この会議におきまして、平成十八年に「生活者としての外国人」に関する総合的対応策というものを取りまとめをいたしまして、この中には、雇用の問題、教育の問題等々含まれてございます。

 この会議におきまして、その後、実施状況をフォローアップしてまいったところでございますが、特にこのテーマについては、今後取り組みが重要だということもございまして、本年一月に、内閣府に定住外国人施策推進室というものが設置をされました。こちらの推進室の方で、ことし一月それから四月に、定住外国人支援に関する対策の取りまとめも行っておるところでございまして、私どもの担当しておりますこの連絡会議の立場からも、この推進室との連携を密にしていくということにしているところでございます。

 以上でございます。

辻元委員 その中で、一、二、具体的な案件についてお聞きしたいんです。

 一つは、日系ブラジル人の皆さんなんです。やはり、日系の方ということで、規制緩和をし、そして、日本語や日本の文化にも他の外国人の方よりも親しまれているのではないかということで、日本の中でたくさんの方を受け入れて、ともに共生し、そして日本で働いていただこうというような方向に政府としてかじを切ったと思うんですね。ところが、今、現状、ではどうなっているかということをちょっとお聞きしていきたいわけですが、それが一つです。

 それともう一つは、これもたくさんの委員会でも指摘されております、外国人の研修・技能実習制度について問題点が多々国会でも指摘をされました。日本に来て技能を学んでもらうんだと言っていたにもかかわらず、低賃金で、本当に劣悪な状況の中で、ただ単純労働、そして切り捨てていくというような点が多々指摘されてまいりました。

 こんな指摘をされたら日本は恥ずかしいわけですね。日本に何か技術を学びに行くんだと門戸を開いたとか、それから、日系の方に来てもらって、働くんだと言っていて、しかし、来てみたら、違法なこともたくさん行われていて、単に低賃金で働かされている。こういう状況をきちんと改善していかないと、私は、お互いに、社会保障協定を結んで、グローバル化の中で、きちんと人的交流、そして日本にも優秀な方々に来ていただいて、少子高齢化の中で、日本も多民族になっていくと思うんですけれども、乗り切っていこうということにならないと思うんです。

 さてそこで、まず最初に日系ブラジル人の皆さんの話なんですが、九〇年に法改正が行われて、この九〇年の法改正が行われた時点と現在で、どれぐらい数がふえて、日本で働いているまたは暮らしていらっしゃるのか、まずお答えください。

高宅政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる日系ブラジル人ということに限定しての統計というのはつくっていないわけですが、ブラジル国籍を有する方で、在留資格が日本人の配偶者等、あるいは定住者、永住者、あるいは永住者の配偶者等、こういった方の多くが日系人と思われますので、これにより算出した数字でお答えしたいと思います。

 一九九〇年のブラジル人の新規入国者数は約六万三千人でございますが、そのうち、これら四つの在留資格による入国者は九千人でございます。一方、在留者数につきましては、同年末の外国人登録を受けている方の数、これが約五万三千人となっています。次に、昨年、二〇〇八年中でございますが、この場合のブラジル人の新規入国者数は約三万一千人、そのうち、これら四つの在留資格による入国者は一万三千人でありますが、同年末の外国人登録者数は約三十万七千人となってございます。

辻元委員 今、三十万というふうにいろいろなところで私も聞いているんですね。こちらで結婚された方もいれば、子供たちが日本で学んでいるという人たちもたくさんいるわけです。

 これは、学校に行っている子供たちの数というのはどれぐらい、文科省の方、いらっしゃっていますでしょうか。

木曽政府参考人 ブラジル人学校の実態でございますが、ことしの二月二日の数字で八十六校ございます。子供たちの数は三千八百八十一人でございました。

辻元委員 実際に働いている方々、一つは、今、日系ブラジル人の方々の話をしましたけれども。それから、日系ブラジル人の方々、そしてさらに、大きな意味で外国人労働者として日本に来て働いている人たちの失業率というのはどれぐらいとか今現状どうなっているかというのは、どこの省庁のどなたが把握されているんでしょうか。

 よく、この間、失業率が五%になったという報道がされるんですけれども、確実に今外国人の労働者はふえている、そしてさらに、一番最初に首を切られているわけですね。この人たちも日本の中の社会を構成する一員であるし、それから、景気のいいときは、結果的には雇用の調整弁のように使われてしまっているという現状があるわけですが、一つの社会を支え経済を支える非常に大きな力を発揮してくださっているわけです。

 ですから、失業率のカウントというのは、今よく政府が発表する失業率というのは外国人は含まれているのか、そして、例えば日系ブラジル人の方とか、ある程度日本も受け入れを促進していこうというように受け入れた人たちの失業率というのは把握しているのかどうか、お答えください。

岡崎政府参考人 失業率自体、労働力調査の結果でございまして、これは内閣府の所管でございます。これにつきまして、詳しいことは内閣府にお聞きいただきたいと思いますが、私どもが把握している限りでのブラジル人等の方の雇用状況でございます。

 これについては、ハローワークに求職者として来られるという形で把握しておりますが、昨年の九月ごろまでは毎月の新規求職者が数百人程度でございましたけれども、十月以降千人台に乗りまして、それで、十二月には二千五百人ぐらい、それから、一月、二月はそれぞれ五千人ぐらいということでございます。その後、少し落ちついておりますが、やはり三、四千人、毎月、新規求職者が来ている。

 したがいまして、これは就職される方とかおりますのでそこの差し引きはありますけれども、やはり、現にハローワークに来られている方だけで二万とか、そういう数字にはなっていると思います。あとは全体の人数との関係である程度推計するということになろうと思いますが、ハローワークに来ておられる方でそのぐらいいるというふうに認識しております。

辻元委員 今、ハローワークに来ている人の人数ということだったんですが、私は、政府として、これから開かれた、さっき国際化の中に、迎え入れる国際化というのがありました。そうしますと、外国人労働者、今どれぐらいいらっしゃっていて、そして失業率はどうなっているかとか。今までは、日本でも失業率が上がった下がったと、私たちも、一喜一憂と言うとおかしいですけれども、政治の場にいる者は物すごい心配するわけですね。しかし、その外に置かれちゃっているわけですよね。これで迎え入れる国際化だとか、それから日本の経済の活力をこれからつくっていくんだというようにはならないと思うんですね。

 これは内閣府の所管と今おっしゃいましたですか。これからは、外国人労働者の失業率についてもきちんと、ハローワークに来た数だけ調べているというのではなくて、統計として日本はちゃんと、それ以外、日本人というか日本国籍の人はとっているわけですから、とっていく方向で検討なさった方がいいと思うんです。

 というのは、失業が潜ってしまっているわけですね。例えば、学校の話もそうなんですけれども、これは埼玉県の例で、親が失業してしまって、何とかアルバイトして食べつないでいるけれども、ブラジル人学校は普通の私塾扱いですから、月に何万円も授業料がかかって、子供たちが学校にも行けない状況になっている。しかし、どこに言っていっていいかわからないとか、それから、雇用主がちゃんと社会保障もつけてくれていないというような事例があちこちで出てきているわけですね。

 そうしますと、政府として、トータルに外国人労働者の失業率であったり状況というのをもっと積極的に、先ほど失業率は五%だというのはきちんと統計をとってカウントしているわけですから、把握し、そして対策を練っていくことが必要だと思いますが、いかがですか。

岡崎政府参考人 一つ訂正させてください。労働力調査の所管は内閣府じゃなくて総務省でございます。済みません。

 きょう、ちょっと総務省がおられないので、私ども労働を担当している立場からお答えしますと、やはり、失業率の統計の手法の中で把握できるかどうかということになると、技術的になかなか難しい気もいたします。ただ、おっしゃいますように、外国人労働者、特に日系ブラジル人等、こういう形の方々がどういう状況になっているか、これをきちんとした形で把握しながら対策を立てていくということ自体は重要だろうというふうに思っています。

 私どもは、でき得る限りハローワークを中心にその状況を把握しながら対応していきたいというふうに思っておりますので、そういう中で対応させていただきたいというふうに思います。

辻元委員 それと、私、外国人労働者を支援するNGOの皆さんとかともいろいろ意見交換するんですけれども、ハローワークに行くことすら知らない人もたくさんいるわけですね。私は、やはり、日本がこれからどういう国の形をつくっていくのか、多民族共生型になっていかざるを得ないし、いくべきだと思っています。今、一民族一政治形態の時代はもう終わっているわけなんですよ。ですから、そこの発想を切りかえていかないとまずいと思っているんですね。

 もう一点、ちょっと伺いたいんです。これは法務省ですか。今回、日系人離職者に対する帰国支援事業というのを、この経済不況の中で、帰国される方は積極的に、帰っていただくのにも経済的にも応援しようということで支援をお決めになったようなんですが、これは法務省ですね。

 その中で、入管制度上の措置として、支援を受けて帰った人は、当分の間、同様の身分に基づく在留資格による再入国は認めない。日本の政府の補助も受けて一回国に、もう仕事もないし、子供も学校も行かされへんし、大変やからと帰った人は、次、再入国を当分の間認めないというふうになっておるんですよ。

 これは、認めない理由は何か、法的根拠はあるのか、それから、当分の間というのはどれぐらいの間なのか、お答えいただきたいと思います。

高宅政府参考人 日系人離職者に対する帰国支援事業は、厳しい再就職環境のもとで、我が国での再就職を断念されて帰国することを決意された、こういう方に対し帰国支援金を支給するというものでございます。その方については、当分の間、再度同様の身分での入国は認めないということとしております。

 まず、その期間ですが、当分の間が具体的にどの程度の期間であるかということにつきましては、本事業開始から原則として三年をめどとしつつ、雇用、経済情勢の動向等を考慮しつつ見直しを行うということを想定しております。

 それから、法的根拠についてでございますが、基本的に入管法の建前は、外国人個人が入国しますので、個々に外国人の審査を行うということになるわけでございます。ただ、本邦において安定して在留活動を継続することができるということが必要でありまして、それの観点からいいますと、やはり、日本で不幸にして離職されて、再就職の見込みがないということで帰られたということから、当面こういう条件に適合するということは難しいんではないかということで認めないということになると思います。

辻元委員 今、三年とおっしゃいましたですか、当分の間というのは。それは公表しているんですね、三年というのは。

高宅政府参考人 三年と明示してというか、三年をめどに検討するということで公表している、ちょっとこれは厚生労働省の方になりますが、公表しているはずでございます。

辻元委員 はっきりこういうふうにするということを示した方がいいと思うんです。外国人の方はすごく混乱しているわけですよ。でも、また日本にも来たい、しかし今とりあえず緊急避難的に一たん帰るとか、いろいろな人がいます。ですから、三年だったら三年できちんと政府は方針を示した方がいいと思う。当分の間とか、そんなのは国際的に通用しないと思うんですね。

 次にもう一点、日系人の皆さんの学校の問題で、この間、学校に行けない子供たちが出てきております。私は、子供は国籍とかそれから親の経済状況に関係なく平等だと思うんですね。実際に日本は子どもの権利条約も批准しておりますし、ひとしく日本にいる子供たちに教育を保障していくという国であらねばならぬと思うんですよ。

 そこで、一点は、ブラジル人学校の場合は、先ほども言いました、学校運営に消費税もかかっていますね。さらには、子供たちの通学にも、通学割引も使えない。そうすると、働く中でしんどい人たちの子供たちに一番負担がかかってしまっていると思うんですよ。

 経済危機というか、経済状況も厳しくなる。それから、これからさらに外国人の子供たちもふえてくると思います。日本はそういう方向に行くとはっきり政府の方針で示しているわけですから。ですから、この間も国会で議論がありましたけれども、その議論を受けて今どういうように改善をされているのか。

 それから、文科省は、例えばこの消費税の問題とか、それから、寄附を受けたときの優遇も、欧米の学校なんかは優遇をたくさん受けられるところもあるんだけれども、受けられていない現状、これは財務省なんかに文科省が言うた方がいいと思うんです。何でこっちができてこっちがと。ですから、そういう改善がどうなっているかということを最後にお聞きしたいと思います。

 時間厳守ですから、その答弁をいただく前に、なぜこういうことを申し上げているかといいますと、今回、社会保障協定を結ぶ相手のスペインなんです。

 EU諸国、ヨーロッパでは、移民とか外国人労働者の皆さんを経済への貢献で非常に肯定的にとらえて、制度を整備していっているわけですね。二〇〇〇年から二〇〇五年の十五カ国の年平均経済成長率二%のうち、〇・四%分が移民の流入による経済だと言われています。

 そしてさらに、今回、社会保障協定を結ぶ相手のスペインでは、九〇年代以降、南米やアフリカ、東欧などからの移民の受け入れが急増した。この十年間で外国人は約七倍にふえ、建設や農業、製造業などの現場で経済を支えた。その分、社会保障をきちんと手当てしているわけです。そして、スペインにとどまれば住居や医療、教育など最低限の公的サービスは保障されている、だから頑張るんだ。そして、移民が集中する州の政府が、失業した移民に職業訓練や言語教育を施す動きもある。私たちが社会保障協定を、きょう認められると思うんですけれども、その相手のスペインはこういう状況なんですね。ですから、日本からスペインに働きに行く人もいてる、しかし向こうからも来る、これはスペインだけじゃありませんけれども。

 ですから、最後に、子供の教育の問題、ずっと国会で指摘されてきたことを、この半年ぐらいでどう改善されたのか。それから、財務省に働きかけはどうですか。いかがでしょうか。

木曽政府参考人 ブラジル人学校等に対する支援といいますか、寄附税制の問題もございますし、通学定期の問題もございますし、消費税の問題もございます。これらにつきましては、各種学校に認可されなければこの恩典を受けられないという仕組みになっておりまして、この認可権は都道府県知事が有しておりますので、現在、各都道府県に対して、ぜひブラジル人学校等を積極的に各種学校に認可していただきたいということをお願いしているところでございます。

 ただ、非常に零細な学校が多いものですからなかなか実態が進んでいないということで、例えば通学定期につきましてはJR等に個別に要望を伝えて、今その交渉をしておるところでございます。

 いろいろな意味で各種学校の問題もございますが、現在、文部科学省では、特に不就学になっている子供たち、自宅にいる子供たちの問題について非常に深刻な問題だというふうに受けとめておりまして、一つは公立の学校に速やかに入っていただくためのいろいろな施策を進めておりますと同時に、そういう子供たちのためのクラスといいますか、定住外国人の子供就学支援事業というものを新たに立ち上げて、教科指導あるいは日本語教育指導をその中で行いたいということで、三年間で三十七億円の予算をこの補正予算でいただきまして、現在準備をしておるところでございます。

辻元委員 ちょっと時間がありませんでしたので実習制度はできなかったので、また次の機会に行いたいと思います。

 外務大臣、日本の子供たちが外国で学校に十分行けないような状況になったら、きっと外務大臣は、どなり込みには行かないと思いますけれども、その国に対してちゃんとやってくれよと。ですから、やはり日本もやらなあかんと思うわけですね。ですから、そういう問題意識でまた外務委員会でも質問していきますので、きょうはこれで終わりますが、よろしくお願いいたします。

 以上です。

河野委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

 外務委員会の委員の皆様におかれましては、定時に委員会が開会できますよう、遅刻なきよう御出席をお願いしたいと思います。水曜日と金曜日が定例日でございますので、よろしくお願いいたします。

    ―――――――――――――

河野委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とウズベキスタン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、投資の促進、保護及び自由化に関する日本国とペルー共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とスペインとの間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、社会保障に関する日本国とイタリア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

河野委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

河野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

河野委員長 次回は、来る十九日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.