衆議院

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第8号 平成26年4月2日(水曜日)

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平成二十六年四月二日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      石川 昭政君    石原 宏高君

      大野敬太郎君    勝沼 栄明君

      河井 克行君    木原 誠二君

      黄川田仁志君    小林 鷹之君

      河野 太郎君    島田 佳和君

      田所 嘉徳君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    藤井比早之君

      星野 剛士君    牧島かれん君

      武藤 貴也君    小川 淳也君

      岸本 周平君    玄葉光一郎君

      松本 剛明君    河野 正美君

      阪口 直人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    青柳陽一郎君

      小池 政就君    笠井  亮君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        三ッ矢憲生君

   経済産業副大臣      赤羽 一嘉君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  佐々木裕介君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  近藤 正春君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長谷川浩一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 和田 充広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 山上 信吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 丸山 則夫君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   北野  充君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    片上 慶一君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           田中 正朗君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           森   清君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           後藤  収君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      高橋 泰三君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房審議官)          片山  啓君

   政府参考人

   (原子力規制庁長官官房原子力安全技術総括官)   竹内 大二君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力規制部長)          櫻田 道夫君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     勝沼 栄明君

  石原 宏高君     石川 昭政君

  河野 太郎君     田所 嘉徳君

  渡海紀三朗君     藤井比早之君

  玄葉光一郎君     岸本 周平君

  村上 政俊君     河野 正美君

  青柳陽一郎君     小池 政就君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     牧島かれん君

  勝沼 栄明君     大野敬太郎君

  田所 嘉徳君     河野 太郎君

  藤井比早之君     渡海紀三朗君

  岸本 周平君     玄葉光一郎君

  河野 正美君     村上 政俊君

  小池 政就君     青柳陽一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     あべ 俊子君

  牧島かれん君     石原 宏高君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とアラブ首長国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百八十五回国会条約第一二号)

 平和的目的のための原子力の利用における協力のための日本国政府とトルコ共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(第百八十五回国会条約第一三号)


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 第百八十五回国会提出、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とアラブ首長国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び平和的目的のための原子力の利用における協力のための日本国政府とトルコ共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両件につきましては、第百八十五回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とアラブ首長国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 平和的目的のための原子力の利用における協力のための日本国政府とトルコ共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 引き続き、お諮りいたします。

 両件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官長谷川浩一君、大臣官房審議官和田充広君、大臣官房審議官山上信吾君、大臣官房参事官山田滝雄君、大臣官房参事官下川眞樹太君、大臣官房参事官丸山則夫君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長北野充君、中東アフリカ局長上村司君、経済局長片上慶一君、内閣官房内閣参事官佐々木裕介君、内閣法制局第一部長近藤正春君、文部科学省大臣官房審議官田中正朗君、経済産業省大臣官房審議官森清君、大臣官房審議官後藤収君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長高橋泰三君、原子力規制庁審議官片山啓君、原子力安全技術総括官竹内大二君、原子力規制部長櫻田道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。武藤貴也君。

武藤(貴)委員 皆さん、おはようございます。自由民主党衆議院議員、滋賀四区選出の武藤貴也でございます。本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。(発言する者あり)

 今、河野先生からきつい応援の言葉をいただきました。ありがとうございました。

 まずは、きょう、原子力協定についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 トルコとUAE、アラブ首長国連邦と先般原子力協定を結んだということでございますけれども、この協定には一つ大きな違いがありまして、トルコの方はこのように書かれています。両国政府が「書面により合意する場合に限り、トルコ共和国の管轄内において、濃縮し、又は再処理することができる。」合意した場合に濃縮して再処理することができる、トルコの方はこう書かれている一方で、アラブ首長国連邦の方は、その九条で、「アラブ首長国連邦の管轄内において、濃縮され、又は再処理されない。」という記述になって、大きな違いが出ています。

 この大きな違いに至った経緯と、大臣がこれまで臨時国会で御答弁されているんですけれども、改めてお伺いしたいんですが、このトルコ管轄内において核物質を濃縮して再処理することについて合意しないかどうかを再確認させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

岸田国務大臣 トルコとの原子力協定の交渉につきましては、我が国として、核不拡散の観点、さらにはトルコの原子力政策、そして国際的な議論等を総合的に勘案しながら協定の交渉を行ってきました。

 そして、御指摘の規定についてですが、トルコ側から、トルコが他の国と結んでいる協定の表現ぶりですとか、あるいはトルコ国内での議論等を勘案して、トルコの考え方が示されました。その上で我が国としては交渉を続けてきたわけでありますが、トルコの濃縮、再処理を禁止するということについて実態は確保できたという判断に基づいて、御指摘のような現在の規定ぶりに至ったものであります。

 我が国の立場を申し上げますならば、協定の対象となる核物質のトルコ国内における濃縮、再処理につきましては、認めるつもりは全くありません。そして、このことにつきましては、トルコ側に、協定の交渉の場等を通じて再三にわたってしっかりと伝えてきております。

 加えて、こうした考え方は、行政の立場にとどまらず、やはり国会、議会に対しましても、私が委員会、国会の場に出席をさせていただき、こうしたトルコの濃縮、再処理を認めることはないということを明言し、そして国会の議事録にとどめさせていただいてきました。

 本日、この委員会で改めて御質問いただきました。改めてこの場で、政府としましてトルコの濃縮、再処理を認めることはないということを明言させていただき、議事録にとどめさせていただきます。

武藤(貴)委員 大臣からしっかりとした御回答をいただきました。今、合意することはないと断言をいただきましたので、私としても納得をさせていただきたいと思います。

 それと、もう一点確認をさせていただきたいのですが、今、自民党内でエネルギー基本計画というのが策定されていると思います。このエネルギー基本計画では、日本の原発については可能な限り縮小していくという記述があります。

 まだ定まっていないエネルギー基本計画なんですけれども、原子力協定を結ぶ、そしてこの中には、今後も、技術協力ですとか、あるいはいろいろな面で原子力発電所の建設や維持管理に日本は協力していくことになると思うんですが、今後、こういう協定を結んでおいて原発をなくすということは、事実上、不誠実というか難しいと思うので、この整合性ですね、日本の国内のエネルギー基本計画とこの協定の整合性をしっかり担保していただきたい。

 この点について、どなたか答えられる方、御答弁をいただいておきたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力協定と今検討中のエネルギー基本計画との関係についての御質問を頂戴いたしました。

 我が国は、原子力についての基本的な立場といたしまして、原子力の平和利用における三つのS、セーフガード、保障措置のS、原子力安全、セーフティーのS、核セキュリティー、セキュリティーのS、この三つのSというものを重視しておりまして、これらの分野における国際的な枠組みの強化ということに取り組んできているところでございます。

 原子力協定は、我が国が幅広い分野において原子力協力を行うに際しまして、平和的利用、不拡散を法的に確保し、三つのSの強化に資する重要な枠組みというふうに考えております。また、原子力関連資機材の移転というものも協定に基づきます協力の分野に含まれるわけでございますけれども、移転に当たっては、その平和的利用、不拡散というものが法的に担保されるということでございます。トルコ及びアラブ首長国連邦との原子力協定につきましても、これらの三つのSの強化に資する規定というのが盛り込まれているところでございます。

 お尋ねのエネルギー基本計画との関係について申し上げますと、政府の原案に基づきまして今検討が進められているところというふうに承知をしておりますけれども、現在の政府の原案におきましても、事故の経験から得られた教訓を国際社会と共有することで、世界の原子力安全の向上や原子力の平和利用に貢献していくとともに、核不拡散や核セキュリティー分野において積極的な貢献を行うことは我が国の責務というふうに記載をされているところでございまして、原子力協定の締結ということとエネルギー基本計画についての検討というものは整合的であるというふうに考えている次第でございます。

武藤(貴)委員 御答弁ありがとうございました。私としては納得させていただきたいと思います。

 時間が二十分しかございませんので、ちょっと話はかわるんですけれども、きょうはもう一点、わずかな時間ですが、尖閣諸島と集団的自衛権、今議論になっている点について、簡単に要点だけ御質問させていただきたいと思います。

 ここ数年、尖閣諸島周辺における中国の領海侵犯が増加しています。さらに言うと、ことしに入って、中国の領海侵犯が、回数はもちろん多いんですけれども、領域内に滞在している時間も長くなっているということが外務省によっても発表されています。

 なぜ中国が領海侵犯、領空侵犯を、何百回という数に及んでいますが、これだけ繰り返しているのか、国民は不安になっていると思いますし、一体そこで何をやっているのかということを思うと思います。

 中国が今何を考えているのかというと、恐らく、日本とアメリカの集団的自衛権の行使、日米安保の五条の「締約国は、日本国の施政の下にある領域における、」という文言を想定しているんじゃないかな。つまり、施政権が及んでいないということを証明しようとして、何回も領海侵犯を繰り返し、そこに長く滞在しているのではないか、私はこういうふうに想像するものであります。

 確かに、米国はこれまで一貫して、尖閣諸島は日米安保五条の対象だというふうに言っています。しかし、領有権については全く言及しない。さらに、条件がついていまして、この五条の文言そのものなんですけれども、施政権が及んでいる限りにおいて日米安保五条の対象ですよと。したがって、中国は今、たび重なる領海侵犯、領空侵犯を繰り返して、長く滞在することによって、施政権が及んでいないという理屈を構築しようとしているんじゃないかというふうに考えられます。

 日本はこれまで、確かに出ていけと言ってはいるんでしょうけれども、物理的に排除しないという意味で、事実上、それを許してしまっている。例えばロシアなんかは、漁船ですら銃撃して拿捕してという厳しい取り締まりがあるわけでありますけれども、日本はいまだかつてそういうことをしたことがない。これは、国際法上、実効支配が及んでいないんじゃないかという解釈がなされる可能性があるんじゃないかなというふうに私は考えています。

 そこで、たび重なるこうした中国の領海侵犯に対して、国際法上、やはり物理的にそれを排除するということを検討して、今後十年、二十年、この領海侵犯、領空侵犯が繰り返されていくと、アメリカが最終的に、施政権が及んでいないんじゃないかという解釈をする、このことを念頭にして対応していかなきゃいけないんじゃないか、このように思いますけれども、担当者の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

三ッ矢副大臣 先生の御質問に対して、三つの部分に分けてお答え申し上げたいと思います。

 一つは、我が国の施政権が尖閣諸島にきちんと及んでいるかどうかということについてであります。

 申し上げるまでもなく、尖閣諸島は歴史的にも国際法上も我が国固有の領土でありまして、現に我が国はこれを有効に支配しております。他方、どういう監視体制をとっているかということにつきましては、ちょっとこの詳細は、手のうちを明かすことにもなってしまいますので、コメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、中国公船が尖閣諸島沖で領海侵入を繰り返していることは事実でございまして、これは極めて遺憾なことでございます。引き続き、我が国の領土、領海、領空は断固として守り抜くという方針のもとに、関係省庁が連携して毅然かつ冷静に対処していきたい、このように考えておるわけであります。

 パートツーとしまして、実力で排除できないのか、こういう御指摘がございました。

 国際法上の一般的な理解として申し上げますと、公船は、旗国以外の国の管轄権からの免除というものを有しております。旗国以外の国が旗国の同意なく立入検査や乗員の逮捕等を行うことはできません。

 ただし、領海において外国公船が無害通航に当たらない航行を行っている場合、沿岸国は、公船が有する免除を侵害しない範囲で、無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる、このようになっております。ただし、これは条件がついておりまして、そのような措置は当該公船の侵害行為との比例性が確保されていないといけないということでございます。

 どういう措置をとるかということは個別具体的な状況に応じて判断する必要があるわけでございまして、正直申し上げて、ここで一概に一般論として申し上げることは非常に難しいと申し上げざるを得ません。

 それから、実効支配が揺らいでいるのではないかという御指摘があったと思いますが、我々としては、我が国の有効な支配はわずかなりとも動揺していない、このように考えておりまして、したがって、御指摘のございました日米安保条約との関係で、施政権といいましょうか、日本の有効支配は微動だにしていない、このようにお答え申し上げたいと思います。

武藤(貴)委員 今、実効支配がきちんとなされていると、結論としては最後の方で御答弁をいただいたんですけれども、これは日本側の解釈であって、他国から見れば、毎日のように、これだけの数、何百回、何千回という数を繰り返されて、毎日のように自国領のように領海、領空侵犯を繰り返されると、これは国際法上、実効支配が及んでいるのかと、解釈が分かれてくる可能性があるんじゃないかなということを私は指摘させていただきたいと思います。

 二十七分ということだったら、もう時間があと五分もないと思うので、集団的自衛権についてお伺いしたいと思うんです。

 私は、この集団的自衛権、今、自民党内で議論をしていますけれども、本来、国連憲章で言う自然権であって、国が本来持っている固有の権利だというふうに思っています。つまり、制限できない権利だというふうに思っています。

 何年か前に国連改革という構想が持ち上がったときに、その中の一つとして、日本が常任理事国入りをするという案がありました。ドイツとかインド、ブラジルとともに常任理事国入りをしたいという提案をしたと思うんですけれども、それぞれほかのドイツ、インド、ブラジルには共同提案国というのがありまして、例えば、ドイツなんかはフランス、ベルギーなんかが支持したし、インドなんかはスリランカが支持したし、ブラジルも、チリやペルーという周辺国が支持をした。しかし、日本の支持国というのは、実はアジア諸国で一カ国もなかったという現状があります。たしか、キリバスとか南太平洋の島国は支持していた国があったと思うんですけれども。

 戦後、ASEANを含めてアジアの国に、ODA等々、日本は莫大な支援を行ってきたわけですけれども、日本が国連の常任理事国入りをすると言ったときに、それを支持しなかった。これはなぜかというと、やはり中国の影響があって、中国が怖いんじゃないか、こういう見方があります。私も、中国に配慮しているんじゃないかというふうに思います。

 何で中国に遠慮しなきゃいけないかというと、日本が軍事的に全く頼りにならない。東南アジアの国々は、かつて、中国が南におりてきて大変な有事の事態に、武力行使に至ることも多々あるので、日本と同盟関係を結んでそれを抑止したいという構想があったと思うんですが、日本は同盟関係を結んでも集団的自衛権を行使できないから、一方的に守られるけれども日本が協力することはできないという今の国内法の状況があります。

 そこで、お伺いしたいんですけれども、国連憲章には、フランス語が正文だと思うんですけれども、ドロワナチュレルという表現で書かれています。つまり、自然権としての集団的自衛権というのが文言として書かれています。これを留保なしで日本は受け入れた以上は、国際法上の自然権として集団的自衛権を認めたということだと私は理解するんですが、それを日本国内の憲法上制限してきたという状況があります。

 それで、自然権としてこの集団的自衛権を受け入れて、自然権というのは、いかなる憲法や法律によっても制限できない権利のことを自然権というふうに、国際法の中で、あるいは法的に、国内法においてもそういう解釈、理解をされている、定義づけをされていると私は思うんですが、憲法上、自然権を制限することが可能なのかどうかということをお伺いしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 集団的自衛権につきましての国際法上の位置づけについて、私どもはちょっとお答えする立場にございませんけれども、集団的自衛権と憲法との関係について、政府は従来、我が国が国際法上集団的自衛権を有しているということは、主権国家である以上、当然ではありますけれども、一般に国家が国際法上の権利を行使するか否かは各国の判断に委ねられており、憲法その他の国内法によって国際法上国家に認められている特定の権利の行使を制限したとしても、国際法と国内法との間の矛盾、抵触の問題が生ずるわけではなく、法的には特段問題を生ずるものではないというふうにお答えをしてきているところでございます。

武藤(貴)委員 自然権が憲法によって制約できるかという質問だったんですけれども、私、これは、日本の国内政策判断として行使しないというのならわかるんですけれども、行使できない、つまり、ドゥー・ノットだったら理解できるんですけれども、キャン・ノットということだと思うんですよね、できないと言ってしまったら。

 したがって、集団的自衛権を憲法で制限することができるのかという質問にお答えをしていただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えいたします。

 私どもは政府の立場ですので、憲法のもとでできないというふうに申し上げておりますけれども、日本として、国民の意思として、憲法によって政府に行使させることをしないようにしているということでございますので、日本国憲法の判断としてしないということを決め、政府にできないとして禁止をしている、こういうことだというふうに理解しております。

武藤(貴)委員 質疑の時間が終了しましたのでこれで終わりますけれども、多分、日本の国内の議論というのは国際社会では全く理解されないと思うんですね。自然権というのは、制限できないから自然権と言っているんだと思います。そのことを念頭に置いて、今後、私も党内での議論に参加していきたいと思いますし、政府の中でも検討を進めていただきたいと思います。

 これで終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 おはようございます。公明党の岡本三成です。よろしくお願いいたします。

 初めに、岸田外務大臣にお伺いいたします。

 原発事故後の基本的な我が国の原発輸出の姿勢について御質問したいんですけれども、原発事故後、特に、安全神話に固まっていた原発の安全性にクエスチョンマークが投げかけられまして、今の日本国内の世論の多くは、できれば原発依存度を下げて、日本の国内がそれでもやっていけるのであれば最終的に原発ゼロを目指していきたいという世論の声は大変大きいと思うんですね。一方で、諸外国の原発に対する姿勢を考えてみますと、そういう事故を経験した日本からこそ、最も高水準の安全性の原発技術を供与してほしいという声が強いこともわかります。

 したがいまして、大臣もこの委員会で答弁していらっしゃるように、日本の責務として、この事故から学んだ教訓等を世界と共有することによって世界の原子力安全に貢献していきたいというこのスタンスは、理解はするんですけれども、どうしても、全体の政策としての一貫性を考えたときの国民の皆様への説明というのは、もうちょっと必要な気がするんです。

 その上で、諸外国は、例えば今回であればトルコとアラブ首長国連邦、それぞれ国内における電力の政策が決まっていて、ある一定の時期までに原子力の割合をここまで広げていきたいということですから、それに対して日本国政府が原発の輸出というのを許可しながら後押ししていくというのは国際貢献なんだというふうなスタンスも、理解はいたします。ですから、全体としての落としどころといいますかゴールという意味では、今回の協定をしっかりと結んだ上で、相手国の要求に対して国際貢献という立場から最高水準の安全性のものを輸出していくということは、理解はいたします。

 その上で、先ほど武藤委員の質問の中で、この委員会でも、昨年来、何回も大臣が、例えば、使用済み核燃料の濃縮等については認めませんと先ほどもおっしゃいましたけれども、これは、そういうふうに交渉の中で日本側の議事録もとっていらっしゃるという答弁も先週ありましたし、大臣がこのような場でそのことを大きく宣言されることの重みに関しては、全く違和感がないんですね。

 その上で、大臣もいつまでも大臣をやっていらっしゃるわけではないですし、安倍政権もどこかではかわるわけです。そうすると、将来の政府に対してくさびを打っておく、足かせをつけるというのはなかなか難しいことは理解しながらも、今、岸田外務大臣が書面で合意はしないとおっしゃっていることに関して、仮に将来の政権のどこかがそれを認めるようなことがあったとすれば、それは条約の改正になりますので、そのときには国会の新たなる承認が必要だというふうに私は考えるんですけれども、どのようにお感じになりますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、福島第一原発を経験した我が国として、こうした事故を通じて得た経験、知見を国際社会としっかり共有し、そして原子力の平和利用の安全性に貢献していく、こうした我が国の基本的な姿勢でありますが、当然のことながら、相手の国の原子力政策ですとか、あるいは核不拡散の観点ですとか、何よりも相手の国の要請等、具体的にはそういった諸点を勘案して対応していくということになるかと存じます。

 そして、御指摘のトルコの原子力協定における規定でありますが、先ほども答弁させていただきましたが、我が国としましては、トルコとの交渉の結果、実質的にトルコにおける濃縮、再処理は禁止できるという判断のもとにこういった規定ぶりになった次第です。そして、そのことについて、先ほども申し上げましたが、日本政府としては認めるつもりは全くありませんし、トルコ側にも再三伝えておりますし、国会においても何度も明言させていただいているということであります。

 そして、将来について、それを、国会の承認を必要とする等歯どめを考えるべきではないかという御質問だったと理解いたしますが、そもそもこの問題について承認のプロセスを考えること自体、将来そうしたものを認める可能性を認めることになってしまうのではないかと考えます。

 このことについては、我が国は、全く入り口の段階から、濃縮、再処理は認めないという方針で臨み、その実質をかち取るためにどうあるべきなのか、そうした方針で議論に臨み、そして、そうした考え方は、我が国国内だけではなくして、トルコ政府に対しましても正式な交渉の場でしっかり伝え、そして記録にとどめてきました。そして、国内においても、政府のみならず、国会の場においても再三議事録にとどめてきたところであります。

 こうした姿勢で臨み、そもそも全く認めることは考えていないということをしっかりと御理解いただき、政府の方針について御理解をいただきたいと考えております。

岡本委員 わかりました。

 ということは、少なくとも自公政権が将来のどこかであったときには、自公政権の中で大臣を務められた大先輩の岸田外務大臣が後世においてまでくさびや足かせをはめているというふうな御答弁だというふうに受けとめさせていただきます。

 続きまして、今回、UAEとトルコの二つの協定で、私、違和感がありますのは、もちろん交渉事ですから相手があるわけですけれども、片方に関しては、書面があればこのような再処理等に関しましても認める、逆の言い方をすれば、当然、書面で合意しなければ認めないわけですけれども、UAEにはそのような文言が入っていない。非常に一貫性がないように感じるんですね。

 もっと申し上げれば、過去に締結した十二の協定、これもある意味ばらばらであります。つまり、相手方との交渉の中でこちらのスタンスがぶれているような感じも感じ取れまして、これは、もしかしましたら、外国に与える影響としては、日本という国は押せば引くんだ、言えばそれを認めてくれるんだというふうに誤解されるのではないかなという危惧があるんですけれども、原子力協定における基本的な日本政府の立ち位置、基準というものを御答弁いただければと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力協定を交渉また締結する際に、濃縮、再処理についてどのような規定ぶりにするかというのは非常に重要な論点であるというふうに私ども思ってございまして、相手国との交渉の際には、この規定を置くかどうか、そしてどのような形の規定を考えるかということについては、幾つかの観点を考慮しているところでございます。

 第一点といたしましては、核不拡散上の観点、第二点として、相手国が濃縮、再処理技術を既に有しているかどうかといった相手国の事情、そして第三点といたしまして、相手国の原子力政策、不拡散に関する取り組み、第四点といたしまして、我が国との間で想定をされます原子力協力の具体的態様、第五点としまして、国際的な議論、このような諸点を勘案しながら、総合的に検討した上で交渉を行ってまいっております。また、その上で、相手国との交渉事でございますので、交渉によって、そのような観点からの議論をした上での規定ぶりというものが最終的に出てくるということでございます。

 濃縮、再処理につきましては、政府としては、今後とも、これらの要素を考慮しながら総合的に検討した上で交渉を行っていくということでございますけれども、濃縮、再処理というのが核不拡散の観点から特に機微であるということを十分に念頭に置きながら、慎重に対応すべきというふうに考えているところでございます。

岡本委員 協定の内容の合意につきましてはネゴシエーションそのものなわけですから、ぜひとも、日本は押せば引くような国だというふうな誤解を与えないような交渉をお願いいたします。

 続きまして、トルコの建設予定地になっておりますシノップについて質問をいたします。

 当初、シノップ市長は原発建設に反対でありまして、そのことを掲げられて二期目の当選もしていらっしゃいます。また、報道によりますと、地域の市民の方からも原発建設に関する反対の声が大きく上がっているというふうな報道もなされておりますけれども、もともと我が国の原発輸出の基本的な考え方は、ある意味国際貢献でありますから、トルコ政府、地方自治体、そしてそこの市民の方の同意、または、ぜひとも日本から原発を輸入したいというお声がない中でこのことを進めるのは筋が違うというふうに理解をしております。

 その上で、岸田外務大臣は、昨年十一月十三日の当委員会の答弁の中で、「シノップ原発開発地域におきましても、現状は、地域住民から原発建設についておおむね支持を得られている、こうした報告を受けております。」というふうに発言をされていますが、この報告はどなたから受けたんでしょうか。例えば、世論調査のような客観的な数字があって、現地の方々の原発建設に対する支持を得られているというふうに確認をされているのか、または、トルコ政府が公にそのようなことを我が国に伝えることによって、私たちとしても正式なトルコ側の認識というふうに受けとめていらっしゃるのか、または、我が国のチャネルの中で、現地の大使館員のような方が非常に主観的にそう感じていらっしゃるだけなのか、その報告の情報のソースを教えていただければと思います。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 現地の反対運動に対する住民の立場、あるいは地域住民の理解が得られているかどうかについての根拠についてお尋ねをいただきました。

 これは、具体的に申し上げますと、我が国の政府関係者、現地の大使、あるいは、我々政府関係者が出張した場合に、トルコ議会の議員、あるいはトルコの政府関係者、具体的には、この事業を推進する主体でありますエネルギー天然資源省の幹部、あるいはトルコにおきまして原子力規制を担当しております原子力庁の幹部、あるいは外務省、こういった政府関係機関の幹部から説明を受けているところでありまして、その説明の中身は、確かに反対運動はございますが、ただ、このシノップの原発建設予定地域の住民の大宗はおおむね支持している、反対運動は限定的である、こういう情報提供の内容でございます。

 いずれにしましても、原発建設計画を国家の重要な政策としているトルコ政府は、国民の理解を得る第一義的な責任があるわけでございまして、これまで、さまざまな広報努力、あるいは現地に情報センターというものをつくって地域住民の理解を得る、こういう努力をされているものと理解しておりまして、今後ともこれは継続されていくと理解しております。

岡本委員 情報ソースが正式なもの、オフィシャルなものだということを確認いたしましたけれども、仮にこの協定が進んでいく過程の中においても、引き続き現地の住民感情というものをフォローしていただくことをお願い申し上げます。

 続きまして、原子力機器を輸出する際の安全検査体制について御質問いたします。

 まず経産省にお伺いをいたしますが、この輸出に当たっては、大変膨大な金額ですので、例えばJBICのローンであったり、NEXIのカントリーリスクのヘッジであったり、さまざまな公的金融が使われる可能性が高いというふうに理解しておりますけれども、OECDのガイドラインを踏まえた場合に、このような公的金融が使われる場合には安全確認の手続が必要となっております。

 それは、プロセスといたしましては、このような公的金融、例えばJBICが、経産省に対して輸出相手国の原子力の安全体制などを事実確認することによって安全確保等に関する配慮を確認するというのがOECDのガイドラインなんですけれども、今回のこのトルコ、とりわけ候補地になっておりますシノップの案件につきましては、経産省はこの役割を担っていただけるんでしょうか、御答弁をお願いいたします。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 原発の安全確保につきましては、まず一義的には当該国が安全の確保をするということが国際的にも確立した考え方でございますけれども、今先生御指摘のOECDのガイドラインにおきましては、公的信用を供与する場合に、プロジェクトの環境及び社会への潜在的影響を事前に評価するということになっておりまして、そのガイドラインを踏まえまして、JBICもしくは日本貿易保険からの照会に基づきまして、当省が輸出相手国の安全規制体制の事実確認をこれまでしてきたところでございます。

 ただ一方、国内の、我が国の安全規制体制につきましては、独立した規制委員会が設置されておりまして、その後の国内体制をどうするかにつきましては、現在、政府部内で鋭意検討しているところでございます。私どもとしても検討を急ぎたいと考えてございます。

岡本委員 大臣、今の御答弁は、経産省の中にあった保安院が独立した規制委員会となったために、今は経産省の所管ではないので、経産省で安全体制をチェックする体制にはないというふうにおっしゃっているんですね。

 それでは、きょうは原子力規制委員会においでいただいておりますので、規制委員会の方にお伺いをしたいんですが、規制委員会は、設置法の第一条におきまして、もろもろ書かれておりますけれども、そのポイントだけ抜き出しますと、「原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならないという認識に立って、」「必要な施策を策定し、又は実施する事務を一元的につかさどる」というふうに設置法に書いてあるんですが、このような原発輸出におきましても、この設置法に書かれているようなことで、規制委員会は安全性をチェックするという職務を全うしていただけるというふうに理解してよろしいでしょうか。

片山政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力規制委員会は、東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえまして、推進と規制を分離するという考えに基づきまして、原子力施設に係る国内規制を担っており、原子力関連資機材の輸出につきまして意見を申し上げる立場にはないと考えております。

岡本委員 大臣、規制委員会は、国内には責任を負っていますけれども、日本の技術を海外に輸出するときにはその責任を負っていないとおっしゃるんですね。つまり、誰も、この責任を負っているというふうに認識している行政機関がないわけです。

 これは、外務大臣の管轄ではないかもしれません、その職権の範囲を超えるかもしれませんけれども、我が国として、国際貢献のために、さまざまな事故を経験した上で、何とか諸外国の原子力安全に貢献をしていきたいという気持ちでこの輸出を推進するわけですから、政府を挙げて、どこの行政機関がこのことをしっかりと担当して、諸外国により安全性の高いものを輸出するか、その体制づくりをするべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、OECDのガイドラインとの関係を考えましても、我が国は、確認手続の制度についてしっかりと整備しなければならないと考えています。各省あるいは各担当の現状については今答弁させていただいたとおりでありますが、政府全体として安全確認の制度はつくらなければならないと認識をいたします。政府全体として、この原子力の安全確認についても、今現在検討はしていますが、ぜひ検討し、具体的な制度をつくりたいと考えます。

岡本委員 大臣の力強い御決意だというふうに受けとめますけれども、協定が進む中で具体的な候補地まで決まっておりまして、実はシノップにおきましては、昨年の我が国の予算でフィージビリティースタディーも既に行われておりますので、つくらなければいけないという御認識を、スピードアップして、ぜひ政府全体として取り組んでいただければと思います。

 最後に、このOECDの基準なんですけれども、福島第一原発の事故を受けまして、OECDの基準自体も見直すべきではないかというふうな議論がされているような報道がなされております。

 一方、我が国独自の基準もあるんですけれども、我が国独自の基準では、例えば、輸出の金額が十億円以下の案件は安全確認の対象外とされているんですね。また、公的金融を使わないものも安全対象外で、安全対象外のフィールドというのは非常に広いんですけれども、毎日新聞の調査によりますと、これは毎日新聞が貿易統計から引っ張ってきた数字ですが、過去、二〇〇三年から一二年で、何と千二百四十八億円もの原子炉部品が二十カ国以上に安全審査を通らずに輸出をされております。

 このようなことがないように、つまり、非常に安全性の高いものしか輸出ができないというようなくさびを打つためにも、日本国内に対する安全確認の対象というものに関しまして基準を見直すべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 OECDの環境コモンアプローチにつきましては、二〇一二年に見直しがございまして、IAEAの原子力安全の基準についてリファーするという仕組みの見直しがされております。

 私どもは、そういった見直しがありましたものですから、諸外国がどういう取り組みをしているかという調査を今経産省の方でしてございます。そうした結果を踏まえまして、さらなる検討を進めてまいりたいと思います。

 一方、この安全確認の対象は、輸出信用機関が公的信用を付与する場合に、原子力発電以外のプロジェクトも含めて対象にするということですので、公的信用の対象にならないものはやはりさすがに対象にならないということでございますし、現在は、貿易保険につきましては、輸出金額が十億円以下のものについては包括でやっておりますので、細かな部品でございますので、プロジェクトということではございませんので、安全確認の対象外としているところでございます。

岡本委員 さまざまフォローアップしなければいけない事案を明確にさせていただきましたけれども、この協定をもとに原発を輸出した際に、諸外国から日本に対する評価が高まるような行政のオペレーションということをぜひお願いできればと思います。

 以上で質問を終わります。

鈴木委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 おはようございます。民主党の岸本周平でございます。

 本日は、外務委員会におきまして質問の機会をいただきました。委員長初め理事各位にまずは感謝を申し上げたいと思います。

 私のきょう質問する立場であります。この両協定に関しましては、あくまでも核不拡散の立場、核の平和利用、そして何より原子力安全の強化を推進するという観点がまず第一でございます。その上で、我々が政権与党時代、ベトナムやヨルダンなどの二国間原子力協定を推進してきたという、政策の継続性の観点ということからも、賛成の立場で質問をさせていただきたいと存じます。

 しかしながら、これは私ども民主党が政権時代、原子力発電につきましては、二〇三〇年代末までに原子力への依存ゼロを目指してあらゆる政策資源を投入する、そのことによって原発ゼロの社会を目指すということを決めております。その立場は変わっておりませんので、ある意味、大変苦しい選択であるわけでございます。

 その一方で、しかしながら、現実に、今私たちの日本の経済産業構造の中で、原子力プラントをつくる企業、主に三社でございますけれども、その企業が置かれている立場、世界の原子力産業の中での立ち位置などを冷静に現実的に考えていった場合に、なかなかほかの選択肢はないのではないかということをまず最初に明らかにしていきたいと思います。

 それで、きょうは経済産業省の赤羽副大臣においでいただいております。

 まず、大きく、一九八〇年代以降の、このころ原子力プラント企業はたくさんあったわけでありますけれども、それ以降、世界の原子力プラントメーカーの国際的な再編集約化が行われてまいりました。その結果として、現状、世界の原子力プラントメーカーの状況はどうなっているのか、赤羽副大臣にお尋ね申し上げます。

赤羽副大臣 お答え申し上げます。

 まず、一九八〇年代以前は、各国の原子力発電所はそれぞれの国の原子力プラントメーカーが建設をしておりましたが、スリーマイルアイランドの原発事故ですとかチェルノブイリの原発事故を契機に、世界的に原発の建設が停滞した一九八〇年代以降は、原子力プラントメーカーの国際的な再編集約が進展したわけでございます。

 それ以後、特に地球温暖化の問題への対応から原発の重要性が再認識をされた二〇〇〇年代半ば以降、特に我が国のメーカーの維持してきた高い技術力との連携という形での原子力プラントメーカーの再編集約が一層進展したわけでございます。

 具体的には、二〇〇六年に、東芝によるアメリカ・ウェスチングハウス社の買収、二〇〇七年には、日立とアメリカGEによる日米新会社の設立といった、日本とアメリカの原子力プラントメーカーの統合が進展をいたしまして、日米の原子力産業における協力関係が緊密化をしました。

 また、二〇〇七年には、三菱重工とフランスのアレバ社が中型炉の共同開発のための合弁会社でございますアトメア社を設立するなど、日本とフランスとの連携も進展しておるところでございます。

 他方、ロシア、韓国、中国にも大規模な原子力プラントメーカーが存在をしておりまして、今、国際的な原発輸出市場は大変な競争が行われているという状況でございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 要すれば、東芝とウェスチングハウス、日立とGE、三菱重工業とアレバの三グループが、今現在、世界の原子力産業の中核主体となっているわけです。

 確かに、ロシア、韓国はある程度国際競争力はありますけれども、中国はまだまだ国際市場ではプレーヤーにはなっていないという中で、いわゆる第三世代プラスの、大変安全性の高いと言われている最新鋭の原子炉の現状、建設実績、あるいは近々の予定等について、どのような状況になっているか、お伺いします。

赤羽副大臣 今委員御指摘のいわゆる第三世代プラスの軽水炉につきましては、現在、世界で熾烈な開発競争とまた受注合戦が繰り広げられている状況でございます。

 具体的には、まず、ロシア国営企業のロスアトム社が開発をいたしました加圧水型の軽水炉VVER1200、これは現在、トルコ、ベトナムなどで建設が行われております。

 韓国では、韓国電力公社が設計をいたしましたAPR1400、これは今、アラブ首長国連邦で四基建設がされているところでございます。

 我が国におきましては、東芝子会社のウェスチングハウス社がAP1000、三菱重工業とフランス・アレバ社の合弁でアトメア1、また、日立と連携するGEがESBWRといった、いわゆる第三世代プラスの軽水炉の設計を保有しているところでございます。

 東芝子会社のウェスチングハウス社は、現在、アメリカと中国に合計八基のAP1000の建設を進めております。また、トルコにおきましては、三菱とアレバ社のアトメア1が、中国や韓国との競争を経まして、現在、優先の交渉権を獲得しているという状況でございます。

 我が国の原子力プラントメーカーに対する、その技術力の高さ、安全性等々について、世界の期待は大変大きいものという評価を得ているところでございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 特に最新鋭炉については、厳しい国際競争の中で、もちろん、契約をとるのには相手国政府との政治的な関係がいろいろあります。例えば、ベトナムであれば、潜水艦とセットで売り込むようなロシアの戦略もありまして、そういうことの中で、しかし、日本が、今言った三大メーカー、それぞれ提携先とともに、ほとんどの最新鋭炉のプラントは押さえているという状況があるわけであります。

 その上で、日本のプラントメーカーの強さは、例えば原子炉の圧力容器、これはもう皆さん御存じのとおり、室蘭にあります日本製鋼所が、何と世界の八割のシェアを占めているという意味での、サプライチェーンの力が非常に強いということでありまして、まさに米国が、スリーマイル以降、民間の原子力発電の建設をしていないという中で、ある意味、日米原子力共同体とまで称されるぐらいの緊密な関係があるわけであります。

 その意味では、米国から日本の原子力産業に対する期待というものについては経産省はどのように見ておられるか、御質問いたします。

赤羽副大臣 今、岸本委員御指摘のとおり、圧力容器などの原発のサプライチェーンにおける重要な部材について大変高い国際競争力を持つ企業、今御指摘の日本製鋼所、これは私も現地で視察を何回かさせていただいておりますが、存在をしております。

 日米両国間におきましては、世界の原子力安全と核不拡散を確保するという価値観を共有しておりますし、これまでも、日米原子力協定の枠組みの中で、原発建設に関する技術の提供ですとか核燃料の供給から、先ほどからるる御説明がありますように、日立とGE、東芝とウェスチングハウスといった産業連携の構築に至るまで、最も緊密な協力関係を構築しているところでございます。

 加えて、福島第一原発事故の収束につきましても、アメリカから技術的な、またそのほかの協力関係も大変いただいておるところでございます。

 現在、今後多くの原発建設が見込まれておりますアジア太平洋地域でも、最も緊密な産業連携を日米両国間は構築しておりまして、これは、繰り返しになりますが、原子力安全と核不拡散の確保に積極的に関与していくという点で大変重要と考えております。現実に、先ほど答弁させていただきましたが、中国においても、東芝とウェスチングハウスの協力のもとで新規建設が行われているところでございます。

 米国政府からは、原子力安全に関して、また核不拡散の確保といった点で、我が国が世界をリードするように繰り返し期待が表明されているところでございまして、今後とも、政府間、産業間での幅広い日米協力をしてまいりたい、こう考えておるところでございます。

岸本委員 ただいま副大臣からお述べいただいたとおりでありまして、さらに、例えば、二〇一二年の八月ですけれども、CSIS、戦略国際問題研究所で、アーミテージ・ナイの第三次レポートというのが出されております。

 この中でも、日本と米国は、国内外において安全で信頼できる民間原子力発電を促進する点において、政治的、商業的利益を共有している、原子力発電の安全かつ正しい発展と活用は、日本の包括的な安全保障の絶対不可欠な要素であると指摘されているわけでありまして、ある意味、安全保障の観点からも重要な産業であるというふうに考えております。

 今副大臣もお述べになりましたが、まさにこれから福島第一の廃炉に向けて三十年、四十年かかる。その廃炉のやり方については、まさに原子力産業の国際社会に対して、私どもは救いの手をお願いしているわけです、知恵をかしてくださいと。

 そういう意味で、国際社会は、わかりましたということで、世界じゅうの原子力産業にかかわる人たちが福島第一の廃炉について私たちに協力を惜しまない姿勢があるわけでありますから、そうであるならばこそ、私どもは、核の不拡散と平和利用、原子力の安全のために、この二国間の原子力協定を推進することで、今副大臣もお述べになりました、日立、東芝、三菱重工という世界最先端の原子力プラントの技術を持っている私たちが、この協定のもとで、不拡散、平和利用のもとで技術を提供していくということで原子力産業の安全性に寄与していく。

 これは、多分、国際社会の中での私どもの産業に対する期待というのもあるでしょうし、また一方で、これは私どもの政権与党の時代の責任でありますけれども、福島の経験と教訓を生かして、さらなる安全性を高めていくということと兼ね合わせていくべきだと思っております。

 そこで、副大臣、最後に質問しますが、世界の主な原子力発電計画における日本企業の関与、これはいろいろと歴代政府も努力してきているわけでありますけれども、その現状と、さらに、その背景にある諸外国の日本の原子力技術に対する期待というものについて、概要を御説明願えればと存じます。

赤羽副大臣 我が国の原子炉メーカー及びその子会社が主契約者となって建設を受注したプロジェクトは、アメリカ、中国において六件、十二基ございまして、うち、既に建設が始まっているものは四件、八基ございます。

 また、現時点で優先交渉権を獲得しているプロジェクトにつきましては、ベトナム、トルコ、リトアニア、ブルガリア、四件、計八基あります。

 また、現時点で原発建設を計画する海外の原子力事業への参画を通じまして原発建設を企画しているプロジェクトは、イギリスで三件、これは七基から九基、現状、ございます。

 諸外国の我が国の原発技術への期待は、やはり相手国の事情、意向によってさまざまでありますけれども、一様にして、我が国プラントメーカーは、これまで、原発のシステム全体の輸出のみならず、先ほど申し上げましたような圧力容器などの部材も世界の原子力施設に向けて大変多く輸出してきた、また高い評価をされてきた実績もございますし、福島第一原発で受けた大変な教訓と経験が世界に共有できることが高く評価されております。また、人材育成についてもこれからも大きく貢献ができるもの、そう認識をしておるところでございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 例えば、ベトナムのズン首相の御発言を引きますと、日本は事故を教訓としてさらに技術を発展させると信じている、そこまでおっしゃっていただいて、日本の原子力プラントに対する期待をいただいているわけです。

 しかし、残念ながら、これは私、また経済産業委員会でやりますけれども、では本当に福島原発事故の教訓を私たちが生かしているのかという点は、これらの国々の期待がある以上、本当に真剣に検証しなければならないと思います。

 これも私の同僚議員が経産委員会で何度も質問しておりますけれども、本当に津波だけで福島第一があのような事態に陥ったのか、地震の段階でどのような被害が起きたのかは実は解明されていないんです、現状。これは、検証委員会でもそのところは飛ばしているんです。場合によっては、東京電力がそこの調査を邪魔した、妨害したという事実もあります。したがって、実は地震によって危機的な状況になってメルトダウンを起こしていたのかもしれない。それはそうではないとは言い切れないんです、現状。だとすれば、私たちは福島の教訓と経験を生かしていないということになります。

 これは、岸田大臣の話ではありませんけれども、安倍内閣として受けとめていただきたいのは、立法府の調査でも出ていないんです、立法府も含めて、行政府とともに、本当にこれらの国々が期待をしてくださっている、そのことに応えるためにも、私たちは真摯に、本当に地震でどこまでの被害があったのか、これを究明しなければならないと思います。特にトルコは地震国であります。トルコが期待をして買ってくださることになるのであるならば、それまでに、私たちはきちんとこの検証をしなければならないと思っております。

 また赤羽副大臣には経産委員会でお世話になると思います。

 以上、るる述べてまいりましたけれども、確かに、国民感情からしても、再稼働に反対する方も世論調査ではかなり多い、原発ゼロの社会を目指すという世論の支持もかなり高い中で、国内では原発をゼロにする方向で、民主党はそう考えているわけでありますけれども、一方で、輸出につながるような原子力協定であります、正直申し上げて。原子力協定がなければ輸出できません。

 そういう、国内でみんなが不安に思っているものを海外で売っていいのかということについての本当に悩ましい問題がありながら、しかし、今、日本の日立、東芝、三菱重工業が、世界の中の原子力プラントをこの三社でつくっているわけであります。これをどうするのか。

 また、その技術力があるからこそ、日本が、原爆を持たない、非核の国でありながら、国際的な原子力の学会も含めて、実業界の中で大きな発言力を持っているのは、この技術をキープしているからでありまして、この技術力をキープするために、常に運用を行い、開発を行い、建設を行っていくということも一方で大事なことであります。廃炉だけのために優秀な技術者を雇い続けるということは恐らく難しいんだろうと思います。日米の大きな協力体制のもとで、私たちは歯を食いしばってこの技術をキープしていく必要があると私は確信をしております。

 その上で、外務大臣に少し観点を変えてお聞きいたします。

 先ほど来、武藤委員、岡本委員からも再三御質問がありました。UAEとトルコ共和国において、核物質の濃縮、再処理の規制、あるいは移転の規制が、書きぶりが違うじゃないかということで両委員からも御指摘がありました。私もそのように思います。

 もう一度、ダブりますけれども、なぜこんな大きな違いがこの両協定で起きたのか、簡潔に御説明いただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回のトルコ、そしてアラブ首長国連邦との原子力協定の交渉に当たっては、核不拡散の観点、そしてそれぞれの相手の国の原子力政策、さらには国際的な議論等を勘案して交渉を進めてきました。

 そして、その中にあって、御指摘の、濃縮そして再処理に関する規定の表現ぶりでありますが、そもそも、アラブ首長国連邦の原子力協定においては濃縮、再処理はされない、こうした規定になっております。

 それとの比較において、トルコがどうしてこうした現状の規定になっているのかという御質問でありますが、この濃縮、再処理の問題についても、我が国としましては、他国に対する姿勢を基本に交渉に臨みました。

 その中で、トルコ側からは、トルコが今日まで他の国と結んできた協定の表現ぶりとの比較、あるいはトルコ国内におけるさまざまな議論等を勘案して、さまざまな意見が出されました。それに対しまして、我が国としましては、先ほど申し上げました基本的な方針で交渉に臨み、その交渉の結果として、御指摘のような、書面により合意する場合に限り濃縮または再処理ができる、こうした表現ぶりになった次第であります。

 こうした表現ぶりではありますが、我が国としましては、実質的にトルコの濃縮、再処理を禁止することは確保できたと認識をしております。

 我が国としましては、先ほども申し上げましたが、基本的に、まずトルコにおける濃縮、再処理を認めることは全く考えておりません。そして、そのことにつきましては、トルコに正式な交渉の場においてしっかりと伝えております。

 そして、国内においても、政府のみならず、議会との関係においても、再三、正式な国会の委員会に出席をさせていただきまして、政府としての考えを述べ、そして議事録にとどめさせていただいた次第であります。

 表現ぶりに至ったことについては今申し上げたとおりでありますが、我が国としましては、実質的にトルコにおける濃縮、再処理は禁止する、こういった実はしっかり確保できていると考えております。

岸本委員 再三同様の答弁をいただいておりますが、これは事柄の中身もさることながら、外交交渉の過程、プロセスが大変不透明であるということの一例であります。

 私ども立法府では、当然ですけれども、両国外務省の間の交渉のプロセスは一切教えていただいておりません。わかりません。その中で、今まさに岸田外務大臣からその交渉の一端について、あるいは昨年十一月の臨時国会でもありましたが、国会で、そういう答弁の中で、外交交渉のごくごく一部のところを取り出して御説明をいただいているということであります。

 ですから、同僚議員の皆さん、これは全く見えないわけです。私たちは知らされていないんです。岸田外務大臣のおっしゃることは信じます。発言された範囲のことは信じます。しかし、これは本当に、外交交渉のプロセスをどこまで立法府に出して、示して審議をすべきかという大きな問題の一般論にも私はつながると思うわけであります。

 これはきっと特定秘密になるんでしょうね。だから、この経過を教えてくれと言ったって、いやいや、それは教えられませんということになるんでしょう。私自身、いろいろな交渉に携わった経験からしますと、トルコに対して、実質的にうちは絶対この書面は書きませんということを申し入れた、記録にもとどめたと言っておられます。この記録は頼んでも出てこない。特定秘密になる。

 では、そのときのトルコ政府の反応はどうだったんですか。はい、わかりましたとおっしゃったんですか。わかりました、もう条文は空で結構です、空振りの条文で結構です、日本の外務省が絶対に許可しないとおっしゃるのであるけれども、条文に書いてあれば我々のメンツが立つので、よっしゃよっしゃといって、それが議事録に残っているのか残っていないのか、そういうことが我々はわからないんですよ。

 わからない中で答弁だけを聞いていますと、まず最初に思うことは、これは外交上、無礼千万じゃないかということであります。条約が批准される前に、その条約の条文を担当外務大臣が公の場で否定しているんですよ。トルコ共和国の面目丸潰れじゃないですか。トルコ共和国の外務大臣は何と言えばいいんですか。そういうことになるんです、外から見れば。だって、ここの条文には書面で合意すれば認めると書いてあるわけですから、そんな気は俺らは全くないんだということを国会の場で言うということは、トルコ共和国政府の面目丸潰れですよ。失礼千万じゃないか。

 批准する前に、条文は書いているけれども、俺は守る気はないということを公にする。俺は守る気はないとおっしゃったじゃないですか。そういうことでしょう。つまり、書面で許可するつもりはないということは、協定の条文を真っ向から否定する発言をされているんですよ。外務大臣、それは外交上、非礼千万と思いますけれども、いかがですか。

岸田国務大臣 まず、批准する前に全く守るつもりはないと国会で公言しているのではないかという御指摘がありましたが、逆に、この文面については、文面どおりしっかりと守っていくということを今申し上げているわけであります。守った結果、これは、今申し上げましたように、トルコの濃縮、再処理は認めることにはならない、こういったことについて御説明をさせていただいています。

 そして、外交上、無礼に当たるのではないかということでありますが、こうした考え方は、原子力協定の交渉段階において、たびたび交渉が行われ、先方の交渉団長、トルコの原子力庁長官以下が交渉団長になっていますが、この交渉団に対しましても、正式に我が国の考え方、そして対応についてはたびたび説明をさせていただいておりますし、トルコ側からもこうした我が国の考え方については理解を得ていると承知をしています。

岸本委員 いやいや、大臣、条文を素直に読むと、両締約国政府が書面により合意する場合に限り何々することができるということですから、書面で合意すればできるということを単に書いているだけなんです。

 つまり、書面に合意する可能性があるからこういう条文になっているので、最初から書面に合意する可能性がゼロであると一締約国、当事国が思うのであれば、こういう条文は要らないわけであります。条文の読み方として可能性があるものを真っ向から否定しているというのは事実でありますから、では、そもそもこの条文は要らないですよ。

 そうだとすると、これは日本の国内でもよくあることですけれども、表向きはこうしておきますけれどもと、よく昔、役所でやったんですよ、覚書、裏の覚書、もう今はやっていないと思います。よく私もやりましたよ、何百本も書きましたよ。渡海先生、笑っていらっしゃる、全くそうですよ、やられたと思いますけれども。覚書で、本当はこうなっているけれども、実はこんなことはしませんというのを、日付とサインをして判こを押すんですよ。

 そうすると、例えば、この交渉過程で、日本政府は、条文はこうだけれども、絶対に文書なんかは出しませんということで、トルコの団長がわかりましたと言ったんですか、わかりましたと言って覚書にサインでもしたんですか。そこの交渉過程が非常に不透明なんですよ。

 では、理解を示したのは、それは記録に残っているんですか。日本の外務省が、八条はあるけれども、実質的には認めません、それに対して向こうのトルコの団長が理解したというのは記録に残っているんですか。

岸田国務大臣 まず、交渉の原点は、我が国はトルコの濃縮、再処理を認めない、それがまず原点であります。そして、それを基本方針に議論を行い、そして、先ほど申し上げましたトルコ側の事情で、表現ぶりとしてはこういうことになった、これが実態であります。

 そして、向こうが認めたということで記録があるかということでありますが、交渉において、我が国がこうした考え方、方針についてしっかりと明言したことについては記録は残っておりますし、そして、それについて理解を示したという記録は残っております。

岸本委員 その記録を出してください、委員会に。出せますか。

 速記をとめてください。質問が続行できません。

鈴木委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

鈴木委員長 速記を起こしてください。

 外務大臣。

岸田国務大臣 これは他の外交交渉においても同様でありますが、こうした交渉の経緯、詳細につきましては、相手方との関係があります、この具体的な記録について公表することは控えなければならないと考えています。

岸本委員 それでは本当に何の担保もありませんし、私どもは信じることはできません。

 したがいまして、委員長にお願いしますが、理事会でこの資料についての提出の要求を御検討していただくことをお願いしまして、私自身はこれ以上質問をすることはできませんので、これで質問をやめます。

鈴木委員長 ただいまの岸本君の申し出につきましては、理事会において協議をいたします。

 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 ぜひ、先ほどの岸本委員のお尋ねに対しては、委員長初め、前向きな御検討を委員会においてお願いしたいということを付言させていただきます。

 原子力協定に関連して、去る三月二十四日、二十五日に行われました核セキュリティーサミットの成果等についてお尋ねします。

 二点、まず、日本政府が高濃縮ウラン、それから分離プルトニウムをアメリカに移設するということを表明されたというふうにお聞きしています。その意義について一つお尋ねをいたします。

 それから、関連してこれはお尋ねせざるを得ませんので、触れていただきたいと思いますが、政権発足から一年三カ月経過して、ようやく日米韓、日韓の首脳同士が顔を合わせた。テレビ画面を通じますと非常に複雑な表情が伝わったように感じますが、その成果なり課題について、特に、アメリカの仲立ちなくして、一年三カ月、日韓の首脳が顔を合わせなかったというその現実についても触れていただきたい。二点お尋ねいたします。

岸田国務大臣 先日のオランダ・ハーグにおきます核セキュリティーサミットにおきまして発表いたしました、世界的な核物質の最小化への貢献に関する日米首脳による共同声明、この日米の共同声明におきましては、核テロ対策の強化、そして研究開発の推進を両立させる日米協力として、次の点で一致をいたしました。

 一つは、日本原子力開発機構の研究炉の一つであります高速炉臨界実験装置にある高濃縮ウランとプルトニウムを全量撤去の上、米国に移送し処分するということ、二点目としまして、米国による研究炉使用済み燃料引き取りプログラムを日本について延長するということ、そして、高速炉臨界実験装置、FCAから撤去する核物質を用いて行う予定であった研究は、代替燃料を用いて日米協力により実施すること、こういった点で一致をした次第であります。

 この声明の評価ですが、日米首脳が世界的な核物質の最小化のために強いリーダーシップを示すことができたと考えております。

 そして、もう一点の御質問の日韓関係についてですが、今回、核セキュリティーサミットに合わせて行われました日米韓三国の首脳会談でありますが、北朝鮮問題を中心とする東アジアの安全保障について、三カ国が今後とも緊密に連携していくことの重要性が確認されたということであり、この点において大変意義ある会談であったと認識をしております。

 そして、今回の日米韓首脳会談は、我が安倍総理と朴槿恵大統領にとりまして、初の直接の会談ということになりました。ぜひ、我が国としては、今回の会談を第一歩として、大局的観点から未来志向で重層的な日韓関係を築いていく、こうした協力関係を進めていくこととしていきたいと考えております。

 日韓関係、言うまでもなく、我が国にとりまして最も大切な二国間関係であります。そして、北朝鮮を初めとする東アジアの安全保障環境を考えましても、この二国間の関係が安定していることは大変重要なことであります。ぜひこうした大切な二国間関係を進めていかなければいけないと思っておりますが、そのためにも意思疎通、対話が重要であると思います。

 残念ながら、今日、日韓関係は大変難しい状況にあり、そして、今回の日米韓首脳会談に至るまでトップ同士の会談が実現してこなかった、こういった状況にありました。

 しかしながら、日韓関係においては、さまざまな経済関係あるいは市民交流を初め、交流があります。また、北朝鮮を初め、共通の課題があります。こういったものを通じてしっかりと意思疎通を積み重ねていき、今後とも高いレベルの政治対話、トップの政治対話、こういったものを続けられるようにしっかりと努力をしていきたいと考えています。

小川委員 日韓に関して言えば第一歩だと思いますが、甚だおくればせながらの、そして国際会議の場に、あわせて第三国の仲立ちという、決して大きいとは言えない第一歩だと思います。そのことは今後もぜひ心して、日韓関係の改善、外交努力を積み重ねていただきたい。

 あわせて、核物質のアメリカへの移設について若干素朴な疑問もあります。そんなに日本の管理状態はアメリカから見て危険なんですか、不十分なんですか。

 そして、これは高らかに共同声明でその成果を発表しておられる、表現しておられるようにお見受けしますが、一方で、核物質に対する日本の管理情勢に対するある種自信のなさなり、アメリカから見た不安なりということを公に表明したことにもつながるんじゃないかという、ちょっと素朴な疑問を持っていますが、この観点からお答えいただける方はいらっしゃいますか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣からも答弁させていただきましたように、核物質の最小化といいますものは、今回の核セキュリティーサミットでも議論をされました、国際社会としての大きな課題であるということでございます。

 その中で、米国は、機微な核物質をより機微でない形に転換する、そういうふうな能力を持っておりまして、これまで世界各国の機微な核物質を受け入れ、そして処分をしてきた、そういうふうな実績があるところでございます。

 したがいまして、今回の日米での合意また決定といいますものは、機微な核物質を最小化するというその課題を実現するに当たって、最も適切な方法を日本政府として総合的に判断したその結果によるということでございまして、我が国と比較して米国のセキュリティーの方がどうか、そのような考慮に基づいて行ったということでは必ずしもございません。

小川委員 私は共同声明を拝読して素朴にお尋ねしているんですね。これ以上深追いしませんが、「米国に安全に輸送された後、セキュリティの強固な施設に移送され、」というくだりがありますよ。お尋ねの趣旨については理解していただけると思いますが。

 原子力協定を議論するに当たって、福島の事故を背負っているということが一つ大きくあります、背景として。そして、今般、自国では処理しかねる、あるいは安全に保管しかねるというような見られ方を国際的にされたおそれもある。しかし、高らかにその成果を宣言しておられるようですが、そこに対しては、そういう問題意識は当然内在すべきだ、そのことはちょっと指摘した上で本題に入りたいと思います。

 原子力協定に関して、率直に申し上げて、民主党内でもさまざま議論がありました。いろいろな報道もなされた。それは当然踏むべき過程だったと思いますし、その上できょう質疑に立たせていただいております。

 一番シンプルなお尋ねをいたします。この協定は原発輸出推進協定ですか、それとも核不拡散、安全使用推進協定ですか。大臣、お答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、原田(義)委員長代理着席〕

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 シンプルにということでありますが、少し丁寧にまず御説明させていただきたいというふうに思います。

 我が国は、原子力の平和利用における三つのSというもの、すなわち、セーフガード、不拡散のための保障措置、セーフティー、原子力の安全、そしてセキュリティー、核セキュリティーというものを重視してまいりました。

 そして、この原子力協定は、我が国が原子力協力を行う際に、平和的利用、不拡散を法的に確保し、三つのSの強化に資する重要な枠組みである、このように理解をしております。

小川委員 丁寧に説明することは大事だと思います。特に国会の場はそうかもしれません。

 しかし、この議論に関して、冷静な議論をややしがたい状況があるのは、一つには、先ほど申し上げた国内事情があります。それはもう当然のことだと思います。

 しかし、一方で、あえてシンプルにお尋ねしますと申し上げたわけですが、この協定は、政府として、原子力発電の輸出に対して前のめりな、積極的な姿勢をとろうとしているのか、それとも、現状の世界において利用せざるを得ない、あるいはされざるを得ない核燃料に関して、極めて安全を担保し、安定的に、そして濃縮を制限し、第三国への輸出を食いとめるという核不拡散、拡散抑止の観点からの条約なのか。ここに関しては、国民的な理解を含めて、極めて認識が十分に議論されていない。あるいは、私は、政府の側からいえば、これは極端な話ですが、協定の名称を含めて、コンセプトの組み立て方を含めて、甚だ不十分ではないかということを申し上げたいわけであります。

 当然、そうはいっても、これはきれいごとでは済まない世界がやはりあります。この協定なくしては、少なくとも主要部分については輸出できないわけでありますから、一方で、輸出に向けて橋をかけるという側面があることは、これは否定しがたいんだと思います。

 しかし、重ねて申し上げますが、これはあくまで国際社会において核不拡散のためであり、拡散の抑止であり、そして安全利用であり、平和利用である。

 そういう観点について、私は、名称も含めて、いま一度、よくよくこれは国民感情にも配慮し、そして現実、事実を正確に御説明するという観点からの気遣いが必要だと思いますが、重ねて、ちょっとその点、御答弁いただきたい。

木原(誠)大臣政務官 再度御答弁をさせていただきます。

 具体例でいえば、トルコ、そしてアラブ首長国連邦、両国とも原子力の平和利用を促進していきたい、こういう思いがあり、そして我が国の平和利用に関するこれまでの知見、経験、技術を活用したいという思いがある。

 そういう中にあって、この原子力協定を結ぶことによって、私どもとしては、原子力の平和利用における枠組み、そしてまた、不拡散の枠組みをしっかりと確保し、同時に、先ほど申し上げた三つのSについて、相手国、すなわちトルコ、そしてアラブ首長国連邦においてもその三つのSについての取り組みを強化、促進、向上してもらうように促すということがこの枠組みの大きな目的であろう、このように理解をしております。

小川委員 今の点、ちょっと確認します。今度は大臣に御答弁いただきたい。

 まさに、先ほど木原さんが御答弁されたように、相手国のニーズに対して、日本政府として、あるいは日本の産業界として、これを真摯に受けとめていく、ついては、こうした協定が必要だという、恐らく事の運びとしてはそうだと思うんですね。

 その点、ちょっとはっきり御答弁いただきたいんですが、これは民主党政権時代、二十四年の九月に、いわゆるエネルギー・環境会議としてまとめたエネルギー・環境戦略であります。この中には、再三議論になってきましたが、二〇三〇年代に原子力に依存しない世の中を目指すということをはっきり明記いたしました。

 関連して、国際社会との関係についてはこういうくだりがあります。諸外国が我が国の原子力技術を活用したいと希望する場合には、相手国の事情や意向を踏まえつつ、最高水準の安全性を有した技術を提供するんだというくだりがあります。つまり、諸外国が我が国の技術を活用したいと希望した場合に限って、あえて言えば受け身で、しかし、誠意を尽くすというたてつけになっているわけであります。

 この点、政権がかわった後の、再交代した後の文脈をやや確認しようとしているわけですが、例えば、ことしの二月十日の予算委員会、安倍総理は御党の高市政調会長の御質問に対して、原発輸出に際してはこう御答弁されています。「いろいろな議論がありますが、相手国の意向や事情をしっかりと踏まえながら、」というくだりがあります。私どもがとってきた、よい意味で受け身の姿勢とこれは軌を一にするものなのか。しかし、相手国のリクエストがある場合とはっきりは書いていません。

 あわせて、御党のあるいは安倍内閣の姿勢についてちょっと改めて御確認をいただきたいと思いますが、今現在、案段階のエネルギー基本計画には、国際社会との関係について、「核不拡散及び核セキュリティ分野において積極的な貢献を行うことは我が国の責務であり、世界からの期待でもある。」と。

 ですから、改めて確認しますが、私どもの政権のときには相手国のリクエストが前提でした。それに比べると、少しそこがはっきりしないんですね。今回の協定締結に至る経過もいろいろあったと思いますが、私の希望としては、相手国のリクエストがあって初めて、よい意味で受け身で、しかし、必要な誠意を尽くすということであっていただきたいわけですが、そこは政権として、政府として、その観点からする立ち位置、姿勢は前政権時代から変わったのか変わっていないのか、そこを大臣、御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 現政権の基本的な考え方ですが、福島第一原発の事故を経験した我が国として、こうした貴重な経験あるいは知見、これを国際社会と共有することによって原子力の平和利用に貢献する、これは我が国の責務であるという考え方に基づき、具体的には、相手国の要請、あるいは相手国の原子力政策、そして国際的な議論、こういったものを勘案しながら相手国への協力のありようは考えていく、こういった考え方に立っています。こうした諸点を総合的に勘案して方針を考えていくということかと思います。

 相手国からの要請を前提としているのかという御質問でありましたが、現実問題、相手国が全く要請していないのに我が国が何か強引に押しつけるということは考えにくいのではないかと考えます。

 前政権との方針、その御指摘の部分だけに限って、一致しているかどうかという部分については、今、たちまちには厳密に検討することはできませんが、重なっている部分は当然あるんだと思っております。

 そして、先ほど協定の位置づけについてお話がありましたが、今申し上げました方針によって相手国の原子力の平和利用に貢献するとしましても、その大前提として、これは平和利用でなければならない、そして、核の不拡散の見地から、しっかり前向きなものでなければならない、こういった考え方があります。それを確保するのがまさに原子力協定の役割だと認識をしております。

 しっかりとした方針で国際的な原子力の平和利用に貢献したいと思いますが、その大前提であります平和利用、そして核の不拡散、これを法的に確保する、これが原子力協定の意味合いだというふうに考えております。

小川委員 ありがとうございました。

 大臣がそう認識しておられるのはそれで結構です。ただ、冒頭お尋ねしたのは、それを国民に説得し、理解をいただくには、より大きな工夫なり、国民の目からの見え方を意識する必要があるのではないですかということを申し上げているわけであります。

 その上で、民主党としては、さまざまな議論を積み重ねた上で、この協定そのものには賛成させていただく前提で議論を集約いたしております。

 ただし、核の拡散を防ぐ、不拡散に貢献し、安全利用、平和利用に限定するという、その協定の趣旨に賛成するということでありまして、これは、直ちに原発輸出に対して積極的とか、あるいは原発輸出を推進する、言葉を悪く言えば、積極的に売って歩くということに対してはかなり懐疑的であります。

 むしろ、そこは慎重に、現在の国内情勢等を踏まえれば、極めて謙抑的に、党内議論をさらに積み重ねるという前提に立っての採決姿勢であるということもちょっとこの場で公に明らかにさせていただきたいと思います。

 その上で、個別に、相手がトルコであり、またUAEでありますから、具体的に、トルコに関して、日本と同様、大変地震の頻発する国であり、なおかつ、最近は特に政情不安も言われました。さまざまな騒乱や、場合によってはテロといったことに対する緊張度が比較的高いということも想定する必要があると思いますが、事トルコとの関係においてこの点をどう評価されたか、具体的にお述べいただきたいと思います。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、地震につきましての事実関係でありますが、トルコの首相府の災害緊急事態管理庁の発表によりますと、トルコ国内を五つのカテゴリーに分けて危険を分類しております。そのうち、シノップ地域の黒海沿岸、まさに今回、原子力発電所の建設がトルコ政府によって計画されている地域につきましては、危険度の低い方から二番目に属するという報告が行われております。

 また、地震の規模でありますけれども、マグニチュード五というのが震央付近で建物に被害が出ると言われておりますが、同じくトルコの災害緊急事態管理庁の資料によりますと、シノップ及びその周辺地域で、一九〇〇年から今日まで、マグニチュード五以上の地震は発生していないという発表がなされております。

 また、津波につきましても、トルコの国立地震モニタリングセンターによる発表によりますと、シノップ地域の面する黒海沿岸で地震による津波が発生した記録はないということであります。

 次に、政情につきまして、五つほど指標を挙げて御説明を申し上げます。

 まず、一般犯罪でございますが、トルコの警察庁の公開資料はやや古うございますけれども、二〇〇六年の資料で、発生率は日本とほぼ同じというか、日本よりも低いぐらい、十万人当たり一千件程度。

 テロにつきましては、二〇一二年、一昨年からトルコの中で一番テロの問題となっておりましたクルドの問題、北イラクを中心としますPKKとのテロとの闘いでありましたが、これも和平プロセスが一昨年より進んでおりまして、ここ最近はこのPKK起因のテロはございません。

 三番目、確かに、極左の自爆テロは、昨年二月、アメリカの大使館を目がけて自爆テロがございました。一名の死者が残念ながら出ておりますけれども、それ以降、極左の自爆テロというものにつきましても起こっておりません。

 四番目は、去年五月、六月からイスタンブールでデモが起こりまして、国内が騒乱とした時期がございました。これは、イスタンブールの市街開発計画をベースとする市民運動、環境運動がベースでありましたけれども、これも今は鎮静化をしております。

 最後に、つい先月末でございますけれども、トルコで大きな地方選挙がございまして、その場でも、現在の与党であります公正発展党、AKPが支持率を上げておりまして、四六%の支持を受けている。

 一応、事実関係として、トルコの治安情勢をそのように判断しております。

小川委員 おっしゃるとおりです。るる詳細にわたって検証されるということは当然必要なプロセスだろうと思います。

 しかし、そのことと、最後のお尋ねですが、国内でもそうでしたが、安全神話に陥ってはならない、これは誰しも共有することだろうと思います。先ほど、岡本委員の御指摘の中でも、国際的に輸出を考えていく部分についての安全確認、安全技術、あるいは安全規制といったようなことが空洞地帯になっている、これは大変重要な御指摘だと思います。

 それから、もっと突っ込んでお聞きしますが、日本企業が海外において原子力発電所の建設にかかわり、あるいは、その後、場合によっては運用にもかかわるでしょう、さまざまな技術協力等を通して。そして、結果として、あってはならないこととはいえ、想定すべきだと思いますが、重大な事故、過酷な事態に立ち至った場合、日本企業、場合によっては日本政府、どういう責任を負うんですか、お答えいただきたいと思います。

    〔原田(義)委員長代理退席、委員長着席〕

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、我が国として原子力協力を行う際には、これまでも再々答弁がございますように、相手国の原子力安全のためにさまざまな協力をするということが大前提となることをまず申し上げたいと思います。

 今委員からも御指摘がありましたように、万が一の事態ということを想定いたしまして、原子力発電施設において万が一原子力事故が起こった場合の責任ということにつきましては、企業の契約内容であるだとか、あるいは当該施設が所在する国の原子力損害賠償に関する国内法というものに照らして責任が判断されることになるというふうに考えております。

 トルコの場合でございますけれども、トルコは原子力損害に関するパリ条約というものを締結しております。この条約におきましては、施設の運営者である原子力事業者というものへの責任集中、被害者が一体誰に対して訴えを提起するのかという意味での責任集中でございますけれども、これが定められているということでございます。トルコは今、この規定を踏まえまして、トルコ側として原子力損害賠償に関する法案を整備しているというところでございます。

 したがいまして、我が国の企業が製造した原子炉などの原子力関連資機材が納入されたということが想定をされ、そして、トルコにおいて、そのような原子力発電所において万が一原子力事故が起こったというときには、被害者の責任は誰に対して提起をするかということについて言いますと、これは原子力事業者でありますところの事業会社が負うということでございますので、当該の資機材のメーカーである日本企業あるいは日本政府に対してそれが向けられるということには必ずしもならないということでございます。

小川委員 建前として、そういうことなんだろうと思います。ただし、これは、おくればせながら、日本もこの原子力損害賠償に関する国際条約に加盟の準備を進めている、その事実も確認したいと思いますが、その理屈は国内における東電と同じ構造ですよね。電力事業者が一義的に責任を負うんだというたてつけ、建前になっています。しかし、事はそれで済まないのが万一の際の原子力災害です。

 今、一通り表面的なことを御説明いただきましたが、事前に事務的な説明を受けた中では、物によっては、場合によっては、原子力事業者から製造責任者に対する求償契約、特約というものがあり得るというお話をお聞きしましたよ。これは、実態、どうなんですか。可能性はどうなんですか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど私から答弁させていただきましたのは、万が一の原子力事故の場合、被害者の方がその被害についての提起を誰に行うか、そのような意味での責任集中ということでは、パリ条約、そして、トルコではパリ条約を踏まえた上で国内法の整備を行うであろうから、それは原子力事業者である事業者に向けられるということを申し上げました。

 今委員から御指摘がありましたように、それでは、被害者から責任追及、被害についての提起を受けた原子力事業者がその先どうなるのかということについての点でございます。

 パリ条約におきましては、契約によって明確に規定をされているような場合には、その規定する範囲内におきまして原子力事業者がメーカー等に対して求償を行う、そのようなことも認められておりまして、この点は今委員御指摘のとおりでございます。

 トルコの原子力損害法というのは、先ほど申し上げましたように、現在、整備の途中であるということでございますので、トルコ側として、パリ条約の趣旨を踏まえた上で、国内の制度整備を行っていくということだろうと思います。

 メーカーについての求償権ということにつきましては、先ほど申し上げましたように、契約がどのような形になるかというところによって決まってくるということでございますので、政府として予断することは差し控えたいと思いますけれども、今申し上げていることは、被害者の損害賠償は誰に向けられるかということとはまた別の次元のところでございまして、被害者からの損害賠償の提起ということにつきましては、先ほど申し上げた責任集中の制度となっているということでございます。

小川委員 とにかく、これは重要な論点だと思うんですよね。政府として、民民の契約だから一定配慮します、あるいは立ち入りませんというのは、一般的にはそうでしょう。しかし、事原子力災害において、しかも安全神話に戻ることはできない、なおかつ国内事情を抱えているということからすれば、改めてそこに対する大変慎重な研究なり、場合によっては情報収集なり、行政指導なりということも当然視野には入るべきだと思います。

 そのことをつけ加え、重ねてになりますが、平和利用それから核拡散抑止という観点から賛成をいたす予定ではありますけれども、実際の原発輸出に対してさまざまなおそれ、注意すべき点、論点が残るということに対しては、我が党として大いなる、さらなる研究を積み重ねさせていただくということをつけ加えさせていただきまして、質疑を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 それでは、民主党の持ち時間の範囲内で質問をさせていただきます。

 まず冒頭ですけれども、けさの八時四十六分、南米のチリの北部沿岸でマグニチュード八・〇の地震があったと先ほどニュースの速報がございました。この点につきまして、邦人の安否も含めまして、何か今入っている最新の情報がございましたら、この場で御報告をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 チリの地震につきましては、報道で承知をしております。

 今現状、事実関係を確認中でありますが、現在のところ、邦人に被害が発生したという情報は承知しておりません。

渡辺(周)委員 この点につきましては、はるか日本の向こうとはいいながら、津波が発生した場合、我が国にも、学者さん、気象庁を初めとして、あるいは専門家の方々がいろいろと今後警報等を出されると思いますが、我々も注視をしていきたいと思いますし、また、沿岸国、近隣国にいる邦人に対しては、最善の注意を払うように、外務省としても、邦人保護の立場から、ぜひとも早急な対応をお願いしたい。事態の進展とともに早急な対応をお願いしたいと思います。

 さて、今ちょっと地震の話をしましたけれども、今、小川委員も質問をされましたトルコも、これまで大変大きな地震に見舞われてきたところでございまして、一九〇〇年以降にマグニチュード六以上の地震が七十二回発生している地震国。中でも、一九九九年のトルコ北西部地震では、一万七千人以上の死者、四万三千人以上の負傷者が発生していまして、合わせて六万人以上の死傷者が出ているというところでございます。確かに私たちも、トルコで一旦地震が起きますと、もともと余り耐震補強等が進んでいない、非常に歴史的な遺産の国でもあるという意味では、崩れ落ちた国土の映像なんかを見まして、何度も驚いたことがございます。

 ある調査によりますと、イスタンブール市の耐震補強率では、四年ほど前の数字ですけれども、全建物の一%程度なんだと。日本みたいに地震が来ることを念頭に置いた耐震補強というものがそうそう進んでいないお国柄でもございます。

 それだけに、これは先ほど小川委員も申し上げましたが、私どもの党の中でも、核の不拡散それから平和利用について、その素地をつくるという意味でのこの協定は絶対に必要で、我々の国としてやはり賛成をすべきである、反対すべきではないというような意見がありました。しかし、だからといって、原発を輸出するのかということになりましたら、やはり福島であれだけの事故を起こし、しかも、世界じゅうから今もその点については注視をされている我が国として、地震国トルコに出すのはいかがなものなのだろうか、こういう意見もあります。どちらももっともな意見でございます。

 その上に立って申し上げたいのですが、これはそもそも論です。そもそも今、日本の原発事故、三・一一を受けた原発事故の後で、トルコ側から見て日本の原発は信頼されているのでしょうか。極めてそもそもの質問ですけれども、日本の技術が世界に誇るトップレベルにある、しかし、このような事故を起こした中で、今現在、いまだ原因究明もコントロールもできない中で、日本の原発というものに対してトルコ政府あるいはトルコ国民はどう見ているか、どう認識しているか、その点についてはいかがですか。非常にそもそも論でありますが、お答えいただければと思います。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の原子力技術に対するトルコ政府からの信頼感というのは、これは首脳レベルでも、我々実務レベルでも、累次にわたり表明をされております。例えばシノップの原子力発電所建設プロジェクトで予定されている原子炉につきましても、我々が聞いておりますのは、アトメア1という非常に信頼性の高い最新の炉型でありまして、各先進国の規制当局からの基準適合の評価も受けているということであります。

 こういったことは、日・トルコ首脳会談の後の共同のプレスリリースなどにおきましても、日本の原子力技術に対する高い信頼が寄せられているということは明らかでございます。

渡辺(周)委員 改めて伺いますが、首脳レベル以外に、今、我々の国でも原子力発電に対する意識調査等は定点的にメディア等が行っております。あるいは、政府が、さまざまなNGOとか、あるいは公の団体も行うこともございますが、首脳レベルでない、例えばそこの地域の周辺住民における意識であるとかあるいは国民の意識ということにおいては、何かそういう客観的なものは、データはストックされているんでしょうか。いかがですか。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば世論調査とか、そういう数字があるかということについてのお尋ねがありましたが、そういう数字は我々承知しておりません。

 ただ、先ほども私、御説明を申し上げましたけれども、トルコの原子力発電を推進するエネルギー天然資源省のみならず、規制を担当する原子力庁、こういったトルコ政府の責任ある幹部から、現地におきます、シノップの原発建設予定地域における住民の反対につきまして、もちろんそういう反対運動はある、ただし、住民は原発建設をおおむね支持しておって、反対運動は限定的であるという説明を受けております。これは、我々が、昨年の秋ですけれども、政府の調査団を現地に派遣したときも、案内をしてくれました現地の人たち、あるいは政府の担当の幹部たちから同じような話を受けているところでございます。

渡辺(周)委員 これはもちろん、原発を立地しようというところの住民、さまざまな恩恵を受ける人あるいはそうでない方、変わらない方、もっと言えば、直接的にそこにはいないんだけれども、近隣に住んでいて非常に不安に思っている方、そういう方もいるんだろうと思います。

 私は、ある意味では、国民の意識の最大公約数というところがどこにあるか、また日本の原発に対してどんな思いを持っているかということに対して、もし不安があるのであれば、それをどう解消していくかということは今後必要になってくるんだろうと思います。

 そういう意味では、原発は、日本の国がそもそも安全だと思われているかどうかということについては、どういう思いを持っているかについては承知していないということなんですが、しかし、それは、何か直観的な、ばくっとつかむようなことを言うのではなくて、やはり何らか客観的なデータの上に立って、トルコ国民が、あるいは立地予定の町の周辺の住民がどういう思いを持っているかということをやはり把握しておくべきだろうというふうに思いますし、また、そういうことを大使館なり調査団なりがしっかりやっていただきたいというふうに思うんです。

 なぜ私がこういうことを言うかというと、一つ申し上げたいと思いますが、これはもう言うまでもなく、一九八五年三月十七日、テヘランの空港に取り残された邦人を救出するために、トルコ航空の飛行機が邦人救出をした。これはもう御存じのとおりで、当時のオザル首相が、当時、我が国がまだ法的整備ができていなくて自衛隊機が派遣できない、そして民間の航空会社に要請したところ、乗員の安全を確保できないということで、トルコ航空が首相の命によって決断をした。そして、そのときにパイロットに志願を求めたら、全員が手を挙げて、全員が日本救出のためにテヘランに向かってくれた。これは、四十八時間以内に退去しないと、四十八時間以降は上空を飛ぶ飛行機は民間機であろうと無差別に攻撃するとサダム・フセインが言って、自国民を優先したほかの国はみんな行ってしまったわけです。そこで最後、二百名からの日本人が残ってしまった。しかしそれを、残り時間わずかな、タイムリミットが迫る中で救出をしたのがトルコ航空。このときのオルハンさんという機長さんは、先般亡くなられたときに日本からもお悔やみがあったというふうに聞いておりますけれども、旭日小綬章を二〇〇六年に受けられた方である。

 こういう命をかけて守ってくれた親日国に対して、もっと言えば、これはもうさかのぼること百二十年も前の、和歌山県串本町沖でのエルトゥールル号の座礁事故で、地元住民が、言葉も通じない異国の国民を救うために、明治二十三年、やはり命をかけて救ってくれた。そのことはトルコの教科書にも載っていて、そのときの恩返しだと言わんばかりにした。

 そしてまた、先ほど申し上げた、時代はまた戻って、トルコ北西部で六万人の死傷者を出す地震があったときは、今度は日本から仮設住宅を運んでいったときには、住民たちはそこにニッポン村という愛称をつけたり、あるいはコウベ通りだとかトーキョー通りだとかというニックネームをつけてその恩に応えたという、お互い持ちつ持たれつというか、本当に国家が危機に瀕したときには、国民が危機に瀕したときには、見返りを求めずお互いが助けたということの歴史があるわけでございます。

 だからこそ、この親日的なトルコに対して、我々は、そんなつもりはないということはもちろん承知していますが、やはりいいかげんなことをしてはいけないな、そんな思いを強くするわけです。

 そういう意味では、今後、この協定が結ばれることによって原発の技術を移転するということになった場合、例えば、行われるであろう地震国トルコの地層調査であるとか、あるいは周辺インフラの整備であるとか、そういうことについて、日本国としてある程度は、やはり私は、民間の問題、民民の問題だからといって投げるのではなくて、民間の契約であっても、何らかのしっかりとした裏書きをしてあげる、できることはしていくべきではないかと思うんですね。

 どこの国に対しても我が国は同じようにするのでしょうが、とりわけトルコという国に対しては、歴史的いきさつの中で、やはり日本の威信にかけてそれはしなければいけないのではないかと思うだけに、今これから、例えば地層の調査もそうでしょう、それから周辺インフラのあり方について、あるいは日本が原発事故を起こしたことに対して、やはりその情報というものはしっかりと提供しなければいけないと思うんですけれども、この点については、どうでしょう、大臣、何かお考えはございますでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国としましては、国際社会に対して原子力の平和利用に貢献するに当たって、やはり責任のある対応をしていかなければならないと考えております。そしてその中で、トルコとの関係を考えましても、委員御指摘のように、長い歴史の中で友好関係を持ち、そして親日国として我が国に対して理解を示してくれている、こうした大切な国に対して責任ある対応をしていかなければならない、これは当然のことだと考えます。

 そして、トルコからの要請もあり、我が国としまして、トルコの原子力の平和利用に貢献しようということで、まずは、平和利用そして核の不拡散を法的に確保するという見地から、協定を今、国会で議論していただいているわけでありますが、こうしたトルコに対しましての原子力の平和利用への貢献という際に、福島第一原発を通じて得た我が国の経験ですとか知見、これをしっかりと共有していかなければなりません。

 ぜひ、誠実に、トルコの原子力の平和利用の安全について、我が国としてもしっかりと協力をしていきたいと考えます。

渡辺(周)委員 やはり、原発事故を起こした国だからこそ言えること、わかったことがあるんだと思います。

 ですから、安全神話というものに、我々もどこか安心し切ってきた部分がある。恐らくトルコの国内でも、原子力発電所というものは非常にコストの安いエネルギーで、大きなエネルギーを生み出す、そして、さまざまな経済発展をしていく中で、成長していく中で、なくてはならない、恐らくそのように立地を推進する側は言うのでしょう。

 しかし、あえて我々は、日本の国が今、この期に及んでいまだやはり迷っている部分が日本国民の中にもある。我々政治の中にも、原発の今後についてはさまざまな意見がある。だからこそ言えることを、やはり私は、親日国のこれだけのきずなを持った国として、率直に伝えられるものは伝えていただきたいと思うし、提供できるものは、もしそうなればぜひ提供していくべきだろうというふうに思います。その上で、ぜひ、国としても、トルコの発展を考えて、今後の外交成果を残していただきたいと思うわけです。

 残り五分ほどになりましたので、ちょっとテーマをかえます。

 日朝交渉について、北朝鮮の側に変化があると。ここも核を持っている国として非常に関心のある国なんですが、核とミサイルと拉致、我々としては拉致問題について協議を再開したいという中で、一定の前進が見られたというような報道もあります。

 この点につきましては、前回の外務委員会でも私は聞きました、何か変化が見られるのかと言いましたが、この交渉を終えてみて、手応え、あるいは今後の展望というのはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 日朝の政府間協議ですが、三月の三十日と三十一日、二日間にわたって、双方が関心を有する幅広い諸懸案について率直かつ真摯な議論が行われたと報告を受けております。

 そして、成果について御質問がありましたが、今回、一年四カ月ぶりの協議の再開でありました。そして、拉致、核、ミサイルを初めとする我が国の諸懸案、関心事については、しっかり伝えさせていただきました。そして、協議の結果として、協議を継続するということで一致をいたしました。

 まず、協議を継続するということについては一定の評価をしたいと存じますが、議論の中身につきましては、一年四カ月ぶりの協議の再開でもありましたし、引き続き協議をする、続けていくということでありますので、今後とも引き続き粘り強く交渉し、具体的な北朝鮮側の前向きな態度を引き出す、こういった成果につなげていきたいと考えています。

渡辺(周)委員 時間延ばしとか先送りみたいな、結局、協議をするけれども、結果的にいつもゴールが見えてこない、結論のない話し合いというのをまた繰り返すのかなと。そうすると、また時間がたつばかりでございます。

 既にここで宋日昊氏が言ったのは、日本の朝鮮総連の本部の売却について、要はこれを保全することが前提であるというようなことを言っておりますが、こういう発言を受けて、何か変化があるのでしょうか。これが何か、条件交渉、闘争の一つの条件なんでしょうか。いかがですか。

岸田国務大臣 今回の日朝政府間協議におきまして、御指摘のように、北朝鮮側から朝鮮総連の不動産の入札問題について問題提起があったのは事実であります。しかしながら、それについて何か結論が出たとかいうことはありませんし、そして、やりとりについては、今後まだ議論が続きますので、現時点で何か断定的に申し上げるのは控えたいと存じます。

 引き続きまして、そうしたさまざまな課題を提起した上で議論が続けられることと考えています。

渡辺(周)委員 向こうもさまざま要求を出してくるでしょうけれども、こちらからは既に、一定の前進があれば経済制裁を緩和してもいいというような発言がなされていますが、何か変化があるのか、それとも、こちら側だけが最初に折れて、結局、成果が得られぬまま、とるものだけとられてしまうのかと思うんですが、この点について、朝鮮総連の売却については、これも向こう側から投げてきた一つの変化球ではありましょうが、そこはしっかりと信念を持って交渉を続けていただきたいと思います。

 最後、時間がありませんので、二つ立て続けに伺います。

 一つは、先般ドイツのベルリンを訪問した中国の習近平国家主席が、日本軍国主義の侵略戦争で中国人三千五百万人以上が死傷した、南京では三十万人以上が虐殺されたということを言います。これまでさまざまな方がいろいろなことを言うんでしょうけれども、今回は国家元首であります。国家元首が他国へ行って、我が国の反論できない場でこういうことを言う、これからこうしたことが恐らく想定されると思います。いわゆる歴史認識というものを突きつけて、あちらこちらで拡散をしていく。このことについて、日本政府として、国家元首がこのような発言をすることに対してどのように対応するのかということが一つ。

 もう一つお尋ねしたいのが、いわゆる河野談話の見直しはしないけれども、河野談話のプロセスについては検証するということなんですが、プロセスを検証するということは一体どういうことなのか、そして、その結果どうであったということは公表されるのかどうなのか。

 新しい事実が出てきたら河野談話というものを見直すべきであるという、先般の産経新聞だったでしょうか、七割近い、そうであるという世論が出ていましたけれども、私は、何らかの形で加筆するなり、あるいは、さらなる新たな事実というものについて公表するということはあってしかるべきだと思いますが、外務大臣、この二点についていかがお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まず一点目ですが、いわゆる南京事件につきましては、政府の見解は、旧日本軍の南京入城後、非戦闘員の殺害あるいは略奪行為があったことは否定できないと考えておりますが、その具体的な数については、さまざまな議論があり、断定することは困難であるというものであります。

 そして、そもそも、第三国において歴史問題で我が国を批判すること、これはもう非生産的なことでありますし、日中関係に何ら役に立つものではないと考えております。したがって、中国の指導者からかかる発言がなされたことは、遺憾であると言わざるを得ません。

 我が国としましては、戦後六十九年間、平和国家として歩んできた我が国の歩みとあわせて、こうした歴史的な問題につきましても、我が国の立場について正しい理解を得るべく、一層対外的な広報を強化していかなければならないと考えております。

 そして、二点目の河野談話についてですが、河野談話の作成過程の検証につきましては、二月二十日の衆議院予算委員会におきまして、石原元官房副長官より、元慰安婦の聞き取り調査結果について裏づけ調査は行っていないという点、そして、河野談話の発表により一旦決着した日韓間の過去の問題が、最近になり再び韓国政府から提起される状況を見て、当時の日本政府の善意が生かされておらず非常に残念である、こうした証言がありました。

 こうした証言があったことを受けまして、この作成過程について実態を把握し、それをしかるべき形で明らかにするべきであると政府は考え、具体的には、河野談話の作成過程で韓国側との意見のすり合わせがあったかどうかの可能性については、政府の中に極秘の検討チームをつくり、実態を把握した上で、その取り扱いについて検討していきたいということ、そして、この元慰安婦からの聞き取り調査については非公開を前提として実施されたものであり、日本政府は、約束を守る国として、機密を保持する中で政府として確認したい、こういった考え方を官房長官から表明させていただいております。

 そして、結果について御質問いただきましたが、結果につきましては、政府としては、国会から求めがあれば、こうした報告等について用意がある旨、官房長官は発言をしているものと承知をしております。

渡辺(周)委員 続けてまた次の委員会でやりますが、きょうはここで終わります。

鈴木委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 本日は、原子力協定、また台湾の問題、さらにミャンマーやウクライナの問題など、多岐にわたって質問させていただきたいと思いますが、より成熟した民主主義の社会はどうあるべきか、また、前回質問させていただいた、積極的平和主義の視点から日本としてどのような対応をすべきなのか、そういったテーマに沿って質問させていただきたいと思います。

 まず、この週末なんですが、私、党内の有志とともに台湾に行ってまいりました。今、学生が中心になって、中台サービス貿易協定に反対するデモを行っておりまして、立法院、国会を占拠、まさに我々が視察をした日は、五十万人とも言われる大勢の方々が抗議活動を行っている日でございました。

 私たちも、国民党、民進党の関係者、また政府、そして学生のデモへの参加者などにヒアリングを行って、この状況についての理解を深めたい、そういった思いで活動してまいりました。

 簡単に説明すると、これは、中国側が金融や医療などの八十分野を、そしてまた台湾側が運輸や美容などの六十四分野を開放する協定で、昨年六月に中台間で調印はされたものの、議会での審議を行わなかったこと、また、野党の要求で見直しを行ったものの、時間切れを理由に審議を強引に打ち切ってしまった、こういう手法と、このサービス貿易協定が通ってしまったら、中国の大きな力にのみ込まれてしまって、台湾の社会や経済が破壊されてしまう懸念、また一方で、少数の資本家が多くの農民や労働者、また中小の工業者をのみ込んでしまう、そういう階級闘争としての側面もあるということも感じたわけでございます。そういった状況を懸念して、学生たちが、台湾の未来を奪う、生存権をかけた闘いという、そういった思いで活動しておりました。

 私が大変驚いた、また感銘を受けたのは、とにかく学生たちのマナー、モラルが非常に高いんですね。国民がそれを本当に懸命に後押ししている。学生たちも軽い乗りではなくて、例えば、デモの会場でも一生懸命勉強している、大学の先生が出張でそこで講義をしているような様子もありました。また、全土から無料のバスが出て、学生たちあるいは市民たちを会場に送る、そういった役割を果たしていたり、また、シャワーを提供する、食事や医療を提供する、また、弁護士の方々が法的な根拠をしっかりと担保できるようなサポートをする、そういった活動、国民全体が学生を後押ししている、そういう様子を見ることができました。

 一方で、リーダーの視点に立てば、まさに民主主義のコストに直面をしているということだと思います。強いリーダーシップでスピード感のある対応をしたいという思いはあるでしょう。しかし、国民を説得する力も必要であるということを、恐らく馬総統も今実感をしているのではないかと思います。

 さて、大臣にお聞きしたいと思いますが、こういうデモという手法について、そもそもどのようにお考えでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 まず私の方からお答えをさせていただきたいというふうに思います。

 台湾についてでありますけれども、まさに、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値観を共有する、緊密な経済関係と人的往来を有する、我が国にとって非常に重要なパートナーであり、大切な友人であるということはまずお話を申し上げておきたいというふうに思います。

 今まさに委員から現場からの報告をいただいたということでありますが、一つ一つの事件、事象について私どもの立場でコメントするということは差し控えたい、このように思っておりますが、本件について、これは台湾にとって重要な政策課題の一つである両岸サービス貿易取引をめぐって、今、厳しい意見の対立や混乱が見受けられるといったことは事実であるというふうに理解をしております。

 その上で、デモの対応を含め、また当局の対応を含め、今まさに両者間において、あくまでこれを議論を通じて打開していこうという努力が行われているということでありますので、今まさに台湾においてそういう民主主義に根づいた一つの大きな活動が両側から起こっているというふうに理解をしているところでございます。

岸田国務大臣 私へ、デモについてどう考えるかという御質問がありました。

 デモにもいろいろなケースが考えられますが、国内法において、法律の範囲内において行われるデモというものは、一つの表現手段として尊重されるものではないかと考えております。

阪口委員 民主主義社会においてデモというのは、みずからの主張を表現する手段として憲法二十一条の第一項においても認められておりますし、政策決定者、政治的リーダーも、選挙によって選ばれた存在ではあるものの、やはりこういった国民の声をしっかりと謙虚な姿勢で受けとめるということは必要だと思います。また、政府の政策とは異なる考えを持ってこうした表現をしている人たちに対する、とにかく丁寧な説明、これは不可欠であると思います。

 一方で、私、今回の台湾の中台サービス貿易協定締結のプロセスを見ていると、昨年の暮れの特定秘密保護法の成立プロセスと共通するところを正直感じました。

 自民党の石破茂幹事長が、この特定秘密保護法案に反対する人々が行うデモを指して、テロ行為とその本質において余り変わらない手法である、こういったことをブログにおいて書かれました。私も、この考えは基本的に誤っていると思っている一人でありますが、今回の台湾においてもそうでしたが、世界各国で、民主化を支援する、この民主主義の考えに立ってデモを行っている方々に、実は石破幹事長のこの考え方について聞いております。本当に世界の方々が、その考えはおかしい、日本の民主主義というのはどうなっているんだ、こんなことをおっしゃるわけでございます。

 こういった御党の石破幹事長の考え方と、民主主義におけるデモの位置づけ、世界における位置づけとの乖離ということについて大臣はどのように思われるでしょうか。そして、大臣自身は、いわゆるデモに参加したことはありますか、あるいは、デモのすぐ近くで政府の考えとは違う方々の声を聞いたことはありますでしょうか。この二点、お答えをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、御指摘の石破幹事長の発言の真意については私は十分確認はしておりませんが、デモに対する考え方は、先ほど申し述べたとおりであります。法律の秩序の中で行われるデモというのは、民主主義における表現の一つの大切な手段であると考えております。

 そして、デモに参加したことがあるのかという御質問でありますが、デモの定義というのは、どこまでがデモでどれがデモでないのか、ちょっと私も定かでありませんが、大人数で集まって何か意思表明をするということであるならば、学生時代も含めて何度か経験した記憶があると思っております。

阪口委員 大変興味深い答弁でしたので、その大臣が参加されたデモについてもう少しお答えをいただけないでしょうか。

岸田国務大臣 その具体的な内容については、先ほども申し上げましたように、デモとは、どれがデモでどれがデモでないかという部分も含めて定かではありませんので、ちょっとこの場で申し上げるのは控えたいと存じます。

 いずれにしましても、デモというのは、法の秩序の範囲内であれば、大切な手段だと考えております。

阪口委員 大臣とは時々ジムで御一緒することがありますので、そういったもう少し開かれた場でぜひお伺いをさせていただきたいと思います。

 デモというのは、否定的な捉え方をされる方もいますが、しかし、なかなか自分たちの声が政策決定者に届かないというときに、本当に自分たちの生存権をかけて活動している、そういった側面があること、これはぜひ理解をすべきだと我々は思うんですね。

 続いて、トルコへの原発輸出についてお伺いをしたいと思います。

 先ほど、政府の答弁においては、原発が建設されるシノップ地域周辺においては原発の建設に関してはおおむね肯定的である、そういった説明がありました。ただ、シノップの市長は原発に対して反対という立場で選挙を通っているわけでもございまして、恐らく限られた視察の中で、周辺にいる人たちが推進に賛成であるからといっておおむね賛成と言うことは、私は少し乱暴な解釈ではないかと思わざるを得ないと思います。

 原発輸出についてですけれども、トルコにおいては、この週末、先ほども説明がありましたが、地方選挙が行われて、エルドアン首相が率いる与党が圧勝したということですね。

 ところが、この地方選挙の前後に、トルコにおいて、私は、民主主義とは逆行する状況がかなり進んでしまったと思っています。ツイッターやユーチューブなどが使えなくなってしまった。これは、首相の独断で使えなくしてしまったわけですね。私もいろいろと情報提供を受けて、そのお礼に世界選手権の浅田真央さんの映像を送ろうとしたら、もうユーチューブは見られなくなってしまったということで、情報に対するアクセスが大変に制約されてしまっているということを大変憂慮しております。

 一方で、例えば地震などの災害が起こったときに、ツイッターやフェイスブックなどのSNSというのは、携帯電話、固定電話などが使えないときにおいても、非常に使い勝手がいいツールであります。私も、三月十一日の東日本大震災の直後に、ツイッター、フェイスブックを使っての救援活動ということに取り組んでいた経験上、こうした情報にアクセスする権利を奪っておきながら、原発の開発を進めていく、原発を建設する、これは、安全対策という点で大変に大きな矛盾であると思います。

 国民の安全を担保できない状況をトルコ政府がみずからつくり出そうとしている、この点について、大臣、どのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 トルコにおける原子力の安全ですが、まず、トルコ国内におきましては、原子力発電所の設計の原則や安全検査といった事項に関する国内規則が各種整備されています。また、IAEAの評価ミッションを受け入れたり、EUと同じ方式のストレステストをトルコにおいて自主的に実施する意向を表明したり、こうした対応をとってきております。

 さらに、トルコは核物質防護条約を締結しておりますし、また、核物質及び原子力施設の防護あるいは放射性物質の安全な輸送といった事項に関する国内規則を整備しております。

 また、原子力の政府の体制につきましても、原子力規制当局はトルコ原子力庁、そして推進はエネルギー天然資源省ということで、別の組織として運営している、こういった体制をとっております。

 こうしたトルコの国内法あるいは政府の組織としては、国際的に見ても、原子力安全に対しまして対応が行われていると認識をしております。

 そして、御指摘のように、インターネット等で情報が制限されているのではないか、こういった御指摘があります。事実そういった動きがあること、これは承知をしています。ただ、トルコの国内においても、そういった動きに対して、司法から判断が下され、さまざまな議論が行われている、こうした国内の動きも存在すると聞いております。

 トルコの国内において、こうした原子力の問題についても透明化が図られることを期待したいと考えています。

阪口委員 日本では、福島第一原発事故の教訓を踏まえて、原子力の推進機関と規制機関の分離が行われて、原子力規制委員会が発足したわけでございます。ところが、私が調べた限りでは、トルコにおいては、トルコ原子力庁がいまだに推進と規制の両方を行っているということでございます。

 ちょっとこの点を確認させていただきたいんですが、要するに、我々が世界で最も安全な原発を輸出するということであれば、単にハードとしての原発を提供するというだけではなくて、とにかく、安全性を担保するためのあらゆる手段、あらゆる方法をやはり先方とも議論をして、そしてこれは内政干渉ではないと思います、我々の教訓をしっかり伝えるというのはまさに日本の義務だと思いますが、この点についてどのようにお考えなのか、大臣の見解を伺いたいと思います。

上村政府参考人 まず、事実関係のお答えを申し上げます。

 トルコの原子力庁設置法におきまして、原子力庁の権限として、基本的には規制の側面でございますけれども、確かに先生御指摘のとおり、この原子力庁設置法におきましては、規制を実施すると同時に、原子力の平和利用に関する基本的な政策あるいは方針を定めることも権能として入っております。そういう意味では、日本の制度とはやや違うものでございます。

 ただ、この点に関しましてはトルコ政府の側としましても問題意識を持っておられて、現在、法的な整備を新たに進める、改正をする、それから人的な関与につきましても整理をする、こういった改正が行われると承知しております。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国として、トルコの原子力の平和利用の安全につきまして、しっかりとアドバイスを行う、貢献をしていくことは大変重要だと考えています。そして、トルコの国内の体制についても、今、上村局長から御説明させていただいたような認識に立っておりますが、そもそもこの原子力協定の中に、原子力の安全につきましてはトルコとの間で定期的に協議を持つ、こういった規定も設けさせていただいております。

 こうした具体的な規定に基づいて、ぜひ、引き続きまして、トルコとの間で、原子力の安全についてしっかりと我が国としても協議をし、アドバイスを行い、そして貢献をしていきたいと考えています。

阪口委員 その点は本当に日本の責務であると思いますので、とにかく、我々の党は、この原子力協定については、党内で大変に激しい議論を行った上で反対ということでございますが、もし政府として原発を輸出するということであれば、今申し上げた点については万全の対応を求めるということをぜひお願いしたいと思います。

 一方で、私がもう一つ大変に憂慮するのは、廃炉計画、放射性廃棄物の処分計画、これが不明であるということでございます。日本の前にトルコにおいて原発の建設計画を推進しているロシアは、廃棄物に関しては自分たちが引き受ける、そういった契約であると私は承知しておりますが、日本が今商業契約を進めている内容を見る限りでは、この最終処分の問題については明確になっていない、これは私の理解なんですが、この点について現状どうなっているのか、御説明をいただきたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の問題は、我が国が原子力協力を行った際、特に原子炉にかかわる協力を行った際の使用済み燃料の取り扱いという問題であるというふうに考えます。

 日・トルコ原子力協定、それから日・アラブ首長国連邦原子力協定の双方について言えることでございますけれども、我が国との間では使用済み燃料は移転をされない、そのような形になっております。したがいまして、我が国が、トルコそれからアラブ首長国連邦から使用済み燃料を引き受けるということにはならないということでございます。

阪口委員 私の今の質問の趣旨は、日本が引き受けるか引き受けないかということだけではなくて、トルコ国内においてどのように処理をされるのかということを実は聞きたかったんですが、この点についても教えていただきたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 御案内のように、使用済み燃料の処分、特に最終処分ということにつきましては、これは原子力利用を行ういずれの国においても非常に大きな課題でございます。トルコにつきましては、この最終処分をどのようにするかということについては、今後検討をしていくということになってございます。

 あと、一点つけ加えさせていただきますと、一般的な原則ということで国際的に理解をされていることといたしましては、使用済み燃料をどのように処分するかということについてはそれぞれの国の責任において考えるというのが国際的な考え方の基準となっているということでございます。

阪口委員 今の答弁を聞いていて、確かに、使用済み燃料の問題、これは国内問題であるということではありますが、ただ、原発は売るけれどもその点については勝手にやってくださいということであれば、世界最高レベルの安全を担保してエネルギー政策に寄与するんだという趣旨で考えると、これは大変に不十分であると思います。そういうことも我々の党内でも議論をした結果、これは反対せざるを得ないという結論になったわけでございます。

 とにかく、私もこのトルコへの原発輸出に関してはこれまでも三回ほど質問をさせていただいてきたわけでありますが、例えば、これは基本的には民間の契約なので政府はそこまではわからないというような答弁、あるいは、今おっしゃったような、最終処分また核廃棄物の処理については我々の責任ではないと捉えられかねない説明というのは、私は、日本が今まさに背負っている責任を踏まえると、これは十分ではないと思います。この点については、まさに世界から信頼される状況をしっかりとつくっていかなければいけないと強く申し上げておきたいと思います。

 次に、ミャンマーについて、前回に続いてお聞きしたいと思います。

 現在、ミャンマーにおいては、一九八三年以来の国勢調査が行われているんですね。ミャンマー国内の移民・人口省と国連人口基金が協力をして、推計人口六千万人と言われておりますが、人口の基礎データを収集する、それを持続可能な開発に生かしていくということで行われているんですが、ただ、いろいろと現地の情報を収集すると、過疎地におけるデータ収集や民族問題が国勢調査にも非常に困難な状況を生み出していて、さまざまな問題が生じているということでございます。

 特に、ラカイン族などが、ロヒンギャ族という回答が調査票に残ればロヒンギャ族という民族の存在を認めることになるということで、やはりデモ活動を行っていて、それを受けて、私が知っている限りでは、三月三十日にミャンマー政府は、ロヒンギャ族という回答は認めないという約束をした、このように聞いております。

 一方で、この国勢調査の費用を相当程度、日本円で十六億円程度拠出していると言われている英国政府などは、調査は公平かつ脅迫を受けずに全ての人々が参加できるものでなければいけない、そういった声明を出しているわけでございます。

 日本政府としてはこの問題についてはどのような立場なのか、また、この国勢調査についてはこれまでどのように直接間接的にかかわってきたのか、この二点をお伺いしたいと思います。

木原(誠)大臣政務官 まず、事実の確認からさせていただきたいと思います。

 先般開始されましたミャンマーの国勢調査に関しまして、今委員から御指摘いただきましたとおり、ラカイン州におきまして、民族の欄にロヒンジャと記載された場合はこれを調査結果には反映しない旨のラカイン州政府の声明が発表されたというふうに承知をしてございます。また、同州において、同時期に、国際機関やNGOに対する大規模な暴動の発生も報告されているところでございます。

 我が国といたしましては、国勢調査はまさに国家の基本情報を収集するという重要な事業でございます、同調査が公正かつ平和裏に実施されることを期待しているところでございまして、あわせて、同州において全ての暴力がまず停止されるということが重要であると考えてございます。

阪口委員 今、日本政府がこの国勢調査に直接間接的にどのようにかかわったのかということについてもお聞きしたんですが、この点いかがでしょうか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 ラカイン州におけます今回の暴動を含め、これまで多数の死傷者が発生した事態を、日本政府としても人道的な観点から憂慮しているところでございます。先ほど外務大臣政務官から申し上げましたとおり、この国勢調査については、公正かつ平和裏に実施されることを期待しておりまして、同時に、ラカイン州において暴動が停止されることが重要と考えているところでございます。

 そういった中で、先月、岸田外務大臣がミャンマーを訪問した際に、テイン・セイン大統領そしてルイン外務大臣に対して、こうした我が国を含む国際社会の懸念を伝達し、暴力の停止と国民和解に向けた事態の改善努力を働きかけたところでございます。

 と同時に、ラカイン州におけます平和と安定に向けた取り組みを後押しするという観点から必要な人道的支援を行ってきているところでございまして、先般の外務大臣のミャンマー訪問の際に、同州を含む避難民支援のための、国際機関を通じた総額十六億円の支援を決定したところでございます。

阪口委員 今、公平に実施をする、国勢調査についてこのような日本政府としての考えが表明されました。

 基本的な考え方を伺いたいんですが、ミャンマーにおけるロヒンギャ族が国勢調査の対象から排除されるということ、これは公平なんですか。公平な調査ということと、現に住んでいるロヒンギャを認めないということ、この整合性についてはどのように理解すればいいのでしょうか。

    〔委員長退席、原田(義)委員長代理着席〕

下川政府参考人 今回の国勢調査にかかわります経緯について、我々が承知しているところを御紹介させていただきたいと思います。

 もともと、このラカイン州における国勢調査で民族名としてロヒンジャと記入することは認めるべきではないという動きが起こりまして、同調査のボイコット運動が行われ、そのボイコットを支持する人々はそのあかしとして建物に仏教の旗を掲揚する、そういう動きが起こったというふうに承知しております。

 三月二十六日の夜、そういった仏教の旗を取り外そうとしておりましたNGO所属の女性職員が近隣住民に目撃されたことを契機といたしまして、住民が同職員の引き渡しの要求を行うと同時に、ほかの国際NGOの建物に対して投石等の破壊行為を行う暴動が発生したというふうに承知しております。

 そういった流れの中で、治安当局は、まず威嚇発砲等を行って暴徒を解散させた上で、夜間外出禁止を拡大する措置をとった。さらには、そういう流れの中で、委員からも御指摘ございましたけれども、二十九日、地元住民に対して、ロヒンギャと記載した場合は国勢調査の記録としない旨約束するということを州の地元住民に対して公表したというふうに承知しているところでございます。

 一部においてこういうようなボイコットという動きがありまして、そのボイコットを排除しようとする人間に対して暴動というものが起こりまして、そういう中で出てきた政府当局間の判断として、ロヒンギャと書いた場合には記載しないということが出てきたわけでございますけれども、そういったような経緯と同時に、国勢調査の重要性ということも踏まえまして、これはまさにその国の判断として公正かつ平和裏に実施されることを期待しているというのが日本政府の基本的な立場でございます。

阪口委員 今、ロヒンギャを排除することと公正な国勢調査を行うということの整合性についてという趣旨で質問をしたんですが、正直、私、今説明を聞いていて、一番聞きたかったことについてはよくわかりませんでした。

 ロヒンギャの問題、これが大変難しい問題であるということは私も承知しております。ただ一方で、きょう最初に申し上げた、きょうの私なりのテーマである民主主義の成熟ということを考えたときに、少数派、最も弱い立場の方々の権利、これにやはり日本政府というのは敏感でなければいけないと思います。これは、大変難しい、ミャンマー政府とのさまざまなかかわりを踏まえた上で総合判断をすべきだと思うんですが、しかし、公正な国勢調査ということであれば、そのあたり、もう少し明確な日本の姿勢、日本の価値観というものを私は示していただきたいなと思うわけでございます。

 時間になりましたのでこれで終わりますけれども、本当に、成熟した民主主義国としての日本ということは我々はもっと真剣に考えなければいけないと思っておりますので、こういったテーマで今後も質問をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

原田(義)委員長代理 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 本日、初めて外務委員会で質問をさせていただきます。関係各位の御配慮に、まずもって感謝を申し上げたいと思います。

 さて、私は、平素、環境委員会の方で理事をさせていただいております。そういった関係で、昨年九月にフィンランドのオルキルオト島の方に派遣していただきました。そして、有名なオンカロという場所に行ってまいりました。

 地底四百五十メーター、百メーターを潜っていくのに一キロの道のりですから、計四・五キロの道のりを車で奥深く入っていったわけであります。フィンランドは、今わずか二基の原子炉から出る核燃料廃棄物の責任ある処理ということで、十万年後まで安全を担保しようということで、これだけ大きな設備が必要なんだなということを思って帰ってまいりました。既に三千億円程度の工費がかかっていて、二〇二〇年度の稼働には幾らかかるのかわからないというぐらい、大規模な予算もかかるというふうにお聞きいたしました。

 帰国後に、我が国が一体どういう状況にあるのか知りたくなりまして、十二月に党の有志で青森県の六ケ所村等を訪問して、視察してまいりました。

 既に我が国は原子力発電の恩恵を享受しております。トイレなきマンションとやゆされることもありますが、核燃料廃棄物を責任を持って処分するには極めて莫大なコストがかかるものだと思っております。

 原子力発電は、言われているほど安いエネルギーではないというふうに思っております。核燃料廃棄物処理でありますとか、周辺自治体あるいは地域住民の方のケアを正確に算定していけば、大変なコストがかかってしまうのではないかなと思っています。

 国益や世界的な経済競争力という観点からは、安定、安価なエネルギーの確保は絶対的なことであると思っています。また、安全であることも極めて大切であります。

 さて、今回の議題であります、トルコ共和国政府とUAE、アラブ首長国連邦政府との間の原子力協定についてお尋ねをしたいと思います。

 もう報道等でも御承知の方もおられると思いますけれども、我が日本維新の会では賛否がかなり拮抗した状況にありまして、昨年からいろいろと報道されているところであります。

 私個人は、実は、国益という観点から、当時は賛成という立場を表明させていただきました。また、貿易赤字という点から、現在も賛成という同僚議員もいるように認識をしております。しかし、本当に原発輸出が国益にそぐうのか、貿易赤字解消に貢献するのか、極めて大きな疑問を持っているところであります。

 まず初めに、核燃料廃棄物の問題をお尋ねいたします。

 輸出したい国の中には、廃棄物処理を引き受けることを条件にする国もあるかと聞いております。先ほどの阪口委員の方とちょっと重複しますけれども、現地にて発生した核燃料廃棄物に関して、我が国の対応方針を再度お聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回の日・トルコ原子力協定、そして日・アラブ首長国連邦原子力協定、この二つの協定におきまして、我が国との間で使用済み燃料は移転されない、こうしたことにしてあります。したがって、我が国が、トルコまたはアラブ首長国連邦から使用済み燃料を引き受けることにはならないと考えています。

 原子力施設からの使用済み燃料をどのように取り扱うかについては、一義的には、当該原子力施設を管轄する国が責任を持って取り組むべき課題であります。トルコまたはアラブ首長国連邦の原子力発電所における使用済み燃料については、それぞれの政府が責任を持って処理することになると考えております。

 ただし、我が国としましては、相手国から求められれば、これまでの経験に基づいて助言を行うなど、可能な範囲で協力をしていくことはあり得ると考えています。

河野(正)委員 そういうことで、今回の協定では移転はしないということで、我が国が引き受けることはないように思っております。その点は安心しているところでありますが、実際は、トルコで原発を受注したほかの国などで、引き取りを前提にしている国もあるかというふうに聞いておりますが、その点、どなたか。

岸田国務大臣 トルコに関しましては、例えばロシアが受注しましたアックユ原子力発電所の建設に係るトルコとロシアの政府間の合意では、両政府間の別途の合意に従うことを条件として、ロシア由来の使用済み燃料をロシアで再処理できること等が定められていると承知をしております。

 このような例があるのは事実であります。

河野(正)委員 そういうふうに引き受けるという約束で売り込んでいる国もあるということでございます。

 仮に先方で事故が起きた場合、例えば福島第一原発に類するようなことが万が一起きてしまった場合、我が国に製造者責任というのを問われることはないのでしょうか。この点をお聞かせいただきたいと思います。

 例えば、インドでは、一九八四年十二月にアメリカ企業の殺虫剤製造工場から猛毒ガスが流出し、付近の住民数千人がお亡くなりになったという不幸な事故がございました。被害者団体によれば、数十万人の方が後遺症に苦しみ、累計死者数は二万人を超えると報道されておるところであります。アメリカ企業から支払われた賠償金では足りないということで、こういった経験を生かして、インドでは、二〇一〇年制定の原子力損害賠償法に反映させていると聞いております。

 万が一原子力発電所事故が起きた場合、事業者だけではなく、メーカーなど原発供給者も賠償責任を負うことになります。この点、我が国としての考えはいかがでしょうか。どのように認識されているか、お聞かせください。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の事態、まさに万が一ということで、起こってはならないことが起こった場合どうなるかということのお尋ねであると理解いたします。

 一般論といたしまして、原子力発電施設において万が一原子力事故が起こった、そのような場合の責任につきましては、企業の契約内容それから当該施設が所在をする国の原子力損害賠償に関する国内法などに照らして判断されることになるということでございます。

 トルコにつきましては、原子力損害に関するパリ条約というものを締結しております。このパリ条約におきましては、当該施設の運営者である原子力事業者に対して責任集中ということが定められております。責任集中という意味は、被害を受けた方がそれを提起する相手方は誰かというと、それは原子力事業者に集中をされるということでございます。今現在、トルコにおきましては、このようなパリ条約の規定を踏まえまして、原子力損害賠償に関する法案を整備しているというところでございます。

 したがいまして、トルコということにつきまして申し上げますと、万が一原子力事故が起こった際の責任ということであれば、被害者の方がそれを提起する相手方は誰になるかというと、原子力事業者である事業者に対して行う、そのような仕組みになっているということでございます。

河野(正)委員 トルコはそういったことでお聞きいたしましたけれども、もし仮に事業者、原発供給者の方で、メーカー等が責任をとれというふうになった場合に、輸出した企業だけに責任を負わせることができるのでしょうか。国が補償することにならないのか。こういう事態をやはり念頭に置いて考えていきますと、国益という観点からは、この協定は反対せざるを得ないのかなと思っております。

 九九%の安全という言葉があったにしましても、一〇〇%の安全という言葉はあり得ないと思っております。こうなった場合に、国内の民間企業だけに責務を負わせるのか、あるいは国も手助け、つまり税金をつぎ込んで対応することになるのか、この点、いかがでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの答弁と一部重複するところも出るかと思いますが、その点、御容赦いただければと思います。

 万が一の事故の場合に、トルコの場合にはパリ条約を締結している国であるということから、それに沿った国内の法整備を行うということで、原子力損害の対応につきましては、被害を受けた方が誰にそれを提起するかということでいいますと、これは原子力事業者、つまり、トルコにおいて当該発電施設を運営している者であるということでありまして、被害を受けた方がその被害について提起をする相手方というのは、資機材のメーカーであるところの日本企業であるだとか日本政府というふうなところに来るということではないということでございます。

 したがいまして、重複になりますけれども、被害を受けた方がその被害を提起するのは、当該発電施設の運営をしている責任者であるところの原子力事業者ということでございます。

 以上でございます。

河野(正)委員 この点は、先に進みたいと思います。

 原子力発電所など、海外でインフラ、社会基盤の事業を受注しやすくするために、独立行政法人日本貿易保険が、戦争やテロ、政府の債務不履行といった不測の事態による損失に加えて、相手国が突然政策変更などをした場合も補償対象として貿易保険というのを準備されているかと思います。

 この貿易保険の現状について教えていただけますでしょうか。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 貿易保険は、我が国企業の対外取引に係る損失を補填する制度でございます。例えば、日本企業がプラントなどを輸出した場合に、輸出の相手方に対して日本企業や本邦銀行が有する債権について、当該相手方から支払われないことにこうむる損失をカバーするものでございます。

 したがいまして、事業活動を行う者が第三者から損害賠償を請求されたことにより受ける損失は対象としておりません。原発事故が発生した場合にメーカーが負う賠償責任についても、貿易保険の対象とはしておりません。

 以上でございます。

原田(義)委員長代理 ちょっと、今、数が足りないという御指摘もありましたので、委員を集めております。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

原田(義)委員長代理 それでは、速記を起こしてください。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小熊慎司君。

小熊委員 日本維新の会の小熊慎司です。

 午前中の質疑では、委員長を初め定足数が足りていないという状況、また、これは大事な協定の質疑ということであれば、外務委員会は、私は、ほかの委員会よりも質疑者も答弁者も含め非常に格調高い、いい委員会だとは思っているんですけれども、非常に残念な状況でありました。二度とこのようなことがないことを、私自身も含めて、これは肝に銘じなければならないというふうに冒頭申し上げまして、質問に移ります。

 この原子力協定、午前中の質疑もありました。御承知のとおり、我が党でも、昨年、非常に時間をかけて党内でも議論をし、また、両院議員総会という大きな党内手続を経て、最終的には反対という結論を導き出しました。

 この議論の過程の中でも、これは人それぞれによって、主義主張ということだけではなくて、考え方において、我々は国内でフェードアウトを目指しているんだから海外においてもそうだろうという並行した考え方を持つ人もいましたし、輸出に関しては民民の取り決めでもあるので、国内の原発政策とはまた別問題だろうというふうに切り離して判断をする方々がいたのも事実であります。

 また、日本のこれからのエネルギー政策、海外のエネルギー事情、また原子力にかかわる国際的ないろいろな議論がありましたけれども、とりわけ我が党で大きく反対の議員がふえたというのは、我が党の橋下共同代表が、やはりトイレのないマンションを売っていくということはあってはならない、午前中の質疑でも我が党の阪口委員が言っていましたとおり、処分場を含めてしっかりと整備をされていなければ出すということは無責任だろう、そういう強い思いの中で、最終的に多数が反対ということになったわけであります。

 また、その後も我々はいろいろ党内で、残念ながら河野議員の質問の途中に委員会がとまってしまって、質問の順番がずれましたけれども、この後、私の後、また河野議員がやりますけれども、本当に原発がもうかるのかという観点からも、これはもうからないんじゃないかというまた一つの判断もあり、そうであるならば、再生可能エネルギーで逆に世界をリードして、そしてそういった技術を輸出して日本の国益を得ていくという観点といったものも一つの側面としてあります。

 また、ウランに関しては無限ではありません。これはいつかは枯渇する資源でもあります。

 そういったことを考えれば、やはり時代を先取りして再生可能エネルギーに取り組む方が得だろう、そういった考え方もありました。

 そういった、いろいろ多角的に捉えて、最終的には我が党は反対なんですけれども、やはりその中でも、とりわけUAEとトルコとを比べたときに、トルコの八条はやはり盛んに問題視をされました。

 午前中の質疑で民主党の岸本委員が言ったとおり、ざっくばらんに言えば、大臣はこれまでの質疑の中でも、やらない、署名は絶対しないんだということを強くおっしゃっているんですけれども、だったら、そもそも条文に入れることはなかったんですよね。

 ざっくり言えば、トルコ国内の事情を私も詳しく知りませんけれども、トルコの方も、とりあえず入れておいてメンツを立ててくれということだったのか、本気でこれを入れ込んで、すきあらばというか、チャンスがあれば署名してもらって、再処理が可能な状況を本気で主張していたのか。メンツの問題だったのか、本気だったのか、これはどうですか、大臣。

岸田国務大臣 御指摘の条項に関する協議につきましては、我が国としましては、核不拡散の問題、あるいはトルコ国内の原子力に関する法体系等、さまざまな観点で協議に臨みました。

 それに対しまして、トルコ側は、濃縮そして再処理に関しましては、まず一つは、トルコ自身が今日まで他の国と結んできた協定とのバランスの問題、さらには、今回の条文はトルコにおける濃縮、再処理のみを規制するものでありまして、日本における濃縮、再処理を規制する規定ではない、こういったことにも鑑み、濃縮、再処理をすることができないという否定的な文言を用いることに関して国内において議論がある、こういった表明がありました。

 我が国としましては、協議を行った結果、トルコにおける濃縮、再処理を禁止するということにおいては実質的に確保できるという判断のもとに、今回、協定の中でお示ししているような条文になった次第であります。

 トルコとの交渉の状況については、今申し上げたような次第でございます。

小熊委員 大臣は紳士的に答弁をいただいていますけれども、UAEとかほかのこれまでの協定を見たら、そういう規定がないんですよね、条文がない。やらないということの方が多いわけですよ。何でそういうふうにまとめられなかったのかな。

 やはりトルコがこれを入れてくれと強く主張してきているわけですよ。日本は、それは署名しませんよと言っていながらも入れてきた。トルコのこの狙いというのはどういうふうに受けとめていますか。政府は交渉の過程の中でどういう受けとめ方をしましたか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 それぞれの国におきまして原子力政策を、原子力についての取り組みを進める際に、核燃料サイクルをどのように考えていくかということは、我が国のみならず各国にとっても大きな課題でございますけれども、トルコといたしましても、今後の核燃料サイクル政策についてはまださまざま検討中の段階である、そのような状況でございます。

 協議の経緯につきましては先ほど大臣から答弁がありましたとおり、先方といたしましては、他国との協定との関係、それから我が国とトルコとの相互の関係というところも踏まえまして、先ほどのような形での協議を行ったところでございまして、先ほど大臣からも他国との関係ということでありますように、他国とトルコとの協定の中で、このような場合に限り行うことができる、そのような実例もあるというところも踏まえての協議であったというところでございます。

小熊委員 これは、やはり入れるべきじゃなかったと思うんですよね。ここは削ってつくるべきだったと思うんですよ。

 再処理のあり方とか、国によっていろいろな取り組みをしているというのであれば、先ほど言ったように、本来であれば、原発というのは、我が党の議論の中であったとおり、核燃料サイクルとか最終処分のあり方とかまで含めて確定しているものだけで交渉すべきだという、我が党はそういう立場ですから、それが整っていない段階での協定はよろしくない。

 まして、このトルコの場合は、再処理に関して、日本は絶対署名しませんよと。だから、これは堂々めぐりになるんですけれども、だったら、こんな規定にしなきゃよかっただろうということなんです。トルコが強く主張してきたということは、やはりやりたいからなんですよ。大臣が署名しませんと言っても、やりたいからこの条文を入れたわけじゃないですか。

 もしくは、トルコの国内事情でそういう議論が拮抗していて、まあまあ、これを入れておかないと国内をおさめられないから、ちょっと入れておいてくれ、うちの方も本気で署名してくれとは言わぬからというようなことだったのか。

 本気でこれを入れてくれと言っているんだったら、これは今後の中で、外交上、トルコとの間でやはりいろいろな駆け引きが出てきてしまうわけですから。なければそういう駆け引きがない形でこれから進むんですよ、トルコと日本の間は。ある以上、これが成立すれば、トルコはやはり、折に触れ、署名してくれ、署名してくれと来るんじゃないんですか。

 そのトルコ側の事情、主張というものに対しては、今後どういうふうに来るか、その予測というかシミュレーションはしていますか。どうですか。

北野政府参考人 午前中の質疑におきましても大臣から何回か答弁がございますように、先方における濃縮、再処理について我が国として同意する考えはないということは、我が方から先方に対し、交渉の経緯の中で、我が方の交渉責任者から先方の交渉責任者に対してきちっと伝えているところでございまして、先方も、我が国がそのような考えであるということは明確に理解をしているというふうに考えているところでございます。

小熊委員 だから、それをわかっていながら入れてくれと言ったトルコの意図ですよ。そこをどういうふうにしんしゃくしているのか。やらないんだけれども書いてくれと言ったわけでしょう、これを入れ込んでくれと言ったわけでしょう。それはやりたいからでしょう。そうなんですよね。一応気持ちをおもんぱかって入れたんでしょう、トルコのメンツを。それとも、本当に主義主張を、折衝の中で、うちは署名はしないけれども、まあ言っていることを少し入れ込みましょうかと言ったんですか。それとも、向こうのメンツを保つために入れたんですか。

北野政府参考人 交渉の経緯につきましては大臣からも答弁がありますので、重複は避けたいと思いますけれども、私どもが重要と考えている点は、このような規定においても、我が方が同意をしなければ先方において濃縮、再処理が行われることはないという、そのような規定ぶりを我が方として確保することができた、そして、我が方としては濃縮、再処理を認める考えはないという考えであり、それも先方にきちっと伝達されているというところでございます。

小熊委員 もう堂々めぐりになるからこの件については終わりますけれども、結局、その可能性を、大臣は絶対ないんだと言っても、これは可能性は残すんですね、今後、未来にわたって。やらないと言っても、大臣がかわったらわからないですよ。また、いろいろな国際的な情勢でわからないかもしれない。日本の明確な立場があるのであれば、こういう条文にしてしまったというのは、トルコ側に譲ったということですよね、これは。そういう立場であれば、再処理は認めないということでいいんです。今後の核不拡散、原子力の取り組みに関しても、日本はしっかりと、やらないというのを言葉であらわさなきゃいけなかったんです。

 これは譲歩したんですよ。やらない、署名しないと言っていても、言葉上は譲歩したんですよ。可能性はゼロじゃなくなっているんですよ、この協定上。そういうことによって、これからのいろいろな状況変化の中で、やはりこれはしっかり我々も注視をしていかなければいけない。この八条がなければ、そんな心配はないわけですよ。

 今、大臣がそうやって署名はしないという立場であるのは十分理解をしました。そもそも論ですけれども、それだったらこんな条文にしなきゃよかったということですよ。条文にしたということによって、今後、いろいろな可能性、臆測も呼びます。やらないと明言している、だから、やらないと明言しているなら書くなということなんです、堂々めぐりになりますけれども。

 これは、そういう意味においては、臆測とか推測とか、また可能性といったものも残してしまったので、非常に問題のある協定だというふうに言わざるを得ません。今後の対応の中で日本の核不拡散や原子力の平和利用といったことにやはりもっとしっかりと努力をしていかなければいけないものになってしまいましたし、トルコと日本との外交交渉の中で材料に使われるという可能性も残しましたから、日本のこの協定のやりとりの中でどのようなやりとりがあったか、午前中の岸本委員が言ったとおり、これは資料として今後明らかにしてもらわなければいけません。しっかり検証していかなければなりませんから、これは、特定秘密じゃない限り、その交渉の過程を明らかにしていただくことを、私は今、再度、岸本議員と同じように求めたいというふうに思います。今までの交渉の経過も精査しながら、今後もしっかりこれは注視をしていかなきゃいけない部分でありますので、ぜひこの情報開示を求めて、次の質問に移ります。

 協定とはちょっと離れますが、過日、国際司法裁判所で、南極海の調査捕鯨の、日本にとっては大変残念な判決が出ました。法を重視する国家としては、これは従わざるを得ません。

 実は、私の地元でも、新潟、また東北、北海道の方では、郷土料理で鯨汁というのがあるんです。肉じゃなくて、塩鯨といって脂身の部分を、東北や新潟では、新ジャガが出たころ、これを夏ばて防止に食べるんです。機会があったら皆さんにもごちそうしたいんですが、北海道の道南ではこれは正月料理なんですね、ハレの日の料理なんですよ。また、浄瑠璃の部材にも使われていて、これは私の地元の福島県の二本松市でも職人さんがいますけれども、こういった日本の伝統文化にも深くかかわっている、食文化にも深くかかわっている鯨の文化が、この調査捕鯨の禁止によって大きく変わらざるを得ない。

 今までも、商業捕鯨が禁止されてから大きく変わってきた部分もありますし、残念ながら、商業捕鯨でとってこれを消費もしていましたけれども、実際、冷凍されて保存されているのが結構余っちゃっている、昔より食べなくなってしまった。もう既にこの日本の鯨の文化の危機であります。

 日本は商業捕鯨のためにこれまで調査を続けてきたわけですけれども、その調査捕鯨すら禁止をされてしまった。ただ一方で、北西太平洋地域の調査捕鯨が今後どうなるかということもあります。

 まず初めにお聞きしたいのは、この裁判で負けてしまったのは、日本の取り組み、国際的な理解への努力がやはり足らなかった、失敗してしまったということがあると思いますので、その反省点。あわせて、今後、南極海以外で今調査している地域の部分、これも同じような形態で調査捕鯨していますから、これも訴えられて裁判にかけられたら、今のままではやはり同じような結論が出るというのが素直な見方です。太平洋の北西部での調査捕鯨に対して今後どういうふうに対応していくのか。この二点、まずお聞きをいたします。

三ッ矢副大臣 お答え申し上げます。

 我々としても大変残念な、また非常に深い失望を禁じ得ないような判決が出ることになりました。これは、官房長官の談話にもございましたけれども、まことに遺憾であるというふうに思っております。

 日本としては、日本の立場を裁判の場においても十分主張してきたところでございますけれども、先生も御指摘いただきましたように、国際法秩序を重視し、法の支配を重視する国として、この判決は受け入れざるを得ないというのを、事実としてまず申し上げておきたいと思います。

 日本は、六十年以上も前にIWCに加盟しまして、IWC内の根深い見解の相違でございますとか、あるいは、近年見られる、言ってみればIWCの機能不全、これにもかかわらずIWCにとどまって、委員会が抱える問題に対して広く受け入れ可能な解決方策を模索してきたところでありますし、そのための努力を最大限やってまいったつもりでございます。

 非常に残念ではございますが、今後の具体的な対応につきましては、北西太平洋の問題も含めてということになろうかと思いますけれども、判決の内容を慎重に精査した上で真摯に検討していきたい、このように考えております。

小熊委員 負けたことの経過、日本の取り組みをもう一回検証して、こっちの地域でまたやられたら、先ほど言ったように同じような仕組みで調査捕鯨をしていますから、何も努力をしなければやはり厳しい結果が出るというのは、推測することは簡単です。

 また、一回禁止されてしまった南極海にどう取り組むのかということもこれから考えていかなければなりませんし、究極の目的は商業捕鯨の再開でありました。あと、とらないことによって海の生態系が逆にバランスを崩しているという日本の主張も通らなかったわけですよ。それは、海洋資源を守るということも、ある意味、日本が負けてしまったことによって、海洋資源がまたバランスを崩していくということにもなってしまった。やはりこれは、日本の外交力の取り組みが、ちょっと甘く見ていた部分でもありますから、今後また、国際社会に訴えていきながら、しっかりやっていかなければなりません。

 私も、昨年、オーストラリアに超党派の若手議員交流プログラムで行ってきて、オーストラリアの方々といろいろ議論しました。いろいろな党の政治家の方々、また政府機関ともしました。自由とか民主主義とか、あの国もそういった部分については価値観を共有できる国です。

 しかし、捕鯨に関してだけは本当に全然論理的でない主張をして、ここだけは我々日本と絶対相入れない分野でありましたけれども、我々が何か野蛮人みたいな言われ方をされました、捕鯨の話をすると。いろいろしゃべってみると、哺乳類と魚や植物とは違うと言うんですよ。私はそこは怒ったんですよ。日本は、植物だって魚だって、命として大事にしているんだ、リスペクトしているんだ、あんたらの方が差別主義者だ、おかしいということも言ってきたんです。

 他国の名誉を傷つけるわけじゃないですけれども、私は、オーストラリアの主張しているのは、この捕鯨に関しては非常にロジカルでないというふうに思っています、政治家とか政府関係者にいろいろ聞いても。でも、そうじゃない主張に我々は負けたということは大いに反省しなければなりませんから、今後、巻き返しをどう図っていくのか、これはしっかりと対応していただいて、また、これはその後の経過もこの委員会で継続して議論していきたいというふうに思いますので、負けたことの精査をこれからまたしっかりしていただいて、新たな対応策を、近日中にぜひ方向性を示していただきたいというふうに思います。

 次に移りますけれども、三年前のあの大震災以降、被災地のいろいろな支援をしていただいていますが、外務省の事業で、アジア大洋州地域及び北米地域との青少年交流、いわゆるキズナ強化プロジェクトというのがあります。

 これは、これまでは、学校単位で青少年の交流をしていました。しかし、ことしの春、先月三月は、外務省の皆さんの努力によって、学校単位ではなくて、課外活動、学校外の活動の団体の青少年を交流のプログラムに入れていただきました。

 私の地元のよさこいのチームを三月にアメリカに派遣していただいて、非常にいい成果を上げてきましたし、また、復興に大変な寄与をしていただいた、また風評被害対策にもなっていただいた。また、それぞれアメリカの青少年と日本側の青少年の大きな交流も生まれて、教育的な観点からも非常な成果を上げました。

 これは、今までは正式には学校単位であったのを、今回、ある意味実験的にというか、学校の範囲を超えて、課外活動の団体にこのプログラムを当てていただいたわけであります。しっかりとしたこういった成果が上がりましたから、今後、このキズナ強化プロジェクト、今回はイレギュラーな対応だったんですけれども、こういう学校単位ではない課外活動というのを逆に正式なプログラムの内容にして対象範囲を広げていくということが、またこのプロジェクトの趣旨、目的により一層かなっていくというふうに思います。

 これは、今回は緊急的な対応で採択していただいた事業でありましたけれども、今後、正式に、学校の枠にはめない、もっと広く青少年の交流をさせていくという方向性について見直しをかけるということについてはいかがでしょうか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありましたキズナ強化プロジェクトでございますが、これは、東日本大震災からの復興の基本方針を踏まえまして、アジア大洋州地域及び北米地域の青少年交流を通じた、日本再生に関する外国の理解促進及び風評被害に対する効果的な情報発信を行う、この二つを主たる目的として、それを、さらには、日本産品の信頼回復、向上を図ることを目的として実施したものでございます。

 それで、平成二十五年三月末までに、招聘事業につきましては三百九案件、約八千人、そして派遣案件につきましては百六十二案件、約三千人の交流事業を実施いたしまして、全ての事業を終了したところでございます。その過程におきましては、今委員から御指摘のあったような対象団体等についての取り組みもしたところでございます。

 その結果といたしまして、当初のいろいろな目的に照らしましても、例えば参加者に対するアンケート調査を行った結果、日本に対する印象の変化ということについては九二%、それから日本への再訪については九七%の人が肯定的な回答をしているということがございます。

 また、交流の様子や参加者の声につきましても、外務省のホームページなどを通じまして広く内外に発信し、外国の理解促進、風評被害を是正するための情報発信に努めてきたところでございます。

 このように、派遣事業そして招聘事業が、日本の復興状況発信それから外国における理解促進、この双方の面において役割を果たしてきたということを踏まえまして、今後とも、地方自治体とも連携しながら、中長期的な効果を期待したフォローアップに努めていく所存でございます。

小熊委員 その際、通り一遍の、自治体とか、また学校単位とか、その枠にとらわれずに、逆に、青少年のいろいろな活動をしている団体というのは、そういう公的な機関、学校や町単位とかではなくて、課外活動みたいな、スポ少とか、やはりああいうものが結構多いと思うんですよ。

 さらに、今回私の地元で行かせてもらった団体は、本当は五十人を超えるようなチームなんですけれども、二十何人という枠をはめられてしまったので、一部しか行けなかったということです。一団体何千人もというわけにはいきませんけれども、人数の拡大もしていかなければいけないというふうに思っています。

 常日ごろ、外務省の予算は倍増しろと私も言っていますけれども、こういった案件も、やはり下手に大人が海外に行くよりは、青少年が行った方がよっぽど日本の宣伝になるかもしれないし、そういう意味では、弾力的な運用もさることながら、これを人数も拡大していく。これは本当に、二十数人でというと、行かせる団体も限られちゃうんですよ。大きな青少年の合唱団を連れていく、二十三人となったら、これは合唱団としてはちっちゃいアンサンブルになっちゃうわけですよ。

 この人数の拡大という検討はどうですか。そうじゃないといろいろな多様性のある団体が行けないんですよ。

下川政府参考人 先ほど答弁させていただきましたとおり、今回のキズナ強化プロジェクト自体は、東日本大震災からの復興の基本方針を踏まえまして、先ほど申し上げたような目的として行われた事業でございまして、二十三年度復興予算に盛り込んで、二十五年度三月末までに招聘、派遣事業、それぞれを実施して、全ての事業を終了したところでございます。

 他方、今委員から御指摘のありましたとおり、いろいろな交流事業、派遣、招聘事業の効果については、我々としましてもこれから留意していく必要があると思いますので、いろいろな工夫を凝らしながら、これからも引き続き青少年の交流の強化に努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

小熊委員 これは終わったプロジェクトと言いますけれども、いまだに復旧復興は道半ばでありますし、ましてや我が福島県は、原子力災害は継続中の災害でもあります。だから、これは、さらに延長する、またバージョンアップして延長していくということが必要ですし、その際には、これまでの積み上げた経験を踏まえて、さらに弾力的に、しかも拡大をしてやっていく、そういうことが必要なんじゃないですか。

 そういった前向きな議論をするためにも、この外務委員会は午前中一回とまりましたけれども、再開を素直に認めたということは、こういう前向きに対応してもらうためでありますから、ぜひ、政府においても、与党の議員の皆さんにおいても、まさに青少年交流の拡大、充実化というものは、この三年間で終わりで、結果よかったですねということじゃなく、これは継続していかなきゃいけない案件ですから、ぜひ大臣、予算づけをよろしくお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 結いの党の小池政就です。

 外務委員会では初めて質問させていただきます。いつもは、といいますか、きょうも隣で経済産業委員会の委員として質疑に立たせていただいておりまして、法案審議の途中、こちらにもお邪魔させていただきました。

 私たちは、今回のトルコ、UAEとの原子力協定につきましては、倫理的な問題だけではなくて、安全保障の問題、また国民に対するリスクの増大という観点からも到底認めるわけにはいかないわけでございますが、国会でこのような委員会の機会をいただきましたので、幾つか内容等をきょうは確認させていただきたいと思います。

 まず第一点目は、日本にとっての安全保障にかかわる問題でございます。

 トルコとの協定にあります核物質の濃縮それから再処理についてでございますが、これまで委員会の中でも、今の質疑にもありましたように、その経緯についてそもそもどうだったんだ、意図はどうだったんだという話も議論はされております。ただ、結果としてこのような協定が出てきているわけでございますから、この協定に沿ってきょうは幾つか確認をさせていただきたいと思います。

 今回の協定におきましては、まず、第二条の三項におきまして、ウランの濃縮、使用済み核燃料の再処理、プルトニウムの転換及び資材の生産のための技術及び設備というものは、これらを移転することを可能にするような改正が行われた場合に限り、この協定のもとで移転することができるということが明記されておりますが、具体的にはどのようなプロセスというものを想定されているんでしょうか。大臣、お答えいただけますでしょうか。

岸田国務大臣 どのようなプロセスを想定しているか、要は、改正を行うとした場合のプロセスをどのように考えているかという御質問かと思いますが、今の御指摘の点につきましては、基本的には先ほどの濃縮、再処理に関する条項と同じ考え方に立っております。こうしたプルトニウムの処理等につきましても、我が国としましても、これは基本的に認めることはありません。よって、具体的なプロセスということでありますが、これを認めるプロセス自体、全く想定することは考えられないと思っております。

 基本的に、我が国としての方針、濃縮、再処理につきましても、そして今のプルトニウムの条項につきましても、認めることは全く考えておりませんし、この辺の方針につきましては、従来からトルコにも伝えておりますし、私も国会におきまして考え方を表明し、議事録に残しているところであります。

小池(政)委員 大臣の意思は尊重するわけでございますが、このような協定があるわけでございますから、この中身をぜひ御回答いただきたいと思います。

 先ほどの第二条の三項におきましては、改正につきましては、第十四条1の規定に従ってということが明記されております。第十四条の1におきましては、「いずれか一方の締約国政府の要請に基づき、この協定の改正について、相互に協議する。この協定は、両締約国政府の書面による合意によって改正することができる。」ということが書いてあるわけでございます。

 さらに、この十四条の1につきましては、「この協定の改正は、次条1に規定する手続と同様の手続に従い、効力を生ずる。」ということが書いてありまして、それでは、第十五条、こちらがどうなっているかということでございますが、こちらは第十五条の1になります。「各締約国政府は、他方の締約国政府に対し、外交上の経路を通じて、この協定の効力発生のために必要とされる国内手続が完了したことを通告する。」ということでございますが、この国内手続というのはどのようなことを指しているんでしょうか。

北野政府参考人 今委員から、この条約の改正についてどのような手続になるかということについてのお尋ねがございました。

 この協定にも、今委員御指摘にありますように、改正の手続については、他の二国間の協定と同様に、どのような手続で改正が行われるかということについて規定されております。

 先ほど委員からも御指摘がありましたように、改正をするというのは、今、国会で御承認をいただいている協定を変えるということでございますので、それと違う姿にするということについて両国が合意をするといったときに、そのときにどのような手続がなされるかということでございまして、それに当たっては、今委員から御指摘があったような、それぞれの各国における手続というのがございますけれども、翻って考えますと、今委員の御指摘の最初のところは、この協定の二条の三項の規定にあります。二条の三項は、濃縮、再処理に関します技術の移転、それからプルトニウムの移転ということについては現行の協定においてはなされないということを規定しておるところでございまして、それを変えるためにはこの協定自体を変えなければいけない。

 もう一度申し上げますと、この現行の協定のもとでは、それは移転をされないということが今の協定であり、そのような協定について、現在、国会においての御承認をお願いしているというところでございます。

小池(政)委員 改正されない限り移転されないということはわかっているんですが、ただ、この協定に改正について明記されているわけでございますから、その改正の手続について聞いているところでございます。

 しっかり回答していただきたいんですが、この国内手続は何を指しているんでしょうか。

北野政府参考人 先ほどの答弁とも一部重複をいたしますけれども、まず、改正を行うためには、両国の間で協議を行い、そしてそれについて合意が形成される必要があるということでございますので、先ほど御質問がございました、濃縮、再処理の技術、それからプルトニウムの移転ということについては、我が国として、これを改正するといったことは現在考えていないところでございます。

 仮に改正が行われる際にはどのような手続となるかということにつきましては、日本それからトルコ、それぞれの国内の手続に従いまして、現在、この協定につきましては国会の御承認を頂戴するために提出をさせていただいており、そしてまた、発効させるためには、発効のためのそれぞれの、各国から相手方に対する通知といったことの手続もございますけれども、そのような手続を経ていくということが改正のときには想定されることにはなります。

 中身の話について申し上げるならば、濃縮、再処理にかかわる技術の移転、それからプルトニウムの移転ということについて、私どもとして、この協定を改正するといったことは現在考えていないところでございます。

小池(政)委員 なかなか回答が出てこないんですが、別の形でお聞きしますと、この国内手続といいますのは、今回の協定のように国会での承認が必要とされることなんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げますと、国会に承認をお願いしております条約、その中身についての改正ということになりますと、国会の御承認を頂戴するというのが、その中身の詳細を見る必要がございますけれども、通常、検討する流れでございます。

小池(政)委員 一般論ということでございますが、この件に関しましても、改正になるのであれば、ぜひ国会で審議して、その承認をしっかりと経て検討していただきたいと思います。

 また、今回、使用済み燃料の処理につきましては幾つか答弁をいただいておりますが、プルトニウムの管理につきましてはどのようになっているんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの質疑でもお答え申し上げましたけれども、プルトニウムにつきましては、先ほど委員が御指摘をされました条項におきまして、これを移転するということは想定されないということがトルコとの協定においては規定をされているところでございます。

小池(政)委員 想定されていないということでございますが、これが可能性があるということも規定されているわけでございますが、その際に、プルトニウムの管理はどのように考えているんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの答弁とも関連をいたしますけれども、この協定におきましてはプルトニウムが移転をされるということは想定しておりませんので、そのようなことはこの協定の中では起こらないということでございます。

 一方、使用済み燃料についてはどうなのか。使用済み燃料の中にはプルトニウムが含まれているわけでございますけれども、これにつきましては、先ほど申し上げたとおり、プルトニウムは移転をされないという形になりますので、使用済み燃料につきましても、それは特に移転をされないということがこの二つの協定における基本的な記述であるということでございます。

小池(政)委員 移転じゃなくて再処理も含めているわけでございますから、その管理についても検討する必要があると思います。

 特に、アメリカは、余剰のプルトニウムを持つということに対して大変懸念を持っているわけでございます。だからこそ、日本に対しても、また韓国に対しても、そのような観点から厳しく指導しているところでございますが、今回、このような形で、そこら辺が全く想定されていない。例えば、貯蔵の施設等についてどうするかということも日米の原子力協定の中で規定されているわけでございますが、そういう点も全く検討されていないということから、非常に危惧するところでもございます。

 というところから、アメリカ側からの意見というものも一部ここには関連するんじゃないかなということもあるわけでございますが、今回のこのような条項を含めることに際しまして、アメリカ側から何かしらの意見、もしくは事前の打ち合わせ等はされたでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、原子力に関する各国との協力を行うに当たりましては、これは累次にわたって答弁を申し上げておりますように、原子力の平和利用それから不拡散ということと非常に深くかかわりを持っております。

 私どもも、原子力の不拡散、平和利用に非常に深い関心を持っている国でございますし、またアメリカも同様でございますので、一般論として申し上げますと、私ども、各国との原子力協力のあり方ということについては、米国ともさまざま意見交換をするということはございますし、また、米国が各国との原子力協力に当たって、どのような考え方、協定を持っていればその規定ぶり、あるいはどのような運用をやっているかということについては、さまざま情報をとりながら交渉するということは通常やっているところでございます。

 一方、私どもがトルコそれからUAEとの協定を作成するに当たりましては、あくまでも主権国家として、我が国としての意思に基づいて交渉しているところでございます。

小池(政)委員 時間もなくなってきたので次に行きますが、まず、現地での事故の危険性についてお伺いさせていただきます。

 これも、安全性をどうやって確保するかという観点からこの委員会でも質疑がされてきたところでございますが、きょうは経産省にも来ていただいておりますので、この観点から、日本として現地の事故の安全性をどうやって確保すると考えていらっしゃるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力の安全性の確保につきましては、一義的には相手国政府、トルコの場合であればトルコ政府の責任において判断するという事項ではございますけれども、私どもは、やはり原子力の安全性、特に福島の事故の教訓、経験を世界と共有するということが非常に重要だと思っておりますので、協定上、それから原子力の輸出という観点から、非常に強い関心、それから我々の責務があると思っております。

 そのため、第一には、我が国が締結する原子力協定におきましては、相手国と幅広い分野で協力をするということを定めておりまして、その中では原子力の安全に関する協力というのも重要な分野だというふうに考えております。

 特にトルコとの関係で申し上げれば、トルコは、地震の発生する可能性や、それから具体的なプロジェクトの中身が想定されているというようなことでございますので、トルコと交渉を行った結果としまして、原子力安全の向上のための定期的な二国間協議をするというようなことを盛り込ませていただいてございます。

 それから、これはもう全体の話になりますけれども、原子力安全に関する国際的な関心の高まりを踏まえまして、現在の原子力協定におきましては原子力関連条約に関する規定というのを設けて、安全についての国際的な取り組みをするということをまとめて入れてございます。

 それから三番目に、具体的なアクションといたしましては、やはり原子力発電の新規導入に対する国の人材それから制度の整備ということが非常に重要だと思っておりますので、それらに対して私どもの方から具体的な支援をするということを考えております。

 このような幾つかの取り組みをあわせた上で、原子力発電の安全性の確保ということと原子力の輸出の安全性の確保ということをやっていきたいというふうに考えている次第でございます。

小池(政)委員 今おっしゃらなかったんですが、国際的なルールとしてはIAEAの規制というものを基準として指導していくということをお聞きしております。

 そのIAEAの基準につきまして、日本の基準との関係について規制庁の方からお伺いさせていただきたいんですが、事故前と事故後に関しまして、このIAEAの基準に対して、日本の場合は上なのか下なのか、厳しくなっているのか、もしくは基準よりももともと甘かったのがさらに強くなったのかどうか、そのような観点についてちょっとお聞かせいただけますでしょうか。

竹内政府参考人 国際的なルールと日本の基準との関係についてでございますが、福島第一原発事故以前の規制基準につきましては、各種の事故調査報告書で指摘されているとおり、シビアアクシデント対策が事業者の自主性に任されていたという状況でございます。これが諸外国の基準に比べて不備があったと認識しております。

 事故後には、原子力規制委員会が策定しました新規制基準につきましては、シビアアクシデントへの備えを含めまして、これまでに明らかになった事故の教訓を踏まえた上で、IAEAや諸外国の規制基準も確認しながら、さらに我が国の厳しい自然条件等も勘案しておりまして、世界で最も厳しい水準であると考えております。

小池(政)委員 世界で最も厳しい基準だということでありますから、ぜひ現地にもそれをしっかり遵守してもらうようにお願いしたいわけですが、その際に、原発が現地のどのようなところに置かれるかという状況もしっかり踏まえた指導というものが必要だということを考えております。アメリカの場合の基準というのは、対テロに対しましては大変厳しい基準だったわけでございますが、日本の福島第一にこれが適用された際には、アメリカ側でテロ対策またハリケーンに対する対策というものはしっかりとされていたわけでございますが、ただ、それをそのまま持ってきてしまったばかりに、半地下構造でハリケーンに対しては強いんですが、それが海沿いで、津波に対しては非常に脆弱だったということも踏まえてしっかりとこれは指導していただきたいと思いますし、また、規制等の体制についても、これはできる限り現地に対して働きかけるべきだと思っております。

 午前の質疑にもありましたが、これは大臣の認識がちょっと違うんじゃないかなということを考えてしまうわけでございますが、大臣は、原発の推進機関とそれを規制する機関、これがトルコではしっかり独立しているんだという話をされておりました。ただ、こちらの委員からも指摘がありましたように、トルコの場合、原子力庁の方の役割分担を見ますと、これはIAEAが出している資料でございますが、確かに推進とは書いてないわけでございますが、研究開発でございますとか、大学との共同研究それから教育、かつ、規制それから審査等、そういうものも含めた、そのような体制になっているわけでございます。

 日本の場合も、技術がありながら事故が起こってしまったのは、そのような体制から来る安全神話と、またそこから人災というものが生み出されてしまったわけでございますから、そこは、独立しているから大丈夫だということではなくて、しっかりとここも審査、働きかけをしていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。

岸田国務大臣 トルコの原子力平和利用の安全体制につきましては、御指摘のような行政機関の体制についても注視しなければなりませんが、あわせて、国内法の整備ですとか、原子力安全に関する国際条約等の受け入れなど、政府全体の取り組みをしっかり評価しなければならないと考えています。

 こうしたトルコ政府の法制ですとか行政組織ですとか、あるいは国際条約への取り組み、こうしたものを総合的に見た上でトルコの安全に対する姿勢を考えていかなければならないと思っておりますが、そうした上で、我が国としましても、原子力の平和利用につきましては、みずからの経験、知見をしっかり国際社会と共有しなければならない。このことは、福島第一原発を経験した国として、これはもう責務であると考えております。

 ぜひ、我が国の立場から、トルコ政府に対しまして、この協定が発効いたしましたら設けられることが盛り込まれております定期的な原子力安全に関する協議等を通じまして、しっかりとアドバイス、提言をしていきたいと考えています。

小池(政)委員 おっしゃるとおり責務だと思います。

 また、今回の原発輸出に関しましては、安倍内閣は成長戦略の一環だということを指摘されているわけでございますが、この観点についても一点確認をさせていただきたいと思うんです。

 インフラ輸出また原発輸出につきましては、将来の市場がどうなるかということも大変影響があるわけでございまして、特に将来の国際的な原発市場におきましては、やはり事故の後からだんだんと下方修正されつつあるというのが現状でございまして、IAEA、それから国際エネルギー機関、IEAというものも、毎年毎年、将来の市場というものを想定して出しているわけでございます。毎年の試算というものがだんだんと下降しているということから、国際的にもやはりバラ色の市場になっているわけではないということでもありますし、また、各国の政策につきましても少しずつ変化が出ているところでございます。フランスにおきましても、今まで推進派だった大統領が、今度はかなり慎重な大統領にかわったということで、これからの政策に影響があるかもわかりません。

 そんなような観点からも、果たして成長戦略に資するべきものなのか、それも私は考えるべきではないかと思っております。

 かつ、このような大きな案件につきましてはプロジェクトリスクというものが物すごく大きくなるわけでございますが、この点についても、今までのインフラ輸出の実績というものを見てきた中で、入り口はいいけれども出口になるころにはもうよろよろの状態で、民間の企業がかなり損失をこうむっているということも多々あるわけでございます。

 例えば、今回、UAEに対しての原発の協定でございますが、ドバイに鉄道を輸出した民間の会社におきましても、過去、輸出契約によりまして自分たちの経営がかなり厳しくなって、結果として初めて赤字を出してしまうような、そんな状態になった民間企業もございます。しかも、これは貿易保険をつけていながらこんな状態になっているわけでございますから、ここは、採算としてもしっかりと確認すべきではないかなと私は思います。

 また、UAE、それからトルコにおきましても、例えばイギリスみたいに原発にも固定価格買い取り制度があるわけではないわけでございますから、その間における採算とか、また、政府の政策変更等も非常にここは関連する問題だと思います。

 そして、最後に、国民負担についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 日本の国民に対してどのようなリスク、負担がこれから出てくるかということでございますが、あくまで事故につきましては、今までの答弁でもありましたように、まずは事業者が負担すべきだというようなことは確認しているわけでございますが、事業者じゃないにしても、例えば民間としてプラントを納入する、そのような状態におきましても、民間の負担というものがそこでは発生するわけでございます。例えば、三菱重工がアメリカにおきまして、これは民民ではありますけれども、地方の電力会社から、原発の一部の事故によりまして、四十億ドル以上の請求を受けているという状況もございます。

 また今度は、トルコ、UAEにおきましては、必ずしもプラントを輸出するだけではなくて、発電事業者としてこれから参画することもあり得るわけでございます。トルコは内外から民間の発電事業者の参入を促しておりますし、UAEは、アブダビにおきましても、発電部門では一部民間が参入しております。そういうようなところから、大きなリスクを背負っていくのではないかなと思います。

 また、今回、そのような件におきまして、この二つの国とは関係ないわけでございますが、アジアにも原発輸出ということを考える際に、そこから多分、CSCという国際的な条約というものを検討していると思います。去年も指摘をさせていただきましたが、このCSCへの批准状況、また今後の見通し、どのようになっているんでしょうか。

岸田国務大臣 我が国政府としましては、国際的な原子力損害賠償制度の構築に参加することは大変重要な課題であると認識をし、そして、福島第一原子力発電所の廃炉、汚染水対策に知見を有する外国企業の参入の環境を整えるため、CSC、原子力損害の補完的補償に関する条約を締結することといたしました。そして、本年の適切な時期に国会に提出するべく、今、関係省庁間で国内実施措置の整備等の作業を行っているところであります。

 ぜひ、必要な整備を踏まえて、具体的な国会提出の時期を検討していきたいと考えています。

小池(政)委員 CSCは、原賠法を含めて国内の他の法律との調整等が必要だと思いますので、ぜひそこは早急に対応していただきたいと思います。

 時間になりましたので、終わりにします。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず初めに、確認でありますが、東京電力福島第一原発の事故後に日本が他国との二国間原子力協定に署名したというのは、今回のトルコとアラブ首長国連邦、この二つの国を相手にしたものが初めてなのかどうか、その点についてどうでしょうか。

岸田国務大臣 日本とトルコ両政府は、二〇一一年一月に第一回交渉を行い、計三回にわたる交渉をもって実質合意に達し、その後の国内手続を経て、昨年五月に安倍総理がトルコを訪問した際にこの協定の署名をいたしました。

 また、日本とアラブ首長国連邦の両政府は、二〇〇九年六月、第一回交渉を行い、その後、数回の交渉を経て実質合意に達し、昨年五月に安倍総理がアラブ首長国連邦を訪問した際にこの協定の署名をいたしました。

 よって、委員御指摘のとおり、これら二カ国との協定は、東日本大震災以降、我が国が初めて署名した原子力協定であります。

笠井委員 大臣、今そういうお答えだったんですが、福島原発の現状というのは、事故から三年を過ぎてもなお非常に深刻な状況で、汚染水問題など、何ら解決していない非常事態にある。そして、事故収束のめども立っていないという状況であります。そして、事故原因の究明も尽くされていない。

 にもかかわらず、なぜそういう国の日本が原子力協定を他国と結んで原発輸出を進めていくことができるのか、この点、大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 我が国としては、福島第一原発の事故、本当に悲惨な事故を経験した国だからこそ、みずからの経験や知見、これを国際社会と共有することによって国際的な原子力の平和利用の安全にしっかり貢献していかなければならない、これが我が国の責務だと考えております。そういった考えに基づいて、我が国としては、相手国の要望ですとか、あるいは事情等もしっかり勘案した上で、貢献の具体的な方策を考えているところであります。

 そして、その前提としましては、やはり具体的な原子力の利用に当たって、平和利用であることをしっかり確認しなければならない、そして、核不拡散にしっかり資する取り組みでなければならない、こういったことを法的に確保するために、相手国との間で原子力協定を結ぶという対応を行っています。

 今回のトルコあるいはUAEとの間における協定も、そうした意義づけがあると考えています。

笠井委員 政府のエネルギー基本計画の問題がけさも議論にありました。それで、まだ閣議決定されていないわけですよね、日本がどうするかという問題。

 けさの北野部長の答弁では、エネルギー基本計画の政府の案との整合性、案との整合性と言われましたが、まだ決まっていないわけでありまして、国内で原発をどうするか、その位置づけも定められないもとで、こういう外国との原子力協定に署名をし、承認をする、そして原発を推進するということは、これはできないんだと私は思うんですけれども、どうでしょうか。

岸田国務大臣 我が国の基本的な考え方は、先ほど答弁させていただいたとおりであります。我が国として、我が国の立場から、原子力の平和利用の安全にしっかり貢献していこうという方針のもとに取り組んでいる次第であります。そして、そうした考え方がエネルギー基本計画の原案においても示されているということであります。

 ぜひ、こうした考え方について、国民に対しても、あるいは国際社会に対しても、しっかり説明をし、理解を得ながら、我が国の国際貢献を進めていきたいと考えています。

笠井委員 大臣も今、原案ということを言われたので、決まっていないわけですから、それで外国にどうするのかという話にならないというふうに思います。

 角度を変えて伺いますが、政府が昨年六月に閣議決定をしました成長戦略、「日本再興戦略 ジャパン・イズ・バック」では、インフラ輸出を国際展開戦略として位置づけて、「商売の話は民だけに任せればよいという従来の発想を大胆に転換し、インフラ輸出やクールジャパンの推進などのトップセールスを含め官民一体で戦略的に市場を獲得」する。そのために、「内閣総理大臣を始めとする閣僚によるトップセールスを毎年十件以上実施する。」こう打ち出したと思うんですが、間違いありませんか。

岸田国務大臣 戦略の文言は今手元にありませんが、基本的な考え方は御指摘のとおりだと考えます。

笠井委員 そのインフラという中には電力ということも明確に入っていて、そのもとで原発の問題も今やられているんだと思うんですが、実際、トルコとの間では、昨年五月と十月の二度にわたって安倍総理がトルコを訪問して、文字どおりトップセールスを展開した結果、日本の三菱重工業、伊藤忠商事などが参加する国際コンソーシアムによるシノップ原発の優先交渉権を獲得したわけであります。

 そこで、確認しますが、原子力協定では、特定のビジネスやプロジェクトを取り決めるものではない、こういうものであるわけですね。その点はどうでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 原子力協定は、我が国が相手国との間で幅広い分野におきます原子力協力を行うに際しまして、平和利用、不拡散を法的に確保いたしまして、累次御答弁申し上げております三つのSの強化に資する重要な枠組みというふうになっております。

 今委員から御質問ございます民間企業との関係について申し上げますと、民間企業の商活動について取り決めるものではありません。また、協定の取り決め自体が、我が国の企業による特定のプロジェクトの受注を約束したり、その実施を義務づけたりする、そのような性質のものではございませんで、一般論として申し上げれば、原子力協定のもとで進められる各国との協力ということにつきましては、相手国における検討、それから両国の企業の商活動などを通じて具体化をしていく、そのようなものでございます。

笠井委員 では、伺いますが、安倍総理が昨年五月にUAEとトルコを訪問した際に、三菱重工業、伊藤忠商事、その方々が同行した事実はありますか。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年四月二十八日から五日四日にかけて、ロシア及び中東三カ国、これはトルコも含んでおります、安倍総理が訪問された際には、部分的な参加を含めまして、日本経団連会長、国際協力銀行総裁を初めとする百十八社の民間企業等の関係者が参加しておられまして、トルコにおきましては、日本トルコ経済合同委員会というのが総理のトルコ訪問時に行われておりますが、こういう行事に三菱重工、伊藤忠の同行された方が参加されております。

笠井委員 同行しているということでありますが、そういう中で協定が結ばれて、これらの企業が優先権を獲得した、こういう経過であることは間違いありませんね。

上村政府参考人 お答えを申し上げます。

 安倍総理のトルコ訪問、例えば去年の十月の二十八日から二十九日のときに、我々の方でまとめました概要の紙が、これは外務省のウエブサイトにも載ってございます。

 この中で、日・トルコ首脳会談におきましても、日本企業トップを交えた会合、一部分でございますが、行っておられるということ、それから、経済の成果としましては、今回、シノップ原発プロジェクトについての、日本企業側とトルコ政府との間での優先的な交渉権に基づきます商業契約の大枠について合意したというふうに述べられているところであります。

 事実関係はそういうことでございまして、今先生が御指摘のような、直接の関係があるというふうには必ずしも申し上げられないと思います。

笠井委員 同行したと。その中で、総理自身が署名もし、そして企業の側は交渉している、いろいろ話し合いをしているという中で結ばれたということでありまして、そういう点では、経過は明らかだと思うんです。

 自国で重大な事故を引き起こした政府が、いわば前のめりで、トップセールスということも含めて他国に原発を率先して売り込むということは、やはり事故の教訓あるいは経験を踏まえるという点でいうと、本当に無責任そのものの態度だと言わざるを得ません。特に、世界有数の地震国トルコに原発を輸出して、事故の危険性を高めることは国際的にも許されないということを強く指摘したいと思います。

 次に、協定の中身について、この間、けさ、午後も含めて議論されていますが、若干、私なりに、整理する意味で伺ってみたいと思います。

 トルコとの協定の第八条の問題、繰り返し出ておりますが、その八条では、「両締約国政府が書面により合意する場合に限り、トルコ共和国の管轄内において、濃縮し、又は再処理することができる。」とあるということだと思うんですけれども、これを定めた理由というのは何なんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 再三にわたって大臣からも御答弁させていただいておりますとおり、これは、トルコにおきまして濃縮、再処理をすることを規制するためのものでございまして、この規定によって、我が国が同意をしない限り、そして我が国はこれを同意をしないということを再三申し上げているわけですけれども、先方が濃縮、再処理をするということがない、そのような状況を確保することができた規定であるというふうに理解をしております。

笠井委員 どうしてこれを設けたのかということについて聞いているんです。別に日本はやりたくてこれを設けたわけじゃないわけですね。

 そうすると、トルコ側の事情というようなこともさっき大臣も言われたんですが、結局、トルコ側の事情というのは一体どういうことになるんですか。もう一回、改めて伺います。

岸田国務大臣 今回の協定の交渉に当たりまして、我が国としましては、核不拡散の観点ですとか、トルコの国内の原子力法制のあり方、あるいは国際的な議論等を勘案しながら交渉に臨んだわけですが、その中で、御指摘の条文につきましては、我が国としては、まずもってトルコにおける濃縮、再処理、これは認めないという方針で臨みました。

 それに対しまして、トルコ側は、我が国のこうした姿勢に理解を示しながらも、まずはトルコ自身が今日まで他国と結んだ協定との比較において、そしてさらには、今回のこの規定がトルコにおける濃縮、再処理のみを規制するものであり、日本における濃縮、再処理を規制する規定でないことにも鑑み、両国が合意しない限り濃縮、再処理することはできないという否定的な文言を用いることにつきまして国内において議論がある、こういった指摘をしました。その上で、文言上、両国が合意する場合に限り濃縮できるという規定ぶりにしたいと強く主張してきたところであります。

 今回の規定につきましては、先ほど北野部長からも答弁させていただきましたように、これは、両締約国政府が合意しない限り濃縮あるいは再処理はされないという中身でありますので、我が国としましても、トルコにおいて濃縮、再処理が行われないという実質は確保できたと判断して、こういった条文で合意した次第であります。

笠井委員 核物質の濃縮、再処理というのは、核兵器の転用につながりかねない重大問題でありますが、そんな重大な規定を、トルコ側の事情、今大臣は二つ言われましたけれども、そういう事情をおもんぱかってまで、なぜ条文に盛り込んでやって、そして結ばなきゃいけない、そういう必要性があるか、その点はどうですか。

岸田国務大臣 こうした原子力協定、さまざまな条約の議論の交渉においては、相手国があるわけであります。そして、さまざまな相手によりさまざまな事情があり、考え方があります。

 協定の結果は、そうした相手との交渉の結果、定まるものでありますが、今回も、我が国としましては、先ほど申し上げましたトルコの考え方、立場を聞きながら、我が国としてのトルコにおける濃縮、再処理、これを認めないという立場をいかに確保するかということで協議を続けたわけであります。

 実質的に、トルコにおける濃縮、再処理、これを禁止するという実質を確保することができたという判断に基づいて、今回の結果に至った次第であります。

笠井委員 トルコ側がとにかくこういう条文をということで、事情も含めて言ったという点でいうと、トルコ側としては、将来的に自分の国で濃縮、再処理を行える余地を残しておきたい、つまり文言上も。そういう理由はどこにあるというふうに日本側、日本政府は承知しているんでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 トルコ側の考えでございますので、私どもの判断として右である左であるということを明確に申し上げることはなかなか難しいわけでございますけれども、トルコ側の原子力に関する政策ということについて申し上げますならば、先ほども御答弁させていただきましたように、トルコ側としては、核燃料サイクルのあり方というのは現在政府部内で検討中であるという、そのような事情があるということでございます。

笠井委員 この核物質のトルコ国内での濃縮、再処理を認めないという政府の考えというのは、先ほど来、累次にわたって大臣も答弁されていますが、交渉の過程でトルコ側に伝達しているということでありますが、相手に伝達した内容というのは書面にしていないと、この間、答弁がありました。省内の記録として保持していると。

 外務省内の記録にとどめた理由というのは何ですか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 一般に、協定の交渉ということについては、膨大な内容のやりとりを先方とやることになります。そして、私どもとしては、この濃縮、再処理という大事なやりとりにつきましては、先般来、大臣からも累次にわたって答弁をさせていただいておりますように、この協定交渉におきまして、三回にわたる公式協議、そのいずれの回においても、我が方の交渉団長から先方の交渉団長に対してしっかりと伝達をしているということで、我々の考えの伝達ということ、そして、それが先方に伝わっているということについてはしっかりと行われているという、そのような判断に基づいてのことでございます。

笠井委員 事は協定第八条の解釈、運用にかかわる問題でありますが、大臣、先ほど、禁止をする、やらせないということで、そのことについては、繰り返し、実質的には実をとったということを言われたわけですけれども、ところが、それだけ大事な問題だったら、合意議事録とか、あるいは交換公文などをつくっていないわけですね。

 つまり、伝達はしたと今も言われましたが、相手は伝達をして日本の立場を理解した、こうも言われました。理解はしても、了解せずに、留保したから、結局、文書としてつくれずに、日本側の省内の記録にとどまったということなんじゃないですか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しの答弁になって恐縮でございますけれども、この規定の中身ということに着目して申し上げれば、我が国が合意をしない限り、先方はこれができない、濃縮することはできない、再処理することはできない、そのような形となっておりますので、その意味で、我々の意思によってそのことを左右する、そして、我々の意思というのは先方の濃縮、再処理を認めないということで、これは先方に伝わっているということでございます。

笠井委員 では、トルコ側には具体的に何と言って伝達をしたのか。省内の記録があると言われました。これは交渉事ではなくて、交渉に当たって日本側の結論を伝えたわけですから、これは明らかにできるはずです。その外務省内の記録で、伝達した中身の該当部分を読み上げてください。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 午前中、大臣からも答弁をさせていただきましたけれども、二国間の交渉、お互いに信頼関係がございます。これは、お互い、交渉の中で伝えたやりとりというものを、先方が外に向かって全て話をする、我々もそれを全て明らかにするということになると、外交交渉というもの自体がなかなか成り立たない、そのような状況でございます。

 したがいまして、お互い信頼関係の中でやりましたやりとりをそのままの形でお伝えすることはなかなか難しいということは御理解をいただければと思いますけれども、事柄の中身としてどのようなことを先方に伝えてきたかということで申し上げれば、日本側として濃縮、再処理を認める考えはない、端的に言ってこのような中身を先方に伝えているところでございます。

岸田国務大臣 ぜひ確認したいのは、我が国がトルコにおける濃縮、再処理を認めることはないということを実質的に確保できたということは、トルコとの交渉のやりとりの中で確認したものではありません。まさに、でき上がったこの条文そのものにおいてそれが確保できたと我々は考えています。

 条文そのものが、両締約国政府が合意しない限り濃縮または再処理はされないという内容でありますから、この条文に基づいて、我が国としては認めることはあり得ませんし、そして、そのことについて国会においてしっかりと表明をし、議事録にとどめてきたわけであります。

 そして、午前中からの議論の中で、今後、政権がかわったらどうなるのかとか、大臣がかわったらどうなるのか、こういったことがありますが、外交の継続性、あるいは政策の継続性を考えた場合に、もしそういった議論が起これば、当然、国会の厳しい評価にさらされることになります。これは、外交の継続性、そして政策の継続性を考えましても、こうした我が国の方針はしっかりと確保できるものだと考えています。

笠井委員 最後に言われた国会の厳しい評価にさらされるという点でも、国会が知らなきゃいけないことはあるわけですよ。

 先ほど言われて、この条文自体が、両締約国政府が書面により合意する場合に限り濃縮、再処理することができるという、書面にあらわれている、まさにそこなんですけれども、あらわれているということについては、この間、大臣も北野部長も繰り返し言われたのは、二つ担保があると。

 一つは、相手にちゃんと伝達したんだ、それは外務省内に記録を持っているんだ、それから、大臣が国会で答弁されて、言っているんだと言われたわけですが、そのことは、つまり、この条文そのものと言われるその裏づけとなるものであって、それがちゃんとやられているかどうかが今後国会で厳しくさらされるのであれば、少なくともその結論として条文になった、それと、条文とあわせて、本来ならば合意議事録なり、そういうものとしてやっていいはずの問題ですよね。そういうものがなくて、今回こういう形になっている。

 ほかの国との関係でいえば、原子力協定の場合だって合意議事録をつくっているところはあると思うんですけれども、今回、トルコとはないわけですから、そういう形で処理しているのであれば、少なくとも日本政府が何を言ったのか、何を伝達したのか、そして、トルコ側がそれに対してどう答えたのか、つまり、伺いました、あなた方の言うことは理解した、だけれども私たちは留保しますと言ったのかどうか、ここは重要な点であって、そこのところはきちっと言うのは当たり前なんじゃないですか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、トルコと交渉段階でどのようなやりとりをしたか、このことについてしっかり説明責任を果たさなければいけない、これは御指摘のとおりだと思います。

 そして、それをどのように説明するのか、これにつきましては、外交交渉の常でありますが、相手との関係の中でどのように示していくのか、これを考えなければなりません。その範囲内で、極力、我が国としてトルコ側に何を伝えたのか、これはしっかり説明責任は果たしていきたいと存じます。

 そして、それとあわせて、でき上がった条文において、しっかりとこうした歯どめが確保できているということ、このことについてもしっかり説明をし、理解を得ていきたいと考えています。

笠井委員 説明責任を果たすと言われるんだったら、公表するのが一番間違いないわけですよ。

 つまり、交渉経過のことでいろいろやりとりがある途中の話というのは、それは外交交渉はいろいろなことはあるでしょう。だけれども、これはとにかく、今大臣が言われたみたいに、その結果として条文にこうなったんだ、その裏づけとなる、担保となる話として出ている話なので、少なくとも、伝達した中身、それに対して向こうがどう対応したかということについては、この部分は公表して当然だと思うんですよ。

 公表していただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 累次御答弁申し上げておりますように、我々の方からは、先方の濃縮、再処理ということについては、これを認める考えはないということを交渉の経緯の中で申し上げました。そして、大臣からも再三にわたって答弁がありますように、これは我々として、今後、適切な機会も捉えつつ、先方に対して再確認というふうなこともしていきたいというふうに考えております。

 私どもがそのような考えであるということについては、交渉の経緯の中で、三回にわたって行われました公式の協議、交渉団長から交渉団長に対して明確な形で伝達をし、先方は我々の考えということをしっかりと了知している、そういうふうな状況でございます。

笠井委員 そこまで固まった話だったらしっかり出してもらいたいと思うんです。ずっと議論があったって曖昧なままで、国会に対してだって説明責任とまで言われるわけですから、これは曖昧にしたままに承認ということにはいかないと思うんです。

 改めて、委員長に、私の方からも、少なくともこの該当部分については外務省のその記録について公表するように、理事会で協議をお願いします。

鈴木委員長 後日、理事会で協議いたします。

笠井委員 後日じゃだめです、きょうやらないと。通っちゃったら、話が違ってくるんですよ。

 国会答弁でちゃんとやったからと大臣は先回りして言われましたけれども、しかし、その後の政権が、では、異なる行動がないということを断言できるか。外交の継続性とか言われるけれども、しかし政策は変わり得るわけですね。先ほど、公明党の議員の方が、自公政権である限りは信用しますと言われたけれども、いつまでもそういう政権かどうかわからないわけです。

 では、その点については、これから日本政府は、こういう条約を結んでも、協定を結んでも、異なる行動が絶対ないと断言できますか。

岸田国務大臣 トルコの濃縮、再処理につきましての我が国の方針につきましては、まずもってトルコ側、国際的にも我が国の方針は明示し、明らかにしているところであります。そして、国内においても、政府のみならず、立法府のこの委員会で外務大臣が直接発言を行い、それを議事録にとどめております。こうした政府の方針は、外交の継続性あるいは政策の継続性を考えますときに、将来の政府もしっかり縛っていくことになると考えております。

 こういった形で、我が国の方針はしっかりと確保されるものだと考えています。

笠井委員 幾ら大臣が日本は認めないというふうに繰り返し答弁されても、それだけでは保証にならない。日本は認めないと言うのだったら、そんな不明瞭な規定に合意する必要はないということになるわけでありまして、トルコ側の要望を受けてこんな危険な規定を盛り込んだところに、原発輸出にはやる安倍政権の姿勢が端的にあらわれていると申し上げたいと思います。

 時間がもう間もなく来ますので、指摘だけにとどめますけれども、この協定の実施に当たっては、四つの原子力安全関連条約に基づいて、それぞれの国が既存の義務に適合するように行動することが定められておりますが、そのうち、放射性廃棄物等安全条約、これにはトルコが入っていないわけですね。そういうままでもやってもいいのかという問題もある。それはどうですか、ちょっと一言聞きたい。

上村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、トルコは放射性廃棄物等安全条約の締結はやっておりません。

 これにつきましては、交渉の過程でも締結に向けて日本政府から働きかけ、現在、トルコ政府部内で国内手続を進めているところであると承知をしております。

笠井委員 そう言っているということなんですけれども、これは、トルコがEUに加盟するに当たっても、欧州委員会から繰り返しいろいろな形で言われていて、今まで未加盟という問題も指摘をされている。レポートもあります。そういう中で、背景には、トルコの原子力の法体系の全体の整備がおくれている、欧州委員会のレポートにもそういう指摘がある。

 結局、そういうところに協定を結んで輸出をするということになれば、これはまさにそういう点でも大きな問題になってくると思うんです。しかも、先ほどから申し上げているように、核物質の濃縮、再処理が行える余地を残した規定まである。

 ともかく、優先権を獲得したいということで、先に輸出ありきの、前のめりの姿勢があらわれていると思います。福島事故の反省と教訓が生かされていない。

 今、日本が輸出すべきは原発ではないということだと思うんです。日本が言うなら、もう原発は懲り懲り、輸出するなら原発ゼロだということで、まさにそういうことをしっかりと言うのが日本の政府でなければならない、このことを強く申し上げ、しかも、まだこの問題では引き続きさまざまな問題が指摘されていますので、このまま審議を終わるということでは絶対いけないと思います。

 徹底審議ということで、引き続き審議を強く求めて、私の質問を終わります。

鈴木委員長 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 午前中に引き続き質問をさせていただきますが、まず初めに、私の質問の途中に多くの先生方が離席されることによりまして、委員会が休憩に入ってしまったということを非常に遺憾に思っております。また、私は一時から内閣委員会の方で質問に立たせていただく予定になっておりまして、当委員会の先生方だけでなく、内閣委員会の理事の先生方にもいろいろ時間調整ということで煩わせたことを非常に悲しい出来事だと思っておりますので、今後、緊張感を持って審議をしていただきたいと思います。

 それでは、前回までの粗筋から言わなければいけないので、非常に難しいことなんですが、私は、この協定によりまして、貿易赤字解消であるとか、日本の国益にそぐうのかどうか、国益に有利な状況になっていくのかどうかというロジックで質問をさせていただきました。また、国の賠償責任ということについてもお聞かせいただいて、トルコ等々の中では、国が責務を負うことはないだろうというようなお話をいただいたかと思います。また、貿易保険、最後、ここで終わりましたけれども、先方が不払いのときに補償するものであり、事故等はカバーしない、あくまで国内でお金が循環する保険のシステムであるという御答弁だったかと認識をしております。

 いずれにいたしましても、海外で事故が起きた場合、我が国が責任を問われる可能性もゼロではないというふうに考えております。原発輸出に関しましては、非常に多くのリスクが潜んでいるのではないかというふうに考えているところであります。

 また、フィンランドのお話も先ほどさせていただきましたが、フィンランド・オルキルオト島にある原発、三号機を今つくっているところでありますけれども、大幅に建設がおくれてトラブルを生じているというふうに言われております。工事おくれや安全性を高めるための追加費用が発生し、受注しているフランスのアレバ社はフィンランド側から多額の損害賠償請求を受けているということも報道されていると思いますが、この事実を政府としてどのように認識されていますでしょうか。お聞かせ願いたいと思います。

長谷川政府参考人 お答え申し上げます。

 フィンランドの電力会社であるテオリスーデン・ボイマ社、通称TVO社と原発メーカーであるフランスのアレバ社等との間で、オルキルオト原子力発電所三号機建設工事の遅延をめぐり、双方が損害賠償を求めて国際商業会議所国際仲裁裁判所で係争中と承知しております。

 本件は外国の民間企業間の訴訟であり、政府として何らかの認識を申し上げる立場にはございません。

 以上でございます。

河野(正)委員 もうかるからということで輸出をするということなんでしょうけれども、今お聞かせ願いましたように、他国でも、やはり原発をつくってみたら、工期はおくれる、いろいろな諸問題が発生してトラブルを生じるということで、損害補償請求を受けている例がたくさんあるんじゃないかなと思っております。果たして、日本の貿易赤字を解消するために有利なものであるのかどうかという懸念が大きくあります。

 そして、本当は、午前中、ここで盛り上がってきて、我が国のところを話をしようと思っていたところだったんですが、我が国企業についてお尋ねをいたします。

 アメリカ・カリフォルニア州のサンオノフレ原子力発電所の問題をお尋ねします。

 報道によれば、三菱重工業が二〇〇九年二月から交換用の蒸気発生器を納入しておられると思います。三号機の蒸気発生器の配管で異常な摩耗が起き、放射性物質を含む微量の水が漏れてしまったということであります。その後、二号機、三号機の運転も停止されています。これに伴う代替燃料のコストや、発電できない原発の維持費用など、数十億ドルがかかるということであります。

 三菱重工業は、賠償責任の上限額を、契約に明記した約一億三千七百万ドル、日本円で約百三十八億円と認識しておられたそうです。しかし一方で、運営会社である南カリフォルニアエジソン社は、欠陥が余りにも基本的かつ広範な場合、上限設定は無効であるという認識から、こういった主張をされています。

 さらに、このサンオノフレ原子力発電所の付近住民、地域住民の方の批判から、廃炉をしなければならないということが決まり、結果として、三菱重工業は、四十億ドル、約四千億円を求められているかと思います。

 現在進行中の案件であるとは思いますが、可能な範囲で、現在把握されている状況をお聞かせいただきたいと思います。

片上政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員御指摘の案件、米国サザンカリフォルニアエジソン社のサンオノフレ原子力発電所に三菱重工が納入した蒸気発生器から冷却水が漏えいし、結果として、昨年六月、廃炉の決定に至った事案でございます。

 その後、昨年十月に、このサザンカリフォルニアエジソン社は、三菱重工に、委員御指摘のあったとおり、約四十億ドルの損害賠償を行うための仲裁申し立てを国際商業会議所に行っております。

 現時点での状況は、仲裁のための準備が行われている段階と承知しております。

 なお、三菱重工によれば、このサザンカリフォルニアエジソン社の請求は根拠のないものであり、同社の主張及び要求が不当であることを仲裁において主張するというふうに承知しております。

河野(正)委員 今認識されていますように、契約では上限が百三十八億円であったにもかかわらず、四千億円請求されてきたという事実があるわけであります。今後、仲裁の結果がどうなるかは見守っていかなければならないと思いますけれども、原子力発電、決して安いエネルギーではない、非常にリスクの大きい輸出になるのではないかなという懸念があります。この点はしっかり確認をしておいていただきたいと思います。

 もう残り時間は余りありませんけれども、新潮文庫から「朽ちていった命」という本が出ております。この本を読んでいたんですけれども、これは東海村の臨界事故でお亡くなりになった作業員の方の治療記録であります。

 当初は意識もしっかりしておられて、御家族の方と、入院がどれぐらいになるかなとか、あるいは白血病になっちゃうのかなとか、いろいろコミュニケーションがとれていた方が、だんだん意識がなくなっていって、体の内部から、染色体レベルで徐々に命が崩れていくありさまが克明に記録されております。

 私は医師でありますけれども、残念ながら、今の人類には放射能事故をコントロールする能力はないと思っております。本の中でも、治療に当たった方の印象として、海図のない航海という記述がありました。午前中、最初の方でも述べたかと思うんですが、九九%の安全という言葉はあったとしても、一〇〇%の安全というのは決してない、そういった言葉はないと思っております。

 ということは、何らかの事故が起きた場合に、やはり大きな損害を法律等で、協定の中で担保していかれるんだと思いますけれども、先ほど話をしましたように、上限を契約で百三十八億円、一億三千七百万ドルとしておきながらも四十億ドル請求される場合もありますので、これは本当にそういったこともリスクが大きいものだということを考えて行動していただかなければならないのじゃないかなと思っております。

 原発は決して安いエネルギーではありませんし、輸出するにしても、貿易黒字という面、短絡的に考えるのではなく、長期的に見ると非常に厳しい大きな問題を含んでいるということを申し述べまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーでございます。

 私が、きょうのこの日本・UAE、アラブ首長国連邦及び日本・トルコにおける原子力協定に関連しての質問のラストバッターとなります。重複する質問等々もあるかと思いますが、どうぞまたしっかりと御答弁をお願いしたいと思います。

 それでは、この問題に対して質問をさせていただきます。

 二国間の原子力について平和利用の分野における協力、それについて必要な法的な枠組みを定めるものでありますが、この二国間で協定を結ぶ場合などのほかに、まず、そもそも論ではありますが、原子力の平和利用に関する多国間国際規定、関連条約について、原則的にはどのような枠組みがあるかについて、まずお伺いしたいと思います。

北野政府参考人 原子力の平和利用に関する国際的な枠組みということについてのお尋ねでございますけれども、二国間の原子力協定というものもそのための一つの重要な枠組みでございますけれども、それ以外のものといたしまして、原子力の平和利用、それから核の不拡散ということに関する国際的な枠組みといたしましては、核兵器の不拡散に関する条約、通常NPTと呼んでいるものでございます、これが非常に重要な枠組みとしてございます。

 また、これのほかに、原子力の関連の資機材、技術の輸出国の集まりであります原子力供給国グループ、NSGと通称しているものでございますけれども、こちらの方で関連資機材、技術の移転を行う際の守るべき指針というものを定めておりまして、これも核不拡散のために非常に重要な役割を果たしているところでございます。

玉城委員 まず、やはり核の平和利用、不拡散ということについて、各国でそれを最大限の基本として二国間の条約も結ばれるわけなんですが、では、原子力の安全性に関して特に厳格に規定している関連条約、法規と、それに対応する我が国の法規とはどのような関係になっておりますでしょうか、お聞かせください。

北野政府参考人 原子力安全の分野についてのお尋ねでございますけれども、国際的な条約ということで申し上げますと、原子力安全に関連する条約といたしましては四つ重要なものがございます。原子力安全条約、原子力事故早期通報条約、原子力事故援助条約、放射性廃棄物等安全条約、この四つの条約が国際的な条約として非常に重要なものでございまして、また、原子力安全の実施をするための国内の法整備といたしましては、原子炉等規制法と呼ばれているものが重要なものでございます。

玉城委員 日本が、二国間で協定が締結されている国において、今後、日本の民間企業体が事業を受注して進められる場合、そうすると、やはりさまざまな国からのサポートというものが必要になってくるというふうに思います。

 政府全体としてさまざまなサポート体制がとられることが前提になる場合、特に、巨額な建設資金、それを必要とする点に関してお聞かせいただきたいと思いますが、まず、この場合、どのような枠組みで政府からの資金及び投資援助を行うものになるのか、お聞かせください。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 原発プロジェクトに対する政府の支援ということで、今、金融のお話がございました。関係する金融につきましては、いわゆるOECDのガイドラインなどの条件に従いまして、我が国及び相手国の協力の中で、個別のプロジェクトごとの経済性やリスクとの関係で決まるということでございますので、枠組みとしましてはOECDのガイドラインのルールにのっとりながら、具体的な条件については各プロジェクトの個別によって決まっていくということでございます。

玉城委員 個別の案件によってそれぞれまた資金繰りも変わってくるということは当然でありますが、この場合、相手国とのファイナンスに関する負担割合などについても少しお聞かせをいただきたいと思います。どのようになっておりますでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 日本の公的資金と相手国が調達する資金の割合でございますけれども、これもそれぞれのプロジェクトの条件によって異なってくるということが実態でございます。ただ、OECDのガイドラインにおきましては、いわゆる公的輸出信用につきましては、輸出額の八五%を上限とするというルールがございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、次に、さまざまな二国間の協定に関連する管理やリスクについてお尋ねしていきたいと思います。

 原子力発電所建設及び核物質等の安全管理に関しては、本協定内の内容における取り組みはもちろんですが、原子力安全関連条約に基づく措置の実施も含めた、徹底した安全管理がしかれるべきであるというふうに思います。きょうは、この委員会でもさまざま安全管理についての質疑が行われておりましたが、他方では、また、さまざまな事態への対応も事前に想定してしかるべきであるというふうに私は思います。

 原発における原子力事故発生等を想定した賠償などに関して、どのような取り決めとなっているのか、外務省にお伺いします。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 万が一の事故の際の損害賠償責任ということについて、この協定での扱いはどういうふうになっているかということでございますけれども、実は、この点は、我が国が締結しております他の原子力協定と同様に、この協定自体の中では、原子力事故が起きた場合の損害賠償責任ということについての規定というものは特に置いてございません。

 それでは、万が一の事故が起こったらどうなるかということでございますけれども、これまでの質疑の中でもございましたけれども、そのような事態におきましては、企業の契約内容、当該施設が所在する国の原子力損害賠償に関する国内法などに照らして判断をされるということでございます。

 トルコにつきましては、原子力損害に関するパリ条約というものを締結しておりまして、この条約では、原子力事業者への責任集中が定められている。これを踏まえて、現在、トルコでは関係の法案を準備しているところということでございます。

 また、アラブ首長国連邦では、また別の条約であります改正ウィーン条約というものを締結しております。この条約におきましても、原子力事業者への責任集中というものが定められておりまして、アラブ首長国連邦の政府におきましては、原子力損害賠償法を既に制定しているというところでございます。

 万が一の事故の場合には、いずれの場合にも、現地で施設を運営している事業者というものが被害者の方からの提起を受ける、そのような形での責任集中という形になっているところでございます。

玉城委員 済みません、今の件で一点確認をさせていただきたいと思いますが、今答弁になったことは、日本が各条約に加盟をして、双方がその賠償の関係性を持っているということでしょうか。それとも、相手国がそういう条約に加盟をしているということの確認でよろしいでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘の後者の方でございまして、それぞれの各国が今申し上げましたパリ条約なり改正ウィーン条約に入っている、そのことによって、それぞれの国はそれぞれの条約に適合した国内の法整備をしなければいけない、その法整備の効果として先ほど申し上げたような形になるということを御説明させていただいたところでございます。

玉城委員 そうですね。我が国も、実はこれまでそのような条約には入っておらず、今CSCの条約に加盟するかどうかというところについて検討しているというふうなことで承知をしております。

 では、今回の二国間における協定の内容について、一番重要な点ですが、改めて確認をさせていただきたいと思います。

 トルコとの協定では、この協定の適用を受ける核物質のトルコにおける濃縮、再処理の規制について、両政府が書面により合意する場合に限りと限定的表現ではあるが、濃縮、再処理可能な書き方になっておりますね。同じように、協定の改正が行われた場合に限りという限定的な表現で、相手国への濃縮、再処理技術移転の可能性がある条文、これは二条の3でこのように決められています。

 先ほど来、大臣の答弁を聞きますと、それは行われないということを再三答弁していただいているということですが、確認として、大臣、それでよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 近年、国際社会におきましては、濃縮、再処理技術等の移転の規制強化に向けた議論が行われています。そして、それとともに、我が国から原子力関連資機材等が移転されるような状況が生じてきました。

 こうした動きを受けまして、政府としましては、カザフスタンとの原子力協定、これは平成二十二年に署名されていますが、このカザフスタンとの原子力協定以降の協定につきまして、相手国への濃縮、再処理技術等の移転を規制する旨の規定を設けてきている、こうしたことを行ってきております。

 政府としましては、濃縮、再処理技術の移転は不拡散上機微でありますので、こうした方針をとっているわけですが、現在御審議いただいております日・トルコ原子力協定につきましても、改正ということにつきましては全く予定していない、これにつきましては再三申し上げているとおりでございます。

玉城委員 改正する予定はないというふうな中にあって、限定的ではあっても書き込まれてしまったということが、これからも臆測を恐らく残していくのではないかというふうに懸念があるわけです。

 それでは、万一論ということでお答えをしていただきたいと思います。万が一、この協定の改正による新たな管理責任が求められることになるということは、そういうことは全く想定していないということでよろしいですか。

岸田国務大臣 まず、整理しますと、この協定におきましては、濃縮、再処理についてトルコにおいては認めないということ、これは再三申し上げてきているとおりであります。

 そして、御質問は、濃縮、再処理技術の移転についての御質問だと思いますが、これは別の条項、第二条三項において規定されている部分ですが、この部分につきましても、今申し上げましたように、改正ということは全く考えておりません。

玉城委員 協定を締結した後に、例えば我が国と諸外国との政治環境等々を考えてみますと、情勢不安等不測の事態によって原子力発電所建設計画が中断、あるいは施設完成後の核物質安全管理体制等に著しい障害等が生じた場合、協力国である我が国が負わなければならない責任や範囲というのはどのように想定されますでしょうか。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国が原子力協力を行うに際しましては、再三にわたって答弁をさせていただいておりますように、三つのS、不拡散のセーフガード、そして原子力安全のセーフティー、それから核セキュリティーのセキュリティー、この三つを重視しておりまして、これらの分野における国際的な枠組みの強化ということに取り組んでおります。

 また、今お諮りをさせていただいております二つの協定におきましても、このような取り組みにおいて、相手国の取り組みの強化を確保するための措置というものが取り組まれているところでございます。

 今御指摘になられましたように、相手国が情勢不安になるといったことは、今お諮りをさせていただいておりますトルコ、それからアラブ首長国連邦ということについて、特に現在のところ予見をされているということではございませんけれども、あくまでも一般論ということで申し上げますと、仮にそのような事態が発生をしたというときには、三つのSのうち、特に、原子力安全、それから核セキュリティーの二つの確保ということが重要になるのではないかというふうに考えております。

 そのような場合には、原子力安全、そして核セキュリティーの確保ということについては、相手国に対して、これらの確保について、原子力協定の関連規定に従って適切な措置を講ずるということを求めるという立場が一つございますけれども、それとともに、我が国として、また、これらの国を支援する、我々として応援をするということも当然考えなければいけないと考えておりますので、IAEAを初めとする関係の国際機関、関係国とともに、相手国に対して適切な支援を、相手国の要望、そしてまた協議等の中で、そのような措置をしていくということを考えていくべきだろうと考えております。

玉城委員 では、今、文字どおり、核セキュリティーのスリーSが示されたわけですが、IAEAが提示した核セキュリティーの暫定的定義は、核物質、その他の放射性物質、それらの関連施設に対する盗取、破壊行為、不正アクセス、不法移転その他の悪意ある行為の予防と検知に関して、それにつながるテロリズムの行為も脅威も増大する懸念をいずれの原発立地国や地域も抱えているというふうに書かれております。

 そうしますと、もう一度確認をさせていただきたいと思います。

 原発施設の建設中及び建設後、稼働中におけるセキュリティーなどの全体的な協力の枠組みはどのような取り決めによってとられるのかということをお答えいただきたいと思います。

北野政府参考人 お答え申し上げます。

 核セキュリティーにつきましては、また、先ほどの原子力安全も同様でございますけれども、それぞれの国において措置をするということが一義的な責任ではございますけれども、我が国が原子力の協力ということを相手国と行うということに当たっては、可能な情報交換であるだとか支援であるだとか、そういうふうなことをお互いに相談するということは当然あり得るものというふうに考えております。

玉城委員 ありがとうございます。

 では、ここからは、我が国がとり得る放射性物質の管理について、少しお話を聞かせていただきたいと思います。

 福島第一原発では、かかる事故から三年がたち、大量の地下水による汚染水対策に現在も追われている一方です。原子炉建屋内部及び原子炉の細部について状況がどのようになっているのか、いまだに高い放射線の影響などもあって復旧作業がなかなか進んでいないと誰もが認識しているところではないかというふうに思います。

 そういう状況の中で、こういう原子力を輸出するという協定に関する考え方には、やはり慎重でないといけないということが国民にとっても納得できる方向性ではないのかということを改めて考えるわけであります。

 現下の福島第一原発の状況ですが、放射性物質等の状況及び管理等について、きっちり把握している環境にあると言えるのか、規制庁に伺います。

櫻田政府参考人 東京電力福島第一原子力発電所の中の放射性物質の状況ということでお尋ねがあったと思います。

 原子力規制庁といたしましては、東京電力福島第一原子力発電所を、通常の原子力施設のような状態ではないということから、特定原子力施設として指定して、放射性廃棄物の適切な管理を行うということを求めているところでございます。

 放射性廃棄物には気体、液体、固体とございますけれども、まず、気体について申し上げますと、一号機から四号機の建屋からどのような量のものが放出されているかということを定期的な測定を行って、敷地境界における被曝の評価を行う。この結果、十分に小さなものとなっているということを確認している状況でございます。

 それから、液体につきましては、今御指摘ございましたように、汚染水が大量にございますけれども、これを、ALPSと言われてございますが、多核種除去設備を用いて放射性物質の量を低減させて、万一漏えいした場合のリスクを低減させるということをやってございます。また、汚染水を貯留するタンクにつきましても、溶接型タンクへのリプレースを行うといったようなことをやりまして、信頼性の向上を図るということになってございます。

 それから、固体廃棄物、これは瓦れきとか伐採した樹木とかいろいろございますけれども、放射性物質のレベルに応じた適切な管理を行うということを求めてございます。

 それから、原子力規制委員会といたしましては、これらの放射性廃棄物による敷地の境界における被曝評価について、平成二十八年三月末までに年間一ミリシーベルト未満となるように、これは通常の原子力発電所と同じレベルになるようにということでございますが、そのように指示をしているところでございまして、引き続き東京電力の取り組みをしっかりと監視、指導してまいりたいというふうに考えてございます。

玉城委員 今答弁の中にありました内容が本当にスムーズに行われているのであれば誰も懸念を持たないはずですが、ALPSがとまったり、あるいは電源が停止したり、このかかる事態というのは、もう一刻の猶予もならないという状況が続いていることでしかないと思うんですね。

 ですから、そういうことを考えると、甚大な被害をもたらした事故の全容も明らかになっていないままに、対症療法的な現場対応に追われるような取り組みしかとれないことについて、国民は常に事業者と政府や監督省庁の対応に強い関心を持ち続けたまま、環境被害へのさらなる拡散に対しても強い深い懸念が続いているわけです。

 事故発生以降三年が経過した現時点で放射性物質による汚染収束のめどさえつかない状況は、これまでの我が国における原子力及び核物質の安全管理に関する対応について重大な問題があったのではないかというふうに思います。その点についてお聞かせください。

竹内政府参考人 福島第一原子力発電所の事故に関しまして、安全対策、安全規制がどうなったかということでございます。

 平成二十四年に原子炉等規制法が改正されまして、シビアアクシデント対策が規制要件化されたほか、過去に許可を受けた原子力施設に対しましても、最新の技術や知見を反映した基準への適合を義務づける、いわゆるバックフィット制度が新たに規定されたところでございます。

 この改正を受けまして策定されました新規制基準におきましては、福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえまして、地震、津波とも基準を強化した上で既設の原子力に対してもバックフィットさせることに加えまして、仮に今回見直した基準における想定を超える事故や自然災害が発生した場合におきましても、炉心損傷の防止、格納容器の破損の防止、放射性物質の拡散の抑制のための対策を要求しているところでございます。

 こうした新規制基準の検討に当たりましては、IAEAの安全基準や諸外国の規制基準も確認しながら、世界最高レベルの基準になるように取り組んだところでございます。

 こうした基準への適合状況をしっかり確認することで、福島第一原発事故と同様の事故を防止できると考えております。

玉城委員 つくづく思いますに、今もし福島第一原発が、再びマグニチュード七クラスの地震が来たらどうするのかということを想像してみていただきたいと思います。我々は、しっかりそのことに対しても、早急なという表現では余りにも陳腐過ぎるぐらいの対応策を、日本という国力をもってでも当たらねばならないのではないかというふうに、常に頭からそのことが離れないということを一言申し述べておきたいと思います。

 一たびこういう事故が発生しますと、今のように多くの問題解決の困難性が予見される原子力発電などの平和利用に関する核開発については、外国に対する原発技術輸出政策に関しては、やはりこれからは慎重に検討されるべきものであります。積極的な原発外交を進められる状況ではないと私は断じたいと思います。政府の姿勢についてもそのように断ぜざるを得ません。

 最後に見解をお伺いしたいと思います。

赤羽副大臣 済みません、福島原子力災害の現地対策本部長を務めております赤羽でございます。

 民主党政権を引き継ぎまして、一昨年、自公政権が樹立され、十二月二十七日に今の職を任命いただきました。私は、任命直後、一月二日から毎週二日間、福島の原発被害地域に足を運んで対応してまいりました。

 廃炉もやり、汚染水対策もやり、賠償もやり、除染も全て東京電力任せにするという当時の体制は無理があるということで、昨年九月に国の方針を変えまして、この廃炉・汚染水対策については国が前面に出るという方針転換をしたわけでございます。政府の現地事務所も立ち上げまして、各省庁からの常駐者も出ております。

 一番大事なことは、規制庁からそれまでさまざまな指摘がありましたが、あくまでそれは民間企業の東京電力に対するアドバイスにすぎなかった。ですから、アドバイスですから、検討としてずっと引きずっていたことが多かった。そこからいろいろな事象が起こってしまった。

 そういったことを私は一掃したいと考えまして、国が前面に立つ以上は、規制庁からの指摘はアドバイスではなくてオブリゲーション、マストだということで、毎月一回、現地調整会議も行っております。これは、東京電力の副社長以下、関係責任者が全員出席をし、関係省庁も全員出席をし、規制庁も出席をしていただいております。

 そこで、さまざまな事象が起こっているのは事実でございますが、その事実について、政府と東電と規制庁が同時にその事象を共有する、そしてその事象からあらゆるリスクを検討する、そしてそのリスクに対して、リスクがあれば具体的な対策を徹底的に、重層的に、また予防的に打つ、こういう体制を九月から行っております。私はずっと通っていながら、それは相当コントロールをされております。

 ALPSも故障がありますが、それが決定的な、致命的な状況にならないように、そういったことの体制は私はつくっていると自覚をしておりますし、総理が申し上げました、ザ・シチュエーション・イズ・アンダー・コントロールということは基本的に守られているというふうに考えております。笑われているかもしれませんが、私は、この国会の中で一番現地を知っている者の一人だという自負で、責任を持った答弁をしております。

 その一方で、我が国のエネルギー政策とは別に、現実として、午前中の岸本委員の質問に対する答弁もさせていただきましたが、アジア太平洋地域を初めとして、世界各地域で多くの原発建設の計画が予定され、また建設が実施されている現実でございます。その中で原子力の安全性の向上と核不拡散の確保ということをどうしていくのかということは、私は極めて重要なことだと考えています。

 現時点で原発に関しての世界最高水準の技術を持つ我が国のとるべき態度はどうなのか、原発建設において、安全性の高い原子力技術の提供のみならず、オペレーションノウハウや関連人材の育成についても、福島第一原発の事故、厳しい教訓と経験をした我が国の責任として、それを世界と共有することによりまして世界における原子力の安全性の向上に貢献していくことは我が国の責務というふうに考えております。

 以上でございます。

岸田国務大臣 まず、福島第一原発事故の悲惨な状況につきましては、私たちはこれを謙虚に受けとめ、政府挙げて、そして立場を超えて、全力で取り組んでいかなければならない課題だと認識をしております。

 そして、こうした福島第一原発の悲惨な経験をした我が国だからこそ、この知見や経験を国際社会と共有して、原子力の平和利用の安全のためにしっかり貢献していく、これは我が国の責務だと考えています。

 そして、各国の状況、各国の要請等も踏まえながら、我が国として、原子力の平和利用の安全にしっかり貢献していきたいと考えておりますが、その大前提として、核の平和利用、そしてさらには不拡散という大きな目標があります。この不拡散、平和利用だけはしっかりと守っていかなければなりません。

 現在御審議をいただいております原子力協定は、この大前提であります平和利用とそして核の不拡散、これを法的にしっかりと確保するための協定であります。ぜひ、この協定の意義もしっかり御理解いただきまして、御審議を賜り、御了解いただきますよう、心からお願いを申し上げたいと存じます。

玉城委員 るる見解を聞かせていただきましたけれども、やはり日本がとるべき道のりは脱原発です。脱原発から新しい技術を開発して、それを各国で共有していく、そういう方向性も新しい日本の方向ではないかということを最後に申し上げて、質問を終わります。ニフェーデービタン。

鈴木委員長 これにて両件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより両件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺周君。

渡辺(周)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました日本・アラブ首長国連邦原子力協定並びに日本・トルコ原子力協定に対して、原発輸出に対しては慎重であるべきであるが、しかし、平和利用、核不拡散を目的とする両協定について、反対できないとの立場から討論を行います。

 あの福島第一原発における惨禍は今日も続いております。さらに、汚染水処理の状況や使用済み核燃料処理の技術が確立されていないことなど、いまだ原子力技術をコントロールできていないことは明らかであり、輸出時の監視体制も万全とは言いがたい状況であります。

 民主党は、二〇三〇年代に原発稼働ゼロを可能とするよう、あらゆる政策資源を投入するとの方針を掲げ、国内において原発の新増設を認めないとしています。国内で原発ゼロを目指しながら海外に輸出することについては、国内外に批判があり、将来のあり方については、内外の声を十分に聞いて再検討することが必要であるとの認識を示しております。

 さらに、福島の方々の厳しい現状を胸に刻み、いまだ政府がエネルギー基本計画を定めていないことなど、諸般の理由により、我々は原発輸出に対しては慎重に対応すべきと考えます。

 一方で、両協定が、原子力の平和利用、核不拡散という、国際的にも我が国にとっても極めて重要な目的を有することを鑑みれば、賛否の態度表明を迫られれば、やむを得ず賛成するにほかなしとの結論に至りました。

 全面的と言えず、消極的ながらでありますが、賛成を表明して、私の討論といたします。(拍手)

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日本・アラブ首長国連邦原子力協定、日本・トルコ原子力協定、両協定に断固反対の討論を行います。

 両協定は、現在各国が進める原発建設計画に日本企業が参入し、核物質や原子力関連資機材、技術の移転など、我が国企業の積極的な原子力ビジネスの展開を可能とするための法的枠組みを定めるものであります。

 安倍内閣は、原発輸出を成長戦略の柱に据え、首相を初めとする閣僚のトップセールスによって推進しており、東京電力福島第一原発事故後に日本が他国との二国間原子力協定に署名したのは、今回の両協定が初めてのものです。

 福島原発の現状は、事故から三年以上たった今なお、汚染水問題など深刻な状況にあり、収束のめどすら立っていません。

 ところが、政府は、国内向けには、原発に絶対安全というものはないとしながら再稼働を進めようとし、海外向けには、世界一安全な原発技術を提供できるなどと、原発輸出に奔走しています。自国で重大な事故を引き起こした政府が、他国に原発を率先して売り込むなど、無責任そのものであります。新たな安全神話の輸出は断じて許されません。

 とりわけトルコは、日本と同じく、世界有数の地震国であります。こうした国に原発を輸出し、事故の危険性を高めることは国際的にも許されません。しかも、トルコとの協定では、両政府が書面で合意すれば、トルコ国内でウラン濃縮や使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理が可能としていることは、核兵器への転用につながりかねない重大な問題であります。

 まして、このような協定を、参考人の意見を聴取することもなく、わずか一回五時間の審議で採決するなど、到底認められません。

 以上を厳しく指摘し、反対討論を終わります。

鈴木委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 これより採決に入ります。

 まず、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とアラブ首長国連邦政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、平和的目的のための原子力の利用における協力のための日本国政府とトルコ共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

鈴木委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木委員長 次回は、来る四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十二分散会


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