衆議院

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第9号 平成26年4月4日(金曜日)

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平成二十六年四月四日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      池田 道孝君    石川 昭政君

      石原 宏高君    河井 克行君

      木原 誠二君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    島田 佳和君

      田畑  毅君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    小川 淳也君

      玄葉光一郎君    松本 剛明君

      阪口 直人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    青柳陽一郎君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   防衛大臣政務官      若宮 健嗣君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 萩本  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          小川 秀樹君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  萩原 秀紀君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 山田 滝雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    三好 真理君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     中山  亨君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月四日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     池田 道孝君

  木原 誠二君     田畑  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  池田 道孝君     石川 昭政君

  田畑  毅君     木原 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     あべ 俊子君

    ―――――――――――――

四月三日

 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 武器貿易条約の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

 武器貿易条約の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官山田滝雄君、大臣官房参事官下川眞樹太君、領事局長三好真理君、法務省大臣官房審議官萩本修君、大臣官房司法法制部長小川秀樹君、人権擁護局長萩原秀紀君、経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長中山亨君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玄葉光一郎君。

玄葉委員 おはようございます。玄葉光一郎です。

 ICJ、南極における捕鯨訴訟、ショックが走ったというふうに思います。同時に、後ほど今回の厳しい判決を踏まえての反省、教訓をお聞きしたいと思いますが、その前に、けさ、報道あるいはテレビを見ておりましたらば、総理大臣が事務方を厳しく叱責した、こういうふうに報道されていました。

 私は違和感がありますね。叱責というのは、他人の失敗を責め立てることです。これは本当に他人の失敗なのかどうかということだと思うんです。

 これは、私も含めて、これまでかかわってきた、つまりは、この裁判に何らかの形でかかわってきた政治家がまずはきちっと反省するところは反省をするというところから始まらないと、事務方のせいにするという姿勢で、私は、ICJ、非常に重要な役割をこれからますます果たしていく中で、大丈夫かなというふうに思います。

 こういった、事務方を叱責するという、このことに対して私は違和感を感じたわけですが、岸田外務大臣はどのようにお考えですか。

岸田国務大臣 まず、今回の判決につきましては、我が国としまして、全力を尽くしてみずからの主張を明確に打ち出してきたつもりでありますが、こうした結果になったことにつきましては、まず、この結果につきましては失望しておりますし、そして、こうした結果に至ったこと、まことに残念に思っております。

 そして、この結果を受けて、政府の内部においてさまざまな報告が行われ、そして、それに対して検証し、そして分析が行われているわけです。そのやりとりの一部が報道されたということはあるのかもしれませんが、いずれにしましても、この結果に対しての考え方は、政府全体として表明しなければならないと考えております。

 そして、政府としての考え方、受けとめについては、ただいま申し上げたとおり、失望しておりますし、大変残念であると思っています。

 そして、今後は、関係省庁ともしっかりと連携しながら適切な対応を、具体的な対応を考えていかなければならない、これが政府全体としての考え方であります。

玄葉委員 これはぜひ一言お答えいただければと思いますが、結局、事務方を叱責したという報道だけなんですね。そして、鶴岡代理人が官邸から出てきたときに答えたコメントも、恐らく総理大臣と打ち合わせをしてお答えになったと私は推測しますけれども、総理大臣から叱責を受けました、ただそれだけです、こういうコメントです。

 私は、違和感があるんです。事務方のせいばかりにしているという、少なくとも、そういう印象を受けます。そのことに対して、いかがですかということです。

岸田国務大臣 官邸における具体的なやりとりについては、私はその場にもおりませんでしたし、報道で知るのみであります。

 しかし、どういったやりとりが行われたとしましても、こうした結果につきましては、政府全体として受けとめなければならないことでありますし、それに対する考え方、立場は政府として統一して発しなければなりません。

 こうしたやりとりの一部が報じられてはいますが、あくまでも政府一体として責任を受けとめ、そして立場、考え方を発していく、こうしたことは徹底しなければならないと考えています。

玄葉委員 確認なんですけれども、やはりこれは事務方のせい、そればかりでは決してないということですよね。

岸田国務大臣 当然のことながら、これはもう政府全体で受けとめ、そして責任を感じ、今後の対応を考えていかなければならない課題だと思っています。

玄葉委員 私もそう思います。これは私も含めてでありますけれども、やはりショックだったんですね。総理大臣だって、本当に強い関心をお持ちであれば、昨年、口頭弁論が行われた前後にきちっと報告を受けて、さまざまな指示を、特に口頭弁論前にすればよいわけでありますから、当然、政治家の責任でもあるということです。

 何が私はショックだったかというと、この捕鯨の問題そのものもさることながら、ICJ、国際司法裁判所というこれからますます重要性が高まるであろう機関において、日本国政府が初めて当事国になったわけです。原告でも被告でも、いずれにしても、初めて当事国として登場した、その裁判で負けたというのはやはりショックだし、法の支配のチャンピオンを目指したいと思っていると思いますし、私自身はそうあるべきだと思っている者でありますけれども、その裁判で負けたというのがショックだったということなんです。

 したがって、今回のいわば反省、教訓というものを現在分析中ではあろうかと思いますけれども、現時点でどのように今回の経緯から教訓を導き出そうとされておられるか、その点について岸田外務大臣の考え方を聞きたいと思います。

岸田国務大臣 国際的に法の支配を重視している我が国としまして、今回の判決の結果につきましては、まことに残念に思っています。

 そして、今回の裁判の判決の具体的な内容についてはしっかりと精査しなければならないと思っていますが、今後の国際社会を考えますときに、今後もより一層、国際法に基づく紛争解決の重要性は高まっていると認識をしております。

 そうした認識に基づいて、我が国としましては、特に外務省として、国際法に通じた専門家の育成の重要性を改めて強く認識するところであります。今日までも、こうした国際法の専門家の人材育成、強化に努めてきたところでありますが、今回の経験も踏まえまして、ぜひ、省全体として、我が国の外交における国際法の重要性を再認識し、そして体制の強化を図っていかなければならないと思っています。

 そして、我が国として、こうした人材育成も大切でありますし、また、国の内外を通じまして、専門家同士の人材交流ですとかあるいは連携、こういったものを通じて、より充実した人材と体制整備に努めていかなければならない、こうしたことを強く感じるところであります。

玄葉委員 今回、例えば鶴岡代理人はTPPの首席交渉官であります。そちらで忙しい身であるにもかかわらず、彼が一番いわばベストな人選だ、少なくとも非常に能力が高いということで、かえずに、彼が口頭弁論をやられたわけです。彼のせいだと言っているわけじゃなくて、つまり、今回、ほぼ現時点で考えられるベストな布陣で臨んだと思うんです。臨んで、結果がこうだったというのがショックだったんですよね、内部を知れば知るほど。

 ですから、これは相当長期戦というか、腰を据えて人材育成をしていく。あるいは、技術的にもいろいろあると思うんです。こういう訴訟に当たって、おっしゃったとおり、例えば、こういう学者さん、こういう外国の専門家を入れた方がいいとか、恐らくそういう技術的なこともたくさんあるんだろうというふうに思いますので、今回のことから導き出す教訓というものを相当しっかりとつくり上げていただきたい、そしてそれを確実にこれからに生かしてもらいたいということを私からも申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、ロシアのクリミア編入の問題であります。

 これも、今国際法の話をいたしましたので、きょうはできるだけ国際法の話をしようという思いがあるのでありますが、ロシアのクリミア編入ということに対して、つまりこの行為に対して、我が国としては、国際法上これをどう評価しているのかということについて、事前に通告してございますので、お答えをいただきたいというふうに思います。

岸田国務大臣 今回のロシアによる一方的なクリミア編入につきましては、既に一連のG7首脳声明等において示しておりますように、我が国は、明らかな国際法違反であると考えております。

 具体的には、三月十二日のG7声明に示されておりますように、一つは国連憲章、そしてさらには欧州安全保障協力会議の最終文書、ヘルシンキ宣言と言われていますが、この文書、さらには一九九七年のロシア・ウクライナ友好協力条約、そして一九九七年のロシア・ウクライナ地位協定、そして一九九四年のブダペスト覚書、こうしたものに対して違反をしていると認識しております。

玄葉委員 おっしゃるとおりだと思うんですけれども、国連憲章二条四項は、いわゆる強制とか力による領土の取得を禁止しているわけでありまして、そのことに明らかに違反する行為だろうというふうに思います。

 ただ、実はロシアも、これも事前通告しておりますけれども、国際法上の根拠を示して、根拠になっているかどうかは別として、クリミア編入を行った、こう主張しているわけであります。特に、ロシアの立場というのは、プーチン大統領のスピーチ等から幾つか引用いたしますと、クリミア半島の住民の意思表明は、民族自決の原則を定める国連憲章第一条に従って実施をしたのだと。

 民族自決の原則とプーチン大統領は主張するわけでありますけれども、では、このことに対してどのように反論するのですかということが一つあります。

 それと、プーチン大統領は、これも国際法を掲げて、コソボの例を挙げています。つまり、コソボの例を挙げて、独立に係る一方的宣言に際して中央政府のいかなる許可も必要としない、国際司法裁判所、ICJは、国連憲章一条二項、つまりは民族自決の原則だと思いますけれども、一条二項に基づきこれを認めたというふうに言っています。

 さらに、またICJがプーチン大統領の演説で出てくるんですね。コソボ問題に関する二〇一〇年七月二十二日付のICJの勧告的意見ではということで、安保理の実行から一方的独立宣言の一般的禁止を推論することはできない、一般国際法は独立宣言に適用可能な禁止を含まないと定めたのだということまでスピーチの中で実は言っているということです。

 このロシアの主張に対して、どのように日本政府として評価をしておりますか。

岸田国務大臣 まず、御指摘のように、ロシアは、国連憲章第一条の民族自決権、さらにはコソボの例を援用しながら、みずからのクリミア編入を正当であると主張しているわけです。

 まず、民族自決権とは、主として植民地独立の文脈で掲げられた原則です。ですから、今回のクリミア問題に援用することが適切なのかどうか、我が国としては適切ではないと考えております。

 そして、コソボに関してですが、コソボにつきましては、長年にわたり、国連の安保理を中心として、その地位問題につき、国際的交渉と外交努力が積み重ねられました。そして、一九九四年には国連の暫定統治下に置かれ、その後、国際社会の合意のもとで暫定自治政府が成立し、二〇〇八年二月にコソボは独立を宣言いたしました。こうした独立宣言が行われる過程において、国際法の違反はなかったと認識をしております。

 一方、今回のクリミアの問題に関しましては、その地位において、コソボのときのような国際的な議論は行われておりません。そして、住民投票によって同共和国の分離、編入が過半数をとっても、ロシア軍と見られる武装部隊が展開する中で住民投票が決定、実施されており、その過程において国際法上違法な介入が行われていたと認識をしております。

 こういった点を考慮して、我が国としては、こうしたコソボの事例あるいは国連憲章第一条を根拠として、今回のクリミア併合を正当化することはできないと考えております。

玄葉委員 特に後者のことはよくわかりました。

 ただ、冒頭おっしゃった、これはぜひ説明していただければと思うのは、多分、今聞いている委員の皆さんも、いわゆる国連憲章一条に書いてある民族自決の原則とロシアは言っていますよね、それに対して、今回は適用されないというのは何でなんですかときっと思っているんじゃないかなというふうに思うので、簡単に説明してもらえればと思います。

岸田国務大臣 国連憲章第一条、民族自決権が適用されるかどうかということについては判断は難しいかと思いますが、そもそも、この民族自決権、国連憲章第一条、これは植民地独立の文脈で掲げられた原則だと承知しておるので、これをクリミア問題に援用することは適切ではないのではないかというのが我が国の考え方であります。

玄葉委員 私もそう思います。わかりました。

 それで、今回のクリミア編入問題でありますが、やはり全体の文脈から見ると、私も国際法違反だと思うし、力の論理がまかり通ったな、十九世紀的だな、帝国主義的だなというふうに思います。

 その上で、具体的に幾つか聞きたいのは、今回のクリミア編入がもたらす尖閣における事態、状況への影響をどう考えておられるかということであります。

岸田国務大臣 まず、クリミアの問題につきましては、アジアを含む国際社会全体にとって極めて重要な問題であると認識をしております。そして、この問題については実際さまざまな議論が行われています。さまざまなところでこの問題の影響について論評がされているのは承知をしております。

 しかしながら、実際のところ、本当にさまざまな要素が絡み合っていますし、その要素が関連することによってどんな結果につながっていくのか、さまざまな議論はあるわけでありますが、我が国の立場として、特に尖閣諸島あるいは北方領土問題等について具体的にどんな影響をもたらすのか、これを予断を持ってお答えするというのは難しいと考えています。

 いずれにしましても、こうした問題が我が国の立場を損ねることがないようにしっかり外交を進めていく、このことが大事だと考えております。

玄葉委員 実は、この間、在京のロシア大使と夕食を食べました。高村さんも一緒でした。その中で、そういうお酒の場ですから、冗談、ブラックユーモアでありますけれども、先方から、北方領土も住民投票で決めましょう、こういう話がありまして、それは明らかなブラックユーモアだと言ったんですね。

 つまりは、仮に、これから北方領土交渉があって、現在しているわけでありますけれども、国境線が画定しました、日本の領土であるというふうに国境線が画定しました、その中で、ロシア系の住民が住んでいます、そこで、また住民投票が行われて、今回のクリミアのような事態になってしまうということだって全く考えられないわけじゃないわけですよね、今回の事態の援用で、あるいは延長で考えると。

 だから、本当にさまざまなことを、尖閣あるいは北方領土の問題を考える上では、尖閣の問題ということは私は言っていないんですが、北方領土の問題、北方領土交渉を考える上では、あるいは尖閣に対する影響を考える上では、まさに考慮に入れなければならないのだろうというふうに思います。

 そういう意味で、尖閣でありますけれども、やはり中国は息を凝らして現在の状況を見ているのではないだろうかというふうに思うんですね。もし、こういうふうに国際法に反した中で、いわば力の論理がまかり通る形でいわゆる国境線が変わるということに対して、日本を含めて、特に米国初め欧米諸国が何の代償も与えない、何の代償も与えなかったと仮になったときには、やはり中国には誤ったシグナル、サインになるのではないかというふうに思われるのでありますけれども、岸田外務大臣はどのようにお考えですか。

岸田国務大臣 中国が今回のウクライナの問題についてどう見ているのか、どう考えているのか、私自身、中国の立場について断定的に申し上げる材料は持ち合わせてはおりませんが、先日、国連総会におきまして、ウクライナ問題につきまして決議が採択をされました。その際に、中国は棄権をしたというのは事実であります。

 我が国としましては、こうしたウクライナ問題を通じまして、我が国の立場が損なわれてはならないと考えておりますし、そのために、これまでもさまざまな、G7の共同声明ですとか、あるいは国際会議の場において、力による現状変更は絶対に容認できない、こういった考え方は強く訴えてきたところであります。

 いずれにしましても、国際社会において誤ったメッセージが発せられることがないように、我が国としまして、我が国の立場、考え方、G7初め関係国とも連携しながら、しっかり発出していきたいと考えています。

玄葉委員 私、ちょっと今思い出したんですけれども、この場でというか、部屋は違ったと思うんですけれども、外務委員会の場でシリアの問題を扱ったことがあって、あのときたしか、オバマ大統領がレッドラインを越えた、一線を越えたということを言った瞬間に、私はまずいんじゃないかなと思ったということを申し上げた記憶があるんです。

 あれは、結果として、レッドラインを越えたといって、軍事介入はしなかったわけです。それは、もしかしたら、識者によっては、誤ったシグナルを与えているのではないか、あるいは今回のプーチン大統領の動きに何らかの形で関係したのではないかというふうにも言われていますよね。

 今回、また何らかの代償、いや、ロシアとの友好関係というのは日本は大事だと私は思っているんですけれども、ただ、何らかの代償がなく形式的な、例えばグルジア戦争のときのような、あれは別に編入したわけじゃない、一方的に、ロシアプラス二、三カ国だけが国家承認しているような状態ということなんでしょうけれども、あの南オセチアとかアブハジアだとか、本当にあのときのような全くの形式的な制裁に終わっちゃって何の代償も伴わなかったという状況が生まれると、これは、これから長い目で見たときに、いろいろなことに影響を与えちゃうんじゃないかと私は心配しているんですよね。

 どう思われますか。

岸田国務大臣 ウクライナ情勢につきましては、引き続き流動的だと考えております。クリミア情勢ももちろんでありますが、ウクライナ自身、五月の二十五日に大統領選挙が予定をされております。こうした選挙の行方等を見ながら、ロシアを初め国際社会がどう対応するのか、こうした点が注視をされています。

 その中で、我が国として適切に対応していかなければならないわけですが、まずは我が国としましては、三月十八日、ロシアとの査証緩和に関する協議を停止する、さらには、新投資協定、宇宙協定、危険な軍事活動の防止に関する協定、こうした三件の新たな国際約束の締結交渉開始を凍結する、こうした措置を発表いたしました。これは、まずもって、力を背景とする現状変更の試みを決して看過することはできない、こうした姿勢を示す上で適切な措置であったと考えております。

 そして、こうした我が国の考え方は、G7の共同声明あるいは三月二十四日のハーグ宣言、こうしたものに我が国も参加をし、しっかりと表明をしてきております。今後とも、こうした我が国の立場、考え方はしっかり表明していかなければならないと思っていますが、そして、これをロシアに対しても昨年来の二国間関係に基づいてしっかりと直接働きかけていく、こうした姿勢は重要だと考えております。

 ぜひ、こうしたG7を初めとする関係各国と連携しながら、ロシアに対してしっかりと働きかけを行い、そして、今後の情勢を見ながら、さらなる措置についても検討していかなければならないと考えています。

玄葉委員 オバマ大統領が四月の二十三日から来日をされると聞きました。当然この問題も話し合われるというふうに思います。

 やはり、今のところ日本は、G7の中ではいわば一番後ろで制裁についていっている、こういう感じではないかというふうに思うのであります。

 先ほど申し上げたような北方領土交渉への影響、また、もちろん、後にプラスに出るのではないかという説もあるのはあるのでありますが、尖閣に関して言うと、やはり中国は、下手をすると、南シナ海でも東シナ海でも、こうした力で強く出ても構わないという勘違いをしてしまいかねない、そういう問題だと考えれば、また、さらに言うと、法の支配というものを強く打ち出している日本国として、国際法違反であるというふうに断じている、つまりは、国際秩序をつくる上でのルールの問題、理念の問題として、大事にしている法の支配にかかわる問題だというふうに考えたときに、何となく今のように、G7の中で最後のランナーとしてついていきますよという状況で、事実上の様子見のようなことを続けていてよいのか、こういう批判が当然あり得るわけでありますけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、三月二十四日、オランダ・ハーグでG7の首脳会合が開かれましたが、その際にも、安倍総理は、アジアの厳しい安全保障環境を念頭に、この問題は一地域の問題ではなくして国際社会全体の問題である、こういった発言をしております。ぜひ、こうした問題に対する対応が国際社会に対して誤ったメッセージを発することがないように、しっかり対応しなければならない、こういった思いを訴えたものと承知をしています。

 G7各国、国際法の遵守、法の支配を尊重する、こういった思いについては間違いなく一致をしております。そして、ウクライナの問題について、クリミア編入について強く非難をする、こういった点については一致をしております。

 その中で、我が国として、具体的にどう対応していくのか。我が国独自に対応できる部分もあるのではないかと考えます。

 一つは、昨年来のロシアとの二国間関係に基づいて、しっかりとロシアに対して、この問題について我が国の考え方、立場を訴えるということもあるのだと思いますし、そもそも、ウクライナの情勢そのものに対して、平和的な解決に導くべく、今国際社会が取り組んでいます。IMFを初めとするさまざまな国際機関が協力を今検討しているわけでありますが、こうした国際機関との連携に基づいて、ウクライナの問題を平和裏に解決するべく努力をする、こうした努力に我が国として貢献する、こういった取り組みもあるかと存じます。

 ぜひ、我が国としましては、G7、関係国との連携、これはもちろん大切でありますが、我が国独自の立場からこの問題を平和裏に解決するために貢献をする道もあわせてしっかり検討していきたいと考えています。

玄葉委員 四月に、岸田外務大臣、ロシアに行かれるという話を以前聞いたことが、報道なんかで見たことがありますけれども、予定どおり行かれるんですか。

岸田国務大臣 ウクライナの情勢をめぐりましては、先ほど申し上げました、三月二十四日のハーグ宣言の中においても、状況を緩和するための外交的な道筋、これはロシアに対して引き続き開かれているという内容が盛り込まれており、ロシアに対しましてぜひ責任のある行動を促していく、こういった姿勢をG7各国は示しています。

 我が国として、ぜひ、我が国の昨年来積み重ねてきた日ロ関係に基づいて、ロシアに責任ある行動を促していくべく努力をしていかなければならないと考えてはおります。ですから、ロシアとの政治的対話、これはこれからも大事にしていかなければならないと考えています。

 しかしながら、私のロシア訪問、昨年来、ロシアとの間において訪ロが約束されているわけでありますが、この点については、まず、現状においては何ら変更はありません。しかしながら、ウクライナ情勢、そしてG7各国あるいは関係国の動向ですとか、そしてそういった国々との関係等も勘案しながら、引き続きそういった動きを注視しつつ、適切に対応していかなければならない課題だと思っています。

玄葉委員 そうすると、前向きに行くということよりは、慎重に見きわめる、こういう感じですか。

岸田国務大臣 ロシアには責任ある行動をしっかり促さなければなりません。また、ウクライナ情勢は流動的であります。こういった中にあって、我が国として適切な行動はどうであるのか、これは引き続き検討していかなければならないと思っています。

玄葉委員 まさにこれは難しい判断だと思いますけれども、総合的な判断をしていかなきゃいけないんだろうというふうに思います。

 国際法の観点で、また別の問題を一つだけお聞きしたいんですけれども、きょうは国際法にできるだけ特化して聞こうと思っていたんですが、韓国、日韓関係、今度時間があったら一度じっくり全般的にやりたいんですけれども、きょうは、国際法絡みでいうと、幾つかあるんですけれども、一つだけ聞きたいと思います。

 いわゆる徴用工をめぐる裁判というのが、日本企業が敗訴しているわけであります。これは、もちろん個人の請求権においても、一九六五年の日韓請求権・経済協力協定で完全かつ最終的に解決されたのだというのが我々というか日本国政府の立場だというふうに思います。そういう状況の中で、これは判決が確定する可能性が強いという状況になってまいりました。

 中国でもどうやら同じような動きがあって、日本企業がかつて強制連行、炭鉱だとか建設現場だと思うんですけれども、連行して過酷な労働を強いたという問題で、これまでは政治的に中国政府はこの訴えを受理しなかった、中国政府は受理しなかったと言うと正確ではありませんが、ただ、事実上中国政府の影響下にある司法が受理をしなかったということでありますが、最近は受理をし始めたということで、日本企業二十社くらいが訴訟リスクにさらされるという、これは大問題だと思うんです。

 例えば、韓国で判決が確定したとすれば、これは国際法違反として日本国政府としては争うということなのか、それとも、あくまで外交的な解決を求めていくということなのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の旧民間人徴用工の問題を含め、日本と韓国の間の財産、請求権の問題につきましては、日韓請求権・経済協力協定により完全かつ最終的に解決済みである、これが我が国の政府の一貫した立場であります。そして、こうした立場は、今までも外交ルートを通じまして、韓国政府のさまざまなレベルに対してしっかりと申し入れを行い、伝えてきております。そして、韓国政府も、本件につきましては、日韓請求権・経済協力協定で解決済みだという立場であると我々は承知をしております。韓国政府自身も、こういった立場については正式に表明をしてきております。

 ですから、本件は、あくまでもこれは韓国政府自身が解決すべき問題であると考えておりまして、我が国としては、韓国政府が早急かつ適切に対応することを求めている、これが今現状の我が国の立場であります。

 我が国としましては、引き続き民間企業とも連絡をとりつつ、日韓間の財産、請求権問題に対する我が国政府の一貫した立場に基づき、適切に対応していきたいと思っております。状況を注視していきたいと考えています。

 その上で、どういったことになるのか、その点につきましては、あらゆる可能性を念頭に適切に対応していきたいと存じますが、現状においては、これは韓国の政府が適切に対応する問題であるということで、まずは状況を注視していきたいと考えています。

玄葉委員 中国はどうですか。つまり、中国は、恐らく中国政府として、これまでと違って、もっと言うと、韓国政府とも違って、個人の請求権あるいは民間の請求権は、日中共同声明の中で扱ったような形で請求権放棄をいわゆる個人と民間はしていないんだみたいなことを中国政府が言うのではないかというふうに思うんですけれども。

岸田国務大臣 中国との間の請求権の問題については、日中共同声明発出後、存在をしていないというのが我が国の立場であります。

 そして、今回の訴訟につきましては、こうした訴訟の状況によっては、戦後の日中の経済関係、経済協力、そういったものを揺るがしかねない大変大きな問題であると認識をしております。そうした認識のもとに、引き続き注視をしていきたいと考えています。

玄葉委員 時間の関係で、最後の質問をいたします。

 お手元に、NPDI広島外相会合の開催に当たっての民主党の議連の提言があるというふうに思います。NPDIというのは、いわゆるNPTの運用会議に向けて現実的な提案をして、今後の国際的な議論を核軍縮・不拡散の分野で主導するためにつくられたものであります。これまで恐らく七回か八回やったと思いますが、私も、当時、三回ほど出席をして、二回議長をいたしました。

 今度、広島で開催をされるということでございまして、それに当たって建設的な提言をまとめて、事前に外務大臣のお手元にもお渡しをしてございます。

 この提言についての評価をお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 一つ、お答えする前に、先ほどの答弁の中で、コソボに関して答弁した際に、コソボが国連の暫定統治下に置かれた部分につきまして、一九九四年と答弁したようでありますが、実際は一九九九年でございました。ちょっと、おわびをして、訂正をさせていただきます。

 その上で、ただいまの御質問に答えさせていただきますが、今月予定されております第八回NPDI外相会合、初めて被爆地広島で開かれるということで、各国の外相に被爆の実相に触れていただき、その上で政治的な意思をしっかり発信していく貴重な場であると考えております。

 NPDI外相会合、八回目ということですが、その間、玄葉外務大臣も三回御出席されたということであります。今日までのNPDIの実績の上に立ちまして、ぜひ、来年予定されておりますNPT運用検討会議、五年に一遍のこの会議に向けて建設的な提言をしていきたいと考えているところであります。

 そして、民主党の非核議連の提言についてどう考えるのかという御質問でございますが、先日、この提言書、紙を私自身直接いただきました。内容につきまして、大変貴重な提言をいただいたと認識をしております。

 その中で、核軍縮・不拡散に向けたアプローチについてはさまざまな考え方があります。我が国としましては、拡大抑止政策を含む安全保障政策と両立する形で段階的に核軍縮を進めるというアプローチをとっていますが、いただいた提言にあります、核兵器のない世界を目指すという目標については国際社会で広く共有していると考えております。

 そして、いただいた提言にあります、核兵器の非人道性も重要な問題であると認識をしております。核兵器の非人道性を考慮することが、核兵器のない世界を目指す上で、国際社会を結束させる触媒であるべきであると考えます。

 NPDI広島外相会合におきましては、いただいた提言も踏まえまして、ぜひ、核兵器の非人道性をめぐる問題についても、参加する各国外相と率直な意見交換を行っていきたいと考えております。

玄葉委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ウクライナの危機をめぐって米ロの関係が特に緊迫をしている中でありますので、核軍縮分野でNPDIの果たす役割は大きくなっているというふうに思います。

 大臣の御地元での開催でもあります。私自身のときにたしか広島と場所を決めたんですけれども、あのときに、広島の地元の関係者の皆さんから強い要望をいただきましたし、記録に残しておきたいと思うので一言つけ加えると、特に公明党の斉藤議員から強く広島開催の要望をいただいていたということも申し上げておきたいというふうに思います。

 広島会合の成功を強く期待したいと思います。

 以上で終わります。どうもありがとうございました。

鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二十六分開議

鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。村上政俊君。

村上(政)委員 日本維新の会の村上政俊です。

 金曜日の本会議の後という、それぞれ先生方、多分、早く地元にお帰りになりたい中で時間を頂戴いたしまして、大変恐縮でございますけれども、質疑をさせていただきます。

 それでは、最初に岸田大臣に、立憲主義に対する大臣のお考えを伺いたいと思います。

 二月三日の予算委員会で、ちょっと古い話になってしまいますが、安倍総理は、立憲主義について問われて、立憲主義というものは、王権が絶対的な権力を持っている時代に権力を縛るものであって、今では主流の考え方ではないというふうに御答弁なさったと私は承知いたしております。

 私自身も、学生時代、一応法学部におりましたが、そういうふうな立憲主義に対する考え方、総理がおっしゃった考え方というのは、不勉強ながらか、余りお聞きしたことはありません。大臣も法学部の御出身だと思いますけれども、立憲主義について今までお聞きになった中で、そういう考え方というのは、我が国の中では、ひいては世界の中で、余り主流じゃないんじゃないかと思います。

 岸田大臣御自身は、立憲主義についてどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 立憲主義についての御質問ですが、立憲主義とは、主権者たる国民が、その意思に基づき、憲法において国家権力の行使のあり方について定め、そして、これにより国民の基本的人権を保障するという近代憲法の基本的な考え方だと承知をしております。日本国憲法も、基本的に同様の考え方に立って制定されたものだと考えます。

村上(政)委員 私も大臣と同じ考え方です。ということは、基本的には、立憲主義というのは、憲法が権力を拘束するという考え方で、権力に歯どめをきかせるという点に力点が置かれるということだと思います。

 大臣も同じお考えということで、私自身は安心したんですけれども、ということになると、安倍総理と岸田大臣の間でお考えが違ってくるんじゃないかな、閣内で立憲主義に対する認識のずれがあらわれるんじゃないかなと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 私自身、今この場で、総理の発言についてちょっと確認をしておりませんし、手元に資料がありませんが、今委員のおっしゃった、総理が古い考え方であると発言されたということでありますが、その古い考え方、どの部分をどう指しているのか等も、実際の発言を確認しないと、私もちょっと論評することは難しいのが実情でございます。

村上(政)委員 大臣、今、実際の総理の答弁というものが手元に来て、その総理の答弁というものをごらんになった上でもう一度お答えを頂戴できればとは思うんですが、総理がおっしゃった趣旨というのは、私が理解するに、権力を縛るというような憲法観というものは今の主流ではなくて、絶対王政時代の非常に古い考え方であると。今の憲法というのは、我が国とはこういうものであるといった理想というものを前文を初めとした憲法の条文の中に書き込んでいくものであるというふうに、二月三日の予算委員会とか二月十日の予算委員会でおっしゃっていたと思います。

 私自身は、ここにおられる多くの先生方と同じ、まあ、考え方が違う先生もいらっしゃるかもしれないですけれども、時代に合わせて憲法の条文というものは変えていくべきだと思いますし、憲法の改正というのも議論していくべきだと思います。ただやはり、我が国の議会制民主主義の根本原理となるような立憲主義に対する考え方が曖昧である、そういった総理が今いらっしゃるんじゃないかなという疑念を私は持っていて、非常にこれは心配だと思いますので、大臣にお伺いする次第です。いかがでしょうか。

岸田国務大臣 済みません、今、手元に議事録が回ってきましたので、それをいま一度確認した上で答弁をさせていただきたいと思います。

 三月四日の予算委員会でのやりとりですが、幾つかやりとりした結果として、総理の発言が手元にございますが、総理自身が「立憲主義とは、主権者たる国民がその意思に基づき憲法において国家権力の行使の在り方について定め、これにより国民の基本的人権を保障するという近代憲法の基本となる考え方でありまして、日本国憲法も同様の考え方に立って制定されたものと考えるわけでございます。」という発言をしておられます。

 結論としまして、先ほど私が申し上げた立憲主義に対する考え方と一致しているのではないかと考えます。

村上(政)委員 今大臣が御紹介いただいた総理の答弁というのは、何度か答弁を求められるうちにそういうお答えに最終的に修正していかれたものだと思います。最初におっしゃったのは私が御紹介したような発言、答弁ぶりでしたので、私自身、やはり総理大臣という我が国の最高権力者にはきちんとした憲法に対する考え方を持っていただかないと、これから集団的自衛権の議論をするにしても非常に不安を感じますので、問題提起として今大臣の御認識を伺った次第です。

 これは立憲主義の話として、次に、高村副総裁が集団的自衛権についていろいろとお考えを披瀝されていると承知しています。砂川事件判決、最高裁の判決を例にとりながら、集団的自衛権の議論の落としどころを探っておられるのかなと理解するんですけれども、この砂川事件の判決は、自衛権というものは我が国が持っているというふうな、我が国の平和とか安全にかかわる事態に対して自衛権を発動することができるというふうに判事した。その中で、特段、個別的あるいは集団的というものについて区別して、分けて論じているものではなかったと思うんですけれども、これを論拠に集団的自衛権というものが限定的に行使できるんじゃないかというふうに、新聞報道等を通じて承知していますが、こういった高村副総裁のお考えに対して、岸田大臣はどのような受けとめ、お考えをお持ちでしょうか。

岸田国務大臣 現在、集団的自衛権をめぐりまして、与党、もちろん野党の中でも、さまざまな議論が行われていることは承知をしております。

 そして、その中にありまして、高村副総裁も御自分の考え方を述べておられるわけですが、与党あるいは自民党の中での議論における高村副総裁の発言について、今の段階で政府として見解を述べるのは控えなければならないと思っています。

 なぜならば、政府としましては、今、安保法制懇、有識者会議での議論があり、最終報告書が出された後、これを政府としては与党とも議論を行い、そしてその上で政府としての方針を決定するという運び方で議論を進めていこうと考えているわけですから、今の段階で政府として何か断定的なことを申し上げるというのは控えなければならないと思っております。

 その上で申し上げるならば、この砂川事件の判決は、憲法第九条の規定により、我が国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではないとした上で、「わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。」と判示し、さらに、「わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができる」、こうした判示をしたということを承知しております。

 今後、先ほど申し上げましたように、安保法制懇の最終報告書を待って、与党との議論が政府との間で行われ、政府の方針が出され、そして国会においても議論が行われるわけでありますが、その中で、この砂川事件判決についても議論の材料として供されることになるのではないかと想像はいたします。

村上(政)委員 今の御答弁ではこれからの集団的自衛権の議論の運びについてもお考えを示されたと思います。政府としての判断、それから与党との議論ということを踏まえた上で国会の場で議論をする、我々野党とも御議論くださるということですが、これではやはり遅いんじゃないかなと私は思います。

 これは野党の方からいつもお願い申し上げていることですけれども、やはり前広にこの外務委員会で集団的自衛権についていろいろと議論をさせていただく必要があるんじゃないかなと。集団的自衛権について、私を含めていろいろと野党の方から累次質問させていただいているわけですけれども、常にお答えというのは、安保法制懇の結論を待って、閣議決定をした上で我々と議論すると。では、この外務委員会での議論はどういう位置づけなんだと。

 おっしゃっていることも非常に理解はできるんですけれども、その中でも、この場でも前広に我々と議論を重ねていくことができるんじゃないかなと思います。野党の中にも賛成、反対それぞれの立場があって、我々維新の会は賛成の立場で、私自身も賛成の立場ですけれども、そういった議員ともぜひこの委員会で前広に御議論いただいて、よりよいもの、より精緻なものをつくっていく必要があるんじゃないかなというふうに思います。

 というのも、安保法制懇での議論の中身は、なかなかはっきりとはわからない面もあります。安保法制懇のメンバーを見ますと、例えば国際政治にたけていらっしゃる先生とか、外務省の先輩とか、そういう方はたくさんいらっしゃいますけれども、直接的に憲法に関する知見を持っている憲法学者とか、そういった方は非常に少ないんじゃないかなと思います。

 そういう方々で議論していくと、やはり政策論が中心になって、法的な解釈を積み重ねたり憲法解釈を変更する上で、どのような精緻な解釈をしていくのかという点で、議論が粗くなったり、例えば、国会に出していただいたときに、国会での論戦にたえ得るものが本当に出てくるのかどうかという点も私は心配しています。

 以上申し上げたような点で、やはり前広にこの委員会でも大臣と御議論させていただければいいんじゃないかなと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、集団的自衛権の議論につきましても、国会での議論は大変重要でありますし、我々は尊重しなければならないと思います。

 ただ、この問題につきまして政府の立場を質問された場合、政府の方針、考え方が確定していなければ、的確にお答えすることができないということになります。今の段階でなかなか政府としてはっきりお答えできないのは、そういった事情によります。

 国会の議論において、政府の考え方、立場を明らかにして議論することが大事だということで、今の政府としましては、安保法制懇の結論を待ち、その上で、政府として与党としっかり協議をし、政府・与党でしっかり議論をした上で政府としての方針を確定し、そして国会の議論に臨ませていただきたい、このように申し上げているところであります。

 そして、安保法制懇のメンバーについていかがかという御指摘もありました。

 この点につきまして、安保法制懇においても、それぞれの見識をお持ちになられたメンバーの方々が真剣に議論をしていただいているとは思いますが、政府としましても、先ほど申し上げましたような議論の持ち運びの中で、まずもって、安保法制懇の結論を一〇〇%うのみにするということは想定していないわけです。この報告書が出た後に、それを踏まえて、政府としまして与党ともしっかり議論した上で政府としての方針を決めるということであります。

 こうした手順を踏みながら、充実した国会での議論が行われるために、まず政府としての基本的な立場、考え方を確定する作業を行っていかなければならないのではないかと認識をしております。

村上(政)委員 今のお答えでは、政府としての結論を先に出してから、それを国会で審議するというお考えだと思うんですけれども、では、逆にお伺いすると、政府としての議論をする中で、岸田大臣御自身はどのような役割を果たしておられるのかなというのが、私自身は余り見えてこないんじゃないかなと。

 というのも、落としどころを見つける際も、例えば、これは例かもしれないですけれども、高村副総裁が砂川事件を論拠にこういう落としどころがあるんじゃないかなということを例示されたり、何日か前、公邸で、総理と官房長官と、副総裁と幹事長とが集まって集団的自衛権について議論した、これもメディアによる報道ですけれども。そういうふうな形でいろいろと政府・与党間で話を進めておられる中で、では、政府としての結論を出す際に、大臣自身はどういうお考えで、一体どういうふうな役割を果たしておられるのかなというのが私はちょっとわからないということです。

 大臣自身は、政府としての結論を得るために、外務大臣としてどのような役割あるいは議論をされているんでしょうか。

岸田国務大臣 現在、安保法制懇での議論が行われています。そして、安保法制懇において最終報告書が出された後、それを踏まえて政府・与党として議論を行うことを想定しています。

 その際には、政府そして与党の関係者が自由闊達に議論を行い、政府・与党としてしっかりとした結論を出さなければならないと存じます。その議論において政府の一員として貢献することは、当然考えていかなければならないと存じます。

 そして、政府としての方針が確定して、それをもって国会の議論に臨むということで、この段階になりましたならば、私は政府の一員でありますので、政府の一員として政府の考え方をしっかりと御説明させていただく、国会の議論において政府の立場をしっかりと説明させていただく、こういったことに努めなければならない、これが私の立場だと考えています。

村上(政)委員 このやりとりは最後に砂川事件の判決に戻って終わりたいと思うんですけれども、御答弁の中で、砂川事件というものも一つの論拠になり得ると想像するというふうに御答弁がありましたけれども……(岸田国務大臣「論拠じゃなくて、議論に供されると想像いたしますと申し上げました」と呼ぶ)なるほど。では、議論の対象になり得るということですね。

岸田国務大臣 先ほど答弁させていただきましたのは、今後、政府・与党での議論が行われ、そして国会でも議論が行われます。その際に、先ほど委員から御指摘がありました砂川事件判決の考え方も議論の材料として供されることになるのではないかと想像をいたしますと申し上げた次第でございます。

村上(政)委員 議論の対象になるかもしれないという意味でおっしゃっているということと理解……(岸田国務大臣「と想像いたしますと申し上げました」と呼ぶ)はい、わかりました。

 なかなからちが明かないので、済みません、次の話題に移りたいと思います。

 安重根の話です。何度か私自身も取り上げさせていただいた点です。

 安重根の話なんですが、これと、我が国が今まで発出してきた談話というものは、私は関係ないと思います。安重根と、我が国が出した村山談話なり河野談話というものとは、直接に関係するものではないと私自身は理解しています。

 というのも、これは岸田大臣からも、あるいは菅官房長官からも累次にわたって説明がありますとおり、安重根というのは伊藤博文公を殺害した殺人者である、犯罪人であるというのが我が国の立場ですし、私も同じ立場に立ちます。

 村山談話とか河野談話というのは、我が国の過去の植民地支配なり侵略行為について、それについての我が国としての痛惜の念を表明したということであって、安重根という人は一殺人犯、テロリストである、村山談話なり河野談話というのは我が国の過去の歴史について我が国の見解を述べたということであって、直接関係ないと思います。

 しかしながら、韓国外交部の声明なり発言というものを聞いていると、安重根を批判するということは、我が国が植民地支配を否定しているような考え方である、これは常識外れの言動であるというような論評をしている。これは我が国としては受け入れられないんじゃないかなと思います。

 やはり安重根についての立場は我が国と中国、韓国とは全く異なるわけですし、こうした状態が続けば、せっかくハーグで開きかけた日韓、日米韓の関係改善の基礎がまた揺らいでしまうんじゃないかなと。

 こうした状態は非常にゆゆしい問題ですし、我が国としてはこれは絶対に認めることはできないんじゃないかなと考えますけれども、岸田大臣のお考えはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、御指摘のような韓国外交部による論評については承知をしております。

 しかしながら、安重根に関する立場は、再三申し上げておりますように、日本と韓国では全く異なっております。そうした中で、御指摘のような主張を韓国が展開すること、これは日韓関係にとってためにならないと考えております。

 歴史認識につきましては、これも再三申し上げておりますが、歴史認識に関する歴代内閣の立場は全体として安倍内閣もしっかり引き継いでおります。ぜひ韓国政府にはこの点を正確に理解していただきたいと考えております。

 安重根の評価については、我が国は、伊藤博文公を殺害し、死刑判決を受けた人物であると認識をしております。

村上(政)委員 ぜひ、我が国の立場をはっきりとさせていただいた上で日韓関係の改善というものに取り組んでいただきたいと思います。

 次に、南シナ海の話をお伺いしたいと思うんですけれども、南シナ海は、我が国が直面する東シナ海と同じく、中国が海洋進出を活発に行っている海域でありますし、南シナ海では、アメリカと中国の利益なり考え方というのも非常に対立する場であります。この南シナ海に対する我が国の立場というものをお伺いしたいと思うんです。

 このたび、フィリピンが仲裁裁判についての自分たちの考え方を表明した、そういうことがありました。ですので、まずお伺いしたいのは、南シナ海をめぐる中国、フィリピンの二国間の紛争に対する我が国の立場というものはどのようになっているのかという点についてお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 南シナ海をめぐる問題は、地域の平和と安定に直結し、そして世界の海洋秩序に影響する国際社会全体の関心事だと受けとめています。各国が法の支配の原則に基づき行動することが、地域における国際秩序の維持発展にとって重要だと考えます。

 そして、フィリピン及び中国はともに国連海洋法条約の締約国であり、フィリピンが同条約上の仲裁手続にのっとって中国を提訴したと承知をしておりますが、同条約上の手続を活用して国際法に基づく平和的な紛争解決を目指すことは、地域における法の支配に立脚した国際秩序の維持発展に資するものであり、我が国としては、こうしたフィリピンの取り組みについて支持をしております。

村上(政)委員 中国とフィリピンの国力を比べたときに、圧倒的に中国の方が大きいわけですから、フィリピンとしては国際法というツールを使いながら中国と向き合っていかなければならないと思いますし、そうしたフィリピンに対して我が国として明確な支持を出されるというのは非常にいいことだと思います。国際法の法の支配というものを重視するという観点からも、また、南シナ海での中国の海洋進出というものを一定の枠組みの中でコントロールするという観点からも、非常にいいことなんじゃないかなと思います。

 今、御答弁の中で、国際法に従って仲裁手続を申し立てるというような考え方、フィリピンが行う考え方を支持するということでしたけれども、我が国としても、積極的にこうした国際法を使いながら、我が国と他国との間の紛争というものを仲裁なり解決していくというようなお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国としては、力による一方的な現状変更は認めることはできませんし、各国が法の支配の原則に基づいて行動すること、これは地域における国際秩序の維持発展にとって大変重要だと考えております。

 その観点から、全ての関係国に対し、国連海洋法条約を含む関連国際法を遵守するとともに、南シナ海における自国の主張に関する国際法上の根拠を明確にするべきであるという旨、今日までもさまざまな国際会議の場等においても我々は主張してまいりましたが、こうした考え方を、これからもさまざまな機会を捉えてしっかり求めていきたいと考えております。

 加えて、我が国の考え方として、今、南シナ海におきましては、実効的で法的拘束力のある行動規範をつくるべく議論が進んでおります。こうした行動規範作成の議論を妥結させるべく努力をしておられる、こうした関係国の努力については、しっかり支援をしていきたいと考えております。

村上(政)委員 東南アジアの中では、ASEANの中では、その行動規範に対してさまざま温度差があると思いますので、我が国としては、こういう法の支配の枠組み、法秩序の枠組みをきちんとつくっていくというようなこと、それを支援していくというお考えでしたので、そういった方向で進んでいただければと思います。

 力を背景とした現状変更に反対するというのは、これは南シナ海でもそうですし、東シナ海でもそうですし、また、ウクライナでの情勢についてもそうなんだろうと思います。午前中の玄葉前大臣との質疑でもあったと思いますが、このウクライナ情勢についても、我が国は、力を背景とした現状変更には断固反対していくという立場をとらないといけないと思います。

 ハーグにおいてG7の場で安倍総理は中国について言及されたと安倍総理自身のインタビューでお答えになっていて、その中で、中国のそういった力を背景とした現状変更の取り組みについて、ハーグのG7の場で説明されたと。その中で、G7ですので日本以外は六カ国、六カ国のうち三カ国からは賛成、賛同があったというふうにインタビューの中で安倍総理自身がおっしゃっているんですけれども、これは、そういった事実というか、そういったやりとりはあったんでしょうか。

岸田国務大臣 ただいま御紹介いただきました安倍総理の発言については、ちょっと私自身確認しておりませんが、私が承知しておるところによりますと、三月二十四日に行われましたG7の首脳会談におきまして、安倍総理からは、アジアにおける厳しい安全保障状況を念頭に、ウクライナの、クリミア編入の動きは、一地域における問題にとどまらず、国際社会全体の問題であるという発言をしたということを承知しております。この考え方について多くの出席者から賛同を得た、こうした会議の内容であったというように承知をしております。

村上(政)委員 安倍総理は三カ国の首脳から賛同があったというふうにおっしゃっていたと思うんですけれども、これは事実とは異なるんでしょうか。

岸田国務大臣 安倍総理自身がラジオに出演されてそうした内容について発言されたという話は聞いてはおりますが、私自身、ちょっとその発言内容を確認しておりませんし、私自身が外務大臣の立場として承知しておりますのは、先ほど答弁させていただいた内容でございます。

村上(政)委員 済みません、この点は通告して質問しているわけではないんですけれども、総理がG7の場でどのような発言をされたかということについて大臣が御存じないというのは、ちょっと私、違和感を感じるんですけれども、そういった発言は単に報道ベースで出ているだけなのか、あるいはそういった発言は実際はしていないのか、安倍総理の勘違いなのか、ただ単に大臣が御存じないのか、どういう経緯なんでしょうか。

岸田国務大臣 三月二十四日のG7首脳会談における安倍総理の発言の中のポイントは、重要な点は、私が今申し上げた点だと存じます。

 私自身、総理の発言のポイント、重要な点については承知をしております。会議の内容を把握するに当たりまして、私自身はそのポイントについては掌握しておりますが、具体的な一つ一つの言葉等につきましては承知しておりません。しかし、外務大臣として必要な内容については把握しているつもりでございます。

村上(政)委員 ちょっとやりとりが途中でとまってしまったので、とまってしまったというか途中で腰折れしてしまったのであれなんですけれども、最終的にお聞きしたかったのは、三カ国というのはどこなんですかということをお聞きしたかったんです。

 私自身は、G7首脳会合といった場で、二国間の首脳会談とかマルチのそういう首脳会合で総理が一々どういう発言をされたかというのは、本来は、こういう外務委員会でお聞きして明らかにすることではないと思いますし、総理自身もそこでの発言というものを声高にいろいろとふれ回られるような性質じゃないんじゃないかなと思います。

 ただ、総理自身が、ハーグで俺はこういうことを言った、三カ国の首脳から賛同があったというふうにおっしゃったというふうに聞きましたので、では、総理が自分からおっしゃるなら、それはどこなんですかということをお伺いしようと思ったんですけれども、大臣はそういった発言というのは承知していないとおっしゃるので、質問をしてもお答えが返ってくるのかどうか、ちょっと……。

岸田国務大臣 いずれにせよ、賛同した三カ国があったとしても、その具体的な国名を私が申し上げるということは、まさに国際会議の中身を明らかにする、相手がある中にあって明らかにすることになるわけですので、それは適切ではないと存じます。通常の外交交渉、会議における取り扱いといたしまして、相手国の発言した内容等について私から申し上げるのは控えるべきだと考えています。

村上(政)委員 総理自身も、余りそういう会談での中身というものをおっしゃらない方がいいんじゃないかなと思います。

 もう時間が来ましたので、最後にお伺いしたいと思うんですけれども、午前中のやりとりを聞いて、一点、大臣が直接お答えにならなかった点なんですが、ICJの判決が出て、総理が事務方を叱責したと。私自身、叱責するのは不適切なんじゃないかなと思うんですけれども、総理が事務方を叱責するというのは、総理が最終的な責任を負われるわけですから、これはきちんと政府というか政治家が責任を負うべき問題ですし、政治と官僚、政官の関係を考えたときにも、過度な萎縮効果があるんじゃないかなと思うんですけれども、この点、最後にお伺いします。お願いいたします。

岸田国務大臣 総理が担当者を叱責したという点についてでありますが、実際どういった表現を使われたかはわかりませんが、まずは政府内においてしっかりと実態を把握して責任の所在を確認する、こういったことは必要なことだと存じます。

 いずれにしましても、事実を確認した後、責任自体は政府全体として負わなければならないものだと考えます。ですから、政府の中でしっかりと実態を確認した後、対外的には政府全体として責任を負う、こうした姿勢を明らかにするべきものであると考えています。

村上(政)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 結いの党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、質問の機会を二十分いただきました。ありがとうございます。

 早速質問させていただきます。

 まずは、日朝関係、拉致問題についてお伺いしたいと思います。

 日朝政府間協議が、三月三十日、三十一日の二日間にわたり北京で開催されました。この政府間協議は、一年四カ月ぶりに行われ、幅広く諸懸案について議論したということでございますが、拉致問題解決の突破口になればというふうに私も期待しておりますし、期待している関係者も大変多くいると思います。あらゆる機会を捉えて北朝鮮と協議を行うということ自体は必要なことでありますし、拉致問題進展の糸口をつかむチャンスとして歓迎しております。

 これまで安倍政権というのは、対話と圧力の、圧力をかけ続けるという方針だったと思いますが、最近の一連の流れは、方針転換したのではないかと言う関係者もおります。北朝鮮は、経済支援や、具体的には朝鮮総連のビルの売却問題などで支援や譲歩を当然求めてきていると思います。私は、これは当然のことでありますが、圧力をかけ続けるということは重要だと思います。

 まず伺いたいのは、北朝鮮に対する政府の姿勢というのは方針転換したのかどうか、御説明をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 先般の日朝政府間協議におきましては、二日間にわたり、双方が関心を有する幅広い諸懸案について率直かつ真摯な協議が行われました。また、それに先立って、日朝の赤十字会談も行われる、こういった動きもありました。

 実際、こうした対話の動きは存在いたしますが、一方で、北朝鮮の言動を見ておりますと、ミサイル開発あるいは核開発、こうした問題については、前向きな真摯な対応、行動は依然何らとられていないと認識をしております。よって、政府としましては、対話と圧力という基本方針は全く変わらないと考えております。

 引き続きまして、この対話と圧力の方針のもとに、日朝平壌宣言に基づいて、米国あるいは韓国を含む関係国と緊密に連携しつつ、拉致、核、ミサイル、こういった諸懸案を包括的に解決していく方針であり、ぜひ今後とも粘り強く交渉を続けていきたいと考えています。

青柳委員 ありがとうございます。

 方針転換の話については後ほどもう一度触れたいと思いますが、当然ですが、拉致問題の解決なくして正常化なし、経済支援なしという方針で引き続き交渉していただきたいということは申し上げておきたいと思います。

 そして、拉致問題、拉致被害者家族、特定失踪者家族の皆様の共通の思いは、認定の有無にかかわらず全面解決を望んでいるということでございますが、この方針も変わっておられませんか。一応お伺いさせてください。

岸田国務大臣 政府としましては、認定被害者以外にも拉致の可能性を排除できない方々が存在するという認識に基づいて、いわゆる特定失踪者の事案も含めて調査、捜査に全力を挙げるとともに、北朝鮮に対して、全ての拉致被害者の安全確保と速やかな帰国を強く求めてきており、その方針は全く変わっておりません。

 先般の日朝政府間協議におきましても、双方が関心を有する諸懸案について幅広い意見交換を行ったわけですが、特に拉致問題については、これまでの協議の議論を踏まえつつ、日本側の基本的な考え方についてはしっかり問題提起を行いました。

青柳委員 ありがとうございます。

 関連して、第二十五回国連人権理事会北朝鮮人権状況決議について伺います。

 この決議も、北朝鮮の拉致に対する圧力に当然なっていると思いますし、安倍政権の拉致問題に対する大きな成果であると思います。

 三月二十八日の国連人権理事会で日本とEUが共同提出した決議が賛成多数で可決、採択された。この内容は、北朝鮮の人権侵害を最大限の表現で非難している、家族の皆さんの要望にも沿ったものであって、我が国の拉致問題に対する強い意思を示した内容ということで、評価も高いと思いますし、私も評価しているところであります。

 だからこそ、私は、このCOIの報告書、そして北朝鮮人権状況決議について、我が国の国民の皆さんにもっと知ってもらう努力が必要だと思いますし、そういう取り組みが必要だと思います。国内世論の高まりがある方が今後の交渉を後押しするということに当然つながるわけでございますので、そうした取り組みをやっていただきたいと思います。最低でも、外務省のホームページに日本語に翻訳して掲載していただきたいと思っております。

 これは参考人の方にお伺いしますが、こうした取り組みをやられているのか、やっていくおつもりがあるのかについて御説明いただきたいと思います。

山田政府参考人 御指摘のとおり、今回の決議及び北朝鮮における人権に関する国連調査委員会、COIの報告書は、極めて重要なものでございます。

 現在、外務省におきましては、これらの日本語訳の作成を進めているところでございまして、可及的速やかにホームページに掲載し、周知に努めたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 ホームページに掲載するのは最低限やっていただいて、ぜひ日本国内の世論も喚起していただきたいと思います。

 それでは、この人権理事会決議を今後どのように実効性あるものにしていくのか、政府の今後の戦略、方針を御説明いただきたいと思います。

山田政府参考人 人権理事会決議でございますが、今後、主に次の三点を中心にフォローアップしていきたいと考えております。

 まず第一点目でございますが、この決議は、総会に対して、国連調査委員会、COIの報告書を安保理に送付することを勧告しております。総会が早急に安保理への送付を行うよう、フォローアップを行っていきたいと思っております。

 二点目でございますけれども、今月十七日に、安保理メンバー国と非メンバー国が北朝鮮の人権状況についての非公式の対話を行うという予定にしております。こうした機会を活用して、関係国とさらに緊密に連携していきたいと考えております。

 三点目でございますけれども、いわゆるフィールドオフィス、地域事務所でございますが、この設置が勧告されております。現在、関係国と、設置場所、形態等について協議を行っておるところでございます。

青柳委員 ありがとうございます。

 今、方針を説明していただいた中で、やはり重要なことは安保理の決議でありますし、今後、この問題の舞台というのは、国連全体のステージに移ってきているということであります。

 北朝鮮は、安保理の行動によって法的責任を当然問われるべき、そこまでぜひ持っていってほしいと思うんです。実際、国際刑事裁判所への付託ということになるんですが、この付託については、安保理の決議が必要になるということです。先ほど申し上げました人権理事会の採決でそもそも中国とロシアは反対しているわけでありまして、安保理の決議をしていくというのは、実際、現実的には非常に困難な状況だというふうに思います。

 そこで、もう一つ考えられる手段が、特別法廷を設置するという手段もあるというふうにお聞きしておりますが、この特別法廷を設置するということは、膨大な費用がかかるということで、十分検討が必要だというふうに言われております。

 ただ、私は、この特別法廷を設置していくという取り組み自体を最初から否定せずに、これ自体を視野に入れて交渉に臨むことが、より迫力が生まれる交渉につながると思いますので、ぜひ最初からこの特別法廷を設置するということを除外せずに交渉していただきたいと思いますし、この機会が家族の皆さんにとっても最大のチャンスだというふうに言われていますから、ぜひこのチャンスを生かすためにも除外せずに交渉していただきたいと思いますが、御見解を求めたいと思います。

山田政府参考人 御指摘のとおり、法的な措置が勧告されたことは、今回の決議、また今回の報告書の極めて重要な部分であるというふうに考えております。

 ただ、特別法廷の設置につきましては、単に費用の問題だけではなく、かつて設置された特別法廷は、安保理決議に基づくものまたは総会決議によるものの場合は、国連と当事国との合意に基づいて設置されております。

 そういったさまざまなハードルがあることは事実でございますけれども、この勧告の重要性に鑑みまして、本件決議の共同提案国であるEUや、アメリカ等と緊密に連携しつつ、努力してまいりたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 難しいのは当然承知しておりますが、そのぐらいの気迫を持って交渉することによって迫力が生まれるんだと思いますので、ぜひお願いしたいと思います。日本はそこまでやる気があるんですよという思いで交渉するのと、最初からそれはやりませんと言って交渉するのとでは、全然迫力が違うと私は思います。

 さらに、今、関係国、特に米国と連携をとってというお話がありましたけれども、今月二十四、二十五日にオバマ大統領が訪日するということであります。私は、この機会に、ぜひ拉致被害者の家族の皆様とオバマ大統領との面談を調整すべきではないかと思っております。先ほどの安保理の件もあって、米国のリーダーシップを依頼するということはとても重要だと思いますし、ぜひ実現すべきと思っております。

 御案内のとおり、ブッシュ前大統領は二〇〇六年の四月に横田早紀江さんと面談して、ブッシュ大統領自身は、この面談は最も感慨深い面談だったと表現されているわけですし、拉致問題を自分事として実感してもらったということで、大きなインパクトがあったわけであります。

 私もそうですし、皆さんもそうだと思いますが、横田御夫妻初め拉致被害者の皆さんのお話を聞いて心が震えないという人間はいないんじゃないかと思います。オバマ大統領来日の最大のチャンスに、ぜひ面談のアレンジをするということを試みたらいいんじゃないかと私は思いますが、大臣はいかが思われますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、今現在、オバマ大統領の訪日については、日程の詳細については調整中であります。

 米国は、従来から我が国の拉致問題に関する立場を支持してきており、私もケリー国務長官とは電話会談も含めて十五回も日米外相会談を行っておりますが、累次にわたりまして、私に対して、我が国の立場に対する支持をケリー長官は示してくれています。米国のかかる立場については、先般のハーグにおける日米韓首脳会談でも確認したところです。

 拉致問題は、我が国にとって最重要の課題であり、政府として、引き続き、米国を含む関係国の理解と協力を得ながら、この問題の解決に向けて努力をしていく考えであります。

 先ほど申し上げましたように、日程の詳細はまだ何も決まっておりませんが、こうした我が国の考え方については、ぜひ米国に引き続き理解を得るべく、努力をしていきたいと考えています。

青柳委員 やはり直接話を聞くということは全然違いますので、安保理でのリーダーシップをとってもらうという意味において、面談をセットするというのは私はとてもインパクトがあることだと思っておりますので、申し上げておきたいと思います。

 北朝鮮問題の最後になりますが、ミサイル発射に対する日本政府の姿勢について伺いたいと思います。

 先月は、三日と二十六日と二回にわたって、北朝鮮はミサイルを発射いたしました。これは明確な国連安保理決議違反であり、日朝平壌宣言違反であり、当然強く抗議すべき、あるいは国連へも我が国が強く働きかけるべき問題だと思いますが、残念ながら、我が国が本件で国際社会に強く訴えているのかということには疑問があります。そもそも外務大臣は、このミサイル発射について談話すら出していないということでありました。

 最初に伺ったとおり、北朝鮮に対する最近の姿勢が、対話を重視する余り、やるべきことを、やるべき抗議を行っていないのじゃないか、しっかりと、談話は最低限出してもらって、我が国の姿勢と抗議を明確にすべきではないかと思いますが、大臣、本件についていかがでしょうか。

岸田国務大臣 三月三日そして二十六日の北朝鮮による弾道ミサイル発射は、日朝平壌宣言に違反するものでありますし、六者会合共同声明にも違反いたしますし、また、累次の関連国連安保理決議にも違反するものです。当然のことながら、政府として、直ちに北京の大使館ルートを通じて北朝鮮に対して厳重な抗議を行いました。

 また、三月三十日そして三十一日、二日にわたって行われました日朝政府間協議においても、北朝鮮による弾道ミサイルの発射について厳重に抗議を行うとともに、北朝鮮が関連国連安保理決議や六者会合共同声明等を遵守し、自制するよう強く求めたところであります。

 そして、御指摘の、外務大臣談話も発していないのではないかという点でありますが、外務大臣談話は発出してはおりませんが、北朝鮮に対する我が国の抗議については、国会での委員会あるいは記者会見の場を通じまして、累次にわたって公表、発表しているところであります。そして、これは弾道ミサイルの発射ですので、国連安保理決議違反ということで、国連にもしっかり報告を行っているということであります。

 こういった形を通じて、我が国としては、考え方、厳重な抗議について公にしているところでありますが、引き続き、こうしたしっかりとした意思表示を続けながら、何よりも北朝鮮側に、具体的な前向きな対応をとるようしっかりと求めていきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 残り時間がもうありませんので、これで質問を終えさせていただきます。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 岸田大臣は、三月二十八日の日本記者クラブでの政策スピーチで、政府開発援助の長期戦略を定めたODA大綱を十一年ぶりに見直すということで、その方針を明らかにされました。それはどういう考えからか、まず伺いたいと思います。

木原(誠)大臣政務官 お答えを申し上げます。

 現在のODA大綱が作成されたのが二〇〇三年ということでございまして、今委員から御指摘いただいたとおり、それから十年以上がたっております。日本及び国際社会が大きく変化をし、ODAに求められる役割もさまざまに変化してきてございます。

 また、折しも本年は、我が国がODAの供与を開始して六十周年という節目の年にも当たっておりますことから、ODAについて新たな進化を遂げるべきであるという観点も踏まえながら、見直しを行うことにしたということでございます。

笠井委員 大臣、外務省は、三月三十一日に、大臣のもとに、ODA大綱見直しに関する有識者懇談会を設置されましたけれども、そこでは、大臣のスピーチに基づいてということになるのかもしれませんが、何を議論するのか、そしていつごろまでに報告書をまとめて閣議決定を目指されるのか、これは大臣に伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 このたび立ち上げさせていただきました有識者懇談会におきましては、過去六十年にわたって我が国のODAがアジアを初めとする国際社会の平和と安定に果たしてきた役割を踏まえて、今後のODAのあり方を見据え、現在のODA大綱の見直しにつき議論していただくことを考えており、ODAに関係するさまざまな分野を代表する方々に御参加をいただいております。

 三月三十一日に同懇談会の第一回会合を開催いたしました。そしてその際に、ODAの目的や基本方針等につき議論をいただいたところです。今後は、さらに会合を重ね、六月ごろをめどに外務大臣に報告書を提出していただくことを考えております。

笠井委員 その後、閣議決定を目指していくということだと思うんですけれども、この有識者懇談会には、経済界、日本経団連からも参加をされているかどうか確認したいんですが、いかがでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 有識者懇談会には、経団連からも委員として参加をいただいているところでございます。

笠井委員 ODAをめぐっては、日本経団連などからは、人道支援や環境分野に偏っている、安全保障でも活用すべきだなどの意見が出されてきたところでありますが、今回の大綱の見直しでは、安全保障の分野でODAを活用していく、このことについても議論されるということになるんでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 これからの有識者懇での議論におきましては、全ての面について議論をいただくということでありまして、安全保障を含めた面についても議論をいただくということでございます。

笠井委員 昨年六月の日本再興戦略とともに、昨年十二月の国家安全保障戦略で、それぞれ、ODAの積極的、戦略的活用を行うということが明記されております。これらの戦略に沿って大綱を見直していく、そういう議論をやっていくということで理解してよろしいのでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 もう一度整理をさせていただきたいというふうに思いますが、今回の大綱の見直しというものは、前回の大綱が二〇〇三年につくられた、それから十一年たっているという中にあって、そして本年がまさにODAを開始した六十周年に当たり、そして来年は、ミレニアム開発目標を世界的に見直す、そういう年でもある、そういう時期にあって、これまで私どものODAが果たしてきた役割をしっかり見直す中で、ODA大綱についても議論をしていくということでございます。

 その中で、先ほど私が、安全保障の分野でもこれはしっかり考えていくということを申し上げた趣旨でございますけれども、それはあくまでも、これから世界じゅうの皆さんが、経済社会活動をしっかりやっていく、あるいは個人の可能性を開花させる、そういうことをやっていく場合に不可欠な土台である平和で安定した社会を実現していく、そのためにやはり広い意味での安全保障の分野でも議論をしていく必要があるであろう、そういう趣旨で申し上げたところでございます。

笠井委員 外務省国際協力局が三月につくられた「見直しについて」の「ODAに求められる役割の多様化」という中で、国家安全保障戦略、日本再興戦略ということを具体的に冒頭に挙げて、それとのかかわりで、多様性、重要性が増しているというようなことを言われているので、私は、国家安全保障戦略の中で触れられているODAとのかかわりで言及している部分についても当然議論になっていくんだろうと思うんですが、それはよろしいわけですね。

木原(誠)大臣政務官 当然のことながら、国家安全保障戦略では、我が国がとるべき国家安全保障上の戦略的アプローチの一つとして、国際社会の平和と安定の阻害要因となりかねないさまざまな開発の問題、あるいは地球規模の課題の解決に向けて、ODAの戦略的、効果的な活用を図る、こういうことがうたわれておりますので、今回のODA大綱見直しに当たっても、こうした国家安全保障戦略の考え方を反映する一つの側面があるかというふうに理解をしております。

笠井委員 反映する面があるということでありますが、国家安全保障戦略では、「国際平和協力の推進」という項目の中で、具体的に幾つかのことが書かれております。一つは、「PKO等に一層積極的に協力する。その際、ODA事業との連携を図るなど活動の効果的な実施に努める。」というふうにあります。

 戦略自身は閣議決定されたものでありますけれども、大臣、PKOとODAとの連携というのは、具体的にどのようなことをやろうとしているということで戦略を決めたんでしょうか。

岸田国務大臣 今回のODA大綱見直しに当たりまして、開発というものを考えた際に、やはり今の厳しい国際環境を考えますと、開発にとりまして不可欠の土台になるのが平和で安定した社会であるという認識を持ちます。やはり、これからのODAのあり方、そしてさまざまな開発を考えた際に、平和で安定した社会を実現することがまず必要であるという認識に立っております。

 そういった意味から、平和で安定した社会をつくるためにODAも役立てなければならない、そしてPKOも役割を果たさなければいけない、こういった考え方に基づいて、今御指摘がありましたような関係ができ上がっていくと認識をしております。

笠井委員 PKOとODAの連携というのは具体的にどういうことになっていますか。

木原(誠)大臣政務官 お答え申し上げます。

 紛争当事国の中にあって、紛争を終結するに当たって、終息した後にPKO活動というのが出ていく。しかし、その後、平和構築を支援していくという活動は、それだけで終わるわけではございませんので、シームレスな形で、つなぎ目のない形で、PKO活動の後、ODAがその平和構築のためにしっかりと役割を果たしていく、そういう意味での連携を申し上げているところでございます。

笠井委員 今のことにかかわるんですけれども、安保戦略の中では、その次のところで第二点目として書いてあるのは、「また、ODAや能力構築支援の更なる戦略的活用やNGOとの連携を含め、安全保障関連分野でのシームレスな支援を実施するため、これまでのスキームでは十分対応できない機関への支援も実施できる体制を整備する。」と書いてありますが、これはどういう意味ですか。

木原(誠)大臣政務官 先ほど大臣からもお話がありましたとおり、やはり今一番大切なことは、開発の土台となります平和と安定をしっかり取り戻していく。そういう中にあって、途上国において、ややもすれば、法制度の整備であるとか法執行能力といった面においてまだまだ十分でないところがある。そういったところにODAを積極的に活用しながら、それぞれの国の安全保障を高めていくということを我々考えているところでございます。

笠井委員 安全保障分野でのシームレスな支援で、これまでのスキームでは十分対応できない機関への支援も実施できるような体制整備ということですが、これは伺ってみたいんですけれども、非軍事にとどまらず、安全保障分野でこれまでシームレスに対応できなかった軍事的な機関への支援にもODAを活用する、大綱見直しではそれも可能にしようという議論をやっていこうということなんでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 もう御承知のとおりだというふうに思いますが、軍事目的の利用というものは、援助実施の原則の中で今禁止をされているわけでございます。そのことについて、今後、軍事目的にも利用できるようにするといったようなことを考えているわけではないということを申し上げておきたいと思います。

笠井委員 さらにもう一点、ここでは、戦略の中で、「さらに、これまでの経験を活用した平和構築人材の育成や、各国PKO要員の育成も政府一体となって積極的に行う。」というふうに述べておりますけれども、これは何をやろうというのでしょう。

木原(誠)大臣政務官 具体的に何をというところまで、きょう私、つまびらかにお話しする、それだけのあれはないというふうに思いますが、ただ、申し上げておきたいことは、私ども、平和構築ということについて、これまで、さまざまな国、さまざまな地域において経験、知見を蓄えてきてございますので、これは、我々が蓄えてきた平和構築分野における知見をしっかりと世界に還元していくという意味において協力をしていきたいということでございます。

笠井委員 では、これを受けた大綱の見直しの中では、他国の軍事要員についてもODAを活用して育成していく、その可能性まで議論して具体化するということはないということですね。

木原(誠)大臣政務官 他国の軍事要員ということがどういう場面でどういうことになるのかということについて、全てのケースについてお答えするのはなかなか難しいというふうに存じますが、いずれにしても、軍事目的にODAを使うということはないということでございます。

笠井委員 今、軍事目的に使うことはない、原則で禁止されているという話で、まさにこれまで、現行のODA大綱でいきますと、援助実施の原則の中で、「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」と規定されていて、ODAによる物資を支援国の軍に提供したり、ODAでつくった道路や空港を軍が使ったりできない、人材育成の分野でも、軍人はODAの対象でないというふうになってきたと思うんですけれども、それができない、禁止する原則にしてきたのはなぜなのかという点についてはいかがでしょうか。

木原(誠)大臣政務官 これは、ODAの趣旨、目的が、世界の平和と繁栄に資していくということで我々はODAを供与しているわけでございますので、それが直接的に軍事目的に使われるということについては抑制的であるべきだということが我々の考え方であったと理解をしております。

笠井委員 直接的にというところがどういうことになっていくのかという問題が出てくると議論があると思うんですが、現行の大綱になったときに、つまり、平成十五年、二〇〇三年八月二十九日の「政府開発援助大綱の改定について」という閣議決定がございます。閣議決定そのものの文書がありますけれども、そこに、「我が国としては、日本国憲法の精神にのっとり、国力にふさわしい責任を果たし、国際社会の信頼を得るためにも、新たな課題に積極的に取り組まなければならない。」とあります。

 つまり、日本国憲法の精神にのっとって、ODAは軍事に使わないというのが大綱の根本原則だったということでありますけれども、今回の見直しでは、先ほど政務官も言われたような、援助実施の原則で言ってきた「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」というこの規定については見直しには含まれないということで、大臣、よろしいでしょうか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」この原則を変えるつもりはありません。

笠井委員 先ほど政務官が言われた、直接的にはというところがひっかかるんですが、間接的にはそういう可能性があるというような話がニュアンスとしてはあるのかどうか、そこはいかがですか。

木原(誠)大臣政務官 さまざまな場面が想定できるかというふうに思いますが、紛争当事国の中にあって、これまで武器を持ちながらお互いに交戦してきた皆さん、それを軍と呼ぶかどうかは別ですが、そういう皆さんに対して民生支援をしていくというような場面もあろうかというふうに思います。

 また、そういう皆様に対して、人権の概念であるとか、法の支配の概念であるとか、あるいは民主主義の概念であるとかというものを、私どもが、技術協力というのか、教示をしていくといったような場面もあろうかというふうに思います。それを軍事目的と言うのか言わないのかということであろうかと私は理解をしております。

笠井委員 大臣が先ほど、根本原則で言われてきた「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」ということを見直すつもりはないと言われたことは大事なことだと思うんですが、同時に、今政務官が言われた点でいうと、いろいろな意味で、これは直接ではない、それは間接でというようなことで、余地が残ることであってはならないと思うんです。ここは大事な問題として言っておかなきゃいけない。

 そういうことを通じながら、結局、一穴を開いてということで、日本国憲法を踏みにじってODAを軍事に活用するなどということがあったら、これはもうそれこそ日本の国際的信頼を損なうもので、絶対やっちゃいけないことだと思います。

 今、大綱を見直すというなら、ODAを、経済界の海外進出の条件を整備する、そっちで一生懸命やるというものから、途上国の自主的、自立的発展と世界平和に寄与するものに転換する、そういう方向での見直しこそ必要だということを強く申し上げておきたいと思います。

 さて、残った時間がわずかになりましたが、防衛政務官にお越しいただきましたので、若宮防衛政務官に伺いたいんですが、昨年十二月に閣議決定した新中期防、ここでは、滞空型無人機を新たに三機調達し、陸海空共同の部隊に配備するというふうにしておりますけれども、ここで言う滞空型無人機というのは具体的にどういう機種のことを言っているんでしょうか。

若宮大臣政務官 委員御指摘のように、今、二十七年度予算に滞空型無人機を計上することを目指しまして、その前提となる機種選定を行っているところでございますが、この滞空型無人機という具体的な機種につきましては、今後の機種選定過程を通じて決定するということになってございまして、現時点ではお答えできない、そんな状況でございます。

笠井委員 三機というふうにまで具体的に言っているわけですね、中期防でいうと。そういう点でいうと、念頭にあるものが当然あるはずだと思うんですけれども、その中には、何回か前の当委員会で質問しましたグローバルホークというのも含まれているのかどうか、そこはいかがですか。

若宮大臣政務官 委員は前回のこの場での質疑でもおっしゃっておられましたけれども、現在、グローバルホークも含めまして機種選定については進めていこうというところで二十六年度予算を組んだところでございます。

笠井委員 今度の予算でいいますと、二億円ついているという調査のお金があると思うんですけれども、これは、中期防で言っている滞空型無人機ということと、もうちょっと突っ込んで高高度というふうに、高高度滞空型無人機の導入に向けた検討ということで二億円を計上していると思うんですけれども、中期防で言っている三機という滞空型無人機というのと、それから今度予算で調査をつけている二億円で言っている高高度滞空型無人機というのは、当然、大きな意味で滞空型の中にあるわけですね。

 そういうふうに理解していいのかと思うんですけれども、その中には当然グローバルホークというのも含まれている、候補の中に入っているということで、今調査費をつけてやっているということでよろしいんでしょうか。

若宮大臣政務官 委員おっしゃるとおりで、グローバルホークもその対象機に入っているということでございます。

笠井委員 高高度滞空型無人機の導入に向けた検討といって二億円つけて調査をするということでありますけれども、具体的にはこれは何を検討するということでしょうか。

若宮大臣政務官 そもそも滞空型無人機がなぜ必要であろうかというところになってくるかと思うんですが、やはりこれは、搭乗員に対します危険あるいは負担といったものを極力下げていこう、そしてまた、特に広域におけます常続監視体制の強化がやはり必要ではないかなというところで、現有の装備品では十分に実施をすることが困難な、我が国の領海、領空から比較的離れた地域ですとか、それから事態が逼迫した中での情報収集、あるいは空中での常時継続的な監視活動、警戒監視を行うことが可能であろうということから、この高高度滞空型無人機の導入について検討を進めている、そういったところでございます。

笠井委員 時間が来ましたので、続きはまた別の機会にさせていただきます。

 きょうはありがとうございました。終わります。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、外務委員会、国際情勢に関する件、特にハーグ条約を中心に、しっかりと御説明をしていただきたいという気持ちで、ぜひ質問をさせていただきたいと思います。

 私も委員会で幾たびか質問させていただいておりますが、一九八三年に発効したハーグ条約、先行加盟している欧米諸国と我が国が三十年余りを経てやっと肩を並べたのが、条約を承認した昨年の五月のことであります。そして、本年四月一日よりその効力が発せられ、子供の利益を最優先とする国際間における子の連れ去りの問題の解決に向けて、しっかり取り組んでいくこととなりました。

 まず、大臣に伺いたいと思います。

 この条約の発効に向けて行われた国内法整備の内容についての御説明をお願いいたします。

岸田国務大臣 ハーグ条約の締結については、昨年五月に国会で承認をいただきました。そして、条約実施法についても、昨年六月において国会で成立をしていただきました。その後、政省令や最高裁判所規則といった条約の実施に係る運用の規則が定められるとともに、中央当局の人員体制強化や当事者への各種支援制度の整備を行いました。

 その上で、本年一月二十四日にオランダ・ハーグにおいて条約への署名及び受諾書の寄託を行い、本年四月一日にハーグ条約が我が国について発効した次第であります。

 外務省としましては、子の利益を重視することを基本としつつ、条約を誠実に実施していきたいと考えております。

玉城委員 まさに、国際社会の中で、こういうふうに国際間の人権問題、特に十六歳未満の子供を最優先に考えるこのハーグ条約について、我が国がきちんと、子供や、家庭における人として、その尊厳も守るということに一歩ずつ踏み出しているということについては、本当に期待と、そしてその重たい責任ということについても、これからしっかりただしていきたいなというふうに思うわけでございます。

 では、もう一点、大臣に伺いたいと思います。

 このハーグ条約が我が国でも発効して、これから発生する事案への対処について、どのように取り組まれるか、お願いいたします。

岸田国務大臣 本年四月一日の我が国についてのハーグ条約発効以降に、一方の親による国境を越えた不法な子の連れ去りが行われた場合、残された親は、条約に基づき、子の返還を求めることが可能となります。

 我が国に所在する子の返還が求められた場合には、条約上の中央当局である外務省が、子の所在を特定し、友好的解決のあっせん等を行うことになります。当事者間での解決が困難な場合には、裁判所が子の返還の可否を判断することとなります。

玉城委員 その判断をする、もとの居住国への返還の是非は、東京か大阪の家庭裁判所で行うということになっているんですが、実は、大臣、私も外務省のホームページから、「ハーグ条約ってなんだろう?」という、PDFでプリントアウトさせていただきまして、大変わかりやすい、漫画で書いてあるパンフレット、今お手元にありますけれども、こういうパンフレットをぜひこれからはさまざまな窓口でまた置いていただいて、いろいろな方々が目にする機会をつくっていただきたいと思います。その件については、後ほどまた質問させていただきます。

 さて、このハーグ条約、弁護士などの専門家が当事者の間に入って、訴訟によらない、仲裁などによる、トラブルを解決するための裁判外紛争解決手続、頭文字をとってADRというふうに言うそうですが、このADRについて、外務省が全国で五つの機関に委託するというふうになっています。沖縄でも弁護士会にその委託が行われたという報道がありますが、この裁判外紛争解決手続事業、ADRについて御説明をお願いいたします。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 条約実施法では、外務大臣が、子の返還または子と申請者との面会交流を当事者の合意により実現するため、これらの者の間の協議のあっせん、その他の措置をとることができるとされております。

 これに基づきまして、外務省では、東京、大阪及び沖縄にある五つの既存のADR機関に、ハーグ条約に係る事案の協議のあっせんを委託しているところであります。

 具体的には、外務大臣の援助決定を受けた事案の当事者がこのADR機関におけるあっせんを希望した場合、弁護士等の専門家が協議のあっせんを行い、両当事者間の和解の成立を目指します。海外や遠方に所在する当事者は、ADR機関を訪問する必要なく、インターネット、また、テレビ電話システムや国際電話によりあっせんに参加することができます。

 これらのADR機関の利用に当たっては、通常必要となる利用手数料に加え、翻訳費用及び通訳費用等について、外務省から、一案件ごとに八十万円までを上限として、その支援を受けるようなことができます。ですから、その八十万円の範囲内であれば、その当事者は費用負担なくこれらの機関を利用することが可能になります。

玉城委員 さまざまな形で厚く対策をとっていただくということは本当にありがたいことですが、私も、外務省のホームページをのぞいて、では、自分でまずその申請書などなど書けるかなと思ってのぞいてみたんですが、やはり少し専門的なところがあります。ですから、そういう意味でいいますと、このADRの制度を活用させていただくということは非常に効果があるのではないかと思います。

 では、このADR以外の、地域の相談支援について、例えば相談窓口の開設などの取り組みがあるとしたら、どのようになっていますか、お伺いいたします。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、中央当局の業務を実施する外務省ハーグ条約室が、国境を越えた子の連れ去り問題に関する全国からの相談に対応いたしております。

 同室では、裁判官、家裁調査官、弁護士、DVや児童心理などの専門家を採用いたしておりまして、幅広い相談に対応できる体制を整備しております。当事者からの相談には丁寧に対応いたしております。

 子の連れ去り問題に関して悩みを抱えていらっしゃる当事者の方々におかれましては、気兼ねすることなく、電話なりメールなどで御相談いただければと思っております。

玉城委員 気兼ねなく相談させていただくために、例えば、大臣、各市町村にそこと直結する担当窓口を一つ置くですとか、そういうふうな、ふだんからどこからでもアクセスできる、そういうシステムをぜひつくっていただきたいなということもあわせて私はお願いしたいところであります。

 さて、スムーズな問題解決のために、弁護士へ依頼する場合の経済的な支援も含めた法テラスの活用について今度はお伺いいたしますが、この法テラスに関する、特に支援などについて法務省に伺います。

小川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘いただきました法テラスでは、資力の乏しい者にも民事裁判等手続の利用をより容易なものとするために、代理人に支払うべき報酬や必要な実費を立てかえることなどを内容としております民事法律扶助業務というものを実施してございます。

 お尋ねの、いわゆるハーグ条約案件、すなわち、連れ去りまたは留置に係る子についての子の返還、それから、子との面会その他の交流その他のハーグ条約の適用に関する事件につきましては、本年四月一日の条約実施法の施行などによりまして、法律で定められました要件を満たす場合には、連れ去られたと主張する親、それから連れ去ったとされる親のいずれも、法テラスの民事法律扶助の対象となりまして、弁護士費用などの立てかえを受けることが可能となっております。

玉城委員 まず第一に、保護されるべき、法律によって守られる者、それからさらには、日本の現在ある各省、各法によって利用され、それがまた、かつ国民の幸福につながるということであれば、法テラスもぜひ積極的にその支援体制を、啓蒙、啓発活動を積極的にやっていただきたいというふうに思う次第です。

 さて、このハーグ条約、四月一日以降の問題について取り組むことになるんですが、実は、四月一日以前の子の連れ去りの問題、特に面会交流など、今後は面会交流相談が一気にふえてくるのではないかと思料いたします。

 相談合意後の面会交流の実施に伴う政府、中央省庁からの支援についてお聞かせください。

三好政府参考人 お答え申し上げます。

 ADR機関によるあっせんや家庭裁判所における調停により、別居している親子の面会交流の実施が合意に至ったとしても、当事者のみで円滑な面会交流を行うのが難しい場合もございます。

 そのような場合、両当事者が御希望なさる場合には、外務省が業務委託した二つの面会交流支援団体がございまして、面会時の付き添い、あるいは父母が顔を合わせられない場合の子供の受け渡しなどの支援もいたしております。

 一事案につきまして二回分の面会交流について、八万四千円の範囲内であれば、当事者は、交通費等を除いて、費用負担なくこれらの団体を利用することが可能となっております。

玉城委員 そういう情報もぜひしっかりと伝えていただいて、多くの皆さんの面会の実現にこぎつけられたらありがたいなというふうに思う次第であります。

 さて、実は、日本とアメリカのそれぞれの国によっては、親権と監護権というものが、それぞれその国内法によってあり方が異なっております。

 この親権と監護権について、ハーグ条約との関連性はどのようになっているのか、お聞かせください。

石原大臣政務官 お答え申し上げます。

 ハーグ条約は、親権や監護権に関する決定は、子がもともと居住していた国で行われるべきとの考えをとっております。不法に連れ去られた子をもともとの居住していた国に迅速に返還することを目的としております。

 したがって、ハーグ条約によって親権や監護権が決定されることではなく、返還後に、子供がもともと居住していた国における法令等に基づいて親権や監護権が判断されることになるわけです。

 具体的には、例えば日本から米国に子が連れ去られた場合には、子の日本への返還後、子がもともと居住していた国である日本の法令等に基づいて親権や監護権の有無を判断することになります。逆に、米国から日本に子供が連れ去られた場合には、子の米国への返還後、米国の法令等に基づいて判断されることになるわけであります。

玉城委員 やはりこういう問題は、一緒に住んでいる良好な関係のときには起こらない問題だと思います。離婚する双方の親が離れ離れになるときに子供をどうするのかということを考えると、やはり国内法のそういうサポートは、もし欠けている部分があれば、早く満たすべきであるというふうに思うわけなんですね。

 実は、潜在的ではあるんですが、当事者にとって大きな問題になっているのが国内における子の連れ去りの問題です。日本人同士が離婚した場合、あるいは一方的に連れ去ってしまった場合という問題があります。

 法務省に伺います。

 その問題についてはどのような認識を持っていらっしゃいますでしょうか。

萩本政府参考人 ハーグ条約及びその実施法は、国境を越えた子の連れ去りについて適用されるものでして、我が国の国内で一方の親が他方の親の同意を得ずに子を連れていってしまったような場合には適用されません。

 このような事案が国内で発生した場合につきましては、家庭裁判所に子の監護者の指定や面会交流などを求める家事調停や家事審判の申し立てをすることによって解決することが考えられるかと思います。

 これらの手続では当事者間の話し合いによる解決が試みられるのが一般的でして、話し合いがまとまらない場合には審判によって解決が図られることになります。

玉城委員 やはり、国内の問題もそれぞれの家庭によって全て課題が違うということは、もう御案内のとおりだと思います。ですから、我が国における人権問題について、一人の子供、一人の人間、一人の親、それぞれがやはり尊厳を持った存在であるということについて、国内における人権擁護問題等に関する法整備の問題も、ここに来てやはりさらにクローズアップされなくてはいけないのではないかと思います。

 それでは、法務省に伺います。

 平成十三年五月に人権擁護推進審議会から、児童や高齢者に対する虐待、女性に対する暴力、障害等を理由とする差別、学校や職場におけるいじめなどの問題を指摘し、公権力による人権侵害の対処も含めて、政府からの独立性を有する新たな人権救済機関の設置が必要とする答申が出されています。これは、いわゆる国連のパリ原則、国内人権機関がよるべき基準に沿って、国連機関から、日本、我が国に対してたびたび出された勧告にも基づいているものであります。

 伺います。

 人権問題に関する法的対応について、法務省から現況の取り組みについての説明をお願いいたします。

萩原政府参考人 それでは、お答えを申し上げます。

 まず、御指摘のありました人権問題に関する対応でございますけれども、法務省の人権擁護機関では、法務省設置法四条二十九号などに基づきまして、全国の法務局、地方法務局及び支局等において、面接や電話等により、人権侵害の被害を受けた等の人権問題に関する相談に応じ、適切な手続を教示するなどしております。

 また、法務省設置法四条二十六号などに基づきまして、人権相談などで人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、これを人権侵犯事件として調査を行い、その結果を踏まえまして、人権侵害を行った者に対して説示、勧告をするなど、事案に応じた適切な措置を講じているところでございます。

 以上でございます。

玉城委員 法務省の中にある人権擁護機関ですから、法務省の規定によって活動する、そこにはやはり限界があるということがたびたび言われているわけでございます。

 ですから、だからこそ、政府からの独立性を持つ人権委員会設置等の整備の必要について、たびたび国連からも勧告を受けているわけですね。その独立性を持つ委員会等の設置、検討の方向性及び見解について伺います。

萩原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、法務省におきましては、従来、法務省は新たな人権救済機関の設置の必要性について従前申し上げてまいりましたが、この問題に関しましてはさまざまな議論があるということを承知しております。

 そこで、現在は、これまでなされてきた議論の状況を踏まえまして、人権救済制度のあり方について適切に検討する必要があると考えておりまして、人権擁護局において検討を行っている、こういうところでございます。

玉城委員 実は、おととしの通常国会で閣法として提案され、それが解散によって廃案になってしまったという経緯もありますが、平成二十三年八月、法務省政務三役によって出された基本方針があります。新たな人権救済機関の設置についての基本方針、法案名称、人権救済機関の設置、人権委員会、地方組織、人権擁護委員、報道関係条項、特別調査、救済措置、その他など、九つの項目についての基本方針が既に発出されています。

 その基本方針に沿った取り組みについて、今後どのように進められるのか、改めて伺います。

萩原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員が御指摘いただきましたとおり、平成二十三年八月に、新たな人権救済機関の設置についての基本方針が出されまして、それを踏まえ、法務省において法案化の作業を進めた結果、御案内のとおり、平成二十四年十一月九日に、政府は人権委員会設置法案を第百八十一回国会に提出いたしましたが、同月十六日の衆議院の解散により廃案となりました。

 その後につきましては、先ほど申し上げましたとおり、これまでなされてきた議論の状況を踏まえて検討をしている、こういうことでございます。

玉城委員 ぜひ出しましょう。そういう法案をしっかりと国会で議論する、そのことが多くの国民の幸せにつながることであれば、積極的に立法府で議論させていただくことを期待させていただきまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件及び武器貿易条約の締結について承認を求めるの件の両件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 武器貿易条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

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岸田国務大臣 ただいま議題となりました第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十五年四月以来、アメリカ合衆国との間でこの議定書の交渉を行いました。その結果、平成二十五年十月三日に東京において、私及び防衛大臣と先方国務長官及び国防長官との間で、この議定書の署名が行われた次第であります。

 この議定書は、現行の協定を部分的に改正するものであり、我が国が提供した資金等について、グアムに加えて北マリアナ諸島連邦における施設及び基盤を整備する移転のための事業にも使用できることとするとともに、グアム及び北マリアナ諸島連邦における訓練場を使用するための我が国政府による要請を、アメリカ合衆国政府は、合理的なアクセスを認める意図をもって好意的に考慮すること等を定めております。

 この議定書の締結により、第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施が確実なものとなり、これにより、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄の負担軽減が図られることが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、武器貿易条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成二十五年四月にニューヨークで開催された国際連合の総会において採択されたものであります。

 この条約は、通常兵器の不正な取引等を防止するため、通常兵器の輸出入等を規制するための措置等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結し、その早期発効に寄与することは、通常兵器の国際貿易の管理に関する国際協力を推進するとの見地から有意義であると認められます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上二件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十分散会


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