衆議院

メインへスキップ



第19号 平成26年6月6日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十六年六月六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 鈴木 俊一君

   理事 城内  実君 理事 左藤  章君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 薗浦健太郎君

   理事 原田 義昭君 理事 渡辺  周君

   理事 小熊 慎司君 理事 上田  勇君

      あべ 俊子君    石原 宏高君

      川田  隆君    河井 克行君

      木原 誠二君    黄川田仁志君

      小林 鷹之君    河野 太郎君

      島田 佳和君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    星野 剛士君

      武藤 貴也君    小川 淳也君

      玄葉光一郎君    松本 剛明君

      阪口 直人君    村上 政俊君

      岡本 三成君    青柳陽一郎君

      笠井  亮君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   防衛副大臣        武田 良太君

   外務大臣政務官      石原 宏高君

   外務大臣政務官      木原 誠二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  山崎 和之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 金杉 憲治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            平松 賢司君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 真部  朗君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事)         植澤 利次君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二日

 辞任         補欠選任

  松本 剛明君     若井 康彦君

  青柳陽一郎君     椎名  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  若井 康彦君     松本 剛明君

  椎名  毅君     青柳陽一郎君

同月六日

 辞任         補欠選任

  あべ 俊子君     川田  隆君

同日

 辞任         補欠選任

  川田  隆君     あべ 俊子君

    ―――――――――――――

六月四日

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国連邦との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一五号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)(参議院送付)

 所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とオマーン国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)(参議院送付)

同月五日

 米軍機の低空飛行訓練の中止を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一二〇八号)

 中国及び中国周辺地域における人権弾圧問題等の解決に向けて、日本国政府からの働きかけを強化することに関する請願(田沼隆志君紹介)(第一二四六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国連邦との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一五号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一六号)(参議院送付)

 所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一七号)(参議院送付)

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とオマーン国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一八号)(参議院送付)

 国際情勢に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

鈴木委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人国際協力機構理事植澤利次君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房審議官金杉憲治君、大臣官房参事官下川眞樹太君、大臣官房参事官大菅岳史君、総合外交政策局長平松賢司君、内閣官房内閣審議官山崎和之君、資源エネルギー庁資源・燃料部長住田孝之君、防衛省防衛政策局次長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

鈴木委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

鈴木委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 おはようございます。自民党の鈴木馨祐であります。

 ブリュッセルでのG7サミットも終わりまして、世界全体の話題が、安全保障とか、どちらかというとそうした方向にウクライナの一件以降動いてきたのかな、そんな気もしております。そして、今回、G7のコミュニケの中でも東シナ海と南シナ海ということで明記もされたということで、きょうは、その南シナ海あるいは東シナ海の件について質疑を進めさせていただきたいと思います。

 時間も限られておりますので、事実関係の確認から速やかに進めていきたいと思います。

 まず最初に南シナ海でありますが、パラセル諸島、今、いろいろと領有権の主張が入り乱れている状況でありますけれども、この今の国際法上のステータスそして現状についての御説明をお願いいたします。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 パラセル諸島につきましては、第二次世界大戦以降、中国とベトナムの両国間で争いが継続しておりまして、特に一九五六年には西沙諸島の東側を中国が事実上支配いたしまして、その後、一九七四年にベトナムと中国が交戦した後、中国が西沙諸島全域を事実上支配するに至っていると承知しております。

 その帰属につきましては、我が国は、サンフランシスコ平和条約におきまして全ての権利、権原、請求権を放棄しておりまして、その帰属先について云々する立場にはないとはいいますものの、我が方が理解しているところでは、中国は、南シナ海における主権は歴代の中国政府により長期にわたり堅持されてきたものであり、西沙諸島をめぐるいかなる争いも存在しないという立場をとっておりまして、これに対しましてベトナムは、西沙諸島に対する主権があることを確認する十分な法的な歴史的根拠があるということを主張しておるというふうに承知しております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 簡単に言えば未画定ということであろうと思いますが、今回、この大きなきっかけになったのが、これは可動式のもののようですけれども、ガス田の掘削のリグを中国の方が設置して掘削を始めているというのが一つの大きなきっかけとなったわけですけれども、今おっしゃった関係国の権原との関係で、今回のリグの設置場所あるいはリグの設置、どのようにお考えでしょうか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 パラセル諸島、西沙諸島自身の領有権の争いにつきましては先ほど御説明したとおりでございますが、今般リグが設置された場所については、中国、ベトナムそれぞれが自国の排他的経済水域及び大陸棚に関する主権的権利を主張しているというふうに承知しております。

 西沙諸島の帰属先については中越それぞれの立場があるということでございましたが、どちらに帰属しているかにかかわらず、その現場海域というのは、中越双方のEEZと大陸棚に関する権原が重複している、まさに所属が未画定の海域である、国際法上そういうふうに整理されるというふうに理解しております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 そうした重複した海域で中国が非常にアグレッシブな行動をとっているというのが今の現状かと思いますが、この南シナ海における中国の一連の行動について外務大臣としてどのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いできればと思います。

岸田国務大臣 中国が南シナ海において海洋進出を活発化させていること、これは、我が国を含む地域、国際社会共通の懸念事項であり、我が国としましても注視しております。

 我が国として、力による現状変更は認めることができず、各国が、緊張を一方的に高める、こういった行動を慎み、何よりも法の支配の原則に基づいて行動すること、これが国際社会の秩序形成に重要であると考えております。

 こういった考えに基づきまして、我が国としましては、米国あるいはASEANといった関係国としっかり連携していかなければなりません。そして、中国に、国際的な秩序を遵守すること、グローバルな課題において建設的かつ協調的な役割を果たすこと、こういったことをしっかり促していく、こういったメッセージをしっかりと発していくことが重要だと認識をしております。

鈴木(馨)委員 まさにおっしゃるとおりだろうと思います。

 そして、我が国としてこの南シナ海の問題について人ごとではいられないのは、似たような問題を我が国も東シナ海で抱えているということによるのであろうと思います。

 この東シナ海の問題で、尖閣についてはもちろん領有権において争いはないところでありますけれども、今回のこのベトナムの掘削リグの場所、先ほどEEZの重なっているところというふうにおっしゃいました。そういった意味では、まさに未画定の場所において、東シナ海においてもガス田というものが存在をしている。そして、いろいろな議論もあるわけであります。

 これは資源エネルギー庁になるんでしょうか、白樺を初めとしたガス田の今の現状、これは実際、フレアが確認された、されない、いろいろなものがあると思うんですけれども、今把握をされている限りで、最新の今の現状についてお伺いをします。

住田政府参考人 白樺を初めといたします東シナ海での中国の開発等の状況でございます。

 まず、白樺と呼ばれる油ガス田につきましては、これは中国側が掘削をしているという可能性があるわけでございますが、今の時点でこれを断定できるという状況にはございません。

 それから、これは中国名でございますけれども、平湖と呼ばれる、これも油ガス田でございますけれども、こちらの方は、一九九八年に海洋プラットホームが建設をされてから生産が行われているのではないかというふうに考えております。

 それから、これは日本名でございますけれども、樫と呼ばれる油ガス田がございますが、こちらにつきましては、二〇〇五年の九月以降に、今御指摘のとおりフレアが確認をされておりますので、これは生産が行われている可能性が高いのではないかというふうに考えております。

 それから、これも中国名でございますけれども、八角亭と呼ばれる油ガス田がございますが、こちらにつきましても、二〇〇六年の十一月以降、フレアが確認をされておりますので、生産が行われている可能性が高いということでございます。

 さらに、昨年六月以降、東シナ海の中間線の中国側でございますけれども、中国が新たな海洋プラットホームの建設を行っているということを確認しておるところでございます。

鈴木(馨)委員 今御説明いただきましたように、それぞれのガス田において相当程度開発が進んでいるようなところも確認できるといった状況であります。

 一点確認をさせていただきたいんですが、この東シナ海、今、EEZが重複している状況で、しかも境界は厳密に言うと未画定ということであると思いますが、これは以前の質疑でも確認させていただいたところですので、確認ということで、イエスかノーかということでお答えをいただきたいんですが、今現状、日本としては、いろいろ中間線の議論もありますけれども、境界が画定していない以上は、日本の基線から二百海里というEEZについては権原を持っている、放棄をしていないという認識でよろしいんでしょうか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 そのとおりでございます。領海基線から二百海里までの排他的経済水域、EEZ及び大陸棚の権原を有しているという認識でございます。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 そういった状況の中で、ちょうどおととい、ブリュッセルのG7のサミットのコミュニケの中でも、その十六番目の項目で海洋についての記述も出ております。

 その中で、東シナ海、南シナ海の緊張を深く懸念するというコミュニケと同時に、我々は、威嚇、強制または力により領土または海洋に関する権利を主張するためのいかなる者によるいかなる一方的な試みにも反対をする、全ての当事者に対して、国際法に従ってその権利を明確にして、そして主張することを求める、そういった記載もあるわけであります。

 これを考えた場合、白樺は特にそうですけれども、そのほかのガス田についても、東シナ海のガス田全体について、これは権限が重なっているところであって、しかも日本としては放棄をしていないところ、特に白樺については、国際法上一般的な原則とも言われている、真ん中の中間線よりも日本側にガス田の構造も広がっていると言われているものであります。

 となれば、これはやはり、特に今、ベトナムにおいても掘削のリグの撤去というものを求めるということを実際にしているわけですし、南シナ海、東シナ海というところで中国の行動に全世界の注目が集まっている、まさにそのところでありまして、これはタイミングということも大事なんだろうと思うんですね。

 そういった中で、日本として、特に白樺については、設備の撤去、少なくともこれがこれから稼働するかもしれない、しかも稼働しているかもしれないという状況ですから、これについては日本としてきっちりと撤去を求めていくということも必要ではないかと思いますが、この点、外務大臣はいかがお考えでいらっしゃいますでしょうか。

岸田国務大臣 まず、日中両国、排他的経済水域及び大陸棚の境界が未画定である東シナ海を平和、協力、友好の海にするために協力する、こういった点において一致をしております。これは二〇〇八年六月の合意において確認をされているところですが、こうした協力を進めていくことは、両国にとりまして利益であり、また責任でもあると考えます。にもかかわらず、御指摘のように、日中双方の権限が重複する海域において中国側が一方的に開発を進めていること、これは遺憾なことであります。

 まずは、この二〇〇八年六月の合意を実施に移すことを引き続きしっかりと申し入れていかなければならないと思いますが、今、白樺の撤去等についても御指摘がありました。今後の対応につきましては、まずは、こうした二〇〇八年六月の合意をしっかりと求めながら、中国の対応を見きわめたいと存じます。その上で、権原への影響ですとか、あるいは国際法との整合性ですとか、こういったものを考えながら、政府として戦略的に考えていかなければならないと考えます。

鈴木(馨)委員 非常に示唆に富む御答弁だろうと思います。

 これから中国がどういうふうに出てくるかによって、日本としても当然対応が変わってくる。これは撤去を求めるということもそうですし、また同時に、もう一つ、やはり中間線より日本側というのは、国際法で中間線というものがある程度一般的な原則となっている以上は、そこにおいて中国も実際にそういった活動を行っている状況下では、日本としても、例えば試掘を行っていく、こういったことも場合によっては検討し得るオプションなのかとも思っております。

 実際、平成十七年に、当時の帝国石油、今の国際石油開発に対して試掘権の付与がされていまして、そのときの帝国石油からの平成十七年七月十四日付のプレスリリースの中で、帝国石油としては、試掘権を許可されることとなった、そして将来的に試掘を実施したいと考えている、ただ、「同海域では作業の安全確認を始め種々の問題を抱えており、試掘作業の具体化にあたっては関係官庁等と協議した上で判断していきたい」、そういったプレスリリースも実際に出ている状況であります。

 そういった中で、今の状況、しかも、中国が、平和と友好の海と言うには余りにも、これは東シナ海だけではなくて南シナ海においても大いに問題のある行動をしている、しかも、G7でそれが共有をされたという状況であります。

 そういった中で、一つには、試掘についてもその可能性を排除しないのかどうか、これが一点。そしてもう一点、排除しない場合に、きちんと試掘を行っていくための、漁業権等々さまざまな整理も必要であります。そういった中で必要な支援を行っていくべきではないか。この二点、私としてはお伺いをいたしたいのでありますけれども、この点についての御答弁をいただきまして、質問を終わりたいと思います。

住田政府参考人 御指摘の試掘権その他の問題でございますけれども、まさに外務大臣からも御指摘がございましたように、今、一つ一つ、どういった対応をしていくかということにつきまして、中国側の対応を見きわめながら、政府全体といたしまして戦略的な観点から検討していきたいというふうに思っております。

 具体的な検討の内容につきましては、やはり今後の中国側との交渉などにも影響を及ぼし得るということになりますので、具体的にお答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 時間となりましたので、質問を終わらせていただきます。

鈴木委員長 次に、黄川田仁志君。

黄川田(仁)委員 質問の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私も、鈴木委員と同じく、中国の拡張政策に対する今後の日本の対応について、鈴木委員とはちょっと視点、切り口を変えて御質問させていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

 東シナ海をめぐる中国の活動は大変活発化しておりまして、ASEAN加盟国の複数の国が中国との領土、領海問題を抱えているのは皆様の御承知のとおりであると思います。先ほど鈴木委員も御指摘になりましたが、特に中国とベトナムの南シナ海の領有権問題は、現在も継続中で、ますます活発になっているという状況を呈しております。日本としてもこれを看過しておくことはできないということも皆さん御承知のとおりだと思います。

 そこで、先ほど外務大臣もお話がありましたが、法の支配と関係国の連携ということが大切だということでございますが、ベトナムを初めASEAN各国、アメリカ、オーストラリアなどの国々を交えて、さまざまな国際会議や地域フォーラムでの各国との協調というものがますます重要になってきて、世論形成というものが必要になってきています。

 そこで、先般、五月三十日に開催されましたアジア安全保障会議で、安倍総理が、アジアの海や空にかかわる問題に対して、日本の考え方、基本スタンスを講演いたしました。まず、その概要の説明と、その会議の成果、そして各国の反応を教えていただきたいと思います。

石原大臣政務官 安倍総理がシャングリラ対話にて基調演説を行い、世界の成長センターたるアジア太平洋地域がその潜在力を十分に発揮し、平和と安定を確固たるものとするためにも法の支配が特に重要であるということを強調されました。

 海洋や空については、特に、海における法の支配のための三原則、法に基づく主張、力を用いない、平和的解決、これを一つ目に述べられまして、そして二つ目に、二〇〇二年行動宣言、DOCに立ち返り、関係国が一方的な行動をとらないことを主張されました。そして三つ目に、これは日中の問題でありますけれども、不測の事態の回避のために、日中防衛当局間の海上連絡メカニズムの早期運用開始ということを提唱したところであります。

 安倍総理の基調演説については、ヘーゲル米国防長官ほか、ベトナム、シンガポール、またオーストラリア、インドからの出席者が、それぞれのスピーチの中で支持や高い評価を述べたというふうに承知をしております。

 今回の基調講演によって、積極的平和主義のもとでの日本の安全保障政策について効果的な発信ができたものというふうに認識をしているところであります。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 そのように、シャングリラ・ダイアログ、国際会議の場でしっかりとした主張を展開して、中国など、力で既存の境界線を変更しようという動きに対して逐次牽制していくということが必要だと思います。

 国際会議の場でしっかりとした法の支配というものを訴えていくことはもちろん必要であると思いますが、私が問題意識を持っているのは、それと同時に、先ほど外務大臣が関係国との連携を図っていくという中で、その連携の枠組みももうちょっとしっかりつくっていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 と申しますのは、現在、海の憲法と言われています国連海洋法条約においては、EEZやら大陸棚の境界線の画定のためには、二カ国間での、当事者同士での交渉によって解決すべきということになっておりますが、ASEAN各国の大部分は中国が最大の貿易相手国でもありまして、二カ国間で解決するというようなことはなかなか難しいというふうに思います。ですから、やはり、いろいろな国と相互に連携し合ってやっていく、そういう枠組みを日本が積極的につくっていこうということも呼びかけていくべきだと思っております。

 そこで、私が注目しておりますのが、既にこれは設置しているんですが、ASEAN海洋フォーラム拡大会合というものがございまして、その役割が今まで以上に重要になってくるのではないかというふうに思っております。

 このASEAN海洋フォーラム拡大会合は、日本が提案してつくられた議論の場というふうに聞いております。そこで、これがどのような会合なのか、その経緯と、今までの内容を教えていただきたいと思います。

平松政府参考人 お答えいたします。御指摘ありがとうございます。

 ASEAN海洋フォーラム拡大会合、EAMFと我々は呼んでおりますけれども、もともとのアイデアは、東アジア地域における海洋協力の促進が重要だという基本的な認識の中で、我が国が主導いたしまして、二〇一二年四月のASEAN首脳会議の場で開催が正式に決定されたという経緯がございます。御指摘のとおり、我が国が主導した会合でございます。

 EAS、東アジア首脳会議参加国十八カ国の政府関係者、有識者も交えてでございますけれども、第一回会合は二〇一二年十月にマニラで、第二回会合は二〇一三年十月にクアラルンプールで開催されております。ことしは八月二十八日にベトナムのダナンで開かれる予定でございます。

 これまでの会合、私も出たことがございますけれども、EAMFといいますのは、一般的な海洋問題に加えまして、先ほど先生御指摘がございました国連海洋法条約を含む関連国際法を踏まえた対応というのがどういうものであるかということにつきまして専門家を交えて極めて活発な議論が行われておりますので、今後ますます発展すべきフォーラムだというふうに認識しております。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 そのASEAN海洋フォーラム拡大会合を、今お話しのとおり、これからも積極的に使っていくことが必要であると思います。

 といいますのも、先ほど挙げましたアジア安全保障会議、または、先ほど閉幕しましたが、G7のサミットにおきます会議、それらは海に特化したものではございませんので、海の場を平場でしっかりと議論しようということで、このASEAN海洋フォーラムというものがより重要になってくるということであります。そして、特に次回、第三回目は、その当事者でありますベトナムが議長国になってベトナムのダナンの地で行われるということでありますから、法の支配と関係国との連携、国際世論を形成するという上では、機運を盛り上げる絶好の機会だというふうに思っております。鉄は熱いうちに打てということでございますから、今、この機を十二分に生かしてほしいというふうに思っております。

 そこで、外相に、この八月に開催されますASEAN海洋フォーラム拡大会合での日本外交の考え方をお示ししてほしいのと、また、その同時期にASEANプラス3の外相会議もございます、また東アジア首脳会議の外相会談も行われますので、それに対する外務大臣の意気込みをお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、アジア太平洋地域の安全保障を考える際に、EASですとかARFですとか、御指摘のASEAN関連外相会議ですとか、さまざまな多国間の議論の枠組みがあります。アジア太平洋地域の安全保障を考える際には、こうしたさまざまな多国間の議論の枠組みを重層的に活用することによって全体の平和や安定を考えていく、こういった姿勢が重要だと考えています。

 その中にありまして、御指摘のEAMFですが、これは、特に海洋問題につきまして従来からも活発な議論が行われてきた場として、我が国としましては、これは重要な会議だと認識をしております。

 安倍総理も、さきのシャングリラ対話におきまして、アジア太平洋地域におきまして法の支配が重要だということを強調されました。あわせて、法の支配の徹底の観点から、法に基づく主張、力を用いない、あるいは平和的解決、こうした三つの原則を提唱したわけですので、ぜひ、このEAMFの場におきましても、法の支配の徹底に向けて、海洋に関する問題について関連国際法を踏まえた議論がしっかり行われるように、我が国としましても取り組んでいきたいと考えます。

 ぜひ、こういった場をしっかり活用しながら、アジア太平洋地域全体の平和と安定、そして繁栄について、我が国としましても議論をリードしていきたいと考えます。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 外務大臣、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 先ほど鈴木委員も御指摘になりましたが、G7の首脳宣言で、東シナ海及び南シナ海での緊張を深く懸念するという宣言がなされました。それに対して中国は、関係ない国が入ってくるのはいかがなものかというような発言をしていると、けさのニュースでやっておりました。

 これを、中国をしっかりと引き込む形で、関係国、また問題を共有しているアメリカもオーストラリアもしっかり入れた形で、包囲網というわけではございませんが、しっかりした国際的な常識的な認識のもと、中国に対する正しい行動を導いていってほしいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 時間も来ましたので、質問を終わりにいたしたいと思います。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉光一郎です。おはようございます。

 せんだって、集団的自衛権について議論をいたしましたけれども、まだ途中でございましたので、本日は先般の関連で質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 まず、近隣有事の際の米艦初め他国の船舶による邦人輸送について先日質問をしたわけであります。総理大臣は、どの国の船であれ、邦人が乗っていれば守る、こういうふうに言明をされたわけでありますが、米国以外の他国籍の船舶への攻撃排除というのが集団的自衛権で説明可能なのですかという問いについて、丁寧に質問通告をしたのですが、前回、整理された答弁が返ってこなかったということで、外務委員長預かりになっていたと思いますけれども、その後、時間も経過しましたので、本日の委員会でできれば整理をしたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 答弁は政府委員で結構なのでありますけれども、岸田外務大臣、聞くかもしれませんので、ちょっと聞いておいていただけますか。

 まず最初にお聞きしたいのは、紛争発生地域から邦人を輸送する外国船籍の艦船が武力攻撃を受けた場合には、個別的自衛権を行使することは可能なのですか、それとも、これを排除するために武力の行使を行えば、集団的自衛権の行使と整理されるのですか。お答えください。

平松政府参考人 お答えいたします。

 先回の外務委員会で先生からいろいろ御指摘をいただきまして、その後、政府内でいろいろ検討いたしましたので、その結果を踏まえまして、整理した形でお答え申し上げたいと思います。

 一般国際法上、公海において船舶が攻撃を受けた場合、個別的自衛権の行使としては、その攻撃を排除し得る立場にあるのは、原則として、当該船舶の旗国でございます。

 他方、我が国による実力の行使のための法的根拠についてでございますけれども、個別具体的な状況に即して判断する必要がありますので、余り一般化できない点はございますけれども、そういう前提でお許しいただければ、一般論として申し上げれば、我が国に対する武力攻撃が発生していない状況だと思いますけれども、そういう中で、武力攻撃を受けた外国船舶の旗国の要請、この場合は旗国ですね、要請または同意に基づいて我が国がその攻撃を排除するために実力を行使する場合、これは、国際法上、一般に申し上げて、我が国が集団的自衛権を行使するというケースに評価されるというのが一般的な解釈だというふうに承知します。

玄葉委員 それはそれでわかります。

 そうすると、紛争発生地域から邦人を輸送する外国船籍の艦船を防護するために集団的自衛権を行使するということになりますと、紛争が発生している領域国の同意または要請が必要なのか、それとも艦船の旗国の同意、要請が必要なのか、そのことについてもお答えください。

平松政府参考人 お答えいたします。

 委員御案内のとおり、一般国際法上は、ある国家が集団的自衛権を行使するための要件といたしまして、武力攻撃を受けた国の要請または同意があること、他に適当な手段がないこと、必要最小限度の実力の行使であることが一般的に考えられております。

 そういう前提で申し上げれば、これもまた恐縮でございますけれども、我が国による実力の行使のための法的根拠につきましては、具体的な状況に即して判断する必要があるということではございますけれども、一般論として申し上げれば、お尋ねの、外国船舶の艦船に対する攻撃が武力攻撃に当たるということであれば、我が国が集団的自衛権を行使するためには、その旗国の同意あるいは要請が必要であるということでございます。

玄葉委員 結局、旗国の同意、要請が必要だということなのです。

 さらに、紛争発生地域から邦人を輸送する外国船籍の艦船を防護するために、当該船籍国以外の国の同意、要請に基づいて集団的自衛権を行使することは可能ですか。

 よりわかりやすく申し上げれば、例えば、米国がチャーターしたような船の場合、米国の同意でいいか、こういう話でありますけれども、いかがですか。

平松政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しでございますけれども、一般に、我が国が集団的自衛権を行使するためには、当該外国の要請または同意が必要であるということは先ほど御答弁申し上げたわけでございます。

 しかし、今先生御指摘のように、やはり一定の条件のもとでは、当該船舶の旗国以外の国の要請または同意を得て集団的自衛権を行使することもあり得るというふうに考えてございます。

 まさに御指摘のように、具体的な状況に即して判断する必要がございますけれども、例えばチャーター船の場合、旗国以外の国が実質的に運航している状況であって、当該船舶に対する攻撃が、まさにチャーターをしている国、当該旗国以外の国に対する組織的、計画的な武力の行使に当たると判断された場合は、当該旗国以外、この場合はチャーター国でございますけれども、要請または同意を得て集団的自衛権を行使することも考えられるというふうには承知しております。

玄葉委員 では、そうすると、今度は、日本がチャーターしている船、そしてそこに邦人が退避するために乗っていて、その日本がチャーターしている船への攻撃があった場合には、我が国への、これは個別的自衛権というものを行使して排除する場合もある、こういうふうに考えてよろしいですか。

平松政府参考人 御指摘の論で結構だと思います。

 これもなかなか個別的な状況に即して判断するのは難しいのでございますけれども、一般論として申し上げれば、我が国がチャーターしている船に対する攻撃ということだと思いますけれども、もしそれが我が国に対する組織的、計画的な武力の行使に当たると判断された場合は、これは我が国の個別的自衛権の発動として当該攻撃を排除するということも考えられると思います。

玄葉委員 大分整理をされてきているというふうに思うんです。

 例えば、我が国近隣で事態が発生しましたというときに、邦人を守らなければならない、特に輸送されている邦人を守らなければならない。仮に、その船が日本籍あるいは日本がチャーターした船だったらば、個別的自衛権で守るということが可能だろう、もちろん、状況によりますけれども。他方、アメリカ籍あるいはアメリカがチャーターした船ならば、これは集団的自衛権が限定的に行使できるようになれば、それは集団的自衛権の行使で説明可能だろう、こういうことだと思います。

 他方で、一般論では、米国以外の他国籍の船舶への攻撃排除を集団的自衛権の行使で説明は可能なのですけれども、現実問題では果たしてどうなのだろうかということが起きるのではないかという気がするんですね。

 例えば、この間も若干申し上げましたけれども、パナマ船籍というのが実際には多いですよね。朝鮮半島事態が仮に起きて、そしてパナマ船籍の船が韓国の港にかなりあって、その船を使って邦人を輸送しますというときには、今の整理でいいますと、そのパナマ船籍の船に攻撃が行われなければならない。もう一つは、パナマからの同意、要請がなければならない。

 その二つの要件を満たさないと、仮に集団的自衛権の行使を限定的に認めても、邦人を守るために日本の自衛隊がその攻撃排除のための活動をすることはできないということになると思いますけれども、これは、岸田外務大臣、それでよろしいですね。平松さんでもいいですけれども。

平松政府参考人 御指摘のとおりだと思います。

 個別的、集団的自衛権の行使に当たっては、組織的、計画的な武力の行使があるかどうかという、ある意味で厳格な基準のもとで運用する必要があると思います。この行使については、やはり慎重に期すべき、一定の条件の中で慎重に行使すべきというのが国際法的な要請でございますので、今、玄葉委員の御指摘のとおりであると思います。

玄葉委員 そうすると、外務大臣、大分整理されてきたと思うんですけれども、朝鮮半島事態が起きて、事態からいわば退避する邦人は私たちは守らなければならない、どの国の船に乗っていても守らなければならないのだということです。時によっては個別的自衛権で守れます。仮に、時によっては、これから認めていくことになるかもしれない集団的自衛権の行使で守ることができるかもしれません。

 しかし、今整理したように、幾つかの場合においては、例えば先ほど申し上げたようなパナマ船籍のようなケースでは、恐らくは、そもそも、そのパナマ船籍の船に攻撃を受けてからじゃないと要請できないわけですから、もう既に遅いという事態になるわけです。例えば、米国籍の船舶あるいは韓国籍の船舶であるという場合には、もう既に恐らく武力行使がアメリカや韓国に行われていますので、これは集団的自衛権の行使で邦人を守ることは可能だと思うんですけれども、そうでない場合は、そのケースはあり得ると思うんですけれども、守れないということになっちゃうんですね。

 ですから、そう考えると、どうもこれは、集団的自衛権の行使の議論だけではなくて、また新たな概念をつくり出すことも含めて整理が必要ではないかというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 今の我が国の安全保障をめぐる法的基盤の議論、特定の事態とか国を想定して議論を行うものではありませんが、基本的に、あらゆる事態において我が国の国民の命、暮らしを守るためには、国としてどうあるべきなのか、しっかりとした安全保障の法的基盤を整備しておくべきではないか、こういった問題意識のもとに議論を進めています。

 今まだ議論が行われている最中ではありますが、やはり国として、国民の命、暮らしを守るために、あらゆる事態に対し、切れ目のない対応を考えておかなければならないという点において、今委員の問題意識も踏まえながら、引き続き丁寧に議論を行っていくべきだと考えます。

玄葉委員 これは、他国籍の、つまり米国以外、韓国以外、あるいは日本以外の国籍の船舶に乗っている邦人をどういう法理で守るのかということについては、やはり邦人を守ると言っている以上は整理が必要なんじゃないでしょうか。外務大臣、これは整理をしていくということでよろしいですか。

岸田国務大臣 先ほど平松局長から答弁させていただきましたのは、あくまでも、国際法上、一般論としての考え方であります。

 こういった考え方もしっかりと念頭に置きながら、我が国としてどういった法整備をしていくのか、このことについて丁寧に議論をしていかなければならない。その際に、御指摘のように、切れ目のない、あらゆる事態に対応できる、こういったことをしっかりと頭に入れて議論を進めていくべきだと考えます。

玄葉委員 平松さんはどうですか。

平松政府参考人 大臣の御答弁のとおりだと思います。

 国際法上の要請、それから実際に起こる事態等を念頭に置きながら、それが武力行使なのか、その前の事態なのか、そういったことも踏まえながら、総合的に切れ目なく穴がないように考えていくという方向で、今、与党間等で御議論いただいているというふうに承知いたします。

玄葉委員 そうすると、改めて確認ですが、米国、韓国、日本以外の船籍の船舶でも、邦人が乗っていれば守る、そのために、すきのない、切れ目のない対応ができるような体制をとるのである、そういうふうに考えてよろしいですね。

岸田国務大臣 あらゆる事態において邦人の命や暮らしを守るためにはどうあるべきなのか、そういった問題意識で議論を進めていくことが大事であると考えます。

玄葉委員 それでは、次に移りたいと思います。

 これも先日申し上げましたけれども、武力行使との一体化論の問題であります。

 私は、この武力行使との一体化論というのは、実は限界があるなと思っている一人であります。ただ、その上で、総理が、武力行使との一体化論をとるべきではないとする法制懇見解はとらない、一体化論を引き続き採用するのであるということをおっしゃった上で、判断基準をより精緻化する、こういうふうにおっしゃっているわけであります。

 せんだって、報道によれば、後方支援について、今まで以上に支障なくできるようにするために、これまでのいわゆる武力行使の一体化に関する判断基準というものがありますけれども、それを精緻化するのだとして、一種の新基準のようなものが出されたわけであります。

 これまでは、一つは、距離、地理的な関係、二つ目は、日本側の行為の具体的な内容、三つ目は、武力を行使している者との密接性、四つ目は、当該者の活動の状況、現況、これらを総合勘案して、我が国が武力の行使を行っていると見られることになるかどうかを判断するというのが見解だったわけでありますけれども、報道によりますと、一つは、支援部隊が現に戦闘行為を行っているかどうか、提供物品が他国の戦闘行為に直接用いられるかどうか、活動場所が他国の戦闘行為の現場に当たるかどうか、後方支援が戦闘行為と密接に関係するかどうか、四つ全てに当てはまる場合は一体化している、一つでも当てはまらない場合は一体化はしていないと判断をして後方支援をするのだというふうに、報道でございますけれども、そういうことでよろしいんですか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員より御指摘がございましたように、政府といたしましては、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、国際の平和や安全が脅かされる場合に、国際社会が一致団結して対応する際に、自衛隊が幅広い後方支援活動等で十分に貢献できるような法整備をすることが必要であるというふうに認識しております。その一環として、御指摘の武力行使の一体化論についても、現在、検討が行われているところでございます。

 これまで、日本が後方支援をする際には、一体化とみなされることがないことを制度的に担保するということで、御承知のとおり、非戦闘地域、後方地域というような概念を設けて対応してまいりました。

 先ほど先生から御指摘がございましたように、先月出ました安保法制懇の報告書では、一体化の考え方はもはやとらないこととするべきであるという御提言を受けております。

 他方におきまして、政府といたしましては、ただいま御説明いたしましたような考え方で武力行使の一体化論については対応してきたところでございますので、政府といたしましては、従来から政府が示してきた判断基準を、より精緻なものとして、具体的に何が武力行使の一体化する行為なのかということをより明確にし、そして、どのような後方支援が可能であるかということを検討していくという方針でございます。

 今先生から、現在適用されております武力行使の一体化を判断する上での基準についての御言及がございました。そのとおりの対応をしてきたわけでございますけれども、現在、こういう基準をどういうふうにしていくべきかということがまさに与党間で協議をされているところでございます。

 政府といたしましては、それに際しまして、御言及がございました現在適用されている判断基準等も踏まえた御説明を与党にさせていただいているところでございますが、与党の協議が継続しておりますので、さまざま報道等が行われておりますけれども、現在、与党協議が行われているところでございますので、その内容等につきましては、政府の立場から、現在、ちょっと御説明することは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。

玄葉委員 これはやはり、具体的に何ができて何ができなくなるのかということについて、わかりやすく説明しながら議論しないと、多分、聞いている人はほとんどわからないということになるんだろうなというふうに思うんですね。

 これは、報道だと、何か多国籍軍に対する後方支援のことばかり報道されているんですけれども、例えば周辺事態における後方支援も、これは同じですね、確認ですけれども。

山崎政府参考人 御指摘のとおり、周辺事態につきましても、今、周辺事態対処法がございまして、その中に後方地域支援という概念を設けて対応しております。これは、武力行使の一体化論が背景にあっての制度でございます。

玄葉委員 そういうことだと思うんです。

 せんだっても申し上げたんですけれども、私の個人的な考え方としては、やはり、例えば米軍が周辺事態において戦闘作戦行動準備中である、その戦闘機に対して整備、給油ができないというのが、本当にそういう事態が起きたときに、大丈夫なのかなという、つまり、今、できないんですよね、今の周辺事態安全確保法では。それは私、実は問題意識として非常に強くあるんですけれども、外務大臣としては、やはりこういったことをせめて可能にしていく方向で今回の議論を展開したいというふうにお考えですね。

岸田国務大臣 今回の議論は、安保法制懇の報告書を受けて、まず与党での議論がスタートしているわけですが、その議論の中で、安全保障につきましては、国連の集団安全保障措置への参加といった国際法上の合法な活動には憲法上の制約はないとする報告書の考え方は政府としてとらない。一方、集団的自衛権については、限定的な集団的自衛権が従来の政府解釈の必要最小限の武力行使の中に含まれるかどうかについて研究する、こういったことで、安全保障そして集団的自衛権、それぞれ議論を進めているわけです。

 そして、具体的な事態において、集団的安全保障なのか集団的自衛権なのか、これは個別具体的に判断していかなければなりませんが、いずれにせよ、現実の中で、あらゆる事態に対応するべく法的な整備をしていかなければならない、こういった問題意識のもとに今全体の議論が進んでいると認識をしています。

玄葉委員 いや、外務大臣、今私が申し上げたのは、要は、武力行使の一体化論についての判断基準を精緻化しましょう、こういうことです。私自身も、自分の体験で、武力行使の一体化論についてはちょっと限界が近づきつつあるな、こう感じてきたんですね。

 今回、結局、武力行使の一体化論の判断基準、今まで法制局長官が何遍も述べてきた判断基準を変えるとは言うのかどうかわかりませんけれども、より精緻化して明確化することで、この間外務大臣が答弁されていましたけれども、後方支援をより支障なくできるようにするのだ、こういうことだと思うんです。

 それはそれで、ある意味よくわかるので、そのときに、これは多国籍軍への後方支援だけではなく周辺事態でも同じですねということを確認した上で、例えばということで、先ほど申し上げたような米軍機への給油、整備の話をしたわけでありますけれども、そういうことに対して、できるような方向でこの議論を展開するとお考えですねと確認をしたんです。

岸田国務大臣 済みません。御質問の趣旨はわかりました。

 我が国が、積極的平和主義に基づいてこれからもしっかりと国際的な平和や安定に貢献していく、このために後方支援を行うということ、これは大変重要なことでありますし、今まで以上に支障なく後方支援が行える体制を整えていく、こういったことは大変重要であると認識をしております。そういった認識のもとに、御指摘の点も含めて我が国として後方支援のあり方をしっかり考えていくべきである、こういったことで議論が進んでいます。

 ぜひ、我が国として、後方支援を初めしっかりとした平和と安定に貢献する体制がとれるように議論を深めていかなければならないと考えています。

玄葉委員 そろそろ時間が来て、本当は南シナ海の事態をちょっと丁寧にやりたかったのですが、きょうはやめて、最後に、よく、集団的自衛権の定義を聞かれたときに、自国と密接な関係にある外国への武力行使を自国への攻撃とみなして攻撃する権利、こういうことを言われるわけでありますけれども、これまでも何度も恐らく聞かれたことだと思いますが、自国と密接な関係にある外国というのは、同盟国以外はどの国を想定しているのでしょうか。

岸田国務大臣 まず、自国と密接な関係国ですが、これは、国際法上の集団的自衛権の定義の中にあります、自国と密接な関係にある外国という部分についてですが、一般には、外部からの武力攻撃に対し共通の危険として対処しようとする共通の関心を持ち、集団的自衛権の行使について要請または同意を行う国を指すと解されています。そして、国際法上、これはあらかじめ条約等において定めておく必要はない、あらかじめ特定する性格のものではない、このように解されております。

 米国につきましては、これは再三答弁させていただいておりますが、我が国の平和と安全を維持する上で、日米同盟の存在及びこれに基づく米軍の活動が死活的に重要であるというふうに認識をしております。

 そして、我が国の集団的自衛権の議論は今行われている最中でありますし、安保法制懇の報告書の中の「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性があるとき」、こういった限定的な際に、集団的自衛権の行使が従来の我が国の憲法解釈の範囲内かどうか、こういった議論を行っておりますので、我が国として集団的自衛権の要件についてはまだ定まっておりませんので、我が国として、要件に該当する国云々について今の段階で申し上げるのはまだ早いのではないかと思っています。

玄葉委員 何か、安倍総理が、同じような質問に対して、我が国として、2プラス2を行っている国がある、もう一つは、海上自衛隊と共同演習をしている国がある、こういうことを答弁したことがあるわけでありますけれども、2プラス2とか共同演習というのは、これは関係があるんですか。

岸田国務大臣 国際法上も、密接な関係にある国というものは、あらかじめ定めておく、特定しておく性質のものでない、このように解釈をされています。

 我が国としては、集団的自衛権の要件をこれからしっかり確定しなければならないわけですので、その要件に該当する国がどこかということを今の段階で特定することは適切ではないのではないかと考えます。

玄葉委員 きょうはもう時間が来たので終わりますけれども、いろいろ整理しなきゃいけないところが幾つもあるのではないかという印象を持ちました。また引き続き質問させていただきたいと思います。

 きょうは終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小川淳也君。

小川委員 民主党の小川淳也でございます。

 G7の議論でありますが、G7という響き自体が非常に懐かしく感じています。こういうときですから、価値観を共有する国はしっかり連携を深めて一枚岩でやっていくということは大事だと思いますが、一方で、本当にロシアや中国を抜きにして、これからの世界秩序、国際秩序を議論し、実効ある解決策を生み出していけるんだろうかというクエスチョンマークも私の中にはありながら、現在の推移を見守っております。

 その中で、中国に対する名指しの批判というのが飛び交っているという報道がありました。それからもう一つ、最近のアジア安全保障会議、シンガポールでの会議でも、日米と中国が応酬を交わした、空中戦を交わしているという報道もありました。

 そこで、ちょっと基本的な外交姿勢についてお聞きしたいと思います。

 確かに、囲い込みも包囲網も空中戦も大事かもしれません。しかし一方で、本当に問題を抱えていると思われる国との間では、直接対話、膝詰めで、誤解のないように、本人を目の前にして話し合うということが極めて大事ではないかと思いますが、特にアジア安全保障会議でいえば、これは防衛省の対応かと思いますが、中国との間で空中戦をやりつつ、防衛大臣は、日米豪、日米韓、日・ベトナム、ミャンマー、イギリス、フランス、シンガポール、トンガ、ニュージーランドと二国間会談に及んでいるようでありますが、肝心の中国とは全くアクション、モーションが見えてきません。

 その点、外務大臣、包囲網も囲い込みも空中戦も結構ですが、私の申し上げる直接対話に向けて努力をするという点から甚だ不足していると思いますが、その点の認識をお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、先般のG7の首脳宣言ですが、この首脳宣言の中では、海洋の自由ですとかあるいは飛行の自由等、国際ルールとして当然のことを確認した次第でありまして、これは特定の国を名指しにしているものではないと承知をしています。そういった特定の国は首脳宣言の中に明記はされておりません。これは、国際社会として当然守るべき国際ルールについて確認したということであります。これをG7の総意として確認したわけですから、これは中国を含め国際社会全体としてしっかりと受けとめてもらうべきであると考えます。

 それから、先般のシャングリラ対話における安倍総理も、これは特定の国を名指しにしたものではありません。法の支配の重要性を力説したということであります。

 G7の首脳宣言、あるいは安倍総理の演説は、こういった、今申し上げたような内容であると考えておりますが、いずれにしましても、御指摘の中国との対話、これは当然のことながら重要なことであります。

 今、日本と中国、難しい局面にこの二国間の関係はありますが、こうした難しい局面であるからこそ対話が重要だと認識をしております。日本と中国の間において不測の事態も発生しかねない、こうした危険な事態も発生している中でありますので、両国の対話、特に高い政治のレベルでの対話、首脳会談等が行われることは、両国の国民にとっても安心につながることだと思いますし、こういった対話を通じて両国間をコントロールすることが地域や国際社会の平和や安定につながっていくと考えます。

 従来から、我が国は対話のドアはオープンである、こう言い続けております。ぜひ中国側にもこうした対応を受け入れてもらいたいと強く願っております。

小川委員 対話の重要性に触れていただいたことはありがたいことだと思いますが、その努力が不足しているんじゃないかというお尋ねであります。

 折しも、中国からは、王冠中さんですか、人民解放軍の副総参謀長が御出席だったということでありますし、これは防衛省の対応も半分以上責任があると思いますが、そういうことに対するアクション、モーションがもっと見えてくる必要があるのではないかと思います。

 もう一つ、北朝鮮との対話について、特に拉致問題が一定の進展を見せつつあることに対しては心より敬意を表したいと思いますし、また、これが大きな成果につながることを心より御期待申し上げたいと思います。基本的にそういう立場であります。

 しかし一方で、最近の報道ぶりなどを拝見しておりましても、日本政府が拉致問題のみに大変前のめりになって、制裁解除を含めて、対北朝鮮の対話が、日本一国だけが融和姿勢に傾くということに関しては、核やミサイルの問題を抱えている特にアメリカや韓国との関係で、その姿勢が際立ち過ぎるのではないかということを懸念する報道もかなり間々見られます。その点に対する大臣の御認識をお聞きしたいわけであります。

 特に、二〇〇二年の日朝平壌宣言では、日本と北朝鮮双方は、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」とあります。それから、北朝鮮は「ミサイル発射のモラトリアムを二〇〇三年以降も更に延長していく意向を表明した。」とあります。

 日朝平壌宣言は生きていますよね。ここに対しては、ひとり日本のみならず、関係諸国を含めて相当大きな期待が込められた日朝平壌宣言ではなかったかと思います。

 こういうことも含めて、拉致問題が極めて重要な問題であることはもう論をまちませんが、しかし、日朝間に横たわる課題は、あるいは日朝に限らず、他の連携国、友好国との間を含めて極めて重大な問題を別に抱えているということとのバランスをこれからどうとっていかれるのか、その点、お聞きいたします。

岸田国務大臣 まず、北朝鮮との間のさまざまな問題につきましては、まず、拉致問題は我が国として特に主体的に対応しなければならない問題ではありますが、従来の我が国の方針、ミサイル開発、核開発、そして拉致問題、こうした諸懸案を包括的に解決していく、こうした基本的な方針は従来と全く変わっておりません。

 そして、その中で、核、ミサイルにつきましては、北朝鮮は引き続き開発を継続しております。これは、御指摘の日朝平壌宣言、あるいは六者会合の共同声明、さらには累次の国連の安保理決議、これに明らかに違反をしております。我が国として、これは東アジアの平和と安定に対する脅威であり、絶対容認はできないと考えております。

 ぜひ、今後とも、米国、韓国を初め関係国としっかり連携しながら、こうしたミサイル開発、核開発につきましても、北朝鮮の前向きな行動をしっかりと求めていかなければならないと考えています。

 ぜひ、こうした諸懸案を包括的に解決していくという方針は、関係国にもしっかり理解を得るべく丁寧な説明は続けていきたいと考えています。

小川委員 私が指摘している構図といいますか、その点については、もちろん、大臣も十分にお考えいただいていることと思いますが、改めて確認をさせていただき、関連して、きのう、G7の会場内だと思われますが、総理とオバマ大統領が十分程度立ち話をしたというようなことが報じられています。その中で、北朝鮮に対する向き合い方も話題になったのではないかというようなことが報じられております。今私がお尋ねした観点から、このオバマ大統領との立ち話に関して大臣はどう認識しておられるのか、いないのか。

 それからもう一点、今般の北朝鮮との合意事項でありますが、今申し上げたような観点からいいますと、調査開始時点で制裁解除に踏み切るというのは甚だ早計ではないか。後々はしごを外されたり、思ったような成果につながらなかったりというリスクがあり、一方では、先ほど申し上げたような、関係諸外国との間でまさるとも劣らぬ重大な問題を抱えているという背景もあり、これは、調査を開始した時点で制裁を解除するというのは早計に過ぎるという受けとめがあると思います。

 この二点、オバマ大統領とのきのうの立ち話、そして、調査開始のみをもって制裁解除することの、いささか前のめりな姿勢と受けとめられかねない点、二点、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、オバマ大統領と安倍総理の立ち話でありますが、北朝鮮に関しましては、安倍総理から、日朝政府間協議の結果について説明し、今後とも引き続き日米で連携して対応していくことで一致した、こういった内容であったという報告を受けております。

 そして、調査を開始する時点で制裁の一部を解除するということ、この点について御質問をいただきました。

 今回、日朝間で協議を行い、一つの一致を見たわけですが、その中で特別調査委員会の立ち上げが確認をされました。この特別調査委員会の実効性をしっかりと確保することが第一歩として何よりも重要だと認識をしております。

 今回、特別調査委員会の立ち上げに当たって、調査を開始するまでに、この委員会の組織ですとか構成ですとか責任者、これを明らかにする、こういったことで日朝間で合意をしています。そして、その調査が始まりましてからも、さまざまな調査の内容につきまして日本側にしっかりと通知、連絡をしていくこと、さらには、調査の実態につきまして、実効性、内容をしっかり確認するために日本側がかかわっていく、こうした具体的な内容についても文書において確認することができました。

 こういった取り組みによって特別調査委員会の実効性をしっかり確認し、そして制裁措置の一部解除を行う、こういった合意をした次第であります。

 ぜひ、こうした文書での確認、そして協議の内容等を踏まえまして、この特別調査委員会の実効性を高めるべく最大限努力をしていきたいと考えています。

小川委員 なかなか一筋縄ではいかない相手と交渉しているということと、そして、特にアメリカ、韓国との間でまさるとも劣らぬ重大な背景を抱えているというこの二点に改めて御留意をいただきながら、しかし、一定の成果につながることを心より御期待申し上げたいと思います。

 最後に、前回、質問の機会をいただいたときに、集団的自衛権の行使と日米安全保障条約との兼ね合いをお尋ねいたしました。大臣は早々と、日米安全保障条約の見直しは視野に入っていないという御答弁でございました。しかし、そのときは通告が十分でなかったこともございまして、余り議論が深まらなかったような気がしております。

 それに関連して、私自身、ちょっと最近こう感じています。

 基本的に、この集団的自衛権の議論を個別事例の積み上げで深めていくという総理なり政府の姿勢に対しては一定の理解をしています。余り抽象的、観念的に議論しても得るものは少なく、大事なのは個別事例に対する具体の対応だというその姿勢に関しては一定の理解をする立場であります。

 しかし、そうはいっても、最近の議論を見ておりますと、メーンストリームとは思えないような、こんなことは本当にあるのかといったような事例も含めて、ちょっと言葉はあれですが、非常に瑣末な限界事例、周辺事例と言わざるを得ないようなケースを、しかも複数、多数並べ立てることで、この集団的自衛権の本来持つ意味なり意義がかえって見えにくくなっている。そのことが議論の本質を見誤らせたり、あるいは時に国民に誤解を与えかねなかったりというおそれも出てきているということを私は危惧しております。

 そこで、ダイレクトにお尋ねしますが、邦人保護とか邦人護衛とかがこの集団的自衛権の本来の意味ではなく、同盟関係にあるアメリカとの間で、日本がやられたときはアメリカに守ってもらえる、アメリカが攻撃を受けたときは日本はほっておけないでしょう、アメリカへの攻撃に対して日本も実力を行使しなければ同盟関係を維持できないという、そこの双務性の議論こそがこの集団的自衛権の議論の本質だと思いますが、大臣、その点の認識、お聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 いろいろ重要な点に触れていただきました。

 まず、冒頭、集団的自衛権の議論と日米安保条約との関係について、私が安保条約を改正するつもりはないという答弁をしたという点について触れていただきました。

 我が国は、今、我が国の国民の命、暮らしを守るために安全保障の法的基盤をどうするべきなのか、こういった議論を行い、その中で、限定的な集団的自衛権の行使等も含めて議論を行っている最中ですが、まず、日米安全保障条約自体は、これは、我が国の施政下における武力行使、個別的自衛権という考え方に基づいて安全保障条約の履行が考えられておりますので、安保条約自体の改正は考えていないということであります。

 そして、さまざまな事例、どうも実際はあり得ないような事例を挙げて議論が混乱しているのではないか、こういった御指摘もありました。

 しかし、こういった事例は、一つ一つ、決してあり得ないことではないと考えていますし、いずれにしましても、あらゆる事態に切れ目のない対応を行っていく、こういったことのためにしっかり準備をしていく、こういった考え方は重要なことなのではないかと考えます。

 ぜひ、こうした議論は、具体的な事例に基づいて、丁寧に今後とも進めていきたいと考えております。

小川委員 大臣、御答弁の中で、個別的自衛権に基づいて日米安保条約ができているという御答弁であれば、集団的自衛権の行使に踏み切るのであれば、憲法解釈を変更するのであれば、なおさら、新たな事態を想定した日米安全保障条約というのはあっていいという議論に論理的になると思いますよ。

 それから、切れ目なくあらゆる事態に対応するためにも、個別事例を議論することは大事ですが、その大もとになる考え方、抽象論、一般論をしっかり押さえていく必要が逆にあるんだと思いますよ。

 そこで私が申し上げているのは、集団的自衛権行使の本質は米軍の防護にある。邦人保護とかなんとかじゃない。アメリカ軍が攻撃されたことに対して日本国として貢献していくという同盟の実質化というところにあるんだと思います。そして、それはすなわち、ひいては日米安全保障条約の見直しにつながり、現に、事務的にお聞きしたところでは、米韓安全保障協定の中には相互防衛義務が入っている。そうあるべきだと思いますよ、この議論を本格的にやるのなら。そういうことを射程に置いた議論こそすべきだ。

 そして、ひいては北朝鮮が、考える限り、最大の蓋然性の高い事案です。であるならば、日韓との間の安全保障協定、しかも相互防衛貢献、相互援助を含めた日韓の間のしっかりした協定という世界に踏み出していくということを正面から議論してこそ、私はこの議論は意味あるものになると思います。

 世論に配慮しているのか公明党さんに遠慮しているのかわかりませんが、具体的と言えば、それは格好いいかもしれません。しかし、本当にささいな、ささいなという表現はお叱りをいただくかもしれませんが、限界事例を複数並べ立てることで極めてこの議論の本質を見えにくくしている。しかも、はなから日米安全保障条約あるいは日韓との防衛安全保障協定のような議論を度外視していることで、射程外に置いていることで、極めてそのこともわかりにくい議論になっている。

 したいなら、正面からしたらいいと思う、この議論は。そのことを指摘したいと思います。御答弁があれば、どうぞ。

岸田国務大臣 まず、日米安全保障条約ですが、五条において、我が国の施政下における武力行使に対して日米で共同で対処するということを定め、六条において、我が国の平和そして極東の平和と安定のために、米軍が我が国の施設・区域を使用するということを定めています。

 日米安全保障条約、それぞれの義務は同一ではありませんが、これはバランスがとれているというふうに認識をしております。双務性について触れられましたが、日米安全保障条約全体はそういったバランスの中にあると認識をしております。

 そして、何よりも、今行われている議論は我が国の安全保障についての議論であります。我が国の国民とそして平和な暮らしを守るためにはどうあるべきなのか、これを我が国が主体的に議論しているわけであります。もちろん、この議論がさまざまなことに影響することは否定はいたしませんが、何よりも、我が国として自分たちの国民と暮らしを守るためにどうあるべきなのか、これが議論の中心になければならないと認識をしています。

小川委員 また機会を改めます。

 ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 おはようございます。日本維新の会の小熊慎司でございます。

 五項目ほど通告をさせていただいておりますけれども、きょうの質疑の中でも、中越の領海の問題については既に鈴木委員また黄川田委員がすばらしい質問をされましたので、ここは私なりの御提言というか考えを述べさせてもらいたいと思います。

 きょうも、ベトナムの漁船が中国の船に体当たりされて沈没する映像が公開をされておりましたけれども、まさに法の支配、領土、領海といったものは二国間で解決すべき問題でもありますけれども、やはり力による現状変更は認められないという、ロシアの問題もありますし、これはしっかりと国際社会の中で正義を貫いていかなければならないわけでありますので、周辺諸国、また国際社会の中での連携といったものでしっかりと対応していくべきだというふうに思いますし、先ほどの大臣の答弁でもそのような方向性が示されたということは大変よかったなというふうに思います。しかしながら、具体的にどうしていくかということは、これから大臣のもとでしっかりと検討して実行していくことを期待しているところであります。

 次の質問に移ります。

 四日の日に外務省の飯倉公館で全国市長会議のレセプションが行われましたけれども、私も少しだけ出て、石原政務官、木原政務官に挨拶して、その場を去らざるを得ない我が党の党内事情がちょっとありまして、大変じくじたる思いで会場を後にしたんです。その後、私の地元福島県のフラガールが出演をされたり、また、地元のいわき市の清水市長からもコメントがあったりして、第七回の島サミットも、前政権の玄葉大臣のときに、次回は福島で、福島は島だということで決めさせていただいて、それから推測すると、第八回は広島でやるのかなというふうに推測もしているんですけれども、とりあえず、島サミットが福島の地で行われるということは、非常に復興にも寄与するということでもあります。

 そういった中で、地元のいわき市の清水市長が、この島サミット、これは太平洋島嶼国の発展についての会議でありますけれども、一方で、開催地の思いであれば、やはりいろいろと連携しながら、復興の姿をまた世界に発信していくいい契機になるのではないかなというふうに地元の期待も高まっているところでありますので、来年のことではありますけれども、そうした観点から、どのように取り組んでいくのか、お聞きをいたしたいというふうに思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 島サミットでございますけれども、太平洋・島サミットということで、三年に一度、これまで六回開催してきておりまして、地域全体の繁栄や首脳レベルでの関係強化に努めてきておりまして、参加国からも、これまでも非常に高い評価を得てきているところでございます。

 委員御指摘ございましたように、二〇一五年の第七回サミットはいわき市で開催いたしまして、自然災害への対応といった問題を含めて、島嶼諸国と関係を一層緊密にするための協力のあり方というものを検討し、それを成果として発信することによって、地域の一員として日本がともに働く姿勢を示すことができるというふうに考えているところでございます。

 また、この機会に、参加いたします首脳に被災地を訪問していただきまして、復興の状況を直接見ていただくことによりまして、被災地全体の復興と活力というものを力強く発信することができるのではないかというふうに期待しているところでございます。

小熊委員 私、その際にぜひ考慮に入れていただきたいなというふうに思うのは、これまでこの委員会でもたびたび質疑させていただいていますけれども、福島の原子力災害は、まだ続いている、現在進行形の災害でもありますけれども、その中でも、しっかりと福島県民一丸となってこれに対応しているわけであります。国際的な風評被害、間違った情報が伝わっている、また現状がしっかりと認識されていないというところもありますので、この間の委員会でも、「美味しんぼ」の話とか、そういうこともやりましたけれども、国内でもこういうところがありますので、そうした福島の現状、風評被害対策といったものも含めて、正しい情報が世界に発信されていくように、自然災害ということだけではなくて、原子力災害というのは自然災害ではありませんから、その観点からもぜひそうしたアプローチを求めていただきたいというふうに思いますし、また、地元自治体との連携をしっかりと強化していただきたいなというふうに思っています。

 この島サミットに向けて、今まで我々国会内にもいろいろな議連があったんですけれども、島嶼国全ての議連があったわけではありませんが、とりわけ元総理の森先生の御尽力で、今月の十七日には超党派の島嶼国の議連も立ち上がるところでもありますので、そして我々議員としても、党派を超えて、このサミットの成功、また島嶼国の発展、連携についてはしっかりと力を果たしていきたいなというふうに思いますので、これからサミットに向けていろいろとまた密に議論をしていきたいなというふうに思っております。

 次に移りますけれども、昨日、英国大使館におきまして、紛争下の性的暴力予防イニシアチブ、いわゆるPSVIの勉強会が開催され、さまざまな議員が参加されました。私も参加予定であったんですが、これまたよくないことに党内事情で参加できなくて、大変じくじたる思いで、本当にもう参っちゃっているんですけれども。今まで、紛争下での学校の軍事利用を避けるべきだというふうな話もありまして、これも同じようなテーマでもあります。

 このPSVIについては、これから国際的な会議も開かれていく中で、日本政府におきましても、日英共同声明の中でも、日本がこれに積極的に取り組んでいくということが確認をされているところでもあります。これは具体的にどう取り組んでいくのか、お示しをいただきたいと思います。

石原大臣政務官 小熊委員にお答えいたします。

 今ちょっと確認をしたんですけれども、岸副大臣がその英国大使館の勉強会の方に参加をしているようでありますけれども、一昨年五月に英国のヘーグ外相が立ち上げた紛争下の性的暴力防止イニシアチブ、いわゆるPSVIについては、我が国としても積極的に協力していく方針であります。昨年九月の国連総会での一般討論演説で安倍総理が述べたように、紛争下の性的暴力を予防しつつ、不幸にして被害を受けた方々を物心両面で支えるために、我が国として積極的に貢献していく考えであります。

 来週、六月十日から十三日にロンドンで、紛争下における性的暴力の終えんに向けたグローバルサミットが開催されるところでありまして、我が国代表として岸外務副大臣が出席し、我が国の取り組みについて紹介するとともに、各国、国際機関との間でPSVIに関する今後の課題や取り組みのあり方などについて意見交換をする考えであります。

 一つの今までの取り組みとして、アフリカ、中東等における性的暴力防止のための紛争下の性的暴力担当国連事務総長特別代表、SRSG事務所等の国際機関に対して、二百十五万ドルの拠出を昨年の補正予算で行っているところであります。

小熊委員 この勉強会は私、残念ながら参加できなかったんですが、その前に英国大使館の方といろいろ意見交換をさせていただいた中で、まさにどういう支援が日本から必要なんでしょうかということをその場でお聞きして、今政務官からも、物心両面でやっているんだといって、予算の話も出ましたけれども、ざっくばらんにお金ですかという話をしたんですが、お金もありながら、やはりこの分野に関しての日本の人材の活動の場、活躍の場、かかわり方をどんどんふやしてほしいというようなことを言われました。

 そういう意味で、この人材的な支援というものに関してはどうでしょうか。

石原大臣政務官 資金面の支援に加えて、やはりこの分野における知見や経験を蓄積した専門家というものを育成していかなければいけません。そうした問題意識から、直近ではありますけれども、今月の四日に、関係省庁や専門家による会合、プラットホームを立ち上げ、今議論をスタートしたところであります。

小熊委員 私も、先進国の中でお金だけが期待されているのかなというふうに思っていたんですが、いや、日本はすばらしい人材が多いので、ぜひ人材の協力をお願いしたいという期待がすごくありますよというふうに言っていただきました。

 その後も、いろいろ議論したり、私なりにさまざま検証したんですけれども、人材で協力をしていくということは、ひいては、そういった人材がまた、国内においても、ある意味、こうした大切なテーマの国民への啓蒙にもつながってくるというふうに思いますので、この人材育成、そして協力といったものをぜひ拡大していくような形、そしてまた、国内にフィードバックをしていくというところもあわせて検討いただいて、今月のこのロンドンでの会議においては、そうした提案が日本政府としてもできるようなことをぜひ期待したいというふうに思います。

 これだけに限らないんですけれども、たびたびお話もさせていただいていますけれども、協力隊を初め、日本の人材というのが世界にどう寄与していけるのか、そしてまた国内にフィードバックしていくのかというのは、本当に今、重要なところに来ているというふうに思いますし、これはしっかりと日本がリーダーシップを発揮できる分野でもあるというふうに思いますので、ぜひ期待をして、またしっかりと具体的に実現をしていっていただきたいと思いますし、きょうは答弁でそういう方向でもやると言いましたから。ただ、この後検証させていただいて、あれはちょっとと言われたらまた議論させていただきますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 次に、ODAの件に移ります。

 ことしは日本のODA六十周年、まさに選択と集中、そして拡大へと転換をする契機になる年だというふうに思っていますけれども、ここに来て、この間もちょっとこのODAの問題をやりましたけれども、これは相手国の方の問題ではあるんですが、ベトナムのリベート問題、これは、日本も、ちゃんとしてくださいということで今とめているわけでありますけれども、ベトナムにおいては日本が一番ODAを出している国ですから、ベトナムにとっても大きな痛手だというふうには思います。

 報道等によれば、これは相手国の方が原因ではあるんですけれども、さはさりながら、日本としても、再発防止にもう少し関与できないのかなというふうに思うんですけれども、このベトナムのリベート問題への今後の対応について、現状を含めてまずお伺いをいたします。

大菅政府参考人 御指摘のベトナムの不正問題についてお答え申し上げます。

 御指摘の事案は、鉄道コンサルタント会社である日本交通技術株式会社、JTC、この会社が、ベトナムほか二カ国におけるODA事業において、相手国実施機関の関係者に対してリベート提供を行っていたことが疑われるというものでございます。

 三月二十日の報道で出たことを受けまして、このJTC社が設置いたしました第三者委員会が四月二十五日に報告書を発表いたしまして、リベート提供の事実があったということを認定しております。

 この報告書によりますと、ベトナムにおきましては、円借款事業として整備を進めておりますハノイ市都市鉄道一号線、この設計等の業務を受注したJTC社の社員が、発注者であるベトナム鉄道公社の関係者に対しまして、二〇〇九年十二月から二〇一四年二月までの間に総額六千六百万円を提供していたというふうにされております。

 これを受けまして、外務省そしてJICAとしましては、JTC社を新規のODA事業から一定期間排除するという措置を講じたところでございます。

 また、ベトナム政府との間では、ODA交通案件における不正防止のための対策協議会といったものを設置いたしまして、今次の不正事案に係る事実関係の調査、それから、ベトナム側には、関係者に対する処置、それから再発防止策の策定等を強く求めているところでございます。

 この二日に石兼国際協力局長が現地に出張いたしまして、先方政府との間で第二回の協議会を開催いたしました。そこで、不正が指摘された契約への円借款の貸し付け停止、必要な措置がとられるまでの新規案件の採択停止等の方針をベトナム側に伝えたところでございます。

小熊委員 これは、求める方も求める方でしっかりしなきゃいけないんですけれども、払う方も払う方であって、これはベトナムには厳しい措置というか、当然の措置だと思いますし、ベトナムにおいてはしっかりと再発防止の案を示していただいて、また再開できるように努力を期待しているところであります。

 これは、我が国内の会社で、国内のルールに基づいて処罰はしているんですけれども、はっきり言ってちょっとそれが軽いんじゃないかなというふうに思います。これは崇高なODAを汚しているんですよ。こういう事件が出るたびに国民のODAへの理解も失われていくんですね。単なる公共事業の不正でのペナルティーと同じレベルではなくて、もっとこれを厳しくやっていく検討が必要だと思うんです。

 国内のいろいろな公共事業の不正は、国内のことですから、日本文化、日本の社会、日本の企業風土を背景としてやっていますけれども、これは国際的な、それぞれの国の事情とかがいろいろある中でやっている事業でありますので、これは、国内の会社に対してのペナルティー、また再発防止のために、新たな方策を再考すべきだというふうに思うんですけれども、その点についてはどうでしょうか。

大菅政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の不正事案についてとりました措置、それぞれ外務省もJICAも、決められた規定に基づいて厳しい措置をとっていると思いますが、この規定自体をさらに厳しくするかどうか、この点につきましては、今般のベトナムだけではなくて、インドネシア、ウズベキスタン、三カ国に対してリベート提供があったというのが疑われておるわけでございますが、この件につきましての事実関係の調査をまずきっちりとした上で検討していくということになると思います。

小熊委員 これは、ODAに人格があったら本当に名誉毀損で訴えたいぐらいの話ですから、すばらしいODAを汚すような行為はもう許しがたい。本当に国民にも間違った印象を与えてしまいますので、ぜひこれは厳しく対処できるように御検討いただきたいというふうに思います。

 また、このODAの見直しに向けた議論が進んでいるところでありますけれども、現大綱の中では、「軍事的用途及び国際紛争助長への使用を回避する。」という原則が定められているところであります。つまり、ODAによる物資が支援国の軍隊に提供されないように、これを禁じているわけであります。こういった姿勢、こういった方向性が、国際的には、日本の国際貢献、ODA事業といったものの理解を進めてきたところでもありますし、また、他国に比べて日本のODAの評価が高いというところの一つの事由でもあるというふうに思います。

 この原則の重要性を踏まえた上で見直しを図っていかなければならないわけでありますけれども、一方で、昨年十二月に閣議決定された国家安全保障戦略においてはODAの戦略的活用が明記されていて、政府内だけではなくて、民間レベルでもそのことについてさまざまな議論がされているところであります。

 今、現大綱にある軍事的用途を禁じている部分を踏まえて、そこの部分に関してはどのように見直しを図っていくのか、大臣にお聞きをしたいと思います。

岸田国務大臣 現在のODA大綱は、前回改定されてから十一年がたとうとしています。その間、国際社会の環境は大きく変化いたしましたし、何よりも、ODAに対して求められる役割といったものも変化していると認識をしています。加えて、今、国際社会においては、ポストMDGs、新たな開発目標策定に向けた議論が行われています。

 こういった状況ですので、ODAもさらなる進化を遂げなければならないといった認識のもとに、改定の議論を進めていきたいと考えています。現在、有識者会議におきまして御議論いただいております。できれば今月中には報告書をいただき、年末までに改定作業を行いたいと考えております。

 こういった状況ですので、今の段階で私から内容について確定的なことを申し上げるのは控えなければならないのかもしれませんが、ただ、御指摘の軍事目的の利用の部分につきましては、従来の軍事的用途及び国際紛争助長への使用の回避の原則、この原則との関連で、ODAを軍事目的に利用すること、これは今後とも考えておりません。この点については、ODA大綱の見直しに際し、この基本的な考え方を変えるつもりはないということだけはぜひ申し上げておきたいと存じます。

小熊委員 いい答弁をしていただいたなというふうに思っています。

 ぜひ、そういう意味でも、国民的な情報発信、先ほど言った昨年の閣議決定の中で、戦略的に活用していくということが、ある意味、うがって捉えられている、歪曲して捉えられている部分で、いろいろな人が騒いでいるところがあるのも事実でありますから、今の大臣の答弁というのは、そういった誤解を解くいい答弁だったというふうに思いますので、そういうのもぜひ広く発信をしていただきたい。

 残念ながら国会はもうすぐ閉じてしまうわけでありますけれども、この大綱については、秋の臨時国会においてでもしっかりと議論していきたいというふうに思いますし、その大綱の中には選択と集中と拡大という言葉がついていることを隣の城内委員と一緒に願いつつ、秋の臨時国会も短いことで終わらず、長くとっていただいて、しっかりと議論できることを御期待申し上げ、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

鈴木委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 きょうは、まず最初に、先日の日朝政府間協議での合意、日朝合意について質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど小川委員からも御指摘がありましたが、私も、北朝鮮が誠意ある調査を行う保証がない中で日本が拉致問題解決のためにこれまで実施してきた制裁措置を解除するということ、これは大変に大きなリスクがあると感じております。

 そこで、質問させていただきたいんですが、まず、現地で行う調査が本当に実効性のあるものになるのかどうか、それを担保する上で、私は、まず、金正恩第一書記によってこの特別調査委員会にどこまで権限が付与されているのか、その点についてどのように合意、確認をしているのか、この点について質問させていただきたいと思います。いかがでしょうか。

岸田国務大臣 今回の日朝協議において確認された点、一致した点でありますが、御指摘の特別調査委員会は、全ての機関を対象とした調査を行うことのできる権限、こうした特別の権限を付与されるとされております。加えて、調査を開始するまでに、組織ですとか構成ですとか、それから責任者、こういった具体的なものを明らかにする、こういったことで合意をしている次第です。

阪口委員 あくまでも先日の合意は、政府間の合意ということで、いわば官僚レベルの合意だという意識で私は理解しているんですが、北朝鮮という国は独裁国家であり、そして金正日総書記が拉致問題は解決済みであるという姿勢を以前示していた、そういった状況を覆すためには、この調査委員会が、金正恩第一書記によって権限が付与されているということが確約されていなければ、私は本当の意味で実効性のある調査にならないのではないかと大変に危惧をしているわけでございます。

 重ねての質問ですが、この点について確認をさせていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、今回の合意は、日本と北朝鮮、両国の政府間の合意であります。そして、御指摘のように、かつて北朝鮮が拉致問題は解決したという態度をとっていたのは事実ではありますが、今回の合意において、少なくとも調査に関しまして、具体的な、そして前向きな行動を示したということであります。

 この調査の実効性を高めるために、全力で取り組んでいかなければならないと存じます。その上で、しっかりとした結果に結びつけるよう、日本政府としても全力で努力をしたいと考えます。

阪口委員 ちょっと私の表現が誤っていた点、訂正します。私が申し上げたかったのは、あくまでも交渉したのが官僚レベルであって、そこに、政府間とはいっても、少なくとも先方の金正恩第一書記の関与がどこまであるのかということが、私は、報道あるいはこの合意文書の中では十分に確認できなかったものですから、そのような表現をさせていただいたわけです。

 私は、全ては結果だと思うんですね。ですから、この拉致問題解決、そして、私がこれまでの外務委員会の中でも申し上げてきました、北朝鮮において人道的に大変厳しい状況にいらっしゃる方々は、拉致被害者だけではなく、一九五九年以降の帰国事業の中で帰国された日本国籍を持っていらっしゃる方なども同様でございます。もちろん、特定失踪者の方々もそうでございます。

 ですから、こういった方々が本当に今回の調査によって日本に帰国できる環境を整えること、その担保がされることと、そして同時に、結果が全てでありますから、しっかりとした結果がもたらされた上で制裁を解除するというのが、これまでの北朝鮮のさまざまな不誠実な対応を見る限りにおいては絶対必要だと思うんですが、なぜ調査を開始した時点で制裁解除という判断になったのか、この点、大臣の考えを確認させていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、今回の合意におきまして調査の対象になりましたのは、一九四五年前後に北朝鮮域内で死亡した日本人の遺骨及び墓地、残留日本人、いわゆる日本人配偶者、そして拉致被害者及び行方不明者を含む全ての日本人に関する調査であります。こうした全ての日本人にかかわる問題について調査の対象としたわけですから、ぜひ、こうしたさまざまな分野にわたる日本人の問題の解決に向けて努力をしなければならない、まず基本的にそのように思っています。

 そして、なぜ調査が開始される段階で措置の解除を決めたのかという質問でありますが、結果を出すために、北朝鮮側の前向きな行動をしっかりと求めていかなければなりません。その大前提がこの調査であります。ですから、今は、この調査の実効性を高めることに全力を挙げなければなりません。

 そして、この調査の実効性ということにつきまして、先ほど来説明させていただきますように、まず、特別調査委員会にしっかりとした権限を与えること、そして、立ち上げの段階で組織や構成や責任者を明らかにさせること、さらには、この文書の中で、この調査において随時日本側に通報する、さらには、日本側関係者による北朝鮮滞在、関係者との面談、あるいは関係場所への訪問の実現、そして関係資料の日本側との共有、こういった具体的な対応につきましても文書として明らかにした次第であります。ぜひ、こうしたことを頼りに実効性を高めていかなければならないと思っております。

 今回開始する時点におきまして、北朝鮮に対してとっている我が国の措置の一部を解除するという対応についてもぜひ御理解をいただき、ぜひ、オール・ジャパンでこの問題について取り組み、結果を出すよう努力をしていきたいと考えています。

阪口委員 先ほども申し上げましたとおり、結果が全てだと思います。また、一部の被害者が帰国したことをもって、これが全面的に解決されたというような評価をしてはならないと思います。ですから、北朝鮮がこれまでになくこの問題解決のために前向きな姿勢を示している、これは私も感じているところでございますが、とにかく、日本国籍の方々、本当に生きて日本の土を踏みたいと思っていらっしゃる方々の帰国が実現するように、この調査のプロセスを我々は厳しく監視していく義務があると思っています。

 私、大変気になることは、例えば、北朝鮮の調査委員会のメンバーが一定の権限を付与されて、拉致被害者あるいは失踪者、また日本国籍者に面接をしたときに、彼らは、日本に帰国したいということはなかなか言えないと思うんです。これはこれまでの経緯からも容易に想像できることです。日本側が現地訪問などをして情報を共有できる、そういったことも合意されていると聞いておりますが、私は、やはりこの調査のプロセスに踏み込んだ形で日本側が監視そして関与しないことには、ヒアリングした結果を、北朝鮮の政府にとって都合のいい形でこちらに伝えられる、そのことをしっかりと確認できないと思うんですね。

 ですから、私の要望としては、例えばDNA鑑定などの科学的調査をこの調査の中にしっかりと入れること、そして同時に、できる限りこの調査自体に、日本人が、日本からの調査が、後から聞いて確認をするということではなくて、ヒアリング自体にも関与できるようにしっかりと交渉すべきだと思いますが、この点はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、帰国ということについてお触れいただきました。

 なかなか帰国が言い出せないのではないか、こういった御指摘でありましたが、今回、合意文書の中において、「調査の過程において日本人の生存者が発見される場合には、その状況を日本側に伝え、帰国させる方向で去就の問題に関して協議し、必要な措置を講じることとした。」この一文を明記したということは意義があったと考えています。ぜひこの辺もしっかりと実行につなげていかなければならないと思います。

 そして、日本人が調査に関与するべきではないか、こういった御指摘でございます。

 この文書の中で、調査の進捗に合わせ、日本側の提起に対し、それを確認できるように、日本側関係者の北朝鮮滞在ですとか、関係者への面談ですとか、関係場所への訪問ですとか、あるいは関係資料を日本側と共有するですとか、こういった具体的なものを列記し、適切な措置をとる、こういったことを文書の中に明記しております。これを手がかりにぜひ具体的な効果のある調査を進めるべく、北朝鮮側としっかりと協議をしていきたいと考えます。

阪口委員 次に、ミャンマーにおいて日本が官民を挙げて進めているティラワ経済特別開発事業について御質問をさせていただきたいと思います。

 私も、このティラワ開発区については二年前に訪問をしました。当時は、これが二〇一五年までに開発されるのかと思うぐらい、まだ本当に何もない場所でありましたが、その後、どのような開発がされるのか、さまざまな機会を通して注視をしてきた次第でございます。

 これは、日本にとって本当に理想的な、現地の住民の方々の人権や環境にも配慮し、同時に、日本が、ミャンマーという経済的にも大変可能性がある国に対して、開発プロジェクトを通してより多くのミャンマーの国民の方々の福祉に貢献できる可能性がある、そういった大変に大きな理想を掲げたプロジェクトであると理解をしております。

 ところが、先日、現地の住民の方々にヒアリングを行う機会がありまして、その結果、さまざまな不満を持っている、必ずしも理想どおりに物事が進んでいないということを住民の口から聞く機会がありました。

 私は、同時にJICAの方々にもヒアリングを行って、これはどうしても、現地の方々とプロジェクトを進める側、受けとめ方の違いというのは当然あるものだと感じていますので、双方からの評価といいますか、この事業のプロセスについてお伺いをさせていただいたんです。

 やはり、JICAの方々、外務省の方々は誠実に事業に取り組んでいるとは思うものの、これを理想的な事業に共同でつくり上げていくためには、住民の方々のさまざまな声をより受けとめていく姿勢が必要であると思っています。

 具体的に質問させていただきますが、まず、私が非常に気になった現地の声は、一九九七年に、今の経済開発が進められる前に、同じ場所ではありますけれども、住民に対して立ち退きを求める、そういった強制的な措置が既にあったと聞いております。当時は、一エーカー、四千四十六平米当たり二万チャットという額で立ち退きをさせられて、ただ、その後、放置をされた。そして、二〇一三年に、再び立ち退けと言われたにもかかわらず、もう既に一度補償がされているから新たな補償はありません、このように言われたということでございます。

 一つは、これはミャンマーで初めての国際基準準拠の住民移転計画でありまして、私は、住民の立ち退きに関しては大変丁寧に現地の声を聞いているとは思いますが、ただ、今私が申し上げた方々に関しては十分なカバーがされていないというのが現地の声でございます。この点についてどのように認識しているのかということが一点。

 一九九七年、ミャンマーは、実勢レートと公定レートが異なるものだったんですね。ですから、二万チャットというのは、実勢レートでいうと本当に二十ドルぐらい、一平米が一円弱という大変に安い価格でございます。一方、公定レートは、一ドルが大体六チャットぐらいですから、その二十倍近い価格になるわけですけれども、これは当時、どちらのレートで計算をされたのかということもあわせてお答えをいただきたいと思います。

植澤参考人 先生のただいまの御質問に対して、JICAよりお答えさせていただきます。

 まず、一九九七年の件でございますが、これは御案内のように、ミャンマーが民政化する前、今から十七年前のことではございますが、私どもも、今回の開発をするに当たって、土地の所有権等々を正確に把握する必要があるという観点から、今先生が御指摘された点についてミャンマー側に照会した経緯がございます。

 そのときの先方の説明でございますが、当時、九七年でございますが、まず、そこにいた住人に対しては新たな移転地を提供する、また、農業を営んでいた者には農地に対する補償をするということ等々で、一種の補償がございました。そして、特に、今御指摘のあった農地の補償額が、先方政府の説明によりますと、御指摘のとおり一エーカー当たり二万チャットが支払われたということは事実でございます。

 ただ、そこに若干説明を加えさせていただくとすれば、ミャンマーは、当時の体制の中で、一九五四年に土地の国有化というのもしておりまして、事実上、我々が概念する所有権というものはございませんでして、一種の土地使用権のようなものがございました。それは、法律というよりは、慣習上、その種の土地使用権の売買が行われていたということでございます。

 当時、ミャンマー政府は、その補償額を算出するに当たり、周辺地域の農地使用権の売買価格をもとにこの二万チャットというものを算出したということでございます。確かに多い少ないの議論はあると思うんですが、ミャンマー政府によりますと、当時の市場価格は八千チャットであったということを我々受けております。したがいまして、その当時の手続としては一定の手続が踏まれたものと我々は認識しております。そして、事実、合意された証拠のようなものもあるというふうに聞いております。

 一方、JICAが融資という形でかかわる今回の特別区の開発でございますが、ここの意義等については、冒頭、既に先生の方から非常に深い御理解の御説明をいただきましたので、その部分は省きますが、まさに御指摘のとおり、これはミャンマー政府にとりまして初の国際基準の移転計画の実施でございます。

 当該住民たちが民主的に移転できることは当然ミャンマー政府の一義的な責任ではございますが、ODAという血税がつぎ込まれた事業でございますので、JICAといたしましては、その開発が、JICAガイドラインに沿った形、すなわち国際基準になるように住民移転が達成されるように、助言、支援を続けていこうと思います。

 ただ、先生御推察のとおり、正直申し上げまして、住民移転は簡単な作業ではございません。ミャンマー政府と住民等関係者が対話を通じ課題を一つ一つ解決していくことが重要であると考え、JICAとしては、精いっぱい、真摯に側面支援それから助言を続けていきたいと思いますので、この点御理解いただければと思います。

阪口委員 ありがとうございます。

 今御説明をいただきましたが、一九九七年当時のミャンマーというのは、私が知る限り、強制労働あるいは強制移転というのが、住民の合意、とても国際的な基準で合意と言えるような基準ではない形で行われる、そこに異議申し立てを行うというのは、直ちにその住民の生命の危機につながっていく、そういう状況であったと私は認識しています。

 ですから、その当時にそういった形で土地の使用権の移転があったとして、今は国際基準に従った補償があるというと、このギャップというのは大変大きなものなんですね。これは、こうしたプロジェクトをより理想的な形で実施していくためには、仮に当時そのような合意がされていたとしても、住民の声を真摯に聞いた上で、どのような解決策がベストなのかということは、やはりこれはしっかり話し合って決める必要があると思います。

 私の理解では、住民にとって、この点についてのJICAとの対話、話し合いが、少なくとも彼らは十分だと受けとめていないということでございましたので、ぜひこの点については、より大きな理想を掲げたプロジェクトとしては、当時移転させられた住民の声をしっかり聞いていただきたいと思います。

 同時に、移転先の住環境にさまざまな問題があるということも聞いております。例えば、移転先につくられた井戸などが、写真を見る限りは、この壁の色ぐらい茶色く濁った色になっていて、飲料水としても生活用水としても適当ではないように私にも思われました。また、彼らが新たに移転した住宅自体も大変に密集した環境の中で建設をされているものが多くて、そういったことについても多くの不満の声がありました。

 私の提案としては、JICAさんも日本の外務省もこのことに全力を注いでいる、その姿勢は評価させていただきたいと思いますが、しかし、現地の住民のそういった声がある以上は、何らかの形で第三者による評価をしていただく、そういった組織をつくって、その上で、より公正な形で事業を展開していく、これが私は一番必要ではないかと思っているんですけれども、この点についてお考えを聞きたいと思います。

鈴木委員長 国際協力機構植澤理事。

 阪口君の質問時間がもう終了していますので、簡潔に御答弁をお願いします。

植澤参考人 では、簡潔にお答えさせていただきます。

 先生繰り返しおっしゃっているように、私どもも、住民との対話は最も大事なプロセスだと思います。いろいろな問題は、結局ミャンマー政府と住民が話し合わないと解決できない、そこを回転させていくというのが我々の役目であると考えております。

 個別事案については、井戸等、先生御指摘のあった問題点がございます。これは我々も十分認識しております。例えば、学校に通う問題もありました、それも徐々に解決はしておりますので、これについても取り組みます。また、モニタリングについては、基本的にはまずミャンマー政府が自主的にやってもらうことが必要です。しかしながら、私ども、実質的に支援をして、モニタリングをすることに向けて十分な体制をとっていきたいと考えております。

 以上、全てにお答えできておりませんが、時間でございますので。どうもありがとうございました。

阪口委員 終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 結いの党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、質問の機会を十五分いただきました。本日既に議論があった内容と通告した内容が重なっておりますが、よろしくお願いしたいと思います。

 初めに、安倍内閣の外交・安全保障政策と集団的自衛権の行使、憲法解釈の変更について改めて確認して伺いたいと思います。

 所信表明演説等を読み返しましたけれども、やはり安倍内閣の外交・安全保障政策の基本というのは、日米同盟の強化、積極的平和主義による国際貢献、あるいは力による現状変更は認めないという強い姿勢であって、それを実現するために、昨年、NSCを設置する、あるいは国家安全保障戦略を策定する、新防衛大綱を策定する、さらにことしに入って、武器輸出三原則を見直す、また、今般、安保法制懇の報告書が提出される、そして現在、与党協議が行われているという状況だと思います。

 我が国の平和と安全、つまり主権、国民、領土を守っていく、これを、国際情勢の変化に対応する安全保障環境の変化に対応していく、そのために政治がきちんとした安全保障政策を策定していくというのは当然のことだと思いますし、その政治がつくった安全保障政策を実施するために法整備を行っていくんだということも当然のことだと思います。安倍内閣がこういう外交・安全保障政策について策定し、実施しようとしているということについては、評価させていただきたいと思います。

 そこで、改めて伺うんですが、岸田大臣もこの安倍内閣の外交・安全保障政策について当然評価をしていると思いますが、改めてこの安倍内閣の外交・安全保障政策の評価について確認したいと思います。よろしくお願いします。

岸田国務大臣 まず、国として、政府として、国民の命そして平和な暮らしを守るために不断の努力を続けなければならない、そのために絶えず努力を続けていくことは大変重要な責務であると認識をしております。

 そして、特に昨今、我が国をめぐる安全保障環境の厳しさが増していると認識をしております。また、昨今、宇宙ですとかサイバーですとか、容易に国境を越える新しい脅威も現実のものとなってきました。

 こういった安全保障環境の変化に対応するべく、我が国としましては、まずは我が国の防衛力を初めとする備えをしっかり備えておかなければいけないわけですし、あわせて、安全保障の法的基盤につきましてもしっかりと整えておかなければならない、こういった認識のもとにさまざまな議論を進めています。

 そして、それにあわせて、日米同盟を初め各国とのさまざまな連携も深め、抑止力を高めていく、こういったことも考えていかなければならない、これが現実であると考えています。

 こうした現実を前にしまして、安倍内閣としましても、さまざまな分野、外交も含めて安全保障につきまして議論を進め、そして備えを行っている、これが現実であると考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 岸田大臣の説明だとややマイルドになるんですけれども、安倍内閣のこうした外交・安全保障政策をきちんと実行していこうとすればするほど、やはり現行憲法との整合性がとれなくなってくる、これまでの憲法の解釈ではそごが生じてくるということで、今回、憲法の解釈を変更して、今、安倍内閣がやろうとしている外交・安全保障政策の実行を責任を持ってやるということなんだろうと思っていますが、安倍内閣の外交・安全保障政策あるいは積極的平和主義の実行を本当にきちんと行っていこうとすればするほど、結局、憲法の解釈の変更のみで対応していくということについて無理が生じてくるんじゃないかと思います。

 十五事例というのが示されました。この事例を、憲法の解釈の変更のみで本当に十分に対応できるのか、本当に十分に達成できるのか。憲法の解釈の変更のみで本当に達成できると思われますか。もう一度お伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 御質問の趣旨は、憲法の解釈の変更のみで対応できるかとおっしゃったのは、さらに憲法の改正まで踏み込む必要があるのではないか、こういった御質問だと理解してよろしゅうございますか。そう理解した上でお答えさせていただきたいと思います。

 まず、今、変化する国際環境の中で我が国の安全保障の法的基盤について議論をしているわけですが、現状においては、憲法解釈の変更と集団的自衛権の行使についてまだ結論が出たものではありません。まだ議論が続いているところではあります。安保法制懇の報告書の中で、我が国の安全に重大な影響が出るといった限定的なケースにおいて集団的自衛権を行使するというのが、従来の憲法解釈に言う必要最小限度の範囲内に入るかどうかを研究していく、こういったことで議論が進んでいるところであります。

 憲法改正については国民の議論の深まりの中で判断されるべきものだと思っていますが、その上で、解釈改憲という言葉と、憲法の解釈の変更という言葉があります。解釈改憲というのは、すなわち、憲法の合理的な解釈の限界を超えて、本来なら憲法の条文自体を改正しなければ実現できないような結果を導き出す、こういったことだと理解していますが、これを政府が行うことはありません。

 今の議論、憲法の解釈の変更ということについては、昭和四十年に文民に関する見解を変更した例があるとおり、政府はその可能性を全く否定しているものではありません。これは、論理的整合性ですとか法的安定性をしっかり重視した上での考え方であります。こういう考え方に基づいて、先ほど申し上げましたように、限定的な集団的自衛権が従来の憲法解釈の範囲内に入るかどうか研究を進めている、これが今の議論のありようであります。ぜひ、こうした議論を進めることによって、我が国の国民と平和な暮らしを守るために、切れ目のない、あらゆる事態に備える法整備を進めていきたいと考えております。

 十五事例につきましては、与党の要請を受けて、わかりやすい事例ということで提示をさせていただいたものでありますが、こういったものも含めて、ぜひ、すき間のない法的基盤をしっかり構築していきたいと考えております。

青柳委員 本日も議論があったんですが、今御答弁いただきました、わかりやすい十五事例を用いて説明していくという進め方についても伺いたいと思うんです。

 昨日、我が党でも、外務省さんや内閣法制局、防衛省さんにも来ていただいて、十五事例の説明をいただきながら議論させていただいたんですけれども、結局、このやり方ですと、きょうの議論でもあったんですが、外交・安全保障政策の本筋から何となくそれてしまって、この事例が本当にあるのかどうか、あるいは、そのときにどう対応していくのかという議論にそれてしまって、本来やるべき外交・安全保障政策の本筋の議論からそれてしまって、なかなか議論が進んでいないんじゃないか、与党の協議もそういうことに陥っているんじゃないかと仄聞しております。

 こういう十五事例を例示して、わかりやすい事例と言ったんですが、逆にわかりにくくなっているんじゃないかとも思いますし、こういう事例を例示して憲法の解釈を変えていくという進め方について、まず大臣、このやり方でいいと本当に思われていますか。

岸田国務大臣 安全保障の議論、そして法的整備の議論、これはややもしますと専門的になりがちですし、国民から見てわかりにくい部分があるということは否定できないと存じます。しかしながら、この安全保障の議論は、国民の命あるいは暮らしに直結する大変重要な議論であります。ですから、やはり国民にとってわかりやすい議論を政府としても心がけなければならない、これは強く感じております。

 その際に、やはり具体的な事例を挙げて、こうした事態に対応できないことについてどう考えるか、問題提起をするということは、国民の理解をいただく上で大変大切な取り組みではないか、方法ではないかと考えております。そういった意味で、国民にわかりやすく問題提起をするという意味で、十五事例を挙げるといった考え方も意味があるのではないかと存じます。

 十五事例につきましては、与党の要請を受けて政府から示したものでありますが、こういった事例を通じまして、ぜひ、今後とも丁寧に、国民にわかりやすい議論を続けていきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 十五事例については、むしろわかりにくい事例とか、本当に空想の世界じゃないかという議論もありました。

 そこで伺うんですけれども、では逆に、例えば、今、北朝鮮で内乱、混乱が発生して、政権、政府が崩壊し、国の統治がなくなった状態で、拉致被害者あるいは特定失踪者が救出を求めてきた場合に、我が国は、自衛隊を派遣して、その拉致被害者、特定失踪者を救出することができるのでしょうか、できるとすればこれはどの事例に当たるのでしょうか、お答えいただきたいと思います。

平松政府参考人 お答えいたします。

 大変恐縮でございますけれども、現在行われている検討というのは、特定の地域、事態を念頭に置いたものではございませんで、ただ、一般論として申し上げれば、在外自国民の保護、救出はもちろん非常に重要でございますけれども、一般的には、領域国の同意を得て行われるというのが一般的な慣行でございます。

青柳委員 ということは、できないということになるんですね。

 まさに今、拉致問題が注目されておりますが、こういう事例こそ取り上げて、まさにこういう事態こそ発生し得る事態じゃないかと思います。こういう事態が発生したときに拉致された日本人を救出できないとなってしまっていることこそ、私は、変えるべきじゃないかと思います。

 きょうは時間が来ましたのでこれ以上質問はできませんが、本当にこれこそわかりやすい事例なんじゃないか、やるべき事例なんじゃないかと思いますので、ぜひ御検討いただきたいということと、大臣はこれまでの答弁で、国民の皆さんに丁寧に説明していく、あるいは、関係国にも丁寧に説明していくということを再三述べられております。であればこそ、むしろ、なぜ憲法改正をしていかないのかということについてもきちんと説明していただきたいと思います。安倍内閣の外交・安全保障政策を実施していくのであれば、私は、憲法の解釈の変更で乗り切っていくのは無理が生じる、その方が国民には理解されないんじゃないかと思っておりますので、御検討いただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

鈴木委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 武田副大臣にお越しいただきまして、防衛省にまず伺いますが、航空自衛隊には基本ドクトリンと呼ばれる文書が定められておりますけれども、この目的と性格はどういうものでしょうか。

武田副大臣 御指摘のありました航空自衛隊基本ドクトリンについてでございますが、航空自衛隊の隊員が任務を遂行するに際しまして準拠すべき事項や考え方を共有するために、平成二十三年三月に航空幕僚監部が部内向けに作成したものであると承知をしております。

笠井委員 要するに、基本ドクトリンというのは、航空自衛隊の行動、戦い方の原理原則を書いた指揮運用に係る基本文書だということだと思うんです。

 ここに航空自衛隊基本ドクトリンというのがあります。二〇一一年の三月三十一日、航空幕僚監部が策定したということでありますけれども、この文書には、第一章の「航空作戦の要諦」というところがありますが、その箇所に、私が前回、五月三十日の質問で指摘した攻勢対航空に関する記述がありますけれども、何と書かれているでしょうか。

武田副大臣 第一章の中の第三節「航空戦力と航空作戦」においては、「航空作戦の要諦」として、主として空において、大きな妨害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態である航空優勢について記述していますが、その中で、御指摘の攻勢対航空については次のとおり記述しております。

  航空優勢を獲得するためには、二種類の方法がある。一つは、敵の航空戦力をその根拠地周辺で撃破する「攻勢対航空」であり、指揮組織及び指揮系統、航空機、レーダー・サイト、SAM及び飛行場等の航空戦力基盤を破壊することによって航空優勢を獲得するものである。もう一つは、侵攻する敵航空戦力を撃破する「防勢対航空」であり、全般防空と拠点防空を適切に組み合わせた防空網の構築によって、要時要域における航空優勢を獲得するものである。

  攻勢対航空は、特に敵の根拠地が遠方の場合、航空優勢の獲得に多くの労力が必要となる。一方で防勢対航空は、主導的に航空優勢を獲得するには難があるが、戦闘空域が我の根拠地に相対的に近く、レーダー・サイトやSAMなどの多様な防空兵器を一体的に運用することができる。実際の航空作戦においては、政策や武力紛争の目的、彼我の能力や根拠地の位置関係、戦況などを考慮した上で、攻勢対航空と防勢対航空の戦力配分を決定することが重要となる。

といった旨を記述しております。

笠井委員 防勢対航空についても述べられたんですけれども、私が指摘した攻勢対航空というのは、今ありましたように、敵の根拠地、領土に侵攻をして、航空機などの航空戦力を撃破することを目的とした敵航空基地攻撃を示すということであります。

 今ありました攻勢と防勢について、「攻勢が積極的に敵を求めてこれを撃破しようとする戦い方であるのに対し、防勢は敵の攻勢を待ち受けて破砕する戦い方である。」というふうにしている。

 今日、政府がグレーゾーン事態の事例として挙げる離島等における不法行為への対処に関しても、この文書の中では、「島嶼部に対する攻撃へ的確に対応するため、米軍との共同を考慮しつつ戦術的に攻勢的な作戦にも備える。」というふうに明記をされております。

 もう一つ別の文書がございます。「航空自衛隊ドクトリン等に関する調査研究」と題するもので、幹部学校が二〇〇六年三月三十日にまとめた文書でありますが、これはどんな性格の文書でしょうか。

武田副大臣 この調査研究というものにつきましては、航空自衛隊基本ドクトリンの作成に資するべく、調査研究の目的で作成されたものであり、航空幕僚長に報告されたものであると認識しております。

笠井委員 この基本ドクトリンというのは航空自衛隊のドクトリン体系の最上位の概念に位置づけられるもので、今副大臣がおっしゃいましたが、こちらの今の文書はそれを作成する過程で基礎研究になった文書ということであります。

 この文書には、私、看過できない記述が随所に出てくるというふうに思うんです。

 例えば、序文の中では、「自衛隊は、「存在する自衛隊」から「機能する自衛隊」への脱皮が求められる」とした上で、「抑止を前提とした従前の考えでは、新たな脅威への対応には限界がある。」「わが国の防衛を考えるに際しては、従前の体制を是とするのではなく、変革を強力に推進するとともに、日米の連携を更に強化するような施策を講じなければならない。」というふうにあります。

 そして、具体的に、第五章、この中では四十ページですけれども、「航空自衛隊ドクトリンの在り方」の中で、取り扱いは慎重を期すことが必要な防衛政策を超える行動として三つの項目が挙げられていると思うんですが、どんな項目が挙がっているでしょうか。

武田副大臣 「第五章 航空自衛隊ドクトリンの在り方」におきましては、「ドクトリン体系を検討するうえでの考慮事項」として、御指摘の「防衛政策を超える行動等にかかわる研究の継続」について記述しております。

 これはすなわち、防衛計画の大綱等の現状の防衛政策の枠組みを超える行動と考えられるものについては、「ドクトリンとして文書化した場合、国民、関係省庁、諸外国等に対して、不要な誤解を与えるおそれがある。そのため、その取り扱いは慎重を期すことが必要である。ただし、将来に備えて準備研究することは継続して実施しなければならない。」として、攻勢対航空・戦略攻撃、対核兵器作戦、宇宙作戦の三項目について記述をしております。

笠井委員 防衛政策を超える行動の一つとして、今三項目言われた中に攻勢対航空が挙げられているわけですけれども、この文書には、攻勢対航空が敵基地攻撃を示すものであり、「与党国防部会において検討すべきことを提言されていること等から、研究は実施すべきと判断する。」というふうに書いてあります。同時に、詳細については、「現時点での文書化は相応しくないと判断した。」というふうに書かれている。

 攻勢対航空・戦略攻撃が防衛政策を超える行動に当たる理由というのは何なのか、そして、なぜ現時点での文書化はふさわしくないというふうに判断したんでしょうか。

武田副大臣 あらゆる脅威に対する対応のシミュレーション、そうしたものをやはり考え続けていくということは重要なことだと我々も考えておりますけれども、委員御指摘の点につきましては、いずれにしましても、防衛省の見解をまとめたものではなく、部隊内で独自にさまざまな角度から検討したものにすぎないわけであります。

 また、与党の内部におきましては、さまざまな角度から、今後さま変わりする安全保障環境にしっかりと対応していくための防衛力整備、その必要性について積極的に議論が行われているということは承知しておりますけれども、そのことについて具体的に防衛省の方に意見が出されたということもいまだありませんし、また、先ほど申しましたように、御指摘の点につきましては、防衛省の見解というものをまとめたものではないことを御理解いただきたいと思います。

笠井委員 防衛政策を超える行動について、いずれにしても研究、検討をやっているという形で、そのことも明確になっているわけですね。

 この攻勢対航空・戦略攻撃が防衛政策を超える行動に当たる理由というのは、今言われなかったけれども、私ははっきりしていると思うんです。この航空作戦が防衛政策の基本とする専守防衛を逸脱して、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略を超えるからではないか。

 文書の中には、この攻勢対航空を、既に平成十四年度幹部学校の研究、「教範「航空作戦」改正のための基礎研究(十五年三月)」において、従来の空自が行う航空作戦に加えたというふうにまで書いてあります。

 この文書の、航空自衛隊の「任務の多様化、拡大等への対応」という箇所には、これは二十八ページですけれども、「将来の憲法改正、集団的自衛権の解釈変更、」「等に対応する上で、航空防衛力の運用にかかわる基本的考え方を開発し、明確にすることが必要である。」こう書いてある。そして、「これまでは、政治が決定する任務や役割を受けて対応するといった受動的姿勢であったが、今後は、場合によっては、現在の任務、役割、法的な枠組みを超えて空自が主体的に議論する場を持ち、その知識を蓄積、検証していくことが必要である。」ここまで書いているんですね。

 私は読んで驚きました。政治が決める前に主体的にどんどんやるんだ、研究をどんどんやっていくんだ、議論するんだというわけです。

 現在、集団的自衛権の行使容認に関する安倍総理の表明を受けて、与党が協議をしているようでありますけれども、航空自衛隊では、それにはるかに先立って、政治が議論し、判断する、それを待たずに、先に、現在の任務、役割、法的な枠組みを超えて主体的に先取り研究をやってきたということは間違いないですか。防衛省の正式の見解とかいう話じゃなくて、研究をやってきたということは事実ですよ、これは。

武田副大臣 政治が決める前に独自でやるということは、これは許されません。

 それで、さまざまな研究についてのことですけれども、やはり、先ほど申しましたように、ありとあらゆる脅威というものが増しておる。そしてまた、その脅威というものは、今まで考えだにしなかったものも我々の身に降りかかってくることもあり得る。でありますから、さまざまな国々の取り組み等も踏まえながら、あらゆる角度から研究をしていくということも、これは必要なことであります。

 しかしながら、その行動につきましては、独自の判断での行動というものは絶対許されるものではなくて、政治の判断というものを待って、その指示によって、決められたルールのもとで的確に動く、それが航空自衛隊に課せられた任務であるというふうに私は認識しております。

笠井委員 副大臣、許されないと言ったけれども、そういう研究をやっているんじゃないですか、ここに書いてあるわけですよ。

 政治の決定を受けて対応する受動的姿勢ではなく、法的な枠組みを超えて主体的にというのは一体何か。これは、シビリアンコントロールという話がよくあります、それで問題になるわけですけれども、これから見たって問題だというふうに認識をお持ちになりませんか。

武田副大臣 委員は、つまり、文民統制上さまざまな問題があるのではないかという御指摘だと思いますけれども、防衛省・自衛隊が任務遂行に当たりまして必要な範囲でさまざまな研究を行うことは、これは私は当然として受けとめております。

 いわゆる、御指摘の敵基地攻撃等について研究すること自体、どういうものであるかというものを問題提起し、そして研究することについても、これは研究については許されるのではないかというふうに私は考えております。

笠井委員 政治の決定を受ける前に、受動的じゃなくて、それと関係なくどんどんやっていい、副大臣はそう考えていらっしゃるんですか。研究ですよ。さっき許されないと言った話ですよ。

武田副大臣 研究と行動というものは、また異質なものであろうかと思っております。

 行動につきましては、政治の決められたことについて、決められたルールのもとで行動をとらなければなりませんけれども、ありとあらゆる脅威の可能性というものに対する研究は、怠ることなく、諸外国の事例も踏まえてやっていくことも私は必要ではないかというふうに言っておるわけであります。

笠井委員 これまではできないと言っていたんですよ、ここに書いてあるように。できないことだけれども、やらなきゃいけないから研究を始めたというふうに書いてあるんですよ。

 空自自身だって、これまではできないということでやらなかったけれども、しかし今はこういうことだからといって、研究もどんどんやるんだと書いてあるわけです。受動的じゃなくて、今度は能動的、主体的にやると言っているわけですよ。こんなことをどんどんやっていったら、一体どうなるんですか。国会の議論は何だという話になるでしょう。

 最後に大臣に伺いますが、大臣は、前回の私の質問に対して、アラスカ州での多国籍軍の軍事演習について、攻勢対航空の訓練ということで私はただしたんですけれども、訓練のありようは知らないけれども、憲法解釈の範囲内で実施されていると思うというふうに答弁されました。

 しかし、きょうただした一連の防衛省のこの空自の文書にあるように、攻勢対航空訓練というのは、現在の航空自衛隊の防衛政策を超える行動であって、大臣が言われる憲法解釈の範囲内で実施されたものじゃない。集団的自衛権の行使容認を先取りしたものをどんどん研究してやっている、こういうことがはっきりしているんじゃないですか、これ自体は。そして、そういうことで実際訓練もやっているんだ、こういうことになるんじゃないですか。

岸田国務大臣 自衛隊の行う訓練ですとか行動につきましては、防衛省あるいは自衛隊にて実施しているものでありますので、外務省として、その内容について説明する立場にはありませんが、自衛隊による訓練ですとか行動、これが現行の憲法解釈の範囲内で行われるということ、これは当然のことではないかと考えています。

笠井委員 終わりますけれども、研究だって自衛隊でやっている行動の一つなんです、そういう形で。軍事行動じゃないですよ。しかし、研究をやっているんですからね。

 文書には、「米国では、同盟国連合の作戦運用は当然のことながら、」「多国間で共用出来る多国籍軍ドクトリンを構築しようとしており、既にNATO諸国、英連邦同盟諸国との間では共同作業を進めている」「米軍との共同を重視する自衛隊としては、ドクトリンを効果的に活用して共同作戦の実効化に積極的に参画しようとするアプローチが必要」と、空自の多国籍軍への参加を想定した記述もあるんですよ。

 空自がアラスカ州で行ったB52による爆撃援護訓練は、米軍主導の多国籍軍との共同作戦を先取りした訓練だった。研究だけじゃなくて行動もやっている、訓練をやっているということで、これは断じて許せないことだと思います。

 時間なので終わりますが、この問題は本当に許せないということで、きょうは、ただして終わります。

鈴木委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党の玉城デニーです。

 きょうは、ODA大綱の見直しについて質問をさせていただきます。

 先般、岸田外務大臣は、三月二十八日ですが、「進化するODA 世界と日本の未来のために」と題して日本記者クラブでスピーチを行い、来年、二〇一五年が国際環境の中で大きな変化を告げる年になるであろうと捉え、ODA六十周年のことし、ODA大綱の見直しを行うことを発表していらっしゃいます。

 その中で、これは大臣のスピーチなんですが、大臣に就任して一年三カ月が経過し、現場主義ということで、三十四の国、地域を訪問させていただいたというコメント、それから、移動距離でいうと、もう地球を約十一周したということで、地球九周ぐらいで大体地球から月へ届くと言われているので、もう月を折り返しているというふうなコメントなども含めて、本当に行動的に展開していらっしゃるということに関して、私は大変すばらしいなというふうに思います。

 本来であれば、外務委員会も、積極的に委員や理事の先生方とともに外国へ出向いていって、現地の状況をつぶさに視察をさせていただきながら、さまざまな議論をこの委員会の討議に生かしていきたいというふうに常々思うわけでありますが、我が国の外交について、大臣が先頭に立ってしっかり現場主義を貫いていらっしゃるということに対しては、大変敬服をするということをまず申し上げておきたいというふうに思います。

 さて、その大臣のスピーチの中でも発表されました、政府開発援助、ODAの見直しにおいて、二〇〇三年八月閣議決定されたODA大綱、策定後十年間に生じたさまざまな変化及び活用の要請等を踏まえて見直しを行うというふうにしております。岸田外務大臣のもとには有識者懇談会を設置すること、あるいは、広く国民の声を聞くということもその中でうたわれております。

 では、まずこのODA大綱の見直しを行うに当たり、これまで我が国が行ってきた政府開発援助、ODAという支援についてどのような評価を行っているのかについて、まず質問したいと思います。

岸田国務大臣 本年は、我が国がODAを開始して六十年という大きな節目の年に当たります。

 我が国は、自助努力を支援する、あるいは持続的経済成長を重視する、さらには人間の安全保障の実践など、特色ある支援を行って、アジアを初めとする途上国の安定と発展に大きく寄与してきたと考えています。

 こうしたODAの歩みは、開発途上国とのきずなを深めるという意味においても、さらには、我が国の国際社会における地位を向上させるという意味においても、確かな成果が上がってきたと認識をしております。また、平和で安定した国際環境という我が国の発展にとって必要な条件をつくり出すためにも役立ってきた、このように認識をしております。

 本年三月にASEAN七カ国で行われた世論調査でも、約九割の方が日本の経済技術協力は自国の発展のために役立った、こういった回答を寄せてくださっておられます。

 ぜひ、こうした六十年を振り返りまして、ODAが引き続き大いなる役割を果たすために、ODAの進化について考え、そしてODA大綱の改定についても考えていきたいと思っております。

玉城委員 日本にとって最大の外交ツールでありますODA、これは大臣も述べていらっしゃるとおり、外交の三本柱である日米同盟の強化、近隣諸国との関係強化、そして経済外交の強化ということについて大きな役割を果たしているというふうに私も認識するものであります。

 外務省のホームページでも、ODA、政府開発援助について、きめ細かくその内容が国民の皆さんに知らされておりますが、二〇一二年のODAの実績は、支出純額で、二国間ODAが約六十四億二百二十一万ドル、日本円にして約五千百十億円、国際機関に対する出資、拠出などが約四十二億二百三十万ドル、日本円にして約三千三百五十四億円、ODA全体では、前年比で若干減ってはいるものの、約百六億四百五十一万ドル、八千四百六十四億円というふうになっております。

 こういうふうに実績を積み上げてくるというのは、それなりのこの六十年という長い年月の中でも、しっかり諸国との協調体制の中で行われてきているものというふうに私も認識を同じくするものであります。

 このODA大綱では援助の理念について述べられており、国際連合憲章の諸原則、開発途上国の援助需要、社会経済の状況及び二国間関係などを総合的に判断しているわけですが、このODAの政策に当たっては、一つ、環境と開発の両立、一つ、軍事的用途と国際紛争助長への使用回避、一つ、発展途上国の軍事支出や大量破壊兵器、ミサイルの開発、武器輸出入動向への十分な注意、一つ、途上国の民主化の促進、市場経済導入努力、基本的人権及び自由の保障状況への十分な注意などなどを原則に掲げ、現地における着実な実績やさまざまな成果を得るに至っています。

 いわゆるODAの四原則というものでありますが、今般のODA大綱の見直しに当たり、これまでのODA四原則を今後どのように継続していくのか、あるいはこの四原則に修正等が行われるのかについて伺いたいと思います。

岸田国務大臣 ODA大綱の見直しにつきましては、今現在、有識者の方々に御議論をいただいております。できれば今月中には報告書をいただいて、年末までに改定を行い、新たな大綱を策定したいと考えております。

 ですので、今の段階で内容について私が余り踏み込んではいけないのかもしれませんが、少なくとも、今御指摘いただきました四原則の基本的な考え方については変えるべきではないと私は考えております。

玉城委員 本当にこの四原則は、非常に重要なといいますか、基本的な日本国としての外交の方針がしっかり示されているものというふうに思います。この四原則は、これからも引き続き細部にわたって遵守されるべきではないかというふうに思うわけです。

 先ほども大臣が述べられていたんですが、これまで行ってきた我が国のODAの特色として、スピーチの中でも、教育や人づくりを通じて途上国がみずから成長を切り開いていくこと、その国に合ったものをともに考え、ともに進んでいくとする自助努力の支援、そして、民間投資と雇用を生み出すインフラ整備等による持続的な経済成長、そして、人々が恐怖や欠乏から免れ、尊厳を持って生きていけるように協力する人間の安全保障などを掲げ、経済や民生部門で大きく貢献したことについて評価も述べられていらっしゃいます。

 今般の大綱見直しに向けては、冒頭で紹介したように、外務大臣のもとへ有識者会議を設けて改定に向けた検討を進めていくということになっております。このことについては、今月中である程度その意見をまとめられるというお話です。

 ODA大綱の見直しの背景については、これは三月に発表された大綱の見直しの中での資料にある文言なんですが、一つに、ODAに求められる役割の多様化、二つには、国際社会の開発に関する議論の変化、三つ目には、非ODA資金との連携強化の必要性、四つ目には、国際平和協力における要請などが挙がっています。

 この中で、例えば、従来の貧困撲滅に加え、新たな視点や課題が俎上に上っている、持続可能な開発、成長、格差の是正、防災、国際保健などの国際社会の開発に関する議論の変化等々、細かく見ていくと、こういうふうな四点の内容で精査をしていくということは、本当にこれからのODA大綱の本筋になる見直しになるのではないかと思います。

 しかし、その一方、先ほど四原則を貫いていくとおっしゃった大臣ではありますが、これまでの四原則に基づく安定的協力の構築と各国との平和的な民生協力の支援から転じて、禁じられていた軍事支援へと拡大する懸念が生じかねない上、四原則における監視、あるいは各国への十分な注意喚起など、その実効性をどのように担保するのかという新たな課題が出てくることもやはり想像されるわけです。

 そういう見直しがあらぬ方向に行かないこと、そのためには広く国民の声を聞いていただきたいと思うんですが、今後のプロセスの中では、国民の声を聞く機会を設け、国民的議論を行うパブリックコメントも、私が調べたところによりますと、まだその開催の頻度は足りないのではないかというふうなことも思料いたします。

 ですから、こういうふうな懸念を踏まえて、この見直しを行う場合、安全保障と非軍事分野への活用の議論ということが起こってきた場合、現在の集団的自衛権の拡大解釈とも整合させるような形でODA大綱の見直しがなされるのではというふうな懸念も生じてくるのではないかと思うわけですね。

 ですから、本来あるべき日本の外交の最大のツールであるODAが、この大綱の見直しによって、軍事面への転換に重なっていくような見直しになっては困るという国民の思いもあると思います。

 そのような問題と懸念があるとすれば、やはりこの大綱の見直しについてはしっかり注意深く見ないといけないのではないかと思います。そのことについてどのような見解をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 ODA大綱の改定につきましては、前回改定されてから十年以上がたち、国際的な環境も大きく変化をし、ODAに期待される役割も変わってきている、そして、ODAを開始してから六十年という大きな節目を迎えることになった、さらには、国連においてはポストMDGsの議論が行われている、こういったことを踏まえてODAは進化しなければならない、こういった問題認識のもとに改定の議論を進めているところであります。

 よって、安全保障の集団的自衛権等の議論とは、これは連動したものではまずありません。

 そして、先ほど御指摘がありましたODA四原則、特に軍事目的への利用ですが、これは考えていないということ、これは再三申し上げているとおりであります。

 先ほど、今月中には有識者会議の報告書をいただきたいと思っていると申し上げましたが、その後、報告書を土台として、ぜひ丁寧に議論を進めていきたいと考えます。例えば経済界ですとか、あるいはNGOですとか、多くの関係者の方々とも意見交換をしたいと思いますし、パブリックコメント等もしっかり活用させていただきたいと存じます。その上で、年末に新たな大綱が策定できるよう努力をしていきたいと考えます。

玉城委員 ありがとうございました。

 大臣には、これからもぜひ積極的に現場主義を貫いていって、各国の情勢を我が国の外交にしっかりと結びつける活躍を御期待申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。ニフェーデービタン。

     ――――◇―――――

鈴木委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国連邦との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件、所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とオマーン国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 政府から順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国連邦との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とオマーン国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアラブ首長国連邦との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成十八年以来、アラブ首長国連邦政府との間でこの条約の交渉を行いました。その結果、平成二十五年五月にドバイにおいて、我が方在アラブ首長国連邦大使と先方財務担当国務大臣との間で、この条約の署名が行われた次第であります。

 この条約は、我が国とアラブ首長国連邦との間で二重課税の回避を目的とした課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とスウェーデンとの間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十五年以来、スウェーデン政府との間で現行の租税条約を改正する議定書の交渉を行いました。その結果、平成二十五年十二月にストックホルムにおいて、我が方在スウェーデン大使と先方財務副大臣との間で、この議定書の署名が行われた次第であります。

 この議定書は、投資所得に対する源泉地国における限度税率のさらなる引き下げ、税務当局間の徴収共助の手続の整備等の措置を講ずるための規定等を設けることとしています。

 この議定書の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、我が国とスウェーデンとの間での課税権の調整がより効果的に行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得及び譲渡収益に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十五年以来、英国政府との間で現行の租税条約を改正する議定書の交渉を行いました。その結果、平成二十五年十二月にロンドンにおいて、我が方在英国大使と先方国庫大臣との間で、この議定書の署名が行われた次第であります。

 この議定書は、事業利得に対する課税に関する新たな規定を導入するとともに、先ほど御説明したスウェーデンとの間の議定書と同様、投資所得に対する源泉地国における限度税率のさらなる引き下げ、税務当局間の徴収共助の手続の整備等の措置を講ずるための規定等を設けることとしています。

 この議定書の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、我が国と英国との間での課税権の調整がより効果的に行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とオマーン国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十三年以来、オマーン政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成二十六年一月にマスカットにおいて、我が方在オマーン大使と先方財務担当大臣との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、先ほど御説明したアラブ首長国連邦との間の条約と同様、我が国とオマーンとの間で二重課税の回避を目的とした課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 この協定の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 以上四件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。(拍手)

鈴木委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十一日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.