衆議院

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第3号 平成26年10月24日(金曜日)

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平成二十六年十月二十四日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江崎 鐵磨君

   理事 齋藤  健君 理事 三ッ矢憲生君

   理事 長島 昭久君 理事 小熊 慎司君

   理事 佐藤 茂樹君

      伊東 良孝君    大岡 敏孝君

      河井 克行君    木原 誠二君

      小林 鷹之君    河野 太郎君

      島田 佳和君    鈴木 俊一君

      薗浦健太郎君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    根本 幸典君

      星野 剛士君    武藤 貴也君

      玉木雄一郎君    津村 啓介君

      若井 康彦君    青柳陽一郎君

      林  宙紀君    岡本 三成君

      宮沢 隆仁君    穀田 恵二君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   農林水産副大臣      あべ 俊子君

   経済産業副大臣      山際大志郎君

   外務大臣政務官      薗浦健太郎君

   防衛大臣政務官      石川 博崇君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 島田 順二君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    齋木 尚子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           原田 英男君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        住田 孝之君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 吉田 正一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十四日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     伊東 良孝君

  小林 鷹之君     大岡 敏孝君

  中根 一幸君     根本 幸典君

  阪口 直人君     林  宙紀君

  笠井  亮君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  伊東 良孝君     木原 誠二君

  大岡 敏孝君     小林 鷹之君

  根本 幸典君     中根 一幸君

  林  宙紀君     阪口 直人君

  穀田 恵二君     笠井  亮君

    ―――――――――――――

十月二十三日

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成十九年四月以来、オーストラリアとの間で協定の締結交渉を行いました。その結果、本年七月八日にキャンベラにおいて、我が方安倍内閣総理大臣と先方アボット首相との間で、この協定の署名が行われた次第であります。

 この協定は、両国間において、物品及びサービスの貿易の自由化及び円滑化を進め、投資の機会を増大させ、食料供給、エネルギー及び鉱物資源、自然人の移動、競争及び消費者の保護、知的財産、政府調達等の幅広い分野での枠組みを構築するものであります。

 この協定の締結により、幅広い分野において両国間における経済上の連携が強化され、そのことを通じ、両国経済が一段と活性化し、また、両国関係が一層緊密化することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

土屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官島田順二君、アジア大洋州局長伊原純一君、経済局長齋木尚子君、農林水産省大臣官房総括審議官今城健晴君、生産局畜産部長原田英男君、資源エネルギー庁資源・燃料部長住田孝之君、防衛省大臣官房審議官吉田正一君、防衛政策局長黒江哲郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊東良孝君。

伊東(良)委員 おはようございます。自由民主党の伊東良孝でございます。

 ただいま岸田外務大臣から、日豪EPAに係る諸般の御説明を、あるいは御提案をいただいたところであります。これは長い間の懸案事項でございまして、日本とオーストラリアの間に、まさにこの経済連携協定によりまして大いなる発展が望まれるということでありますので、歓迎をしたい、このように思う次第でもあります。

 既に我が国は十三カ国とEPAを交わしておりまして、オーストラリアは十四カ国目になろうか、こう思うところでありますけれども、他国と違うのは、平成十八年の十二月でありました、これは衆議院、参議院の農林水産委員会でそれぞれ決議がなされたところであります。その大きなものは、お米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖、いわゆる農産主要五品目でありますけれども、これが、関税が撤廃されるようなことになれば日本の農業は壊滅するというような大きな危機感を持って、このときは議論をされたのでありました。

 私は北海道選出でございますが、北海道だけで、この主要五品目の関税がなくなると一兆三千億ほどの大きな影響が出る、もう九割の農家が壊滅してしまうというような、そんな危機感があったところでもありまして、それを受けての国会決議であった、このように思うところであります。

 今回のEPA合意におきまして、批准をするに当たりまして、このときの国会決議に反しない合意であるとするその根拠をぜひ大臣からお聞きしたい、このように思う次第であります。

岸田国務大臣 まず、日豪EPAを初めとする経済連携というもの、国会において御承認をいただいて初めてこれは締結できるものであります。ですので、最終的に、御指摘の衆参両院の農林水産委員会と日豪EPAとの整合性については、国会において御判断いただくものであると認識をしております。

 しかし、政府としましては、この決議の重み、これはしっかりと受けとめた上で、国益にかなう最善の道を追求するべく、政府全体として交渉に当たってきた次第であります。その結果、全体として、国益にかなう、我が国にとって利益になる協定を実現できたと考えております。

 中でも物品の関税交渉に当たりましては、我が国の農林水産業者の経営への影響、これにつきましては十分考慮し、そして、これに影響を極力与えないよう十分留意して交渉に取り組んできた次第であります。

 具体的には、品目ごとの国内農林水産業における重要性等を勘案し、必要に応じて、再交渉や、関税の撤廃、引き下げからの除外等の対象とするとともに、関税の撤廃または引き下げの対象となる品目については、二国間セーフガード措置を確保しております。

 これらによりまして、国内の農林水産業の存立及び健全な発展を損なう、こうした影響は回避できるものと考えている次第でございます。

伊東(良)委員 主要五品目のうち今回大きく影響を受けるであろうと想定されるのは、まさに牛肉、そして乳製品の部分であろう、こう思うわけであります。

 特に牛肉におきましては、冷凍肉、加工用の冷凍肉になろうかと思いますけれども、これが三八・五%が、初年度で八%、二年目で二%、三年目で一%、あとはトータル十八年をかけて一九・五%に引き下げていく、そして冷蔵肉、これは日本の割といいお肉と競合するかと思うわけでありますけれども、これは三八・五%を十五年かけて二三・五%に引き下げていく、二種類の関税の取り扱いがある、このように伺っているところであります。

 この交渉経過において、国内農家あるいは牛肉をつくっておられる繁殖農家の皆様方がこれについてどんな反応を示されたのか、また、これが理解を得ることができたのかどうか、これについてお伺いをしたいと思います。

原田政府参考人 お答えします。

 日豪EPAの合意内容につきましては、畜産分野を中心に、生産者、生産者団体、都道府県等に、農林水産省が四月十七日から全国十一カ所で説明会を開いてまいりました。説明会におきましては、特に、今先生御指摘のとおり、牛肉の関税について大変関心が高うございました。

 内容につきましては、今先生の御指摘のとおりの最終税率でございますが、その最終税率につきまして、冷蔵と冷凍で四%の格差を設けている、あるいは十五年、十八年という非常に長期の期間での削減であること、また、近年の輸入量を上限にしました効果的なセーフガードを今回設定しているということで、そういう説明を十分した上で意見交換を行いました。

 参加者の皆さんからは、牛肉関税の引き下げに対する懸念の声はもちろんございましたけれども、丁寧に私どもの方から内容を説明するとともに、国内畜産業の存立及び健全な発展を図っていけるような合意内容になっているのではないかということを御説明いたしまして、理解を求めてまいったところでございます。

 今後とも、現場ではいろいろな不安の声がございますので、そういった声を払拭することをできる限り現場に行ってしてまいりたい、生産者の方々に丁寧に説明をしてまいりたいと思っております。

 以上でございます。

伊東(良)委員 原田部長が全国各地でしっかり御説明されたということは聞いているところであります。

 しかし、実際に、三八・五%から、初年度で八%、二年目で二%、三年目で一%、この三年間で一一%の関税引き下げになるわけでありますから、これは何らかの影響が出るのは当然予想されるわけであります。生産者は、そこまで数字が、あるいはその影響が、その時点では恐らくわからなかったんだろうというふうに思うところでもあります。また、説明がうまかったのかもしれません。

 そこでお聞きしますけれども、生産者の収入減についてどのような予測をされているのか。また、先ほど言いましたように、肉用牛、あるいは北海道でたくさん飼っているホルスタインの雄の子牛を肉用にしていくようなことがあるわけでありますし、もう一方、牛乳を搾り終えた廃用牛を、これが一番ランクが低いと言われるわけでありますけれども、加工用に回す、これらとのバッティングがさまざま予想されるわけであります。

 この点についてどのような見解を持っておられるか、お聞きします。

原田政府参考人 お答えします。

 今後、豪州産の牛肉が関税が下がったときにどんな影響があるかでございますけれども、まず、豪州産の冷凍牛肉につきましては、関税率が二年で一〇%下げられます、二八・五%になるということで、これは関税以外の要素もあるんですが、単純に関税だけで見たときには、港での売り渡し、卸が七%の低下になります。

 今先生御指摘のようなホルスタインの去勢の牛肉、あるいは経産牛の牛肉、いろいろな牛肉の種類があるのでございますけれども、それ自体が、国内の卸売価格が、その時々の需給ですとか、外国産牛肉、豪州産だけではなくて米国産牛肉その他の牛肉の影響もあったり、いろいろな要素で動いておるものでございますから、輸入時点での価格は先ほど申しましたように七%の低下がありますけれども、それ以外の、その以降の価格につきましては、これから仮に発効されて豪州産牛肉が関税が下がって入ってきたときに、よく注視をして見てまいりたいと思っております。

伊東(良)委員 一一%も三年で下がるから、これは影響が出てくるのは当たり前だろうというふうに思います。影響がそんなにないのであれば、関税なんて、こんなのは半分ではなくて全部なくしたってという話になるわけでありますので。

 これが、やはり、生産者にとってみれば取り分が少なくなるということが前提であるならば、それに対する対策なども強化すべき、こう思いますけれども、特にこれについての具体的な対策がないのかどうか、お伺いをいたします。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 日豪EPAの協定内容、これに関しましては、豪州側より一定の柔軟性を得ることができた結果、我が国の畜産、酪農の存立及び健全な発展が図っていけるような内容となったと考えているところでございます。

 今後とも、現場の皆様の不安を払拭していくために丁寧に説明をしていくとともに、畜産物価格の変動に関しましては、新マルキンなどの現行のセーフティーネット対策によってしっかりと対応していく考えでございます。

 いずれにいたしましても、本協定の締結の結果、影響に留意しつつ、生産者の皆様方が引き続いて意欲を持って経営を続けられるよう、畜産、酪農に対しまして、構造改革、また生産性の向上による競争力強化を推進してまいりたいと考えております。

伊東(良)委員 ぜひよろしくお願いします。

 生乳生産が減ってきているせいか、ことしの五月にバターが七千トン緊急輸入をされました。九月にも三千トンの追加の緊急輸入がありました。合計一万トンのバターが緊急輸入をされたわけであります。これは、生乳換算すると、恐らく十数万トンの乳量換算になろうか、こう思います。

 これは恐らく、バター、脱脂粉乳等に回す加工乳が減ってきた、要するに、飲用乳にその分が回っている、生産量が落ちているということではないか、このように思うわけであります。

 牛乳は、飲用乳があれば、バター、脱脂粉乳用の牛乳もありますし、さらにはまた、生クリーム等々の液状製品と言われるこうしたものもありまして、それぞれ単価が違うわけであります。もちろん、優位な方に優先的に行くわけでありますけれども。

 加工乳不足ということでバターを一万トンも輸入するとすれば、原料乳不足の理由、あるいはこの対策を講じていかなければならぬというふうに思うわけであります。加工乳不足の理由、今後の対策についてお伺いをいたします。

原田政府参考人 お答えします。

 国内で生産された生乳につきましては、今先生御指摘のとおり、腐りやすいという品目の特性がございますので、まず最初に、保存がきかない牛乳などに向けられまして、その後、バターや脱脂粉乳向けに、加工に向けられるということでございます。

 したがいまして、ことしのように生乳生産が減少している場合には、今お話ありましたように、まず牛乳に向かってしまって、バター、脱脂粉乳の製造量が減ってくるということはございます。特に昨年の夏以降、離農もございます、また猛暑もございまして、生乳生産量が、都府県だけではなくて、北海道でも減少傾向が続いておりました。

 その傾向もあって、脱脂粉乳やバターの生産量が、例えばことしの四月から八月期でも対前年九・六%の減少でございますし、在庫も、バターは八月現在で対前年三二%減少してございます。そうしたことで、今お話のありました緊急輸入等も決定して、実行しているところでございます。

 直近の生乳生産で見ますと、分娩がちょっと回復しております。あるいは、猛暑も昨年ほどではなかったということもございまして、北海道を中心にやや回復傾向にあるとは承知しています。

 ただ、やはり生産基盤が弱っているということはいろいろな場面で御指摘を受けているとおりでございますので、農林水産省としまして、生乳生産の回復に向けて、特に来年度予算におきまして、農家の規模拡大に必要な施設や機械の整備を支援する、あるいは、性判別の技術や受精卵移植を使って優良な雌牛を残すあるいはふやしていくということで、酪農生産の基盤を拡大するための要求をしているところでございます。この予算を確保して、今先生御指摘のあったような生乳生産の増加に向けて、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

伊東(良)委員 ぜひ、酪農、畜産対策にはよろしくお願いをしたいと思います。

 これまでEPAを締結した十三カ国、それぞれタリフライン、九千十八でしたでしょうか、品目があります。品目別の自由化率がこれまでも発表されておりまして、低いところでも八四・四%、高いところで八八・四%の自由化率になっているわけであります。TPPは、これを限りなく一〇〇%に近づけるということでありますけれども、EPAはこのラインでありました。

 今回の日豪EPAの締結というのは、自由化率にしてどのくらいになるのか、そしてまた、これまでの他の十三カ国のEPAとどのような大きな違いがあるのか、お伺いをいたします。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御質問の品目数ベースで申し上げますと、この日本とオーストラリアの経済連携協定が発効いたしますと、十年以内に日本側の自由化率は約八八・四%、豪州側の自由化率は九九%以上となります。これは、これまでに日本が締結をいたしましたEPAの中で、自由化率の最も高い協定の一つとなることになります。

 品目とは別に、貿易額で申しますと、この発効後十年以内に、日本とオーストラリアの間の往復貿易額の約九五・三%が無税となります。

 この貿易額ベースで見ますと、我が国の発効済みEPAにおいて、より高い自由化を実現しているものもありますけれども、豪州は日本にとりまして第四位、また、我が国は豪州にとり第二位の貿易相手国でございます。こういったことに鑑みますと、これまでに発効した他のEPAと比較いたしましても、日豪経済連携協定は十分に意義のある、高い自由化率のEPAであると考えている次第でございます。

伊東(良)委員 時間がそろそろでありますので最後にいたしますが、非常に有効なEPAであるという高い評価を私はするところでありますけれども、一方で、その犠牲に農家がなってしまってはよくないという思いもいたします。この機会に、強い農業づくり、そしてまた、原田部長からもお話ありましたように、離農対策あるいは後継者対策、新規就農者対策を初めとして、生産量をしっかり維持するということが何よりも肝要であろうと思います。

 この日豪EPA締結に合わせて、ぜひしっかりした酪農対策をとっていただきたいというふうに思うところでありまして、この点、最後の決意を聞いて、質問を終わりたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 今後の畜産、酪農の対策に関しまして、この日豪EPAの影響、その他の経済連携の進展にかかわらず、生産者が引き続き意欲を持って経営を続けられるよう、畜産、酪農の生産基盤の強化、さらには競争力の向上に取り組んでいく考えでございます。

 このため、平成二十七年の予算要求におきまして、畜産関係者の結集による地域全体の収益性の向上のための畜産クラスターの構築の推進、また、地域の中心的な畜産経営体、新規参入者に対する施設整備など、飼料米の利用や草地の改良の自給飼料の生産拡大、さらには、各畜種の特性に応じた経営安定対策、配合飼料の価格安定対策などのセーフティーネットの対策を講じるための必要な予算をしっかりと確保してまいりたいと思います。

伊東(良)委員 よろしくお願いします。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、齋藤健君。

齋藤(健)委員 自民党の齋藤健です。

 きょうは初めてこの外務委員会で質問をさせていただく機会を与えていただきまして、まず、ありがとうございます。議論を深めていくために、幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 私は、かつての通商産業省に勤務をしておりましたときに、日米通商摩擦が最も激しいときに、そのど真ん中でアメリカと交渉をやってきた経験がありまして、そういう経験から見て、まず、今回の日豪の経済連携協定につきまして、思うところを少し述べたいと思うんです。

 まず、私は、今回の締結のタイミングというのは、ベストのタイミングであったのではないかと思います。七年かかった交渉ではありますけれども、通商交渉というのは生き物でありまして、それぞれの国がもうまとめなくてはいけないという環境ができないと、どんなに交渉をしていても合意はできません。おもしろいことに、お互いの国が今結ばない方が国内的には得だという状況にあるときには、交渉の中身がどんなに接近していても合意はできません。しかし、今合意した方が得だとお互いの国がそのタイミングで思ったときには、実際に交渉の中身はかけ離れていても、一瞬で合意ができます。

 つまり、大切なことは、交渉する中身も大事なんですけれども、お互いがもうまとめなくちゃいけないという環境をつくることが交渉以上に大事だということだろうと私は思います。

 そう考えますと、今回、安倍総理が、おじいさんのころからオーストラリアと深い関係があり、それから、総理がオーストラリアに行く、向こうのアボット首相がこちらに来る、こういうタイミングで、何とかしなくちゃいけないという環境ができたんだろうと私は思います。その一瞬のタイミングで、これだけ、私は今自民党の農林部会長ですので、オーストラリアという、農産物の輸出国の中ではリーダー的存在で、ほかの国の農産物の市場開放について最も強硬な国の一つである国と、この農産物を含めて合意ができたというのは、私は、この一瞬を捉えたからこそ合意ができたんだろうというふうに思っております。

 恐らく、この一瞬に合意ができなければ、協議はずるずると漂流するか、あるいは、日本がもっと大きな妥協をしなければ合意ができないという状況になったんだろうと思っておりますので、この一瞬を捉えて見事合意に結びつけた大臣以下外務省初め関係の人たちの御努力を、私はまず多としたいと思っているところでございます。

 加えて、内容を精査してみますと、非常によく考え抜かれている内容になっていると私は思っております。気にならないところがないわけではありません。これについてはこれから少しお話をさせていただきたいと思います。

 気にならないところがないわけではありませんけれども、それぞれの利害関係者が心配をされているところに見事にそれなりの手を打っておられる合意内容になっていると思いますので、どんな利害関係者も最低限受け入れ可能な中身になっているなと思っておりますので、私は、かつての経験者として、なかなかよくやれたんじゃないか、まあ、今どきセーフガードかという気持ちもないわけではないんですけれども、これがなければもちろん合意できませんので、よくできたものだなと思っていることは、まずお伝えをしておきたいと思います。

 その上で、私が幾つか気になることを御質問させていただきたいと思います。

 まず一つ目は、当然やられていると思うんですけれども、この日豪の経済連携協定によりまして、日本側に、その経済にいい影響が出るということは当然あると思いますので、日本全体で、今回の連携協定を結ぶことによってどういうメリットがあるのか、日本全体の経済効果をどのように試算しておられるか、それについてお伺いできたらと思います。

中山副大臣 御質問ありがとうございます。

 齋藤委員も御承知のとおり、我が国経済に与える具体的な効果につきましては、貿易・投資の流れは景気や為替の変動等に大きく影響されるため、一概に、定量的にお答えすることは困難であるということであります。

 その上で申し上げますと、日豪EPAは、両国間の貿易及び投資の促進に寄与いたしますとともに、我が国にとって、例えば、以下申し上げる経済的なメリットがあるというふうに思います。

 まず、関税撤廃により、豪州市場における日本企業の競争力確保につながるということ。二つ、投資の保護及び自由化、知的財産の保護、商用訪問者の入国許可の手続の簡素化等を通じまして、日本企業が豪州において円滑に活動できる環境が整備されるというふうに考えております。三つ目、豪州は日本にとって主要なエネルギー及び鉱物資源、食料の調達先であり、これらの物資の安定供給の確保が期待されるところであります。

 なお、あえて数字でお示しするとすれば、我が国から豪州に支払われる関税の額に関し、将来的に輸出構成や金額が不変である等一定の仮定を置いて試算を行いますと、発効後八年目には約五百八十億円減少し得ると試算されます。

 以上であります。

齋藤(健)委員 私の質問は、関税がどれだけ得するかということではなくて、日本経済にどういういい影響があるのかという試算をしているのかという質問だったんですが。この協定を結ぶことによって実際に痛みを伴う人が、先ほど同僚の伊東委員もおられたので、ですから、どういう効果があるかというのを具体的に説明していくことは、政府として私は大切なことだろうと思っておりますが、なかなか難しいのもよく承知をいたしております。与党ですので、これ以上突っ込むのはやめますけれども、本来であれば、そういうものがしっかりあった方が、私は痛みを伴う人への説得力は増すのではないかと思います。

 二つ目ですけれども、今回、自動車の関税が最終的には撤廃されることになるわけであります、オーストラリア側の。これによる、要するに、自動車産業の受けるメリットというものはどのように試算されているか。これは経済産業省ですか、よろしくお願いします。

山際副大臣 お答えいたします。

 今の委員の質問にきちんとお答えできるかわかりませんが、二〇一三年の値というものがもう出ておりまして、これは、実数で四百三十六億円関税を払ってございます。今回のEPAが発効いたしますれば、この四百三十六億円分が実数としてなくなるということでございます。一年目に七五%なくなりますから、一年目、即時撤廃として、三百十億円程度になるというふうに試算はされております。

 それと、定性的な意味で申し上げるならば、もう既にオーストラリアとアメリカとの間で自動車の関税は撤廃されております。そして、我が国のちょっと前に韓国とのFTAの話が出ておりますから、韓国車に関しましても、我々よりも少し早いタイミングで関税が撤廃されるということが予想されております。

 そういう意味でいいますと、我が国の自動車産業が、イコールフッティングという観点でフェアな土俵で戦えるかどうかということが大変重要でございまして、そういう意味では、自動車産業にとってフェアな環境で戦える、そういう環境整備がこれでできるものと考えております。

齋藤(健)委員 今の副大臣の御答弁を私なりに解釈すると、関税では、さっき申し上げた、四百数十億円ぐらいの自由度が日本の自動車産業界に出てくる、それプラス波及効果もありますという御説明だったんだろうと思いますが、私、きょう一番申し上げたいことは、今回のオーストラリアとの経済連携協定を結ぶことによりまして、日本国内の産業間に不公平が生じるということだと思います。

 つまり、この協定によって大いなるメリットを受ける業界と、この協定によりまして、自分たちの本意ではないけれども、生活すら脅かされるかもしれない、そういう業界が出てくるということでありまして、政府が結んだ、政府が行った行為によって産業間の不公平が発生するということを私は重視しております。

 これは民間の話ですので、それを政府が是正しろとかいうことは難しいと思いますが、利益を得る自動車産業というのは、日本のリーディングインダストリーです。日本の経済の代表選手です。この人たちだけが利益を得て、そして、政府が結んだ協定によって、不幸にも影響をこうむる人たちがいる。この日本のリーディングインダストリーが、自分たちだけ利益が上がりました、あとは知りませんというようなことで本当にいいのか。

 これから厳しい協定をいっぱい結ぶことに日本はなっていくと思います。そういう意味では今回のはすばらしいと思いますけれども、でも、産業間不公平が生じるということについて、何らかの配慮というものは必要なのではないかと思います。

 いわんや、自動車産業が日本のリーディングインダストリーであるならば、まさかこういうことはないと思いますけれども、オーストラリアに世話になった、だからなるべくオーストラリアから物を買おうなんて、まさかそんなことにはならないと思います。買うのなら、トヨタ、日産の社員食堂では全部国産のものにしますとか、何らかのそういうリーディングインダストリーとしての配慮というものが私は必要なのではないかと思いますが、きょう、わざわざ副大臣に来ていただいたのは、副大臣の感想を聞きたいなと思ったので、どうぞよろしくお願いします。

山際副大臣 委員御指摘の点は、実はという話をしてはどうかわかりませんが、経産省の中で官僚がレクチャーに来たときに、私も同じ問題意識を持っているということを経産省に対して申し上げました。

 もちろん、それは自由に経済活動というものが行われるというのがいいことだ、私はそういう考えの持ち主ではございますけれども、しかし、どこに対しても配慮が必要だというのはおっしゃるとおりでございまして、そういう配慮が、特に今、地方創生の話がされている中で、いかにして配慮ができるかということは、省を挙げてしっかり取り組ませていただきたいと存じます。

齋藤(健)委員 私はここで、リーディングインダストリーである自動車産業の矜持というものをどこかで示してほしいなというふうに思っております。

 引き続きまして、話が少しかわるんですが、私は、今回の日豪の経済連携協定の中で、非常に画期的だなと思う項目が入っているんですね。それはどういう項目かといいますと、第七章に食料供給という章が設けられております。

 オーストラリアも日本も、今、WTOに加盟しておりますので、当然のことながら、WTOのルールが課されることになります。

 WTOのルールでは、加盟国、WTOに入っている国は、他の締約国の領域の産品の輸入について、または他の締約国の領域に仕向けられる産品の輸出もしくは輸出のための販売について、とにかく、入ってくるものについて、あるいは輸出をするに際して、禁止や制限を新設または維持してはならないということに基本ルールがなっています。ただし、輸出をする国にとって、自分の国が食料不足になったときには、例外としてこの一般原則は適用しないというルールになっているわけです。

 今回の日豪は、そこに、日本がいざというときにはオーストラリアからちゃんと食料が入ってくるようにということで、工夫をされている章が入っているんですね。これは、条文を読むと長くなっちゃうので、私の時間がなくなっちゃうので申し上げませんが、とにかく、オーストラリアが何らかの国内事情で輸出しにくくなったときでも、一生懸命輸出するように努めますという条項が入っているんです。

 こういう条項というのは、今まで日本が十三カ国と結んだEPAの中に過去あったのかどうか、あるいは、日本以外の国同士が結んでいる自由貿易協定、経済連携協定の中にこういった前例はあるのかどうか、この辺について教えていただければと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の食料供給章でございますけれども、我が国がこれまで結んだEPAの中で、食料供給章を設けたものはございません。本件日豪EPAが初めてになります。

 また、豪州及びその他の主要国が第三国と締結している自由貿易協定、経済連携協定について、網羅的にお答えするのは困難でありますけれども、我が国が豪州と結んだこのEPAのような独立の章を設けている例があるとは承知しておりません。

 ただ、何らかの規定ということで申しますと、例えば、韓国、豪州のFTAの中には一定の規定が置かれているとは承知しておりますが、それは日豪EPAのような広範な内容、そして、まさに委員御指摘の、制限、規制をしないよう努めるということを規定したものではございません。

齋藤(健)委員 そうなりますと、ここで質問なんですけれども、なぜこの豪州と日本のEPAにだけこういう章が入っているのか、その点についてお答えをいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、豪州は、国際社会におきまして、我が国にとりまして戦略的なパートナーです。また、これまで我が国が結んできた二国間EPAの相手国のうち、最大の貿易相手国です。そして、我が国にとりまして重要な食料供給国でもあります。

 こうした豪州の位置づけを考えますときに、我が国への食料の安定供給の確保、こうした観点から交渉させていただき、結果として、日豪EPAにおいては、我が国のEPAとして初めてこの食料供給に関する章を設けることになった、こういった次第です。

 国民生活に直結する食料分野において、日豪間で具体的な協力を強化し、安定性あるいは信頼性、こういったものを高めていく、このことは、政府間のみならず、国民レベルでも日豪間の緊密化に資する、こういった大きな意義があると考えています。

 日豪EPAにつきましては、この食料供給以外においても、広い分野においてさまざまな規定を設けて、そして、アジア太平洋地域における経済連携を推進する、こうした包括的な協定が成立したと考えていますが、このことは、他の経済連携の交渉においても、地域のルールづくりにおいても、こうした動きを促進する、こうした意義がある、こういったEPAであると認識をしております。

齋藤(健)委員 オーストラリアでは、二〇〇六年、二〇〇七年と二年連続して干ばつがありまして、そのときの小麦の生産量が低水準になって、世界的な供給不足懸念が生じて、国際価格が上昇したという現実もございます。実際の運用が大事だと思っておりますので、日本とオーストラリアの現在の友好な関係の中で、せっかくつくっていただいた章でありますので、これが意味のある形で運用されるようにお願いをしておきたいと思います。

 最後の質問ですが、先ほど伊東委員からの質問がありましたが、今回は、牛肉の関税の引き下げと同時にセーフガードが導入されることになりました。

 ただ、牛肉の関税の引き下げは、十五年かけて引き下げるのでありますけれども、セーフガードについては、協定発効後十年目または両締約国が合意する他の年、ですから十年よりもっと早い可能性もあるということですけれども、両国間でこの見直しを行うということになっているわけです。

 十五年かけて関税は撤廃するけれども、十年後にセーフガードは見直しますよという内容になっているんですね。しかも、その十年後の見直しについては、残念ながら、市場アクセスを改善する方向での見直しだということが協定の条文にも書いてあるということです。

 ですから、その点については、突然また自民党農林部会長の立場に戻りますけれども、当然セーフガードが続く、守られるという前提で、我々はこの協定に、まあ、最低限クリアできているだろうと思っているわけでありますので、十年過ぎてもきちんとこのセーフガードが現状のまま維持されて、弱まることがないという前提で我々は理解しているんですけれども、これは農水省かもしれませんが、農水省もそういう理解でよろしいでしょうか。最後の質問です。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 おっしゃるとおり、日豪のEPAに関する牛肉の特別セーフガード措置に関しまして、協定の発効後の十年目または両締結国が合意する他年のいずれかの早い時期に、この両国間での見直しの対象となることというふうにされております。

 この見直し、例えば、セーフガードの発動水準の引き上げなどの措置を通じまして、この市場アクセスを改善する観点から行われることとされておりますが、あくまでも見直しの結果は何ら予見されているところではございませんでして、十一年目以降のこの発動水準に関しましては、両国間の交渉で合意が得られない限り十年目の発動水準が適用されることとなるものでございます。

 豪州との間で再協議を行う際には、国内の農林水産業の存立、さらには健全な発展と両立し得るよう、また、畜産に携わっている生産者の皆様が意欲を持って経営を続けていくことができますよう、全力を挙げて交渉に挑んでまいりたいというふうに考えております。

齋藤(健)委員 終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、日豪経済連携協定またそれに関連する質問を若干させていただきたいと思います。

 先ほど岸田大臣の方から提案理由の説明がございました。そのときにも三行ほどで今回のこの日豪経済連携協定の意義を述べられているんですけれども、もう少し詳しくちょっと御説明いただきたいなと思います。

 というのは、ほかの政府委員の答弁の中にもありましたけれども、オーストラリアというのは日本にとって第四位の貿易相手国でございますし、また、オーストラリアから見て日本は第二位の貿易相手国でございます。日豪経済連携協定の締結によりまして、戦略的パートナーでもある豪州との経済連携の強化、これはもちろんのこと、二国間の安全保障まで含めての緊密化というものがこれから期待されているところなんですね。

 この日豪経済連携協定をこのタイミングでしっかりと締結、発効させることの両国関係にとっての意義と、特に日本にとってこの連携協定というのはこれだけの国益上のメリットがありますよということを、ぜひ外務大臣の方から御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 先ほども答弁の中にありましたが、日豪EPAは、我が国がこれまで署名してきた二国間EPAの相手国のうち、最大の貿易相手国とのEPAということになります。

 こうした経済的な意義に加えまして、ただいま委員からも御指摘がありました、基本的価値あるいは戦略的利益を共有する豪州との間において関係強化につながる、こういったことにも寄与する、こうした重要な意義が今回のEPAにはあると考えています。

 また、この日豪EPAは、貿易、投資、知的財産、競争、あるいは政府調達など、幅広い分野が含まれています。ともにアジア太平洋地域における経済連携を推進する日豪間でこのような包括的な協定が成立することによって、TPPを含む地域のルールづくりを促進する、こういった期待にもつながります。

 そして、特に我が国にとってのメリットとしては、関税撤廃により、豪州市場における我が国企業の競争力を確保することができるということがあります。

 また、豪州は、日本にとって主要なエネルギー・鉱物資源そして食料の調達先であります。このEPA締結によりまして、これらの物資を安定的に供給する、こうしたことにもつながっていく、こうした意義も期待できるのではないかと考えます。

 以上申し上げましたように、今回のEPAの意義というのは、幅広い分野に大きな影響があると考えております。

佐藤(茂)委員 それで、日豪EPAの特徴、先ほどの齋藤委員あるいは伊東委員と若干重なる部分はあるかもわかりませんが、ぜひ簡潔に答弁いただきたいと思うんです。

 一つは、今までの十三カ国・地域のEPAにはなくて、今回新たに設けられた章といたしまして、食料供給という独立した章を設けられました。

 あわせてちょっとお聞きをしたいと思うんですが、さらには、今まで数少ない事例でありましたエネルギー・鉱物資源の章、これは今までインドネシア、ブルネイとはありましたけれども、そのほかのEPAにはありませんでした。こういうものも今回設けられました。さらに、スイスとのEPAにしかなかった電子商取引、こういう章も今回のオーストラリアのEPAの中には設けられている。

 ですから、先ほどの齋藤委員は食料供給ということで絞られましたけれども、さらにエネルギー・鉱物資源そして電子商取引ということをあえてこのオーストラリアのEPAの中で明確に章として立てられた理由、その意義、また内容についても簡潔に御答弁をお願いしたいと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 日豪EPAでは、委員御指摘のとおり、我が国のEPAとして初めて食料供給に関する章を設けましたが、豪州は、先ほど大臣の答弁にもございましたとおり、我が国にとって重要な食料供給国でございます。この食料分野の重要性に鑑みまして、一定の重要な食料に関しては、WTO協定に整合的であっても、輸出禁止や輸出制限の措置を導入しないよう努めることを約束するという規定が含まれている次第でございます。

 また、エネルギー・鉱物資源等について申し上げますと、我が国にとってオーストラリアは重要なエネルギー及び鉱物資源の供給国でございます。日豪EPAに独立の章としてエネルギー及び鉱物資源章を設けることは、こうした資源の我が国への安定供給の確保に資する意義がございます。

 具体的な内容といたしましては、先ほどの食料供給章と類似の第一項が設けられております。すなわち、WTO協定に整合的であっても、エネルギー及び鉱物資源の輸出禁止や輸出制限の措置を導入しないよう努めることを約束しております。

 さらに、過去、インドネシア及びブルネイとの間のEPAにおきまして、限定的ではありますけれども、エネルギー・鉱物資源に係る独立の章を設けたことは、委員御指摘のとおり、ございました。しかしながら、今回の日豪EPAにおきましては、適用対象となる鉱物資源の範囲を拡大しておりまして、より具体的に申し上げますと、インドネシア、ブルネイに比べて、石灰、アルミニウム、コバルト等、こういった重要資源にも対象を広げたということでございます。

 さらに、電子商取引章について申し上げます。

 WTO協定が作成されたころには存在をしなかったような新しい物品・サービスの取引方式がございます。そうした特性を踏まえて、適用される貿易ルールをより明確かつ精緻なものとする意義をこの独立章は持っていると考えております。

 日・スイスにも、御指摘のとおり、電子商取引章がございますけれども、今回の日豪EPAにおきましては、より内国民待遇、最恵国待遇について、その事由等を詳細に規定した意義を持っております。

佐藤(茂)委員 今局長からも答弁がありましたように、オーストラリアというのは、日本にとって資源とエネルギーの最も重要な供給地の一つでございます。

 きょうは経済産業省から来ていただいていると思うんですけれども、従来から、鉄鉱石や石炭、こういうものはもちろんのこと、これからの日本経済にとっても非常に大事になってまいります天然ガスさらにはレアアースについても、今オーストラリアの現地で日本企業による開発プロジェクトあるいは投資というものが進んでいるというように伺っているわけでございます。

 私は、かつて、野党時代に経済産業委員会の理事をやっておりましたときに、一番問題になりましたのは、レアアースの中国の輸出制限というのがありまして、そのときに、やはり、中国の依存度が余りにも高いレアアースを、いかに調達先を分散させて、そして安定供給に資するような、そういう具体的な戦略と戦術をいかに立てていくかということも非常に大きなテーマになりました。

 さらには、LNG、天然ガスも中東の割合が結構高いんですけれども、中東というのはやはり常にリスクがあるところでございますから、中東の依存度をできるだけ下げて、調達先をしっかりと分散させて、そして安定供給に資するということが、やはり日本のエネルギーの安全保障、資源の安全保障というものを考えたときに、これから非常に大事になってくるであろう。

 そのときに、このオーストラリアにおける日本企業の天然ガスやレアアースの開発や投資というのは非常に重要な意味を持ってくるのではないか、そのように考えているわけでございます。

 そういう観点から、今のオーストラリアにおける日本あるいは日本企業の天然ガスやレアアースの開発及び投資の状況、さらにはその意義について、政府の見解を伺っておきたいと思います。

住田政府参考人 豪州の位置づけでございますけれども、御指摘ございましたとおり、豪州は、石炭及び鉄鉱石の我が国の輸入量の約六割強を占めておるわけでございますが、LNGにつきましても、現在、輸入量の約二割を占めておりまして、最大の供給国ということになってございます。また、レアアースの供給につきましても、中国がやはり一番大きい供給国でございますが、中国以外ということで見ますと、鉱石といたしましては最大の供給源ということになっておるわけでございます。

 まず、天然ガスにつきまして、御指摘のございました、中東への依存がやはり大きいということでございますが、現に中東から約三割弱の天然ガスが来ておるところでございます。したがいまして、この天然ガスにおきます中東への依存というのを減らしていくという意味からも、オーストラリアのような、政治的にも、また輸入の経路という意味でも、非常に安定、安全な国の位置づけというのは非常に重要なわけでございます。

 天然ガスにつきまして、我が国企業、これまでからもいろいろな形で資本参加をしておりますが、さらに今回、イクシスというLNGのプロジェクトにおきましては、我が国の企業が主導をする形で参画をしていくということで、二〇一六年末には生産の開始を予定しておるところでございまして、また我が国にとっても非常に重要な供給源になるということでございます。

 また一方、レアアースにつきましては、豪州のマウント・ウェルド鉱山におきまして採掘をいたしました鉱石を、マレーシアの工場で精製して日本に持ってくるというプロジェクトに我が国企業が参画をしておりまして、昨年から生産を開始したところでございますが、間もなく本格的な生産が行われるということで、レアアース製品が日本に供給をされ始めているということでございまして、一部のレアアースにおきましては、豪州からの供給というのが主要な供給源になっていくということを考えております。

 このように、オーストラリアというのは、我が国の資源エネルギーの安定供給確保という観点から、非常に重要な供給国の一つでございます。加えまして、企業の投資環境の観点からも、ほかの国と比較して非常に安定をしているというものでございます。政治的にも、経路という意味においても、安定的であるというふうに考えております。

 このため、政府としましては、オーストラリアにおけるさまざまなプロジェクトについて、JOGMECなどを通じたファイナンスの面での支援を行うなど、オーストラリアとの資源エネルギー分野での協力関係の強化、拡大に向けまして、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

佐藤(茂)委員 続いて、外務大臣から、今回の意義で、競争力の確保に非常に意味があるんだという観点からいうと、我々がやはり意識しないといけないのは韓豪FTA、これとのタイミングの問題というのが非常に大事になってこようかと思います。

 四月八日にこの韓豪FTAというのは署名されて、現在、両国の国会において締結に向けた議論が行われているというようにお聞きしておりますが、外務省で知る限り、この韓国と豪州のFTAの締結、発効の見通しはどうなっているのか、また、内容において、日豪EPAと比較してどのような違いがあるのか、また、先ほど指摘しましたように、発効のタイミングを考えましたときに、やはり日豪EPAの発効はなるべく早い方が望ましいと私は考えるんですけれども、今の外務省としての見解を伺いたいと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御質問の、韓国と豪州のFTAの発効のタイミングについてですけれども、日豪EPAの署名よりも三カ月早い四月に署名をされたというのは御指摘のとおりでございます。現在、豪州及び韓国において、締結に向けた国内の手続が進められておりまして、日豪EPAよりも早く発効する可能性はあると認識しております。

 また、韓豪FTAの内容ということでありますけれども、一般的に、EPAやFTAの交渉では、交渉参加国の間でそれぞれの関心に応じて協定の構成や内容が決まってまいります。したがいまして、経済関係や制度の異なる第三国の間のEPAですとかFTAを、我が国が結んだEPAと一概に比較することは必ずしも容易ではありません。したがいまして、御質問いただきました韓国・豪州FTAにつきましても、基本的には同様の難しさがございます。

 ただ、その上で申し上げますと、例えば、日豪EPAでは、物品の市場アクセスについて、我が方の関心品目であります自動車、自動車部品について、韓豪FTAと同水準の約束を得ております。

 また、物品の市場アクセス以外の分野については、先ほども御質問いただきましたとおり、韓豪FTAにはない、独立の食料供給章やエネルギー及び鉱物資源章が日豪EPAには設けられておりまして、これは特筆すべきことだろうと考えております。

 また、サービス、電子商取引、政府調達、競争といった分野におきましても、韓豪FTAに比べて劣後しない高い水準のものとなっておりまして、以上を踏まえますと、日豪EPAは韓豪FTAにまさるとも劣らない内容となっていると認識をしている次第でございます。

 そして、最後でありますけれども、豪州市場において日本企業が韓国企業より劣後した条件のもとに置かれる期間をなるべく短くするという観点から、政府といたしましては、本件日豪EPAの早期の発効に向け尽力しているところであります。

 ぜひ、委員の皆様方の御理解と御協力をお願い申し上げます。

佐藤(茂)委員 質問時間が五分を切りましたので。

 きょう、防衛省から、防衛大臣政務官及び政府委員の皆さんにもお越しいただいております。

 日本と豪州というのは、基本的価値と戦略的利益を共有するアジア太平洋地域における戦略的パートナーでございまして、この委員会で今話題になっております貿易・投資を中心とした良好な経済分野を築いていくことだけが大事ではなくて、安全保障、防衛協力の分野においても、今、協力関係というのが非常に進んでいる状況にございます。

 十月の十六日に日豪防衛大臣会談というのが行われまして、オーストラリアの将来潜水艦プログラムに関する協力の可能性について検討を行っていくことになりました。

 本年四月に閣議決定されました防衛移転三原則の原則二では、「移転を認め得る場合を次の場合に限定し、透明性を確保しつつ、厳格審査を行う。」ということになっております。その一つは「平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合」、二つ目が「我が国の安全保障に資する場合」、この二つでございます。

 この二つのことを考えたときに、どう考えても、このオーストラリアの将来潜水艦事案というのは、「我が国の安全保障に資する場合」というものに該当するのかどうかということを、これからしっかりと吟味していかないといけないんだろうと思うんですね。

 今回のこの事案が日本の安全保障につながるのか、あるいは日本の安全保障にとってどういう点でプラスなのか、現段階でどのように考えておられるのか、防衛省としての見解を伺っておきたいと思います。

石川大臣政務官 お答え申し上げます。

 オーストラリアは、本日御議論いただいておりますとおり、普遍的価値のみならず、アジア太平洋地域における戦略的利益も共有する特別な関係にあるパートナーであると認識しているところでございます。

 このような豪州との間では、安全保障面におきましても、共同訓練、防衛装備、技術協力など、多面的に防衛協力を強化していくことが、両国の特別な戦略的パートナーシップを深化させるとともに、我が国の安全保障上も極めて重要な意義があるものと考えているところでございます。

 なお、先生御指摘の、防衛装備移転三原則との関係で申し上げれば、一般に、防衛装備の移転に当たっては、御指摘のとおり、我が国の安全保障の観点から積極的な意義があることが不可欠となっております。

 そういう意味で、豪州の将来潜水艦プログラムに関する協力につきましては、今般の日豪防衛相会談におきまして、豪州側からの要請を受け、日本としてどのような協力ができるのか今後検討していくこととしたところでございますが、そういった中で、本件協力がどのような観点から我が国の安全保障に資するのかといった点は十分に吟味していかなければならないものと考えております。

 以上でございます。

佐藤(茂)委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

土屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三分散会


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