衆議院

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第4号 平成26年10月29日(水曜日)

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平成二十六年十月二十九日(水曜日)

    午前九時五十五分開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江崎 鐵磨君

   理事 齋藤  健君 理事 武田 良太君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 長島 昭久君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      青山 周平君    河井 克行君

      木原 誠二君    小林 鷹之君

      小林 史明君    河野 太郎君

      島田 佳和君    薗浦健太郎君

      田野瀬太道君    渡海紀三朗君

      東郷 哲也君    中根 一幸君

      橋本 英教君    星野 剛士君

      宮内 秀樹君    武藤 貴也君

      吉川  赳君    篠原  孝君

      玉木雄一郎君    津村 啓介君

      若井 康彦君    鷲尾英一郎君

      青柳陽一郎君    阪口 直人君

      岡本 三成君    宮沢 隆仁君

      笠井  亮君    小宮山泰子君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   農林水産大臣       西川 公也君

   外務副大臣        中山 泰秀君

   農林水産副大臣      あべ 俊子君

   内閣府大臣政務官     小泉進次郎君

   外務大臣政務官      薗浦健太郎君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   農林水産大臣政務官    中川 郁子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 河野  章君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 島田 順二君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    齋木 尚子君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 松村 武人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           原田 英男君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十九日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     小林 史明君

  小林 鷹之君     田野瀬太道君

  鈴木 俊一君     橋本 英教君

  星野 剛士君     青山 周平君

  津村 啓介君     篠原  孝君

  若井 康彦君     鷲尾英一郎君

  玉城デニー君     小宮山泰子君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     宮内 秀樹君

  小林 史明君     吉川  赳君

  田野瀬太道君     小林 鷹之君

  橋本 英教君     鈴木 俊一君

  篠原  孝君     津村 啓介君

  鷲尾英一郎君     若井 康彦君

  小宮山泰子君     玉城デニー君

同日

 辞任         補欠選任

  宮内 秀樹君     星野 剛士君

  吉川  赳君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま本委員会において審査中の経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件に対し、農林水産委員会から連合審査会開会の申し入れがありました。これを受諾するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上、決定いたしますので、御了承願います。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時十分開議

土屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。西川農林水産大臣。

西川国務大臣 午前中の連合審査会におきまして、農水省側で不手際があったことをおわび申し上げます。御迷惑をおかけいたしました。

土屋委員長 この際、申し上げます。

 先ほどの連合審査会におきまして、議事運営に不手際がございました。大変申しわけありませんでした。おわび申し上げます。

 今後とも円滑な運営を心がけていきたいと存じます。

     ――――◇―――――

土屋委員長 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官河野章君、大臣官房参事官島田順二君、経済局長齋木尚子君、内閣官房内閣審議官澁谷和久君、財務省大臣官房審議官松村武人君、農林水産省大臣官房総括審議官今城健晴君、生産局畜産部長原田英男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。篠原孝君。

篠原委員 篠原でございます。

 午前中に引き続き、質問させていただきます。

 ちょっと私の方からも、フェアな議論をするために、おわびをしておきます。

 私、午後、ちゃんとするというのは、冒頭申し上げましたように、四日ほどシドニーに行っていまして、質問の通告というか、できなかったもので、連合審査の方だけでやる予定で、当初、先週、質問通告しておりますので、ちょっと質問通告にない質問もあるかと思いますけれども、その点は答えられない、そういうふうにお答えいただいて結構でございます。なるべくちゃんと答えていただきたいんですけれども、よろしくお願いします。

 資料の二ページ、三ページをちょっと見ていただきたいんです。

 これはまだ、質問というよりも、私の意見を聞いていただきたいということなんです、このEPAに関係してですけれども。実は、これはオーストラリアに行くときにも持っていったものでして、だから英語で書いてあるんです。よく見ていただきたいと思います。

 地産地消という言葉は、皆さんもう御存じだろうと思います。エネルギーの地産地消ということで、エネルギーにも使われるようになりました。実は、よく申し上げているんですが、この言葉と下の旬産旬消というのは、私がつくった言葉であります。

 相当定着しておりまして、外国でもよく使われているんです。プロデュースローカリー・コンシュームローカリーというのが地産地消です。旬産旬消は、プロデュースシーズナリー・コンシュームシーズナリー。英語がよくわからなかったときは、プロデュースゼア・コンシュームゼアとか言っていたんですが、格調高くするとこうなるんだそうです。プロデュースゼンとかコンシュームゼンというふうに、それをローカルとシーズナルにやってあります。

 これは、上のもので見ると、スローフード、イタリアのスローフード、ファストフードに対してスローフードというので、もう使われています。これはどういう考え方かというと、済みません、英語で恐縮ですけれども、農場とテーブルの距離を縮めるということです。それから、生産と消費の間の時間を縮める。これが食生活の大原則だと。

 皆さん、地のもの、旬のものを食べるんだというのは、おじいちゃんやおばあさんから聞いて育てられたと思います。それをちょっと四字熟語にしただけなんです。この延長線上で考えていただきたいんです。

 「地産地消」のところですね。私がつくった言葉なんですが、フードマイレージ、これももう農業白書や環境白書に使われています。

 ウッドマイレージ、おわかりになりますよね、木。木こそ重い。こんなものを遠くから遠くへ運ぶと、CO2を物すごく出すわけです。だから、なるべく移動は少ない方がいいんですね。

 同じ家を建てるにしたって、僕はよく例に出すんですけれども、小宮山さん、おられますね、小宮山さんのところの川越市で、家をつくるのにカナダ材でつくったら、カナダのバンクーバー港まで三千キロから四千キロ、トラックか列車で材木を運ぶ、そこから横浜港に来て、横浜港からまた車で運ばれるわけです。それを秩父材でつくったら、本当に環境負荷が少ないわけです。外部不経済がないわけです。

 こういうことを我々は考えていかなくちゃいけないんじゃないかと思います。何でもかんでも、あっちが安くつくれるから全部輸入するとかいうのは、絶対考えなくちゃいけない。このウッドマイレージも、もう環境白書、林業白書に使われています。

 次が、全く使われていないんですよね、意図的に使わない人たちがいるんです、グッズマイレージです。韻も踏んでいるんです。外国人の方はみんな完璧に理解できます、理屈で考えますから。物の移動はなるべく少なくした方が環境に優しい生き方ができるんだということ、これは皆さんおわかりいただけるんじゃないかと思います。

 ただ、これは何で使われないかというと、ここまでいくと、今取り組んでいる自由貿易、これに大きく反するんです、フリートレードとそれからインターナショナルディビジョンに。しかし、どこに線を引くかというのをよく考えていただきたいんです。

 ここまでは英語にしていかなかったんです、その次のページを見ていただきたいんですが、地産地消と自由貿易がいかに対立するかというんですね。

 エネルギーの地産地消で、皆さん、今エネルギー問題を非常に考えておられるので、おわかりいただけると思います。例えば送電ロスを少なくするんだったら、広瀬隆さんという反原発をずっとやってきている人が、新宿副都心に原発をつくれと言っていました。今、ドイツでは、もう風力発電、北ドイツではすごいです。しかし、工業地帯は南にある。送電線をどうやって引くかという大問題になっているわけです。景観を壊すし、鉄はいっぱい使うし。

 日本で何をすべきかといったら、風の強いところ、弱いところがある。私のところで恐縮ですけれども、長野県なんというのは、小水力発電、雨がいっぱい降って急傾斜がありますから、これで長野県が、こんなのは計算の仕方はいろいろあるんですけれどもね、さっきのEPAの逆効果というか影響もそうですけれども、計算の仕方によるんですけれども、簡単に、長野県民が使う電力を全部小水力で発電できるんです。エネルギーも地産地消でなければいけないんです。

 我が長野県は、重化学工業なんかあるはずがないんです。軽薄短小じゃないと絶対ペイしないんです。もう地産地消というか、輸送コストというのは考えないとだめです。

 その次に、オーストラリア。考えていただくとわかるんですが、オーストラリアの、皆さん御存じだと思います、日本は約五兆円輸入しています。後ろの表を見ていただくとわかりますし、さんざんごらんになったと思います。日本が最大の貿易赤字を抱えている国です。鉄鉱石、石炭、天然ガスや石油の類いです。

 その下の(2)のところで見ていただきたいんですが、マクレーンという非常によくしゃべる元大使がおられたと思うんです。七年前、大使でした。私のところに来ました、私がネクストキャビネットの農林水産大臣をやっていたので、そして決議をしたので。そして、理解してほしいと来て、一時間半ぐらい議論しました。

 僕は、こう言ってやったんです。もし環境に優しい生き方というか効率を考えたら、何でオーストラリアは、金額なんかちょっとだけの農産物をこれだけ輸出して日本を苦しめるんだ、石炭も鉄鉱石もあるじゃないか、少なくとも、鉄鋼はオーストラリアでつくってそれを日本に輸出したらどうだ、石炭も鉄鉱石もみんな来るから、そのかすが日本じゅうにたまって日本の環境が劣化する、オーストラリアで始末をつけてほしいと。

 皆さんはどれだけ素直にお聞きになるかどうかわかりませんけれども、欧米人というのは、理屈は理屈で考えられるんですね。ですから、論理的にはおまえの言うとおりだと言って議論が始まりました。しかし、結論はやはり、もっと牛肉を買えと言っているふうになるんですけれどもね。

 これをよく考えていただきたいんです。だけれども、皆さんの頭の中は、何でもそうやって輸入してつくって、こっちがちょっと安くつくれるからというので、インターナショナルディビジョンでということでやっておられるんじゃないかと思います。

 私は、これはそろそろ考え直してもいいんじゃないかと思っているんです。だから、その権化である、農産物をみんな含めて関税ゼロにするなどというTPPには反対して、ネクタイなんかしたくないのにネクタイをして、余り似合わないと思うんですけれども、このバッジを派手派手しくやっているんです。皆さん、それだけ真剣に考えていただいているかどうかということです。

 だから、その国の国民に必要なものは、なるべくその最終消費地の近くでつくるのが合理的なんです。だから海外立地しているんですね、輸送コストを考えたら。

 それで、何で我が国で牛肉を、オーストラリアから全部買わないでつくっているかというと、最終消費地は日本なんだから、えさのトウモロコシだとかグレーンソルガムが日本にはないけれども、それでも輸入して、そしてつくって、なるべく新鮮な肉を消費者に届けようということです。許されるんです、これは。こっちの方がいいんです。だから、こういうことをよく考えていただきたいんです。だから、食べ物は特に必要なんですね、フードマイレージを少なくするのは。

 フードマイルというのは、ティム・ラングというイギリスのラルフ・ネーダーみたいな人が使い出したんです、フードマイルズだったんです。私はトン掛ける輸送距離で、積分してやると、日本は当然、一番高くなるんです。

 皆さんおわかりだと思いますけれども、日本は金額でいえば貿易黒字国でしたけれどもね。金額ではため込んでいます。もっとため込んでいるのは、物の輸出と輸入だったら、原料は山ほど、七億トンぐらい輸入しているんです、これはちょっと古い数字ですけれども。七千万トンしか輸出していないから、六億トンが日本の大気や土地にかすとして残るんです。これをずっと続けていったら、やはりバランスを崩していくんじゃないかと私は思うんです。

 だから、余り自由貿易、自由貿易というのをやっていただきたくないと思うんですけれども、こういう考え、虚心坦懐、原点に戻って考えていただきたいと思うんです。

 外務大臣、この考え方、いかがでしょうか。TPPにもぜひ反映していただきたいと思っています。

岸田国務大臣 ただいま委員の方から、地産地消あるいは旬産旬消ですか、お話を聞かせていただきまして、大変興味深く聞かせていただきました。さまざまな示唆に富む要素を含んでおられるお話ではないかなと感じました。

 その一方で、我が国の現状を考えますときに、我が国としましては、食料ですとかエネルギーですとか、あるいは鉱物ですとか、こういったものを輸入に頼っている、こうした現実があるのも事実であります。そして、そうしたものの安定供給を考えた場合に、安全保障や貿易などさまざまな不安定な要素があるというのも、国際社会の現実ではないかとも思います。

 そういった不透明な国際状況、あるいは不安定なさまざまな環境の中で、我が国として必要な食物、エネルギーあるいは鉱物等をいかに安定的に確保するかという視点も重要なのではないかなとも思いながら聞いておりました。

 いずれにせよ、どちらかというのではなくして、地産地消、そして、言ってみれば自由貿易、こういった考え方とのバランス等についても思いをめぐらせながら、我が国としてあるべき姿を考えていく課題ではないかと考えます。

篠原委員 政治家が考えなくちゃだめですね。経産省とか外務省とかの皆さんは、どこかの偏った方にばかり行ってしまうんです。これはやはり我々政治家が、大所高所からとめて、ストップをかけなければいけないと思っております。

 次に、午前中も議論がありましたけれども、ISDあるいはISDSについてです。

 林委員が言っていましたけれども、日豪には入っていないんですね。日本が、たしか二国間のEPAで入っていないのは、フィリピンも入っていない。私はこれは問題だと思うんです。

 もともと発展途上国が、内乱があったりして、工場、いろいろなものを、投資先のものも国有化したり、そういったことがあり得るので、そのためにISD条項があったはずなのに、いつの間にか拡大解釈されている。相手がアメリカだからなんですね。アメリカはとんでもない訴訟大国ですから、何でも訴える。もうNAFTAで、カナダやメキシコはさんざんひどい目に遭っている。

 日本はどうするのか。この一ページ目のところに、ISDSで、ちゃんと、「合意しないこと。」と書いてあるんです。一体、これがどのようにTPPでは行われているのか。

 こういう点では、日豪EPAには入らなかったのは丸なんですね、二重丸なんです。日本がさんざん主張したのかというと、多分、違うんだろうと思うんです。オーストラリアが強硬に嫌がったからなんです。

 ところが、これまた不思議なんですけれども、御存じだと思いますが、韓国と豪州のFTAには入っているんです。聞いてきました。聞いてきましたというか、向こうが話したんですけれどもね、午前中にお話しした件ですけれども。

 それは、相当抵抗したんですよ。だから、韓国とオーストラリアのFTAは、批准というか国会承認を受けるのに相当時間がかかったんです。日本の場合は、すぐ通すと言っていました。

 韓国は、なぜ執拗にISDSを入れ込もうとしたか。これは、大臣、なぜかおわかりになりますか。韓国も本当は嫌がっていたんです。韓国は、日本よりも、何というか、物すごく誇り高い国ですから、米韓FTAにいろいろなところから反旗が翻りましたからね。BSEの絡みで、高校生がろうそくデモをしたりしたんです。だけれども、法曹界、法律界、弁護士、裁判官たちが、猛然と、韓国の主権を侵すということで反対したのがこのISDSなんです。

 そして、李明博大統領は、朴槿恵大統領に、これは再交渉すべきだというふうに引き継ぎをしているはずなんです。途中まではそうなっていたんです。それを、今回、しつこく協定の中に入れたんです。

 この背景というのをお聞きになっておられますでしょうか。質問通告してありませんけれども。

岸田国務大臣 第三国間のやりとりですので、私も、十分情報を得ていないうちに主観で物を申し上げるのは控えさせていただきたいと存じます。

篠原委員 通告してありませんので、しようがないんです。

 では、これは私の、大臣でもない、副大臣でもない、自由な考えです、解説ですけれども、韓国も本当は嫌なんです。ですけれども、韓国と豪州とのFTAでISDSが入らなかったら、それ、できるじゃないか、それが当然だ、アメリカと再交渉しろと言われるのが怖いんです、多分、韓国は。だから、どことも、アメリカとのFTAにISDSが入っている、だからオーストラリアのも入っている。みんな入るのが常識なんだと言いたいから、必死になって食い下がって、オーストラリアが嫌なのに。オーストラリアは、日本とオーストラリアの間と同じように、オーストラリアの方がずっと輸出超過なんです。だから、そういうメリットがあるので、早くFTAを結んだ方が得なので、そこは目をつぶって韓国には応じたんだろうと思うんです。

 韓国は、変な対応だと思いますけれどもね。思いますけれども、韓国としては筋を通しているんです。変な筋の通し方ですけれどもね、余り賢くないし。それは、法曹、法律界から文句を言われるのを抑えるためです。

 韓国は、もう一つあって、日本を異様に意識する国ですから、日本も認めているんだというのを何かのときに使っているはずなんです。

 翻って、では、我が日本国のことを考えますと、これは、なかなか、今後のEPAなんかは問題だと思いますよ。

 だから、先進国同士では、お互いに、そんな突然国有化されるなんというのはないんだから、ISDSみたいなのはやめようというので、米豪のFTAはなかったわけです。先進国同士ではなしにしようというふうになっているわけです。オーストラリアはそれにこだわっているんです。日本もそれを受け入れた。

 だから、これからあるEPAの対象国で、ああ、うちは発展途上国と同じに扱われるのか、オーストラリアと同じような先進国だ、ばかにするなということを言われたりするのではないかと思います。

 外務省の皆さん、よく考えておいてください。日本は終始一貫していないんですよね。やはり、僕は、毅然たる態度で、ISDSは絶対日本の主権を侵すというふうに言って、突っぱねていくべきだと思います。

 なぜかというと、アメリカはもっと恐ろしいことを考えているんです。カレンシーマニピュレーションとかカレンシーインターベンションとかいう言葉は、大臣、お聞きになっていますね、通貨操作国というのを。オリジナリーには、中国や韓国に対して、中国が特に貿易黒字を相当抱えているときに、意識的に通貨を安くしているということで言われたんですが、今や、このTPPの交渉にも入りつつあるんです。日本が通貨操作国だという言いがかりをアメリカはつけようとしている。TPPは、何でもかんでもアメリカのルールを押しつけているんです。

 そして、もう一つ恐ろしいのは、このISDSは後から訴えるんですけれども、サーティフィケーションというもの、これは、大臣、お聞きになったことは余りないのかもしれませんけれども、私のようにTPPを追っているのは、どんどん入ってくるんです。ISDSは後からなんですが、こっちは先でして、証明という意味なんです。

 どういうものかというと、アメリカの制度に合わないような法律は、先に直さなかったら、協定を結ばないというんです。事前チェックです。事後チェックも恐ろしいです。この法律が間違っているからだめだといって訴えられる。新しくつくろうとしたら、これはTPPに反するからだめだという。めちゃくちゃです。

 このISDSそれからサーティフィケーション、外務省の方がどうやって日本語をつくるのか知りませんけれども、がんじがらめになってきて、日本は主権国家として立ち行かなくなっちゃうんじゃないかと思います、TPPは。だから、こういうことをよく考えていただきたいと思うんです。

 何も、日本国の独立は、憲法九条を改正してだけじゃないんです。そっちはそっちで、私は、やるんだったらやるで、大事だと思います。しかし、こんなへんちくりんな経済協定でもって日本の主権がずたずたにされる、これは絶対に避けなければいけない。これは、一番情報が早い、それで、そういうことを考えている外務省、外務省の皆さんというか、外務大臣が考えていただかなくちゃいけないことだと思うんです。

 主権が侵されるわけです。日本でこの法律が大事だとつくっている、文句を言われる、これが合わないから直さなければ協定は結ばない、こんなふうになりつつあるんです。

 だから、今、TPPの中に完璧に入ることはない。こんなことをやってきたら、ますますまとまらなくなると思いますけれども、政府間レベルでサインした、その後、どこの国でも国会承認をする、そのときに問題になって、これを認めなかったら入れない。リオープンはしないと日本国政府は言っていますけれども、私は、アメリカから言われると、また妥協して、受け入れなくちゃならなくなったりするんじゃないのか。

 こういうこともぜひ考えて、TPPについては、日本の国益を守るために全力で取り組んでいただくことをお願いしまして、私の質問を終わります。

土屋委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 日豪EPA、大変重要なこの条約の話をさせていただきたいと思います。

 二つに絞って、きょうは質問します。一つは影響試算、二つ目は決議との整合性、この二つについて絞って質問したいと思いますので、端的にお答えをいただきたいと思います。

 まず、午前の質疑を踏まえて確認したいことがありますので、それから質問したいと思うんです。

 TPPの影響試算について、午前の、私はちょっと聞き逃したんですが、農水大臣が、来年の早いうちにも新しい試算を出すやに答弁をしたと私は理解しておるんですけれども、この点、事実関係を改めてお答えいただきたいと思います。

今城政府参考人 お答えいたします。

 午前中、大臣がお話しされた内容でございますけれども、私どもが聞いておりますのは、内閣官房、要するに、これはTPP政府対策本部事務局でございます、ここにおきまして、国際的な連携を図りながら、TPPの経済効果分析など、EPA等も含むんだと思いますが、行うために必要な経費、これを二十七年度予算として概算要求しているということで、準備を進めているというふうに仄聞しておりまして、そういうことで大臣がお話しになったのかなというふうに理解しております。

玉木委員 わかりました。二十七年度予算で、そういう試算の予算を概算要求でしているということなので、来年四月以降にそういった試算をするということだと思います。

 これは、私は幾つかのインプリケーションがあると思っているのは、今、GTAPモデルということで一回回して、一回やっていますけれども、新たにするということは、幾つかの条件が明確にならないと新しい試算をすることは意味がないということですね。

 ということは、来年四月以降、関税を含めた幾つかの不明確だった数値が明確化されるということを前提に、予算要求をしているのではないかなと思っているので、ある種、政府の意思として、来年度はTPPの大枠というか妥結に向けた、そういったことが見えるという前提でその試算をするということを意味しているのか、その点についてあわせてお答えいただければと思います。

今城政府参考人 お答えいたします。

 いずれにしても内閣官房の予算でございますが、これにつきましては、当然、まだTPPが現時点において交渉真っ最中でございますし、いつごろどうなるかということも現時点では全く予測できないという中で、GTAPモデルではできないいわゆる非関税措置等々の分野、そこのところにおける手法と申しますか、そういうものの開発のための予算であるというふうに仄聞しておりまして、ストレートに、今委員がおっしゃったような影響試算そのものを四月以降に予見しているからとか、そういうことではないように仄聞しております。

玉木委員 直接の担当ではないので、仄聞でお答えしにくいんだと思いますけれども。ただ、試算は、私は出すことはいいと思いますので、それを早く出していただきたいなと思っております。

 その意味で、日豪EPAについて話を戻しますけれども、午前中の審議の中でも、日豪に限らずEPAについて試算したことはない、これからも出す予定はないということなんですが、私は、これはやはり出すべきだと思いますよ。

 というのは、今お手元に資料を配っていますけれども、今からさかのぼること十年前でありますけれども、日豪貿易経済枠組みに基づく共同研究ということが行われております。ここに書きましたけれども、二〇〇三年七月、当時の小泉総理とハワード首相との間で署名された日豪貿易経済枠組みに基づき両国で共同研究をするということで実施をしております。

 この実施した中身なんですけれども、私が先ほど申し上げたような、いわゆるGTAPモデルを回しておりまして、主な試算の内容は下に書いています。全体として両国のGDPと二国間貿易は増加をする。ここに書いていますが、特に増加率はオーストラリアの方が大きいとなっているんですね。二〇二〇年、オリンピックの開催される年の試算として出ていますけれども、オーストラリアで〇・六六から一・七九、中央値でいうと一・二二五です、ふえる。それに対して、日本が〇・〇三から〇・一三、中央値でいうと〇・〇八、一%に満たない数字がふえるということであります。

 これは、試算するときによくあるんですけれども、全ての関税が一気になくなった場合の仮定、かなり大胆な仮定を置いてやるとこうなるということなんですが、ただ、そういう前提でもきちんと、これは右にちょっと英語の簡単な省略版を書いていますけれども、セクトリアル・インパクツ・イン・ジャパンと書いていますから、セクター別のインパクトは一応出しているんです。これを二〇〇五年に出した上で、二〇〇六年の衆参の農林水産委員会の決議につながっていくんです。

 次のページを見てください。

 こういうことがあるので、これは今の西川大臣が委員長だったときの決議でありますけれども、一番上の段の後半に、小さい字なんですが、こういうふうに書いています。「一方、」以下です。「日豪間の」とありまして三行目、「日豪間のEPAによって、国内の農林水産業を中心に大きな悪影響が及び、我が国農林水産業・農山漁村の有する多面的機能が損なわれるおそれがあるとともに、現在進めている我が国農林水産業の構造改革の取組に支障が生じるとの強い懸念がある。」ということですね。

 こういうことを、ある種、試算に基づいて決議に至っているわけでありますけれども、なぜかというと、資料一に戻っていただきたいんですが、この計算をすると、日豪の多くの産業分野で輸出、生産、雇用が増加するものの、日本の農業分野では生産が大幅に減少、もっと大事なのは、農業及び食料分野で雇用が大幅に減少するというふうになっております。

 ちなみに、一〇〇%関税を撤廃した場合には、労働市場への影響として、グレーンズということですから、穀物系は三〇%、実は雇用が悪化するという試算。デアリープロダクツですから、乳製品については一四・九%雇用が悪化するということが試算で出ているわけですね。こういうことがあるので、今で言う重要五項目についての決議が決まったわけです。

 それで、問題です。こういう試算を十年前に出してあるわけでありますけれども、今いよいよこの条約の批准、これは我々の国民生活に大きな影響を与えます。プラスもあればマイナスもある。

 それを立法府にいる人間として、私も今の時点で、本当にイエスと言っていいのかどうか、いまだにわかりません、正直言うと。この中に座っておられる方で、確信を持ってこれがいいのか。自由貿易が一般にいいということは誰でもわかります。でも、この内容が本当に我が国にとってプラスのインパクト、あるいは国益にとって少なくともプラスになるのかという確証を持って、この条約に対してイエスと言えるかどうか。このことが、一人一人の、これは与野党を問いません、国会議員に問われていると思っています。

 その意味では、私は情報が欲しい。その意味で、二〇〇五年に行ったものと同じような試算をやはり出すべきだと思います。幾つかの関税の引き下げについての率やペース、例えば米については除外にすることが決まっていますから、それは心配ないというようなことを全て入れた上で、やはり試算を出すべきだ、少なくとも二〇〇五年に行ったようなモデルを使って出すべきだと考えますけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、日豪EPAの意義につきましては、外交の立場から申し上げるならば、日豪の二国間関係、さらには地域におけるルールづくり、さらには日本企業の競争力、また、食料、エネルギー、鉱物を初めとする日本に必要なものの安定供給に資する、こういったさまざまな観点からメリットがあり、ぜひ、この日豪EPAの意義について国会におきましてもしっかり御理解をいただき、御承認いただきたいというふうに思っております。

 そして、委員の御指摘の試算につきましては、今後、我が国の農業を初めとする産業に対する影響等を考える上で、重要性を御指摘になられているものかと存じます。

 いずれにしましても、こうした外交の立場から日豪EPAの重要性はしっかり説明させていただきたいと思いますが、政府全体として、国内の産業に対する影響等について真剣な議論を行い、対応を考えていく、この点は大変重要な視点ではないかと考えます。

玉木委員 一般論として、EPAは反対するものではないし、私もいいと思います。ただ、それが本当にどういう影響を及ぼすのかということについては、交渉内容によるわけですね。

 ですから、TPPもそうですけれども、交渉が今進行しているときには、そういうことを出せと言ってもそれは無理筋なので、我々も要求はしませんけれども、ある程度、まさにきょうこうして議論が行われる最終段階になっていて、枠組みがわかっているわけですから、それを踏まえた試算をやはり出すべきだと思うし、それが私は国民に対する最低限の立法府としての説明責任、あるいは政府としての説明責任だと思います。

 ですから、本当であれば、そういったものを見た上で、最終的にこれが、決議との整合性も踏まえつつ、いいのか悪いのかを判断したいんですけれども、なかなか時間的に制約があるということであれば、事後でもいいので、やはり今回の取り決めが、二〇〇五年と私は同じモデルでいいと思いますので、やはり試算を当委員会に提出していただきたいと思うんですけれども、委員長、そこはお取り計らいいただけますでしょうか。

土屋委員長 それは理事会において協議していただくことにいたしたいと思います。

玉木委員 これは大事なことだと思いますので、ぜひお願いします。

 なぜ私はこういうことを言うかというと、次の話に移りたいと思いますが、決議との整合性です。こういうことに対して比較的厳しい篠原先生も、このEPAの内容はまあまあいいんじゃないかという話を午前中していましたけれども、私は実はそう思えないんですね。

 なぜかというと、資料三を見てください。

 セーフガードを組み合わせた牛肉の関税の取り扱いについては、うまくやっていると思います、確かに。私は、余りフローズンについて、つまり冷凍には心配していないんですが、チルドについては、かなり日本の比較的良質な牛肉との競合があるので、よくよくしっかり見ていかなければいけないという立場なんです。

 この三の、えらいがちゃがちゃした表をちょっと皆さん眺めていただきたいんですが、何を申し上げたいかというと、まず、赤の上の線、ぎざぎざです。これは、冷蔵肉、いわゆるチルドでありまして、三八・五をすとんすとんとまず下げるわけです。

 これはちょっと審議にありましたけれども、附属書においては、一年目はことしの年度末、つまり三月三十一日で終わります。二年目は、実はいきなり来年の四月一日から始まるので、この一、二年目というのは、いきなり、わずかこれから数カ月の間にこの二段階まで下がります。ですから、実は、赤のチルド、冷蔵の方を見ていただくと、かなり一気に下がるということがごらんいただけるかと思います。ずっと下がっていって、これは十五年目まで下がっていって、二三・五になるわけですね。

 青の冷凍の方です、フローズンの方ですけれども、これはちょっと違った形で下がっていくんですが、最終一九・五まで、十八年目までかけて下がっていくわけです。

 問題はここからです。セーフガードであります。

 セーフガードが入るので、それを超えた量になった瞬間にもとの三八・五になるので、今の国内に流通している量からそんなに変わらないので大丈夫ですよ、だから国内農業に対する影響はないからまあいいんじゃないか、篠原さんもそう考えて、多分、うんと言ったんでしょうけれども、私が実は心配しているのは、これを見てください、セーフガードについて決まっているのは十年目までです。それに対して、関税が下がっていくペースと長さについては、それぞれ十五年、十八年と、さらにその先まで決まっています。

 では、それぞれの、青の冷凍、赤の冷蔵に関してセーフガードがどういうふうに十一年目から適用されるかについては、結論からいうと、決まっていません。どう書かれているかというと、協定第二・十八条、下に書いていますが、これを見てください。

 ここに書いているように、十年目の年または合意する早い年において見直しの対象になりますよと書いてあるんですね、見直されるんだと。ただし、その見直しは、発動水準の引き上げ、つまり、セーフガードでいうと、その枠を、これでいうと、より上側に広げていくということですね。だから、なかなかそれが発動されにくくするということですね。あるいは、そうやったときにあわせて関税を引き下げていく。もとに戻るときの関税も、場合によっては引き下げるのかもしれません。あわせて、そもそもこの特別セーフガード措置の廃止等の措置を通じて、当該農産物、ここでいうと牛肉ですね、市場アクセスを改善する観点から行われるということになっております。

 どういうことを言いたいかというと、この十一年目以降というのは、より関税が下がっていきます。日本の畜産農家からすると、より厳しい環境条件に置かれる。そのおそれが高まるときに、セーフガードが実はどうなるかわからないし、場合によっては廃止されるかもしれないということがここに書かれてあるわけであります。

 この先の姿が実は描けないと、本当に、先ほど資料二で申し上げました二〇〇六年の決議、これは、国内の農林水産業、農山漁村の有する多面的機能が損なわれるおそれ、こういったものに対してしっかりと対応したことにならないし、今の時点では、なるかもしれないし、ならないかもしれないというのが正確な言い方だと思います。

 ここについて、やはりしっかりとしたこれからの方向性ということも何らかの形でピンどめしておかないと、今、当面はいいんですけれども、それこそ今から十年後以降の世界が、本当に決議が目指したような世界になるのかについてはわからないわけであります。

 ですから、これは、我々院に属する人間としても、場合によっては新たな決議を、この十年目以降のセーフガードの扱いについての、二〇〇六年の決議と整合性のとれた新たな決議を与野党を超えてつくっていく必要があるかもしれませんし、政府としても、この先の姿については、ある意味、時間がたってもう国民が忘れたからということではなくて、しっかりとした対応をする必要があると思っておりますけれども、この点についていかがお考えでしょうか、お答えください。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 牛肉のセーフガードについては、十年後に見直しを行う旨の規定があるという委員の御指摘でございます。

 確かに、協定発効後十年目または両締約国が合意する他のいずれか早い年に、両国間の見直しの対象となるとされているところでございます。

 しかしながら、この見直しの結果につきましては、協定上、何ら予断されているものではありません。十一年目以降のセーフガードの発動水準については、両国間の交渉で合意が得られない限り、十年目の発動水準が適用されることとなります。

 政府といたしましては、これらのセーフガードに関する規定を含め、日豪EPAの交渉結果は国内畜産業の健全な発展と両立し得るものであり、全体として我が国にとって利益となる協定を実現できたものと考えております。

 また、豪州との間で見直しを行う際には、国内畜産業の存立及び健全な発展と両立し得るよう、また畜産に携わっておられる生産者の皆様が意欲を持って経営を続けていくことができるよう、全力を挙げて交渉に臨みたいと考えております。

 なお、協定上は、市場アクセスを改善する観点から……

土屋委員長 答弁は簡潔にお願いいたします。

齋木政府参考人 申しわけありません。

 見直しを行うとされておりますが、繰り返しでございますけれども、これは豪州側の意向を踏まえて確認的に規定しておりますが、結論が予断されているものではございません。

 失礼しました。

玉木委員 両立がされたものと思いますと軽々しく言うべきではないと思いますよ。その確信の根拠たる数字は何ですか、データは何ですか、証拠は何ですか。農家をそういうきれいな言葉だけで私は言うべきじゃないと思います。私は、自由貿易は進めるべきだという立場ですよ。でも、そういうことを繰り返しているんですよ。

 あえて私は二〇〇五年の試算を出したのは、二〇〇五年の時点で二〇二〇年の数字も出しています。その試算が正しいかどうかは別として、十五年後の姿も示しています。そういったことを示した上で、こういうふうになるからこういう国内対策を打つんだ、あるいは打たないんだ、そういうこととセットで言わないと、説得力のある、本当に国益を守れる交渉結果というのは、実は得られないのではないかと思っております。

 これは日豪EPAだけに限りません。これからさまざまなバイ、マルチの協定を日本は結んでいくべきだと思うし、そうすると思いますから、そういった真摯な態度で、口からごまかしだけを言うのではなくて、ちゃんとした説明を国民に対してしていく。それが本当に国益にかなう経済連携交渉になると思いますので、その点、強く政府に要請しまして、質問を終わりたいと思います。

土屋委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾でございます。

 今の玉木委員の質問に次いで、経済統計の話もちょっと織りまぜながら質問したいと思います。

 今、日豪EPAですとかTPPの交渉ですとか、二国間あるいは地域間の協定の交渉促進が花盛りでありますけれども、実は、ちょっと前を振り返ってみれば、WTO、これが本当は貿易のルールづくりという場では主役だったわけであります。

 このWTOも、実は、二〇〇八年以降ほとんど何の動きもないものですから、少し議論の場からは話に出なくなりまして、出なくなったんですけれども、実際はかなりこのWTOというのは今も動いている部分がございます。

 それは、二〇一〇年に尖閣諸島沖で民間の漁船が海保の船にぶつかってきた、この後、我が政府の対応をきっかけにして、中国政府がレアアースの輸出について非常に差別的な取り扱いをしました。

 実際、これは、日本政府はWTOに提訴したわけですね。提訴をし、その後、ヨーロッパそれからアメリカと共同で対処することにして、ことしの夏に、このレアアースの輸出禁止にまつわる紛争につきまして結果が出たわけであります。これは日本の勝利だったわけであります。二〇一〇年からすると、四年かけまして、中国政府の対応について、日本政府が勝ったというのがWTOの場で認められたということであります。

 そういうことで、このWTOというのが、今、ルールづくり等々では二国間ないし地域間の交渉ばかりが目につきますが、まだ非常に重要な意義があると私は感じております。

 その中で、幾つか論点がありますので、まずそこからお聞きしたいと思います。

 日本は勝ったは勝った、これはすばらしいことだと思いますし、では、勝ったので、実際、中国政府に対して是正措置をとってもらわなきゃいけないというように思っていますけれども、残念ながら、この是正措置については、紛争の処理という部分では若干弱い部分があると聞いています。

 今どういう現状にあるのか、実際に我々が紛争解決プロセスでは勝利をしたわけですから、その後の状況についてお聞かせをいただきたいと思います。

薗浦大臣政務官 お答えいたします。

 委員おっしゃるとおり、紛争解決手続において、八月に我々は勝訴をいたしました。現在、違反が確定をいたしました中国のレアアース等輸出規制措置について、是正の措置の実施までの期間について、これは相手国と協議をすることということになっておりますので、中国側と米国、EUを交えて複数回にわたる協議を行っているところでありまして、引き続き違反措置を速やかに是正するということを求めていくのが我が国政府としての立場でございます。

鷲尾委員 これは、いわゆる強制力に乏しいと言われる側面があるわけですね。

 こっちとしては、やってくれ、やってくれと当然求めていくしかないんでしょうけれども、実際にその強制力の乏しさということが論点になることはありませんでしょうか。

薗浦大臣政務官 強制力に乏しいのではないかという御意見をいただきました。

 協定内で、違反をした国、違反国は、違反措置を実施期間内、これは当該者同士の話で決めるのでございますけれども、これを是正する義務をまず負っています。

 この実施期間内に是正できない場合、申し立て国、この場合でありますと日本とアメリカ、EUということになりますけれども、紛争解決機関の承認を得て対抗措置をとることができるということになっております。

 実際には、ほとんどの紛争は対抗措置の段階に至ることなく解決をされてきておりますので、いまだシステムとして機能しているというふうに我々は理解をしております。

鷲尾委員 ところが、レアアースについてはほとんど中国が独占しているわけでありますから、我々が何に対抗措置できるんだという論点もあるわけですね。ちょっと時間もないのでこれ以上言いませんけれども、ちょっとそこはよくよく注視していただきたいのがまず一点。ちょっとこれは、なめていると本当に大変なことになっちゃうよということは、ぜひ申し上げておきたいというふうに思います。

 あわせて、強制力をさらに増していくためには二国間の交渉もすごく大事で、それは私も促進すべきだと思うけれども、やはり今ある既存のプロセスに対して政府としてしっかりとコミットしていく、あるいは、我々が、その場にほかの国もしっかりとコミットしようぜと言っていくことが極めて重要だと思っています。

 そういう意味で、実は二〇〇八年以降、なかなかWTOはルールづくりができていないわけですけれども、最近、ルールのつくり方を若干変えたところがありまして、全て一括して合意するという方法から、合意したところから発効しようという部分合意という考え方が出てまいりまして、それでかなりのレベルまで実は合意に至ったわけです、一度は。ところが、それこそ日本にとっても重要な相手国であるインドが、政権がかわったことによって、非常にこれに対して難癖をつけているというところもあります。

 先ほど申し上げたように、いろいろな経済規模の大きい国々にWTOにコミットしてもらわないと、いかに紛争解決で我々が勝利したとしても、結果として強制力がおぼつかないという形になるわけです。

 こういった今のインドの態度、あるいはほかの国をコミットさせるという観点から、政府の御見解を伺いたいと思います。

薗浦大臣政務官 委員のおっしゃっておられますバリ合意についてでございますけれども、確かにインド等の反対によりまして、本年七月末の期限までに議定書の採択に至っておりません。

 インドに対しましては、九月に行われました日印首脳会談におきまして、安倍総理からモディ首相に対して、貿易円滑化協定の部分、ここが期限どおり採択されなかったことがまず残念であるということと、それから、インドに対して、各国の意見に耳を傾けて、責任ある対応をしていただきたいということを求めた次第であります。

 我が国としては、先ほど先生がいろいろな国のということをおっしゃいましたけれども、ジュネーブにおける関連会合等々の機会を利用しまして、インドに対する働きかけを強めているところでございまして、今後とも、さまざまな国と協力をしながら、多角的な体制の強化というものを推進していく考えでございます。

 以上です。

鷲尾委員 では、あえてまた大臣にお聞きしたいと思いますけれども、二国間の経済連携協定、あるいはTPPなどの地域における連携協定のほかに、既存のWTOについて、政府としてどのようにかかわっていくか、大臣のお言葉で御見解をお述べいただきたいと思います。

岸田国務大臣 現在においても、WTOを中心とする多角的貿易体制の維持強化、これは我が国の通商政策の柱であると考えます。戦後から今日に至るまで、我が国の経済発展、この多角的貿易体制によるところが大変大きいと認識をしています。

 そして、バリ合意の一部である貿易円滑化に関する協定について、予定されていた本年七月末の期限までに同協定をWTO協定の一部とする議定書の採択に至らなかったわけですが、こういった事情から、WTOにおけるドーハ・ラウンド交渉の今後の見通しが不透明であるとは認識をしています。

 しかしながら、我が国として、世界百六十カ国さらには地域が加盟しているこのWTOを通して、多角的貿易体制の強化、これは引き続き積極的に推進をしていかなければならないと考えます。

 そして同時に、二国間、多国間のFTA、EPAについては、有志国の間でWTOで約束した以上の貿易自由化を進める、こういったことを通じまして、WTOを中心とする多角的貿易体制を補完する、こういった役割を担っていると考えています。

 ぜひ、WTOの重要性、そしてそれを補完するEPA、FTA、こういったものの存在、それぞれの存在意義をしっかり考えながら、戦略的に我が国の通商政策を進めていかなければならないと考えます。

鷲尾委員 この間、ジュネーブへ行ってきまして、WTOの関係者というんですか、農業部長と話してきたんですけれども、日本の農家はもうWTOじゃなくてTPPの方に頭が行っているんじゃないかと言っていましたね、皮肉まじりに。やはり日本に期待する向きは大きいですから、現行、動いているプロセスもたくさんありますので、積極的なコミットをお願いしたいと思います。

 続きまして、日豪EPAでありますけれども、政府の答弁をひっくり返して見てみますと、全体として国益にかなうとか、利益になる協定だということはそこかしこでおっしゃっておりますが、私からすると、全体として国益と言われると、一体何だろうと思っちゃうわけであります。

 もう少し具体的に、目標としている国益、我々が達成すべき国益、具体的に教えていただけませんか。

中山副大臣 鷲尾委員、ありがとうございます。

 日豪EPAは、我が国がこれまで署名してきました二国間のEPAの相手国のうちで、最大の貿易相手国とのEPAであります。この経済的意義に加えまして、基本的価値観と戦略的利益を共有する豪州との関係強化に寄与するものとして、重要な意義があると考えております。

 同時に、日豪EPAには、貿易、投資、知的財産、競争、そしてまた政府調達等、幅広い分野が含まれております。ともにアジア太平洋地域におきます経済連携を推進する日豪間でこのような包括的な協定が成立することによりまして、TPPを含む地域のルールづくりを促進することが期待されておるところであります。

 特に、委員御指摘の、我が国にとってのメリットとしましては、関税撤廃によります豪州市場における我が国企業の競争力を確保することができるであろう、また、豪州は日本にとって主要なエネルギー・鉱物資源及び食料の調達先であり、EPAの締結によりまして、これら物資の安定供給の強化が期待されるところであります。

鷲尾委員 ありがとうございました。

 具体的にというところで、豪州市場での日本の競争力というところもあるでしょう。

 では、日本として、そういった利益の積み上げの中で、本当に全体としての利益になるのかどうかというところは、言ってみたら、わからないわけですよ。わからない。では、実際に競争力が上がったことによってどうなるのかとか、農業分野でいえば、当然ですけれども、どういう影響があるのかとか。

 これは、具体的に考えていくにつけ、企業競争力の強化もエネルギーの安定確保も、言ってみたら、言葉ですから、定性的な情報なんですよね。もっと言うと、政府答弁でいくと、ルールづくりができますよ、それによって、先ほど中山副大臣に答弁していただいたような、貿易・投資関係を非常に強化していきますよ、ひいては経済成長していきますよという答弁をされているわけです、過去をひっくり返しますと。

 そこまで言うのであれば、やはりもう少し、定性的な情報だけじゃなくて、定性的情報というか定性的予断ですよ、これは。だから、やはりある程度、定量的な予断も根拠として出していただかないと、先ほどの玉木委員がしつこく言っていましたけれども、本当にどうなんだと。それは連合審査でもそういう話があったでしょう。

 そういうことも含めて、しつこく言いたいと思いますけれども、ちゃんと定量的な情報を出せ、こういう話なんです。そうじゃないと、本当に国民にとってこれがメリットがあるのかどうなのかというところがわからないと思うんですね。

 総理もおっしゃっていますよ。総理も同じように、国内畜産業との関係でいけば、存立及び健全な発展は図れるんだ、総理自身もそこかしこで答弁されていますけれども、図れるかどうかというのは何が根拠なんですかというところをやはり見せていただかなきゃいけないと思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 先ほども、玉木委員の御質問の中に、定量的な試算の必要性について御指摘される部分がありました。

 いずれにしましても、こうした定量的な試算あるいは効果、これを考える際においては、景気ですとかあるいは為替ですとか、さまざまな変動要素によって大きく影響される部分があります。大変難しい点もあるということは考えておかなければなりません。

 そして、その中にあって、今回の日豪EPAについては、先ほど中山副大臣の方から答弁させていただきましたように、さまざまな意義が期待されるわけです。そして、そのことによって、GDPを初めさまざまな数値の向上に期待が寄せられるわけでありますし、また、アジア太平洋地域の安定ですとか、域内のビジネス環境の整備改善、あるいは地域における経済関係の改善、こういった効果も期待されます。こういったことも含めて今回の日豪EPAの意義や成果を考えていかなければなりません。

 そこまで考えますと、全てを定量的に考える、試算する、それはなかなか難しい部分もあるのではないかと存じます。その中にあって、どれだけ国民から理解される議論を行うのか、それは政府全体としてもしっかり検討しなければならない課題だとは存じます。

鷲尾委員 最後は、技術的にどこまで盛り込むかというのは、それは、ある一定の仮定を置いて、その仮定に基づいてどうだという試算を出して、それが国民の判断材料になるということですから、全てまとめてきちっとやってくださいとか、その試算に基づいて我々が揚げ足をとるとか、そういう類いのものではないんですよ。そこはちょっと苦しい言いわけじゃないかなと今大臣の答弁を聞いていて思いました。

 きょうは、あべ副大臣にも来ていただいていますから、このことについては農水省さんに聞きますけれども、我々がTPPの交渉に入る前、いろいろな役所からいろいろな推計が出まして、百花繚乱みたいになっちゃったんです。この混乱を見てか、今の政府は、TPPの推計については政府としては一つだよという話をされていました。

 オーストラリアとのEPAを締結すると、民間団体も含めて、食料自給率がもう大変なことになるんじゃないかとか、過去いろいろ言われていたところもあります。これは、メリットをこうむる我が国の輸出、あるいは競争力が強化されるような部分については、メリットだから余り心配していないかもしれませんけれども、デメリットをこうむるような国内においては、これはなお一層シビアな問題を抱えているわけですから、この協定に本当に入っていいのかどうかという経済的な試算を農水省も出すべきだと私は思いますけれども、どうですか。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 日豪のEPAに関する経済上のメリットにつきまして、一般的には、関税削減などによって貿易・投資が促進され、両国の経済を活性化する、また、食料、資源、エネルギーなどの安定的輸入の確保、また、輸入先の多角化につながることなどがあるものと考えております。

 日豪EPAが我が国のGDPの増大に与える効果などにつきましては、景気、為替、これらの変動の要因による貿易及び投資の状況変化などにも影響されるものでございますから、具体的にお答えすることは困難でございます。

鷲尾委員 そうしたら、もう政府は試算できないということになりますよ、そんなのは。それは、各省庁いろいろな試算があるわけで、その試算という試算が今の答弁だったら何もできない、こういう話になりますよ。そんな答弁じゃだめですね。次、また農水委員会でもやりましょう。

 ちょっともう時間がないから先に進みますけれども、これじゃ納得できない。国民は納得できないと思いますよ、そんな答弁では。ちゃんと根拠を、岸田大臣も、重要だ重要だと言うんだったら、重要性を説得するべき、重要性に応じた資料を出してもらわないと。ということは、根拠資料を出さないということは、大して重要じゃないと思っているということですよ、常識的に考えたら。重要だったら詳しく説明する、当然じゃないですか。その一番の詳しさの根拠である数字を出さないというのはおかしいですよ。

 これは重要じゃないと思っているということなんですかねという印象論だけ申し上げて、次に移りたいと思います。

 日豪EPAの国内法の、いわゆるこの審議ですけれども、国内畜産業の存立及び健全な発展を図っていくことができる合意内容、これは先ほど紹介しました、これは安倍総理の答弁ですけれども、これも、国内畜産業の存立及び健全な発展を図っていくことができる合意内容、言葉では、これを一言言われたって、現場の畜産農家さんは全く理解できないと思いますから、具体的にお示しください。

あべ副大臣 委員にお答え申し上げます。

 日豪のEPA協定におきまして、例えば牛肉につきましては、関税率は長期間かけて段階的に削減いたします。また、近年の輸入量の程度が上限となるような効果的なセーフガードも確保したところでございまして、国産牛肉への影響は限定的であると考えているところでございます。

 また、乳製品に関しましても、バター、脱脂粉乳につきまして、将来の見直しの対象とするところでございますし、プロセスチーズ原料用のナチュラルチーズなどについては、一定量の国産品を使用することを条件とした関税割り当てを設定したなどでございまして、国内の生乳の生産に影響を及ぼさない範囲となっているものと私ども農林水産省といたしましては考えているところでございます。

 このように、日豪EPAは、国内畜産業の存続、さらには健全な発展を図っていけるような合意内容であると私どもは考えております。

鷲尾委員 その答弁の繰り返しなのかなと思いますけれども、きょうは今城さんも来ていますし、この間、私、農水委員会で質問を飛ばして答えてもらえなかったので、ちょっとこの場をおかりして、少し込み入ったこともお聞きしたいと思います。

 先ほど、あべ副大臣から御答弁いただきましたけれども、効果的なセーフガード、常識的に考えたら、セーフガードが入ったというのは大きいと思います。

 ただ、このセーフガードも、先ほど玉木委員から御紹介があったとおり、十年目以降がどうなるかわからないというのが一つと、それから、発効日がいつになるかの関係で、本当に、今後数カ月でがくんと関税率が下がっちゃうんですよね。やはりこれは心配する向きがあると思うんです。これはどうでしょうか。

今城政府参考人 委員の、発効時期と牛肉の関税の関係でございます。

 先ほど玉木委員からもございましたとおり、協定の内容に定められている一年目というのは、年度の途中であれば三月三十一日までで、四月一日から二年目になるという合意内容になっておるところでございます。

 ただ、発効日が具体的にいつかということにつきましては、今まさに御審議をいただいているところであり、手続上は、両国政府が交換公文を交換してから三十日後に発効するという合意内容になっておりますけれども、現時点で発効日はいつかということについては申し上げられないことは御理解いただきたいと思います。

鷲尾委員 そうしたら、来年度に入った方が、一段階目の引き下げから約一年度分ぐらい、十二カ月分ぐらい日数があるわけですから。

 例えばの話、仮で恐縮だけれども、これ以降発効するとした場合と、それから来年度に発効するとした場合は、それは当然来年度に発効した方が有利なんじゃないかなと思いますけれども、どう思いますか。

今城政府参考人 仮定のお話ということでございますけれども、仕組み上は、今、鷲尾委員おっしゃったとおりでございます。

 ただ、何度も繰り返しますが、私は、発効日につきまして、具体的なことをここで申し上げるというのはできないということは御理解いただきたいと思います。

鷲尾委員 そうしたら、できるだけ国益にかなう、ある意味、輸出企業については競争力が高まるわけですから、やはりデメリットを受ける皆さん方のことも考えながら発効日というのを考えた方が、より国家としては戦略的だと思いますけれども、大臣、どう思いますか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、さまざまな周辺の状況、関連状況をにらみながら戦略的に物を考えていく、こういった視点は重要だと考えます。

鷲尾委員 のれんに腕押し感が否めないわけですが。

 ちょっともう時間もなくなってまいりました。飼料用米の質問をしたかったんです。

 結局、日豪EPAを締結いたしますと、今、政策的には、米を転作して飼料用米をどんどん作付していこうという話でありますけれども、今、飼料用麦については無税化、無枠化するわけですよね。ということは、当然ですけれども、どんどん入ってくるのではないかというふうに思っていますけれども、一方で、飼料用米をどんどんつくれと言う。そうすると、そこと代替するんじゃないか。

 つまり、政策としては、日豪EPAを促進すると、飼料用麦が入ることによって、飼料用米がたとえつくられたとしても、それを使用される余地がなくなって、政策としてちぐはぐじゃないかという論点があると思うんです。この点、どうでしょうか。

原田政府参考人 お答えします。

 飼料用麦につきましては、トウモロコシや飼料用米と比べますと、たんぱく質が高いですとか繊維分が高いということで、同じ穀物でございますけれども、畜産農家から見ると、用途にちょっと特徴がございます。

 一方、価格も、今、トウモロコシと比べても餌麦の方がちょっと高くて、飼料用米はトウモロコシと同じ価格で農家は取引をしてございますので、そういった意味でも、価格優位性も飼料用麦は余りない。

 今も既に全量SBSで、ほとんど無税と同じ水準で入っていますので、そういった意味での単価の大幅な下げはないとは思うんですが、実需者といいますか、農家の皆さんや団体から言われていますのは、やはり餌麦を、飼料用麦をSBSのような手続が要らないで自由に使えることで機動的に単価も下げられるということで要望がございますので、そういったメリットはあると思っております。

鷲尾委員 了解しました。

 そうしたら、先ほど申し上げましたけれども、戦略的にぜひやっていただきたいな。農水省内でも戦略的にやっていただいて、政府自体も戦略的にやっていただいて、デメリットを受ける皆さん方が心配にならぬようなお手配をお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 維新の党の阪口直人でございます。

 本日は、日豪EPAについて、そしてヘイトスピーチについて、さらに、積極的平和主義のあり方を問うという視点で、カンボジアに対する選挙制度改革支援について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、日豪EPAについてですが、私が質問しようと思っていた内容で、もう幾つか論点提示がされましたので、ISD条項について。これは、先ほど篠原委員からさまざまなレクチャーがありましたが、政府からはこれといった答弁はなかったように思いますので。

 日本とオーストラリアとの協定の中にISD条項が含まれていない。一方で、韓国とのFTAは、アボット政権の発足を受けて、ISD条項を盛り込むことで妥結し、署名されました。

 日本としては、どういう理由でこの日豪EPAの中にISD条項が入っていないのか、この点、端的にまずはお伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、先ほども申し上げましたように、豪州と第三国との間のFTA交渉に関しまして政府としてコメントすることは控えたいとは思いますが、日豪EPA交渉におきましては、まずは、我が国は投資家の保護に資するISD条項を含むことを主張いたしました。一方、豪州は大変慎重な立場でありました。そして、その交渉の結果、全体のパッケージの一環として、ISD条項の挿入について将来の見直しを行うこととした次第であります。

 そして、豪州においては、国内裁判手続による公正な救済が基本的に確保されております。また、日本企業が協定に反する取り扱いを受ける場合には、協定に基づいて設置されます投資小委員会等を通じて、政府間で豪州側に問題の解決を求めることができる、このようにされております。さらには、豪州の外国投資審査基準額の引き上げにより、豪州に投資する日本企業の手続的負担を軽減している。

 こういった諸点を総合的に考慮して、ISD条項については将来の見直しの対象とすることで双方一致したというのが、今回の日豪EPAの豪州側との交渉の状況でございます。

阪口委員 ありがとうございます。

 一方で、TPPに関してはこのISD条項が入ってくるであろうということが予測されるわけですけれども、今回の日豪EPAにおいて、今大臣が御説明されたような交渉プロセスというものが、TPP交渉にどのように影響を与え得るのかということについて、これは大臣の考えで結構ですので、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、日豪EPAとそしてTPP、これはともにアジア太平洋地域における経済関係強化、あるいはルールづくり、こうしたものに貢献するものであると考えます。そして、日豪経済連携協定の締結がTPPを含む地域の経済連携の活性化に寄与すること、これはぜひ期待をしたいと考えています。

 そして、TPP交渉につきましては現在交渉中であります。よって、今の段階で内容について予断することはできないわけですが、少なくとも、日豪EPAがまとまったこと自体、TPPの他の交渉参加国が交渉を進めるインセンティブとなること、こういったことは考えられると思います。

 そして、日豪EPAの中においても、本当にさまざまな分野が規定されています。そして、分野によっては、今回、日豪EPAで合意した内容が、他の交渉においても、日豪が協力していく中で、参照される、参考とされる、こういったことは考えられるのではないか、このように考えます。

阪口委員 どちらにしても、きょうもさまざまな論点が提示されましたが、この日豪EPAそしてTPPが日本の国益に確実につながっていくんだというその論拠を正確に示すことが、やはり農家の方々を含む人々に対する説得力になると思います。十分とは言えない面がこの質疑の中でも私は感じられましたので、その点については、ぜひしっかりとした対応をお願いしたいと思います。

 次に、ヘイトスピーチについて伺いたいと思います。

 まず、率直に、ヘイトスピーチについて大臣はどのような思いを持っていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 ヘイトスピーチにつきましては、安倍総理も述べておられますように、一部の国あるいは民族を排除しようという言動があるということ、このことは極めて遺憾でありますし、また、あってはならないことであると考えます。私も同様に考える次第でございます。

 このような言動に対して、まず政府の関係省庁において現行法を適切に適用していく、こうした姿勢は重要であると考えます。

阪口委員 日本は人種差別撤廃条約の締結国であります。一方で、国際的な義務として、人種、皮膚の色、世系、これは血筋ですね、民族的、種族的出身を一くくりにして差別する人種差別を違法とする法制度、あるいはヘイトスピーチ自体を規制するような法的整備がなされていないわけですね。この現状についてはどのようにお考えでしょうか。

岸田国務大臣 まずは、先ほど申し上げましたように、現行法を厳格に適用することが重要だと思っておりますが、その上で新たな法規制ということにつきましては、個々の事案の具体的状況を検討する必要等がありますが、今各党におきましてもさまざまな議論が開始されていると承知をしております。また、ヘイトスピーチにつきましては、国民的な議論も今沸き起こっている、こうした状況についても承知をしております。

 こうした各党の議論、国民的な議論、こうしたものをしっかりと踏まえた上で新たな法整備については考えていかなければならないと認識をいたします。

阪口委員 今の大臣の答弁を聞く限り、何が何でも積極的にこういった問題についてリーダーシップをとって対処していくんだ、そういった決意を感じることは私にはできなかったんですが、しかし、このヘイトスピーチというのは、まさに人間の尊厳を踏みにじって、同じ社会に存在すること自体を否定する、そういった私は本当に大変大きな人権問題だと思っています。

 同時に、ヘイトスピーチというのは、必ず表現の自由と一体的に議論されて、表現の自由を侵すことにつながってはいけないというような、そういった意見が必ず呈されると私は承知しています。

 表現の自由は大変大切なことなんですが、しかし、暴力的な言葉によって、弱い立場の方々、マイノリティーの方々、そういう方々の表現の自由、感情表現の自由が侵害される、これは非常に重く受けとめなければいけないと思うんですね。

 そういうことを考えると、各党の議論は議論として、やはり政府としてもリーダーシップをとっていく、こういった姿勢が今大変に求められているのではないかと私は考えているんですけれども、改めて、表現の自由との関連も踏まえて、大臣のお考えを聞きたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、ヘイトスピーチの議論においては、表現の自由との関係についてもさまざまな議論が行われているものと承知をしております。

 こうした議論を踏まえた上で、政府としても、ぜひ、今後、新しい法制については考えていきたいと思います。

阪口委員 今後考えていきたいということで、ちょっと煮え切らない答弁だなと正直残念に思うわけでございます。

 国際社会においては、やはり過去のさまざまな戦争の反省などを踏まえて、このヘイトスピーチ、特に、先ほど申し上げた、人種や肌の色などを差別する、その存在自体を否定するようなスピーチは、これはもう絶対的にいけない、こういう流れになっているかと思います。

 私は、やはり日本に対しては、積極的にこのような問題に対して取り組んでいくという期待が国際社会からも寄せられていると感じています。

 一方で、国内法が国際的に求められている責務と合致していないという理由で、こういった問題の対処について消極的であるということは、私は認められないと思うんですね。やはり、それにふさわしい国内法の整備を行うべきであると思いますので、きょうは大臣から積極的な答弁はいただけませんでしたが、ぜひ、この問題については、政府として前向きに取り組んでいく、そういった姿勢を期待したいと思っております。

 与党の岡本議員から、そうだと、小さな声ではございましたけれども、大変心強いお言葉をいただいて、うれしく思います。

 次に、先ほども申し上げましたカンボジアの選挙制度改革支援についてお伺いをしたいと思います。

 この件については、実は私、以前にも質問をしたことがございます。私自身が、一九九二年から三年にかけての国連カンボジア暫定統治機構のメンバーであったということも含めて、カンボジア、五年に一回行われる選挙に、これまで四回、さまざまな立場でかかわってまいりました。

 私は、このUNTACというのは日本の外交における一つの成功物語であると思っていまして、長年内戦が続いたカンボジアに平和をもたらす一端を日本が担った、それも大きな役割を果たしたということ、これは非常に意義のあることであったかと思います。

 その一方で、昨年の七月にカンボジアで総選挙が行われました。結果的には、与党人民党が六十八議席、野党の救国党が五十五議席獲得、そういった結果になったんですが、この結果について、また選挙のプロセスについては、カンボジアの国内そして国際社会から、非常に多くの疑問が呈されました。すなわち、とりわけ選挙人登録に不正が入り得る余地が大き過ぎる。

 私がこの選挙の監視をした際にも、地域によっては二〇〇%を超える人々が、与党寄りの方々が登録をしているというような声も聞きました。一方で、野党支持が明らかだという方は投票ができないというような事例も聞いております。

 したがって、私は、積極的平和主義という観点からも、民主化支援を一歩踏み込んで行っていくという点においても、このカンボジアの選挙制度改革支援に日本は積極的な役割を果たすべきであると長年思ってきたわけですが、昨年、フン・セン首相が、安倍首相に対して、ぜひこの点について積極的な役割を果たしてほしい、そういった要望がありました。

 私は、これは日本が民主化支援ということに一歩踏み出していく千載一遇のチャンスだと思いまして、早速、去年の十二月及びことしの八月にカンボジアに行きまして、選挙制度改革支援にかかわるさまざまなアクター、具体的には、ソー・ケーン副首相兼内務大臣であるとか、あるいはソク・アン副首相、イム・スオスダイ選挙管理委員長、また、野党の党首であるサム・ランシー救国党党首などと綿密な意見交換をしたわけでございます。

 そういったことを踏まえて質問させていただきたいんですが、まず、大きな質問として、日本としては、民主化支援ということに一歩踏み出して支援を行う、そういった考えについて現時点ではどのように思っているのかということでございます。

 過去には、これまでは民主化支援というのは内政干渉にもつながるということで、日本政府は決して積極的ではなかったと私は思っています。法整備支援であったり、あるいはガバナンス支援ということについてはこれまで実績も積んできたと思いますが、その国の体制の根幹につながっていく、こういった選挙制度改革支援というようなことについては積極的には行ってこなかった。

 しかし、カンボジア側から、それもフン・セン首相から安倍首相に対して要請があったということをチャンスと捉えて、私は一歩踏み出すべきだと考えているんですが、ぜひ、この点についての大臣のお考えを聞きたいと思います。

岸田国務大臣 まず、カンボジアの政治的安定あるいは民主的発展、これは同国にとって重要であるのみならず、ASEANの均衡ある発展、さらにはアジア太平洋地域の平和と安定、こういった視点からも大変重要であると認識をしており、ただいま委員からも御指摘がありましたように、従来、民法ですとか民事訴訟法ですとか、こうした法制度整備を初めとするガバナンス分野での協力を日本も行ってきた次第であります。

 そして、それに加えて、選挙改革支援についてどう考えるかということですが、ぜひ、我が国としましても、カンボジアのニーズを踏まえながら、選挙改革支援の分野におきましてもしっかり支援をし、そして民主主義の強化に貢献をしていきたいと考えます。

 そして、カンボジアの選挙改革に協力するためには、やはり与野党間の政治協調のもとに選挙改革を進めていくという視点が重要だと認識をしております。

 委員も御案内のとおり、昨年の七月の選挙から後、しばらく与野党間の膠着状態がずっと続いてまいりました。私も、その中で、ことし六月にカンボジアを訪問させていただいた際に、フン・セン首相に対して、与野党の協調が選挙改革支援のためには重要である、こういった思いを伝えさせていただきました。そして、その後、ことしの七月にようやく野党が国会に復帰をするという動きが実現をいたしました。

 ぜひ、今後とも、この与野党の協調体制、そして与野党の考え方、こういったものを尊重しながら、選挙改革支援について我が国としても前向きに取り組んでいきたいと考えます。

阪口委員 現在、与野党は、組織法の整備、すなわち、新たに選挙管理委員会をつくっていく、その選挙管理委員会のあり方についてさまざまな議論をしているところでありまして、また、それが整備された後に選挙法をつくっていく、そういう流れであると私は承知をしています。

 やはり、私、野党、与党の双方の政治家と話をして感じることは、野党の方々は、なるべく新しくできる選挙管理委員会に大きな権限を持つようにしたい、一方で、与党は、いわゆる内務省、これまで選挙人登録などを行ってきた内務省がより大きな影響力を持つように継続していきたい、そういった根本的な考えの違いもあってなかなか議論が進まない反面、しかし、今、与党と野党が同じ交渉のテーブルに着いているということは非常に意義のあることですから、日本としては、この状況を何とか後押ししていくべきだと思うんです。

 一方で、この問題に対して日本はどのような貢献ができるのかということで、ことしの五月に日本政府は調査チームを派遣いたしました。この十月にもその調査結果をカンボジア側に報告するということで、調査チームはカンボジアに行っております。

 ちょっと細かい質問になりますけれども、この二回の調査団の派遣を経て、外務省としては、現時点では具体的にどのような支援内容を検討しているのか、この点をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 本年五月、外務省、JICA、そして行政関係者等で構成される調査団がカンボジアを訪問し、同国の与野党関係者、内務省、そして国家選挙管理委員会、ドナー等との面談を行いました。その結果、選挙人登録の精度向上、そして選挙管理委員会が行う投開票事務手続の改善、そして選挙人教育の強化等の支援ニーズがあることを確認いたしました。

 そしてまた、先週ですが、外務省の担当課長をヘッドとするミッションをカンボジアに派遣しまして、これらの調査結果をカンボジアの与野党及び政府関係者に説明するとともに、調査結果を踏まえ、カンボジア側で我が国に期待する具体的な支援内容を検討してほしい、こういった旨伝えた次第でございます。

 我が国としては、こうしたカンボジア側のニーズを踏まえて、さらなる調査、他のドナーとの意見交換を通じて支援の内容を具体的に調整してまいりたいと考えております。

阪口委員 ありがとうございます。

 基本的には、カンボジア側の要請に従って支援内容を決める、そういった方向性なんだと思いますが、私自身は、では、この選挙制度改革に直接かかわる政治家が実際にどのような支援を日本側に求めているのか、そういった視点でさまざまなヒアリングをしてまいりました。

 具体的に申し上げると、ソー・ケーン副首相兼内務大臣は、日本による選挙改革支援として、特に選挙人登録と選挙人名簿に対する技術的支援、これを期待しているということを明言されました。また、サム・ランシー救国党党首は、選挙人登録や選挙人名簿の作成など、技術的に支援可能な具体的内容を日本から提案してもらえれば選択肢の一つとして人民党と協議したい、このようなことをおっしゃっています。

 この点については、今、EUも支援を行うということで、カンボジア側とさまざまな協議をしていると聞いておりますが、EUは、バングラデシュで一億六千万人を超える方々の選挙人登録をIT技術を使って実施した、そういった実績があるということで、カンボジアに対しても、いわゆるボーターズカードの電子化という提案を恐らく行ってくるのではないかと思います。

 五月の調査結果によって、不正が入る余地を最小化する選挙人登録を行うことが非常に重要であるという結論が得られたわけですから、私としては、カンボジア側が最も求めている、選挙人登録に不正が入り込む余地をなくすための支援というものを日本にぜひ行ってもらいたいと思います。

 これこそが、私は、二十年以上にわたって日本がカンボジアの支援を行ってきた、先ほど成功物語という言葉を使いましたが、これをしっかりと定着させていく上で非常に鍵になると思っております。

 この点について、大臣の所見を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、選挙人登録あるいは選挙人名簿作成、これが大きな課題であるということは我が国も認識をしております。

 一方、こうした分野の支援を検討するに当たっては、カンボジア側の技術的水準、あるいはこの分野で支援の実績を持つ他のドナーとの連携、オーストラリアなどは一九九八年から有権者登録データの電子化に係る技術支援の実績があると聞いておりますが、こうしたオーストラリアを初め他のドナーとの連携、こういった要素なども勘案していかなければならないと考えます。

 そして、先ほど委員からも御指摘がありましたが、カンボジアにおきまして、選挙法ですとか選挙管理委員会設置法、こうした法律の制定に向けて今議論が始まっております。この議論の過程を通じまして、よりカンボジア側のニーズも具体化してくるのではないかと期待をいたします。

 ぜひ、今申し上げました点に加えて、カンボジアのニーズ等もしっかり確認しながら、我が国の支援のあり方について検討を進めてまいりたいと考えます。

阪口委員 EUやオーストラリアが既に実績があるということで、彼らが積極的に選挙制度改革支援、特に有権者登録にかかわってくること、これ自体は私はカンボジアにとってはいいことだと思います。

 ただ、私としては、やはり日本には、積極的平和主義という視点からも、あるいは民主化支援に一歩大きく踏み出すという意味においても、従来日本が行ってきた選挙支援、これは、例えば投票箱を提供するであったり、あるいは投票用紙の印刷を間違いなくきれいに行うといった技術的支援が中心だったんですね。そういった従来の方針から一歩二歩踏み出して、先方が最も求めている支援を、これはオーストラリアやEUとの連携であってももちろん構いませんが、日本がしっかりとしたイニシアチブをとり、また戦略を持ってここの部分にかかわっていくこと、これは非常に大きな意義があると思います。

 私は、この点をしつこく先ほどから申し上げているのは、やはり、アジアの民主化に日本が貢献をする、また、その政治制度の民主化によって経済の民主化に貢献するということは、日本のビジネスチャンスを広げることにもつながると思うんですね。

 特に、中国とこれからさまざまな局面において日本は対峙していかなければいけないと思います。例えば、大規模インフラをその国に、カンボジアを含めてアジア諸国に売っていくというときに、中国は恐らく、より早い意思決定と安い価格で、日本にとっての大きなライバルになると思うんですね。ただ、私は、日本の方が、全体としては、環境に対する配慮、あるいはそこに住む人々の人権や文化的多様性に対する配慮という意味では、すぐれた点がたくさんあると思います。

 そういったときに、例えば、独裁的なリーダーではなくて、その国の国民の利益につながるような援助をする、あるいはODAを提供するという際に、やはり選挙制度がより民主的で、より多くの国民の意思を反映したものであるということが、日本が受注する可能性を高めると思うんですね。

 そういう意味で、私は、カンボジアを一つの契機にして、例えばミャンマーであったり、さまざまなアジア諸国に対して、よりアジア的な価値をしっかりと組み入れた民主化支援をしていく、欧米的な価値観の押しつけではなくて、彼らとともにその国に一番ふさわしい民主主義をつくっていくパートナーとして、日本がより大きな存在感を発揮するということに非常に大きな意義があると考えております。

 ですから、今回のカンボジアにおける挑戦というものを、そういった民主化支援における新しい局面に一歩踏み出していく、そういう転換点にしていただきたいと強く思っているわけでございますが、大臣の考え、この点についてお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 我が国の支援を考える際に、まず、ことしの年末に向けて、今、十一年ぶりにODA大綱の見直しを進めております。

 ODAというもの、我が国の国際支援というものを、より時代にふさわしいものに見直していこうという議論を進めているわけですが、その中にありましても、人間の安全保障ですとか人間中心の支援、こういった基本的な考え方は不変であると考えます。

 ぜひ、カンボジアにおきましても、こうした人間の安全保障、人間中心の支援、こういった考え方に基づいて、日本らしい支援をしっかり行っていく、こういった観点は大変重要だと考えます。

 その中にありまして、御指摘の選挙改革への支援、大変重要な課題の一つであると認識をし、ぜひ、カンボジアの政治的安定、民主化の定着に向けて、我が国として我が国らしい貢献を進めていきたいと考えます。

阪口委員 ありがとうございます。

 最後の言葉は非常に大臣の思いがこもったものと私は受けとめました。

 これはカンボジアに限らずですが、独裁的という言葉が正しいのかどうかわかりません、カンボジアは、ここ二十年、民主的な選挙が行われて、その中で、フン・セン首相がリーダーとして君臨してきた国でございますが、例えば、カンボジアの歴史を見ても、体制が変わったときに、リーダーがリーダーでなくなったときにどうなるかというと、殺されるか亡命するかということが続いてきたわけですね。ですから、不正が起こり得る余地をなるべくなくしていくことと同時に、誰が勝っても次にもチャンスがある、そういった制度をしっかりつくることにもやはり日本は貢献をすべきであると私は思っています。

 実は、野党の救国党は、政権からおりても在任中のことでは起訴はしないという法案をつくるべく、人民党に対しても呼びかけを行っています。

 私は、カンボジアは、本当に次の選挙の結果次第では、場合によっては内戦になる可能性さえも否定できないぐらい、人民の選挙制度に対する不信と、また、人民党政権の強権的な手法に対しては不満を持っていると思います。このことについては人民党政府もよくわかっているので、だからこそ、今選挙制度改革に積極的に取り組もうとしているわけでございます。

 彼らは、欧米よりも日本に期待するところが非常に強いということを私も感じておりますので、ぜひそういったイニシアチブを日本がとっていく、岸田大臣がぜひ中心になって進めていっていただきたいと思いますので、この点について、先日に続いて、きょうはどうしてもお話をさせていただきたいという思いで質問させていただきました。

 重ねて申し上げると、首相案件であること、そして、カンボジアに長年かかわってきた日本としての一つの仕上げ、総仕上げの一環であること、また、中国などを意識した際にも、国民の声が反映される政治制度、経済システムをつくることが双方にとって非常に利益があるということを踏まえて、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 私の質問は以上です。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 維新の党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、質問の時間をいただき、ありがとうございます。通告しました内容は、これまでの議論と重なるところもあるんですが、よろしくお願いしたいと思います。

 質問に移りたいと思いますが、きょうの日豪EPAの質疑の前に、まずは拉致問題について、数点だけ伺っておきたいと思います。

 平壌に派遣している日本政府代表団の状況について、本日も既にいろいろと報道されておりますが、この協議について、大臣はどのような方針で派遣したのか、そして、きのうときょうの午前中までの協議の現状についてどのように見ているのか、まずはお伺いさせてください。

岸田国務大臣 まず、今回の派遣につきましては、我が国として、拉致問題が最重要課題であるということ、また、特別調査委員会の調査の現状についてしっかり把握すると同時に、北朝鮮側に対して、迅速に調査を行い、そして速やかに、そして正直に結果を通報するよう強く求めていく、こうした我が国の立場をしっかり伝えるために派遣を行った次第であります。

 そして、昨二十八日は、午前中に約二時間半、徐大河特別委員会委員長、金明哲副委員長、朴永植副委員長及び各分科会の責任者との面談が行われました。

 また、午後、合計約三時間、拉致被害者及び行方不明者について、金副委員長出席のもと、担当の分科会責任者、姜成男国家安全保衛部局長及び朴永植人民保安部局長から、調査の現状について説明を聴取し、やりとりを行った次第です。

 日本側からは、先ほど申し上げましたように、拉致問題が最重要課題であることを徐大河委員長を初めとする責任者に対して直接強調するとともに、調査を迅速に行い、その結果を一刻も早く通報することを強く求めた次第です。

 また、午前及び午後の協議を通じて、北朝鮮側からは、特別調査委員会の体制や調査の現状について説明があり、日本側からは、我が方の問題意識を伝えるとともに、疑問や質問を提起し、詳細を問いただした、こういったやりとりがございました。

 本日も二日目の協議が続けられております。協議継続中でありますので、詳細な内容や評価については、現時点においては控えたいと思いますが、ぜひ、今回の派遣の目的であります我が国の立場を北朝鮮側にしっかり伝えることにつきまして、しっかりと確実に成果を上げていきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 今大臣が御答弁いただいたとおり、北朝鮮側の対応は、徐大河委員長初め各責任者が総出で出てきているということ、それと、日本の立場を今回の訪朝で伝えるということについては、わかりました。

 しかし、その結果、北朝鮮の返答が日本が納得できるものでなかった場合、今回の協議の結果によっては交渉を打ち切るということがあるのか、あるいはまた、今回の協議の結果をもって再制裁をかけるということもあるのかどうか、現時点での検討というのをお聞かせください。

岸田国務大臣 まず、今回の派遣は、いわゆる特別調査委員会の第一回目の通報だと考えてはおりません。あくまでも、我が国の拉致問題が最重要課題であるなどの考え方、立場をしっかり伝えていく、これが今回の重要な目的であります。

 今回の派遣が今後どのような特別調査委員会の動きにつながっていくのか、これがしっかりと見きわめられなければならないと考えております。今回の派遣につきましては、そのように考えている次第であります。

青柳委員 ありがとうございます。

 今回の目的は、再三大臣も答弁されているとおり、日本の立場を伝えることだということで理解はするんですが、これは当初、日朝の合意があったということからすれば、大変期待外れな状況なんじゃないかなと思っていますし、安倍総理や岸田大臣の答弁も、大分ハードルを下げてきているんじゃないかと思いますが、当然のことながら、大きな成果が出て、一刻も早く、一日でも早く、家族の皆さん、拉致被害者あるいは特定失踪者の皆さんが帰ってくるということを期待しているところでございますので、ぜひ大きな成果が出るように、きちんと交渉を引き続きやっていただきたいと思っております。

 本件については、引き続き委員会の機会に伺いたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、日豪経済連携協定について伺いたいと思います。

 既に、本日の議論でもいろいろ答弁があったことですが、私からもお伺いさせていただきます。

 これまでの二国間EPAのパートナーの中で最大の貿易相手国であるオーストラリアと協定が交渉妥結に至ったということは、私は大変大きな意義があると思っておりますし、評価できることなんだろうと思います。

 そこで、改めて伺いますが、この日豪EPAのメリットとデメリットについて、政府の分析と評価をお聞かせいただきたいということと、デメリットについては、そのデメリットをカバーする政府の対策もあわせてお聞かせいただきたいと思います。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 日豪EPAのメリットでございますけれども、戦略的パートナーである豪州とこのような形で経済関係の強化を決めます経済連携協定を結ぶということは、日豪両国間の貿易及び投資の促進に大きく寄与するものと考えております。

 特に、具体的な経済的メリットといたしましては、関税が撤廃されることにより、豪州市場における日本企業の競争力の確保、増強が担保されることであります。また、二点目といたしましては、投資の保護及び自由化、知的財産の保護、商用訪問者の入国許可の手続の簡素化などを通じまして、日本企業が豪州において円滑に活動できる環境が整備できるものと考えております。

 さらに、豪州は、日本にとりまして、主要なエネルギー及び鉱物資源、食料の調達先であります。これらエネルギー・鉱物資源、食料の安定供給の確保が期待できるというメリットがございます。

 これを関税額ということで若干お示ししたいと思いますけれども、我が国から豪州に支払われる関税の額に関し、将来的に輸出構成や金額が不変であるなど一定の仮定を置いて計算をいたしますと、発効後八年目には、日本の企業が豪州に支払う関税額は約五百八十億円減少するというふうに考えている次第でございます。

 他方におきまして、デメリットということでありますが、きょうの審議の中でも、例えば牛肉についてどのように考えるかという御指摘がございました。

 実は、牛肉につきましては、日豪EPA交渉において、豪州側から、当初より関税の撤廃を強く求められていたところでありました。政府といたしましては、衆議院、参議院農林水産委員会の決議をしっかりと受けとめ、畜産業の構造改革の努力に悪影響を可能な限り与えないように十分に留意しつつ、粘り強く交渉をしてまいりました。

 この結果、最終関税率でありますが、国産牛肉への影響の差なども考慮いたしまして、冷蔵と冷凍の間に四%税率の差を設けるとともに、冷蔵牛肉は十五年、冷凍牛肉は十八年と、長期間にわたっての段階的削減とすることを確保した次第であります。

 また、冷凍、冷蔵牛肉それぞれについて、一定量以上の輸入量となったときには、関税率を現行の三八・五%に戻す効果的な特別セーフガード措置も確保したところでございます。

 以上です。

青柳委員 ありがとうございます。

 今答弁の中にもありましたが、私は、このEPA、あるいは今後妥結があるかもしれないTPP、こういうことをやることによって、むしろ農業の構造改革が進むんじゃないかと思いますので、ぜひこの点は、EPAがあるから構造改革が進まないんじゃないかというのは私はちょっと立場が違うと思いますので、申し上げておきたいと思います。

 そして、もう一つは、セーフガードについても今御答弁がありましたけれども、今回のこのEPA、初めて牛肉についてセーフガードが導入されたわけでありますが、一方で、その交渉には、これもきょうの審議でやりとりがありましたけれども、衆議院の農水委員会の決議というものもありました。セーフガードの導入と農水委員会での決議について、関連性があったのかどうかをお伺いしたいと思います。

 この決議を超えて妥結するためにセーフガードというのを導入したのか、あるいは、この決議とセーフガードは全く関係ないのかについても御答弁いただきたいと思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 今委員が御言及されました農林水産委員会の決議の中には、セーフガードには特段の規定は置かれていないと承知しております。

 申すまでもございませんけれども、日豪経済連携協定は国会の御承認をいただいた上で締結できるものでありまして、この決議と日豪経済連携協定との整合性については、基本的に国会において御判断いただくものと考えているものです。

 しかしながら、政府といたしましては、この決議をしっかりと受けとめ、国益にかなう最善の道を追求すべく、政府一体となり、全力を挙げて交渉に取り組んでまいりました。

青柳委員 ありがとうございます。

 ということは、この決議を素直に読めば、明らかに今回の交渉の妥結というのは、決議を超えて交渉の妥結がなされているわけでありますから、そこで大臣に伺いたいと思いますが、こういう衆議院の決議があっても、今回の交渉妥結のように、国益にかなうというふうに判断されれば、決議を超えて交渉の妥結というのがあるというふうに理解したいと思うんですが、そういう理解でよろしいんでしょうか。

岸田国務大臣 日豪EPAを初めとする経済連携は、国会で御承認をいただいて初めて締結することができます。よって、この決議との整合性につきましては、やはり国会において御判断いただくものであると考えます。政府としましては、決議をしっかり受けとめて、国益にかなう最善の道を追求するべく、関係省庁が一体となって、全力を挙げて交渉に取り組むということであります。

 今回、日豪EPAにおきましても、そういった方針で臨んでまいりました。そして、我が国として、国益にかない、全体として利益になる協定を実現したと政府としては考えているところであります。

 いずれにしましても、国会において決議との整合性については御判断をいただき、そして、最終的に御承認いただけるかどうか御判断いただくことになると認識をしております。

青柳委員 ということは、今の答弁でいけば、政府としては、国益にかなえば、国会の決議があっても交渉の妥結をしていくんだというふうに理解をいたしました。御答弁ありますか。

岸田国務大臣 政府としては、決議を重くしっかりと受けとめて、国益にかなうべく、全力で交渉に臨んだ次第であります。

 その結果について、決議との整合性については、国会において御判断いただくことになると承知をしております。

青柳委員 でも、政府としては交渉を妥結したわけですから、決議を超えてやっているわけですよね。ですから、国益にかなえば妥結できるんだということの答弁なんだと思います。

 しかも、私は推進する立場ですが、さらに岸田大臣は、この国会の所信表明でも、経済外交を推進していくんだということをあの短い所信表明の中でもわざわざ述べられておりますので、次の大きな課題はTPPでありまして、TPPも同様に決議がありますが、決議を超えて交渉するんだろうと期待申し上げますが、岸田大臣は、TPP交渉において、所信で述べられている経済外交を推進するということについて、TPPではどのような役割を果たしていくおつもりでしょうか。

岸田国務大臣 まず、繰り返しますが、政府としましては、国会の決議は大変重たいものであり、しっかり受けとめさせていただかなければならないと認識をしております。その上で、国益にかなう最善の道を得るべく、交渉に臨んだ次第であります。結果につきましては、国会で御判断をいただくと認識をしております。

 そして、TPP交渉につきましては、引き続きまして、国益と国益がぶつかる大変厳しい交渉が続いております。TPPというものは、国家百年の計であり、我が国の成長戦略の柱であると認識をしております。総理からも、私を含む関係閣僚に対して、全面的に交渉を支援するよう指示を受けているところであります。

 外務大臣である私としても、米国を初めとするTPP参加国との二国間会談の際には、TPP早期妥結に向けた参加国間の協力の重要性等について言及の上、連携強化に努めているところであります。

 また、私自身もTPP主要閣僚会議のメンバーの一人として議論に参加をしておりますし、また、米国との並行交渉については、TPP交渉と足並みをそろえて妥結するべく指揮をとっている、こうしたことであります。さらには、情報収集という点においては、在外公館を総動員して情報収集にも努めている、こういった取り組みをしている次第でございます。

 ぜひ国益を実現するべく、引き続き全力で対応していきたいと考えております。

青柳委員 ありがとうございます。引き続きの岸田大臣のリーダーシップを期待したいと思います。

 そこで、伺うんですけれども、このTPP交渉はいつまでに妥結を目指すんでしょうか。そして、現在は、その上でどの段階にあるんでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 十月の二十五日から二十七日、オーストラリアのシドニーでTPPの閣僚会合が開催され、甘利大臣、御出席いただいたところでございます。

 この閣僚での議論を踏まえまして、現在、シドニーに首席交渉官及び関係の作業部会の交渉官のメンバーが残っておりまして、閣僚の指示を受けて必要な作業を現在も行っているというところでございます。

 今後でございますが、閣僚会議の中でお決めいただいたことでございますが、来月のAPECの機会を捉えて再び閣僚会合を開き、さらに交渉を前進させるということとなったところでございます。

 妥結がいつなのかということにつきまして、毎回、閣僚会議をやるたびに共同記者会見で問われるわけですが、おとといの共同記者会見では、ホスト国の豪州のロブ大臣がそのことを聞かれまして、協定の中身、サブスタンスが合意の時期を決めるんだ、こういう言い方をしているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、交渉はもう最終局面を迎えているところでございます。あのオーストラリアの大臣も、合意は手の届くところにあるというような言い方をしているところでございまして、我が国としては、早期妥結に向け、引き続き最大限努力していく所存でございます。

青柳委員 二〇一三年十月のTPP首脳声明では、二〇一三年中に協定を妥結するということを発表しているわけです。今はもう、二〇一三年どころか二〇一四年の年末も近づいてきているわけです。

 今、最終局面だという御答弁がございましたけれども、これは本当に最終局面なのかということと、当初の交渉のスケジュールから大幅にずれているわけでありまして、この大幅にずれている原因はそもそもどこにあると分析されているんでしょうか。

澁谷政府参考人 確かに、昨年十月、バリで首脳会議が行われた際は、年内の合意を目指すというふうな声明になっていたと記憶しておりますが、その後、十二月に閣僚会議を開催し、ことしの二月に閣僚会議を開催し、五月に閣僚会議を開催したんですが、ここはなかなか間合いが縮まらなかったということでございます。

 五月の閣僚会議の際に、これだけ幅広いテーマについて、しかも、環境とか労働とか、経済連携協定としては大変新しいテーマを含んでいるものでありますので、閣僚で全てを議論するということではなくて、事務方でまずは徹底的に論点を詰めて、議論が煮詰まったところで閣僚会議、こういうような指示が五月のシンガポールでの閣僚会議で出されたところでございます。

 これを受けまして、七月にオタワ、九月にハノイで首席交渉官会合が行われまして、今回も、シドニーの閣僚会議の前に、キャンベラで一週間、首席交渉官以下が集まって協議を行ったところでございます。

 その結果、ルールの分野については、かなり論点が絞り込まれまして今回の閣僚会議で議論がなされたということ、それから、バイの交渉、物品を含めた市場アクセスの交渉については、七月のオタワ以降、二国間の協議を精力的に進めておりまして、幾つかの国とはかなり収束に近いような状態にまで来ているのが事実でございます。

 そういう意味で、昨年の状況に比べますと、かなり最終局面に近づいているという実感を持っているところでございます。

青柳委員 スケジュールというのは大変重要なことだと思います。

 経済効果の試算では、農業分野ではマイナス三兆円、全体ではプラス三・二兆円だと試算されていまして、こういうことからしても、生産者や事業者、あるいは国民にとっても、このスケジュールというのはある意味死活問題になるんだろうと思います。

 ですから、しっかりスケジュールについても説明責任を果たしていくべきなんだろうと私は思っておりまして、そういう意味で、最終局面というのは、本当に最終局面なのでしょうか。最終局面だとすれば、年内には交渉をまとめるということで理解してよろしいのか。これはまさに説明責任をきちんと果たすという意味で、再度お伺いしたいと思います。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の閣僚会議をホストいたしましたオーストラリアのロブ大臣は、閣僚会議の開催の前に、年内に、ベーシックエレメンツという言い方をしておりましたが、協定の基本的な要素について合意をするべく閣僚で努力をしていきたい、こういう言い方をしておりました。

 実は、TPPの協定は非常に多岐にわたっております。二十一の分野にわたっておりまして、政治的に難しいというよりは、技術的に、協定の案文をまとめたり、附属書をまとめたりするのに物すごく時間がかかるものが多々あるわけでございます。そういうものを全部まとめようとするとかなり時間がかかるわけでございますけれども、ロブ大臣のおっしゃる基本的な要素についてというのは、恐らく、政治レベルで合意ができるところはなるべく早く決着をしたい、こういう趣旨であろうかと思います。

 現在、シドニーの閣僚会議を受けて、首席交渉官でそうした作業をしているところでございまして、また次のAPECのときの閣僚会議に向けて、精力的な協議を行っていきたいと考えております。

青柳委員 今の説明だと、交渉分野が多岐にわたるから時間がかかるんだというのは、それは二〇一三年当時も一緒じゃないかと思いますので、それを理由に時間がかかっているというのは答弁としてはよくわかりませんので、一応指摘しておきたいと思います。

 ちょっと通告しておりませんので答えられないかもしれませんが、答えられれば教えていただきたいんです。

 一部の報道によれば、TPPに参加していない中国というのは、RCEPをTPPの対抗軸として重視している、ですから、TPPが、この交渉が頓挫してくれれば、RCEPをてこに中国が主導権を奪うんだという指摘があります。我々としてはこれは懸念だと思いますが、こうした分析についてコメントをいただけますでしょうか。

澁谷政府参考人 昨年十月のインドネシアのバリにおけます首脳会議の声明の中で、TPPの協定というものは生きている協定である、すなわち、APECの国に対して開かれたものであって、多くの国が関心を表明することを喜ばしく思う、こういう内容の声明が出されたところでございます。

 まずは現在の十二カ国で精力的に協議を行っているところでございまして、その結果が各国にも伝わり、また、広域的な地域連携協定のモデルにこのTPPがなるということをTPPの交渉をやっている人間は目指している、このように考えております。

青柳委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、関係者がとても多い交渉だと思いますし、利害関係者も多いので、交渉をしっかりまとめていただいて、早期に妥結をすることを私は期待したいと思います。

 最後に、ちょっと質問をかえまして、最近報道されましたクマラスワミ報告の撤回要請について、少しお伺いしたいと思います。

 今回の報道されているクマラスワミ報告の撤回要請ですが、どのような経緯でこういうことが持ち上がったのかということと、報道によれば、クマラスワミ氏に会って撤回を要請したが、クマラスワミ氏はこれを拒否したということですが、それでは、今後はどのように対応されていくのかについてお伺いしたいと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 クマラスワミ氏に対する働きかけでございますけれども、経緯といたしましては、先般、委員も御案内のとおり、朝日新聞が過去の誤報を認めるとした、そのような進展がございました。

 このようなことを踏まえまして、いわゆるクマラスワミ報告書と呼ばれる報告書を書かれたその本人に対しまして、そのような最近の進展というものをしっかり説明し、また、何らかの形で報告書に示された同氏の見解を修正するということを促した次第でございます。

 また、これとあわせまして、この問題に関します我が国の基本的な立場であるとか、あるいは、このいわゆるクマラスワミ報告書は一九九六年二月に出されておりますけれども、その後に実施されましたアジア女性基金事業、さらに女性の人権の促進に向けた日本の取り組みといったことを説明すると同時に、このクマラスワミ報告書の中に記された事実関係であるとか法的議論に関しまして、日本として、同意できないで留保しているということを改めて指摘したところでございます。

 これに対しまして、先ほど委員からございましたとおり、同氏の反応としましては、その報告書をつくったときの特別報告者の任を離れて長く、報告書を修正する立場にはない、いわゆる吉田証言というのは証拠の一つにすぎないのであって、自分としては引き続き報告書の立場を維持するというふうな趣旨の反応があったところでございます。

 このような反応を受けて、どうするのかという御質問がございましたけれども、我が国といたしましては、クマラスワミ氏からそのような反応があったということは非常に残念に思っておるところでございます。

 同氏も言われたとおり、報告書を執筆した当時の、女性に対する暴力の特別報告者の任務から離れている、これは事実でございまして、そういうところも踏まえつつ、政府といたしましては、引き続き、国連人権理事会を初めとする国際社会に対しまして、適切な機会を捉えて我が国の立場であるとか取り組みというものを説明して、理解を得るべく、そういった努力を続けていきたいと考えておるところでございます。

青柳委員 この報告書の前提となる証拠が崩れたので、今の答弁で、残念だということですが、ぜひ残念で終わらせないようにしていただきたいなと思います。

 国連人権委員会で採択したものを撤回するというのは、過去にそう事例がないことだというふうに聞いておりますが、事例がないからこそしっかり対応していただきたいなと思っております。

 ということを申し上げまして、私の質疑を終えたいと思います。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、宮沢隆仁君。

宮沢(隆)委員 次世代の党、宮沢隆仁であります。よろしくお願いいたします。

 まず、EPAの話に入る前に、日豪間で非常に重要な案件が今発生しておりまして、それについてお伺いします。

 案件というのは慰安婦問題なんですが、ちょっと詳細を申しますと、シドニー近郊にストラスフィールド市というのがありまして、私がきのう調べた範囲では、人口約三万五千人の町で、二〇一一年時点で、中国系が一七・三%、韓国系が八%いるそうです。

 この中で、当時、副市長等が中心となって、慰安婦像を設置しようという動きがあるらしいんですけれども、私、概説しましたが、この点については参考人が来ていただいていると思いますので、参考人、いなかったでしたか。では、外務大臣の方からお願いします。

岸田国務大臣 豪州ストラスフィールド市における慰安婦碑設置の動きを含め、慰安婦像や碑の設置等は、我が国政府の立場と相入れない、極めて残念なこととまず受けとめております。

 我が国政府としては、豪州を含む諸外国の地方自治体において、各民族系が平和と調和の中で共生することを希望しております。

 個別の案件に具体的にどう対応しているか。こういったことにつきましては、つまびらかにすることによってマイナスの影響も想定されますので、この場で具体的なものを申し上げるのは控えたいとは思いますが、ただ、我が国としましては、現地の我が方在外公館等を通じて、慰安婦問題について、日本政府の考え方やこれまでの取り組み、これはさまざまなルートを通じまして説明をしてきているところであり、この努力は引き続き続けていきたいと考えております。

宮沢(隆)委員 ありがとうございます。

 外務省の方からレクを受けた範囲では、市会議員が何人かいるらしいんですが、その中に自由党の議員もいる。それで、今のアボット首相も自由党であるということで、今御努力されているのはわかっているんですが、できましたら、政治的にも、外務大臣の方から向こうの大臣の方へ働きかけをしていただければなと思います。

 実は、この問題はアメリカで今もっとホットな問題として起こっていまして、日本人の子弟が韓国系、中国系の子弟にいじめられているというようなことも起こっているようですので、そのようなことが起こる前に、ぜひよろしくお願いします。外務省の方でも努力しているというのは私も聞いていますので、引き続きよろしくお願いします。

 では、日豪EPAのお話に入ります。

 私も午前中、連合審査で質問させていただき、そこでいろいろお話を聞いて、今、午後もずっとお話を聞いていて、やはり私と同じような疑問を皆さん持っているんだなというのがわかりました。

 その一つは、先ほど鷲尾議員がおっしゃっていたんですが、これは歴史的に、まず最初はWTOというものがあって、そこでいろいろ交渉をしていた、その後、むしろほかの国が先行してEPAを始めて、日本はしばらく静観していたんだけれども、やはりEPAの方がよさそうだというようなムードになってきたようで、二〇〇〇年代に入ってから急速に日本もEPAを締結し始めたというふうに私は理解しています。

 まずは、その歴史的流れは、なぜそういうことになったのかという理由をちょっとお聞きしたいんですが、これも外務大臣でよろしいですか。

岸田国務大臣 WTOを中心とする多角的貿易体制の維持強化、これは、先ほども答弁させていただきましたように、我が国の通商政策の柱であると現在でも認識をしております。我が国の今日までの経済的発展、これは多角的貿易体制によるところが大変大きかったと認識をしているところであります。

 そして、WTOを中心とする多角的貿易体制と同時に、二国間あるいは多国間のFTA、EPA、こういったものについて、有志国の間でWTO協定で約束した以上の貿易自由化を進める、こういったことを通じてWTOを中心とする多角的貿易体制を補完するという考えに基づいて、こうしたEPA、FTAを進めているところでございます。

 引き続き、八つのEPA交渉、今、我が国は同時並行的に進めておりますが、戦略的かつスピード感を持って推進していきたいと考えております。

 昨年閣議決定いたしました日本再興戦略においても、国際展開戦略として、貿易のFTA比率を二〇一八年に七〇%に高めるという目標を掲げております。こうした目標もにらみながら、ぜひ今後ともEPA交渉等を進めていきたいと考えております。

宮沢(隆)委員 わかりました。外務省、外務大臣を中心としてどんどん進めようという勢いは、私も感じております。

 ただ、やはり、先ほど玉木議員からも質問がありましたように、いわゆる試算、定量化したデータというのがなかなか出てこないなというのは私もずっと気になっておりまして、午前中は、いわゆる二〇〇六年、二〇〇七年あたりの、農水省の盛んに抵抗するためのデータみたいなものを示させていただいたんですが、それがぱたっと出なくなっちゃったように思うんです。

 その辺の経緯というんですか、先ほども何回か答弁していただいたんですが、なぜ出していただけないのかということについてはいかがでしょうか。

岸田国務大臣 こうした経済連携の効果につきまして、国民に対してわかりやすく説明する努力、これは大変重要な努力であると認識をいたします。

 先ほど来さまざまな御指摘をいただきました。定量的な試算あるいはデータ、こういったものにつきましても、ぜひ、今後の検討課題とさせていただきたいと考えます。

宮沢(隆)委員 検討していただけるということで、ぜひよろしくお願いいたします。

 これもやはり国民の素朴な疑問として申し上げると、WTOからEPAに移ってきて、それも今十四カ国目に入っている。さらに、今TPPを同時進行でやっている。将来は、先ほども出ましたけれども、RCEPというのにいずれ入ろうとしている。

 そうすると、おのおのの協定を結ぶに当たっては、メリット、デメリットを当然考えなきゃいけませんし、今度、将来加わってくる新しい協定がEPAにどう影響してくるのかというのも、当然、要するに、何が起こるかというのを推定していかなきゃいけませんよね。

 どうも午前中聞いていても、EPAはEPAでやっていきます、TPPはTPPでやっていきますというふうにしか聞こえないものですから、いわゆる整合性というんですか、一つ一つ、EPA、TPP、RCEPが、どういう戦略でほかと絡みながら進めて、日本の国力を守りながら経済発展をさせていくのか、そういう統合戦略みたいなものがどうも見えてこないんですけれども、その辺をちょっと答えていただければと思います。

岸田国務大臣 例えば、今回、日豪EPAが署名されたことによりまして、TPPの交渉参加国においても交渉のインセンティブが働く、こういった効果は想定されます。

 また、日豪EPAにおいては、先ほど来御説明させていただいておりますように、知的財産ですとか、あるいは政府間投資等、さまざまな課題、分野が含まれております。その分野によっては、TPPを初めとする他の経済連携の議論の参考になる、こういった効果、影響も想定されます。

 このように、今我が国は八つの経済連携を同時並行的に進めていますが、この経済連携を同時並行的に進めることによって、お互いが刺激をし合い、そしてお互いにダイナミズムが働く、こういった効果を期待しながら、我が国として、こうした経済連携を同時並行的に進めていく、こういった努力を進めていくことが重要ではないかと認識をいたします。

宮沢(隆)委員 まさにそのとおりであろうと思います。

 ただ、きょうの議論をずっと聞いていて思ったのは、外務省も外務大臣ももちろん努力されておられる、農水省も努力されておられるんですが、締結してみないとわからないという面が必ずあるはずだろうと思うんですね。それはもちろん、こういう複雑な協定ですので、何が起こるかわからないという面もあるだろうと思うんです。そのときに、日本の国民に対しては、ちゃんと協定するから大丈夫なんだよということだけを与えていたのでは、国民が待ちになってしまうと思うんですよね。

 ですので、これはもう、ある意味、自由競争の世界にどんどん入っていくわけですから、国民に、簡単な言葉で言うと、戦わなきゃいけないんだよということを、やはり啓蒙していくべきだろうと思うんですが、その辺はいかがでしょうか。

岸田国務大臣 こうした経済連携を進めていくなど、経済外交を進めるに当たりまして、やはり、国民の理解あるいは国民のさまざまな協力が重要だということについては言うまでもありません。

 政府として、経済外交の重要性はしっかり認識をし、現在においても、経済外交を三本柱の一つとして掲げているわけですから、この経済外交を進めるに当たりまして、ぜひ、国民の理解、協力を得るべく、しっかりとした説明責任、努力を続けていかなければならないと考えます。そういった理解、協力を背景に、しっかりとした経済外交を進めていきたいと考えております。

宮沢(隆)委員 私は長野一区が地元なんですが、農家の方はいっぱいいまして、TPPのことがよく話題になって、もちろん、反対する方もおられるんですね。日豪EPAのことはまだ議論したことがないんですけれども、やはりそういう経済協定のときには、結局最後は腹をくくって戦うしかないんだということを私が言うと、そこそこ納得してくれる方もいらっしゃるので、できましたら、安倍総理大臣あたりから、そのようなことを国民にメッセージとして送っていただければ、国民自身も、ある意味、覚悟ができるんじゃないかなと思いますので、その辺は安倍総理大臣と相談していただければと思います。

 それから、これもまた外務省のレクを受けながら感じた素朴な疑問だったんですけれども、例えば、オーストラリアに入った日本企業の立場に立って、将来、五年か十年後に、WTOがあり、EPAがあり、TPPがあり、さらに、もしかしたらRCEPもあるかもしれない。企業のリーダーの頭の上には、それだけの協定が並んでいるわけですよね。そのときに、日本企業は、全く自由に協定を選べるというふうに外務省の方からお聞きしたんですが、それはそれでよろしいでしょうか。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば、ASEANの幾つかの国とは、日本は二国間のEPAを結んでおります。また、日本とASEANの間の物品に関するEPAもございます。そういう中で、ASEANに展開をする企業、ASEANに輸出をしたい日本の企業は、今の例で申しますと、日・ASEAN・EPAあるいは二国間のEPA、どちらも選べる、これは事業者が選べるということでございます。

宮沢(隆)委員 では、ついでにお聞きしたいんですが、いわゆる関税率というのはおのおの違うわけですよね。そうすると、企業側にすれば、選ぶときに当然、関税が低い方を選ぼうとすると思うんですけれども、そうすると、協定間で関税引き下げ争いみたいなのは、いわゆる競争ですよね、そういうのは起こり得ると思うんですけれども、いかがでしょうか。

齋木政府参考人 委員御指摘のとおり、まさに、相手国市場でみずからの国籍を持った企業がより活動しやすいように関税率を下げさせるということで、熾烈な交渉をやっております。

宮沢(隆)委員 そうすると、これは将来、例えばもっと長いスパンで、十年、二十年という先を考えると、しぼんでいく協定みたいなものもある、要するに、アクティビティーが低下していくような協定というのはあり得るんですか。みんなが協定としてそれを選ばなければ、活動しなくなってくるわけですよね。ちょっと、僕の理解が正しいかどうか。

齋木政府参考人 正しく理解できたかどうかわかりませんが、協定としては、特に失効の手続、終了の手続をとらなければ、国際約束として引き続き有効ではありますけれども、事業者が使わなくなれば、その協定が、より使われる頻度の少ない協定、まさに廃れていく協定ということが、事実上の行為として、実態として起きてくるということはあろうかと想像いたします。

宮沢(隆)委員 廃れることもあり得るということですね。

 それからもう一つ、これはちょっとどなたに聞いていいかわからないんですが、十年、二十年後に、例えば日豪EPAが、予想したほど効果はないよね、かえってマイナスだよねというのがだんだん明らかになってきたときに、そこから引くということはできるんですか、ほかのEPAも含めて。その辺、ちょっとお答えください。

齋木政府参考人 ただいまの御質問に答えさせていただく前に、一点、先ほどの私のお答えを補足させていただいてよろしいでしょうか。

 委員の御質問が関税でございましたので、私も関税に着目をしたお答えを申し上げたんですけれども、まさに日豪EPAでごらんいただけますように、最近の経済連携協定は、関税という市場アクセスの分野だけではございません。

 すなわち、サービス、投資、知的財産、そして電子商取引、今回の日豪EPAにつきましては、鉱物資源、エネルギーの安定供給、また食料の安定供給、こういったいろいろな実質的な内容、広範な内容を含む協定でございますので、関税部分については、やがて時がたって使われなくなる部分が仮にあるとしても、今申し上げた、それ以外のルールの面、あるいはサービス、投資等のアクセスの面におきましては、引き続き重要な意義を持ち得るということでございます。

 そしてまた、今の御質問ですけれども、一般論で申し上げますと、当該条約に終了に関する規定がございますれば、その終了に関する規定を使うことによって、要らなくなった条約を終了させる、廃棄させるということは可能でございます。

宮沢(隆)委員 そうなんですか。ちょっと意外なお答えなもので。

 そうすると、例えば日豪EPAについては終了の規定は存在するのかしないのかということと、もし引きたくても引けないという事態になったときはどのようにするかということをお答えいただけますか。

齋木政府参考人 先ほど、一般論でお答えいたしました。

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定でございますけれども、ここには二十・六条というのがございます。これが終了に関する規定です。「いずれの一方の締約国も、一年前に他方の締約国に対して書面による通告を行うことにより、この協定を終了させることができる。」ということであります。

宮沢(隆)委員 では、終了することができるということですね。わかりました。

 今、多数の項目で云々とおっしゃっていた、それを私は資料としてお出ししたんですが、一枚だけです、この表ですね。これも外務省の資料をそのまま持ってきただけなんですけれども、これだけの項目で締結、豪州は下から二番目に横に並んでいます。それから、一番左は、今まで結んできたEPAが早い順にシンガポールからずっと並んでいまして、豪州が十四番目ということで、この表は非常に興味深いなと思って、私はずっと眺めていました。

 ここで話が少しそれますけれども、実は私は外科医なんですが、多分、このEPAあるいはこういう経済協定というのは、外務省が使う、ある意味、手術に使う道具と同じようなものだと私は感じていまして、例えば外科医の場合は、手術するときにできるだけいい道具を使いますよね。その道具というのは、こちらでいうとこういう経済協定。

 道具はもちろん、新しくて、たくさんあればいいんですけれども、道具に溺れるということがありまして、特に若手の外科医なんかは、いい道具さえそろえれば手術はうまくいくというふうに考える傾向があります。ところが、例えばメス一つとっても、いい形、いい刃のメスを一本持って、それをずっと使っていれば、最終的にはそのベテランの外科医はいい結果を出すということがあります。ただ、若手はやはり、新しいもの新しいものということでどんどん飛びつくんですが、必ずしもうまくいくというわけではない。

 もう一つは、ちょっと具体的で申しわけないんですけれども、例えば脳腫瘍でも、耳鼻科領域に近いような場所にできた腫瘍を取るときは、耳鼻科医と一緒にやるんですよね。すると、一緒にやる外科医のクオリティーというのもやはり大事で、そのときに選ぶわけです。すると、その連れてくる外科医が使う道具というのも、やはりそれなりの違う道具があるということで、それにちょっと似ているかなと、余りにこじつけ過ぎかもしれませんけれども。

 だから、何が言いたいかというと、片っ端から協定を結ぶだけがその道なのかな、要するに、結ばなくてもいい協定もあるんじゃないかなというふうにちょっと感じたんです。どうも、今の外務省の勢いを見ていると、とにかくがんがん結ぼうという方向に進んでいるように見えるんですが、今私が言ったような懸念をどのように捉えられますでしょうか。これは、できましたら大臣に。

岸田国務大臣 決して、経済連携を締結する数を競うかのようにどんどんと進めているという意識は、当然のことながらありません。EPA、経済連携交渉そのものの重要性、相手あるいは参加国等との関係など、さまざまな状況をしっかり勘案した上で、我が国の国益になる経済連携をしっかり見定めた上で、我が国として交渉に臨んでいる次第でございます。

 ぜひ、経済連携、経済的な効果はもちろんでありますが、さまざまな国際環境、あるいは二国間関係、こういったものもしっかり勘案しながら、しっかりと判断し、そして交渉を進めていかなければならないと考えます。

宮沢(隆)委員 ちょっと失礼な物言いになっちゃったかもしれませんが、お許しください。

 ぜひこの辺は慎重に進めていただいて、国民が納得できるような、わかりやすい説明で進めていただければ、国民も、我々の政党も後押しができていくだろうと思います。

 まだ時間がありますので、ちょっと細かい領域に入っていきますが、先ほどもISD条項の件は話がたくさん出ましたので、一応省きます。

 一つ、ちょっと日豪EPAと別な話になるんですが、韓豪FTAというのも同時進行ぐらいで進んでいるということをお聞きしたんです。その場合、自動車産業とエネルギー・鉱物分野で、韓豪が進み、日豪も進みということになった場合に、日本の国内産業へどのような影響があるかというのをお答えいただきたいと思います。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 豪州は、例えば自動車については現在五%の関税であります。韓国と豪州のFTAにおいては、この自動車の関税を〇%に最終的にはするという約束になっています。

 したがいまして、日本とオーストラリアの経済連携協定がないとしますと、日本から自動車をオーストラリアに輸出するときは五%の関税が引き続きかかり、韓国からオーストラリアに行く韓国の自動車は無税で入れるということで、日本の自動車メーカーの豪州市場における競争力という意味では、韓国企業に劣るという状況になるわけでございます。

 したがいまして、日豪経済連携協定は韓豪FTAより三カ月おくれての署名ではありましたけれども、一日も早く締結をすることにより、日本の企業が豪州市場において、例えば韓国の企業との関係で競争条件に劣後することがないようにしたいと考えている次第であります。

宮沢(隆)委員 ありがとうございます。急ぐ理由というのがわかりました。

 あと、鉱物についてはいかがでしょうか。

齋木政府参考人 失礼いたしました。

 鉱物につきましては、日豪経済連携協定におきまして、エネルギー及び鉱物資源に関する独立の章を置いております。この中で、WTO協定に整合的であったとしても、エネルギーや鉱物資源の輸出禁止や輸出制限の措置を導入しないよう努める旨の法的義務を書き込んだ規定を日豪EPAにおいては結んでおります。これは、韓国、豪州のFTAにはない規定でございます。

 そういう意味では、一概に、第三国間のFTAと、日本がある国と結んだEPAとを比較してというのは、余り意味のあることではないと思います。といいますのは、いろいろな要素が入っておりますので、どちらがより有利だ、不利だと一概に結論づけることはできないと思いますが、少なくとも、エネルギー及び鉱物資源分野について申し上げますと、今申し上げたとおり、韓豪FTAにはない有意義な規定を日豪EPAにおいては取り入れることができました。

宮沢(隆)委員 よく理解できました。ありがとうございます。

 それから、この表を見ていただくとわかるんですが、電子商取引という項目が、真ん中よりちょっと左側に、縦に書いてあります。これをずっと上から見ていくと、締結しているのはスイスと豪州、この日豪EPAだけなんですね。これがなぜこういう結果になったのかということと、これを締結することによるメリット、デメリットをちょっと教えてください。

齋木政府参考人 今御質問をいただきました電子商取引章でございますけれども、これは、先ほど委員の御質問、御意見の中にもありました、例えばWTO協定の時代にはなかった新しい概念であります。

 デジタルプロダクトというコンピュータープログラムなどが典型ですけれども、デジタル式に符号化され、電子的に送信されるようなもの、これが商業ベースに乗って世界を駆けめぐる、こういったデジタルプロダクトについて新しいルールが必要であるということでございまして、日本とスイスの間で、そして今回は日本とオーストラリアの間で、こういった新しい物品・サービスの取引方式について、その特性を踏まえてどういう貿易ルールが適用されるべきかにつきまして、明確かつ精緻な規定を置いたということでございます。

 より具体的に申しますと、今申し上げたデジタルプロダクトについては、内国民待遇及び最恵国待遇を与えるということで、内外無差別また第三国に与えたよりも不利でない待遇を与えるということをスイス及び豪州に約束をしているところであります。また、電子的送信については関税を賦課しないということも決めております。さらには、消費者保護、個人情報の保護、中小企業の電子商取引の利用促進に関する協力などにつきましても、詳細な規定を置いたところでございます。

宮沢(隆)委員 では、それについてもうちょっとお聞きしますが、今後、日豪に限らず、この電子商取引というものをほかの国のEPAに追加していくという発想はあるんでしょうか。

齋木政府参考人 先ほど外務大臣からも、戦略的に経済連携協定交渉を進めていくという答弁を申し上げたところでございますけれども、まさに、EPA交渉をどの国と行うか、そのEPA交渉の中でいかなる分野を規定するかということは、相手国の特性を踏まえて戦略的に交渉をしていく必要があると考えておりまして、今後のEPA交渉において電子商取引章を必ず設けるかどうかにつきましては、一概にお答えすることが困難な事情をおわかりいただければと思います。

宮沢(隆)委員 いや、それが可能かどうかだけです。

齋木政府参考人 交渉事でありますから相手のある話ですけれども、電子商取引について章を設けるということは、相手と合意できれば、当然、これからのEPA、経済連携協定の中に取り込んでいくということは可能であろうかと存じます。

宮沢(隆)委員 これもよくわかりました。

 最後になりますが、この表の一番右端、先ほどもちらちらお話が出ていましたが、食料供給章というものですね。緊急時に対応する云々というお話だったんですが、済みませんが、もう一回簡潔に説明をしていただけますか。

齋木政府参考人 どうもありがとうございます。

 日豪EPAにおきましては、我が国がこれまで締結しましたEPAの中で初めて食料供給に関する章を設けました。

 簡単に申し上げますと、一定の重要な食料に関しては、WTO協定上、輸出の禁止や制限をかけてもよいということにはなっているわけですけれども、日本とオーストラリアの間では輸出禁止や輸出制限の措置を導入しないように努めるということを規定しております。また、それに加えまして、透明性を確保するための事前通報等々についても所要の規定を置いてございます。

宮沢(隆)委員 食料安全保障のことを考えると非常に重要な規定だろうと思って、これを結ばれたことは非常によろしいかなと思うんですが、一方で、オーストラリア側からほかの国と食料供給章というのを結んだ場合に、マルチプルに結ぶようになると、日本への影響とかというのはあるんでしょうか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 まず、私どもが承知をしている限りでは、オーストラリアがこれまでほかの国、第三国との間で食料安定供給に関する独立の章を持ったEPA、FTAを締結したことはないと承知しております。

 今後の問題でありますけれども、そこはどういう規定ぶりになるかというところもあると思いますけれども、私どもとしては、食料安全保障の観点で、この章をとったことは大変大きいと考えておりますので、オーストラリアもその思いを同じくしていると思います。

宮沢(隆)委員 相手の国のことですから、日本でとやかく言えることではないかもしれませんが、私、これは非常にポジティブな印象を持ちました。この日豪EPAに関しては質問はほぼ私は終了しますが、私の印象では、この日豪EPAはかなり有力というんですか、ポジティブな印象も持ちましたし、進めていっていいかなという、一国民としてそう思いました。

 それで、ちょっと話はまたそれるんですが、あと二、三分ですので。

 実は、次世代の党は、安全保障に関して、フィリピンにこの間六人ぐらいで行ってきまして、最終的には、南シナ海等を囲む国を守るというんですか、海洋の安全を守るという意味で、そういう議連のようなものをいずれつくろうということで動いています。

 私、外交の世界をちょっと見ていて思ったのは、いわゆる各国との、例えばフィリピンだったら日比議連とかというのがもちろん存在するんですが、いずれ、こういう、貿易なら貿易、食料なら食料、防衛省が絡むようなら、安全保障なら安全保障という、少し細かい分野での議員の連携というのが必要かなというふうに感じております。

 突然の質問なんですけれども、岸田大臣にちょっとその辺をお聞きできればと思うんですが、いかがですか。

    〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕

岸田国務大臣 外交のチャンネルとしましては、政府間の外交もあれば、民間外交もあれば、そして、御指摘の議員外交もあります。

 もちろん最後の責任は政府が負わなければなりませんが、こうしたさまざまなチャンネルを通じて、さまざまな課題に関しまして意思疎通を図り、交流を図るということ、これは大変重要なことではないかと存じます。

 そして、さまざまなルートの中にありましても、議員交流というもの、それぞれの国民を代表する議員が直接交流をするという切り口、これは大変重要な交流であり、御指摘のようなさまざまな分野、課題において議員外交が進むことは歓迎すべきことではないかと考えます。

宮沢(隆)委員 非常にポジティブな御意見、ありがとうございます。

 実は、この海洋議連の会合がこれから開かれるところですので、もしよろしければ参加していただければと思います。宣伝で終わりにいたします。

 どうもありがとうございました。

三ッ矢委員長代理 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 この午後の委員会の冒頭に、西川農林水産大臣と委員長から、午前の連合審査会で不手際があったという陳謝がありました。誰の質問でどういう不手際があったのかがよくわからなかったという話なので、私の質問の際に、政府出席者、政府参考人として登録されて理事会で確認された以外の方が発言をした、農水省の今城大臣官房総括審議官が答弁をしたということでありました。

 私、これで今ちょうど十六年目のささやかな衆参両院の議員の経験でありますけれども、質問のときにこんなのは初めてでありますので、こういうことが二度と起こらないように強く求めておきたいと思います。

 そこで、日豪のEPAについて、まず岸田大臣に伺います。

 本協定は、農産物輸出大国との間で結ぶ初めての経済連携協定で、日豪間の往復貿易額の約九五%について十年間で関税を撤廃する。本協定の本格交渉前の二〇〇五年時点でも、例えば日豪政府間の日豪貿易経済枠組みに基づく共同研究、これによれば、日本の農業分野では生産が大幅に減少するとともに、農業及び食料分野で雇用が大幅に減少するということで、貿易自由化による経済的な悪影響を指摘しておりました。

 日本の農民、農業団体なども、経営が成り立たない、離農者がふえるという声を上げて、道や県、市町村自治体も、農業輸出大国相手のEPA交渉入りは、地域の雇用を支える生産基盤に与える経済的悪影響があるというふうに、懸念と危惧を示しておりました。

 にもかかわらず、それらを押し切って、第一次安倍政権のときに交渉が開始されたものでありますが、岸田大臣、交渉の結果、そういう多方面にわたる、それから政府自身でもそういうことが言われていた、そういう懸念や危惧の声というのは完全に払拭されたという御認識でしょうか。いかがですか。

岸田国務大臣 日豪EPAには、貿易、投資、知的財産、競争、政府調達など幅広い分野が含まれております。また、日本と豪州との間では、御指摘のように、センシティブな品目があり、国内産業への影響を極力回避しつつ国益にかなう最善の道を追求するとの観点から、長く厳しい交渉を行ってまいりました。結果、国益にかない、我が国にとって利益になる協定を実現できたと政府としては考えております。

 意義として、基本的価値観と戦略的利益を共有する豪州との関係強化に寄与する、あるいは日本企業の競争力を確保する、あるいはエネルギー・鉱物資源や食料の安定供給を強化する、さらにはアジア太平洋地域のルールづくりを促進する、こういった意義が考えられます。

 政府としましては、本協定締結の効果、影響に留意しつつ、やはり生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営を続けられるよう、畜産経営の構造改革あるいは生産性の向上による競争力強化など、しっかりと推進していかなければならないと考えております。

笠井委員 農水省に伺いますが、日豪EPAに関して全国の市町村議会から出されている現在までの意見書の本数と概要、特徴、どういうものになっているか、報告をしてください。

今城政府参考人 お答えします。

 地方自治法第九十九条に基づく意見書、これにつきましては、平成二十五年四月一日から平成二十六年九月末までに、都道府県議会または市町村議会から農林水産省に御提出のあったものについて分類しました。参加すべきでない、慎重対応、農業の国内対策が必要、その他の四分類に集計したところでございます。

 このうち、日豪EPAに関しまして、都道府県議会から一件の意見書が寄せられ、内容は、農業の国内対策が必要との意見でございました。市町村議会からは百三十八件の意見書が寄せられ、内容は全て、慎重に対応ということでございました。

 また、TPPに関しても同様に寄せられておりますが、お尋ねは日豪EPAでございます。

    〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕

笠井委員 それは昨年の四月からことし九月末までですが、それ以前、つまり、協定交渉入りというのが二〇〇七年だと思うんですが、それ以前を含めてこれまでどれだけ上がっているかは、どうでしょうか。

今城政府参考人 残念ながら、私どもの意見書の取り扱いとして、一年間、三月のときに更新するということをしておりますので、それ以前の正確な数字は把握しておりません。

笠井委員 ちょっとこれはおかしいと思うんですよね。だって、協定は随分長きにわたって、七年ぐらいずっと交渉があって、いろいろな意見が出てきたわけですが、いざ国会で審査するという時点になったときに、これをめぐって、つまり、地方議会からどれぐらいの意見が出ているかというのはここで議論するわけですけれども、今伺うと、一年単位で、あとはもう廃棄しちゃっているという話なので。

 これは基本的なことなんですけれども、そういうあり方でいいんでしょうか、大臣。要するに、協定をここで審査するんですね。これまで協定をめぐって七年間にわたっていろいろな意見でいろいろ議論があったことを、ここでそれも踏まえてやろうと思っても、今農水省も、一年しかやっていないので、あとはわからないんですということなんですけれども、本当にこういうあり方で、農水省は農水省であるんでしょうけれども、ここは協定の審査を、外務省が出した条約、協定に基づいてやっているんですが、どういう感想をお持ちですか。

岸田国務大臣 地方議会の決議等の取り扱いにつきましては、今答弁があったとおりかとは存じますが、今この日豪EPAの御審議を国会にお願いしております。できる限り、今日までの経過ですとかさまざまな意見、こういったものも踏まえた上で、充実した議論をお願いしなければならないと考えております。

笠井委員 これは本来だったら、ここで審議できないと私は言いたいぐらいの話なんですね。だって、そういうのはきちっと、どういうのがあるかを踏まえて、国民の代表たる国会がこの協定はいいかどうかとやるわけで、そのときに基礎データがこの一年余りしかないという話だと、できないんだと思うんですよ。

 これは、きちっとその問題も検討し直してもらいたいと思うんですが、いかがですか、農水省さん。

今城政府参考人 お答えいたします。

 地方自治法第九十九条に基づく意見書というものについては、いわゆる公文書という扱いではないので、保存期間その他が具体的に定められているというものではございません。

 ただ、外交案件に限らず、意見書はかなりの数を私どもは頂戴しておる次第でございまして、日豪EPAということで区切って保存するということでもなく、全体の取り扱いとしてそういうふうにさせていただいているということでございます。

 ただ、地方からの御意見につきましては、さまざまな場面で、私ども、フェース・ツー・フェースも含めて非常によく意見を承っており、日豪EPAについても、地方の方からの意見というものはよく拝聴している次第でございます。

笠井委員 聞いていても、国会でこれがどうなっているかといったら、わからないわけですよ、幾つ出ているのかもわからないわけで。少なくとも協定が国会承認されるまではそういうのがなかったらだめだと私は思うので、今後の問題ですけれども、きちっとそこのところは検討してもらいたいと思います、あり方として。

 我が党も、この協定交渉入り前の二〇〇七年三月から、導入されれば日本の農業に余りにも甚大な被害を与える、日本農業の存廃にかかわる交渉には入るべきではないということで、交渉開始そのものに反対することを表明してまいりました。

 二〇〇七年四月の交渉開始直後ですけれども、その直後にも、かなりいろいろなところから出ました。

 例えば、北海道農業・農村確立連絡会議、副知事それから道経連、JA北海道等で構成されるそういう連絡会議などが呼びかけ人となって、米や小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの農業分野での重要品目を関税撤廃の対象から除外するなど適切に対応することを明記した要望書を、内閣総理大臣宛てに提出しております。

 沖縄県の那覇市議会、石垣市議会がそれぞれ提出した二〇〇七年の意見書は、砂糖や牛肉等の品目を関税撤廃の例外品目とすること、交渉いかんによっては中断も含めて厳しい判断をもって臨むことを求めております。

 交渉の結果、本協定は、そういう要望、意見に何ら応えるものになっていないんじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 当然のことながら、日豪EPA交渉につきましては、この長い年月の中でいただいたさまざまな御意見等をしっかり踏まえた上で、国益にかなうべく最善の道を追求してまいりました。

 今回、そういった議論の積み重ねの上に立って、署名を行い、そして、国会に審議をお願いしているわけでございます。その内容につきましては、最終的には、国会に御判断をいただかねばなりません。

 ぜひ、政府のこうした今日までの取り組みをしっかり評価して、御承認いただきたく存じます。

笠井委員 国会が判断する上でも、必要なものがなければできないという話になってまいります。

 そして、踏まえたものになっているというふうにはなっていない。国内対策万全ということも先ほど言われたけれども、交渉の結果、協定が署名された後も、懸念、危惧の声が払拭されたどころか、慎重対応を求める意見書が新たに出されたり、関係者から反対の声が広がっております。関係自治体、関係者の理解と納得など得られていないのが現実ではないかと思います。

 そこで、今回、日豪間で合意した協定は、広範な農林水産品について、日本市場へのアクセスに係る関税の撤廃、削減等を認めたもので、危惧されたとおり、国内の農業に極めて大きな打撃を及ぼす内容になっていると思います。

 日本の農林水産物加工品の関税撤廃、千七百四十品目、特に、重要品目のうち除外となったのは米のみで、牛肉、乳製品など九百四十品目で大幅な関税削減、関税割り当てを認めている。自動車の関税撤廃と引きかえに、農産物の輸出大国を相手に、食料主権をないがしろにして国内の農業を窮地に陥れる、こういう約束を行ったのは、私は重大ではないかと思うんですが、そういう認識はおありでしょうか。

岸田国務大臣 先ほども申し上げさせていただきましたが、さまざまな御意見を踏まえてこの日豪EPA交渉に臨んでまいりました。

 そして、政府としましては、日豪EPAの交渉結果は、国内のさまざまな産業の健全な発展と両立し得るものであり、我が国として受け入れられるものと考えております。

 ぜひ、国会においても、この協定につきまして御承認をいただきたいと考えます。

笠井委員 先ほどのやりとりの中でセーフガードの話がありました。数量セーフガード措置があるので、安価な豪州産牛肉の過度な流入については歯どめをかけることができるという議論もありますけれども、しかし、後でも議論しますが、そういうセーフガードの措置そのものが本協定締結後の見直し協議の対象になっているんじゃないかと思うんですが、そういうセーフガード措置についても見直し協議の対象になっているかどうか、これを確認したいんですが、いかがですか、経済局長。

齋木政府参考人 今御質問いただきました牛肉に係る特別セーフガードですけれども、十年目までは協定の中でそれぞれの規定がございます。確かに、その後につきましては見直しが行われるという規定であります。

笠井委員 その見直し協議の性格について、協定には、発動基準の引き上げや適用税率の引き下げ、措置の廃止等を通じて、アクセスを改善する観点から行われるというふうに明記されているわけですね。要するに、セーフガード措置をなくす方向で見直していく。それで守れるといっても、当てにならないという話になってくると思うんです。

 本協定が、二〇〇六年十二月に、午前中も質疑でもやりましたが、衆参の農林水産委員会において、それぞれ全会一致で決議した日豪EPAの交渉開始に関する決議の趣旨に反することは明白だと思います。

 そこで、次になんですが、この協定が一たび締結されるとどうなるかという問題を伺いたいと思います。

 関税措置と非関税措置を規定する日豪EPAの条約本文と附属書には、関税割り当てや関税削減、除外措置、規制緩和措置が書き込まれております。これは、オーストラリアに対しても、さらにEPA交渉中のEUやカナダ、あるいはTPP交渉参加国に対しても、要するに、日本はここまでは認める、そして、それより先も交渉の余地がある、つまり削ってよいというアナウンスになるという政治的意味は持ちませんか、大臣。

岸田国務大臣 あくまでも日豪EPAとTPPを初めとする他の経済連携は別の経済連携交渉であると考えております。

 ただ、先ほど申し上げましたように、日豪EPAが成立することによって、他の経済連携の参加国に交渉のインセンティブが働くとか、分野によってはその内容が参考とされるなど、こういった効果、影響はあるとは存じます。

 しかしながら、いずれにせよ、それぞれ独自の経済連携としてしっかりとこの議論を進めていかなければならないと考えます。

笠井委員 それぞれ独自だけれども、効果、影響はあると大臣は言われました。つまり、実際にもう日本は、EPAを結ぶいろいろな国から、例えば日本・メキシコEPA改定議定書のように、さまざまな形で現に再協議を持ちかけられているのが実態でありますし、オーストラリアに対しても、あるいは米国等の他の農産物輸出国に対しても、同等以上の譲許を要求する根拠を与えることになるということだと思います。

 そして、それらに対応するために、日豪EPAにはいわゆる再協議条項が措置をされております。第二・二十条のところにこうあります。市場アクセス及び競争力保護に関する見直しということで、これは関税措置を定めた附属書一について、この協定の効力発生の日の五年目の年または両国が合意する他の年のいずれか早い年において、両国の見直しの対象になると規定をしております。

 つまり、見直しというのは、五年目の年だけではなくて、または両国が合意する他の年のいずれか早い年ということでありますので、この規定ぶりからして、条約締結後、間を置かず、あるいは短期間のうちに、豪州側かあるいは日本側か、どちらかでもこれに基づいて再協議を提起する可能性はある、そういうことになりますね。

齋木政府参考人 お答え申し上げます。

 日豪EPA第二・二十条でありますけれども、委員御指摘のとおり、発効後五年目もしくは両国が合意する、より早い年となっております。

 したがいまして、一方の締約国がより早い見直しを提起することは可能でありますが、あくまでも見直しのためには両国の合意が必要であります。

笠井委員 もちろん、合意がなければ見直しできないわけですが。

 ですから、国会の承認後、相手側が例えば三カ月後にでも再協議を提起はできる、その可能性は否定できないということでありますね。これはもう条文上のことです。

齋木政府参考人 相手国がどうするかというのは、これは私ども、コントロールできるところではありません。

 しかし、繰り返しで恐縮でございますが、合意しなければ見直しはないということでございます。

笠井委員 再協議は提起できますかと聞いているんです。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 事実上の問題として、提起はあり得るということだろうと思います。

笠井委員 提起できるんですが、しかも、条文が規定している見直しの内容ですが、迅速な関税引き下げまたは撤廃、入札手続の簡素化、割り当て数量の増加、調整金に関する問題ということで、より具体的に見直しの内容というのが明記されている。

 重要品目である食糧用の麦、牛肉、砂糖、乳製品などについても、迅速な関税引き下げまたは撤廃、入札手続の簡素化、割り当て数量の増加、調整金に関する問題、ここに書いてあるようなことを見直す、つまり、そういうことが提起できるということで、再協議になっていくということが条文上あるということですね。

齋木政府参考人 条文上、そのような規定があるというのは御指摘のとおりであります。

 他方において、見直しの結果は、当然のことながら、予断されておりません。

笠井委員 しかし、そこまで具体的に内容が書いてあって、提起できることになっているということは、そういう中身が共通の論点になっているということだと思います。

 政府は、TPP交渉妥結を展望して条約テキストにこういう規定を盛り込んだということではないんですか。

齋木政府参考人 この見直しの対象になっている品目につきましては、特に豪州の高い関心がある品目でございます。交渉の中におきまして、豪州側の要求には極めて厳しいものがありました。

 したがいまして、見直しをするときには、豪州側として、ここに書いてあるような観点からの要求が出てくるであろうということを概念的に書いたものでありまして、繰り返しですけれども、この方向で結果が予断されているということではございません。

笠井委員 それは合意しなきゃできないんですから。

 しかし、そういうことで、再協議の中身というのは具体的に明記される結果になって、つまり、内容について、こういう項目について、見直しということで条文上規定されているというのは、このことは合意したわけですよ、条文で。だからこれは条約になっているので。

 本協定の第二・二十条の二項でありますけれども、日本が第三国との国際協定に基づいて当該第三国に対して与えた特恵的な市場アクセスの結果として、日本の市場における競争力に重大な変化がある場合には、オーストラリアの当該原産品に対して優遇を与える観点から見直しを行うというレビュークローズがあります。

 ここで言う第三国に対して与えた特恵的な市場アクセスの特恵的というのは、具体的にどういうことを指して言っているんでしょうか。それから、日本国の市場における競争力に重大な変化がある場合というのは具体的にどういう場合か。どんな品目について、そして、第三国というのはどんな国を想定しているのか。どうですか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 特恵的な市場アクセスという、この特恵的といいますのは、典型的には、オーストラリアでない他の国と経済連携協定を結び、その結果として市場アクセスが変化をするということだと理解をしております。

 また、その第三国について、特定の国を念頭に置いているということではございません。

 また、我が国市場における競争力に重大な変化が生じた場合というのは、規定のとおりであります。すなわち、単なる変化ではなく重大な変化が生じた場合に見直しの対象となるということです。

 また、対象品目でございますけれども、二・二十条の1に書いてございますように、「締約国の表第二節の表の4欄に「S」を掲げた品目に分類される」ものということで、Sのついた品目がこの見直しの対象に係らしめられています。

笠井委員 単なる変化と重大な変化の違いはどこにありますか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 それは、重大な変化と思う、思うというよりも、重大な変化と両国が認定をするということでございまして、軽微な変化ではなく、単なる変化ではないということで理解しております。

笠井委員 どの程度までなら軽微で、ここまでいったら重大というのは、それぞれあると思うんですけれども、その辺は何もないんですか。

齋木政府参考人 条約の二・二十条には、重大な変化が生じた場合というふうに規定しております。

笠井委員 では、その場合に、条文が言うオーストラリアの当該原産品に対して優遇を与える観点というのは、具体的にどんな観点ですか。

齋木政府参考人 失礼いたします。

 今委員は優遇とおっしゃったかと思いますが、条約の規定上は、「同等の待遇を与える観点から見直しを行う。」となっております。

笠井委員 優遇というのはありませんか。

齋木政府参考人 二・二十条は、同等の待遇……(笠井委員「二・二十条の二項で」と呼ぶ)二・二十条の二項は「同等の待遇を与える観点」と規定をしております。

笠井委員 そうすると、それはどういう意味になりますか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 我が国が豪州以外のある外国に対しまして、この条約の発効後、特恵的な市場アクセスを与えた結果として、先ほど申し上げました、Sに分類される豪州の原産品の我が国市場における競争力に重大な変化が生じた場合には、豪州は、日本が第三国に対して与えた特恵的な市場アクセスと同等の待遇を欲しい、当然要求するということを豪州は言っておりました。

 したがって、そういう観点から見直しが行われるであろうということを規定しておりますが、繰り返しで恐縮ですけれども、その見直しの結果は何ら予断されておりません。

笠井委員 そうすると、現在交渉中のEUやカナダとのEPA交渉とかTPP交渉などで、万が一、日豪EPA水準を上回る関税、非関税措置を決めた場合に、その水準で新たな措置を見直すことになっていくということになりますか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 与えた結果として、日本の市場における競争力に重大な変化が生じた場合には、見直しの対象となるということでございます。

笠井委員 そうした見直しによって日本国民に与える悪影響を具体的に説明する、どんな影響があるかを説明するという担保は、この協定、条約上、どこに明文規定されているでしょうか。

齋木政府参考人 日豪経済連携協定上、委員の御質問いただきました規定に該当するようなものは設けられておらないと承知しております。

笠井委員 そうすると、そういうことになった場合に、国民に説明するということは一切担保がないわけですよ。

 一旦、日本の譲許、自由化措置に足を踏み入れると、今後も、要するに芋づる式に約束させられて、そこから抜け出ることが難しくなっていく、あっちがこうなったからこっちもこうするというふうにやっていくわけですから、TPP交渉を含めて、他国との交渉結果によっては、豪州農産品の受け入れのさらなる拡大要求につながって、譲歩の連鎖に陥る事態になりかねない。

 そうならないというふうに断言できますか。

齋木政府参考人 お答えいたします。

 見直しにつきましては両国の政府が行いますけれども、その結果につきましては国会にお諮りをすることになります。

笠井委員 大臣、それはもちろん国会で諮ることになるわけですが、こういう仕掛けになっていくと、どんどん譲歩をするというか、そういう連鎖に陥っていくということにつながるじゃないか。つまり、こっちがもっとこういうふうになったから次はうちもこうしろ、さらに、向こうがこうなったからこうしろというので、どんどんどんどん日本が譲ることにつながるんじゃないか。その点はいかがですか。

岸田国務大臣 この協定の条文につきましては、先ほどから御説明させていただいたとおりでございます。

 いずれにしましても、見直しにつきましては両国の合意が必要でありますし、その結果につきましては予断するものではありません。そして、合意に基づき、国会の承認が必要になる、当然のことであります。

笠井委員 政府は、長い間かけて慎重に検討して交渉してきたというふうに繰り返し言われます。そして、国会にかけて承認を得るんだと言われるけれども、大筋合意したのが半年前のことし四月で、署名したのが七月で、国会に提出したのはことし十月十日であります。まだ三週間もたっていない。七年間の交渉をやってきて、それで、資料を出してほしいと言ったら、もうありませんという話になったりしているということでありまして、膨大な条文と附属書で、十分検討するいとまもない。何より、関係自治体あるいは議会、関係団体、国民の理解と納得を得られていないのが現状であります。

 こういうもとで、事は農業を初めとして日本の今後にかかわる重大な協定でありまして、こんなことに踏み出して亡国の道を歩むということは絶対あってはならない。

 まだまだ議論は尽くされていないわけで、さらに徹底審議して、その上で廃案にすべきだ、このことを強く求めて、私の質問を終わります。

土屋委員長 次に、小宮山泰子君。

小宮山委員 生活の党の小宮山泰子でございます。

 本日は、最後の質問になるかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 さて、実は、本日最初には、きょうは何度も出ておりますけれども、衆参両院の農水委員会の決議との整合性についてお伺いしたいと思います。

 この中で、私自身大変危惧しておりますのが、国会というものを国会議員はどう思っているのか、特に政府に入った方もなんですけれども、思っているところであります。

 それは、きょうも議運の理事会におきまして議題というか問題になったんですが、昨日の本会議におきまして、もう名前は議運の理事会におきまして公表されましたけれども、自民党の一年生議員から、大変、議会制を理解していない、三権分立である、それだけ国会議員というのは責任があるということを理解されていないような不規則発言があったということでもあります。

 この議員におきましては、維新の会の女性議員に対してのセクハラのやじ、また、最近もですけれども、国土交通委員会で国会の品格を大変損なうようなやじを飛ばし続けているということで、何度も何度も注意を受けているようでもあります。

 こうやって考えますと、残念ながら、今の与党の方々の多くの中には、国会というものは政府が出してきた法案等を通すことが目的で、国会として審議をすることの大切さ、そういった意味において、三権分立ということ自体がおわかりになっていないのではないか、それだけの重きがあるということがおわかりになっていないのではないかと思わざるを得ません。そういう意味においては、国会の品位を損なうものとして、懲罰にも値するのであるという話が本日の議運の理事会で行われたところでございます。

 そこにおきまして、本日朝から、本当に何度も何度もお答えされていることではありますでしょうけれども、改めて伺わせていただきたいと思います。

 本年四月十日及び五月二十二日の衆議院農林水産委員会で、林農水大臣は、両院での決議と日豪EPAとの整合性について問われ、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖について豪州側から一定の柔軟性を得たため、交渉を中断せずに継続し、大筋合意に至った、特に牛肉については、豪州は関税撤廃を強く要求したが、冷凍、冷蔵の間に四%の税率差、現状以上の輸入量になったときに関税を現行水準に戻すセーフガード、長期の関税率削減期間、こういう一定の柔軟性が得られ、国内畜産業の健全な発展と両立し得る関税削減の約束となったと答弁され、さらに、最終的に決議との整合性については委員会で御判断をいただくというふうに考えていると述べられております。

 改めて、私どもとしては、国会にも提出されましたこの両院での決議、大変重いものであります。米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目が除外または再協議対象となるよう全力を挙げて交渉することとされております。

 この点に関しまして、日豪EPAの内容を両院の決議と照らして、整合性は十分とれているのか、改めて御見解を伺います。

中川大臣政務官 日豪EPAの内容と衆参農林水産委員会の決議との整合性については、国会で評価をしていただくものと考えております。

 今先生お話しになられましたように、国会決議は立法府の意思表示でありますけれども、国権の最高機関である国会において行われたものでございますので、政府といたしましては、決議をしっかりと受けとめて、真摯に、粘り強く交渉したものと思っております。

 その結果、米については関税撤廃の対象から除外をし、食糧用麦、精製糖、一般粗糖、バター、脱脂粉乳は将来の見直しの対象とするなど、豪州側から一定の柔軟性を得たところであるというふうに思っています。

 また、牛肉については冷凍と冷蔵の間に四%の関税格差と効果的なセーフガード措置、チーズについては一定量の国産品等を使用することなどを条件にした関税割り当ての対象となっております。

 こうしたことから、政府といたしましては、国内農林水産業の存立及び健全な発展と両立し得る合意に達することができたと考えております。

岸田国務大臣 当然のことながら、国会のこの決議、大変重たいものであります。

 ただ、日豪EPAを初めとする経済連携につきましては、最終的には国会に御承認いただかなければ締結することはできません。よって、国会の決議との整合性についても、最終的には国会に御判断いただかなければならないものだと考えております。

 政府としましては、この決議の重みをしっかりと受けとめ、国益にかなうべく、最善の道を追求するべく、全力を挙げて交渉に臨んできました。そして、政府としましては、国益にかない、全体として我が国にとって利益になる協定を実現したと考えておる次第でありますが、ぜひ、国会におきましても御理解をいただき、御承認をいただきたく、心からお願いを申し上げます。

小宮山委員 ちなみに、この四月ですけれども、日豪EPAの大筋合意を受けて、ジュリー・ビショップ・オーストラリア外相がインタビューに答えている記事がございました。この日豪EPAと環太平洋経済連携協定は補完的なものだと理解しているというふうに述べられております。そういう意味においては、北海道におきましては、さまざまな農産物が大変影響を受ける、ある試算では、北海道への影響は一兆三千七百十六億円と、道内のGDPの四・二%に上るということを大変危惧をされているのが、この日豪EPAの一つの側面でもございます。

 四月十七日には、北海道知事と道議会の方々やJAなど農業関係団体、また北海道選出の国会議員等も陳情をされております。そこに中川政務官がいらっしゃったかは存じ上げませんけれども、中川政務官のホームページにはTPPは断固反対という文字が載っておりまして、とはいっても、これが最近なのかと言われますと、このホームページ、私が見たときには、最終の更新が二〇一三年の四月二十二日でございます。活動記録は三月十五日で終わっているんですが、これもなかなかすばらしくて、先代の中川先生のカレンダー完売の報告が、私がわかった中では最後のようでございました。

 そういう意味では、この一年ちょっとの間で何が起こったのかはわかりませんが、北海道におきまして政務官はどのように御説明されているんでしょうか。やはり、これだけ御自身のお住まいのところにも物すごく影響があるということが随分と言われて、本当に熱心に活動されている中で政務官につかれているわけです。よもや地元と国会での説明というものが違うとは考えたくないんですが、いまだに、やはりこの遵守というものと、本日も朝から、かなりさまざまな中において、十年後はわからないような記述等もあります。そういった協定の内容にもなっております。

 その点をどうお考えなのか、改めて伺いたいと思います。

中川大臣政務官 ホームページについての御指摘、ありがとうございます。今工事中でございまして、その工事前のものをごらんになったのかなというふうに思っております。その後も更新をしているんですけれども、今工事中となっております。御指摘いただいてありがとうございます。

 今お尋ねなのは、日豪EPAの国会決議のことなんでしょうか。それか、私、今ちょっと聞き取り方が悪かったのか、今議論をしているのは日豪EPAのことであり、私は日豪EPAの国会決議のときにはまだ議員ではありませんでしたので、TPPの国会決議の話をされたのか、ちょっとわからなかったのですが。

小宮山委員 何を言っているかわからない、余りこの方向の活動をされていなかったのかなという思いを今しましたけれども、二十六年の四月十七日ですので、それは、議員になられていたときに北海道知事は陳情もされているし、ことしの話ですので、当然、日豪EPAに関して、また、日豪EPAの豪州側の大臣の発言というのもことしの話ですので、もうおととし議員になられていたということで、関係ないということはないと思います。

 そういう意味においては、もう少し真摯に聞いていただきたかった。それはなぜかといえば、先ほども、繰り返しになります、時間が本当に費やされると思っていなかったんですが、先方の外務大臣の方は、TPPとこのEPAは補完的なものであると言っているわけだから、全く別物だということはないわけですよ。理解できませんか。

 では、いま一度、TPPとEPAの関係について、補完的なものであるかどうか、どう理解されたのか、ちょっと確認させてください。

中川大臣政務官 日豪EPA交渉とTPP交渉は全く別々の交渉であるというふうに思います。

 日豪EPAの交渉の合意内容いかんにかかわらず、TPP交渉においては、交渉参加国であるほかの十一カ国との間でそれぞれに合意に至る必要があります。

 したがって、日豪EPAの交渉の合意内容がTPP交渉へどのような影響を及ぼすかは、あらかじめ申し上げることは難しいと考えております。

小宮山委員 それでは、私の今の回答の理解としては、豪州側の外務大臣の発言は、EPAとTPPは補完的なものであるということは否定されるということの認識をお持ちになっているというふうに捉えざるを得ないかと思っております。もちろん、外務大臣は違う意見だと思うんですけれども、いいです。

 少々正直申し上げまして、それだけ選挙のときの古いログかもしれません、拝見して、断固反対と言っておきながら、この補完的なものというものに関しては賛成をされる、本当に委員会決議というものを遵守されているのか、多少やはり疑問に思うところではあります。それが私の、農水の政務官の回答への感想でもあります。

 引き続いて、本来の、もとに戻らせていただきたいと思います。

 やはり二国間の協議というものは大変重いものもありますし、また、先ほどお伝えさせていただきましたが、国内の農業には大きな影響もあるかと考えております。

 飼料用の小麦の食糧用への横流れ防止措置の問題でありますけれども、この問題というのは、過去におきましては、事故米をきっかけに、二十年の十一月、輸入時に食品衛生法違反となった事故米は、輸入業者が輸出国に返送するか廃棄されることになりました。

 また、その後には、食糧法改正で、非食用米穀は、定められた用途に確実に処理すると確認できた事業者に直接販売しなければならなくなったために、平成十九年のような転売は起こらないものとされるということで、過去には、さまざまな国から入ってきたものというのが、使用目的が違うというか、転売をされることによって身元が明確にならなくなる、そういったようなこともあったようであります。

 今回、税関の監督のもとで横流れ防止措置を法律に規定することとされておりますが、悪意を持って不正の実行を行おうとする者がいた場合、十分な実効性を確保できるのかという疑問もまだ残るところでございます。その点に関して御見解をお聞かせください。

松村政府参考人 お答え申し上げます。

 飼料用麦につきましては、現在、国家貿易のもとで指定工場制度がとられておりまして、麦が飼料の原料として使用されることを担保し、横流れ防止をするための措置といたしまして、農水省におきまして、麦を加工する工場の指定を行うなどしております。

 日豪EPAにおきまして、飼料用麦については国家貿易から民間貿易に移行することとなりましたけれども、輸入された麦が飼料の原料として使用され、横流しされることを防止するため、指定工場制度にかわるものとして、関税定率法第十三条に既に規定がございます承認工場制度と同様の制度を新たに導入することとしております。

 この制度は、あらかじめ税関長の承認を受けた工場におきまして、豪州産麦を輸入し、飼料を製造する場合に、当該豪州産麦の関税を無税とする制度でございます。

 この制度によって、承認を受けた工場に対しましては、輸入申告時における原料品の数量及び製品の製造予定数量等を記載した書面の提出を義務づける、製品製造時において輸入原料品を飼料以外には使えないように加工するということを義務づける、工場搬入から搬出に至るまでの原料品、製品等に関する帳簿の備えつけ、あるいは製造後の税関への届け出等を義務づけております。

 さらに、税関がこれらの帳簿や原料品、在庫等を確認し、あるいは製造状況について検査を行い、横流れに対する罰則を設けるということで、横流れ防止措置を各段階において適切に図ることができると考えておるところでございます。

小宮山委員 ありがとうございます。

 先ほど事故米の話をしたとき首をかしげる議員さんがいたので、御説明を追加させていただきたいと思います。

 平成十九年に、輸入時にカビなどが見つかったミニマムアクセス米の事故米を、飼料用に用いることを条件に販売をされたんですが、複数の米麦仲介業者、販売業者へと転売が重ねられて、加工台帳等が偽造され、最終的に、飼料用、非食用と示されないまま販売されていた問題が発覚した。つまり、転売することによって身元がわからなくなって偽装されるということが起きたという問題であります。

 今答弁にありました、大変丁寧な答弁でありましたけれども、今回、しっかりと検査をされるということでありますので、この点はしっかりと、さまざまな懸念があるところをないように、しっかり取り締まるなりやっていただければと思います。

 というのも、やはり飼料用の小麦が国家貿易から数量の枠を定めない民間貿易に移行することにより、需要者たる畜産、酪農などにかかわる農家の飼料購入価格は上昇するのか下落するのか、変化が予想される中で、その額はどの程度と考えられるのか、その点も見解を伺わせていただきたいと思います。

原田政府参考人 お答えいたします。

 現在でも、飼料用麦は、国家貿易のもと、SBS方式で輸入しておりまして、実質無税に近い水準になってございます。

 今回の民間貿易への移行に際しまして、メーカーが自由に、いいタイミングで餌麦を輸入できるということと、港の保税倉庫に少し在庫調整的に持っておけるということで、そういった効果を期待して、飼料用価格が下がるというふうに期待しておりますけれども、御質問の、具体的な、幾ら上がるか下がるかということにつきましては、なかなか難しい面がございますので、御理解願いたいと思います。

 以上でございます。

小宮山委員 できれば、酪農の方々、飼料で使われる方が損をしないように、農水省としては努力を怠らず頑張っていただきたいと思います。

 さて、本日も、本当にこの時間、人数になってまいりますと重なるところがありますが、ISDS条項についてお伺いしていきたいと思います。

 日豪EPAには、相手国への投資や事業展開を行った企業などが進出先で不利益を受けた際に相手国政府を訴えることができる条項、いわゆるISDS条項が含まれていません。

 TPP交渉参加の是非について議論の際に最大の論点の一つであるこのISDS条項が含まれておりませんが、政府は、TPPと限らず、これまで日本が結んできたEPA、FTAなどの経済協定では、日本・フィリピンEPAを除いて、全てISDS条項が入っているが、問題は生じておらず、日本企業を守るために同条項が入っていることは望ましい、当たり前だというような捉え方を示されていると認識しております。

 投資の保護や相手国内で事業を行う際関係するさまざまな法規制が、安定性に乏しいとか、まだ十分に整っていない分野がある場合も予想される発展途上国との間での経済協定では、確かに日本企業を守るために必要といった論理もあり得ると思いますが、TPPは、先進国である米国もあれば、経済規模も小さい途上国に数えられるかもしれない国も含む多国間での協定となっております。

 私がTPPの参加に反対する一つは、この同協定でのISDS条項にあります。

 TPPでのISDS条項が問題なのは、ISDS条項の裁定が行われる機関の公平性と、また、どういった事柄に対して訴えを起こすことができるかという、扱われる分野に対して疑問が拭えないということであります。

 それぞれの国の国内法で整備されているさまざまな制度、社会保障制度や教育制度、公共性、公益性の高い法人の行っている事業なども含めて、非常に広い意味で非関税障壁として訴えを起こされる可能性が十分にあるという懸念が拭えずにおります。

 これまでの経済協定のもとで、これまで訴えは起きていないとか、何でも訴えられるわけではないとか、妥当でないものは扱われない、だから心配無用だと政府、外務省は述べられるんですが、ほかの経済協定とTPPでは異なった結果を迎える可能性が十分以上に考えられるのではないでしょうか。

 TPPでのISDS条項とほかの経済協定でのISDS条項の持つ意味は異なると考えますが、どのように捉えているのか、外務大臣にお伺いいたします。

 あわせて、日豪EPAにはISDS条項がなくとも問題ない理由について、重ねて御説明いただきたく存じます。

岸田国務大臣 まず、日豪EPAにおきましては、我が国は投資家の保護に資するISD条項を含むことを主張いたしました。一方、豪州側は慎重な立場でありました。そして、交渉の結果、全体のパッケージの一環として、ISD条項の挿入については将来の見直しを行うということになった次第です。

 豪州におきましては、国内裁判手続による公正な救済が基本的に確保されています。また、協定に基づいて設置されます投資小委員会等を通じまして、政府間で豪州側に問題の解決を求めることができる、こういった点もありますし、さらには、豪州の外国投資審査基準額の引き上げによって、豪州に投資する日本企業の手続的負担を軽減している、こういった点もあります。

 こういった点を総合的に考慮して、ISD条項について将来の見直し対象とすることで日豪間で一致したというのが、日豪EPAの交渉のありようでありました。

 そして一方、このISD条項につきましては、基本的に海外投資を行う日本企業を保護するために有効であり、経済界が重視している規定であると認識をしています。よって、我が国としましては、投資受け入れ国としての我が国の規制権限に十分配慮し、そして一方で、海外で活躍する日本企業を保護するという観点、この二つの面を勘案して、我が国が締結した投資協定及びEPAにおおむねISD条項を盛り込んできたということであります。

 TPPにつきましては、引き続きまして交渉が行われていますが、今申し上げましたような点を十分踏まえた上で議論が行われているものと認識をしております。

小宮山委員 ありがとうございます。

 本日、もう一つどうしても聞きたかったのが、篠原委員の方からもありました、自由貿易とは何ぞやというそもそも論であります。

 そもそもの自由貿易の定義をどう捉えているのか、大臣にまずお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、自由貿易につきまして画一的な定義を行うことは困難だとは思いますが、少なくとも現代の世界経済の重要な要素であるということは間違いないと認識をいたします。

 一九三〇年代の不況後、世界経済のブロック化が進み、各国が保護主義的な貿易政策を設けたことが第二次世界大戦の一因になった、こういった反省から、一九四七年、ガット、関税及び貿易に関する一般協定が作成され、ガット体制が一九四八年に発足をいたしました。

 いわゆる自由貿易の考え方に基づいて、貿易における無差別原則等の基本的ルールを規定したガットは、多角的貿易体制の基礎を築き、貿易の自由化促進を通じて、日本経済を含む世界経済の成長に貢献してきたと考えております。

 二国間、多国間のFTA、EPAにつきましても、このガットの考え方に基づいて一九九五年にWTOが成立したわけですが、WTOを中心とする多角的貿易体制を補完するものであるという認識のもとに経済外交を進めているというのが我が国の立場であります。

小宮山委員 ありがとうございます。

 一定程度の関税自主権というのは当然認められるべきものであります。それは、独立国としての歴史的な背景から見ても当然かと思っております。

 そうなってきますと、現在交渉中のTPPは、自由貿易の枠内の仕組みと捉えられるのか否か、あるいはTPPが究極の自由貿易の姿だと捉えているのか、これも改めて御見解を伺わせていただきたいと思います。

小泉大臣政務官 ただいま御指摘のありました自由貿易の枠内かとか、そういったことでありますけれども、まず、今大臣がおっしゃいましたとおり、自由貿易の推進というのは我が国の通商政策においての大きな柱だというのは、御党とも認識は同じだと思います。

 その上で、TPP、これは昨年十月のインドネシアのバリで、TPP首脳会談においての声明ですが、各国の新旧の貿易と投資の課題に対応し、雇用の維持、創出を支え、経済発展を促進するための、包括的で次世代のモデルをつくり上げるものである、そういうふうにされております。

 ただ、その一方で、昨年二月の日米首脳会談におきましては、総理は、聖域なき関税撤廃が前提とされるものではない、そういった認識に立った上で交渉に参加しているものでありますので、いずれにしましても、攻めるべきは攻め、守るべきものは守り、引き続き交渉に全力で当たっていきたいと考えております。

小宮山委員 交渉に全力で当たっていきたいと言われても、何に向かって当たっていらっしゃるのか、TPPに関しましては余りにも情報が非開示でありまして、判断しようがないというところであります。

 究極の自由貿易というふうに捉えているのかわかりませんでしたけれども、やはり、私どもの党自体も、当然、生活の党も基本的には自由貿易は推進すべきものであるという立場ではございますが、やはりそこは、各国、さまざまな関税の自主権は認めている中で、丁寧な交渉というのは必要でもありますし、また、それに関係する国民、業界というものに対しての配慮や、また、共同で日本国を支えるという意味において、情報共有というものは大変重要なことだと考えております。

 そういった意味において、TPPというのは、今までの交渉の中でも相当異質な交渉の仕方をしているということにおいて、違和感を感じるところでもあります。このことを指摘させていただきたいと思います。

 時間の関係で、本当は、国産のプロセスチーズの原料用ナチュラルチーズが減少した場合等、そういった観点で質問したかったのですが、この点に関しましては、引き続き、農水省におきましては、特に、これから攻めの農業といって行う中において、きちんと国内の産業育成のために努力をしていただきたいことをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後五時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時二十三分開議

土屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 これにて経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日豪EPA、経済連携協定の承認に反対の討論を行います。

 本協定は、農産物輸出大国を相手とする初の経済連携協定であります。我が党は、二〇〇七年の本格的交渉入り前から、日本の農業に甚大な被害を与える、日本農業の存廃にかかわる交渉に入るべきでないとして、交渉開始自体に反対してきました。

 全国の道県、市町村議会の自治体の意見書を初め、農業団体などから、さまざまな懸念や危惧の声が表明されてきたのであります。だからこそ徹底審議が必要にもかかわらず、連合審査会を含めてもわずか七時間の審議で採決するなど、到底認めることはできません。

 衆参の農林水産委員会が、二〇〇六年十二月、全会一致で決議した日豪EPAの交渉開始に関する決議は、政府に対して、一つ、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖を初めとする重要品目が除外または再協議の対象となるよう全力を挙げる、二つ、豪州側が重要品目の柔軟性に十分配慮しない場合は、交渉の継続についても中断も含めるなどを求めています。

 これらは、主権者たる国民の願いと農民の血の叫びを込めた厳粛な決議であり、段階的関税削減や関税割り当ての設定等を許さない。これこそ貫かれなければならないのであります。

 しかるに、本協定は、広範な農林水産品目について日本市場へのアクセスに係る関税撤廃、削減等を認め、国内の農業に大きな打撃を及ぼす内容となっています。

 自動車関税撤廃と引きかえに、農産物の輸出大国を相手に食料主権をないがしろにして国内の農業を窮地に陥れる約束を行ったことは、極めて重大だと言わなければなりません。

 特に、重要品目のうち除外となったのは米のみで、牛肉、乳製品は大幅な関税削減、関税割り当てを認めています。これは、米国等の他の農産物輸出国に対しても同等以上の譲許を要求する根拠を与えるものにほかなりません。この譲許によって、北海道、東北、九州を中心に畜産、酪農及び関連業種が受ける影響は深刻なものになることは確実です。

 さらに、本協定は、米国が主導するTPP協定の締結につながるものであり、国民生活の広くにわたり、重大な影響を及ぼす事態を呼び込むものであります。

 本協定には、また、日本が第三国に特恵的なアクセスを認めた結果に対する見直し条項が規定されています。関税、非関税措置の見直しとあわせて、TPP交渉を含め他国との交渉結果によっては、芋づる式の譲歩に陥る事態となります。

 以上、重大な問題点を指摘して、反対討論を終わります。

土屋委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 これより採決に入ります。

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

土屋委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

土屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十七分散会


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