衆議院

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第5号 平成26年11月5日(水曜日)

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平成二十六年十一月五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江崎 鐵磨君

   理事 齋藤  健君 理事 武田 良太君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 長島 昭久君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      伊藤 忠彦君    小倉 將信君

      木原 誠二君    小林 鷹之君

      河野 太郎君    斎藤 洋明君

      島田 佳和君    鈴木 俊一君

      渡海紀三朗君    東郷 哲也君

      中根 一幸君    藤丸  敏君

      星野 剛士君    武藤 貴也君

      玉木雄一郎君    津村 啓介君

      若井 康彦君    青柳陽一郎君

      阪口 直人君    三宅  博君

      宮沢 隆仁君    笠井  亮君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   内閣府副大臣       赤澤 亮正君

   内閣府副大臣       平  将明君

   農林水産副大臣      あべ 俊子君

   経済産業副大臣      山際大志郎君

   環境副大臣        北村 茂男君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   文部科学大臣政務官   山本ともひろ君

   国土交通大臣政務官   うえの賢一郎君

   防衛大臣政務官      原田 憲治君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           福本 浩樹君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           石川 正樹君

   政府参考人

   (気象庁長官)      西出 則武君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            中島  敏君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 辰己 昌良君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  真部  朗君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月五日

 辞任         補欠選任

  河井 克行君     小倉 將信君

  木原 誠二君     伊藤 忠彦君

  薗浦健太郎君     斎藤 洋明君

  宮沢 隆仁君     三宅  博君

  玉城デニー君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     藤丸  敏君

  小倉 將信君     河井 克行君

  斎藤 洋明君     薗浦健太郎君

  三宅  博君     宮沢 隆仁君

  鈴木 克昌君     玉城デニー君

同日

 辞任         補欠選任

  藤丸  敏君     木原 誠二君

    ―――――――――――――

十一月四日

 原子力損害の補完的な補償に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力損害の補完的な補償に関する条約の締結について承認を求めるの件(条約第二号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省北米局長冨田浩司君、厚生労働省大臣官房審議官福本浩樹君、水産庁資源管理部長枝元真徹君、経済産業省大臣官房審議官石川正樹君、気象庁長官西出則武君、海上保安庁警備救難部長中島敏君、防衛省大臣官房審議官辰己昌良君、人事教育局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。東郷哲也君。

東郷委員 おはようございます。本日は、トップバッターとして質問をさせていただく機会をいただきました自民党の東郷哲也でございます。よろしくお願いいたします。

 通告に従いまして、まず、エボラの対策について少しお伺いをさせていただきたいと思います。

 私もことしの七月に、西アフリカの方へ四カ国訪問させていただきました。その当時から、現地では非常にエボラに対して、ガーナのアクラで、ECOWAS会合の主要議題の一つとして、エボラの対応について話し合いがなされておりました。

 ただ、そのころはまだ、死者の数でいけば数百人のレベルでありましたから、これほどまで感染が拡大していく、そういうような、どちらかというと、国際社会においても、対岸の火事のような、遠いアフリカで起こっている病気のような認識であったんじゃないかなと思います。

 現在、WHOの推計でいきますと、死者が五千人を超えて、感染者が一万三千人を超えているという、決してもう人ごとではない、こういう中で緊急事態宣言が起こっているわけであります。

 今そうした中で、先般、日本、羽田空港へ、報道によりますと、ロンドン発の全日空機二七八便で乗客にエボラ出血熱の疑いがあるとの一報が走ったわけでありますけれども、その際、国土交通省と全日空に入ったのが十月二十七日午後四時過ぎだったとされております。

 しかし、この同じ全日空二七八便のほかの乗客二百名余りは、何も知らされないままに、この羽田空港から各地それぞれへ散ってしまったわけであります。全日空がこの便名を明らかにしたのは、時間がたった二十八日午前五時半過ぎだったと言われております。

 今回、結果的に、この感染の疑いの搬送された方が陰性であった、結果オーライで、よかったということでありますけれども、この方が仮に陽性であった場合、危機管理で考えた場合、国内各地へ感染が拡大するリスクがあったんじゃないかなと懸念をしております。

 そうした中で、全日空便とほぼ同じ時間に、ロンドン発の日本航空便が複数到着しておりました。速やかにこのとき便名を公表していれば、乗客は対応を判断でき、他社の便の乗客の安心にもつながったのではないか。

 こういう中で、情報開示のあり方、共有に関する危機管理の面から反省すべき点があったのではないかなと思います。

 きのうの段階で私が通告しましたけれども、その後、厚生労働省、国交省の方で、こういう情報開示のあり方を今後改めていくというような報道がけさもなされておりますけれども、今回こうした中で教訓として得られたこういった情報開示のあり方、危機管理の対応について、どのように考えているか。

 あわせて、今回発熱を訴えた男性というのは、羽田空港の検疫所で、自己申告でリベリアに滞在していたという旨を検査の段階で言っている。そういった、あくまでも自己申告があったからできたわけであって、我が国へ入国する方というのは全国の空港で二千八百万人に上る、西アフリカ諸国から直行便がないですから、実際どこを経由して入ってきたのかがわからない現状の中で、細かくチェックすることがない、あるいは自覚症状がない場合に、果たして、検疫で時間をとられるのを嫌がって、虚偽の申告あるいは何も申告しない、こういった状況が起こり得るのではないかというふうに思っております。

 そうした場合、我が国の国民の安全をどうやって水際で守っていくのか、その水際対応の強化策についてどのように御検討されているか、お答えをお願いいたします。

福本政府参考人 お答えいたします。

 まず、情報開示と共有についての話でありますけれども、今回のようなエボラ出血熱の疑いのある事案が発生した場合にどう公表するか、これに関しては、該当者の個人情報保護の観点ということと、それからもう一つは、感染症対策などの点で、いつの時点でどう対応することが適切かというようなことから判断するということが必要だと思っております。

 エボラ出血熱自体は、感染者の血液あるいは体液に直接触れることによって感染する疾病であるということと、それから、ウイルスに感染しても、いまだ症状が出ていない段階ではほかの方に感染することはないということからいたしまして、疑いのある方が血液の遺伝子検査等によりまして陽性になって確定するという時点で諸々の情報を発表することが適切ではないか、それで足りるのではないかというふうに我々は考えておったところでございます。

 ただ、一方、確定診断までに一定の時間がかかるということも事実でございまして、疑い段階にある事案が発生したという事実が何らかの形で一般の方々に知られるところとなった場合には、先生も御指摘ありましたけれども、同時間帯に同じ空港に入国した多くの方々がおられるわけで、そういう方々が不安な状態に置かれるということも想定しなければならないということを今回経験したところでございます。

 今回の経緯を踏まえまして、国土交通省とも協議をいたしまして、今後の方針といたしましては、疑いのある患者が確認をされまして、次の検査のために血液の検体を搬送するというステップがございますけれども、そのステップに至った段階で、従来の方針を前倒しいたしまして、疑い事案が発生したということと、それから航空便名等を発表するというふうに方針を決めまして、昨日、報道機関に伝えたところでございます。

 それから、あわせて、水際対策をどうするのかというお話がございました。

 御指摘の水際対策、具体的には、ギニア、リベリア、シエラレオネ、それからコンゴ民主共和国、この発生四カ国に到着前二十一日以内に滞在された方については、まず、入国の際に検疫所に立ち寄っていただくということをお願いしております。

 検疫所に立ち寄りをお願いする方法といたしましては、従来から、検疫所のブースに掲示をする、あるいは機内でのアナウンスをしていただくこと、加えて、入国管理局でいわゆるパスポートコントロールをいたしますけれども、発生国の国籍を有する方は、まず検疫所への立ち寄りを、誘導をお願いするというようなことをしておりました。

 加えて、先般、十月二十四日でありますけれども、この体制を強化いたしまして、入国される方々全員に対して、検疫所と入国管理局それぞれで、一人一人の方に対して滞在の有無を問いかけるということによりまして検疫所への立ち寄りをお願いする、そういう強化をしたわけでございます。

 立ち寄っていただいた検疫所では、検温することに加えまして、四カ国での行動歴を聴取する。問診を行った上で、発熱等の症状のある方は、入院、隔離をして次の検査というステップに進みますし、症状のない方に対しては、氏名あるいは連絡先、旅行日程等を検疫所で聞き取りをいたします。その後、入国されるわけですけれども、毎日二回、体温をはかっていただくとともに、症状の有無を含めて検疫所に報告を義務づけるということをお願いしておるところでございます。

 先生御指摘ありましたように、今、直行便がない中で、海外からの入国者の方は確かに多数に及びます。ただ、こういう発生国に滞在をされる方というのは、その中では数が少ないわけでありまして、その中から該当者をピックアップするという方法、ほかの方に迷惑をかけずにする方法、いろいろ苦慮しているわけでございますけれども、従来からの方法、それから、さらに加えた、強化した方法によりまして万全を期したいと考えておるところでございます。

東郷委員 御答弁いただきまして、ありがとうございました。

 このエボラは、空気感染するということじゃないですから、冷静に対処していかなければならない。しかしながら、万が一、日本へ感染拡大が広がった、世界的なパンデミックが懸念されている中で、こういった状況が起こったときにどうやって危機管理として対応していくか、こういったことをしっかりとやっていただきたいと思います。

 そうした中で、いろいろな御異論はあると思いますが、オーストラリアやカナダ政府で、エボラのところで、発生四カ国から、ビザの発給停止等の一時制限をしている国もあります。そうした中で、西アフリカ諸国から、ビザ発給停止による入国制限など、こういった問題について我が国としてはどのように考えているか、お答えをいただきたいと思います。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 ギニア、リベリア及びシエラレオネにおいては、WHOや米国疾病予防管理センター、CDCの協力のもと、空港における検温、問診などの出国スクリーニングが強化されており、発熱等の症状が出る者は出国できないことになっていると承知しております。

 また、我が国の水際対策としては、当該三国への二十一日以内の滞在歴が確認された者について、一日二回健康状態を確認することとし、さらに、各空港における検疫所と入国管理局の連携強化により、可能な限り、過去二十一日の流行国の滞在歴を確認することができるよう、検疫体制の一層の強化が行われているところでございます。

 現下、国際社会のエボラ出血熱撲滅のために、全力を傾注し、我が国も積極的に貢献しております。

 エボラ出血熱の脅威を取り除くためには、西アフリカにおいてそれを根絶しなければならず、その際重要なのは、西アフリカの流行国を孤立させることがない、こういうことが大事でありまして、国連安保理またWHOも、一般的な渡航に国境制限措置を課すべきではないと勧告しているところでございます。

 仮に、当該三国における査証発給を停止すれば、事実上、健康状態にかかわらず入国を制限することとなり、かえって、これら三カ国を孤立に追い込むことになりかねません。その結果、流行国は経済的、社会的に大きな打撃を受け、エボラ出血熱の流行がさらに拡大するおそれがございます。

東郷委員 いずれにしましても、今お答えいただきましたエボラの対策、もちろん、日本だけじゃなくて、まずは西アフリカで起こっている事態が一日も早く終息に向かうように、日本政府としても積極的に国連機関等に働きかけをお願いしたいところであります。

 次に、北朝鮮の拉致被害者における再調査の問題について通告をしております。時間がないので端的にお伺いします。

 今回、家族会の一部の反対を押し切った形で、総理の強い意思で決断をして、北朝鮮に行っていた。しかしながら、何らかの回答、実質上ゼロ回答に等しいものではなかったかな、こんな感想を私自身は持っておりますけれども、これまでも北朝鮮との交渉においては非常にだまされ続けてきた、そういうような印象を持っております。

 ことし五月のストックホルム合意において、日朝の行動措置をそれぞれ七項目列挙し、行動対行動を原則として、北朝鮮には、調査の進みぐあいを確認できるよう、日本側による北朝鮮滞在、関係者との面談などの措置を求めていましたが、一方で、九月中旬段階で北朝鮮側は、再調査の進捗について、いまだ初期段階にある、このような回答でありました。早くも、北朝鮮の一方的なペースに、交渉に持ち込まれているのではないか。

 通常、我が国の国民が拉致をされている、誘拐をされているわけです、まずは安否の確認をしっかりとやる、きちっとその担保をとる、そして、それから交渉が再開されなければならない。そういう中で、先に制裁解除の話だけが来てしまう、こういうような相手のペースにややもするとなりがちな交渉がこれまで続いてきたのかなと思います。

 今回、世論の懸念を振り切って平壌に行く以上、ストックホルム合意にのっとって、何らかの具体的な行動要求あるいは義務を課すべきではなかったのか。こういった中で、どのように今回の訪朝が成果があったのか、外務大臣、きょうは、政治家としてどのようにこの問題に対して決意を持って臨むのか、お答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 今回の訪朝の意味ですが、今回の訪朝における協議、十月の二十八日、そして二十九日、この二日間行われました。

 この協議に先立って、九月の段階で、瀋陽におきまして日朝外交当局間会合が開催されました。この九月の段階で北朝鮮側は、委員からも御指摘がありました、調査は初期段階であり、拉致被害者お一人お一人の具体的な情報については提供できない、こういった発言をしていたわけです。我が国としましては、それは容認できないということで、今回、十月、この訪朝を決断したということです。

 この訪朝によって、我が国の立場、拉致問題が最重要課題であるということ、調査の現状についてしっかり把握をするということ、そして、調査を速やかに行って、迅速に、正直に通報を行うことをしっかり要請してくる、こうした立場をしっかり伝えるために訪朝をいたしました。

 さらに言えば、今回この訪朝を見送ったならば、交渉の重い扉をやっとあけたばかりであるにもかかわらず、再び交渉が途絶えてしまうかもしれない、こういったリスクについても考え、さまざまな観点を総合的に勘案した上で、訪朝する、こういった決定をした次第です。

 残念ながら、事前に北朝鮮側の発言等で判明していたとおり、拉致被害者の方々の安否情報、消息について具体的な情報を得ることはできませんでした。

 しかしながら、今回の訪朝によりまして、日本の強い決意を、北朝鮮のまずは調査委員会の責任者に直接伝え、そして、そのことによって、北朝鮮の最高指導部に伝えることができたという意味はあったと思っています。加えて、北朝鮮側からは、過去の調査結果にこだわることなく、新しい角度から調査を深めていく、そして、特殊機関に対して徹底的に調査を行う、こういった説明もありました。

 こういったことを考えますときに、派遣した意味はあったと考えております。ぜひ、今回の平壌派遣が今後の迅速な調査、一刻も早い結果の通報につながることを期待しております。そして、政府全体として、今後の対応につきまして、今回の協議で得られた情報等をしっかり分析した上で、総合的に検討していきたいと考えております。

東郷委員 時間がございませんので、一日も早く、拉致被害者の解決に向けて全力を尽くしていただくことを要望して、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、伊藤忠彦君。

伊藤(忠)委員 自由民主党の伊藤忠彦でございます。

 本日は、特に質問の機会を与えていただきました委員会の皆様方にも、深く感謝を申し上げたいと存じます。

 本日質問させていただきます内容は、まさに六十年前、日本国にもたらされましたある出来事についてでございます。私も、つい最近、読売新聞の「論点」というコーナーに石川好さんという方が書かれた記事が載るまで、知ることのなかったことであります。しかし、この記事を読んでから、私は、この件はどうしても我が国国会で取り上げなければならないと思い、本日の質問をさせていただくわけでございます。

 この出来事は、一人の女性によって実行された歴史的な出来事であります。

 今から六十年前、一九五四年十月三十日の読売新聞夕刊のトップを「李徳全女史、今夕入京」という見出しが飾りました。日中国交正常化という大事業が、当時の自公を初め大先輩の国会議員の皆様から民間の皆様まで、多くの双方の努力の積み重ねによってなし遂げられる、まだ十八年も前の出来事であります。

 李徳全さんは、中国の赤十字社の代表として、中華人民共和国建国以来初めての民間団体として来日をされました。その目的は、第二次大戦後、中国本土から一般の引き揚げがほぼ完了した後も中国に捕らわれていた約千人余りの日本人BC級戦犯名簿を携え、この方々を速やかに帰国させるという大事業をなし遂げることにございました。

 その当時は、日本国は、外交上、中華人民共和国を承認しておらず、米国側の強い意向もあって、この訪日団の受け入れは日本国政府ではなく、日本赤十字社が受け入れ先となっておりました。

 一方、李徳全さんが代表となったこの団の構成は、副団長に、後に非常に有名になりました廖承志さん、そして通訳には、後にやはり駐日大使となる楊振亜さんと、長い間、その後、日中関係に貢献をされてこられた、中日友好協会の副会長でもあった王効賢さんがついてこられました。

 この一行は、十三日間日本に滞在し、日本各地を訪問され、この間、廖承志氏は、入閣前でありました高碕達之助さんともじっくりと話し合い、後に世に知られる日中貿易の原点となったLT貿易の基盤となる話し合いがなされたと言われています。

 十月三十日午後五時過ぎ、羽田空港に香港から到着した一行は、翌十月三十一日、日赤を訪問し、当時の日本赤十字社の社長であった島津さんと会い、予定どおり、BC級戦犯千名余の名簿を手渡したわけでございます。

 終戦後の日中間の交流は、まさに中国側が、民間人、戦犯となられた方々を日本に帰還させることから始まったと言っても過言ではありません。その際、一九五〇年代に李徳全という一人の女性が大きな役割を果たしていたわけでございます。

 大臣は、この女性のことについて御存じでございましょうか。

岸田国務大臣 御指摘の李徳全女史ですが、一九五〇年代に、当時、中国に残留していた日本人の帰国につきまして、中国側の責任者として活躍された方であったと承知をしております。

 そして、ただいま委員の方から御指摘がありました一九五四年の来日につきましては、中国の赤十字会会長として来日をされ、そして日本赤十字社との間で覚書を交わし、これが、その後、日本人の引き揚げが本格化していく契機になったと承知をしております。

 そして、あわせて御紹介がありました同訪日に同行した廖承志氏が、その後、高碕達之助氏との間でLT貿易を始められ、これを通じて拡大した民間の経済関係が日中国交正常化の背景の一つになったという意味で、この李徳全女史の訪日、これは日中関係の大きな節目であったと承知をいたします。

伊藤(忠)委員 一九五四年、到着した十月三十日の羽田空港の様子は、伝えられましたところによれば、空港ターミナルは日本の各界の四百名余りの方に埋め尽くされ、空港の外でも三千名余の人たちが期待に胸を膨らませて待っていたと言われています。

 李徳全女史の空港到着後の最初の発言は、自分たちの訪問が、日中両国の友好発展を促進するためで、また、日中両国お互いの理解を促進するためであると強調されました。また、廖承志副団長は、世の中は道はない、歩く人が多ければ道となるという魯迅の話を引用し、歩き続ければ日中友好の道が開拓されることになると話されたと言われています。

 代表団は、十三日間の滞在中、東京、名古屋、京都、大阪など六都市を訪問し、各地で交流した日本人は実に七、八万人を超えるとも言われております。当時、BC級戦犯とされた千人余りの名簿を待っていた家族の関係者を初めとする皆様、そして日本国民としても、この上ない喜びでいっぱいであった瞬間であったと、現在の我々もまた確信することのできる日でございました。

 李徳全訪日団が実際に訪日するまでの間には、日中両国の間で多くの方々が努力をされたと記されています。中国側は最終的に、周恩来首相が、民間先行、民をもって官を促すという対日方針のもと、李徳全女史を初めとする訪日団を送り出しておられます。周恩来首相は、また、代表団が日本に着くことができれば、それはすなわち成功であると言われたと伝わっております。まさに、戦後、日本国が、サンフランシスコ講和条約後初めて、人民中国から使者を迎えた最初の一日でございました。

 ところが、当時の日本国は、一九五一年にサンフランシスコ平和条約に調印をし、その翌年に日華平和条約に調印をいたしたこともあり、一九五四年十月三十日からの李徳全女史を初めとする訪日団と、この団を送り出してくれた中華人民共和国に対し、日本国政府としては謝意を伝えることなく、この団は帰国の途につくことになったわけでございます。

 少し正確に言えば、赤十字社の幹部でもある皇族の皆様方や、当時の衆参両院の議長を初め有力な政治家の皆様方は、李徳全さんの一行に対し、友好の姿勢と人道精神に対して感謝の意を伝えられたと記録されております。

 改めまして、大臣にお伺いをいたします。

 六十年前に行われました李徳全さんを初めとする訪日団の方々の、戦後の戦犯者の引き揚げを通じて日中関係の改善に果たされた、大きなきっかけをつくられた当時の功績に対しまして、日本国政府を代表して、このことについてどう評価されるか、御答弁を願いたいと存じます。

岸田国務大臣 李徳全氏を初めとする訪日団が、日中国交正常化前の段階において、日本人引き揚げの促進に大きな役割を果たして、日中関係の前進に大きな貢献をされたこと、このことについては、私としましても、感謝そして敬意を申し上げなければならないと考えます。

 日中間の民間交流、これは、当然のことながら、望ましいことであり、さまざまな交流あるいは対話が積み重なることによって日中関係全体の改善につながっていく、このように確信をいたします。李徳全氏のこの貢献、これは、そうした交流の大きな前例となるものであると考えます。

 私としましても、この李徳全女史を含む先人たちの精神をしっかりと受け継ぎながら、さまざまな分野、レベルでの対話、交流を積み重ね、そして、より高いレベルでの対話につなげていくべくしっかり努力をしていきたいと考えます。

伊藤(忠)委員 ただいま、日本国外務大臣として、政府として、公式に、六十年前の李徳全女史の訪日団とその行為に対して謝意をあらわしていただきましたことに、私としては深く感謝を申し上げたいというふうに思います。

 そして、今まさに日常では、日中関係、いろいろなことが起こっております。決して順風満帆ではございません。しかし、最初の一歩は互いに歩み寄ったところからスタートをしているということ、六十年前のこのことをかみしめながら、次のAPECに向けて、両国がそれぞれしっかりとした努力をしていただきますことを改めてお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 おはようございます。民主党の津村啓介と申します。きょうはよろしくお願いいたします。

 本日は、日本の北極政策について、各府省にるる質問をしていきたいと思っております。

 冒頭、端的に申し上げますと、私はある危機感を持っております。それは、地球温暖化によりまして、近年、海氷が北極海において急速に減少しているわけでございますけれども、商業船の運航や、エネルギー資源、水産資源などの開発、あるいは海上兵力を含む日本の安全保障環境が大変大きく変化をしている中で、我が日本政府が、各府省の縦割りによって、北極圏域の沿岸国、主なところで五カ国あります、アメリカ、ロシア、カナダ、ノルウェー、デンマーク、こういった沿岸諸国はもとより、我が国の近隣諸国であります中国や韓国、場合によってはインド等にもおくれをとりかねない、分野によっては既におくれをとっている、そういう危機意識でございます。

 大臣、お読みになったことがあるかどうかわかりません、大変大部なものでございますけれども、平成二十四年度の外務省の補助金を受けた調査研究・提言事業ということで、日本国際問題研究所がまとめた「北極のガバナンスと日本の外交戦略」というレポートがございます。

 大変さまざまな分野にわたって深い議論がされているんですが、一番最初のサマリーのところの結論は、中国や韓国を含む近隣諸国に比べて、日本の北極への取り組みはおくれているという問題提起で終わっております。

 これができたのが平成二十四年度の事業でありまして、平成二十四年度は二十四年四月から二十五年三月、これは二十五年の三月に出されておりますけれども、その二カ月後の昨年五月には、北極評議会、ACと呼ばれていますけれども、この北極評議会に日本はオブザーバー参加を正式に認められておりますし、外務省も、ちょうどその時期に、昨年の春に北極担当大使を新設されて、今二代目だと思いますが、北極政策について一定のコミットメントをされていると認識をしております。

 ただ、残念ながら、各府省から九人の政務に来ていただいておりますけれども、この後、るる確認をさせていただきますように、各府省の取り組みは、それぞれ大変熱心にされているんですけれども、横の連携がなかなかとられていない。外務省ないしは内閣官房海洋本部の司令塔機能ということがこれからさらに必要になってくるのではないか、そういう問題意識で質問させていただきたいと思っております。

 結論を少し先取りして申し上げると、現時点で私は日本の北極政策に六つの課題があると思っております。

 一つ目は、北極観測の縦割りという課題であります。

 二つ目は、砕氷船、耐氷船の建造が世界各国に比べて非常におくれているという課題であります。

 また、三つ目は、経産省におけるエネルギー資源戦略、農林水産省における水産資源の戦略、そして環境省における生物多様性あるいは気候変動問題に対する対応、それぞれ、重要な事業官庁が大変重要な取り組みをされているんですけれども、こうした各府省の取り組みが、海洋本部や、最近CSTIと呼ばれていますけれども、科学技術・イノベーション戦略本部、こうした司令塔機能を果たすべきチームと必ずしも連携ができていないという課題。

 そして、四つ目は、これは安全保障上の問題ですけれども、北極海は、冷戦期においては、原子力潜水艦の展開等、それはそれで戦略的に非常に重要な地域であったわけですが、海氷が大変後退している現在においては、いわゆる海上兵力、護衛艦等も、ロシアやアメリカ、カナダ、こういったところは既に共同訓練であるとか、ロシアにおいては以前使っていた軍事基地を再開する等の、そうした安全保障上の変化もあります。

 しかし、残念ながら、日本の防衛省は、新大綱あるいは中期防で、北極海については特段触れておりません。わずかに、国家安全保障戦略において、傍論の形で、非軍事的な側面で北極海に若干触れていますけれども、安全保障上の位置づけが我が国においてなされていないという点、これが四つ目。

 そして、五つ目の課題としては、重なるところでありますけれども、残念ながら、外務省さんは、科学技術担当大使もいらっしゃる、北極担当大使もいらっしゃる、科学技術という日本の武器を外交上で使っていこう、あるいは北極にコミットしようという姿勢はかいま見られるんですけれども、なかなかそれが一つの大きな絵となって各府省に共有されていない。

 そして最後に、六つ目ですけれども、こうした各部署での、例えば防衛省さんであれば新大綱、科学技術の分野であれば科学技術の基本計画、それぞれ文書になったビジョンがあるわけですけれども、こういった中に北極政策の位置づけが明確になされていないために、私の記憶では、安倍総理が、例えば所信表明であるとか、そのほか対外的な発信において、日本における北極政策の位置づけということを明言されたことはなかったと思います。

 プーチン大統領あるいはオバマ大統領は、近年、この北極の位置づけを盛んにPRされているんですけれども、日本の取り組みがおくれているのではないか、こういう問題意識のもと、以下、るる御質問させていただきたいと思います。

 最初に外務省に伺いますが、二〇〇八年、北極海沿岸諸国、アメリカ、ロシア、カナダ、デンマーク、ノルウェー、こういった国々がイルリサット宣言と呼ばれる宣言を発しております。

 これは、海における法の支配という観点からは我が国の立場と重なる面はございますけれども、既に、その沿岸の諸国が、新たに南極条約のような法的な枠組みをつくらない、UNCLOSであるとかこういう既存の海洋法条約にのっとって北極圏にかかわる新しい課題については向き合っていく、そういう宣言だと思います。

 北極海の、オバマさんに言わせると、地球上最後のフロンティアと言われる非常にポテンシャルの高い地域において、非常に消極的な姿勢だと考えますし、この五カ国に入っていない我が国からすると、ある意味では潜在的なチャンスを逃すことになるのではないかと考えるわけですが、日本の外務省としてこのイルリサット宣言をどう評価しているのか、伺いたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘の北極海をめぐる問題ですが、私も、デンマーク等北欧諸国を訪問させていただいた際に、あるいはNB8を初めとするバルト諸国の外務大臣と会談をさせていただきました際に、必ずこの北極海の問題が議論のテーマとして上がります。

 この問題にいかに関心が強いのか、また、ロシアや中国を初めとするさまざまな北極海をめぐる動きについて大きな関心があるというようなことについても、強く感じてきたところです。地球温暖化もあり、新しい航路ですとか新しい軍港の可能性が指摘される中にあって、この問題は国際社会において大きな関心を集めていることは私も感じてきているところであります。

 その中にありまして、御質問のイルリサット宣言ですが、二〇〇八年に北極海沿岸五カ国が発表したものであり、同宣言は、北極海におけるさまざまな可能性や課題への対応について述べる中で、北極海に関し、海洋法を初めとする広範な国際法の枠組みが重要な権利義務を規定していることを確認した上で、新たな包括的な国際法上の制度は不要である、こういったことを表明しております。

 南極等に対する考え方とは少し異なった基本的な考え方を持っていると承知していますが、北極海に関する法的枠組みに関しては、我が国としまして、海洋における法の支配等の考え方と照らしましても、イルリサット宣言に示された考え方、これは基本的には我が国の立場と一致していると考えているところでございます。

 イルリサット宣言に対する我が国の立場ということにつきましては、以上でございます。

津村委員 各府省に伺っていきたいと思います。

 皆さんのお手元にこういう資料を配らせていただきました。これは、本年五月三十日に、国土交通省の中に設置をされております官民連携協議会で、国土交通省から説明資料として配られたものの抜粋でございます。

 最初のページ、北極海航路の概要ということで、近年、気候変動の影響により北極海における海氷域面積が減少、夏期の航行が可能になった、六月後半から十一月後半。北極海航路は、現在日本がシーレーン、海上貿易で一番使っておりますスエズ運河を通る南回りの航路に比べると、航行距離は約六割、海賊もおりませんので非常に安全。さらに言いますと、スエズ運河の方から参りますと、アジアの中で日本は一番遠い地理的なロケーションになるんですけれども、北極海航路になりますと、アジアの入り口が日本ということになりますので、通過拠点という意味でも非常にポテンシャルが高い、北海道では大変注目されているということでもあります。

 この表には、左下に、海氷面積がこの十年間で随分減ったというのが図示されているわけですけれども、気象庁それから文部科学省におかれては、この北極の海氷の後退について、どのような形で観測をされ、把握をされているのか、それぞれ伺いたいと思います。

西出政府参考人 海氷を含む海上気象情報に関しましては、国際的な枠組みのもと、北極海域についてはカナダ、ノルウェー及びロシアが担当しておりまして、この中で北極の海氷に関する情報が提供されております。

 一方、気象庁では、北極域の海氷は日本の気候の変動にも影響することから、米国国防省の気象衛星の観測データを提供していただき、北極域における海氷の分布状況及び長期変化について解析を行っております。この結果については、気象庁ホームページ等を通じて情報提供しているところでございます。

 最新の結果によりますと、夏の北極域の海氷の面積は年間で約八・九万平方キロメートルのペースで減少しており、一九七九年からの過去三十五年間では約三分の二に減少しております。

 今後も引き続き、このような観点から、北極域の海氷に関する情報の収集、分析及び提供に努めてまいります。

山本大臣政務官 委員御指摘の北極海における夏季の海氷面積でございますが、JAXAのデータによりますと、御指摘のとおり、近年減少傾向にある。JAXAは一九七九年から観測を始めておりまして、過去三十五年間では三分の二程度に減少している。

 また、文部科学省ではこれまで、国立極地研究所や海洋研究開発機構、JAXA等において、船舶あるいは衛星などを活用して北極域の観測研究を進めているところでございます。特に、平成二十三年度より、大学等の研究者を結集した北極気候変動プロジェクトを進めております。

 また、科学技術・学術審議会の北極研究戦略小委員会において、平成二十五年七月に、「北極域研究における調査観測体制について」というものを取りまとめておりまして、観測の空白域におきましても、今後、それを埋めるために国際連携の強化を図るなど、戦略的に観測研究の推進に取り組んでいるところでございます。

 また、文科省としましては、現在、北極圏国との国際共同研究の実施あるいは国際研究拠点の形成等について検討しているところでございます。

 また、関係府省庁と連携しつつ、北極域における総合的な観測研究を積極的に進めてまいりたいと思います。

津村委員 仄聞したところでございますが、気象庁におかれては、世界各国の中で、縄張りというか、ある程度担当する地域があるようでして、そののりを越えて日本が北極にしゃしゃり出て観測をするということに一定の制約があるということを聞いております。

 一方で、今の文科省さんと気象庁、一定の連携はされているんだと思いますが、日本がこれから北極海をどういうふうに使っていくのかということを考えながら、海氷の面積だけではありません。海氷が解けますと、その分、塩分の濃度といいますか、そういうものが随分変わるようでして、これが潜水艦であるとか海上輸送で、後で触れますけれども、海図、チャートの問題、相当デリケートなことだそうで、これから海運業界における日本のプレゼンスというものを上げていく上では、日本の科学技術をしっかり利用して観測体制を強化していくということがまずインフラとして必要になってくると考えますので、ぜひ、それぞれ一定の制約を抱えてのこととは思いますが、日本として、その潜在的な力を十分に発揮して対応していただきたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 これは国交省さんに伺いたいと思いますが、北極海航路が日本の海運に与える影響をどのように分析されているかというところでございます。

 皆さんにお配りした資料の二ページ目でございますが、北極海航路の利用の現状、トランジット航行はここ三、四年で急増しているというところであります。

 これはまさしく急増しておりまして、左下に書かれておりますけれども、二〇一〇年、わずか四年前には、北極海を完全に横断して通った船というのは年間に四隻しかありませんでした。これが年々ふえておりまして、昨年は七十一隻。これは完全に渡り切った船だけを指しているんですけれども、北極圏域で荷物を運んだ船というのは二百三十隻、二百四十隻ということだそうであります。

 このペースでふえていきますと、中国等では、これから十年後に自分たちの対ヨーロッパ貿易の一〇%から一五%は北極圏を使うであろうという予測を国として発表しているというケースもあります。また、今、海氷面積が三十五年間で三分の二になったというお話がありましたが、先ほどの外務省が補助金を出しております日本国際問題研究所のレポートで紹介されておりますけれども、このままのペースで海氷が減少すると、二〇三〇年から二〇四〇年には北極海の氷はなくなる計算にある、夏の期間ですけれども。そうしますと、今以上に安定した航路になるということであります。

 そういうことが起きていきますと、どういうメリット、デメリットがあるかということを簡単に御紹介いたします。

 メリットとしては、例えば、スエズ運河を経由する南航路と比較して、航海距離あるいは日数が短くなるということが一点。燃料が大幅に削減されて価格競争力が高くなるということが二点目。そして、海賊リスクがないという意味で安全性が高いということがございます。

 一方で、今なおある課題といたしましては、通年での利用が困難、冬の間は氷が大変ふえますので、そういう意味で、輸送の安定性、定時性というのが専門用語であるそうですけれども、安定した輸送ができないおそれがあるということ。

 それから、大きなコンテナ船がなかなか航行できないので、スケールメリットの面で課題があるという点。

 それから、先ほど申し上げましたけれども、海図、この北極圏域の海がどうなっているのか、水深であるとか、そういう海図の面が、これは安全保障上のこともあるので、国際的になかなか共有されていないという点。

 それから、まだまだ航海実績が少ないので、保険料、海上保険のプレミアムが非常に高い。ここは近年急速に下がってきているので、それがこの航行をふやしているんですけれども、この海上保険の経済的な問題。

 それから、気象観測所や緊急で避難できる港等の沿岸インフラの問題。

 さらには、最近ロシアが、これはビジネスになると考えたのかわかりませんけれども、自分たちの、北東航路というんですか、ロシアの沿岸、EEZを通る船については砕氷船を先導させるということを法律上義務として課して、その砕氷船を先導させるのには当然お金がかかるということで、エスコート料を課している、こういう問題。

 あるいは、後ほど触れますが、砕氷船自体の世代交代の問題。こうしたさまざまな課題もあるところであります。

 こういったことを国土交通省さんは既に研究会を発足させて研究されているわけですれども、今後の北極海航路の利活用に向けた政府の取り組みとして、今の海運業界への影響も含めて、どういったことをなされているのか、お願いいたします。

うえの大臣政務官 今委員御指摘があったとおりでございまして、北極海航路につきましては、スエズ運河経由と比較すると、航行距離は約六割に短縮できる、あるいは海賊リスクが低減される、そういったさまざまな要因で航行コストが削減できるだろう、そのように考えているところでありまして、新たな選択肢だというふうに考えています。

 我が国にとりましても、国際物流あるいは今後のエネルギー調達につきまして、大きなインパクトを与えるものだというふうに考えております。

 一方、今委員御指摘があったように、例えば避難対応の問題であったり、あるいは海図が古い等々、御指摘のあったような問題が山積をしているような、そういった状況でもございますので、そうしたことも踏まえて検討を進める必要があるだろうというふうに思います。

 このような状況の中で、国交省としては、平成二十四年度から、北極海航路利活用の可能性あるいはその技術的、制度的な課題等々につきまして調査検討を進めてきたところでありまして、本年五月から、先ほど委員御指摘のあったような、民間事業者あるいは関係行政機関が集まって、情報共有化を図るための官民連携協議会というものを立ち上げ、そこでの検討を進めているところであります。

 また、本年八月には、日中韓の物流大臣会合におきまして、日中韓三国で、北極海航路について情報交換を通じた相互協力に努める、そうした旨の共同声明を発表させていただきました。これに基づきまして、今月末には、三国共同で国際セミナーを開催させていただきたいと考えているところであります。

 こうした取り組みによって、北極海航路の利活用を今後とも支援してまいりたいというふうに思います。

津村委員 ありがとうございます。

 今、日本の海運業界の国際的なプレゼンスがどのようなものであるか、その中で、本来日本にとって潜在的なメリットの大きい、つまり、北極海航路を使うとアジアの中でよりヨーロッパに近い、入り口になるこの日本が、どの程度、北極海航路を利用できているのかという数字について伺いたいと思います。

 北極海航路の現在の航行数、それが世界全体でどのくらいの数であるのか、先ほど少し御紹介いたしましたけれども、国交省としてどう把握されているのかというのが一点。そして、そのうち、日本を発着する船舶数はどのように推移しているのか、数字を教えてください。

うえの大臣政務官 北極海航路を東西に横断して航行する船舶の実績でございますが、先ほどの委員が御提出いただきました資料にもあるとおり、平成二十二年には四隻であったものが、平成二十三年には三十四隻、二十四年には四十六隻、そして二十五年には七十一隻、増加傾向にあるということであります。

 このうち、日本を発着した船舶の実績につきましては、平成二十四年には、LNGを運んだ一隻、また、平成二十五年には、ナフサ、石油製品、LNGを運んだ三隻というふうになっております。

津村委員 外務委員会委員の皆さん、日本の海運業界が世界でどの程度のプレゼンスがあるかということをぜひ知っていただきたいと思うんです。

 国交省さんにも御協力をいただいて事前に入手した数字でありますけれども、世界の海上荷動き量に占める我が国商船隊の輸送量の割合ということであります。過去十年以上にわたって大体九・三%から一〇・九%、ほぼ一〇%のシェアを占めております。

 また、南回り航路の、スエズ運河を航行した船の数でありますけれども、二〇一二年におきまして、一年間で、全世界で一万七千二百二十四隻、スエズ運河を航行している。その中で、日本の船社が運航している船舶は一千二百四十六隻、七・二%であります。南航路、スエズ運河ですので、アフリカやインドやいろいろな国々が通っている中でのシェアですので、七・二%と必ずしも高くありませんが、世界全体での荷動きに占める割合は一〇%ということであります。

 そうした中で、今お話がありましたように、近年、四十六隻、七十一隻という船の北極海航路の実績の中で、日本はわずかに一昨年一隻、昨年は三隻ということで、まだまだ伸び悩んでいる。

 ことしの七月、商船三井が、二〇一八年度から定期航路としてロシアのLNGを運搬しようということを発表しておりますので、少し動きが見えてきた。きょうの質問は、それを背中を押そうという、できれば前向きに応援していきたいという趣旨で質問させていただいているわけですけれども、まだまだシェアとしては低いのかなという気がいたしております。

 そうした中で、これを後押しするためには、一定の官民挙げた努力が必要だと思うんですが、何しろ、夏ですけれども非常に冷たい海ですので、先ほど、ロシアが砕氷船の先導を義務づけるということを申し上げましたけれども、砕氷船であるとか、あるいは、その船自体が非常に冷たい海に耐え得る、耐氷船というのが専門用語であるようですけれども、そういう仕様になっているかということも重要なようであります。

 国交省さんに伺いますが、砕氷船、耐氷船の世界各国の保有状況と、我が国を含むアジアの現状について、数字を教えてください。

うえの大臣政務官 大型の砕氷船につきましては、これは米国沿岸警備隊の調査でございますが、世界で八十隻存在をしております。このうち最も多く保有しているのはロシアで四十隻、次いでフィンランドの七隻となっております。ちなみに、アジアでは中国、韓国がそれぞれ一隻を保有しております。我が国は防衛省の砕氷船「しらせ」一隻を保有しております。

 そして、御指摘のもう一点、耐氷船につきましてでございますが、これは、今世界で一万四千隻存在しているとされております。最も多く保有しているのはロシアで約二千隻、次いで中国の九百隻というふうになっております。ちなみに、韓国は三十七隻であります。我が国が運航いたします船舶につきましては、一般商船、探査船など四十八隻でございます。

 なお、我が国ではこれまで約三百四十隻の耐氷船を建造しているところであります。

津村委員 砕氷船については、大型の船が世界で八十隻のうち、日本は一隻、それは南極観測船の「しらせ」、後に触れますけれども、南極で運用しているので、北極での実績はありません。

 また、世界で耐氷船は一万四千隻あるうちの、日本が建造したものはわずか三百三十七隻でありますし、日本が持っているものは今四十八隻ということで御紹介がありました。非常に少ないということであります。

 そうした中で、お隣の中国は、九三年にウクライナから大型の砕氷船、雪竜を購入いたしまして、一昨年に北極海航路を完全横断、大きなニュースになったようですけれども、完全横断をいたしまして、帰り道では、ロシアの沿岸を通る北東航路でもなく、カナダの沿岸を通る北西航路でもなく、北極海の真ん中を通る中央航路という公海上を通って、観測を成功した。

 さらには、アイスランド、グリーンランド、大国ではありませんけれども、一定の発言力を持つこうした北極海の沿岸国に非常にコミットメントを深めておりまして、アイスランドの中国大使館というのは世界最大規模ということだそうですけれども、恐らくアイスランドにある世界各国のものの中で最大ということだと思いますが、非常に戦略的な動きをしています。

 また、中国は今一隻持っているというお話がありましたけれども、雪竜のことですけれども、これは報道ベースですが、さらに十億元、約百六十億円を投じて新しい砕氷船の建造も進めているということであります。

 残念ながら、日本では砕氷船をさらにふやしていこうという計画はないようでありますし、南極で運用している「しらせ」、時間的な制約あるいは性能的な制約もあって北極海での展開が難しいというお話があるようでありまして、この点でも大きく出おくれているのではないかと考えております。後に時間があれば触れさせていただきます。

 それでは、さらに各省に質問を続けさせていただきたいと思いますけれども、経済産業省さんに伺いたいと思います。

 北極圏においては、石油、天然ガス等のエネルギー資源が埋蔵されている、世界のシェアで、ガス、石油がそれぞれ一五%とか三〇%の埋蔵量があると言われております。かなり将来の掘削ということに至らなくとも、既にロシア沿岸ではLNG等の開発が進んでいるわけでありますけれども、資源の乏しい我が国にとってこの北極圏域のエネルギー資源は非常に重要な、魅力的なものだと思いますが、現在、どのような日本にとっての政策的な位置づけ、あるいはコミットメントの取り組みをしているのか、お話を聞きたいと思います。

山際副大臣 お答えいたします。

 今委員御指摘いただきましたように、二〇〇八年の米国の地質調査所の発表によりますと、世界の未発見資源量のうち、北極圏は、石油で全世界の一三%、天然ガスで世界の三〇%を占めるとなってございます。一定のポテンシャルがあると認識してございます。

 こうした北極圏の石油、天然ガスのポテンシャルの大きさに鑑みまして、平成二十四年六月に取りまとめました資源確保戦略におきまして、北極圏を地理的フロンティアとして位置づけ、日本企業の参入を重点的に支援するとしてございます。

 加えまして、平成二十六年七月に総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科会石油・天然ガス小委員会が取りまとめました中間報告書では、北極圏の事業をリスクマネー供給支援等で後押ししていく旨記載してございます。

 これらも踏まえまして、経済産業省の具体的な取り組みとしては、デンマーク王国領のグリーンランド島の北東海域内での探鉱プロジェクトに参画してございます。グリーンランド石油開発株式会社に対しまして、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構、JOGMECを通じまして、累計で七億円の出資、支援を行っております。

 今後とも、北極圏におけるプロジェクトの進展等に注目し、必要な支援を講じてまいりたいと存じます。

津村委員 農林水産省にも伺いたいと思います。

 農水省におかれては、政府の一員として、この北極圏域における水産資源のポテンシャルというものをどのように評価されているのか。外向きに、農水省として北極海についてこういう戦略を持っているという、何か取りまとめたものがあるのか。

 そして、解氷期間の拡大、海水温の上昇、解氷による海水の希釈化、氷の方が塩分が少ないものですから、これが薄まっていくということが、北極圏というのは日本から見てちょっと遠いですけれども、もう少し手前のベーリング海等を亜北極圏域というようですけれども、地球温暖化が進んでいますので、水産資源の分布が、例えば、今まで三陸沖にいた魚が少し北の方に移動するというようなことも起きているようでございます。

 日本の水産業にとって、こうした一種の環境変化、逆手にとれば大きなビジネスチャンスの到来につなげていけるのかということも考え得るわけですけれども、なかなか農水省さんとしての動きが必ずしも一般国民に伝わっていないというふうに思いますけれども、どのようなビジョンをお持ちで取り組んでおられるのか、伺いたいと思います。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 委員が御指摘のように、北極圏の環境変化に関しましては、我が国にとって重要な水産資源、この分布に大きな影響を与えると私どもも認識をしているところでございます。

 我が国といたしましては、北極圏域の一部であるベーリング海におきまして、サケ、スケトウダラなどにおきましての水産資源の調査を毎年実施しているところでございまして、今後とも積極的な情報収集に努めてまいります。

津村委員 環境省さんにも伺いたいというふうに思います。

 環境省では、生物多様性の観点と気候変動の観点、主に二点において一定の調査をされていると思いますけれども、少しその取り組みについて、特に北極圏域に絞って伺いたいと思います。

北村副大臣 お答えいたします。

 地球温暖化や生物多様性の保全などの環境問題は人類共通の課題でありまして、文字どおり地球全体で取り組むことが必要であります。

 環境省としては、北極圏域が地球環境に果たす役割を踏まえまして、北極圏域においてさまざまな施策を実施しているところでございます。

 特に、地球温暖化問題については、IPCC第五次評価報告書によると、二十一世紀中に北極海の海氷は縮小かつ薄くなり続ける可能性が非常に高いとされております。このため、環境省としては、これまで、シベリア域に観測ネットワークを構築し、温室効果ガス濃度を観測するなどの取り組みを進めているところでございます。

 また、北極圏域の生物多様性の保全についても、北極評議会の関係部会に職員を参画させまして、情報収集や今後の協力について関係国と検討を進めているところでございます。

 こうした取り組みを通じて、北極圏域にかかわる国際的な議論に積極的に貢献をしてまいる所存でございます。

津村委員 経産省さん、農水省さん、そして環境省さんに更問いとしてもう一問伺いたいと思いますが、先ほどの質問の中にも含めていたつもりなんですけれども、それぞれ大変多様な取り組みをされている事業官庁でいらっしゃるので、探せば、こういう調査もしていますよということは、るるあるんだと思います。それぞれ大変意味のある取り組みだと思うんです。

 これを、国全体として北極圏に対してどの程度のコミットメントをしていくのか。特に、沿岸国であるアメリカ、ロシア、そして近隣諸国である中国、韓国に一定の動きがある中で、日本が出おくれているんじゃないかという危機感から申し上げますと、それぞれにお役所が、役所の戦略あるいは日本の国の戦略の中でどういう役割を果たそうとしているのかがなかなか見えてこないというのが、きょう問いただしたい非常に重要なポイントであります。

 経産省さん、農水省さん、環境省さんとしては、例えば成長戦略であるとか、何とかビジョンであるとか、そういう対外的な発信の中でこの北極政策というものを何か位置づけていらっしゃるのか、あるいは今のところそういうものはないのか、これは課題として急速に今出てきた問題なので、まだできていないということであればこれから頑張っていただければいいんですけれども、現時点でどういった戦略をお持ちか、伺いたいと思います。

山際副大臣 今委員が御指摘されたように、政府全体としてこういう形で北極圏を戦略的に利活用していくというものがないという御指摘をされたいということでの御質問だと思うんですね。

 どうしても経済産業省は、エネルギーを中心として、資源等々について考える省庁でございます。そういう意味では、先ほど申し上げたようなことはやっておるんですが、確かに、横連携をして政府全体の戦略を立てていかなきゃいけないという御指摘は、そのとおりだと思いますので、それを踏まえてしっかり当たらせていただきたいと思います。

あべ副大臣 北極圏におきまして、特に農林水産省といたしましては、水産資源の活用の取り組みを今後どうしていくかということだと私は理解をしておりますが、北極圏域の中心に位置するいわゆる北極海におきまして、これはFAO、国連食糧農業機関の資料でございますが、タラなどの水産資源の分布がされているというふうに言われているところでございます。

 関係国の利害が今錯綜しているところでございまして、また広く海氷に覆われていることから、現時点ではいわゆる漁場の開発は困難な状況にあるところでございます。

 しかしながら、委員が御指摘のように、北極圏域の環境変化によりまして水産資源の分布の変化が予測されることから、北極圏域の資源の利用に向けた世界的な動向を農林水産省といたしましても注視をしてまいりたいと思っているところでございます。

北村副大臣 御指摘のように、沿岸国との兼ね合いもあり、あるいは北極評議会にもオブザーバー参加というような状況でありまして、環境省としてとりわけ特化した計画あるいは具体的なものを持っているわけではありませんが、環境省としては、北極においても地球温暖化や生物多様性のおのおのの分野で戦略性を持って取り組んでいかなければならない、その重要性は十分認識をいたしておりまして、さらに努力を続けていきたいというふうに思っているところでございます。

津村委員 私の把握する限りでありますけれども、日本政府として北極政策について何か横串で書いたものというのは、海洋本部が書かれている海洋基本計画の中に一定の記述があるということと、それから、先ほど御紹介いたしました国家安全保障戦略の中に、これは安全保障政策としてではありませんけれども、北極海ではさまざまな資源のポテンシャルがあるというようなことが二行ほど書かれている以外は、府省横断的なものが存在していないということだと思っています。

 何しろこの数年間で急速に起きている変化ですので、これからの対応ということだと思いますけれども、ぜひ、ことし、来年、岸田外務大臣初め関係府省の皆さんの御努力で、北極政策について発信をしていただきたいと思いますし、安倍総理にも、場合によっては年明けの所信表明も含めて、一定の言及をしていただくチャンスがそろそろ来ているのかなというふうに思っているところでございます。

 先ほどから、とりたてて経産省さん、農水省さん、環境省さんをお呼びしてそれぞれ伺ったのは、率直に申し上げて、他の府省に比べて少しお取り組みが遅いのではないかなと思うからであります。国交省さんであれば官民協議会がありますし、文科省さんであればGRENEと呼ばれる事業がありますし。

 もちろん、北極というのはちょっと地理的に離れたところでもありますので、全く足並みをそろえるというか、同じ程度の予算を使えばいいというものではないと思うんですけれども、例えば、先ほど水産資源のお話をされましたが、日本が直接とりに行くにはちょっと遠いよということかもしれませんし、確かに氷がたくさんあるよということだと思うんですけれども、しかし、沿岸諸国にとっては非常に重要な水産資源であるわけで、日本は恐らくそういう水産資源のリサーチ力というのは、わかりませんが、沿岸諸国に負けない、世界に誇る技術をお持ちだと思うんですよね。

 そういう技術を供与することによって、かわりにまた北極評議会での日本のプレゼンスが上がるとか、今オブザーバーですけれども、正規のメンバーになれるかもしれないとか、バーターといいますか、環境もそうだと思います。日本の環境技術というのは非常にすぐれていると思うんですけれども、こういったものを沿岸諸国に提供することでまた得られる知見がたくさんあるんだと思いますので、そういう戦略性を持って取り組んでいただきたいということを申し上げているわけであります。

 外務省さんに伺いたいと思います。

 今、日本とロシアの間には科学技術協定が結ばれております。最初、これの運用状況についても多分問いが入っていると思いますけれども、二年に一回それぞれ行き来して会議をしている、そこの御紹介は割愛していただいて結構ですが、今、日ロ科学技術協力委員会で、ロシアが大変積極的に北極政策を進めているにもかかわらず、日本とロシアの間でその議論がなされていないやに私は仄聞しております。

 これは、ぜひ日本の方から、次回のこの委員会におきまして、環境にしても、水産資源にしても、エネルギーにしても、こういうことができるよということをロシア側に協力を申し出て、一方で、ロシアからも、日本は頼りになるんだということをアピールしていただきたいと思うんですが、ぜひ御一考いただけませんか。

岸田国務大臣 御指摘の日ロ科学技術協力委員会ですが、今日まで十一回開催をしています。そして、昨年九月、十一回目の会合を行いましたが、九回目の会合におきましては、北極研究に関する日ロ協力につきまして意見交換を実施しております。そして、その会合の結果に基づいて、本年十月末に東京において、両国の研究機関間で、北極研究ワークショップ、これを開催したところであります。

 御指摘のように、北極海をめぐるさまざまな動きあるいは国際社会の関心を考えますときに、ぜひ、日ロ科学技術協力委員会、今後の委員会におきましては、こうしたテーマもしっかり取り上げられるべきではないかと考えます。

津村委員 時間が押してまいりましたので、簡潔にいきたいと思います。

 砕氷船の話を先ほど申し上げました。砕氷船をどういうふうに活用していくのかということでありますけれども、残念ながら、今、日本には一隻しかなくて、これが南極で使われているということであります。

 文科省さんに伺いたいと思いますけれども、この砕氷船「しらせ」を北極海に展開させる、あるいは新しい砕氷船を建造していく、こうした取り組みが必要だと思いますけれども、どうお考えか伺いたいと思います。

山本大臣政務官 御質問にお答え申し上げます。

 委員御指摘の、南極だけではなく北極圏もということでございますが、例えば、ドイツ、韓国等では、同じ年に同じ船で両極を観測するというような事例もあるようでございますが、日本で、いわゆる南極地域の観測事業として、一年間フルに「しらせ」を活用するということは事実上不可能でございまして、修理、メンテナンスの時間、あるいはクルーの訓練期間等々を入れますと、事業そのものに使えるのはおよそ半年程度でございます。そうなりますと、南極と日本の往復の期間等を考えますと、実際、南極では一カ月程度しか活動ができない。

 そういうことから考えますと、両極を「しらせ」のみでやるというのは、時間的、物理的には相当難しいかなというところでございます。

 そういった運用面で厳しいのであればもう一隻建造してはどうかという御提案でございますが、そのことに関しては、我々文科省としても、北極における観測研究も重要だということは十分承知をしております。

 現在、先ほど委員御指摘の耐氷船の観測船「みらい」が北極圏を中心に観測をしたりしているところではございますが、砕氷船については、建造の必要性があるかどうかというのは、総合海洋政策本部、そこで総合調整をして、きちっと関係府省庁と今後十分相談をして、検討していきたいと思っております。

津村委員 時間がなくなってまいりました。最後の質問を平さんにさせていただきたいというふうに思います。

 この北極政策ということは、この数年間で急速にスポットライトを浴びてきた、先ほどから申し上げているとおりであります。そうした中で、先週末には、第二回の北極サークルという各国の会議がレイキャビクで行われまして、そこには日本からも行かれて、日本の北極担当大使が、日本は科学技術で非常に力を持っているので、そういう分野で積極的に貢献していきたいということをスピーチされております。非常に重要なスピーチだったと思います。

 そうした中で、日本の科学技術政策、これから五年に一度の基本計画を策定する段階になっておりますし、それを議論する審議会のメンバーが年内に、約二十名から三十名だと思いますが、基本計画専門調査会ですか、人選を行っているところだと思います。

 その人選に何かくちばしを入れるつもりはありませんけれども、少なくとも平さん御自身もそのメンバーでいらっしゃるはずですし、いろいろな発信ができると思うわけです。この数年間の大きな科学技術環境の変化を受けて、平さん御自身が、ぜひ、新しい日本の科学技術基本計画、これは横串のものですから、先ほどから日本政府は横串のものをしっかり用意していないということを申し上げているわけですけれども、しっかりと科学技術政策の中に北極政策を位置づけるべく御努力をしていただきたいということと、さらには、国防から、あるいは海洋本部から、いろいろ乱立しているわけですけれども、安倍総理も含めて、それぞれの北極政策の重要性というのはしっかり打ち込んでいただいて、日本政府として発信をしていく、その黒子役を平さんに期待したいと思うんですけれども、決意を述べてください。

土屋委員長 平内閣府副大臣、時間が経過しておりますので、簡潔にお願いいたします。

平副大臣 はい。

 今御指摘いただいたとおり、科学技術・イノベーション会議において、基本計画専門調査会を設置し、今人選を進めているところでございます。

 きょうの質疑を通じて、役所は縦割りになる、ですから、司令塔をしっかりつくって、政治主導でやるということだというふうに思いますので、しっかり、きょうの質疑を踏まえて、北極政策も踏まえて、政治主導を果たしてまいりたいと思います。

津村委員 時間が参りましたので、終わります。

 平さん、頑張ってください。岸田さんも頑張ってください。

土屋委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 この質疑に先立って、ちょっと文科委員会の方に差しかえで質問に行ってきまして、文科委員会の方では、CSC条約の条約締結に伴う国内法の改正の質疑をもうしていて、きょう、決をとるらしいんですけれども、本来は、条約が締結をされるから国内法整備という順序、大臣に言ってもこれはしようがないんですが。

 私も委員の一人として、文科委員会と連携して外務委員会の名誉が保たれなかった、外務省としても、条約もまだ衆議院としてイエスかノーかはっきりしていないのに国内法が先に整備されるというこの順序の違いというのは、私自身も含め、理事として反省ですけれども、この議論の進め方というのはちょっとよくなかったと思いますし、今、国内の中で、特に私は福島県ですから、原子力賠償といったものがどうなっていくかということを注目している中で、形ではありますけれども、こうした形で議論が進んでいくというのは、やっつけなのかな、適当なのかなということを示してしまったという意味では、国会の一員として私も深く反省しながら、質疑に入っていきたいというふうに思います。

 まず最初に、CSCはちょっとおいておいて、ODA大綱、今度新しく開発協力大綱というふうになるわけでありますけれども、これまでもずっと質疑をしてきました。いよいよこの大綱の案ができ上がって、これをもとに、日本のこれからの国際協力といったものをどうしていかなきゃいけないかということを議論を深めて、そしてまさに形であらわしていかなきゃいけないというふうに思っています。

 今回、ODAという言葉から、海外では開発協力という英語にはもともとなっているものではありましたけれども、とりわけODAから開発協力という言葉に変えた意義と狙いといったものについて、お伺いをしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のODA大綱の見直しですが、現在、十月二十九日からパブリックコメントに付させていただいております。

 この新大綱の政府案につきましては、御指摘のように、名称を、政府開発援助大綱、ODA大綱から、開発協力大綱に変えることを考えております。これは、ODA卒業国への協力を含め協力のスコープを広げるということ、さらには、官民連携を初め、政府だけではないオール・ジャパンの協力を目指すということ、さらには、我が国からの一方的な援助ではなく、開発途上国との対等なパートナーシップに基づく協力関係の強化を目指すこと、こういったことを端的に示す、そういった考え方に基づいて、名称の変更も今検討しているという次第でございます。

小熊委員 今大臣が言ったとおりの狙いというのは非常にいいですし、その狙いに合致するということでこの名称を変えていくということは、非常にいいことだというふうに思っています。国民の理解も含めて、新たな切り口でやっていく。

 今大臣がおっしゃっていただいたとおり、さきの委員会でもいろいろ議論しましたけれども、ODAの対象国からの卒業国、あと、先日の委員会では、後発開発途上国の卒業国、でも、卒業しながらも脆弱性が脱却をしていない。国内でいう、今、地方創生とかやっていますけれども、地域の自立といいながら、なかなか地理的な特性でできないのと同じような問題を抱えているのが、国によってもあるわけですね。

 CARICOMに関しては、卒業国でも新たな支援を表明されたところで、これは国際的にも評価をされています。また、過日の委員会でも大臣の方からありましたとおり、太平洋島嶼国に対しても、卒業国になっていくんですけれども、これに対しても新たな支援ということになってくるんですが、これが、今、いわゆる卒業するかしないかというのは、ざっくり言うと、国民の一人当たりの所得みたいな指標が一つあるわけです。

 ただ、私もODAは、選択、集中と拡大とは言っていながら、やはり、国民の理解という意味では、税金を投入するので、ある程度の基準、指標みたいものがないと、卒業国だから、まだ脆弱だから支援をする、ただ、この脆弱というのは何なのか、まだ支援が必要だというのは何なのかというのは、ある程度の具体的な基準、物差しみたいなものを示していく中でその取り組みをしていかないと、国民の理解、また、支援を受ける側でも、お互い卒業したのに、こっちの国は支援を受けて向こうの国は支援を受けていないというのが出てきたときに、ちゃんと説明責任を果たすという意味では、定量的な何かを出すのかどうかというのは、やはり検討されなければいけないというふうに思います。

 ODA対象国を卒業した場合でも、これはまだまだ支援は必要だという視点は非常にいいと思います。その視点を進めるためにも、具体的な指標、物差しみたいなものをある程度は検討すべきだというふうに思います。

 国連の中でも、脆弱性といったものは、いろいろ議論したけれども、結局は具体的な規定ができなかったという経過も私は承知した上で、それでも、なおかつ、多少の物差しといったものをつくるべきだというふうに思いますが、その点についてはどうでしょう。

岸田国務大臣 今回の新大綱におきましては、先ほど申し上げましたような新しい変化に対応するべく、名称も含めて、新しい要素を考えているところです。

 一方で、基本方針としまして、非軍事的協力による平和と繁栄への貢献ですとか、人間の安全保障の推進ですとか、さらには、自助努力支援と日本の経験と知見を踏まえた対話、協働による自立的発展に向けた協力といった、我が国ODA六十年の歩みの中で培った哲学、これはしっかり位置づけていきたいと思っています。

 こうした考えに基づいて、今委員の方から御指摘がありました新しい動きの部分についても、具体的に検討していかなければならないと思います。

 大綱におきましては、今まで、六十年間の歴史の中で大事にすべきことをしっかり位置づけ、そして、時代の変化の中で何が求められているか、こういった考え方を示し、大きな方向性をしっかり示したいと思いますが、その範囲内で具体的にどう対応するのか、これはしっかりと具体的に検討を進めていきたいと考えます。

小熊委員 選択と集中と言っているなら、ある意味対象国をふやすことだと思います。拡大ですね。拡大になっていくわけですから、これはしっかりと説明責任を果たさなければいけないので、そこは、卒業国に対しても支援していくときのいろいろな理論構築はお願いしたいというふうに思います。

 新たな大綱の案をいろいろ見せていただいて、一つには、さきの通常国会でも少しやりましたけれども、軍事利用目的ではないんですけれども、災害派遣とかそういうものに対しては、やはり、各国の軍隊とか自衛隊みたいなものが活躍をしなければいけないものについては、それは、一律、軍隊だからということで支援をしないということではなくて、災害とか、そういうセクションでしか行けないものに関しては、まさに国際協力ということで、これも対象になっていくという指針をしっかり示してあるということは、またこれは評価に値するものだというふうに思います。

 この点についても、いろいろな誤解なきよう、国内外を含め、しっかりと説明責任を果たしていかなければいけませんけれども、ただ、これに関しては、さきのあのフィリピンの台風での自衛隊の実績等もありますので、こうしたものを広く国内外に御紹介しながら進めていっていただきたいというふうに思っています。

 また、今回の大綱で、新たな視点として、新たな視点というか、これまでも取り組んではいましたけれども、先ほど大臣も言われた官民連携みたいなところです。去年のTICADでも、開発援助から投資もしてくださいという視点が、アフリカ側からの提案もありました。これはアフリカだけではなくて、さまざまな開発国は同じことが言えるというふうに思っています。

 そうした意味で、今回の大綱でもそのところは触れていますけれども、まさに官民連携といったものをこれからふやしていくことが、少ないODA予算の中でもより効果が発揮をされる国際支援につながってくるというふうに思いますので、この官民連携といったものに関して、これは進めていくんですが、一方で、開発ということは、環境破壊や乱開発につながるところもあります。日本も、ここまで発展するときに、さまざまな重化学工業が進展したときに、いろいろな公害問題ももたらしました。そこは、逆に、日本のまねをすべきところではないんです。日本の失敗があるからこそ、それを避けるべきだということも、その相手国に言えるというふうに思っています。

 大綱の中にはちょっと言及が少ないんですが、持続可能な開発、環境に配慮した開発といったことは言及しているんですけれども、投資促進となると、これは民間ベースになって、まさにビジネスライクにやる部分もありますから、とりわけ乱開発につながる、その国に国内法が整備されていなければ、まさに公害をもたらしたりするものも出てくるかもしれないことが懸念されますので、官民連携は必要ですけれども、ぜひこうした、多少しか言及していませんけれども、環境に配慮した、日本が失敗した道を新たに新興国にさせないという観点が非常に重要だと思います。その点に対する配慮、対応といったものはどう考えていますか。

岸田国務大臣 委員御指摘のように、環境に配慮した開発あるいは持続可能な開発、こういった面におきまして、日本の今日までの知見を生かし、日本らしい援助、支援を行う、こういった考え方は大変重要であると認識をいたします。

 二〇一〇年にJICAが策定しました環境社会配慮ガイドラインに従いまして、環境、気候変動、あるいは現地社会への影響に懸念がある場合には、相手国に対して適切な対応をとるよう働きかけ、気候変動を含む自然環境への影響、あるいは非自発的な住民移転などの現地社会面への負の影響を回避する、あるいは最小化する、こうしたことのために、相手国による環境社会配慮の実施を適切に支援、確認すること、こういったことを環境社会配慮ガイドラインにおいて示し、この原則をしっかりと確保していく、こういった姿勢はこれからも大事にしていきたいと考えます。

小熊委員 そこで、さきの通常国会でもSPREPの支援を決めていただいて、今取り組んでいただいているわけですけれども、国ごとでじゃなくて、まさに地球規模の課題というのは、国境を越えて、エリアを越えて、広い範囲で抱えている課題というのも多いわけですから、今回の大綱でも、地球規模の課題に対応していくということも言及されています。これは、だから、今までのODAのお金の出し方は国ごとみたいなのが一番多かったわけですけれども、まさにエリア単位でのことについても取り組んでいかなきゃいけないということになってきます。

 そうなると、今、財務省がうるさいんでしょうけれども、さまざまな国際機関に日本が参加していますけれども、今は縮小したり整理をしちゃっている部分もあるんですね。でも、ここは、地球規模の課題に対応していくということであれば、効果のないものはもちろん整理をしていって結構なんですけれども、こうした国際機関に対しての日本の取り組みというものも、もう一度積極姿勢に転じる必要性があるんじゃないんですか。

 今、縮小傾向でしょう。だから、SPREPも、オブザーバーで入ってせっかくいい取り組みをしているのに、日本はオブザーバーでとどまってしまっている、お金もかかるという理由が先に立っていると思うんですけれども。でも、地球規模の課題解決というのは、これはやはり、今ある国際機関にさまざまコンタクトをして、アプローチをしていくということも非常に重要です。

 そういう意味では、もう一回、さまざまな国際機関への取り組みの見直し、それによる地球規模の課題に対するアプローチをしていくという視点については、どう取り組まれていきますか。

岸田国務大臣 御指摘のように、地球規模の課題等に取り組むに当たりまして、国際機関との関係、これは大変重要な関係であると認識をいたします。

 ただ、国際社会におけるさまざまな課題につきましても、これは年々変化をしています。また、その中における我が国の立場というのも変化をしています。こうした国際機関との関係を一律に、あるいは固定化するのではなくして、こうしたさまざまな変化にやはり柔軟に対応していく姿勢も大事なのではないかと思います。

 ですので、課題ごと、あるいは国際機関ごとにそれぞれの重要性や我が国との関係等をしっかりと判断し、限られた財政の中でもありますので、めり張りのきいた対応が求められるのではないかと考えます。

 そういった視点から、絶えず国際機関との関係について検討していく、見直しをしていく、検証していく、こういった態度は重要なのではないかと考えます。

小熊委員 ありがとうございます。

 私も、何でもかんでもということではありませんから。今までは本当にコストカットみたいな感じで、縮小の視点でありましたから、これは新しい大綱のもとに従って積極的にもう一回見直しをしていただく。もちろん、私も、全てやれと言っているわけではありません、しっかり内容のあるものには積極的なアプローチをしていっていただきたいというふうに思います。

 先ほどの地球規模の課題解決、また持続可能なという、この持続可能な開発というのは、国連の方でも、来年の開発目標に採択をすべく今いろいろな議論を重ねていると聞いております。持続可能な開発ということは、まさに先ほど言った環境面に配慮した開発でなければなりませんし、また本当の自立といったものにもならなければいけません。

 また、持続可能ということは、どの国だって一カ国で成立しているわけではありません。お互いに支え合いながらやっているということであれば、面としての地球規模の課題にも取り組むということでもありますから、来年の国連の開発目標の採択前に、この年に、本年に日本がこの大綱を示すわけですから、まさに開発に関して世界のリーダーシップを発揮するという意味でも、ぜひもう少し今回の大綱に色濃く、持続可能な開発だという哲学をもっと堂々と出していっていいと思います。

 私も各国のいろいろな国際協力の事業を見ていますけれども、私は、日本の国際支援にかなう国なんというのはないというふうに胸を張って言えるというふうに思いますので、そういう意味でも、国際社会の中でも、この開発に対してのリーダーシップ、国際支援というリーダーシップを発揮するためにも、今国連で議論をされている持続可能な開発といった点について、もう少しこの大綱で際立たせるべきだというふうに思いますし、重要な視点であるというふうに思いますので、その点についてはどうでしょうか。

岸田国務大臣 まず、来年、ポストミレニアム開発目標の策定につきましては、既に、国連を初め国際社会において議論が始まっております。来年の目標策定に向けて大きな関心が集まっていますし、議論もこれからますます熱が入るものだと思います。その目標策定に向けて、我が国としまして、しっかり貢献をしていかなければいけない、これは当然のことだと思います。

 御指摘の持続可能な開発という視点等につきましても、ODA大綱、今、先ほど申し上げましたように、十月の二十九日からパブリックコメントを開始しまして、十一月二十七日まで約一カ月間、パブリックコメントを続ける予定になっております。その際に、ぜひまたしっかりとした御意見も聞かせていただきながら、最終的な大綱確定に向けて検討を続けていきたいと思います。

 そして、そうしたさまざまな意見を踏まえたしっかりとした大綱を策定し、そしてその内容をもってしても、来年の国際的な目標、このポストミレニアム開発目標策定にしっかりと貢献をしていくよう努力していきたいと考えます。

小熊委員 私の意見は委員会で言っているから、私はパブリックコメントでやらなくても大丈夫ですよね。(岸田国務大臣「はい」と呼ぶ)

 先ほど官民連携も言いましたけれども、これはビジネスの分野もそうなんですが、まさに国民の理解を得るという意味では、さまざまな市民団体、NGO等との連携も必要になってくるというふうに思います。これはまさに、いろいろな多角的な視点での取り組みということもありますけれども、ひいては、NGOの有効活用というのは国民の理解の進展にもつながるというふうに思いますので、より積極的にNGOとの連携を図っていくべきだと思いますけれども、この点についてはどうでしょう。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 顔の見える援助を行う上で不可欠なパートナーとして、日本の国際協力NGOとの連携を強化していく必要がございます。

 外務省としては、三本の柱を基軸にして連携支援を今実施しているところでございます。まず一つ目は、NGOの国際協力活動に対する資金面の支援、二つ目は、NGOの能力向上に資する支援、そして三つ目は、NGOとの対話ということでございます。

 具体的には、NGO関連ODA予算については、NGO側の要望も踏まえ毎年増額しているところでございます。そして、NGOの組織力の強化、人材育成等の事業の実施、NGOとの定期協議会を行っている、ことしは年七回行っているところでございます。

 いずれにしましても、今後もこの日本のNGOの能力強化を含めた活動をさらに支援し、ODAとNGOとの連携を深めていく所存であります。

小熊委員 ぜひこれは進めていっていただいて、それがひいてはいろいろなODAの拡大にもつながってくるというふうに思います。

 いよいよODAに対しての本論に入っていきますけれども、ちょっと確認ですが、一応ODAの目標は、対GNI比で打ち出していますが、〇・七%という目標は変わらないということでよろしいですか。あともう一点は、現在はGNI比に対して何%になっていますか。

岸田国務大臣 GNI比〇・七%という目標、国際的にそうした目標が確認をされ、各国とも努力を続けているというのが現状であります。

 国際社会を見ましても、現実にこの目標を達成している先進国は限られておりますが、我が国としましては、引き続き、こうした目標は念頭に置きながら、我が国の立場から努力はしていかなければならない、このように思っております。

 そして、昨年の我が国のODAの対GNI比は〇・二三%となっておりまして、DAC加盟国二十八カ国のうち十八位にとどまっているというのが現状でございます。

小熊委員 これは〇・二三の前は〇・一七で、ちょっとはね上がったのはミャンマーの債務に対しての支援ですから、流れとしては一時的なはね上がりなんですね。例えば、〇・二三というよりは、流れとしては、やはりこれは〇・二も切るような今の日本の状況ですよ。

 確かに各国と比べても、ほかの国もというんですけれども、世界一いいODAをやっているんですから、数字も世界一にしていかなきゃいけないというふうに私は思いますし、あと、やはりODAの国民的理解を得ていくときには、予算を増額していく場合はそのことが前提であります。

 これから消費税も上げるのかどうか、またさらなる増税、我々は凍結をうたっていますけれども、こうした国民の皆さんがいろいろな負担をしていく中で、年金もなかなか満足にもらえない、アベノミクスで経済はよくなったといっても地方ではまだまだ全然だめだといっている中で、ざっくり言うと海外にお金を出すということなら、そんなのをやる前に国内だろうというのが一般感覚です。でも、いろいろなグローバル化した社会の中、世界の中で、それぞれの国が発展することが日本も発展するという、この論理がまだ全然国民に伝わっていないんですね。

 この大綱を新しく策定するのを機に、やはりODAに対する、国際開発協力に対する意義といったものを、しっかりもう一回やり直さなきゃいけないというふうに思います。

 今、外務省でもいろいろなパンフレットをつくっていますけれども、これは立派なパンフレットです。内容が否定されるものでもありません。でも、この立派なパンフレットでも国民的理解は進んでいないんです。

 まして、外務省からもちょっといただいたんですけれども、普通のこういう雑誌でも、民間でつくっている雑誌でも、国際協力といったテーマを、外務省が協力して、つくってもらっています。こういうソフトな雑誌でも、やはり国民はチャリティーだと思っているんですよ、ODAを。

 何回もこの委員会でも言いましたけれども、東日本大震災が起きたときに超党派で、あのときは民主党政権でありましたけれども、ODAを削減するなという話を言ったら、言った連中たちには大抗議でした。私のところでも、名前を連ねただけで、二百、三百のメールやファクス、抗議の電話、いっぱいありましたよ、おまえ、被災地のくせして何やっているんだと。

 でも、これが今の普通の国民の皆さんの世間相場です、ODAに対するものとして。これをやはり変えていくということが、今後のODAを推進していく意味では非常に重要なことです。国際的に評価されても、国民から評価されなければ、それはだめですから。

 まして、国際支援をしていろいろな経験をした、いろいろな国で協力をしてすばらしいことをしてきた、いろいろな日本の国民が帰ってきたときに、就職もない、いろいろな海外での経験を国内にもフィードバックする機会もないというのは、まさに国際協力に対する国民の理解がないからそういうことにもつながってくるというふうに思います。

 これは教育の機関で、私の妻も協力隊の元隊員で、地元では、出前講座みたいなのをやって、国際理解教育といった授業をちょこちょこやったりもしていますけれども、やはり、地方においても、この都会においても、こういう国際協力の国民理解という取り組みが非常に少ないというふうに思います。

 これから、ODA、選択と集中と拡大をしていく意味では、まさに啓蒙活動、国民の理解。国民は誤解していますから。チャリティーだと思っているんですから。チャリティーではないんだ、まさに日本の戦略である、日本のためにもなっているんだということをもっと、今でもマイナスの状態だと思うんです、ここはとりわけ力を入れてやっていかなきゃいけないと思うんですけれども、新たに広報活動に関しての取り組み、どうでしょう。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 ODAの広報についての御質問をいただきました。

 まず、当然、ODAについては、外交上の効果を高める上、そして、国内については、先ほど委員お話がありましたように、幅広い国民の支持を得る上で、積極的に情報発信していくことが不可欠であります。

 そういった中で、相手国においては、日本からの援助であることを積極的にアピールするために、まず、現地メディアへの積極的な広報のみならず、供与機材、施設へ日章旗ステッカーを貼付する等により目に見える援助となるように、そして、先方政府、国民に、日本の援助がいかに相手国に役立っているか、幅広く周知するよう努めております。

 日本国内では、ODAを活用した中小企業の海外支援に関する全国各地の説明会、また、地方を含め、積極的に発信に努めているところでございます。また、ODA白書、ホームページ、メールマガジン、さらにはテレビ番組も活用したODAに関する情報提供、毎年十月に日比谷公園で実施しているグローバルフェスタを初めとする国際協力関連イベントの開催などを通じ、ODAが果たしている役割を多くの国民にわかりやすく伝えるべく、積極的に取り組んでおります。

 本年は、御承知のように、我が国がODAを開始してから六十年という節目でもございます。ここに、六十というバッジは、それを記念してのバッジということでございますので、これに本当に昔から積極的な小熊委員もぜひしていただいて、それのアピールもしていただきたいと思います。

 一人でも多くの国民に、これまでのODAの成果や世界からの評価を知っていただくとともに、今後のODAのあり方について考えていただくよい機会であると考えております。

 そのために、交通広告、テレビ番組、雑誌等で、従来ない、インパクトのある手法による広報を行い、これまでの手法では必ずしも届かなかった層、特に若い世代の人たちに届くように、情報発信に努めているわけでございます。

 例えば、お笑いタレントや女性タレント、ミュージシャン、ともに共感して感動したという日本初の外務省プレゼンツ情報バラエティー番組「僕らが世界にできること」ということで、十月三日に、ニコニコ生放送、これはインターネットですが、また、TOKYOMXで放送されております。

 また、それが話題になりまして、十七日に、音楽編ということで、やはりニコニコ生放送で五時間にわたっての放送があり、これは「めざましテレビ」でも取り上げられたと伺っております。

 ほかにも、グローバルフェスタは、AKB48さんが参加したこともありまして、やはりいろいろなところで報じられておりますし、また、雑誌「ブルータス」というところで、国際協力特集号を作成しました。小熊委員が、人に焦点を当てるようにという御指導もありましたので、国際協力に従事する人を取り上げた内容になっていると伺っております。

 今後とも、我が国のODAによる貢献が国内外に十分に周知、評価されるよう、さらに積極的に取り組んでいきたいと思っております。

小熊委員 長い答弁、ありがとうございました。

 本来、これは、中根政務官だって地元で、この委員の皆さんもそうですけれども、何で外務委員会なんという票にもつながらない委員会に入っているんだなんて言われたりもするのが現実ですよ。

 今、官僚のトーキングペーパーじゃなくて、政治家としてまだまだやはり足りていないというのをちゃんと感じていると思いますので、これはしっかりやらなきゃいけないですし、まさに今取り組んでいること、やっていますけれども効果は出ていないわけですから、理解が深まっていない。

 あと、まさに、やわらかい、お笑いを使ったりなんだりというところの話が出たので次に移りますけれども、クールジャパン戦略、これは大事なんですね、日本のイメージですから。

 過日の予算委員会で我が党の木下委員が資料を提示したんですが、これは放送にたえられないということで資料を提示することができなかったものが、この委員会においては、委員長初め紳士淑女の皆さんですから、非常に問題のある資料であるが答弁者には配付をしてよろしいという許可をいただきましたので、答弁者側にはこの資料が出ています。これは何なんだ、ひどいじゃないか、こんなものを委員会に持ってくるなという理事の御意見もありましたが、こういうのに国が金を出しているんですよ。これでクールジャパン、日本の文化だと売り出しているんですね。十五億円も出しているんです。

 私もいろいろ多趣味ですから、サブカルチャーとかも好きですが、でも、これがクールジャパンかと言われると、フールジャパンじゃないのというふうに本当に思いたくなりますよ。

 これは経産省の方の予算のクールジャパンでありますけれども、これは委員会でも配れない資料ですよ、全世界に流布したんですよ、公金を使って。こういう文化があるということも、私も全く否定はしません、それは人の嗜好ですから、趣味ですから。だけれども、国が推進するクールジャパンとしてやるべきものは、これも文化として私も否定はしませんが、優先順位はめちゃくちゃ低いんじゃないのかなと思うんです。

 日本のイメージをどう売っていくのというのは、さっきのお笑いを使う、お笑いを使うのもいいんですけれども、逆に、海外の人から見れば、日本のクールって何といえば、日本人が気づかないところに視点を当てたりしているんですよ。私の地元も観光地で、民芸屋さんじゃなくて、ほうきとかを売っている普通の雑貨屋さんですよ、民芸品なんか一個も売っていないようなところが、観光客は喜んで買っていくんですね。

 クールジャパンを売り出すということは、押し出していくということは、受け手の側の気持ちというのはどうなんだろうということを考えれば、こんなものには支援しちゃいけないと思うんですよね。これは自由に商売をやってもらっていればいいんですよ、法律の中で。

 これは委員会でも配れない資料です。でも、これは全世界に流布されているんですよ。一義的にはこれは経産省ですけれども、やはり日本のイメージという意味では、醸成するというのは外務省が担っていかなければいけませんけれども、こうしたものが世界に流布されて、これがクールジャパンの代表みたいに一部思われているということに関しての見解、大臣、どうですか。

岸田国務大臣 まず、クールジャパン、日本の魅力、そして現状についてしっかりと国際社会に示していく、そして理解を得ていく、こうした姿勢は大変重要な取り組みだと思います。

 ただ、その際に、具体的に何を取り上げ、そしてどうそれを表現するかという部分につきましては、表現に関しましては、表現の自由とのバランスを考えながら、社会通念上許容される範囲で表現しなければならないとは思いますが、しかし、結果として、我が国に対する理解が深まる、そして我が国に対するイメージがよくなる、こういったことにつながらなければ、何のための取り組みだかわからなくなります。

 ぜひ、結果として、我が国の現状に対する理解が深まったり、あるいは我が国のイメージがよくなる、こういった結果につながるように、さまざまな取り組みを考えていかなければならないと存じます。

 具体的な一つ一つについて私の立場から申し上げるのは控えますが、基本的に、今申し上げました考え方に基づいて、一つ一つ点検し、そして実行していかなければいけない課題ではないかと考えます。

小熊委員 これは、大臣、多分知らなかったと思うんですね、こんなことをされているのを。これはいろいろな省庁でやっていますよ、縦割りの弊害ですよ。クールジャパンというのは国家戦略ですから、これはちゃんと横串を通しておかなきゃいけないんですよ。まして、海外に対する情報発信というのは外務省が一番やらなきゃいけないところですから。

 多様な日本の文化を紹介するのはいいんですけれども、ちょっと偏りがある。外務省もそうです。いろいろなイベントで、AKBさんもいい、AKBさんを多用していた時期もありました。

 やはり日本のいろいろな文化を紹介するという中で、AKBもあるよ、こういうのもあるよというのはいいんですけれども、ちょっと偏りが見られますから、ほかの取り組んでいる省庁も、外務省がリーダーシップを発揮して、もう一回見直して、ちゃんと幅広い、深い日本の文化を売っていくということをぜひ、縦割りの弊害をなくすように、外務大臣、リーダーシップを発揮して取り組んでください。大事な案件ですから、これは。国会でも否定された資料が全世界に堂々と流布されているということなんですから。ぜひお願いをいたします。

 日本のいろいろな海外との交流、インバウンドもふやしていく、これは地方においても今取り組んでいますけれども、いろいろな課題があります。

 その一つが、多少緩和もされていますけれども、通訳案内士がめちゃくちゃ足りていない。実際は、アンダーグラウンドな通訳案内士も、許可をとっていない人たちもいる中で、外国人観光客はふえましたけれども、ではその対応はどうなっているんだと見ると、正式な通訳案内士じゃない人が報酬を得て案内している場合も。これはしようがないです、この数字で。

 これはしっかり、これから受け入れ体制をどうするかということは関係省庁と連携をとっていかないと、そういう意味でも観光分野での人材育成が必要です。

 また、PRといったことに関しては、さまざまな、世界各国にある在外公館は、まさに日本の観光PRの拠点ともなります。そういうところに、今、日本は少ないんですけれども、高等教育を受けた、専門学校や大学で観光を学んだ人材を在外公館でも採用して、生かしていくということが必要です。

 私もいろいろな視察に行って在外公館の人に会いましたけれども、外務省の人はおおむね真面目で、政治家みたいにへらへらしゃべらないから、逆に営業マンとしてはちょっと心もとないなという部分がありますけれども。済みません、自分ばかりが基準ではないですね。やはり、まさに日本の営業マンとして、在外公館にそういう人材を育成していかなきゃいけない、そういう人材を採っていかなきゃいけないという点も指摘をさせていただきます。

 あと、これは時間がないので最後になりますけれども、いろいろな国々、十数カ国が、グローバルエントリー、簡易的に入国する取り組みをしています。日本もアメリカから言われているんですけれども、日本はちょっと後ろ向きになっています。グローバルエントリーするというのは、入国審査が簡易的になるもの、機械でぴぴっとやれちゃうものですから。でも、これはもちろん厳しい基準の中で許可を出しているので、いろいろな犯罪者の抑止はどうなんだ、それもちゃんとなされるわけです。

 これから海外交流、インバウンドもふやしていく、経済交流もしていくという中で、逆にここがボトルネックになってしまったのでは元も子もないわけですよ。

 このグローバルエントリー、これを一つの例に挙げていますけれども、まさに出入国の、ちゃんとした基準は設けますけれども、この取り組み、簡便な取り組みというのは、ほかの国でもやっていて、日本にもオーダーが来ていますよ。これはどうしますか、日本。

中根大臣政務官 グローバル・エントリー・プログラムは、入国時の手続の迅速化、効率化及びセキュリティー強化を目指して米国が考案した枠組みと承知しております。

 我が国としては、本プログラムのもとで日米両国民の入国審査手続が迅速化することは、両国間の人の交流のさらなる活性化に資する可能性があると考えており、本プログラムを導入することができないか、現在、関係省庁とともに、引き続き日米間で協議を行っていく所存です。

小熊委員 ちょっと時間がかかり過ぎていますから。もうこれは検討しているんですよ、何年間も日本も。なおかつ、アメリカ側が、自分のところはいいから、まず日本人に対してグローバルエントリーさせてあげるから、それに取り組みませんかといっても、これも取り組んでいない。

 まさに、海外交流、国際交流をちゃんとしていく、経済交流していくと言っていながら、現場ではそういうお役所仕事になっちゃっている。これは政治家の英断で簡単にできる、取り組める話ですから、ぜひ取り組んでいただくことが、これからの相互交流、国際発展につながっていきますので。

 政務官、原稿なしでやってください。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 恐らく、いろいろな関係法令を精査することもあります。今そこも含めてしっかり、委員言われるような形で進めていければと思っております。

 見ないでやりました。

小熊委員 今言ったところ、アメリカ側からだけでいい、受け入れ側から先にやりますから、日本の関係法令関係なくやると言っているんですから、ぜひそれはお願いします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、三宅博君。

三宅委員 こんにちは。次世代の党の三宅博でございます。

 きょうは、日朝関係について、大臣にお伺いしたいと思います。

 まず初めに、歴代の総理大臣、外務大臣、拉致大臣の北朝鮮及び拉致問題に関する所信表明並びに発言内容について、お伺いしたいと思います。

 ちょっと御紹介させていただきます。歴代の外務大臣なんですけれども、これは、平成十九年の一月二十六日、麻生外務大臣のときに、「拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はなく、北朝鮮の核開発は断じて容認できません。」こういうふうに発言されています。

 平成二十年の一月十八日、高村正彦外務大臣、「拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、」というふうになっています。

 それから、平成二十一年の中曽根外務大臣は、「拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して」というふうになっていますね。「拉致問題の全面的な調査のやり直しが開始され、生存者の帰国につながるような成果が得られるよう、引き続き真剣に取り組みます。」

 今度は、民主党の岡田外務大臣、平成二十二年の一月二十九日、「北朝鮮については、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、日朝平壌宣言に基づき、不幸な過去を清算して、国交正常化を図る方針です。」

 同じく民主党の前原外務大臣は、平成二十三年の一月に、「すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するために全力を尽くしてまいります。」その前にやはり同じように、「拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算し」となっているんですね。

 それから、同じく民主党の玄葉外務大臣も、平成二十四年の一月に、「不幸な過去を清算して、国交正常化を図るべく努力していきます。」「全ての拉致被害者の一日も早い帰国を実現するため、全力を尽くします。」というふうにおっしゃっています。

 今度は岸田大臣なんですけれども、平成二十五年の二月二十八日、昨年ですね、「北朝鮮による昨年のミサイル発射や先般の核実験は、我が国として到底容認できず、断固としてこれを非難します。」というふうにおっしゃっていますね。それから、「拉致問題の解決なくして国交正常化はあり得ないとの方針のもと、拉致問題の解決に全力を尽くします。」というふうにおっしゃっています。

 これは、自民党の外務大臣も、それから民主党の外務大臣も、ほとんどもう一言一句変わりのないような発言をされているんですね。あれほど政策的な相違がある、あるいはまた、主義主張に大きな違いがあるにもかかわらず、北朝鮮問題については、不幸な過去を清算する、あるいは、拉致、核、ミサイルといった包括的な解決を目指す、そして、国交正常化をする。本当に十年一日のごとくというふうにいいますか、もうほとんどこれが変わっていないんですね。

 ここで、私、ちょっとお聞きしたいんですけれども、不幸な過去、不幸な過去というのがもうずっと書かれているんですね。総理大臣もそうですよ、同じような発言をずっとされているんですね。これも、自民党の総理大臣、それから民主党の総理大臣も、ほとんど変わりがない、内容に差異がないんですね。

 「対話と圧力の方針のもと、引き続き、拉致被害者が全員生存しているとの前提に立って、すべての拉致被害者の生還を強く求めていきます。核・ミサイル問題については、日米の緊密な連携を図りつつ、六者会合を活用して解決を目指します。」これは、第一次の安倍内閣のとき、平成十八年ですね。

 それから、福田総理大臣も、「すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算し」というふうにおっしゃっているんですね。また、福田大臣は、平成二十年の一月にも、同じように、不幸な過去を清算すると。

 あるいはまた、菅直人総理大臣、これは平成二十三年の一月なんですけれども、「我が国は、日朝平壌宣言に基づき、」「不幸な過去を清算し、国交正常化を追求します。拉致問題については、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するため、全力を尽くします。」

 あるいはまた、野田総理大臣、平成二十三年、「北朝鮮との関係では、関係国と連携しつつ、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決を図り、不幸な過去を清算して、国交正常化を追求します。」というように、歴代の総理大臣も外務大臣も、あるいは拉致の担当大臣も、ほとんど同じような内容のことを発言されています。

 政策の一貫性という部分ではいいのか知りませんけれども、どうもこれは、御自身が、皆さんがそれぞれ書かれたとは思えないんですね。恐らくは、外務省が書いた文章をそのまま読まれているんじゃないかな。そこに全く、魂といいますか、強い思いというのが感じられないんですね。

 具体的にお伺いしますけれども、不幸な過去の清算というふうなこと、これは何を指して言っているのか。不幸な過去というのは、恐らくは、日本と北朝鮮、この関係についてだと思うんですけれども、日本と北朝鮮といいますか、朝鮮半島、当時の朝鮮ですね。不幸な過去とは何を指して言っているのか、あるいはまた、どちらの国にとって不幸だったのか、それをちょっとお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕

岸田国務大臣 日朝平壌宣言におきましては、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、そして不幸な過去を清算して、国交正常化を図ることが北東アジア地域の平和と安定にとって重要であるという基本原則に立っています。

 そして、ここで言う不幸な過去ですが、平壌宣言の中に書いてあります、一九四五年八月十五日以前に生じた事由に基づくさまざまな事柄を指しているものだと認識をしております。

    〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕

三宅委員 恐らく、今おっしゃったように、合邦時、朝鮮半島の植民地支配と巷間言われています、そのことを指しておっしゃっていると思うんですけれども、果たして、それでは、朝鮮にとって日本の合邦というのが不幸な過去であったのかどうか。これを、具体的な問題、数字でちょっとお話をしたいと思うんです。

 決して、私は、朝鮮半島にとって一方的に不幸な時期であったとは思えないんですね。それは、一九一〇年の八月から一九四五年、昭和二十年の九月までの三十五年間続いたんですけれども、この間に朝鮮はどのように変化したか、あるいは発展したかということを紹介させていただきます。

 明治四十三年の朝鮮半島の人口については一千三百三十一万人。昭和十七年、戦時中なんですけれども、この間、ほぼ倍増しまして、二千六百三十六万人の人口になっているんですね。

 あるいはまた、朝鮮半島の学校数、明治四十三年は普通学校百三十校のみだったんですけれども、昭和十八年の五月では四千二百七十一校。これはもちろん帝大も含めて、京城大学、今のソウル大学ですね、これも含めてなんですけれども、百三十校から四千二百七十一校。

 それから、朝鮮半島の平均寿命、これは諸説いろいろあるんですけれども、昭和の初期については三十代の前半であった、昭和の十年ぐらいになると三十六歳ぐらいになってきたというんですね。ウィキペディアなんかですと、合邦時は二十数歳だった、二十代であった、それもほぼ倍近くなって四十五歳近くになったというふうにいうんですけれども、言ってみれば、これは、朝鮮については非常に大きく変貌を遂げて発達したのではないかなというふうに思うんですね。

 なおかつ、明治四十三年から昭和二十年までの三十六年間の日本の一般会計の歳出総額は千二百三十五億円。千二百三十五億円ですよ。同じ期間の朝鮮総督府特別会計の歳出総額は百五十五億円。日本の歳出総額は千二百三十五億円。これは、言ったら、一割以上といいますか、朝鮮の近代化に、日本の一般会計の一割以上の巨額のお金を向こうに投じているんですね。

 それ以前の朝鮮半島といいますと、もちろん、近代法も整備されていない、学校も余りない、病院もない、道路とかこういった近代国家の基盤というのが余りなかったんですね。それを日本が巨額の資金を投じて近代国家の礎を築いたというふうに言われるんですね。

 だから、不幸な過去、不幸な過去というふうにおっしゃいますけれども、日帝三十六年の植民地収奪というよりも、日本人の税金を注ぎ込むことによって朝鮮半島の財政をずっと支えてきて、また、近代国家の基盤をつくったというふうに思うんですけれども、これが果たして、さっきの不幸な過去と朝鮮半島にとって言えるんでしょうか。あるいはまた、反対に、日本にとって不幸な過去じゃなかったのかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 歴史についてはさまざまな議論があるのは事実ですが、政府としましては、先ほど申し上げました日朝平壌宣言においては、一九四五年八月十五日以前に生じた事由について不幸な過去と認識をしていますし、また、我が国の歴代内閣におきまして、アジアの方々に対して歴史の中で大きな苦痛や被害を与えたという認識に立っており、この認識につきましては、歴代内閣、そして安倍内閣においても変わらないと考えております。

三宅委員 余りそのように歴史の負の部分のみを捉えて、不幸な過去とか、あるいはアジア諸国に迷惑をかけた、このようにおっしゃるのはいかがなものかなと。

 日本の朝鮮あるいは台湾の合邦時、やはり両国に非常に多大の恩恵を与えた、あるいはまた、アジア諸国にとっても、植民地支配から脱却できたというのはやはり日本の働きによってである。その部分、光の部分もあわせてお話しされる、あるいはそれも捉えて政策を立てられる、これが、本来ですと、公平な日本の立場に立った外交だと思うんですけれども、それがされていないように思えて仕方がないんですね。余りにも贖罪意識に陥っているというんですか、罪の意識、これはいかがなものかなと。そういったものが、日本人の誇りとか名誉とか、こういったものを損なっているのではないのかなというふうに思います。

 今大臣が何度も日朝平壌宣言というふうにおっしゃいましたので、この部分についてお伺いしたいと思いますけれども、それでは、日朝平壌宣言の中身はどうだったのか。

 日朝平壌宣言の中身をちょっとお話しさせていただきますけれども、ここでもやはり、国交正常化を早期に実現させなくてはならない、「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、」というふうになっているんですね。

 二番では、「過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。」というふうになっているんですね。日朝双方がですね。「国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動」、北朝鮮に民間経済活動があるのかどうか余りわからないんですけれども、それを「支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致する」というふうに書かれているんですね。

 もうほとんど、お金をどのように払うか、日本から北朝鮮に資金協力するかというのが、この日朝平壌宣言の主なテーマであったと思うんですね。

 そこで、また包括的な部分に入っていきますけれども、北朝鮮といいますか、これは双方なんですけれども、「国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、」ここで拉致問題が入ってくるんですね、「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。」

 また、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守する」、これは「双方は、」ですよ。日本は、ずっとこの国際的合意を遵守しています。「核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、」というふうに書いているんですね。「この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを二〇〇三年以降も更に延長していく」、これが日朝平壌宣言の内容なんです、文言。

 ここには、拉致問題というのは全く具体的に書かれていないでしょう。「日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が」と、拉致問題なんか一切書かれていないんです。

 あのときに、金正日さんは、一部の妄動主義、英雄主義の人間がああいう行為に走ったんだというふうなことを小泉さんにおっしゃったんですね。日朝平壌宣言の中身は、ほとんど、安全保障上の問題、あるいはいかにお金を払うということが書かれてあって、ここには拉致問題というのが具体的に全く書かれていないんですね。

 双方が国際法を遵守する、あるいは、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守する」「核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。」というんですけれども、それでは、その間、北朝鮮はこの国際的合意を守ってきたのかどうか、ここが問題なんですね。決して彼らはこれを守ってこなかったというふうに思いますよ。

 平成十四年以降、核実験を三回やっているでしょう。ミサイル発射も何回もやっていますよね。二〇〇二年、平成十四年以降、日朝平壌宣言以降の北朝鮮の核実験回数、二〇〇六年の十月、二〇〇九年の五月、二〇一三年の二月、合計三回の核実験をやっているんですね。ミサイル発射数は、二〇〇六年の七月、二〇〇九年の四月、二〇〇九年の七月、二〇一二年の四月、二〇一二年の十二月、二〇一四年の三月、六月、七月と、計十四回やっているんです。

 日朝平壌宣言を北朝鮮は守っているんですか。日本は忠実にこれを履行し、守っていますけれども、北朝鮮は全く守っていないでしょう。いかがですか、このあたり。

岸田国務大臣 まず、我が国の北朝鮮との関係に関する政府の方針、これは、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決を目指すというものです。そして、我が国としては、日朝平壌宣言に基づくかかる方針が、北朝鮮との間の諸懸案を解決し、日朝関係を前進させる上で最も効果的なやり方である、こういった関係に基づいて協議を進めております。

 そして、現実については、今委員の方からさまざまな御指摘をいただきました。こうした現実に対しまして、今申し上げました基本的な考え方に基づいて臨んでいるわけですが、しかし、具体的な対応としましては、核実験あるいはミサイル開発等につきましては、我が国のみならず国際社会と連携しながら、北朝鮮に対しましてしっかりとした圧力を加え続けています。そして、我が国としましても独自の圧力を加えているところです。

 我が国としましては、もともと、対話と圧力の方針に基づいて北朝鮮との問題を解決していかなければならない、こういった方針で臨んできました。

 圧力につきましては、今申し上げました形で圧力を加え続けてきましたが、北朝鮮の厳しい経済状況を考えますときに、このことは一定の効果があったと認識をしております。

 そして、対話と圧力の方針ですので、対話につきましても、ことしの三月に一年四カ月ぶりに対話を再開し、北朝鮮に対しまして具体的な対応を促す、こういった取り組みをしているところです。

 こうした全体の中で、北朝鮮の対応につきましても評価をし、そして我が国の対応をしっかりと検討していかなければならない、このように考えます。

三宅委員 評価をしとかいうふうにおっしゃっていますけれども、私が申し上げたいのは、日朝平壌宣言はもう既に破綻しているんですよ。

 北朝鮮が、過去、日本に対してやってきたことは何か。うそと時間稼ぎだけでしょう。にもかかわらず、いまだに日朝平壌宣言にのっとってというのは、おかしいじゃありませんか、こんなこと。いつまでこういうふうな理不尽な交渉を続けられるのか。それは、日本国民の多くは強い憤りを持っていると思いますよ。

 そもそも、拉致はテロなんですよ。北朝鮮はテロ国家。拉致を日本国内で実行した主犯の朝鮮総連、これはテロ組織でしょう。

 今私が言ったことに対して、大臣、どのように御認識ですか。

岸田国務大臣 朝鮮総連につきましては、過去に国際テロ事件や拉致容疑事案を引き起こした北朝鮮を支援する在日朝鮮人等と密接な関係にあると認識をしております。

 また、北朝鮮は、かつて、韓国に対しまして、ラングーン事件ですとか、また大韓航空機爆破事件など、テロ行為を実行したというふうにも承知をしております。

 こうした組織であり、国家であると認識をしております。

三宅委員 アメリカ自身も、北朝鮮はテロ支援国家だというふうな発言をしておりましたけれども、あれはテロ支援国家じゃない、テロ国家なんですよ、北朝鮮そのものが。その下部機関たる朝鮮総連は、まさにテロ組織。日本国内におけるいろいろなテロ行動、拉致の実行犯、拉致の主体、まさにこれはテロ行為でしょう。

 とすると、その北朝鮮に対して、朝銀信用組合から、朝鮮総連ですよ、テロ組織たる朝鮮総連に多額の資金が流れていったんですね。これによって朝銀信用組合が破綻したんでしょう。その破綻した朝銀を、日本の公的資金一兆四千億円をもって再生させたんです。言ってみれば、これは、テロ組織に対して間接的な資金援助をしたことになるということなんです。これはとんでもないことですよ。こういうことをずっと、歴代、日本はやってきたんですね。

 特に、日朝交渉の席上、過去、北朝鮮は日本に対してどういうふうな発言をしてきましたか。我々は日本に届く武器を持っている、東京を火の海にするぞ、火の海にするぞ、こんなことを言ってきた。まさに、彼らのその行動といいますか、これに沿った行動なんですね。

 ひとり日本は、あの日朝平壌宣言に基づいてといいますか、合意を遵守し、北朝鮮なんか、全くその合意なんか遵守していないでしょう。

 ありとあらゆるテロ行為をやってきた。今大臣もおっしゃったように、ラングーンの爆破事件、あるいは大韓航空機の爆破事件、あるいはまた、大統領を暗殺しようとした文世光事件、ありとあらゆるこういったテロ活動をやってきた。

 また、日本国内においては、数百名の日本人を北朝鮮に連れていった。拉致をやってきたんですね。

 これに対して、日本政府は、基本的に、知らなかったということはあり得ないんですよ。数百名の国民が次から次と北朝鮮に姿を消して連れていかれている、このことを日本の警備、公安の優秀な連中がわからないはずがない。してみると、日本政府もそのことは把握していた、にもかかわらず、これを見て見ないふりをしてきたというのが日本の過去の外交でしょう。

 この問題については、自民党も民主党も全く一致したような行動と言動といいますか、しているんですよ。

 もういいかげん国民に正直におっしゃったらどうですか。拉致被害者を我々は取り返せません、取り返す気もないんですと。でないと、これは背信行為をずっと続けることになりますよ。いかがですか。

岸田国務大臣 我が国の北朝鮮に対する基本的な方針につきましては、先ほど来答弁で申し上げているとおりであります。

 そして、我が安倍内閣におきましても、拉致問題、最重要課題だと認識をして取り組んでおります。拉致被害者の御家族の方々が高齢化されておられる、こういった現状を考えますときに、まさに時間との闘いであるという認識に立って、強い覚悟を持って臨まなければならないと思っています。

 そして、拉致問題につきましては、全ての拉致被害者の安全確保、そして即時帰国、さらには拉致に関する真相究明、そして拉致実行犯の引き渡し、こういった点をしっかりと引き続き求めていかなければならないと認識をしています。

三宅委員 今の御答弁も聞いていましたけれども、本当に国民に対して恥ずかしくないのかな、私はそのように思います。

 以上、質問を終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 沖縄の名護市辺野古の新基地建設にかかわって、私は十月十五日の当委員会で、米海兵隊が、中部訓練場、この上空でF35ステルス戦闘機を運用するために空域拡大を計画していることを取り上げました。その際、米海兵隊が昨年策定した基地運用計画、戦略展望二〇二五、これには、空域拡大のほか、辺野古の新基地建設などによって、海兵隊の航空機それから船舶による人員、物資の輸送能力が高まるということが書かれていることもあわせて指摘をいたしました。

 そこで、まず外務省に伺いますが、これまで日米政府間で、米海兵隊の人員、兵員あるいは物資の輸送の機能の向上に関して、新基地を使ってどんな船舶で人員、物資を陸揚げすることが協議をされてきたんでしょうか。この点、いかがですか。

冨田政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘がございました戦略展望二〇二五という米国海兵隊による文書に基づくお尋ねでございますので、それを踏まえてお答えをさせていただきますと、先生御指摘のこの文書におきましては、普天間飛行場の代替施設建設や岩国飛行場の拡張、グアムにおける施設建設等を通じ、総体として積みおろしのための海港や空港としての能力を拡大するという趣旨が記述されているというふうに承知をしております。

 他方で、この文書につきましては、私ども、内容について米国政府から説明を受けているわけでもございませんし、それから、他国の文書の内容についてお答えする立場にはないと思いますけれども、いずれにいたしましても、ここに書かれた内容について日米間で具体的なやりとりが行われている、こういう状況にはございません。

笠井委員 今、冨田局長から、説明を受けていないという話だったんですが、今局長も引用されたのは、この戦略展望の十一ページのところだと思うんですけれども、ここにはこうあります。

 SPOD、シーポート・オブ・デバーケーション、陸揚げ港及びAPOD、エアポート・オブ・デバーケーション、陸揚げ空港としての能力と収容力を、岩国海兵隊基地の拡張、それからカネオヘベイ海兵隊航空基地の近代化、日本の普天間基地代替施設の建設、それからグアム施設を通じて高めるというふうにあるわけです。

 まさにこのことについて、今言及もあったんですけれども、説明を受けていないと言うんですが、これは辺野古の新基地建設で今大きな焦点になっている問題ですね。これがどういうことになっていくというふうに米側は考えているのか。これは説明を受けていなくたって、日本側から、これはどういう意味ですか、あなた方の海兵隊の文書にこういうことがあるけれども、そういうことで、意味について確認したり確かめるということはしないんですか。

冨田政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘のこの文書につきましては、先ほど私も御答弁申し上げましたけれども、今先生から御指摘のような記述があることは事実でございます。

 他方で、この文書を読みますと、普天間飛行場代替施設に、具体的に積みおろしのための海港を整備するといった記述があるわけではございません。

 また、現実の移設計画に即して申し上げますと、普天間飛行場代替施設におきましては、護岸の整備が予定されているところではございますけれども、これは、故障したヘリコプター等の航空機を輸送する船舶が接岸するためのものというふうに承知をしております。

 恒常的に兵員や物資の積みおろしを機能とするような、いわゆる軍港の建設は予定されていないというふうに承知しているところでございます。

笠井委員 ごまかしちゃいけないですよ、局長。

 具体的にこの辺野古のところに言及があるかどうかと言われたけれども、辺野古で普天間代替施設の建設ということで言及していて、そしてSPODとAPODの能力と収容力を高めるというのは、では一体どういう中身になるのか。新基地をめぐってはどういうことになるのかというのは、当然大きな問題だし、日本政府だって関心を持たなきゃいけないし、それを沖縄の県民や国民にも説明しなきゃいけないんですよ。

 では、伺いますけれども、二〇〇五年の十月の日米安全保障協議委員会、2プラス2の共同発表ではこうあります。「輸送協力には航空輸送及び高速輸送艦(HSV)の能力によるものを含めた海上輸送を拡大し、共に実施する」というふうに書いてあります。

 この輸送協力の中で言う「高速輸送艦(HSV)の能力によるものを含めた海上輸送を拡大」というのはどういう意味ですか。それを「共に実施する」というのはどういう意味ですか。これは共同文書ですから、具体的にどういう意味かというのは説明しなきゃいけないはず、できるはずです。

冨田政府参考人 お答えをいたします。

 二〇〇五年の2プラス2の共同発表におきまして、御指摘のような記述があるところでございます。

 その文書の中に、「二国間の安全保障・防衛協力において向上すべき活動の例」というものが列挙してございます。その中で、補給、整備、輸送といった相互の後方支援活動に関連して、ただいま御指摘のあった記述が行われているところでございます。

 特に、高速輸送艦、ハイスピードベッセル、頭文字をとってHSVと呼んでおりますけれども、この高速輸送艦の有する機能が、我が国の防衛及び周辺事態の対応や国際的な安全保障環境の改善のための取り組みにおける、海上輸送面での日米協力を大きく向上させる可能性があるということを踏まえて、当該文書に記述を行ったものというふうに承知をしております。

笠井委員 防衛省に伺いますが、高速輸送艦、今あったHSVにはどのような輸送機能があるのか、また、そのHSVの能力の活用について、今、外務省からありましたが、では、これまでに日米間ではその活用についてはどんな協議が具体的な問題として行われてきたんでしょうか。

原田大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今、外務省からもお答えがあったとおりでございまして、私どもとしては、HSVにつきまして、今の普天間の代替施設について、そこに軍港的なものをつくるという計画は全くございません。

笠井委員 私が聞いたのは、HSVにどんな輸送機能があるのか、その活用についてどんな協議があるかと聞いたので、今の答えじゃ答えになっていないんです。

原田大臣政務官 失礼しました。再度お答えをさせていただきます。

 HSV、いわゆる高速輸送艦とは、ウオータージェット推進機関を備えるなどして、一般的な輸送艦艇に比して高い速力にて海上輸送を可能とする艦艇と認識をしております。

 例えば、米軍においては、喫水が浅く、アルミニウム製の双胴船である統合高速輸送艦を保有しており、主として、戦域内における高速輸送任務に活用している旨承知をいたしております。

 当該艦艇は、四十三ノット、約八十キロメートルの最大速力、標準速度は三十五ノット、約六十五キロで、千二百ノーチカルマイル、約二千二百キロの航続性能、三百十二名の兵員、これは着席でありますけれども、及び五百四十五トンの装備品等の輸送能力を有している旨承知をいたしております。

笠井委員 数百人から千人、そして五百トン余りの物資が運べるということで、相当高速であり、在沖海兵隊が頻繁に使っている。グアムと沖縄はそれで行くと三十五時間。海兵隊の機動力を格段に高めたと言われているものであります。

 そこで伺いますが、報道によれば、米軍は、沖縄で前方展開している第三一海兵遠征部隊を辺野古から乗艦させることで機動力を高めて、アジア太平洋地域への即応展開能力を拡大することを目的にして、辺野古新基地のHSVの配備を計画しているということがあります。あれこれ言われましたけれども、辺野古の新しい基地をつくったところでHSVが人員、物資を積みおろしする計画について、協議をやっているんじゃないですか。

冨田政府参考人 お答えをいたします。

 先ほども御答弁いたしたところでございますけれども、普天間飛行場の代替施設への移設計画におきましては、飛行場の施設のほか、故障したヘリコプター等の航空機を輸送する船舶が接岸する護岸、それからキャンプ・シュワブに存在いたします浅海域から陸上へのアクセス用の施設が埋め立てに伴い機能を失いますので、その代替施設としての斜路、これらを整備することと承知をしております。

 しかしながら、普天間飛行場の代替施設において、恒常的に兵員や物資の積みおろしを機能とするようないわゆる軍港の建設が予定されているわけではございませんし、そのために米軍と具体的な協議を行っている、こういう事実もないところでございます。

笠井委員 今繰り返し局長が言われて、恒常的なということを言われました。

 では、恒常的なものは考えていないけれども、そして軍港的でもないと言われたけれども、恒常的ではなくて、一時的、臨時的に兵員や物資の積みおろしを機能とするようなこと、つまり、建設を計画している辺野古新基地の護岸にHSVが接岸して積みおろしをするということはあり得るんじゃないですか。それはないと言えますか。

冨田政府参考人 現在、普天間飛行場代替施設への移設計画の中で予定されている施設につきましては、先ほど御答弁申し上げた二つの例に限られるわけでございます。

笠井委員 私が聞いているのは、恒常的にと言うと、繰り返しそれはないと言われたので、一時的、臨時的に積みおろしで使うということはないか、そのことは断言できるかということを伺っているんです。

冨田政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、現在予定しておりますのは、先ほど御答弁申し上げた、故障したヘリコプター等の航空機を輸送する船舶が接岸する護岸と、キャンプ・シュワブに存在する浅海域から陸上へのアクセス用の施設が埋め立てに伴い機能を失うことから、その代替施設としての斜路、これらを整備することにしているところでございます。

笠井委員 ですから、できたものを使うことはないですかと聞いているんです。そういうことはないと言えるかと。それは使わせません、これしかないというふうに言えるんですかということです。

冨田政府参考人 繰り返しで恐縮でございますけれども、今、私どもが移設計画の文脈で考えている施設の態様というのは、今申し上げたとおりでございます。

笠井委員 あくまで現在ということを繰り返し言われて、恒常的なものはということにとどまっているわけですが、米海兵隊は、現在、ホワイトビーチに寄港する佐世保基地配備の揚陸艦で人員や物資などを訓練地に輸送しております。報道によれば、米国務省側は、辺野古の軍港機能を整備して運用の一体化を図ることで時間やコストの削減が可能になって、輸送能力も向上するというふうに説明したということでありますけれども、HSVについても、日米協議でそうした説明を米側から受けたことはないということをはっきり言えますか。

冨田政府参考人 HSVにつきましては、先ほど御答弁申し上げたとおり、二〇〇五年の2プラス2の文書に記述させていただいたところでございます。

 ただ、この記述につきましては、海上輸送面での具体的な協力内容について日米間で引き続き検討していく、こういうことを前提にしたものでございまして、個別具体的な在日施設・区域における具体的な協力、これをあらかじめ念頭に置いたものではございません。

 したがって、この記述が普天間飛行場代替施設における高速輸送の運用を念頭に置いたものというふうな御指摘には当たらないというふうに考えております。

笠井委員 アメリカの国防総省側も、海兵隊の輸送経費が削減対象になるなど、予算面がアジア重視戦略に支障を来していたけれども、日本の協力で計画が前進できると、日本による費用負担の可能性まで示唆したということが言われております。これが事実なら重大だと思います。

 改めて確認ですが、米側がHSVを辺野古新基地に配備する、ないしは陸揚げ港として使用する計画を有しているということに関して、外務省も防衛省も全く把握していないということでよろしいんですね。

冨田政府参考人 重ねてでございますけれども、HSVについて、先生御指摘のような協議が日米間で行われているという事実はございません。

笠井委員 二〇〇九年の十月十五日に駐日米大使館が発した公電があります。これは、その三日前の十月十二日に、当時のキャンベル米国務次官補らが日本の外務、防衛両省幹部との間で普天間基地問題をめぐって会談したやりとりが詳しく述べられております。

 この公電には、当時、防衛省の防衛政策局長だった高見澤現内閣官房副長官補が、米側に対して、米軍の新たな配備や作戦計画の変更を伴う場合は辺野古新基地の機能に反映させるべきだと進言をして、その例としてMV22オスプレイの配備とともに高速輸送艦などを挙げたとあります。

 外務、防衛両省では、少なくとも二〇〇九年時点で、辺野古新基地の機能に高速輸送艦を反映させる、つまり、HSVの陸揚げ港として使用する計画を把握していたことになるんじゃないかと思うんですけれども、なぜ隠すんですか。

冨田政府参考人 お答えをいたします。

 先生御指摘の報道は、いわゆるウィキリークスにおいて公表された情報に基づく御質問だというふうに理解しております。

 私どもといたしましては、従来から、ウィキリークスのように不正に入手され公表された文書についてコメントすることは差し控えているということでございます。

笠井委員 出方がどうであろうと、そういう文書があった。当時、その会談、あるいはその話し合いの中にかかわった当事者の方もそのことは否定していないんです、お名前はあえて申し上げませんが。

 高見澤氏といえば、辺野古新基地へのオスプレイ配備をめぐっても経緯がありました。一九九六年、米側は日本側への配備を通告して、SACOの最終報告の草案に明記していたけれども、当時、この問題の交渉担当者で防衛庁の運用課長だった高見澤氏がその文言を削除するように求めていた、このことが米側文書で明らかになったというものであります。

 にもかかわらず、日本政府は、その後も配備について未定だと説明を繰り返して、そして、二〇一一年十二月提出の評価書で初めてオスプレイについて記述した。私は何度も、これは九〇年代から衆参両院の委員会の中でもただしてきた。ところが、この同じ公電にも、日本政府が少なくとも二〇〇九年の段階で既にオスプレイ配備を把握していたことが明記されているわけですね。

 一事が万事、情報隠しも甚だしいということが問題になってくると思うんです。国会、国民を欺く行為と言わざるを得ないというのが、いろいろな経過の中で明らかになっています。

 最後に、大臣、この高速輸送艦の辺野古新基地への配備ないし使用問題について、私は、幾つかの問題で、日米の合意の問題、あるいは米側文書の問題をもとにただしてまいりましたが、直ちに事実関係を調べて、とにかく、これは一般的にこうだとかという話じゃないんです。二〇〇五年からいったら、もう九年たっているんです。それ以降、具体化が進んでいないのかという問題がある。辺野古の方は、一方は建設強行が始まっているわけですから、そしてそれが本当に、県民にとって、国民にとって、負担増、負担軽減という問題になっている。

 大臣は繰り返し負担軽減ということばかり言われるわけですけれども、こういう問題についても、どうなっているかということについて国会と国民に明らかにする責任があるんじゃないでしょうか。いかがですか、大臣。

岸田国務大臣 まず、辺野古の普天間飛行場代替施設におきまして、軍港としての機能が整備されようとしているかのごとき御指摘につきましては、先ほど来、北米局長を初め政府側から答弁させていただいたとおりであります。

 いずれにしましても、普天間飛行場の固定化はあってはならない。これは、政府のみならず、地元の皆様方にとりましても共通認識であると考えています。

 ぜひ、こうした共通認識に基づいて、辺野古への移設計画、これが普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であるとの認識のもとに、しっかりと努力を続けていきたいと考えております。

 そして、この点につきまして、引き続きまして、地元の皆様方に対しましてしっかりと丁寧に説明する、こういった努力は続けていかなければならないと考えます。

笠井委員 終わりますが、丁寧にしっかり説明すると言うんだったら、こういう問題についても、実際に疑問が出ていて、どうなっているんだと洗うんです。

 何をもって軍港かという問題もあります。米側の文書や証言で、高速輸送艦が新基地を使う計画であることが明らかになったにもかかわらず、オスプレイと同じく認めようとしない政府の姿勢は重大だし、高見澤氏は、現在、秘密保護法を所管する国家安全保障局の次長を務めているわけですが、まして、そういう中で秘密体制強化なんかもってのほかだと思うんですね。

 政府は、辺野古新基地を普天間基地の代替というふうに言いますけれども、オスプレイが離着陸するV字形の滑走路に加えて、強襲揚陸艦が接岸可能な二百七十二メートルの護岸、さらにLCACが上陸できる斜路まで整備するということや、今の問題もあります、HSV。軍港機能と一体化した施設整備と、まさに普天間の基地機能をはるかに超えた、海空輸送能力が集中する海兵隊の一大拠点をつくろうという問題になっているわけですから、こういう巨大基地建設、断じて容認できない。徹底してこの問題も追及してまいります。

 終わります。

土屋委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の鈴木であります。

 私は外務委員会で質問するのは初めてであります。とりわけ、大変お世話になっておる大臣に直接お尋ねするということでありまして、大変ありがたく思っております。

 政治は、言うまでもありませんけれども、まさに内政と同時に外交が非常に大事であります。そういう意味で、今の日本を取り巻く外交状況というのは、問題山積といいますか、本当に大臣も大変御苦労いただいておるのではないのかな、このように拝察をいたしておるわけでありますが、きょうは限られた時間でありますので、日ロ、日中、そして最後に北朝鮮ということで、三カ国にわたって、日本と今どんな状況にあるのか、ひとつお聞かせをいただきたいし、私の考えも述べさせていただきたい、このように思っております。

 まず、日ロ関係でありますけれども、十一月に予定をされておったプーチン大統領の来日が延期をされたというふうに伺っておるわけでありますが、ただ、十月のASEM、そして十一月のAPECでも、安倍総理とプーチン大統領の会談が、会見といいますか、セットされておるというふうに聞いておるわけであります。日ロ関係の改善という意味では、それはある意味で、見えなくても、そういう形でバイで話ができるというのはいいことなんですが、一方で、アメリカ、ヨーロッパには、逆に日ロの接近について警戒感もあるやに伺っておるわけであります。

 そこで、ちょっと具体的に御質問に入りたいと思うんですけれども、現在のウクライナ情勢とロシアへの制裁措置ということであります。

 大臣は、九月二十五日の談話でこのようにおっしゃいました。「ウクライナ情勢をめぐる対露追加措置について」ということの中で、今後、ロシアが、停戦合意に基づいて、ウクライナの主権及び領土一体性を完全に尊重する形で、事態の平和的解決に向けて、建設的に行動することを求めるとロシアに対して要求を示した上で、ロシアがウクライナ危機の平和的解決のために積極的かつ明確な行動を行う場合、今般の決定に基づく措置を修正または解除する用意がある、このようにおっしゃったわけですね。

 そこで、お伺いしたいんですが、我が国の対ロ制裁措置というのは、欧米諸国による制裁措置と歩調を合わせていくのか、それとも、独自の対応といいますか、独自の解除というのもあるのか、そのところをまず大臣にお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国としましては、ロシアに対しまして、停戦合意に基づいて、ウクライナの主権及び領土一体性を完全に尊重する形で、事態の平和的解決に向けて、建設的に行動すること、こうしたことを求め続けています。

 そうしたことから、御指摘の九月二十四日に対ロ追加措置を発表した際に、ロシアがウクライナ危機の平和的解決のために積極的かつ明確な行動を行う場合、今般の決定に基づく措置を修正または解除する用意がある、こうした旨述べた次第です。

 しかしながら、それ以降も、ウクライナ東部の一部地域におきましては戦闘が継続しています。そして、十一月二日には、国際社会による懸念表明あるいは働きかけにもかかわらず、分離派による選挙が一方的に行われました。このことについては遺憾に思っております。

 こうした中ですので、この対ロ措置については、停戦合意の履行状況も踏まえ、今後の状況の推移をしっかりと見定めた上で、基本的にはG7の連携を重視しつつ適切に対応していかなければならない、このように考えています。

鈴木(克)委員 そうすると、今最後におっしゃった、G7その他諸外国の、特に欧米諸国と共同歩調でいわゆる制裁については考えていくというか、解除等もそれと同一歩調をとっていくというふうに、今私はお伺いをいたしたところであります。

 続いて、プーチン大統領の訪日が、現在のところ未定だというふうになっておるわけですが、我が国の対ロ措置がプーチン大統領の訪日について影響を与えているのか、さらに、大臣がロシアを訪問するということがいわゆる大統領が訪日される前提となるのか、その辺のところを大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 我が国は、先ほども申し上げさせていただきましたが、ウクライナ情勢を踏まえ、G7との連携を重視しつつ対ロ措置をとっております。しかし、同時に、日ロの政治対話、これは重要であり、継続していく考えです。

 プーチン大統領訪日については、今現在、日程は全く決まっておりません。種々の要素を総合的に考慮して検討していくこととしておりますが、我が国がこれまでとっている対ロ措置がこの訪日に直接影響しているというふうには考えてはおりません。

 私自身、外務大臣の訪ロについては、プーチン大統領訪日の前提と言うかどうかはともかくとしまして、ロシア側がこれをプーチン大統領訪日の準備プロセスとして重視している、このように我が国としては理解をしております。

鈴木(克)委員 大臣の訪ロがいわゆる準備プロセスだ、こういうふうにおっしゃったわけでありますが、ということは、言葉をかえるならば、やはり一つの前提であるというふうに言えるのではないのかなというふうに思ってお伺いをいたしました。

 続いて、北方領土というのは、本当に我が国にとって長年の悲願でもありますし、国際関係上も非常に大きな関心事だというふうに思っています。

 ことしの八月にロシアは北方領土周辺で軍事演習を行いましたよね。そしてまた、九月にはイワノフ大統領府長官が択捉島を訪問しました。イワノフ長官の訪問というのは、ロシアの閣僚としては、二〇一二年七月のメドベージェフ首相以来、二年ぶりの北方領土訪問だということだと思います。

 ロシアの北方領土における最近の動き及び政府の対応について、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、本年八月、ロシア軍が国後島及び択捉島で軍事演習を実施いたしました。そして、九月にイワノフ・ロシア大統領府長官らが択捉島を訪問いたしました。

 これらは、まず、我が国の北方四島に対する法的立場に鑑み、受け入れられるものではなく、いずれにつきましても、我が国としましては、ロシアに対しまして抗議を行った次第です。

 政府としましては、今後とも北方四島をめぐるロシアの動向に注意していきたいと思っていますが、そもそもこういった事態が生じないようにするためには、根本問題であります北方四島の帰属の問題を解決することが必要であります。

 日ロ双方の立場は依然として大きく隔たってはおりますが、北方四島帰属の問題を解決して平和条約を締結するべく、ぜひ粘り強く取り組んでいきたいと考えております。

鈴木(克)委員 抗議をしました、それから、帰属問題を解決しなきゃならない、そして、平和条約を結んでいく、これが大事だ、まさにそのとおりであります。

 しかし、大変御無礼な言い方ですけれども、本当にそこに一貫した我が国のロシアに対する政策といいますか、強い思いというのか、そういうものがどうも、外務省としてお持ちなのかなという気がしてなりません。

 もちろん、御担当にしてみれば、一生懸命努力しています、それだけ大きな問題ですということかもしれませんけれども、後ほど申し上げます拉致の問題も含めて、やはり外交として、日本の外交は本当に大丈夫かというのが、ある意味、国民の声でもあるというふうに思いますので、ロシアの問題について、四島問題も含めて、本当に毅然たる態度で、ひとつぜひ外務省として、また大臣として臨んでいただきたい、このことを申し上げて、次の質問に入らせていただきたいというふうに思います。

 次は、日中関係であります。

 これも本当に問題山積でありますし、それは難しいんですよということになるのかもしれませんけれども、きょうは論点を絞って。

 現在、伊豆諸島、小笠原諸島沖に中国のサンゴの密漁船が押し寄せている、こういう状況でございます。台風二十号云々ということもあるわけでありますけれども。

 現在の、大群といいますか、大量の密漁船が来ておる状況は、私は海賊行為だというふうに思っています、まあ、どのように御見解されておるかわかりませんけれども。私はそう思うんですが、外務省は、政策の一つに、海賊対策への協力というのをきちっと掲げてみえるわけですよね。

 当然、海賊対策というと、一般的にはソマリア沖とかホルムズ海峡の問題というふうに思うわけですけれども、私は、日本近海で行われている海賊行為ともいうサンゴの密漁に対して、外務省としてどういうふうに今お考えになっておるのか、そのところをまずお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 本年九月中旬から、小笠原諸島周辺海域におきまして、中国のサンゴ密漁船と見られる漁船が多数確認されています。海上保安庁によれば、十一月三日、小笠原周辺海域及び孀婦岩の周辺海域において、中国のサンゴ密漁船と見られる外国漁船二百五隻を確認したと承知をしています。

 また、本件については、先月来、我が国の領海や排他的経済水域における中国のサンゴ密漁船による関係国内法違反による五件の逮捕事案が発生をしております。

 そして、委員の方から、これはもう海賊ではないかという御質問をいただきました。

 国連海洋法条約上の海賊行為というのは、公海あるいはいずれの国の管轄権にも属さない場所にある船舶、航空機等によって行われる行為とされていますので、今回の件については、中国のサンゴ密漁船の違法操業は我が国の領海また排他的経済水域内で行われておりますので、この定義には当てはまらないかとは存じますが、しかし、この現状につきましては、大変深刻な事態だと認識をしております。

 海上保安庁におきましても、大型巡視船あるいは航空機を集中的に投入した特別な体制をとって、水産庁とも連携して、違法操業等を行う外国漁船の取り締まりを強化していると承知をしていますが、外務省としましても、東京及び北京において、累次にわたり、外交ルートを通じた中国側への申し入れは行っています。

 そして、中国側の反応ですが、中国側も、本件の重大さを認識し、漁民に対する指導など具体的な対策に取り組んでいる旨明らかにしています。

 いずれにしましても、外務省としましては、中国側は今申し上げたような反応を示しているわけですが、具体的な行動を中国側に求めていかなければなりません。ぜひ、迅速かつ実効的な対応を中国側に求めていきたいと考えています。

鈴木(克)委員 大臣、率直に、海賊行為というのは、要するに公海上のという御説明をいただいたわけです。しかし、領海であれば、国民的感覚からいけば、もっと海賊である。強盗であると言ってもいいのではないかなと思うぐらい憤りを感じておりますし、危機感を持っております。

 そこで、水産庁や防衛省は後でまた伺いますけれども、最後に、中国の外交部も重大性を認識しておる、こういう御説明もありました。まさにここなんですね、外交というのはここなんですよ。

 したがって、このサンゴ密漁問題を日中当局が連携をして徹底的に解決するということをすれば、将来の日中関係、尖閣とかそういうことまでは言いませんけれども、もろもろの問題にとって私はこれは非常にいい影響になってくるというふうに思うんですよ。

 だから、この際、本当に徹底して日中当局が連携をしてこの問題をおさめていく、静めていく、そういう大臣の強い決意はいかがでしょうか。お示しください。

岸田国務大臣 中国の外交部報道官、これは十一月三日の定例記者会見において、サンゴの採取は中国国内でも違法であり、中国の関係部門が引き続き取り締まりを強化する旨発言したと承知をしております。そして、先ほども申し上げましたように、外交ルートを通じた日本側からの累次の申し入れに対しても、中国側は、本件の重大さを認識し、漁民に対する指導など具体的な対策に取り組んでいる旨明らかにしています。

 このように、日中両国ともに、サンゴの違法採取に反対し、厳格に取り締まる、こういった立場を共有しているわけです。

 我が国領海や排他的経済水域において中国サンゴ船が違法に操業すること、これはまことに遺憾であり、我が国としては絶対認めることはできません。ぜひ、政府としましても、今後とも、引き続きさまざまなレベルで申し入れをし、そして、迅速かつ実効的な対応を中国に求めていく考えです。

 ぜひ、こうした取り組みを通じまして、日中のこの問題に対する取り組みが結果につながるよう、しっかり臨んでいきたいと考えます。

鈴木(克)委員 本当にお願いします。日本の海保と、中国の、どういう部署になるかわかりませんけれども、それが漁船を囲んで、だめなんだ、おまえらのやっていることは間違っているんだというところを、やはり、ぜひ、世界に向けて発信をすることによって、両国間の信頼関係というのも、それからまた、本当に遵法の国であるということも対外的にアピールする、ある意味では、チャンスと言うと大変御無礼がありますけれども、これを本当に機会としてきちっとやってもらいたい、私はこのことを本当に強く申し上げておきます。

 もう時間がありませんので、密漁は、中国では重罪だというふうに聞いておりますが、日本では罰金が四百万というふうに聞いております。これは水産庁にお伺いしたいんですが、私はこれは軽過ぎるのではないかなというふうに思うんですが、その点、どのように考えてみえるのか、お聞かせください。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 小笠原諸島沖での中国漁船のサンゴの密漁に対しましては、水産庁といたしましても、海上保安庁と連携をして、航空機、漁業取り締まり船を現場海域に派遣いたしまして、取り締まりの強化を図っているところでございます。

 御指摘いただきました密漁の抑止の観点から罰金の引き上げが可能かどうかについては、関係省庁と協議したいというふうに考えております。

鈴木(克)委員 まだ質問項目は残っていますが、時間でありますので、これで終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

土屋委員長 次に、原子力損害の補完的な補償に関する条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 政府から趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 原子力損害の補完的な補償に関する条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました原子力損害の補完的な補償に関する条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 この条約は、平成九年九月に国際原子力機関において開催された外交会議において採択されたものです。

 この条約は、原子力損害の賠償額を増加するために締約国間で補完的な資金調達の制度を設けること、原子力事故による原子力損害に関する訴えの管轄権等について定めるものであります。

 我が国がこの条約を締結し、その早期発効に寄与することは、原子力損害についての世界的な責任制度の構築に貢献するとの見地から有意義であると認められます。

 なお、この条約中の原子力施設及び少量の核物質についての適用除外に関する規定並びに原子力施設から搬出され、原子力施設に由来し、または原子力施設に送付される核物質に係る原子力事故により生ずる原子力損害及び原子力施設と同一の敷地にある財産に生ずる原子力損害についての事業者の責任に関する規定につきましては、その内容に鑑み、留保を付することが適当であると認められます。

 よって、ここに、この条約を所要の留保を付して締結することについて御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

土屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十二日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十一分散会


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