衆議院

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第4号 平成27年4月1日(水曜日)

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平成二十七年四月一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 土屋 品子君

   理事 秋葉 賢也君 理事 大野敬太郎君

   理事 島田 佳和君 理事 辻  清人君

   理事 三ッ矢憲生君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      石崎  徹君    小渕 優子君

      大塚 高司君    大西 宏幸君

      河井 克行君    小林 鷹之君

      佐々木 紀君    鈴木 隼人君

      薗浦健太郎君    渡海紀三朗君

      中根 一幸君    藤井比早之君

      星野 剛士君    松島みどり君

      武藤 貴也君    緒方林太郎君

      吉良 州司君    小山 展弘君

      津村 啓介君    長島 昭久君

      青柳陽一郎君    木内 孝胤君

      岡本 三成君    穀田 恵二君

      玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   内閣官房副長官      加藤 勝信君

   外務副大臣        城内  実君

   防衛副大臣

   兼内閣府副大臣      左藤  章君

   法務大臣政務官      大塚  拓君

   外務大臣政務官      薗浦健太郎君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   防衛大臣政務官      原田 憲治君

   防衛大臣政務官      石川 博崇君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  前田  哲君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤山 雄治君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  小澤  仁君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   上月 豊久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 達夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 鈴木 秀生君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 水越 英明君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    冨田 浩司君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    三好 真理君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  枝元 真徹君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 辰己 昌良君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 山本 達夫君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月一日

 辞任         補欠選任

  小林 鷹之君     石崎  徹君

  鈴木 貴子君     小山 展弘君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     藤井比早之君

  小山 展弘君     津村 啓介君

同日

 辞任         補欠選任

  藤井比早之君     大西 宏幸君

  津村 啓介君     鈴木 貴子君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     小林 鷹之君

    ―――――――――――――

三月三十一日

 緑の気候基金への拠出及びこれに伴う措置に関する法律案(内閣提出第一二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 緑の気候基金への拠出及びこれに伴う措置に関する法律案(内閣提出第一二号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

土屋委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長上月豊久君、大臣官房審議官下川眞樹太君、大臣官房審議官佐藤達夫君、大臣官房参事官鈴木秀生君、大臣官房参事官水越英明君、北米局長冨田浩司君、領事局長三好真理君、内閣官房内閣審議官前田哲君、内閣審議官藤山雄治君、内閣参事官小澤仁君、水産庁資源管理部長枝元真徹君、防衛省大臣官房審議官辰己昌良君、地方協力局次長山本達夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

土屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

土屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡海紀三朗君。

渡海委員 おはようございます。

 久しぶりに質問に立たせていただきますが、よく思い返してみると九年前ぐらいかなと思っております。よろしくお願いいたします。

 十五分という短い時間ですから、少し焦点を絞って質問をしたいというふうに思いますが、その前に、一つ、大臣は、国益ということについてどういう印象をお持ちですか。どういうふうに国益ということを常に意識されながら外交をされておりますか。大臣のお考えを聞きたいと思います。

岸田国務大臣 国益ということにつきましては、さまざまな議論が行われ、また深い議論も行われてきたものと承知はしておりますが、その中で、一つ参考になるものとしましては、一昨年の十二月に、我が国におきましては初めて国家安全保障戦略というものを取りまとめました。この中において国益というものを表記しております。

 その中で、「我が国自身の主権・独立を維持し、領域を保全し、我が国国民の生命・身体・財産の安全を確保すること」「豊かな文化と伝統を継承しつつ、自由と民主主義を基調とする我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うすること」、そして、「経済発展を通じて我が国と我が国国民の更なる繁栄を実現し、我が国の平和と安全をより強固なものとすること」「さらに、自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・擁護すること」、このように記載されております。

 このように、国民の命、暮らしを守り、国としての主権、独立、領土を守り、そして経済の発展、豊かな文化を守る、そして我が国にとって重要な国際環境の整備に努める、こうしたことを国益と言っていいのではないかと考えます。

渡海委員 ある意味、総理はもちろんでありますが、外務大臣も、国益の先頭に立って、日本の代表として御活躍をいただくわけでありますから、これからもどうぞ頑張っていただきたいというふうに思います。

 短い時間でありますから、少し焦点を絞りますが、外交にはいろいろな、あえて言いますとツールと言っていいんですかね、ハードパワーとかソフトパワーとか、そういうことをよく言われるわけであります。日本は、余り、軍事的貢献ということは制約があるわけでありますから、どちらかというとソフトパワーと言われているような、今お話がありました文化とか、そして、あと何がありますか、ODAも必ずしも全部ソフトパワーとは言えない半面もあるようでありますけれども、そういった我が国らしいツールを駆使して国益を守っていくということであろうと思います。

 その中で、ちょうど大臣と御一緒させていただいたのは福田内閣でございました。あのとき大臣は科学技術担当大臣、そうでしたね、一緒にやらせていただいたと思いますが、今回、大臣のもとに、科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会ですか、このような懇談会が設置をされているというふうに聞いておるわけでありますけれども、こういった懇談会を設置された目的といいますか、狙いといいますか、そのことについて大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

岸田国務大臣 委員から今触れていただきましたように、まず、委員はかつて文部科学大臣をお務めになられました。同じ内閣で、私が科学技術担当大臣を務めさせていただきました。当時は、iPS細胞が初めて国際的に注目を集めた時期でありまして、日本の科学技術体制について、随分、渡海文部科学大臣と議論させていただいたことを思い返しております。

 我が国の外交にとりまして、科学技術というものも貴重な外交資源であると認識をしております。その中で、有識者懇談会の狙いにつきましては、近年の国際情勢を踏まえて、我が国のすぐれた科学技術をいかに有効に外交に活用すべきであるか、こうした議論を行うことを狙いとしております。

 昨年七月、こうした狙いのもとに有識者懇談会を開催させていただき、ちょうどあす、また開催が予定されていますが、あすでちょうど五回目の会議になりますが、議論を続けているところでございます。

渡海委員 現在の議論の進捗状況といいますか、どのような状況でございますか。いつぐらいをめどに考えておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 あすまた議論が続きますし、有識者の皆様方に御議論をお願いしている立場ですので、いつまでということについては今の段階で私から申し上げることは控えますが、昨年の七月から議論をお願いしています。年も明けまして、そろそろこの議論につきましてもさまざまな論点が出尽くし、議論が積み重ねられてきました。ぜひ近いうちに議論をまとめていただき、そして、できることなら報告書を作成していただき、御提言もいただきたいと期待をしております。

渡海委員 先ごろ、ことしは仙台で国連防災サミットも開催をされました。来年は、たしかG7を日本でやるという予定になっているというふうに思っております。現在、自分のところでやっていただきたいと、我が兵庫県からも神戸市が手を挙げているようでありますけれども、これは国益をかけてやるわけでありますから、開催地にふさわしい地方を選んでいただきたいと思っております。

 このようなさまざまな、我が国がリーダーシップをとれるそういった会合で、やはり、どういうテーマを設定するかというのは開催国として非常に重要だというふうに思っております。

 先ほども申し上げましたように、軍事的貢献といいますか国際協力、自衛隊が出ていったから必ずしも軍事的だと言えない側面もあるのかもしれませんが、かなり制約があるわけでありますから、そういった中で、我が国がこれからも国際的にいろいろな貢献を果たしていく上で、そういった国際会議の場でのテーマ設定というのも大変重要だというふうに考えますし、環境とかそれから資源の問題、そして感染症の問題等々、人類共通のテーマを取り上げて日本が貢献をしていく、リードをしていくということも大変重要なのではないかなと私は考えておるところであります。

 我が国は、国力が確かに、指標だけ見ていますと経済的にも、この前の委員会ですか、データも示されていたというふうに覚えておりますが、あの経済大国と言われた、世界第二位の経済大国、そういう時代から大分数字的には下がっているというふうには思っておりますが、少なくとも科学技術分野におきましては、まだ世界で大変優位な地位を私は確保していると思っておりますし、また同時に、世界からも高い評価をいただいているというふうに認識をいたしております。

 そういう意味でも、この外交政策立案において科学技術を活用していくということは、大変有効な手段であるというふうに考えておるわけでありますが、大臣はどのように考えておられますか。お聞かせをいただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、我が国の科学技術につきましては、国際的にも高いレベルにあり、そして高い評価を得ていると認識をしています。そして、国際社会を見るときに、気候変動などの課題、あるいは宇宙等のフロンティア領域における課題、それ以外にも、北海航路ですとか、あるいはエボラ出血熱ですとか、さまざまな課題を見るときに、国際社会において、科学技術上のより高い専門性が求められている、こうした知見、能力が不可欠である、こうしたことを強く感じております。

 これら外交課題に取り組む上で、我が国の有する専門的な知見を効果的に活用していく、こうした取り組みは大変重要だと認識をしております。

 先ほど御紹介させていただきました科学技術外交に関する有識者懇談会の提言も参考にしながら、ぜひ、外交にそうした知見を生かし、国際会議等においても適切なテーマ設定をし、議論をリードしていくよう努力をしていきたいと考えます。

渡海委員 ぜひそうしていただきたいと思います。

 もう余り時間がないようですから、少し急ぎたいと思います。

 ちょうど二年前の三月に、我が党の科学技術・イノベーション戦略調査会、今、私が再度会長をさせていただいておりますが、科学技術イノベーション政策の司令塔機能強化という提言をさせていただいております。

 もちろん、今、CSTIで、今は総合科学技術・イノベーション会議になったんですかね、昔は大臣が担当大臣をされておりました、第五次の科学技術基本計画の議論もしていただいておるところでありますけれども、第四次の科学技術基本計画の中には、科学技術外交のさらなる進展ということについてもしっかりと記述があったわけであります。

 そのような状況でもあるわけでございますし、司令塔という意味では、実は、世界各国は、総理の科学技術顧問という職を置いておられます。アメリカのホルドレン博士であるとか、イギリスが、最近かわりましたね、政府主席科学顧問、マーク・ウォルポート氏が今務めておられるわけでありますが、調べてみますと、ほかにも、EUが主席科学顧問という席があります。フランスは高等教育研究担当大統領補佐官、これも科学顧問の職だと思います。お隣の韓国でも、科学技術特別補佐官という職がございます。

 日本の場合、CSTIが今のところ司令塔という扱いになっておるわけでありますが、御案内のように、例えば健康・医療戦略本部、CSTIは直接かかわらないというふうな若干複雑な形にもなっておるわけでございます。そういった意味では、やはり科学技術顧問制度というのはもっともっと活用すべきだというふうに思っております。

 政府だけではなくて、ちょっと調べたんですが、例えばアメリカでは国務長官科学技術顧問という方がいらっしゃいます。ウィリアム・コルグライザーとおっしゃるんですかね。それから、イギリスも、外務省主席科学顧問、イギリスは全ての省庁に科学顧問というのを置かれているとも聞いているわけであります。

 私は、科学技術大臣をされた岸田大臣でもあるし、有用性についてはよくおわかりだというふうに思っております。そういう意味でも、ぜひ我が国でもこういった制度を採用されてはどうか。肩書は、どういう肩書にされるかはそちらでお決めいただいたらいいと思うんですけれども、外務大臣科学技術顧問とか、外務省主席顧問とかいった科学技術担当のそういった顧問を設けられることが、これからの外交にとって非常に有意義だというふうに考えておりますが、大臣の積極的なお答えをいただきたいというふうに思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、アメリカには科学技術担当の大統領補佐官があり、また、米国、英国には外交当局に科学技術顧問が置かれております。それぞれ、外交政策の立案、実施に活用されていると承知をしています。

 我が国におきましても、科学技術の顧問から専門性の高い助言を得ること、これは有益だと思います。そして、こうした科学技術に関する顧問を置き、その成果を期待するためには、こうした科学技術担当の顧問を置くと同時に、適切な体制をしっかり構築すること、これも重要なのではないかと考えます。

 こうした考え方につきましては、先ほど来議論に出ております科学技術外交のあり方に関する有識者懇談会におきましても議論が行われ、実際、こうした科学技術担当顧問の設置が検討されていると聞いております。ぜひ、この有識者懇談会の成果もしっかり参考にさせていただきながら、御指摘の点についても検討を進めていきたいと考えます。

渡海委員 時間が参りましたのでこれで終わりたいと思いますが、いわゆる顧問同士が密に連絡をとり合って、お互いの信頼関係を深めていくというふうな外交の手段もあるようでございますから、ぜひ前向きに御検討いただきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは、国際情勢に関して十五分間質問させていただく機会をいただきましたので、大きく二つ、外務大臣初め外務省の皆さんにお聞きをしたいと思うんです。

 一つ目は、この九月にもきちっとした策定をされようとされておりますポスト二〇一五年開発アジェンダのことにつきまして、お聞きをしたいと思うんです。

 今、一月から七月にかけまして国連の政府間交渉で活発に議論されて、九月の国連サミットで、二〇一五年以降どうするのかという国際開発目標の策定が行われるというようにお聞きをしております。ぜひ日本には策定作業のリード役を果たしていただきたいな、そういう期待の上で、何点かお尋ねをしたいと思うんです。

 一つは、現在のミレニアム開発目標、MDGsと言われているものについて、これは二〇〇一年に策定をされて、八つの目標のもとに、二十一のターゲットと六十の指標が設定されて、取り組まれてまいりました。ことしがまさに達成期限でございます。

 まず、外務省として、また政府として、この十数年間で一定の成果は上げることができたと思うんですが、積み残された課題もあると思うんです。そこで、改善された点、また一定の成果というものをどういうように見ておられるのか。二つ目には、積み残された課題、引き続き取り組まないといけない課題というものは、どういう課題として認識されているのか。さらには、達成状況の地域差について。この三つについて、どういう認識をされているのか、お尋ねをしたいと思います。

水越政府参考人 お答えいたします。

 ミレニアム開発目標、MDGsの達成に向けた国際社会の取り組みにより、一部ではかなりの成果がありましたが、進捗のおくれている分野が存在していることは、委員御指摘のとおりでございます。

 具体的には、極度の貧困の半減、開発途上地域全体で見た初等教育における男女格差の解消等の目標は達成されました。

 その一方で、分野別でいえば、母子保健、衛生分野等の進捗はおくれております。

 また、地域の目標につきましては、サハラ以南のアフリカ、南アジア、オセアニア島嶼国等では達成におくれが見られております。

 MDGsの達成期限である二〇一五年を迎えた今、我が国としても、目標の進捗に向けて引き続き取り組んでいく考えでございます。

 ポスト二〇一五年開発アジェンダの策定に当たっても、こういったミレニアム開発目標の残された課題を踏まえて取り組んでいく方針でございます。

佐藤(茂)委員 もう一点は、この十数年間で、当初、ミレニアム開発目標を策定したときには視野に入っていなかったような新たな課題というものも、当然出てきているかと思うんですね。

 例えば、先月、三月の十四日から十八日にかけまして、仙台市で第三回国連防災世界会議が行われました。こういうところで、例えば国際的な防災戦略等というものが議論をされたわけですが、当初、ミレニアム開発目標にはこういう防災分野というのは余り扱われていなかったわけですが、そういう課題等にも当然これから対応していかなければいけないと思うんです。

 政府として、こういう国際社会の変化に応じて生じてきた新しい課題というものを、どういう点がそういう課題であるというふうに認識されているのか、お尋ねをしたいと思います。

水越政府参考人 お答えいたします。

 ポスト二〇一五年開発アジェンダの策定に当たりましては、ミレニアム開発目標、MDGs実施の過程で生じました国内格差の是正、あるいは持続可能な開発の必要性などの新たな課題に対応すべきと考えております。

 また、委員御指摘のとおり、防災はこれまでのMDGsには含まれていませんでしたが、脆弱な個人を直撃し、開発の成果を水泡に帰させかねないものであります。我が国の主張もあり、防災の重要性については、ポスト二〇一五年開発アジェンダの基盤となる文書に現在含まれております。

 我が国としては、引き続き、ポスト二〇一五年開発アジェンダに防災が明確に位置づけられるよう努力していく所存でございます。

佐藤(茂)委員 それで、外務大臣にぜひお尋ねもし、また、ぜひリードをしていただきたいと思うのは、このポスト二〇一五年開発アジェンダの基盤となる考え方というか理念、ここに、やはり日本の強みを生かしながらも、さらに日本の考えをしっかりと発信して、そして新たな枠組みの策定を主導していただきたいと思うんです。

 特に、日本外交の柱の一つとして取り組んできましたし、また、今までODA大綱にも、さらに、二月に名前が変わりまして開発協力大綱となりましたけれども、その基本方針の一つとして、日本としては、人間の安全保障という、その理念に基づいてさまざまに国際社会の中で貢献をしてきたわけです。

 これは、ただ日本にとどまらず、今やはり国際社会の中で、弱者を含めたあらゆる人々が開発の成果を実感して、また多様な脅威に対処できるような、そういう人間一人一人に着目する人間の安全保障の理念というのは、私は極めて普遍的な考え方であって、これからのポスト二〇一五年のこの開発目標の理念としてしっかりと据えられるべきものではないかと思うんですが、外務大臣として、こういう人間の安全保障をポスト二〇一五年開発アジェンダの基本理念として主導していくということについて、どのように考えておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 御質問の人間の安全保障ですが、人間一人一人に焦点を当て、その保護と能力の強化を通じて、人々が持つ豊かな潜在能力を存分に開花させることを目指す理念とされていますが、我が国政府としましては、この人間の安全保障を外交の重要な柱として積極的に推進をしてまいりました。

 今般閣議決定した開発協力大綱においても、人間の安全保障の推進を基本方針の一つとしたところであります。本年九月の採択に向けて議論が進められていますポスト二〇一五年開発アジェンダについても、人間の安全保障が重視する人間中心の開発の重要性については、既に国連加盟国の間でも共通認識が醸成されつつあると感じております。

 引き続き、この人間の安全保障の理念に基づく新しい開発アジェンダの策定に向けて、議論をリードしていきたいと考えます。

佐藤(茂)委員 ぜひ、日本がリードをしなければ、ほかの国というのはなかなか難しいと思うんです。

 というのは、先ほどの第三回国連防災世界会議に合わせて潘基文国連事務総長が日本に来られまして、三月の十六日に我が党の山口代表と会談をされたんですが、私も同席をしておりましたときに、潘基文さんが自然に、この一言が印象に残っていたんですが、日本は人間の安全保障のチャンピオンだ、こういうことをさらっと言われたんですね。

 ですから、加盟各国だけではなくて、今の事務総長のそういう意識の中にも、やはり、日本というのは人間の安全保障の理念をずっとリードしてきた、そういう認識が非常に強くあるんだなということを会談に立ち会わせていただいて実感したわけですから、日本の強みを生かして、ぜひこのポスト二〇一五年開発アジェンダの議論をリードしていただきたいなというふうに思います。

 二つ目の大きな課題としてきょうお尋ねしたいのは、イエメン情勢についてお尋ねをしたいと思います。

 アラビア半島の南端のイエメンの武装組織フーシ派に対しまして、現地時間の二十六日に、サウジアラビアなど十カ国が空爆に踏み切りました。

 この背景というのはいろいろ報道されているんですが、もともとは、このフーシ派というのはイエメン北部を拠点とする武装組織でございましたけれども、昨年九月に首都サヌアに進攻して、ことし二月に政権掌握を一方的に宣言いたしました。一説には、その背後で支えているのはイランではないか、イランが支援しているのではないかという見方もありますけれども、これは定かではありません。

 その後、フーシ派がさらに南部に進攻して、ハーディー暫定大統領の政権が崩壊の瀬戸際に追い込まれたということもあって、ハーディー暫定大統領を支えるスンニ派のサウジアラビアなどが、今回、フーシ派への空爆に踏み切ったと言われているわけであります。

 それに対して、既にアメリカ、イギリス、フランス、トルコなどは、サウジアラビアなどの今回の軍事介入に対して支持を表明している、そういう状況であります。また、アメリカは、後方支援、情報提供などで支援をするということも大統領が承認したという報道もございます。

 先ごろ、二十八、二十九日だったと思うんですが、エジプトで開催されたアラブ連盟の首脳会議では、各国首脳は、サウジアラビアなどによるイエメンへの軍事介入を支持して、加盟国による合同軍の創設でも合意いたしました。ただし、イエメンへの軍事介入をめぐっては、加盟国であるイラクは慎重姿勢を見せているというように、完全には一致しているわけではありません。

 このまま放置しておくと、当初のイエメン国内の権力闘争が、シーア派とスンニ派の宗派対立の色彩を強める懸念も言われております。

 そこで、ぜひきょうは外務大臣にお尋ねしたいのは、日本政府として、今回のサウジアラビアなどがイエメンへの軍事介入に踏み切ったことをどのように評価されて、また、日本政府としてどのように対応されるのか、外務大臣にお尋ねをしたいと思います。

岸田国務大臣 イエメンにおきましては、ホーシー派の武装勢力が首都サヌアを武力にて制圧した後、三月二十五日以後、サヌアから逃れていたハーディー大統領を追って同国南部に進出していました。このような中、サウジアラビア等が、正統にイエメン政府を代表するハーディー大統領の要請を受け、ホーシー派の根拠地を空爆した、このように承知をしております。

 我が国としましては、従来から、サウジアラビア等のGCC各国が、国連とともにイエメンの全ての政治勢力が参加する包括的な政権移行プロセスの再開に向けて努力してきたこと、これを一貫して支持してきています。

 我が国は、今回のサウジアラビア等による軍事行動の背景には、イエメン政府がホーシー派武装勢力の活動を取り締まることができない状況の中で、これ以上の暴力を食いとめなければならない、こういう事情があったと理解をしています。

 我が国としましては、こうした地域各国の努力が実を結び、事態の鎮静化につながることを期待していきたいと考えます。

佐藤(茂)委員 事態の鎮静化を期待するということなんですが、もう一方で、このイエメンというのは、さらになかなか難しい勢力として、イスラム過激派アラビア半島のアルカイダが勢力を伸ばしております。これは、一月にパリで起きたフランスの週刊紙会社の銃撃事件で犯行声明を出している、そういう勢力であります。

 要は、シリア、イラクなんかと同様なんですけれども、国内で内紛が起こっている間にそういう過激派が勢力を伸ばす、そういう状況というものが、このまま放置すると懸念されるのではないか。

 イエメンがそうなると、さまざまに影響が出てくるわけですね。例えば、ここは、私も海賊対策を与党の責任者として取りまとめて何回かこの周辺に行かせていただいたんですけれども、スエズ運河経由で地中海とインド洋を結ぶ海運の要衝の地でございまして、ここがやはり非常に不安定になってくると、世界経済さらには日本経済にも非常に影響を与えるわけでございます。

 もう時間も参りましたので終わりますが、ぜひ、イエメンの安定化に向けて、国際社会と連携しながら、日本に何ができるのかということをもう一歩踏み込んで積極的に検討していただきたいと思うんです。一言で結構ですので、外務大臣、御答弁いただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、イエメンは、アラビア半島のアルカイダ等によるテロの脅威に直面しています。この安定は日本及び国際社会の利益だと考えています。我が国としましても、この事態が鎮静化することを期待するわけですが、しっかりと、我が国としての責任を果たし、貢献をしていかなければならないと思います。

 さきにシリアのテロ事件が発生した際に発表したテロ対策の三本柱を中心に、イエメンの安定化に向けて貢献していきたいと思いますし、また、政権移行プロセス、これが速やかに再開されるように国際社会と連携をしていかなければならないと考えております。人道支援等、日本の強みを生かした支援を行っていく考えであります。

佐藤(茂)委員 丁寧な御答弁ありがとうございました。

 質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、緒方林太郎君。

緒方委員 民主党、緒方林太郎でございます。

 二度目のバッター立ちということで、大臣、よろしくお願いを申し上げます。

 前回に続きまして、村山談話、河野談話からスタートをさせていただきたいというふうに思います。

 この件について、私自身の思いを最初に述べさせていただきますと、もうこの件についてあれこれ議論を巻き起こすべきでないというのが自分自身の考えであります。歴代政権が引き継ぐと言ってきたものについて、前を向いて、未来志向ということを政権も言っておられます。その方向で進んでいくのであれば、この件について余り議論を巻き起こすことが適切ではないのではないかというふうに思います。

 もちろん、今、この件に関して、例えば韓国、中国から、請求権問題等でいろいろな問題の提起がありますが、これははっきりさせたいと思いますが、私は、請求権問題については政府の立場を完全に一〇〇%支持するという立場です。今いろいろなことを、例えば強制連行、いわゆる慰安婦問題、こういったものに対する請求権問題に対する政府の立場というのを支持した上で、しかしながら、このメッセージというところについて、この談話であれこれと議論を巻き起こすことは適当ではないというのが、それが私自身の立場であります。

 それを前提に申し上げれば、これまで引き継ぐと言ってきたものについて、全体としてという言葉がつくようになった。

 一般論として、お役所の表現として何か新しい表現がつくときは、何か意味が変わったというのが通常の考え方であります。原則、基本的な、そして、全体として、こういった表現がつくときには、何らかの特別な意味がある。お役所の文書を読むときというのは、もっと簡単に言い直すことができるにもかかわらずそうなっていないというときには、そこに必ず何らかの意味があるというのがお役所の文章であり、物言いだというふうに思います。

 そういった、全体としてという表現がつくから、だから、では、それは何なんですかということを聞かざるを得ないというのが私自身の問題意識であります。

 それを踏まえて、先日、全体としてと言うからには、村山談話、河野談話の骨子、そういったものが、骨子ぐらいは受け入れているだろうというふうにそこから推定が働くわけでありまして、前回、骨子についてお出しいただけますかということを御質問しましたところ、検討をし、そして、政府全体として閣議決定した答えについてさらにお答えするわけでありますので、しっかりと確認した上でお答えいたしますという答弁が大臣からありました。

 大臣にお伺いいたします。骨子はいつ出していただけますでしょうか。

岸田国務大臣 村山談話、河野談話の骨子について御質問いただきました。

 そして、これは前回もやりとりをさせていただきましたが、まず政府としましては、質問主意書で御質問をいただき、一応閣議決定したお答えは出させていただいてはおりますが、その上で、前回やりとりをさせていただきましたので、私自身としてこの骨子について改めて考えてみました。

 そして、実際、自分自身検討してみて思ったことですが、村山談話、河野談話、それぞれA4判で一枚の紙におさまる分量の談話であります。そもそも、さまざまな要素を総合的に勘案し、練りに練った上でこの文言をまとめたものでありますから、まず全体としてこれをしっかりと理解されるべきであると思っています。その一部分を抜くというのはかなり難しい作業なのかなということは感じました。

 その上で申し上げますが、やはり河野談話については、慰安婦問題について、まず日本政府の行った調査結果について述べています。そして、その調査を行った上で、政府としての認識、これをこの中で述べています。そして、その上で今後の対応について、その内容について触れています。こうした談話であると思っています。

 そして、村山談話につきましては、戦後五十周年の終戦記念の日に当たり、まず日本の戦後の歩みについて述べています。そして、その上で日本政府としての認識を述べています。そして、今後の対応について内容を述べています。こうした談話であると考えています。

 それ以上につきましては、A4一枚紙でありますので、ぜひこれは全体として受けとめなければならない談話であると考えております。

緒方委員 経緯論と章立てについてお答えをいただいたというふうに思いますが、先ほど、認識について述べたものである、そして、内容について述べたものであるということでしたが、そこをいわばサマリー的に説明いただけないですか。全体としてと言っている以上は、そのまさに中核的な、骨子というのは、広辞苑で書いているところでは、全体を構成する上で重要な部分というのが骨子ということの意味であります。その今認識とか内容とか言われた部分に踏み込んで、骨子をお答えいただくことはできないでしょうか、大臣。

岸田国務大臣 確かに、骨子というものはどういうものなのかということについては議論があるところかとは思いますが、やはり、河野談話、村山談話、当時のさまざまな要素を総合的に勘案した上で、文章自体、練りに練った上で、この文書ができ上がっていると受けとめています。そして、その上で今現在の文言にまとめられたと思っています。その分量自体もA4で一枚紙におさまる内容でありますので、その中でさらに一部分を取り出すということは、逆に誤解を招くことになりかねません。

 こうした文書でありますので、やはり全体としてこの文書を受けとめる、理解するべきものではないかと私は考えます。

緒方委員 分量が一枚ぐらいだから、これ以上、サマリーをつくっていくこと、骨子を抜き出すことは難しいということでありました。

 しかしながら、前回も質問しましたが、七月一日の安保法制に関する集団的自衛権等々を含む閣議決定、あれも、確かに分量は少し多いですけれども、練りに練ったものであります。それについて骨子を述べてくださいと言えば、それは別の委員会でありますけれども、中谷国務大臣がかなり詳細に述べられ、しかも、よく要約できているなというふうに思いました。

 練りに練った文章を、そういうことが可能なのであれば、一枚の文章であっても、大学受験でよくありますよ、一枚ぐらいの文章が書いてあって、これを四百字以内に要約しなさいみたいな。できないことはないと思いますけれども、大臣、いかがですか。

岸田国務大臣 村山談話、河野談話と、そして昨年七月一日の閣議決定の文書ですが、もちろん、扱っているテーマ、中身も違います。そして、その作成の過程も違います。

 やはり、村山談話、河野談話につきましては、先ほど申し上げました、さまざまな要素を検討した上で、当時の政府関係者が練りに練ってつくった文書だと思います。その中で一部を取り出すのはなかなか難しいのではないか、慎重でなければならないのではないかと私は考えます。

緒方委員 しかし、同じ閣議決定文書であります。昨年の七月一日の閣議決定についても、河野談話は閣議決定がございませんでしたが、村山談話、それぞれ閣議決定をされています。閣議決定をされた文書について骨子をつくってくださいと言って、片方については大丈夫で、片方については非常に引けたところがある。大臣、ダブルスタンダードだと思いませんか。

岸田国務大臣 安保法制の方につきましては、三月五日の予算委員会の場で、まさに委員の方から中谷国務大臣に対しまして、昨年七月一日の閣議決定の概要について説明するような求めがあり、その上で中谷大臣から答弁がなされたものと承知をしております。そして、その閣議決定、たしかA4の紙で八枚ほどだったと思います。そして、内容についても、安保法制ということについて議論したペーパーであります。それを簡潔に答弁されたということでありました。

 一方、村山談話、河野談話、これは、先ほど申し上げました、文章を練りに練った上で一枚紙に凝縮した文書であります。

 扱っている中身、テーマが異なりますので、これは、扱い方、要約等の仕方、おかしなことをしては全体としての理解を損ねることになります。何よりも大切なのは、全体をしっかりと理解することではないかと存じます。要約をするということにつきましても、その点を念頭に、丁寧に扱わなければならないのではないかと考えます。

緒方委員 それでは、私にはかなりダブルスタンダードだなというふうに見えますけれども、大臣、お苦しいようですので、この件はまた後日につなげたいと思います。

 加藤副長官、来ておられますけれども、総理が、全体として受け入れるという表現をこれまでもずっとしておられます。先ほども申し上げましたが、必ず新しい表現が入るときというのは何かそこに特別な意味があるというふうに見るのが、通常の行政文書であったり、お役所からのメッセージはそういうふうに読むものだと、これは私が役所の外務省国際法局条約課にいるときに上司から教わった考え方であります。

 それを踏まえて、全体として受け入れるというのと、受け入れる、この違いは何ですか。

加藤内閣官房副長官 今委員が御質問の中で言われたように、安倍総理におかれては、安倍政権としては、戦後五十年の村山談話、そして戦後六十年の小泉談話を含め、歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでおり、今後も引き継いでいく考えでございますというのを、それぞれ委員会等で発言をさせていただいているわけであります。これをどう解釈するかということでありますけれども、あくまでもこの文言どおりでございまして、全体として引き継ぐ、引き継いでいくということになるわけであります。

 河野談話及び村山談話については、先ほどから外務大臣からもお話がありましたが、当時の内閣がさまざまな要素を総合的に勘案し、練りに練ったという形で今の文言になっているわけでありまして、全体として理解されるべきものである、そういう立場に立って全体として引き継いでいく、こういうことを申し上げているところであります。

緒方委員 苦しいんだなということはよくわかりました。

 それで、全体としてというのがなぜ入ったのかということについて御答弁いただけなかったわけでありますが、先般の私の質問に対して岸田外務大臣の方から、どの部分を引き継いで、どの部分を引き継がないか、そんなことはあり得ないという表現がありました。これは、共産党の穀田議員から質問した際にも同じような答弁があったと記憶をいたしております。

 どの部分を引き継いで、どの部分を引き継がないか、そういうことはあり得ないということであれば、全部受け入れているというのと何が違うんでしょうか、官房副長官。

加藤内閣官房副長官 ちょっと今の質疑そのものを私は詳細に承知していないので、答えることは非常に難しいんですが、これまでも答弁であるように、いろいろこれはどうかという御質問に対して、そのことについて否定しているものではないということを答弁してきたわけでありまして、そういう流れの中で、全体として引き継いでいる、こういうことでございます。

緒方委員 どれかを否定しているわけではないという、今、答弁がありました。どれかを否定しているわけじゃない、パーツが例えば百個ぐらいあって、一はどうですか、二はどうですか、いや、どれも否定していません、どのパーツも否定していませんということであれば、全部引き受けているというのと何が違うんですか。もう一度、副長官。

加藤内閣官房副長官 今、どれかと申し上げたのは、一つ一つ指摘をされたその文言について、それを否定しているわけではないという意味で申し上げたということであります。

緒方委員 では、答弁をされた外務大臣に伺います。

 どの部分を引き継いで、どの部分を引き継がないか、そんなことはあり得ないということであれば、それは、例えばパーツが百個あったとして、部分に全部分解してみたとして、ここはどうですか、いや、これを引き継がないということはないです、では、ここはどうですか、これもないですということになっていけば、合成していけば、全体としてまさに全部、そこのパーツ全部否定しているところがないという理解でよろしいですか。

岸田国務大臣 その点につきましては、たびたびいろいろな委員会で御質問をいただいておりますが、御指摘のように、全体として歴代内閣の歴史認識を引き継いでいるわけですから、この部分は引き継いでいます、この部分は引き継いでいません、そんなことは決してございません、そういった趣旨のことを申し上げております。

 それで、最後の、全部を引き継いでいるとの違いということについては、いずれにせよ、私の申し上げているのは今申し上げた趣旨であり、そのようにぜひ受けとめていただきたいと存じます。

緒方委員 この件、まだ続けていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 テーマを移したいと思います。

 東京裁判についてお伺いをいたします。

 先般、東京裁判については、サンフランシスコ平和条約第十一条において、日本は東京裁判を受諾している、そういう表現がありました。この件についても、私は、日本の歴史を担ってきた先人に対する敬意を払った上で、まさにこれは国際条約ですので、これをオーバーライドするようなこと、そして、それで新たな議論を巻き起こすようなことはすべきでないというのが、これが私の大きな前提であります。

 その前提のもとにお話をさせていただければ、裁判の射程については、例えば、いわゆるセンテンスと言われている死刑とか無期懲役とか、そういった部分だけではなくて、千ページを超える、大きな東京裁判全体というものを全て裁判のスコープに含むという答弁がございました。それについて、さらには、どんな形でも異議を述べる立場にない、どの部分についても、国と国との関係において、当該裁判について異議を述べる立場にないということで御答弁いただきました。

 形態、内容、いずれにおいても異議を唱えないということで、もう一度確認させてください、大臣。

岸田国務大臣 確認ですので、改めて申し上げますが、極東国際軍事裁判所の裁判の内容となる文章、三部から構成され、その中に、裁判所の設立及び審理並びに根拠法、そして侵略及び太平洋戦争等に係る事実認識、そして起訴状の訴因についての認定、判定及び刑の宣告、この全てが含まれております。

 我が国はこのような裁判を受諾しており、先般答弁させていただきましたとおり、これらのどの部分についても、国と国との関係において、異議を述べる立場にはないと認識をしております。

緒方委員 ありがとうございました。それでいいんだろうというふうに思います。

 それでは、城内外務副大臣、お伺いをいたしたいと思います。城内外務副大臣もこの見解でよろしゅうございますか。

城内副大臣 お答えします。

 同じであります。

緒方委員 城内外務副大臣のブログ等々を読んでおりますと、東京裁判史観からの脱却とか、東京裁判という茶番劇とかいう表現がたくさん出てくるんですけれども、もう一度確認をいたします。よろしいですね。

城内副大臣 同じ立場であります。

緒方委員 今、自由民主党政調会長をやっておられます稲田朋美さん、先般質問した際に、今言ったようなラインで、第二次安倍内閣でもこの立場は貫かれていましたかという質問に対して、岸田大臣の方から、もちろんそうでありますという答弁がありました。しかし、閣僚を離れて、政調会長になるや否や、全然違うことを言っておられるということがあります。

 城内副大臣にお伺いいたしたいと思います。今のポストを離れられても、その立場を貫くお気持ちがございますか。

城内副大臣 副大臣として、岸田大臣と同じ立場であります。一応内閣の一員で、閣内不一致ということがあってはならないと思います。

 ただ、政調会長として、稲田さんがどういう立場であるかについては、それについてはコメントする立場にはございません。

緒方委員 もう一度聞きます。

 城内副大臣、退任後もこの立場を貫いていくというお気持ちがございますか。

城内副大臣 この場で、どういう立場かということを申し上げることは余り適当じゃないというふうに思っております。

 ただ、いずれにしましても、副大臣として、大臣と同じ立場であることは、これは全く変わりません。

緒方委員 よくわかりました。ありがとうございました。

 それでは、済みません、時間が短くなってまいりましたが、左藤副大臣、来ておられますので、最後、安保法制について、一部お伺いをいたしたいと思います。

 私、昨年の七月一日の閣議決定、全部だめだとか、含まれていることに対して物すごく否定的な立場というわけではございません。その中でやるべきものはやるということで、なかなかいいところに目をつけているなというところもあるというのが私自身の立場である。

 ただ、説明をしっかりするべきだというのが私の意見でありまして、先般も聞きましたけれども、きょうもお伺いするのは、中身に入っているのではなくて、その説明の仕方、国民に対してわかりやすいかどうかということに主眼を置いた上で質問をしているということを御理解いただきたいというふうに思います。

 それで、資料を一部お配りさせていただきました。前回も出しましたが、一九八一年、衆議院議員稲葉誠一君提出「憲法、国際法と集団的自衛権」に関する質問に対する答弁書ということであります。

 上からだあっと書いてありまして、これまでの見解からいうと、途中から読みますが、「当然であるが、憲法第九条の下において許容されている自衛権の行使は、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解しており、」のところで、恐らくこれまでの政府見解は、ここまでが政府が言われている基本的論理であって、そこから下の「集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。」さらにその後段でありますが、ここは基本的論理でないというふうに政府の見解は成立をしているというふうに理解いたしましたが、左藤副大臣、これでよろしいですか。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 今、基本的なものはどうかということに相なるんだろうと思います。

 これまでも繰り返し申し上げているとおりでございまして、憲法第九条の解釈に関する従来からの一貫して表明してきた政府の基本的論理は、九条は、その文言からすると、国際関係における武力行使を一切禁じているように見えますが、前文で確認している国民の平和的生存権や、第十三条が生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えますと、九条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置をすることを禁じているとは解されません。

 一方、この自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであり、そのための必要最小限の武力行使は容認されるというものでございます。

 ここで言う基本的な、ちょっと、基本的なというふうにおっしゃいますから答えさせてください。憲法九条の政府見解の基本あるいは基礎となる趣旨、すなわち、昭和四十七年の政府見解などで示された、憲法九条のもとにおいて例外的に許容される武力の行使についての考え方であることを端的に表現したものでございます。

 このような趣旨で基本的なという表現を用いていますが、いずれにしても、政府は、昭和四十七年の政府見解などで示された憲法九条の解釈に関する従来の政府見解の論理あるいは考え方は維持しています。

緒方委員 多分、その答弁書は、私の次の質問に対する答弁書ではないかというふうに思います。

 私が聞きたいのは、ここにある、資料でお配りしました、資料で、ここまでが基本的論理で、ここからは基本的論理でないというところを区分けをつくったわけでありますけれども、この区分けで政府の見解は正しいですねということを聞いています。

左藤副大臣 そのとおりでございます。

緒方委員 そこで、次の質問なのでありますが、先ほど、全体としてという表現についても同じことを言いましたが、既存の政府見解の基本的な論理という表現を使って今言われます。

 これも私は、外務省条約課にいたときの経験から、大体、基本的なという表現が入ると、例外は何だというふうに考えるのが通常でありまして、ここで左藤副大臣にもう一度お伺いをいたしたいというのは、既存の政府見解の基本的な論理というのと、既存の政府見解の論理そのもの、これには違いがありますか、副大臣。

左藤副大臣 基本的な論理は基本的な論理で存在をしていると思っています。

緒方委員 それは存在していることはよくわかっているんですが、基本的なを落とした上で、既存の政府見解の論理そのものと、既存の政府見解の基本的な論理の間に差がありますかというふうに聞いているんです。もう一度。(左藤副大臣「ありません。ないと思います」と呼ぶ)

土屋委員長 左藤内閣府副大臣、御指名してからお願いします。

左藤副大臣 済みません。

 ないと思います。

緒方委員 ないんですね。

 では、政府参考人、よろしくお願いします。

前田政府参考人 ちょっと私の方から補足的に御説明をさせていただきます。

 先ほど副大臣が御答弁申し上げたところと少しかぶりますけれども、ここで申しております基本的な論理というのは、憲法九条は、その文言から見ますと、国際関係における武力行使を一切禁じているように見えるわけでございます。一方で、政府は、前文で確認している平和的生存権あるいは十三条の幸福追求権等が国政の上で最大の尊重を必要とするというところの趣旨を踏まえてこれを考えますと、憲法九条が、我が国が自国の平和と安全を維持して存立を全うするために必要な自衛の措置、これをとることを禁じているとは解されない、こういう考え方をとっているわけであります。

 このことは憲法九条の政府解釈の基本あるいは基礎となるという趣旨で、四十七年の政府見解などで示された、九条のもとにおいて例外的に許容されるという武力の行使についての考え方のことを基本的な論理、このように呼んでいるということでございます。

緒方委員 それでは、一九八一年の見解の中で、「集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであつて、憲法上許されないと考えている。」というのは、論理そのものですらない、既存の政府見解の論理そのものですらない、そういう見解ですか、副大臣。

左藤副大臣 それは当てはめの話だと思います。

緒方委員 当てはめなんですけれども、当てはめた、いわば結論ですよ、結論です。論理がこうあって、その最後のところに論を結ぶものとして結論があるわけですけれども、そういう論を結ぶ結論というのは、そもそも論理そのものを、これは論理学の世界ですけれども、論理を構成しないというふうに思いますか。

左藤副大臣 当てはめの問題かもしれませんが、集団的自衛権の行使が憲法上許容されるか否かという点は、あくまで昭和四十七年政府見解で示された基本的な論理の当てはめの帰結であり、基本的な論理そのものの一部ではありません。

緒方委員 お答えになっていないんですけれども、ただ、もう質問を終わりますので。

 そもそも、何か一つの文章があって、それの一部が文章の論理を構成しないということは、多分ないんだと思うんですよね。基本的な論理ということによって、基本的なという言葉を入れることによって、今お配りした資料のような切り分けを可能にしているのではないかというふうに推察するから、こんな変な質問をせざるを得ないわけです。

 最後に、もう質問を終わりますので、副大臣にお伺いしたいと思います。

 こういうふうに切り分けることが、前回もこれは外務大臣に聞きましたけれども、本当にこういうふうに、これが基本的論理で、ここから先は、今の理屈で言うと、基本的論理どころか、以下半分のところはそもそもこの見解の論理そのものを構成しないと言わんばかりのその姿勢ですね。それが国民に理解されるというふうに、副大臣、思われますか。

左藤副大臣 当然、これは国民の御理解を得ることが重要だと思っております。そういうことは間違いありません。

 しかし、第九条に関する政府見解については、難解な部分があるのは事実でございます。国民の命と幸せな暮らしを守るために何が必要なのかについて、国民の皆様により一層の理解を得られるよう、丁寧に説明をしてまいりたいと思っております。

緒方委員 終わります。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 おはようございます。長島昭久です。

 先週に引き続いて質疑の機会を与えていただきまして、理事の皆さん、ありがとうございます。

 先週ちょっと積み残した課題について、幾つかお伺いをしたいというふうに思います。

 一つは、在外邦人の安全確保、在外公館の警備についてであります。

 ISによる邦人殺害事案、それからチュニジアにおける先月のテロ事案、これはもう絶対に許すことのできない暴挙であります。犠牲になられた皆さんには、お悔やみを申し上げたいというふうに思いますし、御冥福をお祈りしたいというふうに思います。

 そこで伺いたいんですけれども、このシリアとチュニジアの事案を受けて、今百二十六万人とも言われています海外にいる邦人、日本人、あるいは日本企業、中東には一万人以上の日本人の方がおられるということでありますが、この二つの事案を受けて、政府として、邦人の安全確保、そして在外公館の安全確保、警備、この取り組み、どのように具体的に強化をしたか、御説明をいただけますでしょうか。

藤山政府参考人 御指摘のシリアにおける事案あるいはチュニジアにおける事案、これらを含めまして、テロ情勢は非常に厳しいというふうに認識をしております。

 政府としましては、シリアにおける事案の直後ですけれども、二月の三日、官房長官を長とする国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部を開催いたしまして、各種テロ対策をより一層徹底強化し、推進をするということにしております。

 具体的に申し上げますと、不穏動向の早期把握に向けた情報収集、分析の強化、あるいはテロリストの入国阻止等に向けた水際における取り締まりの強化、あるいは空港、公共交通機関などの重要施設の警戒警備の徹底などの諸対策を強力に推進するということにしているところであります。

 さらに、シリアにおける事案を踏まえまして、現在、検証委員会を開催しておりまして、政府として適切な対応ができていたのか、例えば政府の初動態勢ですとか情報収集の体制などを対象にして検証を行っているところであります。

 こうした取り組みを通じましてテロ対策の不断の見直しを行いまして、テロの未然防止に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

長島(昭)委員 今お話しいただいたように、やはり情報収集と分析、これは非常に大事だというふうに思います。

 そういう中で、きょうは防衛省から来ていただいていると思いますが、防衛駐在官の増員の話が一方で出てきています。これはテロ対策の文脈でほぼ同時に出てきた話なんですが、今、藤山さんから御説明いただいたテロ対策あるいは邦人の保護、安全確保、この問題と、防衛駐在官の増員という対策、これとどういう関係があるのか、御説明いただきたいと思います。

石川大臣政務官 お答え申し上げます。

 先生御指摘のシリアにおける邦人殺害テロ事件あるいはチュニジアにおけるテロ事案に見られますように、テロの脅威というものは世界的に増大をしている中にあります。

 防衛省といたしましても、こうしたテロ対策あるいは邦人保護に政府全体として取り組んでいくため、また、海外に派遣されている部隊の安全確保を図るため、さらには、国際的なテロの動向について情報収集をしていくことが重要との考えから、特に、中東・アフリカ地域における、テロに見られる不安定な状況がある中で、これが我が国にとっての安全保障の観点からも重要性を増しているという観点から、この地域における情報収集能力の強化が重要だというふうに認識をしているところでございます。

 防衛駐在官の派遣体制の強化を含めた中東・アフリカ地域に関する情報収集体制の強化策について検討を進めているところでございまして、防衛駐在官の新規派遣あるいは増員というものにつきましては、厳しい定員の事情、あるいは適切な人材の計画的確保に伴う制約等もございますが、こうした制約も踏まえつつ、駐在国の情勢が我が国の安全や自衛隊の運用に及ぼす影響、駐在国と我が国の防衛協力の進展、テロ対策や邦人保護のための情報収集の必要性等を総合的に勘案して決定してまいりたいと考えております。

長島(昭)委員 わあっと今いろいろミッションをおっしゃったんですけれども、もう少し焦点を絞って伺いたいと思うんです。そもそも防衛駐在官の役割というのは何かと伺いたいと思うんです。

 いろいろな方と話していると、シリアのISの事案のあった後、防衛駐在官の増員という話が出たので、何か防衛駐在官が在外公館とかあるいは日本人学校とか、そういうものを守ってくれるのではないかというような誤解をしている向きもあるんです。

 それから、今少しおっしゃいました、部隊の安全を確保するとかあるいは軍事的な情報を収集するとか、こういうことはあると思うんですけれども、まず治安ですよね、テロ対策というのは。特に、邦人保護とか邦人の安全確保というと、まず警察や治安組織との情報交換、情報分析、これが大事だとは思うんですけれども、そういうものと防衛駐在官というのはどういう関係があるのかないのか、ここをちょっと焦点を絞ってお答えいただけますか。

石川大臣政務官 お答え申し上げます。

 防衛駐在官は、先生よく御存じのとおり、幹部自衛官という立場を生かしまして、各国の軍、国防当局、また他国のその地におけます駐在武官から、軍同士の関係でしか入手し得ない種々の貴重な情報を入手することができると考えております。特に、派遣先国に関連した軍事関連情報の収集を防衛駐在官は得意としております。

 また、今御議論いただいております国際テロあるいは国内治安に係る情報につきましても、各国の軍、国防当局や他国の駐在武官から相応の情報収集が可能であり、在外邦人保護に係る政府全体の取り組みに関しても、防衛駐在官が貢献することができると考えております。

 ただし、先生御指摘のありましたとおり、国際テロあるいは国内治安に係る対処につきましては、各国におきまして一般的に中央情報機関あるいは法執行機関が担っていることが多うございますので、在外邦人保護に関しましては、正直申し上げまして、防衛駐在官による国防当局からの情報収集には一定の制約があることも事実でございます。

 したがいまして、在外邦人保護に係る情報収集に当たりましては、他の在外公館職員と連携し、役割分担をしつつ、情報収集を実施してまいりたいと考えております。

長島(昭)委員 非常に正確な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 大臣に伺いたいんですけれども、今聞いていただいたように、防衛駐在官の収集する情報というのは、偏りがあると言うとちょっと語弊がありますけれども、軍事的な、国防コミュニティーの中のいろいろな情報なんですね。もう一つ大事な情報は、現地の法執行機関あるいは警察、治安当局、こういうところとの交流によって得られる情報。この情報を邦人とかあるいは日本の企業とかそういうところと共有してその身を守っていただく、あるいは危険な情報があったらアラートを出す。これは大事な二本柱、情報収集、分析の二本柱だというふうに思うんですけれども、そういう中において、外務省の果たす役割について大臣から御答弁をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 邦人の安全に関する情報収集に当たっては、今御指摘がありました防衛駐在官、軍関係機関の関係者の中での情報共有、これもまた大変重要でありますが、御指摘のように、それ以外のさまざまなルート、政府関係者、治安機関、さらには情報機関、こういった関係者との情報共有、これも重要でありますし、さらに、各国の外交団の間の情報共有、あるいは警備関係団体、現地有識者、さらには公開情報などを通じての情報収集、これも極めて重要なルートであると思っています。

 こうしたさまざまな情報源あるいは媒体を通じて、邦人の安全に必要な治安、テロ情報について適切に情報収集を行う、在外公館においては、外交官においては、そういった取り組みが重要だと考えます。

 そして、そうして集めた情報をさらには民間の企業あるいは在留邦人と共有していく、こういった観点も大変重要でありまして、在外公館と在留邦人代表者との会合であります安全対策連絡協議会を初めとするさまざまな場を通じまして、情報を共有し、情報を交換し、そして情報収集を行う、こういった取り組みが行われなければならないと存じます。

 こうしたさまざまなルートを駆使して、全体としてしっかりとした情報を集める、これが外交において重要だと認識をいたします。

長島(昭)委員 先ほど私は、防衛駐在官が武装して大使館や大使公邸を守っているわけではない、そういうふうに考えているのはちょっと誤解だということを申し上げたんですけれども、それでは、大臣、在外公館や公邸を物理的に守っているのは誰でしょうか。

岸田国務大臣 在外公館を守るためにしっかりとした責任を担わなければならないのは、まずは在外公館そのものであると思っています。

 公館の出入り管理の厳格化ですとか緊急時の対応要領の再確認、あるいは任国治安当局への警備強化の要請ですとか治安関連情報の入手、さらには速やかな報告、こういったさまざまな取り組みを行うのが在外公館の役割であると認識をしています。

長島(昭)委員 いや、大臣、在外公館の役割は先ほどの御答弁でよくわかっているんですが、在外公館や大使公邸などを物理的に守っているのは誰ですか。

岸田国務大臣 物理的に守っているのは誰なのか。これは、基本的には、任国、現地の政府のさまざまな警備、治安組織であると認識をいたします。

長島(昭)委員 政府の機関だけですか。

上月政府参考人 具体的に、警備はどういうふうに守られているかについて御説明いたします。

 まず、大使館の中には警備対策官という人がおります。もともとこの人たちは、外務省のプロパーの職員もおれば、日本の公安機関から助けをかりて、あるいは日本の警備会社から一時雇用しているような人たちのグループがございます。それで、その中にさらに警備専門員という形でもって雇用している人たちもいるというのが一つのグループです。

 二つ目のグループは、今度は現地における警備員の雇用というのをしております。現地の人たちを謝金警備員という形で、謝金で守ってもらう、このグループがその次のグループでございます。

 その上で、ウィーン外交官条約上は任国の大使館及び大使館施設を守るのはその任国の責任になりますので、その任国政府から治安当局者が来て、一番周りのところで警官が守っている。

 こういう二重三重の警備体制になっているということで、今申し上げた三層が主に大使館を守っている人たちでございます。

長島(昭)委員 ですから、主要国は、アメリカみたいに海兵隊員がガードしているところももちろんありますけれども、基本的には現地の警備会社と契約を結んで、そこで警備員を派遣してもらってガードしてもらう、こういうことですから、これはやはり予算が非常に大事なんですね。きちっと予算をつけてあげないと、そういう質の高い警備会社と契約をして、安全確保の実を上げる、実効性を上げるということはなかなか難しいわけであります。

 そういう中で、私は、在外公館というのは、在留邦人にとってはもう本当に命綱といいますか、最後のとりでというか、何か起こったときに逃げ込む対象でもありますし、アルジェリアの事案の後、陸上輸送で邦人救出をするということが法的にできるようになりましたけれども、しかし、そういうときにも、邦人に集まってもらう、これはやはり在外公館に、広場に集まってもらって、そこに輸送部隊を投入する、こういう形になるんだろうというふうに思うんです。そういう意味では非常に大事だと思うんです。

 大臣、実は一昨年の四月にも、私、安保委員会で大臣にこの警備体制のことを伺ったことがあるんです。そのときに大臣は、確かに在外公館というのは大事な拠点である、邦人の保護、日本企業の安全確保、これは国にとって極めて重要だ、こういうふうにおっしゃった。その後、ただ、「財政等、大変厳しい環境の中でありますが、国として何を優先するべきなのか、めり張りをつけ、最大限努力をしていかなければならない課題だ」、こうおっしゃった。張りはいいですけれども、ちょっとめりは、これだけ厳しい外部環境において、簡単にめりをしていただいたら困ると私は思うんです。

 シリアのISの事案を受けて、大臣から、在外公館に対して、物理的に警備を行う人員の補強をしなさいというような指示は出していただいたんでしょうか。

岸田国務大臣 一連のテロ事件を受けまして、改めて私の方から指示を出し、対応を行いました。

 具体的には、現地の要請に応じまして、中東、アフリカ、欧米等の公館への警備員等の臨時増員配置、あるいは警備用の設備、機材の追加設置、こういったものを実施いたしました。具体的な内容については控えなければいけませんが、イメージとしまして、警官や警備員等の増員に関しましては、約百名の増員の配置を実施しております。

長島(昭)委員 確かに、これは警備上の秘密にかかわる話ですから、詳しく御答弁はいただけないと思っておりましたが、それでも今、実数は百名、こういうことをおっしゃっていただきましたので、非常に意を強くしたところであります。

 繰り返し申し上げますが、在外公館は在外邦人にとっては最後のとりででもありますので、この警備体制強化にしっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に移りたいと思いますが、これは全くがらっとかわりますが、ガイドラインの話、日米のガイドラインと安保法制とのかかわりについて、ちょうど先週、三ッ矢筆頭の方からもくぎを刺していただきましたが、その後も報道が続いておりまして、安保法制が先かガイドラインが先か、これは結構皆さんが注目しているところでもございます。

 まず、外務大臣に閣僚として伺いたいんですが、安保法制に係る関連法案、これの国会提出は大体いつごろになりそうなんでしょうか。

岸田国務大臣 安保法制の法整備につきましては、今、内閣としてこの検討作業を続けていると承知をしております。作業の進みぐあい等、具体的な提出時期については、まだ内閣として明らかにしたことはなかったと思います。できるだけ早い提出に向けて、今作業が進んでいるものと承知をしています。

長島(昭)委員 きのう、自民党の佐藤国対委員長が、大体五月の中旬ごろだと。つまり、連休明け。大体皆さんはそう予測しているんですね。それよりスピードアップできそうな情勢なんでしょうか。

岸田国務大臣 御案内のとおり、安保法制の整備につきましては、各省、関係省庁が協力しながら、内閣全体として取り組んでおります。全体の作業の進捗状況、その具体的な進捗状況まで、ちょっと外務大臣として今承知をしてはおりません。

 引き続き精力的に作業を進め、一日も早い提出に向けて努力をしたいと考えます。

長島(昭)委員 私が仄聞しているところによると、相当大変だ、土日もない、連休もないと。本当にかわいそうだなと思うんですけれども、事務方の皆さん。

 となりますと、その前に、つまり提出の前に恐らく総理がワシントンに行かれることになるんだろうというふうに思います。これはもう日米両政府から発表されていますが、四月の二十八日が日米首脳会談、こういうことです。

 ここでちょっと踏み込んで伺いたいんですが、もしかすると、その前に日米の間でガイドラインの改定の合意がなされて、それを受けて総理がワシントンに行かれるような日程感という情報もあるんですが、外務大臣としてはどのような見通しを持っておられるんでしょうか。

岸田国務大臣 ガイドラインにつきましては、日米間において、たしか中間報告が行われまして、ことしの前半をめどに見直しの作業を進めていくということで一致をしていたと承知をしております。そうした合意に基づいて、引き続き作業が続いているものと承知をいたします。

長島(昭)委員 改めて指摘させていただきたいと思いますが、やはり安保法制が完成しないと、自衛隊がきちっと行動する、その自衛隊の行動、できるかできないかということも含めて、定まらないんですね。

 私は、再三申し上げているとおり、そういう担保をきちっと確立した上で、米側と、日本とアメリカとの間の新しい役割、任務分担を議論した方が実効性のある議論になるのではないか、こういうことを思っておりますので、先日、自民党の三ッ矢筆頭理事の方からも同様の発言がありましたが、やはり、与党協議だけで、法案もできていないのに、見切り発車してガイドラインの改定の合意をしてしまうことのないように、外務大臣として、ぜひ国会を重視した形でリーダーシップを発揮していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 ガイドラインの見直しと、そして安保法制の整備につきましては、先ほど来申し上げているように、それから先日来答弁させていただいておりますように、前後関係について何ら決まっているものはありません。しかしながら、政府としまして、この両者の整合性をしっかり確保しなければならない、こうした点につきましては、重要であると考え、努力をしていかなければならないと考えております。

 いずれにしましても、見直しが行われるガイドラインにつきましては、我が国の憲法あるいは法令に従うことは当然のことでありますし、ガイドラインの見直しを行ったとしても、その見直しは、我が国政府に対しまして、立法上あるいは予算上、さらには行政上の措置を義務づけたり、法的な権利や義務を生じさせる、こういったものではないと考えております。

 こうした整合性はしっかりと大事にしながら、引き続き作業を進めていきたいと考えます。

長島(昭)委員 さて、この新しいガイドライン、ガイドラインの改定、これは十八年ぶりの改定となります。

 それでは、お伺いしたいと思いますが、今回、ガイドラインを改定する目的、意義はどこにあるんでしょうか。

岸田国務大臣 前回のガイドライン策定から今日まで、安全保障環境は大きく変化をしています。例えば、北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威の存在、ますます大きなものになっています。また、中国の不透明な軍事力の近代化、急速に拡大、活発化する海洋進出、これは地域や国際社会の懸念事項となっています。さらには、サイバーあるいは宇宙空間といった新たな安全保障の課題も発生しています。

 ガイドラインについては、このような認識のもとに、平成二十五年十月の2プラス2共同発表において、紛争を抑止し、平和と安全を促進する上で日米同盟が引き続き不可欠な役割を果たすことを確保するため、これを見直すことについて日米間で合意したものであると認識をしております。中間報告におきまして、この方向性につきまして、日米間で共通認識を確認しています。

 こうした議論を踏まえて、引き続き作業を進めていかなければならないと考えております。

長島(昭)委員 十八年ぶりの改定、いろいろな思いが私もあります。

 やはり、前回は、九三年の北朝鮮核危機の後、九三年、九四年の核危機のときに、当時も連立政権でしたけれども、米側が対応するときに、日本側は何ができるんだ、どういうサポートができるんだと。一説には、一千項目ぐらいの要望事項があったけれども、ほとんど何も応えられなかったと。これで本当に同盟はもつのかというところがスタートになって、どちらかというと、米側から、こういうことができないかと持ちかけられて、米側の要望に応えるようなガイドラインのつくり方だったというふうに私は記憶しています。

 ぜひ、今回は、日本が主体的に戦略を練って、日本の主体的な行動を支えるようなガイドラインを外務大臣のリーダーシップでつくっていただきたい、このことを要望しておきたいと思います。

 その中で、もう時間がないので、最後の一点にしますけれども、現行のガイドラインには幾つかの決定的な制約が課されていたと思うんですね、対米支援、後方支援をする際に。特に、後方支援ではなくて、わざわざ後方地域支援というような言葉を使って。私はちょっと三つだけ例を申し上げます。

 一つは、我が国の領域の外では輸送を除いては後方支援できない、こういう制約がありました。それから、物品の提供なんですが、武器弾薬は除く、こういうことになっていましたね。それから三番目は、これはよく言われることですが、発進準備中の作戦機に対する直接の給油や整備はできない、こういうことになっていました。

 私は、これは明らかに、日米同盟協力、特に周辺事態というのは、放置しておけば、我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態ですから、我が国の平和と安全に重要な影響のある事態ですから、これは我々としては当事者としてきちっとやっていかなきゃいけない。憲法の制約がありますから、後方支援活動に限られてしまうとしても、これはできません、あれはできません、こういう状況ではできません、これでは支援にも何にもならないと私は常々思っていました。

 閣議決定、去年やりました。そして、その後に、ガイドラインの中間報告が出ています。そして、今回、法整備に当たって与党合意ができました。今私が申し上げたような三つの制約というのは、この過程においてクリア、つまり除去されることになるんでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の点は大変重要なポイントではあるとは思います。

 ただ、具体的にどう対応できるかということにつきましては、具体的な法律ができなければなりません。今、政府としまして、安保法制、国会提出に向けて作業を続けているところであります。ぜひ、引き続き与党ともしっかり協議を続けながら、作業を急ぎたいと考えます。

長島(昭)委員 まさに今外務大臣がおっしゃったように、法律ができないと、これができるかできないかわからないんですよ。ですから、ガイドラインの積み残しのこういう制約も、アメリカとの交渉の中で一体クリアできるかどうかということはわからないんですよ、まだ。そういう中で、アメリカと何の合意をするのかと私は不思議でたまらない。

 ですから、法律をきちっとつくって、これとこれはできる、これはさすがにできない、できることとできないことを明らかにしてやはり米側との交渉に臨むのが、恐らく事務方の方も交渉しやすいと思いますよ。

 その点、もう一度くぎを刺させていただいて、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

土屋委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 維新の党、木内孝胤でございます。

 先週に引き続き、アジアインフラ投資銀行についてお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 昨日、三十一日が創設メンバーを決めるデッドラインとされておりました。先週質問した時点でも、想定外の英国の参加、その後の独仏伊の参加表明、こうした問題がある中で、その後も、韓国、オーストラリア、さまざまな国が参加表明をされています。

 昨日、テレビや新聞等の報道を見ていましても、日本は参加見送りということで、私は現時点で、他国との交渉経緯等も存じ上げておりませんので、参加するべきだとか参加するべきでないという論評は差し控えたいと思いますけれども、やはり英国が参加をしたということ、独仏伊が参加をしたということ、これは米国でも、完全に見立てというか見通しを見誤った、孤立したのではないか、失策ではないか、そのような声が出ております。

 現在、外務大臣としてはどのような認識をお持ちでしょうか。

岸田国務大臣 まず、我が国の立場は、従来から申し上げておりますように、AIIBに対しまして、ガバナンスが確立できるか等幾つか慎重に検討しなければならない点があるという認識に立ち、慎重な立場に立っている、こうした立場は全く変わっておりません。

 そして、各国の動きですが、さまざまな関係各国との連携、意見交換、情報交換、こういったものが重要であると認識をしています。

 英国につきましても、従来から情報交換を行ってきましたし、英国がAIIBの参加を表明する前に、英国から日本に対しまして事前に通告というものがありました。そういった形で、ずっと情報交換、意思疎通は図ってきております。

 そして、英国に続いて、ドイツですとかフランス等においても協定交渉入りが発表されているわけですが、こういった国々におきましても、AIIBにおいてガバナンスあるいは債務の持続可能性等の原則が確保されるよう引き続き取り組んでいくことが重要である、こういった認識が明確にされています。

 我が国を含む関係国の間で、交渉に入るか、あるいは外側から働きかけるか、これはアプローチの違いはあるかと思いますが、AIIBに関する基本的な問題認識は引き続き共有されていると思いますので、引き続き関係国と緊密に連携をしながら中国側に働きかけを行っていく、こういった努力は続けていきたいと考えております。

木内(孝)委員 ガバナンスが確立されるのを確認してとか、あるいは審査基準がしっかりしたものだというのを確認してから参加をする、これはごもっともなことだと思うんですが、よくよく考えてみますと、AIIBというのは、一定の資本金というものができて、それ以外に、貸し出しをする際は、市場から多くの資金を調達した上で貸し出しを行うわけです。したがいまして、そもそもこの金融機関が存在するということ自体が、ある意味、一定のガバナンスがないと資金調達すらできない金融機関なんですね。

 したがいまして、ガバナンスが確立できないとと言っている理由は一見もっともらしく聞こえるわけですけれども、英独仏伊が入って韓国が入ってオーストラリアが入って、それでガバナンス云々と言っているということ自体が、ややお粗末な気がするというのが一点。

 それに加えて、昨日、安倍総理が、党内でしっかり議論を進めてほしいと指示を出されたと認識しております。これは一年半ほど前に発表された構想であり、昨日、党内でしっかり議論してほしいという指示を出すというのは、いかにも動きが遅過ぎるというふうに感じるわけでございますけれども、それでも大臣は、これは仕方ないんだというふうにお考えなのか。

 あわせてお伺いしますけれども、官房長官も、創設メンバーにならないリスクというのはそんな大した不利益はないというような談話を出しております。

 私は、創設メンバーに入る入らない、これは大きな差があると思います。TPPに関してはもちろんいろいろ賛否はあるかもしれませんけれども、結局、最後に呼ばれて入る立場と、みずから仕掛ける、あるいは創設メンバー、早期のメンバーで入る、これはもう全然状況が違うんですね。私もいろいろ交渉状況を聞きますと、TPPにおいてですけれども、やはりいろいろなことが固まってしまっている、後発メンバーというのは非常に不利益なんだというふうに聞いております。当然、AIIBにおきましても、日本にとって不利益が生じる可能性があると思っております。

 私は、官房長官談話、あるいは、安倍総理の今から党内で議論してほしい、今回は明確な失策だと思っておりますけれども、その点について大臣の御意見をお伺いいたします。

岸田国務大臣 AIIBに参加するということになりますと、例えば我が国が参加するということになりますと莫大な出資金が求められることになります。我が国として、そうした対応をするということになるならば、しっかりとしたガバナンスの確立など、明らかにしなければならない点についてしっかり確認した上で取り組まなければならない、これは当然のことだと思っています。

 ですから、中国側に対しましてしっかりと我々の問題意識、疑問をぶつけて、そして、中国側からそうした問題意識について回答をしっかり得た上で検討するべき問題であると思っています。残念ながら、今、そういった問題意識が明らかになっておりません。

 我が国として、慎重な立場はこのまま維持していかなければならないと思っていますが、今回、AIIBに参加を表明した国々であっても、こうしたガバナンスの確立等、物事の決定ですとか透明性ですとか、こういった問題意識をAIIBに持ち続けています。中に入って議論をするのか、外から働きかけるのか、立場は違っても、AIIBに対する問題意識はしっかり共有しながら、中国に対する働きかけはしっかり行っていかなければならない、このように思っています。

 そして、これから与党において検討をするという指示が出たのではないか、あるいは参加しないリスクがないという発言が官房長官からあったのではないか、こういった指摘もありました。

 しかし、基本的には、今申し上げた考え方に基づいて、慎重な立場で検討をしていかなければならないと思っていますし、官房長官の発言にしましても、政府として、特定の期限にとらわれることなく、引き続き、関係国と連携しながら、我が国の立場をしっかり中国側に働きかけていくことが何にも増して重要である旨述べたものと理解をしています。

 今の段階では、まだ、入るメリット、入らないリスクなど、リスクを考える段階ではないのではないかと思います。まずは、我が国として、今持っている問題意識、問題点について明らかにされることが今の段階ではまず大事であると認識をしています。

    〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕

木内(孝)委員 いま一つ危機感が共有されていないということは大変残念なんですが。

 いずれにしましても、日本は民主主義国家の中で世界第二位の経済大国です。恐らく、今回は、日米さえ緊密に連携をして、きちんと働きかけをしなくても何となくほかの国は参加しないだろうと勝手に油断をしたとしか私は率直に見えません。

 英国が参加したというのは私は率直にショッキングでした。きょうはエープリルフールでございますので、イギリスの新聞ではよく、うその記事を冗談でやるわけですけれども、それぐらい、私にとっては英国の参加というのは非常にショッキングな事件でございました。

 今回の、そうやって、さも失策がないかのごとく取り繕うことが、次へのステップへのおくれとなる可能性があると思っておりますので、これ以上の質問は差し控えますけれども、ぜひ危機感はしっかりと持って対応していただきたいというふうに思います。

 次の質問に移ります。

 対日直接投資についてお伺いをいたします。

 今、対日直接投資推進会議というのがございまして、大臣も参加されていると認識をしております。この対日直接投資における外務省の取り組みと成果について教えてください。

岸田国務大臣 対日直接投資を促進して日本再興戦略に貢献すること、これは我が国の経済外交にとりましても大変重要な課題だと認識をしています。

 そして、御指摘の対日直接投資推進会議ですが、先日、三月十七日に会議が開催をされています。その際にも、対日直接投資を促進する観点から、外務省として、在外公館における活動や国際約束の締結状況の報告を行いました。

 今後は、これらの取り組みに加えまして、在外公館での対日直接投資推進の窓口設置、そして、推進会議において決定をされていますが、企業担当制、こうした取り組みへの協力、こうしたものを通じまして、対日直接投資の促進に一層取り組んでいきたいと考えております。

木内(孝)委員 経済外交といった場合、特に、今、中国は日本のほぼ三倍ぐらいの規模の外貨準備がございますけれども、あるいは、純債権等を使って、これを外交にどうやって生かすかというのを非常に深く考えながら進めているわけでございます。ぜひ、日本も、いろいろ言っても世界第三位の経済大国、民主主義国家の中では第二位の経済大国でございますので、こうしたたくさんの国民の資産を生かす経済外交を心がけていただければというふうに思います。

 それと、二〇一二年末段階で約十八兆円の対日直接投資、これをほぼ倍増させるという計画だというふうに理解しております。今おっしゃったような取り組みというのは、私、全て非常にすばらしい内容だと思っておりますけれども、一つ、私も資本市場で長く働いてきた人間として、この対日直接投資をふやす取り組みとして、御提案というか申し上げたいことがあります。

 先般の外務委員会で、寺田委員から、保守本流とは何かという御質問があって、ちょっと興味深く拝見をしておったわけですけれども、その中で、小さな政府、市場を重視するというようなことをおっしゃっていたと思うんですが、さらに言うと、昔の大平外務大臣あるいは大平総理というのは、非常にこういう自由主義経済の信奉者でありながら、非常に温かみのある自由主義者であったのではないかというふうに考えているわけです。

 今回、私は、日本の経済、なぜ外からお金が中に入ってこないのかというふうに考えた場合、やはり統制型の経済というふうに見られている、いわゆる普通の自由主義の経済と見られていない、この経済の転換を図ることが一番重要だと思っております。

 きょうは外務委員会で、余り脱線したくないので申しわけないんですけれども、今回の通常国会におきましても、例えば、政策投資銀行あるいは商工中金とか、民営化すると言われていたものが、全部民営化先送りというか、期限も区切らないとか、あるいは実質骨抜きとか、そういうふうになっております。

 したがいまして、日本にいろいろ投資をしようと思っていた海外の投資家がこぞって、アベノミクス、アベノミクスと言われている割に、最後、成長戦略がテークオフしないのは、こうしたところに原因があるのではないかというふうに思っております。

 これは若干外務委員会から外れる部分はあろうかと思うんですが、私は、大臣のそういう国家観というか経済観というか、とりわけ経済外交を三本目の柱としている外務大臣の、こうした、何か改革逆行経済というふうに見えてしまっているわけですけれども、大臣の所管ではない分野ではございますけれども、こうした民営化先送り、これをどうお考えなのか、お聞かせください。

岸田国務大臣 おっしゃるように、商工中金ですとか政策投資銀行は私の所管でありませんので、その民営化について私が直接触れることは控えなければならないとは思いますが、ただ、先ほどちょっと紹介させていただきました日本再興戦略の中にも、規制改革を含む取り組みが含まれています。やはり、外務省としましても日本再興戦略を推進するために取り組んでいかなければならない、このように認識をいたします。

 例えば、経済連携を進めることが、翻って国内のさまざまな規制改革ですとか構造改革にもつながる、こういったこともあり得るでしょうし、こうした観点から外務省としてやるべきことをしっかりやり、我が国の国内のそうした規制等についても考えていく、こういった取り組みを進めていくことは大事なのではないか、このように思っております。

 こうした経済連携協定、投資協定等の締結、あるいは関係省庁の連携も大事でありましょうし、またさらには、三月十七日の対日直接投資推進会議で決定をいたしました、日本に重要な投資をした外国企業に各省の関係副大臣を相談相手としてつける企業担当制という制度が打ち出されましたが、こういった制度を通じてさまざまな取り組みを進めていく。こうした企業担当制において、直接、外国企業から日本の規制ですとか構造の問題点を吸収することによって、それを政策に生かしていく、こういった取り組みも重要なのではないかと考えます。

 ぜひ、外務省の立場から、御指摘の規制ですとか構造の改革に向けて資するように努力をしていくことは重要なのではないかと認識をいたします。

木内(孝)委員 実は、以前から話があって、時々出ては立ち消えている話の中に、対日投資庁をつくったらどうかという話がございます。

 こうした海外との連携を深めることによって、さまざまな構造がいい方向に変わる、もちろん外圧によって悪い方向に変わるということもございますし、自由主義というのは、いい面と悪い面、二つあると思いますけれども、こうした対日投資庁をつくる、推進会議の例の中でも、インベスト・イン・UKという話と並んで、インベスト・イン・ジャパンというような組織をつくる、対日投資庁をつくるというようなお考えについて、大臣、御所見をお聞かせください。

    〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕

岸田国務大臣 まず、対日投資を促進することは重要であるということで、さまざまな取り組みをしなければならないということにつきましては、今申し上げたとおりであります。

 そして、そのためには関係省庁がさまざまな連携もしなければならないと思いますし、取り組みについてもさまざまな協力が求められます。こうした大きな課題であるということは認識をいたします。

 ただ、対日投資庁という新しい役所をつくるという御提案につきましては、私自身、具体的にそういったことについて考えたことがなかったものですから、今すぐにお答えすることは、ちょっと、慎重でなければならないと思います。

 恐らく対日投資の重要性については間違いないとは思いますが、新たに役所をつくるということになりますと、行革等さまざまな観点からも見ていかなければならない課題になるかと思いますので、その辺も含めて検討した上でお答えするべき御質問なのではないかと考えます。

木内(孝)委員 企業を誘致する場合、対日投資をふやす場合、一つの肝となるのが、税制といいますか、税金の高さとなります。

 今、どこの国も、法人税の引き下げ競争に入っているわけですけれども、一方で、格差の問題というのも指摘されております。

 二〇一三年のアイルランドでの、当時はG8サミットですか、その時点では、多国籍企業の租税回避に関する、各国が連携をして、そうした租税を回避するようなことというのをきちっと監視していこうというような声明が出されております。

 なかなか難しいのは、格差を是正しようと思って税率を高めると、税金を払わなくていい国、アジアでも税率が安い国がございますけれども、そういった国に行ってしまう。あるいは、資産課税を強化しようと思うと、結局、トップ一%の人たちはそういう国に逃げてしまう。そうした意味で、結局、なかなか、そうした自由主義、資本主義の格差の問題というのはどうしても是正できない。

 そういう問題意識を持って、G8サミットあるいはG7サミットでもこうしたことが議題に上がったと思われるわけですけれども、その後、ちょっと、いろいろな世界的な課題というのはあるわけで、それだけ論じているわけではないでしょうけれども、ことしもG7サミットが六月にあるかと思いますけれども、そうした、その後のフォローアップといいますか、監視状況、あるいは進展したこと等、ございますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答えします。

 多国籍企業による租税回避の問題でございますが、近年、多国籍企業が税制のすき間を利用した節税対策により税負担を軽減することに、国際的な批判が高まってございます。この問題に各国で協調して対応するために、OECDの租税委員会におきまして、我が国が議長のもとで、G20の全面的な支持を得て、税源侵食と利益移転、BEPSと呼んでございますが、これのプロジェクトの取り組みが段階的に進められているところでございます。

 この取り組みは、多国籍企業が国際的な取引を通じてグループ企業全体の税負担を軽減させる租税回避スキーム、例えば、どの国にも課税ベースを認識されないようにしたりとか、税負担の低い国、地域の経済実態のない子会社等に利益を移転させたり、これに対して各国が協調して対抗することを目的としたものでございます。

 BEPSのプロジェクトにおきましては、昨年九月に七つの行動につきまして第一弾の報告書が公表されております。また、残された課題につきましても、本年九月及び十二月にその検討結果を示すこととされてございます。

 この取り組みを日本としても重視しておりまして、年末の取りまとめに向けまして、国際会議の場で議論を主導してまいりたいと考えてございます。

木内(孝)委員 やや経済外交に重点を置き過ぎた気もいたしますけれども、大臣の経済外交、三本目の柱の取り組みについて期待を込めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 維新の党の小熊慎司です。

 まず、過日、大変な被害に見舞われた、サイクロンで被害を受けたバヌアツ等の地域において、日本もさまざまな支援をして、また、政務官も迅速に現地に飛んで、バヌアツの外相とも会談をされたということでありますけれども、どういう支援をしてきたか、しっかり日本がやったということは報道等で承知をしておりますので、今後、日本の対応として、バヌアツに限らず、こうした被害に対してどのような支援を行っていくのか。来週、緑の基金について質疑もありますので、大きな意味での気候変動に対する日本の支援の仕方はそこで細かく聞きますが、今回、バヌアツの現地調査をされて、その中で薗浦政務官が、今後どういうふうにこうした被害、また国と関係をしていかなきゃいけないのかという点について、お聞きをいたします。

薗浦大臣政務官 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、我が国の支援内容についてはもうわかっているということで省略をさせていただきますけれども、私自身が行って非常に印象的だったのが、去年、日本のODAで完成をした病院の建物だけは非常に堅牢で、ここが単なる病院としてじゃなくて避難所としても非常に現地で役に立った、加えて、医療チームもそこで活動しているという状況もございました。

 外務大臣等との会談の中で、もちろん、短期的な支援についても言及はあったんですけれども、私自身もそう感じたことは、中長期的に、いわゆるサイクロン対策、防災、それから高潮対策という意味での町づくり、インフラ支援というのを我が国として検討すべきという意を強くして帰ってまいりまして、この旨は既に大臣にも報告をし、省内で共有をいたしております。

小熊委員 そういう意味では、長期的な視点に立って今後どうしていくかというのは、これは過日の防災会議でもありましたし、不幸なことで、本当はなくてよかったんですけれども、東日本大震災という経験を日本がしておりますから、今、そうした復興に向けての中でも、この中長期的な取り組みというもの、この知見が日本にはあるわけですから、そうした視点で、国際的に日本の果たす役割を、薗浦政務官は現地に飛ばれての経験もありますから、来週も緑の基金でその辺のことを質疑したいと思いますけれども、ぜひ今後取り組みを強化していただくようお願いを申し上げ、次の質問に移ります。

 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約、いわゆるハーグ条約、発効されてきょうでちょうど一年を迎えております。

 まず、発効してからの、裁判沙汰になっていないような案件もあるというふうに聞いておりますので、明確な数字というのはないのかもしれませんが、一応、この一年間の中で、この条約、連れ去り事案についての件数等をお聞かせください。

岸田国務大臣 ハーグ条約が昨年四月一日に我が国について発効してから、本日でちょうど一年が経過いたします。

 一年の間に外務省が受け付けた申請の件数ですが、日本に所在する子の外国への返還を求める申請が二十六件、外国に所在する子の日本への返還を求める申請が十八件、日本に所在する子との面会を求める申請が五十五件、そして外国に所在する子との面会を求める申請が十四件、合計いたしますと百十三件になります。

 このうち、既に日本に連れ去られた子の外国への返還が三件、外国に連れ去られた子の日本への返還が四件それぞれ実現するなど、条約は着実に実施されていると認識をしております。

 国際化が進む中、条約の発効により国境を越える子の連れ去りをめぐるルールが明確になったことは、そのような事態の防止とあわせて、条約を締結した大きな意義ではないかと考えております。

小熊委員 一年でそうした状況ですから。でも、細かい案件を見ると、やはり家族観というものが国によって違ったり、法体系も多少違うというところで、納得がいってその決定に従っている案件が全てではないというふうに思いますので、これはしっかり今後も対応していただきたいなというふうに思います。

 このハーグ条約の質疑を日本は長い時間をかけてしてきた中で、今大臣が言ったとおり、これは国際的な価値観を共有して、とにかく、親の状況がどうであれ子供の幸せが一番なんだ、子供にとって両親というのはあくまでも両親で、そこが離婚していようとしていまいとというのがあって、その子供の権利というのを前面に押し出してつくった条約でありますけれども、その価値観は大切だと外務大臣はおっしゃいました。

 このハーグ条約の質疑をしている中で、いろいろな意見が出た中で、しからば、国内はどうなっているんだというのを議論していて、私も、これは外務省でなく法務省になりますけれども、では、国内法もこの価値観に従って整備すべきじゃないのか、検討していくべきじゃないのかというので、前向きな答弁もいただいていたんですけれども、実際は、条約発効一年して、国内の状況がまたそれに従って、その価値観に従っていろいろな展開があるのかといえば、ないんですね。

 子供の利益を考えてこの条約に批准したわけです、日本は。だけれども、子供の利益ということを考えて、国内法の整備も必要だろうというんですが、やはり国内の連れ去り事案が近年、高まっているというところで、法務省、今までどうしていたのというところでお願いします。

大塚大臣政務官 お答え申し上げます。

 まず、小熊議員には、子供の権利擁護という意味で、大変熱心に取り組まれていること、心から敬意を表する次第でございます。

 一方、国内でどうなっているのかということでございますけれども、国内におきましては、当然、夫婦間のトラブルに起因して子供を連れ去る、他の親の同意を得ずに連れ去るという例がもちろんあるわけでございまして、現状、子の連れ去りが適切でない場合の救済手段としては、家庭裁判所に子の監護者の指定及び子の引き渡しの申し立てをすること、それらを本案として子の引き渡しの保全処分の申し立てをすること等が現在とられている手段ということになるわけでございます。

 一般論として、これらの申し立てがあった場合には、家庭裁判所において、個別具体的な事案に応じ、さまざまな事情、どれぐらいお父さん、お母さんが子供の監護に熱心にやっていたかとか、養育のための家庭の条件とか、そういったことを総合的に考慮した上で、子の利益の観点から適切な判断をする、これは家庭裁判所が判断をするということになっております。

 それで、ハーグ条約は、委員御指摘のとおり、国境を越えて不法に連れ去りがされた場合は、原則として、子供の常居所を、まあ住所地ですね、有していた国に返還することが定められているわけでございます。これは、子の監護に関する事項については、子が常居所を有していた国において判断されることが適当という考え方に基づくものでございます。

 一方で、国内での子の連れ去り事案の場合は、子の監護に関する事項については、いずれにしろ、我が国の中で完結をすることでございますので、我が国内で判断をされるということになり、どっちの国で判断をするか、例えば、福岡のお父さんと名古屋のお母さんだった場合に、どっちに裁判管轄権があるかということは問題にならないということでございますので、ハーグ条約で生じているような問題自体が生じていないということになるわけでございます。

 したがって、ハーグ条約が適用される事案と国内の事案では問題の状況が異なるため、ハーグ条約と同様の制度を整備するという観点でいいますと、なかなか、話として、そうはなっていかないということがあるわけでございます。

 国際裁判管轄権をどっちにするかというのがハーグ条約で決めていることでございますので、その観点では、問題は国内法では存在していないということであろうというふうに考えております。

小熊委員 大塚政務官もお子さんがいらっしゃって、家庭円満ですから、こういうことは大塚政務官の家庭ではならないとは思っていますけれども。

 今仕組みの話もされて、では、その仕組みがうまくなっているかというと、実際、政務官も担当していますからわかるとおり、日本の場合、やはり女性の方が、離婚した場合、逆に親権に強いというのが、事例としては、相対的には多いわけですよ。

 その仕組みがあって、ちゃんとそれで整理されるというのが今の答弁ではあったんですが、実際、極端なDVとかあったら別ですけれども、そうじゃなくて、離婚して子供に一切会えていないというお父さん方、お母さんもたまにいますけれども、結構な数があるわけですよ。

 やはり今の仕組みで、現実、処理できていない、解決できていないという案件があるわけですから、もちろんハーグとたてつけが違う部分はありますけれども、実際、子供の権利が大事だ、まさに価値観の部分でいえば、それが達成されていないこともありますから、ぜひ今後の検討課題として、今の仕組みでちゃんと回っていないんだと。

 あすは我が身ということはないと思いますけれども、ぜひそこは現場の状況を見て、さらに、今後、少子高齢化、また日本の社会が変わっていく中で、いろいろな夫婦間のトラブルもふえてくるでしょうから、ぜひこれは今後の検討課題、現状をしっかり把握していく上で対応していっていただきたいのと同時に、大塚家のお幸せも祈って、次の質問に移ります。

 今、同僚の木内議員からもありましたアジアインフラ投資銀行、AIIBについて私も質疑させていただきます。

 これは、今、大臣の答弁を木内委員の質疑で聞きまして、慎重な姿勢。でも、ガバナンスの問題とかいろいろ、透明化の問題はあるんですが、福田元総理は疑問はもうないんだという発言もされていたりするんですけれども。

 私は、確かにいろいろなスタンスがあるというふうに思います。ちゃんと固まってから関与するというのも一つの選択肢であると思うんですが、今回の件について、いわば問題点としては、やはり、最初ちょっと簡単に考えていたというか、参加国は少ないだろうという見立てがあったんじゃないかな。当初の日本の情報把握と今回の現状にはやはり乖離があって、結局、情報収集についてはちょっと見込みと違ったということがあるというふうに思うんですが、当初から、このぐらいの参加国があるんじゃないかというような見立てはありましたか。それとも、やはり見立てはもっと小さいものだろうということでしたか。その点についてお聞きします。

岸田国務大臣 AIIBに対する対応につきましては、当初から、関係各国との連携、意思疎通を重視してきました。中国に対する問題提起、問題意識をぶつける、こうした働きかけにつきましても各国との連携を重視してきた次第です。

 ですので、参加を表明した国の数について、当初想定していたかということでありますが、参加を表明した国であっても、まだ参加を表明していない国であっても、協議に参加する、あるいは外側から働きかける、この立場の違いはあったとしても、中国の今立ち上げようとしているこのAIIBに対する問題点、問題意識については共有ができていると思っています。英国等につきましても、参加を表明する前に、我が国に対しましては事前に通告がありましたし、緊密に連携をとってきましたし、これからも連携を大事にしていきたいと存じます。

 ぜひ、それぞれの立場を超えて、このAIIBに対する問題意識は共有し続けていきたいと考えています。

小熊委員 日本は一定程度の条件を突きつけていますから、今後、それがクリアしたら参加するということもあり得ますか。

岸田国務大臣 公正なガバナンスの確立など、問題点を中国側に提示しています。残念ながら、我が国のこの問題意識、問題点につきまして、中国側から明確な回答がない現状にあります。

 引き続き働きかけは続けていきたいと思いますが、その結果どうなるかということを今の段階で、予断を持って、こうした公の場で申し上げるのは、我が国の立場として適切ではないのではないか、控えるべきではないか、このように考えます。

小熊委員 参加するかしないか、これはアナリストたちもいろいろ意見が分かれているというのも承知をしていますし、今後の展開でどうなるかというのは、確かに今は慎重な発言をすることが適切だとは思います。

 一点、私自身、感じるのは、中国もやはり国際協調のルールをつくっていくんじゃないかなと。無理くりな運営をするということはちょっと想像できない。というのは、中国単体でシルクロード基金というのもつくっていますから、一〇〇パー中国のやり方でやれちゃうわけです、そこは。こっちの方は、いわゆる価値観を共有していくんじゃないかなという意味で。

 今回の点で問題というのは、情報収集のあり方にちょっと詰めが甘かったというふうな感じと、あとは、安倍外交が価値観外交とか自由と繁栄の弧とか言っていて、そこから逆に外れちゃったなという感じが否めないですね。その安倍内閣の外交の基本方針が、アメリカと日本が中心で価値観外交とか自由と繁栄の弧とやっていたのに、気づいたらみんな逆にそっち側に行っちゃったというような状況の一つだと思うんですね、全体ではないですけれども。

 ですから、また中国のプレゼンスが高まっていくという状況をしっかりと日本の外交戦略として考えていかなければいけないという点と、あと、やはり人民元が基軸通貨の一つになっていくという点に対して日本がどう対応していくかということも、今後、しっかり対策をとっていかなければいけない点であるというふうに思っています。

 ですから、現時点でまだAIIBに対する日本の最終的な態度表明はしていないとしても、それに入る入らないは別としても、今後の中国の主導する価値観と日本がどう対応していくか。委員でなくなりましたが、もとの外務大臣の松本議員も、大体、地球儀を俯瞰するという言葉がおかしいんだ、地球を俯瞰するのが正しいんだと。リアルな世界を見ていないから、こういう情報収集を間違って、対応を間違ったんじゃないかなというふうに今回ちょっと思ったんです。

 だから、的確に、地球儀俯瞰じゃないんですよ、ちゃんと地球を俯瞰して、自由と繁栄の弧という方向性も私はいいと思いますけれども、ちゃんとリアルな世界を把握する情報収集能力と分析能力と、そして今後の対応といったことを、やはり今回の案件で日本のそこの弱い点が明らかになったと私は思います。

 ここをしっかりと対応できる外交力の強化をしていかなければならないというふうに思いますので、そうした方向性についての答弁をお願いします。

岸田国務大臣 まず、我が国としましては、戦後七十年、自由、民主主義、法の支配、さらには人権、こういった基本的な価値観を重視しながら平和国家として歩んできた、世界の平和と安定に貢献してきた、この歩みについては誇りに思っておりますし、こうした基本的な姿勢のもとに、引き続き、世界の平和、安定、そして繁栄に貢献していかなければならない、こういった思いは全く変わりはありません。

 しかし、その一方で、おっしゃるような国際金融を初めさまざまな具体的な課題分野におきましては、さまざまな動きが存在いたします。これからの動きについても不透明なものがあります。やはりそうした現実を前にしましては、現実的で、そしてリアルに物を考え、したたかに対応する、国益のためにこういった姿勢もしっかり大事にしていかなければならないのではないか、このように考えます。

小熊委員 いずれにしろ、このAIIBについて、日本は、むちゃくちゃなことはさせないということはやっていかなきゃいけないので、中に入ってそれをしっかりやるのか、それとも、外側にいて、アメリカのように世銀で協調関係でいろいろな事業をやっていくというように、アジア開発銀行でどういうふうにAIIBに関与するか、どっちにしろ、関与はしなきゃいけないと思う。それは、どっちの選択肢をとるにしても大変なことだと思いますので、しっかりここは、地球を俯瞰して外交を展開していただくようお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

土屋委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 きょうは、日米防衛協力の指針、いわゆるガイドラインの再改定問題に関連して質問します。

 報道によれば、再改定後の新たなガイドラインは、自衛隊の活動に地理的制約をなくし、米軍支援の範囲や内容を拡大するというもので、安倍総理とオバマ大統領との首脳会談に先立って、四月下旬に外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2をワシントンで開き、ガイドラインの再改定を行う方向で調整中とありますが、岸田大臣、そのとおりですか。

岸田国務大臣 御指摘の具体的な日程につきましては、2プラス2をいつ開催するのか、さらには、見直し後の日米ガイドラインをいつ公表するのか、こうしたことについては、全く決まっておりません。今の段階で、御指摘の点については何も決まっていないのが現実であります。

穀田委員 それでは、少し聞きますけれども、大臣は、政府四演説の中におけるいわゆる外交演説や、安全保障政策にかかわる所信の中で、繰り返し、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している、こういう認識を示されておられます。具体的に何が念頭にあるのか、お答えいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、冷戦後の四半世紀だけをとってみても、国際社会におきましてグローバルなパワーバランスは変化をしています。

 また、技術革新の急速な進展、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発及び拡散、国際テロなどの脅威によって、このアジア太平洋地域において問題や緊張が生み出されています。今やこれらの脅威は容易に国境を越えてやってくる、こういった時代になったと認識をしております。

 さらに、近年では、海洋とか宇宙空間、サイバー空間に対する自由なアクセス及びその活用を妨げるリスクが拡散し、深刻化しているとも認識をしております。

 こうした状況を見るときに、もはやどの国も一国のみでは自国の平和と安全を守ることができない、こういった状況になってきています。こうした状況を指して、我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増していると認識をしていると申し上げた次第であります。

穀田委員 今お話を聞いていると、冷戦後から始まって、随分、国際情勢全般について、それはどこでも共通している内容をずっと言っているにすぎないんですよね。

 だから、私は、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していると判断される根拠、いわゆる日本の関係、取り巻く安全保障環境を言っているわけですから、その根拠を聞いているわけです。もう一度お答えいただければと思います。

岸田国務大臣 今申し上げたさまざまな状況については、確かに国際社会全体としても対応しなければいけない課題かと思いますが、私が特に申し上げたのは、アジア太平洋地域を念頭に申し上げております。アジア太平洋地域の安全保障環境を念頭に、今申し上げましたような点がこの四半世紀だけをとってみても大きく問題になり、そして、取り組まなければならない課題として取り上げられているのではないか、このように思っています。

 我が国にとって、先ほど申し上げましたようなさまざまな点、大変重要な課題であり、しっかりとこの安全保障環境の厳しさを認識した上で対応していかなければならないと考えています。

穀田委員 大臣は、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることへの対応が必要だとしまして、例えば国際情勢報告、つまりこの外務委員会における所信表明の中で、日本の領土、領海、領空を断固として守り抜くと、必ず連なってくるんですよね。

 では、一体どういった国を、領土、領空、領海を断固として守り抜く上で念頭に置いているのか、お答えいただけますか。

岸田国務大臣 海洋における法の支配の重要性あるいは海洋の航行の自由を守ることの大切さ、これは、近年、国際社会においても、そしてアジア太平洋地域においても、大変大きな課題として浮かび上がっています。

 東シナ海あるいは南シナ海におきましても、海洋の航行の自由を損なうような動きがあるということ、これは関係国共通の懸念となっています。

 こうした状況を捉えて、今申し上げましたような所信の内容になっている次第であります。

穀田委員 そうすると、東シナ海、南シナ海、そういう実態を一つ念頭に置いていると解釈していいと。

 そこで、安倍内閣が二〇一三年十二月に策定した防衛大綱では、「我が国を取り巻く安全保障環境」として、北朝鮮、中国、ロシアの動向について具体的な言及があります。例えば、中国については、「中国は、東シナ海や南シナ海を始めとする海空域等における活動を急速に拡大・活発化させている。」「こうした中国の軍事動向等については、」「今後も強い関心を持って注視していく必要がある。」と書かれています。

 岸田大臣の念頭には、これらの国の軍事動向があるということでよろしいか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、東アジア、アジア太平洋地域においてはさまざまな課題があり、そして緊張を生み出す問題が存在をいたします。こうした現実にあるさまざまな課題を念頭に置きながら我が国の安全保障について考えていく、これは当然のことではないかと思います。

穀田委員 さまざまなと言われますけれども、では、そこで聞きましょう。

 アメリカの国防総省でアジア太平洋地域の国防政策を統括するシアー国防次官補は、三月の二十七日、ワシントンでの講演で、ガイドラインの見直しによって自衛隊の役割が拡大し、東シナ海だけでなく、南シナ海の周辺海域で、日米の能力の強化や調整がさらに進むことになると発言しています。

 この発言からも、防衛省では、ガイドラインの再改定をめぐる協議の中で、自衛隊が南シナ海でも警戒監視活動などを行うことが既に検討されているのではないかと思うんですが、防衛省にお聞きします。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 報道でも言及のあった警戒監視については、南シナ海において、現在、自衛隊として常続的な警戒監視活動を行っておらず、また、その具体的な計画を有しているわけではございません。

 他方、防衛大綱及び中期防においては、警戒監視能力、情報機能の整備、強化や、アジア太平洋地域における二国間、多国間による共同訓練、演習の推進を行っていくこととしております。

 また、日米間では、現在、日米防衛協力の方向性について、ガイドラインを見直す作業について議論を進めているところでございます。

 国家間の相互依存関係が一層拡大、深化し、南シナ海における情勢の我が国の安全保障における影響も拡大、深化する中、南シナ海における日米防衛協力については、こうした我が国を取り巻く情勢、防衛大綱等の考え方、日米間の議論を踏まえて不断に検討していく課題と考えております。

穀田委員 今のは礎石を三つばかし言ったわけだけれども、この発言は私は極めて重要だと思っていまして、こうした発言は、シアー国防次官補だけではありません。米海軍第七艦隊のトーマス司令官も、ことし一月、通信社とのインタビューで、南シナ海での警戒監視活動に関しても日本に期待していると述べておられます。

 これに対して、中谷防衛大臣は、二月三日の記者会見で、「国家間の相互依存関係が一層拡大・深化して、南シナ海における情勢のわが国の安全保障に与える影響、」今もありましたけれども、「これも拡大・深化をする中で、」という発言がありましたよね、今同じことを言っているんですけれども、「わが国としてどのように対応すべきかについては、今後の課題である」と述べて、自衛隊が南シナ海での警戒監視活動を行う可能性を否定していないんじゃないですか。改めてお聞きします。

左藤副大臣 今の御質問ですが、先ほど申し上げたように、我が国を取り巻く情勢、防衛大綱の考え方、日米間の議論を踏まえて不断に検討していく課題だ、このように改めてお答えを申し上げたいと思います。

 具体的な計画を有しているわけではございません。

穀田委員 では、課題としては否定しないということですね、さっきと同じ話、答弁をしているだけにすぎないんだけれども。

 では、聞きますけれども、防衛省統合幕僚監部防衛計画部の二〇一二年七月付の資料があります。これは、この間、私は予算委員会でやりましたけれども、「取扱厳重注意」と記されたこの資料には、「我が国を取り巻く安全保障環境」としまして言っているわけですけれども、北朝鮮、中国、ロシアの軍事動向を整理した上で、「軍事的な挑発行為を続ける北朝鮮や活動を活発化させるロシアに対応するとともに、急速に拡大する軍事力を伴い、野心的な海洋進出を図る中国に対抗できる防衛力を備えることが大きな課題」だと記されています。これなんですけれどもね。

 その中で、とりわけ中国について、「中国の軍事戦略」として、「台湾有事、朝鮮半島有事、島嶼紛争等の局地紛争への対処を想定」など、中国側の現状認識を明記しています。

 「戦力の運用」として、「東シナ海・西太平洋」では、「日米プレゼンスの抑制や自国影響力の拡大」「東シナ海における海洋権益(尖閣等)の拡大」「有利な作戦環境の作為及び防御縦深の拡大」として、「台湾・島嶼侵攻を想定した「海上・航空優勢」、「着上陸侵攻」等の統合作戦能力の向上」などを挙げています。

 また、「南シナ海」では、「南シナ海の支配に向けた既成事実化」として「島嶼侵攻の能力の強化」を、「インド洋への進出等シーレーンの安定確保」として「軍事力を背景とした政治的な威嚇」などと列記しています。

 防衛省では、こうした分析を行ってきたことは間違いありませんね。

左藤副大臣 お答え申し上げます。

 今の御質問ですが、今おっしゃった文書、いかなるものか私は存じ上げていませんので、お答えを差し控えたいと思います。

穀田委員 何か使うと、都合が悪いと大体そういうふうに言いますが、この間、同じ資料を出したときに、防衛大臣は、議論をやって、今も来たように、後ろからアドバイスがあって、四回目の質問のときに承知していないという話をするわけやね。三回はその文書を前提にしてやっているんですよね。せやから、余り、知らない知らない、承知していないと言うのもいかがなものかと思います。

 そこで、中身についてどうなんやと聞いているわけですやんか。そういう分析を行っているのかと。

 では、もう一つ言いましょう。さらに重大なのは「対中防衛の考え方」、これですよ。見ていないとしたら、よほど疎外されておるんかいなと思わざるを得ないんやけれども。そこになりますと、「抑止(平時)」から「対処(有事)」に至る日米の事態への対処が具体的に記されていることであります。

 「抑止」では、「広域・常続的な警戒監視等の強化及び所要の対処準備による強固な防衛態勢の確立とともに、米軍との緊密な連携により、中国の影響力拡大及び武力行使を抑制」とあります。そして、活動範囲は、「中国の関心の高い海域での展開」として、「南西諸島、東シナ海、南シナ海、グアムまでの西太平洋及びインド洋等」としています。

 さらに、「対処」、いわゆる有事では、「日本の主体的な行動及び米軍との共同作戦をもって、これを阻止」するとして、「周辺の航空・海上優勢を確保するとともに、機動展開により作戦基盤を確立」「米軍の来援基盤の確立を推進し、更なる米軍との共同対処」などを行うと明記されています。

 このように、防衛省では、対中防衛として、平時から有事までの事態を想定し、南シナ海やインド洋を視野に、既に日米で共同作戦を展開する検討を行ってきたのではありませんか。

左藤副大臣 失礼します。

 防衛省・自衛隊としては、さまざまな検討をすることは当然だと思っていますが、今おっしゃったこの資料については私も存じ上げておりませんので、コメントのしようがございませんので、お許しいただきたいと思います。

穀田委員 さまざまな検討を行っているということと、資料はわからない、こう言う。

 ということは、さまざまな検討の中に、私が述べた資料のような、「対中防衛の考え方」「抑止(平時)」「対処(有事)」というところまで、左藤さんがおっしゃるところのさまざまな検討という中には入っておられましたか。

左藤副大臣 先ほど申し上げたように、それについてはまだ見ておりませんので、確認ができておりません。

穀田委員 見ていないから確認できない。

 ということは、確認したらあるかもしれないということですか。

左藤副大臣 それについては確認をしておりませんので、コメントはできません。

穀田委員 余り同じことを言わせんといてや。確認したらあるのやったら、次、ありました、言わなあきませんわな。

 しかし、今私が言っているのは、では、そういう内容が、平時だとか有事だとか、南シナ海に行くでとかいうことは議論しているのですかと言っているんですよ。

左藤副大臣 今おっしゃったように、いろいろなこと、さまざまなことを検討するのは当然で、改めて申し上げます。

 しかし、詳細についてはコメントを控えさせていただきたいと思います。

穀田委員 私は、今述べましたように、「我が国を取り巻く安全保障環境」というところで、「中国に対抗できる防衛力を備えることが大きな課題」だと。これは、前から一般論としては言っているわけです。そして、「中国の軍事戦略」の分析の内容と、そのときに、「対中防衛の考え方」、私はこういう三つの話をしているわけですよ。だから、中身について言っているわけです。

 つまり、もう一度言いましょうか。安全保障環境というのは、中国に対抗できる防衛力を備えることが大事だということが一つ、それから二つ目に、中国の軍事戦略を、南シナ海やインド洋への進出をやろうとしているという分析をしているということと、そういうものに対応する場合に平時と有事ということを考えている、この三つのことを言っているんだけれども、その三つの内容は、では検討したことはないのかと聞いているんです。

左藤副大臣 失礼します。再度お答えを申し上げます。

 当然、我が国を取り巻く安全保障、これは全般を踏まえて、特定の国を云々じゃなくて、全般を踏まえて、そういういろいろな検討、さまざまな検討をさせていただいております。

穀田委員 少し話が後ろへ来ましたね。つまり、最初は特定の国と言わずにそういう検討はという話をしていたけれども、一つずつ具体的に聞き出すと、そういう特定の国はしていないということになる。

 私は、それは違うという意見なんやね。もし、そういう話を私らが言いますやんか。そんな重大なことをやっていますかいなと言うのが筋ですやんか。そう思いませんか。

 だって、平時や有事ということまで私は出しているわけやから、文書は知らないとか、さまざまな検討をしているとか、特定の国はやっていないとかという話をあれやこれや言うんじゃなくて、やはり、平時から有事まで、事を構えることまでしているということについては、絶対していないんだったらしていない、そんなことをすることがありますかいなというのだったらそうする。そういう話は必要じゃないですか。

 それを、確認しますだの、それから、さまざまな検討をしますだのという話でやるほどのことでは困る。こんなことをもしやっているとしたら、世界に、こんな、平時、有事、中国との事を構えることまで考えているということが明らかになったら、私は極めて大事なことだと思うんですよね。

 これは、私は、何も単に今の話をしているだけじゃなくて、きょうの新聞でもトーマスさんは言っていまして、きのうの横浜での会見でもしていますように、南シナ海まで行ってもらう、世界じゅうどこでも自衛隊が一緒にやってもらうということまで言っているわけでしょう。そういう発言からしましても、一つ一つの事実を積み上げていった場合に、私は極めて重大な問題だと言わざるを得ない。

 そこで、岸田大臣に聞きますけれども、自衛隊は、確かに現在、南シナ海では警戒監視活動を行っていない。しかし、今後、そんなふうな発想に基づいて活動範囲を南シナ海まで拡大するならば、中国と日本の間の緊張が激化することは火を見るよりも明らかだと思うんですね。まさに、大臣が言うところの、外務大臣としての演説の中にありますように、不測の事態が発生する可能性も否定できない、こういうふうに思うんですが、いかがですか。

岸田国務大臣 外務大臣の立場から申し上げることとしましては、安全保障を考える場合に、まず外務省として果たすべきことは、力強い外交を進めることによって、安定した国際環境を創出し、さまざまな脅威の出現を未然に防ぐこと、これが何よりも重要だということであります。

 外務省としましては、引き続き、しっかりとした国際環境、安定した国際環境創出のために、しっかり外交を進めていきたいと考えております。

 その上で、日本の安全保障を考える上で、防衛省としましても、しっかりとさまざまな備えを考え、そして日米の安全保障体制についても考えていくことになるのではないかと考えます。

穀田委員 私は、当委員会において先日質問しましたよね、日中韓外相会議での共同報道発表に言及しました。この文書にあるように、「三外相は、」「三か国協力の深化が翻って各二国間関係及び北東アジア地域の平和、安定、繁栄に貢献することを強調した。」こうあります。さらに、「二国間関係を改善し、三か国協力を強化するために協力することで一致した。」ということを述べて、みんなで一致したばかりではありませんか。

 そのときに、岸田大臣、ガイドラインの再改定による自衛隊の活動範囲の拡大は、もし先ほど言ったようなこと、こういうようなことを含めて考えているとしたならば、三カ国会議での合意を日本みずからがほごにすることになるのではありませんか。

岸田国務大臣 まず、日米ガイドラインの議論につきましては、ことしの前半をめどに、引き続き議論が続いているものだと承知をしています。具体的な中身については、今の段階で何か申し上げるのは控えなければならないと思っています。

 いずれにしましても、我が国としましては、さまざまな二国間関係、多国間関係をしっかり活用しながら、東アジアの安定のために努力をしていかなければならない。外務省としては、そうした大きな責任を担っていると考えています。

穀田委員 昨年十一月に行われたASEANと中国の首脳会議では、中国とASEANが二〇〇二年に調印した南シナ海の当事国の行動に関する宣言、DOCの全面的かつ効果的な実施を進め、法的拘束力を持つ南シナ海行動規範で早期に妥結する考えを改めて表明したと聞いております。

 こうした方向が南シナ海問題の平和的解決にとって重要なことは、岸田大臣自身も、各種の国際会議、例えば東アジア首脳会議参加国外相会議だとか、第二十回ASEAN地域フォーラム閣僚会議で述べてきたことだと思うんですね。

 先ほど中国の話をしましたけれども、そういう意味では、自衛隊の活動範囲の拡大というのは、南シナ海問題の平和的解決に逆行することになるのは明白だと私は思うんですね。その辺、いかがですか。

岸田国務大臣 日米ガイドラインの議論、そして自衛隊の行動につきましては、今議論が行われている最中でありますので、何か申し上げるのは控えさせていただきます。

 我が国としましては、従来から申し上げておりますように、海洋における法の支配の重要性、三原則を、昨年、シャングリラ・ダイアログの場で安倍総理からももう表明させていただいておりますが、こうした考え方に基づいて地域の平和と安定が保たれることが重要だと認識をしております。

 DOCの議論、そしてCOCの議論、そして、ことしはASEAN共同体の実現に向けて重要な年だと認識をしております。こうしたさまざまな平和と安定への取り組みが前進することをしっかりと期待し、日本の責任を果たしていかなければならないと考えます。

穀田委員 今、議論の最中なので差し控えたいとありました。

 先ほど私は指摘しましたけれども、トーマス第七艦隊司令官はガイドラインの見直しについて言っているわけですよ。「柔軟性が向上し、自衛隊と世界中のどこでも共同して部隊を運用できるようになる。」こういうことまで言っている。私は、けしからぬと言っているわけですよ。

 それともう一つ、今言ったように、先ほど私が明らかにした防衛省の文書によれば、中国に対しては明確な、そういう平時、有事とまでやっているような考え方までして、南シナ海まで行くというようなことをしている。

 こんなことではだめだ。こういうことは、あなたがおっしゃった平和の構築ということからしても極めて危険な考え方だ。そういう点からしますと、日米ガイドライン再改定は中止すべきだということを強く求めて、終わります。

土屋委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党と山本太郎となかまたち、玉城デニーです。

 質問の前に、きょうは四月一日です。きょう、二〇一五年四月一日は、一九四五年、米軍が沖縄本島に上陸して七十年です。これが四月一日です。

 三月二十六、二十七日に慶良間、座間味島に上陸した米軍は、態勢を整え、四月一日に上陸いたします。本島中部の読谷、北谷海岸から一斉に上陸し、水平線が米軍の船で真っ黒だったという戦争体験者の話にもあるとおり、上陸部隊だけでも十八万三千人余りという兵力を投入して、日本の軍隊、兵士のみならず、沖縄の住民も犠牲となった戦火が繰り広げられていきます。

 四月一日の上陸以降戦没した県民は、判明しているだけでも十万四千人に上り、戦没者の遺骨は、兵士、住民を問わず、収容作業が七十年も経て今なお続けられています。沖縄戦最後の激戦地となった摩文仁に建つ平和の礎には、国の内外を問わず犠牲となられた方が、二〇一三年六月二十日までに二十四万一千名余りとなっています。

 占領された米軍基地からの爆音被害、環境汚染被害、あるいは米軍人軍属による事件や事故は、沖縄に米軍基地が集中することと比例して発生しています。よく、時代を振り返るときに、あれから何年たった、例えば、あれから七十年たったというふうなノスタルジックなそういう思いとは全く正反対に、あのときから今もなお、戦争があったというその歴史の事実が、沖縄県民の日常生活に暗い影を落とし続けています。

 そのことを、くしくも四月一日に外務委員会が開催されるという冒頭に当たって、申し述べておきたいと思います。

 では、ここから質問に入らせていただきます。

 沖縄県の米軍普天間飛行場の移設先であります名護市辺野古沿岸部で進められている海底ボーリング調査を含め、翁長知事が、三月二十三日、海底面の現状を変更する行為を全て停止することを沖縄防衛局に文書で示しました。県は、許可区域外の作業でサンゴ礁を損傷させた可能性が高く、工事を続けるには新たな岩礁破砕許可が必要と主張もしています。

 この翁長知事が出した作業停止指示についての見解から、まず伺いたいと思います。

原田大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 三月二十三日、沖縄防衛局は、沖縄県知事から、代替施設建設事業に係る岩礁破砕等の許可に関し、同県による調査が終了し、改めて指示するまでの間、海底面の現状を変更する行為の全てを停止するよう指示する旨の文書を受領いたしました。

 これを受けまして、三月二十四日、沖縄防衛局職員が沖縄県庁を訪問し、一部区域におけるアンカーの設置を理由に全ての施行区域における全ての現状変更行為の停止を求めることは不当であること、本件アンカーの設置は地殻そのものを変化させる行為ではなく、岩礁破砕に当たらないこと、今般指示でコンクリート製構造物の設置が許可申請外の行為であるとしたことは、以前より沖縄県が沖縄防衛局に対して示していた内容に反すること、沖縄県内で国を事業者として行われた同種事案においても、本件と同様のアンカーの設置は岩礁破砕許可手続の対象とされていないこと等の説明をさせていただきました。

 その上で、沖縄防衛局は、三月二十三日の沖縄県知事の指示は無効なものであり、現在行っている作業を中断する理由にならない旨を記した文書を沖縄県に手交させていただきました。

 さらに、本件自体が無効なものであることを明らかにするため、三月二十四日、沖縄防衛局長から農林水産大臣に対し、審査請求書及び執行停止申し立て書を提出いたし、三月三十日、農林水産大臣から執行停止の申し立てが認められたところであります。

 今後、審査請求についても、法令にのっとって適正に審査されるものと認識をいたしております。

玉城委員 その三月二十四日、農水大臣への無効申し立てについて、この農水大臣への経緯については、翁長知事が出した作業停止は、沖縄県漁業調整規則の中にある項目に従って出されております。

 その六項目めには、漁業調整そのほか公益上の事由等により別途指示をする場合はその指示に従うことという、そのことが明記されている、いわゆる岩礁破砕の許可に関しての項目です。そして、もしその指示に従わない場合、付した条件に違反した場合は許可を取り消すことがあるというふうにも、この許可書の中では、指示に従わない場合にはまたそれ以降のことも考えますよというふうなことが書かれているわけですね。

 では、農水省にお伺いいたします。

 沖縄防衛局から農林水産大臣への無効申し立てについて、農水省はどのような見解をお持ちでしょうか。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、二十四日に審査請求と執行停止の申し立てが出てまいりました。

 沖縄県の漁業調整規則の第三十九条につきましては、岩礁破砕等を行うに当たって必要な沖縄県知事の許可につきまして、国が事業者である場合を特に除外してございません。このように、国が事業者である場合にも沖縄県知事の許可が必要であることは、私人が事業者である場合と変わらないというべきであることから、沖縄防衛局にも申立人の適格が認められるということを解することが相当であると考えまして、執行停止、また、現在、審査請求の審査を行っているところでございます。

玉城委員 行政不服審査法は、本来であれば国民が何らかの害をこうむったときに行政に対して不服を申し立てる、そういう立法の趣旨があるはずですが、ここでは、それは行政と行政の関係ではなく、その法に照らして適法である、適正であるというふうに言っているようであります。

 法の内容については、また後刻しっかり議論させていただきますが、林農水大臣による執行停止決定書のポイントというのがあります。

 まず、県の停止指示は行政処分に当たるということ、国にも不服審査請求の申し立ての資格があり、防衛局の申し立ては適法であるということ、この二ポイント目は先ほどお答えいただいたとおりだと思います。

 しかし、普天間周辺住民の危険性や騒音の継続による損害、日米両国間の信頼関係への悪影響による外交、防衛上の重大な損害が生じるということ、損害を避ける緊急性があるということというふうに、農林水産大臣の見解とはまた異なる見解がそこに付されているということがあります。

 このことについて、日米間の関係性と農林水産大臣の決定理由の関係について御説明をお願いします。

枝元政府参考人 お答え申し上げます。

 行政不服審査法におきます執行停止の要件は、一点目といたしまして、重大な損害を避けるための緊急の必要性があること、二点目といたしまして、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないこととされており、これらは、当事者が提出する書面によりまして双方の主張を勘案して、審査庁が判断するものでございます。

 まず、一点目の損害の要件につきましては、処分による損害は、処分の内容や審査請求人の行う行為の目的によってさまざまであり、必ずしも処分の根拠となる法律や審査庁の所掌に限定されるものではございません。

 本件について申し上げれば、この工事の目的は普天間飛行場周辺住民に対する危険性や騒音の除去等であり、工事がおくれることによりまして、これらの危険性や騒音の継続による損害が生じ、日米両国間の信頼関係への悪影響による外交、防衛上の損害といった回復困難で重大な損害が生じ、当該損害を避ける緊急性があるとする審査請求人の申し立てを相当と認めたものでございます。

 一方、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがないという要件につきましては、処分庁である沖縄県知事から、工事を停止しなければ岩礁破砕の確認調査ができなくなるという主張をいただいているところでございます。この点につきましては、工事を停止しなくても確認調査を実施することは可能であり、必ずしも認められないというふうに判断をいたしました。

 これらの理由から、執行停止の要件に該当するとの判断をしたものでございます。

玉城委員 沖縄県側が、最初に、どうも岩礁破砕、サンゴ礁を潰している蓋然性が高い、その可能性が高いということで、調査をさせてくれというのが、今回のそもそもの話だったと思います。それが、調査ができないということであれば全ての工事を中止せよというふうな流れになってきているわけなんです。

 では、防衛省にお伺いいたします。

 この岩礁破砕に関する沖縄県側との協議については、どのような経緯で行われたものでしょうか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 本事業におきましては、岩礁破砕等に関しまして、海上ボーリング調査の実施に伴う協議及び埋め立て等の工事に伴う許可申請の手続を行っております。

 このうち、ボーリング調査に向けた沖縄県との事前打ち合わせの際、浮標、ブイの断面や設置数が記載された協議書の案を御提示したところ、同県の担当者から、ブイの取り扱いについて内部で確認する旨の御発言があり、後日、他の事例を踏まえれば、ブイの設置については岩礁破砕等に係る手続の対象とならない旨が口頭にて示されました。

 また、埋め立て等の工事に伴う許可申請に当たりましても、許可申請の案を事前に県担当者に送付したところ、後日行われた打ち合わせにおいて、県担当者から、ブイの断面図及び設置場所の記載部分を削除するよう指示されたものでございます。

玉城委員 今、県の方から、岩礁破砕にならないという口頭の説明、それから、アンカーの形状を記した書類も添付しなくていいということで削除したということですが、その県側と防衛省側が協議を行った際に、確認できる文書等はありますか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 岩礁破砕等に関する協議また申請につきましては、昨年の七月十一日に、岩礁破砕等に関する協議書、そして岩礁破砕等許可申請書を県に提出したところでございます。それに対しまして、七月の十七日、協議書に対する回答書、また八月の二十八日に、申請書に対する許可をいただいたところでございます。

 この正式な手続の前段階といたしまして、五月中旬以降、県の事務当局と、ボーリング調査に伴う協議書について事前調整をしてきたところでございます。

 先ほども御説明いたしましたように、ボーリング調査に伴う協議に向けた沖縄県との事前打ち合わせの際、ブイの断面や設置数が記載された協議書の案を提示したところ、同県の担当者から、ブイの取り扱いについて内部で確認する旨の御発言、これは六月四日でございますが、ございまして、後日、他の事例を踏まえれば、ブイの設置については岩礁破砕等に係る手続の対象にならない旨、口頭にて示されたところでございます。これは六月二十日でございます。

 また、埋め立て等の工事に伴う許可申請に当たりましても、許可申請書の案を事前に県担当者に、六月二十日、メールで送付をいたしましたところ、後日、六月二十四日に行われました打ち合わせにおいて、県担当者から、ブイの断面図及び設置場所の記載部分を削除するよう御指示をいただいたというところでございます。

玉城委員 済みません、最後に確認をさせてください。

 その一連の作業の中で、六月二十四日のメールですね、これは、口頭ではなくメールでやりとりをしたということでよろしいですか。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 六月二十日に沖縄防衛局の方からお送りしたメールの図表に対して、六月二十四日の打ち合わせの席で、設置場所等の記載部分を削除するよう指示をいただいたところでございます。

玉城委員 一点確認させてください。

 だから、それが口頭で済まされてしまったのか、それとも、確認してお互いが了としたその経緯についての確認の書面がありますかということです。

山本政府参考人 お答えいたします。

 失礼いたしました。口頭で御指示をいただいたところでございます。

玉城委員 こういうふうな、口頭でやった、文書でやったという経緯について、非常に曖昧な部分が散見されるわけです。ですから、重ねて私は質問させていただきましたが、この件については、さらに厳しい状況に進んでいくことを考えると、しっかりそこの確認作業をしなければいけないと思います。

 大臣、済みません、残余の質問は、予定しておりましたけれども、また後日質問させてください。

 以上で質問を終わります。ニフェーデービタン。

     ――――◇―――――

土屋委員長 次に、内閣提出、緑の気候基金への拠出及びこれに伴う措置に関する法律案を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 緑の気候基金への拠出及びこれに伴う措置に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました緑の気候基金への拠出及びこれに伴う措置に関する法律案につきまして、提案理由及びその概要を御説明申し上げます。

 緑の気候基金は、気候変動に関する国際連合枠組条約に基づく資金供与の制度の運営を委託された開発途上国の温室効果ガス削減と気候変動への適応を支援する多国間基金であります。

 国連気候変動交渉において、緑の気候基金を早期に稼働させ、これを通じた途上国支援を行うことにより、気候変動対策に関する二〇一五年の新たな枠組み合意に向けた交渉を推進させるべきとの国際的な機運が高まったことを受け、我が国は、二〇一四年十一月のG20サミットにおいて、安倍総理から、国会の承認を前提として、十五億ドルの拠出を表明しているところであります。

 この法律案は、この拠出表明を踏まえ、緑の気候基金に対する我が国からの拠出及びこれに伴う措置について定めるものであります。

 次に、この法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、政府は、緑の気候基金に対し、予算で定める金額の範囲内において、本邦通貨により拠出することができることとするものとしております。

 第二に、政府は、緑の気候基金に対して拠出する本邦通貨の全部または一部を国債で拠出することができるものとし、当該国債の発行条件、償還等については、国際復興開発銀行の例に準ずるものとするものとしております。

 第三に、緑の気候基金の保有する本邦通貨その他の資産の寄託所としての業務は、日本銀行が行うこととするものとしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願い申し上げます。

土屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会


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