衆議院

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第6号 平成14年4月3日(水曜日)

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平成十四年四月三日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 鉢呂 吉雄君
   理事 岩永 峯一君 理事 大村 秀章君
   理事 金田 英行君 理事 原田 義昭君
   理事 佐藤謙一郎君 理事 鮫島 宗明君
   理事 白保 台一君 理事 山田 正彦君
      相沢 英之君    岩倉 博文君
      岩崎 忠夫君    梶山 弘志君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      北村 誠吾君    熊谷 市雄君
      小西  理君    後藤田正純君
      七条  明君    高木  毅君
      竹本 直一君    西川 京子君
      浜田 靖一君    三ッ林隆志君
      森岡 正宏君   吉田六左エ門君
      加藤 公一君    小平 忠正君
      後藤  斎君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    楢崎 欣弥君
      堀込 征雄君    山内  功君
      江田 康幸君    高橋 嘉信君
      大森  猛君    中林よし子君
      松本 善明君    菅野 哲雄君
      山口わか子君    藤波 孝生君
    …………………………………
   農林水産大臣       武部  勤君
   厚生労働副大臣      宮路 和明君
   農林水産副大臣      遠藤 武彦君
   会計検査院事務総局第四局
   長            有川  博君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房長) 田原 文夫君
   政府参考人
   (農林水産省総合食料局長
   )            西藤 久三君
   政府参考人
   (農林水産省生産局長)  須賀田菊仁君
   政府参考人
   (農林水産省経営局長)  川村秀三郎君
   政府参考人
   (食糧庁長官)      石原  葵君
   政府参考人
   (水産庁長官)      木下 寛之君
   参考人
   (農林漁業金融公庫総裁) 鶴岡 俊彦君
   参考人
   (BSE問題に関する調査
   検討委員会委員長)
   (女子栄養大学大学院客員
   教授)          高橋 正郎君
   参考人
   (BSE問題に関する調査
   検討委員会委員)     岩渕 勝好君
   参考人
   (全国農業協同組合連合会
   代表理事専務)      堀   喬君
   参考人
   (酪農家)
   (宗谷BSEを考える会会
   長)           田中 滋久君
   農林水産委員会専門員   和田 一郎君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月三日
 辞任         補欠選任
  高木  毅君     三ッ林隆志君
  宮腰 光寛君     竹本 直一君
 吉田六左エ門君     森岡 正宏君
  川内 博史君     加藤 公一君
  松本 善明君     大森  猛君
同日
 辞任         補欠選任
  竹本 直一君     宮腰 光寛君
  三ッ林隆志君     高木  毅君
  森岡 正宏君    吉田六左エ門君
  加藤 公一君     川内 博史君
  大森  猛君     松本 善明君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 会計検査院当局者出頭要求に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)
 農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案(内閣提出第二二号)
 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
鉢呂委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案及び農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、参考人として農林漁業金融公庫総裁鶴岡俊彦君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として農林水産省生産局長須賀田菊仁君、農林水産省経営局長川村秀三郎君及び食糧庁長官石原葵君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第四局長有川博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内功君。
山内(功)委員 民主党の山内功でございます。
 大臣、きのう出ましたBSE調査報告書はよく読みましたか。
武部国務大臣 よく読ませていただきました。また、これまでの議論の経過も公開で行われておりますので、逐次、その議論を踏まえて、できることから、どんどん改革に向けてのプランニングも立てさせていただいております。
山内(功)委員 その中で、どのような指摘に改めて責任の重さを自覚しましたか。
武部国務大臣 やはり、私どもが厚生労働大臣とBSE問題に関する調査検討委員会を私的諮問機関として設置したそのときの動機は、BSE発生時、私は、行政に構造的な問題がある、どうしてBSEの侵入を防げなかったのかと。仮に、ゼロリスクということが難しいとしても、リスクに対してそれを低下し、危機対応マニュアルも、厚生労働省や都道府県としっかり協議してつくり上げていれば、初期段階におけるあのような混乱はなくて済んだのではないか。
 一口に言うならば、農林水産省という立場で考えますと、生産者サイドに軸足を置いていた農政、これを今消費者サイドに大きく軸足を移して、食と農の再生ということについて真剣に取り組んでいかなければならない。食品の安全問題につきましても、総理からも、法整備あるいは行政組織対応システムについても検討を指示されました。
 私どもは既に、ちょっとお見せしますが、食と農の再生プラン、消費者に軸足を置いた農林水産施策へ転換しますというそのプランニングを策定し、最終局面の検討をいたしているわけでございます。安全で安心な食、安全で安心なフードシステムの構築を目指していかなければならないということを痛切に感じた次第であります。
山内(功)委員 まずは農水省に危機意識の欠如、そして失政があった、そういう指摘ではないのですか。国民はもとより、与党の大幹部の皆さんからも大臣を辞任すべきだというような指摘をされていますけれども、どう考えているのでしょうか。
武部国務大臣 私は、先ほども申し上げましたように、BSE発生時、危機管理意識の希薄さ、縦割り行政の弊害、行政に構造的な問題がある、したがって役人任せにはできない、政治主導で執念を持ってこの問題究明、そして問題解決に全身全霊を打ち込んで努力していこう、こういう決意で臨んできたわけでございます。
 このたびの御報告を受けまして、農林水産省に対して厳しい御指摘がございました。とりわけ一九九六年時における肉骨粉の禁止を行政指導にしたということについては、これは大きな失政である、重大な失政であるという指摘もございました。そういったことを踏まえて、私どもは農林水産省の姿勢を正す、同時に、農林水産政策の抜本的な見直し、改革を断固として続行するという決意で臨んでまいりたいと思います。
 今、まさに私の立場からいたしますと、大変な手術の真っただ中に立って真剣に手術を行っている、メスを投げ出すわけにはいかない、最後までやり抜かなければいけない、仕事を投げ出してはいけないという決意で改革に向けての努力を続けていきたい、かように決意を新たにしている次第でございます。
山内(功)委員 そのメスは、次の医師がたくさんおられて、あなたにかわってほしいと言っているんじゃないですか。小泉内閣が一内閣一大臣ということを決めているから、その言葉に安住して、自分がやめると言わない限り総理がやめさせることはないだろうと思っているのではないんですか。
武部国務大臣 そういう気持ちは毛頭ありません。私自身、農林水産省の最高責任者として非常に大きな責任を感じているのでございます。
 BSE発生後六カ月を経過いたしました。私自身の反省点もたくさんあります。しかし、この問題の根の深さ、種々この調査検討委員会で御指摘いただいたとおりだ、このように受けとめておりまして、私自身が、この問題解決、改革に向けて本当に命がけで努力していかなきゃならない立場に私はある、こう考えておる次第でございます。針のむしろという言葉がございますけれども、私は、非常に厳しい立場に立ちながらも、これをやり遂げていく、困難を克服していく。特に今農林水産省、いろいろ御指摘ありますけれども、改革の緒についたところでありまして、非常にいい体制になりつつある、私はこう考えております。
 みんなで、国民の皆様方の信頼を取り戻すためには時間がかかるでしょう。しかし、さまざまな対策についてもいろいろ講じさせていただきました。今が一番大事なときだ、こう思っている次第でありまして、ぜひ国民の皆様方にも、最後までやり遂げさせていただきたいということの御理解をお願いしたい、こう思っている次第でございます。
山内(功)委員 大臣は、昨年四月に大臣を拝命されたときに、BSEについて、自分も研究しなくてはいけないかなとは思われたんでしょうか、就任時に。
武部国務大臣 就任時、私は総理から、武部君、小泉内閣は改革断行内閣だ、頼む、こう御指示をいただいたときに、農林水産政策においても、大胆な改革に打って出ようということで、「食料の安定供給と美しい国づくりに向けて」という、いわゆる武部私案というものを発表させていただきました。その二番目のところで、安全と安心による食料確保の構築、システムをつくり上げて消費者の信頼確保に努める、そういうことを一つの大きな柱にさせていただきました。
 BSEの問題に限らず、やはり今後の農林水産省の行政というのは、生産者サイドから消費者サイドに軸足を移して、食の安全、安心ということ、消費者保護第一という視点で進めなきゃならないという問題意識を強く持っていた次第でございます。
山内(功)委員 もしBSEについて問題意識を持っておられたんだとしたら、大臣自身が、就任後、我が国で一頭目が発見されるまでの間、外国からさんざん注意を受けていたにもかかわらず何の対策も立てなかったという責任がより強くなると思いますよ。
 坂口厚生労働大臣は、前任の大臣のときのことまで責任とって辞任するなら首が幾つあっても足りないというような発言をされていますが、武部大臣の場合にはその言葉は全く当てはまらないと思うんですけれども、どう考えていますか。
武部国務大臣 行政というものは継続性のあるものでございます。過去の行政対応の問題につきましても、そのことをしっかり検証し、どこに問題があるか、どこをどのように改革していかなければならないかということをしっかり把握した上で、将来に向けて適切なリーダーシップを発揮していかなければならない立場にあるのが私の立場だ、かように思います。
 さような意味で、反省することは非常にたくさんあります。同時に、先ほど申し上げましたように、安全と安心ということを中心にした食料の安定供給、そして消費者の信頼確保という一つの柱は、私は、就任して以来、的確な判断だった、このように思っておりますが、具体的な問題については、私自身も、就任時、数々あったことを反省しなければならない、こう思っておりますし、その反省点に立って相当な改革へ向けての農林水産省施策の見直しというものも進めてまいった、そのことも自負している次第でございます。
山内(功)委員 大臣は、つい本音が出やすい選挙の後援者の集まりで、感染源を解明することは大きな問題ではないと言ったり、牛肉ステーキを食べるパフォーマンスの際には、後で、急に会場に行けと言われた、口を大きくあけておいしそうに食べろと言われたなどと国会で答弁される。鈴木宗男議員は、北方領土返還を一番考えていると言っておりながら、本音の部分では、あんな開発にまだまだ三十兆円もかかるようなところが返還されても困ったもんだと本音を言う。
 鈴木議員と武部農林水産大臣は、私は同じと思うんですけれども、どこか違うんですか。
武部国務大臣 全く本質が違うんじゃないでしょうか。
 私は、感染源の究明が大きな問題かと言ったことは一度もございません。根室での会合でも、私は、農林水産大臣としての冒頭のあいさつで、人の生命と健康に影響を与えない体制、すなわち全頭検査体制をまず優先しました。それからもう一つは、さまざま影響を受けている皆さん方に関連する対策に全力を挙げます。それから三つ目には、感染源の究明、このことについては農林水産省が一番エネルギーを費やしているところでございます。この三つを柱に、今真剣に努力をしているということを冒頭のあいさつで申し上げました。
 その後の対話の中で、感染源の究明と牛肉の安全性の問題とは切り離して考えていただけないものでしょうか、牛肉は全頭検査によって安全を証明したもの以外は流通しない体制になったんです、この点についてどう思いますかと。これに対して、一人の組合長さんは、いや、やはり感染源の究明がなされないと消費は伸びないと思う。もう一人の組合長さんは、牛肉と牛は別に考えるべきだ、牛肉は、流通しているものは安全になった、安心できるものになったんだ、これは農業団体としても大いに宣伝しよう、そういう話でございました。
 感染源の究明が牛肉の安全性の問題にとってそんな大きな問題ですかという私の質問に対してそう答えているわけでございまして、私は、そういう感染源の究明が大きな問題かなどと思ったことはみじんもありませんし、そういう言い方はしていないのであります。ただ、そのことが新聞等で報ぜられて、国民の皆さん方に誤解を与えたということについては私の不徳のいたすところ、まことに申しわけないという思いがいっぱいでありますし、そのことによって関係者の皆様方に多大な御迷惑をおかけしたということについては、率直におわびをしなければならない。であればこそ、その後、深い反省に立って、さまざま努力を傾注している、改革に全力を尽くしているというふうに御理解をいただければありがたいと思います。
山内(功)委員 国民は、最も適切な時期に出処進退を決めない政治家の態度、真実を語らず言いわけばかりに終始する国会議員の姿にうんざりとしています。今、辞任しないと言われた。あしたとか近日中に、やはりやめますと言えば、それこそ、本日の衆議院での発言の軽視、そして政治不信です。
 どんな圧力があろうと絶対やめないという大臣の決意を、それじゃ最後にもう一度聞かせてください。
武部国務大臣 私は、最初も申し上げましたように、いろいろな責任のとり方はあろうと思います。やめるのは簡単なんだろうと思います。しかし、今私に課せられている責任というものは、まさに改革の途上にあって、その真っただ中にあって、これを投げ出すわけにはいかない、やり抜かなければいけない。そのために泥まみれになってでも全力を尽くすというのも、責任のとり方なのではないでしょうか。
 今、本当にBSE問題について、食品の安全の問題を中心に非常に大事な局面にある。そして、私どもも、二月以来、食と農の再生プランというものの策定に省内挙げて取り組んでいるわけでありますし、そのことも間もなくでき上がるというところまで来ているわけでございまして、私は、総理からも、正確に科学的に食の安全の問題について、消費者の皆さん方、国民の皆さん方に的確に伝えるとともに、やるべき仕事についてしっかりやり通すということが農林水産大臣の当面とるべき責任ではないかというような御指摘もいただいておりますので、総理のそうした御指示に従って、農林水産大臣としての職責を全うしてまいりたい、このように考えているわけでございます。
 ぜひ御理解をお願いしたいと思います。
山内(功)委員 私は、大臣、自分自身の名誉のためにも、報告書が出た時点で潔く大臣をやめる、そういう姿を国民は望んでいると思っています。
 金融二法の問題、質問に少し入らせてもらいますけれども、政府の保証が厚ければその産業自身の改革は進まないという言葉がありますけれども、大臣はこの言葉についてはどう思われますか。
武部国務大臣 私は、農業の経営について言うなれば、やはり農業にいそしんでいる皆さん方の創意工夫、そしてその努力というものが一番大事だと思っておりますし、政府としては、そういった創意工夫、努力に対してでき得る限りの支援というものをしてさしあげたい、このように考えているわけでございます。
 さような意味で、今、我が国の農業は非常に大事なときです。したがいまして、農業の構造改革というものを強力に進めていかなければなりません。その視点は、やはり食料自給率の向上に向けて生産者の方々がそれにチャレンジして、自分自身がその担い手として意欲も能力も、またそれに対する経営理念というものもしっかり持って創意工夫というものを発揮してもらいたい、こう思っておりますし、それを政府がしっかり支援していく、そのための構造改革を断行していく、そういう関係が大事だ、このように考えている次第でございます。
山内(功)委員 ですから、大臣も一議員になられて、創意工夫を凝らして政策を立案して政府に対応を迫るということをされたらどうかと私は思います。
 私は、農家の倒産事件について関係したことがあるのですが、そのときに、公庫からの借り入れ、農協からの借り入れ、農林中金からの借り入れなんかがあったんですね。もう一つおかしいなと思ったのは、一本の借り入れについて農協と県信連と公庫の書類があったんですよ。ですから、大変むだな貸付制度であるなと感じたことがあるんですが、こういう問題意識からちょっと若干お聞きさせていただきます。
 会計検査院にも来ていただいておりますが、例えば農業改良資金における不当な貸し付けは、検査をし始めてから何件ぐらいあるんでしょうか。また、補助の目的に沿わない国庫補助金の相当額は合計幾らになるか、教えてください。
有川会計検査院当局者 平成六年度検査報告から直近の十二年度検査報告までの農業改良資金に係ります不当事項を集計しますと、件数は四十三件、不当貸付金額は二億二千二百万円、これに対する国の貸付金等相当額は一億四千八百万円となっております。
山内(功)委員 それでは、農業近代化資金については会計検査上どのような問題点があったのか、指摘されたその概要と指摘された件数、そして金額などについて教えてください。
有川会計検査院当局者 近代化資金につきましては、直近の平成十二年度検査報告におきまして、特定高性能農業機械の導入に対する利子補給事業について、処置済み事項を掲記しております。
 その概要は、高性能農業機械の利用面積に関する国の基本方針の周知徹底が図られていなかったために、利子補給を受けて導入された機械のうち相当数のものの利用面積が、各都道府県の定めました導入計画の利用面積の最下限をも下回っておりまして、農業経営の改善に資するものとなっていなかったことから、改善を求めたものであります。
 本件指摘に係ります金額は、二千六百件の貸し付けに対する二億百七十万円となっております。
山内(功)委員 改良資金や近代化資金についての会計検査院の指摘などにつきまして、農水省としてはどのように受けとめ、またどのように対応をしたのか、教えてください。
川村政府参考人 お答えいたします。
 ただいま会計検査院の方から答弁がございました。
 まず、農業改良資金でございます。この農業改良資金につきましては、指摘を受けまして、当該貸付金について繰り上げ償還等の措置をとりますとともに、貸し付けの適正化のために、借り受け者に対する制度内容の周知、それから指導の徹底、また事前事後の審査、事業確認業務の強化、それから事業業務報告の適正化等につきまして、各都道府県を指導したところでございます。また、全国研修会の開催等によりまして、現場で農業者に接します改良普及員等の制度に対する理解の徹底を図っております。
 また、農業近代化資金の関係でございますけれども、これにつきましても、本資金の融通の一層の適正化ということで、都道府県に対しまして、この農業近代化資金の利子補給承認に当たりましては、都道府県の導入計画に即したものとなるように周知徹底をするというのが一点。それから、その趣旨を各都道府県の農業近代化資金の取扱要領に明確化するということ、それから的確な運用を行うということを指導するということで、平成十三年十月二十三日付で通知を発出しております。
 今後とも、こういったことのないように、適切に運用されるよう関係機関等を指導してまいりたいというように考えております。
山内(功)委員 近代化資金などはお金が返ってきませんので、むだ遣いはやめていただきたいと思っています。
 今回の改正の趣旨は、制度資金の流れを公庫資金から民間資金、つまりは農林中金とか農協とかにシフトさせるものだと理解をしておりますが、農協についても金融機能の改革がまだおくれているんじゃないかという指摘もありますし、担い手の農協離れ、農業離れも指摘をされています。近代化資金へのシフトということはうまくいくと考えておられるのでしょうか。
武部国務大臣 率直に申し上げます。
 私は、今までの制度資金のあり方については、抜本的に改めなければならないという数々の問題があった、このように思います。同時に、昨日も議論ありましたが、農協というのは、組合員である生産者に対しまして、営農指導を初めさまざまなサービスを提供しなければならない、そういう立場にあるわけであります。したがいまして、こういった根本的な問題については、農協みずからが大改革を期していかなければならない、このように考えております。
 さらに、今、近代化資金等の問題がございましたけれども、こういったことがしっかり機能していくかどうかということについては、農林水産省としても今後適切に農協等も指導していかなければなりません。
 公庫資金の問題あるいは農林中金とのかかわりの問題も、特に今、農林公庫と農林中金のことについて、先生は、これは統合すべきじゃないかというようなお考えをお持ちなのかもしれません。しかし、私自身も、これから金融については大きな改革がさらに進んでいくんだろう、こう思います。そのことが、本当に利用したい者にとって、また利用してもらいたい人たちにとって、利用していただくという、それがしっかり機能していくためにはどうしたらいいかということを考え、現実問題、公庫と中金の場合にはこれは困難性もございます。
 農林公庫を農林中金に結合するということは政府系金融機関を民間銀行と統合するということと同じことに相なりますので、問題があるものとは思いますけれども、しかし、そういったことを大胆に、私は、従来の既成概念を超えて、改革に向けた努力が必要だというふうに思います。必要ならば法改正等も今後視野に入れて、望まれるような、そしてそれが有効に利用されるような、機能するような、そういう努力が必要ではないか、こういう認識でございます。
山内(功)委員 農林公庫の資金ですけれども、逆ざやとなっていますよね。昭和四十年以降、国の一般会計から出されている補給金の総額はどれぐらいになるんですか。
武部国務大臣 今、私、直ちにその数字、承知しておりませんので、事務当局に答弁させます。
川村政府参考人 農林漁業金融公庫補給金の推移でございます。ちょっとトータルはしてございませんが、平成元年当時は千二百七十五億でございました。これがだんだん減ってまいりまして、平成十二年では七百二十七億ということに減少してございます。
山内(功)委員 ありがとうございました。
 BSEの問題については、日本じゅうが大変混乱をして大きな問題となっている。それに対応して私たちが要求しているBSEの対策法について政府の方で積極的に対応をしていただけない。全農や地方の農協が虚偽表示事件を起こす。生産者と消費者の信頼関係が今ずたずたの状態ですので、これを再構築するためにも、省を挙げてしっかりとした日本の農政を築いていただくことを念願いたしまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて山内功君の質疑は終了いたしました。
 次に、楢崎欣弥君。
楢崎委員 民主党の楢崎欣弥です。
 大臣の身辺が慌ただしくなったようです。これからもその進退を問う声が上がると思いますけれども、体調を整えられて、国民にわかりやすい対処をしていただきたい、このように思います。
 本論に入る前に、数点お尋ねいたします。
 本年の二月五日付で、「飼料用の魚粉の当面の取扱いについて」、こういう通達が、農水省の生産局長と水産長官名で地方自治体になされています。
 これは、飼料用の魚粉中への哺乳動物のたんぱく質の混入の有無を調査したところ、魚粉工場の約一九%、百七工場中二十工場から哺乳動物由来たんぱく質が検出されたということで、「水産加工残さのほか原料の一部として飲食店等から回収された残さを使用しており、検出されたほ乳動物由来たん白質は、現時点では、これら食品から派生する残さに由来するものであると考えられます。」となっているわけですね。
 この場合のBSEのリスクはないと考えられるとした上で、念のための措置として、魚介類のみのたんぱく質が含まれるものと魚介類以外の食品残渣等を含むものとを分別する仕組みを整備するまでの間、牛用飼料については、魚粉を用いた製造、出荷を一時停止するよう求められておるわけですけれども、そこでちょっとお聞きしたいんですが、飲食店等からの残渣物とは何を指すのですか。
須賀田政府参考人 この通達で言います「飲食店等から回収された残さ」とは、通常、都市あらと呼ばれております、スーパーでございますとか飲食店でございますとか、消費地市場等から排出される食品廃棄物としての魚のあら等を私どもは念頭に置いております。
 この残渣には、もっと具体的に言いますれば、魚のあらのほかに、わずかながら食肉などの食品廃棄物が混入をしている可能性がございまして、もともと食品であり、安全性には問題がないと考えておりますけれども、やはり純粋魚粉とその混入する可能性がある魚粉の分別の仕組みが整備されるまで、この魚粉を使用した牛用の飼料の出荷を念のための措置として自粛してもらっているという状況でございます。
楢崎委員 つまり、市民が食した残り物ということであれば、その食したものに危険性があるという誤解を招くおそれがありますよ。
 そこで、製造、出荷の自粛は、二月十二日以降当分の間とありますけれども、どの程度の期間を見込んでありますか。
須賀田政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、この出荷の自粛の間に飼料製造における魚粉の適正な使用の確保のための工程確認、現行の工程確認の仕組みの見直しというものを行う必要があると考えております。
 このためには、リサイクル原料の使用状況を把握する必要が、あるいは原料の把握をする必要があるわけでございますけれども、その原料の調達先が多岐にわたっておりまして、私どもできるだけ急ぎたいわけでございますけれども、この工程確認の仕組みの見直しには数カ月、少なくとも二、三カ月は要するというふうに考えております。
楢崎委員 実施状況の報告を二月末日までということで求めておられるわけですね。その報告、まとまったんでしょうか。あわせて公表されるのか。されるのであれば、ぜひ提出していただきたいんですが。
須賀田政府参考人 この生産局長と水産庁長官の通達におきまして、魚粉を用いた牛用飼料の製造、出荷を一時停止するよう飼料製造業者等関係者に対して周知徹底するということで、都道府県知事と関係団体に対して依頼をしたわけでございます。
 先生おっしゃるように、二月末までに、都道府県知事は地方農政局へ、関係団体の長は生産局長へ報告せよということになっていまして、報告は生産局長の方にも来ておるわけでございますけれども、現在、取りまとめ作業中でございまして、取りまとめの内容については、必要に応じて公表したいというふうに考えているところでございます。
楢崎委員 ぜひ提出をお願いしたいと思います。
 次に、全農チキンフーズの偽装工作に関してですが、農協組織を信じてきた生産農家、それから農協ブランドを信じてきた消費者を裏切る、また刑事罰にも相当すると思われる重大な事件であろうと思いますけれども、この件に関して、全農の会長が三月六日の記者会見で、再発防止のめどがつけば、七月末の任期切れを待たずに辞任の意思というものを表明されていますけれども、これは、過去の問題を振り返っても、会長のみならず本部役員は総退陣すべきだと思いますよ。指導すべきではないですか。どうですか。
川村政府参考人 お答えいたします。
 今回の全農チキンフーズの偽装事件につきましては、先生御指摘のとおり、消費者の信頼を裏切るばかりでなく、生産者の真摯な経営努力を無にしかねないあるまじき行為だということで、極めて遺憾に思っております。今回の事件を契機に、全農としましては、協同組合の原点に立ち返りまして、体制の一新を図り、組織を挙げて再発防止のための取り組みを徹底することが必要であると考えております。
 農林水産省としまして、現在、全農に対して農協法に基づく報告を求めているところでございますが、その結果を踏まえまして必要な措置を検討するということにしております。その中で、今御指摘もありましたような経営体制の問題も含めまして、農家組合員の立場に立った全農自体の抜本的な改革を求めていきたい、こういうふうに考えておるところでございます。
楢崎委員 そうですね。今、答弁にありましたように、農水省は三月十二日に、全農と鹿児島県の経済農協連合会に対して農協法に基づく報告を求めておられる。期限は三月二十六日までとなっているわけですけれども、内容的にはどのような報告を求められているのか、あわせて回答の内容について御報告をいただきたいと思います。
川村政府参考人 お答えいたします。
 今回の事件を受けまして、三月十二日に、全農とそれから鹿児島経済連に対しまして、事件を起こしました子会社の業務、それから親組合との関係、それから事件の内容等につきまして農協法に基づく報告を求めまして、三月二十六日に全農及び鹿児島経済連から提出がなされております。
 その具体的な内容といたしましては、事件の経過のほか、その原因につきまして、全農におきましては、実質的な子会社に対する管理が不十分である、管理監督者としての責任を果たしていなかったこと、それから鹿児島経済連につきましても、経済連による子会社に対する管理監督が不十分であったこと等が報告されております。
 これらの報告によりまして、事件の経緯、発生原因等についてはおおよそつかめたわけでございますが、事実関係のうち細部について両者の報告に相違があるところもございました。また、報告を求めた事項のうち記述が不十分なところもございましたので、現在、全農及び鹿児島経済連に対しまして追加の報告を求めているところでございます。
楢崎委員 昨年の農協改革二法でも議論となりましたけれども、農業、農村、農家構造の変化に対応した二十一世紀型の組織改革、そして意識改革がなされてきているのか、疑問に思わざるを得ないのです。今度の事件を見てもわかりますように、農協存在の理念というものが見えないんですね。
 私は、農協役職員の再教育、これが必要だと思います。ところが、教育所ともいうべき研修センターが廃止される県も出ている。教育が軽視されているんですね。ぜひチェックをしていただきたいと思います。私は、そういう教育の中で意識改革を図ることが急務であろうと思います。そのことを申し述べて、本論に入ります。
 私がこれまでに携わってきました農地法の一部改正、それから今も言いました農協改革関連二法を初め、これまでは農業のあり方そのものが問われてきたと思うのですね。これに対して本法案は、制度資金の再構成と、これからの農業の担い手の経営展開にとって必要な資金が円滑に供給されることを趣旨とするものですけれども、基本法、基本計画の理念である農業の構造改革の推進、それと担い手の育成という政策課題に対して、本法案が果たす役割というのは何なのか、それによって期待する効果があらわれるのか、これが昨日、きょうも一部ですが、同僚議員による質疑の基本的な論点であったと思います。課題も多く提起されたと思いますね。
 まず、これまでの議論を振り返って、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
武部国務大臣 我が国の農業あるいは農村というものは、非常に大きな岐路に今立たされていると思います。一方において、食料の自給率四〇%、これでいいのかということについては、国民の皆さん方も、将来の世界の食料の需給事情ということを想定すると、我が国においても自給率を上げていかなければならない。しかし、農村は、実際過疎化、高齢化というような問題に直面している。こういうときに、やはり望ましい、意欲と能力のあるそういう経営体というものを強力に育てていくということの必要性を感じております。
 同時に、やはりそういったみずからやろうという方々は、私はもっと多様なビジネスチャンスがあるということも気がついてほしいんです。ただ農業というのは畑を耕し、種を植え、そしてそれを生産し出荷するということだけではない、農業に関連するビジネスチャンスがたくさんあるというふうに考えております。
 そういったことを思いますと、やはり、本委員会におけるさまざまな御議論を振り返ってみましても、効率的かつ安定的な経営体が農業生産の大宗を担う農業構造を確立していくということが第一に必要でありまして、農業者の創意工夫を生かした経営改善の取り組みを支援する上で融資が極めて重要な政策手法になるのではないか、かように考えますし、制度資金が、農業者にとって何で資金需要がふえないのか、さまざまな現実的な問題があります。
 農産物価格の問題、あるいは社会経済情勢の問題はありますが、やはり一つには、農業者にとってわかりやすい、使いやすい、魅力のあるものであったのかどうかという反省点に立って、わかりやすく使いやすい、魅力あるものとすることが重要だということを、ほぼきのう、きょうの御議論の中で御指摘をいただいたのではないか、このように思っております。
 また、こうした議論を踏まえた上で、融資手続、融資審査、機関保証等の融資実務面で、農業者の視点に立って、真にわかりやすく使いやすいものとなるよう最大限の工夫をする必要があるという御意見がございまして、私どももそうした対応に努力をしていかなくちゃいけない、このように思うわけでございます。
 行政というのは、全国各地の農業者が円滑、的確に利用できる状況を整えるというところまで視野に入れなければならない、こう思っておりまして、本委員会の議論を十分生かして新制度の運用に当たってまいりたい、かように考えている次第でございます。
楢崎委員 丁寧な答弁、ありがとうございました。
 私は、総括なくして農業金融行政の改革はない、このように思うのです。そういう立場に立つ者として、昨年農協改革二法で論議された問題点がきちんと総括されているか、これが本法案を論ずる上で私は重要だと思うのですね。過去、あの住専に過剰な融資を続けて莫大な不良債権を生み出したその農協系統が、今度は投資育成会社に出資しようというわけですからね。
 そういう視点から数点お伺いしたいのですけれども、系統が抱える不良債権総額、十一事業年度末で、これは表向きの数字ですけれども、二兆八千五百一億円でした。これは、前年度、つまり十年度から三千三百九十五億円増加した数字なんですね。この不良債権額、今日どうなっているんでしょう。解消されたのですか。
川村政府参考人 農協系統の抱える不良債権の問題でございますが、農協系統の信用事業の健全な運営の確保という意味で、貯金者の信頼確保、それから農協系統においても不良債権の査定を厳正に行うということ、それから不良債権の処理を着実に進めるということで行ってきたところでございます。
 その結果でございますが、農協、信連、農林中金の十二事業年度末のリスク管理債権の総額は二兆三千九百億円でございまして、前年度に比べますと四千六百億円ほど減少してございます。その内訳でございますが、末端の農協は不良債権処理をやっておりますが、一方で、厳格な査定ということをやっているために増加したものもございます。ただ、信連、農林中金につきましては、リスク管理債権の処理を進めた結果、大幅に減少している、こういうことでございます。
楢崎委員 当時は須賀田さんが経営局長だったと思うのですが、昨年の八月から不良債権買い取りの系統債権管理回収機構が営業を開始したということで、どの程度の買い取り、回収がなされたのでしょうか。
川村政府参考人 系統サービサーの関係での御質問でございます。
 不良債権の処理に際しましては、引当金の積み増し、それから債権の回収、債権の売却等、種々方法があるわけでございます。売却が適当ではあるけれども売却先が容易に見つからないような案件につきましては、今御質問ありましたサービサー、債権回収会社を活用すると円滑な処理が可能となるということでございます。このため、農協系統では十三年四月に系統サービサーを設立いたしまして、同年八月から営業を開始しております。
 その実績でございますが、まだ発足間もないということでもございますが、平成十四年三月末現在で、買い取った債権の元本総額が百五十二億円で、買い取り価額は十八億円、今のところ回収額はゼロとなっております。
楢崎委員 貯金保険機構から問題ある農協にはどの程度支出されていますか。あわせて、全国相互援助制度、いわゆる相援制度が発動されたのかどうか、お聞きします。
川村政府参考人 お答えいたします。
 農協系統におきまして、経営困難な農協を本年四月のペイオフの解禁までに確実に解消するように、必要な場合には今御指摘のございました貯金保険制度、それから全国相互援助制度積立金からの資金援助も行って、積極的に取り組んでおります。
 実績でございますが、平成十三年度におきまして、貯金保険機構から、十六の農協に対しまして合計で六百三十八億円の資金援助が実施されております。また、相援でございますが、全国相互援助制度の積立金から、十五農協に対しまして約八十億円の資金援助を実施したところでございます。
楢崎委員 ペイオフ解禁までに、不良債権等によって経営困難に陥っている農協は解消するということでしたが、では、その目的は達せられたわけですか。
川村政府参考人 農協系統におきまして、ペイオフ解禁までに経営困難農協を確実に解消するよう、これまで積極的に取り組んできました。
 この結果でございますが、自己資本比率四%未満の農協、昨年八月の段階では三十農協ございました。その後、早期是正措置命令が発動されたものが五農協ございまして、合計で三十五農協を対象といたしまして、合併なり事業譲渡または増資等によりまして、この十三年度末決算におきまして自己資本比率が四%未満となる農協はなくなったものというふうに考えております。
楢崎委員 確認しますけれども、ペイオフには対応できるのですね。そういう体制が整ったのですね。
川村政府参考人 昨年の通常国会におきまして、農林中金それから信連、農協の総合力を結集しまして、組合員等が安心して貯金ができる新たな農協金融システム、これはJAバンクシステムと言っておりますが、このための農協改革の二法を成立させていただきました。
 その中核は、農林中金が農協系統の総意のもとに、問題農協の早期発見、早期是正のための自主ルールを作成する、これに基づいて信連、農協の金融業務を指導するということがございます。この自主ルールは本年の一月から正式に動き出しておりまして、これが適切に運営されれば、安定的な農協金融システムが確立できるというふうに考えております。
 農林省といたしましては、こういったシステムが適切に機能し、ペイオフ解禁後も農協金融が安定的に運営されるように、都道府県また農協系統とも緊密に連携をとって、適切に対応していきたいと思っております。
楢崎委員 私は昨年、監査体制の強化を訴えたのですけれども、JAの全国監査機構も発足されたようですね。そういう意味では、初代委員長を外部から招かれたことも評価できると思います。また、中央会監査の独立性と質の向上という観点に立って、その機能が発揮されることを期待したいと思います。
 そこで、投資育成会社に農林漁業金融公庫からの出資を可能とする特例措置が講じられているわけですけれども、一方では事業規模の縮減、特殊法人改革の線に沿った見直しが求められているわけですね。その整合性と、農業構造改革が進む中で公庫が果たしてきた役割、今後の展望についてお伺いをしたいと思います。
川村政府参考人 農業法人に対します融資につきましては、これまでそのほとんどを農林公庫が担っております。したがいまして、農業法人についての情報でありますとか融資審査のノウハウは、これまでのところ農林公庫に集中的に蓄積されている現状にございます。このため、農業法人投資育成会社の事業を軌道に乗せる観点、それから、今申し上げましたような農林公庫の有します審査ノウハウ等を有効活用するということで、農林公庫が投資育成会社に対して出資を行えるということで今回お願いをしているところでございます。
 この農林公庫の投資育成会社に対します出資業務の追加につきましては、農林公庫の出資先を農林水産大臣の承認を受けた投資育成会社に限定しておりますし、また、あくまで民間出資を補完する範囲で行うということで、公庫の出資比率が半分以上になるということは考えておりません。このことは、出資に際しての主務大臣の認可によって担保しております。
 また、出資業務を追加する一方、スクラップもしておりまして、農地等取得資金等の既存資金を廃止しておりますし、また融資枠の削減も行っております。そういう意味で、今回の法人への出資はございますけれども、農林公庫の業務拡大にはつながるものではなく、特殊法人改革の趣旨にも反するものではないというふうに考えているところでございます。
 それから、農林公庫の特性それから構造改善の関係でございますけれども、農林漁業の生産力の維持増進、それから食料の安定供給の確保のために必要な長期、低利の資金の融通ということを目的にしておりますが、その融資業務は農林水産業の振興に大きな役割を果たしております。これまでのいろいろ、スーパーL等のアンケートによりましても、利用後の収益の向上なり、生産の拡大なりに大きく貢献してきたと考えております。
 今後とも、効率的、安定的な経営体の育成等、これは重要な政策課題でございますけれども、農林公庫の役割は極めて重要であるというふうに考えておりまして、ただ、特殊法人等改革の趣旨は十分に踏まえた上で、公庫と民間との分担関係等、適切に対応してまいりたいというふうに思っております。
楢崎委員 もう一点、認定農業者向け資金使途が追加されることになりました農業近代化資金、それと公庫との関係ですけれども、スーパーL資金に準じての拡大、そして長期運転資金の追加など、両資金の差異がなくなってきていると思うんですね。近代化資金の使途を拡大する一方で、今言いましたように、公庫の事業規模縮減の方向が示されているわけですけれども、この両資金制度の今後といいますか、どういう方向に進んでいくと思われますか。
川村政府参考人 お答えいたします。
 今御指摘がございましたとおり、農業近代化資金の資金使途と、それからスーパーLとがほぼ同様の関係になったわけでございます。これによりまして、資金規模がそれほど大きくなくてそれから償還期間も長くないようなケースにつきましては、基本的には農協等の民間金融機関で対応し得るという体制ができたと思います。
 ただ、近代化資金につきましては、原資が一年物の定期預金等が中心でございまして、償還期間が長いものまた資金規模が大きいものについては、十分対応できないケースが多いということが考えられます。こういう場合は、農林公庫で確実に対応するということでございます。
 結論的に申し上げますと、公庫資金は民業補完に徹する、そして農業近代化資金で対応するものは極力農業近代化資金で対応するという考え方のもとに、分担、連携関係を展開していきたいと思っております。
楢崎委員 質問時間が終わりました。
 話は変わりますけれども、ある労働組合が退職した組合員が農業に従事できる農園づくりに乗り出すという報道がありました。会社人生にかわる新たな生きがいを見つけてもらうのがねらいらしいですけれども、農業が持つ多面的機能の一つの効果のあらわれとして評価できるのではないかと思いました。そのことを紹介して、質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて楢崎欣弥君の質疑は終了いたしました。
 次に、山田正彦君。
山田(正)委員 自由党の山田正彦です。
 きょうは金融二法案についての審議ですが、その金融二法案の審議に入る前に、きのう発表がありましたBSE問題に関する調査検討委員会報告について、大臣に二つほどお聞きしたいと思っております。
 まず、この報告書の中で、大臣が大臣になってからの問題、いわゆるEUのステータス評価の問題です。
 これは当然、大臣、こういう書類があって、この報告書の中にははっきりと、「もしも、EU報告書案の内容が国民にあらかじめ知らされ、これらの対策があらかじめ取られていれば、当面の風評被害は起きても、今回の発生時に起きた大きな社会混乱は防げた可能性が高い」。それに対して、なぜこれを公表しなかったか、なぜこれが国民にあらかじめ知らされなかったか、そういう指摘が明確になされているわけです。
 これは私も、またこの委員会において、この委員会の前にも、大臣のときに、農水省に、いわゆるEUステータス評価は明らかにしろと。ただ、その評価書そのものがないというようなことであった。それがいつの間にか新聞にすっぱ抜かれて、いわゆるスクープされて、そしてこういう結果になってきたということなんですが、これは、まさしく武部大臣が大臣のときに、いわゆる当然そういう処置をするべきであったのにしなかった。この責任については、大臣、どう考えられるか。
武部国務大臣 私は、率直に申し上げまして、EUステータス評価を中断したということについては、これはいろいろな経緯はありましても、やはり御指摘のとおりだ、このように理解しております。
 ただ、私が六月初めに中断することを了としたのは、何度も委員会で申し上げましたように、OIEの基準に照らしてEUが新たな評価をするということで、それを新たに受けるんだなということを確認してそういう断を下しました。
 しかし、EU評価を受けなかったことによってBSEが侵入しなかった、あるいは評価するしないにかかわらずBSEは侵入していたんだろうと思いますけれども、やはりせっかくいろいろな情報を提供していただいているわけでありますから、それをしかと受けて厚生労働省や都道府県と危機対応マニュアルをきちっとつくっていれば初期段階のあのような混乱はなかったということは、極めて大きな反省点でございます。
 そういう意味では、この報告書の指摘というものは、私どももそのとおりだ、このように受けとめております。
 以上です。
山田(正)委員 大臣、それをしなかったことは確かに問題であったということは言っているわけですが、まさしく大臣が大臣になってから、このEUのステータス評価についても、私ども委員会の議員に対してすらないということ、そういう形で不透明、いわゆる隠してきたという事実。
 そしてもう一つは、OIE基準、いわゆる百三十三度、二十分、三気圧、これによってやったんだから絶対大丈夫だと委員会でも答弁してきた、これも間違いであった。実際にはそういう加熱基準じゃなく、イタリアからの肉骨粉も輸入されておった。そういう数々の過ち、これを大臣は犯しておった。それなのに、そういう、言ってみれば言い逃れというか、自分たちには、自分には責任がない、そういう言い方は納得できない。
 大臣、本当に今回、大臣になってからのこういうBSEの問題について、大臣としてその責任、それは自分としてはなかったのか、責任をとらなきゃならないほど大事な失政、あなたの大臣としての失政があったとは本当に思っていないのか。その辺をもう一回聞いて、それでこの問題を終わりたい。
武部国務大臣 私は、ゼロベースで調査をし直すようにという指示をしました。イタリアの肉骨粉の問題にいたしましても加熱処理条件が実際に要求していたとおりなのかどうかということを、それだけの問題じゃありません、ですから、オランダにもイタリアにも諸外国にも職員を派遣して、全部ゼロベースで調査し直しておるわけでございます。
 私は、そういう報告であるということを承知しているけれども、しかし起こり得ないことが起こり得るんだ、したがってそれを真に受けてはいけないということで、私は、事務当局に厳命しまして、すべてもう一度調査し直すようにという指示をしたのでございます。このことは、私は、今もなおイタリアについては職員を派遣してさらに調査を求めているわけでございまして、感染源、感染ルートの究明については、あり得ないことがあり得るという前提に立って調査し直すようにということを申し上げたことを申し上げたいと思います。
 また、EUステータスの問題はおっしゃるとおりです。私は、EUも七月に新しい基準、OIE基準に照らしたものに変えていますね。そういう情報でそれは了とした次第でございますが、委員御指摘のとおり、私が反省しなければならないこと、私の在任中に数々の問題があったこと、そういったことを否定するものではありませんし、そういう責任を数々感じていればこそ、私は、事務当局に対して相当なことを次から次と指示して、そしてBSE対策について数々の改革、とりわけ食品の安全問題については徹底した努力をしている所存でございます。
山田(正)委員 きょうは金融二法案の審議なので、そんなにこのことでするつもりはありませんが、ただ大臣、今のあなたの答弁、きょうはちょっと資料を持ってきていないんだけれども、あなたは議会でもって、委員会でもって、いわゆるEU、イタリアの肉骨粉は、百三十三度、二十分、三気圧、これでちゃんと加熱、OIE基準でしたんだということを証言している、きょう持ってきていないけれども。議事録がある。それでいて今それと違うような答弁をなさった。これは大きな問題だ。しかし、この場でこれ以上追及することはやめよう、それは。
 次に、今回の検討委員会の報告を見て、この中に政治家の関与、いわゆる政と官の関係が政策決定の不透明を助長してきた、そういうくだりがあるわけですが、これは新聞報道等によると、自民党農林族議員等々の云々とあったのをそういうふうな表現に直したとか、そういう話もあるわけですが、これについては、武部大臣がそういうふうに指摘し、そういうふうに自分の答弁について書きかえさせたといういきさつはなかったのか。
武部国務大臣 全くありません。
 御案内のとおり、今回の調査検討委員会は公開で行われております。また、いろいろなやりとり、修文についても、後ほどそういったものも公に発表されると思います。あらゆるデータも提出して、公開のもとで行われて、そして執筆も、事務当局が何ら関与しないで委員の皆さん方の間でやっている。私は、こういう委員会とか審議会というのはかつてなかったのではないかと思うぐらいにオープンにやられたということで、高く評価しております。
 それでなければ国民の皆さん方の信頼を得られないんだということで、私が強くそういうようなこともお願い申し上げまして、私自身はもとより、農林水産省が一字一句関与できるようなそういうものではない。本当に高橋委員長を初め委員の皆さん方御自身の、データに基づく御議論を踏まえての執筆、報告であるということを、私は非常に感謝を申し上げたい、このように思うわけでございます。
山田(正)委員 いろいろ新聞の報道等が私としては本当なんじゃないか、そう思うんですが、きょう午後からの参考人質疑で、うちの党で高橋先生に聞いてもらうことになっていますので、その件はそれでまたいろいろと明らかになると思います。
 もう一つ、今回、政と官の癒着の問題について、癒着とまで言えなくても、表現しなくても、そういうたぐいの話を指摘されているわけですが、もう一つ実は政官業といいますか、いわゆる業との関係、いわゆる官の天下りの問題。これについては、今回のBSE問題の背景はそこにもあるのではないか、そこにある不透明なものがいわゆる今回のような日本のいろいろな措置のおくれにつながってきたんじゃないか、そう思うのですが、いわゆる食肉及び畜産関係の特殊法人、独立行政法人あるいは公益法人の中で、社団法人、財団法人、一体どれくらいあって、そしてそこにどれくらいの天下りがあるのか。大臣、質問通告しておったので、わかる範囲で結構です。
武部国務大臣 特殊法人が、農畜産振興事業団、農水省OB七名、独立行政法人家畜改良センター三名、公益法人は八十五に対して百十四名ということでございます。
山田(正)委員 ざっと今私の手元にあるこの特殊法人、独立行政法人、いわゆる食肉と畜産関係だけで八十五あるわけですが、その中には、いわゆる問題の前の熊澤次官、今回調査報告書にもあるように、重大な失政の責任あるとされた、言ってみれば当時の畜産局長、熊澤元次官が社団法人日本食肉協議会、ここを含めるとして八十五もこうして天下りの団体がある。これに、食品、畜産の業界そのものに天下ってさらに再就職していった人たちのことを考えると大変な官と業の癒着、そういったものはかなり重大なことになっているんじゃないのか。
 ひとつ大臣としては、口を開けば、食の安全について消費者の立場から今度は考えたい、そのようなことばかり言っているようだけれども、最も肝心な農水省のあり得べき姿の中で、この天下りの問題、これについてどう考えるのか、そこをはっきり述べていただきたい。
武部国務大臣 これは委員御指摘のとおり、この問題はやはり厳正に見直しをしていく必要があるという私は認識でございます。したがいまして公益法人等も、いろいろございます。そういったことについてはスクラップ・アンド・ビルドというような考え方に立って、事務当局には総ざらいをしてみるようにということを指示しておるところでございます。
山田(正)委員 公益法人を総ざらい、いわば整理し、天下りをさせないということなのかどうか。整理し、必要なものは全部やめさせ、そして天下りもこれから先禁止する。そういういわゆる農水省改革をやるつもりなのか、そうではないのか。
武部国務大臣 それは、おっしゃるとおりです。そういった問題も含めまして総点検をする。そして、もう時間もたっているし、歴史も過ぎているし、存在価値のなくなっているものもありましょうし、また同時に新たないろいろな国民的な要請があるものもあるんだろうと思うのです。
 私は、天下りということの考え方、これが、通常言われている天下りというようなことは問題だと思いますけれども、それぞれの経験や能力や知識や、そういったものをいろいろなところで生かすということは、私は、これは民間企業においても同様でして、それは否定するものではありませんが、これは公務員制度改革大綱の中でもいろいろ指摘されている問題でございますので、公務員の再就職の適正化の取り組みということも含めてきちっとやっていく必要がある、こういう認識でございます。
山田(正)委員 きょうは金融二法案の審議の場なので、それくらいで本来の議題に入らせていただきたい、そう思います。
 このいわゆる農業金融の問題で、農業近代化資金、公庫資金、それから農業改良資金、この三つが大きくはあると思うんですが、その中で農業近代化資金にしても、実はかつて私も畜産をやり、牛を買うときに近代化資金を借りたことがございますが、この金額が年々年々減ってきている。
 農業近代化資金、これは平成八年度千六百四十八億あったものが、十二年度は九百七十二億、四割近く減っている。ほかの農業改良資金にしても、やはり同様にぐんぐん減ってきている、この五年間で。これは、いわゆる農業金融にとっては大変なことなんじゃないのか。なぜこうなってきたのか。そのことを大臣、どう考えられるか。
武部国務大臣 いろいろな理由があろうかと思いますが、やはり近年、農業を取り巻く情勢というものは極めて厳しい状況になっておりまして、社会経済情勢あるいは農産物価格の低迷、農家経済の実態が非常に厳しい状況の中で、一般的には少しでもスリムにしていこうという傾向が一つあるわけでありますので、できるだけ繰り上げ償還などに努めていこう、そういう農協等の指導もありましょうし、生産者みずからの努力といいますか、そういう動きも当然あります。
 また同時に、やはりしっかりした営農指導というようなことが行われているのかどうかという問題も農協改革のときに指摘されまして、私どもは、したがいまして、今般の改正で、わかりやすく、使いやすい、魅力のある、そういう制度資金というものに大きな転換を図っていこう、こう考えているわけでございます。
山田(正)委員 実際に農業をやってみて、農業の制度金融で一番困ったのは、これは私自身の体験からして、設備とか機械とか、あるいは家畜を買うときのお金は出るけれども、いわゆる運転資金が出ない、これは大変農業者にとっては困ってきたわけですが、今回、いわゆるセットでなくても、今困っている運転資金そのものについてを近代化資金で借り入れができるような改正なのかどうか、その点について少しはっきりとした答弁を。いわゆるセット、設備と全く関係ない、運転資金だけを近代化資金で出せるのか、出せないのか。
遠藤副大臣 運転資金については、長期は貸し付けるように認めておりますが、いわゆる資金繰りのための資金というのは対象とはいたしておりません。
 ただ、今度設けました負債整理資金等々を利用されて、これまでの長期固定化債務などを整理されて、そして長期の運転資金にかえるという手法はあろうかと思います。
山田(正)委員 この近代化資金の枠内で、運転資金あるいは借りかえ資金も可能だと。今回の改正で、あるいは改正がなくても、どちらですか。
遠藤副大臣 改正がなくてもと言うとちょっと語弊がありますが、今度はそういうふうな形で、いわゆる超長期の運転資金等に借りかえが進むように、可能な限りわかりやすく、使いやすいという制度に直しているところでございます。
山田(正)委員 実際に借り入れの際に農業者が一番困るのは、特にプロ農家、実際に先進的にやっている農家というのは、時折というか、よくあることで、かえって多いかもしれませんが、農協との関係がうまくない。農協から資材を購入したりとかしないで、直接安いところから自分で入れ、そして高いところに自分で売ろうとする。そういう専業プロ農家、そういった農協と関係がうまくいっていない農家は、どうしてもこの近代化資金、制度資金を借りるのは非常に苦労している。農協組合長がうんと言わなければ出してくれないとか、これは現実に体験してきたことで、そういった状況がある。
 そういった中で、実際、民間の金融機関、いわゆる銀行とか、今は信用組合までできるようになっているようですが、そういったものも近代化資金を利用できるとなっているようだが、実際には大変難しいのではないのか、実際その割合は一体どれくらいなのか、なぜ難しいのか。その辺をひとつ副大臣でも大臣でも、大体質問の通告はしておったはずです。
遠藤副大臣 恐らく、近代化資金の中ではかなりまれなことじゃないかと思いますが、もし必要ならば、数字を明らかにするように、時間をいただければですね。恐らく、ほとんどなきに等しいのではなかろうかと思います、近代化資金の中で。
山田(正)委員 いわゆる銀行とか金融機関、農協ではなくて、民間のそういうところはまれ、まずないと言っていいと。
遠藤副大臣 私は、いわゆる業者登録というか、米作農家で、業者登録ということで、農協を経由しないで米を販売なさる方々の団体などもよく存じておりますが、そういう場合でも、団体がいろいろ保証をしたり支えたりしてという形はあると思いますが、今度の改正をいただければ、民間金融機関においてもその制度が利用できるということにしておりますので、これが周知徹底され、広報、PRされれば、利用者がそういうところからふえてくる可能性があるのではなかろうか、こんなふうに考えておるところでございます。
山田(正)委員 本当に中核的な農家、いわゆるプロ農家は、農協離れがどんどん進んでいる。逆に言うと、農協離れが進んで、いわば農業生産法人とか、事業としての農業が将来の日本の農業を担っていくであろう。
 そういった場合に、そういった人たちが本当にお金が借りられるような形での、民間金融機関に対して十分な、農協と全く同じような、そういう形での政府の対応、行政の対応、これはぜひとも農水省としてはしっかりとした指導をしなければ、いわゆる調査委員会の指摘書にもあるように、大きな圧力団体である農協、団体に対して、政治家が、農水族議員の、大臣、副大臣とは言いませんが、そういった方々が、そういう圧力の中で、本当にこれからの日本を担う若いプロ農家、そういったものの金融、そういったものに対しての配慮はぜひしていただかなければと、そう考えております。
 次に、農業改良資金なんですが、農業改良資金等について、あるいは近代化資金、あるいは公庫からの資金もそうですが、実際に農家が借り入れしようとするときに、担保を要求される、保証人を要求される。ところが、残念ながら、農業をやっているところというのはほとんどが過疎地域で、私もそうでしたが、ほとんど不動産の価値もない、不動産の価値もなければ保証人になってくれるような人もいない。
 その中で、やはり農業信用基金協会、各県にあるこの農業信用基金協会の保証、これを何とかとらないと金を貸してもらえないので、信用保証協会に保証の依頼に行く。ところが、保証協会も、実際には保証人が要る、担保が要る。いろいろな形で、私の経験からすればなかなか貸してもらえない、どうしようという状況が多いわけですが、この農家の金融に対して、その保証協会、信用基金協会のいわゆる無担保無保証、保証人なしで、担保物件なしで保証している割合というのは一体どれくらいあるのか。
遠藤副大臣 具体的な数字をお求めのようでございますので、今事務方から入手したことを読ませていただきます。
 信用基金協会の状況を若干御報告させていただきます。
 まず第一に、貸付残高に対する保証残高の割合は、近代化資金で八七%、一般資金で二九%。金額にしますとかなりの金額になりますが、事故率は、近代化資金で一・二%、一般資金が二%程度です。保証料率は、都道府県ごとに資金が設定されておりますから、御存じのとおりそれぞれ違いますけれども、〇・二九から高いところで〇・五くらいになるものと見られています。
 なお、この基金は二千四百八十億円で、準備金は百十八億円であります。基金協会の保証料収入、これは百五十億程度、基金運用の益金は四十億で、低金利を反映して年々減少をしている模様でございます。
 なお、物件担保、第三者保証人なしで債務保証しているのは、平均的には三百万円弱程度の融資額のものです。融資額が大きくなるほど、物的担保、第三者保証人なしでの機関保証の割合は低下しておるようであります。農業近代化資金について見れば、件数で七九%、金額で六四%が、物的担保、第三者保証人なしで機関保証されています。
 なお、この際申し添えておきますが、このたびのBSE発生に伴いまして、既存の借入枠とは別枠で、無担保無保証で資金のつなぎ資金を導入するようにということを強く要請して、利用者も多いようでございますし、また、中小企業庁にもお願いを申し上げまして、BSE関連つなぎ融資として、無担保無保証の設定をさせていただいております。
山田(正)委員 もう四、五年ぐらい前になりますが、いわゆる銀行の貸し渋り対策として、中小企業、それに対して五千万までは無担保無保証で融資を実現した。これはかなり広範に、実際の中小企業者は結構あのとき随分使ったわけなんですが、結果として思ったより事故率も少なかったようで、そんな中でいわゆる五千万という話であった。
 ところが、当時、農業者、漁業者から、中小企業者に対しては五千万まで無担保無保証という銀行貸し渋り対策があるのに、我々にはそういう制度もないじゃないか、一体どうしてくれるんだ、そういう話が大分あったわけなんですが、今まさにBSEの問題を含め、いわゆる貸出金額そのものの四割ぐらいこの五年間で減ってきて、非常に農家も金融が逼迫し、私どものところに聞こえてくるのは、畜産農家に限らず、農業者がどんどん倒産、破産、破綻していっている状況というのは大変な数に上ってきている。
 そんな中で、やはり金融というのは一番大事なことなんですが、それに対して、十分そういう配慮、いわゆる無担保無保証、信用基金協会が、三百万以下じゃなく一千八百万、少なくとも総合資金の限度額、それくらいは無担保無保証で出そう、そういう形でなければ、日本の農業の再生、いわゆる若いプロ農家にもう一度農業を真剣にやらせるということはもうできないんじゃないのかな。その辺、大事なことだと思いますが、大臣でも副大臣でも結構です。
遠藤副大臣 まさしく委員おっしゃるとおりでございまして、農協金融というのは、どうしても土地担保融資というものに偏り過ぎてきたんではなかろうか。そこで、資材等の購入とかあるいは販売というふうな流通の面での構造改革が一番おくれておるわけですね。つまり、運転資金需要にたえられない、こたえられないのが農協金融と言ってもいいであろうと思います。
 そこで、このたびの改正で、個人で千八百万、法人はその倍の三千六百万という枠を設定しております。農協に対しましても、金融担当者に対しましても、いわゆる農業法人を毛嫌いするような形であってはならぬ。やはりどんどん、むしろ法人を育てていって資金力をつけ、しかも資金の運用もできるような形にしていかなければ、農協金融そのものが土地担保金融にしがみついている限りは伸びませんよということで、最近ようやく農協側でも、いわゆる農業法人に対する考え方が若干変わりつつあるのかなと思っていますし、その傾向が続けばいいと期待をしております。
 念のために申し上げますが、千八百万と三千六百万円というのを設定してございます。
山田(正)委員 個人が千八百万、法人が三千六百万というのは無担保無保証で出す、いわゆる無条件でやると。
遠藤副大臣 それぞれ審査はあるわけですから無条件というわけにはいきませんが、そういう枠を設定しておるので、どうぞ使われるような経営体質を整備して、間口は広げたということでございますから、御理解いただきたいと思います。行政側としては、無条件なのかと言われれば、そうでございますというわけにはいきませんので、審査はいたします。
山田(正)委員 かつて貸し渋り対策の五千万、結構中小企業は助かったわけなんですが、まさにあのときは、もちろん無条件とは言いませんが、それなりに枠が広がった。だから今回もそれなりに、あれくらい並みに広げるつもりなのかどうか。
遠藤副大臣 過去のことを申し上げて大変恐縮ですが、四、五年前の貸し渋りのときに、私は、当時の通産省、貸し渋り対策本部長みたいなことをしておりました。当時、無担保無保証の対象業種というのは六十業種程度あったんです。最終的には百九十台まで業種を広げました。例えばゴルフ場、ゴルフ会員権売買というのはサラ金業者と同じ扱いでありましたし、そういうものをどんどん枠を外してふやしてきました。
 多分、農業の世界に、株式会社、有限会社とか、そういう法人的な経営の手法が取り入れられればられるほどそうした枠は拡大していかざるを得ないのではなかろうか、むしろ私どもは期待をしているところでございます。
山田(正)委員 副大臣がむしろ期待をしているというんじゃ困るので、副大臣がそうさせる、大臣がそうさせる、そういう行政をやらなければ農家は助からないところまで今来ているということ。ではひとつ大臣、どうですか。
武部国務大臣 先ほど来山田先生からいろいろな御議論をいただいておりますけれども、基本的には全く私は同感なんですね。これは農協改革、農協の存在を揺るがすぐらいのそういうものに私は発展していくと思います。また、農協がきちっとした対応をしなければ、それは組合員はどんどん離れていくでしょう。
 ですから、今回の制度資金の改正につきましても、私は、本当に個人の創意工夫というものがどんどん発露できるような、そういうものにしていかなくちゃいけない、このように思っておりますし、やはり、意欲や能力のある経営体を育てなきゃならぬわけですから、必要があれば今委員提案のような方向を決断していきたい、このように思っております。それにはもう少しさまざまな精査や検討が必要だと思います。
 また同時に、私ども、これから補助金行政というのは縮小していくべきだ、このように思っているんです、農業経営の問題につきましては。農業政策というのは、他の産業と違いますから、やはり市場原理、競争政策というようなことだけではやり切れません。これはまた重要です。が、同時に、公共原理、共生政策というものはあるんだろうと思います。
 そういうようなことで、行政の関与というものがこれからも非常に大切になってくるとは思いますが、しかし、基本的には、やはり政策手法として融資ということ、また、できる限り規制も緩めて、個人の創意あるいは企業の努力、そういったものを助長するような努力をしていきたい、このように思っているわけでございます。
山田(正)委員 なかなか、大臣も長々と答弁する割には、中身のないお話だ。
 一つ大臣に御提案したいのですが、各県の中小企業の信用保証協会と比べて、保証料率が低いんじゃないか。これも質問事項の中へ入れて通告しておったんですが、事故率も比較的少ないんじゃないか、農業信用基金協会。そうして考えれば、これはひとつ、どうしても、保証料率を高くして、そしていわゆる事故率が少々あってでも、さっき大臣も言ったように、あれだけ補助金を国は農業にじゃぶじゃぶ出しているんですから、そうであったら、本当にそういう意味で、どんどん無担保無保証をやっていく、そういう姿勢でひとつぜひやっていただきたい。どうぞ、大臣。
武部国務大臣 おっしゃるとおりだと思います。
 ただ、機関保証の割合が高い、事故率が低い、保証料率も低いとの特徴がありますが、低金利下で運用益も減少しておりまして、農業信用基金協会も経営状況は厳しくなっている、そういう現状がございます。
 しかし、今委員御指摘のことは私も全く同感でございまして、そういう努力をしていかなくちゃいけない、このように考えます。
山田(正)委員 きょう参考人で農林漁業金融公庫総裁を呼んでおりますので、総裁にお聞きしたい、そう思っておりますが、いわゆる不良債権のリスク管理、それは今どういう現状にあるのか。ちょっと手短に、私も持ち時間が少なくなってまいりましたので、お答えできれば。
鶴岡参考人 農林漁業金融公庫の平成十三年三月末におきます貸付残高、三兆九千六百九十八億円でございます。農林公庫は銀行法の適用は受けませんが、自己査定結果を踏まえまして、民間金融機関と同様の基準に従いましてリスク管理債権を算出しますと、二千百九十三億円ということで、貸付残高に占める割合は五・五二%になっております。
 私どもとしましては、融資が実効があるようにするために、貸し付けに当たりましては、経営状況を把握し、農林漁業の特性を踏まえた適切な審査に努めるとともに、融資後も経営指導等のフォローアップを行い、リスク管理債権と極力ならないように努めているところでございます。さらに、回収不能と判定されましたものにつきましては、財務の健全化のために償却を実施し、不良債権の整理促進を行っているところでございます。
山田(正)委員 私の手元にあるこの資料、いわゆるリスク管理債権の状況によりますと、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫、国金とあるわけですが、この中で、破綻先債権が農林漁業金融公庫は七十七億しかない。ところが、延滞債権が一千五百九十億。実際に、じゃ中小企業金融公庫はどうかというと、破綻先債権が二千九十一億あって、延滞債権は千三百八億。いわゆる国金も、むしろ破綻先債権の方が多いわけですが、この数字で見る限り、農林漁業金融公庫は破綻先債権が極端に少ない、延滞債権と比較して。
 ということは、これは私は、かつて農協金融をやっている担当者から聞いたことがあるんですが、払えなくなっても、年に一回一万円でも利息分として払ってくれておけばこれは破綻債権にならないので、払ってくれと言われたことがあると。実態の中身は、これは大変な破綻先債権。それが多いのに、いわゆる金融監督庁の監査等がないので、中身はそうであるのにかかわらず、リスク管理そのものが甘いんじゃないのか。総裁、いかがですか。
鶴岡参考人 私ども、財務内容につきましては、会計検査院の検査を毎年受けているところでございます。それから、十二年度には監督官庁の検査を受けております。そういう点もございまして、私ども、自己査定する場合に甘くやっているつもりはありません。
 ただ、最近の景気の状況、価格の低迷等によりまして、返済が滞っておるところ、あるいは返済に困っているというようなところにつきましては、一件一件実態を伺いまして、条件変更をしているというようなこともございますし、また、昨年十二月に新しくつくっていただきました不良債権の処理のための借りかえ資金の実行、これは十月から始まって、やっていますけれども、今までかなりの実績を上げていますし、私ども、そういうことで、どうせ金融監督庁の検査も近くは入ることになるわけですので、余りいいかげんなことはやっておりませんので、御理解いただきたいと思います。
山田(正)委員 農協の不良債権のリスク管理、金融公庫の不良債権のリスク管理等、少し質問しようと思っておったのですが、ちょっと私の質問時間がなくなってしまいました。
 最後に、大臣に言っておきたいと思っておりますが、非常に大事な問題なんです。実際に、それによって、不良債権の中身と農協等のそれも大事なんですが、逆に借りる側の立場からすれば、今非常に農業者についても破産事件、破綻事件、それについて競売等々もどんどんなされていっているようです。
 非常に厳しい状況の中にあって、年に大体四万人ぐらいの自殺者が今出ておりますが、その中でいわゆる借金苦が約半分ぐらいだ、そう思っております。その中に農林漁業者が一体どれくらいいるものか、そういったことも含めて、これから先、大いにひとつ、破綻したものをどういう形で救済していったらいいのか。
 私も、かねてから農水省の若い人たちに、民事再生法を今こそどんどん適用して、いわゆる農業者の再生を図るべきじゃないか、そういう言い方をしていますが、最後に大臣、その件についてひとつ御答弁いただいて、私の質問を終わりたい、そう思います。
武部国務大臣 委員御指摘の問題につきましては、私も数々の生産者に接しております。私どもの地域にありましても、会えばいろいろな問題提起がございます。しかも、能力もある、意欲もある、そういった方々が農村に残って頑張ってもらいたい、あるいはそういった方々にもう一度チャンスを与えて、法人等の経営者になってもらいたいということ、数々あります。
 また、民事再生手続の方の問題にいたしましても、私は、すべての法人、個人をその対象としているわけでございますので、農家等の方々にも利用可能なものとなっておりますので、そういったことについても、私ども、適切な指導、また現場に対しましてそういったことについての情報提供、そういったことについては、委員御指摘のように非常に大事だと。
 本当に能力のある、力のある、意欲のある人たちが農村を去らなければならない、農業をやめなきゃならぬ、これは最も残念なことでございますので、そういった人たちにチャンス、いわゆる再チャレンジのチャンスというものを与えるような、そういう農政の展開に努力したいと思います。
鉢呂委員長 これにて山田正彦君の質疑は終了いたしました。
 次に、中林よし子さん。
中林委員 BSE問題に関する調査検討委員会の報告についてただしたいのはやまやまではございますけれども、それは午後の質疑に譲るといたしまして、法案の質疑をさせていただきたいというふうに思います。
 法案の中身に入る前に、この法案の前提になる農業構造改革問題について質問をしたいというふうに思います。
 昨年二月から八月まで、農業経営政策に関する研究会において、今後の農業経営政策に関する議論がされました。農業構造改革推進のための経営政策が取りまとめられました。また同時に、農水省は、米政策の見直し、これを打ち出しました。この米政策の見直しでは、副業農家を稲経から外すという案に対して、全国の農業者から猛反対が広がって、結局、食糧庁案は撤回されることになったわけです。
 なぜ撤回されたのか。それは、農家の実態を見ないで、小泉構造改革のバスに乗りおくれまいとする思惑からそうなったのではないかというふうに私は思いますし、多くの皆さんがそうおっしゃっています。今、小泉内閣の構造改革も、その真の姿が国民の前に明らかになるにつれて、急速に国民的支持を失いつつあります。
 先ほどの研究会の審議、これは調査室が配っている資料ですけれども、それを見ますと、新政策については本当に実現するのか疑問に思っていたのだが、やはり実現しなかった、今回の構造展望についても、農業に実際携わっている者として実現できるのかなと思う、こういう発言が載っております。
 私は、これは大変的確な指摘だというふうに思っております。農業構造改革も新政策の延長線上にある以上、私は、この新政策は日本農業にとって一体何をもたらしたのか、こういう総括がきちっとなされなければならないというふうに思うわけです。
 この新政策はどういうことを言っていたかというと、「十年程度後に目標を置いた政策の展開方向」としていたわけですね。そうすると、ちょうどことしが十年目に当たるわけです。新政策実施十年目で、その政策の総括、どういうぐあいに大臣はされているのか、まずお答えいただきたいと思います。
武部国務大臣 平成四年に策定いたしました新政策におきましては、効率的かつ安定的な農業経営体を育成するための市場原理の一層の導入や、施策の集中化、重点化等の政策の展開方向が示されたわけでございます。
 十年程度後の稲作を中心とした農業構造の展望を行ったわけでありますが、実際には、委員御指摘のとおり、農業労働力は平成十二年では二百四十万人、四九%となっております。これを年齢階層別で見ますと、六十五歳以上の階層で予測と現実の乖離が大きく、見込んでいたほどの高齢者のリタイアがなかったという結果になっているのは事実でございます。
 農家総戸数も、平成十二年度は三百十二万戸、これも見込んでいたほどの農家数の減少はございませんでした。
 個別経営体数については、一定の仮定を置いて計算すれば、全販売農家の約四%、十万戸程度が他産業並みの所得を農業で得ているという形態でございます。
 以上の達成状況の評価についての御質問でございますが、経済社会情勢の著しい変化等農業外を含めたさまざまな要因を考慮する必要があると思います。
 特に、農地の資産的保有傾向が続く中で、すべての生産者に効果が一律に及ぶ各種の価格政策が維持されたということも大きいと思いますし、これらによりまして、需給事情や消費者ニーズが農業者に伝わりにくい、農業者の経営感覚の醸成の妨げとなってきた、その結果、農業構造の改善や内外価格差の是正につながらなかった、国産農産物の需要の減少を招いた面があると考えておりまして、私は、こういう実態を踏まえて、農業構造の改革に大胆に取り組んでいかなければならない、そういう気持ちを強くしているわけでございます。
 稲経の話、米政策の見直しの話等ございましたが、後ほどいろいろ御質問ございましょうと思いますので、そうしたところで私のまた考えを申し上げたいと思います。
中林委員 現実問題、その新政策が目指した方向にはほど遠い、こういう総括をされております。その原因について、著しい経済的な変化があった、そこに私は責任転嫁してはいけないというふうに思うのですね。十年後を目指すという新政策、大々的に打ち出して、それに右へ倣えでさまざまな施策も施されてきたわけですよ。
 私は、具体的に、今話になりました稲作、これが一体どうだったのかということを検証してみたいというふうに思います。
 販売農家の米生産の主要指標の推移、これを見ますと、米生産で十アール当たりの所得、九二年産八万八百十五円だったわけですけれども、これが九九年には四万四千七百三十二円、約二分の一に減っております。それから、十アール当たり家族労働報酬、これが九二年産では四万八千四十二円、それが九九年では一万六千百三十六円ということで、約三分の一に、大変に減っております。
 結局、この一戸当たりの作付面積をふやしていくんだということだったわけですけれども、わずか一ヘクタールぐらいしかふえてはおりません。これは主業農家だけの平均なんですけれども、そのぐらいしかなっていないということでございます。
 新政策は一体どういうことを稲作で言っていたかというと、「望ましい稲作経営の展望」として、「経営の効率的規模は十ないし二十ヘクタールに達する。」「十年程度後は、こうした経営が生産の大宗を担うことを旨とし、」「主たる従事者一人当たりの生涯所得も地域の他産業従事者と遜色ない水準とする」と。これは全くお話にならない。現実は惨たんたる状況ではありませんか。これはお認めになりますね。
武部国務大臣 平成十二年には個別経営体一・四万戸を育成してきたということにとどまっているところでございますが、今委員御指摘のような実態があるということは認めざるを得ない、このように思います。
 これは、先ほども申し上げましたように、農業構造の改善がおくれているということの証左でありまして、今後、稲作経営の構造改革の一層の推進を図るために、昨年八月に食料の安定供給と美しい国づくりに向けた重点プラン等に沿って米政策の見直しを進め、水田農業の構造改革を進めてまいりたい、かように考えている次第でございます。
中林委員 その新政策で、しかも今回も構造改革というのが出されているわけですけれども、本来ならば、十アール当たり一番所得が高いのが十ないし二十ヘクタールにこうやっていくんだという話だったんですね。ところが、この間、一番稲作で所得が高い面積、それは三ないし五ヘクタールのところですよ。それで、十ないし二十ヘクタール、そこのところは、この一番高い三ないし五ヘクタールの生産規模の農家の七七%しかなっていない、こういう実態でございます。
 それで、規模の大きい稲作農家の所得、この推移を見ますと、九四年の十ヘクタール以上の稲作農家の一戸当たりの稲作所得は九百三十万円でした。ところが、五年後、九九年はどうなったかというと、一戸当たりの稲作所得は六百八十八万円ということで、何とこの五年間で二百五十万円も減少しているということになっているわけですね。
 今、武部大臣はその原因は構造改革が進まないからだったとおっしゃるんだけれども、構造改革で一番目玉にされた十ないし二十ヘクタール、そこの方が規模の小さいところよりも所得が少なくなっているということでは、これはその原因に当たらないんじゃないですか。真の原因はどこにあるとお考えですか。
武部国務大臣 さまざまな原因があると思っております。一つには、やはり専業農家といいますか、主業農家が米価の影響を一番大きく受けておりますし、投資が一番多い方々でありますし、そういうようなことがある意味では途上にある構造改革の影響を受けているのではないか、このように思います。したがいまして、私は、稲作経営安定対策によりまして、今後そうした主業農家に傾斜的に力を入れていくということによって我が国の自給率の向上と米政策の構造改革というものを強力に進めていく必要がある、このように思っているわけでございます。
 問題は、やはり他産業との所得格差が埋められないということがネックでありまして、これまではいわば幅広い価格政策ということで一律にやってまいりましたけれども、そういう意味では、この価格政策を所得政策という方向に重点を移していくということで、その構造改革の一環として進めてまいりたい、このように考えているわけでございます。
中林委員 私は、原因を尋ねました。今、さまざまな原因が考えられるということで非常に抽象的に述べられましたし、それから、まだ途上にある構造改革、だからそういうことになったんではないかというふうに今大臣おっしゃったんですよ。私、書きとめました。本当の原因は私は明らかにされていないというふうに思います。価格政策がまだまだいろいろな面で維持されていた原因も挙げておられましたけれども、そこはまるで逆だというふうに私は思います。
 新政策は、今後の価格政策、それについてどういうふうに言っていたかというと、「効率的・安定的経営体が生産の大宗を占めるような農業構造を実現していくことによりコスト削減に努めながら、農業生産構造の変革を促進するため需給事情を反映させた価格水準としていく必要がある」。
 その結果、どういうことが具体的に行われたのか。食管法が廃止された。そして、新食糧法が導入され、米価は市場原理が導入されました。そして、当初あった値幅制限まで撤廃された。米価はこの結果、歯どめのない下落を続けてきました。九二年、六十キロ当たり二万千九百九十円であった自主流通米価格は、二〇〇〇年には一万四千七十円、まさに暴落とも言えるような下落の一途をたどり続けている。もう惨たんたる稲作経営。あなた方が新政策ということで目指し続けた価格政策の結果がこういうことになったとお考えになりませんか。
武部国務大臣 私、今お答えしたとおりでございまして、米については、単に生産すればそれで足りるというものではございませんで、価格は需給により決定されるものでございまして、最終的には消費者に供給されて、農業として成り立つものと私は考えております。
 このような観点から、食糧管理法から現在の食糧法に法体系が改正されまして、消費者のニーズに応じた形で米の生産がなされるように措置されたところでございまして、このような方向は、消費者のニーズに応じた生産を確保することのみならず、生産者の自主性を生かした稲作生産の体質強化を図るということや、市場原理の導入により国民の負担を可能な限り少なくしつつ、米の生産を確保するといった観点から、政策としては私は方向は間違いではない、このように認識しているわけであります。
 それに加えて、今、米政策の見直し、また、経営所得安定対策ということの検討にも入っているわけでありまして、先ほども申し上げましたように、構造改革が途上にある、これを強力に推進することによって問題解決を図っていきたい、このように思っているわけでございます。
中林委員 消費者のニーズにこたえて市場原理に任せたんだと。それを国民からいえば、消費者からいえば、それはこれだけ経済が苦しいわけですから安ければ安いほどいい。そういうことに任せていて農家の経営が維持できるのかという問題が問われるわけですよ。それでは私たちはいけないということをこの新政策のときにも申し上げてまいりました。
 私は、あくまでもそういう考えを大臣がおとりになっているならば、今後の、今示されている構造改革そのものも結局、稲作農家を初め日本の農業を壊滅的な方向に向けてしまうのではないか、そう思わざるを得ません。
 昨年三月に「農林金融」というものが発行されておりますけれども、ここでも、次のような指摘がされております。
 近年の米価格低落は稲作所得の大幅な減少を招いている。稲作経営安定対策がその影響を一部緩和する役割を果たしているが、所得の減少は完全には補償されていない。大規模経営の所得減はやはり大きく、地域としては北海道、東北、北陸などで所得の落ち込みが大きい。
  稲作所得の確保のために経営規模拡大を目指す方向もあるが、前記のとおり、適期作業や水管理などの面で単収を維持することが困難である。機械装備も重要な検討項目であるし、投資負担に耐え得る収益見通しが成り立つのかという点も大いに疑問である。規模拡大やコスト逓減の速度に対して、米価低落のスピードがやはり速すぎると思われる。
と、この「農林金融」で言っているわけですよ。
 大臣、この点の指摘、お認めになりますか。
武部国務大臣 米価につきましては、基本的には需給により決定されるものでございまして、今までの米政策、面積中心にやれば、減反すればするほど、少なくなった面積でたくさんつくろう、そういう性向が働きます結果、なかなか需給バランスがとれないというような問題もあるわけでございます。そして、そのことが生産過剰となっている場合には価格にも影響してまいりますし、政府としても、調整保管でありますとか飼料米の処理を実施するとか、そういうようなことをやってきているわけでございます。
 これらの措置の実施により低落傾向に歯どめをしようということで考えてまいりましたが、私は、やはりこの稲作経営に与える影響を緩和するためには稲作経営安定対策というものを抜本的に見直していく必要があるのではないか。さらに、米政策につきましても、そういうような観点から、消費者がどういうものを望むのか、有機米の問題でありますとか、そういったこと等もございます。
 そういう稲作農家の経営安定に、今、それぞれ現場の意見も聞きながら、研究会を立ち上げて検討している次第でございまして、今いろいろ委員御指摘の問題に対しましても、解決の道筋をつけていきたい、こういう決意で臨んでいるわけでございますので、御理解いただきたいと思います。
中林委員 私は、この新政策、端的に稲作の今の現状を示したわけですし、それからさまざまなところでの論文の指摘なども紹介をいたしました。まさに破綻していると言わざるを得ないというふうに思うわけです。
 これは、先ほど大臣も新しい構造改革の、何かこういうようなものを、それとは全然違う、これは稲作だけのものですけれども、一たん食糧庁がもう撤回したものです。
 当初、私どもに説明をしたときに持参したものですけれども、この一番左が現行という、今見ていらっしゃいますね。一番下の結論のところを見ていただくと「果てしない縮小生産のサイクルへ」と。こういうことで、新政策のままの稲作を続けていれば、果てしない縮小生産のサイクルへと結論づけているわけですよ。もう農水省自身が、食糧庁自身が破綻を認めている、そういう状況じゃありませんか。
 それで、この論文、先ほど示しました「農林金融」の論文で、こういう指摘がさらにあるわけですよ。
  農業所得の減少は営農意欲の低下につながらざるをえない。稲作専業農家が経営継続を断念するならば、稲作での担い手農家の確保は困難となる。
  現在の稲作、あるいは水田農業にとっては担い手の確保が喫緊の課題であるので、生産費を補償し、持続的な農業経営を可能とする価格・所得政策が求められている。
こう言っているわけですね。だから、市場万能の価格政策、需給の動向の中で決まるんだというようなことではだめだと指摘をしている。
 私は、日本共産党が、この新政策が出されたときに、十年前から価格の補償、所得の補償、それが必要だ、こういうことにならなければ日本の稲作は続けられないという提案をいたしましたけれども、大臣、いかがですか。
武部国務大臣 これはお持ちのようでございますから、これを見ていただければありがたいと思いますが、今先生御指摘のことは、私どもも、私や遠藤副大臣が大臣、副大臣に就任して、この米政策の抜本見直しというものをやろうということについては、やはり現状を検証しなきゃならない。
 現行政策についてさまざまな問題があるということから新しい政策を今展開しようとしているわけでございまして、水田農業の抜本的な構造改革ということについては、さまざま総合的な政策のあり方を今検討しているわけでございますし、また、構造改革に伴うリスクを回避するためのセーフティーネットの創設ということが、水田農業の抜本改革と整合性を持った経営所得安定対策のあり方として、これからしっかりした結論を提示できるような、今研究会等の開催をしているわけでございまして、きょう御答弁申し上げられることは、先生のおっしゃるように、価格政策も全部国が保障して、その上で所得補償政策もと、そういうことが許されるのか、今いる農家すべてに対して。私は、そうではないと思うのですね。
 さまざまな農村の実態等を考えた場合に、やはり望ましい経営体というものをしっかりこの稲作の場合にもつくり上げていく、そういういわゆる構造政策というものが必要であろう、こう思っているわけでございまして、水田農業の安定と発展、そして食料自給率の向上、水田の多面的な機能の維持、このことも我々が今考えている一つの大事な要点でございます。御理解をいただきたいと思います。
中林委員 結局、みずから本当は破綻している、現実はもう惨たんたる状況だというのは、現実はお認めになっているんだけれども、それでもなおかつこの線を進めていくということを大臣は強弁されているわけです。私は、この新政策の路線を、今度、もっと強力に政策を集中しながら進めていくんだ、こういうことの行き着く終着駅、それは、一体日本農業をどこに導いていくのかということが問われているというふうに思います。
 ついこの間届けられました、平成十四年三月、全国農業会議所発行の認定農業者の経営継承に関するアンケート調査結果、これを見ると、今の現実が一体どうなるのか、将来がどうなるだろうかということを読み取ることができるというふうに思います。
 認定農業者の三八%、四割近くが後継者がいないと言っているわけですね。認定農業者へ農地集約していくわけでしょう。そこが十ないし二十ヘクタールということなんですよ。今、認定農業者の年齢構成を見ると、五十五歳から五十九歳が六割、それから六十歳以上が四割、大体そういう結果が出ておりますよ。
 今度の構造改革の目標年度は平成二十二年、二〇一〇年を目標に置いているわけですが、一体この方々が何歳になるのか。そういう高齢になって、なおかつ後継者がいない人たちがいる。十ないし二十ヘクタールという大規模の農業、果たして本当にやっていけるのかと。そういう人に、日本の農業の主な担い手、稲作の担い手、そうなるんですか。ならないんでしょう。だからこそ、あなた方が考えている受け皿というものを、法人化する、株式会社の導入だ、こういうことに結果的になっていく。
 そうなると、株式会社というのは本当に日本の農業の担い手になり得るのか。これはいろいろな人が指摘しているけれども、おいしいところ取りじゃないか、企業というのは。結局、収益性の上がらないところだけが従来の農家に残されていく、そういうことになりかねないよという指摘さえあります。
 ですから、私は、これで大臣に聞いても同じことを言われるでしょうから、だからお聞きはしませんけれども、あなた方が描いている構造改革でいくならば、日本の農業の終着駅というのは、まさに日本から農業が破壊されていく姿。食料自給率が高くなるなどということは、到底保証されないというふうに思わざるを得ません。
 そこで、今回の金融二法がそういう前提のもとで出されました。具体的に法案についてお聞きしたいというふうに思います。
 まず、農業法人の投資の円滑化に関する特別措置法についてのことです。
 この法案では、投資育成株式会社のうち、事業計画の承認を受け、地方公共団体や農協が株式の過半を占めるものは、農地法の出資制限の制約を受けずに農業生産法人に出資できることになる。投資育成株式会社の株式の半分以上を地方自治体や農協が持つということが強調されているわけですけれども、残余の株式の取得、これについては制限があるのでしょうか。
川村政府参考人 お答えいたします。
 今回の特別措置法案は、農業法人への投資の円滑化を図るために、農業法人投資育成会社に関する特例措置を設けるものでございます。
 この場合、農業法人の中で農地を取得できる農業生産法人に対します出資につきましては、投機的な農地取得につながることがないよう、農業法人投資育成会社であって、事業計画をつくりまして、農林水産大臣の承認を受けるということがまず義務づけられております。
 それから、現行農地法上、農業生産法人への出資制限のない地方公共団体及び農協系統がその議決権の過半数を有するものに限りまして、農業法人に投資できるということにしております。この場合、地方公共団体なりあるいは農協系統が投資育成会社の議決権の過半数を保有しておれば、他の議決権をだれが保有するかについては特段の規制は設けておりません。
 なお、当面設立が見込まれる投資育成会社でございますけれども、全農あるいは全共連、農林中金等のJAグループが中心となって出資を行いまして、あわせまして農林公庫も補完的に出資を行うということを想定しております。
中林委員 今お聞きしたら、残余の株式には制限がないというお答えだったわけですね。そうすると、最大株主が民間企業になることも当然考えられ、しかも、これは外資が持つことも排除はされていないというふうに思うわけですけれども、そこは確認したいと思います。
川村政府参考人 ただいまもお答えしたとおり、地方公共団体あるいは系統が議決権の過半数を保有しておりますと、他の議決権についての特段の規制はございません。
 ただ、先ほども言いましたとおり、その他のものにつきましては、農林公庫等が補完的に出資するということを考えているところでございます。
中林委員 要するに、ちゃんと明確に答弁されないものですからあれですけれども、今私が指摘したように、残余の株式の制限がないわけだから、最大株主が民間になったり、外資も当然入る余地があるということが明確になりました。
 農業生産法人には、農地法で構成要件が定められて、農業関係者以外の出資を四分の一以下に制限しているわけですけれども、投資育成株式会社が農業生産法人に出資する場合、取得できる株式、持ち分の上限は決めてありますか。
川村政府参考人 出資の議決権の関係でございます。
 平成十二年の農地法改正におきまして、株式会社の参入につきましては、いろいろな懸念払拭ということで、農外からの出資比率は四分の一までとすることなどの農業生産法人としての条件を満たす株式会社に限りまして、参入が認められているところでございます。
 農協系統あるいは地方公共団体は、農外資本という位置づけではございませんので、この四分の一の出資比率の規制は設けられておりません。そういう意味で、議決権数の制限はなく、また、農業生産法人に対して出資ができます。
 今回のこの特別措置法でございますけれども、農業生産法人に出資できる農業法人育成会社につきましては、地方公共団体それから農協系統がそれぞれの議決権の過半数を有しているものに限っておりまして、このため、農協系統それから地方公共団体と同様に、農業生産法人に四分の一の出資比率の規制を受けずに出資ができるというのがまず一点でございます。
 ただ、この農業法人投資育成会社からの出資が農業法人の経営の自主性を損なうということは好ましくないものですので、このため、農業法人への出資持ち分は当該農業法人全体の二分の一を超えないようにしたいと考えておりまして、この点につきましては事業計画で担保したいと考えております。
中林委員 要するに、法律上の上限はない、事業計画の中で定めるという方向です。
 そうなると、農業生産法人への出資制限、これは農業生産法人に対する企業支配を防止するために設けられております。二〇〇〇年の農地法の審議の際、私も当時の構造改善局長の渡辺氏と随分議論してまいりました。
 当時の局長は、農業関係者以外の出資を全体で四分の一範囲内、一構成員は一〇%に制限することで企業が支配権を握れないようにしている、これが歯どめですよと。この歯どめ論をさんざん繰り返されて、大丈夫だ、大丈夫だ、こういうふうに言われたわけだけれども、今回の法案で、民間大企業がたとえ外資であろうと、最大株主になり運営の主導権を握る可能性がある投資育成会社が、農業生産法人に対し、この制限を受けずに出資できることになるわけですよ。
 農地法による出資制限が骨抜きになって、農外資本による農業生産法人の経営支配に対する唯一の歯どめと言われるものが結局骨抜きになるということになれば、一体どういう事態になるんだろうかというふうに思います。今、現に大企業を挙げただけでも、カゴメ、セコム、プロミス、三井物産、JT、ドール、こういった広範な業種の企業が、農業とは全く関係のないような企業も農業参入を進めております。
 こうなると、先ほど私は、構造改革の行き着く先が、こういう株式会社の受け皿になって、おいしいところ取りだ、つまり、こういう企業は安定的な農業をやらないだろうと。様子見もあるし、実験的なものもあるというふうに伝えられているわけですね。
 結果的に今回の法改正というのは、そういう道を全面的に開いていく一歩になるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、大臣、いかがですか。
武部国務大臣 御心配なことを挙げれば数々あると思うのです。しかし、私は最近、農林省のホームページの一番最初に農業をやりたい人を応援しますというのを掲げましたら、一日百件以上のアクセスがあるんですね。私は気持ちとしては、一千四百兆円の個人金融資産というものを農業や農村に導入したいな、このように思うのです。そういう意味で、法人化でありますとか集落営農でありますとか、都市と農山漁村の共生、対流というようなことをも視野に入れて、農業の経営の今後のあり方というものを真剣に考えてみたい、こう考えているわけでございます。
 今回の新法は、株式会社参入をめぐる平成十二年の農地法改正時の議論を十分踏まえたものとなっているわけでございまして、農外資本による経営支配につながるものではありませんし、これからの、やる気のある、元気のある、能力のある、意欲のある望ましい経営者、経営体というのは、そんなことに支配されるような方々ではない、そういう人たちを育てていくというのが私たちの使命だ、こう思って取り組んでまいりたいと思っているのです。
中林委員 それだったら、今回のような法改正なんて全く必要ないじゃないですか。私は、農地法のときも、あるいは新農業基本法の法案のときも、与党でさえもこういう株式会社の参入については異論があって、それがずっと今日まで、一つ許し、二つ許し、そしてずっと規制緩和をして、農地法のときに、歯どめだ、歯どめだと当時答弁をしてきたことまで取り除いていくということは、日本の農業の先行き、本当に憂えざるを得ないということを指摘しておきたいと思います。
 次に、農業近代化資金助成法の一部改正についてお聞きいたします。
 今回の法案は、特殊法人改革の一環として、認定農業者向けの長期運転資金の貸し付けをスーパーL資金から近代化資金にシフトしていく、そういう方向を打ち出したものだというふうに思います。つまり、民間にできることは民間で、こういう小泉構造改革があるわけですけれども、その農業版だというふうに思います。私は、これは許されないなというふうに思っているのですね。
 そもそも農林公庫というのは、その性質からして、超長期、低利の融資の必要性があり、民間からの資金調達が不利な農業分野で政府系金融機関だからこそできる融資を行う、こういう役割があるわけですね。先ほど副大臣も、民間の金融機関ではそういうものはないだろうというような御答弁もあったぐらい、だからこそこういう農業分野における政府機関の金融機関がある。
 しかし、実際にスーパーL資金の償還期限は二十五年以内、それから農業近代化資金は十五年以内で、貸し付け条件には大変大きな差があります。昨今の農業経営の悪化で負債整理に頭を抱えている認定農家が、みずから進んで近代化資金を選んでいくとは大変考えづらいというふうに思います。
 そこで政府が考えたのが、法改正後のJA窓口一本化ではないかというふうに思います。実質的に農協に融資窓口を一本化して、申し込みを受けた農協を中心として、公庫、農協、改良資金が協議をして最も適切な資金を選択する仕組みづくりをする、こういう予定があるというわけですけれども、仮にスーパーL資金と近代化資金が競合した場合、つまり民間でできることは民間でのスタンスに立つならば、農業者にとっては、どちらも借りられるという場合、最も適切な資金としては近代化資金が選択されるということになるのか、そうじゃなくて、農家の方から、償還期間が長いスーパーL資金、こっちの方だと言えば希望どおりになるのか。具体的な問題ですから答えてください。
川村政府参考人 お答えいたします。
 今回の改正の中で、融資手続につきまして一元化を図ろうとしております。これは、日ごろお取引をしていただいております金融機関、ここに申し込みをしていただきたいということで、農協等ということで、農協に限りませんで、公庫等もいいわけでございます。そこに提出があれば、各機関が連携をして、最も適切なものを融通するということでございます。
 その点、今お尋ねがありましたとおり、二つのものが競合するということがあるかもしれません。その場合は、農業者の意思を尊重いたしまして、その農業者が選択されるものを貸し付けていくという姿勢でやりたいと思っています。
中林委員 それは本当にちゃんと守っていただかなければ困るというふうに思いますね。農家の皆さんは、農業というのはすぐに結論が出る問題じゃないので、長期の低利の資金というのが一番の望みだということを重ねて申し上げておきたいというふうに思います。
 今回、私は非常に重要な問題だというふうに思っているのが、農業改良資金を改編して高リスク農業へのチャレンジ資金に性格を変えているという問題なんです。
 そこで、青年農業者育成確保資金、これが廃止される。この資金は、新規就農者に限らず、幅広い青年農業者などが研修や施設整備に使える融資制度として、この十年間、毎年五十億円から八十億円の融資実績がある制度なんですね。
 大臣にお聞きします。高齢化が進展する日本農業の現状において、青年農業者の確保のための施策、これは予算措置も含めて当然力を入れるべき課題だというふうに思うわけですけれども、なぜこの資金を廃止されるのですか。逆行するのじゃないですか。
武部国務大臣 私は、私の執行の一番大きなねらい、願いというのは、農村に新しい若い経営者がどんどん参入する、新規就農者をどんどん迎え入れて活性化したい、あるいはまた、おいしい水、きれいな空気、美しい自然というのは、都市住民にとってはないものねだりだったかもしれません、しかし、私自身が大自然の中で育ったことを踏まえて本当にありがたいと思っているだけに、もっと都市住民の方々にも、老いも若きも農業や農山漁村に入ってきてもらいたい、こう思っているわけでございます。
 そういう意味で、そういった施策をこれからもう最大限重点施策として充実していきたい、こう思っておるわけでありまして、青年農業者育成確保資金を廃止しても、新たな農業改良資金及び就農支援資金で対応は可能でありますし、こういったことを充実してチャレンジャーを迎え入れようということでございますので、先生大変御心配の向きでございますが、私は、先生が考えているようなことをもう大いに拡大していこうという決意でございますので、また御意見があったらお聞かせいただきたいと思います。
中林委員 もう大いに意見ありです。というのは、今大臣が示された就農支援資金、これは認定就農者でないと借りられないわけですよ。限定がありますよ。今までの青年農業者育成確保資金というのは、さっき言ったように、いろいろ幅広い融資を受けられるということなんです。だから後退なんですよ。
 それで、新規就農対策予算を、農水省に、一体幾ら積んでいるんだといって資料の提出を求めたんですけれども、ばらばらになっていてちゃんと合計して出してこないのでうちの方で合計したんですけれども、去年、二〇〇一年度よりも今年度、予算成立しましたけれども、やはり減っていますよ。二〇〇一年度は二百六十七億四千百万円、今年度は二百六十六億八千百万円と減っているんです。
 それから、さらに減っていて問題なのが、経営継承運営円滑化資金というのがあるんですけれども、これなどは、千八百万円というのを去年予算措置していたんですけれども、今年度は五百万円ですよ。もう泣くに泣けないほど新規就農対策というのは減りに減り続けている、わずかしかない。大臣が幾ら決意を述べられ、自分はそこに力を入れているんだと言われても、実際の施策、予算措置がこれではだめですよ。
 日本共産党は、本当に、担い手、特に青年の担い手というのは日本の農業を支えていくためにどうしても必要だというふうに思います。私は、月々十五万円所得保障して、本当にこれで安心してやれというのを三年間は継続する提案をしているんです。そういう方向に転換されることを求めまして、私の質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて中林よし子さんの質疑は終了いたしました。
 次に、山口わか子さん。
山口(わ)委員 社会民主党・市民連合の山口わか子でございます。
 今回のこの二法案を提案する根拠につきましては今まで御説明を聞きましたし、そして、この法案を出すことになった背景あるいは農業の現状を見たときに、大変な現状だということは、ただいまの中林議員に対する大臣の御答弁でもいろいろ述べられていましたので、私も、本当に大変な現状の中で、お金を借りてそれでも農業を続ける人がいるのかどうかという心配を非常にしていますので、その辺は、先ほどの御答弁で、それ以上のものは出ないかな、こう思っていますので、次に進めさせていただきたいと思います。
 大臣は、食料の安定供給と美しい国づくりに向けた重点プランという私案を出されて張り切っていらっしゃることはもうきのうから伺っております。そして、その私案の中でも、安全で安心できる食料を安定的に供給するために、軸足を消費者に向けた農水省の構造改革が大事だということも大臣がおっしゃっているわけです。
 私も、今までの農林水産省の政策を見ますと、どうしてもどっちかというと生産者が中心になっていまして、本当に安心して安全な農林水産業を進めてこられたのではなかったんじゃないかというふうに思うのですが、大臣の先ほどのこの私案につきまして、この方針をどう具体化されるのか、御答弁をいただきたいと思います。
武部国務大臣 私は、就任時、「食料の安定供給と美しい国づくりに向けて」というテーマで発表させていただきました。そのときにも、安全、安心な食料の確保のためのシステムをしっかり構築して、そして消費者の信頼を確保する。
 これは、私も年来そういう思いを持っていた者でございますが、どういうふうに具体的に消費者サイドに軸足を置いた農林水産省行政を進めていくかということにつきましては、この二月初めには、先ほども申し上げましたように、食と農の再生プランというものを具体的に各局に検討を指示いたしまして、しっかりした工程表をつくって、今後、十四年度は何をどのようにするのか、十五年度は、十六年度はという目安をきちっとつくって、その工程表に合わせたプランニングをしているわけでございます。
 消費者に軸足を置いた農林水産政策への転換、これが私の大きな使命と考えておりますし、そのキーワードは安全で安心なフードシステムの構築ということだ、このように思っております。
 具体的なことを述べよと言うのであれば、今また私の構想を申し上げてもよろしいのですが、いずれにいたしましても、BSEの問題を機に、私どもは本当に深い反省点に立って、生産者が成り立っていくためにも消費者サイドに軸足を置いて、消費者が何を求めているか、食についてはどういうものを求めているのかということをきちっと生産者が認識して生産システムをつくっていかないと、自給率を向上するといったって、消費者が召し上がらないものを供給して自給率は上がりません。このことについては重大な決意を持って取り組んでまいりたい、こう思っている次第でございまして、御理解を賜りたいと思います。
山口(わ)委員 今まさに大臣がおっしゃいましたように、消費者が食べないものを幾ら生産してもこれはだめだという御答弁をいただきまして、私もまさにそのとおりだというふうに思っています。
 そこで、本当に安心できる農産物の提供に努力されているのか、私はこの辺が非常に心配になるわけです。私が国会にお世話になるようになってからでも、農薬の問題、O157の問題、遺伝子組み換え食品そしてBSEの問題、食肉への抗生物質投与による耐性菌問題と、本当にさまざまな問題が、消費者の不安をかき立てる材料として、マスコミをにぎわさなかったときはないんじゃないかというふうに思っているのです。
 それで、私はもう一つ心配がございまして、その心配の種について御質問申し上げたいと思いますが、実は、カドミウム米の調査についてでございます。
 このカドミウムが人体に蓄積されますと、長時間をかけて骨がすかすかになるわけです。このすかすかになる過程で物すごい痛みを発するわけですね。つまり、記憶にあると思いますが、富山の神通川流域で起こったイタイイタイ病というのがありますけれども、この前駆症状とでもいいますか、そういう病気にも進んでいくその前の状況が今非常に心配されております。その手前の症状としては特に腎臓疾患の障害が多く起こるというふうに言われておりますし、このカドミウムがどうやって人体に入るかといいますと、これはお米を通して入るというふうに言われているわけです。
 特に、閉山した鉱山付近ですとか、その近郊の農地からとれたお米が非常に高い値を示しているというふうに言われています。このカドミウムにつきましては一九二〇年から六〇年代に発生しているわけで、そしてこのカドミウムの汚染米が大問題になったことは有名なわけです。
 この閉山した鉱山付近の土壌汚染からこういう汚染米が出ているわけですが、このことについて現在はどう処理をされているのか、お伺いしたいと思います。
石原政府参考人 お答え申し上げます。
 カドミウムで汚染された農地から生産された米の処理でございますけれども、カドミウムの汚染につきましては、食品衛生法で、御案内のとおり、カドミウム濃度が一ppm以上の米は販売等が禁止されております。したがいまして、このような米、すなわちカドミウム濃度が一ppm以上、こういう米につきましては都道府県等により焼却処分をしているところでございます。
 このカドミウム濃度が一ppmに満たないもの、〇・四ppmないし一ppm未満、こういう米につきましては、食品衛生法の基準は満たしております。したがいまして、安全性には問題はございませんが、カドミウム汚染が問題となった当時、これは先ほど先生の方から御指摘ございました、昭和四十年代初めに大きな問題になったわけでございますので、その当時から消費者の感情を考慮いたしまして、政府がすべて買い入れを行いまして、合板接着剤原料等、非食用に処理しているということでございます。
山口(わ)委員 このカドミウム米の汚染につきましては、現在基準が、ただいまお答えいただきましたように、食品衛生法では一ppm、農林水産省では、食糧庁では〇・四から一ppmということになっているわけですが、これを決められた根拠というのは一体どういう根拠で決められたのかというのが非常に心配なわけです。
 なぜかといいますと、このカドミウムというのは長年蓄積されるわけですね。そしてもう一つは、お米を食べる、主食するのは日本人なんですね。量が少しであればそう問題はないと思うのですが、蓄積されていきますから、たとえ〇・四から一であっても、この蓄積された結果が、やはりカドミウムによる人体に対する影響は非常に大きいというふうに多くの学者の先生方も言っているわけです。
 ですから、私は、この〇・四から一というふうに食糧庁が決められたことの根拠をお聞かせいただきたいというふうに思います。
石原政府参考人 先ほども申し上げましたが、昭和四十年代初めにカドミウム汚染が大きな問題となったわけでございます。そのときに、厚生省さんの方で、具体的には昭和四十五年でございますけれども、微量重金属調査研究会、こういうものを開催いたしまして、そこで科学的な検討を加えまして食品衛生法の規格基準を一ppmとしたということでございます。
 しかしながら、四十五年にこの研究会の検討が出る前に厚生省さんの方で、いろいろな社会問題になったということから、〇・四ppmを超える米、こういうものにつきましては何らかの環境汚染が考えられるということ、そういう判断をいたしまして、要観察地域として指定して、そこは米を配給しないようにという要望があったわけでございます。
 その後に一ppmという食品衛生法の基準ができたわけでございますけれども、その当時、農林水産省といたしましては、〇・四ppmということで配給しなかった、そういう経緯にかんがみまして、消費者の感情、その辺を考慮いたしまして、引き続き〇・四ppm以上一ppm未満、こういうものにつきましては食用に回さないという決定をしたところでございます。
山口(わ)委員 この一ppmというのも非常に緩やかな基準だというふうに思っていますし、〇・四から一についても、本当にこれで安全なのかという、この根拠については今ちょっと御説明がなかったんですけれども、こうしたカドミウム米が全国各地で生産されていると思うのですね。生産されているから、〇・四以上は工業用としてのりに使っていて、実際には食用に回していないという御答弁だったわけですが、ということは、農林水産省としては、このカドミウム米については全国的な調査を行っていると思うのです。
 私も食糧庁の出しているホームページを見せていただきましたけれども、そのホームページにも公開されているようですが、どういう基準で、調査をいつから始められて、現状はどういうふうになっているのか。そのカドミウムの汚染米がどのくらいの地域に出ているのか、御説明いただきたいと思います。
石原政府参考人 食糧庁の調査でございますけれども、現在、十三年産、これでは五百十五点について調査を行っております。この調査は、重点調査というもの、これが全国で四百十一点ございます。それと、要請調査というものが百四点ございます。合わせまして五百十五点について調査しているわけでございます。
 この調査の内容、重点調査といいますのは、これは平成五年以降実施しておりますが、過去、〇・四ppm以上のカドミウムが検出されたそういう地域、そういう米を対象といたしまして、都道府県それから市町村、JA等の出荷業者、それから調査対象生産者、こういう方々の了解を得まして実施しているということでございます。
 もう一方の調査、要請調査でございますけれども、これは、残留農薬の調査対象生産者または調査関係者からカドミウムの調査の要請があった場合に、関係者等の了解を得まして実施しているものでございます。
 いずれにしましても、こういう重点調査、要請調査をやった場合、これの結果が判明するまでは出庫を留保する、そういうような措置も講じまして、消費者の方々から安全性について疑念を抱かれるようなことのないように対応しているということでございます。
山口(わ)委員 私は、調査の結果どのくらい、〇・四から一ppmあるいは一ppm以上のお米が、どの地域かは結構ですが、何カ所くらいから出されたのかお伺いしたのですが、御答弁がございませんでした。
石原政府参考人 失礼しました。
 十三年の調査の結果を申し上げたいと思いますけれども、重点調査によりますと、〇・四ppm以上一・〇ppm未満の検出点数は三十三点ということでございます。また、一・〇ppm以上の検出点数につきましては二点ということになっております。
 なお、要請調査につきましては、〇・四ppm以上一ppm未満の検出点数及び一ppm以上の検出点数については、一切ございません。
 以上でございます。
山口(わ)委員 ただいまは十三年の調査についてお伺いしましたが、平成九年と十年産米でも、三万七千点について全国ベースのカドミウム分析調査を行っているというふうにホームページで見せていただきました。そして、この調査結果がどうだったのかを含めて、十三年産の調査を含めて、この内容についてお知らせいただきたい、資料を欲しいと思いますので、後ほどいただきたいと思いますが、よろしいですね。
 それから続いての質問ですが、現状の基準値、つまり、農林水産省が決めているという〇・四から一ppmというのは本当に安全であるかということが十分確認できない御答弁だったわけですが、この基準につきまして、実は、食品の国際規格を決めるコーデックス委員会というのがあるわけですね。このコーデックス委員会では、カドミウムの摂取量について、〇・二ppmの数字を今打ち出しているというふうに聞いていますし、EUでもこの数字に切りかえるようですけれども、日本での基準の決め方は、この〇・二ppmについてどういうふうに考えておられるのか、御答弁をいただきたいと思います。
須賀田政府参考人 現在、先生言われましたコーデックスの食品添加物・汚染物質部会におきまして、カドミウムの国際的な基準値の原案の検討が進められております。
 先生おっしゃるように、平成十一年にデンマークが作成いたしました基準値原案、お米については〇・二ppmでございますけれども、提案されておりますけれども、これについては、基準値を検討するために必要な健康への影響を解明するための疫学調査に基づく毒性評価が不十分だということで、現在、日本においても、厚生労働省を中心に大規模な疫学調査を実施しているところであります。
 このような主張は、アメリカ、フランス、タイ、フィリピン等が同調しておりまして、去る三月に開催されたこの部会におきましても、一つは、我が国の疫学調査結果を十五年六月の国際専門家会議で最優先に評価する、あわせまして、主要な食品からのカドミウムの摂取実態も評価する、その二つのことが合意されました。現在の基準値の原案は、こういう評価結果を踏まえて見直されるということが合意されているところでございます。
 厚生労働省、環境省と連絡を密にいたしまして、的確に対応していきたいというふうに考えているところでございます。
山口(わ)委員 いろいろな疫学調査を実施して、その結果で決めたいというお考えのようですけれども、実は、日本という国は非常にこのカドミウムが多いわけですね。特にカドミウム汚染米につきましては、世界的に見ても非常に多くなっているというふうに聞いているわけです。
 そして、今までこれだけの汚染米が出た中で、日本としてはどういう対策をとられてきたのか。その不安を抱えてお米をいまだにつくっている農家がいるわけですね。そして、回収はしているというふうに聞いていますけれども、実際には強制的に回収しているわけじゃないと思いますから、多分、農家の皆さんはこの汚染米を食べているというふうに私は思うのです。
 その辺も含めて、実際に、汚染された農地をどういうふうに改良しているのか。そして実際に、汚染米を生産している農家の皆さんにはどういう指導をされているのか、お聞かせいただきたいと思います。
須賀田政府参考人 現在の対策でございます。
 農用地土壌汚染防止法に基づきまして指定をされた地域におきましては、休耕等の対策によりまして汚染米は生産が行われていない状況にございますけれども、その周辺の地域におきまして、先ほど食糧庁長官がお答えになりましたけれども、一ppm以上のカドミウム汚染米が見つかる場合がございます。食糧庁等が行いました十三年度の調査結果によりますと、四十トン弱のカドミウム汚染米が見つかっておりまして、この汚染米については、自治体によってすべて焼却処分をされているわけでございます。
 まず、この汚染米が生産された地域におきましては、先ほど申し上げました農用地土壌汚染防止法に基づいて、まず綿密な調査が行われるということでございます。その結果、地域指定をする必要がございますれば、カドミウム汚染農用地の指定を行うということでございまして、その地域におきまして、排土とか客土とかの農用地復元の対策を行う必要があるということで、環境省と密接に連絡をとりながら必要な対策を進めるという仕組みになっているところでございます。
 なお、先ほど食糧庁長官がお答えになりました〇・四ppm以上一ppm未満の対策でございます。
 やはり農作物のカドミウム等の吸収を大幅に抑制するような高度な営農技術を確立することが必要でございまして、例えば、pHの上昇によりますとなかなか水に溶解しないとか、いろいろな技術がございますので、そういう営農技術を指導しているというところでございます。
山口(わ)委員 ただいまの御答弁ですと、そういう土壌改良をする予定になっているというふうに御答弁をいただきましたが、今までは、一切この土壌改良はなされていないのでしょうか。もう何年も、四十年もたっているわけですから、本当はきちっと土壌改良、できるわけですね。その中で、やはりカドミウムをどんどん減らしていくということが大事だというふうに思うのですけれども、今の御答弁だと何か、やっているのかどうかわからないので、もう一回お聞かせください。
須賀田政府参考人 大変失礼をいたしました。先ほど申し上げました事業、公害防除特別土地改良事業等でございまして、この事業で約八割、六千六百ヘクタールのうちの五千六百ヘクタールについて対策を講じておるということでございます。
山口(わ)委員 八割が土壌改良なさったというお話ですが、土壌改良した結果、再度調査したときにどういう改善点があったのか。毎年調査していて、多分、重点調査というのは、今までにカドミウムの高いところについては再度調査をされているというふうに思いますし、土壌改良した結果がやはり改善されていれば、もっと減っていいはずだというふうに思うのですが、その辺はどうなっているんでしょうか。
須賀田政府参考人 先ほど申し上げました事業を実施いたしまして、その後、調査をいたしました。この地域指定の要件を満たさなくなったところについては地域指定の解除をするということをしておりまして、現在までに四千三百七十三ヘクタールの地域指定の解除を行っているというところでございます。
山口(わ)委員 四千三百七十三ヘクタールが改良したということですか、改善できたということですか。できればそのデータも後でいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それから、今一応農林水産省で決めているこの規格は、EUあるいはコーデックス委員会から見ると大変低いわけですよね。低いということは高いということなんですね、安全性が低いということになるわけです。実際にこの〇・二ppmの数字を日本のお米に当てはめた場合に、日本全体では何%くらいこれにひっかかるんでしょうか。
 この予測は非常に大事だというふうに思いますし、健康に関する危険因子についても、これからきちっと説明していかなきゃいけないというふうに思いますし、EU全体ではカドミウムは非常に低いですから、やはり日本にとって非常に重要な問題だというふうに思います。
 特に大人がお米を食べた場合に、かなりたくさんの摂取がされるわけですね。特に欧米人から比べると三倍から五倍の数字になるというデータも出ているくらいですから、もし〇・二になったらどういう状況になるのか、予想されていればお答えください。
須賀田政府参考人 お答えを申し上げます。
鉢呂委員長 もう少し大きい声で。
須賀田政府参考人 余り仮定の話を進めるのもいかがかとは思いますけれども、平成九年と十年に食糧庁が行いました全国規模のカドミウム米の実態調査によりますと、その濃度が〇・二ppmを超えるお米は全体の約三・二%あったということでございます。
山口(わ)委員 かなりふえるということになるわけで、この辺につきましては、やはりこれから大事に考えていかなきゃいけませんし、いろいろな検査を、ほかの民間の団体も検査をしているわけで、その検査によりますと、もっと多くの農地がこの対象になるということも実際に出されているわけですので、やはりこの辺は、さっきの危険因子ではありませんが、カドミウム米についても危機意識を持っていただいて、土壌改良するなり、調査をきちっとするなりはやっていただきたいというふうに思うわけです。
 各都道府県でも独自にこの検査をしていまして、実際には市場にお米が出回らないようにきちっと調査をしているところも聞いております。そこのデータから見ましても、やはりカドミウム汚染がどの程度健康被害を与えるかというところでは、例えば石川県あたりは〇・一三から〇・三四ppm以下でないと健康被害が起こってしまうというデータも出ているわけですね。そういうことから考えても、やはりこれから先、よほど慎重に、〇・四では私は高過ぎるというふうに思っていますので、十分検討していただきたいというふうに思います。
 それからもう一つ、何で日本にこんなにカドミウムが多いのかということなんですが、一つは、亜鉛の製錬工場から出るカドミウム汚染が問題になっているというふうに思いますけれども、もう一つは、カドミウムの約八割は、携帯電話とかOA機器などの充電式の乾電池、ニッケルカドミウム乾電池に使われているわけです。そして、このリサイクル率というのがまた二割というふうに大変低いわけですね。ほとんどは廃棄物処分場かごみ焼却場へ行って、周辺の土壌を汚染しているわけです。
 この辺については、農林水産省として、こういう日本の汚染について、やはりお米に対する影響もかなりこれは大きいわけですが、どういうふうに調査をされて認定されているのか、お答えがいただければいただきたいと思います。
石原政府参考人 消費者に安全性につきまして疑念を持たれるということが一番困る、我々は、安全な米を供給するのは当然のことでございますので、そのようなことから、これまでいろいろな努力をしてきているところでございます。
 それで、これまでカドミウムにつきましては全国で五百十五点の調査をしているということを先ほど来申し上げてまいりましたが、昨今、食品の安全性につきまして、消費者の関心が非常に高まっているということでございます。そういうこともございまして、我々、平成十四年産からは、カドミウムの調査につきましては、これまでの五百十五点を倍増いたしまして、一千点につきまして調査したいというふうに思っているところでございます。
 ちなみに、残留農薬につきましては、これまで一千点で調査してまいりましたけれども、平成十四年産からは、これも倍増ということで、二千点につきまして調査するということにしているところでございます。
 先ほど先生の方からお尋ねがございましたいろいろな電池の問題、こういう問題につきましては、我々、直接こういう問題にはタッチしておりませんが、おっしゃるとおり、これのリサイクル、そういうのをきちっとやっていただくことがこういう汚染米の発生を防ぐ重要な要素でございますので、我々、この辺につきましては、関係の省にもしかるべく申し入れをするなりして対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。
山口(わ)委員 十四年には倍増して調査をなさるというお話で、大変結構なことだというふうに思います。ただ、調査をする場合に、どこを調査するかというのは大変重要な問題になってくると思うのです。
 私が今申し上げましたように、やはりカドミウム汚染がどういうところでどんなふうに広がっているかということも調査した上でその周辺の農地というふうに決めていただかないと、例えば、農薬を実施しているところに、ついでにカドミウム調査もやるというようなことでなくて、やはりカドミウムがどんな形で汚染されているか、特に、処分場ですとか焼却場の周辺の農地はそういう対象に入れるとか、これからはやはりそういう努力が大変大事だというふうに思っています。
 その辺は、やはり厚生労働省や環境省とも連携をとりながらやっていくことがとても大事だと思うのですね。BSEの問題もそうですが、農林水産省だけの問題ではなくて、やはり厚生労働省の問題、環境省の問題と幾つかかかわってくるわけで、一番やはり連携をとってもらうということがとても重要になるというふうに私は思っていますが、そういうふうになさるおつもりかどうか、もう一回御答弁を。
石原政府参考人 我々、十四年産、これは倍増するというふうに申し上げましたけれども、基本的には、これまで汚染米の見つかったところの周辺地域を実施したいと考えています。
 しかし、いたずらに周辺というだけでは、今先生の方から御指摘がございました点、十分かどうか問題がございます。その点で、厚生労働省それから環境省、こういうところとも十分連携を図りながら、発生源があるわけでございますので、そういうものにも十分目配りして、調査の遺漏なきを期してまいりたいと考えているところでございます。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
 やはり汚染というか、環境汚染もそうですし、食料の汚染もそうですし、一番消費者が不安を抱えているのはその問題だと思うんですね。BSEが何でこんなに騒がれているかといえば、結局は、もしかしたら人間に新ヤコブ病が出るのではないかということも消費者の皆さんの不安をかき立てる大きな問題になっているわけです。
 やはりこういう問題についてはよほど慎重に、そして安全、安全検査というのは慎重になることに一番、どんなに慎重になってもいいわけですから、もしかしたらという、このもしかしたらがとても大事になってくるというふうに思いますから、十分このカドミウムにつきましては、もう何年もの中の課題になっているわけですね。ですからその辺はやはり十分調査をするなり、国民の皆様にぜひ情報公開をしていただいて、安全で安心なお米が食べられるということをやっていただきたいというふうに思います。
 そういう意味で、特に大臣は、安全で安心、軸足を消費者にと言っているわけですが、このお米や農産物の問題というのはこれからいろいろな問題が出てくると思うんですね。環境ホルモンの問題もしかり、幾つかの新たないろいろな危機が出てくるというふうに思いますので、やはりこれを未然に防いでいく。そしてやはり、早く消費者に情報公開をするということがこれから求められているというふうに思うのです。
 その辺で大臣の、今のカドミウムの問題もそうですが、私もこのカドミウムの問題がこんなになっているなんということは、やはり書物を読まないとなかなか理解できない。農水省がそういう情報公開をしているわけでもありませんので、そういうことを含めて、これからこの危機意識に対する農水省の取り組み、決意を述べていただきたいと思います。
武部国務大臣 山口先生御指摘のことは、そのとおりだと思いますね。先ほどもちょっとお話しいたしましたけれども、安全で安心な食、安全で安心なフードシステムの構築ということが一番今消費者や国民の皆さん方から求められておりますし、生産者も、食と農の一体化といいますか、生産者と消費者の間に顔の見える関係というものをしっかり構築することが、生産者にとってもこれから自信を持って、意欲を持って生産にいそしめる大前提だ、私はこのように思います。
 農場から食卓へ、生産者と消費者の間の顔の見える関係の確立、そういう意味では、私は、食卓へ生産情報を届けるトレーサビリティーシステムの構築、普及ということを急ぐ必要がありますし、食品表示の問題でいろいろな問題が起こりました。JAS法をできるだけ今国会で改正しまして、これを機能できるような形にしていかなくちゃならぬと思っております。
 もう一つ、今先生御指摘のように、食の安全に関するリスクコミュニケーションということが非常に大事だ、こういうふうに私は感じております。つまり食のリスク、残留農薬等も含めまして、予防原則に立った、リスク分析に立った、今ダイオキシンの話もありますし、先生のお話にございますようなカドミウムの問題もありますし、家畜の問題でも、鳥インフルエンザもありますし、O157、口蹄疫、そしてBSE。我々、こういう国際化、グローバライゼーションという中で、リスクをゼロにするということは容易ではないんだろうと思うのです。
 そういう意味では、リスクを少しでも低下させる。リスクというものをしっかり科学的に専門的に分析し評価すると同時に、それに基づいてどういうリスク管理をしていくか、そういう行政対応の組織、システムづくりということも必要ですし、加えて国民の皆さん方にも、消費者の皆さん方はもとより、報道関係の皆さん方も含めて、そういった情報を正確に開示しまして、そしてみんなで賢くこのリスクに向かい合っていく、そういうことも必要なんじゃないか、このように思っております。
 そのために、今後農林水産省といたしましても、食と農の再生に向けた政策の大胆な見直し、改革を積極果敢に進めてまいりたい、かように存じている次第でございます。
山口(わ)委員 ありがとうございました。
 ぜひ危機意識を持っていただいて、本当に安心、安全な食料を提供できるような農業生産、農業をやっていればやっているほど貧乏になってしまうというのではもうこれは大変なことですから、精神的にも肉体的にも安心で安全な食料生産の政策をぜひ追求していただきたいと思います。
 先ほど私申し上げましたカドミウム米につきましては、確かに市場には出回っていないんですが、聞きますと、やはり含有量が多く含まれているお米を生産している農家の皆さんは、申告があれば同等米と交換してくれるという制度があるようですけれども、実際には交換した事例というのがあるのかどうか、ちょっとここが私は疑問なところです。ですから、生産した農家はそのお米を食べているんではないかというふうに思うのですね。
 ですから、そこのところをぜひもう一回きちっと調査をしていただいて、危険なものは消費に出回らない努力をしている以上、やはり生産者の皆様にも食べないような指導をしていただかなければいけないんじゃないかというふうに思っています。
 その辺はぜひ検討していただいて、お答えができればしていただきたいのですが、これから努力をしていただきたい。これは実際にそういうことがあるようですので、私は大変なことだというふうに思っていますから、その辺はぜひ努力をしていただきたいというふうに思います。
 そして、先ほどいろいろな調査をされましたデータも後でいただきたいというふうに思いますし、土壌改良の結果もいただきたいということで、ちょっと時間は早いですが、おなかがすいていますので、この辺で質問を打ち切らせていただきたいと思います。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて山口わか子さんの質疑は終了いたしました。
 これをもって両案に対する質疑は全部終局いたしました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 ただいま議題となっております両案中、まず、農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案について議事を進めます。
 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子さん。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 本法案は、制度金融からの資金融通を大規模法人を中心とした一部の意欲と能力のある経営体に集中させ、農業構造改革推進のための経営政策に沿って、育成すべき経営体以外の農家を制度金融の枠組みから除外しようとする措置であり、賛成できません。
 反対の理由の第一は、農業近代化資金助成法の一部改正で、特にスーパーL資金の縮小方向を示すことは、新政策以来の農業政策の破綻によって多大な負債に苦しむ認定農業者への施策の縮小につながるという点です。
 第二の理由は、農林漁業金融公庫法の一部改正で、認定農業者以外の農業者が使える資金である農地等取得資金と農業構造改善事業推進資金を廃止し、本来、負債整理資金として創設したため貸し出し要件が厳しくなっている経営体育成強化資金に一本化することで、認定農業者以外の農業者を公庫資金の枠組みから締め出すという点です。
 第三の理由は、農業改良資金助成法の一部改正で、法律の目的から、農家生活の改善、特定の地域、中山間地等の条件不利地への対策、青年農業者の育成の助長などの規定を削除し、他の制度金融と横並びの資金に改変する点です。農業改良資金は、中小農業者や女性農業者を含む広範な農家に使われた資金であり、これを担い手集中型の資金に改変することは農業改良資金からの国の撤退方向を示すものであり、特に青年農業者育成確保資金の廃止は、日本農業にとって喫緊の課題である青年後継者育成対策を後退させるものです。
 以上で、本法案についての反対討論を終わります。
鉢呂委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 これより採決に入ります。
 農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金田英行君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。鮫島宗明君。
鮫島委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合を代表して、農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    農業経営の改善に必要な資金の融通の円滑化のための農業近代化資金助成法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  農業を取り巻く事情が大きく変化する中で、農業経営に関連する諸施策を抜本的に見直し、その強力な推進を図ることが重要な課題となっている。
  よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に努め、制度資金を通じた農業経営の改善に万全を期すべきである。
      記
 一 今回の各種制度資金の見直しに当たっては、効率的かつ安定的な農業経営体の育成に資するよう、融資実務面においても、地域や個々の農業経営の実情に応じ、分かりやすく使いやすいものとなるよう、最大限の工夫を行うとともに、融資の利用実績が低迷してきた要因を解明し、新制度が十分活用されるよう特段の配慮をすること。
   また、各種制度資金の融資を受けた者に対しては、着実な経営改善が図られるよう、農業改良普及センター等の指導に万全を期すること。
 二 農業近代化資金等の円滑な融通のため、農業信用基金協会の保証能力の一層の向上を図る等保証制度の充実に努めること。
 三 各種制度資金の融資枠については、担い手の資金需要の動向等を踏まえ、適切な水準とすること。
 四 農業改良資金について、高リスク農業へチャレンジするための資金へと抜本的に改めることにかんがみ、従前、農業改良資金が担ってきた農家生活方式の改善、青年農業者等の育成については、農村現場の実情等を踏まえ、今後とも適切な措置を講ずること。
 五 農業近代化資金の融資を担う農協系統については、担い手のニーズに的確に対応し、地域農業の振興に積極的な役割を果たすため、生産資材コストの抜本的引下げ、適切な表示を前提とする農産物販売力の強化など事業・組織の改革を強力に実行すること。
 六 農林漁業金融公庫の在り方の検討に当たっては、政府系金融機関全体の在り方を論議する中で、しかるべき時期に改革の方向性を明らかにすること。
  右決議する。
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
鉢呂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。
武部国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいりたいと存じます。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 次に、農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案について議事を進めます。
 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子さん。
中林委員 私は、日本共産党を代表して、農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案に反対の討論を行います。
 農地法は、農業生産法人があくまで耕作者主義に立ち、農外企業等に支配権を握られることを防止するため、農業関係者以外の出資に量的制限をかけています。本法案は、農外資本による農業生産法人の経営支配に対する唯一の歯どめ策である出資制限を骨抜きにするものであり、農外企業による法人経営のコントロールを可能にするものです。農業生産法人の要件のこれ以上の緩和は許されません。
 第二に、本法案は、どのような企業でも投資育成株式会社を設立し、事業計画の承認を受ければ農事組合法人の組合員になり、出資総額の二分の一まで出資可能とするもので、投資育成株式会社が資金面から農事組合法人の運営を握ることもできることになり、農外資本が投資育成株式会社を通じて農事組合法人の経営を支配することが可能となるものです。
 輸入農産物の増大、農産物価格の下落が続く中で、農業法人は厳しい経営を強いられており、その財務体質の強化が必要であることは言うまでもありません。しかし、そのために農外資本によって法人運営が支配されることがあってはならず、本法案にはその保証がありません。自己資本増強のための税制等の改善を図ることが先決であると同時に、農業法人の安定的な発展のために農産物価格保障など農政の転換を求めて、討論を終わります。
鉢呂委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 これより採決に入ります。
 農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、金田英行君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。山田正彦君。
山田(正)委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党及び社会民主党・市民連合を代表して、農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    農業法人に対する投資の円滑化に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)
  農業を取り巻く諸情勢の変化に対処し、農業の持続的な発展に向け望ましい農業構造を確立するため、家族農業経営発展の支援と併せ、農業経営の法人化を推進し、その経営基盤の強化を図ることが重要な課題となっている。
  よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に万全を期すべきである。
      記
 一 農業経営の法人化に当たっては、専業的家族経営とともに地域農業の核となる農業法人を育成する観点から、本法に基づく投資制度を適切に運営するとともに、各種の政策支援の充実を図ること。
 二 農業法人投資育成会社の農業法人への投資に当たっては、農業法人の実態や意向を十分に踏まえて投資基準を作成するなど、農業法人の健全な育成に資するような適切な運営がなされるよう、留意すること。
 三 農業法人に対する投資育成事業の実施に当たっては、農業法人の経営の自立性を損なわないよう配慮すること。
  右決議する。
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
鉢呂委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
鉢呂委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣武部勤君。
武部国務大臣 ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいりたいと存じます。ありがとうございました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 なお、午後一時から委員会を再開いたします。ただいまは全員参画をしておりますので、一時からは全員参画をしていただきますように、よろしくお願い申し上げます。この際、休憩といたします。
    午後零時三十一分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三分開議
鉢呂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 本日は、本件調査のため、参考人として、BSE問題に関する調査検討委員会委員長・女子栄養大学大学院客員教授高橋正郎君、同じくBSE問題に関する調査検討委員会委員岩渕勝好君、全国農業協同組合連合会代表理事専務堀喬君、酪農家・宗谷BSEを考える会会長田中滋久君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用のところ農林水産委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせ願い、調査の参考とさせていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、高橋参考人、岩渕参考人、堀参考人、田中参考人の順に、お一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えいただければありがたいと思います。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることになっておりますので、御了承お願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
 それでは、高橋参考人にお願いいたします。
高橋参考人 ただいま紹介いただきました、BSE問題に関する調査検討委員会の委員長をやっておりました高橋でございます。
 昨日の第十一回検討委員会において成案を得まして、その報告書を厚生労働大臣、農林水産大臣にそれぞれ手渡しいたしました。きょうここで発言する機会が与えられましたので、二点についてお話をしたいと思います。
 一つは、このBSEに関する調査検討委員会の成り立ちあるいは運営の仕方等にかかわることでございます。それに関連しまして、後でまた詳しい質問が出るとは思いますが、若干のこの報告書の概要を説明させていただきます。
 それから第二の点は、関連しまして、委員長という立場を離れまして、この問題を解決していく将来展望について、私なりの私見を述べさせていただきたいというふうに思っております。
 それでは、お手元の調査検討委員会報告、これのはしがきのところを、一ページ、二ページ、三ページに分かれておりますが、見ていただければありがたいと思います。
 私ども十名の委員は、昨年の十一月六日に両大臣から指名を受けました。委嘱を受けて、十一回にわたり、延べ三十時間の討議の時間を重ねまして、成案を得た次第でございます。この委員は、そこにも書いてありますように第三者的なものでございまして、業界あるいは農業界あるいはお役所のOBの方は入っておりません。私、農林水産省に十二年ほど籍を置いておりますが、それはつくばにあります研究機関で研究者としてでございますので、行政の経験はございません。
 そこで、この会の運営について、二つの特徴をひとつ御理解いただきたいと思っております。
 それは、一ページから二ページにかけて書いてありますが、まず一つは、すべて会議を公開として進めてまいりました。会議の席にテレビを置きまして、別室で傍聴者がテレビモニターを通じて聞いていただく。毎回、ジャーナリストの方を除いた、マスコミ関係者を除いて七十名もの傍聴者がいたというふうに聞いて、この問題の関心の深さを痛感しております。それから資料も公開し、それから議事録も、発言者の名前を入れてインターネットを通じて公表をしております。そういうふうに公開である、あるいは透明性が高い会議であったということが一つございます。
 第二の特徴は、一般の政府の検討委員会あるいは審議会では、お役所の事務局が報告書案を作成して、それについて各委員が意見を述べて修正する等の作業でございますが、実は私どもの委員会では、公開を原則にしているということもあります。それと、第三者的な立場からより明確に意見を表明しようというようなことから、最初にスケルトンとして私のメモを出し、三名の起草委員によってそれぞれオリジナルな原案をつくりました。しかも、その原案を作成する段階で委員同士の調整はやっておりません。委員同士の調整はオープンの場でやったということで、最初の案から大分修正された点もあって、最終合意を得たものと最初の案とは多少違うところでございます。
 いずれにしましても、国民注視の中でやっていたということと、私ども委員として、論議を進めている過程で背中から国民の多くの方々が押してくれているというふうに、国民から負託された課題を中心に論議をし、結論を得たものでございます。
 内容については、やや時間がございませんのでかいつまんで申しますと、第一部は、BSEにかかわる行政対応の検証でございます。いろいろな時期に分けて、それぞれの時期にどういう行政上の対応があったのか、それに対して委員会としてどういう評価をするかということをかなり細かく、あるいは客観的に論じております。
 第二部では、BSEにかかわる行政対応の問題点、改善点についてでございます。これは、総括してどういう問題があったのかということで、例えば「危機意識の欠如と危機管理体制の欠落」ほか七項目について問題点を指摘しております。そこでは、重大な失政があったと言わざるを得ないという厳しい評価も中に入っております。
 第三部では、そういうような問題点の反省の上に立って、今後の食品行政のあり方について論じております。
 そこでは、国際的な基準になって、グローバルスタンダードになっているコーデックスが提唱しておりますリスク分析、リスクアナリシスの手法を導入すべきだということ、それは、具体的に言いますと、リスク評価とリスク管理、これを明確に分けて、リスク管理をする行政組織と、それからリスク評価する科学者の判断をする機関、これを別個につくることによって今後の食品の安全性の確保にかかわってくることであろう、それからもう一つは、国民に十分、あるいは業界の方々にも十分理解していただくためにも、リスクコミュニケーションをその両機関でしっかりやるということを提唱しております。その中で、例えばリスクマネジメントについては、トレーサビリティーという新しい手法を積極的に導入すべきであるということを言っております。
 それから最後に、そういうようなことから二つの具体的な提案を出して、政府は六カ月以内に成案を得て、しかるべく必要な措置を講ずるように提案しております。三十五ページになりますが、その最後は、一つは、新しい消費者の保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための法律という、これは非常に長ったらしいんですが、包括的な法案を作成すること、それからもう一つは(二)でございますが、リスク評価を中心とした独立性のある新たな食品安全行政機関を設置するという点でございます。
 以上が第一の点でございますが、第二の点は、この検討委員会を通じまして私自身が強く感じた点について、幾つか提言をしてみたいと思っております。
 一つは、何といっても、この問題が起きたのは、行政上の大きな欠陥が根底にあった。それは、例えば、農林水産省は生産者に軸足を置いて、消費者にはそれほど軸足を置いていなかったというような問題でございます。それが、結果として、そういった生産者サイドに立った施策が回り回って生産者に大きな打撃を与え、苦悩を強いているというようなことが今回の問題で明確になったことでございます。
 それを考えてみますと、農林水産省の名称を食料・農林水産省に変えて、食料を提供する、供給する組織として、あるいは消費者ニーズをしっかりつかんで生産振興に努めるというようなものでなければならない。そういうように、農林行政自体の性格あるいは行動指針も変えていく必要があるだろうという点が一点でございます。
 あわせて申し上げますと、国の立法府でありますこの機関も、農林水産委員会じゃなくて、できれば食料・農林水産委員会というような名称になって、食料まで通した、農業生産から流通、加工、消費まで含めた全体のフードシステム、あるいはフードチェーン全体にかかわる施策を論じていただくということが必要ではないかということが第一点でございます。
 第二点は、行政組織において、どうも意思決定機構が明確ではなかった。
 例えば、問題になっております肉骨粉の行政指導。法的規制で禁止をしなくて、行政指導をした。これが農林水産省のどのレベルで決定されたのか。これが、我々の調査委員会の中でも明確に答えが出ておりませんでした。
 関係者のアンケートを見ましても、局長クラスでは、大臣が決定したというふうに答えた人はだれもおりません。課長レベルでは、大臣が決定したというのは七名中三名いたというようなことから考えますと、どの段階で重要な意思決定が行われたのかよくわからないというシステムがあります。
 これは、やはり危機管理意識というものを考えてみますと、危機状況においては、いわゆるボトムアップ、下からずっと立案し、提案しながらトップに行って、トップがそれを承知する、承認するというようなシステムではなくて、危機管理のときには、情報をトップに集めて、それでトップダウン方式の意思決定と行動をとる必要があるわけですが、そういうことができなかったことが大きな問題で、ある意味で、行政組織における制度疲労あるいは組織疲労というものがこの背後にあるのではないか。今後の改革については、その点を含めて抜本的な改革を期待しているところでございます。
 以上で発言を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
鉢呂委員長 ありがとうございました。
 次に、岩渕参考人にお願いいたします。
岩渕参考人 岩渕でございます。
 私は、宮城県の農家の生まれで、五年ほど前までは前沢牛とか仙台牛の飼育を時々手伝っておりましたので、子供のころから現場の状況は肌で知っているつもりでございます。
 私が今回担当いたしましたのは、報告書の第二部の原案でございます。ここは、第一部の検証を受けまして、BSE発生の原因と責任を総括し、第三部の食品安全行政のあり方に導くというコンセプトで起草いたしました。
 起草前に委員会でまとまった議論をする時間がほとんどなく、委員各位の意見を求めた上で、第一部の論議と評価を参考に書きました。したがって、原案はたたき台という性格のものですが、委員会に諮る前に一部の新聞に報道され、さらに委員会は公開でございますので、マスコミにも原案を含む資料がすべて配布されておりますので、一斉に報道されたという経緯でございます。
 委員会では、こうした事態を予測してあらかじめ対応を協議いたしましたが、情報公開と透明性の確保という観点から、途中経過が報道されて、結果として国民をミスリードするようなケースが起こってもやむを得ないという合意を得ておりました。委員会では、傍聴席のマスコミ向けに、原案はたたき台であるということを申し上げて注意を喚起いたしましたが、いろいろな報道がございました。それから、そういう意味でいいますと、報道のあり方、それから国民に対する情報提供という面から難しい課題を残したなというふうな感じを持っております。
 原案のポイントといいますと、一九九六年の肉骨粉問題でございます。ここで「重大な失政」という表現を使いました。委員会の論議では、一連の対応の中で十分な情報があった時期であり、最も明確で最も重大な政策判断のミスという評価でほぼ一致していました。
 「重大な」という表現が適切かどうかという点については、いろいろ考えましたが、単なる失敗あるいは失政では他の判断ミスと同列でやや軽く、言葉をかえて致命的なという表現を使うとこれはやや強過ぎるという感じを受けました。もし言いかえるとすれば、不作為ということになりますが、薬害エイズ事件で一審有罪の決め手になったり、昨年のハンセン病裁判でも国会議員と官僚の不作為が指摘されていました。ただ、国民にはわかりにくいということで、この用語は使いませんでした。それで、原案の段階では「重大な」を入れて委員会に諮ったところ、残すべきだという意見がほとんどでございまして、削除すべきだという意見は全くありませんでした。その結果、そのまま残ったという経緯でございます。
 もう一つのポイントは、政治への言及です。
 委員会では、一九九七年の家畜伝染病予防法審議で衆参両院の農林水産委員会の議事録も提出されました。このとき、現在委員長でいらっしゃる鉢呂議員が質問に立たれて、「この程度の業界指導で事足りるのかどうか、」と、まさに正鵠を射た質問をなさっていらっしゃいます。ところが、農水省畜産局長の答弁は、使用実績は完全にゼロになっており、安全性は現段階で確保されていると答弁しております。
 その結果、より効果的かつ効率的な制度の構築が求められている、また、防疫方法の確立に全力を尽くすこと、また、今後とも指導することという附帯決議をつけました。この「指導すること」がいわゆる行政指導にお墨つきを与える結果になり、対策がおくれる誘因になったことは否定できません。鉢呂委員長の無念は察するに余りあるところであります。
 もともと、農水省の政策決定に自民党農水族議員の影響力が強いことは、マスコミでも国民の間でも常識になっていますから、政治と行政の関係に言及しなければ、国民に対し不誠実で無責任のそしりを免れないと考えました。
 原案では、自民党を中心とする農水族議員という表現を使いました。自民党の農水族議員が怒っているという報道があり、高橋委員長初め数人の委員から、特定政党を報告書で名指しすべきではないという意見が表明され、農林関係議員という表現に修正されました。
 私の意見を申し上げますと、実態を伝えるには原案の表現が正確であると思います。ただし、自民党の名前を出しますと、野党が追及の武器に使うことが最初から予想されましたので、子供でも知っていることをあえて名指ししなくても意味は通じると思い、削除に反対しませんでした。さらに言えば、族議員が自民党議員を中心とすることを証明するということが実は極めて難しいということがございます。それから、農水族議員には野党議員も含まれております。それに、体質改善の努力を促す場合、当事者を責め過ぎると逆効果になるという配慮もありました。
 また、原案では、BSE問題のあらゆる局面で陰に陽に影響力を及ぼしてきたという記述がございましたが、委員長の修正案で、政官の癒着が政策決定の不透明性を助長してきたものと考えられると修正案が出され、皆さんの賛成を得て一たん承認されました。けさの毎日新聞は、原案の中に政官癒着という記述があり、委員会の中で私がそれをぜひ残すように主張したというふうに報道されておりますが、これは全くのでたらめでございまして、これは委員長の修正提案で、委員会で承認されてそのようになったものでございます。
 私個人の意見といたしましては、行政に対する政治の関与は決して否定されるべきものではないと思っております。委員会の修正論議で提案して否決されましたが、参考までに紹介しますと、「政党政治、なかんずく議院内閣制においては、当然ながら政治が行政を指導、監視する権限を持ち、結果に対する責任も負っている。その意味では、一連のBSE問題についても、政治が本来の機能を十分に果たさなかったことが、対策の遅れを招いた一因であることも指摘せざるを得ない」というふうに書きましたが、どうも政治論議風でわかりづらくて採用されませんでした。でありますが、政治の責任として、監視と指導が不十分だったと私は今でも思っています。きちんとしたチェック体制があれば、密着しても十分な連携ということに相なりますが、もたれ合うと癒着になり、ひいきの引き倒しになるというふうに思います。
 最終報告では、政官癒着という表現を使わず、「そのような政と官の関係が政策決定の不透明性を助長し、十分にチェック機能を果たせない原因となったものと考えられる。」というふうに加筆修正いたしました。
 BSE問題が発生するまで役所から相談がなかったという農水族議員の声も聞きますが、それは、逆に言えば、行政に対する指導監督が不十分だったことを図らずも証明するものではないかというふうに思われます。政治が責任を免れることはできないというふうに私は思っております。政治が行政に関与すること自体が問題なのではなく、政党政治のチェック機能を果たさなかったことが問題であるということです。
 今回強く感じましたことは、行政も政治もやや反省が足りないのではないかということでございます。少なくともその思いが伝わってこないというのが実感でございます。それぞれに言い分があることは承知しておりますけれども、なかなか責任を認めようとしない官僚がいたり、一部には高圧的な言辞を弄する政治家もいらっしゃるように聞いております。それがどれだけ国民の不信を増幅し、消費回復をおくらせているか、改めて考えていただきたいというふうに思います。
 なお、野党も当然ながら責任を免れることはできません。ちなみに申し上げれば、重大な失政のあった九六年は、自社さ政権の時代でありました。原案段階の報告書を国会で振りかざすのもいかがかと思います。
 それから、農水省の改革は当然でございます。名前も、先ほど委員長が申し上げましたように、変えた方がいいというふうに思います。英国は環境・食料・農村地域省、ドイツは消費者保護・食料・農業省に変えました。新しき酒は新しき皮袋に。日本は省庁再編で名前を変えませんでしたので、このあたりで名前を変えることも、大臣をかえるよりも、人心一新、意識改革、体質改善に効果があると私は思います。
 以上でございます。(拍手)
鉢呂委員長 ありがとうございました。
 次に、堀参考人にお願いいたします。
堀参考人 ただいま紹介をいただきました全農の堀でございます。
 意見陳述ということでございますけれども、冒頭、国民の皆さん方におわびを申し上げなければならないということでございます。
 全農の子会社であります全農チキンフーズ株式会社、表示偽装という、現在まさに食品の安全性が議論される中で、生産者団体の会社としてあるまじき、あってはならない行為をしたということに対して、消費者の皆さん方、また生産者の皆さん、関係者の皆さん方に心からおわびを申し上げる次第でございます。
 この問題につきましては、早速、外部の識者による、弁護士、公認会計士二十名による調査委員会を立ち上げまして、約二週間にわたってこの問題の調査をお願いいたしました。一定の結果が出てまいりました。事実関係、責任の所在、こういったものが明らかになり、また、委員長の名のもとに、今後こういった事件の再発防止について御意見を賜っております。
 それに基づきまして、現在、全農を中心としましてこの再発防止の骨格をつくり上げまして、今後、それを実践していくということが大事だろうということでございます。非常に信頼を失墜させた、JAの言ってみればブランドを傷つけたということに対して、一日も早く信頼回復に向けて努力していかなければいかぬというふうに考えております。先生方の御指導を賜りたいという考えでございます。
 それから、BSEに関する意見陳述といいますか、今私たちが一番気になっておりますのは、今回三頭のBSEが発生し、大混乱を来したということでございますが、この三頭でこれから、いろいろ今までの知見等を見てまいりますと、まだ潜伏期間というものがあるということになりますと、これから先七、八年は、第四頭、第五頭が出てもおかしくないという判断をせざるを得ない。そういったときに、また同じような事態が発生することはぜひ避けなければいかぬというように考えております。そういった面で、我々生産者団体はもちろんのこと、行政、また国会の先生方、また消費者、マスコミ、そういったことも含めて、この対策を今から考えておかなければいかぬだろうという感じでございます。
 それからもう一点は、今回のこういった私どもの不祥事の事件を通じて感じたことでございます。
 今回の報告書にあります、第三部にありますように、やはり消費者の視点に立った食品行政、そういう面で、特に我々、流通段階、生産者段階が手がけていかなければいかぬ問題は、いわゆる原料から製品まで一貫した情報開示、トレーサビリティーに取り組んでいくということが今大事だろうと思っておりまして、全農自身も、今、牛肉を初めとしてトレーサビリティーのシステムを手がけておりますし、今後我々が扱う食品についても、トレーサビリティーの思想を盛り込んだ形で取り組まなければいかぬ、こう考えております。そういう面での政策的なバックアップも、ぜひお願いできればなということを感じております。
 非常につたない意見開陳でございましたけれども、御清聴ありがとうございました。(拍手)
鉢呂委員長 ありがとうございました。
 次に、田中参考人にお願いいたします。
田中参考人 話を始める前に、今回のBSEの発生で、罪なき罪で殺処分された三軒の農家の疑似患畜たちに、ここで黙祷させていただきます。
 それでは、まず畜産の原理ということで説明させていただきます。それは、人が食して栄養を吸収できないもの、草、副産物などを家畜を通すことによって、人間の食料を生産するということです。つまり、汚染されたものを給与した場合、今回のBSEのような問題が起こり、この畜産の原理であるリサイクルシステムが壊れるということです。
 それでは、宗谷BSEを考える会の、お手元に配ってあります資料の三つの基本方針を読み上げたいと思います。
 一、家畜伝染病予防法に基づくBSEに対する現行制度の見直しを強く要求します。
 二、BSE発生の原因究明、責任の所在の明確化も強く要求します。
 三、安全な食料生産への取り組みと消費者との連携に取り組んでいきたいと思っています。
 そして今回、私たちはBSEを考えるとき、どこの組織にもとらわれない有志の会で動こうと決めました。それは、正確な原因究明を求めるからです。
 それでは、少し詳しくお話をします。
 平成八年にBSEを家伝法の法定伝染病に指定したことの間違いと責任は大変重大だと私たちは思っております。BSEは伝染病ではない。空気感染、接触感染もありません。なのに家伝法に入れられていることにより、国民に誤解を生みました。なぜBSEの正しい科学的知識を伝えてくれないのですか。
 家伝法に基づき、一頭の患畜牛が発生した農場の同居牛の八割から九割を疑似患畜という言葉で大量殺処分を行う、このことが我々生産者にとって最大の不安であります。この問題が、大きな問題を次々と生んでいきます。捨て牛、廃用牛の停滞、無意味な一時預かりの制度、地域農業の摩擦、生産者をBSEの加害者とする、そして我が国の大切な、年月をかけて改良しつくり上げた国の資産である牛を失い、ひいては、国民、消費者の安全な、安定した畜産物の自給、供給を捨てようとみずからしているように思えます。直ちにこの方法を中止してください。
 これは、今言ったように、生産者だけ、我々だけのわがままで言っているのではありません。BSEが伝染病なら、私たちはこのようなことを考えません。農業は工業とは違い、命の産業です。一瞬にして、家族と同様にしていた牛たちを何の科学的根拠もなく大量虐殺され、お金をやるから新しくスタートしろと言われて、今までの築き上げた生産を短期間で戻せる仕事ではありません。
 私は、十七年前に猿払に新規入植し、ゼロ頭の牛から十七年の年月を妻と二人、そして地域の皆さんの温かい協力で百八十頭の経営になりました。この生産量を、あの若いときと同じようにきょうから、あすから、ゼロから再スタートすると言われて、そういうエネルギーはもうありません。
 生産者の生産の意欲を失わせて、日本の安全で安定した自給生産は続けられますか。そして、消費者の要求にこたえられるのでしょうか。我が村の若い世代の人たちは、BSEが発生したら離農するさとはっきり言っています。
 農家の身の覚えのない不安、そしてあすは我が身、このBSEは畜産型薬害エイズだと私は思っています。そして、政府のつくった問題なのだと思っています。
 つまり、伝染病と同じ考えで、ポイント爆撃的な大量殺処分でBSEは解決しません。それは、伝染病でないからです。かえってマイナス効果、先ほどから言っている安全で安定した我が国の独自の生産の低下を生むと思っております。現に、三例の発生農家の疑似患畜牛はすべて陰性でした。この大量虐殺の責任はだれにあるのですか。そして、この方法の目的と意味は何なんですか。理解ができず、納得ができません。
 猿払の発生農家、六十二頭の疑似患畜といいますが、その中には妊娠していた牛もいます。その失われた命の数、乳牛としての国の大切な資産、それは六十二頭ではなかったはずです。それ以上あったと思います。
 武部農相は、OIE基準、国際的基準に従うと強調しています。しかし、OIE基準とは貿易ルールであり、EUと違い、我が国の牛肉は輸出産業ではありません。
 それよりも大事なことは、日本の状況、大量のイギリスのような汚染された肉骨粉を給与していない、そういった状況、日本の畜産の方向性を考え、しっかりした科学的根拠を持って、我が国独自性のあるやり方をつくり上げることが大切なんだと私は思っております。それが国への信頼であり、食の安全、安定が維持されるものだと思っています。現にEU各国でも、それぞれの国の方法で行っています。BSEは、ゆっくりと急いで解決していかなければいけないのではないでしょうか。
 最後に、BSEの正しい科学的知識により、BSEを社会的に認知させる努力をしてください。そして、情報公開で透明性を持ってください。それが消費の正しい回復を生みます。そして、生産者の命の産業の体温感を、流通加工業界の人たちは消費者に伝えることをプライドを持って行ってください。そして消費者は、その我々のつくった生産物の体温感を感じ、食べていただきたいのです。この体温感の欠落がすべての問題を今回起こしていると思っております。そして、BSEのような過ちを二度と繰り返さないためにも、国のバイオセキュリティーシステムを、縦割り行政ではなく早く確立させていただきたいと思っております。
 どこにでもいる肩書もない一酪農家の声を聞いていただきまして、ありがとうございます。(拍手)
鉢呂委員長 大変ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鮫島宗明君。
鮫島委員 参考人の四人の先生方、ありがとうございました。大変お忙しい中、急なお呼び立てにもかかわらずお越しいただいてありがとうございます。特に、宗谷BSEを考える会の会長の田中滋久さん、酪農家は朝晩乳を搾らなくちゃいけないから冠婚葬祭にも出られないと言われている職種ですが、わざわざ永田町のむさくるしいところまでおいでいただいて、また大変心に響く御指摘をいただいてありがたく思います。
 初めに高橋委員長に、きょう報告書を読ませていただきましたけれども、この報告書の性格、若干わからない点がありますので、私は野党ですし、時間もちょっとないものですから、いろいろ失礼に当たる段もあるかと思いますが、お許しいただきたいと思います。
 たしか農林水産大臣と厚生労働大臣からは、これまでの行政対応上の問題の検証をしてください、それから今後の畜産・食品行政のあり方について御検討いただきたい、この二本が諮問事項だと思いますが、やや奇異に感じますのは、今の田中参考人の発言にもありましたように、現在の問題、現在進行中の問題、現在抱えている問題、ここのところについては余り価値判断を出さないでくださいという諮問もあったんでしょうか。つまり、過去、現在、未来という流れの中で、現在部分がこの調査報告書からはすっぽり抜け落ちているという印象があるんです。
 先ほど岩渕委員からは若干それに触れる部分もありましたが、トータルとして、今現在行政が行っていること、それからBSEを伝達性じゃなくて伝染性としてかなり乱暴な処分を行っている、あるいは死亡牛の検査をいまだにやらないために感染経路の追求が甘い、あるいは厚生労働省との連携が今本当にちゃんと行われているのか、そういう現在進行中のもろもろの問題についての評価がこの中ではやや不十分なような気がするんですが、その辺はどういう諮問だったんでしょうか。
高橋参考人 現状についてどのような問題点があるのかということは、全体の流れの中で論じているだけでございまして、現在の問題点については、例えば農林水産省のBSEに関する検討会ですか、そういう技術的なあるいは科学者の集団がございます。そこを中心に対応しているということで、我々委員会としては、現状の問題については、全体の文脈から流れてくる、例えば死亡牛の問題だとかあるいは全頭検査についての評価だとか、それからサーベイランスをやっている過程で、当初は厚生労働省とそれから農林水産省でそれぞれ別個にやっていて連携がなかった、それが同一の方法でやるというような方法だとか、それは今までの経緯の中で現状につながっている問題についてだけは論じておりますが、現在の問題そのものは諮問事項になかったというふうに考えております。
鮫島委員 岩渕委員にも同じ質問ですが、今の委員長と同じお答えでよろしいんでしょうか。
岩渕参考人 その件については、全く承知しておりません。ですから、そういう話も具体的に聞いたことがございませんで、ただ設置目的の中に、先ほど委員がおっしゃったようなことが書いてあるなというふうな認識だけでございました。
 ただ、どこまで私どもが検証して論議するのかという点につきましては、私自身、そういうことに縛られずに広く考えた方がいいというふうに思っておりまして、委員会でもそのように発言いたしまして、ここは我々の守備外であるという意見には賛成いたしませんでした。
 以上です。
鮫島委員 田中参考人にお伺いしますが、猿払で感染牛が発見された農家とはお知り合いなんですか。
田中参考人 芦野地区というのが僕のいるところなんですが、そこからは離れて、離れてというか隣なんですが、浜猿払地区というところの酪農家で、特別昔から親友だったりとかなんとか、そういう関係ではありません。
鮫島委員 ある情報によると、疑似患畜と扱われた牛の処分、それに対する補償の代金が払われるのに、農協系統の組織を通して払われた。そのときに、滞納していたえさ代をしっかり引いて農家に渡されたというふうに聞いております。実は、農協系統がその方に渡していたえさの中に、まさにBSEを発生させた感染源が入っていたんですが、その代金をしっかり取って渡したというふうに聞いていますが、そういう話は地元で聞いたことはありますか。
田中参考人 正直言って、聞いたことはありません。金銭的な部分というのは、なかなか酪農家の方まで耳に入ってきていないということがありまして、それでこういう会をつくったというのもあります。
鮫島委員 ちょっと全農に集中的にお伺いしたいと思いますが、全農が扱っている御商売の中で、自動車燃料部の取扱高、直近の数字で幾らぐらいだかおわかりでしょうか、平成十二年。
堀参考人 今具体的な数字は持っておりませんが、多分六千億ぐらいの数字ではなかったかと思います。
鮫島委員 今のは平成十二年度の数字かと思いますが、同じ年度の野菜、果樹を扱う部門の園芸販売部の売上高が幾らだか御存じですか。
堀参考人 多分一兆二千億ぐらいあったのではなかろうかと思います。
鮫島委員 ホームページの最新のに出ている実績ですと、平成十一年度の数字しかなくて、自動車燃料部の数字が五千二百十七億円、園芸販売部の数字が四千三百九十九億円。つまり、青物より、野菜果物よりも自動車燃料の方が扱い高が多いというのが実態でございます。
 全農は、二百十四社の子会社、孫会社、協同会社をお持ちで、これは実際、株の保有比率、出資の比率、経営のかかわり方の違いによってこういう呼ばれ方をしているようですが、いずれも全農の支配下にあることには間違いない。これも二百十四社は公表されている会社でして、この中に全農チキンフーズも入っているわけですが、これらの会社の営業状態といいますか、大体全部黒字になっているのか赤字になっているのか、その辺の定性的な数字でよろしいんですが。
堀参考人 先ほど園芸事業の事業分量を申し上げましたけれども、これは先生のは十一年ということで、十二年は私ども二十六県と合併をしておりますので、その合併した部分の数字がふえているということで御理解いただきたいと思います。
 それと、関連会社の経営の問題でございますけれども、今二百十四社ございます。それでもって、約五十社が、畜産関係が多うございますけれども、繰り越しの損益を出している会社でございまして、ほかは一応正常な営業をやっていますけれども、そういう状況です。
鮫島委員 全農チキンフーズに関する特別報告事項、最近いただいたものの中に、なぜこういう事故が起きたのかということの分析の中で、売り上げの増加、収益の向上が至上命題で、営業、販売が先行し、コンプライアンスが軽視されていたことがこういうモラルの低下を招いたという総括になってございますが、これはある種全農全体のコンセプトでしょうから、この会社の総体、今五十社程度が余り成績が振るわないということですが、全部集めると利益の総額は年間幾らぐらいになりますか、二百十四社。
堀参考人 取扱高が、この二百十四社、多少数字が前後しますけれども、約一兆四千億程度の売り上げでございまして、十二年度の総当期利益が二十五億ということでございます。これは、会社を全部足した数字でございますので、当期利益が三十八億を上げた会社が百五十七社、先ほど言いました五十社が十三億の赤字になっておる。合計でございます。これは各社を足した数字でございます。
鮫島委員 ありがとうございます。ネットで二十五億の黒ということですが、農協法の第八条というのを御存じだと思いますが、どういう内容でしょうか。
堀参考人 ちょっと八条の項目、失念しております。
鮫島委員 第八条、営利の禁止。「組合は、その行う事業によつてその組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその事業を行つてはならない。」というのが農協法第八条です。農協法第九条というのが、この営利の禁止を前提として、そのかわり独禁法は適用しませんよという特例がついている。
 農協が行っていい事業の範囲というのがいろいろ決まっていますが、その中で、先ほどの石油の販売、先ほどの販売量は、日本の元売会社の中で一番大きい金額になります。全農に次ぐ会社は伊藤忠エネクスという会社で、年間四千四百一億、全農が五千二百九億ですから、規模としては全農が一番、日本一の石油元売会社になります。
 この事業は何を根拠に行われているかというと、農協法の第十条、「組合員の事業又は生活に必要な物資の供給」ということが認められているので、揺りかごから墓場までの事業を展開しているわけですが、一方で、では農家の実態はどうかというと、主業的農家、主に農業を主としてそれを生活の中心に据えている方が二割、八割の方はいわばサラリーマン、副業的農家。ですから、組合員の生活に必要な物資の供給というと、サラリーマンに必要な物資の供給とこれは同じになるわけでして、いわば何の縛りもない中で、青天井で自由にやっているというのが今の農協の実態。
 そういう意味では、第八条の縛りがあるものですから、もうかる部分は、子会社、孫会社、協同会社、二百十四社をつくって、そちらでネットで二十五億の利益を上げる。本体は営利の禁止ですからプラマイゼロにしておく。これは道路公団などと全く同じやり口でして、農家の利益とは関係のない、独立した一つの特権的事業体の姿。
 私は、報告書の中に突然戻りますが、族議員の話がありましたが、族議員は裸でいるわけではありません。農業団体と結びついて初めて族議員のパワーが出ているわけでして、その意味では野党のこの委員会に属している族議員とは質が違う。ところが、農業団体について触れている部分が一言もない。これは、岩渕委員のような鋭い方がなぜここを見落としたのか、そこだけ一言お願いしたいと思います。
岩渕参考人 ちょっと私にそういうマインドがなかったというのが正直なところでございまして、ついでに申し上げておきますと、この報告書をお読みいただければわかりますけれども、マスコミを含めたその他の分野、科学者の対応なども含めてさまざまな部分を批判しておりますが、業界団体という、それは不明にしてマインドがありませんでした。
鮫島委員 あと二分ぐらいだと思いますが、いわゆる政官業の癒着という中での業というのは、この場合は農業団体のことですし、そこが票を出すからこそ族議員というのが初めて誕生するわけでして、私は、今の農政に影響を与えている順番からいえば、確かに御指摘のとおり自民党の族議員が一番でしょう。二番目に影響を与えているファクターは何かというと、いわゆる専門家と言われる各種の審議会、委員会、これが実は二番目。三番目が農業団体、四番目がマスコミ、五番目が農家、消費者、悲しい野党、こういう順番だと思います。
 それで、私ども、ちょっと農協に戻りますが、先ほど言ったような八条、九条という縛りがあり、そして、本来利益は出しちゃいけないけれども子会社でやっている。ところが、その子会社が全農チキンフーズのような事件を出した。これはやはり連結決算にしていかないと、こういう疑惑が払拭できないんじゃないか。それについてのスケジュールだけ、もしお持ちでしたらお伺いします。
堀参考人 御指摘の点がございます。したがいまして、今二百十数社、これは県連との合併によって大幅にふえたということで御理解いただいております。したがいまして、この会社については、平成十五年の末でもって連結決算に移行したいなということで現在準備を進めている段階でございます。
鮫島委員 最後に一問だけです。
 今の私の指摘その他で、農業団体というのがどういう性格のものかおわかりいただけたと思います。それと結びついているのが自民党の族議員、それにコントロールされて動きがとれないのが行政、そういう環境の中で、個別の農家の方はBSEの恐怖におびえながら酪農をしているという環境だと思いますが、そういう中で、今大きな流れは、軸足を生産者から消費者側に移すべきだ、あるいは今までの考え方は生産者に偏り過ぎていたということが大変強く打ち出されているわけですが、東京で御出身になって、その後ずっと北海道で酪農をされていたお立場からいって、農政の中心というのは生産にそれほど軸足があったというふうにお感じでしょうか。この質問を最後にします。
田中参考人 主観として正直に申し上げます。
 今回の答申、来るときに飛行機で読みまして、消費者重視ということに対しては僕は別に、大変いいことだと思って感激していました。そのかわり、生産者重視が今まであったというふうな表現がすごく僕はがっかりしまして、僕たち生産者、本当の末端の僕たちは、BSE、先ほどお話ししたように、もう本当に苦しんでいました。そんな重視されて何か保護された記憶はございません。今までもそんな大きく保護されたとも思っていません。これは、逆に言えば、鮫島議員さんが言われたとおり、関連団体の人方が保護されていただけじゃないのかなと正直に僕は思っております。
鮫島委員 どうもありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて鮫島宗明君の質疑は終了いたしました。
 次に、江田康幸君。
江田委員 公明党の江田康幸でございます。
 本日は、四人の参考人の方々、御苦労さまでございます。私の方から幾つか質問をさせていただきます。
 まず、このBSE問題に関する調査検討委員会報告書、読ませていただきました。この報告書は、BSEの発生防止で後手後手に回ったその農水省の対応を「重大な失政」、そのように結論をつけられまして、そして、食の安全確保のためには、新法の制定と新しい行政組織の発足を提言されているという内容であるかと思っております。
 今回、この報告書は、先ほども高橋先生申し上げられましたように、公開して、そして客観的な評価をもっての検証結果であるとおっしゃられました。最初に、やはり私も、この調査報告書の最大重要なところは、何が今回のBSEの発生において問題であって、どこが問題で、そして何が不適切で、その責任はどこにあって、またどういう改革をしなくちゃいけないか、そういうことが、政府並びに立法府の方もですけれども、それに対処するための一つの重要な提言であると私は思っております。
 この第二部に「BSE問題にかかわる行政対応の問題点」というのを指摘されております。これは非常に重要な問題点を指摘されたとして、私は高く評価できるものではないかな、これまでの審議会の一辺倒の報告とは違って、やはり一歩踏み込んだその考察をなされていると考えます。
 そこで、まず一つは、「危機意識の欠如と危機管理体制の欠落」ということについて、報告書によれば、危機意識が欠如していると。それで、特に農水省が九六年四月にWHOから肉骨粉禁止勧告を受けながら課長通知による行政指導で済ませたことは、英国からの肉骨粉輸入を禁止した等の事情を考慮しても、重大な失政と言わざるを得ない、また、二〇〇一年のEUのステータス評価に対しても、政策判断の間違いであった、このように断定されております。
 この断定されたその客観的な事実というものに関して、最初に御確認をさせていただきたいと思いますが、私、この重大な失政、政策判断の間違いには、大きくは三つあったのではないか。
 一つは、先ほどの二つに加えて、八六年から九五年の英国におけるBSE発生を踏まえた対応、これも非常にまずいところがあるかと思っております。
 英国で八六年にBSEの発生が確認されて、そして国際的には的確な対処がなされ始めていた。そのような情勢の変化に対して農水省がとられたのは、BSE発生国からの生きた牛の輸入の停止であり、BSE発生国から輸入する肉骨粉への加熱処理条件の義務づけなどを措置していたわけでございます。しかし、この加熱処理条件の実態については、現地調査などの積極的な対応がとられなかったと報告書でも示されておりますが、確かに、九〇年前後の肉骨粉は、特にBSE病原体による汚染が高レベルで存在していたわけでございまして、BSE侵入防止には最も重要な時期であったかと私も思います。
 そこで、このような措置しかなぜとれなかったのか、そこら辺の検証について、最初に申し上げておくべきでしたが、高橋先生、どうでしょうか。どのように検証がそこにおいてはなされましたでしょうか。
高橋参考人 五ページを見ていただきたいと思います。下から四つ目のパラグラフ、「BSE侵入防止にはもっとも重要な時期であった。」という文言があります。
 これはまさに議員御指摘の、一九八八年、イギリスで肉骨粉の使用を禁止している、それから九〇年前後にイギリスの畜産局長、獣医局長ですかから農水省に文書が参っております。それから、一九九〇年の六月に農林水産省の担当者が現地に視察をし、その報告書がたしか三千部配布されたというふうに聞いておりますが、それは三千か四千か、ちょっと間違いがあるかもしれませんが、その中で、その原因が肉骨粉である、イギリスではそれを禁止しているというような項目がございます。そういうことに対してもう少し危機意識があれば、あるいは、恐らく危機意識を持っていた人が専門家の中にはいるはずなんです。その人たちの意見を十分聞いておれば、もう少し対応の仕方も違っただろうというふうに考えます。
 そういう意味で、議員がおっしゃる三つの時期の重要な点は、二十一ページにありますように、一九九六年四月のWHOの勧告にまつわる問題、それから、そのパラグラフの四行目から、一九九〇年に調査団を派遣し云々ということ、これは先ほど私が申し上げたことで、その結果、肉骨粉の処理基準を強化したにとどめたということも判断が甘かったということの評価をしております。
 したがいまして、三つの重要な時期についての判断はここで行っているつもりでございます。
江田委員 客観的な事実としてどういうところが一番問題だったのかというところを確認させてもらうためにも、一つずつちょっと確認させていただきたいと思うんですが、次の大きな問題は、指摘されているように、九六年の肉骨粉の牛への給与を法的に禁止せずに行政指導にとどめたという点であるかと思います。
 私も実は医薬品の製造開発を行っておりまして、医薬品におきましては、この九六年ぐらいからだったと思いますが、やはり既に、イギリスの牛胎児血清と申しますか、バイオテクノロジーでよく使うのは、細胞を培養するために牛の胎児血清を使うんですが、そういう牛の胎児血清はイギリスのものは使用できなくなるように厚生労働省が九六年からWHOに従って通告してくるんですが、もう九六年、九七年の段階から、医薬品の研究者、一般の研究者、民間の研究者レベルでは、BSEが非常に危険である、そういう認識が広がっていたにもかかわらず、この九六年の段階、さらには二〇〇一年のEUステータス評価を拒否したところにおきましても、これは非常に農水省の意識、また危機管理、危機意識の欠如が問われるかと思います。
 この九六年では、アメリカ、オーストラリアも九七年の段階では既に法的規制を行ったわけでございまして、これを意識せずに、二〇〇一年の三月になるまで農水省の方が対応をとってこなかった、そこのところの、やはりまたなぜですが、なぜそのようなことになるのか、その点について検証はどのように行われたのか。これはEUのBSEステータス評価に対する対応と一緒に、再度お願いいたします。
高橋参考人 報告の六ページを見ていただきたいと思います。
 非常に重要な時期は一九九六年の四月でございますが、四月の八日、下から十二行目ぐらいに書いてありますが、農林水産省では海綿状脳症に関する検討会を開いております。ここの委員の皆さんはBSE関係者がほとんどであったというふうに理解しております。そこでの会議要旨がその二行目に書いてありますね。「国内の反すう動物の内臓等については、国内の反すう動物の飼料として利用されることがないよう指導することが重要である」というふうに発言要旨が公表されております。
 しかし、その会議に参加したある職員が議事メモをつくっております。ただ、この議事メモは速記録を落としたものでないということで、証拠性についてどれだけ高いものであるのか、若干議論の余地が分かれますが、しかし、その議事メモによりますと、動物性飼料をイギリスと同じように禁止令を出すべきだという発言がございました。しかし、その発言があったといういわゆるプライベートな議事メモに対して公的な会議の要旨は、指導するようにというような、「指導することが重要である」というふうになっているわけですね。この辺を大分いろいろ検証しました。
 しかし、我々の委員会は、その発言者にまでさかのぼって陳述を求めるということができないシステムでございます。これは、いわゆる検察でも何でもないということで、我々調査会の限界でございました。ましてや調査会では、資料はすべて公開とするが、個人名、例えばこの会議の議事録等についてはすべて出しておりますが、役職名は出すけれども個人名は出さない、それから個人の利害にかかわることについては公表をしない、会議もクローズにするというような規定というか申し合わせがございまして、私はよほど、その発言をした、お医者さんだと聞いておりますが、その方に確認をしようかと思ったんですが、さすがにそれは委員会の枠を超えるということでやっておりません。これが一つ。
 それから、その後、先ほど申しましたように、四月の十六日だったでしょうか十五日だったでしょうか、指導で禁止を勧めているわけですね。課長名で出しているわけです。
 その後、七ページに書いてありますように、上から五行目ですか、農業資材審議会飼料部会の家畜飼料検討委員会というのが開かれております。その中で、先ほど申しましたように、二名の方は禁止をすべきだというふうに言ったんですが、ただ、この委員会のメンバーは、必ずしもBSEの専門家が余り入っていなかったわけですよね。そういうふうな意見が出たとすれば、その専門家を呼んで少し再検討すべきではないか……(江田委員「先生、時間がないので」と呼ぶ)はい。そのような検証をしております。
江田委員 わかりました。
 今申されましたように、やはりこの危機意識の欠如というか、また危機管理体制の欠落というのが今回のBSEを引き起こしているというのは、これは非常に明らかなことだと思います。それで、農水省の責任においても、これは問われてくる問題だと思っております。
 それらを引き起こしたその奥底にあるのは、やはり生産者優先、また消費者保護軽視の行政であったり、また政策決定が不透明であったり、先ほどのお話に通ずるところでございますが、こういう点に関しては、第二部をおまとめになられました岩渕先生、一言御見解をお聞きしたいと思います。
岩渕参考人 今委員におっしゃっていただきましたので、ほとんどそれにつけ加えることはありませんが、やはり先ほどから生産者の方から批判がございましたように、生産者は優遇されてきたつもりはないという、これも確かに同感でございます。私も子供のころからそう思っておりました。
 この肉骨粉に関する判断の中で一番大きな問題であったと思われるのは、やはり生産者の目先の利益、目先の利害に対する配慮が非常に強かったというところを私は一番強く感じております。ですから、そういったようなことがきちんとできなかった。実に難しい判断であったろうというふうには思いますが、やはりそこのところはどこかで踏み切らざるを得なかった問題ではなかったかなというふうに思います。
江田委員 もう時間がなくなってまいりましたが、非常に重要なポイントで、農水省のこういう体質、行政の体質と同時に、こういう団体の目先の利益に絡む、そういう悪い面でいえば癒着となるんでしょうか、そういうところもあるという御指摘かと思います。
 こういうものを克服して改革を断行しなければならない段階でございますが、食の安全ということに関して最も期待が寄せられているのが、先ほどから申されておりますように、この報告書でも進言がされておりますように、これは新たな新法を制定しよう。その法律の名前は、若干食品安全法から変わりまして、消費者の保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための法、こういうものを制定しなければならない。同時に、関連法も、食品衛生法もまたJAS法も切りかえていかなくてはならないだろう。またさらに、独立性、一貫性を持ったリスク評価ができる、そういうリスク評価機能を持った食品安全行政機関、これを設置するというのが重要である。これが今非常に食の安全においては求められている重要な観点だと思っております。
 そこで、政府の案としまして、最近、食糧庁を廃止して、新たに内閣府のもとに食品安全を担当する行政組織を創設する方向で検討がなされていることが新聞に報道されました。これは、農水省と厚生労働省の関係部署の一部の組織や職員を移して発足する方向でございますが、この組織の上部機関として、食品の安全性を評価するため、ここに学者などの専門家で構成する委員会、これを設置して、勧告、命令などの権限を与える、その下にこの委員会の決定を実行に移す事務局としてその行政組織を、行政機関を持つ、こういうような案でございます。
 これについて、最後に高橋先生に御意見をお伺いしたいと思います。これで食の安全が確保できますでしょうか、それを。
高橋参考人 提言しておりますリスク分析、これのポイントはリスク評価にあると思います。
 これは、EUの食品白書の中で言っていることは、独立性、卓越性、それからもう一つは公明性というか公開性、この三つの原則をはっきりしなきゃいけない。
 さてここで、私は、その独立性ということが日本のこの社会風土の中で十分確保できるかどうか。日本の社会風土というのは集団主義あるいは縦社会というか、こういう社会の中でできるかどうか。ましてや、既存の産業振興省の人たちが出向して後でまた戻っていくというような形で事務局を構成するようでは、これは独立性は保てないと思います。
 そういう意味で、この独立性を保つための組織のあり方は、皆さん方は大いに議論していただきたいというふうに考えております。
江田委員 時間が参りました。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。
 次に、高橋嘉信君。
高橋(嘉)委員 自由党の高橋嘉信でございます。
 それでは、岩渕参考人にお聞きしたいのでありますが、政官癒着が今回のBSE問題の政策決定に影響を与えていると思われる部分がある、これは、先ほど一九九六年の四月の時点とか、そのポイントが三つあったというお話ですが、どの時点でも結構ですが、政策決定に、そして「重大な失政」と言うからには、その辺お考えになられるところがあるのでしたら、政官という部分、癒着という部分でお話を賜りたいのです。
岩渕参考人 先ほど御説明申し上げましたが、政官癒着という言葉は使っておりません。それで、政官癒着という言葉を使うことに私は反対の意見を持っております。ですから、そこのところを私に聞かれても、なかなか申し上げにくいということでございます。
高橋(嘉)委員 それでは、例えば第十回の報告書に、EUのステータス評価に対して、日本の酪農は肉骨粉の使用の習慣がないこと等を理由に途中で断ったと。たしか、これは岩渕参考人の第二部のお話だったと思うのですが、それが最終報告には、「英国からの肉骨粉輸入を禁止し、牛用飼料への肉骨粉使用がほとんどないと考えられていた」と訂正されていますが、これはどうしてですか。
岩渕参考人 原案を出した後、各委員並びに、及びといいますか、それぞれの担当官庁から意見を募集いたしました。それで、事実関係において違うと思われる点について申し述べるようにというようなことで、さまざまな意見が寄せられました。その中に入っていたことでございまして、委員会でこれは入れてもいいということで入れました。そういう経緯でございます。
高橋(嘉)委員 日本の酪農は肉骨粉の使用を認められるような専門書すらあるのですね。そういったことは把握しておられなかったのでしょうか。つまり、肉骨粉の使用が習慣にないことという、この認識の違いが大前提だと思うのですね。先生が、日本の酪農は肉骨粉の使用の習慣はなかったんだと本当に思っていらしたのか、そして最終報告を作成する際において、いやいや、実はちゃんとこういう専門書も出ているし、農林省の飼料の成分表にも出ているわけですね、ミート・ボーン・ミールと。そういうのに出ているからこういうのは言わないでくれというだれかの話があったのか、僕はその点を聞きたいのです。
岩渕参考人 そのような具体的な話はございませんでした。ですから、委員御指摘のような認識が私自身にはなかったという点については、不勉強のそしりは免れないというふうに思いますが、このあたり、委員長の方が多少詳しいですか。
高橋参考人 学会で肉骨粉を勧めたという事実があったのではないのかというようなこと、それと農林省の指導陣営、例えば普及センターあたりが肉骨粉を勧めたんではないのかというような質疑は行っております。学会でやったことについては回答はございませんでしたが、農水省としてはそういう指導をしていないということを回答がございました。
高橋(嘉)委員 それでは次に移りますが、先ほどの重要な政策決定、政策ミスの最大のポイント、これは私もそう思いますが、一九九六年の四月十六日に、WHOからの勧告を我が国は受け入れて、肉骨粉の飼料としての使用を自粛する旨の通達を関係機関にした、こうあります。この時点において、これはもう報道されていますからお話ししますけれども、九六年の三月と四月に合わせて五十トンという大変な肉骨粉の使用量が記載されていまして、通常使用量の倍以上なんですが、その点は違和感を感じませんでしたか。
鉢呂委員長 どちらに対する。
高橋(嘉)委員 岩渕委員にできればお答えしていただきたいんですが。
岩渕参考人 さまざまな資料の中で、大丈夫かなという印象は受けましたけれども、そういう専門的な知識に欠けておりまして、それでどうかというふうに問い詰めるところまでは至りませんでした。それが正直なところです。
高橋(嘉)委員 言うなれば、これは在庫処理だったという報道までされているわけでありまして、それに近いぐらいの数値を示しておりまして、これは大変なことなんですよね。
 肉骨粉が嗜好性が悪いことは御案内のとおりでありまして、配合飼料に一ないし二%をまぜるわけですね。それが五十トンだと、例えばこれを二十キログラム入りの配合飼料の袋にすると二十五万袋になるんですよね。つまり、これが一ないし二%、一%とすれば五千トンになるわけですね、一%まぜて配合飼料をつくるわけですから。食べないんですよ。やはり共食いは嫌なのかどうかは知りませんが、肉骨粉を牛は食べない。嗜好性が極めて悪い。これは本にも出ておりますけれども、そういった状態の中で、これだけの、まさに二十五万袋という配合飼料が一瞬のうちに、まさに通達が出る前後に処理されている。この実態を把握されていたのかなと思っただけであります。
 それでは、僕は当然ここは違和感を感じていただいたんじゃないかなと思ったんですけれども、では次に御質問申し上げますが、例えば行政通達に自粛通達というのは本来あってよろしいと思いますか。
 通達というのはやめろという話でありまして、その時点の通達の内容を見ても、飼料としてしないようにという話になっているわけですね。そして、詳しく聞きますと、これは協会に通達を出して、それから傘下の会社にちゃんと通知しなさいよという、そしてしかも確認をしていなかったんですね、僕が農林省から確認したところによりますと。この点は非常に最大ポイントであるというところの中で、いや、政官の視点はないというお話ですから結構ですが、まさに先ほどから生産者に軸足、消費者に軸足がなかった云々の問題ではなくて、製造会社あるいは業界団体、輸入商社に軸足があったと言わざるを得ないぐらいの状態がこの一点を見てもあるわけなんですが、この点について御意見をお伺いします。高橋委員長と岩渕委員にお願いします。
高橋参考人 残念ながら、その商社の行動あるいは肉骨粉の在庫問題については、当委員会では論議はされておりません。
岩渕参考人 先ほど申し上げました九七年の衆議院農林水産委員会の議事録によりますと、そのとき農林水産省の畜産局長の答弁としては、メーカーか販売会社か知りませんけれども、それに調査させたところ、流通していないという結果を得ている、そういう答弁がございました。結果として、それが事実でないということは明らかなことでございまして、そういう点でいきますと、あのときの農林水産省の答弁というのは非常に全く信用できない答弁であったと思います。ですから、そのあたりのところは、ぜひ役所を呼んで徹底的に質疑をしていただきたいというふうに思います。
高橋(嘉)委員 それでは、例えば、事が起きてからの話でありますけれども、その九六年のときも自主回収は全然しようともしなかったんですが、二〇〇一年九月に、空胞が発見されて、疑似患畜の発生を公表した。その後も全く、肉骨粉の入っているもの、たとえこれは豚用であろうと鶏用であろうとですが、そしてその後に、十月四日にそれをとめ、十月十五日には法的規制をしているわけですから、その前後も全然回収しようとしていなかった農林省の姿勢はもう御案内だと思うんですが、その点についての高橋参考人と岩渕参考人の御意見を賜りたいんです。
高橋参考人 その点については、例えば、肉骨粉をどのような状況で使っているのかというような質問を事務当局にして、そして例えば、袋の中に表示されているというようなことでチェックをしてきたという回答を得ているだけでございます。
岩渕参考人 その点につきましては、先ほど生産者の目先の利害に配慮と申し上げましたが、もうちょっと正確に言いますと、生産者の目先の損害に配慮というような、そのようなマインドで役所は処理したのではないかなというふうな感じを持っております。
 ですから、そういった点でいきますと、大変に難しい問題もあるのでございますけれども、当然ながら、この種の問題につきましては、予防原則、たとえ現実に危害が発生していなくても、発生するおそれのある場合にはそれに対してきちんと対策をとるという、この原則を確立していなかったことがさまざまな問題を引き起こした最も大きな背景的な原因ではないかなというふうに思います。
高橋(嘉)委員 参考人に何もいろいろ申し上げるつもりはないんですが、生産・製造団体とかいうのであればわかりますが、一番生産者が迷惑をこうむっているわけでありまして、僕は生産者だけを擁護しようという考え方に立っているわけでも何でもありませんが、全く無傷のままでいるのは肉骨粉の輸入商社とか製造関係のところでありますから、生産という側面だけで軸足、あるいはその側面だけを見た話をされると、ちょっと違うのではないかなということだけ僕は申し上げておきます。
 それで、堀参考人にお伺いしますが、全農にも配合飼料の製造工場がありますよね。全国に何カ所ぐらいありますか。
堀参考人 今、三十三工場ぐらいあると思います。
高橋(嘉)委員 発生当時、またそれ以降、肉骨粉入りの飼料を回収しよう、これはやはり最終的に農家は困るかもしれない、生産農家は困るかもしれない、回収しようという議論なり、農林省からのそういった旨の相談はありましたか。
堀参考人 もともと、全農のそういった工場でつくっている配合飼料につきましては、牛用については肉骨粉を使っておりませんから、これは平成三年ごろからずっと、記録で残っているのは平成三年以降使っていないということでございますので、そういった措置はとる必要がない、そういう判断をしておりました。
高橋(嘉)委員 では、全農の役員の方々は、そういうふうな議論とか何か、工場で使っていないのはわかりました、使っていないにしてもそういう議論はありましたか。
堀参考人 それはございませんでした。
高橋(嘉)委員 それでは、二〇〇一年の六月十一日から十四日にかけて、WHO、FAO、そしてOIEの専門家会議が行われました。この翌日にステータス評価の取り下げを決めていますが、ここの点が非常に僕も違和感を感じるんです。
 この点について、ちょっと不明な点が多いんですが、わかる範囲で結構ですから、なぜ検討を重ねる状況もなく、翌日十五日に評価の取り下げをしたか、けったか、この点について検討会ではどのような議論になったんでしょうか。岩渕参考人。
岩渕参考人 この間の経緯につきましては、役所側にさまざまな質問もいたしましたが、明確な回答はありませんでした。その間のやりとりについての、それぞれEUとのやりとりの文書は出てまいりましたけれども、その間の政策決定、判断、そういったようなことについては、私の記憶では全くなかったように思います。もし違っていたら、委員長の方から。
高橋(嘉)委員 それでは、田中参考人にお伺いしたいんですが、発生当時もしくはそれ以前でも結構なんですが、肉骨粉という存在を御存じでしたか。
田中参考人 僕個人としてですが、肉骨粉という存在は知っておりました。それは、日本飼料標準とかNRC飼料標準という標準にはミート・ボーン・ミールというものがありますので、そういうえさがあるということはわかっておりました。
高橋(嘉)委員 つまり、そういう成分表に出ているわけなんですね。ですから、農林省は指導をしていないなんというのはうそなんです、農林省の技術会議の資料にあるわけですから。そうすると、それは食べさせていいものだと思います。それと、経済連とか何かの広告がばんばん出ている。例えば「デーリィ・ジャパン」、これもマスコミに出ましたけれども、そこの中には、それを使いこなしていますかなんて出ているわけですね。これはアミノ酸の関係にもいい、たんぱく源の供給にも非常にいいと書いているわけですね、ただし嗜好性が悪いと。そういう実態にあるのに、指導をしていなかったと言うその農林省の姿勢もですけれども、それは暗にもう、ああ、使っていいものなんだな、これを使いこなしていけば乳量もふえるし、いいものなんだなと生産者は思うに決まっているんですよ、今の田中参考人が言われるように。
 では、僕は、時間がありませんので、もう一点だけ田中参考人に。今のBSE対策で十分か否か、先ほどの話でわかりますけれども、もう一度だけお答えを願います。
田中参考人 先ほど自分で意見を言わせていただいたとおりで、生産者の僕たちとしては、十分どころか、まだ何も解決しておりません。よろしくお願いいたします。
高橋(嘉)委員 こういった大問題に発展したわけですけれども、「重大な失政」という結論をいただいたわけでありますが、行政の不作為、これはもうまさに否定できない問題であろうと思いますが、行政の責任のあり方というものは、例えば政策に対しての責任のあり方というものは、今後対応する、いいんだ、今までは悪かった、今後こうするということだけで行政の責任というものは免れるものだと思いますか。その点、感想で結構ですので、全参考人の方にお伺いしたいです。
高橋参考人 委員会としては、事実を確認して、それを検証し、問題点を明らかにし、今後の対応策を考えるということが課せられたテーマ、課題でございまして、その具体的な個人の責任について云々するような論議はしておりませんし、そういうことをやる場ではないと認識しております。
高橋(嘉)委員 ほかの三参考人の方に勘違いされてはいけませんのでお話ししますが、個人の責任というものを僕は申し上げているのではありません。行政の責任というものは、今後こう対応するということだけでいいのでしょうか、その点、感想だけで結構ですということです。
岩渕参考人 無論、委員おっしゃるとおり、それでいいものであるはずがありません。ですから、報告書の中に一部触れてはいますけれども、役所の政策決定過程というのは、ほとんどが組織としての連帯責任というふうな形で、個人名を出さない形でもちろんやっておりますし、そのことによって個人が責任を問われることはないという、このシステム自体に若干の問題は感じておりますが、それとはまた別に、今の御質問でいえば、そういったようなことがあっていいはずがありませんので、過去のことについても、行政としてきちんともっと真剣に反省して、責任を明確にすべきであるというふうに思います。
堀参考人 こういった事態が発生したということは事実でございますので、責任云々よりも、むしろ、こういったものを糧にして、次のこういったものが発生しないようなことを考えていくのが大事ではなかろうか、こう思います。
田中参考人 僕は、過去については、BSEを考える会の第二に書いてあったように、責任の明確化というところで、過去のことを追及したいと思っております。
 そして、未来というよりも、僕たちは、先ほどから言っているように、何も変わっていないんです、発生してから、現場は。現在進行中も何もなく、変わっていないんです。とまっちゃっているんです、過去から。だけれども、僕たち生産は動いているんです、ずうっと。だから、そこのところだけはきちっと押さえていただきたいとお願いしたくて来ました。お願いします。
高橋(嘉)委員 終わります。
鉢呂委員長 これにて高橋嘉信君の質疑は終了いたしました。
 次に、中林よし子さん。
中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。
 まず、高橋参考人にお伺いをいたします。
 今回の報告を見ても、九六年四月のWHOの勧告、それの行政側の受けとめ方、これがやはり大失政の一番の要因だったろうというふうに私も思っていたところなんです。
 九六年のWHOの勧告を受けて、最初に、四月八日に、海綿状脳症に関する検討会という、専門家の皆さんにお集まりいただいた会が開かれます。私は、発生した一番最初、当委員会で、九六年のWHOの勧告を行政指導にとどめた問題で、なぜそういう結論に至ったのかということを政府に問いただしたんですね。そうしたら、専門家の意見を聞きました、こういう回答でございました。
 では、専門家の意見とは何かということで、資料を出していただいたんですけれども、それが委員発言要旨というものでございました。ここで、「国内の反すう動物の内臓等については、国内の反すう動物の飼料として利用されることがないよう指導することが重要である」、これが専門家の意見の要旨だということで、その資料をいただいたわけです。
 これは、局長以下十二人も政府の役人が出席している、そういう重要な会議だし、WHOそのものの会議が、FAOもOIEも参加しているし、イギリスで、これは人に感染する、そういう危惧が否定できないというのを受けての非常に重要な国際会議、その勧告だったというふうに思いますから、日本で初めてそれをどうするかということを専門家の皆さんに聞いていただいた。要旨だけではなくして、もっとちゃんとした会議録があるはずだということで、私は農水省に問いただしたんですよ。そうしたら、農水省の答弁は、紛失しましたということなんです。
 非常に不思議だと思ったんですね。要旨だけあって、なぜ会議録が紛失したのかという不可思議なことがあったんですけれども、先生方の第三者委員会が始まって、十二月二十四日、これはクリスマスイブの夜なんですけれども、見つかりましたということで、休み明けに私の部屋にこの議事メモというものが、委員会にも提出されたものが届いてまいりました。私はこれを見て、やはり専門家の皆さんはちゃんと指摘をしていらっしゃったなというふうに思いました。なぜ紛失したと農水省が言ったのかということを推測してみたんですね。
 専門家の方々は、日本でも英国と同様、動物性飼料の禁止令を出して、脳リンパ節の流通を禁止した方がよいのではないか、こういうことをはっきりおっしゃっているし、防疫の問題については、疑わしきは禁止だ、海外からの侵入防止と国内での発生防止が必要だ。それから、大きな問題は、BSEは人間がつくった病気であり、これがだれがつくった病気であるかが責任問題に発展する、そういうおそれがあるんだ。さらには、イギリスでは禁止令を出したんだけれども、それが末端まで行き届かなかったから今回のような事態が発生したんだ、そういう指摘まであって、だれ一人として行政指導すべきだと発言された方は、この議事メモからは全然読み取れないわけです。
 そうなると、そこに参加した農水省の局長以下十二人の役人がいるわけですけれども、そこで発言がねじ曲げられたとしか言いようがございません。それで十六日の行政指導ということになって、今日の大失政の一番大きなもとになった。
 二十四日という日は、熊澤事務次官がもう辞任を表明したというか、やめさせるよという農水省の発表の後だったわけですね。だから、もうそこには責任が及ばないというところでこの議事メモが見つかったのかなという私の推測ですけれども、私がこの問題で、一連の農水省とのやりとりの中で事実を今述べましたけれども、高橋参考人、こういう話を聞かれて、どのようにお感じになりますでしょうか。
高橋参考人 今の議事メモ、手元にございます。おっしゃるとおりでございます。ただ、私ども不勉強で、国会でこの問題が議題に上ったということは、つい最近、行政当局から教えられるまで知りませんでした。
 さて、そこで、行政当局は各委員にこの発言要旨、これは先ほど朗読されましたように、「指導することが重要である」という発言要旨、これを各委員に持って、これでよろしいかということを確認した。こっちは公的なものである、しかし、議事メモはそこに参加していた個人のメモであって、根拠性が乏しいという回答でございました。
 私どもの委員会の限界でございまして、あるいは裁判所のようにとことんこの問題を追及することはできなくて、その行政当局の発言を踏まえて、辛うじてこういう発言があったということを、そういう文言を報告書の中に掲載させていただきました。
 以上です。
中林委員 岩渕参考人にお伺いしたいんですけれども、やはり私どもも、この報告で農水族ということで、国会議員と政策決定のかかわり方の問題ですね。それで、特定の政党の名前を挙げるのはいかがなものかということで、特定の政党を最終的には伏せられましたけれども、自民党というのは国民が周知の事実だということもお話しになったというふうに思うんですが、具体的に、例えばこのBSE対策で、族議員と言われる議員が何か影響を及ぼしたとか、そういう聞き及んだ話でもあれば御紹介をいただければというふうに思うんです。
岩渕参考人 BSEに関しまして、いわゆる自民党族議員の関与ということにつきましては、九七年の農水委員会のやりとり、それから、それ以降につきましては、BSE発生以降、さまざまな動き及び発言が報道されておりまして、その限りでは承知いたしておりますが、具体的に、では役所が公文書をつくって持ってきたとか、そういうようなことはございません。
中林委員 重ねて岩渕参考人にお伺いしたいんですけれども、雪印食品の偽装問題がありましたよね。政府の買い上げ問題に端を発してですけれども、このとき、条件緩和をいたしました。最初は屠畜証明がなければだめということを言っていたんですが、後で在庫証明でいいよということになって、そこに偽装の余地が入ることになったんじゃないか、そういうふうに私は思っているんですけれども、ここに農水族の関与があったことは聞いていらっしゃいませんでしょうか。
岩渕参考人 聞いておりません。
中林委員 それで、九七年の当委員会での附帯決議の問題で、委員会全体が追認したんではないか、こういうことを農水省も説明しているし、大臣も、私などが質問するとそれを必ず盾にとられるんですけれども、参考人にぜひ御理解いただきたいのは、あの本法について、日本共産党は反対をしております。
 ただ、先ほど言われたように、鉢呂議員の方からこんな指導でいいのかということで、当時の局長が、いや、ちゃんとやっているから大丈夫というような答弁があった上で附帯決議が出されたものですから、それはもっと強固な指導をするという点では私どもも賛成をしていったという経過がございますので、全部それを、当委員会がやり方を追認したということではないことだけ、ちょっと申し上げておきたいというふうに思います。
 田中参考人にお伺いするわけです。
 事態は少しも変わっていない、軸足など、とても生産者に及んでいないよというような、端的に言えばそんなお話があったと思うんですけれども、私は総理に、今回の問題は農家の責任ではないし、それから関連業者の責任でもないし、消費者の責任でもないということで確認をしたら、そうだと総理も答弁されたわけですね。それで、政府が万全を期して対策を講じたいということも表明をされました。
 私は、農家をめぐっているし、それから、焼き肉屋さんを初め業者の皆さんとも懇談を重ねているわけですけれども、BSEの発生によって受けた損害、その補償というものはやはりされていないというふうに思います。農水省は、BSE対策、いろいろやっているからということを言うわけですけれども、今具体的にやられている施策と、実際酪農をやっていらっしゃる間でかなりの差があるんではないかというふうに思うんで、この損失補償の問題で何か御要望があればお伺いしたいんです。
田中参考人 お金の面でということになると、具体的に言うと、いろいろな補てん金も出てきております。
 そして、猿払の場合は、地方交付税二千何百万がおりまして、それで廃用牛が、さかのぼって一頭当たり三万二千円、初生犢は一万円という金がつくということになっているんですが、それが、財源がもう尽きますから、その後、価格が変わらなかった場合、じゃ、どうなるのかという問題もあるんですけれども、ただ、この廃用とか初生犢の問題というのは、猿払村だけが被害をこうむっているわけではなくて、BSEにおいて全国の酪農家みんなが被害をこうむっているわけですから、全体に渡らなきゃいけない金じゃないかというのは、個人的には酪農家として思っております。
 それで、僕たち酪農家の最大限の不安というのは、先ほど言ったように、家畜伝染病という名前の中にBSEを平成八年に突っ込まれてしまったのが、だれが突っ込んだのかちょっとわからなくて、そのおかげで、何かもう全部自分たちが被害者になってしまっているような感覚で、それが変わらない限り、僕たちの経営というのは、いつになっても、幾らお金を下さっても安定しないものですから、そこのところだけを強調してお願いしたいと思っております。
中林委員 それで、なかなかちょっと言いたいことも言われないのかもわかりませんけれども、田中参考人に、十七年前から夢を抱いて、やはり北海道で根づいていこうということで酪農を始められたと思うんですね。一番最初に、畜産の本来の姿というか、草を食べてそして牛乳や肉にしていく、そういうことで、今回肉骨粉という共食いをさせるというようなことでBSEの発生を見たということになるわけですけれども、田中参考人自身が、本来酪農とはどうあるべきか、あるいは畜産でも結構ですけれども、その本来のあり方と、しかし現実、経営をやっていて、そうやれば本当に経営が成り立っていくのかどうなのか、今の乳価の状況だとかそういう現実の問題からいえば、なかなか大変だろうというふうに私は思っているわけですね。
 それで、今度の肉骨粉の問題は、やはり効率性などを優先した、安いですから、結果がそういうことになったんじゃないか、あるいは日本の自給率の低さから、そういう汚染国から肉骨粉を輸入せざるを得ない、そういう状況が背景にあるんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけですね。
 だから、十七年前、酪農をやろうと決意をされて今日までやってこられた中で、自分たちが描く理想の酪農経営、そして現実の経営との矛盾といいましょうか、もしそれがあれば、今農政で何をやってほしいのか。直接的には、家畜伝染病予防法の具体的な問題、改正を求められましたけれども、今現実に、今後も酪農を多くのみんなが希望を持ってやっていこう、そういうときに、一番農政に望む、そういうものがあれば、せっかくいらしたのですから、ぜひ十分語っていただければというふうに思います。
田中参考人 大変問題が大きいので、ちょっと端的に言いますと、端的というか、抽象論になってしまって申しわけないんですが、僕たち末端の酪農家が、今までは部落だけで固まっていたりしたんですけれども、今こういう問題、BSEが起きてみると、すごい地方連携というか、全体の連携がすごくとれまして、そういう人たちといろいろな話をしてみると、もう上からトップダウンで何かをおろしてきてもらうんじゃなくて、末端の僕たちがこれから農業をやるときに何をしたいという立案をしたい、その立案を上に上げていって予算づけをしてくれ、そういうような、当たり前の話なんですけれども、そういうことを僕たちはやっていきたい。
 それをやりたいというのがこれからの農政にぜひお願いしたいというか、補助金でも何でも、上からただ落としてくるんじゃなくて、僕たちはこういうものを立案していって、地域を超えていろいろなネットワークでつながる。今もうインターネットでどんどん仲間をつくれますから、そういう中で考えたものを上に上げていって予算づけして、本当に補助金が有効に使われているかどうかをもう一度確認を国がするというようなことをしていただいた方が、僕たちにとってはうれしいなと思っております。
中林委員 高橋参考人、岩渕参考人、それぞれがフランスとドイツとベルギーでしたか、いらっしゃった御報告も見させていただいております。
 私どもも先般、それを追うように実は行って、いろいろお話をお伺いしたんです。それが今後のあり方のところに生かされているんだろうというふうに思ったんですけれども、とりわけ情報公開の問題ですけれども、これについて、高橋参考人、岩渕参考人それぞれ、日本で取り入れるべき情報公開のあり方で御提言があればお伺いしたいというふうに思います。
高橋参考人 まず一つは、私どもの委員会の方式、これをもう少しいろいろな形で進めていただきたいと思います。
 政と官との関係についても、もっと透明性を出していただくことによって消費者や農業生産者の信頼感が確保できるだろうと思っております。
岩渕参考人 委員会の中でさまざまな指摘がございまして、要するに、一番大きな問題としては、やはり情報の伝達の技術及びツールに関してもっともっと工夫の余地があり、情報伝達の専門家がいないというようなことも指摘されました。それは国民や消費者に対しての情報の伝達と同時に、リスクマネジメントを担当している規制当局、あるいはリスクアセスメントを担当する機関との相互の情報の伝達においても非常に不十分なものがあるということで、今度新しい組織をつくるときには、その部分もきちんと配慮した組織形態にしていただきたい、かように思います。
中林委員 まだ一分くらいはございますけれども、私どもも情報公開の問題では、一番学んだ点は、隠し立てがいけない、国民が、政府が少しでも隠しているというふうに思ったら、消費者の信頼は取り戻せないよ、こういうお話だったんですね。
 高橋参考人、申しわけないんですけれども、だれに聞いたらいいのかな、要するに、消費がまだ戻らないわけですよ、日本の場合。何をやれば今一番消費が戻るとお考えなのか、もしそれがわかれば、済みません。
高橋参考人 その問題は恐らく皆さんと意見が一致していると思います。まさに安全と安心をどうつないでいくのかということ。安心の背後には信頼があります。その信頼をどう回復するか。今全国にはびこっている、消費者を含めあるいは生産者を含め、不信感、これをどのように払拭するか。
 そのためには、私どもが提案したものを早急に実現していただく、しかもこれを公開の議論の中で、国民合意のもとで実現していただくことが信頼回復の基礎になると確信しております。
中林委員 どうもありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて中林よし子さんの質疑は終了いたしました。
 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 最初に、調査検討委員会が一定の結論を持って報告したということに、これまでの検討委員会の御労苦に心から感謝申し上げたいというふうに思っております。
 最初に、高橋参考人にお聞きしますが、先ほども質問の中で答弁がありましたけれども、日本においてリスク分析、リスク評価とリスク管理をどのように行っていくのかという観点で、高橋参考人は、最終ページにあるんですが、日本の実情に合った組織形態というものを念頭に置いているという答弁がございました。私もイギリス、フランス、ベルギー、EUに行ってきてこのことを調査してきたんですけれども、ヨーロッパの状況を即入れるんじゃなくて日本のということ、このことは一面真理があるというふうに思います。
 ただ、これはイギリスでも経験してきたんですが、新たに組織をつくり上げるときに、既存の組織を乗り越えた形でつくっていかない限りつくり得ないんだということも言われてまいりました。そういう意味では、今の組織の中に埋没してしまう嫌いが私はあるんではないのかなというふうに思うんですが、委員長として、最終報告にあるリスク評価、管理の組織というものが日本にどうあったらいいのかということを、今考えていることがございましたら答弁願いたいというふうに思っています。
高橋参考人 我々の報告書では、残念ながら、法律の専門家もあるいは行政の専門家もいなかったということで、具体的な姿については論及しておりません。
 したがいまして、ここから申し述べますのは私個人の意見でございますが、どうも日本の場合、欧米の国と比較しまして、個の確立というものが非常におくれて、いわゆるインディビジュアルというのは、欧米では個人でございますが、日本ではインディビジュアルは集団だろうというふうに考えております。したがいまして、集団の意思の中で、集団の中でどう生きていくのかということが依然として私の考えている日本の社会風土だと思う。その中でどう独立性を保つかということなんです。
 この報告書の中にありますように、あるいはEUの科学委員会なんかでもそうでございますが、例えばEUの構成国以外から、例えばアメリカの学者をその委員の中に入れております。この報告書でも書いてありますように、海外を含めた公募制をとって、その委員会の独立性を保つことだろうということだろうと思います。
 それからもう一つは、その審査が非常に厳しいものだということでございます。たしか、十数人の委員を選ぶのに三百人か四百人の候補が応募しているということをドイツかEUで聞いてまいりました。ということは、その中から、いろいろな利害関係がない人、あるいは中立性、独立性を保てる人格を持っているかどうか、これを吟味することだろうというふうに思っております。
 難しいことですが、しかし、挑戦しなければこの問題は解決しないというふうに思います。
菅野委員 わかりました。
 ただ、私も非常に難しいなというふうな思いでいるんですが、そういう意味で、中間報告と最終報告を見たときに、最終報告では六カ月というふうな期限つきになりました。中間報告は六カ月(一年)となっていたんですが、この括弧の一年がとれたというのは、それなりの決意があってとったのかなというふうに私は読み取ったんですけれども、この六カ月という期間を委員長としてどのような形でとらえているのかなということをお聞きしておきたいと思います。
高橋参考人 こちらは皆さん関係するんですが、食料・農業・農村基本法、あれを制定するのに三年余かかっております。そのように基本法をつくるのに時間をかけていたのでは今の事態の問題解決にならないという意味で、そんなに長期なものを考えるべきではないということが一つでございます。
 もう一つはやはり、具体的な組織をつくり、そこに予算が整うためには、来年度の予算要求と合わせたような形での議論の進行を期待せざるを得ないのではないのかというような意味もありまして、六カ月というのはそんなに厳密なものではないんですが、拙速でなく、しかし余りのんびりしないでというような意図でございます。
菅野委員 では、岩渕参考人にお聞きしたいと思うんです。
 私も宮城県出身で、そして小さいとき酪農をやっていて、農家生まれなんです。岩渕さんの先ほどの話を聞いて、境遇は同じだなと思うんですが、私は、BSE調査検討委員会に入って、今日の酪農というか畜産業全体をどのように考えておられたのかなというふうに思うんですけれども、抽象的な質問になってしまいますが、今日の酪農あるいは畜産業の現実というものをどう評価しておられるのかなということをお聞きしたいと思っています。
岩渕参考人 個人的な感想で恐縮でございますが、私のところは五年前までといいまして、五年前に、どうしても赤字がかさんで経営できなくなって、畜産からは撤退いたしました。そのような経緯もございまして、日本における農業、特に畜産、国際化の中で、あるいは、報告書の中にも一部書いてありますけれども、工業化した畜産の中で日本がどういうふうにやっていくのかということについては、非常に難しい問題であり、疑問を感じております。そこまでにとどめておきたいと思います。
菅野委員 それでは、現実に今酪農経営をなさっている田中さんにお聞きしたいと思うんですが、十二月二日に社民党の調査団が猿払村に行ったときに、大変お世話になりました。
 本当に、先ほど田中さんが申されたように、BSEが発生して、そして末端で酪農経営をやっている方は、発生時と今は何ら一つも改善されていない、その当時から対策がほとんど打たれていないという先ほどの話を聞いて、私も愕然としたのでありますが、先ほども中林委員が質問しているんですけれども、今現実に、例えば酪農経営をなさっていくときに、問題点として自分なりにとらえているということを披瀝願いたいというふうに思っております。
 私も、この委員会で、家畜伝染病予防法からBSEを外して、新たな法体系のもとで対処していかなけりゃならないんだということを主張してきました。それがまだ実現していません。そして、フランスに行ってOIEに行って、OIE基準なるものも調査してまいりました。そして、OIEから言われたことは、本当にその国が独自政策としてやっていっていいことですよということまでも、端的に言えばそういうことも話されてまいりました。
 そういう意味では、OIE基準、OIE基準と言って前に進もうとしない今の政府の姿勢に対して、私自身も怒りは持っているんですけれども、その点も踏まえて、現在田中さんの思っていることをお聞かせ願いたいというふうに思うんです。
田中参考人 先ほどの意見を言わせていただいたときに言ったとおり、OIE基準については疑問に思っていましたので、あのとおりのことを言わせていただきました。
 それと、酪農の経営の話に先ほどちょっと触れられていたので、中林さんにも聞かれたんですけれども、いろいろな全国の酪農家と話してみると、BSEについてもいろいろな地域ごとの温度差がありまして、随分差があるというのを感じました。そして、農業のあり方についても話してみると、個々のその形がみんな地域地域、日本、一つじゃない。やはりみんなばらばらで、同じ北海道でもそれぞれの形、経営形態があるので、それが存続していくにはどうしたらいいかということ、だから十把一からげにしてどんという補助金だと、やはり先ほど言ったように合わないというのは思ったので、下からの成立というのをお願いしたい。BSEについても、何か全く同じような気がしています。
 というのは、千葉の支援グループの人とも接触しているんですが、千葉の考え方と僕たち猿払とはやはりまた全然ちょっとニュアンスの違うところもあるんです。だから、その辺を一つの、何かBSE問題でぽんと当てはめることは僕はできないんじゃないかなと思っていますので、やはりそういうのを細分化してお願いしたいなとは思っております。
菅野委員 わかりました。これからもぜひ意見を聞かせていただきたいと思うんです。
 もう一つ、私はこだわりを持って取り組んできた部分ですが、要は、このBSEを考える会でも言っているんですが、老齢廃用牛の処分の問題ですね。疑似患畜牛の全頭殺処分の問題とこの老齢廃用牛の問題、これを今後どう解決していくのか。
 例えば、八年経過後だったら思い切って出せるというふうに思うんですけれども、田中さんの牧場でこの老齢廃用牛を今どのようになさっているのか、その実態を教えていただきたいというふうに思うんです。
田中参考人 僕の家はもうどうしようもないので、先ほどから言っているように、何も変わらない状態が続いています。でも、牛舎がもういっぱいになってきて、更新牛を入れざるを得ないので、割り当てなんですけれども、ホクレンからの廃用牛の割り当てという枠がありまして、処分する頭数が決まっていますので、農協の方にその連絡を入れておいて、枠に入ったときに、自分のものは要するに普通の屠場に流しています。だから、出てしまったらそれでアウト。だから、もう腹をくくってやっています、うちの場合は。
菅野委員 わかりました。出てしまったらアウトという腹をくくっているというのは、家畜伝染病予防法に従っていく。政府は今それへの対応措置も講じたと言っていますけれども、その政府の講じた中身、御存じですよね。それに対する意見なり、今、田中さんみたいに割り切って対応している人もいると思うのですが、BSE問題を考える会の中で、そのことが割り切れている人と割り切れないでいるという人がいると思うのですけれども、猿払村の実態はどうなっているのかなということをお聞かせ願いたいというふうに思っています。
田中参考人 廃用牛の出し方については全くばらばらです。牛舎に余裕のある人たちは、やはり怖くて、いまだもって全部、あの十一月の下旬から抱えています。それで、しまいには、もう廃用にしたいんだけれども、置いておいてもしようがないから、また、長期空胎になっていると、長期空胎というのは、おなかに入っていない状態だと乾乳になって乳も出なくなっちゃいますから、もう時期が外れているのに授精をして妊娠させて、またもう一回置こうという無理なことをやったりする人も出てきています。だから、本当にこれは千差万別です。
 あと、この廃用の問題は、千葉とか群馬の方ともお話ししていると、僕たち猿払の場合は、先ほど言ったように、一応牛を持っていっていただけるものですからいいんですが、もう屠場の方でシャットアウトして、頼むから廃用を持ってこないでくれといって、もうどうにもならない状態がこっちの内地の方では起きていますので、やはりどうも視点が全然違うなと思いますので、だから問題を多角化してとらえていただきたいと思っています。
菅野委員 私どもも、この廃用牛の問題、精いっぱいこれから取り組ませていただきたいというふうに思っています。
 堀参考人にお聞きしたいのですが、先ほど高橋委員の質問に対して私は非常にびっくりしたのですが、三十三工場でもって配合飼料をつくっている、全農の配合飼料には肉骨粉は一切これまで使ったことはございませんということなんですが、そのとおりでよろしいんですか。
堀参考人 乳牛用、肉牛用の牛用の配合飼料には使っていないということでございます。豚用なり鶏用は使ってございます。
菅野委員 それでは、もう一回田中参考人にお聞きしたいのですが、飼料の中に肉骨粉と書かれているというふうに言いましたよね。それで肉骨粉の存在は知っていたということを先ほどの質問に答えられているのですが、ホクレンの飼料も肉骨粉とは書かれていないんですか、飼料の材料の中に。
田中参考人 配合飼料の種類はすごい数出ているんです。ホクレンだけでもすごい数出ていまして、その他の商系も合わせたら、すごい数の、もう膨大な配合飼料が出ているものですから、本当に自分の使っている配合飼料ぐらいしかわからないんですね。だから、僕の使っている配合には表示はありません。肉骨粉という文字はありませんでした。ただ、ほかのにあったかどうかは、ちょっと僕も膨大な量なのでわかりませんので、申しわけございません。
菅野委員 最後になりますが、先ほども高橋委員が質問したというふうに思うのですが、調査検討委員会をずっとやって、四月二日に検討結果を報告した、答申したという状況になって、その中の目玉は、目玉というか、重大な農政の失政があったということと、これからこういう方向に持っていくという、この六カ月かけて一つの大きな提言をなさったというふうに思っています。
 この「重大な失政」という部分に対して、私は現場でも常に聞かれているんですが、農水省の責任を明確にすべきだというのがもう生産現場も含めて大きな声として上がっているんですね。いまだ農林水産省あるいは厚生省としての、政府としての責任を明確にしていないというふうに私は思えてならないんです。
 それで、四人の参考人の方々にお聞きしたいと思うんですが、今、現時点で政府が責任を明確に出しているというふうに思っているんでしょうか。そして、今後の責任のあり方について、立場を超えて個人的な感想でもよろしいですから、意見陳述していただきたいというふうに思うんです。
高橋参考人 私は、この報告書を出したのが終わりではない、これが事の始めであるということをいろいろな機会で申し述べております。
 この提案で、例えば、リスク評価委員会をつくればそれでいいんだ、あるいは新しい基本法みたいなものをつくればそれで解決だということではなくて、いろいろな形での改革をこれを機会にやらざるを得ない。農林水産省自体の体質も変えなきゃいけない。それを実際に実行して初めて責任をとったということになるというふうに確信しております。
岩渕参考人 農水省としての責任のとり方というのは、きちんと考えて不十分であるというふうには思っております。
 ただ、政治の方でお願いしておきたいのは、どういう形であれ改革を推進していくという前提で、そういう人を中心に今後の改革を進めていっていただきたいというふうに思います。間違っても後退の懸念を国民に抱かせるようなことがあってはならない、かように思いますので、よろしくお願いします。
堀参考人 高橋先生が言われましたように、これからそういう今までの失敗をきちっと改善をしてやることが責任だろう、私はこういうふうに感じます。
田中参考人 責任をとったと僕も全然思っておりません。一度も謝罪された姿をテレビで見せていただいておりませんので、思っておりません。
 それで、これは資料につけたんですけれども、三月の十三日に要請書を出したんです、もう一度。これは原因究明の件だったんですけれども、反省しているならもっともっと早く出していただけるはずなのに、放置されていまして、これの文章に書いてあるとおり、BSE発生の原因究明こそが最大の農水省の課題だと大臣はおっしゃって帰られたにもかかわらず、やはり放置されているということは、責任を感じていらっしゃらないのかなと思っております。
菅野委員 ありがとうございました。終わります。
鉢呂委員長 これにて菅野哲雄君の質疑は終了いたしました。
 次に、金田英行君。
金田(英)委員 どうも四先生、参考人、御苦労さまでございます。自民党の金田英行でございますが、しんがりの質問をさせていただきたいというふうに思っております。
 本当に長い間、膨大な資料を委員会の中で読みこなし、そしてすばらしい報告書をまとめていただきました。本当にこの御労苦には感謝したいと思います。
 そこで、委員長が、報告書にもあるんですが、この委員会は、従来の審議会等々と違って委員主導で進めてきたんだというふうに自負されております。隠れみののような役人の審議会とはわけが違うんだということを冒頭言っておられるので、本当にそういった意味ですばらしい報告書になっているなというふうに思っております。
 そこで、若干高橋委員長にお尋ねしたいのですが、重大な失政があったということが幾つかあるのでございますが、この報告をもとにして、昨日、厚生省でもあるいは農林水産省でも処分が行われております。また、処分ができない大臣等々については、給料の返還というようなことが行われて、処分そのものは十四人で農林水産省の場合済んでいるんですが、この報告がもとになって、この報告に対応するための農林水産省なり厚生労働省での処分だったろうと思うわけでありますが、そのことについてどういうふうに思われますか。
高橋参考人 先ほど申し上げましたように、国民あるいは酪農家や業界の方々は、やはり信頼が回復するまでは厳しく見詰めているというふうに思っております。したがいまして、私どもが提案する幾つかの点を解決するのに役立てば、それはそれなりに意味があると思いますが、とにかく、我々の提案を実現するためのステップをいろいろな形で踏んでいただきたいというふうに期待します。
金田(英)委員 改革に我々今一生懸命取り組んでいるわけであります。イギリス、ドイツ、フランスにも行って、ああ、行政改革がやられているなと。このBSEを契機にヨーロッパ諸国ではいろいろな組織改正が行われております。日本でも何らかの形をしなければならない。農林水産省がいかに牛肉は安全だ安全だとPRしても、オオカミ少年みたいなもので、国民が、ああ、そうですかという形になかなかなっていない。だから、やはり消費者の信頼を回復するためには行政機構の改革も含めて取り組まなきゃならない。そして、御報告に指摘されておりますように、消費者保護を基本に、みんな国民は消費者でありますから、消費者を基本に今までの食の安全に対する政策を大転換しようということで取り組んでいるわけであります。
 そういった方向について委員会で示されていたことについては、本当に我々が今ねらっていること、そして組織改革はこうしなきゃならない、表示の問題にはこうしなきゃならないという改革をいろいろ討議しておるわけでありますが、そういった考え方と方向を一にしていって、ああ、すばらしい報告書を出してくれたな、この報告書がまた土台になって、我々の近々出すべき党としての検討あるいは政府部内としての検討の重要な提言になっていくんだろうなというふうに思っているわけです。そういった意味では、本当に御苦労さんでしたと言わせていただきます。本当にこの報告書が契機になってこれからの農林水産行政の大きな転換が図られていくんだろうなというふうに考えております。
 ただ、私、読ませていただいて感じたのは、各役所には膨大な資料あるいは情報が舞い込んでまいります。土曜、日曜をかけて月曜日になりますと、在外公館からのテレックス等々は、百通を超えるような膨大な情報が寄せられております。そして、我々はそういった情報に囲まれながら仕事をしているわけでありますが、そのはんらんする情報の中の何が大切な情報なのかという検索というんですか、それは一にかかって、その情報を取り扱う者の能力、資質に完全にかかわっているわけであります。
 例えば、新聞に毎朝載っているんですが、首相官邸の一日と書いておりまして、Aさんが官邸に行って三十分ぐらい総理と会っている、その情報を得ただけで、今何が行われていて、どういう変化が起きるなということを、情報を持っている者にとってはいろいろな判断ができるわけです。ですから、情報の中で何が重要な情報で、これを大臣に上げなきゃならない、あるいは局長に上げなきゃならないという、その情報の価値を判断することが極めて重要だ。危機管理と一言で言えばそうなんですけれども、そういったことについて、行政機構をしっかりとそんな方向で改革していくというのは、相当の、並大抵な作業でないな、そして簡単な改革ではないなというふうにつくづく感じて、我々がこれから取り向かうべき課題の重さ、大きさ、困難さということをしみじみと、読ませていただいて感じた次第でございます。
 そういったことについて簡単に、あのときが悪かった、過去からいってあのときにああすればよかったということは、過去を振り返ってみて言えるわけでありますが、その当時、その任にあった者として、通常の状況の中で、あれがそんなに重要なことだったのと、情報の価値を判断するということは相当の専門的な知識が要るわけで、そんなことについて、岩渕先生、何かありましたら。本当にその難しさというのをすごく今感じているんです。
岩渕参考人 九六年、私、当時厚生省を担当しておりまして、薬害エイズ事件、まさにはじけている、我々の言葉で言いますとブレークしていました。そのような時期でございます。
 そのことが行政の不作為という形で裁判で問われまして、そういった意味でいいますと、厚生省というのは非常に身を切る思いをして危機管理の大切さを学んだ。それはきれいごとだけではありません。あすは我が身ということがございます。その他、昨年指摘されましたそれこそハンセン病それからクロイツフェルト・ヤコブ病も含めまして、さまざまな苦い体験の中から、予防原則、危機管理の体制を整えてはいます。
 それでもなお大変に心もとない状況であるということは申し上げざるを得ないということでございまして、そういう意味でいいますと、国民の健康、生命を守るということの難しさという点でいきますと、やり過ぎてそれによって引き起こされるロスあるいはマイナスにどの程度我々がそれをきちんと受けとめる覚悟とシステムと、はっきり言えば予算を持ち得るかという、そこにかかってくるのではないかなと思います。
 そういう意味でいいますと、やはり国会議員の先生方に申し上げておきたい、あるいは我々マスコミが拳々服膺しなくちゃいけないことは、大震災の警戒警報発令と全く同じような形での、予防原則を発動した場合でのロスに対する、俗な言葉で言えば太っ腹で受けとめる、そういう覚悟とシステムをつくっておいていただきたいというふうに思う次第でございます。
金田(英)委員 また岩渕参考人にお尋ねしたいんですけれども、報告書の中で岩渕先生が担当された第二部でございますか、そういった中で、農林関係議員という記述がございます。失政と指摘されている部分について言えば、九六年の肉骨粉の使用禁止を行政指導にとどめたことが大きな問題だと指摘されているわけでございますけれども、そのくだりのすぐ下に農林関係議員が出てくるものですから、あれっと思って、何か基本的に族議員というのは悪なる存在だというふうにもし仮に思っているとしたら、そこいら辺は改めてもらいたいなと私思っておるものですから。
 当時の事情をちょっといろいろ調べてみましても、例えば肉骨粉の使用を法律で定めた方がいいんじゃないかとか、行政指導にとどめていいんだろうかというような党に対する相談はなかったというふうに記憶しておりますし、また、ステータス評価の問題でも、カテゴリー3とかリスク3とかいろいろあって、それについていろいろな議論が当時行われていたことについても、政府の方からは報告がなかったということがあると思います。
 そういったことについて、何であそこに、農林関係議員と意思決定の不透明さという不思議な表現になっているんですが、そこいら辺についてどういう感覚であるのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
岩渕参考人 最初の報告といいますか御説明でも申し上げておりますけれども、例えば、そこの「重大な失政」の後になぜ出てくるのかということでございます。それだけ位置が近いという認識を持っているからでございます。それは、癒着とかそういったようなことではないということは先ほどから申し上げているとおりでございます。
 族議員という言葉にも抵抗を感じていらっしゃるというふうに今おっしゃいましたけれども、広辞苑によりますと、族とは、同じ先祖から分かれた血統の者、一門、一家、家柄、一定の範囲を形づくる同種類の仲間、群がること、集まること、こういうふうな説明がなされています。
 何もここで日本語のことをどうこう言うつもりはございませんけれども、族という言葉にはさまざまな意味合いがありまして、斜陽族から太陽族からみゆき族から竹の子族、暴走族までいろいろございます。ですから、そういったようなことも含めて、先ほどから申し上げておりますけれども、私、マスコミの人間でございますので、マスコミにとってみると、例えば農林水産族と言わずに農林関係議員というふうに言うことは、やや欺瞞性を感ずるようなところがございまして、その様相を比較的正確に表現しようとすると、決して悪い意味でとらえているというふうにお考えになっていただかなくても私はいいというふうに思います。
 ちょっとくどくなりますけれども、現代用語の基礎知識によりますと、族議員とは、「特定の政策課題に強い関心をもつ議員の総称。」その他、以下省略いたしますけれども、決して悪い意味ではなくて、非常に力のある立派な集団であるというふうな認識は持っております。
金田(英)委員 農林族と言われることに抵抗があるわけではありませんので。
 我々、やはり酪農家の意見を携えて国政に参画しているつもりであります。ですから、いろいろな農政展開をやっていくときに、現場の実態はこうなんだから、こういった今の現状の制度はこう改めなきゃならないよと、いろいろな提言を部会等々でさせていただきます。私も、族と言われるのかどうかわかりませんけれども、農林水産部会長を務めておりまして、そういった中では族なのかもしれませんけれども、そのことについて何か悪なる存在というような気持ちがあるとすれば、それは私は断固として、やはり政治と実際の酪農家とをしっかりと結びつけているのが我々なんだという自負を我々も持っておりますので、御理解を賜りたいと思います。――では、岩渕先生。
岩渕参考人 今若干違和感を感じたんですが、やはりそこで、酪農家との間というふうなところで、そういう意味でいいますと、やはりどうしても生産者中心というふうな印象が国民の間に出過ぎるのは、これから先は少し変えた方がいいのではないかなというふうに思います。
金田(英)委員 我々、生産者に軸足が置かれているのは確かでありますが、生産者とて消費者から見捨てられたときにその生産現場は成り立たないわけでありますから、消費者のこともしっかりと踏まえて、大臣以下、これから大きく政策転換をして、消費者に軸足を置いた形での政策に転回していくと言っておりますので、そのことはそのことでいいんですが、ちょっと二十三ページ、報告書の中で、いわゆる族議員のことを中段で述べたすぐ後に、「農林水産省は」とかとぐうっとありまして、そこの二行目から「大臣をはじめ農林水産省内、そして一部の国会議員に改革を目指す動きが出てきたことは評価に値する。」というふうにお褒めの言葉をいただいているわけでありますが、「大臣をはじめ」ということで、大臣は、改革を一生懸命やろうと思って頑張っておられる大臣でございます。そういったことと、この報告書が出て、そのことはどう理解したらいいのか。族には二つあって、改革派の族と守旧派の族とがおられるというふうに、ここのくだりではどう理解したらいいのかなと。
岩渕参考人 委員会の論議の中では、やはり批判するだけではなくて、前向きの改革に向けた動きはきちんと評価しようということになりまして、こういう記述に相なりました。ですから、そういう意味でいいますと、人間あるいは人間の集団を一色でこういう色合いだというふうに決めつけるというのはいかがなものかというふうに思います。
 以上です。
金田(英)委員 田中さん、本当に御苦労さんでした。猿払村芦野からいらっしゃって、私はあそこいら辺の酪農家は全戸訪問しておりますので、田中さんには何度かお目にかかっているかと思います。
 田中先生が言われました、伝染性という訳語は間違いで、あれは伝達性だ、そして家畜伝染病予防法の範疇外で法体系を整備すべきだ、そういう御意見を賜りました。確かに感染はしないのでありまして、経口感染ということであります。
 そしてまた、全屠殺するのはおかしいじゃないか、同居牛等々を処分するのはおかしいんじゃないかということの御意見がありましたけれども、我々大変な議論をしております。今でもまだこの議論は続いているわけでありますが、ドイツでもフランスでも、同居牛、同期の牛というんですか、飼料同期と年齢同期というのは、フランスでもドイツでもみんな殺処分をしております。
 そういったことで、やはり一日も早い正常化を目指して我々頑張るという中で、何としてでもこの殺処分というのは避けて通れない。とにかく、殺処分しなくても、一番怖いのは全頭検査でひっかかるんでないかという不安で廃用牛を出さないという問題もあるんでしょうけれども、やはり全頭検査する以上は、やみからやみに、検査しないで牛を殺処分しているというような状態は、消費者の目から見て極めて疑念が生ずるから、やはり全頭検査の体制は守りたい、そして感染牛が出ても農家の人がしっかりと経営再建ができるような補償措置もしっかりととらまえていこうというふうに考えているのであります。
 そこいら辺また、地元でありますので、私がまた猿払に行ったとき、BSEを考える会に呼んでいただいて、そこいら辺の疑問等々、我々も一生懸命悩みながら今対策を検討しているところであります。
 それで、非加熱製剤が血友病患者に打たれてエイズ患者になった場合、全く我々はそういう状態に置かれているんだというお話が田中さんからあったんですが、まさに実感としてそのとおりであります。しかし、田中さんが、我々は何にもしてもらっていないし、我々の現状は全然変わっていないということをお触れになりましたけれども、そのことについては、我々は一生懸命に、ありとあらゆる考えつく対策はやっているつもりであります。
 例えば、酪農家の経済がどんどん落ちてきたので、廃用牛を五万、四万の価格は補償しようとか、あるいは狂牛病で経営が大変だからといって乳価を七十銭引き上げたり、あるいはまた、ホル雌が生まれた場合には後継牛対策として一頭につき三万で経営支援していこうというようなことは確かにやっているわけでありまして、そういった政策の努力、そういったものについては御理解を賜りたいものだなと。私もいろいろと御説明に上がりますが、そこいら辺はよろしくお願いしたいというふうに思っております。
 そんなことで、田中さん、これからもBSEを考える会でいろいろな活動を続けていくんでしょうけれども、最後に、私が今言ったことを踏まえて、何か感想があればお尋ねしたいと思います。
田中参考人 今おっしゃられたとおり、確かにお金が少しずつ動いてきていることは事実です。でも、何度も言うようですけれども、先ほど意見陳述してわかっていただいているとも思いますので、酪農経営の根本なんです、これは。牛をちゃんとした理由で殺処分されているなら、僕たちは何も言わずに、だから構わないんですけれども、何で殺処分されるのかわからないんです。そして、殺処分されて――だって、どちらかの議員さんが農相さんに、全部陰性だからもう科学的な根拠がないんじゃないかと言ったら、武部さんが、逆に科学的な根拠がないから殺処分せざるを得ないんだみたいにおっしゃっているんですけれども、だから、そういう矛盾が農家の中でずっとたまっちゃっていますから、経済的にお金を下さったからオーケーという話じゃないということだけはどうしてもわかっていただきたいので、よろしくお願いいたします。
金田(英)委員 時間が来ましたので、終わります。
鉢呂委員長 これにて金田英行君の質疑は終了いたしました。
 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の皆さんに一言御礼のごあいさつを申し上げます。
 本日は、長時間、しかも貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。当農林水産委員会も、皆さんの貴重な意見を反映して、また、責任を持って重要課題に対処してまいりたい、このように考えております。
 今後ともBSE問題を中心にさまざまな御指導をいただくことをお願い申し上げまして、委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 引き続き、農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房長田原文夫君、農林水産省総合食料局長西藤久三君、農林水産省生産局長須賀田菊仁君及び水産庁長官木下寛之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
鉢呂委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
鉢呂委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小西理君。
小西委員 自由民主党の小西理でございます。
 本日は、大臣初め関係の農林水産省の方々に、BSEについて御質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど、田中参考人の方からもありましたように、この問題はまだ緒についたばかりでございまして、ほとんどの問題がまだこれから解決していかなければならない、そういう重大な局面に今あるというように理解をしております。
 いろいろな問題がございますけれども、きょう、二十分という時間でございますので、消費者の信頼回復、またそれによってもたらされる消費の回復及び畜産経営維持、これについての方針について御質問をさせていただきたいというように思います。ほかにも、先ほどから出ておりますように、原因の解明、それから老廃牛の対策、またへい死、病死牛の対策などお聞きしたいこともありますけれども、これは別の機会、またほかの議員の方で質問いただければというように思います。
 まず一番に、消費者の信頼の回復と消費の回復でございますけれども、この問題が根本的に解決しないと、今のこの畜産の経営というものは先行き成り立たない、このように考えております。いろいろ対策を打っていただいていることは承知しておりますけれども、本当の意味で消費者の不信感というものは大変根強いものがあるというように思っております。ちょっと微に入るかもしれませんけれども、幾つかの現状について御質問させていただきたいと思います。
 まず一点目に、BSE発生以前の焼却対象の牛肉、全頭検査前の肉になるのですけれども、これの今現状と処分の状況についてお伺いしたいと思います。
須賀田政府参考人 BSE全頭検査前の隔離牛肉でございます。全国四十都道府県の二百五十九の倉庫におきまして、一万二千六百二十六トンが保管されたところでございます。
 この隔離牛肉につきましては、適正な事業の執行の確保と国民の信頼回復という観点から、検品によりまして補助事業の適格性を判定し、不適格なものは補助事業の対象から除外することとしております。三月二十四日現在、補助対象として適格と判定された牛肉は四千三百五トンでございます。補助対象から除外した牛肉は五トンでございます。
 他方、検品の結果適格とされた隔離牛肉は順次焼却をするということにしておりまして、三月二十二日現在で二千六百トンについて焼却を実施したところでございます。
 今後、可能な限り速やかに焼却を実施して、不安の払拭に努めていきたいというふうに考えているところでございます。
    〔委員長退席、佐藤(謙)委員長代理着席〕
小西委員 引き続き、同じ件についてちょっと質問していきたいと思うのですけれども、今、雪印の問題もございまして、こういう肉が残っておると消費者の不安というのは完全に払拭することはできないではないか、こういう意見も私も地元の方で聞いております。
 今、適格性ということでおっしゃっていますけれども、これもやはり行政的な視点であって、消費者の視点ではないかなと思うのですけれども、この部分をどれくらいのめどで最終的に処分できるのか。また、二百五十九の倉庫というふうにおっしゃいましたけれども、これは一体、私もちょっと不勉強かもしれませんけれども、どこにあるのか、何トンあるのか。
 こういうものを公表される、またオープンに消費者の前に示される、もう示されているのかもしれませんけれども、そういう点についてどうお考えか、お願いしたいと思います。
須賀田政府参考人 私ども、先ほど、保管されている牛肉を検品する、それに合格したものから焼却するというふうに申し上げました。いろいろな事件等がございました。事業のより適正な執行の確保ということから、大臣の強い指示によりまして、全箱、これは九十二万箱ございます、全箱検査を実施せよということでございました。この全箱検査をどのようにしてやったらいいかということについて現在検討をしているところでございます。
 これまで実施してきた検品のやり方では、全箱やりますと二年近くを要するというようなことがございますので、これまで我々が全国二百五十九の倉庫に出向いて検品するという方法から、検査の拠点というものを設けまして、全国に保管中の牛肉を順次検査拠点に搬入をいたしまして、集中的、効率的な全箱開封による検品を実施する方向で検討をしているところでございます。こういう方法を用いますと、我々の考え方によりますれば、二年近くを要する検査期間が短縮されまして、一年以内にできるのではないかというふうに思っているところでございます。
 それで、どこの倉庫にあるかということを公表するのかという話でございます。
 現在、営業倉庫というところに保管をされておりまして、倉庫業の方の同意が得次第、これを公表する方向で検討しているところでございます。
武部国務大臣 大体役人の答弁というのはまどろっこしいんですね。
 全箱検品します。一カ所に集めて、一年以内にさせます。何年もかけてやれるものじゃありません。これは私の厳命であります。今のような、検討だとかなんとかというようなことではだめでありまして、全箱検品、一年以内にやる、そのためにはいろいろな方法がある、不可能を可能にせよということを、改めてこの場で局長に厳命したいと思います。
小西委員 大臣の非常に心強いお言葉、ありがとうございます。
 次の質問に移らせていただきます。
 同じように、肉骨粉、これも今同じような状況で保管されているかと思いますけれども、それぞれ、BSE発生以前に海外から輸入された肉骨粉、また、それ以後、日本でつくられ、保管されている肉骨粉、これらの現状、保管その他、これと処分の見通し、これについてお伺いできればと思います。
須賀田政府参考人 ただいまの御質問は、昨年の十月四日の肉骨粉の全面使用停止以前に輸入された肉骨粉のお話でございます。
 昨年一月一日より、欧州におけるBSE発生の拡大を受けまして、EU諸国からの肉骨粉の輸入を停止したところでございます。また、十月四日以降、すべての国からの肉骨粉等の輸入を緊急的に一時停止し、あわせて国内における製造、出荷についても一時停止したところでございます。
 これにより、国内での流通が不可能となった輸入肉骨粉等が約七千三百トン発生をいたしましたけれども、これにつきましては、まず、未通関のものについては、相手国の政府機関が受け入れを認めるものについては返送、転送を認めたところでございます。また、通関済みのものにつきましても、輸入検査時の衛生状態が保持されていることが明確であること、相手国の政府機関が受け入れを認めていることが満たされれば、輸出検疫証明書を発行して輸出を認めたところでございます。
 この結果、返送等が図られましたけれども、再輸出先の見つからなかった約五千五百トンにつきましては、飼料用に使用されることのないよう、助成措置を講じて焼却処分を推進しているところでございます。これまでに焼却処分を終えた数量は約一千二百トン、約二割でございます。
小西委員 国内の方の御回答をあわせていただきたいというのと、あと、製品として、飼料として市場に流れないためのいわゆる担保措置といいますか、こういう方策だから流れない、今、保管されているから焼却されるんだという話ですけれども、それだけだとどうなるかわからないという話で、そこのところをどういうふうに担保されるのか、あわせてお願いします。
須賀田政府参考人 国内の肉骨粉の処理の現状でございます。
 現在、肉骨粉、十一万四千七百トンの在庫がございます。一日当たり焼却が必要な肉骨粉の生産量が約九百トンでございます。これに対して、現在、一般焼却施設とセメント工場合わせまして一日の焼却量が七百十三トンということで、まだ一日当たり約百八十七トンの在庫が積み上がっている計算でございます。
 セメント工場に受け入れをお願いしておりまして、これまで、環境省の認定状況でございますけれども、全三十六工場のうち三十三工場から申請がございまして、二十一工場が認定をされている状況にあるというふうに聞いております。今後も、環境省及び都道府県との連携によりまして、これまで焼却の進んでいない地域の一般焼却施設の確保、あるいはより多くのセメント工場での本格焼却を促進いたしまして、焼却量の積極的な拡大に努めていきたいというふうに考えております。
 梅雨入り前、五月中には一日当たりの焼却量と生産量が均衡をし、その後、順次現在保管されている肉骨粉の在庫が減少をいたしまして、来年の夏までには在庫が解消するという見通しを持っているところでございます。
 これがよそに流れないようにするのを担保ということでございます。
 まず、法令によりまして、昨年の十月十五日から、肉骨粉を含むすべての家畜飼料の製造、販売、家畜への給与を法的に禁止したところでございます。また、肉骨粉の利用ができなくなったということを踏まえまして、その製造と焼却に要する経費を助成しているところでございます。個々のレンダリング業者ごとの保管及び焼却の実施状況について都道府県から毎週報告を求めまして、円滑かつ確実な肉骨粉の処理を推進しているところでございます。
小西委員 今、法的措置と、いろいろな措置と言われましたけれども、実際に行って見るなり、いろいろなものは決めても実際に守られていなかった今までの現状がありましたから、現場に行ってしっかりとしたチェックをするような体制をつくっていただければというように思います。
 次の質問に移らせていただきたいと思います。
 この委員会の報告でもございましたように、これからトレーサビリティーというのが非常に重要なキーワードになってくると思うのですけれども、実際、耳標がほぼ牛の方には行き渡ったのではないかなというように思います。実際に、国内でいろいろな技術的に難しい点もあるやに聞いておりますけれども、どのようにこれが消費者の目の前に肉の形であらわれるのか。その辺を、どういう仕組みを考えておられるのか、いつごろそれを実施されるのか、そういうところをお伺いしたいと思います。
武部国務大臣 ヨーロッパにおきましてもトレーサビリティーの導入が消費の回復の決め手になっているという経験も私ども承知しているわけでございまして、トレーサビリティーシステムは、消費者がみずから食品の生産方法等に関する情報を引き出すことによりまして安心して食品を購入していただくという意味で、私は非常に重要だ、こう思います。
 また、万一、食品事故が発生した場合にも、その原因の究明を容易にする手だてにもなります。したがいまして、農場から食卓までの過程を明らかにするということが重要でありまして、消費者の食品への信頼を回復する観点からもその導入に全力を挙げたい、このように思っております。
 また、牛肉については二月二十一日に実証試験を開始したところでございますが、米、野菜や茶飲料等の加工食品についても、現在、同様のシステムの開発と実証試験に取り組んでいるところでございまして、私は、十四年度はさまざまな実証試験をして、十五年度実施、導入を目途に努力するようにということを指示しているわけでございまして、早ければ早いほどいいということでございますので、食品の生産履歴等の情報を消費者に正確に伝える仕組みについて、食品表示制度の改善強化とともに、トレーサビリティーの導入というのが極めて重要でありますので、その制度化を検討してまいりたい。十五年度実施、導入を目途に進めてまいります。
小西委員 一刻も早い導入をお願いしたいと思います。また、消費者に安全であることが実際に担保されることに加えて、目に見えるような形でわかるような、こういう対策もあわせて強く希望をさせていただきます。
 次に、今後の畜産経営についてお伺いをしたいと思います。
 実際、我々が畜産農家を回りますと、新たに素牛を入れるべきなのか、それとも廃業した方がいいのか、このような状況が一体いつまで続くんだ、こういうような状況で、もう右向こうか左向こうか、こんな迷ってしまうような、そんな状況におるのが非常に多くあります。
 BSEマル緊、これは今非常に重要な、動いているわけですけれども、これは一体いつまで続けられるか、どのような状況になるまでこれが続けられるのか、この辺がはっきりしないと彼らも非常に迷っている。この辺、伺いたいと思います。
    〔佐藤(謙)委員長代理退席、委員長着席〕
須賀田政府参考人 いわゆるBSEマル緊でございます。肥育牛経営農家の大幅な収益の悪化ということに対処するために、一頭当たりの粗収益が物財費を下回った場合に、その差額を一カ月ごとに補てんする仕組みでございます。
 先般の畜産物価格決定に当たりまして、この対策を今年度も引き続き実施するということを決めたところでございまして、最近の牛肉の消費動向でございますとか、畜産経営の状況でございますとか、その状況を見ながら、今後とも適切に実施を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
小西委員 質問の趣旨とお答えがちょっとずれていますね。
 それはよくわかるんですけれども、そういった段階で、農家が不安に思っておるわけです。こういう状況、だから、例えば確実にもとの価格に戻るまでとか、一定の利益がこれだけの幅に戻るまでとか、今この時点で言うのは非常に難しいかもしれませんけれども、それが出ないとなかなか納得というものは現場でできないんだと思うのですね。その辺、大臣、ちょっと一言。
武部国務大臣 私は、消費の回復がもう喫緊の課題だ、こう思っておりますが、最近、例えば酪農でいえば、ぬれ子も少し値段が戻ってまいりました。ごく最近の卸売価格も上がってまいりました。それから、焼き肉協会の最近のデータは九五・七%、そういう対前年比の数字も出てきてまいりました。遠藤副大臣の地元の米沢牛は、キロ四千円を超えているそうです。
 私は、ようやく、そういう一つの分水嶺といいますか、諸般の対策や生産者の方々の努力、あるいは消費者の皆さん方に、私ども食品の安全問題について真剣に取り組んでいるということなどの理解も少しずつ出てきたのじゃないか、こう思っておりまして、しかし、実際には、やはり生産者の方々、先生御指摘のとおり、これからどうしたらいいのか、素牛を買っていいのかどうかというようなことがやはり悩みだ、迷いであろう、このように思います。
 したがいまして、十四年度も継続実施すると決定したわけでございますが、今後とも、まずは消費の回復、結果的には価格の回復ということに相なろうと思います。そのことに全力を尽くすと同時に、生産者に心配させない、そういうことをメッセージとしてしっかりこの場で申し上げたいということで御理解いただきたいと思います。
小西委員 ぜひしっかりとお願いしたいと思います。
 あわせて、酪農家の、事業経営体でありますので、将来の資金繰りを含めて、利益計画や事業計画、これができないというのも一つの大きな不安の原因ではないかと思いますけれども、このあたりの指導であるとか、そういうものに対してどのようにお考えなのか、お伺いしたいと思います。
須賀田政府参考人 畜産経営は生産期間が長いだけに、将来を見通すということが他の農業に比べて非常に大事なことではないかというふうに考えております。
 ということで、まず情報として提供しなければならないのが、技術改良といった経営管理とか、家畜の飼養管理面での情報の提供、それから市場の状況、畜産物の市場情報がどうなっているかということを迅速かつ的確にお伝えをして、それを前提として営農計画を作成していただくということを基本的考え方にいたしまして、地域の畜産関係の行政と畜産会、それから農協等が一体となりまして、ただいま申し上げましたような経営技術関連情報、補助事業の情報などの経営情報のデータベース化、これを前提とした効率的な指導等に努めまして、経営体のレベル、実態に応じた営農計画の立案というものにつきまして支援をしているところでございます。
小西委員 事業体として畜産農家が将来に向けて不安なくやっていけるように、しっかりとした対策をお願いしたいと思います。
 最後に、まとめとして、ちょっと辛口にはなりますけれども、一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。
 失政という言葉がありましたけれども、私は、もっとこれは重く、欠陥という言葉で受けとめられるようなものだと思っております。大胆な見直し、改革と言うことは簡単ではございますけれども、それが実際できるような仕組みを持たないと農水省もこれからやっていけないというように思うわけでございます。
 僣越ではございますが、二点ばかり言わせていただきたいと思います。
 まず一点に、意思決定ですね。意思決定のプロセスというのがありますけれども、やはり企業経営の中では、科学的な意思決定のプロセスというのは経営学の中でいろいろ言われていますから、ぜひそういうものを考えていただければ。僣越ではございますけれども。
 それで二点目に、やはりいろいろなことが、責任回避型思考といいますか、これをやればおれたちはオーケーだというようなそういう思考から、やはり戦略的な、こういう目的を達成するために何をしていかなきゃいけないのか、そういうような思考に変えていっていただければ。
 独断と偏見で大変僣越なことを申しましたけれども、以上で質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて小西理君の質疑は終了いたしました。
 次に、筒井信隆君。
筒井委員 民主党の筒井信隆でございます。
 きのう出されました調査検討委員会の報告書、それからそれに続いて出されました懲戒処分等について、集中して質問をしたいと思います。
 最初に懲戒処分の方ですが、武部大臣が六カ月、それから副大臣が三カ月、熊澤前次官が二〇%の六カ月というふうなことが出されております。
 そこで、大臣にお聞きしたいのですが、農林水産省から支給される給与月額、これは、議員報酬と農林水産省から支給される全体の公的な報酬のうちの何%を占めるんでしょうか。それと絶対額と。
武部国務大臣 今回の処分にあわせまして、国民に対しまして食品の安全性に対する不安感や農林水産行政に対する不信感をもたらしたことにかんがみまして、農林水産省の最高責任者として、農林水産省から支給される給与月額の六カ月分を国庫に自主返納するということにいたしました。返納額は、六カ月分で二百万円でございます。一カ月約三十三万円でありますが、これは、国務大臣の俸給月額百六十八万二千円の二〇%に相当するものでございます。
 私は、全額返納することも考えていたのでございますが、他に及ぼす影響等があるというようなこともございまして、御示唆をいただいてこのような取り扱いをしたものでございまして、このことによって私は問題が解決した、私のすべてのけじめをつけた、こういうふうには思っておりません。
 農林水産省の最高責任者としてこのような措置をとったということでございまして、やはり、一日も早く農林水産省行政に対する国民の信頼を回復する、そのために懸命に努力を積み上げるということが大事だ、このように思っております。
筒井委員 そうしますと、熊澤前次官に対して二〇%六カ月返上ということと、中身的には一緒の内容でございます。これが、重大な失政と指摘された中身に対して、そして、去年だけで二千億円以上の損害を国民に与えた、食の安全に対する不安を広範な国民に与えた、それに対する責任のとり方として、だれが考えても十分だと思う人はいないだろうと思うんです。
 それに対して、今、他に与える影響ということを言われましたが、他に与える影響というのは何かということと、それから、今言ったような状況の中で、これだけの処分で十分なんだという根拠、積極的な根拠、あるのかないのか。あれば言ってください、なければないと言ってください。
 この二点の答弁をお願いします。
武部国務大臣 今申し上げましたように、私はこのことによって国民が十分な処分をしたというような認識は持っておりません。他に及ぼす影響というのは、これはちょっと私の言葉遣いがまずかったかもしれませんが、これまでの諸般の大臣の自主返納等に照らして措置をしたという次第でございます。簡単に国民の皆さん方の信頼をこのことで得られると思ってやっているわけじゃありません。組織全体の問題に対して、最高責任者としてこのようなけじめをつけた次第でございます。
筒井委員 他に与える影響ということに関しては、結局撤回なんですか。それとも、今言われたのは、何か今までのこととの均衡みたいなことを言われましたが、こんなことがあったのは農林水産省始まって以来でしょう。今までと比べるような対象のものはないんですよ、均衡なんか考える必要ないんですよ。その上で、他に与える影響というのをまだ維持されるのか、それとも撤回されるのか、それをはっきりしてほしいということが一つ。
 それから……(武部国務大臣「委員長」と呼ぶ)いや、時間の関係があるから、大臣、余り質問以外のことを答えるからそういうふうなことを、つい口が滑っちゃうんですよ。
 それに対する答えと、それから、国民がこれで十分だというふうには当然思わないだろうということは、今認められました。大臣自身もこの処分で十分だということを言う積極的な根拠はないということはお認めになるわけですね。その二点。
武部国務大臣 他に与える影響ということは撤回します。
 とにかく、これまでのさまざまな大臣の自主返納、こういったことについては、事務的にも相談いたしましてこのように措置したわけでございまして、先ほど言いましたように、私は一年分でも返納したいということを考えていたわけでありますが、そういう意図でございますので、御理解いただきたいと思います。
 それから、私自身の責任のとり方ということについては、これが一年分であろうと二年分であろうと自主返納で理解していただけるというような、そういう思いはいたしておりません。やはり、しっかりとした今後の対応、それが一番大事だと思います。そう簡単に消費者の皆さん方や国民の皆さん方や生産者の皆さん方が納得してくれることではないんだろう。したがいまして、職務をしっかり全うすることによって、一つ一つ対策の実を上げることによって、少しずつ理解が深まり、評価がいただけるように、私はそのことを心に誓って頑張りたい、こう思っているわけでございます。
筒井委員 今、私は懲戒処分等今度の処分について限定してお聞きをしておりますので、それでお答えいただきたいんですが、今度の処分等に関してはこれで十分だというふうに国民が納得していただけない、このことは先ほどからお認めになっている。大臣自身もこれで十分なんだという根拠は示すことはできませんね。それは何か説明できますか。
武部国務大臣 これは私が自主的にそういう措置をとったということでございます。
筒井委員 十分なる根拠は、先ほどから何回かお聞きしているけれども答えておられないんで、ないというふうに判断をさせていただいて、次の質問に移ります。
 それで、今度の報告書をつくった委員が十名ですが、委員長の高橋さん、この人は、この文書でも、先ほども産業界、農業者、政府関係者を含まない第三者的立場の人間だというふうに主張されておりましたが、御本人もちょっと言っておられましたように、十一年間農水省の研究所に勤めて、農水省の職員であった。その後も、検討委員会だとか審査会だとか、いろいろな委員を農水省から委嘱されてずっと続けてきた。それが約十個ぐらいになるんですよ。この高橋委員長がまさに第三者的な立場の人間だとどうして言えるんですか。
田原政府参考人 お答えいたします。
 高橋委員長は、現在は女子栄養大学の大学院の客員教授ということでございますけれども、その前は日本大学の教授を……(筒井委員「そんなのはわかっている」と呼ぶ)
 確かに、十年間余り農林水産省の試験場の研究者ということでおられたわけでございますが、その後はずっと純然たる学術研究の道を歩まれたということでございまして、いわば農林水産省の足がついたままのことでこの委員会の委員を引き受けておられるのではないという意味におきましては、第三者ということではないかと考えている次第でございます。
筒井委員 その後も、もうずっと、必ずと言っていいぐらいに複数の委員を農林水産省から委嘱されて、その仕事をやってきている。だから、私は、全く、政府関係者とは言えない第三者なんて言えない。しかし、それを本人も言っているし、この報告書の文章でも書いている。このことを問題にしているんです。
 そこでお聞きしたいんですが、ここで、その他二名となっていますね。委員十名のうち獣医学者が三名だとか、ジャーナリストが三名だとかとあるんですが、その他二名というのは具体的にはだれのことを指しているんでしょうか。
遠藤副大臣 調査検討委員会に私はほとんど出席しております関係から、お答えさせていただきます。
 その他二名というのは、恐らく女性委員を、二人いらっしゃいますので、主婦連の会長さん、それから消費者連盟の事務局長さん……(筒井委員「それは消費者団体の代表でしょうが」と呼ぶ)消費者団体ですよ。の、これが女性委員でございます。
筒井委員 副大臣、読んでおられるんでしょう、この文書、もちろん何回も。ここで委員十名の立場を説明しているところがあるでしょう、一ページ目に。今の女性委員は、消費者団体役員二名の中に入っているでしょう。その他二名があるわけですよ。このその他二名というのはだれかと聞いているんですよ。
田原政府参考人 四十二ページ目に委員名簿がついておりますけれども、まず、ジャーナリストというのは、上から一番目の岩渕委員、三番目の加倉井委員、それから四番目の砂田委員でございます。それから、獣医学者というのは、獣医学関係者は、上から二番目の小野寺委員、下から三番目の藤田委員、それから下から二番目の山内委員。それから、消費者団体が、下から四番目の日和佐委員と一番下の和田委員。その他というのは、したがいまして、高橋委員と竹田委員という真ん中のお二人ということでこの文書の記述はなされております。(筒井委員「高橋委員はどこに入っているんですか」と呼ぶ)その他という分類でされております。
筒井委員 だから、農林省も、ここで、役職では大学教授として書いてあるんでしょう。だけれども、学者という分類に入れないんですよ。その他の分類に入れているんですよ。――まあ、いいや。そんな、またいろいろな言いわけを聞いたってしようがない。
 それで、大臣にお聞きしますが、この報告書全体についてですが、この報告書の、もちろん何回も読んでおられると思いますが、事実に反する部分、あるいは賛成できない、反対の部分、あるいは理解できない部分、さらには意味不明の部分、これらが一カ所でもあるのかどうか。今挙げた部分をもう一回言いますが、事実に反する部分、賛成できない、反対の部分、理解できない部分、意味不明の部分、こういうところはありますか。あったら指摘してください。なければないでいいです。
武部国務大臣 イエスかノーかということではなくて、大事なことですから申し上げますが、本調査検討委員会の報告の作成の段階で、これまでの行政対応に関する事実関係については、委員の方々から農林水産省及び厚生労働省への確認が行われ、それを踏まえた上での報告の作成が行われたと承知しております。
 これらの事実関係を踏まえた上での行政対応についての評価及び今後の食品安全行政に関する御提言については、委員会の総意として取りまとめたものでありまして、私としてはこれらの御指摘、御提言をしっかり受けとめ、農林水産政策の抜本的な見直し、改革に取り組んでまいる所存であります。
筒井委員 今、官僚の文書を読み上げましたが、結局、確認しますが、今挙げた四つの部分はないということでよろしいですね。
武部国務大臣 この報告書を厳粛に受けとめて、これを尊重して今後の対応に努めたい、このように思っているわけでございます。
筒井委員 尊重とかなんか、すべて実行するのかどうかをこれから質問するんだけれども、今まず確認しているんですよ、事実に反する部分があったのかないのか。それは、さっき、ないという答えでしたよね。賛成できない、反対の部分があるのかないのか、あるいは、理解できない部分、意味不明の部分があるのかないのか。先ほどの答弁ですと、今挙げた部分は一カ所もないというふうにお聞きしてよろしいわけですね。
武部国務大臣 そのように受けとめて、尊重したいと思っております。
筒井委員 では、先ほどの先走った答えがあった部分に移りますが、ここで出されている提言はすべて実行する予定ですか。
武部国務大臣 私どもは、これまで食の安全と安心の確保に向けた改革に真剣に取り組んできたところでありますし、本報告を受けてその重要性を改めて痛感しているわけでありまして、この報告をしかと受けとめて今後の対応に努力していきたい、このように思います。
筒井委員 先ほど、須賀田さんの官僚答弁に対してあれほど大臣は立腹されて明確に答弁された。今まさに官僚答弁そのものじゃないですか。この中で検討しなきゃならない部分とかなんか、あるのかないのか。それとも、今の時点で、もうこれはずっと議論されているんですから、中身は。当然、もう即決即断でやるのが大臣の先ほどの姿勢でしょう。ここで出された提言はすべて実行に移すのかどうか、これをはっきり答えてください。
武部国務大臣 すべて最大限尊重してまいりたいと思います。
 特に、この調査検討委員会は公開で行われているわけでございます。したがいまして、一回目から私ども、どういう議論が行われてきたかということはつぶさにいろいろその都度承知しているわけでございますので、報告書が出る以前からこれは大事なことだということについては、例えば、いわゆるリスク分析の考え方に基づいて、消費者をパートナーと位置づけて、消費者に正確でわかりやすい情報をタイムリーに提供すること、対等の立場で意見交換や議論を尽くして共通の理解と認識を醸成しながら物事を決めていく、そういう新しいシステム、食品の安全性に係る制度を組織の中につくり上げていく、そういったことなどは、既に私ども取り組みを進めているところでございます。
筒井委員 だから明確に答えてほしいんですが、ここで出された提言、もう既に首相の指示があるのもあるので、それはまた後で確認しますが、ここで出されている提言が幾つかあるわけですよ。それは、時期とかなんかはこれから検討しなきゃいかぬし、中身はまだ抽象的なものもあるし、中身も検討しなきゃいかぬでしょうけれども、ここに出されている提言はすべて実行に移すのかどうか、それとも移せないものがあるのかどうか、あるいは検討しなきゃならない部分があるのかどうか、それを聞いているので、先ほどからの答弁では、すべて実行に移す、こういう方針でよろしいですね。
武部国務大臣 すべて実行に移す、そういう考え方で検討をお願いしてきたわけでございます。しかし、中身については、これからいろいろと議論をしなければならないこともありましょう。しかし、この答申を最大限尊重する、そしてこれに対応するということで御理解をいただけるものと存じます。
筒井委員 食品の安全に関する基本法の制定と新しい行政組織に関しては、首相の指示があって、夏ごろをめどに具体案を作成する、それで平成十五年度予算に反映させる、これはあったようですから一々確認しませんが、「重要な個別の課題」とした提言の中で「食品に関する表示制度の抜本的見直し」、これも先ほど大臣ちょっと答弁されましたね。これも実行しますね。
武部国務大臣 先ほど食品表示の話まで細かく申し上げておりませんが、私ども、食品表示については、JAS法がございます。これについては、食品表示一一〇番等をやりまして、いろいろとこの制度に問題があるということを痛感しております。したがって、罰則の強化など、できればこの部分については今国会でも改正したい、こう考えているわけでございます。
 そのほかに、食品衛生法でありますとか、公取、経済産業省、それぞれの立法趣旨に基づく法体系がございます。今、私ども、表示制度対策本部で三省連絡会議なども設けていろいろ意見交換しているところでございますが、そういったことについてはこれからの課題になろうと思います。
筒井委員 官僚の文書を読んでいるから、私がまだ質問していないことまで先に答えちゃったんですよ。私、これから、今言われた食品衛生法、JAS法等の罰則に関しては、この提言は、軽過ぎる、犯罪を防止する効果はなくて、違反続発の誘因となったとまで言っているんですよ。この罰則の強化、するのかどうか。それから、さっき聞いた食品に関する表示制度の抜本的見直し、これもするんですね。
 それからもう一点、もう時間の関係がありますから同時に聞きますが、飼料安全法等で厚労大臣も、厚労省の大臣も意見を述べることができるという規定になっているけれども、こんな責任のない規定じゃだめなんだと報告書は明確に言っておりまして、意見を述べると明確に位置づけなければ省庁同士の連携なんかできっこないじゃないかと言っている。この飼料安全法等の改正。この三つ、やるんですね。
武部国務大臣 それは積極的に検討してまいります。
 あと、細かい点は事務当局に答弁させます。
筒井委員 細かいところを聞いているんじゃないんですよ。積極的に検討していきますというのは、まさに官僚答弁なんだよね。時期とか中身とかはこれから検討していくんでしょうけれども、今言った趣旨で改正はやるんですね。それとも、やらないんですか。
武部国務大臣 大臣になりますと、これはいろいろな、国会の意見も聞かなきゃなりませんし、私はこう思っているからといってびしっと一言で言えることと、それから答弁の中では多少幅を持った答弁をしなきゃならぬことがございます。例えばこの委員会なんかでも、国会軽視とよくよく言われることもあるわけでありますので、私としては、やる、やりたい、そういう考えでございます。
筒井委員 それからもう一点、この報告書が重要な指摘をしている部分がございます。こういうことを指摘しております。
 畜産の工業化というところでございまして、二十一ページから二十二ページに記載されておりまして、趣旨としては「国際的な市場競争を勝ち抜くために経済効率を最優先する畜産の工業化が進んだ。畜産廃棄物を飼料にリサイクルする肉骨粉は工業化の申し子だった」、しかし「飼料の安全性に対する関係者の認識は甘かった。」、肉骨粉が「自然の食物連鎖を変えたためにBSEを招いたことは経済効率を最優先した近代畜産の陥穽というべき」である。非常に重要な指摘をしている。これは、畜産に限らず農業も工業化しておりますから、それがいかに大きな弊害を起こしているか。だから、今、循環型農業というのが言われているわけでして。
 この報告書の趣旨は、肉骨粉をそもそも牛の飼料として使うことを批判している、この点ははっきりしていますね。そういうふうに理解されていますか。
武部国務大臣 そのように理解しております。
筒井委員 そうすると、これは現在の、現在までの農林水産省の方針とは全然正反対ですね。
須賀田政府参考人 もう既に昨年の十月から、肉骨粉の製造、販売、家畜への給与を全面的に禁止する措置をとっておりまして、肉骨粉をさらに焼却するために必要な経費を助成しております。
 今後の肉骨粉等の取り扱いは、BSE対策検討会の御意見を伺いながら決めていくという基本的考え方にいるわけでございます。
筒井委員 そういう今現在のそれは考え方で……。
 私の方で読み上げますが、農林水産省はこういう文書を出していますね。認められますか。「肉骨粉は本来飼料用原料等として有用なものであるが、BSE発生に伴い、暫定的に停止する」、今須賀田さんは、その暫定的に停止したことを言っているだけなんですよ。それからさらに、別の文書では、「肉骨粉は飼料用原料としてこれまで有効に利用されてきた。BSEフリーの安全な肉骨粉の製造・供給体制を可及的速やかに確立することが重要」である。
 まさに、今現在はこういう問題が起こっているから、一時的に、暫定的に肉骨粉の使用を停止しているけれども、しかしこれを、安全な肉骨粉をえさとして、今後飼料用原料として使いたい、これが有効であり有用なんだ。これ、明確に農林水産省、つい最近まで文書で出しているでしょう。
須賀田政府参考人 従来の考え方からいたしますと、調査検討委員会で御批判もされておりますけれども、畜産廃棄物のリサイクルと有効利用という考え方もございました。しかしながら、今回の一連のBSE発生の反省に立ちまして、肉骨粉の牛への使用というのを改めまして、今後はやはり飼料基盤に立脚をした畜産経営の確立ということを政策の中核に置いて畜産行政を展開していくということです。
武部国務大臣 今回は、私どもも、この報告をいただく以前から、農林水産省の行政を生産者サイドから消費者サイドに軸足を大きく移す、そういうことに踏み切っているわけでございます。これは、今までの反省の上に立っているわけでございます。生産者と消費者の間で顔の見える関係を構築する、食と農の一体化ということが目標であります。したがいまして、今回の報告を受けて、報告をしっかり吟味して、報告に沿って私どもは対応してまいらなければならない。
 肉骨粉の問題についても、これはやはり、一つは科学的な知見ということが大事でありましょうし、もう一つは何よりも消費者保護第一というこのことが大事でありますし、私自身のかねてからの考え方は、やはり人と自然の共生、生物多様性の問題、こういうようなこともしっかり踏まえて、農林水産省の行政というものを、農林水産政策というものを大胆に見直す必要がある、かように考えておりますので、そういう考え方で対応してまいりたいと思います。
筒井委員 草食動物である牛に肉骨粉を給与すること自体が自然の今までの連鎖から離れるわけですよ。そして、共食いになるんですよ。それを本質的に批判しているのが今度の報告書なんだ。それが、農林省の現時点での、先ほど私が読み上げた文書はつい最近の文書ですよ、ことしに入ってからの。現時点においてもまだ、肉骨粉をえさとして給与する体制を、それがいいんだ、有効で有用なんだ、今は暫定的に、一時的に停止しているんだと、全く正反対の考え方に立っているんだ。
 私も、それは肉骨粉をリサイクルしなきゃいかぬから、例えば肥料として使うとか、そういう方向は考えなきゃいかぬと思いますが、牛のえさとして草食動物に渡す、こういうことこそがまさに報告書が言う畜産の工業化であって、食物連鎖に反する。自然の連鎖に反する。
 これは、大臣、この報告書の指摘どおりに、その方向性で根本的に見直していく、今までの農林水産省のその考え方を訂正していく、こういう方向でよろしいですね。
武部国務大臣 ただいま申し上げましたとおりでございます。やはり科学的な知見、それからこの報告で示されておりますように、やはり生物多様性の問題、もろもろそういったことを考えて、この報告に沿って、私どもは軸足を消費者保護第一という考え方でやっていきたい、このように思っております。
筒井委員 須賀田局長、だから確認したいんですが、さっき何かわけのわからないことを言っていたけれども、農林水産省の現在の畜産についての方針とこの報告書の方針とは、まさに全然違う。そちらの方向にこれから軌道修正していく、今大臣の趣旨はそういう趣旨だったと思いますし、報告書はまさにそれを出しているわけですが、そういう方向で、須賀田局長、よろしいですね。
須賀田政府参考人 OIEの基準でも、BSEの清浄国と言われる条件として、最低八年間は牛に肉骨粉を給与してはいけない等の基準がございますし、反すう動物には肉骨粉等を給与しないという方針を打ち立てております。大臣言われたとおりの方針で我々も行政に携わっていきたいというふうに考えております。
筒井委員 それから、この報告書は、感染源は肉骨粉であるというふうに断定していますね。その部分、ちょっと読み上げてみますが、牛に肉骨粉が給与され、感染源を拡大した、感染ルートの肉骨粉は生産段階であり農水省の責任である、これは報告書の二十三ページですが、感染源が肉骨粉である、それがどこから来たとかそういう具体的なことは言っていませんが、肉骨粉が感染源であるという断定はしている、こういうふうに理解されていますか。
遠藤副大臣 異常なプリオンの病原体の運び屋がいわゆる肉骨粉であるということは世界共有の認識というふうに私どもも認識しております。
筒井委員 そうしますと、日本で三頭発生した、BSEが発生した、これはまさに肉骨粉給与を徹底的に禁止しなかった農水省に責任がありますね。これは断定できますね。
武部国務大臣 行政指導でとどめたことがBSEの侵入を許したということに相なろうと思いますし、万が一BSEが侵入したとしても、きちっとした危機対応マニュアルを厚生労働省や都道府県とつくっていれば大きな混乱はなかったのではないかと。私は、いつも申し上げますが、絶対ということは申し上げませんが、この報告は厳粛に受けとめてそのような対応をしていこう、このように思っております。
筒井委員 今までも、かもしれませんとか、可能性が高かっただとか、想定できますとかいうまでは認めていたんだけれども、きょうはもっと一歩突っ込んだ答弁。
 私は別に、一〇〇%云々とかというか、要するに、肉骨粉が感染源であるという断定はできる、断定した、報告書は。そして、この報告書について、先ほど私お聞きしましたが、事実に反する部分はないというふうに答えておられましたから、これが正しいというふうに農林水産省も大臣も考えておられると思うのです。
 感染源が肉骨粉であるとすれば、断定できるとすれば、この肉骨粉の給与を全面的に、徹底して禁止しなかった、この農林省の行政指導に発生責任がある、これもまた断定できますねという、そういう質問なんです。もう一度答えてください。
武部国務大臣 私はたびたび委員会等でも答弁申し上げておりますように、行政指導にとどめたということについては、これはまずかった、何で法規制にしなかったのかと。しかし、法規制にしたからといって、ゼロリスクということは容易に、確保するということは難しいかもしれないけれども、そういった科学的な正確な情報を消費者の皆さん、生産者、いろいろな方々にきちっと開示してリスクコミュニケーションというものをしっかりつくっておく必要があった、こう言っているわけでありまして、農林水産省の責任はそういう意味では非常に大きい、報告書が記しているとおりだろう、かように受けとめております。
筒井委員 ただ、報告書で、結果として推定五千頭以上に肉骨粉が給与され、汚染源を拡大したと書いてあって、この五千頭に肉骨粉が給与されてしまったというのは、農林水産省の発表をそのままうのみにしているんですよね。
 だけれども、農林水産省が五千頭であると言った根拠というのは、要するに聞き取り調査でしょう。あなたは肉骨粉を与えましたかと。与えましたというふうに答えた農家が百六十五農家で、五千百二十頭だったと。だから五千頭以上の牛に肉骨粉が給与された、こういうふうに発表しているだけなんですよ。こんなの根拠がないんですよ。大体、今度三頭のBSEが発生しましたが、三頭のBSEが発生した農家は肉骨粉を与えていませんと答えているのですから。
 だから、一言でいいですから、確認しますが、要するに、あなたは肉骨粉を与えましたかと本人に聞いて、与えたと言う農家だけで算出したら五千頭余りになったにすぎない。まさにこれこそ、五千頭余りにしか肉骨粉を与えていませんというふうに断定できないですね。この二点だけ確認します。
須賀田政府参考人 昨年の九月、全戸調査ということで行いました結果、十道府県、百六十五戸、五千百二十九頭の肉骨粉を給与された牛が確認されたということでございますが、そのやり方でございます。都道府県の家畜防疫員が、個別の農場への立入検査におきまして、農家から聞き取りと飼料関係の書類検査を行ったと。一方で、肉骨粉の販売業者の方からも製品の販売先を調査して、両者を照合して確認をしたわけでございまして、調査自体は適切に行われたというふうに考えているところでございます。
遠藤副大臣 ですから、そのような、委員おっしゃるようなことも当然考えられたので、全頭検査に屠畜段階で踏み切った、厚生省に強く要望して実現したところであります。
筒井委員 わかりました、今の副大臣の答えで。要するに、五千頭以上というのは断定できない、だから全頭検査に踏み切ったという趣旨なので、それはそれで結構です。
 それから、この報告書で、法的規制を行わなかった理由として、先ほども出ておりましたが、附帯決議が全会一致でなされたということもどうも根拠の一つに挙げている。これもちょっと問題だと思うのです。
 これは武部大臣がいつも言っていることですけれども、全会一致決議があったことは確かですが、この当時、農林水産省は、行政指導が完全に徹底されていますというふうに文書でも、この農水委員会でも、明確に保証しておりましたね、答えておりましたね。実際は全然徹底されていないのに、文書ではこういうふうに言っているわけですよ。
 九六年四月以降、行政指導により肉骨粉の牛への給与が効果的に防止されている。九六年四月以降、肥飼料検査所が立入検査を行い、製造記録、製造設備の実地検査を行って、行政指導の遵守状況を確認している。まさに具体的に立入検査までやって、いろいろな検査をやって、行政指導が徹底されていますと文書でも、この公式の答弁でも、答えているわけですよ。
 当時、私は議員ではありませんでしたが、議員はみんなそれを当時は信用するでしょう。行政指導で全面的に徹底されているならば、それは指導をそのまま続けりゃいいじゃないか、人間だれでもそう思いますよ。だから、これを野党の責任とか議員の責任にするんじゃなくて、そのときに農林水産省がうそをついていたことを反省すべきじゃないですか。徹底されてもいないのに、そんな明確なうそを何回も何回も繰り返している、このことを反省すべきでしょう。
武部国務大臣 当時は自社さ政権のときでなかったかなと思うのでありますが、筒井先生の党と私どもは政権与党にあったのではないか、こう思いますけれども。
 私は、全会一致で附帯決議を議決したから、だから行政指導にしたなんて全く思っていません。そもそも、私は、専門家の意見も聞いた、それからそういう附帯決議もあった、もろもろ事務方から説明を受けております。しかし、現に発生したわけですから。ですから、これは行政上、構造的な問題がある、あるいは縦割りの弊害もあるんじゃないか。したがって、これは政治主導で徹底究明しなきゃならない、そういう決意で、客観的に、科学的に検証する機会が必要だということで、この調査検討委員会の設置に私は強い意欲を持って臨んだわけでございまして、うそという言葉は適切かどうかわかりませんけれども、そういうさまざまな問題があった、こう理解しております。
筒井委員 きょう本当に聞きたかったのは、これから政官業の癒着構造の問題についてお聞きしたいのですが、「政と官の関係が政策決定の不透明性を助長し、十分にチェック機能を果たせない原因となった」、これをこの報告書が指摘しております。
 この指摘に対して、大臣は、談話で、厳粛に受けとめて、厳正な措置を講ずる、そして農水省の姿勢を正すということを述べておられますから、この報告書の指摘は正しいというふうにもちろん考えておられるわけですね。
武部国務大臣 そういうところもあったんじゃないかと思いますね。
 ただ、私どもは、国会は国権の最高機関であります。国会議員は主権者によって選ばれて国会で活躍しているわけでありますので、いろいろな方々の意見は謙虚に耳を傾けて、いい意見は拝聴します。しかし、そこのところを、理不尽なことについては毅然として対処するということが一番大事だ、これは小泉政権、また、私どもの基本的な姿勢でございます。
筒井委員 そういうこともあったということを認めただけでいいんです。あとの説明は私は求めていない。
 それで、具体的にお聞きしますが、この原案が表に出た三月二十二日の午後に、農水省の幹部の方が、江藤隆美議員に、江藤・亀井派の会長さんですが、報告書原案の説明に行きましたね。
田原政府参考人 お答えいたします。
 先ほどそういうお話を聞きましたので、問い合わせましたところ、三月二十二日に江藤議員のところにお伺いしましたのは、私どもの事務次官ということでございます。なお、事務次官は、この日、第九回の調査委員会が開かれまして、原案が出ておりますけれども、そのことだけということではなく、当時は、畜産物価格でございますとかいろいろなことがございまして、そういった話の一環でお伺いしたというふうに言っておるようでございます。
筒井委員 その当時は、この原案には農水族議員という表現が、まさにそのままもろに載っていたわけでございまして、この原案に対して、江藤隆美さんは、その次官に対してどう発言されましたか。
田原政府参考人 事務次官の方からは、いろいろな話をしたということで、特に個々具体的な話につきまして江藤議員の方から御指摘があったかということについては記憶がないというふうなことを聞いております。
筒井委員 次官ともあろう優秀な方が、しかも三月二十二日は、つい最近ですよ。記憶はないなんてはずがないでしょう。そんな話で逃げられるはずがないでしょう。こういうふうに言ったんでしょう。無礼者、名誉毀損だ、公の場で対決してやる、この農林族議員の表現に対して、そういうふうに説明したんでしょう。大体、こういう発言を記憶にないとか忘れるはずがないでしょう。もう一回答えてください。
田原政府参考人 事務次官は、先ほど申し上げましたけれども、畜産物価格でございますとか、こういった報告書の関係ですとか、いろいろなことが議題になったということでございますが、具体的に江藤議員の方からこういう話があったということについて、細かく、何といいましょうか、幅広い話を伺ったということでございまして、個々具体的には、それはメモ等が残っていないので再現できないということだと聞いております。
筒井委員 大体、江藤さんはどういう立場で、次官がわざわざ行って説明したんですか。農林水産省関係の何かの役職がついていて、それに対する説明のために行かれたんですか。どういう立場で、次官がわざわざ説明に行ったんですか、どういう理由で。
田原政府参考人 与党の中で一番大きい自民党におきます総合農政調査会の最高顧問ということでお伺いしたというふうに聞いております。(筒井委員「何」と呼ぶ)最高顧問、自民党の総合農政調査会最高顧問ということでお伺いしたということで聞いております。
筒井委員 最高顧問だったらほかにもいるでしょう。ほかのところに説明に行きましたか。はっきり答えて、あなた、そのままこれなんかは終われないですよ。記憶にないからといって逃げられると思わないでくださいね。
 わざわざ次官が行って説明して、それに対して江藤さんがどう発言されたか、答えがないなんてだれも信じるはずがないでしょう。具体的に、御本人もその後直ちに、記者会見というか、記者が周りに押し寄せていたわけだから、すぐ記者と話しているわけですよ。もう一回答えてください。
鉢呂委員長 田原官房長、時間がありませんから、明確に答えてください。
田原政府参考人 記者会見の際の次官の発言のメモというのをちょっと読み上げさせていただきたいと思いますけれども、メモもとっておりませんし、いろんな話のその中で、いろいろ御感想がありましたが、私自身特段、何ていいましょうか、幅広いお話があったというだけの印象で戻ってまいりましたけれども、特段義務を負ったというような感じではないんですが、こういうふうに記者団には答えているようでございます。
筒井委員 今のは次官の記者会見でしょう。
田原政府参考人 はい。
筒井委員 同時に、この直後に江藤さんも記者と、記者会見というか、正式な記者会見ではないけれども、話していますね。ぶら下がりというのか、あれは。その内容は知っていますか。
田原政府参考人 お答えいたします。
 メモ等がございませんので、その部分については私ども承知いたしておりません。
筒井委員 それからもう一点、時間もないので確認しますが、大体、江藤さんのところにこういうふうに、重要な問題が起こるたびに次官が行って説明しているんですか。
田原政府参考人 それは、毎回毎回ということではないのではないかと思います。恐らく、案件ですとか、節目節目ですとか、そういったところで、次官、あるいは担当局長、あるいは担当課長といったような者が行くことはあるのではないか、かように考えている次第でございます。
筒井委員 それで、今回のこの報告書、首相にも報告に行った、厚生労働大臣と武部大臣、二人とも行かれた。これはもう当然の話だと思いますが、そのときに、先ほど申し上げました、夏ごろまでに具体案のめどを出すという指示を受けた。これは厚生労働大臣の談話でも出ておりますし、武部大臣の談話でも出ております。
 しかし、厚生労働大臣の談話では、与党における検討とも十分連携を図ってもらいたいという指示があったというふうには全然記載されていないんですが、武部大臣の方だけ記載されていますが、こういう指示が首相からあったことは間違いないんですか。
武部国務大臣 食品の安全の問題に関する行政組織等のシステムづくりについては、与党の方から一度総理に申し入れをしたといいますか、提案したことがあるようでございます。そのことを総理が承知しておりまして、今後、閣僚会議等で議論をして、今御指摘がありましたように、夏ごろまでにまとめて、十五年度の予算に間に合うように、そういうお話がありました。
 同時に、私、メモを見まして、与党においてもそういうことをやっているので、そういった議論も参考にするようにと、そのように承知しております。
筒井委員 今、参考にすると言われましたが、大臣の談話では、十分な連携をとれ、こういうふうに言ったと書いてあるんですが、では、正確ではないんですか。
武部国務大臣 同じことだと思うんですけれども、与党における検討とも十分に連携を図ってもらいたい、こういう趣旨だったと思います。与党も検討しているので、そういったところの議論も参考にせい、連携せよと。私は、参考にせよということと連携せよということはそんなに大きな違いではない、このように理解しております。
筒井委員 その報告書が、もう一つ、先ほど金田英行さんも質問されましたが、そういう政官の関係によってゆがめられている面があると同時に、それを改革する動きが大臣を初めとして出てきている、そういう新しい動きは評価すべきだ、これを言っているので、私も外から見てそういうこともあるかなという感じをして、そういう動きがあるとすれば、それは確かに評価しなきゃいかぬ。
 そういう新しい動きというのは具体的にはどういうことですか。それから、その一部議員というのはだれですか。さっきの金田英行さんも入るのかな。
鉢呂委員長 時間が来ておりますので、簡便に。
武部国務大臣 与党とというのは自民党でございません。与党三党、公明党、保守党、自民党、三党で、プロジェクトチームでしょうか、そういう検討委員会があるわけでありますので、私は、食と農の問題については、与党の意見も十二分に耳を傾けるべきであろうと思いますし、立法府の意見にも十二分に耳を傾けて、いい意見はしっかり取り入れて、国民の皆さん方のために、よりよい食品の安全問題についての対応に全力を挙げる必要がある、このように考えているわけでございます。
筒井委員 終わります。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて筒井信隆君の質疑は終了いたしました。
 次に、江田康幸君。
江田委員 公明党の江田康幸でございます。本日は、BSE問題に関する調査検討委員会の最終報告書に関して質問をさせていただきます。
 まず、本報告書では、一九九六年のWHOからの肉骨粉禁止勧告を行政指導にとどめた点、また、EUのステータス評価を拒否したことについて、重大な失政、政策判断の間違いと断定がなされております。
 九六年の行政指導にとどめた点につきましては、当時は、アメリカ、オーストラリアが九七年には法的禁止措置をとり始めたんですね。その後もこの問題は取り上げられずに、法的規制について審議会に諮問されたのは二〇〇一年の三月になってからでございます。
 この間何も対応がなされなかったことを、本報告書では、重大な失政である、もしこれが適切な対応がなされていたのであれば、このBSEの発生は避けられたかもしれない、もしくは最小限に食いとめられたかもしれない、そういう意味からして、重大な失政ということをここで指摘しているのであると思われます。
 もう一つ、EUのステータス評価につきましては、二〇〇〇年の十一月、このEUからの報告書が参りました。評価の結果が参って、そしてこれに対して、この結果報告は、輸入肉骨粉によるBSE侵入の可能性が日本は大きいですよ、特に九〇年のイギリスからの輸入肉骨粉については高いその感染の可能性がある、さらに、日本のBSEの防止システムというのについては極めて不安定であることから国産牛がBSEに感染している可能性が高いが、確認されていないという判断で、カテゴリーの3に結論づけられているわけでございます。
 これを不服として追加データを出して、受け入れられずに、評価の中断を要請していったのが二〇〇一年になってからでございますが、これが、もし適切な対応がなされていたのであれば、発生時に起きた大きな混乱は防げた可能性が強いのではないかということも指摘をしております。
 さらに、こうした不適切な対応しかとり得なかったその背景としまして、農林水産省の危機意識の欠如、また消費者保護軽視、生産者優先政策があるとしております。農林水産省と厚生労働省の間の意見交換もまた不十分ではなかったか。チェック機能が働かなかったことも明らかにしているわけでございます。
 これらの検証結果をどのように受けとめて分析をしておられるか。農林水産大臣と厚生労働副大臣の御見解をまずはお聞かせいただきたい。
武部国務大臣 私は、このBSEが発生して、なぜこういうことになったのかと。行政に構造的な問題がある、役人任せにはできない、政治主導で徹底究明しなければならない、そのためには客観的な検証、科学的な知見に基づく検討が必要ではないかということで、この第三者委員会の設置を、厚生労働大臣ともお話し合いをしまして、私的諮問機関として行ったわけでございます。長い間、しかし大変忙しいとき、集中的な御議論をいただきまして、今、江田先生御指摘のような御報告をいただいたわけでございます。
 一言で申し上げますと、私が心配していたとおりの結論であったな、こう思いまして、このことを厳粛に受けとめなければならない。そして、その責任をどのようにして国民の皆さん方に対して果たしていったらいいのかということについてもいろいろ真剣に考えました。
 そして、これらは農林水産省という組織全体の問題として受けとめよう、食に関するさまざまな課題が顕在化している今こそ、ピンチはチャンス、消費者保護第一に消費者サイドに軸足を大きく移して、食の安全と安心を確保するために、食と農の再生を目指して、農林水産政策の抜本的な改革、見直し、これにみずから先頭に立って全力で取り組んでまいりたい。
 来週中にも、食と農の再生に向けた新たなプランを今作成中でございますので、これをお示しして、これに基づき農林水産政策の大胆な見直し、改革を積極果敢に行っていくという決意でございます。
宮路副大臣 きのう出ましたBSEの調査委員会、その報告書におきましては、委員御指摘のように、縦割り行政の弊害の問題、あるいはまた農林水産省と厚生労働省との連携不足など、私どもの役所にとりましてもさまざまな御指摘をいただいておるところであります。
 そして、例えば一九九六年のWHOの肉骨粉禁止勧告に関しまして、農林水産省の方により明確な意見を厚生労働省として述べるべきであったといったような記述もそこの中には見られるところでありまして、私ども、今にして思えば至らぬ点があったなというふうに、その御指摘を重くかつ厳粛に受けとめておるところでございます。
 したがいまして、今後、報告書の御提言の趣旨をも十分に踏まえて、食品安全行政に遺憾なきを期してまいるよう、見直しその他、法律、そして組織、その改正問題に、改善問題に積極的に取り組んでまいりたい、このように思っている次第であります。
江田委員 では先に、また次の質問に移らせてもらいますが、次におきましては、まずBSE、この問題は国民の食の安全に対する信頼を大きく揺るがしました。
 食品の安全をめぐって、これは新しい問題、次々に発生しております。雪印の国産牛の肉の偽装事件、それから全農までも、生産者を守るはずの全農までが鶏肉偽装、国産牛の偽装を行っている。そういう次々に新しい問題が発生しているにもかかわらず、農林水産省の認識は希薄であったと言わざるを得ません。
 今こそ消費者の健康保護を最優先するという方針を明確にすることが重要であり、その方針のもとに包括的な食品安全法の制定を行って、また、専門家によるリスク評価を行う独立した行政機関を新しく設けるなど、万全な食品の安全体制構築に全力を挙げるべきであると考えます。
 この点につきましては、報告書では「新しい法律の制定と行政組織の構築が必要」として、次の二点について、六カ月をめどに成案を得て、必要な措置を講ずるべきだと述べております。
 すなわち、一つは、食品の安全性の確保に関する基本原則、リスク分析の導入を重点とする消費者の保護を基本とした包括的な食品の安全を確保するための法、新法ですね、これを制定し、食品衛生法、家畜伝染病予防法その他の食品関連法を抜本的に見直す。二点目は、欧州各国における独立性、一貫性を持った、各省庁との調整機能を持つ新たな食品安全行政機関を設置するというものでございます。
 今回のBSE問題は、消費者の信頼を失えば生産者は生き残れないということが証明されたことになります。そのように、消費者保護優先の政策展開は、生産者を保護するためにも欠かせない必須条件でありまして、これは先進国の常識でございます。武部大臣も、おくればせながら、生産者重視の農業行政から消費者重視の農業行政へと改革を強く目指されているところであることはよくわかっております。
 そこで、新たな法律の制定と行政組織の構築に関するこれらの進言を、農林水産省、また厚生労働省としてどのように受けとめておられるか、また具体的にどのようにして実現をしようとされているか、両省の見解をお聞きしたい。
武部国務大臣 今、江田先生の御指摘の問題につきましては、この場をおかりいたしまして、私は、国民の皆さん方に深くおわびをしなければならない、こう思っております。
 それだけに、この報告書を厳粛に受けとめて、坂口厚生労働大臣とともに総理にも報告をいたしました。総理からは、この報告書で「六ケ月を目途」と言っておりましたが、総理は、夏ごろまでを目途に、そういう非常に、さらに急げというお達しでございます。
 このことにつきましては、法制度の整備、また食品安全庁になりますかどうか、そういった制度、組織に、このリスク分析の考え方に立って、消費者をパートナーと位置づけた、消費者に正確でわかりやすい、そういう行政対応ということについて真剣に考えていかなきゃならない、このように思います。
 高橋委員長が、今回の報告は最後でない、これは始まりだ、こうおっしゃっております。私も、まさにそのとおりだ、このように理解しておりまして、昨日、省内の幹部職員に対しても改めて指示いたしましたし、きょうは全省職員を集めて訓示もいたしました。泥まみれになって、この問題解決に全力を尽くすことによって、国民の皆さん方の理解を少しでもいただけるような努力を先頭に立って積み上げていきたい、このように考えている次第でございまして、御理解を賜りたいと思います。
宮路副大臣 今、武部大臣からも御答弁があったところでありますが、厚生労働省といたしましても、報告書において指摘をされましたところの法的な整備の問題、それから組織の整備の問題、この二点につきましてしっかりと対応していかなきゃならない、こう思っております。
 先ほど武部大臣からもお話がありましたとおり、総理からも御指示をちょうだいいたしておるところでありますし、したがって、私どもとしましても、食品衛生法の見直し等にできるだけ早期に着手するとともに、また、新たなる行政組織の整備の問題につきましても、関係省庁と協力しながらしっかりと対応してまいりたい、かように思っている次第であります。
江田委員 少しでも前倒しになって、夏ごろまでをめどに法整備と行政組織の体制を整えていくというお返事は、これは国民にもわかりやすいと思われます。
 次でございますが、これまでの農林水産省の行政は根本的に見直す必要があるというのが多くの意見でございます。生産者団体や農林水産関係議員との関係で偏った政策決定が行われて、消費者の声を真剣に反映しようとしてこなかった。こうした姿勢は結果として生産者の利益に反することは明らかであり、より消費者の視点に立った農政に抜本的に転換すべきである、そのように強く思います。
 この点につきまして、報告書では、「政策のサーベイランス機能を中心的に担うのは政治である。」しかし、にもかかわらず、「農林水産省の政策決定にあたり、最も大きな影響を与えているのが国会議員、とりわけ農林関係議員であるのは故なしとしないが、全国の農村を地盤に選出された多くの議員が巨大な支援団体にして強力な圧力団体を形成し、衰退する農業を補助金や農産物輸入制限などを通じて支え、生産者優先の政策を求めてきたことは否めない。そのような政と官の関係が政策決定の不透明性を助長し、十分にチェック機能を」果たせなかったということを指摘しております。
 これらの指摘を踏まえまして、今こそ消費者の視点に立った農政に抜本的に転換すべきと考えますが、武部農林水産大臣におかれましては、そのお覚悟がおありか、またどのようにしてそれを実現なされるおつもりか、御答弁願います。
武部国務大臣 私自身が小泉総理から農林水産大臣として指名をされたということも、そのときに総理は一言、小泉内閣は改革断行内閣だ、頼む、この一言でした。それは、大胆な農林水産省の改革、出直し、そして政官業の問題についても毅然とした対応をするようにという意味が込められている、かように思います。
 したがいまして、今委員御指摘のように、私ども、もう既に生産者サイドから消費者サイドに軸足を大きく移し、そして消費者保護第一の考え方で行政のかじ取りをしている所存でございますが、それは結果的には自給率を向上させ、生産者のためでもある、かように思うわけでございます。
 しかし、同時に、コミュニケーションということが非常に大事であります。このリスクに対する評価あるいは管理、コミュニケーション、このことも含めましても、私は、コミュニケーションの問題については、立法府とも、与党とも、あるいは国民の皆さん方、生産者、消費者、いろいろな方々とのコミュニケーションということを第一に考えまして、今後の農林水産省の新しい出直しを図っていきたい、かような強い決意で臨んでまいりたい、かように存ずる次第でございます。
江田委員 大臣のお決意は、小泉内閣は改革断行内閣であるから今の農水省を改革せよ、その旗頭になっておられる、その決意も強いものがあるというのは、この委員会でも、またいろいろなところでおっしゃられておりますので、私もよく心しておるつもりでございます。
 それはそれとしまして、最後の質問でございますが、BSE問題が農林水産省の政策判断の誤りや時代おくれの消費者軽視体質から起こっている以上、これらを改めない限り、農林水産行政に対する国民の信頼を回復することは絶対にできません。この際、人心を一新して、農林水産省の古い体質の一掃並びに農林水産行政の転換を図るべきであるということを強く主張させていただきます。
 昨日、調査報告書の公表と同時に、農林水産省は、先ほどもお話に上っておりますけれども、事務次官や当時の行政の責任者に対して責任を明確にする意味で、減俸による懲戒処分等を発表されました。武部大臣や遠藤副大臣におかれましても、また退職している当時の畜産局長であった熊澤前事務次官、それから永村前畜産部長においては、俸給の自主返納という形でその責任を果たされておるようでございます。
 しかし、BSE発生以来、牛肉消費は低迷したままで、今もって回復の見通しが立たず、産地価格も下落を脱しておりません。生産者や焼き肉店などは売り上げの大幅減少が続いており、廃業も深刻化しております。被害総額は、先ほども出ました、ことし一月までに二千億円でございます。こうした事態を招いた農林水産省の責任は重大である。
 さらに、報告書にも指摘されておりますとおり、農水省の無責任な対応で感染牛の発生を招いて、巨額の税金を、国民のこれは血税でございますが、その巨額な税金を対策費として投入しなければならない、そういう事態になっていることもまた農水省の責任は非常に重大なものがあります。減俸処分で責任をとったとは言いがたい、国民の納得はやはりこれは得られにくい。
 高橋委員長もおっしゃっておりましたが、報告書は出発点、政府がどう対応するか国民は鋭く見ている、こう申されておりました。BSE問題が農林水産省の政策判断の誤り、消費者軽視体質、ここから起こっている以上、これらを改めて初めて農林水産行政に対する国民の信頼を回復することができます。
 人事や組織を一新して、消費者保護重視の農林水産行政の大転換を図るべきであると思いますが、大臣、重大な大臣のお決意をお伺いしたいと思います。
武部国務大臣 ただいま江田先生からいろいろ御指摘のありましたことは、国民の率直な声だ、私はこのように受けとめたいと思います。謙虚にその国民の声に耳を傾けつつ、私はまさに針のむしろと言っても過言でない状況に立たされていると思います。それだけに、泥まみれになってでも改革の手を緩めるわけにはまいりません。
 人事につきましても、一月に大刷新を行わせていただきました。これは改革への第一歩を踏み出した、こう自負しているところでございますが、さらなる農林水産省の大改革、また農林水産政策の大きな見直しに、農林水産省の責任者としてその先頭に立って、一日も早く国民の皆さん方に多少なりとも評価されるように、理解されるように、私自身も謙虚な気持ちで職責を全うしてまいりたい、かように決意を新たにしている次第でございます。
江田委員 残念ですが時間が参っておりますが、農水省の大改革をやるという御決意は強く強くわかります。私も思います。大臣の首をすげかえて何も変わらなければ、それは国民は欲していない。やはり、今回の問題を起こした、そういう問題を起こさない行政に変える、そういう意味での人心の一新をこれはまず第一にやらなくちゃいけない。
 大臣の問題は、大臣とお心に判断されるかと思いますが、そういう意味で、本当に新しい農林水産省を構築する、そういう強い意思を国民にメッセージとしてはっきりわかるようにお伝えしていただきたい。私で言えることはここまででございます。
 以上でございます。ありがとうございました。
鉢呂委員長 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。
 次に、高橋嘉信君。
高橋(嘉)委員 自由党の高橋嘉信でございます。
 私は、生産者、消費者の立場に立って考えてみても、見れば見るほど、今回の減俸とか事務方の人事をいじくったぐらいで、責任の所在ということを国民の前に示したとは到底言いがたいと思っております。
 そこで、まずは一九九六年、まさに最大のポイントのあたりからお話をお伺いします。
 EUの加盟国全体で肉骨粉の使用禁止は一九九四年、もうこれはイギリス、オランダ、フランスとどんどんなってきました。当時、世界情勢はそうあったわけです。米国でのサーベイランス体制、あるいは免疫組織化学的な検査の導入、これも一九九四年です。オーストラリアもそういう体制をいち早くしいてきております。
 そういった状態の中で、四月の二日から三日、WHOの専門家会議、FAOやOIEも参加して、そして四月三日にプレスリリースされている、先ほどから何回もありましたけれども。そしてそれを受けて、世界はそういう情勢になっているんだ。肉骨粉の危険性を知ってきた。そして法的禁止措置をとってきた。そのときにどうして、同年四月十六日に農林省はFAOの勧告を受けたにもかかわらず、法的なものでなかったのか、ここにまさに問題があるんですね。
 そして、さっきから僕は、こういう質問の仕方は悪いかもしれませんが、肉骨粉使用自粛の通達という意味がよくわからないんです。飼料にしちゃだめだよという通達をしているわけですね、通達をそのとき見ると。自粛通達というのは控えろという意味でしょう。私は単純にそう理解すると思います。それは、行政サイドの通達というのは、今回もその通達の矛盾、それが徹底していない流れがどんどん後からも出て、私も後で質問申し上げますが。
 通達に種類があるんですか。最初に、一九九六年の通達も、これはもう、反すう動物に給与する飼料とすることのないようと言っているわけですね。やっちゃだめだよという話でしょう。それなのに、わずかそこの、協会の人たちだけに一片の文書を通達して、自粛通達した。何回もその言葉を聞きましたけれども。
 大体に、これ、簡単にで結構ですが、協会から個々の商社なり製造工場なりにしっかりとこれが伝達されているか確認をとったんですか。その点、まずお伺いします。その当時。
武部国務大臣 九六年の指導通達を農業団体、都道府県に発出し、農家、農協、輸入商社等へ指導通達を徹底した、このように聞いております。国の補助事業の一環として、都道府県による――そこまではよろしいですか、(高橋(嘉)委員「よろしいです。確認したかです」と呼ぶ)確認ですね。と聞いております。
 しかし、これは課長通達であって、私は、一番最初これを見たときに、私自身も、通達のあり方ということは、これはもう少しきちっとハイレベルの通達で、きちっとフォローアップしなきゃならぬものじゃないのかなという印象を率直に持ちました。そういうふうに聞いております。
高橋(嘉)委員 私がお役所の事務方から確認したところでは、確認はされていないのであります。
 そして、九六年の三月に、これは報道された内容ですから、どうもうやむやであってはいけないと思いますので、再度私の方から聞かせていただきます。
 一九九六年四月十六日にあの自粛通達が出ましたよね。その前の三月に、四十二トンもの通常の倍以上の肉骨粉が使用されている。これはちゃんと統計上出ております。そして通達を出された四月にも、また八トンが使われております。計五十トン。そして、報道に出た内容では、農林省の役所の方が言っていましたが、流通段階にあったものは処理されたと思いますと。
 だから、そのときの報道は、在庫処理の猶予期間を設定した、そしてさらにその方が答えたのには、内々に通達を出すよということを伝えていたという話になっているわけですね。その点のところ、大臣の見解をお伺いしたいんですが。
武部国務大臣 先生の御質問はかなり事細かな御質問でございますので、私が正確、適切にお答えできるかどうかわかりませんが、九六年の行政指導前の三月、四月における肉骨粉の牛用配合飼料への使用について事務方に確認いたしました。四十六トンと八トンとなっているわけでございます。
 九六年当時のWHO勧告及びこれを受けて発出した行政指導においては、反すう動物由来の肉骨粉であっても、豚、鶏用飼料に振り向けることが可能であるということから、在庫解消を目的に牛用飼料として駆け込み生産を行うという必然性はなかったという説明でございますが、私も率直に、言ったとおりのことを申しますと、本当かというふうに申したところでございます。確かに、豚、鶏用飼料に振り向けることが可能であるというのは、なるほど、そうかな、かように思いました。
 これは本当は事務方に質問していただければ一番いいと思うんですが、そのような説明を聞いているという次第でございます。
高橋(嘉)委員 私がお聞きしたいのは、大臣、先ほどから決意を強くおっしゃっていますけれども、大臣はもう確認していたはずなんですよ。そのときに、一九九六年当時、通達が協会までだったことだってもう知っている。みんな知っているはずなんです。聞いているはずなんですよ。それだったら、それはミスだったということではっきり言ってもらえばいいんです。これから後、どんどん進んでいるわけですから。こういうことを確認しないで、この問題解決に当たるという考え方の方が間違っていますから。根本の問題になるんです。
 大体にここで換算すると、五十トンの肉骨粉があるわけですね。これは配合飼料にすると、先ほども参考人のときに話しましたが、肉骨粉は嗜好性が非常に悪い、一ないし二%です。そうすると五千トン、配合飼料に実際にすると五千トンのものに混じっちゃうわけですね。わずかでも発症する可能性があるわけですから。二十キロ入りで二十五万袋ですよ。二十五万袋の飼料がそのまま出回ったわけですよ、一片の通達の陰になって。これは重大なことでしょう。僕は極めて重大なことだと思っておりますよ。
 それを回収行動もしないし、全く措置をとらなかった。そしてその発生した三頭の生年月日、三頭ともその時期であるということは、これも皆さん御案内のとおりであります。ここに重大な問題があった、ここだけは認識していただきたいと思います。
 さて、次に行きます。
 EUのステータス評価、そしてあとOIEの基準、大臣はこれを何回もおっしゃられていますけれども、こういった世界的な情勢、状況にあって、二〇〇一年六月十一日から十四日、WHO、FAO、OIEの専門家会議が報告されていますね、六月十一日から十四日の間に。そして極めて厳しい内容、肉骨粉に対してありますよね。それなのに大臣は、OIE基準が出るからという話になった。あの報告書にもありますけれども、OIEの基準というのは自己評価であって、清浄国の条件はこうだ、その条件を満たすためのものだけであって、評価手法はないという、報告書にもありますけれども。
 何ゆえに、これは大臣就任時でありますけれども、何でそれを簡単に、しかも十一、十四日、その会議を受けて、極めて厳しい内容だったのに、検討を重ねたという経過も全然見当たらない。何で六月十五日、次の日に、あえてステータス評価をけるんですか。全くここも理解できないんですよ。全く理解できない。これは本当に、行政の重大な失政と言われてもやむを得ないことなんですよ。
 そして僕は、ちょっと、国際的な動向がそのようになっているのに聞く耳を持たなかった理由は何なのかという、ここをはっきり教えてほしいわけなんですよね。
 それと、これに加えてちょっとお話聞かせてほしいのですが、今までの見解のことはもうお話聞かなくて結構です。ここで次の……(武部国務大臣「言わせてください」と呼ぶ)いや、結構です。次の、ところで大臣、肉骨粉、大臣就任してからで結構ですが、肉骨粉というのは日本で酪農家が使っていたということを御存じでしたか。それと、農林省がそれを認知していたか、あるいはその農林省、農業関係団体が推奨していたということは御存じでしたか。まずそこだけで結構です。
武部国務大臣 私は、酪農家が肉骨粉を使用しているとは思っておりません。少なくとも私の知っている酪農家は、そういう人はおりません。
 後の質問については、これは承知しておりません。その当時承知していない。その後、私もいろいろ調べまして、いろいろな読み物などに目を通したことはあります。
高橋(嘉)委員 この辺の認識がこの問題の判断する基準になってくるのですよね。知らないと言って、酪農に詳しい大臣なのに、大体にして、ホクレンとか経済連、全農がちゃんと裏に名前を出しているところで、例えばこの「デーリィ・ジャパン」、これもテレビに出たのですよ、あのとき、大臣がエレベーターまで追っかけられているときに。
 調べたのですが、ここの中にはちゃんとこうあるのですよ、「ミートボーンミールや血粉、魚粉を使いこなしていますか?」と。たんぱくサプリメント飼料として次のような特性を持っている、高たんぱく質で、たんぱく質のルーメンバイパス率が高い、アミノ酸バランスがすぐれている、でも嗜好性は悪いと。要は、食べさせるような指導をしているのですよ。例えば、農林省は関知していないと言っても、これも出ているのですよ、「日本飼養標準」、農林水産省農林水産技術会議事務局、これにちゃんとミート・ボーン・ミールと出ているのですよ。
 だから、さっき田中参考人に聞いたら、この飼料成分表で、ここにも飼料成分表もありますけれども、これで私は肉骨粉の存在を知っていますと言っていましたよ、先ほどの方が。(武部国務大臣「肉骨粉の存在は知っていましたよ」と呼ぶ)だから、存在を知っていてそれを認知している、例えば農林省がこういう形で。そうしたら、普通の人は食べさせていくわけですよ。僕はそうだと思いますよ。その点について、ではいかがですか。
武部国務大臣 北海道の場合は、いい粗飼料をつくって、いいえさを食べさせて、いい個体を養って、いい牛乳を出して、いいふん尿を出して、それを畑に散布して、そういう一つの自然の中での循環なり自給飼料というものをしっかりつくっていこうという酪農がほとんどです。私はそのように承知しています。したがいまして、肉骨粉というものを牛に食べさせるというようなことは、私は知らないのですね。
 しかし、肉骨粉というものは、あるというそのことについては知っておりました。これは、肥料だとかそういったものに使うという、そういうような程度のことは知っておりましたけれども、私の身近なところでは肉骨粉を使用しているという例は、今までの経験で見たことはありません。まあ私も全部は知りませんけれども。
高橋(嘉)委員 いずれ、その認識が多分今までのいろいろな答弁の中に反映されているような僕は気がするのですが。
 例えば、ではちょっと話はまた、この問題については後で入っていきますので、お伺いいたしますが、原因は究明する、迷宮入りはさせないと。簡単にお答えください、今でもその考えに変わりありませんか。
武部国務大臣 これは私の強い決意でございます。迷宮入りはさせないという決意で努力しておりますし、農林水産省も、その人員もふやして、三月一日から専門家も一人増員して、このことに一番今エネルギーを費やしていると言っても過言でない、このように思っております。
高橋(嘉)委員 一九九六年十一月に輸入されたイタリア産肉骨粉のうち、帳簿のない三菱商事、何回事務方から聞いても、帳簿がない、わけわからない、ありませんと。いずれ、飼料安全法の保管義務は二年だと、まあこの点も問題あるのでしょうが、いずれ、わからない、帳簿がないという返事なんだそうですが、これで原因究明できるのですか。
武部国務大臣 一九九六年に輸入されました百五トンについては、輸入業者に輸入ロットごとに販売先を整理した当時の記録が保存されていないというのは御指摘のとおりでございますが、再度の立入検査、これは二月二十二日に行った結果、残されていた販売時期等の記録や関係者への聞き取り等に基づく当時の取引関係から推測すると、大部分は養鶏用の飼料原料として使用された可能性が高いというふうに考えられるとしておりますが、引き続き、当時の販売状況を分析しつつ販売先等の調査を継続しているところでございます。
高橋(嘉)委員 資料がないのに、鶏だとか豚だとか言われてもどうしようもないので。
 大体に、この三菱商事への立入検査は、BSEが発生してから一カ月後なんですよ。二〇〇一年十月十日です、一カ月後にやっている。大体こういう怠慢な体制だから。そして、二回目目ですよ、今大臣が言った二月二十二日というのは。このようなことで、本当に迷宮入りさせないなんて大言壮語をやられると困るのですよね。
 しかも帳簿がないと。帳簿がない、さあ売った先、今まで取引した人たちはどうだったか、どうだったかみたいな話なんですね、実際のことを言えば。そう思いますよ。このことについてはまた後で関連した形で触れていきますから。
 では次に、BSE発生後の対応についてお伺いしたいと思います。
 八月二十四日、当該牛の脳の空胞を発見しました。そして、十日にBSE疑似患畜の発生を公表しました。十二日から五千八百名により四百六十万頭の調査を開始しましたね。この調査期間は九月十二日から九月三十日までの十八日間ですが、この点については間違いありませんか。
武部国務大臣 間違いございません。
高橋(嘉)委員 要は、わずか十八日間でやったわけですから、五千八百人が。さっき資料なんかも見たようなこともちょっと局長言われていましたけれども、大体にして、全部その購入伝票からみんな見て、過去八年からみんな見てやるなんということが、例えば、五千八百人が十頭ずつ一日やったとしても、十日間でやったって五万八千頭ですよ。四百六十万頭を調査したのですよ、十八日間で。だから聞き取り主体。目視をして、神経症があるかどうか、それと、あとは聞き取りなんです、ほとんど。聞き取りというのは直近の記憶に基づくもの以外はないでしょう。つまり、ああ、肉骨粉やっていたと、直近の記憶に基づくものしかないでしょう。そういうものじゃないですか。でないと、五千頭分の全部、それを見せてもらうしかないのですけれども。
 要は、そこで僕がいろいろ聞いてみたところによると、豚用のえさ、牛肉骨粉でありながら豚用のえさ、それが発生後も牛に給与されていた実態があったと事務方が言っていますよ。それについていかがですか。
武部国務大臣 五千八百人の防疫員等を動員して短時間でぜひやってくれという要請をして、それを受けて、あの当時、ちょっと思い出しますと、本当に、私も現場の話も聞きましたけれども、朝早くから夜遅くまで本当に一生懸命やっていたようです。しかし、これは専門家の目視でありましても、それは絶対ということはないでしょう。そこで、私どもは全頭検査を厚生労働省に要求したのです。
 当時は、三十カ月齢以上で九九・九五%だと、感染するのは。だけれども、我が国を本当に清浄国に取り戻していくためにはきちっとしたことをやらなくちゃいけないということで、私どもは全頭検査を厚生労働省に要求して、これは単に、安全な牛肉を、証明された肉だけ流通させるというその意味が一番大きいけれども、同時に、サーベイランスといいますか、我が国の実態がどうなっているか、そういうようなことのデータも欲しいんだ、そういうようなことで全頭検査をやったわけでありまして、一つで何でも万全にはならない、念には念を入れてやろうという姿勢で私は当時事務当局に指示をした、また厚生労働省にもお願いしたということを御理解いただきたいと思います。
高橋(嘉)委員 僕が言っているのはその趣旨で言っているんじゃなくて、要は、発生後も豚用のえさであろうが何であろうが牛に給与されて、ずっとほったらかされていたということを言いたいんですよ。
 殊さらさように、鶏用だ、牛用だと言いながらも、みんなそういう実態があったんですよ。あったから九月十八日に、十二日から検査してまずいと九月十八日に法的禁止をして、それでもなおかつ三十日まで検査していますから、まだ全然徹底になっていない。
 だから、二十五日にまた通達出したんでしょう。当然の流れじゃないですか。僕はそれほどリスクを拡大させたということを言っているんですよ。これは大きな責任ですよ。その点についてどう思いますか。
武部国務大臣 私は、サーベイランス効果はあったんじゃないか、このように思います。(高橋(嘉)委員「いえいえ、えさを与えてしまっていたという実態についてです」と呼ぶ)
 それは、混入の問題あるいは豚、鶏用のえさを間違って与えることもありましょうし、あるいは意図的に与えた場合もあるのかもしれません。ですから私どもは、輸入の禁止、それから製造、出荷の禁止、すべての家畜に与えることを禁止しました。ペットフード用も、魚のえさ用にも、みんな一時これをストップしたんです。
 ですから、念には念を入れてやらなくちゃいけないという思いは、私として、当時そういうおそれもあり、そういう声も耳にするというようなことで、ありとあらゆる手をできるだけのことをやろうということで、全部禁止しました。そのことに対していろいろな批判もありました。しかし、それはその当時そうしなきゃならぬと思ってやったわけでございます。
高橋(嘉)委員 前に予算委員会で質問したときは、そういうふうな話じゃなかったですね。
 いずれにせよ、素直にそれは認めて隠さないようにすることが一番大切なんですよ。いや、そういう実態もあった、だからこう手を打ったと。大体にして手を打ったのが、では十月四日、法的には十月十五日じゃないですか。実態が、そうやっていろいろなえさが牛に食べさせられているわけですよ。
 それは正直言いまして、例えば、では大臣にお伺いしますが、厚生省はちゃんと自主回収の通達を出していますよね。では、自主回収の通達を出しましたか、農林省は。そういうあふれている、ストックされているえさ、実際に食べさせられてしまっているえさ、これを危険だと、法的禁止もした後でもいいですから、自主回収させましたか、命じましたか。
武部国務大臣 法的に規制しましたので……(高橋(嘉)委員「いや、でも、自主回収はしましたか。厚生省は指示しているでしょう」と呼ぶ)自主回収は、法的規制をいたしましたので、それはしておりませんし、なお全頭検査体制をその後とりましたし、焼却処分を命じました。ですから、一の手、二の手、三の手といろいろやったということは事実でございます。
高橋(嘉)委員 私は個人的には大臣に恨みも何もないんですけれども、僕が言いたいのは、要は法的禁止した後に、では流通段階にどれぐらいあるかというぐらい調べるのは普通のことだと思うんですね。こういうことをしているから、前の一九九六年当時のように、また在庫処理に猶予期間を与えたんじゃないかなとまた言われちゃうわけですよ。
 僕は、この辺のときには、ぴしっと自主回収を厚生省と同じように求めていく。実態として、そうやって豚のえさであろうと何であろうと、牛に肉骨粉入りのものが与えられていたわけですから、そういうことを、実態あったかもしれませんみたいな話をしていましたが、わかった時点ですぐ迅速に手を打つことが僕は一番の課題だったと思っていますよ。
 これが、こういう一連の流れが報告書にあるような重大な失政と言われるゆえんだと思っております。私はそう思っております。(武部国務大臣「いや、失政は一九九六年です」と呼ぶ)一九九六年と同じようなことを二〇〇一年にもしたような形になっちゃっているわけですよ。自主回収の措置もしていない。法的禁止した以後にもしてないでしょう、だって。
武部国務大臣 それは厳しいお達しでございまして、私ども謙虚に受けとめますが、一九九六年の当時の重大な失政ということと、BSEが発生してから私どもがさまざま手を打ってきたこととは、大きな違いがあると思いますね。
 今、十月四日にこれはもう輸入も禁止するというようなこと、途中まで船が来ていて、帰したりもしているんですよ。それから肉骨粉の処理も、今もう大変な難儀な問題になっているんです。しかし、当時川口環境大臣に私は、九月二十七日だったと記憶しておりますけれども、何とかこれはできないだろうかというような話から、平準化すればやれるかもしれない、そのときに大臣から、セメント工場ということもありますねと。
 それは厳しいお達しでありますけれども、さまざまな苦労をして、そして、確かに回収はしなかったことは事実ですけれども、焼却を命じたり、それから法規制していますから、三年以下の懲役、三十万円以下の罰金と、そういうことまでやったんです。
 十月十五日、遅いと言いますけれども、これはやはり独裁政治じゃないんですね。これはやはりそのような手続が要るんです。我々とすれば、独裁政治というのは取り消しますが、余りにも先生、当時のことを先生も考えてください。それはもう、いろいろあの手この手でやって、我々も、それでもなお抜かりがなかったとは言っておりません。反省することはたくさんあるんです。
 ですから、それは先生の立場でそういう本当にきつい、厳しいことをおっしゃるのはわかりますけれども、しかし、報告書でも評価もしてくださっているんです。重大な失政ということだけじゃありません。ですからそういうことも、人柄のいい高橋先生のことでございますので、よくそのことも存じ上げている方ですから、御理解をいただきたいと思うんです。みんなで頑張ったじゃないですか。
高橋(嘉)委員 独裁というところは撤回してもらいましたが、行政、食の安全と安心と先ほど高橋委員長も言われたように、安全を示すのは、やはりその体制をつくるのは農林省にあるわけです、厚生省と。これに早かったから独裁だとか、遅かったから何とかという話じゃないんですよ。いち早くやるのが大事な問題です。私はそう思っております。ここにも重大な行政的なミスがあった、不作為と言いたいぐらいのミスがあった、私はそう思っております。
 時間も来てしまいましたので、あとは答えは要りません。責任の所在です。私は何回も申し上げております。正直言って、先ほども言いましたが、減俸とか云々とかそういった問題じゃなくて、本当に、この間のアンケートも出ておりましたけれども、要は農政に対する不信だと。僕はもう少しやりようがあるのではないかなと。もうちょっと、隠すことじゃなくて、どんどん追及していってぼろぼろ出てくるんだったら、最初から言って、しからばこうだという判断をしていくとか。
 それと、最高責任者である人が、国民の食を預かるまさに農業のトップリーダーなわけですから、その判断というのはもう大変なことなわけですから、僕は、それをしっかりと考えていただかない限りは、先ほどからリスクコミュニケーションを連発されていますけれども、それは違う話だと思いますよ。
 全頭検査体制は厚生省の所管ですから、農林省の所管は、前から申し上げているへい死牛、これを早く検査しろと何回も言ってきました。やっと、BSEが発生して一年後の九月に始まるらしいですけれども、農林省の所管の仕事はそこにあったわけですよ、一番の仕事は。僕は、そこのところをもう少しよく考えていただきたい。
 そして、けじめ、けじめと言われますけれども、けじめというのは、前にも予算委員会で言いましたけれども、僕は、次への対応をけじめとは言わないと思っております。客観的検証も出ましたし、今後どのような御決断で考えられるのか、それは私の知る由もありませんが、いずれ武部大臣の農林省の最高責任者としてのけじめのあり方というものを全国民にお示しいただきますようお願いを申し上げて、質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて高橋嘉信君の質疑は終了いたしました。
 次に、中林よし子さん。
中林委員 まず、九六年、WHOの勧告を受け、日本政府、農水省がどういう対応をとったか、それを明らかにしなければならない。今度の報告の中で述べられていない点、これについて大臣にお伺いしたいというふうに思います。
 九六年四月の海綿状脳症に関する検討会、これがWHOの勧告を受けて最初に開かれた、今後の行政対応を決める極めて重要な会議だったというふうに思います。これには、当時のBSE問題の専門家が出席していました。
 当初、この会議の模様を知らせる文書、それは、委員発言要旨、これしかなかったわけですね。この発言要旨では、「国内の反すう動物(牛、羊、山羊等)の内臓等については、国内の反すう動物の飼料として利用されることがないよう指導することが重要である。」が委員の発言要旨としてまとめられております。
 そこで、私は、もうたびたび、この議事録があるはずだ、要旨だけじゃないだろうということをずっと農水省に要求をし続けてまいりました。ところが、農水省は、探してもないんです、紛失しました、こういうことを言い続けました。さらに私が言うと、倉庫をさんざん探したんですが、それでももっと探せというならば、来て探してください、ここまで言われたんですよ。
 そこで、実は、熊澤事務次官の辞職が決まった後、十二月二十四日のクリスマスイブの夜、これは休日です。その休日の夜に、衛生課のある職員が、さんざん探した倉庫を探したら出てきたと言っているんですね。それも、当時、衛生課の何人かの職員が残業していたことも私は確認しております。しかし、だれ一人として紛失したはずの議事録が見つかったことをそのときは知らなかった、こういうふうに言っている。
 本来は、探しても探してもなかったものがそのイブの夜に見つかったよと言ったら、もう大騒ぎでしょう。見つかりましたと言ってむしろその課は沸くはずだったというのに、そっとだれも知らなかったと。
 それで、だれが一体見つけたんですかと私が聞くと、それは言えませんと言われるんですね。なぜ言えない、お手柄じゃないですか。紛失したと思ったものが見つかったんですから、本来ならば名前を明かして表彰でもしてあげればいいというぐらいの問題だというふうに思うんですね。
 私は、この議事録メモというのを持ってこられたので、見ました。なぜ紛失したということになっていたのかという理由が、これを見てわかったわけですよ。
 ここでは、この最初の検討会で事務局が、現在の行政の対応方法についての意見、また短、中、長期に留意する点について御指摘をいただきたいとこの検討会に投げかけております。
 そうすると、委員の方はこういう指摘をしております。「日本でも英国と同様動物性飼料の禁止令を出し、脳、リンパ節の流通を禁止した方がよいのではないか。」こうおっしゃっております。さらに、「防疫の問題については、疑わしきは禁止」こういう意見を述べた委員もいます。それから、「海外からの侵入防止と国内での発生防止が重要である。」さらには、「大きな問題はBSEは人間が作った病気である。これは誰が作った病気であるか責任問題に発展する。日本としてもしっかりした対応が必要。」と述べているわけですね。「結局データはすべて英国が出しているデータであるので、他国の措置を見習わなければならない。」こういうことを言っております。
 それだけではありません。さらにこういう言及もしております。イギリスでは一九九〇年以降生まれたものにBSEの発生が認められる理由、もうイギリスでは肉骨粉使用を禁止しているんですよ。しかし生まれているということの理由について、「八八年の反芻動物由来の蛋白質の飼料への禁止令が末端まで行き渡らなかった」んだ、禁止令を出しても行き渡っていないんだ、こう指摘をしているわけですね。法的禁止さえも末端への徹底がなされていない、こういう指摘があるわけです。英国からの汚染肉骨粉が第三国を経由して輸出されていることも、これも指摘をされております。
 極めてこの議事メモというのは、本当によく、委員の方々は専門家ですよ、述べておられる。それを、当時の熊澤局長、この方が出席している、十二人役人が出席している会議ですよ、その熊澤局長が委員発言要旨をまとめた。法的禁止を求めた発言は全く紹介していない。そして、だれも発言をしていない、「国内の反すう動物の内臓等については、国内の反すう動物の飼料として利用されることがないよう指導することが重要である。」だれもそんなこと言っていないのに、これが委員の発言要旨だというふうにまとめられた。
 資料を隠して出さなかったということは、ここに私は秘密があるんじゃないかと疑わざるを得ないんですね。もしそうであったならば、これは重大な問題だというふうに思いますね。大臣、この経過は明らかにしてほしいと思うんですけれども、いかがですか。
武部国務大臣 私は、調査検討委員会のデータは、ありとあらゆるものを出すように、あるものはきちんと出すように、要求されて用意できるものはきちっと出すように、委員会の運営も公開でやっています。
 ですから、この話を聞いたときにも、私も激怒いたしました。しかし、私は、隠ぺいした、故意に隠したというふうには思いたくありませんけれども。
 いずれにいたしましても、調査検討委員会の厳しい御指摘、生産者サイドに軸足を置いていたということ、危機管理意識の欠如という問題、それから、いわば情報についてもきちっと開示していないという問題等々の御指摘もいただいております。そういう御指摘を厳粛に受けとめて、そういうことが今後起こらないような農林水産省改革に全力を尽くしたい、このように考えている次第でございますので、御理解を賜りたいと思います。
中林委員 今回の報告で、この九六年の禁止令を出さなかったことが大失政だ、こう指摘をしているわけですね。その一番取っかかりで、私は、九月の当委員会で、最初の委員会で、九六年、法的禁止をしなかったことが原因じゃないかということを大臣にも言いましたよ。しかし、そのときに大臣は、専門家の意見を聞いたんだ、それで行政指導にしたんだ、それが発言要旨なんだ、行政指導が重要だと専門家は言ったからそうしたんだ、こういう話を答弁でされております。専門家の意見を聞いたということなんですよね。だから私は、このいきさつというのは極めて重大だと。
 私は、大臣は、出てきたからいいんじゃないかという不規則発言も聞こえてまいりましたけれども、そうじゃないですよ。先生、探しに来いとまで農水省は言ったんですよ、私に。そこまでおっしゃるんなら、見つからないものは見つからないんですと言ったんです。
 それで、見つかったと言われたから、では、どこでどういうふうに見つかったのか現場を見せてほしい、そこまで言いましたよ。そうしたら、見せられませんと言われたんです。そんな、現場がなぜ見せられない。倉庫と言うんだったら、かぎをあけてもらえば見られるでしょうと言ったんですね。それでも、見せられないと。
 それで、先生、見に来ていただいても結構ですと言われたのが、私がこの問題を予算委員会でただす前日の日ですよ。ただし、写真はいけません、秘書の方、一人だけ連れてきてください、こういう非常に限定的な話で倉庫に案内されました。十二月の時点とは変わっていたのかもわからないけれども、私が見た限り、私の議員の部屋よりもよく整とんされた倉庫でございました。紛失するような状況じゃ全くない。ファイルにありましたといういきさつなんですよ。
 だから私は、この経緯は、大臣、農水省として明らかにする必要があるんじゃないですか。どうですか。
武部国務大臣 いろいろな経緯については、先生御指摘のことは、私は、極めてゆゆしき事態であり、深く反省しなきゃならぬことだ、かように思います。
 ただ、私は、いろいろな専門家の意見を聞いたり国会の決議などの話もしましたけれども、私は当初から、法的規制にすべきだった、そういうことも申し上げているわけでありまして、先ほど来申し上げておりますように、行政上、構造的な問題があった、そういう直観をいたしましたから、これはもう徹底究明しよう、役人任せにはしないという原則でやってまいりましたことを御理解いただきたいと思います。したがいまして、そういう出てきたということについても、私は厳しく叱責したということは先ほど申し上げたとおりでございます。
 遠藤副大臣が私以上にその件について経緯を知っているようでございますから、遠藤副大臣の答弁をお許しください。
遠藤副大臣 委員の、クリスマスの夜ということで私思い出したんですが、実は、厳しい資料要求があると、非常に困惑しておりました。そして、私のところへその要求の内容を持ってまいりました。それで、衆議院法制局に問い合わせる、どの程度まで探すというか、要求が受け入れられるものか、上で、それを出させました。中身を見て私自身も驚きました、これは大変だと。これは公表すべきであろう、資料の請求に応ずべきであろうということで、公開するようにさせました。それがクリスマスの前でわかって、中身を見て、こういう議事メモがあったということを私自身知った次第であります。非常に重要な問題だと思います。
中林委員 公表するのは当たり前のことですよ。出さなかった、それまでさんざん私が要求したのに、ないない、紛失した、先生、来て探してくださいとまで言われたものですよ。それが見つかったときは、こっそり見つかったのかどうなのか、本当はお手柄なのに、だれも、だれが見つけたのか知らないと言うんですからね。これはひどいということを重ねて申し上げておきたいというふうに思います。
 そこで、そのWHO勧告を受けて行政指導にとどめたという問題で、大臣は、私は初めから法的禁止を言っていたんだと言われるんだけれども、そうじゃないですよ。昨年の九月二十六日の当委員会で、私が法的禁止をしなかったことがだめだったんじゃないかと言ったら、武部大臣はどうおっしゃっているか。
  委員は一片の通知、こういうことでございますが、私ども一片の通知というふうには思っておりません。しかも、私も多少酪農地帯のことを承知している者といたしまして、牛というものは大変な対価のあるものであります。これはもう、牛一頭が事故を起こして倒れたり死んだりするということは、その経営にどれだけ影響を与えるかというようなことについては、一人一人の酪農家が経験上肝に銘じているはずでございます。
  それは都道府県もあるいは農業団体も、それから各般の専門家の皆さん方も、獣医師を初め、獣医師もこれを一片の通知と受けとめるということ自体、私は非常に甘い認識と言わざるを得ません。
こういうことをおっしゃっているわけですよ。だから、言いわけに終始している。後で、今になって思えば法的禁止しておけばよかったみたいな話なんですよ。
 それで、今回、私が指摘をしたこと、先ほどから言っているけれども、重大な失政だったと。この最初の九月二十六日指摘をし、それ以後も私はこの点にずっと触れてまいりましたけれども、私が正しかったのか、それとも武部大臣がおっしゃった、一片の通知なんじゃない、行政指導もちゃんとやっていた、あるいは、そういうことで認識が甘い人たちもいたんだというふうに一部、国民にその責任を負わせるようなことも答弁されているわけで、どちらが正しかったとお思いになりますか。
武部国務大臣 先生、私の発言のすべてじゃなくて、その部分を朗読されたと思うんですが、私は一番最初に申し上げていることは、起こり得ないと思うことが起こり得る、それが今の時代なんだということで、それこそ、報告、連絡、相談、点検と確認なんというそんな言葉まで使ったことがあるんです。ですから、念には念を入れよということを私は終始、事務当局に厳しく申してきているわけでございます。
 ただ、行政指導が悪かったのかということについて、当時においては、いろいろな専門家の意見を聞いたり、そういったことを聞いてやった、そういうことを説明しているわけでありまして、しかし、私の認識は、やはり徹底して、念には念を入れて、起こり得ないと思うことも起こり得る時代ということを考えるならば、きちっとした危機対応マニュアルというものを持ってやるべきだったということを当時も言っているはずでございます。
 いずれにいたしましても、こういう問題が起こっているわけでございます。大きな混乱を与えたという事実に対しましては、私も、農林水産省のトップの責任者として大きな責任を感じている次第でありまして、それだけに、大胆な農林水産省改革あるいは農林水産政策の見直し、そして食品の安全問題についてしっかり取り組んでいこうという決意で今臨んでいるわけでございます。そういう形で責任を果たしていきたいということを御理解いただきたいと思うのでございます。
中林委員 大臣、法的禁止という問題はこの後どういう発言になっているか。だから、今法的禁止に改めたんだという落ちなんですよ。これは、九月十八日に法的禁止になさいました、その後の委員会ですから。だけれども、ずっと言いわけして、都道府県なんかが一片の通知と受けとめているのは認識が甘いと言っているんですよ。現に私はある県から、通知が見つかりませんと言っているんですね、どんなものか見せてほしいとまで言われました。それが事実です。
 それから、EUステータス評価の問題です。これは過去の問題ではなくして、小泉内閣になってからの問題です。
 この問題でも私は、去年の五月八日、大臣あての手紙も見ないで、そして六月に断ったという問題を予算委員会でも取り上げさせていただきました。そのとき、大臣の答弁は、我が国がステータス評価を断ったのは、OIEが五月に新たなる基準を採択、EUも近くこの基準に応じた評価に変えるという情報があった、私が了とした理由は、新たにEUもOIE基準で評価するんだということで了としたというようなことを述べられているわけですね。
 ところが、今回の報告ではどういう報告になっているかというと、「EUの評価手法は、客観的で透明性のあるものにするため、二年間、多くの専門家がかかわって作成されたものであって、すぐれた内容のものとみなせる。一方、OIEは清浄性に関する基準を設けているが、評価手法は定めていない。」というふうに言っているわけですよ。だから、私は、このとき予算委員会で武部大臣が御答弁になったことは認識が間違っていたんじゃないか、理解が浅かったんじゃないかというふうに思いますね。
 私はそのとき、OIEとEUは違うんですよということも申し上げましたよ。その点についてはいかがですか。
武部国務大臣 その前に、肉骨粉のことは、九月十八日に、牛から牛への肉骨粉は法的規制に変えております。ですから、私は当時のことを思い出しますと、なかなか、やはりいろいろ、役所内では私の指示に対して不満顔の職員もおりましたけれども、法的規制を大臣名でやったということも事実でございますので、そこのところを御理解いただきたいと思います。
 今の問題は、それは私、確かに正確な情報をしっかり持っていなかった、情報、知識を持っていなかったということは、四月二十六日に大臣に就任した直後でございますので、これは深く反省しなきゃなりません。大臣になったら、なった瞬間から全責任を負っていかなきゃならぬ、こう思っております。
 ただ、EUも、OIEの新しい基準の採択というのはたしか五月の総会か何かでなかったかと思うんです。五月ですね。それで、EUはこのOIEの基準採択によって、それに準拠したものをつくるという説明だったんです、事務当局は。それで、それは間違いないなということで、実際にEUがOIEの基準に準拠した新しい評価をつくったのは七月なんです。
 ですから、そういうことで私は了としたわけでございますけれども、EUステータスを中断したからといってBSEの発生には私は影響なかったと思うんですよ。これは、肉骨粉の問題が、もう既に侵入していたんです。
 しかし、せっかくEUが情報を日本に提供しているわけですから、本当にざんきにたえないのは、どうしてそういう正確な情報をきちっと公にしなかったのか、それに基づいて厚生労働省や都道府県としっかりした危機対応マニュアルをつくらなかったのかということが残念でならないのでございます。そのことについては、深く反省しております。
中林委員 大臣、もう言いわけはやめた方がいいんじゃないですか、もうはっきり言っているわけですから。
 それで、言われたように、EUのステータス評価を断らなかったら日本でBSEが発生しないなんということを私は全然言わないですよ。それは、初動のマニュアルがつくれていない、これをもし受け入れて、日本にもそういう可能性があるよということに誠実に耳を傾けていれば、そこができて、その後の風評被害をさせなかったでしょう、こういう指摘をしたら、ちゃんとこの報告でも、これをちゃんとやっていたら、「発生時に起きた大きな社会混乱は防げた可能性が高い」、こういうふうにちゃんと報告でも指摘をしているわけですから、そこのところの、私はやはり、OIEに対する、またEUとOIEの違いをちゃんと認識していただかなかった大臣の責任、これは大きかったというふうに思います。
 厚生労働省の副大臣に来ていただいているわけです。今回は厚労省の問題にも報告は触れております。
 私は、二月十三日の予算委員会の質問で、総理に対して、飼料安全法第二十二条、厚生大臣は、公衆衛生の見地から必要があると認められるときは、農水大臣に対して意見を述べることができるということで、今の総理は九六年の秋から厚生大臣になったわけですよ、だから、その点を問いただしたら、総理は、そういう点を含めて今よく調査をしてもらっているんだ、こういう答弁だったわけです。
 その結果が出まして、今回の報告で、BSE問題が人の健康問題として浮上してきた以上、BSE拡散防止の観点から、農林水産省に対して、より明確に厚生労働省は意見を述べるべきであった、こう指摘をしているわけですね。
 この点について、厚生労働省としてどういう反省をされていますでしょうか。
宮路副大臣 厚生労働省といたしましては、BSEに関するWHO勧告、これが一九九六年の四月の三日になされたわけでありますが、そのプレスリリースにつきまして、いち早くそれによって情報を入手いたしましたので、その結果を踏まえて、平成八年の四月の十一日に食品衛生調査会を開催いたしまして、そこでこのプレスリリースを資料として提出して御議論をいただきました。そして、その結果を踏まえまして、翌四月の十二日に農林水産省の方に、WHO専門家会議の勧告について適切な対応がなされるよう要請いたしますとともに、関係資料を提供いたしたわけであります。
 しかしながら、昨日の報告書におきまして指摘を受けましたように、より明確に意見を述べるべきであったという点につきましては、今にして思えば私どもも至らなかったのかなというような、そういう反省をいたしておるところでございまして、その報告書におきます御指摘につきましては、私ども大変厳しく、かつ重く受けとめているところでございます。
中林委員 大臣、いまだに牛肉の消費は回復しておりません。その原因、どこにあるとお考えでしょうか。
武部国務大臣 これは、率直に申し上げまして、消費者の皆さん方にまだ牛肉に対する漠とした不安感が強いんだろう、このように思います。
 私ども、一日も早く消費回復のために今なすべきことは、正確で科学的な情報を国民の皆さん方にきちんとお伝えするということが必要だ、こう思っておりますし、食品表示に対する問題も一因ではないか、こう思いまして、食品表示に対しましても厳しく対処してまいりたい、このように思っております。
 行政に対する不信があることもその背景にあることは言うまでもないことでございますので、この報告書をしっかり受けて、これを尊重して、食品の安全問題ということに真剣に取り組んで、食と農の再生に向けた新たなプランも今作成中です。これは来週中に発表できる、このように思っておりますので、そういった一つ一つの努力を明らかにすることによって、国民の皆さん方に御理解をお願いし、消費の回復に全力を挙げたい、このように厳粛に今考えている次第でございます。
中林委員 四月一日、日本農業新聞がアンケートの結果を発表しています。これは、全国の消費者団体、生協を対象にアンケートをし、三十団体が回答をしております。牛肉の消費が落ち込んでいる理由、「農水省の対応が信用できないため」、四割です、一番多いんです。「偽装表示が多い」が三割です。「BSEが怖い」、これが二二%、こういう結果になっているんですね。
 昨日この報告が出て、消費者団体なども、やはり、食品の安全とおっしゃるならば大臣がおやめになることが一番だ、それが国民に対して見える形だ、こういうことを多くの方がおっしゃっております。
 それから、きょう参考人の方の御意見を聞きました。北海道猿払で実際に酪農をやっている農家の方は、BSEが発生したときと今の事態は全く変わっていない、こうおっしゃいました。自分のところで廃用牛はずっと飼い続けているんですと。やっと動き始めたから妻を説得して、今は計画的なあれに乗せているけれども、近くの人たちはやはり抱え込んでいる、こうおっしゃっておりました。
 生産者に軸足があった、今度は消費者になどとおっしゃっているけれども、自分はそのあれを聞いてがっくりした、決して生産者に軸足など置いてもらっていた気はしない、いろいろな対策をとられて、実際金は入ってくるのも見ている、しかし、事態は少しも変わっていない、こうおっしゃっておりました。
 この間、私も多くの皆さんと懇談を重ねてきて、本当に、自分たちの責任でないところでこんなひどい被害をこうむった、それは生産者の皆さん初め関連業者の皆さん、焼き肉屋さんも倒産が相次いでいると。きょうは焼き肉は回復したみたいな答弁もありましたけれども、それはとんでもないです、現実は。九月以降の国民の苦しみを思ったときに、これだけ大失政だと言われているわけですよ。政策の判断ミスがあったと言われている報告を受けて、小泉首相がやめろと言わなければいつまでも続けるということじゃなくて、ここで大臣の判断が要ると私は思いますよ。国民の皆さんに謝ってちゃんとその職を辞す、これが責任の最大のとり方だと思いますので、ぜひその決断を示してください。
武部国務大臣 先生の御発言、御指摘を私も謙虚に受けとめたいと思います。同時に、今私ども、このBSE問題については、厳しい反省の上に立って、またさまざまな御批判を受けつつ、この解決に全力を尽くしているんです。
 生産者サイドに軸足を置いていたものを消費者サイドに軸足を大きく移すということは、これは生産者のためでもあります。生産者からすれば、田中君からすれば、今先生の御発言のような気持ちにあると思います。しかし、私どもは、食の安全と安心、食と農の一体化、生産者と消費者の間に顔の見える関係を構築するということについて、昨日いただいた報告書に基づいて、これを尊重して、これを形にしていく、まさに今その途上にあると思っているのです。
 先ほども申し上げましたが、針のむしろと言っても過言でありません。どんなに厳しい状況の中に立たされていても問題解決、投げ出してはいけない、逃げ出してはいけない、やり通して解決していくんだ、そういう強い決心とともに、厳しい御批判に対しては謙虚に耳を傾けて職責を全うしたい、かように存じます。
中林委員 終わります。
鉢呂委員長 これにて中林よし子さんの質疑は終了いたしました。
 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 きょうの委員会も午前九時から始まって、もうかれこれ十時間になんなんとしております。最後のバッターになりましたけれども、この問題、私は、大臣、冒頭申し上げておきたいと思うんですが、これまでのこの委員会なり予算委員会で私は質問を繰り返してまいりました。そして、大臣は、その都度、このBSEの調査検討委員会、この結論を待っているんだ、そういう形で今日まで来ているというふうに思っています。
 そして、四月二日にこの調査検討委員会からの報告が出たというのは、このことの重みというものは非常に重いものだと思います。過去のこのいろいろな重大な失政ということで一言で語られますけれども、過去のことは過去として、農水省もすべての人心を一新して、これから前向きな議論をしていこうという形で、四月二日のこの調査検討委員会だったというふうに思っています。
 こういう状況の中で出された検討委員会のこの調査結果を踏まえて、私は、大臣、本当に、過去の議論は調査検討委員会ですべて議論して、すべて国民の前に明らかにした、これから前向きに進んでいこうという決意が、政府全体、私どももそういう決意で今臨んでいると思います。
 そういう状況で、人心一新という言葉があります。過去の状況のことは触れない、後は触れない、そして前向きに議論していこうというこの人心一新という言葉、このことをどうとらえて、大臣、対処しようとしているんですか。このことをしっかりと大臣に受けとめてもらいたいと私は思うのです。
武部国務大臣 人心一新という言葉は重みのある言葉です。私も好きな言葉です。しかし、農林水産省、この一月に人事の大刷新をいたしました。そして、農林水産省大改革の第一歩にした所存でございます。
 委員は、私に責任をとってやめろ、こうおっしゃりたいんだろうと思いますが、やめることは簡単だと思います。泥まみれになっても、逃げず、投げず、やり通す、そして問題解決に全力を尽くす。これが半年間、BSE発生以来さまざまな御批判もいただき、私自身も反省もさせられ、同時に、ささやかながらいろいろな知恵も与えられ、問題解決へ向けての方向性というものを明らかにして、生産者サイドから消費者サイドに軸足を大きく移して、消費者保護第一で農林水産省の新しい出発をさせるんだ。そのことについても、食と農の再生プランということについても来週中にはこれを発表できると思います。
 既に私どもは、今申し上げましたような改革への途上にあります。報告書もいただきましたが、これは公開でありますので、逐次報告書の議論にも耳を傾けながら、我々は、単に待つだけじゃなくて、調査検討委員会の議論にあわせて改革に踏み出しているわけでございまして、食品の安全問題についての法整備あるいは行政組織のあり方等々、真剣に今取り組んでいる次第でございますので、そのことを御理解願えればありがたいと思います。
菅野委員 大臣がどうしてそんなにこだわるのかということが私自身はわからないんですけれども、過去の、きょうの議論もそうなんですが、農水省の責任をこれまでずっと追及してきました、問題点を指摘してきました。そのときに、大臣は、この調査検討委員会にその問題点の調査はゆだねているから、その調査検討委員会ですべてのデータをもとにして十分検討した結果を、その結果によりますということで答弁してきたわけです。
 それで、この四月二日にこの重大な失政ということの報告が出ました、検討委員会の。この検討委員会の重大な失政という報告をどう重く受けとめているのかということを聞きたいんです。
 そして、私どもが、この検討委員会の結果をもとにして、大臣がこれからも農水大臣として続けようとすれば、また検討委員会で不十分な点も含めて、これから大臣を過去にさかのぼって、農水省の失政というものの具体的な部分をまたこの国会で追及していかざるを得ないという、前向きな議論には展開していかないんだ、このことが人心一新というものの言葉の持っている重みだというふうに思うんです。このことをどう考えているんですかということを冒頭聞いているんです。
武部国務大臣 もうこの委員会でも予算委員会でも、随分責任については厳しく追及されました。しかし、私はやはり、この大変なBSE問題に傷だらけになっても立ち向かっていかなければならぬという責任感を持っているわけでございます。そのつもりでございます。
 そして、この調査検討委員会をなぜ設置したかということについては、何度も申し上げました。私は、BSE発生当時、これは行政に構造的な問題がある、縦割り行政の弊害もあるのではないか、役人任せにはできない、したがって政治主導で執念を持って徹底究明していこう、そのためにはやはり客観的な検証が必要なんじゃないだろうか、科学的な知見というものに基づいた検討が必要なんじゃないかということで、厚生労働大臣にも相談して、私的諮問機関として調査検討委員会を設置させていただいたんですね。
 ですから、私が、そこで出てくる提言、報告書というものを待って、そしてそれに基づいた改革案に全力を尽くそう、こう思っていた次第でもありますし、また、私どものとるべき責任ということについても熟慮させていただいておったわけでございます。
 今私がとるべき責任というのは、先ほど申し上げましたように、調査検討委員会の報告をしっかり受けとめて、これに基づいた改革に全力を尽くす、こういうふうに決意を新たにしている次第でございます。
菅野委員 大臣はずっと九時からのこの議論でもってそのことを強調されてきました。もうすっかり耳の中に大臣の答弁はこびりついているんですが、先ほど中林委員も言ったんですが、国民感情としてどう思っているかということを考えてほしいと思うんです。そして、これから具体的な政策展開をやっていくときに、国民のあるいは消費者の信頼を得ることなくして新たな政策展開というのはできていかないんじゃないですか。このことを考えてほしいというんです。
 それで、私は、今回の一連の経過の中で、牛肉の安全への不安、不信、これを招いたこと、これは農水省の重大な失政によって招いたことなんです。これを払拭していく手段を、大臣として、それでは国民の前に具体的に今示し得ますか。このことを具体的に、国民が農水省の重大な失政に対して不安を持っている、不満を持っている、こういう中で具体的に示し得ますか。この道筋をそれでは示してください。
武部国務大臣 重大な失政ということ、これは一九九六年の肉骨粉の問題について行政指導にしたということが重大な失政と記述されているなどというようなことをあえて私は言うつもりはありません。しかし、同時に、こういうお話はこういう場ではしたくはなかったんですけれども、あの報告書の中には、BSE問題を契機に大臣を初め改革への取り組みが見られることは評価できる、こういうふうにも書いているわけでございます。
 それはどういうことかというと、生産者サイドに軸足を置いた農政から消費者サイドに軸足を置いて、消費者保護第一でこの農林水産省の政策を見直していこう、農林水産省の大改革を進めていこうという、そのことを評価していただいているんだろう、こう思います。
 今先生が、国民にその道筋を明確にできるのか、こうおっしゃいましたが、私は、食の安全、食と農の一体化、消費者と生産者の顔の見える関係、食品問題についての法整備や食品問題についての行政組織、リスク評価、リスク管理、リスクコミュニケーションといったものの組み合わせをどうとっていくかということを明らかにしていくことが、それは、すぐ、きょう私がこういう答弁をしたからといって直ちに国民の皆さん方が理解してくれるとは思いません。
 私は、それは、国民の皆さん方の理解や評価をいただくためには相当しっかりした対策を講じていくこと以外にない、こう思っているわけでございますので、そのことに真剣に取り組んで実績を積み上げていきたい、実を上げていきたい、こういう決意であることを、何度も同じことばかり申し上げて恐縮でございますけれども、そういう考えでございますので、御理解を賜りたいと思います。
菅野委員 私は今、農水行政にこのBSEが発生して以降、あるいはそれ以前の重大な失政に対して、国民世論は本当に農政不信に陥っています。四月二日、この調査報告が出て、マイナスから出発するのと過去のことはゼロにしてそこから出発するのとでは、これから取り組む方策というものが全然違ってくるというふうに思っています。
 消費者にこの不安を与えたこと、これを申しわけなくなって、謝って、そして理解してもらって、そこから出発するというのが今日この調査検討委員会の報告が出た形でのとるべき道だというふうに思っています。そして、この調査検討委員会の報告を受けて、人心一新をした上で、新たな体制でもってこの検討委員会のことを踏まえてやるのが、私はこれからの大臣のとるべき道だというふうに思っています。
 なぜこのことを申し上げるかというと、今日のこの調査検討委員会の段階で、六カ月間で、先ほども参考人質疑で言いました、委員会としては六カ月(一年)というふうにあったんですが、それを一年という部分を取って、六カ月で、そして食の安全を確保する体制をつくろうとしているんです。このことは、消費者団体も含めて、農林水産省が信頼を得た上でないと進まないということなんです。
 そして、六カ月間でもってこのことをやっていこうとするときに、この法整備や組織整備、あるいは科学技術者の確保、このことを国民全体で議論していってつくっていかなきゃならないことだというふうに思っています。単に農水省だけでつくればいいという問題ではなくて、国会等も含めて、そういうときに、これまでの不信というものを一切一掃した形での取り組みの中で、初めて実現されることではないんでしょうか。
 農林水産大臣、こういう意味に立って、六カ月間で国民の信頼をかち取って、そして新たな体制をつくるだけの覚悟と理念をどう持っておられるのか、これをお聞きしておきたいと思います。
武部国務大臣 報告では六カ月間ですけれども、昨日、総理の御指示は、食の安全にかかわる法制度整備、さらには食品安全にかかわる行政組織のあり方等々について、夏ごろまでにまとめよという指示です。これは大変なことです。さらに、夏ごろまでということは、これは十五年度予算に反映させようということでございます。
 私ども、今どういう理念でというお話ですが、何度も申し上げておりますように、調査検討委員会の議論と並行して、どういう方向で農林水産政策を改革していくべきか、見直していくべきかということについては先ほど来申し上げた次第でございますが、消費者に軸足を置いた農林水産政策に転換するということです。食と農の再生プランというものについても、来週中には発表できるというところまで準備しております。
 私、不徳のいたすところ多々ありますけれども、この半年間に、深い反省の上に立って、厳しい御批判をいただきながら、消費者の皆様方や生産者の皆様方、国民の皆様方あるいはまた国会の皆様方のさまざまな意見に耳を傾けまして、今申し上げましたような一つの理念に基づいて、今、改革案あるいは改革政策というものを樹立しつつございまして、急がなければならないという、そういう状況にあればこそ、私自身が先頭に立って努力していかなければならないという思いを強くしているということを御理解いただければありがたい、かように存じます。
菅野委員 この調査報告書では、最後にこう言っているんです、「欧州各国における食品安全機関の再編成を参考とするに当たって、組織・機関をそのまま日本に導入することは危険である。」と。私もイギリスとベルギーとフランスに行かせてもらって、この実態は見てまいりました。このことは、この文章はよくわかるつもりです。それで、「欧州における状況を精査し、日本における現状とを具体的に比較検討した上で、新しい行政組織を構築していくべきである。」というふうに、これは最後の結びの文章です。
 これは、調査検討委員会としては方向性はつけていないんですね。この状況、これは、多くの国民的な議論の中で検討していく課題であるというふうに位置づけられています。国民的議論というのは、農林水産行政への信頼がなくて国民的議論は展開されていかないんじゃないですか。このことをどう考えていくのか。そして、不信を払拭するためにまた二カ月、三カ月、四カ月かかるということであれば、六カ月以内にはこの組織体制というのはできていかないんじゃないですか。このことを考えてほしいということなんです、私の言っているのは。
 そういう意味では、最後の、調査検討委員会におけるこの一項目ですね、ワンセンテンス、このことに対して大臣はどういう理念を持っているんですか、このことを聞きたいんです。
武部国務大臣 総理からは、官房長官……(菅野委員「総理じゃないですよ、農水大臣としての見解」と呼ぶ)いやいや、総理からは、官房長官、坂口厚生労働大臣、それに私を初め関係閣僚による関係閣僚会議を五日の閣議で決めて、早速、この問題について政府全体としてどういう方向で取り組むべきかという、そういうこともスタートせよという御指示もございました。
 私は私なりの意見もございます。例えば、リスク評価、リスクアナリシスというような観点に立てば、やはりリスク評価とか予防原則という問題については、専門家、そういった集団が独立して必要なのかな、このように考えております。
 同時に、リスクマネジメント、リスクコミュニケーションという問題についてどう取り組んでいくか、農林水産省としてもそのことを今真剣に構想をまとめつつあるわけでございまして、そのほか、食品表示への信頼回復の問題等々もございます。
 そのことについては、政府全体で、関係閣僚会議を一つの場にして、国民の皆さん方の意見をしっかり聞いた上でやっていくというのは言うまでもないことでございまして、であればこそ、私は、間断なく、投げ出さず、逃げ出さずやり通すという決意で臨む必要がある、こう考えておるわけでございます。
菅野委員 大臣と私の認識というのがかなりかけ離れているようで、どうも、私の考えていることと大臣の思っていることというのはこんなにも乖離しているのかな。このことは、国民感情と大臣が思っていることの乖離のあらわれだということを私は指摘しておきたいというふうに思っています。
 それで、もう一つ解決しなければならない問題なんですが、日本の畜産業、酪農といってもいいです、酪農をどう再建していくのか、これは、確かに乳価の問題でありますけれども、根本的な問題が私は解決していないというふうに思っています。
 乳価の価格形成の構造がどうなっていくのか。私も、雪印乳業の食中毒問題が発生したときにこのことを指摘しましたけれども、牛乳価格、生乳価格が量販店を中心にして価格形成が行われている実態が存在します。そして、この価格低迷、乳価の価格低迷によって、酪農家はどんどんコスト削減を迫られてきています。
 コスト削減というのは、大量に搾乳する方法ということでやってきたというふうに思うのです。そして最後に、コスト削減の行き着く先は、飼料価格まで、この価格低下の影響というのが飼料の価格削減まで到達していった。そういう中から、今回のBSEの発生につながっていく一つの要因になるというふうに私は思っています。
 こういう酪農を取り巻く体系、流通体系も含めて、このことにどうメスを入れていくのか、このことなしには、日本の畜産業、酪農というものの持続的発展はないのではないのかなというふうに私は思っています。それと同時に、このことをやるときに、消費者とどう理解を共有していくのか、このことも重要な課題だというふうに思っています。
 大臣、この酪農を取り巻く状況というものをどう認識して、今後どのような方向でやっていこうと考えているのか、お聞きしておきたいと思います。
武部国務大臣 酪農経営のあり方というのは、周辺を取り巻く環境というのはさまざまですね、経済の低迷を背景にして、生乳などはなかなか伸びないということが一つあります。それから、加工原料乳地帯におきましても、去年の夏から北海道あたりはちょっと伸びてきておりますけれども、なかなか乳量が伸びません。
 そんな中で、生産者は、少しでもコストを安くするための努力をしているわけでありますし、一方において、環境問題というのは非常に深刻になってきております。そういった問題を考えますと、酪農経営の体質強化ということについて相当な努力が必要だ、このように思っております。
 また、コストに見合う価格ということでの取り組みも重要だ、このように思っておりまして、同時に、やはり生産者と消費者の顔の見える関係というものをしっかり構築していくということが、今後の牛乳・乳製品の安全性確保にも通ずるものである、そして、これは消費にも通ずるものである、消費者の理解を求める取り組みでもある、こう考えております。
 そのほか、いろいろ経営体のあり方等々、私なりに構想はありますが、もし具体的なことを先生望むのであれば申し上げますけれども、そういうことで、真剣に今取り組み中でございます。
 しかし、酪農については、私は、相当力を持って頑張っている生産者もふえてきているんじゃないか、そういった方々に勇気を与えるような努力をしていかなきゃならない、このように思っております。
菅野委員 先ほど、筒井委員からもこのことは、今日の酪農の実態ということで、酪農の工業化、畜産の工業化という方向に行っていることの問題点が議論されました。調査検討委員会でもそこまで触れていますから、前向きに、どうあったらいいのかの議論も含めて、これから、私は、先ほど言ったように、消費者も交えてこの議論をしていかない限り、根本的な解決になっていかない、量販店では、客寄せの目玉に牛乳とか卵がなっているという現実があるわけですから、ここにメスを入れていかない限り、消費者とそれから生産者という形の関係は改善されていかないということを申し上げておきたいと思います。
 非常に重要なことだというふうに思っていて、このことに対しても、この議論をやるにしても、国民の、消費者の農水行政に対する信頼がなければ、行われていかないんです。このこともしっかりと念頭に置いておいてほしいというふうに思います。そういう意味においては、大臣の思い切った決断というものがそこにはなければならないということを申し上げておきたいと思います。
 最後に、時間がなくなりました。問題点だけ指摘しておきたいと思います。
 レンダリング事業、これは今、国の肉骨粉の買い上げによって維持されております。このことをいつまで続けるつもりなんですか。
 そして、このレンダリング事業というのはなくてはならない事業であるということなんですけれども、そのことも前向きに検討していかなきゃならない課題ではあるということなんですが、調査検討委員会では一切触れられていません。そして、今後の方向性についても、これは重要な課題のまま残っているというふうに私は思っています。
 これも、半年や一年をかけて議論する中身ではなくて、具体的に早急にこれからこうするという方向性を明示しなきゃいけない課題だと思うんですが、大臣、一言だけ答弁願います。
武部国務大臣 委員御指摘のことはまことに大事なことだ、このように思っております。
菅野委員 私は、ずっと一連の、これからの多くのBSEが抱えた問題点を解決していくためには、すべての国民挙げて解決していかなければならない、そして、すべての国民を挙げてということは、農林水産行政に対する国民の信頼を取り戻すことが先決である、そのためには、農林水産省としてはっきりとした責任を国民の前に明確にするのが今の時期だということを申し上げて、私の質問を終わります。
鉢呂委員長 これにて菅野哲雄君の質疑は終了いたしました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後七時二分散会


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