衆議院

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第5号 平成13年4月12日(木曜日)

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平成十三年四月十二日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 川端 達夫君

   理事 中谷  元君 理事 浜田 靖一君

   理事 水野 賢一君 理事 山口 泰明君

   理事 高木 義明君 理事 牧野 聖修君

   理事 田端 正広君 理事 藤島 正之君

      岩屋  毅君    臼井日出男君

      嘉数 知賢君    金子 一義君

      瓦   力君    下地 幹郎君

      新藤 義孝君    中山 利生君

      林  幹雄君    山崎  拓君

      山本 明彦君    吉川 貴盛君

      米田 建三君    小林 憲司君

      今野  東君    島   聡君

      首藤 信彦君    渡辺  周君

      河合 正智君    赤嶺 政賢君

      今川 正美君    井上 喜一君

      小池百合子君    粟屋 敏信君

    …………………………………

   外務大臣         河野 洋平君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      斉藤斗志二君

   防衛庁副長官       石破  茂君

   外務副大臣        衛藤征士郎君

   防衛庁長官政務官     岩屋  毅君

   防衛庁長官政務官     米田 建三君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    首藤 新悟君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  柳澤 協二君

   政府参考人

   (消防庁次長)      片木  淳君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   安全保障委員会専門員   鈴木 明夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十二日

 辞任         補欠選任

  宮下 創平君     山本 明彦君

  山崎  拓君     林  幹雄君

  吉川 貴盛君     新藤 義孝君

  伊藤 英成君     島   聡君

  小池百合子君     井上 喜一君

同日

 辞任         補欠選任

  新藤 義孝君     吉川 貴盛君

  林  幹雄君     山崎  拓君

  山本 明彦君     宮下 創平君

  島   聡君     伊藤 英成君

  井上 喜一君     小池百合子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件 

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二九号)




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     ――――◇―――――

川端委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、政府参考人として防衛庁防衛局長首藤新悟君、防衛庁運用局長北原巖男君、防衛庁人事教育局長柳澤協二君、消防庁次長片木淳君及び外務省北米局長藤崎一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川端委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

川端委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。

首藤委員 おはようございます。民主党の首藤信彦です。防衛庁設置法改正の問題について、斉藤防衛長官にまずお聞きしたいと思います。

 本件の改正というものは、地域紛争やテロリズム、社会の騒擾、いわゆる低水準紛争と言われるものへの対応や、あるいはサイバーテロリズムなどの高度な技術化、また最近課題となりました災害対策支援など、このような激変する安全保障環境と、変容し多様化するニーズに対応するために防衛庁が本格的に対応しようとしているものであって、評価すべきものである、そういうふうに考えております。それを前提に、二点ほど質問させていただきます。

 一つは、防衛庁設置法の改正において、自衛官の定数改定ということが最初にテーマとして上がっています。この点に関しまして、斉藤長官がみずから趣旨説明において、これはなぜそういうことをするかということに関して、都市部における災害対応やゲリラ、特殊部隊による攻撃への対処を合理化、効率化するために、第一師団の改編をその根拠と説明しておりますけれども、御存じのとおり、日本は災害列島と言われるように、どこで大規模災害が発生してもおかしくはない。そういうような状況の中で、関西、九州、四国、北海道などで発生すれば、たちまち交通は分断されて、せっかく改編され近代化された第一師団がその用をなさないのではないか、そういうふうに考えることも可能だと思います。

 その意味において、この設置法を改正し、定数改定、しかもその背景に第一師団の改編ということが最大の眼目となっておるのであれば、さらに現実的に、災害対策という点に関しても、九州、四国、北海道や関西方面などで師団の改編を行う必要があるのではないかと考えますが、斉藤防衛長官はいかにお考えでしょうか。御意見をお伺いしたいと思います。

斉藤国務大臣 お答えいたします。

 防衛庁といたしましては、今回改編する第一師団に限りませんで、すべての師団についても、各種災害やゲリラ、特殊部隊による攻撃など、多様な事態により適切な対処をし得るよう、機動力の向上や装備の近代化を図りながら、地域の特性にも応じた編成に逐次改編をしているところでございます。

 具体的には、防衛大綱の考え方に基づきまして、新たな体制への移行として、平成九年度から全国のすべての師団についても、その配置している地域の特性を踏まえまして、沿岸配備型、また戦略機動型、さらに政経中枢型などの幾つかの形の特徴を出しまして、編成を逐次改編しているところでございます。

 また、昨年十二月に定められました新中期防におきましても、防衛大綱の定める新たな体制への移行を重視いたしておりまして、おおむね達成することができるというふうに思っております。

 防衛庁としては、この新たな体制への着実な移行を図る、今後とも我が国の防衛及び各種の災害を初めとした事態への対処に全国的に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

首藤委員 御趣旨はよくわかりました。それではもう一点、この点に関して質問させていただきます。

 この改正においては、新たな企画として、任期付隊員ということがその眼目としてうたわれています。それは、今後のそうしたさまざまな安全保障環境の変化に対応するための人員の増強であるというふうに考えられるのですが、自衛隊法三十六条改正において任期付隊員の要件が規定されています。その必要性を考慮しますと、例えば、外国語、言語それから通信技術、さらには数字や暗号などのIT関係能力、こういったものを持っている者が対象として考えられるのですが、こうした言語それからIT関係能力というものは、もう既に、技能、技術レベルにおいて量的には日本国籍保有者のみでは対応できないということが経済面で多く指摘されているとおりであり、また現実もそのとおりだと思います。

 そういうことを考えますと、実際にこうした隊員が本当に必要となるような状況では、外国籍保有者も隊員の対象とせざるを得ないのではないか。そうしますと、今までの日本の自衛隊、日本人、日本国籍を持った者を前提とする、当然のことですけれども、そうした自衛隊のあり方というものが、この任期付隊員においては修正する可能性があるのかどうか、その辺の展望について斉藤防衛庁長官にお聞きしたいと思います。

斉藤国務大臣 ただいま国籍に関する御質問だったというふうに思います。

 一般に申し上げますと、公権力の行使に携わる公務員となるためには、日本国籍を有することが必要と理解されております。自衛官などの隊員の採用におきましても、受験資格において、日本国籍を有しない者の受験を認めていないという現実がございますし、この方針に今回変更はございません。また、今度新たに導入いたします予備自衛官補についても申し上げますと、これは非常勤の自衛隊員でありますが、所定の教育訓練修了後は予備自衛官に任用されまして、有事の際には招集された常勤の自衛官となるものでございまして、このような者が日本国籍を有することが必要であることは、公務員としては当然であると私ども考えております。

 今回、導入を予定しています予備自衛官補制度におきましては、ただいま御指摘もいただきましたけれども、医療従事者、語学要員、コンピューター技術者等、民間のすぐれた技術、技能を有する者を採用する技能公募を設ける予定でございまして、その技能公募の具体的な内容については、自衛隊としては、必要な技能を今後精査した上で、日本国籍を有する者の中から必要な技能を有する者を採用していきたいというふうに考えております。

首藤委員 その方針はよくわかりました。

 ちょっと、私、斉藤長官に言いたいのですけれども、この部分は速記は結構ですけれども、私が質問しているので、ぜひ、この辺を見ないで、私の顔を見て回答していただければ、やはりお互いの意見交換として役立つと思うので、今後のためによく頭の中に入れておいていただきたいと思いますけれども、今のは速記は結構です。

 それでは次に、日本の安全保障にとって恐らく極めて重要であろうし、また、歴史においてこの辺が日本の安全保障の転換点になったのではないかということが、恐らく将来の歴史書には書かれるであろう海南島における米軍偵察機の強行着陸の事件について質問したいと思います。

 まず、石破副大臣にお聞きしたいのですが、この事件、そもそも米軍機のEP3と中国の空軍機との接触というものが一体どこで起こったのか、正確にその位置を特定していただきたいと思います。

石破副長官 これは、アメリカと中国との両方の発表を総合して申し上げますが、日本時間の一日の午前十時過ぎに、南シナ海の海南島南東の公海上空、これを航行しておりました、通常の偵察活動を実施しておりましたEP3、アメリカ海軍の哨戒機でございますが、これが追跡した中国海軍のJ8戦闘機二機のうちの一機と空中接触したというふうに承知をいたしております。

 南シナ海の海南島南東の公海上空、こういうふうに認識をしておるところでございます。

首藤委員 それは、南東といえばずっとフィリピンまで南東なんですね。この問題は、この事件が一体どこで起こったか、そのポイントを正確に把握するということが一番重要な点なんです。

 それから、ただいま副大臣から十時ということを、アメリカ及び中国の情報を総合して十時という発言がございましたけれども、人民日報の四月一日版によりますと、九時七分、海南島東南の百四キロ海上ということになっています。この情報が正しいのかどうか、確認をお願いします。

石破副長官 時刻につきましては、私どもは十時過ぎというふうな認識をしておるところでございます。

 なお、位置につきまして、アメリカ側の発表におきましては、海南島沖七十海里、約百三十キロというふうに申しておりますし、中国の方は海南島東南、今先生がおっしゃったとおりでございますが、百四キロというふうに公表しております。両者の間に乖離があることは事実として認識をしておるところでございます。

首藤委員 この問題は、最大の眼目は、これが領空の侵犯に当たるのかどうか、すなわち米軍機の行動に犯罪性があるのかどうかということが問題となるということは明らかであります。

 それから、海洋法条約においてもその他の国際的な取り組みにおいても、領空と考えられる地域において発生したこういうような事案に関しては中国刑法において罰せられるということが人民日報、中国側の主張であります。

 それはさておき、当初においてはあくまでもこれは公海上という形で言われ、我々もそういうふうに主張しているわけです。しかし、現実にCBSでパウエル国務長官が発言している、人民日報で書いてある、あるいは日本のメディアでも書かれていることを言いますと、第一に、パウエル長官は、緊急着陸のときは当然のことながら、領空を侵犯した、これはある意味で緊急状態ではしようがないということを暗に示しているわけですが、同時に、やはり領空侵犯があったという認識をパウエル長官がしていると思いますが、その点は日本の防衛庁としてはどのように見解をお持ちでしょうか。

石破副長官 失礼いたしました。先ほどの時刻につきましては日本時間ということでございますので、時差がございます。十時過ぎ、それは九時七分というような御指摘と一致しようかと思っております。訂正させていただきます。

 今のお話についてでございますが、接触が起こったのは公海である。中国の主張を聞きましても、その後領空を侵犯した、こういうふうに申しております。また、そのエマージェンシーを、メーデーですか、これを米側の哨戒機が発信したということも、これは米側の方は言っておるわけでございます。そうしますと、事故が起こったのが公空である、その後緊急着陸をするために領空に進入したということ、そこは事実として確認をすべきことかと思っております。

 問題は、先生御指摘のように、救難信号を発信しながら着陸をするということが領空侵犯、委員のお言葉をかりれば犯罪性というのでしょうか、そういうものに該当するかどうかは、これは一概に論ずることは難しかろうかと思っております。個々具体的に事案は今までも判断をされたことでございまして、確立した概念があるとは私は承知をいたしておりません。今後それは米中間においていろいろな意見の交換、また解決に向けての努力がなされるというふうには思っております。今のところ一概に申し上げられないというような御答弁しか申し上げられません。

首藤委員 事実確認をもう一度防衛庁にしたいと思うので、もう一度副大臣の御意見をお伺いしたいんです。

 この件に関しては、緊急不時着であるという、要するに、接触したので二千四百メートルも落下して、緊急に着陸せざるを得なかったという考え方と、これは香港筋から出てきているように、一機が、結果的に中国の軍機が墜落した、それを見て同僚機が米軍機を撃墜しようという命令を求めた、それに対して中国側は、それでは戦争になってしまうと言ってそれはやめさせて、そして海南島に不時着させた、強制着陸させた、そういうシナリオが考えられているんです。

 客観情勢から見ると、それも可能性としてなきにしもあらずでありますが、事実認識としては大変な差があるわけです。日本の防衛庁はそれをどのように、どちらの方にとっておられるか、その見解を伺いたいと思います。

石破副長官 香港側でそのような報道がなされておることは承知をいたしております。その両者によって全く事態というものの把握は異なるということも、委員御指摘のとおりでございます。

 ただ、そのことについて私どもがどちらであると認識しておるかということについて、今確たるお答えを申し上げることはできません。そのことについて情報を有しておるわけでもございません。ただ、御指摘のように、繰り返しになりますが、そのことによって事態の性質は全く異なるということは事実でありますし、情勢の把握に努めてまいりたいと思っておるところでございます。

首藤委員 いや、副大臣、それはおかしな話ではないですか。日本はアメリカと安全保障条約を結んでいる。これが日本の非常に近いところで起こった。しかも、日本のシーレーンとも関係し、目の前にはベトナムがあり、日本の国益とも大変関係のあるところであります。それに対して、事実をアメリカ側が日本の防衛庁に伝えていない、防衛庁がこれを判断できない、こんなばかな話はありますかね。

 私は、多少なりとも軍関係の調査をして研究している者ですが、米軍機、米艦船において多くの場合大体ビデオを積んでいる。ですから、細かいところまで全部ビデオが入っているというのが現状であります。ですから、それが、要するに不時着であるのか強行着陸であるのか、あるいはまた強制的に着陸させられているのかというのは、当然のことながらビデオにびっしり撮られているはずでありまして、それを知らないというのは防衛庁が隠しているのかあるいは伝えられていないのかでありますが、その点はどちらでしょうか。

石破副長官 私も委員と同じように、このことが日本の安全保障にとって極めて重大な問題であるという認識は持っております。

 ただ、実際、今、委員、ビデオというふうにおっしゃいました。そういう可能性も十分にあるだろうと思っております。乗員は今帰ってきておらないわけであります、まだ現時点においては。したがいまして、ビデオに撮っておったとしても、それを仮に持ち帰ることが、仮にあったとしての話でございますが、そうすればそういうことが明らかになるのかもしれません。

 しかし、現時点においてそのことについて申し上げますと、物事両面があろうかと思っております。私どもがそれを了知しておる、そのことをまた明らかにするということが安全保障上どうなのかということにつきまして、こういう場でお答えをすることにつきましては差し控えさせていただきたい。

 しかしながら、委員の御指摘のことがまさしく国の安全保障上極めて重要なことである、そのことについて正確な認識を持つこと、その努力は極めて大切であるということ、私はそのことにつきましては強く認識をしておるところでございます。

首藤委員 それで結構です。今の段階ではその程度において、この問題は今後も発展していく問題であろうと思いますし、外務委員会を通して、また当委員会を通してこの原因究明についてあるいは事実調査について進めていきたいと思っております。

 これはもう本当に重要なことで、これを米中間のさまざまな交渉パッケージの中で解決されるんではなくて、我が国もきちんとこの問題に関して事実を調査し、我が国の見解、意向を持ち、そして、アメリカとの関係においてそれをきちっと主張していくことが重要だということに関しては、ほとんど認識の差はないと思いますので、今後はこれを続けていきたいと思います。

 次に、このEP3でありますが、外務大臣の答弁によれば、日本にはEP3が岩国基地に五機いると言われていますが、それは本当でしょうか、副大臣。

石破副長官 EP3というふうに呼称しております、名前がついております飛行機を、岩国に五機持っていることは事実でございます。

首藤委員 これは「日本の防衛」という、まあ防衛白書みたいなものですね。日本の主要な装備はこれに載っているんですよ。今度の平成十二年版、防衛庁の方なら、皆さんもうこれはどこにあるかぐらい暗記しておられます。二百九十四ページですか、主要航空機の保有数、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊とありますが、この中に、EP3は一体どこに含まれていますか。

石破副長官 実は、私も同じ疑問を持ちましてこれを読みました。これはどういうことなんだということを確認もいたしました。

 これはP3Cの中に含まれております。P3Cのバリエーションの中に入っております。もう少し詳細なものには、このEP3というものを別個立てにして記載しておるはずでございます。

首藤委員 これは大変な問題なんですよ。大変な問題ですよ。防衛庁の方はよく御存じでしょう。どんがらはP3Cなんですよ。中は違うんですよ。全然違う機種なんですよ。格好は似ている、しかし、対潜を哨戒するのと空中に飛び交う電波を大量に採取するのは、全く違う目的を持った全く違う飛行機なのです。ベースとなる飛行機は同じでも、全く違うものをこういう形で記載していることに関して、これは大変な疑問を感じないわけにはいかない。この件がなければ、恐らく我々も気づかなかった。

 しかし、EP3という機種はこの中に含まれてはいけないのです。これは別個にEP3として、別機種として、こういう情報専用の機種をどれだけ持っているかということは、きちんとわかるようにしなければいけないのです。この点に関しては、大変な問題だと思いますが、時間がないので。この問題の趣旨ではない。

 趣旨は何か。今度の海南島で不時着したアメリカのEP3の情報というのは、かなりの部分が中国側に渡ったと思います。私も多少長く研究して、秘密情報というのは破壊しても破壊し尽くせるものではないと。それが一部のものであればともかく、全部が向こうに行ったら、たとえメーンのハードディスクが破壊されていても、ほんのちょっと、それを実際に運用している人が、ああ、ここのところはここのハードディスクに入れておこう、ここのところは自分のフロッピーディスクに落としておこうというものがたくさん部品のように散らばっていて、それを総合すると実は機密がわかるのです。

 ですから、この点に関しては、EP3が捕獲されたということは、連合国、それから同盟国である日本の機密情報もかなりの部分が漏えいし、なおかつ、これをベースとした日本に持っているEP3のシステムは全く役に立たない。そうすると、我が国の防衛予算に対しても膨大な甚大な損害であるということがわかる。

 この点に関しては、防衛庁長官の御見解をお聞かせ願いたいと思います。

斉藤国務大臣 今、海南島にございますEP3でございますが、すべての関係が明らかになっていない状況でございます。御指摘いただきました収集された情報そのものにつきましても、私ども入手しているわけではない状況でございます。

 しかしながら、いろいろな共通点もあるという御指摘の中で、今後いろいろな事態が想定されるのかな、そういったことも幅広く視野に入れながら、御指摘の点についてはしっかりと対応していきたいというふうに思っております。

首藤委員 斉藤防衛庁長官は肝っ玉が太いのか知りませんけれども、これはもう本当に日本の安全保障上、大変な問題であります。ですから、もう限られた時間ではそれを討議することは本意ではないし、また、これはもっと重要な問題でありますから、継続してこれから研究していきたいと思っています。時間がないので、また御意見をお伺いしたいと思いますが。

 最後に、長官にお聞きしたいのですが、本件は周辺事態とお考えですか。いかがですか。

斉藤国務大臣 周辺事態というふうには思っておりません。

首藤委員 では、防衛庁長官の周辺事態というのはどこまでを想定されていますか。これはもう日本にとって直接影響があるものだと思いますけれども、防衛庁長官の周辺事態の認識をお聞かせ願いたい。

斉藤国務大臣 周辺事態というのは、その状況を申し上げるということだと思います。したがいまして、個別にこれはこうだ、こういうことはなかなか言えないのではないかというふうに考えております。

首藤委員 これは仮定のことで質問してもしようがないという意見もあります。しかし、我々が考えなければいけないのは、これは中国筋からの情報のように、もし同僚機が落とされて、それを見ていた僚機が感情的になってこれを撃墜したら、当然のことながら二十四名の乗員の命は失われ、当然これはもう発火点となったはずなのです。大変深刻な場所であり、状況であるのです。

 この件に関しても、余りにも問題が大きくて、私の残された五分の中で追及するわけにはいかない。これはまた別途追及させていただきます。

 これは現在、アメリカと中国の中で、こういう問題で解決しようという形で手打ちが早急に進んでいます。しかし、これは我が国にとって重要な問題なので、我が国も独自の調査網を持ってしっかり研究し、民主党も独自の研究をして、そして、日本の安全保障にとって将来大変危惧になってくるであろうこの事件を徹底解明し、また国会で討議していきたいと思っています。

 最後に、斉藤長官にお聞かせ願いたいと思います。

 私は、先日、防衛大学校の卒業式に列席しました。大変立派な卒業式でございまして、自由民主党、民主党だけでなくて、将来は、社民党もそれから共産党も、すべての国会議員、国民を代表する議員が、こういう日本の防衛、日本の安全を守っている、守ろうとしている若者の卒業式にぜひ列席すべきだ、そのように私は考えております。

 大変立派な卒業式で、招待客の祝辞も大変立派なものでした。自分の軍隊経験を通して、その体験から、現在の日本の防衛に関係する若者に対してそれを鼓舞する、大変立派な祝辞であったと思います。

 招待客の祝辞を述べたのはどなただったでしょうか、斉藤長官。

斉藤国務大臣 前の、元……(首藤委員「私の方を見て」と呼ぶ)今思い出しているので。富士通の会長を務められた山本さんだったと思います。

首藤委員 ここにあるのは、その方の祝辞のテープ起こしをしたものです。そこに、いろいろあるのですが、文民統制という言葉があります。文民統制というのは一般的には、英語で、片仮名では何と言いますか、斉藤長官。

斉藤国務大臣 シビリアンコントロールと言います。

首藤委員 文民統制、シビリアンコントロールですよね。日本の防衛システムにおいて最も重要な基本的な概念、専守防衛であるとか、平和憲法であるとか。シビリアンコントロールというものは、第二次大戦の惨禍を経験した我々が、いろいろ問題があるにしろ、シビリアンコントロールでいこうじゃないかということを決意し、ずっと来たわけです。

 しかし、ここの祝辞の中ではこう書かれています。これは、ちょうど楠木正成が足利尊氏を打ち破ろうとしたけれども、結局貴族が反対してそれが実らなかった、そういうところから言っているのですが。要するに、軍人じゃない、軍隊を知らないそうした文民の統制に従ったために国が滅びてしまった、文民統制は亡国の悲劇である、こういうふうになっております。

 斉藤防衛庁長官、それに対する御意見はいかがでしょうか。

斉藤国務大臣 山本氏の祝辞を私今読ませていただいているわけでありますが、御指摘のその文民統制に係る言葉が大事ではないかと思っております。

 ここには「大局観や戦略眼も無く軍事への理解もない文民統制は」ということでございまして、逆に言えば、大局観もあり戦略眼も持っていて、そしてさらに軍事への理解もある、そういう文民統制ならば問題ないというふうに私は読んだところでございます。

首藤委員 もう一度同じ質問をしてもいいのですが。

 それというのは大変なことですよ。要するに、文民統制、シビリアンコントロールというのは、いい人がコントロールするとか、能力のある人がコントロールするとか、あるいは能力のない人がコントロールするとかという問題ではないのです。シビリアンコントロールでいくか、ミリタリーコントロールでいくか。ミリタリーコントロールでも、だめなミリタリーコントロールもあれば、いいミリタリーコントロールもあるかもしれない。

 しかし、そうではなくて、日本の防衛の基本はシビリアンコントロールである。たとえ万が一ろくでもない人がやったとしても、それはシビリアンコントロールであるということを我々は選択し、それをやっている。ですから、問題は、いいシビリアンコントロールじゃなくて、シビリアンコントロール自体に価値がある。そのことをどうして御理解できないのですか、斉藤長官。

斉藤国務大臣 委員の御質問の趣旨が文民統制等々の議論に入っていったものですから、先ほどそのようにお答えをしたわけでございます。特に日本の場合、その歴史の教訓の中で、私どもは文民統制で行こうという決断をして、現在まで来ているわけでございます。

 いろいろな国防に関する重要事項につきましても、内閣に置かれてございます安全保障会議が最終的に責任を持ちまして判断をしていくわけでございますが、そこには内閣総理大臣、外務大臣、財務大臣等々、重要閣僚が構成メンバーとしてございまして、判断に遺漏のなきように、間違いのないような、そのような体制になっておるわけでございます。

首藤委員 質疑時間が終了しましたので、これ以上この問題についても触れることはない。しかし、私が触れなくても、この問題は実は大変な問題なんです。これははっきり苦言を申したいが、この問題だけでもうこの委員会を全部使ってもおかしくないぐらいの問題です。私は、今防衛庁がこの設置法案を改正する。そしてそれは、災害対策とか都市部におけるさまざまな社会騒乱、そういうものに対処する。すなわち、今安全保障システムに求められているのは、どのように市民社会と共働し、共働するというのはともに働くという意味ですね、していくかということなんです。いかに市民の同意を、賛同を、参加を得られるか。任期付自衛官もまさにそうでしょう。

 ですから、今本当に防衛庁がそういうことを真剣に考え、そしてそれに対する同意を、コンセントを得ていかなければいけない状況において、このように旧態依然として、軍人だけが正しい、だから頑張りたまえ、それは、確かに意見としてはわかる。しかし、これは公の席で、たとえそれが民間のゲストであったとしても、それをそのままほっておく防衛庁の姿勢というものは、好ましいものではない。

 こういうものに関しては、その場で直ちに長官が、あるいは防衛大学校校長が一言コメントをすべきであって、またこの問題が変な形でフレームアップしていかないためにも、国民を守る防衛庁として、国民とともに歩む防衛庁として、きちっとしたコメントをそれに対してやっていくことが肝要だと思います。これは私の意見であり、斉藤長官へのせんべつとして心の中に受けとめていただきたいと思います。

 以上をもって終わります。

石破副長官 申しわけございません。先ほど答弁に誤りがありましたので、訂正をさせていただきます。

 委員御指摘の、この「日本の防衛」のP3C、この中に先ほどEP3が含まれているというふうに申し上げましたが、誤りでございました。含まれておりません。これは、ごらんのとおり主要航空機の保有数というふうになっておりまして、主要ということではございませんので含まれておりませんが、ただ、これをあえて隠しておるとか、そういうものではございません。委員もあるいはお持ちかもしれませんが、公開資料の中にそのEP3というものは、新たに別個に項を起こして公開いたしております。あえて秘密にしておるとか隠しておるとか、そういうようなものではございませんが、この中に含まれてはおりませんでした。申しわけございません。

首藤委員 もう時間がないので、これ以上同僚の時間を短くしません。その件に関しては私いろいろコメントがありますが、次に同僚の意見を聞きたいと思うので、これはまた次回、その件はお話をさせていただきます。

川端委員長 次に、今野東君。

今野委員 民主党の今野東でございます。

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案についてお尋ねをするつもりでここに立っておりますが、その前に二、三お尋ねしたいことがあります。

 実は私、日中議連で四日間中国に行ってまいりまして、きのう帰ってまいりました。中国では、全人代の正副委員長等、それぞれ大変重要な役割を担っている方々とお会いし意見を交換することができた、大変意義のある訪中だったと思っておりますが、その中で必ず出てまいりましたのが教科書問題でした。

 この安全保障委員会と教科書問題は余り関係がないと思われるかもしれませんが、しかし日本の安全保障上は全くかかわりがないということでもないし、また中国では随分その問題について、どなたと会ってもそのことをおっしゃるので、一言外務省にお尋ねしたいと思いまして、質問をさせていただくのですが、特に教科書問題については、韓国と中国との間で、韓国はかなりエキセントリックだけれども、中国は穏やかであるというふうに表面上はなっておりますが、実は中国の中ではどなたも、これは非常に遺憾であるという感想をお持ちでございます。

 特に私が気になったのは、北京大学に行きまして学生たちと意見交換をするという場所を設定してもらいまして、これは大変よかったと思っているのですが、ただ、その日時がおとといの午後三時半でした。ところが、三時半になっても学生はあらわれませんで、やっと来たのが四人です。それで、遅くなるので始めましょうということで始めたのですが、四人そろっている中の一人の学生が発言した、その最初の発言は、きょうは大変人が少ないけれども、これは少ないのは、私たちが忙しいということもあるけれども、日本側に対する抗議の姿勢だと受けとめてほしいということを言うのですよ。そうこうしているうちにぱらぱらとあらわれて九人ほどになったのですが。それで、中国の次代を担う北京大学の学生たちが、押しなべて非常に、私たちが想像している以上に教科書問題については怒っている。こんなことでは日本と中国はうまくやっていけないということを言っているのですね。

 それで、私は一言、それでは日本は中国に対して、この教科書問題についてどのように説明をしているのだろうということを知りたいと思いまして、きょうは外務副大臣がいらっしゃいますので、お答えいただきたいと思います。お願いします。

衛藤副大臣 今野東委員にお答えを申し上げます。

 この教科書問題につきましては、御案内のとおり平成十四年度の中学の歴史教科書につきましての問題でありまして、中国からは関心や懸念が表明されまして、この問題につきまして、私どもるる説明も申し上げました。

 常に御説明申し上げておることは、我が国の教科書は、中国や韓国と違いまして、いわゆる官製の教科書ではないということ。それから、私どもといたしましては、特定の歴史認識あるいは特定の歴史観を、政府をして著作者あるいは教科図書検定作業委員に強制するものではない。あくまでもこれは、我が国憲法でうたわれておる表現の自由、出版の自由、言論の自由という大切な国民の権利をしっかり踏まえて、私どもとしては教科書の検定を見守っておる。こういうことを常に申し上げております。

 私ども、戦前にして誤ったこの轍を今後踏まないようにせねばならぬ、こういうようなことも申し上げておりますし、一九八二年の教科書問題のときにできました近隣諸国条項、こういったものが、国際的な規制を受けるものではない、これは教科図書検定作業審議会の中における内規である、そういうことも明確に申し上げております。

 また、私どもとしましては、当然、一九九五年、平成七年八月十五日の村山内閣における村山談話、さらに一九九八年の金大中大統領訪日の折の新しい日韓時代に向けた日韓共同声明、そういうものをしっかりと踏まえた教科書の検定作業が行われておるものと確信をしておる。そして、今回百三十七カ所の修正があったわけでありまして、そのことも重く受けとめておる。さらには、歴史の真実は一つしかない、歴史は創作できるものではない、歴史を歪曲させるものでもないし、させてはならない、その真実を後世に教科書をもってして伝えるのが我々の責任であり、義務である。こういうような立場につきましても御説明申し上げ、検定後は、福田官房長官のコメントあるいは町村文部科学大臣のコメントを踏まえた立場で、私どもは引き続いて、日中、日韓の友好交流をさらに深めるための粘り強いさらなる努力をしていく。

 そして、日中、日韓だけではなく、アジア、ひいては世界の皆様に対しましても、誤解を持たれることのないように、偏見を持たれることのないようにあらゆる努力をこれからも続けてまいりたい。そして、言うまでもなく、こういう教科書問題が、両国のみならずアジアにおける国々の皆さんに不愉快な思いをさせないような努力もこれからせねばならぬ、このように思います。

 よろしくお願い申し上げたいと思います。

今野委員 周辺の国々に不愉快な思いをさせないようにしなければいけないということでしたが、不愉快な思いを実際にしているわけでありまして、僕は、この時期に町村さんが中国に行ったりなんかしたら本当に危ないぞと思ったぐらい、非常に向こう側が緊張しております。

 ぜひ共通の歴史認識を、お互いにそれぞれ歴史に関しては見方が、いろいろな角度から見るとあるわけですけれども、もっとよく話し合うということを、共通認識を持つということを時間をかけてでも話し合っていくことが必要なんじゃないかということを思いましたので、それをひとつお願いしておきたいと思います。

 さて、もう一つが、アメリカと中国の両軍機の衝突であります。

 先ほど同僚の首藤議員からも質問がありましたが、中国側はこれはできるだけ穏やかに解決したいという姿勢がいろいろな方とお話ししても見えたわけです。しかし、日本にとりましても、もちろんアメリカと中国だけの問題ではなくて、このEP3は沖縄から飛んでいるということもありますし、大変重要な問題であると思うのですが、これはアメリカと中国から防衛庁にどのような説明があったのか、お尋ねしたいと思います。

石破副長官 このことにつきましては、米国と緊密な連絡をとりながら対応しておるところでございます。

 しかしながら、今の時点におきまして、私どもの方でこのような情報を得ておるというようなことを申し上げますことは、大変申しわけございませんが、事柄の性質上差し控えさせていただきたい、お許しをいただきたいと存じます。

今野委員 今のところはそういうお答えなのだろうとこれは了解いたします。

 さて、今回提出された防衛庁設置法等の一部を改正する法律案ですが、即応予備自衛官の員数の変更、それから予備自衛官補制度の導入などが提案されておりますが、これまでの予備自衛官そして即応予備自衛官はどのような役割を受け持っていたのか、そして実際にどのようなケースで派遣されていたのか、教えていただきたいと思います。

石破副長官 現在、予備自衛官が何をしておるかということでございますが、これは委員御案内のとおりでございましょうけれども、防衛招集命令を受けまして自衛官となり、予備自衛官または即応予備自衛官から成る部隊が作戦地域に転用された後、後方地域における警備、また後方支援等の役割を担う、これが予備自衛官でございます。

 即応予備自衛官というのは、それよりもさらに練度を上げまして、年間の訓練が三十日ということでありますので、即応性を高めたものが即応予備自衛官ということだと理解をいたしておるところでございます。

今野委員 その即応予備自衛官なんですが、即応予備自衛官は年間三十日の訓練義務がありますね。日ごろ一般の職業に従事する元自衛官を訓練に招集するのに、この三十日間の訓練義務というのがあって非常に苦労しているということを聞きます。こうした経済状況の中で、企業にとってもなかなか余裕がないということで、合計三十日の訓練に社員を送り出すというのは、企業にとっても重荷になっているのだという話も聞きます。

 それで、九八年に即応予備自衛官を募集し始めた西部方面隊第四師団ですが、その年のうちに、七十五人が仕事との両立は不可能であるということでやめておりますね。一方、中部方面隊は、年五日の訓練をする予備自衛官を雇用する管内の企業九千社に協力を求めたところ、了承しましょうという企業はわずか一五%しかなかったという実態があるわけです。予備自衛官としての訓練が年間五日ぐらいなら、それでも九千社のうち一五%ぐらいは、企業も何とか協力しましょうという姿勢を見せてくれるわけですけれども、三十日となりますとそれはなかなか難しいということになるわけですね。

 冷戦後の防衛費削減の中で、常備兵力を補うための予備兵力の拡充をしているというのは世界の趨勢であるわけですが、予備役は国防戦略上の重要な位置を占めて、イギリス、イタリア、それからイスラエルなどでは、予備兵力が正規軍の二倍から四倍に上るという実態があります。

 防衛力の規模及び機能についての一層の合理化、効率化、コンパクト化を進める必要に迫られている陸上自衛隊の常備自衛官のスリム化が図られる中で、予備自衛官を確保しておくことが、災害時それから国内有事における活動に大事になってくるのであると考えれば、予備自衛官の募集に対する企業の協力を得るためにどのような施策が必要なのだろうかと私も考えるのですが、どういう必要があるということをお考えなのか、お答えいただきたいと思います。

石破副長官 平成十一年度の数字でございますが、即応予備自衛官を雇用していただいておる企業は二千百社というふうに認識をしております。また、即応予備自衛官の方々が訓練に出ていただく率は、これは私も非常に高いなと思ったのでございますけれども、九七・二%ということで、それだけの方々が訓練に三十日参加をしていただいておるということであります。

 今のところ、考えますと、本当に多くの企業がこれに応じていただき、そしてまた訓練に参加していただく率が非常に高いということで、ありがたいことだと思っているわけでございますが、委員御案内のとおり、これにつきましては、即応予備自衛官雇用企業給付金というような形をとらせていただいております。年間約五十一万円、給付金という形でお支払いをさせていただいておる。そのことがすなわち好結果につながっておるというふうに、ダイレクトに結びつけられるかどうかは別にいたしまして、委員おっしゃいますように、企業の御理解、御協力がなければできることではございません。このことでさらにお教えをいただきながら充実を期してまいりたいというふうに思っております。

 予備役のあり方ということにつきましても、冷戦後の新しい情勢等々含めまして、我が国のあり方が諸外国と異なっておることも事実であります。しかしながら、そこには、徴兵制をとっておるか否かとか、いろいろな条件の違いもございますので、このことにつきましてさらなる検討はしてまいりたい。

 いずれにいたしましても、今多くの企業に御協力をいただいておることにつきまして、心からお礼を申し上げたいと思っておるところでございます。

今野委員 即応予備自衛官の必要定数が満たされないのか、なぜそうなのかという問題は、年間三十日間の訓練期間についての企業の協力という問題だけではなくて、さらに大きい問題が実はあるのではないかと思うんですね。第二次世界大戦で犯した日本の軍部の暴走に対する苦い歴史を持つ私たち日本人は、やはり、なぜ即応予備自衛官が必要なのかということを思いがちなわけでありまして、国民へのそういう点の十分な説明がないまま募集をしているということに不安を持つのではないかと思うんですね。

 国民に対しての説明責任をさらに徹底すべきではないかと思うんです。そして、国民がどのように危惧を抱いているのかしっかり認識もしなければいけないのではないかと思うんですが、見解をお伺いします。

石破副長官 これは委員も恐らくそうであろうと思いますし、私も戦後というか戦無派の世代でございますから、あるいは世代によって認識は違うのかもしれません。ただ、自衛官の仕事というものが戦前の忌まわしい記憶と結びついて、なかなか予備自衛官の応募が少ないというふうには私は認識をしておらないところでございます。

 ただ、予備自衛官なるもの、そして即応予備自衛官なるものがどのような仕事をしていただくのかということについては、きちんとした御説明をすることを私ども心がけております。

 さらに、即応予備自衛官について申し上げれば、今まで部隊の充足率というのは非常に低うございまして、七〇%とか八五%の充足率であった。しかしながら、この即応予備ということを入れることによって、部隊の充足率は上がってくる、そしてそれがフルに動くようになる、それの練度が上がってくる。しかし、後方においては即応予備、そしてまた後方に限らず、そのような支援について一歩下がったところで即応予備が使えるというようなことで、トータルとしては練度は上がってくる、力は上がってくる、少なくとも損耗は避けられるというふうに思っておるところでございます。

 ですから、国を守るということにおいてのメリット、そしてその方々に何をしていただくのかという意義、そういうことにつきましても、よく皆様方に御理解をいただくべく今後も努力をしてまいりたい、このように思っておるところでございます。

今野委員 災害時に自衛隊の方々がおいでいただいて、いろいろさまざま細かい手伝いもしていただくということは、国民の間で大変それはありがたいことだと多く思っているのではないかと思いますが、国民の自衛隊に対する災害派遣への期待が高まっていることから、予備自衛官が自衛官として災害派遣活動に従事することができる制度を導入するということですが、災害にも都市災害、山間地災害、島嶼災害、特殊災害など細かく分けますとさまざまあるわけでして、例えば、都市災害では機動性がより求められるわけですし、積雪山間地では、除雪機能とか遠隔地輸送とかいうことが求められます。

 こうしたさまざまな災害が異なる特性を持つ中では、予備自衛官はどのような救援活動にかかわるのか。また、その役割はどうなっているんでしょうか。また、年五日の訓練で本当にそのような災害に対応するのに十分なのか、お伺いしたいと思います。

 また、自衛隊の災害出動が一番多いことを考えれば、私は、かつての西ドイツにあった緊急支援隊のような災害のための別働隊を特別に設置した方がいいのではないか、いろいろな抵抗を考えますと、あるいはその方が人も集まるんじゃないかと考えるんですが、その点についても見解をお伺いしたいと思います。

柳澤政府参考人 申しわけございません、まず前半の災害派遣における予備自衛官の活用について、私の方から御説明させていただきたいと思いますけれども、現在、出頭可能性といったいろいろな状況を考慮して年間五日間の訓練で、これは自衛隊のOB、自衛官であった者をそういう形で予備自衛官にしております。

 そして、災害の場合に、いろいろな形態の任務が出てくるわけでございますけれども、基本的な部分というのは、やはり常備の、本来の自衛官の部隊が対応していくんだろうと思っておりますし、災害の際には、それぞれ職場の事情とか御本人の事情等で可能な方には、予備自衛官であっても、これを招集をかけて役割を果たしていただこうということが今回お願いしている制度でございます。

 その場合に、全員がすべて一番クリティカルな部分で行動していくという場合だけではございません。例えば、コンピューター技術を持っている者を比較的後ろの方で、司令部等で活用することでありますとか、あるいは給水、給食といったような生活支援といったようなものも、これも非常に膨大なマンパワーを要するものでございます。そういった分野等、予備自衛官の方々の状況やその練度に合わせてやっていただく仕事は十分あるんであろうというふうに思っております。

今野委員 今回の防衛庁設置法等の一部を改正する法律案では、予備自衛官補の導入が記されております。これは、IT革命が進み、また自衛隊の役割が多様化していく中で、民間のすぐれた専門技能を有効に活用するために、元自衛官以外の民間の方を予備自衛官補として採用して、教育訓練を修了した者を予備自衛官として任用する制度だとあります。なぜ予備自衛官補の設置が必要なのかということがはっきりしておりません。また、この予備自衛官補の規模の根拠を教えていただきたいと思います。

 それから、この改正案では、練馬にある第一師団の災害対応及びゲリラ、特殊部隊への対策が念頭に置かれているとあるんですが、これはその予備自衛官補などもその教育訓練の過程で、市井の中での諜報活動のための訓練などもあるのではないかと推測することもできるんですが、そういった点から、教育訓練の内容についても教えていただきたいと思います。

石破副長官 今回、予備自衛官補というものをなぜ入れるかということでございますが、一つは、正直申し上げまして、予備自衛官の募集環境が厳しくなっておるということが実はございます。

 先ほど委員からも御指摘をいただきましたが、予備自衛官にはなったが、なかなか職場の都合等々でやめてしまわれる方が残念ながらかなりの数に上る。もう一つは、予備自衛官というものは、現在のところ自衛官をやめられた方々に応募していただくわけでありますが、そうしますと、退職者の増減によって変動があるということもございます。退職される方が減ってきますと、ソース自体が減るということもございまして、両々相まって非常に環境は厳しくなってきたねということは一つあります。

 それからもう一つは、ITでありますとかコンピューターでありますとか、民間のいろいろなすぐれた専門技能、これをやはり活用していくべきではなかろうかという二つの思いがございまして、今回、予備自衛官補というものを入れさせていただきました。

 人数につきましての御質問がございました。これは確たる根拠を示せと言われると、かくかくしかじかでこういうわけでありますということはなかなかはっきりしたことは申し上げられない。しかし、そのようなものでございます。もともとこの予備自衛官補という制度が本邦初演みたいなお話でございますから、どういうふうな形で滑り出すかということも考えながら、まずそれぐらいの人数で滑り出そうということを考えておるわけでございます。

 それから、訓練内容ということでございますけれども、ゲリラ、特殊部隊への対処の内容はどのようなことかということでございます。それは第一師団についての御質問でございましたが、市街地戦闘に適しました、より機動的、柔軟な運用を可能とするということでございます。運用単位をふやす。また、特殊災害や化学テロ等に備え、化学防護部隊の機能強化を行うということでございまして、まずは予備自衛官というものをいきなりゲリラ、そしてまた特殊部隊へということは、事の性質上なかなか難しかろうかというふうには思っておるところでございます。かなり特殊な技能が要求されるというふうに思っておりますし、そうでなければなかなか安全を確保することは難しいというふうに思っておる次第でございます。

今野委員 こういった制度を見まして、先ほどもちょっと触れましたが、私たちが戦後培ってきた日本人としての感情から、徴兵制を思い起こす人もいるんじゃないかと思うのです。確かに、この法律の中では公募によって採用されるということが明記はされておりますが、こうして民間との交流を深めていくことが徴兵制といったものにつながるのではないのだということを確認させていただきたいと思いますが、見解をお聞かせください。

斉藤国務大臣 委員から、ただいま徴兵制ではないかという御指摘がございましたけれども、この制度では、まず志願に基づいて、試験または選考により行うということが基本にございまして、強制ではなく個人の自由意思ということが前提でございますので、学徒動員等々徴兵制ではないということを御理解賜りたいと思います。

今野委員 それから、今回の改正案の趣旨では、ゲリラや特殊部隊による攻撃への対処等を念頭に置いてあるとあるんですが、仮にロシアと中国を日本に脅威を及ぼし得る国だとしても、予想可能な期間にこれらの国は経済建設を国策の中心に据えていくでありましょうし、潜在的脅威といったものは存在しないというのが公式見解でもあります。

 現在、日本と周辺諸国との間での武力紛争が皆無である以上、どのような形でのゲリラや特殊部隊による攻撃があると具体的に想定しているのか、この点を明確に御説明いただきたいと思います。

石破副長官 潜在的脅威という言葉は最近用いておりません。そのような認識を私ども持っておりませんし、国際情勢についても、今委員の御指摘のとおりだろうというふうには思っております。

 しかしながら、どのような形か明確に答えよというお話でございますけれども、いわゆるゲリラ・コマンドーといいますのは、いろいろと言われておるとおりでありまして、いわゆる工作員というようなもの、そしてそれが特殊な訓練を受け、水に潜り土に潜りというような形、そういうようなものが全くないというような情勢にもなかろうという判断をいたしております。それは、最近の報道等々を見ましても、私どもは国民の中にそのような不安があろうかというふうに思っております。

 そういうことがないにこしたことはありませんし、そういうような国際努力もしていかねばなりません。しかし同時に、そういうような、国民が抱いておられますような不安、そういうようなものを払拭するに足る、それをするに足る装備、訓練、それはしておくことは私どもの義務であろうというふうに考えております。ゲリラ・コマンドーというのはそういうようなものだというふうに認識をしておるところでございます。

今野委員 もう時間が参りましたのでこれで終わりますが、私は、本日質問をさせていただきましたことも含めて、全体的にやはり国民に対する説明というのが明らかに不足しているなという感じがするんですね。理解をされていない。ぜひ、そういったところに力点を置きまして、国民の多くが自衛隊に対して理解を示すような施策をお考えいただきたいということをお願いして、質問を終了いたします。

 ありがとうございました。

川端委員長 次に、小林憲司君。

小林(憲)委員 民主党の小林憲司でございます。

 本日は、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案につきまして御質問させていただきます。

 最初に、防衛庁設置法の改正案についてですが、統合幕僚会議の定数を百七人増員するということでございますが、この定数増員は、事務局と情報本部における体制強化等に伴う変更ということで理解しておるわけでございますけれども、統合幕僚会議に所属する自衛官をふやすということであります。この体制強化ということは具体的にどのような内容のものか、まずはお聞かせいただきたいと思います。

石破副長官 統合幕僚会議で百七名、その内訳でございますが、統幕事務局におきまして十四名でございます。この十四名の内容は、防衛交流関係の体制の強化、中央指揮システムの保全体制の強化ということになっております。

 残ります九十三名は、これは情報本部でございます。これは、政府の情報収集衛星の運用組織でございます内閣情報衛星センターとの連絡体制の整備、それから、電波、画像等の情報の分析、収集体制の強化、そのようなもので情報本部で九十三名、そしてまた事務局において十四名、そういうような内訳と内容になっておる次第でございます。

小林(憲)委員 次に、陸上自衛隊の自衛官の定数を三千五百九十九人削減するということでございますけれども、これは、第一師団を都市部での対処能力を強化した師団に改編するということに伴うものであるということで御説明いただいておるわけでございますが、提案理由の説明では、都市部での対処として、災害対応とゲリラ、特殊部隊による攻撃への対処を念頭に置いているということでありました。

 聞くところによりますと、今回は化学防護部隊の強化を図られるということでございますが、我々にはまだ記憶に新しいと思うのですが、地下鉄サリン事件の記憶があります。現在のところ、どのような化学兵器が想定されているんでしょうか、また、その化学兵器に対してどのような対処行動ができるのでしょうか、主なものについてぜひとも御説明いただきたいと思います。

石破副長官 大変恐縮でございます。専門家ではございませんので、そのまま御説明するようなことになりまして、失礼かと思いますが、お許しをいただきたいと存じます。

 私どもといたしましては、化学兵器に使用される可能性がございます有毒化学剤といたしましては、神経組織に作用しまして身体の機能を破壊する、まさしくサリンですとかVX等々の神経剤、また、組織の破壊や血管を損傷させる、マスタードに代表されるようなびらん剤というようなものを想定しておるところでございます。

 対処法いかにということでございますが、サリン等におきましては、全国に展開いたしております化学防護部隊の隊員が、防護服、防護車等につきまして現場に進出をする、化学剤検知器材等々により何が使われたのかということを特定し、除染車等において除染を行うということでございます。

 また、部隊に対しまして直接攻撃されるというような可能性が生まれました場合には、隊員につきましてのその防備を万全といたしたいというふうに思っているわけでございますし、隊員が傷害を負った場合も、衛生部隊が応急治療を施し、状況に応じては後送するというようなことを考えておる次第でございます。十三年度予算におきましては、その強化の一環といたしまして、神経剤治療用自動注射器、このような整備を開始しておるところでございます。

 新中期防におきましても十三年度予算におきましても、このNBC対処、化学対処も含めるわけでございますが、このことを特に重点として取り組んでおるところでございます。

小林(憲)委員 ただいま大変御説明いただきまして、化学防護隊につきまして、先ほども述べましたが、やはり都市に住んでいる我々といたしましても、サリンなどの化学兵器は現実に六年前に多くの方の犠牲を出したわけでございますから、今大変恐ろしい脅威となっておると思います。

 我が国の自衛隊では、化学兵器に対する態勢というものは、今御説明ありましたように、まだまだ始まったばかりだと思います。ぜひとも、これは東京だけではなくて、大阪、名古屋、大変な大都市、いろいろな形でのことが起こっておりますので、ぜひともその対処態勢というものを、今御説明いただきましたので重ねてはお伺いいたしませんが、よろしくお願いしたいと思います。

 そして、本日は自衛隊の定数についての質問でございますので、自衛隊の編成ということを考えた場合、いつも思いますのは、有事法制のことでございます。

 当然のことながら、防衛というものは、法制面、運用面、装備面において体制が十分に整備されていなければならないといつも私は思うわけでございます。しかしながら、我が国の場合は、大変残念なことでございますが、法制面に関してはこれまで置き去りにされていたと言わなければならない状態ではないでしょうか。

 森首相は、今国会で、施政方針に関して演説されました。「有事法制は、自衛隊が文民統制のもとで、国家、国民の安全を確保するために必要であります。昨年の与党の考え方を十分に受けとめて、検討を開始してまいります。」と明言されました。私は、このような方針を出されたことは、大変森政権で評価される点ではないかと非常に思っております。

 しかしながら、森政権の失速とともに、この有事法制の検討チームが発足するのかと思われましたが、かなり今迷走してみえるというふうにお伺いしております。実際には、今現状、この検討チーム、どのような形になっておられるか、少々教えていただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

斉藤国務大臣 委員御指摘のように、今国会の冒頭に、施政方針演説の中で森首相がその点に触れられまして、法制化を目指してという言葉も使われました。

 この有事法制の問題は、二つの観点から必須のものであるというふうに考えております。一つは、自衛隊の任務遂行を全うしなければならないという一点と、もう一つ、かかる防衛体制を整備するという二点から必要だと思っております。

 そこで、長い歴史もございます。福田内閣当時から研究ということでスタートした有事法制でございますが、現在も、防衛庁でもいろいろな検討を重ねているところでございます。今回は、森首相みずからが演説の中で方針を出していただいたものですから、官邸主導ということで、今地道に、かなりこう実務的に難しい問題がございます、法的な問題等々がございますので、実務的にしっかりと積み重ねていこう、こういう格好で対応させていただいているところでございます。

小林(憲)委員 重ねて長官に御質問させていただきますが、今この検討チームというのは、これは防衛庁の管轄でなっているのでしょうか。それともどのような形で、対処されているのはよくわかりましたが、今防衛庁がしっかりとイニシアチブを握ってこれはやってみえるのですか。それとも違うところで、各省庁から出てきてやってみえるのでしょうか、どうでしょうか。教えてください。

斉藤国務大臣 従来は、防衛庁の内部で粛々といろいろ幅広く検討してきたということでございますが、今回からは、内閣官房が中心になるということでございます。そして、法律的にもかなり多岐にわたります。厚生労働省の範囲もございますし、また国土交通省の範囲もございます。したがいまして、もう防衛庁限りというわけにはいかない状況の中で官房を中心でやっていただく、こういうことでございます。

小林(憲)委員 それはちょっと私は理解ができないところでございまして、いわゆる有事法制、自衛隊が何か起こった場合に進んでいく、対処していくというための法案でございます。それが各省庁から内閣官房ですか、のもとでやって、道路を封鎖しなければいけないから国土だと。こっちは法律がこうだ、港を使うからこうだと。これはばらばらにやっていて、防衛庁からも出ていったら、有事が起こった場合、防衛庁がやはりイニシアチブを握って、しっかりと自衛隊を進めなければいけないわけでございますから、そのような形で検討されていても、いつまでたってもこの有事法制はなかなか前に進まないのではないかと思います。

 先ほどお話ありましたように、福田内閣当時から研究が開始されて、一九七七年です。二十四年間、長い間その法制化は、必要性が叫ばれながら見送られてきたわけでございますが、少々我が党のコマーシャルをさせていただきますと、民主党では、今緊急事態という状況を定義しまして、それに対処する法制を準備しておるわけでございます。

 しかし、政府の方は、自民党単独政権の時代、連立政権の時代、いろいろありましたけれども、これまで長い間、法制化に着手できなかった。どうして二十四年間も先送りの状態が続いてきたのでしょうか。これはひとえに、今長官おっしゃいましたけれども、有事法制に対するしっかりとしたイニシアチブを防衛庁が持たない。防衛省にならなければいけないのにいつまでも庁だ。これが何とも卑屈な感じがしていたし方ありません。

 何とかこの検討チーム、しっかりと長官のもとで物を進めなければならないのではないでしょうか。自衛隊はいつまでも後始末をする隊ではございません。起こったときにすぐに行動をとれる。それの指揮をとるのが防衛庁である。そして、防衛省になっていただきたい。私はそう思いますが、長官の御所見をお願いします。

斉藤国務大臣 今、二点お話をいただいたというふうに思います。

 まず、省の昇格の問題でございますが、この件につきましては、かねてより私どもも、一日も早く省に昇格してほしいことは強く望んでいるところでございます。しかしながら、この件につきましては、議員の皆さん方の賛同がなければならない。こういうような背景もございまして、今一層の議論の高まりを期待しているところでもございます。

 もう一点は、かなり長い間議論してきた、なかなか実を結ばないというような印象を受けるという中で、防衛庁が先頭に立てというお話でございます。従来の研究は防衛庁が中心になってなしてまいったところでございますが、先ほども御説明申し上げましたように、例えば指揮所一つつくる場合でも、国土交通省に係る法律、また環境省に係る法律等々がございまして、これを防衛庁でというわけにはいかない。したがいまして、内閣官房が中心になりまして、内閣官房が幅広く全部の省庁との連携の中で取りまとめていくのが望ましい格好でございますので、束ねていただくということで、現在、そのような体制の中で、事務的に着実にスタートしたいというふうに考えているところでございます。

小林(憲)委員 ぜひとも、今の長官のお言葉、大変重いお言葉だと思います。防衛庁の皆さん、そしてまた我々議員も、日本の国は今大変な状態になってきていると思いますので、その辺をしっかりと御理解いただいて進めていきたいと思います。情報収集、そしてまた今後の進め方、ぜひとも、これは与野党ともに手を携えていかなければいけない国の問題だと非常に思います。

 本日は、自衛隊の定数に関しての審議をしているわけでございますが、私は先ほど申し上げましたが、有事に際しての法制面の整備が進んでいないということを非常に懸念しておるわけでございます。

 確かに、与野党とも、一部の議員の間には、有事法制は基本的人権をじゅうりんするものだ、戦争を誘発するものだという御意見がございます。しかしながら、現状では、有事の際に自衛隊は国民の生命と財産を守るために超法規的な行動をとらざるを得ない、私はそう思います。

 基本的人権の尊重という観点からして、その方がはるかに問題が大きいのではないでしょうか。法治国家である以上、憲法の理念を守り抜くためには有事に対処する法律がぜひとも必要である。私はそう強く思います。また、我が国が有事の際に毅然と行動する法律を持つことは、かえって戦争を抑止するものと考えております。

 このような点に関しまして、ぜひとも防衛庁長官、御所見をお願いいたします。

斉藤国務大臣 小林委員には、先般防衛医大の卒業式にも御出席をいただきまして、大変御関心があられるということは承知しておりました。

 ただいま御指摘もいただきましたように、有事法制の必要性、私どももそれを強く認識をいたしているところでございますし、その中身としての公共の福祉、また基本的人権等々を擁護していかなければならないというのもごもっともだと私は思っております。

 こういった保護法制、法律は、平時のときにこそ十分な検討を加えて議論をして、そして対応していく、そして国民の権利を擁護していくということは、まさしく正しいことだというふうに思っておりますので、私どもも可能な限りの国民の権利を尊重しながら、国家と国民の安全を守るための公共の福祉を確保したいというふうに思っておりますので、逆に、委員の方の御支援、御協力も切にお願いをしたいと思っております。

小林(憲)委員 今の長官のお言葉、まさしく、これからの日本を担う防衛庁に本当になっていかなければいけない、そう強く思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。

 次に、テクニカル的な御質問を二、三点させていただきたいと思いますが、まずは、先ほど来とちょっと重複するかもしれませんが、自衛隊法の改正案に関しての質問です。

 予備自衛官補という制度を新たに導入する。この予備自衛官補の募集は、一般公募と技能公募を予定しておられまして、平成十三年度は広報、募集を行い、平成十四年度から採用して教育訓練を開始するということを聞いております。これは初年度の人数の確保というものは、大体どれぐらいの人数を考えていますか。そしてまた、その根拠ということが第一点。

 今回の予備自衛官補という制度、これを導入した背景といたしましては、予備自衛官員の員数をなかなか確保できないということがあるわけでございます。特に、平成十一年度からかなり充足率が減少しているわけでございますが、その原因を簡単で結構ですので、教えていただきたい。

 そして、三点目ですが、どれぐらいのレベルの方を想定してみえるのか。先ほども東議員のときにいろいろな特殊な技能というお話が出ましたが、どのような技能、そしてまたどのようなレベルをお考えなのか。それとも、どういう資格とか経験年数などがあるのか。テクニカル的な質問でございますが、よろしくお願いいたします。

石破副長官 お答えも重複して恐縮ですが、お許しをいただきたいと存じます。

 人数につきましては、技能公募が大体四十から六十人、一般公募が二百人から三百人ということを現在考えておるところでございます。この根拠は何だと言われますと、先ほどもお答えをしたのですが、明確な根拠というものは実は持っておりません。しかしながら、予備自衛官の欠員の発生状況、これは考慮しなければいかぬだろうというふうには思っております。発生状況に対応したものであること、そしてまた本格的なこの制度を運用するに先立ちまして、試行的、そういう意味合いも持っておりますので、そのようなことを考えましてこのような人数を設定させていただいておるということで御理解を賜ればというふうに思っております。

 予備自衛官の充足率が下がった理由いかんというお尋ねでございますが、これはソースが減少しつつあるということ、かてて加えて、この経済環境でございますので、なかなか職場の御都合、年間五日というふうには運用いたしておるところでございますが、それもままならないというような御事情がおありだろうというふうにデータからも推察をいたしておるところでございます。

 また、どのような能力を要求するかというお話でございますが、これは本当に予備自衛官として、また自衛官として、国の独立、平和、安全を守る自衛官として十分足るだけの能力というふうな抽象的なお答えになってしまいますが、あえて申し上げるとしますならば、例えて言いますと、お医者様という場合もあるわけですね、看護士さん、看護婦さんということもございますでしょう。そうしますと、実際に私どもが医官でありますとか、看護官でありますとか、そういう方々に働いていただいておるわけでございますが、そういう方々と遜色のない力量というものが必要になってこようかと思っております。

 医療従事者にしてもそうですし、通訳として活躍される方もそうでありますし、コンピューター技術もそうであります。やはりこれは、自衛官ということであります以上は国民の期待、負託に十分こたえられる方々でなければならぬという点は、私どもは確認をしておくべきことかというふうに思っておる次第でございます。

小林(憲)委員 ありがとうございました。

 私は、自衛隊に勤務したことのない人を予備自衛官補から予備自衛官に任用するという制度は非常によいのではないかと思っております。

 と申しますのは、幅広いいろいろな分野で、今御指摘がありましたような医療、コンピューター、または最先端のハッカーに対するそういうもの、いろいろなものがあると思うのですけれども、経験や技能を有する方々が予備自衛官として待機しているという状況は、国民全体の防衛意識を高めることに大きな期待があるわけでございます。多くの若者が、専従の自衛隊員ではないけれども、予備自衛官としてふだんは民間の企業などで働いているという状況は、民間防衛という考え方から見て大変好ましいのではないか、そう私は思います。

 そういうことから、自分たちの国は自分たちで守る、これは当たり前のことである。これはいつも、私は持論としていろいろなところでお話しさせていただいているのですが、今の日本のあり方、自分の国を愛せない、そして自分のお父さんお母さんも愛せない、子供も殺してしまう、このような日本の国民の風潮はまさしく、何か日本自体が大きく間違ったところがあるのではないかと非常に強く思うわけです。自分の国を自分たちで守るという大変崇高な考え方を広めるためにも、この予備自衛官補制度というものの導入に対しましては、教育的効果なども含めまして、ぜひともしっかりとしたものにしていただきたい、そう思っております。

 そこで、教育的効果ということで防衛庁長官の御意見を少々お伺いしたいと思いますが、よろしくお願いします。

斉藤国務大臣 委員はアメリカにも留学をされた御経験があって、アメリカのそういった考え方にもかなり影響を受けておられるのかなという感もいたすわけでございますが、自分の力で国を守っていく、国民みずからが守っていこうというのは、基本的な考え方だというふうに思っております。

 防衛庁・自衛隊、大変大きい組織でございまして、全国にも約三百の駐屯地とか基地がございます。そこでの国民との触れ合いというのはかなりのものになっているなと思っておりますが、まだまだ全国的な意味での、また一般的な意味での認識、広がり、認知等々は不十分である、そんな感もいたしております。それは委員の御指摘のとおりだなというふうに思っているところでございます。

 近年、時代が変わりまして、ボランティア活動等々が社会的な活動として大きくクローズアップされてまいっておりまして、参加型の社会をつくっていこうということがございます。その中で、予備自衛官補の制度等々も相まって考えてきたということだと思いますので、新しい時代、新しい社会構造の変化に対応してよりよき日本をつくる、そして、よりよき防衛の意識を持った人たちに囲まれながらの仕事をしていくということが大事だと思いますので、委員の御指摘にございますように、私どももそういう感覚で国民の意識を広げていきたいというふうに思っております。

小林(憲)委員 大分時間になってまいりましたので、最後に御質問をさせていただきたいことがございます。

 法案の関連質問になりますが、ブッシュ政権が日米同盟重視という基本方針の中で打ち出しています安保合同事務局ということがあります。これはマイケル・グリーン、NSC、国家安全保障会議の日本・韓国担当部長でございますが、余り今取り上げられていないのですが、これは共同通信なんかでも全部出ています。報道などによりますと、この合同事務局は、アメリカ国防総省などから人材が来て、日本側と合同で恒常的な事務局を設置するというものであります。

 日米間の安保協議の場は各レベルで設けられております。そこでまず、現在、日米安全保障の協議機関としてどのようなものがあって、それぞれどのような役割を持っているのかお伺いしたいということ。

 あと、非常に外交面で、もしこれがやられると二元外交になるのじゃないかという話もあるのです。では、それだけ外務の方がしっかりやっているかというと、それはちょっと疑問なんですけれども。となると、私は、常設の合同事務局がぜひとも必要であると思うわけでございます。特に、アメリカの国防総省から人材が来て防衛庁の職員とともに仕事に当たるということは、これは大変有益であるのではないかと考えます。

 私がアメリカ大使館などに先日ちょっと問い合わせをさせていただきましたところ、まだこれはすべて、具体的な段階では何も決まっていないということでございますが、この合同事務局の構想は、アメリカ政府内において今のところどのような扱いになっていると日本政府は理解しているのでしょうかということをお伺いします。

 よろしくお願いいたします。

衛藤副大臣 小林憲司委員にお答えを申し上げます。

 御案内のとおり、今、日米間では安全保障問題に関する協議機関が幾つかございます。

 代表的なものといたしましては、閣僚レベルの安全保障協議委員会。これは、日米両政府間の理解の促進に役立ち、安全保障の分野における協力関係の強化に貢献するような問題で、安全保障の基盤をなし、かつ、これに関するものについて協議する機関であります。

 それから、双方の局長クラスの協議機関といたしまして日米安全保障高級事務レベル協議というのがございます。これは、日米相互にとって関心のある安全保障上の諸問題についての意見交換をする場であります。

 それから三番目といたしまして、これも我が方は局長レベル、米側は在日米大使館参事官クラスでありますが、いわゆる日米合同委員会であります。これは、日米地位協定の実施に関して、相互間の協議を必要とするすべての事項に関する日本国政府と米国政府との間の協議機関であります。

 それから、これも我が方は局長レベル等が出るのでありますが、防衛協力小委員会。これは、日米防衛協力のための指針のもとでの日米間の作業についての協議であります。

 最後に、これは我が方の防衛庁の装備局長等が出席いたしますが、日米装備・技術定期協議というのがあります。これは防衛関連技術に係る日米協力のための協議。

 こういう機関があるわけであります。

 ただいま小林委員御指摘の、合同事務局構想でありますが、これにつきましては私も報道でよく知っておりますが、ただいま委員御指摘のとおり、委員自身も大使館に確認をしたということでありましたが、いわゆる米政府の公式な立場というものにつきましては、合同事務局構想は、構想としてあるかもしれませんが、まだ具体的になっていない、こういう状況であります。

 しかし、私どもといたしましては、日米同盟の強化、あるいは日米同盟を堅持し、質的レベルアップのためにも、将来こうした合同事務局というものが出てくるならば、今申し上げました各種レベル、各種チャネルを通じまして、日米安保体制のさらなる強化、質的レベルアップのためにもあらゆる努力をしてまいりたい、このように考えております。

 結論といたしましては、この合同事務局構想につきましては、まだ公式に打ち出されたものではありませんので、あえて言うならば、コメントは差し控えておきたいと思います。

 以上であります。

小林(憲)委員 ただいま御説明いただきましたとおり、安全保障上の状況を共有したり、両国の防衛政策を絶えず調整したりする機関、これだけたくさんのものが今あるということをお伺いしましたし、また、この合同事務局というものを、多分ブッシュ政権はかなりの強い勢いでこれからアジアに対しましても政策を打ち出してくる、私はそう強く思います。

 今は具体的に進んでおりませんが、このマイケル・グリーンさん、今何も決まっていないのに、わあわあこれだけ言っているわけですから、ブッシュ政権は何をしてくるかわからないところをかなりはらんでおりますので、ぜひともその準備と、あと防衛庁の皆さんに一言だけ私から言わせていただければ、もっと情報量において職員の皆さんが必死にならなければ、これからの日本の国は取り残されていくのじゃないか、そう非常に強く思いますので、そのことだけ私の方から皆様にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

川端委員長 次に、藤島正之君。

藤島委員 質疑に入る前に、先ほど民主党の小林委員の方から、国防省の昇格を早急に進めろ、それから有事法制についても速やかに立法化すべきである、こういう意見を、民主党の方から御意見が出るというのは大変喜ばしいといいますか、歓迎すべきものでございます。ぜひともそういうことで民主党全般をおまとめいただければこれはなおいいな、こういうことをまず申し上げて、それから質疑に入らせていただきます。

 一昨日、この場で、実は私、我が国の防衛のあり方について斉藤長官と議論したわけでございますけれども、その考え方は、我が国の防衛は車の両輪のごとく、まず自衛隊と日米安保条約に基づく米軍の存在、この両方があって成り立つ。しかし、その役割といいますか意味合いは、やはり時代によって変わってきておるので、かつては米軍が大変大きな輪だったわけでありますが、その米軍の日本におる役割もアメリカの国家政策でかなり変わりつつあり、我が日本の自衛隊もかなり充実はしてきておるということから、この輪の役割がかなり変わってきておる、そこをよく見据えて、これからの我が国の防衛を考えていく必要がある、こういうことを私は申し上げたわけであります。

 引き続きまして若干議論させていただきたいと思いますのは、その中で、自衛隊の役割でございます。私は、我が国の防衛は我が国自身で考えないかぬ、その中において、自衛隊がやはりもう少し充実して、まず主体的に自衛隊が我が国の防衛の役割を果たさないかぬ、こういうことでございます。

 実は、ソ連の崩壊から我が国を取り巻く環境がかなり変わってきておるということでございまして、これに応じて、私は、自衛隊の配備とかいろいろな面も考えていかなきゃいかぬと。もちろん、大綱を見直したりしまして変えてきておるわけですが、そのことにつきましてもう少し議論させていただこうか、こう思っているわけでございます。

 ところで、これは事実関係としまして、二十年ほど前の北方ソ連軍と現在の北方のロシア軍はどのように変化しておりますか。お伺いします。

    〔委員長退席、高木(義)委員長代理着席〕

首藤政府参考人 二十年前の極東ソ連軍につきましては、地上軍部隊、海軍部隊、航空部隊及び戦略部隊が質、量両面で増強を続けておったと承知いたしております。一方、その規模は、九〇年以降縮小傾向にございまして、現在の極東ロシア軍はピーク時に比べて大幅に削減された状態にございまして、その数等も全般的には低調であると考えております。

 ちょっと具体的に数字を申しますと、八〇年時点で地上兵力は三十五万人、三十四個師団が、二〇〇〇年では二十二万人、十六個師団、海上兵力は百五十二万トンが八十五万トン、航空兵力は二千六十機が七百九十機というふうに減ってきておる状況を把握しております。

 いずれにいたしましても、極東ロシア軍の将来像でございますけれども、今後のいろいろな状況もございますので、私どもとしては引き続き注目してまいりたいと考えております。

藤島委員 今説明がありましたように、半分以下、三分の一ぐらいまで減ってきておるということでありますし、活動の方も今若干触れられましたけれども、先般、領空侵犯という形で報道があったわけです。ことし二月にあったわけでございますが、「四機がいったん北海道礼文島北方の領空を侵犯」というようなことであります。この事件に関しまして、ロシア側は外交ルートを通じて、侵犯があったかなかったか、事実関係を確認する専門家同士の会合を設けたいと日本側に提案、防衛庁も受け入れる方針を伝えた。この件について、事実関係をちょっと御説明いただきたいと思います。

首藤政府参考人 今の件でございますが、確かに、我が国の抗議などに対しましてロシア側から、分析の結果、日本領空の侵犯という事実を確認できないという回答を私どもは得ているのみでございまして、ロシア空軍機の領空侵犯の原因については必ずしも明らかではないということでございます。

 なお、防衛庁としましては、本件に関しまして、ロシア側に対して、外務省を通じて厳重に抗議して再発防止を強く申し入れてまいりましたほか、これまでに防衛交流の場を通じて、領空侵犯事案について直接話し合いをする機会を設けてきたところでございます。その中で、ロシア側より二月二十七日に、この事案の事実確認に関する専門家会合の開催について提案がございましたところ、これについて受け入れる用意がある旨、三月の十三日、外交ルートを通じましてロシア側に回答いたしたところでございます。

藤島委員 「防衛庁では、領空侵犯の原因について、ロシア機のパイロットがロシア国内から発信される航法用電波などを正確に受信できず、侵犯と認識していなかった可能性があると見ている。」要するに、機材が古い、新しいものにかえていくほどの余裕がない、こういうロシア軍の現実ですね。要するに、かつて二十年前に比べると、これは我が国から見ると、脅威という面から見ると非常にいいことなんですが、かなり下がってきておる、これをまず一つ私は申し上げておきたいと思うわけであります。

 さらに、事実関係として聞きますけれども、同様に、北朝鮮軍あるいは中国軍、中国軍については一昨日伺いましたので、かなり増強されているということなんですが、北朝鮮軍についてごく簡単に説明してください。

    〔高木(義)委員長代理退席、委員長着席〕

首藤政府参考人 北朝鮮でございますが、一九六二年以来、全軍の幹部化、全軍の近代化、全人民の武装化、全国土の要塞化という四大軍事路線に基づいて軍事力を増強してきております。

 防衛庁としましては、一九八〇年におきましても、北朝鮮の軍事力について、陸軍兵力を増強していること、それから、強力な機動打撃力を保有していること、ゲリラ戦を重視していることなどを認識しておりましたところでございます。

 この点は、現在におきましても、北朝鮮は深刻な食料不足などの経済困難に直面しているにもかかわらず、依然として軍事面にその資源を重点的に配分いたしておりまして、即応態勢の維持強化に努力しており、また、大規模な特殊部隊を保持していると考えているところでございます。

 さらに、二十年前との比較で申し上げますと、現在、北朝鮮は核兵器開発疑惑を持たれておりますほか、弾道ミサイルの開発や配備を行っていると見られております。

 北朝鮮のこういった動きは、朝鮮半島の軍事的緊張を高めておりまして、日本を含む東アジア全域の安全保障にとって重大な不安定要因となっていると考えている次第でございます。

藤島委員 北朝鮮の状況は今説明があったとおりでありますが、数日前に、これも報道ですが、「北朝鮮工作員上陸か 水中スクーター発見」こういうような記事もあったわけでありまして、かなり脅威として増してきている、こういうふうに私は思うわけであります。

 そういう観点からしまして、長官は、西日本、山陰地方、こういった方面について、不法分子の上陸だとかあるいはテロ、そういったものを勘案した場合、現在の自衛隊の態勢で全く十分である、こういうふうに考えておられるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

石破副長官 委員御案内のとおりでございますが、師団でありますとか旅団でありますとか、これの配備ということだけについて申し上げれば、そう均衡を失しているとは思っておりません。

 しかしながら、その能力いかんというふうに問われました場合には、これは、現在のままで御指摘のような西日本や山陰地方にゲリラが侵入したときに、包囲はできるにしても、撃破はできるかというと、なかなかこれは難しいと思っております。これはもう小説がすべてとは申しませんけれども、恐らくああいうような能力、「シュリ」でありますとかああいう映画を見ましても、そういうものを持った工作員が入ってきたときに、じゃ、対応能力としては十分かといえば、残念ながら十分であるというふうに断言はできません。

 したがいまして、これをどのようにするかということでございまして、十三年度予算におきましても、そのような装備ですとか訓練を充実させねばいかぬ、そして、専門の対処部隊、これをつくっていきたいというふうに思っておりまして、編成の準備を急ぐところでございます。

藤島委員 今回の法案の中身にも関係してくるわけですけれども、自衛官を今回三千名強減らして、即応予備を入れました新たな旅団とか、いろいろな形を考えておるわけですけれども、これも、実は発想したのはかなり前でありまして、その発想も、先ほどちょっと議論がありましたように、即応予備自衛官を入れたものは何かと。

 この理由なんですけれども、これは御承知のように、陸上自衛隊の充足を、定員十八万に対して、実はふやしたかったわけですけれども、八〇%ちょっとで、なかなか上がらない。海上、航空が九六%ぐらいでございましょうか、総平均で八五、六%なんですけれども。そういう実態が改善できないままずっと来たものですから、定数は減らして、それを即応予備的なもので埋めていこうというような発想があったわけです。

 それはそれでよろしいんですが、私がちょっと申し上げたいと思っておりますのは、要するに、当時であっても、ソ連の脅威という観点から、北海道所在の陸上自衛隊の部隊はほとんど九〇%以上の充足率にしておった。それで、その分、西側、第四師団、第八師団等は、実は六〇%を欠いている部隊がかなりあったわけであります。

 私が申し上げたいのは、定員だけをいじるんじゃなくて、実員をやはり、先ほど副長官もおっしゃったように、実態がどうかということがやはり問題なのでありまして、私は、北海道の部隊をどんどん実員的に減らして、これは今そういうふうな方向で実施しているようですけれども、西日本の方に振り向けていく。その中にあって、早い段階で考えていたような硬直したものではなくて、もっと柔軟にその辺を考えていく必要があるんじゃないかと。部隊編成にしてもそうなんですけれども。

 この先、第八師団などは、むしろ定員を減らして、定員を減らすとそれだけじゃなくて、それに伴って部隊の改編、小さな部隊を廃止するとか、あるいは廃止しないまでも部隊の異動等が起こってくるわけでありますが、その際に考えておいていただきたいのは、やはり九州、山陰、西日本の方を重視するという姿勢をきちっと持った上で弾力的に考えていっていただきたい、こう思うわけですが、この点について長官の所見を伺いたいと思います。

斉藤国務大臣 委員御指摘のように、前大綱、現大綱で、海並びに空については定員はほぼ横ばいの状況の中で、陸だけに関して言えば、二万減らすということは御案内のとおりでございます。これは、全体的に合理化、効率化、コンパクト化、その流れの中で対応しているわけでございまして、そういう中での再配置的なものを全体に見直しつつやっているのが現状だというふうに思います。

 その中で、今、ソ連からロシアに変わりましたけれども、航空機の飛来の頻度等々、いろいろな状況分析、情報収集の中での、北はいかにあるべきか、また日本海側はいかにあるべきか、また南の方はどうあるべきかという議論を重ねて今やっているというふうに御理解賜ればと思います。

 そういう全体での大きな構造変革といいますか、を見据えながら、一方では部隊等々の弾力性、機動力等々、これは装備の近代化も含めてでございますが、それは一段と要求されているというふうに思っておりますので、委員の御認識とほぼ一致するような状況の中で今あるというふうに御理解賜ればと思います。

藤島委員 大変いい御答弁をいただきました。ぜひそういう方向で頑張っていただきたいと思います。

 さて、次に、今回の法案の中で、予備自衛官にも災害派遣を実施させるというような内容があるわけでありますので、災害派遣について二、三、お尋ねしたいと思います。

 まず、災害派遣についてですが、形態別には一応どんな実績になっているのか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 防衛庁におきましては、私ども、真に国民の皆様の自衛隊であるべきといった観点から、災害派遣に対しましては全力を尽くして今日までやってきているわけでございます。

 最新のデータといたしまして、実績でございますが、新しいのは平成十一年度でございますが、これは、風水害、地震、津波、火山対策等で約十件でございます。また、捜索救難等で約六十件。また、急患輸送、これがおよそ六百件。その他、山火事等の消火支援などが約百四十件。トータルで約八百二十件の災害派遣の活動を行っているところであります。

 ただ、今、新しいのはトータルでは十一年度と申しましたけれども、御承知のように、十二年度、大変大きな災害に見舞われました。その際に、私ども災害派遣に出ておりますので、若干、具体的な事例をちょっと敷衍して御説明させていただきたいと思います。

 御承知のように、昨年の三月末からの有珠山の噴火災害に際しましては、人員約九万八千人、車両約三万七千両、航空機約一千機、艦船約百隻により住民避難の支援、給食、給水支援あるいは観測支援等を実施いたしました。

 さらに、九月の上旬に見舞われました東海地域の集中豪雨がございますが、これに際しましては、人員約九千九百名、車両約一千八百両、航空機約百四十機によりまして、人命救助、道路の警戒、水防活動等を実施いたしました。

 さらに、十月六日でございますが、鳥取県西部地震に見舞われました。このときには、人員約一千三百人、車両約五百両、航空機約四十機によりまして、給食、給水の支援、航空偵察、それから入浴支援などを実施いたしました。

 そしてまた、一番直近で御記憶に新しいのが本年三月二十四日の芸予地震でございますが、これに際しましては、人員約五百三十名、車両百七十両、航空機約四十機、船舶約十隻によりまして、航空偵察、給水支援、それから雨漏り防止のシート等の貸与などを実施したところであります。

 そしてさらに、ちょっと長くなって恐縮ですが、最後に、今現在も続いておりますのが三宅島の噴火災害でございますが、これにつきましては、昨年の六月二十七日以降でありますが、東京都知事さんから三度にわたりまして災害派遣要請を受けまして、これまで泥流等の発生に対応するための土のう積みですとか、さらには降灰の除去、救援物資等の搬送等を実施いたしました。現時点におきましても、防災活動にかかわります人々、あるいは物資の輸送支援、さらに航空機におきます雄山の火山活動の観測支援等々をやっております。

 いずれにいたしましても、私ども自衛隊、全力を尽くしまして、迅速かつ適切に今後ともやってまいりたい。

 長くなりました。以上であります。

藤島委員 今説明ありましたように、大変いろいろなことをやっておるわけですね。特に、自衛隊ならではという仕事を一生懸命やってくれているわけでありまして、余りマスコミには出ていないのですが、非常に感謝されているわけですね。

 例えば、雲仙・普賢岳の件では、当時の長崎県知事から、自衛隊は、もはや協力者でも支援者でもなく、安心、安全の確保のためなくてはならない存在になっていたというふうな感謝もされております。

 あるいは、先ほども説明がちょっとありましたが、有珠山なんかでも、装甲車で一生懸命活躍しております。こういうのは自衛隊しかできないわけでありますね。そのほか、離島での急患輸送、これは自衛隊に犠牲者が出てまで一生懸命やっておるということであります。

 あるいは、ちょっと古い話ですが、JALの御巣鷹山の件なんかでは、あそこで五百名ほどの犠牲者が出たわけですけれども、それを八月の暑い中、一生懸命捜索をして、死体をおろして、やった。そういう普通嫌がるといいますか、本当に大変な仕事。あるいは、河川のはんらんなんかで出動しまして、あの泥水の中をひもでつないで助けに行くとか、ああいうのは本当に大変な仕事なんですね。

 現に、国民から大変に信頼もされ、感謝もされているということなんですが、それに対しまして、私は、災害派遣の自衛隊の手当が低過ぎる、こう思うわけです。ちなみに、聞いてみましたら、何と一日八百円なんですね。十日ぶっ続けで出て八千円ですから、子供の小遣いにもならないぐらいしか、十日間朝から晩まで泊まり込みで行っても、それぐらいしかならない。こんな手当でいいのかどうか。

 一方、確かに警察なんかでも同じような手当が出ているのですけれども、警察の方は、残業手当といいますか超勤手当がそっくり出るものですから、一カ月おりますと四、五十万の手当になる。一方、自衛隊の方は八百円で、例えば三十日いましても二万四千円。これは給与制度の違いがあるにせよ、とんでもないことだ。一方、やっている仕事の内容は、先ほど申し上げたような、普通の人じゃなかなかやってもらえないようなことをやっておるのです。この辺について、改善の方向、これをぜひやっていただきたいと思いますが、長官、この件についてどういうふうにお考えになりますか。これは長官にお願いします。

柳澤政府参考人 申しわけありません、簡単に説明だけさせていただきます。

 先生御承知のところで御発言と思いますが、手当の額そのものは、一般職と並びで設定をしております。ただ、おっしゃるように、自衛官はあらかじめ二十一時間程度の残業手当分が本俸に繰り入れられておりますので、そういう制度の違いで差が出ていることも事実でございます。

 ただ、これは全般のあり方、給与のレベル全体のあり方等、それから実際に災害派遣の実績や現状も踏まえて、私ども、今後とも研究していかなきゃいかぬところだと思っております。

斉藤国務大臣 今、藤島委員から御指摘いただきまして、そんなに格差が大きいのがあるものかなという実感を持ちましたので、その点、よく勉強させていただきたいというふうに思います。

 災害派遣で出動した自衛隊員の処遇改善につきましては、そういった特異な環境下での作業ということがございますので、十分考慮いたしたいと思いますし、御指摘いただいた点も念頭に置きまして、できる限りの努力をさせていただきたいと思います。

藤島委員 給与、手当の普通の考え方でいくとなかなか難しい、これは私もよくわかっておるわけですけれども、そこは、今のような実態を踏まえて、何かアイデアを出してやってほしいと思うわけでありますので、今の長官の答弁のとおり、ぜひ前向きに、早急に御検討いただきたい、こう思うわけであります。

 それから、災害がありますと、どうしても自治体との連携、これが非常に大事なわけでありますが、現在、阪神・淡路大震災の反省もあって御検討いただいておると思いますが、どういうふうになっているのか、御説明いただきたいと思います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 防衛庁といたしましては、先生御指摘のように、災害対処に第一義的な責任を有します自治体、この自治体との常日ごろからの連携が物すごく大事だと思っております。

 これまで、特に阪神・淡路以降、私どもといたしましては、四十七都道府県、全都道府県と実動訓練、防災訓練もやっております。そして、実動訓練というのはある意味では非常に有意義なのでございますが、またやれることも限られておりますので、さらに私どもといたしましては、今後、図上演習、こういうものも引き続き積極的にやっていきたい、そのように考えております。

 それからまたさらに、阪神・淡路大震災の経験を踏まえまして、私どもといたしましては、災害対策基本法の改正等によりまして、災害派遣を命じられた自衛官が、一定の場合に、自衛隊用緊急車両の円滑な通行の確保あるいは警戒区域の設定、土地建物の一時使用、障害物の除去等に対しまして、自治体の職員等が災害対策基本法に基づいて有する権限を行使するような整備を、国会の御手当てをいただきました。

 そのほかに、我々といたしまして、災害派遣に係るところの整備の充実強化、それから、発災したときには直ちに連絡幹部を県等へ出しておりますが、そうした自主派遣にかかわる判断の基準の策定等々、いずれにいたしましても、我々といたしましては、初動対応が非常に大事であるということ等を踏まえまして、今、関係自治体との間で円滑な連携の強化に努めております。

 また長くて恐縮ですが、なお、その中でまた特に大事だと思っておりますのは、災害派遣で出た自衛隊の活動拠点の確保、それからヘリコプターの離着陸場の確保などがとても大事でございまして、警察、消防、自治体とも連携をとりながら、そういったことにつきまして、今確認等の作業を進めているところであります。

藤島委員 そういう点も非常に大事であるし、今説明があったように、対応のマニュアルも作成して、現実的な即時対応、こういった方向に向かってやっておるということは大事なことで、非常にいいことだと私も思いますので、進めていただきたいと思うのです。

 そのほかに、各県あるいは政令指定都市のような大きなところには、全然素人の方がそれぞれの県なり市なりで育っていくよりも、やはり自衛隊の経験がある人間をそれなりの、防災官とか何かのポストでいいのですけれども、それにつけて、常時連絡できるようにしておく、これがまた大変大事なことだと私は思うのですね。東京都なんかですと志方さんがおっておるし、神奈川県にもOBがおっておるというようなこともあるわけです。

 これは、ぜひ進めていくことが円滑な初動対処になるし、どことどこに連絡するとかいうのも、やはり自衛隊の経験者であると非常にスムーズにいくわけですからね。やはり県で育った人はなかなかそういうふうに、かゆいところに手が届くようなわけにはいかぬものですから、私は、ぜひそういう制度を進めていくべきだと思います。

 ちなみに、自衛官の定年が非常に早いものですから、五十四歳、五歳ぐらいなものですから、一般の公務員の定年が六十歳ですから、そこから五年以上ありますし、あるいは、若干それ以上あれしたりしましても、大変いいことである。

 これはかつて私は自治省の局長に相談したことがありまして、一年ぐらい前なんですけれども、これはぜひ前向きに進めるべきだというような御意見もあったのですが、総務省はこの点についてどういうふうに考えているか、意見を聞かせてください。

片木政府参考人 大規模災害時におきます災害応急活動を行う上で、お話ありましたとおり、地方公共団体と自衛隊等との連携は極めて重要であるというふうに認識をさせていただいております。

 消防庁といたしましては、地方公共団体に対しまして、平素から地方防災会議等の場を通じまして、自衛隊などの防災関係機関との連携を強化すること、地域防災計画の中で防災関係機関の連携協力に関する事項を定めること、先ほどお話のありました防災訓練の実施に当たりましては自衛隊等の防災関係機関と連携をとって実施すること等を要請しております。

 お話にありました、最近、地方公共団体の中には、OB自衛官を中心に防災関係職員として採用されておる例があるというふうに聞いております。これも連携を進めていくための一つの方法であるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、地方公共団体の職員の任用は、申し上げるまでもございませんけれども、各団体の長の責任で判断されるべき事柄でございますので、地方公共団体の意向も踏まえまして、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。

藤島委員 ぜひ、応援する方向で指導なりをしていただきたいと要望しまして、質問を終わります。

川端委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 今回の法案の根底にある問題について、冒頭一、二、伺いまして、法案の質問に入りたいと思います。

 私は日本共産党の赤嶺政賢です。

 防衛庁長官は、二月の所信表明の中で、初めて責任という言葉を使いました。「国際社会における我が国への期待が高まりを見せる今日、防衛庁・自衛隊は、我が国のみならず、国際社会の平和と安定にも責任を有しております。」このように述べられたわけですね。

 ところで、これまでの新防衛計画大綱だとか、あるいは昨年の通常国会の所信表明では、責任という言葉ではなくて貢献という言葉を使われているわけですね。より安定した安全保障環境に向けて積極的に貢献していくと。

 責任という言葉と貢献という言葉の間には、明らかに違いがあると思いますけれども、特に、なぜこれまでの貢献という言葉を責任という言葉に変更したのか、長官の見解をお聞きしたいと思います。

斉藤国務大臣 御案内のように、我が国が世界から信頼される国家になりたい、これは国民あまねく信じているところでございます。そのためにも、国際社会で求められている責任と役割を着実に果たしていくことが必要であると私どもは考えております。

 このために、防衛庁・自衛隊としても、内外の期待にこたえ、国際平和協力業務の実施もいたしてきているところでございますし、また、安保対話、防衛交流の推進等により、より安定した安全保障環境の構築に積極的に貢献することが防衛力の役割の一つの柱であると考えているところでございます。

 初めてだというふうに御指摘でございますが、このような考え方は、平成七年に閣議決定されました平成八年度以降に係る防衛計画の大綱において示されたところでもございまして、防衛庁としては、今後とも、国際平和のために積極的に取り組み、国際社会に対する我が国の責任を果たしてまいりたいというふうに考えております。

赤嶺委員 所信表明では明らかに貢献と責任という言葉を区別して使っていらっしゃる。貢献といえば任意で行うことになりますが、責任といえば義務が生ずるわけですね。私は、やはりここで防衛庁は、国際社会の要求にこたえるという言い方で一歩重大な方向に踏み込もうとしているということを指摘せざるを得ないのです。

 国際社会の要求ということで私たちが思い起こすのは、去年の十月に、アメリカの知日派によるいわゆるアーミテージ・レポートの中で、こう言っていますね。日本が集団的自衛権を否定していることが同盟協力を束縛するものとなっている、これを撤回することは、より緊密で効果的な安全保障協力を可能にする、そして、今や負担の共有、バードンシェアリングから、力の共有、パワーシェアリングに至るときだと。このように、昨年十月に知日派の方々は提言をしていらっしゃるわけです。

 それで、せんだって出された自民党の国防部会の提言では、同じトーンで、政府の従来の集団的自衛権行使に対する解釈は同盟の信頼性確保の上での制約となっているとして、政府解釈の変更や新たな法律の制定による集団的自衛権の行使を求めているわけです。

 今、斉藤防衛庁長官が、貢献という去年の所信表明から一歩進んで、責任という言葉を使ったのは、今の、アメリカの知日派と言われている人々の集団的自衛権行使に踏み込めという要求、そして自民党の国防部会の報告、これらを念頭に置いた、そういう方向への一歩踏み出した発言ではないかと指摘せざるを得ないのですが、いかがですか。

斉藤国務大臣 私が、御指摘のように二月二十三日にそのような内容でお話をさせていただいておりますが、それよりさかのぼりまして、二月八日には、森内閣総理大臣からも同じような趣旨で、申し上げますが、「国際社会で求められている責任、役割を着実に果たしていくということが必要である」という御発言がございます。

 これは、よりよき社会をつくっていこう、より平和な世界にしていこう、そのために私ども日本がどれだけのことができるだろうか、そういった基本的な考え方の中で、私ども、申し上げているわけでございます。

 そしてもう一点、アメリカの有志によるレポートが出されたということを御引用されました。

 確かに、個人のお立場での著書というふうに聞いておりますが、それに全部私どもが引っ張られるということはないというふうに考えてございます。

 御案内のように、集団安全保障は、国際法では認められていますけれども、我が国ではそれは行使しないということになっておるわけでございまして、日本の憲法の枠内での対応ということが大前提にあるということも御理解賜りたいと思います。

赤嶺委員 私は、集団的安全保障と自衛権の……

斉藤国務大臣 ごめんなさい、集団安全保障を集団的自衛権に訂正します。

赤嶺委員 私は、言葉のあやの違いとして申し上げているわけじゃないのです。

 国際社会に対する責任を一層果たしていきたいというその背景になるのは、先ほどの知日派の論文があり、それにこたえた自民党の国防部会の報告書がある。そういうことを土台にして、今政府が責任という言葉を盛んに使っていますけれども、やはりこれは集団的自衛権や海外での武力行使に突き進んでいこうという意思の表明にほかならないということを指摘しながら、次に、予備自衛官への公募制導入問題について伺いたいと思います。

 予備自衛官への公募制の導入が法案に盛り込まれているわけですが、これは、従来の元自衛官だけにとどめないで、民間からも公募して採用しようというものであるわけですね。

 それで、改めて確認をしたいのですけれども、これまでの答弁では、予備自衛官の防衛出動時の任務について、常備自衛官が第一線に出動した後の地域の警備、補給、医療を担うということだけにとどまらないで、戦闘で欠けた人員の補充として第一線に送られることもあるとしてきているわけですが、現在もそういう見解に変わりはありませんか。

石破副長官 基本的な運用の構想は、今委員が御指摘のとおりでございます。しかし、本当に欠けてしまった場合に、後方におりましたそのような部隊が出なければ任務が全うできないということは、当然理論としてありようかと思います。そういう可能性を排除するものではもちろんございません。

赤嶺委員 戦闘で欠けた人員の補充として第一線に送られることもあり得る、こういう可能性は排除しないという答弁でありました。

 それでは、次に伺いたいのですけれども、防衛出動命令が発せられたときに、予備自衛官が出頭を拒否した場合、これは自衛隊法第百十九条によって三年以下の懲役または禁錮ということになると思いますが、間違いありませんか。

石破副長官 そのような考え方でおります。

赤嶺委員 次に伺いたいのですけれども、予備自衛官補という制度なんですが、訓練期間中の予備自衛官の候補者は、訓練の修了の日の翌日に予備自衛官に任用されるものとするとなっています。

 この予備自衛官補から予備自衛官になる場合に、何らかの方法で本人の意思を確認する措置をとることになっていますか。

石破副長官 そのとおりでございます。

赤嶺委員 そうすると、基本的には本人の意思をとって、訓練を修了すればその時点で自動的に予備自衛官に任用されていくということになるわけですが、そうした予備自衛官補が予備自衛官になるときに、予備自衛官が第一線にも送られるということ、そして防衛出動命令を拒否した場合には罰則があるということ、訓練を修了すれば自動的に予備自衛官に任用されるということについて、予備自衛官補を募集する際にきちんとした説明は行われるのでしょうか。

石破副長官 自動的にということは、私は、訓練が終わって次の日から自動的になるというわけではないというのは先ほど申し上げたとおりでございます。

 また、そのことについて説明をするかということでございますが、いやしくも予備自衛官補、そしてまた予備自衛官となるということでございます。そして、それがまた災害招集また防衛招集というときには、先ほど御説明したような立場に立つわけですから、そのことは当然義務として御説明をいたします。いいかげんなことをするつもりは毛頭ございません。

赤嶺委員 そうすると、予備自衛官補が予備自衛官にならないという本人の意思表示があれば、ならなくていいわけですね。

石破副長官 それは当然、そういう意思表示があればそういうことはあり得るだろうと思っております。

赤嶺委員 大まかな流れがつかめました。

 そこで、私、今度の予備自衛官補のもう一つの問題として、学生をその対象にしているという問題について伺いたいと思うのです。

 法案では、予備自衛官補の一般公募は十八歳からということになっていますね。それで、五十日間の訓練を修了すれば予備自衛官に任用されることにもなっています。

 そうなりますと、例えば大学一年の学生がその年のうちに訓練を修了すれば、残り三年間の学生時代を予備自衛官として過ごすことになるわけですね。

 その際に、防衛庁長官に伺いたいのですが、その間に仮に有事というような事態になれば、こうした学生も招集されることになるのではありませんか。

斉藤国務大臣 今御指摘いただきました学生、要するに募集資格が十八歳以上ということが今回の一つの基準になっております。

 したがいまして、一般の方もまた学生も、十八歳以上という該当者になった場合は、まず最初に、あくまでも個人の志願、意思に基づく制度だということでございまして、そのような個人の意思を持って応募されるということが大前提になるわけでございます。したがいまして、志願に基づいて、試験または選考により防衛招集応招義務のない予備自衛官補に採用されていくということでございます。

 先生は、所要の教育訓練修了後予備自衛官に任用されるという、そういった後さらにという御質問でございます。

 御案内のように、予備自衛官になりますと、災害派遣並びに防衛出動等々の任務も与えられてくるというふうにあるわけでございますが、これは制度の中での対応だということになると思います。

赤嶺委員 私は、志願していない学生を予備自衛官補にするなんという話は一言もやっていないのですよ。予備自衛官補になった学生が、予備自衛官補の訓練を受けて、そして所要の訓練を受けて予備自衛官になったときに、防衛出動の場合に学生も対象にするのですねということであります。

 それは、そうするということでありました。その場合に、私たち日本の社会が、日本の歴史を振り返ってみて、学生をどう見るかということなんですよ。私、学生を有事の際には政府が兵力の一部とみなすことになる、ここが非常に重大な問題だと言わざるを得ません。

 一九九三年の十二月に、二百七十二名の私立大学の総長、学長が、二百七十二名といいますと、私立大学の約七割なんです。その一九九三年の十二月というと、学徒出陣五十年という年なんですね。この年に、約七割の総長、学長が共同声明を出しています。その共同声明は「学徒出陣五〇年にあたって」というタイトルで、

  今日の高等教育の重要な部分を担う私立大学の総長・学長の職にある私たちは、戦争に青春を奪われた全世界の若人たちのことを、とりわけ、戦陣に倒れた学徒のことを痛惜の念をもって想い起こす。

ということをした上で、大学の使命とは何か、学徒出陣との関係でこう言っています。

  大学の使命が、真理の探究を通じて世界の平和と人類の福祉に貢献すること、そのような学問的営為によって次代を担う若人を育てることにあることは言うまでもない。私たちは「学徒出陣」五〇年という時期にあたり、このような悲劇を重ねないためにも、大学がその本来の使命を今日の課題に即して、十二分に果たさなければならないとの厳粛な想いに打たれる。とりわけ、総長・学長の職にある私たちは、自らの責務の重さを銘記するものである。

こういう決意を述べておられるわけですね。つまり、学生というものはどう見るかというのが、学長、総長のこういう見解があるわけです。

 皆さんは、この予備自衛官補、これは志願だと言いながら、学生を実力行使の一部とみなすというような、この点に僕は非常に歴史を振り返らない重大な問題があると思いますよ。自民党は笑っていますけれども、歴史的な経験をした人たちにはこういうことは非常に許しがたいことなんですよ。どうなんですか。学生をそのような実力行使の一部とみなすあなた方の考え方は、この私立大学の学長、総長の考え方に照らしても間違っている、このように思いませんか。

石破副長官 大学の使命というものの中にそのようなことがある、それは委員御指摘のとおりですし、そのような総長、学長さんの御意見は、それはそれで多とせねばならぬと思います。しかし、これは志願するものでありまして、これを学徒出陣、徴兵制とダブらせて議論をされるというのは、私はそれは事の本質を意図的にゆがめるものではないかと思っておりまして、そのような形の御議論はいかがなものかというふうに私は思っております。

 これは志願制でもございます。徴兵制でも学徒出陣でもございません。そしてまた、国を守るということが、国の独立を守るということが非常に崇高な使命であるということは、多くの国民が認識をしておることでございます。それを戦前と重複させて議論するというやり方は、私どもが戦後営々として歩んできたこの歴史をかえって否定することになるのではないか。国の独立の価値、そしてまたこの国を守る崇高な使命、それに学生が志願するということが、私はちっともおかしいことだとは思っておりません。

赤嶺委員 全然わかっていないんですよ。私、徴兵制だといって批判しているわけじゃないんですよ。日本の歴史の中に、学徒を過去に戦場に連れていった、そういう痛恨の思いがある。この痛恨の思いを歴史的に見る見方というのは持たぬといけないわけですよ。既に、私立大学の学長、総長の七割に当たる人たちが、学徒出陣五十年に当たって、再び学徒を戦場に送ってはいけないというようなことを述べておられるわけですね。そういう認識を全く踏まえないで、そんな学徒出陣と結びつけるだとか徴兵制と結びつけるというようなのはおかしいというような話は、あなた方の歴史認識がおかしいと思うんですよ。

 私は、何でそんなことを言うかといいますと、やはりあの歴史に対する反省が皆さんは全然足りないわけですよ。

 この間、さっきの教科書の問題で議論になりましたけれども、扶桑社の教科書採択に当たったときに、沖縄の新聞に投書が載りました。これは学生です。「何をどう伝える歴史教科書」ということで、こう言っているんですよ。「慰安婦の記述は消え、「南京大虐殺」も簡略化、果てには「ひめゆり部隊」を勇敢に戦ったとすらある。」このように言っているんですね。そして「沖縄戦の記述が減り、住民よりも軍人の方が戦死したというような表現や基地について触れないことに、沖縄の多くの人が沖縄戦の真実、基地についての現状を正しく伝えていない、と憤りを感じたことだろう。」このように言っているわけですね。つまり、日本の国民というのは、私たち沖縄県民にとっても、あのひめゆり部隊の悲劇とかあるいは健児の塔の悲劇とか、非常に忘れられないもの、国民的体験があるわけですよ。

 私の中学時代の恩師は、ひめゆり部隊の生き残りでした。その生き残りである恩師が、自分が生き残りだということを私たちが成人になるまで語ってくれなかったんです。成人になってお話を聞いたときにこう言いました。実は、あの戦争で同級生がみんな死んで、生き抜いているということが犯罪だというぐらいに考えてきた。その同級生の親に会ったときに、生きているということについて本当につらい思いをしてきた、だからあの戦争を語れなかったんだと。二度と同級生や学徒がああいう戦場に行くようなことがあってはならない、このようにしてこの恩師は語っておりました。

 斉藤長官、学生をそういう第一線に送ることについて、日本の歴史を踏まえて、少しはじくじたるものはないですか。志願と言いますけれども、やろうとしているのは皆さんですよ。皆さんが仕掛けをつくって、そこに学生をやろうとしているわけですから、そういうじくじたるもの、国民の歴史的体験に照らしてありませんか。

斉藤国務大臣 赤嶺委員は教壇にも立たれたというふうに聞いております。したがいまして、人を育てる、また指導する、学生とも接する、こういったことが人一倍、気持ちが、お思いになるのではないかとお聞きいたしておりました。私もそれにまさるとも劣らない気持ちで、今の若人、学生を思っています。

 ただいま御説明申し上げましたように、新たな制度を導入する中で、十八歳以上、一般の方もおられますし、学生さんもおられます。そして、これは志願制度の中で導入させていただきたいわけでございます。加えて、その応募時と説明時には十分な説明もさせていただきます。そして、予備自衛官になった暁には、災害派遣または防衛出動、そういった任務もあり得るということも十分御説明させていただきたいと思っております。

 そんな中で、日本は長い歴史の中で悲惨な戦争も体験してまいりました。そして今、かたく誓っているわけです、専守防衛に徹しようと。守っていかなきゃならない、若人にも、やはり守っていただくその一翼を担っていただきたいと私は思っています。先生の御意見を聞きますと、あたかもあした攻めていくようなお話でございますが、とんでもない。日本は専守防衛、そして、憲法を守りながら対応していくということをぜひ御認識いただきたいと思います。

赤嶺委員 斉藤防衛庁長官、これだけ大きな声を出して言うのなら私も言いたいと思いますよ。

 こういう、攻めてくる危険もあろうはずがないという中であなた方は沖縄にあれだけの基地を置いて、あれだけの苦しみを与えて、しかも皆さんの出先の防衛施設局長がとんでもない発言を沖縄で繰り返して抗議を受けている。自衛隊だってそうじゃないですか、米軍と同じような不祥事件をどんどん起こしている。だから、こういう防衛について沖縄県民が負っている負担を考えたら、そう大声を出して言うべき問題じゃないですよ。もっとじくじたる思いで防衛を語らないと、防衛でこれだけ犠牲にしておいて、そういう話が通用すると思いますか。私は、そのことをまず申し上げておきたいと思うんですよ。

 それで、やはり日本の社会が、学徒について、学徒出陣だとかあるいはひめゆり部隊の悲劇だとか、こういう歴史的体験を持っている日本の社会が、学生を戦場に送るようなそういう法律は絶対つくっちゃならないということを申し上げて、最後の質問に移りたいと思うんです。

 予備自衛官補だとか即応予備自衛官だとか予備自衛官とかいろいろつくって、結局、実戦部隊はやはり強化される。それで、今私が申し上げたいのは、そういう自衛隊の強化ということではなくて、アジアでの平和の流れだとか、朝鮮半島での平和統一の流れ、これは私、よくわかるのですよ、北朝鮮や韓国の人たちが民族の統一を願っているということを。私自身が、祖国から分断されて、東京に来るにはパスポートを持って渡航せざるを得ないという民族分断の悲劇を味わいましたので。

 それで、沖縄にいる民団の人たちに聞きました。民族の統一の流れは抑えがたいものがある、幾ら政治がどういう流れにあろうと、やはり平和統一の流れだ、国民的にはそういうことだというぐあいにお話ししておりました。そういう中で、やはり明らかに日本の国も軍縮に踏み出すべきだというぐあいに思いますが、いかがでしょうか。

斉藤国務大臣 今朝鮮半島のお話にも触れられました。私、民族ということも非常に大事な要因の一つだと思っています。

 十年前にドイツは東西分かれておりましたけれども、一緒になりました。次は北と南の朝鮮、韓国が一緒になるのだろうな、みんな期待を持って見ているところも事実でございます。しかしながら、南は民主主義の国であり、自由主義の国であり、一方、北の北朝鮮、正式には朝鮮民主主義人民共和国という名前だったと思いますが、これはどういう政党が中心になっているか、朝鮮共産党だと言われているわけでございます。私は、民族を超えて仲よくしていただくことを切に願っているわけでございますが、そういういろいろな考え方の人たちがいる中で、いろいろなことを難しくしている、残念に思っておるところでございます。

 沖縄の問題につきましては本当に心が痛んでおります。少しでも沖縄の皆さんの負担を軽くしようということで、SACOも着実に今進展を見ているところでございますし、また先生が御主張なされる、学生がすぐ戦争に行くような話と今回の法案とは何かちょっとすれ違うような感じもいたしてございますので、ぜひとも私どもの趣旨を御理解賜ることを切にお願いを申し上げたいわけでございます。

赤嶺委員 すれ違って近づいてこないのは皆さんの方であって、どこにすれ違いがあるかといえば、やはり国民の歴史的な体験を踏まえて、学生が戦場に行くようになるような制度をつくるのは、政府としてどんな責任、どんなじくじたる思いも持っていないかということが問われるということも申し上げておきたいと思います。

 それで最後に、斉藤長官が北朝鮮も共産党ではないかというようなお話がありますが、皆さんがよく知っているように、私たち日本共産党と北朝鮮労働党とは全く関係のない、むしろ一番厳しい批判をしてきた政党であると同時に、SACOの問題もおっしゃいましたけれども、SACOの問題は沖縄にとって、米軍基地問題の整理縮小ではなくて、新たな基地の建設である、こんなことでは納得しないということも申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

川端委員長 次に、今川正美君。

今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。

 私は、今回提出された法案に入ります前に、一昨日の委員会で質問し損ねた点がございますので、一点だけまず冒頭、外務大臣にお尋ねをしたいと思います。

 例の米中の軍用機の衝突、墜落事故に関してでありますが、本日の新聞によりますと中国側も米軍機の乗員を全員解放するという記事が出ておりまして、ほっといたしております。前回申し上げましたように、できるだけ米中関係が険悪な方向にならないようにというふうに願っておりましたから、一安堵はいたしております。

 さて、この件に関しまして、御承知のように米軍のEP3偵察機は米国基地の所属であり、しかも嘉手納基地から発進をいたしています。

 この点に関しましては、実は琉球新報のことし四月三日の新聞で、東京国際大学の前田哲男教授が次のようなことをおっしゃっています。今回の米軍の行動は「極東における平和と安全の保持、日本の防衛というより、米国の国益を守る要素が色濃く、在日基地が野放しで米軍に使用されていることを表す。安保条約六条が定める極東の範囲は、中国沿岸域は含まないというのが政府の統一解釈であり、嘉手納基地からの飛行は六条に抵触する。」このように指摘をされているわけであります。私もそのように認識するのですが、この点、外務大臣いかがでしょうか。

河野国務大臣 前田さんがいろいろお書きになったりお話しになったりしていることを時々私も読ませていただいております。

 そのキャリアを見れば、この手の話に相当専門的であられるはずでございますが、その専門的であられるはずの前田さんのお話としては、いささかこれは私には納得のいかない御指摘でございます。もうこの手の話は随分といろいろ繰り返し議論のあったところでございまして、例えば偵察空域についても触れておられますけれども、偵察空域というものがいかなるものを指しているのか定かではございませんし、いずれにせよ、今般の事故が起きたのは公海上であったというふうに我々承知をしているわけでございます。

 今般の米軍の活動は通常のパトロール活動であったというふうに承知をしておりまして、米軍がこのような活動を公海上で行うことは、御指摘の極東の範囲との関係を含め、日米安保条約上、何の問題もないというのはこれまでの法的な解釈といいますか、そうした面での定説であることは、もうこの御議論をなさっている方には、どなたにも御理解いただけているというふうに思います。

今川委員 大臣の御見解として一応は受けとめておきますが、非常に気になるのは、今回のことで、米側の公式の、政府の考え方とはちょっと違うと思うのですが、いろいろなアドバイザーグループの中から、ややもすれば、これまで米中問題に関しては日本政府はいわば第三者的なスタンスをとってきたのではないか、もっと米中問題に関して積極的に関与すべしというふうな発言が随分見受けられまして、非常に懸念するところではあります。

 そこで今回、アメリカの新ブッシュ政権の対外政策について、特に特徴的に私が非常に懸念をしますのは、例えば対中国、それから対朝鮮民主主義人民共和国いわゆる対北朝鮮、あるいはロシア、この間の短期間の流れを見ますと、例えば北朝鮮に対しては、いわゆるペリー・プロセスあるいは枠組み合意ということを全面的に見直すというふうなことが新聞等でも報道されておりまして、せっかく冷戦が終わってからもう十年を超えておりまして、アジア太平洋地域、日本を取り囲む国際環境も、徐々にではあれ緊張緩和の流れというのが出てきた折に、米国の新しい政権がそういう、日本にとっても非常に重要な対外政策を修正したり、見直したりということが非常に気にかかります。

 これは私個人の推測にすぎませんが、例えばよく言われるTMD計画にいたしましても、アメリカのペリー元長官は、朝鮮半島が安定しさえすれば、日本にあえて配備をする必要はないのだということをはっきり断言なされています。しかし、政権がかわってから、恐らくアメリカの軍部や、あるいは国防総省あるいは軍需産業、そういったところの圧力があったのかな、巻き返しがあったのかなというふうに思えるところがあるのは、例えば、米国が中国と事を交えるということにはいかないにしても、そこそこの緊張感をいま一度つくり出すことで、BMDあるいはTMD計画を一つ例にとると、それを有効に推進できるのではないか、そういうことがうかがえるのであります。

 私が外務大臣にお聞きしたいのは、ややもすると、これまで日米間の中でそういう重要な対外政策を協議したり一つの物事を決めていくときに、まず米側からボールが投げられて、それが日本の憲法や法律に基づいてどこまで受けとめられるかどうかという、常に受動的な形でこの間推移してきたのではないか。事アジア太平洋地域における平和と安全の問題でありますから、もっと日本の側から、外務省などが中心となってもっと主導的に、主体的にアジア地域のあるべき平和の姿、枠組みというのをもっと積極的に提示をしていいのではないかというように思うのですが、その点いかがでしょうか。

河野国務大臣 アメリカがアジア太平洋の地域の平和と安定というものに大きな関心を持っている、これも別に悪いことではない、否定する必要はないことだと思います。

 他方、今川議員がおっしゃるように、日本がもっと主体的にこうした問題について積極的に外交努力といいますか、そういうものをやることによって、アジア太平洋地域の平和とか安定とか繁栄とか、そういうものを目指すべきではないかという御意見であるとすれば、私は十分理解できます。

 ただ、御存じのとおり、例えばASEANプラス3、これはASEAN十カ国に日中韓が加わって、これはアメリカは入っていないわけですね。アメリカが入らなくても、そういうASEANプラス3というようなグループで、会合でアジアの平和、安定、繁栄、そういったものについて真剣な議論をする。とりわけASEANプラス3の会議のときには、プラス3の部分、いわゆる日中韓で首脳会談を行うということがもう定期的にといいますか、その都度首脳で集まって話をするということがもう定着をしてきていますね。こういうことは、私はやはりいいことだと思うのです。そういうところでそれぞれが、首脳がアジアの問題について話し合うということは、私はこれから先もどんどんと進めるべきで、行われるべきだと思います。

 と同時に、現在のアジアの安定の要素の一つは、やはりアメリカのプレゼンスというものがあることも、これも否定できないわけでございますから、それらについても十分承知の上で、さらに一層の安定とか繁栄とか、そういうことについて話し合うということは、これからもやっていくべきだと思いますし、それは定着をして、その話が進んでいるということを私は申し上げておきたいと思います。

今川委員 私も、このASEANの問題に関しては、御存じのようにASEAN地域フォーラムというのが形づくられて、その中で、アジア地域における平和、安全保障のあり方が真摯に議論がもう既に始まり、定着しているということを私なりに評価をしておきたいと思うわけであります。

 さて、今回の法案で、これからの自衛隊のあり方、任務等についてどう考えたらいいのかということを御質問する前に、このアジア太平洋地域の全体的な問題なり、特に本委員会でも各党から御質問の中にありましたが、いわゆる集団的自衛権ということの基本的な考え方であります。

 これはもう釈迦に説法かと思うのですが、国連憲章が当初つくられる折には、集団的自衛権イコールというわけではありませんが、軍事同盟的なことを意味するこの集団的自衛権という概念は、最初なかったと思うのですね。

 ところが、ラテンアメリカ諸国あたりから、表現はちょっと妥当ではないと思うのですが、創設される国連というのは頼りにならないというのか、その間にどこかが攻めてきたときにどうするということで、アメリカに頼みたい、そういうふうな考え方、流れの中で、かなり唐突に国連憲章の中に個別的自衛権及び集団的自衛権という概念が導入されたというふうに私は理解しております。ですから、集団的自衛権とは何ぞやということの明確な定義が国連憲章の中にはないはずであります。

 そこら辺が、国連がもともと目指す方向、理想とした集団安全保障という言葉とよく似通っている面もあって、いわゆるあらかじめ敵を特定せずに、国際ルールに違反する、国際ルールを破った場合に、あくまでも平和的手段ということを大前提にしながら、さまざまな、非軍事的な措置もありますけれども、あくまでも大原則は、国連加盟国全体でこれに対処していくということが原則であったと思うのですね。

 これに対して、集団的自衛権というのはあくまでも、相手方がアメリカとは限りませんが、NATOも含めまして、まさに二国間あるいは多国間で軍事同盟条約を結びながら、ここで軍事的に対処していくということでありますから、国連の目指そうとした集団安全保障という概念と、いわば軍事同盟的なものを意味する集団的自衛権というのは、本質的に違うのではないかと私は思うのですね。

 その点を、国連憲章がつくられる過程を含めまして、今私が申し上げたことで間違いがないのかどうか、外務大臣、ちょっと御答弁をお願いしたいと思います。

河野国務大臣 集団安全保障と集団的自衛権についてお尋ねでございますが、もう今議員が述べられましたが、もう一度整理して申し上げますと、集団安全保障とは、平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為が発生したような場合に、国際社会が一致協力して、このような行為を行ったものに対して適切な措置をとるということによって平和を回復しようという概念でございまして、国連憲章にはそのための具体的措置が規定されている、これが集団安全保障でございます。

 国連憲章第七章に規定されております集団安全保障制度は、特に国際連盟の失敗に対する反省に基づいて、国連の最も中心的な機能の一つとして規定されているというふうに理解しておりますが、集団的自衛権というのは、これは今お話がありましたように、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を言うわけでございます。

 それで、集団的自衛権は、国連憲章の制定以前に既に地域的な相互援助条約を締結していた米州諸国などの主張を入れまして、起草過程において、集団的自衛権が国連憲章第五十一条で明示的に規定されるに至ったものというふうに解釈をしております。

 つまり、両者の違いについては、集団安全保障制度は、ある国が侵略などを行った場合に、当該国も加盟している国連自体の判断のもとに、軍事的その他の強制措置によって、こうした侵略行為を鎮圧しあるいは除去する制度であるのに対しまして、集団的自衛権に基づく実力行使は、国連自体が組織してとるものではなくて、国連が集団安全保障制度のもとで必要な措置をとるまでの間、武力行使を受けた国と何らかの連携関係にある国が、侵略を除去するために当該国の判断によってとるということが許容されている措置という点が異なっている。これはもう議員が御指摘になったとおりでございます。

今川委員 そこで、これからの日本あるいはアジア太平洋地域の平和のあり方、安全保障のあり方ということに関してでありますが、私も今いろいろと、この冷戦が終わってから十一年間、湾岸戦争からコソボの紛争等に至って、いわゆる武力を投入してみて、これが米軍であれ多国籍軍であれ、武力を投入することで事がうまく解決したのかどうか。一〇〇%とは言いません。例えば、今のアルバニア系住民の一部が武装してマケドニアにまで入り込むというような事態も生じて、かえって事態が複雑困難になっている面もあります。そういった意味で、私は、これからのあり方というのはいわゆる紛争予防、予防外交に重点的にシフトをしていくべきだというのが私の考え方なんです。

 実は、この点に関しましては、一九八八年、毎日新聞によりますと、いわゆる竹下三原則というのが出ているんですね。当時の竹下総理ですが、一つは援助の強化、それから二つ目に文化の交流、三番目に紛争防止への積極参加ということを国連総会の中でもおっしゃっている。さらに、一昨年、これは河野外務大臣も出席をなさっているようでありますが、いわゆるG8の外相特別会合の中でも、いわゆる紛争予防の大切さ、これからの国際社会の中で紛争予防を最も重要にしながら臨んでいくべきではないかということが言われております。

 そういった意味では、九七年の統計によりますと、最近の戦争というよりも紛争というのは、国家間の争い事ということよりも、一つの国の中の民族同士とかいうことが随分ふえていまして、九七年統計だと、百三件の紛争の中に占める国家間紛争は十七件にすぎなかったという統計もあるわけであります。

 そういった意味では、やはり先ほど申し上げました国連のあり方、いろいろな面で改革がなされなければならないというふうに思うのでありますが、そうして見ますと、予防外交を基軸に置きながら、国連をいろいろな意味で抜本的に改革していく意味において、これまで日本政府もそれなりの努力はあったと思うんですが、この点は大臣、いかがでしょうか。

河野国務大臣 紛争予防というのは、今、国際社会の中で、とりわけ先進国が最も関心を持つ問題だというふうに私は認識しております。

 一体、紛争というものはなぜ起こるか。今議員がおっしゃいましたように、民族間の問題もありますし、あるいは宗教上の摩擦もあります。あるいはもっと深刻なのは、貧困によって起こる紛争というものがございます。まだほかにもいろいろケースはあると思いますけれども、そうした紛争を予防するためには、例えば貧困を克服するための援助でありますとか、これはただ単に経済援助だけじゃございません、技術援助もあるだろうと思いますが、そうした貧困を克服するための手だて、これをどういうふうに考えていくかという問題もあると思います。

 それから、紛争が起こった後、なかなかそれが終息しない、どんどん深刻になっていくという問題を考えますと、そこには、例えば武器がどこからか渡されてくる、あるいは流れ込んでくる。あるいは、その武器を買うための財政力といいますか、金がどこからかそこへ回る。私どもG8の外相会議で議論をいたしましたときに大きなテーマになりましたのは、アフリカの紛争で、武器を買うための原資に例えばダイヤモンドが使われる。ダイヤモンドが不正に採掘されて、それがやみのルートで流れて、その金が資金になって武器が買われるというような問題がある。したがって、やみのルートで資金がそういうところに流れ込むことを何とか防ぐ方法はないかというような問題についても、相当突っ込んだ議論が今行われているわけで、これは一回のG8の外相会議で結論が出るというものでもございません。とにかくたくさんのケースがありますから。

 先般の九州・沖縄で行われましたときの外相会議では、例えば小型武器をどうやって規制するか、あるいはダイヤモンドの売買をどうやって規制するか、あるいは貧困の克服のためにどういう方法があるか、あるいはその結果非常に犠牲になる子供たちをどういうふうに救うかとか、そういった問題について議論する。恐らく、ことしイタリーでまたサミットが行われれば、イタリーのサミットの前に行われるであろう外相会議でも、紛争予防についてまた別のテーマが議論されるということになると思います。

 我々は、今お話がありましたように、やはり紛争予防というものをもっと集中的に議論して、それを具体的に進めていく。中には、今これも議員がヒントとなる御意見を述べられたように、国家の単位で考えて問題が解決するだろうか。これは小渕総理が人間の安全保障という概念を提唱されて、これは国連の中で、人間の安全保障、一人一人の人間の安全保障についてどうやってそれを守るか、こういう考え方もあるわけですね。ですから、さまざまな問題のつかまえ方といいますか、アプローチの仕方について、それはケース・バイ・ケースでいろいろなケースがあると思いますが、それをやっていかなきゃいけないというふうにも思うわけです。

 それからまた、紛争と一言で言うけれども、一体、紛争とはどういうものを紛争というか、あるいは紛争が解決されたという状況はどういう状況をいうのか。つまり、国境線が変更されそうになったものを押し戻す。それが押し戻された結果、もうそこで紛争が解決されたと言えるかどうかという問題もあると思います。

 長くなって恐縮ですが、もう今から三十年近く前でございますけれども、イスラエルにダヤンという大変な兵隊さんがいまして、このダヤンさんは飛行機乗りで、大変強くて、ダヤン率いる部隊というものはもう大変な強さだったんです。そのダヤンが、ある日、東京に来ておりまして、私は全くぶらっとホテルでそのダヤンと一緒にお茶を飲んだことがあるんです。いろいろな話をしましたが、もう天下無敵の部隊を率いているダヤンが、ミスター河野、武力で問題は解決しない、武力で問題は絶対に解決しないのだ、解決をするのは話し合いによって、納得によって解決する、納得しなければ問題は解決しないんだと。その人に言われて、私は、なるほど、そうだということをしみじみ思ったことがあるんでございます。

 これから先も、我々は、外交努力というものをやはりさらに一層強めていかなければいけない。しかし、問題が起こっているときには、力でそれを抑えておく、あるいは原状に戻す、そういう力もまた一方で必要で、これが全く要らない、こういうものを使わないで問題が解決するかというと、そうもいかないということもあるということを申し上げたいと思います。

今川委員 もう時間もあと五分を切ったようなので、本当はこれから防衛庁長官にかなり具体的に今回の法案でお尋ねをしたかったのですが、もう一括してお尋ねをいたしたいと思います。

 私が、きょうわざわざ時間の大半を外務大臣の方に振り向けたのは、今紛争予防だとか、これまでのように長い間、軍事力に依拠していろいろな物事を解決していこうとする、そういう流れに対して、少なくとも日本という国は、この半世紀の歴史を踏まえて考えてみますと、国際環境も、冷戦時代に米ソが当時、非常に厳しい時代にあった、まだまだこれからでありますが、朝鮮半島でも、昨年六月にまさに歴史的な会談も行われている。もろもろの様子を考えてみますと、自衛隊をこれからどうするかという問題なわけですけれども、率直に申し上げて、今度のこの新しい中期防衛計画も含めまして、今の国の財政の非常に厳しい状況の中で財政事情も勘案しつつと書いてありますが、勘案しているのかなと思わざるを得ません。

 例えば、これは正式の文書ではないですが、アメリカの外交問題評議会という八十年以上の歴史を刻む有力なシンクタンクがございますけれども、数年前のレポートでも、長期にわたる兵器調達計画の中に日本を組み込むというくだりがあって、そういった意味では、例えば、今度の空中給油機、もう既に購入しているAWACS、あるいは、イージス艦でも大体七千トンそこそこの船でしたが、今度はいきなり一万三千五百トンの排水量を誇る、いわば軽空母の様相を呈した大型護衛艦を建造するんだ、あるいはこの御時世に戦闘ヘリを導入するとか、C1輸送機の開発にしても、P3Cの改良型にしても、飛行距離も六千五百キロあるいは八千キロというふうにどんどんやはり伸びていっている。

 そういった意味で、専守防衛と先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、まさに専守防衛という基本的な考え方からしても、国際協力の名のもとにこういう事態があっていいのか。今の国家財政の逼迫した状況を考えると、非常にぜいたくな買い物が多過ぎる、私はそう思います。しかも、後年度負担という形で次々に、台所は火の車なのに次から次に新しいものに手をつけてしまうというあしき循環というのがあるのではないかというふうに私は思うのであります。

 そういった意味では、少なくとも八五年からこの十五年余りの間に、例えばアメリカ、ヨーロッパ、あるいはロシア、中国、いわゆる兵員、装備、国防費、そういったものが日本ほど水平で推移しているところはない。ほとんど三割から四割削減されていると思います。

 そういった意味では、日本の場合だって、自衛隊は、今度も予備自衛官あるいは予備自衛官補とかいう制度が設けられる。そうしますと、確かに陸上自衛隊は若干定数削減となっていますけれども、率直に申し上げて、定数割れをした分、下方修正しているにすぎない。もっと大胆に、少なくとも十年ぐらいの計画的な期間をおいて、まさに国際環境、先ほど外務大臣もおっしゃったように、アジア太平洋地域の予防外交を中心にした国際環境を整えつつ、計画的にもっと自衛隊も軍縮、縮減をしていくべきではないかというのが私の基本的な考え方であります。

 それで、今度の防衛白書にも盛られておりますし、今回の法案の中にも触れられておりますが、例えば、国民の側からは災害対策に対して非常に期待が大きいというふうに言われております。いわゆる雲仙・普賢岳から阪神・淡路の大震災、いろいろなところへ自衛隊も出ていっておりますけれども、それだったら、いっそのこと、国内外の重要な災害に対応し得るそういう専門チームというのか、そういったものを編成し、それに必要な装備を与え、そういうさまざまな災害に対応し得る訓練を施す、こういった形で、災害救助部隊みたいなものを自衛隊から切り離してやってみたらどうか。そうすると、自衛隊の中の人材活用も十分に可能ではないかという気がいたします。

 ただし、自衛隊の場合は、さきの委員会で私は申し上げたことがあったんですけれども、まさしく河野大臣がおっしゃったように、人間の安全保障ということは、人権です。人間の尊厳を十分に理解し、人権教育が行き渡っている個人であり組織でないと、こういう国内外の災害救助には対応できないと思うのでありますが、この点、防衛庁長官、いかがでしょうか。

川端委員長 時間を経過しておりますので、結論をお願いいたします。

斉藤国務大臣 今、何かたくさんの御質問を賜った感がいたします。

 大局的な話としては、防衛計画の大綱にのっとりまして私どもは時代に合わせた対応をしている、したがいまして、前大綱よりも、陸上におきましては二万人、今大綱の中では減らしていくという大きな流れの中で日本の防衛力整備を進めているところでもございます。

 また、災害救助等々については、非常にニーズが高まってまいりました。それについても精力的に対応しなければならない。

 その点について、今、専門チームということで御指摘いただきましたけれども、一つの考え方かなという気がしないでもないわけでございますが、例えば災害救助にいたしましても、水からあらゆるものを網羅しなければできません。したがいまして、単品的にできるかというとそうでもないわけでございまして、そういう総合的な見地の中から、現在の選択をさせていただいているということでございますので、御了解いただければというふうに思います。

川端委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

川端委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。

 本法案は、昨年十二月、政府が閣議決定した新中期防衛力整備計画に基づき、自衛隊の部隊の体制及び機能の強化、米軍への支援態勢の強化を図り、新ガイドライン、周辺事態法の発動態勢づくりを一層進めるものであります。これは、朝鮮半島や東南アジアにおける平和の流れに逆行するものであり、断じて容認できません。

 第一に、陸上自衛隊第一師団の改編は、政経中枢地区の特性を踏まえるとして、都市部でのゲリラ、特殊部隊、NBCによる攻撃や災害への対処能力を強化するものであります。各普通科連隊の編成を従来の四個中隊から、より身軽な五個の中隊で構成することとし、高機動車、多用途ヘリコプターを導入するなど、周辺事態への対応も視野に入れ、より高い機動性、機能性を持つ自衛隊への改編を進めるものであります。師団の編成定数の変更は、実員数への数合わせの中で行われるものであり、およそ削減の名に値しません。

 統合幕僚会議の増員は、情報本部における情報分析・収集体制の強化、新中央指揮システム導入に係る統合幕僚会議事務局の体制強化などを図るもので、自衛隊の情報・指揮通信能力を一層強化しようとするものであります。

 第二に、予備自衛官補制度の導入は、元自衛官に限られていた予備自衛官の採用を、学生を含む自衛隊未経験者にまで拡大するものであります。

 現在の予備自衛官の定数は、政府が対ソ脅威を口実に制度発足時の三倍以上にまで拡大してきたものです。ソ連崩壊や朝鮮半島の緊張緩和など、国際情勢が大きく変化しているにもかかわらず、現在の自衛隊の兵力規模、構成を抜本的に見直すことなく、ただ現体制のもとでの予備自衛官制度の維持強化、さらには国民の中での自衛隊の組織化、定着化を図ろうとするものであり、容認できません。

 さらに、学生をも公募の対象としていることは、学徒出陣の悲劇を生んだ侵略戦争への反省、日本国憲法の精神に反するものであります。

 法案では、新たに予備自衛官の任務に災害派遣を付与するとしていますが、災害に対する国民の強い関心を逆手にとって、予備自衛官の確保、自衛隊への関心の高揚に利用しようとするものであれば、到底国民の納得を得られるものではありません。

 第三に、任期付隊員制度の導入は、一般職に準じて、情報技術の専門家などを民間から任期を定めて採用することによって、自衛隊の情報・指揮通信能力の強化をにらんだものであり、政府の意向に沿った民間人の採用、企業との人的つながりの拡大などによる新たな官民癒着を生むおそれがあるものです。

 以上、反対の意思を表明して、討論を終わります。

川端委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

川端委員長 これより採決に入ります。

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

川端委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

川端委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

川端委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十分散会




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