衆議院

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第4号 平成13年11月27日(火曜日)

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平成十三年十一月二十七日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 玉置 一弥君

   理事 石破  茂君 理事 園田 博之君

   理事 浜田 靖一君 理事 水野 賢一君

   理事 末松 義規君 理事 渡辺  周君

   理事 田端 正広君 理事 藤島 正之君

      岩屋  毅君    臼井日出男君

      嘉数 知賢君    瓦   力君

      下地 幹郎君    中山 利生君

      平沢 勝栄君    吉川 貴盛君

      米田 建三君    安住  淳君

      伊藤 英成君    江崎洋一郎君

      小林 憲司君    今野  東君

      首藤 信彦君    前原 誠司君

      河合 正智君    赤嶺 政賢君

      児玉 健次君    今川 正美君

      小池百合子君    粟屋 敏信君

    …………………………………

   議員           東  祥三君

   議員           中塚 一宏君

   外務大臣         田中眞紀子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      中谷  元君

   防衛庁副長官       萩山 教嚴君

   外務副大臣        植竹 繁雄君

   外務副大臣        杉浦 正健君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   防衛庁長官政務官     平沢 勝栄君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    津野  修君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   小町 恭士君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            谷内正太郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   安全保障委員会専門員   鈴木 明夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十七日

 辞任         補欠選任

  江崎洋一郎君     安住  淳君

  赤嶺 政賢君     児玉 健次君

同日

 辞任         補欠選任

  安住  淳君     首藤 信彦君

  児玉 健次君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  首藤 信彦君     江崎洋一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二八号)

 国際平和協力法案(東祥三君外一名提出、衆法第一三号)

 防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案(東祥三君外一名提出、衆法第一四号)


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     ――――◇―――――

玉置委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の一部を改正する法律案並びに東祥三君外一名提出、国際平和協力法案及び東祥三君外一名提出、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として防衛庁運用局長北原巖男君、外務省北米局長藤崎一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玉置委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玉置委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 きょうは、PKOの法案ということで、今、世間的にも論議がなされておりますし、特措法の関係でもいろいろと審議がなされたところであります。

 このPKOという活動でございますけれども、ODAとともにこのPKOというのは日本の平和に対する協力ということで、非常に貴重なものだと考えております。いろいろな憲法上の制約があるという話もございますけれども、その中でもでき得る限りPKOについては我々としても協力を深めていくということが重要であろうと思いますし、あのブラヒミ・レポート等についても、かなり前向きな、国際的な認識も深まっているということでございますので、日本としても積極的な形でかかわっていくということだろうと思います。

 ただ、法律上の問題あるいは憲法上の問題は一つ一つクリアをしていかなきゃいけない、そういう観点から御質問させていただきたいと思います。

 まず、このPKOについて、その要員ですが、日本で派遣をされるということなんですが、国内法が通じるわけでもない、さりとて国際法というものがこのPKOあるいは国連の法律ということではあるのかどうか。このPKOの要員について、法的な立場について、ちょっとまず最初にお伺いをいたします。

 ちょっと具体的に言えば、このPKOの要員、例えばそこでいろいろな過失とか、あるいは場合によっては犯罪とか、そういったところが起こった場合ですが、このPKOの要員についてはどこの国の法律が適用されることになるんでしょうか。ある意味では裁判管轄権みたいな話になるかと思いますが、まず、PKOの要員に対する法的な立場というのをちょっと明らかにしていただきたいと思います。

杉浦副大臣 先生は外務省に御在勤になったこともございますし、ODA初め、非常に幅広い御理解をいただいて活動されておるわけでありますから、御質問の趣旨も確認のためになさったと存じます。

 いわゆるPKO要員、これはPKO要員といってもいろいろございますが、一応自衛官を派遣するという前提で、いわゆる国際的には軍人の資格を持った者のというところに限定して答えさせていただきますが、そういう方々が派遣される、派遣地においての裁判管轄権についてのお尋ねでございますけれども、これは個々のPKO、さまざまなPKOございますけれども、そのPKOにおける国連とその受け入れ国、受け入れ国といいますか、受け入れ地域と申しますか、受け入れ政府と申しますか、その間に締結される地位協定によることと相なっております。

 それで、その地位協定なるものは、一応こんな分厚いですけれども、モデル協定というのを国連でつくっておりまして、その大体モデル協定にのっとって締結されておるのが通例でございます。大体モデル協定に近いものが、それぞれ今までたくさんPKOやっておりますが、結ばれておると御理解いただいて間違いないところでございます。

 この協定によりますと、地位協定、モデル協定、すなわちほとんどのPKOにおいて締結されている協定と御理解いただいても間違いではございませんが、それによりますと、その平和維持活動の軍事部門の軍事構成員、つまり自衛隊が派遣された場合は自衛隊員がそれに当たりますが、これは受け入れ国・地域において犯すことのあるすべての刑事犯罪については、それぞれ本国の専属的裁判権に属すると規定されております。

 したがって、我が国自衛官がそういう刑事事件を起こした場合は、すべて日本の法律によって裁判をされるというふうに相なります。

末松委員 そうしますと、そのPKOの要員の属性についてお聞きをしたいのですけれども、そうなりますと、モデル地位協定といいますか、例えば日本だったら日本と国連とあと受け入れ国、三者の間の地位協定という形になるんだろうと思うのです。そうなりますと、PKO要員というのは、自衛隊員も含めて国連の準職員といいますか、そうでもないですね、準職員までの形ではなくて、ちょっと属性的に見れば、日本から派遣されているんですけれども、国連と協定上に基づく範囲内での方々ということで、国連ともちょっとまた一線を画す、そんな感じですかね。ちょっとそこのところを。

杉浦副大臣 地位協定は、国連とそれぞれの地域・国との間で交わされるものでございまして、派遣国は一切かかわりません。

 その身分ということになりますが、国連の職員ではもちろんございませんで、各国から、派遣国から提供される部隊要員は、その国連PKOにおる間も、在勤している間も、派遣国の公務員、自衛隊でしたら自衛隊法に基づく公務員として活動に従事するものでございます。国連には準職員という規定はないようですし、もちろん国連職員でもありませんし、日本の国家公務員として自衛隊員は活動するということになります。

 しかし、その配置など、例えばゴラン高原ならあそこに配置されておるわけですが、ここにいてこういう活動をやれというようなその配置等に関する国連の指図、コマンドと言っておりますが、指図には従います、活動中は。指揮命令系統のもとに入るわけでありますけれども、その余の懲戒処分等の身分に関する権限は引き続き派遣国が有しているものというふうに承知いたしております。

 ただし、国連PKOの軍司令官、そのPKOについての司令官が発令されるわけでありますが、この司令官については、国連職員に採用されまして、国連職員として国連PKOに従事するということに相なっております。

末松委員 さらにもう一点だけお伺いしたいと思います。

 例えば、公務遂行上で過失致死なんということが起こるかもしれないですね。そういった場合に、本国の法律が適用されるという話になりますと、海外で起きたことで、国内法の中で国外では適用されないなんという話にもなるのかもしれません。そういった場合、やはり公務遂行上の業務上過失致死とかそういったことは、多分日本国の法律の中では、海外の場合、適用除外という形になるんでしょうか。

杉浦副大臣 現地で公務中に自衛隊員が業務上過失致死の犯罪を犯したという点についての御質問だと思いますけれども、今まで幸いにしてそういう例はございませんが、そういう場合については、もちろん、先ほど御説明申し上げましたように、地位協定に基づきまして日本が裁判権を有することになります。

 そういう事件を起こした場合には、通常現地の官憲に逮捕されるということになると思うんですが、そういう場合におきましては、直ちにPKOの最寄りの、まあ司令官が一番近いと思うんですが、国連PKOの代表であって一番近いところにある者に身柄が引き渡されることになっております。

 裁判でございますが、日本の国法に基づいて裁判されるということになるわけなんですけれども、業務上過失致死罪について、日本の刑法体系のもとでは国外犯は処罰の対象となっておりません。したがって、処罰されないことになります。したがって、本国には送還するでしょうけれども、刑事裁判上かけることはできない、業務上過失致死については、そういう扱いに相なると思います。

末松委員 不幸にしてそういうふうな例があるかもしれないし、また、そういったある意味では間違いが起き得やすいような環境に置かれるかもしれない。その中でも、自衛隊員を含めPKO要員の方々が日の丸を背負って一生懸命やられるような、ある意味でのきちんとした環境づくりを日本政府としてもバックアップ、応援していかなければならないと思います。

 それで、引き続き防衛庁長官の方にお伺いをいたしますけれども、我が国がそういった方々のバックアップをしていく中で、これもちょっと私は、最初にマイナスからのことであっても大丈夫な形というのが意識にあるものですから、そこからお話をしていきますけれども、例えば不幸にして犠牲になられた方々に対して、国家の補償といいますか、あるいは国連の補償というのか、そういうものがきちんとあるのかどうか、その状況はどうなのか、お伺いをいたします。

中谷国務大臣 隊員に万が一のことがあった場合につきましては、国家公務員災害補償法に基づいて障害補償、遺族補償などを実施することといたしております。また、生命、身体に対する高度の危険が予想される状況において活動する場合においては、それらの補償の通常の五割増しの特例を適用することによって可能な限りの補償の充実に努めたいというふうに思っております。

 また、この行動の中で、一身の危険を顧みることなく職務に従事し、殉職または障害の状態となった場合の措置として、最高額六千万円の賞じゅつ金の制度を設けておりますし、また、内閣総理大臣がその者の功労を表彰して特別ほう賞金、最高額一千万を授与するというようなものの制度がございます。

 国連の方は、先ほど外務省からもお話しいたしましたけれども、あくまで派遣国の自国の責任において自国の公務員として参加しておりますので、国連の方の金銭面の補償については存在するというふうには、私承知をいたしておりません。

末松委員 ちょっとこれは、今の金額等もいろいろとお話を伺えば十分なものと言えるんだろうと推測しますけれども、まだ主要国との比較の上なんかでも、日本として、あるいは日本の公務員、公務災害等含めて形の中で比較して、どういうふうな状況であるのかを、ちょっとそこは御答弁をいただきたいと思います。

中谷国務大臣 比較でございますけれども、国家公務員としては同一金額でございますが、警察官等が参加する場合はそれぞれ地方公務員としての補償の制度がございまして、それぞれ各都道府県ごとにおいてその金額は差があるというふうに聞いておりまして、その分の格差は存在するというふうに思っております。

 それから、先ほど国連からの補償について承知していないということでありましたが、犠牲になった要員への補償額については、要員の国籍にかかわらず一律五万ドル支給されるということでございますので、その点については訂正させていただきます。

末松委員 地方公務員、警察の職員に比べて低いという認識ですかね。そうですか。やはりそれは我が国としても、国を代表して行っているので、そこの差はできるだけなくすという形でまた御努力をいただきたいと思います。

 あと、自衛隊員の方と他のPKO要員の方、一般の文民の例えば選挙監視員とか、そういう方々との間の補償の差というのは、さっきのお話ではあるやにちょっと感じられましたけれども、その辺はいかがですか。

中谷国務大臣 国家公務員という立場で出ていく場合においては、格差はないというふうに思っております。

末松委員 それでは話題を移しまして、法制局の方、きょうおられるかと思いますけれども、いきなりちょっと話を戦闘といったことについて限定してお伺いをするわけでございますが、PKOの要員の方々が不幸にして山賊、匪賊のたぐいとかそういうふうなところから攻撃をしかけられる、そういうことも、治安維持という観点からいけばあり得ることだと思うんです。その議論が、武器の使用の条件の議論と、あと、ある一部で、私は誤解だろうと思うんですけれども、自衛権あるいは集団的自衛権、そういったことと混同している議論が見受けられるわけであります。そういった意味で、私は混同すべきでないという立場から質問をさせていただきます。

 具体例で申し上げますが、例えば、ある国に派遣されたときに、その国の同意を得ているわけですが、山賊や匪賊のたぐいが襲ってきた、このPKOの要員に対して。そうした場合、例えばその自衛隊が輸送の任務を担っていた、と同時に、ほかの国のPKO部隊、軍属のPKO部隊が襲ってきたことに対して協力して防戦に当たった、武器も使用した、そういう場合に、武力行使だというふうに言う方がいますが、私はそうじゃないと思うんです。その辺についての、武力行使に当たるのか当たらないのかというのを、私は当たらないと思いますけれども、法制局長官の方にお伺いしたいと思います。

津野政府特別補佐人 お答えいたします。

 御指摘の問題といいますのは、あくまで私的な、山賊とかあるいは強盗だとか、そういった集団に対する武器の使用の問題というふうに理解してよろしゅうございますか。

 そこで、これは従来から政府としていろいろ御答弁しておりますけれども、憲法九条の一項で禁止しております武力の行使といいますのは、我が国の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうというふうに解してきているわけであります。

 そこで、ただいま御指摘になりましたように、武器使用の相手方が窃盗、強盗等を目的とする私的な集団である、そういうことが明白な場合でございますけれども、そういう場合は、我が国PKO要員の武器使用が憲法上の武力の行使に該当するというようなことはないというふうに考えております。

末松委員 重ねて、だめ押しの質問で恐縮なんですけれども、そういう武力の行使に当たらないということは、例えば集団的自衛権の行使だということも、そういうのは論外だということを確認したいと思いますが、どうですか。

津野政府特別補佐人 ちょっと答弁が抜けましたが、共同でいろいろ他国部隊と武器の使用をするということがどうかというようなことでございますけれども、これは、そもそも現在のPKO法の規定で定められております武器の使用といいますのは、これはいわゆる自己保存権というようなものでございますので、そういった意味で、そういったものが、先ほど言いましたように憲法の禁ずる武力の行使には該当しないということでございますから、集団的自衛権というのは武力の行使にかかわる概念でございますので、それと武器使用との関係では、集団的自衛権というような問題が出てくるというようなことはないと考えております。

末松委員 今の御答弁のポイントの中に、私的な集団、強盗あるいは山賊、匪賊等ですね、私的なという御指摘がございました。そうしたら、私的じゃない場合がどこまでなんだという議論に今度はなってくるわけでありますが、ちょっと念のため申し上げれば、例えば、具体例でいきましょう、正規軍の一部が勝手に軍律を乱して、いわば記章はつけていても勝手に軍律を犯して物取りに走った、それが襲ってきた、それを共同で防戦したという場合、これは自衛権との関係ではどうなるんでしょう。

津野政府特別補佐人 非常に設定が、それだけの問題でお答えするのは非常に難しい問題だと存じますけれども、ひとつ一般論でお答えさせていただきますと、要するに、国または国に準ずる組織、そういったものの、いわゆる戦闘といいますか、襲撃とかそういうものがございました場合に、それが国または国に準ずる組織としての行動というものであれば、それは、我が国のPKO要員による武器使用のすべてが武力の行使に当たらないというわけにはできないというふうには考えられます。武力の行使に当たらないということはできないと考えられるわけであります。

 ただ、我が国のPKO要員が国際平和協力法に従いまして、現在定められておりますように、自己または自己とともに現場に所在する我が国要員もしくは、今度新しく入っているところもございますが、その職務を行うに伴い自己の管理のもとに入った者の生命、身体を防護するため必要最小限の武器使用を行う限りは、これはいわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、憲法の禁ずる武力の行使には当たらないということで、現行のPKO法の二十四条、改正法も含めましてでございますが、そういう規定に従って、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものに該当するような武器を使用するということにつきましては、それは憲法の禁ずる武力の行使には当たらないということになります。

末松委員 武力の行使にそれは当たらないんですという位置づけでございました。

 ちょっと最後に、この解釈がどうかということで申し上げますけれども、先ほど法制局長官の方で、正規軍及び国家の軍隊あるいはそれに準ずる組織が襲ってきたといった場合は、これはある意味ではPKOの派遣の同意そのものが破壊された、なくなったということで、これ自体は、正規軍が何か襲ってきた、これはもう合意がなくなったということで、PKOの任務そのものも、そこはもう破棄されるという位置づけでよろしゅうございますよね。

 そして、そのときに防戦する場合は、これはもう自然権的な、いわゆる自己の生命、自己保存の観点から防戦をするということは、当然のことながら許されるものであるという位置づけですよね。

津野政府特別補佐人 停戦の合意が破れたというときでございますね。

 それはPKO法の方にも規定してございますけれども、停戦の合意が破れたようなときには当然、中断とか撤退とか、いろいろそういったことを講じなければならないことがまずございます。その過程におきまして、武器使用の問題等がございますけれども、先ほど申しましたように、国または国に準ずる組織であろうと思われますから、そういったものの行動であるということであれば、我が国PKO要員による武器使用のすべてが武力の行使に当たらないということはできないと考えられるわけでございます。

 ただ、先ほども申しましたけれども、我が国のPKO要員が、国際平和協力法に従いまして、自己または自己とともに現場に所在する我が国要員もしくはその職務を行うに伴い自己の管理のもとに入った者の生命、身体を防護するために必要最小限の武器使用を行う限りは、これはいわば自己保存のための自然権的権利というべきものであるから、憲法の禁ずる武力の行使には当たらないということでございます。

末松委員 その武器使用ということなんですけれども、この概念について、もうちょっとお話しさせていただきたいと思います。

 自己の管理下というのが今度新しく入ったんですよね。防衛庁長官にお伺いしますけれども、この自己の管理下というのはだれが判断するんですか。つまり、PKO、現場の部隊長みたいな、そのリーダーが判断するのか。あるいは、もしその方がいない、あるいは連絡がとれない、そういった場合には個々の隊員が判断していいものなのか。そこをちょっとクリアしてください。

中谷国務大臣 これは部隊として行動しておりますので、その現場に上官がいるときは、具体的な状況において適切な判断をするということが期待されますので、上官の命令によって行動するということになります。いない場合においては、個々の判断によって武器を使用するということになります。

末松委員 個々の状況がいろいろな難しいケース、上官が判断しにくいケースが出てくる場合もあるのかな。できる限り国会の方で、こういう場合はこうだよというふうに言ってあげるのが政治の責任だと思うんですけれども、例えば特措法の関係で、議論を聞いていますと、自己の管理下という場合には、他国の、例えばカナダの部隊がいたら共同して防戦をするというか、何かの状況で武器の使用が必要になる場合、他国の部隊を守ることはできないんだというお話でございました。ただ、十把一からげにそうなんだということでもなさそうで、例えば他国の部隊の兵士が傷ついたり、あるいは何かの要因で防戦もできない、そういった場合には自己の管理下に入るんじゃないかという話もございます。

 ところで、そこで私は質問させていただきますけれども、他国のPKO軍事要員、これが自己の管理下に入るケースというものはどんなものなんでしょう。

中谷国務大臣 基本的には、「自己の管理の下に入った者」という意味は、同じ場所にいて自衛隊員以外の者が不測の攻撃を受けて自衛隊員と同じ危険にさらされた場合に、その現場において、自衛官の指示に従うことが期待される者ということであります。

 具体的には、業務のための連絡調整とか視察のために訪れている他国の要員、そういうこととか、我が国の車両に同乗させて他国の宿営地に移動している他国の要員、つまり業務上の連絡調整のために来て、それを我が国の車両に乗せてもとのところへ送迎をする、そういうケース。それから、我が国の部隊が他国の部隊と同一の宿営地に所在する場合であって、我が国要員が警衛をして、宿営地の秩序維持、または安全管理を行っているときの当該他国の要員ということのケースが、このような「自己の管理の下に入った者」に当たり得るというふうに思っております。

 明確な区別をする必要がございますが、どのように区別をするかということでございますが、まさしく自衛官の指示に従うことが期待をされるか否かということでありまして、例えば自衛隊員が同じ危険になったときに、伏せろということを指示したらそれに従って伏せて、その指示に従って行動した場合、他国の兵士であっても自分の命を自衛官が守ってくれることを期待するわけでありますので、そういうケースにある場合は該当できるというふうに思われます。

末松委員 傷ついた他国の軍事要員、こういった場合は、そこはある意味ではこちらの管理下に置かせることはできますよね。ちょっとそこを確認します。

中谷国務大臣 当然、傷病等をして自国の部隊等がそばにいずに自分の力だけで安全を確保できないような兵士の場合、我が国の「自己の管理の下に入った」ということで、その者の安全を確保することができるというふうに思っております。

末松委員 それで、ためにする議論かもしれません。そういった意味で、ちょっと私自身もやや引けるところもあるんですけれども。

 例えば戦闘状況になりますと、他国の軍事要員、こちらの自衛隊もそうかもしれませんけれども、入り乱れて、ある人間は負傷し、ある人間は健在で戦っている、そういった混戦状況が基本的には一般の戦闘地域の状況だと思うんですね。そういった場合は、上官の判断はやはりそこは困るんですよね。そういったある意味では、まあ半分ぐらいは傷ついて半分ぐらいが元気だというような場合、一緒にやっているんだということの中で、それはもうある意味ではほかの襲ってきている敵に対して共同して当たるんだ、そういった中でお互いにかばい合って頑張るんだというようなことが一般的なケースなのかもしれません。その辺についてどうですか。

 そこは、ある意味では生命、身体の危険が一体で、同じ運命のもとにあって、そして一緒に防戦することが生命、身体を守るんだということで、ともに当然、自衛隊の管理下という位置づけにはなじまないかもしれませんけれども、そういう解釈ができるんじゃないかと思いますが、どうですか。

中谷国務大臣 いろいろなケースがありますので、その時々によって指揮官がよく状況を見て判断しなければなりませんが、基本的に考えなければならないのは、指揮官として、自己の管理のもとに入るか否かということで、その自己の管理というのは先ほどお話ししましたけれども、そこの指揮官の指示に従うことが期待される者であるかどうか、期待できる者であるかどうかという点で、自分の指示に従うというふうに判断したら、それは防衛対象になるというふうに思います。

 しかし、他国の武装したPKO要員で、その国の部隊の一員として行動しているケースもございます。そのように、安全について彼らが自己責任を持って行動し、かつまた自衛官の指示に従うことがない場合、そういう場合においては該当しないということがございまして、それぞれの状況において事態は変化するわけでございますけれども、防御対象としては、この法律においては区別をし得るという観点で考えているわけでございます。

末松委員 人の命というのが今のケースなんでしょうけれども、今度は物といいますか、自衛隊法九十五条ですか「武器等の防護」という中で、国有財産である物を、武器等を守る場合には武器の使用が許されるという解釈になるんでしょうけれども、例えば不幸にして武器等をまさに奪取されようとしているというようなケースの場合、そのときに、取り返しに行くんだということで、そこで武器の使用が必要になるといった場合、そこはどうなんですか。

中谷国務大臣 ただいま委員の方から、国有財産を守るための武器使用というお話がありましたけれども、まさに自衛隊法九十五条というのは、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を破壊または奪取しようとする行為から防護するために認められるものであります。

 これの武器の使用条件、要件は、その行使が認められる極めて受動的な、かつ限定的な武器使用ということを定めておりまして、例えば、武器の使用は自衛官に限られる、また武器等の退避によってもその防護が不可能である場合、他に手段のないやむを得ない場合、それから警察比例また防護対象の武器が破壊された場合等、要件が定められております。

 したがいまして、自衛隊の武器が既に奪取されてしまった後において、これを奪還するために武器の使用をするということはできないと考えておりますが、今まさにそれが持ち去られようとしている場合においては、既に持ち去られた場合と異なって、事態に応じて合理的に必要と判断される限度において武器を使用することが可能であるというふうに考えております。

末松委員 日本の国有財産はいいのですよ。国連の財産、貸与されているものとかUNとでかでかと書いた車とか、輸送任務のときなんかにそれがまさに奪取されようとしている、そういった場合は、それを守るためには武器の使用というのは今の法律では許されていないと思うんですが、そこの辺はどうなんですか。

中谷国務大臣 あくまで自衛隊法九十五条というのは我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を防護するために認められるものでありまして、国連の車両についてはこの九十五条の防護対象には含まれないということであります。

 ただし、砂漠の国連ジープというお話もありますけれども、砂漠の真ん中で国連から貸与された車両が奪われた場合に、まさしく死の危険に遭遇するようなこともあるのではないかということがありまして、この業務を実施する自衛隊の部隊が国連の車両の貸与を受けて業務に当たるような場合に、この車に乗っている自衛官が自己の生命、身体の防御のために武器を使用することができるようなときは、この九十五条に基づいて武器を使用した結果として、国連の車両等についても防護されるということはあり得るというふうに考えております。

末松委員 それは、九十五条の延長線でオーケーだということなのか、それとも、先ほど杉浦副大臣が言われたように、地位協定の中で基本的にオーケーになるのか、その辺についてはちょっと明確にしてください。

中谷国務大臣 あくまでも九十五条というのは、我が国の防衛力を構成するものに限られておりまして、後段でお話しした部分におきましては、国際平和協力法第二十四条第三項に基づいて、自己の身体、生命の防御のための武器使用という概念でございます。

末松委員 となりますと、自己の生命の安全、これにつながるということにおいてのみ、そこは当然オーケーだよという位置づけですね。ちょっとそこのところだけ再度確認します。

中谷国務大臣 自衛隊法第二十四条三項という、自己の生命、身体の防御のためということでございます。

 訂正いたします。自衛隊法じゃなくて、国際平和協力法第二十四条第三項でございます。

末松委員 それでは、残り時間も少なくなってきましたので、PKOの任務ということについて質問をします。

 民主党は、警護任務等についても請け負っていくべきじゃないかという観点から今議論を深めているわけであります。

 具体例でちょっと申し上げますが、任務ということになりますと、任務遂行上の観点というのと、あとは、これは武器使用の場合なんか特にそうなんですが、自己の生命、身体の安全という観点でやや義務上の乖離が生じてくるわけでありますが、例えば具体的に、輸送の任務を請け負ったとした場合、山賊あるいは匪賊のたぐいが道路を占拠していた、こういう事例が当然出てくるんだろうと思うんですね。

 そういった場合に、輸送任務の任務遂行上のため、その妨害を排除できるのか、あるいは強制的に排除できなくて、例えば百メートル先に山賊、匪賊あるいは強盗のたぐいがいて、荷物を置いていけと言う、おまえらも降参しろ、逃げろという話を言った場合、これは強制的に排除できるのか、それとも、そこで、やばいということで引き返していくのか。基本的には現場の判断も当然そこが問題になるんですが、一般論としてお答えいただきたいと思います。

中谷国務大臣 基本的には、武器を使用してお話のような妨害行為を排除するということはできないわけでございます。あくまでも武器使用権限については、相手が攻撃を行う場合に身体を防護するため、もしくは自衛隊の武器等の破壊を防止、防護するためにということに限られておりまして、強制的に停止を求めた場合は、まず説得をして妨害を行わないように働きかけ、妨害を行っている者に対して理解をいただく行為をする、そして、それでも相手が応じない場合あるいは相手側が説得に応じる見込みがない場合においては、後方からの攻撃に警戒しつつ後退をするということとなるというふうに考えております。

末松委員 そうすると、強制力を伴うような、あるいは実力を伴うような妨害排除というのは、選択肢として現在のところ、任務遂行上の観点から、任務を全うするという観点からはそういう実力行使はできないということですね。確認をちょっと。

中谷国務大臣 現状においてはそのとおりでございます。

末松委員 そうなりますと、これは別に警護任務だけに限らないわけですよ。輸送任務とか、あらゆる任務がそういう任務遂行上の観点のときに妨害が起こった場合、そうすると妨害を一切実力で排除できないとなると、何のための任務なんだ、何のためなんだと当然批判が起こるわけですよ。日本というのは実力でそういうことができない、最後は手を挙げて去っていくという話になりますと、国際社会の笑い物になるということもあり得るわけです。

 つまり、実力を行使することそのものが、ある意味じゃ信頼に足る任務だというふうに、国際社会の中ではそういう観点が私は強いように思うわけです。

 そこら辺は、これが多分今後のPKOの任務を遂行する場合の課題だと思うんですけれども、国連の方で、我が国が勝手に、ここはできませんよということで、いわば限定的な任務ということを請け負うということは可能なんですか。

中谷国務大臣 これは現在まで、PKF凍結状態においてもPKOに参加をしたということからしてもわかるように、国連の側には我が国の事情、立場を説明して理解を得てきたところでございまして、これまで九年間で六回にわたってこの平和維持活動に参加をしてきたところでありまして、我が国の立場また協力等の姿勢は国連側に今のところ理解をされているというふうに思っております。

末松委員 そうなりますと、先ほど杉浦外務副大臣の方で、その受け入れ当該国とあと国連との間で地位協定なるものを結ぶんだと。それと、派遣国、日本の意思が当然入った形でのその三者ですか、そこでの地位協定になるんだろう、多分そうなるんだろうと私は思うんです。各国によってそういうふうなことを明記した、ここまではできるけれども、ここまではできないよと、そういうふうなことが実際に今、各国によって、自国の憲法とか法律の範囲内でそういうことを規定されているんですか。

中谷国務大臣 我が国の場合は、派遣する場合に、派遣先国の受け入れの同意というものが必要でございますが、一般的には国連と派遣をする国との二者の間で取り決めが行われておりまして、一般的にこの部隊の規模、要員の種類あるいは人数、派遣期間についての取り決めが結ばれているというふうに承知をいたしておりますが、その内容等につきましてはそれぞれの国の事情が反映されたものというふうになっておりまして、あくまで国連とその派遣国との取り決めというふうに承知をいたしております。

末松委員 そうなりますと、では、日本の特殊事情が盛り込まれた合意というのは、それぞれの国はそれぞれの国であると思うんですけれども、それと国連との間のメモランダムとかそういうことで取り交わしているんですか。あるいは、そういう取り決めはないのですか。

中谷国務大臣 日本のような派遣国と国連との間で取り決めをしているということであります。

 派遣国と国連との取り決めですね、そういうものは存在をすると思います。

末松委員 だから、輸送任務をする場合、こういう形で輸送任務をしますよという、それで部隊がどうこう、何人、何人、それはわかるんですよ。だったら日本のように、例えば妨害排除のための強制力は行使しませんよとか、いろいろな限定つき任務になるわけでしょう。それが国連と派遣国の間で取り交わすなんてことはないわけですよ、一般的に。考えられないわけです。

 ということであれば、今度は国連と我が国との間でそういうふうな取り決めというのはあるんじゃないですかと。そうしないと、各国によって事情が違うのに、いろいろな個別の事情がある、それを当該国と国連だけで取り決めなどというのはできませんからね。それは、国連と我が国との合意については何かあるんですかというのが私の問いなんですよ。

中谷国務大臣 ちょっと質問を取り違えているかもしれませんが、一般的に国連と派遣国の間ではそういう取り決めが結ばれているものだと承知をしております。

 我が国が参加する場合も国連と我が国で調整を行いまして、我が国の場合は国連平和協力法に基づいて要員を派遣することについて了解を得た上で取り決めを結んでいるところでありまして、こうした取り決めの内容は、派遣国のそれぞれの事情に応じて、それが反映された内容に基づいて取り決めがされているというふうに理解をいたしております。

末松委員 そこなんですよ。我が国と国連との間で取り決めがなされている、そこなんですね。

 ということであれば、国連の現地司令官が我が国と国連との間で取り決めがなされていること以上のことを要求してきた場合、これは何か、襲われてきたら実力でぼんぼんはね返せというようなことをもし現地の国連の司令官が要求してきたって、当然我が国としては受け入れられないということで突っぱねるというこの理解でよろしいですね。

中谷国務大臣 そのようなことを言われても、法律的にそういうことを実施することはできませんので、それを受け持つことは困難だと考えております。当然、司令官もこの取り決めや我が国の事情を理解した上で業務に当たっておりますので、そういう要請は我が国に対して来ないのではないかというふうに思っております。

末松委員 逆に、私が国連の現地の司令官の立場だったとすると、何か日本というのは使いにくいな、せっかく警護任務あるいは輸送業務を任せようと思っても、どうも、ちょっと強盗のたぐいが数人出てきたらすぐにしっぽ巻いて逃げるのか、そんなところには任務は任せられないじゃないか、そういうふうに感じてしまうケースがあると思うんですけれども、そういうことに対して防衛庁長官としてはどういうふうに思われますか。

中谷国務大臣 そういう御指摘を感じるケースもあるのではないかというふうに思いますが、基本的に、その司令官にいたしましても、あらかじめ我が国の参加に当たっては国連との間で調整を行って、国連もそれを了承し、また現場の指揮官にもその趣旨が伝わっているというふうに思いますので、その司令官が我が国が定めております国際平和協力業務以外の業務を行うよう指図をしたり無理な要求をしたりすることは、現場ではないというふうに思いますが、当然のことながら、司令官として任務を考えた場合に、さらに我が国の姿勢に対して期待をし、要望するということは十分あり得るのではないかというふうに思っております。

末松委員 法律、つまり我が国のPKOの協力法を改正しようという中で、そのコンテクストにおいて法制局長官の方にお聞きしたいと思うんですが、例えば妨害、任務遂行上のときにどうしても、どんな任務でもそうですが、妨害等が山賊や匪賊あるいは強盗などによって、どうしてもこれは妨害を排除せざるを得ないというケース、これに日本が全く対応しないんだよという話になってしまいますと、そこは国際的な信用という観点からいくと、やはり日本はある意味じゃ、軍隊、張り子のトラじゃないかということですね。そういう観点から、ある程度の妨害の排除ということについては、任務遂行の観点もやはりきちんと考えるというのがブラヒミ・レポートの一つの本質でもあると思うんですね。

 そういったときに、この国連と我が国との取り決めの中で、もう少し妨害排除というものについて、任務遂行上の観点でどうしても必要不可欠で、しかもそれは最小限度なんだというふうなことを盛り込むような、我が国の法改正をしようとする場合に、これは憲法上違反という形になるんでしょうか。法制局長官にお尋ねします。

津野政府特別補佐人 PKOの任務遂行に対する妨害排除のための武器の使用ということでございますけれども、従来からこれはしばしば答弁してございますけれども、PKO活動における任務の遂行を実力で妨げる企てに対抗するための武器の使用、こういうものはいわば自己保存のための自然権的権利というべきものを超えた武器使用となり、その相手方が国または国に準ずる組織であったような場合に、憲法の禁ずる武力の行使に該当するおそれがあることから、我が国PKO要員にこのような武器使用を認めることについては、憲法との関係で慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

末松委員 今、我が国の部隊がいわば一国でそういったことをやるのであれば、そういう懸念、つまり国際紛争を調整する手段からの武力行使という形はあり得るんですよ。ただ、これはあくまで国連という枠組みの中で、しかもPKO、ピース・キーピング・オペレーションなんですよ。これのときに、その任務遂行もそれは憲法が禁ずる武力行使なんだというふうなことが言えるんですか。法制局長官、もう一回お願いします。

津野政府特別補佐人 御質問の点は、従来から国連の行動とのいろいろな関係で御議論があったところでございますけれども、従来から我が国、これは国連軍一般にも言えることですが、我が国は憲法の平和主義、国際協調主義の理念を踏まえて国連に加盟しているわけであります。

 我が国としては、最高法規である憲法に反しない範囲内で、憲法九十八条二項に従って国連憲章上の責務を果たしていくということになるわけでありますけれども、憲法九条によって禁じられている武力の行使あるいは武力による威嚇というようなものは、そういうものに当たる行為につきましては、我が国としてこれは許されないというのは当然のことであります。

 国連平和維持活動でありますけれども、これは国連安保理決議等に基づきまして国連が組織し、国連の統括のもとに行われるものでありますが、このことは国連が各国から派遣された要員に対する指揮監督権を有することを意味するものではありませんで、国連は各国から派遣された部隊や要員の配置等の調整に関する権限を有するにとどまるものであるというふうに理解しております。

 したがいまして、PKOに派遣された自衛官は我が国の公務員として活動するものであり、自衛隊の部隊の活動は我が国の活動そのものでありますから、当然憲法の枠内で行われるべきであるというふうに考えております。

末松委員 この点については、時間がなくなりましたから、私ももうちょっと議論したいところでありますが、非常に民主党としてもこの点についてきちんと考えていきたいと思いますので、そこはまた再度議論させていただくということで質問を終わります。どうもありがとうございました。

玉置委員長 安住淳君。

安住委員 おはようございます。民主党の安住でございます。

 私は、きょうは安全保障委員会まで来まして質問させていただきます。私は、実は党内でPKOの改正作業をやっているチームの責任者なものですから、きょうこうして一時間ほど質問させていただきますが、まず長官、よろしいですか。

 外務大臣、御苦労さまでした。後でちょっと質問させてもらいます。

 細かな法律論は今から我が党の同僚議員が何回もやりますから、ちょっと政治的に考えたいと思いますが、なぜ今回PKOの改正案を、この臨時国会の終盤になって、唐突とは申しませんが、なぜ出してきたのか、私はちょっと理解に苦しむところが実はあります。

 それも改正案は、これは長官も本当にこの分野では専門家でございますから、私も長年やっていまして、はっきり申し上げまして、政治的にはいろいろな意味があるかもしれませんが、現実にこれからのPKO活動をやるとき、この程度の改正案で具体的に何をやろうとしているのか。むしろ政治的なポーズにしか見えないんですね。

 あのブラヒミ・リポートのことについては後からやりますけれども、今こんな法律案を、改正案を出して、まるでいかにも一歩前進、二歩前進というような、余り匍匐前進なんて言いたくありませんが、思い切った改正をやらないといけないというふうに国連でも言っているときに、ほとんど五原則にも手をつけず、武器の使用のところも、後で法制局長官からもまたお話を伺いますが、「自己の管理の下に入った者」という、さきの特措法のときのことを準用しただけ。つまり、これでは何を目的に、どこにこのPKO活動をやろうとしているのか。PKFの凍結解除というのは、これは長官、当たり前の話であって、それだけで今回ぽんと出すのは私はとても納得いかないんですね。

 ですから、なぜ今改正案を出すのか、納得のいく御説明をしていただければと思っております。

中谷国務大臣 PKOの重要性に関する認識につきましては、委員と同じく私も大変重要だというふうに思っているわけでございますが、現実問題として、PKOが成立してから約十年近くの間、PKFが凍結されておりましたし、また、これまで六回にわたって現実に凍結状態でPKO活動をいたしまして、着実にこの経験と実績を積んで、国民の皆様方も御理解をいただいた状態が非常に高くなってきたというふうに思っております。

 私としましては、武器の使用や、またPKFの凍結解除につきましては、もう少し早くやるべきだというふうに思っておりましたけれども、これも国会における各政党会派の議論に基づきながら、その議論を見守ってまいりましたが、今回の改正等につきましては、与党三党の間で、PKOのあり方について真摯に御議論をいただきまして、このPKO活動の実施につきまして、より効果的に実施するにはという観点で合意をされて、それに基づいて私たちもPKO法の改正を行ってきているわけでございまして、今回の改正によってこのPKO活動に対してより効果的かつ適切に寄与することができるということで、非常にうれしく思っている次第でございます。

 残された課題というものはまだあるわけでありまして、この点につきましても、今後各政党間でよく話し合いをした上で、国会の合意をいただいて実施をしていただきたいというふうに思っております。

安住委員 私は何を言いたいかというと、PKOの重要性というのは、少なくとも二十一世紀の前半、実は、私は、日本外交の多分柱になる話だと思うんですよ。現行の憲法がそのままであることを前提にすればなおさら、専守防衛とは違う概念で国際貢献をするとなれば、国連からもそういう強い要請があるわけですから、私は、国内世論もこの十年間、九二年に法律が成立してからの歩みというのは本当に、若葉マークをつけて安全運転に徹して、多少犠牲者の方は出て残念なこともありましたが、世界に非常に評価をされる貢献をしてきた。しかし、実は、日本はもっと貢献をすべきであるという意見は非常に強い。私もその立場でいるんですよ。

 しかし、長官、今言った話は、そんなに重要だったら、なぜ臨時国会の頭からそういう話にならないんですか。おかしいじゃないですか。とってつけたように、大変失礼な話だけれども、この国会の終盤になってから、それも熱心な議論の末とはとても私は思えないんですね、例えば専門にやってきた議員として言わせていただくと。五原則の見直しというものがない限り、新たな展開をするというのは実は非常に難しいんですよ。もう百もわかってそのことはおっしゃっていると思うけれども。

 極めて政治的な意味合いが濃い改正案で、不純とは言いませんけれども、非常に残念だなと私は思っているんですけれども、いかがですか。

中谷国務大臣 確かに、おっしゃることは私も同じように考えております。基本的には、今後我が国が国際連合を中心とした国際平和のための努力に積極的により貢献する必要があるというふうに思っておりますが、やはり一方で憲法問題があって、武力行使をしないということによって、この問題においてそれぞれ、政党間もさまざまなまだ議論がございますし、議員間でもいろいろな考えの方がいらっしゃる中で、この時期においては、もっとよく政党間で話し合いをして、その実施の素地をつくっていく期間が必要ではないかというふうに思っておりまして、そういう点におきまして、さらなる議論が政党間また議員間で展開されるということを期待しているわけでございます。

安住委員 それは与党の責任放棄ということになるんです。我々は実は案を出しているんです。つまり、何を言いたいか。五原則のことはまず置いておいて、PKFの本体業務の解除ですね。イからヘと言うと速記の方に、後から、何を言っているのかよくわからないかもしれませんが、イロハニホヘのヘです、までは解除する。しかし、実は長官、今一番大事なのは、ここには入っていませんけれども、警護の業務というものが非常に今重視されている時代ですよね。PKO、もし参加するんだったらですよ。選挙監視の要員とかNGOの要員、避難民の警護もそうです。こういう問題にトライをしないということは、結局、現状で必要とされているPKO活動に対して、日本は積極的に貢献しようという意思がないんじゃないかというふうに思われても仕方ないんじゃないですか。いかがですか。

中谷国務大臣 日本はPKO活動に対してより積極的に貢献すべきだというふうに考えておりまして、今回も、東ティモールに対して自衛隊の派遣をすべく現在準備をいたしておりまして、こういった活動を一つ一つ重ねることによって、より国際社会からも信頼を得て、評価をしていくべきだというふうに思っております。

 そこで、PKFの凍結解除を今回お願いしているわけでございますが、当然、この任務を遂行していく上においては警護任務の付与が必要であるという部分はあるということは私は認識を持っておるわけでありますが、しかし、これの実現に対して、まだ各政党間でも議論があることでございますので、この点においてよく御理解をいただくことを期待しているわけでありますし、また、PKFの凍結解除がされた部分においても、この実施をより安全、かつ的確に行うためにおいては、さらなる検討が必要でございますので、この検討においても今後実施していただくと同時に、これらの実施におきましては、隊員の安全等をかんがみまして、より慎重に実施をしてまいりたいというふうに思っております。

安住委員 私は全く納得できないわけですね。全くこういう答弁というのは、何か中谷長官らしくないなと思います。

 私は、実態論として、警護業務をなくすと実はニーズにこたえられないんじゃないかと言っているんですよ。では、警護業務を付与する場合、今の武器使用で大丈夫なのか、そういう議論がもっと出てこなきゃおかしいですねと。改正案というのは、実はそこが一番大事なんだけれども、今回、何も改正していないじゃないですか。いかがですか。

中谷国務大臣 今回の改正におきまして、武器使用の面においては、これまで、同じくPKO業務に携わる要員だけの安全確保しかできなかったわけでありますけれども、自己の管理のもとにある者ということで、その現場に同一的に存在をして、安全を守ることが期待される者に対しても、安全を確保することができるわけでございまして、これは前進だというふうに思っておりますが、さらなる体制を整備するために、今後とも我々自身も検討し、努力をしてまいりたいというふうに思っております。

安住委員 PKOの五原則の見直しや任務の拡大については後半の部分で、福田長官も多分お見えだと思いますから、そのときにまたちょっとやります。

 田中外務大臣、けさですか、お戻りになったのは。御苦労さまでございました。パキスタンを訪問なさって、ムシャラフ大統領とも会見をなさって、避難民のキャンプにも行かれたということですが、パキスタンに行かれた御感想をまずお伺いしたいと思います。

田中国務大臣 三泊四日でしたけれども、今おっしゃった政府の要人、それから、ムシャラフ大統領だけじゃありませんけれども、外務大臣、大蔵大臣、内務大臣と食事もしながら会談ができましたし、それから、あとは国際機関、UNHCRでありますとかユニセフの方と、非常によくお話を伺えました。それから、NGOの方たちともひざを交えてよく話を聞けましたし、こちらからも申し上げました。そして現場の被災民の方のところへ行くことができまして、その四つのルートといいますか、それによって、今後、和平と復興について、ボンでの会議それから東京での会議もあるわけですし、これからまた頻繁に国際電話や来訪も関係国からもあるわけですけれども、日々その中で模索をしていくということになると思いますが、非常に充実していたというふうに思います。

安住委員 我が国とパキスタンの間にはいろいろな問題があって、CTBTの問題等もありますが、大臣の方からそのことについては、ムシャラフ大統領に対しては何をおっしゃったんでしょうか。

田中国務大臣 大統領との話は、基本的にはCTBTの話と、それから、あちらがおっしゃったのは、インドが絡みましたカシミールの問題、そうした話と、それから債務の話がありました。いわゆるパリ・クラブの話がございました。それから、もちろん日本からの三億ドルの無償資金協力についてのお礼をおっしゃっていました。

 こちらからももちろん、先ほども触れましたCTBTの問題、署名を早くしていただきたいということでありますとか、それからインドとのカシミール問題については、できるだけ自制的に対応してほしいというふうなことも申し上げました。

 あと、債務削減に、これはすぐ応じることは大変困難である、日本の財政状態が大変厳しいですから。それは前に、アジズという大蔵大臣が二週間ぐらい前に東京へ来られたときにも申し上げてあって、今度アジズさんにも、それから外務大臣サッタールさんにもお会いして、内務大臣にもお会いして、その話が全部大統領にも伝わっていましたので、ポイントはかなり絞り込んでよく話ができたというふうに思います。

 パキスタン自身の民主化という問題がありますけれども、そのことについてもかなり率直に、来年の十月選挙があるということで、御本人は非常に自信を持っておられて、大変立派な見解を示されておりました。あとは、自衛隊の艦隊が今度カラチに物資を持って着くわけですけれども、そうしたことの受け入れについてもお話がありました。

 あとは、大体そういうことで、またお聞きください。まだ書類が全部そろっていなくて。

安住委員 公式な会談はそうだったと思いますけれども、行かれた体感で伺いますが、パキスタンの政治情勢というのは、つまりムシャラフ体制というのは今後どうですか、安定感があるというふうにお感じになられましたですか。

田中国務大臣 そこがまさしく私が一番確認したいと思っていたことでありまして、時系列的に、九月十一日以降のことについて、私は、アングイッシュという英語の言葉、すなわち、心の葛藤というか懊悩しておられて、こういうアフガン事件が起こって以降、パキスタンの大統領が大変なお立場になったというものが本当に時系列的にはっきり出てきた時期から、最近だんだんと、戦況の推移とともに自信を持ってこられているというか。それから、国内の中でいろいろな二十、三十ものグループの人たちと四十時間以上もかけて議論をした、その結果、自分がいろいろな政策を導き出しているんだという非常に自信に満ちておられたので、今後の民主化についても大変自信を持っておられると思うし、そうなるだろうというふうな予感がしました。

安住委員 アフガニスタン情勢については、大統領を初めパキスタン政府の高官は何か新しいお話はなさっていらっしゃったでしょうか。

田中国務大臣 アフガニスタンの問題につきましては、御存じのとおり動きがあって、国連の努力というものを今後強く支持していくということではお互い意見が一致しましたし、そして、ブラヒミさんの意見というものを尊重していかなければならない。

 パキスタン側は、日本で来年の一月末に開催するアフガニスタンに関する復興支援会議がありますから、そこに参加をしたいという意思表明がありまして、そのことについて私どもも、日本だけでは決定することはできませんけれども、基本的にはパキスタンが参加なさることを考えて、ほかの国にも伝えていきたいというふうにお返事をいたしました。

安住委員 いえ、私が申し上げているのは、北部同盟とタリバンとの戦闘状況ですね。ビンラディンがどこにいるのか。かなりマスコミのニュースも統一的な話でないんですよ。ですから、クンドゥズ州の交戦、それからいろいろなところでの戦闘状態について、新しい話や情報というのはありましたですか。

田中国務大臣 地元の新聞を見ておりまして、そのクンドゥーズの問題についても見ておりましたけれども、やはりブラヒミさんとの話になるわけですが、そのときの戦況の一々のこともありますが、和平をめぐる動きについては、ドイツで開かれる、先ほどの繰り返しになりますけれども、ブラヒミ特別代表やアフガン人のいろいろな勢力による各派の代表者の会議の推移をよく見ていこうと。

 これは、ボンでの会議というのは、御存じのとおりヨーロッパの国、EUとか何か入らないで当事者同士がやるわけですが、そこで意見が収れんされるというのはかなり大変な作業だと思いますけれども、であるからこそ努力をしていかなければならないという面があるわけですね。

 ですから、そういうものに対して非常に客観的に見守っていこうというふうな方向性がありますし、今聞かれたクンドゥーズ州、今現在のアフガンの状態そのもの自体につきましては、まだ相変わらず流動的であるということを現地で一番感じましたし、北部同盟側がタリバン側の最後の要塞のクンドゥーズをほぼ制圧した、けさの新聞だともう陥落したと書いてありましたですかね、そういう模様であって、タリバンの本拠地であるカンダハルとか同州の周辺には依然として戦闘が行われているというふうなことも大使やら地元の情報で得ておりました。

 そういうことは、刻々と変わってきているということは非常に掌握していましたが、もっと大きな目で見て、結果としてどのようにしてこれを安定させていくかということは、これはボンでの会議が非常に重要になるだろうということは、お互いに意見交換してきております。

安住委員 アフガニスタンの問題をめぐる暫定政権の緊急設立に向けた話し合いが、要するにボンで始まるということです。

 ブラヒミさんの尽力に対して、G8の外相声明というのが出て、それを支持するという、きのうの夜ですか、私もそれは英文と日本文で見せてもらいました。確かにおっしゃるように、つまり私は今、実はこの法案とも関係があるから質問させてもらっているんですけれども、アフガニスタンの復興というのは、これは多分相当大変な話になるわけですよ。

 それに対して、では日本はどう貢献するか、いや、日本というよりもPKOというのはどうかかわるのかというのは、実は非常に重要な話だと私は思っているんです。もしかすると、何か新聞の一部で、今回の法改正は、PKOの改正案は、アフガニスタンに向けた対応であるというようなことをどうも書いているところもあるんですが、私から言わせていただくと、こんなのは全くナンセンスな話で、ここが今から議論したいというところなんですね。

 ナンセンスとまで言い切っていいかどうかというのはありますが、実はブラヒミさんは、田中大臣は出席できませんでしたが、私もぜひ行っていただきたかったけれども、国連のG8、あのときもG8の外相に、このアフガンでのPKOの活動については余り積極的に発言をしなかったというふうに私は情報を得ているんですよ。

 それはなぜかというと、これから政権をつくって、政体というとあれですけれども、政権の体をなすものをつくって、そして新たな復興活動をやっていくわけですよ。そのときに本当に、PKOがどのタイミングで活動するかというのは、国連も判断がつかないと思うんですよ。また、かなり早い時点から、本当にやることがあるのかというと、実はないんですよね。

 それからいうと、私は最初の質問に戻りますけれども、中谷長官、なぜ今このPKOの改正案を出すんですかと。だから、そこに私は疑問を感じるという話なんですよ。いかがでございますか。

中谷国務大臣 当面我が国としては、来年、東ティモールに対してPKO派遣を準備いたしておりますので、今回の改正につきましては、この東ティモールの活動がより円滑に行われるための改正であるというふうに私は認識をいたしております。

杉浦副大臣 先生の御質問で、アフガンの将来にPKOが導入される可能性についての御質問だと思います。

 ブラヒミ特使、我々は彼らの活動を全面的に支援しておりますが、中心になって、きょうからアフガン各派の会合がボンで開催、始まることになりますが、ブラヒミさんのお考えは、G8の外相会議ではなくて、十一月十三日の安保理において、ピースプロセスについてのお考えの表明があった、先生御指摘のとおりでございます。

 ブラヒミさんの考え方は、第一は、現地のアフガンの方々が、治安部隊をつくって治安の維持に当たるという選択。それから二番目が、多国籍軍と申しますか、アフガンに兵を出している各国軍隊がコアリションをつくって治安の維持に当たる、これが第二の選択。それから第三番目が、国連PKO活動、この選択が考えられる。

 つまり、物すごく流動的な状態で、タリバンも、カンダハルが陥落すると一応表面的には全部放逐されることになるわけですが、山岳へこもって抵抗する、ゲリラ戦をやると言っておりますから、治安維持というのは緊急の課題になるので、それに対応しなきゃならぬということでございます。

 ただ、それについてブラヒミさんは、第一の治安部隊の編成は、時間的に間に合わない、ピースプロセスにもかかわるけれども。それからPKOについても、現実的には立ち上げるのに数カ月かかる。それから、戦闘がゲリラ戦状態で継続する可能性が強い、したがって、PKO導入の前提でございます停戦の合意というのがどうとられるかによりますが、一部極端なタリバン一派との間に合意が成立しない状態で、どうかということもあります。

 それから、現地政府受け入れ、政府といいますか行政組織との合意が必要なんですが、暫定政府ができない以上、その合意も取りつけられないというようなことで、現時点では導入の可能性はちょっと非常に考えられないという表現をされております。しかし、排除されてはおりません、排除されてはおりません。

 したがって、今回、PKFが解除になれば、これからの、もう非常に流動的ですけれども、ボンで始まる会議の成り行き、暫定政府ができる見通し、いろいろ不透明ではありますけれども、きちっとしたものができてまいれば、将来PKOの国連による導入という可能性もないわけではないという点は申し上げたいわけでございます。

安住委員 それは、杉浦副大臣の言っていることは、時系列の状況からいくとそうかもしれませんが、実は、ブラヒミさん初め国連は、違うことで悩んでいると思いますよ。新たな形での、新たな時代のPKOということでどう対応すべきかを悩んでいるんであって、国連のいわゆる派遣条項にこれが適するかどうかについて悩んでいるんじゃないんですよ。それはぜひ認識してくださいよ。

 つまり、だから日本も、今から議論しないといけないというのはそういうことなんですよ。今の五原則に合わせたら、はっきり申し上げてアフガニスタンには二十年たっても三十年たっても多分行けないと思いますよ。歴史的な話は、そうでもないと言う人もいますが、少なくとも十年ぐらい私はかかると思っているんですよ。つまり、どこまでを多国籍軍でやって、どこまでをPKOでやるかという線引きが非常に難しい新たなケースなんですよ。そのことを認識してもらいたい。

 だからこそ、五原則を残したままで今回の改正案というのは、これは政府としての意思を確認しますが、福田長官、今、中谷長官は、アフガニスタンを想定したものというよりは東ティモール等々に対する、ゴラン高原もあるかもしれません、それに対しての、要するにより積極的な貢献をするためだという旨の発言をしましたが、多分私もそうだろうなと思いますが、政府の立場を確認したいと思います。

福田国務大臣 私、今委員のおっしゃるような中谷防衛庁長官のお話であれば、そういうことである、こういうふうに思っております。

 私自身といたしましても、これはかねがね思っておったところでございますけれども、せっかく十年前にPKO活動ができるということになったんでありますけれども、一時はカンボジアに多人数参りました。しかし、その後は極めて眇々たる人数のPKO隊が派遣される、こういうふうなことでございます。今現在も全世界で四万数千人活躍している、そのうち四十人ちょっとでございますかね、率でいえば〇・一%。

 それは何でそういうことになるか。やはりその活動範囲が限定をされているんだということによるものではないかというふうに私は思っておりますので、そういう意味におきまして、今回この法律改正が行われまして、そして新しい任務ができるということになりまして、それだけ国際平和に活躍する日本という姿をアピールできるということは大変結構なことじゃないか、こんなふうに考えているところでございます。

安住委員 アフガニスタンの復興ということでいうと、今の福田長官の話は了解をいたしました。

 アフガニスタンにちょっと限定をして具体的な話をさせてもらいますと、私は、たしかあれはテレビか何かで見たんですけれども、アメリカの国防長官が地雷の除去等について、例えばというクレジットつきで、日本は貢献できるんではないかという旨の発言を、たしかあそこにあるのは対戦車地雷ですよね、地雷の除去等について、日本は戦後復興という点では貢献できる旨の発言をしたのを私見ているんですけれども、長官、何か記憶にございませんか、そういう話を国防長官がなさったのを。

中谷国務大臣 そういう発言があったということは承知をいたしておりますが、基本的に、PKOの派遣については、ブラヒミさんもアフガニスタンに現時点でのPKOを派遣することは難しいということを言っておられまして、私も、今の日本のPKO法案はよくできておりまして、その原則、五原則がありますが、この中の三原則と申しますか、同意、合意、中立、これは国連のPKO自体もこの三原則を有しておりまして、現在のアフガニスタンにおいては、政府もまだ暫定的なものができておりませんし、また停戦も成立していないという状況で、国連自体のPKOの派遣の条件を満たしていないというふうに思っておりまして、PKOの地雷の処理というのは不可能であるというふうに思っております。

安住委員 全くそのとおりなんですね。例えば、私は、政治家がそういう発言を、知識なくと言ったら変ですけれども、もしそういう発言をするのであれば、それは大きな責任があると思うんですね。

 私もいろいろ聞いたので、これはちょっと議事録に残しておきたいので確認をしますと、例えば、長官、アフガンに埋設されている地雷量というのは推定どれぐらいでございますか。

中谷国務大臣 多少年代は古いんですけれども、九六年四月十日現在で、アフガニスタンに埋設されている対人地雷の数は一千万個に上ると推定をされております。

安住委員 一千万個ですね。

 それでは、日本には地雷の除去をするための部隊というのがありますね。これは各師団に一個ずつぐらいあるんですけれども、人員と、大体どれぐらいの規模なのか、そして、その人たちは一日平均すると、対戦車地雷だとどれぐらいの地雷の除去が可能なのか、ざっと説明していただけますか。

中谷国務大臣 現在、陸上自衛隊において地雷を処理する能力は持っておりますが、これは、あくまでも我が国有事に際して我が国を防衛するという見地での地雷処理でありまして、能力的には、陸上自衛隊の普通科部隊、戦車部隊、施設部隊等で、主に地雷原に一定の通路を設けて、それで防衛行動を行うという趣旨の地雷処理訓練等を行っております。

 装備品としては、九二式の地雷原処理ローラー、九二式の地雷原処理車、七〇式の地雷原爆破装置等を有しておる中でありまして、一般的な訓練は行っておるわけでありますが、専門的に地雷を処理するための部隊また組織というものは有しておりません。各部隊にその処理能力を付与するための訓練は行っておりますが、専門的に地雷処理部隊というのは有しているわけではございません。

安住委員 これは大変なんですね。ソナーと一緒で、物すごく耳を冷静にそばだてて、二十分ぐらいで集中力が途切れるぐらい集中しないと、地雷というのは見つからないそうですよ。それでも一個見つかるかどうかですよ。

 今、アフガニスタンに一千万個ですね。日本の部隊が行って、それも専守防衛のために常設しないといけない部隊の一つですね。それを長期アフガニスタンに派遣して、一千万個のうちの、例えばどれぐらい取ってくれなんという話になったら、これはもう大変な話で、大体そんなことをPKOとしてやる業務なのかどうかということも含めて言うと、私は非常に常識から外れた議論だと思うんですよ。

 何かいかにも、PKOとか復興支援というと、地雷除去といったら、政治家とは言いませんが、何となくすばらしいんじゃないかと思うかもしれませんが、現実にはこんなことをやるというのは大変なことで、私はそんなことをゆめゆめ想定していないでしょうねということを確認したいと思うんですけれども、いかがですか。

中谷国務大臣 そのとおりだと思います。

 国連のPKO局自体も直接地雷の処理の活動をしているわけではなくて、基本的には、地雷の処理等においては、埋設された国の政府が主体となって行っておりますし、またその地雷処理する方も、NGO、また地雷の埋設国の人たちが協力をして行っておりますが、しかし技術指導としては、各国の退役軍人とか地雷処理の能力を持った将校が、その国に行って、その国の人たちに地雷の処理の仕方を教えているという活動にとどまっておりまして、部隊を編成して地雷を除去するということ自体、国連も行っておりませんし、日本も現時点においてそのようなことをできる部隊を有しているわけではございません。

安住委員 カンボジアでも、基本的にはカンボジアの新政権が主体となって地雷の除去をして、それに対して物的、人的支援をしていくというのが、これは常識なんですよ。

 福田長官、確認ですけれども、地雷の除去に対してこの方法、つまり今のやり方というのをしっかりとアフガニスタンでも踏襲するという方針で日本政府はよろしいですね。

福田国務大臣 今回の法律が改正されるということになりますと、国連によるPKO活動として地雷除去が行われる、こういうことになるわけでありますけれども、我が国もこれに参加できる法的根拠が整うということになります。

 このような場合の実際の対応、アフガニスタンであろうが、ほかの国であろうが、これについてはその時点で諸般の事情を勘案して考えていく、こういうことになると思います。できる限り、できるだけ協力をする、そういう姿勢はとっていきたいと考えております。

安住委員 今の、これは確認ですけれども、PKFの本体業務の中にあるニですね、つまり放棄武器の収集、保管、処分ということに地雷は入るというふうな認識でいいですね。そういうことですね。

中谷国務大臣 そのとおりでありますけれども、これはあくまでそのPKO活動を行う地域においての自国の活動の安全を確保する面での地雷の処理ということでありまして、国連のPKO自体の地雷処理活動においては、あくまでその除去活動や地雷に関する啓蒙活動を支援することが一般的な目的でありまして、地雷の処理ということが主任務ではないというふうに認識をいたしております。

安住委員 わかりました。

 ぜひアフガニスタンの復興支援は積極的にやっていただきたいと思います。私は、アメリカがあえてそういうことを言ってくるとは思いませんけれども、別口で何とか地雷の除去をというようなことを言ったときには、やはりそれは大変なことですから、慎重な対応を強く日本政府に対して求めたいと思います。

 さて、PKO活動について、少しやはり歴史的なことを考えてみたいと思います。

 私は、ガリさんが「平和への課題」ということで、九二年に平和執行の考えに基づいて非常に強いPKOをやっていこうじゃないかという方針を出されて、九三年にソマリアで大きな事件といいますか、多数の犠牲者を出す結果になって任務を終了したという事件が、私はPKO活動のやはり大きな一つの分岐点になったと思うのです。

 その後、九四年のルワンダ、それから九五年の旧ユーゴにおけるボスニアでの大量虐殺もこれはなかなか防ぐことができなかった。つまり、PKO活動といっても、時代の要請になかなかこたえられないわけですね。その中で、ブラヒミ・レポートというのが出てきたわけです。これはROE、いわゆる交戦規定についてかなり思い切った方向性が必要であるというような旨の報告を出しているわけですね。

 私は、全体的に、今後PKO活動が国連の中でどうあるべきなのか。それに対して日本はどういうふうに貢献すべきなのか。これは集団的自衛権の問題ともリンクするわけですけれども、将来のあるべき姿を含めて、福田長官また中谷長官、どちらでも結構でございますから、私、内閣としての方針をぜひ聞かせていただきたいと思うんです。

 あわせて、これは自由党も法案を出していますので、自由党の考え方も伺いたいと思います。

中谷国務大臣 確かに、国連自体でPKOのあり方については非常に精力的に議論をされておりまして、いわゆるガリ報告に基づくPKOの議論もソマリアの例でとんざしたということがありますが、第二世代PKOという言葉がございますが、現在行われているPKOの国際的なあり方については、各国に対して、PKOの活動能力を向上していただけないか、また、PKOの派遣要員の増強、数の増加を期待いたしておりますし、その能力の向上も期待する方向で話が議論されているというふうに思っております。

 したがいまして、各国においては、PKOに対する派遣力というか、まず待機制度、どれだけの要員がPKOに参加できるかという部分と、緊急展開能力ということで、いざというときに要員の派遣ということができるようにできないかというような内容で、現在国連内でも検討が行われているというふうに承知をいたしております。(安住委員「日本政府はどうあるべきか、それに対して」と呼ぶ)

 やはり国民の理解を得ながら、我が国として、より国際的に評価をされ、そして尊敬される国となるためにも、このような国際平和協力活動については積極的に対応すべく考えていくべきだというふうに思っております。

東(祥)議員 安住委員は、PKO問題に関して党内においても座長としてお仕事をされていて、いろいろ研究されていると伺っております。今の御質問は、まさに国際社会における、とりわけ国際の平和と安全に対して日本が今後どのようなかかわり合い方をしていくかという点において極めて重要なことなんだろうと思います。

 御案内のとおり、PKOは別に国連憲章の中に書かれているものではない。第二代事務総長でありましたダグ・ハマーショルドが、まさに冷戦構造のはざまの中で、国際の平和と安全を守るために国際連合がいかなる活動をすることができるかと必死の努力の末、このPKO活動というものを編み出したんだというふうに思います。

 先ほど御指摘のとおり、PKOの歴史の中で、ただ単にハマーショルドが編み出した伝統的なPKOにのっとった形でPKOを派遣することができないようになる可能性も出てきている。そういうときに日本として、今までの、九二年に僕らも参加してつくったものでありますけれども、あれは、国際の平和と安全に対して、日本というのは国際社会からある意味で初めて、湾岸戦争の経過を踏まえた上で、問い詰められた起点だったんだろうと思うんです。そういう意味において、ある意味でちゃんと慎重な審議、国際社会の動向、そういうことを視野に入れようとしたんですけれども、個々いろいろな問題がやはり生じてしまった。

 そういう意味において、やはり私たちは真剣に考えなくちゃいけないことは、日本政府の場合、現行までは、基本的に、国連の平和活動に対して参加する場合、一つの縛りになっているのは憲法九条の問題なんだろうと思うんです。私たちは今回法案を提出させていただいておりますが、そこでの基本的な考え方というのは、憲法九条、内閣法制局中心に積み上げてきているものというのは、それは自衛権の問題なんですね。

 御案内のとおり、国際社会において唯一拘束力を持つものというのは、国連の安全保障理事会の決議なわけです。これはもう安住議員御案内のとおり、自衛権の問題というのは、国連憲章五十一条で盛られているものであって、あくまでも国連の加盟国が武力攻撃を受けたとき、安全保障理事会が適切な必要な措置をとるまでの間認められている各国固有の権利だ。そうすると、安全保障理事会において決議されたものというのは自衛権ではないというとらえ方を我々はしているわけであります。

 したがって、私たちの法案では、安住議員御指摘の、ありとあらゆる問題に対して対応できる、そういう立場に立っておりまして、それは憲法解釈上、新しい角度から新しい時代に対応できるような、そういう措置が施されているわけであります。

 さらにつけ加えさせていただければ、先ほど言及ありました九二年のアジェンダ・フォー・ピース、あれは失敗したというふうに言われておりますけれども、本当なのか。ガリ事務総長が来日されたときも、この点についてお話をさせていただいたことがあります。大事なことは、国連を中心とした平和活動、国連加盟国がどのようにそれを支え、そしてまた推進していくか、そこの一点にかかっているんだろうというふうに思います。

 そういう意味で、現在では、北欧諸国あるいはまたカナダが中心になって、いわゆるUNスタンバイフォースという即応部隊、それをつくり上げていると思いますが、そういうところに日本としても積極的にかかわっていくということが一つの日本の外交方針としてあるんではないのか。僕らが政権をとっていればそういう方向で考えていきたいというふうに思っています。

安住委員 東議員の考え方と私は非常に近いので納得は非常にしますけれども、そこでやはり、専守防衛といいますか、そういう概念の中で国際貢献、今の現行憲法の中でやっていくというのは、すごく大変なことだと思うんです。しかし、現実論で言えば、竹を割ったようにはいきませんから、現行法の中でやはりじわりじわりやっていくしかないのかなと思うんですね。

 しかし、それにつけても、そうであればというか、五原則の見直しはやはりやらないといけないと私は思うんですね。第一のところです、第一のところの五原則の見直しを私は実は考えたらどうかなと思っているんですね。つまり、紛争当事者間の停戦の合意が成立していることというのがありますね。これは法制局長官、大変恐縮ですが、通告していませんから、この場合の紛争当事者の者というのは、主にこれは国家ということでスタートしたんじゃないでしょうか。それでよろしゅうございますか。

津野政府特別補佐人 五原則といいますのは、これは当時の政党間でたしか一番最初に合意された原則だったと思いますが、私が承知しております限りでは、紛争当事者と申しますのは、要するに、紛争が国際的な広がりを持ってまいりまして、あるいは内戦だけにとどまっている場合もございますけれども、国または国に準ずるような組織、そういった当事者、そういった間での紛争という意味でございますから、そういった組織、国または国に準ずる組織、そういった者が大体この紛争当事者に当たっているというふうに私どもは考えております。

安住委員 そうだと思うんですね。つまり、国ないし組織というふうにだんだん敷衍してきた。私が言っているのは、その紛争当事者が存在し得ないような場合のPKO活動というのが出てきたということです。紛争当事者が全く存在をし得ない、なおかつ紛争当事者の一方だけが生き残っていると言ったら変ですけれども、例えばの話、山岳地帯にその部隊だけが立てこもって、それ以外の平たん地帯では何の状況もない、そういうふうにケースが非常に多様化してきたので、私は、このPKOの五原則の一のところは、やはりこれちょっと縛りが非常に強過ぎるんじゃないかと。これに厳密に照らし合わせていくと、なかなかこれは活動する場所というのは限られるんじゃないかと思うんですね。

 ですから、ちょっと前向きな話をしますと、例えば停戦が成立していると認め得るようなことを認定する、そういう国家が主体となって合意をしていることじゃなくて、合意を、事実上停戦状態にあるとか、長官、やはりそういう考え方に私は直した方がいいと思うんですけれども、いかがですか。

福田国務大臣 この参加五原則、これは、我が国がこういう活動をするに当たって、憲法で禁じられた武力行使をするとの評価を受けることがないことを担保する意味で策定された、こういうことなのでございまして、極めて重要な意味合いがあるんですね。

 しかし、憲法に抵触をしないという範囲の中で、この意味合いが、一つ一つの意味合いの解釈、これがその時々、その時代によって変わっていくということはこれはどうなんでしょうか。例えば武力行使についても、必要最小限度と言っているけれども、この必要最小限度というのはどうなのかという議論は、これは今までも随分され、またこれからもされるだろうと思います。

 ですから、この辺のことについては、これはやはり国会の議論でもって十分なさっていただくというような問題もあるかと思います。ですから、私は、これは未来永劫一つの解釈しかないという考え方はとりたくないと思っております。

安住委員 どっちの方でお話しなさっているのかよくわかりませんでしたけれども、やはり私は、実態として、実態としてですよ、これからは、国内における内戦状態の中で、一方ないし両方の紛争当事者が、先ほども申し上げましたが、存在し得なくなった場合等々、多種多様な状況があって、その中で、解釈としてここを変えていく、要件緩和をしていくというのは私はおかしいと思っているんですよ。

 解釈ではなくて、やはりルールをしっかりと書き直す、私はそういう考え方なんですけれども、もう一度政府の考えを伺います。

中谷国務大臣 どう考えるのかということでありまして、全く戦いのない状態でもあり、またその紛争の当事者ももういなくなった場合は、私は停戦の合意は成立しているというふうに思っておりますし、今回の東ティモールの派遣の場合も、数年前は紛争をしておりましたけれども、現時点においては全く平穏で、その紛争の当事者もいなくなったということで派遣をするわけでございますので、この五原則の中で考えていくのも差し支えはないというふうに思っております。

 この五原則の中の停戦の合意というのは重要なファクターでありまして、我が国が武力行使をするとの評価を受けることがないために担保する意味で策定された重要な骨格でありまして、今後ともこの部分については堅持をするべきだというふうに思っております。

安住委員 私も堅持をすべきだと思いますけれども、ルールですから。だから、中身をどうするかという話ですよ、現実論に合わせて。

 そこで、もう時間がありませんが、二問だけ伺います。

 法制局長官、先ほど、警護業務を私は少なくとも、全くだめだというんじゃなくて、選挙監視要員やNGOの要員に関してはその生命と身体を我が国の自衛官が、PKO派遣された人たちがやはり警護をするというのは十分認められ得るんでないかと私なりにはちょっと考えるんですが、これは法制局としては、警護業務をやった場合、例えば自己の管理の下に入った人が自分よりも百メーター先にいて、その人が強盗や何かに襲われたときに、そこまで走っていくのは間に合わないから例えば射撃をしたという場合は、これは今の武器使用の規定からいうと、やはり外れるおそれがあるという解釈ですか。

津野政府特別補佐人 まず、警護業務の話がございますが、国際平和協力法上、警護業務をこれから追加するかどうかというような議論がさまざまにされているわけですけれども、これ自身は政府部内でまだ具体的な法改正の検討が行われているというふうには承知しておりませんので、これは警護の対象者とか行為の態様とかそういうものが明らかでない現状のもとでは、憲法九条との関係を申し上げることは難しいというふうに、そこは御理解いただきたいと思います。

 ただいま、百メートル先の……(安住委員「例えばで恐縮ですが」と呼ぶ)例えばですね、自衛官から百メートル離れたところに、これはどういう人がいるのかちょっとよくわかりませんが……(安住委員「被災民だとします」と呼ぶ)被災民ですか。相手方は。(安住委員「武装をした例えばゲリラとか」と呼ぶ)ゲリラですか。そのゲリラがどういった性格のものかもちょっとわかりにくいんですけれども、ともかく、今度改正することに予定しております二十四条三項に基づいて武器を使用してその生命あるいは身体を防衛することができることになりますのは、自己とともに現場に所在し、かつ、その職務を行うに伴い自己の管理のもとに入った人であるというふうにされております。

 それで、御質問のように、被災民がこれらの要件に該当することとなるかどうか、これにつきましては、被災民と自衛官との間の距離、百メートルとかそういった距離のみならず、当該場所、周辺の状況とか襲撃の規模とか態様とか、あるいは被災民と自衛官以外に現場に所在する者がどんな人がいるかとか、あるいはいないかとか、そういう人たちがどういうところにいるかとか、あるいは被災民と自衛官との関係がどういうような関係にあるのか、あったのかといったようないろいろな要素を、前提条件を設けないで、一概に、単に百メートル先にという条件だけでは、当該被災民を防衛することができるかどうかというその一般論としてお答えするのはなかなか難しいというふうに考えております。

安住委員 いやいや、多分そうだと思いますけれども、私が言いたかったのは、つまり、自然権的権利で、それでまた「自己の管理の下に入った者」という話ですと、仮に警護業務を認めた場合に、警護業務の場合であると、警護をしている人間が襲われたりなんかしたときに、こちらから出向いていって交戦をすることが現実的に現行法上非常に抵触するおそれがあるという意見交換をしたものですから、そこはどこまでなのかな、どこまでが認められるのかなということをちょっと議論したかったんですけれども、時間がないので。

 ただ、中谷長官、そういう話をもっとぎりぎり詰めて、出せるところまでやはり政府も出していく。各政党間に御協議をゆだねる旨の発言を長官がなさるのは、私はだめだと思うんですよ。政府としてどこまでやるかという責任を持たないから、いや、むしろこれは、失礼ですけれども、与党の問題ですよ。逆に言えば、与党としてこの問題をクリアするというのだったら、ちゃんと警護業務はやるべきだと私は思いますよ。

 東ティモールだって結局それが大事でしょう。これから大統領選挙があるんですよ。そのときに警護業務をできないわけですね。多分そうですよ。選挙監視要員を守っていくというのは非常に私は難しいと思いますよ。なぜかといったら、PKFの中にも入っていませんから、今回の凍結解除。

 だから、私は新しい時代のPKOを考えた場合に、ブラヒミさんではありませんが、世界の情勢も大きく変わりました。アフガニスタンに至っては、想像を超えるような状況になっています。つまり、こういう中で、大変失礼な言い方ですけれども、今回の臨時会では本当に政治的にちょこっと手直ししただけの改正案、これでもし終わりということだと、これは私は政府は大きな責任があると思いますね。二十一世紀のPKOのあり方を考えたら、やはり次に引き続き五原則の見直しや武器使用のあり方、私は、そういうことに関してしっかりとした政府案、我が党も出すつもりですけれども、出すことによって、二十一世紀の日本外交の中心はこのPKOなんだと。

 ですから、同僚議員からも国内における自衛隊を含めた別組織論の話は多分すると思いますが、国内の体制の整備、カナダのピアソン・センターのように、アジアの中にそういう中心的なセンター、アジアのPKO活動の拠点をつくって、私は、日本というのはPKO活動のアジアの中心だと言われるような活動をすべきだと思うんです。それは自由党もおっしゃっていましたけれども、専守防衛とは違う概念でこの話をスタートしているんですから、法律上、解釈を変えるのはさほど難しくないと私なりには思っています。

 どうぞ、そういう気持ちを持ってこのPKOに取り組んでいただきたいと思いますので、福田長官、最後に心構えだけ聞かせていただきたいと思います。

福田国務大臣 確かに、日本の二十一世紀の国際社会に対する貢献と申しますか日本の外交のあり方というものを考えた場合に、このような平和裏における活動というものの活動範囲を広げるというものは大変大事であるというように思っておりますので、これからもしっかりとこの辺の勉強をさせていただきたいと思います。

安住委員 終わります。

玉置委員長 渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。末松、安住両委員に続きまして質問をさせていただきます。

 今も質疑がございましたけれども、私は、まずPKOというものがいかなる変遷を経てきたかということにつきまして、ぜひその御認識について防衛庁長官にお尋ねをしたいと思うわけであります。

 今もお話がありましたとおり、PKOが冷戦下そして冷戦後と一つの境をつくりまして、このPKOの存在が別の役割を持って出てきたわけでございます。そんな中で今回この改正案が、今もお話がありましたけれども、まさに十分な議論をもう少しして、これは私も、PKOとODAという問題はやはり日本外交の二つの大きな柱であろうと思うわけでございまして、その中で、今回このような議論が残念ながら拙速にされざるを得なかった。本来ならばこれはもっと時間をかけて、識者も入れて、あるいは現地に赴いた方々にも本当に率直な話を聞きながら、国会、立法府が挙げてやるべきであっただろうと思うわけでありまして、この点については、今回のこのような形でしか、なかなか本質にたどり着かず議論できないことは非常に私自身も残念だと思うわけでございます。

 九二年の六月に法が成立をいたしました。そして、当初のあの当時私は議員ではありませんでした、当時は地方議員をしていたわけでありますが、あのときの国会での議論あるいはさまざまな活動を見るにつけまして、大変日本という国が新しい時代に入ったんだなということを痛感したわけであります。

 しかし、そんな中で、これは例えば法案の審議のときに、あるいは例えばカンボジアに行くというときはマスコミ等も含めて大変大きく扱うわけでありますけれども、なかなか時間がたってきますと、だんだんその議論の本質は何であったか、あるいは現地でどんなことをしているかというより、例えばカンボジアなんかだと、やれタケオのふろが、何とか温泉がどうであったかとか、例えば向こうに行ったらどんなものを食べて、どんな現地と交流しているかという、非常にどちらかといいますと本質論からちょっと離れた部分ばかりがどうしても報道されるようになってしまったわけであります。

 長官は、日本国内におきますPKOそのものに対する十分な理解が今日まで、九二年六月の成立以来どのように変わってきたか、あるいは達成されたかということにつきましてどうお考えか。まずその点についてお尋ねしたいと思います。

中谷国務大臣 非常に冷戦後、国際、国家間でこのPKOのあり方については高い評価と期待は高まりまして、ことしのノーベル平和賞には国連が、またPKO活動等が選ばれたわけでございます。

 冷戦が終わった後、非常にPKOが脚光を浴びておりますが、PKOの歴史は古く、主に中東のイスラエル・パレスチナ紛争、この停戦合意の後の停戦監視ということから、また、キプロス島というのがございますが、トルコとサイプラス、これの紛争の後の監視を旨にスタートした古典的な、伝統的なPKOもありますし、最近では、カンボジアまた東ティモール、コソボなどのように、ただ単に軍事的な部分だけではなくて、選挙、文民警察、人権、難民帰還支援から行政事務、復興開発など国づくりのためのPKO活動も実施されておりまして、よりPKOの果たすべき役割というものが大変大きくなっておりまして、国連自体もPKOのあり方について真剣に議論を続けている、各国も期待しているというふうに認識をいたしております。

渡辺(周)委員 確かにそういう歴史の中ですね。

 私、ちょっとお尋ねしたいのは、もしかして答弁書にはないかもしれませんけれども、日本国内でPKOそのものに対する、長官も就任前さまざまな委員会におきましてPKOのあり方については積極的にいろいろな御発言をされているのは、私も議事録で読んでまいりました。その中で、今日本の国でPKOそのものに対する十分な理解が得られているかどうか、これは個人的な見解でございますから、どうぞ答弁書など見ずに、ちょっと現状の御認識を伺いたいと思います。

中谷国務大臣 現在のPKO法が成立したのは平成三年でありまして、私はまだ一年生議員でありましたけれども、これの委員会の採決やら本会議の採決を見ますと大変な混乱でありまして、私も委員席に座っておりましたけれども、某党の女性の議員が紙を持ってきて、反対だということで異様な混乱がありまして、一般の人たちも戦争に参加するんじゃないかというようなことを思っておられた方も多かったというふうに思いますが、その後六回の活動を通じて、やはりPKOがあること自体が世界の平和と安定につながっていることでもありますし、またPKO自体が武力行使ではないということをよく理解していただいて、最近の各報道機関の調査においてもPKOに対して理解をする数字が上がってきております。

 また、五年ぐらい前でしょうか、私、一度、成田空港から外国に行くときに、PKO反対だという看板が鉄塔に掲げられておりましたけれども、現在はその看板も撤去されて、やはり国民全体としてPKOに対する理解というものは相当進んできているのではないかというふうに思っております。

渡辺(周)委員 まさにそういうふうな変遷を経て、私も当時を思い出しますと、例えば地方議会なんかでも、PKO絶対反対なんというTシャツかトレーナーを着て議場に入ろうとして議場に入れてもらえなかったなんという、幾つか地方議会なんかで単発的に、散発的にそういうことがあった。そういういろいろな動きの中で、実際活動をされることによって、これはいわゆる武力をもってして相手領土の中に入っていって何らかの軍事的行動をとるんではないということがだんだん理解をされてきたわけであります。

 しかし、その反面で、どうしても日本の国内に対する、世論でありますとか、あるいは日本の法の整合性ということを今日まで中心に議論してきたことによって、これはある識者の方の御指摘ですけれども、日本のPKO論議というのは、実は国連というところに足を置いてから見た視点に欠けているんじゃないかというような指摘もあるわけです。その点について、今までの議論と、やはり先ほどお話があったような、冷戦が終わりましてこれからさまざまな事態の中で国連のあり方が問われる中で、後ほどまたそのことについてもただしたいと思いますが、日本のPKO論議というのは、国連という視点から実は少し視点がずれていたんじゃないかという指摘もあるわけで、私もそのとおりだと思いますけれども、その点については、長官、どのように御認識していらっしゃいますか。

中谷国務大臣 やはり国連の活動自体、またPKO活動自体が、憲法の前文に書いております、専制と隷従、圧迫と偏狭をなくそうとしている国際社会の中で日本は名誉ある地位を占めたいと思うということを書いておりまして、国連を中心とした協力に対して日本は惜しみない協力をして世界平和のために努力をすべきだというのは、まさに憲法の書いている精神そのものであるというふうに思っております。一方で、憲法九条の中に、戦争の放棄、また武力行使はしないという、抑制をしていく部分も書かれておりまして、この両面から、さまざまな議論が展開されて本日に至っているわけであります。

 この議論の間を通じて、各党間の認識、また国民のPKOに対する考え方や国際平和に取り組む姿勢等にも大変大きな変化があって、現時点においては、やはり日本の国際貢献の姿勢として、世界の中で尊敬をされる国家になるために人的貢献もすべきであって、それが国連平和維持の活動においては、その活動に対して積極的に行うこともいいのではないかというふうに思う方がふえたと思っておりまして、この議論においては非常に有意義であったと思っております。

渡辺(周)委員 その議論の中で、やはりこれからは国連からの視点というものを置いて日本は議論していかなきゃならない。といいますのも、国連の現実から遊離をして、時には、主要加盟国である日本が、PKOの発展や政策決定ということについて何か無関係の立場のような、どこか一歩退いたような形の印象も当然受けるわけであります。

 しかし、先ほど同僚委員からも話がありました、確かに、PKOがすべてにおいて成功してきたのではなくて、失敗をしたという例もあります。しかし、国連が一九四五年に創設をされまして、その後、冷戦が本格化した一九五〇年代、そしてその後は非常に拒否権が乱発されまして、いわゆる国連という集団安全保障体制がほとんど機能しなかったという中で、まさに、加盟国の英知の中から生まれてきたのがこのPKOだ。

 認識は同じと思いますが、そんな中で、もともとが、限りない可能性がある反面で、実は見かけ倒しの無力さを露呈したというときもあったというふうな相反する面があるわけでございます。これは、別の言い方をしますと、国際社会の英知の結晶というべき光の部分と、当面する危機と当座の政治的即興で取り繕った影の部分もあるんだというふうな指摘をする方もいるわけであります。

 その後、冷戦が終わりまして、PKOの発動も、冷戦前と冷戦後では非常にその質も変わってまいりました。そんな中で、先ほど安住委員からも話がありましたガリ事務総長の報告書、「平和への課題」が出たわけでございまして、そんな中で、さまざま日本のこれからのPKOのあり方というもの、この整合性、あるいはこのブラヒミ・レポートも含めまして、今後どうしていくかという点についてお尋ねをしたいわけであります。

 この冷戦後の一つの大国、これまでは大国の介入がなかった、あるいはさせなかったという中から、PKOという形での世界の秩序を求める途上国等も多くなってきた。その分、いわゆる従来考えていたような国家対国家の問題よりも、国家内の問題になってきたわけであります。

 そうした中で、これからどのような形で考えるかということを日本は考えていかなきゃならないわけでありますけれども、その点について、先ほどちょっと同僚委員の質問がしり切れトンボになりましたので、あわせて聞きますと、今後、日本のあるべきPKO活動についてはどのようにお考えになっておるのか、その点についてお尋ねしたいと思います。

中谷国務大臣 当然のことながら、PKO活動には日本は積極的に貢献していくべきだというふうに思っております。しかし、今までのPKOの歴史を見ますと、非常にPKO活動と各国の外交努力というのは表と裏でありまして、PKO活動を成功させる上においては、事前に外交を展開して準備をしておくかどうかという点が大きな要素だと私は思っております。

 というのは、PKOを行う上においては、国内のいろいろな対立する会派が集まってマンデートをして、それによって取り決めをして、それの前提でPKO活動をやるわけでありますが、いいかげんなマンデートをしますと、その停戦の合意が崩れて、逆にPKO要員が巻き込まれてたくさんの犠牲者が出るわけでありまして、いかにしっかりとしたマンデートをこしらえてPKO活動を行っていくかということにかかっているのではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、PKOを実施する前の段階の努力というものが大変重要でございまして、日本も、外交を中心として、そういう準備を遺憾なく行っていくと同時に、そのマンデートに基づいたPKO活動においても、積極的に人的貢献を図るために、より世界平和のために貢献すべきだというふうに思っております。

渡辺(周)委員 今、この新しい時代の、先ほどもお話ありましたが、いわゆる五原則がございますが、例えば、この合意の部分というのが、例外はないのかということを実はお尋ねしたいわけです。

 つまり、いかなる状況下でも、行われた合意はそのまま生きていると考えるのか。例えばソマリアの例は、これは実際に各トライブ、部族、民族、各グループが集まって、そこで実際、かなりの和平を求めようということで、和平会議の直前までこぎつけていった。ところが、それはある意味では大国の管理下にあったということで、それなりの土俵が用意されて、そこまでいったわけでありますけれども、しかしこれはアメリカ主導の当時の多国籍軍がおりまして、そのもとで合意されたアジスアベバ合意ですね。ところが、その後、ソマリアへPKOが展開したときには、ほとんどアメリカの影響力がなくなった中で、結果として、当初集まってきた合意みたいなものがほごにされた。それで、御案内のとおりソマリアの内乱が始まりまして、無政府状態になったわけであります。

 そうしますと、そもそも、合意というのはどういうことなんだということになるわけでありますが、これから日本の国が新時代のPKOの中で当然活躍を、活動していかなきゃならないとすると、この前提自体ももう一回問い直さなければいけないのか、あるいは、何らかの形で定義づけをしなければいけないと思うわけであります。

 もちろん、合意があるという前提で行った、しばらくしたら、何らかの力の抑圧がなくなったことによって、その合意がほとんどなきにひとしくなった場合の対応等も当然これはかなり検討されていると思いますけれども、先ほど来質問しております、この新しい日本としてのあるべきPKO活動の中で、こうなった場合に、もう一回この五原則をきちっと定義づけする、あるいはしっかりともう一回議論するというお考えはあるのか、あるいはそれを進めていらっしゃるのかどうか、その点についてお尋ねしたいと思います。

中谷国務大臣 これは、国連自体の、PKO活動の存立の前提となることでありまして、大変重要なことであります。ことしも国連でPKOのあり方について検討されておりますが、国連のアナン事務総長は、昨年十月にブラヒミ報告を受けてパネルをした結果、ブラヒミ報告の勧告のいかなる部分も、国連が戦闘組織となることを意味したり、PKO要員が武器を使用する原則を根本的に変更するものではないというふうにされております。やはりPKOの原則は、中立であること、また停戦の合意が保たれていること、受け入れ国が同意をしていること、この三原則がPKO活動の基礎でありまして、この前提が崩れないように絶えず注視をしていくべきであるし、これに参加する場合には、国連のPKO自体の原則が崩れているか否かによって各国も参加を決めるわけでありますが、特に、我が国もこの三原則が守られているかどうかということを注視しなければならないというふうに思っております。

 一方で、ソマリアの例を出されましたが、これは、司令官のさばき方というか、米国自身がその司令官の指示に本当に従ったかどうか、またその司令官自身の判断が適切であったかどうかという点を見ていかなければなりませんが、実際にPKO活動が行われた場合も、現地の司令官の指揮統率が適切であるかどうか、こういう点も十分に監視をしながら参加をしていかなければならないというふうに思っております。

渡辺(周)委員 私がお尋ねしているのは、つまり、当初の状況と当然変わってきたというところがあるわけであります。

 実は、これはどこの国だったでしょうか、例えば、現地へ行ってみて、停戦違反と見られるような幾つかのことが起きている、しかし、全体としては停戦の合意は守られているから大丈夫なんだということで、これはカンボジア等でもあった。そして、帰ってこられた後に、そういうことを幾つか、こういうことがあったということも、行かれた隊員の方々から報告がされているわけであります。これはいろいろなレポート等に出ておりまして、当初の行った話、つまり書いてあるPKOと、現地でしてきたPKOというのは非常に違うんだというようなレポートも存在しているわけであります。

 つまり、ここではこうであろうと言っても、行ってみたらそんなことはない、もっと言えば、現地の方の受け取り方は全然違う、もっと言えば、平和のために来たはずなのに、向こうにしてみれば、これは平和という名をかりた、国連というのは侵略をするグループだというふうにとっている例えば現地の相手方もあったということもあるわけでございます。

 そういうことを考えますと、これから質問に入りますが、今までですらそうであったわけであります、カンボジアへ行っても、当初は施設大隊が橋を直すとか道を直すという話だったのが、途中から全然違うことが突然付与されてきた。それを考えれば、PKFという本体業務になれば、当初想定していたこととは全く違う事態に当然行くことになるわけであります。それだからこそ、この三原則というものを非常に、我々はどの時点で判断するかということが必要であります。

 それで、先ほどちょっと御答弁の中に中立という言葉が出てきました。このブラヒミ・レポートの中立性というところの中に、中立性概念の明確化というのがあるんですね。これをちょっと読みますと、ここに出てくる中立ということは、ある意味では公正という言葉ですが、公正とは、国連憲章の原則及びPKOの任務の目的に忠誠だということであり、紛争当事者に対する平等性とは異なると考えるべきだとブラヒミ・レポートは言っています。

 となりますと、日本の見解と若干違うんじゃないのかなと思うぐらい、これはこれまでのいわゆる日本の五原則が変わってきているというふうに判断すべきでありますけれども、今回、先ほども答弁ありましたけれども、ブラヒミ・レポートを見て、日本が当初、日本型のPKOが日本型のPKOでなくなるというところがもうそこまで来ているわけですから、その点について、長官の率直なお考えを聞かせていただきたいと思います。

中谷国務大臣 基本原則としては、中立、合意、同意は、ひとしく考え方は合っているというふうに思っておりますが、各ミッションに応じて、それぞれの地域に応じて、別個、計画等が策定をされておりまして、現地の情勢に合わせていくということであります。

 ブラヒミ報告自体も、国連の事務局員の増強、体制の強化ということを挙げておりまして、ニューヨークの国連自身が、各国の職員を増強して、的確な判断と合理的な活動をし得る能力を向上させておりますし、また国連本部自身にも予算、決算権があって、国連総会で了承されなければなりませんので、それにふさわしい内容におのずとなるというふうに思っております。

 ですから、日本の場合も、この原則に応じて参加をしているわけでありますが、我が国の五原則と照らして、逸脱した、また違った方向に行くというならば、中断、中止ということを決断して、参加を見送るということも可能でございますので、大いに、我が国なりにもこのPKOのあり方について注目をしていかなければならないというふうに思っております。

渡辺(周)委員 これまでのPKOの任務が、本体業務に参加できるようになれば、当然、劇的に変わるというのは、もう先ほど来ずっと議論されてきているわけでございます。

 今、お話ありました、例えば、交戦規定、国連平和維持活動における武器使用基準というものを見ますと、これは日本の、果たして今回改正される法と整合性がとれるんだろうかということを我々としては非常に関心を持つわけでございます。

 例えば、武器使用の制限というところを見ますと、武器使用は敵対行為に対応する最後の手段である、そして云々とありまして、例えば、脅威のレベルと同等でなければならないとか、あるいは、最後の手段として使用しなければならない云々とあります。目標達成に必要な強度と期間に応じなければならない、脅威のレベルと同等でなければならないというこの交戦の規定等、そしてまたこのことを考えますと、日本と事国際基準、要は、国連スタンダードと日本スタンダードというものが果たして整合性がとれるんだろうかということになるわけです。

 それは、もちろんこの法改正をすることによって、一歩我々が、本当に今まで机の上で議論して、紙の上で書いてきたものとは違う現実の中にいよいよもう送り出さざるを得ないということで、大変我々自身の覚悟も問われていると思うわけであります。例えば、国連の武器使用の原則と我が国の原則の整合性について、これまでどんな議論がされてきたのか、あるいはどのようなことが考えられるか、その点について、どなたかお答えいただけますか。

中谷国務大臣 現時点においても、国連の部隊行動基準、ROEについて検討はされているというふうに思っておりますが、一般的にROEについては、それぞれのミッションというか地域ごとに定められるわけでありまして、それぞれの地域に応じて違うわけであります。一般的に、個々のPKOにおけるROEにおいて、要員の生命等の防護のための武器使用、それに国連の施設、物品を防護するための武器使用並びに任務を実力をもって妨げる企てに抵抗するための武器使用などが国連のROEに含まれる場合もあるというふうに承知しておりますが、我が国の場合は、今回、自己とともに所在する隊員の管理のもとに入った者の生命または身体を守るということを追加するわけでありまして、おのずと国連との認識には差があるというふうに認識をいたしております。

渡辺(周)委員 今、国連との認識には差があるというのは当然でありまして、長官だからお尋ねしたいんですけれども、実際問題、これは現場に行って、どのような不測の事態が起こるかわからない、そのような中で、確かにこの武器使用の問題というのは、非常にこれは我々関心を持っていろいろ議論をしてきているわけであります。ここが一番議論になるところでありますけれども、実際問題として、いわゆる国連基準と日本の基準、実は、私はかなり差があると思うんです、現場でのとらえ方。

 その点について、これはやはり元自衛官でもあった長官としては、もしかしたらお立場で言えないこともあるかもしれませんけれども、これまでの幾つかの現場の例を含めながら、そのようなことに対してどうお考えか、もしできればここで、これは個人的な見解で結構です、長官としての答弁じゃなくても結構ですから、現場を知らない人間がああではないだろうか、こうではないだろうか。実際行ってみれば、もうこれは現場に任せるしか現実問題としてないんじゃないかということがあるわけです。

 これは、幾つかの、例えばザイールなんかを見ましても、実際難民の人道的支援で行ったはずなのに、行ったらそこで、例えばNGOのお医者さんが車を持っていかれたということで、たまたま偶然救援することができたという場合、当然火器を持っていくわけでありますね。その後、やり過ぎじゃないかという批判もあった。当然そこには銃も持っていくわけであります。そんなときに、何か道路のパトロールだとか、道路の巡回だとか何か言いながら、結局何か取り繕ったところがあるんですけれども、実際問題として、本当はもうそういうレベルの議論じゃなくて、ある意味では国連の基準にかなり寄せて、近づけていかなきゃならないと私自身は思うわけでありますけれども、できれば長官の率直なお考えをお聞かせいただきたいと思うんです。

中谷国務大臣 現状の活動等に対する反省と教訓ということで、今委員がザイールにおけるNGOを救出したときの例を挙げられましたけれども、本当にすぐ目の前で、また近くで、日本人のNGOの危機に際して、本当に見て見ぬふりをしていられるか、傍観していられるかというと、実際に派遣された隊長さんなり隊員はそうではないというふうに思っておりまして、そのザイールの例の場合も、いろいろ名目をつけて救出をしたわけでございます。

 また、カンボジアの選挙監視の際も、日本のNGOの方がタケオのすぐ近くで選挙監視をされましたけれども、そういった事態に、やはり同じ日本人として本当に大丈夫かどうか、何かあったときに守ってあげることができるかどうか、これはいわゆる自然権的権利というか、自然発生的に起こる人間としての感情ではないかというふうに思います。また、チームワークというか各国協力して任務をしている上において、そのパートナーである国の人たちが危機に際したときに、本当に我が国はできませんということが言えるのであるかどうか、実際に派遣される隊員や隊長の皆さんの御苦労も十分拝察をするわけでございます。

 今回そういう見地で、自然権的権利ということで、自己の管理のもとにある者については安全を確保することができるようにしたということで、そういった問題点はある程度はカバーできると思いますけれども、やはりしっかりとした、任務を行う上においてはそれなりの権限を与える必要がございますので、今後の問題等につきましては各政党間で真摯に、より積極的に議論を展開されて、各政党間で合意をしていただきますように心からお願いをする次第でございます。

渡辺(周)委員 そういう意味では、例えば救援を求めているNGOがいる、そこに行けば武器を持っていかなかったら何が起きるかわからない、当然であります。ところが、あのときには、たしか一生懸命何か後で取り繕って、中には帰ってきてからあれはやり過ぎだったんじゃないかというふうに一部メディアから追及された部分もある、そういう話も聞きます。

 結局、現地のことをわからない人間が何か一生懸命、法に触れたんじゃないかということをあら探ししたという感もあのときの報道の中には非常にあったわけであります。しかし、これは現場へ行ってしまえば、その場その場どう対応するかというのは、ある程度これはもう本当に判断にゆだねられなきゃいけないんだと思います。

 そういう意味では、今回の管理下というこの言葉も非常によくわからずに今日まで来てしまった。つまり、現場へ行ってみないと、何をもってして管理下かというのは、これは非常に難しいと思うんですね。こちらで想定して、こうなったらどうだろうか、ああなったらどうだろうかという場合は、当てはまるかはまらないとか言っても、その場へ行ってしまえば、これは正直言って、もしかしたらこの辺でのそのような議論が吹っ飛んでしまう状況に陥るかもしれない。

 ということで、あえてもう一度お尋ねしますけれども、管理下という言葉をどのように考えていったらいいのか、その点について。それから、先ほど警護の話がありました。この警護ということについて、何をもって警護と定義するかということもあわせてお答えいただければなと思います。

中谷国務大臣 「自己の管理の下」という意味でございますけれども、これは、自衛官等が国際平和協力業務を行うに際して、同一の場所で活動することがある自衛隊員以外の者のうち、不測の攻撃を受けて自衛官とともに共通の危険にさらされたときに、その現場において、その生命、身体の安全確保について自衛官等の指示に従うことが期待される者のことを言うわけでございます。

 この概念に従いまして、かなりの部分のそういった事態に対して対応できるのではないかというふうに思っております。

渡辺(周)委員 不測の危険というのは、例えば危険な場所に行く場合は、これは不測になるんですか、ならないんですか。それはもしかしたら非常に細かいところを尋ねて申しわけないですけれども、そういう意味に考えてちょっといろいろと疑念があるものですから。その辺はどういう見解をお持ちなんですか。

中谷国務大臣 これはいろいろなケースが考えられるのであって、先ほどの御質問のように、百メートル近くでどうだとかいうことをこの場でお答えするのは適切でないと思います。

 そういうケースをかんがみまして、不測の攻撃を受けて共通の危険にさらされたときに、その現場において自衛官の指示に従うことが期待される者であるかどうか、そういう点を勘案して、現場の指揮官が判断して対処し得るというふうに考えております。

渡辺(周)委員 ほかの方へも質問しますので、この質問もそろそろまとめなきゃいけないと思いますが、いずれにしても、これは送り出す我々も覚悟が問われているんですね。これは非常に今までのPKOですら、現場で任務が変わった、状況が変わったということが行ってみなきゃわからない。もっと言えば、日本の国にいてはわからない状況、情報が、実際行ってみて全く我々が聞いていた情報と違うじゃないかということだって、これは現実問題としてあるんだと思います。

 それを考えますと、自社さ政権のとき、村山政権のときに、あれはザイールでしょうか、ルワンダ難民の人道的支援のために岩垂調査団が行った。そうしたら、行ったら、もうこんなことだったら武器を持っていかなきゃだめだということを当時の社会党の方々がそうおっしゃったというようなレポートを見ますと、一番最初の話に戻りますけれども、ここで議論をして、軍隊が外へ出るんだというふうなことで反対をした方々が、実は現場へ行ってみたら、これは銃を持っていかなかったら大変なことになるというぐらい状況が変わったわけであります。

 ですから、これは正直申し上げまして、あくまでも私個人は、武力の行使に行くのではなくて、結果、やむを得ず何らかの形で自己の生命を守る、あるいは仲間を守る、あるいは管理のもとに入った者を守る、あるいは命の危険にさらされている者を守るときには、やはり現場でこれは判断せざるを得ないんだろうな、ここで議論をするよりも。

 そういう意味では、手足を縛ることのないような、これは最初に申し上げました、与党三党だけじゃなくて我々もやりますが、とにかく政治判断で何か答えを引き出されたような形ではなくて、これは我々の覚悟という意味で、日本の政治家が、やはりこれから本当に国際貢献の中での本体業務に入っていくんだということで、ぜひともその気概を持って長官には今後のこの議論を進めていただきたいなというふうに思うわけでございます。

 それで、自由党の方も来ていらっしゃいますので、今回、法案を出されたということにつきましての背景、それから、いわゆる現行法と今回の改正法に対してなぜ対案を出されたのか、こういうお考えについてぜひ聞いておきたいと思います。

東(祥)議員 渡辺先生、よく聞いてくださいました。ありがとうございます。

 先ほど来からのお話を聞いていても、もう先生御案内のとおり、日本というのはこれまで、国際の平和のために一生懸命頑張るんだ、頑張るんだと言っておきながら、現実にPKO法案をつくり上げたときに、自衛隊法を見てください、第百条の七、雑則ですよ、雑則に入れているわけですね。それを国際社会の方々が見たときに、結局口だけじゃないかと。私たちは、ちゃんと自衛隊法第三条、いわゆる本来任務ですよ。第一項というのは、国土がもし危機に瀕したときにどうするのか、あくまでも専守防衛、攻撃に対して反撃する。その部分において支障が伴わない限り、国際の平和と安全のために積極的に頑張っていきましょうということで第二項に新たに加えさせていただいているわけです。これを見ていただければ一目瞭然で、本当に国際の平和と安全のために、日本として国際社会に明確に発信していくんだということであります。

 それからもう一点、これはまさに前提になることですけれども、政治家が日本の進路といいますか、そういうものを決めていかなくちゃいけないんじゃないでしょうか。

 僕は、一九九〇年に政治家になりました。そのとき、安全保障の議論というのは内閣法制局長官がやるのかと錯覚に陥ったんですよ。多くの若い政治家の人たちは、その錯覚に陥っちゃって、多分マインドコントロールされているんじゃないでしょうか。つまり、国際平和活動、あるいはまた国連を中心とした平和維持活動、回復活動、これは本当に憲法九条と抵触するのかどうなのか、これを政治家みずからが提案しなくちゃいけないんだろうと思うんですよ。

 私たちは、それを踏まえた上で、そうではないんだと。国連憲章と憲法第九条というのは同じですから、国連憲章の第二条第四項、戦争というのはやっちゃいけないんですよ。しかし、戦争というのはやっちゃいけないんだけれども、国際社会においてならず者があらわれてきたときどうするんですか、それは各国が自衛権を発動してやるんですか、そうじゃないでしょうと。国際社会が一致団結してそのならず者に対して制裁措置を加える、それがまさに国連憲章の基本的な考え方であり、それが本当に機能しているかどうかというのは別ですね。

 では、それに対して、一九五六年、日本は国際社会に国連加盟国の一員として復帰していくわけです。そのときに、国際社会の平和と安全のためにどうするのかと本来覚悟してこなくちゃいけなかった。だが、それを基本的にしてこなかったんじゃないでしょうか。

 私たちは、ある意味で、新進党時代から、真正面からこの問題とぶつかり合いながら、そしてつくり上げ、自由党の中でも、自自連立政権をつくっているときも、この問題に対して決着をつけなくちゃいけない。大変失礼ですが、名前は控えさせていただきますが、自民党の多くの政治家の方々から、東さん、今度やるから今は待ってくれと。僕は、今度とお化けというのは絶対に出ない、今ちゃんとやらなくちゃいけないんだということで申し上げ、そして、内閣法制局の考え方というのは憲法だけですから、あくまでも国際の平和と安全に関しては、憲法と国連憲章と自衛隊法、そういうものを兼ね合わせた形でもって日本の政治家が発信しなくちゃいけないでしょうと。したがって、例えば、私たちは、国連の平和維持活動のみならず、国連の平和回復活動、国連を中心とした、国連の安全保障理事会でそういう決断をすれば憲法上クリアされますよ、こういう判断を下しているわけです。

 さて、やるかやらないかという問題は、それこそ憲法論議ではなくて、日本が持っているちゃんとした能力に応じて政治判断、政策判断をしていけばいいわけですよ。ところが、今までのこういう議論をすれば、必ず、政治家がいわゆる軍事作戦の問題まで介入してこなくちゃいけなくなるわけですよ。渡辺先生がおっしゃるとおりですよ。現場に行って、あの当時も議論されました、機関銃を持っていっていいのか、一丁ならばよくて合憲で、二丁ならば違憲だ、こういう議論がなされていることがナンセンスでしょう。国際社会から見れば、日本の国会というのは安全保障議論に関して何をやっているのかという形で見られてしまいますよ。

 そういうものを全部踏まえた上で、日本として、国際の平和と安全、とりわけ今回はPKO問題でありますから、今までのありようといいますか、憲法論議の、何というのでしょうか神学論争的に、いわゆる政策論を議論していると憲法解釈論に戻ってきてしまい、こういうものを全部クリアカットしましょう、その上で本来、政策論を論じなくちゃいけない。政策論を論じていると憲法解釈上抵触する、全くナンセンスな議論がずうっとこの十年間行われてきた。

 九二年、三年のときというのは、渡辺美智雄当時外務大臣が、若葉マークだからこれはしょうがない。もう十年近くの一つの経験があるわけです。それを踏まえた上で、政治家がちゃんとこの問題に対してどのように決着させるのか、そういう視点に立って新しい法案をつくらせていただきました。

 渡辺先生とほぼ同じような意見でございますので、民主党内をまとめていただいて、ぜひとも御賛同していただければと思います。

渡辺(周)委員 非常に共鳴できる部分があるわけでございます。先ほど安住議員は納得と言いましたが、私は共鳴できるわけでございます。

 しかし、非常に堂々と、まさに信念を持ってお話しいただきました。ぜひ防衛庁長官にも、これぐらい堂々と、どうぞ御自身のお考えをまたいろいろな場で披瀝して、今までのような議論じゃなくて、何か低いレベルで議論するより、これから日本、どうするんだという議論を本当に積み重ねていって、ある意味では、やるかやらないか、ほとんどもう問題点は出尽くしたわけでありまして、あとは政治家の決断だろうと思います。我々も覚悟を持って、毅然として今後考えていかなければいけないなと思います。

 それで、外務大臣、お疲れのところ、大分お疲れですけれども、大丈夫でございますか。何か、けさ早くに帰ってこられた。パキスタンでの御活動につきまして、ここでぜひ御報告をいただきたいと思いますが、行かれて、難民キャンプで大変感涙きわまったというふうなことも報道等で見ておりますけれども、実際行かれていかがだったでしょうか。

 たしか、私自身がこの委員会で御質問したときに、パキスタンやイランに、できれば行きたいし、また、今それで何とか調整をしているというふうなことをおっしゃっていましたから、帰ってこられて、いかがであったか、そしてまたどのような御認識を持って帰ってこられたか、その点をお尋ねしたいと思います。

田中国務大臣 渡辺先生おっしゃるとおり、私はずっとアフガン問題が起こってから、地政学上、パキスタンは極めて要衝になるし、フロントラインの国家になる、第一線の国家にならざるを得ない立場にあるなと思っておりましたから、ああいうふうに申しておりました。

 国会の都合等がございましたけれども、今回行けてよかったと思いますのは、杉浦副大臣があの四千万の緊急援助を持っていかれたのは二カ月前ですけれども、その後に与党三党の幹事長が行かれて、まさしく自衛隊の問題で話をしに行かれた。日本からは今回三回目ですけれども、それぞれ展開が違ってきていて、今現在PKOの御議論をしていただいていますけれども、もう向こうの方の現場では、またもちろんそうした流動的な現場の状態はありますが、和平と復興に向けて何ができるかということについての新しい展望、そのためのシステムづくりが始まっています。

 ムシャラフ大統領にお目にかかって、私は、あの方のパーソナリティーとあのスタンスの中に、このアフガン問題、それにまた取り巻きの国家の一つであるパキスタン及びそのほかの周辺国家の思いと変化と見通しがすべてあるなというふうに思いました。やはり哲学を非常に持っておられて、そして自分の国の貧しさ、貧しさといいますのは、国家の歳出の五四%近くが債務の返済に充てざるを得ないという貧困の中にあって、そして自分もそうであるけれども、そういうふうなことと、国家とは何かというふうなこともおっしゃって、そういう中でもって連帯をして助けてもらわないとやはり生きていけないと。

 それから、難民の方たちがアフガンに帰還してからも、そこで何かというと、まず地雷の撤去があると。それは私どもが難民とかいろいろな方から聞いた話ですけれども、ムシャラフさんにも私はそれを申しました。そうだと交代にお互いに言うくらいの感じで。まず地雷でしょうと。それから、あちらは水がない、かんがい用水がない、私が農業の母体がないでしょうと言うと、それもそうだと。それからもっと、国のガバナンスみたいなものが、すべてシステムが壊れてしまっている、そういうのもあるのだとあちらがおっしゃったり、それからもちろん、技術がないといっても何もできないでしょうと言うと、そうなんだというふうなことで、トータルに、ゼロからつくらなければいけない、それがアフガニスタンであり、周辺国もそうした中にあるのだということに対してどのように我々が取り組むかということであって、日本の皆様もまた応分に、いろいろな御意見もあるでしょうけれども、不幸な人のためには自分たちも手を携えてやっていくのだということ、テロに対して闘っていくという連帯感といいますか、そういうもののトータルで原点を見ることができたというふうに感じました。

渡辺(周)委員 アフガンの復興に向けてもいろいろな国のさまざまな思惑があって、例えば、元国王を元首にするのはどうだ、あるいはパシュトゥン系の人をやはり入れるべきである、つまり穏健派タリバンも入れるべきではないか、逆に言えば、いや、北部同盟はだめだと言って、例えばアメリカでありますとかパキスタンであるとかあるいはイランであるとか、いろいろな国の復興に向けての思惑がもう既に出てきたわけでございます。

 その点につけて、ぜひ日本の国としてこれから、大臣帰られて政府なりに提言されるとすれば、これから日本として提言すれば、何をまず日本としてイニシアチブをとるということをお感じになったか。先ほどお話がありました、例えばそのためのガバナンスがもうアフガンにはない、つまり、PKOにもかかわることでありますけれども、例えば警察機能もなければ司法機能もない、あるいはもう選挙さえ行われないなんというところもある中で、どういうふうにしていったらいいかということもこれまでPKO議論の中でされてきたわけでありますけれども、大臣、今回行かれて、どのように日本が今後アフガンあるいは周辺国の支援、まず最初にできることは何だろうか、どのようにお感じになっているか。

田中国務大臣 これはあの地でいろいろな意見を聞いてみますと、資金援助、人的援助、技術援助、いろいろなことがあると思うのですけれども、これというのはないですね、一つということは。

 ということは、アフガンの人たちがそういう意見を、特にユニセフの方とかUNHCRの方が言っておられたことなのですけれども、アフガニスタンの方たちが自分の出身のところへ戻る前には、今前段で申し上げたような準備が必要ですけれども、そのときに自分たちが、今ボンでの会議とかいろいろなされるわけだけれども、そのペースに引きずり回されるのではなくて、自分たちが国をつくる、そのための基礎のアドバイスを上げるのであって、ほかの国が先に前に出て、はい技術、はい資金、はいこれというのではない。それは難民の人の中にもありましたね。ただ祖国に帰りたいだけではなくて、自分たちがやるのだ、そのための助けが欲しいと。あくまでも主体はアフガン人なのですよね。そういう視点は今回、国会の議論の中でもって意外となかったような気がしますし。あったかもしれませんけれども。

 やはり、中であらゆる、特にNGOとか国際機関の方たちの分析はそういうところにありまして、それがなくて、ただ政治がぽんとお金を上げましたとか、さあ人を行かせますとかいうことになると、現場とかみ合わなくなるなと思いましたので、その辺の声をやはりよく吸い上げて、政府も国際機関もNGOも一体となってやっていくということが必要だというふうに思いました。

渡辺(周)委員 きょうの新聞では、外務省から、以後初めてアフガンの方に行かせて――大丈夫ですか、大分お疲れのようですけれども。(田中国務大臣「眠い」と呼ぶ)眠いのはまさにお顔を見ていればよくわかります。大分お疲れのようでございますが。

 ぜひ現状をこれから把握していただいて、とにかく日本が今回のアフガン復興、あるいは周辺国への支援にどういう形で何ができるのかということをぜひとも我々も考えていかなければならないというふうに思うわけであります。

 いろいろな議論をしてきました中で、やはり大国のさまざまな、冷戦が終わって、一種の力の真空地帯のようなものが生まれた。そしてそのことによって、今までは大国を頼りにしてきたというさまざまなこれからの国が、今後国連というものを大変に重要視して、いろいろな国づくりでありますとか、あるいは地域の平和、安定をつくっていくだろうと思います。外務大臣、そういう意味では、今回行かれて、大臣たしかこの中に、これは私もテレビで見ただけですからちょっと正確にはわかりませんけれども、自分のいいところを認めて、他人のいいところを認めるというような御発言をされまして、前後をちょっと聞いていなかったので、何を、どういう思いで言われたかわかりませんが、とにかくそうした国々に対して国連がどうあるべきか、あるいは日本がどのような形でそれぞれの国に対して、その国を尊重しながら進めていかれるか、どのように今後展開していったらいいかということにつきまして、外務大臣としていかがお考えか、ぜひその点についてお尋ねしたいと思います。

田中国務大臣 先ほど着いて、空港から直接来たばかりなものですから、頭がちょっと混乱しておりますけれども。飛行機ばかり乗って、人工衛星みたいにぐるぐる回っていたものですから。

 要するに、国連がというお尋ねにぴったり合わないかもしれませんけれども、やはり一つ一つの命を大事にして、そして自分たちが何ができるかということが国連も、あるいは一つの国家も、個人の考え方の原点にあるのではないかと思いまして、そういう相手の立場をよくわかって、何を必要としているかということをくみ上げて、そして、今度ブラヒミさんの活動とかいろいろあるわけですけれども、東京では復興会議をさせて、日本でして、そしてまたボンで現場の声が出るということでしょうけれども、ベストはないけれども、国際社会として、どういうふうにすれば次善の策ができて、最終的にはいいところに帰結していけるだろうかということについての知恵を出し合おうではないかということだと思います。

 今、ちょっと考えがうまくまとまらず、時間も短いですし、申し上げられませんけれども、もう一回、また帰って資料を見たり、状況を頭で整理して、改めて御報告したいと思います。

渡辺(周)委員 外務大臣は現場主義という言葉を使われたようで――あと二分ほどでございますので、何とか頑張っていただきたいと思います。現場主義という言葉を使われました。まさに現場に行っていただきまして、日本という国がこれから、そうした大国の論理によらない形で、いかにいろいろな国を見てきて、そして日本としてのまた外交努力をして、それをもっと積極的に、これだけのことをやりながら日本の外交というのが残念ながら評価されていない、日本の努力というのがなかなか日本国内にすら伝わっていないというのが現状だと思います。ぜひとも、そういう意味では現場主義を貫いていただきまして、さまざまな国に行っていただきたいと思います。

 ぜひ、これから日本の国が、まさにこのPKOの本体業務もそうでありますが、新しい時代に入った。そして、今回のテロ以降、世界の秩序が大きく、その中で日本が何をしたらいいのかということも、大変な教訓を我々は得たんだと思いますし、また、やるべきことはたくさんございますので、ともどもになって考えていくように、そんなことを申し上げながら、時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。

玉置委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

玉置委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいま議題となっております各案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長小町恭士君、外務省総合外交政策局長谷内正太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玉置委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玉置委員長 質疑を続行いたします。小林憲司君。

小林(憲)委員 本日は、先ほど来この法案につきまして、内容につきましても非常に深い論議がされているわけでございます。私は、まず内容につきまして、おおむね本当に賛成なんでございますが、一点だけ、武器使用のことにつきまして、中谷防衛庁長官にお伺いしたいと思います。

 これは非常に単純な話なんですが、今ある戦力というものが、今までずっと日本の国を守るために維持されてきて、そのためだけのものがあると思うのです。それは、飛行機にしろ船にしろ、いろいろな武器に関して。これが、この法案の改正によりまして、日本のために他国に行かれる方が武器使用ということで身を守らなければなりません。そのために十分な装備というものが今現状されているのかということと、それを海外に派遣している間は日本の国防というものは手薄になってしまうのか、それとも、それがあっても大丈夫なのか、その辺をちょっと教えていただきたいと思います。お願いします。

中谷国務大臣 現在の我が国の防衛力の整備に関しましては、防衛計画の大綱並びに中期防衛力整備計画に基づいて年々整備をしているわけでございますが、この中期防衛力整備計画の中では、我が国の防衛に関すること、並びに多種多様な事態に対応し得ること、並びにPKO初め国際安全保障環境の整備に資するという見地で、それぞれ所要の、必要な装備を整備しておりまして、この点において各種業務を行うということになっております。

 したがいまして、現在行っているPKOに際しましても、この業務を実施するに必要な装備の面においても整備をしているわけでございますが、現状のPKO活動にかんがみまして、現在我が国に保有する装備の内容で十分任務達成し得るだけの装備面の整備がされているというふうに考えております。

小林(憲)委員 今の防衛庁長官のお話を聞いて、さぞかしたくさんの自衛官の御家族の方々が安心されたことと思います。

 本当に、この法案、できることがふえる分だけ、それだけやはり危険も伴う、大変、人の命を預かる問題であります。そしてまた、新しい方向に今日本の安保が向かっているということの一つのあらわれではないかと思うのです。

 この同時多発テロが九月十一日に起こりましてから、テロ特別法案等、いろいろな法案ができてくるわけでございます。今回のPKO法の改正にしてもそうでありますが、この今大切な時期に決まっていくこの法案に関して、私は非常に興味といいますか、大切なことなものですから、どんな過程でこの法案というものが今日本の国ではつくられていっているのであろうかということを少々お伺いしたいわけでございます。きょうは、これはずっとおさらいをしていきたいと思っておるのです。

 まず、九月十一日に同時多発テロが発生いたしました。時差等がありまして、十三日の十一時半に外務省本庁五階で会議があったそうでございますが、この会議では、どなたが何をお話しになったのか、これを教えていただきたいと思います。

小町政府参考人 お答えいたします。

 本件事件が起こってから、連日のようにいろいろな会議をやっておりますので、十三日になって、今委員御指摘のような会議が特別に開かれたということは、ちょっとただいま記憶にございません。申しわけございません。

小林(憲)委員 それでは、場所を特定させていただきますが、この総合外交政策局長室であった会議について教えていただけるでしょうか。

谷内政府参考人 十三日のその時間帯に、確かに私の部屋で会議をやったと思いますけれども、これは、総合政策局の各課のそれぞれ関係する者を集めまして、これから今後どのように対応していくかということについて内部の打ち合わせを行ったわけでございます。

小林(憲)委員 では、そこで各課の責任者の方と谷内総合外交政策局長が今後の対応についてお話しになったということです。

 その後、十三日の五時なんですけれども、谷内さんが首相官邸に入られておりますが、これは何のお話をされに行ったのでしょうか。教えていただけますか。

谷内政府参考人 官邸で、古川副長官のところに防衛庁、外務省、それから官邸の中の方々が集められまして、そこで政府全体としての事務的な打ち合わせをさせていただきました。

 私の方からその内容について申し上げるのはいかがかと思いますけれども、私もそこに呼ばれた一人でございます。

小林(憲)委員 今、その内容についてはお話しできないということでしょうか。

谷内政府参考人 主宰は古川副長官がなさいまして、そこで私も呼ばれて出た席でございますので、内容について私の方から申し上げるのは差し控えさせていただいた方がよいのではないかと思います。

小林(憲)委員 それでは、また改めまして古川さんの方からお話は聞かせていただきたいと思いますが、それは可能でしょうか、委員長。

玉置委員長 では、預かります。委員長が預かります。

小林(憲)委員 わかりました。お願いします。

 というのは、首相官邸に入られて今後の方針を話されたときに、どのような内容の方針を話されたかということは、やはり我々委員に対して教えていただきたいと思いますし、これ、初めからちょっと一つずつおさらいをしていきたいと思っておりますので、ぜひともお願いいたします。

 その後ですが、十五日になりまして、当時の柳井駐米大使が米国務省に訪ねているわけでございますが、どなたと柳井さんはお会いして、何のお話をされたかを御存じでしたら教えてください。これは藤崎北米局長、お願いします。

藤崎政府参考人 お尋ねの十五日につきましては、当時の柳井駐米大使がアーミテージ国務副長官と非公式な意見交換を行ったということは承知しております。

小林(憲)委員 これは、非公式な会見であったということでございますね。これでアーミテージ国務副長官とお会いになったと。ここで、マスコミ等、大変日本では有名になった言葉がございますが、ショー・ザ・フラッグ。このショー・ザ・フラッグという言葉は、このときにどなたがおっしゃったんですか、どなたから聞かれたんですか。これを教えていただけますでしょうか。

藤崎政府参考人 私どもは、こういうふうな発言が行われたというふうな報告は受けておりません。

小林(憲)委員 それでは、どなたもこのショー・ザ・フラッグという言葉がここで出たという報告は受けておられないし、そういう事実がないということでしょうか。もう一度お願いいたします。

藤崎政府参考人 今の点についてでございますが、国務副長官との意見交換は、今申し上げましたとおり、非公式の意見交換でございますので、大使自身、その後の報道関係の取材に対しましても、自分として記録をとっているわけではないのであるが、そういう表現を使われたということは記憶していないと述べたということを承知しております。

小林(憲)委員 それでは、このショー・ザ・フラッグという言葉を使った覚えはないし、聞いた覚えはないと柳井元駐米大使はおっしゃっているということですね。

 私は、この言葉は大変意味があったんではないかなと思うんですよ。それまでの流れで、やはり周辺事態法でいくのか、新法でいくのか、その大変いろいろな論議がある中で、とにかく後方支援で行かなければいけない、アメリカにこう言われたんだというような報道で、このショー・ザ・フラッグという言葉が大変テレビ、マスコミ等で出たと思うんですが、それでは、このマスコミ等が取り上げた最後に、方向転換とまでは言いませんが、強くそちらの方向に向かう流れをつくったこの言葉というのは、だれも何も確認をしていないということでしょうか。

藤崎政府参考人 今御答弁申し上げましたとおり、そういう表現を使われたという記憶はないというふうに柳井大使が報道関係者等にも述べているところでございます。

 本件につきまして、ただ、柳井大使は同時に、できるだけ日本が見えるような貢献をすることが望ましいというようなことは、お互いの話し合いの中でこれまでも議論してきている、いずれにせよ、日米間ではいろいろな意見交換をしているが、今回のテロリズムに対する対応につきましては、我が国として主体的に寄与していくんだということをアメリカ側にも説明し、アメリカ側もこれについて評価してきているということを繰り返し述べてきているというふうに承知しております。

小林(憲)委員 ありがとうございます。

 それでは、大変お疲れのところを申しわけございませんが、外務大臣、今一連お話があったと思うのですが、この十一日の同時多発テロ発生から十六日、それまでの間にすべていろいろな、先ほどおっしゃった総合外交政策局長室での会議ですとか、あと、首相官邸に入られて何か報告をされたと。内容はちょっと教えていただけなかったんですが、そういうことの報告というものは、大臣の方にはあったんでしょうか。これは、同じ質問を防衛庁長官にもお願いいたします。

田中国務大臣 九月十一日以降も以前もそうですし、現在もそうですけれども、部局内での会議というのは頻繁にやっております。テロのことだけではございません。それから、官邸にもやはり、特にテロ特措法なんかありましたときには、集中的に事務方が呼ばれていって各省庁との打ち合わせをするというふうなこともやっておられるわけですので、そうしたことの結果報告は聞いておりまして、そしてみんなで意見を交換する、そして方向性を決めるということはやっております。それを逐一全部、私たちもこういうふうに国会があったりしますし、ですから、そういうことはやっておりませんけれども、そのことによって、別に意思の疎通が図れないというふうなことではないというふうに思っております。

中谷国務大臣 防衛庁といたしましては、九月十一日以来、警戒態勢をとる等極度の緊張状態にございまして、連日幹部が集まって情報交換並びに今後の対応を検討いたしておりますので、逐次そういった情報、調整等に関するお話は受けておりまして、幹部間でも協議をいたしております。

小林(憲)委員 それでは、一連、この件につきまして、マスコミ等でよく外務大臣は、十六日まで何も知らなかったとか、そういう報道がされておりますが、そういう意向の報道が多かったと思うんですけれども、そういうことはなくて、いろいろな結果報告は外務省の方から、どういう方向でいくということの御相談や報告等は随時あったということで理解してよろしいでしょうか。

田中国務大臣 タイムラグがあることはありましたけれども、基本的なラインのことはちゃんと報告も聞いておりますし、相談を受けております。

小林(憲)委員 同じ質問なんですが、これも、防衛庁長官に関しましても、話し合いの場に余り入っていなかったというような報道等もありましたが、そういうことはなくて、すべて皆さん、どういう方針でいくか、新法でいくかどうかという方向性をつける大事な時期に、すべて報告も受けて、会議の方の結果も聞いていたということでよろしいでしょうか。

中谷国務大臣 非常に、十一日の事態が防衛庁始まって以来の事態だというふうに認識しておりまして、逐次その対応等については、その当時は情報収集の面が多かったわけでございますけれども、外務省や官邸等と調整をした内容また結果等は、幹部間で協議をいたしておりました。

小林(憲)委員 先ほどの話に戻るのですが、ショー・ザ・フラッグという話、これは外務大臣そして防衛庁長官はどなたかから、こういうことをアーミテージさんが言っているとか、柳井さんが言っているとか、確実ではなくて結構なんですが、そのショー・ザ・フラッグという言葉が、非公式でもそこで出たかどうかというお話は聞かれたことがありますでしょうか。教えてください。

中谷国務大臣 私は、新聞の朝刊で、記憶は定かでございませんけれども、与党の有力な方が発言した内容に、ショー・ザ・フラッグというふうに書いていたということで、そのとき初めて知りました。

田中国務大臣 非公式な話を柳井さんとアーミテージさんがして、その報告を藤崎局長から聞いたか、柳井さんから電話であったか、あのときは結構忙しかったんですけれども、その中で直接聞いたのではなくて、何かマスコミの中で、メディアの中でショー・ザ・フラッグという言葉が出てきたなというふうに記憶しておりますが、ちょっと前のことですので、今よく正確に覚えておりません。

小林(憲)委員 先ほど来のお話を聞きましても、大変重要な法案等がいろいろ国会で審議されてきておるのですが、どうも国民の皆さんに対して、いろいろな方向で間違った報道等もあるような気がいたします。

 このショー・ザ・フラッグという言葉も随分これは取り上げられて、アメリカの言うなりになるのが嫌だと言う方が見えたり、アメリカにおどされているんじゃないかという意見が出たり、また、日本はどうなっていくんだろうと心配になったり、そういう言葉の一つになっていたような気がいたしますが、今お話を皆さんから聞いておりますと、どうも定かではない話がひとり歩きしていっているということだと思います。

 ここで私は何が言いたいかと申しますと、ぜひとも、今重要な転換期でありますので、外務省の皆さんも、情報と確かな話を国民の皆さんに提供していただいて、安心をしていただかなければこれからはいけないんじゃないか、私はそう思います。

 また、この会議のお話を先ほど聞きましたが、私はよくわからないんですが、その内容をちょっと教えていただけないのでわかりませんが、聞くところによりますと、周辺事態法でいくのか、新法でいくのか、後方支援でいくということでやっていくのかというお話が、いろいろと幹部の皆さんの間でされたということですが、そういう場には、大臣とか長官というのは一緒にお話をするということはないんでしょうか。教えていただけますか。

田中国務大臣 このテロだけじゃありませんけれども、そもそも内閣として最も理想なことは、これは経済のときに竹中先生もおっしゃっていて、一、二回やったことがございますけれども、経済の方向性とか、それからこうした外交防衛の問題もそうですが、やはり各閣僚、総理もお忙しいんでしょうけれども、本来は、閣僚がまず集まって方向性をいろいろ議論する、それを事務方におろすというのが基本的なあり方ではないか、民主的な方法だというふうに私は思っております。

 それよりも、やはり実務にたけている事務方が各省庁から集まって話を官房で詰めていくというふうな形が、前からそうであったのかこの内閣かは存じませんけれども、少なくとも内閣ができましたころには、経済の関係では竹中先生なんか発案なさって、我々が一緒に集まって官邸で議論をしたことがございまして、そういうことが本来まずあった方がいいということは、私と中谷先生とも話したこともあります。でも、結果的には別に私たちとそごがあるわけではございませんから、大きな情報を持っている官僚組織というものがまず出るという方法をとっておられるのかなというふうには思っておりますけれども。

小林(憲)委員 大臣のおっしゃることはよくわかるのでありますが、やはり立法をするのは政治家であると私は思いまして、これは役人の方の仕事ではない、憲法でそう定められておるわけでございますから、ぜひとも、今大臣がそうあるべきだとおっしゃられたことに関しまして、外務省の方、小町さん、どうでしょうか。これからやはりこういう重要な方向性を決めていくような場は、事務方とやはり政治家、大臣、長官等と一緒の席で話し合って、ある程度の話はしていくべきだと思いますが、どうでしょうか。

小町政府参考人 今委員御指摘の点でございますけれども、田中大臣、けさほど帰られて、そのまま委員会に出席される、大変目まぐるしい日程をこなしておられることにわかりますように、我が国を取り巻く国際情勢は非常に目まぐるしく変化しております。テロ対策を含めて、いろいろと取り組むべき課題が山積しております。

 こういった中で、我々としては、大臣と十分緊密に連絡をとり、意思疎通を十分図りながら仕事を進めていくべきだと思っておりますし、これまでそうしてきたつもりでございますけれども、今後とも、十分であったかどうかを含めて点検しながら、さらにその方向で最大限の努力をしていきたいというふうに思っております。

小林(憲)委員 本当に物事は何でも聞いてみるものだな、私はそう思いました。新聞や週刊誌やテレビで見ておりますと、もう全く大臣も長官も知らない間に官僚の方々がどんどん話を進めて、ショー・ザ・フラッグなんという話までつくっちゃって物事を進めてしまったと思っておりましたら、ちゃんと大臣も長官も御報告を受けておりましたし、そしてまた、外務省の皆さんもちゃんと報告をこれからすべてして大臣を支えていく、長官を支えていくということであるというお話を今聞きまして、大変勉強になりました。ぜひともそのお言葉を守っていただきたいと思うのであります。

 パキスタンに大臣が行かれて、大変御苦労さまでございました。マスコミ等で、先ほど来質問の方々がおっしゃったように、涙ぐまれている田中眞紀子大臣を見たときに、何人の方が心温まる思いをしたでしょうか。本当にこれからは大変な情勢が起こってくると思います。アルカイダとオサマ・ビンラディンに関しましては、その命運ももうほとんど尽きたという感じになってきたと思います。

 また今後、やはり起こり得べき問題は、アフガニスタンの復興という問題に日本がどうやってかかわっていくかということでございますが、確かに、その現場を見られて、パキスタンが崩壊しないようにしなければいけないということもあるでしょうし、いろいろな政治的な動きがあると思います。サウジアラビアに関しての状態も非常に難しい問題が起こってくると思います。

 そんな中で、やはりアフガニスタンの復興といいますか、これから日本が関与していく状態なんですが、これはやはり日本の国益をまず第一に考えて関与していかなければいけない。いっときの気持ちでは、私も大変あの状態を見ればそれは何とかしなければいけないと思うと思うんですが、国益という点からやはり考えなければいけないと思うのですが、大臣はどう思われるでしょうか。

田中国務大臣 なかなか一言では言い切れない複雑な問題をたくさん包含しているというふうに思っておりまして、日本の国益とおっしゃっておられるんですよね。それはなかなか、これが国益にかなうからできる、する、かなわないからできない、しないということではないというふうに思いまして、言ってみれば、一つの国だけの努力によってすぐにすんなり解決する問題ではなくて、それぞれの国が応分に何ができるかということについて、バランスよく意見の交換をしながらやることだと思います。

 では、どういう国家なりアフガン難民の帰還支援をするかといいますと、それぞれの出身の人が自分の出身の母体に戻ることが一番いいわけですけれども、それにはアフガンの、こういう意見がありましたね、これはフィッシャーさんというユニセフの事務局長さんときのうお目にかかったんですが、この方は女性とか子供の問題を中心にして研究をなさっている方ですが、極めて明快におっしゃったことは、アフガンの人たちが自分の国に戻って、国をまたつくり直す。そのためには、世界のスピードが、周りの援助や考えが早く行き過ぎて、自分たちアフガニスタンの人間が取り残されることは困ると。アフガン人民の人たちによる、自分たちのペースで自分たちの国づくりができるように、それぞれ日本も含めて手伝ってほしいのだということなんですよね。

 そこを取り違えないように、国連やブラヒミさんや日本がみんな一生懸命やることは大変大事なことですし、そういう枠組みができるのも大変努力のおかげで、結果でよかったと思いますが、それが先走っても、でき上がったのを、お料理も本当は自分はこういうものが食べたいと思っているのに、違うものがどんどんできてしまって、さあ、食べてください、これでいいでしょう、おいしいはずですよと言っても、自分が食べたいものはそうじゃないかもしれないという相手の気持ちをおもんぱかってそういうものに近づけていく。

 しかも、それをする前には、お料理であれば、お野菜を洗う、お水、そういう井戸を掘るというふうなこと。それもこう言っていましたね。NGOの方も、井戸を自分たちが何十メートルも掘る、スコップで掘ると。井戸で普通にやっても失敗してしまうこともたくさんあって、機械が壊れることもあるのでシャベルで掘る。掘って、やってみせてあげて、そのものをそこに置いてきて、自分たちが次に移動しても、NGOがいなくなっても、そこで自分たちで掘ってください、そういう努力を自分でして、労働を、井戸を掘るコツを覚えてもらう。

 それから、ほかのことについてもいろいろ具体的にたくさん教えていただきましたけれども、その援助、日本から持ってくる、どこから持ってくるものもいいけれども、本当に欲しいもの、あるものは近隣のパキスタンなりウズベクなり、何か買ってくる。それから、その国で、アフガンで売っているものがあればアフガンのものを使う。そうすれば、その国の経済に裨益するのである。そういうふうに、自分たちのところに、アフガニスタンの人のところに技術も富も行くように、そして彼らのスタイルでやってあげる。

 そのためには、地雷の除去も大事ですし、まず、帰還してもただそこでいいわけじゃありませんから、地雷を除去するとか、お水の問題ですとか、農業の技術ですとか、それから靴をつくったり、いろいろと物をつくっている現場も支援センターのところで見てきましたけれども、そういう技術を身につけて収入の糧につながるようなものをあれする。それから、もちろん道路とかインフラですとか、それから基本的に、ガバナンス、いわゆる国の、国家という形態をなしていないわけですから、そういうシステムづくりだとか、アフガニスタンの人たちが自分のスタイルで、なるほどねと得心のいくような形で、スピードアップはできないかもしれないけれども、やっていく、そういう忍耐と努力と具体的な援助が必要であるということでございました。

 余りたくさんいっぱい学んできたので、これを一度整理しなければというふうに思っておりますけれども、きょうはそれを申し上げさせていただきます。

小林(憲)委員 やはり今後の課題というのが大変多くあるということで今お伺いいたしまして、ぜひとも、大臣と外務省の皆さんで、日本の外に対するしっかりとしたアピールと、日本の立場というものをつくっていっていただきたいと思っております。よろしくお願いします。

 防衛庁長官にお伺いしたいのですが、今後の日米関係ですけれども、今、太平洋でチームチャレンジという形で合同演習のような形がされておると思うんですが、日本は、前回、オブザーバーということで実際に参加はしていないとは思うんですけれども、今後、こういう形で法案の改正などをしていきますと、チームチャレンジ等にも参加していくような形にはなっていくんでしょうか、教えてください。

中谷国務大臣 近年、多国間での共同訓練が非常にふえてまいりまして、チームチャレンジのみならずコブラゴールドとか、タイ、シンガポール、マレーシア等を中心に東南アジア、また米国を初めとする各種の訓練が行われるようになりました。日本としても、このような国際安全保障環境をより強化していくということが地域の平和と安定につながっていくと思っておりますので、今後とも、積極的にこのような訓練にも参加をして、より強固な国際安全保障環境を構築すべきであるというふうに考えております。

小林(憲)委員 先ほどの話でありましたように、別に米国はショー・ザ・フラッグと言って日本を高所からおどしたような言葉を発したわけではないということがはっきりしてきましたけれども、ぜひとも、今後は、やはり世界の平和ということで、我々も世界の一員として、今、防衛庁長官のお言葉にありますように、どんどん参加をしていかなければいけないと私も思いますので、どうかよろしくお願いします。

 そこで、やはり安全面のことがかなり気になると思うんですけれども、コソボ以来、米国の攻撃の仕方というのが変わってきているということが言われておるんですが、いわゆるミサイルによる攻撃をまずしてから、それから上陸していくということで、本当に、アメリカの子供たちというか、国の子供たちというか、そういう人たちに一人もけが人や死者を出しちゃいけないということで、かなり新しい攻撃の仕方をされてきていると思うのであります。ソマリアにおいては、十二人の方が死傷したということで、すぐに全軍撤退ということであったと思うんです。

 今後の日本の防衛も、本当に大事な我が同胞の、日本の国を愛する人たちが今自衛隊に集っておるわけでございますから、ぜひともこの辺についても防衛庁長官の方からお考えを聞きたいと思いますので、よろしくお願いします。

中谷国務大臣 科学技術の進歩というか、情報の進展に伴いまして、より逐一、私たちは戦闘の状況を知る可能性がふえてきたわけでございます。そういう点で、戦闘員と非戦闘員の区別を明確にし、非戦闘員により損害がないように戦いをしていくというのが現代の戦闘にとって非常に重要なファクターになってきておりまして、そういう観点で、各種の戦闘においては、非戦闘員の損害が少なくなっていくというようなことを念頭に進んでいっているというふうに思っております。

 我が国といたしましては、進んでいく科学技術や情報化の進展に合わせて、それぞれの兵器の近代化並びに戦いの仕方のあり方等については不断に検討、研究をしながら、時代の変化に対応していかなければならないというふうに考えております。

小林(憲)委員 もうそろそろ時間なので終わろうと思いますが、最後に、やはりきょうの質問の中で、総合外交政策局長室、こちらの方で、この局長室、総合外交政策局長室ですか、長いんですけれども、岡本行夫さんという元北米一課長がおられて、湾岸戦争のときに百三十億ドルも払ったのに日本は大変悔しい思いをさせられたという思いからこの総合外交政策局長室というものをつくって、ここで今後の、そういうことがあった場合の対応をしていこうということでつくられたというふうに聞いておりますが、こちらですべて決まっていってしまうような状態はいけないんではないかなと私は思います。立法ですので、方向性と、そしてまた、どういう対処の仕方をするのかというのは、やはり政治家主導でなければいけない、そう私は思います。

 ですが、もちろん、細かいこと、知識ですとか事務処理ですとか、そういうことは皆さんのお力がなければならないものだと思います。先ほどちょっとお預かりしていただいたんですが、このテロが起こってすぐにどんな話が、大臣と防衛庁長官、後ほど御連絡いただいたということではございますが、まず実際にどんな話がどんなふうに流れたかということを、ぜひとも内容を次回教えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本当に、法案を議論するのではなくて、政策を議論する、特に安全保障の場合は、超党派でこれはやっていかなきゃいけない問題であると私は思います。ですから、法案を、このようにPKOの話も一日やりましても、まあそうだろうなという話でしかなくて、だれがどういうところで政策決定して、どういうプロセスで進んでいるかもわからないような法案を国民の皆さんによくわからないまま、説明もできないままそれを押しつけていくようなことは、政治家としてしてはいけないと私は思っております。

 ですから、ぜひとも、今後とも防衛庁長官、外務大臣をしっかりと支えて、その意思疎通をしていただきながら、どういうプロセスで何が決まっていくのかということをしっかりと我々にも教えていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 終わります。

玉置委員長 小林憲司君の質問は終わりました。

 今の質問の中にありました、九月十三日の内閣官房副長官古川さんの主宰される会議の中身につきまして、後ほど理事会でお諮りをして調査をするということで、御了承いただきたいと思います。

 次に、今野東君。

今野委員 民主党の今野でございます。

 まず、このPKO改正案ですが、PKFの部分、凍結解除によりまして我が国が行えるようになる協力業務のうち、直ちに協力できる、あるいはそれに向けて訓練できるという項目は、どういうものがあるのでしょうか。この改正の先に何があるのか、私たちはどうしても、東ティモールだろうとか、アフガニスタンがその先にあるのだろうとかいろいろ考えるのですが、できればそのあたりのことも含めまして、具体的にお話しいただければと思います。防衛庁長官、よろしくお願いします。

中谷国務大臣 PKFの凍結解除につきましては、従来から、できるもので、あるものの中で凍結ということで実施を見合わせていたわけでございますが、今回の解除によってできる内容につきましては、停戦及び武装解除の監視、駐留・巡回、武器の搬入、搬出の検査・確認、放棄武器の収集、保管、処分、これは地雷の回収ということですね、また、停戦線等の設定の援助並びに捕虜交換の援助という項目、そして、これに類するもので政令で定める業務というふうになっておりまして、これらの項目に基づいて業務の実施が可能になりますが、現時点において、直ちにこれらを実施するということは考えておりません。

 具体的に検討しておらず、現時点におきましては、直ちにこういう業務を実施するということを考えているというわけではございませんので、この点をお話しさせていただきます。

今野委員 実施することは今考えていないとはいっても、凍結解除するわけですから、いつかはこういう業務をすることになるということを、当然これは考えておかなければいけないわけですが、地雷の回収も含めて、いろいろなところにその業務が広がっていくわけですね。

 私は、きょうは、紛争の停戦後、当事国の武装解除などの任務もするようになると思うのですけれども、そのあたりについてお尋ねしたいのです。

 そこで、展開する部隊は、当然武器を持ちますね。そして、ゲリラの襲撃や突発的な武力衝突も考えられるわけです。事態は常に流動的で、こういう業務をするということになりますと、常に危険と隣り合わせであります。

 現在、国連のPKO活動が展開されている場所は、私の知っている限りでは多分十五カ所だろうと思うのですが、日本はこのうち、ゴラン高原に派遣をしておりますね、行っていますね。ここからの情報は、実際に出かけていっているわけですから、当然いろいろ情報が入ってくると思うのですが、私たちは、現在行っているそういう業務、活動からだけではなくて、もっと広く、さまざまな経験から学ばなければならないと思うのです。

 例えば、一九七八年から展開している国連レバノン暫定駐留軍について、どういう業務が行われ、また、どういう問題が起きているか。そこのところをどのように把握していらっしゃいますか。

中谷国務大臣 私も、四、五年前に、このUNIFILの展開しているレバノンとイスラエルの国境付近に行ったことがございますけれども、UNIFILというのは、レバノン暫定隊ということで、この地域のいわばレフェリーのような存在で、停戦が行われているかどうかを監視するのが任務でございますが、現時点におきましては、当時イスラエルが占領した地域からイスラエルが撤退をいたしまして、総じて平静を保っているというふうに承知しておりますし、また、本年七月の二十日に発表されました国連事務総長報告においても、総じて平静を保っているというふうな報告がされております。

 他方、シリアとレバノン国境沿いの一地域、シェバというところなんですけれども、この農場の帰属をめぐる紛争から生じるレバノン人武装グループのヒズボラとイスラエル軍との間で散発的な戦闘や、イスラエル軍によるレバノン国内への攻撃が行われる等の問題は生じているというふうに認識をいたしております。

今野委員 おおむね平静を保っているというお話なんですが、これは、レフェリーのような存在といいながら国連レバノン暫定隊、UNIFILというのは、フィジー、ネパール、それからフィンランドの部隊が地域を分担しておりまして、そして、イスラエルとレバノンの国境に設置された安全保障地帯にその活動を展開しているわけですね。

 安全保障地帯の検問所には、かつて、ゲリラが自爆テロを敢行して三人の兵士が即死したという事実もあります。これは平静と言えないと思うのです。このレバノン暫定隊の本体業務、日本でいうPKFを担う部隊で、殉職者がいない部隊はないと報道をされております。隊員のどなたかが必ず亡くなっている。そして、交戦相手を殺害したことのない部隊もないという報道があるのですが、このあたりは御存じでしょうか。

中谷国務大臣 UNIFILの例をおっしゃったわけでございますけれども、この地域の活動においては、一九七八年の設立以来、ことしの五月一日までの累計で二百四十一名の犠牲者が出ておりますが、この中では、事故が百一名、敵対行為が八十三名、病気四十四名、その他十三名というふうに集計をいたしております。しかし、近年のデータを見てまいりますと、九九年の五月を最後に、犠牲者は出ておりません。

 つまり、イスラエルの撤退の後、このUNIFILの展開地域は総じて平静であるということで、深刻な問題は生じていないというふうに思っておりますし、もし仮にUNIFILがなかったらどうなっていたかといいますと、やはりヒズボラとイスラエル軍の戦闘がもっともっと激化して、もっと多くの死傷者が出ていたのではないか。やはりこういったPKOがあることによって平静を保ってこられたのじゃないかというふうに考えております。

今野委員 近年は平静を保っているとはいっても、我が国が仮にそのPKOに参加して活動をするということになれば、もちろん出かけていってすぐ平静な状態になるとは限らないわけですから、そこに活動を展開して、その結果ここのところ平静になったというのであって、ここにいなかったらもっと多くの犠牲者が出ただろうという話は、私はちょっと違うと思うのですね。

 私は、自衛隊員の皆さんの安全はどのように確保されているのだろうか、されていくのであろうかという観点からお尋ねしたいのですが、仮にこのPKO改正案が採択されまして、そして、これも仮にの話ですが、出かけていくかどうかわかりませんけれども、何年か後にアフガニスタンに自衛隊を派遣するとする。そうすると、その地域はもちろん平静だとは言えないわけですね、隊員のうち、このUNIFILのように何人かが殉職するかもしれない。そう知りながら、もし仮にそのときにあなたが防衛庁長官であったとしたら、それを隊員の家族や国民にどのように説明しますか。

中谷国務大臣 防衛庁長官といたしまして、派遣に際しましては、最大限の注意と考慮を払ってやっていきたいというふうに思っております。

 基本的に考え方としては、まず、この我が国のPKOへの参加につきましては、憲法及び国際平和協力法の内容の枠内で行われるということ、第二点は、国内の支持があって、また国際社会からも評価をされるものである、第三に、現地の実情に合わせて、要員の派遣が効果的かつ安全に行われるための万全の体制をとることができるものである、そして第四に、我が国が適切に対応するにふさわしい可能な分野である等との観点から、派遣する前には現地調査をよくやりますし、また国連や国際機関等の意向も踏まえて、総合的に判断をして派遣したいというふうに思っております。

 お話のありましたUNIFILのような、イスラエルとヒズボラとの間で断続的な衝突が継続しているようなところに対する派遣については、慎重に検討をしてまいりたいというふうに思っております。

今野委員 それは派遣する側はそうでしょう。派遣されるその隊員とか、あるいはその家族の気持ちを私はちょっと考えたいと言っているんですよ。そういう自衛隊員の方々の中にも、危険な仕事でも、世界の平和を構築するために私は行くんだという意欲に燃えている人もいるでしょう。しかし、自衛隊に入ったのは専守防衛の自衛隊に入ったのであって、国を守るために自衛隊に入った。海外まで武器を持っていって、そういう活動をするとは思っていなかったという人もいると思うのですよ。

 カンボジア暫定行政機構に参加した隊員が、これも最近の新聞報道で知ったのですが、当時を振り返って、訓練も装備も不十分で、攻撃に巻き込まれていたらと思うとぞっとするという発言もしている。これは報道されています。そのあたりのこの隊員の方々の気持ちは、どのように把握をしていらっしゃるんですか。

中谷国務大臣 この国際平和協力業務に派遣される隊員の選定につきましては、まず本人の意思を確認することにいたしております。部隊全員丸ごとそのまま派遣をするということではなくて、まずこの能力、まず人とうまくやっていくことができるのか、我慢強いか、協調性があるのか、また明るいのか、そういうふうな適性を見て、そして任務遂行に必要な知識、経験、健康状態を踏まえまして、家族の事情等の個人的な状況も十分しんしゃくした上で、最終的に本人に意思確認をして派遣をいたしております。

 現在のところ、私も派遣隊員等に話を聞いたこともございますし、部隊の責任者にも話を聞きましたけれども、非常に行ってみたい、世界のために貢献してみたいという隊員が殺到して、その要員を選考するために一苦労しているというふうな現状でありまして、派遣される隊員につきましては、非常に意欲的に任務を遂行していただいている現状でございます。

今野委員 本人の意思を確認して、その上でその能力があるか、我慢強いか、明るいかという項目まであるとは私は知りませんでしたけれども、確かにそのあたりも必要でしょうね、人とうまくやっていくために。その本人の意思を確認するということなんですけれども、確認をした結果、いや、私は行きたくないということになったら行かせないのですか。

中谷国務大臣 そういう隊員は派遣をすることから遠慮していただきたいというふうに思っております。

今野委員 遠慮をするというのは、どちらが。

中谷国務大臣 要するに、派遣をする隊員に含めないということでございます。

今野委員 その結果、その隊員が将来、その隊の中にいにくくなるとかというような配慮は何かありますか。

中谷国務大臣 そういうことによって不利益をこうむることがないように努めていきたいというふうに思っています。

今野委員 今、長官の話を聞いて、行きたくないなと思っている自衛隊の人は、ひょっとして何人か安心した人もいるかもしれませんが、さて、PKOに自衛隊を派遣するというのは、その活動を十分にしてもらえばもらおうと思うほど、憲法との整合性が問題になってくると思うのですね。

 そして、そこでさまざまな無理な解釈をして派遣していくということになるのではなくて、私は、この際、国連待機軍のような別働隊を編成して、自衛隊の方々と別に別働隊を編成して、そしてその方々に行っていただくというのが一番すっきりすると思うのですが、それを今後のテーマとして掲げるつもりはありませんか。

中谷国務大臣 まず、現状において国連待機軍というものが具体的にいかなるものかということにもよるわけでありますけれども、本来、国連憲章の七章に基づく正規の国連軍というのはいまだ設けられてないわけでございまして、おっしゃっている内容についてはPKOに関してだというふうに思っておりますが、これはいろいろな国において、例えばカナダとかスウェーデン等は非常に積極的で、待機部隊等を持った待機制度を設けておりますし、それぞれの国においてはPKOセンター等で積極的に活動いたしておりますが、我が国の場合においては、通常の国防の任務をするための各部隊、陸海空ございますけれども、通常に国防の任務をしている中でその要員の一部をPKOに派遣しているというのが現状でございまして、常時そういう部隊を待機するとなりますと、それなりの装備、予算また人的な確保が必要でございます。

 陸上自衛隊の能力、現在新しい時代に合わせて態勢の変化を、転換を実施いたしておりますけれども、通常の業務の中でいかなる人数をPKO要員に派遣できるのかという観点を考えますと、ぎりぎりの状態で各地域における警備活動、また災害等に対して即応できる態勢等をとっておりまして、現時点においては特別にPKOのための部隊編成を常時持っているということを考えているわけではございません。

今野委員 国連に国連の正規軍が、今ないわけですけれども、それはもちろん承知をしておりますが、しかし、我が国としては、国連にそういう国連としての機能というのは一体どうなのか提案をし、そしてそういう先のイメージをつくって、そこに沿っていくという形でこういう別働隊のようなものを編成していくという検討も、十分価値のある検討だと思うのです。ひとつそのあたりもお考えいただきたいと思います。

 それでは、続きまして外務大臣に伺います。みんなからお疲れのところ、お疲れのところと言われて、大変申しわけありませんが、しばらくおつき合いいただきたいと思います。

 シャムシャトゥー難民キャンプにいらっしゃいまして、そこでいろいろ見ていらしたと思うのですが、診療所で診療活動の説明も聞いていらしたと伺っておりますが、そのあたりはどんな状況だったのでしょうか。

田中国務大臣 このシャムシャトゥーは、幾つかある難民キャンプの中でもすぐれた方の施設で、もっと大変なところもあるやに伺っておりますけれども、そうしたところでありましても、医療器具が、分娩台が一つありましたし、あとは、あれは何でしたかね、超音波ではないし何かそうした機械が一つありまして、あとはほとんどは聴診器でした。そして、薬品等は十二分にあるというふうにドクターがおっしゃっていまして、看護婦さんが足りないということもおっしゃっておられたし、子供さんが、とにかく三〇%ぐらいが来る人来る人栄養失調であって大変だということを言っておられました。

 ですから、何がといって、やはり基本的にもう、まず水がないとか、衛生状態が悪いですし、あとは、このシャムシャトゥーに限らず、教育といいますか、医療、保健、衛生について、そういうベーシックな知識がない。そういうものもなければいけないから、ただお医者さんだけがいっぱい行けば全部終わるものでもないし、それから幼児死亡率が極めて高いということなんですね。ブルカをかぶっている女の人が、顔は出しませんけれども一緒に座っていたら、さっとブルカを開いたら中から赤ちゃんが、木でくくりつけて、もう栄養失調で声も出ないのだと言っていましたね。それで、ただ抱きしめていましたけれども。

 そういう状態でいましたので、まず衛生管理の基本的な知識と、それからファミリープランニングというのは、そこは大変力を入れていましたね。このシャムシャトゥーではファミリープランニングが極めて大事だということで、加藤シヅエ先生は戦後、サンガー夫人というアメリカの方の教育を受けられたということですが、その加藤シヅエ先生の名前をつけたようなNGOもいましたけれども、まさしく家族計画というふうなことをきちっとしないと、幼児死亡率も上がるし、衛生も悪いしというふうなことで、やはり母子の健康というふうなことだと思います。医療器具なんかはほとんどないに等しかったです。

今野委員 そこで、PKO活動の、特に難民の医療活動について、シャムシャトゥーに行っていらしたばかりで、生々しい体験もしていらしたわけですが、この難民医療活動について、どうあるべきだと考えていらっしゃいますか。

田中国務大臣 現状はもう難民の医療活動というものは、一般的には、受け入れ国の政府ですとか、それからUNHCRとか赤十字ですね、ICRCなどの国際機関、それから民間のNGOが現地の状況に応じてそれぞれ実施をしておられるというのが実情ですが、PKOのかかわりはどうかということになりますと、国連のPKOが難民医療活動を主たる任務とすることは通常は想定されていないと思われますけれども、国際的な人道支援、人道援助機関、団体を支援するなどの形で難民の援助活動を行うということはあり得るというふうに考えております。

 そして、日本といいますか、私どもが見てきまして感じますことは、国際的な人道援助機関とか団体への支援であれ、あるいは国連のPKOへの協力でありましても、具体的な要請があれば、実際のニーズや現場の状況を十分に踏まえて協力をするということであるというふうに思います。ですから、その橋渡しをする人がなかなかいなくて、沼田大使にもよく、もちろんお願いしてきましたけれども、真ん中の橋渡しをするNGOが必要なんですね。現場とこちらの供給側といいますか、そういうことを感じてまいりました。

今野委員 ところで、大臣は国際緊急援助隊というのを御存じでしょうか。

田中国務大臣 はい。日本政府が各国に派遣しておるものでございます。

今野委員 この国際緊急援助隊というのは、医療チームの派遣とか、それから救助チームとか、専門家チームの派遣だったり、医薬品などの物資の供与だったりしまして、一九八二年からこの活動をスタートしていると記憶しておりますが、年間三十件前後の援助実績があるのですね。この実績の中では、一九九一年のイラン流入イラク避難民救済、それから、トルコに流入したイラク避難民を医療チームを派遣して救済に当たったという実績もあります。

 国際貢献の面では、なかなか日本の顔が見えないということがよく言われます。そういう中で、国際緊急援助隊は徐々にその存在を示しつつありました。ところが、今この国際緊急援助隊は、その活動を自然災害のみに限定されているのです。それがなぜか御存じでしょうか。

田中国務大臣 ちょっとこれは、私も十二分にまだ今勉強ができていませんので、役所から今聞いたところでございますけれども、人為的な災害と自然災害で、今委員がおっしゃったのは自然災害だけに限られているということですが、これは、私今、飛行場から着いて、途中で渡された質問でございまして、今一生懸命勉強中なんですけれども。

 国際緊急援助隊の任務は、国際緊急援助隊の派遣に関する法律第二条に規定されているとおりで、海外の大規模な災害に対して、被災国政府等の要請に応じて、救助活動、医療活動その他の災害応急対策及び災害復旧のための活動を行っている。

 そして、災害というのは、主に地震とか火山の噴火でありますとか、台風とか洪水などの自然災害を指しますが、ガス爆発などによる人為的な災害も含まれる。ガス爆発を人為的な災害という、そういうふうな面のものも含まれる。

 そして、紛争に起因する災害は国際緊急援助隊法の対象とするところではありませんが、これは平成四年の国際平和協力法の成立に伴って、紛争に起因する災害は同法の対象とするとの政策的仕分けを行ったことによるものであるということでございます。

 ちょっと複雑怪奇で申しわけありません。

今野委員 平成四年にPKO法ができるまでは、この国際緊急援助隊は避難民の救済にも出かけていけたのです。PKO法ができまして、そして分けられてしまったのですよ。国際緊急援助隊は自然災害だけに、そして自衛隊は難民救済のために出かけていけるというふうになったのですね。しかも、これは法律ではなくて政府答弁によって、国際緊急援助隊は自然災害のみに限定されたわけなんです。

 そこで、防衛庁、これは運用局の方でしょうか、にお尋ねしたいのですが、自衛隊が難民救済で医療活動をするとなると、どういうチームになっていくのでしょうか。

北原政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛庁では、現在、先生御指摘の国際緊急援助活動並びにその活動にかかわります輸送活動等、迅速かつ的確に対応するということで、陸上自衛隊におきまして、応急治療あるいは防疫活動等の医療行為やヘリコプター等によります物資等の輸送活動、さらには、医療活動、輸送活動、または浄水装置等を活用した給油活動を組み合わせました活動を自己完結的にできますように態勢を維持しておりまして、そのために、現在、陸上自衛隊の各方面隊が半年ごとに持ち回りでこれを担当いたしております。さらには、海上自衛隊、航空自衛隊におきましても、輸送艦、補給艦あるいは航空機等によります援助活動が適切にできるようにという形で態勢を維持しているところでございます。

 いずれにいたしましても、今先生御指摘の、どういった編成等につきましては、今申しましたような態勢の範囲の中で、被災国からの要請の内容あるいは被災地の状況、あるいは被災地域において得ることができました可能な限りの支援等を踏まえまして、外務省との協議で決めていく、その都度判断していくというものでございます。

 これは、枠組みとしては国際緊急援助隊でございますけれども、この枠組みに基づいて実施いたしましたのがホンジュラスの難民救援隊でございました。他方におきまして、先ほど来出ておりますが、PKOの枠組みとして実施いたしましたのがルワンダの難民救援隊というものがございます。

今野委員 そして、そういうふうに自衛隊の方が難民救済で医療活動をするために、今ちょっと長くてよくわからない部分もありましたが、出かけていく用意、その心づもりぐらいはあるようですけれども、実際に医務官の方々は救急医療の現場で仕事をしていますか。

北原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の点につきましては、私ども任務として、救急医療あるいは応急治療等あるいは災害派遣等、多くの任務を抱えておりますので、そうした任務を適切に実施できるために常日ごろから周到な訓練を実施しております。

 さらに加えて、国内では、例えば災害派遣等につきましても適切に対応しているところでございます。

 また、先ほど来御答弁申し上げました海外への医療活動に当たりましても、適切に実施をしてきている、そのように考えているところでございまして、今後とも要請があった場合には粛々と任務を全うしてまいりたい、そんなように考えております。

今野委員 私が聞いているのは、救急医療の現場で実際に仕事をしていますか、していませんかと聞いているのです。もう一回答えてください。しているか、していないかだけでいいです。

北原政府参考人 先ほど申しましたように、災害派遣等、そのような形の場を通じまして、実際にその治療に当たったりしていることもございます。そう数がたくさんあるというわけではございませんけれども、当たっております。

今野委員 今の様子からすると、あったとしても数は非常に少ないのでしょう。

 外務大臣、国際緊急援助医療チームの方々は、私、きのうこの方々にお話を聞いたのですが、紛争終了後の難民救済に行きたいと言っているのですよ。だけれども、この政府答弁があって、今行けないのです。こういう方々は、例えば医療チームのヘッドの山本さんというお医者さんなんですが、日本医科大学にいらっしゃいまして、そして救命救急センターで、現場でさまざまな救急活動を行っているのです。こういう方々こそむしろ即戦力になる方々で、救急医療の現場で仕事していますかと言ってもすっと答えられない、恐らくほとんどしていないのでしょう、そういう方々が行くよりは、実際にやっている人が行った方がいいじゃないですか。これはどう思いますか、大臣。

田中国務大臣 基本的にはおっしゃるとおりだと思いますし、私は、緊急援助隊の方と、この間表彰式も外務省でいたしましたので、そのときにもいろいろ現場の声も聞きましたけれども、今後、アフガン難民を初めとして難民医療分野での支援策を検討するに当たっては、国際緊急援助隊それから医療チームに参加した経験を有する人材の有効な活用というものを含めまして、効果的な支援活動の実施というものに努めていくのはよいことだというふうに思います。

北原政府参考人 一言付言させていただきたいと思うのですが、過去二回、救急医療でホンジュラス並びにルワンダへ出ていっておりますけれども、そのときに、医療のみならず地元等から御要請を受けますのが、地域の防疫活動とか薬剤の難民キャンプへの輸送ですとか、かなり幅広いものを要請されます。

 したがいまして、こういった医療活動とあるいは防疫活動等を組み合わせてこれを同時に実施するといった点になりますと、なかなか民間の方々では難しい面がある、そういった点で、私どもといたしましては、今後ともこうした面に派遣が命ぜられた場合には粛々と努力をしていきたい、そのように考えております。

今野委員 これは質問ではありませんけれども、今自衛隊が行った方がスムーズなんだというような大体お話だったと思いますけれども、この国際緊急援助隊医療チームの方々も、まず行きますとメディカルコーディネーターの方が三カ月間いるのですね、そして、そこでどういう医療を行ったらいいかというのを十分に調査し、ここに一カ月ぐらいの単位で医療スタッフの方々が実際に行っているのです。だから、十分にできるんですよ。むしろこちらの方が平和的な国際貢献ということで、世界からも認められると私は思っているのです。

 ですから、将来的には、田中外務大臣、今の国際緊急援助隊の医療チーム、救助チームに輸送チームとかそれから施設チームを加えて、非軍事の国連PKOの人道的活動、難民支援、自然災害などすべてに対応できる国際救助隊を創設すべきだと思うのですが、いかがですか。

田中国務大臣 確かに、この間私が外務省で表彰しましたときも、四、五十人おられたかと思うのですけれども、皆さん大変生き生きとしておられて、あの方たちの意見を聞いていても現在も機能しているという感じはいたしましたけれども、しかし今、今野先生の御指摘を受けまして、やはり今後、人的な、物的な資源の効果的な活用ということはもっとやるべきですし、できることは迅速かつ効率的にやるというのは当然だというふうに思います。

今野委員 こういう方々が、ぜひ紛争終了後の難民救援活動もしたいと言っておられますから、わざわざそれをふさぐ必要はないわけで、ぜひぜひ検討をしていただきたい。またもう一度、ふさいだ道ならば開いていただきたいと思います。

 さて最後に、もう時間がありませんからお尋ねしますが、アフガンの復興支援高級事務レベル会議が二十日に終わりました。そして、来年の一月にアフガンの復興や人道支援を話し合う閣僚級の国際会議が東京で開かれることになっておりますね。このときの議長ですが、新聞報道によりますと前国連難民高等弁務官の緒方貞子さんなんですが、そのとおりなんですか。

田中国務大臣 一月末の会議をおっしゃっているわけですよね。これはまだ決定していないというふうに存じますけれども。

今野委員 それでしたら、ぜひ外務大臣としてここの会議の議長をおやりになって、そして、ここでは多額の復興資金が必要になってまいります。例えば、国連開発計画のブラウン総裁は、アフガニスタンの復興に七十億ドルから百億ドル、八千六百億から一兆二千四百億ぐらいはかかるだろうと言われておりまして、その負担だけをただ日本が押しつけられるというのではなくて、ぜひ外務大臣、そこで議長をしていただいて主導権を握って、日本として本来やるべき姿勢で臨み、そういう資金を提供する役割だけを押しつけられるということのないように頑張っていただきたいと思います。

田中国務大臣 一言申し上げさせていただきます。

 力強い応援をいただきましたし、また御趣旨もよく理解できましたので、そのような方向に行くように各党挙げて、違う方向に行かないように御指導いただければと思います。要するに、いろいろな経緯もありますので、九六年から日本がアフガンの枠を、和平とか復興ということは小和田大使が国連にいらしたころから言い始められていて、そして開催の提唱もずっとしてきておりますので、今おっしゃった趣旨を踏まえて会議ができるようにというふうに私も思っております。

今野委員 終わります。ありがとうございました。

玉置委員長 首藤信彦君。

首藤委員 まず、今般の国際平和維持活動に関する協力の法改正について、幾つか御質問させていただきたいと思っております。

 このいわゆるPKO法というのは、これからの冷戦後世界において外交の中心となるであろうというふうに考えられているわけでありまして、それに対して、現実の法というものは必ずしもそれを十分にカバーしていない、それからまた、現実の展開がいろいろな局面で起こっていて、今までのいわゆるPKO、それ自体国連憲章に明確に規定されているわけではございませんが、そうしたものに対して十分に対応できていないということから、これをさまざまに変えていこうという努力がされているわけであります。

 その中で、特筆すべきなのは、もちろんいわゆるブラヒミ・レポートと言われるものなんですけれども、今般の日本での改正はブラヒミ報告とどのように対応しているのか、あるいは対応していないのかをまず外務大臣にお聞きしたいと思います。

植竹副大臣 首藤先生の御質問にお答えいたします。

 PKOの問題でございますが、昨年、ブラヒミ・パネルを設立するなど、PKOの包括的な見直しを行ってきております。我が国としましても、こういう取り組み方に対して非常に評価しておりまして、見直しのためのそういう議論に積極的に参加しておるところでございます。

 なお、報告は、PKO、紛争予防、平和構築を包括的に国連平和活動としてとらえ直しておると思います。

 今委員御質問の新時代のPKOとは、まさに予防展開や平和構築的任務も含めて多様化したPKOを意味されていると考えておるものでございますが、我が国としては、こういうふうに多様化したPKOにつきましては、新しいやり方で協力していくべきが当然と考えておりまして、いかなる対応が可能か、真剣に検討していく考えでおります。

 なお、今回のPKO法改正は、これまで我が国が実施してまいりましたPKO法に基づく協力の経験を踏まえまして、我が国が国際連合を中心とした国際平和のための努力に対して、より適切に、効果的に寄与するものでございます。

首藤委員 全く私の質問に答えていただいていないんですけれども、時間をただ浪費しただけで、一つも答えていただいていないんですが、要するに、今回の法改正は関係あるのかないのかということをお聞きしている。いかがですか。

植竹副大臣 この点につきましては、今質問にお答えしていないというようなことでございましたが、これまで私ども、我が国が実施してきたPKO法に基づく平和協力の経験を踏まえまして、我が国が国際連合を中心とした国際平和に対して、より適切に、効果的にするものであり、関係はございます。

首藤委員 私は、外務省の対応を、漠然とした話をお聞きしているのではないんです。ブラヒミ・レポートと対応しているのか対応していないのか、対応しているならどこが対応しているのか、対応していないならどこが対応していないのかをお聞きしているんです。そこを明確に、外務大臣、よろしくお願いします。

中谷国務大臣 今回の法改正は武器の使用権限の部分のみでありまして、現在、ブラヒミ報告に基づいて国連が議論されておりますけれども、この改正と今回の改正は関係がございません。

首藤委員 それでは、改めて外務大臣にお聞きします。

 しかし、このブラヒミ・レポートというのは、アナン事務総長の勧告に基づいて行われて提出されたわけで、これに対しては、各国が同時的にこれに対応するということになって、そういう合意が形成されているはずであります。それに対して、日本は現実にどのように法改正をして、それをどのようにこのPKO法に盛り込もうとしているのか、それをお聞かせ願いたい。

中谷国務大臣 今回のブラヒミ報告に基づく改正は、まず国連の体制の強化並びに各国の国連への要員の派遣の増加等でございます。

 この体制の強化に関しましては、先般本委員会でも御議論いただきましたけれども、国連本部の職員への自衛官の派遣等に基づいて、量的な拡大に伴って我が国も参加できるようになったわけでございまして、質的には、国連の変化に対して我が国も貢献をしていこうというような努力は続けております。

首藤委員 委員長、これは、我々が討議して、もうすぐ採決しようかというところに来ているわけですよ。これは趣旨説明があって、これを一年かけて検討しようというわけではないわけですね。ですから、今漠然としたそういう話を何度もお聞かせ願っても、我々はそれを審議することはできない、そういうふうに思うんですよね。

 防衛庁長官は何か外務大臣も兼ねておられるようなので、よくわからないんですが、外務省としてはこのブラヒミ・レポートをどのように受けとめて、そしてどのように改革しようとして、そして今般出されたこれにどの程度盛り込み、かつ盛り込み損ねたのか、そこのところをはっきり言っていただきたいと思います。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 お答えいたします。

 ブラヒミ・レポートでございますけれども、PKOの要員は和平合意の約束に背いたり、その他暴力によって合意を損なおうとする者に対しては強力なROE、ルール・オブ・エンゲージメントですけれども、それをもって自身、他の要員及び任務を守ることができなければならないとされているということでありますけれども、これは従来のPKOの武器使用原則を変更するものではないか、右に対する日本の立場でございますけれども、こうした御質問に合ったブラヒミ・リポートの箇所につきましては、これを受けた事務総長の実施計画におきまして、国連の考え方が明らかになっております。

 すなわち、国連の事務総長は、武器使用に関するブラヒミ報告の勧告は、PKOが紛争当事者の合意のもとで展開する場合にのみ適用されるとした上で、勧告のいかなる部分も国連が戦闘機構となることを意味したり、PKOの要員が武器を使用する原則を根本的に変更するものではないと指摘をいたしております。

 いずれにいたしましても、日本といたしましては、長く尊重されてきておりますPKOの原則が基本的には維持されることが重要であると考えております。

首藤委員 私はそれは、どうもありがとうございました。それではっきりしました。

 結局、今回の法改正というのは、ブラヒミ・レポートにおける、ブラヒミ・レポートの最も重要な骨子である強力な交戦規定の必要性、これを受けて法改正に踏み切った、そういうことに理解してよろしゅうございますか。外務大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 国連ではブラヒミ報告の勧告を受けて、現在その最終的な対応については検討中でありまして、まだ結論は出ておりません。

 なお、今回の改正につきましては、現時点での日本の従来におけるPKO活動の反省、教訓を受けて、今後さらに充実したPKOに参画していこうという内容でありまして、今後新たに変化をするPKOに対応したものではなくて、従来のレベルにおいて、それに追いつこうという内容の改正でございます。

首藤委員 中谷長官におかれましては、一人二役で大変御苦労さまでございます。給料も二倍差し上げたい気持ちがしますけれども。

 ということは、ブラヒミ・レポートと今回の法改正とは関係ないということでございますね。

 それでは、外務大臣にお聞きいたします。それでは具体的に、このブラヒミ・レポートが求める趣旨にどのように対応されようとしているのか。

 なぜそういうことを言うかといいますと、今回のPKOはもう目前に迫った東ティモールへの選挙監視、特に五月の大統領選挙、そして建国というのがありますけれども、それの要員の確保やさまざまな安定のために行われるというふうに考えています。その点こそまさにブラヒミ・レポートの指摘している点なんですけれども、こういう問題に関して、例えば文民警察官であるとかその他の活動に関してどのように対応されているのか、それをお聞かせ願いたいと思います。外務大臣、よろしくお願いします。

田中国務大臣 平和活動の改善それから強化は、国際の平和と安全にとって重要な意義を持つということはもう基本でございますけれども、これらの勧告、提言を真剣に受けとめて、議論に積極的に参加をして、可能な協力は実施していくという考えでございます。

 また、ブラヒミ・レポート、報告におきましては、必ずしも取り扱われなかった問題としてPKO要員等の安全問題がありますが、日本は本年三月にこれに関するセミナーを実施し、その結果、ブラヒミ勧告のフォローアップの一環に加えるなどの貢献も行ってきております。

首藤委員 全然答えていただいていないですよ。

 もうすぐ、東ティモールへの派遣というのは今最も重要で、目前で、そのためにもこういうものを変えていかなきゃいけないと言っているのに、東ティモールへの対応、どういうふうにブラヒミ・レポートに盛られたさまざまな視点というものを盛り込んでやろうとしているのか、それをお聞かせ願いたいと言っているんですが、いかがですか。

植竹副大臣 委員お尋ねの点ですが、ブラヒミ・レポートというものは、直接的にはこうじゃなくて、そのリポートにありましたものを受けまして、事務総長の実施計画において、先ほど大臣が答えられたように、武器使用に関するブラヒミ報告の勧告は、PKOが紛争当事者の合意のもとで展開する場合にのみ適用されるということでございます。そしてまた、勧告のいかなる部分も、国連が戦闘機構となることを意味したり、PKO要員以外、武器を使用する原則を根本的に変更するものではない。

 したがいまして……(首藤委員「私の質問に答えてください。どのように今後対応しようとしているのか」と呼ぶ)私どもは、このPKOの原則が基本的に維持されることを基本としまして、今後、東ティモールとか、そういう問題についても対応していかなくちゃならないと考えているわけです。

首藤委員 漠然とした話を聞いているんじゃないんですよ。外務省に聞いているんですよ。

 もう目前まで迫った、五月までにはもう半年しかないわけでしょう。ですから、そのために、東ティモールにおける危険の要件は何であるか、それから平和貢献の要件は何であるか、それを幾つかやって、ブラヒミ・レポートの勧告に従ってそれを一つ一つやっていかなかったらできないではないですか。法律を改正するというのはそういう意味ですよ。

 ですから、それは、ブラヒミ・レポートが進んでいる、そして目前に迫ってきた、東ティモールの大統領選が迫っている、その中で今回の法改正があって、三つ一緒になっているわけじゃないですか。その相関性がわからなくてどうして法改正ができますか。いかがですか。副大臣で結構ですよ。

植竹副大臣 ただいまのお話ですが、私は、やはりこれは基本的な問題として取り上げないと、例えばインドネシアにしましても東ティモールの問題にしても、PKOの原則が基本的に維持されないことには対応の仕方ができない。具体的に、それは、その場合にどういう点についてなるかは今後検討していく課題だと思います。

首藤委員 今後検討していくという、目の前に、五月に迫っているということを話しているでしょう。それから、大統領選があって、さまざまな問題があるということを言っている。

 例えば、PKOの今一番の重要な要件として、文民警察の活動があるでしょう。それから、今はPKO活動は四軍体制と言われるんです。それは、陸海空、NGOと言われるんです。それぐらいNGOの活動というのは重要で、そういうものを盛り込みながらPKO活動というのはやっていかなきゃいけない。それがブラヒミ勧告なわけですよね。そういう目前に迫った問題に関して、だからこそ、こういう新しいPKO改革法を設けてやろうとしているわけですよ。

 ですから、その整合性は何なのか。今何を足りない部分をやろうとしているのか。だから、これは、例えば自衛隊の交戦規定その他の問題であるとしたならば、文民警察とかその他の活動に関しては、今どのような作業をされているのかをお聞きしているんです。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 東ティモールにつきましては、今現行のPKOに基づいて派遣の準備中でありまして、ブラヒミ・レポートにつきましては、日本のPKOにとって長期的な課題として検討できるということでございます。

首藤委員 ということは、今回の東ティモールへの派遣は、今回の改正が行われても、今回の以前の、今の段階での法律に準拠して派遣を実行する、そういう意味ですか。防衛庁長官、いかがですか。

中谷国務大臣 今回東ティモールで行おうとしている活動内容は、主に施設部隊を中心とした道路の修理、補修を中心にいたしておりまして、従来の、凍結解除以前の状態においても十分活動ができる内容になっておりまして、新しいPKOに基づいたものであるのではなくて、従来のタイプのPKOに対応した形にするようにいたしております。

首藤委員 それはもう珍奇なことを今お聞きしたわけですけれども、そうすると、現実に行っても、施設大隊がして、施設大隊に何らかの脅威が迫ったときも、今回の法改正における例えば武器使用基準の緩和とか、それからさまざまな今まで凍結されていた業務の、今回は認めるということになってきましたけれども、駐留とか巡回とか、その他廃棄武器の保管とかいろいろのことができるということになりますけれども、そういうことに関しては、今までの縛りどおりで一切やらないということを意味しているんでしょうか。いかがでしょうか。

中谷国務大臣 今回の東ティモールに関しましては、凍結解除で新たに任務に加わった部分においては実施をいたしません。

 また、ROEという武器使用規定につきましては、国連は、すべて本部でスタンダードに全体を縛っているわけではなくて、各任地また場所に応じてそれぞれ個別のROEをつくっております。

 今回派遣する上においては、よく現地のPKO司令部と相談の上、部隊の安全を図るための武器使用等につきましては、現地の司令部と取り決めをして、隊員の安全確保にも十分配慮を払って行っていきたいというふうに考えています。

首藤委員 防衛庁長官、よく考えてお答えをください。これはもうあなたは責任者で重要な問題ですから。

 しかし、そういうつもりで施設大隊が行ったとしても、あるいはモザンビークのようにムブコンを出したとしても、現実に脅威があって、しかも、今度の新しい改革によっていろいろな活動範囲が広がっているにもかかわらず、古い、以前の協力法のもとでしか行動させない、そういうことを今おっしゃっているわけですから、それは本当にそのとおりなんですか。いかがですか。

中谷国務大臣 今回改正をしている法律案に基づきまして、PKOの現場においていろいろな混在をする人たちがある中で任務を遂行するわけでありますけれども、自衛隊員が活動している現場に所在して、不測の事態を受けて、自衛官と同じ危機に遭遇をして、かつなお、自衛隊の指示に従うことが期待される者に対しては自衛隊は安全確保を実施するという点で、一般の現地の人たち、また国連の要員等においても、ともに安全を確保できるように改正をしたわけでございます。

 この点につきましても、十分国連側と協議の上実施をいたしますし、また、現地にも与党の代表の方も行っていただきました。現在も、政府の調査団、また防衛庁の調査団も行っておりますけれども、その辺を現場で十二分に確認をした上で実施をいたしたいというふうに思っております。

首藤委員 それは、精神論はいいんですよ。だけれども、そんなことをやっていたらもう時間がどんどんなくなってくるので、次のテーマに移りたいと思います。

 今回の法律改正によって、PKO活動というのは随分大きくできるようになりました。しかし、それが、例えばタリバン後のアフガニスタンなんかに使うということに関しては、それはやはり非常に難しいだろうという意見がございます。

 ただ、なぜ私が先ほどからブラヒミ、ブラヒミと言っているかというと、そのブラヒミこそが、一九九八年以前までずっと、アフガン問題の特別特使として国連から派遣されてこの問題をやっていた人なんですよ。

 ですから、ブラヒミさんがこれを今回もまた同じようにやるということは、PKO活動に関しては、今でこそ、北部同盟とかいろいろな問題があってとてもそういうPKOなんという状況には考えられないわけですが、九八年に悔しい思いを抱えたブラヒミさんがやめるわけですけれども、そのブラヒミさんがもう一回戻ってくるわけですから、思い切ってこの段階でPKOを入れて、そしてこの地域の安定を図るということは十分に考えられるわけなんですね。

 そういう状況において、日本のPKOというのは送ることは可能でしょうか。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 アフガニスタンでの情勢に、アフガニスタンだけに限って申しますれば、国連のPKOが設立されることになるかを含めて、極めて流動的であるというのが今実態でございます。

首藤委員 これは外務大臣、ここは専門家の会議なんですよ。これは将来のこととか流動的であるというんだったら、それは町でみんなが先のことはわからないねと言っているのと同じじゃないですか。そうじゃないでしょう。これは日本を代表するような安全保障の委員会なんですから、その中でも可能性があることに関して幾つか言っていかなきゃいけない。

 では、もう一つお聞きしたい。今問題になっているのは、タリバン後にアメリカがさらに活動を続行して、アブ・サヤフ退治のためにフィリピンへ兵を送るというのが、もう本当に既成事実みたいな形でいろいろなところで上がってきているわけですね。こういうものに対して、ではどうするのか。例えば、今回のテロ特別措置法でいくのか、あるいは、フィリピンになってしまいますとこれは周辺事態法なんですけれども、外務大臣としては、いかがですか、どのように対応されますか。何の法律がそこに準拠されますか。

田中国務大臣 いろいろのケースを想定なさっていますけれども、仮定の問題でございますから、今おっしゃっている個別具体的なことについては、その状況を踏まえずにお答えするということは適当ではございません。

首藤委員 それはお答えになっていないんですね。それは確かにすべての問題は仮定ですけれども、外交はすべて仮定なんです。情報の我々が知っているのは、本当の真実じゃなくて、あくまでも蓋然的な、漠然的な事実にすぎないんです。ですから、こうなるであろうということはすべて仮定なんです。仮定の問題が答えられないといえば、それは答弁拒否と全く同じなんですよ。

 ですから、こういうのは極めて蓋然性が高いんですから、こういった問題に関してはいかがお考えですかと。これは日本の命運がかかっているんですよ。大臣、いいですか。アフガニスタンじゃなくてフィリピンですよ。もう我々の周辺事態の問題ですよ。我々のシーレーンの問題ですよ。その問題に関してどうですか。外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 基本的には今申し上げたことでございますけれども、あえて申し上げますれば、周辺事態法が適用されるか否かにつきましては、法律の目的に照らして考えるしかないということでございまして、周辺事態法は御存じだと思いますので繰り返しません。

首藤委員 法律に照らしていかがですか。それがどういうふうに適合できるかできないか、明言いただきたいと思います。外務大臣。

田中国務大臣 基本は先ほど来申し上げていますように、具体的なことが、個別なことが起こっておりませんから申し上げられませんけれども、周辺事態法というのは、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に対応して我が国が実施する措置」であるということでございます。

 繰り返しますけれども、やはり仮定の問題でありますので、余り具体的な状況を踏まえずにお答えするということは適切ではないというふうに思います。

玉置委員長 ちょっと速記をとめて。

    〔速記中止〕

玉置委員長 では、速記を起こしてください。

 田中外務大臣。

田中国務大臣 先ほどフィリピンのケースをおっしゃいましたけれども、政府としては、関係の法律の目的を踏まえて、我が国としてとるべき措置について主体的に検討していくということになるんですが、具体的には、今回のテロに関連していればテロ特措法を使うということは申し上げるまでもありません。

首藤委員 それはもう大変な重要な指摘で、これはただ仮定の問題じゃなくて、本当に我々の、日本の運命にかかわってくる問題で、私も長年国際政治を研究してきましたけれども、こんなにも早く危機というものが我々の足元まで押し寄せてくるかとは思わなかったです、はっきり言って。

 ですから、このことは、今回の質疑ではここでとめますけれども、ぜひ外務省においては早急に対応を考えていただきたいと切にお願いいたします。

 さて、それでは、せっかくパキスタンに行かれたわけですから、私も二度ほど空爆後入りましたけれども、同じシャムシャトゥの難民キャンプに行きまして、同期生のような親しみを感じますけれども、あそこへ行くだけでも大変な難しさがありまして、トライバルテリトリーを抜けていくわけですから、それだけでも大変な御苦労であったと思いますけれども、お帰りになったのがパキスタン航空のチャーター便だというふうに聞いております。たしかこの時期には直行便もあるはずですけれども、なぜチャーター便ですごいお金をかけて帰られたのか、幾らぐらいお金がかかったのか。経費に関してはよく御存じだと思いますから、外務大臣、いかがですか。

田中国務大臣 これにつきましては、私も出発する前の閣議後の記者会見でも何度も申しておりまして、チャーター便というのはコストがかかりますので、何とか安いといえば普通のコマーシャルラインで行けるようにということは記者会見でも言っておりまして、結果としては、同行の記者さんも一緒にチャーター便に乗りましたので、コストも一人当たりの計算までしてもらいました。チャーター便で乗った場合と、それから一般のコマーシャルエアラインだったらどうかと。当然、チャーターの方が高いわけです。

 ところが、この委員会に、きょう私は朝六時何分、日本時間ですけれども、向こうのまだ夜中の二時、三時なんですけれども、に成田に着きまして、閣議が八時半にありまして、それからこの委員会がありますので、吹っ飛ばして、着がえることもなく、スーツケースを引きずったまま空港から髪振り乱して閣議に来て、そしてここに今引き続きいるわけでございますが、これに午前中も大した、私は副大臣もおられるからいいのかと思いましたけれども、やはり本人が絶対出なければいけない、それから閣議も八時半には絶対いなければいけないということになりますと、成田からパトカー先導で走りましても、時間と速さの関係で間に合いませんで、直接の直行便はありませんでした、今回。

 したがいまして、これがきょうの午後か夕方着いていいという御許可がいただけて、副大臣対応なりしていただけるのであれば、普通のラインで十二分に帰ってこられたんですが。全部チャーターではございません。イスラマバードからバンコクまでです。バンコクからはANAに乗ってまいりました。

 ですから、そうしたことも大変、コストは、必要でしたら後ほど事務方から調べてもらって御報告ももちろんいたしますけれども、税金でもあるし、私は、本当だったらこういうときに、二人も立派な副大臣もおられますし、ほんの半日ぐらいのことであったら普通のラインで来られるとよかったなとは思っておりますが。

 以上でございます。

首藤委員 田中外務大臣、外交活動、大変御苦労さまですが、その中で、ムシャラフ大統領との会談というのは、非常に、一番重要なイベントであったと思います。

 その中で、当然のことながら、ムシャラフ大統領から、パキスタンの重債務を何とかしてほしいということがあって、それに対して、帳消しはできないけれども、何らかの対応をするということを示唆されたということを聞いておりますけれども、具体的にはどのような対策が可能になるか、それをお聞かせ願いたいと思います。

田中国務大臣 これは、私が行きます前に、アジズという大蔵大臣が外務省にお見えになりましてこうした話もなさったんですけれども、そのときと同じことを今回もパキスタンで繰り返しました。

 すなわち、日本の経済状況が非常に厳しいということ、失業率が上がっていて、経済的な先行きが大変暗いということを申しまして、債務削減に応じることは困難である、これは小泉総理もおっしゃっております、そのことを申しました。

 ただし、具体的に何か対応ができるかどうか検討をするということをお話し申し上げておりまして、これはまた閣内で引き取って今後検討していくことだろうと思いますので、私がここで一人で、一存で、重要な問題で、相手もあることでございますから、お答えはすぐにはいたしかねると思います。

首藤委員 もう一つの外交成果というのは、言うまでもありません、先ほども申しましたように、シャムシャトゥーのキャンプに行ったということなんですが、アフガニスタン問題で日本が貢献する道としては、やはりそうした難民がこう、流れ出てくる人たちをいろいろ面倒を見てあげなきゃいけない。だからシャムシャトゥーのキャンプのようなものがあり、いろいろなキャンプがあるわけですね。しかし、そういうところからさらに少しずつ少しずつ外へ流れ出ていっているんですよ。やがていろいろな国に行くわけですね。やがてタイに行きまして、それから韓国に行きまして、やがて日本に来る。こういう方がおられるわけですね。

 そうしたアフガニスタンの難民の方、特にタリバンやパシュトゥン人から迫害を受けてずっと逃げてきた、バーミヤンに住んでハザラ人の方がたくさん来て、日本に来てようやくほっとして難民申請をしたら、途端に捕まってしまった。東京入管で今確保されているということなんですね。それはもう大変な苦しい状況で、私も行きましたけれども、まるで動物園のようなところですね、鉄格子の中で。そして人が衆人環視の中で顔を丸出しにしてトイレをやっているという、そういう非人道的なんですけれども。

 なぜこの人たちが、解放されたり、難民のステータスが得られないのか。その根拠が、難民申請が拒否されても、送還されても、身が危険でない。要するに、今の状況は、タリバンも崩壊して、アフガニスタンに強制送還しても、この人たちは、返そうと思えば帰れるんだ、危険でないんだ、だから難民申請はおかしいんだ、だからそれはだめなんだというのが法務省の見解ですけれども、外務省の判断としては、これはどのような危険度だとアフガニスタン内部を考えておられますか。

植竹副大臣 今委員のお尋ねの点でございますが、これは所管は法務省であって、私どもとしては、そういう今状態の……(首藤委員「法務省の判断を聞いているんじゃないんです、外務省の判断を聞いているんです」と呼ぶ)

 ですから、そういう入管の扱いの状況については、私どもはそれは聞いております。しかし、そういう点については、例えば難民問題は、アフガンばかりじゃなくていろいろなところから来ています。人数とか何か考えますと、なかなか収容し切れないという状況も聞いております。そういう意味ではこういう点をもっと改定する必要があるかと思いますが、これはもう法務省の方で、入管ですべて対応しておることでございますので、私どもの方からのお答えとしてはそういうことしか申し上げられません。

首藤委員 植竹副大臣、あるいは外務省の皆さんもそうだけれども、難民問題は日本の省庁の都合に従ってできているんじゃないんですよ。難民という問題があって、それは横断的にいろいろな省庁が絡んでくるんですよ。だから、それは横断的にみんな努力してやらなければ、日本の貢献にならないじゃないですか。それを、あれは法務省がやるからうちは関係ないと。

 しかし、法務省の見解は、法務省は別にアフガニスタンやパキスタンに目を持っているわけじゃないから、結局外務省に聞くんでしょう、そうじゃないですか。ですから、外務省はどういうような判断をしているのか。例えば、パキスタンなら危険度四ですか、今。アフガニスタンは危険度幾つですか。どのような問題があるんですか。

植竹副大臣 まず第一問ですね、外務省としましては、法務省には現地事情とかその他の状況の情報は提供しております。

 それから、二の危険度の問題は、五でございます。

首藤委員 そうなんですよ。ですから、危険度五で、帰ったら危ないわけですよ。ですから、そういうものは、ではどういう情報の提供をしているのか問題もあるし、さらに、それぐらいのことをきちっとできなければ、アフガニスタンの約二千万の人口のうち約一千万が国内避難民化して、五百万が難民化している、こういうのを、ことしアフガニスタン難民で難民認定を受けた人が三人。そんな状況では、国際貢献とか、アフガニスタン難民も救うとか、戦争が終わったら私たちは助けますよとか、うそばかりじゃないですか。

 本当にアフガニスタンの人を助けて、あんなに親日的なアフガニスタンの人を助けるためにも、我々も省庁を超えてやったり、さまざまな市民を巻き込んだりして、いろいろな努力をしなければいけないでしょう。

 ですから、私は、その点に関しては大いに反省してほしいし、これは危険度五であり、そしてこの問題は、やはりそんなもの、送り返したら、強制送還したら、それこそまさに北部同盟のリンチのちまたになり、南へ帰せばタリバンのリンチのちまたになっていく。こういうことは危ないんだとしっかり提言してください。

 もう時間がなくなりましたので、最後に防衛庁関係をもう一度お聞きしたいんです。

 今回の法改正、これによって本当に踏み込んだ。それは、ある意味でブラヒミ・レポートに通じていくように、ある意味で本当に必要なところへ踏み込もうとしていることはよく理解できます。しかし、それには、長官よく御存じのとおり、兵は百年練れという言葉がある。本当に時間がかかるんですよ、何か一つの業務をするために。例えば空挺部隊を育てるためにだって何十年もかかっていくわけですよね。軍艦を修練するために何十年もかかっていくわけですよ。

 同じように、今度の法改正をしたら、実際にこの法改正によってできる、可能な部隊というものはどれぐらいの習熟期間をもって送ることができますか。いかがですか。

中谷国務大臣 まず、基本的には、基本教練として、我が国の安全保障のために各部隊が武器の使用等の演練を行っております。

 武器の使用等につきましては、ルワンダにおいてはけん銃、小銃、機関銃、通信車、またゴラン高原もけん銃、小銃、機関銃等を装備して行くわけでございまして、基本認識としては、我が国有事における防衛出動と態勢としては同じ考え方で、武器等の使用等につきましても、演練をしたことに基づいて隊員の安全確保を図ってまいりたいというふうに思っております。

首藤委員 中谷長官、私は本当にがっかりしました。もう本当に心臓がとまるぐらい驚きました。それは、あなたは官僚のお話である。政治家としての話でもなければ、防衛庁の人間として現場にいた人間の話でもないですよ。

 例えばPKOというのを調べればわかるように、例えば、先ほどからお話にあるレバノンのPKO、フランス軍がいました。フランス軍にはファマスという機関銃がありますよね。これはしゃれた機関銃ですよ。美しい機関銃。私は、その担当者に国連で話を聞いたんです。実際には、ファマスでは夜間も含めてこの不安定状況に対応できないということで、ファマスを全部封印して倉庫にしまって、市場からカラシニコフを買って全部フランスの軍人に持たせた、こう言っていました。

 だから、本当にPKO活動をするのであれば、そういう危険が、生活と危険が本当に接点を持っているようなところでPKO活動をするには、持っていく小銃だけだって、六四式とか六二機関銃とか八九式とか、そんなものじゃだめなんですよ。肩に当てて撃つ小銃と腰だめで撃つのと違うわけですよ。ですから、こういう活動をするときには、そういう武装も含めて根本的に変えなきゃいけないじゃないですか。例えば、防衛庁がFN・MINIMIを持っているでしょう。FN・MINIMIでも、日本で生産したらたちまち事故が起こったじゃないですか。

 そういった装備面を含めて、どのような対応がこれから可能であり、そしてそれが可能なときには、一体どれぐらいの時期があれば実際にこの部隊を発動することができるのか、専門的な意見をおっしゃってください。

中谷国務大臣 現時点においても、防衛庁の人間が現地に参りまして、現地の情勢、また任務の内容等も含めまして、必要な装備の種類と数量を決めることになっております。

 これに基づいて自衛隊は所要の準備をして、実施計画を定めた上に、安保会議にかけて、国会に報告をすることでございますけれども、この所要のものによって的確に安全確保ができるように、それまでにも準備をしてまいりたいと思いますし、現在の練度におきましても、あくまでも日本有事を想定して各種戦闘にたえ得る能力に達しているわけでございますので、それぞれの練度を生かして、最大限安全に留意をして、任務を達成したいというふうに思っております。

 また、今回の改正によって、武器防護のための武器使用、並びに防護対象の拡大という内容が適用されるわけでありまして、この点は東ティモールにおいても同様に適用されますので、こういった内容の充実によって対処し得るというふうに考えております。

首藤委員 ハードが一つ問題だと私は指摘したい。と同時に、ソフトの部分がもう致命的に弱いのじゃないか、私の体験ではそう思います。

 こういうことをやると、だんだん危険な地域になって、けがをして死ぬ方もおられる。例えば、アメリカの軍でいえば、大体従軍牧師がついていきますね。自衛隊にどれだけ従軍僧という方がおられるのかもわからないけれども、そういう方の取り扱いはどうなっているのか。

 例えば、これから海外へ行くと、これは物すごい高いレベルで通訳が、頻度が必要となります。今までのようにムブコンをやっていたり、道路を補修したりするんじゃなくて、本当に捕虜に話しかけなきゃいけない。それから、難民支援だといろいろなことをしゃべらなきゃならない。例えばアフガニスタンでいけば、パシュトゥン語、ダリ語をしゃべっていかなきゃならない。そういうことを考えると、部隊編成の中でも物すごく通訳の比率が多くなってきます。こういったものに関して、自衛隊は現在どのように対応できていますか。いかがですか。

中谷国務大臣 これまでも、カンボジアの場合にはクメール語、またゴラン高原等の場合も現地の言葉、またモザンビークもポルトガル語等の現地通訳を雇用して業務に当たったわけでございますが、今回におきましても十分に信頼にたえる通訳が雇用できるように面接を行うと同時に、雇用の際には、契約ではありませんけれども、秘密保持等については約束をさせた上で実施をいたしたいというふうに思っております。

首藤委員 時間がもうほとんどなくなりましたので、最後に、中谷長官も私も共通の知識を持っている地雷の分野についてお話をさせていただきたいと思います。

 地雷を除去する可能性があるということで、実際するかどうかは別として、あるということですけれども、その根拠は、今回の法改正に基づくと、放棄武器の収集、保管、処分となっておりますが、それでよろしゅうございますか。

中谷国務大臣 あくまでもPKO活動の範囲においての地雷の除去として、御指摘の項目で実施したいというふうに考えています。

首藤委員 これも専門家としておわかりになると思いますけれども、例えば、私なんかがやっているカンボジアの北西部のバッタンバン、これは畑のところは確かに除去されているんです。しかし、実際にそこでは人が働かない。なぜかというと、そこにはクリーク、川が流れていまして、川の斜面はまだ地雷がびっしりあるのです。その地雷は、もう紛争が終わって十年以上たつのですけれども、放置されている。これは、実際は放置地雷じゃないわけですよ。地雷を放置しているんだけれども、放置武器ではないわけですね。これは明らかに、だれが設置したのか、あるいはクメールルージュかもしれない、あるいはまた政府軍かもしれない、しかし、残すことによって、例えば、今パイリンという町に閉じ込められているクメールルージュの勢力がいつの日かもう一回立ち上がってきたときに、そのクリークに入り込まないように設置しているわけですよ。ですから、地雷の場合は、明確に放置兵器ではないわけですよ。そういうものがどうして、この法律の中で除去できるという根拠はいかがですか。

中谷国務大臣 PKOを派遣する前提としては、停戦の合意がなされておりまして、そのような地雷の埋設においては、その政府においては、必要がないというふうに考えておるわけでございます。

 おっしゃるように、そのクリークに地雷があるかどうかわかりませんが、私は、木製とかプラスチック等で洪水のときに流れていったそういう放置地雷の一種ではないかというふうに思っております。

首藤委員 全く不十分な回答ですが、時間なので、これで終わります。

玉置委員長 藤島正之君。

藤島委員 自由党の藤島正之でございます。

 田中外務大臣、パキスタン訪問、本当に御苦労さまでございました。時差で大変でしょうけれども、ふだん舌鋒が非常に鋭い分をちょっと時差で調和してちょうどいいのかなという感じもしますけれども。

 私も、実は、我が国のPKOの派遣されましたところはほとんどすべて行っておるわけでございまして、最初にカンボジア、あるいはルワンダ、モザンビーク等ありますけれども、一九九四年、ルワンダに参りましたときは、まさに異様といいますか、非常に何とも言えない感じに包まれたわけでございます。それは、見渡す限りの平地が国連支給の青いテントで埋まっているのですね。下の方は何もしいていない、そういうのが延々と続いている、そんなところで、食べ物はほとんど国連の支給、あるいは着るものも国連の支給、そんなものでありました。

 今回、外務大臣は現場を見られて、そこでNGOあるいは国連の方々のいろいろな活躍をごらんになったと思うのですけれども、具体的にそういうのをごらんになって、どういうふうに感じられましたでしょうか。

田中国務大臣 人の尊厳、それから人の善意、言い尽くせませんけれども、未来を信じる力といいますか、そうしたものを感じました。

藤島委員 先ほど外務大臣と立ち話の際にもありましたけれども、やはり実力部隊の発揮の場というよりも、そういったNGOとか国連の陰のような役割、これが非常に大変なものであるということを実感されたんじゃないかと私は思います。私自身が当時訪問したとき、そういう感じがしましたので。

 ところで、これは本当かどうか知りませんけれども、最初のころ、難民キャンプのような汚いところは嫌だとか、こう言ったとか言わないとかいう話がありますけれども、マスコミでは、日本が立場を鮮明にする段階ではないという事務当局の意見に忠実に従ったとかいろいろありますけれども、私は、これまで田中外務大臣がいろいろなところへ行かれた中では一番の成果があったんじゃなかろうかな、こういうふうに素直に感じているところでございます。

 ところで、ちょっと国連の話に話題を変えたいのですけれども、国連は、御承知のように、一九四五年、五十一カ国で発足し、我が国はその十一年後の五六年に八十番目に入ったわけでありますけれども、現在何カ国が加盟しているか御存じですか。

田中国務大臣 百八十九だと思います。

藤島委員 そうです。大変な数ふえているわけですね。要するに、私はここで申し上げたいのは、一つとして、国連の役割がやはり世界で重要視され、どんどん加盟している、そういう事実でございます。

 その後、八二年、カンボジア等があったわけですけれども、一九九〇年、これには、PKOとして十八カ国あるわけですね。それがその後かなりふえていますが、今現在、外務大臣は何カ国になっているか御存じですか。

植竹副大臣 現在、八十七カ国だと思います。

藤島委員 九〇年以降、実は三十五カ所できているんですね。ですから、非常にこの十年、いろいろなことを国連がやって、やはり国連の場はそういう活躍の場になっておるということなんですね。

 一方、国連に勤務している日本人というのは約百人しかいないんですね。国連に関係者というのは五万人ぐらいいるそうですけれども、その程度しかいない。分担金はといいますと、御承知のように、大体アメリカが二二%、日本は二〇%弱ですね。あとドイツが九%、中国一・五、ロシアが一・二、こんなものなんですね。非常に日本の貢献度が大きい中で、私は、日本人の国連の職員が非常に少な過ぎるんじゃないかなという感じはしておるんですけれども、この点は、外務大臣はどうお考えですか。

田中国務大臣 これはもう簡単なことで、ふやす方がよろしいと思いますし、日本はもっと積極的に当然関与していくべきであろうというふうに思っております。

藤島委員 これは、外務省挙げて頑張って、ぜひふやしていってほしいと思います。

 それとの関係もあるんですけれども、いわゆる国連の常任理事国入りの問題ですね。これについては、現在どういう段階になっておって、どういうふうに考えておりますか。お伺いします。

植竹副大臣 今委員お尋ねの安保理改革の問題でございますが、常任理事国入りについては、大多数の国が支持しております。常任、非常任議席双方の拡大を大多数の国が支持しておりまして、我が国は拡大後の安保理事会の議席数を二十四と、そういうことを主張しておりますが、今後この点を含めまして、さらに改革に関する他の論点につきましても、議論を進めていくことが重要だと考えております。

藤島委員 質問を事前に通告してあるので、外務大臣の方にお答えいただきたいんですけれども、私は、ぜひ常任理事国入りを努力していただきたいと思います。

 これは、新たな義務というのは余りないわけでありますし、財政負担も常任理事国入りによって特に負担するといったようなものでもないし、軍事活動がそれによって直接求められるといったようなものでもないわけでありますので、先ほどの分担金の問題を含め、ぜひ国連における我が国の発言権といいますか、これを強めるような努力を外務省挙げてやっていただきたい、こう思うわけであります。

 ところで、私は、先ほど来、国連についてこのように機能がどんどん高まってきているということに関係いたしまして、今回、自由党の方から、政府に対する対案として二法が出されておるわけですけれども、その背景について、提案者の方にお伺いしたいと思います。

東(祥)議員 お答えします。

 藤島議員は、初めて日本政府の中でPKO法案をつくった当事者のうちの一人でありまして、その当時の状況もよくおわかりになっていると思いますが、私たちが今回提出させていただきました法案は、午前中でも若干お話をさせていただきましたが、基本的には、政府案と比べた場合、全く憲法のとらえ方が違うと思っております。

 私たちの場合は、あくまでも国連を中心とした平和維持活動並びに回復活動も含めた上での安保理という唯一国際社会における拘束力を持っている機関です。ここで決議が出たものに対して、日本が参加、協力していく場合、それは憲法九条の延長線上で禁止されるものは何ら含まない、ここに最大の違いがあると申し上げてもいいと思います。よろしいでしょうか。

藤島委員 国連との関係、憲法との関係、それと、基本法と今回提案されている二法、この関係について御説明いただきたいと思います。

東(祥)議員 前回のテロ対策法案において、自由党の考え方を基本法という形でまず提出させていただきました。これは、基本的には二つの柱になっておりまして、いわゆる自衛隊という日本で唯一の武力組織をどのように動かすか、どのように使うか、これは、我々政治家にとって最も重要な判断を伴うものであります。

 第一の柱というのは、それは、自衛隊を動かす場合、日本が直接攻撃される、あるいはまた、そのまま放置しておけば攻撃されるおそれがある、そのときに、まさにこれは自衛権の問題でありますから、個別あるいはまた集団を問わず、日本の防衛のためにすべての能力をそこに注ぎ込む。

 そして、第二番目の柱、これはまさに本日議論させていただいているところにかかわってくるわけでありますが、いわゆる自衛隊という武力組織をどのように国際協力において活用することができるか。

 ただ、さきに出させていただきました基本法案は、あくまでも自衛隊という唯一の武力組織を国連を中心とした平和活動にどのように利用させるかという問題でありまして、当然、PKO活動、そこには、ただ単に武力組織のみならず、御案内の、今日、NGOやその他のシビリアンの方々が活動して、より進展している領域もあるわけであります。したがって、その部分を抜き出して、今回、国際平和協力法案として提案させていただきました。

 憲法とのかかわり合いにおいては、先ほど申し上げましたとおり、憲法九条で禁止されているものは、この部分においては該当しない。別の言葉で言えば、日本国憲法の国際協調主義、これがまさに日本国憲法の一つの理念でありますけれども、この理念を忠実に法案の中に入れさせていただいたということでよろしいでしょうか。

藤島委員 ところで、第六条では、要するに、「我が国は、国際の共同の利益のため必要があると認めるときは、国際連合の総会、安全保障理事会若しくは経済社会理事会が行う決議又は国際連合、国際連合の総会によって設立された機関若しくは」云々とありまして、その決議が条件になっておると。この点について、一部まだ現実的でない部分があるのではないかといったような批判もあるわけですけれども、この点について、現在の政府案といいますか、現在の政府のPKO法そのもの、あるいは今回の改正を含めた案、それとテロ対策法、これとの比較で御説明いただきたいと思います。

東(祥)議員 国連安保理決議、あるいはまた総会の決議、あるいはまた経済社会理事会の決議、いろいろあるわけでありますが、ここで極めて注目しなければならないのは、基本的には国連の安全保障理事会の決議のみが拘束力を持つということでありまして、そこには、まさに憲章第七章のいわゆる武力行使容認決議まで含めた形での決議が可能になるということであります。

 本日、午前中も議論されておりましたけれども、日本は、いわゆる国連を中心とした平和活動に参画するに当たって日本独自の基準をつくっているわけであります。その独自の基準というのは、先ほど来申し上げているとおり、憲法第九条の延長線上で、抵触するのか抵触しないのか、ここが一つの分水嶺になっているわけであります。私たちの場合は、全くそれに抵触するものではないと政治そのものが判断をして、それがまた国連憲章と憲法とのかかわり合いにおいても、その部分は論理的にも説明できる問題だと思いますが、そこに本質的な差があると思います。

 したがって、国連安保理の決議が出たとしても、日本の場合は、そもそも参加することができないと独自の制約を課した上で、そういうふうに判断せざるを得ない局面というのは出てくると思います。

 他方、私たちの提出させていただいている法案というのは、初めの段階で、できるできないということではなくて、すべてできる。ただ、そこに参加するかどうかということは、あくまでも日本国の政治判断、政策判断でそれは選択することができる。それはすべての国々、国連加盟国が行っていることでありまして、日本の現行PKO法、また改正案が今回出ているわけですけれども、その部分に関しては何らブレークスルーしていない。そこが本質的な最大の違いなんだろうというふうに思います。

藤島委員 大変大きな違いがあるということなんですね。

 次に、もう少し内容について議論してみたいと思いますが、これは防衛庁長官に伺いますけれども、国連の指揮との関係になりますけれども、任務遂行のために武器使用を内容とするコマンドが発せられるというようなことがあり得るのかどうか、お伺いします。

    〔委員長退席、末松委員長代理着席〕

中谷国務大臣 それぞれのPKOの現場において司令官が判断することでございまして、現時点においてそのような命令を発するかどうかわかりませんが、我が国に関しましては、そのようなことが法律に現時点においては盛り込まれておりませんので、現地においてそのような指導や指令を、司令官が日本に対して命ずるということはないものだというふうに思っております。

藤島委員 これは、かつて平成三年の答弁で、指揮とコマンドといいますが、指図との関係で政府側の答弁なんですけれども、行政面とか兵たん面とかあるいは身分面とか、そういうところには国連軍の権限は及ばない、これは本国政府の問題である。しかし、兵員の配置、展開、そういった行動の側面については国連指揮官のもとで行動するということで各国も了解しておると承知しておると。この後段の部分で、国連の指揮がいわゆる運用面についてはあり得るわけで、そういう場合があった場合、これはどういうふうに行動するんでしょうか。

中谷国務大臣 現時点においても、政府の調査団やまた防衛庁の職員がPKOを行おうと予定している場所において、現地の状況等を視察したり、また国連の現地司令官とも面会をし、また職員とも調整を行っておりますが、当地における自衛隊の活動等、配置等につきましても、十分日本側の立場やまた計画等に配慮して実施をしていただけるものだというふうに思っております。

藤島委員 防衛庁長官の答弁はそれでよろしいんでしょうけれども、要するに、端的に言いますと、拒否するということなんですね。武器使用は、いわゆる場面にもよりますけれども、いわゆるa項、b項のうちのb項についての行動はできない。これはもう再三言われておりまして、これに関する武器の使用も当然できない。ここは一線を画されているということでよろしいわけですね。

中谷国務大臣 今後の検討課題であるというふうに認識いたしております。

藤島委員 今後の検討課題じゃないと思うんですね。ここは今の政府解釈に基づけばb項までは入り込めないということだと思うんですが、間違いないですか。

中谷国務大臣 今回の改正によりまして、bタイプの武器使用が実施できるということには及ばなかったわけでございます。

藤島委員 今回は及びませんけれども、そうしますと、現在の憲法解釈のもとでも将来はbタイプの実行もなし得る、こういうふうに考えていいんですか。これは重大なところなんですけれども。

中谷国務大臣 これにつきましては、将来の検討課題だというふうに思っております。

藤島委員 将来の検討課題ということは、現在の解釈のもとでも可能性があり得る、こういうふうに解釈されるんですけれども、本当にそれでよろしいんですか、確認しますけれども。ちょっと後ろの方と検討して答えてほしいんですけれども。

中谷国務大臣 現時点におきまして、それができるのかできないかというところまで検討はいたしておりません。

藤島委員 これは、ぎりぎりのところ検討した結果、どうしてもbタイプはできないというところで今残っているわけなんですよ。そこはきちっとしておいていただかないと、ここは将来の検討結果で今の解釈のもとでも十分できるというのでは、本当にそういうことで、きょうは法制局は呼んでいないんですけれども、大丈夫なんですかということで確認をしたいんです。

 なぜかといいますと、この次の質問なんですが、その点については自由党の案ではどうなっておりましょうかと。

東(祥)議員 我が自由党の提出法案、国際平和協力法第九条におきまして、国際平和協力業務に従事する職員は、任務を遂行するため、国際法規及び国際連合の定める基準その他確立された国際的な基準に従い武器を使用することができるとして、武器使用に関し、国連の基準等の国際基準によるべきことを定めております。

 ところで、今藤島委員御指摘の国連の基準では、国際平和維持活動に関して、a、要員の生命等の防護と、b、任務の遂行を実力によって妨げる企てに対抗するために武器の使用が認められているところであります。したがって、我が国の要員は、この国連の基準に従い、任務の遂行を実力によって妨げる企てに対抗するための、いわゆる御指摘のbタイプの武器使用を行うことが可能である。

 以上です。

藤島委員 ここは大事なところなんですね。私は、今の政府解釈、憲法解釈でいく限りはbタイプは無理だと思うんです。もしbタイプができるとなると、それこそ憲法解釈から何から、もうまがいの解釈をどんどん膨らませていくということになるんじゃないかと思います。

 それからもう一つ、いわゆるPKO五原則との関係でありますけれども、PKO五原則は、一番が、紛争当事者の間で停戦の合意が成立していること。二番が、当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。それから、当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく中立的な立場を厳守する。こういう大きなのは三つがあるわけですね。あと四と五があるんですけれども、この三つを厳守しながら、PKO、これからの参加というのは非常に難しくなってくる場面が多くなるんじゃないかと思うんですね。

 これは、これまでの各委員からも質疑があったところでありますけれども、その点について、現在のPKO法は非常に窮屈にできておる。現実に派遣できないようなケースが、今度のアフガンの問題なんかでも、この要件を完全に全部クリアするというのは非常に難しいというような気がするんですね。そのとき、また新しい法律を政府が出すかどうかは別ですけれども、恐らく今までの政府答弁を集合してみますと、なかなか難しいんじゃないかと思うんですが、その点、自由党の案については、このPKO五原則との関係はどういうふうに考えておるんでしょうか。

東(祥)議員 藤島委員御案内のとおり、日本がPKO活動に参加するに当たってのいわゆる五原則というのはあくまでも日本独自の基準でありまして、ただし、五つの基準のうちの三つというのは、広く大枠の形においても、国際連合においてその指針に従った形でPKO活動を展開するということは御案内のとおりであります。

 ただ、問題は、委員が指摘されているとおり、また、午前中の他の同僚の委員が指摘されているとおり、伝統的な、本当に紛争していた当事者同士が停戦を合意するのか、こういったことを考えたときに、これから多分予想される問題というのは、いろいろな部族間に分かれた紛争が行われていたときに、その部族間すべてにわたって一〇〇%停戦の合意が得られなかったとしても、これは国際社会の平和と安定のためにとってどうなのかという、国際連合加盟国、とりわけ安保理加盟国の方々がどのように判断するか、そこに極めて重要な問題を提起していることなんだろうと思うんです。

 そういう意味において、一〇〇%ではなくて七割あるいはまた六割五分でも、これはPKO活動を展開させる必要がある、このように安保理が決断したときに、我々の法案においては、そこに参加、協力することができるというふうになるわけです。政府案では、そうではなくなる、いろいろな議論が出てくる。

 二番目の、いわゆる当事者間の受け入れ合意、この問題もそうであります。

 多分、アフガニスタンにおいては、今北部同盟が実効支配を完成させようとしている。そのときに、来るべき政権においてどれだけイニシアチブを自分たちがとれるかどうなのか。そのときに、国際連合を中心とした平和維持活動が入ってくることに関して、多分、来なくても大丈夫ですよ、我々がやりますよという形でのいわゆる和平プロセスが今回展開されていくんだろうというふうに思うんです。

 しかし、そのときにも、国際社会がこの問題をどのようにとらえるかということによって、果たして今までのような伝統的な形で、本当に一〇〇%の形で同意が得られるかどうかという問題に関しても、当然、国連PKO局においていろいろなシミュレーションを行っていると思います。

 そこで決議が出たときに、日本として、我々の法案においては、参加、協力することができる。ところが、現行の政府の法案においては、そこでまた議論になってしまって、ぐちゅぐちゅじゅくじゅくした議論が続くことになるんではないのか、このように思います。(藤島委員「それともう一つ、紛争当事者に偏ることなく中立的な立場の厳守というのは」と呼ぶ)

 これは、国際連合の、僕も元国連の職員ですから、それは中立的な立場で仕事をするというのは、国連の枠組みの中で行われている基本原則でありますから、ただ、その中立性をどのように担保するかということは極めて政治的な問題でありまして、客観的にそれを表明するというのはなかなかできない。

 いずれにいたしましても、私たちの提出させていただいている法案においては、こういう五原則にとらわれることなく、国際社会が総意として、国連安保理決議、並びに総会あるいは経済社会理事会、そういうところでかんかんがくがくの議論をして、総意として決議が出てくるわけですから、それに対して、その過程において日本政府は代表して意見を開陳していけばいいんであって、そこで決議が出た場合には、それに基づいて参加、協力することができる、そういう建前になっております。

    〔末松委員長代理退席、委員長着席〕

藤島委員 防衛庁長官に伺いますけれども、警護任務はできるんでしょうか。先ほどのbタイプと似たような質問なんですけれども、今後、今の政府解釈、憲法解釈のままで、警護任務は将来検討によっては可能になるのかどうか、伺います。

中谷国務大臣 警護任務でございますけれども、いわゆる要人の警護等につきましては、その要人は「自己と共に現場に所在する」「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」に該当して、自衛官が武器を使用して防衛することが可能となる場合があり得るというふうに考えております。

藤島委員 今回の案による、どこまで含むかという議論は、また明後日の時間に細かく議論をしたいと思いますけれども、そういうことではありませんで、今までいわゆる警護任務といっていた部分、これも、かつての議論で、憲法解釈の関係から、警護任務をやるには、やはりその裏づけとなる武器の使用といいますか、武力の行使がないままの警護任務というのは困難であろうという判断で除かれているわけですけれども、今回、武器使用の範囲を若干広げた点で、確かに、警護対象がこちらの方に入ってきてしまえば、今のような解釈も管理下に入ったということで成り立つのかもわかりませんけれども、そうでなくて、いわゆる国連に依頼された警護任務、こういうものは、伝統的な今までの議論ですと、これはできない。やるためには、先ほどのような武器の使用の裏づけがないと、現場の自衛官にそれこそ大変な無理を押しつけることになるので、そういうことはできないんだ、そういう議論だったんですけれども、その点についてはそういう考え方でよろしゅうございますか。

中谷国務大臣 基本的には、自然権的権利でございまして、自衛官と同じ現場に所在をして、不測の攻撃を受けて自衛官とともに共通の危険にさらされたという状況の中で、その安全確保について自衛官の指示に従うことが期待される者である場合においては、この防御の対象になるということでございます。

藤島委員 確かにおっしゃるとおりだと思うんですね。狭い範囲の警護では意味はわかるんですけれども、いわゆる国連が求める警護というのはそういう警護じゃないんですよね。要人がどこかからどこまで移動するのを警護していってほしいとか、こういう警護なんですよね。こういうケースは、私は今までの議論ではできない。したがって、今回のPKF凍結の問題でもその部分は入っていなかったという事情にあるわけですけれども、その点、確認をしておきたいんです。

中谷国務大臣 今回、任務の追加には入っておりませんが、警護の業務を追加することについてはさまざまな議論があるということを承知いたしておりますので、このような業務を的確に遂行するための武器使用のあり方を含めて、今後十分に検討していく必要はあるというふうに思います。

藤島委員 何か、政府の考え方ですと、どんどんいつの間にか広がっていって、集団的自衛権も何もかもなくなるような、そんな感じを受けてしまうんですけれども、少なくとも、割り切りとしては、さっき申し上げたように、集団的自衛権が禁止されているということからくる武器使用の限界、そこからくる、警護任務は受けられないということで、実は、現在の凍結されているPKFにさえ入っていない、こういう問題なんですが、時間があれなものですから、この点に関しては自由党の案ではどういうふうになるんでしょうか。

東(祥)議員 先ほど御説明させていただいているとおり、武器の使用に関しては、国際慣行、そしてまた国連の基準で認められている限りにおいて武器の使用をすることができるというふうになっております。

 先ほど藤島委員が、世界各国に展開された日本のPKO部隊、観察された、そういうお話がありましたが、例えばモザンビークの例で、御記憶だと思うんですが、あのとき、日本部隊とポルトガル部隊が一緒のところに生活しておりました。日本部隊が多分シャワー室を借りていたと思うんですね。そのとき、例えば、もし反乱分子が、いわゆる平和停戦合意を守っていたとしても不満分子というのは常にいるわけですから、もしポルトガルに攻撃をしかけてきたときに、日本というのはどうするんですかと。そのときに、日本の今のPKO法、そしてまた改正されたときに、常にシャワー室を共有しながら、また、あるときはワインをともに飲みながら、共同で対処しなければならないPKOのチームとして戦っているにもかかわらず、まさに友軍のチームを見放す、そういう法案になっているのですよ。

 だから、それはそもそも武器使用の限定からきてしまう。それは、憲法九条の延長線上で、国連を中心とした集団安全保障措置の一環としてとらえるという決断をしていないから、こういう議論が約十年近くなった今日まで続いている、これはまさに政治の怠慢だろう、こういうふうに僕は思っております。

藤島委員 現行法では、武力行使、戦闘行為が行われそうになると中断という規定があるわけですね。任務を中断する。それで、それがおさまらない場合は帰ってこなくちゃいかぬ。ここが、現行のPKO法、これはテロ対策法もそうですが、大変重要な問題なんですね。

 今説明があった部分とちょっと似通った部分なんですけれども、一緒になって仕事をしているときに、ぽっかり我が日本の機能している部分だけが穴があく、中断をして帰ってくる。それこそ、そのときこそ各国は自衛隊に活躍してもらいたいそのときに、ほっぽって帰ってこなきゃいかぬ、もしそのまま戦闘行為を行えば憲法違反になる、こういう今の法律の立て方になっているわけですが、そこは、防衛庁長官よろしいですね、そういうふうな立て方であるということは。

中谷国務大臣 国連の活動に対する支援等につきましては、武力行使にならぬように、国際基準に合わせて、国連の行動に合わせていかなければならないというふうに思っておりまして、今後検討すべき課題だというふうに思っております。

藤島委員 今後検討すべき課題じゃないので、今の法律がそういう中断という制度があって、それがそのままになっていると結局帰ってこなきゃいかぬ、こういう法律の立て方になっている、これはもう間違いないことなので、この先どういう検討をされるかどうかは別にしまして、そこが大問題であるということなんです。

 これは、もう長官がどういう言い回しをしても、法律にはっきり書いてあるわけで、間違いない事実なんですけれども、この点について自由党の案はどうなっているかということを聞きたいわけです。

東(祥)議員 要するに、日本のPKO法、テロ対策法案もそうですけれども、いわゆる憲法論争というバーチャルリアリティーの世界でずっとやってきているのですよ。だから、現場でどのような対応をしなくちゃいけないのか、他の国々がどのような行動を行っているのか、そういう基準に合わせた形で適応できないような手かせ足かせをしてしまっているのだと私たちは思います。

 したがって、先ほど言及なされました、テロ対策法案もそうですし、このPKO法案もそうですけれども、いわゆる五原則のうちの三つのうちの一つが崩れてしまえば、中断し、そして自分だけが、自分の国だけが撤収しますよ、このような、まさに国際協調主義とは相反する方針でPKO活動に参加しようとしているのですよ。そうであれば、やめればいいのですね、そういう活動には一切参加しませんと。

 先日の代表質問においても発言させていただきましたけれども、国連のPKO局長というのは、PKOに参加する各国の部隊というのは、共同で仕事をしなくちゃいけないのだと。したがって、自分たちのことは守ってください、あなた方のことは守れませんというような形ならば、それは共同行動そのものができなくなってしまうではありませんか。

 したがって、我々の法案は、その現場の動き、現場の対応、国連を中心とする平和維持活動、こういうものをすべて把握した上で、国連の基準、そしてまた国際慣行上行われている基準に従って動けるような形にしなければならない。そこでの行動というのは、いわゆる今日まで内閣法制局中心になってやってきている憲法九条の延長線上における憲法解釈とは全く違った角度から、この問題を提起させていただいているわけであります。

 以上です。

藤島委員 そうすると、当面の国際協力、自衛隊のPKO協力というような観点からしますと、今回の法案でもう完全である、こういうふうに認識してよろしいですか。

東(祥)議員 常に世の中、また時代というのは変貌していきます。完全ということは、それは私は言い切れませんけれども、少なくても、本質的な部分における、核の部分においては、国際社会と共通の土俵で、国際の平和と安全に対して、日本の意思としてそれを発言することもできますし、そしてまた、具体的な展開を可能ならしめることができるだろうというふうに思います。

 ただ、何度も申し上げるとおり、具体的にできるという前提のもとで、何をやるかやらないかということはこれは政治の判断であり、政策判断でありまして、それは日本が得意とする分野で頑張っていけばいいわけだと思います。不得意な分野をあえてやる必要はない、このように思います。

藤島委員 最後に、やはり自衛官を海外に派遣するには、自衛官自身が納得して行く必要があると思うのですね。恐らく自衛官は入隊するときは、我が国の安全のため、あるいは海外に行くときであれば、世界の平和に貢献しているのだという、本当に自分自身の納得が必要だと思うのですね。その点について、もう実は我が党の案は、先ほども民主党の方からも拍手がありましたけれども、非公式には自民党の皆さんも、気持ちの中ではほとんどの皆さんは賛成しておられるわけですね。

 本当に最後になりますけれども、委員長の感想をお伺いしたいと思います。

玉置委員長 今までのお話を聞いておりまして、やはり日本のPKO参加は国際水準でいかないと評価をされない、また信頼もされないというふうに思います。そういう意味では、まだまだ論議の点があると思います。

 以上です。

藤島委員 ありがとうございました。

玉置委員長 次に、児玉健次君。

児玉委員 日本共産党の児玉健次です。

 福田官房長官、中谷長官、田中外務大臣にお尋ねをしたい、こう思います。

 最初に、PKFの本体業務の凍結解除をめぐってですが、これは中谷さんからお答えいただきたいのだけれども、自民党、公明党、民社党が平成二年の十一月に自公民三党協議のための中間報告というのを書いています。そこで、国連平和維持活動に関する業務の冒頭のところに、「武力紛争当事者の兵力引き離し」というのを挙げています。今度、本体解除された第三条のイ「紛争当事者間で合意された軍隊の再配置」、これは今の兵力引き離しに当たりますね。お答えください。

中谷国務大臣 最後の部分が聞こえませんでした。

児玉委員 兵力引き離しに当たりますね。(中谷国務大臣「どの部分。その前のフレーズ」と呼ぶ)三条、そこのイにありますね、「紛争当事者間で合意された軍隊の再配置」、そこです。

中谷国務大臣 この部分は、停戦監視ということで、兵力が決められた線から逸脱しないかどうか、そういう点を見張るということで、兵力引き離しの一種ではないかというふうに思います。

児玉委員 相対峙する両軍の間に割って入って兵力を引き離すこともあると。

 そして次に、三のロのところに「緩衝地帯その他の武力紛争の発生の防止のために設けられた地域における駐留及び巡回」とあります。そして、ハには「武器の搬入又は搬出の有無の検査又は確認」とあります。このようなことをすることになりますと、平和維持軍としては、国連の言葉で言えばエリア・オブ・ディプロイメント、展開地域が設定されることになる。そして、展開地域における駐留地、これは一般的に言えば陣地ですね。そして検問のための検問所の設定、そういうことに事柄が運んでいきますね。

中谷国務大臣 そのとおりでございますが、これを実施する前提というのは、停戦の合意がなされ、また受入国の同意がされるという約束事に従ってやるわけでございますので、これらを逸脱した状況が出たら、そもそもPKO活動がなくなるわけでございます。この停戦が維持された状況において先生のおっしゃるような業務を行うわけでございます。

児玉委員 その停戦の成立だとか、両紛争当事者のPKO活動に対する合意だとか、それらはこの法律の中に書かれていますから、後からまた議論することがあるでしょう。

 そこで、今のようなPKF本体の活動に加わっていくと、停戦監視等のために部隊の展開地域を巡回パトロールする、検問所で車両、通行人を尋問して武器を押収することもある、これらは、土木工事、輸送などを業務とする軍事活動とは質が異なりますね。歩兵部隊、日本の自衛隊にあっては普通科部隊、要するに軍隊にしかできない任務だと考えますが、そのとおりですね。

中谷国務大臣 いわゆるPKF本体業務ということで、おっしゃるとおりでございます。

児玉委員 さて、そうなりますと、九一年九月十九日に、PKO法案提出に当たって内閣官房長官が談話を出しています。その中で、強制手段によって平和を回復する機能を持つものではない、したがって、国連平和維持隊は、従来の概念の軍隊とは全く違うものであり、戦わない部隊とか、敵のいない部隊と呼ばれるゆえんである、こういうふうに認識を示していますが、この認識が変わったわけですか。

中谷国務大臣 その認識は変わっておりません。

 これらの業務というのは、いわゆる停戦で定められた事項が守られているかどうか、それを注視、また監視をする役割でありまして、いわゆるレフェリーやそういう違反がないかチェックするために行っているわけでございまして、そのための組織、部隊であるというふうに考えております。

児玉委員 認識が変わってないということは承っておきましょう。

 そこで、もう少し具体的にお聞きをします。

 PKFがパトロールなどの任務を行っているとき、その宿営地や検問所が襲撃される、待ち伏せに遭う、突発的な武力衝突の危険と隣り合わせ、これが現在のPKFの活動の実態だと私は考えます。

 例えば、東ティモールのPKOで、昨年八月のことですけれども、国境地帯を警備行動中に、越境してきた武装グループを目撃したという住民からの報告を受けて、ネパール部隊が現地に出動し、待ち伏せ攻撃に遭って犠牲者が出ました。そういうことは、PKFの活動では残念ながらよく起きることです。そういう活動に今回自衛隊が参加することになる。そこで、自衛隊がPKF活動に参加した場合、巡回パトロール中に、みずからの展開地域において武装グループがあらわれている、そういう目撃の情報を受けたとき、どんな任務を担当することになるでしょうか。

中谷国務大臣 基本的には、自己防御のための武器使用等によって身を守るということでございますが、当面先方の動向を注視して行うわけでございます。それでもなお危険を感じる場合におきましては、その業務を中断して部隊の方へ帰るということでございます。

児玉委員 実際に、今国連が展開しているPKFにあっては、生命、身体の防衛だけでなく、任務遂行を実力で阻止しようとする企てに対する武力の行使が認められています。例えば、国連サイプラス平和維持隊、一九六四年四月十日の国連事務総長のメモの中でこのことが明記されています。任務遂行を実力で阻止しようとする企てに対する武力行使の容認です。

 そういう活動を行うPKFだからこそ、これまで日本政府は、武力行使の目的を持って武装した自衛隊を海外出動させることは憲法上許されない、こうはっきり述べていました。今のは法制局長官の言葉ですが、例えば、九〇年十月二十五日、海部首相は、武力行使を伴うような平和維持軍、これについての参加は困難、要するに、武力の行使をしてはならないという憲法九条のゆえに、日本政府は国連平和維持軍への参加は困難と一貫して述べてきたのではありませんか。長官、どうですか。

中谷国務大臣 基本原則、いわゆる参加五原則でございますけれども、この精神はいささかも変更しておりませんで、今回PKF活動、今述べられたことが内容でございますけれども、それに参加するに当たりまして、憲法で禁じられた武力の行使をするという評価を受けることがないように、十分参加に当たりましてはこういった活動状況を勘案して、慎重に選考をして実施したいというふうに考えております。

児玉委員 今、長官がお答えになった言葉は、この二十二日の衆議院本会議で私どもの赤嶺議員に対する長官の御答弁、今の言葉を私は精査できないので、そのときの言葉は、「参加五原則は、我が国が国連平和維持隊に参加するに当たって、憲法で禁じられた武力の行使をするという評価を受けることがないことを担保する意味で策定された、国際平和協力法の重要な骨格であります。」、こう答弁されましたね。どうでしょう、そのとおりですか。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

児玉委員 そこで、承りますけれども、この言葉自身は私はよく理解できるのです。すなわち、参加五原則が崩れたら現行の憲法のもとでPKF参加は困難、できないということですね。

中谷国務大臣 そのとおりでございます。

児玉委員 そこで、次の問題に入りたいと思います。武器使用の拡大、二十四条の問題ですね。今回の改定が、憲法違反とならない担保である武器使用原則を変質、拡大するものではないかというふうに私は受けとめざるを得ないのです。

 そこで、具体的に申しましょう。まず第二十四条、防衛の対象に、その職務に伴い自己の管理のもとに入った者をつけ加えました。中谷長官は、同じく二十二日の本会議での私どもの質問に対して、不測の攻撃を受けて自衛官と共通の危険にさらされたとき、その現場において、その生命、身体の安全確保について当該自衛官の指示に従うことが期待されている者を「その職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者」、そうお答えになった。

 今おいでになったけれども、福田官房長官、御苦労さまです。この前テロ特措法のときに、ちょうど今の問題をあなたと議論しました。この点は、外国部隊の隊員についても同様でしょうか、長官。

中谷国務大臣 現時点のPKO法案におきましては、他国の要員や国連職員は含まれておりません。しかし、これまでの活動を勘案いたしますと、やはり同じ職場で勤務をする者、また国連の職員が危険な状態に際して、ただ目前で看過して見ておくだけでは、到底国際社会の中で容認できないような事態があるという認識のもとに、今回、武器の使用に関しまして、管理のもとに置く者において武器の使用をするということにしたわけでございます。

児玉委員 長官、私が聞いているのは、極めて簡単な一つのことしか聞いていないのです。管理のもとに入るということについて、いろいろ御答弁があった。その対象に、おっしゃるような条件を満たしたとき、外国部隊の隊員は入りますか、入りませんか。どうでしょう。

中谷国務大臣 その外国の要員が自衛官と同じような危機に遭遇をして、かつまた自衛官の指示に従うことが期待される、また先方が希望するような場合においては、対象に含まれるというふうに考えております。

児玉委員 私、お聞きするところでは、政府や与党の諸君の内部の論議の中で今の状況を議論なさったときに、突如として襲撃を受ける、そのとき、自衛隊の幹部が伏せろと声をかける、それに応じて外国の部隊の隊員も伏せたとすれば、それは「自己の管理の下に入った者」とみなすのだ、こういう議論があったと聞くのですが、そういうことでしょうか。

中谷国務大臣 そのような議論があったというふうに私は聞いておりませんけれども、今お話を伺った範囲の中で、仮にそのような危険に遭遇した場合に、自衛官が伏せろと言って外国部隊の兵士が伏せた場合は、この管理のもとに入る者として防衛の対象になるというふうに私は思っております。

児玉委員 九月十一日の許しがたい国際テロの問題に関連しての一連の国会審議、そのとき、私は福田官房長官に対して、捜索救助活動で救助された米兵をどのように見るかという質問をしたとき、ジープを私は言いました。ジープに乗る、そしてジープに乗って輸送する。長官は、自衛隊の手によって輸送が行われているようなときには、その米兵は「管理の下に入った者」と判断できる、こう答弁されたと私は記憶しています。そして、会議録も改めて読みました。かつ、その後、法制局長官が、ただ、救助された方がみずからを守るというような武装をしていて、そういう人たちがみずからを守ることができる能力がある、この場合は管理しているという中には入らない、こういうふうに答えられた。

 救助した米兵が自衛隊のジープに乗っているときは管理のもと、そして今の、伏せろと言うと伏せたけれども、ある国の要員はしかるべき武装をしていて、みずからを守る能力がある、そうなると、テロ特措法のときの議論では、これは入らないということになりはしないか。いかがでしょう。

中谷国務大臣 基本的な考え方は、やはりいろいろなケースに応じて違うというふうに思いますが、安全確保のために自衛官の指示に従うかどうか、同じような立場において自衛官の指示に従うような状況にあるかどうかということでございまして、このような者は身を守る手段を十分に持たないために、いわば自衛官に身をゆだねざるを得ないというような者であるというふうに思っております。

児玉委員 私は、一般論を述べているのではないのです。法案の審議ですから、厳格でなきゃいけない。外国の要員がみずからを守るため、しかるべき武装をしている、一方、自衛官、自衛隊のある種の上官が何らかの声をかける、伏せろと言う、その声に応じて伏せた、その場合は「管理の下」、別の行動をすれば管理の外ということになってしまう。この辺のところは何を基準にしているのかということがさっぱりわからない。こういうあいまいな言い方だと、状況に応じて、まるでゴムひものように自在に「管理の下」を広く言うことも可能になりますね。それでどうして武器使用が日本の隊員の生命を守る必要な最小限度と限定的に言うことができるだろうか、この点、お答えいただきたい。

中谷国務大臣 外国人部隊等については、先方も部隊行動をいたしておりますので、基本的には上官の指示、命令に従わなければならないわけでございます。ところが、個人的に訪れた兵士とか、また、突発事故等で自分の上級部隊の上司に従うことが不可能な場合もございます。そういう意味では、自分自身で身を守るすべを十分持たずに、いわば自衛官に身をゆだねざるを得ないような者でありまして、そういう者につきましては、自衛官の指示に従うために自分の身の安全をゆだねるというケースに当たるというふうに思っておりまして、そういう意味では、無限定に外国人兵士を守るということではございません。

児玉委員 それは、聞いている人を納得させませんね。二十四条が極めてあいまいに、自在に拡大されているというのが今度の手直しの一つの特徴です。

 もう一つ大きな問題、それは、自衛隊法九十五条の適用の問題です。

 九十五条においては、自衛官は、自衛隊の武器、弾薬、火薬等々、職務上警護するに当たり、人または武器等を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができるとあります。武器等を「職務上警護するに当たり、」という言葉の意味なんですが、これはあらかじめ武器等の警護任務を付与された自衛官が部隊として配置されるということを前提にしていますか。

中谷国務大臣 あらかじめ警護任務を付与された自衛官のみでございます。

児玉委員 さてそこで、武器等の防護を任務とするあらかじめ任務を付与された自衛官、隊員がいる。そういう隊員がいない場合に、武器に対する襲撃があった場合はどうなりますか。

中谷国務大臣 任務を付与されておりませんので、その場合はできないというふうに思っております。

児玉委員 そこで、先ほどのPKFの本体業務凍結解除の問題に入りますが、自衛隊部隊が、PKOの歩兵部隊の任務、停戦監視、武器の搬入、搬出など、そういった業務を行う宿営地、陣地と言ってもいいでしょう、検問所、そこに置かれている自衛隊の車両、そして武器、通信機器、これらの警護は、そのことを任務とする部隊がこの後、PKFの活動にあっては配置される、そういうことになりますね。

中谷国務大臣 部隊ではなくて、自衛官個人個人でございます。

児玉委員 部隊ではなくて個人個人、その個人個人をあらかじめ特定してその任務を付与されていますか。

中谷国務大臣 派遣する場合は、そのようにいたします。

児玉委員 そうであるとすれば、話をさらに深めなきゃいけませんね。自衛隊PKF部隊が構築する検問所が攻撃を受けることがあるかもしれない。そして皆さんが、この自衛隊法九十五条に規定する武器の使用について、これは平成十一年四月二十三日、衆議院のガイドライン特別委員会に政府が出したものですが、そこで、その事態に応じ合理的に必要とされる限度で武器を使用する警察比例の原則というふうに明記していますね、警察比例の原則。ストローク・フォー・ストローク・レスポンシズ、撃たれた分だけ撃ち返す、バズーカで撃たれたらバズーカで反撃する、そういう応戦状況が生まれるのではありませんか。

中谷国務大臣 その原則におきましては、国内と同様に、その原則に基づいて実施をするものでございます。

児玉委員 そのことが持っている性質、危険性というのは非常に大きいということを私は指摘しつつ、そのことと憲法との関係の問題を長官や大臣その他にお聞きしたいと思うのです。

 皆さんが九九年四月に出されたこの九十五条に規定する武器の使用について、なかなか難しい文章になっていますね。一として趣旨が書いてあって、二であれこれ列挙されていて、その中に先ほどの警察比例の原則という言葉も書き込まれている。その趣旨のところで何と書いているかというと、PKO五原則の第五原則、皆さんがそれが中心的な部分だともおっしゃっている、隊員の生命等、そして今までの説明では、等とは身体のことだ、こういうふうにも説明がされている。そういう生命または身体を防衛するための武器の使用は憲法九条一項の禁止する武力の行使に該当しない、こう言いつつ、これはあくまで例示でしかない、そのほかにも武器の使用があり得るとして、そして自己保存のための自然権的権利というべきものの範疇とは異なる別の性質の武器の使用、そういうものに九十五条の武器の防護に伴う武器の使用が入るのではありませんか。お答えください。

中谷国務大臣 九十五条の武器防護のための武器使用は、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を防護するためのものでございまして、自然権的権利とは違った観点での武器防護であります。

児玉委員 非常に重要な問題で、そこのところははっきり承りました。

 そこで、そうなりますと、政府が九九年四月二十三日、衆議院のガイドライン特別委員会に提出された文書では、九十五条に規定する武器の使用、これは今のお答えでも明らかなように、いわゆる自然権的権利に属するものではない、別の範疇に当たるものだと。そうなりますと、PKO五原則の五原則目とは、枠から外れませんか、どうですか。

中谷国務大臣 これは離れないというふうに思っております。

児玉委員 それは全く説明がつきませんよ。PKO法の成立のときになぜ自衛隊法九十五条が適用除外になったのか、いろいろ言われました、混乱があるだとかその他。いわゆる内戦型のPKFが残念ながら進行しているもとで、当時皆さんが九十五条を適用除外したその条件はますます進行しています。

 そして同時に、PKO法成立時において自衛隊法九十五条が適用除外とされたのは、武器使用について規定する第五原則との関係から見ても、自衛隊が武器等の防護のための武器を使用することは、同原則の枠内ではないことも理由の一つである、こういう議論がされています。この議論も長官は否定されますか。

中谷国務大臣 まず、九十五条の武器使用は武力行使ではございません。

 というのは、これを実施する上においては、先生も先ほどお述べになりましたけれども、いろいろな要件が定められておりまして、受動的かつ限定的な必要最小限の行動であるべきであるという要件のもとに武器を使用するものでありまして、例えば自衛官に限られる、また武器の退避等によってもその防護が不可能である場合は、他に手段のないやむを得ない場合でなければ武器を使用することができない、警察比例の原則等の要件のもとでございます。

 そして、当初これが除かれていた理由につきましては、当初は初めてのPKO活動等でありまして、この法律を適用すればかえってその事態の混乱を招くおそれも排除しないということと、もう一点は、平和協力業務の場合に、一般的に個々の武器等の破壊、奪取が業務全体を不可能ならしめるといったことはさほど想定されないというような事情によって、慎重かつ謙抑的に業務をスタートしたわけでございますが、数々PKO活動を実施いたしまして、このようなおそれがないというふうに判断をした結果、本来適用除外すべきでないような九十五条の武器防護のための武器使用、これを今回改正によって認めるということにした次第でございます。

児玉委員 議論をかみ合わせたいですね。

 受動的、限定的、謙抑的とおっしゃいました。どんなふうに言ったとしても、先ほどの警察比例の原則に基づいて反撃が可能ですね。そして、しかもこれは隊員の生命等の防護に限るという自然権的な権利のカテゴリーとは別のものである。そして、PKO五原則の第五原則というのは、皆さんが繰り返し述べていらっしゃるように、あなたたちの主張によっても、要員、隊員の生命等を防護するための必要最小限度のもの、自然権的権利の性格づけをなさっているんですよ。その性格づけからこの九十五条の武器使用は明らかに外れているではありませんか。はっきりさせてください。

中谷国務大臣 我が国が憲法で禁じられているということは、武力行使をするとの評価を受けることがないという意味でございまして、この武器等におきましては、我が国の防衛にとって非常に重要なものでございますが、こういうものを守るということにおいてもいろいろな制約をつけて、受動的、限定的な必要最小限度の行為でありまして、それが海外において行われたとしても、憲法の禁じる武力の行使に当たるものではないという認識において使用するものでございます。

児玉委員 何回同じことを言われても、私がお聞きしていることと違いますね。

 私が聞いているのは、PKO五原則の五番目のその枠の中に自衛隊法九十五条における武器の防護のための武器の使用が入るか入らないか、明らかに入らない。そして、これまでの論議の中で、それはPKO五原則の枠内には入らないという論議も随分されてきた。そういう中で、先ほど長官自身がはっきりお認めのように、PKO五原則というのは憲法に違反しないということの担保である、それが崩れたら無条件でのPKF参加は困難、できない。そういうものですよ。

 その五原則が九十五条によって崩れたではありませんか。はっきりしていますよ、事態は。どうですか。

中谷国務大臣 基本的には、この九十五条というのは我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を防護するための規定でございますが、いわゆる部隊にとっても大変重要なものでございます。

 過去のPKOの事例の中で、やはり車が強盗に襲われて通信機材等が盗まれた事態を経験いたしておりまして、他国の部隊の例では武器そのものが強奪されるといったことも発生したというふうに聞いております。

 このような例を受けますと、やはり自衛隊の通信機材の盗難等に際して、武器による威嚇等を行ったとしても武力行使にも当たらず、事態を混乱させるようなことがないと考えられますし、また、武器の破壊また奪取を見過ごすということによってかえって隊員の緊急事態への対応能力の低下、また治安の悪化につながるということも想定をされまして、この認識に至って、今回適用というふうに判断したわけでございます。

児玉委員 今度は別の論点が出てきた。窃盗、これは本会議であなたがおっしゃったことです。そういうことは許されるべきではありません。はっきりさせましょう。

 その上で、どんな事態が起きているのか。私が聞いている範囲で言えば、一つは、東ティモールで、市街地の駐車場にとめてあった自衛隊の車両が破壊されて携帯通信機材が盗まれたケース。もう一つは、ゴラン高原で、同じく市街地の駐車場に置いてあった自衛隊車両のかぎが壊されて窃盗に遭った。この二件以外に何かありますか。

中谷国務大臣 それ以外にあったかどうかまだ確認をいたしておりませんが、我が国のみならずほかの国も、大切な武器が窃盗されるとか金品が盗まれるとか、そういうケースもございまして、この事態を放置しては部隊の対応能力等も低下するということで、今回その必要性を感じるわけでございます。

児玉委員 やはり、PKO五原則のあなたたちが中心だと言ってきた第五原則、そこから枠をはみ出す新たな要素が、自衛隊法九十五条、そういう形で持ち込まれてきています。

 私は、田中外務大臣にお聞きをしますが、先ほどブラヒミ報告、これは二〇〇〇年八月、十人の有識者がいろいろ議論をなさった、日本からも参加した。そして、その中で今の武器使用の問題について、外務省はこう訳していますね。PKO要員は要員のみならず他の要員及び任務を守ることが必要である。交戦規定は、警察比例、ストローク・フォー・ストローク・レスポンシズに限定せず、破壊的な攻撃の根源を沈黙させるに足る攻撃能力の付与を認めるべきだ。こう言っていますね。これが、今PKOの今後の方向性として提起されている、そのとおりになるかどうかはわからないけれども。

 田中外相は先ほど、このブラヒミ報告は長期的課題として検討できるというふうにお答えになった。長期的課題として、この交戦規定の、まさしく警察比例を上回る大規模な反撃、それが認められることが長期的な課題になりますか。お答えください。

田中国務大臣 先ほどのお尋ねのときに、ほかの方のときに長期的な課題についてお話し申し上げましたけれども、ブラヒミ・リポートの箇所につきましては、これを受けました事務総長の実施計画におきまして、国連の考え方が明らかになっております。

 事務総長は、武器使用に関するブラヒミ報告の勧告は、PKOが紛争当事者の合意のもとで展開する場合にのみ適用されるとした上で、勧告のいかなる部分も、国連が戦闘機構となることを意味したり、PKO要員が武器を使用する原則を根本的に変更するものではないと指摘をいたしております。

児玉委員 そのような方向での報告が出たということについてはもちろんどなたも否定なさらないし、そして、交戦規定の改定というのが、今の、福田長官も何回か本会議で言われた内戦型の紛争状況の中での一定の対応としても、現実の議論の対象となっている。

 そこで、私は最後に言いたいのですが、今、アジアの諸国が日本の現状に対してどんな懸念を抱いているか。

 一方では、インド洋に護衛艦その他が既に出動した。そして、今、武装した軍隊としての自衛隊がPKOという形で海外に出かける。そのことについての重大な憲法からの乖離がこの手直しで進められようとしている。

 韓国の中央日報は、その社説でこう言いましたね。日本政府に対して、既に世界第二位の軍事大国である日本の自衛隊が海外に出る状況は、韓国、中国を初めとする周辺諸国に懸念を抱かせるに十分な材料であり、東アジア全体の軍備競争を触発する可能性がある。(発言する者あり)静かに聞きなさい。

 田中外相、あなたはこの警告をどう受けとめますか。

田中国務大臣 今般の国際平和協力法の改正につきましては、折あるごとに近隣諸国にも説明もしてきておりますし、また今後も当然していかねばならないというふうに思っております。

 今現在、反応を示してきておりますところは、今委員のおっしゃった中国なり韓国ということがございます。やはり中国の場合外交部の報道官ですけれども、これは、記者の質問に答えまして、歴史的な原因から日本がいわゆる軍事的な方面において役割を発揮することに大変ナーバスで、非常に敏感でございますので、日本が慎重に行動せよということを希望する旨を発言したというふうに承知しております。また、韓国もPKFの凍結解除に懸念を示しているという報道もございますけれども、政府からは直接そうした懸念が表明されているという事実は承知しておりません。

 しかし、そうではありましても、近隣諸国に対しましては、必要に応じて法改正の内容について十分にさらに機会をとらえて説明をしてまいります。

児玉委員 今外相がおっしゃった中国の報道官、二十二日の記者会見で何と言っているか。PKOを含めて軍事分野での役割の発揮は非常に敏感な問題だと指摘をし、日本に、実際の行動で専守防衛の公約を厳守するようにその記者会見で述べているじゃありませんか。そこのところをしっかり見なさい。

 私の質問を終わります。

玉置委員長 今川正美君。

今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。

 私は、具体的な質問に入ります前に、この法案の一部改正につきまして、本会議の代表質問でも申し上げたことを簡単に繰り返しておきたいと思います。

 一つは、それぞれ今質疑の中で強調されておりますように、本来、あの戦争が終わってから国連が創設をされて世界の国々から大きな期待を集めながら、直後いわゆる冷戦下に入りまして、安全保障理事会の機能が事実上麻痺するような状態の中で、しかし、世界各地でやはり地域紛争が後を絶たない。その中で、それに対応するために、国連憲章上の規定はないけれども、いわゆるPKOというのが誕生したと思うのですね。特に、冷戦期間中の四十年間に約十三件、それから、むしろ冷戦が終わってからこの十二年間に四十三件のPKOがいろいろな地域で活動しているということでありまして、しかも、この四十三件の中の約九割は、よく言われる内戦型紛争に対応しているということであります。

 そういった意味で、やはり我が国としても、国連憲章で言う第七章、軍事制裁も含めたものとは質的にも違う、いわば平和を維持する、国際平和を維持していく活動には積極的にやはり関与していくべきだということには異存がありません。

 ただ、やはりこの九年間、このPKO協力法が成立をしましてから、今それぞれ質疑の中にもありましたように、いろいろな矛盾点がございます。それは一言で言うと、文民も含めていろいろな形のものが、参加の仕方があると思うのだけれども、率直に申し上げて、自衛隊を組織ごと、部隊ごとこれに参加をさせるというところからいろいろな無理が生じてきているのではないかというふうに私は認識をします。

 ちなみに、この自衛隊は、これはもう中谷長官に対しては釈迦に説法で失礼だと思いますけれども、朝鮮戦争のさなかにいわゆる警察予備隊という名前で誕生して、二年後に保安隊、この名前が示すとおりであります。そして、一九五四年に自衛隊という名の組織が誕生した。そのときには、代表質問でも申し上げましたが、日本国民に対する約束だけではなくて、約半世紀前に日本が大変な惨禍を与えたアジアの多くの国々に対する約束としても、これは、憲法九条の手前、自衛力までは否定されていないはずだ、必要最小限度の実力組織という位置づけの中で、国民の皆さん方あるいはアジアの国々に認知をしていただこうというのが原点であったかと思います。

 しかも、同じ自衛隊が発足をした五四年の六月には、参議院の本会議におきまして、「海外出動を為さざることに関する決議」まで採決をされているわけですね。

 そういう原点をしっかりお互いに確認し合いながら、自衛隊という組織をどういうところに出していいのか悪いのか、出すならばどういうふうな条件のもとでなのかということを逐一吟味しながら、議論をしてみたいと思うわけであります。

 そこでまず、今回のPKO協力法の一部改正の中身に入って伺いたいと思います。

 まず第一点は、いわゆるPKF凍結解除に関する問題であります。

 まず、中谷防衛庁長官にお尋ねをいたしますが、今申し上げましたように、自衛隊が本来海外の出動というのを想定していなかったにもかかわらず、PKOだったらということもありまして、九年前に法が成立をしたわけでありますけれども、専ら自衛隊をどう派遣していくのかというところから出発していますから、いろいろな問題点が出てきていると思います。

 このPKFを凍結したいきさつに関して、政府の答弁としては、ざっくばらんにいきますと、経験を十分積んだ上で、国内外から広い理解を得てから、それまでの間は凍結をするという答弁があっていますけれども、それはわかります。しかし、それだけじゃなくて、やはり憲法上の制約ということがあるから、PKFというのは日本特有のやり方として凍結をしておったということではないかと思いますし、その点を伺います。

 それともう一つは、当時のPKO協力法案の審議の経過の中で、内閣法制局も含めまして、これが法解釈上の限界点という言われ方が盛んにされましたけれども、そういう意味合いからしますと、やはりこれ以上のPKO協力法の一部改正であれ何であれ、明らかに無理だと思うんだけれども、その点はいかがでしょうか。

中谷国務大臣 昭和二十九年当時に参議院においてそのような決議をされたということは存じ上げておりますが、これは海外において武力行使をしないということでございまして、当時は冷戦の一番激しい時期でございましたが、今、冷戦が崩壊をして、世界全体が世界の平和をどう保つかということを真剣に考えておりまして、そのためにPKO活動が頻繁に行われているわけでありまして、このPKOの必要性につきましては委員と認識を一致するものでございます。

 そこで、当初、PKFについては凍結をして実施しなかったわけでございますが、これは、やはり初めてのことでありまして、十分PKOに対する国民の合意を得てから行うべきであるというような政治的な判断として行われたものでございますが、当時から状況が大変変化をしたことと、過去六回にわたって実際に派遣を行って、ああ、PKOというのはこういうものなんだなという点を国民の皆さんに御理解をしていただきまして、内外においてこのような実績を評価していただいて、このPKF凍結解除に対する御理解をいただいたところでございます。

 また、世論調査等におきましても、平成十二年の十月の内閣の調査におきまして、この参加を続けるべきだという合計が七〇%、また、読売新聞等の平成十三年十月に行いました日本人の意識調査で、この国連平和維持隊の活動に参加する方がよいと思いますか、「参加する方がよい」が四四%ということで、「参加しない方がよい」が二五%ございましたが、これを上回った結果が出ておりまして、国民の皆様方の御理解がいただけるのではないかというような環境が変化したこともありまして、今回、凍結解除を行うわけでございます。

今川委員 そこで、二点目に、いわゆるPKF凍結を解除することが、東ティモールの場合には、派遣の仕方にもよりますけれども、現行法でも可能なのかなとも思うのですが、しかし、この間のさまざまな報道も踏まえてみますと、来年春に予定されている東ティモールへの派遣とか、あるいは、先月の十六日、テロ対策特別委員会の中で福田官房長官がおっしゃったのは、国連平和維持隊、PKFの活動で地雷除去ができれば、日本は技術も高く、貢献できるのではないか、それができるよう法的整備を進めたいと述べておられますね。

 そういった報道もあるわけですが、例えば、この地雷除去ということに関してとってみますと、今月二十日の自民党の国防部会で、陸上自衛隊の幹部が自衛隊に地雷除去活動はなじまないと力説したというふうに、一部報道がございます。それからまた、専門家の間でも、例えばNGOなどが、民間団体がやる地雷除去というのは農地などに戻すための安全化ということが言われていまして、それに比較して、自衛隊だけじゃなくて軍隊などが行う通常の地雷除去というのは、いわば戦闘行為中あるいはそれに類した場合に、進路の障害となるから、その障害を除去していく、そういったことで、かなり性格、目的も違うということで、やはり軍事的な組織にはなじまないというふうな指摘もありますけれども、この点、長官、いかがでしょうか。

中谷国務大臣 その幹部自衛官の発言の真意につきましては承知をいたしておりませんが、私が推測するにおいては、まだそういうことを実施した経験がない、つまり、自衛隊ですから、攻撃とか防御のために地雷原を、道を開設するということは訓練で実施したことがございますが、広範囲において一つ一つ地雷をなくしていくということにつきましては、いまだ訓練もしてないわけでありまして、そういう点で、やったことがないという点を強調したのではないかというふうに思っております。

 基本的に、この地雷除去活動というのは、世界でNGOの方が中心になっておりますが、それぞれ被埋設国が主体となって、国連や国際機関が協力を実施しておりまして、実際にこの作業に当たるのは、各国の軍隊が部隊としてやっているのではなくて、オブザーバーというか、退役軍人やそういう知識を持った人が現地の人に教育をして、その現地の人が行っているというのが現状でございまして、基本的には、その除去活動、地雷に関する啓蒙活動等を支援しているというのが実態でございます。

今川委員 そうしますと、今の御答弁によりますと、例えば自衛隊の場合にはそういう訓練も十分積んでいるわけでもないというお話でありましたが、これは福田官房長官、今の件なんですが、十月十六日の特別委員会で私が先ほど申し上げたようなことを述べておられますが、今の中谷長官のおっしゃった答弁との関係で、いかがですか。

福田国務大臣 私がその十月十六日に述べたというのを正確に覚えているんではないんです。多分一般論的な意味で述べたんではないかと思いますけれども、今回、法改正ができるということになりますれば、地雷の除去というのは法的には整備をされるということになるのではなかろうかと思います。

 ただ、実際に地雷除去をするかどうかということについては、これはその状況次第ということがありますので、そういうふうな環境が整っているかどうかということが大事でありまして、その上での判断になると思います。

今川委員 次に、田中外務大臣にお尋ねします。パキスタン訪問は大変御苦労さまでした。

 一点、これはまだ確定した話にはなっていないんですが、新聞報道によりますと、今、タリバン政権は事実上もう崩壊したんではないかという報道になっていますね。そうした場合に、その後のこと、アフガン復興計画の中で、例えば、米軍はそれはやらない、あくまでもタリバンなりあるいはビンラディン氏なる者を追い詰めることに専念する。その後の治安維持のことに関しては、例えばイギリスなどを中心にした多国籍軍で治安維持に当たるであるとか、あるいはそれが多国籍軍なのかPKFなのかということはまだはっきりしませんけれども、仮にPKFで対応していくとなった場合に、今回の場合にイギリスは米軍と一緒にアフガニスタン攻撃に加わっていますので、PKO、PKFといった場合には、中立性の原則というのが、もしイギリスがそこに加わると損なわれはしないかと思うのですが、その点いかがでしょうか。

田中国務大臣 まさしく委員がおっしゃっているような状態で、タリバンがどこまで追い詰められているか、それからUBLがどうなるかというふうなことはあって、やはり軍事上のことでアメリカプラスイギリス等がその辺のことをやっているわけですけれども、治安の維持、先ほど来、午前中からずっと申し上げているように、アフガンの難民の人たちが結果的にはアフガンに帰るという帰還のことを考えた場合に、その前段でも、また帰るに当たっても、すべての面で治安の維持というものがまさしく大事になるということは議論に出ました。

 委員のおっしゃっているお尋ねは、ではイギリスが入ったら中立性を損なうということなんですけれども、これはずっと議論の中にありますこの多国籍軍の問題とか、あるいはどこのだれがするかという問題、これはやはりいろいろ細かい案はあると思いますけれども、現場の中で、やはりいろいろ部族間の問題も、内部自体もあるというのは、今回行って非常にコンフュージングだということがわかりましたので、今ここで、これが入れば、イギリスならいい悪いというふうな状態ではないと思いますので、もうちょっとこれはよく落ちついて見きわめをつけていかなければならないし、自動的に整理されていくものだろうというふうにお答えするのが誠実だと私は思います。

今川委員 次に、先ほど同じような質問があったんですが、もう一度再確認の意味でさせていただきますが、PKFの部隊の実情、これが、本体業務を担うPKF部隊では、各国が派遣した過去の経験からしますと、殉職兵がいない部隊はないだとか、逆に交戦相手を殺害したことのない部隊もないという非常に辛らつな報道もあるわけですけれども、そういうふうな、派遣する先の国によって実情もそれぞれ違うとは思うんだけれども、そういうPKF部隊の実態があるのに、仮に自衛隊をそこに派遣するとなった場合に、やはりそういう同じような事態に陥るのではないのかということを懸念するわけですけれども、長官、それはいかがでしょう。

中谷国務大臣 過去にPKOで犠牲になった方の累計を調べてみましたけれども、これまで、全体で千七百九名の方が亡くなっておりますが、これの一番大きいものは事故でございます。交通事故等で、これが七百二十四名、その次が敵対行動でありますが、これは五百七十八でございます。あと病気が三百一名、その他ということで百六でございます。

 それぞれ各PKO、成功したPKOもありますし、非常に危険があって犠牲者が出たPKOもございますけれども、やはり基本的には、PKO等においては、停戦を監視するなどこの地域の平和が維持されるために行うものでもございますし、武力行使を前提としたものでもございませんので、非常に人類の平和と安全のためには、大変価値のある活動であるというふうに認識をいたしております。

 我が国の場合は、参加五原則に基づいて、数あるPKOの中でも日本が参加しても大丈夫と思われる、任務にしても安全にしても、日本が参加しても十分任務を達成できるというようなPKOに対して参加をしていきたいというふうに思っております。

今川委員 次に、いわゆるPKOなどに派遣をする場合に、当然そこには指揮権の問題などが出てくると思うのですけれども、一つは、これは外務大臣に確認の意味でお尋ねをしたいんですが、国連平和維持活動のための標準作戦運用規定、いわゆるSOP、このことに関してが一つ。

 それからもう一つは、国連と国連平和維持活動に人員及び装備を提供する国連加盟国との間のモデル協定案、このことは今でもありますね。そのことをちょっとお尋ねします。

植竹副大臣 今、国連とPKO部隊における指揮系統やあるいは武器使用基準についてのお尋ねでございますが、まず国連と派遣国との間のモデルの協定案というものにつきましては、国連と派遣国の間におきまして、要員、装備等について取り決めを起草する際、参考とするために国連によって作成されたものであるわけでございます。

 この協定案によりますと、参加国によって提供される要員は、国連PKOに派遣される間、引き続き派遣国の公務員として国連PKOの活動に従事しておりますが、その配置、組織等に関する国連のコマンド、いわゆる指図のもとに置かれているものと考えるわけでございます。

 さらに、国連PKOにおきましては、国連司令官がその活動、組織等について定めましたSOP、標準行動規範及び特に武器使用の範囲について定めました武器使用基準を作成しているものと承知しております。

 国連PKOにおきます武器使用基準は、個別のPKOをもとに具体的に定められるものでございまして、すべてのPKOに適用される普遍的な武器使用基準が存在するわけではありませんけれども、国連は、これまで国連のPKOにおいて用いられてまいりました武器使用のさまざまな形態などにつきまして取り決めました包括的なガイドライン、いわゆるサンプル武器使用基準と申しますか、を策定中であると承知しております。

 なお、国連PKOにおける武器使用に関するこれらの文書につきましては、現に関係者のみに配付されております国連の内部の極秘文書であることから、その性質上、第三者が入手、もしくは第三者にその内容を公表することが認められるものではないと承知しております。

 なお、ゲエノ国連PKO局長は、日本に滞在中、政府関係者及び与党関係者と国連PKO活動について意見交換するとともに、日本記者クラブにおいて講演を行ったものであります。

 同局長が申しますのには、我が国の法制度を理解し、我が国の国内議論にまで立ち入る立場にないとしつつも、PKOはあくまで平和を達成するための活動であることを強調の上、各国のPKO部隊ができる限り武器使用に関し統一的な行動をとることが、目的達成のために、また要員の安全の確保上重要であることを指摘しておりました。

 以上でございます。

今川委員 そこで、いわゆるSOPに関してでありますが、第一章第五節のd項に、次のようにあります。「平和維持活動に従事する軍事要員は作戦運用事項に関しては、自国政府当局からの命令を受け入れず、事務総長からの指令を受ける国連司令官からの命令のみを受けるのが、平和維持の基本原則である。」このようにあります。

 それからさらに、モデル協定案の方でありますけれども、五項の「権限」のところに、「参加国によって利用に供される要員は、国連平和維持活動に派遣される間、引き続き本国の役務に服するが、安全保障理事会の権限の下に事務総長に付与された国連の指揮の下に置かれる。」というふうになっているわけですね。

 今申し上げた点に関しまして、実は平成三年の九月三十日の国際平和協力等に関する特別委員会の会議録の中にあるんですが、丹波外務省国際連合局長の答弁として、「行政面とか兵たん面とかあるいは身分面とか、そういうところには国連軍の権限は及ばない、これは本国政府の問題である。しかし、兵員の配置、展開、そういった行動の側面については国連指揮官のもとで行動する」というふうに答弁があっているわけですね。ここはどうも、やはり釈然としません。

 これは当時、このPKO協力法案が議論をされていたころ、一つは、国連を中心にして平和活動に当たっていく、参加をしていくという場合に、国連からの要請、あるいは国連の指揮下、あるいは国連への忠誠といったような、そういった文言がこの協力法案の中で全然見当たらないんですね。少なくとも、例えばこの協力法案の中で、第六条「実施計画」の中で、そういう国連からの要請、そして国連の指揮下に入る、そして国連のもとで忠誠を誓いながら活動する、そういうふうな規定がなぜ欠けているのか、そこのところをちょっと御説明ください。

福田国務大臣 派遣国から国連PKOに派遣された要員は、派遣国の公務員として国連PKOの活動に従事するものでありまして、国連のコマンドというのは、派遣された要員や部隊の配置等に関する権限であって、身分に関する権限を含めた全般的な指揮監督権ではないということであります。

 こういうことから、国際平和協力法においては、国連のコマンドをあらわす用語として指図という言葉は、用語は用いていないというように承知しております。――用いておるということですね、逆。逆、逆。

今川委員 その点もう少し、普通、指揮と言いますよね。今おっしゃったとおり、指図という言葉に置きかえられているデリケートな意味は何なんですか。

福田国務大臣 用語の問題なんですけれども、我が国の国内法において通常、指揮とは、上級官庁が下級官庁に対してその所掌事務について方針、基準、手続、計画などを命令したり、各機関の長などの職務上の上司がその下僚たる所属職員に対して職務上の命令をすることを意味するということなんです。指揮を受けた下級官庁や下僚たる所属職員はこれに服従する法律上の義務があり、従わなかったことには何らかの制裁を科せられる、こういうことであります。

 さらに申し上げますと、PKOにおいて事務総長が有する指揮、いわゆる指揮権ですね、これは、各国から参加している部隊を有機的に結びつけて一体として機能させるために、その配置や移動等のオペレーションを行う権限であり、その権限はオペレーションの面に限られ、隊員に対する懲戒権等の身分上の権限や地位、昇進、給与等の面での権限はあくまでも我が国政府に属している。我が国の国内法に言う指揮とは性格を異にするものであり、この点を踏まえまして、国連の指揮を指図、こういうふうに呼んでいるところでございます。

今川委員 非常にわかりにくいんですよね。一般の国民が聞いていて、わからないですよ。もっとすっきり、国際的な平和活動に参加をする、派遣をさせるというんだったら、すっきり、国連の指揮下に入ってやるというのがやはり普通じゃないですか。

 それで、関連して、これは中谷長官の方にお尋ねした方がいいかと思うんですが、先月の二十二日に、国連のジャンマリー・ゲエノPKO局長とお会いになっていますね。

 これは朝雲新聞なんですが、報道によれば、東ティモール独立に伴うPKOへの自衛隊部隊の派遣、あるいは自衛隊のPKO活動における武器使用基準の緩和、さらに国連PKO局への自衛官派遣などをめぐって意見を交換したとございます。その中で、ゲエノ局長の方から、PKOは各国の協力が大切であり、余り制限が厳しいと部隊運用の柔軟性を失うという指摘もあったというふうにありますが、ここは、もう時間が余りありませんので簡潔に、このお会いになったときの中身について御報告ください。

中谷国務大臣 基本的に、今後PKOがどのように変わっていくかということを伺ったわけでありますけれども、発言の内容等につきましては、それぞれPKOにおいては、各国が活動をしている中で、余り制約、制限が多い中で派遣をされると、ほかの国が、かえってそのためにいろいろな仕事をつくることによって、本来の活動に対して支障になってくることもあり得るというようなことをおっしゃったわけでございまして、できるだけフリーな立場で参加していただければありがたい、それならそれなりの活動もできるのではないかというような、本来のPKOの活動の趣旨を述べられました。

今川委員 今、なぜそういうことをお尋ねしたかといいますと、先ほど、自由党から出された法案をめぐってやりとりがございましたけれども、そのときはむしろ私、聞いていまして、東議員の方が説明がすっきりするんです。それでいいかどうかは、立場が違いますので違うけれども、すっきりするんですよ。

 チームワークが一番大事なわけでしょう。隣で、同じ外国の部隊が同じような作業なり活動をやっていて、向こうから助けてもらうことがあるけれども、こちらは憲法上、あるいはいろいろな制約があって、日本の場合には助けることができませんでは、実際、参加してしまえば、実態面として、これは人情論じゃなくてもそうじゃないですか。一たん参加してしまうとそうなりますよ。これはやはり、助けることができないということの方がよほどきついですよ。

 そうしますと、同じような意味において、例えば、いわゆるPKO協力法案の場合は大きく二つの要素を、原則を入れ込むことで、自衛隊が部隊ごと派遣されても、参加をしても憲法上クリアするというふうになった二つのことがありますね。

 一つは、武器の使用と武力行使をある意味で区分けして、憲法に抵触しないように、武力行使に当たらないという原則を入れ込んだこと。いま一つは、危険が及んだ場合には日本の判断で中断し、撤退するという原則を入れ込んだはずですね。

 しかしその場合も、他の議員からも同じようなことがありましたが、それぞれが、各国の部隊が集まって、ある意味でチームワークを組みながらPKOなりPKFの活動をやっている、そうした場合に、日本の主体的な判断で、これは危ないなと思ったときに日本が率先して先に撤退するということになったら、ざっくばらんに言うとへっぴり腰というのか、日本は何だ、かえって参加しておったのに……(発言する者あり)いや、だから、恐らく実態面からしますと、法律にどう書いてあるかは別の問題として言っているんですね。やはり撤退をするときには、ほぼ時期を前後してというか同じくして、それはやはり国連の現地の司令官の判断で、ここはもうお互いに撤収しようというふうになるのが現実じゃないのかな。にもかかわらず、このPKO協力法を成立させんがために二つの原則を入れ込んだからそういう現実との乖離、矛盾が出てきているんじゃないかと思うんですが、そこはいかがですか。

中谷国務大臣 そのとおりだというふうに思います。

今川委員 いや、そのとおりだけじゃ困るんですよ。そうしたら、今のPKO協力法、この法律の手前、いかがですか。

中谷国務大臣 今の法律につきましては、五原則を設けておりまして、このことによって憲法が禁ずる武力行使に該当しないことを担保するための重要な原則であって、今後とも堅持する考えでございます。

今川委員 もう時間が余りなくてあれなんですが、中谷長官、私ももう原稿を外れてやっているので、もう少し、今申し上げたように、だからいち早く撤退せずに長くおれという意味で言っているんじゃないんです。

 実際に参加をしていくと、各国の部隊で連携をとりながらやろうと思ったら、日本だけが日本の、先ほど指揮とか指図とか聞いたのはそういう意味なんです。日本政府が主体的に判断をして、ここは危ないからこれ以上おるとやはりどうしても反撃せざるを得ない、そうすると憲法上のかかわり合いが出てくる、だからここは撤退しよう、こうなったときに、ひきょう者呼ばわりされたり、何だ日本は信用ならないとかというふうに現実はなるじゃないですか。しかしながら、今のPKO協力法で、五原則でいく限り、撤退しなければならないんでしょう。そこのことをお尋ねしているんです。

中谷国務大臣 その点の問題意識は我々自身も持っておりまして、今後、この点につきまして国会で合意をいただきまして、国民の合意が得られるように、今後とも努力、検討してまいりたいというふうに思っております。

今川委員 私が申し上げたいのは、だからそういった意味で、冒頭に申し上げたように、もともと、何が何でも文民の方はさておいても自衛隊をどう活用していくかという観点からやっていこうとしたから、そういう矛盾といいますか、現実的に合わなくなってしまう。(発言する者あり)そうすると、今後ろから不規則発言もありましたけれども、五原則の方を変えてしまえというふうに、そういう衝動に駆られてくるわけですね。そういう問題点を私は申し上げているわけであります。

 さて、二番目の問題として、武器使用の基準の緩和、拡大に関してであります。

 これは、一つは、国連のPKOに参加をしていくときに、やはりPKFにおける装備や武器使用のルールは、そのPKOの任務とか個々の派遣先の現地情勢、あるいは紛争当事者の装備水準などを度外視して決められる性格のものではないですね。そこで、PKFの武器使用のガイドラインとしては、いわゆる要員の生命、身体の防衛が一つと、いま一つ、PKFの部隊任務を阻止する行為の排除という大きく二項目あろうかと思います。

 そこで、このPKFの武器使用をそのような形で認めていった場合には、携帯する武器が、例えばけん銃だとか軽機関銃だとか、それがどんどん派遣先の状況によってはバズーカ砲だって、あるいは迫撃砲だってという形で際限なく、この上限というか、そういうのはあるんでしょうかね、長官。

中谷国務大臣 その武器の種類とか数量につきましては、十分現地の状況を見て判断しなければなりませんけれども、それにつきましては、基本計画を定めまして、安全保障会議にかけ、政府で決定をし、そして国会に報告することになっておりまして、国会の皆様方に御承認いただくべく、内容にいたしつつ、かつまた、隊員の安全を図り、任務の遂行に支障がなく安んじて業務が行われる内容にしなければならないというふうに思っております。

今川委員 その次に、先ほど申し上げました、いわゆる武器使用の場合にbタイプと言われる、任務遂行を妨げる行為を排除するために武器を使うということで、これは随分以前、十年前になるのですけれども、九一年の六月二十七日、当時の自衛隊の寺島統合幕僚会議議長が、退任に当たっての記者会見の中で、参加している他国と同じ行動ができるようにしてほしい、スウェーデンができることを自衛隊ができないというのでは困る、また、政治の場での話と現場での実際の対応とは違った側面もある、どういう事態にどう対応するか制服の側でも考えていきたいという趣旨のことを述べられて、弾力的運用への願望といいますか、そういうことを述べられているわけですね。

 要するに、現場の方としては、政府が、政治の側が基本計画なり実施要項を決めたならば、あとは、具体的なことは、細部にわたっては現場に任せてくれといったような声が上がってきているというのですけれども、その点、防衛庁長官はどのように受けとめ、考えておられますか。

中谷国務大臣 これはまさに政治の側の問題でございまして、自衛隊の行動につきましては法律の枠内で運用していかなければなりませんので、この武器の使用等につきましては法律によって定められるということになるわけでございます。

 現時点において、このbタイプの武器使用に関しましては改正案に盛り込んでいないわけでございますが、他方、こうした武器使用が個々の国連PKOにおける武器使用基準に含まれる場合もあるわけでございまして、今後、この武器使用規定のあり方につきましては、国連のPKO活動の実態や国会における議論も踏まえつつ検討していく課題であるというふうに思っております。

今川委員 今の点に関しまして、日本以外の既にPKF活動をやっているところの、他国の状況としては、いわゆるbタイプの武器使用というのもやっていますね。ちょっと確認です。

中谷国務大臣 一応、国連のモデルROEには含まれておりますが、実際に現場、現場によってROEが違うわけでありまして、すべてのところでやっているということは確認いたしておりませんが、基本となるモデルROEにはこのbタイプは含まれているというふうに認識をいたしております。

今川委員 もう時間が来ましたので次回にまた回したいと思うのですが、今のことに関して、先ほど後ろからもいろいろと発言があっていましたけれども、いわゆるPKFにしましてもPKO活動にしましても、よその国々の部隊との混成部隊じゃないですか。いろいろなセクションを持ち合いながら活動をやっていく。そうすると、PKFを凍結したはずなのに、もう九年もたったじゃないか、実際に現地に行ってみたら、解除をしてくれ、こういうふうな形になってくる、あるいは、先ほど後ろから声がありましたが、PKO五原則を実態に合わせて変えろという声になってくる。

 そうしますと、中谷長官、最後に一言、どうですか。例えば、今言うbタイプの武器使用は各国さまざまだというけれども、やはり派遣先の国の一つの状況の中で、日本も含めて参加をした場合に、日本だけはaタイプだ、あとはbタイプとなると、それこそさっきのゲエノ局長じゃありませんが、やはりできるだけチームワークを保とうとすると、そこまでbタイプまで踏み込んでしまいはしませんか。その点、どうですか。

中谷国務大臣 この点につきましては、各党、各議員間でもいろいろな考え方がありまして、現時点においても政党間のお話し合いが続いているわけでございますので、今後ともこの議論の推移を見守りながら検討してまいりたいというふうに思っております。

今川委員 時間が来ましたので、終わります。

玉置委員長 次回は、来る二十九日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十分散会


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