衆議院

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第6号 平成14年11月26日(火曜日)

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平成十四年十一月二十六日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 田並 胤明君
   理事 岩屋  毅君 理事 木村 太郎君
   理事 浜田 靖一君 理事 山口 泰明君
   理事 末松 義規君 理事 渡辺  周君
   理事 田端 正広君 理事 樋高  剛君
      岩倉 博文君    臼井日出男君
      北村 誠吾君    小島 敏男君
      杉山 憲夫君    虎島 和夫君
      中山 利生君    仲村 正治君
      野呂田芳成君    平沢 勝栄君
      町村 信孝君    伊藤 英成君
      江崎洋一郎君    大出  彰君
      川端 達夫君    前田 雄吉君
      前原 誠司君    赤松 正雄君
      赤嶺 政賢君    今川 正美君
      粟屋 敏信君
    …………………………………
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   参考人
   (杏林大学教授)     田久保忠衛君
   参考人
   (財団法人国際開発センタ
   ーエネルギー・環境室主任
   研究員)         田中浩一郎君
   参考人
   (日本貿易振興会アジア経
   済研究所地域研究第2部主
   任研究員)        酒井 啓子君
   参考人
   (愛知大学助教授)    河辺 一郎君
   安全保障委員会専門員   小倉 敏正君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十六日
 辞任         補欠選任
  江崎洋一郎君     前田 雄吉君
同日
 辞任         補欠選任
  前田 雄吉君     江崎洋一郎君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国の安全保障に関する件(テロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画の変更及びイラク情勢等)


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     ――――◇―――――
田並委員長 これより会議を開きます。
 国の安全保障に関する件、特にテロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画の変更及びイラク情勢等について調査を進めます。
 本日は、参考人として、杏林大学教授田久保忠衛君、財団法人国際開発センターエネルギー・環境室主任研究員田中浩一郎君、日本貿易振興会アジア経済研究所地域研究第2部主任研究員酒井啓子君、愛知大学助教授河辺一郎君、以上四名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中にもかかわらず本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、田久保参考人、田中参考人、酒井参考人、河辺参考人の順序で、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知をいただきたいと存じます。
 それでは、田久保参考人、お願いいたします。
田久保参考人 おはようございます。お招きいただきまして、大変ありがとうございました。大変光栄に存じております。
 今委員長から、忌憚のない意見をということでございますので、四点にわたりまして、いろいろ申し上げてみたいと思うのでございます。
 先日、ある全国紙を見ておりましたら、数日前でございますけれども、ある著名な学者が、今回のイラク攻撃は強い国が弱い国をいじめるんだ、保安官がこの指たかれと号令をかけて、補佐官がみんな集まってたたくんだというようなとんちんかんな議論がございました。これはとんでもないことではないかなと思います。こういう意見を載せる新聞もどうかしておりますけれども、根本的な国際情勢の認識が間違っているのではないかと。
 去年、九・一一テロでございますけれども、これがブッシュ政権に与えた衝撃、並びに自由世界、民主主義を標榜する国家に与えた衝撃というものをこの人は考えていない。それからもう一つはサダム・フセインでございますけれども、サダム・フセインが湾岸戦争以後どれだけ国連決議に反してきたか。それから生物化学兵器、核は持っていないと思われるのでございますけれども、生物化学兵器、これがどれだけ危険な存在であったかということを完全に無視しているのではないかなというふうに思います。
 私が申し上げたいのは、この意義でございますけれども、アメリカを中心とした世界でございますが、フェーズ1、フェーズ1はアルカイーダ、これをたたいた。アフガニスタン戦争でこれは一段落したわけでございますが、残党をたたいている段階だ。これも大変私は困難な仕事だと思うのでございますけれども、局面はフェーズ2に入った。フェーズ2のスタートは、一月二十九日、ブッシュが年頭の一般教書で強調いたしました悪の枢軸でございます。その筆頭に来るのがイラク、次がイラン、三番目が北朝鮮ということで、その筆頭のイラクをたたき始めたんだと。こういう概念が、概念というか受け取り方が、日本の社会では甚だ乏しいのではないかなというふうに考えております。
 アメリカの決意でございますけれども、これは容易ならざる決意でございます。皆様先生方は御案内のとおりだと思いますけれども、ホームランド・セキュリティー・デパートメント、これはあっという間に上下両院を通りました。これは実にペンタゴン、復員省、それから三番目がこのホームランド・セキュリティー・デパートメントでありまして、十二省庁を網羅した十七万人の人員を擁する対テロの組織というか、大きな官庁機構でございます。これは一月一日からスタートするでしょう。日本の行政改革でございますか、この遅々と進まない様子を見ておりますと、私はすごい国だなと、舌を巻かざるを得ないというふうに思うのでございます。
 それから、これに伴いまして、いつどこからいかなる手段でだれに襲いかかってくるかわからない、この敵に対しまして、従来のアメリカの戦略、戦術はこれは意味をなさない。テロに関する限り、事前にかなりの動きを察知した場合は先制攻撃もあり得る、これはアメリカの建国以来の戦略、戦術の大転換でございます。
 こういうふうにアメリカの、超大国が大きく方針それから体制、これを転換して、これに世界全体が動いていこう、連れて動いていこうという、この意義がどうして一部の人にはわからないのかなということでございます。これが私がまず第一点で申し上げたかった点でございます。
 それから、第二点でございますけれども、アメリカ政府の考え方でございますね。あるいはアメリカ国内と言ってもいいと思います。
 アメリカ政府は、これまたわかり切ったことを申し上げるのでございますけれども、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ウォルフォビッツ国防副長官、こういったネオコンサーバティブ、新保守主義という人たちがいらっしゃる。これに対しまして、国務省でございますけれども、コリン・パウエル国務長官、我々にとって非常に親しいアーミテージ国務副長官、こういった方々が国際派と言われて、両方の意見が対立している。その真ん中にコンドリーザ・ライス女史が大統領補佐官、うまい調整を図りまして、一番上でブッシュ大統領が極めて適切なジャッジメントを下している、こういうことでございます。
 当初は、ネオコンサーバティブ、同盟国に別に相談しなくても単独でたたけるというような強硬論があったわけでございますけれども、これはどうもいかぬよということで上下両院の決議をとった。この決議をとりまして、ニューヨーク・タイムズとウォールストリート・ジャーナルが、ネオコンがウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズが国際派を代弁して、大激論が一カ月にわたって展開された。しかし、結局上下両院で決議が採択されたということでございます。これはコンドリーザ・ライスあるいはブッシュ大統領を中心とする、国内の与野党のコンセンサスを見事に取りつけたんだろうと思います。
 その後、日本では、国連決議がない以上ついていく必要はないさと、与党の大物が何人も言っておられましたけれども、国連決議、通っちゃったじゃないかということでございます。十五カ国、フランスが反対するよ、中国、ロシアは危ないよ、シリアは賛成するはずがないだろう、こういうふうに言っておられたのを私この耳で聞きましたけれども、十五カ国が全部賛成しちゃったんだ。十五対ゼロの国連決議というのは、そういうことをおっしゃった方々は今どういう感想をお漏らしになるか、私は伺ってみたいなと思うくらいでございます。
 こういうコンセンサスに基づいて、この間、プラハで開かれましたNATOの拡大委員会、東欧の七カ国が加盟したわけでございます。これが本当は目玉なんですけれども、ブッシュは、対イラク攻撃、これに対する賛成を取りつけた。それからロシアに行きまして、プーチンとの話し合いでも賛成を取りつけた、こういうことでございますね。
 したがいまして、ネオコンサーバティブが言っているような極端なことではなくて、比較的穏健な方法、実際の外交は大変高圧的だったようでございますけれども、こういう方法で、ひとまずルールにのっとって対イラク攻撃に踏み切らんとしている、これが私の認識でございます。
 こういうところに立ちまして、日本は何をすべきかということ、これは皆様先生方の御審議の対象だろうと思うのでございます。
 私、不満を申し上げますと、日本にできることは何か、できないことは何か。すべて私は役人の発想だと思います。これは今の特措法の枠内で、あるいは大きく言うと憲法の枠内で、あるいは予算の範囲内で、あるいは国民感情を考慮して、いずれも私はそれを軽視しろとは申しませんが、これは絞り込んでいくと、できることとできないこととはっきりしてくるわけでございます。
 お役所の、いかにも小ざかしげに、ここまではできます、できませんということで、アメリカにこれを要求を出す。アメリカはこれを不満とする。キャッチボールをやっているうちに、アメリカの圧力でついに向こうの言うとおりになる。この繰り返しがずっと戦後続いてきたんじゃないか。
 ブレジンスキーが言っているような、被従属国とは言いませんが、被保護国、ブレジンスキーが五年前に巨大な将棋盤という著書の中で、日本は、デファクト プロテクトリート オブ ザ ユナイテッドステーツ、アメリカの事実上の保護国だと。保護国というのは今世界に二カ国しかありませんで、これはモナコともう一つ、スペインとフランスの間にある小さな人口七万の国でございます。これ並みになってしまったというのは、外交防衛で確たる哲学がないからではないかなというふうに私は考えているわけでございます。
 私は、日米関係というのは最も重要な問題だ、これは大変重要な意義があるということを一貫して説いてきた人間でございますけれども、これは、日米関係だけでこの問題を取り扱うと、極めて小さなところに絞り込んでいって、事務的な結論以外に出ないであろうというふうに思います。したがいまして、イージス艦一隻出せないような現状が続いているのではないかなというのが私の考え方であります。
 次に私が申し上げたいのは、一番重要なことなのでございますけれども、アメリカとの同盟関係、これを抜きにして日本人として、あるいは日本の国家として来るべき二十一世紀、ずっと続いていくテロにどういうふうに対処していくのか。これは、あたかもテロリストたちは別の種類の人間で、アメリカだけを攻撃している、こういう国際社会からデタッチしたような考え方というのは、迫力を非常に弱めているのではないかと私は考えているわけでございます。
 私も月刊誌の論壇で時々論争しているわけでございますが、いわゆる保守派の間に親米、反米ということで今分かれている。反米の方々は、テロリストたちは悪い、さりとてアメリカはグローバリゼーションをやっている、あるいはユニラテラリズムでございますね、単独行動主義、これは悪いよ、したがって両方悪いんじゃないかい、こういう意見でございます。
 私は、これはとんでもない意見だと思う。特に国会の先生方、我々言論人は、自由社会、民主主義社会で生きているわけでございます。これは言論、集会、結社の自由、何よりもとうといものだと思います。この言論、集会、結社の自由は、こういうシステムは、この体制を否定しようという言論あるいは思想、これにまで寛容でございますね。しかし、これを行動に移したときに、民主主義を信ずる者は立ち上がらなきゃいけないんじゃないか。冗談じゃないぞ、ここで立ち上がらなければ民主主義というのは崩壊するわけでございます。今の時代というのは、そういうことになっている。
 これにアメリカが先頭を切って、このテロリストたちと闘おう、あるいはテロリストに大量破壊兵器を提供する、あるいは提供する可能性のある国との闘いに立ち上がった以上、我々は我々の信念で立ち上がるべきだ、これが第一でありまして、第二は、日米同盟を重視する、こういうところで日米間の協議をして細かいところを決めていく、これが順序ではないかなというふうに考えております。
 ちょうど十五分でございますので、これで私の意見開陳を終わらせていただきたいと思います。大変失礼いたしました。(拍手)
田並委員長 どうもありがとうございました。
 続きまして、田中参考人にお願いいたします。
田中参考人 おはようございます。田中でございます。
 私は、問題意識として、アフガニスタンが現状でどうなっているのかということからお話をさせていただきたいと思います。
 なぜかと申しますと、アフガニスタンの問題が、国際社会による同国への介入及び我が国のテロ対策特措法制定を通じた同国への関与のきっかけとなっていることから、この一年を経てアフガニスタンの事態がどのように変化しているかを振り返るというのは非常に必要である、そして、例えばイラク情勢にどのような対応をするのかということを想定した場合にも、その下地となり得るということから、これを取り扱う次第でございます。
 「きのう」と比べました場合、アフガニスタンはどうなっているのか、まずその変化から見てみましょう。一言で言って、よくなったところもあれば相変わらずというところもあります。
 第一点目ですが、ターリバン政権は崩壊しました。それから、アルカーイダの訓練基地、これは各地に点在していたわけですけれども、これも破壊されております。アフガン人から見れば、忌み嫌っていた外国人による支配というものは終わったわけでありまして、その点でアフガニスタンは解放されたわけです。これは進歩であります。
 それに伴いまして、多数の難民が帰還しております。将来への期待値も非常に高いわけですので、難民の帰還も予想外に進んでおります。既に百七十九万人の難民がこれまでに帰還したと言っております。
 それにあわせまして、国内では学校が再開されております。国際的な支援もありまして、各地で積極的に教育に取り組む姿が見受けられます。とりわけ女子児童の就学が復活したことは大きな差であります。カブールの街角を歩いていて、街角に学童が列をなして歩いているというのは、非常に時代が変わったことを感じさせる出来事であります。
 十月のことでありますが、新しいお札を導入しました。これは通貨の安定、それから新札への切りかえを図って、同時にデノミも行うという効果が期待されております。これまで各地で異なる通貨を用いていた戦乱の時代から新しいアフガニスタンに脱皮する、そういう象徴的な出来事でもあります。
 内戦の方は、ひところの状態に比べれば小康の状態にあります。実は、この一年の間に大規模な戦闘が起きていないということ、これはある部分では奇跡に近いと思います。それだけこの国では戦闘はそれまで日常茶飯事だったということです。
 これらはすべていい方向の変化であるというふうに言えるんですけれども、やはり悪い状態への回帰、あるいは、悪いままでの状態が依然として継続している事象もございます。
 一つは、貧困と飢えであります。天候状態による影響もありますけれども、アフガニスタンは依然として多大な人道支援を必要としています。残念ながら、ことしもそれは変わりませんでした。それゆえに国際的な支援も、労力はどうしても人道支援の方に振り向けられがちになり、復興支援に取りかかるタイミングもおくれてしまいました。
 次に、麻薬の問題です。ターリバン政権の末期に、一時的に生産が厳しく禁止されましたが、ことしは改めて最大の生産国に躍り出たと思われます。麻薬による資金の発生にとどまらず、無法状態の維持を好都合と認める人たちがこの分野では活躍するだけに、ここに変化がないことは、今後を考えるとゆゆしき事態であります。
 抑圧的と考えられたターリバンですけれども、彼らが去って、各地はどうなったのでしょうか。実は、ターリバンが出現する前夜のような、軍閥による群雄割拠の状態が再び出現してしまいました。この種の指導者たちは、依然として武力を通じて国を支配し、互いに小規模な衝突を繰り広げるばかりでなく、その支配地域の住民を抑圧し続けている事例をたくさん出しております。地域によっては、ターリバン時代と同じくらいにイスラム法に基づいた抑圧的な制約を課す司令官が存在しております。
 それでは、現状が今どうなっているのかを分析してみたいと思います。
 簡単に言えることは、未完であること、アンフィニッシュドビジネスは、何も軍事作戦ではないということであります。
 内戦からの再建をかけて今アフガニスタンは前進しているはずでございますが、二十三年間も続いた戦乱や無政府状態から一夜にして国家再建が果たされるわけではありません。しかしながら、再生への出だしから道を誤った場合、そして、それに気づかずに前進し、その誤った軌道を修正する機会も設けられなかったとしたら、最終的にどこへ行き着くのか。恐らく正しい目的地にたどり着くことは不可能に近いことだと思われます。そうした危険性があることを常に念頭に置きながらアフガニスタンにかかわっていかなければならないのではないかと思います。
 実際に昨年秋、ターリバン政権が崩壊した際のときのことを考えずに、コアリションフォーシズ、米軍を中心とする多国籍軍は軍事攻撃を進めていったことがあります。これはある部分国際社会の大きな過ちでありました。ターリバン政権が崩壊して慌ててボン会議を開催しましたけれども、軍事力を背景にカブールを手中におさめた軍閥とそれ以外の在外アフガン人の発言権の差は歴然としておりました。必然的に北部同盟という軍閥に偏った政権ができてしまい、手が血で汚れている彼らは、また同時に民族的にも偏りがあるがゆえに、各派からはその反発が強く出たわけであります。
 しかしながら、第二段階に招集されるはずである大民族会議でこうした偏りは是正されるものと期待されておりました。ところが、この段階では、各地の代表者選出における不透明さ、アメリカによる議事運営への介入、軍閥による脅迫や買収が横行し、代議員によって大統領に選出されたカルザイ氏の正統性にも傷がついてしまいました。何よりも、大統領選出を通じて軍閥やイスラム原理主義者に借りをつくってしまったその状態、このもとではカルザイ氏は大統領としての指導力を発揮することは非常に難しくなったわけです。
 時間が限られておりますので先に飛ばさせていただきますが、要は、カルザイ氏は非常に脆弱な政権基盤の上で今日も政権を運営することを余儀なくされております。彼はカブールの市長でしかないという極端な表現もあります。非常に失礼な表現かもしれませんが、かなり実態をあらわしております。その立場すら、実は実力者でありますファヒーム国防大臣の前には非常に象徴的なものとなってしまいます。地方の軍閥の多くが政権への帰属を繰り返し表明しておりますけれども、それは従属を意味しているのではありません。カルザイ氏は幾つかの人事を行っておりますけれども、それに従った地方の司令官や官吏は非常に少数であります。その実力、限界を早くから見限られていると言っても差し支えないかと思います。
 そして、軍閥に借りがある、それが大統領にとっての大きな弱みでありますけれども、それは何も大統領だけではありません。アフガニスタンにおける深刻な問題はやはり治安にあります。ところが、その治安を乱す要因となるのは何もターリバンやアルカーイダの残党ばかりではなく、地方の軍閥であります。そして、その対テロ戦争を遂行するために、あるいは遂行しやすくするために、アメリカはこのカルザイ政権に従わない軍閥に対しても武器支援を行ってきております。こうした矛盾、これを将来的にどうやって正していくのか、その点があいまいになっております。
 こうなってくると、国際社会のアフガニスタンの再生という課題は非常に行方がわからない状態であります。ただ、一つだけ忘れてはならないのは、和平プロセスが果たしてうまくいっているのかということも常に念頭に置いて動いていかなければいけないということであります。
 その和平プロセスを支えるために、復興支援、これは東京の国際会議においてことし一月に表明されたことでありますけれども、それが考えられております。現状では、既に今年度に予定されておりました十八億ドル、さらにその後積み重ねられて十九・四億ドルに膨らみました国際的な支援の約七割に当たります十三・一億ドルが拠出されたと言っております。その中で、我が国は既に今年度に予定されていた二・五億ドルを超える二・八二億ドルを拠出し、ある部分では優等生として立場を築いております。
 ところが、こうした支援に対して、アフガン側の受けとめ方は異なっております。円グラフで説明いたしますけれども、外側の円は、これまでに集められた、あるいはアフガン側に拠出されたお金がアフガン側でどのような形で使われたのかということをアフガン人の目から見た図であります。
 彼らに言わせますと、当時約九億ドルと言われていた拠出金額のうち約八割方は人道支援や間接費、人件費などで消えてしまって、真水の部分、復興支援というものは二割でしかないということ。そして、さらに内側の円ですけれども、そうしたお金もほとんどは国際機関を経由して拠出され、直接アフガン側が使えるようなお金というのは一割ちょっとでしかないという不満でありました。このように、暫定政権にとって、これまでの支援は必ずしも想定した規模や内容ではなかったということ、不満が募るものだったということであります。
 アフガニスタンとイラク、そして我が国の関与を考えていくとどのように見えてくるのかということを最後に申し上げます。
 今、盛んに、レジームチェンジという言葉がはやっております。ある部分、これはアフガニスタンが先鞭をつけたことなのではないかと思います。それだけ大事業、国際社会が支援をする新体制の設立という大事業でありますが、果たしてこれはうまくいっているのか。アフガニスタンにおいては、まだまだこういう問題が山積していることを今申し上げたばかりであります。
 ただ、気になりますのは、イラクに対する攻撃の必要性をアメリカ政府あるいは議会でいろいろ語る際に、常にアフガニスタンの成功例というものを引き合いに出してきました。実際にはアフガニスタンでは決して成功しているとは言えない状況にあるにもかかわらず、これを出してきた理由、それはなぜかといえば、やはりコアリションビルディング、同盟国をいかにして説得するか、そしてアメリカ国内の世論をいかに対イラク戦に向けて高揚させるかという政策的な意図が見え隠れしております。
 ここへ来て、そのアメリカも、やはりアフガニスタンの国家再生がうまくいっていないということを若干認めるようなトーンに変わってまいりました。これまで否定的でありました軍隊による積極的な国づくりへの支援と関与を始めたわけであります。それだけ事態が逼迫しているということを認めたわけであります。また、米大統領の特使でありますが、今後は軍閥への武器支援は行わないと明言しております。これらが守られることを期待するのは、やはりアフガン国民そのものであると思われます。
 最後になります。
 国際社会の一員として、大量破壊兵器の脅威に立ち向かう責任というものはあると思います。必要であれば、我が国としてもそれを憲法などが定める範囲の中で果たさなければいけないと思います。しかしながら、そこで関与するにしても、当該国や地域において立場が異なる第三国からの示唆や誘導によって、我が国の国益が損なわれることがないようにしなければいけません。それはイラク問題に関しても同じであるはずであります。
 私がアフガニスタンの経験で忘れることができないのは、時にはほかの事情によって実情が覆い隠されてしまうようなことがあるということであります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
田並委員長 どうもありがとうございました。
 次に、酒井参考人、お願いいたします。
酒井参考人 アジア経済研究所の酒井でございます。
 私は、専ら今のイラク情勢について、国内面の状況を含めて御説明させていただきたいと思います。私は、アジア経済研究所におきまして二十年間、イラクを中心に中東を見てきたということがございますので、そういう意味では、その政権の安定性といったことに注目していきたいと思います。
 本日お話しいたしたいのは三点ございまして、まず、最も注目される点といたしましては、国連の現在イラクに対して行われつつある査察、大量破壊兵器に対する査察、これが果たして順調にいくのであるかどうかという点、これが最も最大の関心事だろうと思います。そして、それを踏まえまして、対イラク攻撃が行われるのかどうか、そして、もし行われた場合にはそれがどのような状況になるのかという三点について述べさせていただきたいと思います。
 まず、査察の問題でございますけれども、前提として申し上げておきたいのは、現在の状況におきましてはかなりこの査察、六十日間の査察が予定されておりますけれども、これが必ずしも順調にいくとは思いがたい状況にあるということが結論として言えるかと思います。
 これは留意いただきたいのですけれども、これは査察そのものが極めて困難だというふうに申し上げているというわけでは決してなくて、査察をイラクが受け入れやすいような環境を国際社会がつくることがなければかなり難しかろうということでございます。最後にまた繰り返し申し上げるかと思いますけれども、現在の国際情勢の中ではイラクが査察を受け入れにくいような環境が存在する、その環境を変えることによって査察体制を改めて確立するということは十分可能であるという前提の上に、現状では難しいというふうに申し上げておきたいと思います。
 では、なぜそれが難しいかという点に参りますけれども、これは先ほども申しましたように、イラクは必ずしも査察体制そのものに対して真っ向から反対しているというわけではございません。曲がりなりにも、湾岸戦争以来九五年までは、比較的イラク政府は査察体制に対して協力的な態度をとっておりました。九六年以降九八年の二年間で頻繁な衝突を起こす、そして現在の査察棚上げ状態に至ったという状況があるわけですけれども、まずそこで、なぜイラクが査察体制に対して非協力的な態度をとったかという原因について考えてみれば、これは一点に絞られます。それは、査察団の中に諜報行為を行うという者が存在していたということにほかなりません。
 その意味では、イラクが査察体制に対して最も問題にいたしましたのは査察団の構成ということになります。どういう出身の人物であって、しかも国籍的にバラエティーに富んでいるかどうかという点をイラクは最も重視しております。この諜報活動が査察の中で行われていたということについては、実際に査察団のメンバーであったスコット・リッターという、これはアメリカのマリンの諜報将校でありましたけれども、この人が、自分はそのような活動をしていたということで、現在いろいろな形でそれを証明するような発言を数々行っております。
 そもそも査察がそうした構成上問題があるということに加えまして、とりわけ、今回の安保理決議千四百四十一号においては、さらにイラク側が査察体制に対して協力しにくい点が幾つか述べられております。その大きな点は四点ございます。
 一つ目は、査察団が武装した保安要員を同行することができるという点にあります。二番目は、その保安要員を含めて査察団がイラク国内の陸海空の交通を自由に遮断し、自由にさまざまな施設にアクセスすることができるという点であります。三番目は、それに加えて、常時、バグダッド上空を含めてイラク国内にU2偵察機などの、無人であれ有人であれ偵察機を飛ばすことができるという状況、三点がございます。これはある意味ではイラク国内に一種の治外法権領域を設けるというような措置になっておりまして、イラク側はこれに対して国家主権の侵害であるということを強く反発しております。
 最後に四点目に問題にしております点は、査察団が、さまざまな査察活動の過程において、イラクの政府の要人あるいは科学者といった軍事開発にかかわった人物に対してインタビューを行うことができる。ただ、このインタビューについては、イラク国内で行うとイラク政府の圧力がかかる可能性がかなり大であるので、これを国外に連れ出してインタビューを行うことができる。さらには、家族を人質をとられないような形で家族もともども国外に出ることができる。さらに、その後帰国することが難しい場合はそのまま亡命も認めるというような内容が付されております。
 すなわち、これは一種のイラク国民に対する亡命奨励措置というような内容になっておりまして、これは実際には、国連のUNMOVIC、イラクの大量破壊兵器査察を携わる委員会ですけれども、このUNMOVICの委員長であるハンス・ブリクス氏自身も、こうした亡命奨励措置というような内容は安保理決議にはそぐわないのではなかろうかというような懸念を表明しております。
 以上申し上げましたような点は、まず先ほども申し上げましたように、かなりイラクのいわゆる国家主権に対する、チャレンジするような内容になっているという点が特徴的でございます。しかし、そうは申しましても、イラク側といたしましては、この決議を受け入れないことには、あるいはこの決議に準じる形をとらなければ戦争になるという状況は重々承知しておりますので、基本的にはこれに対して協力的な姿勢をとろうとしているということは事実かと思います。
 ただ、先ほど申しました三点につきましては、実は二つ問題がございます。一つ目は、こういった条項、特に査察団が自由にイラク国内の交通を遮断できるというような条項は、これは意図的ではない形の、いわゆる事故的な衝突を招く可能性が非常に高い。つまり、交通警察と査察団の間のいざこざというようなマイナーなレベル、末端のレベルでの衝突ですら大きな問題になりかねないというような問題を秘めておりますので、そういう意味では、事故によってその問題が生ずる可能性が非常に高いという点でございます。
 もう一点につきましては、これはより一層深刻な事態でございますけれども、イラク側が、必ずしも査察を受け入れたところで戦争は回避できないのではないかという危惧を強く持っているという点でございます。これが冒頭に申し上げました、国際社会がいかにイラクに対して査察を受け入れさせるかという意味で努力する余地があるという点につながってまいります。
 と申しますのは、イラクが査察を受け入れても戦争が起こるかもしれないと思っている最大の要因は、アメリカが、安保理決議がなくても戦争を行う用意があるというような発言を、安保理決議の採択の前でございますけれども、しばしば行ってきているということにあります。さらに言えば、アメリカの最終的な戦争の目的が大量破壊兵器の破壊、廃棄という問題ではなくて、むしろフセイン政権の転覆というところに目的があるのではないかということを、実際にアメリカの政権の高官がしばしば触れております。
 そうしたところから、イラク国内では、国連決議にいかに従順であっても戦争が起こるのであれば、またその判断が違ってくるという認識が生まれてきやすい状況にあるわけです。すなわち、言いかえれば、査察行為が戦争を回避するための手段であるとすればイラクとしては十分受け入れる余地はある、しかしながら、もし査察を受け入れたにもかかわらず戦争が起こるということになれば、ある意味で査察団の行動が開戦準備のための行動になり得る、つまり開戦の前の軍事情報を入手するための行動であるとすればこれは受け入れがたいというような判断にイラク政府が行きがちな状況にあるわけです。
 そういう意味で、今申し上げました二つの点、事故的な衝突、そして二番目はアメリカの攻撃に対する不信感という二つの理由によって査察活動が途中でとんざする可能性は極めて高いというふうに私は判断しております。となりますと、そのような状況を踏まえて、戦争が発生するということはある意味では不可避であるというふうに考えた方がよろしいかと思います。
 しかしながら、それでは最後の点につきまして、戦争が起こった場合に果たしてどういう状況が生じるかという点につきましては、一言で申し上げまして、イラク内外におきまして非常な混乱と不安定を招くということになるかと思います。その最大の理由は、これは軍事的に考えましては、私どもは軍事的には専門ではございませんので印象論でしかございませんけれども、どう考えてもイラク軍にアメリカの攻撃に耐えられるような力があるとは思えないというのはまず前提でございます。
 しかしながら、そうした軍事的な敗北がフセイン政権の打倒あるいはフセイン政権の崩壊というものを即座に導くかどうかというのはまた別の問題になります。あるいは、フセイン政権の崩壊が即座に新政権の成立ということをもたらすかというのはまた別の問題になります。
 イラクに関する専門家、欧米の専門家を含めて合意しておりますのは、イラクにおいて新政権を安定的に確立するということは極めて難しい、アフガニスタンのような状況とはまた別であろうということで意見が一致しております。といいますのも、現在国内に今現在の政権にかわり得るような反体制派が存在しないということがまず第一点ございます。そして、では国外に目を向けますと、国外にそうした新政権を立てられるような人物がいるかといいますと、これも存在しないということになります。
 アメリカは現在、INC、イラク国民会議という組織を母体にいたしまして新政権の受け皿というような形をとっておりますけれども、これは、湾岸戦争以降、十年以上にわたりましてこのINCを中心に組閣工作をさまざまにしてきたわけですけれども、いずれも失敗に終わっている。むしろさらに内部分裂が強まっておりまして、なかなかかいらい政権を立てるという形だけをつくるのもかなり難しいという状況にあります。最近うわさされておりますようなアメリカの直接支配、GHQ型の直接支配というような案も、これは積極的にそういう案を考えているというよりは、むしろ消極的に考えて、新政権を担うようなスータブルな存在がいないということで、消極的に、アメリカが全面的に支えるしかなかろうというようなアイデアかと思います。
 ちなみに、こうした直接支配ということを考えれば、相当戦時あるいは戦後のコストが高まるということは目に見えておりまして、現在、米議会で試算されている数字では、最大見積もって二千億ドル近くのコストは戦争の準備及び戦後の処理にかかるというふうに推計されているという数字がございます。
 以上、そのような形で新政権をつくるのは非常に難しいわけですが、万が一そのような形で国内にかいらいではあっても新政権をつくる、あるいはアメリカがそれをバックアップするというような体制がとられたとしても、そのことが周辺国に与える影響は極めて甚大なものになるかと思います。
 当然、イラク同様に反米的なスタンスをとっておりますシリアやイランといった国々に対する影響もかなり大きなものになるかと思います。加えて注目すべき点は、サウジアラビアに対する影響かと思います。サウジアラビアは、これまで親米国としてアメリカの対中東政策の中核を担ってきたわけですけれども、しかしながら、もしアメリカの政策の力点がイラクに移されるということになりますと、サウジアラビアが相対的に中東における役割を低下させるということになりかねません。そういたしますと、サウジアラビアの王制、さまざまな形で反体制活動も抱えております現在の王制が果たして安定的に維持できるかどうかという問題も出てくるかと思います。
 このように、イラク国内及び国外にさまざまな問題をはらんだ新政権の樹立ということになりますけれども、唯一安定的に新政権が立てられるとすれば、どうしたオプションが考えられるかと申しますと、これは現体制のかなりの部分を残すような形で政権が交代した場合にのみ、ある程度の安定性が得られるということが考えられるかと思います。
 フセイン政権は、しばしば言われるように、フセインとその親族あるいはその側近の独裁体制だというふうに言われておりますけれども、そのすそ野には、現在の与党でありますバース党という広大な与党が控えております。これは、この与党はイデオロギー政党ではございますけれども、現在では一種の生活政党になっております。国民の生活をかなりの程度支えている、地方に行き渡った支持母体を持っている政党だというふうに言えるかと思います。
 こうした国民の生活の間にかなり根を張ったような巨大政党の隅々までひっくり返すということではなく、そうした現在の社会経済的な基盤を支えているような政体をある程度残した形で政権が交代することができれば、比較的安定的な政権移譲ということが可能ではなかろうかというふうに考えます。
 しかしながら、現在のアメリカの政策を見る限りでは、必ずしもそうした点に留意しているとは思えない、むしろ国民の生活を根こそぎひっくり返すような形での新政権の一からの樹立、あるいは戦争の、市街戦を含めたかなり国民レベルを巻き込んだ形の戦争というような政策に依拠しているというふうに見えるように思います。
 大体十五分になりましたので、以上で私の方の御報告は終わらせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
田並委員長 ありがとうございました。
 次に、河辺参考人、お願いいたします。
河辺参考人 委員長、御紹介ありがとうございます。
 おはようございます。河辺でございます。国連あるいは日本外交の問題を研究しております。このような場で意見陳述の機会をちょうだいしたことを心からお礼申し上げます。
 資料、四ページにわたって用意いたしました。といいましても、ここにはまさに資料しか書いてございません。文書の抜き書きなどが中心になっております。その最初のところに、ある文書、ある出来事に関して出された声明文なんですが、その抜き書きを示しました。
 カーター元アメリカ合衆国大統領がノーベル平和賞を受賞しましたが、その際に、それに関しまして出された声明文です。ごらんいただくとおり、大変感情的で挑発的な内容でございます。
 あなたは安っぽいメダルをもらって喜んでいるんだろうとか、イエスは殴られたらほかのほおを差し出せと女の子のようなことを言ったのかもしれないが、我々はそうじゃない、先制攻撃で殴り倒す、やっつけることが求められているのであるとか、あるいは、あなたに対して我々は心にもない敬意を表明する、同時に、あなたが今後も荒廃し、しかも危険な世界各地を旅し続けることを、願わくばそれがますます頻度を増すことを心から願っているとか、そんな内容の文書でございます。
 だれが発表したものか。例えばビンラーディン氏がさらなるテロ攻撃を予告するその声明文のようにも見受けられますが、署名者は異なります。ジョージ・ブッシュ氏であります。ジョージ・ブッシュ・アメリカ合衆国大統領の、カーター元アメリカ合衆国大統領がノーベル平和賞を受賞した際に出された公式声明文であります。昨日確認いたしましたところ、現在もホワイトハウスのホームページに残っております。
 ある西側先進国の首脳、今や西側という言葉自身が不適切かもしれませんが、NATOの一員の首脳がこんな発言をしたということをロイターは伝えております。ワシントンの現政権の根本的問題は極めて知性に欠けることである、私の発言ではございません、あるNATOの一員の首脳の発言でございます。
 率直に申しまして、このブッシュ氏の公式声明も、彼の使った言葉をかりれば、文明的な発言であるとは申しがたいように存じます。ちなみに、この声明文が出された直前、アメリカ議会、合衆国上院は大統領に武力攻撃の権限付与を決めた、その直後に出されたものでございました。
 その際、報道官はこのような言葉を前置きとして使っております。現在、ブッシュ大統領は第三次世界大戦の細部の検討に忙しい。それにb、c、d、eと続きまして、ブッシュ政権が国際的な場において発した言葉、あるいはクリントン政権下において急速に一国主義的な傾向を強めた、ユニラテラリズム、その傾向を強めた共和党関係者の発言など、幾つか抜粋しました。
 特に人工中絶、これはアメリカ合衆国においては大きな政治問題であるわけですが、そのような米国内の問題、これを理由に掲げて国連分担金の不払いを宣言する。あるいは女性差別撤廃条約や子どもの権利条約を批判する。小火器、小さな武器でございます、の違法取引の根絶について、市民は武器を持つ権利があるんだと主張して反対をする。あるいは米軍に対する反対活動、敵対活動は取り締まられなければならないが、米軍が裁かれることは許さぬとして国際刑事裁判所に反対をする。ここに掲げて紹介しましたのはごく一例でございます。若干の事例でございます。ほかにも多くの問題においてブッシュ政権は同様の姿勢を示しております。
 なお、ついでながら、このhというものは、ブッシュ政権、そのユニラテラリズムにかかわる発言ではございません。この方は一九八九年から九三年、国務省の法律顧問を務めたシャーフという人の発言でございます。刑事裁判所に強く反対をする共和党の議員たちに向かって、こう言っております。なぜ、あなたたちがならず者国家と呼ぶ諸国とアメリカ合衆国のみがこの問題に反対をするのか、共同歩調をとるのか、痛烈な皮肉でございます。
 この国際刑事裁判所、これはことし二〇〇二年七月一日にこの規程が発効いたしました。もしもアメリカ合衆国が強硬な姿勢を示さないでいたら、そして一年以上前にこの規程が発効していたならば、いわゆる九・一一事件もこの裁判所で裁かれた、取り扱われたことにもなったかと存じます。
 ちなみに申しますと、この規程が採択されたとき、日本からは小和田国連大使が参加しております。その際の演説は、ブッシュ政権の主張を、この当時はまだクリントン政権ですが、現在のブッシュ政権の主張をほぼなぞるものであったということが言えます。現在も日本は、この問題に関して世界の中でも最も消極的、否定的とまではあえて申しませんが、消極的な国であるということが言えるかと思います。
 現在、アメリカ合衆国の中では、ベトナム戦争以来最大規模とも言われるような、武力行使に対する反対集会が頻繁に持たれております。せんだってもワシントンにおいて十万人、これは主催者発表ですが、十万人の反対集会が開催されました。ヨーロッパにおいても同様の状況が続いております。百万人規模の集会すら持たれております。その背景にあるのがこのようなブッシュ政権の姿勢である、そして、そのブッシュ政権が対テロ戦争を掲げてアフガニスタンを空爆し、日本が現在その支援を行っているという状況でございます。
 さて、今回私が与えられたテーマ、テロ対策特措法に基づく対応措置に関する基本計画の変更及びイラク情勢、これは、必ずしも直接はかかわらない二つの問題、テロという問題とイラクという問題がかかわって、二つくっついております。
 では、まず、テロとは一体何なのか。これは、日本政府の答弁においてもみずから認められておるように、定義をするのが大変難しい問題でございます。実は、一九七二年から国連総会でこの問題がずっと議論されてまいりました。その七二年の国連の議事録、これを見るだけでもその混乱というのがよく見えてまいります。二ページ目、「テロとは何か」というところに幾つかその発言を引用してみました。
 第二次世界大戦中、フランスの地下運動あるいはアメリカの独立革命、これらはテロではないのか。ヨーロッパのレジスタンス運動、ナチスに対する抵抗運動、これをナチスはテロリストと呼んだじゃないか。
 あるいは、民主イエメン、これは南北にイエメンは分かれておりましたが、現在は一つになっておりますけれども、この大使は極めておもしろいことを言っております。興味深いことに、この国連総会の議場に並んでいる代表団の半分以上が、数年前までは大使、閣下ではなくてテロリストと呼ばれていたことであると。独立の闘士だった、それを独立運動を抑圧する側から見ればテロリストとなる、独立してしまったら大使、閣下、エクセレンシーと呼ばれることになる。では、テロとは何だ。
 さらにこの中で、当時のアメリカ合衆国のベネット次席国連大使は、アメリカ独立戦争もテロじゃないかと言われて、こんな対応をしております。ジョージ・ワシントンが反逆者であったということは事実である、ただ、ハイジャックはしなかった。何だかわけのわからないことになっております。ちなみに、このときのアメリカ合衆国の首席国連大使はジョージ・ブッシュ氏、現在のアメリカ合衆国大統領の父親でございました。
 こういう中で、南アフリカのみが迷いのない姿勢を示しております。我が国にとってみれば、テロはテロだ、ほかの何物でもない、断固取り締まる。この当時の南アフリカは、現在の南アフリカとは異なります。現在は民主化されておりますけれども、この当時は悪名高きアパルトヘイト政策をしき、国際的な非難を集めていたその南アフリカが、逆に迷いのない姿勢を示している。この問題の問題点、この問題の難しさというのがよくわかるかと思います。
 この問題は、この後二十年間国連総会の議題に残り続けるのですが、九四年、国際テロリズム根絶措置宣言というものが採択されます。ここにこの問題は一つの山を越えるということになります。
 その背景にありましたのが、前年九三年に結ばれた、合意されたパレスチナ暫定自治という問題でございました。言い方をかえれば、それがあったからこそ、テロとは何かという問題にある一つの区切りがついたということが言えるかと存じます。逆に言えば、この暫定自治がほごになったならばどうなるか。その結果、ますます絶望が深まることになります。
 現在、テロに関しては、しばしば貧困が問題だということが言われるように感じております。しかしながら、このように見ますと、このように貧困が問題だというふうに単純に言っては、こぼれ落ちる論点というのが大変多いということがおわかりいただけるかと思います。
 今、みずからの命を犠牲にしてまで自爆テロという絶望的な、まさに絶望的としか言いようがありませんが、犯罪的な行為ですが、こういう行動に走るパレスチナの若者たちは、むしろ経済的には恵まれている環境にあることが少なくありません。さらに言えば、高等教育を受けている者も多い。九・一一、あの惨劇、あの飛行機に乗って突っ込んだ若者の中には留学経験を持った者もいるということは、皆様方よく御存じのとおりでございます。
 もちろん経済問題も重要でありますが、しかしそれ以上に問題になるのは、不正義な状態が続いているというそのことにほかなりません。もちろん九・一一、このような犯罪行為がどのような理由からもどのような意味からも正当化されない、これは言うまでもないことではありますが、しかし、人の命が場所によって甚だしく値段が異なるということも痛感いたします。
 例えば、南部アフリカにおいては、八〇年代、百五十万人が南アフリカの侵略によって犠牲になっております。これは国連の報告書によりますが。その百五十万人が犠牲になったということすら、恐らく先進国の中ではほとんど認識されていないでありましょう。マンハッタンで犠牲になった三千人の五百倍となるのでしょうか、その人数が犠牲になっております。
 余り時間もありませんので、とっとと進んでいきたいと思いますが、イラクというところに今度ちょっと論点をまた変えてみたいと思います。さっきも申しましたが、この問題とテロの問題は必ずしも一致しておりません。
 一九九八年、イラク危機というのが起こったことがございます。先生方御存じのとおりでございますが、九八年年頭にアメリカ合衆国がイラクを爆撃するという危険が高まります。この際、アナン事務総長の調停によってひとまずは回避されますが、十二月に至って爆撃が実行されます。そのときにイラクが査察を拒否し、それ以降査察が行われていないわけです。この際、アナン事務総長の調停により一たん危機が回避された直後でございますが、安全保障理事会は、イラクにとって最も深刻な結果をもたらすことになる、次にイラクが査察を拒否した場合はそういう結果をもたらすという決議を採択しております。
 これを提案したのは日本でございました。当時日本は安保理の理事国を務めており、大使は小和田恒氏でございました。十二月にアメリカ合衆国とイギリスが爆撃を始めますが、そのときにもこの両国を安保理の席上において支持した唯一の国が日本でございました。
 その際、外国の記者からこのことについてただされた岡田真樹外務参事官は、次のように答えております。爆撃する権利、これは世界のどのような国でも持つのか、そうである。では、アメリカ合衆国またはイギリスだけではなく、日本や例えば中国またはロシアも含むのか、その権限がある。
 今回の決議においても、深刻な結果という言葉が使われております。これについて外務省の北米局長は、アメリカ合衆国は強い言葉を使っているが、これはイラクに安保理決議をのませるためである、そのように説明をしておりますが、実は同様の言葉は三年半前に日本政府が提案をした決議にも盛り込まれておりました。そして、爆撃を招いております。
 重要なことは、こういった外務省が行っていた措置の裏で進んでいたのが、いわゆる一連の不祥事であるということでございます。外務省不祥事は、会計制度の問題あるいは人事上の問題、そういう形でのみ議論されがちでございますが、むしろ論じるべきは、そのような外務省がどのような外交政策を組み立ててきて実行してきたのかということであろうかと思います。そして、政府をチェックすべき国権の最高機関である国会が問うべきことこそ、その外交政策であろう。人事上、会計上の問題というのは、言葉は悪いかもしれませんが、その下に任せておくことができるような問題ではないでしょうか。
 さて、もう時間がなくなってまいりましたが、これは法治主義の観点からも問題になります。周辺事態法、一九九九年、つまりイラクの爆撃が行われた直後でございますが、その際、政府は、アメリカ合衆国は国連の加盟国であるから国連憲章を守るのである、だから違法な武力行使はしない、したがって、それを支援することは国権の発動たる戦争ではない、そういう説明を繰り返していたわけでございます。ところが、ブッシュ政権は国連決議を守らない。
 現在、国連総会には国連決議の遵守という議題があります。八〇年代から二十年間残っております。これの念頭に置かれていたのは何かと申しますと、実はアメリカ合衆国でございます。レーガン政権がことごとく国連関係の機関の決議を無視する、その中でキプロスがこれを提案し、現在まで残っております。ブッシュ政権はその姿勢をより強める。ところが、九・一一の事件の後、法律的にはなかなか説明のしづらい報復行動をとる。そこで、改めて国連というものに目を向けざるを得なくなる。その中で、滞納していた国連分担金の支払いの再開も決めます。
 そこで、九・一一の興奮の後、時限立法としてつくられたテロ特措法、そしてアフガニスタンに展開された自衛隊、これを本来の目的と違う、しかも三年前には日本も深くかかわり、爆撃をする権限があるんだとまで言った、その問題に転嫁をしていく、このことが法治主義の観点から見てどのように考えられるのであろうか。
 最後に、これは本論とは全く関係がございません。財務省のホームページにこんな図を見つけました。つぶれてしまって見えなくなっておりますが、法律案提出から公布までの流れだったでしょうか、まとめだったでしょうか、そういうふうについております。法案というのは閣議から国会に提出されるものであるがごとく書かれております。国の唯一の立法機関にして国権の最高機関たる国会というのがこういうふうに位置づけられているのか。私は、もし学生がこういうふうに説明したら、さて、どういうふうに採点したらいいのかなと、ちょっと最後にいささか蛇足ではございましたが、余計なことをつけ加えました。
 時間、二分ほど超過してしまいました。申しわけありませんでした。御清聴ありがとうございました。(拍手)
田並委員長 どうもありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
田並委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。
平沢委員 自由民主党の平沢勝栄でございます。
 四人の参考人の皆さん方には、お忙しい中おいでくださいまして、本当にありがとうございました。
 今、いろいろお聞きしていまして、私自身は、イラクの問題、酒井参考人が言われましたように、アメリカはフセインを打倒と考えていることは、これはもう間違いないだろうと思いますし、私自身はそれが一番いい解決法で、今、北朝鮮の問題もいろいろ騒がれていますけれども、拉致問題だって、金正日が倒れない限り、私はいつまでもこの未解決の状態が続くんではないかなと。
 去年の九月十一日以降、アメリカは国際テロとの闘いということを言っているわけでございます。ですから、国際テロを許容している、あるいは、いろいろな意味で支援している国に対して毅然とした対応をとる、これは世界の一つの大きな流れではないかなということで考えているわけでございまして、今、参考人の皆さん方からいろいろな御意見をいただいて、言いたいことはいろいろあるんですけれども、きょうは参考人の皆さん方の御意見を聞く場でございますので、参考人の皆さん方から御意見をお聞きしたいと思うんです。
 サダム・フセインとそれから国際テロリストの関係、特にアルカイダというかタリバンというか、そちらとの関係というのもあるでしょうし、それとは別なほかのテロリストとの関係もあると思いますけれども、サダム・フセイン、これは国際テロリスト、アメリカはいろいろと、アルカイダとあるというようなことも言っておりますし、日本の川口外務大臣は、その辺ははっきりしないようなこともこの委員会の場で答弁しておりますけれども、これについて、簡単で結構ですから、田久保参考人から、イラクの国際テロとの関係についてちょっと御説明いただけませんでしょうか。
田久保参考人 今平沢先生の御質問でございますけれども、これはハードエビデンスがないんですね。あのテロが起こる一年前に、プラハでチェコの諜報機関が、アルカイーダとそれからイラクの担当者が協議をしたというところまではあるんですが、これ実際テロの協議をしたかどうか、ハードエビデンスがないということでございます。先ごろ来日いたしましたアメリカの国務次官だったですかね、ハイレベルの接触はあるということでございます。
 いずれにしても、これはテロ関係の情報は、特にインテリジェンス情報は非常に抑えておりますので、表面に出ているのは、むしろ泳がせたり、ほかの目的という場合がありますので、これはよくわからないというのが私の今の考えであります。
平沢委員 ありがとうございました。
 田中参考人、酒井参考人、河辺参考人に簡単にお聞きしたい。今と同じ問題を聞きたいと思うんです。
 アメリカは、アルカイダとかなんかあるということをブッシュの演説の中でもはっきり言っているわけですけれども、これらについてどう思うか、ちょっと簡単に。一言でいいですから。
田中参考人 明確な証拠はないと思います。
酒井参考人 私も同様でございまして、明確な証拠はございません。
 その関係について私が見ております分析につきましては、お配りいたしました資料のところに簡単に書いて触れてございますけれども、内容を申し上げますと、基本的にイデオロギー的な接触点は全くない、フセイン政権は世俗的な左翼政権でございまして、アルカーイダのような、いわゆる右翼イスラム主義勢力とはこれまで接点がないという傍証が一つございます。
 それと、リチャード・バトラーという前の国連のUNSCOMの委員長、これがやはり米議会に公聴会で呼ばれまして、そのときに、その点についてどう思うかというふうに聞かれまして、彼は、サダム・フセインは大量破壊兵器をみずから開発しているかもしれないけれども、それを他人に譲り渡すほど寛容な人物ではない、むしろそうしたことが回りめぐって、みずからの政権に敵対してくるというようなことの危険性の方をむしろ重視する人物であろうというような判断を述べております。
 以上です。
河辺参考人 私も他の参考人の先生方と同様に、そのようなものは承知しておりません。
 また、私の理解によりますと、むしろサダム・フセイン氏のパーソナリティーから見ましても、そういうものとの接触というのは、これまでのところ、余り積極的に求めることはないのではないかなというようにも感じます。
 以上です。
平沢委員 それでは、今の問題について田久保参考人にちょっとお聞きしたいのです。
 ブッシュ演説の中に、テロリスト支援、アルカイダがイラクにいるというようなことがはっきり書いてありますけれども、これについて田久保参考人、アメリカの判断についてどう思われるでしょうか。
田久保参考人 アルカイーダが例のアフガニスタン爆撃の後にイラクに逃げたことは、これはもう歴然としていると思います。
平沢委員 イラクの問題というのは、これは北朝鮮の問題で日本がこれから対応を考える意味で、非常に参考になるわけでございまして、そこでまた、四人の参考人の皆さん方にお聞きしたいと思うのです。
 北朝鮮はミサイルの技術供与とかいろいろな意味での協力関係を、イランとかパキスタンとかシリアとかあるいはリビアとか、いろいろやっているということが言われているわけですけれども、イラクと北朝鮮との関係、これについてはどうお考えになられるか、田久保参考人からちょっとお願いできますか。
田久保参考人 私はしかとした証拠は持っておりませんが、北朝鮮がイラクを初めとする諸国にミサイルあるいは関連の技術を輸出しているということは新聞報道で知っております。
田中参考人 一九八〇年代にイラクの隣国のイランにいたときに、いろいろな方々と話をしていたわけであります。当時、イランとイラクは敵対しておりまして、イラン・イラク戦争を行っておりましたが、イラクの所有していたスカッドミサイルがテヘランの町などに降り注いでいた、その状況におきましても、少なくともイラン側の見方でありますが、そのようなミサイルに北朝鮮の技術が入っている、あるいは北朝鮮との関係があるというような発言はございませんでした。
酒井参考人 イラクと北朝鮮の関係でございますけれども、これも私も報道ベースでしか存じ上げませんけれども、ある程度の武器の行き来があるという報道は数々ございます。
 ただ、私がイラクに駐在しておりました八〇年代の後半におきましては、むしろ経済関係として韓国との関係をイラクは熱心に進めておりましたので、相対的には北朝鮮との関係は八〇年代以降、先細りの状況にあったというふうに理解しております。
 以上です。
河辺参考人 私も、公刊されている資料以上のことは存じておりませんが、いわゆる国際兵器市場のたぐいで、特に九〇年代後半以降、第三世界からの武器というものが流れ込んでいるということはよく言われております。
 しかしながら、そういう中においてもなかなか市場拡大ができない、このこともよくささやかれておりまして、結局のところ、廉価ではあるがそれ以上ではない武器を購買することが、必ずしも顧客を見つけることができていないということも言われております。北朝鮮に関連した問題、直接関連してはおりませんが、そういったことが言われておるかと承知しております。
平沢委員 フセインは中東のヒトラーと言われているわけでございまして、北東のヒトラーが金正日でございますけれども、このフセイン体制の崩壊がない限り、なかなか解決しないというのが実態だろうと思うのです。
 フセイン体制、かつて化学兵器をクルド族あるいはイラン・イラク戦争等で使ったことがあるわけでございまして、先ほど田久保参考人が言われたように、核兵器は持っているかどうかは別にして、生物兵器、化学兵器を持っていることはこれはまた間違いないわけでございまして、また、これがいつ、どこで、どういう形で使われるかわからない。
 そういう中で、いよいよあしたから査察が始まるわけでございまして、先ほど酒井参考人が言われたように、どの程度協力がなされるか、これは大変に難しいというか疑問だなという感じがしているわけですけれども、もし協力が得られなければ、アメリカは当然武力行使に入ることになるだろうと思うのですけれども、武力行使以外にイラクのそうした大量破壊兵器を廃棄させる方法というのがあるのかどうか。
 要するに、金正日もそうですけれども、サダム・フセインもそうですけれども、こうした査察に対してもいろいろな問題があるということを先ほど酒井参考人言っておられましたが、そもそも大量破壊兵器を廃棄さえすればこの問題は解決するわけでございますけれども、じゃ、武力行使以外に大量破壊兵器、何のためにこんなものを持って、そしていつ使うかわからないという、それはいろいろ国際的にも脅威であることは間違いないわけで、北朝鮮との問題とも非常にリンクしてくるわけです。
 アメリカの武力行使がおかしいという議論もいろいろあると思いますけれども、じゃ、武力行使しなかった場合にイラクがこの大量破壊兵器を自主的に廃棄する可能性というのはあるのかどうか。
 これも田久保参考人からちょっと教えていただけますか。
田久保参考人 イラクがいかに悪らつなことをやってきたかというのはもう明白でありまして、今の大量破壊兵器、平沢先生がおっしゃいましたけれども、これはイランにも使っているわけですね。イラ・イラ戦争にも使っている、それからクルド族にも使っている、こういうことをやっております。それから、十一年前にはクウェートを侵攻し、あわよくばサウジアラビアも侵略しようとした、こういう前科があるわけですね。
 それからもう一つ、武器を持っているということ自体が見えざる大変な力になっている。北朝鮮が核を持っているかいないか、一、二個持っているんじゃないかというだけで周辺諸国は腰がちょっと震えてくる。特に日本の方は腰が引けてくるという、つまり、軍事力、大量破壊兵器が翻訳されて外交力になってくる。これを非常に警戒すべきではないかなというふうに私は考えております。
田中参考人 最終的に自主廃棄をすることを期待するのは無理だと思いますので、仮に大量破壊兵器を開発し、隠し持っていた場合、そしてそれを査察によって察知されることを拒否するのであれば、それの除去のためには武力行使以外の道がないというのは何となくわかります。
 それは、アフガニスタンにおいてターリバン政権それからアルカーイダを掃討するために最終的には武力行使を断行せざるを得なかった状況を踏まえても、類例として考えることはできますが、一方で、九八年まで行われておりました査察においてほぼそういった危険が除去されたものではないかとも思われます。
 それ以降にどのような状況にあるのかをまず立証すること、検証することが優先されてしかるべきであると思います。
酒井参考人 ただいま田中参考人の方から指摘がございましたように、今問題になっておりますのは、九八年以降の四年間においてどのような形で開発が進んだかということが問題になっております。
 九八年以前のことにつきましては、基本的に化学兵器についてはまだ調査途中という形で終わっておりますけれども、ミサイルと核兵器に関してはかなりの点で廃棄が完了したというのが国連の基本的なスタンスかと思われます。
 その後の査察団が入らなくなった状態に対して、武力行使以外に廃棄あるいは開発をさせない方法として考えられた方法に、スマートサンクションという議論がございます。これは特にアメリカのパウエル国務長官が中心となって出しましたアイデアでございますけれども、これは、中に入って武器がどれだけ開発されているかを見られない以上、中に入ることをとめるしかない、軍事転用可能なあらゆる物資に関して、やみで取引がなされないよう、あるいは国連を通じてでも入っていかないようにチェックするという方法でございます。
 現在これが導入されておりますけれども、当初パウエル氏に案を提示いたしましたアメリカのシンクタンクの報告などでは、これを徹底させることができる。つまりこれを徹底させるために、例えば電子チップなどをありとあらゆる国連で許可した物資についてつけることによって、途中で化学兵器に転用されないようにすべて衛星等でチェックすることが可能である。このようにして、査察が入らない状況であってもかなりの部分開発を監視することが可能であるという報告が出されております。
河辺参考人 少し視点を変えてみたいと思います。
 大量破壊兵器の問題は、九〇年代の半ばが一つの転換点になり得たかと思います。しかしながら、それが失われてしまった。どういうことかと申しますと、一つは、日本も積極的に推進をしました通常兵器の移転登録問題でございます。
 これは、採択された際に、キューバや中国と並んで、例えばメキシコなども強い懸念を示しております。どういうことかと申しますと、通常兵器の移転のみが制限されるあるいは強く監視されるということは、自国内で兵器生産ができない国の軍事力があからさまになってしまうということであるわけです。その一方で、先進国、特に世界最大の武器生産国であるアメリカ合衆国の生産自体はほとんど何ら監視を受けないということで、メキシコなどですら懸念を示した。
 ところが、その後、この問題に関してこれらの国々が示した懸念が解消されることなく、結局のところほとんど手つかずでだらだらと続いてきてしまっている。これは、今やだれもが認めていることなんですが、ほとんど意味がないような形式的な制度になってしまっている。
 ただ、そのことについては、そもそもこの制度が持っていた問題点、いろいろな意味で問題がありますが、第三世界から見た問題点、先進国から見た問題点、双方ございますけれども、それをきちんとやる、チェックするということがちょっとできなかった、しなかった、その怠慢というものを責められなければいけない。
 それから、九〇年代の半ばに核兵器の問題に関して、先生方御存じのとおり先進国の核保有が認められるということになってしまった。これがまた、より議論を複雑にしてしまったことがあるかと思います。
平沢委員 ありがとうございました。
 もう時間がありませんので、ちょっと田久保参考人にお聞きしたいと思うのですけれども、アメリカがもし武力行使に踏み切った場合に、日本としてどうすべきか。
 これは大きな問題でございまして、単なるモラールサポートでいいんじゃないかという議論もありますし、日本はもっと積極的に、同盟国アメリカとの関係を考えた場合に協力すべきではないかと。イージス艦の派遣ということも一つの議論になっているわけで、ほかの護衛艦はいいけれども、なぜイージス艦がだめなのかというのは私もちょっとよくわからないわけで、もしイージス艦がだめなら護衛艦だってだめなわけで、今もう護衛艦は行っているわけでございます。
 その辺のことも含めて田久保参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、もし武力行使が始まった場合に、日本としてどういった協力が望ましいと思われるか、ちょっと御意見をお聞かせいただけますか。
田久保参考人 私も、できるだけのことをやるべきだと思います。イージス艦の派遣を含めて、できるだけのことをやるべきだと思います。
 その一つは、我々も二十一世紀、これからアメリカを中心とした自由主義国、民主主義国の対テロの作戦に参加するんだという、確固としたやはり哲学的確信が必要である。それプラス、日米同盟、これをいかに堅持していくかということでございます。
 それからもう一つ、三つ目でございますけれども、私は、日本の防衛政策、これはいろいろな欠点があろうと思います。政治経済、経済は依然として私は世界有数の経済力だと思う。政治もいろいろ言われていますけれども、日本の政治より悪いところは幾らでもある。防衛政策はどうかというと、防衛政策だけはちょっと欠点があり過ぎるんじゃないか。軍隊ではないという政府答弁で、軍隊であるということをさせようというところで常に迷っている。こういう機会に、遊んでいると言ってはおかしいんですけれども、自衛隊の戦力をフルに利用するというのは、私は練度を上げる上で大変意義があるんではないかと。
 以上三点でございます。
平沢委員 もう時間がありませんので、最後にお聞きしたいと思うんですけれども、このイラクの問題に日本がどう対応するか、どういう形でこの問題に臨んでいくかというのは、日本と北朝鮮のこれからの関係にも大きく私は影響を及ぼすだろうと思うんです。
 このイラクの問題を、この推移を、間違いない対応をしながら、今、日朝正常化交渉というのはデッドロックに乗り上げたような形もありますけれども、言うまでもなく北朝鮮は、イラクの場合は大量破壊兵器は持っていないと言っていますけれども、もう北朝鮮は正々堂々、私たちは持っていますよということを言っているわけでございます。こうした国に対して、イラクとはちょっと直接関係ありませんけれども、密接な関係を有していますので、あえてお聞きします。日朝交渉については今後、大量破壊兵器を持っていると堂々と公言して、しかも、それをいろいろな形で日本に対する威嚇の道具に使っている北朝鮮との交渉について、どう臨んだ方がいいと思われるか、田久保参考人、ちょっとお聞かせいただけますか。
田久保参考人 私は、対朝交渉は急ぐべきではないと思います。それから、対朝交渉で正常化、それと国交樹立というのは全然別ではないかなと思います。ニクソンが中国を訪問した、これは正常化のために行ったわけで、その後ちょうど十年目、一九七九年の一月一日に、カーター政権のときに国交を樹立したわけでございます。これは二つに分けて考えればいいじゃないか。
 それから、その正常化交渉でございますけれども、今、世界の大勢というのは対テロでみんな一致しているわけでございますね。先ほど参考人の方がおっしゃいましたけれども、乱れているんじゃなくて、共和党の中でも一人っきり反対しなかった。アメリカの中ではほぼコンセンサスでございます。国連安保理事国十五カ国全部が賛成だ。こういう一つの大きな流れがあって、小さなところを見るべきではない。そうすると、これが北朝鮮に与える影響というのは、日本がイラク攻撃に大変な力をかしたというのは、これは無言の圧力を北朝鮮に加えることになるだろうと思います。
 したがいまして、私、今の先生の御質問に対して、正常化をどうするかですけれども、正常化は一切急ぐべきではない。大前提は拉致であり、もう一つは、日本にとってはテポドンではなくてノドン、新潟の原子力をねらっているノドン百基、これを、大きな声でノドンということを政府には言ってほしいというふうに考えております。
平沢委員 時間が来たので、終わります。ありがとうございました。
田並委員長 次に、前原誠司君。
前原委員 民主党の前原でございます。
 四名の参考人の皆さん方、きょうは、お忙しいところわざわざお越しをいただきまして、貴重な御意見を賜りましたことをまず御礼申し上げます。
 まず、私のアフガニスタンあるいはイラクの問題に対する考え方を少しお話をして、それを受けていただく形でそれぞれの方に御質問をしたいと思います。
 同盟関係を一つの基軸に考えた場合に、私は、アメリカの行動というものにかなり日本は影響を受けざるを得ない、こういう考え方を持っております。先ほど田久保参考人がおっしゃったように、日本の安全保障、防衛問題というのはかなり穴がありますけれども、その穴については、例えばパワープロジェクション能力でありますとか、あるいは情報収集能力、そういうものについてはかなりアメリカに頼っておりますし、また、一九七〇年以降につきましては、盾と矛の分業体制ということで、アメリカ依存というものがかなり強くなってきている。
 先ほど、北朝鮮とイラクの問題を対比した質問がございましたけれども、私は、まさに北とイラクに対する問題というものは、同盟関係のもろ刃の剣というものが如実にあらわれている話だと思っています。
 北については、私は田久保参考人が先ほどおっしゃった意見には全く賛成で、全く焦る必要はない、急ぐ必要はないと。そして、韓国やアメリカとの同盟関係で、強く我々の主張を貫いていく。そして、そのバックボーンにあるのはやはりアメリカの軍事力なんだろうというふうに思います。つまりは、同盟関係というものを背景に、対北朝鮮外交というものはかなり強気で臨むことができるのだろうというふうに思っております。
 それに対して、イラク問題あるいは中東問題というのは私は逆のもろ刃の剣だと思っておりまして、アメリカが行動することによってメリットを受ける部分とデメリットをこうむる部分というものがある。特に、私は、酒井参考人がおっしゃったように、イラク攻撃をアメリカは多分やるんだろうというふうに思いますけれども、やったときに協力しなかったら、何だ、北朝鮮では一緒になって行動してくれというふうに言いながら、イラクの問題については同盟国でありながら協力しないのか、こういう言われ方あるいは見られ方をするのは必然だというふうに思います。したがって、どこで手を挙げるか、どういう協力をするかは別にして、ある程度の協力はやはりせざるを得ないんだろうというふうに思います。
 私がきょう皆さん方にぜひ御質問をしたいのは、武力攻撃のみだけでイラクの体制崩壊はできるかもしれないけれども、しかし、新たなテロでありますとか、あるいはアメリカへの憎しみ、あるいは他のアメリカを協力する国への憎しみというのは残る。そして、大量破壊兵器などの拡散などによって新たな脅威というものが永続するし、またそれは、ひょっとしたら見えない形での脅威というものに、九月十一日に顕在化をしたわけでありますけれども、さらに拡大をしていくのではないかという危険性を私は感じ取っております。
 四人の皆様方にお伺いしたいのは、軍事行動のみならず、先ほど河辺参考人からはテロの根源のお話がございましたけれども、もう少し掘り下げていただきまして、軍事行動だけでは多分私はテロの撲滅やあるいは対立の芽を摘むことはできないんだろうと思いますが、じゃ、軍事行動ではなくていかにそういったテロの芽を摘むべきなのかということについてのそれぞれの参考人の方々の御意見をお伺いしたいと思います。
 田久保参考人からお願いします。
田久保参考人 ただいまの御質問でございますけれども、テロとは何ぞやということでございます。
 私が今ここで立って申し上げている前提は、アルカイーダを中心とするテロでございます。そのテロに、テロリストたちに大量破壊兵器を渡す可能性のある、おそれのある、現に渡したかもしれない、こういう国が悪の枢軸だというふうに理解しているわけでございます。
 私、テロ全般、もういろいろな各種のテロがあるのでございますけれども、今のテロにつきましては、これは特殊なテロで、アラブを代表したものでも何でもないんじゃないかと思います。
 私のつたない、乏しい知識でございますけれども、これは、約半世紀前にアラブに起こったテロ、ファンダメンタリストたちのグループで、アラブの政権の腐敗に対する不満、これがテロの出発点になったんじゃないかと思います。
 これはどういうことかというと、今から二十年前でございますが、ちょうど一九八二年に、シリアの、今のアサドの親父さんでございますが、アサド王の政権を転覆するというおどしがあって、これはハマ、シリアで第四の都市でございますけれども、ハマにいるということを突きとめて、特殊部隊が二昼夜にわたってこれを皆殺しにしたわけですね。シリアの政府はわずか二千人の、わずかというんですか、市民二千人が犠牲になったと言っただけですけれども、アムネスティ・インターナショナルは、二万五千から三万が皆殺しになったと。その後、そこにブルドーザーで、あとコンクリートを敷いて大駐車場にして、ハマは何事もないように今に至っている。
 これはハマのおきてと申しまして、アルジェリア、チュニジア、エジプト、このディクテーターたちがこれと同じことをやった。その結果、アフガニスタンとベカー高原に逃げたのが、そのうちの一部がアルカイーダでございます。
 したがって、私は、徹底的にこの連中を根絶やしにしないといけないのではないか。いささかも私は同情を抱いておりません。軍事力でこれを根絶やしにしないといかぬじゃないか、日本もこれに協力しないと後に禍根を残すことになるのではないかというふうに考えております。
田中参考人 そもそも、イラク問題とテロがどの程度密接に関連しているのかなということの前提に大きな矛盾があるのではないかと思います。それをわきに置いておきましても、実際にテロを根絶やしにすること、これは武力攻撃においても多分無理でありまして、まず敵を拡散させることに通じてしまう。これは、アフガニスタンでの攻撃を見ても明らかであります。
 ただ、だからといって手をこまねいているというのも策ではありませんので、たたかなければいけないときはたたくというのは正当な防衛行動でもあるかと思いますが、最終的に必要なのは、同時に、テロの温床となる、これは何も貧困だけではありません、テロを支える社会構造、それから政治構造、宗教構造、いろいろな側面がありますが、こういったところに対しても適切な処置を図っていかない限り、いろいろな矛盾は常にはらんだまま、アメリカが得意とする二重基準のもとに、テロに向かう、あるいはテロを支持する民衆あるいはグループを育て上げてしまう。それは常について回ると思います。
酒井参考人 御指摘のありました、軍事行動ではない形でテロの根絶はどうかという問題でございますけれども、私も全くそのとおりだと思います。
 報告させていただきましたように、今次の対イラク攻撃は、むしろ周辺国あるいは国内にかなり混乱を引き起こすということを考えれば、むしろテロの温床がますますふえるのではないかという気がいたします。そういう意味では、戦争そのものの問題よりも、やはり戦後、いかにアフターケアをきちっとやっていくかということが重要になっていこうかと思いますし、とりわけ難民などが大量に発生した場合には、そうしたところから、社会的、経済的な困窮の中からテロが発生してくるという問題がございますので、難民のケアが最大の問題だと思います。
 さらに言えば、軍事行動によって政権が転覆されたような場合は、やはり力による支配という形が続くことになりますので、逆に、短期的な軍事政権が繰り返し立つというような群雄割拠状態が生まれる可能性もございます。そうなりますと、やはり力信仰というものが打破できないということになりますので、そうした点でも、やはり軍事的な攻撃にのみ頼った政権交代というのは、むしろ禍根を残すことになろうかと思います。
河辺参考人 私も、いわゆるテロ問題と称するものとイラク問題は別な問題であって、それを一緒にしてしまいますとむしろ混乱をすると思いますが、さらにまた、いわゆるテロリストと称される者と特に中東に広く広がっている民衆の不満というものを一緒にすることもまたできないと存じます。
 例えば、サダム・フセイン政権がどの程度民衆に、人々に支持されているかどうかはまたこれも大いに疑問がありますが、少なくとも選挙結果に見られたような一〇〇%ではないでありましょう。しかし逆に、武力行使が行われることによってサダム・フセイン政権への支持を喚起してしまう、先ほども申しましたが、そのことも否定できない。また、何よりも重要なのは、先ほども他の参考人の先生方もおっしゃっておいででしたが、ダブルスタンダードの問題であるということ、それからもう一つは、異議の申し立てが今できなくなってしまっているということであります。
 特に、これはさっきも言いました、いわゆるテロリストと、中東諸国に広がる人々の不満というのは完全に分けていかなければいけないんですが、その不満の方で申しますと、いわゆるインティファーダ、子供たちが石を投げて武装軍隊に立ち向かっていくという、まことにもうほかに何とも言葉の言いようのない、絶望的な光景が出てこなければいけないような状態というのは、人々の不満というものが反映されない、異議の申し立てができない、そこにあるわけです。
 先ほども触れましたが、テロ撲滅宣言が採択されることとパレスチナ暫定自治合意はセットであったはずなのに、一方だけがほごにされてしまうのであるならば、ますます絶望的な戦いをせざるを得なくなる、そういう形に人々を追い込んでしまうし、そこにまた人々の支持を与えてしまう。例えば、先ほども触れました国際刑事裁判所の問題、こういったものがきちんと整備されていくこと、それも一例であろうかと思います。
 また、先ほど酒井先生が難民のケアの問題にお触れになりましたが、先生方も御存じかと思いますが、実は、パレスチナ難民は難民ではございません。難民条約に基づく難民ではございません。したがって、自分がもといた場所に帰還する権利というのを条約に基づいて保障はされておりません。あくまでも安保理決議によるのみでございます。そういう二重基準がある。世界には、難民である難民と、難民でない難民がある。
 これについては、たった一例ですが、レーガン政権下の国連大使でありましたカークパトリックは、こういうふうに言っております。国連には二つの難民基準があるのである、その一方の難民基準、つまりパレスチナ難民にのみ適用されている基準、これはUNRWA、パレスチナ難民救済事業機関という機関がケアしておりますけれども、これを支持していくことはアメリカ合衆国にとって極めて重大なのであるなんということも申しております。
 ですから、これはむしろ日米関係の問題になってしまうんですが、そこをどう対応していくのか。私は、いろいろなやり方があると思います。ノルウェーがやったやり方も一つでしょうし、スウェーデンがやったやり方も一つでしょうし、オーストリアや南アフリカがやっているやり方も一つであろうかと思います。
 以上でございます。
前原委員 さらに掘り下げた質問を、田中参考人、酒井参考人のお二人にお伺いをしたいんですが、先ほど酒井参考人がおっしゃった武力攻撃の事後の話、それは、そのケアというのは私も大切だと思います。先ほど田中参考人がおっしゃったように、平和的な解決だけでテロの根絶というのはなかなか難しいので、武力行使もやむを得ない部分もあるだろうという意見に、私は全く賛成です。
 ただ、武力だけですべてが解決できるわけがないとする場合に、武力攻撃の事後ではなくて、武力攻撃をする前、あるいは並行して、テロの温床というものをいかに国際社会がスポットを当てて、そこをいわゆる解消するような努力をしなければいけないかというところを、もう少し突っ込んで議論をさせていただきたいと思います。
 先ほど田中参考人がおっしゃった、貧困だけではない、社会構造などのいろいろな構造の問題があるんだということをもう少し詳しく言っていただいて、ではそれにどういうふうに国際社会が向き合うべきなのか、対処すべきなのかという話をお聞かせいただきたいのと、酒井参考人には、事後の話ではなくて、では、その温床にスポットを当てるために、今、国際社会、特に日本が何をすべきなのかということをお二人にお伺いをしたいと思います。
田中参考人 多分、一九九〇年の湾岸危機以降九一年の湾岸戦争に至るまでの事例と重なるかと思いますけれども、少なくとも当時アラブ諸国に根深く存在していた不満、これはサダム・フセインがうまくそれを利用したとも言えますパレスチナ問題に関する国際社会の無関心あるいはその放置の姿勢、そして二重基準の適用、こういった問題を解決する必要に、ある部分国際社会も迫られ、最終的に、イラク攻撃の後にはなりましたけれども、中東和平に向けて、この問題の解決に取り組む姿勢が示されたわけであります。
 現状におきましても、アルアクサ・インティファーダ以降、中東和平は完全に崩壊状態にあります。そして、この問題が直接のイラク攻撃等へ関連性はありませんけれども、少なくともこれがテロの温床となること、あるいはテロの温床として使う人たちにある部分口実を与えていることを考えれば、仮に対イラク攻撃が行われるのであれば、あるいはそれ以外の国に対しても、地域に対しても対テロ攻撃が行われるのであれば、中東和平問題、パレスチナ問題の解決に向けての国際的な努力を改めて喚起する必要があると思います。
酒井参考人 ただいまの田中参考人と全く私も同意見でございます。テロそのものの問題というよりも、むしろテロを惹起してしまうような社会的な環境、これはやはりパレスチナ問題に代表される不公正感、ダブルスタンダードの問題というものがイスラム、中東世界に非常に根強いということがございますので、やはり国連を中心とした公正な基準に基づく紛争の処理といったものに貢献していくことが一番の近道であろうと思います。
前原委員 お二人にもう一点、さらにお伺いしたいんですが、パレスチナ問題、中東問題の解決というのがテロの根っこの部分にあるのはそのとおりだというふうに思います。
 では、このパレスチナ問題、今なかなか難しい状況にあると思いますし、またテロ以降、風向きが変わってさらに激しくなっている、またイスラエルの政権が常に強硬と融和を繰り返していてなかなかまとまりがつかないという部分があると思うんです。では、そのパレスチナ問題をどのように解決していくべきなのか、また日本の役割は何なのかということについて、お二人にお伺いをしたいと思います。
田中参考人 これは非常に処方せんが難しい問題だと思いまして、私もこの問題では必ずしも専門ではございませんので、ここで明確な指針を示すことは残念ながらできません。
 ただ、国際的な関心、少なくともその取り組みが現在完全に後手後手に回り、そしてアメリカがほとんどクリントン政権の末期から中央に立って積極的に仲介はしておりましたけれども、それが崩壊して以降はほとんどたなざらしの状態、野ざらしの状態にもう置かれておりますので、それを今後の流れの中で改めて、関心が国際社会としてあるんだ、そしてその問題は全く忘れられているわけではなく、このイラク問題しかり、あるいはパレスチナ問題しかり、それ以外の問題しかり、同等に扱われるということを示していく姿勢は大事だと思います。
酒井参考人 パレスチナ問題の解決のためにということでございますけれども、一点だけ申し上げます。
 このパレスチナ問題がなかなか解決がつかない理由の一つとしては、やはりアメリカがどうしてもイスラエルに対して偏った形の判断をせざるを得ないというような、これはさまざまなアメリカの内政的な要件もあるかと思いますけれども、そのような制約がございます。
 それに対してやはり日本は、ヨーロッパ諸国と同様になるべく中立的な立場をもって、アメリカのようなダブルスタンダードではないんだというような形を明確に示していくことによって、解決の中心的な役割を果たすことが十分できるかと思います。
前原委員 最後の質問をさせていただきたいと思うわけであります。
 テロ特措法の基本計画に話を戻したいわけでございますけれども、私自身が少し政府の考え方あるいは取り組みに理解ができないというのは、これは政府というよりも与党三党の考え方なのかもしれませんけれども、どのような支援をするかという哲学が極めて不明確であるというふうに私は思っています。
 先ほど田久保参考人がおっしゃったような、やはり外交上の理念というものを打ち立てた中で、その方針に従って何をやるか。つまりは、ここまでやったらアメリカは許してくれるだろうとか、あるいはここまでやれば顔が立つということも現実面では私は必要だとは思いますけれども、しかし、何か確固とした理念というものが必要ではないかというふうに思います。
 その上で、アメリカ側から非公式的に、先ほどから話が出ておりますような、武力攻撃が終わった事後の内戦状態の収拾というものに対して、例えばPKOを自衛隊として派遣して、そしてアフガニスタンなり、あるいはひょっとしたらイラクの事後についてもそういう話があるのかもしれませんけれども、そういう事後の平和構築に人を出すべきであろうというような意見がありますけれども、それについてどう思われるかということを最後にちょっと、時間が来ましたので簡単にで恐縮でございますが、田久保参考人と田中参考人、酒井参考人のお三方にお伺いをしたいと思います。
田久保参考人 簡単にお答えいたしますと、これは、法律的にできるかできないかというよりも、政治家として先生方の御判断で、これは中東に一つの大きな役割を日本はこれから果たすきっかけになるというふうにお考えいただきたいと思います。
 それは恐らく、イラクが倒れますとサウジアラビアの地位が非常に低下する、イラクの地位が非常に大きくなる、ここに一定の期間アメリカの占領軍がいるだろう、これはサウジアラビアにいる米軍がイラクの方に移って、サウジアラビアの予期される大混乱をここから監視するということになる、中東に地政学的な大変化が起こる、そこで日本が一役、二役買わないということはないだろうというふうに、これはもう先生方の大きな御判断をお願いしたいというふうに思います。
田中参考人 先生の御指摘のとおり、事後収拾にPKO派遣、あるいは平和構築に向けての自衛隊の役割あるいは我が国の人的な貢献、これはいずれも適切な場合において十分になされていくべきだと思います。
 それがないと、やはり日本は、非常に後方ではあるかもしれませんけれども、戦うためには人と船艦を出したけれども、その後の収拾の問題では、事後収拾の問題ではどうも出てこないという部分を残してしまうと思われます。
酒井参考人 PKOを出すべきかという御質問でございますけれども、私は、PKO云々というよりも、むしろ日本に戦後一番期待されておりますのは、やはり経済再建への協力だと思われます。といいますのは、イラクは産油国でございますので、石油さえ出せればその後の戦後復興は非常に簡単だろうと思います、地方統治も含めてでございますけれども。
 その場合、現在のイラクの石油施設などをつくりましたのは日本企業でございます。あるいは、かつては八〇年代に、丸紅さんでございますけれども、全国十三カ所の病院建設をしたというようなことがございます。そういう意味で、日本が戦後復興において真っ先にすべきことは、そうしたイラクが戦後復興に向けて土台づくりをしていく、その協力において恐らく真っ先に日本企業に声がかかるものかと思われますので、そういった面で十分機能を果たしていくことができるかと思います。
前原委員 貴重な御意見、ありがとうございました。
 質問を終わります。
田並委員長 次に、赤松正雄君。
赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
 きょうは、四人の参考人の皆様方から大変に刺激的なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございました。私は、これからこの問題を考えるために、私の意見を申し上げるというよりも、皆様からさらに参考になる御意見を聞かせていただきたいという趣旨のもとにお話を聞かせていただきます。
 まず、ちょっとこういう場合にこういう聞き方は不適切かもしれませんが、田久保参考人と河辺参考人に、お二人にそれぞれ、田久保参考人には河辺参考人の考え方を、河辺参考人には田久保参考人の考え方について御感想をお聞きしたいんですが、それはポイントは一つです。アメリカ、ブッシュ政権をどう見るかということでございます。先ほどお話を聞いていると、ブッシュ共和党政権をどう見るかでお二人の考え方は際立って違っていたと思うんですね。
 さっき、河辺参考人の冒頭のお話はなかなか刺激的でございます。私、恥ずかしながら、ブッシュの発言だとは知りませんでした。一方、田久保参考人は、いつもながら際立って明快な論理展開で、いつも感心して聞かせていただいているんですが。
 ブッシュという人については、あのアメリカ大統領選挙のときに、たしか私が読んだ本で、シニア・ブッシュの奥さんが、つまり今の大統領のお母さんが、ジョージ、何でいつも自分のことばかり語るのとか言って、自分のことしかしゃべらないというシニア・ブッシュに対する批判をしていた、同じことが息子にも向けられるというようなことが書いてあったりしまして、要するに、アメリカ大統領ブッシュ氏のいわば知性的な部分、さまざまなそういう人間性を疑う論調が多かったと思うのですが、実際に登場されて今日まで、結構頑張っているなという見方もあったりしまして、要するに、どっちが正しいのかようわからぬのです。
 田久保参考人は、先ほどの河辺参考人が言われた、NATOの話も引っ張り出されたりしまして、ジュニア・ブッシュの知性は際立って疑わしいというこの指摘に対して、どういうふうに思われますか。
 今度は河辺参考人には、さっき田久保参考人がおっしゃった、二つの勢力を巧みに、いわばネオコンサーバティブと国際派、両方をうまく統御して、まあ間にライスさんが入っている、その上に乗っかってなかなかの行動をしているというふうに言われる田久保さんの意見についてどう思われるかということから始めたいと思います。
田久保参考人 ただいまの御質問でございますけれども、私は、戦後の国際政治で大きな問題というのは、やはり去年の一月二十日におけるブッシュ政権の誕生であろう、それから第二の大きな衝撃というのは九・一一テロであろう、二つあると思います。
 そこでかぎとなるのはブッシュ大統領でありまして、ブッシュ大統領の知性がどうかという先生の御質問でございますが、私は、知性に関しては、ここで評価できるような立場にもございません、材料もございませんが、一つだけ申し上げたいのは、去年の十二月のクリスマスのときに、彼が一冊の本を抱えてテキサスの牧場、別荘に行って読みふけった。これはモリスというピュリッツァー賞を受賞した伝記作家が書いた「セオドア・レックス」、セオドア・ルーズベルトのセオドアにレックスはREXで王という意味ですね。私もインターネットですぐ三日後にこれを取り寄せて読んだんですけれども、これがいいか悪いかは別にして、今のブッシュ大統領がどれだけこれを参考にしているかは別にしまして、セオドア・ルーズベルトを非常に研究しているということは事実でございます。
 セオドア・ルーズベルトは、こんなところで一言で申し上げるのはあれですけれども、アメリカの国際政治学には必ず彼が言った言葉が出てくる。これは、スピーキング ソフトリー ホワイル キャリング ア ビッグ スティックと。スピーキング ソフト、ソフトにしゃべるんです、ただし大きいこん棒はここに持っているんです。私は、でっかいこん棒を片手に、猫なで声でねというふうに学生には教えているんですが。
 日本は、このこん棒を全部捨てて猫なで声でやってきたところに今のツケが来ているのではないか。アメリカを初めどこの国にもいい顔をして、謝って、それで許してくれないと逃げるんじゃないか。これと全然逆の政権がブッシュ政権である。それを細かく分解するとコンドリーザ・ライスになり、ネオコンになり、国際派になる、こういうことでございまして、そのトップに位するブッシュというのは、これは知識の方はともかくとして、判断の方は今のところ極めて的確であるというふうに私は評価しております。
河辺参考人 何ともお答えしづらいようなことを答えなければいけないのですが、国際派と新保守派ということをおっしゃられたのですが、この国際派という言葉も実はさまざまな定義がございます。
 先生方御存じのとおり、特に二十世紀のアメリカ合衆国の外交行動は、モンロー主義とウィルソン主義の間を大きく揺れてくる。ウィルソン主義というのは一つのリベラルの方の国際主義であるわけですが、第二次世界大戦後は、今度はモンロー主義の立場からむしろ国際主義というのが出てくる。つまり、リベラルな国際主義ではなくて、リベラル、保守を超えた共通の共産主義という敵がいるのだから、それに対決しなければいけない。そういう形で、その二つの間の矛盾というのは、第二次世界大戦後、長らく顕在化しないできた。しかしながら、米ソ対立が終わる中で、今度はその間の矛盾が顕在化をしてくる。これが一つでございます。
 次に、すべての政治論は建前と本音がございます。ストレートに言ってしまったらまとまる話がまとまらない、そこであえて別な形で言いかえていく、こういうことはございます。
 また、もう一つそこに関連してですが、すべての議論は国内政治の文脈で語られます。例えば、アメリカ合衆国が包括的核実験禁止条約を上院が否決しましたが、これは国際的な観点から否決したのか、いや、むしろ極めてワシントン・ローカルな問題から否決をしております。
 先ほど紹介をいたしましたカーターのノーベル平和賞受賞に関する声明ですが、あれも、例えば次のように考えていただければ、なぜあれほどブッシュ大統領が激高したのかというのはおわかりいただけるかと思います。あの問題は、ジョージ・ブッシュ氏がイラクに対して爆撃をしようとしているそのときに、ノーベル委員会がそのような態度を批判すると明言した上で自分の政敵である民主党の長老に与えたものである、しかも中間選挙の目前である、例えばそういうことがあるわけです。
 そういう議論をどういうふうに外で見ていくのか、これは非常に厄介な問題でございますが、私は、アメリカ合衆国のこれまでの議論の流れを見ておりますと、現在のブッシュ政権に対する揺れ戻しというのが必ずどこかで来るだろうなということは考えております。
 それからもう一つなのですが、アクシス、いわゆる枢軸という言葉が使われましたが、六十年前に枢軸であった我々として、イラクの状況あるいは北朝鮮の状況というのを世界で最もよく理解できるのかもしれません。どのような議論であれば六十年前の日本が受け入れられたのか、どのような議論は受け入れられなかったのか、そして日本はどのような道を歩んだのか、そういうことを考えてみてもいいように私は感じております。
 ちょっと直接のお答えにはならなかったかもしれませんが、以上でございます。
赤松(正)委員 ありがとうございました。
 田久保参考人に続けてお伺いいたします。
 先ほど、日本は何をすべきかということの文脈の中で、お役所の発想だと。例えば、特措法の中で、あるいは憲法の枠内で、あるいは予算の枠内で、こんなふうなことで、できることとできないことを分ける、こういうふうな行き方が際立って日本の旧来的な役所の発想だというお話がございました。やがてアメリカの圧力を受けてそれに従っていくだろう、こういうふうなこともおっしゃったわけです。
 そういうことを踏まえた上で、先ほど来の田久保参考人のお話は、従来からおっしゃっている集団的自衛権の行使について、日本が政策的判断としてこれを行使しないと決めているのはおかしい、そういうお立場からくるお話だろうと思うんです。先ほど来のお話、私もよく理解はできるわけですけれども、長い間の積み重ねの上に今がある、そういう積み重ねの上で、我が国がこの場面でどう行動するかといったときの論理づけ、これをやはり国民にしっかり訴えていくという観点からいけば、感情の流れとして田久保参考人のおっしゃることはよくわかるんですけれども、国民を説得する場合からいうと、大変申しわけない言い方ですが、いささか大胆、かつ少し乱暴じゃないのかなという気が私にはします。
 そこで、どうしたらいいかというときに、私なんかも思うんですが、やはりここは、日本が大量破壊兵器開発国とそれからテロリストの結合で国防上の脅威に直面しているということで、これは個別的自衛権の発動、そういうふうにとらえて、そうしていわゆる対テロ戦争及び大量破壊兵器を持った国に対する国際的な協調行動に参画をする、こういう論理立てというのはある意味でわかりやすいというか、集団的自衛権行使云々というよりも、いわば国民に対する説得という部分ではわかりやすいような気がするんですが、そういった考え方に対してどう思われるでしょうか。
田久保参考人 集団自衛権か個別的自衛権かでございますけれども、実は、ネオコンサーバティブの連中が、同盟国に別に相談しなくてもいいんじゃないか、我々は我々で個別的自衛権の行使でいけるんじゃないかということをかつて騒いだことがございます。ただし、これはアメリカ国内でも余り説得力はなくて、むしろ国際派の方が、いやいや、そういうことを言う前に、国内あるいは同盟国との協議が要るよということを言ったわけでございます。
 我が国は、翻って、今先生がおっしゃったようにどうかということでございますけれども、私が非常に評論家としての立場の何々すべきだということを申し上げて、こちらの先生方はそれをどういうふうに現実に実現するかというお立場でございまして、立場が違うので私の方が素人論になるかとも思います。
 ただし、私は、できれば、個別的自衛権も行使できるんじゃないかというのは、一つは我々が、ここにいる先生方も皆さん反核の立場をとっている、それから反大量兵器の立場をとっている。これは北朝鮮も、それからサダム・フセインがいかにひどいことをやってきたかというのは、今もうアメリカの新聞、雑誌にばんばん出ている。アメリカの新聞だけではございません。どういうところに核容疑、生物兵器容疑、化学兵器容疑、全部調べ尽くした上で、これだけ悪いことをやっていると。ここのところをもう少し考えると、国民に対しては、やはりこれはひどいじゃないかということになるんじゃないかと思います。それからもう一つは、我々の中東の石油への依存度でございますけれども、もう八〇%以上になっちゃっている、これを余り言う人がいない。
 以上の二点から、私は、個別的自衛権の行使まで踏み切れるかどうか、これはもう先生方にお考えいただきたいのでございますが、ここで立ち上がる十分な理由はあるのではないかなというふうに考えております。
赤松(正)委員 ありがとうございました。
 次に、田中参考人にお伺いいたしたいんですが、先ほどいただきました資料の二ページ目に、「アフガン側での受け止め方」ということで、「アフガン側が主張するこれまでの国際支援の内訳」ということで、先ほど、人道支援及び間接費が八〇%、復興支援が一〇%、いわゆる残り一〇%しか、いわばアフガンそのものがしっかりと使える部分がないというお話がありました。
 当初、今回のアフガンに対する日本の貢献ということについて、アメリカ等で、やはり湾岸と同じように日本の貢献を余り評価しないというふうなことが誤って伝えられたりした側面があって、私は、そのことについてもっと日本の外務省、外務大臣が強く抗議をし、また国際社会の中でアピールをすべきだ、こう思ったんですが、なかなか現川口外務大臣は、そういうことはもう終わったことだからしなくていいんだというふうなお話で、少し私は遺憾に思った場面があるのです。このアフガン側の、今回の日本のさまざまなる支援に対してどういう受けとめ方をしていると思っておられるか、簡単にお願いいたします。
田中参考人 少なくともバイの場、つまりアフガン側と日本側との協議の場では、大変感謝しているという声が伝わってきております。ですから、これは公式にそういう発言を向こう側の要人が、カルザイ大統領以下、繰り返しております。
 ただ、そういう評価、あるいはそういうある部分リップサービスは、何も日本だけに対してではなく、ほかの国に対しても行っておりまして、例えば日本以上に、あるいは日本と比較して日本よりも拠出の割合が少なく、あるいはもともとの表明していた金額が少ない国に対しても、そういう感謝の念は忘れておりません。同時に、そのときに大体つけ加えておりますのは、おたくはたくさん出してくれるけれども、ほかはどうも出してくれないんですよねという不満を、間接的に何か伝えているという状況であります。
 これ一つをもって、必ずしも我々の貢献が十分であるとかあるいは十分でないかということをはかることはできませんが、ある部分、受けとめ方の問題としまして、アフガン側にも幾つかの欠点といいますか問題点があることを指摘しておきます。
 それは、ここで申し上げましたアフガン側が主張する人道援助というものの中には、あるいは人道支援というものの中には、我々のサイドではこれは復興支援だというふうに数えているものが少なからず含まれているということです。学校に対する支援、教育に対する支援でありますとか、保健医療に対する、例えば病院の建設、こういったものは、こちらの方では復興の方に加えているにもかかわらず、アフガン側では、これはいわゆる復興需要、つまり雇用を創生しないのでこれは復興ではないとして、人道の方にカウントしているという側面もございます。
 以上です。
赤松(正)委員 ありがとうございました。
 酒井参考人にお尋ねをいたします。
 酒井さんがお書きになった「イラクとアメリカ」、大急ぎで最初の始まりの部分と一番終わりだけ読ませていただいて、中を飛ばしちゃったんであれですが、一番最後のところでおっしゃっていることについて、私は、何でも人が書かれるものは一番最後のところにポイントがあり、もちろんそこだけとは言いませんが、大事なポイントがあると思いますので、お聞きしたいのです。
 要するに、米ソ対立、それから今度はアメリカ対イラク、こういう二つの力のいわば対立というものの流れを説かれた最後のところで、問題はフセイン個人の存在だけにあるのではなくてフセインの築き上げた、あるいはフセイン自身を生み出したフセイン的なるもの、これをいかに乗り越えるかということが将来の最大の課題だ、こうおっしゃっているのですが、短い時間で恐縮ですが、このフセイン的なるものを的確におっしゃっていただくということと、どう乗り越える、乗り越えていくプラスの方のシナリオをここでちょっと披瀝していただいたらありがたいと思います。
酒井参考人 途中、退席いたしまして、大変失礼いたしました。ちょっと体調を崩しておりましたせいで。
 ただいまの御質問でございますけれども、まさに御指摘のとおりでございまして、フセイン的なるものという形で私が申し上げたかったのは、御指摘のとおり、いわゆる二項対立、冷戦期の場合は米ソ、あるいは、現在であればイラクとアメリカというような形で、大きな二つの対立を利用した形で地域紛争を遂行するというような、まさにそれが、ある意味では、地域紛争なりテロといったさまざまな要因になるというふうに考えております。
 先ほどの議論にもつながりますけれども、そうした問題は、世界のかなりの部分で米ソ冷戦対立以降なくなってきているとは思いますけれども、中東の場合は、やはりパレスチナ問題の未解決という問題が非常に多うございます。やはり中東で、テロリストにしてもそうでございますけれども、どこの国の独裁政権も、パレスチナ問題を持ち出すという形でみずからを正当化するというような手法がいまだに根強いわけです。
 ですから、その意味でも、やはりパレスチナ問題を根本から解決するということがあれば、不要にそういった大きな動員をかけて、大きな問題を過大に大きくしていくというようなことがなくなっていくだろうというふうに私は考えております。
 以上です。
赤松(正)委員 終わります。
田並委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうは、参考人の四人の先生方、お忙しい時間を割いて御高説を賜りますことを心から感謝申し上げたいと思います。どうか忌憚のない御意見を賜りたいと思うのであります。
 きょうは、さまざまな議論を、お話を伺っておりまして、私、ちょっと素朴な疑問というか、ぜひ四人の先生方にそれぞれお伺いいたしたい点は、結局、今、アメリカのイラクに対する攻撃がどの程度可能性としてあるのかという部分だと思います。
 それぞれの先生方の持っていらっしゃる情報、そして分析に基づきまして、それぞれのお立場からどの程度の可能性があるというふうに、もちろん先のことですから、これはあくまで予想の分野でありますから、外れてもそれはいいことだとは思いますけれども、それぞれの先生方の御見識に基づいて、どの程度可能性があるのか。また、なぜそのように思われるのかということ、それと同時に、ではその攻撃がもしあるとしたら、それが大体いつごろ行われるであろうか、これも全くの予想でよろしいかと思います。
 そもそも、やはり政治の場合は、あらかじめ予想に基づいて備えをしておかなくちゃいけない。物事が起きてから、そこでばたばたとまたいろいろな理屈づけをしたり法律をつくったりしてきたという歴史を考えるときに、やはりちまたでは、新聞報道では、クリスマスの前だとか後だとか来春だとか、さまざまなことを言われておりますが、これはそれぞれの先生方の個人的な、本当にざっくばらんなお話でよろしいかと思いますけれども、まずお話をいただきたいと思います。
田久保参考人 可能性でございますけれども、その前に、ちょっと今の状況は、とりあえず十二月八日にイラク政府が申告をすることになっている、どういう申告が十二月八日までに出てくるのか、これが一つであります。
 それからもう一つ、査察官が、きのうは二十数人入りましたけれども、おいおい年末までに百人になるだろう。この持っている資料、どこに何が疑われているかという資料が物すごいのと、それから機材でございますね。例えば、宇宙衛星からの映像を絶えず送っている。それから、低空飛行のヘリコプターあるいは無人機でかなりのところの写真を撮っている。それから、固定カメラでございます。それから、空中の細かい金属の分子をとるフィルターを使っておりますね。それから、グラウンドペネトレーティング何とかという、地上からずっと突っ込んで地下の異常を探る機具もあるそうでございます。こういうのに加えて核の専門家、生物化学兵器の専門家がどっとあそこに行くのでありますから、これはうそかどうかがばれるだろう、ばれたらアメリカがやるだろうということでございます。
 それで、アメリカの軍事ですけれども、既に集積しておりますね。湾岸地域、クウェートでは、国境のところでもう何回も地上戦闘の訓練、演習が繰り返されている。それから、湾岸諸国、今までは湾岸諸国がみんなアラブ諸国だから反対するだろうと。みんなうそっぱちでございます。みんな米軍を入れて今三万人の集積があるので、あとは兵員を運んでいけばいい、こういう状態になっている。
 それから、軍事的には圧倒的にアメリカが有利で、イラクは、これは変なことを申しますけれども、全くむちゃくちゃ。十年間に兵器のリクルートがついていない。それから、当時二十代、三十代の人が三十、四十になっちゃった、実戦の経験がない。それから、ティクリットという自分の出身の将軍を二人コマンダーにしたり、その下の中堅、下級兵士、この三〇%ぐらいがティクリット出身者。しかも、これが疑い深くて常に異動あるいは更迭している、一人の将軍が力を持たないようにしている。これは全体として力になるまい、短期決戦だろうということを言われております。
 その場合は、夜攻撃するわけですね。暗視装置というのは物すごく発達したものを持っている。向こうはだめ。夜の方があの暑い地域では攻撃しやすい、長い夜は冬がいいだろう、こういうことでございます。それから、三月には砂あらしが来るので、これは避けたいねということでございますので、大体、私の大ざっぱな勘でございますが、一月から二月、三月の初めぐらいにかけてがちょうどいいタイミングかなというふうに考えております。
田中参考人 攻撃の可能性についてでございますが、これは限りなく現実に近いものがあると思います。
 ある部分、イラクは、あるいはサダム・フセインはまないたの上のコイのようなものであって、何らかの痕跡を、たとえそれが今回、例えば九八年以降に彼がひそかに開発したものでなかったとしても、前回までの査察で取り残されていたか見落とされていたようなものが、仮に今回大々的に入ることになる査察の結果認められたら、これをもって攻撃が行われるのではないかと思っております。
 時期については、やはり気候の要因が非常に高いので、これは冬のうちに当然行うことになるということで、準備の時間も必要でございますが、大方十二月にはそれが整うとは思われますので、そう遠くない将来に起こり得るものだと思っております。
酒井参考人 ほとんどほかの先生方と全く同じことなんでございますけれども、私も戦争の可能性は基本的に非常に高いというふうに見ております。
 理由につきましては、先ほど述べさせていただきましたように、査察活動自体がかなり、事故的な形であれ何であれ、衝突が発生しやすいような内容になっているということ。そして、万が一査察が順調に進んだといたしましても、これは一応予定では一月の二十七日に、六十日間の査察期間を無事終えたとすれば一月の末という形になりますけれども、これが終えられたといたしましても、アメリカが最終的にフセイン政権の転覆というところをねらっているということを考えれば、順調にいったとしても何らかの形で軍事行動は行われるのではないかという点になります。
 時期につきましては、全く先生方のおっしゃるとおりで、後ろから換算いたしまして、三月の後半になりますともう既に暑くなる、しかも市街戦、化学兵器の反撃というようなことを想定いたしますと、かなり重装備になるということで、暑くなると行動できないということから換算して、早く考えれば二週間で戦争が終わるという者もおりますし、もう少し慎重に一、二カ月見た方がよいという意見もございます。さまざまな諸説がございますけれども、いずれにしても、冬ということで言われております。
 以上です。
河辺参考人 一言で言えば、ブッシュ政権が何を考えるかということによってしまいますので、合理的な議論を積み重ねるよりも、あなた、何考えているのか、そこに尽きてしまうかと思います。
 となりますと、むしろこれは国内政治的な文脈も無視できない。なぜこんなことを申しますかといいますと、これまでの三人の先生方がイラクの問題あるいは軍事的な問題を御指摘になったからでございます。
 軍事的に考えても冬開始されることが大きいかと思いますが、例えば湾岸戦争開始から十二周年、一月十七日なんということもひょっとしたら考えられるかもしれません。最終的には、いつ、どういう状況でやるのが一番いいのか。一月十七日といいますと、ブッシュ大統領が就任してほぼ二年たつということもございます。
 ばかげたことを申し上げたように私自身も思いますが、政治はそういうようなところで動くこともしばしばございます。特にアメリカ合衆国の経済状況がどうなのか、クリスマス商戦がどうなるのか、そういったことも極めて、つまらないことではあるとは思いますが、戦争開始のボタンを押すそのきっかけになろうかと思います。だからこそ、同盟国のブッシュ政権に対する働きかけが重要ではないかとは思います。
 以上でございます。
樋高委員 難しい質問にお答えをいただきまして、本当にありがとうございます。
 この臨時国会、十二月の十三日に終了して、来年また通常国会が始まりますけれども、実は、私がなぜこの質問をしたかと申しますと、おおむね国会閉会中であろうということを私は予測しているわけなんです。やはりこういうときこそきちっと安全保障委員会を、日本が主権国家としてきちんとした意思表示ができるようにきちっと対応しなくちゃいけない、だからこそ、こちらにいらっしゃる議員の先生方に向かってお話をいただきたいという思いでちょっとお尋ねさせていただいた次第でありました。
 田久保先生にお伺いをいたしたいのでありますけれども、戦後といったらちょっと長くなってしまいますが、湾岸戦争後の日本の安全保障の議論につきまして先生の御所見をちょっと伺いたいのであります。
 ちょっと雑駁な話になるかもしれませんけれども、私は結局、ここ数年の間に周辺事態法ですとかテロ特措法といういろいろな法律をつくってきた、そして、ある意味で安全保障政策が継ぎはぎであったのではないかと思います。そんな中でさまざまな矛盾点が生じてきた。
 やはり私は、行き着くところ、やはり憲法解釈というところまで行き着いてしまいます。もちろん、最終的には私は憲法改正をすべきだという考え方をはっきりと主張させていただいております、自由党もそういう考え方でございますけれども、憲法解釈の原理原則をあいまいにしたまま行いますと、やはりどうしても、国際社会にあって、日本だけの特有の考え方を押しつけてしまいかねないというふうに思うわけであります。
 この際、先生もさまざまな論説のところであります、例えばテロに関しましては、今回、テロ支援国は許さぬという気概を世界に示して、同時に、この機会を利用して欠陥だらけの国防を本格的に正常化させる戦略と思考が必要であるというふうにも先生はおっしゃっておいででありますし、また、欠陥だらけの防衛政策、それは私自身も全く同感なんでありますけれども、過去十年ぐらいさかのぼって、この間の議論につきまして先生はどのようにお考えでいらっしゃるのか、またどういう方向に日本の安全保障の議論というのは進むべきなのか。
 私は、まず基本的には、結局、その場その場でいろいろな法律をつくってきましたけれども、やはり憲法解釈、例えば集団的自衛権というものがきちんと、これはもう後方支援であろうが、私は軍事力を動かすということは、国際常識からいって、それは武力行使以外の何物でもないわけでありますから、集団的自衛権も堂々と認めて、そうすれば別に法律がなくても堂々と自衛官の方々が誇りを持って国際貢献できるというふうに私は考えているのでありますけれども、いかがお考えになりますでしょうか。
田久保参考人 湾岸戦争以来、日本の防衛政策が前進したか前進しないかということになりますと、私は、少しは前進した。私が思っているよりも、はるかにそのテンポは遅いということでございます。これは周辺事態法、いわゆるガイドライン関係法もそうでございますし、それから今度の特措法もそうでございます。ステップ・バイ・ステップで、そのステップの幅が非常に狭いな、小さいなということでございます。
 私は国民の一人としてその審議を見ておりますと、やはり行き着くところは集団自衛権の問題で、権利はあっても行使できないというところが最大のネックじゃないか。
 しからば、そういう解釈をどうしてあの法制局がとっているのかというと、憲法九条にその根っこがある。よって、根っこを改めない以上は、こういうぎりぎりの欺瞞がずっと続いていくのかなというふうに私は考えております。そこのすき間のところが、たしかあれは小泉さんだと思ったんですが、この間の特措法の審議のときに、もう限度に来たというようなことをおっしゃって、ぎりぎりのすき間のことを言っておられました。私は、この問題がだんだん一つの方向に収れんしていけばいいなというふうに考えております。
 それから、余計なことでございますけれども、もう一つは、防衛庁のシステムの問題で、防衛庁設置法十六条で、防衛庁長官が、官房長あるいは局長だったですかね、そのアドバイスを得て三幕の長に命令を下すなんという上下の関係、これは制服の地位が異常にシステムとして低くなっている、こういうところもひとつお考えいただかないと、健全な防衛政策にはならないのではないかというのが、湾岸戦争以後、私がますます強めております印象でございます。
樋高委員 どうもありがとうございました。
 あと、自由党で申し上げております一つの自衛権の発動による武力行使というものは、当然、日本国が直接攻略を受けた場合もしくは放置しておきますと武力攻撃に至るおそれの強い場合、もしくは、国連の安保理もしくは総会による武力行使容認決議に基づいて軍隊を海外に出すべきだという基本的な考え方があるわけなのであります。
 ではちょっと、実態として、今回先生方にお尋ねをいたしたいのでありますけれども、今後、米国の行動に矛盾をする国連決議が行われた場合の我が国の対応をどうするか。
 つまり、武力行使容認決議が行われない場合は、今の政府の考え方は武力行使はできないと。つまり、アメリカが今回、先ほど冒頭でそれぞれの先生方は可能性が高いという話でありましたけれども、実際に可能性は高いけれども、国連による、例えばこの間の一四四一のあの決議の趣旨はあくまで核査察という分野に限定をされたものでありまして、九〇年の国連決議六七八の武力行使容認決議、九一年でありますけれども、また停戦合意、六八七でありますけれども、こういった国連の決議にかかわらず、つまり米国の行動に矛盾する国連決議が行われた場合、我が国の対応はどうするかということをしっかりと考えていかなくてはいけないと思うのであります。
 最後に四人の先生方にお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
田久保参考人 まことに仮定の御質問でございますけれども、国連決議とアメリカの行動、これが相反した場合、どうするかということでございます。
 具体的にどういうふうになるかというのは私わかりませんけれども、私、国際政治をやっている者でございまして、アメリカは国連決議を一つのお墨つきとして利用して、自分の単独行動に出ている、これは現実の問題だと思います。今、国際政治で実力を持っているのは国連ではなくて、国連はお墨つきを出すところであって、実力行動に出ているのはアメリカでございますね。そこで、私はこういうことを考えるのでございます。
 実は、小泉さんがピョンヤンに行かれた直後でございますけれども、日中友好三十周年記念のシンポジウムがあって、私もそこで一人、メンバーとして出たのでございますが、中国の方が、訪朝から帰ってこられたばかりの小泉さんに向かって、小泉さんの行動は大変立派なものである、戦後初めてアメリカのきずなを断ち切って独自外交に出られた方で、立派な方ですねと。それから、ドイツのシュレーダー首相は、これまたイラク攻撃に反対の立場を選挙前からずっと表明しておられて、これまたドイツもアメリカのきずなを断ち切って独自外交をと、こういうことで礼賛したわけでございますが、この発言の裏に透けて見るのは、やはり日米間、独米間、これに亀裂が入ればざまを見ろということではないかと思います。
 私、こういうことに、こういう見方に乗ってはいけないんだ。したがいまして、今先生の御質問にずばりお答えするとすれば、国連とアメリカとどっちをとるかといった場合、我々は、我々の安全保障上、アメリカをとるべきだというふうに考えております。
    〔委員長退席、末松委員長代理着席〕
田中参考人 武力行使を容認する新たな決議が仮にないままでアメリカがその攻撃、武力攻撃に踏み切った例、あるいはそういう状態を仮定しての御質問だと理解いたしますけれども、実はその先例は既にアフガニスタンにおいてありますので、この場合、アフガニスタンにおいて行ったこととなぞらえて考えれば、当然日本もそれに何らかの形でかかわっていくことになるものだと思っております。心情的には私はちょっと理解しがたいところもありますけれども、実態としてはそのように動いていってしまうものだと理解します。
酒井参考人 ただいまの御質問でございますけれども、基本的に、現在成立しております国連決議一四四一では、査察に応じなかった場合には深刻な事態を招くということで、これは実は解釈をその後どうするかという議論になっておりまして、アメリカは現在の決議において既に武力行使につながるものというふうにみなしていると考えられます。
 ただ、それに対してフランス、ロシアなどの他の安保理理事国は、新たにもう一回、やはり安保理で議論すべきではないかというような議論がございますので、既にそういう意味では、アメリカが新たな決議なしで今攻撃をしたとしても、アメリカとしては、もう既にそれは認められている、国連の場で認められているものだというふうな理解のもとで、あるいはそういうような解釈のもとで軍事攻撃が行われるものだろうというふうに私は解釈しております。
    〔末松委員長代理退席、委員長着席〕
河辺参考人 ちょっと古い話ですが、一九九四年五月、クリントン政権のころですが、そのとき、大統領命令二五というのが出されております。
 ここで言われたことは何かといいますと、アメリカ合衆国の利益にかなう限りにおいて国連の活動に参加するが、それ以外のときにはアメリカ合衆国の利益を優先する、これはクリントン政権が共和党の強い批判に対応する形で、押し切られる形で出したものでございます。その後、この撤回はもちろんなされておりませんし、現在その姿勢はますます強くなっております。例えば、国連は対テロ戦争に対して各国からの支持を得るために必要なのであって、それ以上のものではない、それに従うべきではないということは、共和党周辺で繰り返しさまざまな形で表明されているのは先生方御存じのとおりでございます。
 ですから、アメリカ合衆国が、何らかの新しい何かがなくても勝手にやっていくということは当然ありますし、それが国連関係の機関の決議と矛盾する、実はそんなことは過去に多々例がございまして、むしろ合致している方を探す方が難しいぐらいなものでございます。
 一九五〇年の朝鮮戦争、六〇年以前は若干ございますが、特に五〇年の朝鮮戦争、六〇年以降はほとんどないというべきでありまして、また、決議の解釈に関しても極めて恣意的でありまして、国連の法務部はしばしば困っているという状況でございます。
 さて、そこでの問題なのですが、集団的自衛権が日本の中で議論される、その唯一の根拠となっているのは、先生方御存じのとおり、国連憲章でございます。そこにのみ依拠しております。
 ところが、もう一つ問題がございまして、集団的自衛権というのは、一言で言えば軍事同盟を結ぶ権利ですが、これは国連憲章の中では、集団安全保障が機能するまでの間の措置として定められております。つまり、これは相互に排他的でございます。
 ところが、日本では、例えば現在の安保条約第一条は、国連強化に努力するということがうたわれておりますが、これは、集団安全保障という意味での国連の強化に努力するということになります。したがって、安保条約は、集団安全保障が機能するまでの間ということになっているのも御存じのとおりでございます。
 では、この排他的なところがどこで一致するのか。両方ともにアメリカ合衆国がかかわっている、唯一そこにのみであります。それが憲法の規定を揺さぶるための唯一の法的根拠として五十年間ずっと利用されてきた。
 そしてもう一つ、では、ここで問題になりますのが、防衛政策とは外交政策の中で決められるということでございます。
 ところが、この問題は残念ながら十分議論されていない。行革会議の議論の中ですら、外務省は全くと言っていいほど論じられなかったわけであります。冷戦が終わって日本外交をどうするのか、その際に論じる機会を我々は失ってしまった。行革が終わって二〇〇一年、新省庁の体制が始まった途端に発覚したのが外務省不祥事である。つまり、だれも問題があると思わなかったところに最大の問題があった。結論を申しますとこうなります、我々は何も見えていなかった。
 そういう中で、何だかんだ言いましても世界第二の経済大国である日本とナンバーワンのアメリカ合衆国がくっついたとき、それにブレーキをかける国は絶望的になってしまう。そういう状況がある。
 そして、既に現在自衛隊が展開されており、イラクを爆撃する権利があると外務省が明言しており、そういう中で私が懸念しますのは、次に日本がテロの対象にならなければいいんだがなということであります。
 かつて、南部アフリカで百五十万人が犠牲になった。そのときだれもその報復をしてくれませんでした。報復することがいいとは思いませんが。そのとき南アフリカを支援していたのは、ほかでもない日本とアメリカ合衆国であります。そういうこともぜひ考えていただきたい。
 それをきちんと対応しないと、テロの根は、あるいはそれを支える人々の心情はいつまでも消えない、そのことをお考えいただきたいと存じます。
樋高委員 時間ですので終わりたいと思います。
 先生方の御活躍を祈っております。どうもありがとうございました。
田並委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。
 きょうは、四人の参考人の先生方に、先ほど来、本当に大事なお話を聞かせていただいて、大変勉強になっております。
 そこで、私は、国連の決議一四四一の問題と、それから、国際社会にならず者だとか悪の枢軸だとかと言われる国々が登場してきたときに国連がどういう役割を果たさなければいけないのか、そして、今日、イラクとの関係で決議された一四四一がどういう意味を持っているのかということについて、四人の先生方にそれぞれ御意見を伺いたいんです。
 私たちは、この一四四一決議は、アメリカがどう言おうと、アメリカの自動的な武力行使に道を開くものではないという立場であります。
 それから、イラクの大量破壊兵器の問題が、この一四四一決議によって、国連の枠組みで平和的に解決していく可能性を持っている、最大限その平和的解決の可能性を現実にしていく上で、私たちも野党外交を進めてまいりました。
 不破議長が中国の江沢民氏と会談をして武力行使反対の共同声明を出すだとか、あるいは、党の国会議員を中心に中東諸国、イラクにも参りまして平和的解決の努力をしてきたわけですが、そのスタンスは、イラクはその国連決議を受け入れて査察に応ずるべき、過去の査察でとったいろいろな不誠実な態度についても改めていただきたいということもありましたし、それから、アメリカは一方的な武力攻撃計画を中止せよ、双方に対してのそういうスタンスをとってきたわけでございます。
 そこで、それぞれの参考人の先生方の一四四一決議に対するお考え、それから問題点、そして、本当に平和解決の可能性を現実にしていく上でどんな努力がこれから求められていくのか、この点についてお伺いをしたいんですけれども、田久保参考人の方から、それぞれ四人の先生方にお願いいたします。
田久保参考人 この決議でございますけれども、その前に、九八年に査察官が追い払われてから四年間、どれだけの努力をアメリカを中心に払ったかということもお考えいただきたいと思います。共産党がおやりになっていると同じように、何とか平和的に解決したいということのとどのつまりが今度になってしまった。
 それから、先ほど申し上げましたネオコングループというのは、国連の決議必要なしという議論でございました。これに対してコリン・パウエル国務長官、外務大臣でございますけれども、どうしても国連の決議が要るのではないかと。両方の対立の中をとって、ブッシュ大統領はコリン・パウエルに軍配を上げて、それでいこうということで、みずから国連演説をぶって今回の事態になった、こういうことだと思います。
 そこで、私は、今の国際政治というのは二重構造、これは実力はアメリカ軍、この軍事力がもう考えられないぐらいに断トツになってしまった。今や、歴史上、今まではなかったような事態が実現しているわけでございます。
 ここのアメリカが中心になって、しかもこれは民主主義国でございます。独裁国じゃございません。文句を言うなら文句が言える国でありまして、ここが秩序の維持者になっている。それにお墨つきを与えるかどうか、国際世論のシンボルというのは国連決議ということになっておる。今度の場合は十五カ国、シリアに至るまで、ロシアそれから中国までが先生方御案内のように賛成に回ったということでございます。しかも、国内ではブッシュは中間選挙で過半数をとった、こういうことでございまして、やはりかなりの重みを持つものではないかなということでございます。
 今この段階で平和の努力をなさっていることは、これはまことに貴重なことだと思いますけれども、まあまあこれは、こういう事態になったのにはそれなりの段階を踏んで、理由があるんだというふうに私は解釈しております。
田中参考人 赤嶺先生のおっしゃいましたローグステートに対する対応なんでございますけれども、ある部分、こういう名称を使って他国を非難すること自体はアメリカの勝手でございますので、あるいはどこの国の勝手でもございますので、それをほかの国あるいは国連が妨げるということはやはりできないのだと思います。
 ただし、それが実体を持っているものかどうかであることを検証するのは同盟国としての立場も当然ありますし、また、検証する場として国連などが活用されてもしかるべきかと思います。
 それはなぜかといいますと、このようにアメリカ一国によってローグステート呼ばわり、あるいはアクシス・オブ・イーブル呼ばわりされるということで、その当該国、相手国が受ける不利益というものは非常に大きいからであります。これは何も軍事攻撃の対象になり得るというだけではなく、国際機関からの援助がすべてとまるぐらいの可能性を秘めている言葉であります。
 一例を申し上げますと、例えばローグステートの一角をなし、またアクシス・オブ・イーブルの中にも含まれておりますイランについてでございますけれども、イランの軍事的な脅威あるいはテロへの支援がどの程度のものであるかの検証がないまま、このローグステートあるいはアメリカが指定するところのテロ支援国のリストに含まれることによりまして、世界銀行からの融資の話がとまってしまったり、あるいはWTOへの加盟が非常にブロックされるという不利益をこうむるからであります。
 その点で、検証が必要であるというのが私の姿勢でありますけれども、それを見ますと、安保理決議一四四一というものは、とりあえず査察を行って検証しようという考え方を、そしてその姿勢を持っておりますので、これは尊重されてしかるべきだと思います。
 そして、田久保先生が今引き合いに出されました十五対ゼロの支持を得たということ、これはもちろん国際社会の強い決意のあらわれでもありますけれども、それは同時に、検証しようとするその姿勢をも支持しているものだと受けとめております。
酒井参考人 ただいまの御指摘につきまして、決議一四四一をどう見るか、さらに、平和的解決の可能性という点でございますけれども、決議につきましては、先ほど御報告の中で申し上げましたように、イラクに対して極めて厳しい状況になっている、そして、このような内容ではなかなかイラク側が査察自体を順調に運営することができないのではないかという危惧を強く持っております。ただ、それに対しまして、では平和的解決がないかといいますと、それは基本的には私は、努力次第で可能ではなかろうかというふうに思っております。
 と申しますのは、やはり先ほど申しましたように、イラクをいかに協力させるか、査察に対して協力させていくかということが重要になるわけでございまして、これは先ほど申し上げましたように、もし査察に協力した場合に武力行使が行われない可能性があるんだというふうなことになれば査察に協力いたしますけれども、これが、いずれにしても武力行使があるんだ、アメリカが軍事攻撃をしてくるんだというふうにイラクが確信を持ってしまいますと、逆に、いかに査察を受け入れさせようとしても難しいということになります。
 ですから、ある意味では、追い詰め過ぎて、それで、いずれにしてもやられるのであれば協力したってしようがないというような形でその態度を硬化させないように、いかに国連が対応していくかということになるかと思います。
 特に、ブリクスUNMOVIC長官などは、そうした意味ではアメリカが余りに過度にそのこぶしを振り上げることで逆にその査察を行いにくくしているのではないかという懸念はこれまでも繰り返し言ってきておりますし、あるいは、前回、九月に一たんイラクが、新決議が通ります以前に査察を受け入れたときも、ブリクス長官はなるべく早く入りたいということを表明した。にもかかわらず、アメリカが、新決議ができるまで査察は行くなと逆にとめたというような環境がございますので、これは、国連がいかにアメリカ等の圧力から一定の距離を置いて、中立な、大量破壊兵器の廃棄というのみ一点に集中して査察ができるかどうかということにかかってくるのではないかと思います。
 以上です。
河辺参考人 一四四一の問題といわゆるならず者国家ということの問題、二点をお尋ねいただいたというふうに認識しております。
 まず最初に、ならず者国家という言葉なのですが、私も古今東西の文献をすべて調べ尽くしたわけではございませんが、おもしろい事例を過去に、二百年近く前に見つけました。イギリスでのことでございます。当時のイギリスのいわゆる小ピット首相が、ならず者国家という言葉を使っております。ならず者国家と呼ばれた国はどこかといいますと、アメリカ合衆国とフランスでございます。
 つまり、王制をとっているその当時のヨーロッパにおいて、王制を倒し革命を起こしたフランスと、そこから独立をした、そして――もともと原理主義というのはキリスト教の中の言葉でございまして、特に原理主義の中の原理主義が、ヨーロッパから特にアメリカ合衆国に多く行ったわけですね。今でもその傾向というのは強く残っておりますが。そのような人々に対して旧宗主国であったイギリスはならず者と呼んだわけです。昔、アメリカ合衆国は立派なならず者でございました。
 そのならず者という言葉が改めて復活をするのが、九〇年代に入ってからでございます。ここには当然の――簡単に一言で言ってしまいますと、新しい敵をつくると。
 これも先ほど来申し上げておりますが、ある政治行動はしばしば国内的な文脈、国内の政治的な文脈で巻き起こる。
 例えば、核抑止論というのがございましたけれども、これは本来であれば、小さな国、特にいわゆるならず者と呼ばれるような、つまり、非合理な行動をする国は核抑止論の対象にはならないはずなわけですね。お互いが理性を持っているからこそ、核の脅威を理解し、だから両方とも使わない、そして、そのためには両方とも同じだけの被害を与える核兵器を持っていなきゃいけない、これが核抑止論であったはずなんですが、米ソ対立が終わったことによって改めて引っぱり出さなきゃいけなくなってくる、あるいは米軍の存在を改めて国際的に主張する、あるいは国内的に主張しなければいけなくなってくる、そこへ出てきたのがならず者国家という言葉であるわけです。
 私、インターネットでならず者国家という言葉を引いてみました。ローグネーションズ、ローグステーツと引いてみましたら、一番多く出てきたサイトは何かと申しますと、アメリカの中の各州の河川局でございました。どういうことかと申しますと、暴れ川です、要するに。ローグリバーというのが一番多く出てきました。おもしろいなと思いました。逆に、ならず者国家という日本語で引いてみますと、ヤフー・シーオー・ジェーピーで引きますと、国際政治学者の書いたサイトがずらずらずらと出てきました。なるほど、こういう文脈の中でこういう言葉が使われるんだなというふうに感じました。一つの政策は必ずしも合理的な根拠があるから打ち立てられるとは限らない、特定の国内事情から出てくる場合もある。
 それから、一四四一なんですが、これが戦争、戦争というよりも一方的な武力行使になることは目に見えておりますけれども、そのきっかけになるであろうことは、可能性は高いと思います。しかしながら、直接はそうならないと認識されているからこそ、すべての国が参加、賛成をした。どちらをこれから中心的に掲げていくのか、それが日本外交にとって問われているのではないだろうかと考えます。
 ありがとうございました。
赤嶺委員 どうもありがとうございました。
 国連のあり方をめぐりまして、私も、酒井参考人の「イラクとアメリカ」の著書を読ませていただきましたけれども、今後の国連を私たちが見ていく上で非常に参考になる箇所がありました。
 その中で、湾岸戦争後のイラクに対する国連の経済制裁について、さまざまな問題点を指摘して、国民的に評判が悪いとお書きになっているわけですけれども、その経済制裁というのはどういうところに問題があるというぐあいに考えていらっしゃるのか、この点もまた御説明をお願いします。
酒井参考人 御指摘がございました湾岸戦争以降続いております経済制裁でございますけれども、これはかなり早い時期から、政権の政策を和らげるために効果があるのではなくて、むしろその国民生活を圧迫する、逆に、その政権そのものをむしろ強化させるような役割にしかなっていないということで、かなり批判が非常に強く出されております。
 現在では、一部解除されまして、ある程度の石油は国連の管理のもとに輸出できる、そしてそれに基づきまして、最低限の人道物資と言われるものは輸入できるというような形で、かなり貿易量はふえているということは確かではございます。
 ただ、現在問題にされておりますのは、この輸入に関してでございますけれども、人道物資は輸入できるというふうになってはございますけれども、安保理が中心となりました国連制裁委員会というところがこれをすべてチェックしなければいけないということで、アメリカやイギリスがとりわけ輸入物資については厳しく拒否している。それで、例えば、医薬品などに部類されるようなものでも、化学兵器転用可能であるというようなみなされ方をして、なかなかそういったものが入らない。あるいは、しばしば言われておりますのは、上水道に対する設備などに関しても、パイプそのものがミサイルあるいは大砲に転用されるのではないかというような形で、さまざまにブロックがかかっております。
 そうした意味で、経済制裁はかなり解除されてきてはおりますとはいえ、そういった生活のかなりの根底部分、特に衛生面と医療関係のところでまだまだ大きな被害を出している。毎年多くのがん死者が出ているというふうに言われております。これもいわゆる放射線関連の物資を輸入できないということで、これは核疑惑の関連になりますけれども、放射線治療ができないということで死亡者がふえている。そういうような状況はいまだにかなり続いているものというふうに見てよろしいかと思います。
 以上です。
赤嶺委員 やはり国連の経済制裁あるいは軍事的な制裁、いろいろお話を伺ってきたんですが、国際社会における無法な行為は、国連憲章の第七章の四十一条、四十二条に基づいて、それぞれ経済制裁、軍事的な制裁の強制措置がとられるわけですが、実際の今日の世界は、先ほどからお話がありましたように、アメリカ一国の軍事制裁、特にアフガニスタンにおけるああいう報復戦争を見ていても、逆に、国際社会が国際的な無法やルール違反に対して団結するというよりも、中東の社会では矛盾と亀裂を拡大し、紛争の原因を本当に分散させているじゃないか、こういうことを感じます。この点で田中参考人、酒井参考人、河辺参考人の御三名の先生方の御意見を伺いたいと思います。
田中参考人 赤嶺先生の御指摘のとおり、やはり中東諸国あるいはイスラム圏広くにおきまして、アメリカの行動、特に、とりわけこれは先ほどから御指摘申し上げているとおり、パレスチナ問題に対する姿勢の違いにおいて大きな矛盾を感じさせております。それがあるがゆえに、例えばアルカーイダのような組織に対する義援金の拠出、これは何もアルカーイダとわかって出していたわけではないにせよ、パレスチナに向けて出されたはずの浄財が回り回ってテロに使われることにもなったという背景もございます。
 その点で、やはり突出した米国の軍事行動、とりわけ国連の決議を経ない状態の軍事行動は、かえって中東における、中東諸国民におけるアメリカのイメージの低下につながり、それがまたテロのターゲットとしてのアメリカをクローズアップさせることになるものだと思います。
酒井参考人 ただいま田中参考人がおっしゃったことと全く同意見でございますけれども、あえてつけ加えさせていただきますとすれば、経済制裁、先ほど申しましたように、イラクの場合はかなり部分的に解除されている部分がございます。ただ、国連が管理しておりまして、ディストリビューションに関しましても、国連が、イラク政府ではなく国連が主導をとってディストリビュートしているという問題がございます。
 これは一見非常に効率的に見えておりますけれども、しかし、非常に大きな問題をはらんでおりまして、と申しますのは、通常このような形で制裁から一番最初に解除されますのは、人道物資、医薬品と農産物、農産物といいますか食料品になります。そういたしますと、通常の途上国の場合は農業生産で生活を成り立たせている国民が非常に多い、むしろ経済制裁に関連した人道物資の援助という形で国内の自立的な農業生産能力というものを失うことになっているという事例がございます。
 とりわけ、これは先ほどのテロの問題と関連いたしますけれども、先ほどの御質問の中で、アルカーイダの残党がイラク国内に入り込んでいるという御指摘がございました。これは事実でございますけれども、しかし、これはイラクの本土に入り込んでいるわけではございませんで、多国籍軍が湾岸戦争以降に解放して今国連の管理下にあるクルド地域にアルカーイダは入り込んでおります。
 これはまさに、ある意味では、経済制裁のもとに国連が一括して管理することになってしまった、そうした地域においてこそテロ組織が入り込んでしまうというような皮肉な結果をもたらしているという意味では、制裁あるいは制裁に関連して行われる人道物資援助というものが見落としてしまう国内の政治勢力の自立的な解決というものの問題を無視しては考えられないのではないかというふうに危惧いたします。
 以上です。
河辺参考人 アメリカ合衆国の政策がむしろ矛盾を拡大するのではないだろうかという御質問ですが、全くそのとおりであると思います。
 ただ、一つちょっと古い事例を挙げてみたいと思います。
 一九九〇年にイラクに経済制裁が施行されるまで、全面的な経済制裁というのはただ一例、南ローデシアに関するものだけでございました。その際は多くの制裁破りが報告されております。主にポルトガルですが、アメリカ合衆国、香港、日本などというのもございます。つまり、経済制裁自体も必ずしも一様に適用されてきたわけではない、そういうことがございます。
 そして、もう一つ気になりますのは、先ほども申しましたが、人々の異議申し立てと申しましょうか、声が、酒井先生、田中先生のお言葉をかりれば国際社会が注目をしなくなる、あるいは僕の言い方をすれば人々の声が世界に届かなくなる。これは二重に届いていないんですね。つまり、政府に対しても届いていないし、その政府がまた国際社会の中で声を上げることができない、そういう二重構造を持っております。
 かつてというか七〇年代、アラブ諸国が、テロとは何だ、アメリカ合衆国もテロリストだったじゃないかというふうに息巻いていたころは、そのことが、そういうふうに各国政府が主張することが意味があったかどうかはともかくとして、まだ形だけでも人々の代弁を政府がやっていたわけです。ところが、それすらできなくなっていく。それすらできなくなるその進展と、いわゆる原理主義組織といいましょうか、そういったものが人々の間で支持を広めていく過程というのはほぼ一致しております。政府が人々の声すら耳を傾けることが、これはリップサービスとしてですらです、できなくなる中で政府以外のアクターが登場してくる、そういうことも無視できないであろうと思います。
 そしてまた、そのような状況が続くことは、実は政府の弱体化にもつながる。それはよりややこしい複雑なことに、地域の安定という意味でも複雑なことになると同時に、そこに住んでいる人々に対して、より悲惨な状況をもたらすことになる。そして、それは、ひいては九・一一のような形で先進国にはね返る可能性も極めて高い。
 その意味で、非常にか細い、息抜きなんというふうに、あるいはガス抜きなどと言うと言葉は悪いのですが、それであった国連ですら無視し始めることがどれほど大きな反響をもたらしてしまったのか、そういうことも考えていいのではないかと思います。
赤嶺委員 時間が参りましたので、これで終わります。
 どうも四人の参考人の先生方、きょうは本当にありがとうございました。
田並委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党の今川正美です。きょうは、参考人の先生方、本当にお忙しい中ありがとうございました。
 私は、質問いたします前に、簡単に私の考え方を述べてみたいと思うんです。
 参考人の先生方も当然御承知のように、今アメリカのブッシュ大統領が憎き相手として、オサマ・ビンラディン率いるアルカイダというテロ組織、あるいはイラクのフセイン大統領を悪の枢軸というふうに名指しをしておりますが、これは、ほかでもなく、かつてソ連が侵攻したあのアフガン戦争の中で多くの反政府テロ組織をアメリカが支援し育成したわけですが、その中にこのアルカイダがいた。そういった意味では、あの昨年の大変な事件、九・一一米国テロ事件の実行犯の黒幕とされるビンラディンやアルカイダは、ほかでもなくアメリカが育てていた。あるいは、イラクのフセイン政権にしても、八〇年代、八年間続いたイラン・イラク戦争で、イランのいわゆるホメイニ体制をつぶすためにイラクにしかけ、そのときのフセイン政権に莫大な軍事援助などをやって百万の軍隊につくり上げたという皮肉な結果があると思います。
 そして、今、ブッシュ・ドクトリンと言われるように単独行動主義、あるいは場合によって先制攻撃ということまで表明をしておりまして、そういう私流に言わせれば、世界の歴史の中で節々に、かつてはイギリス、今はアメリカというぐあいに、大国のわがままをいつまでも許しておっては法が支配する国際社会の秩序というのはいつまでも確立できないのではないかと思うんですね。
 そういった意味で、現実の国連には、これは河辺参考人が一番お詳しいと思うんだけれども、非常にいろいろな改革をすべき課題があろうかと思うけれども、そうした大国の支配なりわがままを許すくらいならば、やはり国連をもっと強固なものに、各国が協力をしながら国連中心に国際社会のもめごとを調整しおさめていく、そういうルールをやはりつくっていかなければならないという思いを強くしているわけであります。
 そこで、これはまず田久保参考人と河辺参考人にお聞きをしたいと思うのでありますが、いわゆる昨年の九・一一テロ事件が発生しまして、ブッシュ大統領は報復をするということで、それ以来約一年間、現在もアフガニスタンに攻撃をしておりますが、こうしたことが、国際法上、今米国がやっている戦争、攻撃が自衛権の名のもとに果たして正当化をされるんだろうかということをお二人の参考人にお聞きしたいと思います。
田久保参考人 最初に、先生の御見解でございますけれども、国家と国家、あるいは国家と国際組織の関係は絶えず流動している。アメリカとソ連が冷戦のときに真っ向から対立したけれども、今米ロは非常にいい関係である。中国との関係も絶えず変わっております。国家と国家の関係は永続しない。かつてテロリストを支援したというのでアメリカあるいは日本がアルカイーダを支持するわけにはいかないだろう、あるいはイラクに理解をするわけにはいかないだろうというふうに私は考えております。
 先生の御質問で、私は、そういう文脈で、民主主義のシステムそのものをターゲットにしたアルカイーダあるいはその残党、これをやっつけるのがフェーズ1でありまして、これとテロリスト国家、さっきローグステートとありましたけれども、ならず者国家と訳したのは日本の新聞でありまして、不法国家と訳すのが私は一番いいと思うんですが、不法国家とテロリズムが結びつく、これをとりあえずフェーズ2でたたこうと考えたのが今の段階だろうと私は思いますので、全部整合はしているんじゃないかなというふうに考えております。
河辺参考人 国連の強化に関しての御質問だというふうに考えます。それからもう一つは、アメリカ合衆国のアフガニスタンでの行動は正当化できるかということを伺ったと存じます。
 私は国際法を専門にしておるわけではないので、国際法的観点から見てどうであるかということを十分な根拠を持ってお答えできる立場にはございませんが、自衛権の名でどこまで正当化できるか、これは極めて怪しいものであると思います。それは、実はブッシュ大統領みずからがそのことをよく承知しておりまして、だからこそ新しい戦争だという言い方をせざるを得なかった。つまり、旧来の自衛権、個別的であれ集団的であれ、その中で説明することが難しい、だからこそそういう言い方をしたのであろうと思います。
 さて、ではアルカイーダが民主主義を倒そうとしたのかということなのですが、これはちょっとそのように短絡化することは私は極めて危険であろうと思います。先ほど来申し上げておりますとおり、人々の声が届かない、そういう声が封圧された人々がたくさんいるわけです。その人々にとってみれば国際的民主主義なんというものは成り立っていないわけですね。だからこそそれを封圧するものを暴力をもって倒そうとする。もちろんそれを私は一切認めません、認めませんが、単純にそれをデモクラシーというふうに言ってしまっていいのかどうか、私はそこでちょっと疑問を感じます。
 では、国連の強化策はないかということなのですが、さまざまな強化策を論ずることはできると思いますが、私は何よりも有効な強化策は日本の政策が変わることであると思っております。
 日本は安全保障理事会に過去八回当選をしております。これは世界で最多でございます。しかも日本の国連加盟は一九五六年十二月、国連が発足して十一年たってからのことです。十一年おくれてやってきたにもかかわらず世界最多、これはもう群を抜いているわけです。特に一九六五年、国連安保理の議席が十一から十五に拡大されますが、それ以降で見ますと、安保理の活動の四割に参加をしております。五年に一遍、任期が二年ですから、これで四割、五年に一遍当選しております。ということは、今の国連がもし悪いとすれば、その少なからぬ責任は日本にあることになります。
 少なくとも、常任理事国五カ国、これが国連を牛耳っているんだとすれば、日本は六番目の力は間違いなく持っている。しかも分担金は第二位。アメリカ合衆国が当てにならない中では、日本も決して率先して払っているとは言えませんが、いろいろ口をうるさくも言っておりますけれども、それでもこの分担金の意義、影響力というのは非常に大きいものがあります。
 その国がどういう政策をとっているのか、国連の中で何をやっているのか、これがほとんどチェックをされていないのではないか、これが私の考える大きな疑念であります。それを抜きにして国連の改革云々をしてもほとんど無意味である。我々、これは私という意味ですが、主権者といたしまして、あるいは行政府をチェックすべき国権の最高機関である国会として何をやるべきかというのは、もちろん政府の外交政策、そのチェック、それ以外の何物でもないわけであります。
 では、先ほども触れましたが、例えば国際刑事裁判所、これなどがきちんと確立されればパレスチナ問題、そのほかの問題の解決の寄与にもそれなりの役割を果たすと思います。逆に言いますと、だからこそアメリカ合衆国は国際刑事裁判所を強く批判するわけですが、その確立に日本がどれほどのことをやったのか。はっきり申しますと、何もやっておりません。これはオフレコだということでしたので名前は申し上げられませんが、外務省のある役人が、国際刑事裁判所はやる気ないんだ、これは日本の国益には合致していないんだ、そんなことを言ったのも聞いております。では日本の国益というのは一体何なのか、私はそここそを問うべきだと思います。
 さっきも申しましたが、ナンバーワンのアメリカ合衆国とナンバーツーの日本がくっついてしまったら、ナンバースリー以下は抵抗することも難しくなる、異議を申し立てることも難しくなる。日本の姿勢が変わればまた状況は変わってくる。どのような社会、企業、組合、官庁においても同様だと思いますが、イエスマンのナンバーツーの存在というのは、組織論として見ても好ましくないと思います。
 以上でございます。
今川委員 さて次に、今イラクに対して国連の査察団の本隊が昨日入ったようでありますが、これは酒井参考人も御指摘のように、私は、今この国連査察、ぜひ、いろいろな意味で最後の目的を達せられるようにきちっと平和的に成功してほしいと本当に思っています。
 ただ、アメリカのこれまでのいろいろなやり方を見ていますと、場合によっては、一応国際的な合意を取りつけた形でやるんだけれども、何らかの仕組み、演出をやって、結局はブッシュ大統領は、ブッシュ政権はフセイン政権を倒したいというところに基本的な目標があるようですから、時間の問題としてやはりイラク攻撃に踏み切るのではないかという危険性を非常に感じているんですね。
 そうした場合に、先ほど河辺参考人が具体的におっしゃっていましたが、現在の国連憲章では、ちょっと繰り返しになるんですけれども、自衛権の行使は、武力攻撃が発生した場合、しかも安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間に限定をされている、少なくとも武力攻撃が差し迫っていると客観的に証明される場合というふうにつけ加えてもいいと思うんですね。
 先ほどお聞きしたことで、例えば九・一一テロ事件以降、圧倒的なテロ反対の国際世論があったにもかかわらず、アメリカやイギリスなどは国連安全保障理事会に対して、テロの再発防止に向けた集団的安全保障措置を具体的に組織するように働きかけを一切行っていない、これが現実だと思うんですね。
 そして、今イラクのお話なんですけれども、少なくともそうしたアメリカが今、まあ査察が今から始まる段階ですからせっかちな話になるんですけれども、武力攻撃をやるということが果たして国際的に正当な行為と言えるのかどうか、そこを四人の参考人の方々にそれぞれ簡潔に御見解を伺いたいと思います。
田久保参考人 今先生がおっしゃいました、一番いい解決がやはり国連だろうと思います。国連が機能しない場合は、コソボ戦争で行いましたようにNATOの決議に基づいて行う。国連もNATOもなじまない、これが私はテロだと思います。人、物、金、技術、これが全部ボーダーレスになったときに、今、国家と全然違うテロリスト組織が、ボーダーレスで、いつ、どこから、いかなる手段で、だれを対象に向かってくるかわからない、こういう時代に突入しているので、私は、必ずしも国連に依拠しなかったからといって悪いというふうには言えないんじゃないか。では、こういうテロにどういうふうに対処するか、こっちの方を考えるべきじゃないかなというふうに私は考えております。
田中参考人 対テロ戦争におきましては、テロ攻撃というもの自体が主体が国家でないということで、あと、攻撃をする方は国家であった、米軍などは国家であったということで、その攻撃の非対称性ということも何かいろいろ言われましたけれども、やはり最終的に、どこの段階でどういう要件を満たしていれば戦闘を行い、またどこの段階で戦闘をやめるという手続を明確にするための安保理決議というものは、やはりこの世の中必要ではないかと考えております。
酒井参考人 ただいまの御質問に関しまして、武力攻撃が正当かどうかという点についてでございますけれども、私、国際法の専門家ではございませんのであれでございますけれども、国連憲章七章にのっとった形で差し迫った脅威が果たしてイラクにあるのかどうかという点が一番大きな問題になるかと思いますけれども、アメリカは、先ほど申しましたように、テロ組織とイラクの関係があるのではないかという疑念を前提にして、差し迫った脅威があるというふうに認識しております。
 しかしながら、一点掲げておきたいのは、CIAの報告で述べられておりますのは、現在のイラクを分析した限りでは、攻撃されない限り化学兵器などの大量破壊兵器を使用するようには思われない、逆に、アメリカがイラクを攻撃した場合には、それに対する反撃として何らかの形で大量破壊兵器を使う可能性があるというふうに指摘されております。このようにアメリカ国内でも、必ずしも先にイラクが大量破壊兵器を他国に対して使うという可能性については否定的な見方をする人が多いということが言えると思います。
 ただ、アメリカが現在先制攻撃という姿勢を明らかにしておりますので、国連憲章云々ということの正当化を抜きにして考えれば、アメリカの現在の政策は、多少なりとも危険性があった場合には先制攻撃を行うんだというような姿勢にあるということは確かではないかと思います。
 以上です。
河辺参考人 一九九八年に爆撃した際に、外務報道官が尋ねられましてこういうふうに答えております。攻撃をしていいかどうか、それが国連安保理の決議に違反しているかどうか、だれが判断するのか、だれでも勝手に判断していいのか、客観的な判断であればよろしい、そういうふうに言っております。ある意味ではこれに尽きるかと思います。
 それが正当であるかどうか、もっと言いますと、そういうことを議論すること自身が余り意味がないのかもしれません。理屈は後からついてくる、後から無理やりつければいい、つかなかったら既成事実にすればいい、一言で言ってしまえばそういうことになるかと思います。
 では、国連が機能するというのはどういうことかということなんですが、もう少し言い方を変えてみたいと思います。国連を機能させてはならない、これがアメリカ合衆国の立場である、あるいは日本の立場でもある。国連がもし機能したら、集団安全保障措置として機能したらどうなるか。日米安保条約は機能しなくなるわけです。御存じのとおり、日米安保条約にもその規定はございます。国連の集団安全保障措置が機能するまでの間ということになっているわけです。だからこそ、それは機能してはならない、こういう矛盾した中に、特にアメリカ合衆国はいる。
 もう一度繰り返しますが、正当性があるかないかが問題なのではなくて、理屈は後からついてくるということではないかなと。他人のことを勝手に推測するのはなんですが、行動を見ておりますとそういう感じがいたします。
今川委員 最後に、四人の参考人の先生方からそれぞれ一言ずつと思ったんですが、あと二分ちょっとしかありませんので、代表して田久保参考人と河辺参考人にお聞きしたいんです。
 このたび、この委員会でも報告があったんですが、この戦争しているアフガニスタン、米軍支援を今自衛隊がやっています。これが、あと半年間、来年の五月十九日まで再延長されました。私は、これは憲法上はもちろんですが、武力行使と一体化するかしないかにかかわらず、やはりテロ対策特措法そのものが非常に憲法とのかかわり合いでおかしいというふうに思っているんです。
 それと二点目に、この委員会でもそうなんですが、この間まであったテロ対策特別委員会でもそうなんですけれども、インド洋、アラビア海方面に派遣されている自衛艦がそれぞれどういう活動をしているか一切見えません。その報告も具体的なものは何らありませんし、少なくとも我々がこういう委員会で、自衛隊の船がどういう港に停泊したのか、どこに寄ったのかということも軍事機密として公表できないということであれば、国民はもとより、この国会という大事なところですら公平な議論ができないというのが現実なんです。そういった意味で、再延長は何ら合理性もないし、やめるべきだというのが私の立場なんです。
 それともう一つ、三点目に、これまで約半世紀近く築いてきた日本の国と中東諸国との信頼関係というのが大きく損なわれるのではないかという懸念を持つわけですけれども、今申し上げました田久保参考人と河辺参考人から簡潔に御見解を伺いたいと思います。
田久保参考人 私は、法律論よりも、これは先ほどから私申し上げましたように、やはり政治的な判断が必要ではないかな、したがって再延長は正しいんじゃなかったかなというふうに思います。細かい法律の解釈は先生の方が御専門だろうと思います。
 自衛艦でございますけれども、これはやはり自衛艦の情報を公開すべきだなというのは先生のおっしゃるとおりだと思います。私は、行った自衛官から聞いたところでは、大変な御苦労なすって、あの炎天下で給油活動というのは大変なことだ、特にあそこでイージス艦が行って情報を提供してくれれば我々どんなに助かるかな、こういうことを私が聞いていることも事実でございます。
 それから、中東でございますけれども、私は、アルカイーダそれからイラク、これをアラブの代表というふうには思わないわけでございます。したがいまして、アメリカが軍隊を集積しておりますが、これもアラブの諸国で、サウジアラビアは特別の事情で基地をつくらせないと騒いでいるんでございますけれども、私は大きな流れというのは、アラブの中でイラクは孤立している、アルカイーダも特異なテロリストのグループだというふうに判断しております。
河辺参考人 まず、テロ特措法は違憲ではないかということですが、違憲という以前に安保条約の規定すら逸脱している、そのことをより重視すべきであるかと思いますし、だからこそ時限立法だったのだろうと思います。それを、もともとアフガニスタンでの作戦のために極めて疑義のあるところを時限立法という形で出したものを、さらにイラクへ途中から内容を変えて延長する。これは、違法性の上に違法性を幾つ重ねる気なのかというふうに申し上げたい、個人的な意見でございますが、そのように私は感じております。
 それから、軍事秘密という形ですべてが秘匿されているということですが、ここでぜひ思い返していただきたいことがございます。情報公開法が施行されましたが、外交防衛に関しては例外規定が設けられております。先ほど来申し上げておりますが、防衛政策は外交政策の枠組みでつくられます。特に外務省は、戦後日本の歴史の中で秘密というのを数多く抱えてまいりました。それは今でも続いております。
 ことし六月、三十年前に起きた外務省公電漏えい事件、これを暴露する文書がアメリカ合衆国から見つかりましたが、福田官房長官が再調査を約束した翌日、今度は川口外務大臣の名前で、そんなことはしない、確定済みであると改めて否定してみせる。では、この公文書はどうなるのか。そんなものは知らぬ、もうこれは解決済みであるというふうに突っぱねる。そこにこそ、先ほど来申し上げております、問われなかった日本外交の問題があるわけです。
 日本外交の秘密というのは、情報公開法によれば、相手国または国際機関との信頼関係を損ねる場合があるから秘密にすると言っておりますが、むしろ、国民との間あるいは国会との間の信頼を損ねるから秘密にしておる、そういうふうに言った方がいいのではないだろうかと考えております。
 一連の外務省不祥事の中でこのことが問題になったのですが、なぜか、ことしに入って機密保持の徹底というのが重要課題に上ってきてしまいました。昨年はなかった項目です。それがいつの間にか改めて実施計画の中にも盛り込まれてしまっております。大きな問題であろうと思います。
 最後に、中東諸国との信頼関係が損なわれるということなのですが、違う形で考えてみたいと思います。
 パレスチナ暫定自治合意が九三年にまとまりました。これは後に崩壊しますが、それを取りまとめたのはノルウェーでございました。当時、公然とは会えないイスラエルの関係者とPLOの関係者が、ノルウェーならば信頼して会った、これは大変重要なことであろうかと思います。ノルウェーであればイスラエルも信頼した。ノルウェーであればパレスチナ、PLO側も信頼をした。
 では、日本がそういうことを行い得る立場にあるんだろうか、あるいはそういう信頼を得るだけの何事かをこれまでやってきているのだろうか、そのことを我々は問うべきではないのでしょうか。つまり、繰り返しになりますが、日本外交は何をしてきたのか、今何をしようとしているのか、そこをこそ問うべきではないかというふうに考えます。
 ありがとうございました。
今川委員 時間が来ましたので、これで終わります。
 きょうは、四人の参考人の先生方、本当にありがとうございました。
田並委員長 以上で参考人に対する質疑は終わりました。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変御多用のところを参考人の先生方には私どもに貴重な御意見を述べていただきまして、ありがとうございました。これからの当委員会の参考に資すること多大でございました。心から厚くお礼を申し上げます。
 以上をもちまして本委員会を代表してのお礼のごあいさつにかえます。先生方のますますの御活躍をお祈りいたします。ありがとうございました。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時二十二分散会


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