衆議院

メインへスキップ



第2号 平成15年2月27日(木曜日)

会議録本文へ
平成十五年二月二十七日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 田並 胤明君
   理事 岩屋  毅君 理事 木村 太郎君
   理事 浜田 靖一君 理事 山口 泰明君
   理事 桑原  豊君 理事 渡辺  周君
   理事 赤松 正雄君 理事 樋高  剛君
      岩倉 博文君    臼井日出男君
      北村 誠吾君    小島 敏男君
      左藤  章君    虎島 和夫君
      中山 利生君    仲村 正治君
      菱田 嘉明君    平沢 勝栄君
      町村 信孝君    大出  彰君
      小林 憲司君    前田 雄吉君
      田端 正広君    赤嶺 政賢君
      今川 正美君    粟屋 敏信君
    …………………………………
   議員           中山 正暉君
   外務大臣         川口 順子君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局軍
   備管理・科学審議官)   天野 之弥君
   政府参考人
   (外務省アジア大洋州局長
   )            薮中三十二君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   安全保障委員会専門員   小倉 敏正君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十七日
 辞任         補欠選任
  杉山 憲夫君     左藤  章君
  野呂田芳成君     菱田 嘉明君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     杉山 憲夫君
  菱田 嘉明君     野呂田芳成君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 国の安全保障に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
田並委員長 これより会議を開きます。
 国の安全保障に関する件について調査を進めます。
 お諮りいたします。
 議員中山正暉君から委員外の発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
田並委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 中山正暉君。
中山(正)議員 先般の当委員会の審議に際しまして、参考人に来られました佐藤勝巳氏の証言がありました。その証言に関しまして、当委員会理事の皆様にお願いをして、私も当委員会の委員長を務めたことがございますし、私も三十四年間の国会議員、連続十一回当選させていただいております者として、私の晩節を汚すわけにもいきませんので、ここで理事各位にお願いをし、今委員の皆様方の御許可を得まして、また委員長の御配慮をいただいて、発言の機会をお与えいただきましたことに心から感謝を申し上げたいと思います。
 実は、前の委員会、十二月の十日に平沢勝栄議員が御質問になりました、「北朝鮮のスポークスマン、応援団になったのが日本の国内にはいっぱいいるんです、これが日本の国益を大きく損ねてきたと私は思うんですけれども、佐藤参考人、いかがですか」という質問に対しまして、これは佐藤勝巳さんのお話でございますが、「ずっとおりました。それは現在の社民党、それから前の社会党、こういうような政党、さらに前の日本共産党というようなものは、理由はどうあれ、北朝鮮の意向を体して積極的に議会内において、さらには議会外において擁護してきた、これが拉致問題を阻害してきたかなり大きな理由です。九〇年代以降は、自民党の中に、もうはっきり名前を申し上げますけれども、金丸信さん、さらに渡辺美智雄さん、さらに加藤紘一さん、野中さん、中山正暉さん、こういう方たちが、北朝鮮の意を体して、絶えず米を出すとか拉致問題を不問に付して日朝交渉をやれとかいうさまざまな動きをやってきたことが、今日、拉致問題が長年問題にならなかった理由の大きな一つだと理解しております。」こうおっしゃっておられるのです。
 私は、ここに、「帰国事業二十年」、一九五九年から一九七九年という本を持ってまいりましたが、これは、「帰国事業二十年」、新潟県在日朝鮮人帰国協力会の記録、非売品でございます。
 この中に、佐藤勝巳氏という方は、元川崎汽船の労働組合にいた方のようでございまして、この方が、一九六二年と六四年、六二年は十一月の十日、それから一九六四年は九月の二十三日、このときに朝鮮民主主義人民共和国赤十字栄誉徽章受賞者、いわゆる北朝鮮から勲章を二回もらっておられる方でございます。二回もらった中に、横田めぐみさんの救出の会の会長小島晴則さんも入っております。佐藤勝巳さんに関しては、二回も勲章をもらっておられるわけです。
 この二回勲章をもらっておられる方、どこでどう転換されたのかわかりませんが、これまた国会図書館で、私は佐藤勝巳さんの論文をいろいろ取り寄せてみました。これは国会図書館で取り寄せたものですが、「謀略と本質」という、質問された平沢先生も警察御出身でございますが、警察に対する、公安当局に対する大変な誹謗を、この論文の中で旭洋丸事件に関していろいろ書いておられます。
 全部申し上げると時間がかかりますが、「北朝鮮のスパイを凄惨、陰惨な北朝鮮というイメージアップに利用、両国人民の離反に使っているような卑劣な行為と断定せざるを得ない、治安当局は、現体制を維持するため、つまり現体制を批判、変革しようとする者を弾圧するために存在しているべきものである。しかし旭洋丸事件は、それが単に国内にとどまらず、国際的な、朝鮮民主主義人民共和国をも諜報、挑発、攪乱するものであるという具体的な証拠を提示し、しかも、その手口が直接、間接に日本の植民地支配の犠牲者である在日朝鮮人を、恥知らずにも脅迫、利益誘導し、スパイに仕立て、みずから祖国を売り渡させて、二重、三重の国家犯罪を犯しているのである。」
 とにかく、いろいろおっしゃっているのですが、この帰国事業というのは何かというと、この帰国事業は、一九七九年から二十年の間に九万三千二百十五名の在日朝鮮人を送り込んだ。この中に、御承知のように千八百三十二名の日本人妻が入っていたわけでございます。今これは脱北者という形でどんどん出てこられて、むしろ佐藤勝巳さんなんかは、今は皆さんに水色のリボンをつけさせておられますが、このときは、ここにも載っておりますように、黄色いリボンをつけさせて、いわゆる北朝鮮に送り込むシンボルにしておられました。今皆さんに水色のリボンをつけさせておられますが。混血の子供が六千人、その方々が今脱北者となってどんどん五月雨のような気の毒な形で出てきておられる。むしろ、その問題をこの方は救援の活動の中心にすべきではないかと思っております。
 この拉致の家族を支援する会といいますのは、今五人の方々をとめ置いている。私なんかは、外務大臣にもお願いしておきたいと思うんですが、本当は三十八度線の離散家族の接見場所を拝借して家族の方々と会わせるとか、それから北朝鮮の大使館があります北京で日本の大使館との間で交渉の場をつくるとか、そんなことをすべきじゃないかと思うのでございますが、時間も十分しかありませんから意を尽くせませんが。
 私は、ここに社会新報を持ってきております。この社会新報では、社会新報の中に私のことを書いてくださっています。「会談が一転険悪な雰囲気に変わったのは、森自民党団長がいわゆる日本人拉致疑惑問題に言及し、金養健朝鮮労働党国際部長が、この問題を我々と結ぶのは侮辱であると発言したにもかかわらず、自民党中山正暉衆院議員がさらに追及したことによる。」
 私は、自民党の治安対策特別委員長というのをやっておりまして、その治安対策特別委員長として横田めぐみさんの問題を、安明進という北朝鮮の工作員、ちょっと年が若過ぎるので、横田めぐみさんを見られたという年に、年齢が適合しないようにも思えて、私は、あなた、横田めぐみさんを見たということになると、七歳か八歳か九歳じゃなかったんですかと御本人に言ったことがあります。非常に不思議な背景を持っておられる方でございますが、この方が横田めぐみさんの話をされたときに、マスコミが大騒ぎになりまして、桜井新先生、今参議院に移られましたが、この方が私のところへ飛んでこられて、中山さん、あんた治安対策をやっているんだから、治安の問題として拉致の問題をやってくれ。私の母の中山マサと申しますのが、昭和二十五年にこの衆議院にありました海外同胞引き揚げの促進に関する調査特別委員会の委員長をしておりました。そのときに、キリスト教の斉藤理事長と、それから外務省のアメリカ・倭島公使と、それから私の母が、ちょうど委員長という立場で国連の人道委員会に提訴をしたものですから、その提訴をした故事に倣って、私は自分が拉致の会長になったときに国連の人道委員会に提訴をして、北朝鮮は国連に窓口を持っているから、そこで交渉をしようと思ったわけでございます。
 ところが、突然私に、三党訪朝団、自社さきがけでございますが、その副団長として入ってくれとのことで訪朝会談に出ました。森団長があいさつをされて、それから小野清子さんが、いわゆる北朝鮮に行った千八百三十二名の御婦人の代表が第一団で帰ってこられた、そのお礼を言われて、野中さんが事務局のこれからの運営の方式を言われて、私が一時間半にわたって拉致疑惑問題、七件十人を私が初めて北朝鮮代表団に説明をしたわけでございます。説明をして、そして一時間半の休憩後、向こうから、南という北朝鮮の教育大学、女性の学長でございましたが、この方が立ち上がって、何だと。大脇雅子それから堂本暁子、小野清子という三名の女性議員がいながら従軍慰安婦問題に触れないというのは何事かと、大喝一声始まりました。
 皆さん、あっけにとられておられましたので、私が手を挙げて、実は一九一七年にロシア革命が起こりました、そのときに、どんどんシベリアに赤軍が出てきて、それに対して五カ国がシベリア出兵をやってその赤軍の拡張を防ごうではないか、日本に一万五千人の兵隊を近いから派遣してくれと要求されて、イルクーツクに本部を置いて、二年八カ月という間シベリア出兵をやりました。ところが、一万五千人のうちの七千五百人が梅毒にかかって帰ってきました。その梅毒を家庭の奥さん方、また恋人にうつさないためにも、それからロシアのお嬢さんを強姦しないために、昭和三十年まではそういう組織がありましたので、それに依頼をして実は慰安所を設けてもらった。これは世界的な軍隊の常識でございました。
 私は昭和七年生まれでございますが、私の意識の中には、従軍慰安婦というのは、全く意識はありません。慰安婦は知っています。従軍看護婦、従軍記者というのは知っていますが、慰安婦に従軍のついたものは聞いたこともありませんと言いましたら、一回で終わりました。
 そのほかにもいろいろありました。第二回目に私が団長で行ったときには、金容淳さんが、座るといきなり、三十六年間日本が朝鮮半島を併合した理由は何かと。それに対して私は、それは、清国、ロシアというのは、いろいろ極東木材会社、鴨緑江木材会社という架空の会社をつくって、軍服を脱いだ軍人を送り込んできた。いろいろな悲劇があったが、最大の理由は、その当時、西郷隆盛以来、朝鮮半島は日本の領土にすべきだというのに対して、一人反対していた人は伊藤博文であった。伊藤博文公は、ハルピン、今の瀋陽、奉天ですね、この三つに名前変わりましたが、そこで安重根という人が撃ち殺したでしょう。日本人には、マッカーサーという米軍司令官、ちょうど伊藤博文のような方が日本におられましたが、日本人にはマッカーサーを撃ち殺すようなばかはいませんでした。こういうことを言いましたら、金容淳さんが、安重根に対しては我々と韓国の評価が違います、これで会談はスムーズに動き出しました。
 何で三十八度線で分けたか、その次にはその質問が来ました。三十八度線で分けたのは我々ではありません。ヤルタというところで一九四五年の二月の四日から十一日までヤルタの秘密協定が行われている。日本が知ったのはそれから十年後、米ソ冷戦構造ができ上がってから、アメリカがロシアとの秘密協定を日本にばらした。その交渉のときに、ルーズベルトにスターリンが、中立条約があったから日本をごまかすために、そのとき参加するとは言いませんでしたが、満州をよこせ、北朝鮮をよこせ、それから樺太をよこせ、千島列島をよこせという要求は具体的には占領行政命令一号という形で、八月十六日にそれが日本に提示された、マッカーサー元帥からです。それを受けたのは東郷外務大臣でした。
 東郷外務大臣というのは、五歳まで朴さんという名前で、あの方は朝鮮人でありました。四百年前に日本に来た朝鮮人でありました。その朴さん、後の東郷茂徳外務大臣、この方が、三十八度線から上、いわゆる三十四方面軍関東軍、関東軍はソ連軍に武装解除をしろ、それから南側は第十七方面軍、これは、米軍に武装解除をしろという命令を受けたのは、あなた方朝鮮人の血を引く外務大臣が受けたんだ。これは、瀬戸物をつくる陶工を東郷に置きかえたんですね。そんな話をしました。
 もう時間が来ましたという電報が参りましたから、これ以上申し上げることはできませんが、私は、この拉致を支援する会の人たちは一体何を考えているのかと。北朝鮮は孤立しているように見えますが、百五十四カ国と国交があります。EUは去年だけで二十五億ドルの食料支援をWFPを通じてやっています。ことしになってもう十二億ドル。アメリカはまた食料支援をしようとしているんですね。
 しかし、この朝鮮人民軍参謀本部指令というのには、五〇二七作戦という米軍の北朝鮮侵攻作戦が実は北朝鮮に漏えいしました。これが一九九八年の十二月の二日に朝鮮軍参謀本部から、その五〇二七作戦に協力をする日本を攻撃の対象にすると世界じゅうに公表しているんです。
 私は金容淳氏に、拉致の日本のマスコミが発表したもの、それから、よど号犯九名が九名の奥さんをもらって、三十二名の家族になっている、今七人日本に帰ってきていますが。その話と、それから、柴田泰弘という人は、よど号が昭和四十五年の三月三十一日に乗っ取られたときには、一番若い十六歳でございました。十三年前に日本に帰ってきて神戸で逮捕されて、五年の刑を受けて、もう今民間でコンピューターの会社をやっております。その彼の裁判記録、これは、よど号犯を帰してくるつもりで、私は北朝鮮と交渉したときに、のどに刺さった二本のとげを抜きに来ました、一本は拉致問題七件十人、そのときは七件十人、今は十件十五人になっていますが。そして、もう一本はよど号犯の引き渡しですと言いました。
 私は、今よど号の問題が全く出てこないのは不思議でなりません。そのころは、拉致の問題は疑惑ということで、犯人は特定されていませんでした、平成九年の警察白書です。ところが、よど号犯ははっきり、三十二名の家族がいるということがわかったものですから、これを連れて帰ってくれば、私は、拉致の情報を持っているだろうと思ったのです。小泉さんが行ったときには向こうが謝ったんですが、私のときには対立していたわけです。徹底的にこっちの言うことに対抗したときに我々が闘ったということが、世の中には余り知られていません。どういうわけか、マスコミには私のような実際に交渉した者が全く呼ばれずに、平沢勝栄先生も警察におられましたが、一回も向こうに行かれたことはないようでございますが、その方が毎日テレビに出てしゃべっておられるという異様な現象が起こっております。
 そういう中で、この参考人として呼ばれた佐藤勝巳さんの本当の姿を、特にもうきょうは時間がありませんから、小田実の「私と朝鮮を論ずる」、この中で、彼が大転換をした、今の立場に変わったことを書いております。これはいずれ、もし御興味がおありの方がありましたら、御要求いただきましたらコピーして差し上げたいと思いますが。
 金容淳さんに私が申しました。あなたがボタンに手をかけたら、日本にミサイルは八分で飛んでくる、四分で見つけて四分で撃ち落とすのは不可能、そのことを言いながら、私は、昼飯のときに隣に座ったので、背中に隠していた資料、森団長にも野中さんにも相談せず、相談したらやめておけと言うだろうと思いましたから、私は彼をあおりました。平成九年、日本の国会が周辺事態対処法を審議していたときに、今日本でやっているのはあなたが怖いからだよと言ったら、何で怖いんだと。ノドンというのは潮岬までが射程に入る。千キロ飛ぶ。だから、その千キロの範囲内には東京が入っていないから、大阪の私はあんたにねらわれておるという話をしたら、そんなことせぬと言いますから、そんなことせぬと言うけれども、あんたの持っているテポドンは、そのころ千五百キロ飛ぶと言われている。沖縄が射程に入る。アジアでの米軍の最大の基地が射程に入る。
 それは、TMDなんてつくったって、近いから、撃ち上げてくるミサイルと迎撃のミサイルがうまく会わない。二兆円もかかるものが日本に役に立たぬと、そんなことせぬよとおっしゃるから、そうおっしゃったのが、あなたがボタンに手をかけたら八分で来ますよ。そんなことせぬとおっしゃるから、私が背中からどっと資料を出して、これを見てくださいと言いました。説明したときには受け取ってもらえなかった資料を、昼飯の席で金容淳の鼻の先に突きつけたわけでございます。そうしましたら、中山さん、私がそれを直接受けるわけにいかぬから、そこにいる黄哲審議官に渡してくれと。まあ、一瞬、冷凍庫に入ったようになりました。
 その資料を黄哲という人に渡して、その人が明くる日、タラップに乗って帰ってこようとしたら、中山さん、初めて拉致の資料をいただきましたと礼を言われました。
 横田めぐみの話をしたのは、私が五年前にしたんです。それをなぜ、去年の三月になって、八尾恵が有本恵子さんを誘拐したという話が自民党の役員会で出てきましたから、官房副長官、ちょっと待ってくれ、何で今、私が言ったときには追加せずに、八件十一人にせずに、今何で追加するんだと言ったら、きょうの昼からの裁判で八尾恵が証言をしますからとおっしゃいました。証言をした後に発表するならいいけれども、証言をする前に発表するというのは何事かと、私は自民党の役員会で官房副長官に申しました。
 とにかく、ほかに百人とか二百人とか、韓国に至っては四百六十八名の拉致者がいる。その人たちをどうするのか。五名を、ただ佐藤勝巳さんらの指揮によってマスコミを支配し、週刊誌も全部支配してこの人たちを置いていることは、百九十カ国とおつき合いがある日本が、ODAを振りまいておいて、金をまきまくったって、一発のミサイルが飛んでくれば日本は終わりです。それなのに、一カ国だけおつき合いのない国を、せっかく小泉総理大臣が意を決して北朝鮮との交渉の幕を開いたのに、それを阻止して、何とか北朝鮮を日本と引き離しておこうというその背後の勢力に、皆さん方ひとつ、これは一体何のことなのかと考えてみてください。
 中国は、二十四発の原爆を持ち五十四回の実験をしています。そのNPTという、この国会で核拡散防止条約が批准されるときに、私は賛成討論をしました。その賛成討論をする前に松野頼三政調会長のところに行って、いいんですか。五カ国だけが核を持つ、あとは持っちゃいかぬ、おまえらの懐は見せろ、おれの中身は見せないという、そんな世界一の不平等条約、核拡散防止条約を批准していいんですかと、私は政調会長のところへ行きました。中山君、いざというときは、そんなものは超法規、そんな、法律も条約も切ればいいんだと申されました。
田並委員長 中山議員に申し上げますが、申し合わせの時間が参りましたので、簡単にお願いいたします。
中山(正)議員 わかりました。本当はまだまだ一時間半ぐらいいただきたいと思うんですが、簡単な話ではございません。
 本当に、日本を愛する、この場にいらっしゃる安全保障というものに特別の御興味をお持ちの方、ひとつ、この不思議な集団の動きをどうぞよく、深く理解をしていただいて、国家安全保障のために御対応をいただきますようにお願いをし、浜田先生から、次は自分の持ち時間だから少しぐらいははみ出してもいいよと言ってくれました。私はお父さん幸一先生と、昭和四十四年に初当選したときに、議席が隣同士でございまして大の親友でございますので、その親友の御令息の御配慮に心から感謝をし、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
    ―――――――――――――
田並委員長 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛局長守屋武昌君、防衛庁運用局長西川徹矢君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省総合外交政策局軍備管理・科学審議官天野之弥君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省条約局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
田並委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
田並委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田靖一君。
浜田委員 自由民主党の浜田靖一であります。
 本日は、中山先生のお話の後に私が質問するのは、今の内容を聞いておりますと、大変勉強不足だなというふうに思ってしまうわけでございまして、その中で、今いろいろと話題になっております事案も含めてお話を伺いたいと思うわけであります。
 今、中山先生のお話にもありましたように、北朝鮮からのミサイルの脅威というのは、これは我々が一番身近に恐怖を感じるわけでございますし、また、その対応というものについて、いかなることができて、いかなることができないのかということを、一度ここで御確認をさせていただきたいと思います。
 まず、法制的には一体どうなっているのか、そしてまた、装備。大変ベーシックな話でありますけれども、この点についてお伺いをしたいと思います。
石破国務大臣 現在、北朝鮮から仮に、仮定の話で恐縮ですが、別に北朝鮮からでなくてもどこでもいいのですけれども、弾道ミサイルが飛んできた場合に、限定的な、ごく限定的な対処能力はある、PAC2等々ですね。湾岸戦争のときにイスラエルに供与されたパトリオットがあれを落とした、あの場面を想像していただければよろしいかと思いますが、ごくごく限定的な対処能力は持っているけれども、それが、射程が、アル・フセインと違いまして千キロ台になりますテポドンになった場合に、落下速度が非常に速いですから、同じような限定的な能力も十分に発揮できるかといえば、それはかなり問題があるだろうというふうに思っています。
 では、法制的にはどうかということを考えてみたときに、まだミサイル防衛というものは、今後いろいろな議論をいただき、安全保障会議の議を経て決定をするものでありますけれども、それがどういうような法律的な根拠によって対処が可能なのかということも、きちんと検討していかなきゃいかぬことなんだろうと思っております。枠組みとして、落ちちゃった場合には災害派遣で行く、こういう話になっておりますが、それはもう、確かに今の条文からいえばそうなのですね。ただ、それを撃ち落とす場合に、では防衛出動で行くのか、その場合に、防衛出動の手続というのをやっておったらば、時間はどうなのか。
 要は、一番大事なのは、どうやって国民の生命財産を守るかということであり、それが撃ち落とせるということであるとするならば、その可能性が非常に高いとするならば、撃とうとすることをやめるのではないかということなんです。大事なのは、どうやってその発射をさせないかということであって、そのためにどのような手だてがあるのか、私ども、本当に国民の生命財産に責任を持つ立場にある者として、先生方と一緒に議論をし、検討していかねばならぬというふうに思っておるところでございます。
浜田委員 そういうことになると思うんですが、そうすると、基本的にはいいです、すべてのあらゆる手段をとってということになりますと、当然これはアメリカとの関係というのは必ず出てくるわけでありまして、日米安保というのが、安全保障条約というのがあって、これに対処していく。まあ、実際に動けるのはという話になればそういうことになるんでしょうけれども、そうすると、特にアメリカとの信頼関係というのが今どんな状況にあるのか、どういうレベルで、どういうふうになっているのかも含めて、その辺のところをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
川口国務大臣 委員がおっしゃいますように、信頼関係、非常に大事でございます。
 今、その信頼関係ということでいうと、この間、パウエル国務長官が来て記者会見で言っていらっしゃいましたけれども、日本とアメリカの間の関係というのは非常に強い。たしか、ロバストという言葉を使っていらっしゃいましたけれども、そういう認識を向こう側は持っており、私どもも持っています。
 委員がおっしゃるような、日米安全保障条約の五条というのがあるわけですけれども、やはり我が国の平和と安全を守るという観点からいきますと、基本的に我が国が近隣の諸国といい友好関係にあるということが非常に大事でありまして、そういった面で外交の努力が非常に重要でございますし、あと、日米安保条約、そして我が国の持っている、これは防衛庁長官の方のお話ですけれども、みずから持っている適切な防衛力、そういったものが重要な要素であると思います。
浜田委員 そういう意味では、経済も当然これは重要な信頼関係のうちにも入るでしょうし、特に私自身が思うのは、軍事的なそういう情報交換ですとか信頼関係というのがやはり一番見やすいのかなという気もします。
 日米というのは、これは昔からのそういう同盟関係というのが非常に強いわけでございますので、当然のごとく、イラクに対しても同じようなシンパシーというか、感覚を持っていなきゃいけないのは当たり前の話でありますが、今ヨーロッパでも、イギリス、フランス、ドイツというのは、これは対応が違うのが当たり前のような気がするわけであります。
 というのは、もうソ連の脅威がなくなって、そしてイギリスはEUにも入っていない。EUの経済等の関係も含めて、これは必ずしも軍事的な問題だけではなくて、いろいろな形の関係の中での配慮もあるわけで、戦争反対と言えばこれはだれもが戦争は反対であります。しかしながら、その裏にあるものというのは、これは当然見ていかなきゃいけない。
 私がここで、なぜこういうことを言うかというと、いろいろな総合戦略というのが当然あってしかるべきだと思うわけであって、それは必ずしも軍事的な面だけではなくて、経済そしてまた日本の国益に立った総合戦略を立てて、こういった問題に対して対処していくというのがこれは非常に重要だと思うんですよね。
 そうすると、きのう、いろいろな情報の錯綜とかという話がありましたが、政府全体として、情報収集、分析といった体制というのは万全にできているのか。そしてまた、政府の総合戦略はだれが責任を持って統合調整をし、総理にそれを伝えているのかというのがちょっと見えないところがあるので、そこのところについてぜひ教えていただきたいと思うのであります。
 特に、情報というのは、これは幾らでもとろうと思えばいいんですが、あった方がいいんです、情報はいっぱい集めた方がいいんですけれども、その中で、では一体、それを分析して、だれが意思決定をして、この情報によって何をしようとするのかというのが重要であって、情報だけ聞いていても、それが実行に移せなかったら、それに対してどういう対処をするんだということを言えなければ、できなければ意味がない。情報が幾らあってもですよ。ですから、そういう体制というのは非常に重要だと思うんですよね。
 この点について、どのような状態になっているのか、お聞かせ願えればと思います。
石破国務大臣 これは、あるいは内閣からお答えするのが適当であって、私からお答えするのは必ずしも適切ではないかもしれませんが、委員が御指摘なのは、恐らく、一昨日の北朝鮮の地対艦ミサイルをめぐっても、いろいろな、あえて混乱といえば混乱があった。
 これは、今、内閣情報官というものがあり、また統幕のもとに情報本部というものがあり、情報は何もそれだけではなくて、公安調査庁もあれば、警察もあれば、いろいろなものがとってくるわけで、それが内閣のもとに集められて、きちんとした形で総理大臣に伝わるということが一番大事なのだろう。
 確かに、今そういうような体制は整っているように見えますし、そして限られた人数で努力をしているわけですが、それが本当に、「プラチナ・ビーズ」なんという小説がありましたが、山ほどある情報の中で、どれが本当に有用な情報であるかというのを分析するのが一番大変なことである。すべてのものが内閣総理大臣に上がっても、これは判断のしようがないのだろうと思っております。それを、それぞれ、例えば外務省がとる、情報本部がとる、警察がとる、公安調査庁がとる、それをどの段階でどのようにセレクトして上げていくか、お互いの情報の共有をどのようにするのかみたいなことについては、なお、さらなる検討が必要なんだろうと思っています。
 これは、テポドンのときとか、あるいは不審船のときとか、いろいろな事案がありました。古くは、函館空港ミグ25事件なんというのもありました。もう一度、どこで何が使えるのかということは、常に常に反省をし、さらによい体制にしていくことが必要なんだろうというふうに思っています。瞬時にあらゆる情報が上がっても、それはかえって混乱を招くだけだということは認識をいたしておるところでございます。
浜田委員 そのとおりでありまして、例の対艦ミサイルなどというものは、レーダーでもこれをとらえるというのは、逆にこっちから向こうを見ている方が遠いわけですから、そんなものを撃ったか撃たないかというのは、確認するのは大変なことであります。
 そして、それが実際に軍事的に、センシティブになるのはよくわかるんですが、ミサイルというと、いろいろなミサイルがあって、それが軍事的にどういう評価を得ているかというのは国民の皆さんは知らないので、逆に言うと、きのうのような形で、マスコミがいきなりミサイル発射といって、何が飛んだかわからないのにいきなり昔のテポドンの映像をテレビで流せば、国民が動揺するのは当たり前の話であって、逆に言えば、その報道というものも、やはりきちっとした確認をとってから情報を流さなければいけないと私自身は思うのです。
 それによって、これに対しての感情的な部分が表にあらわになるというのは決していいことではないし、日本がそれに動揺しているということを北朝鮮にわざわざメッセージを送る必要はどこにもないのであって、我々とすれば、軍事的にはそんなものは大したことはない。だから、それに対して冷静に対処をしているのは当たり前の話であって、それに対しての情報の分析の仕方、情報の上げ方というのはある。
 これは、きちんとした形で長官のところまで上がるのは必要でしょう。しかし、その中で、では、どこに連絡はしなかった、ここに連絡はしなかった、連絡しているだけで時間だけが過ぎて対処が怠る、機能不全に陥るというのがまさに今、現状としてあるわけなので、本来であるならば、それは確実にここまで上がって、そこで一体何をするのかが問題であって、知っていればいいという問題じゃないということですね。そして、それに対して、では一体対処できるのかといったら、対処できることは、今長官がおっしゃったように、法制的にも軍事的にもそれに対処するものがない。では、情報だけ上げていてどうするの。問題はそこなんですよね。
 だから、安全保障の基本というのは、要は運用ですよ。一体、それに対処できるだけの能力があって、それが足りない場合には一体どうしたらいいのか。そうなれば、当然のごとく、法律的にもしっかりと議論すべきだし、軍事的にも何が必要なのかを議論すべきだと思う。
 ただ、一番問題なのは、こういった状況になったときに考えて、それをつけ足していくというのは、私は余りいいことじゃないと。こういうときには冷静にならなきゃいけないわけであって、逆に言えば、そういうのは平時のときに、何も問題が起きていないときにしっかりそれをつくっておいて、いざ有事のときには、これは当然のごとく、それを冷静に判断して、冷静に対処の仕方を進めていくというのが一番重要なことであって、今のように、ほら見たことか、こんなことになるんだったら、今つくっておかなきゃいけないじゃないかというのは、これはまた論外だと私は思います。逆に言えば、そのときにやらなかったことを、やはり自分自身として、我々として反省をしながら、そこは冷静に今後の議論をしていかないといかぬのかなというふうに私自身は思っている次第であります。
 この点は皆さん方にも御同意を得られると思うんですが、我々だれしもが戦争は嫌であります。これは否定するものでありますけれども、しかしながら、我々のしなければならないことというものをやはり明確に意思決定をしなければならないという点では、これは政府でもそうでありますけれども、しっかりとした今後の議論を積み重ねていっていただきたいなというふうに思います。
 決して感情論だとかいうことではなくて、やはり、先ほど申し上げたように、すべての情報を精査し、その中で冷静な対処、そして自分たちの意思決定。意思決定というのは、人に影響されることではなくて、自分自身がどう考えるかというのを表明すべきことであろうと私は思いますので、ぜひ歯切れのいい意思決定をしていっていただきたいなと思う次第であります。
 きょうは、私の持ち時間も、中山先生のお話がございましたので二十分ということになってしまいました。これから先、質問しますと、これは大変聞いておきたい事項なのでありますが、残り時間がたった五分しかありませんので、長官にこれをお聞きしていると、多分時間をオーバーしてしまいますので。
 私がお聞きしたかったのは、防衛庁のあり方検討、これから当然変わっていかないといかぬわけでありまして、今までの考えの中に埋没するのではなく、今申し上げたように、時代によって変わってくるわけでありますから、調達の問題にしろ、装備、そしてまた体制、それから、その機動性の問題、そういうものをやはり物理的に、合理的に切りかえていく、そういうことを本当に議論しないと、もたないと思います。
 そしてまた、もう一つは、やはり、ただ単にそういうことだけではなくて、防衛庁の省昇格の問題も我々としては考えておりますし、それに対して党としても、部会の方で防衛庁の省昇格に関するQアンドAとかそういうものをつくって、PRに努めているところでございます。
 そして、今申し上げたのは運用の話で、そういった装備の話ばかりしていましたが、そうではなくて、防衛庁の中身、これで一番重要なのは、統合運用というのがあるわけでありますが、これを、どうも自衛隊だけの運用になってしまっているところがありますが、そうではなくて、本来であれば、防衛二法の改正というのが重要なことになってくると思いますので、そういったことは、また改めて、次回に質問させていただきたいと私は思います。
 その統合運用に関しては、石破長官、大変お考えを持っていると思いますので、ぜひその辺のところは、今後の防衛庁の中において、もっともっとスピードを上げて、あり方検討の結果というか、中間報告でも結構ですから、我々にまた御提示を願いたいなというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いをする次第であります。
 私の持ち時間がなくなりましたので、これだけ、次回の予告をさせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
田並委員長 次に、赤松正雄君。
赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。おはようございます。
 私は、まず、先日行われました防衛庁長官、外務大臣の所信の表明に対する質問をさせていただきます。
 まず、防衛庁長官にお伺いいたしますが、防衛庁長官は、所信表明におきまして、冒頭にこうおっしゃっています。
  北朝鮮は、NPTからの脱退を宣言し、核関連施設の凍結解除の動きを見せ、ミサイル発射のモラトリアムを見直す可能性を示唆する発言を行っています。このような一連の行動は、日朝平壌宣言に反するものであり、我が国は重大な懸念を有しております。
こういうふうな認識表明を冒頭になさっておりますけれども、まず、一昨日ですか、既にきのうの予算委員会等で議論がいろいろされたようでありますが、北朝鮮からの地対艦戦術ミサイルの発射、この事態、この事実、これは、先ほど申し上げました長官の所信表明の冒頭の日朝平壌宣言にどういうふうになるんでしょうか。
石破国務大臣 委員御案内のとおり、日朝平壌宣言においてモラトリアムの延長が確認されておりますが、そこで対象となっているのは、我が国の安全に直接かかわる弾道ミサイル、これが直接の対象になっているわけであります。そうしますと、地対艦ミサイルであるとするならば、少なくとも弾道ミサイルではないとするならば、これは形式論理からいえば、日朝平壌宣言のモラトリアムの延長というものに反するものではないというふうに考えております。
 それから、それはあえて日朝平壌宣言に反するのかというふうなお尋ねであるとするならば、それが地対艦ミサイルである限り、弾道ミサイルでない限り、日朝平壌宣言に反するものだとは考えておりません。
赤松(正)委員 そういう基本的な認識はわかりましたが、では、ミサイル発射のモラトリアムを見直す可能性を示唆する、こういう発言ということを挙げておられますけれども、現実にミサイル発射のモラトリアムを見直す、つまり、先ほどおっしゃったような弾道ミサイルを発射する、こういう可能性については、現在の時点でどういうふうな認識をされているんでしょうか。
石破国務大臣 今そういうような非常に危機的な状況といいますか、モラトリアムもやめてしまう、あるいは弾道ミサイルの発射実験も行うというような危険性が今直ちに切迫をしておるという認識はいたしておりません。
赤松(正)委員 では、直ちにそういったことが起こり得るということはないけれども、こういう、先ほど冒頭に申し上げた、また長官自身が所信表明の冒頭で述べておられることについては、一つの将来における可能性、そういった動き、現実に一〇〇%ぴたっと合うということではなくて、それに限りなく近い行為として、その行為は日朝平壌宣言で盛られた、恐らく日朝平壌宣言には二カ所ばかり「この宣言の精神」という言葉が出てきますけれども、それに反する、こういうことだと受けとめればいいんでしょうか。
石破国務大臣 おっしゃるとおりでございます。日朝平壌宣言の基本的な精神、基本的な考え方とは相入れないものを有しておるという意味でございます。
赤松(正)委員 では、今のくだりについては後で外務大臣に確認をしたいと思うんですが、先ほどの所信表明の最初のパラグラフの終わりに、長官は、一連の問題解決に向けて「毅然たる対応をいたしてまいります。」と。最近しばしば、毅然たる対応というのはいろいろな場面でよく使われるんですけれども、長官が使っているこの「毅然たる対応」というのは、どういう中身を指すんでしょうか。
石破国務大臣 それは、我が国全体として、日朝平壌宣言の基本的な考え方、これは遵守をしなければいけない。NPT脱退であるとかモラトリアムの再検討の示唆であるとか、そういうことがなされているわけですが、そういうことに対しては、そういうものについて決して日朝平壌宣言の精神に相入れるものではないのだということを、きちんきちんと対応していくということであるというふうに考えます。
赤松(正)委員 きちんきちんと対応するとは、何かよくわかったような、わからないような御答弁です。具体的な対応としてどういうことがあらわれるのかなということは、非常に気になるところでございますが、それ以上は言うのはやめておきます。
 今のことに関して、私は次に外務大臣にお伺いしたいんですが、本来、所信表明というのは、非常に重要な役割を持つものだと私は思っております。決して形式に流れてはいけない、こう思うんですが、防衛庁長官の所信表明と外務大臣の所信表明を並列して読ませていただいて、いささか外務大臣の所信表明は、ちょっとばかり通り一遍ではないのかなという印象を受けます。だからといって、防衛庁長官の方が際立ってすぐれているという意味ではないんですが。
 要するに、冒頭で、外務大臣の所信表明は、「我が国が直面する最重要課題の一つである北朝鮮との関係では、日朝平壌宣言に基づき、」云々、こう続いていくわけで、先ほど来申し上げているような、現在の北朝鮮と日本との関係についての現状の認識というものが、いささか外務大臣の所信表明にはよくあらわれていないのではないか。非常に平板に、さらっと「日朝平壌宣言に基づき、」こういうふうに書いている。
 確認でございますけれども、先ほどの防衛庁長官の所信表明にあった、そういう一連の最近の、あの小泉総理の訪朝以降に見られる、今日までの約半年近くの間における北朝鮮の行動というものは、日朝平壌宣言の精神にもとるんでしょうか。それとも、もとらないというか、合っているんでしょうか。まず、その辺の基本的な認識は、外務大臣はどういうふうに表明をされますか。
川口国務大臣 日朝平壌宣言は、我が国にとって、北朝鮮と我が国の今後の関係を前に進めていくときの重要な政治的な文書であると思っています。北朝鮮もそのように思っていまして、これは、最近の金正日の誕生日のときの北朝鮮の発表した文書の中に、これが非常に金正日の、国防委員長の成果であるという取り上げ方をしているわけです。
 我が国としては、北朝鮮との間の諸問題、これは、拉致等を初めとする二国間の問題もありますし、国際社会全体が懸念を持っている安全保障上の問題もあります。こういった問題を平和的に解決していくことが非常に重要であって、この平壌宣言というものは、それを北朝鮮に守らせることによって、そういった平和的な解決をしていくことが必要であるということを考えています。北朝鮮に対しては、いろいろな接触の折に、これに従って、国際社会の責任ある一員として対応をするということが北朝鮮自身のためになるのであるということを言っております。
 それで、そういうことでございますので、これを守らせる、そして平和的に問題を解決することが大事であって、実際にどうやって効果的にそういった状況を達成することができるか、これが外交という観点からいうと一番重要なことであると思います。
 したがって、平壌宣言について、これが最近の一連の行動によって、ミサイルについては防衛庁長官がおっしゃったとおりでございますけれども、ほかのことが平壌宣言に反するか反しないかということを言うということではなくて、平壌宣言を守らせて平和的に問題の解決を図っていく、それが重要である、そういう立場でございます。外交は、やはりそういう意味で、成果が出ないと意味がないと思っています。
赤松(正)委員 そうしますと、要するに、基本的な認識としては、防衛庁長官の言うような、反するものであるというふうな、こういう位置づけを外務大臣の立場としてはするべきではない、こういうふうにおっしゃったんだというふうに理解すればよろしいんでしょうかということ。
 あわせて、この平壌宣言をもう一度しっかりと読ませていただくと、これはいろいろなことを蒸し返しするつもりはありませんけれども、ここで言われている宣言に示された精神、「宣言に示された精神」というのが二カ所出てきますけれども、この平壌宣言の精神とは何なんでしょう。その二点をお伺いしたいと思います。
川口国務大臣 先ほど申し上げましたことは、この日朝平壌宣言というのは、我が国と北朝鮮との間の諸問題を解決して国交正常化をしていくことの重要な、そのための政治的な文書であるわけです。
 ですから、大事なことは、この文言の一つ一つについて、これに反しているとか反していないとか、そういうことを問題にするのではなくて、今必要なことは、どうやって北朝鮮にこれを守らせていくか。守らせることによって我が国が諸問題を解決して、拉致の家族の方にも帰ってきていただいて、国交正常化をしていくことが、しかもそれをこの地域の平和と安定に資する形でしていくことが大事だということでして、そういった目的を達していくために重要な、政治的な重みのある文書である、そういう位置づけであります。
 それで、精神とは何か、基本原則とは何かということですけれども、これはまさに、この精神、この宣言に示されている――原則、いろいろ書いてございます。それから、精神というのは、これは非常に幅の広いものでありますけれども、一番最初のところに書いてございますが、「地域の平和と安定に大きく寄与する」そういう形で我が国が関係を正常化することができる、そういうふうにしていく、そういう考え方、広く言えばそういうことだと思います。
赤松(正)委員 この「宣言に示された精神」というのは、極めてあいまいな形になっているなというのが、私の率直な印象を改めて、この昨今の事態を前にしてそういうふうな印象を強く受けます。
 私は、この一連の北朝鮮をめぐる問題についての、中長期的なスパンとしての解決の方途というものの一切のかぎを握っているのは、やはり中国であろう、中華人民共和国の存在、中国と北朝鮮との関係、これが際立って重要な役割を示すだろう、こんなふうに思います。
 これは、先般、私どもの仲間の北側政調会長が衆議院の予算委員会の冒頭の質問でも申し上げたと思いますけれども、いかにして日本が中国とのパイプというか、この関係をうまく使って、北朝鮮という国というものを暴発させないというか、先ほど来申し上げたりあるいは外務大臣がおっしゃっているような形でうまくやっていく、文字どおりこの一つの宣言に示された精神がうまく働くようにしていくかのかぎは、私は中国が握っている、こんなふうに思うんです。
 これは、例えば、先日来大きな話題になっている、北からの、去年にあったようなあの脱北者の瀋陽の総領事館への駆け込み、あるいはまた今回のケース等々、北を脱して中国との国境周辺に何十万と言われているような人たちの存在、こういったものを今後どう対応するかという問題も、一にかかって中国の役割というものが非常に重要な役割を示すと私は思うんです。
 こういった中国の役割ということについて、外務大臣は、先ほど来申し上げております所信表明の中に、米韓両国との緊密な連携ということの後ろに、中国、ロシア等の関係国や関係国際機関とも協力しつつ、こういうふうな言葉が出ております。
 私は、先ほど冒頭に言いましたように、所信表明の役割というのは、もう少しこういう表現を詳しくしていただかないと、単純に、単なるだれもが考えるようなことをさらっと言われるのではなくて、どこか一カ所でもいいから、ぐっと意味のあることを深く言っていただきたいなと思うんです。
 そういう観点を改めて補足する意味合いでお聞きするんですけれども、中国との協力ということをどういうふうに外務大臣は考えておられるのか、お答え願いたいと思います。
川口国務大臣 これも委員がおっしゃいますように、北朝鮮との関係を考えるに当たって、中国の役割、非常に重要であると思います。先般、パウエル国務長官が来たときにも、北朝鮮の問題の話をして、中国の役割が重要であるということで意見の一致を見ています。
 北朝鮮との今後のかかわり合いを考える上で、まず一義的に一番大事なこと、これは日米韓の連携、これがそのまず一番の中心であると思います。それで、それをやりながら、中国は北朝鮮と国境も接していますし、中国から北朝鮮へのさまざまな支援、そして北朝鮮の経済の悪化あるいは人が北朝鮮から出てくるということがあったときに一番影響を受けるのも中国であります。そういう意味で、中国も非常に大きな関心を持っています。したがって、中国との連携ということを既にいろいろな場でやっておりまして、一月末には薮中アジア局長を中国に派遣して、そういう話をいたしております。
 それで、今、中国は三月の初めに大きな人事関係の会合がありまして、私のカウンターパートも含め異動期にありまして、なかなか時間を合わせることが難しいんですけれども、うまく時間が合えば、近日中に中国とも私はもう一度話をする必要があると思っています。
 そういった形で、中国、そして同じようにロシアも大事ですけれども、そことの連携はきちんととっていきたいと考えています。
赤松(正)委員 ある論者に言わせれば、ロシアはもはや北朝鮮への影響力はほとんど完璧に失っているというふうな指摘、そして中国の表面上のさまざまな発言とは別に、際立って北朝鮮というものに対する中国の影響力というのは本当に強くて、表面上、平和的な解決云々というようなことを言っていることを余り信用すべきではないんだということを指摘する人もおります。私は、まあそれを一〇〇%うのみにするというわけではありませんけれども、ぜひとも、中国には近くお会いするということを今おっしゃいましたけれども、さまざまな手だてを講じて、何というか、強い、それこそ毅然たる対応で、きちっとした結果が出てくるような、そういうものがあらゆる局面で求められていくのではないか、そんなふうに思います。
 ちょっと話が飛びますが、外務大臣が今、国会で野党の皆さん中心にさまざまなことで苦しめられておられるということは、私は見ていて結構同情的な立場であります。先般、国会の外で、外務大臣は国会の外ではなかなか、非常に重要な活躍をしておられる。この間、民放テレビの、ある、まあ田原総一朗さんですけれども、その対談を見ていて、なかなか外務大臣は頑張っている、非常に明快なメッセージを送っておられるという評価をいたしております。
 そして、先般、「論座」においても非常に大事な提言をされている。こういうふうな提言をされたと思うんですが、その中で一つ印象に残ったのは、アメリカに対して何も言っていないじゃないのかという指摘を受けられて、いや、そんなことはない、自分は京都議定書の問題においてアメリカにきちっと言うことを言ったという話をされていました。恐らくそのところを買われて総理は外務大臣を外務大臣に起用されたんだと思うんですけれども、それは非常に印象に残っているので、それでは中国に対して、外務大臣は、何か個人的なことで結構ですので、きちっと言ったという経験をお持ちなんでしょうか。
川口国務大臣 ストレートに物を言ってしまうのは私の悪い癖でもあると思っていますけれども、中国との間でもいろいろなことを言っております。
 一例を挙げれば、私は、中国にとって、今日本があるいはほかの国際社会が持っている共通の価値、これを持ってもらうことが非常に大事だと思っています。例えば知的所有権というのもその一つです。知的所有権制度をきちんと持ってもらわないと困る、そういうようなことも、例を挙げれば申し上げております。
赤松(正)委員 最後に防衛庁長官にお聞きいたしたいんですけれども、要するに、中国のいわゆる日本でいうところの防衛費の伸びぐあい、正確なところを私は掌握していないんですが、それこそ昨今、約十四年間にわたって中国が軍備の二けた増強をし続けている、こういう指摘。まあ、どういう基準でこれを見るのかというのはあるんだろうと思いますけれども、こういった中国のいわゆる防衛費増強、軍事費増強というのは、アジアの今の状況を平和と見るか、あるいはまたヨーロッパとは違って結構平和ではないというふうに見るのか、見方は分かれますけれども、こういった大幅な軍事増強をするのは近代史上際立って珍しい、こういうふうな指摘をする人もいるんですが、防衛庁長官、この辺の具体的な数字をもとにしての認識度合いを聞きたいと思います。
石破国務大臣 正直言ってよくわからない。いろいろな解説がありますし、何しろ国防費の内訳が、人員生活費と活動維持費と装備費の三つしかないので。例えば日本や、あるいはアメリカ合衆国やイギリスやフランスのような国防費というものを出していないわけですね。今委員御指摘のように、十四年連続で一〇%以上ふえているという話ですが、そのほかにもいっぱいいろいろなものがあって、それを全部足すと世界第二位の軍事費じゃないのかというアメリカの分析もあるわけです。
 私も大臣になる前に中国に参りまして、同じようなスケールで出さないと比較ができない、日本と同じような、少なくとも旧西側の諸国と同じようなスケールで出していただかないと比較のしようがない、それが透明性を高めることになるのだから、きちんとそれを出してくださいなというお願いをしております。
 防衛白書風に申し上げれば、今中国が掲げております近代化の目標が、中国の防衛に必要な範囲を超えるものであるのかどうか慎重に判断されるべきということを防衛白書では言っておるわけですが、要は、共通の物差しで見ないとわからない、そうであることをきちんと明らかにすることが中国に対するいろいろな懸念を払拭することになるのだろう。大事なことは透明性である、そしてそれは共通の尺度を持つことである、そのように考えておるところでございます。
赤松(正)委員 北朝鮮に対しても、韓国に対しても、中国に対しても、先ほど来申し上げているような、あるいはお聞きしたような、平和をこの地域に確立していくというその精神、姿勢は大事でありますけれども、同時に、きちっと冷静に見詰めていく。例えば、言葉は適切かどうかわかりませんが、チャイナ・ロビーだとか何とかロビーと言われる存在とは別に、きちっと冷静な分析をする人を防衛庁長官や外務大臣のそばにしっかり置いて、引き続きしっかりと仕事をしていただきたい、こう申し上げまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
田並委員長 次に、渡辺周君。
渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。
 それでは、最初に外務大臣にちょっとお尋ねしたいんですが、今、率直に物を言うところが私のいかぬところだとおっしゃっていましたけれども、今までも何度もこの委員会で質問をしながら、仮定の話には答えられないと。アメリカがイラクに対して軍事行動を起こした場合、日本はどうするんですか、これはもうずっと同僚議員から、また私もこの場でもずっと問いただしました。そのたびに、仮定の質問には答えられない、何も言ってこなかったわけですね。
 この点について、今になって、先般の原口大使の発言、そして今さら、これも何回も同僚議員が追及しておりますけれども、いわゆる国内向けの要約が違っていた、こういう問題が指摘されているわけです。事実、国内に向かっては仮定の話には答えられないと言いながら、外に向かってははっきりとこの新決議に対して支持をするんだと。この点について、今までの大臣が言っていた見解は一体どういうことだったろう。今ここへ来て、通告はしてありませんよ、大臣として今ここで答えていただけますでしょうか。大臣、どうぞ。
川口国務大臣 イラクで戦争があったときにどういうような対応をするかという御質問は、ずっと昨年からいただいております。それで、昨年の多分十二月であったと思いますけれども、事態はどんどん進展をしてまいりますので、それに合わせてお話をしておりまして、十二月ぐらいから答弁の申し方、この点についてはかなり外務省としては変えてきています。
 それは、事態の進展が変わってくるという状況で、それを踏まえてということでして、外交を扱う立場からいいますと、武力の行使をしない、みんなが平和的に解決をしようと思っている状況、武力の行使がそんなに見えていない状況、そういうところから武力の行使云々ということについて語っていくということは、世界全体として物事を平和的に解決をする努力、これを非常に一生懸命みんながしている段階で言うことは適切ではない、そういう観点で、それはそういうことで、物事の、国際情勢の変化に伴って答弁というのはおのずから変わってくる、そういうことでございます。
渡辺(周)委員 例えば、我々が議論をこれからする北朝鮮の問題もそうです。それから、先ほど浜田委員もおっしゃった有事法制の整備についてもそうです。すべて仮定をやはりシミュレーション、当然想定して、我々は、ある意味では、もちろん北朝鮮がミサイルなど飛ばしてこないことが何よりでありますし、有事法制をたとえ整備しても、発動されないような環境で我が国が未来永劫続くことが何よりも望ましいわけであります。
 ですけれども、そうでないという場合にどうするかということは、当然政治として考えなきゃいけないわけでありまして、ある意味では、その点について状況が変わってきたから答弁が変わった、この問題は時間がないから余りやりませんが、今までの御発言について、これは、木で鼻をくくったような答弁が余りにも多過ぎた。
 とにかく、それで審議が何回も中断をしたり、あるいはし損ねたり、答弁ができなくて、結局、何か宙に浮いたような形でそのままになってしまったことがあったわけです。その点については、外務大臣、ぜひ答弁についてはちゃんとめり張りをつけて言っていただきたいと思うんです。その点、最初に申し上げておきます。
 それから、さっき手を挙げていただいた副大臣、イラクに行かれるそうでございます。民主党はもう既に、今帰国の途についておりますけれども、バグダッドに石井一議員初め党三名で、既に民主党として、野党外交のもう一つのチャンネルとして我々は既に送り込んでいるわけであります。昨年暮れにはやはり、当委員会のメンバーも務めておりました首藤議員がバグダッドに行っているわけであります。野党外交という形で我々は別のチャンネルを模索しなきゃいけないということで、二度にわたって同僚議員が行っているわけであります。
 それで、おくればせながら政府として特使を派遣される、副大臣が行かれるということがきょう報道されておりましたけれども、どのような日程で、どういう意図で行かれるのか、その点について簡潔にどうぞ。
茂木副大臣 今回のイラクに対します特使としての訪問でありますけれども、イラクをめぐります情勢が大変切迫をしている、そういう中で、この問題をどうしても平和的に解決をしたい、そしてそのためにはイラクのより積極的な協力が必要である、それを引き出すためのぎりぎりの日本としての外交努力の一環だ、このように考えております。決して簡単な交渉ではないと思っております。そしてまた、大臣も既に発表しているようにリスクもある、そういう中でもあえてこの外交的努力を最後の最後まで続けたい、こういう思いで行ってまいりたいと思っております。
 それから、先ほど手を挙げましたのは、原口大使の件で見解が違うじゃないか、こういうことでございましたので、それでございましたら幾らでもお答えをさせていただきます。例えば、英文と日本文の違いの話であったりとか、政策的に踏み出しているところは何にもないと思います。大臣、総理がこれまで国会でも、また談話等々で申し上げていることと政策的に飛び出しているとかそういうことはないと思います。
 ただ、日本語と英語では、それはウラル・アルタイ語とインド・ヨーロピアン語族でありますから、全く一語一語が同じになるというわけじゃないわけです。
 例えば、サンキュー・ベリー・マッチと英語では言います。それを、非常にありがとうとは余り言いません。ありがとうございますという謙譲語をつけることによりましてベリー・マッチのニュアンスを出す、これが日本語との違いでありまして、例えば、シリアス・コンサーンの話でもベリー・リミテッドの話でも、もし御要望がありましたら幾らでも丁寧に答弁はさせていただきます。
渡辺(周)委員 この英訳についてやる時間がありません。
 ただ、私が聞きたいのは、いつから行かれて、どういう意図で日本政府として、特使としてどういう役割を果たしてこられるのか、その点をお尋ねしたい。
茂木副大臣 詳しい日程につきましては今調整中でありますが、できるだけ早く、今週の週末ぐらいには現地の方に向かいたい、このように考えておる次第であります。
 また、目的につきましては、先ほど申し上げたように、この問題の平和的な解決のためにイラク側のより積極的な対応を引き出す、そのための外交努力であるということであります。
渡辺(周)委員 今まで日本は、結果的に特使を派遣したこともなかった。そして、現地にいる代理大使も、政府要人と会って我が国としての意向を伝えることもしてこなかった。事実、そういう現実の中で、おくればせながら政府が行かれるわけであります。とにかく、日本の国としての対応を早く決めていただきたい、態度を鮮明にしてきていただきたいということを申し上げるわけであります。
 防衛庁長官にお尋ねします。
 先般のミサイルの北朝鮮の発射について、今回の意図は何であったと長官は考えていらっしゃるのか、その点について御見解をまず一つ伺いたい。
 それからまた、昨日にも実は、ミサイルの発射実験を行うんじゃないかという話がありましたけれども、例えば航行制限海域の解除というものがもう既にされたかどうか。つまり、この軍事演習はまだ続くと見ているのかということですね。その点についての御見解をいただきたいと思います。
石破国務大臣 当然、相手の意図というのは推測するしかございませんが、御案内のとおり、十二月の末から三月、日本で言う農閑期には定例訓練というのをずっとやってくるわけであります。その一環でやったということがあります。あるいは、盧武鉉大統領の就任のその日に合わせてやった。しかし、これが言われておるような対艦ミサイル、従来私どもが持っておると推測しておるような対艦ミサイルであったとするならば、ノドンとかテポドンとか非常に進んだ兵器、画期的な兵器の披瀝、披露というものではないわけで、では、盧武鉉氏の就任式に合わせたからいかなる政治的な意図があるかということは、非常に推測がしにくいことだと思っております。
 あるいは、持っているのだから実験するのは当たり前だ、こういう考え方もあるのかもしれません。それはいろいろな分析をしなければいけませんが、これを決して過小評価することがあってはならないが、先ほど浜田議員が御指摘になりましたように過大評価をすることもないだろう。要は、日本海に向かってミサイルが撃たれましたというと、まるでテポドンが撃たれたような、ノドンが撃たれたような騒ぎになる。それでも日本海にミサイルが撃たれたのでありますし、仮に北の方向、沿岸に沿って百キロのミサイルが撃たれても、日本海にミサイルが撃たれた、こういうことには変わりがないわけであります。私どもは、できるだけ事実を正確に把握するという努力をしていきたいと思っております。
 それから、航行制限海域の解除についてのお尋ねでございますが、現時点におきまして、解除されたというような情報には接しておらないところでございます。
渡辺(周)委員 このミサイル発射、確かに通常の、過小評価をしてはならないけれども、過大評価もすべきでないだろうというふうに今おっしゃいました。
 今回の発射を受けて幾つか報道等が、今おっしゃったように、日本海にミサイル発射と第一報が入ったときには、これはすわという状況にもちろんなったわけであります。しかし、確かにそういう意味では軍事的な脅威はなかったかもしれないけれども、射程百キロ以内で。しかし、北朝鮮の場合は、もうこれまでも何度となく、例えばアメリカが経済制裁をするのであれば休戦協定を放棄するぞと。あるいは、二十日の日にはミグが韓国領空を侵犯しているわけですね。そして、今回の事件。
 つまり、これだけ朝鮮半島の情勢が緊張を高めている、しかも、世界が北朝鮮の出方を非常に注目しているときにこういう行動をとったらどう反応するかということは、当然計算ずくでやっているわけでありまして、低度の軍事力誇示だというふうな指摘ももちろんあるわけでありますけれども、今この問題で、こういう緊張状況下でこういう動きが既に出ている。もっと言ってしまえば、事前に、今指摘をしました航行制限をかけたということはもう既に知っていたというふうな情報もあるわけです。その点については、長官は事前に、近く何らかのミサイルが発射されるということを知っていたのかどうか。そして、それを知りながらも、今回は大したことではない、だから緊急性がなければ防衛庁は長官なり官邸なりに上げなかったのではないかというふうに推測されるわけですが、この発射の可能性が近くあるということについては、長官はある程度御認識されていたんですか。
石破国務大臣 北朝鮮の軍事動向につきましては、平素から細心の注意を払って分析をしておるところです。今回の航行制限水域等々のお話でございますが、防衛庁、それは私という意味ではありません、担当の事務レベルという意味でございますが、担当事務レベルといたしましては、数日前に北東部の沿岸地域に東北東に向けて航行制限海域が設定されるという情報は得ておりました。
 そしてまた、二十四日の午後には、時刻と数は不明ではございますけれども、地対艦ミサイルが発射されたという情報を防衛庁としては入手をいたしておったところでございます。
渡辺(周)委員 では、もう一回確認ですけれども、事前に航行制限が引かれていた、つまり、近く何らかのそういう行動が起こり得るというふうに長官は御認識をしていたかどうかということですね。それからもう一つは、なぜその情報が翌日の午前中になって長官なり官邸なりに届いたのかということでございます。
 その点について、再度確認をしたいと思います。
石破国務大臣 先ほど、これは私という意味ではなくて防衛庁だというふうに申し上げました。それでは、その事実を事務方が把握したと同時に私が知っておったかというお尋ねであるとすれば、それは存じませんでした。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 一般的に、北朝鮮が設けました航行制限海域は、海上において射撃等を実施するときはどこの国でも設定すると考えられておりまして、北朝鮮においても、この海域において、現在までしばしば設定されてきております。
 航行制限海域の設定目的も、今回のような地対艦ミサイルのほか、沿岸砲といった戦術的な火器の射撃などもありまして、この水域が設定されたから必ずミサイルの発射が行われる、こういうものではございません。こういう航行制限海域の設定自体に直ちに緊急性、重大性があるわけではなくて、その時点でのさまざまな情報を踏まえて総合的に勘案する必要があると事務的には考えたわけでございます。
 具体的にどうだったのかということでございますけれども、当日、北朝鮮の地対艦ミサイルが内陸部から北朝鮮の沿岸の海域に発射されたとの情報は、防衛庁の私どもの担当事務レベルで、二十四日の午後に入手したところでございます。
 この評価でございますけれども、北朝鮮は毎年この海域の近辺で冬期訓練を行っております。それで、沿岸部から海岸砲や地対艦ミサイルの射撃を行っているという事実がございます。
 今回のミサイルの評価でございますが、射程距離約百キロメートル、これは、先ほどから防衛庁長官が申しておりますけれども、北朝鮮がテポドン、これは千三百キロ以上ということで日本を射程におさめることができますけれども、今回撃たれましたのは射程百キロの地対艦ミサイル、これは沿岸部から海上に浮かんでいる艦艇を沈める、こういう目的を持ったミサイルでございますので……(渡辺(周)委員「詳しい話はいいですから、早くしてください」と呼ぶ)我が国に向けられたものではないと考えました。
 我が国の安全保障に直ちに影響を与えないと考えたため、当日は担当事務レベルにとめて、二十五日になってから防衛庁長官に報告したものでございます。
 なお、同情報につきましては、二十四日中に内閣官房の担当事務レベルにも文書で配付しているところでございます。
 それで、二十五日の動きでございますが、これは、まず韓国の報道機関に、北朝鮮のミサイルが日本海に向けて発射という報道が流れました。これを受けまして、防衛庁としましては、午前九時ごろ長官に報告するとともに、官邸に、二十四日の時点でこういうことをつかんでいたということは報告いたしました。
 そういう経過をたどっております。
渡辺(周)委員 今、長官に最初にお答えいただいたことですが、そうすると、事前にそういう情報は、防衛庁はつかんでいたけれども、自分のところには入っていなかったと。そして、航行制限海域を設けられた、つまり何らかのアクションがあるだろうということを防衛庁は知っていた、しかし長官は知らなかった。そして、今説明がありましたけれども、当日、ミサイルの発射があったことも防衛庁はつかんでいたけれども、長官に上げたのは翌日だと。
 つまり、報告する、連絡する、あるいは相談する、これは企業なんかでホウレンソウという言葉ですけれども、まさにこういう状況下において、長官が何も知らされていない、耳にしていない、情報が上がってこない中で、先ほど申し上げたように、例えば経済制裁をやったら休戦協定を放棄するんだ、以前から、例えばどこそこを火の海にするには何分もかからないんだ、こう言ってはばからない、つまり緊張度をエスカレートさせている国が隣にある。ましてや、横では韓国の新大統領の就任祝賀会をやる直前であります。日本の総理大臣も行くわけであります。そこで、横の国が、たとえ結果的には軍事的脅威にならなかったことかもしれませんけれども、こういう環境下において、実は防衛庁は、既にそういうことを事前にある程度予測していながら、何ら防衛庁長官なり官邸なりに上げていなかった。
 これは、我が国の危機管理としては大変な失態と言ってもいいわけですけれども、その点については長官、どう思いますか。この時期にですよ、そういうことが何一つ伝わらなかったというのは、どういうことなんですか。
石破国務大臣 この点につきましては、きのう予算委員会で原口委員にもお答えをしたことですが、ただ、正確に認識をしなきゃいかぬことは、例えばテポドン、例えばノドン、あるいはこの地対艦ミサイルというのは、それぞれ我が国の平和と安全に与える影響は全く異なるんだということは、よく御理解を国民の皆様方にもいただかねばならないと思っています。
 繰り返しの答弁になって恐縮ですが、日本海に向かってミサイルが撃たれたという報道だけで、テポドンが飛んできた、ノドンが飛んできたという場面を想起される方が多いけれども、これはそういうものではないんだ、日本の平和と安全に直接影響を与えるものではないものであったということは、確認をしておく必要があるだろうと思います。
 委員御指摘のように、これは日本の危機管理体制の重大な欠陥であるという御指摘ですが、この航行制限区域というものは、本当にここ何年来、何度も何度も設定をされるものなのです。何回も何回も設定されるものなのです。そして、そこにおいて地対艦ミサイルの発射実験が行われるということも、決して特異な事象ではないのであります。ですから、これを防衛庁長官に上げる必要はない、国の平和と安全に直接脅威を与えるようなことではないというふうに、それを事務方が判断したこと自体を私はとがめ立てをしようとは思っていません。
 しかし、大事なことは、きのうも答弁で申し上げましたが、それがそうであるのかないのかという判断をするのは、やはり私がすべきものであったのだろう。それはどういう意味かといいますと、立場上そうだということであると同時に、そのことについて、国民に直接責任を負わなければいけない立場の私が判断をすべきものであったのだろうというふうに思っております。
 それが上がってきて、やはり私は、これは我が国の平和と安全に直接の影響を与えるものではないという判断を恐らくしたんだと思います。地対艦ミサイルというのはそういうものですから。弾道ミサイルのように、全く打つ手がないというわけではない。委員御案内のとおり、例えば我が国の護衛艦であっても、チャフを持っているわ、フレア持っているわ、あるいはCIWSも持っているわけですから。
 しかしながら、それをどのように国民の皆様方に御説明をするのか、安心してくださいという御説明をするか、それとも、説明をしなくてもこれはよいというふうに判断をするか、御説明をすべきものなのかという判断は、大臣たる私がすべきだということで、きちんと小さな情報でも上げてくださいということをお願いし、徹底をしておるところでございます。
渡辺(周)委員 そのとおりだと思うんです。とにかくすべて、先ほど、一番最初に長官がおっしゃったのは、北朝鮮については平素から情報収集をしているんだという中で、例えば、それをどう判断するかは知っていたけれども、それをどう判断したかというのは、これはある意味で政治判断もあるでしょうし。つまり、こういうことが可能性としてあるけれども、これは余り心配をしなくてもいい、ただ、近く、数日以内にこういうことがあるかもしれぬ。つまり、例えば国会かいわいでもあるいはマスメディアの記者の中にも、近く飛ばす何かがあるんじゃないかということは、もう事前からある程度、うわさの域であったかもしれませんけれども、出ていたわけです。それについて、逆に、こういう動きがあるということは何らかの形で出して、それを、問題は、知らなかったということが、耳に入っていなかったという体質がやはり問題だと私は申し上げたかったわけです。
 ちょっと時間がありませんので、幾つか質問しますけれども、今回は、結果的にこういう対艦ミサイル、射程百キロ以内で済んだ。しかし、例えば今後、先ほど赤松委員さんでしたでしょうか、ありましたけれども、特に米朝対話の開始が後になればなるほど、何らかのまた示威行動は、デモンストレーションはエスカレートしてくるだろう、この瀬戸際外交がエスカレートしてくるだろうと。そうなってきた場合に、我が国として、独自で北朝鮮に対して何らかの制裁を行おうという検討はされているのかどうか。これは外務大臣になるんでしょうか、それが一点。
 それから、IAEAが国連の安保理に付託をしました。この安保理の意思決定の中において、我が国はどうコミットしていくのか。つまり、安保理の中の協議に日本は積極的なのかどうなのか。この点について、今、現状どのように考えていらっしゃるのか、その点について御質問いたします。
川口国務大臣 北朝鮮について、こういう場でオープンに議論をするということの難しさというのがございまして、それはなぜかといいますと、これは全部公開情報でありますから、そういう意味で、北朝鮮に対して我が国がどういうふうに考えているということを申し上げることが、北朝鮮にとって一つの判断の材料になる、メッセージを送ることになるという意味で、なかなか申し上げるということが難しいテーマであるわけですけれども、北朝鮮が今後どのような行動をとるか、さらに、次のステップにエスカレートをしていくことになるのか、それとも、そういうことではないのか。そこは、我が国としてはスペキュレーションをする範囲を超えないということです。
 したがって、そのときにどういう対応をとるかという、例えば我が国独自で経済制裁をするということを考えているのかどうか。これは、北朝鮮の問題に対応するというときには、国際社会が全体として対応をする話であるというふうに私は考えております。我が国独自で何かをやるとかそういうことではない。そのためにIAEAの場があり、それから日米韓の連携をして議論をする場があり、そして国連の安保理の場があるということです。
 IAEAでの議論の過程で、我が国は、かなり北朝鮮の核の問題についての議論のリーダーシップはとっておりまして、実質的に国連のP5のメンバーに日韓を加えた会議を頻繁に行いました。これも、イニシアチブは日本がとっています。
 今、IAEAから付託を国連の安保理にされているわけでして、国連の安保理が専門家の会合でこれを議論するということを言っているわけで、その議論が始まっているということです。我が国としては、国連の場においても同じように、日本、韓国、この意思が、考え方が議論に反映されることは非常に大事だと思っていまして、既に、日米韓の連携を核として、その周りにほかの国連の安保理での関係国の場をつくるような形で、実質的に行動をとっています。
 我が国の考えること、あるいは韓国の考えること、これを無視して北朝鮮の問題について安保理として対応できないということについては、安保理の常任理事国のメンバーには、これは十分わかっていて、全くそこに疑念を持っている国はないと思います。
渡辺(周)委員 確認ですが、そうしますと、日本独自で制裁を、何らかのアクションを起こすということはないというふうに今おっしゃったんですね。そういう理解でよろしいですか。それが一点。
 それともう一つ、国際社会の、特に安保理の中でイニシアチブをとるというふうなことがございます。その中で、では具体的にどういうふうに、つまり、この間、韓国の国会議員さんが超党派で来られました。長官にも恐らくお会いされましたでしょうし、我々の党本部にも来られて、御一行に会いました。そのときに、やはりミサイル発射の対応という形で、韓国の国会議員さんが超党派で、急ぎ足で日本にやってきたわけです。そのときに、やはりP5プラス2、つまり、日韓が安保理に対して働きかけを強めていこうということを言いに来たわけでございますけれども、実際、具体的にどういうふうにやるのかということについて、もう連携するとか強化するとか、そんな言葉はもう百万遍出てきているわけですから、いいんです。では、具体的にどうするのかということを今どうお考えかということ、もう一回確認したいと思います。
川口国務大臣 経済制裁というお話がありましたけれども、今、国際社会のどの国も、経済制裁を考えている国はいないということです。
 それで、経済制裁にしても、あるいはほかの何にしても、今の問題として、要するに、安全保障の問題、あるいは我が国にとっては二国間の問題、さまざまありますけれども、そういった問題の解決については、まず日米韓、これの連携が基本にある、ここで十分に連携をとる。これは本当に頻繁にやっています。それから、その上で、国連の場、安保理の場というのが、今付託をされましたので、あるということ。ここでは、専門家のベースでの議論をやるということでやっているわけですね。ですから、経済制裁云々ということは全く、まさに仮定の話でありまして、どこもこんなことは今考えていない。
 我が国としても、この北朝鮮の問題は、国際社会、日米韓、それから国際社会と連携をして慎重に平和的に解決ができる、要するに効果が出る、そういう形で進めていくべきものであると思います。非常に慎重であるべきだと思っています。
 それから、では、具体的にどういう連携の仕方をしているのか。これは、非常に平凡な話ですけれども、一番あるのは、情報の交換あるいは考え方の交換、会議を実質的にやっていくということで、それに現在は尽きるということです。
渡辺(周)委員 質疑の時間が終了しましたけれども、経済制裁も含めて、日本独自の制裁というのは考えられると思うんですよ、経済制裁のみならず。ある意味で、万景峰号の入港を阻止することだって、これは結果的には経済制裁につながるわけである。それから、送金の停止ということもあり得るわけですね。こういうことを実際、日本としては考えられるかどうかというような質問を私はしたつもりなんです。実際、こういうことについては、今の答弁では、経済制裁という、我々も日本独自の制裁は考えていないというふうに答えられた、こういうふうに確認しておきます。
 それから、最後に一つだけお尋ねしますけれども、今度アメリカが、この間の韓国の就任式のときには、米支援の用意があるというふうに言いました。日本について最後、一言だけお答えいただきたいのですが、この今のアメリカのこういう判断を含めても、日本としては米支援をする気はない、その点について、ないんですねということはどうなんでしょうか。これだけ最後質問して、終わりたいと思います。
川口国務大臣 現在、政府の中でそういうことを検討しているということはございません。
田並委員長 次に、桑原豊君。
桑原委員 今回質問するに当たりまして、私は、所信表明というのは、今までいろいろな大臣の表明を聞きましたけれども、防衛庁長官の所信表明は、後から読み返していろいろ勉強するに値する、そういう内容を含んでおったということで、きょうは、所信表明を中心にしてちょっと質問をさせていただきたいと思います。
 そこで、先ほど公明党の赤松委員の質問と少しダブるんですけれども、長官は、いわゆる平壌宣言について、一連の北朝鮮がとっている行動、これを評価すると、それに反するんではないか、こういうふうに言っておられるわけですね。そして、それに我が国は非常に重大な懸念を有している、こういうふうに言っているんですが、反するということの中身ですね。これをさらに詳しく少し説明していただきたいと思います。
石破国務大臣 赤松委員に対する答弁と重複して申しわけございませんが、それは、個々の具体的な事象を評価して、反すると申し上げたわけではございません。日朝平壌宣言というものの精神というものに、例えばNPTの脱退であるとか、ミサイル実験モラトリアム期間というものについての言及であるとか、そういうことは日朝平壌宣言にうたわれておる精神には反するということであります。少なくとも、その趣旨とは相入れないものがあるということを申し上げておるわけでございます。
桑原委員 反するという認識を前提にして、では、どう対応すべきだと、こういうふうな考え方はどういうことなんでしょうか。どう対応すべきかということ。
石破国務大臣 これは私の個人的な考えでございますが、日朝平壌宣言を見ましたときに、私、まだ当時閣僚ではございませんでしたけれども、例えて言いますと、「双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。」そういうフレーズがございます。あるいは、先ほど外務大臣が答弁されたような部分もございます。
 そういうものから、例えばNPTから脱退をするよということは、我が日本国としては、NPT体制を堅持するんだ、NPT体制によって核というものが拡散していくことがないように、どこの国でも核を持っていいんだという話になりますとこれはもう際限ない連鎖になってしまいますから、例えばNPT体制の維持ということは、米朝二カ国の問題ではなくて、これは国際社会全体の問題ですよというように、日本としてはそのことをきちんと申し上げていくということなんだろうと思っております。
 大量破壊兵器あるいはその運搬手段、その拡散というものは、日本国にとっても危険でありますが、同時に、世界全体にとっての危険である、脅威であるという認識をきちんと持つことが必要だと私は思っております。
桑原委員 そういう認識を踏まえて、違反している、こういうふうにおっしゃったんだろうと思うんですが、そのことを前提にして、何か具体的な行動をやる、何かをする、そういうことではないわけですね。要するに、そういうふうに守るべきだというふうに言うだけで、それ以上のことを何かやるということじゃないわけですね。
石破国務大臣 それは、外交努力によって達成をされるものだと思っております。
 私ども防衛庁といたしましては、これはどこの国ということを申し上げることはいたしませんけれども、いろいろな危険に対して、国の平和と独立、国民の生命と財産、これがきちんと守れるように対処していくということでございます。
桑原委員 外務大臣にお聞きしたいと思うんですが、外務大臣として、現状の北朝鮮が一連のいろいろな行動、発言なども含めてあるわけですけれども、そういったものが平壌宣言に反しているのか反していないのか、どういうふうにとらえられているんですか。
川口国務大臣 当然私どもも、北朝鮮のNPTからの脱退、あるいは核についての国際約束に反しているのではないかという懸念、こういうことに関しては重大な懸念を持っております。そして、北朝鮮に対しては、NPTに戻るように、そしてIAEAの査察ですとかそういった枠組みに戻るように、これは今まで既にいろいろな機会をとらえて強く求めています。
 それで、その上で平壌宣言ですけれども、これは、日朝の関係を、さまざまな拉致その他の問題を解決し、そして国際社会がみんなが懸念を持っている安全保障上のさまざまな問題を解決して、我が国の立場からいえば国交を正常化し、あるいは世界全体の立場からいえば国際社会の責任ある一員としてやっていく、そういうところに至るまでの重要な、政治的な重みを持った文書であるというふうに考えています。
 ですから、我が国が考えていることというのは、それがある事象に照らして反するか反しないかということではなくて、北朝鮮にそれを守らせて、北朝鮮が国際的に先ほど申し上げたような形の国家になる、そしてそれを平和的にやるように我が国としても努力をする、そういうことが大事であるということです。
 平和的に問題を解決する、外交において大事なことは、そういうような結果をもたらすための努力、それが大事であって、平壌宣言は、先般も金正日国防委員長の誕生日に、金正日総書記の一つの大事な成果ということで北朝鮮側も取り上げていた文書であるわけでして、我が方としては、それを金正日が当然守るであろう、それを守らせることによって、また我が方としてはそれを守らせる努力、これは非常に重要な努力で、やっていかないといけないんですけれども、議論をして、それをやらせて、北朝鮮を国際的に責任がある国にしていく、それが大事であると思っています。
桑原委員 平壌宣言の精神に反している、そういう点では長官も大臣も同じ認識だというふうに、今の大臣の御答弁でもそういうふうに思うわけですけれども、平壌宣言の精神に反しているじゃないかと直接北朝鮮に対して、それを是正すべきだというふうに何らかの方法で伝えた、そういうふうなことはあるんですか、大臣。
川口国務大臣 これは、いろいろな機会に伝えています。北朝鮮に対して、NPTの脱退を発表しましたときにも、北朝鮮がNPTに戻る、国際社会の懸念を払拭するような形で疑惑にこたえるということが大事であるということは、さまざまな折に伝えています。これを、対話を重ね、北朝鮮に平壌宣言を守らせる、そのための努力をするということが外交であると思っています。
桑原委員 IAEAが国連に付託をするというような話ですとか、そういったことは伝わってくるわけですけれども、直接我が国は平壌宣言を北朝鮮と結んでいるわけですね、共同で宣言したわけですから。それを踏まえて、北朝鮮に直接こんな話をして、北朝鮮はこんな反応だ、こういうのが全然伝わってこないと思うんですけれども、北朝鮮はどう言っているんですか、そういうときに。
川口国務大臣 北朝鮮に直接いろいろなメッセージを伝えているかという意味では、伝えています。それは、談話というような形だけではなくて、いろいろな、我々としては日朝平壌宣言に従って正常化のための交渉をやるということが非常に大事ですから、伝えてきています。それについてのやりとり、これは個々の外交の問題でございますので、こういったところで具体的に、何を向こう側が言ったかということをお話しできないのは申しわけないんですけれども、そこは御理解をいただきたいと思います。
 北朝鮮との間でいつ対話が再開可能かということについては、まだその時期ではないということで、我が方としてはそれは残念に思っています。
桑原委員 平壌宣言に非常に触れたり、あるいは違反している、そういうふうに見られることがありながら、我が国の対応というのがどうも、直接北朝鮮に対してしっかりした話し合いをしているというふうに伝わってこないわけですね。そこら辺、今、相手側のいろいろな反応は外交交渉のこともあって、はっきりできないというような言い方をされましたけれども、私は、細かいところをどうこうということではなしに、やはり平壌宣言を前提にして交渉をやろうとして、今入っているわけですから、その点がどうなっているのかということは、国民にも我々にもちゃんと伝えるべきだ、こういうふうに思います。
 そこで、防衛庁長官の所信の一番最後に、「防衛とは抑止力をその本質とするものであり」「組織も、法制も、「戦うためにある」のではなく、「戦いを起こさないためにある」ものでありますが、そうであるが故に、それを実効あらしめるために、組織は精強であり、法制は万全であらねばなりません。」抑止力というものが防衛の本質だ、こういうふうに言っておられるわけですね。私も、抑止力とは何かと広辞苑で調べますと、「おさえとどめる」としか書いていないわけですね。何を抑えとどめるのか。
 軍事的に言えば、相手が攻撃をしかけてくるとか、あるいは相手が軽挙妄動してちょっかいをかけてくるとか、そういうことをさせない、そういう力というものがこの抑止力に軍事的には当たるのかなというふうに思うんですけれども、ここでいま一度、防衛庁長官の抑止力というものは何たるやということをもう一度ちょっとお話しいただきたいと思います。
石破国務大臣 これは、従来の政府の立場はこういう立場でございます。これは平成七年に閣議決定をしたもの、翫正敏議員の質問主意書に対します政府の答弁書ですが、「そもそも抑止力とは、侵略を行えば耐えがたい損害を被ることを明白に認識させることにより、侵略を思いとどまらせるという機能を果たすもの」こういうことになっているわけです。
 私は、確かにそれはそうなんだろうとは思いますが、同時に、侵略を行ったとしてもその成果が得られない、侵略を行ったとしたらば耐えがたい損害を受けるということだけではなくて、侵略を行ったとしてもその所期の目的を達成し得ないということも抑止力なんだろうと思っているのですね。
 よく、有事法制というのは戦争するための法制じゃないかとか、自衛隊というのは戦争するためにあるんじゃないのか、こう言われることがありますが、それは全く逆なんで、戦争を起こさせないための有事法制であり、戦争しないための自衛隊だ、一種のパラドックスみたいな議論があるんだろうと思っているのです。
 つまり、日本を侵略しようとしてもその所期の目的を達成し得ない、自衛隊は迅速に行動し、市民は的確に避難をし、被害は最小限に抑えられ、その侵略の意図が達成されない、それも私は抑止力なんだろうと思っています。耐えがたい損害を与えることによって思いとどまらせると同時に、侵略してもその効果を達成し得ない、よってそれを思いとどまらせる、それも抑止力の中身であろうというふうに思っておるところでございます。
桑原委員 具体的に、我が国の防衛の抑止力、これをどういうふうに考えておられるのかということをお聞きしたいと思います。
石破国務大臣 私どもが防衛力整備を行い、あるいは政府全体として有事法制をお願いいたしておりますのは、その抑止力をさらに万全たらしめようとしているからであります。
 私は、所信の中で申し上げました、さればこそ法制は万全であり、組織は精強であらねばならないというふうに申し上げましたのは、我が国に対する危険というものは十年一日のごとく同じものではない。かつてはソ連の危険というものが考えられたのでしょう。それを、もちろん明確に脅威とか、ましてや仮想敵国とか、そのようなことを申し上げたことはありませんが、いわゆる北の脅威というものが取りざたをされていた。それは冷戦時代はそうだったのだろうと私は思います。
 しかし、防衛白書に書いておりますように、そのような危険というものは遠ざかってきた、しかしながら、アジアにおいてはなお不安定な要素が存在をする、加えて、テロでありますとかそういうものも起こってきた。じゃ、そういうものに対応して、法制は万全であるか、組織は万全であるかといえば、なおなお万全を期すためにやらなければいけないことがあるだろうというふうに思っております。
 今、日本の体制は抑止という点からしてどうであろうかというお尋ねでございますが、新たなそういう危険に対応すべく、早急に法制やあるいは装備というものを整えていくことが私どもの責任だというふうに考えておる次第でございます。
桑原委員 この所信の中でも、日米安全保障の実効性を高めるということが抑止力を最大限発揮し得る体制の実現だ、こういうふうなことを述べておられますし、今月の十八日の予算委員会の答弁の中でも、いわゆるアメリカの核兵器、これについて言及をされて、日本も核を持って相互確証破壊という世界をつくるのかといえば、それは我が国としては非核三原則があるからできない、日米安全保障第五条あるいは防衛協力に関する指針、それをもちまして合衆国の核によって相互確証破壊というものをつくる、そういうようなことになるのだろうというふうに思っておりますということで、いわゆるアメリカの核、これも日本の防衛の抑止力、こういうふうに位置づけておられるわけですが、これはそういうことでよろしいんですか。
石破国務大臣 おっしゃるとおりでございます。
 一部において、日本も核を持つべきだという議論があることは承知をいたしております。しかし、先ほど申し上げましたように、日本はNPT体制を堅持するのだ、そして核拡散というものを防ぐんだ、そうでなければ、あの国が核を持っていいんだったらうちも持っていいというようなことだと、もうとめどなく広がるであろうというNPT体制を堅持するという立場から申しましても、我が国が核を保有するという政策はとり得ないというふうに私は思っております。
 では、しからばどうするんだと。相手が核を持っていた場合に、あるいはそういうことが懸念される場合に、じゃ、何をもって抑止力と言うのかというと、我が国が持たない以上、それは米国の核ということになる、私はそういうことになるのだろうと思っております。
 古いお話でございますが、例えば昭和五十年に三木内閣総理大臣とフォード大統領の日米共同のプレス発表というものがあった。私も読み直してみましたけれども、そこにはこのように書いてある。「両者は、」「米国の核抑止力は、日本の安全に対し重要な寄与を行うものであることを認識した。これに関連して、大統領は、」フォードですね。フォード大統領は、「総理大臣に対し、核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があつた場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引続き守る旨確言した。」こういうふうにございます。
 そしてまた、日米防衛協力に関する指針の中でもそのことが確認をされておることでございまして、米国の核、その抑止力というものは我が国にとっても抑止力たり得ることは、今でも不変であるというふうに考えております。
桑原委員 一般的に、核の傘、アメリカの核の傘とか、あるいは日米安保の核心は核安保だ、こういうふうな言われ方というのはあるわけですけれども、いわゆる非核三原則、これを日本が、ある意味では国の基本的な考え方、政策として選択しているわけですね。これは、日本に核を持ち込まないとか、日本がつくらないとか、持たないとか、こういうことであるわけなんですけれども、それにとどまらず、私は、日本の一つの、世界で唯一の体験の国として、核の攻撃をこうむった、そういう体験の国として出てきたテーゼだと思うんですね。
 そういう意味では、単に日本がそうなんだということだけではなしに、世界からこういう核をなくしていかなければならない。そういう意味で、私は、NPT条約もいろいろ不平等だ、持っているところはそれでいいので、これから先持たせないんだ、これは不平等だという言い方もありますけれども、しかし、それは全体、核というものを縮小して、それがない世界をつくっていくための一つのプロセスなんだ、そういう位置づけであろうというふうに私は思うんです。そういう位置づけで我が国も入っているというふうに思います。
 そういうふうなことを総合していったときに、日本はアメリカと安保を結んでいるけれども、核が我々の最後の守り手なんだよ、抑止なんだよ、そういうふうな考え方に立つということが本当に我々の選択すべき政策なのかということには、甚だ私は疑問がある。というよりも、むしろ、そういう一般的な言われ方の中にあっても、我々はそれをやはり否定して、本当に核のない、そういう時代をつくっていくんだという立場に立つべきではないかというふうに思うんです。
 その点、非核三原則とかNPTとか、日本のこれからのあるべき方向、そういうものを考えたときに、長官ははっきりとそういうふうに、抑止力だというふうに言われたわけですけれども、その点はそれでいいのかどうか。私は甚だ疑問があるので、その点を少しお話しいただきたいと思います。
石破国務大臣 私どもは、防衛計画の大綱におきまして、こういう言い方をいたしております。「核兵器の脅威に対しては、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮の国際的努力の中で積極的な役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存するものとする。」何を言っているんだ、こういう感じなんだろうと思いますが、要は、基本的には、委員御指摘のように、核のない世界を目指しましょうと。NPTというのも一つのプロセスなんだろうと思う。核のない世界というものとNPTというのは、原理からいえば矛盾をするものなんですね。五カ国が持っているわけですから、それ以外の国は持っちゃいかぬ、こういう話ですから、それはする。だからそれは、核のない世界という究極の理想に向かった一つの通過点、途中の時点であるという評価は、それはそうなんだろうと思っているのです。
 しかし、実際に、なぜ長い間平和が保たれてきたかといえば、それは一種の相互確証破壊の世界の中で、いわゆるバランス論に立って平和が維持されてきたという事実は事実として認めなきゃいかぬのだろうと思っています。
 そうなった場合に、私は昨年から何度か申し上げていることですが、じゃ、ABM条約というものをどのように考えるんだろうか。これはアメリカとロシアの間の条約ですけれども、アメリカは抜けたわけですね。じゃ、ミサイル防衛というものをどう考えていくんだろう。先ほど、抑止力というお話をいたしました。つまり、弾道ミサイルをある国に撃ち込んだとしても、それは必ず撃ち落とされてしまうんだということになれば、撃ったって意味ないですね。それじゃ撃つのやめましょうか、こういうお話になるはずなのですね。じゃ、弾道ミサイル防衛というものをこれから議論するわけですけれども、これを入れるか入れないかということは、もちろん議論の上で、安全保障会議の議を経て決せられることですが、そういうこととの関連を我々はどう考えるべきなんだろうか。どうすれば核のない世界というものができるか。
 そして私は、平和というものはある意味、理想の平和もあります。本当に夢のような、みんなが心優しい人たちで、正義と信頼に満ちた人たちで、そういう平和というものが究極の理想であることには違いがない。しかし、そんな世界は今まで人類有史以来一度も出現をしたことがない。それはずっと目指していくべきものだと思うし、努力をしていくべきものだと思っています。しかし、同時に、私たちはどうやって国の安全を守っていくかということを考えたときに、抑止力であり、そしてまたバランスでありということにも目を向けていかねばならぬのだろう。理想と現実、現実を踏まえつつ理想を追求するということの中にあって、今のこの時代をどういうふうに考えるか。大量破壊兵器やあるいは運搬手段の拡散というものに対して、どう対処していくべきなのかということを、また先生方と御議論をさせていただきたいと思っております。
 理想は理想として追い求めます。しかし、現実の安全も平和も守っていく、それが政府の責任であると考えております。
桑原委員 ミサイル防衛ですね。相手がミサイルを発射しても、それは必ず撃ち落とされるからそうしないことになる、こういうことには私は、これはなかなか現実は、逆に、それを突破していく方策をどうしていくか、こういう方向に行くと思うんですね。抑止の理論というのは、やはりそういうふうにお互いがお互いを抑止するために、自分たちのいろいろな武器あるいは体制を整備していく、これの繰り返しになっているわけですね。
 例えばミサイル防衛にしても、私は、そういうふうに抑止が働くとすれば、それは、今ミサイル防衛網をつくる国が、自分たちが持っているミサイルや核をなくしていく、少なくしていく、そういう方向と同時にそれが打ち出されたときに、それが一つの本当の意味での抑止につながっていくのかな、こういうふうに思うんです。ただ、現実そうなるかということは極めて難しいわけでして、私は、やはり抑止の理論そのものの中に、そういう危険性、軍拡の危険性というものがはらまれているんだというところをぜひ踏まえた上で、抑止力というものを考えていかなきゃならないと思います。
 加えて、やはり抑止というのは、単にそういう精強な組織と法整備で抑止するというだけではなしに、いわゆる外交であるとか国際協調であるとか、この国に何か変なことをしたら、世界じゅうが反撃をするぞ、いろいろな形でしっぺ返しを受けるぞ、こういうような国際的な連携や協調の力というのも、これは大変な抑止力になるというふうに思いますので、そういったことなどを含めて、幅広い抑止、本当に平和と均衡に向かうような、バランスがそういう方向に向かうような抑止というものをやはり考えていく必要があるんではないか、こういうふうに思いますので、その点、御意見として申し上げますけれども、長官、何かあったら一言おっしゃっていただいて、最後にしたいと思います。
石破国務大臣 おっしゃるとおりなんだろうと思っています。本当にそういうのが機能すればいい、日本に何か手をかけたら国際社会の制裁を受けるんだよというような状況をつくることも、大事なことなんだろうと思っています。しかし、それは日本がそう思ってもらえる国でなければいけないのでしょう。国際社会からそのように思ってもらえる国となるためにはどうすればいいか、そういう議論があるんだろうと思います。
 委員が冒頭御指摘になりましたように、それがかえって軍拡を招くものなのかどうなのかということは、本当に議論をする必要があるんだろうと思います。MDを入れることによって軍拡になるというようなことであれば、それは入れない方がいいという議論も成り立つでしょう。入れることによって軍縮の方向に進むんだということであれば、私は、それは積極的に検討する価値があるものだと思います。
 そこのところの議論は、世界の中でもいろいろな議論があります。軍拡につながるからMDはだめという話もあるし、いや、今までのように相互確証破壊、MADみたいな、ある意味、不道徳なという言い方はしませんが、そういう一種の緊張の、恐怖の均衡みたいな考え方はあるべきではないんだという考え方もあるわけです。
 我が国としてどのような考え方をとるべきなのかということも、私どもも考え、国会における御議論を踏まえて、私どもも考え方を整理してまいりたい、このように思っておるところでございます。
桑原委員 これから議論させていただきたいと思います。ありがとうございました。
田並委員長 次に、樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうも質疑の時間をいただきまして、ありがとうございました。
 まず、イラクの問題から入ってまいりたいと思いますが、外務大臣に伺います。
 予算委員会でも私、総理も含めまして何度も議論をいたしましたけれども、米英、つまりアメリカ、イギリスを国連安保理で支持する政府の説明責任が果たされているとは、到底私は思えない。支持をする判断に至った理由や事情を、国民にきちんと納得できるように説明をする責任があると思います。今、国民に向かって説明してください。
茂木副大臣 アメリカそしてイギリスの新決議案ということでありますけれども、これは、正確には二十四日にアメリカ、イギリス、そしてスペインで共同で出された決議案でありまして、委員御案内のとおりでありますが、内容は、イラクが依然として関連の安保理決議を履行していない、安保理決議一四四一により与えられた最後の機会を生かすことができなかった、この旨を決定する決議案であると承知をいたしております。そして、この決議案でありますけれども、イラク問題の平和的な解決のための最後の外交的圧力をイラクに対してかけるもの、そのように我々理解をいたしております。
 したがって、その上で、国際的な外交努力を真に最後まで行う、こういう意味において、今般、この決議案が出されたことを評価し、そして、その趣旨を支持する、こういう形でありまして、今後、動きというのがいろいろあるんだろう。まさにこれから、最後のイラクの努力といいますか協力姿勢にかかってくる、そして、そこの中で、七日に査察の報告も行われる、こういう一連の経過があるわけでありまして、そういったものを考えて総合的に、支持するかしないかは最終的に判断していきたいと考えております。
    〔委員長退席、渡辺(周)委員長代理着席〕
樋高委員 外務大臣のお言葉として、外務大臣のわかりやすい言葉として、支持する理由をお聞かせいただきたいと思います。
川口国務大臣 今、茂木副大臣からお話をしたとおりなんですけれども、これは、イラクが今まで累次の国連の決議、これに全くと言っていいほどこたえてこなかった、全部それに違反をしていた、この認定が一四四一でされたわけですけれども、そういった深刻な状況、それが今あるわけですね。その深刻な状況の中で、アメリカとイギリスとスペイン、この三カ国が、イラクは数々の決議、具体的には一四四一ですけれども、与えられた最後の機会を失した、生かすことができなかった、そういうことを文章とする決議を出したわけです。
 我が国としては、今これがイラクに対して最後の、国連の累次の決議に従いなさいよということを言う最後の外交的な圧力であるというふうに理解をしています。そして、支持をするというのは、そういった国際社会の外交的な努力あるいは努力をしましょうというアプローチ、それを支持するということを言っているわけです。
 実際にイラクが最後の機会を逸したかどうか。これは、まさに今、七日に安保理に対してブリクスの説明が行われることになっていますし、今、各国が働きかけをし、関心を持って見ているわけで、そういった、これからそこに至るまでの過程で、イラクが本当に国際社会の求めに応じて、能動的に、積極的に査察に協力をしていくかどうか、そして、武装解除をみずからやるかどうか、あるいは、やった証拠を見せるかどうか、そのイラクの動きにかかっている。それを見て、我が国としては、失したかどうか、そういう状況かどうかということを判断する、そういうことです。
 我が国としては、我が国なりにイラクに対して、そういう努力をすることが大事だということを説明をし、強く求めるということをやる必要があるわけでして、そのために、茂木副大臣には一日からイラクに行っていただきますし、高村、中山元外務大臣にはそれぞれ、高村大臣にはサウジとエジプトに、中山元外務大臣にはシリアとトルコに行っていただくということです。
 それから、同時に、我が国として非常に大事だと考えているのが、中東全体の和平、これがこういったことで前に進まない状況ということがあってはいけない。すべての周辺の国とお話をしますと、根本は中東の和平がうまく進むことなんですということを皆さんおっしゃいます。ですから、我が国として、今まで中東の和平を前に進めるための努力をしているわけでして、それを引き続きやる必要があるということで、この点については、有馬特使にパレスチナとイスラエルと、そしてエジプトに行っていただく、そういうことを考えています。
 さまざまな努力を我が国みずからもやって、イラクに廃棄をさせる必要があると考えています。
樋高委員 経過を聞いているわけではなくて、なぜ支持をしたかという理由を伺いたい。とてもアカウンタビリティーを果たされているとは思えないわけでありますけれども。
 茂木副大臣、おいでであります。今度イラクに特使として派遣をされるということでありますけれども、ところで、何をしに行くんですか。
茂木副大臣 今大臣の方からも申し上げたとおりでありますけれども、まず、基本認識として、例えば英米案の話がございましたけれども、アメリカとそしてイギリス、それからヨーロッパの中でもフランスとドイツ等との立場が違っている、こういう御意見もあるわけです。
 私は、今月の初め、イギリス、そしてフランス、ドイツと回ってまいりました。そこの中で、基本的な認識というのは一緒なんです。まずは、イラクの大量破壊兵器の問題というのは、国際社会にとって深刻な問題である。次に、国連決議の一四四一で定めているのは、イラクの側にこの疑惑を晴らす挙証責任がある。そして、現段階まででのイラクの協力というのは極めて不十分である。これは、イギリスだけではなくて、フランスでも、そしてドイツでも同じ認識を持っている。
 そこで、どういうアプローチで最後の最後にイラクに積極的な協力を引き出すか、そういった意味でこの新しい決議案の趣旨を支持する、こういうことを申し上げているわけであります。
 そして、最後の外交努力を続けるために、私も、大臣の御指示のもとでイラクの方に行ってまいるということであります。そこの中では、我が国としての、また我々が聞いている国際社会の、イラクの現状、査察の協力状況に対する認識等についても当然伝えさせていただく。私は、ブリクス委員長、エルバラダイ事務局長とも今月直接会って話を聞いております。また機会がありましたら、ブリクス委員長等々とは行く前にももう一度話をしてみたい、こう考えております。
 何にしても、七日にまた報告の期限が来る。そこの中で、国際社会が、イラクの協力がこのままではだめですよ、こういうことでありますから、まさにイラクに対して、どう協力するんだ、こういうことを強く迫る、こういう形になってくると思います。
 もちろん、大臣含め外務省の中でも、具体的にどのような形で交渉に臨むか、今検討させていただいております。しかし、テーブルに乗った上での真剣勝負であります。そういうことでありますから、交渉の具体的な進め方につきましては、この席では控えさせていただきたいと思います。
樋高委員 イラクにとってみれば、日本は敵国なんです。そんな中にあって行かれるということは、自己矛盾を感じませんか、いかがですか。
茂木副大臣 敵国とかそういう表現が適切かどうかはわかりませんけれども、私は、やはり国際社会というのは、それぞれが、考えの違いがあっても理解し合えるような土壌をつくっていく、議論の中でそういうことをやっていく、交戦状態にあるわけでも何でもありませんから、そういう溝というのを埋めていく、それがまさに外交なんだと思います。考えが違うから話をしない、少し相手が気に入らないから相手のところには立ち寄らない、そういうことではなくて、溝があってもそれを埋める、溝がなければ行く必要はないんです、溝があるから行く必要がある、そういう思いで行ってまいりたいと思っております。
樋高委員 ところで、北朝鮮によりますミサイル発射の話、地対艦ミサイルの発射の話なのでありますけれども、外務省として、この北朝鮮によるミサイル発射の意図はどこにあったというふうに考えていらっしゃるんでしょうか。
    〔渡辺(周)委員長代理退席、委員長着席〕
川口国務大臣 これについては、人の気持ちというのは全くわからないわけで、幾つか推測をするしかないわけです。これは、別な委員の方の御質問に答えて石破長官がおっしゃったとおりでございます。基本的には、北朝鮮は、この時期毎年ミサイルの発射の訓練をしているということです。ですから、そういうことでいえば、いつもやることをやったということです。
 それから、たまたま時期がそういう前日であったということで、それと関連づけて考える人もいるかもしれませんが、それがどういう関連づけであったのか、あるいはそういう関連づけがなかったのかあったのかも含めて、それはよくわかりません。
樋高委員 日米韓への牽制がねらいであったんではありませんか、いかがですか。
川口国務大臣 これも本当に、まさにそういうのがあったのかなかったのかということも含めて、こちらにはよくわからないということですけれども、日米韓、これは、北朝鮮に対しては、いつも連携をとった上で同じメッセージをずっと送っているということでございます。この時期、何か別途の理由があって、日米韓に対して牽制をする必要があるような何か特別な理由があるとも思えませんし、よくわかりません。
樋高委員 ところで、北朝鮮に対してどのような厳重な抗議をしたのか、そしてそれに対する反応、どのような返事があったんでしょうか。
川口国務大臣 これはむしろ石破長官の方がよく御存じの話ですけれども、これは地対艦のミサイルでございまして、距離からいうと百キロメートルぐらいのものであると私は承知をしております。通常毎年やっている話であって、日朝平壌宣言が、弾道ミサイル、これを対象としているということからいうと、別に日朝平壌宣言の違反ではないということでして、我が方としては、抗議を行うことは考えておりません。
樋高委員 どのような抗議をしてどのような返事があったか伺っているんです。もう一度お願いします。
川口国務大臣 今申し上げたばかりなんですけれども、北朝鮮に対して抗議をすることは考えていないということを言ったわけです。
 これは、北朝鮮との間では、我が方は、さまざまな問題を解決して国交正常化交渉を進める、そして国際社会の懸念をしている安全保障上の問題、これに対して北朝鮮にきちんと対応してもらって、国際社会の一員、責任ある一員として行動してもらうことが大事であるということで、これは国際社会みんなが思っているわけですけれども、そのためにどういう方法をとって行うか。これは、効果のある方法をやるべきであって、慎重に冷静に対応すべき問題であると考えています。
樋高委員 ミサイル発射が北朝鮮によるものと確認されたわけですから、日本政府としては経済制裁を検討することもあり得るということでよろしいんでしょうか。
茂木副大臣 先ほど来、外務大臣、そして防衛庁長官の方からも何度も答弁をさせていただいておりますが、日本の安全保障に脅威を与えるようなミサイルであったら、当然、抗議をする、そういうことは日本としてすべきでありますけれども、今回のミサイルの場合は、地対艦、こういう形でありまして、日本の安全保障にとりまして脅威を与えるものではない、こういう観点から、抗議をすべきものでもない、また、これが日朝平壌宣言に違反するものでもない、そういうことでありますから、抗議をする状況にないわけでありまして、当然、その延長線上として、これが経済制裁等々につながる問題ではない。
 しかし、北朝鮮のミサイルの発射であったりとか、さまざまな動向につきましては、日本政府として、これからもそういった小さな動きも含めて慎重に対応をフォローしていきたい、こんなふうに考えております。
樋高委員 防衛庁長官に伺います。
 今回、総理への情報の伝達がおくれたということでありますけれども、反省しているんでしょうか。どこが原因であったんでしょうか。
石破国務大臣 先ほど来お答えをしておるとおりでございますが、これが日本の危機管理の欠陥を露呈したとか、そういうことをおっしゃる方がありますが、日本国民の、あるいは日本国の平和と独立、生命と財産、それに影響を与える事態であったとして、それが防衛庁長官にも伝わらない、内閣総理大臣にも伝わらないということであれば、これは重大な欠陥です。
 しかし私は、先ほど来答弁しておりますとおり、この訓練は日常行われておるものである、十二月の末から三月まで農閑期に訓練は行われる、そして、このミサイルは弾道ミサイルでもなく、地対艦ミサイルであるということですから、事務方がそれを私なり官房長官なりに上げなかったということをもって、即座に日本の危機管理の欠陥が露呈されたというふうには考えておりません。それは、弾道ミサイルが何であり、対艦ミサイルが何でありというような正確な知識をもって国民にきちんと御説明をするということが必要なことなんだろうと私は思っています。
 したがって、今外務副大臣から答弁がありましたが、今こういう時期でもございますし、ささいな情報でもきちんと収集をする、それが平和と安全に影響を与えるものであれば公表する、与えるものでなければ、いたずらに不安をあおり立てるようなことは決して得策ではありませんので、公表しない、その判断を大臣たる私が行うために、ささいなものでも上げてくださいということでございます。
樋高委員 私が言いたいのは、いわゆる政府の中でとか、役所の中でとか、事務方がどうこうという話ではなくて、いわゆるこういう、今長官もおっしゃったような、安全保障に関してのとても今緊迫した状態にある中にあって、正確に事態を把握すると同時に、国民に対して少しでも早く正確な情報をお伝えする責務を怠ったのではないですかということが言いたいんですが、いかがですか。
石破国務大臣 これは委員も御存じなのかもしれませんが、情報をすべて開示するということが必ずしも我が国の平和と安全に直結することではありません。それは、情報源というものは多岐にわたっています。情報源というものは明らかにできないことの方が多いのです。明らかにしてしまったと同時に、あるいは情報そのものを開示したと同時に、個々の情報源からは二度とその情報はとれなくなるというようなことは歴史上枚挙にいとまがないことです。
 したがって、国民の皆様方に向けて開示すべきもの、開示すべきではないもの、その判断が、私は今回間違っていたとは思っておりません。対艦ミサイルが発射されるということをすべて公表しておったらば、これは大変なことになってしまう、そして、これは私どもの努力が足りないのかもしれませんが、弾道ミサイルと対艦ミサイル、あるいは弾道ミサイルと巡航ミサイル、そういうようなものの違いというものをよく御認識していただかなければ、日本海に向かってミサイルが発射されたら大変だということになってしまうわけであります。
 したがって、どの情報を国民にお伝えするべきなのか、それが結果的に国の平和と安全、独立につながるかどうかということを責任を持って判断する、私がさせていただきますということで、今回のことの反省事項があるとするならば、判断の正しい間違っているではありません。それを判断するのが私であるべきであった、ですから、これから先は上げてくださいということを申し上げているわけであります。
樋高委員 それでは、再発射の情報はあるんでしょうか、ないんでしょうか。政府関係者は、複数の方々が情報はあるという話でありましたが、いかがですか。
石破国務大臣 現時点でそのような確たる情報には接しておらないところでございます。
樋高委員 国会には話をしない、つまり、国民にはこれは説明する必要はないんだということのようであります。
 ところで、今回の北朝鮮によるミサイルの脅威に対して、今後どのように対策をとられていかれるのか、いかようにして日本国民の生命財産を守るのか、今一番知りたいのは、今後、国民が、市民が安心して心配なく生活していってよいのか、今ここを知りたいんですけれども、いかがでしょうか。
石破国務大臣 これから先も安心して生活していってよいのか、こういう御質問であるとするならば、それはそうしていただけるように政府としては万全を尽くしておりますとしか申し上げようがありません。
 要は、今国民の皆様方が感じておられる不安というものは、弾道ミサイルであり、あるいは生物兵器であり、化学兵器でありということなんだろうと思っています。それにきちんと対応できるような、例えば生物化学兵器については、あるいはそういうようなテロについては、法制の整備もあるいは運用の改善も急速に行っているところであります。
 弾道ミサイルについては、従来から答弁申し上げておりますとおり、そういうものが撃たれた場合に防ぐ能力というのは、アメリカ合衆国といえども持っていない、世界じゅうどこでも持っていない。だから、ミサイル防衛をどうするかという検討、これを安全保障会議で決するためにもいろいろな検討をしていかねばならないということ、申し上げておるとおりのことでございますが、これでパーフェクトだということは世の中にはありません。しかし、我が政府として国民の皆様方が安心して暮らしていただけるように、決してその努力を怠ったことはありません。ただ、委員の御指摘等々踏まえまして、さらに万全を期すべく真剣にやってまいるということでございます。
樋高委員 いずれにいたしましても、外交関係では今二枚舌外交という言葉も出ておりますし、また、私はある意味で、石破長官、そして川口外務大臣に期待をしているからこういう辛口の質問をさせていただいているわけでございますので、しっかりと、今最も外交、防衛、安全保障の問題、重要なテーマでありますので、取り組んでいただきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。
田並委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 きょうは、イラク問題について質問をしたいと思います。これまで外務大臣の答弁、長々といろいろな説明を聞いておりますので、きょうは限られた時間でもありますから、端的に答弁をお願いしたいということを申し上げて、質問に入ります。
 先ほど、茂木外務副大臣、大変語学にお強いとみえて、どんな質問にも答えますとおっしゃっておりました訳の問題でありますが、この間、沖縄北方特別委員会で茂木副大臣の答弁を聞いていましたら、やはりそれは余りにもおかしな答弁だと納得いかないものがありました。
 そこで、改めて聞くわけですが、私は、語学の議論をしようということではなくて、本当に国民にどんなメッセージを政府が送ろうとしているのか、そこを確かめる上での質問であります。
 この間の原口国連大使が査察継続の有効性について語ったゼア・イズ・シリアス・ダウトというこの表現、これは日本語、和訳としては、疑問が生じていることは否めません、このように訳しておられます。この訳が正確なのかどうか、この点について、いろいろ語学の説明は結構です。訳が正確かどうか、この点についてお答えをお願いしたいと思います。
茂木副大臣 直訳ではありません。ただ、日本語と英語、言語体系が違っておりますので、直訳が正しいということではないと私は思っておりますが、趣旨としては正確だと思っております。
 簡単に御説明を申し上げます。例えば、疑問が生じていることは否めません、これを英語にすると、イット・イズ・ノット・ディナイアブル・ザットから始まるのだと思います。そして、ゼア・イズ・ダウト。ただ、英語の表現としては、これは必ずしも通りがよくないので、日本語で否めませんと強い表現を使っているわけですね。英語では、ゼア・イズなんですね。それをさらに補強するためにシリアスという言葉をつけて、その全体としての強さとしては私はバランスがとれているんではないかな、こんなふうに思っております。
赤嶺委員 直訳でないということはお認めになりました。それでバランスはとれているということでありますけれども、直訳でいくと、重大な疑問があると。私、英語辞典をきのうの晩いろいろひっくり返してみて、そのように解しました。
 それで、直訳どおりではないけれども、英語と日本語の体系上そうなったんだという御説明でありましたが、実は、同じように、査察継続の有効性について、疑問が生じていることは否めません、こういう言葉というのは、原口国連大使が使ったのが最初ではないんですね。この間のUNMOVICやIAEAの追加報告を受けました二月十五日に外務大臣が談話を出されております。この談話の中では、同じように、疑問が生じているのは否めませんということになっているんです。英訳となると今回と違うんですね。英訳となると、イット・イズ・アンディナイアブル、否定しない、直訳どおりというか、日本語を英訳にしたなと語学に乏しい私の知識でもそのように感じるんですが、同じ言葉を原口国連大使と外務大臣が違う英語を使っている。これはそれでも正しいんですか。
茂木副大臣 まず、談話につきましては、当然日本語が正確なものになります。それから国連でのスピーチにつきましては、英語でやっておりますから、英語が正式なものになります。
 その上で、ぜひ委員御理解いただきたいのは、先ほど、こういう簡単な例を出させていただきました。サンキュー・ベリー・マッチ、これはだれでも言えます。ただ、これは、非常にありがとうとは日本語では多分言わないんだと思います。普通の方は、ありがとうございます、こういう言葉を使います。ただ、これは、謙譲語というのが英語の場合にないわけですね。そうすると、ありがとうございますの意味がベリー・マッチに込められるわけです。そこは非常にはならないんです。
 そうすると、やはり、ウラル・アルタイ語圏に属する日本語とインド・ヨーロピアン語族の文、文法体系も違う英語では、おのずから、同じ趣旨のことを言うために表現が、ベリーがそのまま非常にはならない、それによって趣旨全体で、文全体、文脈全体で判断していただくしかないんだと思います。さもなければ、全部日本語をそのまま直訳したら、恐ろしくおかしな英語になってしまう、こういうことがいろいろな場面で生じる。このことにつきましては、語学そのものが違うんだということで御理解いただきたいなと思います。
赤嶺委員 語学論争というのは後で機会を見てやればいいと思います。私が聞いているのは、ですから、原口国連大使は英語で演説された、極めて強い調子の英語を使っている。しかし、和訳にすると非常にやわらかくなる、やわらかくなるというか調子が落ちている。同じ落ちている調子の日本語を、今度は外務大臣の談話を英訳したときには、その日本語の語感に合ったような英訳になっている。使い分けているわけですよ。原口国連大使が演説をしたときには、米英が国連安保理で孤立をしているとき、そういう時期に日本はああいう演説を行った。強い調子のイラク批判。アメリカ後追い施策と言わざるを得ないと思うんです。
 こういう使い分けの中に、国民は、語学の違いだとか言語体系の違いというのは見ておりません。直観的に、政治姿勢の違い、アメリカを支援するときの強い調子、国民に対しては問題を抑制的に伝えるこういう調子、こういう意味でしかとらないわけです。そこをマスコミも今、二枚舌外交じゃないかということを言われているんだ、皆さんは、皆さんの外交姿勢はそのように言われているんだ、こういう材料としてこの議論をぜひ聞いてほしい、このように思うんです。
 それで、時間が非常に限られているということを最初に申し上げましたので、次の質問に移らせていただきます。
 外務大臣は、この間の米英案の私の質問に対して、問題を平和的に解決するために真に最後の外交的な圧力を加えるということで、米英案への支持を表明されているわけです。
 外務省から、独仏ロ案、ロ案じゃなくて覚書のペーパーですね、外務省のペーパーを見せていただきました。ドイツ、フランス、ロシアの、外務省が出したペーパーの中には何と書いているかといいますと、「国連安保理の一体性を確保し、イラクに対する圧力を増強することが重要」だ、このように書いているんですね。イラクに対する圧力を増強することが大事だと。外務省のペーパーにもそのように書いているわけです。ところが、外務大臣はこの間、私の質問に対して、フランス、ドイツ、ロシア案はイラクを利するものと言いました。
 これはちょっと、なぜ、圧力をかけるということでは全く同じ姿勢をとっている。茂木副大臣もさっき、イラク認識について違いはないという説明がありましたが、違いもないし、姿勢も同じ姿勢をとっている。だのに、何で独仏ロ案はイラクを利し、米英案は支持なんですか。
川口国務大臣 独仏ロ案について、今委員が引用なさった私が言ったとすること、それについては、議事録をきちんと見て、どういうコンテクストだったかということを私自身確認してから申し上げたいと思いますけれども、私が独仏ロ案について考えていて、そのときに言ったであろうはずのこと、これは、独仏ロ案が百二十日というタイムラインを出して、それだけの時間を上げるということになっているわけですけれども、今のイラクの決議の守り方、対応の仕方からいうと、先ほども委員がおっしゃったように、査察の継続の有効性に疑問なしとしないというふうに私どもは考えておりまして、それによってイラクが本当に決議を守って大量破壊兵器を廃棄するかどうか、破棄するかどうか、そこにつながるかどうかということについて疑問があるということが一点と、それからもう一つ、この時期、イラクに対して国際社会が一丸となって圧力をかけることが大事な時期に、イラクに対しての態度が国際社会で分かれているということはイラクに利するということを申し上げた。
 ですから、私がそのときに申し上げたであろうこと、そのときはそう思っていましたし、今もそう思っていますので、そういうことであって、委員が今おっしゃった形で恐らく申し上げていないと思いますが、それについては、私自身、議事録を持っておりませんので、それを見たいと思います。趣旨はいずれにしてもそういうことです。
 それからもう一点、ここに立ちました折に、先ほどの、私の談話の英訳と、それから原口大使の英訳が違うのではないかと……(赤嶺委員「和訳」と呼ぶ)和訳が違うのでないかというお話がありましたけれども、これも今、私、手元に私の談話の英訳を持っておりませんのでもう一回今確認しますけれども、委員が先ほどおっしゃったイット・イズ・アンディナイアブルということで始まるということであれば、英語の語感としては、そちらの方がシリアス・ダウトよりも強いということだと私は考えます。
赤嶺委員 外務大臣のこの間の答弁は、今武力行使をするかどうかについて国際社会が立場を異にして争うことはイラクを利することになる、このように発言しているんです。
 フランス、ドイツ、ロシア案にはこう書いているんですね。案というよりも覚書ですね、覚書には、優先課題は査察を通じて本件を平和裏に解決することであり、イラクに対する武力行使のための条件はまだ満たされていないという。イラクに圧力をかける点では米英もフランスも同じ、しかし、先ほど私が読み上げた点は米英案とは違う。このフランス、ドイツ、ロシアの覚書のこのくだりについて、外務大臣はどのように考えますか。
川口国務大臣 先ほど二つ申し上げたうちの前段の方で申し上げましたけれども、もう一回繰り返させていただきますが、百二十日間という時間を与えれば本当にイラクが対応をするのかどうか、これの見方がかぎであるわけですね。
 十二年間イラクがこれをやらないできた、そして、十一月以降新しい一四四一の決議があって、イラクが今までまじめに対応してきたかどうか。今までやってこなかったことについては、一四四一でイラクは守ってきていないということが決定を安保理でされているわけですね。それ以降、本当にやってきたかどうか、これはエルバラダイ、ブリクス両方に言わせても、手続面での協力はあったけれども、サブスタンスの面での協力はないと言われているわけですね。
 ミサイルの廃棄、これについてもまだ返事をしていない、そして、小出し的に生物化学兵器用の爆弾が発見されたということを今になって言っている。全体として何千発の、六千発だったか九千発だかちょっと今覚えていませんけれども、それだけのまだ爆弾、弾頭があるという疑念が持たれているときです。ほかにも疑点はたくさんある。VXガス二・四トンというのもあります。さまざまあるわけですね。
 それに対してイラクがこたえてきていないということが問題であって、それが時間を何日か、百二十日間与えることによって本当に対応するんだろうか。それが我々の、査察の継続の実効性に疑問なしとはしないということで申し上げていることであって、そういう考え方でおります。
赤嶺委員 さっき外務大臣は英語の語感について自分の専門の知識を披瀝しておられましたが、私が辞書を調べたら、ゼア・イズ・シリアス・ダウト、これは重大な疑問ですよ。それから、イット・イズ・アンディナイアブル、これは否定しないというものであって、どちらが日本人が見て語感が強くなるか、この点もはっきりしていると思うんです。
 それから同時に、査察の期間の長さが最大の違いでということになりましたが、やはりイラクへの国際的な圧力というのは国際社会が一致して協調しなければならないというのは、皆さんも繰り返しおっしゃってきたことです。今、世界の国の圧倒的多数は、国連安保理での公開討論の演説の中でも、圧倒的多数はフランスやドイツの立場であります。ですから、皆さんこそ、このフランス、ドイツの立場を支持して国際的協調を強めなければ、イラクに対する圧力も中途半端なものになるということを申し上げておきたいと思います。
 それで、もう一つですが、今度は、アメリカが目的としている戦争、この問題ですけれども、ブッシュ大統領は、もし我々が戦争に訴えなければならなくなるなら、我々は残酷で暴力的な独裁者からイラク国民を解放するだろう、このように発言しております。外務大臣は、ブッシュ大統領のこういう発言、どのように考えますか。
川口国務大臣 よその国の大統領がおっしゃった発言について私の立場でコメントをするということは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今国際社会が一致して必要だと思っていること、それは、イラクがみずから大量破壊兵器を破棄する、それをやるということが大事であるということであります。そこについては一致をしている。それから、イラクがどのような政府を持つかどうか、それについて決めるのはイラクの国民である、これは当然であります。
 大統領の発言について、これは全体のコンテクストもわかりませんので、コメントは申し上げません。
赤嶺委員 今、イラクに対する武力行使、この中心になっているのはアメリカであります。そのアメリカが、本当に大量破壊兵器の廃棄を目的としての武力行使なのか、あるいは伝えられているフセイン政権、政権打倒を目的にしているのか、これも、皆さんが日米同盟をおっしゃればおっしゃるほど、政府の立場を明確にしておかなければいけない問題だと思うんです。
 この点では、もう既にアメリカではグロスマン国務副長官は、フセイン政権打倒を想定したブッシュ氏の指示について詳しく述べております。本当に日米同盟というならば、そのアメリカが目的としている戦争についても皆さんは国民に対して説明責任を持っているということを指摘しておきたい。
 それで、もう時間がありませんので最後の質問になりますけれども、戦争はいつの場合でもやはり罪のない女性や子供やお年寄りを犠牲にいたします。戦争が始まったらどれだけの被害が出るか、国連でもいろいろ想定をしているようですが、これについては、外務大臣、国連がどんなふうに考えているか説明していただけませんか。
茂木副大臣 難民等々につきましては六十万とかそういう数字も公表されておりますが、まだ戦闘が始まった状態でもありませんし、そういう状態で確たるものを申し上げるのは時期尚早かな、このように思っておりますが、今全部のデータを持っているわけではありませんので、御必要とありましたら、改めて御説明に伺いたいと思います。
赤嶺委員 本当にもしそれがイラクに対する武力攻撃となったら、結局犠牲になるのは罪のない国民です。
 私は、一昨年、アメリカのアフガニスタン攻撃、この問題を調査しにパキスタンに行ってまいりましたが、難民キャンプで見たものやあるいは難民病院で見たものは、本当に戦争で傷ついて、あるいは体じゅう、顔じゅう砲弾だらけの母親のそばで幼子が何も知らずに遊んでいる、こういう姿でありました。アフガニスタンから逃げてきた難民の証言も、軍事施設を爆撃しているというけれども、もうタリバンなんかいなくなった後に米軍がやってきて、結局村人が殺害されて、我々は怖くなってパキスタンに逃げてきた、こういう話もしておりました。
 ぜひ、川口外務大臣、どこかの委員会で自分も戦争体験者だというお話をされたようでありましたが、戦争で犠牲になった人たちの気持ちは、二度と再び、沖縄の言葉で言えば戦世(いくさゆう)を引き起こすな、戦争をとめるために生きている人たちが働く、我々はこういう時代の任務を持って今政治に携わっているということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
川口国務大臣 委員のおっしゃることはよくわかります。
 戦争はできるだけ避けるべきである。アメリカも日本もそのために努力をしている。そのために今やってもらわなければいけないのが、イラクの武器の、大量破壊兵器の廃棄です。それをしなければ、例えばイラクはあのイラン・イラク戦争のときに化学兵器を使いました。三万人の人が死んでいます。そしてクルド民族に使いました。それでまた同じぐらいの、これは人数ははっきりしませんが、数の人が死んでいます。そういうことがないように大量破壊兵器を廃棄しなければいけない、それが大事である。それをやらなければいけないのはフセインである、そういうことであります。
赤嶺委員 終わります。
田並委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。
 きょうは、イラク問題に絞りまして、川口外務大臣に質問をいたしたいと思います。
 まず最初に、私は、このイラクの大量破壊兵器問題は、予算委員会等でも集中的に審議をされ、今、ある意味で秒読みの段階とも言われておりまして、最大の危機を迎えているんだろうと思います。
 さて、国連の安保理事会のうち、先般、米英、スペインを除く十二カ国がいま少し査察を継続するようにということを強く求めているにもかかわらず、米国は、フセイン政権打倒のためには新たな決議がなくとも武力行使をするという意思をはっきり表明しています。今回米国がとろうとする行動は、二十一世紀の世界秩序を、これまで人類社会が築き上げてきた法の支配から再び十七、八世紀に戻るような、力の支配へと後戻りさせかねない、さらに、イスラム社会はもとより、国際社会を大混乱に陥れかねない、そういう危険な要素があると思っています。
 少なくとも、十二年前の湾岸戦争のときと違って、イラクが米国など他国を直接攻撃しているわけでもないのに、ブッシュ大統領は、米国を脅かすならず者国家は先制攻撃でつぶすといったブッシュ・ドクトリンは、はっきり申し上げて、国際法上許されるはずがないと思います。
 問題なのは我が国なんですけれども、先ほども議論がありましたNPT体制の根本的な矛盾を踏まえた上でイラクの武装解除を達成するためには、平和国家たる我が日本の外交力が厳しく問われている局面だろうと思うんです。
 ところが、川口外務大臣にしましても小泉総理にしましても、昨年の臨時国会以来、私たち野党が、米国が国連決議に基づいて武力攻撃をする場合だとか、あるいは新しい決議がなくとも武力攻撃に踏み切る場合だとか、幾つかの事態を想定して、我が国政府としての基本的な見解なりスタンスを国際社会にはっきり示しておくべきだというふうに求めても、仮定の話はしない、予断を持って判断をしない、あるいは川口外相も、米国の武力行使を支持するとも支持しないとも言わないのが国益であるとおっしゃった。
 しかし最近、米英の新たな決議案が出るに当たって、米英案を支持するように、ODAをちらつかせながら理事国を説得する。新聞でも報道がございました。これはもう二枚舌外交と言わざるを得ません。国会を軽視するのみならず国民を愚弄する。全く説明責任を果たしていないと言わざるを得ないんです。
 以上のことを申し上げて、具体的に幾つかの点について外務大臣にお尋ねをしたいと思います。
 まず第一点は、九一年に湾岸戦争が終わった直後、九八年に査察が中断するまで、いわゆるUNSCOMの査察が続けられましたけれども、九八年になぜ中断したのか、その原因なり理由について外務大臣、お答えください。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 九七年六月以降、イラクによる査察の拒否、妨害の事例が相次ぎまして、かかるイラクの査察拒否を非難する一連の国連の安保理決議が採択されました。
 特に、九八年十二月に、イラクに対するUNSCOM、大量破壊兵器の廃棄に関する特別委員会でございますが、その査察が中断する際に、UNSCOM自身から安保理に提出されております報告書におきまして、イラク側から完全な協力が得られていない、実質的な武装解除はできないという旨を報告、結論づけられている次第でございます。
今川委員 実は、つい先日議員会館に、このUNSCOMにかかわったアメリカの査察官スコット・リッターという方がわざわざおいでになって、自分がかかわったUNSCOMの査察の中身について、非常にわかりやすく具体的にお話がございました。
 その中で、幾つかちょっと紹介したいと思うんですけれども、スコット・リッター氏は、米国が国連の査察団にどのような圧力をかけているんですかという問いに対して、それはフセイン政権転覆の手助けをしろというものなのだ、時間さえ十分にあれば査察官は任務を達成できるが、米国は時間を与えないだろうと。これは今回のことを指しているわけですね。武装解除よりフセイン政権の転覆を優先する米国が査察をゆがめているのではないかということをきちっとおっしゃっております。
 前回のUNSCOMが、結局、査察の中断を余儀なくされた。今当局からその理由なりの説明がありましたけれども、それもあります。しかしながら、今回、例えばイラク政府がU2という偵察機を使うことを非常に嫌がりましたね、最終的にはこれは受け入れるわけですけれども。国連が行おうとしている、できるだけ中立で公正に、無条件に査察をやろうとする、そうした場合に、それに乗じて、かこつけて、アメリカが例えばU2偵察機みたいなものを使ってイラクの軍事施設を偵察する、そういういわゆるスパイ行為があったではないかという形で、イラク政府に口実を与えてしまったんですね。だから結局、九八年、UNSCOMの査察は残念ながら挫折をした、私はそのように認識しています。
 ですから、今回のIAEAにしてもUNMOVICにしても、そうした過去の経験に照らすと、国連がまさに中心となって、アメリカであれどこであれ大国からの圧力なり妨害を許さない、そういう体制をきちっとつくっておかないと、いたずらにイラク政府に不要な口実を与えてしまうということを私は言いたいんです。
 スコット・リッター氏は、先ほど申し上げました、査察団は誠実に活動したが、米国が査察を妨害した、核兵器開発の形跡は残念ながらなかったと。問題は、先ほど外務大臣もおっしゃったように、過去、自国民のクルド族に化学兵器を使ってみたり、八〇年代のイランとの戦争において化学兵器を使ったという悪い実績を持っています。ですから問題は、生物化学兵器がどうなのか。リッター氏は、我々が査察したときに、おおよそ生物化学兵器の九〇%から九五%はその装置なり施設を破壊し尽くした、問題は残る五%から一〇%だろう、しかし、例えば化学兵器の場合には、五年間するとヘドロ化して使い物にならなくなるんだ、こうおっしゃっているんですよ。
 この点、今、スコット・リッター氏の、査察の経験を持った方の証言を紹介しましたけれども、ここを、川口外務大臣、どのように受けとめておられますか。
川口国務大臣 スコット・リッター氏がそういうことをおっしゃっていて、またそういう本もお書きであるということについては、私も聞いています。ただ、スコット・リッター氏は、それは全く個人としての発言でして、彼は、査察官ではありましたけれども別に国連の職員であったわけでもない、あるいはUNSCOMの代表者であったわけでもない。要するに、個人の立場から発言をしている、そういうことであります。
 それで、いろいろな生物兵器、化学兵器、これは後から事務当局から、今どれぐらいのものが疑念として引き続き残っているかということについては細かくお話をするようにいたしますけれども、そういったことを、九〇%破壊しようが何をしようが、疑念は疑念として残っているわけで、イラクに対して我々が、国際社会が一致して、一四四一で全会一致で望んでいることは、イラクがみずからそれを廃棄しましたと出せば、話はそれで済むんですね。それをどうしてイラクはやらないのか。
 U2、これも今、U2を飛ばすということは、一四四一でみんなが全員一致で、当然やらなきゃいけないといって合意したことです。イラクは受け入れていない。受け入れると言いましたけれども、まだそれが、きちんとできる形になってから、本当に受け入れたばかりだ、そういうことです。
 いろいろなことを、とっくにやっていなければいけないことをやらなくて、圧力が加わるとちょびっとやる。そういう姿勢では、イラクが平和的に物事を解決したいと思っているかどうかということについて、国際社会としては本当に心配せざるを得ないわけです。イラクにすべてかかっている、そういうことです。
 あと、残っている疑点については事務当局からお話をいたします。
今川委員 ちょっと時間がきょうはもうありませんので、査察の問題に絞って今質問しているんです。
 外務大臣、もう一点、今の件とかかわって、実は、これは二月十六日付の私の地元、長崎新聞で久間元防衛庁長官がインタビューに応じておられまして、その中でこのようにおっしゃっているんです。イラクの姿勢の問題です。「イラクに核兵器がないことを知っていながら、米国は「生物化学兵器」と限定せず「大量破壊兵器」と、恐怖感をあおるような言い方をしている。そこに今回の戦略の不自然さがあるような気がする」とおっしゃっている。
 私が申し上げたいことは、確かにこの十二年間、イラクは、いろいろな査察の妨害をしたり、非協力であったり、だましたり隠したりしてきていますよ。だから私は、イラクを弁護する余地などはない、悪質な独裁政権と思っていますから。
 問題なのは、非常に厄介な相手ですので、米国などがそういう政治的な思惑で妙な圧力をかけたり、イラク政府に不要な口実を与えるようなことがあってはならない。まさにUNMOVICやIAEAがきちんと公正に、中立性を持って、いろいろな妨害を受けずに査察を継続する、そこに意味があり、価値があるんだと私は思う。この十二年間非協力的だったからもう時間稼ぎはだめだ、武力でやっちゃえということにはならないと思うんです。だから、フランスやロシアなどはそのような、四カ月ほど時間をかければもっとうまくいくんではないかということを言っているんだと思います。
 昨日の東京新聞の夕刊にも、生物兵器を発見したということがイラク政府から通告があった、これに対して、UNMOVICの委員長も、これらはイラクが実のある協力をしている証拠なのかと問われて、そうだ、幾つかのはっきりした要素があるというふうに、これはブリクス委員長がお答えになっています。
 外務大臣、いま一度、先ほど紹介した久間長官のそういうインタビューへのお答え、それから昨日の新聞夕刊に出ていました、生物兵器が一個だけれども見つかった、そういう形で、さらに一定、四カ月なら四カ月、三カ月なら三カ月という期限を切って、そこでイラクが全面的に協力をすることがないならば、すべての証拠を提示しないならば重大な局面になりますよといった通告をすればいいじゃないですか。いかがですか。
茂木副大臣 イラクの今の査察に対する協力の状況でありますけれども、私も今月、今お話のありましたUNMOVICのブリクス委員長とは直接お会いをしております。そこの中で、例えば国連の加盟国から不要な圧力があるとか中立性が侵されているとか、そういう懸念の表明は全くございませんでした。
 一方で、イラクにつきましては、手続面、プロセス面では改善は進んでいるけれども、実質面、例えば、今まで残っていた疑惑に対して自分からまさにこたえる、こういう実質面については協力が不十分である、こういうお話がございました。
 それ以降、強化された査察についても、単に査察を強化しても、きちっとイラク側の協力の態勢がないと査察は実効を上げない、こういう発言をブリクス委員長もされている、私はそのように承知をいたしております。
 また、核兵器と、それから生物化学兵器のお話がございました。では、どこまでの脅威になるか、こういうことにも絡んで、今残っておりますのが、例えば、UNSCOMが九八年、残る疑惑として指摘しておりますのが、化学兵器弾薬で、砲弾で九百発、それからVXガス、これが二・四トン、そしてボツリヌス毒素が二万リットル、炭疽菌が八千五百リットルと、いろいろございます。
 どれくらいの脅威なのか。比較の仕方というのは難しいわけでありますけれども……(今川委員「できるだけ簡潔にお願いします」と呼ぶ)VXガス、申し上げます。サリンと比べて、例えば皮膚吸収の場合の危険度、これは三百倍になります。半数致死量でいいまして、VXガスが六ミリグラム、それに対しまして、サリンの場合は千七百ミリグラム、こういう形になります。例えば、あの地下鉄サリン事件、九五年であったと思うんですが、十二名の方が亡くなられて……(今川委員「ちょっと、質問から外れているからいいですよ。もういいです。もう聞きたくないから」と呼ぶ)(発言する者あり)いや、答えていますよ。
今川委員 いや、そんな、答弁をずらしてもらったら困りますよ。
 自民党の政治家の中でも重鎮ですよ。私の同じ長崎県内選出のすぐれた政治家でもあります久間元長官が、先ほど紹介したようなことをおっしゃっている。それをどう思うかと聞いただけです。
 きょうはもうあと五分しかありませんので、もう一つ、きょうは途中で切れますが、聞いておきたい。
 そもそも、今イラクが開発しているかもしれない、あるいは保有しているかもしれないと言われる大量破壊兵器の中で、特に生物化学兵器に関して、ちょっとこれは外務大臣にお尋ねしたい。
 これは御存じでしょう。八〇年から八年間続いたイラン・イラク戦争のときに、米国政府は、イランの革命、ホメイニ革命を封鎖する目的で、イラクに総力を挙げて支援したんですね。財政支援、武器の援助。その中に、あろうことか、生物化学兵器の素材を提供し、ノウハウを提供したわけでしょう。
 具体的なことを少し紹介します。
 九二年までに、生物化学兵器の売却、アメリカ企業からの売却が明らかになった。米国政府は、イラクに対する広範囲に及ぶ生物化学兵器の売却を認可していた。これらの中には、炭疽菌、マスタードガスの成分、致死性の筋肉けいれんを引き起こすボツリヌス菌、肺炎や肝臓・脾臓拡張、貧血、急性皮膚炎を引き起こすヒストプラズマ病原性カビ、そして他の危険な化学物質が含まれていた。しかも、この売却リストの中には、巨大化学会社のダウ・ケミカルが化学兵器に転用される可能性があることを知りながら、米国商務省の認可を受けて百五十万ドルで売却した殺虫剤まであった。
 このように米国は、自分たちの援助によって、イラクが違法な毒ガスなど化学兵器を使用し、さらにそれを含めた大量破壊兵器開発を進行させていることをすべて知っていたんだというじゃありませんか。
 外務大臣、どうですか、これは。
川口国務大臣 当時、八〇年代、イラン革命がありまして、そのイラン革命が中近東に広がっていく、そういうことに対する懸念があって、英米諸国、英米を初めとする幾つかの国がイラクに支援をしていたという事実があるということは知っていますけれども、具体的に何が支援されたかということについては、日本としては知る立場にありません。したがって、今おっしゃったようなことについては、それが事実かどうかということは確認できません。
 ただ、申し上げたいのは、それはそのときの事情と、イラクが十二年にわたって決議を守ってこなかったという事情がある今とでは、全く事情が違う。問題は、今国際社会が懸念しているということは、イラクがそれを廃棄するということであるわけですね。それは一四四一で、数々の決議もそうですけれども一四四一で全会一致で採択をされた決議です。ですから、今おっしゃったようなことは、イラクの今の行動を正当化することには全くならない。イラクは見える形で廃棄をしなきゃいけない、そういうことです。
今川委員 もう時間が来ましたのでこれで終わりますが、最後に一言だけ言わせてください。
 イラクの現在の行為を正当化するなど、私は金輪際考えませんよ。ひどいことをやってきた独裁政権ですから。
 問題なのは、何度も言うように、IAEAとかUNMOVICが努力をしながら、国際社会のそういうコンセンサスの中で、できるだけ徹底して、どんなにイラクが非協力であろうが全面的に査察を成功させるように努力をしているときに、先ほど申し上げたように、UNSCOMのときもそうですが、米国は、正直申し上げて、この国連による査察が成功するかどうかということは余り関心がない。むしろこの査察を通して、見てみろ、やはりフセインは非協力であったというあかしがとれればそれでいいんです。それを口実に武力攻撃に入ろうとしている。そういういいかげんなことを許しちゃいけないということを私は申し上げておきたい。そうしないと、国連そのものが権威が失墜しますし、ますます国連中心のこの世界の枠組みというのは崩れてしまうということを申し上げて、質問を終わります。
田並委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.