衆議院

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第5号 平成16年11月25日(木曜日)

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平成十六年十一月二十五日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 小林 興起君

   理事 岩屋  毅君 理事 高木  毅君

   理事 仲村 正治君 理事 池田 元久君

   理事 大石 尚子君 理事 渡辺  周君

   理事 赤松 正雄君

      石破  茂君    奥野 信亮君

      嘉数 知賢君    瓦   力君

      北村 誠吾君    坂本 哲志君

      寺田  稔君    額賀福志郎君

      浜田 靖一君    古川 禎久君

      御法川信英君    武正 公一君

      津村 啓介君    中野  譲君

      本多 平直君    前原 誠司君

      松本 剛明君    村越 祐民君

      佐藤 茂樹君

    …………………………………

   国務大臣        

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  堀内 文隆君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   安全保障委員会専門員   前田 光政君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件(中国原子力潜水艦による領海侵犯事案)


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     ――――◇―――――

小林委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件、特に中国原子力潜水艦による領海侵犯事案について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官堀内文隆君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長大古和雄君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君及び外務省北米局長海老原紳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小林委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小林委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。御法川信英君。

御法川委員 おはようございます。自由民主党の御法川でございます。

 先般の中国原潜の一連の事件についてお伺いをいたします。

 政府の方から、十一月十六日付で、一連のこの事態に海上警備行動の発令があった後のことをるる報告を受けているわけでございますけれども、実際に、当時この中国と思われる潜水艦を発見したのが当日の朝六時前後というふうに聞いておりますけれども、それからこの八時四十五分の警備行動発令までの時間、二時間半、三時間近くあるわけでございますが、この間についての御説明をいただければと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 当該潜水艦につきましては、同日の早朝から先島群島の周辺海域の我が国の領海内を潜水したまま航行したということでございまして、海上警備行動については八時四十五分でございますけれども、領海侵犯した時間につきましては、潜水艦の探知という事柄の性格上、答弁を差し控えたいと思っております。

御法川委員 その点をなかなか政府の方では表に出せないということですので、この事件を機に、これからどうするかという視点から、いろいろと御質問させていただきたいと思いますけれども、実は、ことしの四月の十五日に、この安全保障委員会で、参考人で、杏林大学の平松先生と、あとは金田先生、岡崎研究所の金田さんを呼んで、防衛についての参考人質疑というのをやりました。

 そのときに、いみじくも、この件で、平松先生が、この中国の日本海域における行動について非常に詳しい先生でございますけれども、お話をなさったその後を受けて、私、このときに質問させていただきましたけれども、去年の十二月の十九日の閣議決定で「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」という文書がありますけれども、この文書の中でも、「海上自衛隊については、対潜戦を重視した整備構想を転換し、弾道ミサイル等新たな脅威等への」というふうに、新しいものにシフトをしていくということで、この時点において対潜戦というものが若干相対的には軽視されていたというようなニュアンスもございますけれども、今回こういう事件が起きて、これから新しい防衛大綱の策定もしなければならない、こういう中でどのようにお考えか、防衛庁長官にもお伺いしたいと思います。

大野国務大臣 ただいまの御質問は、従来の脅威、例えば対潜水艦というようなことでありますけれども、これを少し軽視しているのではないか、こういう御質問だと思いますけれども、昨年の閣議決定をやりましたときの文章を見ますと、いずれも、陸も空も海も「転換」という言葉を使っております。例えば、「陸上自衛隊については、対機甲戦を重視した整備構想を転換し、」「海上自衛隊については、対潜戦を重視した整備構想を転換し、」「航空自衛隊については、対航空侵攻を重視した整備構想を転換し、」つまり、そのときの発想でございますけれども、脅威が多様化してきた、だからやはり発想法も転換しなきゃいけない、ここに重点を置いた書き方になっております。しかしながら、いずれにしても、従来の脅威というのはあるわけでありますから、これも思いながら、あらゆることに対応していかなきゃいけない、こういう趣旨で書かれているわけでございます。

 いずれにいたしましても、新たな脅威に対して、即応性、機動性、柔軟性あるいは多目的性、こういうことを十分に考えながら、組織あるいは装備等を抜本的に見直していきましょう、こういう趣旨で書いているわけでございます。したがいまして、この本格的な侵略事態に対処するための最も基盤的な部分は確保しつつ、新たな問題に対処していかなきゃいけない、こういう意味合いでございます。ただ、そういう転換期にございますから、「転換」という言葉を使ってわかりやすく説明したというふうに私は理解しております。

 防衛庁といたしましても、従来からの潜水艦に対する警戒監視活動やシーレーン防衛に加えて、弾道ミサイル、テロあるいは武装工作船、それに加えて、あるいは島嶼侵攻、その他新たな脅威など多様な事態等に実効的に即応できる、そういう体制をつくっていきたい、こういうことが大事だと思っております。

御法川委員 ありがとうございます。

 それで、多分これは言葉のあやということもあるんでしょうけれども、今まさに策定されようとしている新大綱の方でございますけれども、これに盛り込むべき事項(案)という小さいちょっとした書き物があるわけでございますが、この中においても、「周辺海空域における警戒監視、領空侵犯対処、」あるいは「武装工作船等対処」というふうになっておりまして、今回のこの原潜の事件なんかは広い意味ではここに入るような話かなと思いますけれども、しかしながら、中国という大国の軍隊がやっている活動でございまして、武装工作船というようなものとは根本的に意味が違うものだと思います。

 そういう意味で、このことについて、例えば、とりわけ中国ということではなくても、領海における防衛について何か大綱に盛り込むお考えがもしおありであれば、お考えをお聞きしたいと思います。

大野国務大臣 我が国防衛のことでありますから、領海に対する守り、これはしっかりしていくのは当然のことでございます。引き続きその点はきちっとやっていきたい。

 ただし、大綱にきちっとそこをどう書くかということは、御指摘でございますけれども、従来の考え方に変わりない。大綱には、今後検討でございますが、そういう意識を持ってやっていきたいと思っています。

御法川委員 それでは、ちょっと今回の事件に戻らせていただきますけれども、日本が抗議をしたことに対する中国側の反応といいますか、私、報道で聞いている限りでは、遺憾の意ということをあらわしたということになっておりますが、その後の日本政府あるいは中国政府のこの件に関する声明等ありましたら、お教えいただきたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 本件につきましては、日本側から直ちにということで、十二日の夕方に町村大臣から中国側に抗議をしたことは御承知のとおりでございます。

 その後のことでございますが、十六日になりまして、中国の武大偉外交部副部長から阿南在中国大使に対しての回答というのがまさに今回のことでございまして、先方の我々への通報というか説明は、訓練の過程で技術的原因から誤って入ったということで、中国側としてこの発生を遺憾に思うという発言がございまして、そしてまた、それに加えまして、十九日、日中外相会談においても外相レベルでそのことが確認され、そしてさらに、二十二日、日中首脳会談において総理からもこの外相会談での確認を再確認するということでございまして、遺憾に思う、これは、我々としては、当然中国側が陳謝したというふうに受けとめております。

御法川委員 外交レベルでは、この件に関しては一件落着をした、そういうふうな理解でよろしいんでございましょうか。

薮中政府参考人 中国側からの我々に対する説明、まさに陳謝の意があった。そしてまた、日本側からは、大臣も先方に指摘しましたけれども、そしてまた総理からも指摘がありましたけれども、再発防止というのが極めて大事であるということを先方に伝えてございます。

御法川委員 さて、今回は中国の原潜ということでございましたが、日本の周辺海域において国籍不明の船が多様な活動をするという可能性はこれからもゼロではない、そういうふうに思います。

 そういうときに、先ほど、一番最初に質問したことでございますけれども、発見からかなりの時間がと考えるか、それが短時間だったか、これは若干の判断の余地はあると思いますけれども、いずれ、二、三時間の間があって海上警備行動の発令があったという、このことが果たして前例となるものなのか、あるいはそうではないのか、この辺のことはいかがでございましょうか。

大野国務大臣 御存じのとおり、海上警備行動というのは総理の承認を得まして防衛庁長官が発動するものでございます。したがいまして、各省間の、内閣あるいは外務省等、海上保安庁は当然でございますけれども、調整というプロセスが一つあります。

 それから、今回は、潜水艦ということで、海の中に潜っているものをどう判定していくかという問題がありまして、今、何時何分に領海を通過した、必ずしも特定して言えないケースもあるわけでございます。それから、どういう時点でこれを発表するのが一番いいんだろうか。これは相手方の問題もあるかと思います。しかし、私は、基本的に、やはり迅速に行動していくべきである、毅然とした行動をとるべきである、やはりそれは透明性を持ってやっていくべきである、このように思っております。

 今回の事件につきましては、位置の特定が難しいというような潜没航行中の潜水艦の問題でありますし、それから、慎重な手順を踏んで対処しなきゃいけない、こういう問題がありましたけれども、やはり基本的に、私は、反省するところがあれば反省して、よりよい危機管理体制をつくってまいりたい、このように思っております。総合的に反省するところはする、検証すべきところはしていく、こういう姿勢でございます。

御法川委員 今長官からお答えがありましたけれども、まさにこの点について、例えば政府内で、あるいは防衛庁の中で、正式なというか公式な形でのレビューという形のものが今行われておるんでしょうか、そうでないんでしょうか。

大野国務大臣 防衛庁内では、正式にとか公式にということではありませんけれども、幹部が集まりまして、今回こういうことであったけれども、こういうふうに、こういう点はということで、話し合いはいたしております。

御法川委員 政府としてはまだないということですね。

大野国務大臣 各省庁集まってということは、私は聞いておりません。

御法川委員 そうすると、これは今後あるいは同じような事件があった場合に、やはり今回のこの一連の行動というのはある意味でスタンダードにならざるを得ないんではないかなという、ある意味で危惧なんです。これを、例えば、もう少し迅速な形で政府が海上警備行動を発令することができるようにする、あるいはROEについて見直しをかける、こういうことも必要になってくるという考え方もあるんではないかなと思いますけれども、長官、この辺はどのようにお考えでしょうか。

大野国務大臣 事務レベルでは、内閣官房で集まって検証しておるそうでございます。

 いずれにしましても、反省すべきところは反省する、検証すべきところは検証して、まず、先ほど申し上げました迅速な行動、毅然たる態度等を原則としながら、反省すべき点は反省していく、こういう態度で臨んでまいります。

 事務的には、官房で関係各省集まって検討していると聞いております。

御法川委員 今回は、中国の原潜ということを総合的に、最終的に判断したということでございますけれども、海上警備行動が発令された段階ではこれを中国の船と特定していたんでしょうか。

大野国務大臣 この点はたびたび私も聞いておりますけれども、やはり水の中を潜っている、海の中を潜っている船でございます。どの程度の日本の能力があるのか相手方に知られる、これをぼやかした方がいいのか、きちっと言った方がいいのか、いろいろ問題もあるわけであります。

 日本の能力というのは悪いものではありません。しかし、そういうことはおいておいて、やはり最終的に、方向が決まる、それから潜水時間が長くなっている、あるいは相手の陸地に近づいている、こういうことで、もう確実にこうだと言える段階で海上警備行動を解除した、こういうことでございます。

御法川委員 今回は、中国の原潜だったということもあって、非常に慎重な態度がもしかすればとられたのかもしれない。その点については、まさにこれは政府のお考えでございますし、その点についてどうこうという話ではございませんが、まさに国籍不明ということで、こういう事件があった場合に、どのような、まさか同様の行動にはなり得ないと思いますけれども、これが潜水艦でなくても、一般の、一般のというか船舶であっても、国籍がわからないという段階で、海上警備行動をとらざるを得ない領海域に、日本の領海に入ってきたという場合の政府の対応というのは、これはまた変わってくるということでしょうか。

大野国務大臣 まず、浮上している船舶でございましたら、これは旗を掲げていないと不審船になります。これはそれなりにきちっとした対応ができるわけでございます。

 それから、潜っている船の場合は、日本のそれを識別できる能力については必ずしも明らかにしない方がいい、手のうちを示さない方がいいということがあります。しかし、いずれにしても、不審船、潜っている船ですから、海上警備行動で、海洋法国際条約に従って、浮上して旗を出しなさい、これは言えるわけでございます。

 それから、潜ったままずっといるわけですから、どこの船と断定するかについては、先ほど申し上げましたように、航行している方向性、それから陸からどのぐらいまで来ているんだというようなこと、こういうことを総合的に判断して、中国船、中国の船であるということを判断したということであります。

御法川委員 今後こういう活動、実は中国に関しては平松教授あたりがかなり深い研究をしていらっしゃって、こういう活動はこれから激しくなるだろう、あるいは、潜水艦だけではなくて、あの地域の資源探査等における行動なんかも多いのではないかという話でございます。

 実は、防衛庁がつくられた資料、ことしの十月に防衛庁さんからいただいている資料でございますが、この中に、「日本周辺の安保環境」ということがございまして、この中に図があるわけでございますけれども、この参考図の中に、中国潜水艦が浮上して大隅海峡を西航しているということも書いてあります。

 要は、日本の政府としては、こういうものがこれからあるんだろうなという認識があるというふうに私は考えますけれども、そういう中において、もう一度先ほどの質問に戻りますけれども、これからの政府のこういう海上における対応、この辺についてもう一度だけお伺いしたいなと思います。それで私の質問を終わらせていただきます。

大野国務大臣 海洋国家として日本は海の守りが大事だ、先生の信念、よく承りました。

 それで、そういう海洋国家の周辺に不審船が来るというのは、大変日本としては注目、注意をしなきゃいけない事態でございます。いかなる場合でも、潜水艦であろうと、海の中に沈んでおろうとも、それとも海の上を走っておろうとも、こういう不審な船あるいは潜水艦等につきましては、今後きちっとした毅然とした態度で臨んでいく、当然のことであります。

 なお、その手続等につきましては、海上警備行動というのがございます。これは警察行動でありますから、武力行使についてはもちろん制限がありますけれども、そういう行動をとる場合のマニュアルをきちっと考えていく、これが一番大切なことであります。

 繰り返し申し上げますけれども、迅速に毅然とした態度で臨んでいきたい、そのために検証すべき点は検証していく、反省すべき点は反省していく、こういうことで臨んでまいります。

御法川委員 ありがとうございます。

 やはり、どこの国がどうだということではなくて、日本の領空あるいは領海内に入ってきたものに対しては、日本政府としては、毅然としてこれに対処するというこの姿勢をぜひ貫いていただきたいな、こういうふうに思います。どうもありがとうございました。

小林委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。

 今、御法川委員から御質問があったのに引き続きまして、集中審議ですから、同趣旨のことをお聞きします。

 大野防衛庁長官は、今、反省すべきは反省する、検証すべきは検証すると四、五回、もっと言われたかもしれませんが、そういう反省、検証するんだということとあわせて、何について反省し、何について検証しようとされているのかなと思って聞いておりましたら、同じく数回にわたって、迅速、毅然、そして透明性というのは少し少なかったですけれども、迅速に毅然と透明性を持って、こういうお話でございました。

 ということは、先に防衛庁の話を聞きますが、今回の一連の案件について不適切な点があった、だから反省されるんだと思いますが、その中身については、迅速さにおいて、そして毅然という部分においていささかの不適切な部分があって、反省するべきは反省する、検証するべきは検証する、こういうふうな角度で今いらっしゃる、こういうことでよろしいでしょうか。

大野国務大臣 大変ポイントを集中的に攻撃されておるわけでありますけれども、問題は、今回の案件というのは、六時五十分に官邸連絡室が設置されている。それからその後、情報収集、事実確認等をやっております。海上警備行動の要件を満たすかどうかというような検討もやっております。発令した場合、どういうような措置をとるかということも考えております。内閣官房を中心に、各省庁間で調整をしてきているわけでございます。また、その後、八時十分の時点で、総理承認に向けての所要の手続をとる、こういうようなことをやっておりまして、その段階では官邸連絡室を官邸対策室に変えておるわけでございます。

 そういう経緯をもう少しスピードアップできないかというのは私の頭の底にあるわけであります。ですから、迅速性というのはそういう意味で申し上げているわけでございます。

 それからもう一つは、解除するのも、解除するというか、どこの船と特定するというのも、慎重に慎重に構えてやっておるわけであります。繰り返し申し上げますけれども、やはりこの潜水艦がどの方向へ向かって進んでいる、どの地点まで到達した、こういうことを本当に慎重にやっておる次第でございます。

 したがいまして、毅然性といった場合に、慎重過ぎるんじゃないかというお言葉もあるかもしれません。そういう意味で、私は、一般論として迅速、毅然ということを申し上げているわけでありますけれども、その点は慎重にやらなきゃいけない点もある、こういう観点ももちろんあるわけであります。

 それから、透明性という場合には、八時四十五分に海上警備行動を発令いたしておりますけれども、これを官房長官が発表しましたのが十一時前後かと思いますが、これももう少しどういうふうに考えたらいいんだろうかな、こういう観点があろうかと思います。私は率直に、そういう観点から検証してみなきゃいけないし、もしいろいろな判断、例えば日本の周辺にそういうことで不審な船が来るとすれば問題ですから、やはりいろいろな観点から考えてみなきゃいけない、そういう意味で申し上げたわけでございます。

赤松(正)委員 大臣のお話は、普通の人間社会におけるお話としては際立ってわかりやすいというか、そういうことなんだろうなと思うんですが、事は日本の防衛、日本の主権というものをどう守っていくかという話でございますので、今のように、るるいろいろおっしゃいましたけれども、いかにも、防衛という観点、領海侵犯ということに対してどう対応するか。まして、ましてというか、ミサイルが飛んできたときに、もうそれこそ十分以内、八分とか七分とか五分とかという短い間に判断をすべてしなくちゃいけないというテーマもあるわけで、今のようなことではいささかおぼつかないなという印象を強く受けます。

 ちょっと時間が短いのでこの点はそれぐらいにしておきますが、外務省の方は、かつて外務委員会で外務大臣が、この問題、まだ中国の潜水艦であるということがわからない時点で、事後に、終わった時点に冷静に検証する、こういうふうに十二日の外務委員会においておっしゃっておりますが、ここで一般的にお聞きするのではなくて、先ほどの御質問にもありましたが、要するに今、東シナ海においては、今回原子力潜水艦という話でありますけれども、中国のいわゆる海底調査、資源調査をめぐる探査船というものがいろいろいるということについて、一連の外務省におけるレベルで、中国に対して、今までの流れの中で、強い抗議をしてきたかどうか。しっかりとした、そういう抗議というか、過程において、強く日本の意思というものを言ってきたかどうかということを私は非常に懸念いたします。

 今回、総理大臣は、首脳会談で、先ほど遺憾表明という話がありまして、再発防止ということも外務省の当局の方からありましたけれども、言ってみれば総理の御発言は、東シナ海における中国による資源開発についても適切な対応が重要であって、東シナ海を対立の海としないようにすることが大切である、こういうふうなお話をされたんですね。

 そういうのを概括的に聞くと、非常に大きいお立場で非常に適切なことをおっしゃっているんですが、やはりその前段に、外務省レベルで中国に対する厳しい問題点の指摘というものがないと、総理の非常に大きい立場からの東シナ海を対立の海にするなということが生きてこないと思うんですが、外務省における今日までの、今回の原潜だけじゃなくて、そういう一連の中国の行動に対してどういう角度で今まで言ってきているかということについて、逢沢副大臣の方から手短に、明快に述べていただきたいと思います。

逢沢副大臣 日中関係が大変重要な二国間関係であることは申し上げるまでもございません。問題があれば適切にその問題を処理する、そして国の立場、考え方、それを明確に相手に伝える、そういうことを重ねて真の友好というものが育ってくる、私どももそのように承知をいたしております。

 原潜の問題につきましては、直ちに町村外務大臣が程公使を呼び、そして事実関係を明確にしてほしい、そして謝罪を求める、また、なぜこのようなことが起こったのか、その理由、そして再発防止、この四点について明確な申し入れをし、その反応につきましては先ほど薮中局長が答弁をしたとおりでございます。

 さらに、私どもとしては、このようなことが二度とあってはならない、再発防止については強く申し入れを行い、李肇星部長も町村外務大臣に対して、全くそのとおりであるという趣旨の発言をいただいております。

 また、海洋船の問題につきまして、これも問題があればその都度抗議を申し入れ、そして、このようなことが起こらないようにということについては累次厳しい発言をいたしているわけでありますが、具体的には、問題があれば現場の水域で申し入れをする。同時に、外交ルートを通じ、これは東京と北京両方でやるわけでございますけれども、活動の即時中止、それを厳重に申し入れを重ねてきているといったようなことでございます。

 また、それについて、四月には特に海洋調査船に関する日中協議を行いました。また、十月にも東シナ海に関する日中協議を行い、資源開発のことも同時に扱ったわけでありますが、海洋調査船の問題についてもこの東シナ海に関する日中協議の場で取り上げ、我が国の考え方、問題意識を強く申し入れているわけでございます。引き続き適切に、そしてまた必要に応じて、強く中国側には日本の考えを伝えていく立場でございます。

赤松(正)委員 そうしますと、時間が参りましたので結論を申し上げますけれども、私は今聞いて、外務省にとっては不適切な対応はなかったというふうに総括をしておられるというふうに判断をしました。防衛庁の方にはいささかの反省すべき点があった、こういうことなんだろうなというふうにお聞きをいたしました。

 ともあれ、総理の御発言は、いわゆるこの問題についての、いわゆるこの問題というのは、台湾の問題について総理がお話をさきの首脳会談でされておりますけれども、平和的解決の重要性というものを強調されて、当事者間の対話の早期再開の促進に向けて努力を求める、こういう発言があります。

 原子力潜水艦の問題の広い深い背景には台湾の問題というものも見過ごすことはできないと思いますけれども、そういういわゆる中国、台湾との関係における平和的解決という部分で、アメリカ・パウエル国務長官が先月のちょうど今ごろ、中台の対話を呼びかけた。これに対して中国はほとんど聞く耳を持っていないということが報道されているわけですが、日本も今回、小泉総理はその同趣旨のことを中国に言ったわけですけれども、それについての適切な対応というか、答えはなかったように私は聞いております。

 いずれにしても、こういう問題について強い関心を持って、日本らしく、この場面でしっかりと積極的な発言をしていく外交を展開していただきたい、こう申し上げまして、私の発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小林委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 先般の中国原潜の領海侵犯事案につきまして質問させていただきたいと思います。杉浦官房副長官、おられますね。

 まず冒頭の質問は、防衛庁長官と杉浦官房副長官にお尋ねをしたいと思います。

 幾つか検証しなくてはいけない点があると思います。また、今この委員会の同僚委員が質問をされたこととも重なるわけでございますけれども、まずは、海上警備行動発令がおくれた点について、検証し、また具体的な提案をさせていただきたいというふうに思います。

 追尾をしていた潜水艦が方向を変えたのが大体十日の午前四時ぐらい、そして国籍不明の、そのときは潜没潜水艦が領海侵犯をしたのが五時四十八分、そして領海を出たのが七時三十五分、そして海上警備行動発令が八時四十五分ということで、よく言われておりますように、領海の外に出てから海上警備行動が発令をされたということであります。

 先ほど防衛庁長官は、迅速性について改めるところは改めなきゃいけない、こういう話がございました。私は、防衛庁の中はそれほど時間がかかったというふうには思っておりません。もう少し短縮できてもよかったのかというふうに思っておりますが、具体的にどういったところに、もし迅速性というものの改善点があるとすればお考えになっているのか、防衛庁長官にまずお伺いします。

大野国務大臣 まず、海上警備行動自体の問題でありますが、領海を侵した船に対しまして、領海外に出ていけ、あるいは潜没潜水艦等に対しましては浮き上がって旗を出しなさい、こういう行動であります。これは警察行動でありますから、わかった段階でという問題が一つある。だけれども、わかった段階とはどういうことなんだろうかという問題が一つあるわけです。

 これは、潜水艦ですから、もう前原議員御存じのとおりでありますけれども、いろいろな装置があって、それに対して確認をするわけですけれども、必ずしも入った時点ですぐわかるというものじゃない。潜没潜水艦が領海侵犯したという時点を何時何分何秒という単位でとらえることはなかなか難しい、こういう問題はひとつ御了解いただきたいと思います。

 それから、どういう状態で、今度はどういう措置をとるか、いろいろな問題が出てきますが、その調整を二番目の問題として各省庁間やっていかなきゃいけない、こういう問題がまた一つあろうかと思います。

 こういう問題を総合して考えますと、やはり、まず確実に領海侵犯したろうという問題、その前に領海侵犯しそうだという点から態勢を立ち上げるかというような問題もありましょうし、私は、そういう意味でいろいろな面から検証していくべきだ、こういうことを申し上げているわけでございます。

前原委員 よくわからないんですが、後でちょっと具体的な提案をさせていただきますので、それについて御答弁をいただきたいと思います。

 問題は、内閣官房に上がってからだと私は思っておりまして、二つのことについて質問をさせていただきたいと思います。

 一つは、海警行動発令までのタイムラグが内閣官房に上がってからあり過ぎる。この点について、官房副長官、なぜこれだけの時間がかかったのか。つまりは、防衛庁から、海警行動の発令というものが望ましい、そういう上申があってから実際の海警行動発令までの時間がかかっております。約二時間。これをどう考えておられるのか、改善点があるのか、その点についてお答えください。

杉浦内閣官房副長官 委員のおっしゃられる点でございますが、まず、この領海侵犯事案、潜没潜水艦による領海侵犯事案であって、海上警備行動をとられた事例としては初めて、前に不審船に対してやったのが第一回でありますが、初めてのことでございます。

 委員がおっしゃるように、危機管理体制について見直すべき点があるかどうか、初めての事案でありますので、今後とも慎重に検討をしていかなきゃならない問題であると思います。

 それから、今回の場合、官邸での対応について申し上げれば、防衛庁からの連絡を受けて、六時五十分に官邸連絡室を立ち上げたわけでございます。官房長官に連絡があったのは午後七時でございます。そして、その後、情報収集、事実確認等を行いまして、海上警備行動の要件を満たすかどうか、発令した場合にどのような措置を講じるか等について、連絡室において、関係省庁とも調整しながら、慎重に確認、検討を行ったということでございます。

 その結果、八時十分ごろの時点で、総理の承認に向けて所要の手続をとる必要があるとの判断に達しまして、官邸対策室に切りかえ、必要な手続を進め、総理の承認を得て、八時四十五分に防衛庁長官が海上警備行動を発令したものでございます。この間、官房長官が必要な連絡、指示等を行ったわけであります。

 したがいまして、位置の特定が難しい潜水航行中の潜水艦に対して、慎重に手続を踏んだということで時間を要したということをまず御理解いただきたいと思います。

 公表がなぜおくれたか。公表といいますか、官房長官が……(前原委員「それは後で質問します」と呼ぶ)ああ、そうですか。

前原委員 潜没潜水艦の領海侵犯について、海上警備行動は初めてだったと。しかし、危機管理というのは初めてのことがこれから起きる可能性が多いわけで、初めてだったからおくれたというのは、私は何の理由にもならないと思います。その点をしっかりやっておくのがまさに危機管理というものであって、私は、それは全く言いわけにならないということをまずは申し上げておきたいというふうに思います。

 それから、これはちょっと具体的な提案を、過去の失敗あるいはまずかったことを教訓として、手続をやはりしっかりと今後のために改善をしなくてはいけないと思いますので、防衛庁長官それから官房副長官に提案をさせていただきたいと思います。

 先ほど防衛庁長官が御答弁をされましたように、海上警備行動というのは、これは警察権ですね。そして、武器使用基準も警職法の準用で行う。つまりは、本来であれば海上保安庁が一義的な警察活動を海において行うことであるけれども、海上保安庁の力では無理があるというときに海上警備行動が発令されるものだと私は認識しております。

 しかし、能登半島沖の事案は、これは漁船を模した北朝鮮の工作船でございましたけれども、今回は原子力潜水艦ということで、いわゆる軍艦ですよね。軍艦というのは国連海洋法条約で第三国の警察権適用が免除されています。特に潜水艦については、これは潜没していたら海上保安庁が追尾するということは無理ですよね。もともとが、やはり初めから海上自衛隊で行わなければいけないことでありまして、軍艦あるいは潜水艦については、本来であれば、海上保安庁が一義的に行うというのは、もう初めから無理なことだと思っております。

 したがって、こういう事案については、もう自衛隊が出ていかなきゃいけないということを前提として、私は、海上警備行動の発令というものが自動的に行われるような仕組みというものを考えたらどうかと。

 今申し上げたように、潜没潜水艦あるいは軍艦の非無害通航、こういったものについては海警行動を出さないと、海上保安庁はできないんですから。海上保安庁ができなかったら自衛隊が行うということですけれども、さっき申し上げたように、軍艦については第三国の警察権の適用がはなから免除されているわけですね。ということは、その件についてはもう自動的に自衛隊が動かざるを得ないし、今回も、先ほどどこの潜水艦かわからないような答弁をされていましたけれども、私は、その点は、日本の対潜哨戒能力というのは世界でもトップレベルにあると思っていますし、なかなか表立って、どういう把握だったかということは政府のお立場としては言えないこともよくわかっておりますけれども、しかし、明確にわかっていたということは私ははっきりしていると思うんですね。

 したがって、どの時点でというところには、それは秒とか分の単位のずれはあるとしても、こういった事態には私は海警行動というものが自動的に発令をされるような仕組みに変えた方がいいと。だって、これは国連海洋法条約違反ですから。

 ですから、そういう形に私は今の二点については改善をすべきだと思いますが、防衛庁長官の御答弁をいただきたいと思います。

大野国務大臣 私は、これは、まさに海上警備行動というものは警察権の発動と同じでありますから、危険なものを取り去る、こういう意味で自動的であっていいと思います。

 しかしながら、ここが問題なんです。まさに自衛隊という武力行使のできる集団であります。この集団を自動的に発動していいのか、こういう問題が必ず残ります。したがいまして、閣議決定でも決めてありますように、やはり総理の承認を経て、本来ならば安全保障会議あるいは閣議を経て発動すべきものを総理の承認を経て防衛庁長官が発令する、こういう手続は大事にしていかなきゃいけない。だれが責任を持つのか、全く自動的にしてはいけないと思っております。これは形式の問題だと思います。しかし、まさにその形式が非常に大事ではないか。

 だから、それをいかに自動的と同じように迅速にやっていくべきか、どういう場合はどうなんだ、マニュアルをきちっとつくっておいて、気持ち自動的、しかしちゃんとそれは縛りはありますよ、こういう形にするべきではないかと思っています。

前原委員 いや、手続はあらかじめ決めておいたらいいんですよ。手続とそれを発令する権限者は決めておいたらいいわけです。

 では、武力行使が可能な実戦部隊を自動的に出動させることには問題があるということであれば、自衛隊法の八十四条の対領空侵犯措置というのは、これは自動的に出るんじゃないですか、スクランブル発進というのは。つまりは、日本の主権というものが脅かされる可能性があれば、そういうものをあらかじめ決めておいて、そして権限者が判断をした中でそれが行われる。では、対領空侵犯でも閣議決定しますか。総理の最終的な判断というのが行われますか。されないでしょう。

 そういうことであれば、この対領侵と同じように八十二条の海警行動についても、今まさに――ちょっと聞いておいてください、長官。今おっしゃったように、手続は決めておいたらいいんですよ。だから、平成八年の閣議決定で省略というものを決めたわけでしょう。もっと違う形で省略をして、今申し上げた海上保安庁ができない軍艦についての非無害通航についてはある程度自動的に海警行動を発令できるようにするというのは、これは極めてリーズナブルな話じゃありませんか。

大野国務大臣 今私申し上げましたとおり、これは気持ちの上ではもう自動的でいいと思います。しかし、武力を持つものですから、そういうものを発動するわけですから、それはやはりきちっとした手続を踏んでおく。これは、手続を踏んでおくというのは、手続を初めから決めておけばいいじゃないかということでありますけれども、手続を決める上で、単に形式的にやっているというんじゃなくて、それは実態として、やはり総理の耳に入って、総理が、これでオーケー、あるいはもう少し考えろ、こういうことはできるようにしておくのが当然ではないでしょうか。

 それは、完全に自動的にするということがどういう意味なのか、全く防衛庁長官だけでできるようにするのか、あるいは現場の判断に任すのか、ここまで含んできます。だから私は、やはり手続、形式の上できちっとその手続は踏んでおかなきゃいけないんじゃないか、こういうことを申し上げているわけであります。

前原委員 では、国連海洋法条約違反をされたときに、海警行動を発令しない、特に軍艦、潜没潜水艦のときに発令しないということがあっていいんですか。主権が侵されて、国際法違反を他国にされて、そしてそれを留保するということはどういうことですか。

大野国務大臣 主権国家日本としては、そんなことは絶対あってはならないことであります。

前原委員 それだったら、領海侵犯等の軍艦等による非無害通航時には、ある程度手続は決めておいて、だから、手続なしでやれなんということを言っているわけじゃありません。手続を決めておいて、半ば自動的に対領空侵犯措置のような形で取り締まりが行われるような形にしたらどうですかと言っているんですよ。

大野国務大臣 同じことを言っているんじゃないかと思います。つまり、手続の形をどういうふうにやるのか、この議論で少しかみ合っていないんじゃないかと思います。

 一番初めから言いますと、現場で判断してやるのか、防衛庁長官がやるのか、あるいは今のような形にするのか、こういうことを議論しているわけでありまして、私はやはり、形としては、防衛庁長官から内閣総理大臣に伝えて、そして、それについて承認を経た上で発動をするという今の形でいいんじゃないか。運用面でもう少し改善する必要があるんじゃないか。まさにそれは、もう自動的と言っていいぐらいの問題でありますから、その手続は踏んでいかないと、やはり武力行使が伴う可能性のある組織を動かすわけでありますので、そういうことを申し上げているわけです。

前原委員 いや、八十四条に基づく対領侵のスクランブル発進だって手続はあるわけですよ、当然ながら。勝手に飛び立っていっているわけじゃないわけですよ。情報を得て、そして判断をする中でやっていっているわけですから。

 だから、そういうことの手続の簡素化の中で、迅速に、主権侵害がされないような形をとってくれということで言っているわけですよ。だからそれを検討してください。検討するかどうか、それだけで結構です。

大野国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、いろいろな意味で検証をして、改善すべきは改善すべきだというふうに思っています。

前原委員 官房副長官にお尋ねいたしますが、先ほど、公表のことについてあわせて御答弁されようとしましたけれども、これがなぜおくれたのかということと、今の防衛庁長官に対して私が申し上げたことについて、これは内閣もやはり手続についてはかかわる問題だと思いますので、主権侵害がされないような、そういうところでの海上警備行動が予備的も含めて発令されるような、私は、特に軍艦等の領海侵犯のおそれありというときには予防的にそういうものも発令されるような手続をとらなきゃいけないと思いますが、その二点について御答弁ください。

杉浦内閣官房副長官 貴重な御提言だと思います。不断に見直さなきゃならないわけでございますから、防衛庁の方ともよく相談した上で、検討すべき中に入れていきたいと思っております。

 なぜ二時間余りかかったかという点でございますが、これはもう先生御案内のとおりだと思います。現実に潜没潜水艦を追尾しておったわけであります、詳細については既にもうおわかりのとおりでありますが。これは軍事上の非常に機密を要するオペレーションであったわけでございまして、そういうものを十分連絡をとりながら見きわめるということ、そして安全保障上の問題として、もちろん国民に知らせるということも大事なことでございますが、安全保障上の一つの措置でございますので、慎重の上にも慎重に検討をしておった、それで二時間近くかかったということでございます。

前原委員 どこの国かとかいうことはその段階で私は言う必要ないと思うんですが、私が申し上げているのは、海上警備行動の発令は、やはり発令したらすぐに公表すべきだということを申し上げているわけです。

 手のうちがどうのこうのという議論があったという話を聞いておりますし、軍事上の機密云々という話でありますけれども、実際問題、私が防衛庁からも聞いているのは、針路を変えた段階で、警告も含めて、相手に追尾しているということがわかるようなアクティブソナーを海中に落として、もう相手の潜水艦は自衛隊が追尾しているということはわかっている、そういうことを知らせているわけで、まさか日本は何も知らずにいるなんということはあり得ないわけですよね。そうなると、海上警備行動が発令されたことによって何が相手に手のうちが知られるのか。

 例えば海上警備行動、後で質問いたしますが、警察権の行使なので何もできないということは、これは多分中国の軍部はわかっていると思いますよ。したがって、海上警備行動を発令した、そして黙っていることによって相手にこちらの手のうちがわからないということは全くあり得ない。そこはお互いにある程度の情報を持ってやっているわけですよね。だったら、なぜすぐ公表できないんですか。

 どの国がとかそういうことじゃなくて、海上警備行動を発令したら直ちにそれを公表すべきだということを申し上げているんです。

杉浦内閣官房副長官 御意見として承って、今後検討する中に入れたいと思います。

前原委員 今の点に関して防衛庁長官の御意見をお聞かせください。

大野国務大臣 私は、前原委員おっしゃるとおり、海上警備行動を発令すれば直ちに公表すべきであると。

 だれが公表すべきであるか、こういう問題があると思いますが、そういう面はきちっと今後手続の面で決めておく必要があるんじゃないか、このように思っております。

前原委員 ぜひそれは、お二人の答弁から、私もぜひ改善をしていただきたいということを改めて要望しておきたいと思います。

 続きまして、八十二条に基づいて海上警備行動が発令をされて、それで何ができるのかといったところに第三の問題点があると思うんですね。第一は海上警備行動発令のおくれ、そして二番が公表のおくれ、三番が海上警備行動自体のいわゆる不備というもの、これをどう考えていくのかということがあろうと思います。つまりは、警察権の行使しかできませんということでありますので、結果的には何もできないということになってしまいます。

 しかし、国連海洋法条約違反、無害通航違反、非無害通航であるということになれば、他国はそれぞれ国連海洋法条約に基づいて国内法をしっかり整備しているわけですね。例えば、現に中国は、一切の必要な措置をとって領海の非無害通航を防止及び制止する権利を有するというような法律をつくっているわけですね。ロシア、韓国、北朝鮮、我が国の近隣の国はすべてそういった法律を持っているわけです。

 私が問題としたいのは、防衛庁長官、海上警備行動が警察権の行使であるということ、しかし、ではさらに何か、それより上回る行為を行おうとしたときには防衛出動しかない。つまりは、海上警備行動と防衛出動というかなり大きな乖離が私は大きな問題なのではないかというふうに思っているわけです。したがって、海上警備行動を警察権ではないものにしていく、あるいは、海上警備行動を警察権の行使とするのであれば、防衛出動と海上警備行動の間の領域警備のような概念をつくって、そしていわゆる他国が行っているような自衛措置、別に国の自衛権の発動じゃありません、しかし、国家の主権というものを脅かされないための自衛措置というものがとれるように私は改善をすべきだというふうに思いますが、その点について御答弁をいただきたいと思います。

大野国務大臣 現在、かなりそういう意味では制約されていることは、もう先生おっしゃるとおりでございますけれども、今後それをどういうふうに考えていくか。私はやはりいろいろな角度から検討させていただきたいな、このように思います。

前原委員 いや、それは検討しなきゃいけないのはだれだって認識しているわけで、具体的にどういう検討を加えていくのかということです。

 もっと突っ込んで申し上げますと、部隊が任務のために自衛を行うということ、これをどのように担保していくか。これは、憲法上、自衛権と言ったら、すぐに何か自衛権発動の三要件ということに内閣法制局はワープしてしまう、こんなばかな話はないわけであって、任務遂行を行っている上で、そして主権侵害を防止するための、任務遂行のための武力の行使というものは、私は警察行動と国家としての自衛権の間に当然あるべきで、それがない日本がおかしいんじゃないかと思うんですね。それを検討すべきだというのが私の提案であります。それについて御答弁をいただきたい。

大野国務大臣 防衛に対する考え方、長い歴史を持ったものであります。それから、現在はその脅威というのがさまざまに変わってきておるわけであります。その両面から、先生御指摘のようなことを今まさに真剣に取り組んで考えなきゃいけない、これも十分わかるわけでございます。

 ただ、一体どういう方向でどうやるんだというと、私個人の意見にならざるを得ない。(前原委員「個人って、防衛庁長官じゃないですか」と呼ぶ)防衛庁長官でございますが、やはり組織としてきちっと考えなきゃいけない。私は、そういう面で、考えさせていただきたい、このことだけを申し上げさせていただいて、これで答弁を控えさせていただきたいと思います。

前原委員 バッジをつけて、それで防衛庁長官になられているんですから、組織がどうのこうのって、今までの延長線上にこういう海上警備行動と防衛出動という大きな壁があるんじゃないですか。それだとうまく対処できない部分がありますね。そして、ほかの国の、さっき中国の例を申し上げましたけれども、国際法違反、国連海洋法条約違反ということについて国内法を整備していて、それに対しては毅然とした態度をとれるようになっている、単に警察権だけでなくて。

 さっき申し上げたように、何度もお話ししていますけれども、軍艦、第三国の警察権適用が免除されるわけですよ。それが警察権で対応しようなんということがおかしいわけで、それだと対応できないという、それで次は何があるのだと言われたら、武力行使になる防衛出動でしょう。間のものって当然要ると考えてしかるべきじゃないですか。

大野国務大臣 おっしゃることは、はらわたにしみ渡ってよくわかるわけであります。その間のものをどうやるか、やはり主権国家として主権を守る、領域、領海を守る、当然のことであります。だから、その辺についてどういうふうに考えていくか、これは検討しなきゃいけない課題である、このことを申し上げて、しかし、どういうふうに検討するかということまでは、ただいまの段階で、私、申し上げる段階ではございません。

前原委員 では、これだけ防衛庁長官、御答弁いただけますか。

 海上警備行動と防衛出動の間は、いわゆる段差があり過ぎる、この中間のものを、これは国際法に認められた権利なんですよ。それをほかの国はやっている。日本の自衛隊がそんな領海侵犯をすることはありませんけれども、したらそういう措置を他の国はとる、日本はとれない。その間のものが必要かどうか、その点についてだけでも御答弁ください。必要と考えておられるかどうか。

大野国務大臣 必要であろうかと考えておりますけれども、その点も含めて検討させていただきます。

前原委員 検討して結論を出していただきたい、そのことをお願い申し上げます。

 次に、今回の海上警備行動の発令は、海上自衛隊だけに発令をされていますね。なぜ海上自衛隊だけに発令をされたのか。そして、お話を伺っておりますと、AWACSが警戒監視に飛んだということでありますが、そのAWACSが浜松から飛び立った法的根拠について御答弁をいただきたいと思います。

大野国務大臣 航空自衛隊の方でございますが、この航空自衛隊につきましては、警備行動は発令されておりません。航空自衛隊につきましては、十一月十日の海上警備行動の発令後から海上警備行動が終結いたしました十二日午後三時五十分までの間、AWACSを合計七ソーティーにわたり派遣しておることは事実でございます。我が国の防空識別圏内の先島群島周辺海域上空等において継続的に警戒監視を行いました。

 それで、その目的でございますが、領空侵犯のおそれのある航空機が出現した場合に速やかに対応できるよう、必要な警戒監視を行ったものであります。

 その根拠についてのお尋ねであります。

 あえて申し上げるならば、防衛庁設置法第五条、つまり防衛庁の所掌事務第十八号、所掌事務の遂行に必要な調査研究を行う、こういうことになると思います。

前原委員 防衛庁設置法に基づく警戒監視ですか。私は、府中の航空総隊司令官が発した対領空侵犯措置だというふうに理解をしておりますが、それは、ちょっと事実関係だけもう一度答弁してください。対領侵でしょう。

大野国務大臣 現実の領空侵犯は起こっておりませんので、あくまでも、ここに言われております十八号の調査研究という趣旨で行われている次第でございます。

前原委員 いや、普通のスクランブルだって領空侵犯が行われてからでは遅いわけで、それまでにスクランブル発進をしているわけです、八十四条に基づいて。これは別にここで議論してもしようがないので、正式な根拠を、私は府中の航空総隊司令官の指示によるスクランブルだというふうに理解をしておりますので、その事実関係を調べてこの委員会に、理事会にでも御説明いただきたいと思います。委員長にお願いを申し上げたいと思います。

小林委員長 では、理事会で検討します。

前原委員 では、調べて。

 その前提で少しお話をさせていただきたいと思いますが、能登半島沖の不審船事案のとき、海上警備行動を初めて発動されたわけでありますが、そのときは北朝鮮のミグが北朝鮮から発進をしてこちらまで来る気配があった、こういうことであります。つまりは、今回の中国側の説明は技術的なミスと言っていますが、そういうことを信じる人は私はいないと思います。これについては、ここで議論しても、外交上の問題でありますので、ここを私は追及することはいたしませんが、しかし、もし組織的なものであれば海のみならず空からも出てくるわけでございまして、そういうときのいわゆるエアカバーということは極めて重要なことだろうというふうに私は思っております。

 しかも、先ほどの防衛庁設置法の五条、警戒監視、あるいは対領空侵犯措置にしても、結果的には、対領空侵犯措置にしても領空に入ってこなければ対処ができないということになるわけでありまして、ある程度の、これも警察権の域を出ない。先ほど申し上げたように、やはり防衛出動とその間のものが必要だということについての認識は変わらないわけですが、さはさりながら、もちろん潜水艦しか出てこなかったけれども、しかし、実際問題AWACSが飛んで警戒監視を行って、何かがあったときにはさらなるスクランブルというのが行われることになるわけでございまして、そういう意味では、私は、海上警備行動というのが今回海自だけでよかったのか、あるいはこれからの海上警備行動については、空もパッケージにして、さっき申し上げたように予防的なものも含めてやるということが私は必要なのではないかというふうに思いますが、その点について防衛庁長官の御答弁をいただきたいと思います。

大野国務大臣 空につきましては、今先ほど申し上げておりますように、警備行動というよりもむしろ調査研究という立場でやっております。その点につきましては、もう少し事実関係を調べてまた理事会に御報告いたしますけれども、今、やはり総合的に考えていくということは、本当に大事な考え方だと私は思っております。

 そういう意味で、可能性があるものであれば、可能性がないものについてまでとは言いませんけれども、もし、海、空、陸、場合によっては陸とまで言っていいのかどうかわかりませんけれども、可能性のあるものはすべて態勢を整えた警備体制をつくっていく、これが、多様化した脅威が出てくる時代の、私は、本当に新しい考え方として構築していかなきゃいけないな、こんなふうには思います。検討させていただきたいと思います。

前原委員 陸はともかくとして、やはりエアカバー、そういったものは当然ながら予防的な措置としては必要になってくるし、そこまで視野に入れて海上警備行動は発令しなきゃいけないと私は思いますので、ぜひ今後は、私は、パッケージで海上警備行動を発令されることが望ましいということだけ提案をさせていただいて、ぜひ御検討をいただきたいと思います。

 次に、私が質問させていただきたいのは、防衛大綱あるいは次期防の議論がなされて、お金の話とか、あるいは陸を何人にするとか、そういったお金の話が先行しているということについては、私は極めて問題だというふうに思っております。

 それは、限りある財源の中でどう捻出をしていくのかということは確かでございますけれども、ただ、やはり哲学というか、国家としての理念がなければいけない。その哲学、理念というのは、領海、領空、それから領土は当然のことながら、排他的経済水域を含めた日本のいわゆる主権というものを実効支配するというまず基本がなければいけないというふうに私は思っております。

 先ほど、海のみならず空の海上警備行動の話もさせていただきましたけれども、今の段階で、日本の国土は世界の国土面積の五十九位、しかし、排他的経済水域を入れると世界第六位という広大な面積でありますけれども、その面積を実効支配するということが海上保安庁並びに自衛隊の責務であるというふうに私は思っておりますが、その考えについて、防衛庁長官、どう考えられますか。

大野国務大臣 海上を含めた、海を含めた日本の守り、これは海上保安庁そして自衛隊の仕事だ、責務だ、こういうお考え、全く賛成でございます。

前原委員 先ほどお金の話をしました。日本は、莫大な長期債務、そしてまた単年度予算でも四割を超える公債比率、大変財政が厳しい。

 しかし、別に中国と事を構えるという意味ではありませんが、まさに東シナ海あるいは今回の海洋区域、海洋におきましても、中国のプレゼンスというものがどんどんどんどん高まってきているというのは、これはもう厳然たる事実でございます。そして、中国はというと、高いときで年率一〇%を超える経済成長率、防衛費につきましても一〇%をこれまた超える二けたの伸び率で軍事費をふやしている。そしてまた、装備を充実させている。

 となると、先ほど防衛庁長官がおっしゃった、海の守りのみならず空の守り、日本の領海、領土、領空、そして排他的経済水域、それらの上空も含めて、本当にこのままで主権国家日本としての権益というものは実効支配できるのかどうかということが、今後私は、かなり難しくなってくるんではないかと。もちろん、アメリカとの同盟関係があって、それを、足らざるところはカバーしなきゃいけない部分は出てくるのは当たり前でありますが、しかし、そういう観点の中で、まさに防衛大綱を見直しをして、そして次期防というものに備えるという考え方がなければいけないんではないかと思うんですね。

 そういう視点をちゃんと本当に踏まえて、しっかりと防衛大綱の議論をされているのかどうか、あるいは、次期防のその装備の内容についても検討されているのかどうか、その点について御答弁をいただきたいと思います。

大野国務大臣 まず、防衛大綱についての議論の焦点でございます。

 これは、やはり安全保障環境が変わってきている、したがって、あらゆる危機、ミサイル防衛から島嶼防衛、あるいはゲリラ、テロ、いろんな場合がある、そういうことで、あらゆる脅威に対して対応できるようにやっていきましょう、こういう観点が一つあります。

 それからもう一つは、やはりそれについて実効的に、多機能弾力的であろうとしても、弾力的というのは、すなわち、今申し上げたいろんな機能を積み上げていけば大変な装備になってしまう、だから弾力的に対応していきましょう、そしてそれについては実効性のあるものにしていきましょう、こういう観点が一つある。

 それからもう一つの観点は、まず、日本の国、自分自身で守っていきましょう、そしてその次には、同盟国との関係を重視していきましょう、最後は、私はやはり、国際協調を重視していきましょう、つまり、世界の平和は日本の平和なんだ、こういう観点を十分取り入れていかなきゃいけないんではないか。したがって、御存じのとおり、国際業務を本来任務にしていくことも例の懇談会のリポートでは示唆されているわけでございます。

 まさにそういう観点から議論を始めるべきである。財政が厳しいのは大変よく我々はわかっているわけでありますけれども、財政という切り口からではなくて、やはりそういう日本を取り巻く安全保障環境の変化、どこに力を入れていったらいいのか、こういう安全保障、防衛というものをどう考えたらいいのかというところから入っていって、後、その中で効率化していくというか、節約できるところは節約していこう、私は、そういう観点から安全保障会議でも参加させていただいて議論をさせていただいています。その点は全く先生のお考えと同じではないかと思っています。

前原委員 官房副長官と防衛庁長官にいま一度決意を私は聞かせていただきたいと思うんですが、内閣として、予算の総合的な調整をされるお立場の一人だろうと思いますので、ぜひ、その哲学というか基本理念は、私は押さえなきゃいけないと思っていますので、その点についても官房副長官には御答弁いただきたいと思うんです。

 日本の海洋権益を含めたいわゆる日本としての主権の維持、そのための実効支配、そしてその上空の制空権、こういったものは、まさに先ほど防衛庁長官がおっしゃったように、今後もみずからで守り抜いていくという国の構えですよね、それをこれからも維持していくということが基本にあるのかどうなのか。その点において、私は、防衛予算というものの柱が固まってくると思うんですが、私は、それはぜひ守り抜いていくべきだ、海洋権益を実効支配し、その制空権を確保し続ける、そのことの政府としての意思をもう一度、官房副長官も含めて、防衛庁長官にも御答弁をいただきたいと思います。まず、官房副長官から。

大野国務大臣 もう申し上げることはありません。全くおっしゃるとおりでございまして、本当に御支援をいただいてありがとうございます。そういう観点から私自身は頑張ってまいるつもりでございます。

杉浦内閣官房副長官 大野長官のおっしゃったとおりでございまして、先生のおっしゃるとおり、予算といいますか、財政は厳しい中ではありますが、おっしゃるような趣旨で我が国の防衛を全うし、権益を維持していくための費用は惜しんではならないと思います。

 ただし、合理化すべき点は多々あると思いますので、その点は防衛庁の方におかれても十分取り組んでいただきたいし、予算は総額は抑制的であらねばならない、そう考えております。

前原委員 時間が参りましたので、これで終わりにいたしますが、もちろんむだは削らなきゃいけない、合理化できるところは合理化しなきゃいけない。しかし、先ほどもお二人が御答弁いただいたように、相対的に、近隣諸国が軍事費を増額していく中で、日本の領土のみならず、海洋権益を含め、またその制空権も維持していくというのはなかなか大変なことだと思いますが、それはしっかりとやっていくということを、政府一体となって取り組んでいただきますように、そして我々もそのことについては、野党という立場ではありますけれども、しっかりと側面支援していくということを申し上げて、私の質問を終わります。

小林委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 きょうは、国の安全保障に関する件、中国原子力潜水艦に関する領海侵犯事案について質疑をさせていただきます。

 まず冒頭、防衛庁長官は日米防衛首脳会談をやってこられた、そして帰国後の初の委員会でございますので、それについて、若干、最初に聞かせていただきたいと思います。

 まず、ミサイル防衛は、開発、生産段階に入れば問題が出てくるので、日米安保体制の効果的運用として武器輸出三原則の見直しを検討している、これはラムズフェルド国防長官との首脳会談で言われたというふうに報じられておりますが、この事実確認をしたいと思います。

大野国務大臣 まさに、いろいろな意味で、安全保障体制を同盟国と共有していく、こういう考え方は大事だと私は思っております。

 その中で、武器輸出三原則、もちろん日本の平和のメッセージとして昭和四十二年から武器輸出三原則という考え方をとってきております。しかし、ミサイル防衛という時代になってきまして、ミサイル防衛の開発、生産ということになってまいりますと、今、技術ということだけではアメリカとシェア、共有しているわけでありますが、やはり開発とか生産になってきますと、まさに武器輸出三原則に抵触するようなことになってまいります。

 そういうことを念頭に置きながら、今先生がおっしゃったように、ラムズフェルド国防長官との話の間で、今、日米で技術共同研究をやっているミサイル防衛については、やはり開発段階、生産段階になったことを考えた上で、念頭に置いて、今先生御指摘の、三原則の緩和を検討している、こういうことを申し上げたわけでございます。

武正委員 これも今のそうした記事の中でも指摘をされるところでありますが、例えば日米共同技術研究、これは覚書を交わして、MDの研究をされている。今年度予算措置をしたミサイル防衛とは違う、次の、ある面、次世代型のMDであるというお話でありますが、これは、聞くところでは、やはりアメリカ本土に直接飛来をするような、さらに高いところでとらえるような防衛技術であるというような報道もあるわけですが、これから開発、生産、そしてまた、その開発された迎撃ミサイルが米国から第三国に、いろいろとケースが考えられていくわけなんですけれども、この武器輸出三原則の見直しということの御発言が、ある面、無原則に広がっていく危惧を覚えるところなんですが、その点はいかがでしょうか。

大野国務大臣 例えば、アメリカに武器輸出をすると、そのアメリカからまた場合によっては紛争地域にまでそれが輸出されていくような場合を御想定なさっての御質問だと思います。

 私はやはり、平和国家日本として、平和のメッセージを世界に出し続けてきたわけでありますから、そういうことが起こらないように、そういうことについてはきちっと、第三国には移転しないとか、そういうことについても皆さんに御議論をいただいて決めていただきたいな。その前に、もちろん武器輸出三原則についてこれを緩和するかどうか、これはやはり議論していただかなきゃいけない問題でありますけれども、私は、新しい時代の流れの中で、少なくとも同盟国とはそういう問題をやっていかなきゃいけない。

 その場合の問題として、今武正先生がおっしゃったようなポイントについてはやはりきちっと歯どめがかけられなければいけないな、こういうふうに思っていますが、この点はやはり十分議論をしていかなきゃいけないなと思っております。

武正委員 この議論の中では、防衛費のコストアップ解決のためには共同研究やむなしというような議論も出てくるんですね。ただ、これは国内防衛産業の納入先が防衛庁に限られているということもあるんですが、やはり入札とか選定とか、これはいろいろと会計検査院の指摘を防衛庁は受けているというところも含めて、まだまだ改善の余地があろうというふうにも考えますし、また、日本の防衛技術を育成しなきゃいけない、こういった議論もあるんですが、十一月二十二日の東京新聞には、次期主力戦闘機を選定へ、米FA22などをF4後継というような一面の記事が出ておりますが、「防衛庁、国産眼中になし」という小見出しも出ているわけですから、これはまた、ここのことが本当だとすれば、これの理由とすれば矛盾も出てこようというふうにも考えるところでございます。

 また、これはアメリカでも指摘をされておりますが、いわゆる次世代型は、先ほど言ったように米国本土対象のMDということで、新システムは一兆円の倍以上という指摘があったり、また、MD関係予算は〇五会計年度で百億ドルでありまして、今後五年間はほぼ同規模の支出ですが、システムを稼働させた後の維持管理コストは含まれないということで、開発や維持のコストは増加し続ける。そういった意味では、このMD開発コストを日本に負担してほしいという米国事情が実はこの背景にあるのではないかな、こういうふうに私は考えるところでございます。

 これは後ほどの、今回の中期防の見直しあるいは防衛大綱の見直し、ここでやはり、MDありきのために陸自、海自、空自が縮減をしなければならない、先ほど来同僚委員が指摘をされているところの、本当にこのMD導入ありきという昨年の閣議決定、本当にいいんだろうか、こういったことを今回の武器輸出三原則見直しの防衛庁長官の発言からも考えるところでございます。

 そういった意味で、また、こうした発言もされているんですが、ミサイル迎撃については「「防衛出動」閣議経ずに」「来年、法改正」、これはやはりシビリアンコントロールの点からも問題ありというふうに考えるんですが、この点はやはり、こういった発言をたしかワシントンで記者会見か何かでされているようですが、その事実確認と、内容についての真意をお聞かせいただきたいと思います。

大野国務大臣 ミサイル防衛の導入ということになれば、そのまま放置しておくわけにはいきません。ミサイル防衛をどうやって運用していくか、このこともきちっと考えていかなければいけない問題であります。

 御存じのとおり、ミサイルというのは発射されて十分程度で日本に攻撃してくる可能性が、可能性というのは、十分以内で来るわけでありますから、その間、防衛出動の場合の安保会議、閣議を経てということになるとこれは可能性が全くなくなる、そういうふうに、もう相手のミサイルの攻撃を受けた後になってしまう可能性が大でございます。したがいまして、そういうことはきちっと今の段階からいろいろな意味で考えておかなきゃいけない。

 その場合の問題点として、やはり判断するという問題、それからそれをシビリアンコントロールという要素でどういうふうに考えていくか。それは決断と責任の問題になりますけれども、そういうシビリアンコントロール、責任論ということも考えながら、きちっと運用体制を検討しておかなきゃいけない、できればやはりそういう体制をつくって法制化していくことが安心のもとになるのではないか、そういう意味でワシントンでは話をいたしました。

武正委員 まさに決断と責任というお話でございまして、これは後ほどの潜水艦事案でも出てくるところでございます。

 海上警備行動が、要は閣議を経ずに、安保会議も経ずに、官房長官から首相の承認を得れば発令ができる、こういうような体制が整備されていたにもかかわらず、三時間も経過した。まさに、今回のミサイル迎撃、防衛出動、閣議を経ずに法改正をということもやはり同じようなことが言えるのではないか。その前提として今回の潜水艦事案は大変参考になってくるというふうに思います。

 ただ、このミサイル迎撃については、まず七分から十分というお話でしたけれども、やはり、この間もございましたように、ミサイルへのエネルギー充てん、それを事前に察知する等、あるいはミサイルの移動等、事前からそれなりの、いろいろとこれは米軍の偵察衛星等からの情報もあるといったこともいろいろ考えていくと、まだまだいろんな形で、シビリアンコントロール、念には念を入れているということの、それこそ今長官がおっしゃったように、あるいは同僚委員も言っておりますように、私は、本委員会なりあるいは国会での議論、この点をもっともっと深めていく必要があろうかと思いますので、ぜひ防衛庁、政府からの説明責任を果たしていただきたいというふうに考えるわけであります。

 ラムズフェルド国防長官は、まず配備、後で改良するといった持論の持ち主というふうに聞いているんですけれども、やはりこれは米側での指摘で、二〇〇二年末以来、いわゆるミサイル迎撃の迎撃実験をしていない、もう二年間していないということで、それこそ、MITのルイス教授の記事も出ておりましたが、運がよければ迎撃できるかもしれない、こういった指摘がある中でのMD導入。私は、やはりもっともっと日本の防衛、安全保障としてしっかりと考えていくべきではないかなと。昨年の閣議決定の見直しも、改正も視野にというふうに私は考えるところであります。

 そこで、今回の防衛庁長官のワシントンでの会談でこういったことも言っておられます。いわゆる米軍再編について、特に沖縄の負担軽減に十分配慮してほしい、国内外への移転が考えられると言っておられますが、そもそもSACO合意というのがもう八年前である、それこそこれはSACO合意で、沖縄の負担軽減ということであのときにやるべきであって、ここで米軍再編に乗ってやろうというのは、やはり日本政府の怠慢、そのそしりをやはり免れ得ないというふうに私は考えるんですね。この点について、どうでしょうか、どのようにお考えですか。

大野国務大臣 日本政府は、あらゆる機会をとらえて負担の軽減ということを訴え続けております。しかしながら同時に、この表裏一体をなしているのは、日本の防衛についてアメリカの存在という抑止力が落ちちゃいけない、こういう問題があるわけでございます。当時は当時として、精いっぱい沖縄の負担の軽減ということをやった、それがSACO合意であると私は信じております。

 ただ、新しい時代、特に安全保障環境が世界的に変わったということと、もう一つは、軍事科学技術力が大幅にふえたという、この面をもってすれば、機動力が大変高まっているということも見逃せない事実でございます。機動力の高まりによって、もしこの負担の軽減ということができれば、それは当然やっていかなきゃいけないし、これは、全体のアメリカ軍の再配備でございますから、再配備全体の中で何とか沖縄を中心とする負担の軽減をなし遂げていきたい、こういう思いでそういう話をしているわけであります。

武正委員 きょうは民主党の外務・防衛の部門会議で軍事アナリストの小川和久先生に来ていただきましたが、そのときも、SACO合意のときに、今回、普天間のヘリ墜落もございました。あのときにヘリが普天間で飛べないようになぜできなかったのか、まずそれを先にすべきではなかったのか、これはやはり政府も怠慢であり、この国会としてもやはりそのそしりを免れ得ないというような御指摘もあったわけであります。これは、やはり私は重く受けとめるべき指摘だというふうに思っておりまして、私は、この沖縄の負担軽減、米軍再編と絡めていこうという政府の姿勢、理解しますが、本来はやはり八年前にやられなければいけなかったというふうに考えるわけでございます。

 それで、ちょっと外務副大臣にお聞きしたかったんですが、時間の関係で次の質問、飛ばしまして、沖縄のことが続きますので、防衛庁長官にお聞きしたいんです。

 資料の十六、十七、十八ページに、ようやくいただきました米軍の沖縄ヘリ墜落事故の和訳、法務部長の今回の調査報告書に対しての承認というか、最後の一番大事なコメントですよね。これは、米海兵隊第一海兵航空団のカーソン中佐が調査報告書五八三〇を出した、分厚いものを出して、それに対して十月一日付の法務部長のコメントでございます。これは、三ページ、最後につけました。

 それで、この十八ページ、一番最後のページですが、十四番、「地上にいる民間人への危険を最小限とするため、自らをより大きな危険にさらすことを知りつつ行った彼らの決定及び行動につき、本事故に関係する搭乗員は称賛される。」ということですね。

 これは、当初から新聞記事等で報じられておりました。要は、運転がうまかったとか、うまく避けてうまいところに落ちたとか、そういったことがあって、みんな、けしからぬ、何だあの発言はということで、再三再四指摘をしてきたわけです。長官、一番最後の十四番の上から二行目なんですね。「本事故に関係する搭乗員は称賛される。」と。

 これが調査報告書の評価として法務部長名で添付されて、防衛施設庁さんが責任をやっておられる日米合同委員会事故分科委員会の合同検証もやりませんので、これが唯一の、唯一と言っていいほど大事な今回の同型機ヘリの飛行再開の根拠とされた資料です。

 この運転が称賛される、飛行が称賛される、こういったことが書かれていることを、私はやはり日本政府として、これはいいんだろうかと。日米刑事犯罪、その管轄権の問題でも主権侵害ということで、一体ここは独立国なのかということをあのときみんなが疑問に思った。そして、こういった発言がたびたび出て、みんなが怒った。そして、今回、調査報告書にまたこうしたことを書いて出してくる。

 防衛庁長官、このことをどうお考えになりますか。

大野国務大臣 まず、この書簡でございますけれども、これは、ティーセンというのは上司ですか、上司が書いたものであります。ティーセン、アメリカ軍の上司ですね。アメリカ軍の上司が書いたものであります。上官ですね。

 そういう意味で、これは上司が書いたものとして受けとっていかなきゃいけない、これは私そう思います。それから、県民感情への適切な必要があるという意味ではどうかなという御議論もあろうと思いますけれども、この点は、上司、上官が書いたものである、こういう受けとめ方を私はしております。

 御指摘の箇所の直前の段落においては、起こるべき事故ではなかったということも書いてあろうと思いますし、適切な指導監督により防げたものであるということも述べられているようでございます。そういう意味では、事故の深刻さについての認識が示されておる。御指摘の記述があったからといって、これは上官の意思であって、これは上官の意思として存在しておりますから、これを否定するわけにはいきませんけれども、事故の原因それ自体については、別途、別の角度から考えていかなきゃいけない、当然のことであります。

 事故の重大性が、これがあったからといって否定されたり過小評価されたりするような問題ではない。我々は、この書簡はあくまでも上官の書いたものとして認識していかなきゃいけない、このことは申し上げたいと思います。

武正委員 今のこの資料を、十六ページを見ていただきたいんですが、これは法務部長名で、カーソン中佐の調査報告書についての第一承認と。要は、調査報告書が正しいかどうかをこの人が評価しているんですよ。いろいろ勧告は、これは不適切だと、例えば十七ページの、勧告三は不承認。これは、整備をした人が協力してくれたから称賛に値するものであり、品性を示すものだけれども、免除しちゃまずいと。三名のうちの一名ですね。当たり前ですよね。不適切であると。

 こういったことをこの人が評価して調査報告が、米海兵航空団におけるいわゆる内部監査ですよ、それの評価でこれが出て、確からしさということで出てきている。その確からしさを与えている、評価を与えている法務部長が、このような称賛すべきであるということを書いていることを、日本政府として、先ほど、問題ないということでよろしいんでしょうか。

大野国務大臣 よく読ませていただきますと、「自らをより大きな危険にさらすことを知りつつ行った彼らの決定及び行動につき、本事故に関係する搭乗員は称賛される。」と。

 これは、事故原因と切り離して、搭乗員の姿勢を述べたものだと私は理解しております。事故原因は事故原因としてきちっと把握していく、当然のことであります。その点については私は毅然とした態度で調査を進めてもらいたいと思いますけれども、ただ、搭乗員は搭乗員として、この事故が起こった際にきちっと対処したな、これが上官の評価である、こういうふうに理解しておる次第でございます。

武正委員 これが日本側の今回の事故原因、再発防止の最大の証拠というか資料になっているんですね。それで、事故分科委員会で、今これをもとに日米合同委員会の勧告をつくっておられるわけですよ。そして、事故分科委員会では、省庁の専門家は現場あるいは機体検証に行かせておりますが、昭和五十二年F4ファントム横浜墜落のときのように、民間の専門家を交えた日米合同検証もやらずに済ませているわけなんですね。

 これは、原因究明は、整備不良だということになっての資料ですね。だから、運転がうまいと書いてもいいじゃないかと防衛庁長官は言われますが、本当にそうなんでしょうか。我々からすれば、原因究明を、本当に整備不良かどうかというのを確かめるための資料ですね。本当にそうなのか、整備不良なのかとこっちがある面疑ってかかるというか検証しようというのが日本政府の立場なのに、いや、もう原因究明、原因は整備不良だから、こうやって運転がうまいと書いたっていいじゃないかと、それを日本政府の防衛庁長官、事故分科委員会の担当責任者、最高責任者が言っていいんでしょうか。私は甚だ疑問に思います。これはもう答弁は結構でございます。

 さて、極東条項見直し発言撤回についてもお伺いしたかったんですが、ちょっと時間がないので、外務副大臣。

 外務省が見解を出したと。極東条項は、「日本と極東の安全に資する実態があれば問題ない」、外務省の見解というものが新聞にこう報じられているんですけれども、これは外務省の見解として事実なのか、あるいはそうした見解をもうまとめられておられるのか、あるとすれば、それをお答えいただきたいと思います。

逢沢副大臣 私も、十一月十二日の朝日新聞を見まして、大変びっくりをしたわけであります。確かに十二日の朝日の朝刊に大きな記事が出ておりました。私も、その記事が出たということはその段階で承知をしたわけでありますが、ただ、米軍再編をめぐる外務省の見解がこうこうこういうふうな形でまとめられたといったような事実は、新聞には報道されておりますけれども、そういった事実は省内では全くない、当省として関知するところではないということを明確に申し上げておきます。

武正委員 私は、この二年間、あるいは昨年のブッシュ声明、グローバルな軍事体制の見直し、そして日米当局の担当者が米軍再編の協議を進めながら、国会でいわゆる説明責任を回避してきたということは、甚だ問題が多いというふうに思っています。かえって日米安保体制の不信を招いているのではないかというふうに考えるわけですね。

 これは、防衛庁長官、これまでも前任の防衛庁長官を初め外務大臣にたびたび国会で、米軍再編はどうなんですか、どうなんですか、協議はどうなんですかと言っても、なかなかその内容を明かしていただけません。こうした対応でずっと来ていること、いかがでしょうか。

 私は、もっとオープンに、国会に対して説明責任を果たしていくと。先ほどの、当初の武器輸出三原則の問題、あるいはミサイル防衛に関しての防衛庁長官の「「防衛出動」閣議経ずに」というようなことも含めて、とにかく議論を国会でオープンにしていくためには政府の説明責任は欠かせないと思うんですが、この二年間、米軍再編についての説明責任が欠けていたという御認識、あるいはそのことはやはり問題だというふうにお考えになるのかどうか、お答えいただけますか。

大野国務大臣 お答えのポイントは、説明責任は絶対必要であるし、これは果たしてまいるつもりでございます。

 ただ、トランスフォーメーションの問題について申し上げますと、まず、いきなり個別具体的な話が出てきて、それについてどうかということになりますと、これはいろいろな意味で問題であります。したがいまして、まず安全保障に対する戦略対話が必要である、あるいは日米両方の役割、任務についてきちっと議論しようじゃないか、こういうことで、個別具体論と同時にそういう問題について今議論している最中でございます。

 最後の、個別具体的な問題でありますけれども、何といっても、安全保障問題、日本の防衛、安全保障というのは、地元の皆様の御理解、御協力がなければできるわけありません。したがいまして、個別具体論のところにつきましても、あるいは安全保障対話につきましても役割分担の問題につきましても、すべてでそうでありますけれども、私は説明責任を果たしてまいりたい、このように思っております。

 ただ、問題は、個別具体の問題につきましては、一つの地域の皆さんときちっと話し合いをしていかなきゃいけない。まだその点についても具体的な案ができているわけではありません。具体的な案ができる前にそういう議論を始めますと、もう本当に収拾がつかなくなる。したがって、そういう問題については、今説明を控えさせていただいているわけでございます。そういう意味で、私は、ラムズフェルドに会いました際も、地元の皆様の御理解、御協力が必要なので、そういう御理解をいただくためには、やはり個別的、具体的な問題につきましては時間がかかりますよ、このことは申し上げてまいりました。

 そういうことで、今申し上げましたように、もちろん安保対話、それから役割分担、個別具体的な問題、すべて私は説明責任を果たしてまいるつもりでございます。

武正委員 それでは、ようやく潜水艦の事案に入らせていただきますが、台湾の陳水扁総統から日米両国政府に通知をした、台湾が今回の潜水艦事案をいち早く察知をして通知をしたんだという報告がありますが、これは事実かどうか、防衛庁、外務省。――外務省から。

逢沢副大臣 台湾の陳総統が、先般の潜水艦の事案について、実は台湾側が事前に情報を得ていた、そのことは日本側に通報した、そういうことを発言されたということは報道で知ったわけであります。しかし、政府として、そのような事実はないということを申し上げておきたいと思います。

今津副長官 防衛庁としては、そのような事実は全く承知いたしておりません。

武正委員 承知しておりませんというのは、なかったということですか。(今津副長官「はい」と呼ぶ)

 続いて、先ほど、MD閣議決定、潜水艦事件とのそごはないかというのは、これは同僚委員も指摘をしておりますので、ちょっと質問を飛ばさせていただきます。

 ただ、やはり、例えば海上自衛隊については、MD導入によって規模の縮小を図る云々かんぬんがありますので、先ほどちょっと私申し上げましたが、防衛庁長官、昨年のその閣議決定見直し、改正、こういったことが私は必要ではないかと。陸自の四万人削減ということで、きょうは陸自一万人にというような報道も出ていましたけれども、どうなんでしょうか、MD導入ありきということが、いろいろと本当によいんでしょうか。この点、防衛庁長官、どうですか。

大野国務大臣 御質問は、MDを導入したために予算上他に影響しているではないかというふうにとらえてよろしゅうございますか。(武正委員「はい」と呼ぶ)

 日本の防衛というのは、やはり多岐多様な脅威に対して対処していかなきゃいけない、このことはもう武正先生十分御認識いただいていると思います。ミサイルという脅威に対してどう対処するか、それはミサイル防衛ということしかありません。それからまた、島嶼部あるいはテロに対してどう対処するか、あるいは潜水艦に対してどうやっていくか。この新しい安全保障環境の中で、いろいろな多様な脅威が出てきているために、これはもう多様な対応をしていかなきゃいけない。これはまさに多機能弾力的な、しかし実効的に対処していかなきゃいけない、こういう問題で、もう日本の防衛、安全保障問題、極めて新しい歴史の曲がり角に来ていると言っても言い過ぎでないぐらい新しい発想法でやっていかなきゃいけない。

 その中で、ミサイルということを日本の防衛問題、安全保障問題としてどういうふうにとらえていくか。やはり私は、ミサイル防衛、これはもう本当に一瞬にして日本国が攻撃されるわけでありますから、きちっと対処していかなきゃいけない。そのためにいろいろな工夫をしてやっていくべきである。これがもう一言で、先ほどから何度も申し上げておりますけれども、多機能弾力的な防衛構想ということで申し上げているわけでございます。

 私は、ミサイル防衛を決定した、これは日本として正しい方向である、このように思っております。

武正委員 ちょっと潜水艦の方にまた移らせていただきますけれども、先ほど来、防衛庁長官、六時半に秘書官から連絡を受けた、八時四十五分までなぜ二時間十五分も海上警備行動発動を要したのか、総合的に反省、総合的に検証というようなお話でございましたが、ちょっとそこら辺、ずうっと質問を飛ばさせていただきます。先ほどもう同僚委員から指摘がございますので、重複を避けます。

 そこで、官房副長官、お控えをいただいておりまして、ありがとうございます。十一月十二日、外務委員会で、私のやはり今回の案件の質疑に関して、やはりお手元に資料で内閣官房のフローチャート、十五ページそれから十四ページ、十四ページの方がわかりやすいですね。これを指し示しまして、内閣総理大臣、官房長官、官房副長官への速報、報告、指示、こういったものが非常に時間がかかった、そういった指摘をしたときに、そこに報告があって指示がある、ある場合もあるというふうに書いてあるということは、ない可能性もあるというふうに読めるわけでありますが、きょうは、お手元にこれまでの閣議決定と、それから細目について用意をしておりますので、どこに、危機管理監から政治家であるお三方、総理大臣、官房長官あるいは官房副長官、まあ事務方もいらっしゃるのかもしれませんが、報告、指示、やらなくてもいいときもあるんだよというのが書いておられるんでしょうか、御指摘をいただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 お答え申し上げます。

 先日は、ちょっと時間がなくて、詳しく御説明申し上げられなくて、先生お示しのチャートに基づいて御説明申し上げたわけでございます。

 お示しの資料、このチャートの中の速報という部分につきましては、お配りいただいた緊急事態に対する政府の初動体制について及びその後ろに細目が配られておりますが、そこに明確な規定があるわけではございませんけれども、関係省庁等から緊急事態に関する情報を入手した場合には、内閣情報調査室が速報を第一義的に行うということになっております。

 その初動体制については、閣議決定の「記」の1の(3)でございますが、「内閣危機管理監は、緊急事態に関する情報を掌握し内閣総理大臣及び内閣官房長官へ報告するとともに、必要な指示を受ける。」こういうふうに相なっております。

武正委員 だから、必要な指示を受けるというのは、受けなくていい場合があるということでしょうかということを聞いたんですが。

杉浦内閣官房副長官 総理大臣及び官房長官は、必要な場合には指示を行うということでございます。

武正委員 必要でない場合は指示を行わないということですか。

杉浦内閣官房副長官 今までの例では、過不足なく指示が行われていると承知しております。

武正委員 ただ、今回、第一報が八時半に首相のところに行っていますね。先ほどすぐ連絡をするんだということでしたけれども、三時間後に首相のところに行っているんですよ。ちょっと先を急ぎます。

 そこで、お手元の初動対処マニュアルなんですけれども、それぞれちょっと比較をしていただきたいんですね、細目と。

 三ページの1の(3)、「官邸連絡室を設置」ということで、今行われているものですね。「内閣危機管理監は、情報の集約、内閣総理大臣等への報告、関係省庁との連絡調整を集中的に行う必要がある場合、官邸連絡室を設置する。」そして、三行飛んで、「事態の推移に応じ、」「対策室に改組し、」とあるんですね。

 これは平成十年につくった初動対処マニュアルなんですが、十二ページですけれども、5番の(2)、同じようなところなんですが、「内閣危機管理監は、緊急事態等に関する情報を収集整理し、官邸内の報告・連絡に当たる必要がある場合、」官邸連絡室を設置する。さっきの「情報の集約、内閣総理大臣等への報告、関係省庁との連絡調整を集中的に行う必要」、今はそうなってしまうんですが、非常にハードルが高くなった書きぶりですね。

 同じく十二ページ5の(5)、これはどうやったら対策室に変えられるか。今回、一時間二十分、連絡室から対策室への昇格がおくれたんですね。これを読みますと、「内閣危機管理監の判断により、官邸連絡室を官邸対策室に改組する。」ところが、今のものは、さっき読みましたが、三ページ1の(3)、「事態の推移に応じ、」と。つまり、「内閣危機管理監の判断」から「事態の推移に応じ、」ということで、そこで責任の所在もあいまいになっているんですね。

 一方、官邸対策室を見ますと、十一ページ5の(1)ですね、「緊急事態等に対する初動対処を行う必要がある場合、」今回緊急事態なんですね、いわゆる領海侵犯は。このことは資料にも出ておりますけれども、それがやはり、四ページの「官邸対策室」、3ですね、「内閣危機管理監は、緊急事態に関し、情報の集約、内閣総理大臣等への報告、関係省庁との連絡調整、政府としての初動措置の総合調整を集中的に行う必要がある場合、官邸対策室を設置する。」と。さっきの「緊急事態等に対する初動対処を行う必要がある場合、」ということから、やたら書きぶりがふえてしまっている。

 私は、やはり危機管理体制というのはシンプルなのがいいというふうに思うんですね。初動は大変混乱していますので。それがこのように複雑になっているだけでなくて、危機管理監も実は判断が下せない、責任の所在をあいまいにしているということで、私は、ここに実は今回の海上警備行動がおくれた原因があるのではないかというふうに考えるんですが、防衛庁長官、どうでしょうか。

大野国務大臣 問題を制度としてとらえるか、それとも運用面でとらえるか、こういう問題の御指摘かと思います。

 今、危機管理監の組織、これは制度の問題ですが、もしそういう面で反省するところがあれば、やはり反省していかなきゃいけない。あるいは海上警備行動というのも、先ほど議論が出ましたけれども、危機管理という面でとらえていくのかどうか、こういう問題も出てこようかと思います。

 いずれにしても、もう少し勉強させていただいて判断していきたい、このように思っております。

武正委員 官房副長官、どうですか。

杉浦内閣官房副長官 今の点は、新官邸ができまして、下に危機管理センターができた、そこへ情報が集中することになった事態を受けて改正したものでございますが、必ず連絡室を設けて対策室に格上げするんだというふうになっているわけでもございません。いきなり対策室を立ち上げた場合もございますし、危機の内容によって、まず情報を集める連絡室からという場合もございましたし、地震のようにはっきりしている場合には対策室ということでやった場合もあるわけでございまして、御指摘の点、制度がこうなっているから対応がおくれたのではないか。私どもは、対応は必ずしもおくれたとは思っておりませんけれども、こういうふうになっているからどうこう、おくれたというふうには考えておりません。

武正委員 先ほど長官は、とにかく反省もしなきゃいけない、検証もしなきゃいけないということでございますが、やはり私は、初動の段階で危機管理監も責任から外れている、要は、責任の所在がよりわからなくなっている、ブラックボックス、官邸がですね。

 私はやはり、官房長官、官房副長官、首相、これが最初に速報が行って、指示がない場合もあるじゃなくて、ちゃんと指示する、先のその初動の段階で判断をかむ。まして危機管理監も判断にかまなくなっている、ここが問題だと思うんですね。私は、政治家がやはり判断にかむというふうに思うんですが、最後、長官、いかがでしょうか。

大野国務大臣 繰り返したお答えになりますけれども、やはりシステムがどうこうという問題と運用がどうこうという問題、二つあると思うんですね。運用の改善という面から即応性ということを考えることもできるはずであります。

 それから、システムがどうかというと、私、やはりシステムについては勉強しないと、いきなりシステムがどうのこうのという話はしかねます。少し勉強させていただきたい、このように思います。

武正委員 以上で終わります。ありがとうございました。

小林委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十七分散会


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