衆議院

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第8号 平成17年4月26日(火曜日)

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平成十七年四月二十六日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 小林 興起君

   理事 赤城 徳彦君 理事 岩屋  毅君

   理事 高木  毅君 理事 仲村 正治君

   理事 池田 元久君 理事 大石 尚子君

   理事 渡辺  周君 理事 赤松 正雄君

      石破  茂君    奥野 信亮君

      嘉数 知賢君    瓦   力君

      北村 誠吾君    坂本 哲志君

      寺田  稔君    額賀福志郎君

      浜田 靖一君    古川 禎久君

      御法川信英君    武正 公一君

      津村 啓介君    中野  譲君

      本多 平直君    前原 誠司君

      松本 剛明君    村越 祐民君

      佐藤 茂樹君

    …………………………………

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   参考人

   (岡崎研究所理事)    金田 秀昭君

   参考人

   (慶應義塾大学総合政策学部専任講師)       神保  謙君

   参考人

   (愛知学院大学情報社会政策学部教授)       柴山  太君

   安全保障委員会専門員   前田 光政君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 防衛庁設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)


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     ――――◇―――――

小林委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、岡崎研究所理事金田秀昭君、慶應義塾大学総合政策学部専任講師神保謙君、愛知学院大学情報社会政策学部教授柴山太君、以上三名の方々に御出席をいただき、御意見を承ることにいたしております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、金田参考人、神保参考人、柴山参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 御発言は着席のままで結構でございます。

 念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知いただきたいと存じます。

 それでは、金田参考人、お願いいたします。

金田参考人 おはようございます。岡崎研究所理事の金田でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、時間も限られておりますので、弾道ミサイル防衛を主体にお話をさせていただこうと思っております。

 これは統合運用との関係が深くございますので、もちろんでございますけれども、御質問などございました場合には当然それをお受けするということで考えております。

 お手元に資料が、レジュメがございます。三ページほどのものでございますが、大体これに沿ってお話をさせていただこうと思っております。題しまして「わが国のミサイル防衛のありかた 目指すべきは総合的なミサイル防衛施策(5D)の推進」、なぜ五Dであるかということについては後ほどお話しいたします。これを推進すべきであるという考え方でございます。

 まず、バックグラウンドでございますけれども、これはもう既に御案内のとおりでございますが、ざっと触れていきたいと思いますが、米国のMD構想でございます。

 一つは、米国の戦略転換の背景と脅威評価、あるいは、それに対する米国の新たな核抑止戦略の構築また各国の反応、それから米国のMD構想と課題といった問題でございます。

 御承知のように、冷戦後、核戦略といったものは大きく変化してまいりまして、米国においては、特に核戦略の変遷、それから資源制約、脅威認識、あるいは即応概念といったところで非常に大きな影響を受けまして、もともと新たな核戦略を構築する必要に迫られていた。そこに九・一一テロというものが大きく出まして、これに対しまして、米国としては予測不可能な非対称脅威との戦い、ホームランドディフェンスということになるわけでありますが、最優先課題となったわけでございます。

 その中で、特に冷戦時代の核戦略といったものが今でも有効なのかどうかということで脅威評価をした場合に、ならず者国家、これはちょっと言葉は悪いわけでありますけれども、ならず者国家、ローグカントリーですね、あるいは国際テロといった問題が出てまいったわけであります。

 そういったことを背景といたしまして、米国は抑止戦略の見直しをいたしまして、従来の冷戦時代のいわゆるMAD、ミューチュアル・アシュアード・ディストラクション、相互確証破壊という、米ソ間の理性にのっとった抑止といいましょうか、そういったものから、拒否的抑止、有効な防御それから攻撃、これがなければいけないのだということに変化してまいるわけでございます。

 その具体的な実行といたしまして、新三本柱、核・通常兵器による攻撃、さらに、冷戦時代はどちらかといいますと相互確証破壊の中で置き去りにされておりました防御あるいは基盤といったもので再構築をしていく。つまり、これは、従来の懲罰的抑止から拒否的抑止力の保持ということに変わっていったわけでございます。

 米国のねらい、ロシア、中国のねらい等ございますが、この中で、特に日本が今後考えなければいけないことは、米国の拡大抑止力、いわゆる核の傘でございますね、こういったものに依存するという従来の考え方が本当にそれでそのまま通用するであろうか、戦略環境の変化から見た具体的な検証が、例えば日米間の間でもしっかりと持たなければいけないのではないかというのが私の考えでございます。各種の弾道ミサイル、巡航ミサイル、これが我が国をある日、全く突然に襲ってくるかもしれないというような状況も踏まえて、それでは米国の拡大抑止力がどうなるかということを考えていかなければいけないと思います。

 米国のMD構想でございますけれども、御承知のように、もうこれは特に説明は要しないと思いますが、グローバルに展開する多層防衛システムというものをつくり上げていく、上昇段階、中間段階、終末段階、あるいはそれを取りまとめるBM・C4Iというものがございます。そして、その手法は一挙に十年先のものをつくり上げるということではなくて、できるものからそれを実際に使っていく、スパイラルアプローチという方法をとっております。

 上昇、中間、終末、BM・C4I、いろいろございますけれども、細かい説明は省かせていただきまして、一部は開発段階にございますが、一部はいわゆる初期防衛能力段階、IDCと申しますが、そういう段階に既にあるということでございまして、我が国が今予算化しようとするシステムもその一部でございます。

 その他、政治的課題、経費的課題、道義的課題、将来的課題、そういったものがいろいろございますけれども、ここに書いてあるとおりでございます。

 次に、我が国周辺の脅威、二ページ目でございますが、これをちょっと検討しなければいけない。

 まず、我が国の弾道ミサイル防衛の位置づけでございますが、平成八年に、政府としては日米防衛協力指針の見直し、いわゆるガイドラインでございますけれども、ここでBMDということを明確に打ち出したわけでございます。そして、昨年末の新防衛計画大綱では、防衛力の役割として、弾道ミサイルなど新たな脅威への実効的な対応、こういう文言も明確に入ったわけでございます。

 ここで、我が国周辺の脅威あるいは潜在的脅威あるいは危険要因、脅威ではないということもありますので危険要因ということを踏まえて見ますと、北鮮にはこのようにノドン、テポドンなど、また中国には多種多様な、短距離ミサイルからSRBM、MRBM、IRBM等々、たくさんの種類の弾道ミサイルが、我が国が射程の中に入っているということでございまして、特に中国の場合には、そのほとんどすべてにいわゆるWMDの弾頭が搭載可能であると言われていることは、これは私どもは無視できないのではないかと思います。

 またさらに、最近では、巡航ミサイルの開発等も、これは対艦だけではなくて対地巡航ミサイルというものもうわさされているということには、特に注意を要するということでございます。

 それから、国際テロリストがいわゆる軽易な対艦あるいは対地巡航ミサイル、これを例えば一般の商船に載せたコンテナから発射するであろう、こういう可能性も非常に現実感を持ってうわさされているわけでございまして、ではこういったものに対していかに有効に対処するかという問題が出てまいります。

 我が国の弾道ミサイル防衛につきましては、政府はSMD、いわゆるイージス艦に搭載するシップベースド・ミッドコース・ディフェンス、海上配備型の中間段階防衛というものでございますけれども、これと、それからPAC3、ペトリオット・アドバンスド・ケーパビリティーというものでございまして、現在、航空自衛隊が持っておりますペトリオットにいわゆる弾道ミサイル防衛能力を付したもの、これを十七年度予算以降、導入するということを決しておりまして、つまり、SMD、前方に配置します、例えば日本海などに配置しますイージス艦と、それからホームランドディフェンスといいましょうか、我が国の領土に配置しますPAC3によります縦深防御という態勢をとるわけでございます。

 期待効果はここに書いてありますようなことであるという説明がされておりますが、その中で、特に最近、アメリカのGMDでございますね、グラウンドベースド・ミッドコース・ディフェンスというものでございますけれども、昔、NMDと言っておりました、ICBMなどからアメリカの本土を守るというもの、これについての開発体制がなかなか不備が指摘されておりまして、いろいろな試験をやっても失敗する。こういうことから、どうも我が国が導入しようとするSMDなども非常に問題があるのではないかという論調がございましたが、これは全く別のアプローチで開発をしておりまして、SMDは七回中の六回、迎撃試験に成功している。またPAC3は、イラク戦争で、実戦で証明済みであるということもございまして、そういった心配は当たらないであろうと思っております。

 それから、将来展望でございますけれども、将来脅威に対しまして、防衛庁といたしましては、将来の脅威や関連技術動向を踏まえまして、BMD能力の向上に不断の努力をするということでその意向を示しているというぐあいに聞いております。

 また、関連技術、装備等を考えていきますと、今回導入いたしますSMDあるいはPAC3、これらに加えまして、そのSMDのちょっと先の能力を持ったシステム、それを考えておりますところの日米共同技術研究というものがございます。これは、やはり先ほどのスパイラルアプローチなどという観点からも非常に適するものでございまして、今我が国が有効だと言っております射程千キロメートル級弾道ミサイルに対しさらにその能力を高めると同時に、より能力の高い弾道ミサイルにも対応能力を持ったシステムを展開することが期待できるということで、これは必要であろうかと思います。

 その次、三ページをお願いいたします。

 費用の問題でございますが、ここで詳しくは申しませんけれども、防衛庁がお考えになっておりますシステムを導入いたしますと、当面の経費が四から六千億円、維持経費、研究開発も含めますと、約八年から十年間で八千億から一兆円程度というようなことでございますけれども、これが高いのか安いのかということを考えた場合に、我が国の国民が弾道ミサイルという脅威からまくらを高くして寝られるということを考えますと、ここに幾つか述べましたような手当ても含めまして、いかがなものかなということであろうかと思います。

 さて、最後に、日本の安全保障政策における弾道ミサイル防衛の意義と究極的な方策について申し上げたいと思います。

 我が国が地域核軍備管理・軍縮に具体的に関与し得る絶好な機会を提供しているんだと私は思っているわけでございます。我が国の防衛といたしまして、この弾道ミサイル防衛というのは唯一の対抗策でございます。と同時に、いろいろな昨今の状況から考えまして、米国のいわゆる拡大抑止、核の傘が効かなくなる可能性といったものに対する最小限の担保である、そういう観点もあるかと思います。

 また、日米同盟強化という意味では、在日米軍を直接守る、米国の本土に間接的にせよ影響する可能性を持つということから、米国の拡大抑止履行の担保あるいは双務性向上といったことにつながると思います。

 国際的責務の遂行、それから拡散防止という意味でも、例えば我が国は核クラブの一員になることは決してないと思うわけでございますが、毅然たる弾道ミサイル防衛クラブの一員たるという存在感を持って、この地域におきます核戦略、核軍備管理あるいは軍縮に役立つ国となるということ、それのきっかけを得るんだと思うわけでございます。

 最後に、我が国弾道ミサイル防衛のための総合的なミサイル防衛施策について申し上げます。五Dでございます。なぜ五Dかといいますと、ちょっとこじつけもあるわけでございますが、Dを頭文字にした五つの要素、これを防衛施策と考えております。

 まず一つは予防でございます。ディスエージョンディプロマシー。

 先ほども言いましたように、拒否的抑止力を有する弾道ミサイル防衛クラブの一員として、関係国間協議に積極的に参加するということが我が国として非常に大事ではないか。核とか弾道ミサイルとか、こういったものをタブー視してはいけない、直視する必要がある。そうした中で、我が国として最もふさわしい、国是としてあり得べき形でこういったものを持つということは大事であろうと思っています。

 それからもう一つはディターランスポスチャー、国家態勢でございます。

 通常型の拒否的抑止力、これを持つ。核は持たないけれども、しっかりとした通常型拒否的抑止力を持つ。当面は防衛に専念するが、後ほどお話ししますように、逐次、局限でありますとか拒否といいましょうか、そういったレベルでも持っていく必要があると私は考えておるわけでございますけれども、そういったことをやり、そして国家意思を表明することにより、周辺諸国に対しても、あるいはいわゆる国際テロリストなどに対しましても、抑止効果を発揮するということでございます。

 次の拒否、防衛、局限と申しますのは、いわゆる防衛マターということになるかと思います。

 拒否というものはディナイアルパワーでございますけれども、これは、通常、攻勢防御と言われるものでございまして、昭和三十一年のいわゆる鳩山答弁というものがございますが、こういったものと関連させて考えますと、脅威の変化、米軍の変革、武器技術の向上などなどを考え合わせますと、専ら米国依存の体制にあると。つまり、やりは専ら米国に依存する、盾は日本だ、こういう形だけの体制が、例えば弾道ミサイル防衛ということに関して相変わらず有効なのかどうか、意味があるのかどうかということは考えなきゃいけない。応分の、自前の能力を保有するということも大事なのではないかと思います。

 防衛につきましては、まさに狭義の弾道ミサイル防衛でございまして、積極防衛、防御というものでございまして、ここでやはり大事なことは、日米共同運用を前提とした国家としての自主的措置を担保するということでございます。

 つまり、いろいろなことを考えますと、情報の収集から最終的な発射ということ、いろいろなフェーズを考えてみました場合に、もちろん我が国だけでやる、自助努力をする、これは大事でございますけれども、一方において、いろいろな意味でやはり十分な能力に達するためには莫大なお金がかかる、あるいは相当長い時間がかかるということもあわせ考えますと、やはり当面米国と相当な協力関係を持つ、強固な協力関係を持つといったことを前提にした上で、最終的な意思の判断、それからそれの実行というようなこととしましては、自主的に措置をする、自主的に我が国として判断をする、そういったことを担保する必要があると思います。

 そういったことを含めまして考えますと、最適な運用体制の構築といたしまして、日米共同を前提として考えますと、早期探知、対応、迎撃権の委任、あるいは日米共同の役割分担、あるいは自衛隊間の統合運用、こういった問題につきましていろいろと課題があるということでございます。

 最後に局限でございます。

 これは消極防御、国民保護ということでございまして、国民保護法制を十分に活用し、そして、例えば弾道ミサイルの脅威が高まったというようなときに対する国民への通知、あるいは実際に発射されてしまったというようなことに対する国民への警戒警報の発令、それから事前にマニュアルをしっかりとつくっておいて、そしてそれを国民に周知徹底するというようなこと、これは国家として当然やらなければいけないことであろうか、このように思うわけでございます。

 以上で説明を終わらせていただきます。(拍手)

小林委員長 ありがとうございました。

 次に、神保参考人、お願いいたします。

神保参考人 おはようございます。

 慶應義塾大学で専任講師をしております神保と申します。本日は、この委員会で意見を陳述する機会をいただきまして、委員の皆様方にまず御礼を申し上げます。

 既に金田参考人の方から、包括的な現在のミサイル防衛の計画、そして日本にとっての意味についての御発言がございました。

 私の冒頭の発言の中では、日本が現在推進しているミサイル防衛計画が今後五年から十年にかけてもう一度大きな戦略的な構想の見直しを求められるであろうということをまず第一に発言させていただきます。その次に、本日の大きなテーマでもあります今後の自衛隊及び日米における統合運用体制について、私の見方を陳述させていただければというふうに考えております。

 まず最初に、既に金田参考人の方から発言がございましたとおり、現在、日本は平成十五年十二月十九日の弾道ミサイル防衛システムの整備の閣議決定に従いまして、十六年度、十七年度の予算の中において、既にSM3、SMDというお話がございましたけれども、海上のミサイル防衛システムの取得、そして航空自衛隊が運用する予定のPAC3ミサイルの取得という多層的なミサイル防衛の取得という政策判断にコミットしております。そして、その運用システムの整備ということにおいて、これも航空自衛隊が現在運用しております自動警戒管制組織、これはバッジシステムと呼んでおりますけれども、これについて、そのBMD対処能力の付加のためのシステム設計というものに既に着手したということでございます。これが日本が十五年以降、政策決定を行った一つの大きなトラックということになるかと思います。

 もう一つのトラックというものが走っておりまして、これは既に一九九八年十二月の日米両政府間の了解覚書、MOUの中で始まっていることでございますけれども、日米共同技術研究というものがもう一つのトラックとして進んでおりまして、これが、現在共同研究の対象となっているシステムが、既に述べました1の海上配備型システムをさらに発展させ、より高い能力を目指したシステムというものを現在研究しているというところでございます。これにつきましては、現在、新しいMOUの再構築の中で、さらに共同開発というところまで踏み込んで日米がどのように協力していくかということを組みかえている最中というふうに理解しております。

 その二つのトラックというものをどういうふうに今後日本の防衛政策の中で結びつけていくのかというのが、実はこの最初の1で述べましたシステムの取得と今後の日米共同技術研究をどのように組み合わせていくかというときの大きな課題として、今後五年から十年のスパンで日本の防衛政策の中でもう一つの大きな問題提起を与えるというふうに考えております。

 どういうことかと申し上げますと、このレジュメの3の中で書いてあることでございますけれども、今後、予算をつけまして取得するシステムが仮に二〇〇六年から七年にかけて多層防衛の初期的な配備というものを達成すると同時に、将来開発予定されるBMDが想定されるシステムコンポーネントというのが、恐らく我々が二〇〇六年から七年に配備する初期配備と、そして、今後、共同技術研究が終わってそれを新たに配備する段階では、恐らくその防衛構想が目指すもの自体が少し変わってくるのではないかというふうに思っているからでございます。

 この下に、私がマトリックスを書きましたけれども、まずその初期配備されるシステムというのは、脅威として、当然、北朝鮮のノドンミサイルをプロトタイプに置きましたショートレンジからミディアムレンジの弾道ミサイルというものを置いて、そして防衛範囲というのも、PAC3の拠点防衛とSM3の地域防衛というものを結び合わせた防衛範囲として、まずそのシステムコンポーネントを考えていくという形式でございます。

 ところが、この将来構想というところで、新しいウエポンシステムというものをつくるようになると、これが、日米の共同開発がどこまで技術として進むかにもよるわけですけれども、今後はより長いレンジの、MRBMからさらにはICBMも含めた脅威というものを対象としたシステムを検討する段階に入るということでございます。さらに、防衛範囲としましても、これが拠点防衛、地域防衛から、さらに広域の防衛というものに踏み込んだミサイルシステムというものが技術的に可能になってくるというのが、今後数年間で見られる技術的発展の可能性でございます。

 具体的に、今度取得しますシステムは、インターセプターの口径といたしましては十三・五インチ、そのインターセプトの高度といたしまして、大体百六十キロから二百キロ程度ということが想定されるわけでございますけれども、今度アドバンストミサイルといった新しいミサイルの中ではより高高度な迎撃が可能になるということは、つまり直接的に言いますと、ノドンミサイルの射程を超えたさらにロングレンジのミサイルにどのように技術的に対応するかということを検討する段階に入るということでございます。

 これが意味するところは、今まで日本のミサイル防衛システムの取得の段階では、我々の専守防衛の原則というところと、さらには集団的自衛権の行使に踏み込まないというところにおいてのミサイル防衛構想というものから、完結したシステムとして運用されてきたわけですけれども、今後この日米共同技術研究による新しいシステムを構想する際に、さらにその射程の長いミサイルを日米でどのように運用していくかということにおいて、これまで日本が保持してきた防衛構想の原則というものからどういうふうに踏み出すのか、さらに言えば、踏み出さないでさらにどういうふうに技術にコミットするのか。こういった一つの防衛構想のトランジションをするのかしないのかということについての政策判断が問われる事態が今後やってくるということを冒頭申し上げたいというふうに思います。

 次に、既に金田参考人からも御紹介ありましたけれども、今後、特に日本が注視すべき北朝鮮、中国のミサイルとの関係における戦略的関係がどうなっていくかということについて述べたいというふうに思います。

 簡単な事例を申し上げますと、現在我々は北朝鮮の第二次の核危機というものに直面していると言ってよろしいかと思いますが、第一次の危機、つまり九三年から九四年の北朝鮮の核危機と、二〇〇三年からことしにかけてと言ったらいいんでしょうか、第二次ミサイル危機、各核危機における危機の性質というものを比べた場合、私は二つの大きな違いがあるというふうに思っております。

 一つは、やはり九三年、九四年の危機というのは、北朝鮮のノドンミサイルというものをいわば脅威の軸に置いた危機の構造というものが展開されていた。つまり、北朝鮮から兵器の移転というものがあっても、それは通常兵器の移転というものであり、北朝鮮の脅威というものは、まさに北東アジアの戦域というものに局限された形で我々は語っていた。

 ところが、二〇〇三年からの新しい北朝鮮の危機というのは、まさに、北朝鮮がこのまま放置すれば、ノドンミサイルの射程を超えたテポドン1、そしてテポドン2への開発可能性というものを念頭に置き、北東アジアの戦域から、さらに言えば、アメリカの前方展開基地、そしてアラスカを含む米国本土といった、本土ミサイル防衛といいますか、本土の安全保障にかかわる事態というものを我々は直面しているというのが第一点。

 第二点につきましては、今後北朝鮮がいわゆるプルトニウムの量産というものを仮に進めていった場合に、これを第三国、あるいは第三のアクターに移転する可能性を含むということでございます。したがいまして、我々が九〇年中期に見た北朝鮮の危機というのは、まさに戦域的な脅威から、現在ではグローバルな脅威としてのインプリケーションを持つというのが非常に大きな違いかというふうに思っております。

 したがいまして、我々が北朝鮮の核そしてミサイルの問題に対峙するということは、韓国及び日本の戦域的な安全保障にかかわる問題だけではなく、まさにアメリカの本土防衛に踏み込んだ問題に我々はこの問題を通して取り組んでいるということでいいますと、まさに我々は、北朝鮮の問題というものが戦域的な脅威から空間を横断したグローバルな脅威として直面しているというのが第一点でございます。

 第二点は、まさにこのミサイル防衛の中長期的な課題というものが、北朝鮮の問題を超えて、中国のミサイルの配備といった問題にどう対抗していくかということが、非常に重要な課題として今後浮上するというふうに私自身は考えております。

 この中国のミサイルというものに対峙するときに、やはり非常に大きなパラメーターというのは、アメリカと中国との戦略的な関係がどのように推移するかというシナリオの分析かというふうに考えております。詳しく申し上げる時間がございませんけれども、現在、中国がわずかな数の液体燃料のICBM、極めて脆弱性の高い大陸間弾道ミサイルによって最小限抑止といった抑止関係をアメリカに保持していると客観的に判断できる情勢から、どのようにこの関係が発展するのか。

 一つは、中国が今後、より精密化されて、さらにテクノロジーもソフィスティケートされた形のミサイルを保持するようになり、さらに脆弱性を排してかなり高靱性の高いミサイルを配備するということになれば、対米戦略関係における限定抑止といった戦略に移行することが考えられます。仮に、アメリカがそういったミサイルに対してもミサイル防衛というもののケーパビリティーを高めることになれば、中国がアメリカに対する直接的な大陸間弾道ミサイルによる抑止関係というもののほかに、北東アジア戦域であるとか、さらにはその非対称的な戦力といった関係によって、抑止関係を複雑化させてくるといった戦略をとる可能性も示唆されるわけでございます。

 こういう段階において、日本のミサイル防衛がいかなる意味合いを持つかというのも、今後五年から十年のスパンで極めて大きな段階に入ってくるというのが、この(2)で申し上げたかったことでございます。

 最後に、次のページに参りまして、統合運用体制に関しまして私の意見を陳述させていただければというふうに思います。

 大きく分けまして二つ申し上げます。

 一つは、自衛隊の統合運用体制ということでございますけれども、現行の運用体制において、1におきまして戦闘管理・指揮・統制・通信システムというものをどのように構成するかという現行の構想でございますけれども、今、十六年度、十七年度で整備しているものを判断すると、基本的に日本における地上レーダー、そしてこれから配備するイージスセンサーによる弾道ミサイルの探知、追尾を行う、そしてそれを多層的な迎撃を行うということで、既に中谷防衛庁長官時代からの主体的な運用をどのように進めていくかということがこの予算の中でも大きく反映されているということでございます。

 もう一つ、非常に重要なのはやはりミサイルの初期探知ということで、現在のシステムの中では、アメリカの保有している早期警戒衛星、これは地上三万六千キロを静止軌道としてある静止衛星のことを意味しますけれども、それがまさにミサイルの初期ブースト段階の探知というものにおいて非常に大きな役割を果たしているわけですけれども、現行の日本が目指している探知のシステムというのは必ずしも、そういった早期警戒システムをどのように組み合わせるかということについての信頼性の担保の課題というものがいまだに存在するのではないかというふうに私は思っているわけでございます。

 どういうことかと申しますと、基本的に、地上レーダー、イージスセンサーによる探知、追尾ということは、警戒に関する体制というものを常に整え、そして、フェーズドアレー・レーダーと地上レーダーというものを組み合わせた形で常にそこにレーダーを照射するということをして初めて可能になるわけですけれども、それを独自で運用するということに関してはいまだに大きな課題があるということでございます。そういった日米の統合運用としての体制というものをどういうふうに整えていくのかということも新たに今後考えなければいけないということかというふうに思います。

 もう一つ、迎撃段階におきましても、現行の構想ですと、SM3、PAC3による多層迎撃ということでございますけれども、現行の体制、そして将来、五年から十年におけるノドン以上のミサイルを迎撃する体制に日本が仮に踏み込む場合、現在のシステムコンポーネントの段階から日米でどのように統合的に運用してこれを迎撃するか。具体的には、アメリカのイージス艦との統合運用体制というものをもっと真剣に考えていく必要があるのではないかというふうに考えているところでございます。

 次に、時間も限られておりますので、2を述べて私の発言を終わりにしたいというふうに思います。

 もう一つは、ミサイル防衛システムの運用と法的な整備ということでございますけれども、現在、既にこの委員会でも議論されております自衛隊法八十二条の二におきまして、緊急対処要領の中で、極めて柔軟な指揮命令系統と迎撃の基準というものが設置されつつありますけれども、ミサイルの脅威というものが極めて短期的に、そして短い時間の中で迎撃の運用を行わなければいけないという性質にかんがみまして、このような柔軟運用というものを可能な限り追求していくということが極めて重要ではないかというふうに思っております。

 もう一つは、今後、長期的な課題となりますけれども、このウエポンシステムと調達の構造ということになります。

 今後、我が国が五年から十年先の日米の共同の開発から配備というものに踏み込んでいく際には、やはり我が国の防衛産業がアメリカ並びに欧米諸国の防衛産業と共同で開発ができるようなフレームワークというものを法的に整え、そして、現在の防衛産業というものが積極的にアメリカとの共同開発というものに踏み込んでいけるような、そういった体制を整え、その最先端のシステムというものを我が国の防衛産業というものに翻ってはもたらしていく、こういった構造をもたらすことが極めて重要ではないかというふうに考えている次第でございます。

 私の意見陳述は、以上にさせていただきます。(拍手)

小林委員長 ありがとうございました。

 次に、柴山参考人、お願いいたします。

柴山参考人 愛知学院の柴山でございます。

 このような席にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。一言、感謝の言葉を申し上げたいと思います。

 具体的には、きょうのお話は、基本的な発想をまず押さえた上で個別の発想に入っていくということかと思います。金田先生それから神保先生が既に述べられたことはできるだけカットして進めますので、その点、よろしくお願いしたいと思います。

 私の理解では、日本にとってのミサイル防衛の目的というのは、せんじ詰めればこういうことになるかなというふうに思っております。最優先の目的としては、とにかく完璧に近いミサイル防衛体制を整備し、相手方から見てどのような形のミサイル攻撃を行っても成功と呼べるような成果が上がらない状況及び認識をつくり上げ、そのようなミサイル攻撃自体が発生することがない、そういうことを抑止する。すなわち、戦うのではなく、戦うことの意味をゼロにし、一発も飛んでこないというような状況をつくり上げるというのが最大の目的かと思っております。その意味で、法制度そのほかにおきまして安易な妥協をすることがかえって危険を招くんだという認識が重要かと思っております。

 そして、第二の目的。これはあってはならないことと思いますけれども、万が一そういう場合が発生した場合でも、被害を極小化するということが重要かと思います。

 ミサイルディフェンスは、とかくミサイルに対してミサイルを当ててというお話が多いわけですけれども、実は、もう金田先生がお話しされたように、まあ金田先生の分け方と私の分け方とほんの少し違いますけれども、基本的には五つの構成要素。簡単に申し上げますが、一つは外交。

 二つ目は日米関係の機構化。とりわけ司令部を導入すること。及び、現在、アメリカのワシントンにはイギリスの統合軍使節というのが、百人ぐらいの規模の将校たちがペンタゴンの中に自分の部屋を持って統合運用に着手しているわけで、それぐらいの協力関係がないとなかなか難しい、作戦と申しますかミサイル防衛の作戦は機能しないと思います。

 それから三つ目は、具体的な兵器の導入、配備ということです。

 四つ目は、余り議論されにくいことでありますけれども、敵対的な国家がミサイルを撃ってくる場合の、その基地に対する攻撃。現状では安保条約を通じましてアメリカにお願いするということになっておりますけれども、では、どれぐらいやってくれるんだろうということに関しましては、日本側はやはりある程度知っておかなくちゃいけない。あるいは、これはやっていただいて、これはやってくれるなというところまで入らないと、具体的な作戦の中ではこれは機能しないというところがありますので、そのことが大事かなと思います。さらに、本当の最悪の場合、特にアメリカの攻撃力が十分でないかもしれないという状況の中で、それを補完する意味で、日本側が向こうのミサイル基地を攻撃するということも少しは頭に入れておかなくちゃいけないのかなというふうに思います。

 最後に、民間防衛については、金田先生もおっしゃったとおりであります。

 一の外交手段に関しては常に努力するといたしましても、二から五までの構成要素が有機的かつ効率的に機能して初めてミサイル防衛というのができるわけでありまして、日本は、とかく三番目の構成要素ばかりにちょっと力を入れまして、また、特に二に関しては、集団的自衛権及び憲法との関係がありまして、それらの議論が煮詰まるのを待っているというようなところかと思いますが、残念ながら、これは避けて通れないというふうに私は理解しております。

 さて、提案されている両法案とも、私の目からいたしますと、建設的な内容というふうに理解しておりますが、まだまだ補完されるべき点はあるかと思います。以下、かなり個別的なお話になるかと思います。

 第一に、最も重要なこととして、ミサイル防衛と統合運用の両方にかかわることかと思いますけれども、提案されている法案では、首相と防衛庁長官に過大なるシビリアンコントロールの責任を負わせるというふうな内容になってはいまいかと。しかも、緊急時にこの法案の内容が集中しているということについて、少し、一抹の不安を感じるわけであります。

 英米の軍事史が専門でありますが、英国の軍事史を参考にいたしますと、イギリスは冷戦期、内閣防衛委員会、今はDOPになっていますが、日本でいえば安全保障会議の下に小委員会として、常設、準常設、臨時の委員会を含めて、名前を挙げればこういうふうにややこしくなりますが、本土防衛委員会、防空委員会、能動的防空委員会、そのほか本当に重要なのは名前も載ってこない特殊臨時委員会というようなのが複数ありまして、それを運営しておりました。

 構成員は、内閣の閣僚及び軍首脳、専門家などになりますが、それらが多角的に防衛体制の整備、運用のための日常的準備を行っておりました。それらが機能していたから、内閣防衛委員会には、一つの文書で、警戒網や防空作戦、民間防衛の有機的なつながりやその弱点といったものが明確となりまして、それへのバランスのとれた対応というのができたのかなというふうに思います。ここまでイギリスが一生懸命にやったのは、一九四〇年のいわゆるバトルブリテンで敗北寸前まで追い込まれたという経験があったからだと思います。日本もこれ並みの努力が必要なのかなというふうに存じ上げておるわけであります。

 重要なのは、緊急時に限り二人のシビリアンにだけ依存する体制はある程度仕方がないわけですが、そのための準備、整備過程については、シビリアンコントロールを組織的に、かつ、より多くのシビリアンの参加を日常化する組織をつくる方が望ましいと思います。特に、日本は第二次世界大戦において余り成績のよくない防空作戦をいたしまして未曾有の被害を招来してしまったということは、決して忘れることはできないわけであります。

 二番目は、それとも関係するわけですけれども、今度はソフトウエアに入るかと思いますが、申し上げましたミサイル防衛の二から五の構成要素を有機的に総合するのはどういうふうにやるのかという問題でありまして、調整という問題をまずお願いしておきたいというふうに思います。

 次に、ちょっと急ぎますが、三番目に、日本はとかく民間防衛のことをかなり過小評価しておるというふうに思います。防空作戦と直結している民間防衛をどのように総括、運用するかということは、かなり大きな問題かと思います。

 特に、大量破壊兵器の弾頭が不幸にして落ちてしまった、どこに着弾して、それは生物兵器なのか化学兵器なのか、あるいは核兵器なのかということで、住民の対応は全く違ってまいります。現状は、自衛隊と地方公共団体の非公式な関係に依存して国民保護法を進めるというふうな状況でありますが、日本がアメリカからの戦略爆撃で百ウン十万人もの人を失ったという経緯からいたしますと、これはいかがなものかというふうに私は思います。

 その意味で、ミサイル防衛は確実なものではない。正直な話、うまくいったときは非常にうまくいくけれども、一つミスをすれば八〇%も着弾してしまうというような可能性がある以上、この民間防衛について、やはり組織立った理解というもの、あるいはそれへの対応というものが必要であり、とりわけ、防空委員会を常設し、その下に民間防衛の関係者を参加させた民間防衛の委員会をつくっていくというようなことも必要かと思います。

 さて、第四に、実際上、ミサイル防衛は複雑な日米共同作戦によって行われる可能性が圧倒的でありまして、参考資料の十四にありますような、日本だけで完結するというシナリオは、およそあり得ないというふうに思います。冷戦下の分担内容が比較的はっきりしていた作戦内容と違いまして、ミサイル防衛の作戦は非常に一体化を強いられるというふうに理解しております。

 日米間での情報共有、指揮、作戦計画、運用等のすり合わせは、両者にとって、日本だけじゃなくてアメリカにとっても、ミサイル防衛の成否のかぎになると理解しております。その意味で、法案審議に当たっては、そのことを含みながら進むべきではないかというふうに思います。特に、米国によるミサイル基地への攻撃の度合いとその成功度が迎撃作戦の内容と直結しているということは、決して忘れるべきではないというふうに思っております。

 米軍筋では、集団的自衛権の行使なしに果たして共同作戦が成功するのかというふうに危ぶむ声もあります。その意味で、この法案は確かに第一歩としては建設的ではありますけれども、将来の中ではそれなりの修正というものを考える必要があるかと思います。

 さらにお話は個別的になります。八十二条の二にある文言では、攻撃ミサイルを発射した国の上空での迎撃ができないというような内容になってしまう可能性があるかと思います。

 攻撃ミサイルの第一波を発射直前に察知し、それらを敵対国上空で撃墜する場合と、既に第一波の攻撃があり、それは公海上空から迎撃したが、第二波以降の攻撃があり、それらを敵対国上空で撃墜する場合とは、かなりの違いがあると思います。ブースターフェーズでの迎撃の有効性が大きいだけに、後者は最低限可能とすべきというふうに思います。また、前者は高度の政策判断によりますけれども、大量破壊兵器が弾頭に載せられているという可能性が高ければ、これを可能とすべきというふうに私は思います。

 とりわけ、今後、ミッドコース段階でのおとりそのほかの迎撃妨害システムというものが、かなり複雑化なおかつ進化してまいるというふうに思います。その意味で、ブースターフェーズの段階を作戦上失うことは、ミサイル防衛の成否をかなり握っているのではないかというふうに思います。

 特に、現在はイージス艦及びPAC3だけのお話になりますが、次の時代に入りますと、ステルス戦闘機がマッハ五以上の高速迎撃ミサイルをもって撃墜するという段階がやがて参ります。作戦的には、危機状況の中で、相手国の領空外のところで待機しており、ミサイルが発射されて攻撃意思が明確にされた段階で向こうの領空に侵入し、既に発射されたミサイルを撃墜する、こういうような状況をつくれば、大国はなかなか難しいのですが、小国に対してはかなり大きな抑止力になる。その力があるだけで、向こうがエアボーン、つまり空中に発射できるミサイルの数をかなり削減できる、それを向こうが認識してくれれば、最初の話になりますが、一発も飛んでこないという話になるかと思います。

 さらに、ミサイル防衛におきましては、果たして制服組の指揮を統合幕僚長に任せるのが望ましいのか、それとも、アメリカのように、北米防空司令部というものをつくってその司令官に任せるという、専門職をつくって命令系統を簡素にする方がいいのかということについては、私は、実はアメリカの教訓というのはそれなりに理解すべきだと思います。

 さて、時間が迫ってまいりましたが、統合運用についての御意見をほんの少しだけ申し上げておしまいにしたいと思います。

 正直な話、三十年以上、英米の軍事史を勉強してまいりまして、統合運用の道は両国におきましても甚だ険しい道であったかと思います。中には自殺者も出るというようなこともありまして、この道は非常に険しい。しかしながら、兵器体系の内容を考えればそれは進んでいかざるを得ないということについては、まず了解をすべきだと思います。

 第一の問題点ですが、この法案にありますような改革は、かなり先を急ぎ、なおかつ理想を追い過ぎたのかなというふうな一抹の不安を感じるわけであります。

 英米の経験からでは、統合に関しては、基本的には、中途半端な組織をまずつくって、ゆっくりと時間をかけて練り上げていくというやり方を行いました。例えばイギリスのケースでは、参謀長委員会で調整的な上部構造をつくって、なおかつ、下の方に、まず統合的な計画、分析を行う統合計画部という下部構造をやりました。譲り合いの精神、あるいは各幕とも無私の精神がないとこれはできませんが、余りにも過大なものを要求するのはどうなのでありましょうかというのが私の意見であります。

 あともう一つ、防衛庁長官のリーダーシップが物すごく要求されるわけですね。それで、フォレスタル長官が精神異常を起こして亡くなられたということも歴史的な事実でありまして、このことに関してはかなり難しい。

 あと、中間的な組織の導入にかかわるかと思いますけれども、統合幕僚長に余りにも過大な負担がかかり過ぎないかということを心配しております。

 例えば、陸幕出身の普通科出身の統合幕僚長が出てきた場合に、ミサイル防衛をお願いしてううんというふうな理解もあるかと思います。むしろ、統合幕僚長は制服の最高司令官として、いろいろなミッションやタスクフォース別に司令官を任命し、あるいは重要なものは首相みずから任命し、彼らを束ねるというような運用の方が現実的ではないか。具体的には、イギリスなんかにありましたような司令官会議、あるいはアメリカなんかが今でもやっています、陸海空の三幕長をそのままに置く。ただし、統合は、その下の部分、下部組織、統合幕僚監部がアメリカ、イギリスのようにゆっくりと調整を行って、やった方がいいのかなというふうに思います。

 最後に、三番は飛ばしまして、四番目でありますが、参考資料の九であります。非常に瑣末なお話で恐縮ですが、運用部と指揮通信部をなぜ一体にしないのかというふうに私は思います。ここでは、こんなやり方をしておれば、情報伝達のおくれや混乱を招来するのではないかというふうに不安に思います。また、情報本部からの情報の流れについて書かれておりません。恐らく詳細なものは書かれてあるのかもしれませんが、少なくともこれには書かれておらないので、それは明白にしておく必要があるのかなと。

 あと最後に、任命権はともかく、統合幕僚長の罷免権をシビリアンが確保するということはかなり重要かなと。もちろん、そんなことは法律に書かれているというふうにありますけれども、あえてそれを書くことは、シビリアンコントロールの上からも重要かというふうに理解しております。

 ありがとうございました。(拍手)

小林委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人各位の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小林委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂本哲志君。

坂本(哲)委員 自民党の坂本哲志でございます。

 各方面からの高度な御意見を賜りまして、心から感謝をしておりますが、お一人お一人に御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、金田先生の方に、技術的な問題でございますけれども、この迎撃の命中精度というのが現実にどのくらいかというのがよくわかりません。先ほど言われましたSMDの方は七回中六回成功している、あるいは非常に精度が高いんだ。一方で、GMDの方は三回連続失敗だったですかね、二〇〇三年そして二〇〇五年にも失敗をしている。いろいろ開発のアプローチが違うからということでございますけれども、考え方としては似たようなところもあるのじゃないかなと。そういう技術的なもの、精度の問題はどのレベルまで来ているのかというのを一つお伺いしたい。

 それから、先生がスパイラルアプローチというものを言っておられます。費用対効果も考えて、できる範囲で、可能な段階でその装備を取り入れる、あるいはシステムを取り入れるというようなことでありますけれども、こういう技術的なものが非常に不安定な中で、あるいは精度がまだ定まらない中で、そういうスパイラルアプローチというのがどこまで可能なのか、その辺のところについてのお考えをお伺いいたしたいと思います。

 それから、今後、日米共同で運用していくに当たりまして、やはりこの精度の問題、技術的な問題、日本とアメリカの認識の度合いというのはかなり差が出てくるのかなというふうに思います。日本の場合には、やはり面積が狭い国土の中で非常に都市的機能も集中しておりますので、精度も一〇〇%を求めるでありましょうし、アメリカの場合には、もっとほかの考え方もあるかもしれません。そういう認識をどういうふうにして一つにしていくのかというような方法論、そういったものがあればお伺いをいたしたいと思います。

 そういうことをいろいろ考えていきますと、まずイージス艦搭載のSMDに集中をする、そしてそれを補完するような形のPAC3を配備する、これに初期的な配備ということで、まず予算も、いろいろな面も集中していくのが順当な姿かなというふうに思いますけれども、その辺の考え方もお聞かせいただけたらというふうに思います。

金田参考人 どうもありがとうございます。

 特に命中精度の件について、坂本先生の御質問だったと存じます。

 いわゆる軍事ということを考えてみました場合に、一〇〇%ということは、これはまずあり得ないことではないかと思います。その中で、もちろん精度の向上も図るけれども、その他のいろいろな面で、そもそもふらちな、我が国を攻撃しようとする者たちを抑止する、そういったことがまず大事だと思います。これは私のみならず、神保先生、柴山先生もおっしゃったことかなと存じます。

 そういったことをまず前提にお話をさせていただきますと、いわゆるGMDとSMDは開発のアプローチが全く違います。そして、委員御指摘のように、GMDは何回も失敗いたしました。一方において、SMDは非常に多くの成果をおさめている。

 そういったことを踏まえまして、アメリカのMDA、ミサイル防衛局でございますか、これは最近、GMDの方の開発体制をてこ入れした。いわゆるSMDに関与していた人がGMDも一緒に見るというような形にしたようでございます。そして、今後一切、GMDの開発については、SMDに関与して成功をおさめていたマネジャーが、彼女なんですけれども、これがうんと言わなければ絶対先に進めないというようなことまで大分やっておるようでございます。

 つまり、アメリカの中では、GMDについては確かに反省があり、そしてSMDの開発の成功といいましょうか、今までの段階でございますが、そういったものにできるだけ影響を受けるようにしようということでやっているようでございます。

 いずれにしましても、我が国が導入しようとしておりますのは、GMDではございませんで、SMDの方でございます。SMDの方は、今申しましたように、非常に大きな成功をおさめております。そしてまた、日米共同技術研究を現行でやっておりますけれども、これも今回導入しようといたしますいわゆるSMDの初期防衛能力型からさらに一歩も二歩も前進した、そういったものをねらって開発しているものでございますので、例えばノドン級のミサイルに対しても非常に能力が高くなるということも考えられますし、またノドン級を超えるような能力を持ったものにつきましても対応が可能になってくるであろうと存じます。

 そして、最後の御質問でございますけれども、いずれにしろ、私は、やはり日本の戦略環境を考えました場合に、縦深防御というのが大事だと思います。したがいまして、イージス艦のように、前方に展開して広域を防衛する能力を持ったものと、それから最終的には、ホームディフェンスといいましょうか、ゴールキーパーといいましょうか、そういった意味で、我が国の要域、要所、そういったものを、かつ機動力をつけまして、随時展開する、大事なところを守るといったような、この二つの組み合わせは絶対我が国の戦略環境に適合しているんだろう、このように思うわけでございまして、その二つともやはりしっかりと考えていかなければいけないんだろう、このように思います。

坂本(哲)委員 ありがとうございました。

 それから、神保先生の方に、今後のミサイル防衛の展開を考えた場合に、防衛産業にも踏み込む必要がある、同時に、きょうはおっしゃいませんでしたけれども、先生の論文を読ませていただきました中に、日米同盟の戦略調整をしっかりとやるべきであるというようなことを書かれた論文をお読みいたしました。戦略調整をしっかりやることが周辺諸国の拒否的抑止力につながるというふうに私も思います。

 そこで、日米同盟の戦略調整というものが、ある程度目に見える形で、政治的にも、対外的にやはり段階的に進んでいくことを目に見える形にしなければいけない、そのことが周辺諸国への拒否的抑止力にもつながるというふうに思いますが、それを考えた場合に、どういう形で、MD、ミサイル防衛構想に特化した形の日米戦略調整、会議の立ち上げ、こういったものが考えられるんでしょうか。

神保参考人 まず、冒頭に御質問のありました防衛産業の話なんですけれども、先ほどの金田参考人への質問と重ね合わせて発言いたしますけれども、やはり現在のBMDの研究から開発、そして配備に至る全体の構想というのが、日本とアメリカのシステムというのはかなり違っている側面があるというふうに理解しております。

 御存じのとおり、アメリカは、ブッシュ政権に入って以降、能力基盤アプローチというものをとる中で、みずからの防衛調達のあり方というのもやはり発展的に、そしてスパイラルに進めていくということを明らかにしております。

 具体的にこれがどういうことかというと、これまで例えば、研究を行い、そして別途政策判断を行い開発を行い、そしてまた別途政策判断を行い配備を行うという三段階のアプローチというのはさまざまなウエポンシステムをつくるときの基本的な考え方だったわけですけれども、スパイラルアプローチというのは、やはり研究というのを開発の段階になってもずっと進めていく、配備を続けても続けていく、開発もそれをスパイラルに行っていくということで、常に新しい技術をウエポンシステムの中にアップロードして取り入れていく、これがアメリカのいわゆる現在の調達、そして開発の考え方でございます。これと我々の多年度方式の開発というものを、どういうふうにすり合わせて、アメリカの技術とのいわゆる運用性を保った中で進めていくかというのが非常に大きな課題だというのが一番目に対する私の考え方でございます。

 二つ目の、日米の戦略調整というのは、やはり非常に重要だというふうに考えておりまして、今アメリカの国防総省と日本の防衛庁の間でいわゆるミサイル防衛に関するワーキンググループというものが進められておりまして、具体的にミサイル防衛の戦略構造から運用に至るまでの話し合いが進められているわけですけれども、私は、最後に私のレジュメに書いたことでございますけれども、やはりもっと広い視野で、そして、さらにワーキンググループに参加する層を拡大したBMDに関する戦略対話というものを進めなければいけないのではないかというふうに考えているところでございます。

 どういうことかといえば、具体的にこれは今度導入するBMDをどういうふうに運用するのかといった短期的な課題にとどまらず、今後の新しいシステムを運用、そして、日米がどのように戦略的にこれを運用していくのかということを含めた長期的な課題を話し合う場というものをつくらなければいけないというふうに考えております。そして、その戦略対話のもとに、やはりそれを具体的に統合運用するとしたら、仮にするとしたら、どういったシステムの開発、そして運用体制が必要なのかといったワーキンググループをその下部組織としてつくり上げていく。こういったすそ野のはっきりとした対話の構造というものをミサイル防衛に特化してつくっていくということが極めて重要な段階なのではないかというふうに感じている次第でございます。

坂本(哲)委員 ありがとうございました。

 柴山先生の方にお伺いしたいんですけれども、非常に示唆に富んだといいますか、統合運用の時点で、あるいは緊急の時点でもそうですけれども、首相、長官への負担が大きいのではないか、そして、陸上自衛隊の普通科出身の統合幕僚長に最終的な判断を任せることが果たしてどうかというような御意見がございました。まさにその辺は私も一緒でございます。

 同時に、平常時において、日常時においてシビリアンコントロールができるような組織の構築、これが必要ではないかというようなことを先生の方もおっしゃっておりますが、今の日本の法体系の中で、この日常時の組織、どういうメンバーで、どういう範囲で、そしてその権限、もしつくるとすれば、どこまでその権限が与えられるかというようなことについての御意見をお伺いしたいと思います。

 それからもう一点、ブースターフェーズでの作戦を日本が失うことはこれは大きいんだ、今後、ブースター段階での作戦を保持するために、さまざまな技術開発、研究、これも必要だと思いますけれども、どの分野で、どの部門で日本として研究開発することが一番効果的なのか、その辺のところについてもお伺いいたしたいと思います。

柴山参考人 まず、後ろの方からお答えをした方がよろしいかと思いますけれども、第一に有力と思いますのは、まだ導入をされておりませんけれども、将来恐らく導入することになろうかと思います支援戦闘機、あるいは戦闘機にステルスの性能を持っているもの。御存じのとおり、空中給油ができますから、危機のときに必ずしもそれを使わなくても済む、なおかつ、それを上げた段階で相手にかなりの圧力をかけることも可能でありまして、その意味では、航空自衛隊のステルス戦闘機に、今アメリカで開発が進んでいるマッハ五のファーストホークだったと思いますけれども、名前はひょっとしたら間違っているかもしれませんが、それなんかの対弾道ミサイル用のものを考えておくべきなのではないかなというふうに思います。航空機の場合は何時間もそこの上におりますから、政治的には非常に判断が楽だし、向こうも目に見える形で、どれぐらいやられるかということが見えますから、かなり大きいのではないかというふうに理解しております。

 二つ目ですが、ここのところは、イギリスに至っても、やはり組織は何といっても手探りでつくり上げてきたというふうに言ってもこれは過言ではないかと思います。防空委員会も多々あったのは、こんなにたくさんあったのは、まさに手探りのものでありまして、日本も手探りにならざるを得ないのだというのは仕方がないんですけれども、とにかく安全保障会議の下に防空委員会をつくって、基本的には、出てくる閣僚としては、首相、防衛庁長官、外務大臣、そして財務大臣、それに加えて、現状では統幕議長、そして三幕の長、そして非常勤の形で民間防衛の専門家、さらにはそのほかの、その議題に合わせて必要な者を招待するという形をまずとられることが一番いいのかなと。

 なおかつ、そこで一応文書を回して基本的な方針を決めて、それを安全保障会議で議決していただくということで、現状はこういうことであってこういう方針で進み、万が一のことが起こったときにはお二人にお任せするという方針がシビリアンコントロールとしては正しいやり方であって、その場になってただ命令するというような形をとるというのは、民主主義の原則からいって危険かなというふうに理解しております。

 長くなって済みません。

坂本(哲)委員 ありがとうございました。

 終わります。

小林委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党の津村啓介と申します。

 きょうは、貴重な機会をいただきましてありがとうございます。私も、各参考人の先生にお一つないし二つずつ順に御質問させていただく形をとらせていただこうと思います。

 まず、私、本日の議論、全体として大変多岐にわたりますし、ミサイル防衛の現状及び将来の可能性についていろいろと示唆に富むお話を伺えたと思うんですが、しかし、議論の前提として、私の質問の前提として一つ申し上げたいのは、ミサイル防衛というものが、五年後、十年後というお話もありましたが、将来、このような可能性もはらんでいるよ、そういう種類の話と今回のこのミサイル防衛の議論というのは一応分けてお話をさせていただきたいと思っていまして、今回の法案整備については、やはり技術的にもあるいは法的にも、他国あるいはアメリカと比べれば、かなり制約の大きな、小さく一歩を踏み出す、そういうミサイル防衛かなというふうに感じておりまして、その前提で今回のミサイル防衛についてという前置きで質問させていただきたいと思います。

 そう考えたときに、最初の金田参考人から、日本の安全保障政策における弾道ミサイル防衛の意義ということでお話がありまして、その中に、弾道ミサイル防衛クラブの一員たる存在感というお話から、タイトルでは地域核軍備管理・軍縮に具体的に関与し得る絶好の機会というお話がありまして、将来的な姿としては、私も何となくイメージがわかないわけではないんですけれども、今回のこの法整備、この程度のと言っては語弊がありますが、今回の日本のミサイル防衛がこうした地域の核軍備管理といったかなり大きなテーマにどういった形で具体的につながっていくのか、少しイメージをお話しいただければと思います。

金田参考人 どうもありがとうございました。

 今回の法案ということに限ってということでございます。

 今回、我が国の、今まで全く欠落しております弾道ミサイル防衛機能、これを導入するということの意義は非常に大きいと思います。

 まず、米国がMD構想を、クリントン政権からそうでしたけれども持ったときに、周辺諸国も、特に中国などは、ロシアもそうでしたけれども、非常に大きな危惧の念を抱いていたと認識しております。そういった中で逐次進めていき、ここまで行き着いたということであります。我が国として、今まで全く持っていない弾道ミサイル防衛能力を持つということは、非常に大きいんだと思います。

 もちろん将来像としては、私がお話しいたしました五Dという部分の、例えば拒否の部分であるとか民間防衛であるとかそういったことは必要でございますが、まず何よりも、とにかく撃たれたミサイルを撃ち落とせる能力を持ったということは、私は、周辺諸国あるいは国際テロリストなどに対しまして一定の抑止効果を発揮し得るものだと思うわけであります。

 そういったことで、我が国がそういう能力を持つということによって初めて、我が国に対して脅威を及ぼしかねない、あるいは危険要因となっている周辺諸国も含めまして、いろいろな意味での、例えば弾道ミサイルの開発や巡航ミサイルの開発や、そういったものについての抑止機運といいましょうか、全体としての取り組みというものをどうやって図っていくのかということについて、我が国がかなり具体的に参加をできるということだと思います。

 我が国が一切そういう能力を持っていない、何かあったらば直ちにブラフをかけられてしまうというような状況の中で、幾ら発言をあるいはそういったことを求めても非常に難しいのではないか。まずは最初の一歩でございますので一〇〇%の状況ではないかもしれませんが、それでも、しかしこういうことを持つということによってそれらの国々とこういった問題について真剣に話し合うことができるということは、将来的な地域の軍備管理・軍縮の第一歩といいましょうか、そういったものに近づける一つのステップかな、このように私は思っておるわけでございます。

津村委員 金田先生、ありがとうございます。

 私も、小さな一歩でもまず踏み出すことの意義というのは大変深いと思っておりまして、そういった意味で大変共感させていただきながらお話を伺いました。

 次は、神保先生に伺うんですけれども、そうした中で、私は、さはさりながら、前に進んでいく上で、やはり政策を、仮にミサイル防衛を今回のような形で導入をしたとして、今後、五年から十年にかけて、先ほどの先生のお言葉をかりれば、多層的ミサイル防衛を発展的に整備していく、そういう政治決断をしていくかしていかないか、それを考えるときに、一つの重要な決断しなければいけない部分は、いわゆる武器輸出三原則というものをどういうふうにこれから日本の国策として位置づけていくのかあるいは位置づけていかないのかという点だと思っているんですね。

 正直言いまして、私、必ずしも定見を持ち得ておりませんで、いろいろな側面があると思うんです。道義的な面や、外交的なある種の理念として掲げる意味合いや、そういったものもある反面、例えば技術開発の面で制約になるとか、あるいは、これから日本が経済的に必ずしも右肩上がりといかない中で、産業の国際競争力をどうやって維持し高めていくかといった観点も私は大変重要だと思っておりますし、あるいは安全保障政策上も、ある種の制限というか他国との関係においてコミットを制限している要素になっている可能性もあるというようなことも思うんです。

 私のそういった迷いの話はこの辺にいたしまして、神保先生が、日本にとっての武器輸出三原則が現状ないし近い未来においてどうあるべきかということを、ちょっと基本的な質問で恐縮ですが、お願いいたします。

神保参考人 御質問ありがとうございます。

 この武器輸出三原則をどうするかということにつきましては、昨今、防衛計画の大綱の見直しの中でも、随分先生方の間でも議論がなされたことというふうに思います。その議論を拝聴する中で、私は三つの論点があったのではないかというふうに考えております。

 一つは、武器輸出三原則とミサイル防衛の今後の開発との関係でございまして、これまで、九八年以降、日本が日米共同技術研究から開発という段階に移るに当たって、いわゆる日本側のプライムコントラクターがアメリカの防衛産業、国防産業とともに開発を進め、その技術がいわゆる第三国に移転されるという可能性を持つことに対してどう判断するのかというようなことが一点目だったと思います。

 二つ目は、これは石破前長官がオランダのハーグで発言されたことにも関連いたしますけれども、東アジアに限らずさまざまな国で日本のいわゆる防衛技術、特にそれを中古でも売ってほしいという国が、例えば潜水艦なり艦船なり、まさにそういったものを各国の防衛というものに使うということに当たって、日本のこれまで配備してきた技術そして装備というものを援用できないかというのが第二点目。

 三番目も、これも前長官がいろいろおっしゃっていたことでございますけれども、やはり今の日本の防衛産業というものはかなり危機的な状況でございまして、これはこれまでの日本の戦後の硬直的な調達構造によるところが非常に大きかったわけですけれども、世界の国防産業の趨勢を見ますと、やはり一つの大きなシステムコンポーネントを開発するに当たり、国際的ないわゆる連携、コングロマリット体制というものを非常にダイナミックに進めておりまして、一つの大きな例は、ヨーロッパにおけるジョイント・ストライク・ファイター・システムの開発ということがよく例に取り上げられますけれども、まさに多国籍のオフィスが一つのオフィスに入って、そしてその中で最も安い技術と労働力というものを担保して、そして高い生産性のもとで一つの技術をつくり上げていく。これが世界の趨勢となっているときに、日本の防衛産業が武器輸出三原則の原則でこれに入り込めない。

 この三つの論点をどうしていくかというところで、やはり日本は、まだ二番目、三番目に関してはこれを突破できていないということだと思います。

 私の考えからいたしますと、やはりこの趨勢の中で、この三つの論点というものに日本はできるだけ原則を守った中でコミットしていくことが必要ということでございまして、これまでの三原則というよりは、むしろ我々は、積極的な、肯定的な三原則。つまり、例えば、テロ支援国家には武器を輸出しない、そして交戦のある地域、国、そして関与している地域には武器を輸出しない。こういった形での明確な、武器をどこに輸出しないのかという三原則の再定義によって、なおかつ、先ほど言ったような三つの協力分野に積極的に入り込んでいく、こういった再構成が必要ではないかというふうに考えております。

津村委員 ありがとうございました。

 私も、石破前長官のお考えも含めて、武器輸出三原則のある種の見直しというか前向きな再定義については共感を持っておりまして、そういった意味で、お話を伺っておったんですが、余計ですけれども私の考えを一つ申し上げますと、やはりこれは、防衛産業といいますか経済界の方からも、やはり数量的に考えていかなければいけない部分もありますので、それがどの程度日本の経済にこれから寄与していけるのかということを国民に説明していくのは経済界の仕事でもあるかなというふうに思っております。

 最後に、柴山先生にお伺いさせていただきますが、私も民間防衛の話に大変興味を持っておりまして、最近の防災関係の取り組みとも重なるところがあると思っているんですが、いわゆる防災行政無線をどう整備していくかとかそういったことも含めて関心を持っておるんですけれども、防空委員会の設置というお話、イギリスを例に引かれてお話がありましたが、もう少し、ハード面とかあるいはソフトも含めてですが、具体的に今すぐ取り組むことのできる施策としては、民間防衛の観点からどういったアイデアがございますか。

柴山参考人 ハード面でありますけれども、とにかくまず警戒警報を出す。それをかなり一律的なものに出す。警戒警報だけじゃなくて、残念ながら、例えば着弾した場合は、何がどこに落ちて、それはどういうようなことがあるかということを、もちろん携帯あるいは放送というような形を通じまして、即座に流す必要があるかと思います。

 もちろん、それ以前に、どういうような準備を行って、あるいは訓練を行ってということをしておきませんと話になりません。その意味では、かなり統括的な訓練、さらに、これは自衛隊の範囲に入り得るかと思いますけれども、着弾が仕方がない場合には、具体的にヘリコプターを飛ばして、それがどういうような状況にあるかということをテレビ画像という形でそれを流す。なおかつ、それの状況ということを判断して、それに対する対応を、消防署なりあるいは警察なり、どういうことにするかということをあらかじめ持っておかないと第一段階はだめかと思います。

 これはあくまでも第一段階で、最終的には、御存じかと思いますけれども、これは都市計画の話になりまして、地下街の利用とかいう話にもなるかと思います。

津村委員 神保先生に、最後に一つだけ短く御質問いたします。

 先生の著作といいますか論文の中に、クリントン政権期から一貫してミサイル防衛に関する超党派的な流れが、合意があったというようなお話があったんですが、日本も二大政党期になって、これから安全保障政策をどうやって超党派で最低限の共有認識を深めていくか、大変重要な問題だと思っているんです。そうした中で、今後、アメリカがミサイル防衛について、例えば大統領選挙のたびにとか、あるいは国防長官の人事によって、そういう不安定性といいますか、逆に言うと、どの程度安定的なものになっているのか、今後の、近い将来の展望をお聞かせいただければと思います。

神保参考人 短くかいつまんで発言させていただきたいと思います。

 委員御案内のとおり、アメリカにおいては、クリントン政権期の九九年だったと思いますけれども、ミサイル防衛法というものが超党派のかなり幅広い支持によって成立いたしまして、ラムズフェルド報告以来といいますか、アメリカのミサイルに関する共有認識というのは大変高まっておりまして、その意味におきましては、九八年からテロが起こるまでの間、ミサイル防衛というのは、やはりアメリカの国防政策にとって第一級の関心事であったということは間違いないというふうに思います。

 九・一一のテロが起こりました後に、やはりアメリカは安全保障のパラダイムというものを大きく変化させておりまして、もちろんノーザンコマンドであるとか本土防衛庁の設立とか、アメリカ自身が非対称的な脅威にねらわれている、こういったところにやはり膨大な予算が組み入れられていったわけでございます。

 本年度に関しましては、ミサイル防衛の予算というものも若干減額ということでございますけれども、既に二〇〇四年に、アラスカとカリフォルニアにおける初期配備というものを行いまして、この計画自体はずっと進んでいくということでございます。

 もう一つおもしろかったのは、本年の四月ですけれども、アメリカでかなり幅広い世論調査が行われまして、この国民の世論調査の中で、ミサイル防衛をどれほど推進していくべきかという質問に関しまして、およそ七〇%の国民がミサイル防衛は必要だというふうに答えているということから考えまして、現在の計画性、そして国民の依然として強いミサイル防衛に対する支持というものを考えますと、この計画はかなり基盤的な支持を持って進められていくというふうに判断しております。

津村委員 ありがとうございました。

小林委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 きょうは、三人の参考人の皆様には、大変貴重な、また専門性の高いお話をいただきまして、ありがとうございました。

 私は、順番を変えまして、真ん中の神保参考人からいきたいと思いますが、先ほど、一番最後のくだり、米軍と自衛隊のインターオペラビリティーの確保の部分が時間がなくてお話をいただけなかったんですが、そのくだりの中で、とりわけこのペーパーにあります最後の、現行のBMD―WGに加えて産官学による戦略対話、また日米共同研究の確立が必要だ、こういう結論、お話、この周辺、若干触れていただきたいと思います。

神保参考人 ありがとうございます。若干、最後の部分を補足的にお話しさせていただければというふうに思います。

 私の全体の報告に貫かれておりますのは、今後、やはり日本は、アメリカとの共同運用というものをどこまで踏み込んで行っていくのかという一つの大きな政策判断に差しかかっていて、そして、その政策判断というものは相当コンプリヘンシブな形で行わなければいけないというふうに考えている次第でございます。

 仮に、先ほど私が冒頭の報告で申し上げましたように、探知、識別、追尾から迎撃に至るまでアメリカと共同で行っていくということになれば、アメリカの早期警戒衛星のみならず、イージスにおけるレーダー、グラウンドベースト・レーダー、そしてアメリカにおけるC4Iとバトルマネジメントと日本のシステムというものをどう組み合わせながら日本のインターセプターを撃つかということになるわけです。

 したがいまして、それは非常に深いレベルでのデータリンクと、そして共同運用のためのインターオペラビリティーを必要とするということにおきまして、日米のやはり軍事上の統合ということを相当覚悟を持って行う必要があるということでございます。

 私の判断といたしましては、仮に、初期配備のミサイル防衛、日本の側のミサイル防衛というのがかなり日の丸的といいますか、日本の中で完結した運用を目指したものであったとしても、将来配備されるであろうより高い次元のミサイル防衛を運用する段階において、私は日米共同運用というものは避けられない道筋ではないかというふうに考えているわけでございます。

 そういたしますと、今後、日米共同技術研究がある一定の段階を経て、新しいアドバンストケーパビリティーのような形でのミサイルを導入する段階に、日米の共同運用をそこで初めて検討するというのではなくて、既に現段階において、日米のBMDに対する戦略対話というものを、将来の共同運用の深みを確保するという視点から現行より整備しておかなければならないというのが、私が最後の部分で申し上げたかった要旨でございます。

赤松(正)委員 ありがとうございました。

 金田参考人にお伺いいたします。

 先ほどもちらっと話が出ておりましたが、先ほどのお話の、日本の安全保障政策における弾道ミサイル防衛の意義と究極的な方策の、いわゆる金田参考人がいつもおっしゃる五D、総合的なミサイル防衛施策の五つのDですが、とりわけその最初の予防、外交における部分のお話を少し詳しく聞かせていただきたいんです。

 拒否的抑止力を有する弾道ミサイル防衛クラブの一員として関係国間協議に参画をしていくという、この弾道ミサイル防衛クラブの構想というものをもう少しちょっと詳しくお願いいたしたいと思います。

金田参考人 ありがとうございました。

 先ほどの津村委員のお話とは違いまして、もう少し将来像といいましょうか、そういったことについてのお話をさせていただきたいと思います。

 五Dということで、予防外交というものが最初に出てくるわけでございますが、どちらかといいますと、というか、日本がやるべきはまずは後ろの方から、その中でもとりわけ大事なものがディフェンスの防衛でございます。これは、とにかく我が国を攻撃する意図がなくても、例えば間違って飛んでくるというようなこともございますので、我々が能力を持つ以上、そういったものをしっかりと持っていかなきゃいけないというのがまず第一でございます。

 それと、総合的な、二番目の話でございますが、抑止力を持つ、抑止態勢を国家として持つんだというためには、防衛だけでは、つまり、飛んでくるミサイルを撃ち払う、火の粉を撃ち払うというだけではだめでありまして、もちろん、日米共同ということを前提にいたしますが、自分自身でもその飛んでくる火の粉のもとを断つという一定の、応分の能力は持つ必要があろうか、それが拒否でございます。

 それから、実際に火の粉がかかってしまう、それをすべてたたき落とすことは不可能な場合もある。その際に、火が落ちても、いろいろな火災がそれ以上にならないように、延焼が大変なことにならないように、そういったものを抑えていくというのが民間防衛でございます。

 とりあえずはまずは防衛だと申し上げましたけれども、この三つがきちんと整いますと、我が国としましては、そこでいわゆる拒否的抑止力といいましょうか、我が国として相応の拒否的抑止力を持ったということになるんではないだろうか。そのことを国家の意思として明確に示すということによりまして、いわゆる抑止効果が生まれるということでございます。その抑止効果といいましょうか、国家としての態勢でやれば抑止体制でございますけれども、その抑止態勢を背景にいたしまして、特にこの周辺諸国の国々、我が国に危害を及ぼす可能性のある弾道ミサイルなどを多数保有している国々との、言ってみれば外交カードといたしまして、予防外交に役立てていく、そういうアプローチを模索していく必要があろうかと思うわけでございます。

 そういう意味で、核クラブとかそういった意味合いはなくても、弾道ミサイル防衛クラブ、その三つの抑止態勢を確立するということが前提でございますが、そういったことを果たすことによって、より地域的な軍備管理、ミサイルなどに対します軍備管理・軍縮に積極的に参画できるということであろうと思う次第でございます。

 以上です。

赤松(正)委員 ありがとうございました。

 柴山参考人にお伺いいたしたいと思います。

 いただいた資料の「日米防衛協力と同盟ミサイル防衛(AMD)への道」という論文の中で、一番最後の方のくだり、興味を引かれたところについてお伺いしたいと思いますが、核軍縮とAMDはコインの両面である、核軍縮かそれともAMDか、ミサイル防衛か、こういう立て方ではなくて、両方同時に進めていくべきである、このお話は非常に興味あるところなんですが、このあたりにつきまして、問題の立て方ということについて若干解説を加えていただきたいと思います。

柴山参考人 御質問ありがとうございます。

 思いますに、核兵器ができまして、すぐに、ミューチュアル・アシュアード・ディストラクションの、MADと言われる相互核抑止の状況に入ったというわけでは実はないんですけれども、五〇年代の真ん中には、基本的にはそういう形はでき上がったわけです。それはまさに、世界において、恐怖の均衡によって平和が維持される、ただし、その裏側は、その立派な指導者がしっかり議論ができて、まともな対応ができればというような時代であったわけですけれども、それがキューバ危機でかなり大きなクエスチョンを得る。その意味で、ずっとその後、米ソ側が非常に努力をして軍備管理を進めてきたわけです。

 しかしながら、そのミサイル防衛を中心にして、要するにディフェンスを中心とした形でお互いが組むこと、前、はるか昔に学会で私が申し上げましたけれども、ミサイル防衛が本当の目的じゃないんだ、ミサイル防衛を通じて大国間の協調を確保することが大事なんだ、その組織化をやることによって、そこから出られないようなシステムにして、その中で核軍縮とミサイル防衛をやって、ならず者国家みたいなところを外していくという形で二つのものをやるんだ、その意味では、まさに、学会の用語で言えば国際レジームを進めるんだと。そのために一番重要なのは技術だ、そのことは可能なんだよということを日本が示すこと、そして、そのことを積極的に国際的に協力していくというような姿勢を持つことによって、危険な恐怖の均衡から安全の均衡へというふうな方向になるのではないかというふうに理解しております。

赤松(正)委員 ありがとうございました。

 先ほどの、柴山参考人のお話の統合運用についての意見のくだり、なかなか興味深いお話をるるいただいたわけですね。具体的な、アメリカ、イギリスにおける歴史的な経緯をたどりながら、私なんかも余りよく知らない話を幾つか聞かせていただいて、非常に面白かったんですが、例えば、かなり強調されて、今回のこの統合運用を進めていくというのは甚だ険しい道だというふうなお話がありました。そこでのお話は、今回のこの法案は、理想を追い過ぎていささか先を急ぎ過ぎているのではないのか、もう少し、第一段階としては中途半端でもいいから、とりあえず中間的な組織導入というようなことが大事だ、こういうふうなお話だったんですが、ちょっとここで、禁じ手かもしれませんが、その柴山参考人の御意見に対して、現場でやってこられた金田参考人に、そういう御指摘に対してどう思うかという話を聞かせていただきたいと思います。

金田参考人 柴山参考人のお話は、非常に私としましても新鮮であり、かつ意味のあるお言葉だったと考えております。

 ただ、少し誤解があるというように私はとりました。つまり、ここで制服組のコマンドと指揮、これが統合幕僚長であるという認識は、これは誤っているんだろうと思います。つまり、統合幕僚長というのは文字どおり幕僚の長でございまして、チーフ・オブ・スタッフでございます。したがいまして、これはあくまでも防衛庁長官の補佐機関である、その補佐機関の幕僚の長であるということであろうと思います。

 今回、なぜ統合幕僚長という形になったかというと、昨今の情勢などを踏まえまして、統合という意味での運用が非常に重要になった。これはスマトラの例の地震などでもそれが立証されたわけでございますけれども、そういう意味で、やはり今回、今後は統合で運用しなきゃだめだ、それに付随する問題もいろいろと解決しなきゃだめだということで統合幕僚長という考えが生まれてきたのだろうと思います。したがって、統合の運用という意味で統合幕僚長が出てこられた。したがって、いわゆるその他の予算でありますとか人事であるとか装備であるとか、そういういわゆる行政的な部分については、相変わらず各幕僚長が、これもやはり指揮官ではなくて幕僚長なんですが、これがそういう部分については防衛庁長官を補佐する、こういう形である。あくまでも、統合幕僚長にしても各幕僚長にしても、指揮官である防衛庁長官の補佐機関であるということでございます。

 大事なことは、これはまさに柴山先生がおっしゃったように、しかしながら、実際に統合マインドをつくっていくのはどこであろうか。それはまさに、自衛隊の部隊になります、今明らかではございませんけれども。例えば海上自衛隊でございますと、自衛艦隊司令部という部隊がございます。この部隊の指揮官がございます。これはまさに指揮官でございます。航空自衛隊の場合には航空総隊司令官という指揮官がございます。これは防衛庁長官の命を受けて指揮をとるという形式でございます。こういった形のものが、今までもずっと連綿とありまして、そして、それぞれの、各自衛隊の文化、教育、それから運用の実、これを上げていくということであります。

 そういうことが、今回法案からでは必ずしも明らかではないわけでございますけれども、例えば統合運用という形でやるとするならば、中央機構である、長官の補佐機関である統合幕僚監部という以外に、統合司令部というんでしょうか統合部隊司令部というんでしょうか、そういう意味の常設的な司令部を設けて、そしてそれが統合的な運用についての日常的な教育でありますとか、あるいはドクトリンづくりでありますとか、そういったことをやっていく。そういうことによって、本当の意味での統合マインドというのが各自衛隊に広がっていく、普及をしていくんだろう、このように思います。

 柴山先生がおっしゃられたイギリスの統合の歴史などをひもといてみますと、確かにイギリスもいろいろな問題を抱えておりますが、その一つの解決策として、常設司令部というものを中間段階に設けております。これは、私の知るところ非常にうまくいっているというぐあいに理解いたします。

 イギリスのような、ちょうど我が自衛隊とほぼ同程度の規模、それからいろいろな政治形態の類似性、そういったことを考えますと、これからの話かもしれませんが、今後はそういったことについての御検討をしていただく必要があるのではないかなと存じます。

 以上でございます。

赤松(正)委員 柴山参考人は、また御意見、コメントはあろうかと思いますが、時間が来ましたので、後の自由討議の中でそういう機会を見つけられてお話しいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小林委員長 以上で各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は二、三分程度となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

赤城委員 自由民主党の赤城徳彦です。

 きょうは、それぞれの参考人から大変貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

 私は神保参考人にお尋ねしたいんですが、レジュメの一ページの将来構想、「防衛構想のトランジション」に関連してです。

 いずれ、将来を考えますと、多くの国がこういう防衛システムを持つようになるだろう。これは必ずしも日米間だけではなくて、いろいろな国がこれを持つ。しかし、それぞれの国の能力に限りがありますから、それぞれの国の能力に応じて分担し合うという形になるのではないか。

 そうすると、ある国にミサイルが飛んできたときに、それを日本の例えば海上システムで、前方で撃ち落とさなきゃいけないというふうな事態が起こる。先生おっしゃるように、他国に向かうミサイルを撃ち落とすのは集団的自衛権に抵触するというのが従来の考え方でした。ところが、今回の法律の八十二条の二は、これは防衛出動ではなくてその前段階として対処するということになっていますから、自衛権の行使とか武力の行使の概念ではなく、いわば警察権の行使だ、こういう法解釈です。

 そうすると、同じ理由で、集団的自衛権という問題は、相手国の意図がわからない、いきなり飛んでくるミサイルについてはそういう集団的自衛権の行使の問題は生じないのではないか。しかし、本格的な戦闘状態になってきますとこれは集団的自衛権の行使の問題になるという、何だか奇妙なことなんですね。それはどこに問題があるのか。自衛力の行使の前段階というふうな構成に無理があるのか、それとも、ミサイルを撃ち落とすという純粋に防衛的、防御的な、いわば鉄の玉をぶつけるということですから、それは今までの武力行使概念とは違う世界の話だ、こう理解したらいいのか。

 そこら辺、広域防衛というふうなことが現実化したときの日本の考え方、どういう防衛構想を描いたらいいのかということを、あらましで結構ですから、教えていただければと思います。

神保参考人 御質問ありがとうございます。

 私、法制制度について必ずしも詳しく検討しているわけではございませんので、いろいろ間違ったことを申し上げるかもしれませんが、私自身の基本的な考え方だけ述べさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、仮にミサイルの射程というものが延びてまいりまして、仮に北朝鮮ということを想定してみた場合、現在のノドンというのが一応千三百キロ程度の射程、そしてテポドン1、2とそれぞれ射程が延びてくるというふうに想定されております。

 仮にテポドンが一万キロの射程を持った場合、これがどこまで届くかということになりますと、北米でいいますと大体アメリカのアラスカのあたり、そしてヨーロッパでいきますとほとんどのEU諸国を含むという形になりまして、これは、北朝鮮が保有するミサイル自体がいわゆる戦略的な脅威としてある。そして、その飛翔経路によっては、特にこれは北米に関して言えることかと思いますけれども、やはり、日本の北側にかかるような形で飛んでいく形態をとるということについて見れば、将来の非常に高高度での迎撃が可能なミサイルを導入する際には、そうした他国に向かうミサイルについて日本のシステムを迎撃に当たらせるということが現実味を帯びた選択肢になってくるわけでございます。

 そこで、日本の従来の集団的自衛権の行使との関係、そして今回議論されております自衛隊法八十二条の二との関係をどう整備するかという話でございますけれども、マドルスルーという表現を使ったら変かもしれませんけれども、現行解釈のいわゆる自衛権に当たらないという形で、いわゆるミサイルの経路がある程度どこに着弾するかわからず、どこに着弾するかわからないにもかかわらず、我が国あるいはその領空を通過するであるとか、それに危険を及ぼす可能性のあるミサイル、さらにはその部品が落下するかもしれないという段階を援用させてグローバルなミサイル防衛に対応させるということも一定程度は可能かというふうに思います。

 ただし、ここで考えなければいけないのは、やはり、柴山参考人もおっしゃっておりましたとおり、将来のテクノロジーというのは大変多様化してまいります。今後我々が関与するのが必ずしもアドバンストないわゆる海上発射型のミサイルだけではなくて、場合によってはよりブーストフェーズでのエアボーンミサイルということになりますと、先ほど柴山参考人がおっしゃっておられたようなステルス型の戦闘機だけではなくて、例えばボーイングに載せたエアボーンレーザー型といいますか、いわゆる高照射型のレーザーを遠くから照射するというような形の防衛構想もやはりいろいろなところで関与してくるかと思います。

 こういったすべてのミサイル防衛の構想に我が国の現在の解釈というものを当てはめていくことが果たしていいのか、それとも、やはり他国の防衛というものに日本のシステムも関与させていくんだ、そのグローバルな脅威が迫ってくる時代に、やはり戦域だけの脅威でつくりかけてきた法体系なり政府解釈というものは見直す必要があるのか、このあたりの政策判断を技術の進展とあわせてしなければいけないというのが私の考えでございます。

前原委員 民主党の前原でございます。

 きょうは、三参考人の皆さん、ありがとうございました。

 お伺いしたいのは一点でございます。ミサイル防衛のそれぞれ専門家でいらっしゃいますが、資金が無尽蔵にあって、そして防衛費に限界がないということであれば、これからどんどんどんどん技術の革新に合わせてミサイル防衛を整備するということにはなるんでしょうが、今でも多大な借金を抱えていて、恐らく防衛費も含めて抑制傾向になっていくのは間違いないと思います。

 と同時に、中国の台頭と、中国が十七年連続して平均一〇%以上の軍事力を増加する中で、東シナ海の権益、あるいは領土の係争地域というものもあるわけですね。

 つまりは、防衛費というものをどのように配分していくかということの中でこのミサイル防衛を考えないと、ミサイル防衛だけを考えていたのではバランスのとれた防衛力整備にはならないだろう、このように考えております。

 しかも、ミサイル防衛については、北朝鮮が今後何年間存続しているかわかりませんが、もちろん中国、ロシア、近隣の国は持っているわけでありますけれども、北朝鮮のように、いつ飛んでくるかわからないという蓋然性の高い国には恐らく中国やロシアはならないんだろうと思います。

 そうしたときに、先ほど申し上げたとおり、ミサイル防衛というものと他の通常戦力とのバランスを、戦略環境の変化と日本の財政というものをあわせた場合にどのように考えていったらいいのか、その点についてお伺いをさせていただきたいと思います。

金田参考人 どうもありがとうございます。

 資金は無尽蔵にないわけでございます。しかしながら、脅威というものが、あるいは危険要因というものがまた大きく変化していく。それは大きくなったり小さくなったりする。それから、国と国との関係における問題のみならず、例えば国際テロリストというものが最近は出てきている。こういう状況をやはり我々は考えていかなきゃいけない。そこで、日本の国民の皆さんが安心してまくらを高くして寝られるという状況をやはり国家としては責任を持ってやらなければいけないことだと思います。

 それでは、お金という面だけで弾道ミサイル防衛が終わるかというと、そうではないということを、先ほど私、ある一面ではそうであるが、それだけではないということを五Dというお話の中でさせていただいたと思います。

 そういったことで、近隣諸国との関係もつくり上げる、そういう中で、いかに我々が努力いたします防衛の体制といいましょうか、そういうものを、大きな外交カードといいましょうか、そういう形に使っていくかということが大事なんだと思います。

 したがって、それを非常に簡単に申せば、例えば弾道ミサイル防衛というようなものにつきましては、我が国としては非常に戦略的なデバイスであるというような考え方を持って臨むということが大事なのかなというぐあいに思います。

 一方におきまして、例えば、先ほど柴山先生からもお話ありました民間防衛というようなことを考えますと、弾道ミサイルが飛来するというようなことを全国津々浦々に通知しなきゃいけない、警報として出さなきゃいけない、そういうものをどうやってつくり上げるんだ。既存のものもある、新しいものも必要だ、そういうことで中心になるのが、例えばBM・C4Iを構築する際に、それをそういったものの中心に据えて、そして全国の津々浦々に警報を発することのできるようなことをつくり上げる、これは相当大がかりなシステムになると思います。

 つまり、その効果というのは、ただ単に防衛費を消費するというだけではなくて、我が国のIT産業そのものを全体的にもう一回掘り起こす、大きな世界的なレベルで見ても、一段、二段ステップアップしたような極めて大規模なものをつくっていく、そのことの民間への波及、そういう防衛の経済効果といったことも着眼しながら進めていけばいいのかなというぐあいに思います。

神保参考人 大変難しい御質問だというふうに思います。

 以前、一九七〇年代に日本の防衛構想を見直したときに、所要防衛力と基盤的防衛力の対立というのがございました。所要防衛力論というのが当時成り立たなかった背景も、もちろん戦力の見積もりというのもございますけれども、日本の財政的な制約というのがやはり非常に大きな要因だったというふうに思います。

 その際に、やはり、軍事的合理性というよりも政治的な合理性のもとに我々は基盤的防衛力というものを採用し、そして日米同盟の効率的な運用のもとで日本の総合的な安全保障の力というものを他国とともに担保していく、それが同盟であり、その他の国との協力的な安全保障の構想だったというこの構図自体は、私は継続していくんだろうというふうに思います。

 ところが、脅威の態様が変わり、金田先生もおっしゃったように米国との同盟国による抑止関係というものが十分に機能しないすき間というものに対して、我々がやはり独自の力というものを発揮していかなければいけない分野というものがある。それが一つは、いろいろありますけれども、非対称的な脅威であり、領域防衛の問題であり、ゲリラ・コマンドー攻撃のようなああいった非常に小規模な、非対称的な攻撃にいかにみずからの能力を整えていくかという次元と、そして、ミサイル防衛のような、いわば対称的な国家では抑止できたかもしれないが、そうではない相手に対して、アクシデンタルなローンチも含めて、その他のいろいろなシナリオによって日本に対してミサイルが発射された場合に、これを独自の力で防衛するといった能力というものが必要となってくる、こういったことに関しては、やはり優先的に予算を割いていかなければいけないというふうに思うわけでございます。

 もう一つ、仮に、非対称的な脅威というのはこうした拒否力、防衛力といった手段でも十分に担保されないという事態、つまり国民がそれでも安心できないという事態になった場合、日本がやはり初めて懲罰的な能力に関してもこれを検討するといったことを始めなければいけない時代に入ったのではないかということをつけ加えて申し上げたいと思います。

 具体的には、北朝鮮のミサイルを、同盟関係でも、そして我々のミサイル防衛でも十分に防衛が担保されないと国民が認識した事態に対して、これを北朝鮮にさらなる手段をもって抑止をかけるということになりますと、やはり、日本が通常戦力によっていかに相手のミサイルサイトをたたくかといった懲罰力の導入というのが、いわゆるプライオリタイゼーションでいいますと、順番をもって検討されていく、こういった形での構想が求められていく、そういったところへの予算の配分というものはやはり不可欠なのではないかというふうに考えている次第でございます。

柴山参考人 私は、金田先生や神保先生ともかなり合意するわけですけれども、基本的には、かなり戦略的なことなので、ある程度のお金に関しては目をつぶらざるを得ないのかなというふうに思っています。

 ただし、やはり、マルチプルなミッション、例えばステルス戦闘機であれば、相手の戦闘機に対する対応からミサイル防衛、さらにはそのほかの偵察とかいうようなところまで全部カバーできる。そんな意味では、兵器体系を選ぶ上で、ほかのミッションもこなせるものを優先的にやるということでお金を削るというのは、これは一つあるのかなと思います。

 もう一つは、やはり民間のテクノロジーを米軍のように積極的に使って足元から安く上げるということをやらないと、もはやもたないのかなというふうに思っております。

 あともう一つは、これを言うとかなり自衛隊の人に怒られるかもしれませんが、やはり人を削る。これ以上削ってどうなるのかというふうに言われますけれども、RMA化が進む中では、これまでのように、とりわけ陸上で第一線に人間が立つという段階は、二十年たてばもうなくなると思います。そのことから人件費を削っていくということもやはり考えていくというのがいいのではないかというふうに思っております。

武正委員 民主党の武正公一でございます。

 三参考人、本日はまことにありがとうございました。

 民主党は、これまでシビリアンコントロールということで大変こだわってまいりまして、今般、テロ特措法に基づく自衛隊の派遣延長、これについてはやはり反対という声明を出しております。テロ特措法で国会事前承認ということにこだわった過去からの流れでございますが、今回のミサイル防衛構想に基づく法案では国会報告ということが出ているんですけれども、やはり、シビリアンコントロールでも国会の関与のあり方ということで、それぞれ三参考人の御意見を伺いたいと思います。

金田参考人 非常に一般的なことになると思いますけれども、シビリアンコントロールというのは、政治が軍事、我が国の場合では防衛ということになりますが、それをスーパーバイズする、監督するということでございまして、民主主義国家として非常に当然でありますし、また、幸いなことにといいますか、我が国ではそういった概念につきましては非常に普及しておる、ごく当たり前のことであるというぐあいになっているんだろうと思います。

 そして、こういった問題に、例えば弾道ミサイル防衛という問題につきまして、実際に何かアクションを起こした場合に国会に報告するということ、報告の仕方、承認の仕方、これは私は法律の専門家ではございませんので云々することはできないわけでございますけれども、シビリアンの究極である国会が何らかの関与の仕方をするということもまたこれは至極当然であろうかと思います。

 そして、何よりも大事なことは、弾道ミサイル防衛ということは非常に緊急性を要することでございます。したがいまして、シビリアンがあらかじめ平時の、平素の段階で落ちついてじっくりと考えられる、そういったときに、政治からの防衛への実施要領といいましょうか対処要領といいましょうか、そういった問題についてあらかじめ適切な形でそれを示し、それを実行するように求めていくということもまた大事であろうと思います。適当な委任というものが今回の場合には非常に重要な要素になってくるという側面もあろうかと存じます。

 以上です。

神保参考人 私は大学で安全保障論を教えておりますけれども、そのときに冒頭の授業の中で申し上げますことは、現代の安全保障は、とりわけ冷戦期に比べると空間軸と時間軸が大きく変化したのではないかということを言っております。

 どういうことかというと、空間軸というのは、やはり空間、いわゆるナショナル、リージョナル、グローバルのバウンダリーを超えて脅威が迫ってくるような時代になったのですね。テロリズムもそうですし、非対称的な脅威が迫ってくるというのもそうだ。

 時間軸と申しますのは、従来のように、平時があって危機が生じて有事があって、そしてシースファイアが起こるというような緩やかなカーブを流れるものから、新しい脅威というのは突然危機と有事がやってくるというような段階にあります。

 こういった二つの流れの中で、シビリアンコントロールの形というのも新たに再定義しなければいけないのではないかというのが私の考えでございます。

 主に、例えばインド洋やイラクへの派遣といった、特措法による日本の新しい領域に対する派遣ということに関して、国会が十分な精査をもって、それを随時精査していくということは非常に重要だというふうに思います。他方で、金田先生のおっしゃるような、非常に緊急性を要するような事案への対処というものについては、やはり国会がその権限をある程度現場にゆだねるということを事前にしっかりと了解するということが極めて重要な問題かというふうに思います。

 したがいまして、両者に共通するのは、やはり立法の場が安全保障に関するマインドというものを極めて精緻に持っていただいて、こういった新しい安全保障の態様に対するシビリアンコントロールを一元的に適用するというよりは、事案ごとにそれにふさわしいシビリアンコントロールのあり方を設定する、そうした形でお考えをいただければ、大変、新しい安全保障の世界にふさわしいシステムがつくれるのではないかというふうに考えているところでございます。

柴山参考人 必ずしも神保先生とは、意見を異にいたしますが、もはやアメリカ、イギリスでは長い間のシビリアンコントロールの歴史があります。そこから素直に学ぶということは非常に大切かと私は思っております。

 あともう一つは、たとえ私が申し上げたような防空委員会ができても、政治家の皆さんに知的努力がなく、知識がなく進めば全然これは話にならないわけでありまして、国会の皆さんにまずお願いしたいのは、とにかく知識と現状の認識についてのかさ上げをお願いする。それをもって各委員会でしっかり議論をし、私どものような、つまらない学者でございますけれども、そういう人も呼んで、ほかの観点から、防衛庁だけの話を聞くというのではなくて、中立の人間がどういうふうに考えているんだろうというような観点から意見を聞いてみようという広い心を持たれて国会運営をなさることがまずは大事であるかと思います。

 それとともに、もう一つは、何と申してもこれは内閣の問題点でありまして、内閣がとにかくしっかり握るという決意のもとに運営するということが重要であり、それを支える国会というのもまたその意義を問われているというふうに思っております。

武正委員 ありがとうございました。

中野(譲)委員 きょうはためになるお話をいただきまして、大変ありがとうございます。

 時間も限られていますので、簡潔にちょっとお尋ねをしたいんですが、神保先生が、拠点防衛、地域防衛、そして広域防衛という概念の中で、現存の計画の中では地域防衛といっても極めて限定的な地域防衛だというのは、委員の方々、皆さん、先生方御存じだと思うんですが、これは五年から八年で八千億から一兆円で、広域防衛にはとても及ばないという状況の中で、神保先生のおっしゃる広域防衛というのはどのような予算とか兵力とか、あとは現存のいわゆる安全保障の中でのフレームワークをどういうふうにかいていくというところで、どういうような広域防衛の絵面をイメージされているのかをちょっとお尋ねしたいと思います。

神保参考人 委員おっしゃるとおり、日本が初期配備するミサイル防衛のシステムというのは、恐らく限られた範囲を防衛するということになると思います。

 今後、私が将来構想の中で広域防衛に発展する可能性があると申し上げた要素は幾つかの要素に分かれます。

 一つは、ミサイルの弾道とか飛翔経路を見ると、それはやはり日本の領土なりほかの他国の領域をまたいで到達するということを考えれば、仮にICBMを、アセンド段階といいますけれども、飛翔が上がっていく段階で、ここでインターセプトするというシステムを取得すれば、それはほかの国に向かっていくミサイルを日本のシステムで、ある一定の地域のもとで迎撃するということがいわゆる広域防衛の一つの要素ということになります。

 もう一つは、ミサイル防衛というのは必ずしもインターセプト段階だけを言うのではなくて、それは探知から迎撃に至るすべてのスペクトラムを指します。その段階で、日本とアメリカが仮にこういったシステムを共同運用するということになりますと、日本におけるグラウンドベースト・レーダー、今FPS―XXというのが飯岡町に配備されておりますけれども、これがどんどんふえていきます。こういったデータの収集、そして日本のイージス艦におけるセンサーとそしてデータの収集と解析というものが、その他の国が、特にアメリカがミサイル防衛を運用するときの重要なコンポーネントになる、こういったことがいわゆる広域防衛を語るときの非常に大きな要素になるかということに思います。

 したがいまして、私のイメージというのは、必ずしも、日本がイージス艦をどんどんふやして、ミサイル防衛のシステムコンポーネントを拡充して広域防衛を行うというよりも、むしろアメリカの全体のグローバルなミサイル防衛のシステムの中に日本のシステムコンポーネントを組み込むことによって広域防衛を達成する、こういったイメージとして話したということでございます。

小林委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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