衆議院

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第7号 平成19年4月10日(火曜日)

会議録本文へ
平成十九年四月十日(火曜日)

    午後三時開議

 出席委員

   委員長 木村 太郎君

   理事 赤城 徳彦君 理事 今津  寛君

   理事 北村 誠吾君 理事 寺田  稔君

   理事 中谷  元君 理事 笹木 竜三君

   理事 遠藤 乙彦君

      石破  茂君    大塚  拓君

      大前 繁雄君    亀井善太郎君

      瓦   力君    鈴木 淳司君

      高鳥 修一君    浜田 靖一君

      福田 良彦君    三原 朝彦君

      山内 康一君    山崎  拓君

      神風 英男君    津村 啓介君

      長島 昭久君    前田 雄吉君

      赤松 正雄君    赤嶺 政賢君

      日森 文尋君    西村 真悟君

    …………………………………

   防衛大臣政務官      大前 繁雄君

   参考人

   (軍事評論家)      江畑 謙介君

   参考人

   (大阪大学大学院法学研究科教授)         坂元 一哉君

   参考人

   (拓殖大学国際学部教授) 川上 高司君

   参考人

   (沖縄大学名誉教授)   新崎 盛暉君

   安全保障委員会専門員   三田村秀人君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     亀井善太郎君

  高木  毅君     高鳥 修一君

  仲村 正治君     三原 朝彦君

  辻元 清美君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  亀井善太郎君     安次富 修君

  高鳥 修一君     鈴木 淳司君

  三原 朝彦君     仲村 正治君

  日森 文尋君     辻元 清美君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 淳司君     高木  毅君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案(内閣提出第二七号)


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     ――――◇―――――

木村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、軍事評論家江畑謙介君、大阪大学大学院法学研究科教授坂元一哉君、拓殖大学国際学部教授川上高司君、沖縄大学名誉教授新崎盛暉君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、江畑参考人、坂元参考人、川上参考人、新崎参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知をいただきたいと存じます。

 それでは、まず江畑参考人にお願いいたします。

江畑参考人 江畑でございます。

 簡単に意見を述べよということなので、できるだけ手短に今回の法案の内容に関連することを述べさせていただきたいと思います。

 まず第一に、米軍再編の目的と基本方針ですが、これはもう皆さん御存じだと思いますけれども、簡単に言えば、二十一世紀、アメリカが軍事戦略にどうやって対応したらいいかということのための全世界における米軍の基地及びその施設、部隊の再編計画です。

 その基本的な目的はどうかというと、冷戦時代の米軍の基地及び部隊の配置というものは、簡単に言えば、東側、つまりソ連を中心とする共産圏諸国の封じ込め政策、そして、それが外へ出てくるのを防ぐ、あるいは出てきた場合にそれを防ぐという、いわゆる静的な、スタティックな基地の配置であったのに対して、これからは、どういうことがどこで起こるかは非常に予測が難しい、そのためにそこに迅速に短時間で対応できるような形に基地及び部隊を配置するというのが基本目的です。そういう意味では、ダイナミックな作戦ができるようにということと言えるかと思います。

 ただ、その場合に、日本側の立場から見た場合には、では、米軍がある中東方面とかアフリカ方面に展開する場合に日本を中継するというようなときに、果たして日本の基地が使われること自体をどういうふうにとらえるかという一つの疑問が出てくるだろうというふうに考えます。ただ、それも、逆に見れば、今回の日米の合意、特に去年なされました日米間の合意に関連して、共通の戦略目標がある、それが世界の安定に寄与するものであるならばという事項が共同声明についてございますので、そこから見れば一種の解釈が可能かなとも思われます。

 それから、アメリカの方針としては、すべての事態にアメリカの軍隊、つまり米軍だけで対応するのではなくて、その地域における同盟国ないしは友好国の積極的な役割分担というものを期待する、できればそのために必要な経費の負担も求めるというのが、表立っては言っておりませんが、基本的な政策として感じられるといいますか、見てとれます。

 ただ、これも地域と国によって格差がございまして、経済的に非常に困難な国に対してはそれほど多くは求めていません。その例としては、黒海周辺におけるルーマニアあるいはブルガリアで、こういうような国に求めるのは、米軍基地そのものの建設はアメリカが負担するけれども、その周辺のインフラ、例えば道路の整備というようなものに関してはブルガリアやルーマニアに負担してもらうという形です。

 それに対して、逆に、基地そのものの新設ないし移転に関して多くをその国に負担を求めるというのが、例として言えば、まさに日本であり、お隣の韓国がそうだろうと思います。ともに米軍経費、例えば韓国の在韓米軍の移転経費、特に、ソウルにおける在韓米軍司令部を平沢という南の方に移動しますけれども、これの経費、つい最近出ましたけれども、総額が約十兆ウォン、日本円にいたしますと一兆二千五百億円、そのうちのおよそ六〇%、七千億円分ぐらいは韓国が負担する。そういう点で、比率からいうと、今度の沖縄の在日米軍を、特に海兵隊を中心としてグアム島に移転する経費の負担率が五九%ということですから、日本と似たような負担率かなというふうに思われます。

 それで、今回の特別措置法案について、日本の国民の立場からして、一国民としてどういうふうに見られるかということの意見も申し上げます。

 まず、地理的に見ますと、日本は、アメリカの本土から見れば、太平洋を越えて反対の位置にあります。したがって、ここは、冒頭申し上げましたけれども、アメリカが中央アジアあるいは南アジア、さらには遠くはアフリカにまで米軍を展開する場合に、日本という、太平洋を越えたこちらにある同盟国というのは極めて重要な戦略的な位置にあります。しかも、政治的にも、言うまでもなく、同じシステムですし、価値観も共有できるというところですね。特にこういう点から言えるのが、沖縄の価値というものは、アメリカから見る限り、アジア方面、それからさきの東南アジアから南アジア、中東に至るまでの経緯を考えますと極めて重要になって、むしろ冷戦時代よりも沖縄の地位はアメリカにとってみれば非常に高くなったということが言えるかと思います。

 それから、日米安全保障条約そのものの存在というものは、アメリカ軍のアジア太平洋方面展開能力を支えるものであるというだけではなくて、地域安定要素として評価している国があることも否定できません。また、日米安保条約に基づく配置によって、日本、我が国の軍事力の過度な、過度というのはいろいろ比較の問題がございますけれども、軍事力の過度な増強が抑えられるというふうに考えているアジア諸国あるいはそれ以外の地域の国もあるというのも、またこれも否定できない事実だろうと思います。

 そして一方、外国の軍隊の駐留や基地の新設というものがなされれば、その国にとってみれば地域住民との摩擦が生ずるのは当たり前のことで、基本的には摩擦がふえる要素が存在してまいります。ですから、これから見るならば、日本国民の方から見るならば、いわゆる沖縄の負担軽減だけではなくて、在日米軍施設や基地、部隊、その再編、移転に伴って、米軍基地、施設を持つ、あるいは新たに受け入れてくれる自治体や住民、それに対して何らかの補償措置が必要となると思われます。その手段として、現在ここに提示されている特別措置法以外に何か有効な手段が見出せるかというと、私個人としては、では、ほかに何かいい方法があるかとなると、残念ながら見出せないというのが現実でございます。

 それからまた、国際的に見た場合、日米が同盟関係にある以上は、外交の基本として、日米両国間で締結された合意というものが実行されない場合に、両国関係のみならず、国際社会における基本的ルール、あるいはマナーと言いかえてもいいかもしれませんけれども、その見地からも我が国の信頼性に対する疑問が生じます。したがって、一度決めた以上はそれを完遂せねばならない。よほどの大きな状況の変化がない限りは、基本的には、両国間で締結された合意に関してはそれを守らなければならないというのが、国際社会で問われますし、それができませんと、我が国の利益が大きく損なわれることになります。

 平成八年、いわゆるSACOで合意されました沖縄の普天間航空基地の辺野古沖への移転というのが十年間にわたって何ら進展せず、結局、再度今回の日米合意を締結せざるを得なくなったという経験は、同じことをまた繰り返しますと、日米間の信頼だけではなくて、世界における我が国の国際的な取り決めに関しての、あるいは約束事に対しての遂行能力に対する疑念を生むという懸念があります。

 そのために、合意された再編内容の実現あるいは進捗状況に応じて地域振興策を実施するという方法が今回の特別措置法で提示されています。これを単純に見ますと、まさに国民の側から見ると、目の前にニンジンをつるされて、馬がそれを食べようと進まされているというような感じを受けて、確かに余りいい気持ちはいたしません。いたしませんが、ではほかにいい方法があるかとなりますと、これも私個人で見るならば、残念ながら、ほかにはこれ以上のものが見出せないというのも事実で、もしこれがだめだというなら、何か別で現実的であって有効な方法というのを考え出さなければならぬのですが、今、私個人にはそれを例示できる能力はございません。

 ただ、最後に、基本的にこれは国民の税金を使って行われることです。今回の特別措置法の内容を見ますと、ほとんどいわゆる財政的な支援策ないしは財政的な解決策ですから、そうなりますと、国民の税金を使って行うものですから、どうしてこのような施設が必要なのか、あるいはどうしてこの部隊は移動せねばならぬのかということに関して、国民に十分理解を求めるようにさらに一層の説明が必要だろうと思います。

 これは、法案の第一章第三条第二項にもより一層の説明を行うというふうに書いてございますけれども、それと同じように、今までの経緯からしますと、日米間の合意を急ぐ余り、何か国民に対しての十分な説明がなされてこなかったような印象があります。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

木村委員長 ありがとうございました。

 次に、坂元参考人にお願いいたします。

坂元参考人 大阪大学の坂元でございます。

 本日はお招きくださり、ありがとうございました。

 日米同盟は、二十一世紀に入ってすぐ、九・一一テロ事件への対応という正念場を迎え、それを何とか乗り切りましたが、今また新たな正念場を迎えております。言うまでもなく、北朝鮮の核兵器への対応という問題であります。日米同盟が朝鮮戦争を契機として生まれましたことを考えますと、この同盟に関して言えば、テロよりも大きな危機が目前にあると言ってよいのではないでしょうか。

 私は、日米両国がこれまでのところ核問題についてよく連携していると思います。思いますが、両国間の連携に微妙なすき間風が吹いて、それが思わぬ大きな風になり同盟を揺さぶる可能性が全くないとは言い切れません。

 なぜなら、核の脅威と申しましても、やはり遠近の差がございまして、日本の場合はそれが近くにあって直接の脅威になりますが、米国の場合は遠くにあってまだ間接的な脅威にすぎないからです。日本の場合はごく少数の核でも困りますが、米国の場合はごく少数の核なら慌てる必要はない。どちらも北朝鮮の核を安全保障上の脅威ととらえてはいるものの、危機感には差があるように思います。特に、米国は今イラクで手いっぱいになっておりますので、相対的に北朝鮮の核については危機感が薄れます。

 一つエピソード的な例を挙げますと、最近、米国において、日本問題に関心と経験を持つ識者のグループが日米同盟に関する報告書を出しました。代表者は国務副長官を務められたアーミテージさんで、アーミテージ・レポートとも呼ばれています。この報告書は、二〇二〇年までのアジアの将来を予測しつつ、日米同盟の重要性を再確認し強調するものでして、私は基本的に歓迎しております。

 ただ、中に気になる記述がございました。それは、この同じグループが二〇〇〇年にも報告書を出しているのですが、その二〇〇〇年以降、アジアで起こった最も重要な出来事は中国の爆発的な経済成長かもしれないと書いているところです。確かに、中国の驚異的な経済発展が地域だけでなく世界の将来にとってとても大きな意味を持つことは間違いありません。それはそうなんですが、安全保障に関する報告書として見た場合、私としてはやはり、二〇〇〇年から二〇〇七年の間にこの地域で起こった最も重要な出来事は昨年十月の北朝鮮の核実験だと書いてほしかったと思います。

 しかし、それはやや揚げ足取りかもしれません。大事なことは、日米がしっかりと連携することで、そのこと自体は今度のアーミテージ・レポートでも全体を貫くテーマになっております。北朝鮮の核の脅威に直面した今、日米同盟を強化し、同盟間にすきま風が吹かないようにする。その努力の必要がますます高まっているのは確かではないでしょうか。

 本委員会で審議がなされています駐留軍等の再編の円滑な実施に関する特別措置法案は、その意味でも重要な法案だと思います。私は、米軍再編と日米同盟のすり合わせを速やかに進めて、日米同盟を強化する、そのために日本が行う努力の財政的基盤を整える本法案の成立を希望いたします。もちろん、国民の税金に絡むことですから、国会での徹底した御審議も期待しております。

 米軍再編は、米国が軍事技術の驚異的な発展を踏まえて、テロとの闘いなど二十一世紀の国際環境が生み出す新しい脅威に対抗するため、米軍基地と部隊を再編し、米軍をさまざまな事態に効率よく対応できる軍隊に変化させる試みです。かぎになるのは米軍の迅速な展開能力で、米国本土以外の基地が果たす役割が小さくありません。特に日本の基地は、イギリスなどとともに、非常に重要視されているようでございます。

 数年前から、この米軍再編と日米同盟をどうすり合わせるか両政府間で話し合いが行われ、昨年、大枠で合意がまとまったわけです。その円滑な実施には、まだ再編で影響を受ける自治体と地域住民の理解を得る作業が残っておりますが、私は、両政府間の合意については基本的に支持しております。

 私が支持します理由は、この合意が、米国の戦略的要請に対応しつつ、そればかりでなく、その一方で、日米同盟の構造的弱点の是正を進めることにもつながるのではないか、そう期待するからであります。私が構造的弱点と申しますのは、近年、大分変化してきたとは申しましても、この同盟が依然として基地を貸して安全保障を得ることを基本とするものであり、互いに互いを守るという、通常の意味での同盟関係の側面が弱いことであります。そして、その側面が弱い分、基地負担が重くなります。

 基地を貸して安全保障を得るという形は日米それぞれの事情と戦略を背景にしてできたもので、双方に大きな利益がございます。あるから長続きしてきたわけです。ただ、残念ながら、この形はお互いに感情の摩擦を生じさせやすいところがございます。と申しますのも、基地を貸す方は、借りる方が基地の負担と危険を十分に理解していないのではないかと疑い、逆に基地を借りて軍隊を置く方は、自国の若者に命のリスクまで負わせて抑止力を提供しているのに評価されないと感じる、そういうことになりやすいからであります。

 米軍再編に伴う日米の話し合いの中にもその摩擦が見られました。在日米軍基地の整理統合は、米軍のプレゼンスに伴う抑止力を減ずることなく基地負担の軽減や分担を図るやり方、つまり、抑止と負担のバランスでもって進められたわけです。それは当然のことですが、問題は、抑止というものが目に見えにくく、反対に負担は目につきやすいということです。ですから、二つのバランスと申しましても、どうしても負担をどう減らすかがクローズアップされる。そうなりますと、今度は米軍の方が、何だ、おれたちはただの負担か、こういうことになっておもしろくない。

 私は、日米同盟が二十一世紀も活力を持って続いていくためには、同盟協力の形を、基地を貸して安全保障を得るということだけに頼らず、互いに互いを守るという要素をできる限りふやしていくべきだと考えています。そうすることで、基地をめぐる双方の不満を、すべてではないにしろ、和らげていくことができるし、抑止と負担のバランスもより気持ちよく実現できると考えるからです。

 そうした観点から今回の両政府間の合意を眺めましたとき、合意のさまざまな中身の中で私が特に注目しておりますのは、グアムについての合意であります。

 グアムは、西太平洋マリアナ諸島最南端に浮かぶ米国領の島で、皆様御存じのように、日本から飛行機で三時間ほどで行ける常夏の島です。人口約十六万人、毎年何十万人もの日本人が観光に出かけております。実はこの島は、米国が米軍再編において、日本、イギリスなどと並び、世界大の米軍展開を支える重要拠点の一つと位置づける島でもあります。

 日米両政府は、このグアムに関して二つのことを合意いたしました。一つは、沖縄に駐留する第三海兵機動展開部隊司令部など、沖縄から八千名の海兵隊員とその家族九千人が県外に移転します。これは、米国政府が、日本政府の働きかけに応じて、沖縄の基地負担軽減の目玉として打ち出した措置です。在日米軍基地が集中する沖縄の負担軽減は、基地を貸して安全保障を得る形の同盟をスムーズに運営するため、極めて大事な取り組みであることは改めて言うまでもありませんが、このグアムへの移転は、沖縄の負担を日本国内の他の基地が分担することで軽減するというやり方ではなくて、日本全体として負担を軽減するものです。

 もっとも、グアムへの移転経費の約六割、六十一億ドルを日本側が負担することになっております。真水の財政支出は、日本側の上限が二十八億ドル、米側は三十二億ドルで米国側が多いのですが、日本側は財政支出に加えて、家族住宅や基地インフラの建設について、国際協力銀行などを通した出資、融資を三十三億ドル行うことになっています。そういうことを国際協力銀行ができるようにするのが今回の特別措置法の主たる目的の一つですが、そういう特別措置法をつくらなければならないことをとってみても、この経費分担がかなり異例なことであることがわかります。

 あるいは、世界に例を見ないことかもしれません。何しろ、他国の領土に他国の軍事施設をつくる、その資金を出すというわけですから、これはどういう理屈で出すのか、それが問題になるのは当然だろうと思います。国会でもそこのところは十分に議論していただいて、間違っても、わけがわからないうちに出したということにはならないようにしていただきたく思います。

 もしそういうことになりますと、国民も不満でしょうし、また、米国側に安全保障に関する日本の姿勢について誤解を与えるおそれもあります。あの国は、同盟を結んでおいて、我々を助けるとはなかなか言ってくれないが、基地を貸したり、お金を出したりすることは簡単にやってくれるといった誤解であります。そういう誤解は国家の名誉や品格にかかわります。

 私自身は、海兵隊の沖縄からの移転が日本側の要請であったこと、グアムに移転した米海兵隊は日米同盟の目的のために使われること、移転を早めて沖縄の負担を早期に軽減できること、真水の財政支出自身は米国の方が多いことなどを考え合わせて、六十億ドルというのは巨額ですが、移転経費の分担はやむを得ないと考えております。ただ、そう考えていますが、それでも多少ひっかかるところはございます。そのひっかかりを私なりにどう納得しているかは、最後に述べたいと思います。

 もう一つ、グアムに関して、米軍再編と日米同盟のすり合わせの結果出てきたものとして、米国がグアムの訓練施設を拡張するのに合わせてグアムにおける日米共同訓練を強化することがございます。これは、自衛隊と米軍の相互運用性、能力、即応性の向上に貢献します。既に、陸上自衛隊と航空自衛隊がグアムで共同訓練を行い、成果を上げていますが、特に航空自衛隊は、広い訓練空域を使って、日本ではやりにくい電子戦の訓練ができますし、米軍との真剣な訓練で戦技の向上にも役立つそうです。

 こうした訓練は、自衛隊と米軍が協力して日米同盟の有事対応能力を高め、東アジアの軍事バランスを日米両国にとって有利なまま維持するのに役立ちます。日米同盟を互いに互いを守る同盟に近づけていくという観点から見た場合に、共同訓練の基地としてグアムがより頻繁に活用されることは、海兵隊のグアム移転に劣らず大きな意味があると考えます。

 そして、その観点からさらに言えば、グアムへの海兵隊移転についても、むしろ移転後の海兵隊の使い方に注目すべきかもしれません。といいますのも、抑止と負担のバランスでグアムに海兵隊司令部が移転するわけですが、その基地負担が減った分、抑止力維持のための日米間の仕事の分担はどう変化するのかという問いが必ず出てくると考えるからです。

 私は、米国側には、この移転した海兵隊が日米同盟の目的に即して移動する場合には、日本側から輸送、整備、補給などの後方支援協力を得られるという期待があると思います。将来的にそういうことができるようになるならば、日米は互いに守るという形の協力をまた一つふやすことができます。

 アジアには今、一方に、域内の経済発展、経済関係の緊密化、観光や文化交流の増大といった平和的潮流がある反面、他方には、北朝鮮の核問題、台湾問題、そして前年比二けた以上の軍事費増大を続けて脅威になりつつある中国の将来という不安定要因がございます。日本の平和と繁栄は、まさに日米同盟が、後者の潮流を抑え、前者の土台を固める、そのことにかかっているのではないでしょうか。日米同盟強化の必要は明らかです。

 ただ、同盟強化と申しますと、これまで大抵は、まず米国側に強化のための構想が生まれ、次に米国側から提案ないし要求があり、その後、日本側がのろのろと対応を考える、のろのろしているうちに国内が大もめになる、そういうことになりがちでした。残念ながら、今回の米軍再編についても、そういった側面が全くないとは言えません。私は、これからは、たまには日本の方から積極的に何かを提案し、動けないものかと考えております。

 例えばグアムに関して言えば、日米同盟も、日本がアメリカに基地を貸すばかりではおもしろくありませんので、突拍子もない話かもしれませんが、私は、何か協定を結んで、グアムに訓練目的の基地を借りたらどうだろうかと思ったりいたします。もしそれがいろいろな理由で難しいとしましても、そのくらいの気持ちで、グアムの施設を訓練に使わせてもらうような提案をしたらどうでしょうか。

 あるいは、もし海兵隊の輸送に協力するとしたら、それに合わせて、日米が協力して、グアムと沖縄の間のシーレーン防衛を行うという提案をするのはどうでしょうか。

 そうした形で、グアムをいわばてこにして、基地を貸して安全保障を得る同盟の形を、互いに互いを守る同盟に近づけていくことができますならば、つまり、日米同盟の構造上の欠陥を埋め合わせていくことができますならば、六十億ドルという移転経費の負担は決して無駄ではない、そういうふうに私は割り切ろうとしております。もちろん、そういう割り切りでよいかどうかは今後の展開次第ではございます。

 以上、好き勝手なことを言わせていただきました。法案審議のお役に立ったかどうか自信はございませんが、私の話はこれでひとまず終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

木村委員長 ありがとうございました。

 次に、川上参考人にお願いいたします。

川上参考人 拓殖大学の川上でございます。

 今回の在日米軍再編協議は、私は、二つの大きな成果が上がったというぐあいに考えております。一つ目は、米軍再編に対して、日本政府は、沖縄を初めとする在日米軍基地を抱える自治体の負担を大幅に減らしたこと、それから二つ目は、この協議を通じて日米同盟が強化、発展することになったこと、そういった画期的な交渉であったと私は考えております。そして、この二つの成果は、この米軍再編特別法案を通すことによりなし遂げられるというぐあいに私は考える次第であります。

 今からその経緯を簡単に説明いたしまして、米軍再編特別法案の必要性の理由を述べたいと思っております。

 今回の米軍再編のアメリカ側の思惑それから日本側の思惑のそもそも論から御説明したいと思っております。

 まず、アメリカ側から見た米軍再編協議の理由は、二〇〇一年九月の米国同時多発テロで、アメリカは、世界の安全保障環境が大きく変わったということを認識し、テロを最大の脅威として国防戦略を立て直したことに始まるわけでございます。テロは、世界じゅう、いつどこで発生するか予測のつかないモバイル型の脅威であります。したがいまして、アメリカは、そういったモバイル型のテロの脅威に対しまして、世界じゅうのいかなる場所でもアメリカ軍を機敏に、敏速に投入するために米軍再編を行ったわけであります。そして、その作業の一環が、この在日米軍の再編にほかならなかったわけでございます。

 米軍再編協議に際しまして、アメリカ側には二つのねらいがあったと思っております。一つ目は、キャンプ座間に所属する在日米軍司令部を改編すること、二つ目は、韓国の対外政策がアメリカよりも中国寄りになりつつある中で、アメリカは、台湾海峡などでの危機の際、韓国のアメリカ軍基地を確実に使えるかどうかとの懸念を抱くようになり、その結果、韓国のアメリカ軍を段階的に縮小し、かわりに日本の基地を確実に使えるようにしたいというふうなことだと思っております。

 これに対して日本側のねらいというものは、在日米軍再編協議を基地負担の軽減を実現する千載一遇のチャンスとしてとらえ、基地を抱える自治体から負担を軽減し、一方で日米同盟の強化を図った、いわゆる一石二鳥の効果を図ったわけでございます。

 この在日米軍再編協議は、どちらかといえば、日本側が主導権をとって積極的に交渉を行って成果を上げたと言っていいと私は思っております。

 この成果は、在日米軍再編協議のバランスシートで見れば一目瞭然となると考えております。

 二〇〇四年九月に小泉前総理がブッシュ大統領との会談で取り交わした約束が、抑止力の維持と負担の軽減でありました。そこで、在日米軍再編協議の成果をこの抑止力の維持と負担軽減で見てみようと思っております。抑止力の維持と負担軽減は、抑止力それから負担軽減に因数分解ができ、それぞれのバランスシートで評価することができるわけであります。

 まず、抑止力のバランスシートであります。

 これをアメリカ軍独自の動きから見ますと、キャンプ座間に所属する在日米陸軍司令部が高い機動性と即応性を有し、かつ、有事の際の統合作戦の指揮所としての統合任務が可能な司令部に改編されることは、抑止力の維持強化となるわけであります。

 これに対して、同じように統合任務部隊を編成できる第三海兵機動展開部隊、3MEFの司令部などのグアム移転は、抑止力の低下につながりかねないというふうな声がありました。しかしながら、グッドマン海兵隊太平洋司令官が、実戦部隊である三一海兵遠征隊、31MEUを沖縄に残すことにより抑止力を維持し、かつ、モビリティーのある司令部機能をグアムへ移設させることにより、地元からの負担軽減を目指したと指摘しているように、実戦部隊が残るため、抑止力の低下とはならないというぐあいに考えられると思います。

 次に、日本側から見ますと、透明性が確保されないままで軍事力を毎年一〇%以上の割合で増強する中国、核を保有することになるかもしれない北朝鮮、この軍事的脅威に対する抑止力は、アメリカ軍なくしては十分に成立いたしません。

 アメリカはテロといったグローバルな脅威の方をリージョナルな脅威より優先させる傾向にあり、日本は何としてもアメリカ軍を日本に引きつけておかねば、独自の安全保障は十分に確保できない。そのために在日米軍再編協議で講じられた措置は、自衛隊と米軍との一層のインターオペラビリティーの向上化でありました。そのことにより、日本の抑止力は維持強化されることになるわけであります。

 その措置を具体的に述べますならば、第一に、冷戦後初めて、日米間に共通の戦略目標が設定され、それを達成するために日米の役割、任務、能力の分担が新たに設置されたことであります。これにより、自衛隊と米軍が十分な調整を行いながら、共通で多様な問題に実効的に対処する上で、協力することを明らかにしたわけであります。

 第二は、司令部機能の強化であります。

 座間に在日米陸軍司令部が改編されるのに伴いまして、陸上自衛隊の中央即応集団司令部が新設されます。このことにより、陸上自衛隊とアメリカ陸軍とのいわゆる肌と肌との接触が初めて可能となり、司令部間の連携強化、情報交換、協力体制、そういったものが強化されるわけであります。また、陸上自衛隊と共同作戦の運用がより可能になると考えられます。

 横田に航空自衛隊航空総隊司令部を移設してアメリカ第五空軍司令部と併置することになりますが、これによって、日本の防空及びBMDにおける情報共有を初めとする司令部組織間の連携が強化される。

 同じく、横田に共同運用調整所が創設されることで、統合幕僚監部と在日米軍司令部との間の情報の共有化が図られ、日本防衛の共同対処機能を果たすことにもなります。

 第三に、自衛隊及び米軍における施設の共同使用でありまして、これらによって、自衛隊と米軍の融合化が行われ、抑止力が向上されることになるわけであります。

 まず、自衛隊の米軍基地使用に関しましては、横田の米軍基地へ航空自衛隊の航空総隊司令部及び関連部隊が移動する、それから、キャンプ座間へ陸上自衛隊の中央即応集団司令部が移動する、厚木基地へ海上自衛隊のEP3、OP3、UP3飛行隊が岩国から移駐する、陸上自衛隊訓練のため、キャンプ・ハンセンを使用するというふうなことでございます。

 逆に、米軍が自衛隊の基地を使用することに関しましては、米軍のKC130十二機が海上自衛隊鹿屋基地へ定期的なローテーションを展開する、それから、緊急時における航空自衛隊新田原及び築城基地の米軍使用、それから三番目に、米軍訓練の移転というふうなことが挙げられるわけでございます。

 次に、負担軽減のバランスシート、これを考えてみたいと思います。

 在日米軍再編協議の結果、当然ながら、負担が軽減される自治体、それから負担がふえる自治体が出てくるわけでございます。

 例えば、沖縄の場合は米軍再編で大きく影響を受ける地域でございます。沖縄からは、在沖海兵隊約八千人及び家族九千人のグアム移転は目に見える地元の負担軽減となります。また、普天間飛行場の返還、県南部米軍施設の全面、一部返還は、沖縄中南部の住民にとっては負担軽減となりますが、北部の住民の皆さんには負担がふえるわけになります。特に、普天間飛行場の代替施設の移転先である名護市を初めとする自治体には多大の負担増となるわけでございます。

 厚木基地に関しましては、空母艦載機五十九機の岩国基地への移転があります。厚木からは負担が軽減されますが、当然ながら、岩国では負担がふえる。また、同時に普天間の空中給油機KC130十二機が岩国へ移動するわけですが、この移動から沖縄からは負担が減りますが、岩国では負担がふえる。このため、少しでも岩国から負担を軽減するために、岩国の海上自衛隊EP3、OP3、UP3飛行隊を厚木へ移駐させる。さらに、KC130十二機を海上自衛隊鹿屋基地及びグアムに定期的にローテーションで展開させ、少しでも岩国に負担を減らす努力をする。しかし、一方で、鹿屋の負担はふえることになる。

 このように、米軍再編の結果として負担が軽減された自治体はプラスとなりますが、逆に負担がふえることとなる自治体のバランスシートのマイナスをどうプラスで埋め合わせるか、これが問題となってくるわけであります。

 ここに、米軍再編特別法案の必要性が出てくると私は考えております。

 その埋め合わせる方法として、在日米軍再編により負担のふえる自治体の理解を得ることが重要なことは言うまでもありません。そこにおいては、地元が米軍再編を受け入れようとするインセンティブをいかに高めるかが重要でありまして、その方法論としては、強制的な法規もありますが、私は論外であると思っております。

 再編の実施に伴う基地負担の増加というマイナス面を地域振興策によるプラスで補うという米軍再編法案のやり方が現実的な方法であると考えられます。負担が大きくなるが、米軍再編という国の防衛に対して大所高所から前向きに協力する市町村に対しましては、国として配慮することは当然だと言えるのではないでしょうか。

 そのほかに、米軍再編法案の必要な点が二つあります。

 二つ目に重要なのが、地元からの負担を減らすためには、これがパッケージディールであるということを理解しなくちゃいけないと思っております。

 在日米軍の七五%が集中する沖縄から少しでも多くの米軍を削減することは、沖縄県民の長年の悲願であったわけでございます。日本政府は、米国に主体的、積極的に働きかけて、沖縄から大規模な米軍の削減、それから米軍の土地の返還の合意を今回取りつけました。今回を逃しましたら、このようなチャンスはいつ来るかわからない状況であります。

 それを実現させる再編実施のための日米ロードマップでは、普天間基地代替飛行施設の完成に向けた具体的な進展があること、これに加えまして、グアムにおける所要の施設及びインフラ整備のための日本の資金的貢献が取り決められているわけであります。その後に、沖縄からグアムへ第三海兵機動展開部隊の移転がなされ、その展開が行われた後に、普天間基地を初めとする嘉手納飛行場以南の相当規模の土地の返還がなされるというふうなパッケージディールになっているわけでございます。

 したがいまして、グアムのインフラ整備を行う資金調達をするための法的根拠となるこの米軍再編特別法案が成立せねば、すべてが無駄になってしまうということになってしまうわけでございます。

 また、海兵隊八千人とその家族九千人がグアムへ移転するためには、グアムにおけるインフラなどの大規模な整備が必要となり、これをアメリカのみで行った場合は、長期間を要することになり、沖縄の負担軽減が早期には進まないおそれがあるわけであります。このため、グアム移転を早期に実現するため、日本も応分の負担を行うことは合理的であると考えられます。

 さらに、グアム移転経費を民間スキームで行うことにより、在沖縄海兵隊のグアム移転に係る日本側の負担を将来的には日本に戻ってくる資金で賄うことは、アイデアとしては非常に合理的ではないでしょうか。民間資金を使えば使うほど税金を投入する額も減ることになります。こうした努力を期待したいと私は思っております。

 最後になりますが、この米軍再編特別法案が必要な理由は、三年半もかけましてようやく日米間で合意した在日米軍再編協議の合意事項を履行できなかった場合、アメリカ側の日本に対する多大な不信感を抱かせることになり、日米同盟に深い傷がいってしまうことになるということでございます。

 今後、ますます不透明化する我が国の戦略環境に対しての備えをしなくてはならないという観点からも在日米軍再編協議の合意事項は履行せねばならず、そのための必要条件としての米軍再編法案は重要であります。

 以上で私の参考人発言を終わらせていただきます。(拍手)

木村委員長 ありがとうございました。

 次に、新崎参考人にお願いいたします。

新崎参考人 新崎です。

 私は、沖縄から見た米軍再編の問題について話をさせていただきたいと思います。

 米軍再編それ自体は、繰り返されていますように、アメリカの世界的戦略の一環ですし、日米同盟あるいは日米の軍事的協力を目指すものですけれども、沖縄の地位というのは、既に日米再編協議の合意文書あるいはこの法案の中においても、特に沖縄県とか沖縄住民、あるいはその負担軽減というような文言が登場していることからも明らかなように、日米同盟の中で極めて重要な位置を占めていると考えます。

 その重要な地位というのは今急に起こったことではなくて、ある意味では、沖縄、日本、世界を貫く戦後の歴史、現代史の中で一貫して続いてきたことであると私は思っております。そういうことを、限られた時間の中ですので、簡単なメモを皆さんにお配りしてありますけれども、このメモに沿ってお話をさせていただきたいと思います。

 まず、日米関係の中の沖縄ということを考える場合に、まず最初に、現代の歴史の出発点として、沖縄戦というものがあります。日米両軍はここを地上戦の戦場としました。そして、その戦場での米軍の勝利に引き続く軍事占領がその後続けられました。

 日本は、ポツダム宣言を受諾して敗戦を受け入れ、そして連合国軍の支配下に置かれましたけれども、沖縄では名実ともに軍事占領が継続されます。これは、アメリカの占領政策の上で、日本を非武装化するという政策の裏側で沖縄を分離、軍事支配し、要塞化するという政策がある意味では貫徹されたわけです。

 そして、日本がいわゆる主権を回復した対日平和条約の第三条によって、沖縄は日本から分離され、主権国家の規制を受けることなく、国内法的な制約を受けることなく基地が建設でき、基地が使用できる状況に置かれたわけです。いわば、沖縄は日米同盟、日米安保体制を外側から強化する役割を割り振られてきました。

 しかし、これに対する、アメリカの軍事支配に対する民衆運動の高揚とかベトナム戦争への介入によるアメリカの政策破綻の中で、沖縄の排他的支配が維持できなくなった段階で、アメリカは基地維持の責任を日本に転嫁するという形で沖縄返還というものが実現していくわけであります。

 こうした戦後の歴史をるる述べている時間はありませんので、話は飛ばして、九〇年代の中ごろ、つまり九五年の沖縄における米兵犯罪をきっかけとする沖縄の民衆運動が起こって以降の話を次にさせていただきたいと思います。

 この背景には、東西冷戦の終えん、そして東西冷戦を前提とした日米安保の再定義、そしてそれを沖縄に適用する形でのいわゆるSACO合意というものがこの中期、九五年、九六年、九七年という段階で進んでくるわけです。

 このSACO合意というのは、ある意味では、沖縄の民衆への、これまでの東西冷戦の軍事的拠点であったこと、東西冷戦が崩壊したことに対する平和への配当として、米軍基地の整理、縮小、撤去、そして日米地位協定の見直しを求めるというものに対する回答がこのSACO合意でした。

 しかし、このSACO合意は、基本的には、いわゆる七五%在日米軍基地が沖縄に集中しているという状況を七〇%に切り下げる。沖縄の基地を二〇%少なくする。基地そのものは沖縄に、拠点は封じ込めておく。そして、老朽化した基地を日本の資金でコンパクトな最新鋭基地につくりかえるということが根幹でした。したがって、九七年十二月の名護市民投票を初めとする民衆の抵抗によって、ほとんど進展しない状況が続きます。

 ただ、この間、北部振興策とかSACO関連交付金とか、それから軍用地所在市町村活性化事業等によって、地域社会に大きな亀裂が生じたことは言うまでもありません。地域に生じた亀裂というのは、反対で一色だった地域が基地容認派との間で亀裂を起こしていくということです。それは地域社会に亀裂を生じさせただけではなくて、家族とか兄弟とかも賛成派と反対派に引き裂いていくという、ある意味では社会の破壊という結果を生んできました。

 そういう中で、いわゆる米軍再編というものが次の段階として、安保再定義の次のステップとして進んでくるわけです。そして、その中で、少なくとも沖縄から見たときに、いわゆるSACO合意の積み残しを、その部分的修正を含めて、一挙に加速し解決しようとしているというぐあいにこの米軍再編というのは見えます。

 そして、この米軍再編というのは、従来の東西冷戦対応型の沖縄の基地の役割というのを大きく変化させ、これは沖縄基地だけではなくて、こういう東西冷戦対応型の重厚長大な基地を、もっとさまざまな種類の基地を組み合わせたネットワーク型の基地網で、いわゆるアメリカの言う対テロ戦争等にも対応できるような形に組みかえようというのが米軍再編です。

 その意味では、特に海兵隊基地としての沖縄の基地の軍事的役割は、相対的には低下していると思います。しかし、にもかかわらず、日米両政府にとってその政治的価値はむしろ増大しているということがこの間立証されているように思います。

 そういうことを踏まえて、この米軍再編円滑化法案というものを見てみたいと思います。

 これに対しては新聞、ジャーナリズム等も、余りにも露骨に、目先にニンジンをぶら下げて、例えば基地建設のためのしりをたたいていく、あめとむちの政策であるというような言われ方をしています。そういう側面があることも間違いないように思います。

 ただ、私は、それよりも危険な要素というか、そういうものもここには含まれているように思います。参考人としてここに出席するということになってから、こちらから送られてきた資料があります。こちらの安全保障室の資料に書かれているところによると、この再編交付金の従来の基地関連交付金等との違い、国庫補助金等との違いはどこにあるかというと、いわゆるソフト事業も対象にしているところに特徴があると指摘しています。

 従来は、基地関連市町村等に配賦される補助金その他はいわゆる箱物をつくる、そういうことでさまざまな計画がなされ、お金が出される。しかし、できることはできるけれども、その運用の経費は全然見られないので、そういう面で行き詰まりを生じている。そういう地方自治体等から、もっと自由に使える金をということでソフト事業も対象にしているということのようですが、この法案だけでその詳細がわかるわけではありませんけれども、今、この資料で、いわゆるソフト事業を対象としているのはなぜかという理由づけの中でそういう説明がなされております。

 ただ、では、自由な金ができていいのかというと、これはあくまで時限立法です。十年たったらなくなります。そうしたら、その次はどうなるんだ。つまり、安易に予算規模が膨らんで、そしてそれがぱったりなくなるという段階で、どのような対応を地方自治体はとらなければいけないのか。

 他力依存、ある意味では基地依存のこの政策は、あめとむちというより、場合によっては麻薬とむちになりかねない、地域社会の腐敗を深めてしまうおそれがあるというぐあいに、私は、現地でこれまで、基地周辺整備事業、あるいは基地所在市町村活性化事業、いわゆる島田懇事業等の具体的ケースを目にしながら痛感しているところであります。

 この米軍再編円滑化法案のもう一つの柱は、グアムとは明記していなかったと思いますけれども、アメリカ合衆国における基地の建設に対してお金を出す、そういういわば新たな段階に日本が踏み込もうとしている。そして、その必要性は、沖縄県の住民の負担軽減の観点からということがしきりに強調されております。ここに、私は、先ほど言った沖縄に対する軍事的利用だけではなくて、政治的な利用が非常に浮き彫りにされているというふうに認識せざるを得ません。

 海兵隊のグアム移転というのは、アメリカの世界的な、軍事的な再編の一環として行われるのであって、沖縄の負担軽減の目的として行われるものではないということは、ローレス等アメリカ側の交渉の当事者たちが繰り返し言っていることです。結果として負担軽減になるかもしれない、しかしあくまで抑止力の維持強化が目的なのだということは、強調されているとおりだと私は思っています。目的とするものでもないにもかかわらず沖縄の負担軽減というのが非常に大きくクローズアップされているというのが問題だと思います。

 それから、ここで、例えば海兵隊の要員八千名とか家族九千名がグアムに移る、それだけ負担軽減になるということがしきりに強調されています。沖縄タイムスの昨年五月十九日の紙面に載りましたけれども、沖縄タイムス社が在沖米軍にこの問題について照会をした。沖縄には一応一万六千だか八千だかの米軍がいることになっていて、そのうちの半分がグアムに行くということになっているそうですけれども、この去年の五月の時点で、沖縄にいる海兵隊の数は一万二千五百三十人だそうです。これから八千人引いて四千人になるのか、そうではないのか。つまり、軍事基地の実態というのは机上の数字とは決して符合するものではないという側面があるように思います。

 それから、家族九千名の問題ですけれども、このとき、この時点での家族の数は七千九百十名だそうです。沖縄タイムスの記事でも、九千を引いたらマイナスになるという皮肉っぽい表現が出ていました。こういう数字をとらえて負担軽減というようなことが言えるのだろうか。

 それから、負担軽減とは一体何なんだろうか。基地の面積なんだろうか、そこにいる米兵が引き起こす犯罪のようなものだろうか、あるいは騒音のようなものだろうか。一体そのどれをとって基地負担と言われているのか、その辺は非常に不明確です。あちらがふえればこちらが減る、その総体としてどうなのかという問題です。

 そして、この中で繰り返されているのがパッケージ論です。例えば、海兵隊がいなくなる、それは負担軽減になる、では、なぜ辺野古にV字形滑走路を持つ新しい空港が海兵隊基地として必要なのか、そのことに関する十分な説明は全くなされていないと思います。住民側の要求を入れて、騒音が及ばないように滑走路の方角を変えるとか二本にするとか、そういう説明はありますけれども。

 一方では、これは宜野湾市の伊波市長なども指摘していることですけれども、普天間の海兵隊の施設等はほぼグアムに移るようですが、では、なぜ普天間代替施設として辺野古に基地が必要になるのか。

 これはアメリカの総領事などが言うことですけれども、普天間基地の周辺には八万人人がいる、辺野古には八千人しかいない、だから負担軽減だと彼は堂々と言っていますが、そういうものでしょうか。それだったら、沖縄には百三十万しか人口がいない、日本には一億三千万いるから、沖縄に集中させれば日本全体としては負担軽減になる、そういう論理が通用しないと同じように、普天間から辺野古に持っていけば負担が軽減されるということにはならないように私は思っています。

 そのほか、この負担軽減等の議論の中で触れられていないのは、自衛隊による米軍基地の共同使用です。キャンプ・ハンセンで陸上自衛隊が共同訓練をするとか、嘉手納飛行場の共同使用の問題が出てきています。

 御承知のように、今沖縄にある自衛隊の基地というのは米軍基地の三十分の一ぐらいだと思いますけれども、ある意味では、米軍から返還された点に存在するような形だろうと思います。そのため、軍隊としての訓練には支障を来していて、そういうときには本土の基地を使わざるを得ないというような事態がこれまで起こっていたと思います。ところが、キャンプ・ハンセン等が使えればそういうことがなくなって、しかし、それは住民の負担の増大にはつながらないのかということです。

 それから、嘉手納基地の共同使用の問題、そして、嘉手納基地にはF22等が、ある意味では当然のごとく今配備されたりしています。この間新聞をにぎわしているオスプリの問題とか機種の変更とかそういうものをトータルで、果たしてどこをとれば負担の軽減だろうか。プラス・マイナス、いろいろなところのマイナス部分だけをつまみ出して負担軽減といっても、しかし、一方ではパッケージ論が強調されている。

 全体がまとまらなければ一歩も譲らない、つまみ食いは許さないというアメリカ側の姿勢ですから、そういう中でどういうぐあいにこれを理解すべきなのか、そう考えたときに、私はやはり、この米軍再編あるいはこれまでの基地活性化事業とか北部振興策とか、そういうものの経験に即して最も効率的につくり上げられたであろうこの円滑化法案の問題点が逆に浮き彫りにされてくるような気がします。

 これが、私が沖縄から眺めた基地の実感です。

 もう時間が過ぎるそうですから、これで終わらせていただきます。(拍手)

木村委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人各位の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

木村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内康一君。

山内委員 自民党の山内康一と申します。

 本法案の意義について、あるいはこの在日米軍再編の日本に対する影響、あるいは日本の安全保障に対するメリットについてお尋ねしようと思って質問をたくさん用意してきたんですが、もう既に大分お答えいただきまして、逆に裏を返して、江畑先生と川上先生にお尋ねしたいと思います。

 この法案を通じて在日米軍の再編を進めていくということのメリット、意義、よくわかりました。逆に、もしこのような法案が通らなくて、あるいはこの在日米軍基地の再編が日本側の問題があって進まなかった場合の、裏を返してデメリットあるいはリスク、そういったものについて御所見をお伺いできればと思います。

 例えば、韓国であれば在韓米軍、大分削減が進んでいるというようなことがありますが、やはりあれは韓国にとってみたときの抑止力が下がっているということにつながっているんじゃないかと思うんですけれども、そういった意味で、もしこの法案のような措置がとれなかった場合あるいは在日米軍の再編が進まなかった場合、日本にとってどのような安全保障上のリスクがあるか、江畑先生、川上先生にお尋ねいたします。

    〔委員長退席、寺田(稔)委員長代理着席〕

江畑参考人 お答えいたします。

 まず、本来の御質問は、この再編計画の実行がうまくいかなかった場合ということなんだと思いますが、その前に、御指摘なされた在韓米軍の件についてなんです。

 これは私の理解するところ、在韓米軍を削減しても、確かに、先ほど坂元参考人からの御発言もありましたけれども、韓国における反米感情や何かの問題で、なかなか米軍基地の運用というのが難しくなってきたというのも一方ありますけれども、過去十年間の変化を見る限り、北朝鮮、これは朝鮮民主主義人民共和国、以下、北朝鮮と略称を使いますけれども、この軍の内容は、核兵器の技術的な開発及びその運搬手段の弾道ミサイルの開発というものを除けば、通常戦力においてはほとんど進歩していないというふうに考えられます。

 一方、アメリカ軍及び韓国軍は、一九九〇年代から急速に発達いたしましたいわゆるIT、情報技術を駆使して非常に効率のいい軍隊となった。したがって、数の面において言えば、かつての、例えば一九九四年、いわゆる朝鮮半島の核合意の前に非常に緊張したことがありましたけれども、あの時点における在韓米軍及び韓国の軍隊が感じていた北朝鮮の脅威に比べれば、現在の北朝鮮の通常戦力の脅威は非常に低下したというふうに考えます。それがゆえに在韓米軍の削減が可能になったということがかなり大きいのではないかというふうに考えます。

 ただ、問題は、削減が可能であっても、それは抑止力としての機能、実はこの抑止力という概念は非常に難しくて、自分たちではこれで抑止力が高まったと思っていても、相手がそう思ってくれなきゃどうにもならないんですね。ですから、本当に在韓米軍の三分の一削減というのが、北朝鮮の側から見た場合に、実質的能力が高まったから同じだなと見てくれるのか、それとも、実際は、戦闘能力が下がったから今こそチャンスだと思われるのか、それは残念ながら我々の方にはわからないんですが、客観的に見るならば、世界のいかなる視点から見ても、在韓米軍及び韓国軍の能力は非常に高まったというふうに思います。

 しかし、いざここで危機が生じますと、米軍の増強というのが当然必要になります。それは、危機が高まって、戦闘状態にいかなくても、韓国及びその周辺に米軍を増強することによって抑止力が高まるという効果が生まれます。その場合には、その受け入れ先、ないしは韓国に米軍を投入する場合の非常に有力な基地及び施設として日本というのが地理的にいってもあることは間違いなかろうと思います。ですから、日本でいえば、周辺事態安全確保法によってそれはある程度担保されるわけですけれども、アメリカはそれを期待しているということは言えるかと思います。

 一方、ですから、これがうまくいかなかった場合はどうなるかという本来の御質問に対する答えなんですが、先ほど私、これは申し上げましたように、ともかく両国間で外交的に一応決まったこと、それが履行できなかったという場合においては、確かに日米間において非常に不信感が高まるという問題はまず第一点に生じるだろうと思います。

 では、かわりに、ここが問題なんですが、アメリカが、では日本はいい、韓国と同じように、在日米軍は削減して別のところにという代替基地があるかというと、これはありません。グアム島は三千三百キロ以上離れたところにありますので、その地理的な位置からするならば、どうしても日本というのはアメリカの世界戦略から見ればかけがえのない存在であって、何が何でもそれは手放したくないだろう、アメリカから見た場合ですよ。

 ですから、あとは、日本はそれをどうやって、別に、アメリカの弱みにつけ込むという言い方をしては非常に失礼になりますけれども、そうではなくて、アメリカはそれだけの価値を認めているんだということに対して我々は、これも坂元参考人がおっしゃられたように、どういうふうに積極的に関与する、アクティブに考えていくのかということが重要だろうというふうに思われます。

 それから、うまくいかなかった場合、もう一つの重要な問題は、二国間の合意として成り立った以上は、これは先ほど申し上げましたのでしつこくは繰り返しませんが、世界の信用を失う可能性がある。特に安全保障においては、今後、例えば、日本は既にNATOとの連携を強めていくということを一応国際的な約束として打ち出したわけですけれども、それ自身に対して、欧州NATO諸国の、NATOにはアメリカやカナダも含まれますが、特に欧州NATO諸国の不安というものが生じる可能性もあるということで、国際的な信義及び責任という問題から、やはり決まったことは形をつけなければならないというふうに思います。

 以上です。

川上参考人 ただいま御質問のありました、うまくいかなかった場合はどうなるかという御質問でございますが、私は、三点あると思います。

 まず、これは江畑参考人もおっしゃいましたが、まずは日米同盟にとってこれは大きなマイナスとなるということでございます。ただでさえアメリカは、アフガニスタンやイラクに対して大きな戦力を割いて、関心事はそこにございます。そういうときに今回の条項が履行されないということになりますと、何か事が起こったときにはアメリカが本当に助けてくれるのかというふうないわゆる懸念というのが生じてくるわけでありまして、こういう意味で、抑止力の若干のマイナスということも考えることができると思います。

 ただ、二番目ですが、普天間からは動かないというふうなことがまず間違いなく生じてまいると思います。これに伴いまして、そういう意味で、在日米軍基地自体は動かないわけでございますので、多分、抑止力は低下しませんが、ただ、そこの基地を使ってアメリカ軍が展開する際の用途がどちらかといえばグローバルな用途に重きを置き、リージョナルな台湾海峡の危機とか朝鮮半島の危機について果たして日本を助けてくれるのかというふうな信憑性の問題が生じてくる。いわゆる日米同盟の危機が生じるんじゃないかと思います。

 それから三番目に、かぶりますが、先ほど私の方から言いましたように、これはパッケージ論でございますので、沖縄から負担が全く減らない。

 現在、今回の在日米軍再編協議は、まことにアメリカ側と日本側から見事なまでの立て役者がそろって成ったものだと思っております。ブッシュ大統領と小泉前総理の厚い個人的な信頼関係、それから、ラムズフェルド国防長官のトランスフォーメーションにかける熱い意気込み、それから、在日米軍再編協議前半におけるアーミテージ国務副長官、グリーンNSC上級補佐官といった知日派が存在した。それから、防衛省と外務省の、これはあくまでも熱意、こういったものが組み合わさりまして、今回の在日米軍再編協議は日本側に有利なものとして展開したものでございます。

 特に、沖縄からの負担軽減、これが全く無にされ、今回の普天間基地初め、キャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧、それから牧港等々の返還がいつになるかわからないというふうなマイナスが起こると私は思っております。

 以上です。

山内委員 続きまして、川上先生にもう一度お尋ねしたいと思います。

 先ほど江畑先生から、この在日米軍の、日米同盟の存在というのがアジア諸国の一部にとって安心感につながっている、瓶のふた理論なのかもしれません、そういうお話がありましたが、今進めている在日米軍の再編を近隣諸国はどのように見ているのかということ。近隣諸国といってもいっぱいありますね。とりあえず、中国あるいはロシア、それから、沖縄のすぐ近くである台湾あるいは東南アジア、こういった国がどうとらえているのか、川上先生の御所見をお伺いします。

川上参考人 近隣諸国がどう考えているのか、これは非常に重要な問題であると私も思っております。たびたび、中国それから韓国、ロシア、いろいろなところから問い合わせが私のもとにあるわけでございますが、これは恐らく二つの側面があると思います。

 一つは、日本が在日米軍再編によりますます抑止力が高まり、中国にとって軍事的ないわゆるプレッシャーとなるのではないかというふうなことも聞かれますが、逆に、二つ目の観点というのは、アメリカ軍と一緒に行動するのであれば、その範囲でおりましたら中国は安心であるというふうな二つの側面、いわゆる瓶のふた論でございますが、こういう側面がある。

 これに関連しまして、恐らく、ロシアその他の周辺諸国も同じような観点を抱いていると思いますが、この観点に関しまして、私は、日本側からの積極的な戦略、日本が普通の国となるに従って一体どういうぐあいに向かうのか、そういうふうなことを日本の方から今後積極的に示していく必要がある。言うなれば、アーミテージ第二次レポートにあったような、それに対する回答、日本はどこへ向かうのかというふうなものが今後求められると思っております。

 以上です。

山内委員 それでは、江畑先生と川上先生に再度お尋ねします。

 もし、日米同盟を進めて、さらに自衛隊と米軍との相互運用性を高め、協力関係を強化していくと、自衛隊と米軍が一体不可分になることになって、その結果、万が一日本とアメリカの国益が必ずしも一致しない場合、どのように対処すればいいのか。例えばドイツは、イラクの戦争には反対しましたが、アフガニスタンにはちゃんと軍隊を派遣して治安維持活動に貢献した、そういう、是々非々で、場合によってはアメリカと日本が必ずしも利害が一致しない場合、そのときに、司令部が一緒になっていて分けて考えることができるのかなというところを、技術的な点も含めてお答えいただければと思います。

江畑参考人 お答えいたします。

 日米間の、自衛隊及び米軍との共通性あるいは運用の一体化が進むということに関する御質問なんですけれども、どう対応したらいいかということでなくて、基本的に、今まで既に日本の自衛隊の運用権というものは独立しておりまして、それは、相互間の調整によって、どこまで米軍がやり、どこまでの負担を日本側が担当するかということは確保されてきています。

 これが今までなかったのが、御存じの在韓米軍の韓国における戦時統帥権の問題で、平時においてもかつてはアメリカが持っていたのが返還され、今度は、二〇一二年をめどに、有事においては韓国軍がアメリカ軍の司令官の下に入るという形になっていたのが、そうではなくて、別個独立、韓国軍は韓国軍、独立した形で行う。

 そのために、今ある在韓米軍司令部のような形ではなくて、在韓米軍と韓国軍、おのおの独立した国の独立した軍隊が韓国という地域及びその周辺地域を守る場合には、どうやって役割分担を行い、どこのところをどちら側が担当するかということを調整し合うわけですね。それがまさに日本と同じような形になる。もちろん国の状況が違いますから、アメリカと韓国の間で、どういう形でお互いの調整機能のシステムをつくっていくかというのはこれからの問題ですけれども、基本的には日米間のものに似たようになると思います。

 それが今度行われるのが、具体的な形としては、平時の日米間の政治的な要素の高い調整だけではなくて、有事においてはどうするかということが、まさに横田につくられる日米間の運用調整司令部と申しますか、そういうところで行われるということになって、したがって、必ずしもというより間違いなく、日本の独立性はこのまま保持されたままだろうと思います。

 ただ、今議員が御指摘になられたような危険性というもの、日米間の利害が異なるというような場合があります。例えば、予想されるものとしてみれば、イランに対してアメリカが軍事行動を起こすという場合にどういうふうに我々はそれに対応したらいいかという話になりますね。アメリカは表上はイランから一滴も油を買っていませんが、裏でスポットや何かでどういうふうにやっているかわかりませんけれども、それはともかくといたしまして、日本は一九%をイランから輸入、依存しています。今のところ撤退状態ですが、アザデガン油田の開発や何かでいろいろ利権の問題もある。

 それで、アメリカのイランに対する軍事的な行動が行われた場合、そこにアメリカが、例えば沖縄の基地を中継としてディエゴガルシアに戦闘機部隊やあるいは爆撃機部隊を派遣するという場合に、沖縄の嘉手納基地を使いたいと、事前に言ってくるかどうかわかりませんが、もし相談されあるいは現実においてそれが確認された場合にどういう対応をとるかというようなときには、かなり大きな政治的な決断が迫られる可能性はあります。

 その一つの例としては、一九八六年のリビア爆撃のときに、アメリカは、イギリスから発進するアメリカ軍の戦闘爆撃機を、フランスやスペインの上空の通過の許可を願い出たんですけれども、両国は拒否いたしました。そのために、アメリカは、ジブラルタル海峡を通って、つまり完全に公の海の上を通って地中海に入るという、したがってその分だけ非常に長距離になりますが、空中給油を重ねて、途中でそのために事故が起こってアメリカ軍機が何機か落ちましたけれども、そういうような事例もありました。

 ですから、それを日本がやれというわけではございませんけれども、そういうような方法ということも、事例も過去にはあった、同じNATOの中でも利害が対立する場合にはそういうこともあるということを御参考に申し上げておきます。

 以上です。

川上参考人 お答えいたします。

 まず、日本と米国の国益が一致しない場合はどうするかという御質問でございましたが、まず最初に、日本の国益とは何かということを定義してから本来でしたら述べるべきだと思うんですが、私の私見でございますが、これは、地域的な国益もしくはグローバルな国益というぐあいに二つ分けて考えますと、日本の場合には、すぐそこにある危機、これは、先ほど申し上げましたように、軍事費が増大しています中国それから朝鮮半島の危機というのがございます。こちらの方の危機が、当然ながら、少なくともアフガニスタンとかイラクよりも日本にとっては直接的な危機としてやはり重要だと私は考えております。

 したがいまして、そういう場合には、日本の場合は当然、地域的な国益の方がグローバルな国益よりも重要だとするならば、日本の場合のミッションといたしましては、地震、津波、鳥インフルエンザ、それから人道復興支援もしくは戦後復興支援、こういったものに日本というのは特化していくというふうなことで、日本は、はっきり言うべきことはやはりアメリカには言っていくというふうなことを今後していく必要があるかと思っております。

 以上です。

山内委員 ちょっと持ち時間が少なくなってきたんですが、坂元先生に一つお伺いしたいと思います。

 日本もきちんと戦略を主体的に考えていくべきだというような御趣旨であったかと思うんですけれども、アメリカだとアーミテージ・レポートみたいな、大変インパクトがあって、外交政策どころか国際的な環境に影響を与えるようなすごくインパクトのあるレポートが出てきますけれども、日本からはそういう報告書なり提言というのはなかなか出てこない。この背景、戦略性がないというか、そういう戦略をきちんと考えてそれを提示していく、そういう知的なインフラがないのかなという印象がするんですけれども、そういう日本独自の戦略をしっかりつくっていくためにはどのような体制を整えていかなくてはいけないかということについてお願いします。

坂元参考人 日本外交については、戦略性がない、こういうことがよく言われまして、それでずっと悩みが続いているわけですけれども、これは要するに、日本が国家としてどういう目的を持っているかということ、そのことだと思うんですね。戦略というのは要するに目的と手段の連鎖のことでありまして、その目的がはっきりしませんと戦略ははっきりしないということですね。

 そうしますと、今まで、戦後考えてみますと、日本の大きな目的というのは要するに国際社会に復帰するという、戦争が終わってサンフランシスコ講和条約で一応形式的には国際社会に復帰するわけですけれども、いろいろな意味で戦争の整理という問題がございまして、余り仰々しい大げさなことを言わずに、静かに国際社会の中で、一員としてまた再び力をつけていこうということをやっていたわけだと思うんですね。ですから、それが既にもう前に終わっているんですけれども、その後に、では、国際社会に復帰した後にどういう大きな目的があるのかというところで、今、まだ悩みが続いているということではないかと思います。

 しかし、最近は外務省でも、例えば、自由と繁栄の弧といった価値観外交というのを前面に押し出してまいりましたけれども、そういう、日本が国際社会でどういう目的を持つのかということで、これの場合は、要するに、世界が自由や民主主義あるいは法の支配といったものがあって繁栄する、そういう社会をつくるために日本がお手伝いするということを明確に目的として、言葉に出してこういうことを言うということをし始めているわけなんですけれども、そういうものができてきますと、そのためにはどうしたらいいかということを考えることもできるようになりますし、そういうインフラとかは、そのうちといいますか、いろいろな能力はあると思いますから、そこは余り心配していませんが、まず目的というものを明確にするということができることが大事じゃないかと思います。

    〔寺田(稔)委員長代理退席、委員長着席〕

山内委員 以上で質疑を終わります。ありがとうございました。

木村委員長 次に、笹木竜三君。

笹木委員 民主党・無所属クラブの笹木竜三です。

 参考人の先生方にいろいろお伺いをしたいと思います。

 先ほど参考人の先生方からいろいろなお話があった中で、今回の法案についてですが、法案に基づいてこれから出していくお金についても、財政支出についても、あるいは融資とか出資についても、これは国民の税金を使って行っていくんだから、当然丁寧な説明が求められるというお話がありました。あるいは、安全保障の観点からも、わけがわからないうちにお金を出すことは、これは国民意識としても非常によくない、そういう御意見もありました。

 その点からまずお伺いをしたいわけです。例えば、グアムへの移転、八千人プラス九千人で一万七千人と言われていますが、沖縄の海兵隊とその家族がグアムに移転する、その分について真水での財政支出ですとか出資、融資をするということですが、まず今まで他の国でこういった例があるのか、全く例はないと。外国の軍隊が駐留をしていてそれがもともとの外国の本国に戻るときに、その駐留されていた国が資金を拠出する例があるか、これは全くないと。あるいは、では法的根拠はあるのか、法的根拠は今までのところない、だから今回この法律をつくるんだろうけれども、今まで明示的にそれを禁じているような法律はないと。へ理屈で答弁しているような状態です。

 非常に無理をしてこの枠組みをつくっているわけですが、そんな中で、では、どうしてこの海兵隊とその家族がグアムに移転する分について出すのか。これは、日本においての負担が減るんだ、アメリカがそれに協力をしてくれる、だからその分出すんだ、そういう説明です。

 政府の説明はそういう説明ですが、それでさらに突き詰めていきますと、先ほど参考人の先生の発言の中にも一部ありましたが、海兵隊八千人とその家族九千人というけれども、この九千人というのは本当に妥当性があるのか、どうも現実に沖縄にいる海兵隊とその家族の実数からかなりかけ離れているんじゃないか。そういうことでやりとりをしていきますと、いや、これはアメリカがそういうふうに説明をしているんだ、だからそれを信じるしかない、裏づけは手元には何の資料もない、そういう答えが返ってくる。

 あるいは、積算根拠はどうなのか。例えば、さっき言ったグアムに移転するに当たっての家族住宅ですとか、あるいはインフラ、上下水道、電力、廃棄物処理、こうしたことに対する出資とか融資も含めて、上限を決めているわけですが、この上限について、どういう根拠のもとでこの上限が決められているのか。

 アメリカでは十年ほど前から、SPEですか、民活方式での方式はもう始まっている。ハワイでもやっている、アメリカ本土でもやっている。そういうようなものを参考にして、かなり額としてはそれよりも何倍も高い金額ではじいているけれども、そのアメリカが出している資料、そういう根拠を示せるのか。これは、アメリカに許可をとらないと出せない、こういう答弁が返ってくる。

 ここでお伺いをしたいわけですが、今言ったような状態で、当然、決して日米安保をやめろとか言っているわけじゃありません、民主党全体もそうです。あるいは、米軍再編をきっかけに日本もそれなりの協力をどういう形でできるか、あるいは、世界に対する、アジア太平洋に対する貢献をどうできるか、アメリカとさらにどういう新しい協力ができるか、そういうことを考えていくことは当然だと思いますが、今言ったような話で、これは何も、今この案のものを通さないとすべてがオジャンになるという話じゃないと思います。

 平成二十六年度で終了をする、そんな中で今スタートを切るわけですが、こういったわけのわからない形でのお金の出し方というのが望ましいかどうかということについて、まず江畑先生の方からお答えいただきたいと思います。

江畑参考人 お答えいたします。

 歴史を見ますと、たしか近代国家、それはいつかという定義が難しいところですが、例えば十九世紀後半から現在に至るまでも、外国の領土の中に、グアム島はアメリカの準州ですから、その中に、その国の、つまりアメリカの軍隊のための施設を建設するというときに、その当事者の、つまりアメリカ以外の国、この場合は日本、これが資金を出したという例は、私の知っている限りはございません。

 考え方からしてもおかしいのです。つまり、そこに何らかのある半恒久的な施設をつくるという場合には、例えば日本の国内でつくるなら、それが返還された時点においてはもう使い物にならないものになって老朽化しているというようなこともあるにせよ、一応国内ですから日本の財産という形になりますけれども、そうじゃなくて、全く外国の領土にそれをつくるということは、考え方としてみれば確かに例を見ないものだろうと思います。

 ただ、このような例はございます。冷戦が終わったときに、東ヨーロッパの諸国に駐留していた旧ソ連軍、その後、九一年の末にはソ連邦が崩壊いたしましてロシアになりましたけれども、ロシア軍が本国に引き揚げるに当たって、当時の東ドイツ、それからポーランド、チェコなどに長期駐留していたために、それが一気にロシア共和国の本土に戻ると、それを収容するだけの施設がないとロシアが言いまして、実態はどうだったかは我々にはわかりませんが、それで、東西融合を果たしたドイツが、引き揚げたロシア軍の兵士とその家族のための住宅をロシアの国内につくる資金を提供したという例はございます。

 それが今回の日本のグアム島における米軍施設の移転ということに直接関連する、または比較できるようなものかどうかということに関しては、個々の人によって解釈は分かれるところだと思いますが、一応それは御参考までに申しておきます。

 では、笹木議員が御指摘になられた、上限あるいは家族の人数がはっきりしないというものに対して、簡単に言えば、積算根拠がわからないのに資金や何かを出せるかという問題でございますけれども、まず、アメリカの海兵隊の場合は、実戦部隊、例えば第三一海兵遠征部隊、通称MEUと呼んでいますが、31MEUの場合、こういう戦闘部隊に所属する海兵隊員は家族は連れてきておりません、実戦部隊ですから。ただ、司令部要員や航空要員の幹部や何かは家族がおります。そして、これは常に移動しています。

 沖縄にいる海兵隊員というのは常に一定ではありません。逆に言えば、出入りが非常に激しいということです。その第31MEUが第七艦隊の揚陸艦か何かに乗ってペルシャ湾方面に行った場合には、当然そこの部分の二千から三千人近い人間がいなくなります。ですから、ある一定の瞬間をとって幾らと言うことはできても、平均してどうかというとなると、必ずこの人間がいるということは言いにくいところがあります。

 この実態を、アメリカのまさに部隊の運用にかかわることなので、普通はなかなか、今現在はどうなっているんだといっても、アメリカは教えてはくれません。ですから、これを把握するのはなかなか難しいところがあります。簡単に言うならば、アメリカを信じるしかないというのが現状だろうと思います。

 それから、どれだけのお金がかかるかということに関しても、これも、何せ、ここが難しいんですが、日本の国内に日本側でつくるということだったら大体積算はできるんです。ところが、別の国ですから、その地域の状況、それからコンストラクター、つまり建設会社にどこを選ぶのか、どのような構造のものにするのか、そして、例えば天候の条件、気象条件なんかも日本とはかなり違うところがある。そうすると、日本のスタンダード、基準ではできないようなものがある。そうすると、これを正確に把握するというのは現実においては非常に難しい。だからいいのかということになりますけれども、やはりある一定の額を見込んでおかないことにはどうしようもない。

 これは、日本の場合はちょっと例外的なんですが、ほかの国で、兵器開発、武器の開発や何かでいうと、一応このくらいでできますよという会社からの応募があって、契約を結ぶわけですね。契約を結んだ後、どんどん上がっていくというようなことが結構ございます。それが非常に問題にはなりますけれども、あるめどをつけてあっても、必ずしもそれよりも上に行くとは限りませんが、うまくすれば下に下がる場合もあるんですが、一応の目安というものはつけておく必要がある。それは、アメリカが言うんだったらこうで、そこでスタートして、我々日本が何をすべきかといえば、できるだけ安くということを常に考えて今後の細部の交渉に当たるということではなかろうかと思います。

 以上でございます。

笹木委員 つけ加えてお話をしますと、アメリカ側からは当然、今までの本国とかハワイでの実績とか、それをもとに計算した資料は日本には一応渡されている。それをもとにこれから精査をしていく。その資料さえも出すことができないというような状態で、信じるしかないという部分はあるにしても、そういった資料も一切検討せずに、出さずに、それでこの額を信じてくれというようなやり方が望ましいのかどうか。

 あわせて言いますと、その後、本来海兵隊がグアムに移転した分について使われているのかどうか、これも、会計検査院も含めてチェックをする保証がありません。これは、相手の国が事後的にかなり本当に協力をしてくれる、その保証がないと会計検査院もチェックをすることができない。そういう状態で、今、枠組みだけ認めろという話です。

 あるいは、では国内のことに話を転ずると、自治体に対する再編交付金、十九年度五十一億円、こういう見積もりがありますが、平成二十六年度で終了するまでに一体どのぐらいの額がかかるのか。これは全く数字は出ておりません、明らかにされておりません。

 こういった状態で、言ってみれば、わけがわからないけれどもアメリカに言われて出すというような出し方が望ましいのかどうか。坂元先生、川上先生、新崎先生にそれぞれ御意見をいただきたいと思います。

坂元参考人 問題は二つございまして、そもそもこれはこういうお金を出すのがよいことかどうかということと、それから、出すにしてもその出し方の問題ということだと思います。

 先ほども私は申し上げましたが、非常に異例なことであるというふうに思いますので、これが常例になるというようなことにはならない、そういうことを議論の中で確認しておいていただくということは必要なことかというふうに思います、もし異例な形で出すという場合。

 それで、今の笹木先生の御質問は、要するに、ちょっと積算根拠がまだ明確じゃないのに出すというのがどうだということなんですが、確かにそれはそのとおりだと思うのですけれども、私は、あるいは私の勘違いかもしれませんけれども、この政府の財政支出は、上限これだけと決めているわけでありますね。そうすると、その上限に行かない可能性もあるということはあり得ると思うんですね。

 ですから、私は、ある程度上限はこれだけと決めて、それで今後、アメリカのやることはわからぬじゃないかとおっしゃいますが、それだったら、アメリカに対してこの積算根拠をはっきりしてもらいたいと要求する。その積算根拠が明確になれば、もう法案で通っているこのお金の中から出していきますよ、こういうようなことにすればいいのじゃないかなというふうに思います。そのための条件とかいうものを少しこの国会で話し合っていただければ、すっきりとしたことになるんじゃないかなというふうに思っております。

 それから、一応、もう一つの出資や融資の方も、これは、後で返ってくるお金ということもありますので、また国際協力銀行を通じて、経済的な観点からそういう精査が入るということに期待をしておるわけであります。

川上参考人 私は、この問題に関しましては、恐らく考え方の問題ではないかと思います。

 第二次世界大戦後、これほど長い間、いわゆる外国の軍隊が大規模に展開されている国はないと思うわけですね。したがって、大所高所から見ますならば、米軍が日本国内から少しでも出ていってもらえるんだったら、しかも抑止力を落とさずに出ていってくれるんだったら、これに対することは非常にやるべきである。

 例えば有事駐留の可能性もございますし、それからもっと少数の米軍で守ることができるような可能性もあるというふうな観点から、たとえ、これが若干、先生のお言葉をかりますと、わけのわからない形で出るものであるにしろ、私はそうでないと思いますが、これはこの機を逃さずにどんどんやるべきだと私は思っております。

 以上です。

新崎参考人 再編交付金の問題については、先ほど私はその中身にも問題があると言いましたけれども、今のお話にもあるように、つまり、現在の段階では、我々に、あるいはその対象になる市町村にも、どういう形でどういうものがというのが全く見えていません。

 過去でいいますと、例えば北部振興策とか基地所在市町村活性化事業等でも、何年でどれぐらいというとりあえずの目安はあったように思います、途中で打ち切られたりもしていますけれども。そういうものもなしにスタートだけしていく、そうすると結局、対象となる市町村の対応はどうなるかというと、国の言いなりになるか、あるいは、例えばそれをつり上げるためにある種のごね得をねらうか、そういう対応しか残らなくなります。

 いずれにせよ、市町村、地方自治体の自立性、そういうものが大幅に損なわれていく、そういう危険性をはらんでいると私は思っています。

笹木委員 お答えの中には、積算根拠をちゃんとアメリカ側が出しているのなら、それが最大限の上限だとしても、それをもとに議論をしていけばいいわけだから、それを示して、それで議論を進めていく、精査していくべきだ、そういうお答えもありました。当然だと思うわけです。

 今、国民に対する説明ということで財政の話を最初にお聞きしたわけですが、財政だけじゃないと思います。米軍再編と国内における在日米軍の再編、こういったものに対する説明が非常に決定的に不足しているし、資料も出てこないことが非常に多いわけです。

 まず江畑先生にお聞きしたいんですが、例えば、普天間代替施設の千八百メートルの滑走路、ジェット戦闘機は運用しないから大丈夫だと言っているんだけれども、どうして千八百メートルの滑走路が必要なのか。

 あるいは、日本にとって、沖縄の海兵隊司令部機構はグアムに後退するけれども、陸軍第一軍団の司令部機構はキャンプ座間に前進配備をされる、これはどうしてなのか。

 あるいは、ミサイル防衛、迎撃体制について、日米の共同の運用だというけれども、共同運用で本当に大丈夫なのか。情報はアメリカに圧倒的に多くがあって、先生も書いたものに例を出しておられますが、ある国から二発の弾道ミサイルが撃たれた、一発は日本の中の米軍基地に、一発は地方都市に、そういった場合に、最初の一発の方をより優先して、米軍が、情報操作と言うのは悪いですが、結果的にそう言われても仕方のないような状況がないと本当に言い切れるのか。では、ないようにするためには、日本としては国家が主体的にどういうような担保をとればいいのか。

 そういったことについてなかなか説明がしっかりないので、かわりに江畑先生、まず御意見をいただきたいと思います。

江畑参考人 お答えしますというよりも、いや、一国民として、むしろそれは国会において、皆さん民主党の方々を初めとしてぜひ聞いていただきたいことで、我々国民、納税者としてみれば、今、笹木議員がおっしゃられたことは全く確かにわかっていない、説明が十分にできていないというふうに言わざるを得ません。

 私個人の推測はあるんですけれども、例えば普天間の代替基地で、辺野古あるいは名護市のところにつくる飛行場で、御存じのとおり、固定翼機、ヘリコプター以外のものはみんな岩国に移動してきちゃうわけですね、残るのはヘリコプター、基本的には。その後、ヘリコプターが、オスプリという垂直離着陸も可能な新しいタイプの輸送機、これはチルトローターと言っていますけれども、そのタイプにかわったとしても、滑走距離はせいぜい数十メーターあればいいはずで、それが五機並んだところで、例えば五十メーターの五機でも二百五十メーターで済むわけです。それが何で千何百メーターも要るのかということに関してはわからぬ。

 そういう関係、ヘリコプターの運用基地が主体であるという説明がなされるならば、前の沖縄県知事の稲嶺さんが言った、だったらヘリパッド、つまりヘリコプターだけの発着基地、それだけでいいのではないかというのは確かに説得力を持つだろうと思います。

 したがって、なぜ必要なのか、しかも二本どうして必要なのかということは、やはりそれは、我々国民としてみればぜひ説明していただきたい。どういうふうに使うつもりなんだ、そのために滑走路一本幾らかかるか。それが税金でつくられるということを考えるならば、やはりそれは説明していただきたい。

 どうして、米陸軍司令部がこちらに来て海兵隊の司令部が後ろに回る、これは軍事的には説明はできるんですが、時間が長くなりますので、それは省略させていただきまして、後で御質問があればまたお答えさせていただきます。

 日米共同運用に関しても、これは今後の問題で、できるだけ情報共有、特に弾道ミサイル防衛に関しては時間的余裕が極めてございませんので、ほぼリアルタイムでそれが共有できなきゃならないんです。

 一九九一年の湾岸戦争の教訓から、イスラエルはアメリカと協定を結びまして、アメリカの早期警戒衛星、これは赤道上の静止軌道上にあって、太平洋、インド洋、そして大西洋方面を見ていますけれども、それの中東方面を担当するインド洋上の早期警戒衛星のデータを、アメリカと同じくリアルタイムでその映像を、映像というかデータが見られる、生データがとれるという協定を結びまして、一九九一年一月一日からそれをやっております。

 日本の場合にはその協定がございません。今度、ことしの恐らく夏になると思いますけれども、JTAGS、ジョイント・タクティカル・グラウンド・システムの略なんですが、簡単に言えば、アメリカ陸軍の部隊で、太平洋にある早期警戒衛星からのデータを受け取る部隊が三沢に来ます。三沢から、ではその生データが我々日本で共有できるかということは、今のところわかりません。多分できないだろうと。

 ですから、向こうが処理して、これは日本に与えた方がいいなという情報が来るという可能性は、今の段階でいうならば高い。しかし、問題は、それじゃ、生でデータをもらえるように協定を結べるかというと、ここで日本の場合には秘密保護という問題があって、どうやって日本の場合には秘密保護が担保されるかという、日本では秘密保護法の基本法というのはございませんので、これが非常に大きな障害になると思います。

 これから、日本とアメリカの間では、GSOMIAと呼んでいますけれども、日米間の、自衛隊及び米軍の運用に関しての機密を保護するいろいろな協定を結ぶことにはなっておりますが、しかし、それ以前として、一般民間人はそういう対象とならない場合が多いので、そうすると、アメリカとしては非常にそこに不安を感じて、イスラエルと同様な情報提供というのを期待するのはかなり難しいかというふうに思います。

 以上であります。

笹木委員 それともう一点、今回の米軍再編で、米国は、要は世界じゅうのどこにでも、非常に臨機応変に、速いスピードで展開できる柔軟な部隊への変革を目指している。当然、在日での米軍も同じようなことが期待されていく。

 結局これは、日米の安全保障条約の極東条項に照らして相入れないものが出てくるんじゃないだろうか、そういうふうには思われないか。あるいは、今後、米軍が自衛隊に新たな役割、任務、能力を求めてくる、その際に同様な問題が発生してくるのか。集団的自衛権の問題も当然あると思いますが、そのことについて、坂元先生、江畑先生の御意見をお伺いしたいと思います。

坂元参考人 日米の同盟関係というのは、安保条約を基盤にしながら、その後、それとともに、例えばガイドラインとか、あるいは日米間のさまざまな共同宣言といったもので肉づけされているわけでございます。

 一昨年ですか、世界の中の日米同盟ということを日本は打ち出しているわけでありますけれども、米軍がそういう世界大に柔軟に展開できるのを日本の基地が支えるということになりますと、やはり世界の中の日米同盟というスケールで考える必要が出てくるということになると思います。

 それが安保条約とどういうふうに関係を持つかということですが、これは必ずしも矛盾するということではないと思うんですね。と申しますのは、安保条約の極東条項、つまり極東における国際の平和と安全のために安保条約が存在するというのは、極東における国際の平和と安全のためであれば、米軍の、日本の基地を使った活動というのを、別にそれは、理屈の上では世界大になっても構わないということに考えられると思います。もちろん、実際には、極東という言葉を安保改定のときに使ったときに日米の交渉者の頭の中にあったのは太平洋ということなんですけれども、理屈の上からいえばそうなる。

 しかし、その理屈よりも、繰り返しますが、日米同盟が、安保条約を根幹としておりますが、それにもう肉づけされたものがある。そういう中で、世界の中の日米同盟、こう言っている言葉は、それは単なる飾りの言葉ではございません。非常に重い意味を持っている言葉だと私は思います。

江畑参考人 お答えいたします。

 まず、極東条項の件ですけれども、これは客観的に言って間違いないと思いますが、現実にはほとんど意味をなしておりません。もう大分前からなしておりません。

 日本の政府は、日米安保条約の定義、定義といっても、あそこには明確には、もちろんどの範囲ということは書いておりませんし、それは政府解釈として、言うまでもなく、フィリピン以北、それから台湾地域、そして朝鮮半島周辺というふうに言って、それが、依然として解釈が変更になっていないためにいまだに残っているわけでございますけれども、在日米軍自身は、もう全くそれには関係なく移動をしております。

 一九九一年の湾岸戦争が始まる前の一九九〇年八月二日、イラクがクウェートに侵攻して、その直後の三日後には、沖縄の嘉手納基地からAWACSという早期警戒管制機がサウジアラビアのリヤドに展開いたしました。米軍としては最も早く湾岸地域に展開した部隊が沖縄の早期警戒管制機でしたし、その後、湾岸戦争の後のイラクにおける南北飛行禁止空域のパトロールに、これはローテーションで、いろいろなところに展開している米軍部隊が来ているんですが、在日米軍の三沢の部隊や沖縄の嘉手納の部隊もそちらに行って、そして一定期間、三カ月ないし四カ月にわたってクウェートから発進して、南部飛行禁止空域のパトロールを行ったというのも事実でございます。

 ですから、もう在日米軍自身は全世界にわたって動ける。つい最近までは在韓米軍はそれができずに、アメリカから見れば非常に効率の悪い軍隊だったんですが、日本は、そういう点ではどこにでも動かせる、しかも太平洋を越えたこちら側にあるという地理的な意味から、非常に効率のいい部隊であったということは間違いなかろうと思います。

 ですから、では、それは今後どうなんだということになりますと、今、坂元参考人がおっしゃられたように、米軍のそういった行動、特に在日米軍のそういった行動を、日本が、国際の安定ないしは国際の安全という見地からどう解釈するかということだろうと思います。

 極東という概念がもう果たして通用するか。これから先は全く私の個人的な考えでございますけれども、冷戦後のグローバル化の世界において、果たして極東という地理的概念が適切なものを持つのか否か。

 例えばコンテナ輸送なんてどうなっているのか。昔は、船は、貨物船は、アメリカから横浜に来て、横浜から上海に行く場合には、横浜と上海の間には中国向けの物資しか運んでいなかった。ところが今は違いますね。アメリカの本土から、ロサンゼルスからいきなり上海に行って、そこでコンテナをばらして、ハブ・アンド・スポークといいますか、それが神戸に来たりするわけです。

 そうすると、物流の動きからしても、もうまさにそこに、ある地域という狭い地域の概念というのは存在しないわけで、ですから、そういう物流の流れが滞った場合、ジャスト・イン・タイムのまさに日本の自動車産業の生産方式なんかは、たちまちのうちに停滞します。

 ですから、非常に広い概念で、全世界の安定ということの概念から考え、その中から、日米安保条約に基づく、日本がアメリカに対しての米軍基地の展開、及びそれが、日本の、世界に対してどういうふうに役に立つかという概念から考えるべきで、極東という解釈を、繰り返しますが、これは私、個人的な考えですけれども、極東条項という、あるいは極東の概念という解釈は変えた方がいい、もう廃止した方がよろしいかと思います。

笹木委員 余り時間がないので残念なんですが、いや、ですから、そういったことをむしろはっきりと明言していくべきだと思うわけです。

 例えば坂元先生は、集団的自衛権についても、地理を限定した形でそれをしっかり明言して認めていく、あるいは、極東の安全のためでなくても在日米軍の活動範囲を広げていくことに対してある程度のオーケーを出していく、そういったことをこの機会にも考えていくべきだろう、そういったことを論文に書いておられます。

 あるいは江畑先生は、この機会、アメリカと対等な立場になるようないろいろな交渉をしていく、そういう環境にある、地位協定、これは非常に独立の主権国家としては問題がある、この機会にこういったことの見直しも必要だ、そういったことを本で書いておられます。

 もう時間がなくなりましたが、きょうは、要は、まず法案の前提で、お金の使い方が非常に根拠が見えない、最低限の資料も出てこない。あるいは、お金の使い方だけじゃない、ほかに説明すべきことが、米軍再編とか在日米軍についての説明がされていない。そして、新しい時代の中で、当然こういうふうに新しくしていくんだということをはっきりと位置づけて説明もし、明言することが必要なんだけれども、していない。こういったことに非常に問題があると思うわけです。

 先ほど、この法案が通らないと大変だということを質問の方が言われていましたが、参考人の先生方も心配なさって、確かに通らないと困ることがあるというふうなお答えをされていましたが、SACOの合意だって十年間何にも実施されていなくて、別にそれで日米同盟が崩れたわけでも何でもありません。必要なのは、このスタート地点でより望ましいスタートを切れるかどうか、そこが国会に問われているし、国民に対して説明をすることが国会に問われているんだろう、そういう気持ちで質問をさせていただきました。

 どうもありがとうございました。

木村委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 参考人の先生方、大変お忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。

 まず、抑止力の維持という観点なんですけれども、江畑先生、川上先生に御質問したい。

 江畑先生の御本なんかを読ませていただきますと、座間には米軍団第一司令部が出てくる、逆に沖縄からは海兵隊の司令部がグアムに移転する、この逆の動きということで記述をされております。座間の場合には、これはあくまで受け入れの体制であって、有事の際に、いわゆる旅団戦闘チーム等が米本土、アラスカ、ハワイ等から来るであろうという想定であるというふうに記述されております。

 何でこういう逆の動きをするのかということなんですけれども、沖縄の人から見れば、海兵隊の司令部よりも戦闘部隊が移転してもらった方がありがたいんじゃないか、これは当然だと思います。なのに、今回は、司令部の方が移転して戦闘チームは残る。もしこの動きで抑止力を維持できるのであれば、例えば、戦闘チームがグアムに移転して、いろいろな装備等は逆に事前集積で沖縄に置いておけばいい話であって、そういうふうに考えれば、戦闘チームを逆にグアムに移転してもらった方が、いろいろな意味で都合がいいんじゃないかと思っております。

 決まってしまった話で、今すぐどうこうというのはありませんけれども、今後の課題として、沖縄の負担をより軽減していくためにも、この点についてどう考えられるか。これは両先生にお伺いしたいと思います。まず江畑先生からお願いします。

江畑参考人 お答えします。

 この点に関してはむしろ新崎参考人にお聞きなさった方が、現実の沖縄の実態をよく御存じですから適切かと思いますけれども、一応私の方から簡単に申し上げれば、まず陸軍の場合は、遠藤議員御指摘のように、要するに有事の際の受け入れ、これは何も韓国だけとは限りません。この先に、場合によっては台湾方面あるいは東南アジア、南アジア、そういう方面に米軍が、先ほどから各参考人が申し上げておりますように、短時間に米軍部隊を展開するということのために受け入れる体制、太平洋を越えたこちら側で受け入れたい。

 なぜかというと、米軍陸軍部隊というのは、九十六時間で一個旅団、一個旅団というのは大体五千人から六千人の規模ですけれども、それをどこの地域でも展開できるようにという態勢を整えるように今変更、変革はしておりますが、現実にはかなり重武装な部隊で、基本的には、本当に身軽なアメリカの海兵隊のような歩兵部隊とは違うところがあります。そのために、それなりの装備と物資を蓄積、太平洋を越えて持ってきて、そこで戦闘準備を整えてから行かなきゃならない。もちろん、日本が外敵の脅威にさらされた場合には、それを助けるという意味もございます。

 ですから、そこで、受け入れ体制及びその場所、そのための施設、特に相模総合補給廠は非常にそういう点では有力な機能を持っていますが、そういうものを確保しておきたい。

 ただ、どこへいつ必要になるかわからないから、海外駐留米軍というのはやはり金がかかりますので、特に陸軍の場合には、今申し上げたように、いろいろ重装備を持っていますので金がかかりますから、それを軽減する、必要のないところに平時から置いておく必要はないというふうに考えているんです。それはわかるんです。

 ただ、わからないのは、まさに遠藤議員の御指摘にあったとおり、海兵隊のグアム移転でして、おっしゃるとおり、全くこれは個人的な意見ではございますけれども、戦闘装備を、まさにグアム島やサイパン島にありますけれども、通称事前集積船と呼んでいますが、装備と戦闘物資を載っけた貨物船と同様なものを沖縄の港、ないしは場合によっては陸上に置いておいて、戦闘部隊だけをすぐに持ってくれば、人間だけは飛行機で持ってくれば済むはずですから、それで済むはずなのに、なぜ司令部だけを後方に移動したのかということは、正直これは我々国民は知りません。つまり、政府から説明はございません。むしろ国会においてそこら辺を、どうしてそうなのかということを明言していただければいいと思います。

 そこにおいて、唯一の説明らしきものは、そこに戦闘部隊を置いておくことによって抑止力が発揮されるということなんですが、緊急に展開できる、しかもグアム島と沖縄との距離というのはそれほどの大きなものではございませんので、その機能がありながらどうして抑止力が低下するのか。むしろ、有事の際にアメリカの本土からの第一海兵師団なんかも受け入れられるだけの、陸軍と同じような、受け入れ機能だけを沖縄に維持しておくことによって抑止力はむしろ高まるんではないかという気は私個人はいたすんですが、正直、どうしてこのような形になったのかというのは、私にはわかりません。

 以上でございます。

川上参考人 これはあくまで個人的な研究者としてのお答えでございますけれども、第三一海兵遠征隊、いわゆる31MEUでございますが、この機能の面からでございます。つまり、31MEUは、沖縄から台湾それから朝鮮半島へ一日で展開可能でありますけれども、もし仮にこれが国内の富士へ移設された場合には、朝鮮半島へは二日、台湾へは三日かかってしまうわけでございます。

 こういった台湾海峡有事の救出作戦、日本人もおります、そういう救出作戦、それから、そのほかの第三国が宮古それから尖閣列島に上陸を試みようとした場合には、31MEUは恐らく自衛隊と共同して対処することになる、ホープフリーなんですが、そう思いますが、こういう場合には、一日、二日のおくれが致命的になってしまう。現在の31MEUにはそういう機能があり、それが必要であるというふうなことであります。

 それから、普天間飛行場の回転翼機というのは、日常的に活動をともにする他の組織の近くに位置せねばならないというふうなことがありますので、ヘリ部隊を含めた実戦部隊の分散化は極めて困難である。これは31MEUのエレメント、つまり歩兵大隊、砲兵中隊、ヘリ部隊、こういうものを分散化した場合には、集結に時間がかかる、六時間以内の出動は不可能であるというふうなことで、31MEUの沖縄への移駐というのは継続して行うというふうなことだと私は思っております。

遠藤(乙)委員 次に、坂元先生にお伺いをしたいと思います。

 先生、グアムへの移転、またグアムの地政学的、戦略的位置を大変高く評価されておられまして、私も同じ見解を持っております。特に、三月の上旬に委員会の理事でグアムの現地を視察いたしまして、それによって非常に、まさにその感を深くしたわけですけれども、私が一番印象に残ったのは、グアムには基地はあっても基地問題がないということなんです。

 当初、沖縄と同じような状況かなと思って、グアムに移転するのは、負担を逆に移転するのかということで、そういった面でいろいろ心苦しい点もあったんですが、実際に現地を視察してみてわかったのは、グアムの場合、アンダーセン空軍基地それからアプラ海軍基地、いずれも島の外れにあって、人口はほとんど中央部にあって、いわゆる民間地域と基地が全く截然と分かれております。沖縄のような、いわゆる人口密集地域に危険が隣り合わせというような状況はないということで、イデオロギー的な反対論は別として、そういった現実的な基地問題という意味では存在しないということはよくわかりましたということと、もう一つ、グアムが、今ほとんど観光産業が中心でありますが、必ずしも観光産業の展望がよくない。特にグアムの場合、ほかと比較をして、観光地としての国際競争力は必ずしも十分ではない、私はそういう印象を持ちました。

 そういった中で、今後、グアムの経済の安定、雇用機会等を考えますと、逆に海兵隊等が移転してきて、基地機能が強化されて、地元のそういった雇用機会や経済活性化を考えますと、安定した基地経済への依存度を高めることが非常に賢明な選択であろうというふうなことを実感した次第でございます。これはグアムの知事もそのように言っておりまして、よく住民にもそういったことを説明しながら、これを逆にグアムの発展の機会としてとらえたい、実はそういった回答もあって、非常に私も印象深く思った次第でございます。

 そういった意味で、今回の沖縄からグアムへの海兵隊移転は、私は一石三鳥であると思っておりまして、沖縄の負担軽減、グアムの地域の振興、それからもう一つは、先生がたしか論文で触れておられましたが、日米共同訓練、これは、非常にグアムの地域はいろいろな意味で制約が少なくて、存分な訓練ができるだろうということで、こういったことを総合しますと、多分グアムは今後、日米安全保障協力、日米同盟協力の象徴的な地位になっていくだろうという感じがいたしました。

 また、グアムの地域は、かつて二万人の日本軍が玉砕をした地、にもかかわらず、グアムの島民は非常に親日的で、今や日本の観光客が七割、八割を占めているという状況でありまして、そういうことも考えると、グアムの地域振興についても日本としても協力してあげることが必要だというふうな見解を持ってまいりました。

 そんな意味で、一つ先生の御指摘の中で、今後、移転後のグアムのあり方、また移転後の海兵隊の使い方といった点で指摘をされておられましたが、グアムにおける日米共同訓練の問題についてどう思われるかという点が一つ。

 もう一つは、これは私の非常に個人的な印象なんですが、グアムにこれだけの緊急展開能力、特に、海兵隊があり、また今後、グローバルホーク、三十時間以上無人で偵察できる高性能偵察機ですが、偵察能力も高まるというわけです。

 これはある意味では、アジア太平洋地域における災害に対する緊急援助能力が極めて高くなるわけであって、ある意味では、グアムへのこういった今回の移転も含めて、逆に今後、海兵隊の、災害派遣と言ってはなんですけれども、いろいろな、今までインドネシアの津波、あるいは先般のソロモンの津波、地震等を考えますと、また異常気象等を考えますと、この地域、災害救済のニーズが非常に高まるわけであって、こういった能力を一つは災害派遣にも使うようなことを逆に日本として提案していくようなことも大事じゃないか。そうすることによって、海兵隊の存在というものをより受け入れられ、理解されやすくするという点もあるかと思っております。

 この共同訓練の問題と、それからアジア太平洋地域における災害派遣へ海兵隊を活用する、二点につきまして先生の御見解をお聞きしたいと思います。

坂元参考人 私、先ほどお答えの中で、世界の中の日米同盟というものを、一昨年と申しましたが、これは昨年、小泉・ブッシュ会談で強く打ち出されたものでありました。それが打ち出されて、世界の中の、こう言っておりましたら、北朝鮮の核実験とミサイル発射が起こりまして、やはり日米同盟はアジア太平洋の、極東の安全のためにあるんだということが明確になったわけであります。

 このグアムの話は、朝鮮半島の危機というよりも、その朝鮮半島の問題に一応片がついた後に、中長期的にアジア太平洋の抑止力のあり方、抑止力のための日米の協力のあり方に物すごく関係するところではないかというふうに思っておるわけであります。ただ、ちょっと先のことといえば先のことなんですが、少し時間的余裕がある間に、グアムについてのいろいろなアイデアを、今遠藤先生がおっしゃったようなアイデアを出していくということは非常に大事じゃないかと思います。

 特に今、災害派遣のことをおっしゃられましたが、アメリカ側でも日本の軍事力の使い方には制限があるのはよくわかっているから、ミリタリー・オペレーションズ・アザー・ザン・ウオーでしたか、軍事以外の軍隊、自衛隊の使い方というものをよく考えて、そして日米が協力できることを探っていくとなりますと、津波の災害に見られたような、ああいう大きな災害に海兵隊あるいは自衛隊が協力して当たるということにこのグアムが何か使えないか、そういうアイデアを出していくということが日米関係の今後にとって非常に大事じゃないかなと。いつも受け身で、何か相手から言われて、それに仕方なく従っていって、ああ、これ仕方ないね、こういう話ばかりでは活力が出ませんので、これはそうしていただきたいと思います。

 さはさりながら、やはり、これは軍隊の話でありますから、日米の共同訓練によりまして、相互運用性、それから即応性、そういうものを訓練によって高めていくということが非常に大事でありまして、今、遠藤先生、御視察のことについておっしゃられましたけれども、グアムがそういう受け入れ体制というものが非常にあるということで、沖縄から施設をグアムに移すということが、その意味でも、関係者にとってすべてにプラスになるというようなところがあるのではないかと思います。

 グアムの訓練につきましては、これはもう全部江畑先生のお話から受け売りでありまして、勉強させていただいているわけですけれども、グアムの近くには、この地域では有数の射撃訓練場というものがございまして、日本では国内でなかなかできない訓練ができるというようなこともございますから、ますます今後、こういう訓練を積み重ねていく。これは陸上、航空だけでなく、海上自衛隊についてもそういうものを、訓練ができるようにすればいいのじゃないかと思います。

 グアムとかで訓練ができるということになりますと、自衛隊の士気にとってもよろしいのではないか。定期的に多くの自衛隊員がそこを訪れて訓練、少しは観光もできるということになれば、それはよろしいのじゃないかというふうに思ったりもいたします。

遠藤(乙)委員 先生の御意見、非常に心強く思いました。

 私、もう一つ、グアムは基地の島になるんでしょうけれども、場合によっては基地観光というカテゴリーもあり得るんじゃないか。F22をウオッチング、ホエールウオッチングじゃなくてF22ウオッチングとか、そういうこともあれば、かなり安全保障オタクの人には観光の一つのあれにもなるだろう、まさに観光振興の一つのあれになるかなと、若干これは余談ですけれども、思った次第です。

 次に、新崎先生にお伺いしたいと思いますが、先生のお話はかなり懐疑的、そもそもこの法案に御反対、また、今回の在日米軍再編も問題があるということを御指摘でしたけれども、現実問題を考えると、沖縄の負担軽減という観点から見ると、現状固定化かあるいはパッケージかという、この二つしか現実的にはないかと思います。もちろん、先生のお立場からいえば両方とも非常に悪いということだと思いますけれども。

 その上で、今回のパッケージは全く改善にはつながらない、沖縄の負担軽減の改善にはつながらないというふうに見ておられるのか、あるいは、両方とも悪いけれども、このパッケージは現実的にはより悪くない方向には、両方とも悪いけれども、より悪くない方向には変わるというふうに見られておるのか、その辺、少し本音の部分でお話をいただければと思います。

新崎参考人 現状なのか、それとも再編によるパッケージによる変化の方がいいのか、現実問題としてというふうに前提をされました。私は、現実問題というときに、現実問題とおっしゃる方が本当に現実を見ているのかなということをまず考えざるを得ません。今、現実問題として、現状かパッケージ、あるいはパッケージ論とおっしゃいましたけれども、要するに米軍再編かという二者択一以外の道はないのかという発想は、日本の政治家にはないのかと私は思ってしまいます。

 今のような現状は突如として起こったわけではなくて、先ほど私があえて限られた時間の中で沖縄戦までさかのぼって話を始めましたけれども、今、例えば沖縄の位置あるいは地位というのが、この二つの選択肢以外に、例えば、基地をなくしたらどういうことが起こるのか、そういう発想が全くなくていいんだろうか。例えば、基地がなくなったら北朝鮮からミサイルが飛んでくるのか、あるいは、中国が先島に、宮古とか八重山に侵攻してくるのか、そういうことになるんだろうか、なるということを前提にして何か話が進んでいる、このところに私はやはり基本的な疑問を持ちます。

 それから、この再編円滑化法案について言いますと、特に私が感じるのは、これまでも基地を維持するために、経済振興、昔は、基地維持のために経済振興とは言わないでほしいというのが、私たちはそういう発想は持っていないというのが、橋本首相の段階まではむしろ積極的に強調されていました。私たちがそれは結びついていると言うことについて、それは非常に勘ぐりであるとおっしゃっていたのですが、今やそれをむき出しに言うようになってきているというものの象徴がこの法案だと思います。

 それが何を生むかということをさっき私は具体的事例に即して申し上げたつもりです、それは、家族的な共同体を含む地域社会を破壊してしまう、そういう問題をはらんでいますよと、これは軍事的な問題とは若干離れますけれども。

 そういう社会の破壊を前提として、安全保障というのが成立するのでしょうか。安全保障という場合に、それは国家という抽象的な存在を前提にするのか、人間を前提にするのか、社会に住んでいる一人一人の人間を前提にするのか。

 そこを根幹にして考えていくときに、私は、むしろ、基地のない社会を一挙に実現できるとは言っていません。段階的にそういう方向性を探っていくことの方がよほど現実的であると私は考えていますので、こういう二者択一では問題は解決しないんだということを特に強調させていただきたいと思います。

遠藤(乙)委員 私も二者択一だけとは言っているつもりはないんですけれども、当面のテーマとして、二者択一なら選択するしかないということで申し上げたので、その辺はよろしいかと思います。

 以上、私の質問を終わります。ありがとうございました。

木村委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 途中、イラク特別委員会と時間が重なりまして退席したことを、大変失礼いたしました、おわび申し上げます。参考人の先生方、本当に御苦労さまです。

 今のお話の流れがありますから、最初に新崎先生にお伺いしたいんです。

 今回の法案では、米軍再編案を受け入れた自治体に対して、その進捗状況に応じて再編交付金を交付するとなっているわけです。これは、先ほど先生のお話で、沖縄の地域社会を疲弊させるもの、むしろ、あめとむち以上に麻薬とむちという表現をお使いになりました。SACO合意も県内の基地のたらい回しでした。それで失敗したと思います。

 今回の法案は、お金の力で自治体住民を押さえつけて、基地のたらい回しを一層押しつけるものというぐあいに私たちは認識しておりますが、これでは沖縄の基地問題は解決しないと考えておりますが、先生はいかがお考えでしょうか。

新崎参考人 結局繰り返すことになりますけれども、私は、この法案の三つの問題点を指摘したと思います。

 一つは、出来高払いという発想、あるいはそれが生み出す問題。それから、これは従来の箱物だけではなくてソフトの部分を対象にするというふうに言われているけれども、そのことがかえって持つであろう大きな危険性の問題。それともう一つは、沖縄の負担軽減という口実で、この法案の中にちゃんと書かれていますから、アメリカ合衆国における基地の建設等にお金を出すんだという理由づけに沖縄が政治的に利用されている問題。ここに私は非常に大きな問題を感じます。

 特に、最後の沖縄のためにという部分は、むしろ、沖縄と大和といいますか本土との連携、連帯を切り裂く方向に作用するだろう、せざるを得ないだろう。つまり、初めての、やったこともない、外国に基地をつくることに金を出す、それを正当化する根拠として、なぜ沖縄を引き合いに出すのか。ここのところに、私は、ある意味では、ある種の怒りを感じます。もしそれがどうしても必要なら、沖縄を利用しないでやったらいい。なぜこれが沖縄の基地問題の解決であるかのごとく、みんなが言うのかあるいは政府も言うのかという問題です。さっき言いましたように、本当に負担軽減につながるかどうかわかりません。海兵隊員の数も家族の数もあいまいです。

 それから、いわゆるパッケージというものですから、辺野古がなぜ必要かという説明は全くない、これは江畑さんも言われていたような気がしますけれども。要するに、騒音を避けるためにどっちに滑走路の向きを変えるとか、そういう議論だけをしている。こういうことの方を先にきちんと明らかにしない限り、沖縄の基地問題の解決というのは糸口も見出せない、私はそういうぐあいに思います。

赤嶺委員 私も本当に、これまで国会で、沖縄をだしにして本土の基地の強化につながるじゃないかということを申し上げてきたんですが、やはり今先生から同様の御意見を拝聴することができました。

 やはり沖縄の県内での基地のたらい回しは沖縄の基地問題の解決にはつながらないんじゃないかということを、私たち、日ごろから、県民の立場で、県民の目線で考えるわけですが、このことについて、川上参考人、坂元参考人それから江畑参考人、もし何か考えていることがありましたら、どんなふうにお考えなのかというところを聞かせていただきたいと思います。

川上参考人 お答えいたします。

 まず、沖縄からの負担軽減につながるか、本当にどのくらいつながるか。これは私の個人的な研究者としての立場から申しますと、3MEFの司令部がグアムに移るということは、これは非常に大きいことではないかと思っております。やはり司令部が移るということは、今後の海兵隊の趨勢がある程度見えているのではないか。

 それから、沖縄基地のたらい回し、これも現実からできることからやっていこうと。確かにSACOの例はありますが、SACOの二の舞を踏まないというふうなことで今回の再編協議というのは行われ、かつ最高のタイミングでまとまったのではないかと思っておりますので、少なくとも現実からできることを一歩ずつやるというふうなこと。

 それから、沖縄から、少なくとも、一人でも二人でもいいから米軍を、とにかく抑止力を落とさないまま、沖縄の抑止力それから本土の抑止力を落とさないで移すということは、私の立場からは非常に意義あることだと思っております。

坂元参考人 私も川上さんと同じ考えですけれども、もちろん今先生がおっしゃったように、基地を負担と考えるかどうかというのは、負担の定義の問題がございますが、基地を沖縄だけでたらい回しするということでは沖縄の負担が、基地を負担と考えれば減らない、これは当たり前のことだと思うんですね。

 しかし、基地のたらい回しのやり方が、非常に都市部に集中して危険な基地を、もう少し危険性を減らすような形で別に移すということになれば、これは負担が減ったかどうかは別にして、それは合理的なことだと私は思います。

 しかし、それは根本的な解決にならないので、やはり沖縄の負担を減らそうと思えば、本土への分担移転、あるいは今回のようなグアムへの移転。これは、先ほど川上さんが趨勢をあらわしているとおっしゃいました。これは非常に大事な言葉だと思います。将来的に見ますと、これはもっと大きな海兵隊の削減ということが、これは極東の、東アジア太平洋の国際政治地図、国際安全保障地図がどう変化するかによりますけれども、そういうこともあり得るのかなというふうに思いますと、今回はやはり私はプラスではないかというふうに思っております。

江畑参考人 まず、基地の沖縄の中のたらい回しという件です。

 先ほど川上参考人からもお話がありましたけれども、沖縄の海兵隊、残るのが戦闘部隊だというならば、これとヘリコプターというものは切り離すことができません。別に私がそうだと言っているわけではなくて、アメリカの海兵隊の運用方式を考えるならば、そしてその性格を考えるならば、アメリカの海兵隊はどんなことがあっても、地上戦闘部隊とヘリコプター部隊を隔絶する、例えば別の島に持っていくことすら多分彼らは絶対に反対するだろうと思います。いいとか悪いとかの問題じゃなくて、それは向こうが譲らないということをまず現実問題として考えていかなければならない。

 では、滑走路が要るか否かということに関して、私も先ほど申し上げましたが、例えば、戦闘部隊自身がグアム島に移転しても、滑走路は必ず要求します。

 なぜかというと、それは、沖縄に部隊を持ってくるためにはやはり航空機が、大型輸送機が必要ですから、そのための滑走路が要る。嘉手納だけでは足りないと彼らは考える。特に、海兵隊は空軍とは違いますから、やはり独自の基地が欲しい。既にそれは今までにおいて、普天間という形で彼らは有用性というものを十分享受しているわけです。もちろん、あそこにはアメリカ海軍の飛行機も離発着しておりますから、そういう点でいうならば、運用面からいっても滑走路が必要ですし、またその滑走路を持った航空基地というのは、彼ら、つまり海兵隊及び、実際はアメリカの海兵隊というのは海軍の組織の下ですが、アメリカ海軍としてやはり航空基地が欲しいという戦略上の問題は、これは変わらないだろうと思います。

 したがって、どうあろうとも、やはり普天間の代替基地をつくるとなれば、それは飛行場の形、かなりの滑走路の長さを持った飛行場の形になるということにはあらがえないと思います。

 それから、基地の負担の軽減ということに関して、今、坂元参考人もおっしゃいましたけれども、若干関連することではありますが、もう一歩日本側が積極的に基地の集約ということができなかったかと。できるところだけを何か動かして、ある意味では、つまみ食いという表現というのは適切ではないかもしれませんけれども、そこだけをやったという形で、いっそのこと、これを機会に、北部訓練地域が適当かどうかわかりませんけれども、例えばその辺に集約するとか、ドイツではそういうような形で在独米軍基地の集約の方法を図っております。

 それにはこちらの戦略も必要なんですよ。戦略というのは、こういうことはできるから、ここでこうすればいいではないかということが積極的に言えなきゃだめなんです。アメリカがこうしたいからといって、いや、それはできないからと一歩一歩各個撃破したら、この場でこういう表現方法が正しいかどうかわかりませんけれども、軍隊の戦いのやり方としては稚拙な方法でして、各個撃破されます。やはり一点集中なので、こちらも戦略を持ってやらなきゃならない。

 そういう点では、防戦に徹して、どうも結局一部分に終わってしまったという印象がぬぐえない。もっと劇的なあるいは画期的なといいますか、再編計画を日本側から打ち出せなかったかというふうな気がします。

 それから最後に、簡単に申し上げれば、沖縄の価値は、戦略的には、先ほど新崎参考人は軍事的価値は下がっていると言っていますが、私の個人の見解ですが、むしろ高まっています。これは、アメリカの世界戦略にとって今後沖縄の基地というものは、地理的にいって極めて重要になると思います。その具体的な話をしていると時間がないので省略いたします。

 したがって、アメリカは沖縄を手放すことはいたしませんし、そこからアメリカ軍を完全撤退させるという選択肢というものは、まずアメリカの戦略から見て極めて難しいし、それは日米安保条約の破棄にもつながる問題だろうとも思います。

 一方、だからといって、これは別に名指しするつもりはございませんけれども、例えば、中国が何をしてきたか、南シナ海における南沙諸島でどういうような技術的な実効支配体制を整えているかというようなことも、我々は、あそこは日本にとって重要なシーレーンですから、そういう点からの実態も考えてみる必要があるかと思います。

 以上で終わります。

赤嶺委員 時間がなくなってしまいましたけれども、端的に、つまり、グアムへの基地建設というのは、先ほど川上参考人が、やはりこれからの趨勢を示している、3MEFの司令部の移転はと。ということになりますと、先に沖縄の負担の軽減があってグアムの基地建設があったのではなくて、やはりアメリカの世界戦略で、これからの趨勢はグアムを拠点にしてやっていくという話があって、そこに沖縄をのせたというぐあいに私なんかは受け取るんですが、この点について、川上参考人とそれから新崎参考人にお聞きしたいと思います。

 その場合に、そういうことであれば、そこの外国軍隊の基地建設に日本の金を出すのは、やはり憲法上も財政法上も間違っているんじゃないかと思いますが、時間がありませんけれども、端的によろしくお願いいたします。

川上参考人 お答えいたします。

 学者といたしまして、そういう文献は目にしたことはございます。しかしながら、今回、私の発表にありましたように、早期にそれをやり遂げるためには、かつ海兵隊の少ない財政状況を後押ししてあげて、日本側がそれに対する資金援助をして、かつやはり負担を軽減するというふうなことから、今回の日本側の法案というのは私は非常に重要であるというぐあいに思っております。

新崎参考人 ちょっともう一度言っていただけませんか、私に対する質問。

赤嶺委員 ですから、沖縄県民の負担の軽減が先にあってグアムに基地建設じゃなくて、グアムの基地建設という世界戦略を口実にしていると先ほどから先生もおっしゃっていますが、そこにお金を出すというのは憲法上も間違っているんじゃないかという私の意見ですが、先生の御意見はいかがでしょうか。

新崎参考人 わかりました。

 要するに、それはそのとおりです。ですから、そのアメリカの戦略に追随することが日米同盟にとって貢献することであり憲法にも合致するというぐあいに国会が判断されるのかどうかという極めて重要な問いが投げかけられていると思います。

 それを沖縄の負担軽減というような言葉で覆ってしまっては本質が見えなくなりますよということだけ、つけ加えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 終わりますが、先ほどからグアムに移転するのは3MEFの司令部だけというお話もありましたから、最近の委員会では、いや、陸上部隊も航空部隊も支援部隊も行くんだというお話になっておりまして、実態の中身が見えないなというところにやはりもっともっと議論が必要だということを申し上げて、きょうは、参考人の先生方にお礼を申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

木村委員長 次に、日森文尋君。

日森委員 社民党の日森文尋でございます。

 大変お疲れのところ恐縮ですが、時間もありませんので、端的に質問させていただきたいと思います。

 最初に、新崎先生にお伺いしたいんですが、先生は論文の中で、米軍再編は明らかに地域及び世界における安全保障環境を悪化させているというふうに断定されて、私もまさにそういうことがあるのかなという思いがあるんですが、その辺のことについて少し具体的に教えていただきたいと思います。

新崎参考人 私は軍事問題の専門家ではありませんけれども、いわゆる抑止力という場合には対象があるはずです。例えば、こちらが抑止力を強化する、そうすると相手もそれに対応して強化する。これは、例えば、世界的規模での例としては東西対立がありました。

 そして、今の議論というのは、相手の存在とか相手の反応を全然無視したまま、ある意味では仮想敵国をつくって、こちらの抑止力の強化ということを言っているのではないか。相対的な関係として、視点を移して考えなければいけないのではないか。

 そうしないと、先ほど言ったような、安全保障環境という言葉を私は多分かぎ括弧を使って使っていたと思いますけれども、最近流行語になっているからそういう言葉をわざわざ使ったわけですが、いわゆる安全保障環境というか日本の周辺の国際情勢というかそういうものを、一方的に事を進めるだけでは改善できないのではないか。

 もっと外交的な手段とかさまざまな問題と組み合わされることによってなされなければいけないことが、余りにも軍事的な再編とかそういうことだけが優先しているために、今のような、私に言わせれば、かえって国際的な緊張を激化させ、例えば一方を追い込んで、ハリネズミのごとくさせていく要素もある、そのことをバランスよく考えなければいけないのではないか。こういうことが言いたかったわけです。

日森委員 ありがとうございました。

 江畑先生にお伺いしたいんですが、先生も論文の中で、米軍再編イコール在日米軍縮小ととらえていると、大きな失望を抱くようになるかもしれない、こうおっしゃっているわけです。

 この間、流れを見ていてさまざまな論議を聞いていると、まさにその先生の危惧が当たっているんじゃないかという思いがあるんですが、そういう、むしろ在日米軍縮小ではないんだという先生の御心配を、もう少し具体的に教えていただけたらと思うのです。

江畑参考人 私自身は、米軍再編が在日米軍縮小、縮小というのは何を意味するかというと、能力の問題と数の問題というのがありますけれども、とにかく一般的にわかりやすいのは数ですから、数が減るというだけを考えているとそれは大きな間違いであるというふうには述べましたが、そのこと自体がいいことか悪いことかというと、それは状況によると思います。

 例えば、日本が非常に外敵から大きな脅威を受けているようなときに、日米安保条約に基づいて米軍が日本に部隊を駐留させるし増派させるということが、もし日本の防衛にとって、安全保障にとって役に立つことであるならば、ふえることはむしろ歓迎、その状況においては歓迎すべきことでしょう。そういう態勢を整える状況もあり得るんだということを、今後の世界においてはそういう可能性というものも否定できない。ですから、この在日米軍の再編においては、日本はかなりその問題に対しては柔軟的といいますか、自分の考えを固定しちゃって、とにかく少なくなるんだという考えでいるのではなくて、状況によってはむしろふえることもあり得る。

 問題はそこから先で、それが本当に日本の国民の生命と財産を守るのに、総合的あるいは結果的にいいことにつながるのかという判断を的確にする必要があるということ。ですから、単純に数が少なくなればいい、万々歳だと思っていると、状況によっては非常に、そういう意味では、失望と言ってはおかしいですけれども、それに期待しちゃいますと失望をするということを申し上げました。

 以上です。

日森委員 ありがとうございました。

 坂元先生にお伺いしたいんですが、先生も論文といいますかお書きになった文章の中で、先ほども御指摘されましたが、基地と安全保障の交換なんだということを脱却しなきゃいかぬということをおっしゃっていまして、いわゆるNATO型の同盟に近づけていくことがいいのではないか。そういう格好にすることによって、アメリカに対して日本が発言権を確保することができるのではないかという趣旨のことをおっしゃっております。

 それは、私はNATO型にすることがいいかどうかというのはここでは触れませんけれども、しかし今、アメリカに対して我が国が主張しなければならないことがあるとすれば、だから恐らくそういう提起をされたと思うんですよ。どんなことを日本がアメリカに対して言わなければいけないのかということについて、ちょっと具体的に教えていただけたらと思うんです。

坂元参考人 言わなきゃいけないことはいっぱいあるような感じもいたしますけれども、私がそう申し上げた、NATO型にするということじゃなくて、日米安全保障条約、日米同盟の根幹は基地と安全保障の交換と言っておりますが、これだけではだめだということでありまして、これは、やはり米国にとって、さきに江畑さんがおっしゃいましたけれども、在日米軍基地の価値というのは非常に大きなものでありますから、これなしの日米関係というのはちょっと考えにくいんですが、しかし、それだけに頼っておりますと、基地の負担という問題についてはこれはどうしようもなくて、また、いろいろな問題についてこちらの発言権はないなということになるわけであります。

 今回も、最初に私申し上げましたけれども、要するに北朝鮮の核問題、これは非常に大きな問題なんですね。それで、アメリカとやはり少し脅威の感覚が違う、これは仕方ないところがありまして、例えば、九・一一テロの対応といいましても、我々は同盟国としてともにテロと闘うといっても、この脅威感覚はアメリカとはやや異なるというわけであります。ですから、そういう異なるものがあったときに、我々は、これを一緒にやるために、これをやってくださいよということをいろいろ言わなきゃいけないことはあると思うんですね。

 朝鮮半島の問題というのは、これから、ミサイルが飛んでくるかどうか、核が飛んでくるかどうか、そういうことだけじゃなくて、今後十年、二十年という間で、北朝鮮をめぐる北東アジアの情勢、それがとりもなおさず北東アジア全体の地図、国際政治地図というものに大きな影響を与えることは必ず起こるんですね、これは。

 そのときに、日米の中で我々が言うべきことは、個々具体的にはここで申しませんけれども、いろいろ出てくるということになると思うんですね。そのときに、我々が米国との間の関係をしっかり保つためには、何といっても二国間関係の基盤であります安全保障関係、これを強く結びつきを強めなきゃいけないということであります。もちろん、我々には我々の事情といいますか、いろいろな考えや利益がありますので、そういうものは明確に主張していくということが大事じゃないかと思いますね。

 ですから、先ほど六十億ドルの話でも、アメリカは出さない、困ったなじゃなくて、これは出さなきゃ困るよとはっきり言ってもらう。しかも、それは一応この法案を通していただいて、そういうことが出せるということにした後も、実際の運用においてはこちらもどんどん発言権を出していって、グアムのいろいろな基地の建設なんかにも、これは直接言うのかどうかは別にして、間接的でも何であれ、いろいろと言うべきことは言っていく、我々に必要なものはこれが必要ですということは言っていく、これが大事じゃないかなというふうに思っております。

日森委員 四人の先生方に一言ずつお聞きをしたいと思うんですが、きょうも日米同盟ということが大分話に出ていました。あのローレスが、ちょっと象徴的だと思ったんですが、明らかにアメリカに向かって飛んでくるミサイルを日本が撃ち落とせるのに撃ち落とさないのはクレージーだ、これは日米同盟とは言わないんだというようなことを、日本に来たときおっしゃっていたわけですよ。

 これなどは日米同盟ということを随分象徴的に示しているなという気持ちがあるんですが、日米同盟とは我が国にとって一体何なのかということについて、時間がありませんので、江畑先生から順にで申しわけないのですが、お聞かせをいただきたいと思います。

江畑参考人 簡単に申し上げます。二つです。

 一つは、やはり日本だけで、これからの不安定な、アジア太平洋地域だけではなくて、世界情勢において日本の安全保障が確保できるとは、私個人的には思いません。それはNATO諸国の多くのところでもやはり共通で、したがって、だから、NATOから離脱するよりむしろ中に入ってやっていこうと。

 二点目が、やはり、先ほども冒頭私も申し上げましたけれども、日米安全保障条約があるがゆえに、日本が独自に強大な軍備を持たなくても済むということも非常に大きい、それがほかの国にとって非常に安定的な要素になっているということも否定できないと思います。

 ただ、問題はそこから先で、日本がアメリカと一緒にといいますか、共同でどのような行動をするかということで、日本が世界の、そしてアジアの中の安定ということで事前に考えませんと、アメリカがもしそこで大きな過ちを犯すなら、日本も同様な評価を受けて、非常に世界の中で孤立する可能性はあると思います。

 以上でございます。

坂元参考人 私は、日米同盟というのは、要するに抑止と友好というふうに考えております。それは、東アジアにおいて日本が国際政治の中で生きていくために必要な抑止力の基盤であり、そして、この日米関係の重要性というのを所与のものとしますと、二国間の関係といいましても、国家と国家の関係といいましても、やはりこれは人間の関係と同じように、さまざまなレベルでその関係のきずなはあるわけですけれども、一番大事なものは、いざとなったときにお互い助け合うということだというふうに思うんですね。これは人間関係とも変わらないと思います。そういう約束を持っているということがいかに日米関係の友好のきずなになっているか、そのことの大きさというのは強調してもし過ぎることはないというふうに私は考えております。

 したがって、私は、日米同盟とは何かと言われれば、日本にとって抑止と友好というふうに、抑止の基盤であり友好のきずなである、こういうふうに答えることにしております。

川上参考人 私の場合も二つあると思います。

 一番目は、現状では最もよい、効率的な日本の安全保障を守るスタイルだと思います。日本単独では、日本の国を守るということは果たしてどうでしょうか。かつ、日本が仮に中国と同盟を結ぶことはいかがでしょうか。仮に日本がロシアと結ぶこと、仮に、頭の体操をしますならば、北朝鮮と同盟を結ぶこと、こういうのは論外でございます。したがいまして、最も効率的で、かつ、現状に即しての日米安全保障条約だというふうなこと。

 それから二点目は、国際公共財といたしまして非常に有効なものとして発展する、今回のものを通じて同盟のトランスフォーメーションが行われ、日米同盟をプラットホームに、ARFもしくは六者協議、そういうものを加えて、国連も加えながら重層的な安全保障体制をつくっていく、いわゆるこの地域に平和と安定をもたらす基礎になるものだと私は考えております。

 以上です。

新崎参考人 一言では答え切れない問題を一言で答えろと言われて非常に困っていますけれども、日米同盟という言葉がどこから使われるようになったか。

 例えば、私たちは沖縄返還に際して、これは日米軍事同盟の再編強化だと言っていたようなときに、政府とかそういうのは日米同盟という言葉を非常に嫌っていましたし、同盟ではないとおっしゃっていました。そして、恐らく同盟関係という言葉が日米の文書の中に出てきたのは鈴木善幸・レーガン共同声明あたりじゃなかったかと思いますけれども、それが、いつの間にか当たり前のように、九〇年代になってから、特に橋本・クリントン共同声明のあたりから非常に強調されるようになってきました。歴史的な背景として、なぜそうなのかというのをやはり考えておいた方がいいと思います。

 私に一言で答えろといったら、やはり日米の共同覇権主義の象徴であると答える以外にありません。

日森委員 どうもありがとうございました。

木村委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十二分散会


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