衆議院

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第3号 平成21年3月17日(火曜日)

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平成二十一年三月十七日(火曜日)

    午後四時十一分開議

 出席委員

   委員長 今津  寛君

   理事 江渡 聡徳君 理事 嘉数 知賢君

   理事 新藤 義孝君 理事 中谷  元君

   理事 仲村 正治君 理事 松本 剛明君

   理事 山口  壯君 理事 佐藤 茂樹君

      愛知 和男君    小野 晋也君

      大塚  拓君    瓦   力君

      木村 太郎君    鈴木 馨祐君

      薗浦健太郎君    武田 良太君

      寺田  稔君    林   潤君

      山内 康一君    山崎  拓君

      神風 英男君    津村 啓介君

      長島 昭久君    馬淵 澄夫君

      田端 正広君    赤嶺 政賢君

      照屋 寛徳君    下地 幹郎君

      西村 真悟君

    …………………………………

   防衛大臣         浜田 靖一君

   外務副大臣        橋本 聖子君

   国土交通副大臣      加納 時男君

   防衛副大臣        北村 誠吾君

   防衛大臣政務官      武田 良太君

   政府参考人

   (内閣官房総合海洋政策本部事務局長)       大庭 靖雄君

   政府参考人

   (内閣法制局第一部長)  山本 庸幸君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中島 明彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 高岡 正人君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ審議官)      秋元 義孝君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   鶴岡 公二君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  伊藤  茂君

   政府参考人

   (国土交通省海事局次長) 大野 裕夫君

   政府参考人

   (海上保安庁次長)    鈴木 久泰君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  徳地 秀士君

   安全保障委員会専門員   金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十七日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     鈴木 馨祐君

  寺田  稔君     林   潤君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 馨祐君     安次富 修君

  林   潤君     寺田  稔君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国の安全保障に関する件(アデン湾における海賊対処のための海上警備行動等)


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     ――――◇―――――

今津委員長 これより会議を開きます。

 国の安全保障に関する件、特にアデン湾における海賊対処のための海上警備行動等について調査を進めます。

 この際、防衛大臣から報告を聴取いたします。浜田防衛大臣。

浜田国務大臣 ソマリア沖、アデン湾における海賊対処のための海上における警備行動の発令について御報告申し上げます。

 ソマリア沖、アデン湾の海賊は、日本を含む国際社会への脅威であり、緊急に対応すべき課題であります。同海域では、年間約二千隻の我が国に関係する船舶が通航し、我が国にとって、欧州、中東と東アジアを結ぶ極めて重要な海上交通路に当たります。世界全体では海賊事案発生数が減少傾向にある中、この海域では、最近でも重火器で武装した海賊による事案が多発、急増していることは、大変懸念すべき事態であります。

 こうした海域において、日本国民の人命、財産を保護することは政府の重要な責務であることから、海賊対処のための新法が整備されるまでの応急措置として、三月十三日、自衛隊法第八十二条の規定に基づき、内閣総理大臣の承認を得て、海上における警備行動を発令いたしました。

 この命令に基づき、翌十四日、海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」及び「さみだれ」が呉を出港いたしました。

 これらの護衛艦は、各艦に哨戒ヘリコプター二機を搭載しております。また、派遣人員は約四百名であり、海上保安官八名が同乗して司法警察業務を行います。

 今回の海上警備行動による活動内容については、我が国に関係する船舶の護衛を実施することとしており、海賊行為の抑止や海賊を退散させることを基本的な考え方としております。具体的には、護衛艦は、護衛対象となる船舶との間で通信を行いつつ、アデン湾の海域を同航し、その際、護衛艦に搭載した哨戒ヘリを飛行させ、周囲を警戒しつつ、護衛を実施することとしております。

 燃料等の補給につきましては、基本的にジブチ港に寄港して行うこととしております。なお、今回の命令では、インド洋で補給支援活動を実施する部隊は、必要に応じ、補給支援活動に支障のない範囲において、海賊対処のために派遣されている護衛艦に燃料等を補給することとしております。

 また、我が国に関係する船舶の防護を効果的に実施するためには、関係国、関係機関との連携協力を行っていくことが重要であることから、関係国、関係機関との間で、現地における海賊の状況、各国の活動状況等について情報交換を進めてまいります。

 また、我が国に関係する船舶の防護の効果的な実施のためには、固定翼哨戒機P3Cによる哨戒活動を実施することも重要であることから、P3Cの派遣について、引き続き準備を進めてまいります。

 防衛省・自衛隊としては、海賊対処に万全を期してまいります。

 以上であります。

今津委員長 以上で報告は終わりました。

    ―――――――――――――

今津委員長 この際、お諮りをいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房総合海洋政策本部事務局長大庭靖雄君、内閣法制局第一部長山本庸幸君、外務省大臣官房審議官中島明彦君、外務省大臣官房参事官高岡正人君、外務省中東アフリカ局アフリカ審議官秋元義孝君、外務省国際法局長鶴岡公二君、国土交通省海事局長伊藤茂君、国土交通省海事局次長大野裕夫君、海上保安庁次長鈴木久泰君及び防衛省運用企画局長徳地秀士君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

今津委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

今津委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本剛明君。

松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。

 きょうは、先日発令をされました海上警備行動についての質疑ということで、中心的に防衛大臣、また関係の当局に御質問をさせていただきたいと思います。

 改めて、八十二条、海上警備行動でこういう遠方へ、なおかつ期間を定めずに送り出すということ、私どもも報道で知る限りでありますが、政府の議論の中での浜田大臣の行動なりお顔なりを拝見する限り、本来、この八十二条でこういう形で出すことは想定をされているものではないというふうにお考えであったのではなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 私も顔に出やすいタイプでございますので、そういう意味ではあれかもしれませんが、しかし、我々とすれば、今回の海上警備行動というのはまさに、我々の国民そしてまたその財産というものを守るために、海上警備行動というものをとることによって対処しておいて、その後に、これは前々から、新法を整備した上で対応することが基本であるというふうに私はずっと言い続けてきたところでございますが、当然、この法案の提出というのも確認できましたので、今回、海上警備行動という形をとらせていただきました。

 確かに、御指摘のように、我々とすれば、新法というのは当然考えてきたことでありますけれども、しかし、緊急を要するということでございますので、あくまでも臨時措置としての海上警備行動の発令ということになったと私は考えておるところでございます。

松本(剛)委員 今回の法体系等を見ても、新法では、派遣をするに当たっては国会への報告を法定されておられます。海上警備行動では、何らそういった国会への関与については法定はないわけであります。

 これも常識的に、やはりこれだけの派遣をするのであれば、自衛隊という実力部隊を出すのであれば国会への報告をするべきだろうという前提に基づいて法律はそのように定められているというふうに思います。逆に申し上げれば、海上警備行動でこれだけのことをすると、国会への報告もない程度のことに本来はとどめておくべきものであるというのが法の趣旨であるというふうに私どもは考えているわけであります。

 今おっしゃったように、ソマリアの海賊対策が必要であるということについては、私どもも、また多くの国民も異論のないところだろうと思いますが、どういう制度で、なおかつ、今の制度の中でどこまで許されて、どこまで緊急性と制度の本来あるべき姿とで判断をするのかということについて、率直に申し上げれば、私の判断ではやはり海警行動で出すべきではなかったのではないかという思いを持ちながら、何点か質問をさせていただきたいと思います。

 今、新法が後から国会へ提出されたということで、いわば追っかけてくるという状況だというふうに思いますが、海上警備行動で一たんお出しになった以上は、当該艦船は海上警備行動による命令で行動して帰ってくるのではないかというふうに私は理解をしておりますけれども、この海上警備行動で海賊に対処するといった場合は、これまでも指摘をされておりますように、武器の使用等に当たっても、正当防衛とか緊急避難といった範囲になっている。これは当然、急迫不正をきちっと判断し証明をしなければいけないとか、過剰でないということを判断し証明をしなければいけないとか、大変現場に大きな負担がかかると言わざるを得ないというふうに思っております。

 そういう意味でも、海上警備行動で、これだけ遠隔地で、なおかつ、ソマリアは今、御指摘があったように大変海賊の被害が多発をしているということは、それだけ何らかのいわばリスクのある事態に遭遇をする可能性も決して低くないと考えておかなければいけない事態だろうというふうに思います。

 そういう意味では、自衛官を預かっておられる大臣としては大変重い判断をされたのではないかと思いますが、この点、万全の備えをしていただいているというふうに御答弁をいただけるのかどうか、お伺いしたいと思います。

浜田国務大臣 我々、自衛官を海外に派遣する際には、当然そういったリスクを勘案しつつ、遺漏のないような態勢、準備をさせていただいているところでございます。

 当然、今回の場合におきましても、武器使用に関しては、今松本委員から御指摘のとおり、海上警備行動の際の武器の使用というのは警察官職務執行法にのっとってやることになっておりますので、そういう意味ではどこまでというのが想定しづらいところもあるわけでありますが、しかし、我々のやれるべき範囲内はすべてこの準備の中で明確に、武器使用に関しても、隊員が迷うことなく活動できるようなことをしっかりと海上自衛隊の中でシミュレーションし、そしてまたそれに対する準備をしっかりとしたところでございますので、今のところ、私は、現時点で我々のやれることはすべてやったというふうに考えているところであります。

松本(剛)委員 今の武器の使用に関しては、当然、その手順というかプロトコル、いわゆるROEという言葉が使えるのかどうかわかりませんが、そういったものについても定められた上で、これは相手のあることなので非公開である、こういうお話でありました。

 相手があるということは私どもも理解をいたしますけれども、今申し上げたように、日本の場合は一般の裁判にかかってくることになるわけであります。そういう意味では、何らかの形で検証をしていただく、そういう手順でなければいけないというふうに思いますし、その辺のところは、公開というか、定めるに先立ってどういう手続というか、どういう対応をとられたのかということを、もしお示しいただけるところがあれば教えていただきたいと思います。

徳地政府参考人 海上警備行動によりまして海賊に対処する際の武器の使用でございますけれども、先ほど大臣からもお話がございましたとおり、警察官職務執行法第七条に基づいて行われるわけでございます。

 その際の武器使用の具体的な基準ということにつきましては、これは統合幕僚監部の方で定めまして、それで大臣まで御承認をいただいておるものでございますが、具体的な内容につきましては、我が方の手のうちということもありますので、なかなか、具体的に申し上げることはちょっと困難かと思います。

松本(剛)委員 きょうは時間が限られているのでこれ以上申し上げませんが、申し上げたかったのは、法務当局であるとか法務省の刑事当局であるとかそういうところと、いわば刑事法を所管しているところとある程度整合性をおとりになったのかどうかという意味で聞かせていただいたわけでありまして、もう既に定めてお出しになっているというふうに思いますけれども、今からでもそういうこともしておいていただかなければ、自衛官の皆さんにとって最終的な、それに頼ってやるということであれば、ぜひしていただきたい。

 それから、今、公文書の管理というのもいろいろ言われているわけでありますが、私は、一定の時期をもって公開をすべきところが、もちろんそのときそのときの判断があると思いますけれども、というふうに思うということも申し上げておきたいと思いますので、ぜひそれを、中にも今のをとめていただいて、一度御検討いただきたいというふうに思います。

 それではもう一つ、海上警備行動について、私ども民主党の会議にも御説明いただいたときに何度か議論になりましたが、保護の対象となる船舶については、日本籍船は当然のことながら、日本人が乗っている、日本の積み荷がある、日本が運航を行っているものということでありましたし、さらにそれに、我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶、こういう定義をされておられるというふうに説明をお聞きいたしました。

 これは自衛隊法八十二条の解釈ということになると思いますが、国土交通省とも連携をとりながら具体的にこれを定めるということでありましたが、この定義、解釈というのはどのようにお定めになって、どこでいわばオーソライズしたものなのかということを確認したいと思います。

徳地政府参考人 お答えいたします。

 自衛隊法第八十二条に基づきまして海上警備行動を発令する場合に、その保護の対象となるものということで、条文上は「海上における人命若しくは財産」ということになっておりまして、これは従来から御答弁申し上げておるとおり、基本的には日本国民の生命または財産というふうに考えておるところでございます。

 そして、先生もお触れになりましたとおり、海上警備行動によって保護の対象となり得る船舶ということについては三つのカテゴリーがございまして、日本籍船、日本人が乗船する外国籍船、それから日本の船舶運航事業者が運航する外国籍船または日本の積み荷を輸送する外国籍船であって我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶、こういうふうに考えておるところでございます。

 そして、このような考え方につきましては、まさに自衛隊法第八十二条の解釈に関するものでございますので、このたび、海上警備行動によりまして海賊対処に関する検討を進める中で、防衛省それから国土交通省等関係省庁との間で考え方を取りまとめまして、それぞれ関係省庁内でしかるべく了解を得まして、先ごろ、安保会議においてもこれを説明した上、公表させていただいたところでございます。

松本(剛)委員 先ほどもお話があったように、日本人の生命と財産というのをどう解釈するかということでは、これは大変重要な解釈ではなかろうかというふうに思っております。

 そういう意味で、今御説明がありましたけれども、本来であれば、やはり省なり内閣なりのどこかできちっと定義をされて確認する、もしくはこういったものを保護対象とするということをどこかで確認しておくべきではないかというふうに思います。今お聞きをする限りでは、各省のいわば事務方の打ち合わせで文章になって、安保会議では一応説明をしたということでありますが、安保会議の決定した内容という中にこういう文章があったというふうには私どもは見なかったんです。

 今後、ずっとこれが八十二条の解釈としては当然生きてくるわけですよね。これは、解釈次第によっては決して狭くはない、かなり広い内容にもなってくるというふうに思いますが、政府の意思としてお決めになるのであれば、きちっと手続をとった上でお決めになるべきではないかということをずっと申し上げ続けてきているということも私としては申し上げておきたいと思います。

 それでは、これについてもまだ幾つかお聞きをしたいことがあるんですが、ちょっと順番を変えて、もう一つ、今回新たに護衛艦を二隻派遣されるということになります。インド洋にも既に任務で出ておられます。当然、交代をしていただくのに何週間かかかるということがあります。戻りましたら整備をしていただくということもあります。

 また、これはヘリコプターも二機ずつ積んでお出になるというふうに聞いておりますけれども、ヘリコプターの運航に習熟をした要員というのは海上自衛隊でどのぐらい確保していただいているのかということもあります。

 率直に申し上げれば、二隻ずつとはいえ、我が国の海上自衛隊にとっては、インド洋とかなり近いところでありますが、二正面作戦という言葉が使えるのかどうかわかりませんが、二つの作戦をいわば同時並行的に、しかも、すべて海上自衛隊の護衛艦ないしは一部はヘリに負担がかかる形でしていただくという形になります。

 インド洋の補給艦及び護衛艦、インド洋の場合は特に補給艦の負担が大変大きいのではないかというふうに私たちは推察をしているわけでありますが、護衛艦隊においても、きょうここで具体的に数字は申し上げませんが、充足率などを見ましても、いわばそれを回していくのは決して容易ではない、かなり厳しい運用になっているのではないのかなということを懸念しています。

 他方で、我が国を取り巻く東アジアの安全保障の情勢というのは決して緊張感が下がったような状況ではないわけでありまして、国際的な、いわばマスコミ報道流に申し上げれば、バスに乗りおくれるな的な発想でソマリアへ行くということと、我が国の東アジアにおける安全保障環境と我が国の海上自衛隊の本来の国防の任務、それに与える能力ということからすると、かなりしわ寄せが来るということが大きく懸念されるということを私は申し上げておきたいと思いますが、防衛省側から答弁をいただきたいと思います。

浜田国務大臣 先生の御懸念というのも確かにあるわけでありますけれども、しかしながら、我々、今回の派遣に際しましては、現在の我が国の周辺における国際情勢、そしてまた自衛隊の主たる任務である我が国の防衛の体制を確保することを十二分に考慮した中で今回の派遣を決めたところでございます。

 艦艇の修理、定検も、訓練そしてまた練度の向上のサイクルとか部隊のローテーションも十二分に考慮した上で、我が国の防衛の任務に必要な体制はしっかりと確保して、御指摘のような問題を生じないようにした中での今回の派遣であるというふうに、私自身はそう思っております。

 確かに、今後そういったことのないように、いろいろなことを勘案しつつ、今後とも対処してまいりたいというふうに思っておるところであります。

松本(剛)委員 我が国の防衛にかかわることですから、細かい数字や内容についてはこれ以上お聞きをいたしませんが、改めて、大臣を初め幹部の皆さんは、相当、充足率などの昨今の状況などは、看過できないとまでは言いませんけれども、決して楽観を許さないような状況であろうというふうに私は思っております。また、艦上でのヘリの離発着ということであれば、相当習熟をしたメンバーを、それはパイロットに限らず、そろえておかなければいけないわけでありますから、我が国の中で護衛艦の中のヘリというものの人員がそんなに余るほどたくさんおられるのかどうかということについても、ここで答弁は求めませんけれども、そういうことも今後も十分に勘案をしていただいた上で、特に防衛大臣として、内閣のほかの方から、さあ行こうと景気のいいことがあっても、大分頑張っていただいておられたようには見えますけれども、最後まで場合によっては頑張っていただかなければいけないときがあるのではないかということを強く申し上げておきたいと思います。

 海上警備行動について、改めて今回のこの解釈を確認いたしますと、私どもも、同僚議員が質問主意書で、本来、立法趣旨からすれば日本の沿岸に限られているのではないかということに対して、公海上に及ぶという答弁をいただいているわけであります。しかし、公海上といっても広いわけでありまして、今回のことを見る限り、これで八十二条の解釈としては、期間もそれから活動範囲という面も、特に八十二条には制約がない、無制限なんだという解釈がこれで確立をされたというふうに解しておられるんでしょうか。

徳地政府参考人 自衛隊法の八十二条に基づきまして海上警備行動を発令した場合に、その行動の及ぶ範囲ということでございますけれども、これにつきましては、先生も今御指摘のとおり、公海に及ぶということでございますが、まさにその行動に必要な範囲において公海に及ぶということでございますので、決して、その範囲を超えて無制限というふうには考えておるものではございません。

松本(剛)委員 典型的な、法律の解釈を聞いて、法律の条文に書いてあるとおりですと答えているにほぼ等しいような答弁だろうというふうに思います。

 ですから、逆に言うと、今までは多くの人間は、この八十二条というのはやはり日本の周辺、周辺という言葉もいろいろな定義がありますけれども、そういうふうに解釈をしていた。いわば、一つたがが外れたと言ってもいいと思います。どなたがお考えになったかわかりませんが、私は、あえて申し上げれば、今回のはある種の悪知恵ではないかというふうに思うんですけれども、こういう形で海賊対策ということで海上警備行動をお使いになったということは、先々、ここまで許されたということが大変大きな例になるのではないかということを懸念しています。

 参考にお聞きをしますけれども、諸般の事情とか条件があると思いますが、例えばいわゆるシーレーン防衛というのがこれまでも議論になったことがありますが、海上警備行動というものの条文を使って、必要があれば、もちろん武力紛争であってはいけないとかさまざまなことがありますが、今回のようなエスコート方式で日本の船団を護衛するということが防衛大臣は法律上は命令できることになるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

浜田国務大臣 今の御指摘でありますけれども、シーレーンにおける船団護衛については、海上警備行動による対応によって船舶の安全を確保する活動を行うことができるかどうかということについては、大変通り一遍の話でありますけれども、個別具体的な状況に際して同条に規定する要件に該当するかどうかの判断をする必要がありまして、あらかじめ一概に申し上げることは大変困難かなというふうに思っておるところでございます。

松本(剛)委員 これはもう御答弁は要りません。今の御答弁を聞く限りでも、私なりに解釈すれば、場合によってはゼロではないということになるのではないかというふうに思います。

 今、少しそのことで申し上げました、当然、武力紛争にかかわるか、かかわらないかということは、我が国の憲法の場合、一つの大きな問題になってきますが、今回、海賊対策というものは、けさも私ども民主党の会議でも、いわゆる新法の説明の中でも、これは警察活動なのだから武力行使には当たらないという御説明がありましたが、そういう理解でよろしいんでしょうか。海賊対策の定義と武力行使の関係をお聞きしたいと思います。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 海賊行為への対処のための自衛隊法第八十二条の規定により海上警備行動が命ぜられた自衛隊の自衛官が、公海上におきまして、海賊行為であって、我が国の刑罰法令が適用される犯罪に当たる行為を行った者に対して、同法九十三条第一項の規定において準用する警察官職務執行法第七条の範囲内で武器を使用することは、これは憲法第九条で禁止されている武力の行使に該当するものではないと考えております。

松本(剛)委員 時間に限りがありますので、それは結論なので、その理由を聞いているんですよね。皆様がそう言っておられることはわかっているわけで、けさは、総合海洋政策本部の方で、警察活動だから当たらないという御説明をされたように記憶をしておりますが、それでよろしいでしょうか。おられませんか。おられますよね、総合海洋政策本部。

大庭政府参考人 海賊対処法案に基づいて罰すべき処罰の対象となる犯罪行為を行っている者に対処するために法律が定める範囲内において武器の使用を行うということは、これは武力の行使には当たらないということだと理解しております。

松本(剛)委員 海上警備行動と今回の新しい法律とということにそれぞれなりますが、政府としての海賊の定義というのは、今回、新しい法律に書いておられるということが政府の定義だろうというふうに理解をして、お聞きをしています。

 けさ、御自身で、警察活動だから武力行使に当たらないとおっしゃったのを私はメモをしたんですが、ここではその表現はおとりになりませんか、事務局長。

大庭政府参考人 法律に基づいて犯罪とされる行為に対処するための行動は警察活動でございます。その警察活動のために用いる武器に関しましては、基本としては、警察官職務執行法に基づいて行うものというようなものでございます。

松本(剛)委員 法律に基づいて処罰をすべきものに対処するのは警察活動だから、それに対応するのは警察活動である、よって武力の行使に当たらない、こういうお話になろうということだというふうに思います。

 テロというのも犯罪だというふうに言われます。犯罪であるということが我が国として認定できるのであれば、これに対処をするのも警察活動だから武力行使に当たらない、こういう説明でよろしいでしょうか。

鶴岡政府参考人 ただいまの御質問につきましては、国際法上の側面と国内法上の側面と、二つの法の側面があろうかと思います。国際法上の側面については私から御説明申し上げまして、担当の者から国内法的な観点の御説明を差し上げたいと思います。

 まず、テロリズムにつきましては、委員もよく御承知のとおり、国際法上もあるいは国連の会議におきましても、統一的な定義はございません。(松本(剛)委員「犯罪として認定されるものに対してと申し上げました」と呼ぶ)はい。

 一般国際法上は、テロリズムについて、各国は取り締まりを行うことができるということが確立しておりますけれども、このテロリズムへの対処が国際法上の犯罪取り締まりの警察活動であるというふうな認定を一般的に行っているということは、現時点においては断定することはできません。現時点においては、国際法上、テロリズムへの取り締まりが警察活動であるというふうに認定されているということは確立しておりません。

松本(剛)委員 それでは、少し違う観点からお聞きをしましょう。国内については御答弁がありませんでしたけれども。

 海賊の、いわば対処の対象となるものというもの、これは、新しい法律を見る限り、行為を基準として判定をされるというふうに理解をしていますが、この法の定める項目に該当する行為を基準として海賊行為であると判定し、これが処罰の対象になるという理解でよろしいんでしょうか。

大庭政府参考人 海賊対処法案におきまして、海賊行為とは、船舶に乗り組みまたは乗船した者が私的目的で公海等において行う、航行中の他の船舶の強取、運航支配などと定義をいたしております。したがいまして、これらの定義に個別具体の行為が当てはまる場合には、本法案に基づく対処の対象となるものでございます。

松本(剛)委員 この法律で定める各項は行為という形で定めているわけでありますから、この行為を外形的に判断して、海賊行為である、そしてこれは処罰の対象である、それに対して武器を使用するのは武力の行使に当たらない、こういう論理になろうかというふうに思うんですが、そういう理解でよろしいんでしょうか。それはそれでよろしいですね。

 そうしたら、今おっしゃった私的目的、この考え方についてお聞きをしたいと思いますが、この私的目的の内容は何でしょうか。

大庭政府参考人 海賊対処法案におきます私的目的につきましては、私人の利得の欲望、憎悪、復讐その他の目的が当てはまるものと考えております。

松本(剛)委員 私的目的という条件で、外れるものは何ですか。

鶴岡政府参考人 委員御承知のとおり、今回の法案の海賊行為の定義は、国連海洋法条約第百一条の定める海賊行為の定義との整合性を確保してつくられているものでございまして、その中に言う私的目的がございますので、国際法上の私的目的の部分について簡単に御説明申し上げますと、わざわざ国際法上、海賊行為が私的目的のために行われるものとされておりますのは、国家自身による行為や国際的に承認された交戦団体により正統政府に対して行われる攻撃などが海賊行為にならないという趣旨で私的目的というものが定められたと理解しております。

松本(剛)委員 従来、武力行使に当たるのか当たらないのかという判断は、いわばその主体が国または国に準ずる者であるかどうかということがこれまで、例えばイラク特措法の議論とかでも一つ大きな基準になってまいりました。主体で判断をするという区分と、今回、海賊という行為で判断をするという部分は、明らかに物差しは違う基準になるわけであります。

 今おっしゃった私的目的のところで国家というものをかぶせるのかどうかでありますけれども、国または国に準ずる者というものがかかわった場合というのは私的目的に当たらないというふうに皆さんは解されているのか。そこが一致しなければ、従来の武力行使の線の引き方と今回の海賊行為の線の引き方というのは違うところで線を引いていることになりますから、何らかの新たな武力行使の解釈をされたということになろうかと思いますけれども、いかがでしょうか。

鶴岡政府参考人 海賊行為とは、私有の船舶の乗組員などが私的目的のために行う不法な暴力行為、抑留または略奪行為でありまして、その取り締まりは、その性質上、国際的な武力紛争には該当いたしません。したがって、海賊の取り締まりに伴う実力の行使が憲法第九条により禁止される武力の行使に該当することはございません。

 したがって、海賊行為の主体が国家または国家に準ずる組織に該当するかどうかを整理する必要はないと考えております。

松本(剛)委員 時間が来ましたので終わりますが、主体が何であるかを整理する必要がない、今、こういうお話でありました。従来の部分と、海賊に関しては、武力行使の解釈についていわば特別の枠を設けられたというふうに、一度整理をしてみていただいたらなるかというふうに思います。改めて議論の機会をいただいて、しっかり議論したいと思います。

 以上です。終わります。

今津委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 先週に続いて、ソマリア沖の海賊問題について聞きます。

 まず、前回の質問で、海賊発生の原因として、外国漁船による違法操業と有毒性廃棄物の不法投棄の問題を取り上げました。外務大臣は、調査して報告したいということでありました。副大臣、調査の結果について報告していただけますか。

橋本副大臣 私の方から答えさせていただきます。

 ソマリアを含む周辺国等によりまして、御指摘の事実が指摘されていると承知をしております。

 ソマリア沖、アデン湾における海賊行為は、かつては、ソマリア領海内における外国による違法操業や有害物質の不法投棄に対抗するために、地元漁民による自衛手段という側面があったというふうに言われております。他方、最近の海賊事案というのは、かつての自衛団的なものから、今は、身の代金を目当てにした金銭目的に変化をしているというふうに認識をいたしております。

 いずれにしても、ソマリア沖での海賊事案の多発の原因は、貧困問題、そして治安機関の取り締まり能力の不足等があると認識しております。特に、ソマリアにおきましては、一九九一年以来、武装勢力間の抗争が絶えず、国土全体を実効的に統治する政府が存在しない状況にありまして、法執行、司法機関が機能していないことがあるというふうに認識をしております。

赤嶺委員 今御答弁いただいたんですが、今日、新しい海賊の集団になっているという、そこは共通なんですが、ただ、この二月に首相に指名されたシルマルケ氏、二月十六日のプレスリリースの中で、あらゆる政治勢力に対して政治プロセスへの参加を呼びかけ、国際社会に対しては、海賊問題の発端となったソマリア領海での違法操業と廃棄物投棄に対処するよう、今でもなお求めているわけです。

 また、去年の十二月、ケニアのナイロビでソマリア周辺の海賊に関する国際会議が開かれました。コミュニケが発表されておりますが、この中でも、違法操業と廃棄物投棄に反対し、ソマリア領海の主権を再確認した、このように述べているわけですね。

 私は、まず、日本政府がこの問題で、国際社会と連携して具体的な対策を検討するよう求めておきたいと思います。

 それで、先ほど出ました内戦の問題、ソマリア内戦について認識を伺います。

 そもそもソマリアという国は、北部はイギリス、南部はイタリアの植民地とされてきました。一九六〇年に独立を果たし、その後、軍事クーデターにより発足したバレ政権が二十年余り、アメリカの軍事援助も受け、ソマリアを統治しておりました。九一年に、バレ政権は反政府勢力の蜂起によって崩壊し、その後現在に至るまで、全土を実効支配する統一政府は存在しない内戦状態が続いています。

 外務省の「アフリカ地域における海賊問題の現状と我が国の取組」というペーパーでは、海賊事件多発の大きな要因として、ソマリアには中央政府が存在せず、法執行、司法機関が機能していないと、さっき副大臣がお答えになった部分ですが、これを挙げております。

 ソマリアの内戦の経過と現状、これについて説明していただけますか。

橋本副大臣 先ほどと同じことの繰り返しになりますけれども、ソマリアは、九一年以来、武装勢力間の抗争が絶えず、国土全体を実効的に統治する政府が存在をしていない状況にあります。このような状況から、海賊の温床となりまして、当該地域の安定の観点からも懸念されるところであります。

 これに対処するため、国連安保理事会において、ソマリア沖の海賊対策、そして、現在ソマリアに展開中のアフリカ連合ソマリア・ミッション強化の方策等が議論をされてきておりまして、関連する決議も採択をされております。

 また、昨年の八月にはジブチ合意も成立をいたしまして、これから、最近のこのような和平に向けた一連の動きに対応して、ソマリア情勢に関心を有する欧米、アラブ、アフリカ諸国、国連機関等の間で構成されるソマリア国際コンタクトグループが、今後の和平進展への支援等につき検討を行っております。

 こうした国際社会の動きに対応して、我が国も積極的に参加をし、そしてまた貢献を行っているところであります。引き続いて努力をしたいと思います。

赤嶺委員 私が伺いましたのは、ソマリアの内戦の経過。今ソマリアに国際社会がどういう対応をしているかということではなくて、まず内戦の経過を押さえてみたいと思ったんですが、しっかりとした答弁はいただけませんでした。

 内戦は、先ほどから繰り返しておりますように、十八年も続いてきたわけです。その原因がソマリアにさまざま要因があるのは当然ですが、私があれこれ言うことではないと思います。ただ、きょうここで議論をしたいのは、そのソマリアの内戦に対する国際社会の関与のあり方がどうであったかという問題です。

 バレ政権崩壊後の内戦と干ばつで、三十五万人が餓死し、百五十万人が瀕死の状態と言われる事態になりました。これに対し、国連は当初、人道援助を目的にPKOを派遣しました。しかし、その後、国連PKO初の強制力を持つ平和執行部隊を派遣し、武器の放棄を拒否する武装勢力との間で衝突が繰り返される事態になっています。その中で、米兵が首都モガディシュの町を引きずり回される映像が報道され、米軍とPKOはソマリアから撤退しました。

 ソマリアの平和執行部隊、これについて、国連では現時点でどのように評価されておりますか。外務省、答えていただけますか。

秋元政府参考人 お答えいたします。

 今委員おっしゃいましたとおり、九三年に国連が国連ソマリア活動を派遣いたしましたけれども、所期の成果を上げられずに九五年に撤退しているということでございまして、その後、国連としてはPKOを送れない状況にあるということでございます。

 今ソマリアの状況を申し上げますと、もともとここは氏族社会でございまして、いろいろな氏族が、例えば日本の戦国時代のような形で対立し合っておりまして、これまでも、暫定政府、イスラム再解放連盟、ソマリランド、それから南部を中心とする各種武装勢力と、四すくみ、五すくみ、六すくみのような形で対立し合っております。

 他方で、何とか暫定政府を維持していくためには、やはり少なくともモガディシュ、首都の治安を維持していくことが必要だろうということで、今現在は、アフリカ連合によりますソマリア・ミッション、AMISOMというのが展開しておりまして、これは大体三千五百人の部隊が展開しております。

 他方、国連のPKOを送るべきかということにつきましては、国連の加盟国、安保理のメンバーの中でも意見が分かれているところでありまして、多くの国はまだ時期尚早ではないかという考えを持っておりますけれども、昨年、国連安保理で議論された際には、六月一日までに新たな決定がなされた場合には国連PKOを展開しようということになっております。

 ただ、果たして今の状況のもとで、六月一日までに新たな決定ができるかどうかは不透明な状況でございます。

赤嶺委員 PKOについて説明していただいたんですが、もう一点、今度はアメリカの対テロ戦争、そのかかわりについて聞いていきます。

 二〇〇五年一月、暫定連邦政府がケニアのナイロビで発足をいたしました。一方、ソマリアの国内では、二〇〇六年六月に、イスラム法廷連合が南部ソマリア地域を制圧いたしました。その年の十二月には、隣国のエチオピア軍の支援を受けた暫定連邦政府とイスラム法廷連合の間で戦闘が行われ、暫定連邦政府が首都モガディシュを制圧いたしました。

 この過程で、アメリカは、対テロ戦争の一環として、イスラム法廷連合と対立するモガディシュの軍閥を支援して、エチオピア軍の侵攻の際には、米軍の特殊部隊が同行し、軍事的な助言を行ったと、これは各種報じられております。

 それだけではないんですね。二〇〇七年一月には、国連PKOから撤退した以降初めて、ソマリアへの軍事介入をアメリカは行っております。ソマリア周辺海域を封鎖し、ジブチの米軍基地から、あるいは米空母アイゼンハワーを展開させて空爆を行っています。アルカイダの重要なメンバーがいるというのが理由であります。多数の民間人の犠牲も報道されております。

 日本政府は、アメリカとその支援を受けたエチオピアの軍事介入について、これにはどのように対応しましたか。

秋元政府参考人 テロリストとこの内戦とのかかわりというのは必ずしも判然としておりませんけれども、今まさに委員おっしゃいましたとおり、一部の武装勢力を率いているのがアルカイダメンバーであるということを言われております。例えば、先ほどおっしゃられましたイスラム法廷連合を率いていたハッサン・アウェイスという者は、国連アルカイダ・タリバン制裁委員会のリストに掲載されているアルカイダのメンバーであるわけであります。

 また、米国は、二〇〇七年一月以降、テロリストの拠点をたたくんだということで空爆等も行っております。先生おっしゃいましたエチオピア軍のソマリアへの派兵につきましては、これも、背後でアメリカが支援していたということは言われております。

 我が国として、特段これを支援していたとか、あるいは支持を表明していたということは特にございません。

赤嶺委員 内戦が続いているソマリアにアメリカがそういう行動をとったのは、当時の国連報道官は、国連事務総長はこの種の行動が紛争にもたらす新たな局面と敵対行為が激化する可能性に懸念を抱いている、EUの報道官は、この種の出来事は長期的には役立たない、このように述べているわけですね。

 米軍の空爆はその後も続いているんです。二〇〇七年六月には、アメリカ海軍の艦隊がソマリア北部のプントランドの港湾都市を攻撃しています。二〇〇八年三月には、ソマリア南部のケニア国境付近に巡航ミサイルを撃ち込んでいます。

 こうした米軍による空爆について、外務省はどのように把握していますか。

秋元政府参考人 米軍がテロリストの拠点に対して数度にわたって空爆を行ったことは承知しておりますけれども、その是非について、我々として判断する立場にはございません。

赤嶺委員 米軍はいかなる法的根拠に基づいてそういう攻撃を行ってきたんでしょうか。

秋元政府参考人 具体的にいかなる法的根拠に基づいたかというのに関しましては、今手持ちの資料がないので確たることは申し上げられませんけれども、米国は、通常、こういうような行動をとる場合には、自衛権を援用している例が多いと承知しております。

赤嶺委員 対テロ戦争の自衛権ということなんですが、日本も無関係ではないんですね。

 テロ特措法に基づいてインド洋に派遣されている海上自衛隊の補給艦は、ソマリア沖を含む海域で活動するCTF150という多国籍軍の部隊に給油をしてきました。ソマリアへの空爆を行う米軍に対しても支援を行ってきたということではありませんか。これは防衛大臣。

浜田国務大臣 これはあくまでも海上の補給活動の一環としてやっているわけですので、その点はまた、これは先生の御指摘とはちょっと合うかどうかわかりませんが、我々としては、そういう活動をしているということであります。

赤嶺委員 CTF150については給油しておりますよね。

浜田国務大臣 150に関してはやらせていただいております。

赤嶺委員 私たちは、そのCTF150がソマリアも攻撃していた、対テロ戦争に基づいてということなんですが。

 私たちが言うのがそのとおりであるかどうかという御疑問をお持ちのようでありますので、一度はっきり調べて、委員会にもう一度説明していただけますか。

浜田国務大臣 米軍の個別の活動については、なかなかこれは把握することも難しいわけでございまして、その点については、現時点でどうかということは、お答えすることは大変難しゅうございます。

赤嶺委員 私が聞いているのは、自衛隊による支援体制ですよ。

浜田国務大臣 我々とすれば、当然、いろいろな御指摘のあった中で、我々が補給したものについては確認ができるわけですから、それについてはお答えはできますが、米軍の活動については確認はできませんので、御了承願いたいと思います。

赤嶺委員 日本もそのCTF150に対し、あるいはソマリアへの空爆を行う米軍の行動について支援を行ってきたかどうか、自衛隊の活動についてきちんと求めたいと思います。

 ただ、去年、ブッシュ大統領がおやめになったときに、十一月のイギリスのタイムズに、テロとの闘いがいかにソマリアをアルカイダの手中に追いやったかという記事が出ているんです。ブッシュ政権のテロとの闘いの名による軍事介入が、もともと穏健なソマリアのイスラムを過激化させた。今ソマリアの大統領になっている人というのは、イスラムの穏健派ですよね。昔、アメリカがテロリストだといって攻撃した人が今大統領になって、アメリカはそれを支援しているわけですが、過激化させた。道徳的にも物質的にも情報面でもアメリカの支援を受けたエチオピアによる侵攻のもとで、一万人のソマリア人が死亡し、百万人以上が家を離れ、三百万人以上が緊急人道支援を必要とする事態になりました。こういう厳しい指摘をイギリスのタイムズで行っているわけです。

 私は、政府は、まずアメリカの対テロ戦争の中止を求め、自衛隊による給油支援を直ちにやめるべきだと思います。

 これは副大臣に伺いますが、去年の十二月、ソマリア周辺の海賊に関する国際会議で、国連特別代表のアブダラ氏は、海賊問題に真剣に取り組むとは、何よりもまず、ソマリアが平和で安定するよう支援することである、このように述べております。

 ソマリアの海賊問題は、ソマリア問題の一部にすぎません。ソマリア内戦という陸の問題が解決しない限り、海賊という海の問題は解決しないと思います。副大臣はそういう認識がありますか。

橋本副大臣 やはり国内の情勢の安定というものが何よりも不可欠だというふうに思っております。

赤嶺委員 今ソマリア沖に応急的な対処として、例えばアメリカの国防総省のモレル報道官が去年の十一月、こう述べているんですよ、世界じゅうの海軍の艦船をすべてソマリア沖に集めても問題は解決しない、やはり問題の根本的な解決こそ、今、日本の外交が取り組むべきことだと。

 きょうは海上保安庁にも来ていただきましたが、海上保安庁の国際社会の中で果たす役割についても伺いたかったんですが、ちょっと時間がありません。

 やはりソマリアの海の問題、陸の問題も含めて、どうすれば、国際社会が海賊を根絶し、そして航海の安全、平和な航行を確保できるかということについて真剣に考えるべきだ、九条を持つ国が軍隊をソマリア沖に集めても、それは根本的な海賊の問題解決にはならないということを申し上げまして、質問を終わります。

今津委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 質問の前に、海上警備行動と関連して、浜田大臣の直感的な感想で結構でございますから、お聞かせください。

 大臣、我が国の警察組織と活動において、例えば交通事犯であれば交通課が担当、あるいは詐欺や横領事件は知能犯係、暴力団事件は暴力団対策室、このようにして、組織犯罪、風俗犯、強盗、窃盗事件などの刑事事件、みんな担当が異なっておるわけですね。そのような捜査の人員配置もやります。それから、時として、取り締まりのための秘密兵器も警察は使う、このことを大臣はどのように思いますか。

浜田国務大臣 当然、犯罪というのが大変多種多様にあるわけですから、それに専門的な能力を持った人間を充てて、効率的にこれに対処し、そして犯罪を防止するということで、警察組織の中でそういった割り振りをしているというふうに私自身は思っております。

    〔委員長退席、新藤委員長代理着席〕

照屋委員 私からすると、百点満点の答弁だと思います。

 そのとおりなんですよね。要するに、海賊は犯罪ですよ。これを取り締まるためには、やはり犯人像を特定しないと有効な取り締まりや対処方針は決まらぬわけです。それを私は言いたかったわけであります。

 それで、海上警備行動に関連して、これまた浜田大臣のソマリア沖、アデン湾における海賊の実態に対する認識をお伺いしますが、ソマリアを担当する外務省の駒野大使が、一月二十三日、朝日新聞の取材に対して、ソマリア沖の海賊は現地の若者たちのあこがれの職業である、あるいは海賊のリーダーは現地で最も女性にもてる存在であるとか、海賊は豊かな生活の象徴である、このように大使が述べておる。このことについて、浜田大臣はどのようにお考えでしょうか。

浜田国務大臣 その国々で、国の評価に対するものはいろいろな御意見があろうし、またその情報を見るにつけ、先ほど来の議論の中にもありましたように、まさに国家として、国としてのしっかりとした経済政策、そしてまた国民のために何をするべきかということも含めて、いろいろな手段があろうかと思うわけでありますが、残念なことに、職業においてそれが一番簡単に富が得られるということ、それがたまたま海賊ということ、今の先生のお話からすればそういうことになろうかと思うわけであります。

 そういう意味では、国家として本当にしっかりとした体制がとれれば、海賊ではなくても、ほかの職業につくことができれば、そっちの海賊というのはなくなるのかもしれませんし、そういったことを考えますと、私が今先生のお話を聞いていて思うのは、やはりそういった国としてのまとまり、そしてまた職業の数の多さというものを経済的な部分、産業的な部分でしっかりと振興されることが極めて重要だということを率直に私自身としては思ったところであります。

照屋委員 海上警備行動を発令した大臣にお伺いしますが、ソマリア沖の海賊は、もともと漁民であったと言う人もおります。いやいや違う、武装した部族集団だ、こう言う人もおります。大臣はどう考えておられますか。

浜田国務大臣 先生のおっしゃるように、生い立ちはどうにしろ、私どもとすれば、我が国の国民の人命、財産というものを脅かすものであれば、これはたとえ生い立ちが何であろうとも、私の今の立場から申し上げれば、これをしっかりと守り、遺漏なきよう航海をしていただくことがまさに重要なわけでありますので、我々の任務というものを考えれば、目の前にあるものは、やはりしっかりとそういった船舶等を送ることであって、今先生のおっしゃったように、海賊の生い立ちというところまで私自身は今回の派遣に当たっては考える必要はなく、我々とすれば、その船舶、人命を守るということだけに私自身は特化して考えたところであります。

照屋委員 大臣、僕は違うと思うんですよね。やはり海上警備行動を発令するからには、海賊の実態というのをどのようにとらえるかということをしっかり確立しなければいけないと思うんですよ。

 もし、元漁民ではなくて、武装をした部族あるいは武装をした氏族であれば、場合によっては、国または国に準ずる者である場合もあるわけです。その場合には、憲法九条で禁ずる海外での武力行使に該当するおそれもあるわけでしょう。そういう判断をした上で、大臣は海上警備行動を発令されたんじゃありませんか。

浜田国務大臣 先生、そうはおっしゃいますが、我々もいろいろな海賊のタイプについても見させていただきました。そしてまた、部族とかそういうものも確かにあるかもしれませんが、しかし、我々とすれば、任務、特に自衛官を出すに当たっては、そういった部分を勘案しながらも、実際に目の前にそういったものがあらわれたときにどう対処するか。

 まずは、目的は当然、これは警護であり、船を安全に航行させることが我々の任務でありますので、今先生がおっしゃったように、その分析というのはあるかもしれませんが、我々とすれば、目の前にある、自衛官が対応するものと、そしてその背景にあるものと、要するに、これは外務省なり海洋政策本部の中での議論の中で、私どものパーツとすれば、当然、そういったことも勘案しながら、海上警備行動というものを私自身が発令したところでありますので、全く考えていないわけではなく、実際に動く際の整理として、私は今申し上げたところであります。

照屋委員 先ほどからの議論を聞いておると、一九九一年以降、ソマリアが無政府状態になっている、これも私もそのように思います。そして、外務省のホームページを見ると、海賊発生の最大の要因はソマリアの無政府状態だ、このように言っております。

 ところで、海上警備行動を発令した浜田大臣は、現在、ソマリア暫定政府に沿岸警備隊はあるという認識でしょうか。

浜田国務大臣 今の私の記憶の中にはございません。

照屋委員 ないと私も思います。大臣、今のソマリア沖の海賊はもともとソマリア沿岸警備隊の隊員である、そういう説を述べる方もおられるんですよ。そこら辺は海上警備行動を発令される際に考慮に入れたんでしょうか。

浜田国務大臣 先生、そうはおっしゃられても、我々としては、今それを確認する方法がございませんし、ただ、現状として、実際にいろいろな事例を見させていただくと、海賊が船に乗り込んでいろいろな船を略取するような、そういう映像等も我々は見させてもいただいているわけでございます。しかしながら、沿岸警備隊の隊員が海賊になったというふうなことを私どもが確信する材料はございませんでした。

照屋委員 浜田大臣に尋ねますが、海上警備行動の発令根拠は自衛隊法八十二条と理解をしております。同法八十二条は、主権侵害行為に対する警備、あるいは、地理的には領海、せいぜいいって排他的経済水域内の範囲が原則ではありませんか。

徳地政府参考人 自衛隊法の第八十二条に基づきます海上警備行動につきましては、まさに条文にも書いてありますとおり、「海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合に」ということで、そのような場合に一定の手続でもって発令されるものでございます。

 そして、これは自衛隊法の第三条の任務との関係で申しますと、公共の秩序の維持ということでございますので、基本的には日本国民の生命財産を保護するというふうに考えておるところでございます。

 他方におきまして、それではこのような行動をどのような場所において実施することになるかということになりますと、領域内は当然でございますけれども、必要に応じ公海に及ぶというふうに我が方は従来から考えておるところでございまして、その意味におきまして、ソマリア沖の海域というものも、必要であれば排除されるものではないというふうに考えておるところでございます。

照屋委員 大臣、自衛隊法第三条は、自衛隊の任務について具体的に規定をしております。大臣が発令した今回の海上警備行動は、自衛隊法第三条のどの項目に基づく任務でしょうか。明確にお示しください。

徳地政府参考人 自衛隊法の第三条の一項に、「必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」と書いてございますので、そこに当たるものというふうに従来から解釈をしております。

照屋委員 確かに、自衛隊法三条一項には、我が国への直接侵略及び間接侵略からの我が国の防衛、いわゆる専守防衛、あるいは、今あったような、「必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」、こういうことが書いてあることは私も承知をしております。

 この「必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」というのは、自衛隊の活動は、憲法九条の趣旨に沿って、自衛のための範囲内に限られるものである、そして、海上警備行動における公共の秩序の維持も、我が国の主権の及ぶ範囲内で、かつ自衛のための範囲で行われるべきであって、それを超えると憲法九条違反のおそれが強くなるという考えは、大臣、お持ちでしょうか。

    〔新藤委員長代理退席、委員長着席〕

徳地政府参考人 先生御指摘の点につきましては、まず、憲法第九条との関係について申し上げますと、先生もお触れになりました自衛隊法の第三条の第一項の、まさにその主たる任務、国の防衛の方に関係する話であろうというふうに思っております。したがいまして、国の防衛につきましては、当然、個別的自衛権の範囲内、憲法九条の範囲内ということでございます。

 他方におきまして、自衛隊法の第三条の第一項の「必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」というものにつきましては、基本的には警察権の行使ということでございますので、通常であれば、警察機関がこれを行使するということになりますけれども、警察機関の能力では及ばないというような場合に、これを補完するような形で、自衛隊がかわりに警察権の行使を行うということでございますので、その意味におきまして、国の自衛の問題とは別個の問題というふうに考えております。

照屋委員 それはおかしい解釈だと思いますよ。自衛隊法三条一項は、原則として専守防衛に限っておるんです。その上で、必要に応じて公共の秩序の維持に当たる、こう言っているわけだから、条文の解釈としても、私が述べたように、公共の秩序の維持、これも我が国の主権の及ぶ範囲、そして自衛のための範囲で行われるべきである、こう考えないとおかしいと思うんです。

 今回の海上警備行動は、警察活動でしょうか、それとも海上における治安維持活動でしょうか。

徳地政府参考人 今回、自衛隊がソマリア沖、アデン湾において行うこととしておりますのは、海賊行為を抑止する、あるいは海賊を日本船舶から退散させるというようなことでございます。

 このような業務につきましては、本来であれば、日本におきましては、警察機関たる海上保安庁において行われる、いわば警察権の行使というようなものでございますけれども、海上保安庁の方ではこのようなことを行うことが非常に困難であるというふうな理解でございますので、そのかわりに自衛隊が出ていくというような整理でございます。

照屋委員 国土交通省に尋ねますが、海上警備行動は、国土交通省が窓口役として護衛を希望する船舶を募り、優先順位を決めるシステムだと聞いております。きょう現在、護衛を希望する船舶は何隻でしょうか。

大野政府参考人 三月九日の時点までに、対象となり得る船舶の基礎情報に関する登録を広く事業者から受け付けたところでございます。二千五百九十五隻でございます。今後、増加、変更あり得べしと思っております。

 なお、先生のお尋ねの中で、優先順位をつけるという考えはございません。よろしくお願いいたします。

今津委員長 照屋君、もう時間ですので、御協力ください。

照屋委員 最後に、これはぜひ浜田大臣にお答えいただきたいんですが、マスコミ報道によると、防衛記者会に加盟する新聞、テレビ各社が、海上警備行動に派遣された護衛艦二隻について、乗艦取材を求めたところ、当面の間は認められないとの回答があったようですが、そのとおりでしょうか。乗艦取材を許可できない理由をあわせて尋ねます。

 私は、国民の関心の高さからしても、情報を開示して、活動の透明性を確保することが重要だと思いますが、大臣、最後にお答えください。

浜田国務大臣 これはまさに、我々の説明に対してちょっと早とちりの反応をしたというふうにしか思えませんで、我々とすれば、今現在、かの地に向かっておるわけでありまして、逆に言えば、向こうでの活動が始まって、ある程度落ちついたところで取材等にも応じたいということもございます。例えばきのうの時点で聞かれても、向こうの方でどのような態勢がとれるかも含めて、そしてまた艦の方も、これは余裕のない状況の中で人を乗せていますので、そういった意味においては、これをアテンドするということになりますと、それなりに落ちついてからでなければなかなか取材というのは、乗せるというのが難しくなります。

 なぜかといえば、乗せてしまったらおりるというわけにもなかなかいきませんので、それは、乗ったら二日から三日にかけては一緒に行動してもらわなければなりません。そういったことを考えれば、我々とすれば、これは取材を拒否するということではなくて、調整するまで時間が欲しいということを言ったというふうに私は聞いておりますので、決して取材に対して拒否をしたということではなくて、取材することを前提にして時間が欲しい、そしてそれを検討させてくれと言っただけのことでございますので、我々とすれば、拒否する理由はないというふうに私自身は思っております。

照屋委員 終わります。

今津委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 浜田大臣が所信表明演説で、「自衛隊による海賊対処については、新法を整備した上で対応することが基本であると一貫して申し上げてきた」ということをずっと申し上げていますね。

 しかしながら、海賊対策は、三月十三日に浜田大臣は海上警備行動を発令して、同日には海賊行為の処罰及び海賊行為に対する新法を閣議決定して、十四日には護衛艦が現地に向かうというふうな、浜田大臣の思いとは逆の順番になっているような感じがしますけれども、そのことについてどう思われますか。

浜田国務大臣 法案の件に関しましては、法案の方が先の方がよかったというお話があるかもしれませんが、しかしながら、昨年来、いろいろな国会の状況等も考えながら、そしてまた、この法案というのが、つくるまでにいろいろな御議論もいただいて、我々としてそれを検討することもあり、法案が提出され、そしてできるまで待っているというのは、今の海賊の状況からすれば対処は早い方がいいということがございました。

 そういった意味では、法案の方が今提出されてこれから議論していただけるということでございますので、私とすれば、海上警備行動を発令するに至るまでの経緯等も含めて考えれば、今回、その法案に対して国会で御審議をいただいた上で、また新法ができたときに改めて命令の出し直しをして対処すれば、これは問題ないのかということでございます。

 あくまでも応急措置として海上警備行動を発令したということでございますので、その点は、たとえ海上警備行動が早くても、その後の新法で担保できれば、これは私とすれば納得をするところでございますので、今の気持ちとすれば、法案ができて、提出されてよかったというふうに思っているところであります。

下地委員 平成十三年の九月十一日に米国の同時多発テロが起こりましたけれども、テロ対策特措法はその年の十月五日に国会に提出されて十月二十九日には成立している。そういうふうな法律もあるんですよね。

 今申し上げたように、時間との闘いもおありになったというふうに、まあ推測してわかりますよ。浜田大臣が考えて、法案を最短で、もし野党の協力も得てやれるとした場合はどれぐらいで採決、最長はもうわかっていますよね、三分の二でまた戻さなければいけないということになろうかと思うんですけれども。最長はわかっていますけれども、最短で御理解いただくといったらどれぐらいでできたんじゃないかと思っていますか。

浜田国務大臣 国会のことでございますし、また先生方の御議論というものをやはり当然考えなければならないと思いますので、私が国会の審議等の時間の長さについてコメントするというのはなかなか難しいわけでございます。ほかの法案との兼ね合いもあり、そしてまた今のように衆議院、参議院の立場の違いもあれ、そういったことがあるわけでありますので、今、では最短でどのくらいかと言われても、私自身では想像がつきませんので、その点については、日数についてはちょっと私にはわかりかねるという答弁にさせていただければと思います。

下地委員 答えられないのはわかって今質問したんですよね。これは答えられないですよ、正直言って。

 ただ、だけれども、法案そのものが、この法案を論議するような根拠になったのが、民主党の長島委員がいらっしゃいますけれども、昨年十月十七日の長島委員の総理大臣に対する質問で、民主党を代表して質問をなされているわけでありますから、そういうふうなことになると、これは与党から出てきて指摘をしてスタートしたものじゃなくて、野党の方からも、野党の第一党からも指摘をして、総理もそれをやるべきだというようなところからスタートしました。

 それで、民主党も自民党も、私も参加をさせていただいていますけれども、勉強会でもさまざまな論議をしましたけれども、私は物すごく与野党がスムーズにいく法案じゃないかなと思ったんですね。だから、この法案は十月十七日から始まって論議をしても、国民新党においても、私は海賊対策は賛成すべきだと党内で言いたいと思いますよ。そういうふうな意味では、この法案そのものの重要性もよく与野党も理解をしているし、そしてこのことに関して、私は、与野党でこの協議をして、そして結論を出してやっていくとなると、私の予想では、そんなに時間はかからなかったのかなというふうに思うんです。

 しかし、今論議を聞いていると、海賊対策の重要性という論議よりも、なぜ海上警備行動で自衛隊を出さなければいけないのか、海上警備行動というのは国内周辺の安全保障のために出すようなものであって、ソマリア沖のものに出すべきじゃないんじゃないかという質問も数多く出ますよね。だから、本来の正しい物事、ある意味急いでやらなければいけない正しい物事が、この海上警備行動をつけたことで、本来認められるようなものまで何か認めにくくなっているという論議が出ているんじゃないかという心配をしてしまうんですよね。

 だから、私はそういうふうな意味で今の御質問をさせていただいたんですけれども、この法案を早急に成立させて、海上警備行動じゃなくてやった方が、これからの長い意味での自衛隊の存在意義といいますか、国際貢献とかさまざまなものでは国民の理解が得られたんじゃないかと思う。

 大臣がおっしゃるように、時間がないから早く出さなければいけないというのはよくわかりますけれども、海上警備行動にはなかなか無理やりがあるんじゃないか。まあ役人はつけさせるのがうまいから、それはいろいろな根拠法はつけてきますけれども、私は長い意味で、じっくり待って、じっくり待ってというわけにはいきませんけれども、与野党協議をしっかりとやればよかったんじゃないかなというふうに思っております。

 こういう協議を大臣から、大臣は、初めの方は警備行動じゃなくて所信と同じような考え方だったと私は思うんですけれども、与党の方にも野党の方にも、早く法律を通せ、警備行動じゃなくて早くやりたい、法律を通して堂々と自衛隊を行かせたいというふうなことをお話しなされて、こういう動きをしたことはないんですか、大臣は。

浜田国務大臣 いろいろな場面場面でいろいろな御議論を聞いてまいりましたし、先生方の御意見も伺いましたけれども、なかなかそういう、法案を出すまでの我々サイドの議論、そしてまた与党のPTの皆さん方も真摯な態度でこの議論をしていただくためにも、我々とすれば、いろいろな材料集め、そしてまた逆に言えば、昨年、船主協会の皆さん方からのいろいろな御陳情等々も踏まえて、この海上警備行動というもので対処することが一番早いということはこれはもう当然のことでありまして、そういう意味では、法案を出すというのは、これはまた、私の防衛省の管轄で出す法律でもございませんで、政府全体としてこの法律をつくってやるということで海洋政策本部の方が中心になってつくられたわけであります。

 その中において、我々防衛省とすれば、政府として海上警備行動というのを使ってでも国民の人命そして財産を守るんだということであれば、私どもとすればしっかりとこれに対処していかざるを得ないということもあるわけでありますので、先生の御指摘のように、皆さんで議論をしながら法案が早くつくれればというのは確かに思いましたけれども、ただ、あの状況下では、なかなかうまく皆さん方の意見が一つになるというのはちょっと考えられない部分もありましたので、そういったところは、私自身は動いてはおりませんが、しかし、当然、今後新法においては、ぜひ皆さん方にいろいろな御指摘をいただきながら、いい法律を早くつくっていただいて、この海上警備行動にかわる新法で我々も活動をさせていただければというふうに思っているところであります。

下地委員 一義的には、取り締まりは海上保安庁というふうなことでありましたから、海上保安庁がソマリア沖に行くべきではないかという質問もありましたけれども、長距離であることだとか、海賊の皆さんの武器が海上保安庁のものでは対処できないとかという基本的なことを述べておりました。そのとおりだと思います。

 ただ、そのときに、同じ質問なんですけれども、海上保安庁にしても、海上保安庁ではできないというふうなことがはっきりしたときにそのまま自衛隊に投げるんじゃなくて、法律を出される立場の方からして、海上警備行動じゃなくて、早急に法律を通してやるという考え方は、副大臣なんかはお持ちで、そういう動きは全く法案の中でやられなかったんでしょうか。

加納副大臣 ありがとうございます。

 私は、国土交通副大臣でございますけれども、あわせて、このたび海賊新法の担当副大臣になりましたので、その立場も含めましてお答えさせていただきたいと思っております。

 まさに下地先生の御指摘のとおり、大変急を要する話でありまして、新法を早急につくらなければならないという覚悟でやってきたところでございます。特に、きょうずっと議論されておりますソマリア沖そしてアデン湾で急増しております海賊行為は二つの意味で、あそこを二千隻近く通る日本の関係の商船、貨物、人命、乗組員、こういったものに対する脅威であるだけではなくて、国際社会全体にとっての脅威だというところでありますので、新法をつくりまして、何としても早くこれを実行に移したいというところでございます。

 ただし、新法をつくる過程でさまざまな問題がございます。例えば、海賊行為の処罰を規定する、これについてはいろいろな御意見もございましたし、それの詰めをやっていく、それから与党プロジェクトチームの御意見を十分に踏まえながら最善の努力をしてきたつもりでございますけれども、そういうこともあって、三月十三日にようやく閣議決定できて国会に出したということでございます。

 今後というお尋ねでございますけれども、ぜひとも今国会で充実した御審議をいただき、そして早急にこの法案の成立をお願い申し上げたいというところでございます。

 それから、海上保安庁の立場ではどうかという、私、何か二枚鑑札みたいで申しわけないんですが、海上保安庁としては、やはり海上における治安の確保、これは海上保安庁が第一義的に負っているという強い責任感というか自負を、自覚を持ってやってきたつもりでございますし、今後もそれは変わりません。

 ただし、先生も御指摘のとおり、三つほどの特殊な条件があるソマリアに派遣をするというのは非常に現在厳しいというところも事実でございます。そういうところで、海上警備活動が今行われていますけれども、私どもとしては、この新法を一刻も早く実現したいと思っております。

下地委員 新法を通してやるというのが基本的な考え方でいいと思うんです。この前のインド洋の給油の件がありましたけれども、そのときの論議を聞いていましても、インド洋で日本側がこれだけ頑張っているというふうなものをアフガニスタンの国民の中でなかなか理解していない人が多いんじゃないか、大統領のコメントも、わかっていなかったというふうなことも出ておりましたよね、あのころ。

 ああいうふうなことの論議をずっと聞いて、私たちは、これから自衛隊を派遣するときに、自衛隊を派遣するときの法律とそれと民生支援といいますか、こういうふうなものが必要だという人たち、政党もいます、また、今のような対策も必要だというのがありますよね。

 今、テロというものに対しては、私たちは、警察権力だとか防衛力とかというのと同時に、貧困対策もやらなければいけないし経済対策もやらなければいけない、これは共通項なんですよ。この前のイラクの陸上自衛隊の活躍においては、水を供給したりさまざまなものをやったり、民生支援をやるようなことも一つの方法としてやりましたよね。今までの流れの教訓として、私はこういうふうな海賊対策が必要だと思いますよ。

 この法律を出すときに、民生支援もするんだと。先ほどの質問の中でもなぜ海賊になったのかというふうな、漁ができなくなって、外国の船が来て大量にとっていって困ってそれが海賊になったとか、非常に生活が厳しいとかという話がありましたけれども、今までのこういうふうな教訓からして、海賊対策のハードの部分もきちっとやる、しかし、民生支援の部分も、法律的に、民生支援も組み込んだような法律も一緒に出す。ODAでやるのか何なのかわかりませんよ、こういうふうなパッケージで出すともっと理解が深まるんじゃないか。

 そういうふうなお考えなんかを持って、今までの教訓からして、新しく自衛隊を出す場合には、絶えずそういうふうな方向でやろうというお考えはお持ちになりませんか。

浜田国務大臣 先生の今御提案であります、今回の法案は別にして、やはり車の両輪として、我々、イラクにおいても、外務省、そういった今の民生支援、そしてまた我々の人道復興支援という形の中で車の両輪でやるということを、今先生のおっしゃったような、法案の中にそういうものを組み込めというのは、我々とすれば今までやってこなかったことでありますけれども、そういったものがあった方がわかりやすいということであるならば、やはり我々はあらゆる国民の皆様方に御理解をしていただくことが重要であるわけでありますので、またそういったことも頭に入れながら、いろいろな法律の形というものを考えてみるべきかな、今先生の御意見を聞いてそう思った次第であります。

下地委員 東ティモールへ行って、自衛隊が撤退した跡を見てきましたけれども、自衛隊はいっぱい、車両からいろいろなものを残してきましたけれども、相当に東ティモールにおいて国民の皆さんにも喜ばれていましたよ。また、エンジニアの皆さんがしっかりと教えられていましたから、こういう貢献の仕方も自衛隊にはあるんだな、非常に評価されているんだなということをあのときに感じたんですよね。

 しかし、そういうふうなものと今行っているものとは、ハードの部分も必要ですから、ぜひ私は、こういうふうに海外に出すという、特に貧困地域だとかそういう、紛争地域なんかは貧困が伴っているケースが多々あるわけですから、民生支援も一緒になって防衛省が出していく、そういう仕組みをやると、こういうふうなものは海上警備行動などを使わなくても、僕は、反対せずにどどんと通ってうまくいくんじゃないかと思うんですよね。

 だから、大臣もそうだと思う、ぜひ余り慌てずに、長い意味で、国民からもどの党からも自衛隊を海外に出すことを御理解いただくという意味で、無理やりやらずに、さまざまな、与党にも野党にもそういう協力ができやすいような環境の提案をやってからやっていくというようなものをぜひこれからもお考えいただきたい。私は、そういう提案を与党側の方からどんどんやってくるとこれは時間がかからないというふうに思っていますから、そのことだけお願いさせていただいて、私の質問を終わります。

今津委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十九分散会


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