衆議院

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第6号 平成21年4月23日(木曜日)

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平成二十一年四月二十三日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 今津  寛君

   理事 江渡 聡徳君 理事 嘉数 知賢君

   理事 仲村 正治君 理事 松本 剛明君

   理事 山口  壯君 理事 佐藤 茂樹君

      安次富 修君    愛知 和男君

      赤城 徳彦君    小野 晋也君

      大塚  拓君    瓦   力君

      木村 太郎君    武田 良太君

      寺田  稔君    山内 康一君

      山崎  拓君    逢坂 誠二君

      神風 英男君    津村 啓介君

      馬淵 澄夫君    田端 正広君

      笠井  亮君    照屋 寛徳君

      西村 真悟君

    …………………………………

   防衛大臣政務官      武田 良太君

   参考人

   (東京大学大学院情報学環教授)          田中 明彦君

   参考人

   (拓殖大学大学院教授)  森本  敏君

   安全保障委員会専門員   金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十三日

 辞任         補欠選任

  長島 昭久君     逢坂 誠二君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  逢坂 誠二君     長島 昭久君

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三一号)


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     ――――◇―――――

今津委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、防衛省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 本日は、本案審査のため、参考人として、東京大学大学院情報学環教授田中明彦君、拓殖大学大学院教授森本敏君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。心からお礼を申し上げたいと思います。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、田中参考人、森本参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知をいただきたいと存じます。

 それでは、まず田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 東京大学の田中でございます。

 本日は、安全保障委員会にお招きいただきまして、大変名誉に存ずるとともに、感謝を申し上げます。

 今回の審議の関連でありますが、私は、平成十九年十二月三日に設置されました防衛省改革会議の一員として、防衛省改革についてみずからの見解を述べるという経験をさせていただいております。それからまた、国際政治、安全保障について研究者として研究しているという立場でございます。

 防衛省改革会議は、御案内のとおり、平成二十年七月十五日に報告書を取りまとめまして、これに従って防衛省では漸次改革をお進めいただいているところだというふうに承知しております。私が申し述べることは、防衛省改革会議の報告書と関連していることは当然でございますが、あくまでも、本日申し上げることは私個人の見解、見方でございます。

 ただ、そうは申しましても、この改革会議の審議に参加させていただきまして、防衛省で起こった幾つかの不祥事を個別に検討した結果、最高幹部が規則違反を行い、現場部隊では初歩的なルールさえ守られないという状況に深刻な憂慮を覚えました。脅威が多様化し、過去の先例のみに従っていては対処できないような複雑な事態が発生したときに、適時適切に対応できるかということが大変心配になりました。圧倒的多数の防衛省職員、自衛官がまじめに任務を遂行していることは間違いないというふうに思いますし、私はこれに常々敬意を表するものでありますが、今回の一連の不祥事を検討したとき、どこか全体としての組織文化、気風、組織自体の制度設計に問題があるのではないかと感じるようになりました。恐らく、そのような認識を防衛省改革会議のメンバーは共有したところが多いと私は理解しております。

 そこで、報告書では、全体の改革の方向として、三つの原則を守り、これを担保するために大胆な組織改革が必要であるという結論に達したわけであります。三つの原則というのは、規則遵守の徹底、プロフェッショナリズムの確立、全体最適を目指した任務遂行優先型の業務運営の確立という、この三つでございます。

 これまで、多くの場合、学界でも、あるいは現代社会の議論の中でも、文民統制というのは軍事実力組織からの安全ということが強調される概念でありました。これはもちろん現在でも重要なところでございます。しかしながら、安全保障を確保するということが国家の基本的な任務であるとすると、軍事実力組織をいかに活用するかということもまた文民統制の非常に重要な観点であると思っております。

 そのために、今回の不祥事等を検討した結果でも、いたずらに文官と自衛官を分離することがよいということではない。お互いが協調し、チェックし、そして切磋琢磨する関係が必要であるというふうに思います。前の事務次官の事例や、あるいは防衛省改革会議のときではありませんけれども、最近の前空幕長の事例というのを見ますと、これは、それぞれ分離された組織の中で、本来防衛大臣の監督のもとにあるべき人物が傍若無人に振る舞った、だれもとめられなかったということではないかというふうに思っております。

 つまり、防衛大臣による指揮監督を十分貫徹させるということが、軍事組織からの安全にしても、軍事組織を活用した安全にしても必須であるということだと思います。それにもかかわらず、防衛省が省に昇格したときには、ほとんど組織的見直しが行われなかったというのが実情ではないかと思っております。

 そこで、防衛省改革会議の報告書では、官邸の司令塔機能強化というものについての提言とともに、防衛省における司令塔機能の強化のための組織改革を提言したわけであります。ちなみに、これに加えて、より細かい政策面、運用面、整備面、教育面などにおける組織改革についても報告書は指摘をしておりますけれども、これは防衛省で漸次実行していると了解しております。

 防衛省の司令塔機能強化ということのために提言したのが、大きく言って二つでございます。つまり、第一が、形骸化している防衛参事官制度を廃止し、防衛大臣補佐官を設置すべきであるということ。第二が、訓令に基づいて置かれている防衛会議を法律で明確に位置づけ、より実効的な防衛省の最高審議機関として活用すべきであるということでございます。

 国民から選出された国会によって成立した内閣、その一員である防衛大臣というのは、必ずしも常に防衛や安全保障問題の細部にわたって詳しいというわけではないのではないかと思います。防衛省といった組織のあり方についても、直ちに適切な統制のもとに置くのは困難である場合があるかと思います。個人的に信頼でき、防衛、安全保障問題や防衛省の運営に通じた補佐官を任用できれば、早い段階から幹部を統制しつつ、適切な指揮監督を行うことができるのではないかと考えた、これは私の考えでございます。

 防衛参事官は、本来はそのような意味で防衛大臣を支える存在として設置されたのではないかと思われますが、実質的にはそのような機能を果たしてきませんでした。また、防衛参事官が基本的方針について防衛大臣を補佐すると防衛省設置法で規定されていまして、そこで文官のみが防衛参事官になる。文官のみが防衛参事官になって、これが局長と兼務となるということによって、すべての自衛官、制服は局長クラスの文官の下位に立つ、そういう統制関係に事実上なったと思われます。

 その結果、自衛官組織と文官組織が不必要に分離され、しかも上下関係に立つというようなことになったというふうに私は分析しております。その結果が防衛省・自衛隊全体としての機能低下を招き、しかも不祥事を生み出す土壌になったというふうに思われる面がございます。先ほど申し上げましたように、別々に分けて上下になって、その中は分離していますから、その中で好き放題するという傾向が生まれたのではないかと思います。

 したがって、今回の法案で、防衛会議メンバーが文官、自衛官双方のトップとなり、全体として基本的方針の策定に関与させたということは、私は望ましい改革であるというふうに思っております。

 ただ、往々にして、この種の会議は、公式化すればするほど形骸化するという危険がありますので、これを防ぐためには、情報分析などを含めたさまざまな問題を議題にして、できるだけ頻繁に会議を開催することが求められると思っております。

 以上で、私の公述を終わります。(拍手)

今津委員長 ありがとうございました。

 次に、森本参考人にお願いいたします。

森本参考人 本日、この審議に参考人として招致され、田中先生とともにこの場に出席できましたこと、大変名誉なことだと思います。

 私個人について言えば、防衛大学校を出て自衛隊に入り、十五年の勤務を経て外務省に入り、十五年の勤務を経て、その後、研究所あるいは大学に籍を置いているものでありますが、自衛隊を離れてことしでちょうど三十年になりますので、知識はあるとはいえ、私がいたときの自衛隊と今日とでは全く様相が違い、必ずしも防衛について正しい認識を持っているとは自分で考えておりません。しかしながら、きょうは非常によい機会でありますので、設置法に係る参事官制度の廃止と、いわゆる防衛補佐官の制度というものについて、個人的な考え方を申し述べることはもちろん、そもそもこのような問題が出てきた背景について一言、私見を述べてみたいと思います。

 そもそも、戦後、朝鮮戦争勃発を契機に発足しました警察予備隊を源流として一九五四年にでき上がった自衛隊は、この半世紀の間、絶ゆることなく発展し成長し、今やアジアで有数の防衛力として国際社会でも広く活躍できるようになっていると思います。この間の先人あるいは隊員の不断の努力と国内の多方面にわたる支持と理解というもののおかげで、多種多様な任務に対応できる精鋭部隊が育成されるに至ったことは、我が国の誇りであると考えます。

 他方、二十五万人の自衛官を含む二十七万人の職員と近代装備を有する自衛隊を運営するに際し、不測の事態あるいはミスマネジメントはでき得る限り局限する必要があると考えますが、他方において、全く事故のない実力集団などが本来ありようはずもなく、近年、田中先生御指摘のようないろいろな問題が起こり、このあってはならない事故が国民の失望を買ってきたことも事実であると考えます。

 今日、実力組織としての自衛隊と国家行政組織としての防衛省には、幾つか重要な問題に直面していると思います。

 その一つは、言うまでもなく、冷戦後、特に九・一一以降、国家の防衛あるいは防衛力のあり方について、その役割、意義、機能を国民にわかりやすく説明できる基本的な原理原則がなかなかうまく説明できないということであり、この国民から見てわかりにくくなっている防衛の持っている存在意義あるいは役割について不透明なところが、結局のところは、防衛予算の減少を招き、主要装備の導入がおくれ、隊員の士気やあるいは充足率、あるいは部隊の士気、規律に一定の影響を与えるということではないかと考えます。

 現在、防衛省・自衛隊は新大綱をつくる作業中でありますが、その中で、防衛力が持つ役割と任務について国民にわかりやすく説得できるような論理が見つかればよいなと思っているところであります。

 もう一つの問題は、より本質的な問題として、この半世紀、日米安保体制とともに我が国の安全保障や防衛を担ってきた我が国の自衛隊が、その本来の性格であるいわゆる軍隊としての実力集団、武力集団でありつつも、領域を一歩外に出ると国際法で言う軍隊として扱われながらも、国内法上は、国内において依然として国家行政組織の一部であるという扱いを受けていることに起因するものであります。

 一般国際法上は、軍隊が遵守すべき法律というのは国際法で規定されているわけですが、それ以外に、本来、軍隊というのは、どこの国の軍隊も同じですが、その軍事目的のためには、余り厳しい法的規制を受けずに行動の自由が認められているという性格を持っているわけであります。しかるに、我が国の自衛隊というのは、他の行政機関と同様、あるいはそれに比べてはるかに厳しく法のもとで管理され、法の規定を守ることが精鋭なる組織の証拠であるかのごとき扱いを受けております。

 一般に軍隊というのは、規定は守るが戦闘に強い集団でなければならず、法は厳しく守るけれども戦闘のたびに負けるという軍隊は国にとって不要なものであります。しかし、兵器というのは法では動かず、戦闘の様相も法の規定どおりにはいかないわけで、そういう意味で、いわゆる実力集団としての自衛隊というものと、国内法で規定される行政組織としての防衛省というものの相互関係をいかに調和するかという、もう一つの問題に今日直面しているのではないかと考えます。

 以上を考えるときに我々が特に重視すべきなのは、もちろんシビリアンコントロールのあり方ということでありますが、今、田中先生の御指摘のように、防衛大臣の指揮監督のもとで文官と自衛官がそれぞれのスペシャリストとしての技能を効果的に発揮して、全体として組織の持つ役割を果たしていくためには、いかなる実効性のある組織があり得るのかということは、防衛省や自衛隊が不断に検討し、それを実現していく義務を負っているというふうに考えます。

 実力集団としての自衛隊の機能を最も効果的に発揮するためには、状況に適合する柔軟な組織を常に編成できるように各級指揮官には裁量を与えつつも、これを全体として運営できる防衛省としての機能がなければならないと思います。その意味で、現行の防衛参事官という制度は、複雑多岐にわたる膨大な業務を主管する官房長や局長に、防衛省の所掌事務全般にわたって大臣を補佐するという役割を与えているものであり、やや実効性に欠ける面があるということは否定できないと思います。

 今日、こうした文民統制の原則に従って、防衛省の主任大臣は文官でなければならないわけですが、平均すると九カ月ごとに交代になってきた防衛大臣が複雑な機能を有する国家の防衛について万般の知識を有するとは限らず、他方、防衛大臣の決断は国家の防衛という極めて重要な国家の基本機能にかかわる問題であり、国の防衛について決断を誤ると国は滅び、失敗は許されないということだと思います。したがって、今まで防衛参事官制度という他の官庁には見られない制度が存在したのも係る理由によるものであり、これが十分機能しないということになりますと、その欠陥を補う制度を取り入れざるを得ないということになると思います。

 しかし、防衛大臣補佐官の新設がそれに対する唯一の回答であるかどうか、私個人は必ずしも確信を持っておりません。

 特に、防衛大臣に補佐官が必要ということであれば、総理、官房長官にも防衛補佐官が必要なのではないかと考えます。ただ、この場合は、防衛省の補佐官とは異なり、総理、官房長官の補佐官は、現職の統幕の自衛官が兼職で勤務するということだってできるのではないかと考えます。

 さらに、防衛大臣には、省の所掌事務全体について官房長、各所掌事務については局長がおられますし、その他、国際担当の参事官、あるいは衛生監、技術監などもおられます。そうすると、防衛大臣が防衛政務に関して、防衛行政、防衛政策に関して見識のある者を政治任用するといっても、防衛大臣を補佐することのできる人材を大臣が交代するたびに探すということは容易なことではなく、防衛省以外の人材で、複雑多岐にわたる防衛の機能、任務をよく承知し、大臣を的確に補佐できる人がその都度そろうということは、なかなか難しいことなのではないかと思います。

 したがって、私が考える防衛補佐官に期待される業務というのは、結局のところ、防衛大臣の行う政務あるいは行政を国民、地域社会、メディアあるいは国外に広く知らしめ、これと連携して国家防衛のあり方について、より広範な国内世論、国際世論を醸成する役割を果たすということであれば、防衛補佐官の役割は少しは機能するのではないか、このように考える次第でございます。

 以上は、防衛参事官制度を廃止して防衛補佐官を新設するということに必ずしも否定的な考えを示すものではありませんが、この制度を最も効果的あらしめ、長期にわたってこの制度が機能するためには、さらなる知恵が必要なのではないか、かように考える次第でございます。

 以上でございます。(拍手)

今津委員長 ありがとうございました。

 以上で両参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

今津委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仲村正治君。

仲村委員 先ほどは、両参考人から貴重な御意見をお述べいただき、本当にありがとうございました。

 我が国は、昭和二十九年に自衛隊ができましてから五十五年になりました。当時、我が国の防衛政策は、専守防衛、文民統制の基本理念でスタートしたのでありますが、この基本理念は今でも我が国の不変の理念だと思っております。

 しかし、その後、世界は冷戦構造が崩壊しましたが、世界各地で民族紛争、宗教的対立、テロ活動等、内戦や紛争が頻発している状態です。我が国は、専守防衛、文民統制だから世界で何が起こっても我関せずではいられない。世界が平和でなければ日本の平和を維持することはできないという考え方から、自衛隊は、PKOの協力など、世界の平和を維持するための活動に参加するようになりました。

 私は、常々、安全保障政策は独立国家存立の基本だという信念を堅持していますので、防衛省設置法が、我が国の平和と国家国民の安全を維持するために、その時代に合わせて運用できるように改正することは当然のことだと思っているところでございます。

 そこで、森本参考人にお尋ねいたします。

 今般の海賊対処や弾道ミサイル対処の例から見ても、防衛省・自衛隊には、多様な事態に対し、迅速かつ的確に対処できるような組織と意思決定システムの構築が求められていると考えます。今般の防衛省設置法等の改正案では、防衛大臣の補佐機能の強化として、防衛会議や防衛大臣補佐官の新設などの組織改革を行うこととしていますが、参考人は、防衛省・自衛隊の組織はどのようにあるべきと考えておりますか。

森本参考人 防衛省というのは二つの側面を持っていることは、先生御承知のとおりであります。

 一つは、国家行政組織として、自衛隊という実力組織を国内において指揮監督するという機能と、もう一つは、実力組織である自衛隊を、まさにその持っておる機能を最大限に発揮できるように運用するという責任であります。

 五十五年にわたる、当時防衛庁、現在防衛省、そして自衛隊の運用のあり方というのは、どちらかというと、実力組織としての自衛隊がその持っておる機能を最大限に発揮するようにということより、むしろ、国家行政組織として間違いなく国家の機能を発揮できるように、どのようにして自衛隊を統括管理すればよいのかということをメーンにして、主たる目的にして今まで国家行政組織としての機能が動いていたと思います。

 この二つの側面は、一見、合理的に運営できそうですが、実は、性格としては非常に矛盾をした性格を持っていて、状況に的確に迅速に判断するためには、権限をそれぞれの指揮官に委譲し、例えばアメリカでいえば、軍事作戦については現地の指揮官に任せ、行政組織たる国防総省は、アメリカの議会あるいはアメリカ政府全体の調整をやるという役割を確実に分担して、機能を発揮しているのではないかと思います。もともと、このようなことになったのは、ベトナム戦争のときに、余りに現地司令官の指揮監督に国防省が手を入れたために、指揮系統というものが非常に複雑になって難しい過ちをした過去の経験に倣って、そのような制度になったのではないかと思います。

 このような教訓を我が防衛省及び自衛隊の中に取り入れた場合、現在の防衛省の組織そのものを、会議を連ねて意思決定するということよりも、むしろ、いかにして統幕長以下の各級指揮官がその与えられた権限の中で決断ができるように、部隊が迅速に動けるようにするか、ここを防衛省・自衛隊としてどのようにして調和をしていくかということが、自衛隊の、このような海賊あるいはミサイルといった、時間がなく、かつ、状況が変化をする事態に迅速に対応できる組織の運営のあり方なのではないか、かように考えている次第でございます。

仲村委員 防衛省改革会議の報告書では、文官と自衛官、そして陸海空自衛官を組織的に混在させるなど、緊密に協働する体制をつくるべきと提言していますが、森本参考人は、文官と自衛官の関係はどのようにあるべきと考えておりますか。

森本参考人 文官と自衛官は、それぞれプロフェッショナリティーが違う、組織と育てられ方、持っておる権能が全く性格を異にするわけですが、それをどのように調和をして全体として機能するかは、どこの国の国防省でも大きな悩みであります。

 それぞれの国によって、軍隊のでき方の経緯に基づいて組織が構成されていますので、一概に一般的なルールを申し述べることはできませんが、仮にアメリカを例にとれば、国防総省の文官組織の中には軍人が少数入り、そして各陸海空軍参謀本部の中にも文官が少数入り、双方がそれぞれの役割を十分に発揮して、文官組織は文官組織の中に自衛官のプロフェッショナリティーの知識と権能を取り入れる、あるいは各幕の中にも文官がしかるべき配置で入ってそれぞれアドバイスをするという、この全体の組織を、防衛省として、文官と自衛官がお互いに機能を十分に発揮できるように組織をして、一つの組織が、防衛省という行政組織としての役所と自衛隊という実力組織と、二つを統合して指揮監督ができるようになるのではないかと思います。

 これは、現在は防衛省改革の中で鋭意検討されているところでありますけれども、私は原則は、あくまで、文官と自衛官が持っている本来機能が違い、本来機能が阻害されないように組織と権能がつくられる必要がある、このように考えている次第でございます。

仲村委員 近年、防衛省・自衛隊において不祥事や事故が頻発していますが、この根本原因として、年々、自衛隊の任務が増加している一方、自衛隊の人員は減少傾向にあり、隊員が業務に忙殺され、士気や規律を維持することが難しくなっているということがあると思いますが、この点についてどのようにお考えですか。

森本参考人 冒頭申し上げたように、防衛省及び自衛隊が、近年、あってはならない各種のいろいろな事故だとか事案を起こしてきたということは非常に残念でありますけれども、この本来の原因はどこにあるのかということは、改革会議で鋭意分析されたわけです。

 私は、その分析の結果は確かに正しい面を指摘していると考えますが、最も重要なことは、やはり、国家の防衛を担っている自衛隊が、日本の国内ではいわば行政組織として扱われ、例えば、法に触れた場合には司法官憲に捜査をされ、軍法会議もなく、裁判所あるいは海上保安庁などで捜査をして裁かれるという実態を考えた場合、隊員がみずから誇りを持ってその任務を完遂するというためには、やはり、実力組織としての自衛隊が、本来、軍隊として独立をした機能を発揮できるような組織として扱われ、そのような法体系になっていること。これは、理想の姿は、憲法を改正して国の軍隊にして、名称も、例えば一等陸尉などと言わずに、我が国の、日本国の国軍の陸軍大尉というふうにきちっと呼称できるような状態になること、それが、よい人材が集まり、部隊の士気、規律が今後維持される一つの基礎なのではないかと思います。

 組織をさわって事故がなくなるというふうには思いません。機構を変更したら次の月から事故がなくなってしまうなどということは少し考えにくいことです。したがって、中にいる人間がどのように感じて毎日の仕事に従事しているかということに立脚して現在の自衛隊のありようを考えた場合に、隊員が、みずから国の任務を背負ってその任務を完遂できるような誇りのある状態にしてやること、これが最も重要な手段なのではないか、かように考える次第でございます。

仲村委員 次に、田中参考人にお尋ねいたします。

 田中教授は、防衛省改革会議のメンバーとして報告書の取りまとめに当たられましたが、防衛省改革の必要性について、防衛省改革会議ではどのような議論がなされたのか、また、参考人御自身はどのように認識されておられるのか、これがまず一点。

 二点目は、このたびの法案では、防衛省改革会議報告書において提言されている防衛会議の新設や防衛大臣補佐官の新設、防衛参事官制度の廃止等が盛り込まれておりますが、防衛省の組織はどのようにあるべきと考えておられますか。お尋ねいたします。

今津委員長 田中参考人、時間の関係で端的にお願いいたします。

田中参考人 防衛省改革会議でどのような審議が行われたかということは、全体のメンバーを代表するわけにはいきませんが、報告書に盛られている議論はすべて行われているわけであります。かなり大部な報告書でございますが、森本参考人がおっしゃられたように、事故ゼロというようなことはなかなかどの組織でも難しいにしても、それからまた、国家の安全保障を担う実力組織としてある種の特別の環境があるにしても、ほかの組織でも業務予算が減ったり大変になっている、それと比較しても近年少し不祥事が頻発し過ぎているという認識は、私どもも持ってきたことであります。

 そこで、提案させていただいたことがこの防衛省改革会議の報告に盛られておりますし、組織を変えればすべてが変わるなぞということは私どもは思っておりません。先ほど申し上げましたように、組織文化、気風、これまでの慣行、隊員の誇り、そういうものすべてが影響してきますが、やはり組織を変えることによってそのようなものを変えるきっかけになるということもある。

 そこで提案申し上げたのは、私どもは形骸化しているというふうに判断したわけですが、防衛参事官制度はやめてしまった方がよい、それから、文官、自衛官ともに参加するような防衛会議をつくって実質的な審議をしていただく、こういうことが大事だというふうに思っておりまして、ですから、今回の法案にこれが盛られたことは、私は、防衛省改革会議のメンバーをやっておった人間としてみると、大変ありがたいと思っています。

仲村委員 続きまして、田中参考人にお尋ねをいたしたいと思います。

今津委員長 仲村君、時間になっておりますので。

仲村委員 はい。

 防衛省改革を進めていく上で防衛省に求められるものは何か。また、防衛省改革会議報告書では、国全体として考えるべき課題についても提言されておりますが、政府や国会に求められることは何であるのか。お尋ねをいたしたいと思います。

田中参考人 防衛省に私どもあるいは私が求めたいことは、やはり国家の存亡を担う組織として、できるだけ早く改革を進めていただきたいということであります。

 それから、政府全体ということでありますと、防衛政策、安全保障政策というのは必ずしも軍事実力組織のみが行うわけではない、政府全体として行う面が非常に多いわけでありますから、やはり、内閣、官邸としての整合性のとれた統一的な戦略を実行する形をぜひともとっていただきたい。

 それから、国会におかれましては、やはり安全保障の問題というのは国の存立にかかわる問題でありますから、できれば、非常に大きなコンセンサスのもとで安全保障政策を政府が実現できるような議論を深めていっていただきたいというふうに思っております。

仲村委員 どうもありがとうございました。

 終わります。

今津委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 民主党の津村啓介と申します。

 本日は、日本を代表する安全保障の専門家でいらっしゃいます田中先生、森本先生にこのような質問の機会をいただきまして、大変光栄に思っており、また興奮もしております。どうぞよろしくお願いいたします。

 最初に田中先生にお伺いしたいと思いますが、先生は、防衛省改革会議のメンバーのお一人として、報告書の策定、提言の取りまとめに当たられたわけですけれども、防衛省改革会議という名称ですから、どうしても防衛省という枠の中での議論が中心になったと思うんですが、やはり、防衛政策を考える上では、官邸であるとか外務省であるとか、組織としてはより広い問題意識というものも、当然先生やほかのメンバーの皆さんはお持ちだったと思うんですね。

 ただ、結論の中には当然、防衛省改革会議の結論ですから、それ以外の話は余り書かれなかったんじゃないかな、そういう気がするんですけれども、例えば日本版NSCの議論というのも、近年与野党ともに熱心に議論をしたということがありました。この日本版NSCについてどういうお考えをお持ちかということも含めて、それからもう一つは、どうしても日本の防衛政策は、我が国の置かれた歴史的な特殊性といいますか、そういうものが、どの国もそうでしょうけれども歴史的な経緯に縛られる面がありますので、他国と比べてどういう特徴を持っているのかということに目が行かずに、ついつい日本の国内での議論というものが中心になるのかなと思うんですが、海外と比べて日本の防衛省あるいは防衛政策は、どういう特徴をプラスマイナス含めて持っているのか。先生の御見解をお聞きしたいと思います。

田中参考人 どうもありがとうございました。

 先生おっしゃるとおり、安全保障政策というのは本来極めて総合的なものでございまして、その最終的なところには軍事実力組織が存在するというのはどこの国でも通例であると思いますけれども、安全保障を保つという活動自体は、国が全力を挙げて、政府組織全体を使って行っていくものだというふうに私は常々思っております。

 ただ、やはり国家組織というものがそれぞれの職掌に分かれて行われているということからすると、それぞれの職掌を十分に効果的にするということになってくる。この場合、私は防衛省改革会議に参加させていただきましたけれども、やはり総理がおつくりになる会議でもそれなりの任務というものがございますので、その任務の範囲内で書く。防衛省改革会議において政府全般についてここを改革せよというのは、やはり任務を外れていることだと思いますので、防衛省改革会議自体は主に防衛省の改革について述べております。

 ただ、それでも、官邸においてより有効な司令塔機能を果たすための措置は幾つか提案したところであります。その一つが、先生おっしゃられましたような、いわゆる日本版NSCに関係する議論であります。

 このあたりはなかなか難しいことですが、内閣には安全保障会議というものが現在ございます。この安全保障会議が、見方によるとやや形骸化しているんじゃないかという議論がございまして、これをさらに実質化するにはどうしたらいいかというところの議論は防衛省改革会議でもしたというふうに私は理解しております。それから、別途、国会でも、あるいは前の政権等でも日本版NSCについての議論はなされているわけです。この辺の制度設計はなかなか難しいと私は思います。

 私の私見では、今度の防衛会議についてもそうなんですけれども、フォーマルにルールをつくった仕組み、組織をつくるということも非常に大事なんですけれども、最終的に大事なのは、最高意思決定者がチームとして相互の意思疎通がとてもうまくいって一体として動くということであります。

 安全保障政策に関して見れば、やはり総理、防衛大臣、外務大臣、官房長官、少なくともこの四人が、非常に緊密な意思疎通のもとで、さまざまな長期戦略から中期戦略から危機管理に至るまで行うような形ができれば、それを担保する法制とかその他は、実は二義的だと思います。

 ですから、法律がなくても、例えば四大臣会合というのを頻繁に開いて、この四大臣が適時適切に国の将来について意見調整を行いリーダーシップを発揮する仕組みをつくっていけば、それが私は日本版のNSCなのじゃないかと思っています。もちろん、これは四人だけでできるわけではありませんから、これをうまく支える事務スタッフの体制というのをつくっていくということは非常に重要だというふうに思っています。

 それから、日本の安全保障政策にどういう特徴があるかといいますと、これはなかなか一言では言えませんけれども、先ほど森本参考人がおっしゃられたような、安全保障に関する組織を国家行政組織として扱う傾向が非常に強い。これは、冷戦の間、実際に自衛隊を防衛のために使わなくてよかったという幸運に恵まれてきたことがあるわけであります。ですが、先ほど私が申し上げましたように、軍事実力組織を活用して、現下の非常に複雑な安全保障環境の中で生かしていくということになりますと、国家行政組織としてのあり方に加えて、やはり安全保障を担保する組織としての柔軟性を維持し、かつ実効的にさせるためにどういうふうにしたらいいかという点の議論がもう少しふえてもらえるといいかなというふうに思っている次第です。

 以上です。

津村委員 ありがとうございました。今の議論だけでもかなり深めたいところなんですけれども、時間の制約がありますので。

 今回の防衛省設置法改正の一つの大きな論点であります参事官制度の見直しに関連して、これは先生お二人ともにお伺いしたいんですけれども、文民統制ということが言われて、ルールとしてどういう文民統制の設計図をかくかということはもちろん一つ重要なんですが、もう一方で私が重要だと思うのは、潜在的な人材といいますか、例えばアメリカで政権交代が起きれば、ポリティカルアポインティーで文民の部分がまさに入れかわるわけですよ。それは、日本でいえば国会議員ももちろん文民の重要な一部ではありますけれども、やはり在野にというか民間に防衛政策というものを実務面でも担えるような人材というのが果たして今日本にどれだけいるんだろうか。両先生のような専門家の方というのは実は大変少ないのではないかというところが、日本の安全保障の議論を非常に矮小化してしまいかねないことを心配しております。

 これから政治の方がどう動くかわかりませんけれども、政権交代あるいは二大政党制ということが仮に定着していくとすれば、日本でもそういった政権交代による文民の入れかわり、そういうことが今後予想されるわけで、そういうときに、人材がいないぞということで、官僚のOBばかり、防衛省のOBばかりに頼るのかということでは、ちょっと心もとないなという思いがあるんですけれども、そういった人材をこれからふやしていくには、実際そのフィールドにいらっしゃる両先生から見て、これからどういう工夫をしていけばよいとお考えでしょうか。

田中参考人 人材をふやすということは、まさに先生おっしゃるとおりであります。

 私は、安全保障面に関しても、在野を含めて日本には潜在的にかなり人材はいると思います。ただ、潜在的にと言った意味はどういうことかといいますと、研究者やジャーナリストやビジネスに携わる人間は、ある程度は防衛政策、安全保障政策について勉強することはできますし、それから国際的な外国の専門家と交流することによって比較的正確な知識を身につけることもできますが、やはり一番問題なのは実務面、防衛省の中の実態がどうなっているかというようなことです。ですから、私は、比較的若手の研究者あるいは在野のシンクタンクにいる人等が、防衛省に関して言えば、防衛省の中のことがよくわかるような人事交流等を早目に行っておくということが重要なのではないかと思っております。

 ここから後はいささか先生方から御批判を受けることを覚悟で申し上げますが、官僚OB、防衛省OB、自衛官OBはみんなだめだ、みんな天下りになってしまうんだという言い方は、今の人材を育てるという観点からするといささか不適切な面があると私は思っております。つまり、在野に研究者がいても、先ほど申し上げましたように、実務的なことがわかるためには人事交流をしなきゃわからないんですね。もうちょっと言うと、現に官僚をやっている人、防衛省をやっている人が研究者になるということもあって、防衛省をやめた人が研究者になって、その人がもう一回なったらこれは官僚OBなのか、そういう問題がある。

 私は、望ましい姿は、もちろん、能力のない人間があるポストに前いたからといって何かのポストにつくというのは、これはあってはならない話でありますが、能力のある人間が、官界、学界、実業界、そういうところを行ったり来たりするというのは望ましいことであって、そういう雰囲気をつくっていかないと、防衛大臣補佐官をつくるといっても、なかなか人が見つからないということになると私は思います。

森本参考人 田中先生は、まさに御指摘になったことが正論なので、重複を避けて申し上げると、官僚及び自衛隊のOBを補佐官にしないということなので、もしそういうことであれば非常にほっとして、私がなることは絶対にないなと思って、裁判員制度よりも確率が低いと思って安心しているわけですけれども。

 田中先生がおっしゃったように、確かに、安全保障を知悉している人材の底というのは、それほど諸外国に比べて多くはないですけれども、でも、結構リソースはあります。

 ただし、防衛を知るためには何が必要かというと、やはり防衛のハードとそれから多少の部隊運用というものがわからないと、空理空論の議論をする人に大臣の補佐をさせるということはかえって危ないわけで、そのような人材をつくるためには、どこかシンクタンクで一定期間防衛について勉強をしたり実務を経験するプロセスがあることか、あるいは、例えば防研の一般課程にもう少し幅広くいろいろな分野の人が入れるような組織にして、一年なり一年半なり勉強した人がこの人材のいわばベースをつくるということでないと、単に本を読んで知識のある人が防衛を語るというのは、実は実力組織である自衛隊というものの本来の責任者である大臣を補佐するのにはやや危なっかしい面があるので。

 私は、そういう意味では、防衛補佐官の人材を探すというのはさほど容易なことではない、一回、二回は探せても、一年以内にくるくるとおかわりになるかもしれない防衛大臣の補佐官をその都度探してくるというのは、現在の日本の状態ではなかなか難しく、長期にわたって人材を育成するシステムを別途つくらないといけないのではないか、かように考えています。

津村委員 簡潔に、最後の質問にいたします。

 今のお話、大変示唆に富むお話で、個人的なことを言いますと、実は私も日本銀行のOBでして、昨年、日銀総裁の人事の件では似たような悩みといいますか経験をしたので、大変共感できるところはあるんです。

 今後、そういう自衛隊OB、防衛省OBの方々の話を考えていく上で、ちょっと話はかなり矮小化というか一つの話にしますけれども、ついつい脳裏をよぎるのは、田母神さんの件があると思うんですよね。これは、この件について盛んに発信をされていました森本先生の方にお伺いしようと思いますけれども、田母神さんは結果から見れば、あの種の、問題と言っていいのかわかりませんけれども、一騒動あった後、今やたくさん本を書かれたり、本当かどうか知りませんけれども国政選挙を考えていらっしゃるとかいろいろなうわさが飛ぶほど、引き続き注目人物なわけです。しかし、やはりあのおやめになり方というのはあれでよかったのかなということは、これからの人材登用を考える上で少し整理しておきたいなという思いでお聞きするんです。

 森本先生は、あの田母神さんの処分のあり方、そしてそのもととなった歴史認識そのほかの問題について、どういうふうに総括してごらんになっていますか。

森本参考人 お尋ねの点は二点に集約されているので、最初に歴史認識について申し上げれば、私は同氏と歴史認識を共有しません。戦後の我が国のありようは、いろいろな議論があるにせよ、極東裁判そのものを日本国として受け入れて戦後が始まったのであって、あのような考え方に立って日本の歴史を論じることが日本の国家の将来や自衛隊の将来のあり方に寄与するというふうに私は考えてはいません。

 第二の点は、しかしながら、やめ方そのものについては、やはりもう少し、幕僚長なるところまで行った人でありますので、大臣が本人をあのような形で処理される際、じっくりとお互いに意見を述べ合い、防衛省の職員の時代にどのような歴史認識について省内でいろいろな議論をすべきだったのか、あるいはすべきでなかったのかということについては、ひざを合わせてゆっくりと話し、双方が納得してその後の身の振り方を決めるということがあってもよかったのではないかと思います。

 これは、今急に後知恵でそう思っているのではなく、この事態が起きたときから私はそのように書いてもいますし言ってもいるので、そのことについて私の考え方は変わりません。

 以上です。

津村委員 ありがとうございました。

今津委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、田中参考人、そして森本参考人、お忙しい中貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。

 まず、田中参考人に伺いたいと思うんですが、今議論になっておりました防衛省改革のための組織改革ということでいいますと、自衛隊の情報流出だとか、あるいは「あたご」衝突事故から、防衛事務次官の供応、収賄の問題などを受けて、隊員の意識と組織文化の改革及び現代的文民統制のための組織改革の必要性が求められて実施されるというふうにされております。

 しかし、過去の防衛庁、防衛施設庁あるいは防衛省ということでもさまざまな問題があって、私もいろいろな機会に国会でも取り上げてきたんですけれども、特に入札とかをめぐる問題、談合事件とかあるいは供応、収賄については、防衛省、あるいは防衛庁、施設庁は、事が起こるたびに組織改編ということで行ってきたんですが、結局、対症療法的なものに終わって、根本的な解決になっていないんじゃないかという意を非常に強くしているんです。

 そこで、田中参考人は、改革会議の一員としても議論にずっと携わって参加されてこられたわけですが、この不祥事にかかわって、参考人御自身が政治による監視という問題や国民への説明責任ということについて発言されたこともあると思います。

 今回の組織改革、機構改革によって、どんな組織でもゼロは無理という話を言ってしまうとなかなか難しいんですが、談合問題とか供応とか収賄の問題が今後は起きることが難しくなる、あるいは起きないようになるというふうにお考えなのか、その辺について認識を伺いたいんですが、いかがでしょうか。

田中参考人 今笠井先生おっしゃったように、不祥事もいろいろあるわけですが、その中でも、入札とか調達に関連する問題、やはり、改革会議をやっていまして、国民に対する説明責任というものがちゃんと確保できるような形というのを何とかつくってもらいたいというのが私どもが防衛省に期待するところでございまして、軍事実力組織ですから、すべてが他の省庁と同じというわけにはいかないと私は思っております。それから、防衛に必要な装備品というものの生産のあり方その他も、すべてが他の省庁と同じという形にもいかないと思っております。

 ただ、ほかの省庁その他と比較的共通する問題もありますから、その点については、調達方法等、より一層改善していただきたいというのが報告書で私が期待したところであります。

 ただ、個別の問題にも増して私が最大に遺憾だと思うのは、組織の末端で不祥事が起こるのではなく、組織のトップで起こるということでございます。その面におきましては、重要ないろいろな装備調達について、防衛大臣の監督のもと、チェックス・アンド・バランシズが中で働くような組織をぜひ確立してほしい。ですから、防衛会議というものにも、重要なものについてそういうことをやってほしい。

 それから、防衛省改革会議では、やはり調達に関連するようなものの会議、関連会議はすべて議事録をとって、一定期間の後には国民の目に触れる、わかるというような形をつくってほしいというふうに言っているわけでございます。

 これで本当になくなるのかと言われると、私に保証せよと言われても、それは保証できませんが、私どもとしてみると、そのような説明責任を図る仕組みを着実につくっていっていただければ、将来的には、少なくともこの間あったような話はなくなるんだと私は期待しております。

笠井委員 森本参考人に伺いますが、田母神前航空幕僚長の問題について、先ほど田中参考人からも、傍若無人をとめられずというお話が冒頭にございました。先ほどの質疑の中でも、森本参考人も歴史認識は共有しないと述べられたわけですが、その上で、なぜああいう問題が自衛隊の中から起こってくるというふうに、歴史認識の問題をめぐってですが、お考えなのか。

 それから、ああいう発言や問題、論文にかかわって、今回の防衛省改革のための組織改革について、そういう問題にどう対応する、あるいはそれに対応できるようなものになっているかどうか、改革とのかかわりで、ああいう問題についてどういうふうにお考えか伺いたいんですが、いかがでしょうか。

森本参考人 どうしてこのような問題が起こるのかというのは、大変難しいんですが、私が中にいて過ごした自分の体験だけを思い起こして言うと、そもそも、どこの国でもそうですが、特に日本はそうですが、役人とか軍人の歴史観というのは、行政官や軍人は歴史家ではありませんから、多くの思想家あるいは論客の感化、影響を受けたものであることが多いわけであります。

 したがって、例えば軍人が歴史家であれば、それは戦史を述べることはできますけれども、みずからが歴史家として歴史認識を確立するなどということはなく、いわば他人の受け売りをやって、それを自分のものとすると、徐々に自分の思想がそのように感化され、それを隊員に説く、そういう思想に固まっていくという傾向が、人間組織であるわけですから、組織そのものの物の考え方や思想や哲学に非常に影響を与えるということはあり得るのではないかと思うんです。

 他方において、そのことを現在の防衛省改革の中でどのようにとらえているか、私はつまびらかにしません。できれば、日本の自衛隊・防衛省の中の構成員がバランスのとれた国際認識、国際常識というものを幅広くきちっと共有しているという教育や訓練のあり方がきちっと確保される、それを客観的にどのように確保したらよいかということは大きな問題ですが、それがなければこの種の問題が起こる。起こるんですが、それは外に出ない限り何ら、つまり外の人にはわからずにそのまま事態が過ぎるということがあるわけです。

 私も若いときは旧帝国陸海軍の生き残りの方の思想を受けて、ずっと過ごしました。それが正しかったかどうかということを、後に自分で勉強して、はたと考えることがあります。そのときは確信をしていたにもかかわらず、何十年かたって、例えば外務省に行って外交官としての歴史教育を受けてみると非常に違和感があるという。

 その二つの、とても違和感のある組織を経験したので初めてわかるのかもしれませんが、ある一つの組織の中で、凝り固まって思想が培養されるということが組織全体に与える影響というのを我々はどう考えるかということを考えた場合に、やはり、ある実力組織の持っておる思想だとか信条とか哲学というのはバランスのとれたものとして教育されないといけない、それが防衛省改革の中で生かされていないといけない、このように考えている次第です。

笠井委員 最後の質問ということで、お二人に伺いたいと思うんです。

 私も振り返ってみますと、お二人の参考人に最初に国会で質問をさせていただいたのが一九九七年で、ちょうど今ごろだったんですけれども、当時、参議院の国際問題調査会で機会がありまして、それぞれに伺ったんですが、あのときは、二十一世紀を前にしてということで、アジア太平洋の安全保障と日米同盟、それからガイドラインの見直しということで、大いに議論があったときでありました。

 あれから十二年たって、世界はある意味で大きく変化していると思うんですが、きょうのテーマにもかかわって、大前提の問題としてお二人に伺っておきたいと思っているのが二点あります。

 一つは、アメリカのオバマ政権が、欧州や米州でいいますと、米州各国との関係では、この間も目に見える変化ということを我々も目の当たりにする一方で、日本との関係でいいますと、従来を踏襲するというようにも言われておりますけれども、オバマ政権のアジア太平洋政策について、今後どうなっていくというふうに見ておられるか。これは、お話しいただくとそれぞれ一時間とかになっちゃうと思うんですが、端的に一言ずつということが一点。

 もう一つは、オバマ大統領が四月五日にプラハで演説をして、米国が核兵器のない世界の実現を追求することを宣言して、核兵器を使用したことのある唯一の核兵器保有国として米国は行動する道義的責任があるということで世界に協力を呼びかけました。私も大いに歓迎しているんですけれども、今こそ、唯一の被爆国としての日本の役割、イニシアチブを核兵器廃絶という点では発揮すべきだと思いますが、今回のオバマ発言について、両参考人の受けとめというか御感想を伺えればと。

 この二点、それぞれ端的にお願いします。

田中参考人 オバマ政権のアジア政策でありますけれども、私は、オバマ政権が今後も日本との関係を非常に重視していくものだというふうに思っております。

 ただ、日本との関係を重視するとともに、やはりこれは、現実、今の金融危機からの克服、それからその後の世界、アジアの展望を考える場合、アメリカが中国との関係を大変重視するということもまた間違いないことだと思います。

 しかしながら、今のオバマ政権の中の重要人物は、やはり日本人は我々の友達であるというふうに思っている。ですから、この友達である日本とともに、非常に大事なパートナーである中国との関係をどう築いていくかということがオバマ政権の課題だと私は思っておりますし、日本もまた、アメリカは重要な友人であるから、重要な友人であるアメリカとともに重要なパートナーである中国との関係を築いていく、こういう形でなければいけないと思います。

 オバマさんがプラハで核兵器のない世界を言ったというのは、やはり私は、この大統領の非常なある種の特徴を示していると思います。彼は、具体的な策になると比較的慎重です。実現できそうもないようなことを、具体的に短期のことでこれをやるあれをやるという安受け合いをしない人です。それから、国民に負担も求めるというタイプの人ですが、やはりその背景に非常に長期的なビジョンを語るというところがあって、まさにこの核兵器のない世界というのは、今のアメリカが長期のビジョンを掲げるといったときに一つのあり方だと思っております。

 私自身、直ちに核兵器のない世界が実現するとは、国際政治の分析をしている者からすれば思いませんが、ただ、やはり、アメリカが世界をリードしていくときに、ある種の目標を掲げてやっていくことに日本が協力していくということは当然でしょうし、日本にとって核兵器が削減されるということが望ましいことは、これは間違いないことだと思っています。

森本参考人 オバマ政権のアジア政策はまだ全部出そろっていないと思いますが、一般論としては、やはりアジア政策を進めるときに、日本のような同盟国との関係は依然として重視するという方針に変わりはないのですが、同時に、中国、ロシアとの協調を進めること、それから、まさにクリントン国務長官がインドネシアを日本の後に訪問したように、ASEANを中心とする多国間の協力を重視すること、これをどのように組み合わせて今後アジア政策を進めるかということに我々は注目しています。まだアクターが全部そろっていないので、東アジア担当の国務次官補も指名もされていないという状態でもありますので、アジア政策全体を語るのは少し早いのかなというふうに考えます。

 他方、プラハ演説については、私は非常に深い印象を持っています。それは、オバマという人は、余り特定のイデオロギーだとか政治哲学、信条を持たないのですが、この軍縮という分野については既に大統領候補のときから常にこう言っていましたし、この核軍縮の演説はまさに彼の持っている非常に強い核心的な政治信条に近いものなのではないかと思います。

 田中先生がおっしゃるように、すぐにこれが実現できると思いませんが、少なくとも、米ロ関係をリセットして、米ロの軍縮交渉がことし七月から進めば、これを軸に成果があらわれれば、その他の核兵器国をこの交渉に招き入れてグローバルな核軍縮が進むというのであれば、まさにそれは日本がずっと冷戦期を通じてやってきた核軍縮の一つの方向と一致するものであり、日本としては大変歓迎すべき提案でありイニシアチブと考えます。

 他方、安全保障をやっている者は、このように思い切った核軍縮というものが本当に地域の安定と同盟国の安全を確保することになるのかということについて一抹の不安があり、特に、同盟国に対する拡大抑止というものがこういった思い切った核軍縮によってどこまで確保されるのかということについては、まだこれから相当率直に日米間で話し合っていかないといけないのではないか、かように考えております。

 以上でございます。

笠井委員 ありがとうございました。

 終わります。

今津委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 本日は、両参考人に貴重な御意見を賜り、ありがとうございました。

 最初に、防衛省改革会議のメンバーでもございました田中参考人に尋ねます。

 防衛省改革会議の報告書では、「形骸化している防衛参事官制度を廃止し、防衛大臣補佐官を設置すべきである。」と指摘をしております。この報告書を受けて、防衛省は昨年八月に、防衛省における組織改革に関する基本方針の中で、形骸化している防衛参事官制度を廃止するとの組織改革を決めております。

 しかし、報告書や基本方針では、なぜ防衛参事官制度が形骸化をしたのかという問題点についてはさほど詳細に触れておりません。田中参考人は、防衛参事官制度が形骸化した理由をどのようにお考えでしょうか。

 関連して、今度の法改正で防衛大臣補佐官を政治任用するとか非常勤勤務にするとかということにもお触れいただければありがたいなと思っています。

田中参考人 確かに、報告書の中の分量ということで考えますと、防衛参事官制度が形骸化しているということについての理由を詳細にわたって書いていないという部分の御指摘はそのとおりかと思います。

 議論はしたわけですけれども、報告書はある程度簡潔に書くということからそういうふうになったと私は理解しておりますが、理由の一つは、これは先ほど森本参考人も少しおっしゃったかもしれませんけれども、本来、防衛参事官というのは、防衛大臣を防衛政策全般にわたって補佐するという、アドバイスする機能があるという形で設置されたわけなんですが、これがすべて、特定の任務を持つ局長というようなもの、それからそうでない三人についても任務が割り当てられてしまって、職務分担がはっきりし過ぎてしまった、そればかりやっている。そうすると、結局、本来、防衛参事官という形で国の安全保障政策について、省昇格以前は長官ですけれども、長官をサポートするということがほとんどなく、他の省庁の局長や官房長と同じになってしまう、そういうことだと思います。ですから、それが一番大きな形骸化した理由ではないかというふうに思っています。

 それから、これに関連して、補佐官を政治任用したり非常勤で政治任用するということが今回の設置法改正に盛り込まれているわけですけれども、これについては、私は、報告書でもそういうふうに申し上げておりますが、方向性として見るとこれで正しいというふうに思っています。

 ただ、先ほども森本参考人がおっしゃられましたように、直ちに適切な人材をこのポストに切れ目なく供給することができるかどうかというのは、その人材源を含めて今後考えていかなきゃいけない問題だと思います。先ほど申し上げたことと関係しますけれども、やはり日本における安全保障関係の人材の他分野での移動可能性ということを考えていかないと、なかなかこのポストを十全に活用するというのは難しいと思います。

 ただ、これもまた私見でありますけれども、なぜ我々が防衛大臣の補佐官が必要かというふうに考えたかと申しますと、防衛大臣に任命された方が防衛省に行っても、直ちに、信頼に足る、すぐ相談できる人が周りにいない、ひとりぼっちだというような雰囲気が時に生ずるというんですね。事務次官、統合幕僚長、それから局長その他は、ずっと防衛省の中にいる人で、防衛省のことを何でもよく知っている。そこに、いかに有能であっても、国会議員で一般的な防衛政策、安全保障政策を持った人が一人で行って、その何でも知っている人たちに取り囲まれたときに、どういうイニシアチブでこれをリードしていくかということになると、なかなか難しい。やはり信頼できる一人ないし二人なり三人の人と相談しつつやっていきたいということじゃないかと私は思っているんですね。

 その相談できる人材に、先ほど森本参考人が言われたように、本当にバランスのとれた、しかも実務に詳しい人がどれだけいるかというところが難問ですけれども、私は、個人的に言えば、仮に防衛省の実務にいささか疎くても、バランスがとれて、特に、大臣になられた方が信用できる人、信頼できる人、ですから、大臣の見識のもとに有能な人材を選べれば、それでもかなり機能するんじゃないかと思っております。

    〔委員長退席、江渡委員長代理着席〕

照屋委員 田中参考人に尋ねますが、防衛省改革会議では、自衛隊の不祥事案として、給油量取り違え事案、情報流出事案、イージス情報流出事案、護衛艦「あたご」衝突事案、守屋前事務次官の背信行為などが議論されております。

 一方で、護衛艦「さわぎり」、護衛艦「たちかぜ」、航空自衛隊浜松基地において、上官のいじめによって自殺に追い込まれた自衛官の事件など、現に国家賠償請求が起こされた事案、「さわぎり」については国が敗訴しておりますが、そのような事案については全く議論がなされておりません。

 このような防衛省改革会議の議論のあり方についてどのように思われますか。また、自衛官の自殺が多い原因を先生はどこにあるとお考えでしょうか。

田中参考人 今、照屋先生おっしゃいましたように、幾つかの問題についてはこの報告書では触れておりません。

 これは、そのような問題が重要でないというわけではないのでありますが、やはり審議の時間的制約、早く改革法案を出さなければならないということから、私どもが重要であるというふうに考えた不祥事、事案をまず取り上げて、その上で建設的な提案ができればということであります。

 ですから、特に今先生がおっしゃったような事案を意図的に無視するとか、そういうような形で行ったわけではございません。

 それから、自衛隊において自殺が多い理由というのは、私は個人的には深く研究しておりませんので、まことに申しわけありませんけれども、直ちに見解を申し述べることはできないということで、御容赦いただければと思います。

    〔江渡委員長代理退席、委員長着席〕

照屋委員 森本参考人にお尋ねをいたします。

 参考人の二〇〇八年四月三十日付の産経新聞「正論」を読みました。それによると、防衛省や自衛隊に関する事件、事故が相次ぐ中、森本参考人は、防衛省の改革論議と関連して次のように述べておられます。「これらの事件の原因と組織・機構は直接の関係はない。」事件の多くは「指揮官の指揮や隊員の規律、士気にある。」

 森本参考人は、自衛官の規律の保持あるいは士気の高揚の問題と自衛隊の組織機構改革との関係についてどのようにお考えでしょうか。そして、規律、士気との関係で、具体的な環境整備の方策について御意見をお聞かせください。

森本参考人 私が「正論」の中で、特にこの部分で強調しようとしたのは、すべての官庁、すべての組織がそうですが、何かしらの問題があり、あってはならないミスマネジメント、事故があったときに、改革と称して組織機構をさわって物事を済ますという傾向が日本の社会の中には非常に多いわけです。

 何となくそれでわかったような気になるのですが、この五十余年の間、自衛隊という組織が、冒頭申し上げたように、近年いろいろな事故が発生し、国民の信任を一部失ってきた理由は、組織が悪いからではなく、だから組織機構をさわれば次の日から事故がなくなるということではなく、組織を構成する中の人間、人間の素材、素質、人間関係、広い意味でいうとその中にある規律あるいは士気という、組織全体が持っておるいわばモメンタムといいますか、そういうものが弛緩をして、守るべき規則を守らず、守らないことを横で見ながら黙って過ごし、指揮官がそれを指摘することもなく、厳しく罰することもなく、罰したらその隊員がやめて、次の人材を育成するのに多大の時間と労力を要し、結局、与えられた人間の中で何とか目の前の任務を遂行していかないといけないという、自衛隊の持っている本質的な問題がこのような事故を招いたのであって、繰り返しになるが、組織機構を変えて事故の原因がなくなるというものではないという点を強調するために書いたものです。

 しかるに、それはどうしたらよいのかというと、それはなかなか一言で、ある日突然そこから隊員の士気や規律が立ち直るなどということはなく、非常に総合的な施策を要すると思うのですが、一番重要なことは、自衛隊という実力組織は近代装備を持っていますが、結局のところ、戦闘集団というものを構成するのは人であり、よい人が集まり、よい人とよい人の関係が、非常に強固な信頼関係と、困難な中で任務を遂行していこうといういわゆる強い意識、それが組織をつくり、強い戦闘集団となるわけであります。

 どうしたらこれができるのかということは、これは自衛隊が持っている物すごく本質的な問題であって、一人一人にその意識がなくてはならないし、教育もきちっとしないといけないし、規律もきちっと守られるように厳格な処分をしないといけないし、それから、指揮官そのものが厳しく教育がなされており、真に隊員の模範たる指揮官が各級部隊指揮官の中にいるということが求められる。

 それはしかし、日本の社会の中で与えられたパイをどうやって使うかという非常に難しい問題にみんな直面しているのではないかと思います。日本の社会の中で自衛隊だけが第一級の人間だけで二十七万を構成しているなどということは期待しがたいわけでありまして、全体として、国民が自衛隊に負託する期待と、そして持っておる組織の全体の任務意識というものが人を育て、組織を強くする、それしか言いようがないわけであります。

 ただ、できれば、冒頭申し上げたように、自衛隊という、何か軍隊でもない、行政組織でもない、警察でもない、消防でもないような、外国に一歩出ると軍人と言われながら国内では軍隊としても扱われないこの組織のありようをもう少し国としてきちっと見直し、あるべき姿にしていただくということを立法府の方々にお願いする以外に方法はない、私はかように考えている次第でございます。

照屋委員 終わります。

今津委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 両参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十分散会


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