衆議院

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第8号 平成27年4月23日(木曜日)

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平成二十七年四月二十三日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 北村 誠吾君

   理事 小野寺五典君 理事 門山 宏哲君

   理事 金子万寿夫君 理事 新藤 義孝君

   理事 武田 良太君 理事 大串 博志君

   理事 下地 幹郎君 理事 佐藤 茂樹君

      青山 周平君    今津  寛君

      江渡 聡徳君    小田原 潔君

      大隈 和英君    大西 宏幸君

      大野敬太郎君    木原 誠二君

      木原  稔君    木村 弥生君

      笹川 博義君    冨樫 博之君

      中谷 真一君    野中  厚君

      浜田 靖一君    原田 憲治君

      古田 圭一君    宮崎 政久君

      武藤 貴也君    村井 英樹君

      若宮 健嗣君    小川 淳也君

      鈴木 貴子君    玉木雄一郎君

      津村 啓介君    本村賢太郎君

      柿沢 未途君    吉村 洋文君

      伊佐 進一君    赤嶺 政賢君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   防衛大臣         中谷  元君

   内閣官房副長官      世耕 弘成君

   防衛大臣政務官      原田 憲治君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   豊田  硬君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 吉田 正一君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  黒江 哲郎君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛省人事教育局長)  真部  朗君

   参考人

   (慶應義塾大学法学部教授)            細谷 雄一君

   参考人

   (政策研究大学院大学長) 白石  隆君

   参考人

   (同志社大学政策学部教授)            武蔵 勝宏君

   参考人

   (獨協大学名誉教授)   西川 純子君

   安全保障委員会専門員   齋藤久爾之君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十三日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     古田 圭一君

  大西 宏幸君     大隈 和英君

  大野敬太郎君     木村 弥生君

  木原 誠二君     村井 英樹君

  笹川 博義君     宮崎 政久君

  原田 憲治君     若宮 健嗣君

  玉木雄一郎君     本村賢太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     大西 宏幸君

  木村 弥生君     大野敬太郎君

  古田 圭一君     小田原 潔君

  宮崎 政久君     笹川 博義君

  村井 英樹君     木原 誠二君

  若宮 健嗣君     冨樫 博之君

  本村賢太郎君     鈴木 貴子君

同日

 辞任         補欠選任

  冨樫 博之君     青山 周平君

  鈴木 貴子君     玉木雄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     原田 憲治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 防衛省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三三号)


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     ――――◇―――――

北村委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、防衛省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日、本案審査のため、御出席をいただく参考人は、慶應義塾大学法学部教授細谷雄一君、政策研究大学院大学長白石隆君、同志社大学政策学部教授武蔵勝宏君、獨協大学名誉教授西川純子君、以上四名の方々でございます。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に早朝から御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、細谷参考人、白石参考人、武蔵参考人、西川参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後に、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないということとなっておりますので、あらかじめ御承知をいただきたいと存じます。

 それでは、まず細谷参考人にお願いいたします。

細谷参考人 慶應大学の細谷と申します。

 私は、大学ではヨーロッパの外交史を教えておりますが、同時に、イギリスの外交、安全保障政策、また日本の外交、安全保障政策を専門として研究していることからも、きょうこの問題につきまして、非常に重要な問題だと思いますが、私の立場から考えを申し上げさせていただきたいと思います。

 まず冒頭に、私から申し上げたい第一点目でございますが、私は歴史家でございますので、歴史的な観点から見て、言うまでもなく、日本は、戦前に軍部が政治に介入し、そして、十分なシビリアンコントロールというものがなく、それによって大変な戦争の被害というものをもたらしたわけでございます。したがって、日本の安全保障政策、防衛政策というものが、戦前の反省の上に立って、きちんとしたシビリアンコントロールに基づき、また、平和国家としての理念というものを非常に大切にこれからも保持し続ける、このことは、恐らく多くの方々、国民が共有していらっしゃる意識であろう、認識であろうというふうに考えております。

 また同時に、平和国家として日本が防衛政策、安全保障政策を考える上で、国民の生命、国民の安全というものを何よりも第一に重視していくことも、これもまた非常に重要なことであろうと思います。

 冒頭、この二点、私の基本的な認識を申し上げまして、十五分程度のお時間をいただいて私のお話をさせていただければと思います。

 今回の防衛省設置法等の一部を改正する法律案でございますが、そもそもこの問題を考える上で最も大きな争点となっている問題の一つが、新聞報道等でも多く報じられておりますように、シビリアンコントロールというものがこれによってどう変わっていくのか、これによって日本の従来のシビリアンコントロールというものにどういう影響を及ぼすのかということでございます。

 しかしながら、さまざまな報道を見ています上では、このシビリアンコントロールというもの、これは言うまでもなく文民統制というふうに訳されているわけですが、これが、いわゆる文官統制、これは研究者の世界では広く用いられている用語であり、また認識されている言葉でございますが、このシビリアンコントロールという、いわゆる文民統制と、一方で文官統制というものが多くの場合に混乱され、これは大きく異なる、直接関係のない概念です。

 さらには、もう一つ重要な民主的統制、これは英語ではデモクラティックコントロールですが、この三つの概念というものが十分に整理されずに、また、一体何が重要で、それぞれがどういう関連性を持つかということが十分に認識されずに報道がされ、また議論がされている。

 そもそも日本にとって重要なことは何なのか。その前提となることは、言うまでもなく、文民統制であり、また民主的統制でございます。したがって、この民主的統制や文民統制というものがどれだけ実効的に機能するかということが重要であって、それに対して、文官統制というものは、今回、日本が民主主義国あるいは平和国家として考えていく上では、必ずしも優先順位が高いものではございません。

 私の専門のイギリスを例に挙げて申し上げますと、イギリスでは、文官と軍人が、ヘッドオフィスと言われている、重要な政策を決定する部局の中で協働して、緊密な連携を持って行動をとっています。したがって、イギリスの国防省の建物の中で、基本的に軍人と文官の区別はありません。

 重要なのは、それぞれが皆、基本的にはパブリックサーバント、公僕でありまして、それが政治家の指導のもとに入るということでございます。つまりは、政治家、あくまでも選挙によって、民意によって選ばれた政治家の、議員の方々がこのパブリックサーバントをコントロールし、そして、この議員を通じて、選挙を通じて国民の意向というものが防衛政策、安全保障政策、あるいは軍に、日本の場合は自衛隊でございますが、十分に意向が反映される、これこそが何より重要なことであって、もしもこの重要性というものを十分に認知せずに文官統制の議論をするとすれば、これはやはり本末転倒なことであろうと思っております。

 そもそも、文官統制というものが一体どのようにできたのか、あるいは文官優位体制ということですが、資料にもお配りしてございますとおり、これは、一九五〇年に警察予備隊の創設がなされます。これはここにいらっしゃる方々は御承知のとおりかと思いますが、この警察予備隊というのは、あくまでも警察がもとになってできている。つまりは、戦前の内務省でございます。

 戦前の日本においては、この内務省の警察官僚と軍との間、特に陸軍との間に大変激しいライバル関係がありました。そして、戦前においては、陸軍が優位であり、内務省の警察官僚というものがその下に位置するということで、警察の中には、軍に対する非常に強いアレルギー、嫌悪感、抵抗、対抗心というものがあったわけでございます。それを前提として、警察が軍の上に立つ、これがそもそも警察予備隊ができたときの大きなロジックでした。

 しかも、それ以上に重要なのが、実は大きな誤解からこの文官統制というものができたということでございます。これにつきましては、防衛研究所の中島信吾先生が「戦後日本の防衛政策」の中で書かれている、引用されているものをそのまま挙げさせていただきますと、当時、警察予備隊の警務局警備課長でありました後藤田正晴氏が次のように回想しています。

 シビリアンコントロールの行き方については林さんには不満がある、僕らにもそれは責任がある、要するにシビリアンコントロールというのは政治が軍に優先するということなんだよ、軍事は政治に従属するものであって、軍事が政治をコントロールすることだけを許さぬというのがシビリアンコントロール、ところが、これを履き違えちゃって、僕らにも責任があるんだけれども、背広を着るやつが優先するんだ、制服を着ているやつはその下だ、これがシビリアンコントロールという考えがあります、これは間違いなく。

 つまりは、後藤田氏が述べているとおり、誤解から、そもそも、戦前日本はシビリアンコントロールがなかったわけですから、したがって、この片仮名のシビリアンコントロールが何なのかということがわからなかった。そして、警察官僚は、軍に対してあくまでも警察が上位に立つことをもってシビリアンコントロールと勘違いした。

 これは後に間違いだと気づくわけですね。しかしながら、間違いと気づいても、あくまでも警察官僚が軍の上に立ち、権力を持ち、コントロールするということ、これを手放したくないということ。そして、戦前の経験から、やはり軍が大きな力を持つということが危険であるというアレルギー、抵抗感があったわけです。これは、戦前の軍の横暴に対しての警察官僚の非常に強い抵抗心があった。

 しかも、それだけではありません。当時、警察予備隊で、多くの旧軍人が復帰しておりました。戦前の旧軍人は、シビリアンコントロールというものとは無縁で政治に介入していたわけですから、したがって、そういった人たちが戦後に後の自衛隊に復帰してきたときに、あくまでも警察官僚が軍をコントロールすることが重要だという認識があった。これがそもそもの文官統制の始まりであります。

 ですから、このような、戦前から戦後に移る過渡期において、やむを得ぬ事情があった。戦後の、シビリアンコントロールというものをつくっていく上で、まずは誤解から始まった。しかしながら、同時に、いかにして、日本の戦後の平和国家の中で、国民の間にもある軍へのアレルギーというものを緩和していくか。そのときに、あくまでも背広組である警察官僚が中心となって自衛隊をコントロールするということが国民の信頼を得る上でも必要という認識がされていたわけでございます。

 ところが、戦争が終わってもう七十年たっている、そして、もう旧軍人などというものがこの中にはいない。その中で、今、このような、戦後初期につくった、誤解から始まった文官統制というものを、果たしてそこまでこだわって維持する必要がどこまであるのかということでございます。

 イギリスの例で申し上げますと、イギリスでは国防省があり、軍人と文官が緊密に連携しているわけですが、これはどちらも、あくまでも民主的な統制を得ないパブリックサーバントでございます。官僚なわけですね。したがって、官僚が防衛政策を握るということがどれだけ危険かという認識のもとに、イギリスでは、国防大臣あるいは副大臣に当たるミニスター・オブ・ステート、そしてさらにはその上に立つ総理大臣が全体の軍の機構をコントロールするということですから、あくまでも政治が軍をコントロールする。

 これは、軍というときには、イギリスの国防省であれば、軍人と文官と含めて広い概念での国防軍ということになるかもしれませんが、これをあくまでも政治や民意がコントロールするということが民主主義の社会におけるシビリアンコントロールの本質であって、文官統制という、戦後できた、独特な政治的背景からできたものにこだわることで、我々が、本当に重要なもの、それが冒頭に申し上げましたような文民統制であり、また民主的統制、この重要性を間違っても相対化し、見失ってはいけない。あくまでも国民が、そして議員の皆様方が軍の機構あるいは自衛隊というものを全体としてコントロールすることの重要性というものを指摘したいと思います。

 イギリスでは、先ほど申し上げたとおり、シビリアンコントロールの長い伝統があります。そして、軍人と文官というものが協力することによって、より迅速で実効的な政策決定ができるということでございます。

 そして、では、なぜ今、日本で改正が必要なのか。それは、今まで以上に迅速に、実効的に、国民の生命の安全を脅かす事態に対応しなければいけない。

 これは、東日本大震災もそうですが、自衛隊の運用というものを考えたときに、間違っても自衛隊は外国の土地で戦争する軍隊ではありません、自衛隊というものがあくまでも国民の生命を守るものである以上は、自衛隊の目的というのは、どんなときであっても、運用するときには国民の生命を守るためでなければならない、これは基本的な認識でございます。もちろん、自衛隊法を改正し、本来任務の中で自衛隊を国際平和協力活動に用いるという、従来にはない新しい活動というものは広がってはございますけれども、そもそものこの本来任務の重要な柱であるのは、国民の生命を守ることである。だとすれば、国民の生命を守るために、自衛隊が実効的に運用されなければいけない。

 そのときに、戦後初期にできた文官統制という形式にこだわり、迅速な運用ができずに、それによって迅速に、実効的に国民の生命を守れないとすれば、それはそもそも、平和国家として、自衛隊が何のためにあるのか。国民の生命を守るためにある、それが東日本大震災で示されたことであり、また、阪神大震災のときには十分な形で迅速には対応できなかった反省でもあるわけでございます。

 だとすれば、今、なぜこの改正が求められているのか。

 言うまでもなく、もう既に御理解いただいていらっしゃると思いますが、迅速に、そして実効的に国民の生命を守るために運用するためにはどうしたらいいか、このような問題意識から、この法案というのは、私が察するに、防衛省の中の自衛官の方々とまた文官の方々が緊密に連携して、お互いにとって迅速に行動できるための改正が何なのかということで、これが、自衛官だけでつくって、そして背広の方々の意向を無視してつくるのであれば、これは言うまでもなく制服組の方々の影響力が拡大ということになると思いますが、私の認識、想定では、あくまでもこれは自衛官の方々、制服の方々、そして内局の背広の方々が緊密に連携をとって調整し、よりよく運用できるための方策としてつくられたものであると考えております。

 したがって、そのように考えるのであれば、迅速な自衛隊の活動、運用というものを可能とし、そして、そもそも戦後初期のような、自衛隊の任務というものが極めて限られていた時代とは異なり、PKOのような国際平和協力任務、あるいは災害支援、復興支援、あるいはさまざまな自然災害における緊急の支援、さまざまな形で自衛隊が運用されるような今の新しい時代においては、やはり、迅速、実効的に行動するための運用の仕方を、従来とは違う形で変えていく必要があるんだろうというふうに考えております。

 御清聴ありがとうございました。私からは以上でございます。(拍手)

北村委員長 ありがとうございました。

 次に、白石参考人にお願いいたします。

白石参考人 白石でございます。

 防衛装備庁と防衛産業技術政策ということについて、考えているところをお話しさせていただきたいと思います。

 まず、防衛力の基礎に産業力、技術力があるということは、これは誰もが直ちに理解できることだろうと思いますけれども、こういう、防衛力の基礎にある産業力、技術力をいかに維持し培養するか、あるいは育てていくか、これが、私としては、防衛産業技術政策ということの根幹であると思いますし、それから、防衛装備庁というのはこれをミッションとする、そういう新しい機構であるというふうに考えております。

 きょう申し上げますことは、これを少し敷衍して御説明するということでございます。

 まず最初に、なぜ、それでは防衛生産、技術基盤あるいは防衛生産技術政策ということを考えなければいけないのかということでございますけれども、防衛生産、技術基盤というのは、これは装備品等、つまり防衛省・自衛隊の任務達成のために使用される火器、車両、施設器材、弾火薬類、誘導武器、通信電子等の装備品、船舶、飛行機その他、これを開発、製造、運用、維持、改造、改修するための人的、物的、技術的基盤というふうに定義できるだろうと思います。

 日本の場合、この基盤の特徴というのは、国として工廠を持っていないということでございまして、別の言い方をしますと、民間の防衛産業に完全にこれを依存している、これが日本の特徴でございます。

 問題は、防衛産業を、装備品等の開発、製造、修理、運用支援、維持、整備支援等に携わる企業の全体、こういうふうに捉えますと、防衛省向けの生産額、つまり市場規模というのは、現在で二兆円程度でございます。平成二十七年度の予算で見ますと、主要装備品等購入費というのが大体一・二兆円、維持整備費というのが〇・八兆円で、ちょうど大体二兆円くらいの規模でございまして、日本の工業生産額というのは二百五十兆円ございますので、一%以下、あるいは正確に申しますと〇・八%くらいの規模、極めて小さいものでございます。

 ということで、防衛省の毎年度の予算でこの防衛産業の市場規模は決まりますけれども、予算は決して、順調に伸びていると言うにはほど遠い状態でございまして、主要装備品等購入費と維持整備費の合計というのは、平成十年から二十五年までは大体一・四兆円から一・五兆円、平成二十六年度で一・七兆円で、二十七年度になって二兆円になっているということでございます。それからまた、平成十七年度から二十五年度にかけましては整備維持費の方が多かったということも、これも事実でございます。

 もう一つの問題は、装備品等が急速に高性能化しまして、また複雑になって、その結果、取得単価というのは、つまりそれぞれの装備品というのはどんどん高くなっている。予算は限られていますので、そうしますと、当然のことながら調達数量というのは減っていく。この結果、防衛産業の方から見ますと採算性は低下しておりまして、特に汎用性の低い防衛装備品等関連研究部門とか製造部門の維持というのは次第に困難になっている。

 そもそも、日本の防衛産業に携わる企業で、特に大企業の場合には、防衛産業が一番重要な部門になっているなんという企業は一つもございません。ですから、そういう中で、ある意味では国のためということで防衛産業部門を維持している企業が非常に多いものですから、だんだんと事業性が低下していきますと、社内的にもそれを維持することは難しくなりますし、サポーティングインダストリーの場合にはこれで破綻してしまう、そういう企業も全くないことはございません。当然ながら、事業性が低下していくときには、研究開発投資に対して十分な資金も回していけない。これがおおよその現状でございます。

 問題は、こういう現状を踏まえて、それではどうすればいいのかということでございます。

 ですから、全部を維持することはもうできませんので、国の方から見ますと、国内に保持すべきものを選んで、その分野の維持、育成に注力するしかないだろう。つまり、選択と集中の実現によって安定的かつ中長期的に防衛力の産業基盤あるいは技術基盤というのを維持、培養していくということになる。これは国の方からの観点でございます。

 一方、民間企業という観点から考えますと、民間企業にとって極めて重要なことは、投資の予測可能性を少しでも高めてあげるということでございまして、そのためには、できる限りリスクを抑制して、長期的観点から企業として投資を行い、さらには研究開発、人材育成を行えるようにする、これが非常に重要なことである。

 この二つのことを念頭に置いて、防衛力の基盤にある産業力、技術力を維持、培養していく、これが私は装備庁の主たるミッションであるというふうに考えております。

 その上で、二点考えるべきことを申し上げたいと思います。

 一つは、日本の防衛力の基盤にあります産業力、技術力というのを維持、育成していく上で、理論的には三つのことが考えられます。

 一つは、市場規模を拡大するということ。これは、端的に言いますと、輸出をもっとやるということでございますけれども、日本の場合には、平和国家という国是がございますので、これはなかなかそう簡単にはできない。例えばドイツは非常に熱心に輸出をやっておりますけれども、私は、日本の場合にはこれについてはなかなか難しかろう、むしろ、極めて抑制的あるいは限定的に、防衛装備移転というのは日本の安全保障に資する、こういう条件のもとで防衛装備移転はやりますというのが今のところの大きな合意ではないだろうかというふうに考えております。

 それから二点目は、生産性を向上させるということでございまして、ここにおきましては、研究開発システムにおける産官学の協働というのが極めて重要になってまいります。

 それから三番目は、産業政策、特に企業統合でございますけれども、これは、民間企業、日本の場合には防衛産業というのは全て民間でございますので、なかなか国として、企業を統合しろというふうなことは言えない、これは民間の方がやるべきことだろうというふうに考えております。

 そこで、まず最初に、市場拡大ということについて考えますと、結局、先ほど申しましたように、防衛装備の移転にかかわる政策的な課題というのは、これはあくまで日本の安全保障に資する、こういう条件で行われるべきですけれども、三つぐらい重要な意義があるだろうと私は考えております。

 一つは、同盟、連携関係の強化と相互運用性の向上ということでございまして、これは、日米同盟ということを考えますと、ここでやはり防衛技術協力あるいは防衛産業協力を実施するということは非常に大きな意味があるだろう。それからもう一つは、現在、日本とオーストラリアの間で少し防衛技術の協力が始まっておりますけれども、これも、実際にオーストラリアの要人と話をしておりますと、日豪の安全保障協力においては非常に大きな意義があるというふうに私としては見ております。

 もう一つ、防衛装備移転にかかわる課題として重要なことは、次世代の装備品等の技術開発、さらには生産コストの低減、リスク分散、それから、日本にはないけれども、例えばアメリカにある先端的な技術へのアクセス、こういうことでございます。

 それから三番目は、企業経営基盤の維持、育成、高度化ということでございまして、特に、部品産業の市場拡大ということではこれはなかなか意味があることではないだろうかと考えております。

 もう一つ重要なことは、生産性を向上させ、さらには次世代の防衛技術開発を行う上で、研究開発システムにおける産学官の協力をどう進めるか、こういう課題でございます。

 現在の安全保障の大きな趨勢を見ますと、二つ、ほぼ確実に言えることがあるのではないかというふうに考えます。

 一つは、海中から宇宙まで、安全保障を考えるときに一体的に考えなければいけないということ、これが一つでございまして、もう一つは、サイバー社会というのはこれからも急速に進んでいく、つまり、サイバー空間と現実の空間の融合というのはこれからますます進んでいく、この安全保障をどう考えるかということでございます。

 サイバー社会につきましては、もう既に、それこそ新幹線から発送電あるいは銀行システムに至るまで、我々の生活というのは、あらゆるところで極めて高度で複雑な技術システムの上に成立しておりますけれども、同時に、インターネットが広がり、スマートフォンが広がり、ウエアラブルが普及し、物のインターネットが拡大していきますと、我々の生活というのはあらゆる面でサイバー空間に依存するようになってまいります。この安全保障をどうするのかということ、これは極めて重要な課題でございます。

 これを全て、私は別に防衛省が担当するというふうには考えておりませんけれども、少なくとも、その中で、狭い意味での防衛のところだけの技術的な趨勢を考えましても、サイバー化、つまり、情報通信における革命的な技術進化ということに対して、これをどう使っていくのか。

 さらには、無人化。これで重要なのは、情報通信技術、さらにはロボティクス、それからブレーン・マシン・インターフェース、こういうものでございます。それからさらにナノテクノロジー、こういうものを使っていかにして次世代の防衛装備を開発していくのかというのは、これは極めて重要なことでございます。

 その際に、もうこれは皆様よく御存じだと思いますけれども、技術そのものには軍用も民用もございません。電子レンジというのは、もともとこれは軍用のものとして開発されましたし、例えば情報通信技術というのは、もうインターネットなんというのももともとは安全保障の技術としてつくられたものでございます。

 重要なことは、こういう安全保障の観点から日本の技術動向を見る、外国の技術動向を見る。どこに、誰が、どういう技術を持っているのかということを常に見ながら、日本の外に出してはいけないものは出させないし、外でぜひ欲しいものはとってくる。そういうことができる人たちを育てていく。これも、数年ごとにローテーションをするような、そういうところではできません。こういう非常に高度の技術的な能力を持った、技術戦略を組み立てることのできる人たちを育てていく、これも防衛装備庁の大きな課題になるだろうというふうに考えております。

 これで私の報告は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

北村委員長 ありがとうございました。

 次に、武蔵参考人にお願いいたします。

武蔵参考人 同志社大学の武蔵勝宏でございます。

 私は、文官統制のあり方につきまして、資料に基づきまして、本法案に関する意見を述べたいと思います。

 まず、日本の文民統制は、戦前の日本で統帥権の独立の名のもとに軍部の暴走を許したとの反省から、民主主義国家における軍事に対する政治の優先の考え方を導入したものである。

 そのため、戦前のような統帥権の独立や、軍部大臣武官制は認められず、国務大臣は文官でなければならない。また、内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を有し、防衛大臣が自衛隊の隊務を統括する。国民の代表である国会が法律と予算の議決権を通じて、自衛隊の行動や権限、自衛官の定数や主要組織を議決し、防衛出動などの承認権を持つ。このように、内閣や国会によって自衛隊に対する文民統制が確立され、今日まで機能してきたと考えられる。

 ところが、こうした自衛隊に対する統制に加え、保安庁、防衛庁の設置に際し、防衛庁長官の補佐を通して内局が幕僚監部の制服組を統制する仕組みが取り入れられることとなった。

 戦後の防衛庁では、戦前のような軍政、軍令事項を分けず、内局と幕僚監部の双方に防衛庁長官の指揮監督が及ぶ。その際、内局の官房長及び局長が、自衛隊に関する基本的な方針、計画に関して、防衛庁長官が各幕僚長に出す指示、承認、一般的監督について長官を補佐する、いわば統制補佐権を有してきた。その結果、内局は、その所掌事務とする、防衛及び警備の基本及び調整、自衛隊の行動の基本、訓練の基本を含む、自衛隊の全隊務に関し、政策的、方針的な大枠を主体的に策定し、各幕僚監部は内局の監督のもとでそれを実施するという、実質的な上下関係が今日まで維持されてきたのである。

 文民政治家の長を最高司令官とする軍事中央機構では、軍の組織全体に対して責任を負う国防大臣の指揮監督のもとに、行政的業務に携わる文官部局と参謀総長が並列に置かれるという均衡型が多く採用されている。

 しかし、日本では、十二条の統制補佐権を根拠に、防衛大臣のもとに内局が存在し、その下に各幕僚監部が実質的に置かれるという文官優位が形成されてきた。

 このような仕組みを採用したのは、戦前の軍部が、軍令のみならず、国の政策や政治にまで介入したことがその原点にあると思われる。また、警察予備隊から保安隊、自衛隊に規模が拡大するにつれ、旧軍人を登用せざるを得ず、自衛隊の高級幹部が旧軍人によって占められていたことも、内局による統制を正当化することとなった。

 しかも、内局幹部への制服組の任用制限が廃止されたにもかかわらず、内局は文官のみによって構成され、内局と幕僚監部の上下関係が、文官による制服組の統制をもたらすという特異な構造が生まれることとなったのである。日本のように内部部局が文官のみによって構成される仕組みは特殊なものであり、英米仏独の中枢機構の内局においては、文官と制服組が約七対三の割合で混在しているのが一般的である。また、内局が軍令事項にまで関与するのは、ほかの国の防衛機構にない仕組みである。

 このような文官統制については、肯定する意見がある一方、自衛隊法上、各幕僚長が隊務に関し最高の専門的助言者として防衛大臣を補佐するとの規定を根拠に、軍事専門家でない文官が統制補佐権を有することで、軍事的合理性を損なうとの否定的な意見も存在してきた。

 この日本独特の特異な仕組みのうち、内局が文官のみによって占められている問題は、百八十六回国会で、自衛官は必要があると認めるときにのみ内局での勤務を認めるという特例規定が廃止され、既に内局に自衛官のポストが定員化されている。文官と自衛官の一体感の醸成を目的に、今後、内局における文官と制服組の混在化はさらに進むと思われる。

 一方で、内局による文官統制の根拠とされてきた防衛参事官制度は二〇〇九年に廃止されており、防衛省改革の仕上げとして今国会に提出されたのが本法案である。

 次に、今国会の改正案では、文官統制について、次の二点が主に見直される。

 第一点は、官房長及び局長と幕僚長の関係に係る十二条の改正である。これまで、十二条は、内局が防衛大臣の補佐を通じて自衛隊の運用や防衛力整備、予算編成、装備調達等について文官主導をもたらしてきた根拠規定ともされてきた。今回の改正では、同規定を、政策的見地からの大臣補佐の対象について、幕僚長や幕僚監部に関するものに限定している現行のような規定とはせず、省の任務を達成するための省の所掌事務の遂行とする。政策的見地からの大臣補佐は、幕僚長による軍事専門的見地からの大臣補佐と相まって行われることを明記するとしている。

 また、この改正にあわせて、内局の所掌事務に、防衛省の所掌事務全体について各部局及び機関の施策の統一を図るため、総合調整機能を加えることとしている。

 これらの改正によって、これまで、軍事専門的な領域に内局が関与し、軍事的適合性を欠いていたとされる問題を解消できるかもしれない。他方で、内局には、政策的な見地から施策の統一を図る役割が付与されたことに伴い、内局による制服組に対するチェック機能も一定の担保が確保されたとも言える。河野統幕長も、記者会見において、統幕は軍事専門的な観点から部隊の行動を立案計画するが、政策的な見地に立つ内局と調整して、最終的には防衛大臣に判断をいただくと発言しており、現状との変更はないとしている。

 しかし、内局との調整は、運用次第で弱められる可能性があるのではないか。これまでは、十二条において指示、承認、一般的監督の大臣補佐が規定されているがゆえに、幕僚監部の持つ情報が全て内局を通じて防衛大臣に報告されてきた。しかし、十二条から一般的監督の補佐が削除されることによって、法改正後は、内局との調整を経なくとも、統幕長からの情報が直接防衛大臣に上がり、防衛大臣から各幕僚長に対して直接指示が出せるようにもなる。今後、災害派遣やPKO、ミサイル対応、離島防衛など、迅速性がより要求されるほど、自衛隊の部隊を動かす際、統幕長が内局を通さず直接防衛大臣に運用計画を上げ、命令を受けられるようになる機会がふえるのではないか。

 イージス艦「あたご」の衝突事故では、内局との調整に手間取り、防衛大臣への報告が二時間後となったことは記憶に新しい。

 確かに、報告経路の一元化は、部隊の運用面で迅速な情報収集や効果的な意思決定が行えるようになる。しかし、こうした迅速性が求められるほど、内局の関与が限定され、防衛大臣の判断に当たって、統幕長の軍事的助言が優先される可能性はないだろうか。その結果、軍事専門的見地からの必要性が重視され、制服組に都合のいい情報が防衛大臣に優先的に上がる可能性も排除できない。イラク給油量取り違え問題に見られるような情報隠蔽や情報操作の危険性も生じ得る。

 運用面だけでなく、防衛計画や装備調達においても、内局の関与が政策的見地に限定され、制服組の軍事的合理性からの主張によって防衛予算や装備調達が過大にならないか。

 このように、軍事的見地からの補佐についても、その役割を制服組だけに限定すると、軍事的合理性が優先され過ぎる嫌いがある。すなわち、制服組は、本質的に、設定された目標を達成することに主眼が置かれ、コストその他の非軍事的要因に対する意識が希薄である。

 一方、文官は、政策、法制、予算など、制服組が必ずしも得意としない分野に精通している。したがって、制服組だけで運用や計画を立案するよりも、文官のチェック機能を加えた方が、政治経済的にも、より実現可能性の高いプランを作成することができる。内局の役割を政策的見地に限定し、総合調整機能を付与するだけでは、こうしたチェック機能は十分に果たせないのではないか。

 二点目は、こうした内局の役割が限定化される中で、内局で自衛隊の運用の基本を担当してきた運用企画局を廃止し、統合幕僚監部に一元化することである。

 本改正案では、条文上は、統合幕僚監部が関係省庁や地方公共団体に対して情報連絡や調整の業務を行うことを所掌事務に追加することが規定されているだけである。しかし、既に成立した二〇一五年度予算で、運用企画局を廃止し、対外説明や、統幕長に対して政策的見地からの補佐を行う、統幕副長級の文官ポストである運用政策総括官及び部課長級の文官ポストである運用政策官を新設追加することが決定済みである。また、運用に関する法令の企画立案、運用支援機能等は防衛政策局へ移管し、防衛政策局事態法制課が所掌することになる。

 これまで、内局と統幕の両組織の業務が重複し、緊急事態において部隊の移動や配置などで遅滞が生じかねないという懸念があった。中谷防衛大臣も、記者会見において、自衛隊による救出活動やミサイル対応、不審船対応など緊急事態において防衛大臣による迅速な判断と部隊の行動が必要であり、統幕に一元化して、政策的な見地も加味しつつ防衛大臣に報告することで、重複による時間的なロスや作業の無駄がなくなるとしている。

 このような迅速性、効率性の向上が運用組織の一元化で期待できる反面で、制服組が独断で行動する心配はないだろうか。自衛隊の運用には、軍事的合理性だけでなく、政策や情勢に関する総合的な視点からの判断が求められるが、その役割は、文官が統幕の組織の一員として行使するだけではなく、独立した内局の組織としても関与する必要があるのではないか。

 例えば、自衛隊の国際平和協力業務の場合、これまでは、防衛大臣が決裁する実施要項の策定や行動命令の起案は、運用企画局が統幕と連絡調整しながら作成していた。しかし、一元化後は、統幕長の監督下で、運用政策官付と運用第二課が担当することになり、制服組と文官が同一セクションにおいて共同で行うことになる。統合幕僚監部に配属された文官は統幕長の監督下に置かれ、運用企画局長の監督下で業務を行うのとでは、指揮命令系統が異なることになる。その結果、これまでのような文官の持つ情報や知見を政策的見地から十分に生かすことができなくなるのではないか。

 もちろん、運用面に関する法令面での企画立案機能は内局が保持し、内局が総合調整機能も行使することは可能であるが、十二条の改正とともに運用企画局を廃止することで、内局のチェック機能は弱まるおそれがある。

 なお、防衛出動などの重要案件に際しては、内局局長や各幕僚長をメンバーとする防衛会議の審議を経て、防衛大臣が最終的に判断する手続も踏襲される。「防衛省改革の方向性」では、「防衛会議の下、事態対処のための効率的な調整組織を構築すること」が明記されている。運用局の機能が統合幕僚監部に一元化された場合、内局がチェック機能を果たすためには、この運用に特化した調整組織が重要な役割を持つことになろう。

 以上述べてきた論点を踏まえ、内局と幕僚監部の関係のあり方について私見を述べたい。

 まず、大臣と制服組の利害が一致する場合、シビリアンコントロールが働き、内局の介在の余地は限られる。これに対して、大臣と制服組の利害が相反する場合に、シビリアンコントロールは機能不全に陥りやすい。

 例えば、大臣が軍事的オプションに消極的で、制服組がそれに積極的な場合、制服組による要求、圧迫や情報操作がロビー活動や実力行使等によって顕在化する。逆に、大臣が軍事的オプションに積極的で、制服組がそれに消極的な場合、制服組による反対や抵抗がロビー活動やサボタージュ等によって顕在化する。内局の組織的役割は、こうした大臣と制服組の利害が相反する際に、両者の間にあって、政治、行政と軍事の間の利害調整を行うことにあるのではないか。そうした点で、内局が自衛隊の行動に関してチェック機能を維持するためにも、十二条の改正は慎重に判断すべきである。

 もっとも、現行の十二条を存続させたとしても、文官と制服組の相互牽制によって自衛隊の行動を抑制する方法は、現在の、自衛隊を積極的に活用する状況においては適合的ではないと思われる。

 これまで、文官統制という言葉には、文官が優位な立場で制服組に指示、命令するという意味合いがあった。しかし、本来、内局と幕僚監部はともに防衛大臣の補佐機関であり、政策的見地からの内局と軍事専門的見地からの各幕幕僚長が車の両輪のごとく相互に調整、吻合しながら防衛大臣を適切に補佐することがシビリアンコントロールを強化することにつながるものである。そうした点で、内局と制服組が、それぞれの組織的利害から対立し、防衛大臣に対する補佐において行き違いがあるようでは、シビリアンコントロールは機能しない。文官と制服組が協働して防衛省・自衛隊という組織を効率的に運用していくことこそが必要であろう。

 これまで、文官と制服組には相互の人事交流もなく、文官は軍事専門的知識に乏しく、制服組は政治や政策に疎いという欠点があった。今後は、文官と制服組の相互配置を進め、相互の関係を緊密化し、一体感を醸成することが、防衛大臣の補佐を適切にすることになると考えられる。内局への配置によって、制服組の軍事的知見を政策形成に反映させ、制服組にとっても、軍人的視野を広げることができる。文官の部隊や幕僚監部への配置は、軍事専門的知識や調整能力を高めることになろう。

 新設される防衛装備庁は、外局として初の本格的なUC混合組織になる。異なる文化を持つ集団の混合組織となることから、統合のメリットを生かしつつ、大規模な組織のマネジメントと、不正を防止するためのガバナンスをいかに確立するかが課題となる。防衛装備庁を試金石として、中央部局である内部部局においても、制服組と文官のそれぞれが専門性を生かし、部分最適よりも全体最適を達成する効率的な組織の確立を目指すべきであろう。

 翻って、防衛省改革で是正すべきは文官と制服組の不毛な優劣関係とその意識であり、大臣を政策的見地から補佐する内局の監督権限の削除は、大臣のシビリアンコントロールを弱めこそすれ、強化するものではない。自衛隊の運用や防衛計画の作成などにおいて、内局と幕僚監部が情報を確実に共有し、協働して防衛大臣を支える組織の確立こそが求められていると言えよう。

 以上でございます。(拍手)

北村委員長 ありがとうございました。

 次に、西川参考人にお願いいたします。

西川参考人 西川でございます。アメリカ経済史を専門としております。

 本日は、防衛装備庁の設置案について、思うところを申し述べさせていただきたいと思います。

 まず、この防衛装備という言葉でありますが、これを読みまして、大変耳ざわりのいい言葉だと思いました。中身を見ますと、これは明らかに、防衛装備というのは武器であります。なぜ武器と言わずに防衛装備と言うのか、ややこの法案の作為性を感じざるを得ません。これを英語に訳すとアームズだと思います。防衛装備移転三原則というのが武器輸出三原則にかわって成立いたしましたが、同じことはこれについても言えるわけでありまして、英語に直せば、何だアームズセールスじゃないかということになるわけであります。私は軍拡と軍縮についてこれまでいろいろ資料を見てまいりましたが、このような言葉に出会ったことはめったにありませんでした。

 その上で、私の言語でいえば武器調達庁であるべきだと思いますけれども、防衛装備庁について、その新設される狙いを考えてみました。

 その第一の理由は、先ほど白石先生もおっしゃいましたけれども、武器調達の合理化だろうと思います。これを達成するために、武器の開発、生産、購入、販売、これを防衛省に一元化して、その一元化された権限を行使する新たな機関として防衛装備庁が新設されようとしているんだと思います。

 第二の狙いは、防衛産業基盤の育成であります。防衛省が予算を獲得し、新設の機関、この防衛装備庁でありますが、これを民間企業に効率よく配分する過程で、日本の産業は急速に軍事化するだろうと思われます。主契約企業はもとより、下請契約企業、大学などの研究機関にも軍事予算があまねく行き渡るようになります。そして、つくり過ぎた武器は海外へ売る。そのために武器三原則は既に廃止されました。これは、日本が自前で武器を開発し、生産する体制づくりに向けて、法整備を着々と進めているということだろうと思います。

 この先に見えるのは軍産複合体であります。ミリタリー・インダストリアル・コンプレックス、これは有名な言葉でありますけれども。同じことを、アメリカはもちろんほかの国もやっているじゃないかと言われるかもしれませんが、しかし、アメリカの軍産複合体についていささかでも知識があれば、これを、日本でも、アメリカに見習って同じ道を歩もうというのは愚かしいと言うほかないわけであります。

 軍産複合体というこの言葉は、軍事的組織と兵器産業の結合関係を示す言葉でありますけれども、これを最初に使ったのは、御承知のとおり、アメリカの大統領アイゼンハワーでありました。一九六一年一月、大統領を辞するに際して、彼は次のように述べております。政治を行うに当たって、我々は、軍産複合体が、好むと好まざるとにかかわらず、不当な影響力を手中にするのを防がなければならない、このような結びつきの重みが我々の自由や民主主義的な手続を脅かすことのないようにしなければならない。

 アイゼンハワーが軍産複合体という言葉を誇らしげに使っているのではないということは明らかだと思います。彼はむしろ、軍産複合体が強大な勢力になることを恐れたのでありまして、それが自由と民主主義を脅かすことのないよう監視し続けることを後続の大統領と国民に託したわけです。

 これを受けて、ケネディ大統領は、国防省に文民コントロールをしきました。彼がフォードから引き抜いてきたマクナマラ国防長官は、陸海空の三軍がそれぞれに兵器企業と取引していた慣行を改めまして、武器の選定、発注の権限を国防省に集中したわけであります。彼はさらに、入札企業の選別についても経済合理性を導入しようとしました。しかし、このような改革にもかかわらず、逆に軍部にかわって国防省が前面に出ることによって、軍産複合体はさらに一層強力なものになりました。これをセイモア・メルマンという人が、国家による管理というふうに表現しております。

 アメリカの軍産複合体が初めて弱体化するのではないかと思われたのは、冷戦が終わったときのことであります。一九九三年にクリントン政権が登場いたしますが、彼は、九七年までに軍事費を三〇%減らし、兵器調達費を五〇%減らすことにしました。彼が行ったのはボトムアップ政策でありまして、必要な武器のリストをまずつくって、それの生産に当たる少数の企業というのを選定いたしました。ほかの企業は民間の産業に転換しろということであったわけです。軍から民間への産業転換であります。

 しかし、軍産複合体から企業を引き離すのは容易なことではありませんでした。何とか軍産複合体に残ろうとして、兵器企業は合併を繰り返したわけです。二十世紀末のMアンドAとして、最も盛んな買収劇が行われたわけであります。その結果、十九あった兵器企業が五社になりました。ロッキード・マーチン、ボーイング、レイセオン、ノースロップ・グラマン、ゼネラル・ダイナミクス、この五社が国防省との契約に占める割合は三〇%を占めております。この状況は今日に至るまで変わっておりません。

 兵器企業が大規模化することによって、つまり五社による寡占体制をしくことによって、国防省に対して強い立場に立ったということになります。例えばロッキード社は、戦闘機のF22とF35を独占しておりますけれども、幾らロッキードが値段をつり上げても、納期をおくらせても、国防省は文句を言うことができないのであります。というのは、ロッキード以外にこのような飛行機をつくることはできないという、選択肢がないからであります。

 武器の輸出についても、大規模化した企業は生産が拡大しているわけでありますから、アメリカの国防省の需要だけでは賄えないというか、武器をたくさんつくり過ぎて余るわけですね。それを何とか海外に輸出する。国家は武器の輸出に賛成するわけはないのでありまして、もともと武器というのは秘密でなければならないわけでありますから、なるたけ輸出はしたくない。しかし、安全保障上の理由から、味方の国々に対しては武器を提供するというのが国家のやり方であるわけでありますが、企業の方は、それにはお構いなく、要するに、生産ラインを維持して利益の拡大を図りたい。

 そのよい例がF35の共同開発であります。国防省はさすがにF22については輸出を許しませんでしたけれども、F35については、八カ国と国際的な共同体制をつくるということを許しました。これは、ロッキードの意図は、資金を調達して、しかも市場を獲得しよう、そういう一石二鳥の意図があったわけでありますけれども、しかし、肝心のステルス技術は開放されないままにある。

 日本は、武器輸出三原則がありましたので、共同生産の参画におくれましたけれども、これを購入することは許されております。イスラエルと韓国と同じく、F35の購入をすることになっております。しかも、日本の購入には、F35の最終組み立てと検査設備のための生産ラインをつくることが許されている、そういう特権がついているわけであります。これによって、日本の軍用機生産技術と生産基盤は飛躍的に発展するはずであります。今回の法改正は、このような動きと決して無関係ではないというふうに思われます。

 アメリカでは、二〇一一年から武器輸出がふえております。

 その理由は、オバマ政権の手足を縛る予算制限法というのが成立いたしまして、軍事予算も強制削減の聖域ではなくなったということのために、兵器企業が輸出に活路を見出そうとしているためであります。

 もう一つの理由は、オバマが掲げるリバランス政策であります。

 このリバランスというのは、アフガニスタンとイラクの戦闘が終わった後に、戦略の見直しをしようということを意味しているわけでありますが、具体的には、アジア太平洋地域に兵力を集中させよう、そういうことであります。二〇二〇年までにアメリカ海軍力の六〇%を集中させるという計画が立てられております。

 この地域では、アメリカと同盟関係を結び、アメリカに基地や軍事拠点を提供している国は、日本、韓国、フィリピン、タイ、オーストラリアの五カ国でありますが、リバランスは、これにシンガポール、マレーシア、ベトナムを加えまして、さらにインドとパキスタンなどインド洋周辺国を加えて、アジア太平洋の全域においてアメリカ軍のプレゼンスを高めようとしております。

 このアジア太平洋地域にアメリカは武器を売りまくっているわけであります。リバランスが武器市場の拡大を意味する限り、兵器産業にとってオバマを見限る理由はありません。しかし、オバマの存在が武器市場の拡大を妨げるようなことがあれば、容赦なく彼を退けるでありましょう。

 クリントンの時代以来、アメリカの軍産複合体は最高の発展段階に入ったと私は思っております。それはアイゼンハワーが恐れていた軍産複合体が現実のものになったことを意味します。アイゼンハワーが望んだように、自由と民主主義が軍産複合体の力を抑えることができるでしょうか。アメリカの議会にまだチェック能力が残っていることを期待します。

 アメリカの例で明らかなように、軍産複合体が社会に根をおろしてしまった限り、これを取り除くことは不可能であります。それは戦争と永遠に縁が切れない社会を意味します。このようなアメリカを日本がまねしてよいことがあるはずはありません。日本は、アメリカを他山の石として、違う道を歩むべきであります。せっかく、日本には平和憲法があって、九条には、国際紛争を解決する手段として戦争と武力の行使は永久に放棄するというすばらしい規定があるのに、これを生かさない法があるでしょうか。

 歴史をさかのぼると、一九二八年に、パリで、戦争の放棄をうたった不戦の誓いが四十数カ国を集めて調印されています。日本の憲法はこの精神を受け継いでおります。私は、日本が国連の常任理事になることを望んでおりますが、それは日本が不戦の誓いの衣鉢を継ぐ憲法を持っているためであります。アメリカの兄弟分として世界の強国に名を連ねるためではありません。

 結論的に言えば、日本に軍産複合体を許す流れを促進するような防衛装備庁の設置は不要であると私は考えます。

 以上で終わります。(拍手)

北村委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人各位の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

北村委員長 これより質疑に入ります。

 まず、参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。中谷真一君。

中谷(真)委員 皆様、おはようございます。

 きょうは、参考人の先生方、本当に、高い見地からのお話をいただきまして、心から感謝を申し上げます。非常に勉強になりました。さらに理解を深めさせていただきたいという思いで、参考人の先生方に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、細谷先生にお伺いをしたいんですが、戦後の日本における、自衛隊に対するシビリアンコントロールという議論がございます。これは、私、元自衛官でありまして、そういった経験も踏まえて質問をさせていただこうと思うんです。

 戦後は、やはり戦前からの流れもありまして、自衛隊というのは非常に危険だというか、どんどん独走していくんだという観点のもとに議論されることが多くて、それをいかに抑えるかというような形になっているというふうに思います。

 私が自衛官だったときにイラクの派遣というのがありまして、私の同僚たちがイラクに派遣されるんですけれども、そのときに、出国のときのセレモニーとかというのがありまして、そこにその隊員たちの家族とかが来て、別れを惜しみながら出国していくわけでございます。

 そういった思いをして出ていくわけでありまして、そういった意味では、自衛官たちが本当に好んでそういった危険なところに行きたがるか。行きたがるんだということが前提となった議論が非常に多いんですけれども、私は、必ずしもそうではないんではないか、一番それを嫌っていると言ってもいいんではないかなというふうに思うわけであります。

 そういったことも考えながら、私は、今、文官統制というお話がございましたけれども、これがいわゆる、今後この改正をして、その上下という形を平たくしたという方が危険であって、文官が今やっているのが安全であるという、いわゆる派遣をするという点において、また行動を規制するという点においてだというふうに思いますけれども、そういった観点で今議論されているわけでありますけれども、私は、そうではなくて、先ほどの理由から、これはどちらが危険かということは非常にわかりにくいことである。

 となると、やはり先生がおっしゃった文民統制や民主的統制という観点からは、文官、防衛省の文官は民間から選ばれていない、いわゆる選挙によって選ばれていないという観点からすると、その方々が自衛隊に統制を加えていくということは、私は、これこそ実は民主的統制に反するのではないかというふうに思うわけでございます。

 その点について、細谷先生にお伺いをしたいと思います。

細谷参考人 中谷先生、貴重な御意見、ありがとうございました。

 今先生がおっしゃったことに私は全面的に賛成をしております。

 また、これは、今、日本の国際政治学者の間で、あるいは国際的に見てもかなり一般的に認識されていることでございまして、非常に若手の優秀な国際政治学者、研究者の方で三浦瑠麗さんという方が「シビリアンの戦争」という本を書いております。

 この本の中で三浦さんがおっしゃっているのは、軍人が危険であって戦争を引っ張り、そしてシビリアンがそれをとめるという認識は間違いである、過去の事例を引いたときに、多くの場合に、実際に命をかけて戦場に行く軍人こそが戦争に対しては非常に慎重であって、現場を知らない、戦場を知らないシビリアンが、むしろ逆に戦争に進んでいった。三浦さんは、この本の中で、例えばイラク戦争についても述べておりまして、イラク戦争では、文官、この場合は文民と言った方がいいかもしれませんが、むしろ、例えばブッシュ政権の中で、実際に軍人ではない人、これは閣僚クラスであるとか、あるいはアメリカの国防省の中でもそうですけれども、むしろその中にイラク戦争に積極的な意見が強く、当時の中ではアメリカの軍の中でイラク戦争に対しては非常に慎重な声が強かったということは今既に明らかとなっています。

 したがって、過去の事例を考えたときに、今先生がおっしゃられたように、文官が常に戦争に対して否定的で慎重であって、そして軍人が常に戦争をしたがるというのは、実際に戦場に行き、命をかけて戦うのが軍人である以上は、考え方を変えれば、軍人こそが現場の危険性、過酷さというものをよく知り、そして安易な軍事介入や軍事力の行使というものに対して慎重であるということが一般的に言われることだと思いますし、また同様に、過去の歴史を振り返っても、日本の中で自衛官の方が好んで戦争をしたがるというようなことは私の認識では一切ございません。

 やはり自衛官の方々は、自衛隊が何ができるかということを良識を持って判断し、また、実際に自衛隊ができないこと、あるいは過酷な現場で戦闘に巻き込まれる可能性があるということに対しては極めて慎重であって、これは、言い方をかえれば、戦後の防衛大学校を初めとする日本の中での自衛隊に対する教育というものが非常にバランスがとれた良質なものであったのだろうと思います。それによって、戦前の日本と比べても、今の自衛隊あるいは自衛官の方々が、実際に戦争に行くということの危険性を熟知した上で、自衛隊の行動、運用というものを極めて慎重に考えているというふうに私も考えておりますし、その点では、今先生がおっしゃられたことに私は賛成しております。

中谷(真)委員 先生、ありがとうございます。

 それでは次に、武蔵先生にお伺いをしたいというふうに思います。

 先生、今の十二条を変えずに、制服と背広の割合というか、それを変えることによってできるんじゃないかということをおっしゃっておられました。私も、それも必要だというふうに思うわけであります。

 特に、私も、政策論をやるときになかなか軍事的な見地が入ってこないという、これも、今、安全保障を国会で議論する上で非常に問題だというふうに思っておりますけれども、どちらかというと、言葉とか、いつ、どの大臣がどういう発言をしたとか、こういったことが主体になってしまって、本当に、実際の軍事的必要性とか、こういったことが実は余り議論されにくい環境にあるという意味では、私はそれは必要だというふうに思っております。先生のお考えに私も大賛成でございます。

 ただ、先生がその後、チェック機能が働かないのではないかということをおっしゃっておられました。これは、私は、政策的なチェック機能、いわゆる軍事に対して政策的見地からチェック機能を働かせるというのが先生おっしゃっていることだというふうに思いますけれども、いわゆる背広と制服の役割分担というのは、昔でいう、軍政、軍令というふうに言われていましたけれども、これはやはり、枠、どこで、いつやるか、どういう範囲でとか、政治的に軍事行動の目的を与えたりとか、それに使っていいお金だとか、人員はこれだけだとか、こういった大枠を決めるのがいわゆる政策、政治であって、そして、その中においてどう行動するかにおいては、これはいわゆる軍令、いわゆる軍事的見地から行うというものである、そこが切り分けかなというふうに私は思っているわけであります。

 そういった意味では、私は、その中で、いわゆる上下という形でなくても、そういったチェック機能というのは、つくり方によってはそれは可能ではないかなというふうに思うわけであります。

 ただ、これが上下という形になっていますと、今の状況では、統幕の中にも運用があって、そして政策の中にも運用があるわけでありまして、ここがいわゆる二重の判断をしていくわけであります、重複したというふうに言われていますけれども。

 このときに、やはり軍事的合理性を持っていわゆる制服が判断をしていく、また、背広は、やはりどちらかというと政策的見地からそのことについて判断をしていく、ここに私は結構そごが生まれてしまうのではないかというふうに思うわけなんです、この枠の中でですね。

 この枠の中では、私は軍事的判断がやはり優先されるべきだというふうに思うんですけれども、このことに対して、これは合致をしていかない、この問題を解決するには、私は、そこをしっかり切り分ける、車の両輪となるという今回の十二条の改正は必要だろう。

 余りいい例えではないかもしれませんけれども、軍事的な考え方でいきますと、この五人を犠牲にしてでもこの三十人を救うとか、こういう判断をするわけであります。必ずしもそれが政治にできるかというと、これはなかなか難しい判断でもあるというふうに思っています。

 まず、この、今のことに対しまして先生の御見識をいただきたいと思います。

武蔵参考人 貴重な御指摘、御質問ありがとうございます。

 内局の所掌事務に関しましては、お手元に配付させていただきました資料の別紙の三でございます、所掌事務というものがございます。

 現行法におきましても、改正案におきましても、基本的に内局の所掌事務に変更はございません。すなわち、防衛省設置法八条における自衛隊の行動に関する運用に関する「基本に関すること。」という条文はそのまま残っております。

 すなわち、この基本に関することと申しますのは、内部部局が政策的、大枠的な方針というものを策定し、それを幕僚監部が実施すること、これが基本に関することでございます。

 そういった意味で、今回の改正案におきましても、現行の仕組みどおり、政策的見地から内部部局がそうした政策的、大枠的な方針を自衛隊の運用に関しても策定し、幕僚監部がそれを実施するということは私は変わりないと思うんですね。

 その上で、それをもう少し切り分けた方がいいのではないかということになりますと、今申し上げた設置法八条の自衛隊の行動に関する「基本に関すること。」まで削除しないとできないわけです。

 かつて、旧と申し上げますか、旧の自公連立政権のときの防衛省改革の案では、この「基本に関すること。」というものを削除して、内局が自衛隊の行動に関する基本に関しても関与できない、全てこれは統合幕僚監部に一元化するということでありました。しかし、政権交代があり、今回の新しい自公連立政権におきましては、この設置法の八条の「基本に関すること。」を内局の所掌事務には維持しております。

 そうした点で、恐らくこれは、法令等の企画立案だけではなく、基本的な方針に関しても、やはり政策的見地からの内局の関与というものが、チェックだけではなくて、やはりこれはチェック・アンド・バランス、すなわち、軍事的合理性だけが前面に出てしまいますと、実は、作戦の失敗とか、例えば憲法上のそごといった問題も出てきます。やはりそれをチェックし、バランスを保たせている意味で、今回の改正においても八条はいじっておらないということで、私はこの点はよかったなと思っております。

 十二条に関しましては、一般的監督の補佐権限が「相まつて、」ということで、条文上はなくなるんですね。ですから、運用において内局との政策調整をしていくということは可能かと思いますが、条文上にその根拠規定がなくなると、大臣が行う一般的監督の補佐というものは内局はできなくなります。そういったときに、やはり、先ほど申し上げましたような政策的見地からの補佐が必ずしも十分できないのではないか。特に情報の共有という点で、内局にもしっかりと情報が共有されて、そして、内局と統合幕僚監部が協働して大臣を支える、そういう仕組みがこの十二条の改正によって損なわれるのではないのかということを危惧しているところであります。

 以上です。

中谷(真)委員 先生、ありがとうございます。

 先生の今御指摘ありました、いわゆるしっかりとチェックをしていく、内局にもしっかり伝わるようにというところについては、これはしっかり何らかの仕組みをつくっていかなければいけないというふうに私も思いますので、これはぜひまたいろいろ教えていただければなというふうに思います。

 ただ、計画については、これは内局の皆さんも一緒になって調整しながら作成していくんだろう。ただ、運用において一々入ってきてしまうとという観点から私は申し上げたところでございまして、先生にも今いろいろ教えていただきましたので、そういったことを踏まえながら、また今後この議論を進めていければなというふうに思うところでございます。

 次に、白石先生にお伺いをしたいというふうに思います。

 今回、防衛装備庁を新設するわけでございますけれども、これは新たに特出しをして行うわけでございます。そういった意味では、特出しをして新設するメリットとデメリットを簡潔に、先生のお考えを教えていただきたいというところです。

 また、私は、日本の安全保障に資する輸出というものもあるんだろうというふうに思うわけであります。それは、特に、いわゆる武器装備移転によって海外と同じものを使うということは、あわせて、運用のための共同訓練をやったりとか、こういったことにもつながっていって非常に関係が強くなるという意味では、今、一国で安全保障というものは成り立ちませんから、そういったことも使いながら、やはり仲間をふやしていくというか、同志をふやしていくということは非常に重要だというふうに考えております。

 そういった意味では、輸出をどう行っていくか、これにどうこの装備庁はコミットしていくべきかということについても先生のお考えを教えていただきたいと思います。

白石参考人 ありがとうございます。

 まず最初に、特出しのメリットとでも申しますのは、恐らく一番重要なポイントは、防衛政策あるいは安全保障政策の時間の幅と防衛産業技術政策の時間の幅というのがやはり違うというのが一番重要なことではないだろうかと思います。

 御承知のとおり、次世代の防衛装備の開発なんということを考えますと、これは二十五年とか三十年の幅で考えていないとできませんし、調達計画というのも、これは少なくとも十五年、二十年のスパンで考えないとできない話でして、これを五年のスパンで回していくというのではなかなか産業技術戦略としては成立しないだろう、これが一つ重要な点と考えております。

 次に、輸出についてでございますが、御指摘のとおり、相互運用性の向上あるいは安全保障協力につきましては、防衛装備の共同生産あるいは共同開発というのは極めて重要な意味を持っていることは間違いございません。私のような研究者のところでも、日本の安全保障政策について外国の要人が意見交換するときには、やはり、これが持つ、つまり、武器装備移転を日本政府としてできるようになったことの重要性というのは外国でも非常によく理解されているというふうに考えております。

 ただ、一つ申し上げておくべきことは、武器装備の移転ということはこれまで日本はやっておりません。ですから、武器装備を移転しましょう、民間企業に輸出してもいいですよといっても、そもそも、では、どういう制度のもとでやっていいのか、制度もまだできていない。

 ですから、そこのところで、先ほど申しましたように、多くの企業にとって防衛産業部門というのは極めて小さい部門ですから、そのために、例えば企業のレピュテーションが落ちる、その危険を冒してまで、今のままだったら輸出しようなんというところは余りないんじゃないか。

 むしろ、そこのところは国としてきちっと制度をつくって、その上で、日本の安全保障に資するという観点からこの問題を考えるというのをやはりきちっとやらなきゃいけないだろうというふうに考えております。

中谷(真)委員 先生、ありがとうございました。非常に参考になりました。

 それでは、最後に西川先生にお伺いをしたいというふうに思います。

 先生は防衛装備庁をつくるべきでないというふうに言われたんですけれども、防衛装備庁をつくるという前提で、先生が言われている軍産複合体にしないために、何か防衛装備庁の中にこのような施策を講じればいいのではないかというようなことがございましたら、ぜひ教えていただきたいと思います。

西川参考人 御質問ありがとうございます。

 軍産複合体にしないためにどうしたらいいか、つまり、防衛装備庁の設置とのかかわりでどうしたらいいかということは、根本的に考え直さないとそれはあり得ないというふうに思います。手直しとか、こういうふうにした方がもっといいとか、あるいは日本独特の軍産複合体のためにはこういう道があるとか、そういうふうなことを申し上げているわけではございません。

 それでよろしいでしょうか。

中谷(真)委員 ありがとうございます。

 先生方、ありがとうございました。非常に勉強になりました。これで質問を終わらせていただきます。

北村委員長 次に、大串博志君。

大串(博)委員 おはようございます。民主党の大串博志でございます。

 きょうは、参考人の先生方には、お忙しい中、しかも急なお呼びかけにもかかわりませず、貴重な御意見を賜りまして、質疑の機会もいただきまして、本当にありがとうございます。いろいろな御意見を聞かせていただきたいと思います。

 時間も限られておるものですから、全ての先生方にいろいろなことをお聞きしたいところでございますけれども、全ての先生方には行き届かないかもしれないので、まず、その点、お許しをいただければなというふうに思います。

 まず、白石先生にちょっとお尋ねしたいと私は思うんですけれども、いわゆる防衛装備、技術基盤をつくり、生産基盤をつくっていく、この難しさのことをお述べになっていらっしゃいました。

 確かに、防衛予算が減っていく中、かつ、ある意味特殊な分野でありますよね、特殊な分野であるので、事業化していくにはなかなか難しい面があり、そういう中で、産業として成り立たない中で、どうやって技術基盤をつくっていく、生産基盤をつくっていくのか。

 こういう悩みというのは、かなり、実はどこの国も似たような悩みがあるのではないかなという気がするんです。もちろん、一部例外の国もあるでしょう。しかし、先進国の中でもかなり同じような悩みを抱える国というのはあるんじゃないかと私は思うんです。

 そういう他国の例がどのような形になっていて、それをどのように克服していっているのかというあたりに関して、御見識があったら教えていただければなというふうに思います。

白石参考人 ありがとうございます。

 外国、特に、アメリカはもちろんでございますけれども、アメリカあるいはイギリス、フランス、ドイツ、あるいは最近ですと中国、韓国、そういうところを見ますと、やはり当然、先ほども申し上げたことでございますけれども、市場規模を拡大するということは、どんどん輸出するというのが一つこういう外国の防衛産業がかなり活発にやっておるところでございます。

 日本の場合には、これまではそういうことは、事実上、ごく例外的なことを別にしまして、許されておりませんでしたし、現在は、武器装備移転三原則がございますけれども、まだこれを実施するための制度は正直言ってできていないというところでございまして、なかなか、日本の現在の政治的な合意から判断しましても、市場規模をどんどん拡大していくというのは難しいんじゃないだろうかというふうに考えております。

 それから、二番目にありますのは、産業政策として企業統合をやっていく、それで国際的に競争力のある防衛産業に特化した企業をつくっていくというのも、これも一つの選択肢としてはございますけれども、何しろ日本の場合には全てが民間部門でございますので、なかなか、政府として、この企業とこの企業のこの部分を切り分けて統合しろとか、そういうことはできないというのが事実でございます。

 ですから、その意味では、いろいろなインセンティブをつけて誘導するということはあり得るんだと思いますけれども、私が知る限り、今そういうことはどこでも考えていないのではないだろうか。

 ただ、これにつきましては、イギリスなんかはかなり政府の方でも努力しながら企業統合を進めていって、国際的に極めて競争力のある企業をつくった、そういう例はございます。

大串(博)委員 いま一つ白石先生にお尋ねできればと思うんですけれども、いろいろなそういう悩みが日本においてある中で、二番目のところ、二ポツ、「どうすればよいのか」というところで書かれているんですけれども、「選択と集中の実現によって安定的かつ中長期的に防衛力の維持整備を行う 防衛関係企業にとって予測可能性を高め、」云々、こういうふうにあります。「これが装備庁の主たるミッション」、こう書かれていらっしゃいます。

 日本が直面する悩み、それに対してどうすればよいのかということで、ここに書かれているように、二ポツに書かれているような「選択と集中」とか、あるいは「予測可能性を高め、そのリスクを抑制し、長期的観点から投資、研究開発、人材育成を行えるようになる」というふうに書かれていらっしゃいますが、防衛装備庁というものをつくる、外局をつくっていくということ自体が、組織をつくること自体がこういった実態面に何がどうプラスとして働いていくのであろうかという点に関しては、いかがなものでしょうか。恐らく、防衛省の中の機能をいろいろ精査、検討、改善していくことによっても果たせる面はあるのかもしれないなというふうな思いもするんですけれども、その辺に関する御見識はいかがでしょうか。

白石参考人 そこのところは、正直申しまして、私としましても先生とかなり共通する認識は持っております。

 と申しますのは、機構をつくったときに、最終的には運用するのは人でございまして、どういう人がここで育ってくるのかということがやはり非常に重要になってくる。ですから、装備庁をつくって、それで私が申しますような防衛力の基盤にある産業技術力というものが自動的に高まっていくだろうなんということはもちろん考えておりません。

 先ほども少し申し上げましたけれども、防衛力の基盤にありますような産業技術力を培養するというのは、これは極めて長期のプロジェクトというか戦略が必要なわけでございまして、それを実際に運用するため、実施するために一生をかけるような人たちがかなりの数として育ってこないとだめで、それをつくるには、やはりそれが一つのキャリアになるんだ、そういう仕組みをつくっていくということが私はこの装備庁のまずは大きな仕事になるのではないかというふうに考えております。

大串(博)委員 よくわかりました。ありがとうございました。

 続いて、武蔵先生にお尋ねさせていただきたいと思います。

 まずは文民統制の件についてお尋ねさせていただいて、もし時間があれば、先ほどの装備庁の話についてもお尋ねさせていただきたいと思います。

 この文民統制、十二条や八条等々に関する、二十二条もそうですけれども、改正案が今回提起されて、いろいろ今御意見をいただいたわけでございますけれども、これから審議の中で私たちもしっかり議論していかなきゃいかぬなと思うのは、十二条を今回のような形で変えてきた場合に、何がどう変わるんだろうと。

 つまり、防衛省の中で、これまでは、この案件に関しては、こういうふうな経路を通じて起案され、各局内で合い議を経、そしてここに会議が持たれ、この人がオーケーということを出した上で、ここにこう上がってこう決まっていたんだと、いろいろな、私も役人でありましたから何となくイメージするんですけれども、そういう事務のルーチンがあると思うんですね。これが今の十二条で成り立っていたものがあって、これが新しい十二条で何がどう変わるんだろうかという点。これはこの議会の審議の中でもよくよく大臣等にもお尋ねしていきたいと思います。

 先生は大学でいらっしゃるので、内部の方ではいらっしゃらないから、全ては御存じないと思いますけれども、先生が理解される中で何がどう変わるのかなというところを教えていただければなというふうに思うんです。

 その若干のヒントみたいなものは、これまで内局を通じて防衛大臣に報告されてきたものが、今後は統幕長から直接大臣に上がる、こういうふうなところがちらっと見えましたけれども、こういったことも含めて、事務のフローが一体どういうふうに今後変わっていくんだろうというところに関しての見通しみたいなものがあられたら教えていただけたらと思います。

武蔵参考人 ありがとうございます。

 法律に基づきまして、旧防衛庁のときには、保安庁時代の事務調整に関する訓令というのがございました。これが九七年の橋本内閣のときに廃止されましたので、現在は、いわゆる訓令という形での事務の権限関係というのではなく、実質的な内部でのマニュアルという形で運用されているのではないかというふうに推測いたします。

 当時の訓令に基づきまして、少し資料などを参考に御説明させていただきますと、現在の十二条という規定があることによりまして、例えば、幕僚監部が作成した案につきましては長官が指示をいたしますが、その指示の段階において原案を立案するのは内局でございます。また、幕僚監部が作成した計画等の案につきまして、内局がその案を審議するということになっております。

 すなわち、内局を通さずに大臣が指示をしたり、内局を通さずに大臣に対して計画を上げるということはしていなかったということでございます。

 また、長官への、現在は大臣ですね、大臣への上申や報告に関する基本的重要な件に関しては必ず内局を経由すること、また、十二条におきます一般的監督の補佐権限がございますので、各局の所掌事務に関して内局が幕僚監部に対し必要な通報を求めることができるということで、自衛隊の隊務全般に関しまして、内局がその所掌事務に関して連絡調整等の形で幕僚監部と常に通じて行っておりました。

 ところが、これは、やはり十二条というものがあり、こうした訓令があり、行われていたわけであります。十二条におきまして、今回の改正では、政策的見地から、幕僚長の持つ軍事専門的助言と相まって補佐をする、また、八条の所掌事務のところに「総合調整に関する機能」というものが付与された。

 では、こうした政策的見地からの補佐と総合調整機能というものによって、従来の、大臣が指示、承認、一般的監督をする際の補佐とどう違ってくるのか。

 これは、恐らく、特に重要なのは、やはり一般的監督の補佐の権限というものがなくなることによって、先ほど申し上げましたように、大臣が出す指示やあるいは承認する案を内局が十分にチェックできるのかどうか。もちろん、内局にもそういった調整という観点からの報告もあり、内局が意見を述べるということもあるかもしれませんが、そこのところにおいて内局の権限が弱くなるのではないか。

 また、一般的監督の補佐がなくなるということによって、各局に対して所掌事務に関して必要な通報を求めるということが、根拠規定がなくなるわけですね。

 こういったことから、必ず内局を通して、内局を経由して大臣に報告する、そういったことが法的な根拠がなくなるためにおろそかになる危険があるのではないか。

 もちろん、こうした根拠があろうとなかろうと、いざ緊急事態になりましたら、例えば災害派遣や海外派遣において迅速性が要求される場合に、内局を通さず、直接幕僚監部からの意見や情報というものを得て大臣が決定するということは、民主党政権におきましてもそういうことが多々あったということはお聞きしております。

 そういう意味で、内局からの情報、また幕僚監部からの情報というものをどのように扱われるかということは、自衛隊に対する指揮監督権を持っておられる防衛大臣の御判断によります。

 ただ、そのときに、十二条の根拠規定というものがなくなると、必ずしも内局というものを通さずに行われるということが今後起こり得るのではないか。特に迅速性が要求される場合に、内局がタッチしないまま幕僚監部の情報で大臣が意思決定を行う、そのことが、軍事的合理性が突出してしまい失敗に至るとか、あるいは憲法や政策的見地から見て問題が生じるということを危惧しているところでございます。

 以上でございます。

大串(博)委員 ありがとうございます。

 武蔵先生にもう一問お尋ねさせていただきたいのですが、武蔵先生の資料の中で、米英独仏の国防組織の中枢機構の内部部局においては文官と制服組が七対三の割合で混在しているんだ、こういう仕組みになっている。日本はそうでないわけですね、内局は内局の背広組で占められている、こういうふうな特異な仕組みになっているということでございました。そういったことも含めて、一つの行き方として、背広組と制服組をもっともっと組織の中で混交させていくということが適切ではないかというふうな御意見をここに述べられていました。

 諸外国の状況がどういうふうになっていて、それが、すなわち制服組と文官との融合をよりよくうまくつくり出していっているどういった例として働いているのか、その辺に関する諸外国の知見を少し教えていただければなというふうに思います。

武蔵参考人 お答えいたします。

 私のペーパーでは、英米独仏におきましては、混合組織であるということで、その割合を大体七割から三割というふうに書かせていただきました。これは国によって若干数字に幅がございます。

 ただ、やはり、日本でもともと、内局が文官のみによって構成される、そういう制度を保安庁のときにとった経緯を申し上げますと、それは、戦前の陸軍省、海軍省のいわゆる省部が全て軍人によって占められていた、すなわち、省部も、軍令部、軍政、軍令の全てが軍人によって占められていた、そういう反省から、内局は文官によって占めるということが行われたんだと思います。

 ただ、それは戦後直後のことでありました。今日、自衛隊を実際に海外も含め運用しなきゃいけないという状況になってきたときに、果たして、現場の運用経験のない事務官、文官だけで自衛隊の運用をチェックしたり、あるいは、防衛計画の作成などにおいてもやはり軍事専門的な知見というものを取り入れる必要があるだろう。

 諸外国におきましてはそういったことは当然行われているわけでありまして、すなわち、内局の中で、アメリカであれば国防長官府でございますが、その中で、政治任用のいわゆる文官と、そして制服というか軍人の双方が、お互いにそれぞれの専門知識を生かしながら、協力しながらやっていくということでございます。

 ただ、軍人が例えば内局の幹部ポスト、トップのポストを占めるということになれば、これは戦前と同じことでありますから、あくまで、軍人が例えば次官になるとか、そういうことはございません。

 そういう意味で、日本におきましても、文官に加えて制服組の方が内局で今後さまざまな役割を果たすと思いますが、ラインのところに余り入り込んで、例えば局長クラスに制服組がなるということになれば、内局そのものの存在意義がなくなるのではないかというふうに思っております。

 以上です。

大串(博)委員 それでは、武蔵先生にもう一問、先ほどお話しになっておられました装備庁に関してもお尋ねさせていただきたいと思うのです。

 先ほど白石先生の方からも、装備庁、人をつくっていく、教育、人材育成というんですか、これが非常に大切だということのお話がありました。武蔵先生のプレゼンテーションの中でも、装備庁をつくって、ここは文官と武官が混交する組織に本格的になるわけだけれども、そういった中で統合のメリットをどうやってつくっていくのか、そのガバナンスが大変大切ではないかというような御指摘もございました。やはり組織をつくっていった場合に、魂をどう埋め込むか、どうその機能を発揮させていくかというのはとても大切だと思うんですね。

 その場合に、確かに今回は新しい組織です。これまで防衛省においては、組織を、どちらかというと防衛省内に、防衛施設庁の問題等々もあり、逆に統合していく中にあったのが、今回久しぶりに外局をつくる、そういった形になっている。そういう中で、この防衛装備庁という機能がしっかり果たされていくために、どのような論点が重要であり、ポイントとなっていくのかという点に関しての御見識を少し教えていただけたらと思います。

武蔵参考人 ありがとうございます。

 新しくできる組織は、事務官、技官、それから研究職、自衛官という四つの異なる職種が合わさった、寄せ集めの集団になりかねないという危惧があります。

 伝えられているところによりますと、装備政策の担当は文官で、装備取得の担当は制服組といった従来の縦割りがそのままこの新しい組織に持ち込まれるのであれば、余り統合のメリットはないのではないかなというふうに思っております。

 そういう意味で、機密という問題もございますが、組織のリーダーシップやマネジメントという点では、例えば外部から出身者を任用するということも検討すべきではないかというふうに考えます。

 もちろん、そういった外部からの任用では、内部の職員の士気の問題もございます。そういう意味では、まさに現場の担当職員が、こういったUCが混合した組織でございます、プロジェクトというものをつくり、そのプロジェクトの中でマネジャーという方を置かれ、チームとしての士気を高めるような、職員の専門性を高めるような運用をしていくべきではないかというふうに思っております。

 また、大規模な組織ができますと、どうしても権限が集中し、腐敗を招きかねないという問題がございます。それにつきましては、内部、外部からの二重のチェックによる監察と監査ということでございますが、しかし、これまでもこのような不祥事というのはたびたび起こってきたわけであります。こういったことを申し上げると申しわけございませんが、例えば政治家の介入を防ぐとか、あるいは個々の職員が専門職業家としてのプロフェッションとしての意識を向上させる、こういったことが必要ではないかというふうに思っております。

 以上です。

大串(博)委員 ありがとうございました。大変勉強になりました。

 細谷先生、西川先生、済みません、質問が及びませんで。ありがとうございました。

北村委員長 次に、下地幹郎君。

下地委員 きょうは、四人の先生方の見識をいただきまして、ありがとうございました。

 私どものこの安保委員会では、この前、長期契約法案というのをやりました。そして、今回、防衛省設置法案をやるわけですけれども、その後、安保法制度をやるということになってまいります。私は、この三つの法案の意義というのは、法案ごとに変わっているんじゃなくて、この法案が全部関連しているというふうに思っておりまして、特に防衛省設置法の一部改正法案については非常に大きな意味があるというふうに思っているんです。

 しかも、これは項目がみんなで七つあるんですよね。本当は、防衛省設置法案を一くくりにして、七つの法案を一つの法律にしてやること自体に僕は無理がある、一つ一つが本当に重要な法案だというふうに思ってはいるんですけれども、その中でも、特に文官統制の話はこの法案にとって非常に大事なところだというふうに思っていまして、そのことを、基本的なところをぜひお聞かせいただきたいというのを私の質問にさせていただきたいというふうに思います。

 政府、中谷防衛庁長官は、文官統制については存在していないと否定しているわけなんですよ。これはもう国会答弁でも明確に大臣が言っているわけですから。しかし、今回、十二条の改正も行うというようなことになってきまして、政府が、文官統制はないということを大臣が明確に言っておりますけれども、そのことについてどう思われるのかというようなことが一点。

 それと、私は、この文官統制はあった、今でもある、十二条が存在している以上はあるんだというふうに思っているんですけれども、この十二条の意義みたいなものはどこにあるのか。

 二つについて四人の先生方の御意見をぜひいただきたいというふうに思っておりますので、細谷先生から順次お願いできたら、お願いいたします。

細谷参考人 文官統制という言葉と文官優位ということがございまして、恐らく、統制というのは、これはそもそも文官が大臣を補佐するということになりますから、したがって、文官統制がなかったとしても、補佐をする上での内局の官房長、局長が優位に立つということでは、この優位ということは、今先生がおっしゃられたような意図でいえば、恐らくあるんだろうと思います。

 それを前提にしまして、今回の改正についての意義ということを、私が考えることを申し上げさせていただきますと、先ほど武蔵先生から、内局と統幕、あるいは制服、背広の交流がこれから重要になるということをおっしゃられておられまして、私は全面的に賛成でございますし、また、武蔵先生はこの分野の第一人者の先生ですから、非常に詳細に正確、緻密な御意見をいただいたと思います。

 その上で私の意見を申し上げさせていただきますと、武蔵先生も言及されておられましたが、やはり今までの大きな問題はライバル関係ということがあったんだろうと思います。つまりは、内局と統幕の間で人事交流が非常に限定的である。ところが、今回の改正によって新しく、内局と統幕というものが、これは制服、背広の関係でいうと、それぞれがきれいにすみ分けられるものではなくて、制服の方が内局でより一層勤務をすることが多くなってくる。また逆に、統幕も、これまでは統幕というのはあくまでも制服の組織であったわけですが、その中でも、新しい、十二条改正によって、文官の、背広組のポストである運用政策総括官、そしてさらには運用政策総括官を補佐する運用政策官という、文官が、いわゆる背広組がこれから統幕で勤務するということは非常に大きな意義があると思います。

 したがって、これによってより一層、従来に増して制服と背広の交流が広がっていって、そして、相互の交流に基づいてお互いの信頼関係が高まっていく。そうすると、統幕が運用に関してより一層大きな影響力を持つといっても、これはそのまま自衛官の、制服の影響力が大きくなるという、全くこれはイコールということではなくて、つまりは、統幕の中で文官の、背広の方が勤務するわけですから、つまりは、従来以上に制服、背広の緊密な連携が深まって、その相互の連携、協働に基づいて、より一体感のある迅速な決定がなされるんだろうと思います。そういったことで、やはり、制服、背広の交流を促すという点でも、また、統幕と内局というもののきれいな境界線というものをより総合的に行っていく上でも、今回の改正が重要になるわけです。

 その上で、やはり忘れてはならないのが、なぜ、そもそも従来のような文官統制があったか、あるいは文官優位があったか、あるいは文官がそもそもなぜ大臣を補佐する上で優位にあったかというと、そもそも、国民のレベルやあるいは議員の方々、先生方のレベルで安全保障の緻密な議論というものが必ずしも前提とされていないケースが多かったと思うんです。

 ところが、これからは、防衛大臣になられる方、あるいは三役につかれる方々が従来にも増して、より一層総合的な判断、調整的な判断というものを持って、大きな責任を持って防衛政策というもの、あるいは自衛隊の運用というものを考えていかなければいけないということで、国民と、あるいは重要なポストにつかれる三役の方、大臣の方、さらには立法府である国会が従来にも増して安全保障の問題、国際安全保障の問題、そして防衛の問題に対してより深い理解と知識というものが求められて、また同時に責任が求められてくるんだろうと思います。

下地委員 先生、ありがとうございます。

 私の質問のところの、中谷大臣発言についての先生方の御意見をまずお聞きしたいということが一点と、先ほど申し上げた十二条についての、今の文官統制があるということの根拠になっている十二条に対する御意見と、これが破棄されるというようなことについて文官統制がどうなるのか、この三つの論点でぜひお話をいただきたいというふうに思います。

白石参考人 どうもありがとうございます。

 三点申し上げます。

 文官統制、文民統制、英語にしますと、文民統制というのはシビリアンコントロールで、文官統制というのはシビリアン・オフィシャルズ・コントロールで、こんな妙なものはそもそもあるわけがないので、仮にそういうものがかつてあったとしたら、それは、先ほど細谷参考人が指摘されましたとおり、日本のかつての歴史のある意味では負の遺産だったんだろうというふうに思います。

 二番目に、これから期待されますことは、武官と文官のいわば仕事上におけるハイブリッドな組織をどうつくっていくかということがやはり非常に重要だろう。

 その上で、一つ申し上げますと、実はこれは、日本の自衛隊の場合もそうですし、外国の軍事組織の場合もそうですけれども、武官ぐらい勉強する人たちはおりません。大体において、現場で二年ぐらいやると、また今度は一年学校に戻って勉強する。一生勉強する人たちが実は武官でして、それと別に、日本の、特に、公務員試験を取って、それでキャリアということで入ってくる文官は、オン・ザ・ジョブ・トレーニングはやりますけれども、入って数年して一度留学する以外はほとんど学校に行って勉強するようなことのない人たちでございます。

 ですから、ここのところを、両方をきちっとある時間を置いて学んで、それを持ってまた仕事に戻っていくような人づくりの仕方をつくっていくいいチャンスだということを二番目に申し上げたいと思います。

 それから三番目に、日本のシビリアンコントロールの議論を聞いておりまして、一つ、私としてどうも余り重視されていないのかなと思いますが、実は非常に重要なことは、日本の特に自衛隊の人たちというのは、実は、日本語で文民化と言うと何か妙な意味を持つんですけれども、英語でシビリアナイゼーションと言うと、要するに市民化しているんですね。つまり、軍人と普通の一般の人たちというのは何か違う文化を持っているんじゃなくて、実は日本の今の自衛官の人たちというのは、ある意味ではごく普通の人たち、ごく普通の市民的な感覚と常識を持っている人たちで、これこそが実は日本の戦後七十年の財産だろうというふうに私は思っております。

 ですから、余り内部の統制において、文官統制、そもそも妙なものがあっては困りますし、そういうものはこれからは特に心配する必要もないのではないだろうかというふうに考えております。

武蔵参考人 お答えいたします。

 中谷大臣の答弁が、防衛庁創設以来の担当大臣の、あるいは総理の答弁との変更があったのではないのかということでございます。

 これはもう国会審議で、これまで予算委員会等で御議論がなされておりますが、基本的に、例えば佐藤総理の発言、あるいは竹下首相の発言と申しますのは、文官統制はあるんだということを確かにおっしゃっているんですね。ただ、他方で、防衛庁を創設したときの担当大臣は、内局と幕僚監部の双方がそれぞれの、例えば内局は政策的見地で、幕僚監部は軍事専門的見地で、両輪となって大臣を支えるんだというようなこともおっしゃっているわけです。

 そういう意味で、中谷大臣になって解釈が変更になって、文官統制はないとか、なかったんだというふうに大臣が必ずしもおっしゃったわけでなく、両面性があったんだ、文官統制という面もあったし、両輪として支えるという両面もあったんだと。しかし、その中で、今回の法改正においては特に、文官統制という言葉そのものはもう使わないようにしよう、そういう意図で大臣はおっしゃったのではないのかというふうに思うわけです。

 と申しますのも、統制という言葉は、まさに上から下に対して指示し、命令するということであります。設置法の十二条の規定は、必ずしも内局が上にあって幕僚監部を指示、命令するということではございません。指示、命令するのは大臣であります。その大臣を補佐するというのが内局の役割ですから、文官が幕僚監部を統制するという言葉自体がミスリーディングだったというふうに私は理解しております。

 そういう意味で、今回、文官統制という言葉をあえてかぎ括弧を使って私はお話しさせていただいたわけですが、他方で、内局の文官が、いわゆるチェック・アンド・バランスの関係で持ってきた意義というものは決して今日においてもなくなったわけではございません。

 十二条を改正しますと、大臣の一般的監督の補佐というものが条文上なくなります。防衛大臣の運用によっては、従来どおり、内局の意見も踏まえながら妥当な適合性のある決定がなされると思いますが、どうしても、一般的監督の補佐というものがなくなるということによって、バランスが制服組の方に移行するのではないかという危惧を私は今回の法改正では感じているところでございます。

 以上です。

西川参考人 先ほども申しましたけれども、アメリカでは、シビリアンコントロールをケネディの時代にマクナマラ長官が主導してつくり上げました。

 私はアメリカの例でちょっとお話ししたいと思うんですけれども、シビリアンコントロールの成果といいますか、その場合には、やはり軍と民との利害の対立といいますか、そういうものは当然生じるわけでありまして、軍の方はできるだけ、幾ら高価でも性能のいい武器が欲しい、戦争を考えると当然そういうことを思うわけでありますが、それに対して文の方は、外交的な見地とか財政的な見地から、一応、必要なものと必要じゃないものを区分けしていって合理的に考える、合理的な武器の生産、調達というものを考えるのが文であるというふうなことであったわけであります。

 しかし、実際には、マクナマラ国防長官のもとでアメリカはベトナム戦争をやったわけでありまして、戦争のための歯どめになるということでは必ずしもないと思います。

 したがって、シビリアンコントロールをしいたからといって軍が暴走するのを抑えるということには限界があるかと思いますが、それでも、ないよりはましだ。つまり、一度、周囲の情勢を考えて、それで自分のやっていることの妥当性を考える、そういう機会は、当然、シビリアンコントロールを導入することによって出てくるだろうというふうに思います。

 以上です。

下地委員 もう時間がないので私はこの一本で終わりますけれども、昔、自民党政権のときにも、官邸に制服組が制服で来ることに対してもいろいろな意見がありました。民主党政権のときに初めて、総理の秘書官に制服組がついたんですよ。北澤防衛大臣がそれをやるということを決めて、つけたんです。そのときも相当にその論議がありました。

 そのときの論議は、総理のアドバイザーとして制服組が行くことがいいのかどうなのか。これは私からすると、私は判断をなかなかできにくかったんですけれども、総理の横で、こういう緊急事態がある場合には、いろいろなことがあって、いて当たり前だというんですけれども、私のような戦争を知らない世代が、これが当たり前だということで断定することについてちゅうちょがあったものですから、あのときは余りそういう発言をしなかったんです。

 そういう意味でも、この文官統制の話というのは物すごくこれからの日本のあり方にとっては大事なものであって、当たり前だとかというので切り捨てるのではなくて、やはり、歴史の中で生まれてきたこの流れをどうやってしっかりと論議をしながら前に進めるか。

 この文官統制、十二条を破棄するのであっても、やはり国民が理解するというようなものをしていかなければいけない。しかも、歴代の内閣総理大臣の発言と今の防衛大臣の発言が全く違うというようなことなどを踏まえて、私は、この文官統制という話は特にこの設置法の中では深い論議をする必要があるんじゃないかなということを申し上げて、私の質疑を終わらせていただきます。

 本当にきょうはありがとうございました。

北村委員長 次に、伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 本日、お忙しい中で参考人の先生方皆様にはお越しいただきまして、また貴重なお話を聞かせていただきまして、本当にありがとうございます。

 早速、質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、白石参考人にお話を伺いたいんですけれども、白石参考人は、アジア、とりわけ東南アジアのずっと、専門でいらっしゃいますが、今回、防衛省の所掌事務の中に「国際協力に関すること。」というのが法案で盛り込まれるということになりました。これは、もともと中央省庁の行革の際には、どの省庁にも、所掌事務に関する国際協力に関することというのは全部入った。ところが、防衛省と外務省だけ入らなかった。

 その際、防衛省は海外との協力にどういうものがあるかと、いろいろな議論があったとは思うんですが、今は状況も大分変わりまして、海外との協力は、今までの日米安保という世界だけからどんどん拡大していっている。防衛装備移転三原則、これによる海外との協力というのも今後拡大していくでしょうし、あるいは、開発途上国の能力の構築、能力構築支援というのも二〇一二年から防衛省は行っておりますが、こういうような状況を見て、国際協力の根拠の規定を置こうというのが今回の改正だと思っております。

 とりわけ東南アジア諸国、では、防衛省がどういう協力をしていくか。東南アジア諸国を初めいろいろなその他の地域に対して、防衛省の国際協力としてどういうような協力を今後行っていくべきかというものについて伺いたいと思います。

白石参考人 どうもありがとうございます。

 特に東南アジアさらには南アジアあたりを考えますと、二つ、直ちに思い浮かぶことがございます。

 一つは、これは最近日本語でも使われるようになってまいりましたけれども、太平洋からインド洋にかけての極めて広大な地域をインド・太平洋という言葉でつかまえて、この地域を一つのシアター、舞台として、日本の安全保障、あるいは非常に大きな地域の安定ということを考えよう、そういう考え方が非常に強くなってまいっております。

 これは、日本の場合には、シーレーン一つとりましても死活的な重要性を持つ問題でございますが、この分野で、特にアメリカといわば協力しながら、この地域の安全保障において、例えば海の安全保障において協力していく。特に、例えば合同演習のようなものを実施するということによって協力していくというのは、これは極めて重要なことだろうというふうに思います。

 それからもう一つ、これは日本の自衛隊の戦後の歴史を考えれば直ちにわかることですけれども、実は、防衛ということ以上に、実際には、例えば災害復旧支援のようなものであるとか、ほかの役割が極めて重要になっているということも間違いございません。ですから、その意味で、安全保障協力ということの一環として、例えば災害支援のようなところでの協力、あるいは、この前の三・一一以降のアメリカの協力によってトモダチ作戦等が行われましたけれども、こういうものを踏まえた、ある意味では地域的な演習、こういうことがこれからは東南アジアにおきましても非常に重要になるのではないだろうかというふうに考えております。

 それで、最後に一つ、これは必ずしも防衛ということではございませんで、もう少し広い安全保障ということから申しますと、やはり現在、ASEANの国々さらにはインドのような国にとりましては、この地域の力のバランスをどう維持して、これが突然がらがらっと壊れないようにするか。新興国が台頭することによって力のバランスが徐々に変わっていくのはいいけれども、そういう中で秩序をどう維持していくか。そのために、やはり日本に非常に大きな期待が今かかっている。そういうメッセージを送る意味でも、日本としてはいろいろなことがまだできるんだろうというふうに私は考えております。

伊佐委員 ありがとうございます。

 白石先生は総合科学技術会議の議員もされていらっしゃいましたので、その観点でも少しお伺いしたいと思うんです。

 防衛装備庁の話で、これまで研究開発をずっとやっていた技術研究本部というのを廃止する、防衛装備庁の中に取り込むということなんですが、研究開発の段階から取得、廃棄、このライフサイクルというものをしっかりと管理していこう、プロジェクトマネジャーというのを置いて、そのもとにプロジェクト管理をしっかりやって、研究開発の段階から考えていこうというような取り組みだと思います。

 白石参考人の資料の中にも書いてありますとおり、考えるべきこととして産官学の協働と書いてありますが、これは、意味するところを逆に言えば、今この産官学の協働というのはなかなか進んでいないということをおっしゃっているんじゃないかと思います。また、防衛部門の技術開発、民生部門技術開発の連携、うまくつなげるというのもなかなか進んでいないというのも以前おっしゃっていただいておりました。

 そういう意味では、今回の装備庁というものができることによって、こうした観点が改善されていくことを期待されているかどうか、お伺いしたいと思います。

白石参考人 どうもありがとうございます。

 これは非常に重要な点でございまして、私自身、内閣府の総合科学技術会議の議員をしておりましたときに、正直申しまして、なかなかうまく進まないということで非常に悩んだ点でございます。

 一つ、これについてまず申し上げておくべきことは、両用技術、デュアルテクノロジーという言葉がございますが、この言葉が受けとめられる、その受けとめられ方でございます。

 デュアルテクノロジーといいますと、例えばアメリカでは、研究開発投資というのはかなりの額が国防省によって行われているために、意味としては、軍事的な目的のために投資されている研究開発投資というのは実は民生にも非常に重要です、そういう意味でデュアルテクノロジーという言葉が使われるわけですけれども、日本の場合には、デュアルテクノロジーと言った途端に、これは軍用技術に対する研究開発投資だと受けとめられて、そうすると、大学あるいは国の研究機関ではそういうことをやろうという意思がなかなか生まれてこない、これが現実でございます。

 だけれども、もう既に御承知のとおり、科学技術、イノベーションの世界というのは、オープンサイエンス、オープンデータ、オープンイノベーションの時代でございまして、何か最初から軍用でつくるなんということではございません。技術というのは、そんな、軍用も民用もないんですね。これを、オープンにいろいろなところでつくられていくのを見ながら、防衛にとって役に立つものは、そういうことを担当にする人たち、つまり防衛装備庁にこれから配置される人たちが考える、そういうことになっていくのであります。

 ですから、その意味では、これは一つの非常に重要なきっかけになるというふうに期待しておりますが、ただ、一つ申し上げておきますと、まだそのための予算配分というのは、私の知る限り三億円程度でございます。例えば、文部科学省が大学等の研究機関あるいは大学研究所に自由な研究のために配分しております科学研究費、これは二千億を超えております。そういうことからいいますと、実は、私がかつて京都大学におりましたときにいただきました特別研究費、京大で、ある一つの大きいプロジェクトをやるために五年いただいたお金の、これは半分にも至らない、その程度の極めて小さいもので、これは数桁上げないと、なかなか実際には意味はないのではないだろうかと考えております。

伊佐委員 ありがとうございました。

 では次に、細谷参考人に文民統制の件を伺いたいと思います。

 文民統制のまず定義が何なのかというところだと思うんですが、もちろん、歴史的な経緯がさまざまあって、もしかするとその中で変遷もしているのかもしれませんが、三月、中谷大臣の統一見解として示されたのは、文民統制というのは「民主主義国家における軍事に対する政治の優先を意味する」と。国会における統制、内閣における統制、防衛省における統制という見解が示されました。

 きょうのお話、細谷参考人のお話では、もうちょっと広いのかなと思いました。というのは、民主的統制というものを強調されていらっしゃった。

 確かに、シビリアンコントロールといったときに、では、シビリアンとは一体誰なんだ、もしシビリアンというものが政治だというのであれば、政治が絶対に暴走しないということは言い切れないわけですから、そうしたときに、では、そういう事態を避けるためには最終的な歯どめは何になるかというと、主権者たる国民ということになるわけです。

 恐らく、そういった意味で民主的統制というのが大事だということをおっしゃったのかなと思っておりますが、そういう意味では、では、民主的統制というのは一体何なのか。例えば国民の皆さんに防衛関係の情報を公開することなのか。どういうふうな具体的なことをお考えになっておりますでしょうか。

細谷参考人 ありがとうございます。

 シビリアンコントロールといいましても、これはやはり国によって政治体制が異なりますので、アメリカの場合、イギリスの場合、日本の場合、それぞれがまず異なってくるんだろうと思います。したがって、政府見解で出ております、先生に御紹介いただきました定義というのは、これはやはり日本の政治体制の中でシビリアンコントロールを考えたときのシステムということだろうと思います。

 これをもう少し広く捉えますと、シビリアンとミリタリー、これは戦時国際法でも、一般的に、軍人、ミリタリーと、民間人、非軍人ということでシビリアンというふうに分けるわけでございますが、このように、軍のコントロール、誰が軍をコントロールするのか。

 軍自体が軍をコントロールする。これは、例えば、私の専門のヨーロッパ外交史でいけば、十八世紀、十九世紀、二十世紀半ばに至るまでのドイツが、軍が統帥権を持つということになります。そして、このプロイセンの国家体制を模倣したのが日本でございますから、当然ながら、民主的なコントロールというものが軍にはきかないわけですね。これは統帥権の話で、戦前あったことであることは言うまでもございませんが。

 したがって、このように、もともとをたどってみれば、軍を誰がコントロールするのかということで、そのコントロールする主体が日本の場合には総理大臣です。自衛隊の最高司令官である総理大臣が最高指揮権を持っている。そしてさらには、日本の場合、議院内閣制ですから、これはあくまでも国会のもとに総理大臣が行動する、そしてさらには内閣というものがある。このようにして何重にも、政治の中で軍をコントロールするシステムが、行政レベルでも立法レベルでも当然あるわけでございます。

 そのような形で、日本の民主主義というものがどのように政治を行っているかということを考えた上で、民意を反映した日本の民主主義のシステムの中で、立法的、行政的、さらには防衛省の中でもさまざまな形で、軍、日本の場合は自衛隊をコントロールするシステムが確立している。これが日本で言うところのシビリアンコントロールであり、また民主主義国である日本が行うシビリアンコントロールということで、民主的統制ということになるんだろうと思います。

伊佐委員 ありがとうございます。

 このテーマをもう少し掘り下げて議論させていただきたいと思うんですが、武蔵参考人に伺いたいと思います。

 では、シビリアンコントロールというもの自体が、時代とともにと私先ほど言いましたが、変遷もあるんじゃないか。つまり、昔であれば、どちらかといえば消極的なシビリアンコントロール、つまり、軍事が暴走しないようにしっかりと政治が抑えなきゃいけない、こういうような消極的なシビリアンコントロールから、今ずっと語られていますのは、どちらかといえば積極的なシビリアンコントロール、つまり、政治がしっかりと自衛隊、防衛力を使っていこう、政治の意思のもとで国益に合致した形でしっかりと活用していこう、こういうような積極的なシビリアンコントロールに変わっていっているんじゃないかと思います。これは、安倍政権の今、積極的平和主義という文脈においては、まさしく呼応しているものかなというふうに思っております。

 では、いわゆる文官統制というものについて、これもどんどん実は変遷してきているんじゃないか。武蔵先生が以前書かれたものを読ませていただいたんですが、そこに書かれていることの趣旨を申し上げると、冷戦の前後で、内局による文官統制というのがどんどん薄まっていった、今は、防衛大臣みずから統制の主体となる直接的な統制の傾向がふえてきた、直接的に大臣が統制するようになってきた。これは当然、本来の文民統制なわけです。国民の代表として選ばれた大臣が直接統制するというふうに変わってきたんだということをちょっと述べられておりましたが、少し事例を踏まえて御説明いただければと思います。

武蔵参考人 ありがとうございます。

 文官統制にかわり、防衛庁長官や防衛大臣が、いわゆる間接統制ではなくて直接統制という要素がふえたということは、私も著書で書かせていただきました。

 これはやはり、自衛隊の積極的活用が国際情勢の変化から必要になったということが一点。もう一点は、そうした自衛隊に対する世論の評価というものが、災害派遣やPKOなどの結果、肯定的な評価に変わってきた。

 そういったことから、従来、防衛庁長官や防衛大臣というポストは、自民党の中では余り人気がないポストだったわけですね。そういう意味では、ハト派の方が長官につかれたりということもございました。ところが、私の研究では、二〇〇〇年代以降、防衛庁長官、防衛大臣になられる方は、自民党の中でも国防部会長経験者がふえておりまして、いわゆる国防族の方がなられているんです。

 そういった意味で、余り大臣が自衛隊を活用、運用することに積極的でなかった冷戦期から、冷戦後は、むしろ、自衛隊というものの存在意義を認め、それを有効に活用したいという大臣の意識が変わった。それが、大臣が直接的に自衛隊を統制しよう、そういう傾向が増してきたのではないか。すなわち、自衛隊を統制する側の主体である大臣の、安全保障や防衛問題に関する取り組みの意欲が増した、そういうふうに考えております。

 以上です。

伊佐委員 ありがとうございます。

 これは、私、難しいのはやはりバランスだと思っておりまして、どういうバランスをとるのか、つまり、文官統制というのか、あるいは文民統制の一つのツールとしての内局の調整というのか、言い方はいろいろあると思いますが、こういったものと軍事的適合性のバランスをどうとっていくかということかなと思っております。

 武蔵参考人もこの資料の中で触れられておりますとおり、文官というのは、政策とか法制とか予算とか、こういう、制服組が必ずしも得意ではない分野というのは、内局としてはこれから担っていくわけですから、十二条がどういう形であったとしても。そういう意味では、文官としてのこういう調整の仕方というのは当然残っているわけですし、また、さっき発言の中でもいただいたように、八条というものが残っている。つまり、自衛隊の行動の基本に関するところというのは維持しているということですので。

 こうした文民統制の一つのツールとしてのいわゆる文官統制というものはやはりある程度残しながらも、逆に、余り出過ぎると、軍事的な専門家でない文官によって、軍事面での計画であったりとかあるいは教育訓練であったりとか、こういうようなところによくない影響を与えるかもしれない。

 このバランスをとるのが一番難しくて、このバランスの変遷がこれまでの歴史の変遷だったとも言えるのではないかと私は思っているんですが、いかがでしょうか。

武蔵参考人 ありがとうございます。

 確かに、内局の文官が軍事専門的知識を欠くことによって、例えば、防衛力の整備において従来内局がやってきたのは、三自衛隊、三幕僚監部のそれぞれの意見の違いの調整といったようなことが主であって、いわゆる統合運用という観点からの、戦略的な観点からの内局の関与が不十分であったのではないか。そういう点では、現在、三自衛隊を統合運用するということも進んでいますし、それは何も運用だけではなく、今後は、防衛力の整備に関しても統合運用というのは一層進めていかなければならないと思います。

 そうした点で、やはり、内局の中にもしそうした軍事的な観点からの不足があるならば、それは、内局の文官自身が統合幕僚監部での運用の経験等を積むことによってスキルを身につける必要もあるし、また、制服組の方が、ラインではありませんけれども、内局のスタッフの中で働くことによって、UCが協働しながらやるということで、従来そごがあったような問題は今後改善されていくのではないのかなというふうに思っております。

 ですから、文官が制服組を統制するというのではなくて、統合幕僚監部や制服組だけが物事を決めるではなくて、それを、大臣を補佐する中央部局としての内局もやはりチェックできる要素というのを残していかなきゃならない。その内局というのは何も文官である必要はないわけであって、文官を主体としながらも制服組も関与した組織でいわゆるチェック・アンド・バランスの関係をつくっていく。

 最初の言葉で申し上げますと、諸外国におきましても、国防大臣の下に、例えばアメリカでいえば国防長官府というのがあり、統合参謀本部というものがある、均衡した組織なんですね。その均衡した組織があることによって、参謀本部だけの意見で国防長官が決定しない、それは、国防長官府のスタッフのいろいろな意見を聞きながら決定するわけです。その中には、何も行政的な内容だけではなく、例えば作戦運用に関することも、実は国防長官府の文官スタッフが大臣に意見具申をしているわけなんですよ。

 そういった車の両輪として働かせていくという意味で、運用や計画にわたって従来のような内局の役割というのは十二条でしっかり維持していくべきであるというのが私の意見であります。

伊佐委員 ありがとうございました。

 時間の都合上、西川参考人、質問をお伺いできずに申しわけありませんでした。

 以上、本当に貴重な御意見をありがとうございました。終わります。

北村委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうは、四人の先生方にそれぞれ専門的な見地からお話を伺わせていただきまして、大変幅の広い議論になっているなということを実感しております。

 そこで、最初に西川参考人にお尋ねをいたしますけれども、今、政府は、昨年の防衛装備移転三原則に沿って、武器の輸出や国際共同開発への参加を積極的に推進しようとしています。また、来月の中旬には、昨年七月の閣議決定に基づく安保法制も国会に提出されようとしております。戦後の日本の外交、安全保障政策が大もとから変えられようとしているわけですが、今回の法案もそうした流れの中に位置づけられるものだと私たちは考えております。

 こうした安全保障政策の大きな背景として挙げられているのが、アメリカの能力が相対的に低下したもとで、日本がそれを補って中国の軍事力強化に対抗するというものですが、そうした捉え方について、西川参考人、どのように見ていらっしゃるか、御意見をお聞かせいただければと思います。

西川参考人 御質問ありがとうございます。

 アメリカの軍事的な能力が今衰えているというふうな言説がなされていることは事実でございますけれども、これは私は誤解だと思っております。

 実際には、確かに、オバマの予算措置力と申しますか、そういうものは共和党主導の議会によってかなり制限されておりますけれども、これにはオバマは抵抗したんですね。二〇一六年までは予算の強制削減、つまりこれは軍事費も免れないわけでありますけれども、それは免れる、つまり、最低の削減でそれを抑えるということに成功いたしまして、したがって、国防省もオバマのこの抵抗を非常に評価しているわけでありまして、あるいは、安堵の胸をなでおろしております。したがって、削減というふうに言われているのは、表面上の、強制削減と騒がれていることによるわけでありまして、実際には大して影響なくアメリカの軍事費予算というのは組まれているわけであります。

 その予算のもとで、新たなオバマの政策としてリバランス政策というのが着々と進行しているということだと私は思います。当然、それは、リバランスというのは太平洋アジア地域を対象とするものでありますから、そちらに軍事的な拠点を移そうということでありますから、日本もそれにかかわってくるわけでありまして、そうしますと、日本の役割というのが非常に重要になってまいります。

 日本は既に基地を提供しておりますけれども、その基地をこのリバランス政策の中心に据えようということが図られているわけでありまして、したがって、日本の自衛隊の本拠というか中枢部とアメリカの基地の中枢部が地域的にも今一緒に合体することになっております。ということは、リバランスというのは、アメリカの、中国をかなり意識した政策だと思いますけれども、それに対して、アジア周辺地域を、日本を中心に軍事的なプレゼンスを高めていくという試みが行われている、それがリバランス政策だろうというふうに思います。

赤嶺委員 今の問題と関連して、引き続きちょっと西川先生に伺いますが、重なるかもしれませんけれども、政府は、二〇一三年にF35戦闘機の共同生産に参加することを決めました。また、今年度予算には、新たに、米国製のオスプレイや水陸両用車、グローバルホークなどをFMSで調達するための経費も盛り込んでおります。ことしの一月には新たな宇宙基本計画を公表し、宇宙の軍事利用を日米一体で積極的に推進する方針を示しています。

 こうした政府の方針について、日本国内では日本の安全保障の文脈で語られておりますが、アメリカ政府あるいは産業界の戦略や動向との関係、冒頭のお話にもありましたが、これを、今の事態をどのように捉えればよいのか、この点についても御意見をいただければと思います。

西川参考人 お答えいたします。

 アメリカにとって日本の技術というのは非常に魅力的であるわけでありまして、それを軍事的に使いたいという願望はかねてより持っているわけでありますけれども、日本の方がそれに対応してこなかった。つまり、武器輸出三原則というものがありまして、簡単には日本の技術を、たとえ形の上は民生的な技術であっても、それを輸出することについては厳重な縛りがあったわけであります。

 それを、新たな防衛装備移転三原則というもので変えることによって、準備ができたというか、アメリカの要請に応える日本側の準備はできたわけであります。したがって、これから、防衛装備庁などができれば、ますますその動きは活発化していくだろうと思います。

 これについてアメリカからどういう働きかけがあったか、それについては私も資料がないのでわかりませんが、しかし、この結果をアメリカが喜んでいることは確かでありまして、つまり、F35の場合に、かなりアメリカは日本に対して厚遇といいますか寛容な態度をとっているということにもそれはあらわれていると思います。

 つまり、それはどういうことかと申しますと、F35については、最初から共同生産計画に入らなければ手に入らないというふうに言われていたわけですね。それに日本は入っておりませんでしたので、これは一大事というので、慌てて武器輸出三原則を変えてF35への参画の条件を整えたわけでありますが、時既に遅しといいますか、既にかなり共同生産の方は進行しておりまして、日本は購入の方に回らざるを得ない。しかし、売るということ、F35を日本に売るということについては、あっさりとアメリカは決断を下しております。その場合にさらに日本に、修理と、それから検査のための生産ラインをつくるということも約束しているわけでありまして、ほかに、世界ではイタリアに同じものがあるわけでありますけれども、これは、将来日本に、ほかの国々と違った技術供与といいますかそういうものを認めていることになるのではないかと思います。

 宇宙計画についても同様に、これは先ほどの白石先生のお話にありましたように、これはデュアルと申しますか、軍も民もないというところから出発しているわけでありますけれども、いずれ、宇宙のとり合いといいますか、宇宙の戦争というものに発展していくことは間違いないわけでありまして、したがって、その技術を磨くのにどこの国でも今懸命になっているところでありますが、その先頭に立つアメリカと日本が協力して、この宇宙開発の面でも大きな仕事をしていくだろう、それをアメリカは期待していることは間違いないと思います。

 以上です。

赤嶺委員 ちょっと時間がなくなってきましたので、武蔵参考人にお伺いをいたします。

 今回の法案は、防衛省設置法十二条を改定し、軍事専門的見地からの大臣補佐は各幕僚長が行うことを明記するものとなっております。また、防衛省内部部局の運用企画局を廃止し、部隊運用に関する業務を統合幕僚監部に一元化する改編が計画をされております。

 冷戦の終結に伴いまして、自衛隊を積極的に活用しようとする積極的統制が顕著になったことを指摘しておられますが、九〇年代以降、自衛隊が海外で実任務につくようになりました。そうしたことから、それに見合った防衛省の組織改編が必要になったということだと思いますが、そうした背景と今回の法案との関係をもう少し詳しくお話しいただけたらと思います。

武蔵参考人 ありがとうございます。

 自衛隊が海外で活動するということで、九〇年代以降さまざまな法律がつくられました。PKO協力法を初めテロ特措法、それからイラク特措法、こういった法律を、従来であれば内局だけが法制というのは担当したわけです。ところが、ガイドラインの策定をきっかけにして、どうしても、自衛隊を運用するということになると軍事専門的な知識が不可欠ということで、法制や政策に関することに関しても制服組の関与が顕著になってきた。これは事実であります。

 そういった実態を踏まえますと、内局と統合幕僚監部それぞれが協力する体制というのをつくっていく必要がある、すなわち、文官と制服組が協働していく仕組みが必要である、そういったことで、統合幕僚監部に運用企画局を一元化するといった必要性が出てきたのではないかなというふうに思っております。

 ただ、もともと、この防衛省改革はそういった議論で始まったわけではございません。これは、イラクの給油量の取り違え問題、そして、当時の前防衛事務次官の不祥事等々、自衛隊がさまざまな問題を起こしたということに関して、やはり防衛省・自衛隊の組織そのものを見直す必要があるということから始まった議論であるわけです。ところが、ガバナンスの確立をどうするかといった議論が、自衛隊をどう運用するかという議論に少しすりかわってしまったのではないかという感覚は持っております。

 ただ、現政権におきましては、東日本大震災等での自衛隊の運用の教訓を踏まえ、今日の自衛隊をどう活用するかという観点から、改めてゼロベースで内局と統合幕僚監部の関係というものを精査し直してお出しになられたのが今回の案ではないかというふうに思っております。

 ですから、その場その場で、行き当たりばったりで改革案ができたということは確かにそのとおりかもしれませんが、現在の案というのは、そういった、東日本大震災や自衛隊の海外での運用という観点から出てきた案ではないかというふうに理解しております。

 以上です。

赤嶺委員 引き続き、武蔵参考人に。

 そもそも、戦争放棄や戦力不保持、交戦権否定を定めた憲法九条のもとで、歴代政府は、自衛のための必要最小限度の実力組織だから自衛隊は憲法には違反しないと説明をしてきたわけです。

 世界有数の軍隊となり、海外への派遣を繰り返すに至っています。軍部の暴走を許した戦前の反省を踏まえて、防衛省においては文官が自衛隊を統制すると説明をしてきましたが、海外派兵を効率的に進める体制のためとして、それも今回廃止をしようとしています。

 憲法の文言が一切変えられていないもとで、これだけの変更がなぜ許されるのかということを私たちも考えるわけですが、この点についての参考人の御意見を伺いたいと思います。

武蔵参考人 ありがとうございます。

 自衛隊を海外に派遣するということが、今の憲法九条のもとで、全て違憲であるというふうには考えておりません。

 もちろん、海外での自衛隊の活動というのは、武力行使はいたしません。また、現在の与党協議の行方もございますが、武力行使と一体化するような後方支援というものも今の法律のもとでは認めていないわけであります。そういう意味では、自衛隊が海外の活動において憲法違反にならないような措置をしっかりと防衛省の中でつくっていく、そのためにこの内局の役割というのは私はあるのではないかというふうに思っております。

 ただ、現在、こうした安全保障法制というのは、内局だけで、あるいは防衛省だけでつくっているわけではありません。内閣官房が起案の部局という形になっております。そういう意味では、防衛省の中だけの問題ではなく、時の政権の意向、そういったものがやはり働いて内閣官房の中でさまざまな法律がつくられているということでございます。

 そういう意味で、防衛省の中だけで内局だけがしっかりとチェックするというだけではなく、私は、内閣全体において、特に内閣法制局の役割というのは非常に重要であった。そういう意味で、内閣全体が、憲法九条の観点から、自衛隊の海外派遣が違憲にならないような担保をしっかりとっていくべきである。何もそれは防衛省の内局、文官だけの問題ではないというふうに思っております。

 以上です。

赤嶺委員 それでは、白石参考人にお伺いいたします。

 昨年の十二月に設置された検討会の資料を見ますと、防衛関連企業の中には防衛以外の事業に対するレピュテーションリスクが存在することや、装備、技術移転を支援するためのスキームがないことが現状として指摘されておりますが、こうした現状についてもう少し詳しくお話ししていただければと思います。

白石参考人 どうもありがとうございます。

 私の知る限り、先ほども申しましたけれども、防衛産業に関与している多くの、特に大企業の場合には、防衛産業部門の、事業に占める比率というのは随分小さいものがございます。ですから、その意味で、レピュテーションリスク、つまり評判が悪くなることをあえてしてまで武器装備の移転ということで輸出をしていくとか、そういうことは、それほどインセンティブはございません。

 そういう中で、だけれども、日本が、政府として、日本の安全保障に資する、そういう観点から、例えばある装備体系というものを同盟国あるいは事実上の同盟国のようなところに出していく場合には、単に物を出してそれでおしまいという話じゃなくて、実は、これを長期にわたって運用する上でのプラットホームをつくるということが極めて重要でございます。

 現在、そういうことを我が国としてできるための制度というのは全くございません。ですから、それをつくって、こういう長期にわたるプラットホームを例えば外国でもつくっていい、それについて政府として関与することは極めて重要だろう。そういう制度をつくることが、逆に申しますと、これからの日本の安全保障協力を進める上でも最も重要なことの一つだろうと考えております。

赤嶺委員 終わります。

北村委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 きょうは、お四方の参考人には、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございます。

 細谷、武蔵両参考人にお伺いをいたします。

 私は、日本国憲法第六十六条二項で、文民統制、いわゆるシビリアンコントロールが採用されたのは、大日本帝国憲法下の戦前戦中に、軍部が天皇の統帥権を掲げて暴走し、第二次世界大戦の惨禍をアジア太平洋の人々と日本国民にもたらした反省からであるというのが歴史的事実であると考えます。

 したがって、私は、文民統制、文官統制を考える上で、大日本帝国憲法下の軍部の暴走と、それを受けて日本国憲法六十六条に規定をされた、この歴史的な経緯を重要視しておりますが、同時に、文民統制は、国会による統制あるいは内閣による統制、防衛省内の統制、いわゆる文官統制のレベルで行われることが必要だと考えますが、細谷、武蔵御両人の御意見を伺います。

細谷参考人 貴重な御意見、御質問をありがとうございます。

 今、先生がおっしゃったことに私はほとんど異存はございません。

 戦前の反省ということで申し上げれば、大日本帝国憲法では、改めてここにいらっしゃる先生方に申し上げるまでもございませんが、先ほどプロイセンの政治体制をまねてということを申し上げましたが、そもそも、戦前の内閣、行政府、総理大臣は軍をコントロールすることが憲法上できなかったわけですね。つまりは、直接、天皇が軍に直結するということで、天皇陛下しか軍をコントロールできない。

 これと似たシステムはイギリスにあったわけですが、イギリスの場合は、シビリアンコントロールという形で議会そして内閣が、内閣総理大臣が軍をコントロールできる。そして、さらには、イギリスの場合は、国王は、多くの場合に軍の中で勤務をして、今のウィリアム王子もそうですが、軍の中で勤務をすることによって、みずからが軍に対する知識がある、経験がある。これによって国王も一定程度軍に対する知識があり、また同時に、政府レベルでも、立法府、行政府で軍をコントロールできた。

 イギリスは、長年、軍が、政治目的のもとでシビリアンコントロールと、さらにはデモクラティックコントロール、民主的統制という言葉を使いましたが、これが機能してきたわけでございますが、戦前の日本の場合には、この民主的な統制と、そしてシビリアンコントロールというものは十分に機能しなかったわけでございます。

 戦後の日本国憲法のもとでは、この二つはともに非常に強固に機能しているわけでございます。つまりは、行政府、立法府のもとで、日本国憲法に基づいて、軍が、日本の場合は自衛隊ですが、コントロールされている。

 そして、従来、大きな問題は、先ほども申し上げたことの繰り返しになるかもしれませんが、国民やあるいは議会のレベルで、軍に対する関心、自衛隊に対する関心あるいは安全保障に対する関心が非常に薄かったということだと思います。したがって、国民やあるいは立法府、行政府にかわって、防衛省の中で、防衛庁の中で、内局の文官が代理で、外注されるような形で、ある意味では自衛隊をコントロールしていた。

 ところが、現代では、ここにいらっしゃる先生方、さらにはメディアあるいは国民のレベルでも、安全保障、防衛問題や自衛隊に対する関心、理解が深まってまいりましたので、したがって、そのような、国全体で民主的統制というのは非常に機能している。その点では、私は、当初、一九五四年に自衛隊ができたときに比べてはるかに、実質的な面で、民主的な統制、そしてシビリアンコントロールが機能しているようになっているというふうに考えております。

武蔵参考人 ありがとうございます。

 戦前の反省に立って、現在の憲法六十六条二項、いわゆる文民条項ができたという話でございました。

 戦前は、明治憲法の第十一条、統帥権、すなわち、陸海軍の統帥は天皇に属し、それは内閣といえども関与できない。これは、天皇が統帥権を持っていたわけですが、いつの間にか、天皇が持っている統帥権を軍部が自分で持っているというふうに勘違いしてしまった、こういう問題だったと思います。

 他方で、軍部大臣は、すなわち陸海軍の大臣は武官でなければならないという仕組みがございました。このことによって、陸軍大臣や海軍大臣が辞職することによって倒閣をするということもできたわけであります。

 このような統帥権の独立や軍部大臣武官制というものを認めないために、現在の六十六条二項で、全ての「国務大臣は、文民でなければならない。」という規定が置かれました。

 ただ、では、軍隊、軍人の経験がない方が防衛大臣や総理大臣でなければいけないのかどうかということになってみると、例えばアメリカでは、アイゼンハワーは大統領にもなっております。アメリカの場合、国防長官は、一定のクーリングオフの期間はありますが、軍歴があった方が国防長官になるということは問題ございません。そういった意味で、コントロールする側の総理大臣や防衛大臣にも、軍人でなければいけないということはもちろんありません。軍に対する知識や、あるいはそれを統制するための識見というものがなければ、きちんとしたシビリアンコントロールはできない。

 そういう意味で、日本の憲法、そして自衛隊法の中で、内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を有し、防衛大臣が自衛隊の隊務を統括するというのは、きちんとした識見を持ち、そういう統制ができる方に責任者になっていただきたいという規定でございます。ただ、何事も、一人だけで、一人の政治家だけで二十二万人を擁する実力組織をコントロールすることはできません。そのために内局というものがあるわけですね。

 すなわち、内局の役割というのは、あくまで指揮監督権を持つ総理大臣や防衛大臣の補佐機関であります。その役割を超えて、大臣にかわって、大臣にかわって制服組を統制するというようなことは、私はそれは逆シビリアンコントロールになってしまうのではないかというふうに思います。

 もちろん、国民の代表である国会が法律や予算の議決、さまざまな承認権というものを持っております。私はむしろ、今後のシビリアンコントロールというのは、こうした国会の役割を強化することにこそ求められるのではないかというふうに思っております。

 以上です。

照屋委員 ありがとうございました。

 武蔵、西川両参考人にお伺いをいたしますが、私は一九四五年の七月にサイパン島のアメリカ軍の捕虜収容所で生まれました。その後、一歳のときに沖縄に引き揚げて、以来今日まで、基地の島、沖縄で生きておりますが、沖縄も、七十年前に大変に悲惨な沖縄戦がございました。

 サイパン島の日米の戦闘、あるいは沖縄の沖縄戦、その実相を一言で語ることはおよそ不可能でありますが、先ほどの細谷、武蔵両参考人の御意見と関連して、戦前戦中に軍部の暴走をシビリアンがとめることができなかった主たる原因をどのようにお考えなのか、武蔵、西川両参考人にお伺いをいたします。

武蔵参考人 ありがとうございます。

 戦前戦中の国内における戦争に関する政策決定過程というのは複雑ですので、一概にこうだということは断言はできません。

 ただ、シビリアンがなぜとめられなかったかということに関しては、もちろん憲法上の仕組みの問題もございました。統帥権の独立ということがありましたから、戦争の、戦線であるとかあるいは作戦運用というのは、天皇しか、それに関する統帥権はなかったわけです。それを、先ほども申し上げましたように、軍部みずからが行使し、開戦に踏み切った。

 では、そのとき、なぜシビリアンがとめられなかったか。これは、先ほど軍部大臣武官制のことで申し上げましたが、内閣そのものが軍人によって支配されていた。すなわち、東条内閣は、首相と陸軍大臣と内務大臣を東条英機首相が兼任している状況でございます。こういった軍部内閣であるわけですから、シビリアンそのものが内閣から排除されてしまった。

 これはやはり、実力組織である軍隊というものが二・二六事件以降政党を圧迫していった、こういったものも原因にあったのではないかというふうに思っております。

 以上です。

西川参考人 ありがとうございます。

 私も、照屋先生と同様に、戦争はあってほしくないと心から思っているものでございますけれども、昨今の政治あるいは議会での立法活動の情勢を見てまいりますと、ひしひしと、戦前にまた戻るんじゃないかという恐怖感に駆られざるを得ません。

 それを、戦前においてどうしてあのような戦争をとめることができなかったのかということとかかわらせてどうしても考えざるを得ないんですけれども。現在の方が戦争前よりもいい、あらゆる面ですぐれているというふうには決して思いませんので、また戦争の昔、また戦争を繰り返すこともあり得るのではないかというふうに思っておりますけれども、では、戦前の場合に、どういう過ちというか、どういうことをもっと気をつけていれば、ああいうことが起こらなかったのか。

 いろいろあると思いますが、シビリアンコントロールもその一つであることは確かであります。しかし、それを支えるのは、人間とか制度とかいう問題もありますけれども、それ以上に、やはり国民の意識であり、それから、国民が議会を選ぶわけでありますから、その国民の意識がどの程度議会に反映するようなことであったかということにかかわると思います。

 国民の意識というのは、これはやはり教育によって決まるわけでありまして、現在、政府が教育制度についてもいろいろと、新しい、改革と称して改変をしようとしている。これも非常に恐ろしいというか、考えなければならないことだろうというふうに思います。

 つまり、そういう、着々と、民意を無視してというか、戦争の方に進めていく、そういう動きを国民がとめられなかった。それは、戦争については、責任ある者が当然いるわけでありますけれども、しかし、それをとめるのはやはり国民だったんじゃないかというふうに思うわけでありまして、現在の場合にもまた、国民が戦争に向かうようなこの動向をとめることができるのだろうかということを今考えているところであります。

 したがって、いろいろな知恵を出し合って、例えばシビリアンコントロールについてもよりよいものができればいいと考えておりますけれども、そういうものをつくり上げるのは、やはり国民であり、議会の皆さんであるというふうに考えております。

照屋委員 最後に、西川参考人にあと一点お伺いをいたします。

 一つは、安倍内閣のもとで、武器輸出三原則が防衛装備移転三原則に変わりました。そのことを西川参考人はどのようにお考えでしょうか。

 二点目は、法改正により、防衛装備庁が新設をされます。防衛装備庁はいわば武器輸出の窓口になろうかと思いますが、武器の国際共同開発、生産を含めて、日本がとるべき対応や問題点についてお聞かせいただきたいと思います。

西川参考人 先ほども触れましたけれども、武器輸出三原則を廃止したわけですね。新たに装備移転三原則という耳なれないものが出てきたわけでありますけれども、これは、日本が何らの縛りがなく兵器の輸出をしてもよい、そういう条件が整えられたということだと思います。

 それでようやく日本は人並みの国になったということを言われる方もおりますけれども、しかし、武器輸出三原則がどうしてできたかということを考えますと、これはやはり平和憲法とのかかわりで出てきているわけでありまして、戦争をしない、あるいは世界に戦争を起こさせない、そういう原則を貫くためには、日本は武器をつくらない、買わない、輸出しない、そういう三原則をつくっていく。当初は、ソ連圏といいますか、冷戦のもとで、社会主義圏には輸出しないということもそのうちに入っていたわけでありますが、そのうちに、もうどこにも輸出しないということにしようじゃないかというので、武器輸出三原則というのがつくられたわけであります。

 こんな原則を持っている国はないわけでありますから、これは日本として誇るに足る。つまり、これを守っていけば日本は戦争する国にならないのか、あるいは戦争を引き起こすような国にならないで済むのかというふうに思っていたわけでありますが、それがあっさりとこのたび廃止されたということであります。

 それと、法的整備で支えようというのが、つまり装備庁の役割というのが、防衛装備移転三原則を実施に移していこうという趣旨であるわけであります。これと、全て今回のいろいろな施策、これを戦争立法と言った方が何か大変非難されておりますけれども、私も戦争立法という言葉をあえて使わせていただきますが、この一連の立法ともちろん絡んでいるわけでありまして、本日の防衛装備庁の問題というのは、まさにそれの中核にあるのではないかというふうに思います。

 つまり、戦争できる武力、自衛隊の性格を変えるという問題と、それから自分で武器をつくる能力をつくっていくというのとは密接に絡んでいるわけであります。戦前は、やはり日本も自分で武器をつくらなきゃならないということで、随分努力をしたわけですね。軍器独立という言葉がありますけれども、軍器を独立しなければ日本は一人前の国じゃないというので、突っ走ったというところがあるわけであります。

 その、もと来た道をまた行くのじゃないかというのが私の今大変に危惧しているところであります。

照屋委員 終わります。

 ありがとうございました。

北村委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 高いところから恐縮でございますけれども、参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時五十分開議

北村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、防衛省設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りをいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として防衛省大臣官房長豊田硬君、防衛省大臣官房審議官吉田正一君、防衛省防衛政策局長黒江哲郎君、防衛省運用企画局長深山延暁君、防衛省人事教育局長真部朗君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

北村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

北村委員長 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。金子万寿夫君。

金子(万)委員 自民党の金子でございます。鹿児島県でございます。

 一昨日でございましたでしょうか、二十一日には、与党間において新たな安全保障制度に関する協議が大筋で合意をし、さらに今後、日米防衛協力のガイドラインの合意に向けて動き出すというふうになっております。

 近年、安全保障、国防に対する国民の関心は非常に高まりを見せていると思っております。一時は、ちょっと平和ぼけじゃないかなんとやゆされたこともありましたけれども、今は、政府にとっても我々国会にとっても非常に重要な国家の政策課題であります。その国家安全保障の枠組みを強固なものとして、切れ目のない安全保障体制を確立するということは必須でありまして、戦後日本の安全保障体制の転換に、国内外、大変注目が集まっている、このように思います。

 また、安全保障法制に関する特別委員会が設置されて国会議論が始まっていくわけでありますが、国家としての安全保障体制を整えるとともに、さらに、新たな日米関係を構築し、そして国民の理解を求めていく、政府、国会ともに努力をしていかなければならない、このように思っております。時代の変遷に伴いまして、あらゆる事態に対応のできる体制整備、そのもとに、国際協力分野においても新たな政策課題に積極的に取り組んでいかなければならないのではないか、このように思っております。

 そこで、防衛装備庁の新設についてお尋ねをいたします。

 我が国を取り巻く安全保障環境は、中国が大幅な軍事費の拡大を見せる中で、本当に、防衛計画大綱にあるとおり、我が国の安全を確保する上で、防衛力の質、量ともに必要かつ十分に確保していく必要がある、このように思います。ついては、防衛力の着実な確保に当たり、防衛装備品の取得を一元的に担うことになる防衛装備庁が果たす役割というのは非常に大きいものがあるというふうに思います。

 午前中は参考人の皆様方からいろいろな見地からの御意見もお伺いし、議論もありました。私は、大変有意義な勉強をさせられたなという思いでございますが、防衛装備庁の新設の意義、具体的に政府側から説明をお伺いしたいと思っております。よろしくお願いします。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛装備品の適切な開発、生産、維持整備は、先生御指摘のように、我が国の安全保障上極めて重要でございます。

 特に、諸外国との防衛装備、技術協力の強化、厳しさを増す安全保障環境を踏まえました我が国の技術的優位の確保、防衛生産、技術基盤の維持強化、防衛装備品のハイテク化、複雑化などを踏まえた調達改革などが重要な課題となっております。

 また、高品質の装備品の一層効率的な取得やコスト管理の徹底を図るためには、装備品の構想段階から研究開発、取得、維持整備といったライフサイクルを通じた一元的かつ一貫した管理が必要となります。

 このような課題に効果的、効率的に対応するため、防衛省内部部局、陸海空幕僚監部、技術研究本部、装備施設本部の装備取得に関連する部門を集約統合し、防衛装備庁を設置することといたしてございます。

金子(万)委員 防衛装備品の取得を一元的に担っていく、この取得の効率化というのには大きく貢献する、こう思っております。

 そこで、やはり求められるのは何といっても透明性の確保だ、このように思います。価格を下げる、価格を下げないといった問題等々いろいろあるわけでございますが、透明性を確保するということは非常に大きな部分だと思っております。

 過去においては、いろいろ装備品の調達に関する不祥事もありました。記憶もあります。不透明化について心配する声もあるというふうに思いますが、このような不安を払拭するためにも、防衛装備庁における不祥事を防止するための取り組みについて具体的にどのようなことを計画しているのか、お考えになっているのか、説明をいただきたいと思います。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 防衛装備庁の設置に当たりましては、今先生が御指摘になられました過去の不祥事の教訓、反省も踏まえ、不祥事が生じないような組織設計を行うと同時に、職員のさらなる意識向上に努めてまいります。

 具体的には、防衛装備庁内における監察監査部門の設置により内部監視機能の強化を図るとともに、教育部門の充実による職員への法令遵守意識の徹底を図ります。また、防衛大臣直轄の防衛監察本部の増員により外部からの監察機能を強化するとともに、これは従来設置していたものでございますが、弁護士、公認会計士等外部の有識者から成ります防衛調達審議会の一層の活用、こういった措置により、業務の一層の透明性、公平性を確保し、不祥事を防止してまいりたいと考えております。

金子(万)委員 しっかりと制度設計をして、国民の信頼を得ることができるようにしていただきたい、このように思います。

 次に、南西地域における防衛体制についてお伺いをさせていただきます。

 自衛隊配備の空白状況の解消、これはもう、南西諸島、南西地域の防衛に関して、本当に我が国の防衛に万全を期す上で大変重要だ、このように思います。

 今回、奄美諸島、奄美市と、私の地元であります瀬戸内町に配備をするということになりますが、奄美群島は、奄美市に航空自衛隊がありますし、知名町というところにもやはり航空自衛隊があります。私の瀬戸内町には海上自衛隊の分遣隊がございます。喜界町にも情報本部の部隊があります。

 地域住民との非常に友好な関係が歴史的に築かれてきていることは間違いがありません。特に、記憶に新しい豪雨災害、二年連続ありましたが、あのときの自衛隊の活動、活躍というのは、本当に、奄美群民にとっては今でも語りぐさになっている、あのときにおぶってもらって本当に命拾いをした、あるいはヘリコプターで助けてもらったと。あのときは、孤立集落がたくさんでき、道路は遮断され、あるいは携帯電話も通じないような状況の中にあって、本当に、迅速な対応のもとで、それにはやはり、この奄美地域といいますか、離島ゆえの助け合い、結いという言葉を使いますが、結いの精神というものがベースにあって、そこに大変な自衛隊の努力もあって、なし遂げ、いろいろと人命を救助していただきました。今でもその話題は出るぐらいであります。

 そういう自衛隊に対する感謝の思いもあり、この部隊の配置については、小野寺大臣も来ていただきましたし、武田副大臣も当時は二度、三度ばかりお見えになったんじゃないでしょうか、非常に真摯に、丁寧に行政に対して説明をしていただき、また、政府としての考え方を丁寧に説明していただいたということに対しては感謝いたしておりますが、そういうこともあり、配備計画、地元からは、むしろ誘致の、歓迎の要請も随分ありました。

 今回、奄美市と瀬戸内町、二カ所に配備をするわけでございますが、ことしは予算執行ももう既に決まっているわけでございますけれども、この配備のスケジュール、ことしの予算執行の中身はどういうことになるのか、それから規模を含めて、そこら辺をちょっとお答えいただけませんでしょうか。

中谷国務大臣 委員御指摘のように、我が国の安全保障環境が一層厳しさを増す中で、南西地域の防衛体制の充実は喫緊の課題でございます。

 奄美大島には、南西地域において、特に台風などの自然災害が多いわけでございますが、いろいろな事態が生起した際に初動の対処を行う警備部隊等を配置いたしまして、港湾、空港等の重要インフラの防護のほか、災害対処等に当たるということにしております。

 今後のスケジュールにつきましては、現在、警備部隊等の配置先として奄美市及び瀬戸内町の二カ所を選定したところでありまして、平成二十七年度予算におきまして、用地取得及び調査、設計等に必要な経費を計上したところでございます。

 防衛省といたしましては、引き続き、地元の皆様方と調整をしまして、御理解、御協力を得つつ、部隊配備に向けて着実に事業を進めてまいりたいと考えております。

 また、南西地域における防空体制の充実を図ることが喫緊の課題であることを踏まえまして、平成二十七年度末までに、那覇基地における戦闘機部隊を一個飛行隊から二個飛行隊に増勢いたしました。第九航空団を新編するとともに、第九航空団と南西地域のレーダーサイトの自衛官の実員のさらなる充実向上を行うことを予定いたしております。

 今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

金子(万)委員 南西地域は非常にいろいろな不安があります。無人島も南西諸島には結構多いわけでございますから、いつかどこかの国がそこに上陸したら、あるいは中国がそこに上陸したら一体どうなるんだというような不安を地域住民の方は非常に強く持っていらっしゃる。そういう話題が地元においても非常に多くなりました。ですから、今大臣の、沖縄方面も含めた南西地域の防衛体制の強化に対する具体的なお話がありましたが、ぜひしっかりと進めていただきたい、こういうふうに思っております。我々もまた、私も、本当に地元、生まれ在所でもありますので、しっかりと協力もしてまいりたい、こう思っております。

 同時に、やはり地元から要請が強かったのは、人的交流でありますとか経済効果、雇用等々に期待も随分強いわけでありますから、そこら辺はまた、地元にそのような効果が出るような施設の発注体制でありますとか、あるいは、その他いろいろございますけれども、そういうことを十分に配慮した上で予算執行をしていただきますようにお願いを申し上げて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

北村委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 きょうは防衛省設置法の改正案でございますが、ゴールデンウイーク前でもございますので、多分この後質問の機会はないと思うので、法改正については後ほどお聞きするとして、まず一つは、昨日、日中関係については、インドネシアのジャカルタで約五カ月ぶりに日中首脳会談が行われまして、両首脳とも、日中関係は改善してきた、そういうお話がありまして、極めて関係の改善の兆しが出てきたのではないかと思っております。

 周辺諸国でいいますと、あとは、やはり日韓関係をどうするのかということがこれから非常に問われてくるんだろうと思います。ことしは特に日韓国交正常化五十周年でございまして、特に日韓防衛大臣会談というのは、平成二十三年六月以降、約四年近く開かれておりません。実現すれば約四年ぶりとなるわけでございますが、日韓の間では、積み残しになっております問題、GSOMIAの問題、ACSAの問題、そして、何よりも北朝鮮の核・ミサイル問題への対応、情報をどう共有していくのかとか共同対処をどうしていくのか、そういう問題も残されているわけであります。

 三月下旬に日韓の外相会談が行われました。四月十四日には、ソウルで五年四カ月ぶりに日韓安保対話が開かれました。そしてまた、日本時間四月十七日だったと思うんですが、アメリカ・ワシントンで、日米韓の外務次官級協議と同時並行して日米韓の防衛局長協議も行われたわけであります。

 対話の機運というのは徐々に高まってきているのかなという感じはしておるんですが、日韓安保対話であるとかあるいは日米韓の防衛局長協議などでも、当然、日韓防衛相会談の実現というものを働きかけられておると思うんですけれども、韓国側の反応も含めて状況はどうなっているのかということと、中谷大臣は、特に四月十日の記者会見で、五月に行われるアジア安全保障会議、シンガポールで行われるその会議で、できれば日韓防衛相会談の実現をしたいという意欲を示されているんですけれども、防衛大臣に、日韓防衛相会談の実現についての可能性、また働きかけの状況、その目的や内容について、ぜひ御答弁いただきたいと思います。

中谷国務大臣 今から十四、五年前ですけれども、私が当時防衛庁長官のときには、日韓防衛首脳会談が毎年交互に開催をされておりまして、地域情勢等につきまして意見交換もしたわけでありますが、やはり、日本と韓国というのは、ともに米国の同盟国といたしまして、この地域の平和と安定について共通の利害、これを有しております。このため、韓国との協力を強化いたしまして、北朝鮮の核・ミサイル問題を含むさまざまな安全保障上の課題に一致して取り組むことが重要であると認識をいたしております。

 こうした観点から、私も、できるだけ早期に日韓の防衛相会談を実現しまして、日韓の防衛協力、交流を円滑に進めていきたいと考えておりまして、十四日に行われました日韓安保対話、また十七日の日米韓の防衛実務者協議におきましても、早期開催について働きかけをいたしました。

 これに対して、韓国側は、日韓関係などの諸事情を考慮いたしまして開催の可否を慎重に検討するという立場でございますが、実務者によりますと、しっかりとこの意向を伝えていただくということでございました。

 したがいまして、現時点において会談の実施については何ら決まっていないわけでございますが、私は、両国を取り巻く環境や政策、また2プラス2、ガイドライン等がありますので、できるだけ早く韓国側と会談をいたしたいと思っておりまして、早期に開催できるようにお願いしているところでございます。

佐藤(茂)委員 ぜひ実現を図っていただきたいなというふうに思うんですね。

 その中で、もし日韓防衛相会談が行われたら、今大臣も答弁の中で言われておりましたが、北朝鮮の核・ミサイル問題に対してどう対応していくのかということが、やはり協議では一番大事にしていただかなければならない課題だと思っております。

 そこで、一点だけきょうお聞きしたいのは、北米航空宇宙防衛司令部、NORADのゴートニー司令官が、四月七日にアメリカ国防総省で記者会見いたしまして、北朝鮮が核兵器をKN08に搭載し、米本土へ発射する能力を保有しているというのが我々の評価だ、そのように述べられて、要するに、北朝鮮が核弾頭の小型化に成功しまして、開発中の大陸間弾道ミサイル、KN08に搭載する能力を保有している、そういう認識を示されたと報道されております。

 これがアメリカの見方ではないかなというふうに私どもは受け取っているんですが、日本政府としては、現在、北朝鮮が核弾頭を小型化いたしまして弾道ミサイルに搭載する能力を既に保有している、そういう認識を持っておられるのか、防衛大臣にぜひ見解を伺っておきたいと思います。

中谷国務大臣 北朝鮮の核開発計画につきましては、極めて閉鎖的な体制をとっておることもありまして、小型化とか弾頭化がどの段階まで達しているか、断定的なことは申し上げることはできません。

 しかし、この小型化、弾頭化につきましては、相当の技術力が必要とされますが、まず、米国が一九六〇年までにこうした技術力を獲得したことがあります。それから、北朝鮮が一九一三年二月にも三回目の核実験を実施したことを踏まえますと、北朝鮮が核兵器の小型化、弾頭化の実現に至っている可能性も排除できないと考えております。

 北朝鮮の進行は、ミサイルの能力の増強、また我が国に対するミサイル攻撃の示唆等の挑発言動と相まって、我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっていると認識をいたしておりまして、引き続き、米国を初めとする関係国と緊密に連携しつつ、重大な関心を持って情報の収集、分析に努めるとともに、我が国の平和と安全の確保に万全を期してまいりたいと思っております。

佐藤(茂)委員 アメリカのジョンズ・ホプキンス大学の北朝鮮分析サイト、三十八ノースでは、北朝鮮はもう既に日本や韓国を射程内とする弾道ミサイルを約一千発保有している、さらに、二〇二〇年までには最大百発の核弾頭を製造する能力があると、最近の報告書でそういうものを掲載している部分もありまして、我々としては、この北朝鮮の動きというものに対して、やはりきちっと注視していかなければいけないだろう、そのように思います。

 法案に関連してお聞きをしたいと思うんですけれども、一つは、防衛省設置法第十二条の改正につきましてぜひ防衛大臣にお聞きしたいのは、この第十二条の改正、いわゆる官房長及び局長と幕僚長との関係に係る規定、今現在そうなっておりますが、これについては、今国会で、今日のこの審議に至るまで、既に予算委員会等、本会議等でも野党の皆さんからさまざまに御質問、御意見がございましたし、また、マスコミの記者の皆さんからもさまざま御指摘が防衛大臣のところに数多く届いているかと思われるわけですが、その中で、要は、特に考え方が何ら変わるものではない、また逆に、聞かれ方としては、何も変わるものではないのであればなぜ十二条を改正するのか、そういうやりとりも記者との間であったとも伺っております。

 そこで、ポイントを絞ってお尋ねしたいと思うんですが、一つは、今回なぜ防衛省設置法第十二条を改正する必要があるのかということが一点。二点目に、改正したことによって変わる点は何なのか。三点目に、改正するけれども変わらない点は何なのか。この三点について、ぜひ防衛大臣に明快な答弁をいただきたいと思います。

中谷国務大臣 先ほどの答弁で北朝鮮の三回目の核実験を一九一三年と申しましたが、二〇一三年の誤りでございます。訂正させていただきます。

 お尋ねの十二条においてですが、なぜ改正をするかということにつきましては、今般、統合幕僚監部の改編、また防衛装備庁の新設を行います。防衛省の組織構成が変更をされることから、この十二条につきましても新たな組織構成に適切に対応した規定とするものでございます。

 ただし、政策的見地からの大臣補佐と軍事専門的見地からの大臣補佐を調整、吻合するという従来からの同条の趣旨自体は変更はいたしておりません。

 また、具体的に何が変わるのかということでございますが、三点申し上げます。まず第一点は、新設される防衛装備庁長官も、官房長及び局長と同様に政策的見地からの大臣補佐の主体として明記をいたします。第二に、政策的見地からの大臣補佐の対象が防衛省の所掌事務全般にわたることを明確化いたします。第三に、政策的見地からの大臣補佐と軍事専門的見地からの大臣補佐の調整、吻合という同条の趣旨をより明確化いたします。以上でございます。

 従来から、防衛大臣が的確な判断を行うためには、政策的見地からの大臣補佐と軍事専門的見地からの大臣補佐がいわば車の両輪としてバランスよく行われることを確保する必要がありまして、文官による政策的見地からの補佐は、防衛大臣による文民統制を助けるものとして重要な役割を果たしております。このことは、今般の改正において何ら変わることなく、文民統制を弱めるといったことも当然ないわけでございます。

佐藤(茂)委員 もう一点は防衛装備庁の新設でございます。

 これは先ほど金子委員も指摘されたんですけれども、やはり、防衛装備庁が調達を担う予算規模というのが陸海空合わせ約二兆円になる、防衛省全体約五兆円の約四割を占めるということになるわけです。ですから、調達をめぐる権限が集約することに対して、関連企業等との癒着が生じやすくなるのではないか、そういう懸念が既に言われているわけであります。

 それには歴史がありまして、防衛庁装備品の調達をめぐっては、九八年に旧防衛庁調達実施本部の背任事件がありました。二〇〇六年には旧防衛施設庁で官製談合事件がありました。その後も、元事務次官の収賄事件であるとか、あるいは装備関連企業による過大請求事案もございました。

 こういう不祥事が相次いだわけでございますが、今申し上げたような不祥事に対して防衛省としてどのような再発防止策を打ってこられたのか、そして、今までにも増して権限が集中することになる防衛装備庁の新設に当たって、こういうさまざまに打ってこられた対策を踏まえて、今回、集大成となるどういう対策を、この装備品に係る不正を防止する仕組み、不祥事の再発防止策を考えておられるのか、防衛大臣の見解を伺っておきたいと思います。

中谷国務大臣 防衛省といたしましては、防衛装備等をめぐるさまざまな不祥事を踏まえまして、事案に応じて原因を分析して対策を講じてまいりました。

 まず、具体的には、第一に、調達実施本部事案、これを受けまして、一つの部局に権限が集中しないようにする相互牽制作用が働く組織体制の整備、そして、防衛調達審議会を設置して、部外有識者を活用した第三者による監視体制を確立いたします。

 第二に、防衛施設庁談合事件を受けまして、閉鎖的な人事管理体制の見直し、監査監察体制のさらなる強化、そして、守屋防衛事務次官の収賄事件を受けまして、職員の法令遵守の強化、そして、三菱電機を初めとする過大請求事案を受けて、過大請求を行った会社に対する違約金の見直し、抜き打ちの制度調査の導入、企業の法令遵守の強化など、さまざまな再発防止策の徹底を図っております。

 装備庁におきまして、これらの再発防止策を引き続き厳格に実施してまいりますが、さらに、内部監査機能の強化、教育部門の充実、職員の法令遵守の教育の徹底、あわせて外部からの監察機能を強化するといった措置によりまして、業務の一層の透明化、公正化を確保して不祥事を防止してまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 といいますのも、今回、防衛装備庁で、効果は幾つか、効率化も含めて考えられると思うんですが、万が一にも過去と同様の不祥事が、類似するようなものが防衛装備庁から起こってしまうと、この防衛装備庁の新設は失敗だった、そういう烙印を押されてしまう可能性があるわけでございまして、防衛大臣のリーダーシップを期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 以上です。

北村委員長 次に、津村啓介君。

津村委員 副長官が来られるまで、ちょっととめていただいていいですか。副長官が来られないので。ちょっととめていただけませんか。

北村委員長 速記をとめておいてください。

    〔速記中止〕

北村委員長 速記を起こしてください。

 津村君。

津村委員 民主党の津村啓介でございます。

 きょうは、お忙しいときに世耕副長官にも来ていただいておりますので、冒頭の質問とさせていただきまして、その後退席いただければと思っております。

 先ほど、衆議院の本会議で山谷さんの答弁を聞いて大変ショックを受けたんですけれども、昨日、ドローンが官邸に落下をした、その後、山谷国家公安委員長は、著書の出版記念パーティーですか、そういったことに一時間、二時間、時間を費やされて、なかなか執務室に戻られなかったということが明らかになったようでございます。

 今、ただでさえ総理やあるいは加藤副長官が海外に行かれているときですので、官邸での危機管理というのは日ごろ以上にある意味ではかぶとの緒を締めなきゃいけないところだと思うんですが、世耕副長官が最初の報に接せられたのは何時で、その後どういう初動をとられたんでしょうか。

世耕内閣官房副長官 ちょっと今、その通告をいただいていなかったので、記憶はありませんが、事案が明らかになった直後に秘書官から連絡が入ったというふうに記憶をしております。私も外出中ではありましたけれども、可及的速やかに官邸に戻って対応をさせていただいたところでございます。

津村委員 御記憶の範囲で結構ですので、その後どういった対応、指示をとられたかということをお聞きしたいと思います。

世耕内閣官房副長官 まずは、官邸の実際の実務を取り仕切っているのは内閣総務官室という部屋であります。内閣総務官をまず部屋に呼びまして、どういう事案だったか、そしてどういうことを対外的に公表し、また警察への対応がどういう状況にあるのかということを確認させていただきました。

 それともう一つは、警察庁出身でもあります、事務の官房副長官であります杉田官房副長官と対応について協議をさせていただきました。

津村委員 安倍総理にはどういった形で一報を入れられて、総理からどういった御指示があったんでしょうか。

世耕内閣官房副長官 これは、私からは直接連絡を入れておりませんが、杉田副長官ないし総務官の方から総理秘書官を通じて総理に連絡を入れたのではないか、あるいは官房長官からも当然コンタクトはとっているというふうに思います。

津村委員 総理ないしは官房長官から世耕副長官にはどういった御指示があったんでしょうか。

世耕内閣官房副長官 私には直接指示はおりておりませんが、官房長官に対しては、万遺漏なき対応をするように、情報収集を徹底するようにという指示があったというふうに聞いております。

津村委員 政府高官からのさまざまなコメントも匿名ながら流れておりますけれども、例えて申しますと、明確に政治的メッセージを持った意図的な犯行だというような受けとめもあるようですが、世耕副長官は、第一報を聞かれたとき、とりわけ、東電福島第一原発で、自然界には存在しないけれども福島の事故で大量に拡散されたセシウム134、137由来の放射線も毎時一マイクロシーベルトの線量が確認されたということも報道されていますが、こういったことを聞かれたときに、世耕副長官は、これはどういった事件だと受けとめられましたか。

世耕内閣官房副長官 これはもう警察が捜査に当たっている案件でありまして、官房副長官としての立場で、その性質とかそういうことを、推測を述べるのは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

 ただ、当然、私も第一報に接して、国家の行政機関の中枢である首相官邸でこういう事案が起こったということは、これは極めて重大なことだというふうに思いました。

 今後とも、このような事案が発生したことを真摯に受けとめて、きちっとした対応ができるように、特に官邸の警備体制について不断の検証と見直しを行って、危機管理に万全を期してまいらなければならないというふうに思っております。

津村委員 世耕副長官は、御著書もありますけれども、政府の広報のあり方、前職の御経験も生かされて、政治家としては大変希有なセンスを持った方だと感じておるんですけれども、このニュースに接して、日本国民は一体どういう印象を持った、あるいはどういうふうに政府に対応してほしいと感じたとお考えでしょうか。

世耕内閣官房副長官 なかなか国民の反応を官房副長官という立場で推測するというのも難しいところではありますけれども、当然、国民は、政府に関しては万全の危機対応というものを期待しているわけでありますから、その期待に応えていかなければならないというふうに思っております。

津村委員 報道によれば、今回のドローン落下を受けまして、皇居、官邸など重要施設上空の無人機飛行について規制をしていこう、そういうルールをつくっていこうということを、もう昨日、早速政府として方針を固められたという報道がありますけれども、これは事実ですか。

世耕内閣官房副長官 やはり国家の行政機関の中枢である首相官邸で起こった事案でありますので、これを真摯に受けとめて、いろいろな改善すべきところは改善をしていかなければいけないというふうに思います。

 具体的には、ドローン等の小型無人機につきましては、早ければあすにも、杉田官房副長官のもとで、関係省庁、これは国交省、経産省、警察庁、総務省、あともう少し追加になるかもわかりませんが、こういう関係省庁の連絡会議を開催して、そして早急に、セキュリティーの向上策も含め、運用ルールの策定、制度の見直しなどの対応策について協議をする予定でございます。

津村委員 そうしたことはどなたが決めたんですか。

世耕内閣官房副長官 もちろん、留守番役である官房長官を筆頭に、総理の御判断を仰ぎながら決めているということでございます。

津村委員 今回の警備ですけれども、報道から私は引用しておりますが、警視庁によると、官邸警備は、麹町署、それから同庁の、警視庁だと思いますけれども、官邸警備隊が担当だということですが、この官邸警備の行政の責任者というのはどなたになるんでしょうか。

世耕内閣官房副長官 まず、官邸の警備の警察の体制について申し上げますと、平成十四年四月に、官邸警備の専門部隊として警視庁に総理大臣官邸警備隊を設置したということであります。また、官邸警備隊は、身辺警護を担当するSPや官邸の外周りを警備している機動隊と緊密な連携をとりながら、警戒警備を実施しているというふうに承知をしております。

 また、官邸自身も官邸職員の中に警務官というのがおりまして、これがまた見回りとかそういったことも担当をしているわけであります。

 ですから、警察周りについては当然警察の責任ということになります。また、官邸の中の警務官の行動に関しては、これは官邸の責任ということになろうかと思います。

津村委員 それぞれトップはどなたですか。

世耕内閣官房副長官 まず、警察ということになりますと、トップは、これはまず所属は警視庁でありますから、所属の長ということでは警視総監ということになろうかと思いますし、広い意味でいけば警察庁長官ということになるのかなと思います。

 また、官邸については、官邸事務所の所長というのが事務方としております。

 当然、政務としてはこれは誰になるのかというと、ちょっと規定は細かくわかりませんけれども、やはり官邸の運営ということになれば内閣官房ということになろうかと思いますから、官房長官ということになるのかと思います。

津村委員 その中には山谷さんは位置づけられていないんですか。

世耕内閣官房副長官 当然、警察を管理監督する立場としての国家公安委員長として、山谷大臣の役割もあろうかと思います。

津村委員 今回、飛んできたということも非常に重要なんですけれども、それがしばらく見つからなかった、感知できなかったということもまたもう一つ大きな問題だと思うんですね。

 報道によりますと、これは私もタイトルだけ見ただけなので未確認なんですが、二十一日未明以降に落下したのではないかというような報道がありましたけれども、副長官、何か情報はございますか。

世耕内閣官房副長官 これは私も情報を持っておりません。

 いずれにしても、捜査の中で明らかになってくることかと思います。

津村委員 いつであったとしても、実際に落下したことは事実ですし、それがその瞬間に発見できなかったということも事実なわけですけれども、例えばセンサーとかそういうものがないのかとか、見回りの体制がないのかとか、非常に不思議な、あるいは非常に不安な出来事なんですけれども、これは、世耕副長官、今後どういう方向感で対策を練られるということですか。

世耕内閣官房副長官 センサーがあるのかないのかとか、あるいは点検、見回りの頻度といった具体的な警備体制に関する事柄については、これはセキュリティー上の問題がありますから、ここでお答えは差し控えさせていただきますが、先ほどから申し上げているように、首相官邸において今回のようなケースが発生をしたということは真摯に受けとめて、今御指摘の屋上も含めた官邸施設の点検、警備体制について十分な検証と見直しを行って、再発防止に努めてまいりたいというふうに思います。

津村委員 今の発言は大変気になるんですけれども、確かに、日本の安全保障といいますか、この後安全保障の話もさせていただきますけれども、公表できること、できないことはあると思うんです。しかし、今回のこの余りにもお粗末な事案については、何が起きていたのかということはきちんと国民に説明されるべきだと思うんですけれども、何らかの形で報告をされるというお考えはありますか。

世耕内閣官房副長官 いずれにしても、これはまだ、きのう発覚したばかりでありまして、今後、捜査の行方と、そして我々の検証作業に応じて対応させていただきたいというふうに思います。

 ただ、どういう対応をとったとか、どういう設備を設置したなんということは、これは逆に、セキュリティー上、お話しすることはなかなか難しいんだろうというふうに思います。

 過去の経過についてはどの程度お話しできるかということについては、また十分検討してまいりたいと思います。

津村委員 今回のことで、安倍総理の外遊の日程に何らかの変更をお考えですか。

世耕内閣官房副長官 安倍総理は、予定どおりスケジュールをこなしまして、今、帰国の機中にあるというふうに思っております。特に変更はしておりません。

津村委員 今のやりとりを聞きまして、中谷さん、先ほどの話の中には防衛省は出てきませんでしたけれども、これはまさに国家の安全保障の根幹にかかわることだと思うんですよね。御感想といいますか、これからどういうかかわりをされるかも含めて、コメントいただけたらと思います。

中谷国務大臣 今回、ラジコン、無線の操縦による飛行物体でありますが、もう既に、グローバルホークとかプレデターとか、無人機が世界じゅうで活用をされておりまして、非常に危険なものになり得ます。凶器となり得るし、犯罪にも使われるのではないかということで、これは簡単にインターネット等で購入できるということでありますが、やはり安全上、当然これは規制をする必要があるのではないかなという気はいたしますが、こういった治安等につきましても、政府におきましては、第一義的には警視庁、警察の担当でございますので、政府としてこういった対応をしていければというような感想を持っております。

津村委員 これだけの重大時に、警察の問題だという御答弁は、もしかしたら今のルール上はそうなっているのかもしれませんが、非常に残念というか、厳しい言い方ですけれども情けないというか、やはり日本の国の安全保障のトップにいらっしゃるのは中谷さんだと思うんですけれども、そこは警察ですという御答弁ではちょっと私は納得できないんですが。これから防衛大臣としてどういうかかわり、どういう決意をお持ちですか。

中谷国務大臣 公共の秩序とか安全の維持につきましては、警察や海上保安庁が第一義的な対応をいたしております。

 確かに、自衛隊というものは、警察機関では対応できない場合に、治安出動とか、また海上警備行動等がございますが、警察機関と連携して対処するようになるわけでございますので、こういった点におきましても、関係省庁とも、防衛省・自衛隊におきましても、安全という点におきましては今後とも万全を期してまいらなければならないというふうに思っております。

津村委員 情報が私の方も余りございませんし、まだ明らかになっていないことがたくさんあると思いますので、今後の議論は同僚に譲っていきたいと思いますし、私もまた取り上げさせていただきたいと思います。それから、内閣委員会の緊急開催を含め、さまざましっかりと場をつくってこの議論はしていかなければならないと思っております。そのことをお伝えしておきます。

 それでは、法案の議論に入りますので、世耕副長官、これで結構でございます。ありがとうございました。

 では、中谷大臣、よろしくお願いいたします。

 たくさん質問を用意させていただいていたんですけれども、こういうことで大分時間を今とりましたので、かなりはしょって質問させていただきますことをお許しください。

 まず、今回の防衛省設置法、大変多岐にわたる法案でございまして、一つ一つ尋ねていくとそれだけでも時間が足りなくなるんですけれども、ある程度逐条的に伺っていこうと思うんですが、まず、法案概要の一番目に掲げられておりますのが、防衛省の所掌事務における国際協力の明確化ということでございます。

 国際協力という意味では、つい昨年、武器輸出三原則の見直しということで四月一日に閣議決定をされまして、防衛装備移転三原則及びその運用指針ということが決められたということで、その後、まあ、きのうある程度お話を聞いたんですけれども、今のところ二件ほど。先ほど参考人質疑でもありましたが、防衛装備品の調達というのは十年、二十年スパンの議論ですので、昨年の四月に閣議決定したから一年でどんどん出ていくというものでは短期的にはないのかもしれませんが、それにしてもなかなか進んでいないという印象を持っております。

 そうした中で、通告させていただいている質問の二つ目になるかもしれませんが、ASEAN諸国との装備協力について伺いたいと思います。

 私は、安倍さんが盛んにASEAN諸国を訪問されている姿を見て、おじい様の岸元総理が、就任直後にASEAN諸国を歴訪されて、そして戦後の賠償等の処理を積極的に進められて、そのことが日米安保改定の対米国の議論の、非常に大きな交渉材料といいますか、伏線として非常に見事な外交をされたと思っているんですけれども、安倍さんは、恐らくそういったことも気持ちの中におさめながら、これから、中国の海洋進出を初め、当時とは大きく環境が変わっておりますけれども、やはりASEAN諸国と日本との関係というのが、すぐ隣の中国、韓国、あるいはロシア、アメリカというプレーヤーとさまざまな国際交渉をしていく上で、その少し先にいるASEAN諸国、インド、こういった国々との関係を戦略的に構築されているんだろうというふうに前向きに受けとめさせていただいているわけです。

 そう考えますと、このASEANとの装備品の問題、昨年のシャングリラ会合で安倍総理は、キーノートアドレスですか、基調講演をされて、かなり踏み込んだこともお話しになっていると思いますが、その後の進捗状況、例えばインド、オーストラリアとの装備品移転に関する交渉というのはどのぐらい進展しているんでしょうか。

中谷国務大臣 まず、ASEANの話をされましたけれども、昨年六月に、防衛生産・技術基盤戦略をつくりました。そこでは、東南アジアなどアジア太平洋地域の友好国との間でも、海洋安全保障や災害救助、海賊対処など非伝統的安全保障分野におきまして防衛装備、技術協力の関係構築を積極的に図るとしておりまして、この方針に従ってさまざまな機会を捉えて意見交換を行っております。

 せんだってインドの国防大臣が来日をされました。US2の件につきまして意見交換をいたしましたが、平成二十五年の十二月以降、両国の次官級の合同作業部会、JWGを三回開催しまして、US2のインドへの移転を通じた産業間協力など、幅広い議論を行いまして、これで今後とも議論を進展させていこうということで意見が一致をいたしました。

 オーストラリアとの潜水艦の協力につきましては、せんだってオーストラリアの国防大臣から電話会談の要請がありまして、話し合いをいたしました。豪州の将来潜水艦プログラムに関する協力につきまして、十月の十六日に前の大臣が防衛相会談を行いまして、豪州からの要請を受けて、現在、協力の可能性について協議をいたしておりまして、引き続き日豪間で今協議をしているというところでございます。

津村委員 ありがとうございます。

 もう少し各国のやりとりを掘り下げたかったんですけれども、時間の制約がかなりある中で、きょうは、防衛省の内部のガバナンスの問題に少しフォーカスしながら質問させていただきたいというふうに思います。

 一つは、防衛駐在官のあり方です。

 今回、防衛装備移転三原則ということが昨年あって、国際協力のあり方を大きく変えていこう、そういう法改正でもあると思うんですけれども、現在、防衛駐在官というのは、どのくらいの数、どういった国に派遣をされているのか、それをこれから、今回の国際協力強化という中で、大臣としてどういう人事をされようとされているのか、お聞かせください。

中谷国務大臣 現在、四十大使館と二代表部に五十八名派遣をいたしております。

 この任務は、軍事情報を収集するとともに、防衛協力等の諸調整を任としておりますが、派遣国等につきましても、国際的な安全保障環境の変化を捉えて、駐在国の情勢が我が国の安全また自衛隊の運用に及ぼす影響、また駐在国と我が国の防衛協力の進展等を総合的に勘案いたしておりますので、その点の役割も期待をしているところでございます。

津村委員 今後、この防衛駐在官をふやしていくお考えはありますか。仕事がふえていくと思うんですが。

中谷国務大臣 テロ等の事案を受けまして、本年度は増員をいたしました。

 今後におきましても、各国との防衛協力また装備品の協力も含めて質、量ともに非常に拡大を続けておるわけでございますので、軍事専門家である防衛駐在官が、こういった知識を生かして、派遣国の国防当局のニーズまた派遣国の技術動向を把握する上で今後より一層知見を発揮することを期待いたしておりますので、私としては増員をしていきたいなとは思っておりますが、今後これは検討しなければならないと思っております。

津村委員 午前中の白石さん初め、防衛装備庁新設について、今まである組織を単に継ぎはぎするのではなくて、やはりその人事も含めた一貫したキャリア養成をして、これまでそういう装備品移転という経験値が我が国は低いわけですから、その経験値を上げていく人事をする、そのためにも新しい装備庁は重要だ、そういう文脈で皆さんお話をされていたと思うんです。

 だとすれば、防衛駐在官も、質、量ともとおっしゃったんですけれども、例えばそういう装備移転に専門性を持った方とダブル配置にするとか、何らかの工夫が必要。単に五十八人を六十人にすればいいということではないと思うんですけれども、そういった人事のローテーションについて、私は、最初の大臣といいますか、これから流れを決めていかれる大臣が中谷さんだと思うんですけれども、これからの人事で大臣はそういう御配慮をなさるお考えですか。

中谷国務大臣 非常に重要な役目を果たしていただきたい。

 せんだってイギリスのロンドンで2プラス2を開催いたしましたが、そのとき、イギリスがP1について非常に関心がありまして、その際、駐在武官などが連絡や情報などを入れていただいたということで、まさに専門的知識や、また当事国との連絡調整等においての必要性を痛感したところでございます。

 委員御指摘のように、今後こういった分野の質、量がふえる、また、防衛装備庁ができますと、ライフサイクルコストというか、製造から納品、完成に至るまで全て一貫して行うという仕組みができますので、そういう中で、防衛駐在官においても活動を期待するところがあるということで、今後検討していきたいというふうに思っております。

津村委員 ありがとうございます。

 関連して、だんだん自衛隊定数の話に移りつつあるんですけれども、次のテーマとしても挙げられています。まあ、これは重なり合うテーマなんですが。

 自衛隊の定数について今回幾つかの措置がなされていますけれども、私は、今回法案で文言をいじるよりも、現在の人事運用でできる文官と自衛官の皆さん、背広と制服の人事交流というものを、これは大臣の御差配でできるわけですから、もっと積極的に現場から行っていかれる方がスピーディーですし、現実的なんじゃないかという観点から伺うんです。

 今回、内部部局に置かれる自衛官の定数を四十名から四十八名に増員されています。昨年、ゼロから四十になったんですが、実態としては、それ以前も、定数としてはカウントしていないけれども三十二、三人の方がいて、この二、三年、続けて八人ずつぐらいのペースでふやしているということであります。

 この文官と自衛官の相互配置促進という観点からは、これをさらに数をふやしていくということなのか、この辺でお茶を濁して終わってしまうのか、方向感はどんな形になりますでしょうか。

中谷国務大臣 その考えは、委員とも、私、共通するところでございまして、こういった人事の相互配置の促進は、以前、防衛省改革におきましても盛り込んだ中で、今推進をしているところでございます。

 今回、防衛装備庁ができることによって、千四百名の文官と約四百名の自衛官から成る防衛装備庁ができるわけで、一気にこれは飛躍、増大をいたしますが、やはり仕事の中身も、お互いに車の両輪として、お互いの能力を合わせて、また競い合って、組織としては非常に、より発展をする、中身が充実するという要素がございますので、この文官と自衛官の一体感を醸成する観点は非常に重要でございますので、引き続き継続して検討してまいりたいと思っております。

津村委員 中谷大臣は自衛隊にいらっしゃった時期があると思うんですけれども、ごめんなさい、通告をこれはしていないんですが、どういう部署といいますか、どういうキャリアパスでいらっしゃったんですか。

中谷国務大臣 防衛大学校を出まして、陸上自衛隊に所属をいたしまして、小銃小隊長ということで、普通科の連隊の中で、約六年間、第一線小隊長として勤務をしたり、また、レンジャー教官といたしましてそういったレンジャー要員の教育とか錬成訓練などをいたしました。

津村委員 駐屯地はどちらですか。

中谷国務大臣 山形県東根市にあります神町駐屯地の第二十普通科連隊でございます。

津村委員 その駐屯地には、文官の方、いわゆる防衛省のキャリアの方はいらっしゃいましたか。

中谷国務大臣 当然おられました。業務隊とか給与とか、いろいろな部門におきまして、そこの駐屯地は第六師団という師団本部がありますが、その中にはおられます。

 しかし、私が勤務しておりました連隊は部隊でありますので、全て自衛官がいて、いろいろな訓練、勤務をしていたということでございます。

津村委員 ちょっと不正確だと思いますので、少し速記をとめていただいて、そこで打ち合わせていただきたいんですが。

北村委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

北村委員長 速記を起こしてください。

 中谷防衛大臣。

中谷国務大臣 そういう面の事務官というのはおりましたが、キャリアの文官、内局の方はいなかったということでございます。

津村委員 わかりにくい質問でごめんなさい。

 大臣、これは私からの御提案でございます。大臣の決裁でできることだと思うので、ぜひ御検討いただきたいんですけれども。

 よく、内部部局にどれだけ自衛官の方が入るかというので、今、四十だとか四十八だとか、その交流も大事だという話をしているんですけれども、私は、逆のことも大事だと思っています。

 若手のキャリアの皆さん、この後、実は自衛官の脱柵という、どちらかというとちょっとネガティブな話を、駐屯地の話をさせていただくんですけれども、きのう、レクといいますか、いろいろな話をしていても、そこで働いていたというキャリアの方がいらっしゃらないので、やはり話がつながらないところもあったりもして、私は、若手キャリアの方を、駐屯地といいますか、本当に部隊の現場に、それは半年でもいいかもしれませんし、そこは私が言うことじゃありませんけれども、そういう御経験をされるのは非常にプラスなんじゃないかなというふうに思うんです。

 と申しますのも、いろいろな役所の方、あるいは会社でもそうだと思うんですが、例えば財務省さんだとすれば、署長で行っているのかどうかは別として、税務署の経験があったり、あるいは、私は日本銀行なんですけれども、入行すると最初の一年、二年は地方の支店で、私なんかは函館に行っていたんですけれども。いろいろ、若手の現場での……(発言する者あり)税務署長はないかもしれませんけれども、そういう現場に行かせようという努力は各省庁も努力されていますし、多分民間の企業でも、まず支店から入るというのはよくあると思うんです。

 まさに、制服と背広という、ずっと議論がある、こういうガバナンスを非常に丁寧にやっていかなきゃいけない組織だからこそ、銀行や普通のお役所以上に、そういう現場の経験をされるというのは非常に有意義じゃないかなと思うものですから、これは大臣の御判断で多分そういうことはできると思うんですよ。

 入省一年目とか二年目の方を、それは率直に言って、受けとめる部隊の方の方は、結構受けとめるのが面倒くさかったりするんです、いろいろ新しい事務が発生するので、いきなり東京から新人君が来て一から十まで教えなきゃいけないというのは、それは双方に負担やコストが発生することではあるんですけれども、それは、将来、十年後、二十年後に発生するコストやミスコミュニケーションに比べれば、はるかに小さいといいますか、建設的なコストだと思うんですけれども、大臣、そういった人事を始められるお考えはありませんか。

中谷国務大臣 非常にいい提案でございます。

 やはり現場感覚というのは、防衛政策をつくっていく上においても非常に重要でございますので、たくさんの職員が入ってきておりますが、やはり現場というものは知る必要がある。

 昔は防衛省も、採用して、ある期間、研修という形で現場教育をしていたと聞いておりますが、今ある制度におきましては、内部部局から内部部局以外のいわゆる現場に文官が配置されるポストの中には、各自衛隊の主要部隊に配置される政策補佐官及び企画調整専門官などがありまして、政策補佐官は総監や司令官を補佐し、企画調整専門官は政策補佐官と連携する文官でありまして、両者合わせて約二十名を配置いたしております。

 現場との一体感の醸成の観点からも、引き続き継続して検討をしたいと思っておりますが、本当に現場を知るということは大事な要素だと思っております。

津村委員 大臣から非常に思いを込めて答弁していただいたと思いますので、ぜひ御検討ください。

 次に、そういう質問につながった私の問題意識といいますか、現場の話を少しさせていただこうと思うんですけれども、脱柵というちょっと聞きなれない言葉があります。(中谷国務大臣「知っています」と呼ぶ)はい、大臣はもちろん御存じで、私は初めて知ったんですけれども。

 どういうことかといいますと、ちょっと長いんですが、自衛隊の生活が肌に合わない、人間関係がうまくいかない等々の理由で隊員が脱走すること。実際には、柵を乗り越えて脱出するよりも、定められた外出や休暇の期間が終わっても駐屯地、基地、艦に帰還しない場合が多い。脱柵が発覚すると警務官中心の臨時捜索隊による捜査が行われ、脱柵者は発見され次第、もとの勤務地に連れ戻される。これは、脱走という行為自体に対して懲罰を与えることが目的ではなく、収入と職を失った状態にある脱柵者が窃盗などの犯罪に関与しないよう配慮する意味で行われている。任期制の隊員については、脱柵への罰則規定がなく、任期の継続も円満退職も可能。定年制の隊員については、懲戒免職処分となる。ちなみに、有事の際の脱柵は敵前逃亡とみなされ、自衛隊法違反の罪に問われ、懲役刑が科せられる。ちなみに、他国の軍隊では軍法会議の対象となり、死刑や無期懲役などの最高刑に処せられる可能性があるというものなんですけれども。

 まず、数字から伺わせていただきます。

 脱柵という言葉は、若干スラング的なところがあって、自衛隊での正規の用語ではないそうなので、自衛官の無断欠勤を原因とする懲戒処分の陸海空別の件数について、近年の推移を伺いたいと思います。

中谷国務大臣 自衛官の平成二十一年度から平成二十五年度までの過去五年間における正当な理由のない欠勤として懲戒処分を受けた陸海空別の件数の推移は、平成二十一年度と平成二十五年度を比較すると減少傾向にあります。

 数字を挙げますと、平成二十一年度は、陸は百二十九、海は六十、空は二十一、合計二百十件。そして、平成二十五年度は、陸が八十六、海が二十五、空は十一、合計百二十二件という数字でございます。

津村委員 ちょっとそれは言い過ぎでいらっしゃって、二十一年度と二十五年度を比較すれば確かに半分近くになっていますけれども、二十三年度から二十五年度は増加傾向にあったり、また、その前の数字は教えていただけませんでしたが、これは、地域によってだとか、基地によってだとか、ある時期急にふえるケースがあったりなかったり、それは、私、数字がないのでわかりませんけれども、これはよく大臣がフォローしていただくべき数字だと思うんですね。

 数字の中身についてこれ以上、陸海空別に、比率がどこが高いとか、どこの部隊がとかということは、ブレークダウンしていけばいろいろなものが見えてくると思うんですけれども、きょうは、数字をそれ以上深くは、いただけていませんし、伺いません。また議論させてください。

 自衛官の皆さんの役割上、こういうふうに記事になってしまうのは、ある意味、当事者にとっては気の毒なことなんですけれども、こういう懲戒事案というのは地元紙ではほとんど記事になってしまいます。普通の会社ですと、来なくなっちゃってやめちゃうという人は時々いたりするわけですけれども、わざわざ新聞記事になったりしないわけですけれども、自衛官の方というのはそれだけ非常に重いお立場ということなのかもしれませんが、調査室で調べていただいただけで、一年間で十二、三の新聞記事。恐らくほかにもあるんだと思うんですけれども。

 記事を見てまいりますと、やはりかなりのケースが、門限になっても帰ってこなくて、みんなで捜したら駅で見つかったとかそういうケースで、先ほどの私が紹介いたしました、警務官を中心とする臨時捜索隊が結成されて、それで捜したみたいな、あれはネットのものなので正規のものではないんですけれども、そういう報道がたくさんあります。

 大臣、こうした無断欠勤した隊員というのを実際にはどういう形で捜索をしているのか、あるいは捜索はしていないのか、こういうケースの対処についてどういうルールがあるのか、教えてください。

中谷国務大臣 私の経験上、もう三十年ぐらい前ですが、一応、連隊長というのが服務規律の管理者で、その下に中隊があって、その下に班がありますが、普通、一般隊員は班で居住しておりまして、営内班という中で陸曹がいろいろと服務指導をしています。いろいろな世話をしています。

 無断欠勤で帰ってこないというケースがあるんですが、所在不明となった場合には、部隊の長が、所在部隊の隊員により捜索を行うとともに、速やかに警務隊に協力を求めることといたしておりまして、その部隊等の長は、直ちに当該隊員の留守家族に対しても連絡をするとともに、必要に応じて警務隊長と協議をして警察に保護願を提出することになりますが、一番の当事者は中隊長、中隊長の管理が問われるものですから、全力で捜索をしているということでございます。

津村委員 私も現場のことがさほどわからないものですから、インターネットでちょっと幾つか拾ったんです。ちょっと極端な、余りにも品がないといいますかそういうものは削って、幾つか御紹介させていただこうと思うんです。

 同じ部隊の仲間が交代で下宿や駅、空港、実家等を二十四時間張り込み、友人や彼女の家等がわかればそこへ連絡、調査をする、部隊の人間は休日でもサービス出勤、また、給与口座は凍結され、引き出そうとするとその事実がなぜかばれる、でも生死だけでも確認がとれる。

 俺の同期が脱柵して連れ戻されてからは、任期満了まで駐屯地外への外出はできなく、営内で軟禁状態だったな。

 ちょっと今のは余り、あれかもしれませんけれども。

 旧地方連絡部の方々が、免許や資格を取って、嫌になったら退職してよいから入隊してと言っていました、脱柵しても本人の将来のためとか言って依願退職を勧められます、海上自衛隊なら補充部付になって説得されます。

 元自衛官です、自衛隊では脱柵といいますが、ほとんどありません、一つの駐屯地で一人か二人でしょう、脱柵の主な理由は、訓練に耐えられないとか、生活になじめないとか、部隊に隠していた借金がばれたとか、いじめや異性問題絡みがほとんどです、ただ、やめたい人間は退職することがほとんどなので、脱柵はめったにありません。

 少しバランスをとって紹介したつもりなんですけれども、いろいろなものがあったんですが、中に、二十四時間とかサービス残業で捜すというのが出てきたんですけれども、先ほど警務隊とおっしゃいました、そういう方々の捜索というのは、これは勤務として扱われているんですか。

中谷国務大臣 部隊の所在の隊員について無断欠勤等所在不明となった場合に、部隊長の命令によって捜索を行うことから勤務扱いとなります。仮に捜索を行った日が休日であった場合には、勤務を命ぜられた隊員は、勤務時間に応じて代休の措置が講じられることになります。

津村委員 ありがとうございます。

 この件に関する質問は以上にしようと思うんですけれども、私は、脱柵をしたとか無断欠勤をした方々を責めたいのでも、その上にいらっしゃる中隊長さんたちを責めたいのでもなくて、どこの現場でも一定の数、やはり合わない方というのはいらっしゃるわけですし、そういう方々が将来を傷つけない形でスムーズに転職をされるということはあってしかるべきだと思います。

 その上で、先ほどの質問に戻るんですけれども、やはり、キャリアの方は駐屯地に行かれていないわけですから、こういうことは余り御存じでなかったりするわけですね。まさに現場で起きている話です。ですから、これ、一事が万事じゃないんですけれども、それだけのために、別に、若手キャリアの方が駐屯地に行くべきか、いろいろな議論があると思うんですが、一つの一例として知っておいていただきたいなと思いますし、今後、ぜひ何らかの対策を打っていただけたらと思います。

 続きまして、大臣補佐機能の明確化というテーマの方に移ります。

 時間が押していますので一問に絞らせていただくんですけれども、防衛大臣補佐官というのは今いらっしゃいますか。

中谷国務大臣 今は置いておりません。

津村委員 これは、防衛省改革の流れがあると思うんですけれども、この流れのかなり源流のところで、防衛参事官制度というものを廃止して、防衛大臣補佐官をつくって、これからしっかりと大臣を補佐する体制をつくろうということで、初代の森本さんは、初日に、二〇〇九年八月に着任した直後、「以前の「参事官」は局長が兼ね、防衛相の補佐をする十分な余裕と時間がなかった。国家の防衛には専門的知識に加え、ミサイルが飛んできたり、不審船が入ってきたりした場合、非常に短い時間で適切な判断をしなければならない。そのための補佐官制度だ」というふうに高らかにその意義をうたっていらっしゃるんです。

 その後、何人かの方が大臣補佐官に、元統幕議長、統幕長の方がなられたりしましたけれども、安倍内閣になって、昨年ですか、大臣補佐官の制度が導入をされて、その後、これは防衛大臣だけじゃなくて全府省に大臣補佐官制度がなりました。しかし、現在任命されているのは六人だけで、総務大臣のところだとか厚労大臣。防衛大臣の補佐官は置かれていない。

 他の府省に先駆けて防衛大臣補佐官制度を設けていて、かつ、防衛省改革の長い歴史のかなり最初の段階で、防衛参事官制度を廃止した見合いとしてつくられた防衛大臣補佐官が今置かれていないというのは、非常に、看板倒れといいますか、そんなものは最初から要らなかったのかということだと思うんですけれども、大臣は大臣補佐官を置かれる考えはないんですか。

中谷国務大臣 防衛省は他の省庁に先んじて補佐官を置きました。ちょうど浜田大臣のときに森本補佐官でしたが、非常によく補佐をされて、いいお仕事をされたと思います。

 現在は、岩崎茂元統合幕僚長が参与ということで就任していただいておりまして、実質、補佐官の役割をよくしていただいておりますし、また、防衛省の場合は、副大臣、政務官がおられまして、大変よく補佐をしていただいております。

 それ以上の補佐が必要だと判断した場合におきましては補佐官をお願いはいたしたいと思いますが、現時点におきましては、補佐体制、よくしていただいているので、支障なく業務をしているということでございます。

津村委員 この大臣補佐官制度というのは、これは私の理解が間違っているかもしれませんが、単に数が一人でも多い方がいいという量的な問題ではなくて、下から、ある意味、事務次官以下のピラミッドから上がってくる情報とは別に、セカンドオピニオン的に大臣が物事を判断する、下から上がってきたものがそれでいいのかを大臣自身が御判断するときの、すぐそばにいる知恵袋という要素が強いわけで、それを、今ピラミッドがしっかりしているから大丈夫というのは答えになっていないと思うんですけれども、いかがですか。

中谷国務大臣 まさに外から見る目を持つということは大事なことでもありますし、非常に有能な方がいればアドバイスはいただいておりますけれども、補佐官となりますと正式なポストになりますので、その方の御理解もいただかなければなりませんが、おっしゃるように、数ではなくて、すぐれた人材がいれば登用すべきでもありますし、また御意見も伺っていきたいと思っております。

津村委員 時間が押しましたので、最後の質問にいたします。

 統合運用機能の強化、統合幕僚監部への業務一元化というテーマにもかかわることなんですけれども、一九五九年以来、いわゆる制服の方、自衛官の方は国会での答弁の前例がない。前例はあるんですよ、一九五九年までは。ただ、それ以降はないということなんです。

 これから、陸海空で装備品の統合運用とか、さまざまな議論がこの安全保障委員会でも土俵に乗ってくると思いますし、先ほども申し上げたように、何度も言ってしつこいんですけれども、文官の方は駐屯地での勤務の御経験がないわけですから、やはり自衛官の方でなければ、あるいは自衛官の方の方がより現場に即した、実感がある御答弁をされるケースというのが今まで以上に出てくると思うんですけれども、大臣は、自衛官による国会答弁の必要性についてどうお考えですか。

中谷国務大臣 この点も昔からいろいろと議論されて、検討はされてきておりますが、私も省内でいろいろと検討をいたしておりますけれども、自衛官というのは、防衛大臣を軍事専門的見地から補佐する者として部隊の運用等の隊務に専念すべきであります。その辺は、もう純粋に部隊の運用、統率に専念すべきでありまして、国会の答弁につきましては、従来から官房長及び局長等の文官が実施をいたしておりますけれども、隊務等につきましても、省内で取りまとめをして現在のように官房長や局長に行わせた方がいいんじゃないかというのが現状の結論でございます。

津村委員 現状の結論ということかもしれません。今後の話として聞いていただければと思います。隊務について聞きたいこともあるわけですから、それは隊務に専念されている方に聞きたいということも発生していくと思います。先ほど申し上げましたように、現場との距離を縮めていただきたいということが私の質問の趣旨でありました。

 本日はありがとうございました。

北村委員長 次に、吉村洋文君。

吉村委員 維新の党の吉村でございます。よろしくお願いいたします。

 私からは、先ほども、冒頭少しありましたけれども、昨日起きましたドローンについて、大臣の御所見をちょっと伺いたいと思っています。

 もちろん、この詳細に至っては、別の委員会で、別の管轄で我が党の仲間がまたやるということになるかと思うんですけれども、今回のドローンの落下については、やはり一番大きな問題は、首相官邸の上に落ちている。これはやはり、国家の中枢機能、まさに中心地に、その屋上にドローンが落下し、そして、そこにはセシウムも微量ながらも検出されたということです。これが仮に、例えば化学兵器であったり、あるいは放射線量も尋常じゃないようなものがあったり、いろいろな可能性もこれは想像しなきゃいけないとは思うんですけれども、そうなったときに、これはやはり国家の安全保障上の問題にもかかわるのかなというふうに思っております。

 そういう意味で、今回の件、いろいろ報道でもあります。中にはこういった報道もなされています。「重要施設上空はレーダーで監視するなどの対策が必要なのかもしれない」というふうな意見があったりとか、あるいは、初代の内閣安全保障室長の佐々氏はこういうふうに言っていますね。「四十年以上前から無線操縦装置を使った空からの襲撃が想定されていたのに、いまだ警備体制が不十分だと明らかになった」というようなこともおっしゃっております。

 そういった意味で、こういった国の中枢が空から脅威を受けるということが現に起きたわけでございますけれども、このあたりについて、大臣の御所見というかお考えをちょっとお伺いできたらなと思います。

中谷国務大臣 委員御指摘のように、非常に大事な事案というか事例だと思っております。

 一般に、空の警備というと非常にその対処が曖昧でありまして、例えば海は海上保安庁、陸は警察が第一義的に治安という観点で対処をしておりまして、特に重要施設の警備、これは警察が行うということになっております。

 しかしながら、一般の警察力をもっては治安を維持することができない緊急事態に該当する場合には、治安出動等の発令を受けて、警察機関と緊密に連携して、自衛隊が対処するということでございます。

 今回、今検討がされているわけでございますが、事態がさらに大きな事態になりますと、我が国を防衛する必要があると認められる場合には防衛出動により対処するということでございまして、安全保障の観点から、こういった機関と連携をしつつ、万全の体制をつくっていかなければならないという認識でございます。

吉村委員 きょう、午前中、四人の参考人の方からいろいろ御意見を伺って、その中で、私がこれに関するなと思ったのが、白石参考人だったと思うんですけれども、最後の方で、やはりサイバー社会での安全保障が大切だと思うという、社会が変わってきている中での防衛のあり方、無人化、ロボティクス、ICT、BMIというものもおっしゃっていました。技術に軍事も民生もないと、まさに私もそのとおりかなというふうに思っております。

 いろいろ安全保障を今後議論する中で、例えば、ミサイルが日本の市街地に向けてストレートに飛んでくるというようなことの可能性、それは当然考えながら防衛はずっと進んでいるんでしょうけれども、ただ、実際に国民の生命身体の安全というのを考えたときに、より現実的なのはまさに今回のような事例で、被害の大きな化学兵器を載せたりとか、そういうものがテロ行為のようにやってくるというようなことの方が私は危険性として高いんじゃないのかな。

 一義的にはそういう意味では警察という話なのかもしれませんけれども、今回、まさに日本の一番のど真ん中の中心地でこうなったということについては政府においても反省しなければならないと思いますし、防衛、安全保障という意味でもしっかりと連携をとるというか対策を立てていっていただきたいというふうに思います。

 その点について、もし何か御意見があれば。

中谷国務大臣 御指摘のように、サイバーというのは非常に安全保障上の課題になっておりまして、これは各国とも、サイバー等の対処におきましては、国としてどこが責任を持ってどう対応するのかということについて検討しておりまして、政府の方もサイバー対策ということで政府全体として対応しておりますが、もちろん防衛省は防衛省内でサイバーに対する対応等は組織的に検討、また対処しております。

 この対応等は、先ほども申し上げましたけれども、我が国の重要施設につきましては、公共の安全と治安の維持につきましては警察、海上保安庁が第一義的な対応の責任を有しておりまして、自衛隊は、警察機関で対処できない場合に、治安出動等の発令を受けて、警察機関と連携して対処することになりますので、こういう前提で関係機関と対応を協議、検討していきたいと思っております。

吉村委員 今後、安全保障の観点からもそこをしっかりやっていただきたいと思いますし、警察とそれから自衛隊のそこの間隙をあけない、そういうのは今回の安全保障法制の中の趣旨にも入っていると思いますので、まさにそこは海だけじゃなくて、こういう空の部分においてもしっかり、警察と、自衛隊というか防衛省の中での、その間を縫われることのないように、まさにそこにウイークポイントがあるのかなというふうにも思いますので、そこはしっかりやっていただきたいと思います。

 それで、具体的に今回の法案の中身についての御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、十二条関係についてお伺いしたいというふうに思います。

 今般、昨年の閣議決定もありました、積極的平和主義をとっていくということで、これまで行使することができなかったと言われた集団的自衛権についても定義を定めていて、行使できるような閣議決定もされた。そして、今、恐らくゴールデンウイーク明けからの議論になるんでしょうけれども、安全保障法制についてもしっかりと整備していく。

 例えば、恒久法を制定して後方支援をするだとか、あるいは周辺事態法についても、周辺事態の定義というか、そこの範囲についてどうするかというような議論をする。あるいはPKO絡みについても、駆けつけ警護をどうするかとか、さまざま、今後、今までなかった自衛隊の役割というか活動の場というのが広がっていく、そういった法制がされていくことになるんだろうというふうに思っております。

 やはり大きく我が国の安全保障の基本的な考え方も変わりつつあるのかな、それは私は悪いことじゃないとは思うんですけれども、そういった中で、このシビリアンコントロール、やはり文民統制というのは非常に大切な概念であろうというふうに思っております。

 その中で、今回、十二条が改正されるわけでございますけれども、十二条の点はちょっとおくとしても、そういった大きな枠組みとして、積極的平和主義、それから安保法制のさまざまな改正、そして自衛隊の役割の強化という中で、このシビリアンコントロールというものの重要性が拡大されてしかるべきだというふうに私は思うんですけれども、そのあたりの考え方、大臣にちょっとお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 やはりシビリアンコントロールというのは、民主主義国家において国民が軍事をコントロールするということで、では、その代表である政治、これがしっかり軍事をコントロールする、そのための政治の優先を意味するものでございます。

 我が国の文民統制のあり方は、まず国会、それから総理大臣、そして内閣があって、そのもとに防衛省がありまして、政治の任用で防衛大臣が任命をされて、防衛大臣が指揮をします。文官の皆さん、また制服組の代表の幕僚が補佐をして、その補佐を受けて防衛大臣が判断をして命令を下すというような仕組みになっておりまして、これは戦後つくられたシビリアンコントロールの根本でございますので、この組織、そういう仕組みをしっかりと維持をして、健全な部隊運用をしなければならないというふうに思っております。

吉村委員 国会、それから総理大臣、それから内閣、防衛大臣、防衛省というところでシビリアンコントロール、文民統制をしていくというところはまさにそのとおりだとは思うんですけれども、それを補完する仕組みとして、今回の法制で問題になるとは思うんですけれども、内局の文官による補佐、補完の必要性というか役割についてはどのようにお考えになるんでしょうか。

豊田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の防衛を全うする上では、我が国を取り巻く軍事情勢のみならず、政治情勢や経済情勢を的確に認識するとともに、我が国の外交政策、財政政策や法令等との関係を考慮する必要がございます。軍事合理性のみを考慮して、防衛省・自衛隊の活動について判断できるものではないというふうに考えられます。

 また、そのような政策的検討に当たりましては、さまざまな情報の収集、分析を行いまして選択肢を考慮する必要があることなどから、防衛大臣が的確な判断を行う上では組織的な補佐体制が必要であるというふうに考えております。

 この際、文官である官房長、局長は、官房、各局の長として政策的見地から組織的に防衛大臣を補佐しておりまして、こうした文官の補佐は、大臣による文民統制を助けるものとして重要な役割を果たしておるところでございます。

 なお、このことは、今般の防衛省改革においても何ら変わることはございません。

吉村委員 最初に、一九五四年に初代長官の木村防衛庁長官が就任されました。それから現在の中谷大臣まで、大臣あるいは長官の平均在任期間というのは大体どのぐらいになるんですか。

豊田政府参考人 お答え申し上げます。

 複数回大臣に就任された方を別々にカウントするという形でございますけれども、歴代防衛庁長官及び防衛大臣の平均在任期間は約二百九十日でございます。

吉村委員 計算すると、約九カ月強ぐらいで長官であったり大臣がかわっているということだと思うんですね。

 先ほど申し上げた、なぜ積極的平和主義との関係で御質問したかというと、やはり、今後自衛隊が海外に出ていって、非常に重要な判断を迫られるときというのが出てくると思うんですよね。そのときに、今まで以上に防衛大臣が判断をしなければならない場面というのがふえてくると思うんです。そのときに、本当に国家の存立にかかわるようなことということになりますから、その判断は絶対に誤ってはならない。そのためには、やはりシビリアンコントロールがかなり強化されるべきじゃないのかなというのが私の考えです。

 その中で、長官あるいは大臣というのは、先ほど答弁がありましたとおり、約九カ月ぐらいでかわってしまうということ、当然、大臣がかわれば、多少そこに考え方の違いというのも出てくることもあろうかなというふうに思っています。

 そういう意味で、当然、シビリアンコントロールという意味で、政治が軍部をしっかりとコントロールしていくということは大切なんだけれども、行政としての安定性というか継続性というか、政策的な専門性という見地から、大臣がかわろうとも、ある程度大きな判断、政治的な判断で変わることはあるとしても、そういった安定性、継続性という意味も非常に大切だろう。それを担うという点においては、やはりそれは内局がしっかりとシビリアンコントロールに果たす役割というのはあるんじゃないのかなというふうに思っています。

 そのあたり、大臣、御意見があれば。

中谷国務大臣 そのとおりでございまして、やはり責任の所在という意味では、国民の代表である政治家がみずからその職責を負う。それを助けるものが文官、公務員でございまして、非常に能力のある人たちに支えていただかなければなりませんので、人事とか仕事の仕方等を通じてやはり大臣がしっかり補佐をしてもらう仕組みをつくっていくということでございます。

 先ほどもお話ししましたように、内部部局の文官による補佐というのは、その時々の防衛大臣による文民統制、シビリアンコントロールを助けるものとして非常に重要な役割を果たしていると思っております。

吉村委員 かつての大臣あるいは長官の答弁、文官に関して、内局が統制するということに関しての答弁、これはかつても委員会等で議論が出てきているところではあります。

 私は、個人的には、文官統制という言葉は違うというふうに思っておりますし、文官が統制するとかコントロールするという主体にはなり得ないというふうには思っております。だけれども、補助というか補佐というか、そういう意味で、上下関係という意味ではなくて、そこを連動させていくというのは必ず必要なことだというふうに思うんですね。

 一方で、昭和四十五年の四月七日の、これは佐藤総理大臣の発言、答弁になるんですけれども、申し上げますと、

 自衛隊のシビリアンコントロールは、国会の統制、内閣の統制、防衛庁内部における文官統制、及び国防会議の統制による四つの面から構成されておりまして、制度として確立されているものでございまして、

そういった答弁もございます。

 そして、昭和四十五年四月十五日の中曽根防衛庁長官はこういうふうにおっしゃっていますね。

 私は内局による統制というのは必要だと思っているんです。 三軍がばらばらにならないように、そういう意味で内局においてこれを統合するということは非常に大事な要素でもあるのです。そういう意味におけるシビリアンコントロールというのはある程度あるでしょう。なぜならば、内局というのは長官を補佐する。いろいろ部隊、各幕に対して指示を与えるときも内局が審査して、そして報告にくるのも、また上から下へ下達するのも、内局を通してやるというシステムになっておるのであります。これは非常に大事な要素であると思うのです。

というふうに答弁されているわけでございますけれども、ここの答弁と、大臣の今持たれている考えというのは違うのか、あるいは同じなのかというのをちょっとお聞きしたいと思います。

中谷国務大臣 全く、委員がおっしゃるように、補佐であるという点では同じでございます。

 例えば、中曽根防衛庁長官の発言として、昭和四十五年五月十二日の参議院の内閣委員会において、

 シビリアン・コントロールということは、政治理念が軍事理念に優越するということであり、国民代表である政治家、あるいは国権の最高機関である国会が軍事を掌握するとかいうことであって、国家公務員相互においてせびろが制服に優越するということではない。

と答弁をしております。また、

 文民優位とは政治家や、あるいは国民の代表である国会が軍事を掌握することである

との答弁もございます。

 また、昭和五十八年九月十三日の衆議院本会議におきまして、

  防衛問題について官僚に任せるというようなことはいたしておりません。やはり文民優位を貫く。文民優位とは政治優位であると考えておりまして、私たち政治家の責任においてこの問題は推進してまいりたいと考えておるところでございます。

と答弁しておりまして、こうした答弁を踏まえれば、中曽根防衛庁長官の答弁についても、内部部局の文官の補佐を受けて行われる大臣による文民統制の趣旨であると理解をされます。

 それから、佐藤内閣総理大臣の発言としましては、昭和四十七年の三月十六日の参議院内閣委員会において、文民統制ということは、言葉をかえて言うならば、政治が優先しなければならぬと答弁をいたしております。

 同時にまた、国会におきましても、最高の国家機関である国会が最終的には政治優先という形で文民統制の実をあげている、かように私は理解しております。

と答弁をしております。

 そして、昭和四十七年三月二十七日の衆議院予算委員会におきまして、

 防衛庁長官、これは必ず背広であります。

と答弁がありました。

 また、竹下内閣総理大臣は、昭和六十三年二月二十三日の衆議院予算委員会におきまして、

 内局というものが制服をコントロールすると申しますか、そういう機能がまず第一義的にあるではないか。

と答弁をしておりますが、その直前には、

 防衛政策等を立案する際に、まず内局と制服とのいろいろな話し合いがあって、

と答弁をしております。

 お尋ねの佐藤総理また竹下総理の答弁につきましても、内部部局の文官の補佐を受けて行われる大臣による文民統制の趣旨であると理解をされておりまして、いずれも、補佐をするという位置づけで機能しているということでございます。

吉村委員 その補佐のあり方が今回の十二条の改正でどうなるのかなというのが私の問題意識でして、今まで議論されていたような、例えば制服組より背広組の方が優先するとか、それは本当に不毛な話なのかなというふうに思っていますし、そもそも、シビリアンコントロールというのは、最終的に、国民の生命とか財産とかそういったことにかかわる重大危機について、最後に責任を負えるのはやはり政治家だろうということが出発点になっていますので、文官が責任を負えるという立場ではないですから、文官統制というのはおかしいのかなと思うんです。

 片や、先ほど申し上げたとおり、現実には九カ月ぐらいで大臣もかわっていくという中で、行政の安定性を図るという意味では、あるいは専門性を維持するという意味では、内局の知識というか、そういう、行政が本来持っている、大きな方向性の判断はできなくても、継続性を図るというのはこれは政治家にはできない能力を持っているわけでございますから、そこを、うまく補佐する仕組みが私は現在の、旧十二条なのかなというふうに理解しておりまして、これを改正するというのはどうなのかなという視点を持っております。

 そういう意味で、改正前の旧十二条、文官統制という言葉はちょっとおいておいて、これがどういう意味があるかとなると、やはりシビリアンコントロールの補強の要素はあるというふうに私は思いますし、きょうの朝の参考人の方もおっしゃっていたと思います、武蔵参考人がおっしゃっていました。ここの、十二条の規定の意味についてですけれども、内局の官房長及び局長が、自衛隊に関する基本的な方針、計画に関して、防衛庁長官が各幕僚長に出す指示、承認、一般的監督について長官を補佐する、いわば統制補佐権を有してきた、それで、内局がシビリアンコントロールについて一定の補助というかそういった役割を有してきたというふうに言っているわけでございます。

 そういう意味で、現行十二条を改正する必要性というのがどこにあるんだろうか。私は文官統制を認める立場ではないんだけれども、これを改正する必要もないんじゃないのかなというふうに思っておりますが、このあたり、この必要性についてお伺いしたいと思います。

豊田政府参考人 お答え申し上げます。

 設置法第十二条の改正につきましては、今般、統合幕僚監部の改編や防衛装備庁の新設によりまして、防衛省の組織構成がかなり変更されることになります。同条につきましても、政策的見地からの大臣補佐と軍事専門的見地からの大臣補佐を調整、吻合するという従来からの趣旨自体を変更しないままで、新たな組織構成に適切に対応した規定とするものであります。

 他方、防衛大臣が的確な判断を行うためには、政策的見地からの大臣補佐と軍事専門的見地からの大臣補佐がいわば車の両輪としてバランスよく行われることを確保する必要がありまして、文官による政策的見地からの補佐は、防衛大臣による文民統制を助けるものとして重要な役割を果たしているわけでございます。

 このことは、今般の改正におきましても何ら変わることはなく、文民統制を弱めるといったことも当然ないということでございます。

中谷国務大臣 それにあわせて委員の御質問に答えるならば、今回の十二条の改正につきましては、現在の第十二条の各号に列記されているものだけではなくて、防衛省の所掌事務全般にわたることを明確化させることにいたしております。

 そういう意味では、この列挙された項目だけではなくて、自衛隊法第三条の任務達成のための防衛省の所掌事務が法令に従って、それが適切に遂行されるようにということで、防衛省の所掌事務全般を対象としたというところでございます。

吉村委員 私が思うのは、この改正後の十二条と現在の十二条というのは、二者択一の関係に立たないんじゃないのかなというふうに思うんですよね。両立し得る条文なのかなというふうに思っていて、一つは、防衛装備庁長官が入ったからとか、そういうところは当然両立し得ないんですけれども、そもそも、この改正案というのをつくらなくても、官房長、局長、内局が、自衛隊法三条の任務達成のために、その所掌事務に関して防衛大臣を補佐するというのは、これは当然、存在意義として当たり前のことだと思うので、あえてここで規定する必要はないんじゃないかというふうに思うんです。

 この十二条の方はどういうことが規定されているかというと、要は、大臣の幕僚長に対する行為、それを内局が補佐するということの規定ですね。新十二条というのは、内局の補佐とそれから幕僚長の補佐というのがあって、それが相まって大臣を補佐すること。だから、これは趣旨が違うし、両立し得るんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、このあたりはどういうふうに思われますか。

豊田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣からも御説明をさせていただきましたけれども、今般の改正によりまして、現行第十二条一号から三号に列挙されている事務が除外されるわけではございません。一号、二号、三号を含んだ上で、防衛大臣が所掌される防衛省の所掌事務全てにつきまして、官房長、局長、それから新たに加わる防衛装備庁長官が補佐を行うということでございます。

吉村委員 除外されないという趣旨はわかります。

 ただ、そこで、今までは、この十二条という条文があって、法律上、明文で、官房長、局長が防衛大臣を補佐する中身について具体的に書かれているわけです。だから、これをしなければならないということになると思うんですよね。

 中に書いているのは、どういうことを書いているか。十二条、例えば一号であれば、それぞれの自衛隊に関する「方針及び基本的な実施計画の作成について防衛大臣の行う」「幕僚長に対する指示」について補佐する。それから、二号であれば、「基本的な実施計画について防衛大臣の行う承認」について補佐する。それから、三号であれば、「防衛大臣の行う一般的監督」について補佐するというふうに書いているわけです。これは、書いている以上はそれをしなくちゃいけないという話になりますから、それは内局がこれをしないといけない。

 では、具体的に運用としてどうなるかというと、幕僚からすると、この条文がある以上、内局としっかり連携をとって、連絡を密にして、意見を聞いた上でしないといけないというような、そういう十二条の規定だと思うんです。

 それが、この改正案になると、それぞれの「補佐と相まつて、」というふうになっていますから、これは、一つの判断として、別にここを通らなくても構わないということになるかと思う。当然、運用としてされるということなんでしょうけれども、条文上明確にされていることと、あるいは、条文上そこをバスケットのような規定に変えていくというのは、私は趣旨が違うのかなというふうに思っております。

 きょうの参考人の武蔵参考人も同じような趣旨のことをおっしゃっていて、ああ、そうかなと私も思ったんですけれども、おっしゃっていたのが、十二条において、指示、承認、一般的監督の大臣補佐が規定されているがゆえに、幕僚監部の持つ情報が全て内局を通じて防衛大臣に報告されてきた、しかし、十二条を、幕僚長の軍事的専門的助言と相まって内局の官房長及び局長が大臣を補佐するとの規定に変えることによって、法改正後は、内局との調整を経なくとも、幕僚長からの情報が直接防衛大臣に上がり、防衛大臣から幕僚長に対して直接指示が出せるようにもなるというふうに書いて、私の理解はまさにこのとおりなんですけれども、このあたりについてどのようにお考えですか。

豊田政府参考人 十二条の改正後の解釈につきましては、先生の御指摘とは実は違いまして、十二条の一号、二号、三号、これは全て、大臣が幕僚長に対して行う指示、それから二号は大臣が行う承認、三号は大臣の行う一般的監督ということで、全て大臣の行う業務なわけでございます。

 これら三点の大臣の行われる業務につきましては、改正案におきましても、「第三条の任務の達成のため、防衛省の所掌事務」という中に当然含まれるわけでございますから、こういった大臣の幕僚長に対する指示、幕僚長から上がってくる計画に対する大臣の承認、それから、大臣の行う一般的監督は、引き続き、政策的補佐の対象になるという理解でございます。

吉村委員 いや、条文の解釈的に、それは読めないと思いますよ。必ずしもそういう解釈にならないと思います。

 というのは、十二条を見ると、どういうふうに書いているかというと、「官房長及び局長並びに防衛装備庁長官は、」それぞれの「幕僚長が行う自衛隊法第九条第二項の規定による隊務に関する補佐と相まつて、」、この「相まつて、」が私はポイントだと思うんですけれども、「相まつて、」、まさにこれは車の両輪という趣旨だと思うんですけれども、すなわち、それぞれの行為が「相まつて、」「大臣を補佐する」というふうに書いているのが新十二条。

 それから、旧十二条はどういうことを書いているかというと、それぞれ、大臣が本来すべきことに対して内局が補佐するというふうに書いているわけです。だから、一旦、内局のクッションというか、それを通じないといけないような条文になっている。

 だけれども、新十二条は、相まってするというふうになっているので、運用上はおっしゃるとおりかもしれないけれども、この条文上だけから判断すると、それは違うというふうになると思います。

 まさに、大臣が九カ月ぐらいでかわるというこの平均の状態をとっていくと、やはりそこで解釈の変遷というのがあり得る、そういった、ある意味幅を持った条文なのかなというふうに思っています。

 ですので、本来、例えば迅速な決定をするためにむしろそちらの新十二条の方が優先だというようなことをストレートに提案とされて、それの是非を判断するというのならばまだわかるんですけれども、今までと変わりませんよと言いつつ、ただ、実態の法律条文は、私が読む限りは変わっている。だから、そこの、まやかしというか、そういうのがちょっとおかしいんじゃないのかなというふうには思っています。そのあたり、何か御意見があれば。

中谷国務大臣 これは、条文をこちらからよく御説明しなきゃいけないんですけれども、今までの十二条は、「所掌事務に関し、次の事項について防衛大臣を補佐するものとする。」ということで、一、二、三、補佐をすると。新しい改正案も、「その所掌事務に関し防衛大臣を補佐するものとする。」となっておりまして、「その所掌事務」は、自衛隊法の「三条の任務」遂行のためにということで、別にこの一、二、三が除かれたわけではございません。

 同じ補佐ということですが、この補佐という意味は、機関の長たる職員の執行をそのすぐ下位にある職員が助けることという意味に用いられておりまして、他人の行為の消極的な制限または禁止あるいは積極的な下命を意味する統制を補佐者が行うことはできないということでございます。

 最初も後も、その十二条というのは文民統制を担う防衛大臣の補佐に係る規定であるから、文民統制にとっては重要な規定でございますが、文民統制そのものを定めたものではない。先ほど委員も言われましたけれども、こういった役割につきましては、前と一緒ということでございます。

吉村委員 最後に確認だけしておきたいと思う。

 恐らくこの法律が通るんでしょうけれども、その解釈という意味で、大臣の新十二条の解釈の見解、大臣の最終的な見解をお伺いしたい。

 それは、旧十二条に書かれている補佐について、今まで内局がしてきたそれぞれの指示、承認、一般的監督に対する補佐の運用も含めて、この十二条の規定、それはそのまま旧十二条の解釈と受けとめていいのかどうかについて、最後の御見解をお伺いしたいと思います。

中谷国務大臣 申し上げます。

 現行の防衛省設置法第十二条は、官房長及び局長と各幕僚長との間の上下関係、これを定めたものではありません。したがって、今般の同条の改正は、文官と自衛官を対等に位置づけるものではありません。

 この改正十二条に、「統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長及び航空幕僚長が行う自衛隊法第九条第二項の規定による隊務に関する補佐と相まつて、」と規定するのは、防衛省設置法十二条が、政策的見地からの防衛大臣の補佐と軍事専門的見地からの防衛大臣の補佐を調整、吻合する規定であるということをより明確化するためでございます。

吉村委員 質問と答えが全くかみ合ってなかったような気がするんですけれども。

 要は、旧十二条に規定されてきた内容について、新しい、改正法の新十二条でもそのままその趣旨、趣旨というか運用なり条文の意味は適用されるということでよろしいんですか。

中谷国務大臣 趣旨はそのままでございます。

吉村委員 以上です。済みません。質問を終わります。

北村委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 法案について質問をいたします。今回の法案は、防衛装備庁の新設と、いわゆる文官統制の廃止という、日本の国のあり方にかかわる非常に大きな改正を伴う法案です。

 参考人の御発言にもありましたが、法案の重大性に即した慎重審議をまず求めておきたいと思います。

 まず、防衛省の所掌事務規定の改定について伺いますが、防衛省設置法第四条の所掌事務に、「国際協力に関すること。」という規定を盛り込むことにしていますが、この国際協力とは具体的に何を指すのですか。

中谷国務大臣 お尋ねの国際協力について、具体的に想定される業務といたしましては、現時点では、防衛省が開発した防衛装備の海外移転といった国際的な防衛装備、技術協力に関する事業、そして、他の支援国が活動していない国・地域において実施する能力構築支援が挙げられます。

赤嶺委員 国際的な防衛装備、技術協力、これを挙げられましたが、昨年の四月には、政府は、従来の武器輸出三原則を廃止し、防衛装備移転三原則を決定しております。それ以降、既に防衛省は、諸外国との防衛装備、技術協力を進めてきていると思いますが、これまでに具体的にどのような取り組みを進めてきているのでしょうか。また、その法的根拠は何ですか。

吉田政府参考人 事実関係につき、お答え申し上げます。

 昨年四月の防衛装備三原則の策定以降の装備、技術協力についてでございますが、昨年七月に、ペトリオットPAC2の部品であるシーカージャイロの我が国から米国への移転について、また、同じく昨年七月に、ミサイルの誘導能力向上に関する日英共同研究に係る我が国から英国へのシーカーに関する技術情報の移転について、国家安全保障会議において審議した結果、移転を認め得る案件に該当することを確認していただいてございます。

 また、これらの防衛装備、技術協力につきまして、同案件を実施する根拠というお尋ねでございますが、これにつきましては、我が国の防衛装備品の調達や研究開発に有益であるとの観点のもと、防衛省設置法第四条第十三号、装備品等の調達に関することなどを根拠として実施しているところでございます。

赤嶺委員 防衛大臣に伺いますが、今回、国際的な防衛装備、技術協力を進めるために所掌事務に国際協力を書き込む、こうおっしゃるわけですが、既に政府は、従来の武器輸出三原則を廃止し、新たな防衛装備移転三原則に基づいて、具体的な装備、技術協力は進めているということでありました。

 アメリカへのPAC2ミサイル部品の輸出、今説明がありましたが、これらについて、この間、国民や国会の意思が問われたことはありません。今回の法案は文民統制のあり方が大きなテーマの一つですが、法律の改正前に行政府が勝手にこういうことを進めていることは問題だと思いますが、いかがですか。

吉田政府参考人 先生ただいま御指摘になられた点でございますが、防衛装備移転三原則につきましては、昨年四月一日に閣議決定という形で政府として決定させていただいている。また、先ほど申し上げました、七月のNSCにおける審議結果につきましては、審議結果の概要につきまして広く対外的に公表している。また、こういったものにつきましては、これまで、総理もお答えになっておりますが、国会等で何度も御議論をいただいている、このように承知しておるところでございます。

赤嶺委員 いや、私、法的根拠もないままに、総理が国会で答弁したとか、いろいろなことを言っていますけれども、今回、「国際協力に関すること。」というのが入ったわけですよね。それ以前に、先ほど防衛大臣も答弁しておられましたが、国際的な防衛装備、技術協力、能力構築支援、そういうことについて進めている、法律の改正前に行政府が勝手に進めている、これは問題だと思いますけれども、いかがですか。

吉田政府参考人 先ほど申し上げましたように、これまで行ってきた装備、技術協力につきましては、従来の防衛省設置法上の装備品等の調達に関すること、それから装備品等の研究開発等に関すること、こういったものが根拠になるのではないかというふうに御答弁をさせていただいたところでございます。

 それから、先ほど大臣から申し上げましたのは、今後、防衛装備協力、そういったものを行っていく、例えば、今、インドとの間でUS2の移転などについてどのような協力ができるかというふうなことを議論させていただいているところでございますが、そういったケースを具体化していくに当たっては、我が国の装備品そのものにはかかわらない、例えばインドの国防省が調達する、そういったものについて、我が国防衛省・自衛隊が例えば安全性の証明をするとか、運用について指導をするとか、そういった必要性が今後生じてくるであろう、そういったものについて根拠規定を明確にしておく必要があるという趣旨を大臣の方から述べたと承知してございます。

赤嶺委員 私が何であえてそういうことを聞いたかといいますと、防衛省は、過去にも、法律の改正を伴わないで、現行条文を拡大解釈して、印象に残っているのは、当時、久間防衛大臣のころでしたか、法律というのはゴムひものように幾らでも伸びたり縮んだりすることができるんだという、もうシビリアンコントロールどころじゃなくて、行政権力が国民の意見も聞かないまま法律解釈をやっている、そういうのをたびたび見てきたからであります。

 例えば、二〇〇一年の九・一一テロ以降、政府は、自衛隊をインド洋に派遣し、米軍に対する給油活動を行いました。海上自衛隊の艦船は、テロ特措法に基づく基本計画の決定前に出動いたしましたが、当時、政府が法的根拠に挙げたのが、防衛庁設置法の調査研究という所掌事務規定でありました。

 辺野古の新基地建設をめぐっても、二〇〇七年に、海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」を出動させて環境アセス法に基づかない調査を強行いたしましたが、あのときに挙げたのも、調査研究という規定でありました。

 けさの参考人質疑の中で、法案に賛成の立場の参考人からも、文民統制の問題で大事なことは、国民の意向が十分に反映され、国民と国会がきちんとコントロールすることだという発言もありました。一番大事なことが忘れ去られているのではないか、こういうことを本当に思っております。その点をまず指摘しておきたい。

 今回の法案の中にも、それ以前から海外との防衛装備品、武器のやりとりをやってきている、今度はインドだから入れたということでは説明がつかないようなものだということを指摘しておきたいと思います。

 法案は、新設する防衛装備庁の任務として、「国際協力の推進を図る」と明記しておりますが、これは、具体的にはどういう体制で、どのような活動を行っていくということですか。

吉田政府参考人 御質問の点につきましては、防衛装備庁におきましては、装備政策部に置かれる国際装備課、約二十名ほどを予定してございますが、この課を中心に、国際的な防衛装備、技術協力を推進していくこととしてございます。

 具体的には、防衛装備移転三原則に基づき、国際共同開発、生産でございますとか、装備品等の海外移転への取り組みに加えて、移転される防衛技術やデュアルユース技術の戦略性、機微性を適切に評価し、技術管理もより厳格に行う、こういったような業務をしていくということを考えておるところでございます。

赤嶺委員 防衛大臣に伺いますが、国際紛争を解決する手段としての武力による威嚇、武力の行使を放棄したのが憲法九条であります。ところが、今回の法案は、防衛装備庁を新設して、先ほどありましたように国際協力を推進する、つまり、国を挙げて海外への武器の輸出を積極的に進める、こういうものであります。

 なぜ、憲法九条のもとで、このような法改正が許されるのですか。憲法との関係をどのように説明されるんですか。

中谷国務大臣 このような協力につきましては、先ほど委員も言われましたけれども、現在の防衛省設置法の規定を根拠といたしまして、いろいろな防衛装備、技術協力、また能力構築支援等に取り組んできたということでございます。

赤嶺委員 私が聞きましたのは、装備庁を新設して国際協力というけれども、実態は、国を挙げて海外への武器の輸出を積極的に進めていくことであるわけですから、こういうことが憲法九条のもとで許されるんですか、憲法九条との関係をどう説明するんですか、こういうことを聞いているわけです。

中谷国務大臣 現在も、国連を中心とした平和維持活動とか、紛争予防とか、また開発支援といった取り組みが行われております。必ずしも軍事イコール悪ということではなくて、こういった世界平和や国の復興支援等に当たることにつきましては、まさに平和に対する貢献の分野に当たるのではないかと思っておりまして、特に能力構築支援などにおきましては、これから国づくりをしようとしている国におきまして、そういった能力をつけることによって、安定した地域平和、また社会インフラの整備などが図られるという観点での国際平和協力の一環であるというふうに認識をいたしております。

赤嶺委員 私は憲法の中で軍事イコール悪という表現は知りませんが、書いてあるのは、武力による威嚇、武力の行使を放棄したはずの日本が、何で海外に武器を輸出するような、そういう装備庁をつくるんですかということを聞いているわけです。

 ちょっと具体的に話を進めていきます。

 去年の七月ですが、アメリカへのPAC2ミサイル部品の移転を認めました。部品を米国のライセンス元に納入するものだから我が国の安全保障上も問題ない、このようにしておりますが、まず、PAC2ミサイルがこれまでの米軍の軍事作戦、例えばイラク戦争においてどう展開し、使用されてきたのか、これはどのように認識しておりますか。

黒江政府参考人 米軍におきます個別の装備品の運用の詳細について、防衛省として個別具体的にお答えする立場にはございませんけれども、その上で、米議会が出しております議会報告書、あるいは米国防省の報告書といったものによれば、イラクの自由作戦におきまして、米軍は、PAC2を含むペトリオット部隊を、合わせて最大四十個展開させ、イラク軍の短距離弾道ミサイルからの防衛任務などを担ったというふうに承知をいたしております。

赤嶺委員 あえてということで報告がありましたが、イラクの自由作戦でも使われているわけですね。九回の交戦があった、その多くがPAC2ミサイルによるものだったと指摘しているわけです。

 イラクの自由作戦というのは、国際社会の圧倒的多数の反対のもとで、国際法に違反して開始されたイラク戦争において、PAC2ミサイル部隊は実任務についたわけです。こうした部隊の展開があって初めて軍事作戦が成り立つわけであります。

 一旦提供した武器がどのように使われるかは、結局、提供した国の判断に委ねられることになります。日本の武器輸出が国際紛争を助長するおそれ、これは、PAC2の例にも見られるように、否定できないのではないかと思いますが、いかがですか。

吉田政府参考人 お答え申し上げます。

 PAC2シーカージャイロの米国への移転につきましてでございますが、本件につきましては、防衛装備移転三原則に基づきまして、適正な管理を確保するというふうなことで行ってまいっております。

 具体に申し上げますれば、仕向け先の管理体制の確認というふうなことでございまして、最終需要者でございます米国企業から、最終用途誓約書、エンドユース認証の提出を求め、ジャイロの管理体制を確認することとしています。加えて、ジャイロが組み込まれたペトリオットPAC2を一元的に管理する米国国防省からPAC2ユーザー国以外への移転が厳しく制限されること等、その管理体制についても確認をいたしているところでございます。

赤嶺委員 防衛装備三原則に基づいて、PAC2、アメリカとの関係で日本が部品を提供したにしても、それによって、使われるPAC2は、ああいうイラクの自由作戦などのように、国際法に違反した戦争にもどんどん使われていく。これでは国際紛争を助長するものに、そういう道に踏み込んでいるのではないか、こういうことを聞いているのでありますが、大臣、いかがですか。

中谷国務大臣 まず、移転三原則におきましては原則を三つ設けておりまして、こういった移転等がしっかり管理できるという原則を設けております。

 PAC2につきましては、我が国も装備をいたしておりますが、基本的に、防御をする、攻撃兵器ではなくて防御兵器として我が国としては運用しております。

赤嶺委員 あしたもありますけれども、いろいろなことを言っても、結局、今回の法案というのは、国際紛争を激化させるような道に日本みずからが突き進んでいくものだということを指摘して、またあした議論していきたいと思います。

北村委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社民党の照屋寛徳です。

 法案については、私もあしたただしたいと思います。きょうは法案に関連して尋ねます。

 去る三月三日、私が防衛大学校卒業生の任官拒否等に関する質問主意書を提出しましたところ、三月十三日に政府答弁書を受領しました。その中で、福岡県在住の、当時防衛大学校二年生のK君に対する、同校内における上級生らからの組織的で悪質かつ陰湿ないじめや暴力行為の事実をただしました。政府答弁書では、K君が私的制裁などの不法な暴力を受けていたことを認めました。

 また、横浜地検は、去る三月十一日、K君とその両親らが告訴していた事件で、被告訴人三名を略式起訴、五名を不起訴処分にする決定を下しました。

 大臣は、幹部自衛官を養成教育する防衛大学校における上級生らから下級生への構造的ないじめや暴力について、どのようにお考えでしょうか。

中谷国務大臣 私も同校出身者でありますが、私自身も、また学校関係者も、この事案は大変重く受けとめております。

 この学校の趣旨からいたしまして、やはり、不法または不当に精神的または肉体的な苦痛を与える行為が行われるということはあってはならないと考えておりまして、防衛大学校におきましては、この件につきまして、昨年、平成二十六年八月四日に、学校長を委員長とする学生間指導事案臨時調査委員会を設置いたしまして、事実関係の調査を行っており、今後も事実関係に基づいて適切に対応してまいります。

 また、防衛省といたしましても、平成二十六年の九月十七日に、防衛副大臣を委員長といたします、防衛省におけるいじめ等の防止に関する検討委員会を設置いたしまして、全省的ないじめ等の防止に関する有効な施策を検討しているところでございまして、同委員会において実施することとされた施策を積極的に推進していくことが重要であると考えております。

照屋委員 大臣、このK君への事件は、本当に考えられない陰湿さ、例えば裸にしてライターで陰毛を焼く、これなんかは暴力団ではないかと思わせるような悪質なものなので、そういうのが根絶されるように防衛省に対策を練っていただきたいと思います。

 それで、防衛大学校本科における平成二十六年度の任官辞退者、その数を明らかにしてください。

真部政府参考人 防衛大学校の本科学生におきますところの平成二十六年度の任官辞退者数は、二十五名でございます。

照屋委員 大臣、この人数は、平成二十五年度の十人に比べて、二十五人、物すごくふえているんですね。

 それで、私のさきの質問主意書に対する政府答弁書で判明をしたのが、防衛大学校における中途退学者や、防衛大学校本科卒業生の任官辞退者、私は任官拒否者と呼んでおりますけれども、平成二十二年度以降、毎年度合計約百人に上っている。この数は、平成二十二年度以降の入校者の約五分の一なんです。

 政府答弁書では、「幹部自衛官となるべき者の教育訓練をつかさどる防衛大学校において、任官辞退者が生じることは極めて残念である」と答えておりますが、中谷大臣はどのようにお考えでしょうか。

中谷国務大臣 御指摘のとおり、過去五年におきまして、中途退校者の数、任官辞退者の数の合計が百名を超えているのは、平成二十五年、二十六年となっておりまして、中途退校者の多くは一年生でございまして、主に、性格に合わない、他の大学を受験したいなどの理由により退校をしていっております。

 他方、本科を卒業した者であって、自衛官の任官を辞退した任官辞退者の辞退理由につきましては、本人の進路の考え方の変化によるものと考えられるために、一概にお答えすることは困難でございますが、やはり、幹部自衛官となるべき者の教育訓練をつかさどる防衛大学校におきまして任官辞退者等が生じることは極めて残念でございまして、今後指導してまいりたいと思っております。

 私も防衛大学校で四年間過ごしましたが、二十四時間拘束をされる、また、休日も非常に限られているということで、非常に厳しい生活の上に、学習内容も相当過度なものがございまして、そういった中で幹部自衛官の資質が育成されていくものでございますが、指導者側といたしましては、そういう中で、やはり適切な指導をいたしまして、少しでも優秀な人を、能力を伸ばして採用すべきではないかなというふうに思っております。

 なお、ことしの辞退者がふえた理由といたしまして、学校長によりますと、卒業してから幹部候補生学校に入校した後やめるような考えを持っている人はもうあらかじめ卒業の前にやめていただきたいということで、そういうことで人数がふえた部分があろうかと思いますけれども、委員の御指摘のように、辞退者はできる限り少なく、教育成果を上げるように教育を実施すべきではないかなというふうに思っております。

照屋委員 大臣、やはり私は、二十五年に比べて二十六年度が二倍以上も任官辞退者がふえたというのは、大臣が御答弁になったそれ以外の要因もあるのではないか、こういうふうに思いますので、真剣にその原因を究明してもらいたい、このように思います。

 さて、防衛大学校では、平成二十五年度は自衛官への任官拒否者を卒業式典に参加させていないと私の答弁書に答えております。平成二十六年度はどのように扱われたんでしょうか。

真部政府参考人 御案内のとおり、防衛大学校は、陸海空自衛隊の幹部自衛官を育成いたします我が国唯一の高等教育機関となっております。

 その卒業式におきましては、例年、防衛大臣を初め、自衛隊の最高指揮権を有する内閣総理大臣の御出席を得て実施しておるところでございます。この防衛大学校の卒業生が将来の自衛隊の中核となるということから、総理みずからが自衛官に期待する役割、こういったことについて直接に訓辞をされておるところでございます。

 このように、防衛大学校の設置の目的とか、あるいは任官を前提とした卒業式の意義あるいは構成内容、こういったものを考えますと、幹部自衛官への任官意思のない人を卒業式に参加させることは適当ではない、そういった考え方によりまして、平成二十五年度から任官辞退者を卒業式の方に参加させていないというのが実態でございます。

照屋委員 それは真部さん、違うんじゃないかな。僕はやはり、任官を辞退したから卒業式典に参加させないというのは大いに問題があると思いますよ。

 それでは、防衛大学校では、卒業時に任官を辞退、拒否する者に対して、在学中の学費返還を求めているとの情報がありますが、それは事実なんでしょうか。

真部政府参考人 現在、防衛大学校の本科における任官辞退者に対しまして、学費の返還を求めているということはございません。

照屋委員 最後に、護衛艦「たちかぜ」乗務員であった自衛官が、隊内でいじめや暴力行為を受けて自殺に追い込まれた事件は、遺族が国を訴え、東京高裁で全面勝訴の判決が確定をいたしました。

 遺族は、現在、公務災害の認定を申請中です。私は、確定した東京高裁の判決内容に照らして、速やかに公務災害認定をして、使命感を持って自衛隊に入隊をした被害者の尊厳回復に努めるべきとの立場です。同時に、遺族の無念の思いに応えるためには、一日も早い公務災害認定を望んでおりますが、審査手続の進捗状況について尋ねます。

真部政府参考人 今御指摘の事案につきましては、本年二月に、御遺族の方から、本件災害は公務上の災害である趣旨の申し出をいただいております。

 当該申し出に基づきまして、現在、海上自衛隊の横須賀地方総監部におきまして、損害賠償請求に係る裁判で明らかとなった、今、高裁の判決で明らかとなった事実も踏まえつつ、公務災害に係る調査を実施しているところでございます。

 一般的には、精神疾患の発症には複数の負荷が複合的に影響して発生しておりますことから、業務に関連した過重な負荷につきまして調査を行うとともに、自殺原因の精神疾患と公務との相当因果関係に係る医学的な所見、こういったものを踏まえました上で公務災害の判断を行う必要があるというふうに考えております。

 防衛省といたしましては、できる限り速やかに本件に関する公務災害の判断を行うよう、適切に対応いたしてまいります。

照屋委員 大臣、質疑応答を聞かれて、私は、あくまでも自衛官の人権、尊厳というのは、いかなる場合でも尊重されなければならない、守られなければならないという立場なんです。

 そういう観点から、やはり、隊内におけるいじめの根絶、そして、なぜ幹部自衛官を養成する防衛大学校本科において卒業時に任官拒否者がふえているのか、増大しているのか、そのことも真剣にお考えいただきたい、このように思います。

 それを伝えて、終わります。

北村委員長 次回は、明二十四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十三分散会


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