衆議院

メインへスキップ



第8号 平成13年4月3日(火曜日)

会議録本文へ
平成十三年四月三日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 五島 正規君

   理事 伊藤 達也君 理事 稲葉 大和君

   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君

   理事 小林  守君 理事 近藤 昭一君

   理事 青山 二三君 理事 樋高  剛君

      植竹 繁雄君    小渕 優子君

      岡下 信子君    熊谷 市雄君

      小泉 龍司君    河野 太郎君

      下村 博文君    谷本 龍哉君

      鳩山 邦夫君    原田昇左右君

      平井 卓也君    増原 義剛君

      奥田  建君    鎌田さゆり君

      佐藤謙一郎君    鮫島 宗明君

      長浜 博行君    山田 敏雅君

      田端 正広君    藤木 洋子君

      阿部 知子君    金子 哲夫君

      原  陽子君

    …………………………………

   環境大臣         川口 順子君

   農林水産副大臣      松岡 利勝君

   環境副大臣        沓掛 哲男君

   環境大臣政務官      熊谷 市雄君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬局食品保

   健部長)         尾嵜 新平君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議

   官)           坂野 雅敏君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部

   長)           永村 武美君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局次

   長)           佐藤  準君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長

   )            岡本  巖君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次

   長)           増田  優君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力

   安全・保安院審議官)   広瀬 研吉君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・

   リサイクル対策部長)   岡澤 和好君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長

   )            中川 雅治君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環

   境保健部長)       岩尾總一郎君

   参考人

   (独立行政法人国立環境研

   究所統括研究官)     森田 昌敏君

   参考人

   (独立行政法人国立環境研

   究所循環型社会形成推進・

   廃棄物研究センター長)  酒井 伸一君

   参考人

   (横浜国立大学環境情報研

   究院教授)        浦野 紘平君

   参考人

   (淑徳短期大学非常勤講師

   )            村田 徳治君

   環境委員会専門員     澤崎 義紀君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月三日

 辞任         補欠選任

  佐藤謙一郎君     山田 敏雅君

  金子 哲夫君     阿部 知子君

  原  陽子君     金子 哲夫君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 敏雅君     佐藤謙一郎君

  阿部 知子君     原  陽子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案(内閣提出第三七号)

 環境事業団法の一部を改正する法律案(内閣提出第三八号)




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

五島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案及び環境事業団法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 両案審査のため、本日、参考人として、独立行政法人国立環境研究所統括研究官森田昌敏君、独立行政法人国立環境研究所循環型社会形成推進・廃棄物研究センター長酒井伸一君、横浜国立大学環境情報研究院教授浦野紘平君、淑徳短期大学非常勤講師村田徳治君、以上四名の方に御出席いただいております。

 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人の皆様におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にしてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序でございますが、森田参考人、酒井参考人、浦野参考人、村田参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。

 それでは、森田参考人にお願いいたします。

森田参考人 国立環境研究所の森田でございます。PCBの処理対策につきまして、少し私の考えておりますことを述べさせていただきます。

 お手元に二枚紙の、非常に簡単なポイントだけを書いた紙を用意しておりますが、これに従いましてお話をさせていただきます。

 PCB対策につきましては、その必要性というのは既に三十年前から指摘され続けておりまして、しかしながら、なかなか進まなかった背景がございます。その一方で、PCBに対する人々の感じ方も随分変わってきておりますので、そのような感じ方の推移、そして対策技術がなかなか進まなかった原因、そういった部分について解析をしているところを述べさせていただきたいと思います。

 まず最初に、PCBの有害性についてであります。

 PCBの有害性については、過去四十年間の間に随分さま変わりしてまいりました。そのようなさま変わりといったものが、例えば法律に組み込まれるときのそれぞれの時点において最適であったとしても、振り返ってみると、また違った様子になっているということがしばしば起こっております。

 まず、一九六〇年代、この時期におきましては、PCBは無毒で安全な物質で、非常に便利な化学物質であるというふうに考えられておりました。したがって生産は順調に伸びております。日本では鐘淵化学というのが一番大きな製造者でありますが、あわせて、アメリカのモンサント社と三菱化学との合弁で三菱モンサントという会社が日本でも生産を始めておりまして、六〇年代は、非常によい物質というふうに考えられていたところであります。

 一九六八年に至りまして、これが暗転いたします。きっかけになりましたのは、ダークオイル事件あるいはカネミ油症事件と呼ばれる、ライスオイル、米ぬか油の製造工程においてPCBが混入し、それが鳥肉のえさになる、あるいは人がそれを食することによって起こった中毒事件であります。これを契機にいたしまして、PCBは危険なものではないかという疑いが持たれ始めまして、一九七〇年代の初めの、例えば七〇年の公害国会を初めとする環境問題の高揚と同時に、PCBはやや危険な物質という認識で対策が打たれ始めます。

 例えば一九七二年に回収保管といったこと、あるいは新たな使用の中止が行われておりますが、しかし、このときにもなおかつ、かつて安全に使っておったという記憶が残っておりまして、結果として継続的な使用が非開放的なものについて認められています。

 例えばトランスというのは、それが直ちに環境中に漏れてくるわけではないのであるから、したがってまだしばらく使ってよいのではないかというふうな扱い方であります。また、新幹線のように高性能のトランスが必要なものというのは、PCBはなくてはならないものであるという認識もあり、この時点でしばらくは使い続けるということが起こっております。

 しかしながら、使われたPCBはやがて環境中に漏れ、そして、それがたとえ希釈されて出されたとしても、魚などに蓄積し、再び人間に舞い戻ってくる。わずかに出ていったものがいわばブーメランのように人に戻ってきて、かつまた、蓄積されたPCBが人に害をなすのではないか、そういう心配があるということもありまして、一九七三年に化審法が制定されています。

 これと関連いたしまして、その後、水質汚濁防止法等の環境規制法の中にPCBが少しずつ織り込まれていきまして、排出抑制対策がとられてきております。

 なお、一九七八年に台湾で、カネミ油症と全く同じ症状の台湾油症というものが発生しておりますが、十年後に全く同じ悲劇が繰り返されたという状況になっています。

 一九七〇年代後半から八〇年代にかけまして、環境問題はほぼ終息したのではないかという時期がありまして、やがてPCBの問題も少しずつ記憶から弱まっていったところがありますけれども、しかしながら、保管されていたPCBは一体どうするんだろうかということが課題になっておりまして、八〇年代、この保管されているPCBの処理といったものについて議論がなされ、かつまた、それを何とか消してしまうという動きが出始めております。それで、幾つかの努力がなされました。

 成功いたしましたのは高砂市におけるPCBの焼却でありまして、ここにありました五千五百トンのPCBが焼却され、そして処分されております。今思いますと、これは非常に適切なアプローチでありまして、この焼却は一九八八年か九年に終了していますが、実は、その七年後に兵庫県南部大地震が起こっておりまして、高砂市もかなり揺れております。

 当時、地震等によって、ためられておりましたPCBが漏れたときには非常に甚大な災害になるということが懸念されておったのですが、幸いにして、そのときにはもう既に消えておったということであります。もし仮にそこにありました五千トン余りのPCBが漏れていたならば、恐らく瀬戸内海は全く使い物にならない、そこの水産業は絶命するということが起こっていたということでありますが、何事もなくうまくいったということであります。

 しかしながら、そのほかにたまっておりました少量の、個別に入っておりますトランスその他のものにつきましては、そのまま保管された状態が続いておりまして、それをどうしようかというのが現在の課題になってきております。

 なお、一九八〇年代を終え一九九〇年代に入りまして、さらにPCBに対する毒性の観点が高まってきております。それは、一九九〇年代に猿の実験などが出てまいりまして、あるいはまた、ダイオキシンの問題が非常に広範囲に課題になってきた過程におきまして、PCBの毒性が再評価されてきております。その過程で、PCBというのは想定したよりもより一層強い慢性的な影響を持ち得るということでありまして、一九七〇年代よりもさらに一層の対策強化が必要ではないかという認識が徐々に出てきております。

 この極端な一つの例といたしまして、一九九九年にベルギーで鶏の肉の汚染が発生いたしました。これは恐らく、多分、小さなトランス一個ぐらいのPCBが鶏の飼料の原料に混入したということでありますけれども、その結果として、ベルギーじゅうの鶏肉の生産、さらにそれはほかの食肉へも波及いたしまして、ベルギーは、全体として数千億円のロスを出したというふうに言われております。ダイオキシンと関連した形で極めてセンシティブに市民が心配をし、それがヨーロッパ全体に波及したという事例であります。

 このような全体の流れの中で、一刻も早くPCB処理を急ぐ必要があるというのが現況であります。

 次のページをめくっていただきますと、それでは、PCB処理は一体なぜそんなに難しかったのかということを復習したいと思います。

 PCBの処理の重要性は、世界の多くの国でも一九七〇年代半ば、もう三十年近く前から認識され始めておりました。とにかく、使うのをやめるものの、残ってしまったのを一体どうするかというのはなかなか解けない課題であります。

 その処理がうまく進まなかった一番大きな原因というのは何かといいますと、処理工場の立地問題であります。もちろん、処理技術の安全性の問題もあるのですが、基本的にそれは立地問題として集約されてきたということであります。これは世界じゅうで進みませんでした。

 私自身、二十五年ぐらい前にカナダの環境省を訪れたときにも担当者と話をしたことがあるのですが、その担当者は、セメントキルンで焼くのが一番よさそうである、しかしながら、セメント工場に持ってくる、あるいはその工場周辺の住民が余り同意をしてくれないので、そこで焼くことは難しいのだという話をしておりました。

 恐らく、PCBの処理で最も安価で最も効率のよい方法は焼却処分で、そのうちの一つとしてロータリーキルン、セメントキルンを含めたそういったものもあるだろうということは、もう一九八〇年代の初めからみんなが考えていたことであります。しかしながら、それは先ほど言いましたような幾つかの条件で、特に住民の納得がいく形にならなかったということが一番大きな問題であります。

 そしてその問題がさらに、徐々に形を変えてあらわれてくるのがダイオキシンの問題であります。

 PCBの燃焼過程においてダイオキシンが出るのではないかという不安が絶えずありまして、高砂の場合はそれを徹底的に封じ込めるような焼却炉を建設することによって成功しましたけれども、一般の納得を得るためには、このようなアプローチといったものについて相当きちんとした形をとらなければいけない、あるいは、焼却過程というのはダイオキシンを発生するからよくないんだ、そういう高まりが九〇年代に入って広がってきております。

 その結果として、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリア、そういったところを通じて広がってきましたのは化学処理という形でありまして、これは排ガスが出ていかない、ウエットな処理というか、そういう処理になりますので、そういう点で少しずつ理解が得られ始めているということであります。

 ただ、化学処理が一番いい方法かどうかというのは若干議論の起こるところでありまして、焼却処理の方が多分安価でよいだろうという認識ではあります。しかしながら、市民あるいは国民のコンセンサスを得る過程で、そのようなアプローチもまた一つの重要なアプローチになるということであります。

 なお、全体として、国民全体のリスクを下げる、個別の、個人のリスクということもありますけれども、全体のリスクを下げるということがどうしても必要でありまして、そのような非常に効率のよいアプローチと、個々の市民が感じる個人的なリスクとの間の若干のギャップを埋めつつ展開する必要があるだろう。

 それから、トップダウン型のアプローチというのは、一般的には効率がよくて最もすぐれているケースが多いのですけれども、それは周辺住民が好まないときもあるということもありまして、そういう意味では、どこかに適切なコンセンサスを得ながら展開する必要があるということであります。

 なお、この種のアプローチにおきまして今までずっと感じておりましたのは、国家ないしはそういった公的な関与なしにここの部分は進まないということ、そしてまた、PCBの多くが実は中小事業体、あるいは極端な場合には学校とかいったところに非常に分散して分布しているという構造であります。

 このような分散して分布というのは、一見、自分の身の回りにないように感じているのは間違いでありまして、どこにでもあるというのが現況でありますので、それらのものをとにかく集めて処分をしなければいけない。特に中小事業者の持っているPCBというのは、数それから量におきましても分散しておりますし、また、現在の中小事業者の経済的な苦しさみたいなことを肌で感じますと、そこには適切な誘導策なしには進まないだろうというふうに感じているところであります。

 PCBの問題というのは、それを浴びたときに非常に不安を感じます。そういったときに極端な不安を与えないで、しかし確実に、円滑にPCBを消していく必要があるというのが私の認識であります。

 以上です。

五島委員長 ありがとうございました。

 次に、酒井参考人にお願いいたします。

酒井参考人 国立環境研究所の循環型社会形成推進・廃棄物研究センターを担当しております酒井でございます。

 私自身は、廃棄物問題あるいは物質循環を工学的に研究する立場でございます。その立場から、きょうはPCB処理に関しまして、一点は、循環型社会形成と化学物質コントロールという両方の視点が必要であるという点、それに関連いたしまして、PCB処理が求められる背景、そして処理技術の現状あるいはモニタリングの必要性等といった文脈でお話をさせていただければと思います。

 お手元の資料の一ページ目の下の図でかいておりますイメージでございますが、これは私どもかねてより、二兎を追う者は一兎をも得ずという古いことわざ、これを、二兎を追うときのみ救われるということで、昨今進められております循環型社会形成、これは資源・エネルギー問題であり、あるいは廃棄物問題であり、あるいは気候変動問題でありということから、今後の地球系の維持のためにはこの循環型社会形成は不可欠、こういう合意が得られてきたところでございますが、これに右側の、化学物質コントロールの視点をあわせて運用していくことが強く求められているのではないか、こういう主張のための絵としてかいたものでございます。

 特に、右側のラインというのは、かつての水銀の問題であれ、あるいは昨今のごみ焼却に伴いますダイオキシン問題であり、あるいは環境ホルモン問題、こういったものを循環型社会の形成とともに同時にコントロールしていかなければ、場合によれば、こういう化学物質をあえて循環、あるいは場合によっては、濃縮をして物を循環させてしまう懸念がある、そういう部分をいかに断つか、そういう必要性を訴えているものでございます。その中に、本日のこのPCBというものも非常に強く関連いたします。

 先ほど、森田統括から御紹介がありましたベルギーの鶏肉のPCB汚染問題というのは、これはまさに動物性脂肪を飼料として循環していた中でPCB混入が起こり、そしてその飼料から鶏肉あるいはほかの食肉も汚染をしていったという、ある意味では非常に悲しい事実でございます。こういったことで欧州社会が二年前大きく揺れ動いた、そういう事象でございまして、そういった意味からもPCB処理が求められるということは言えようかと思います。

 次の二ページ目の上の方の図では、PCBとポリ塩化ダイオキシン類、いわゆるダイオキシンというのがよく関連づけて話がされます。

 毒性評価という意味で、ダイオキシン類は全部で二百十種類の異性体がございますが、その中の十七の異性体、そしてPCBの方は二百九種類の異性体がございまして、そのうちの十二種類の異性体、これを同時に毒性評価しよう、こういうルールがWHOで定められ、日本政府もそういう決定をしてきているわけでございますが、そういうダイオキシン類とPCBの似ている側面があるとともに、この図で示しておりますのは、発生源として見た場合には、ダイオキシン類の方は意図的に生成したものではないということでバツ印を入れてございます。

 一方、その下のPCBと書いてある方に関しましては、これは化学反応生成物として意図的に生成をしてきた、そして多様な用途、絶縁体であるとかカーボン紙等にこれは多くを使ってきた、こういう事実がございます。そういった発生源という意味では、これはかなり似て非なるものということが言えるわけであります。そして、日本国内で約五万トン程度まだそういう意味では残存している、そういう状況にあるわけです。

 二ページの下の方では、PCB処理が求められる背景ということで、これは三十年前よりその処理の指摘は既になされていた、そういう森田統括のお話がございましたが、九〇年代に入って以降、特にこの処理の要請が強まってきた背景といたしまして、この一番、二番のポイントが挙げられようかと思います。

 一つ目は、我々が住んでいる一般の大気の環境、この大気環境をはかりましても、やはりPCBは一定レベルで検出はされます。これはまさにPCBの環境中への移動性によるものでございまして、そういう意味では、わずかながら揮散するといいますか、蒸気圧をもって揮散するということで、移動性を持つ、そういうポイントがございます。

 さらに、その移動性が、地球レベルで見ていきますと、極地に住まわれますイヌイット族の方々の女性の母乳中からもこのPCBは検出される。イヌイット御自身はPCBを使っていません。そのあたりは後段の資料の方に少し整理して書いてございますが、右下のページ数で参りますと六ページのところに図を含めてちょっと示してございます。

 ケベック極地に住まわれるイヌイット女性の母乳中のダイオキシン類、PCB濃度と、低緯度地域の女性の方々の濃度を比較したものでございます。このグラフの中で、濃度の高い方がケベックのイヌイットの方々の女性の母乳中のPCB濃度でございまして、低緯度地域の方々に比べて約三倍の濃度というふうになっております。

 これは九〇年代初めにカナダの学者グループで報告された数字を引用させていただいているわけでございますけれども、こういうことになっている理由といたしましては、PCB自体が地球上を移動する。それは、先ほど申しました、わずかながら大気に移動し、そしてそれが大気循環の中で、あるいは大きな海流循環に乗りまして移動をしている、そういう事実を指し示すものでございます。

 それともう一点は、イヌイットの方々の海産物の摂取量がやはり多いということでございます。約三百グラムということで、日本人が平均百グラム程度でございますが、その量に比べて非常に多い。このあたりのことで、みずから使われていないイヌイットの方々の体内濃度の方が高くなっている、こういう事実、これが九〇年代に入ってわかってまいりました。

 四番目に書いてあります残留性有機汚染物質の国際条約、恐らく本年の五月にストックホルムで条約が成立する見通しでございますけれども、その中にこのPCBが取り込まれ、そして国際条約に向けて国際社会が動いていることの大きな理由の一つになってございます。

 それと、こういう事実と一対ではっきり証明できるものではございませんが、衆議院の環境調査室でおつくりになられていますこの三十七号の資料でも御紹介されておりますけれども、国内の使用、保管中の高圧トランスあるいはコンデンサー約三十八万五千台、このうち何と一万一千台が紛失・不明である、それが環境汚染源となっている可能性は極めて高いと見るのがやはり妥当かと思います。そういう意味で、これと今のイヌイットの方々のPCB汚染というものとが、簡単に一対にこれは証明できるものではございませんけれども、その可能性を否定できるものでもございません。

 そういったところで、次の三ページに参りまして、残留性有機汚染物質、POPsと呼ぶ場合もございますが、この条約の成立を目指して国際社会で今議論をされているというところでございます。

 この中で十二種類のPOPsが対象になってございますが、この中にPCBが含まれてございます。そして、意図的な生産に対しては製造、使用を禁止し、そして廃棄に至ったものに関しては適切に処理をしようという機運が高まってきてございます。現在のドラフトでは、二〇二八年を目指して廃絶、そういう案が議論されているというふうに伺ってございます。

 さて、そういう中で、PCBの処理技術でございますが、三ページの下の表に、廃PCB等ということで、主にPCBを含む油とPCBに汚染された固形物とに分けて、どういった方法がこれまで開発されてきたかということを整理して一覧表にしてございます。

 かつては、両者に挙がっております焼却という方法がやや有効であるという認識、これは今も変わらないということが先ほどの森田統括の御見解でございますが、それに加えて、最近いろいろな処理、分解の技術というものが開発をされてきております。そのあたりの整理を含めてここに、水熱酸化分解から還元熱化学分解云々ということで整理をしてございます。

 特に、この下の方の容器に関しましては、この分解の技術に関しましては、今、日夜開発が推進されているというふうに理解してございますが、その下の除去、分離、洗浄技術、ここをうまく組み合わせることでもって、固形物に付着したPCB等も、一たん分離、除去をし、そして、廃PCB等と同じ処理技術が適用できる、そういう方向にあることはまず間違いないと見ていいかと思っております。

 そういうことで、PCB処理技術に関します現状を整理いたしますれば、廃PCB、特にPCBオイルに対します化学処理あるいは超臨界水酸化、このあたりの技術はほぼ実用レベルに達してきているというふうに見ていいのではないかと理解してございます。

 そしてまた、この高温燃焼分解というのは、欧米では確立済みの技術として日夜使用されております。そういう意味では、PCBが新たに廃棄になってまいりますれば、高温燃焼分解で処理を進めているというのが欧州の実情でございます。

 また、日本の方でも、排ガスに対するダイオキシン対策の高度技術化というところは、決して燃焼分解だけに適用するというものではございませんで、化学処理の過程でも、ガス対策という意味では、これは的確に使用し得る要素技術ということになってきているのではないかと思います。

 こういったことで、技術という意味では昨今非常に前向きな展開を見せておりますので、そういった中で、地球環境の保全の視点からもあるいは適正な循環型社会をつくるという意味からも、PCBとぜひこの段階で決別できるようなシステムができることを願っているものでございます。

 その中で、先ほど少し立地時に関します困難性ということの御指摘もございましたが、技術に完全な技術、一〇〇%安全な技術というのはやはりないというふうに認識すべきだと思います。そういった意味では、その技術を使うというシステム、すなわち一定の技術情報、あるいはモニタリングといいますか、その周辺の環境濃度等を含めた情報公開を的確に図りながら、そしてそのデータを見て、そういう意味ではまた見直す勇気も持ち、そして議論の中で的確に処理を進めていくということが最も肝要なことであろうかと認識してございます。

 大体時間だと思いますので、これで終わらせていただきます。

五島委員長 ありがとうございました。

 次に、浦野参考人にお願いいたします。

浦野参考人 横浜国立大学の浦野でございます。以前にもほかの法案でこちらにお招きいただいたことがございますが、四月から所属が若干かわっておりますので、最後の方に所属、連絡先等を書いてございます。

 きょうは、四ページの白い紙と、それからピンク色の参考資料、私どもの研究室で事務局をしております研究会が一年前にPCBの処理の必要性を書いた資料を参考にお配りさせていただいております。

 本日の私のお話は、四つに分けてお話ししたいと思います。一つ目はPCBの特性、二番目が対策の緊急性、それから、重要な三番目が法案への意見、四番目がその他の意見でございます。これに従ってお話しさせていただきます。

 私は物質工学科というところに所属しておりましたので、化学物質の管理というのが重要な仕事であったわけですが、まず、PCBというものがどういうものかというのを、先ほど来お話がございましたけれども、簡単に復習させていただきます。

 PCBは、日本が約五%、世界じゅうが百二十万トンぐらい製造したうちの六万トン弱を日本が製造、場合によっては一部輸入もしておりましたが、こういったものを使ってきました。非常に分解しにくい安定な化合物であるということで、極めて多種多様な用途に使われてきましたけれども、これが災いして、環境中でもあるいは体の中でも極めて安定で蓄積しやすい難分解な状態であったということ。また、一部に、これが安定であるにもかかわらず、中途半端な加熱をされて酸素の中に放置されると、ダイオキシンの一種であるポリ塩化ジベンゾフランに酸化されて毒性がむしろ強まるという性格もございます。

 これが特に体に蓄積しやすいものですから、魚介類等に数万倍あるいは海洋哺乳類や水鳥に数千万倍に濃縮されている。日本人のダイオキシン摂取量の三分の二は魚介類からと言われておりまして、そのうちのまた三分の二、全体の半分以上がコプラナPCB、すなわち、PCBのうちのダイオキシン類に指定されているものが半分以上を占めているというのが現実でございます。

 この有害性については、環境試料、土壌であるとか生物であるとか、あるいは母乳も含めて、合計濃度とダイオキシン換算の毒性等価量との関係が出ておりまして、これは大体一万分の一から五万分の一ぐらいになっております。ですから、一番毒性の強いダイオキシンほど極端に怖がる必要はないんですが、やはりその数万分の一、平均でいうと二万五千分の一ぐらいの毒性があるということになっております。

 この関係を、最近のダイオキシンの耐容摂取量、一日、体重一キログラム当たりの許容摂取量のようなものですが、これが四ピコグラム、十兆分の四グラムというふうに決められているわけですけれども、PCBの許容摂取量は現在五マイクログラムということになっておりまして、ダイオキシン換算しますと、この間に五十倍ぐらいの差がある。PCBの許容摂取量の方が改正されていないままであって、それに関連した基準も改正されていないという状況にあるのを、今後きちっと毒性を評価して管理をしていく必要がある。

 それから、もう一つ重要なことは、PCBは揮発性が少しございまして、取り扱い中に大気中に出る、あるいは保管中にも大気中に出て、地球上全体を汚染、周辺ももちろんのことながら地球全体を汚染し、それが先ほど御紹介のあった北極域に特にたくさん集まってきて被害を与えるというようなことが言われておるわけです。

 こういった特性があるPCBが長い間保管をされてきたわけですけれども、旧厚生省が調査をしたのが、平成四年と十年に調査をされておるわけですけれども、アンケート等で問い合わせをしても七割ぐらいの企業が返ってこないという状況ですので、その後、最近PCB問題が大きく取り上げられてから、大企業を初め米軍であるとか学校を含めて、私のところにもありますとか、こういうところにもありましたというのが次々に見つかっているという状況でございまして、中小事業者あるいは自衛隊なども含めて、本当に日本じゅうでどういうところで使用され保管されているのかというのは必ずしも十分把握されていないという状況にある。

 しかも、例えば旧厚生省の調査で不明ないし紛失したと言われているものをダイオキシン換算すると、およそ百四十キログラム相当になります。百キロと言う方もおられるんですが、このぐらい。現在、旧環境庁が発表しているごみ焼却場等から出てくるダイオキシンの量は、年間三キロぐらいでございます。ということは、四十五年相当分がもう既にPCBからダイオキシンが環境中に出てしまっている可能性がある。

 あるいは、こういうPCB機器を持っている事業者、建物を解体する場合、PCB処理をすると大変だから、ビルごと全部壊して、ビルの建設廃棄物と一緒にPCB廃棄物も一緒に捨ててしまえばわからないからそうしようというような、露骨に言っている業者も実はあるというのが実態でございます。

 こういったものをこれからしっかりと緊急的に対策をとっていかなければいけません。特に保管されているものは、ダイオキシン換算で約二トン相当、二千キロ相当になります。これは、先ほど言いました三キロの七百年分に相当する。要するに、毎年出ているダイオキシン類、ごみ焼却場で大騒ぎしていますが、それの七百年分相当のPCBが保管されているという現状を放置しているわけにいかないということでございます。これはもう前から私どもがしきりに言ってきたことですが、なかなか対策が進まなかったということでございます。

 先ほど来御紹介がありましたように、処理技術はかなり進んできておりますし、いろいろな信頼できる技術ができてきております。高温焼却技術も、住民は怖がる部分があるんですけれども、十分信頼できるレベルに来ておりますので、これも活用して、対象物の量や濃度等に合わせて技術を選択する。例えば、高濃度のものは化学処理をして、低濃度の、布であるとか木にくっついたようなもの、紙にくっついたようなものは場合によっては焼却をするといったような使い分け、あるいは残ったものを最後は焼却するとか、いろいろな組み合わせを考えて対応をとるのがいいのではないかというふうに思っております。

 また、処理後の基準、これは通称卒業基準というそうですが、これは、日本は世界的に大変厳しい基準が旧厚生省あるいは環境庁で、現在の環境省で決められておるんですが、実は、処理の基準の中でも、非常に厳し過ぎる部分と少し緩過ぎるのではないかと思われる部分があります。

 それは、PCBとして考える場合とダイオキシンとして考える場合が少し整合性がとれていない。あるいは排水基準なりその他の基準、廃棄物の溶出基準等も、ダイオキシンの基準とPCBの基準は全く整合性がとれていないという状況でございますので、この辺についてはきちっと整理をしていく、処理を進めながらでもいいとは思いますが、何とかしてきちっとしていく必要があるというふうに思っております。

 そういうことを進める上でも、この法律が提案されたことは大変意義深い、何年間も私どもで言ってきたことがやっと実現してきたというふうに思っております。

 三番目の法案に対する意見でございますが、三十年近く放置してきた行政の責任というのは非常に大きいというふうに私は思っておりますが、これが今これからスタートするということで、過去の責任追及ということではありませんが、やはり国民にそのツケを回し過ぎないようにきちっとしていく必要があるというふうに思います。当然国は、ある程度の責任を持って資金も出してやることが必要だとは思いますが、十分、税金を使っているんだという意識でやっていただきたいというふうに思っております。

 法律そのものは全体的にはかなりよくできていると私は思っておりますので、法案には基本的には賛成という立場でございますが、できれば幾つかの注意点を附帯決議等でつけていただければありがたいというふうに思っております。

 特に、最初の段階では、目的のところに、「国民の健康の保護及び生活環境の保全」と書いてございまして、これはよくあるフレーズでございますが、実はPCBの場合、先ほど来御紹介がありましたように、世界じゅうを汚染しておりまして、特に海洋哺乳類等に大変深刻な影響を与えております。こういった野生生物、生物多様性の保護という視点がこの法律に全くないというのは、今の時代に少しおかしいのではないかということを私は感じております。

 それからもう一点、資金の出捐について、基金出捐ですが、拡大生産者責任というのがOECDで議論されておりますが、PCBを製造した者の負担を、これは国が協力を求めることになっておるわけですけれども、どのぐらいの協力を得られるのか、これは相当国民負担に転嫁されるおそれがあるので、それなりの相当額をきちっと要求すべきである、負担させるべきである。

 それから、PCBを使用した製品を製造した者というのがございまして、私がこの委員会の前にいただいた資料では、重電メーカー、いわゆる発電所とか変電所を持っている、あるいはその機器をつくっているところというようなのが例に挙がって、例なのかどうか、それだけが書いてございますが、実はPCBを使用した製品をつくった者はたくさんおるわけで、この範囲も極力広げて、製造者責任の範囲を明確にして広げて、国民負担を減らしていくべきだというふうに私は思っております。

 それから、先ほどのお二人の方々もおっしゃっておりましたけれども、この問題をスムーズに解決するためには、やはり周辺住民あるいはNGOの理解を得ることが極めて重要でございます。

 法案によりますと、第五条に、国民、事業者等の理解を深めるよう努めなければならないという非常にあいまいな書き方がしてございますが、私は、この問題については、住民参加あるいはNGO参加という言葉が必要なのではないか。その参加の中でリスクコミュニケーションをしてやっていく。

 これは、オーストラリアなどでもそういう事例がございますし、特に、安全の確認の仕方を住民の意見を入れてやっていく。しかも、オーストラリアの場合は測定値を翌日公開しているんですね。そういう形でやることで非常に信頼度が得られるようになっている。そういったことも含めて考える必要がありますし、その中で、自治体の役割というのをもう少し明確にしてよろしいし、その自治体の職員の研修等も非常に重要だというふうに思っております。

 また、自治体は、中小事業所の所有分あるいは分散型用途、例えば、一部は家庭用品あるいは事務機器の古いものの中にまだ入っておりますので、そういったものも把握するとなると自治体の役割が非常に重要でございますので、そういったことも自治体の役割としてきちっと明記しておく必要があるのではないかというふうに思います。

 それから、もう一点重要なことは、技術のことですけれども、技術はかなり信頼できるものができているということを申し上げましたが、それは処理能力のことでございます。しかし、その能力というのはPCBの分解率で表示されておりますので、PCBの分解途中のもの、あるいはほかのものに変換されたものも、トータル、わからないものも出てくるおそれがあるというのが住民の不安でございます。

 その住民不安にこたえるには二通りございまして、一つは、仲間の塩素化合物の合計をはかって管理する。そういう有機の塩素化合物というのが何もありませんよというのを管理する。それは、一つは、今ここに書いてあるSNVOXという、VOClでもいいんですけれども、塩素はClというんですが、これで管理をするということが一つ。もう一つは、毒性で、バイオアッセーで直接管理をするというのが、これは化学的というよりは、住民理解という意味でも、私はそういった新しい指標も含めて副生成物管理をする必要があるというふうに思っております。

 それからもう一つは、処理能力だけではなくて、先ほど来あった、事故や災害等のときに安全な装置であるのかどうか。ところが、今までの処理技術の評価は、ほとんどが処理能力、あるいはどこまできれいにできるかということで評価をされているんですが、火災とか震災があったときに、あるいは腐食とかその他で漏れたりこぼれたときに危険度がどのぐらいなのかというあたりの評価が、実は必ずしも十分ではないのではないかというふうに私は思っております。

 といいますのは、大変心配しておりますのは、もし全国何カ所かでやったときに、一カ所でも事故を起こしたらば、原子力発電所のようにすべてがとめられて、すべてが不信感に陥ってしまって、すべてPCB処理がとまってしまうおそれがある。ですから、どこも事故を起こしてはならないという前提で処理をするとなると、実は、今ある化学処理の中に若干不安なものが幾つかあります。その点について、やはりもうちょっと何かきちっとすべきであるというふうに思っております。

 それから処理の順序等も、地域の特性に合わせたり、あるいは対象物の多さ、PCBの含有量だけではなくて、今現在ほっておくと廃棄されてしまうようなものを優先する必要もあるのではないかというふうに思っております。

 その他、時間も参りましたが、最後の方ですが、廃棄物として埋められたもの、あるいは汚染した土壌についての問題、それから事業団の経費が、特殊法人で公的資金で行われるとなると、競争がないので、つい多少、むだ遣いと言うと失礼かもしれませんが、非常に高額になってしまうおそれがあるということで、環境省や会計検査院の検査だけではなくて、第三者からのチェックを受けるようなシステムが必要ではないかというようなことも考えております。

 それから、その他の意見として、カネミ油症患者さんという大変深刻な、人体実験をしたような事例がございます。これは、本当にしっかりとした調査とか支援が必要ではないか。あるいは、PCBの代替物としてポリフルオロカーボンや六弗化硫黄等が現在温暖化等で非常に問題になって、環境中寿命が数万年というようなものがいまだに使われ、回収義務づけがされていないというふうな状況で、PCBほど毒性はありませんけれども、こういった負荷をきちっと管理していくべきではないかというふうに思っております。

 以上が私の公述でございます。どうもありがとうございました。

五島委員長 ありがとうございました。

 次に、村田参考人にお願いいたします。

村田参考人 淑徳短期大学の非常勤講師をやっております村田と申します。

 三人の参考人の方からもう既に基本的なお話は全部出ておりますので、触れられていない部分だけをちょっと重点的にお話をしたいと思います。

 実は、三十年間に、トランスとかコンデンサーが一万一千台も行方不明になってしまった、これに対する追及がほとんどなされていない。

 実際にこれがどうなっているのかというのは、幾つか事例があるんですが、ほとんどの場合は、工場で保管をすべきと義務づけられているにもかかわらず、その工場の担当者が定年退職、普通の退職あるいは転勤というようなことで管理者が不在になってしまう。しかもその書類も、工場なんかでは大体五年間保管なんということで捨てられてしまうおそれがあるということで、だれもわからなくなってしまう。

 たまたま変電所の改造その他が起きてそういうトランスなりコンデンサーが出てくると、それはわきに追いやっておくわけですが、たまたま廃棄物処理業者あるいは廃品回収業の方が工場へそういうものを集めに来るときに、それが一緒に出されてしまう。担当者はそういうことを全く知らずに引き継いだものですから、最初の担当者は知っているんですが、次の人たちはよく知らない。それが例えば解体業者の中へ回ってくる。

 解体業者をごらんになった方はそうたくさんいないのではないかと思いますが、実は、トランスなりコンデンサーを解体している、そればかり解体しているわけじゃありませんが、要するに解体をして、そこから鉄くずあるいは銅くずを回収して、それを資源として売却するということを昔から続けている業者がおります。そういうところへトランスなりコンデンサーなりが来ると、まずふたをあけて、中に入っているトランス油と称する油をドラム缶に移します。これがPCBである場合とそうでない場合とあるわけですが、一々それは、きちんとした業者であればそれはきちっと分けてやるんですが、本来やってはいけないことなんですが、PCBの入っているものは処理しちゃいけないことになっているんですけれども、それは知ってか知らずかということで解体をしてしまう。

 ドラム缶に入れて、周りに付着した部分は、その下に全部落ちてしまう。ドラム缶に入らなかった部分は全部土に落ちてしまいます。ですから、解体業者のところへ行くと、とても長靴でも履いていかなきゃいけないほど地面が油でどろどろに汚れているというようなところがたくさんございます。そういうところでは、当然PCBが土の中にしみ込んでしまう。

 それから、ドラム缶に入れられたもの、これはどこへ行くかというと、いわゆる廃油処理業者というところへ回されます。この廃油処理業者のところではいろいろなことをやるわけですが、品質のいいもの、余り汚れていないもの、トランス油みたいなものですと、ほとんど潤滑油関係に再生油として回してしまう。潤滑油としてPCBが使われた歴史もあるわけでして、古い機械油の中には大体PCBが検出されます。そういう形で、油としてリサイクルされてしまうということがあります。買う方も、それがPCBが混入している油であるということを知らずに買って機械油として使うということがあります。これは、だから非常に汚染源がどんどん拡散していってしまうということがあります。

 それから、もう一つ盲点になっているのは船舶の解体です。もう三十年以上、寿命が来た船舶、当時、やはり船というのは火災が非常に心配されるものですから、こういう電気機器類というのは不燃性のものを使うということで、PCBのコンデンサーあるいはPCBのトランスを使った船があります。最近、日本は造船の方は低調でして、船の解体の方も余り進んではいないだろうとは思うんですが、かなり前にはこういう船が解体をされて、そこに積んであるコンデンサーのPCBなり、あるいは火災防止のために暖房用に使うのはパネルヒーター、パネルヒーターの中にもPCBが入っているものがありまして、そういうものが解体と同時にほかのスクラップと一緒にまざってきて、油は油で一応集めるんですけれども、PCB入りの油というものが出てくる。これは一時大問題になったことがございます。その後、私も追及をしていないのでどうなっているのかわかりませんが、そういう点の汚染源というのもございます。

 法律の方で、事業者というものの中に、保管する事業者ということになっているんですが、解体をやっている人たちは、PCB入りの製品を保管したりなんかすることはほとんどないんです。運び込まれるとすぐその場で解体をしてしまって次に回してしまうわけですから、この保管というのは時間的なもので、一時間でも置いてあればそれは保管なんだというふうに解釈すれば、それは保管ということになるんですが、一般で言う意味の保管というのはほとんど考えられないというふうに考えた方がよい。ですから、この法律の中に、この保管というものにはもう少し何か条件をつけ加えないと困ることが起きてくるのではないかというふうに考えられます。

 それから、もちろん、譲渡あるいは譲り受けをしてはいけないという条文が載っておりますが、実際には、今お話ししたように、法律の存在を知ってか知らずか、あるいは十分承知してやっている部分もないことはないんですが、知らないで、そういう形でPCB入りの製品が流れてくる。特に倒産した会社などでは、当然そういうものが廃品回収業者の方に回る可能性も多分にあるわけです。これに対する法律的な縛りといいますか、それが十分でないような気がいたしました。

 それからもう一つ、次に、環境事業団がPCBの処理を行うということが今回の法律の大きな目玉だそうなんですが、実は、もう既に化学的な処理、いわゆる焼却処理ではない処理方法で実際に処理が行われています。これはお手元の三七号資料の中にも載っておりますが。

 今までPCBの処理がどうしておくれたかというのは、先ほど参考人の方々からるるお話があったように、いわゆるダイオキシンの発生問題、焼却によるダイオキシンの心配というのが一番大きかったわけですが、この化学処理によると、これは焼却ではございませんで、化学的にほとんどいわゆる還元状態でやるというもの、あるいは空気を遮断してやるという形ですからいわゆるダイオキシンの生成というのはほとんど考えられない。こういう処理技術がもう既に開発されていて既に実施をしているところがございます。お手元の資料の中にも、住友電工あるいは荏原製作所、日本曹達、それから東京電力はこれから、あるいは三菱重工もことしあたりやるという形になっております。

 東京電力の施設は横浜の大黒町という工業地帯で行われるわけですが、このとき近隣住民に対する合意を取りつけるということだった。この大黒町というのは工業地帯でして、実際には近隣に住民はいないんですが、隣の町会あたりを、大体六千戸の同意を取りつけたということでこれができるということになったようです。

 その場合の説明では、これは焼却処理ではないんだ、だからダイオキシンは一切出ませんという説明が行われているはずなんです。住民も納得してそういうふうなものに対しての反対運動が起きないということだろうと思うんです。事業団がどういう技術を導入されるか存じ上げませんが、例えば焼却を中心にした技術を採用するとなると、これはかなりの反対運動が起きる可能性はあります。

 それからもう一つ、事業団が公共的にやるということ。既に民間がやっているにもかかわらず、なぜ事業団が新たにこれに乗り出すのか。むしろ民間のやっていることをもっと助成して、その技術を生かして実際に処理をしていくべきではないか。

 例えば住友電工では、中小企業が保管するPCBの汚染を我が社で処理してもいいということを名乗りを上げております。あるいは関西電力なんかでも、受託処理も計画をしているということのようです。しかも、処理技術というのはまだ完全に評価がされておりませんで、高い技術もあれば安い技術もある。

 最終的に、いろいろなところがそういう処理を始めると、一番安いところ、技術がすぐれていて処理費の安いところに品物が集まってくるということになる可能性があるんですが、事業団がもしこういうことを始めてしまうと、今までこういうことを計画してきたところがほとんどだめになってしまうだろうという感じはします。

 それから、最近工場で、今までやっていた産業が下火になってしまって遊休地を非常に抱えてしまっているところがあります。あるいは、既に自分たちの持っている技術でこういうものは処理ができるんだという処理技術を保有している工場もたくさんあります。しかも、大手の工場ですと、周辺一キロ以上離れて住宅があって、近隣には全く住民が住んでいないというようなところも多々ございます。そういうところを生かして、むしろこういう処理技術の開発といいますか、むしろ技術の向上、お互いに競争し合って向上させるべきであるというふうに考えております。

 それから、公共関与で廃棄物を処理するということは、一応産業廃棄物については禁止されていると言った方が、国際的にいわゆる汚染者負担の原則というものによって、公共的にそういうものを入れると公正な競争が妨げられるというところから、あくまで汚染者負担の原則で排出者がそういうものを負担すべきであると。法律の中には一部出捐の話がございますので、それはそれとして、事業団が実際にやる根拠というのはどうも説得力がないような感じを受けるわけです。

 それから、時間がありませんので先を急ぎますが、先ほどお話しした、金属の解体業で実際に大変な土壌が油で汚れているところがございます。これは、土壌汚染に対する自社での調査義務だとか何か余りない、あるいは中小企業ではそういうことができないというようなところがございまして、これがPCBの汚染を広げている。当然、大気中へも飛散をしますし、雨が降れば流出するということになるので、この解体業のあれは急務だと思います。

 それから、もう既に述べられたように、いわゆる汚染物、PCBそのものではなく、PCBに汚染されたものについてはまだちゃんとした技術が開発されておりませんので、やはりこれを開発するのが急務である。

 そのほか、カネミ油症の患者の疫学調査の話は、もう既に浦野先生がお話しになりました。

 それから情報公開、これも既にお話しになったので、これで終わります。どうもありがとうございました。

五島委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

五島委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小泉龍司君。

小泉(龍)委員 おはようございます。

 本日は、四人の先生方、大変お忙しい中、当委員会にお越しをいただきまして貴重なお話を承りました。まことにありがとうございます。厚く御礼を申し上げます。

 先週来、今回の二法案の審議を当委員会で行っているわけでございますけれども、この議論を集約していきますと、大きく四つの論点があろうかというふうに思っております。

 一つは、法制全体の枠組みの適否の問題。この中には、環境事業団を活用することの是非、あるいは、民主党の方から出ています、PFIの手法を活用すべきだという議論もあるようでございます。

 二番目に、処理技術の確実性、安全性の問題でございます。この中には、ダイオキシン類であるコプラナPCBが処理できるかというような問題も含まれるわけでございます。

 三番目に、措置の実効性。法律ができましても、PCBの処理施設の建設が実際に進まなければPCBの処理は実行できないわけでございまして、過去三十年間、この問題が大きな阻害要因になってきたわけでございます。したがいまして、この処理施設建設に関する地元住民との合意、意思の疎通、これをどういうふうに図り実効性を上げていくのかという問題。

 最後に、この法律の外に出てしまった問題でありますけれども、過去三十年間の間に不明になった一万一千台余りの高圧トランス・コンデンサーを中心とするPCB廃棄物のもたらすリスク、またそれへの対応の問題でございます。

 この四点については今四人の先生方が順次それぞれお触れになりましたけれども、順番に、森田先生には一番目の問題、酒井先生には二番目の問題、順次また質問させていただきますけれども、浦野先生、村田先生と今四つの順番のとおりにお伺いをして、時間の進捗を見て複数の先生にもお伺いをしたいと思うわけでございます。

 最初に、森田先生にお伺いしたいわけでございますけれども、法律の枠組みの問題でございます。

 今回の法律は、排出者責任の原則を基本としつつ環境事業団を活用して処理体制を広域的に整備する、そして、中小企業者の負担を軽減するための基金をつくる、こういう内容でございます。この法律の枠組み全体のあり方について専門家のお立場からどのようにお考えになるか、お教えをいただきたいと思います。

森田参考人 法律のできぐあいというか、全体の枠組みはよろしいかという御質問かと思います。

 私の印象としては、法律は、いろいろな今までの苦い経験も踏まえて、バランスよくできているかなという感じをいたしております。

 一つ、ほかの参考人の先生方から御指摘があって、やや否定的な意見も出たようなところは、環境事業団の是非に関する部分かなという感じがいたしますが、ここのところは少し、考え方をどうするかということかという感じがします。とにかく国の関与なしにこれがうまくいくというふうにはだれも思っていなくて、どのように関与するかというそのやり方のところでいろいろなやり方があるかもしれない。

 指摘されるのは、多分、こういうものをかませるとコストが上がるのではないかという議論かもしれませんが、これに類似したものとして、これが適切な比喩かどうかわかりませんけれども、例えば私たちが土地を買うときに、民間ディベロッパーの土地を買うか、それとも公団の開発した土地を買うかといったときに、少々高くても公団のを買った方が安心かなというふうな思いもあったりするようなところが感じとしてありますが、同じようなことがこういう場面であるかなという感じがいたしまして、そういった公的機関の関与というのは大きい方がひょっとすると国民の安心を得られるかもしれない、そんな感じでございます。

 以上です。

小泉(龍)委員 ありがとうございました。

 続きまして、酒井先生にお伺いをしたいと思うわけでございますけれども、処理技術としての化学分解技術、これを前提に今回の枠組みは進めていこうということになっているわけでございますけれども、この化学分解技術について、海外の実績、あるいはPCB汚染物、トランス、コンデンサーを構成する金属容器、廃プラスチック、木片などのいわゆるPCB汚染物、これも処理できる水準まで技術水準が達しているかどうか。

 もう一つは、ダイオキシン類であるコプラナPCBについても分解が可能であるかどうか。我々は大丈夫だという認識を持っておりますけれども、間違いがないのかどうか、専門家の御見解をお伺いしたいと思います。

酒井参考人 まず、一点目の化学処理技術の海外の実績ということでございますが、カナダ、アメリカ、オーストラリア、フランスあたりで実績があると理解してございます。それらの技術をまとめまして、国連環境計画、UNEPというところでございますが、そちらが昨年の八月に非焼却系のPCBの破壊技術に関しましてレポートを公表してきておりまして、世界各国の中での化学処理技術の認識というものが図られているというように理解してございます。そういった意味で、海外での実績は十分あるのではないかというように考えていいと思います。

 それから二点目の、いわゆるPCB汚染物、油以外のところでございますが、このあたりの技術に関しましては、真空加熱分離、まず容器からPCBを分離するという意味で真空加熱処理技術を使う、あるいは溶剤で洗浄をして、その洗浄した液体を処理するといったようなことで、いわゆる分離の技術をうまく組み合わせることでもって一定の処理レベルにあると見ていいのではないかと思います。

 ただし、容器のハンドリングとかあるいは最終の処理確認といったような周辺の技術を含めて、やはりできるだけ完全に近い技術にするという努力は今後とも必要ではないかというようにPCB汚染物に関しては考えてございます。

 それと、PCBを処理したときにコプラナPCBはどうかということでございますが、PCBの全体の分解率に比べて特にコプラナPCBの分解率が低いというような事例があるようには見ておりません。ほぼ同じ分解率でコプラナPCBも処理できると見ていいのではないかと思います。PCB二百九種類の中のあくまで十二種類がコプラナPCBでございますが、それが特段低いということはない。

 PCBの中には、あと、ダイオキシン類の一部であるジベンゾフランも含まれるんですけれども、このジベンゾフランの方も、化学処理の中で一定の除去率というものも確認されてきておりますので、そういった意味で、ジベンゾフランとコプラナPCBは近いというふうに理解をいたしている中でも、コプラナPCBも分解できると考えていいんじゃないかというふうに思っております。

 以上でございます。

小泉(龍)委員 ありがとうございました。

 第三点目でございますけれども、浦野先生にお伺いしたいわけでございます。先ほども先生、このレジュメの三ページでもうお触れになっていますけれども、重複するかもしれませんが、ポイントをもう少し詳しく教えていただきたいと思います。

 安心、安全を求める地元住民との合意形成、意思疎通、これが非常に重要だと思います。また、施設ができてから後も、円滑なその事業の推進ということを確保するという点からも継続的に住民の方々への、受け身ではない、積極的な、でき得れば双方向の情報開示と意思疎通、これが重要かと思いますが、こうした情報開示のあり方についてどういう点を留意するべきか、どういう方法があり得るのか、重複いたしまして恐縮ですけれども、お教えをいただきたいと思います。

浦野参考人 今御指摘のあったとおり、あるいはほかの先生方からもお話がございましたけれども、住民の理解というのは大変重要でございます。これを得るために、とかく行政とか事業者は、詳しい専門的なことを一生懸命説明するということに陥りがちです。情報を開示するというのも、これは最低限必要なことなんですが、詳しい専門的なことをたくさん出すということよりも、当然、まずは住民自身、あるいはその代表者、あるいはそれを代弁する方が参加しているということがまず絶対必要条件だと私は思っております。

 いろいろな意思決定のところに参加する、あるいは測定に立ち会うというようなこと、あるいは、その結果がすぐにだれでもが見られる、見てわかるかどうかという話はまた別としても、見られるという状況がやはり安心感を生むということも非常に重要なことです。

 ですから、PCBのリスクがどうである、あるいは毒性がどうであるという細かな説明よりも、参加と公開されているということ、それをきちっとするためには、やはり地域の行政機関がそういうセンスでなければいけないわけですし、事業者の方もそういうセンスでなければいけないんですが、とかく技術の説明、あるいは安心ですよ、安心ですよと口で言う安心というのでは、やはり住民理解は得にくい。

 それから、先ほどちょっと指摘しましたけれども、日常的なこと以外に非定常なことが起こり得るということ、要するに災害、震災とか火災とか故障とかいうのが起こるんじゃないかというのは常に住民不安があるわけですので、それに対してのきちっとした対応、住民参加も含めた対応が本当に計画の中にきちっと入るかどうかが重要なポイントだと思っております。

小泉(龍)委員 ありがとうございました。

 最後に、過去三十年間に不明・紛失となってしまったPCB廃棄物の問題でございます。

 村田先生、先ほどかなり詳しくこの問題に触れていただきましたけれども、もう一度そのポイントをお教えいただきたいのです。この紛失・不明のPCB廃棄物はどこへ行ってしまったのか、またそれがどの程度のリスクを我々に与えつつあるか、現在とり得る措置としてどういう方法が考えられるかという点でございます。これも重複で恐縮でございますけれども、お伺いをしたいと思います。

村田参考人 先ほどもお話しいたしましたように、まず、解体業者のところへ回ってそこで土壌汚染をしている。役所側には土壌汚染を調査する権限はないはずなので、どのくらい汚染されているかというのはよくわかりません。ただ、かなり濃度の高いPCBが検出されることはあると思います。特に創業の古いところではそういうことがあります。

 それからもう一つは、廃油処理業者へ回っていく。これも中小零細がたくさんございまして、敷地内に油で汚れた土壌がかなり存在している。その後、製品として潤滑油その他で分散をされてしまった、そういうものかと思います。それ以外の拡散先はちょっと考えられないんですが。

小泉(龍)委員 わかりました。

 まだ幾つかお伺いしたいこともありますけれども、きょうは質疑者が大勢で、まだ五人おられるようでありますから、若干時間が残りましたけれども、これで終わりたいと思います。大変ありがとうございました。

五島委員長 近藤昭一君。

近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。

 きょうは、参考人の先生方におかれましては、大変にお忙しい中、貴重な御意見を賜りましてありがとうございます。かなり急なお願いだったと思いますが、どうぞ御容赦いただきたいと思います。

 今回のPCBの処理について、先生方のお話の中にも、また委員の方の質問の中にもありましたけれども、処理に対して住民の合意というのが大変に重要だと思います。また、この三十年間なかなかPCBの処理が進まなかったこと、これについてはいろいろな問題があると思うんですが、そういう中でも、やはり住民の方の心配、なかなか合意が得られなかったこと、それにきちっと対応できなかったこと等々があると思うのです。

 ところで、改めてこのPCBの処理、なかなか理解が得られないということを思ったときに、どうしてもやはりカネミ油症のことに思いが至ったわけでありまして、先ほど参考人の方からもお話がありました。カネミのことについてきちっとしたフォローがされていないのではないかと。

 私も大変に不勉強でありましてよく覚えていないところもあるんですが、カネミについては裁判も起こされて、しかしながら、途中で裁判を取り下げたか何かになってしまって、和解の補償金か何かを戻せとか戻せないとか、そういったことに対するフォローができていないということも、非常に住民の方に対する不安が払拭されないことの原因になっているかと思うのです。

 このカネミ油症についてのフォローがどうあるべきかということを、各参考人の方から簡単にお聞かせいただきたいのであります。

森田参考人 カネミ油症は一九六八年に起こりまして、当時、昭和四十三年ですので分析技術もまだ余り確立しておらぬ、そういう状況の中で九州大学のグループが一生懸命仕事をされて、原因究明は、比較的早い時期にPCBであるということがわかりました。

 しかし、実はPCBが、熱媒体として使われている間に変質し、ジベンゾフランというダイオキシンの仲間に変わっていって、それが超毒性を発揮したということもその後にわかりました。しかし、その過程で、裁判というのは一種の、何というか、争いのようなところもありまして、いろいろな証拠の提示とか、いろいろなことで難しい部分があったのだと思います。

 今それを振り返って考えてみますと、まず第一に、PCBの汚染として考えられたカネミ油症が、本当にどういう影響を人に対して与えておったのかということをちゃんと勉強する必要はあるだろうということがあります。

 しかしながら、これはもう一方でプライバシーの問題がありまして、やはり人を対象とする研究というのは極めて難しい。患者さん自身が触れてほしくない過去であったり、そういう部分があって、研究が一方ではなかなか簡単に進まないという側面があるのかなという感じがします。

 そういう意味では、日本で起こった非常に重要な事件でありまして、この勉強は相当必要ですけれども、それは相当ちゃんと勉強する必要はあるというふうに思いますけれども、一方で難しい壁もあるのかなということであります。

 なお、十年後に起こりました台湾の油症というのは全く同じ事故でありますけれども、これにつきましては、十年後に起こったこともありまして、化学的な調査は我が国よりもかなり丁寧にやられておりますので、それはかなり参考になるかなという感じがします。

 以上です。

酒井参考人 今、森田さんの方から言われたことに尽きると思っております。

 一つ、イタリアのセベソで、農薬の製造工場での爆発事故の後のフォローアップといいますか、後の追跡ということで、これは一九七〇年代後半に起こった事故でございますが、これをやはりイタリアあるいは国際的な研究チームで丁寧に調べられている、そういう事例もございますので、カネミ油症に関しても、ぜひそういう体制ができるのであれば望ましいということは言うまでもないことだと思います。

 以上でございます。

浦野参考人 私は、レジュメにも一つ書いておったのですが、法律に直接関係していないということで若干説明を省略させていただいたわけですけれども、カネミ油症では、子供が生まれて、いわばブラックベビーと言われるものですけれども、かなり深刻な被害の出た例もございますが、それよりも軽症の方々もかなりおられます。

 これについては、その当時生まれた方がもう結婚されて出産される時期になっておりまして、その代の方々にも、次の世代にも明白な被害が出ているということが実はNGO等の調査でわかっております。

 そういった状況でありながら、カネミ油症事件の患者さんのいわゆる学術的な病理の解明、影響の解明が実はほとんどきちっと進んでいない、あるいは疫学調査的なものも行われていないし、治療もほとんど投げられてしまっている状況にある。これは、先ほど森田参考人からも意見がありましたように、プライバシーの問題と非常に密接に関連して難しいところがあることは事実でございます。

 しかし、これは水俣病とか何かでも全く同じ状況でございまして、最初は地域から非常につまはじきにされたり、今でも油症の患者さんはひっそりと隠れて暮らしている方が非常にたくさんおられます。当然、結婚その他のときにも言えない。家族にそういう人が身近にいた、そういう暴露を受けた可能性があるということを言えない状況で暮らしておるのが実態でございます。

 そういう意味では、しっかりとした体制でこれらの支援をする。その場合に、当然、医学的な部分と社会心理学的な部分、あるいは精神的な部分も含めて、あるいは場合によっては金銭的な援助も含めてきちっとした対応をとるべきだというふうに私はぜひ申し上げたいと思っております。

村田参考人 PCBは、先ほど来のお話のように、環境ホルモンと言われている塩化ジベンゾフランなども含んでいて、それが子孫に影響する。要するに、環境ホルモンというのは、汚染された当人ももちろん影響があるわけですが、子孫に影響を及ぼすということがあるので、やはり追跡調査ということは非常に大切なことなんです。

 ただ、これが十分行われていない。千八百七十一人ですか、認定患者がいて、申請患者は一万四千人ぐらいいたということで、そういう点で追跡調査が十分なされていない。

 追跡調査ができない理由は幾つかあると思いますが、プライバシーの問題も一つ絡んでいるかと思いますが、それ以外に、やはりそういうことに取り組んでこなかったというのが一番大きな問題だと思います。

 それから、疫学調査というのは無関係な人との対比をするわけですけれども、これもかなり費用と経験を要する仕事でございまして、そういうことも行われてこなかったということで、これはぜひ……。この法律には直接関係がないのかどうかわからないので、後ろの方にちょっと私も指摘をしておいたわけです。

 以上です。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 今浦野先生からも、村田先生からも御指摘がありましたように、親御さんが、そういうカネミ油症にかかられた方の子供さんが、また自分の子供にもそういう影響が出るのではないかという心配をしている、そういう世代のところに達している。ですから今回、今後の問題も大切なんですが、過去というか、このカネミのことについてやはりきちっととらえていくことが大事だというふうに私は思っております。

 そういう中で、とにかくPCBの処理が急がれるわけでありますが、先ほども委員の方からお話もありました。焼却法あるいは化学的方法を使っていく、これについて、技術がどういうふうに進んでいるのか。焼却をしたりあるいは化学的方法を使っても、多分に環境に対する負荷があるのではないかなと思いますし、ただ、それをいかように削減していく方法がきちっとあるのかどうか。

 済みません、浦野参考人、そしてまた村田参考人にお願いをしたいと思います。

浦野参考人 日本は、御指摘のように、カネミ油症という非常にまれな、いわゆるダイオキシンを食べた人たちというのがいるわけですね。それは国民に非常に大きなショックを与えておりますし、昨今のダイオキシン問題とも関連して、非常に国民の目は厳しい。それに対して、開発されてきた技術というのは、通常時は十分信頼できるレベルに来ているというふうに私は思っております。私は工学の出身ですから、工学的な部分から見ればかなり神経を使ってきちっとした処理がされるようになっているというふうに思われるんですが。

 それからもう一つ、処理場ができると非常に怖がるわけですけれども、実は、処理をしないで放置しているリスクというか危険性、自分のそばで工場が火事になった、その工場にPCBが置いてあったとすると不完全燃焼して周りにばあっとまかれるわけですから、その危険性ということを考えると、しっかりした処理をする方がむしろリスクは少ないというふうに私は思っております。

 ただ、先ほども指摘しましたけれども、処理技術そのものを過信するとやはり危険である。特に、処理設備そのものが火災とか震災等に遭う可能性もあるわけですし、それから、処理施設を運転する人たちの訓練であるとか、あるいは装置のメンテナンスですね、例えば、場合によっては高温高圧、高温といっても焼却ほどではありませんが、圧力をかけるとか、あるいは、かなり危険だと私は思うんですが、ナトリウムというものを使う技術とか、こういったものもきちっとすれば安心できるということがあるんですが、何か間違えると大きな惨事につながりかねないということです。

 そこの辺に対してしっかりとした対策をとり、また、その対策のとり方について、住民を加えて議論をしていくということが必要なんではないかというふうに思っております。

 以上です。

村田参考人 分解技術を細かく分けるとさまざまなものに分けられるんですが、大まかに分けると、焼却方法と、化学的な処理によって焼却によらない方法、特に、炭素と強固に結合している塩素原子をナトリウムによってあるいはカリウムによって外してしまう。これは、ナトリウムディスパージョンなんという、金属ナトリウムを非常に微細にした、非常に反応性の強いものを使うわけですから、当然そこでは火災の危険性、ちょっと水でも入れば爆発を起こすというような大変危険なものでありますが、そういうもの。あるいは、アルコラートといいまして、アルコールとナトリウムのひっついたもの、ターシャリーブタノールみたいなものですが、そういうものにカリウムをつけて外してしまう。

 これらの化学的な反応のいいところ、まあナトリウムディスパージョンの場合には、ディスパージョンですから不均一、一部、微細的に見れば不均一なんですが液体、液体といっても、塊の状態で入っていますから。アルコラートを使えばこれは均質になるわけです。

 焼却が恐れられているのは、実は、いわゆる燃焼反応というのは大変不均質な反応なんです。火炎温度というのは二千度とか二千五百度とか非常に高く上がるわけですが、周辺の装置そのものはそんなにならない。それから、非常に温度分布が不均一になってしまって、そこでダイオキシンができるんじゃないかというのが住民側の大きな心配なわけです。

 それから、行政側でこういうPCBに関する研究はほとんど行われてこなかった。労働省の駒宮さん、労働衛生研究所でしたか、駒宮さんが唯一、酸素で分解する方法を研究しておられたのですが、それ以外に公の機関でPCB分解技術を研究はしてこなかった。その辺のところがまだ問題としては残っているのではないかと私は思っております。まだ完全な評価ができないということです。

近藤(昭)委員 ありがとうございました。質問時間が終了いたしました。

 ただ、先ほど村田参考人の御指摘の中にもあったと思うんですが、環境事業団が今までやってこなかった、民間では随分進んでいるのではないかなというようなところをもうちょっと私も勉強したいな、そのように思います。ありがとうございました。

五島委員長 青山二三さん。

青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。きょうは、四人の先生方には、大変お忙しい中おいでをいただきまして、貴重な御意見を伺いました。本当にありがとうございます。

 有害なPCBの廃棄物の処理が本法案によってようやく推進されることになったわけでございます。このPCBの毒性が問題化いたしまして三十年近くもたつわけでございますが、この間、本格的な処理は進まずに環境の汚染が進んできたということで、大変心配されていたわけでございます。しかし、このたびの法案によりまして、国のPCB問題への取り組みが示されていると私は評価をしているわけでございます。

 そこで、四人の先生方にいろいろと参考になるお話をお聞かせいただいたわけでございますが、まず最初の森田先生からは、四十年間のPCBの歴史について詳しくお伺いをすることができまして、大変参考にさせていただいたところでございます。大変ありがとうございます。

 お話の中で、焼却処理は安価である、そして、化学処理が市民のコンセンサスを得られるのではないかというお話がございました。そして、特に公的関与なくしてはこの問題は進まないというお話でございましたけれども、そういうことで、市民に不安を与えないで処理すること。

 それから、環境事業団が関与することについて、このことに対しましては、やはり国の関与ということで評価されておられるわけでございますが、環境事業団が関与することについての御意見をお伺いしてまいりたいと思います。森田先生、よろしくお願いいたします。

森田参考人 PCBの処理の問題は、二つの側面で議論されると思います。一つは安全の確保ということ、もう一つが安心の確保ということ、この二つは実は同一ではないんですが、しかし、似たようなところもあるというところであります。

 安全の確保という点に関しましては、古典的な処理法であります例えば焼却その他の方法が、安価で、しかもかなり安全な領域にあるという状況にあるかと思います。しかしながら、PCBからダイオキシンができるのではないか、そういう議論もありまして、安心のところでいろいろひっかかっている部分があるのかなと。

 この安心の部分は、相当心理学的な要素も入ってまいります。トップダウン型で押しつけていたときには、かえってうまくいかないときもあったりしまして、そのあたりで、どうやったら一番住民の合意がとれ、かつまた安全であるかという、そこの工夫が必要かな、そういう感じです。

 国の関与というときに、どういう形で関与するのが一番いいかというのは、多分いろいろな技術的な側面、あるいは法律的な側面を組み合わせて考えなきゃいけないということです。

 事業団が一応関与することになっていますが、そこで使われる技術というものは既に民間が開発されたもの、それを監視しながらきちんとやる、そういう形に多分なろうかと思います。技術の部分は民間の技術、既に開発された技術に安心を確保するために事業団が密接にかかわる、こういう構造でありまして、これが、ずっと積年解決しなかったPCBの処理に向けて出せる答えの一つではないかなということであります。それがベストなのかどうかというのは、もちろんいろいろな議論があるかという感じはいたしますが、一つの答えではないかというふうに考えております。

青山(二)委員 大変ありがとうございました。

 それでは、酒井先生にお伺いしたいと思いますけれども、PCBの発生源は似て非なるものという話がございました。

 微量ながらも大気に汚染が波及しているというようなお話で、イヌイットの女性の母乳から三倍のダイオキシンが検出されているという大変怖いお話を聞かせていただいたわけでございますけれども、身近な問題と申しますと、実は昨年の秋ころからでございましょうか、小学校や中学校の教室で有害なPCBの入った蛍光灯の照明器具が破裂いたしまして、PCBが子供たちに降りかかるという事件が相次いでおります。また、多くの学校では依然としてPCBの入った安定器を使用した蛍光灯が使用されていることがわかりまして、学校施設の中でも大変不安が今広がっているところでございます。

 この学校などで使用中のPCBを含む蛍光灯などの機器の交換につきましては、原則十三年度末までに交換を終えるということを政府は決定しておりますけれども、何としても、子供たちのことでございますので、一刻も早い交換が望まれるのが現状でございます。現在、このような蛍光灯を使用していても本当に安全なのか、大丈夫なのかというお母さんたちの不安がございますので、事故の防止策というものがあるのかどうか。

 それと、だんだんこの交換が進んでいきますと、保管量がふえてくるわけでございますけれども、政府は今後、施設整備に五年、その後十年かけてPCBを完全処理するということを目標にしているわけでございますが、十五年かかるということは、大変に長い年月でございますので大変な心配がございます。今後のPCB処理の展望につきましてはどのようなお考えでいらっしゃるのか、お聞きをしておきたいと思うわけでございます。

酒井参考人 今御指摘されました蛍光灯の安定器につきましては、過去使用してきて、一定の寿命が来ますれば、やはり物理的な破損というものは起こり得るわけでございまして、そういった意味で今政府が近々に交換を考える、そういう方向で対処するというのが基本的な方向であろうというように理解してございます。

 PCBというのは結構幅広い用途に過去使われてきたようでございまして、そういった意味では、結構身の回りの中で、かつ子供が身近で接触する場というものはやはり丁寧に今後も押さえていかなければならないというように認識してございます。

 ただ、処理という立場から見ますれば、保管している量の多いところ、やはりそこをまずは目標にして処理を推進していきませんと、小さな量を数多く集めること、それを思うと非常に大変な作業でございます。そういう中で、量的に多いところをひとつ、いろいろな災害等で非常時に環境にまた漏出するということがありましたら、それはある意味では元も子もないことでございますので、基本的には、やはり量的な保管の多いところを第一優先をしてやっていくべきではないかというように思います。

 そういった中で、量的な意味では、その十五年というのがかなり前倒しの中で処理できる可能性も今後秘めているのではないかというように思っております。

青山(二)委員 大変ありがとうございました。

 それでは、浦野先生にお聞かせいただきたいと思いますけれども、三十年間放置したということが大変なことであったというようなお話でございました。処理方法につきましては若干不安なものもあるというお話もございまして、住民が本当に安心できる処理方法についてはどのようなものがあるのか。

 そして、環境事業団が関与することについての御意見、大変肯定的なようでございますので、その話をもう一度お伺いしたいと思います。

 それからもう一点、産業界からの出捐金をというお話もございましたけれども、その辺のことも少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。

浦野参考人 一つは処理方法について、もう一つは事業団、それから出捐金と、三つの御質問をいただいたと思います。

 処理方法については、先ほどからお話しをして繰り返しになりますけれども、今回の法案の資料に出ているような方法は、処理の効率という意味では私は非常に信頼度があるというふうに思っているわけですが、それぞれにやはり、先ほどから申し上げておりますけれども、何かがあったときにどういう程度の被害が起こり得るか、あるいはそれにどう対処できるかというのを考えてみますと、私は、村田参考人さんと若干違うんですが、意外と焼却というのは安心できる技術であるというふうに、森田参考人もおっしゃっていましたけれども、安心できる技術だというふうに思っております。

 ほかの技術でももちろん幾つか、ここで個別の企業の技術をどれがいい、どれが悪いというふうに言いますと若干問題もございますが、本当に事故が起こらないのか、あるいは起こったときに対応がしやすいのかどうかということをやはりきちっと各技術が明確に、それをちゃんとした書類なりで出して、それをまた住民にも示して説明できるようにしておくべきだというふうに思っております。

 それから、事業団の関与については、先ほどの学校の例とかその他いろいろな分散型の用途のものが、小さいものがやはりたくさんございます。これに対してきちっと対応する。あるいは中小企業に対して対応するというのは、やはり何らかの公的関与が必要であって、事業団の今までの実績から考えれば、事業団がやってもいいというのか、やむを得ないというのかというふうに思っておりますけれども。

 ただ、先ほど御指摘したように、事業団がやるということで、公的なお金でやるということで、いわゆる経済原則と離れた、安心のためだからというともうにしきの御旗になって非常にお金がかかるという形になったり、あるいは、その関連の事務処理等に非常にお金がかかるというようなことでは国民負担がふえるということで、その辺についてのチェックは十分すべきだというふうに思っております。

 それから、そのお金の問題の関連では、産業からの出捐金ですけれども、メーカーは二社でございますので、ここは非常にはっきりしているわけで、やはりそれなりの負担もしてもらうべきだというふうに思いますが、PCBを使った製品を製造販売した企業というのは非常にたくさんございます。その中でまだごく一部しか合意が得られていないようですので、その辺を行政努力あるいは社会的ないろいろな声によって、やはり生産者責任ということで協力をしてもらうということが、全体として、今後の環境行政上でも、あるいは、実は不良債権と言われるようなさまざまな過去の遺産がたくさん環境問題にもございます、こういったものの処理においても、何でも税金でするという形ではなくて、原因者あるいは利益を得た人たちに負担を相応にしてもらうというルールをつくっていくことが必要だというふうに思っております。

青山(二)委員 大変ありがとうございました。

 それでは最後に、村田先生にお伺いいたしますが、このたび、この法案で北九州市にその処理場をつくるということでございまして、これが成功するかどうかが今後のPCB問題解決の大きな要因になると思いますが、一番心配なのが住民の同意は得られるかということで、先生は御指摘されておりましたけれども、何としてもこの住民の同意を得なければならないと思っておりますので、その点についてどのようにすべきかということを質問させていただきまして、終わりたいと思います。

村田参考人 住民同意というのは大変難しいことなので、ここで的確にお答えできるかどうかわかりませんが、やはりその根底になるのは情報公開ということ、それから、常にその装置そのものは住民の監視下に置かれる、確実に、言われたとおり操業がなされていて、基準もちゃんと守られているということ、これが前提になると思います。

青山(二)委員 大変ありがとうございました。

 時間が参りました。これで終わらせていただきます。

五島委員長 樋高剛君。

樋高委員 本日は、貴重なお時間、御高説を賜りまして、本当にありがとうございました。自由党の樋高剛でございます。

 まず、四人の先生方にそれぞれ同じ質問をさせていただきたいと思います。

 私ども自由党では、そしてまた私個人は、危機管理という観点から、今回の法律案にはむしろ積極的に推進するという立場から、実は私なりにちょっと今努力を、また状況も勉強させていただきつつ努力しているところであります。

 実は今回、PCB廃棄物だけではなくて、ほかにもPCB代替物質、一方で、ほかの残留性の有機汚染物質の問題も今後引き続き積極的に取り組んでいく必要があると私自身考えているわけでありますけれども、その件に関しまして、皆様方の御所見、お考えをお聞かせ願えればと思います。

森田参考人 残留性の、しかも蓄積性のある化学物質というのは、環境に一たん出してもまた人に戻ってきますので、それは非常に対策が重要であります。

 それでは、どういう物質がそうであるか、そして、それは現在はもう完全に生産されていないのか、あるいは現在もなおかつそういうものがあるのかということを含めまして、相当ちゃんと漏れがないようにしなければいけないとは思っております。

 全般的には、POPs条約というのが締結され、そして世界的にそれを禁止しようという方向に動いておりまして、それでかなりの部分はカバーされていると思いますが、そこから漏れていて、しかも、近代的な国家において使われているものについてもまだこれから注意を払っていく必要がある、そういう感じでございます。

酒井参考人 PCB以外の残留性の有機汚染物質ということでございますが、まずは、今お話のございましたPOPs条約の中での十二物質、今のPCBを除いたほかの物質もございますので、そういったところへの調査検討というのがまず第一段階であろうと思います。

 あともう一つは、POPs条約自体で枠組みはまた議論をされていくことになろうと思いますが、十二物質以外に一体何があり得るのかということのクライテリアと申しますか、判断基準というものは今後国際社会の中で議論されていくことになるわけでございます。

 そういった中で、一定の生産があり、あるいは環境負荷がありというものに関しては、これは将来また見据えていく必要があろう。今回の廃PCBの処理というもので道筋をつけることが恐らくほかの物質にも、基本的には技術としてかなり有効な側面が見通せるかと思いますので、そういう中で全体として効率的にこの残留性のものに対処していく、そういう戦略は重要ではないかと考えております。

浦野参考人 今のお二人の御回答でPOPs条約のことが出てございますが、POPs条約というのは、世界レベルで汚染していて有名なものというのが出て十二物質候補に挙がっているわけですけれども、これはこれで当然日本の国としてもしっかりとした調査と対策をとる必要があるかと思います。

 しかし、必ずしも世界を汚染しなくても、日本の地域を汚染していれば困るわけでございまして、そういう角度からしますと、分解性の悪い、蓄積性の高いものというのは、ちょっと私のレジュメにも書いてございまして、多少専門的で恐縮ですけれども、オクタノール・水分配係数(Pow)というものがございまして、この数値が国際的にも随分いろいろな化学物質について出ております。これの非常に大きなものというのは、体にたまりやすい、あるいは分解性が悪いという可能性が非常に高いものでございます。そういったもののスクリーニングを今私どもの研究室でかけておりますけれども、かなりの物質があり得るということを考えております。

 それからもう一つは、有害性というのが、毒性だけを考えるのか、先ほどのPFCというふうなもの、PCB代替物のようなものですけれども、こういったものは、毒性は低いのですけれども、地球上に出されたときに、何千年、何万年も分解しない。毒性は出ないけれども、温暖化ということに非常に大きな寄与をするというふうなものもございます。これもある意味のPOPsだというふうに私は思っておりまして、そういったものもきちっとピックアップして管理をしていく体制をつくっていく。

 今後、過去の過ちを余り繰り返さないように、予防的にそういうものをスクリーニングをかけて対応をとっていくという対策が必要ではないか。今のPOPs条約はどちらかというと後始末条約ですので、これからは予防的対策というのをぜひやっていくべきだと思います。

 最後にもう一つは、このPCBの処理技術というのは、酒井参考人からも御指摘がありましたように、ほかのものにもかなり利用できる技術だということで、そういう意味で、これを日本の国としても育てていくことは必要だというふうに思っております。

村田参考人 残留性が問題になるということは、実は生物分解ができないということ、それで土に入るとそのまま残ってしまうということなんですね。その中で、特に蓄積性、油に溶けやすいもので生物濃縮を起こすというものがあるわけです。残留性のあるものはほとんど自然界にない、人間が人工的に合成した物質であるということなんですね。ですから分解者がいないということなんですが。

 そこで、何を対象にしていけばいいか、これは非常に大変なことで、今日本でも、八万とか、多く言う人は十万ぐらいいわゆる化学物質というのは使われているんだと。ですから、まず優先的にやらなければいけないのは、毒性の強い物質、もう一つは、大量生産されているもの、この二つ。しかも密閉系ではなくて、拡散系で使われていてどんどん環境中に散らばってしまうというようなもの、これをまず優先的にやっていくべきだと思います。

樋高委員 浦野先生にお伺いをさせていただきます。

 今回のPCBの特性といたしまして四点挙げられました。難分解性である、なかなか分解しにくい。また蓄積・濃縮性が高い。そして三点目は、有害性がある。そして四点目に、揮発性があり広がりやすいということでありました。

 また一方で浦野先生は、この法律案につきまして、その目的のところで、海洋哺乳類を初めとする世界の野生生物、生物多様性の保護をも目的に加えるべきだということを表明なさっておいででありますけれども、私自身も強く共鳴をする次第であります。

 今回、この法律案が成立しました後はきちっと処理が効率的にされなくてはいけない。そういった観点からしますと、この揮発性があり広がりやすいという特性も一つ大きく注目をしなくてはいけないのではないかと思うわけであります。

 一方で、処理するべきものの優先順位につきまして、やはりきちっと分析をして、効率的に、そして最も安全な方法、最もいい方法、よりよい方法で処理をしていくべきだと考えるのでありますが、先生は、処理すべきものの優先順位につきましていかがお考えでしょうか。

浦野参考人 最後の優先順位の話の前に生物多様性の話がございましたけれども、村田参考人からも御指摘がありましたように、有機塩素化合物類というのは、非常にきれいなところにすんでいた海洋生物は分解能力をほとんど持っておらないので、体内に非常に蓄積しやすい。それで、イルカとかアザラシの大量死、千頭、一万頭というオーダーでの、一気に死んでしまうような事件が頻繁に最近起こっている、それの原因の一つがPCBであるというふうに言われているということもぜひ知っていていただきたい。そういったことで、生態系の保護もぜひしっかり考えていただきたいというふうに思っております。

 処理の優先順位についてですが、先ほど酒井参考人から、量が多くて当然含有量も高いものを優先するということをおっしゃっておりました。これはある意味で当然なことですし、技術的に見れば、そういう方が、ある意味ではやりやすいところからスタートするという面でも必要かと思います。

 しかし、先ほど小学校の蛍光灯の安定器の問題もございましたけれども、実は、あれを今まで余り皆さん知らなかったわけですね。知らないということは全部それが捨てられている、どんどん環境中に出されてしまったということですね。同じようなことが実は中小事業場、工場等の蛍光灯でも全部あるわけです。

 学校でたまたま落ちてきて大騒ぎになったから一年間でばっと調べられて、学校だから国が調べる、自治体が調べる、すぐわかる。ところが、中小事業所であるとか、大学なんかでもそうですけれども、そこにどういうPCB機器があるのか、持っている人自身が認識をしていないということも含めて、これをしっかりと対策をとる、教育も含めてしっかり対策をとっていかないと、一方で処理を進めて非常に厳しい基準をやる、片方でどんどんどんどん出続けている、蛇口の口が開いたままこちらの方で何かをやっているというふうな形になってしまうのは非常に困る。

 したがって、地域ごとに、あるいは、そういった分散型の用途でほっておくと環境中に出てしまうものの量を早く把握して、必要があればそういうものも優先的にやっていかなければいけない。例えば小学校のPCBを優先的に今度対応をとられるわけですが、量的にそんなに多いものではございませんけれども、やはり急いでやらなければいけないというものがあるわけです。したがって、単なる量とか濃度だけではなくて、もう少しきちっと整理をして優先順位を決めていくべきだというふうに思っております。

 それからもう一点、十五年というのは少し長過ぎますので、極力もっと早い時期にやれるように対応すべきだというふうなことも申し上げておきます。

樋高委員 十五年の件につきましては、きょう午後要望させていただこうというふうにも思っております。

 あともう一点だけ。今回、実際の運営上の対応は自治体が行うわけであります。一方で環境省がリーダーシップをとって行うのでありますけれども、もう一度浦野先生にお伺いをいたしますけれども、自治体の役割というのは大変重要である。しかし、そこは環境省と、また一方で地域地域で、役所、県、市町村役場なわけでありますけれども、そこできちっと意思疎通も図れなくちゃいけないし、また自治体によっても意識が全然違うんじゃないかなと私思うのでありますが、その辺につきましてはいかがお考えでしょうか。

浦野参考人 PCBは、国民全部がかかわっていて、どこの都道府県、市町村にも存在しているわけでございますが、それを処理するとなると、では市区町村別に都市ごみのように処理をするかというと、そういうわけにはいきません。当然ある程度の移動がありますし、また、集まってきたところは不安がございます。

 そういったことを考えますと、国と都道府県と市区町村とが連携をして非常に密な意思疎通を図ると同時に、このPCBの有害性あるいは処理技術の安全性、そのほか住民不安にこたえられるような、まさにリスクコミュニケーションができるだけの知識と訓練を受けた人がある程度いないと多分うまくいかない。そういう意味で、今の自治体の様子を見ますと、決して楽観できないというか、かなり大丈夫かなという不安が大きいということを感じております。

 したがいまして、自治体というのも、やはり法律に定められたりあるいは何らかの指摘が行われるとむしろ動きやすい。附帯決議でも何でもいいんですけれども、何かしらのきちっとした行動の根拠あるいは予算的な裏づけというのがあって自治体が動いていくと思いますので、この自治体のPCB処理に対する理解の促進という部分について、あるいは分散型用途の把握等について、しかるべき明記をした対応が必要なのではないかというふうに思っております。

樋高委員 どうもありがとうございました。

五島委員長 藤木洋子さん。

藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。

 きょうは、お忙しいところ委員会にお運びをいただきまして、ありがとうございました。

 早速ですが、先ほど来伺っておりまして、森田参考人からは、PCB処理の安価で効率のよい処分の仕方、分解処理というのは焼却が挙げられる、あるいはセメントキルンを用いた分解も効率的だということをお述べになられました。

 あと、酒井参考人、それから浦野参考人のお二人の御発言の中で特に私が関心を持ちましたのは、酒井参考人は、排ガスに対するダイオキシン対策の高度技術化を併用することでより信頼性の高い運用が可能になるということを述べられましたし、浦野参考人は、卒業基準に関連して、ダイオキシン基準と整合性をとる必要性があるということを述べられました。私も、その点は非常に重要だというふうに考えております。

 関西電力のPCB廃棄物処理を、有機アルカリ金属分解法という処理技術で進めるということになっているわけですけれども、ここではコプラナPCBも確実に処理できるというふうになっておりまして、PCBの中でも特に毒性の強い十三種のコプラナPCBについては、八種の試験条件のいずれにおいても反応後に検出されなかった、こう言っているわけですね。

 だけれども、私が実際現場へ参りましていろいろお話を伺ってみますと、反応後の処理水の排水中のダイオキシン濃度については、一リットル当たり千ピコグラムを検出限界というふうにしているわけですね。ですから、九百九十九・九九九ピコグラムであってもNDと、結局、不検出というふうに報告されているんだということを知りまして、それでいいのかという思いがいたしました。

 そこで、PCBの焼却処理であろうと、あるいは脱塩素化分解法であるとか水熱酸化分解法、還元熱化学分解法、光分解法などさまざまな分解処理があるわけですけれども、いずれの方法であっても、ダイオキシン対策法が制定された今日、ダイオキシン対応で行うということがより安全性を高めることになるし、これはぜひともやるべきことではないかというふうに私は考えるのですけれども、森田参考人、酒井参考人、浦野参考人に、ダイオキシン対応にするということは難しいことなのかどうなのか、その辺についてちょっと御意見を伺ってみたいと思いますので、それぞれお述べいただけますでしょうか。

森田参考人 いろいろな処理技術がダイオキシン対応になっているかどうかということですが、私の認識では、ほぼダイオキシン対応ででき上がっている部分が多いだろうと思います。

 ただし、ケースによってはまだダイオキシンの測定値の検出限界が高くて、そのままそういった成績書が出されて技術評価を受けているケースもありますが、一般的にはダイオキシン対応で動くだろうというふうに認識しておりますし、また、多分これからやられる処理も、それをクリアしない限り住民の合意も得られないということもありまして、すべてそんなふうになっていくかなというふうに考えております。

 なお、処理技術の安全性の問題と対応いたしまして、焼却処理も、御存じのように、焼却施設は全部ダイオキシン対策というのが含まれた形で運転されますのでそこに対応されてきますし、化学処理も、いろいろな形で化学処理をかませるのですが、最後には焼却に持っていくとかいろいろな局面が出てきますので、全体のプラントの設計思想も全部そのような形に最終的にはいくだろうというふうに考えております。

藤木委員 それはそんなに難しいことではないのですね。

森田参考人 はい。ダイオキシン対策技術はほぼでき上がってきておりますので、技術的にそれほど難しいことでは多分ない。

 ただ、コストの問題が若干かかってきております。一九八〇年代の処理技術は焼却を中心としてありまして、それは比較的安いコストで済んでいたのですが、現在の化学処理になりますと当然高くなります。そこの部分が若干ひっかかりまして、処理コストをどうしても下げろと言われれば、そこの部分で少し抜ける部分があるかもしれませんが、技術的には問題ありません。

 それから、今いろいろなところで提案されているものも、それを織り込んだ形ででき上がってきているというふうに考えています。

酒井参考人 PCBの処理技術はダイオキシン対応とすべきという御意見でございますが、環境との接点、今おっしゃられました例えば排水とか排ガスとかいう部分では、それを念頭に置いたシステム設計に当然すべきだというように認識してございます。

 もう一点忘れてならないのは、そういう場面でいわゆるダイオキシン総量という意味合いだけで数字を把握していいかというと、ちょっとそれではまた逆に片手落ちになる可能性があるということを一点御指摘しておきたいと思います。

 先ほどPCBとダイオキシンの違いを発生源を中心に少しお話し申し上げましたけれども、いわゆるダイオキシン毒性当量として見た場合には、PCBの一部とダイオキシンの一部は非常に似ているのですけれども、PCB全体として見たときには、ダイオキシンに似た毒性以外の毒性というものも存在するわけでございまして、そういう場合には、PCBの総量というのも非常に大事になってくるわけでございます。

 ですから、PCBの中の十三種類を取り上げるだけで本当にいいかというと、これもまた片手落ちになる可能性があるという点には十分留意をしていく必要があろうと思います。そういった意味でのバランスが非常に重要だというふうに考えております。

浦野参考人 私も、ダイオキシン対応は今後きちっと行われるだろうというふうに思っております。

 ただ、ダイオキシン対応をきちっと言い過ぎると、先ほど森田参考人からもありましたように非常にお金がかかる、しかも、かえってわかりにくくなる部分がございます。というのは、お金がかかるということは、例えば測定頻度が非常に減ってしまう。それで果たして安全側に動くかというと、必ずしもそうではないということもございますので、ダイオキシン対応にはいくにしても、日常管理はPCBの総量、先ほど酒井参考人からも御指摘がありました。総量が減れば全体的に減るわけですから、ダイオキシン、コプラナPCBも減るということで、総量での管理、あるいは副生成物も含めた有機塩素化合物の合計量での管理とか、あるいはもう少し違う角度で見ると、簡単な毒性試験みたいなものが幾つかキット化されたもの、その他のものがございますので、そういうものも場合によっては併用して安全確認を効率的に、しかも、むしろ頻繁に行うことが住民理解につながるということで、ダイオキシンが一番心配であろうとは思いますけれども、それだけではなくて、私は、いろいろな多様なメニューで安全管理をしていく必要があるというふうに思っております。

藤木委員 ありがとうございます。

 いま一つ、先ほどからカネミ油症事件の問題が論じられておりますけれども、鐘淵化学に現在、保管といいましょうか、残されている処理以後の物質、随分大量にあるわけですよ。汚泥もあるのです。それから固形PCBといいますか、ウエスなんかもございますけれども、そういったものの処理というのは、液状ではありませんし油状でもないようなものの処理技術というのはどこまで進んでいるのでしょうか。それぞれちょっとお答えをいただきたいと思うのですが。

森田参考人 ここのところ、油状のPCBにつきましては、一九八七年ぐらいから焼却に入りまして、これはほぼ完了したのですが、感圧紙等に含まれているPCB、あるいは一たん環境に漏れてしまってそこから引き上げてきたものとか、そういったものは日本じゅうに結構残っています。技術そのものは、幾つかの対象によって少し変わってくるのですけれども、全般的に技術は既にあるだろうと思います。

 先ほどちょっと前に浦野先生から御指摘があったのは、そういったものの規制あるいは対象物とすべき基準みたいなものがPCBとダイオキシンとで少しずれが発生していて、そこは整合性をとる必要があるだろうという議論はちょっと残っています。つまり、ここまでは汚染物、ここまでは汚染していないという、そこのところの境目が、若干あいまいなところが残っていないとは言えないんですが、これはまた、一方では、PCBの毒性に対する認識とダイオキシンに対する認識とが少しずれているところがありまして、ちょっとまだ学問的な意味でのコンセンサスがとれていないというところが残っています。技術それ自体はある程度ありますので、できます。

 それとあわせて、リスク全体を低減する。つまり、PCBだけじゃなくていろいろな化学物質が当然ありますので、それを含めて考えて、プライオリティーの高いものからつぶしていくということも必要かなという感じがいたします。

酒井参考人 固形状のPCBの処理技術に関してということでございますが、基本的に、固形状に含まれているPCBを分離、除去する技術、これは、溶剤洗浄あるいは真空加熱分離等を含めて、技術的には成熟してきているというように理解をしてございます。

 ただ、今おっしゃられました保管中のものということに関しましては、やはり今後、それの完全分解を目指した方向での技術開発も同時並行で図りながら、そういう意味では、固形状のものに対処していくべきだろうというように思います。

 一定の技術はある。ただ、より完全を目指して今後努力すべきだろう、そういう状況だと思います。

浦野参考人 固体についたPCBでございますけれども、プラスチックとか金属についているものについては比較的楽に何とかできるんですけれども、御指摘のあったような汚泥とか布とか紙とか木とかというものにしみついたもの、あるいは汚染土壌もそうなんですが、これは結構難しいところがございます。

 難しいといいますのは、要するに、単に技術的に難しいということではなくて、やはりお金がかかる。お金をうんとかければ当然できるわけですけれども、ごく少量のPCBを回収、分解するために非常に大金がかかるとなると、それが非常に負担になる。あるいは装置が極端に大がかりになってしまって、かえって住民不安がふえてくる。余り大がかりですごい装置でやると、これまたすごいことをやっているんじゃないかという感じにもなるという部分もないわけではない。

 そういう意味でいうと、あるレベル以下のものは、ダイオキシン対策がしっかりとられた焼却施設に持っていくというのが私は妥当なやり方だというふうに思いますので、焼却を恐れ過ぎてかえっていろいろな問題を生じさせるということが、実は鐘化の処理が、ある意味では高温で非常にうまくいったにもかかわらず、不安があって、それを乗り越えられなかったために二十数年間放置されてきた。あれの焼却法を本当に認知してきちっとしておれば、もっと早くPCB対策はとれていたという部分もございます。

 ですから、焼却とそのほかの処理をきちっとした管理のもとに組み合わせてやっていくことが重要ではないかというふうに思っております。

藤木委員 最後になりましたけれども、村田参考人に伺います。

 既に解体されたり環境に出てしまったPCBの問題についてお述べになったわけですけれども、不明となっているPCBが、ダイオキシン換算にすると百四十キログラムというふうに言われておりますけれども、何か名案がありますでしょうか。

村田参考人 残っているところ、例えば明らかに土壌汚染をしているような、ごみ埋立地は別にして、今事業をやっているところの工場敷地内にそういう汚染土壌があるというようなところでは、それを処理するということは対策としては考えられるわけですが、今三人の参考人からお話があったように、処理技術が非常に難しい。土壌をどうやって処理するのか。最終的には焼却処理みたいなことしか今のところ考えられないのですが、施設は非常に大がかりなものになるということ。

 それから、単品ですら反対運動が起きるのに、そういう非常に微量入っている混合物を熱処理して完全にできるのかという心配や何か、それから、そういうものが入ってくると、当然最終的にはダイオキシンや何かを副生するおそれもあるということで、かなり難しいかと思います。

藤木委員 ありがとうございました。

五島委員長 阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子と申します。私は、もともと子供の医者でございます。

 昨年の十二月でございましたが、環境庁、ことしになりましてからは省ですが、当時の環境庁の調査で、いわゆる臍帯の中にPCBを初めとするいろいろな化学的汚染物質の移行が確認されたという報道がなされておりますが、きょう、こうした委員会が開かれますことも、そうした次世代への影響が私どもの非常に強い関心にあって、やはりこの処理問題はどうしてでも解決していかなければならない時期に差しかかっているという認識から、幾つかの質問をさせていただきます。

 私で、きょう参考人に御質問させていただくのは最後ですが、これまでの五人の皆さんの御質問等々伺いますと、やはりキーワードは、安全と安心と住民合意という、どなたもそこに力点を置かれて聞いておられます。私も、安全、安心、住民合意について、おのおのの四方にお伺いいたします。

 まず、一番目は森田先生にお伺いいたします。

 きょうお示しいただきましたレジュメも非常に簡略にまとまっておりますし、改めて勉強させていただいた思いがいたしますが、いわゆるPCBについての認識が、わずかこの三十年、四十年の間でもこれだけ変遷を重ねてまいりまして、当初認識されていた毒性とは大きに違いが出ているということも、ここで先生がお話しくださいました。

 そして、そうした危険性の再評価も大切であろうというお話をしてくださいましたが、その場合に、いわゆる危険性ということを評価するための必要なモニタリングということが非常に重要になってくると思います。いわゆる土壌、大気、水等々にあわせて生物モニターを用いる、例えば貝類とか、そういうこともあろうかと思いますが、先生として、お考えの中で、これからまた未知の毒性も出るやもしれませんこういう化学物質についてのモニタリングのあり方というのを一点お聞かせください。

 それからもう一つ、先生のお話の中できょう勉強になりましたのは、高砂市で実際に住民合意のもとに処理工場がうまく機能した例があるとおっしゃいましたが、この場合には、一体何をモニタリングしておったか。十年前だから土壌とか大気とかはしていませんでしたよ、それでも住民合意は得られましたよということかもしれませんが、そのあたり、どういう点がこの高砂市では実際に、現実にうまくいった原点であるか、その二点ついて、まずお伺いいたします。

森田参考人 まず、モニタリングとしては、何を観察するかということと若干関係してくるんですが、日本全体の人の汚染がどういうふうに推移していくか、そして、そのリスクがどうなっていくかという、そういったタイプのモニタリングという点に関していえば、人を材料としたモニタリング、例えば母乳のモニタリングであるとか血液のモニタリングとかあるいは臍帯といった、どちらかというと捨てても構わないようなそういうサンプルを使ったモニタリングがあります。また、生物的な指標を使って、例えば貝だとか魚だとか鳥だとか、そういったものを使って蓄積状況の推移をはかるというモニタリングもあります。また、当然、トレンドが結構重要ですので、過去に振り返ってどうであったか、そういった形のモニタリングもございます。

 私どもの研究所も、そういったことには結構これまで力を入れてやってきておりますし、また、これからもやっていく予定になっております。

 それから、高砂のケースについてですが、高砂の場合というのは、まず一つは、住民の方々にとってもそこの部分に大量のPCBがあるということ自体が相当不安な材料であって、そういう意味では、まず、住民を含めて、そこにあるものを消すということが非常に重要な課題であったということがあります。

 したがって、ここでもう一つの課題でありましたのは、せっかくいい施設をつくったのであるから、日本のほかのところにあるPCBもそこで焼いてはどうかという議論が当然あります。それの方が効率がいい、日本全体から見れば間違いなく効率がいいんですが、しかし、それは住民の合意が得られませんでしたので、そこにあったものだけがやり終えた段階でそのプラントは全部解体をする、そういう状況になります。

 もう一つ、そこで行われた作業ですが、まず一つは、そういった焼却施設のシステムの安定性、それから、排出することを含めて、いろいろな条件を非常に厳密に規定して、そしてそのとおり運転する。運転管理を非常に厳密にやるということ、それを二年間やるということをまずやったこと。あわせて、排水、排ガスのモニタリングを実施して、確かにそこにないことを検討するということをやっております。

 もともと、鐘化の工場自体相当PCBで汚染されて、もともとPCBを使っていたところでもありますし、それから、高砂市はそのほかに三菱製紙の工場などもあったりしまして、その付近の海域ももともと既に若干汚れていたということではありますが、そういったところに新たな負荷をしている形跡は見えなかったという状況であります。

 以上です。

阿部委員 大変ありがとうございます。

 先生の研究所で母乳あるいは臍帯血等々のモニタリングも視野に入れながらトレンドを見るというお話でしたが、実はこれは、今般、もしも環境事業団が公的なかかわりをいたしますようになれば、当然国としてそうしたモニタリングを積極的に進めるべきと思いますし、また御助言を賜ればと思っております。

 では二点目、酒井先生にお伺い申し上げます。

 先生のきょうの御発言と、それから前もっていただきました先生の論文を読ませていただきました。趣旨といたしまして、大気汚染等々が心配されている以上に、現在、PCBが流出しているような形での汚染が非常に問題であるというお話を伺いました。そして、約一万一千台でしょうか、コンデンサーも行く先不明になっていると。

 先生の御研究の中で、一番目の質問とも関係いたしますのですが、これまで、そういう行方不明になってしまったこととあわせて、各地域での環境モニタリング等々の実績はございましょうか。

 先ほど先生は、イヌイットの女性の母乳のことをおっしゃいましたが、例えば全国各地の母乳を調べてみたとか、この県では不明が多かったとか、そういう日本のマッピングはございますでしょうか。PCBが三十年間放置され続けたことの環境負荷を具体的に指し示すようなデータがございましたら、お教えくださいませ。

酒井参考人 私が不勉強かもわかりませんが、私の知る限り、そういう地域ごとのマッピングは、比較できるような形では存在しないかと思います。

 ただ、散発的には、湖底あるいは海底とかの底質をモニタリングした例という形で、地域的にやはり高い場所があるというようなことを指し示すような結果というのはあろうかと思います。それは、国レベルでもこれまで行ってきている事例はあろうかと思います。ただ、全体を満遍なく調べて、それで全然穴がないというような形のものはちょっと私は存じ上げません。

阿部委員 今般の法律の中では、地方自治体の関与ということが出てまいりますし、各地方自治体がこぞってPCBのちゃんとしたモニタリングをして、下げていくような努力をしてくれる向きに、また先生の研究も生かしていただければと思います。

 三番目、浦野参考人にお伺いいたします。

 一点目は、先生のおっしゃる、環境事業団等々の半ばオフィシャルな方式を用いた場合と、これまでの民間で処理していた場合の住民の参加、同意について、何か具体的に担保できるようなものがあるかというのが一点でございます。公共の事業団でした方が住民合意がうまくいくと考えさせられることが何かあるか。

 それから、続けて二点で申しわけございませんが、もう一点は、皆さんの口にも上りましたカネミ油症のケースでございます。

 実は私は、昨年の夏、五島列島に患者さんの検診に行ってまいりました。三十年前に主に皮膚症状を訴えていた患者さんたちは、今は、乳がんであるとかあるいは肝機能障害、慢性の肝臓障害であるとか老齢に伴ういろいろな神経合併症であるとか、当初予測した病態像とは全く異なるとすら言えるものを呈しておりまして、先生御提唱の患者さんのフォローアップ、必要によっては医療費の減免等々について、私は免除すべきものと思いますが、貴重なデータを与えてくださっている患者さんたちでもありますし、その辺についての先生の御進言を再度お願いいたします。

浦野参考人 重要な点が二点、御指摘というか御質問があったと思うのですが、一つは、事業団というか国の関与した機関の方が住民合意が得られるのか、民間の方がいいのかという御質問、もう一つは、油症患者さん等のフォローの問題でございます。

 実は、事業団がどういうところでどのぐらい事業を展開して、一カ所、北九州市という話は具体的に出ているのですが、その後どうされるのか、私は十分把握をしておりませんが、先ほど申し上げましたように、ある程度公共的なところでやらざるを得ない部分があると、全部ではありませんけれども。それはどこかでやらなきゃいけないとすれば、国が関与した事業団でもいいというふうに思っておりますが。

 それをどこに立地するかは、変な話ですけれども、やはり住民合意の得られやすいところに多分立地を考えておられる。ですから、国がやっているということで安心感の得られるような、あるいは大企業の敷地の中の一部を使って、そこの敷地自身が町ぐらいの大きさがあるようなところもございますので、そういうところで物事をやる場合と、そうではなくて、それなりの人たちがいて、周辺住民が不安がある場合とで合意形成の仕方というのは随分違うだろう。

 ですから、一律に、国がやれば合意形成が得やすいということには決してならないし、むしろ民間が幾つか拠点をつくってやる計画もあるようですけれども、民間の方々から伺っておりますと、やはり住民合意をどう得るか。逆に言うと、悪く言うと、おどしに来て、ゆすり、たかりみたいなのが来たりすることもあるわけですので、そういうことまで踏まえて、大変慎重に一生懸命な努力をしている企業も出てきております。ですから、場合によっては民間ベースでやった方が、むしろ日常的に周辺住民と交流している民間企業がやった方がいい場合もあり得る。ですから、その地域地域、設備ごとにいろいろな対応をやっていく。

 私、実はリスクコミュニケーションのガイドというのを旧環境庁と通産省から委託を受けて三年間日本化学会でやってまいりまして、今度、全体として本を出版することになっておりますけれども、そういったことも踏まえて、どちらにしても、民間がやるにしても国がやるにしても、特に地元自治体がいろいろ関与しないと住民との合意は得られないので、自治体の方々の意識改革というのがやはり非常に重要だというふうに思っております。

 それから油症患者さんは、本当に不幸にして、ある意味では貴重な医学的な資料と言っては恐縮ですけれども、情報を与えてくださる方々ですし、大変御苦労もされていることも事実でございますので、これについては、しっかりとした、これこそ国の、もちろん民間の製造業者等も責任はございますけれども、裁判で一たんの決着がついているということも、裁判というか合意をしたわけですので、残りの部分について、これは単に日本だけのためではなくて、世界でもいろいろなこういった問題で被害を受けている方がおられるわけです。処理技術だけでなく、この被害の実態、あるいはその後の影響についても日本がしっかりとした対応をとって、世界にも貢献すべきものだというふうに思っております。

阿部委員 大変ありがとうございました。

 最後に村田参考人になりますが、私どもがお願いいたしましたので、時間がございませんのであえて質問を省略させていただいて、ただ一点、やはり保管と使用と処分の間にはほとんど差がない、ぐるぐる回っておるので、処分、廃棄だけを処理してもしようがないということを教えていただきましたことをお礼申し上げまして、終わらせていただきます。ありがとうございます。

五島委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 この際、暫時休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後二時六分開議

五島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案及び環境事業団法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として、厚生労働省医薬局食品保健部長尾嵜新平君、農林水産省大臣官房審議官坂野雅敏君、農林水産省生産局畜産部長永村武美君、農林水産省農村振興局次長佐藤準君、経済産業省製造産業局長岡本巖君、経済産業省製造産業局次長増田優君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官広瀬研吉君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長岡澤和好君、環境省総合環境政策局長中川雅治君及び環境省総合環境政策局環境保健部長岩尾總一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

五島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

五島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。樋高剛君。

樋高委員 自由党の樋高剛でございます。

 きょうもお時間をちょうだいいたしまして、委員の皆様方、そして大臣、副大臣、そして政務官、感謝いたしております。

 きょうは午前中、参考人の四人の先生方にお越しをいただきまして、改めて理解を深め、そしてさまざまな観点、視点からも、この法律案につきましての意義を私自身またいろいろ考えさせられたわけでありますけれども、冒頭、午前中参考人の先生方から賜りました件につきまして、大臣の御所見を若干賜りたいと思っております。

 まず、今回のこの法律案の目的のところに、極めて当たり前なんですけれども、「国民の健康の保護及び生活環境の保全」とうたっているわけでありますけれども、ある参考人の先生からは、もう少し次元を広げた形で、例えば、PCB廃棄物というものがそもそも地球環境にも重大な悪影響を及ぼす可能性がある、そういった観点から、海洋哺乳類を初めとする世界の野生生物、つまり生物多様性の保護にも努めるべきだという御意見もあったのでありますが、大臣、いかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 委員おっしゃられますように、目的には「国民の健康の保護及び生活環境の保全を図る」というふうに書いてございまして、海の哺乳類等については触れていないということでございますけれども、この法律を成立させていただいた暁には、その運用に際して、そのようなことにも十分に注意をして運用してまいりたいと思います。

樋高委員 今全世界で生態系のいろいろな調査、私も個人的に勉強させていただいておりますけれども、目に見えないところできっと本当に大変な影響を及ぼしている。これは人間だけじゃなくて、世の中に生きている生物、自然界すべて考えた上で、ここは国会でありますから、やはりしっかりと手を打っていかなくちゃいけないというふうにも私は考えるわけであります。

 ほかに、きょうは午前中、先生方から御意見を賜りましたけれども、例えば今まで三十九カ所、処理事業を進めるべく施設をつくろうということで御努力なさったけれども立地が進まなかったという経過があったということを重々議論してまいりました。

 そこでリスクコミュニケーションという言葉が出てきたわけであります。施設周辺にお住まいになっている方々に、この処理事業について十分に理解をしていただくように処理事業者を指導する必要までやはり踏み込んだ方がいいんじゃないかというお考えも賜ったのでありますが、大臣、いかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 委員がおっしゃいますリスクのコミュニケーションということにつきましては、私も非常に大事なことだというふうに思っております。

 このリスクコミュニケーションの考え方に基づいてさまざまなやるべきこと、情報の収集あるいは整理、その情報公開といったようなこともあると思っておりまして、環境省といたしましては、そのような方向で環境事業団を十分に監督指導して、そういうことが図られるようにしていきたいというふうに思っております。

樋高委員 一方で、処理施設の設置に当たりましては、施設の設置、そして維持管理に関するコストの部分でも議論になったわけでありますけれども、コストの抑制にまで十分に配慮する必要があるのではないか。

 そして一方で、環境事業団が行うことになっているPCB廃棄物処理事業の実施に当たっては、期間内処理は確実に達成されるよう努める、これは当たり前だと思うんですけれども、処理コストの削減、つまりコストという概念もきょう先生方からたくさん寄せられたのでありますけれども、コストの削減にも十分に配慮する必要があるというふうに私は考えますが、大臣いかがでしょうか。

川口国務大臣 主体がだれであれ、事業を行うに当たっては、コストの削減ということには十分に注意を払うというふうに考えておりますし、またそれが必要だろうというふうには思っております。

 ただ、本件は、さまざまな理由があって今まで排出者責任という原則にもかかわらず、民間ベースではできなかったということがあるわけでございまして、その背後には、地元の住民の方が、民間の企業あるいはそれに類したところはコストを削減することが初めにありきで、十分な安全と安心についての手配といいますか、それを適切に確保するということが不十分になるのではないかという心配があるということで、今まで三十年間うまく処理ができなかったということもあるわけでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、最初に申し上げました、いかなる事業にあってもこの点については十分に注意をして事業を進めるということが大事でございますので、この点につきましても、環境事業団に十分に指導及び監督をしてまいりたいと思います。

樋高委員 力強いお言葉を賜りました。指導そして監督を今後ぜひ、引き続きコストの削減、抑制という観点から、しっかりとお願いをしたいと考えております。

 そして今回、PCB廃棄物の処理の実施に当たりましては、安全性を十分に確保すること、これもまた重要な視点であるという話になりまして、処理施設の運転状況、また周辺環境への影響などについての調査もしっかりと実施していただきたい。

 ここで御意見を賜りたいのは、得られた情報の積極的な公開、情報開示、説明責任、アカウンタビリティーの話でありますけれども、要は、今回これだけの事業を国が責任を持って行う。一方で、この四月から情報公開というものが一つの大きな時代の流れとなってきておりますので、先ほども申し上げました付近住民への十分な理解を得るためにこそ、やはり積極的に情報を公開する。それは、調査結果についてもそうでありますし、運転状況、いつから運転をして、例えば、とりあえず一カ月はずっと毎日稼働するんだとか、土曜日、日曜日は休むんだとか、そういう細かいところもやはりきめ細かく、地域の信頼を得るという部分で情報開示をするということが私は重要なことではないかと考えるのでありますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 委員おっしゃられました運転状況その他に関します情報公開等でございますけれども、やはり地元住民の方の安全と安心の確保、あるいは御理解と御協力ということが、この事業を適切に進め、予期された成果を生み出すために非常に重要なことだというふうに考えております。そのようなことが尊重されますように指導監督をしていきたいと思っております。

樋高委員 今回、PCB廃棄物をいよいよ処理するということでありますから、運搬がなされるわけであります。そして収集、一カ所に集められるということでありますけれども、安全性の確保は当然でありますし、運搬中に事故が起こる可能性もある。

 例えばトラックで運ぶのか何でだかわかりませんけれども、思わぬアクシデントによりまして事故を起こして、それが高速道路にばらまかれたりとかすることも十分考えられるわけでありまして、あってはならないことでありますけれども、万々が一PCBが漏れた場合などについての対策もあらかじめしっかりと十分検討して決めた上で行うべきというふうに考えますけれども、その辺はいかがなっておりますでしょうか。

川口国務大臣 事故があるということはあってはならないことだというふうに私ども考えておりまして、そのことがないように適切に指導監督をしていきたいと考えております。

樋高委員 前回、質問の時間をいただきましたときは処理法案の方につきまして質問させていただきましたので、今回は環境事業団法につきまして重点的に質問させていただきたいと思います。

 PCB廃棄物特別措置法案によりまして、先ほど来申し上げてまいりましたが、事業者に対しまして一定の期間内の処分が義務づけられるということになりましたけれども、単に義務づけをしただけでは、事業者にとってそれが実行可能なものでなければ実際にはPCB廃棄物の処理は進まないわけであります。根本的な問題の解決には至らないと考えるわけであります。

 環境事業団法の改正におきまして、今回新たにPCB廃棄物をみずから処理する事業を行うこととされておりますのは、事業者がPCB廃棄物の処理を委託することが可能となるよう処理体制の整備を行うという趣旨と考えられまして、その意図は理解できるわけであります。

 しかし、PCB廃棄物を含む産業廃棄物の処理につきましては、第一義的には民間で行われるべきであり、ここの部分を確認したいのでありますけれども、必要な場合には、県、市町村、都道府県も処理することができることとなっているわけであります。

 したがいまして、今回、国の所管する環境事業団という特殊法人がPCB廃棄物の処理をみずから行うというのは異例でありますけれども、それはきっと何か意味があるんだというふうに私は理解をするわけであります。

 改めて伺いますけれども、では、なぜ事業団が処理を今回行わなくてはいけないのかを国民にわかりやすく、どうか丁重に、この際、きちっと御説明をいただきたいと思っております。

川口国務大臣 今回のPCB廃棄物処理特別措置法によりまして、PCB廃棄物を一定期間内に処理するということを義務づけるわけでございます。その場合、義務を果たすことができる、処理をすることができるということの前提は、それを可能にする施設があるということでございます。ということでございますので、全国的に処理施設の整備をし、処理の実施体制を確保するということが前提になるわけでございます。

 ただ、委員御案内のように、これは本来民間事業者が排出者責任の原則に基づいて処理をすべきであるわけですけれども、これまで三十年間近くこの処理が進まなかったということは、ひとえに地元の住民の方の御理解と御協力が得られなかったということによるわけでございます。

 それならば地方公共団体が廃棄物処理センター等をつくって処理をすればいいではないかということでございますが、このセンターの処理体制、処理をするときの対象の範囲がその地方公共団体の区域内のものということになっておりまして、複数の県にまたがる広域的なものを処理することは困難が伴うということでございます。

 したがいまして、国が責任を持って施設の整備を行って処理業務を進めていくということがPCB廃棄物の処理の円滑な推進には不可欠ということになります。

 その場合に、環境事業団は、今まで産業廃棄物の処理のための融資などを数年前まで行ってまいりましたし、それから、施設整備等をいたしまして地元調整についてのノウハウや経験を持っておりますので、その環境事業団を活用することが最も適当ではないかというふうに考えたということでございます。

樋高委員 去年の十二月でありますけれども、政府が閣議決定いたしました行政改革大綱におきましては、特殊法人の行う業務について、廃止を含めた整理合理化を図ることとされておりまして、平成十三年度中、つまり今年度中にそのための特殊法人等整理合理化計画を定めると決めているわけでありまして、なお、平成十七年度中に所要の措置を講ずることとされているわけであります。それは御案内のとおりであります。

 こうした時期に環境事業団の業務としてPCBの処理事業を追加するということは、この行革大綱に反しないのかという意見も聞かれるのでありますが、その件につきまして、大臣いかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 今回の法改正というのは、急がれているPCB廃棄物の処理を国が行っていく、緊急に処理体制を確保するということが必要で、そのために、環境事業団の事業にPCB廃棄物処理事業、それから処理費用の助成を行う事業を追加するというものでございます。

 また、この事業を追加するに当たっては、従来のスクラップ・アンド・ビルドの考え方に基づきまして、国立・国定公園複合施設建設譲渡事業を廃止することといたしております。それから、新規事業につきましても、時間を決めて、時期を決めて、廃止も含めて見直しをするというふうにしているところでございます。

 委員御指摘の、行政改革大綱で特殊法人の抜本的な見直しをするということとされているわけでございますけれども、環境事業団につきましても、今後、時代のニーズに対応すべく、今までもやってまいりましたけれども、必要に応じまして見直しはしていく所存でございます。

樋高委員 今回、こういう新しい業務を環境事業団が行う、一方で、しっかりとこの全体の行革大綱を一度決めたことに対しまして、新たに、初心に返って事業そのものをきちっと見直すということはとても重要なことでございます。ぜひともお願いをいたしたいと思っているわけであります。

 また、今回事業団に新たな業務を加えるといたしましても、この際、財政上、また内容として一度けじめをつけるべきでないか。そのけじめと申しますのは、一方で聞かれますのは、仕事がないから、仕事がないはずはないと思うんですけれども、PCB処理事業をさせるために、今回、環境事業団にその役割を担ってもらうようにしたというふうにも一部では言われているわけでありますから、今まで事業団がやってきたこと、そして社会的意義をしっかりと発信する必要がある。逆に言えば、その説明責任がまだ果たされていないのではないかと私は思うわけでありまして、そもそも、きちっと一度何らかの形で総括的なけじめをつけるべきではないかというふうにも考えるのでありますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 環境事業団は、今までさまざまな業務を行ってまいりました。まず、昭和四十年に公害防止事業団として設立をされまして以来、国の環境政策の重要な政策手段の一つとして位置づけられてきたわけでございまして、環境問題に対する社会のニーズを踏まえて仕事をしてきたわけでございます。

 具体的に申し上げますと、幾つかございますが、住宅や工場の混在する地域で騒音、振動等の産業公害の防止を図るための企業団地の整備、これが三百六十件でございます。それから、公害防止計画策定地域等におきまして、工場従業員や地域住民の福祉向上に資するための共同福利施設の整備を五十二件、それから、大気汚染の防止を図るための大気浄化機能の高い緑地の整備を十一件、それから、国内外の環境NGOに対する助成を行う地球環境基金が千五百件の助成を行っております。

 環境省といたしましては、事業団が社会のニーズに応じた環境対策、環境保全のための事業を実施して、これが皆様に適切に評価をしていただけるように、今後も引き続き指導をしてまいりたいと考えております。

 事業団の業務については、先ほど申しましたように今までも見直しを行ってまいりましたし、ことしの一月以降、昨年十二月の行政改革大綱に基づきまして特殊法人の事業及び組織形態の見直し等の検討が進められております。環境事業団についても、その中で時代のニーズに対応するように必要な検討を行ってまいりたいというふうに思っております。

樋高委員 事業団が行うすべての事業については、しっかりと今後も継続的に、定期的に見直しをぜひとも行っていただきまして、やはり民間、地方自治体で行うことのできないことを、国が責任を持って安全と安心を担保する、国民の生活をしっかりと守っていくんだと。

 今回、まさしく処理技術も出そろったとはいえ、まだ実績がないわけでありますから、国が責任を持って行うのが当然だと私は思うわけでありますけれども、いろいろな時代の流れがありますので、そんな中で柔軟にきちっと見直しを逐一行いながら、例えば民間に、もしくは地方自治体でもできるというような状況になりましたときは、必要に応じてぜひ改正、所要の措置を講じていただきたいというふうに強く要望いたす次第であります。

 そして今回、PCB処理は、整備、施設をつくるのに五年、処理をするのに十年、トータルで十五年かかるというふうにおっしゃいますけれども、そもそも、この法律ができること自体がもう遅過ぎたぐらいに私は考えております。一方で外国の例をとりますと、EU、カナダにおきましては二〇一〇年、つまり今から九年後には自主的に処理を完了する予定であります。予定でありますからどうなるかわかりませんけれども。

 そういうことを考えまするときに、十五年などと言わずに、かといって、私先ほど来申し上げてまいりました、地域の住民の方々にもちろん理解を求めながら、しっかりと地に足つけた形で前に進めていかなくちゃいけないのは当然でありますけれども、一方で、十五年という形でやっていると、私はこれは、例えば十五年後に振り返ったときに、いや、ふたをあけてみたら全然できていなかったということにも本当になりかねない。

 むしろ、例えば整備に三年、処理に七年、合計十年ぐらいの思いがあってもいいのではないかと本当に私は思うわけです。それで、実態として五年ぐらい長引いて、十五年後ぐらいにやっとでき上がるぐらいなのではないかなと。もちろん、十五年以内にできることを私は信じておりますけれども、むしろ十年計画ぐらいですべてを、整備と処理含めて十年以内ぐらいで行うべく本当に全力を尽くして、もちろん環境省さんもリーダーシップを発揮していただいて、大臣がバトル・アンド・エボリューションという言葉をお使いでありましたけれども、ぜひとも頑張っていただきたいと、私は、ある意味でエールを送るわけですけれども、いかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 委員がおっしゃられますように、私どもといたしましても、できるだけ早く処理を完了したいということで、そのために全力を尽くす所存でおります。

 ただ、この体制の構築というのが一から始めなければいけないということでございますし、それから高圧トランス・コンデンサー約三十九万台といった大量の処理をしなければいけないということでございますので、やはりある程度の期間は必要かというふうに考えます。

 具体的にその施設につきまして申し上げますと、北九州市それから近畿圏、中部圏、関東圏などということで、全国で五、六カ所程度拠点を整備する必要があるということでございますし、このためには地元自治体の御理解、御協力が必要なわけでございます。

 それから、廃棄物処理法の設置許可などの法的な手続がございますし、建設工事の期間もございます。ということで、施設整備の期間として五年を努力目標にということで取り組みたいと考えております。

 それから、施設整備後の処理でございますが、十年程度を目標に取り組むということでございますが、これも、その量が非常に多いということで御理解をいただきたいと思います。

 ただ、冒頭に申しましたように、私どもとしては、できるだけ早く処理体制の整備をし、PCB廃棄物をなくしていくということが重要であると考えておりますので、最大限の努力をいたしたいと思っております。

樋高委員 ぜひとも最大限の努力をお願いしたいと思います。一から始めるからこそ、ぜひとも頑張っていただきたいですし、本当に早目早目で頑張っていただきたいと思っているわけであります。

 最後の質問とさせていただきますけれども、今回、PCB処理にかかわるこの法律案でありますけれども、そもそもこれは、日本国内の問題のみならず全世界、特にアジア地域の環境の問題に大きな影響を与えるぐらいの大きな法律案であるというふうに私は考えるわけでありますけれども、日本が環境問題でリーダーシップをとるということ、そして大臣は、環境先進国を目指すんだというふうにもおっしゃっておいででありましたけれども、PCB廃棄物根絶に向けました大臣の決意を最後に伺いたいと思っております。

川口国務大臣 PCB廃棄物の処理は、日本は国際的に見ても大変におくれております。今まで三十年間近く保管をいたしまして、その過程で紛失をしたり行方不明になったりということで、その中で環境の汚染が懸念をされているわけでございます。

 私どもといたしましては、このPCB廃棄物が、これは二十世紀の負の遺産であるというふうに言われていますけれども、これをできるだけ早くなくしていきたい、そのための処理体制の整備に努めていきたいというふうに考えております。全力を尽くしたいと思っております。

樋高委員 法律案ができましても、それが本当に実態として実効性のあるものでなくては意味がないと考えるわけであります。

 私自身も、環境問題はライフワークとしてやっているつもりでございまして、私自身も積極的に今後もかかわりながら、前々回でしょうか、委員会でも申し上げましたとおり、実は私の選挙区の方でも、不法投棄によりまして、PCBの問題は地域の大きな問題になっているわけであります。

 しかも、来年の六月にはワールドカップサッカー大会の決勝戦が行われる新横浜の国際総合競技場の横でPCBの問題が、地域の問題でありますけれども、それと同時に実は今世界の問題になっているわけでありまして、私も今後継続してしっかりと監視、そして関心を持ってやってまいりたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。きょうはありがとうございました。

五島委員長 山田敏雅君。

山田(敏)委員 民主党の山田敏雅でございます。前回の委員会の再質問ということで、質問に立たせていただきました。

 まず、ブッシュ大統領の京都議定書離脱問題についてお伺いしたいと思います。

 この問題は、我が国のみならず、本当に地球規模の大問題であります。特に我が国の環境行政というか環境政策の一番大事な部分ではないかと思います。

 そこで、最初にちょっと確認をしておきたいと大臣にお願いいたします。

 国権の最高機関である、環境問題を扱うこの環境委員会が、私はどのような判断よりも優先されて最高の意思決定機関だと認識しておりますが、大臣はいかがでしょうか。

川口国務大臣 我が国は三権分立ということでやっているわけでして、その三権それぞれの立場に従って、憲法にのっとって仕事をしていくべきものだと思っております。

山田(敏)委員 私は、この問題をぜひ環境委員会の集中審議の場に移していただきたいと思いまして、しばらくその理由をこの場で議論させていただきたいと思います。

 まず最初に、先週の宣言以来、アメリカ及びEUでさまざまな動きがございました。その後、大臣は、大統領と直接話をされるか、交渉されるか、あるいはアメリカからどのような返事があったか、この点についてお答えください。

川口国務大臣 まず、大統領と直接に私が交渉をしたかという御質問でございますけれども、各国政府におきまして、私のカウンターパートはそれぞれの国の環境大臣でございまして、私は、必ずしもといいますか、残念ながら大統領と直接交渉ができる立場にはないということをまず申し上げさせていただきたいと思います。

 それでは、私が何をしたかということでございますけれども、現在さまざまな取り組みが行われておりまして、そういうようなアメリカに向けての働きかけをどうするということについての議論をリーダーシップをとってさせていただいておりますし、そういう意味では、森総理からブッシュ大統領に手紙を出していただきましたし、けさほども、閣議の終了後、五大臣集まって、情勢の分析及び認識の共通化をさせていただいたところでございます。

 私自身ももちろん、これはかなり前に、アメリカのカウンターパートである環境保護庁のホイットマン長官には手紙を書かせていただきました。また現在、国際電話で各国の閣僚の方々とも意見を交換いたしまして、一緒にアメリカに働きかけるということが大事であるということの認識を共通にいたしております。

山田(敏)委員 今の情報では、今のところ働きかけると、先週と余り変わらないのですが。

 EUは、おとついになりますが、ステートメントを出しております。これはスウェーデンのラーション環境大臣が出したもので、私の手元にあります。三月三十一日付です。私が先週取り上げました、手紙を書いて抗議をするということでは、アメリカが意見を変えるとか何か議論が起こるとか、そういうことでは起こらないのじゃないか、もっと別な方法が要るのじゃないかというふうに御提案申し上げました。この文書の中に、六番目の項にはっきりと書いてあります。

 これは英語なんですが、日本語で申しますと、アメリカに参加するように呼びかける、しかし、同時に、アメリカを除外した形、すなわち、五五%条項で、アメリカが参加しなくても二〇〇二年にこの京都議定書は発効する、それに向けて準備をする、解決策を見つけるための準備をするということが書いてあります。

 すなわち、今大臣がおっしゃった情報とはちょっと違っていて、EUはもう既に、手紙を書く、説得はするけれども、しかし、アメリカ抜きでこれをやらないと、そういう選択肢をとる方法がいいのではないかということがはっきりステートメントで出ておりますが、それについてはいかがお考えでしょうか。

川口国務大臣 私も、先ほど申しましたようにホイットマン長官には手紙を書きましたし、それから談話を出させていただきまして、その中で、今回のアメリカの状況については、今後の京都議定書をめぐる議論をおくらせる、それに問題を生じさせるということで、非常に遺憾であるということを申し上げております。

 それから、EUの関係の方々とも私は対話を持ちましたけれども、EUのそのステートメント、環境大臣会合によるステートメントでございますけれども、それも、アメリカを抜きで云々ということの前に、やはり一緒にアメリカに働きかけることが大事なんだということをまず言っているわけでございます。

 現在、アメリカは京都議定書のプロセスから離脱をしたという報道が新聞になされているのを私も読みましたけれども、それはそういうことではございませんで、アメリカは、国際的なプロセスを通じて、市場のインセンティブを生かした形で、あるいは技術それから他の革新的な取り組みを大事にする形で、どういう対応がアメリカにとってとるべき道であるか、政策のレビューをするということを言っているわけでございまして、そのプロセスあるいは気候変動の問題が重要でないということを言っているわけでは全くございませんで、何がいいかということをアメリカとして政策のレビューをしながら考えるという段階にございます。

 アメリカはそうやって考えているわけでございますから、私どももEUと一緒にアメリカに働きかけるということがまず大事だというふうに認識しております。

 それはなぜかといいますと、アメリカが世界最大の排出国でありますし、それから先進国、アネックス1国というふうに条約上は呼ばれておりますけれども、その中における排出量のシェアというのは三六、七%という高さになるわけでございまして、この国を除いて温暖化対応ができるか、実効性があるかということを考えますと、やはりアメリカを入れることが大事であるというのがEUと私ども日本を含むアンブレラ諸国の一致した点であるということでございます。

山田(敏)委員 先週の答弁とちょっと違うのですが、新聞記事でも、あるいは政府の発表でもはっきりと、先週大臣は、ブッシュさんはもう選挙戦のときから京都議定書には反対だと言っていたと。さらに大統領自身も明言して、そして政府も、大統領報道官も明確に、これはフライシャー米大統領報道官ですが、大統領は京都議定書を支持しないと明確に述べた、そして環境保護局長も、議定書の批准には政府として全く関心がない、すなわち議定書と違うメカニズムでやりましょうということを明確に述べた、こういうふうに前回答弁されたので、私もそう思っていたのですが、きょうは、今まだわからないとか何かアメリカも取り組むとか、そういうちょっとわけがわからないことになったのですが、一応日本政府としての認識をはっきりするには、まず、アメリカは京都議定書から外れたということを明言して、文書にも出してやっているわけですから、これは、明確にこういう立場にあるのだということでないと、この先の議論が全然進まないのですが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 私は先週申し上げたことと全く同じことを申し上げているわけでございまして、先週申し上げたことで先ほど答弁のときに申し上げませんでしたことは、アメリカの共和党は選挙のときから、選挙綱領において京都議定書は支持しないということを言っている、それをブッシュ大統領は、議定書は支持しないということを大統領になって今回言ったということでございますが、それは、京都議定書の今行われている議論、その枠組みから離脱をするということはちっとも言っておりませんで、それは先週もそういうふうに申し上げておりますけれども。

 アメリカは、温暖化問題については、これは大変に重大な問題であると受けとめて、国際的なプロセスを通じて、市場のインセンティブを生かし、技術あるいは革新的な取り組みの枠組みを尊重するようなことが大事だと考え、現在政策のレビューを行っている過程であって、その政策のレビューはまだ終わっていないということでございまして、それを先週も申し上げましたし、先ほども申し上げたわけでございます。

山田(敏)委員 それでは、日本語でもう一回整理しますと、京都議定書は支持しない、しかし離脱したわけではない、こういうことでよろしいのですか。

川口国務大臣 というふうに私どもは理解をいたしております。

山田(敏)委員 去年の十一月のCOP6のことでございますが、日本はアメリカ、カナダとともに、吸収源を認めろという主張を行いました。これは世界的に見ても、また日本の中から見ても、アメリカ、カナダは吸収源が日本の恐らく何十倍とあるわけですから、こういうことを言うとこの議定書の精神そのものが破壊される、こういうような意見がEUから出されたと思うのですが、大臣、そのとき、日本が吸収源を提案して、そしてそれが会議の中で受け入れられなかった点についてどういうふうにお考えになりますか、お答えください。

川口国務大臣 吸収源というのは既に京都議定書に盛り込まれておりまして、それを日本が提案して拒否されたという話では全くないわけでございまして、一九九七年の第三回の締約国会議の際に、吸収源については相当な時間を使って議論がなされ、それを京都議定書の一部として取り入れるということで各国が合意をしたわけでございます。また、それが、各国が、特に先進国でありますアメリカ、日本あるいはEUが、それぞれ七%、六%、それから八%という削減を受け入れるときの前提にもなっていたことだというふうに私は理解をいたしております。

山田(敏)委員 私が申し上げたいことは、日本がこの吸収源を主張して、今の議定書の目標である数字を積極的に、前向きにやっていく姿勢が見られなかったことが非常に残念だということを申し上げたいのです。

 また、アメリカは現在、京都議定書を支持しないということを明確にしたわけですけれども、そのアメリカの理由が幾つかあると思うのですけれども、本当の理由はどこにあるとお考えでしょうか。

川口国務大臣 私は、その共和党政権の当事者ではございませんので、今その点について、どこにあるかということはよくわかっておりません。

 各国と電話等で、何を今アメリカは考えているのかということを話をいたしますけれども、どこの国におきましても、そこについてはよくわからないということでございまして、現在、アメリカが温暖化についての政策のレビューを行っている最中ですので、そのレビューの結果を待ちたいというふうに思います。

山田(敏)委員 これを支持しないというアメリカの本当の理由は、この京都議定書を守ることができない、すなわち、CO2の排出量がどんどんふえまして、今九〇年レベルから一〇%ぐらいふえた、日本も今似たような事情がございますが、そのままいくとこの議定書を守ることができない、そういう事情で、この議定書を支持しないというんじゃなくて、支持できないんじゃないかというふうに言われております。

 これは、日本も似たような事情で、日本が積極的に六%削減のための明確なプランなり政策なりを、これが環境省から出てこないわけですけれども、かなり思い切ったCO2削減のための政策が出てこないと、日本も京都議定書の規定を守ることができない、こういう状況にあると思います。その点はいかがでしょうか。

川口国務大臣 どこの国も、これは二〇〇八年から二〇一二年の期間が今約束期間というふうになっておりますので、その国それなりに、どういう政策をとったらそこでその議定書の定めるところの削減目標を満たすことができるだろうかということで一生懸命に考えておりますし、そのために、京都議定書の中のさまざまな吸収源、あるいはその京都メカニズムといったようなことが議論をされているということでございます。

山田(敏)委員 日本の六%削減についていろいろな試算が出ておりますが、御存じだと思います。このままの状況ですと非常に難しいといういろいろな分析結果が出ております。

 そこで、私、先週も申し上げました。環境省は、やはり日本の行政をリードする立場を持ってもらいたいという意味で、自然エネルギーの促進法案というのが議員連盟で出ております。これもまだ成立しておりません。これは、風力等の自然エネルギーをやろう。あるいは自動車の排気ガスについて革新的なというか削減のための政策、これも出ておりません。今のままやりますと、恐らく日本は六%削減はできないだろうという非常に強い反対のドライビングフォースがありますけれども、環境省として本当にこの点を真剣に考えるかどうか、お答えいただけますでしょうか。

川口国務大臣 環境省で、中央環境審議会のもとでさまざまな検討を今行っておりますけれども、その検討会で出しました試算におきましては、これはさまざまな前提がございますけれども、多分、今のままでいきますと、二〇一〇年に、これは約束期間のど真ん中の年でございますが、恐らく五から八%ぐらい一九九〇年と比べてふえてしまうであろうということが試算として出ております。

 ただ同時に、もう一つの試算で、もし必要な制度等の措置を導入いたしますと、技術的な可能性といたしましては、それを減らし、削減目標を守るということが可能になるだろうということも検討会の結果として出ているわけでございます。

 したがいまして、技術的にはそういうことは可能であるということでございますので、環境省のみならず、関係省庁、それから、これは国民のライフスタイル等にもかかわってくる重要な、さまざまな主体が努力をしなければいけないことでございますので、そういった努力も重ね合わせて、削減目標を達成することが可能になるような努力をいたしたいと思います。

山田(敏)委員 大臣、そのままですと、二〇一〇年にプラス五%から八%となると。ちょっと詳しくわからないのですけれども、それを、何らかの技術的な革新があればということなんですが、実際技術的な革新というのはあるかどうかわからないわけですから。私が申し上げたいのは、環境行政を一つの環境産業行政として考えてやっていかないと、この問題はできないと思います。

 ドイツが十年前に、風力発電の買い取り義務というのをやりました。それによって七百万キロワットの風力発電ができるようになりました。それによってコストが大幅に下がって、それによってまたEUは風力発電ビジネスという大きな産業、四千億円とも言われておりますけれども、新たな雇用も起こって、さらにCO2の削減に大きく貢献したということがございます。

 ですから大臣、もう少し、環境大臣は一つの権威を持っていらっしゃるわけですから、みずから今の環境行政について、環境産業行政ととらえて大きくこれを変えていくという意思が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

川口国務大臣 委員がおっしゃられますように、削減をしなければいけないということは、環境ビジネスといいますか、環境産業の育成あるいは振興ということでいきますと、非常に重要なチャンスであるというふうに私どもは認識をいたしております。

 このために、環境省といたしましては、そのための努力はやっていきたいというふうに考えておりますし、削減目標を守るような努力を、あわせて国民のそれぞれの方も努力をしていただく必要があるわけでございます。

 と申しますのは、現在温暖化ガスの増加というのは、産業部門もございますし民生部門もあるわけでございますが、産業部門は比較的削減が進んできておりまして、その他方で民生部門が、例えば自動車の一台ごとの燃費はかなり向上いたしましたものの、使用台数が非常にふえたということで温暖化ガスの増加につながっているということでもございます。

 その他、民生の事務部門といいますか業務部門でかなりふえているということが実績でございますので、委員おっしゃる環境ビジネスというのはおっしゃるとおりでございます。さらにそれに加えて、国民の皆さんお一人お一人のライフスタイルを変える等の努力等が必要だというふうに思っております。

山田(敏)委員 私は、先週申し上げましたが、日本が世界をリードしてこの地球温暖化の問題をやっていくということには、技術革新と申されましたけれども、これは政策があって初めて技術革新というのは進んでいきます。日本は、過去二十三年間風力発電の研究をやりました。しかし、技術的には今ヨーロッパに比べて十年おくれています。それは政策というものがなかったからなんですね。ですからこれからは、世界をリードしてこの地球の温暖化問題をやるには、日本が思い切った政策を出さないとやっていけないというふうに思っております。

 その意味で、理事会に諮っていただいて、今回のこの京都議定書の問題について、非常に重要な局面でありますと同時に、環境行政の大きな転換を図っていただきたいという意味を込めまして御提案したいと思います。

 例えば十年後に、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの製造と販売を禁止する法律、これを検討して、それによって電気自動車の大きな技術開発が進んで、その技術によって日本が世界をリードする産業を持つことができる、こういうこともシナリオとしてあるわけですから、ぜひ検討していただきたいと思います。

 続きまして、PFIの問題に移らせていただきます。

 前回の委員会で、PCBの処理については、三十年間行政の責任があるから、これを、国民の税金を使わないでPFIという手法を使ってやることが、国民が一番理解ができる方法ではないかという御提案を申し上げました。そして、PFIについていろいろと御質問いたしましたら、大臣の方から、PFIというのは、民間がつくって後で国が買い上げるから税金を使うことになるのだという答弁がございました。私も非常に驚きました。要するに、環境省として本当に、PFIは税金を使わないでやる手法ですから、そのようなことは、だれが申されたのかわかりませんけれども、あり得ない議論でございます。PFIについて議論を深めて、そして知識を深めていただきたいと思っております。

 先週申し上げました福岡市の例がございます。ここに福岡市の報告書がございます。福岡市の環境局が、PFIによって清掃工場の余熱を利用してやる事業でございます。これを行いました。これは、コンサルティングが始まってから約一年半で契約が結ばれました。平成十三年の二月二十三日に議会で承認されましたので、その前の一月に仮契約をして決定されました。

 この中で、先週申し上げましたが、PFIでやることによって約半額でできるようになったというふうに申し上げました。これは、当初福岡市が試算しておりました十七億円という上限価格に対して、落札が決まりましたのは十一億九千万円、半分に近いというか、かなりコストが下がったわけです。

 これによって、福岡市は幾ら税金を使ったか、これをお聞きしましたら、アドバイザーフィー、PFIをすべてやるアドバイザーと契約したわけですが、その費用二千三百万円で、税金を十七億円使って市が運営する予定であったこの施設を、十五年間の運営を民間に任せて、そして十五年後に無償で市に返還する、こういう事業ができ上がったわけですね。

 これは、特に大変な努力をしたとかそういうことではなくて、福岡市の方にお聞きしましたら、財政当局と環境局の方が、これは民間の活力とノウハウを利用してやるのがいい事業であるという判断をされてとんとんと進んだ。実質的には一年ぐらいでこれは契約が完成したわけです。

 これについて、今初めてお聞きされたかどうかは別にして、どういうふうにお考えになりますか、お聞かせください。

    〔委員長退席、近藤(昭)委員長代理着席〕

川口国務大臣 PFIの事業といいますのは、本来公的部門が行う公共施設の整備あるいは建設、維持管理、運営等を、ある役割分担を官と民ですることによって行うという事業でございまして、その意味でいきますと、委員おっしゃった福岡の一廃の処理の施設というのは、一廃は本来市町村が行うべきものとされているものでございますから、そういう意味でPFIの手法、PFI的な手法にはマッチするものだというふうに思っております。

 環境省といたしましても、市町村がPFIの手法を用いて行う一般廃棄物の処理施設の整備事業についての国庫補助ということは、今までも行ってきたところでございます。

 私が承知しております福岡市のごみ処理施設の整備事業というのは、九州電力と福岡市が一緒になりまして、民間の資金や経営能力や技術力を確保、活用して行っていくというものであるということでございます。それで一般廃棄物の焼却処理を行い、発電をしまして電力を売却して、それによって財政負担の縮減や、それから、福岡市にとっては平準化をもたらすということでい事業だというふうに思っております。

 そういう意味で、一般廃棄物の事業というのはこれまでも行われてきて、その手法あるいは地元の方の理解といった点で十分になじんでいる事業である、それから、公的にそもそも行うこととされている事業であるということで、この手法になじむというふうに私どもは考えております。

 委員は、それならば、環境事業団が行うそのPCBの事業になぜPFIが使えないのだというふうにお考えでいらっしゃると思いますけれども、これは、今まで、従来から事業として定着してきた先ほどの一廃の処理の事業とは異なりまして、まさに一から始めるという意味で定着をしていない事業であるということと、それから過去の、三十年来これがきちんと処理をされてこなかったという経緯、また、その背景として、住民の方の理解、御協力が得られなかったということでございまして、PFIの手法というのは、官、民両方やるということで、民が入ってきて行うという部分について、地元の方の理解、協力が得られるという保証がございませんで、まさに今までやっておりませんので、やっておりませんといいますか、今までそれが得られなかったということで、それが難しいという判断に立ちまして、PFIの事業はなじまないということで環境事業団が行うのが適しているという判断をいたしたわけでございます。

山田(敏)委員 今おっしゃったこと一つずつ申し上げますと、一廃の事業はやったことがあるからなじんでいると。

 それでは一つ質問しますけれども、一廃の事業を最初にやった人はどうなったのでしょうか。なじまなかった。だれかが最初にやったわけですから、初めてやることというのはあるわけです。

 それから、住民の理解と申されましたけれども、けさの村田先生の環境委員会の意見陳述書の二ページにありますが、住友電工、荏原製作所、日本曹達はもう既に自社技術でやっていると。それから東京電力、三菱重工はことしじゅうに処理をする計画であると。それから、住民の同意はどうかというと、東京電力は住民の同意を得ているということが書いてございます。ですからPCBについて住民の同意が得られないということはないということですね。ですから、今おっしゃったことは、PFIをやらないという根拠には全然ならないと思います。

 さらに、もっと大事なことは、今ここの議論でもございましたが、北九州市でやって十五年間かかる、これが大きな問題だと。では、どうすればいいか。処理施設をたくさんふやせば、五年以内にあるいは六年以内に終わるわけです。この村田先生の意見書の中には、もう既にたくさんの民間企業が、私もやりたい、私もやりたいということで手を挙げていらっしゃると。これは十分処理施設もできる能力もあるし、東電のケースでは住民の同意も得ている、ここで民間の活力を生かすPFIをやればいいと。

 もっと大事なことは、ここに書いてありますように、果たして事業団がやることによって、競争原理が働くのかということですね。競争原理が働かなければコストは下がらない。それから技術の進歩がない。これからまだいろいろやる未完成の技術ですから、一番大事なことは競争原理が働くように、先ほど福岡市の例も申し上げました、これは入札です。いろいろなグループが、私はこういう方法で、こんな技術で、こんな契約内容でやりますという入札をして、その結果コストが下がって、その結果、よりすばらしい技術を採択することができる、こういうことでございます。

 大臣、私の今のコメントについて、コメントをお願いいたします。

川口国務大臣 たくさんの御質問を一遍にちょうだいしたものですから、全部ちゃんと記憶している自信がなくて、あるいは少し抜かすかもしれませんけれども。

 まず、なじむかどうかという一番最初のお話でございますけれども、多少誤解をしていただいているのではないかというふうに思います。一廃の事業というのは、そもそも市町村が行う事業であるということでございます。したがって、そういう意味で、その技術あるいは廃棄物の処理をするところをつくるということ自体は、そもそも市町村が、要するに公共のところがやっていたということでございます。

 その過程を通じて一般廃棄物の処理をする技術なりその処理場なりについてのなじみがあるというふうに申し上げたわけでございまして、最初、民間企業が排出者責任の原則によってやろうとして三十年間できなかったPCBの廃棄物とは違う話、全くそのスタートラインが違うということでございます。したがって、なじむなじまないというのは、多少そこは誤解をしていただいているかというふうに思います。

 それから二番目に、住民の理解ということでおっしゃいました東電その他のことについては、大きな企業が自社の抱えているPCB廃棄物につきまして、自社の中でそれを処理しようという試みは既に行われております。これはその他の、日本国内にたくさんあるPCB廃棄物を持ってきて処理をしようというのとは違う話でございまして、自社の中で、その企業が地元の、周りの方の理解を得ながらみずからがやる、大企業がやるということでございます。ということで、今問題になっているのは、中小企業が抱えている多くの廃棄物をどうやって処理するかということが問題になっているわけでございます。

 それから三番目に、十五年の期間が長いというお話だったかと思いますけれども、これはそもそも、中小企業のPCB廃棄物等につきましては一からやっていく話であるということと、北九州、近畿圏、中部圏、関東圏等で、全国で五、六カ所の施設をつくりまして、さらに、そこで地元住民の方々の御理解、御協力をいただきながらつくる。それから、廃棄物処理法による施設の許可の法的な手続、あるいはその建設のための期間というものが必要ということでございますので、五年というのを努力目標に設備の整備を進めたいということでございます。

 それから、全体として三十九万の高圧のトランスですとかコンデンサーがあるわけでございます。したがって、施設の整備が終わった後で、おおむね十年を目標としてこれを進めていきたいということでございますので、一から構築するものであるということと、それから、処理をしなければいけないものの数が非常に多いということで、十五年程度の期間が必要であろうと私どもは考えている話でございます。

 それから四つ目に、PFIをやらないと競争原理が働かなくて、例えば技術の進歩がないということをおっしゃいましたけれども、これは環境事業団がやるに当たりましても、どの技術を使うかということにつきましては、入札をいたしてその技術を選択する、その技術を選択するためには事業団の中に委員会もつくって行うということでございますので、技術の進歩がないということでは全くないというふうに考えております。

    〔近藤(昭)委員長代理退席、委員長着席〕

山田(敏)委員 大臣、誤解をなさっているのですが、PFIというのは公共事業をやるわけですから、今回民間の方がたくさん名乗りを上げていらっしゃるわけですが、その方たちは、国ないし事業団が行う国としての事業をPFIという手法でやるということですので、民間がやるということで私は申し上げたのではございません。これは、事業団がどんどん施設をつくるよりも、こういう会社が既にある施設を使ってやっていく方が効率がいいし、コストもずっと安くできるということを申し上げております。

 それから、先ほどおっしゃった北九州市では、環境事業団がやるということで北九州市の方の住民の同意が得られているわけです。これは同じ手法ですから、例えばどこかで東京電力がやる、これは環境事業団の事業です、ただしPFIとして東京電力がやりますということであれば、北九州市と同じように住民の合意も得られるということですから、その辺をちょっとよく聞いていただいて、ぜひ賢明な御判断をいただきたいと思います。

 それから、事業団はそもそも研究者もいらっしゃらない、PCBの処理をやったことがない、技術的な蓄積もない、そのようなところが入札をして技術の優劣を決めるとか、そもそも非常に無理がある。事業主体は国でも事業団でもいいのですけれども、やはりやっていく過程で、PFIという手法でやっていけばこれは効率的に運んでいく。

 それから最後に、この福岡市の例もあるのですが、PFIというのはあくまで民間が自分たちで努力をして、コストを下げれば自分たちの利益になりますから、そのやっていく段階で技術開発はどんどん進んでいきます。そのことを私は申し上げているのです。技術の優劣というのは競争によって決まるものなんです。競争のないところに環境事業団が独占価格でやって、これは幾らです、五十万円です、もう変わりません、こういうところでは競争の原理は働かない、すなわち技術が進歩していかない、こういうことを今私は指摘したいと思います。

 今の、大臣、コメントをお願いいたします。

川口国務大臣 再度、誤解をしていただいているのではないかというふうに申し上げさせていただきますけれども、PCBの処理の事業というのは、本来、排出者の責任の原則にのっとりまして、民がやるべきものであるわけでございます。そういう意味で、東京電力なりその他の大企業は、排出者責任の原則にのっとってみずからやろうとしているということでございます。ですから、そこにはPFI的な手法が入る余地はそもそも初めからないということでございます。

 繰り返しになってもいけませんが、これを何で環境事業団がやるかということでいいますと、例えば中小企業等も、とにかく三十年ぐらいPCBの廃棄物は保管されているわけでございます。これが環境に出て汚染をするということがあってはいけませんので、速やかにそういう事態をなくすということを目的としまして、民ではできないということから環境事業団が行うということでございます。ここは繰り返しになるので申し上げませんが、そういうことでございます。

 それで、北九州市との関係でございますけれども、北九州市長からもお話を伺わせていただきましたけれども、北九州市から環境省にお話がございましたのは、環境省において具体的な準備に入ることを了解するという回答をいただいたということでございまして、現在そういうことでございますので、この法案を成立させていただきました暁には、PCBの処理の方法の検討を含めまして、環境事業団で具体的な準備を開始したいというふうに考えているわけでございます。

 それから技術につきまして、技術の進歩というのが競争によって起こるというのは、これは委員おっしゃるとおりでございます。したがいまして、今後、入札というのはまさにその競争によって行われる、及びそこで、コストの問題だけではなくて、安全性その他も考慮して技術は選択されるということでございますし、果たしてその事業が本当に効率的に行われているかどうかということにつきましては、情報の公開等によって皆さんに見ていただくことで御判断をいただけるのではないかというふうに思っております。

山田(敏)委員 何回も同じことを言いません。よく聞いていただきたいのは、東京電力がやるということでなくて、環境事業団がやるということでいいのですが、その手法を東京電力に任せるということ、それがPFIというふうに申し上げましたので、もう一回よく聞いていただきたいと思います。

 時間が参りましたので、経済産業省にお伺いします。

 本法案について、地方公共団体に届け出義務が課せられるわけです。そうしますと、前回の委員会でも申し上げましたように、PCB処理協会の仕事というのはこの段階で全くなくなると思いますが、十五年間そういう仕事をなさってきて、廃止すべきであると申し上げましたが、その点について御答弁をお願いします。

岡本政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで、PCB廃棄物を保管する事業者が地方公共団体に報告する制度が確立していなかったために、PCB処理協会では、現在に至るまで事業者からの自主的な報告に基づいて台帳の更新業務というのをやってまいっておりましたが、本法案が成立、施行されれば、PCB廃棄物を保管している事業者には、毎年度、その保管状況について、省令で定める事項を都道府県知事に届け出る義務が課せられますので、先生御指摘のとおり、PCB処理協会による台帳に基づく保管状況の実態把握という業務は、地方公共団体が行う仕事と重複することになるものというふうに私どもも認識をいたしております。(山田(敏)委員「私の質問にお答えください」と呼ぶ)

 それで、PCB処理協会そのものをどうするかという点については、これは民間の公益法人ということでございますので、一義的には彼らの発意というところにまつものかと思いますが、あえて私ども、公益法人を監督している所管の立場から申し上げれば、今申しましたように、地方公共団体が法律に基づいて行う業務と重複ということに至りますので、協会の役割というのは事実上なくなるものというふうに認識をいたしております。

山田(敏)委員 このPCB処理協会には補助金が使われております。したがって、協会の自発的なということではなくて、たしか八億円ぐらい補助金が使われておると思いますが、経済産業省はちゃんと監督をして、直ちに廃止に持っていっていただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

五島委員長 鮫島宗明君。

鮫島委員 一部山田委員の質問とダブるかもしれませんが、ニューヨーク市立大学に霍見芳浩さんという日本人のプロフェッサーがおりまして、彼のゼミにいた学生で際立って能力のない学生がいた、それが今のブッシュ大統領だということをこの前、霍見先生がおっしゃっていました。

 そのブッシュさんがわがままを言って各国が困っていると思いますけれども、質問の重複は避けますけれども、日本としては、二〇〇二年までに京都議定書の批准を行うという基本方針にはお変わりはないのでしょうか。

川口国務大臣 日本の方針といたしましては、二〇〇二年の京都議定書の発効ということが非常に大事だというふうに考えておりまして、そのために、国際的な取り組み、国内的取り組み、全力を尽くしてやるということに全く変更はございません。

鮫島委員 場合によったら、アメリカが今のブッシュさんの態度では間に合わないかもしれない、そういう非常に難しい局面に来た場合に、日本がアメリカより先行して批准するケースがあり得るのか、それとも、あくまでもアメリカの同意というのが前提でしか日本の態度は決められないのかどうかということ、その点だけお願いします。

川口国務大臣 アメリカは、排出ガスの量の大きさということからいいますと世界一でございまして、この気候変動枠組み条約で削減の義務を負っている国の中で考えますと、三六から三七%という比率をアメリカの排出ガスの量というのは持っているわけでございます。この国が京都議定書の運用ルールの決定に積極的に参加し、京都議定書の発効に貢献をしてくれるということは、京都議定書の実効性及び地球全体での温暖化ガス問題への対応ということから非常に重要だというふうに考えております。

 私どもは今EUと、アメリカを説得するための働きかけということを協調してやることが非常に重要であるという認識を持っておりまして、そのための努力をいたしているわけでございます。私としても、アメリカの動向によってこの交渉の過程に問題が生ずるということについては、強い懸念を持っております。

鮫島委員 そういうことではなくて、もちろん、最大限の努力をしてアメリカも巻き込みながら合意を形成するというのがあくまでも原則だとは思います。

 ただ、その交渉の仕方としては、多少テキサスの荒っぽい男がしかけてきたブラフにそのまま振り回されることはなくて、場合によったら、先行したEUと日本のグループが五五%条項で発効させて、そういう条件の中でさらにアメリカを巻き込んでいくというオプションもあるのではないか。これ以上議論はしませんけれども、ぜひ独立国の大臣らしい発想をお願いしたいと思います。

 そのことに関連してもう一点だけ申し上げますと、先ほど山田委員の質問に対して、二〇一〇年の温暖化ガスの排出の見通しが一九九〇年に比べて五から八%上昇するという見通し、そういう見通しのもとで、どうやって国民各層の努力なりさまざまな技術開発で日本が課せられている削減枠に到達するかという方向で考えていきたいという御答弁があったように記憶しております。

 昨年までは大臣は大変極端なことをおっしゃっていて、有効な努力を一切しないとすると、一九九〇年レベルに比べて二一%増という大変な状況になるのです、しかし、六%義務があるからトータル二七%減らさなくてはいけない、それは大変難しい話で、したがって京都メカニズム、いわゆるCDMと呼ばれる仕組み、あるいは森林による吸収源というのを大きく見込まないとなかなか日本の削減枠は達成できませんというお立場だったと思います。

 私は、今の立場の方がいいと思いますよ。現実的な見通し、しかも削減ポテンシャルが各分野でさまざまありますと、それを適正に組み合わせ、技術開発の後押しをしながら、何とか現実的なプランニングをしていこうという方がいいと思いますけれども、何か急に変わったような印象を受けるのですけれども、もう早くも森を当てにするのをやめたということでしょうか。

川口国務大臣 少しその前提を整理して申し上げた方がいいと思うのですけれども、私が先ほど申し上げたことと昨年来申し上げている二十何%という数字とは、実は前提が違うお話を申し上げておりまして、前提をそろえれば矛盾する話ではないということですけれども。

 二〇一〇年において一九九〇年度と比べて五から八%増加をするというのは、去年いろいろ申し上げていた、ありとあらゆる政策をとって、エネルギー起源のものを九〇年比ゼロまでに持っていきますというところのゼロに当たるのが、今、五から八になってしまったということでございます。

 では、そのゼロと五から八の差は何によって出てきたかといいますと、確実性の高い政策、対策を前提にすると、二十何%ふえてしまうのがゼロまで戻るのではなくて、戻り方が五から八%上というところまでしか戻らないということを申し上げているわけです。

 では、どういう前提が違うのかということでございますけれども、昨年来お話を申し上げた二十何%というその大綱ベースの話では、例えば、原子力発電所の建設の見通しの数が、今この五から八の数字の前提になっているよりはずっと多い、もっとそこは削減をするということで考えていたからゼロになったということでございますし、それから、国民のライフスタイルの変革ということについても、かなりドラスチックに行うということでゼロというふうに考えていたわけでございます。

 他方、プラスマイナス、ベクトルの向きの違うお話もございまして、例えば、予想されていた自動車の輸送量が大綱のときの前提よりは今はもっと少ないだろうということもございますので、ふえる方と減る方と両方の前提の違いはございますけれども、それほど減らないということに、確実性の高い政策、対策を前提にするとなってしまって、その結果、五から八%増加をしたままでとどまってしまうということを先ほど申し上げたわけでございます。

 先ほど時間に追われておりましたので、そういった前提の違いを余り御丁寧に御説明いたしませんでしたけれども、御説明を申し上げればそういうことでございます。

鮫島委員 ぜひ国内対策を中心にこれからもお考えいただきたいし、私どもも、そういう意味では同じ方向で協力したいと思います。

 ちょっと話は変わりますけれども、前回、二月二十七日のこの委員会の中で、私、諫早湾の干拓問題に触れた中で、参考人を呼んでほしいという要請を出しました。三人のお名前を出しましたけれども、特に、元九州大学の教授の戸原義男さんという方がいらっしゃって、いろいろな六つの委員会の中で四つの委員会のメンバーになっております。さらに、一つの委員会についてはこの方は委員長をやっています。佐賀大学の農学部から九州大学の農学部、今、九州大学農学部の名誉教授ですけれども、ずっと干拓工学の専門一本で来た方です。

 それだけ全体的な委員会の中で大変大きな役割を果たしているわけですけれども、この方が、一九九〇年から九三年まで農林水産省から研究受託、一件当たり八百六十六万円というのを四年間にわたって受け、これは「諫早湾干拓事業潮受堤防の築堤に関する研究」というテーマで、四年間にわたって八百七十万円ずつ受けている。それから、九〇年から九二年まで有明沿岸地域調査ということで、毎年百五十万の研究費を受けている。それから、そのほかに「諫早湾干拓事業潮受堤防の築堤工法に関する研究」というので、別枠で九四年に八百九十七万、合わせて約三千万近い研究費を農林水産省から受けている。

 私は、こういう人がこれだけ多くの、第三者的な役割を果たさなければいけない委員会の委員をやっていて、ここでまとめたアセスメントに基づいて漁業補償が行われているということは大変大きな問題だと思いまして、ぜひ、特にこの戸原義男さんを中心にするアセスメントにかかわった、しかも主導的にかかわった方を呼んでくださいということを私は要求したわけです。

 ちょうど、このアセスメントが出た次の年には、もう諫早湾干拓事業に伴う漁業補償に関する協定書というのが十二漁協と結ばれていまして、そのときに根拠となったのがこのアセスメントで、「諫早湾内の貝類には多少の影響を及ぼすものの、他の有明海の貝類にはほとんど影響を及ぼすことはないものと考えられる。」とか、ノリについては「生育や生産などに影響を及ぼすことはないものと考えられる。」と。

 そういう軽微な影響というアセスメント結果に基づいて漁業補償が行われているとすると、どういう数字で、つまり、多少というのを二〇%というふうに見積もって漁業補償を行ったのか、ほとんど影響がないというのはまあ一割かなと。その辺の数字との関係も大変影響が大きいものですから、ぜひ、こういう場で、大きな影響を及ぼした委員の先生を参考人としてお呼びしていただきたいというのが委員長に対する要望でございます。

五島委員長 御要望の件につきましては、現在理事会において協議中でございまして、理事会で再度協議していきたいと存じます。

鮫島委員 ぜひよろしくお願いします。

 本題に戻ります。

 二本の法案が現在審議されていまして、PCBの適正な処理の推進に関する特別措置法、これについては、とにかく今全国各地でPCBが保管され続けて、私の秘書がきのう、茨城県の境町というところに、東京電力の新古河変電所内に約三万本のトランスが野積みになっているという、こういうのが今一般にPCBが保管されている現状だと思います。

 ですから、その意味では一刻も早く適正な処理をして、万が一にでも環境に対して漏えいすることがないようにというこの法律の趣旨は大変よくわかります。

 しかし一方で、じゃ、具体的にだれがどうやってやるかということが、きのう以来ずっと問題になっているわけですけれども、整理しますと、事業団が行うのか、あるいはむしろ民間が中心で行うのかということが、やや考え方として問題になっていると思いますけれども、その前に、今処理すべきPCB、特に事業団法の一部改正という中で、事業団が行う事業として、処理すべきPCBとしてどのぐらいの量を想定しておられるのか。逆な言い方をすると、ここの部分は事業団では扱えませんよという部分はどんなふうになっているんでしょうか。

岡澤政府参考人 事業団で受ける処理すべきPCBの限定というのは、最終的に事業団の業務方法書で定めるわけでございますが、今想定しているもので申し上げますと、環境事業団によって処理されますポリ塩化ビフェニル廃棄物としては、高圧トランス・コンデンサーを中心として考えております。

 電力会社が保有しております柱上トランスや、製造メーカー等が大量に保管しております廃PCBについては、みずからの処理施設によって処理されるべきものというふうに想定しております。

鮫島委員 一番数が多い、しかし大変濃度が薄いと言われている柱上トランスはこの対象にしていない。あるいは、既にPCBを保管している会社で、自社で処理する施設と計画を持っているところについては、この事業団としては関与しないということだと思います。

 今、このPCBの処理がどうして三十年も時間がとまっていたのかということに対しては、多分三つの問題にきのうからの議論で整理されているんだろうと思います。

 一つは、技術的な信頼性、どういう方法で処理すれば一番適正で安全なのか。二番目が、社会的な信頼性といいますか、パブリックアクセプタンス、特に国民側の安心という分野。三番目が、恐らくコストの問題だろうと思います。

 技術的な信頼性については、事業団自身は技術的な実績がないわけですから、民間に技術的な蓄積があるわけですけれども、今環境省の方としては、PCBの処理技術というのはどんな種類があって、それぞれについて処理コストがどの程度というふうに評価しておられるんでしょうか。

岡澤政府参考人 PCBの処理技術につきましては、廃棄物処理法の処理基準の中に定めておりますけれども、大きく二つの方法がございます。一つは高温焼却技術、もう一つが化学処理でございます。

 高温焼却処理の場合には、トランス一台当たりの値段でございますが、大体二十万円ぐらいというふうに想定しております。

 化学処理の場合には、幾つか中身がございまして、例えば脱塩素化分解法、これはPCBとアルカリ剤を化学的に反応させて塩素を切り離す方法でございます。あるいは水熱酸化分解、これは超臨界またはそれに近い状態の水で分解するような方法。それ以外に、還元熱化学分解あるいは光分解というような技術を採用できるようになっています。

 この化学処理につきましては、多少ばらつきがございますが、トランス一台当たりで想定しますと、大体六十万円とか七十万円というふうなオーダーになるものというふうに考えております。

鮫島委員 大体、二、三倍ということだろうと思います。

 事業団が独占的に行うことについては幾つかの懸念が出されていまして、先ほどの委員もおっしゃっていましたけれども、まず技術的には、今言ったようなさまざまな技術というのは、すべて民間が開発し、民間が保有している技術。したがって、事業団が直接実際のオペレーションについてどこまでちゃんと評価できるのかという点が技術的な問題ではあると思います。

 それからコストについては、やはり事業団が独占的に行うと料金も独占化する。国の行う事業というのは、余計な人件費がかかるというのと、コストが大変高い、事業の見通しが甘い、それから、今の事業体の経理、経営がどうなっていて、今もうかっているのか損しているのかがわからないというのが大体特殊法人の経営の特徴ですから、そういう意味では、みんな事業団が独占的に行うことに対してある程度批判的に見ざるを得ないし、スタートに関してはよほど強い歯どめをかけておかないと、またPCBの塊だか赤字の塊だかわからなくなってしまうという懸念があるわけです。

 処理コストについては、私は、高温焼却処理と、焼却という言葉は余り使わなくて多分高温熱分解という言葉の方がいいんだろうと思いますけれども、それと化学分解で大分値段が違うと思いますけれども、国民感情を抜きにして純粋技術的に考えたときに、この高温熱分解処理と化学処理とで安全性に、完全に処理できるかどうかということで違いがあるというふうにお考えでしょうか。

岡澤政府参考人 PCBを分解するということで考えれば、焼却による高温熱分解あるいは化学処理も、いずれも信頼できる処理技術だというふうに考えています。ですから、いずれも処理基準の中に盛り込んでいるわけでございます。

 ただ、それを設置することで周辺の人たちに与える不安感というものを考えますと、化学処理の方が、密閉された容器内で反応が行われますし、その結果というものをチェックすることができますので、より安心という要素を含んでいるものというふうに考えております。

鮫島委員 両方の処理によって、技術的には少なくとも環境基準より一けた下ぐらいのところまでは多分分解できるという実績は既にあると思います。

 きのう以来、大臣も含めて、結局、安心というところで国が関与というか、公、官がやるのが安心を確保する上での不可欠な要件だと。逆に言うと、官がやるんだったら、むだなコストをかけずに安い方法でやるという選択もあると思いますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

川口国務大臣 コストを安く事業をするということと安全と安心の確保をするというのは、本来両立できれば一番いいことであるというふうに考えております。

 ただ、このPCBの処理につきましては、まさに委員も今おっしゃられましたように、安全と安心の確保という観点から三十年間処理ができなかったという事実があるわけでございまして、そういう意味で、コストがやはり前面に出てしまう民間企業に任せてこれをやるというのは難しい。安全と安心の確保が処理を速やかに進めるという意味からいきますと、一義的に重要であろう、そういうことだと思います。

鮫島委員 安心というもののもう一つの大きな要素として、これまで三十年間合意が形成できなかった理由の一つに、余り考えたくないことですが、万一事故が起きた場合の責任の所在がどこにあるのか、責任の主体がどこにあるのか、そのことが結局はっきりしなかったために、ある局面ではなかなか住民の同意が得られなかったとも聞いております。

 今度、環境事業団が、今政府提案のような内容で環境事業団のイニシアチブでやっていった場合に、もちろん事故が起こらないことを想定でしょうが、万一起きた場合には、その場合の責任の主体はどこにあるんでしょうか。

川口国務大臣 委員おっしゃられますように、まず、事故が起こらないように万全の準備をして事業を行うということが第一だと思います。このためには、環境事業団に学識経験者から成る委員会を設置いたしまして、採用する技術の選定や施設の安全性の評価を行うといったようなことを考えております。

 それから、想定はしたくないのですけれども、万が一事故が起こってしまったらばどうかということですが、そのときには、事業の主体でございます環境事業団が一義的にはその責任を負うことになるわけでございます。

 それで、国との関係はということですが、国は、環境事業団は特殊法人でございますので、その監督者として指導監督をする、そのほか必要な対応をとるということでございます。

鮫島委員 多分、そういう説明だと住民は納得しないと思いますよ。この前の臨界事故で核燃料事業団と科技庁の責任の所在の関係が問題になりましたけれども、やはりもっと国が全面的に責任を、もちろんこういうことは想定したくないことですけれども、万が一のことがあったら国が全面的に責任を負います、補償の問題も含めて任せてくださいと胸をたたかない限り、やはりここのところは、北九州エコタウンではできたとしても、ほかのところでつくろうとする場合にはなかなか難しい問題があるんじゃないかと思います。

 今まで民間企業がPCBの処理施設をいっぱいつくってきたと思いますけれども、この場合、廃棄物処理施設の設置許可手続に基づいて、今までできているPCB処理施設は一応全部アセスメントを行っているんでしょうか。

岡澤政府参考人 まず、鐘化で高温焼却したときは、廃棄物処理法でそうした規定が設けられる前でございましたので、これについてはそういう許可の手続もとっておりません。届け出されているだけでございます。

 それ以外の化学処理につきましては、これは最近建設されたものばかりでございまして、生活環境影響調査と言っていますけれども、そのアセスメントの手続を踏まえた上で許可をとってやっております。

鮫島委員 聞くところによりますと、今度この法律が成立したら、環境事業団が北九州エコタウンにPCBの処理施設を建設すると聞いております。私も二週間ほど前に行ってエコタウンの様子を見てまいりましたけれども、この建設に当たっても当然アセスメントを行うという予定なんでしょうか。

岡澤政府参考人 廃棄物処理法上では、この事業を行う場合には、環境事業団は廃棄物処理事業者ということになりますので、当然、他の通常の処理事業者と同じように一定の手順を踏むことになります。その中にはアセスメントも入ります。

鮫島委員 もう一度確認しておきますけれども、通常の場合と同じようにアセスメントを行うということでよろしいのですね。

 響灘のところは大変問題な土地とされていまして、初めヘドロのしゅんせつで一応海水を追い出した後、さまざまな産廃を埋め込んで、そしてさらに多くの鉱滓を投げ込んで固めて、やっと何とか土地らしい格好をつけたということですから、あそこ自身の土質検査を含めてかなり丁寧にやらないと、工場を建てて動き出してから後、周りの環境を調査して、高い濃度が出ていると、一体、もともとあった濃度なのか、あるいは工場を動かしてから出てきた濃度なのかがわかりませんから、かなり気をつけた丁寧なオペレーションをしていただきたいというふうに私は要望しておきます。

 以上、取りまとめて、事業団が行うのが適当なのか、民間が行うのが適当なのかというさまざまな考えがありますけれども、私は、先ほど申し上げましたように、技術的信頼性、社会的信頼性、コストという面でいえば、これは甲乙つけがたいところがありますけれども、山田委員が先ほど来言っているように、事業団が管理して民間が実際はオペレーションする、建てる方も民間が建てるという、民設公営型のPFIというのがこの事業にはふさわしいということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

五島委員長 奥田建君。

奥田委員 続きまして、民主党の奥田建が質問を続行させていただきたいと思います。

 先週来、皆様にいろいろと御議論をいただく中で、さらに幾つかの問題を検討しなきゃいけないというような点が多々出てきたかと思います。京都議定書の話なんかもたくさん出ておりましたけれども、PCB処理に関して、今までの経緯の中での問題、あるいは信頼を得るためにリスクコミュニケーション、あるいは情報公開、さらには保管、運搬、そして処理の方法といったようなことがいろいろと指摘されておるわけでございます。

 私も、二回目の質問ですので、少々細かい点に入りますけれども質問をさせていただきたいと思います。

 まず、環境省の方にお伺いしたいと思います。

 前回の質問の中で、中小企業者への助成、助成額の考え方は聞きました。今まで、自家処理、自分の会社で処理する、自分で処理してくださいという方、そして、自分で処理はできないけれども、処理費用に関しては全部自分でやってください、助成はありませんという大量保管者という考え方、そしてトランス、コンデンサーに関して言えば、台数で三分の二ぐらいに当たるという、助成を伴う処理を進める中小企業関係者、真ん中のところにちょっとグレーゾーンが出てくるわけですけれども、そこの線引きについて少し説明をお願いしたいと思います。

岡澤政府参考人 環境事業団の処理施設で処理をしますPCB廃棄物につきましては、これは高圧トランス・コンデンサーの処理を中心に行いたいというふうに考えております。

 それ以外に、大口所有者として、まず電力会社がございます。低濃度ではございますけれども、柱上トランスが非常に大量の絶縁油を含んでおりまして、この処理が必要なわけですけれども、これは、環境事業団で想定しております高圧トランス・コンデンサーの処理と同一の処理システムで処理することが必ずしも効率的とは言えない、濃度がかなり違いますので。それとは別に、むしろ電力会社みずからが処理施設をつくって自社処理をしてもらいたいというふうに考えているわけでございます。

 また、PCBの製造メーカーで、現在、引き取った廃PCBを保管している企業というのがございますけれども、そうした企業につきましても、その廃PCBは自社処理されるべきだというふうに考えています。

 それ以外に、台数は多くないけれども、いわゆる大企業が保有している高圧トランスとかその他の廃棄物につきましては環境事業団で処理を受け付けますけれども、その費用については、助成一切なしの原価で負担していただく。

 また、中小企業法に言う中小企業を対象にいたしまして、そこが環境事業団に持ち込んだ場合、あるいは、もしかすると民間事業者とか都道府県や市町村などが設置する処理施設というのが将来できるかもしれない、そういうところに持ち込んだ場合には、それが中小企業であれば、その処理額について、焼却処理をした程度ぐらいまで下げられるように助成をしたいというふうに考えております。

奥田委員 少なくともトランス、コンデンサーの所有に関しては、ほぼ今の保管状況、使用状況のデータはあるということを前回も御説明いただきました。主な大口保管者の中には、電力さん、JRさん、そしてNTT、あるいは官庁の中では自衛隊なんかが多量に保有しているというようなお話を聞いております。こういった大口保有者の保有台数あるいは保有パーセンテージといったものはわかりますでしょうか。

 それともう一つ、前回の質疑の中で、経済産業省の政務官の方から、今までこれだけおくれた中で、排出者責任といった中での処理を求めてきたという御答弁がございました。今までの資料に出ていない、国が持っているトランス、コンデンサーあるいは地方自治体が持っているそういったPCB廃棄物、ぜひともこの数量についても教えていただきたい。自治体にも排出者責任としての処理責任があったはずです。そういった点も含めまして数字的なデータを教えていただきたいと思います。

岡澤政府参考人 PCB廃棄物の大部分を占めております高圧トランス・コンデンサーの我が国における使用及び保管台数のうち、国あるいは地方公共団体がどのぐらい持っているかということについてでございますけれども、それぞれ個別に正確な数字を把握しているわけではございませんが、一部地方自治体の調査の中から推計いたしますと、全国の保有台数約三十九万台あるわけですが、このうち、一〇%から一五%くらいが公が持っているものというふうに考えています。

 そのうち国なんですが、国は、多分一番大口は防衛庁ではないかと思いますが、防衛庁が保管しております台数は、数の上では全国の〇・二%程度でございますので、国の機関全部合わせても恐らく一%にはいかない、そういう数字ではないかと思います。あとは、地方公共団体がかなり持っているということでございます。

 また、大口保管者で保有しているものはどのぐらいかということなんですが、電力会社あるいはJRというのがそういう部分に該当すると思いますが、これは使用中のものを含めてですが、合わせまして約三万一千台でございます。これは全国の保有台数の約八%に相当するという数字になってございます。

奥田委員 今のお話を聞きますと、いろいろな企業に対する排出者自己責任を求めると同様に、自治体などにもそういった処理責任というものは十分にあったということがわかるかと思います。

 あと、低濃度PCB廃棄物の話を少しさせていただきたいと思います。経済産業省の方にお伺いしたいと思います。

 柱上トランス四百万台、保管しているものはその三分の一、現在使用中のものが三分の二と聞いております。この処理について、これまでの議論の中でも高温燃焼という話が出ておりますけれども、燃焼じゃなくて、化学的なことで言えば熱分解だという言い方もされておりますけれども、そういった処理方法についてどういう指導を行おうとしているか、お聞かせいただきたいと思います。

広瀬政府参考人 柱上トランスについてのお尋ねでございますが、一部の柱上トランスの絶縁油にはごく低濃度のPCBが含まれているというふうに認識をいたしております。

 電力会社におきましては、自社の処理施設の建設を計画するなど、PCBの適切な処理に向けた取り組みがなされているというふうに認識をいたしております。

 先生のお尋ねのございました技術でございますが、東京電力におきましては、今年度中に横浜市と千葉市にそれぞれ絶縁油リサイクルセンターという処理施設を運転開始の予定と承知をいたしておりますが、この処理は化学抽出分解法という処理技術で対応するというふうに聞いております。

奥田委員 簡潔でいいのですけれども、いろいろな方のお話を聞いている中で、このトランスの中の低濃度PCB廃棄物というものがどうして生じてきたのかよくわからないといったお話を聞いております。それも監督官庁として、そういった生成物といいますか、ないはずのものがどういう過程で生まれてきたのかということを、わかりましたら御説明いただきたいと思います。

広瀬政府参考人 柱上トランスへのPCB混入についてのお尋ねでございますが、柱上トランスの絶縁油には新油または再生油を使用いたしております。このうち、再生油を使用した柱上トランスの絶縁油にのみ微量のPCBが検出をされてございます。したがいまして、電気事業者におきましては、絶縁油にPCBが混入しないように、絶縁油には新油を使用する、または受け入れ段階で確認を行うということによりまして、再発防止に万全を期しているというふうに認識をいたしております。

奥田委員 そういった再生油、それは油をこすような過程なのかもしれませんけれども、どこで混入したかわからないと。今はないかもしれませんけれども、やはり四百万という大変な数の低濃度廃棄物が生まれてしまったということで、そのプラント過程の中のどこで混入したのか、何が間違っていたのかという原因究明をしなければまた同じような間違いが、まあ間違いが起きたからこの四百万という数字があるのかもしれませんけれども、そういったものに対する指導監督もしっかりしていただきたいと思う次第でございます。

 また、参考人の方のお話にもありましたけれども、今、代替物として使用されておりますSF6、六弗化硫黄というのですか、それも温暖化物質の中で廃絶していかなければいけない物質でもございます。そういった代替絶縁物という形での技術開発支援というものもしっかりとしていただきたいとお願いする次第です。

 あと、柱上トランスというのは電力さんのものだと思っていたのですけれども、一部の伝聞では道路管理者のものだというようなお話を聞いたこともあるのですけれども、その辺の真偽だけちょっと教えていただければと思います。

岡澤政府参考人 電線が通っている電信柱にある柱上トランスは電力会社の保有ですが、高速道路沿いとか主要な国道沿いに照明設備がついてございます。それに特に変圧器が伴っている場合がございまして、その場合には、道路管理者が所有して今現在は保管している状況になっていると思います。

奥田委員 また少し話は変わりますけれども、平成十二年度予算では、PCB等適正処理支援事業といったものに予算措置がとられておる次第でございます。

 環境省の方にお聞きしますけれども、この中で、助成措置に対する民間事業者の応募が二件ということで、少ないという表現があったのですが、二件あったと言えばあった。自社だけでなく、ほかの会社のものも受け入れるという事業だったと思うのですけれども、この支援事業についての中間報告をいただきたいと思います。

岡澤政府参考人 PCB廃棄物の処理施設についてはなかなか立地が進まないということから、当時の厚生、通産、環境の三省庁で化学処理を基準化していたわけですが、それでもなかなか立地が進まないということから、国がイニシアチブをとって、ミレニアム事業としてモデル的なものをまずつくらせて、それで成功例というものを見せることによって民間の立地を進めようというふうな考え方がございました。

 今先生御指摘のように、ミレニアムプロジェクトということで六億円用意いたしまして、一般の民間企業でそうした事業をやりたいところがないかということで公募したのですが、その結果、二件、一応応募はありました。一件は脱塩素化処理技術を用いたプラント、もう一つは還元熱化学分解を用いたプラントでございました。

 ただし、やりたいというところはあったのですが、実際にその処理プラントをつくる場所の選定と周辺地域の同意といいますか、そうしたものが今の段階ではとれておりませんで、プロジェクトとして候補は挙がったのですが、立地するには至っていないという状況でございます。

奥田委員 やはり立地ということが、いろいろな議論の中でも出ておりますけれども、最大のハードルであるかということを思います。そういった中で、ぜひとも国の協力というものはあってもいい。しかしながら、私どもは、建設譲渡事業というものはいかがなものか、それしかないというのはいかがなものかということを思っておる次第でございます。

 あと、POPs条約も、ことしの五月ですか、採択に向けて準備をしていると聞いております。これまでPCBの危険性あるいは処理の必要性といったものを議論させていただいておりますけれども、POPs条約にかかわらず、早急に適正な処理が必要と考える残留性有機汚染物といいますか有機廃棄物といいますか、そういったものをどう考えているか、環境省の方からお答えいただきたいと思います。

岡澤政府参考人 POPs条約の対象物質といたしましては、PCBのほかに、非意図的な生成物であるダイオキシンのほかに、農薬とか殺虫剤、シロアリ駆除剤を用途としておりますDDT、アルドリン、クロルデンなどの化学物質が含まれているわけでございます。

 我が国では、非意図的に生成するダイオキシン類以外のPOPs条約対象物質については、既に新規の製造、使用は行われていないというふうに承知しておりますけれども、では、過去に市場に出た農薬等が現在どれだけ廃棄物として保管されているのかということについては、環境省として正確に把握している状況ではございません。

 そのため、POPs条約の動向も踏まえまして、環境省といたしましては、十三年度予算により、関係省庁との連絡もとりながら、我が国で使用実績のある条約対象物質に係る廃棄物につきまして、その適正処理を確保する観点から、実態把握に努めてまいりたいと考えております。

奥田委員 POPs条約の十二物質というわけではございませんけれども、そういった残留性有害廃棄物というものには農薬関係のものが大変多いと聞いております。

 毒物劇物の取り扱いの中でも、約半数がそういった農薬類に入るということで、農水省の坂野審議官にもきょうはお越しいただいておりますので、農水省の把握している、管理が必要と考えている農薬の生産量あるいは現存量、使用禁止になっているもののデータについて御報告をいただければと思います。

坂野政府参考人 今お尋ねの、BHCとかDDT等の農薬につきましては、昭和四十六年に販売の制限なり禁止ということがなされまして、それに伴いまして回収され、毒物劇物取締法の処理基準といいますか処分基準のもとに、四十七年に国の補助事業によって地中に埋設した農薬でございます。それは当時で三千トン埋設しました。その後、一部掘り起こして再度安全な処理をしたというのがございまして、現在約二千二百トンがまだ埋設の状況にあるわけであります。

 これらの埋設農薬につきましては、埋設した場所はすべて把握しておりまして、かつ、必要に応じて水質調査をしておりますので、環境汚染が生じていないということは確認をしております。

 なお、国が補助したもの以外の埋設農薬についても、関係自治体の協力も得まして、具体的な埋設場所及びその数量の把握に努めたいというふうに考えております。(奥田委員「国以外の埋設量」と呼ぶ)それは、これから早急に把握したいということであります。

奥田委員 今、昭和四十六、七年の禁止そしてその処理という形で、埋設処理三千トン、その途中に一部焼却があったりという御報告を受けました。

 ちょっと教えていただきたいのですけれども、こういった地中埋設の処理、あるいは、その焼却がどういう焼却かは私は存じませんけれども、そこで一部掘り返されたのか、倉庫からそのまま焼却場へ行ったのか知りませんけれども、焼却処理、そういった処理が適正であるかどうかということについて一言お願いいたします。

坂野政府参考人 三千トンのうち、一部掘り起こして処理した方法としては、一部はそのまま保管しているものもございます。処理としては、一般に高温で分解したというふうに承知しております。(奥田委員「埋設については適正な処置か、処置というのはそういう処置でよろしいか」と呼ぶ)

 具体的に申し上げますと、国庫助成でやったものは、例えば鉄筋コンクリートの器をつくって、その中に消石灰を入れたりして、あわせて回収した農薬を入れた、それにまた鉄筋コンクリートなどでふたをしたという事例であります。

奥田委員 埋設の三千トンという数字は聞きましたけれども、国庫補助事業で結構ですから、国庫補助事業で行ったそういった埋設箇所が全国で何カ所ぐらいあるのかということが一点。

 それともう一つ、十二年度補正、そして今年度の予算で、農薬環境負荷低減処理技術等開発事業という予算がついております。十二年度補正で三千八百万円強、そして十三年度予算で四億二千四百万強という数字でございますけれども、こういった無害化処理の技術開発をすることが主点かと思っております。

 こういった点について、これから農薬についての処理、残存、使わない農薬ですね、こういったものに農水省としてどういう取り組みをしていくのか、あわせてお聞かせいただければと思います。

坂野政府参考人 国の補助事業で実施した県は、二十二道県であります。

 それから、もう一つのお尋ねの技術開発でございますけれども、先ほどお話ししたように、DDT、BHC等の埋設農薬は、これまで安全かつ確実な処理技術というのが未開発の状態でありました。

 それからもう一つは、適正に管理したということもございますけれども、環境汚染を生じていないということから、都道府県に対しては、引き続き適切に管理するようにという指導をしたところでございます。

 一方、近年、PCB等の難分解性有機塩素系化合物を適切に処理する技術というものも開発されておりまして、この技術を応用することによってDDTとかBHCなどの有機塩素系農薬も処理できるのではないかというふうに見込んでおるわけでございます。このため、平成十二年から処理技術の開発を行っておりますので、この技術をできるだけ早急に技術確立をしたい。こういう技術は、今お話しのPOPs条約の動きとか、そういうことを踏まえつつ、関係省庁と連携の上、適切に対処してまいりたいというふうに考えております。

奥田委員 昭和四十年代に国の国庫補助事業として処理された物質、私の聞いておりますところでは、DDTそしてBHC、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、後半の方は私もどういうものなのかちょっと頭の中にイメージが浮かばないのですけれども、除草剤あるいは防虫剤といいますか、そういった種類のものと聞いております。

 その以後、今度はCNP、クロルニトロフェンという物質、あるいはパラチオン、こういった物質がまた危険性があるのではないかということで使用禁止になったりしていると聞いておるのですが、これらの措置についてお答えいただければと思います。

坂野政府参考人 まずCNPでございますけれども、これは、平成十一年に毒性のあるダイオキシンが含まれているということが確認されましたので、再度回収の徹底を指示したところであります。その結果、回収されたCNPは、現在製造メーカーの工場内の室内貯蔵施設に厳重に保管されているところであります。

 当方からも当該施設に担当官を派遣しまして立入検査を行わせまして、適切に保管しているということを確認しているところでございます。

 なお、パラチオンのたぐいは、これも昭和四十年代に既に使用されておりません。

 以上であります。

奥田委員 そういったCNPについては、保管トン数や、あるいは市中にと申しますか、一般の農家の方たちのもとには今ないと考えてよろしいですか。また、保管量を教えていただければと思います。

坂野政府参考人 お答えします。

 回収を徹底しておりますので、農家段階にはないというふうに思っております。

奥田委員 今の予算でこういった物質の無害化の技術というものを確立したいと考えておることと思います。

 ただ、ちょっと古いニュースになりますけれども、二年前の九月のニュースで、長野県で五つのJAが独自調査、独自回収をしたら、五JAだけで、そういった使用禁止の不要農薬が八トン弱一般のところから見つかったというような状況もございます。そのほかにも、新聞記事情報ですけれども、古いものをいえば、やはりいろいろなところで検出や発見がされておるといった記事も出ております。

 PCBに限らず、残留性の有害物質といったもの、少なくともその役目を終えた、使用禁止という措置になっているものについては、ぜひとも現状の追跡といった確認もしっかりとやっていただきたい。そしてまた、その調査結果をもとに、適正処理の推進あるいは拡散防止策もとっていただきたいとお願いする次第でございます。

 ちょっと通告しておりませんけれども、大臣もそういったお話を聞いて、これは確かに農水省の主管の部分かもしれませんけれども、環境省として調査して、また共同の事業として取り組んでいかなければいけないものがまだまだ多くあると思います。所感だけで結構ですので、少しお答えいただければと思います。

川口国務大臣 そういった危険な農薬あるいは化学物質が環境に出ることによって環境汚染をするということがあってはいけないことだというふうに思っております。環境省といたしましては、ほかの省庁と連携をいたしまして、できることに取り組んでいきたいと思っております。

奥田委員 環境省の廃棄物・リサイクル対策部長にお尋ねしたいのですけれども、今の地中埋設の農薬等といったものについて、農水省の所管ですけれども、環境省としてどのような対策が必要か。そのままでいいのか。あるいは、こういうことはやってはいないんでしょうけれども、掘り起こしてでもやはり適正処理に取り組まなければいけないということをお考えか、少しお聞かせいただければと思います。

岡澤政府参考人 今地中に埋められているような農薬というのは、その時期には廃棄物処理法上の規制もございませんでしたので、それが妥当かどうかちょっとわからないのですが、化学物質ごとにそれぞれの特性がありますので、改めて、そうしたものを、今の状態でいいのか、あるいは掘り起こして何か対応すべきなのか、そういうことについては、農水省から相談があれば相談に乗っていきたいと思います。

 また、十三年度からのPOPs条約対応の化学物質に対する調査の中で、そうした個別の化学物質について、農薬類について、そういう処分された現状が環境上問題がない状況なのかどうかということも含めて検討してまいりたいというふうに思います。

奥田委員 私はそれが適正な処理とは思えませんので、お話し合いをなさる中で、ぜひとも新しい見解を政府としても出していただければと思う次第でございます。

 それと、今はPCBのお話が中心ですけれども、並行してフロンの問題なんかもございます。あるいは、古くはアスベストなんかもありましたし、ちょっと物は違う、製品ですけれども、スパイクタイヤなんというものもございました。ある時期は便利がられて重宝されておりますけれども、あるとき突然、新しい技術がわかったことによって回収になったり、あるいは処分まで一生懸命考えなきゃいけない。現在いろいろな多くの化学物質のお世話にもなっている中で、これからもまた新しくこういった第二のPCBというものが出てくるかもわからない。

 そういったとき、大変答えにくい質問ではございますけれども、迅速な取り組みに対する、こういった事態に対する大臣の御見解をお聞かせいただきたいと思います。

川口国務大臣 PCBというような問題が二度起こってしまっては大変ということは、全くおっしゃるとおりでございます。

 それで、対応の体制、枠組みといたしましては、新規化学物質の製造、輸入が行われるという場合には、化審法に基づいて適正な措置をとっていくということでございまして、まず、その有害性の審査をして、もし問題があるということであれば製造禁止といった措置をとることといたしております。

 それから、知見が新たに生まれて、それによって製造禁止ということが必要だということになりましたら、その場合には、化審法で第一種特定化学物質というカテゴリーがございますので、そこに追加をするというような措置をとっていきたいというふうに思っております。

 それから、廃棄物となってしまった場合、そこに毒性があるということでございますと特別管理廃棄物ということで、それぞれのその性状に応じて無害化をするといった基準を定めて規制をしていくということでございます。

 それから、廃棄物の処理というのは排出者の責任で行われているということでございますけれども、廃棄物処理法と物の製造を行う省の持つ法律との間の関係をつくるということで、物の製造等の事業を所管する大臣に対して、製品の材質や処理方法等を表示させるといった措置を講ずることが廃棄物処理法でできることになっておりますので、その措置を使って製造者等に一定の協力を求めるということも検討をしたいというふうに考えております。

奥田委員 本日、ちょっとお昼御飯を食べているときのニュースにも、特殊法人あるいは認可法人の統廃合が閣議の中で議題となったということを聞きました。特殊法人、認可法人については、今再見直しということで七十六項目からのチェック項目を設けて、それに照らし合わせていくというようなこともうたわれております。そういった中で、真に効率的な事業をやっているんだろうかというようなことも大変大事な視点かと思います。

 こういった流れの中で出てきた今回の環境事業団法の一部改正といった法でもございます。この点について私どもは、特殊法人である環境事業団に係る、国の公的関与の中でやらなくてもいいんじゃないかという事業が幾つかあるんじゃないかと思うんですけれども、そういった点も踏まえまして、今の統廃合、あるいはその中での事業団の役割、あり方といったものについて大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

川口国務大臣 まず一般論といたしまして、今の官から民へという一連の流れの中で、特殊法人は、法律等で事業独占などのそういう地位を守っているということでございますので、官から民へということの流れの中で、やはり民でできることは民でやっていくということが社会の基本的な流れだと思いますし、私はその方向に賛成でございます。また今、日本の政府といたしましても、そういった社会の動きを踏まえて、一連の特殊法人についての改革という話がなされて起こってきていると認識をいたしております。

 それで、環境事業団のことを踏まえてということでおっしゃっていただきましたので、環境事業団につきましては、今までそれぞれの閣議決定等に基づいて事業の見直しはやってきてまいりまして、例えば融資事業が環境事業団からほかに移されたということもございました。そういう意味では、今まで社会のニーズの変遷に応じて例えば地球環境基金ということを始めまして、NGOの方々への支援もやらせていただいているわけでございまして、柔軟にそこは対処をしてきているというふうに私は思っております。

 これから特殊法人をめぐる改革という流れはずっと続いていくわけでございまして、その過程で、その中で時代のニーズということを正しく認識して、その方向で環境事業団を指導監督していきたいというふうに思っております。

 その中で、PCB廃棄物の事業を環境事業団でやる必要性ということにつきましては、今までも何度か申し上げましたので繰り返しませんが、その部分はやることが必要であるというふうに思っております。

奥田委員 熊谷政務官に類似の質問をさせていただきます。

 先ほど、樋高議員の方からも、行革大綱というものが前に出ている、そういったものを踏まえての法改正でもございます。環境事業団自身の業務の見直しあるいは検討結果といったものについてお聞かせいただければと思います。

熊谷大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 まず、今までもいろいろお話がございましたように、今回、環境事業団の業務にPCB廃棄物処理事業等を追加させていただいたわけでございますが、これは、PCB廃棄物の処理が喫緊の課題であるということにかんがみまして、PCB廃棄物処理特別措置法案とあわせて、緊急にPCB廃棄物の全国的な処理体制というものを確立していく、そういう必要性があったからでございます。

 これに伴いまして、スクラップ・アンド・ビルドの考え方に基づいて、既存の国立・国定公園複合施設建設譲渡事業については、国の直轄事業や地方公共団体事業といったほかの事業手段への代替も可能である、そういう観点から、他の業務に比べて事業団事業として存続させる必要性が比較的低い、このように判断をいたしまして、これは廃止することにさせていただきました。

 その他の既存の事業につきましては、昨年十二月に閣議決定された行政改革大綱において、平成十七年度末までを集中改革期間に定めまして、特殊法人の抜本的な見直しを行うということになっておりますので、この政府全体の検討の中で、しっかりと事業評価と見直しというものに取り組んでまいりたいと考えております。

奥田委員 もう最後の質問になるかと思いますけれども、大臣も先ほどから多くの方の質問に対して、こういった立地、責任を問われる、保証とまでは言いませんけれども、地域住民に安心、安全を与える事業に関して、少なくともPCBは国の大きな関与が必要だということを訴えられております。

 また、今政務官からもスクラップ・アンド・ビルドということがございましたけれども、スクラップというよりも、そういった国立公園内の事業というのは消滅してしまって、ここ数年来、実績がゼロ、申し込みもなければ、やる場所もないというのが現実であったと思います。

 あるいは、地球環境基金のことも少し言いたいのですけれども、現在、百億以上の基金を預かりながら、そこの運用利益ではいろいろな団体の助成というものはできていない状況です。その中でやっと経費を出して、助成に必要な八億円弱のお金を国庫補助でやっている。単なる予算のばらまきと言ったら言葉は悪いかもしれませんけれども、ばらまきの状態になっていて基金が基金として稼働していないような状況になっているのが現実でございます。

 もちろん、そういった補助を当てにしている多くの団体、あるいは海外のいろいろな事業というものはあるかと思いますけれども、本当に基金を預かっている中でそれを最大限に活用していこうとしている姿なのかというと、それはいい点数はつけられないのが現状だと思う次第でございます。

 スクラップ・アンド・ビルドを言うのであれば、私は、PCBは横に置いておいたとしましても、そのほかにあります建設譲渡事業、例えば緑化事業あるいは工業団地、そして廃棄物処理施設、そういったものは、みんな地域やあるいは企業としての組合のお取り組み、あるいは廃棄物処理であれば、第三セクターや広域圏組合、地方自治体といったものができる事業なのではないかと思う次第でございます。

 こういった中で、補助制度を最大限に活用するのは当然のこととしましても、事業団が建設譲渡という形で財投資金を使う、そして自治体などが資金調達できないものを、借金の肩がわりと言ったら失礼ですけれども、資金の先受けをして、地方債を発行するかわりにこっちの予算を使いなさいよという形の事業がこれから求められていく姿の事業ではないんじゃないか。そのツケは、やはり最後には納税者である地域住民にかかってくるということかと思います。

 PCB処理施設は別にしまして、そういった建設譲渡事業こそスクラップ・アンド・ビルドの中に入れていくべきじゃないか、スクラップの中に考えるべきじゃないかと私は思いますけれども、大臣の御意見を聞かせてください。

川口国務大臣 お話しの建設譲渡事業でございますけれども、これは、地域の環境の改善のために、工場移転用の企業団地や工場と住宅の間の緩衝緑地を整備するということ、あるいは産業廃棄物処理施設の整備を、中小零細企業や地方公共団体からの依頼を受けて建設をして、完成後譲渡をするというものでございます。

 それで、中小零細企業はやはり独力では事業を実施していくということが難しいわけでございまして、そういった中小零細企業からは、事業の計画あるいは工事の発注、施工、それから完了までを一貫としてこの事業を行うわけでございますので、かなり要請を強くいただいているというふうに思っております。

 ただ、これはすべての組織の事業について言えるわけでございますが、この環境事業団につきましても、やっている業務を不断に見直していくということは非常に重要であるというふうに考えますし、現在、特殊法人の事業の見直しという作業が政府の中で行われているわけでございますので、その一環としてこれを考えていく必要はあると思っております。

奥田委員 これで終わります。ぜひとも効率ある事業を目指して頑張っていただきたいと思います。

 以上です。

五島委員長 藤木洋子さん。

藤木委員 藤木洋子でございます。

 きょうは、環境事業団法の改正で、PCBの処理、建設譲渡事業などについて伺います。

 先週の委員会では、鐘化の製造者責任や関西電力のPCB処理の安全性などについて質問をいたしましたけれども、製造者の責任や排出事業者の責任が全く不十分ではないかというふうに思います。

 本来、PCBの処理は、国が肩がわりをしてやるものではなくて、製造・使用事業者等の責任で処理すべきものではないのでしょうか。

 これまでの経過を見ましても、一九七六年三月の「PCBを含む廃棄物の処理対策について」という旧厚生省環境整備課長通知でも、このPCB使用部品は産業廃棄物として取り扱うこととし、その処理は、財団法人電機ピーシービー処理協会が一元的に行うこと、また、PCB入り廃感圧複写紙の処理は、ピーシービー入り旧ノーカーボン紙処理協会が主体となって行うことを各都道府県に指示していたわけです。その十年後の八六年三月の通知でも、同様の処理体制を地方自治体に指示しております。

 私、地方公共団体の保管状況などについて幾つか調査をさせていただきましたけれども、今でも地方自治体の方々から要望をお聞きしますと、電気絶縁物処理協会の責任で処理すると言ってきたのだから、なぜメーカーの責任で早く処理できないのか、処理してもらわないと困る、このように言われました。

 ですから、焼却処理ができないというのでしたら、現在進められている分解処理でも、電気絶縁物処理協会が中核になって、製造・排出事業者の責任で適正に処理すべきだと思うのですが、大臣いかがでしょうか。

川口国務大臣 PCBの廃棄物につきましては、昭和四十七年に当時の通産省が行政指導で、PCBの製造の中止、回収を指示いたしたということでございまして、その後、製造業者を中心に電気絶縁物処理協会という財団法人をつくりまして、それから委員おっしゃいましたように、ノーカーボン紙協会という社団法人で、処理施設の設置に向けた努力が行われてきたというふうに承知をしております。

 この間、鐘化におきまして、高砂で焼却による処理ということが行われたわけですけれども、事業者による取り組みにつきましては、やはり地元住民の方々の御理解と協力が得られなかったということで、その後、事業者による処理ということは進んできていないわけでございます。

 排出事業者の責任ということは、当然この原則というのはあるわけでございますけれども、このまま事業者による取り組みにゆだねるということでございますと、処理体制が速やかに整備できないという問題がずっと残ってしまうわけで、その結果として、紛失したり行方不明になってしまったりといったPCB廃棄物が環境の汚染をしてという問題が生じますので、これを速やかに適正に処理をするということがまさに喫緊の課題になったわけでございます。

 それで、排出事業者の責任のもとで、さらに排出事業者に対しまして一定の期間内に処理をするという義務を課しました上で、高圧トランス・コンデンサーを中心に、環境事業団を活用して速やかな処理体制の整備を図るということが必要不可欠であるというふうに考えております。

 それから、製造事業者につきましては、PCB廃棄物処理基金に対しての出捐等を要請するということで、円滑な処理実現への協力をいたすことにいたしております。

藤木委員 三十年間も放置してきた国の責任そのものが問われるのは当然ですけれども、これまでの間、やはり製造・排出事業者の責任をもあいまいにしてきたのではないか、そういうことはしてはならないというふうに思います。

 ですから、事業団の業務にしようとしているPCB廃棄物処理事業というのは、製造・使用事業者等の処理責任を肩がわりするものだというふうに私は思いますね。汚染原因者負担の原則からしても、製造者の責任をあいまいにしかねないというふうに思います。

 国の責任は、中小企業等の処理支援や処理技術開発支援を行うというのは当然ですけれども、何よりも製造・使用事業者等の責任で適正に処理できるように規制や監視をする、これが国の責任ではないかと思うのですが、環境省どうですか。

岡澤政府参考人 御指摘のとおり、産廃の処理というのは事業者責任で処理すべきものでございまして、国としては、その処理基準を整備するなどによって適切な処理を促すというところがその役割だろうというふうに考えているわけでございます。

 環境事業団がPCBの処理をするようになったのは、先ほどから何回もお話に出ているような経緯があったわけでございまして、私ども、これは、排出事業者責任という原則を残したまま、特例的に事業者として環境事業団が出ていくということで考えているわけでございまして、費用的には、恐らく焼却に比べても高いですし、あるいは民間が自己処理するのに比べても高くなる可能性がありますが、その高くなった分については、それは環境対策費も含めてですが、これはきっちりとお金をいただいてコストを負担していただくというふうに考えておりますし、そうしたことで排出事業者責任を全うしていただくことができるというふうに考えております。

藤木委員 仕事をしたらお金をもらうのは当たり前ですけれどもね。いろいろ言われましたけれども、結局、環境事業団が製造者だとか排出事業者の肩がわりをしていることに違いはありません。

 それでは、製造・排出事業者の処理責任を肩がわりしてまで行おうとしている事業団のPCB廃棄物処理事業というのは、確実かつ適正に処理されるかどうかというのが問題です。

 PCB廃棄物の処理というのは、一般の産業廃棄物以上に安全の確保が重要ですけれども、事業団は、PCB廃棄物の処理事業をみずから行った実績はありません。PCB廃棄物処理のノウハウを持っているわけでもございません。処分事業を行おうとすれば、結局、現在評価されている民間事業者の分解処理のノウハウをかりて事業をするということになります。

 このようなPCB分解処理の実績もノウハウもない環境事業団にPCB処理の業務を追加するということは、事業団が新たな事業を確保するためだけだと言われても仕方がないのではないかというふうに思いますが、どうですか。

中川政府参考人 環境事業団は、これまで長年にわたりまして、産業廃棄物処理施設の建設譲渡事業や融資事業を通じまして、産業廃棄物処理に関する先端的な技術やノウハウを蓄積しているところでございます。また、平成十二年度にはPCB廃棄物に関する適正処理支援事業、いわゆるミレニアムプロジェクトといたしまして、民間における新しい処理技術等の助成事業を実施するなど、これらの事業を通じましてPCB廃棄物の処理に関する知見を集積しているところでございます。

 今回、PCB廃棄物の施設を環境事業団が設置していくに当たりましては、その技術につきましては、民間のいろいろな技術を入札という形でそれぞれ御提示いただいて、効率性、安全性の点を、環境事業団の中に第三者の専門家を交えた委員会をつくって、そこで公平に審査をしていただいて、一番適切なところに発注をする、こういうことになろうかと思います。

 したがいまして、環境事業団といたしましては内部にも、実は技術者も、電気とか化学とか衛生工学の専門家はたくさんおるわけでございますけれども、さらにいろいろな専門家のお知恵をかりながら、そしてまた、民間のいろいろな知恵を入札という形でずっと並べて、一番適切なものを採用する、こういったことをしていきたいと思います。

 そういうやり方についての今までの経験とかノウハウというものは、環境事業団に十分に蓄積されているというふうに考えております。

藤木委員 とんでもないですよ。民間事業者の分解処理技術のノウハウというのは、実に何年もの時間と投資をしてつくり上げられたものですよね。民間のこの技術を選定する事業団に体制があるとはとても思えません。

 いろいろおっしゃいましたけれども、それではだれも納得できませんよ。ですから、PCBの廃棄物処理のノウハウを持っていない事業団の事業では、ダイオキシン類やコプラナPCBなどの二次汚染を引き起こした場合はどうなるのかという心配があるわけですね。

 先週の委員会の質疑でも、民間事業者の分解処理技術がダイオキシン類、コプラナPCBでの処理になっていなくて、安全性に問題があるということを私は議論してまいりました。そうした分解処理を事業団が選定して処理事業を進めた場合、ダイオキシン類やコプラナPCBなどの二次汚染を引き起こしても、適切に、迅速に対応できないだろうというふうに思います。

 例えば、豊能美化センターで高濃度のダイオキシンを発生させましたけれども、あの焼却炉の管理、運転はプラントメーカーの三井造船の子会社がやっていたわけですよ。ノウハウを全部蓄積した技術者がやっていたわけですよ。しかし、施設組合には管理、運転のノウハウは全くありませんでした。しかし、実際に事故が起こればだれの責任ですか。すべて事業者の責任になるわけです。

 ですから、ノウハウのない事業団に広域的なPCB廃棄物処理の責任を負わせて、万が一にも二次汚染を引き起こしたというような場合には、国として責任がとれるのかというふうに思いますが、環境省、どうですか。

中川政府参考人 環境事業団が設置いたしますPCB処理施設につきましては、建物の設置、それから施設の設置等につきましては、今申し上げましたように、入札という形で厳格な審査を経て発注する対象の事業者を決めていくわけでございます。

 また、現実の管理運営につきましても、現在のところは、専門家の集団である例えば第三セクターとか、あるいは適切な民間事業者があればそこに、またこれも入札という形をとって委託をしていくということで、いずれにしましても、きちっと専門家の手によって運営がなされていくようにきちっと対応していくということでございます。

 いずれにいたしましても、環境事業団がこれは設置の主体であり、また運営の主体でもございますので、ただいま申しましたように、採用する技術の選定や施設の安全性の評価は十分に行わなければいけませんし、事故が起きないように十分な配慮をすることがまず必要であると考えているわけでございます。

 ただ、想定はしたくない事態ではございますけれども、万が一にも事故が起きた場合には、第一義的には事業の実施主体たる事業団がその責任を負うわけでございますが、国は特殊法人たる事業団の監督者でございますし、事業団は国の特殊法人という位置づけでございますので、国といたしましても指導監督をするのは当然でございますし、また、必要な対応をとっていくということになるわけでございます。

藤木委員 いろいろ伺いましたけれども、それではとても説得力はありませんね。ノウハウのない事業団がどうやって確実に適正な仕事ができるか、対応ができるかという保証にはならないというふうに思います。

 監督をしていくと言われましたけれども、事業団にこの仕事をさせるということを決めた国の責任はとらなきゃならないということを私は申し上げておきたいというふうに思います。

 さらに、住民の合意や建設譲渡先との合意ができなかったりして事業が行き詰まった場合はどうなりますか。事業団でのPCB廃棄物処理・建設譲渡事業が行き詰まった場合に、財投借入の返済に穴をあけるなどのことが起こり得ます。国民に新たな負担を押しつけかねないと私は思います。ですから、事業団が行った例えば玉野市の王子アルカディアリゾートホテルのように、多額の債務を抱えるおそれが出てくるという場合があると思いますけれども、責任が負えますか。

中川政府参考人 PCBの廃棄物の建設譲渡事業につきましては、環境事業団におきまして、関係の都道府県と処理事業者となる廃棄物処理センターなどと十分協議をするとともに、立地を初め施設の建設につきましては、地域住民の理解が得られるように最大限の努力をした上で、地域住民の合意が得られることが確実な場合に事業に着手するということにいたしております。

 御指摘のように、住民合意が行われずに事業が行き詰まって財投の返済に支障を生じることがないように、きちっと事前に地域住民の合意が得られるように最大限の努力をするよう環境事業団を今後とも指導してまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、小林(守)委員長代理着席〕

藤木委員 それでも合意が得られない場合というのはあり得るわけですよね。

 王子アルカディアリゾートホテルの失敗で、自然公園の複合公園施設の設置及びその譲渡事業というのは廃止するということになりましたけれども、PCB処理事業の場合は、自然破壊だとか借金だけで済むというような問題ではありません。国民の健康と生命にかかわる重大な問題だということを深く認識すべきだということを申し上げておきたいと思います。

 そこで、事業団債券の発行等新たな資金調達方式の問題です。

 資金運用部を廃止して、公団、事業団等に財投機関債の発行等の独自の資金調達を行わせるという財投改革は、私どもから見れば、財投を民主的に改革するものではないというふうに思います。結局、事実上解体に導こうとするものだろうというふうに思われるわけです。個々の財投機関の必要性というのは、市場の評価で決めるべきではないと考えるからです。

 さらに、財投計画の縮小で国会議決の範囲が縮小され、巨額の財投債の発行は財政を一層危機に追いやる、そういうものではないでしょうか。また、自治体に対する債権を信託会社に信託して、その信託受益権を信託会社に譲渡するという方式は、自治体に対する債権を信託会社の商品に供する、小口販売をするというものであって、適切ではないと考えます。

 さらに、建設譲渡事業の回収金は財投借入の返済に充当すべきものでございまして、新たな事業団債の担保にしたり、信託受益権として譲渡するならば、財投借入金の返済に支障が生ずる、そういうおそれがあるのではありませんか。

中川政府参考人 今回の財投改革は、従来の資金運用部に巨額の郵貯あるいは年金が預託されて、それが特殊法人等に対する融資に回っておりまして、そういったことから、効率性の悪い特殊法人の事業にもそういった資金が使われていたのではないか、こういう批判がございました。したがいまして、特殊法人を効率化する、財投をスリム化していこう、こういうことで、あらかじめ資金が流入する仕組みを改めまして、本当に必要な金額を財投債という国の信用で資金を調達する、こういう仕組みに改めたものでございます。

 まさに御指摘のように、特殊法人を市場の評価によって選別していこうということではございませんで、今回の財投改革におきまして、財投機関債の発行をまず検討してください、こういうことになっているわけでございますけれども、財投機関債と申しますのは、これは当然公募で、政府保証なしで発行いたしますので、格付をとらなければならないというようなこともございまして、各特殊法人が財投機関債の発行を検討、あるいはその努力を続けることによって法人の効率化が図られる、こういうことが目的でございます。

 したがいまして、今回御提案している改正法におきましても、財投機関債の発行につきまして、いわゆるコーポレート型のほかにアセットバック方式という形での債券発行も可能になるようになっておりますけれども、これはあくまでそういった選択肢をとれるように改正をお願いしているわけでございまして、環境事業団の資金調達をこれからすべて財投機関債でやっていこうというものではもちろんございません。本当に必要な事業であれば、当然、国の信用で最も有利な条件によって調達する財投債によって調達した資金の貸し付けを受けるということを今後とも考えているわけでございます。

 それから、確かに、建設譲渡事業等の資金の回収金が、これは当然、長期的に見れば、全部財投への返済に充てられているわけでございますけれども、財投からの借り入れと、それから建設譲渡事業によりまして、地方公共団体に対する信用の供与の期間のずれがございます。したがって、その間、金に色目はございませんので、部分的にはほかの資金繰りに回るということもございますけれども、決してこれが、いわゆる信託受益権の譲渡に際して、その受益権の行使に使われて返済に回らないとかいうことではございません。この信託受益権の譲渡というのは、あくまで財投機関債を発行する場合の一方式でございますので、今御指摘になりましたような問題はないというふうに考えております。

藤木委員 随分丁寧にいろいろと御説明されましたけれども、それでも結局、自治体に対する債権を信託会社に信託して、その信託受益権を信託会社に譲渡するという方式はやはり適切ではないというふうに私は思いますね。

 それでは、具体的な問題でお聞きをしたいのですけれども、事業団でのPCB廃棄物処理事業が、国によるPCB処理を大義名分に住民合意を抑えて、強引に処理事業を推進する、そういう役割を果たすおそれがあるということです。さきの委員会でも議論をされました北九州市の処理事業の問題です。

 事業団の最初の処理施設建設が予定されている北九州市では、住民の合意を得ておりません。安全性への不安から強い反対運動が起こっております。北九州市長は、二月十六日の本法案閣議決定を受けまして、表向きには正式受け入れ表明ではないとしながらも、設置場所を響灘大橋北側埋立地、このように示しまして、具体的な処理施設建設へ向けての方策を進めております。

 しかし、PCB処理施設の立地場所を指定した上でPCBの処理施設の内容を調査し、安全性を検討するというやり方は本末転倒ではないかと思います。今までの経過の中で市民の意思と意見を求めるようなことは全くされておりませんで、市民にとっては今回の発表は寝耳に水ということです。

 このような、初めに設置ありきという状況で事業団がPCB廃棄物処理事業を推進することはよくないことではないでしょうか。どうですか。

岡澤政府参考人 PCB処理施設の立地場所の問題でございますけれども、私どもは、まず基本的な原則として、PCBの処理施設は都市部に立地させる方が望ましいだろうというふうに思っています。これは、都市部の方がPCBの廃棄物が集積しておりますし輸送の問題も少ない。また、地方へ持っていきますと迷惑の押しつけというようなことも言われる可能性もございますので、できるだけ都市部がいいだろうということで、御指摘の北九州市を含めて幾つかの自治体と内々御相談させていただいているわけでございます。

 その結果、ことしの二月に北九州市から、環境省が具体的な準備を開始することについて了解するというふうな回答がございまして、これは正式な受け入れ表明というわけではございません。

 北九州市の回答の中では、具体的な立地場所につきましても、今後諸条件を踏まえて選定するというふうにしておりまして、北九州市におきましては、安全性確保等を検討する検討会を設置して、検討会の意見、それから市民及び審議会の意見を踏まえて、再度、市としての意見を回答するというふうになっていますので、それを最終的には待たなければならないと思っております。

 したがいまして、現段階では、まず、市としての設置の考え方につきまして御検討されているわけでございますから、その検討の結果を踏まえて私どもとして判断していく必要があるというふうに考えております。

    〔小林(守)委員長代理退席、委員長着席〕

藤木委員 それは私が申し上げようと思っていたことでして、寝耳に水だと言われるような状況で進めるなということを私は申し上げたわけですよ。

 ですから、確かに設置が決まったわけでもないし、響灘地区と結論づけてもいないということをおっしゃるわけですけれども、十二月十五日に北九州市に対して旧厚生省が、処理センターを北九州市に設立することを求める、こういう要請を行いましたね。二十日の大蔵省内示発表で、プロジェクトを北九州市につくるという方針を明らかにしております。

 この政府内示に当たって、市長は、国の考えを詳しく聞き、安全性の確保等条件の検討をする、こういう見解を発表したわけですね。既に北九州市では、廃棄蛍光管だとか医療廃棄物の処理施設設置の方針の策定が進められております。そのすべてについて市民の納得のいく説明すらなくて、一度たりとも住民、市民の意見を聞くこともないまま強行されている、ここが問題なんですよね。

 そこで、PCB廃棄物処理施設予定地に当たる若松区民に対して事前に意見を求める、そういう処置をとるべきだと思いますけれども、それはおやりになりますか。

岡澤政府参考人 言うまでもなく、PCB廃棄物の処理に当たって十分な安全性を確保するということは、極めて重大なことでございます。

 事業団が処理事業を行うに当たっては、地方自治体の意向も踏まえて、計画段階から積極的に情報公開を行う等できる限り透明性を確保することによりまして、周辺住民の理解を求めてまいりたいというふうに考えております。

 また、処理の実施に当たりましても、環境モニタリングの実施、その結果の速やかな公表等情報公開を積極的に行うことによりまして周辺住民の理解を求めてまいりたいと考えております。

藤木委員 それでは、七月に回答が示されるまでに若松区民の意見を聞くということになるんでしょうか。

岡澤政府参考人 先ほど申し上げましたように、ただいま北九州市の中で、受け入れをするのか、あるいはその受け入れ条件などはどうなのか、場所はどうなのかというようなことを検討しておりますので、とりあえず北九州市の判断がどうなるかを踏まえて私どもとしては考えたいと思っております。

藤木委員 ぜひ若松区民が納得できるように意見を聞いていただきたいということを申し上げておきたいと思いますし、強引に進めないでいただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。

 北九州市はカネミ油症事件の発祥の地でもありまして、いまだに油症に苦しむ人々がおられるわけで、PCB廃棄物を九州、四国、中国の広域から回収し、毎日何トンという大量の処理をすることになります。しかし、PCB廃棄物は現在まで三十年近く回収、保管が義務づけられて、特別管理廃棄物として保管基準にはPCB廃棄物だけの基準が追加されていますけれども、収集・運搬基準は、他の特別管理廃棄物と同様の一般的な基準しか規定されておりません。ですから、現行のPCBの収集・運搬基準では、事業団が広域から安全に回収して処理できるかどうかということも極めて疑問です。現行の収集・運搬基準は早急に抜本的に見直していただきたい、これは大臣にぜひお願いをしたいと思います。

 PCB油の分解処理技術の評価はされているようですけれども、実際の実用化に当たっては管理運営での安全性の確保が必要ですし、技術が評価されているのはたかだか日量五キログラム程度のことでありまして、実用化では日量五トンの処理を行うということでありますから、その安全性が確保できないと大変危険なことになると考えます。その事業団の処理方法が今の段階で決まっていなくて、これから北九州市の安全性検討委員会の意見も聞きながら検討していくということになっているわけです。

 しかし、事業団が直接に分解処理を行うというのであれば、こういう分解方法で、このような安全性を確保してやるから北九州市での設置をお願いしたいというのが本来の筋だと思うのですが、そうはなっていない。まさに北九州市頼りというような、北九州市にげたを預けるような無責任な態度でやるべきではないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 この法律案を成立させていただきましたらば、速やかに環境事業団に、PCBの処理法の検討を含めまして、具体的な準備に入っていいということを了解するという北九州市のお話がございましたので、具体的な準備を環境事業団に開始させるということにいたしております。具体的には、環境事業団に専門家の委員会を設置いたしまして、採用する技術の選定や安全性の評価を行うことにいたしております。

 それから、北九州市では、北九州市PCB処理安全性検討委員会というものがございまして、そこにおいて安全性の確保を検討するということとされていますけれども、北九州市長からは、市の委員会の意見を確実に反映させるようにということで環境省に要請がございましたので、環境事業団において処理方法を検討する際には、当然にこれを踏まえて検討させていただくことになるというふうに考えております。

 処理の主体となる環境事業団におきまして、北九州市の意向を踏まえて、適切な処理方法についての検討を行うということになるわけでございますけれども、環境省といたしましても、事業団が適切に準備を進めるように十分に指導監督に努めてまいりたいと存じます。

五島委員長 藤木さん、時間が終わっております。

藤木委員 はい、終わりますので。もう要望だけです。

 住民の協力が得られないまま進めないこと、安全性が確保できないまま強引に進めるということだけはくれぐれもされないように厳しく申し上げて、終わらせていただきます。

五島委員長 阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子と申します。

 私は、本来、環境委員会所属ではございませんが、実は、先ほども申しましたが、二十六年間小児科の医者をやっておりまして、あわせて、いろいろなこうした化学物質の人体への影響、臨床疫学というものに従事してまいりました立場から、今般のこの法案について実は非常に危惧を持っておりまして、あえて私どもの原委員並びに金子委員の好意で、私のこの時間を差しかえていただきました。

 そして、きょう、私の質問でこの委員会が終わり、採決に移るものと思いますが、ぜひとも川口大臣には、もう一度原点に立ち返っての御答弁をお願いいたします。

 まず第一点、恐らく、このPCBという問題が我が国の政治の中で論じられますときに、午前中そして午後も話題になっておりましたカネミ油症の患者さんたちは、いわば身も縮む思いでお聞きになっているのではないかなと私自身強く思います。

 そしてまた、先ほども、これから予定されている環境事業団の当初の予定地が北九州市であり、藤木委員の御質問にもございましたが、住民合意の問題を重々に考慮されるようにという御指摘でございましたが、まず第一弾、川口環境大臣は、この間、カネミ油症の患者さんたちに現実にお会いになりましたでしょうか。

川口国務大臣 お会いいたしておりません。

阿部委員 やはり政治というのは、人間の生きた思いと、それから、やはり納得、国民の安心、安全という点にございますから、会えばどうこうなるというものでもございませんけれども、やはり今般の、まさにカネミ油症あり、それゆえに三十年余にわたり遅延したPCB対策でもございますから、改めて、これはオフィシャルでも非公式でも構いません、環境大臣として、血の通った政治のためにもぜひともカネミ油症の患者さんたちに会っていただきたいと一点要望いたします。

 そして、質問に入らせていただきます。

 私は、ずっと皆様の質問を承りながら、やはりこの法案は根本的な欠陥を持っていると思っております。どういうことかと申しますと、これは、PCBの出口法案、いわゆる廃棄物となってから以降の、あるいは廃棄物とされるべく保管されて以降の処理や安全性に関する法案でございます。しかしながら、既にカネミ油症もそうでございますし、先般のベルギーの食肉の汚染もいわば混入という形で起こったPCB禍でございます。あるいはまた、これは非意図的製造ないしは混入でございます。

 ここで問題にされているのは、すべて意図的な製造、それから、それが保管、処分、廃棄に回った、そこから始まっておりまして、先ほどの午前中の村田参考人のお話の中でも、実は、使用中か、リサイクルされてまた使用に回るものか、使用、保管、処分の間も境目があいまいでございます。そして、現実には小学校等々で蛍光灯も使われている。

 そういたしますと、本来的に国民の安全性という見地に立ちましたらば、混入する可能性もある、使用中のものもある、保管の問題もある、処分の問題、廃棄の問題もあるというふうに立てば、本来この法案は、PCB対策特別法、これは私のつくった仮称でございます、としてより包括的な概念の中で法案形成をされるべきと思いますが、なぜ、出口のところ、廃棄物ということに限ってこの法案を作成されたか。

 これは何度も申しますが、カネミ油症の患者さんたちのPCBは、これは混入したものでございます。そして、そうした事態がきっかけになりこの問題が国民にも提起され、政治の俎上にも上りました。そのこともかんがみた上でのお返事をいただきとうございます。

川口国務大臣 PCB廃棄物につきましては、今まで長い期間、処理の体制も整備ができなくて保管されたままになっていて、高濃度のPCBを含む高圧トランスですとかコンデンサーが紛失・不明をいたしまして、環境の汚染が懸念されるということでございますので、この特別措置法案によりまして、PCB廃棄物の保管、処分について必要な規制を行う、それとともに、処理のために必要な体制を整備するということで処理を推進する、そしてPCB廃棄物による環境汚染を防止しようということでございます。

 このPCB廃棄物が長い期間保管をされたままになっているということは、先進国の中でも本当に日本固有の話でございますので、この処理を推進するということが国際的な観点からも非常に重要だと考えております。

 PCBの処理ということでいいますと、既に廃棄物処理法で、国際的に見ましてもかなり低いレベルまで分解をするということが義務づけられております。それから、これが意図的な排出であるか、あるいは非意図的な排出であるかということを問わず、水質汚濁防止法で排水の規制をいたしております。それから、PCBの処理や廃棄物の焼却に伴うコプラナPCBの排出については、ダイオキシン類対策特別措置法で規制が実施をされているということでございます。

 ということで、コプラナPCBを含めまして、PCBの対策としては、既に環境への排出規制は講じられているということでございます。

 ただ、その一方で、環境への影響が非常に大きい高濃度のPCBを含む高圧トランスですとかコンデンサーについては処理が進んでいないということでございますので、その処理を速やかに進めることが大事であるというふうに考えております。

 それから、PCBの製造、使用につきましては、化審法で、新たにPCBを製造する、使用するということはございませんで、既に製造された製品につきましては、耐用年数を過ぎて廃棄物として保管されるということになりまして、順次処理をされていくということになるわけでございます。

 したがいまして、ダイオキシン類対策特別措置法による規制措置、既にあるわけでございますし、それと今回の特別措置法というのが両方相まって、PCBの環境への排出による汚染を総合的に防止することが可能だというふうに考えております。

阿部委員 私の質問の趣旨をもう一度申します。お返事はもう結構ですから。

 PCB特別対策法として包括的に、特に使用中のものの使用停止期限も定めてつくるべきであるということと、混入時の対策もうたうべきであるというふうに受けとめていただければ幸いです。

 そして、近くPOPs条約を我が国が批准する段になりますと、毒性の見直しということが、特にPCBは歴史がございまして、ダイオキシン類、コプラナPCBとしての毒性換算をした場合に、現在の毒性のADIでは違いが出てまいると思います。この毒性の見直しの計画について、申しわけございませんが、短目にお願いいたします。

岩尾政府参考人 PCBの毒性評価については、厚生省が昭和四十七年に暫定的に決めた一日許容摂取量がございます。環境省としては、化学物質の環境リスク評価を推進するために有害性の評価を実施しておりますが、現在のところ、この厚生省の定めた暫定的な基準を見直す必要があると判断できるだけのPCB全体の毒性情報を把握していないことから、PCBを環境リスク評価の対象とする予定はございません。

 なお、今後PCBの毒性等について知見の収集等に努め、新たな科学的知見が得られた場合には適切に対処してまいりたいと考えております。

阿部委員 その点に関しましては、本日の午前中の参考人の方どなたも述べておられましたけれども、PCBからジベンゾフランないしはコプラナPCBが純粋にPCBという形で分離されずに混入、一緒になっているということも含めて、ぜひとも毒性の再検討は必要ですから、今の点は、これでやりますと時間が詰まってまいりますので、環境省として、午前中の参考人の御意見をきちんと受けとめて対処していただきたいと思います。ここでそうしたことの一つ一つが詰められなければ、言葉で幾ら安心、安全と申しましても、ちっとも安全じゃないし、国民にとっては不安が増すということにもなってまいります。

 続いて、法案に戻らせていただきますが、実はこの法案は、安全性をうたいながら、安全性の指標として何をチェックしていくか、何をモニターしていくかについては全く言及されておりません。

 これも午前中の参考人の皆さんのお話をまとめますと、例えば土壌、大気、河川あるいは貝、ムラサキガイ等々、そうしたものをモニターする必要もあると私は受けとめましたが、しかし、これも酒井参考人に伺いましたところ、我が国のそれらの汚染状況について現状のデータがない、私はマッピングがないというふうに確認いたしましたけれども、これも大変恐ろしいことでございます。基礎データがないところに処理がさらに加わり、いい方に向かうか悪い方に向かうかは、比較するデータがなければ結局は物が言えません。

 この全国モニタリングの項目並びに体制について、所轄の官庁からこの法案に伴うお考えを伺いたいと思います。

岩尾政府参考人 環境省では昭和四十九年から化学物質汚染実態調査を行っておりまして、PCBについては、昭和五十三年から生物モニタリング調査の一環として生物中のPCB濃度の調査を全国二十二の地点で実施しております。現在まで、魚のスズキそれからムラサキガイ、ウミネコなどを対象に調査を進めております。

阿部委員 実は、私は神奈川の藤沢というところで選出されておりますが、この間大変騒がれております荏原製作所のダイオキシンの流出事故に伴って、以降、住民の血液や母乳中濃度、あるいはまた土壌中、河川中もきちんとはかるようにという強い要望が住民から出ております。そして、何度も申し上げますが、今おっしゃったような指標だけではこの問題は大変に不十分でございます。現実に毎年毎年新たにわかってくる毒性あるいは危険性について、十分な納得を住民から得ないと事は進められないという観点から、既にダイオキシン類で実施されているようなモニターもぜひともあわせて、確かにPCBの方が相対としてはダイオキシンより毒性は低いと今のところ言われておりますが、これはモニターしてみないとわからない現実もございますので、あわせてモニタリング項目の増加を要求いたします。

 引き続いて、カネミ油症を振り返りまして、健康被害ということについてもお伺いいたします。

 カネミ油症は非常に独特な食品公害、いわゆるPCBをこれほど大量に直に食べた例などほかにございませんので、患者さんたちも長年のPCB禍に苦しんでおられます。先ほどのモニタリングの関連とあわせて申しますれば、例えばPCBの関連の処理工場で働く労働者の皆さん等々の健康被害のデータも、これは健康被害というふうに判明しなくても、健康検査状況の推移、例えば三十年たったらほかよりも発がん性が高かったとか、十五年たったときに肝機能障害が多かったとか、そうしたことは、実は私たちにとって未知の化学物質であるがゆえに、一つ一つが、その工場内で働く勤労者の皆さん、そして不幸にも食べさせられてしまったカネミの患者さんの健康調査も、そしてあわせて周辺住民の健康調査も非常に重要な一つ一つのデータとなると思います。

 所轄の厚生省におきましては、健康モニタリングということをどのようにこの法案に伴って、環境省の提案でございますが、お考えであるか。特に勤労者、工場労働者と申しましょうか、その辺についてのお考えをお聞かせください。

尾嵜政府参考人 御質問は勤労者ということでございますが、想定しておりました御質問とは全く違った御質問で恐縮でございますが、厚生省といたしまして、私の立場から申し上げますと、カネミ油症の患者さんの研究を担当している部署でございます。

 そういった立場からは、食品という観点からの研究なりをやっておりますけれども、今回の法案に絡みまして、厚生省として、今お聞きしましたPCBの人体影響についてモニタリングするということについては議論をしたことがございませんし、この法案の通った後の全体の対応につきましては、一義的には環境省が御検討なさる事柄ではないか、そういうふうに承知しております。

阿部委員 これは、例えば原発施設で働く勤労者の問題もダイオキシン処理解体工場で働く勤労者の問題も、今般、環境事業団がやるにしろ民営化されるにしろ、その現場で働く勤労者の健康被害という観点からも、それは周辺住民を必ずや上回るものでございますから、厚生省として、健康管理の省庁としてそうした計画をぜひともお立ていただきますように、また法案については、私どもの党からも附帯でお願いするように取り計らってございますので、あわせて御検討をよろしくお願いいたします。

 そして、カネミ油症のことに関しましては、お答えを用意していただきましたようですので、あわせて再質問をさせていただきますが、実は、このカネミ油症と言われるケースにつきましては、午前中も申し上げましたが、当初は皮膚の症状、有害なものを食べたために体が排出しようとする皮膚の症状で露見、発覚いたしました。しかしながら、その後の三十数年、このPCBが長きにわたり体に残留するという特殊な毒物であったがゆえに、午前中も申しましたが、肝臓が悪くなる、免疫系が侵され、がんができる、そして神経系にもおくれた影響が出る等々がございます。

 きょう、私が大変御無理を申し上げまして、農水大臣に御出席をお願いしたいと申し上げましたが、かないませんで、副大臣が御出席くださいましたので、副大臣にお聞きいたしますが、実は、当時、皮膚症状を主に認定された患者さんたちが、その後の訴訟の経過で、一応国の責任なしと認められまして、一時金を国に払い戻すように命じられました。いろいろな事態の中で、十年間でゆっくりと返していいよということになりましたが、はてさて、患者さんたちは皆さん御高齢でありますし、あわせて慢性の障害に悩んでおられます。

 そして、実は、現在のこの患者さんたちの治療費は出ておりません、カネミからは。なぜならば、当初の皮膚症状についての補償、治療費でございましたから、遷延性にどのような障害がくるかについては認識がなかったゆえに医療費は出ていない。老齢、医療にかからなくてはならない、生活苦、その中でお金の返済の問題が起きております。

 私はぜひとも、今般のPCB法案がもしも成立するのであれば、高度な政治的な判断において、このことをきちんと、これは申しわけもなかったし、やはり現在も苦しんでおられるという状況の中で、この仮払金の徴収という事態を担当の農水の方で検討し直していただきたい。

 そして、もしそれが法的に不可能であれば、せめて医療費のお支払い、これは現実に患者さんたちは非常に苦しんでおられますので、これは道義的、人道的見地からも、いわゆる人体実験、壮大な人体実験を起こした結果ですので、そのことをあわせて補償するようなことを、これを農水省に補償せよといっても無理がございますので、各省庁分割の中で話し合われないで、この法案の記念すべきやはり出発点として、現状に苦しむカネミ油症の後遺症の患者さんたちについての対策をしていただきたいという二点を、最初に農水省関連の副大臣に、そしてできれば川口大臣にお願いいたします。

松岡副大臣 先生の御指摘の問題につきましては、経過につきましてはもう既に先生十分頭に、念頭に置いていただいた上での御質問と思いますので、結論の部分だけ申し上げますが、民事調停によりまして、それぞれ個別に返還しやすい方法といったようなことでなされてきたわけでありまして、そして、いよいよ十月が期限である、このような今状況になって、先生の御指摘でございます。

 そこで、債権管理法におきましては、履行延期後十年を経過した後においても、無資力かつ弁済することができる見込みがないと認められた場合には債権を免除できる旨の規定があるわけでありまして、この規定に基づきまして、その時点における個々人の状況に応じ、関係省庁と協議の上、適切に対処してまいりたい、これが私どもの立場でございます。

阿部委員 そのような認識では、恐らくこの法案を国民は安心して受け入れることができないと思います。

 理由は、何が起こるかわからない薬物であるから、例えば医療費等々について、これは国がまるで責任がなかったかのように債権管理法というふうな言い方をされますが、ある意味で国が関与し、食品公害から人体公害へと広がった事態でございます。

 当時の薬物の毒性の認識では確かに責任を問われなかったかもしれませんが、三十数年を経てみて、もし裁判で争われれば違う結果も出るやもしれない事態でございます。本当に、何かが起こっても、大丈夫、国が補償しますよということを言わない限り、実はPCBの処理も進まないという、この当たり前のことを政治家が理解するかどうかで、国の政治はいい向きにも悪い向きにも行くわけです。

 私は、PCBは処理しなきゃいけないと思っています。ただしかし、そのことにおいて、かつて被害を受けた方たちが生活苦に苦しみ、あわせて合併症に苦しんでいるときにお金の取り立てをしていたのでは、国民から見えるものは、随分非情な、片一方で機密費には何億も使いながら、こうしたことの患者さんの生存にかかわることで、このようなつらい取り立てをする政治の仕組みということについて、省庁に分断されずに、もう一度政治家として皆さんお考えいただきたいと思います。

 では、川口大臣お願いいたします。

尾嵜政府参考人 環境大臣がお答えになる前に、医療費の関係について、若干私の方から御説明を申し上げます。

 医療費につきましては、裁判が和解をされました後に、いわゆる認定患者さんにつきましては、カネミ倉庫の方から、入院なり治療に必要な医療費というものが支払われているという状況でございます。

 先生の御指摘は、認定患者さん以外のことをお話しでございましたが、そこについては、医療費は御自分で負担していただくという状況になっているということでございます。

阿部委員 今せっかくお答えをいただきましたので、それについても申し添えたいのですが、当時の基準で認定したものであって、認定という作業自身、例えば水俣病でもそうですが、遅発性にいろいろな症状があらわれることがございます。これも厚生省は経験で御存じですから、そのようないわば経験を学ばないことをおっしゃらないで、いろいろな症状が出てくる、逆に、受診していただく一つ一つがデータでございますから、そうした見地に立って、医療費はむしろ出してでも、助成してでもデータ収集をさせていただくくらいの感覚にならないと、とても現実にはやっていけないと私は思っております。

 せっかくお答えをいただきましたので、私の考えも申し述べました。

川口国務大臣 これは、普通の一般の国民の方にはなかなかわかりにくいことではあると思いますけれども、物事の整理はきちんとしておかないといけないと思いますので申し上げさせていただきたいと思いますが、カネミ油症というのは、食品、要するに食べ物による健康被害の問題でございまして、環境省が担当いたしておりますのは、何かが環境に排出されて、その結果環境の汚染が生じるといった問題については環境省が担当いたしているということでございます。

 ということでございますけれども、そのおっしゃったような有害な物質について問題が生じたということは非常に重い問題であると思っておりまして、環境省といたしましては、環境にそういった有害な化学物質が出て、それによって環境の汚染が起こることがないように全力で取り組みたいと思っております。

阿部委員 今いみじくも川口大臣の御答弁にありましたように、国民的に理解しづらい。当たり前です。国民は、ここからここの分が環境省の責任、ここからここが厚生省の責任、ここからここが通産省の責任というふうに、自分に起こった健康被害を分けて考えることはできないわけです。トータルに人間としてこれは全部受けとめなければならないわけです。

 そして、私が冒頭申し上げましたのは、だからこそ、本法案は、いわばPCB特別対策法として包括的に、各省庁の垣根を超えて立案されるべきであったろうと私は考えております。そこが、国民的理解が低いからではなくて、国民は一個の分解されない人間として生きているからだと私は思っております。

 次の質問に移らせていただきますが、最後に、この環境事業団が行う場合と、これまでの民間が処理していく場合と、何がどのように違ってくるかということを午前中も私は参考人の方にお伺いいたしましたが、キーワードは情報公開であろうということになりました。

 本日、たまたま午前中の報道で、いわゆる核燃、昔の動燃でございますね、の不祥事の発表がございましたが、実は私は、動燃時代の事故の後、ジェー・シー・オーと動燃に視察に参りました。そのときに動燃という機構、当時ももう核燃と名を変えておりましたが、いかに情報公開を渋る団体であったか。私が議員として行ってすら必要な情報をお出しにならない。そして、周辺住民は、特にジェー・シー・オーの事故の周辺住民は、自分に起きた健康被害が、これはあのときの原子力発電の漏れの影響ではないかというふうに非常に危惧しておられたのを今も鮮明に覚えております。

 そうなりますと、逆に、環境事業団ということで行った場合に、より住民への情報公開、住民参加を促進させるものを担保させるものは何であるか。私はまた、コストの点からも特殊法人方式でやることには賛成いたしませんが、それをさておいたとしても、なぜ環境事業団でやった場合の方が、住民参加、住民公開、住民合意が担保されるのか、この一点について川口大臣のお答えをいただきまして、最後の質問にいたします。

川口国務大臣 環境事業団でこのPCB廃棄物の処理をしなければいけないと私どもが考える理由といいますのは、過去三十年間、PCB廃棄物が処理が進まないままに保管をされて、その過程で紛失あるいは行方不明になって環境汚染につながっていったということからでございます。

 それがなぜそうなったかといいますと、排出者責任の原則に基づいて民間企業あるいは保管をしているところがそれをやろうとした場合に、地元の方の理解が得られなかったということでございます。それで、地元の方の理解ということを考えましたときに、環境事業団がそこをやることが適切であるというふうに考えたということでございます。

 それから、おっしゃるように情報公開というのは非常に重要なことでございまして、情報公開が適切になされなければ、環境事業団としては地元の住民の方の理解や御協力が得られない。また、そのことから、この事業を適正に推進していくことも難しくなるということでございまして、まさにこの事業を進めていくために情報の公開をきちんとやるということが必要でございまして、それがなければこの事業を進めることは難しかろうということでございます。

 環境省といたしましても、環境事業団に対しましてはその点をきちんと指導はしてまいりますし、環境事業団もみずから、この事業を進めていかなければいけない主体として、情報公開の重要性につきましては十分に認識をしているというふうに考えております。

阿部委員 最後に申し上げさせていただきますが、私の認識は、今民間の諸企業が一生懸命住民合意をとるプロセスをいわばつくり上げているやさきでございます。そして、申し上げましたように、その方がコストにもよろしいでしょうし、この環境事業団の方式は、官、民の垣根をさらに高くし、住民と官との垣根も高くするものと理解しております。そして、本当にうまくいくかどうかは、この川口大臣たちのお出しになった法案、北九州市で一例目が施工されるやもしれないということで、その現実の成果を拝見したいと思います。ありがとうございました。

五島委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

五島委員長 この際、内閣提出、環境事業団法の一部を改正する法律案に対し、近藤昭一君から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。近藤昭一君。

    ―――――――――――――

 環境事業団法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

近藤(昭)委員 近藤昭一でございます。修正案についての趣旨説明を行わせていただきます。

 ただいま議題となりました環境事業団法改正案に対する修正案について、その理由並びに趣旨を御説明申し上げます。

 特殊法人の行う事業については、真に政府でしか行うことができないような非常に限定的な事業に限りこれを行うべきであり、役目を終えた事業については、地方自治体や民間の活力を活用して、効率的にこれを行うべきであることは、だれもが納得するところであると思われます。

 環境事業団についても、公害を防止するという観点やさまざまな観点から建設譲渡事業を行ってきたところであります。このような建設譲渡事業が設けられました経緯や背景は否定するものではなく、さまざまな実績を重ねながら公害防止に役立ってきたところでもあるわけであります。

 また、今回のPCB処理のように、民間主導で行うことがこれまで困難であった有害化学物質の処理について、国や特殊法人がその事業を推進することにつきましては、一定の必然性があると私たちも考えているところであります。

 ところが、環境事業団の行う建設譲渡事業は、現在に至っては地方自治体や民間でも十分に行うことが可能であるものばかりであり、特殊法人がどうしても行わなければならないような種類のものでは決してありません。

 今回の環境事業団法の改正により、悪名高い自然公園の施設設置・譲渡事業を削除しただけで、他の事業は延命させるなど、極めて不十分な内容となっております。他の建設譲渡事業についても、特殊法人が行わなければならない理由は、現在では何もないと思われます。地方自治体や、廃棄物などは廃棄物処理センターが行う方が地域の事情にも詳しく、効率的な対応ができるはずであります。

 また、環境事業団が建設譲渡事業を行って地方自治体に譲渡した場合、地方自治体は地方債の発行を逃れるために事業団に事業を発注しているケースもあるという話を聞きます。単なる借金隠しの譲渡事業も多いという指摘であります。

 私たちは、このような特殊法人のむだな事業は削り、真に必要なPCB処理事業や地球環境基金などに限定するなどの措置が不可欠であると考えております。

 そこで、修正案の趣旨でありますが、環境事業団の業務のうち、集団設置建物建設譲渡事業、共同福利施設建設譲渡事業、大気汚染対策緑地建設譲渡事業、地球温暖化対策緑地建設譲渡事業及び産業廃棄物処理施設・一体緑地建設譲渡事業はこれを廃止し、それに伴う経過措置を規定したところであります。

 国民の税金を効率的に使う上で、必要不可欠な修正であるとだれもが納得していただけるものと確信しておりますので、御賛同のほど、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

五島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

五島委員長 これより内閣提出、環境事業団法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。小林守君。

小林(守)委員 ただいま議題となりました、政府提出、環境事業団法の一部を改正する法律案並びに民主党・無所属クラブ提出、環境事業団法改正案に対する修正案について、民主党・無所属クラブを代表して、環境事業団法改正案に対する修正案には賛成、修正部分を除いた環境事業団法改正案には反対の立場から討論をいたします。

 PCB廃棄物の処理は、製造、輸入、使用が原則的に禁止された昭和四十九年以降、早急に行うべき課題とされてきながら、現実には、液状PCB五千五百トンを焼却処理しただけで、長期間保管がされ続けてきたものであります。この間に、保管中のPCBが紛失するなどの問題が数多く生じたにもかかわらず、政府、とりわけ旧通産省は、処理に対して国が保証を行い処理を行わせるなどの有効な対策を施すことなく、いたずらに時間を浪費し、処理施設の建設も行うことができないまま現在まで至ってしまいました。まず、この責任を明確に位置づけるべきであります。

 ただし、PCB廃棄物の処理を早期に行うべきとの今回の施策については、地球規模で広がっているPCB汚染の影響を考えるとき、日本の果たすべき責務として、できるだけ短期間に、環境への影響を最小限として行うべき措置であることは言うまでもないことであります。

 また、その処理を、国が責任を持って行うとの理由から、特殊法人である環境事業団がこれを行うということは、特殊法人の業務としては、真に国でなければ行うことができない事業であるものとしてやむを得ないものと私たちも考えております。

 しかし、その際には、環境事業団の行ってきた事業を精査し、民間や地方自治体などで行うことが十分に可能な事業については、きちんと廃止をするということもあわせて行わなければなりません。

 ところが、今回の環境事業団法の改正は、悪名高い自然公園の施設設置・譲渡事業を削除しただけで、他の事業は延命させるなど、極めて不十分な内容となっております。他の建設譲渡事業についても、特殊法人が行わなければならない理由は、現在では何もないのです。地方自治体や、廃棄物などは廃棄物処理センターで行う方が地域の事情にも詳しく、効率的な対応ができるはずであります。

 また、環境事業団が建設譲渡事業を行って地方自治体に譲渡した場合、地方自治体は地方債の発行を逃れるために事業団に事業を発注しているケースもあるとの話もあり、単なる借金隠しの譲渡事業も多いとの指摘もあります。

 私たちは、このような特殊法人のむだな事業は削り、真に必要なPCB処理事業や地球環境基金などに限定するなどの措置が不可欠であると考えます。

 PCB処理を推進するというだれも反対できないような法律案に隠れて、環境事業団のむだな業務がチェックされずに延命されてしまうという不合理は、許されるべきではありません。

 したがいまして、建設譲渡事業を全部廃止するという民主党・無所属クラブの修正案は、極めて合理的かつ国民のニーズにもかなった提案であり、これに賛成するものであります。このような、環境事業団に対する抜本的な見直しを行わないままに、PCB廃棄物の処理事業を追加し、環境事業団の焼け太りを許す原案に対しては、到底賛成することができないということを申し上げて、私の討論を終わります。

 委員各位の御賛同をお願いいたします。(拍手)

五島委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

五島委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

五島委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、内閣提出、環境事業団法の一部を改正する法律案及びこれに対する近藤昭一君提出の修正案について採決いたします。

 まず、近藤昭一君提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

五島委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 環境事業団法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

五島委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

五島委員長 この際、ただいま議決いたしました両法律案に対し、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 まず、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案に対し、山本公一君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の六会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。樋高剛君。

樋高委員 私は、ただいま議決されましたポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案に対する附帯決議案につき、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 環境大臣はポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という。)廃棄物処理について、期間内における処分が適正かつ的確に達成されるよう努めること。

 二 PCB廃棄物の地球環境への重大な悪影響にかんがみ、海洋哺乳類をはじめとする世界の野生生物(生物多様性)の保護に努めること。

 三 PCB廃棄物の処理事業の実施に当たっては、これまで立地が進まなかった経緯を踏まえ、リスクコミュニケーションを通じて施設周辺の住民等から処理事業について十分な理解を得るよう、処理事業者を指導すること。

 四 PCB廃棄物処理施設の設置に当たっては、施設の設置及び維持管理に関するコストの抑制に十分に配慮すること。

 五 PCB廃棄物処理の実施に当たっては、安全性を十分に確保するとともに、処理施設の運転状況や周辺環境への影響等について調査を実施し、得られた情報の積極的な公開を進めるとともに、労働者や周辺住民の健康管理に留意すること。

 六 PCB廃棄物の収集、運搬に際しては、廃コンデンサ等の耐久性を含め安全性が確保されるよう細心の注意を払うこと。また、PCB廃棄物運搬中の事故等により、万が一PCBが漏れた場合等についての対策や対応について十分検討を行うこと。

 七 現在までPCB廃棄物の処理が十分になされず、不明・紛失のPCB廃棄物について、早急に調査を行い、的確な対応を行うこと。

 八 環境大臣は、都道府県が行うPCB使用製品の使用状況の把握とその早期処分の促進が図られるよう努めること。また、PCB廃棄物の迅速かつ適正な処理を推進するため、PCB廃棄物等に係る情報を国民に広く周知するよう努めること。

 九 PCB以外の製造が中止された有害化学物質に係る廃棄物について実態調査を行うとともに、適正な処理の推進、拡散の防止等、必要な措置を速やかに講ずること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

五島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

五島委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 次に、環境事業団法の一部を改正する法律案に対し、山本公一君外二名から、自由民主党、公明党及び自由党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。青山二三さん。

青山(二)委員 私は、ただいま議決されました環境事業団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、公明党及び自由党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    環境事業団法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 環境事業団が新たに行うこととなっているポリ塩化ビフェニル(以下「PCB」という)廃棄物処理事業の実施に当たっては、期間内処理が確実に達成されるよう努めるとともに、処理コストの削減にも十分配慮すること。

 二 環境事業団のPCB廃棄物処理事業については、確実かつ適正な処理が行われるよう、最終処理に至るまでの全体的な管理システム及び事業全体の監視・評価システムの構築を図ること。

 三 PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を促進するため、その処理費用について助成を行うための「PCB廃棄物処理基金」の設置・運営に対しては、国及び都道府県が積極的に関与するとともに、PCB製造者及びPCB使用製品製造者に対しても、これらに見合った協力が得られるよう努めること。

 四 環境事業団が行うすべての事業について見直しを行い、民間や地方自治体では行うことのできない真に国として行うことが必要な事業に限定し、所要の措置を講ずること。

 五 PCB廃棄物の処理施設整備を円滑に進めるためには、地域住民の理解と協力が必要であり、その観点から、廃棄物に関する研究・研修施設の設置や、輸送インフラ整備、周辺環境整備等の関連事業も一体的に整備を行うよう努めること。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。(拍手)

五島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

五島委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいま議決いたしました両附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。川口環境大臣。

川口国務大臣 ただいま御決議のございました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。

    ―――――――――――――

五島委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

五島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

五島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.