衆議院

メインへスキップ



第12号 平成14年5月14日(火曜日)

会議録本文へ
平成十四年五月十四日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 大石 正光君
   理事 熊谷 市雄君 理事 西野あきら君
   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君
   理事 奥田  建君 理事 牧  義夫君
   理事 西  博義君 理事 樋高  剛君
      小渕 優子君    奥谷  通君
      亀井 久興君    木村 隆秀君
      小泉 龍司君    小林 興起君
      阪上 善秀君    田中眞紀子君
      原田昇左右君    菱田 嘉明君
      三ッ林隆志君    小林  守君
      五島 正規君    近藤 昭一君
      鮫島 宗明君    田端 正広君
      武山百合子君    藤木 洋子君
      金子 哲夫君    井上 喜一君
    …………………………………
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   参考人
   (中央環境審議会会長)
   (財団法人地球環境戦略研
   究機関理事長)      森嶌 昭夫君
   参考人
   (社団法人経済団体連合会
   環境安全委員会地球環境部
   会長)          桝本 晃章君
   参考人
   (財団法人世界自然保護基
   金ジャパン気候変動日本担
   当シニア・オフィサー)  鮎川ゆりか君
   参考人
   (千葉商科大学政策情報学
   部教授)         三橋 規宏君
   環境委員会専門員     飽田 賢一君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月八日
 辞任         補欠選任
  西川 公也君     阪上 善秀君
同月十四日
 辞任         補欠選任
  西川太一郎君     井上 喜一君
同日
 辞任         補欠選任
  井上 喜一君     西川太一郎君
    ―――――――――――――
五月十三日
 鳥獣保護法の改正及び野生生物保護法の制定に関する請願(奥田建君紹介)(第二六六四号)
 同(佐藤謙一郎君紹介)(第二六六五号)
 同(小林守君紹介)(第二七七六号)
 同(原陽子君紹介)(第二七七七号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第八四号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
大石委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本案審査のため、本日、参考人として、中央環境審議会会長・財団法人地球環境戦略研究機関理事長森嶌昭夫君、社団法人経済団体連合会環境安全委員会地球環境部会長桝本晃章君、財団法人世界自然保護基金ジャパン気候変動日本担当シニア・オフィサー鮎川ゆりかさん、千葉商科大学政策情報学部教授三橋規宏君、以上四名の方に御出席いただいております。
 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人の皆様におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にしてまいりたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 次に、議事の順序でありますが、森嶌参考人、桝本参考人、鮎川参考人、三橋参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。
 それでは、森嶌参考人にお願いいたします。
森嶌参考人 おはようございます。
 ただいま御紹介いただきました森嶌でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。
 現在の地球温暖化対策推進法は、平成九年十二月に採択をされました京都議定書におきまして、我が国の温室効果ガス排出量の六%削減が規定されたことに基づきまして、地球温暖化対策の基本的な方針を策定するために、翌年の平成十年に立法されたものでございます。
 また、政府は、京都議定書を受けまして、平成十年、同じ年に地球温暖化対策推進大綱を決定しておりまして、改正省エネ法のいわゆるトップランナー方式によりまして省エネを推進する、都市インフラの整備などによりまして二酸化炭素の排出を抑制する、原子力立地を推進する、新エネルギーを導入するなどの各種の施策を発表いたしまして、二〇一〇年までに二・五%の削減を行うということにしてございました。
 しかしながら、地球温暖化対策推進法、現行の推進法では、京都議定書の規定によりますと、京都メカニズムや森林等の吸収に関する具体的な内容がまだ明らかになっておりませんでしたために、国、地方公共団体、事業者、国民の責務につきまして一般的な規定を置いたにとどまりまして、地球温暖化対策に関する国の基本方針を定めること、事業者としての国、地方公共団体が行う温室効果ガス抑制の実行計画を策定、公表すること、その他の規定を置いておりますが、新しいものとしては、地球温暖化防止活動推進員、地球温暖化防止活動推進センターを設置するなどの規定でございますけれども、これらは、具体的な施策の展開というよりも、その後、京都メカニズムなどが明らかになって、我が国が具体的にどのようにして削減をしなければならないかということが明らかになった段階で、さらに具体的な法律を予定したものでございました。そのために、削減措置の具体的な削減率であるとか削減スケジュール等の規定を欠いております。
 その後、平成十二年に開催されましたCOP6におきまして、京都議定書の細目が決定されることが予定されておりましたけれども、御案内のように、ハーグのCOP6では合意に達することはできませんでして、平成十三年七月にボンで開催されたCOP6の再開会合で、京都議定書のいわゆる中核的要素に関する基本的合意、いわゆるボン合意と言われるものが成立をしまして、さらに、マラケシュで開催をされましたCOP7におきまして、京都議定書の運用細則が最終的に合意されたところであります。
 しかし、このようにして京都議定書の中身がかなり明らかになってきたわけでございますけれども、さきに申しました、政府が定めました地球温暖化対策推進大綱にもかかわりませず、我が国の温室効果ガスの排出は増加をしておりまして、一九九九年は、基準年である一九九〇年に比べまして六・八%の増となっております。特に運輸部門が二三%増加するなど、増加傾向がございます。
 そこで、二〇〇八年から二〇一二年の第一約束期に六%の削減をするということになっているわけでありますが、これまでの対策措置の経緯を見ますと、これでは削減目標を達成することができないということで、計画的に総合的な追加的対策措置を講ずる必要があるというふうに考えられます。そのために、今回御提案をしております地球温暖化対策推進法の改正法が準備されたわけであります。
 中央環境審議会では、平成十二年のCOP6以降の京都議定書に関する国際交渉の進展をにらみながら、京都議定書の内容が固まってくる段階で、我が国の温室効果ガス排出にどのように具体的な対策をとっていくかということにつきまして、目標達成シナリオ小委員会と国内制度小委員会を設置いたしまして、温暖化防止対策のあり方の検討を続けてまいりましたけれども、本年の一月二十四日に、京都議定書の締結に向けた国内制度の在り方に関する答申、この答申の概要につきましては、先生方のお手元に本日お配りをしてございます、これでございますが、御参考にしていただければというふうに思います。この答申を取りまとめて環境大臣に提出したところであります。
 答申におきましては、第一に、温暖化防止対策がすべての主体の取り組みを求めるものであることから、目標達成の筋道を明らかにする京都議定書目標達成計画を策定する、それも、国民の代表によって議論をされます国会が定める法律に基づく法定計画というふうに位置づけること、また、計画には具体的に、温室効果ガス別、分野別の削減目標量を定め、個々の具体的な対策による削減見込みなどを明らかにしていく、また、施策の導入の時期などについても、工程表を盛り込むなどとしております。また、二〇〇四年と二〇〇七年でありますけれども、逐次、目標の達成度を評価するというような仕組みを入れまして、計画の目標設定、それから実施についてのフォローアップを行うということを提言しております。
 改正法案は、第八条、第九条におきまして、京都議定書目標達成計画を内閣が定めることといたしておりますし、また十条以下には、内閣総理大臣を長とし、すべての国務大臣をメンバーとする地球温暖化対策推進本部が計画を策定、実行するというふうに規定してございますが、私は、この改正法案の規定は、私どもの提案をいたしました、法律による計画を策定し、そしてそれを政府を挙げて実施するということを受け入れていただいたものということで、大変評価しているところでございます。
 第二に、答申は、対策実施に当たりまして、二〇〇二年から二〇〇四年までを第一ステップ、二〇〇五年から二〇〇七年までを第二ステップ、そして本番であります二〇〇八年からを第三ステップといたしまして、第一ステップにおきましては現行対策をより強化するという方針を提案しておりまして、それぞれのステップにおける対策の進捗状況を評価しながら必要な追加対策を講ずることとしておりまして、いわゆるステップ・バイ・ステップのアプローチをとることを提言しております。
 このような考え方をとりましたのは、削減目標の達成が二〇〇八年からということになっておりまして、まだ六年、まだといいますかもうというかわかりませんが、六年ございますので、その間に削減目標に向けて漸次体制を整えるということを考えているからでございます。温室効果ガスの削減の実現には時間及びコストがかかりますので、対策の効果を評価しながら新たにそれを実施していくということで、対策実施がもたらすかもしれない急激なインパクトを避けようという考え方に基づいているものでございます。
 改正法案では、第九条及び附則第三条が、平成十六年と十九年に計画実施の状況についての評価を行い、必要ならば計画に変更を加える旨を規定しておりますが、これはステップ・バイ・ステップのアプローチをとられたものというふうに評価しております。
 第三に、答申は、温暖化対策は国民各界各層が一体となって取り組まなければならないとしておりまして、我々の生活を、大量消費、大量廃棄型のライフスタイル、この我々のライフスタイルを変革し、省資源、省エネルギーの循環型の社会経済構造へ転換しなければならないとしております。
 改正法案第二十三条、二十六条は、この観点から申しますと十分ではございませんけれども、地球温暖化防止活動推進員の活動を充実する、地球温暖化対策地域協議会を組織するということなどについて規定しておりまして、国民の各界各層が一体となって取り組んでいく方向を示したものというふうに評価をしております。
 そのほか、答申は、ヨーロッパにおいて効果的な手法として既に導入されている経済的手法の検討を提言しておりますが、改正法案の附則第二条は京都メカニズムの検討を続けるということになってございますけれども、今後は広く経済的な手法の導入の検討が行われることを期待したいと思います。
 さらに、IPCCの第三次報告によりますと、今後なお一層地球温暖化の進行は深刻化を増していくということでございまして、京都議定書の第一約束期を超えて、より厳しい温室効果ガスの削減が行われなければならないわけでございます。
 イギリスなどでは、これを機会にして、イギリスにおける経済社会構造を省エネ型のものとし、それをいわばイギリスの今後の経済活性の契機にしたいということでございまして、私、去年イギリスを訪問しましてそれを痛切に感じたわけでございますけれども、我が国におきましても、省エネルギー、省資源の技術開発とその普及実用化のための社会的仕組みを今後さらに開発し、単に温暖化防止対策としてこの地球温暖化対策推進法が機能するのではなくて、今後、循環型の社会の建設に向けて、産業構造、社会構造の転換をもたらし、我が国の経済の活性化を導くようなものになることを期待しているわけでございまして、ぜひこの国会におきましてこの法案を通していただき、さらに、我が国の京都議定書の批准を進めていただき、ヨハネスブルグまでに京都議定書が発効するようにお図りいただきますようお願いを申し上げまして、私の意見を閉じさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
大石委員長 ありがとうございました。
 次に、桝本参考人にお願いいたします。
桝本参考人 経団連の環境安全委員会地球環境部会の部会長を仰せつかっております桝本でございます。東京電力の副社長を務めております。
 きょうは、大変に貴重な機会をいただきまして、まことにありがとうございます。先生方に厚く御礼申し上げます。
 まず、既に先生方、御高承のところではございますが、基本的な事項として私としては極めて重要かと考えますので、大変恐縮でございますが、原理原則の確認から話を進めさせていただきたいというふうに存じます。
 地球温暖化問題の原因、温暖化ガスの代表でございます二酸化炭素は、空気のわずか〇・〇三四%を構成する物質でございまして、すべての動植物の命の営み、いわば地球の営みに伴って排出、吸収されます必須の物質でございます。つまり、農業、漁業、鉱業、製造業、運輸業などあらゆる産業を含め、人間のあらゆる社会活動はこの二酸化炭素排出と不可分でございます。
 今問題となっております二酸化炭素は、石炭、石油、天然ガスなどの大量燃焼に伴うエネルギー起源のものでございます。したがいまして、二酸化炭素の排出抑制は、化石エネルギー消費量の抑制によって達成されます。実は、二酸化炭素の排出抑制が、エネルギー消費抑制を介しまして、生産や社会活動の抑制にもつながりかねないという懸念がここにございます。
 この地球温暖化問題は、産業革命が引き金となりました工業化によるエネルギー大量消費がもたらしたことは、既に御高承のとおりでございます。特に、ここ五、六十年ほどの急速な我々の産業活動、産業社会の発展、これが化石燃料の大量消費を生みまして、二酸化炭素など温暖化ガスの累積をもたらしました。御高承のとおり、これが地球温暖化を引き起こしていると言われているところでございます。
 エネルギーの観点から申しますと、二十世紀に私たちが手にした豊かさは、これまで人類の経験のあるものではなく、化石エネルギーの大量消費、大量廃棄に支えられてまいっております。二十世紀、私どもは先進工業国を中心に大きく発展し、豊かになりました。この間に、町は清潔になり、乳幼児の死亡率は減少し、寿命は延びてまいりました。発展の成果でもございます。
 二十世紀のこの発展は、反面、化石エネルギー大量消費によります二酸化炭素など地球温暖化ガスの大量排出をもたらし、地球温暖化などが問題として現出いたしました。これは豊かさの影、負の遺産でもございます。この負の遺産というコストは、残念ながら、これまでだれも負担をしてまいりませんでした。今私どもは、このコストを二十一世紀に生きることの責任として負担し、地球温暖化問題という難問を克服していかねばならないと考えております。
 この二十一世紀にありまして、私どもは、温暖化問題に対応するに、この化石燃料の大量消費、大量廃棄という根本を変えていく必要がございます。すなわち、より少ない化石燃料でやっていくことでございます。世界各国、特に先進工業国は、一致協力して、大量消費依存型社会を化石燃料のより少ない寡少消費社会へと変えていかねばなりません。森嶌先生もおっしゃられましたが、ライフスタイルの変更というよりも、むしろ文明の転換というほどの大きな挑戦かと存じております。もちろん、当面は、エネルギー転換や消費といった利用段階での効率の向上、燃料の転換、原子力発電や再生可能エネルギーの開発活用促進なども重要かつ有効でございます。もちろん進める必要がございます。
 具体的な話に入らせていただきます。
 温暖化問題への対応の道には、極端に申しますと二つの入り方があるように存じます。
 一つは、二酸化炭素発生の大もとであります化石燃料消費を規制や制度で抑制しようとする道でございます。どちらかといいますと、欧州はこのやり方をとり始めているように見えます。
 もう一つは、国民、企業など社会の構成主体全員への徹底した教育、呼びかけと情報提供、そしてこれらの主体によります自主的、積極的な取り組みでございます。どうやらアメリカは、この方向性を基本としているように見えます。
 私は、問題の重要性にかんがみれば、事態の進展状況によりましては、いつの日にか制度や規制、こうしたものでいわば強制的に二酸化炭素排出の抑制、削減をせざるを得なくなる日が来るかもしれないとも考えもいたします。しかし、そうした道に入るのはできるだけ後にしたい。できればそうしたやり方をとらないで済めば一番よいと考えております。それだけに、まずは社会の主体全員で、それぞれがそれぞれの立場で自主的に取り組むことを徹底して試みることが極めて重要かと考えております。まずここから始めることを大いに試みたいと存じております。
 あえて申せば、現在の議論は第一約束期間の二〇一二年までのことでございまして、二〇一三年以降、それからは第二約束期間が始まります。仮にも、今規制や新たな税負担を始めたといたしますと、これらは第二約束期間では強化されることこそあれ、決して緩和、緩められることはないと推察いたします。
 ところで、この自主的な取り組みにおきまして、幾つか重要、大切なポイントがあると存じます。
 第一は、技術と企業でございます。現在の生活レベルを切り下げるのであれば話は違ってまいりますが、現在の生活水準の維持を同時に追い求めるのであれば、頼りは、エネルギーの転換や利用の効率向上、あるいはエネルギー寡少、より少ない消費の技術でございます。省エネルギー技術と言ってもよいと存じます。省エネルギー技術の普及と新たな技術開発が、二酸化炭素排出削減策の決め手でございます。
 実は、御案内のとおり、我が国の産業界は、一九七三年、七九年の二度の石油危機の後、高騰した石油価格の重さを克服するために懸命な省エネルギーを進めまして、現在では、日本の省エネルギー水準、エネルギーの利用効率の水準は、御高承のとおり、もうこれ以上求めるものはなかなか難しい水準にまで達しておりまして、先進工業国の中で最も高いものとなっております。
 ところで、お考えいただきますと、この技術と技術革新の担い手、主体は企業でございます。企業としては、この環境技術や製品、システムの好事例を普及させることに努めるとともに、新たな技術の開発に努めることが役割かと存じております。こうした技術開発は、企業にとってまさに二十一世紀の新たなビジネスチャンスともなると存じ、日夜取り組んでいるところでございます。
 先般、京都議定書から離脱いたしましたアメリカのブッシュ政権は、新たな温暖化対策を二月に公表いたしました。その内容は、京都で決められましたことから見ますと後退とも見えますが、ある意味で徹底して技術を活用し省エネルギーを進めようとする方向性が打ち出されておりまして、二〇〇三年を初めとして大変に巨額な予算をアメリカはつけようとする具体的な施策が盛り込まれております。この点については、私は評価をしてしかるべきかと存じます。
 第二は、政府の役割でございます。政府の役割は、各主体の自主的取り組みの促進のために、まず教育、そして各種の奨励策を講ずると同時に、好事例なども含め徹底した情報提供を行い、国民全員参加の運動を展開していただくことではないかと存じます。
 技術と企業に関しましても、政府の役割は、こうした企業の取り組みを奨励、喚起していただくことかと存じます。間違っても、企業の意欲、創造性をそぐようなことはしないようにしていただきたい。その意味でも、一般的に申しまして、規制や新たな税負担につきましては、その懸念が大きいところであると思います。
 第三は、地方自治体の役割でございます。この点は、今回の法改正についての直接的なお願いでもございます。地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案、これについての意見でございます。
 この法改正案では、第四章第二十条「地方公共団体の施策」が新たにつけ加えられております。都道府県及び市町村には、「京都議定書目標達成計画を勘案し、」と条件は付せられているものの、「温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとする。」と大きな役割が期待されております。
 ここで、残念ながら心配がございます。法文で言う地方自治体の総合的かつ計画的な施策の策定と実施という部分でございます。
 現下の課題の二酸化炭素排出は、申しましたとおり、あらゆる産業活動、社会生活に伴い避けて通ることのできないものでございます。従来の硫黄酸化物SOx、窒素酸化物NOxなどの大気汚染物質とは全く性質を異にするものでございます。地球という冠がついていることからも明らかなように、実効あらしめるためには、また経済的に取り組むためには、ある特定の地域だけ、ある国だけで取り組むのではなく、全体で取り組むことが殊のほか重要でございます。
 私どもとしては、地方自治体には、国では実施が難しい、地域地域の自然環境や風土を生かした省エネルギー型、資源循環型の地域社会づくり、都市づくりを進めていただきたいと存じております。緑地帯や屋上緑化のようなことから、さらには都市における小川、水路あるいは運河などの設置なども省エネルギー対策になると存じております。地域の風土に合った温暖化対策や地方自治体にしかできない運動や対策に、地方自治体におかれては力を注いでいただきたいと期待いたします。
 ところで、経団連といたしましては、御案内のとおり、加盟業種のうち二十八業種が集いまして、一九九七年の京都会議に少し先立ちまして経団連自主行動計画を策定いたしました。二〇一〇年における二酸化炭素排出量を一九九〇年レベル以下にするという目標を掲げまして、自主的に取り組んでおります。この実績につきましては、毎年レビューを行い、公表いたしております。現在では三十六業種の参加を得ておりまして、排出量は、ほぼ一九九七年から目標レベルとなっております。
 こうした産業界の取り組みと実績に対しまして、森嶌先生からの御指摘もございましたように、民生部門あるいは運輸交通部門では、依然として排出量がふえ続けているという実態がございまして、今後はこの面での実効ある対策が必要かと存じております。
 もう一点、改正法案の内容に関してお願いがございます。少し細かいことで、大変恐縮でございます。
 法改正では京都議定書目標達成計画の策定を定めておりますが、案によれば、この達成計画として、三月十九日に温暖化対策推進本部で決定されました新大綱の内容がほぼそのままに引き継がれると伺っております。
 新大綱は、環境と経済の両立、段階的な取り組み、自主的取り組みを基本原則としておりまして、この点は私どもとして大いに評価するべきものと考えております。しかし、新大綱に示されておりますエネルギー起源の二酸化炭素に係る部門別や対策別の削減目標は、実は昨年の経済産業大臣の諮問機関でございます総合資源エネルギー調査会報告書におきまして一つの試算値として示された数字がそのまま用いられておりまして、これには不確定な要素が大きいと言わざるを得ません。達成計画に示す目標は、試算値であり、柔軟な意味合いを示すものでありましても、ひとり歩きをいたしまして、硬直的かつバインディングと申しますか、拘束的に使われていくおそれがあると懸念いたします。大綱に示された目標値がそうした特徴を持っていることにつきまして、一層の徹底をお願い申し上げるところでございます。
 さらに、個々の企業や事業所の目標あるいは計画策定とその公表につきましては、企業の自主的な判断にゆだねる方向で御検討をぜひお願いいたしたいと存じます。
 例えば、国内外で熾烈な競争を展開しております業種、企業におきましては、個別の事業所単位で目標や計画の開示を行うことは、エネルギーの利用計画、すなわち生産計画の開示そのものとなり、時には企業機密の開示にもつながりかねないと懸念するところでございます。したがいまして、開示のあり方につきましては、企業、業界の自主的な取り組みと判断をぜひ尊重していただきたいとお願い申し上げる次第でございます。
 なお、既に一部企業は、極めて積極的にこの点について取り組み、情報開示を公に進めていることを付言させていただきます。
 次は、京都議定書についてでございます。
 去る二月、小泉総理は所信表明演説の中で、地球環境問題につきまして特に多くの言葉を割いてその重要性を説いておられます。その中で、環境と経済の両立あるいは原子力発電の重要性などについて強調されておられます。現実を踏まえた的確な方針だと敬意を表しております。
 実は、批准問題は、きょうこうした委員会が開かれるとおり、既に国会の先生方、皆様方の御議論の段階に入っております。ここでまた意見を申すのもいかがかと思いますが、それでも、今批准についての意見を私どもが問われたといたしますと、批准の前にまだやるべきことがあると申し上げたいと存じます。
 その理由の第一は、教育と国民への呼びかけでございます。あるいは国民運動の展開でございます。この点が十分でなければ、たとえ批准をいたしたといたしましても、実効は期待できない、それほど重要なことかと存じます。
 第二は、二〇一三年からの第二約束期間への展望でございます。前述いたしましたように、傾向として、第二約束期間では、第一約束期間以上に強力な施策が避けられないものと予想いたしております。それだけに、批准に当たりましては、ぜひ第二段階への展望について議論をいただき、基本原則を明確にしておいていただきたいと存じます。
 第三は、第二の理由ともダブりますが、アメリカの動向でございます。よく指摘がありますとおり、アメリカに加え、中国、インドなどの参画を何らかの形で求めなければなりません。それが、地球規模で温暖化ガス削減の実効を上げるためには必須であると存じております。
 批准のいかんが国際競争力の格差拡大につながり、日本だけが国際競争においてハンディキャップを背負ってしまうというようなことのないように、先生方の御配慮をお願いいたしたいと存じます。
 最後になりますが、一言申し上げさせていただきたいと存じます。
 日本の省エネルギー技術は、先ほども申しましたように、世界の中でもすぐれたものでございます。この技術を世界に普及するだけで、世界の二酸化炭素排出は相当量削減できると確信いたします。このことを十分に踏まえていただき、ODAや国際的な温暖化問題交渉の場で御活用いただきたい。温暖化をめぐる国際交渉は、もはや環境問題の交渉というよりは、各国、各地域がみずからの利益に最も有利な条件を獲得するための交渉の場だというふうに存じております。ぜひ、こうした国連のCOPの場では、地球温暖化への有効な対策に加えまして、日本国国益の実現のために主張と交渉をお願い申し上げまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。
 大変いろいろ申し上げさせていただいて恐縮でございます。ありがとうございました。(拍手)
大石委員長 ありがとうございました。
 次に、鮎川参考人にお願いいたします。
鮎川参考人 世界自然保護基金、WWFジャパンの鮎川です。
 WWFは一九六一年に設立された世界最大の自然保護団体です。世界の約四百五十万人と一万社・団体のサポーターに支えられ、地球規模のネットワークを基盤として、およそ百カ国の国々で活動しております。WWFは、森林、海水、淡水、有害化学物質、生物の種の保全、そして地球温暖化を六つの重点項目として活動を展開しております。
 私は地球温暖化の担当ですけれども、二十カ国以上の代表から成る国際チームが結成されておりまして、京都議定書を発効させること、そして、まず取り組まなくてはならない先進国の排出削減を実現するために、特に産業界と手を組むなど、さまざまなプログラムを展開しております。本日はその観点からお話をさせていただきたいと思います。
 温暖化の深刻さが起きておると思いますけれども、この三月、南極大陸の最大級の棚氷が崩壊しました。そして、これは厚さ二百メートルもあるラーセンBという棚氷で、広さは三千二百五十平方キロメートル、東京都よりも広い、そういった氷が解け出したわけです。これは三十年で起きた最大の崩壊と言われており、過去五十年間に南極周辺の平均気温は二・五度も上昇しているということで、地球温暖化がもう既に起きているということが言えると思います。
 さらに、ヒマラヤの氷河湖は、多くは解けた氷河や雪解けの水を蓄え、洪水を起こしかねない状況にあるという報告も、この四月、国連環境計画、UNEPの方から出されました。
 つまり、世界では恐ろしい地球温暖化の影響がもう既に起きているということが言えると思います。この地球の温暖化をとめようと、世界の国々が十年以上も話し合った末、ようやく取り組みの合意にたどり着いたのが京都議定書です。これは温暖化を防ぐ唯一の国際協定であり、最も重要で現実的なツールであります。COP7で具体的なルールやガイドラインが決められ、ようやく批准をできる段階に来ています。アメリカがこれから離脱して世界に不協和音を醸し出そうとしておりますけれども、今のところ京都議定書にかわり得る国際的な取り組みはありません。
 これを発効させ、世界の国々が実施に取り組み始めるよう、そして日本は、京都という名の当事国として、一日も早くこれを批准していただきたい。批准の承認が十日以降国会で議論され始めたと聞いておりますけれども、京都議定書の批准というのは最も重要で、温暖化対策推進法改正法案とは切り離してでもこの批准を進めていただきたく、私のきょうの最大のお願いはこれです。
 というのも、日本で六%削減は可能であり、京都議定書批准は経済的効果もあるというお話もしたいです。
 WWFジャパンが昨年発表しました「地球温暖化問題解決のためのWWFシナリオ」によりますと、ハイブリッド車、燃料電池、発光ダイオード照明など、エネルギー効率の高い最新の技術を導入したり、サービス経済へ移行をしたり、自然エネルギーの導入及びCDMやJIなどの京都メカニズムを利用することによって、二〇一〇年までに一九九〇年レベルから一二%まで削減が可能という結果が出ております。つまり、日本は削減しようという政策的意思さえあれば、京都議定書を批准して温暖化を防ぐための具体的なシナリオを既に手にしていると言えると思います。
 また、これも昨年発表したものですけれども、「京都議定書批准は経済的損失をもたらすか」という報告がありますが、これは、日本は炭素削減という規制の中では、これを受け身ではなく積極的にとらえ、技術開発に投資を行い、その結果付加価値率を上げ、GDPを九五年から四百七十三億ドル、約六兆円も上げることができる。企業はエネルギー高価格に反応して新製品の開発や省エネルギーなどの革新に積極的に取り組み、その結果、産業構造は脱エネルギー化に向けて変化していきます。日本はこうした活躍をしてこそ温暖化対策の世界市場をリードするようになれるはずです。
 また、京都議定書発効を支持する企業の署名を集めるエミッション55という運動があります。これはヨーロッパ発の運動で、ドイツテレコム、クレディ・スイス、ヌオン電力会社などが中心になっておりますけれども、既に世界から百六十五社が署名をしております。日本からも、リコー、富士ゼロックス、キヤノン、セイコーエプソン、京セラ、ナットソース・ジャパンなどを含む二十五社が署名しております。こうした企業は、京都議定書を発効させ、脱炭素社会を目指すことが、世界にとっても、そして自分たち企業にとっても必要で、新しい産業、雇用を生み出すビジネスチャンスととらえているわけです。
 以上述べた観点からすると、地球温暖化対策推進法改正法案は、改正の姿勢については評価いたしますが、いわゆる善意や国民運動などによる努力目標だけで、各種規制や税制政策などの具体策については中身があいまいなものになっています。批准を機会に、日本が京都議定書を担保するための強力な施策を備えた抜本的改正を行うことを望んでいたのですが、本改正案では京都議定書を担保するための法律として見直すべき改正が十分に行われていないと認識され、非常に残念です。
 今国会での審議では、批准の承認を確実にした上で、時間の許す限り十分な審議をし、可能な限りの修正などをして強化していただけるよう、本日は、次の点を中心にお願いしておきたいと思います。
 第一章の「総則」、これは「的確かつ円滑な実施を確保すること」とありますけれども、ここの部分は、京都議定書の目標達成を確保することとするべきです。全体的に、京都議定書の削減目標を達成するための政治的意思が感じられるものとしていただきたい。
 次に、温室効果ガス排出量及び吸収量を算定し、これを公表するとありますけれども、これは、実質的な削減を行い、京都議定書の目標達成及び京都メカニズムの運用の基盤となるものであり、これを確実なものにするためには、排出源ごとのデータの把握が必要であります。どのくらいの排出量を削減したかを見るためには、もととなる排出量がベースにあって初めて計算できるわけです。地方公共団体や民間団体が削減の実施状況を把握するためには、事業者等の現状の排出量を把握することが必要であり、これが京都議定書目標達成の第一歩であります。
 例えば、このたび佐川急便が、WWFが行っているCO2削減プログラム、クライメート・セイバーズに参加することになり、覚書を取り交わしたんですけれども、これは、企業の自主的取り組みを第三者認証機関が認証するプログラムです。削減目標を掲げるために、排出の現状データを把握してベースラインを設定し、これを第三者に認証してもらうことになったんです。これこそ、企業の自主的取り組みを客観的に評価し、透明性のある確実なものにする試みです。このような取り組みがもっと幅広く行われるようになれば、企業の自主的取り組みも数量的に意味を持ち、京都議定書達成の基盤ができるはずです。
 第二章「京都議定書目標達成計画」、ここで計画の中身は何も書かれていません。しかし、京都議定書目標達成計画の策定に当たっては、温暖化対策推進大綱を基盤とすると大綱には書いてあります。そのため、計画は、大綱の問題点をそのまま引き継いでいることになります。
 以下、その問題点です。
 国民の合意形成。大綱は基本的に政府部内で検討、決定されたもので、国民の参加がありません。国民の合意のもとでないと、温暖化対策は推進できないわけです。合意形成のための仕組みをつくるべきです。
 それから、現状維持というだけの第一ステップでは間に合いません。既存の取り組みのもとでの温室効果ガス排出量は、既に一九九九年で九〇年レベルから六・八%増加しています。CO2だけでいえば九%の増大で、二〇〇四年までの第一ステップで、今までと変わらず各主体の自主的取り組みを中心としているような状況では、結局、この大幅増大傾向をとめることはできないのではないでしょうか。その結果、対策の実施がおくれ、目標達成がより困難になると思われます。
 第二ステップはどうするのでしょう。第一ステップで温室効果ガス排出量が減少方向に向かわなかった場合、第二ステップからどんなシナリオでどのように対処するつもりなのか、社会全体として今から対策、施策を考え、準備しておかなければならないと思います。特に、炭素税導入とか国内排出量取引など、今までとは異なった、今までにない抜本的な政策が必要であることを今認識する必要があります。
 国民各界各層の努力には、これは国民運動だけではなく政策的支援が必要です。これは、国民各界各層の努力に一・三から一・八%を大綱では充てておりますけれども、国民運動的なものだけでは実現が難しく、こうした努力を数値化して削減量として見込むことは実効性が乏しく、京都議定書目標達成のためのツールとしてはならないわけです。これは単なる努力目標にすぎないので、もっとちゃんとした政策支援のもとにこれを行わなくてはならないと思います。
 それから、京都メカニズムをきちんと使う具体的な仕組みを構築しておく必要があります。
 京都メカニズムというのは、何もしないで浮いてきたロシアのホットエアなど問題も多いんですけれども、きちんと使えば、途上国へクリーンで持続可能な発展に寄与する技術と資金の移転が行われるメカニズムでもあります。途上国はこのメカニズムを通して京都議定書に参加するわけですから、その意味でも多くの民間企業がかかわるよう、民間企業がかかわると得をするような参加インセンティブのある国内制度を構築しておく必要があります。本改正法案では、こうしたことが確実になるような条文が入れられることを期待しております。
 最後に、森林吸収源の問題をお話ししたいと思います。
 森林吸収源の問題は、京都会議以降の最大の難問であります。京都議定書に入れられてしまったものの、樹種により、また樹齢により吸収量が異なり、データが不確実であること、また、山火事や病虫害などにより、吸収側から排出側に回りやすく、永続性がないこと、そして、自然吸収量に比べ人為的な活動に基づくものは計測しにくいことなどから、環境NGOとしては、吸収量は最小限にすることを求めてきました。条約交渉の場でも、吸収源の取り扱いをめぐってはけんけんがくがくの議論が展開され、二〇〇〇年のCOP6はこれが原因で決裂してしまったほどです。
 その問題の森林吸収量を、日本としては、ブッシュ米大統領が京都議定書から離脱したおかげで、例外的措置として本来なら計算できないものまで計算してもいいと、千三百万トンまで認めてもらったわけです。大綱で掲げている三・九%の吸収量というのはそういう数字であります。
 それでも、これを機会に日本の森林を整備し、再生が図られるのであれば、それ自体は悪くない。しかし、新しい政策措置もなく、現状程度の水準で森林整備、木材供給、利用等が推移した場合には、二・九%程度の吸収量しか見込めず、大幅に三・九%を下回ると言われております。このように不確実で実現が難しそうな三・九%分をあらかじめ計上することは、目標達成を極めて危うくするものであります。
 いずれにせよ、日本の森林が価値あるものだと認識を新たにし、真に追加的で人為的な活動を行い、林業が産業として成り立つような基盤を人材確保も含めて整備する必要があります。国産材の利用を広げるために、公共施設や新規住宅などで国産材を一定割合利用することを建築基準で決めたり、バイオマスエネルギーを発電や熱源として利用を拡大し、もうかるビジネスとなる林業を確立しなければなりません。
 さらに、森林の質的側面をあわせて検討すべきです。持続可能な森林の管理、経営へ向けての明確な展望と具体的な実施体制をあわせて示していただきたいということで、WWFとしてのお話を終わらせていただきます。(拍手)
大石委員長 ありがとうございました。
 次に、三橋参考人にお願いいたします。
三橋参考人 千葉商科大学の政策情報学部の教師をやっております三橋と申します。二年前まで日本経済新聞の論説委員をやっていた者でございます。
 私は、いつも話をするのに原稿を読まないようにしているんですけれども、きょうは重要な会議であり、申し述べたいこともありますので、大体つくってきた原稿に沿ってお話を聞いていただきたいと思います。
 地球温暖化の問題は、もちろん、今世紀最大の環境破壊につながるだけに、今回、地球温暖化対策推進法の一部を改正し、強化するための法案が国会で審議されることは、それ自体大変好ましいことだというふうに思っております。
 振り返ってみますと、地球が誕生したのは今から四十六億年前です。これに対して、人類の誕生は五百万年前にすぎません。四十六億年を二十四時間、つまり一日に圧縮しますと、人類の登場は一日がまさに終わらんとする二十三時五十八分ごろなんですね。それからわずか二分足らずの間に、新参者である人類は地球環境を徹底的に破壊し、このままで推移すれば、人類の生存条件そのものをみずからの手で破壊してしまいかねない状況にあります。
 持続可能なあすを迎えるためには、私たちは、これまでのエネルギー、資源多消費型のライフスタイル、企業行動、さらに社会資本の形成や都市構造のあり方などをすべて省エネ、省資源型に転換させていくことが急務になっているわけです。
 今回の改正案は、以上のような趣旨に沿うものであり、趣旨そのものには賛成でございます。しかし、二年前の夏、例えば北極点の氷が、一万年に一回、初めて解けてしまうというような異常現象が発生するなど、地球温暖化の脅威は今、年を追って加速しているわけでございます。したがって、その対策ものんびり構えるのではなくて、早急に大胆に効果的な方法を実施することが必要だろうというふうに思います。
 このような現状を考えると、改正案の中で示されている二章の京都議定書目標達成計画の中身及び達成計画の変更を定めた九条、それから四章の温室効果ガス排出抑制のための施策の三点について、特に幾つかの疑問があり、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。
 まず第一の京都議定書目標達成計画についてでございます。
 これは再三森嶌さん、鮎川さんなどが御指摘のように、九〇年比で温室効果ガス六%削減ということになっておりますが、既に九九年の時点で九〇年比六・八%ということになっているわけですから、削減するとすれば、六足す六・八、一三%ぐらい今の段階でも削減しなくてはいけないわけです。このままで推移すれば、二〇一〇年の排出量は九〇年比で八%ぐらい伸びるだろうというふうに推定されているわけですから、合わせると一四%ぐらい削減しなくてはいけないというような大変な事態を今過ごしているわけです。
 このようなかなり大量の温室効果ガスを削減する手段として、企業や消費者の自主的な取り組みや自発的なライフスタイルの転換、あるいは政府、地方自治体による誘導を中心とした方法にはおのずと限界があるというふうに考えております。やはりこの際、温暖化対策税として、例えば炭素税の導入を図るなぞ経済的手法を導入し、市場機構を通して温室効果ガスの削減を図るべき段階に今や来ているというふうに考えております。
 一般に、炭素税の導入については大変な誤解があるように思います。御承知のように、炭素税は税収の確保を目的とした税制ではございません。人々のライフスタイルや産業構造の転換を促すための税でございます。したがって、その導入に当たっては、バッズ課税、グッズ減税、税収中立ということが大前提になるわけです。グッズとは、好ましい行為、例えば労働、事業活動あるいは貯蓄行為などです。これに対してバッズとは、有害物質の排出による大気、土壌、水質汚染、騒音、振動、悪臭など、好ましからざる行為のことでございます。
 バッズ課税とは、好ましからざる行為に課税して、グッズによって得られた所得に対して減税ないし免税しようという考え方です。この場合、バッズ課税で得た税収をそっくりグッズ減税に振り向け、税収中立を図れば、景気に与える影響もほとんど無視でき、産業構造の転換やライフスタイルの変更を促して、長期的には省エネ、省資源型の経済社会へ移行することが可能だろうというふうに思います。
 例えば、自動車についていえば、デンマークが既に実施している、燃費効率の高い車の保有税を軽減して、燃費効率の悪い車の保有税を引き上げることによって、燃費効率のよい車の普及を図ることが既に行われております。当然、メーカーにとっても、燃費効率の高い車の開発に取り組むことがビジネスチャンスにもつながっているわけでございます。
 このように、市場経済の中に温暖化対策税を組み込むことによって、京都議定書の目標を達成していくことは可能だろうというふうに思います。
 炭素税に代表される温暖化対策税については、産業界の一部から国際競争力を弱めるという批判があります。しかし、このような考え方は、影響をいたずらに過大に見ているように思われます。貿易に重大な障害が出てくることが予想されるならば、国境調整税の導入によって十分対応できるものと考えられます。
 約五十年周期のコンドラチェフの波を見るまでもなく、画期的な技術革新が生まれるのは、多くの場合、厳しい制約条件が立ちふさがっているときとか深刻な不況のときであって、バブルのような浮かれた時代には革新的な技術革新は決して生まれてきません。
 御承知のように、七〇年代のアメリカで厳しい排ガス規制を定めたマスキー法が実施されたとき、アメリカのビッグスリーは、実施の延期など政治力で問題の先送りをしてきたわけでございますが、日本の自動車メーカーはその間に短期間に障害をクリアし、八〇年代の世界市場を席巻したことは皆様御承知のことと思います。
 温室効果ガスの抑制は、今後その重要性が一段と強まってくるものと思われます。この際、日本の消費者や産業界にとっては苦痛を伴う場合が起こるかもわかりませんけれども、温暖化対策税の導入など経済的手法を積極的に使って、省エネ、省資源型のスリムな社会へ転換し、その過程で生み出されたさまざまな省エネ、省資源技術、さらに新しい社会システムを背景に、日本の国際競争力を高めていくことが必要です。京都議定書の目標達成は、そのためのむしろまたとないチャンスだと思います。
 具体的には、二章八条の中に、温暖化対策税なぞ経済的手法の導入に関する項目ということをつけ加えるべきであろうと考えております。
 第二の問題は、二章九条の京都議定書目標達成計画の変更に関する部分です。
 改正案は、二〇〇二年から二〇〇四年の三年間は特別の対策は導入せず、二〇〇四年になって初めて新規の対策を打ち出す、それまでは現状のままでいくというように解釈できます。このような解釈が可能だとすると、二〇〇四年までは幾らいいアイデアがあってもそれを導入しないということで、時間の浪費につながる懸念があります。
 御承知のように、日本の企業は、九七年十二月の京都会議以降、環境経営に真剣に取り組むところが急増しております。環境報告書、環境会計などを通して、年間ベースで省エネ、省資源の成果をチェックする手法を開発している企業も実は少なくありません。このような企業のケーススタディーは、それが公開されれば、ほかの企業の参考になる場合も少なくありません。さらに、環境経営に取り組んでいる企業の中には、現行の法律や制度に問題があり、それをどのように改善すれば、もっと成果が上げられるはずだがというような具体的な提案をお持ちの企業も多々あるわけでございます。
 このような事情を考慮すれば、二〇〇四年になって対策を見直すということではなくて、二〇〇二年をむしろ準備期間として、一年前倒しで二〇〇三年からでも、新しい対応を講ずるなど弾力的な措置が必要だろうというふうに思います。
 繰り返しますが、見直しのための具体的なよい提案があり、二〇〇三年から実施できるようなものが出てきても、二〇〇四年までは新しい措置を講じないという条項に妨げられて、せっかくいい対策も実現できないというような問題点があるわけでございます。したがって、九条の計画見直し時期を前倒しにする必要があるというのが、第二点の提案でございます。
 それから、第三の問題は、第四章の温室効果ガスの排出抑制のための施策に関するものでございます。
 この中で、事業者の温室効果ガスの排出抑制のための措置に関連した部分で、事業者に、排出抑制計画を作成し、公表するように努めなくてはならないというふうに書いてあるわけです。
 地球温暖化対策としては、各事業所がどの程度二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しているかの現状を把握することが、その第一歩であるわけです。その肝心の部分が努力目標にとどまっており、公表義務となっていないところに非常に大きな問題があるように思います。
 温暖化対策を効果的に実施していくためには、先ほど鮎川さんも申し上げましたように、温室効果ガスが日本でどの程度、どの事業所がどのくらい排出しているかということを正確に把握するということがそもそも第一歩であるはずでございます。その第一歩の部分が公表義務ではなくて努力目標というところに、このせっかくの法律の問題点があるような感じがいたします。
 これでは正確な現状把握ができなくなり、その結果、見直し段階で必要な対策を講ずる際にも多大の支障が出てくるものと思われます。企業秘密ということもあるのでしょうが、地球益をその上位概念に置く時代に今や世の中は転換しているわけですね。企業の利益と地球の利益とどっちが大切かということに対して、はっきりとその上下関係を明らかにする時代が今来ているというふうに私は考えているものでございます。
 エネルギー多消費型産業の中には、公表すれば国民の批判を招きかねないといったことを危惧する声が極めて大きいわけでございますが、私は、実際にはその逆ではないかというふうに考えているものでございます。円滑な経済活動のためには、エネルギー多消費型産業の果たすべき役割には依然として大きなものがあるわけです。したがって、エネルギー多消費型産業はけしからぬということじゃないんですね。
 しかし、エネルギー多消費型はいかにCO2をいっぱい排出しているかということで世間から批判されることを恐れて、公表を渋るというふうなことがあっては非常に困るわけでございます。すべてオープンにして、エネルギー多消費型産業としての省エネ努力の現状と今後の取り組み方を示して、国民の理解を得ることの方がはるかに大切なんですね。必要な情報を隠す、一般に公表しないというその姿勢、その精神そのものが問われているわけですね。また、地球温暖化対策を進めていくためにも、まさにその部分を明確にする必要があると思います。
 そのような理由により、第二十二条の事業者の事業活動に関する計画などの公表努力は、公表義務にやはりきちっと置きかえるべきであろうと考えております。
 このほか、五章の森林等に関する問題についても意見がございますけれども、時間が参りましたので、私の意見表明ということにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
大石委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
大石委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西野あきら君。
西野委員 自由民主党の西野あきらでございます。
 本日は、参考人の皆さんには、大変御多忙の中、まげて本委員会に御出席をいただいて、実に示唆に富む数々の御発言をちょうだいいたしました。まことにありがとうございました。
 ただ、率直に申し上げまして、参考人の皆さんの御意見を承っておりまして、この地球温暖化という問題が、御意見の中にも具体的にあるように、まさに今から進めるべきだ、いや、単に規制だとか新税ではもってのほかだ、あるいは修正をすべきというように、かなり御意見が大きく分かれておるかのように思っております。
 私は、この地球温暖化の問題につきましては、既に国会で審議中でございますが、私自身も先般の委員会で、当問題はいわば外交的な要素もあるわけでございますが、我が国のいわば安全保障という問題あるいは経済活動という問題については、当然ながら日米、とりわけ米国の存在を無視するわけにはいかないわけであります。日米の協調というものが大変大事でありまして、これは皆さんも御案内のとおりであります。
 つきましては、桝本さんにまずお尋ねをしていきたいと思うんでございますが、そういった安全保障問題とか経済活動とは別に、この環境問題というのは、いわばグローバルな問題でありましても、我が国として、先進国として、とるべき独自外交というものを安全保障とは違う意味で取り組むべきではないかなというふうに思っています。このことは、我が党の山本委員からも、環境という問題は一つの哲学であるというふうなことで先般も発言があったところでございます。
 実は、御指摘もされておりますけれども、日本の経済研究所の発表等によりますと、これからの途上国のモータリゼーションの発展とか、御指摘がありましたとおり、途上国のさらなる工業化ということがどんどん進んでまいります。それによりますと、推定で、五十年後には恐らく現在の二・五倍、百年後には三・三倍ぐらいが予想されるという発表も、これは桝本さんも御指摘のあったところに関係するというふうに思っています。
 でありますから、今から環境問題について、環境の技術について先行的に投資をして、省エネ、新たなエネルギーあるいは代替エネルギー、そういうものに果敢に取り組んでいかなければ間に合わない、むしろこのように思います。この辺については、森嶌理事長からも御発言もありましたし、桝本さんからも、いわば文明の転換という表現であったように思っております。したがって、我が国が、これから先々五十年、百年を見越して、国際的に環境問題についてのいわばリーダーシップを取り戻す、私は今からその基盤をすべきではないかというふうに思うわけであります。
 きょうは、具体的にここには触れておられませんが、桝本さんが書かれました月刊ケイダンレン二月号に、米国や、中国等途上国、そういうものを抜いて実行の対策というものには問題がある、批准を今急ぐのもいかがなことかなということで、むしろ反対の御意見を発表されておるわけであります。わからないことはありませんけれども、しかし、申し上げたとおり、環境問題が、今先進国として我が国が他の国の動向に、ただ考えるだけじゃなくて、独自外交として、むしろ経済と環境を両立するという意味から、新技術の環境ビジネスの創出という問題もございますので、今国際的なリーダーシップをとっていくべきだというふうにも思っておりますので、改めてここらあたりにつきましての桝本さんのお考えをまずひとつお聞きいたしたい。
 もう一点、先にお尋ねをしておきます。
 きょうはほかの参考人さんからもおっしゃっておりましたとおり、自主行動計画、経団連がいち早く自発的に取り組んでいただいておるわけであります。削減目標の六千五十万トンというのは恐らく試算値であって、これがひとり歩きしているんではないかというふうなお話ではあったと思うんでございますが、この目標は省エネの削減をする全体の三二%にも当たりますし、エネルギー起源の削減では二五%にも実は当たるわけであります。したがって、フォーマットによりまして、お話のように三十五項目にわたって各企業に数値をそれぞれ記入させまして、そして、それを業種別に取りまとめていこう、こういうことであります。
 一方、経団連さんでは、第三者機関に登録をさせていこう、そうすることによって非常に透明性が確保されていくのではないか、こういう点につきましては、私ども大変評価をいたすわけでございます。
 そこで、具体的にちょっと二つ目としてお尋ねしたいことは、この第三者機関は、現在、進捗状況、どういうふうに進んでおるのか、あるいは人選はどのようなことをお考えになっておるのか、スケジュール等もおわかりの範囲でまずお尋ねをしたいなというふうに思います。二点、よろしくお願いいたします。
桝本参考人 お答えさせていただきます。
 西野先生が大変に私の書いたものあるいは発言等を御勉強いただいております点、恐縮に存じます。ありがとうございます。
 まず前段でございますが、この御指摘は大変大事であり、かつ、かねがね私どもが若干もどかしく感じている点にかかわることでございます。
 大局的には、自分の庭の前だけを掃除してよしとせず、先進工業国が全体で取り組むことで実効を上げるということが最も重要で、かつ期待されるところであることは言うまでもございません。
 しかし、残念ながら、昨年、アメリカが京都のフレームワークからおりてしまいました。このおりたこと自体、ブッシュ大統領は、自分の国の経済へのマイナス影響を懸念するというふうに表明はしておりますが、その後、ことしになりまして出されたアメリカの施策を見ますと、私ども経団連のかねて主張しておりますような意味での自主的取り組みを、いわば新しい技術開発並びにその普及をするためのさまざまな政策措置で対応していくという考え方、並びに市場経済をできるだけ使おうという経済インセンティブをつけていくというやり方で考えているように見えます。ここに、実は先生御質問あるいは御指摘の日本の独自性の位置が見えるようなところがございます。
 ヨーロッパは、実は、一九九〇年というスタートラインにおいて、いわばほかの地域にない特徴を持っております。御案内のとおり、東西ドイツの壁が壊れましたのも一九八九年かと思います。ソ連がなくなりましたのも一九九一年。ちょうど一九九〇年というのはいわば従来の路線でのピーク、エネルギー消費もCO2排出量もピークだったわけでございまして、ヨーロッパの一部の国、例えばソ連が崩壊した後の現在のロシアを見ますと、既に三十数%のエネルギー消費のマイナス並びにCO2排出量の削減ということが起こっているというほどの変化のある年でございます。
 一方、アメリカと日本は、一九九〇年に対しまして出てきている排出量はふえておりまして、ここにヨーロッパとアメリカ、日本の、既に十年余の間の大変なギャップが見られます。
 このギャップをどう認識するか。日本は、これから先生方の御議論を経てあるいは批准ということになるかもわかりませんが、そういう大変ハンディをしょいながらも、京都ということを大事にして頑張ろうというように私には拝察できます。ただ、アメリカの考えている現実路線は、環境問題も重要とはいえ、いわば米欧の勢力の外交交渉上の争い、そうしたもので覇権をとっていこう、ヨーロッパに覇権をとらすまいというような意図が私は見え隠れするように思います。そういう中で日本はどうするかという御質問かと思います。
 要は、日本は、先ほどもお聞きいただきましたが、省エネ技術において相当すぐれたものを持っております。この省エネ技術と申しますのは、一つ一つの単体の機械、機器、それも効率的でございますが、それをより組み合わせてシステムとして使うという意味でも日本はすぐれたものがございます。私は、日本はこの技術をいかに開発促進するか、そしてそれをいかに世界に普及させるか、それが大きな軸になるというふうに存じます。世界で一人当たりGDP四万ドルに及ぶような大変豊かなフローを生み出しているのは、日本の産業界と産業技術力であることは言うまでもございません。この産業技術力を環境交渉においてもフルに使うという姿勢が、私は日本には欠かせないというふうに思います。
 批准につきましては、先生方の御議論次第でございますので、今さらここで私がどうこう申すのもいかがかと思いますけれども、日本に必要なことは、日本にとって最も国益に応じたものを切り札として用意していく、こういう姿勢が非常に大事であるというふうに存じますだけに、先生御発言の中にあった技術開発、あるいは日本の独自路線でどうするんだ、この辺は、日本の持つ産業技術、そしてお金で、およそ一兆円近いODAを毎年やっておるわけでございますが、これを生かしながら、日本で削減するほかに、日本の技術を各国に普及することで、実効ある意味でCO2の削減を図るというようなことを日本のこれからの独自路線とするべきである。
 この点においては、私は、アメリカの技術開発を促進しようという方向と大いに手を組んでいいのではないか。既に環境省も、あるいは経済産業省も、国としてアメリカの技術開発と手を組んで一緒にやろうということが確認されていると私は理解しております。そういう意味では、ヨーロッパに対して、日本が京都議定書からおりてしまったアメリカと技術開発路線で手を組むというのは、大変に重要かつ大事なことではないかというふうに考える次第でございます。
 それから、経団連の自主行動計画に対する第三者機関の現状でございますが、これは御指摘のとおり、昨年からこの検討をしておりますが、実は、この間に国連の場あるいはISOの場でも、温暖化ガス排出に係る測定、報告、実証のガイド案というものが検討され始めておりまして、この検討状況なども私ども十分勘案しながら、登録機関、第三者機関をつくっていく必要があるということで、まだ勉強中というのが実際でございます。
 ただ、世の中に公表しお願いを申し上げたところでもございますので、私どもとしては、まずは学者先生を主査として、第三者評価委員会というものをとりあえず設置してワークさせていきたいというふうに考えております。
 第三者認証機関というものが、認証という国際的な行為の中で認定されるためには、ある意味で大きい広がりと深みが必要でございます。そういう意味では、まだまだ検討のところが多々ございますので、若干時間を要するかと思いますだけに、現実的には、その前に第三者評価委員会というものを設置いたしまして、ここで学者先生あるいはシンクタンクの方々、NGOの方々にもお入りいただいて、各業種からの報告についてのレビューを改めてしていく。言葉ではっきり申せば、報告内容の的確性をチェックする。それから、経団連自体がやっている集計、計算方法、こうしたものが的確かどうか、それもチェックしていただき、仮称でございますが、第三者評価委員会で検討した結果を公表させていただくということを現在考えております。
 以上でございます。
西野委員 時間が限られておりまして、せっかくでございますので、もう一点だけ桝本さんに聞かせていただいて、あと、各先生方にそのアイデアについて私はお尋ねをしたいな、もしもありましたらお答えをいただきたいなと思います。
 実は、東電さん初め三菱電機さんが、民生部門に係ります特にエネルギー消費の問題で、例えば家庭内にありますモニターで、あなたの御家庭は今月のCO2は杉何本に当たりますよという表示のシステムをスタートされておるかのように承っております。大変おもしろく、またわかりやすいことかなというふうに思っています。
 現に、これは東京都内のあれでございまして、私は大阪でございますけれども、関西はこれはまだやっていませんが、東電さんは電気の使用量の各家庭の領収証の中に、今月の使用量はキロワットアワーで表示していただいておるのですね。キロワットアワーというのはわかってわからないのでございまして、これが、もしも可能ならば、おたくの今月の使用量は、キロワットアワーじゃなくて、CO2の排出量は幾らですよというものが出れば非常にわかりやすいんじゃないかというように思います。
 そういうお考えがあるかという点が一点と、きょうお見えの参考人の皆さん方に、民生部門で、今回もいろいろ推進法をつくったり、あるいは協議会をつくったり、いろいろやろうと国もいたしておるわけでございますが、まだまだこれは緒についたものでございまして、広く国民に徹底はまだしていないというふうに思います。いかに国民に理解を深めて、これらの温暖化の防止に一役を買ってもらう国民のために、どのような方法、啓蒙、アイデア、そういうものがもしもございましたら、一言で結構でございますので、お示しをいただけたら大変ありがたい、このように思います。
大石委員長 桝本参考人にお願いいたします。
 既に西野あきら君の質問時間は終わっておりますので、短時間でお答えをいただきたいと思います。
桝本参考人 申しわけございません。手短にお答えさせていただきます。
 今御指摘のとおり、現在、東京電力と三菱電機さんで、家庭用ホームエネルギーマネジメントシステム、略しましてHEMSと申しますが、こういう試みをしようということで、それぞれの社宅十軒ずつに、そこでお使いになったエネルギー、電気もガスもガソリンも全部表示して、自分のうちがどのくらいエネルギーを使っているかということをわかるような仕組みをディスプレーでやろうということを、実験を始めつつあります。これは、千葉と川崎でそれぞれの社宅十軒ずつに始めたばかりでございます。その中に、今御指摘の、そのエネルギー量は炭酸ガスでどのくらいを排出したことになりますよということを入れる方向でおります。
 これは、炭酸ガス何キログラム、何トンといってもわかりにくいものですから、杉何本ということでやるつもりでおりましたら、新聞が御紹介いただきましたら、花粉症の方から、字を見ただけで花粉症がひどくなるから杉じゃなくしろという御指摘がありまして、関係者は頭を悩ませておりますが、要は、御家庭でお使いになったエネルギーの量がどのくらいの排出につながっているかをお教えする仕組みを機能して、消費者の皆さんに情報を提供したいと考えております。
 それから、二点目の検針票、領収書でございますが、この夏から、七月からと聞いておりますが、私ども東京電力の二千六百万軒の方々の領収書の後ろ側に、おたくの消費量三百キロワットアワーですと、一月これは排出何キログラムに相当しますといういわば対比表を示させていただいて、消費者の皆様にもこの問題に大いに御関心をいただくように便宜を供与させていただきたいというふうに考えております。
西野委員 アイデアの問題で何かありましたら。なければ結構です。
大石委員長 時間となりましたので、もし御返答がなければ終わらせていただきたいと思いますが。
西野委員 どうもありがとうございました。
大石委員長 牧義夫君。
牧委員 民主党の牧義夫でございます。
 本日は、参考人の皆様、お忙しい中おいでいただきまして、また貴重な御意見を賜りましたことを心から御礼申し上げたいと思います。貴重な示唆に富む御意見であると同時に、皆様方のそれぞれのお立場もよく理解できるような、そんな内容であったかなと思った次第でございます。
 私どもの立場を申し上げれば、リオ・プラス10に向けまして、この京都議定書、いよいよ締結に向けてその批准がなされるということなわけで、それをぜひとも進めていかなければならない、そんな立場でございますけれども、ただ、国際社会の中で、これは約束事でございますから、その約束がしっかりと私どもの国として実行できる、その裏づけになる、その担保としての法案かどうか、その辺のところをしっかり見きわめた上で、まだそういった意味でこの原案に賛成していいものかどうなのか、その辺のところを決めかねている立場であるという前提で皆様方に質問をさせていただきたいと思うわけでございます。
 ただ、先ほどからお話が出ておりますように、九九年度で九〇年比、全体で六・八%既に増加しているということでございますけれども、この間全く温室効果ガスを削減しなければならないという認識がなかったわけじゃないわけで、そういう認識のもと、全く野方図にいろいろな経済活動あるいは消費活動が行われていたわけじゃない。そういう中で六・八%の温室効果ガスの増加があったという事実は、やはり重く受けとめなければならないと思うわけでございます。九〇年十月に関係閣僚会議で地球温暖化防止行動計画というのが策定されたわけで、その中で九九年に六・八%の増加を見てしまったというその事実というのは、私は重く受けとめる必要があるんじゃないか。
 つまりは、今回新大綱ができて、その新大綱を土台にして目標達成計画ができたとしても、では前の計画もこういった結果に終わったのに、新しい計画が今度は大丈夫だというその辺のところがどうも腑に落ちないというか、十分納得いく説明をいただかないといけないなと思うわけでございまして、その過去の反省というか、どうして九〇年の行動計画が実行されなかったのかというようなことももちろん踏まえての上での今回の答申であり、新大綱であろうと思います。その辺のところをどういうふうに分析されているのか、まずは森嶌参考人にお話を伺いたいと思います。
森嶌参考人 お答えさせていただきます。
 九〇年の政府の取り組みにつきましては、私どもは政府がいろいろなメニューを挙げて取り組まれることについては全面的に賛成し、協力してまいりたいと考えておりましたけれども、あそこでは、メニューが並んでおりまして、具体的にいつ、どのようにして、どれだけの効果を上げるということについての、計画ではありますけれども、きちっとしたスケジュールづくりができていなかったわけであります。その後の大綱もやや似たところがあります。
 これからの、今度できました新大綱についてでありますけれども、ごらんいただけますように、必ずしも明確に、いついつまでにどれだけの効果を上げるということがメニューの中に示されているわけではありませんけれども、現行の施策はこれだけである、そしてこれに対してこれだけの追加の策をとる、その際に、これについてはこれだけの、場合によっては具体的な数字を挙げてこういうふうに取り組むということでありまして、実は審議体である中環審の会長として、これをどう実行するのかというお答えをする立場にはありませんけれども、少なくとも政府においてこれを実行しようとするならば、各関係省庁において大綱に書かれているものを具体的なスケジュール表にのせて、あるいは、最大の問題は予算、それにかかるお金がどのように配当されるのかということについて何も言及がないではないかという御意見もありますが、まさに各省庁に予算を重点的に配分をしていくことによってこの大綱を実施するならば、私としては今までのものに比べてはるかに実現性があるものではないかと思いますけれども、これはもうよってかかって政府がどれだけの意思を持ち、どれだけの予算を割いて、あるいは人員を割いてこの施策を実施するか、また協力を求められた産業界その他のセクターがどのようにしてこれに対応するかということにかかっておりますけれども、私は計画としてはこういうことではなかろうかなというふうに考えております。
 以上でございます。
牧委員 ありがとうございました。
 次に、桝本参考人にお尋ねをしたいと思います。
 新大綱では、産業部門、マイナス七%目標ということでございますけれども、またその対策の大半というのが経団連の自主行動計画に依存しているわけで、ここではプラス・マイナス・ゼロを目標ということでございます。
 新大綱あるいは議定書の目標達成計画に従って、自主計画というのもこれは修正していくんでしょうか。それともしないのか。そして、この目標達成の担保というのは一体どこにあるのか。だれがどう責任を持ってそれを推進していくのか。
 先ほど桝本参考人のお話の中に、もうこれは国民全体の取り組みである、各層の徹底的な取り組みが必要、まさに文明の転換というお話がございました。全く私もそのとおりだと思うんですけれども、一方で、桝本さん否定されましたけれども、規制や税制という経済的な手法というのもなければ、やはり実行は担保されないと思うんですけれども、その辺も含めてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
桝本参考人 お答えさせていただきます。
 まず、既に九〇年比六・八%ふえている、これはそのとおりに理解をしておりますが、その内容をぜひごらん賜りたいというふうに存じます。産業界も、期待されたマイナス七にまでは実はほど遠いというのが残念ながら実情ではございますが、これまで主にふえている部門は、よく言われますとおり、民生と運輸交通部門でございます。
 したがいまして、何せ全体を減らすということで、まず産業界ももちろん第一に努力をいたしますが、先生方の御指導を賜って、ぜひ力を注いでいただきたいところは、残念ながらこれまでふえてしまった民生、運輸交通部門でございます。
 民生、運輸交通部門がなぜふえたか。これは私に言わせると、行政が縦割りになっておりまして、一つの省庁だけでこの部門では実効が上げにくいからかと、それも一因かと私は存じております。ぜひ、この民生、運輸交通部門で削減に実効を上げるために、省庁の壁を超えたお取り組みをお進めいただきたいとお願いを申し上げます。
 それから、経団連の自主行動計画、九〇年比、二〇一〇年でゼロ、これにつきましてはこれまで着々と努力をしてきておりまして、その線で来てはおります。
 ただ、御案内のとおり、どうやって担保するんだ、これを間違いなくできるのか、信頼できない、非常に極端に申しますとそういう御意見もかねてございまして、経団連としては、先ほど西野先生からの御質問にもあり、お答えをさせていただきましたが、我々のやっていることを多くの皆様の目で評価をしていただく。その前に、でき得れば、ある第三者機関をつくりまして、とりあえずは第三者委員会をつくるように考えておりますが、そこで評価をしていただいて公表し、公表した段階でいわば皆様の目にさらすということで、我々のやっていることをいわば社会的な目にさらすという形で担保をさせていただきたいというふうに考えております。
 それから、マイナス七%の、実は大綱の付表にございます数字でございますが、これは残念ながら、私、意見の中で言わせていただきましたけれども、昨年の資源エネルギー庁の諮問委員会で、幾つかケーススタディーのような試算値が行われました。その試算値の中で、文言としては期待される数字として挙げられた数字でございまして、私どもは、その段階から、このマイナス七は残念ながら難しい、努力をするけれども難しいと言い続けている数字でございまして、ここにつきましては、先ほどお願い申し上げましたが、極めてバインディングあるいは拘束的なものでなくて、大きな期待値として、我々も努力はするけれども、とりあえず我々が表に掲げるのはゼロでいきたいというふうに考えているのが実情でございます。
牧委員 よくわかりました。
 時間がございませんので、本当は三橋先生にもお話を伺いたかったんですけれども、申しわけございません、せっかくおいでいただいて。
 時間がないので、鮎川先生にお伺いをしたいと思います。
 この温暖化対策の取り組み、国やら地方自治体、事業者、そして国民の各層が全体で、それぞれの取り組みが重要であろうという認識は全く同じ認識を持っているわけでございますけれども、それにしても、その国民の取り組みを期待するには、どうもこれまでの計画そのものが国民不在のところでなされてきたというようなことがネックになっているというお話も先ほど来出ておりますけれども、息の長い啓蒙活動、また、計画策定段階からの市民の参加というのが極めて重要だと私は思っております。
 実際、これからいろいろな計画の策定もあろうかと思うんですけれども、具体的にどういう形の参加が望ましいとお考えなのか、どんな政策が有効であるとお考えなのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
鮎川参考人 ありがとうございます。
 まず、大原則としては公開性ということがありますし、情報へのアクセスというものが必要だと思います。そして、例えば検討委員会など、そういった審議会があった場合には、一定の枠、何%の人をやはり市民代表にするとか、そういった仕組みをあらかじめ決めておいて、何人かにするとかやる。
 そして、パブリックコメントの制度は今ありますけれども、これもすごく期間が短いので参加しにくいということもありまして、もっと期間を長く、そしてコンセンサスが得られるまでやるというような、そういった長い、本当の意味のパブリックの意見を聞くという、今のやり方ですと、聞きおくというだけで、何の意見の反映もされないということがあります。
 それと、今のパブリックコメントの問題としては、動員がありまして、非常に民主的ではない方法でもってパブリックコメントが行われているということがありますので、そういうことも防ぐためにも、やはりもっと期間を、そして一定の割合というような、割合を決めておいて参加するというような、それと、意見がきちんと反映される、結果として出るということが一番重要かと思います。
牧委員 もう一点、鮎川さんにお聞かせいただきたいと思うんですけれども、先ほどのお話の中で、WWFシナリオでは、この目標が十分達成可能であるというお話がございました。どんな削減シナリオを描いておられるのか。それが実行可能であるというような、納得できるポイントだけちょっとお聞かせいただければと思います。
鮎川参考人 このシナリオは、要するに、この技術とかサービス経済への移行とか、そういったことが必要だとまず政策決定者が決定しなくちゃいけないんです。政策決定者がそういったことを必要だと思ったら、それを普及させるための政策をつくるわけですから、そういう意味で、いろいろなオプションがあるよということを示したシナリオです。
 ですから、この中で、これをやることが日本の六%削減にとっては最も欠かせない部分である、そういうような認識を持っていただいて、それを実行することに、それに対して支援措置とか政策をつくっていくことによって、さまざまなコストの問題とかがクリアされていくのではないかというふうに思っておりますので、私たちとしては、実行可能のところは政策決定者にお願いしたいというふうに思っております。
牧委員 時間が来たので、これで終わります。ありがとうございました。
大石委員長 西博義君。
西委員 公明党の西博義でございます。
 きょうは、四人の先生方、大変お忙しいところ、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。議論はまだ当委員会でも始まったばかりですけれども、大変私も目を開かれた御意見、たくさんちょうだいして感動いたしました。若干そのことにつきまして、補足的に先生方の御意見をちょうだいしたいと思います。
 初めに森嶌先生にお伺いしたいと思うんですが、私、常々、京都議定書以降のことにつきましてどうなるのかということについて、自分なりに考えてまいりました。つまり、第二約束期間に入りますと、この条件がさらに厳しくなってくるのではないか、これは桝本参考人もおっしゃったとおりですが、確かにそういうことになってくるというふうに思っております。
 といいますのは、枠組み条約自体が、最終的にはCO2濃度を一定に持っていく、こういうことが最終の目的に書かれておりますだけに、今回の京都議定書が、この約束期間が第一回目のいわば国際的な約束事だと思うんですが、このことを我々が実践していくことにおいて、気候に対するどういう地球の状況が生まれてくるのかということが、もう一つ先の状況が我々を含めて国民の皆さんにはわからない、わかっていないというふうに思っているんです。
 というのは、これを実践していく、とりあえず六%、国民、皆さんが総力を挙げて協力をしていくことが地球そのものに対してどういう役割を果たしていくのかということを、もう少しわかりやすく説明をいただければありがたいな。今までずっとこの地球温暖化の問題に取り組んでこられた参考人の先生の御所見をお伺いできればと思います。
森嶌参考人 それでは、お答えいたします。
 京都議定書といいましょうか、第一約束期以降どうなるかということでございますけれども、まず私の考え方では、第一約束期に何らかの効果といいましょうか、実効性の問題はともかくとして、国際協力の仕組みが実を結ぶということでなければ、私は次のステップというのは考えられないと思います。
 自然科学的な状況としましては、IPCCの予測にございますように、これは、海面が九から八十八センチ上がるとか、ちょっと覚えておりませんけれども、一・何から何度上がるとか、大変大きな影響が今のままだとある。その意味では、いずれにしても今の状況を続けられないことは確かでありますけれども、いずれにしても第一歩を踏み出さなければならない。
 私は、世界全体で先進国が五%の削減をしたところで、その全体に対する影響というのは現時点では余り多くないと思いますが、だからといって、一部の方が主張されるように、実効性がないのだからやめたらどうだ、途上国が入っていないのに日本がやることはないではないか、アメリカはそのあれですが、しかし、途上国の問題につきましては、既にこれは議定書の前の、前のといいますか、その基本にあります枠組み条約自身で途上国と先進国の間の区別をつけているわけでありますから、先進国がまずきちっとやることをやらなければ、途上国としては、当然のことながら、なぜおれたちだけ義務を果たすのだということになりますので、私は、第二約束期間、あるいは場合によっては第三約束期間ぐらいになるかもしれませんけれども、途上国にはぜひ入ってもらわなければならない、特に中国とかインドとかいうのがありますので。そのためにも、第一約束期間で先進国がともかく範を示すというか着手すること、そして、削減の可能性があるということを示すことであります。
 私自身、日本も含めて、本当に二〇一二年までに今考えているようなことはできるのか、それとも、思ったよりももっとできるのかということについては、今の時点で必ずしも明確に見通しを持っておりませんけれども、少なくともそれに着手しなければいけないわけで、その点では、私は、アメリカが自国の利益のためにこの枠組みに入らないということは大変残念に思います。
 先ほど鮎川さんがおっしゃったように、京都議定書をつくるまでに十年かけて、しかも、まだ必ずしもきちっとまとまっているわけじゃないわけですけれども、これを別の枠組みでやろう、しかもアメリカの言っていることは、京都メカニズムのように、経済的手法がアメリカの主張で京都議定書の中に入っているわけですけれども、それを新たにつくるということはとても無理であろうということで、その意味では、京都議定書をまず動かし始める。そして、これは二〇〇五年から第二約束期の検討を始めることになっておりますけれども、その中で将来の図を描き、その中では、やはりアメリカが復帰するということも重要ですし、それから途上国に対しても先進国の実績を見せながら、先進国が支援をしながら、義務づけを行う、そういうことでなければならないというふうに思っております。
 現時点では、第二約束期以降どれだけの削減率が出てくるのかということについては、私は確たる見通しはありませんけれども、いずれにしても、第一歩を出発させなければ、すべてはIPCCのワーストシナリオのようになってしまうというふうに思っております。
西委員 ありがとうございました。全く私もそのように思います。
 いずれにいたしましても、世界各国が協調しながら、もちろん最終的には、先進国だけじゃなくて世界のすべての国がこのことに対して協調していくということは、先生おっしゃるとおりだというふうに思っております。
 その上で、時間も余りございませんので、もう一つ森嶌先生にお伺いしたいんですが、このステップ・バイ・ステップのアプローチ、これは、二〇〇八年から一二年までのこの約束期間に到達する上においては、なだらかな目標達成という意味では必須の問題だと私も思っております。新大綱もできまして、それに向かって具体的に進み始めているわけですが、三つのステップをつくっておりますが、それぞれ追加的な対策も含めてなだらかにという表現が出ておりますが、それぞれのステップに対する目安ぐらいはあってもよかったのではないかなという感じを私は持っているんですが、先生の御意見をお伺いしたいと思います。
森嶌参考人 お答えさせていただきます。
 目安と申しますか目標としては、第一ステップであれ第二ステップであれ、私は六%ということであろうかと思います。ただ、それが目安といいましょうか目標であっても、実際には私はそうはうまくいかないのではないかと思いますけれども。
 それから、先ほど、三橋先生、第一ステップでは何もやらないということだったのですが、第一ステップは、現行で法律が存在するもの、例えば省エネ法などを強化することによってどこまでやれるかということでございます。やはり法律をつくるのは、私が申し上げるまでもない、先生方、なお一層御存じでありますけれども、ある意味では現状と目標との妥協ということでありまして、現時点で、この経済情勢の中で急激に施策をとるということのマイナスのインパクトというのは非常に大きいかもしれないということでありまして、ステップ一では何もしない、ステップ二でちょっとやってみる、ステップ三で慌てるという趣旨では全くありません。少しずつやりながら、足らなければ足していくということであります。
 私は、その意味では、このステップ・バイ・ステップのアプローチの最も重要なことは、その都度その実績についてフォローアップをして、きちっと評価をしながら、さて何が足りないのかということを検討していく。従来の計画は、立ててそのまま何十年もこれでやりましょうという話になっておりますけれども、私はその点で、先生はなだらかとおっしゃいましたけれども、なだらかなことを考えるのではなくて、現実への影響と、それから削減の実績とを常に評価しながら次へ進んでいく、そういうステップの方法だというふうに考えております。
西委員 時間がもうなくなってしまいまして、最後、鮎川先生、ちょっと途中飛ばしちゃって申しわけないですけれども、時間がございませんので、森林の吸収のことについて、ぜひともお伺いしたいと思うんです。
 日本という国は、もう七〇%が既に森林である、その整備の状況は別にいたしまして、いわば森林国でございます。その森林を整備することによって、今回、吸収量をふやす、そしてそれがカウントされるということになっているんですが、その森林の整備そのものが、もちろん、どれだけ整備されたかということがカウントの条件だと思うんですけれども、必ずしもそれがすべてCO2の固定化につながる、つまり木を太らせるとかそういうことにつながらないのではないか。
 もちろん、参考人がおっしゃるように、それが林業につながっていくという側面の効果もあるし、どうせ林業につながっていくにしても、CO2の吸収にもつながるような整備の仕方というのが、今回の状況に即してはぜひとも必要な側面ではないか。枝打ちをするのが、また間引きをするのが、一つ一つがどうCO2の固定化につながっていくのかということを少し検証していかないとだめじゃないかという問題意識を持っているんですけれども、自然保護の専門家でいらっしゃる鮎川先生の御意見をちょうだいしたいと思います。
鮎川参考人 ありがとうございます。
 確かにおっしゃるとおりで、私たちとしても、森林の整備によってすぐそれが吸収量につながるというふうには考えておりませんし、条約の中でも、追加的な活動でなくてはいけないとか、九〇年以降の人為的な活動によるものだというような状況がありまして、そういったものをきちんとまず確保しないと吸収量としてカウントすることはまずいというふうにというか、日本の今の懸念しているところは、今ある森林をそのものを何らかの形で全部カウントしたいというような政府の意向があるみたいなので、それは間違っている。それは本当に九〇年以降に行われた新規の活動であり、そしてそれが人の手による人為的な活動であるというふうにきちんと証明できないと、ある意味で吸収はできないわけです。
 NGOとしましては、吸収量で削減してしまうのは一つの大きな抜け穴であるというふうに考えておりますので、やはり一番はエネルギーのところで削減することがまず第一で、それを重点に置いて日本の削減政策は立てていただきたいというふうに思っております。
西委員 時間です。終わります。
大石委員長 樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうは、参考人の先生方、お忙しい中を御高説を賜りまして、本当にありがとうございました。心から感謝を申し上げます。
 まず、今回のこの一部改正案につきまして、私、何か本当に一番重要なところがちょっと抜け落ちているんじゃないかなという問題意識を持っております。そして、そのことにつきまして忌憚のない御意見を鮎川参考人と三橋参考人から賜りたいと思います。
 それは何かと申しますと、まず国の率先実行という部分なんです。例えばCO2排出削減に対して、では環境省がどれだけ努力したかという部分を、国民の前、そして企業の方々にまずきちっと示すという、みずから、隗より始めるという言葉でしょうか、その部分がないと、結局ついてこない。市民、国民、そして企業さんにとっても、そして地方の自治体にとっても、国が今回こういう法律案をつくっても、やはり私、最終的には信頼関係だと思うんです。
 そのときに、では、環境省に限らず、国の機関ということでもいいと思うんですけれども、国会がどれだけCO2削減のために努力したのか、総理官邸はどれだけ例えば電気、光熱を――もちろん必要な部分はしようがないと思います。それはやむを得ないのはわかっておりますが、まずみずから率先実行を行うということが抜けているということで、やはり国、地方公共団体の責務のところにきちっと、数量的な目標計画を策定して、これを公表する、そして努力規定を設ける、またそのことについて毎年把握をし公表する、公開をするということが必要であると思います。それと同時に、京都議定書目標達成計画の中でも、いわゆる数量的率先目標を定めることを明記すべきであるというふうな基本的な考え方を私は持っておりますけれども、いかがお考えになりますでしょうか。
鮎川参考人 おっしゃるとおりだと思います。
 やはりまず、削減をするためには、どのぐらい排出をしているかということを把握するということが必要ですので、それぞれの機関がそういった排出状況を把握しまして、それをベースラインに、どのぐらい削減するかということを明確に計画を立て、そしてそれを公表し、そしてそれを実施して、その実施状況も公表する、そういうシステムをやはりつくるべきだというふうに思っております。
三橋参考人 樋高さんのおっしゃることは、全く賛成なんで、異論を挟む部分はありません。
 私がいろいろ取材している感じでは、例えば中央の省庁でいえば、環境省はやはり一生懸命やっていると思うんだけれども、余り環境問題と関係ないようなほかの省は我関せずというような感じがありますね。それは企業なんかについても同じようなことが言えるわけです。環境セクションは一生懸命やっているけれども、ほかのセクションは一生懸命やっていないというような問題がありますけれども、とにかく、おっしゃったように、率先実行してやる部分を明記すべきであるというのは全く賛成です。
樋高委員 どうもありがとうございます。
 次に、森嶌参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 いわゆる地域協議会、地球温暖化対策地域協議会というのが今回盛り込まれております。この地域協議会は、日常生活に関する温室効果ガスの排出削減に関して協議を行う、話し合いをするということでありますが、この二十六条第二項、細かい話になってまいりますけれども、この中で、その協議結果を協議会構成員は尊重しなければならないという規定になされておりますが、私は、これに加えまして、このいわゆる協議の中、話し合いの中では、当たり前のことなのかもしれませんけれども、国民もしくは地域、市民の意見を反映また尊重ということを明記すべきでないかというふうに考える。
 当たり前のことなんですけれども、そんなのわかっているじゃないかと言われればそれまでなんですが、何のために話し合うのかということを明らかにするために、文言としてきちっと、意見を反映して尊重すべきじゃないかというふうに入れるべきと私は考えるのでありますが、議論の中で、そこの部分がなくなった何か理由があるのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
森嶌参考人 お答えいたします。
 特にこの問題について細かな議論をしたということではございませんけれども、この規定の趣旨は、要するに、国民各界各層が一体となって協力をするということと、それから、地球環境問題でも、シンク・グローバリー、アクト・ローカリーということですけれども、やはり地域がきちっと行動をしなければいけないのではないかということで、このような名の協議会という、ちょっと名前は大仰ですけれども、要するに話し合いの場をつくり、そしてその話し合いの場で出てきたことについてみんながやっていこうではないかということを、一種の自主的取り組みを促すための方法として規定したわけでありますが、先生おっしゃるように、その際に、当然のことながら地域の住民の方の意見を反映させるということは期待されているわけで、それを、条文の中に尊重するということを書くべきかどうかということは、立法者が御判断になることでございますけれども、私は、仮になくても、それはもう当然のことというふうに考えておりますし、また、それを規定することは、先生がおっしゃったような趣旨を強めるということになりますので、こういう条文の中に入れるということについては、私は賛成をいたします。
樋高委員 あわせて、ここの部分につきましては、地域の方々への普及啓発に向けて積極的に行うという努力規定も設けたり、また財政的支援を外せないものであるというふうに考えます。
 続きまして、桝本参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。
 経団連さんの自主的取り組みにつきましては、まず心から敬意を表します。そして、おっしゃいましたとおり、確かに自主的取り組みで削減ができるのであれば、本当にそれが一番ベストなことであるというふうにも私も思うわけなんでありますけれども、本当にできなかったときに、やはりどうしても規制的手段をとらざるを得ないというふうに直面をしたときに、個人的な御意見で結構でありますけれども、では規制的な取り組みをもしやるとしたら、今のお立場もわかりますし御意見も重々わかっている上でのお尋ねなんでありますけれども、私自身は、将来的には環境税、そして夏時間制、そして環境教育、この三つのある意味でドラスチックな柱をきちっと立ててやらなくちゃいけないというふうに考えるのでありますが、そのことにつきまして御意見を伺いたいと思います。
桝本参考人 ありがとうございます。お答えさせていただきます。
 今先生の、仮にできなかったらどうするか、実はこの問題はいろいろなことを考えさせられる御質問でございます。
 例えば、日本の今の経済の状況は、国際的に見ましても、先進国の中でも極めて豊かな実態がございます。為替レートによりますが、日本はGDP一人当たりはアメリカとほぼ同じぐらいの経済水準でございます。なおかつ、世界全体での生産のウエートを見ますと、為替レートにもよりますが、大体一五%から一六%ぐらいの生産を日本は受け持っております。これだけの生産、いわば大変頑張っている、そのために、二酸化炭素の排出というのも、その一種のコストとして生じているというのが実態でございます。
 私は、この日本の豊かさをどう考えるか、ここが実は考えどころでございまして、あるいは国民の選択によっては我々の生活水準を見直そうというようなことすらあってもいいのかもわからないと個人的には思います。ただ、これについては、大いに議論をし、先生方にお考えいただき、国民に問題を投げていただきたい。残念ながら、今の日本はお金のタームで価値がすべて決まっております。そのほかに価値はいろいろあるはずでございます。そうしたこともぜひ御配慮いただきたい。
 それから、自主的取り組みにつきましては、私は総力戦で徹底してやる必要があるというふうに思います。果たしてお国で今国民の皆さんに、地方自治体は地方の方々に問題をどのぐらい提起しているか。何をやったらこれは役に立ちます、CO2削減につながります、環境にいいですよという情報をどのぐらい出しているか。おやりになっている方は出しているとおっしゃっていますが、私は必ずしも十分ではないというふうに思います。環(わ)の国の会議なども、大変いい試みが始まりましたが、まだまだ周知不十分でございます。私は、国民を信頼して、教育の場、実業の場、地域の活動の場、あらゆるチャンスで我々の生活を見直しエネルギーをより少なくしよう、そして地球環境に取り組もうというメッセージを出し続けるという意味で、もっともっと自主行動はやるべき価値があるというふうに思います。先生御質問のいわば規制、制度的措置はその後で本来考えていただきたいというふうに個人的にも存じます。
樋高委員 どうもありがとうございます。
 鮎川さんにお尋ねをさせていただきたいと思います。
 資料の中にさまざまなこの法案の問題点、御指摘をいただいております。ありがとうございます。その中でも、特にこの点だけは絶対に外せないというところがありましたらちょっと御指摘いただきまして、またその理由もあわせて御開陳をいただきますればと思います。
鮎川参考人 繰り返しになるかと思いますけれども、私としては、第一ステップが何もないというところに非常に大きな問題があると思っております。やはり今まである意味で第一ステップみたいなものだったわけですね。ですから、九〇年以降ずっとふえてきたわけです。
 九〇年というのは、ある意味で日本のバブル経済の頂点であったわけで、それ以降、経済が停滞してきたという状況があります。ですから、生産は落ち込んでいるにもかかわらず排出量はふえているという状況があって、その中で削減を行われてこなかったということが重大問題ではないかと思います。そういう意味で、今すぐにでもこの削減は取り組まなくてはいけないというにもかかわらず、ある意味で様子見というか、現状維持のままで、もうちょっと様子を見ようといって四年まで待つというか、二年をむだにしてしまうというところが非常に大きな懸念だというふうに思っております。
 ですから、そういう意味では、今からでも遅くないですので、四年以降に即移せるような政策措置を国会議員の先生の方々に考えていただいて、やはり抜本的な、今まで取り組んできたことのない新しい政策を導入して、そして試みなくてはいけないというふうに思っております。その中には、炭素税とか国内排出権取引とか、そういった今まで取り組んでこなかったことをぜひ入れていただきたいというふうに思っております。
樋高委員 我々議員はしっかりと今いただきました御意見を参考にしながら、今回の審議を進めていかなくてはいけないなということを痛感いたしました。ありがとうございました。
大石委員長 藤木洋子さん。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。
 きょうは、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。まず最初に、桝本晃章参考人にお伺いをしたいと思うんです。
 私も実は、月刊ケイダンレンですか、二月号を拝見させていただきました。それなりに企業の立場を代表してお書きになったという意味では、論旨一貫しているという印象を受けたのですけれども、とりわけ、先ほどもお話に出ておりましたけれども、自主行動計画は我が国の温暖化対策の有力な柱の一つだという認識を示される一方で、この自主行動計画の実行に伴って、目標達成の確実性やデータの透明性、信頼性について外部から多くの注文や批判が寄せられるようになった、的を射た指摘に対しては真摯に対応しているとして、二〇〇二年度、つまり今年度の第五回フォローアップまでに登録機関を設置する、そのことを検討しているんだと述べておられるところは非常に共感を持って拝見させていただきました。
 自主行動計画の目標や実績値を経団連から独立した第三者機関に登録、公表することと挙げられて、将来的には何らかの形で第三者認証を受けることも視野に入れて検討しているということですけれども、先ほどの話を伺っておりますと、かなりこれは進んでいるようにお見受けするわけですね。そのことはまた、経団連の今井会長が朝日新聞のインタビューにお答えになって、説得力や透明性に欠けるというのであれば監視のための第三者を入れてもよいと述べられていることにも反映しているのかな、こんなふうに考えております。
 そこで私は、今回の地球温暖化対策法改正案に、私としては、国内対策としては事業所ごとの温暖化ガス排出量の報告や削減計画を義務化する必要があると考えておりますけれども、そこまではいかないとしても、産業界と第三者機関による検証ということはほぼ合意できるところに達しているのではないかな、そういう思いがするわけです。
 それで、今回の法改正にそこまで盛り込むということが可能かどうか、お伺いをしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
桝本参考人 大変に御関心いただきまして、御礼申し上げます。ありがとうございます。
 評価いただきましたが、この第三者認証認定機関という意味では、私ども三十六業種集まって議論をし始めましたところ、実は課題が幾つもございまして、先生の御評価と全くあべこべで、なかなか確たる仕組みが意見一致のもとででき上がりにくいというのが実情でございます。
 しかし一方で、国連の機関でどうやって例えばCDMなどのオーソライズをするかとか、あるいはヨーロッパ中心にありますISOの中でこの温暖化問題に対する認定認証をどうするか、こういう議論が外部で進んでおります。
 認定認証機関につきましては、単なる産業だけ、国だけではなくて、基本的には、将来的に国際的な場でいわばオーソライズをされるというような必要があるというふうに私ども考えておりますので、実は私どもが第三者認証認定機関というものを目指したいというふうに申し上げ、そう考えておりますが、最終的にこうした確たる仕組みにまで至るには、正直申しましてちょっと時間がかかりそうでございます。実態はそういうことでございます。
 ただ、今御評価いただき、私も申し上げさせていただいて、我々のやっていることに外部の人たちの目で監視あるいはチェックをして、第三者的な目でチェックしたものを公表して、我々の思いあるいは実態をより透明に、信頼をいただくような仕組みというのはどうしても欠かせませんので、今井会長も言い、私も再三申し上げておりますし、先ほどもお話ししましたように、とりあえずは、将来的には認証機関というようなものを考えるということを目標にして、第三者評価委員会というものを近々設置いたします。
 ここでは、今考えておりますのは、七、八名か六、七名の方々にお集まりいただきまして、学者先生、シンクタンク、それからNGO、こうした方々にお入りいただいて、我々の持っているものを全部ある意味でさらけ出して、評価をしていただく。
 実は、経団連の仕組みは業界単位になっております。業界単位というのは、一つの大きいクッションでもありますし、都合のいいところでもありますし、ある意味でみそでもございます。この業界単位の数字を評価していただく。ところが、先生の御指摘の、ちょっとお言葉にあった事業所ごとの排出、ここが実は大変に悩ましいところでございます。
 実は私、電力会社でございますが、電力会社は逃げ隠れもできません。したがって、エネルギーであろうがCO2であろうが、これはもうあけっ広げに全部お出しして、実態は将来計画まではっきりしているというのが非常にはっきりしたことでございます。それから、各企業、環境行動報告書などで自分で自主的に、うちの会社はこのぐらい排出しています、このぐらいの数字に将来なります、こういうことを自主的に公表なさっているところもございます。
 しかし、一たん事業所ごとということになりますと、例えば半導体チップなどの製造メーカーの工場をお考えいただきますと、ここでどのぐらいのCO2を出しているか。CO2は実はエネルギー消費量から計算、推計いたします。エネルギー消費量がどのくらい使われているか、これを公表することにそれぞれ大変に抵抗があります。いわば競争相手の会社でどういう生産をしているかということの推計判断の一つの材料になってしまうということから、この工場ごと、事業所ごとのCO2の排出量の公表並びに計画の提出は、いわば生産計画を出すみたいなものでございますので、なかなか産業界として意見一致が見にくい。あるいは、私どもとしても十分にそういう業界さんの事情もわかるというのが実際でございまして、そうした強いお願いには実はなっておりません。それから、事業所ごとに既に公表している企業も一部ございます。
 ですから、これは、先ほどお願いを申し上げましたのは、そうした実情も御勘案いただいて、企業の自主性にぜひお任せいただきたい。企業の自主性と申しましても、私どもは、社会、先生方、消費者がしっかりした目を持って、企業の環境行動への取り組みについていわば監視、評価をしている、このことは十分痛いほどわかっておりますので、そうした仕組みにとりあえずはお任せいただきたいというふうに存じます。
藤木委員 ありがとうございました。
 それでは、森嶌参考人にお伺いをしたいというふうに思います、たびたびお越しをいただいておりますけれども。
 実は私、「産業と環境」のことし一月の新春インタビューを拝見させていただきまして、先生が極めて、温暖化対策に対する緊迫感といいますか危機感といいますか、そういうものをお持ちだということを本当に感じて読ませていただいたんですね。それはもう待ったなしの課題であって、米国の議定書からの離脱をめぐって、日本の中にも、この議定書、批准するのをやめた方がいいのではないかという動揺が起こったりしたことに対しましても随分御心配をされて、首の皮一つでつながったという思いでことしにつなげたということを述べていらっしゃいますよね。だから、二十世紀を通じて、大量生産型の生産構造それから消費構造が温暖化のCO2を直接的にはふやしてきたわけであって、これを今般から転換させるということが必要だということを述べていらっしゃいますね。
 その緊迫感で私拝見させていただきましたので、きょうのお話を聞いていますと、その第一ステップがこの緊迫感を本当に充足し得るのかということに非常に疑問を感じました。率直にそのことを申し上げておきたいと思います。
 そこで、伺いたいことは二つございまして、一つは、国内対策として、私先ほども言いましたけれども、事業所ごとの温暖化ガスの排出量の報告だとか削減計画の義務づけ、それはかなり難しいと言われましたけれども、排出量報告合戦が起こるぐらいの企業の転換が必要ではなかろうかと思っているわけです。
 それからもう一つは、第三者機関の検証、そういうことを盛り込むことが必要だと思っていますし、一%台の供給にとどまっている風力だとか太陽光発電などの自然エネルギーに思い切ってシフトするということが必要であろう、そういう手法の利用拡大についても大事だというふうに思っていますし、OECDの環境政策委員会が勧告をしております税、課徴金等の経済的手法の利用拡大についても、排出者責任を、明確な対応を進めるということから必要であろうというようなことを考えているわけですけれども、こういうことを盛り込むことで第一ステップを大きく踏み出すことができるのではないかということが第一点です。
 もう一点は、参考人がこの新春インタビューで述べておられるように、環境税を含めた税制全体のグリーン化ということで表現をしていらっしゃいますね。かなり強調されているわけですけれども、税金というものを使って企業や国民の行動を転換させていく。
 そこで、税のグリーン化が生産構造それから消費構造を転換させる上でインパクトを与えるメカニズムについて、ちょっと詳しく御説明がいただけたらと思いますので、その二点についてお述べくださいますでしょうか。
森嶌参考人 お答えいたします。
 幾つか御質問がございましたけれども、最後の税、課徴金のところからお答えいたします。
 私は、規制と税ということでひっくるめて議論をされることについては、それは混同である、法律から見ましておかしい、ごちゃごちゃになっているのではないか。
 規制というのは、特定の行為、こういうことをしてはいけない、あるいはしなさいということでありまして、それは場合によっては、規制の仕方がまずいと、オーバーキルと申しますけれども、やり過ぎであったり、あるいは足らないと結局はその行為を、どっちにしても、する、ないしはしないということですから、その意味では、規制というのは個人の自由をその限りで制限することになりますけれども、税というのは、経済的な手法というのは、むしろどういうことをやるかは個人が選択をできる。その意味では、個人の自由、手段の自由があるわけですけれども、ただ、ある行動をするように例えばコストをかけてやりますと、そのコストと見合った、どういうふうにすれば最も安くできるかという合理的な行動をするであろう。
 先ほど桝本参考人の方から、七三年、七八年のオイルショーテージのときに日本の省エネが進んだというのですけれども、これは全く何もなしに任意に進んだのではなくて、非常に石油の価格が上がった、また石油が来ないということもあったんですけれども、そうだとすると、石油を少なくして従来と同じような生産を上げるためにはどうすればいいかということで、七九年ぐらいから日本の省エネ技術というのは上がったわけでありまして、これは結局、コストがかかってきますと、コストを負担するよりは、例えば省エネ技術に投資をして新しい省エネができるような行動をした方が得だ、そういうことになりますと、そういうふうに企業あるいは人間は行動をするわけでありますので、私は、自主的な取り組みということとそれから税というものとは必ずしも矛盾をしない。
 むしろ私は、ほうっておけば、それこそ、道義的に、何があっても私はやりますよという場合を除けば、あるいは最近の経済界ですと、やはり消費者あるいは市民がどういうふうに反応するかに応じて行動するわけですけれども、それだけではなくて、経済的にもこういうことをしなければ損になる、そういう仕組みが税だというふうに私は考えております。
 ただ、この御時世に税をかけるというのは、それは消費税を上げるような形で、ただ国の財源をふやすために増税をするというんじゃなくて、一定の行動を誘導するところに税をかけ、そしてそうでないところについてはむしろ減税をするというような、それが税のグリーン化ということでありまして、ヨーロッパ、例えばドイツなどではそういう考え方をとっているところであります。
 それから、おまえさんが前に言っていたことに比べると今回のは緊迫感がないではないかという御指摘でございますけれども、私が研究者として、あるいは環境の問題に長く携わってきた人間として考える場合と、それから先ほどもちょっと申しましたけれども、中央環境審議会として、いろいろな各層からの代表がおられ、そして一歩でも二歩でも進めるためにはどういう取りまとめをしていかなければならないかという場合の、どこに基準ないしはどこに着地点を置くかという点はどうしても違わざるを得ないということは白状せざるを得ません。
 ステップ・バイ・ステップのことにつきましても、先ほど申しましたように、今の日本の経済の中で、急激な措置をとる、それからまた、先ほどの桝本参考人の御意見にもありましたように、規制ということを直ちに発動するということについては強い反対があります。他方で、そうすべきだという考え方もあるわけでありますから、その意味では、一歩でも二歩でも事態を進めるための方策として、私としてはとりあえず、第一ステップは何もしないということではもちろんありません、第一ステップでは既存のものを、先ほど申しました、既存の方法をより強化する形で使うけれども、だめならば税でも何でも使っていく。私個人は最初から税は使いたいというふうに考えておりますけれども、中環審の答申はそこまで行っておりません。
藤木委員 時間ですので、あとのお二方には本当に失礼でございますけれども、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
大石委員長 金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子でございます。
 参考人の皆さんには、貴重な御意見、ありがとうございました。
 最初に桝本参考人にお伺いをしたいと思いますけれども、先ほどの御意見の中でさらりと触れられましたけれども、原子力発電の問題についてお伺いをしたいと思います。
 原子力発電、いよいよ原発が耐用年数が来て、廃炉の時代をもう間もなく迎えるという時期になっております。これまでの電力価格の中には、必ずしも廃炉の問題とか最終処分場にかかわる費用の問題が十分考慮されていなかったというふうに思いますけれども、最近、マスコミの報道などで見ますと、電力業界の中で、廃炉の費用が非常に高騰といいますか、費用負担が大きいということで、国に対して助成を求めるというようなことも言われておりますけれども、この点について、ちょうど東京電力の副社長もお務めということでございますので、廃炉にかかわる費用、これはどれぐらいと今お考えでしょうか。その点、もしわかればお聞かせいただきたいと思います。
桝本参考人 お答え申し上げます。
 私、原子力の専門家ではございませんが、私の理解を御説明させてお返事にかえさせていただきたいと存じます。
 おっしゃられるとおり、現在、日本で五十二基の原子力発電所、私どもでは十七ユニットの原子力発電所がございます。一番古いものは、昭和四十五、六年から動いております。確かに年を経てきていることは間違いございません。
 ただ、実態としての設備は、必要なものは必要に応じて、時に先行的に部品の取りかえ、あるいはパイプの取りかえ、主要弁の取りかえ、すべて進んできておりまして、人間の体で申しますと、原子炉の中心である圧力容器という主要部分を除きますと、もうほとんど新品同様と言っていいくらいに、実は私どもは経年対策としてかれこれ十五年から二十年の間、先行的に取り組んできているというのが実態でございます。
 それでも、御指摘にありますとおり、経年に伴うものではないかと思われるような幾つかのトラブルがあることはそのとおりでございます。しかし、全体としてプラントを見た場合には、ほとんどのプラントの部分は新品同様になっているというのが実態でございまして、私どもとしては四十年、アメリカなどでは六十年運転をしたいというようなことで動いているわけでございますが、今申し上げたような、いわば臓器が取りかえられてきているというような形での、プラントが実質的に更新されつつあるという側面が一つあることを御理解賜りたいと存じます。
 それから廃炉につきましてですが、御案内のとおり、日本で現在までに廃炉をいたしましたのは原子力研究所の小さな原子炉一つでございまして、実際に廃炉は日本ではまだ行っておりません。これから日本原子力発電のガス炉、昭和四十年代の初めに動き出したものを廃炉にするという考えでおります。
 一応一番最初に試算されたものでは、建設費のおよそ一割ぐらいに相当するであろう三百億という数字が、大分前の数字でございますが、試算値としてございました。しかし、その後、それは見直されて、もう少し大きい金額、ちょっと私は数字を手元に持っておりません、記憶にはありませんが、相当な額の数字が予定されていることはおっしゃるとおりでございます。
 ただ、この廃炉につきましては、電気料金の中で、廃炉のための費用として、一時的にどんと負担を将来負うことを避けるために、既に少しずつ現在の電気の使用者の方に負担をしていただいておりまして、いわば将来の廃炉に備えた積み立てをしております。この積み立てによって相当部分の廃炉の費用を賄い得るというふうに存じておりまして、私どもとしては、廃炉をある意味で恒常的にやっていく中で、今見通している廃炉の費用もいわば均平化し、具体的に言えば、初めの高い部分は避けられないものの、次第に穏当な数字のところまで下げることができるというふうに見通しております。
 なお、海外での幾つかの廃炉のケースをたくさん勉強していることは言うまでもございません。
金子(哲)委員 そうしますと、マスコミが報道するようにというより電力業界の方から発表されたような、廃炉に伴う支援を求めるということは到底、今おっしゃったことからいえば、あり得ない、企業努力の中でそういうことが実現可能だということになるわけですか。それを短くお願いします。
桝本参考人 その新聞記事を正確に読んでおりません。少なくも東京電力に関しまして言えば、廃炉について政府からの特段の援助をいただくということは考えておりません。
 ただ、何らかの国としての支援とかお金の面でない助成、条件整備、これはお願いする必要があるというふうに存じます。
金子(哲)委員 安全性の問題についてはきょうこれ以上議論してもあれですので。
 確かに、おっしゃったとおり、部品は交換されているかもわかりませんが、現実に、やはり古い型から事故が起きていることは事実でありまして、いずれ廃炉の時代というのは迎えなきゃいけないということになると思いますし、おっしゃったように、建設当時から比べてもはるかに高騰していることは事実で、費用負担というのは、これから電力自由化の時代を迎えてまいりますと、企業間の競争ということからいうと、必ずしもこれから三割も、この案の中では三割増ということが言われておりますけれども、東京電力さん自身が、私が見る限りにおいては、将来に原子力発電に依存することに対して消極的なように見えております。むしろほかのエネルギーで転換をしたいというふうに計画をされているというふうに思うんです。
 その点でいいますと、そういう廃炉問題も含めた、余り過度に、確かにCO2を排出しないということでありますけれども、原子力ということを強調することは、今の温暖化対策、CO2問題だけでなくて、経済面、すべてを見るともっと慎重に検討する必要があるんじゃないかと思うんですが、もしその辺で短く御回答いただければと思います。
桝本参考人 大変大事な御指摘でございます。
 私どもは、実は原子力は技術で電気エネルギーを生み出し得る純国産エネルギー源という評価をしておりまして、事情が許せば、福島の増設等、まだやりたいと思っております。
 ただ、先生御指摘のように、状況は変わりました。それは、電力の消費の伸びがどうやらかつてのように右肩上がり一本やりで伸びない時代に入っております。
 しかし、今ここで御議論になる炭素税あるいはCO2の取引、CO2に値段がつくというようなことになりましたり、油の値段の動向いかんでは、原子力の経済性というのは十分享受し、あるいは可能性がございます。
 私どもは、原子力の開発について特段今のところは新しい変更の方針というものを持っておりませんし、可能であれば、増設、発電所の建設も続けたいというふうに思っております。
金子(哲)委員 ありがとうございました。
 三橋参考人にお伺いしたいと思いますけれども、先ほど情報の公開ということをかなり強調しておっしゃったと思いますけれども、私もそのとおりだと思います。
 ただ、私自身もこの環境委員会におりまして、今度の地球温暖化の場合でもさまざまな数値が出てくるわけですね。何%とかいろいろな数値が出てまいりますけれども、一体どういう根拠に基づいて、どういうデータでそういうことが数字として明らかにされているかということになると、必ずしも国民が本当に理解をしているようなデータというものが情報公開されているだろうかということをちょっと思うわけですね。
 それで、今度の場合でも、ステップ・バイ・ステップということで見直しをするということになりますと、どのような数字でどのような結果が出て、そしてまたそれをどう変えるかということになると、そこが一番重要になってくるというふうに思うんですけれども、最大に、今見て少なくともこれだけの情報は公開されなければならない、例えば先ほどちょっとお話では計算式のお話も出ましたけれども、もともと一番最初に出てくる生のデータといいますか、何を入力するのかということが非常に重要になってくると思います。私はそういうことも含めて公開すべきだというふうに考えておりますけれども、もし参考人、先ほどにつけ加えて、少なくともこういうデータは情報公開をすべきだという点がございましたらお聞かせいただきたいと思います。
三橋参考人 私は、京都議定書の対象になっている温室効果ガスがありますね、六種類だったですか、それについてはもうすべてやはり公表していくということが出発点だろうというふうに思っています。それがあれば対策というのが非常に立てやすくなるんですけれども、実際にはすべて事業所別に正確に提出されているわけじゃないんです。
 それで、一言申し上げたいのは、今競争を維持するために企業秘密が大切なのか、これから五十年、百年という視野で温暖化による被害の方が大切なのか、こういうことをはっきりと仕分けして情報公開に踏み切るという決意が、恐らく日本の産業界にとっても将来の展望を明るくしていくものじゃないかなというふうに思っています。
金子(哲)委員 ありがとうございました。
 鮎川参考人にお伺いしたいと思いますけれども、森林吸収源の問題についてお触れになりましたけれども、私も、これを余りに過大に評価をしてここに頼るということは間違いだというふうに思います。その点は参考人のおっしゃったとおりだと思います。
 ただ、日本の今の現状を考えてみますと、この際、森林対策というものをこれにつなげながらやっていくということもまた重要だというふうに思うんです。ただ、現状を見てみますと、森林基本計画がつくられたわけですけれども、これすら言われているとおり三・九%にはるかに不十分だということであれば、抜本的な計画を立てなければならないと思うんです。
 例えば、先ほど参考人の中にあったバイオマスなどの新エネルギー法がこの国会にも提出されましたけれども、残念ながら、バイオマスなどというものはほとんど相手にされないと言っていいぐらい、廃棄物の燃焼の発電だけが強調されて、その大事なところが結局、地球温暖化対策ということで一方ではそういうことを言いながら、全体、トータルとして一貫した流れがない。縦割り行政ということも言われておりますけれども、その点で、森林吸収源対策ということでもしつけ加えてお話しになることがあれば。
 それからもう一つ、もしお考えがあれば、私はその点で、そういう意味でいいましても、環境省という役割というものがもっと高い位置に、これはいつもの委員会のときも言っているわけですけれども、環境省にすべてのデータが集まって、環境省がデータを分析し判断していくというふうなシステムにしないと、それぞれの、産業界の思惑で通産省が行う、そして農林水産省は農林水産省で思惑で数字が出てくるということであっては、本当にこの地球温暖化対策は進まないというふうに思いますけれども、もしその二つの点についてお考えがあれば、御意見を伺いたいと思います。
鮎川参考人 ありがとうございます。
 森林対策においては、やはりおっしゃるとおりで、私たちもエネルギーの部門でまず削減をしてというふうに考えております。ですから、森林対策としては、私としては、おっしゃったようなバイオマスエネルギーのもっと有効活用をしていただきたいというふうに思っております。
 特に、今森林がすごく放置されている状況がありますから、そこで出てくる森林廃棄物、そういったものをやはりエネルギー、発電に使って、そして、そういったバイオマスエネルギー発電による電力をきちんと買い取る制度を電力会社の方で出していただきたいと思いますし、国としてもそういった買い取るという制度をつくっていただければ、このバイオマスエネルギー発電が少しビジネスになっていくというふうに思っていますけれども、今のところ、そういった制度が全くない。
 ですから、私たちとしては、バイオマスエネルギーを、これも森林のバイオマスエネルギーを進めているんですけれども、なかなかそれが進んでいかないという状況があるので、そういった整備をしていただきたいというふうに思っております。
 そして、環境省の位置をもっと高いふうにというのは全く賛成です。
 先ごろ、やはり京都会議以降ですけれども、企業の中でも環境部門というものが格上げされまして、多くの企業で、社長のすぐ下に置かれる位置になったりとか、単なるセクションだったのが部になったり本部になったりとか、そういった形で企業の中でも、環境がすごく重要だ、環境政策が企業政策の中で重要だというふうに位置づけがだんだん格上げされてきております。
 そういう意味でも、環境政策というのは、私は、環境なくして経済発展はあり得ないし、私たちの生活もないというふうに思っておりますので、まず環境があってという意味では、一番首相のもとに環境政策があって、そのもとですべてのさまざまな政策があるべきじゃないかというふうに私も思います。
金子(哲)委員 森嶌参考人には大変申しわけございません。時間のことで質問ができなかったことをおわびしまして、これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
大石委員長 井上喜一君。
井上(喜)委員 地球温暖化対策、いよいよこれは本格的に取り組まないといけない時期に来たわけでございます。割かし楽観的に、この京都議定書の目標をクリアできるというようなお考えもあるようでありますけれども、私は、ヨーロッパの諸国、石炭を天然ガスに切りかえることによって発電をすれば、かなりのところまで京都の目標を達成できるような国と違いまして、日本の場合はなかなか難しい。したがいまして、国民的にこれは全体としてやはり取り組んでいかないといけない、そんな課題だと思います。まして、経済成長をこれからもさらにやっていく、あるいは生活水準を切り下げないということになりますと、本当にこれは大変じゃないかと思います。
 そういうことで、建前の議論じゃなしに本音の議論をしていかないといけないと思います。そういう点からお尋ねいたしたいのです。
 まず、森嶌参考人と鮎川参考人でありますが、森林のことを炭酸ガスの吸収源としてかなり大きく取り扱われておりますけれども、今、山村は高齢化がうんと進んでいるわけですね。人口が減少しているということでありまして、山の管理ができないという状況になってきているわけですね。伐採だってできない。後がどうにもならないからということです。まして、事業量もうんとふえていくような計画をしておりますが、これは山村対策をきちっとしない限り達成不可能だと思うのでありますが、何か特別な山村対策をお考えなのか、あればお聞かせいただきたいということであります。
 次に、桝本参考人でありますが、原子力発電、これは十基から十二基ぐらいを新設する必要があるということが前提になっておりますけれども、果たしてそんなことができるのかどうか、お考えを伺いたいと思います。
 それから、鮎川参考人は、今の山村対策のほかに、原子力発電についてどんなお考えなのかお伺いいたしたいんです。
 それから、三橋参考人につきましては、原子力発電についてのお考えと、それからもう一つは、技術開発でかなりのCO2の削減ができるんじゃないかというようなお考えかと思いましたが、三つ四つ新しい技術を挙げて、こうすれば何%ぐらいのCO2の削減ができるのか、もう少し具体的に、我々にわかるような御説明をお願いいたしたいということであります。
 以上であります。
森嶌参考人 お答えさせていただきます。
 私は、森内閣、小泉内閣のときの「環(わ)の国」づくり会議のメンバーでございまして、そこでも申し上げたのですけれども、従来の、国がいろいろな政策をつくってそれを下へ持っていくということは経済的にもできなくなってきつつあるということ、それから、先生御指摘のような高齢化の問題もあります。その意味では、もっと地域的に物を考えていくべきではないか。
 そこで、従来の大規模な公共投資をもう一度見直して、それをやめるというよりも、公共投資を振りかえていくということで、私は、その意味では、森林の価値、環境保全の価値、あるいは、今のお話で、吸収源としての価値を考えると同時に、日本の国そのもののあり方から見て、やはり農村や山林が疲弊するというのは将来の再生能力を失うということでありますので、これも時間がかかるかもしれませんけれども、ぜひこの時点から山林対策を、単に過疎対策とかいうことではなくて、長期的な国づくりの、「環(わ)の国」づくりの方向にのっとってやるべきだというふうに考えておりますけれども、むしろ私が逆に先生方にお願いしたいのは、ぜひそういうことを国会で指導していただきたい。私ども学者が意見を言うよりも、やはり国会が国の基本的な方針について転換を図っていただきたいというふうに思っております。
鮎川参考人 ありがとうございます。
 まず、森林の山村対策なんですけれども、これは、先ほども言いましたけれども、やはり産業として林業が成り立つような、そういった政策支援が必要ではないかと思います。
 特に、国産材をもっと利用する機会をつくるということで、例えば建築に、新規住宅においては国産材を一定割合使うとか、そして公共施設などの場合には国産材を使うとか、そしてまたバイオマスエネルギーの利用とか、これをコージェネレーションに使うと発電だけではなく熱源にも利用できるというふうに、そういった利用を、まず市場をつくって、そしてそこに雇用が発生するような、そういったことによって山村に人がもう一回戻っていくというようなことがあると思いますけれども、これは政府の支援なくしてはなかなかできないのではないかという意味で、政府の支援をお願いしたいというふうに思っております。
 次に、原子力なんですけれども、私たちとしては、温暖化対策としての原子力には反対しております。というのも、省エネやエネルギーの効率利用にはつながらない技術だというふうに考えております。
 今までの文明というのは、エネルギー消費を拡大してきて、それをもとに成り立ってきたんですけれども、これはCO2だけではなくて、いろいろな環境に負荷を与えてきました。ですから、それを見直そうというのがこれからの環境政策であり、二十一世紀の価値観だというふうに思っています。つまり、これからは、できるだけエネルギーを使わないで済ます、そして、その中で豊かな生活、生活レベルを落とさない、そういった文明をつくっていかなくてはいけないというふうに思っています。
 その中で、原子力というのはベースロード電源をつくるわけですから、エネルギーのパイをふやすという方に使っていくので、そういう意味では時代に逆行しているのではないかというふうに思いますし、最大の問題は核廃棄物の問題です。これはまだ、次世代への大いなるツケであり、持続可能な技術とはとても言えないというふうに思います。
 京都議定書の中でも、JI、つまり共同実施や途上国へのクリーン開発メカニズムの対象から原子力は外されたわけなんですけれども、これでわかるように、原子力は温暖化対策のための技術として国際的には認められていないということになります。ですから、日本の政策として、温暖化対策の中で原子力が大きな位置を占めているということは非常に大きな問題だと思いますし、日本はもっとほかの省エネの技術がすばらしいものがありますし、これからどんな技術が出てくるかということで、天然ガスへのシフトも含めて、燃料電池への転換とか水素エネルギーとか、新しい技術をそういった方向で開発するように、原子力に向けられている予算をそういった方向に向けるべきではないかというふうに思います。
桝本参考人 ありがとうございます。お答えさせていただきます。
 現在、政府の計画ベースで申しますと、原子力発電所、十三基の建設が期待されておりますが、私どもとしては、最後の最後までこの建設をあきらめず、地元の関係の皆様にお願いを申し上げ続けるというのが実態でございます。
 現実には、実は今でも建設が進んでいるものがこの中に六つか七つございます。北海道の泊、これから進みます。東北の東通、北陸の志賀、中部電力の浜岡、中国の島根、そしてこれから動かしたい、ぜひお願いを申し上げているのが大間、それに敦賀と福島第一の増設そのほかございまして、これはお願いをして、私どもとしては、最後の切り札になり得るものとして活用したい。
 一言加えさせていただくのをお許しいただきますが、原子力は実は太陽光発電と同じぐらいにCO2を出さない技術のエネルギーでございます。したがって、原子力をこの温暖化対策から除外するというのは、極めて政策的、意図的なものでございます。
 ヨーロッパをごらんいただきますと、フィンランドは今、こういう中で新しい原子力をつくろうとしております。最近では、サウジアラビアとベネズエラは、油をより多く売らないといけないということから、原子力に反対を始めました。
 原子力を技術によってつくることで、化石燃料の消費をより抑えていくということと、それによってCO2の削減も図り得るということが原子力の大変な強みでございます。ただ、安全を第一に、そして、御指摘の廃棄物などは、社会的にも大いに御議論いただき、御理解をいただきながら進める必要があるというふうに存じております。ありがとうございました。
三橋参考人 原子力の問題につきましては、私は、これから電力源の自由化が進む中で、経済的に恐らく合わないだろうというふうに考えています。
 私の友人で、ワールドウオッチ研究所のレスター・ブラウン氏も、どうしてアメリカで原子力がはやらないのかというと、これは単純なことで、コストの問題ですというようなことを言っていましたね。それで、国民感情それから後処理の問題、いろいろなことを考えると、電力源の自由化の中で、原子力発電というのはこれから恐らく市場戦にたえないだろうと。国が国家目標としてやるというならば一つの方法だろうと思いますけれども、やはり効率的なエネルギー源の活用ということだと、市場機構を使っていかなくてはいけないということで言うと、計画に盛られているような原子力の増発というのは、私はなかなか難しいんじゃないかなというように考えています。
 それからもう一つ、CO2削減のための技術というのはもういっぱいありますよね。もう御承知のように、太陽光発電から始まって風力発電あるいは地熱の利用、燃料電池の活用、さまざまな方法があります。それから、日本発の非常にすぐれた技術として高温燃焼炉、これなんかだと、CO2の削減が従来の燃焼炉と比べて二割ぐらい削減できますからね。そういうものがいっぱいあります。それから、鮎川さんのところで試算として挙げているように、自動車をハイブリッドカーを中心とした低公害車にどんどん切りかえていくということができれば、それによってもCO2の削減というのはかなりできるんですね。それから、今省エネ住宅というものがどんどん進んでいます。このポイントは何かというと、やはり断熱材を使った住宅ですよね。しかも、木造住宅と絡めて断熱材を使った住宅をこれからつくっていくということにおいても、CO2はどんどん削減できます。
 そういう意味でいえば、技術はいっぱいあるんですね。それを制度、システムとしてやるだけの勇気が政府にあるか。恐らく、新しい技術を導入するに当たっては、古い技術のもとでさまざまな利益を得ていた人たちを説得しなくちゃいかぬわけですね。それができれば非常に簡単なことだろうというふうに私は思っています。
 ぜひ、国会の環境問題に精通した皆さんがそういうことでむしろ制度を変えていただく、そうすれば、そのための技術というのは今どんどん育っているということを指摘させていただきたいと思います。
井上(喜)委員 いろいろな技術はあるんだけれども、その効果がどれぐらいかということ、トータルとしてどうなのかとか、あるいはコストが引き合うかどうか、こういうことだと思うのでありまして、簡単であれば、それはそんなに大きな問題にする必要もないかと思うのでありますが、私は、なかなかそういうぐあいにいかないんじゃないかというような感じなんです。
 最後に森嶌参考人に、森嶌参考人は原子力発電につきましてどんなお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
森嶌参考人 お答えをいたします。
 今先生がおっしゃったように、私は新しいエネルギーをどんどん入れてくるべきだとは思いますけれども、現在の新エネルギーによる供給量などから申しますと、私の感じでは、あと二十年ないし三十年かかると思います。ドイツは風力発電を中心に代替エネルギーを非常に強力に進めておりますけれども、これでも、ドイツの現在の原子力発電は三〇%ぐらいですが、たしか二〇二〇年までだと思いましたけれども、二〇三〇年だったかもしれませんが、最大限やって二〇%ということであります。
 ドイツは三十年後に原子力をやめるというふうに言っておりますけれども、やはり国の政策としてやる場合には、どちらかをいいもの、悪いものというふうに決めつけずに、悪いものの持っている欠点を克服しながら、よりいいものというものを求めていく。そのためにはコストもかかる、エネルギーもかかるという意味で、私は、現在の原子力というものは日本の発電量の三四%、東京電力の場合ですとたしか五〇%ぐらいを供給しているわけですので、先ほど桝本参考人が言われたように、安全の面を気をつけながら、どうやってシフトしていくのかということを考えるのが、政策を考える人間のやることではないかというふうに考えております。
井上(喜)委員 終わります。
大石委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.