衆議院

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第17号 平成14年6月11日(火曜日)

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平成十四年六月十一日(火曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 大石 正光君
   理事 熊谷 市雄君 理事 西野あきら君
   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君
   理事 奥田  建君 理事 牧  義夫君
   理事 西  博義君 理事 樋高  剛君
      小渕 優子君    奥谷  通君
      亀井 久興君    木村 隆秀君
      小泉 龍司君    阪上 善秀君
      原田昇左右君    菱田 嘉明君
      三ッ林隆志君    山本 有二君
      小林  守君    五島 正規君
      近藤 昭一君    鮫島 宗明君
      田端 正広君    武山百合子君
      藤木 洋子君    金子 哲夫君
      西川太一郎君
    …………………………………
   環境大臣         大木  浩君
   環境副大臣        山下 栄一君
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房審議
   官)           坂田 東一君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           坂野 雅敏君
   政府参考人
   (林野庁次長)      米田  実君
   政府参考人
   (環境省自然環境局長)  小林  光君
   環境委員会専門員     飽田 賢一君
    ―――――――――――――
六月十日
 鳥獣保護法の改正及び野生生物保護法の制定に関する請願(樋高剛君紹介)(第四六五二号)
同月十一日
 鳥獣保護法の改正及び野生生物保護法の制定に関する請願(田端正広君紹介)(第五一五二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 参考人出頭要求に関する件
 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案(内閣提出第八一号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
大石委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案を議題といたします。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、来る十四日金曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大石委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
 お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官坂田東一君、農林水産省大臣官房審議官坂野雅敏君、林野庁次長米田実君及び環境省自然環境局長小林光君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大石委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
    ―――――――――――――
大石委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。阪上善秀君。
阪上委員 このたび、内閣委員会から環境委員会に移籍をいたしました阪上でございます。渡り鳥のようなものでございますが、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案につきまして、大臣初め関係の方々に質問をさせていただきたいと思っております。
 この法律は、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の全面改正ということで、文語体の条文を口語体に改めるという、大変御苦労があったことと思っております。
 それはさておきまして、鳥やけだものの保護、それから狩猟の適正化、これがこの法律の目的ではあると思いますが、保護と狩猟という、ある意味では相反する概念が一つの法律になっており、時代によってこの法律に対する社会的要請が異なってきたように感じております。以前は狩猟が非常にはやっていた時期もありましたが、最近では、こういった鳥獣を保護しなければならない、こういった声が強まってきておると感じております。
 そこで、まずお伺いいたしますのは、この法律の目的は、現在、政府としてはどのような位置づけであるのか、保護と狩猟のどちらが重要と考えておられるのか、お聞きしたいと思いますとともに、今回の全面改正における主な変更点の概要についてお答えをいただきたいと思います。
小林政府参考人 鳥獣保護法におきましては、生物多様性の確保のために鳥獣を保護すること、そしてまた、生活環境の保全ですとか農林水産業の健全な発展に寄与するために鳥獣による被害を防止すること、その両方のバランスをとることが重要と考えております。
 また、狩猟につきましては、その捕獲圧によって鳥獣の個体数を調整し、鳥獣のふえ過ぎによる被害を防止するための手法として重要であると考えておりますが、一方で、鳥獣を捕獲し過ぎたり人に危害を生じたりしないように、狩猟というものを免許制度にするとともに、捕獲数や猟法などを制限できる仕組みを規定しているところでございます。
 また、今回の鳥獣保護法の全部改正における主な改正内容でございますが、まず一点目は、狩猟免許に係る障害者の欠格条項の見直しでございます。二点目は、水辺域における指定猟法禁止区域制度を導入いたしまして、鉛製散弾の使用を制限することでございます。三つ目は、捕獲した鳥獣を山野へ放置することを禁止する。四点目に、狩猟者、捕獲等の許可者に捕獲数等の報告を義務づけること。五点目は、違法捕獲された鳥獣等を飼うこと、飼養することを禁止する。六点目が、鳥獣保護法の捕獲許可と種の保存法の捕獲許可、両方従来必要でございましたが、それを一本化して手続の合理化を図ることなどでございます。あわせまして、御指摘のように、従来の条文、片仮名書き、文語体のを平仮名書き、口語体に改めるというものでございます。
阪上委員 今回の改正におきまして、水鳥の鉛中毒の防止のために鉛製散弾の使用の制限がなされるということでございますが、これは私は非常に評価ができるものと考えております。
 鉛製散弾の問題は、現行の鳥獣保護法におきましても規制がなされておりまして、実際にガンやハクチョウなどの水鳥の鉛中毒が問題化されたことを踏まえまして、狩猟鳥獣である水鳥を保護対象とする鉛製散弾の使用の禁止区域が、全国で六十九カ所、五万二千三百七ヘクタール定められているところであります。
 実は、この六十九カ所の中に、私の地元であります宝塚市の千刈水源地がおよそ百四十ヘクタール含まれておりまして、これが兵庫県の唯一の鉛製散弾の規制地域となっておるわけでございます。この千刈水源地というのは神戸市民の水がめにもなっておりまして、水鳥のみならず人間にとりましても、この水辺域におきまして鉛製散弾が規制されるということは非常によいことではないかと感じてまいったところでございます。
 確かに、鉛というものは非常に水に溶けにくい性質を持っておりますが、やはり人間の心理的に、水源地に鉛弾がたくさん沈んでいるというのは甚だ不安なものでございました。ここ数年、古い住宅等に使われておりました水道管が鉛製であることが問題として大きく取り上げられたこともしばしばございましたが、やはりこの規制は評価に値するものと考えておるわけでございます。
 この鉛製散弾というものに対しまして、今回は水辺域での使用を禁止することを考えているということでありますが、六月六日の河北新報によりますと、宮城県では鉛製散弾の使用を全面禁止する方針を決めたとの報道もなされておりますが、環境省として全国的に全面禁止する考えはないのでしょうか、お伺いをいたします。
小林政府参考人 今回の改正では、指定猟法禁止区域の制度を新たに導入するということにしておりまして、この制度に基づきまして、水辺域における鉛製散弾の使用禁止区域を設けるよう都道府県に働きかけていくという考えでございます。
 これは、御指摘のように、ガン類、ハクチョウなどの水鳥が水底の小石とともに鉛製散弾粒を摂取することによって鉛中毒の発生がやや頻繁に起こっている、そういうことでございますし、また特に水辺域に集中的に鉛散弾が使用される実態がある、そういうことを踏まえまして、水辺域において緊急に鉛製散弾の使用を制限する必要があると考えていることによるものでございます。
 一方、陸域ですとか水深の深い水域に関しましては、北海道でのシカ猟による鉛ライフル弾などの例外的なものを除きまして、一般的には、野生鳥獣が鉛製散弾を土中から摂取するおそれが少ないということ、また鉛中毒が起きている事例も認められていないという点、二点目として、集中的に鉛散弾が使用されることは、そういう地域においてはまれであるということから、現段階で全国的な規模で鉛製散弾の規制を急ぐ必要は少ないというふうに考えてございます。
 ただ、そういうことで、鉛製散弾に関しては、当面、水辺域における使用の禁止を促進し、全面的な禁止につきましては、将来的な課題として私ども認識してございますが、鉛製散弾の代替品の普及の状況とかそういうのを見きわめつつ、今後の検討課題といたしたいと思っております。
阪上委員 この問題につきまして大臣にも質問をさせていただきたいと思うんですが、答弁がダブるかもわかりませんが、私は鉛製散弾の規制を拡大していくという必要があると思いますが、全面禁止を行わないといたしますと、今後どのように規制を拡大される予定でございましょうか。さらに、鉛製散弾の代替品の普及へ向けた取り組みについても、大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
大木国務大臣 今回の法律の目的というのは、大きく言えば、やはり動植物についての生態系をきちっと適正な形あるいは適正な規模に維持していく、あるいは、もし適正でないならばそれに向かって直していく、こういうことであろうと思います。
 そういうことで、今の鉛のことにつきましては、鉛使用の弾というのは、今まで実際にそういう猟銃を使っておられる方が、鉛の弾が一番使いやすいと申しますか、いろいろな意味で一番使われておるということですけれども、先ほど局長からもお話がございましたように、まずは私は、いろいろな規制をかける使用禁止区域というようなことをきちっと状況に応じまして決めていく、必要があればそういうものを広げていくということが一つ問題があろうと思います。
 それにつきまして、やはり現地の事情を一番よく御存じの都道府県の方で、猟友会とかそういった実際に猟銃を使っておられる方とも相談しながら、その地域の拡大あるいは今の鉛弾の使用の規制というようなこと、ですから、長期的にいえば、やはりそういうものは強化していくという方になると思います。そういうことでございます。
 ですから、とりあえずは、やはり必要な地域というものをきちっと指定して、その上で、そうすれば当然にまた鉛弾の使用の制限ということになるわけですけれども、それと同時に、今、猟銃を使ってやっておられる方が使いやすいとかということだけではなくて、やはりいろいろな代替品が出てきて、それが非常にちゃんといいものであれば、だんだんそちらへの変換ということも進むと思いますので、その辺はいろいろな情報をきちっとできるだけ皆さん方にもお伝えして、ひとつ全体的な方向としては、指定地域の拡大あるいは鉛弾の使用の制限という方に努力をしたいというふうに考えております。
阪上委員 次に、八十条の適用除外規定についてお伺いをいたしたいと思います。
 本法律案の八十条には、適用除外、つまり、この鳥獣保護法による捕獲許可の対象とならない鳥獣を指定できることといたしておるわけでございますが、具体的にはドブネズミですとか鯨などが予定されていると聞いております。この点について、さきの参議院での答弁では、環境衛生の維持に支障を及ぼすものや、他の法令で適切な保護管理が行われているものについては本法の対象としていないということであったと思います。
 鯨などは農林水産省が所管している法令によって保護がなされているということでしたが、鳥獣保護法を所管し、鳥獣の保護をしなければならない環境省も、農林省とも縦割りではなくいろいろ協力して、鳥獣保護の観点からも見てもらわなければならないと思いますが、いかがでございましょうか。
小林政府参考人 鳥獣保護法案、改正法案の第八十条でございますけれども、他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣を本法の適用除外とし、その具体的な種を環境省令で定めることとしております。
 例えば鯨でございますが、国際捕鯨取締条約のほかに、我が国では漁業法ですとか水産資源保護法に基づきます指定漁業の許可及び取締り等に関する農林水産省令において、捕獲の禁止、捕獲枠の設定等による保護管理がなされていると承知しております。こうした種につきましては、本法の適用除外とすることを考えているところでございます。
 しかしながら、御指摘のように、生物多様性の観点から、環境省としても、日本近海に生息する鯨類などの生息状況に関心を払いまして、その情報の把握に努め、農林水産省や専門家との連携連絡を密にしまして、必要があれば農林水産省及び関係者に対して助言を行ってまいる、そういう姿勢でいきたいと思っております。
阪上委員 次に、ニホンカモシカを例に、我が国の野生鳥獣の保護管理とその生息地の保護についてお伺いをいたしたいと思います。
 ニホンカモシカは、かつて食用にあるいは毛皮をとるために乱獲され、一時は全国で三千頭近くにまで減ったとも言われました。そのため、昭和九年に国の天然記念物、昭和三十年には特別天然記念物に指定され、手厚い保護が始まりました。そのかいがあってか、その後は徐々に数がふえてまいりまして、今度は農林業被害が増大するなどの問題が生じてまいりました。現在では、国の特別天然記念物に指定されているにもかかわらず、地域によっては個体数調整という名目で捕獲されている状況にあることは、皆さんよく御存じのことと思います。
 野生鳥獣が人里にまであらわれて騒ぎになったり、農林業に被害を与えたりすることは、ニホンカモシカの例に限らず、近年ふえていますが、数が減ったから狩猟を禁止して保護する、数がふえたから捕獲するというのは、余りにも安易ではないでしょうか。問題は、なぜ数が減ったのか、あるいはなぜ数がふえたのか、その原因を究明して、人間と野生鳥獣の共存の道を探ることだと思います。
 野生鳥獣による被害が目立つようになった原因の一つとして、戦後の針葉樹を中心とした植林によって、山に彼らの食べるものがなくなってしまったこと、また、人口の増加によって、本来、野生鳥獣のすみかとなっている場所にまで我々人間が入り込んでしまったことなどが指摘されております。これらの反省なしに、幾ら野生鳥獣の個体数を調整しようと思っても、結局は無理があるのではないかと思っております。
 そこで、環境省としての野生鳥獣の保護に対する基本的スタンスと、いかにしたら野生鳥獣と共存していける社会が構築できると考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
大木国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、鳥獣保護法の基本的な考え方というのは、やはり対象はいろいろあるわけでございますけれども、生態系の適切な保存ということによって、さらにまた一つ、人間との共存ということがあるわけですから、そういったものがあると思います。
 今、絶滅種についての保護だとか、多くなったからまたこれをどうするかというような話があって、それは矛盾するじゃないかということでございますけれども、確かにそれは、現象だけを並べて考えてみますと、どういう状況にあるか、各対象になる種が絶滅に瀕しておるのか、ふえ過ぎておるのかということは、やはりこれは、あえて、人間のわがままかもしれませんけれども、人間の立場からもどうするかということが出てくる。ですから、そこら辺をおのずから調整しなきゃいかぬということにありますけれども、しかし、最近非常に鳥獣側の方が、例えば人間との接触が多くなってくる、人里のところへ出てくるというような、確かに先生御指摘のように、彼らのまた生息の状況、環境が非常に悪化している。それにつきましては、基本的に私はそういう現象があると思うんです。
 ただ、なかなか完全に科学的な知見も十分には得られませんから、まずはそういう現象に対してどういうふうにしようかというところから出てまいりますけれども、今のお話のとおりに、具体的な行政措置あるいはその他の措置によりまして、是正できるものはできる。しかし、全体としては、やはり長期的、総括的には、科学的な知見をさらに十分に集積いたしまして、一体どういう解決があるんだ、またどういうニーズがあるんだ、あるいは行政としてはどういうことができるんだというような話は具体的にまただんだんに詰めてまいりたいということでございまして、もう一遍繰り返しになりますけれども、動植物側の方の、彼らの生息の環境等が非常に悪化しておるということが一つの原因であるということは御指摘のとおりだと思います。
阪上委員 野生鳥獣の生息地を守ろうといたしますと、しばしば保護か開発かということで対立が起きてまいっております。しかしながら、これまで野生鳥獣の生息地がどんどん狭められていったことを考えてまいりますと、これからはしっかりとこの生息地を守っていかなければならないと思います。
 野生鳥獣やその生息地の保護を進めようとする場合、例えばその地域における野生鳥獣の生息数やその分布、あるいはこれ以上森の面積が減少したらクマなどの生息が危うくなる、あるいはこれ以上個体数を減らしたら種の存続が危うくなる、そういった科学的なデータがあれば、保護を進める上で極めて有効ではないかと思っております。
 これまでも環境省では緑の国勢調査といったことを行ってまいられましたが、野生鳥獣の保護に役立つような科学的なデータは現在どの程度集積されているのかお尋ねいたしますとともに、今後とも予算をとってしっかりとしたデータの収集に努めていただきたいと思いますが、このあたりの決意をお伺いいたしたいと思います。
小林政府参考人 環境省では、昭和四十八年より継続的に緑の国勢調査を実施してございます。猿、クマ、シカといったような中・大型の哺乳類の全国分布調査、それから鳥類の繁殖状況調査、シギ・チドリ類とかガンカモ類の渡り鳥の渡来数の調査を継続的に実施してございます。
 また、本改正案におきましても、ハンターですとか捕獲許可を受けた者から鳥獣の捕獲数ですとか捕獲場所の報告を義務づけまして、それらを科学的、計画的な鳥獣の保護管理を進める上での基礎的データといたしたいというふうに考えてございます。
 今後とも、緑の国勢調査を中心にデータ収集に力を入れまして、適切な鳥獣の保護管理ができるように努めてまいりたいと思っております。
阪上委員 次に、ことしの三月に、自然と共生する社会実現のための政府全体のトータルプランとして新生物多様性国家戦略が策定され、ことしの四月七日から十九日まで、オランダのハーグにおきまして、生物多様性条約の第六回締約国会議が開催されたと聞き及んでおります。
 言うまでもなく、生物の多様性の確保という問題は、鳥獣保護の問題にも大きく影響してくるかと思います。この法案でも、生物の多様性の確保という目的が新たに盛り込まれておりますが、鳥獣の保護においてどのように反映させていくのか、御見解をお伺いいたしたいと思います。
小林政府参考人 野生鳥獣は生物の多様性の重要な構成要素でありまして、人間の豊かな生活にとって欠くことのできないものだというふうに認識してございます。
 鳥獣保護法に基づく鳥獣の捕獲規制ですとか生息地の保全を通じた野生鳥獣の保護というのは、従来よりその生物多様性の確保に寄与してきた、こういうふうに思ってございます。ことし三月に決定されました新生物多様性国家戦略におきましても、その点についてきちっと位置づけられているところでございます。今回の法律改正におきましても、鉛中毒の防止とか山野への鳥獣の放置禁止などを制度を定めまして、生物多様性の確保の措置、強化をしているところでございます。
 なお、今後、生物多様性の確保を一層図っていく必要があるというふうにも認識してございまして、さらなる取り組みにつきまして、現在検討会で検討を重ねているところでございまして、必要に応じ所要の措置をとり、生物多様性の確保が万全となるように努めてまいりたいと思っております。
阪上委員 質問の冒頭に、保護と狩猟のどちらが重要と考えているかとお聞きいたしました。私も、鳥獣を保護する一方で、鳥獣による被害を防止することの重要性を認識いたしております。
 その鳥獣による被害の防止のためのいわゆる有害鳥獣駆除は、ハンターに負うところが大きいと思いますが、近年ハンターの数は減少し、また高齢化が進んでいるとも聞いております。このような状況の中、駆除の仕組み、体制を再考する必要があると思いますが、どのようにお考えか、お伺いをいたします。
小林政府参考人 先生御指摘のとおり、ハンターは近年減少傾向でありますし、またその高齢化が進行してございますので、将来的に有害鳥獣の駆除とか特定鳥獣保護管理計画の実施が困難になるのではないかというふうに懸念をしてございます。
 その対策といたしまして、狭い地域じゃなくて、複数の市町村を単位とした広域的な駆除体制の整備というようなものを進めることで、有害鳥獣駆除の円滑な実施を図る必要があるものと考えてございまして、第九次の鳥獣保護事業計画の基準にその考え方を盛り込んだところでございまして、今後とも、その周知徹底を図って取り組みを進めてまいりたいと思っています。
 また、先ほど申し上げました検討会におきまして、有害鳥獣駆除の担い手をどう確保するか、そういう総合的な鳥獣保護と狩猟制度のあり方の検討の中で、担い手の問題についても検討を進めてまいりたいと思っております。
阪上委員 私の地元に近い神戸市では、最近イノシシによる人への危害が増大していることから、野生のイノシシのえづけを禁止する全国で初めての条例を先月から施行されたところであります。
 野生のイノシシが人の住んでおるところに出てきて、ごみ箱をあさったり人家に入り込んだりするようになった背景には、六甲山に生息するイノシシの数がふえたこともあると思いますが、人間が安易にイノシシにえさを与えたために、その味を覚えて、えさが欲しくて人間に近づいてくるといったことも原因の一つではないかと思います。
 このような事態が頻発するのを防ぐためには、我々一般市民も野生生物に対する正しい接し方を学ばなければならないと思います。単にかわいいからえさを与えるというのではなく、我々人間と野生生物がどのようにしたらうまく共存していけるか、またどのようにすみ分けをしたらよいのかを我々も学ぶ必要があると考えます。
 そこで、現在そのために環境省が行っておる施策と、今後どのような環境教育、学習の場を設けようとしているのかについてお聞かせ願いたいと思います。
小林政府参考人 六甲山のイノシシの被害が増加したことは、えづけ行為ですとか、えさとなるごみ出しのマナー等が主な原因であったと考えられます。環境省としましても、それらの行為がイノシシに与える影響について、市民が正しく認識することが必要だというふうに考えてございます。
 その正しいマナーのことに関しまして、環境省としましては、先ほど申し上げました第九次の鳥獣保護事業計画の基準におきまして、生ごみの適正な処理ですとか、えさやり行為の防止につきまして指導をしているところでございます。鳥獣の生態や習性に関する知識の普及を図るべきこと、都道府県等にその取り組みの促進方を促しています。また、パンフレットの作成ですとか、国立公園などのビジターセンターにおきましても、いろいろな自然観察会等の場を通じまして、野生鳥獣との正しい接し方について国民の意識啓発に努めているところであります。今後とも、その方向で指導に努めてまいりたいと思います。
阪上委員 今回、鳥獣保護ということで本法律案を審議いたしてまいりますが、この法律だけで果たして鳥獣の保護が本当に果たせるのか、そのように思われてまいりました。といいますのも、今までそうであったように、この法律や鳥獣保護事業計画等で鳥獣の違法捕獲や捕獲制限はなされているのだろうと思いますが、抜本的な鳥獣の保護、すなわち鳥獣の生息域の保護というものが図れるのだろうかと危惧するわけであります。
 確かに、条文を眺めておりますと、鳥獣保護区や休猟区などの規定はございますものの、それは基本的には今ある自然に対する保護のみであります。他の法を考えてみましても、例えば先般環境委員会で審議して成立いたしました自然公園法におきましても、今ある自然の保護以上のものは図れない、そういう法律になっているのではなかろうかと思います。
 私の地元の宝塚市では、市民の参画のもとで、第四次宝塚市総合計画というものを策定いたしましたが、その中には、宝塚市を縦断しておる武庫川等を生かして、水辺空間の緑化や水質の改善を通して、動植物が生息できるようにしようということが盛り込まれております。このような鳥獣のすめるような環境づくりというものは、私はどんどん進めていってしかるべきであると思います。
 今年度の予算を見ますと、釧路湿原や所沢のくぬぎ山における自然再生型公共事業が行われておりますが、このような施策が徐々に進んでいっているということは、まことに喜ばしいことだと思います。このような自然の再生といった事業を今後どのように進めていこうと考えておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
小林政府参考人 小泉総理のおっしゃられました自然と共生する社会の実現のために、残された自然の保全に加えまして、失われてしまった自然を積極的に再生していくことが必要だと考えております。このような観点から、新しい生物多様性国家戦略におきましては、今後展開すべき施策の方向の一つとして自然再生ということを位置づけて、その具体的な方針について記述したところでございます。
 自然の再生のためには、生態系を重視した総合的な観点が特に必要でございます。また、この観点を踏まえまして、関係省庁の緊密な連携ですとか、地域の主体的な取り組みが不可欠というふうに考えてございます。このため、環境省としましては、国土交通省、農林水産省など関係省庁とも十分連携をするのはもちろんでございますけれども、地方公共団体ですとかNPO、地域住民等の参加がどうしても一番大事なことでございます。自然再生事業の推進を、それらのいろいろな主体と手を組んで進めてまいりたいと考えてございます。
阪上委員 以上、終わります。
大石委員長 牧義夫君。
牧委員 おはようございます。民主党の牧義夫でございます。
 本日は、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律改正案でございますけれども、そもそも、この大正七年の法律が、現在の今日的な意義と申しますか、生物の多様性を確保するという観点から、この法律そのものがどんな位置づけになるのかというようなところを主に観点にいたしまして、質問をさせていただきたいと思います。
 先ほどもお話が出ましたけれども、三月に新生物多様性国家戦略が決定されているわけでございます。それにかかわるいろいろな法律といいますか、野生生物を保護するさまざまな法律がございます。また、そういった生態系を保全するための保護地区の指定ですとか、それにかかわる法律もさまざま入り乱れているように私には見えてならないわけでございます。環境省の方に言わせれば、そうじゃないんだ、一分のすきもなくきちっと体系化されているんだというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、いま一つ私にはちょっと理解が、整理が進まない、そんな部分があるわけでございまして、まずその辺の整理から進めていきたい。
 ただ、それに先立って、その大前提として、まず生物の多様性というのが、確保する必要性というのはどういう意味で言われているのか、その辺の大臣の基本的な御認識からお聞かせをいただきたいと思います。
大木国務大臣 今、地球環境ということが非常に言われておりますけれども、私は、大きな意味では、やはり生物の多様性というものは、我々人類も地球上で生きていかなきゃいかぬ、それからまた、いろいろな生物との関係というのもきちっと調整しながら、生物自体の方の存続というのもまたひとつ考えなきゃいかぬということでございますから、要するに、広い意味の地球環境というか地球上の環境と申しますか、そういった意味での一つの重要な要素だというふうに思います。
 ただ、現実に行政の立場からそれをどういうふうにきちっと条件を整えていくかということになりますと、これはいろいろあります。今も、一分のすきもなくきちっとできておるという、必要なニーズに応じていろいろと法律もあるわけでございますから、まだまだ私は、これからいろいろと出てくる問題については、さらに検討を必要とする部分というのは非常に多いと思うんです。多いと思いますけれども、とりあえずは、今までもこういった地球環境といったところから、生物の保護あるいはその多様性の確保というようなことというのは国際的にも割に新しい課題ということで、新しい課題というのは、過去数十年にわたっては言われておりますけれども、地球のそれこそ長い長い歴史の中で最近言われてきているということでございますから、はっきり申し上げまして、私は、それに対する対処というものが、まだまだこれからも詰めていかなきゃならぬ問題はたくさんあると思います。
 しかし、やはり我々がこの地球上で人類全体としてこれからいろいろな生物とも共存しながら生きていく、そのための一つの大きな要素であるというふうに考えております。
牧委員 大臣がおっしゃるとおりだと思います。
 また、地球環境ですとか生物多様性ですとか、あるいはまた種の保存ですとか、そういった言葉というか概念というか、そういったもの自体が、どちらかというとここ最近の出てきた言葉ではないかと思うんですけれども、そういった意味では、鳥獣保護という言葉はやや古いかな。むしろ本当の意味での生物多様性が確保されるようなきちっと体系化された法律さえあれば、これは極論をすればやや時代おくれの、この法律そのものがもう時代おくれのものであるかな。むしろ、先ほどの質問にもちょっと出ていましたけれども、保護と狩猟という観点からいうと、やむを得ぬ理由で狩猟をしなければならない者のためのガイドラインみたいなものを一方でつくっておけば、この鳥獣保護という概念そのものは、もっと大きなくくりの中の一つに入れてしまってもいいのかなというふうに私は思っております。
 生物の多様性というのは、私なりの理解からいうと、やはりDNA資源、これは人間にとっての有用性という観点からだけ、狭い意味で申し上げても非常に有用性があるわけで、例えば医薬品の開発あるいは農作物の品種改良等にもさまざまな遺伝子資源が使われている、欠くべからざるものであるわけでございます。
 世界の六割以上の人々が、医薬品を植物に直接依存している。例えば、アメリカで書かれる全処方せんの四割以上が、野生生物、キノコ類ですとかバクテリア、動植物を起源とする薬品を一つは含んでいる。それぐらい重要な遺伝子資源というものについての認識というのをやはりしっかりしておく必要があるんじゃないかなと思っております。
 ちなみに、これはいろいろたくさんあるので、読み上げていると時間がないのであれですけれども、例えばマラリアの特効薬ですとか、あるいは乳がんとか卵巣がんに有効な薬品ですとか、あるいは最近ですとミケラミンB、これはアフリカ産のヴィネ・アンキストロクラドゥス・コルペンシスという、ちょっと舌をかみそうですけれども、そこから発見されたもので、広範囲にわたる抗HIV効力を示す新物質だ。偶然的にどこかの雑草の中から発見されたりカビの中から発見されたり、そういうものがたくさんあるわけで、そういった意味で、単に鳥獣という概念じゃなくて、あらゆる生物にわたる生態系の保全というものをやはりしっかり見詰め直していく必要があるんじゃないかと思います。
 ただ、しかしながら、環境白書によると、我が国に生息する哺乳類、両生類、汽水・淡水魚類の二割強、爬虫類、維管束植物の二割弱、それから鳥類の一割強の種の存続が脅かされている。このような現状についてちょっと大臣の御認識を伺いたいんですけれども、例えば、我が国における絶滅のおそれがある野生生物の種類というのが、動物で六百六十九、植物で千九百九十四、合計二千六百六十三、環境白書でこういうふうになっているんですけれども、さっき申し上げたような本当の意味での遺伝子資源の確保という意味からして、これは非常にゆゆしき事態だと思うんですけれども、その辺の大臣の御認識をお聞かせいただきたいと思います。
大木国務大臣 いろいろな生物が、人間の側から見ますと、そういったものを活用できるということで非常に大事な資源であるということは、そのとおりであろうと思います。
 これは勘定の仕方によるので、今委員からもいろいろとお話ございましたけれども、それでは、今絶滅のおそれのある種というのはどれくらいあるかということで、日本在来の種ということが一応九万四千二百という数字が出ているんですが、そのうちの約三%、二千六百六十三種というものが今絶滅のおそれがあるというふうに一応考えております。
 また、世界的には、国際自然保護連合が二年ほど前に評価した結果では、これもまた勘定の仕方があれですけれども、一応出てきた数字を見ますと、全世界の百五十万の種のうちで約一%が絶滅のおそれがあるということを見ますと、日本の方が絶滅の種の数がパーセンテージでは多いということになりますので、これは当然そういうことを頭に入れてこれから考えていかなきゃいけないというふうに思っております。
牧委員 これから考えていかなきゃならないということですけれども、それらをしっかりと守っていくための、いわば生態系保全のためのしっかり体系化された法律をぜひ検討していただきたいし、一緒に進めていきたいと希望を述べさせておいていただきたいと思います。
 さて、四月十一日に参議院の方の委員会で、小林局長の答弁の中で、八十条の、さっきもお話に出ましたけれども、イルカを含む鯨類については水産資源保護法を適用、トドは漁業法に基づく北海道連合海区漁業調整委員会の指示により捕獲頭数を制限、ラッコ、オットセイについては臘虎膃肭獣猟獲取締法を適用、海生哺乳類のうち、アザラシ類五種類、ニホンアシカ、ジュゴンを鳥獣保護法の対象とする方向で検討する、また、ジュゴンに関しては、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種としての指定も検討するというような御答弁だったと理解をしておりますが、間違いはございませんか。
小林政府参考人 御指摘のとおりでございます。
 八十条で適用除外にしようとしていますのは、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのあるドブネズミ、クマネズミなどのイエネズミ類、それから、漁業法ですとか水産資源保護法などの他の法令により、捕獲等について適切な保護管理がなされている鯨類、トド、ラッコ及びオットセイを環境省令で指定して法の適用除外にしよう、こういうことで、この環境省令につきましては、今後、中央審議会で御議論いただき、意見をいただき、また、パブリックコメントで国民の意見もいただいた上で決めていきたい、こう考えてございます。
牧委員 先ほどの質問と重複するかもしれませんけれども、いろいろな種によって法律ができたり、非常にややこしいんですけれども、これは、将来的にというか、一くくりにしていくような方向性というのはあるんでしょうか。
小林政府参考人 野生動物を対象といたします法律は幾つかございます。水産資源保護法というのもそうかもしれません。それから、鳥獣保護法もありますし、絶滅のおそれのある種を守る種の保存法、それぞれ目的とするところが少しずつ違ってございます。
 そういうことで、一概に一緒にするというのはなかなか難しい、それぞれの種の態様、その生息状況、それから人間とのかかわり、そういうものの中で法律というのができているというふうに考えてございまして、今すぐ一緒にするというのもなかなか技術的にも難しい点があろうかと思っております。それぞれの法律で最善の努力を努めていきたいと考えてございます。
牧委員 最善の努力を信じるしかないと思います。
 ただ、ジュゴンは農水省で、こっちはスナメリをもらうとか、そういった役所間の縄張り争いみたいなことだけはしないでいただきたいようにお願いを申し上げたいと思います。
 また、十三条の方の確認をさせていただきたいと思います。
 「農業又は林業の事業活動に伴い捕獲等又は採取等をすることがやむを得ない鳥獣若しくは鳥類の卵」について、参議院の方で我が党の委員が質問をいたしたわけでございます。それに対して、小林局長の御答弁は、「従来どおり、ここではネズミ類、モグラ類、これを対象にしてまいりたいと思っております。」というふうに答弁をされておりますけれども、そこもちょっと確認をさせていただきたいと思います。
小林政府参考人 改正法の第十三条でございますけれども、これは捕獲の許可を要しない対象種を定めたものでございます。先ほどと一緒ですが、今後、中央審議会の意見とかパブリックコメントなどの手続をしながら決めていきますが、これは、農業または林業の事業活動に伴って、農地または林地において捕獲すること、こういうところでは、そういう農林業活動をいたしますと、ネズミ、モグラというのがどうしても捕獲されてしまうようなこともございますので、捕獲、殺傷が起こりますので、そういう頻繁に起こることについては、一々の捕獲許可を要しない種類として定めるということで、すべてのネズミ、モグラ類が対象外になるわけではなくて、農林業活動に伴ってその地域でやむを得ず捕獲する場合は、一々の許可が要らないというふうに定めたいと思っております。
牧委員 そこら辺、ちょっともう一回確認したいんですけれども、すべてのモグラ、ネズミではないと。ただ、農業に支障があった場合は、どのネズミ目、ネズミ科、どのモグラ目でも規制の対象外になるということですね。
小林政府参考人 農林業の活動に伴って捕獲の許可を要しない種類となりますものは、モグラ類全種、ネズミ類全種というつもりでございます。
 ただ、そのほか、原生林の中にいるモグラ類もいます。そういうものについては、農林業活動によって捕獲されるということはまず考えにくいものですから、そういう種類については、捕獲する場合許可が要るということ。農林業活動に伴って捕獲されるネズミ類、モグラ類というのは、一応全種許可の対象外にしたい、こういう考えでございます。
牧委員 もう一つ、しつこいようですけれども、確認させていただきます。
 ネズミ類、モグラ類の中には、レッドデータブックに載っているものも多数あるわけで、絶滅危惧が八種、準絶滅危惧が十一種なわけですけれども、これらについても同じ適用になるわけですね。
小林政府参考人 御説明します。
 論理的にはそういうことです。農林業活動に伴うネズミ、モグラ類全種については捕獲許可の対象外ということでございますが、絶滅のおそれのある種につきましては、ほとんどそういう農林業によって捕獲される可能性というのはないというふうに考えてございます。
牧委員 捕獲される可能性はないということですね。
 さらに、例えばトゲネズミですとかケナガネズミ、これは天然記念物にも指定されているわけですけれども、これら以外に、また国のレッドリストじゃなくて、それぞれの地域で絶滅の危機に瀕しているそういったネズミ類、モグラ類もいるわけですね。生態系というのは、その地域地域の独自の生態系があるわけで、全国的にこの種は絶滅の危機に瀕していないといっても、ある地域で絶滅の危機に瀕しているものというのは、やはりそれはそれなりの保護も必要だと思いますけれども、そういったものが捕獲の対象になるということはないということでよろしいんでしょうか。確認させていただきたいと思います。
小林政府参考人 通常の農林業活動に伴いまして、農機具にひっかかったりして死んでしまうようなモグラ、ネズミ類というのは、今のところそんなに多く絶滅のおそれがあるというふうにも考えてございません。
 今御指摘の種類につきましては、原生林や何かに生息するような種類のものでございまして、場合によっては何かの都合でかかってしまうこともあるかもしれませんけれども、そういう可能性は少ないということでございます。
牧委員 そうしたら、可能性は少ないということで理解するしかないんでしょうけれども、今レッドリストというのは、あくまでも絶滅の危機に瀕しているという、リストをただ羅列しただけの話なんですけれども、ここに掲載されている生物について、何らかの保護対象にしなきゃいけないという、その法律的な裏づけというのが、法的な担保というのは今ないんだと思うんですけれども、これは例えば法律的な裏づけを持たせるような改正というのはすべきであると思うか思わないか。
奥谷大臣政務官 レッドデータブックに掲載する種につきましては、専門家の既存の知見などを用いまして、個体数の減少や捕獲の程度を分析した上でいわばランクづけをしまして、絶滅のおそれの警鐘といたしておるところでございます。
 また一方、種の保存法に基づく国内希少野生動植物につきましては、捕獲、譲渡等の禁止や保護区の設定を行うこととなりますので、その指定のためには、分布状況あるいは生息数などについて詳細に把握した上で、関係機関等との合意の形成が必要となります。
 このように、両者は趣旨が異なっておりますので、レッドデータブックの掲載をもって自動的に国内希少野生動植物とするということは大変困難と考えておりますけれども、委員の御指摘のように、今までもそうなんですけれども、レッドデータブックに掲載された種については、やはりその絶滅を防止するという観点から、必要に応じまして国内希少野生動植物種への指定を進めてまいりたいと考えております。
牧委員 それと、さっき私が申し上げたように、やはり生態系というのはその地域地域の独自な生態系があるわけで、そういった意味では、国だけじゃなくて都道府県版のレッドデータブックというのもきちっと完備をしていかなければいけないなと思うんです。都道府県において同様の措置を講ずるべきだと思うんですけれども、その辺はいかがですか。進んでいるのか、進んでいないのか。
奥谷大臣政務官 御指摘のように、国のレッドデータブックと同時に都道府県版のレッドデータブックもありまして、これも国と同じように、専門家の知見等からいわゆる絶滅のおそれの警鐘という観点と、それからそれを自動的に保護対象とするということは、その法律の趣旨の違いで困難と考えておるところでございますけれども、これはやはり国と同様にこれから進めてまいりたいということでございます。
牧委員 もう一つ、生態系に被害を与える要素として移入種の問題があろうかと思います。
 例えば、マングースが奄美大島で希少種のアマミノクロウサギを捕食するために、それに対する対策として駆除をしているというようなお話は聞いておりますけれども、これは、法律的な裏づけは、どういう法的な裏づけに基づいて駆除しているんでしょうか。
小林政府参考人 鳥獣保護法で、今回の改正法の第九条三項でございますけれども、鳥獣の捕獲等の許可申請につきまして、その捕獲等によって鳥獣の保護に重大な支障を及ぼすおそれがあるときには、鳥獣の捕獲等の許可をしないということになっています。
 ただし、同時に、生態系に係る被害を防止する目的で捕獲等をしようとする場合はこの限りではないということで、生態系に重大な被害がある場合は、場合によっては鳥獣に大きな支障があっても駆除するんだ、こういう考え方でございまして、この規定は、御指摘の移入種である鳥獣によって本来の自然生態系の攪乱等の被害が生じている場合には、当該移入種を根絶させることも必要なこともあり得るということを踏まえたものでございまして、そういう規定に基づいて、今後とも、例えばアライグマとかマングースとかの移入種についての対策、対応というのを進めていきたいと思っております。
牧委員 今日的な意味としては、狩猟よりもやはりこの移入種の対策なんかの方が、今もお話があったように、生態系を攪乱する要素としては非常に大きな問題になりつつあるわけですから、むしろこっちの方の対策をきちっとしていただきたいな、これも希望を申し述べさせていただきたいと思います。
 野生生物保護にかかわる法律が、さっきも申し上げましたように、鳥獣保護法、種の保存法、あるいは漁業法ですとか水産資源保護法、あるいは臘虎膃肭獣猟獲取締法ですとか、非常に多岐にわたって、さっきの天然記念物のお話なんかは文化財保護法なわけですね。これは文部科学省所管。非常に複雑な法体系になっていますけれども、これを整理して、これは私の意見じゃなくて、参議院の委員会の中である委員が、野生生物保護法みたいな、全体を総括するような上位の法律があって、そのもとにいろいろな、水産資源の保護だとか、そういうのがあった方がいいのじゃないかというような提案をされたと思います。私は、野生生物保護というより、もっと生態系保全法みたいな、そっちの方が私個人としてはいいと思っていますけれども、参議院の委員の方が、野生生物保護法というような表現をされました。
 これに対して大臣が、「今すぐに私どもとしても野生生物保護法といったような形での法律を出すのはいささか早い」というふうに御答弁をされているわけですけれども、その後の突っ込みがちょっとなかったので、あえて私は聞かせていただきたいと思うんですけれども、なぜ早いとおっしゃったのか、ちょっとそこら辺の理由をお聞かせいただきたいと思います。
大木国務大臣 私ども、法律をつくれば、おのずからそれは行政府としてどういうことをやるんだということをお示ししなきゃいかぬということでございますが、野生の動植物がまずどういう状況にあるかということについては、ある程度科学的な知見が得られませんと、それに対してどういうことをする必要があるのか、どういうニーズがあるのか、あるいは仮に対策を考えるとしても対策ができるのか、そういうような問題がありますから、私としては、たまたまこういうことを、国際的にもまただんだんに知見が得られますし、国内でも得られるということでございまして、例えば先ほどの移入種の問題については、国際的にもいろいろなところで検討しておりますから、いずれもう少しきちっと、どちらかといえば制限するということを、よそから入ってくるものを予防するというようなことが議論として出てきておりますから、これは近々に私どもとしても、国内でひとつどういうふうにこれから進めていくかという案をお示ししたいと思いますが、移入種の問題を離れまして、いろいろな問題がありまして、それを全体としてもっと総合的にとらえる法律が必要じゃないかということ、私は、それはこれからの問題として検討に値するというか、検討していくべき問題だと思います。
 ただ、今の現状で、環境省として、あるいは政府として、どう具体的に行政としてやっていくかということになりますと、たまたまいろいろな相手、対象になるものも、例えば水産物についてはずっと水産庁が長い間知識、経験を持っておられるということで、そのための法律もある程度できておるわけでございますから、それはそれで当面は進めていただいていいのじゃないか。ただ、いろいろなものがありますから、全体としての生態系の問題というものについてどういうふうに考えるかということは、これは私はこれからの問題としては当然に考えるべきだと思います。
 ただ、今具体的に行政側から、こういうことをやりますということを例示的に示して、そしてこういう法律をつくりますということになりますと、ちょっとまだ準備ができていないのじゃないか、あるいは科学的な知見も十分得られていないのじゃないか。それから、あえて申せば、政府として、行政府として具体的に何をやるかということに、ちょっとなかなか、全体をまとめてということになりますと、かえってつながりにくいというようなことも感じておりますので、とりあえずは今後の問題として勉強させていただくということを申し上げておるところでございます。
牧委員 時間が余りございませんので、はしょって申し上げたいと思うんですけれども、今の大臣の御答弁、科学的な知見がまだそろっていないというのは、私はそうではないと思います。また、例えば水産庁との関係あるいはほかの省庁との関係、その辺はぜひとも、最初に申し上げたように、遺伝子資源というのをきちっと後世に残していかなきゃいけない、伝えていかなきゃいけないということの観点からすると、やはり環境省がイニシアチブをとって、さまざまな都市計画やら農業、林業の政策にも先立つような、そういった法体系を整備していただきたいなと思います。
 また、環境省の中だけで見ても、例えば生態系を保全するための保護地区の指定にしても、鳥獣保護法で鳥獣保護区、特別保護地区、例えば種の保存法でいくと生息地等保護区、管理地区、自然環境保全法で原生自然環境保全地域、自然環境保全地域、自然公園法で言う特別地域、特別保護地区、利用調整地区、これは、多分大臣も、どこからどこまでが保護地区で利用調整とか、あるいはダブっていたり独立してあったりとか。例えば、生態系を保護するための地域そのものだけでもこれは整理できると思うんですよね、もうちょっときちっと。だから、環境省の中だけでもこれまでの知見でもってもう少しきちっとした体系にしていただきたいなという希望を、もう時間がございませんので、希望だけ申し上げさせていただきまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
大石委員長 近藤昭一君。
近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。今回の鳥獣保護法改正案について、幾つか質問させていただきたいと思います。
 思い起こしますと、一九九九年、ちょうど今から三年前でございますが、鳥獣保護法の改正がございました。当時私も委員として質問をさせていただいたわけでありますが、当時、その際に、鳥獣保護法、保護制度の充実を求めると附帯決議や、三年後の見直しを定めるという附則が付されたわけでありまして、そしてその三年後にちょうど今当たるわけであります。
 そういう中で、野生生物の保護について、野生生物の生息域の保全あるいは回復という問題で、今現在山間部まで開発が大変に進んでおります。そういう中で、生物の生息域の分断、もともとですとこれは自然の面として広がっている、生物がそういう中で行き来をして生息しているわけでありますが、そういった生物の生息域の分断が進んでいるわけであります。生態系の維持には、こういった生物の生息地域間を連結し、移動経路を確保することが重要。
 もちろん私は、本来ですと、もともとこういうところを分断するのはいかがなものかというふうに思うわけでありますが、ただ、現実問題として起こっていることに対してどう対応していくかという問題で質問させていただきたいわけでありますが、そうするとこういった移動経路を確保することが重要だというふうに思うわけでありますが、こういったことに対してどのように政府として具体的に取り組みをされているのか、お聞きをしたいというふうに思います。
小林政府参考人 クマのような大型哺乳類を中心としまして、一定の生息地を確保するために、まとまった面積の生息環境の保全ですとか、その生息地間を結ぶ移動経路の保全を行うことが重要だというふうに思っておりまして、この点につきましては新生物多様性国家戦略にも書き込ませていただいたところでございます。
 このために、鳥獣保護区ですとか国立公園等の保護地域の指定を進めるとともに、林野庁と今勉強もしてございますが、林野庁とよく連携をいたしまして、国有林の緑の回廊等、効果的に連携させることによって、その生息環境の保全、整備、改善を図り、大型哺乳類の保護対策を進めていきたいと考えているところでございます。
近藤(昭)委員 いろいろと施策が行われる中で、そういった連携される中で、野生生物の生息域をしっかりと保全、回復をしていかなくてはならないと思うわけであります。
 ところで、三年前の改正でそれぞれ自治体の鳥獣保護に対する責任というものが明確化をされたわけでありますけれども、そういう中で特定鳥獣保護管理計画が導入されたわけであります。ところが、調べますところによりますと、昨年末までにこの計画が策定をされた自治体は二十一都道府県にとどまっているということであります。しかも大部分は、各委員の方それぞれ、この鳥獣保護法の持つある種の二面性、つまり鳥獣を保護するのかあるいは狩猟、駆除するのか、大変に背反する側面を持った法律の問題点があるわけでありますが、この計画、二十一都道府県で策定された計画を見ておりますと、大変に危惧をする部分がある。つまり、大部分は、農作物の被害対策などで、動物を減少するという側面が大変に強いわけであります。
 ところが、九州、四国などでは絶滅しかけているツキノワグマなどの保護が急がれているわけでありますし、こういった動物は大変に多い。個体数の減少した鳥獣について、保護増殖を目的とした特定鳥獣保護管理計画の策定という部分でいいますと、大変に弱いというふうに感じております。その部分について、どのようにお考えでしょうか。
小林政府参考人 特定鳥獣保護管理計画につきましては、平成十二年度から、野生鳥獣の保護管理を促進するために、その策定またはその実施費用に対して、都道府県に国庫補助など財政的な支援を行っているところでございます。
 これまで、ことしの四月までの間で二十七県まで増加をしてきました。三十二計画が策定をされてございます。確かに、シカ等の非常に増加の著しい種類についての計画が多うございますけれども、それでも、クマですとか猿ですとかの計画、クマは四、猿は二というような形で策定されておりますし、今後もクマについて八計画を予定されてございます。
 こういう補助金を活用いたしまして、著しく減少している地域個体群である鳥獣を対象としまして特定計画を策定し、例えばクマの場合ですと、ドングリなどクマのえさになるような実がなる木を植えたりなどして生息環境の整備などを行っているところでございます。
 今後ともこの方向でその支援を続け、特定鳥獣保護計画が多く策定されるように努めてまいりたいと思っております。
近藤(昭)委員 二十一から二十七にふえた、そういう中で、絶滅しかけている動物、鳥獣に対しての保護という側面も、少しというか、出てきているということであります。
 ただ、私は大変に心配をしているのでありますけれども、私も二週間ほど前に、森林の保全、どちらかというと災害防止という部分でありますが、森林になかなか手が入っていない、この森林を守っていこう、防災の部分あるいは環境を守っていくという部分でということで、森林の視察に行きました。そして現地で、森を育てるに当たってシカ等が芽を食べてしまう、大変に困っているというお話をもちろん伺いました。
 そういう意味で、そういった山といいましょうか森を育てていらっしゃる皆さんにとって大変に、鳥獣というかシカ等が若芽を食べてしまう、お困りではあるんですけれども、ただ、私は前回の質問のときにもいろいろとお伺いをさせていただきまして、また、今お答えの中にもありました。
 つまり、動物が、山の深いところで食べるものが、えさがなくなってきた。大変に開発が進んでという、自然の体系というか自然が変わってきた。そういう中で、どうしてもえさを求めておりてくる。そういうけもの、鳥獣に対して、きちっと食料が食べやすいという状況もつくっているということを今ちょっと御答弁の中にもありましたが、ただ私は、やはり一番大きな根本の問題としては、だからといって数を減らしたり駆除したり、あるいは、もちろん食べ物を準備するということも大事なんですが、大きな意味で、先ほど牧委員の質問の中にもありましたが、生態系全体ということで見直していく、ましてや、環境省が所管をする法律であるわけですから、もっと環境全体という部分で大きな視点を持っていく必要があると思うんです。
 ところで、前回も質問させていただきました。自治体が特定鳥獣保護管理計画をつくっていくわけでありますが、先ほど大臣の答弁の中にも、これからいろいろ対策をしていくにしても、まだまだデータが不足だということであるという御答弁もあったわけですが、どうですか、前回もお聞きしたんですけれども、こういったものをきちっと対応していく、今私が質問させていただいた鳥獣保護管理計画についても、もともとの計画をきちっとつくるということ、そしてまたその計画が適正かどうかということをチェックしていくということ等々を総合的に考えると、こういった方面の専門家の方が大変に重要だと思うんです。
 済みません、ちょっとこれは質問通告をさせていただいていないんですけれども、三年前に質問させていただきましたときに、国としては各自治体がきちんと対応できるようにそういった専門家を育成していくんだ、それについて国がバックアップをしていく、大体年に一人ぐらい、多くても二人ぐらいという専門家の育成の研修をしていくんだ、各都道府県でありますが、その後どうなったでしょうか。きちっと進んでいるのかどうかというようなことをお伺いしたいと思います。
小林政府参考人 鳥獣保護事業計画を適切に進めるための専門家の育成の件でございますけれども、環境省では、都道府県の担当者などを中心にいたしまして研修を実施しております。年間に二百人くらいの規模で研修を進めてございまして、そういう中で、都道府県の担当者が鳥獣保護の保護管理に習熟するように努めてきているところでございます。
近藤(昭)委員 年間二百人ということですか、各都道府県。
小林政府参考人 失礼いたしました。平成十二年度から、十二、十三、十四、三カ年間でトータル二百人でございます。
近藤(昭)委員 二百人という数が十分かどうかというのはなかなか難しい判断だと思いますが、当時質問させていただいたときに、各都道府県当て大体一人か二人をやっていくと。そういう中で、十二年度、十三年度、十四年、十四年になったところで、大体トータルで二百人ぐらいの専門家を各都道府県で育成してきたということでとお聞きしました。これからきちっとした計画で対応していくという部分と、また、対応していくためにもきちっとしたデータを収集していくという部分でも、引き続きこの対応をお願いしたいわけであります。
 ところで、先ほどの質問させていただいた関連ですが、生息地が一つの地域の中で分断をされているところの問題と、もう一つは、もっと広域の部分で考えなくてはならない部分があると思うんですが、そういった生息域が複数の自治体にまたがるような場合に、この連携体制の構築のために政府はどのように取り組みをされているか、教えていただきたいと思います。
小林政府参考人 生息地が複数の都道府県にまたがる場合のいろいろな施策でございますけれども、環境省といたしましては、第九次の鳥獣保護事業計画の基準におきまして、例えばクマのように生息地がいろいろな都道府県の行政界を超えて分布するような場合には、関係都道府県間で協議、調整するよう規定をしているところでございまして、関係都道府県の連携体制の構築に努めているところでございます。例えば、シカですとか何かでは、京都、大阪、兵庫あたりで広域の連絡調整会議を開く、そういうような形の中で対応を図るように指導しているところでございます。
近藤(昭)委員 もちろん、地域地域でしっかりと、より具体的に、地元といいましょうか、近いところで対応していっていただく重要性等、やはりこれは広域にわたる問題点があるわけでありますが、きちっと政府が対応していただきたいというふうに思います。
 ところで、有害鳥獣の駆除、何が有害かというのは大変に人間の勝手な判断ではないかなというふうに思うわけでありますが、あえてこの場合その言葉を使わせていただきますが、有害と言われる鳥獣の駆除、捕獲個体について、商業的な利用が行われるケースが大変に多々あります。しかしながら、商業的価値の高いものについてこのまま放置すれば、いわゆる有害という名のもとに必要以上に駆除が行われ、個体数の減少を招くおそれもあるというふうに思っております。これを未然に防ぐために政府はどのように施策をお考えか、教えていただきたいと思います。
小林政府参考人 有害駆除された個体の資源を有効活用するということは必要だと思っておりますけれども、商業的価値の高い鳥獣が必要以上に捕獲されることのないようにしなければいけないと思っています。地方公共団体が有害鳥獣駆除にかかわる捕獲許可の運用を適正に行うことというのが大事だと思います。必要以上に捕獲されることをそれによって未然に防止する、そういうことが大事だというふうに考えているところでございます。
近藤(昭)委員 その考え方はよくわかっているわけでありますが、具体的にどのような施策をお考えか、また実施していらっしゃるのかということをお伺いしたい。
大木国務大臣 まだ実施というか、これからだんだんに考えていかなきゃいかぬわけでありますが、今度の法律の二十三条で、販売することによってその保護の方が目的を達せられないという場合には、その販売禁止措置をとるという規定もございますから、これは現実にはどういう生息状況であるのか、また販売の状況がどうなっているかというようなことでございまして、そういったものの実態をひとつ把握した上で、もしも禁止の必要性があるということであれば、その禁止を含めて措置をとりたいと考えております。今のところまだ実行しておりませんけれども、そういう方向で検討しております。
近藤(昭)委員 そうすると、今、例えばそういった問題を、問題といいましょうか、いわゆる有害というものの名目のもとで商業的価値の高い動物が捕獲あるいは殺傷されないように、検討というか準備をしていらっしゃるということかと思うんですが、そういった商業的利用を全く、原則というか禁止してしまうということも考えられると思うんですが、もう一度、その原則禁止することも含めてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいというふうに思います。
小林政府参考人 商品価値が高いために過度に捕獲されるというような鳥獣、例えばツキノワグマのような例があるかと思います。漢方薬の原料であるクマノイ、ユウタンというようなものが、現在そのようなことが言われてございます。その生息の実態ですとか、捕獲の状況ですとか、流通の実態等を把握して、自由な販売や利用が当該例えばクマの鳥獣保護に与える影響について検討した上で、販売禁止等の必要性を判断することとしたいと思っています。
 今現在の段階で直ちにそういうことを考えているわけではないですけれども、現在はヤマドリだけが対象になってございます。将来的にそういう方向というのも出てくるのではないかとは思っています。そういうことで、今後の検討課題として考えさせていただきたいと思います。
近藤(昭)委員 なかなか、まだまだはっきりした施策ということではないようでありますが、商業的価値が高いということでこういった鳥獣が狩猟されないように、ぜひきちっと対応をいただきたいというふうに思うわけであります。
 ところで、狩猟免許保持者の減少と高齢化が進んでおるわけであります。また、民間の狩猟者にゆだねる有害鳥獣駆除は、今申し上げたような問題、つまり有害という名のもとで商業的価値が高いものを、そういう人たちが全部が全部悪いと言っているわけではありませんけれども、そういうような懸念があるわけでありまして、こういった有害と言われる鳥獣駆除については、基本的には公的機関が科学的知見に基づいて実施すべきではないかというふうに考えておるわけでありますが、いかがでありましょうか。
小林政府参考人 効果的な有害鳥獣駆除のためには、駆除する地域の自然的条件ですとか鳥獣の特徴等を十分把握している地元のハンターの方、そういう方たちが実施することが今のところ適切だと考えます。それにかわる手段というのは、今、なかなか見つからないというのが現状です。現在は、市町村等による管理のもとに、地域の猟友会に所属するハンターが駆除隊を組織して実施することが一般的でありまして、これが現実的な対応だというふうに考えてございます。
 ただ、今後とも科学的知見の充実を図る必要がありますので、ことしの一月に設置した検討会におきまして、有害鳥獣駆除の担い手をどう確保していくのか、また、特定鳥獣保護管理計画における個体数管理の担い手をどうしていくか、そういうのを非常に大きな課題として今現在検討させていただいているところでございます。
近藤(昭)委員 三年前にも質問させていただいたときにも、なかなか専門家の方が決して全国にもたくさん、たしか当時は全国で、例えば大学とかあるいは研究機関等々で二百八十人ぐらいだったというお答えをいただいたような気がするんですが、そういった鳥獣に関する専門家がおられる。もちろんそういう方が、残念ながら、朝から晩までといいましょうか、ずっとこの問題に取り組んでいらっしゃるわけではないので、二百八十人といっても決して多い数ではないと思います。また、その後、各自治体でいろいろと専門家の方を、専門家というか、専門に携わる方を育成していただいているといっても、まだまだ十分な人数ではない。そういう中で、私は、科学的知見というのは、科学的な知見によってこれが多いとか少ないとかと人間が判断するというのもかなりおごりがあると思うんですが、ぜひこういったデータをきちっと集めていっていただきたいというふうに思うわけであります。
 その一方で、先ほども申し上げましたように、山を、森を持っていらっしゃるというか、現場で農産物に大変に野生生物の被害が出ているわけでありまして、私は、生態系全体できちっと、場当たり的にというか、対症療法的に鳥獣の数を減らしたりとかあるいは先ほどのえさを準備したりとかいうことではなくて、もっと大きな目で考えなくてはならないと思っているんですが、ただ、現実の問題として、農産物への被害が大変に深刻、三百億円を超えるんではないかというふうに聞いておるわけであります。こういったことに対して、やはり補償制度も必要ではあると思っているんですが、このことについてどういうふうに取り組んでいらっしゃるか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
坂野政府参考人 野生生物によります農産物への被害を防止するため、農林水産省といたしましては、まず、害獣等の侵入の防止さくとか電気さくなどの被害防止施設の整備、さらには、先進的な技術を活用しました被害防止技術の確立、普及、さらには、被害発生原因の究明なり、それと対策技術の技術開発ですけれども、そういった試験研究について等の諸対策を講じているところでございます。
 最近の鳥獣害対策の実績としましては、平成十二年度に二十一億円、平成十三年度には二十五億円が見込まれるところでございます。
 これらの被害防止対策のほかに、国庫負担を伴います農業災害補償制度というのがございまして、これによりまして鳥獣害による共済金の支払いについても実施しているところでございます。
 今後とも、環境省等関係省庁と連携をとりながら、鳥獣害対策についての推進に努めてまいりたいと考えております。
近藤(昭)委員 そうしますと、例えば具体的に、国庫負担を伴うそういった補償制度があるということですが、どれくらいの利用がありますでしょうか。
坂野政府参考人 個別の利用といいますと、これは災害の被害を受けたときですので、個別事例ごとに、例えば被害を受けたところは事例的にはかなりもらうということでありますけれども、全国的な率は、被害自体は、補償の支払い自体はさほどございません。(発言する者あり)
近藤(昭)委員 そのとおりです。
 ですから、先ほども質問の中で申し上げたんですが、三百億円もの被害があって、補償制度もあるけれども、何か今の御答弁では、補償されているのか補償されていないんだかよくわからないんでありますが、いかがでしょうか。
坂野政府参考人 具体的な共済の仕組みを言いますと、共済の掛金は、半分、五〇%が国庫負担になっております。ですから、半分が国庫負担ということになっております。
 それからあと、どういう場合に共済金が支払われるかということでございますけれども、これは補償水準がありまして、七割から九割の水準で補償をする、それ以下に下がった場合にはそこまで共済金を支払う、こういう仕組みになっております。
近藤(昭)委員 済みません、ちょっと私が不勉強なんでありますが、共済制度というのは何でしょうか。鳥獣が芽を食べてしまうとかそういうこと、総括的な共済制度なんですか。
 私がちょっとイメージして質問をさせていただいたのは、山林の開発に伴ってどんどんと鳥獣が食べ物を得る場所が狭められてきた、そういう中で、山をおりざるを得なくなってきて芽を食べてしまう、こういうどちらかというと特定の、かなり絞られた原因の中で出ている被害についてというイメージでちょっとお伺いをしたんですが、その共済制度というのはどうなんですか。例えば災害とか何かの、そういうこと全体のあれなんじゃないですか。
坂野政府参考人 農業の共済制度でございます。これは、災害の、風水害だとか、それからそういったようなもの全体を含みます。その中に鳥獣害対策も含まれるということでございます。
近藤(昭)委員 そうすると、それは以前からあった風水害も含めての共済制度ということですね。
 そうすると、今私が申し上げたのは、鳥獣保護、つまり、どんどん食料がとりにくくなってしまっておりてくる、おりてきて、それを撃ち殺してしまって、駆除して被害を少なくするというのは、考え方としてはあるけれども、非常に問題ではないか、それを抜本的にもっと解決する部分を考えるべきではないかということと、もう一方で、ただ、さはされど、そういう被害が出ているので、それに対してどういうふうに対応なされていかれるんですかという質問でありますが、そうすると、共済金の掛金の半分は国で持っているけれども、そこでやりなさいということで、こういう問題が大きくなってからの、特にその特定の対応はないということですか。
小林政府参考人 前段のところにつきまして御説明を申し上げたいと思います。
 まず、農林業被害を鳥獣によって出さないということの対策としまして、被害防止の対策、さくを設置するとかそういうような対策を講じること、それから、環境省で、先般の法律改正でしていただきました特定鳥獣保護管理計画におきまして、個体数調整ですとか生息環境の整備ですとか、そういうようなことをする、それから有害鳥獣駆除、そういうような組み合わせを林野庁ほか関係省庁とも連携して総合的に環境省ではしているというところでございます。
 共済制度につきましては、また別途御説明があると思います。
坂野政府参考人 被害救済の措置の話につきましては、先生が御存じのように、十一年の改正の際に、その対策をという、損失補償ですか、そういうものがございまして、現在、環境省を中心に関係省庁間でさらに検討しているわけでございます。
 具体的には、環境省の方の野生鳥獣保護管理検討会というところでいろいろな検討をしておりまして、当省としましても、積極的に協力していきたいというふうに考えております。
近藤(昭)委員 質問時間が終了してしまいましたのであれですけれども、今のお答えは、検討しているけれどもまだきちっとした、きちっとしたというか、まあ検討しているということなのかもしれません。これはきちっと、いわゆる対症療法的な部分でのきちっとした対応と、冒頭申し上げましたように、鳥獣保護といいましょうか、やはり生態系をどういうふうに全体として守っていくかということが重要だと思いますので、その観点をぜひ大事にしていただきたいと思います。
 先ほどの同僚の牧委員からも話がありましたように、生態系を全体でどうして大事にしていくか、これがやはり環境省としての大きな仕事だと思いますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。
大石委員長 西博義君。
西委員 公明党の西博義でございます。午前の最後のバッターでございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は、鳥獣保護法改正案に関連して少し幅広く、生物保護政策について大臣を中心に少し御質問を申し上げたいと思います。
 まず初めに、先ほどからも随分各委員からお話がありましたけれども、現行法体制のことについて若干お伺いをしたいと思います。
 生物に関する法律、たくさんございます。野生生物は、今議論になっております鳥獣保護法、それから人に飼われている動物、これは動物の保護管理に関する法律があります。さらには、海生哺乳類、海にすむ哺乳類ですが、水産資源保護法、それから臘虎膃肭獣猟獲取締法というのがあるんだそうです。そのように個別の法律でそれぞれの必要に応じて対応している、こう理解をしております。
 環境省として、これらの現行の個別法律の体系というのは問題がないというふうにお考えになっているのか、これが一点でございます。
 そして、生態系を全体的にとらえる政策、それから、先ほどからも若干ありました外来種、交雑種などへの規制、後ほどまた若干このことについてもお伺いしたいと思いますが、これが現行法で対応していけるのかという気が私はしております。
 ある新聞によりますと、二〇〇一年で七億七千万点の生きた動物が輸入されていると。けたが違うんじゃないかなと私、瞬間思ったんですが、現実には、輸入大国として大量のそういう動植物が輸入されている。もちろん、すべてがすべて生き残ってということではないと思うんです。また、小さなミツバチのようなハチのような、受粉のためのそういう小さな動物も輸入されているということも聞いております。
 いずれにいたしましても、大変外国のそういう生物が日本に現実に毎年毎年入っているということを考えますと、事情によっては個別法によってきちっと対応していくということも当然考えられるとは思うんですが、また、生物全般にわたって包括的な法という考え方もあるんではないか。そのことによって国民全般が生物に対しての考え方というのが広く理解しやすい、基本法と言っていいかどうかわかりませんが、そういう考え方もあるんではないかと実は思っておりまして、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
大木国務大臣 先ほどからずっとほかの委員からも御質問がありまして、要するに、包括的な一つの生物の生態系の保存と申しますか、あるいは、もし十分でなければそれを改善するとか、そういった総体的なものを考えた方がいいんじゃないかというお話でございますが、生物の生態系の保存というのは、いろいろな対象があるわけでございますし、実は、国際的にも国内的にも比較的新しい問題と申しますか、もちろん数十年既にたってはおりますけれども、それでは総括的にどうするかということになりますと、まだそれは国民の中にも意識の中で十分に熟していない問題があるんじゃないか。
 今、例えば移入種が非常に多いというのでも、これも国民がいろいろな形で、あるいは商売用にあるいは愛玩用にいろいろなものをどんどんたくさん飼う。こんなにたくさんになってしまって、これはやはり国全体として考えなきゃいかぬぞというような問題がありますから、それはやはり将来またそういった生態系全体を見直すということが私は必要だと思います。必要だと思いますが、これを今すぐに包括的な法律で一つくくるということが非常に必要か、あるいは非常に適切かということになりますと、ちょっと早いということはあえて私どもも申し上げておるところであります。
 ただ、いろいろな法律があってその関連がよくわからないとか、国民としてはこれはお互いどういう状況になっているかということですから、そういったものをひとつ全体を並べてよくわかるようにする努力というのは必要だと思います。そういった意味での広報活動は私は必要だと思いますが、今すべてのものを別に一つまとめた法律をすぐにつくるということについては、いささかちょっとこれは早いんじゃないかなという感じを持っております。
西委員 大臣のお考え、よくわかりました。
 いずれにいたしましても、国民の中にやはりこういう考え方というものを定着させるということがまずとりあえず大事であるというふうに私も思っておりますので、御努力をお願いしたいと思います。
 次に、私の地元の和歌山県で、皆さんも御存じのように、タイワンザルが昔動物園で飼われたのが野生化いたしまして、それがニホンザルとの交雑になり大きな問題になりました。まだ解決には至っておりませんけれども、そういうことがございました。また、動物ばかりかクワガタなんかも、外国から入ってきたクワガタとの交雑種が自然に見つかる。さらに海藻も、特殊な、キラー海藻というんだそうですが、イチイヅタという海藻が、世界はおろか日本にも入ってきて生態系を脅かそうとしている。特に、今見つかったのが北の方ですが、太平洋岸、暖かい海域ではかなり駆除するのが難しくなるんじゃないか、こんな意見もございます。
 そんなところで、生態系への影響を考えて、生物の輸入に対して厳しい制限を設けていくべきではないかということをお伺いしたいと思います。
小林政府参考人 和歌山県のタイワンザルを初めとしまして、国外あるいは地域外から人為的に持ち込まれました生物による生態系への影響というのは、国内でさまざまな問題を生じさせていると認識しております。こういう種類につきましては、一たん移入されますと取り返しがつかなくなるというようなことも懸念されるわけです。
 そこで、平成十三年の十二月に総合規制改革会議がございまして、そこの答申におきまして、外来種対策のあり方に係る検討が盛り込まれました。検討するように指摘されました。本年四月、オランダのハーグで開催されました第六回の生物多様性条約の締約国会議におきましても、外来種に関する指針原則が決議されました。これらの決議、答申におきましても、外来種につきましては侵入の予防を重点的に行うべきとされております。
 御指摘のとおり、これらの決議を踏まえまして、外来種については、利用の前に、日本でいえば輸入の段階で、生物多様性への影響を事前に評価して、影響を生じさせるおそれがある生物については輸入の抑制をする、差しとめをする、そういうことが重要と考えてございます。
 今、この問題について検討会で勉強しています。十四年度中に方向を出すようにという御指摘もございますので、そういうつもりで今最終的な詰めを行っているところでございます。必要な措置だというふうに考えているところでございます。
西委員 精力的にお願いしたいと思います。
 国際自然保護連合では、本来生息しているところでは自然環境が競争的で余り異常な繁殖とかふえたりしない、そういう種でも別のところに行きますと一遍にふえてしまう、こういうような種があるそうで、インベーダー動植物と言って、百種類を限定して警戒を呼びかけているというようなニュースも私もちょっと拝見しました。
 いろいろなそういう情報がおありだと思いますので、限定的にでも、とりあえずこれだけということでもとりあえずよろしいかと思いますが、精力的にそういう対象を限定して規制を行っていただきたい、こういうふうに思います。
 次に参りたいと思います。
 ニュージーランドで行われているということなんですが、検疫対策として、ペットの問題です、国外から持ってきたペットにマイクロチップを埋め込んで、そして個人、個人じゃない、人ではないですね、動物の識別をしている。私も大変大げさなことかなと思いましたら、実は注射器、ちょっと特殊な注射器なのですが、その針のところに小さなチップを、首のところに押し込んで、それで識別をする、こんなことが既に行われているんだそうです。日本でも一部の自治体ではそういうことが行われているというふうにも聞いております。
 生物を輸入するとしても、その輸入した者、業者及びその飼い主の責任が不明確なためにこれが野生化してしまうとか、こういうことがたびたびマスコミをにぎわしているのですが、こうした生物を識別する方法、例えばマイクロチップ、先ほど申し上げましたが、それか、登録制度というものも犬なんかが既に実施をされておりますが、そういう形で輸入してきた動物の識別をきちっとするべきではないかというふうに思いますが、御見解をお願いいたします。
小林政府参考人 輸入者ですとか飼い主の責任を明確にするということが、輸入した生物の管理を行うために非常に有効な方法であると考えております。
 輸入した生物の登録制度の導入につきましては、制度の対象とする生物をどの範囲にするか、個体識別の方法など、今後いろいろ検討すべき点があるというふうに考えてございます。
 ペットに関しましては、環境省で、動物愛護管理法に基づきまして、最近ですけれども、飼い主がペット等を適正に飼養するための基準を定めました。家庭動物等の飼養及び保管に関する基準というものですが、これを決定告示しまして、その中で、ペット動物の管理者の責任の所在を明らかにしました。そして、逃走した動物の発見を容易にするためにも、名札をつけるとかマイクロチップをつけるとか、そういうような措置を適切に講ずるよう明記されたところでございます。
 環境省としましては、この基準に基づきまして所有者の明示の措置が徹底されるように地方自治体、関係団体と連携して普及啓発に取り組むことによって、ペットの逃走による移入種問題の予防ができるようにしたいと思います。また、有効な輸入生物の管理方法の検討もあわせて引き続き行っていきたいと考えております。
西委員 環境省の方で種々お考えいただいているようですが、先ほどもちょっと現場の体制という議論がありましたけれども、それぞれの自治体が環境省の意向を受けてきちっとした体制で実施できるように、引き続き努力していただきたいと思います。
 これも新聞で拝見したんですけれども、先ほどクワガタをちょっと言いましたが、日本では輸入が許可されておりますシェンクリンオオクワガタとかタイワンオオクワガタ、これは原産地であります台湾では捕獲をしてはいけないという保全動物に指定されている、こういうふうに聞いております。これがまず一点、確認をしたいと思います。
 そして、このようにして原産地で捕獲、輸出禁止がされている生物が日本に現実には輸入されているというようなことがほかにもあるんじゃないかなという気がしておりまして、そんなケースがさらにほかの例でもあるのかどうか、確認をしたいと思います。
小林政府参考人 御説明申し上げます。
 台湾では、野生生物保育法というのがございまして、それに基づきまして、絶滅のおそれのある種あるいは希少で価値のある種につきましては、捕獲ですとか取引を規制してございます。御指摘のシェンクリンオオクワガタとタイワンオオクワガタにつきましても、この規制の対象種となっております。
 また、原産地において絶滅のおそれのあるとされている野生生物につきましては、国際間の協力で輸出入の制限をすることができますが、これはワシントン条約と申しますが、ワシントン条約に基づきまして輸出入の規制を適用させることが一般的に行われている方法だと思います。ワシントン条約の対象種に条約の締約国会議でいたしますと、輸出入に際して許可が必要になります。その一定の手続を経ていないものの輸入はできないということで、日本もその規制に従うということで、適切な輸入規制がワシントン条約の登録種にいたしますとできるようになるというふうに考えております。
西委員 今の説明ですと、このシェンクリンオオクワガタ、タイワンオオクワガタはワシントン条約の適用になっているという前提で考えたらよろしいのでしょうか。
小林政府参考人 この二種類のクワガタムシにつきましては、現在ワシントン条約では対象外になっています。そのために、我が国では輸出入の規制の対象になっていないという状況だと思います。
西委員 一九九九年十一月から二〇〇一年五月までの間で、神戸港では十八万匹、横浜港では十七万匹のカブトムシ、クワガタが上陸している、こんな記事もございました。大変な数だなと。
 一方では、先ほどお話がありましたように、各国では独自に保護しているそういう種でも、日本では輸入の許可が自由に得られる、こんな結果もございます。そうすると、結果的には、他国で捕まえてはいけない、そういう生物が日本で受け入れられている、もちろん出す方が問題であることは当然でございますが、こんな問題点があるように思います。
 環境省には、こうした各国が既に規制をしているという生物の情報が、今、オオクワガタについては、台湾のケースは承知をしているという答弁がありましたけれども、その辺の情報がはっきりしているのか、もしくは、さらに、そのチェック体制がどうなっているのか、あわせてお聞きをしたいと思います。
小林政府参考人 原産地におきまして絶滅のおそれのあるとされている野生動植物の国際取引の規制に関しては、先ほど御説明申し上げましたとおり、ワシントン条約が国際的に合意された規制ということでございます。したがって、各国が自国で捕獲を規制し、さらに輸出を規制する必要があれば、ワシントン条約に基づく附属書に掲載することが一般的であるというふうに思います。
 ワシントン条約に基づく輸出入規制ではなくて、各国が自主的に輸出の制限をしているものについて、我が国がその輸入時に確認して輸入を制限することは、現実的にはなかなか難しい問題があるんじゃないかな、こういうふうに考えてございます。
西委員 若干その辺も配慮が要るんじゃないかなということと同時に、お聞きすると、クワガタとか、そういう種類の昆虫は植物検疫所で判断をされている。つまり、農作物に被害を及ぼすかどうかということが一つの判断基準になっている、こういうふうにお伺いをしております。
 生態系への影響ということが余り視野に入っていないのではないかという問題意識が、私はそういう感じを持っておりますが、これはちょっと事前に予告していなかったですけれども、お答えできますか。
小林政府参考人 確かに、御指摘のとおり、昆虫等につきましては、農作物に与える影響ということで、植物検疫、動物検疫という中で規制をしておりまして、独自の判断で農水省がやってございます。
 現在、移入種による生態系影響につきましては、非常に大きな問題という認識は持っておりますけれども、それのための国内措置ということについてはほとんど対応ができていない状況で、これにどう対応するか、今現在、移入種検討会において勉強しているところでございます。
 絶滅のおそれのあるという観点での輸出入規制であればワシントン条約ですが、移入種問題が生態系に及ぼす影響というのはまた新しい課題だというふうに認識してございます。
西委員 ぜひ環境省として積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 少し観点を変えます。
 鳥獣の生息地をどういうふうにして保護していくか。先ほど牧委員からも御指摘がありました。生息地等保護区、それから鳥獣保護区などいろいろ制度があります。つまり、保護すべきところを限定しているという基本的な考え方だと思います。
 生息地の保護区や鳥獣保護区という枠組みが、保護するという観点から本当に適切なのかどうかということを少し私も疑問に思っております。逆の方がいいんじゃないかと正直言って思っているぐらいでございまして、ここだけを保護するというのじゃなくて、全体を保護する中でここはどういうふうにするかという考え方の方がむしろ適切じゃないかという問題意識を持っておりまして、これについての御見解をお伺いしたいと思います。
山下副大臣 先ほどの牧委員、それから近藤委員の観点も同じような観点だと思うんですけれども、今までの手法を、今おっしゃるように、種の保存法にしろ鳥獣保護法にしろ、生息地を、とにかく区域を限定してそこを保全していくという観点の手法で方向としてはやってきた。それでいいのかという考え方は、私は確かにあると思います。
 新生物多様性国家戦略というものがこの三月につくられたわけですけれども、ここでは、要するに生物多様性から見た国土のとらえ方、そういうふうなことを基本方針に書いてあるわけですね。そういう考え方がやっと日本でも出始めた。したがって、現実の法の仕組みとしては、まだまだそこまでいっていない。今回の鳥獣保護法改正でも、生物多様性の保全ということが目的に入ったけれども、だけれども、そういう考え方はまだまだ根づいていないという段階なのではないかということが、今おっしゃるような問題意識になって出てきているのではないかというふうに思いまして、まだまだ成熟させていかないと、なかなか現実の法体系としてはそこまでまだいかない。
 方向性としてはそういうことが出てきたということが、この新戦略の中に明確に入ったということではないのかなというとらえ方でございます。
西委員 ほぼ共通の認識だというふうに理解させていただきます。
 時間も迫ってまいりましたので、最後の質問にさせていただきます。
 これまでの森林政策をずっと戦後続けてまいりましたけれども、そのことにより、もちろんよかった面、悪かった面、総括的にいろいろあると思いますが、結果的には人工林が大変多くなって、広葉樹林がそのせいで減少した、こういうことになっております。それが、野生生物のえさがなくなって、そして森林で今まですんでいた、特に大型獣が生息できなくなっている、こういう事態になっております。
 現在私たち、国会で議員立法として自然再生法案の提出を目指して取り組んでいるわけですが、いろいろ考えてみますと、例えばドングリなど広葉樹林を植栽して野生生物が生息できる自然を再生すべきである、これはまた一つの再生として大きな観点ではなかろうか、こう考えております。
 環境省及び林野庁も、例えば一つの指標として、クマがすめる山を再生するとか、オオタカがすめる、例えばつい最近もくぬぎ山に視察させていただきましたけれども、そういう観点から森を整備するとか、もちろんもっとほかの目的があってもよろしいんですけれども、何かそういう一つの指標として、その環境に合わせるような整備の仕方というような考え方が事業展開としてもあり得るんじゃないかというふうに、私、この今の法案の審議の中で考えたわけでございますけれども、大臣並びに林野庁の方から御答弁をお願いしたいと思います。
米田政府参考人 御説明申し上げます。
 先生の御指摘になった問題につきましては、我々も同一方向で考えておりまして、昨年、林業基本法を改正いたしまして森林・林業基本法を制定いたしましたが、その中でも、木材供給機能にとどまらず、森林の持つ多面的な機能、環境保全であるとか水土保全であるとか、そういうものを重視して森林を整備していくということが重要という認識のもとで、例えば野生動植物の生息の場の提供などの面ですぐれた機能を持つ複層林であるとか、戦後針葉樹の人工林が大量にできたわけでございますが、それと広葉樹と、針広混交林と申しますが、そういうものの施業、あるいは広葉樹林自体の整備、そういうものを推進して、人間と野生動植物の共生にも配慮していくことが重要と考えております。
 こうした観点を踏まえまして、先ほどの法律に基づきまして森林・林業基本計画が昨年十月に制定されたわけでございますが、その中で、特に森林と人との共生林におきましては、針葉樹人工林への広葉樹の導入、広葉樹林の造成、そういうものを推進することにしております。
 さらに、先生今申しましたようなクマのいる森、オオタカのいる森等々の話でございますが、国有林野におきまして、貴重な野生動植物の生息地のネットワーク形成ということで、緑の回廊というものを設定しております。その中におきましては、今先生から御指摘ありましたような、地域における希少野生動植物、天然記念物等を視野に入れて、具体的な回廊の整備というものを進めるということで対応しております。
 今後とも、これらによりまして、野生動植物の生息、生育環境にも配慮した多様な森林づくりを推進してまいりたいと考えております。
大木国務大臣 お話のございました、今与党三党の方でいろいろと御検討いただいております自然再生法案というのは、個々の生物をどうするかということでなくて、彼らの生息の環境を保全していく、改善していくということでございまして、大変に意味のあるものだと思っております。今林野庁の方からもお話がございましたけれども、また行政府側もそれに対応いたしまして、いろいろな環境を整備してまいりたいと思っておりますので、自然再生法案の方の御審議は、そういう状況になってまいりましたら、私どもも大いに期待をしておりますし、それに対応する措置というものを行政側としても整備してまいりたいというふうに思っております。
西委員 以上で終わります。ありがとうございました。
大石委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。
    正午休憩
     ――――◇―――――
    午後一時三十一分開議
大石委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。
 きょうは、午前中に引き続きまして午後、鳥獣の審議ということで、よろしくお願いをいたします。
 まず、この鳥獣保護法の観点、私もさまざま今回研究させていただきましたけれども、私ども自由党としては、人と自然との共生を目指す、そして生態系を維持するんだ、これは各党共通の理念だとは思いますけれども、それをやはり積極的に推進していかなくちゃいけないというふうに、まず意見の表明をさせていただきます。
 その前提に立ちまして、ちょっと細かいことでありますけれども、大変重要なことでありますので、お尋ねさせていただきたいと思います。第八十条の適用除外の部分についてであります。
 この適用除外、八十条にはこのようにうたわれています。「この法律の規定は、環境衛生の維持に重大な支障を及ぼすおそれのある鳥獣又は他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣であって環境省令で定めるものについては、適用しない。」ということであります。
 大臣にまずお尋ねをさせていただきたいと思いますけれども、海生哺乳類に関して質問させていただきますけれども、参議院の方の審議、これは参議院先議でありますので、全部議事録も検証させていただきましたが、四月十一日参議院の環境委員会で、この第八十条の環境省令に規定をされていわゆる鳥獣保護法の適用を除外する種について、水産資源保護法、漁業法などによって管理が行われている種については鳥獣保護法を適用しないという趣旨の答弁が環境省さんからなされております。
 余り早口でしゃべりますと、大臣、意味がわかりませんので、ゆっくりしゃべります。
 水産資源保護法施行規則には、現在四つの海生哺乳類が挙げられておりますが、この施行規則が設けられてから今日まで、この制度により果たしてどの程度の保護的な成果が具体的にあったのかどうか、そもそも生息頭数また生息地の改善状況などについてきちんとした調査が行われているのかどうかというのがまず一番最初の疑問点であります。行われているとするのであれば、その成果について具体的に教えていただきたいと思います。いかがでしょうか。
大木国務大臣 午前中から、環境省に対しては、今の鳥獣保護に限らず、全体的に生物の多様性あるいは生態系の保存ということについて総合的にいろいろなものを含めてやるべきじゃないかというようなお話もございましたけれども、午前中も御説明申し上げましたけれども、今のところは、従来から、例えば水産関係につきましては水産庁の方でいろいろとその法律もお持ちで、いろいろな施策も行っておられるということでございますので、私どもとしては、今の水産資源保護法の施行規則に基づくいろいろな対策というのは、実質的には水産庁の方でやっておられるということでございますから、今から私が申し上げるのも、水産庁の方でしておられることを私の方で情報としていただいているということを申し上げるわけでございます。
 水産資源保護法施行規則では、採捕規制動物として、ホッキョククジラ、シロナガスクジラ、ジュゴン及びスナメリ、この四つが挙げられておるということでありまして、水産庁において次のような措置を講じておられるというわけであります。
 鯨類二種については、その捕獲を禁止するとともに、現存の頭数把握のための調査等を実施しておられるということでありまして、調査によれば、捕鯨により一九六〇年代には約二百頭ぐらいまでに減少した日本近海のシロナガスクジラに個体数回復の兆しが見られているということで、一度減少したのが少し上がってきておるというふうに理解をしております。
 それから、ジュゴン及びスナメリにつきましては、その捕獲を禁止するとともに、漂着した個体等の報告を義務づけ、生息数の推計、混獲防止等に向けた取り組みを実施しておられるということでございまして、いずれも主としては水産庁がやられておりますが、私どもとしても情報をそういう形では今把握をしておるところでございます。
樋高委員 要するに、水産庁さんの方でやられているのはわかりますけれども、きちっと把握をしていないというふうに私は聞き取れたのであります。要するに、改善状況などについてきちんと調査をして、私が今申し上げたのは、その成果について具体的に教えてくれということを申し上げたのでありますけれども、改善の兆しが見られるとかいう極めて抽象的な言い回しであります。
 いわゆる個体数の回復あるいは保護の効果がきちっと把握できていない、あらわれていないとするんであれば、水産資源保護法ではやはり保護対策としては不十分である。生物多様性の確保を目的とする鳥獣保護法案の方でしっかりとした保護対策を講じていくことが必要だと考えますけれども、どのような御見解でしょうか。
大木国務大臣 繰り返しになりますけれども、私どもとしましては、いろいろな生物の多様性また生態系の保全ということについては、基本的には、そういったものを総体的にとらえるということが必要ですし望ましいというふうに考えておりますけれども、現実には、今まで少なくとも行政官庁としては、いろいろなものについてどういう実際の仕事をするかということを頭に置きながら必要な法律を整備しておる、あるいは調査をしておる、こういうことでございますから、今の水産資源保護法に基づく採捕規制によって個体の減少傾向を緩和するとともに、例えばシロナガスクジラでは個体数の回復の兆しが見られるといったようなことを、ある程度その調査結果も得ておるわけであります。
 また、改正法第八十条では、他の法令により捕獲等について適切な保護管理がなされている鳥獣を本法の適用除外とするものではありますけれども、このように水産資源保護法によりましては個体の保護に一定の役割を果たしておるということでありまして、今の「他の法令」に該当するということで、全体としては、私どもはそこまでは把握をしておるということでございます。
樋高委員 例えば、オットセイとかトドについては農水省であったり、アザラシが環境省、同じ海獣についても取り扱いが分かれているということでありますけれども、生物の多様性を重視するのであれば、やはり鳥獣保護法で一括して取り扱うべきではないかということを申し上げたいわけであります。
 続きまして、ジュゴンについては鳥獣保護法の対象として検討しているということが参議院の方の審議でなされたようであります。参議院の議論の中で環境省からありました、いわゆる水産資源保護法施行規則第一条の指定種のうち、鳥獣保護法の対象としては、今回検討されているのはジュゴンだけなんでしょうかということをお尋ねしたいと思います。スナメリについてはいかがでしょうかということなんであります。
 スナメリは、哺乳類学会では絶滅危機種に、いわゆる日本の希少な野生生物に関するデータブック、水産庁さんの方でつくっておいででありますけれども、こちらの方では希少種となっております。近年、数が激減していて、保護対策が必要とされております。スナメリは、日本周辺に少なくとも四つの地域個体群が存在をしまして、個体群ごとに異なる遺伝的特徴を持っているために、種内遺伝子の多様性保全という観点から緊急に保護対策を検討することが必要であるというふうに考えます。
 以上のことから、ジュゴンに引き続きましてスナメリについても、ジュゴン同様に、生物多様性の確保を目的とする鳥獣保護法の方で保護、回復を図る必要があるというふうに考えますけれども、いかがお考えでありますでしょうか。
大木国務大臣 いろいろな種につきまして、それぞれの現状に応じて、規制をしていくか、まず規制が必要かどうかということでありますし、規制をするとすればどういうことが必要かということになるわけでございますけれども、ジュゴンにつきましてもスナメリについても、そのやり方は完全には一緒でありませんけれども、それぞれに規制ということを考えているということが、まず一般論とすればそういうお答えになるかと思います。
 我が国では沖縄近海にのみ生息するジュゴンにつきましては、生息域及び生息頭数ともに非常に限られておるということでありまして、環境省としても、本年二月から本格的な生息状況の調査に着手したところでありまして、今回の法改正に伴いまして、新たに鳥獣保護法の対象としてジュゴンについては保護をしてまいります。
 それから、スナメリにつきましては、瀬戸内海や有明海などにそれぞれ、これは多少生息数がジュゴンとは違うかなと思いますけれども、数千頭生息しておるということが言われておりますし、水産資源保護法の方で採捕規制が行われるとともに、これは水産庁がやっておられるわけですけれども、水産庁が生態調査や資源調査等を充実させて実施しておられるということでございますので、現段階では、水産庁等と連携を深めながら、スナメリについても、今後水産庁を初めいろいろな調査の情報を集めて、これから必要に応じて今後の対策は考えてもらいたい。今のところではそういうところで、全くジュゴンと一緒ということではございません。
樋高委員 このスナメリにつきましても、鳥獣保護法の対象としてぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 次に、トドの問題について質問させていただきたいと思います。
 四月十六日、参議院の方の参考人質疑におきまして、トドは過去の生息数を大きく下回っている、捕獲割り当てが設定はされているものの、漁業法に基づく年間百十六頭という捕獲割り当てについては、参考人の方からこういうふうにおっしゃっておいででした、何ら科学的根拠もない、過去五年間の陸揚げ頭数の八掛けをしただけというものでありますという指摘がなされたところでありますけれども、この百十六頭という捕獲割り当ての根拠についてお聞かせをいただきたいと思います。
大木国務大臣 トドにつきましては、一九九三年までは捕獲制限が設けられていなかった。一九九四年からは、漁業法第六十七条に基づく北海道連合海区漁業調整委員会の指示によって、捕獲頭数の上限が百十六頭に制限されている。おっしゃるとおり、百十六頭というのはそれが制限の数字になっております。
 それでは、その百十六頭という数字の根拠は何かということでございますが、近年の捕獲割り当て量の根拠は、トドが少しずつ減少傾向にあるというような状況も考え、日本近海の個体群存続の安全を見込んで、八九年から九三年までの平均捕獲数の八掛けとしたということで、これは何にも根拠がないといいますか、根拠はそれが根拠になっているわけでございまして、それ以上の科学的にこれが絶対に必要なとか適当な数字というのがあればいいんですけれども、現実では、やはり現状のふえたり減ったりというところを見て、それを根拠に安全を見込んでそういう数字を決めたということで、ちょっとこれはそれ以上のものがあるかと言われると困るわけですけれども、これはそういうのが実態であります。
樋高委員 大臣、今の答弁は、要するに根拠はないということでありまして、それじゃ困るわけで、環境省が把握せずしてどうやって環境保全をやるんですか。生態系の維持をやるんですか。要するに、科学的根拠がないということを大臣堂々と今おっしゃられたわけですよ。そんなことではいけないのであります。要するに、こういうことではやはり第二のジュゴンとなり得てしまうんじゃないか。
 では、大臣にお伺いしますけれども、例えば現場で、仮に射殺をした後水没した頭数というのは頭数に入れるんですか、入れないんですか。
大木国務大臣 現在のシステムでは入れておりません。
樋高委員 要するに、またそういうところでも、ちょっといいかげんなところがどんどん露呈されていくんじゃないかと思うわけでありますけれども、環境省はやはり、きょうずっと午前中から議論ありますけれども、ほかのいろいろな法律があります。しかし、その中でいかに環境保全を図っていくのか、生態系の維持を図っていくのかということを責任を持ってやらなくちゃいけないわけですね。そのときに、やはりこういったことの一つ一つがきちっとした根拠を持って、裏づけを持って説得力のある話ができなくちゃいけないんです。説明ができなくちゃいけないんです。そのことを申し上げているのであります。
 このトドの問題についてでありますけれども、環境省のレッドリストにおきましては、いわゆる絶滅危機種、2類の方であります。日本の希少な野生生物に関するデータブックでは希少種、哺乳類学会では危機種となっておりまして、これについても緊急に保護対策を検討する必要があるというふうに考えます。
 こうしたことから、漁業被害の問題があるにしても、方法論をちょっと整理してお尋ねいたしますけれども、トドにつきましても、いわゆる鳥獣保護法の対象として特定鳥獣保護管理計画の対象とすることを検討して、漁業被害があったときに環境大臣が有害鳥獣の駆除について許可を出すという方式の方がわかりやすい、シンプルなのではないかというふうに考えますけれども、いかがお考えになりますか。
大木国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおりに、それは非常に理想的な姿をということであれば、環境省がすべての動植物について状況を把握してということが望ましいかもしれませんけれども、現実には、そもそもその基礎となる、スタートとなる科学的な知見というものも十分にわかっていないわけでございます。
 ちょっとよその方に話がずれて失礼でありますけれども、先般来いろいろと国際捕鯨委員会で鯨の種の増減の話について議論しておりますけれども、あの国際的な委員会の、しかも科学委員会でも、いろいろ議論があって、必ずしもその意見が一致しないというような状況でございます。これは、捕鯨委員会の場合にどうして一致しないのか、いろいろよくわかりませんけれども、ですから私は、少なくともトドに限って言いましても、まだ今のところはそういった科学的な知見を少しいろいろと収集して、その上でまたやるということであろうと思います。
 とにかく、環境省が把握してといっても、まず把握が非常に難しいし、把握した上で何をやるかということになれば、さらにこれはいろいろなそれだけの対策を具体的に考えなきゃ、ただ法律に書いておいただけではだめでありまして、むしろ法律に書いておいて何もできないなら、それはかえってマイナスになると思いますので、私どもとしては、現段階におきましては、今、漁業法に基づいていろいろと水産庁さんとも御協力しながら実態を把握していくということが、とりあえずの環境省としての任務ではないかと私は考えております。
樋高委員 この生物多様性の保全、維持ということに関しましては、またちょっと後で本質的な議論をさせていただきたいと思います。
 その前にちょっと話を変えますけれども、生物保全マップの作成についてお伺いをさせていただきたいと思います。
 去年の十月に、生物多様性保全のための重要地域情報が発表されましたときに、当時環境委員会で、川口大臣でありましたけれども、答弁の中で、国民にもっとわかりやすい形で提示することも大切なのではないか。視覚としてわかるように地図をつくり公表することも大切なのではないかということを私は質問させていただいたんですけれども、そのときに、前環境大臣である川口さんは、しっかりと調査をし地図に落としていく必要があるけれども、調査をするためには時間も費用もかかる、しかし、そのための努力をしてまいりたいというふうに前向きな答弁をいただいております。
 要するに、生物多様性保全のためのいろいろな重要地域情報、どこの川はどういう生き物がいて、今どのような状態であるということが箇条書きにペーパーになって出てくるんですけれども、それが要するにビジュアルでないものですから、さっぱりわからない。文章だけ見たってさっぱりイメージとしてつかめないわけでありますから、そういうことをどんどん、情報公開について一生懸命環境省は取り組んでいるわけですから、地図に極力落としていって、もちろん、区割りがあって、県境をまたいでいる生物、生き物もたくさんあるわけですけれども、しかも特定の地域だけではだめなわけなんですが、やはり極力地図にどんどん落としていくことも必要なんじゃないかということで要望し、前向きな答弁をいただきましたけれども、大木大臣も同様の考えでしょうか。
大木国務大臣 前大臣のときにそういうやりとりがあったということは私も存じておりまして、そのときの議事録等も読ませていただきましたけれども、原則としては、できるだけわかりやすい情報を国民に供給するというのは、これは当然環境省ばかりではなくて政府全体としての仕事でもありますから、これは、いろいろと御示唆があれば、そういったものをできるだけ国民の側からわかりやすいものをつくってさしあげるというのは望ましいし、今後もそれは努力をしてまいりたいと思います。
 本年の三月に決定いたしました新生物多様性国家戦略におきまして、自然環境保全基礎調査等の結果を活用しながら、生物多様性保全上重要な地域を特定する作業を進めていくということを言っておるわけでありまして、保全上重要な、例えば今もおっしゃいました湿地だとかあるいは森林等のような情報は、これは地図にもある程度示すことができると思いますので、そういうようなものは、できるだけわかりやすいものをつくって、だんだんに皆さんに見ていただくようにというふうに努力をしたいと思います。
 正直申し上げまして、環境省ばかりじゃありませんけれども、環境省も含めてと言った方がいいと思いますけれども、いろいろとどうも、政府が非常にいろいろな資料をつくるんだけれども、わかりやすいというところでは、まだ百点をつけられない点がたくさんありますので、そういった点も改善してまいりたいと思っております。
樋高委員 去年の十月に前向きな答弁をいただいて、それでは、もう八カ月近くたちましたけれども、具体的にどこまで地図化が進んで、具体的に今後いつまでにどういった形ででき上がる御予定なんでしょうか。
大木国務大臣 川口大臣との御質問あるいは答弁のときにもいろいろ議論があったと思いますけれども、地図化というのが一つお話の中心になったと思いますが、昨年十月以降に区域の地図化の作業を進めておりまして、この五月に、概略的な位置と範囲を示したものを、二十万分の一の地図を関係都道府県に参考として配付をしております。
 それから、より詳しい地図化を進めるということについて、いろいろまた議論があります。正直申し上げまして、きちっと本当に議論の役に立つようなものということになると、いろいろと多少時間もかかりますし、労力もかかるわけでありますが、植生の広がりや動植物の分布状況などを踏まえた上で、明確な区域を確定させるということで努力をしております。正直申し上げまして、今のように時間、労力が多少かかりますが、今後とも、そういったいろいろな調査を通じて、できるだけ詳細な情報というものは整備してまいりたいと思います。また、その結果に応じて、ひとつ皆さん方にお持ちするものもつくっていきたい。今のところは、できたものとしては、先ほど申し上げました五月の二十万分の一の地図でございます。
樋高委員 何でこんなことを申しますかといいますと、いわゆる鳥獣保護法とももちろん関係がありますし、例えばこの四月から毎週土曜日、小学校、中学校はお休みになりました。では、地域でどういう自然体験学習を実施しようかということで、いろいろなさまざまな問題、では、どういう情報があるんだということのときに、やはり地図になっていた方がわかりやすいよという話を全国の地域の方々から伺ったんです。では、環境省に聞いてみましょうよと。聞いてみたら、それがはっきりと地図に落とされているものはないよと。
 もちろん、全部が全部オープンにすることによって、かえって、それをとりに行ったりとかされることがあってもいけない部分ももちろんありますけれども、さはさりながら、やはり文章だけで、何々町にはどういう鳥がいて、またこういう湿地があってというただそれだけじゃなくて、ビジュアルに、小学生、中学生が見ても、ああ、自分たちの田舎町はこういう大切な自然があるんだ、そういう地域自然体験学習とリンクさせる意味でも申し上げているわけです。
 今回のもそうなんですけれども、いわゆる法律をつくりました、もしくは広報に載せましたということで終わっちゃだめだということを私は言いたいんであります。あとは要するに関心のある方だけ見てくださいよということでは私はだめなんだと思うんです。環境問題というのは国民全体また世界全体の問題でありますけれども、自分たちが住んでいる地域にどのような動物、植物がどのくらいあって、そして現在どんな自然環境にあるかということを少しでも関心を持っていただく、そして、できれば本当に小さいときから、幼少のときから自然というものに対して関心を持っていただくということが、私は何よりも重要なことではないかというふうに思うわけであります。だからこそ、目に見えて、だれにでもわかるような形で、少しでもわかりやすい形で要するに地図化していただきたいということを申し上げているわけであります。
 続きまして、また鳥獣保護法の方に戻りますけれども、指定猟法の禁止につきまして、いわゆるくくりわな、とらばさみにつきましてお尋ねさせていただきたいと思います。
 くくりわな、とらばさみに関しましては、いろいろな新聞等々でも大変問題になっております。関係者の方々からもいろいろ資料、写真等を拝見させていただきましたけれども、非常に問題点が多いということであります。
 近年、住宅地にとらばさみが仕掛けられて、飼い猫がわなにかかってしまった事件も発生しております。万が一子供が気づかずに近づいたらどうなるかということも私は本当に心配でならないんでありますが、狩猟期間外に仕掛けられた、またはそのまま放置したのかもわからないけれども、わなにかかってしまった犬の被害も聞いております。また、イノシシなどの有害駆除の有効な手段としては、くくりわな、とらばさみともに現在使用されておりますけれども、実際には、ツキノワグマ、ニホンザル、オオタカ、犬、猫に至るまで無差別に、何がわなにかかるかわからないというのが現状であります。
 環境省において、現在のこういったわなの使用状況をいかに考えていらっしゃるのか、今後、くくりわな、とらばさみに関してどのような対応をしていくおつもりか、具体的に伺いたいと思います。
奥谷大臣政務官 御指摘のように、法定猟具として環境省告示で定めたくくりわな、とらばさみ、また、はこわなというのもあるようなんですが、これらは法律上は問題はありません。クマについては、はこわなやくくりわなというので捕獲することは禁止しているところでございますが、環境省といたしましては、これらのわなによるクマの錯誤捕獲などが生じていることも承知しておりまして、こういった錯誤捕獲が生じないように、わなの使用者に対して、その使用方法や架設場所等に十分注意をするとともに、その巡回等も適切に実施するように、関係都道府県に対して働きかけを行っているところでございます。
樋高委員 都道府県に任せっ放しだよという答弁でありました。また、法律上問題がなくても、社会上問題があるから今申し上げているわけであります。
 とらばさみに関しては、購入する際に、甲種狩猟免許、狩猟者登録及び鳥獣捕獲許可証が必要でありまして、なおかつ、使用するときにはわなに標識をつけなければならないというふうに規制がかけられておりますけれども、実際に、違法に使用されているものに標識などはついておりません。しかも、金物店、ホームセンターのようなところで、だれでもが購入できるような環境で売られている現状を環境省は放置しっ放しでいる。販売する側への指導は一体どうなっているのかということをお尋ねしたいと思います。
奥谷大臣政務官 このとらばさみに関して、標識のないものは当然御指摘のように違法でございます。購入の際には甲種狩猟免許等の提示も求める、それから設置する場合には、先ほど申されました標識を設置する必要があるということ、これは販売者が購入者に対して適切な取り扱いを指導しておるところでございまして、これに関しましても、都道府県を通じて働きかけを行っているところでございます。
樋高委員 政務官、本当に役人以上に役人のような答弁をしないでください。
 要するに、また自治体に任せっ放しじゃないかということでありますけれども、例えば今おっしゃいました、いわゆる標識がついていないのは違法であると。では、それについてどのように環境省として対策を講じていこうというふうに考えていらっしゃるのか、お尋ねいたします。
奥谷大臣政務官 第九次の鳥獣保護事業計画の基準に応じて、都道府県に指導しておるところでございます。
樋高委員 政務官、今のはお答えになっておりません。都道府県に任せっきりで、では、どの程度把握なさっているんでしょうか。その標識がついていなくて、要するに私は、子供たちが本当にそこでぱっと踏んづけたり手をかけて、現物を見られたことがあると思いますけれども、それでばさんと挟んで大変な大けがになるんですよ。例えば犬とか猫が足を挟まれて、それで自分で自分の足をかみ切ってそこから逃げるという惨状も私ちょっと聞いているものですから申し上げているんですけれども、きちっと答えてください。
奥谷大臣政務官 これは、標識のないものについては、鳥獣保護員が見つけて回収するということになっております。
樋高委員 それは罰則はあるんでしょうか。
奥谷大臣政務官 これからそういう制度の改正に持っていくというところでございます。
樋高委員 要するに、こういったことを、先ほどは法律上問題はないから大丈夫だと言ったり、また、法律上問題はあるけれどもそれは市町村に指示しているから大丈夫だ、こういう行政のあり方が私は問題だと言っているんです。
 要するに、今政務官は、これについてきちっと見直しをしてやっていくというふうに約束いただきましたけれども、そういうことで間違いございませんですね。
大木国務大臣 どういう被害が出ておるかについて私も詳細な資料は持っておりませんけれども、もしもそういうことが頻発するということであれば、これは、鳥獣保護法の問題というよりも、一般に国民がそういうことになることについてどうしようということですから、これはもちろん環境省としても十分に実態を調べてみますけれども、しかも、今、もしそういう被害が起こったらどうかということになれば、それをどういうふうに仕掛けて、みんながわかるようにどの程度注意義務をちゃんと皆さんに払ったかというようなことも問題がございます。これは、むしろ一般的な、問題によっては刑法の問題になるかもしれませんけれども、とにかく実態はよく調べます。今委員の方から、非常にそういう問題が多いとおっしゃいましたから、それはその多いという状況を一遍調べてみたいと思っております。その上で処置をいたします。
樋高委員 今度金曜日に参考人質疑がありますので、大臣もぜひ出席していただいて直接聞いていただきたいと思います。
 例えば、もし販売する側への指導を徹底して行っていて現在の状況に至っているのであれば、使用する側に問題があるということなんでしょう。今後も使用を許可するのであれば、例えばそれぞれのわなに製造番号をつけたり、購入者を把握する、きちんと名前を書いていただくということもしなくては、やはり違法使用というのは避けられないんじゃないか。
 あと、例えばいろいろな住宅地の中にとらばさみを仕掛けるような行為という、ある意味でおもしろ半分でとしか感じ取れないようなことが実態としてあるから申し上げているわけでありまして、こういったことに対してやはりきちっと対策をとっていくということによってこそ、初めて環境省が信頼されていくんじゃないですか。
 やはりこういうところをきちっとわかった上で、そういうこともできた上でないと、どんなに鳥獣保護法を改正していい方向に持っていくんだと言ったって全然説得力がないんですよ。やはりそういう身近な問題にしっかりと光を当てていただきたいと思います。
 いわゆるこの法定猟具からとらばさみを外すことを考えてもいいんじゃないかというふうに私は思いますけれども、どのようにお考えになりますでしょうか。
奥谷大臣政務官 現在、とらばさみにつきましては、大型のもの、開いたときに十二センチ以上あるものとか、あるいは鋸歯、のこぎりの歯のようなものがついたもの等の危険なものについては、既に使用を禁止しております。同時にまた多数を使用することも禁止いたしております。
 今後とも、このとらばさみの使用状況についての把握に取り組みまして、関係者からの意見を聴取し、この取り扱いの変更の必要性も含めて検討してまいりたいと考えております。
樋高委員 政務官、本当におかたい答弁を先ほどから本当にありがたいんでありますが、私も、議員若手同士で、厚労委員会でも積極的に政務官に質問しているんです。そうしたら、ある意味で本当にざっくばらんな言葉で、自分の言葉でどんどんおっしゃっていただけるんですけれども、ぜひ奥谷さんにももう少し、今度、書面を読まないで御答弁いただきたいと思います。
 先ほどの話ですけれども、イノシシの被害が甚大である地域に関しましては、駆除、捕獲に関して現在どういった対策を講じているのか、やはり検証する必要があるんではないか、最低限イノシシとツキノワグマが混在するような地域では使用を制限すべきではないかというふうに思いますけれども、どのように考えますか。
奥谷大臣政務官 イノシシの被害が甚大で早急に対応する必要がある場合は、その期間と捕獲数を定めて有害鳥獣駆除を実施すること、また、被害が継続して発生しておる場合には、特定鳥獣保護管理計画を策定いたしまして、これに基づいて個体数の調整を行うこと等の対応が行えるように措置をしているところでございます。また、これについても、予算化、国庫補助を行っております。
樋高委員 大臣にお尋ねいたします。生物多様性の確保ということで本質的なお尋ねをさせていただきます。
 鳥獣の方に話を戻しますけれども、今回の法律の目的の中に生物多様性の確保ということが入ったということは評価をさせていただきたいと思います。しかしながら、この法律においては、ずっとるる議論になっておりますけれども、鳥獣というのはいわゆる鳥類及び哺乳類に属する野生動物のみに限定しているということによって、繰り返しになりますけれども、多様性確保の観点からはやはりどうしても限界があるんではないかというふうに思わざるを得ないですし、指摘せざるを得ないのであります。
 本法で担保できる生物多様性の確保というのは、捕獲規制以外にどのようなものがあり得るんでしょうか、お尋ねいたします。
大木国務大臣 まず、今度、生物の多様性ということをうたっておるからもっとその対象を広げたらどうかというお話については、もう午前中から同じことを申し上げておるんですけれども、とりあえずいろいろな法律があって、それぞれの目的も多少違いますけれども、それを適用して行っておるので、ですから、非常にアカデミックな意味では、そういったものを全部総合してひとつどういうことをするんだということは、私は、政府としても、だんだん取りまとめて全体像を国民によくお示しして、そして将来に向かっての考え方というものもまたお示しする必要があると思います。
 ただ、同じことを申し上げて大変恐縮ではありますけれども、現在では、やはり行政府としては、法律に目的があって何かやるということであれば、おのずから、どういうことをやるんだというところまで書かなきゃいかぬ。それはまた、書かなきゃいかぬということは、逆に言えば、それを実施するための手段なり予算なり労力なりというものが全部そろっていなきゃできないわけですから、やはりできないことを書くというわけにもいかぬわけでありますから、その辺はひとつ御理解をいただきたいと思うわけであります。
 それで、今、いろいろと規制についての、どういうことがあるんだというお話がございましたけれども、これにつきましては、今度の法律におきましては、鳥獣の保護を図るために、捕獲規制に加えて、鳥獣やら加工品の流通規制なども行ってきたけれども、また、今回の改正の――失礼しました。今の申し上げたところは今までの話ですけれども、今回の改正において、さらに、水辺域における鉛散弾の使用を制限するとか、あるいは生態系への影響の防止のために、捕獲した鳥獣の放置についてはさらに厳しく禁止するといったようなことがありますから、正直申し上げまして非常に動きは遅いんですけれども、一歩前進ということでありますので、先ほど申し上げましたように、全体の姿を示すということ、これは私はかなり早くできてくると思うんです。
 ただ、それについて、それを全部のまとめた法律にするとか、あるいはそのための措置というものを全部書き込むということになりますと、これは正直申し上げまして相当時間がかかると思いますけれども、しかし国民が、今、生物の多様性と政府が言っておるけれども、一体どういうようなことを考えているんだ、それから、これから将来へ向かってどういうことをする必要があるんだということについての構想というものは、またできるだけよくわかるように示していきたいと考えております。
樋高委員 それでは、大臣、お尋ねいたしますけれども、そういう全体をひっくるめての抜本改正、いつ行う御予定でしょうか。
大木国務大臣 今申し上げましたように、私は、生物多様性というようなことについてのどういう問題があるかということについては、できるだけよくわかるように、それはこれから、例えばですけれども、毎年の環境白書とかそういったものでも、そういった問題があるよということは御説明できると思います。しかし、抜本的な法律をいつつくるかということになれば、先ほどから申し上げておりますとおりに、これはおのずから行政府としてできること、できないことがあるわけで、できないことを書くというのは、これはかえって混乱を生じますから、できることが、どういうことができるかということを考えながら、またひとつ具体的な対策というものをお示ししたいと思っております。
 今いつまでと言われますと、それはそういった作業の進行状況に応じてというしか申し上げられません。
樋高委員 本当に、委員会の審議で私はいつも思うんですけれども、やはり大臣、期限を思い切って区切っていただいて、それはもう政治家として責任を持つんだというぐらいのリーダーシップをしっかりと発揮していただきたいというふうに思います。
 また次の機会がありましたら質問させていただきます。どうもありがとうございました。
大石委員長 藤木洋子さん。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。
 前回、九九年の法改正の際に、国や地方自治体の鳥獣保護の体制が不十分なままで都道府県への特定鳥獣保護管理計画制度を導入するのは、捕獲や狩猟期間の緩和などから、個体数管理に偏った対策となって、過剰な鳥獣の狩猟、駆除が横行するおそれが問題となったところです。
 それでは、この議論された問題が現在どうなっているのかということなんです。
 環境省の資料を拝見いたしますと、二〇〇二年三月現在の特定鳥獣保護管理計画策定は、シカが十八道府県、カモシカが四県、クマが三県、猿が一県、イノシシが三県ということでして、合わせて二十五道府県、二十九地域となっております。また、前回の法改正の際に使った特定鳥獣の捕獲頭数の比較で見ますと、シカが九七年度で十万一千六百二十七頭から九九年度で十三万三千二百七十四頭に、猿が六千五百二十九頭から一万五百三十二頭に、クマ類が一千四百十二頭から二千三百六十二頭に、イノシシが九万四千九百八十六頭から十五万二千三百九十四頭に急増しているわけですね。
 ですから、特定計画が導入された二〇〇〇年の最新の鳥獣関係統計がまとめられておりませんので、不確かなところはあるんですけれども、傾向としては、有害駆除や狩猟で特定鳥獣の捕獲が急増しているということは明らかでございます。
 そこで、特定鳥獣保護管理計画制度の導入が、捕獲や狩猟期間の緩和などから、個体数管理に偏った、そういう対策となっていて、過剰な鳥獣の狩猟、駆除、こういったことになっているのではないかというふうに私は思うのですが、大臣の御認識はいかがでございましょう。
大木国務大臣 今の、特定管理計画の導入によって捕獲期間が延長あるいは狩猟期間が緩和というようなことが行われているのは、それはそのとおりでございます。
 ただ、いろいろとそのバックグラウンドを聞いてみますと、やはりいろいろな鳥獣による林業被害というようなものも出ておりますから、それに対する対策としては、捕獲期間なり狩猟期間を少し調整するということは必要かなということでありますけれども、その期間は実際に、一応全体としては延ばしても、特定鳥獣の生息状況や生息数の十分な把握を行った上で、その結果に応じて、個体数をどういうふうにするかということはまた別の判断で決めるわけでございますし、捕獲期間についての決定も行うわけでございまして、決して、その結果として今おっしゃったような過剰な捕獲ということにはつながっていないんじゃないか。もちろん、今後もいろいろなモニタリングを行いまして、将来の実行計画については十分に反映させてまいりたいと思いますが、現実に非常にそういう偏った状況が生じているということではないのではないかというふうに判断しております。
藤木委員 恐らく、国としては、ブロック会議などを行って特定計画の策定を県に指導しているというお立場でおっしゃったんだと思うんですけれども、しかし、いまだに西日本のクマの計画は策定されていないんですよ。策定ができていないんです。ですから、特定鳥獣の捕獲も有害鳥獣駆除に偏っているということだけは明らかでございます。
 また、地方自治体で鳥獣保護の不十分な体制のままで権限を移譲する問題も九九年の質疑で指摘をされてきたわけですけれども、例えば、全国の鳥獣保護員の配置状況は、九七年度で三千三百五十六人から九九年度で三千三百八十七人、もう本当に微増しているだけでございます。しかも、鳥獣保護員のうち自然保護の会員になっている人は、例えば北海道の場合、総数二百九十七人のうち十八人だけ、福岡県の場合、六十八人中六人、愛知県は五十二人中六人となっているなど、依然としてハンターが大多数を占めているという現状です。
 また、環境省の資料によりますと、鳥類標識調査の調査協力者数が全国で四百四十七人と微増でありまして、生物分類技能検定合格者は、二級の動物部門で百五十九人、植物部門で百十七人になっていますけれども、まだまだ少な過ぎます。
 さらに、野生鳥獣に関する都道府県調査研究機関、専門家の現状の資料を見ると、九九年当時の資料と全く変わっておりません。つまり、新たな調査研究機関の把握もおくれているということです。
 ですから、特定鳥獣保護管理計画制度が導入されて、市町村に権限を移譲して、特定鳥獣の捕獲が急増しているのに、地方自治体での鳥獣保護の体制は不十分なままになっているということですから、これは、地域個体群の保護だとか生息環境の保護、モニタリング等の調査研究を危うくするものではないか、このように思いますけれども、大臣、いかがですか。
大木国務大臣 今の鳥獣保護の法律の目的にひとつよくかなうようにということで、体制をきちっと整備しろというお話だと思います。
 地方自治体も、これもいろいろと市町村やら都道府県やらあるわけで、今の委員のお話はどうも、市町村の方に権限をどんどん移しているんで、それは全体として非常に弱体化しているんじゃないかということでございますけれども、私どもの方としては、まずは環境省としても地方自治体職員に対していろいろと、具体的に例えばシカやクマなどの保護管理に係る実地研修等というようなものも含めてやっております。それからまた、市町村の職員をカバーすることはなかなか環境省だけでは十分でないという点もありますから、都道府県がまた同じような内容の研修を今度は市町村の職員に対して、都道府県から市町村に対してということでまた研修をしてもらっているわけでございまして、私どもとしては、着実に人材の育成を図っておるということでございます。
 歩みが速いか遅いかということは、いろいろとまた御判断があるでしょうけれども、私どもとしては、そういうことで、人材の育成を含めて、体制の整備に努めているところでございます。
藤木委員 今大臣がおっしゃったような努力が現場で本当に実っているかどうか、検証していきたいと思います。
 そこで、先日、私は、岩手県当局から、五葉山地域のシカ保護管理計画の状況というのを伺ってまいりました。岩手県では、九一年から九九年まで、県の保護管理計画を定め、適正生息数を二千頭としておりまして、対策を実施したそうでございます。
 その実施状況は、狩猟や有害駆除による捕獲数が、九一年度の一千五百九十八頭で始まっておりまして、九六年度の一千八百六十四頭をピークに、九九年度には一千五百六十二頭と、平均いたしますと毎年一千五百ないしは一千九百頭、この間で捕獲をしておりました。
 この結果、生息の動向は、九三年三月に五千頭ないしは六千頭だったものが、二〇〇〇年三月では四千百頭から四千六百頭に減っております。また、農林業被害額も、九一年度で五億五千九百万円だったものが九九年度では五千五百万円と、十分の一に急減いたしました。しかし、岩手県当局は、依然として農林業被害があって、生息域の拡大も見られることから、法改正に伴う特定計画を策定いたしております。
 確かに、適正生息数の二千頭ということから見れば、まだ二倍以上生息しているということになりますから、特定計画を導入したい、そういう意向はわからないではございませんけれども、しかし、農林業被害が十分の一にも減っているわけです。ですから、これ以上狩猟圧をシカの地域個体群にかけるということは慎重でなければならないと思うのですが、環境省、いかがですか。
小林政府参考人 岩手県におきましては、平成十二年度に策定されました五葉山地域のシカ保護管理計画に基づきまして、個体数の調整それから鳥獣保護区の設定等、生息環境の管理、植林地等の管理など被害防除対策を実施してきて、御指摘のとおり、適正生息数に比較して、現在では二倍程度の生息状況でございます。被害も、おっしゃるとおり、十分の一程度に減ってきています。これは、保護管理計画が効果を上げているというふうに私どもは思っています。
 現在の生息数、適正生息数の二千頭の二倍程度の生息数がカウントされていますけれども、一方で生息域の拡大も見られまして、そういうことからしますと、今後も、二千頭の目標に向かってある程度の捕獲圧をかけていく必要があろうかと思っています。
 この特定計画の実施に当たっては、個体群の動態等をモニタリングしまして、結果を適切に、おっしゃるとおり、慎重にまたそれを反映させて、個体群規模を適切に維持していくということが重要だと思っています。まだもうちょっと目標に向かってする努力が必要ではないかなという印象を持っております。
藤木委員 しかし、岩手県の特定計画では、植生の保全を図るとともに、個体数を調整して生態系への影響を軽減し、人とホンシュウジカとの共生を目指すとしておりまして、適正生息数をおおむね二千頭として、個体数管理を二〇〇〇年度、二〇〇一年度、それぞれ一千九百頭の捕獲目標を立てているわけですね。個体数調整を強化する、こう言っているわけです。さらに、個体数を適正生息数に誘導するために、積極的に雌ジカを捕獲するとともに、シカ狩猟期間を二月二十八日まで、つまり十三日間延長するとしております。
 確かに、狩猟、有害駆除によるシカの捕獲数の状況を見ますと、九九年度の狩猟頭数一千二百七十二頭のうち雌ジカは六百七十三頭になっておりまして、五三%です。有害駆除頭数二百九十頭のうち雌ジカが百七十四頭で、こちらは六〇%を捕獲しておりますので、繁殖や農林業被害に対する効果が上がっていることがうかがわれます。しかし、このように雌ジカを中心に毎年一千九百頭の捕獲を実施していくということになりますと、地域個体群への影響が心配でございます。
 そこで、このように岩手県の特定計画で積極的な雌ジカの捕獲、狩猟期間の延長を決めているのは、特定鳥獣保護管理計画技術マニュアルで、「具体的な管理目標及び管理方式の設定」といって、捕獲のインセンティブ、特に雌の捕獲数をふやす工夫と、その観点からの諸制度というのを示しております。例えば、雌の狩猟獣化、一日当たり捕獲数制限の緩和、狩猟期間の延長、その活用を求めているからではないでしょうか。
 ですから、多くの地域で目標を達成していないことや効果を上げていないからといって、結局捕獲実績を上げるために、有害鳥獣駆除、雌の狩猟獣化、一日当たり捕獲数制限の緩和、狩猟期間の延長という手段を安易にとるべきではない、私はこのように考えますけれども、環境省、どうですか。
小林政府参考人 岩手県の特定鳥獣保護管理計画でございますけれども、計画の目標としまして、個体数の生息数の二千頭という目標のほかに、農林業などに影響を及ぼさないような密度とするというような目標を掲げてやってございます。この計画の策定とまたその改定に当たりましては、生息状況、生息数の十分な把握を行って、専門家による検討も行った上で、個体数調整の数とか捕獲期間等の決定を行うことにしているところでございます。
 安易な緩和ということは決してよくない、御指摘のとおりだと思います。目標とする生息個体数、被害程度に近づけるための手段につきましては、その地域地域で個体群の状況などモニタリングをいたしておりますので、その結果を適切に反映させながら個別に検討されるべき問題だろうと思っております。
藤木委員 それでは次に、具体的な問題を挙げて伺います。
 二〇〇〇年十二月二十四日の新聞報道で、大学の研究者が、無許可でニホンザルを飼育している複数の業者から猿を購入して、実験動物として使用していることが明らかになりました。業者は、市町村が有害駆除目的で捕獲した野生のニホンザルを引き取ったり、市町村の委託でみずから捕獲したりして、山中で劣悪な環境の中、無許可飼育を続けていたものであります。
 業者がやみ飼育を続けていた背景には、有害駆除した猿を実験目的で譲渡する場合、都道府県の中には飼養許可を出さない方針を明らかにしているところもあることや、許可を受ければ施設を整備しなければならなくなること、また、飼養許可を取得すると、毎年一匹ごとの更新費用が必要になることなどの事情がございました。市町村は、捕獲した猿の処分に困って安易に業者に譲り渡し、業者はにせの繁殖証明書をつけて動物商に売っておりました。大学や研究者は、研究のためという大義名分のもと、猿を買い続けていたものです。
 この件で明らかになったことは、有害駆除目的で猿の捕獲を許可する際には、捕獲した猿の処分方法を明記すること、あるいは捕獲した猿を飼育、譲渡する場合は許可を受けること、捕獲、飼養許可を出す自治体の判断を第三者が審査、監視できる仕組みの整備などが必要だということだと思うんですね。
 そこで、二〇〇一年一月三十一日に、環境省は「有害鳥獣駆除制度及び飼養許可制度の運用について」という自然環境局長通達を出し、文部科学省が「大学等における実験動物の導入について」という、これも研究振興局長通達を出しておりますけれども、簡潔に言うと、それぞれの通達の内容はどんなものでしょうか。環境省、文部科学省、順番にお答えください。
小林政府参考人 平成十二年の年末に、特定業者がニホンザルを実験動物として売却するために多数飼育して譲渡したという新聞報道があったことから、都道府県に対しまして、こういう類似の問題が再発をしないように、翌年の十三年一月三十一日付で、文書で都道府県に対して要請をしたところでございます。
 内容でございますけれども、まず一点目は、有害鳥獣駆除制度に関してですが、捕獲許可申請に際しましては、被害を受けた者からいろいろ要望が出ています。その被害を受けた者の意思をきちっと文書で確認して、それから許可をするようにということでございます。それから、申請の審査に当たりましては、捕獲個体の処理方法についてどういうふうに使うのかということを明確に書かせることによりまして、有害鳥獣駆除を名目として、実験動物用に野生猿の捕獲が行われることなどの不正行為がないように留意しなさいという点でございました。
 次に、飼養許可に関しましてですが、そういう捕獲個体を譲渡する場合には、飼養許可証を取得して、譲渡に当たってはこれを添付するように指導しなさい、それから、都道府県の職員とか鳥獣保護員を通じまして巡回調査を実施して、不正飼養の疑義がある場合には立入検査などを行いまして、警察当局との協力関係も得ながら取り締まりに努めなさい、こういう点を文書で指示いたしました。
坂田政府参考人 先生が御指摘になりました昨年一月三十一日の私どもの局長の通知のことでございますけれども、若干の経緯も触れながら、その内容を御説明申し上げたいと思っております。
 先生御指摘のとおり、前年の十二月にそういう趣旨の新聞報道がございまして、その中で、私どもの関係する大阪大学あるいは金沢大学といったような名前も取り上げられておりました。したがって、私どもとしては、直ちに事実関係の調査をしたわけでございますけれども、それらの大学におきましては、業者の方から猿を受け入れるに当たりましては、人工繁殖されたものだという確認をしたという報告を受けております。
 ただ、そういうような報道がございましたので、私どもといたしましては、各関係の大学等に改めて注意を喚起する必要があろうかと考えまして、そういう局長通知を発出したものでございます。
 内容面といたしましては、まず第一といたしまして、鳥獣保護法等の関係法令に基づく飼養許可証、こういったものについて確認を励行するというようなこと、あるいはまた信頼できる動物供給業者の選定に配慮すること、こういった点を通知文書の中で明確にしたということでございます。
藤木委員 たくさんおっしゃいましたけれども、環境省は、簡潔に言うと、捕獲個体の処理方法について申請書にあらかじめ記入させるということが一つですね。それから、有害駆除を名目に実験動物用に野生の猿の捕獲が行われないようにすること、それから三つ目には、捕獲個体を飼養または譲渡する場合は飼養許可証をとること、これを指導するという通達だったと思います。文部科学省も二つ要件はありまして、飼養許可証の確認をとること、それから信頼できる動物供給業者から適正に取得すること、こういう指示を出されたわけです。
 ところが、ことしの二月、滋賀県の愛東町が、ニホンザルの学術研究の目的で捕獲申請を得ながら、申請の内容に反して、捕獲した五匹を滋賀医科大学に譲渡していたことが明らかになりました。この事件は、同町の担当職員が有害駆除と同様に学術目的でも動物実験施設に引き渡せると考えておりまして、引き取ってもらえる際に必要な飼養許可証を交付しないまま国立滋賀医科大に譲渡していた、このことが問題になっております。
 脳神経医学研究目的というのは学術研究のための捕獲許可に該当しないし、あるいは、捕獲したニホンザルを飼養、譲渡の許可もとらずに大学に譲渡はできないという問題は、参議院の審議の中で環境省が答弁をしておられるところです。
 そこで、愛東町はニホンザルの学術研究の目的で捕獲許可を県から得ていながら、実態は動物実験用に捕獲をしたこと、そして違法に捕獲をしたニホンザルを大学に譲渡したこと、これが問題なわけですね。
 しかし、このことだけにとどまりませんで、愛東町は、当初、おりによる捕獲許可を得ないまま捕獲をしておりました。学術研究捕獲としていながら、実態は有害駆除そのものだったわけです。また、大学側も、飼養許可証の添付がないことを知りながら愛東町からニホンザルを譲り受けておりました。そのまま数カ月も無許可で飼養していたわけです。結果的には、大学側も飼養許可証が交付されていなかったために実験には使用せず、生き残った三頭のニホンザルを山に帰すことになりました。しかし、だからといってこれらの違法行為が許されるわけではございません。
 ですから、去年一月に環境省も文部科学省も局長通達を出していながら、再びこのような違法行為が繰り返されるということは、趣旨が徹底されていないということになるんじゃないですか。ですから、単に愛東町の担当職員が不勉強だとか、大学側になれ合いがあったんだろうなんて言って済ますことではないと思いますけれども、通達を出された環境省、文部科学省、それぞれお答えをいただきたいと思いますが、いかがですか。
小林政府参考人 学術研究を目的とする捕獲の許可に関する基準でございますけれども、環境大臣が第九次の鳥獣保護事業計画の基準できちっと定めているところでございます。この趣旨が、平成十三年の一月の通達にもかかわらずまた違反行為がたび重なって行われたということは非常に遺憾だと思っています。このような事案が再発しないように今後とも注意する必要があろうと考えてございます。
 現在、野生生物行政担当者会議というのも行っております。改正の鳥獣保護法の説明などもこれから何度も機会があると思いますので、その機会を通じまして、野生鳥獣の捕獲許可とか鳥獣の飼養登録制度の周知徹底に努めてまいる考えでございます。
坂田政府参考人 この問題、私どもも調査をいたしました。若干の経緯が町と大学の方であったようでございますけれども、私ども、最終的に今承知をしていることにつきましては、例えば町の方、愛東町の方では、やはり滋賀県の許可を得てこのニホンザルを捕獲したわけでございますけれども、その申請の内容が必ずしも守られずに滋賀医科大学の方に譲渡されたという、この点がまずは問題であったんであろうというぐあいに思っております。特に、この点につきましては、ことしの二月八日でございますけれども、愛東町長から滋賀医科大学の学長あてにわび状が出されてございます。その中で、愛東町の方で鳥獣保護法の施行に関しまして判断の錯誤等があったということを認めて陳謝をされておられます。
 一方、滋賀医科大学の方でも何も問題がなかったと言うつもりはございません。やはり反省すべき点があったと思います。本来でございますと、実験動物を譲り受けました時点で、先生御指摘のとおり、飼養許可証を受領すべきであったと思いますけれども、ただ、大学の方は、町の方からすぐにも渡すというようなことを言われた経緯があったようでございます。つまり、早期にそういう飼養許可証が出されるという前提に立って譲り受けたようでございます。したがって、大学の方では、法の趣旨にかんがみまして、その後におきましても再三にわたりまして愛東町に対しまして飼養許可証の提出を要求し続けたわけでございますけれども、結果的には出されなかったというような経緯がございました。やはりこういうことを顧みますと、大学の方でも反省すべき点はあったかと思っております。
 したがいまして、今回の事例にかんがみて、我が省といたしましては、当然ながら、滋賀医科大学そのものに対しましては、二度とこういうことがあってはいけないということを指導しておりますけれども、それとともに、国立大学には、動物実験施設協議会、こういうものがございますけれども、こういった会議におきましても今回の事例を示しまして、やはりきちんとした法の遵守、特に昨年一月三十一日の局長通知の内容の周知徹底を図ったところでございます。
 今後とも、そういう方向で関係の大学に周知徹底を図っていきたい、こういうぐあいに思っております。
藤木委員 滋賀県は、二月四日に各市町村に対して、鳥獣捕獲許可制度、飼養許可制度の適正な事務処理に周知し、二月二十六日に愛東町に対して厳重注意を行っております。しかし、こうした事件が発生するのは、ニホンザルを使用する医学実験側の需要があるからなんですね。捕獲をした野生ニホンザルを実験用に譲渡することが商売になっているという側面もあるわけです。国内では実験用猿の供給体制が整備されていないのに、ますます実験用の猿の需要は高まっている。そうした中で、二〇〇〇年十二月の実験用の猿密売事件でも明らかになったように、違法に捕獲した猿を実験用に一匹当たり十五万円ないしは二十万円と、合法的に繁殖された猿でしたら一匹四十万から八十万円かかるわけですが、その半値以下で密売されているわけです。
 こうした背景があるわけですから、単に通達を出すだけでは趣旨は徹底されません。二年前の違法捕獲のときも、結局は、業者にすべて繁殖個体だと言い切られて取り締まることさえできませんでした。
 ですから、法改正に当たっては、第九条の学術研究目的の捕獲は、従来の目的である鳥獣の保護管理に沿ったものだけを認めるというように明記することが必要です。また、第十九条の飼養の登録及び第二十三条の販売禁止鳥獣では野生のニホンザルの実験用飼養や譲渡を禁止することが、再発を防止し、ニホンザルの保護管理が初めてできるのではないかと思うのですが、環境省、いかがですか。
小林政府参考人 改正法第九条の捕獲許可ですけれども、その対象を野生鳥獣に限り、それぞれの捕獲目的等に応じて許可を受けることとなっております。また、その捕獲許可の具体的な基準につきましては、先ほどもちょっと御説明申し上げましたが、環境大臣が定める第九次鳥獣保護事業計画の基準というのがございます。改正法では、第三条の基本指針というものに相当いたしますが、それで基準を示しておりまして、野生鳥獣を捕獲しなければ学術研究の目的が達成できない場合に限られるということでございます。
 そのほか、二十三条の販売禁止鳥獣に関しましては、生息、捕獲の状況とか流通の実態等を把握した上で、自由な販売とか利用が当該鳥獣の保護にどういう影響を与えるか検討した上で、販売禁止等の必要な判断をしてまいりたいと考えております。
藤木委員 今言われたように、第九次鳥獣保護事業計画の基準でも、「学術研究を目的とする捕獲は、当該研究目的を達成するために不可欠な必要最小限の捕獲であって、適正な研究計画の下でのみ行われるものとする。」というふうになっているわけですよ。「鳥類の違法な飼養が依然として見受けられることにかんがみ、」「個体管理のための足環の装着等適正な管理が行われるよう努める」ともなっているわけです。
 実験動物用に野生のニホンザルの捕獲が行われるなどの不正行為を防止するためには、先ほど私が挙げたような措置をぜひとることが必要だと思います。同時に、再発を防止するための罰則を厳しくすることも重要であります。さきの熊本の密売業者は、一匹二万ないしは三万円でニホンザルを手に入れて、一匹二十万円程度で密売していたということですから、愛東町の違反行為などは、単に厳重注意と始末書の対応だけで処理されるというようなことになっていますけれども、とんでもないことだと思いますね。やはり野生生物に関する違法行為は環境犯罪として厳しく取り締まることが必要です。
 ですから、罰則が五十万円程度では再発防止には余り効き目がないと思います。法八十三条での違法な捕獲や飼養についての罰則を厳しくすべきだと思いますが、環境省、いかがですか。
小林政府参考人 環境犯罪、鳥獣保護法違反に対して厳しい対応をすべきだという点は、御指摘のとおりだと思います。警察当局とも相談しながら、しっかりした対応をとるように努めてまいりたいと思います。
 ただ、罰則の量刑に関しましては、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律における罰則の量刑の考え方をそのまま引き継いでございます。なおまた、種の保存法ですとか、他の自然保護関連法律も参考にして罰則を定めておりますので、いろいろな関係法令との比較において、違法捕獲、違法飼養に対する量刑が必ずしも低いというふうには考えておりません。
 具体的な量刑としましては、違法捕獲に関しましては、制度の根幹にかかわる規定に対する違反でございますので、最も重い罪として、改正法の八十三条で一年以下の懲役または百万円以下の罰金ということにしておりますし、無登録飼養、無許可で飼養する場合の違反は次に重い罪として、八十四条で六カ月以下の懲役、五十万円以下の罰金としているところでございまして、他の法令等を参考にしながら決めた罰則規定でございまして、妥当な線ではないかと考えております。
藤木委員 今も、取り締まり、監視に努めるという御答弁でしたけれども、私は、それで再発が防止できるというのは甚だ疑問でございます。それは、地方自治体がみずからの捕獲で、学術研究目的と称して有害駆除で実験用のニホンザルの違法捕獲をやっているのですから、とんでもないことです。
 また、九九年の審議の際も、鳥獣保護員の大幅な増員と育成が問題となったにもかかわらず、鳥獣保護員の全国の体制は、九七年で三千三百五十六人、九八年で三千三百六十人、九九年で三千三百八十七人とほとんどふえていないわけです。しかも、三重県の鳥獣保護員の公募などが一部にありましたけれども、狩猟者以外の鳥獣保護員はほとんど拡大しておりません。これでは密猟や違法捕獲を監視するには限界がございます。
 ですから、捕獲、飼養許可を出す自治体の判断を第三者が審査、監視できる仕組みの整備が必要だと思いますが、環境省、どうですか。
小林政府参考人 捕獲や飼養の許可基準でございますが、先ほど御説明しましたように、環境大臣が第九次の鳥獣保護事業計画の基準を定めておりまして、都道府県はその基準に基づいて鳥獣保護事業計画を定めて、それに基づいて適切な運用が図られているというふうに理解をしています。したがいまして、その鳥獣保護事業計画を定める際には、各都道府県におきまして審議会を開いたり公聴会を開いたりしていろいろな人の意見を聞いて、その基準に従って適切に運用がされているので、ある程度の第三者的な判断というのがされているというふうに理解をしております。
藤木委員 しかし、愛東町の事例を見ても明らかなように、市町村の担当者が鳥獣保護法自体をよく理解していないことが問題になっているわけです。
 ニホンザルのような大型の哺乳類は、群れもしくは個体の生息域が複数の市町村にまたがるのが普通だと伺っております。適正な地域個体群の保護管理をするためには、市町村という単位で対応することは不可能です。このような市町村に捕獲や飼養の許可権限を与えてしまったのでは、適正な鳥獣の保護管理を進めることは期待できません。
 九九年の審議の際も、都道府県から市町村に捕獲許可権限を移譲する際の適正な運用が問題になったところです。九九年の改正を機会に、岐阜、高知などが全種権限移譲してしまいましたけれども、市町村ではほとんどが現地調査をすることもなく許可を出していると伺いました。これで果たして適正な運用と言えるのか。
 また、さきにも示しましたけれども、九九年の審議の際には、調査研究体制の整備、人材の確保が問題になったにもかかわらず、環境省からいただいた資料を見る限り、その後の鳥獣保護センター等への専門家の配置、地域の大学、研究機関及び鳥獣研究者との連携が全く進んでおりません。
 ですから、滋賀県では特定計画の策定を検討しているようですけれども、地方の体制がないままで許可権限だけを移譲するというのでは、鳥獣の保護管理ができないのではないかと、九九年、私は伺ったんですね。その際に指摘したとおりになっているんじゃないですか。大臣、どうですか。
大木国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、環境省が都道府県に対して、また都道府県がその市町村に対して、人材育成計画ということでいろいろ指導しておるというわけでありまして、九九年にたしか附帯決議もついておりまして、それはしっかりしろということですから、それに向かって前進はしていると私は思います。
 例えば、今の滋賀県におきましてもいろいろと、そういった人材の育成とともに、特定鳥獣保護管理計画の策定に当たりましては、学識経験者等、言うなれば専門家もいろいろと含めて検討会を設置するということでやっておられるというふうに聞いております。
 確かに、今の現状が何点かというのはいろいろと御意見もあると思いますが、そういうことで、これはいつまでも地方はだめだといってほかっておいたのでは体制はできないわけでございます。これは、四十七都道府県あるいは全国に三千幾つあります自治体をこちらで全部手をとり足をとりということではなくて、やはり地元においてそういった人材を育成していただきまして、しかもそれは、問題というのは、やはりその地域地域での実情に応じたいろいろな計画をつくり、判断をしていただくということが望ましい姿だと私は思いますので、今、百点でないという御意見があるかもしれませんけれども、私どもとしては実態に合った、地方にできるだけお任せというよりは、放置という意味じゃなくて、やはり地方の御判断あるいはその能力というのをさらに生かしていただいて、問題を解決していただきたいというふうに考えております。
藤木委員 それではだめですね。捕獲許可だとか飼養許可の権限を有する愛東町の違反行為というのは重大な問題なんですね。
 第九次鳥獣保護事業計画の基準でさえも、「許可権限の市町村長への委譲」の項では、「当該種の生息数及び分布等を踏まえた広域的な見地からの判断の必要性、市町村における鳥獣の保護管理の実施体制の整備状況等を勘案した上で、地域の実情に応じて適切に市町村に委譲され、円滑に制度の運営が図られるよう努める」、こういうふうになっているわけですよ。ですから、市町村の担当者が鳥獣保護法や保護管理を実際に知らないという現状では、市町村への許可権限の移譲をするということは間違いです。
 ですから、単に都道府県や国の支援、法の趣旨の周知徹底だけではニホンザルなどの保護管理ができないという現状なんですから、捕獲、飼養許可権限については、もう一度市町村から都道府県に移して保護管理を進めるべきだと思いますが、大臣、どうですか。
大木国務大臣 捕獲とか飼養許可等の権限の今の移譲の問題でありますが、第九次鳥獣保護事業計画の基準をつくって、その基準に基づいて、市町村における鳥獣保護管理の実施体制等を勘案しながら、都道府県が地域の実情に応じて適切に判断してもらうというのが今の体制でございまして、今の市町村への権限移譲というのは、私は、その方向としては決して間違っていないと思うんです。
 ですから、これは先ほども申し上げましたけれども、それぞれのレベルにおいてのまた人材の育成ということは努力してもらいたいと思いますし、特に、必要に応じ都道府県から市町村への助言ということがきちっと行われるように、そういう形につきましては、環境省としても引き続き、適正な行政が行われるようにということで、技術的な支援あるいはその他もろもろの助言等を行ってまいりたいと思いますが、私は、今の方向をもう一遍逆行させるということについては、必ずしも現状に見合ったいい措置だとは考えておりませんので、残念ながら、今のお話につきましては、御意見は伺いましたけれども、今のところそれを逆行させるということは考えておりません。
藤木委員 保護管理ができない鳥獣保護はないわけですから、逆行ではなくて、実態に合わせた措置をとるべきだということを私は申し上げたんです。
 まだ質問が残っておりますけれども、また次の機会にぜひ議論をさせていただきたいと思います。
大石委員長 金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子でございます。
 先ほども少し論議になっておりましたので、第八十条の適用除外の問題について、少し先にお伺いをしたいと思います。
 他の法令、いわゆる水産資源保護法とか漁業法等によって保護されているということが先ほどもお話が出ましたけれども、法律の性格そのものがもともと異なるように思うわけですね。それで、漁業資源の管理、確保ということが本来その二つの法律では大きな目的であって、野生動物の保護ということは、結果として、漁業資源を保護するということの中に派生的に出るように思えてなりません。したがって、そういうことで除外していくということになると、本当の意味では、この法律で言う鳥獣保護とは異なるのではないかというふうに思うんです。
 ちょっと先ほどの論議の中で、いわば捕獲の禁止ということが、基本的には資源を保護していくということで、捕獲の禁止ということが主に出ているというふうに思うんですけれども、そのほかにも保護されているというようなお話をちょっと伺ったように、捕獲禁止、いわば捕獲の制限とか捕獲禁止以外に、水産資源保護法とか漁業法の中に、野生の動物について保護するような何か施策というか、そういうことが行われているんでしょうか。わかる範囲でお答えいただきたいと思います。
    〔委員長退席、奥田委員長代理着席〕
大木国務大臣 先ほどから、いろいろな水産関係の法律と、それから今度の法律との関係とかいうようなことのお話がいろいろとあるわけでございますけれども、野生生物につきまして、生物の多様性を確保する上でなくてはならないものであり、多様な野生生物により構成されている健全な生態系を将来の世代に引き継ぐということでは、我々は、野生生物を全体として生物多様性という観点から、そういう視野から考えていくべきだと思います。
 そこで、このような観点を含めて、従来、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存につきまして、あるいは鳥獣の保護といった個別の目的を有する法律が制定されて、その適正な執行に努めてまいったところであります。
 また最近は、近年、遺伝子組み換えの生物とか移入種による野生生物への影響等の課題も生じておりますから、そういったものに対して、これからきちっとそういった意味の問題をいろいろと対応していかなきゃならぬわけでありますけれども、今のところはそれぞれの法律があって、それに基づいての、ですからむしろ、例えば水産関係の法律でいいますと、環境的な、あるいは生物多様性の観点からの措置というものは非常に主要な部分は占めていないというふうに思いますけれども、現実には、いろいろな意味での、捕獲の禁止とか制限とかそういったような形で、あるいはいろいろと現状をきちっと調べるという形で全体の姿を見守っている。これからさらにそういった状況を見ながら、その次のステップということは将来起きてくるかもしれませんけれども、今のところはそれぞれの法律に基づいて措置を考えておる、こういうことだろうと思います。
金子(哲)委員 今御答弁いただきましたけれども、私がお伺いしたかったことは一点だけでして、捕獲禁止以外に保護の方法、いろいろな手段がどのようなものがとられているのか。今調査とかを言われましたけれども、そういう調査とかでなくて、例えばどういうことを念頭に置いて、捕獲禁止以外に野生生物保護のための措置が、いわゆる水産資源保護法、漁業法ではどういうことがやられているか。
 つまり、他の法でそういうことが規定をされているから適用除外規定を設けますということになれば、片方の法で、該当する法律の方でそれなりの保護措置がなければ意味がないわけでして、それがただ捕獲禁止だけだということであれば、余りにも適用除外する他の法令としての意味をなさないのではないかということをちょっとお伺いしたいわけです。
小林政府参考人 水産資源保護法の例で申し上げますと、水産動植物の採捕に関する制限、禁止のほかに、水産動植物の販売、所持に関する規制、それから漁具とか漁船等に関する制限、禁止、そのほか有害な、水質を汚染するような、そういうものの排出の禁止ですとか、水産動植物の保護培養に必要なものの採取、除去に関する制限、そんなようなものが対象になっております。
金子(哲)委員 それでは私は十分な保護にはならないというふうに思いますので、後でまた質問しますが、その前に、先ほど樋高委員から質問が出た際、トドのお話が出まして、捕獲頭数というのは、いわば海底に沈んだものは計算に入れないというふうに聞こえたんですけれども、それでいいんですか。
大木国務大臣 計算上はそのとおりであります。
金子(哲)委員 そうしますと、これはできれば教えていただきたいんですが、推定で結構です、推定しかないと思いますけれども、海底に沈んだ、狩猟によって海面上に出ない、海底に沈んだものがあるということは認めていらっしゃいますけれども、それは推定でどれぐらいですか。
小林政府参考人 正確な情報につきましては、駆除をしている漁民にしかわからなくて、統計的な数字としては上がっておりません。私どもは存じておりません。
金子(哲)委員 そうしますと、何頭殺されているかというか、結果としてはわからないということですか。
小林政府参考人 そのとおりでございます。現在、全世界のトドの総数、推定ですけれども、十一万六千頭くらいと言われていますけれども、日本でどのくらい捕獲されているか、十分把握してございません。
金子(哲)委員 そうすると、これ自身は幾ら制限をつけても余り意味がなくなるんじゃないかと思うんですけれども、その点はどうですか。
小林政府参考人 捕獲というのを、ただ沈めてしまうだけを目的にしておりませんし、そこの辺の漁民等への指導徹底の中で、おおよその概数はつかめると思います。概数というか、大体の見当はつくと思います。その正確な数字はわからなくても、捕獲規制の上限を定めることによって、ある程度のコントロールはきくものと理解をしております。
金子(哲)委員 そうしますと、それは概数で結構ですが、調査されたことがあるんですか。
小林政府参考人 陸揚げ数としては、例えば二〇〇〇年で百十頭ということがわかっていますが、沈んでしまった個体の数については、先ほども申し上げましたとおり、わかっていないということです。
金子(哲)委員 そうすると、これは要望ですけれども、今まではそういうことに余り関心もなかったのかどうかよくわかりませんけれども、結局何の調査もなかった、とにかく捕獲をされたものだけが頭数として計上されていたということになると思うんですよね。やはり現実というものを、現にもうそういうことが、殺しても捕獲できなくてそのまま海底に沈んだというケースがあるということをもう認められているわけですから、そういうものについて、一回、具体的な聞き取りも含めて、大体どれぐらいの規模になっているかというのは調査をしていただきたいと思うんですが、どうですか。
小林政府参考人 今回、トドにつきましては八十条の適用除外にいたしておりますが、鳥獣保護法の精神につきましては、すべての鳥獣が鳥獣保護法の網の下にかかる。ただ、トドについては八十条で適用除外にします。
 いろいろなことで、現在は、水産資源保護法等で保護されているものはそういう措置をとるということでありますので、先生の御指摘のとおり、今後、トド以外の海生哺乳類に関して、徐々に環境省としても知見を深めていく必要があろうと思います。
 当面、差し当たっては、対象とするアザラシ等の生息調査等にもかからなきゃならないというふうに思っておりますし、トドに関しましてもどこまでつかめるか、なかなか、実態を把握している漁民がどこまで協力してくださるかという点について、問題はたくさん、課題はたくさんありますが、そういう方向で調査というか調べる方向に行きたいというふうに思っております。
金子(哲)委員 ぜひその点は、この委員会でも論議になりましたので、これを機会にぜひその点についても調査をしていただきたいと思います。
 それで、海生哺乳類のことについて、先ほど捕獲禁止以外に、例えば漁具の問題とか漁船の問題などを言われましたけれども、私は、それは本当に海生哺乳類の保護策としては十分ではないというふうに実は思うんですよ。
 それで、ちょっとお聞きをしたいんですけれども、スナメリクジラのことなんですけれども、瀬戸内海の生息状況について、今の状況はどのように把握されているでしょうか。生息地域それから頭数等を、もし把握されている状況がわかれば教えていただきたいと思います。
小林政府参考人 御説明申し上げます。
 我が国において、スナメリにつきましては、西九州、それから瀬戸内海、門司から能登半島までの日本海沿岸と、紀伊水道から仙台湾までの太平洋沿岸に分布しています。先ほどの御質問の中にもありましたように、大体、おおよそ四つの個体群に分かれているというふうに考えておりまして、通常は、沿岸一キロから二キロくらいの範囲で、比較的浅い海中に生息、生活しているというふうに考えております。
 環境省が二〇〇〇年に実施した航空機による目視調査でございましたけれども、そのときの生息数に関する推定値で、約七千六百頭ほどではないかなというふうに考えてございます。これと比較できる過去のデータがないため、増減の経過はわかりませんが、そんなふうに考えてございます。
金子(哲)委員 それは次の答弁のとき一緒に答えてもらえばいいんですが、七千六百頭というのは、今言われた海域全部ということですよね。
 そうしますと、私がちょっとお聞きしたいのは、瀬戸内海に限ってお聞きをこれからしたいと思いますけれども、瀬戸内海域では大体どれぐらいの頭数が確認されて、その主な生息地域はどの辺になっているんでしょうか、二〇〇〇年の調査では。
小林政府参考人 環境省の二〇〇〇年の調査で、瀬戸内海区域の生息数の状況等は、ちょっと今手元にないのでわからないんですが、水産庁のレッドデータブックによりますと、瀬戸内海地域の個体群の資源量というのは約五千頭くらいだろうと。トータルで、水産庁は八千何百頭というようなトータルを挙げていますので、多少トータルのあれが違いますけれども、おおよそそのくらいの生息数かと思います。
金子(哲)委員 お答え、五千頭はわかりましたけれども、海域をぜひお答えいただきたかったと思うんです。
 広島県沖の辺には、どれぐらいいるんですか。
小林政府参考人 申しわけありません。そこまでは把握してございません。
    〔奥田委員長代理退席、委員長着席〕
金子(哲)委員 わかりました。
 瀬戸内海海域、かつて広島県の忠海周辺、竹原沖周辺ですね、スナメリクジラの回遊地域として指定をされていたわけですよね。ところが近年、スナメリクジラ、大抵、瀬戸内海域のうちの主な回遊域は周防灘周辺が中心で、そこでは大抵個体群というか頭数が非常にたくさん発見されていると思うんですけれども、かつての広島県の呉から竹原沖にかけてが、ほとんど今はもう確認できないという状況になっているんですけれども、これはなぜですかと聞いても、では答えられないですよね、そういう状況を知らないということは。どうですか。
小林政府参考人 今まで、環境省としましては、スナメリ等の海生哺乳類について担当していなかったということもありまして、先ほど申し上げた二〇〇〇年の航空機調査以外に十分なデータがない状況でございます。
 スナメリにつきまして、瀬戸内海のスナメリがいろいろな、あの辺は内湾でございますので、人間環境の影響、人間の経済活動の影響を受けてということで、環境の変化を受けやすい種類だろうとは思っておりますけれども、具体的に、例えば海砂利採取の影響を受けているんじゃないかという御意見もありますけれども、現在のところ、私どもとして、それが海砂利の採取の影響だったかどうかというふうに確信を持って申し上げる状況ではありません。
金子(哲)委員 私は、今のところで、海砂利だと言う人もいるけれどもというお話をされましたけれども、結局、保護をするといったら、原因とかがはっきりしないと保護はできないと思うんですよ。
 私は、捕獲禁止以外の保護の方法は何ですかということをあえて問うたのは、漁業、漁具とか漁船とか、先ほど販売の問題とか、そういう問題ではなくて、そこのすんでいる状況というか、海底の状況を含めて、しかも回遊するわけでしょう。かなり広域に回遊をしていく状況がありますよね。
 そうすると、えさの問題だとか食物連鎖の関係もあって、つまり、今、竹原、広島県で私が言った例で考えられることとしたら、断定はできないと言われるけれども、予測される最大の理由は海砂利採取以外にないんじゃないですか。それはどう思われますか、その点については。
小林政府参考人 どうも私どもも勉強不足でございまして、今のお答え、的確に答えることがちょっとできません。申しわけありません。
金子(哲)委員 それでは、もうそんなことを幾ら追及したってしようがない話なので。
 まさに間違いなく海砂利採取の影響ですよ。海砂利採取によって、根こそぎ砂れきはすべて採取をされて、今や岩盤だけですよ。そうしてみますと、もう藻場はなくなり、そしてイカナゴを初めとする小さな稚魚は全部すめなくなっている。だったら、それをえさにしていたスナメリクジラがそこに回遊できないというのは当たり前、当たり前というか、当然の結果としてそうなったわけですね。タイも減少したわけですよね、そういうものも。そうしてみますと、保護をするということでいえば、全体としての、もっと大きな環境の保護から始めないと、個体群だけを捕獲禁止だけで保護しても何の役にも立たないということなんですね。
 私は、きょうちょっと実はこういう質問をするからということで電話をかけましたら、広島県は割合早く海砂利採取を禁止しました。九八年、ちょうどもう四年たつんですけれども、この秋で四年目になるんですけれども、最近スナメリの回遊が見られるようになったという話が出てきているという話を聞いているわけです。つまりは、四年間の中で、完全に自然の回復はできていません。それは、例えば川そのものがダムで閉鎖されたりして砂も来ないとかいう状況もあって、完全に回復されておりませんけれども、ある種の自然が回復したために、そういうスナメリの回遊もまた始まったということだと思うんですね。
 そうしてみますと、特に海生哺乳類などの保護ということになると、大きな環境の単位で考えないと、その捕獲数、捕獲を禁止しておけば、一方では開発は野方図にやっていたということでは絶対できないと思うんですよね。
 そうしてみますと、例えば今度お伺いしたいのは、そのことでとにかくスナメリがようやく広島県で回復しつつあるという、それも完全かどうかということは別にしても、ややそうなっている。それで、周防灘というのは、割合、全く手つかずのところだったものですから、ずっと今でも回遊しているわけですね。海砂利採取も行われなかった。岡山県、愛媛県、香川県、広島県の四県のあの海域だけですから。そうしてみますと、原因はある程度わかってくると思うんですよ。
 そうしますと、次にちょっとお伺いしたいんですけれども、先ほどジュゴンのこともお話が出ましたけれども、もう一遍確認したいんですけれども、今度ジュゴンは国内希少種として保護していこうということの対象にされたんでしょうか、されていないんでしょうか。
小林政府参考人 ジュゴンにつきましては、今現在、ジュゴンの全般的な保護方策の検討のための調査をしているところでございます。ジュゴンと、そのえさになる海草の生息する藻場も含めまして、広域的な調査を沖縄周辺海域において昨年度から実施しています。
 その結果を踏まえて、漁業関係者を初めとする地元の理解が得られれば、種の保存法に基づく国内希少種に指定していきたいということで、今現在調査中ということでございます。
金子(哲)委員 その調査は、先ほどではことしの四月から始まったと聞いておりますけれども、いつまで続くんでしょうか。
小林政府参考人 多分、調査開始から三年くらいは絶対必要かなというふうに考えております。
金子(哲)委員 そうしますと、今おっしゃいましたように、実際に三年間ぐらいかけなければ、ある種の正確な生息状況は調査結果として出ない、しかもまた、藻場の状況の調査も、えさ場も含めて調査をすれば、それぐらいの期間が必要だということになりますよね。
 そうすると、その間は、今ちょっと聞き取りにくかったんですけれども、希少種としてその保護を決めるかどうかはその調査結果を見てということをおっしゃったわけですか。
小林政府参考人 鳥獣保護法は今回改正をいたしまして、鳥獣保護法の保護の対象に、捕獲禁止の対象にしますと、法施行までの間には、その結果がどういう方向づけをするかが出ると思います。
 それから、種の保存法に関しましては、今後、保護区の設定というようなことも念頭に置きつつ考えてございますので、国内希少種の指定で捕獲禁止にする以外に、保護区の設定というのも考えますと、やはりそのくらいの時間はかかるのかなというふうに思っています。
 一応、水産資源保護法でも、それから、今回新たに鳥獣保護法でも捕獲の禁止はされますけれども、保護区の設定まで来ると、そういう時間はかかるかなというふうに思っています。
金子(哲)委員 しっかりとした調査をしていただいて、しっかりとした対策を立てていただく。しかも、それだけの長い期間をかけて調査をしようとされているということですから、特別に指定するとかしないとかじゃなくて、ジュゴンというものが重要だというふうに考えられているから、それだけの財政的なこともやられていると思うんです。
 そうしてみますと、例えば保護区を設定しようということも含めて、これから検討素材になってまいりますけれども、沖縄の周辺の場合に、一つ今一番大きな問題になっているのが、辺野古の問題が実際上政治的な課題にも上っているわけですけれども、あそこも重要なジュゴンの生息地域というふうにも言われて、市民運動のグループの人たちから指摘をされております。
 そうしてみますと、三年間かけて調査をする、そのときに重要だったというときに、万が一それまでに手を加えられるようなことについては、環境省の立場としてはどう考えられているんですか。
小林政府参考人 辺野古の普天間基地移転先の飛行場の問題につきましては、防衛施設庁の方で環境アセスメントをする、こう言っています。政府としてもそういう方向で進んでいますので、環境省としましては、そういう中でジュゴンを保護を図れるように、適切な意見を申し述べていきたいというふうに思っています。
金子(哲)委員 そこで、最初の瀬戸内海の話をもう一度思い起こしてほしいんですけれども、結局、今度環境アセスでやる範囲なんていうのはどこまでかという問題があるわけでしょう。そうしてみますと、もっとそういうことの影響が、現に、特に海底の場合には、我々、地上で見ることができないものですから、その変化というものをつぶさに見ることができないわけですよね。
 確かに、防衛施設庁が中心になってそういうことを検討されているということがありますけれども、環境省の立場で、今は結局受け身で環境アセスの結果待ちということになるんですが、これからの環境アセスの問題とかかわりがあるんですけれども、結果、今までは、工事をやったらこういうふうに影響が出るんだ、だからこういう対策をとるんだというような環境アセスの側面が強かったと思うんですけれども、これからの時代、これからの環境影響というものは、逆に言えば、これを守るためにはどうすべきかという視点から、環境省がもっと意見を言うべきだと思うんですけれども、その点はどうでしょうか。
小林政府参考人 普天間の基地のところに関しましては、ジュゴンの生息地としてジュゴンが結構見られるという場所で、ある程度生息地としての重要性というのもあるのではないかなと思っています。
 その中で、具体的な事業計画の部分についての保護保全対策というのは、その事業者である防衛施設庁がやるし、環境省としては、ジュゴンはもっと広域に生息するわけでございますので、そのジュゴンの広い範囲での保護対策をどう考えるか、こういう立場から、もしその広域的な知見が得られた場合には、適切にまた助言をしていく、こういうスタンスでおります。
金子(哲)委員 その広域の中に辺野古も入っているわけでしょう。あなたの話はおかしいじゃないですか。そこの辺野古の重要性というものが、検証が終えていない時点で、そこはとりあえず、もし防衛施設庁がどうしてもと言えばやむを得ないかなと。そのほかで、その周りで、全体で保護すればいいんだという話ではないんじゃないか。
 三年間もかけて調査をするほど重要性を持って調査をされるのであれば、当然、辺野古も、いや、結果としてはどれぐらいの重要度があるかわからないですよ。しかし、そこはとりあえずそういう計画があるからということで、それはしようがないんだというふうなことでは、環境省として、三年間調査をするんなら、三年間の調査結果を待つ、そして辺野古はもし仮にどうなっても、ほかでカバーできるというふうなことを含めてならなきゃ、全然調査をした意味もなくなるんじゃないでしょうか。
小林政府参考人 ジュゴンに関する環境省の広域的な調査につきましては、もちろん一年ごとに調査結果というのは出てくるわけですから、そういう調査結果を踏まえながら、その時点その時点での適切な意見は述べていくことができるというふうに考えております。
金子(哲)委員 わかりました。
 そうすると、ある意味では積極的な意味で、受け身でなくて、環境アセスのように出されてきたもの、事業主が、事業者が出してきた環境アセスがどうかという評価を下すだけでなくて、積極的な意味で、ジュゴンの生息にかかわって、環境省としては、そのことを積極的な立場で意見を具申していくということでいいんですね。
小林政府参考人 環境省の調査はジュゴンの保護のためにやっているわけでございますので、そういう方向で、ジュゴンの保護が適切に図られるように意見を申し述べていきたいと思います。
金子(哲)委員 ぜひそのことを強くお願いしておきたいというふうに思います。
 あと時間も残り少なくなったので、ほかの質問をしようと思っていたことが、少なくなったんですけれども、もう一つ、鳥獣にかかわって、生息状況の調査ということがあります。今、例えば、先ほどもお話がありましたように、県単位で保護施策をやったりすると言いますけれども、基本的には、私は広島県におりますが、西日本、中国山地といえば、広島県、島根、山口、三県にまたがっているわけでして、その調査とかそういったことについては、単県でやっているだけでは十分な状況調査ということにならないと思うんですけれども、隣接県などとの調整とかそういったことについて、環境省はどういう役割を今まで果たしてこられ、これからどういう役割を果たそうとされているんでしょうか。
小林政府参考人 鳥獣の分布状況を把握するために、環境省としては広域な調査が必要ということは十分認識してございます。先ほども御説明申し上げましたけれども、昭和四十八年から、大型、中型の哺乳類の分布状況等について、環境省が全国の都道府県に委託をしまして実施しています緑の国勢調査というものの中で実施しているところでございます。現在も、ちょうど三カ年計画で調査をしている第二回目の調査になりますが、やっているところでございます。
 また、第九次の鳥獣保護事業計画の基準を大臣が定めましたけれども、鳥獣の生息状況の調査に関する事項に関しましては、近隣都道府県と連携して調査研究体制を整備するように、こう定めているところでございますし、隣接する都道府県にまたがった鳥獣の個体群を特定鳥獣保護管理計画の対象とする際にも、関係する自治体が一緒に協議して、できれば一緒に調査もして計画を立てるように、そういう指導を行っているところでございます。
金子(哲)委員 そのことと関係して、都道府県のそういうことに対する調査研究の体制というのはどのように整備されてきているんでしょうか。それからまた、今後どのような方向で整備をされようとされているんでしょうか。
小林政府参考人 野生鳥獣の科学的な、計画的な保護管理を推進していく上に、その基礎として、鳥獣の生息状況を把握していくことが重要なのは申すまでもないと思います。
 現在、三十の都道府県におきまして調査研究体制が整備されておりまして、独立行政法人である国の試験研究機関ですとか民間の調査機関との連携を図りながらその調査研究を推進していくということで、ぼちぼちですけれども、もう少し、もうちょいですから、都道府県の調査研究体制も進むというふうに理解しております。
金子(哲)委員 ぼちぼちも、もうちょいもいいですけれども、ぜひ力を入れてやっていただきたいと思います。
 最後に、環境大臣にお伺いしたいんですけれども、これはもう午前中もいろいろ論議になっていることでありますので、重ねてお伺いするということになりますけれども、生物多様性ということが言われて、この法案の中にもそのことが盛り込まれておりますけれども、先ほどもちょっと論議をしましたように、各法の中にちりばめられていくということが現実にあって、それを総トータルしてすべての種に対してカバーをするような法律をつくるということは、なかなか言われたとおり難しいと思うんですけれども、少なくとも最低でも基本法的なものをつくって、目指す方向性というようなものは、野生生物保護法の基本法的なもの、各法は別にして、やはりつくっていく必要があるんじゃないか。
 また、しかも、環境省と、先ほど言いました水産庁、林野庁でさまざまなかかわりが出てくるわけですから、そういった意味でも、そういう方向性、法体系の見直しというようなことを、そのための頂点にあるものを新たにつくっていくというような考え方に立たないと、結局、各法を少しずつ直していくけれども、いろいろなところで矛盾が出てくる。やはり国全体として、生物多様性を確保していくための野生生物の保護に関しては、こういう国家の姿勢でいくんだというような基本的な法をとりあえずつくっていくというようなことが、将来必要ではないかというふうに私は思いますし、先ほど科学的な知見の問題もお話が出てまいりましたけれども、そういうことも、すべての調査はもうちょっと時間がかかるかもわかりませんけれども、そういう方向を目指してさまざまな調査を行っていかなければ、どうも省庁でも縦割りでいろいろ物が決まっていく。法律も、あそこを見ろ、ここを見ろというようなことになっていく。
 しかも、この法律そのものも、最初はもともと鳥獣保護というよりも狩猟法的なものから進んできて、そして拡大をされていったところに、やはりどうしてもいろいろ矛盾、問題点も出てきているわけでして、そうしますと、今の社会の中に、今の時代の要請の中にあって、そういう野生動物保護法的な基本法を制定していく必要があるんではないかというふうに思いますけれども、その点について大臣のお考えをお伺いしたいと思います。
大木国務大臣 今のお話につきまして、まず一つ、午前中もお話が出たと思いますけれども、生物多様性というようなことも意識しながら、どういうふうに、個々の生物についての問題もありますし、そういった生物が生息する環境についての保全というようなこともありますので、そういったようなことについて、党の方でもいろいろと御検討しておられるというふうに存じておりますので、それはひとつその状況を見守りたいし、私どもとして、それにまた協力することがどういうふうにできるかということは検討してまいりたい。
 それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、いきなり全部具体的な法律として整備するということは、いささか機が熟していないといいますか、体制ができていないと思いますけれども、しかし、国民の立場からいえば、せっかく生物の多様性というようなことが、これは国内ばかりではなくて国際的にも非常に言われておる時期でございますから、どういう問題があるかというようなことは、これからひとつできるだけよくわかるように、それこそそういった全体の姿がわかるようなものを何か準備して、また、国民にお示しするというような努力も行ってまいりたいと思います。
 先ほどちょっと地図の話も出ましたけれども、地図ばかりじゃなくて、全体の、そういったどういう問題があるかということについての総括表と申しますか、そういったようなものは、またひとつできるだけよくわかるようなものを準備したいと思っております。
金子(哲)委員 これで終わりたいと思いますけれども、いずれにしても、そういう方向性を、やはり全体としてのトータルの方向性というものを明確にして進んでいただきたいというふうに思います。
 きょうは、林野庁と農林水産省、ちょっとお見えをいただいたんですけれども、もうあとちょっと時間がないものですから、またぜひ次の機会に質問させていただきたいと思います。
 以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。
大石委員長 次回は、来る十四日金曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時二十九分散会


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