衆議院

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第19号 平成14年7月2日(火曜日)

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平成十四年七月二日(火曜日)
    午後一時三分開議
 出席委員
   委員長 大石 正光君
   理事 熊谷 市雄君 理事 西野あきら君
   理事 柳本 卓治君 理事 山本 公一君
   理事 奥田  建君 理事 牧  義夫君
   理事 西  博義君 理事 樋高  剛君
      小渕 優子君    奥谷  通君
      亀井 久興君    木村 隆秀君
      小泉 龍司君    小林 興起君
      阪上 善秀君    原田昇左右君
      菱田 嘉明君    三ッ林隆志君
      山本 有二君    小林  守君
      五島 正規君    近藤 昭一君
      佐藤謙一郎君    田端 正広君
      武山百合子君    藤木 洋子君
      金子 哲夫君    西川太一郎君
    …………………………………
   環境大臣         大木  浩君
   環境副大臣        山下 栄一君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   政府参考人
   (農林水産省大臣官房審議
   官)           坂野 雅敏君
   政府参考人       
   (林野庁次長)      米田  実君
   政府参考人
   (水産庁増殖推進部長)  弓削 志郎君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            岩村  敬君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  竹村公太郎君
   政府参考人       
   (環境省自然環境局長)  小林  光君
   環境委員会専門員     飽田 賢一君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月二日
 辞任         補欠選任
  鮫島 宗明君     佐藤謙一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤謙一郎君     鮫島 宗明君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案内閣提出第八一号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
大石委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房審議官坂野雅敏君、林野庁次長米田実君、水産庁増殖推進部長弓削志郎君、国土交通省総合政策局長岩村敬君、国土交通省河川局長竹村公太郎君及び環境省自然環境局長小林光君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大石委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
    ―――――――――――――
大石委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤謙一郎君。
佐藤(謙)委員 民主党の佐藤謙一郎でございます。
 きょうは、鳥獣保護法の改正案につきまして、大木大臣を初め諸先輩に質問をさせていただきたいと思います。
 大木大臣といいますと、私もちょうど環境委員長をやらせていただいていたときに、COP3、大変大臣御苦労されてあの難局を切り抜けた。あれが今日につながっていることを考えますと、環境というものに大変積極的に取り組んでこられた大臣ということで、心から私も期待をするところでございます。
 今日、環境問題といいますと、例えば地球温暖化あるいは循環型社会あるいは環境管理というような柱の中で、私は、自然との共生というのはそうした柱の上に立つ根本的な大変重要な問題だろうというふうに考えております。それは、ともすると人間の傲慢さというものが、自然の中で我々人間も生かされている、そうした謙虚な気持ちを失った時代に遭遇しているような感じがしてならないところであります。
 ついこの間、新聞でヌードチキンというのが報道されたのは、大臣、御存じですか。ヌードチキンというのは、これはイスラエルのヘブライ大学で開発された羽のない鶏。食用に供するためにもう羽をむしる手間を省いてしまおう、それから換気のコストも低減しようという、ここまで来てしまったかという、そんな思いが私はいたしました。人間のために都合のいい自然界というものをつくり上げていくという方向に、この鳥獣保護法というものがどれだけ原点に戻れるかが私どもの突きつけられた課題ではないかなというふうに考えております。
 そこで、きょうは一時間お時間をいただきましたので、三年前の議論から先送りされてきた課題がどう前進しているのかを質問していきたいと思っております。
 私、ちょうど三年前の六月八日に、多分二時間、鳥獣保護法の当時の改正案について質問させていただきました。その当時の民主党は、この改正に反対をさせていただきました。
 これは、改正案の問題点として、例えば、被害防止を駆除に頼った改正案、これは根本的な問題解決にはならないといった観点から、あるいは問題の抜本的解決には、駆除ではなくて防除等の方法に重点を置いて、森林等の生息地の復元を積極的に進める必要がある、改正案はこうした視点の制度化が不十分である。あるいは、農林業者の経済的損失を解消するための直接的な所得補償制度がない、あるいはという形で、何項目か私ども指摘をして、人か動物か、つまり農業被害がそれに当たると思いますけれども、そうした選択をとるということよりも、人と野生生物の共生という理念とその手段を明確に制度化すべきだ、そんな立場から反対をしてきたわけでありますが、今回の改正に当たりまして、私は、その当時の質問で、その当時の議論の課題から、まず、猟区の問題について質問をさせていただきたいと思います。
 これは、一九六三年や一九七八年、あるいはここ二、三年の野生鳥獣保護管理検討会でも大変大きなテーマになったわけでありまして、猟区のあり方の仕組み、私どもは、全国禁猟区制度というものをつくるべきではないかということで、今までの乱場制というもののポジとネガを逆転する、そうしたことをずっと主張してまいりました。
 今回の事業計画のあり方の中で、その方向性が若干見えるかというところまで来ているわけでありますけれども、そのとき私が質問をさせていただいたときに、当時の丸山自然保護局長さんはこういうことを言っておられました。可猟区を設定して、それ以外を禁猟にしようという考え方に対して、現在可猟区は十三万ヘクタールある、その当時でありますけれども、しかし、二十二万人の狩猟者がいて、狩猟可能な人員が、十三万ヘクタールということになると、稼働三十日程度で千五百人程度のキャパシティーしかない、つまり、千五百人しか狩猟というものをすることができないので、二十二万人の狩猟者が現在いるという点からいって非現実的だというような御答弁でありました。
 全国禁猟区制度というものにしていくためにはいささか時間がかかるのではないかというような答弁でありましたけれども、これは、狩猟者が二十二万人いるからできないということなのか、それとも、非現実的だととらえられたその時点から、着実に全国禁猟区制度に歩を進めているというふうに我々は考えていいのか、その辺について御見解をお聞かせください。
小林政府参考人 三年前の自然保護局長の答弁でございますけれども、これに関しては、猟区という制度が現在ございます。その猟区の中で狩猟をするにはいささか手狭である、こういうことでございまして、猟区といいますのは、狩猟を許可するかわりにそこで料金を取る、こういうような制度でございます。
 したがいまして、その土地の所有者の一人一人の了解をとらねばならない、こういう制度のもとで行われていることでございますので、これを一気に大きくしていくには、いささか時間がかかるんじゃないか、猟区の中でやろうとすればという答弁だったと存じます。
佐藤(謙)委員 一時、狩猟者が五十万人を超えていたわけでありますけれども、この猟区の問題については、当時の丸山局長はそういう言い方で、すれ違った議論になっていたわけですが、着実に狩猟者が減っている。
 今、里地里山に対する関心が高まってきたり、自然公園に入ってハイカーが歩こうとすると危険を感じる、現実にはクマの被害よりも暴発による事故の方が多くなっている、そういう現実があって、私の知り合いの中では、自分の地域の近くの学校、通学路が危ないということで、そうしたところを銃猟禁止区域の設定のために努力しているという運動が各地に見られるわけでありますけれども、現実に国土の七一%が可猟地域になっている。禁猟区やあるいは鳥獣保護区等々の狩猟制限されているところは現実に非常に限られているわけでありますけれども、これから市民が制度というものに頼らずに、それでは自分たちの危険、あるいは狩猟という、こういう狭い日本の国土で、そうした文化とは違った文化というものをつくっていこうということで、少しでも禁猟区というものをつくっていこうという運動をしようとしたときに、環境省はそれを支援するという立場にあるのか。それと同時に、こういう市民が少しでも安全なところを確保していこうとするには、どういう手順で運動していったらいいのか、その辺をお示しいただきたいと思います。
小林政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、鳥獣の捕獲が禁止されているところといいますのは、鳥獣保護区とか休猟区のほかに、公道ですとか社寺境内地というようなところがございます。さらに、銃によって猟を行う場合、人命等の危険を未然に防止するという観点で、都道府県知事が銃猟の禁止をする区域などを設けているところでございます。
 最近の例としましても、茨城県で、学校周辺とか通学路や民家の近くで銃を使うことによる危険ということを予防してもらいたい、こういう要望が地元自治体とか地元の町長さんから出てまいりまして、これに向けてその必要性を検討して、茨城県知事が銃猟禁止区域を設定した、こういう事例もございます。
 いずれにいたしましても、ハンターの行為を規制する、国民の行為を規制するという行為は何らかの法律に基づく必要がございますので、この銃猟の禁止区域の設定権限につきましても都道府県知事に任されている、こういう事情でございます。危険防止の観点からは、その地域の実情に応じて知事が適切に設定するというふうに考えてございまして、法的な手続によって行われるものと思っております。
 地域住民からの声は十分尊重するように、危険防止というのが第一義的に考えなければいけない問題ですので、知事にもそのように指導してまいりたいと思っております。
佐藤(謙)委員 都道府県知事に積極的にそうした動きがある場合には環境省として支援をしていただきたいと思うのです。
 ちょっとこれ、私、今ふと思いついたのですが、今、野生生物保護月間なんというような取り組みというのはあるのでしょうか。例えば、そうした期間を設けて、その間に野生生物と人間との共生というものを啓発する、あるいは環境教育の場に付していくというような。
 なぜ私、こういうことを考えるかというと、農村では農業被害というものが非常に大きくて深刻になっている。
 私は、選挙区は都市部でありますけれども、ほとんど土日は農山漁村を歩いています。それは、二十世紀が農村の都市化の時代であるのに対して、二十一世紀は、明らかに都市が農的なるものをしっかりと受けとめなければいけない時代だろうと思っておりますし、とりわけ農山漁村というものがあって都市が成り立っているというふうに私は考えておりますから、都市と農村との共生というものを考えるときに、一方で、生産点で農業被害というものが深刻であって、都市住民はそれに対して余りにも無関心であり過ぎる。やはりその理解から、私たちは野生生物というものを通じて何か次の時代がつくれないかと考えているわけであります。
 そうした一念で、みんなでそうした野生生物との共生というものを考え、場合によっては銃猟禁止区域というようなものを少しでもふやしていこうという動きにつながればと思うのですが、その点はいかがでしょう。
小林政府参考人 野生生物保護月間のお尋ねでございましたけれども、二点ほどあります。
 法律に基づくものではいずれもございませんけれども、一つは、五月の中旬にバードウイーク、愛鳥週間というのがございまして、この週間には、野鳥を保護するという観点から全国各地で普及啓発の行事を行っています。環境省も、常陸宮両殿下をお迎えする全国行事を毎年行っているというところでございます。
 もう一点は、ガンやハクチョウのガンカモ類の渡来状況を一斉に調査する。その日につきましては、ちょうど狩猟期間中ではございますけれども、一月の十三、十四、十五、この三日間をハンティングを自粛するというような形で、鳥のきちっとした把握ができるように、渡り鳥の把握ができるように努めている。そういうことを通じて、保護の思想普及を図っているところでございます。
佐藤(謙)委員 いずれにしても、やはり小学校、中学校、高校と、子供のときからそうした野生生物との共生というものを植えつけていくというのは非常に大事でありますから、私自身、そうした月間といいますか、存じ上げなかった方が悪いのかもしれませんけれども、どうか教育とリンクをさせてそうした運動に取り組んでいただければというふうに考えております。
 次に、三年前の議論で、特定鳥獣保護管理計画がスタートしたわけでありますけれども、そのとき、この特定鳥獣保護管理計画は任意制度でスタートをしてしまわざるを得なかった。そこから実はギャップが出てきたわけで、再三今度の委員会の審議でも指摘をされているように、ふやしたい種の管理計画、例えばクマとか猿についての管理計画は、過般の審議でも、クマが四、猿が二というふうに聞いておりますけれども、減らしたいだけの管理計画が先行をしてしまうおそれがある。一方で、市町村に丸投げをした有害駆除、これは科学的、計画的なものがなかなか担保されないだろうという不安があるわけであります。
 そうなると、その動物が事実上無制限に捕獲が可能になってしまうということを恐れる人が大変多いわけでありますけれども、これが義務制にできなかった理由というものはどういうところにあるのか、御指摘いただきたいと思います。
小林政府参考人 特定鳥獣保護管理計画につきましては、地域個体群の長期にわたる安定的維持を図る、こういう観点から、今御指摘がありましたように、シカ等地域的に著しく増加している種の個体群ですとか、クマなど著しく減少している種の個体群を対象に策定するものでございます。
 地域的に増加している種の個体群とか減少している種の個体群の実態といいますのは、対策の緊急性ですとか現状把握の状況等に、その程度に非常に大きな地域的な差がございます。これを一律に計画策定を義務づけるというのはそういう意味では適当でないということで、任意の計画、こうしたところでございます。
 ただ、これからの鳥獣保護に当たりましては、科学的で客観的なデータに基づく管理ということが必要だという点におきましても、鳥獣保護事業計画を広めていく必要がある、こういうふうに考えてございまして、そのための必要な助言ですとか援助について、環境省としても都道府県に対して行ってまいりたい、こういうふうに思っているところでございます。
佐藤(謙)委員 それでは、一律的にというお話が出ましたけれども、これから科学的、計画的な知見というものが集積するわけであります。それはなかなか市町村というところにまで行かないのが懸念の材料でありますけれども、例えばクマとか猿については、そうした保護管理計画については、そうした計画的あるいは科学的な知見を得て、義務化をするということが将来的にあり得るものでしょうか。
小林政府参考人 例えばクマなんかの場合、絶滅のおそれのある地域個体群というのが環境省の調査でもわかっています。そういう場所につきましては、極力急いで保護管理計画を立てるよう、都道府県とも連携をして進めてまいりたい、こう思っております。
佐藤(謙)委員 それは、義務化ということではなくて、環境省の責任で積極的に管理計画を立てさせるということで理解してよろしいんですか。義務化という方向というのはとられることはないということでしょうか。
小林政府参考人 特定鳥獣保護管理計画につきましては、やはりいろいろな場合の動物を対象に考えられるということもありまして、これから先、どういう動物が急激に減ったり急激にふえたりするかわかりません。そういうような事態には流動的に都道府県知事が対応できるような形にしたいと思っていますので、これを義務化するということは考えておりません。
 ただ、今申し上げましたように、クマとかそういうことに関しては、知事とも相談して、できるだけそういう管理計画のもとで科学的な知見に基づいて保護管理を行う、そういう方向に持ってまいりたいと思っています。
佐藤(謙)委員 三年前の議論で、私は、北海道の斜里町の三人の職員がクマ対策に専従して、時間外勤務もして本当に苦労に苦労を重ねている、そういう現実をお話ししたわけです。
 その方が、苦しい地方財政では自然環境は常に後回しにされかねない、前向きな地方自治体ならいいけれども、多くの自治体では単なる苦情処理として駆除や狩猟が進められる危険が大きい、せめて地方独自の保護管理計画を審査する第三者機関が必要ではないか、そういう提案をされて、私は質問で問うたわけでありますけれども、そのときに丸山局長は、第三者機関という問題については、特定鳥獣保護管理計画を策定する過程で、研究者とか専門家、自然保護団体、幅広い方々によって、事実、検討会というのをつくっている例がある、そういった検討会の設置も必要だろうと考えているというふうに言われました。
 特定地域の保護管理計画についてのチェックをしていくということ、その中に、市民参加といいますか、自然保護団体ですとか、そうした方々がどれだけしっかりと入り込めるかということが非常に大事でありますけれども、計画をチェックする第三者機関としてガイドラインで検討会の設置も必要だろう、こう考えていると言われた丸山局長の答弁に対して、それからさらに進んでおられるのかどうか、その辺の現状をお聞かせください。
小林政府参考人 特定鳥獣保護管理計画の策定に当たりましては、科学的な知見及び地域の情報に基づいて、合意形成を図りながら保護管理を進めることが大事だということに基づきまして、環境大臣が定めます第九次の鳥獣保護事業計画の基準というのがございますが、これに基づきまして、そういう計画を立てる際には、学識経験者、関係行政機関、それから地域住民等から成る検討会を設置してその計画策定に当たりなさいという指示、また、必要に応じて、生物学等の専門的な観点からの人から成る委員会を別途設けてやるようにというような指示を都道府県知事にしてございます。
 今後とも、そのような検討会、委員会を通じまして、検討経過の透明性が確保されるように努めてまいりたいと思っております。
佐藤(謙)委員 ぜひとも、そうした第三者による機関のチェック機能というものが大事ですので、積極的に前に進めていただきたいというふうに考えております。
 それでは次に、第七十八条の鳥獣保護員について、幾つかの質問をさせていただきたいと思います。
 この鳥獣保護員については、審議の中でもいろいろと議論が出ているところでありますし、都道府県の鳥獣保護事業計画に基づく事業の実施の事務を補助する職員ということでありますけれども、実際に市民が保護業務に参加できる唯一の制度ということでもありますし、密猟や違法捕獲の監視という点では非常に重要なところにいるんだろうと思いますが、残念ながら、今三千三百八十七人、これは平成十一年でありますけれども、九三%がハンター依存ということであります。
 私も、三年前の議論のときに、多様化ということに努力していきたいという御答弁をいただきました。これは、一つは高齢化というものに対してどういう対応をしようとしておられるのかということは、この委員会でもお答えがあったのかもしれませんけれども、再度お聞かせをいただきたい。
 それから、参考人質疑で、野上ふさ子さんが三重県の公募制の話をされました。なるほど、やりようによっては非常に生きた鳥獣保護員の制度というものになるんだなというふうに私は感心をして聞いていたわけでありますけれども、三重県の公募制は、二〇〇〇年から、鳥獣保護員と自然環境保全指導員を合体させて公募制にされた。五十七人中、今までハンター四十七人だったのが十二名になって、それまでは市町村や狩猟者団体からの推薦だったのが、非常に競争率もある中で活発なそうした運動が進められてきた。中には、傷ついた鳥獣保護の施設を設けて、個人で子供たちへの環境教育を始めた人もいる、そういうことであります。
 ここで、そうした選定方法を変える、つまり新たな基準を設けるということで、この鳥獣保護員というのは非常に大きく意味のあるものになるのではないか。三年前の丸山局長の多様化ということには努力してまいりたいという具体的なそうした努力についてを含めて、御答弁いただきたいと思います。
小林政府参考人 鳥獣保護員の活動内容でございますけれども、鳥獣保護区等の管理ですとか、狩猟者の指導、鳥獣保護の普及啓発等、多岐にわたっておりまして、地域の実情に通じているという必要がありますし、また、時間的な余裕のある者を選任するというような観点から、結果的にハンターというか狩猟免許を持っている方に多くなっているのは事実でございます。
 狩猟期間中ですと週に二回、狩猟期間以外の期間ですと月に二回というようなことの巡視等が求められるというようなこともありまして、なかなか一般の方ではやややりにくい面がございます。
 そういう意味で、ハンターの高齢化に伴いまして、鳥獣保護員の高齢化というようなこともございます。この問題、現時点で何か特段の、直ちに業務の支障が生じているという状況ではございませんけれども、これから先のことを考えると、いろいろな問題点が懸念をされるわけでございます。
 ただいま御指摘のように、三重県の公募制というのも一つの方法かなというふうに思っていまして、この鳥獣保護員の選定の仕方につきまして、現在、環境省で検討会を設けておりまして、その中でもあわせて議論をしていくというふうにしていこうということにしてございます。
 そういう意味で、今後、狩猟制度に通じ、また地域の事情に通じている人をどうやって確保していくか、大きな課題というふうに認識しているところでございます。
佐藤(謙)委員 三重県も一つの方法だと言われましたけれども、明らかにこれは僕は成功していると思うんですね。多様な方々に鳥獣保護員になっていただこうということであるならば、そういう地方自治体の先進的な取り組みをもっと積極的にバックアップするような、また、そうした方法があるんだということを全国に伝えていくということは、環境省の非常に大きな仕事なんだろうと思うんです。
 今度の鳥獣保護員の基準の中にも、市町村に居住するという基準があるわけですけれども、広域的な駆除体制の整備というようなことが今語られていて、複数の市町村の広域的な取り組みというものがこれからの大きな柱になろうとしているときに、例えば、鳥獣保護事業に熱意を持っていて、地元住民の信望があり、身体強健で時間的にも経済的にも制約が少ない方、私は、当該市町村に居住していてということも含めて、もう少し基準を変えていくべきだろうと考えております。広範な、多様な方々に参画をしていただけるような、そうした知恵を私は三重県から学んでいただきたいなというふうに考えております。
 次に人材の育成、鳥獣保護員で、非常勤職員、こう書いてあるわけですけれども、なかなかこれは難しい問題かと思います。あえてここで非常勤職員という書き方をしなくて、これは地域によって、都道府県によっては、専従でやろう、専従で生かそう、そうした前向きな動きをバックアップするような書き方にすべきではなかったのか。
 なるほど、先ほどの局長の御指摘の中で、日常活動が大変だということを伺いました。それと同時に、余りに安過ぎる手当ということで、年平均が十七万円というのは私どもも驚くわけでありますし、沖縄に至っては年四万円ということで、研修の交通費も自己負担という県が多い。
 そういうふうなことを考えると、国からの財政的な補助というものをもっとしっかりと位置づけなければいけないんじゃないか。まず、この非常勤職員という文言を書かなくていいんではないかということと、さらには、いろいろな議論をしますと、各県に数名の常勤の専門職を、あるいは三年前の議論でありますけれども、野生動物専門官というべきものの位置づけが必要ではないかというような、そうした専門的な、これはそれぞれに役割は違うわけでありますけれども、常勤の方々に積極的にこの制度の中に入ってもらおうという動きがあるというふうに理解するんですけれども、その辺についての御見解をお聞かせください。
小林政府参考人 野生鳥獣の生息する山野、非常に広範囲な部分がございます。そういう地域を対象に鳥獣保護ですとか狩猟の取り締まりを進めるに当たりましては、大変多大な労力を必要とするというふうに思います。
 一方で、都道府県におきましては、限られた予算それから人員で常勤職員がいるわけですけれども、それで対応している。そういう状況の中で、季節的にとか時間的に非常勤の人を鳥獣保護員としてお願いして現地業務を補助する、そういう制度として定めたものでございます。
 一方で、御指摘のように、常勤の専門的な知識を有する職員の必要性というのは十分私どもも認識してございますけれども、鳥獣保護員というのは、そういう常勤の職員を補佐する、補助するものとしての制度として位置づけられているところでございます。
佐藤(謙)委員 鳥獣保護員について、これからますます、市民、国民との接点ということで、この法律を生かす非常に大きな主役になろうかと思いますので、前向きな運用をお願いしたいと思います。
 次に、わなの免許について何点か御質問をさせていただきたいと思います。
 これも三年前私が議論したときに、ホームセンターで売っているわな、これは樋高議員も先般御質問があったと思います、ダブることになるかもしれませんけれども、どのぐらい広がっているか、残念ながら私どももまだ調査をいたしているわけではございません、把握していない、当時の鹿野審議官の答弁でありました。免許制度があって販売の実態が全くわからないというのは無責任きわまりないことでありますが、三年前には、まだ調査をしていない、把握をしていないということでありますが、それが三年たって、どういう把握をされているか、どういう実態を確認しておられるのかというのが一点。
 それから、特定の野生鳥獣が大変減少するというような事態になりましたら禁止あるいは制限というような答弁があったわけでありますけれども、私は有害駆除ということに関しまして、ハンターがだんだん高齢化をする、それに対してわなに依存していかざるを得ないという、そうした状態がそのまま是認をされて、どんどんわなに対する比重が強くなることを懸念しております。
 特定の野生鳥獣が大変減少するというような事態になったら禁止や制限もあり得るということでありますけれども、理由としては、禁止や制限に持っていく条件としては、この条件が唯一のものなのか、その辺についてお答えをいただきたい。
小林政府参考人 まず、販売のことでございますけれども、とらばさみがホームセンター等で売られていること、また、くくりわななどが狩猟専門誌などに掲載されて売られているということは承知してございます。
 この中で、私どもも、購入実態を調べるのは、非常にたくさんのセンターとかそういうところがございまして、なかなか踏み込めないところでございますけれども、とらばさみの販売に関しましては、購入の際に免許証を提示させるとかなどのいろいろな指導をしております。
 それからもう一つ、三年前のことでございますけれども、とらばさみによります錯誤捕獲等の問題が発生していること、また、EUなどにおきましても、動物愛護の観点からとらばさみ等が禁止されていることは承知しています。認識してございます。
 今後、この使用実態の把握に努めまして、関係者からの意見を聞き、鳥獣の適切な保護が図れるように努めてまいりたいと思っております。
佐藤(謙)委員 三年前と全く同じお答えなんですね。
 ですから、免許制度があって、販売の実態が全くわからない、無責任だと。三年前に、調査をまだしていないけれども把握をする、そういう御指摘があったわけで、そういうことが、毎年三百万以上の鳥獣の命が失われ、そのうちの百万が有害駆除、そういう数字を考えると、私は、こうした手ぬるさに、環境省というものがいま一つ信頼を持たれない理由があるのかなというふうに考えるところです。
 それから、時間が余りなくなったので、後段、もう一つの質問をさせていただいた、特定の野生鳥獣が大変減少するというような事態になったら禁止、制限ということでありますけれども、動物に対する愛護の念というのが、時代時代にさらに強くなり、大きくなる。とらばさみにかかる動物のそうしたビジュアルなシーンを見れば、子供たちもあるいは大人も心を痛める。まさに、人間と野生生物が共生しようとするそうした気持ちというものが強くなればなるほどに、特定の野生鳥獣が大変減少するという事態になったらではなくて、私たちは、動物に対するそうした気持ち、虐待というものを拒絶する気持ちから、こうしたものを禁止する、あるいは制限するということがあっていいのではないかと思います。
 例えば、ツキノワグマの生息地、イノシシのくくりわなの混獲防止のために、地域地域で禁止区域というものをつくることから私は始めていくべきだろうというふうに思うわけでありますけれども、時間がないので、ここは要望にさせていただきますけれども、今度、私、来年あたり、野生生物じゃなくて畜産動物の福祉健康法というようなものをつくっていきたいなというふうに思っております。
 愛玩動物は、例えば去勢するに当たっても麻酔をかける。ところが、今度狂牛病で問題になった牛は全部、去勢は麻酔もかけないでやる。あるいは強制換羽の鶏、人間本位のそうしたものに対して、福祉というものから私たちは心優しい社会というものを実現していく。野生生物、この鳥獣保護法の改正というのは、そうしたライン上にあるべきものだというふうに考えております。
 次に、ここで、えづけの禁止ということと、農作物の残滓についてということをちょっと質問させていただきたいと思います。
 野生生物への安易なえづけが、人里への接近ですとかあるいは人なれを生じて農作物被害を引き起こす、あるいは人身事故につながっているということをよく聞くわけでありますけれども、絶滅のおそれがあるような種に対する緊急避難的給餌を例外として、野生生物へのえづけを原則禁止することを明文化するべきではないかという意見があります。私もこれには賛成でありますけれども、環境省の御見解をお聞かせください。
奥谷大臣政務官 野生鳥獣へのえづけ行為でございますけれども、それらが人里に接近いたしまして、農作物とかあるいは人身事故等の被害を助長させるおそれというか、もう現にそういった被害も出しておりますが、このために、環境省といたしましては、第九次の鳥獣保護事業計画の基準におきまして、えさやり行為の防止について必要な指導を行うとともに、その周知を図るよう定めているところでございます。
 今後とも、みだりにえさやりが行われないように努めてまいりたいのですが、えさやり行為の可否につきましては、例えばタンチョウヅルなんかにえづけが現にされておりましたりしまして、そのあたりの線引きが非常に困難である。このような意味から、法律上明文化することはふさわしくないと考えております。
佐藤(謙)委員 確かにタンチョウヅルの例なんかはそうでありましょうが、全国の野猿公園では、野生のニホンザルに対して一個人業者が勝手にえづけをする、そして観光施設を設けて利益を得ているというようなことがあります。線を引くといっても、どこかで知恵を働かせれば、まずこうした線が引けるというところを見出すことができるんじゃないかと思うんですね。
 あるいは、神戸の六甲山でのイノシシのえづけなんかも同様でありますけれども、カナダではクロクマで成功しているというふうに聞いておりますし、これは自発的な協定で、軽井沢あたりでは、ごみ捨ての箱にかぎをかけて、住民が手をつないでえづけに対する拒否文化というものをつくっているわけですので、どうかその辺は、線引きは難しいということではなくて、ひとつ前向きな御見解をお示しいただければというふうに思います。
 それからもう一つ、これは農水省に来ていただいておりますが、農作物被害の直接支払いについて、これは三年前に、被害を防ぐため新たな技術開発に取り組んでいる、済みません、これは直接支払いの前の話でありますけれども、農作物被害については、これもまたこの委員会で、防除ネットですとか防護さくですとか防鳥ネットですとか、そうした形で三年前は十六億円が、今、平成十三年度で二十五億円という数字をいただきました。
 そうした中で、駆除よりも防除という観点から、鳥獣の被害を防止していくような新たな技術開発等にも取り組んでいる、これは当時の大森審議官が答弁をされているわけでありますが、同じような答弁がこの委員会で繰り返されているように思いますが、新たな技術開発、どういう技術開発を得られたのか、具体的にお示しいただきたいと思います。
坂野政府参考人 最近の技術開発について申し上げたいと思います。
 現在の防止対策としては、侵入防止さく、そういったものの対策を進めているわけでございますけれども、より効果的な被害防止対策という視点からすれば、動物の生態だとか行動様式、そういうものを念頭に置いた技術開発が必要だろうということで、平成十三年度から、被害防止対策の新たなプロジェクトをスタートさせました。
 その内容は、野生鳥獣の生態とか行動様式、それから被害発生の原因の把握、それを徹底的に行いまして、その上での被害の効果的な防止、防除技術を開発しようということでございます。
 この技術は、特に生態というのは、猿だとかイノシシの行動というのがどうかというのは非常に重要でございますから、国の試験場、今は独立行政法人化していますけれども、農業なり林業なりの試験場の方に、例えば、従来の作物だとかそういうことじゃなくて、猿だとかイノシシ、カモシカの生態学者の専門家を選考採用しまして、彼らが今のこのプロジェクトのリーダーになりまして、それで今、原因を究明し、また新しい対策をやるということで鋭意やっております。
 それで、十三年からスタートしていますから、あとはその成果をいかにうまく出すかということでございますけれども、そこは鋭意頑張っておりまして、初年度、十三年度につきましては、その成果を実際の、研究機関ですからレポートがございますけれども、この技術は、現場が非常に困っていますので、現場でいかにその時々にそれを活用していただくかということで、ちょっとここにパンフレットがありますけれども、「野生動物との共存に向けて 野生動物の農林業被害にいかに対処するか」というパンフレットをつくっておりまして、従来の、さく等をつくる以前に必ず、ここのところは、例えば猿のところですと、「被害発生とサルの生態・行動パターンを探る」と。まず、どういう行動をしているか、それから、その原因で、先ほどえづけのこともありましたけれども、農地に農作物残渣を置いておくと、これはえづけと同じですよということ、そういったような野生動物の行動、さらに、それを今の技術ではどういう対策をしているかというものをパンフレットで関係の皆さんにいろいろ研修会等でお配りして、それでやっているところでございます。
 以上でございます。
佐藤(謙)委員 平成十三年度からそういう仕組みができたということでしたけれども、説明の内容が三年前とほとんど変わらないことだなという感じです。そうすることも大事でしょうけれども、そうした中に、どうか住民参加といいますか、農業者の知見ですとか、あるいは地域の方々に入っていただいて知恵を出し合う、そうした努力を進めていただきたいと思います。
 私、先ほど直接支払いの話をさせていただきましたけれども、御承知のように、初年度が三百三十億円ですか、国が出した直接支払い。十二万とも十三万とも言われる集落というものに着目をして、農業の直接支払いというものが中山間地で始められたわけでありますけれども、農村、農業の公益的機能は六兆九千億円、こう言われております。ただし、この中には生物多様性保全機能というものが入っていない。
 一方、森林の公益的機能というのは七十四兆九千億円、うち、野生生物保護に三兆七千八百億円という価値があるということをはじき出しているわけでありますけれども、農山漁村のそうした公益的機能の中で、生物多様性の保全あるいは野生生物の保護というものの持つ意味というのがいや増しに増していくだろうというふうに考えております。
 アメリカでは、御承知のように、WHIPですとかEQIPといった農業法に関係をする農業環境政策というものが進められていて、野生生物の生息地としての価値が農業生産活動が原因で著しく悪化したということに対しては支援金を払うというような、そうした直接支払いの努力が見られているわけでありますし、私自身も三年前は、林業のデカップリングというものをいち早く取り入れるべきだろう、そういう提案をさせていただきました。
 特に広葉樹林の整備というものが急務であるということでありますが、当時の山本林野庁長官は、日本の人工林約四割、その中に広葉樹林が二%だ、それを現在人工林の植栽は一〇%広葉樹林で進めている。しかし、この広葉樹林というのは残念ながら経済性というのが非常に難しいということで、ここに直接所得補償という制度を取り入れたらいいのではないかという私の提案でもありました。
 これは農水省と林野庁に、そうしたデカップリングあるいは直接支払いというものが、これからの野生生物を保護する上で非常に大きな役割を担っていくんだろう。ただ中山間地の今までの仕組みではなくて、野生生物というものに日を当てたそうした新しい取り組みというものを積極的に進めていけないだろうか。その辺について、農水省、林野庁の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
坂野政府参考人 野生鳥獣によります被害によります損失補償につきましてですけれども、先生御指摘のように、平成十一年の附帯決議ということがあるわけでございまして、今環境省を中心に関係省庁で議論をしているということでございます。
 それで、中山間の支払いという議論もございますけれども、この野生鳥獣によりますいろいろな被害対策ということを含めまして、現在環境省の方の野生鳥獣保護管理検討会という中において、そういった視点からもまたいろいろと議論されておりますので、その中で当省としても積極的に協力してまいりたいと考えております。
米田政府参考人 広葉樹の問題、自然の環境保全等々の観点での林野庁の方針でございますが、従来、木材の生産を主体とした政策を進める中で、複層林なり広葉樹林の造成など、森林の公益的機能の発揮にも配慮した政策を進めるということで、先年の森林・林業基本法で明確にしたところでございます。
 今後、森林・林業基本法に基づきまして、森林の有する多面的機能の持続的発揮を主体とした施策に転換し、その基本計画の中で、特に森林と人との共生林を中心に、野生動植物の生息の場の提供等に配慮して、しっかり広葉樹林の造成、針葉樹人工林への広葉樹の導入等を進めていきたいと思っております。
佐藤(謙)委員 林業行政あるいは農政についてはいろいろな法律があるわけですけれども、例えば土地改良法ですとか水産基本法ですとか、私ども、環境の保全という言葉を法律の中に入れてくれという主張が通らなかった。環境との調和とか配慮、そういう言葉で濁らせてしまった。生物多様性の問題もそうですし、野生生物というようなものが法律の中でなかなか息づいていきにくい今の法律の体系の中で、どうか野生生物の保護という視点からそうした制度を積極的に進めていただければというふうに考えております。
 次に、林野庁に、福井県ですとか滋賀県、京都府にかかる北近畿のツキノワグマが、植林した杉の皮をはぐという理由で、林業被害のために駆除を続けられている。しかし、この地域は既に地域個体群としては孤立をしていて、絶滅のおそれがあるということをここ近年さらに強く我々は主張しているところでありますけれども、林野庁として、こうしたクマによる杉の皮はぎ、これがどういう理由なのかということと、それから、どういう対策を講じているのかというような点についてお答えいただきたいと思います。
米田政府参考人 クマのいわゆるクマはぎ問題でございますが、我々、クマが幹と外皮の間のいわゆる甘皮と称する部分を食害しておるというふうに理解しておるわけでございます。この被害面積、約六百ヘクタール程度に及んでおりますが、特に、御指摘のとおり、福井県なり京都府等の北、そういう方面で多いわけでございます。
 このクマはぎ対策でございますが、林野庁としては、テープ、トタン、枝条、枝でございます、そういうものの巻きつけを杉、ヒノキにして、被害防止に努めておるところでございますとともに、あわせまして、クマなどの野生鳥獣の良好な生育環境を整備するということで、先ほども申しましたように、広葉樹の植栽など多様な森林整備を推進するということで考えております。
 今後とも、環境省など関係省庁との連携を図りながら、被害防止対策、生育環境の整備など、森林被害防止に係る各般の対策を総合的に推進してまいりたいと考えております。
佐藤(謙)委員 対症療法としてではなくて、クマ、個体群としてのそういう存立というところから、林野庁も積極的な対応をしていただければというふうに思っております。
 もう一つ林野庁にお聞きしたいと思うんですけれども、いわゆるコリドープランについて聞かせていただきたいと思うんです。
 国有林野事業として、保護林同士を連結する、そうして野生生物の移動経路というものを確保して、生息、生育地を拡大して、さらには個体群の交流を促進する、結果として個体群の保全や遺伝子の多様性を確保するというようなことで、全国十三カ所、約二十八万ヘクタールを指定している。その効果についてどのように検証がされているのか。また、特に西日本が全く薄いわけでありますけれども、どういう形で今後拡大していく構想があるのか。
 それと同時に、例えばヨーロッパとかアメリカあたりでは、森林だけではなくて、農村林地、田畑についても、例えば陸生、大型の動物ではありませんけれども、例えば畑の中に三十六万キロの生け垣を畑から畑へずっとつなぐというアメリカの試みが成功しているわけでありますし、お互いに、農業政策の中に環境目標を組み込んで、それを達成する農家に対しても直接支払いをするというような仕組みで、大規模のそういう圃場整備が進む中で、生け垣というものを連続させることによって農地のそうした移動可能な場所を確保していく、そうした試みも、林野庁だけではなくて、田地、農地に対しても進めることができるんだろう。
 牧草地を緩衝地、緑地帯にするというヨーロッパやアメリカの試みも含めて、大変私たちには勉強になるというふうに思っておりますが、そうした連続性というもの、野生動物の移動経路を確保する政策について、それぞれにお答えいただければと思います。
米田政府参考人 お答え申し上げます。
 国有林野事業といたしまして、先生御指摘のような緑の回廊というものを、全国十三カ所、二十八万ヘクタール設けてやっておるところでございます。
 この緑の回廊でございますが、平成十二年度以降設置してきたわけでございまして、既に設置した緑の回廊におきましては、巡視などの保護管理活動、あるいは回廊の経路にたまたま針葉樹が濃いというようなところで間伐を強化して、広葉樹を導入するための必要な整備、そういうものも行っているとともに、今後モニタリングを行うことが必要だと考えております。
 そのために、モニタリングの設計について今検討しておる段階でございまして、今後モニタリングを行うことによりまして、野生動植物の生息、生育実態の把握に努め、その結果を緑の回廊の取り扱いに反映させていきたいということで考えております。
 今後の設定状況でございますが、緑の回廊につきましては、国有林分布が東日本にどうしても多いという事情もありまして、現実の問題では西側に少ないということは事実でございます。ただ、今後とも、現地の状況などを十分踏まえながら、必要な箇所について設定を行っていくという基本的考えを持っておりまして、今検討中の箇所もあるわけでございます。
 さらに、緑の回廊がより効果的に機能するように、適切な管理、整備に努めてまいりたいということで、その一環といたしまして、国有林だけではなくて民有林も合わせた回廊、山に所有の色はついていないわけでございますので、そういうような緑の回廊も一部始まっておる次第でございます。
佐藤(謙)委員 時間が来ましたので、これで終わらせていただきますが、国民が必ず支持をするだろうこうした回廊というようなものを、林野とそれから農地に対してもひとつ積極的に進めていただきたいと思います。
 最後に、害虫防除の薬剤使用の生態系への影響について伺いたかったんですが、時間がなくなりましたので、野生鳥獣の生息地である森林や里山について、特に薬剤等の使用による影響について、どうか真剣に、そうした取り組み、前向きに御検討いただければということを要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
大石委員長 樋高剛君。
樋高委員 自由党の樋高剛でございます。きょうも質疑の時間をいただきまして、ありがとうございました。
 きょうは鳥獣保護法の採決までということでありますので、その前に確認をしておきたいこと、詰めておきたいこと、たくさんありますので、いろいろな視点からお尋ねをさせていただきたい、議論させていただきたいと思っております。
 まず、冒頭申し上げたいのが、大臣にちょっと御所見を伺いたいのでありますが、法律案をつくりましたときに、場合によっては附帯決議というのが付されるわけなんですけれども、この附帯決議の文言、今回も予定をされております、されておりますが、この最後の文章のところが、「検討を行うこと。」とか「見直しを行うこと。」「その徹底を図ること。」「早急に実施すること。」「適切な措置を講ずること。」と書かれている。
 非常に立派な文章ではあるんですけれども、ではその後どうなったのかということが、もちろん我々委員がこうやって国会での委員会での審議を通じてただすということも当然なんでありますけれども、またいろいろな法案の審議、どんどん法律の議論もしなくちゃいけないものですから、時間的にも制約があるという中で、やはり環境省さんの方の立場からみずから積極的にその検討状況なり報告をしていくべきであるというふうに私はまず考えるのであります。
 ここに「検討すること。」と書かれてあって、その後役所の中でどの程度検討されて、どのような措置がなされて、どういう状況にあるかということをやはり環境省は、これから二十一世紀、環境の世紀に向かいますので、きちんとPRをして、環境意識を高めていくんだということが必要ではないか。
 ですから、本委員会でもやはり適宜適切に報告をしつつ、なおかつ、それだけではなくて、例えば、もちろん今一生懸命ホームページ等々を通じてもいろいろなPRをしているのもわかります、チラシをつくっているのもわかりますけれども、それだけじゃなくてもっともっと、環境省のみならず、ほかの役所も全部引き連れて、環境問題に対して理解を得られるような、国民の意識が得られるような形にすべき、そのためには、やはりこの附帯決議にもあるようなことも、またそれぞれの法律の運用状況についてきちっとPRをしていかなくちゃいけないのではないかと思うのでありますが、いかが考えますでしょうか。
大木国務大臣 衆参両院の環境委員会においていろいろと附帯決議をいただいておりますが、これはもちろん、附帯決議の意味というものは、国民の代表である先生方が各党のお立場で、また個々の議員のお立場でいろいろと御意見を述べられて、それをまとめて附帯決議ということで出てくるというわけでございまして、正直申し上げまして、すぐにはなかなか法案の修正だとか新しい法案の成立ということにはつながらないけれども、ある程度これからの一つの方向を示していただいたということでありますから、当然役所としてもそれを尊重して努力をしなきゃいけないというふうに思います。
 ただ、役所全体としましても、それから政府全体といたしましても、いろいろな意味での制約もありますし、あるいは状況の変化というのもあるわけですから、正直申し上げまして、私も四年ほどちょっと間を置きまして、今度は環境省でございますが、また戻ってまいりまして、今までの附帯決議に対するその結果がどうだということになりますと、なかなか難しいな、十分に達成されていないなということは申し上げざるを得ないわけです。
 しかし、あくまで国民の皆様方の御期待というものが示されているということでありますから、今後ともできるだけ実現に努力したいと思いますし、また、今おっしゃいましたように、完全にはできなくても、またこれからこういう勉強は必要だとかいうようなことは、できるだけまたいろいろな形で、ホームページでも何でもいいんですけれども、そういったことでPRするようにということにつきましても、十分頭に入れてこれからも努力をしたいと思っております。
樋高委員 やはり二十一世紀は情報公開そして市民参加による意思決定ということの中で、こういった議論は欠かせないのではないか。常にずっと継続していく。今回の鳥獣保護法も、二年後の抜本改正を目指すという方向性の中で、また二年後、突然委員会でぽんとおろされて、そこで議論をしたって、やはりその途中でどういうプロセスがあったとかいうこともすごく重要な観点だと私は思いますので、しっかりとその検討状況、要するに、言いっ放し、法律をつくりっ放しではなくて、附帯決議に限らず、それぞれの法律の運用状況、特にこの環境分野に関しましては、しっかりと行っていただきたいと強く要望させていただきたいと思います。
 そして、この法律案の中でありますけれども、ちょっと細かい議論でありますが、第十条の関係につきましてお尋ねをいたしたいと思います。
 許可に係る措置命令等についてという部分でありますけれども、法案の第十条、第十五条、そして二十二条、二十四条、二十五条には、いわゆる鳥獣の解放その他の措置命令という新しい制度の導入が図られております。そこで、そのうち第十条第一項に絞ってお尋ねいたしますが、初めに、この立法の理由と条文の解釈を簡潔にお答えいただきたいと思います。
大木国務大臣 今回の改正法案第十条第一項、今おっしゃいましたように、違法捕獲された鳥獣を解放するなどの措置命令ということが、新しい概念というか新しい制度として導入されておりますが、その目的と申しますか、例えば許可を受けずに鳥獣の捕獲等をした場合において、もちろん罰則が第八十三条等であるわけでありますが、そのほかに、鳥獣の保護のために必要があると認めるときには、その鳥獣を自然に帰すことなどの命令を行うことができるということであります。
 これは、やはり鳥獣の保護ということからいえば、罰則は罰則ですけれども、別途鳥獣をどういう状態で置いておくかということになりますと、いろいろな条件を考えまして、それを措置命令ということで自然に帰すことを命令するということも、一つの鳥獣の保護上必要なことではないかということで、あくまでも鳥獣の保護それから生態系の保護と申しますか、そういった保護の観点から、そういったものも併用した方がいいのではないかということで採用しておるわけであります。
樋高委員 一般に鳥獣の密猟と言われております、いわゆる第八条の規定に違反して狩猟鳥獣以外の鳥獣の捕獲等または鳥類の卵の採取等をした者に対して、この措置命令を発することができるかということでありますが、具体例を踏まえてお伺いさせていただきたいのでありますけれども、まず、例えばメジロの鳴き合わせ会に参加する目的でメジロを密猟した者に対して、獲物のメジロの解放命令を発し得るのかどうか。また、いわゆる食用に供する目的でツグミを密猟した場合、生きている個体やおとりについて、その解放命令を発し得るんでしょうか。いかがでしょうか。
大木国務大臣 今のお話と先ほどの措置命令との関連で申し上げますと、例えば措置命令をどういうふうに出すかという場合に、例えば調査研究のために何か鳥を捕獲する。しかし、それはちゃんと手続を踏まなきゃいかぬわけですが、そういった許可なくして手続なしに捕らえた、そういった場合には、調査研究のためにやったということについての罰則はもちろん潜在的にすぐあるわけですけれども、同時に、今申し上げましたように、措置命令で放すということを決めております。
 それでは、今度、メジロの鳴き合わせとか、それから食用とおっしゃったと思いますけれども、食用に供する目的で密猟した、これに対しては、もちろんこれはまた一年以下の懲役または百万円以下の罰金ということでありますが、この場合には、とりあえずそういった違法な行為、刑法的な行為ということでありますから、場合によっては裁判ざたにさえなるわけでありますから、やはりその証拠となりますメジロなりツグミなりをまずは確保しておかなきゃいかぬということでございますから、それを解放するということではなく、没収するということでありまして、鳥を放つという方の措置命令の対象にはならないというふうに理解しております。
樋高委員 この鳥獣の解放その他の措置命令につきましては、いわゆる野鳥保護団体から、実際に法を運用する場面においての危惧が表明されております。
 すなわち、市民の側から、例えば野鳥をこっそり飼育している者がいると密猟事案の情報が寄せられた場合において、行政側が解放命令を発して放鳥させ、つまり鳥を放す、それで済ましてしまうといういわゆるなあなあの処理が行われているのではないかという危惧、また、そのようななあなあの処理を行う際の法的根拠を与えかねないという危惧が考え得るのでありますが、その点につきまして、明快に御説明願いたいと思います。
大木国務大臣 ただいま申し上げましたように、放鳥、要するに解放命令を発し得る場合と、解放命令の対象にならないというふうに二つに分けて今お話し申し上げたわけでございますが、いずれにいたしましても、その必要な措置はとる。つまりは、許可を受けずに鳥獣の捕獲をした場合には、一年以下の懲役または百万円以下の罰金ということでございまして、その点につきましては、きちっとこれは実施するということでございますから、決してなあなあにはならないというふうに思います。
 ただ、今申し上げましたように、場合によって、放鳥させるときとそれを認めないときの二つに分かれるということでございます。
樋高委員 続きまして、時間が限られておりますので、とらばさみ、くくりわなにつきましてお尋ねをいたします。
 前回も私はさんざん議論をいたしましたし、場合によっては、とらばさみを持ってくるよということでありましたけれども、余りここでデモンストレーションをやりますと、ちょっと後で怒られちゃうかもしれませんのでやりませんが、参考人質疑でも、重要なテーマ、今回を機会に、いわゆる違法な駆除のためにも使用されているとらばさみ、くくりわな、取り締まりもやはり困難である、隠れたような場所にもかけられるわけですから。しかも、市街地の中で本当に子供が誤って踏んでしまうこともあり得るし、実際に、猫や犬や、さまざまな被害が出ているわけでありますから、やはり禁止猟具、禁止猟法に指定すべきではないかというふうに私は考えるわけです。
 改めてお尋ねしますけれども、やはりきちっと禁止をして、そして、行政が一元管理、監督をきちんとすべきである。前回の議論は、政務官の答弁でしたけれども、市町村に一生懸命指示しているからという話でありましたけれども、それじゃだめなわけでありまして、環境省がやはりきちんとリーダーシップを発揮しなくちゃいけないと思うんであります。この点につきまして、いかがでしょうか。
大木国務大臣 とらばさみやくくりわなについての問題は、今回の改正に合わせてこれを使用禁止にするかどうかということになりますと、今のところイノシシだとかシカを捕獲するための非常に有効というか効果的な猟具だということで、それにちょっとかわるものもないというようなことで、今のところすぐには改正は考えておりません。
 ただ、おっしゃいましたように、いろいろとほかの鳥獣がひっかかったり、あるいは人間に対する危害が生じたりというようなこともあるわけでございますから、今後、これはやはり各都道府県なり地方にお願いして調べてくれということではなくて、その使用実態の把握につきましては、環境省がみずからいろいろな皆さん方からの意見も聞きまして、今後、法定猟具から除外するというような可能性も含めて、どうするかということを検討してまいりたいと考えております。
樋高委員 続きまして、宮腰政務官にきょうはお越しをいただいております。ありがとうございます。
 この野生鳥獣保護関係は、やはり農水省、林野庁そして水産庁の関係もきちっと議論しなくちゃいけないということできょうはお尋ねさせていただきたいんです。
 まず、農作物の収穫後とり残した集積が野生動物を農地へ引き寄せる要因となっている。農作物残滓、いわゆる残りかすですね、これをやはり速やかに片づける、そして野生鳥獣の引き寄せ要因を除去すべきというふうにも考えるのでありますが、どういう対策を今講じていらっしゃいますでしょうか。
宮腰大臣政務官 御指摘のとおり、人は知らず知らずのうちに野生鳥獣に対しましてえつけ行為を行っているのではないかというふうに指摘されております。
 間接的に鳥獣害を助長すると指摘されております農作物の残渣につきましては、鳥獣害の防止の観点から、農林水産省が主催いたします鳥獣害防止のための研修等を通じて、農作物の残渣を圃場等に放置しないように注意を呼びかけるとともに、従来から、圃場衛生を確保するために、圃場等に放置しないように指導しているところであります。この研修につきましては、大変人気が高く、参加者も多いわけでございまして、引き続きしっかりとやっていきたいというふうに思っております。
 また、資源循環型農業の推進を図る一環といたしまして、有機性資源を利用いたしました堆肥の製造・利用計画の策定や、そのための施設の整備等についての支援措置も講じておりまして、野菜残渣等の堆肥化を行おうとする場合についても活用可能であるということにいたしております。
 今後とも、農作物の残渣が放置をされないように、適切に指導してまいりたいと考えております。
樋高委員 続いてお尋ねいたしますけれども、農水省では、野生鳥獣による農作物被害に係る所轄は生産局植物防疫課であります。これは、野生鳥獣を畑のいわゆる雑草と同じように邪魔者として排除するという発想で設けられております。
 農水省は、やはり環境省と協力をして、野生鳥獣の種の保全や保護管理対策に取り組むべきではないか、もし行っているとしたらどのような対策を今現在講じていらっしゃるのか。そして、農水省さんもやはり野生鳥獣による農作物被害対策として独自にどのような取り組みをしているのか、また、それに向けましてどのような予算配分等々も考えているのか、御答弁いただきたいと思います。
宮腰大臣政務官 農林水産省におきましては、これまでも、環境保全型農業の推進でありますとか、あるいは多面的機能の発揮のための森林の整備、あるいは海洋生物資源の保全、持続的な利用等を通じまして、野生生物種の保全等が図られるよう種々の取り組みを進めてきたところでございます。
 本年三月に取りまとめられました新生物多様性国家戦略におきましても、農林水産業におきましては引き続きこれらの取り組みにより生物多様性の保全に努めていくこととしておりまして、今後とも、環境省等関係府省と協力してこれらの取り組みを進めてまいりたいと考えております。
 また、今ほど御指摘のありました邪魔者扱いではないかということでございますが、できる限り生物の多様性に配慮していろいろな対策を講じようというふうにしてきているわけでございまして、野生鳥獣による農産物への被害防止対策といたしまして、例えば、猿に発信機を装着いたしまして、電波を固定受信局で受信することによりまして猿の個体群の接近を予測し、有害な猿を追い返すなどの接近警戒システム、テレメトリー調査というシステムを導入するなど、先進的な技術を導入した被害防止技術の確立や普及に努めていること、あるいは、シカやイノシシ等のけもの類の圃場への侵入を物理的に遮断する侵入防止さく、電気さく等の被害防止施設の整備、それから、被害発生原因の究明と対策技術の開発等の試験研究では、平成十三年度より、シカ等の行動パターン等の生態や被害との因果関係を研究いたしまして、効果的な被害防止技術の開発を推進していること、さらには、住民全般を対象といたしました鳥獣の生態や被害防止に必要な知識等の普及啓発活動の推進等の諸対策を実施しているところでございます。
 なお、近年の鳥獣害対策の実績といたしましては、平成十年度に二十四億円、平成十一年度に二十一億円、平成十二年度に二十一億円となっておりまして、平成十三年度は二十五億円が見込まれているところでございまして、今後とも鳥獣害対策の推進に努めてまいりたいと考えております。
樋高委員 御丁重な御答弁、ありがとうございました。きちっと環境省と連携をとって、しっかりと対策を講じていただきたいと思います。
 奥谷環境政務官、お尋ねいたします。
 先ほど、えづけという話がありました。いわゆる野生動物への安易なえづけによって、やはりそこに食べ物があるわけですから、どうしても出ていってしまうわけです。人里への接近、いわゆる人なれを生じさせることによって農作物被害を起こさせたり、また、道路に突然飛び出してきて人身事故を起こしてしまったりしている。これは現実であります。
 また、全国の野猿公園では、野生ニホンザルに対して一個人業者が要するに勝手にえづけをしている、観光施設を設けるなどしている。しかも、えづけによって数がふえて、かつ、人なれが進んだ猿が周辺の農作物を食べ荒らすことになり、いわゆる地域住民の迷惑にもなっているということであります。例えば、大分市の高崎山、京都の嵐山、長野県の地獄谷、日光のいろは坂。また、神戸の六甲山ではイノシシへのえづけが同様の問題を引き起こしているということでありますけれども、いわゆる絶滅のおそれのある種に対する緊急避難的給餌、緊急的に食べ物を与えるのは例外として、やはり野生動物へは原則えづけを禁止するぐらい、明文化も含めて、そういう方向性できちんと取り組んでいくべきだというふうに私は思うのでありますが、いかがお考えになりますか。
奥谷大臣政務官 先ほど佐藤先生からも同趣旨の御質問がございまして、御指摘のとおり、野生鳥獣が人里に近づく一つの原因となっておりますし、また、いろいろな被害を生じさせております。それで、いわゆる第九次の鳥獣保護事業計画の基準におきまして、えさやり行為の防止について必要な指導を行い、また、その周知を図るように定めているところでありますけれども、もちろん今後ともそのように努めてまいります。
 法の明文化という話でございますが、これも先ほど申しましたが、釧路湿原等でタンチョウヅルにえづけをしているというようなこともありまして、このあたりの線引きというのは非常に困難であると考えております。ですから、今のところ法律上明文化することは非常に難しいと環境省では考えております。
樋高委員 政務官、私、前回も申し上げましたけれども、役人以上に役人らしい答弁はひとつなさらないように。何で今同じ質問をあえて佐藤先生に続いてしたかといいますと、やはり国会は国会議員同士の議論の中で、政務官には政治家としてのリーダーシップを発揮して、自分の御自身の言葉で勇気を持ってはっきり言っていただきたいから私はお尋ねしているわけでありまして、同じ答弁をするのであれば全く時間のむだでありますので。でも、政務官なりの努力をなさっているのもよくわかりますから、ひとつしっかりとお願いいたします。
 次に、重要な論点でありますけれども、いわゆる鳥獣保護員制度、先ほども議論がありましたけれども、大幅な増員と育成ということが一つの大きな課題であります。
 いわゆる鳥獣保護のために、現場の担当者としては、本法律案におきましては市町村における鳥獣保護員制度しかありませんけれども、保護員のあり方に疑問がある。これも参考人質疑でもさんざん議論になりましたけれども、鳥獣保護員の九九%は狩猟者であるということであります。そして、私もある地域の方々から証言をいただいたんですけれども、実際問題、狩猟をなさる方々が圧倒的に人数が多いので、自分たちの、その意見が正しいか正しくないかは別にして、圧倒的に狩猟者の方々の意見で、おまえは黙っていろと、なかなか言い出せない現実も私ちょっと伺ったのであります。
 そういった現状を考えるときに、いわゆる密猟や違法捕獲を監視することにやはり限界があるんではないかというふうに考えるのでありますが、どのようにお考えになりますか。
大木国務大臣 鳥獣保護員の充実というか、質、量、両方の問題があると思うのでございますけれども、従来から、いろいろと附帯決議などでも、きちんと増員しろとか充実しろというようなお話はたくさん伺っておるので、先ほど一番初めに、御質問の冒頭にも、そういった委員の皆さん方のいろいろな御意見に対してどういうふうに対処していくんだという話でございますが、鳥獣保護員について申し上げますと、確かに、充実というか、質量ともになかなか難しい問題があると思います。
 まず、質につきましては、余り予算とかそういうことは言いたくないんですけれども、予算も、一人当たりの払いも非常に少ない。もっと待遇も考えたらいいなどということもありますけれども、正直申し上げまして、鳥獣保護員につきましては、平成九年度以降ずっと見ておりましても、残念ながら微増であります。もっと大幅にふやせという附帯決議もありましたけれども、残念ながら、現実には、平成九年度の三千三百五十六人がまだ依然として数十名ふえただけということであります。
 せいぜい努力しておりますのは、むしろ環境省の中では、こういった鳥獣保護と申しますか、自然との関係ということで、自然環境局の人間というのはむしろ省内では増加しておりますので、それはひとつそういった努力の反映として御理解いただきたいと思いますが、なかなかこれは数がふえないということでございますから、一つは、どういうところからそれをリクルートするかという、今の、単なる狩猟者だけじゃだめじゃないかというのは、先ほど一例として三重県のお話もございましたから、そういうものも十分考えながらひとつ検討させていただきたいと思います。
 正直申し上げまして、今までは、どちらかといえば、そういった鳥獣の生息しておるその場所の、場についての、ですから山とか森とかそういったところの場をよく知っている人を、やはりそういう人が一番優先的にということで考えますと狩猟者であった、こういうことは否定できないわけでありますけれども、いつまでも同じだけでもいけないだろうということでありますから、これはひとつ、今申し上げましたように、重ねての答弁になりますけれども、質量ともにこれから十分に見直してまいりたいと思っております。
樋高委員 別に狩猟者の方が悪いと言っているわけではないんです。確かに、その地域を知っているかもしれない。しかしながら、例えばその三重県の事例でも、またほかの地域でも、今、いろいろなアンケート調査をなさった団体がありまして、それも拝見いたしましたけれども、やはりなあなあまあまあの本当になし崩し的なことも見過ごされてきている。そのパーセンテージを、一般の方を例えば公募によって、変えることによって、実際、その数字が、数字として実績が上がっているということもわかってきているわけですから、やはりそこら辺のところは改良が必要なんではないかというふうに思いますので、しっかりと行っていただきたい。
 それと、この鳥獣保護員については、非常勤であると法で定める理由、必要がどこにあるのかということが疑問なんです。やはり将来的には常勤のいわゆる専門職として人材育成に努める必要があるんではないかと思いますが、いかがお考えになりますか。
大木国務大臣 できるだけ充実させるということからすれば、常勤ということも考えられるんですが、先ほどから申し上げておりますとおりに、少なくとも今までは、そういった鳥獣保護員をリクルートする先のもとというのがやはり狩猟者でありまして、そういう方々が常勤でやっていただくというのはなかなか現実的に難しいということもあります。
 それからまた、常勤ということになりますと、一体どういう予算措置で、定員措置でというようなことも出てくるかとも思いますから、そういった意味で、かえって難しくなるんじゃないかなというおそれもありますけれども、いずれにいたしましても、私は、先生の御質問の趣旨は、やはりできるだけ充実させろというところに尽きると思いますので、それは常勤、非常勤を問わず、どういうふうにしたら一番質を含めて立派な保護員がたくさん集まっていただけるかということについて、検討は続けてまいりたいと思っております。
樋高委員 いわゆる市町村のみならず都道府県レベルでの野生生物の調査研究体制の充実、鳥獣の捕獲情報等の迅速な集計と公表、農林業及び生態系への被害を防止する技術の開発と普及のため、いわゆる野生生物の保護管理を行う専門的な人材確保が私はやはり必要であると思いますので、どうかしっかりと御検討願いたい、そういう方向になりますように御努力いただきたいと思います。
 時間でございます。最後のお尋ねをさせていただきたいと思いますけれども、いわゆる種の保存を含めた野生生物保護法制の抜本的な改正についてであります。
 鳥獣保護法ではいわゆる種を守れないために、年々、絶滅のおそれのある種のリストがふえ続けているということでありますけれども、種の保存の対象種が少ないのも問題でありますが、その手前の本法においても、やはり野生鳥獣の保護を一層明確にした法制度に転換する必要があるんではないか。また、二年後の抜本改正の際には、鳥獣の保護と狩猟の適正化に関する法律のみならず、絶滅のおそれのあります野生動植物、植物も含めた、種の保存に関する法律を含む野生生物保護に関する法律の抜本的な見直しが必要ではないかと思いますが、最後に御所見を伺いたいと思います。
大木国務大臣 これからの中長期的な目標としては、当然に、もう少し全般的な、包括的なと申しますか、法律ということを考えていいんじゃないかということは、やはり我々もこの地球社会の中で人間と自然界との関係ということのいろいろと見直しがありますし、また国民の理解というものも進んでおりますから、そういったことは考えられると思いますが、とりあえずは、現実に行政としてどういうことがやれるかということを考えますと、今回は、今御審議していただいているような法案でひとつ御審議を願いたい。
 ただ、将来に向かいましては、これからそういった措置を、やはり国民の理解も得ませんとなかなか法律も通りませんし、いろいろな措置もできないわけでございますから、この点につきましては私どもも努力いたしますが、またひとつこれから国民へ向かってのPRも続けてまいりたいと考えております。
樋高委員 やはりきちんと国民の理解を得て、市民参加、情報公開、これを常に忘れず、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。どうもありがとうございました。
大石委員長 藤木洋子さん。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。
 前回に引き続きまして、まず最初に、鳥獣の保護管理について伺いたいと思います。
 前回も指摘をいたしましたけれども、保護管理のための調査研究体制の整備、人材の確保、そして鳥獣保護事業のための鳥獣保護員の増員と育成は、今もお話がございましたけれども、ほとんど改善をされておりません。
 先ごろ策定されました第九次鳥獣保護事業計画の基準では、「検討会・連絡協議会の設置等により調査研究、捕獲管理、生息環境管理、被害防除対策等を実施し得る体制を整備するとともに、」保護管理を適切に進めるため、「鳥獣保護センター等への専門家の配置、地域の大学・研究機関及び鳥獣の研究者との連携に努める。」などとしているわけです。「鳥獣保護員の総数は、地域の実状に応じて市町村数に見合う数を目標とし、その配置については、鳥獣保護区の数、狩猟者登録を受けた者の数、取締りの実施状況、鳥獣保護思想の普及の現況等を勘案して行う」などとなっているわけですね。
 しかし、ハンターが野生生物保護管理の担い手になるということは、これは無理なんですよね、そこだけが担い手になるということは。やはり専門官がどうしても必要になってくると思います。
 そこで、大臣に伺うわけですけれども、今後とも、都道府県から市町村に捕獲許可権限が移譲されているということが進む中で、鳥獣の科学的な保護管理であるとか、あるいは生態系保全に支障を来さないようにしようと思いますと、少なくとも、大幅に調査研究体制を整備するという必要があると思いますし、専門家の確保、そして専門家の鳥獣保護員の増員が必要であろう、このように思うわけですけれども、いかがお考えでしょうか。
大木国務大臣 今のお話は、体制をきちっと整備しろということだと思うんですけれども、環境省自体として、あるいは都道府県として、また市町村として、それから、先ほどの保護員の話も出ておりますけれども、今いきなり保護の専門家をそろえよと言われても、これは先ほどから、まあ言いわけになりますけれども、実態がそうですから申し上げますけれども、やはり狩猟者というような人が現場のことを一番よく知っているということで、そういう人が中心になっておりますけれども、今後は、第九次鳥獣保護事業計画の基準によりまして、市町村を含めた自治体における鳥獣の各種調査研究体制の整備ということで、ですから、まずは、各都道府県の環境関係の人員というのは、一般論として言えば、私は少しずつふえていると思いますけれども、またできるだけ、鳥獣とか生態系とか、そういったことについての知識を持った人も強化していただきたいというようなことで努力をしていただきたいと思いますし、それからまた、どういうふうに市町村に都道府県の方からまた指導していただくかということについても、もちろん問題があるわけであります。
 そこで、環境省といたしましては、数をふやすとかいうこともすぐにはなかなかできないにしても、できるだけそういったことを意識してやっていただくということでございますから、これからの調査研究体制、実施体制の整備ということにつきましては、一つは、インターネットを活用した情報の一元的収集、提供の推進というようなことも、これはやはり今の情報化の時代でございますから、できるだけ、先ほどの三重県の話もございましたけれども、例えば三重県でこういうふうにやっているよというようなことは、よその県でも勉強していただけば、これは一つの勉強になると思いますし、また鳥獣保護行政担当職員への研修、ですからこれは都道府県と私どもとの協力体制というものもひとつ強化してまいりたい。ですから、そういった方々に対する研修によりまして、専門性の向上というようなことも考えてまいりたいと思います。
 ということで、いきなり数の方は、これはいろいろと制約がありますけれども、それについても努力はいたしますが、まずは質の向上の方もあわせて推進をしたいというふうに考えております。
藤木委員 既におくれている分野ですから、よっぽどそれを取り戻すという意気込みで取りかかってもらわなければなりません。
 また、第九次鳥獣保護事業計画の基準では、被害等のおそれがある場合に実施する予察駆除、これは「常時駆除を行い生息数を低下させる必要があるほど強い害性が認められる場合のみ許可する」「予察表の作成に当たっては、」「学識経験者等科学的見地から適切な助言及び指導を行うことのできる者の意見を聴取しつつ、調査及び検討を行う」となっております。
 ところが、被害が起こることが予想されるからといって、被害がなくてもどんどん捕獲するという実態があるわけですね。
 有害駆除の中の予察駆除で、ニホンザル二頭を生け捕りにして、群れ探査用の電波発信機を許可なく装着しようとした町ぐるみの事件がございました。宮城県の七ケ宿町で起こった事件でございます。町当局は、学術目的の調査をする予定だったそうですけれども、電波発信機装置はニホンザルを大量に予察駆除できるようにするということが目的だったわけです。このニホンザルの大量捕獲というのは、環境省の予察駆除マニュアルに反する行為になっております。
 ですから、電波発信機が狩猟や駆除に使用された場合、過剰捕獲や違法捕獲を引き起こすおそれがあることから、電波発信機の使用は野生鳥獣の保護管理目的の学術研究のみに限定するものとするということを明確に規定すべきではないかと思うのですが、環境省、いかがでしょうか。
小林政府参考人 電波発信機の利用につきましては、学術研究目的として鳥獣の行動などを把握する場合に非常に有効な手段というふうに認識しておりまして、学術研究目的以外の電波発信機の利用としましては、ほかに、例えば猿の接近を知らせたり、これをいち早く知って、追い払いを効果的に行うなどの被害防除を目的とした使用法があると思っています。
 この発信機の使用実態について、詳しいことはまだよくわかっておりませんので、情報収集に努めていきたいというふうに思っております。
藤木委員 それは正しく認識をしていただきたいと思いますね。
 次に、前回は野生のニホンザルが医学実験に譲渡するために有害駆除されているという実態を問題にいたしまして、販売禁止鳥獣の対象にするように求めましたけれども、同じような意味で販売禁止鳥獣の対象に検討されるべき鳥獣として、私はクマのユウタンがあるというふうに思うんですね。
 この問題で参議院で審議しましたときに、我が党の岩佐議員の質問に対して、小林局長は、販売禁止の必要性を判断することにしていきたい、このように答弁をしておられます。
 環境省の資料によりますと、クマ類は、九五年から九九年までの五年間で、有害駆除で五千五百七十九頭、狩猟で三千三百八十七頭の合計八千九百六十六頭の捕獲をしております。そして、野生生物保全論研究会のユウタンの供給源の調査によりますと、これは、五十の製薬業者のうち七つの業者が国内野生のクマを供給源としており、また、百二十八の漢方薬販売店のうち二十三の販売店が国内野生クマを供給源としている、このように答えておられるわけですね。
 そこで、クマノイについて販売禁止の必要性を判断するために、流通の実態を的確に把握していく、このようにも述べておられるわけですけれども、的確に把握するための方法はどのような方法なのか。いつまでに把握するのか、そのタイムスケジュールを具体的にお示しいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
小林政府参考人 クマの捕獲者ですとか製薬業者から聞き取り等によりまして、国内でのクマの、クマノイといいますけれども、クマノイの流通実態というのを把握してまいりたいと思っています。
 この実態を把握するには、個別個別のハンターというかそういう人たちとか、製薬業者もなかなかはっきりしたことを言わないというような事情もあります。
 いずれにしましても、早急に着手する予定にしてございまして、流通実態をある程度明らかにしていく必要がある、こういうふうに思っています。その中で規制の必要性というのも検討してまいりたいと思います。少し調査そのものが困難な面がありますので時間はかかるかと思いますが、早急に着手したいと思っております。
    〔委員長退席、奥田委員長代理着席〕
藤木委員 ちょっとおぼつかない御答弁でございますね。
 さきに挙げました野生生物保全論研究会のユウタンの供給源の調査では、五十の製薬業者のうち二十九の業者が海外野生クマを供給源としている、また、百二十八の漢方薬販売店のうち三十三の販売店が海外野生クマを供給源としている、このように答えておられるわけです。
 そこで、先ほどの参議院の委員会審議で、やはり同僚議員が、輸入されるクマノイに種の保存法の譲渡規制を適用すべきではないかという質問をしたのに対しまして、小林局長は、クマノイの違法輸入の状況というのは、違法なものですからなかなかわかっていない、対応のためには水際での取り締まりが大事、そのほかに国内の流通規制というものも検討が必要だと思っていますと答弁しておられます。
 そこで、違法なものは市場から排除するためには、違法なものですからなかなかわかっていないということで済まされるものではありません。違法輸入の実態の把握や、有効な管理の方法をいつまでに実施するのか、こちらもタイムスケジュールを具体的に示していただきたいと思うわけですね。
 そこで、大臣に伺いますけれども、少なくとも二年後の抜本的な法改正までには実効性のある規制措置を実施すべきではないのでしょうか。いかがでしょうか。
大木国務大臣 先ほどからの局長の答弁にもございましたけれども、やはりクマノイの違法な輸入の実態を把握しようということでやっているんですが、これは、違法だからとかどうとかとか、現実にどういう手段でやるかというんですが、なかなか難しい。それは、一生懸命努力しますと言うことはできますけれども、言っただけでできないんじゃいけませんので、正直申し上げますとなかなか難しい。その実態を少しでも正確に把握するための手段として、やはり国内での流通実態の把握ということの方から攻めていくよりしようがないんじゃないかというふうに私ども考えております。
 ということで、製薬業界からいろいろと話を聞くとか、そういうこともやっておりますけれども、これはなかなか時間がかかりますので、今、二年後にはどうとかというようなお話もございましたけれども、もちろん、二年後にそろそろ法案の再検討もせよというようなお話もございますけれども、法案の再検討はともかくとして、この問題につきましても、やはり相当かかります。正直申し上げますが、相当かかりますから、一応、二年というお話はお話として十分に頭にとめておきますけれども、とりあえず、平成十四年度から希少野生動植物の保存対策費というような予算措置もひとつとりまして、現実にこの調査ということは鋭意進めてまいりたいと思いますので、二年でできるかどうかとなりますとなかなか難しいんですけれども、少なくとも二年たてば、その時点での中間報告あるいはある程度のまとまった報告ができることを私は期待しておりますけれども、今のところは、現状はそういうことでございます。
藤木委員 難しい難しいと言っているのでは、やり得というようなことを許すことになりかねませんから、そんなことがゆめゆめ起こらないように努力をしていただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。
 次に、外来種対策についてですけれども、鳥獣対策ではマングースの駆除が問題となっていますけれども、きょう私は、湖や沿岸での外来種対策について伺いたいと思います。
 先日、琵琶湖博物館の中井主任研究員にお話を伺ってきたのですけれども、琵琶湖では、北アメリカ原産のオオクチバスとブルーギルが、沿岸域の沈水植物帯で今や最も個体数の多い遊泳魚となっておりますけれども、逆に、豊富に生息していたメダカ、タナゴ、モロコなどの在来種の小型魚類が忽然と姿を消すという状況だったといいます。
 ブルーギルは一九六八年に、オオクチバスは七四年に初めて琵琶湖で見つかり、八〇年代に入って急増いたしました。そこで、九二年九月に「外来魚移植禁止について」という水産庁通達が出され、二〇〇〇年の三月までに、ブラックバス、ブルーギルの放流禁止の条項が北海道と沖縄を除く全都府県の漁業調整規則に盛り込まれるようになりましたけれども、二〇〇〇年には二十八都県に生息水域を拡大しております。
 また、水産庁と全国内水面漁業協同組合連合会は、九九年一月、各マスコミや釣り関連団体にあてて、「外来魚の密放流に関するアンケートについて」、こういう文書を送付しておられまして、大半の都道府県の漁業調整規則で移植禁止の規定があるにもかかわらず、オオクチバス、コクチバス、ブルーギルなど、漁業や生態系に大きな影響を与える外来魚がふえ続けているという現状を強調しております。
 そこで、こうした釣り団体への啓蒙だとか教育などという息の長い駆除対策だけで、外来魚による生態系への影響を防止できるとはとても私は思えないわけです。ですから、水産基本法や漁業法の内容を、水域での生態系や生物多様性の保全を視野に入れたものに整備するという必要があろうと思っているんですね。在来種の保護と移植禁止、こういった新たなルールづくりが必要ではないかというふうに考えますが、水産庁、いかがでしょうか。
弓削政府参考人 お答えいたします。
 水産基本法において、国は、水産動植物の生育環境の保全及び改善を図るため、必要な施策を講ずることとされており、また、本年三月に策定された新生物多様性国家戦略においては、ブラックバス等の外来魚の生息域、量の抑制を推進することとされております。
 これらを踏まえ、ブラックバス等外来魚については、その生息数を減らしていくことを基本に、生息区域の拡大を防止するための移植の制限、生息数を減らしていくための駆除に対する支援や、ブラックバス、ブルーギル等の効率的な繁殖抑制技術の開発等の対策を実施しているところであります。
 今後、これらの施策をさらに的確かつ効果的に推進していくためには、行政等の取り組みとともに、国民的な理解のもと、遊漁者など、幅広い関係者の協力を得ることが不可欠であると考えており、本年五月、外来魚問題に関する懇談会を設置し、関係者による具体的な取り組みについて合意形成を図るべく、検討を進めているところであります。
藤木委員 九九年の二月に環境省が発表いたしました改訂版レッドリストには、在来淡水魚の約三分の一の種が掲載されております。我が国の淡水魚がこれほどまで危機的な状況に直面するに至った原因の第一は、水辺環境の構造や水質がここ数十年にわたって大規模に改変、破壊されてきたことは明らかです。さらに、研究報告でも指摘されているように、ブラックバスやブルーギルなどの外来魚のえじきになるということが危機的な状況に追い込んでいると考えます。
 ところが、ワシントン条約の附属書に記載されている国際的に保護が求められている希少種以外、生態的影響が懸念され放流禁止の対象になっている魚までもが、観賞魚として何の規制もなく持ち込まれているのが現状であるわけです。こうした多種多様な生物がほとんど規制がなく生きたまま輸入されていることが、外来種問題の根本的な原因です。
 ですから、輸入しても野生化する心配のない安全な種を指定して、それ以外の種の持ち込みを原則禁止するような考え方に立って、生きた個体の輸入に関する包括的な法制度を整備することが、外来種問題の解決にとっては必要ではなかろうかと思うのですが、環境省、いかがですか。
小林政府参考人 生物多様性条約の締約国会議で採択されました外来種に関する指針原則でも、侵入の予防を最優先すべきことが指摘されております。持ち込みの規制というのが重要な検討課題だというふうに私どもも考えてございます。
 ただ、すべての野生生物の輸出入、持ち込み規制というふうになりますと、社会的にも非常に大きな影響がございますので、影響の少ないものまでもやるということはなかなか難しいものがありまして、その辺について今勉強しているところでございます。
 生物多様性条約の外来種に関する原則指針ですとか総合規制改革会議でも御答申をいただいておりますように、そういうことを踏まえまして、環境省で、新たな規制制度の必要性を含めまして、外来種対策のあり方について現在検討を進めておりますので、その中で議論をしてまいりたいと思っております。
    〔奥田委員長代理退席、委員長着席〕
藤木委員 さきの第九回の世界湖沼会議でも、ブラックバスの捕食量に関する実験的研究や琵琶湖及びその周辺の水域におけるブルーギルの生態などが研究報告されております。
 この報告では、十六・五センチメートル程度のブラックバスが一年間にメダカを捕食する量は約一千三百尾と試算されておりますし、ブルーギルの胃の内容物や繁殖状況等の調査では、小型の甲殻類などが多く、五月から六月初めが繁殖期になっておりまして、産卵床は石積み護岸付近に最大で六十床が見られたとしております。
 ところで、国土交通省は、昨年八月、河川管理者に、侵入予防や調査研究、啓蒙活動などの方針を示した報告書をまとめておられます。既に侵入している外来種は、現状を把握し、駆除する品種や場所、方法などの計画を策定、住民や河川利用者と協力して行うとしております。さらに、今後、駆除対象となり得る外来種八種を選び、特徴や弱点、対策の成功例などを盛り込んだ外来種対策の手引を作成すると聞いております。その手引には、ブルーギル、ブラックバスなどが対象となっていますけれども、ブルーギルの対策では、産卵前後の親魚を捕獲するか、産卵場所を破壊すると効果的だというふうになっているわけですね。
 そこで、さきの世界湖沼会議の報告でも明らかになったように、琵琶湖では大規模に改変された石積み護岸付近が最大の産卵床になっているわけですから、この石積み護岸の破壊、改修といいますか、こういったことがブルーギル対策としては効果的ではないのかというふうに考えるわけですが、国土交通省はどのようにお考えですか。
竹村政府参考人 私ども河川管理者も、外来種の異常な急増については大変心配しております。
 今委員御指摘の琵琶湖におきましては、大津の漁協が小型定置網等で定期的に調査しておりますが、ブルーギルが特に急増しておりまして、平成五年には九百五十キログラムだったのが、平成十二年では一万二千五百四十九キログラムと、この一、二年で急増してございます。
 今委員御指摘の世界湖沼会議における研究発表、滋賀県立大学の中尾さんらによる研究でございますが、この研究は、琵琶湖で行われたというより、琵琶湖から外れた陸地の中にある沼、いわゆる曽根沼を対象にした研究でございます。確かに産卵床を研究されておりまして、産卵床は石積み護岸付近に集中して見られたとなっておりますが、私ども、琵琶湖を管理してございます滋賀県等と確認したところでございますが、このブルーギルの産卵床は、沿岸の砂や小砂利の湖底の部分で、すり鉢状のところで産卵床をつくっておりまして、琵琶湖そのものにおきます石積み護岸において産卵床になっているということは、現時点では確認されておりません。
 今後とも、私ども、琵琶湖の多様性のある生態系を実現するために、どのようなところで産卵されているのか、そのためには、もし何らかの対応をするならどのような手法があるのかということも含めて、これから県ともども研究に当たっていきたいと考えてございます。
藤木委員 確かにここは内湖になっておりますけれども、石積み護岸をつくっているということは、非常にブルーギルにとっては生息環境が適しているというふうに言われております。
 新生物多様性国家戦略の「水産動植物の保護のための移入種対策」でも、ブラックバス、ブルーギルといった外来種は、その食性、再生産力等の特性から在来の生態系並びに水産資源に大きな影響を与え、地域によっては、在来種の激変を招いたり内水面漁業に大きな被害を与えていますとして、今後は、地域の実態に応じた外来種の生息域、量の抑制を推進する必要がありますとしております。
 ですから、生物多様性条約の、外来種、予防、導入、影響緩和のための原則指針に基づいて、在来の生態系への悪影響が顕著な場合には、侵入生物を積極的に駆除することが必要であるという考え方を普及していく必要があるのではないかと思います。そして、必要性、緊急性が高い水域から優先的に駆除を実施していくことで、外来魚問題への一般の関心と理解が深まり、釣り人の安易な密放流の抑止につながるのではないでしょうか。大臣にこれはお答えをいただきたいと思います。
大木国務大臣 今もお話ございましたように、生物多様性条約の方で出てきております指針原則ということでも、とにかく外来種が入ってくるのを、定着する前にといいますか、定着しない前にきちっと初期段階でとめろ、こういうのがやはり一番効果的だということでございますから、そういうことを頭に置きながら、今後も私どもとしてもそういった問題の普及啓発を行ってまいりたいと思いますが、やはり国民によくわかっていただくためには目に見えるような行動もしなきゃいかぬというようなことでございまして、例えば、よく見えるところということで、皇居の外堀のお堀に、あそこにブルーギルが大分ほかっておくとふえそうだというような話もございますから、一つはその辺で、移入種対策事業ということで、一遍よくわかるように実施をしてまいりたいというふうに考えております。
 ただ、その問題ばかりじゃなくて、移入種問題全般の全国的な取り扱いにつきましては、今省内にも移入種検討会というものをつくりまして、これは二年前からつくっておりますけれども、これはまたひとつ、全国でどこから手をつけたらいいのかというようなことも含めて勉強を続けてまいりたいというふうに考えております。
藤木委員 ぜひ、宣伝効果だけではなくて、実質的な、実のある取り組みをしていただきたいと思いますね。
 次に、船舶のバラスト水排水での移入種問題について伺いたいと思います。
 外来種の出現で、その海域にもともとすんでいた生物環境が脅かされたり、生態系そのものへの影響を与えておりますし、米国では、五大湖で欧州産のカワホトトギスガイが九〇年代に入って異常繁殖、発電所や工場の取水口をふさいでしまうなどの被害が続出しております。駆除に実に約六百億円が必要とされる事態になっているわけです。
 社団法人日本海難防止協会の推計によりますと、日本は年間約三・一億トンのバラスト水を海外に排出する一方で、日本国内への排出は千七百万トンにすぎないということになっております。ですから、日本産のフナクイムシの仲間や海藻のホンダワラが欧米で確認されるなど、日本船が原因と見られるケースも少なくないとのことでございます。
 そこで、一日当たり三千種の海洋生物が輸送されていると推定され、放出された種のうち新しい海域に定着するものは通常三%未満とされておりますけれども、生物多様性条約決議の外来種に関する原則指針に基づいた日本の海域での確認調査、予防等の対策を実施すべきであろうと思うのですが、環境省、いかがでしょうか。
小林政府参考人 バラスト水による影響の防止対策につきましては、国際海事機関、IMOと申しますけれども、そういう機関など関係する国際機関で検討がなされているところでございます。これらの関係する機関での検討の推移を見ながら、連携を深めて対応してまいりたいと思っております。
 今先生御指摘のように、バラスト水に関しては、日本国内というよりも、むしろ日本から外国へ持っていく海水での影響というのが大きいということでございますけれども、国内でも、外来種に対する、どんな影響が出ているとか、どういう対応をしたらいいか、そういうことを含めまして、バラスト水による影響について移入種対策検討会の中で検討してまいりたいと思っております。
藤木委員 私、今申し上げたのは、それもそうなんですけれども、日本の海域での確認調査、それから予防の対策を実施する必要があるだろうということを申し上げているわけですが、それは研究課題の中に入っておりますね。
小林政府参考人 現在、例えば我が方で干潟の全国生物調査をやるような中で、そういう生物が出てくる可能性もあります。ただ、海洋というとかなり広いものですから、具体的な現地調査というような観点ではなくて、いろいろな情報を集めて、そういう中で検討会として、対策の必要性とか現地調査の必要性、そういうことを見きわめてまいりたい、こういうふうに考えております。
藤木委員 時間が参りましたので最後にいたしますが、バラスト水規制については、九七年のIMO総会でバラスト水の規制及び管理に関するガイドラインが採択されていまして、有害海洋生物及び病原体の伝播を最小化するために、バラスト水を洋上で交換するということを決めております。既にオーストラリアでは九二年から、アメリカの一部では九三年から、大洋中でバラスト水を交換した後に入港するということを義務づけるなどの国内法での規制がありますが、日本では現在特に規制はございません。
 そこで、国土交通省が日本独自の条約案として、処理技術が早期に確立した場合すべての外航船舶に無害化処理を義務づける、また技術開発がおくれた場合は全船舶にバラスト水の洋上交換を義務づけるなどを提示しております。バラスト水の大洋上での積みかえ、排水パイプ内に突起をつけて生物を破壊する、化学及び電気処理で生物を死滅する、排水段階でろ過するなどの方法が検討されているようですけれども、いずれもこの方法には課題があるというふうに聞いております。
 しかし、いずれにしても、バラスト水の輸出大国でありますから、IMOでの進捗待ちにならないで、生態系の保全を考えて早急にバラスト水の規制を図るべきだと思いますが、最後に国土交通省、お答えください。
岩村政府参考人 今委員が御指摘のように、日本は大変な量のバラスト水を海外へ持っていっております。これは、海運大国でかつ輸入大国、資源をたくさん輸入しているということの、相手国に行く際に空で行きますので、その際にバラスト水を積んでいかなければいかぬ、そういうことで量が多いわけでございます。
 今、これも委員御指摘のように、一九九七年の総会で、IMOの場でガイドラインができておりまして、我が国も、このガイドラインに基づきまして、洋上でのバラスト水の交換など自主的な取り組みをしているわけでございます。
 さらに、これを規制するということでございまして、これまた委員御指摘のように、本年三月に我が国から、バラスト水の沖合での交換の義務づけ、加えて物理的な方法によるプランクトンの殺滅等を内容とする条約案を既に提案しておりまして、来年、二〇〇三年の外交会議での採択を目指して、今条約案の審議が行われているわけでございます。
 こういう国際的な問題でございますので、一国だけの規制ということでは効果が上がらないわけでございまして、国際的な知見を踏まえて世界的統一ルールとして規制をすることが肝要であろうかというふうに考えておりまして、一日も早いこの条約案の採択を期すべく、今作業をしているところでございます。
藤木委員 終わります。
大石委員長 金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 前回、お見えをいただいて質問ができませんでしたので、林野庁の方に最初に御質問させていただきたいと思います。
 今、鳥獣保護ということで論議をしておりますけれども、森林の整備ということで薬剤散布などが、例えば私は西日本におりまして、松くい虫の駆除ということで空中散布が大分長く続いたわけでありますけれども、大抵、聞けば、動物等にそういう与えるようなものはやっていない、そういう薬剤は使用していないということをお答えになると思うんです。しかし、一定の害虫駆除ということで、生物を駆除するという目的を持って薬剤が使われているわけですけれども、そういったもののいわば動物に与える影響とかそういったことについては林野庁ではどれぐらい検討されているか、お聞かせいただきたいと思います。
米田政府参考人 お答え申し上げます。
 森林整備に当たりましては、森林被害の的確な防除、作業の省力化の観点から農薬を使用しております。これらの農薬は、農薬取締法に基づきまして適正な使用方法が定められておりまして、かつ、その上で登録されておりますことから、登録時に定められた使用方法を遵守するということが肝要と考えておりまして、その周知徹底について都道府県に指導しているところでございます。
 特に森林への空中散布でございますが、これにつきましては、農林水産大臣が防除実施基準というものを定めまして、貴重な野生動植物の生息地などへの散布を除外するということで、野生鳥獣の生息にも十分留意することとしておる次第でございます。
 これらを通じまして農薬の適正な使用を確保するということにしておりますから、この結果、これら農薬の使用が現在のところ野生鳥獣の生育に大きな影響を及ぼすものではないというふうに考えてございます。
金子(哲)委員 そういうふうに御答弁になると、どうしてもお聞きをしたいんですけれども、では、どれぐらいの調査をされたんでしょうか、どういう調査を。
米田政府参考人 我が方、四十七都道府県に対して聞き取りを実施、問い合わせいたしました。その結果、これまでに都道府県からは、薬剤によって野生鳥獣の生息に大きな影響を及ぼした事例はないというふうに聞いておるわけでございます。ただし、聞き取りでございますので、引き続き農薬の適正な使用の確保というものに努めてまいりたいと考えております。
金子(哲)委員 森林の整備ということも非常に重要な課題でありますので、当然また薬剤散布ということも必要とは思いますけれども、同時に、そのことはそこに生息する動物の問題でもありますので、一応、これまでの検知によっていろいろ使用できないものもあると思いますけれども、今後も引き続いて、しっかりとした調査を行っていただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 続いて林野庁にお伺いしたいと思いますけれども、前回も今回もですけれども、鳥獣保護の観点からも森林の果たす役割ということも非常に重要だということが何度も言われておりますけれども、その点について、きょうの質問にもございましたけれども、例えば今度、地球温暖化の対策ということでもまたこの森林というものが考えられている。
 地球温暖化の場合には、ある程度手を加えなければそれはまたカウントにできないという問題も出てきているわけです。しかし一方で、この動物保護の観点からいうと、そんなに手を入れることがどうかという問題も実際にあるわけでして、例えば地球温暖化のとき、この前の合同の会議では、林道の整備などということが言われておりますけれども、その林道というのは、これまで問題になったような大型の林道とかそういうことがまた浮上してくるというようなことはあり得ないでしょうね。
米田政府参考人 林道などの路網の整備というのがどういうものかというふうに我々考えてみますと、手入れの必要な森林への到達、そこに達するための林道、あるいは作業道、複層林施業などのきめ細かな森林施業等に不可欠な路網、そういうものは、基盤的施設として、国土保全、水資源の涵養など多面的機能の持続的発揮に必要な森林整備において極めて重要であると思っております。
 そういう意味で、林道というもの、一つは、そういう到達のための林道あるいは骨格としての役割を果たす林道と、森林施業に直接利用される細かい作業道、そういうもの、これの連携のとれた路網の整備を推進していくということが重要であって、大きなものをぼんぼんつくる、それで事足れりとは思っておりません。
 また、林道等の開設に当たりまして、動植物の生息など、自然環境の保全に十分配慮することが重要と考えております。
 具体的には五点ございますが、まず、全体計画調査を実施して、事前に動植物の生息状況、地形などを把握の上、開設の必要性、妥当性を十分に検証したい。二番目に、工事に当たりましては、土地の形状の変更、そういうものを最小限にとどめたい。土砂の移動を極力抑制するための線形を選択していきたい。三点目に、のり面でございますが、早期緑化を図りたい。山腹の崩壊や残存森林の損傷の防止などを図る工法等を積極的に採用していきたい。四番目に、小動物がはい出せるようなスロープのついた側溝、そういうものも設置していきたい。五番目に、鳥類などのえさ木となる植生をのり面などに導入していきたい。
 こういう五点の観点で、自然環境の保全に十分配慮して林道をつくっていきたい。我々、エコリンドーと称しておりますが、そういう林道の整備を一層推進していく考えでございます。
金子(哲)委員 十分注意をしながらということですけれども、その際、今の中には皆さん方の考え方がありましたけれども、いわば自然保護団体でありますとか、そういう民間団体のさまざまな意見というものも当然そこの計画策定に当たっては十分考慮されると思いますけれども、その辺はいいんでしょうか。
米田政府参考人 路網の整備、林道の整備は重要であるという上で、具体的に進めるときに当たっては、関係者の意見等々を聞いていきたいと思っております。
金子(哲)委員 重ねてお伺いしますけれども、関係者というのは、今私が言った自然保護団体とか自然環境団体とか、そういうことを指していると理解していいわけですね。
米田政府参考人 当然、そういう人たちの意見も参考にさせていただいて、総合的に判断していくということになります。
金子(哲)委員 その点について、環境省の決意と見解をお伺いしたいと思います。
小林政府参考人 従来、林道につきましては、大規模林道とかそういう形の中で自然の中を切り開いていくようなことが多かったと思います。この林道開設につきましては、環境省も森林法の一部を共同所管するようなことに省庁再編でなりましたので、林野庁と共同しまして、連携をしまして、林道が自然破壊につながらないような、そういった視点で、森林・林業基本計画を初め森林計画の策定に当たりましては協力して共同してやってまいりたいと思っております。
金子(哲)委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それでは次に、この委員会でも大分論議になってまいりました海生哺乳類の問題についてお伺いをしたいと思います。
 きょう、水産庁からお見えですのでお伺いしたいと思いますけれども、水産庁として、この環境委員会の中で海生哺乳類について論議が行われたということは十分御承知だと思いますけれども、それに対してまず最初に見解をお伺いしたいと思います。
弓削政府参考人 水産庁として、海生哺乳類の保護管理についてこの委員会で議論があったということは十分承知しておりますし、従来から海生哺乳類の保護管理については必要な対策をとってきたし、今後ともそういったことをやっていくつもりでございます。
金子(哲)委員 それでは、余りこの委員会の論議を聞いておられないんじゃないかと思います。
 水産庁のこれまでの保護計画とか、水産資源法とか漁業法によって行われる保護は不十分だということで我々は委員会論議をしたわけで、従来これだけやっておりましたからその延長でやりますということでは、この委員会の論議の海生哺乳類の保護ということについて全然理解されていないのではないかと思いますけれども、その辺はどうですか。
弓削政府参考人 従来から水産庁は、先ほどお答えしましたように、海生哺乳類の保護管理については、所管しております水産資源保護法、漁業法、臘虎膃肭獣猟獲取締法に基づいて行っているということでございます。
 このうち水産資源保護法においては、海生哺乳類のうち、ホッキョククジラ、シロナガスクジラ、ジュゴン及びスナメリについては採捕の禁止を定めておりますし、これらの海生哺乳類については、漂着した個体のデータ等を集めております。
 また漁業法等に基づく省令において、イルカを含む鯨類については、必要な資源調査を行い、その採捕に必要なデータを集めて、資源の適正な保存管理への取り組みをしておるところでございますし、臘虎膃肭獣猟獲取締法に基づいて、ラッコ及びオットセイの捕獲についてはこれを規制して、その保存に努めてきたところでございます。
 今後とも、こういった保護管理について、関係の省庁と連携して適切な運用を図っていきたいというふうに考えているところでございます。
金子(哲)委員 この海生哺乳類の保護については、従来、鳥獣保護法の枠の外にあって適用除外になっていたわけですけれども、それが今度の委員会の論議を通じて、ジュゴンなどを含めて幾つかの種についてはこの法律の中の保護対象にするということに決めたわけですね。
 その点についてはお聞きだと思いますけれども、それで、重要なことはやはり、水産庁がこれまで従来とられてきた漁獲規制だとか、そういった保護だけでは不十分だ。私も質問させていただきましたけれども、環境も含めた全体の、例えば今スナメリのお話が出ましたけれども、もうこの論議は余りしたくないんですけれども、スナメリが瀬戸内海でなぜ、例えば広島県沖などで減ったかといえば、結局、海域が荒れたためだということを私は指摘させていただきました。
 そうしてみますと、全体として従来の水産庁がとられていた保護政策だけでは不十分であって、もっと環境省などとの連携、環境保護を含めた保護政策ということにスタンスを移していかないとだめだと思うのですけれども、その点について改めて、環境省などとの今回のこの委員会論議、除外規定、八十条の適用の問題を含めた論議の中で、水産庁としての今後の決意についてもう一度お伺いしたいと思います。
弓削政府参考人 委員御指摘のとおり、まず、漁業というのは、もともと自然の天然に存在する魚及びその他の生物を利用し、自然のすぐれた再生機能を利用することによって成立している産業でございますから、そういった意味で、環境依存型の産業であると考えております。
 そういったことで、委員御指摘のとおり、野生水産動植物の存在する生態系の維持というのが非常に重要になっていくということで、農林水産省でも平成五年に、野生水産動植物の保護に関する基本方針を作成したところでございます。
 そういった観点から、今後とも、そういった海生哺乳類を含めまして、その保護管理について関係省庁、特に環境省と連携し、我々としてその業務を適切に分担しながら、連携した対応をやっていきたいというふうに考えております。
金子(哲)委員 ぜひ、この環境委員会でも非常に論議をしたわけでありますので、しかも先ほど何度も申し上げておりますように、適用除外規定の問題も論議をしまして、今水産庁からもお話がありましたように、そもそも漁業という視点に立って水産庁の場合にはさまざまな法律、漁獲を一定に確保する、また漁業資源を確保していくという視点でその法律というものはあったと思うわけですけれども、今、全体としては希少動物化している中での個体の管理ということになって進んできている点について、今答弁ありましたように、環境省とも十分に連携をとっていただいてこれからの施策を進めていただきたいと思います。
 その中で、私は、もしお答えできれば環境省、水産庁、両方からお答えいただきたいと思いますけれども、やはり現状について、もっと十分に実態というものを把握していただきたい。例えばスナメリについても、海洋性のもの、回遊をしていくということで、個体数の管理とかそういったことはなかなか難しいと思いますけれども、やはり現状の実態をきっちりと押さえるということがその保護に当たって非常に重要だと思います。
 その辺は、やはり海のことになりますので、環境省がどんどんやるといったって、人数もなかなかいらっしゃらない。水産庁からの力もかりなければいけないと思いますけれども、この際、そういう論議も受けて、全体の個体数の調査なども含めて、両方で連携をとり合って調査などをやっていただきたいと思いますが、その辺、二つの省庁からお答えをいただければと思います。
弓削政府参考人 海洋、海に関することの研究は、私ども各種の研究機関を持っておりますので、そういったデータを活用し、環境省と連携をとりつつ研究を進めていきたいと思っております。
小林政府参考人 海の中の海生哺乳類の調査というのは、大変膨大な期間と予算、労力を費やすものでございます。我々としても、今後とも努力をしていきたいと思います。
 ジュゴンにつきましては、先般より御説明を申し上げていますけれども、十三年度の末から三カ年計画で調査を開始してございます。水産庁ともこの問題は連携して調査をしております。
 また、スナメリにつきましては、平成十一年度、十二年度、二カ年で航空機による目視調査などをいたしまして推定個体数などを算出したというようなことで、今後は、瀬戸内海を初め各地域個体群ごとの変動の把握ということに努めてまいりたいとも思っております。
 アザラシ類については、今後のことですけれども、例えば上陸地点での生息数ですとか、漁業被害を通じて生息動向を把握するとかということについても新たに調査をしたいということで、これは今年度から始められればというふうに思っています。
 トドにつきましては、まだ実態が我々のレベルではよくわからない点があります。まず最初、環境省としては専門家からの生息状況の収集に努めて、いろいろな意味で、水産庁からもデータをいただきながら保護対策の検討をしてまいりたいと考えてございます。
金子(哲)委員 ありがとうございました。ぜひ、環境省、水産庁、連携をとっていただいてこの問題に対処していただきますように、重ねてお願いをしておきたいと思います。
 続いて、鳥獣保護員の問題について、既に質問が出ておりますけれども、私の方からも、ちょっと違う観点で二、三御質問をさせていただきたいと思います。
 一つは、鳥獣保護員の配置目標というのは、地域の実情に応じて、大体、市町村数に見合う数を配置ということで、三千幾らかの人数が出ておりますけれども、実は最近、合併の問題が盛んに取りざたされているわけですね。この基準でいきますと、減らすということは今までの論議からいってあり得ないと思いますけれども、そういうこと全体を考えてみますと、それから都市でありますとか、ほとんどそういう鳥獣にかかわりのないぐらい開発が進んでしまったような都市もなくもない現状が今出てきているわけですね。そうしてまいりますと、今の配置目標だけでいいのかということは、合併がどのように進むかという問題もありますし、今後の検討課題になる。
 そうしますと、きょうもお話が出ておりますようなことを、この際、配置の基準とかそういったことも含めて見直していくということが、画一的と言うと言い過ぎかもわかりませんけれども、見てみますと各都道府県によっても随分ばらつきがあるようですから、それぞれ実情を把握しながら配置されていると思いますけれども、ちょうどいい時期に来ているので、そういう市町村の数も変動するんではないかという時期に、この配置の問題について考える必要があるんじゃないか。
 また同時に、その際に、先ほど言いました地域的な事情というのをもっと考慮した配置というものについて、どういう人たちにお願いするかという問題も含めてですけれども、今検討するちょうどいい時期ではないかというふうに思うんですけれども、その点についてどのようにお考えでしょうか。
大木国務大臣 おっしゃるとおり、大変いい時期に来ておると思います。
 もともと、別に市町村の数だけでということではなくて、やはり各都道府県におきましても、ニーズといいますか、実際の状況に応じて考えていただきたいということは言っておるわけでございますが、今回改めて、そういうことでありますから、そういった我々の考え方をもう一遍御連絡をしたいと思っております。
 いずれにいたしましても、保護員の方にやっていただく仕事の内容というものも少しずつ変わってくるんじゃないかということもありますから、そういったことも含め、総じて全体としては、ニーズがあるところへ重点的に配置していただくということを都道府県においても考えていただく、また私どもとしてもそういった方向に向かって御連絡をとってまいりたいというふうに考えております。
金子(哲)委員 ぜひそのことをお願いしたいと思います。
 それで、私、この間からの議論を聞きながら、鳥獣保護員のことでちょっと疑問に思うことが出てきたんですけれども、今度の八十条の問題をいろいろ論議している中で、海生哺乳類の問題もこれからやっていくということになってまいりまして、保護員の関係からいいますと、これは一体どこの枠の中に入るんだろうかというような問題が実はちょっと考えられるわけですね。しかも、海域が、いわば市町村、これは山におけるさまざまな動物の場合もそうですけれども、広域に行くという場合に、こういったことについては、先ほど答弁いただきました今後の検討の課題、対象になっていくんでしょうか。
大木国務大臣 当然に海洋の方の専門家ということも考えなければならないと思っております。ということですから、海洋につきましては、今とりあえずは、全国ということではなくて、例えばアザラシ類とかそういうものであれば北海道とかそういったところが、特定の道あるいは県というものが幾つか考えられますので、そういうところにつきましては、これからそういった海生の動物も対象になるわけでございますから、当然そのことを考えてまたひとつ措置をとっていただきたいというふうに進めてまいりたいと思っております。
金子(哲)委員 今大臣から御答弁いただきましたように、新しくこの委員会でもこの問題を随分と論議しましたものですから、こういうことが、言われましたように、全部に、全国的に一斉にということ、特に海のない県も逆に言えばあるわけでして、課題を抱えている、もう既に具体的な問題になっている地域、そこらからでも配置をしていくということをぜひ早急にお願いしたいというふうに思います。
 これも少し意見が出ておりますけれども、くくりわなやとらばさみのことなんです。
 もう既に意見が出ておりますけれども、私は、少なくとも使用の問題、いろいろあるかもわからないんですけれども、この間の参考人質疑の中でも出ておりますように、例えば、とらばさみですと、スーパーなどでも売られていて、だれでもが簡単に購入できるというような状況にあるということが言われておりまして、こういうことだけでも規制というか、購入は例えば狩猟免許を持っている人でないとできないとかというふうなことはできるのではないか、早いうちに販売を規制していくというふうなことはできるのではないかというふうに思うんです。全面的に禁止することがもし不可能であれば、できることから、少なくとも購入する側から少し歯どめをかけていくとかというふうな具体的なことで検討を始めていただきたいと思うんですけれども、その点どうでしょう。
小林政府参考人 現在の法定猟具であるとらばさみにつきましては、今のところ、例えば内径が十二センチ以上の大型のものとか、それから、ぎざぎざがあるような、鋸歯があるような危険なものは使用禁止はしています。
 また、とらばさみ等のわなにつきましては、先生御指摘のように、購入の際には、狩猟免許を見せろとか、それから捕獲許可証を見せなさいとか、そういうことを提示を求めて売りなさい、そういうようなことの指導もしているところでございます。
 ただ、全面的に禁止とか、そういう販売規制というようなことになりますと、現在、とらばさみは、夜行性の小動物を捕獲するとか、銃が使えないような場所での動物の捕獲手段として有効なものでございますので、一概にかすみ網のように使用禁止猟具という形で販売まで規制するというところに直ちにいかないような状況でございます。
 今後、環境省としては、わなの使用者とか販売店などに対して指導を徹底してまいりたい、こういうふうに考えますとともに、違法捕獲等についての取り締まりも強化して、危険の予防などに努めてまいりたいと考えております。
金子(哲)委員 これからの質問は、ちょっと事前に質問通告を出しておりませんので、お答えできる範囲でお答えをいただきたいと思います。
 猟犬による被害の問題なんですけれども、物すごく大きな被害がたくさん出ているということではありませんけれども、何件かの猟犬による被害ということが出ております。それで、今回のこの法の改正の検討委員会の中でも論議をされたかに聞きますけれども、しかし、今そこまで規制することはないのではないかというようなことになっていたと思うんですけれども、猟犬被害の実情とかいうことについて、環境省は何か把握をされているんでしょうか。わかる範囲で結構です。
小林政府参考人 御説明申し上げます。
 猟犬によって、いろいろ、かまれたり、そういうふうな事故というのは聞いています。今、数字はちょっと手持ちはないんですが、現在問題になっていますのは、犬だけを使って、犬にイノシシとかシカをかみ殺させて狩猟する方法というのがぼつぼつ出ていまして、それによって被害問題も時々は話題になっております。数字もわかっております。
 それで、犬猟と言っていますけれども、犬だけでやる分には、現在、狩猟免許が要らないということになっていまして、非常におかしな状況になっています。狩猟制度の根本にもかかわるような問題でございますので、犬猟の、犬にかみつかせて獲物をとるという行為、免許を持たずにそういうことをやることを禁止するようなことを現在検討していまして、近々、審議会にもお諮りして御意見を賜るというふうな予定にしてございます。
金子(哲)委員 ぜひその問題をちょっと検討していただきたいと思いますけれども、やはり従来と狩猟方法が変わってきたということですよね。本当は、今まで猟犬に追い出させておいて猟銃で撃つというパターンから、今、局長のお話があったように、それそのものでやるということですから、猟犬そのものがもう攻撃的になっているということで、襲うことを前提にするような狩猟になってきているものですから、例えば他の犬だとか鶏の被害だとか、もちろん人的な被害もゼロと言えない状況が今出てきております。
 それで、もう一つは、そのことと関連して、結局、今そういう狩猟が全然認められていないということもあって、保険適用もそういう事故が起きたときに余りできない、狩猟保険のようなもので。例えば、猟銃で過って事故の場合に、被害を受けたようなときには保険の適用対象になるけれども、そういったものもない。何か会社によるとそういうこともあるというようなことが言われておりますけれども、そのように、今、これからの問題、この鳥獣保護法の改正案の中でも、そこの点について今まで論議もないまま通過をしてきておりますけれども、新しい事象として問題が出てきているということで、既に裁判も起こそうという方もいらっしゃるというふうに聞いております。
 そういう現実的な課題として今局長がお話しになりましたし、保険適用の問題も含めて早急に検討していただいて、やはりそういうことによる被害者の救済ということについて適切な措置をしていただきたいと思いますが、最後にその点についてお伺いして、終わりにしたいと思います。
小林政府参考人 先生御指摘のとおり、猟犬による事故につきましては、平成九年、十年くらいだと一件くらいだったんですが、最近になりまして、四件、六件とふえております。
 非常に危険でございますし、こういう狩猟をする人は、多くは狩猟免許を一度取り消されたような人たちが多いものですから、狩猟秩序を維持するためにも、この問題をきちっと対応しなければならないと思います。
 そういう中で、保険制度というようなものも検討してまいりたいと思いますし、五月三十一日に公聴会を開催して、現在、パブリックコメント、意見を求めてございますので、この結果を中央環境審議会にお諮りした上で、こういう狩猟の方法というか捕獲の方法は禁止する方向で進めていきたいと思います。
金子(哲)委員 終わります。ありがとうございました。
大石委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
大石委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、これを許します。藤木洋子さん。
藤木委員 私は、日本共産党を代表して、鳥獣保護法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行います。
 九九年の改正で導入された特定鳥獣保護管理計画制度は、地方自治体での鳥獣保護の体制が十分に進まないままに、増加している野生鳥獣の個体数調整に偏った計画が先行しています。そして、市町村への権限の移譲が進む中で、野生鳥獣の違法な捕獲や飼養などが後を絶たない状況となっています。
 今回の改正案は、生物多様性の確保を入れるなど、部分的な改正はありますが、九九年の改正で盛り込まれた三年後の見直し条項を守らず、依然として狩猟中心の枠内にとどまるものです。また、新たに規定された狩猟鳥獣の定義や許可不要の捕獲の規定、適用除外規定など、重大な問題が多くあります。
 こうした問題を是正し、真に生物多様性の確保、野生鳥獣の保護を図る法体系に早急に改正するよう強く求めて、反対討論といたします。
大石委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
大石委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
大石委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
大石委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、熊谷市雄君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党の七会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。奥田建君。
奥田委員 私は、ただいま議決されました鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表しまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
 一 野生鳥獣の保護を一層明確にした法制度、鳥獣による農林業者の被害救済措置、公的機関が主導する捕獲体制の強化、野生鳥獣の保護管理のための国と地方の責務の一層の明確化等の検討を進めるために必要な、特定鳥獣保護管理計画の実施状況の把握及び評価を進めるとともに、野生生物全般の保護に係る将来的な法体系の確立に向けた検討を行うこと。
 二 とらばさみ及びくくりわなについては、錯誤捕獲のおそれや殺傷の危険性が高いことから、法定猟具から除外することについて検討すること。
 三 本法第八十条によって適用が除外されることが想定されている海棲哺乳類については、捕獲数、生息域の把握、個体数の推計など他法令による保護管理の効果に関する継続的な調査を関係省庁が連携して行い、十分な保護が図れないと認められるときは、速やかに本法適用対象種の見直しを行うこと。
 四 個体数調整、農林業被害防止等のため捕獲された鳥獣については、適切な処理が図られるよう留意し、動物実験・製薬用等の目的を偽った捕獲や譲渡が行われることのないよう、捕獲許可事務の適正な運用に努めるとともに、大学、都道府県、市町村及び狩猟者等にその徹底を図ること。
 五 移入種については、生物多様性に影響を及ぼすおそれが高いことから、本法の改正等抜本的な対策を講ずるとともに、移入種による生態系への悪影響を防止するための施策を早急に実施すること。
 六 野生鳥獣の生息地である森林や里山等の維持・保全を進めるとともに、薬剤等の使用による生態系への影響についての科学的知見を集積し、悪影響が認められる場合には直ちに適切な措置を講ずること。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。
大石委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
大石委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。大木環境大臣。
大木国務大臣 ただいま御決議のございました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、努力する所存でございます。
    ―――――――――――――
大石委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
大石委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
大石委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時四十七分散会


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