衆議院

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第3号 平成14年11月12日(火曜日)

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平成十四年十一月十二日(火曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 松本  龍君
   理事 稲葉 大和君 理事 田村 憲久君
   理事 西野あきら君 理事 柳本 卓治君
   理事 奥田  建君 理事 牧  義夫君
   理事 田端 正広君 理事 高橋 嘉信君
      小渕 優子君    川崎 二郎君
      木村 太郎君    阪上 善秀君
      鈴木 恒夫君    鳩山 邦夫君
      菱田 嘉明君    松浪 健太君
      三ッ林隆志君    水野 賢一君
      望月 義夫君    山本 公一君
      大石 正光君    小林  守君
      近藤 昭一君    西  博義君
      中井  洽君    藤木 洋子君
      金子 哲夫君
    …………………………………
   議員           谷津 義男君
   議員           山本 公一君
   議員           田端 正広君
   議員           奥田  建君
   環境大臣         鈴木 俊一君
   環境副大臣        弘友 和夫君
   環境大臣政務官      望月 義夫君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  鈴木藤一郎君
   政府参考人
   (環境省自然環境局長)  岩尾總一郎君
   環境委員会専門員     藤井 忠義君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 自然再生推進法案(谷津義男君外六名提出、第百五十四回国会衆法第四六号)


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     ――――◇―――――
松本委員長 これより会議を開きます。
 第百五十四回国会、谷津義男君外六名提出、自然再生推進法案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として国土交通省河川局長鈴木藤一郎君及び環境省自然環境局長岩尾總一郎君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。
    ―――――――――――――
松本委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西博義君。
西委員 おはようございます。公明党の西博義でございます。
 提出者の皆さん方には、大変な御苦労をいただきまして、今回、自然再生法、審議に入ることができました。御苦労に感謝を申し上げたいと思います。
 初めに、提出者の皆さんに御質問申し上げます。
 日本の環境法の整備は、一九六〇年後半の公害問題から始まっておりまして、近年ようやく、環境の政策の骨格である環境基本法、それから循環型社会形成推進基本法などの制定を見てまいりましたが、まだ環境という意味では十分ではない、私はこのように考えております。その意味で、この自然再生法案は、環境保全にとどまらず、失われた自然を取り戻そうとする積極的な環境施策を展開しようとするものであり、その意味で、これまでの環境法上、画期的な法案である、こう認識しております。
 初めに、この法案を提出するに至った背景、つまり、どのような思い、考えのもとにこの法案を作成しようとされたのかということをお伺いさせていただきます。
田端議員 西委員におかれましては、この法案の作成の段階からともどもに議論をし、また視察にも行き等々、いろいろ一緒にさせていただいて、大変御努力いただきました。
 今、改めてこの法案の提出の背景について説明しろということでございますが、この法案といいますか、元来、自然の循環というのが環境政策にとって一番の基本であろう、そして、自然との共生ということが大変大事であるという視点から、この法律の基本に、そういったものを理念に据えていこう、こういう思いをいたしております。
 例えば、第一条「目的」のところで、「生物の多様性の確保を通じて自然と共生する社会」という言葉を基本に置いておりますし、また、第二条の「定義」のところでは、「生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的として、」こういう表現を置いておりますが、そういう理念に基づいて失われた自然を取り戻す、そして、環境省を中心に、国土交通省、農水省、三省が連携して、そしてNPOが計画の段階から入っていただくような、そういうボトムアップ方式でやれないだろうかということを考えてきたわけであります。
 そういう意味では、総理が主宰している二十一世紀「環(わ)の国」会議等の精神も踏まえている、こういう思いでもありますし、また、新生物多様性国家戦略において自然再生の施策がその基本的な方向の大きな流れであるという指摘に対しても受け入れたもの、こういう思いもいたしております。
 いずれにいたしましても、自然との共生を基本としたそういう理念でこの法律を立ち上げたということでございます。
西委員 次に、環境省に対してでございますが、自然の保全に関しては、自然環境保全法に基づく原生自然環境保全地域、それから自然環境保全地域という考え方、さらに、自然公園法に基づく国立公園、国定公園などを初めとした現行の自然保全に対する法制度がありますが、今後さらに豊かな自然環境を保全するのに必ずしも十分ではなかったというふうに言われております。
 そういう意味で、環境省は、現行制度にどのような問題といいますか限界があるのか、また、今後どのような方向でそれを強化すべきであると考えているのか、お考えをお伺いしたいと思います。
岩尾政府参考人 お答えいたします。
 現行の自然環境保全法、自然公園法は、主として規制的な手法によってすぐれた自然環境の保全を図ろうとするものでございまして、自然環境保全に一定の役割を果たしてきたという認識をしております。しかしながら、生物多様性を確保するという観点、あるいは損なわれた自然環境を積極的に取り戻すという発想、またNPOや住民の参加という点では、必ずしも十分でなかった面もあるという認識をしております。
 今後は、保護地域の指定拡充や改正自然公園法等の適切な運用によりまして自然環境保全を一層強化するとともに、NPOや住民の参加による自然再生事業の展開、移入種対策の充実に努めるなど、より積極的な自然環境行政を進めていきたいと考えております。
西委員 今環境省の方から少し言及がありましたけれども、この法案では、過去に失われた生態系やその他の自然というふうに定義をされております。そういう意味で、自然再生事業の対象が、原生的自然ではなくて、里山などに代表される人為的に維持されている二次的自然が対象になるのかどうか、この法案の適用の範囲、そこのところを提案者にお聞きをしたいと思います。
田端議員 自然再生事業の対象の範囲はという御質問でございますが、過去に損なわれた自然環境を取り戻すということを目的にしている法律でありますから、原生的な自然はもちろんのこと、言われたところの二次的な自然、これも当然含まれるわけでありまして、再生と保全という二本柱の考え方からしますと、両方が含まれ、さまざまな自然体系が対象になっている、こういうように思います。
西委員 よくわかりました。
 次に、環境省に対してですが、この法案について、マスコミ等では、環境の名をかりた新たな公共事業をつくる可能性がある、こういう批判が一部ございます。
 最近、公共事業自体が悪いもののような極端な意見また議論がありますが、それは私も間違いである、こう思っております。問題は、その事業が本当に国民生活を豊かにし、そして、そのために投入された税がむだ遣いされない公共事業を目指すということが大事だというふうに思います。
 望ましい公共事業を推進するよう、特に環境省には、今回のこの自然再生法が成立された後に十分監視をしていただきたいというふうに思いますが、この事業に関して、そうしたチェックが行われるのかどうか、どういうふうに考えておられるのかということについて御答弁をお願いしたいと思います。
弘友副大臣 今御質問のように、今回の自然再生推進法では、環境省としては、自然再生基本方針の作成をする場合に、環境相がまず国交相それから農水相等と協議をしてその基本方針を作成する、こういう役割を担っているわけでございますので、そうしたことを十分肝に銘じた上で、主務大臣としての責任を果たしてまいりたい。
 そしてまた、公共事業一般につきましても、今御質問のように、そういうむだなというか、環境を破壊するような、そういう事業を行っているじゃないかということでございますけれども、環境省としては、先日大臣の所信もありましたけれども、言うべきことを言う、やるべきことをやるという決意でございますので、一般的な公共事業についても環境保全の観点から物を言ってまいりたい、このように考えております。
西委員 今回のこの法案の特徴の一つは、先ほども提出者からお話がありましたけれども、民間非営利団体、NPOの果たす役割というのを大変重視しているという意味では、今までにない画期的な法律だというふうに私は思っております。
 そこで、提出者の皆さんにお聞きしたいんですが、このNPOなどの活動にどのような役割を今回期待しておられるのか、また、NPOにとって、どのような権利といいますか、そういうものがこの法案に規定されているのかということをお聞きしたいと思います。
田端議員 今回のこの法律の第二条「定義」のところで、「過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的として、関係行政機関、関係地方公共団体、地域住民、特定非営利活動法人、自然環境に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が参加して、」こういう定義をしております。
 したがって、その事業が行われる地域の住民、NPOの人、そしてまた専門的知識を有する人という方々がこの協議会の中に入っていただいて、そして、保全、再生、維持管理、こういう方向を目指すわけでありますから、そういう意味では、まさにボトムアップ方式といいますか、地域地域から合意された計画案が提出され、そして実施に移されていく、こういう形になります。
 したがって、NPOが計画の段階から、市民が計画の段階から参加できるという意味においては、これは、今までの法律ではなかった画期的な仕組みになっている。そういう意味では、市民の意思が十分に反映される自然再生事業が行われるものと期待しています。
西委員 若干今の質問にも関連するんですけれども、この第四条ではNPOが実施者になれるというふうに規定をされております。
 実際に、行政主導ではなくて、この法律はいわば市民主導による、もちろん行政もその中に入るわけですが、市民の主導による自然再生事業もできるということになるわけですが、このことについて改めて提出者それから環境省の方にも確認をさせていただきたいと思います。
田端議員 今おっしゃられるように、実施者には国の行政機関も入ることができますし、また、NPO、市民の代表も入ることができる。そういう意味では、市民の意思と国のあるいは行政機関の機能、これが相マッチして事業が進められるものと思います。
 そういう中で、国の調整といいますか、そういった意味では環境省がリーダーシップを発揮できる仕組みになっていると思いますが、先ほど副大臣の方から御答弁あったように、七条の自然再生基本方針を策定するに際して、環境大臣は、あらかじめ農林水産大臣及び国土交通大臣と協議して自然再生基本方針の案を作成し、閣議の決定を求める、こうなっていますから、環境省がリーダーシップをとるという、国の中でも環境省の位置づけは一歩上になっているというふうに考えられます。
 したがって、環境省が、調整機関といいますか、そういう意味でのリーダーシップを発揮できるというふうに確信できると思います。
岩尾政府参考人 ただいまの提出者の答弁のとおりでございますが、市民主導による再生ということで、地域の多様な主体が参画をして自然再生事業が推進できるというふうに確信しております。
西委員 続いて、国土交通省に対して質問を申し上げたいと思います。
 茨城県では、霞ケ浦の水生生物であるアサザの保全、復元に大変熱心に取り組んでおられるNPO、アサザ基金という団体がございます。アサザプロジェクトという形で、市民による環境保全活動が熱心に進められている、こういうふうに聞いております。
 私どもの公明党も先日視察を行いました。私は残念ながら参加できなかったんですけれども、この計画は、もう既に私どもの考えている環境保全に対する考え方を一部取り入れたような先駆的な取り組みであるというふうに思っております。まず、国交省はこの活動をどのように評価しているのかということが一点でございます。
 また、現地では最近、円卓会議等をめぐって意見の食い違いが起こっているというふうに新聞等で一部報じられておりますけれども、国土交通省は、円滑に自然再生事業を進めるために、この法律が成立したら、自然再生協議会、今回のこの法律上の規定ですが、これに参加する等、どういうふうな対処をされるのかということをお伺いしておきたいと思います。
鈴木政府参考人 アサザプロジェクトの件と自然再生事業の今後の進め方についてのお尋ねでございますが、御説明申し上げます。
 霞ケ浦では、アサザの保全、復元等自然再生への取り組み、これが先生今ございましたように市民団体等を中心になされてきておりますが、この取り組みを関係機関が連携しまして、私どもとしても熱心に取り組んできたところでございまして、その成果について一定の評価が得られているものと考えております。
 今後とも、これまでと同様に、市民団体等と連携しながら、植生回復などの湖岸の再生、そういったものを十分市民団体の協力を得ながら進めていきたいということでございます。
 それからもう一点の、今後の進め方についてのお尋ねの件でございますが、自然再生法の成立、施行後は、法律の趣旨も踏まえまして、法に基づく自然再生協議会に参加する用意はもちろん私たちございます。市民団体や関係機関に私たちとしても広く参画を呼びかけるなどいたしまして、積極的に対応してまいりたいということでございます。
西委員 事業の対象が県など複数の地方自治体にまたがる場合が今後あると思います。実際は、国も縦割りだというふうに言われていますが、地方の自治体もある意味ではそういう活動等は県単位とかまた自治体単位の活動が多いわけでして、そういう意味では、県をまたがる地域、私どもも、大阪、和歌山、奈良とか、そういうところで一つの活動が行われているケースもあるんですが、そういうときには、国がそこの部分を少し調整してあげるというようなことも必要なことがあるのではないかというふうに私は思っております。
 そんな意味で、環境省は今後、協議会を立ち上げていって具体的な計画に参画していくわけですけれども、この協議会に環境省が参加して事業を進めるというようなことも、特定の県が主体になるというよりも、国が主体になるという形で行った方が円滑にいくケースもあるのではないかというふうに私自身は思っておるわけですけれども、提出者としてはどうお考えになるのかということをまずお伺いしたいと思います。また、環境省としてそのような調整など支援を行う用意があるのかどうか、提出者とそれから環境省のそれぞれにお聞きをしたいと思います。
田端議員 事業が複数の自治体にまたがっている場合どうするのか、調整は必要じゃないかという御質問でございます。
 自然再生事業にはさまざまなパターンといいますか形があると思いますので、ケース・バイ・ケースではないかな、基本的にはそう思いますが、事業の円滑化という意味で、環境省が必要な場合には協議会の中に入って支援をしていくということも、これは大事な視点だ、こう思います。
 そしてまた、三省のそれぞれの調整ということもありますので、そういった意味で役割は大変に大きいんだろう、こう思いますが、自然再生に関しての全体構想とそれから実施計画、どちらも合意しなければ事業が成り立たないと思いますので、そういう意味では、地域の多様な参加、そして環境省の行政におけるリーダーシップ、この二つの役割は重要か、こういうふうに思います。
弘友副大臣 今提出者の方から御答弁がございましたけれども、環境省といたしましても、この自然再生協議会に参加をするということは多くなると思うんです。そうしますと、各地に設置されている自然保護事務所というのは、実質的にその事業に参加するということでございまして、自然環境保全の観点から、今お話のございましたように、必要に応じて、関係自治体間の調整だとか、いろいろあると思います。そういう事業を円滑に進めるための対応を積極的に果たしてまいりたいというふうに考えております。
西委員 今、環境省としてもこの協議会に積極的に参加をすると。特に河川など、複数の県をまたがった環境保全とかいろいろ、一つの目的を考えますときに、自治体をまたがり、また先ほど追加でありましたけれども、各省庁に関連した内容ということもあると思いますので、ぜひとも環境省のリーダーシップを期待したいと思っております。副大臣、結構でございます。
 では、ちょっと時間がまだあるのですが、最後の質問でございます。
 具体的な自然再生事業の場所などについては、基本的には地方からのボトムアップであるということは先ほどの質問の中でも御答弁をいただきました。しかし、これからの多様な自然再生事業を考えてみるときに、すべてがボトムアップでうまくいくのかなと。もっと広い観点で国として全体的に眺めてみて、ぜひここは自然再生事業をやった方がいいんじゃないかという観点から、国が決めるといいますか、もちろん自治体の皆さん、NPOの皆さん等の協力を得ての話なんですが、そういう構造といいますか、国が地方などに自然再生事業を促していくという形の考え方もあってもいいんではないかと私自身は思っておりますが、そのことに対する提出者の御意見をちょうだいしたいと思います。
田端議員 国が直接、直轄事業といいますか、そういうこともあってもいいんではないか、あるいは場合によっては、いろいろな意味でアドバイスしていってもいいんではないか、こういう御質問かと思いますが、この法案の十七条のところに、自然再生推進会議というものが設置されることになっていまして、これは、環境省、農林水産省、国土交通省その他の関係行政機関の職員をもって構成する自然再生推進会議を設ける、こうなっています。つまり、ここでは環境省というのが一番頭に出ておりますが、そういう意味では、環境省に恐らく事務局が置かれることになると思いますが、そういうところで、この関係省庁において、会議のリーダーシップを発揮して、そして調整をしていく、あるいはまた全国的なところに目線を向けて、そして、アドバイスすべきことはしていく、こういうことになるんではないかな、こういう思いがいたします。
 そういう意味では、行政機関における三省の調整というものは大変大事だと思いますし、また、アドバイス等、そういうこともそこで行うことになるんではないか。この第十七条第二項のところで、専門家会議から意見を聞くということになっておりますから、そういう専門家会議の意見を受けて、また推進会議として全国にそれぞれのアドバイスをすることになる、こういうことになりますから、そういう意味では、国のアドバイスとかそういう形での関与は十分にあり得る、こういうふうに思います。
西委員 今回のこの自然再生法、市民が公のためにどういう貢献をしていくかということを一つの法案化した大変画期的な法律だというふうに私は大いに期待をしております。ぜひ一日も早く、熱心な議論の上に成立させていただきたいという思いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
松本委員長 近藤昭一君。
近藤(昭)委員 民主党の近藤昭一でございます。
 自然再生推進法について幾つか御質問をしたいと思いますが、まず、今回の法案の大きな理念についてお伺いをしたいと思います。
 二十一世紀は環境の時代、環境の世紀と言われている中で、こうした自然再生に関する施策を総合的に推進しようとするということは大変に重要なことだと思います。しかしながら、既にいろいろなところで、こういった時代の変化に合わせてといいましょうか、必要に追われてというようなところがあると思うんですが、自然再生と名づけられた公共事業が既に進められていると思いますし、また、そういう中でNPO、市民の皆さん、研究者、企業、行政など、さまざま協力をして既に活動している例があると思います。
 こういったある種現行の法体系の中で可能な事業になぜ新しい法律が必要なのか。もちろん私も必要だとは思っているんですが、どういうところを特に検討なさってこの法案の必要性、この法案をつくられ、そしてまた本年の十二月の一日施行と急いでおられるのかということについて、理由をお聞かせいただきたいと思います。
奥田議員 今現在、法整備の以前から、幾つかの事業が展開しているというのは委員御指摘のとおりでございます。そしてまた、この法を煮詰めていく中でも、そういった幾つかの成功事業といいますか、参考にすべきモデル事業があったことも確かでございます。
 こういった中で特徴的なものは、今までの行政中心、主体といったものから、地域あるいは専門家といった方々を含めて、水平的な組織展開のもとで事業内容あるいは業務の分担といったことをしていることが特徴的なことだと思っております。そういった学ぶべき組織体系といいますか、これからの事業のつくり方、進め方といったものを、緩やかな法ですけれども、緩やかな法の中で担保して、そしてまたこういったやり方を広めていくことができないかといったことがこの法制度の趣旨となるかと思います。
 それと、法施行の時期ですけれども、参議院の審議等もありますので、今国会終了までにこの法案がどういった形で議会の承認を受けるかということもかかってきますので、私は十二月一日ということに特別のこだわりはありませんけれども、この法にも示しているとおり、基本方針の作成といったものがございますので、その基本方針の作成にはできるだけ皆さんの御承認をいただいて早く着手したいというのがその気持ちでございますし、また、そういった基本方針をしっかりとまた皆様の御意見を聞きながら作成していかなければいけないというふうに思っております。
近藤(昭)委員 既にそういう事業が行われている、そういうものを学びながらといいましょうか取り入れながら、緩やかなというふうにおっしゃいましたが、そういう体系をつくって、よりバックアップしていこうということだとは思うんですが、ところで、今回の法案には直接的な財政措置というものが含まれておらぬわけですけれども、こういった自然再生事業の推進を財政的にバックアップする必要があるんだと思いますが、その点についてはいかがお考えでしょうか。
谷津議員 この財政的な措置ということでありますけれども、これは実際に自然を再生するという面から考えますと、資金が要るという面もありますし、もう一つは、非常に大事な問題として、これは私の経験から申し上げるわけでありますけれども、NPOとかNGO、地域住民が非常にいろいろな仕事、事業をなさっている場合に、実際問題として、かかる費用というものに対して、今の既存の法律の中ではこれが出し得ないというようなところもあるんです、正直に言いまして。
 それは、やはり器具を必要としたり、あるいは時によってはかなりの時間を割いてやるようなことがあった場合に、そういったものに対して食事代ぐらいのものを出さなきゃならぬようなこともあり得るということもかんがみますと、実際今まで、例えば建設省当時から今の国土交通省の河川局あたりも、いろいろ工面しながらそういう支援をしたということも、実は私自身もそういう経験をしているんですが、あるわけなんです。
 しかし、こういうふうな意味の、法的な根拠に基づいて出し得るようにするということが非常に大事ではなかろうかなというふうに考えておりますし、釧路湿原等の再生事業というのが今行われつつあるわけでありますが、こういう中にも財政的な措置というのは当然必要となってくるわけでありますが、こういう面については、三省でいろいろ受け入れをした中で、これをどういうふうに出していくかというのは、各省ごとに予算要求をするということも必要になってくるのではなかろうかなというふうにも思っております。
近藤(昭)委員 財政的に必要な措置を認めておられると。ただ、それぞれの三省協議をする中で、各省ごとの予算措置の中でやられるということでありますか。
谷津議員 これは当然新しい形のもので出てくるわけでありますから、その省庁の中で予算要求をする場合に、そういった項目の中で出されるものというふうに理解をしております。
近藤(昭)委員 ところで、今回、自然再生推進法案という名称でございますが、この法案の中の自然再生ということはどういう状態を指しておられるのか、また、どのような自然を取り戻すのかということを念頭にしておられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
山本(公)議員 本法案に言います自然再生とは、生物多様性の確保を通じて自然と共生する社会の実現を図るために、過去に損なわれた河川、湿原、干潟、藻場、里山、里地、森林その他の生態系の再生等を指すものでございます。
 また、自然再生事業で取り戻す自然環境の目標は、それぞれの地域に固有の生態系の再生を目指すものであることから、個々の地域別に自然再生協議会が自然再生全体構想を議論する中で定めていくものだと思っております。
 私自身は、本当にスケールの大きな自然再生事業から、蛍の、メダカの戻ってくる河川を取り戻そうという、地域の本当の、そこに住んでいらっしゃる住民の方々のニーズから生まれてくる小さな自然再生事業といいますか、スケールの小さな自然再生事業全体を構想して、この法案に携わったような思いでございます。
近藤(昭)委員 まさしく言葉のとおり、自然を再生していく、それはその中に、今お答えの中にあったように、過去に損なわれた自然、それを回復させていく、その点についてもきちっと、その地域にもともとあった固有の生態系があるというものをきちっと地域ごとにとらえて、ただ単純に自然というもの、例えばコンクリートを壊してそこに土を戻してそこに木が生えていくとかということではなくて、きちっと自然体系を、もともとあった、そしてまた固有のものを大事にしていくということであると思います。
 ただ、こうした自然を取り戻すということをお考えになっているというわけでありますが、一方で、そういった反省がある、既に壊してしまった自然をきちっと取り戻さなくちゃいけないという反省に立った上での法案だと思うんですが、そうすると、過去に起こった、起こした自然破壊について、あるいは先般も同僚議員が環境省に対して質問をしたわけでありますが、例の茨城県笠間市の公共処分場の問題、これはもちろん、この間の答弁で思い出しますと、それぞれ環境モニタリングをしているんだ、きちっと配慮をしているんだということであります。ただ、この間の質問の中にもありましたように、かなりの住民の方が、市民の方のかなりの方が、見直しだったと思いますが署名をして、きちっと検討してくれというようなことを言っている。
 ですから、私が申し上げたいのは、この公共処分場事業は、個別の判断は別として、いろいろとそういったものがあるんだ、あったからこそそういった反省の上に立っての今回のこういう事業があるんだと思うんですが、そういった既に市民グループあるいはいろいろな方から、これはもう自然破壊ではないかといった事業が多くあると思うんですが、そういったこと、過去のこういった事業に対する評価というものはどういうふうにとらえていかれる予定でしょうか。
山本(公)議員 自然再生事業というのは、損なわれた自然の再生を目的とするものでございますけれども、今、近藤委員のお話を伺っておりまして、過去に損なわれた自然というのは、公共事業によって損なわれたというふうに多くの方々が解釈をしていらっしゃるものが随分あるんだろうと思うんですけれども、そればかりではないような気がいたしております。人々の生活によって、本来きれいであった河川が生活排水等によって汚染をされていくような現状というのは、公共事業とはちょっと関係ないというふうに思っております。
 それはそれとして、いずれにいたしましても、自然環境の保全を担う環境省が関係省庁と連携して基本方針の策定の任に当たります。この法律によって、公共事業を主体的に担う農水省や国交省が環境省との間に連携体制を強化していければと思っております。
 公共事業については、基本的に河川法など各個の法律によって環境配慮等の規定がございまして、また、環境影響評価の実施を含め、環境保全の取り組みが適切に行われているという認識を我々は持っております。
 そういう意味において、この法案は、事業の発案や調査設計という初期の段階から地域住民やNPO等の参加を促すなど、地域の多様な主体が参画する仕組みを制度的に措置いたしておりまして、近藤委員の御指摘のとおり、過去において自然破壊につながった公共事業が全くなかったという立場は私どももとっておりません。そういうこともあったんだろう、かように思っております。
近藤(昭)委員 そういった今御答弁のあったような認識でおられるということでありますが、環境省にちょっとお伺いしたいんですけれども、現在も、さっき申し上げたように、幾つかの公共事業の中で、大変にそういう自然破壊を危惧しているような事業があるわけでありますが、環境省が今とらえていらっしゃる、この自然再生法をやる、現在進行中の公共事業についてはこういう環境保全が十分に行われている、こういうふうにおとらえでしょうか。
鈴木国務大臣 ただいま提案者からも御説明がございました。我々としても常に、自然破壊が行われないように、これはしっかりと気を配っていかなければいけないと思っております。
 それぞれの河川法等の中でそうした環境に配慮をする規定がございますし、またアセスメントも行われるようになっておりますので、そういうものを通じて、公共事業というものが環境破壊、自然破壊につながらないようにするということが大切である、そういう認識を持っております。
近藤(昭)委員 大臣にお答えいただいたわけでありますが、環境省、いかがでしょうか。
岩尾政府参考人 前議員のときにもお答えさせていただきましたが、現在の自然環境保全法、自然公園法という法律自体は、規制的な手法ですぐれた自然環境の保全を図ろうということで持ってきたわけでございます。
 私ども、自然環境という観点では、現在、前回も自然公園法の改正がございましたが、保護地域の指定の拡充など、適切な運用によって環境の保全を一層強化したいということと、住民参加、NPOの参加による自然再生事業は積極的に展開してまいりたいというふうに考えているということでございます。
近藤(昭)委員 大臣を先頭に、環境省もそういうことをきちっと配慮していくということであります。
 ところで、今回の法案、自然再生事業に関するこの法案についての環境省の関与ということでお伺いしたいんですが、この法案の主務大臣は、環境大臣、農林水産大臣、国土交通大臣となっておられるわけでありますが、関係省庁間の連絡調整あるいは自然再生推進会議、自然再生専門家会議の事務、進捗状況の取りまとめ等を主に取り扱われるのはどこになられるんでしょうか。
谷津議員 これは、十八条の規定の中に、主務大臣は、環境大臣、農林水産大臣、国土交通大臣ということになっておるわけでありますが、ただいま御質問のありましたこういった推進会議の事務あるいは進捗状況の取りまとめ等を取り扱うということになりますると、実質的には事務局は三省共同ということになると考えておりますけれども、実務的な取りまとめにつきましては、環境省が担うべきものであるというふうに考えております。
近藤(昭)委員 実務的に環境省が中心になってやられるという法案であります。
 そしてまた、地域にそれぞれ、個別の地域と個別の事業ということだと思いますが、自然再生協議会ができるわけでありますが、これの環境省の参加についてはいかがでありましょうか。
谷津議員 これは、地域にそういった推進会議みたいなものができてくるわけでありますけれども、環境省は、先ほども答弁がありましたけれども、地方に出先機関を持っているんですね、自然保護事務所でありますけれども。
 実は、私も前にこの事務所を訪問したことがあるんです。それで、レンジャーの人たちなんかもおりまして、いろいろとそういった地域をずっと見てこられておる方がいまして、一緒に私も二日ほど歩いて、現実にその活動の状況を見てきたんですが、このところはこういうふうにしてもらいたいなとか、あるいはこの辺はもっと環境的な配慮を持ってやってもらいたいところがあるななんということを幾つも言われてまいりまして、なるほど、この人たちが、ずっと長い間そこを見ておる中で、地域の住民あるいは当時NGOの方ともお会いしたんですが、そういう人たちともかなり話し合いをしながら、いろいろな仕事をなさっているというのを目の当たりに見てきたわけであります。
 そういう面から見ますと、自然再生事業を行う立場として考えるならば、できるだけ自然再生協議会にはそういった出先機関、環境省が参加をしてほしいというふうに考えております。
近藤(昭)委員 法案の趣旨では、まさしくそういったところに環境省がきちっとコミットメントをしていく、参画をしていくということでありますが、私は大変に心配をしております。
 今までの質問の中でも、とにかく時代が変わってきた、そういう中で、いろいろと個別のところで問題点も出てきた。しかし、そういうところを現場で多くの方が、今お答えの中にもあったレンジャーの方、レンジャーの方はボランティアの方なのかそれとも政府の関係の方かわかりませんが、いずれにせよ地元で頑張っておられる。そういう方々の意見を参考にしながら、そういった個別のこともやってきた。そして、今回の法案はそれをバックアップするんだということであります。そして、きちっとそういった推進事業の協議会もつくるということであります。
 さきの通常国会からこの法案について出ておりまして、現場とか、そういった再生事業が行われているところへ私も視察に参りましたけれども、環境省さんがよく見本みたいなことで言うアサザ基金のことでちょっとお伺いをしたいと思います。
 アサザ基金の方、よく環境省さんが、こういった事例もあるんだと。それはどういった事例かというのは、私の認識では二つあると思います。そういった、きちっとこういうことをやっていく、国交省、環境省あるいは地元の市民グループが一生懸命やっていくんだ、こういう体制があるんだ、これをバックアップしていくんだと。そしてまた、こういうことを言うとNGOの方に失礼になると思いますが、NGOも本当に力をつけてきたんだ、そういうところで、アサザ基金、みんなのところが頑張っておられるんだというわけであります。
 ところが、その頑張っておられるというアサザ基金でさえ、私のところにも報告が来ました。地元でずっと頑張ってきた。国交省の事業の中に自分たちも参画をしてやってきた。ところが、国交省、これは国交省の霞ケ浦工事事務所ですか、地元には水資源開発公団霞ケ浦開発総合管理所というのがあるようでありますが、ここの所長さんも最近かわられたようでありますが、その管理事務所といいましょうか国交省との間で円卓会議というものを設ける。そして、円卓会議で、水位管理及び逆水門の利用――もともとは、霞ケ浦の水位変動試験、これについて、かなり環境に影響があるんではないかという危惧をアサザの皆さん等々が持っておられた。ところが、一方的にこの水位変動試験の実施を、地元ですかね、発表した。一方的にそういう水位変動のことを言ってきたということであります。
 そしてまた、かつて国交省の扇大臣が答弁をなされた、円卓会議をつくると。円卓会議というものの理解は、私はもう本当に、ある種、白紙からいろいろなことを相談して、やるやらない等々もやるんだと。ところが、その円卓会議を白紙撤回して、意見交換会。意見交換会というのはどういうことかよくわかりませんが、まさしく意見を交換するということらしいですが、その意見交換会の中で、国交省としてはきちっと意見も取り上げていって、それを反映させるんだということかもしれませんけれども、随分と既に不信が生まれているようなことであります。
 こういうような状況で、今こういうことについて環境省はどうお考えでしょうか。
岩尾政府参考人 アサザプロジェクトにつきましては、NPO法人アサザ基金などのNPOが核となって、大学、国交省、漁協、企業、農業団体、流域の自治体、学校など、さまざまなセクターが連携協力して事業を実施しているというふうに聞いております。
 国交省の方では、先ほど河川局長からの答弁がありましたように、地元の意見を十分聞いて事業が進んでいるというふうに私ども承知しております。
近藤(昭)委員 いや、ですから私がちょっとお聞きしたいのは、そういうふうになっていないんではないかということでありますが、これは、アサザからの円卓会議をきちっと開催してほしいというのは環境省に届いていないのですか。
岩尾政府参考人 今回の法律が成立すれば、法律上に自然再生協議会というものが位置づけられて、ボトムアップによる事業というものがなされるというふうに聞いておりますので、この事業が法律に合致すれば進んでいくものというふうに理解しております。
近藤(昭)委員 いや、ですから、きょうの質問の最初からお聞きしていますように、法案提出者にお聞きしたわけですが、基本的な認識としては、そういった環境破壊に対して今までの反省があってこの法案が出てきた、それはもちろん環境省も一番思っていると。それにもかかわらず、ではこれから環境省が中心になってこの再生法をやっていくんでしょう。それで、今このアサザで出ている問題をどういうふうにおとらえになっているかということであります。
岩尾政府参考人 国土交通省の方から先ほど答えたような状況を私ども承知しているということでございます。
近藤(昭)委員 そうすると、そういう申し入れがあるということを御承知おき、これからそういったNPOの皆さんと一緒にやっていくわけですけれども、やっていくという法案がこれからできるわけですが、そこからの申し入れをどういうふうに環境省はお受けとめになって、そして、国交省に対してどういうふうに申し入れをしておかれるのか。主導的にどういうふうにやられるのか。やはりきちっとしていただきたいんですが、いかがでしょうか。
岩尾政府参考人 法律の構成自体が、住民の発意による事業ということでこの法律がなされるわけでございますし、私どもも国レベルでの協議会をつくるということでございますので、この法案に合致するようなものであれば、国としてもきちんと対応できるものというふうに理解しております。
近藤(昭)委員 ですから、先ほども申し上げていますように、さっきお答えになったじゃないですか。いろいろと今進んでいる事業については環境保全が十分にされていると判断をしていると環境省もお答えをされたと思うんですが、これで、こういうことがアサザ基金からも言われていて、本当に環境保全がやられているんでしょうかね。
岩尾政府参考人 先ほど私が答弁申し上げましたのは、国立公園あるいは自然公園等々の、いわゆる環境省が規制的な手法を用いて何らかの自然環境保全を守っていこうということの地域において、私どものできる限りのことをやっていきたいというふうに答えました。
 今回のこの法律、そのような地域ではない、住民の方々が自分たちの身近な環境をどのように回復していくかということでできたものというふうに考えておりますので、そのような法律ができたときには、環境省としても、新しい枠組みとして、関係省庁と連携をとりながらやっていきたいというふうに申し上げているわけでございます。
近藤(昭)委員 もちろんそれは法律ができたらやるのは当たり前のことなんですよ。当たり前のことだと思うんですね。ところが、私が危惧をしているのは、そういう当たり前のことをやったときも環境省は頑張ってほしいと思うんですが、ですから、ここの今の状況をどうしてくださるのかなというふうに思うんですよ。
 ちょっと突然でありますが、大臣、いかがでしょうか。私は、やはり少なくともこの意見交換会、これからずっとアサザというかそういう市民グループの皆さんと一緒にやっていくんだから、少なくとも円卓会議をやる、国交省にやってくれということを、少なくとも環境省が大臣を先頭にやはりこういうことを申し入れていただかないといけないと思うんですが、大臣、いかがお考えでしょうか。
鈴木国務大臣 アサザプロジェクトが一生懸命霞ケ浦のところで御努力をしていただいているということは私もお聞きをして、そして、環境省としてもアサザプロジェクトの活動というものを大変評価しているところであります。
 局長からは、この法律ができた暁には新しい枠組みの中で関係省庁ときちっと話し合いをしていく、こういうことでございますが、今既に一つの円卓会議ができて、そこで意見交換会ができている、こういうことでございますので、環境省としても国交省の方に、今の状況等についてより目的が達せられるような、そういうことについてお話をさせていただきたいと思います。
近藤(昭)委員 今質問時間が終わるんですけれども、大臣、だから円卓会議はできていないんですよ。できていないんです。できていないことが問題だというふうに申し上げているんです。
 いろいろ経緯はあると思うんですが、これからこの法案ができて、やはり私は一番危惧をしているのは、こういうふうに決まったことだからとか、こういうふうになっているからということで、いろいろなものが今まで進んできた反省に立ってのこの法案だと思うんですね。ですから、やはりこれは環境省が円卓会議を開こうと言っていただけるかどうかなんですが、大臣どうでしょうか、御決意というか。
鈴木国務大臣 先般参議院の決算委員会で同様の御質問がございまして、そのときに国交大臣からも、関係者との話し合いというものをさらに十分進めたいというお話がございました。私ちょっと事実関係を間違えていたかもしれませんが、どういう形になるかということはあろうかと思いますが、そうしたアサザプロジェクトの活動、そういうものを踏まえながら環境保全というものがあそこの地域においても守れますように、いろいろ考えさせていただきたいと思います。
近藤(昭)委員 大臣、ぜひ、随分とこの法案のきちっと進んでいくかなめが環境省なわけでありますから、私は、やはりそういうふうにいくように頑張っていただくためにも、まずこの円卓会議を実現していただきたい、復活させ、開催をきちっとやっていただきたい、そういうふうに思います。
 以上です。ありがとうございました。
松本委員長 高橋嘉信君。
高橋(嘉)委員 自由党の高橋嘉信でございます。
 それでは、時間も余りありませんので、自然再生推進法案について質問させていただきます。
 基本理念の中に、自然再生事業は、事業の着手後においても自然再生の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該自然再生事業に反映させる方法により実施されなければならないものとすること、こうありますが、この再生状況の監視、モニタリングはどこが行い、どこが結果を出すのか、また、フィードバックもあり得るのかどうか、まずは提出者の田端先生にお伺いいたします。
田端議員 第三条四項における規定についての御質問だと思いますが、着手後において科学的評価を加え、それを反映させることができるかという御質問、これについては、これは自然再生協議会には専門家も参加しているわけでありますから、そこが中心になって科学的評価を行うということが考えられます。そして、協議会の組織と運営については八条のところで規定しておりますが、そういう地域の協議会での合意を得て、そして専門家が中心になった例えば分科会とかそういうところでチェックしていくことになる、こういうふうに考えられます。
 そういう意味では、フィードバックというのは協議会が中心になってチェックしていく、そして、問題点があればさらに改良していく、こういうことになるんだと考えます。
高橋(嘉)委員 では、協議会においてフィードバックの決定も可能ということですか。これは本当に確認の意味ですが。
田端議員 フィードバックはモニタリング等を行って評価をしていくということになりますから、そういうことができるということであります。それからまた、例えば科学的評価に基づいて事業内容のあり方等についてチェックする、こういうことも考えられると思います。
高橋(嘉)委員 基本理念の中で、自然再生は科学的知見に基づいて実施されなければならないとありますが、今のお話だと、科学的な知見というのは、専門家の人たちも入る、その協議会の存在の中で。その科学的知見というのも、フィードバックも可能というのであれば、ここの協議会の中で判断するということと考えてよろしいですか。
田端議員 第三条四項において、「自然再生事業は、自然再生事業の着手後においても自然再生の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを当該自然再生事業に反映させる方法により実施されなければならない。」こう規定されています。したがって、この自然再生事業の着手後の科学的な評価、これはこの再生事業に当然反映させるわけで、それは協議会の中において、そこでの議論として規定されている、こういう認識でございます。
高橋(嘉)委員 着手後というのは、もう協議会で構想を示して、そして専門家会議とか何かを各お役人の人たちがやって、計画をつくって、そして案が協議会で認められて、計画をどんどん進めるという段階、そしてそれから事業実施に入るわけですね。着手後の科学的知見、これは後でまたお話しします、これは専門家会議の存在が非常に大きくかかわる問題ですから。
 ただ、ここで今申し上げたいのは、フィードバックが可能というお話をさっきされました。これはつまり、その協議会の中で、専門家が入るか入らないかわかりませんが、そこの中でも可能というお話であれば、当然、計画にも、実施、着手にいく前に、協議会における自然再生の全体構想時において、全体構想を描く際において、これは環境を保全するに足る事業であるか、環境を破壊しない事業であるか、ここの判断がなされてしかるべきだと思うんですが、いかがですか。事業着手後に科学的知見という、確かにこれにも書いていますけれども、それはいかがなものかと思うんですが。
田端議員 協議会そのものは、事業前、そして事業着手後、その後も存続するわけでありますから、そこのところは誤解のないようにお願いしたいと思います。
 それで、協議会、着手前において科学的評価をして反映されるのかという御質問でありますが、それは自然環境との関係、自然環境の保全上の意義等、そういう効果を定めることを規定しているものでありますから、自然環境保全の観点から科学的評価の必要性を認識しているということであります。御指摘の趣旨はきちっと盛り込まれているというふうに考えています。
高橋(嘉)委員 要は、僕はこの流れを見ると、科学的な根拠が、まさに主務大臣が意見を聞くことができる、これは九条の六項にありますよね。自然再生事業を主務大臣が認定するに当たり、主務大臣は自然再生専門家会議の意見を聞くことができるものとすること。聞かなくてもいいわけですね。
 基本理念の中に、科学的知見に基づいて実施されなければならないものとすることとありますよね。基本理念の中にありますよね。そういうときに、これは事業実施に当たってまさに最終チェックの場面ですよね、主務大臣が意見を聞くことができるものとするというのは。そうですよね。最終チェックですよね、その後はもう実施に入っちゃうわけですから、認定しちゃうんですから。そうでしょう。そうですよね。その最終チェックのときに専門家会議の意見を聞き、反映するのは当然のことなんですが、聞きたければ聞いてもいいし、聞きたくなければ聞かなくてもいいという、聞くことができるものとすることと、ただこの一つだけで事業着手に入っちゃうんですよね。その点、どう思われますか、奥田先生。
奥田議員 今、専門家会議の話が出ましたけれども、これも、私たちがこの法案を協議していく中で大きな三つの修正をお願いしましたけれども、その中の一点でもございます。地域の意見に偏り過ぎる、あるいは省庁が協議しながらも省庁での理屈に偏り過ぎるということのないように、独立的、客観的な機能を持つ組織というか機関が必要ではないかということでお願いしたものでございます。
 当然、この専門家会議の意見というものは、少なくとも自然環境あるいは生態系といった分野からの人選をしていただきたいですし、そこからの意見を大臣は事業の選定あるいは事業の評価というところで当然尊重すべき意見とすべきものと私は思っております。
 ただ、省庁の方からは、行政の個別法での措置やあるいは行政としての手続の中でのことはそれに当たらないということでできるという文言になっておるというふうに説明を受けております。
高橋(嘉)委員 どうもよくわからないです。要は、基本理念の中に、科学的知見に基づきとありますよね。そして、その科学的知見が、要は協議会の中に専門家が入るというだけですよね。あとはお役所がつくる推進会議ですよね、専門家から聞く範囲というのは。そうですよね、両輪でいくにしても。
 だけれども、事業実施、計画から実施にいく前の全体構想の時点で先ほどフィードバックも可能と。協議会が全体構想をつくりますね。そして、計画に関しては協議会と相談しないと、実施者、国がやる場合でも実施者がその計画案というものを協議会で協議しながらでなければだめだと書いていますよね。そして、計画になって実施にいく前に、事前にこれは本当に自然再生に値するものであるかどうかということを決めていくのが、それも科学的知見に基づいて決めていく、そういう法的根拠がないと思うんですけれども、どう思われますか。
田端議員 先生、ここはこういうふうに考えていただきたいと思うんですが、ボトムアップ方式というのは、それぞれの地域においてそれぞれの多様な主体が参加して事業計画、全体構想をつくる、こういうことであります。その中に専門家が入っていて、その専門家が中心になって分科会あるいは小委員会等をつくって科学的知見を行う、そしてチェックする、もし都合が悪ければ、そこで再協議を開いて、そしてまた計画を練り直す、こういうことになると思います。
 それから、先生のおっしゃっているこの十七条の専門家会議はどうなんだと。これは国に、環境省を中心に、農林水産省、国土交通省の職員をもって構成する調整機関、この調整機関の下に専門家会議を置いて、そして、例えば全国で幾つもの申請があった場合どれを優先した方がいいとか、そういう調整的役割をしなきゃならない、それを専門家会議の意見を聞きながら順序をつくるとか流れをつくるとか、こういうことをするのが専門家会議の方であって、ここのところとの問題と、国の方のそういう調整機関と現地における協議会における役割と、そこは両輪の形で動いていく、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
高橋(嘉)委員 では、話を一つずつ聞いてみたいと思いますので、もとに戻してやっていきます。
 まず、協議会においてフィードバックは可能か否か。可能だというお話でしたが、環境省の考えはどうですか。
岩尾政府参考人 この法案の趣旨からして、可能だと思っております。
高橋(嘉)委員 では、国が実施者として行う場合。
 NPOも実施者となれるというお話が先ほどありましたし、そのように理解すればできるかなという文言もあります。ただ、先ほどのアサザ基金のように、どうも実施者に本当になり切れるのかなと私は疑問を払拭できないでいるのですけれども、それはいずれにいたしましても、国が実施者として行う自然再生事業の際、協議会メンバーの選定基準は何か。だれかが主導しなきゃならないですね。選定方法はどのようにして行われるのか、基準は何か。この法案を見る限り、国が実施者として行われる場合には当然国の主導によるところと判断されますが、これは間違いありませんか。
田端議員 協議会にだれが入るかということは、それは選定基準はありません。だれかがリーダーシップを発揮して、ここの自然をこういうふうに再生しようというこの指とまれ式に、だから、NPOの方も市民の方も専門家も行政機関も入ることになると思います。
 そして、そこで協議会ができて、その中で、じゃ、どういう形でどうしようかという議論が始まっていくわけですから、そういう意味では、この法律は、上からこことここをやれとかやるんだとか、そういうやり方でない、本当にボトムアップ形式の新しい形態の法律である。そういう意味では、非常にすぐれた法律だというふうに認識しております。
高橋(嘉)委員 それでは、今のお話だと、協議会メンバーは数限りなく、手を挙げた人全員入れるという理解でよろしいですか。
田端議員 基本的にはそういうことになると思います。
高橋(嘉)委員 では、NPOが実施者になる場合、必要要件は何ですか。どのようにして実施者が決まりますか。NPOが主体としてやるというような事業の場合ですよ、国の場合とは違って。
 おれもやる、おれもやるとなったときに、実施者は共同でも嫌だと、例えば意見が合わなかった場合、またさっきのアサザ基金のことをぐずぐず言うわけじゃないですけれども、そういう場合の実施者のNPOは、あるいは地域住民が実施者になるんだという場合、やはり意見がみんな一つとは限らないわけですから、その場合は実施者を決めるに当たってどういう方法が考えられますか。
田端議員 ちょっと一つ例を挙げてみたいと思いますが、釧路川の再生事業でありますが、あそこは、かつて二万五千ヘクタールぐらいあった湿原が今二割方減ってしまった。そういうことから、ラムサール条約登録時点にまで戻すべきだという意見が起こってまいりまして、そういう中で、地元のボランティアの方々、NPOの方々、それから国土交通省の出先機関がありますが、釧路市あるいは北海道庁、それからもちろん環境省、農水省等々、さまざまな行政と市民のいろいろな方が参画して、北海道大学の先生も入りまして、そういう意味では、何年も議論を重ねて、ここで言うところの協議会のようなものを立ち上げました。
 そして、その協議会の中でいろいろと議論して、分科会をつくり、いろいろな科学的知見に基づいた調査も行い、そして結論に達した一つの方向は、今から二十年ほど前ですか、直線にした二キロの部分をもう一回蛇行に戻すべきだ、こういう結論に至って、それが今事業化され予算化されて、具体的な動きとなっている。だから、そういう意味では、そこにはNPOの方が入っていますし、NPO、一つだけじゃない、幾つかのNPOが入っていると思います。
 だから、そういう意味では、参加資格といいますか、それはハードルを決めるべきではなくて、議論の中から、そこに入っていただく方、多様な主体が参加して議論を進めていって、そして合意をしていく、こういう流れが一つの流れだと思います。
 だから、アサザの場合も、そのほかたくさん各地にありますが、そういう形で先駆的役割を既に果たしてくれているわけでありますが、この法律ができたときにそれがどういうふうになるかということが大きな問題だ、こういうように思いますし、できるだけこの法律の趣旨と現地で頑張って先駆的役割を果たしている方々の思いとが一体になって進んでいくような事業でありたい、こういうふうに願っています。
高橋(嘉)委員 私は、釧路湿原のお話をお話しされますが、この趣旨はいいと思うんですよ。そして、環境に対して環境省が意見を申し上げていくというのは非常にいいことだと思いますよ。
 ただ、仕組みがしっかりしていないと、どうしても今の世の批判にたえ切れない部分が残されている、そう思うから僕は申し上げているのでありまして、いずれ、先ほどの釧路湿原の話を例題にばかりとられていくと、正直言いまして、要は、国を含まない協議会がああいう形のことを提言して、そのとおりだなと国が乗っていったというのであれば、本来の姿にかえてあえて法律をつくらなくたって、NPOや地域住民たちの行為を国がサポートする形だけでいいんじゃないかという話になってくるわけですよ。
 だから、国が実施者になる場合のことが今一番問題になっているわけでありますし、またそれと、本当にNPOとか地域住民が実施者になり得る場合の要件、そしてその協議会のメンバー構成、そういうことを僕はお尋ねしているのであります。
 まず、大体話はわかりました、どんどん先に進みますけれども、例えば環境省は協議会のメンバーに必ず入るわけですね。さっき、どうも答えが先ほどの方の質問の中でははっきりしなかったように僕は思うんですが、協議会のメンバーには必ず入るんですね、環境省。
岩尾政府参考人 先ほどもお答えいたしましたが、地方の出先機関として自然保護事務所というのを持っております。ですから、実質的には自然再生事業を行う立場としてそういう再生協議会には参加してほしいと私ども思っていますし、また、要請はされるだろうというふうに思っております。
高橋(嘉)委員 参加したいし、要請があるだろうという感じですよね。僕は、もう完全に参加すべきである、そこはすべきであると思っております。
 いずれ主務大臣が、要は基本方針に関しても、国交相、農林相にあらかじめとあるわけですから、まさに環境大臣が主体的に、そういう基本方針作成時に当たって、先ほどから申し上げているような問題を、本当に環境行政のあり方をこうしていくんだということであれば、しっかりと環境行政の今後のあり方というものを、そして主務大臣としての役割というものを、そしてまさに先ほど谷津先生もお話しになりましたけれども、事務的にはもう環境省が最後まで責任を負うんだというような話であれば、それなりの骨格、レイアウトをきちっとつくって、そういうデザインをつくって、基本方針作成に当たり臨むべきだと思いますが、その辺、環境大臣いかがですか。
鈴木国務大臣 個々のそれぞれの事例はあると思いますが、基本的考え方は先生がおっしゃったとおりであります。
高橋(嘉)委員 では、自然再生事業の実施計画は、自然再生全体構想と整合性のとれたものでなければならないものとすること、これは九条の四項ですか、とありますが、これは、実施までの段階であるとこれを限定したものでしょうか。どのようにおとらえでしょうか。
田端議員 九条四項に規定している実施計画と全体構想の関係ですが、整合性がとれたものであるということが必要であるということは当然だと思っております。
高橋(嘉)委員 僕がお尋ねしているのは、つまりこういうことなんですよ。事業着手後の自然再生事業の監視という文言は、先ほども協議会にゆだねたような話だけで、もう着手した場合ですよ。僕が前に申し上げたのは、全体構想をつくる時点で、計画に入る前にフィードバックという話ですからね、勘違いされないように。事業着手後の監視です。自然再生全体構想と整合性のとれたものでなければならないとありますね。これは実施段階までのことか、もしくは最後まで環境省とか役割を担うのか、それも全部協議会の話になっていくのか、その点をお伺いしたいんです。
田端議員 自然再生事業着手後のチェック、監視等について、それぞれその実施者が、協議会が行うということ、それはそのとおりでありますが、しかし、十四条のところにおいて、主務大臣は、主務省令で定めるところにより、自然再生事業実施計画の進捗状況について報告を求めることができるということにされていまして、着手後において、それぞれの所管の大臣のところにそういった意味の報告を求める。また、それを三省の推進会議においても協議することになり、環境大臣を含めた主務大臣がそれぞれをチェックすることになるということになります。
高橋(嘉)委員 その点なんですね。まだ事業に着手していない実施計画に関し、主務大臣、これは環境相もですが、必要な助言をすることができるという規定のみなんですよね。
 環境大臣にまたお伺いしますけれども、基本方針をつくる際ですが、その後の事業実施段階での環境相の主務大臣としての役割、環境省は事業実施から完成後まで責任を負うのが当然ではありませんか。どう思われます。
鈴木国務大臣 一つの事業が始まった、事業が実施されているその状況をフォローして、そしてその事業が適切に行われているかどうか、そういうことを評価することは、これは大変重要なことであると思っております。
 そういう意味におきまして、そうした科学的な評価も行われるということでございますので、そうした評価結果が事業に十分反映されるように、環境大臣としても努力をしたいと思っております。
高橋(嘉)委員 では、前段ちょっとお話しした問題に入りますが、自然再生推進会議を構成する環境省、農林省、国交省が専門家会議を設けとありますよね。お役所が決めますね、これは。その意見を聞くものとすることと、つまり専門家会議の意見をここで聞きますよね、自然再生推進会議は。だから、この時点で、生態学的に誤っているか誤っていないか、もうどんどん計画に入っていってからやっていくんですよね。
 いや、両輪だと言うかもしれません。でも、さっきはもう協議会がフィードバックのあれができるんだという話を聞いたからもういいんですけれども、どうも主務大臣の役割、さっきの専門家会議の意見を聞くことができるものとするというような主務大臣としての役割が非常に弱い、発言力というか。専門家会議、お役所の人たちがここの時点でやっていく。要は職員の人たちですね。それがどんどん進めていく。それで、主務大臣は最後に聞くだけだというような感じにどうしても思えるわけですよね、聞きたければ聞いてもいいという感じだけに。僕はこの点は非常に疑問を持っていますので、まずこれだけ指摘だけしておきます。
 巷間言われるような、自然再生に名をかりた公共事業ではないというのであれば、この専門家会議のメンバーの選定に当たって、NPOやNGO団体の意見を聞くぐらいの懐が必要だと僕は思っているんですが、任命権は役所だけ、この再生推進会議、この三省の役所だけにあるものでしょうか。これは環境保全のために必要な再生事業であるという客観性をますます乏しいものにしてはいませんか。この辺について、奥田先生、田端先生の御意見をお伺いします。
奥田議員 メンバー選定に当たってのNPOの意見反映ということでございますけれども、一応、原則的にといいますか、基本的には専門家会議の窓口となる三省庁がその選任に当たる任務を持つことになると思います。
 今御提案のありましたNPOからの意見反映ということでございますけれども、今こうであるという確たる御返事というのはできませんけれども、当然前向きに検討すべき事柄であるというふうに思います。
田端議員 恐らく先生のおっしゃっている意味は、意見を聞くだけじゃだめだ、聞きおくだけじゃだめだ、そういう専門家の意見をしっかりと反映させろ、こういう趣旨も含んだ御発言かと思いますが、法文上では、「意見を聴くものとする。」となっていますが、当然それは反映するということがもう当たり前のことだと私は認識しておりまして、そういう意味では、行政上の手続とか許認可の問題とか、そういうことではなくて、しっかりとした基本的な意見に対しては、当然反映させていくものだ、こういうふうに認識しております。
高橋(嘉)委員 意見を聞くことができるものとすることじゃないですか、意見を聞くものとすることじゃなくて。だから、これは解釈的には、聞かなくてもいい。反映するという話にまでこれで理解できると私は思いませんけれども。聞きたければ聞いてもいい、法制局見解はそうでしたけれども、聞くものとすることと、聞くことができるものとすることでは全然違うんじゃないですか。もしかして間違えてお話しになられているかもしらぬけれども、もう一度お願いします。
田端議員 おっしゃるように、文章をそのまま読みますと「その意見を聴くものとする。」というのが十七条二項になっております。それから、九条六項のところでは「専門家会議の意見を聴くことができる。」こうなっています。(高橋(嘉)委員「できるものとすることでしょう」と呼ぶ)文章は「聴くことができる。」でございます。
 それで、実は、これは当初の与党三党の案を、先国会でそれを提示して、民主党と協議して、ここのところは修正した部分であります。それは、そういう意味で、この専門家会議というものの位置づけをきちっとして、専門家会議の意見を反映させるのは当然だ、そういう趣旨で法制局に文章をつくっていただきましたので、御指摘のような表現では弱いという意味があるかもわかりませんが、しかし、法制局的にはこれで意見を聞く、反映させるという意味だという意味で我々は理解をしてこういう法案になったということでございます。
高橋(嘉)委員 反映の濃淡がどこまでか知りませんが、「聴くことができる。」というのは、通常は義務的なものではなくて、聞かなくてもいいわけですね。そう理解されても仕方がない。だったら、反映する、その意見を聞き反映するものということに書き直すべきだと僕は思っております。
 時間がないので、次に移ります。
 この法律は、過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的として定めている、こうありますね。
 先進国で法制度を持たないのは日本だけだと世論にさんざん非難されまして、やっと平成九年六月に成立を見たのが環境影響評価法、いわゆる環境アセス法であります。法成立以前の閣議アセスなどのいろいろな行政指導では強制力がない、そこの中で、本当に先進国中一番最後に生まれましたね、この環境アセス法が。
 そういう経緯を含めてでき上がった環境アセス法が今なお生きていない、役割を十二分に果たしていないというのならばそれは結構なんですが、でなければ、国が行う自然再生推進事業に関しては、この環境アセス法施行以前のものに実施対象を絞るべきではないかと考えるのですが、その点、奥田先生、田端先生、いかがでしょうか。
谷津議員 先生御指摘のとおり、平成九年にアセスメント法ができたわけであります。その前は、閣議了解といいましょうか、そういう形でやっておったわけでありますけれども、この環境アセス法に基づくアセスメントを実施した事業につきましては、その時点においての科学的評価に基づくいわゆる環境保全、こういうものについてはきちっと実施されているというふうに考えなければならぬと思っておりますものですから、少なくとも国費を投入した自然再生事業の対象とするということを私は想定することはできないというふうに考えております。
高橋(嘉)委員 提出者の谷津先生からそういうお話であれば、それは附則ででもきちっと明記すべきだと僕は思います。されてしかるべきだと思います。対象範囲を狭めるという意見もあるようですけれども、これは今谷津先生がお話しになられたとおりで、もしそのアセス法が全く今なおちゃんと生きていないというのであればいたし方ないとも言えますけれども、僕は、これを法律の中にきちっと組み込むべきであるということを申し上げておきます。
 さて、そろそろ時間がないからでありますけれども、この法案が要は本当に自然を再生し得るものであるということであれば、自然再々生、また自然再生をやって、また自然再々生推進事業なんということは今後あり得ない、絶対にあり得ない、絶対という言葉はなかなかお答えにくいかもしれませんが、あり得ないというお考えであるか。それを言い切れる内容の法案であるとお考えか否か、田端先生と奥田先生と山本先生にそれぞれ御見解をお伺いします。
田端議員 この法律は、おっしゃるように、自然との共生、そして自然再生、壊された自然を取り戻す、そういう趣旨を目的とした法律でありますから、そういう法律の目的に向かって明確にこの法律は規定されている。そういう意味では、この法律が施行されれば、全国各地においていろいろな形で自然再生事業が着々と行われるということを確信しているという思いでございます。
奥田議員 先ほど、環境アセス施行前にというお話もありました。私も、これは過去のどのくらいのスパンを過去と言うかというものも大変議論の対象になりましたけれども、十年、二十年というスパンでの事業のもとにおいて、そしてそれが過去の事業を実施したときの目的とは違うもの、あるいはその目的といいますか、そのときにはそういった知見や社会的な意見というものがなかったという時代のものを再生、そしてある意味では修正していくべき事業を取り上げるものだと思っております。
 この事業で取り上げたものの再々修正という、再々々生ですか、お話がございましたけれども、やはり地域やいろいろな方々との連帯のもとにつくっていく事業でございますので、もしそういうことがあるとすれば、それはその事業にかかわった人々すべての責任のもとでのことになると思いますし、また、そういったことがないように、こういった専門家の意見やそういった知見というものを集約してやっていく事業であるというふうに考えております。
山本(公)議員 自然再生事業の対象というのは、本来はやはり原生的な自然の回復ということになるんでしょう。
 ただ、私の四国、四国で原生的な自然というのは剣山の頂上しかないんですよ。あとは全部人為的な手が入っているんです。一番高い山の石鎚山というのがあるんですけれども、この一番高い山の頂上まで人の手はもう既に入っているんです。
 そういう現状を考えますと、二次的な自然再生というのもやはりあっていいんだろう、それがまた大半かもしれないなというふうに私は認識をいたしております。
高橋(嘉)委員 時間が終了しましたけれども、一点だけ私から申し上げたいことがあります。
 いずれ、いろいろの問題なしとは言えない中身ですけれども、これは環境省の意気込みなり、本当に自然再生に向けてやろうというこの意気込みは大いに買える話なんですが、やはり科学的知見とか専門家会議とか、そこの部分を、そして主務大臣、環境省、とりわけ環境大臣の役割とか、そこに専門家会議の意見の反映とか、そういう部分をしっかりと考えなければいけない。ここだと思うのですよ。
 ですから、NGO団体からも、これもWWFジャパンかな、世界自然保護基金、こう言っているのですね、「個々の自然再生事業を、主務大臣が事業認定する際に、生態学的に過った自然再生事業でないことを保証するため、主務大臣は自然再生専門家会議の意見を「聴くことができる」ではなく「聴かなければならない」ものとすること。」こう変えてくれと。
 ここは、意見の反映と、あるいは本当に専門家会議が、お役所のお抱えと言ったらあれですけれども、御用会議にならないように、その点を気をつけてくれという叫びだと僕は思っておりますし、そして、その声が本当に反映されるようにしてほしいという、これは真摯に耳を傾けながら進めなければ、本当に、NPO、NGO、いろいろなそういう地域住民の人たちと一緒に取り組むんだというのは絵そらごとになる、この点だけを強く申し上げて、私の質問を終わります。
松本委員長 藤木洋子さん。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。
 早速、自然再生推進法案に対する質疑を行いたいと思います。
 まず、むだと環境破壊の公共事業に対する批判、これが高まっている中で、政府は各種の事業実施法への環境配慮規定を新設してまいりました。近自然型工法の採用あるいは時のアセスの実施、また幾つかの公共事業計画の見直しなど、一定の対応を行ってまいりました。しかし、川辺川ダム、諫早干拓、各地の空港、高速道路などの大型プロジェクトを改めようとはしておりません。そこで、国民の批判はさらに高まっております。ただいま提案されている法案は、こうした自然破壊の公共事業推進への反省や是正が全く見当たりません。
 また、財政破綻の深刻化もあって、公共事業が前年度比一〇%削減されている中で、従来型の公共事業では拡大が困難になっております。そこで、環境保全の装いをした公共事業の推進で活路を切り開こうとしているのではないかと思われます。
 ですから、一方で環境破壊の公共事業を推進しながら、他方で自然再生と称する公共事業推進の制度を創設するということは、限りなく公共事業の拡大をもたらすことになるのではないか。提案者、お答えください。
奥田議員 今、既存の公共事業の中で問題を起こしている事業との関係、あるいは公共事業の肥大化といった御質問であるかと思います。
 私どもも、この法案を協議している中でやはり一番大きな問題になった点は、一つの対立構図をもたらしている大きな公共事業とこの法案との関連、あるいはこの法案がそういった事業に対して、何か影響力と申しますか、一つの指針を示すことができないのかといったことが大きな討論の内容でもございました。
 しかしながら、私どもとしては、この法案自身は、各地域から上がってくる、そしてコンセンサスに近い合意を持った自然再生の事業を採択していくといった方針のもとに出されているものだと思っております。
 もちろん、今藤木先生御指摘の公共事業、私個人としましても、川辺川やあるいは吉野川、そして諫早は行っていませんけれども、そういった事業をたくさん見てきております。そして、住民運動の方の御意見や、どういった住民運動が行われているのかということも見てきております。それはまた、先生たちとも協力していく中で、環境の視点をどれだけこういった公共事業の実施に反映していくかということは、今の、平成九年かにできた環境アセスメントをさらに強力にしたいということで、私どもの会派としても、時のアセスあるいは緑のダム構想といったものも出しておりますし、またこれからも、公共事業のあり方というもっと大きな枠の中で取り組むべき大切な課題と思っております。
 皆さんとともに協力して、新しい法制度、考え方といったものをつくっていきたいというふうに思っております。
    〔委員長退席、牧委員長代理着席〕
藤木委員 自然再生というのは、むだな公共事業の乱開発で自然破壊をやったということの反省の中から生まれてくるものだと思うわけですね。ですから、まずは残された自然を保全することが最重要な課題だと思うわけです。自然破壊の進行を防ぐ法制度の確立がまず必要であって、その上に立って、破壊を受けた自然を復元させる方策が求められていると考えます。
 例えば、干潟は環境保全に重要な役割を果たしていることは明らかですけれども、既に広大な干潟が失われております。残された干潟、浅場、この全面的な保全が求められております。ですから、そのためには、湿地など自然環境を保全しなければならない地域においては、開発自由から原則保全への法制度の転換が必要だと考えますけれども、提案者はどのようにお考えですか。
奥田議員 当然、保全という法制度も、我が国の中で少し欠落といいますか、足りない、弱い部分であると思っております。今、そういった規制中心の法律といいますと、自然公園関係のそういった法律になりますけれども、やはり国際条約などを反映していったそういった法制度というものは、当然もっと充実させていくべき課題であるというふうに私も思っております。
 共産党さんの方でも、干潟、湿地といったところの保全の法律というものを作成しているというような、中身はまだ見ておりませんけれども、お話は聞いておりますので、そういった視点、発想というものは当然必要なことと思っております。
 ただ、今の自然再生推進法案には、保全にかかわるといった部分は全くないとは言いませんけれども、保全よりは、地域の方で少しの手を加えて自然を取り戻すといったことが主体に今回の法案はなっております。
藤木委員 それでは、地球環境問題や生物多様性問題などが国際的にも国内的にも重視をされている中で、二〇〇一年七月の総理大臣主宰の二十一世紀「環(わ)の国」づくり会議報告が、自然再生型公共事業の推進を提言しております。そして、同年十二月の総合規制改革会議の答申でも、多様な主体による自然再生事業の推進が提言され、これを受けて、ことしの四月に閣議決定された新生物多様性国家戦略では、従来部分的な記述しかなかった自然の再生、修復を主要なテーマの一つとして位置づけております。
 この自然再生型公共事業は、既に小泉構造改革予算の重点分野の一つとして位置づけられておりまして、今年度の環境省予算では、自然再生事業調査費に五億四千八百万円、自然再生促進事業に四億二千万円が新たに計上されております。釧路湿原再生整備事業などは、関係各省と連携をして事業が進められております。
 ですから、進められている事業のよしあしはともかくとして、現行法のもとで可能な事業になぜ新しい法制度が必要なのか、そしてなぜ急がなくてはならないのか、全く明らかではありません。
 そこで、今回の法案は、自然再生の装いで公共事業の維持を図ろうとする公共事業実施官庁の思惑と、自然再生事業への関与を確保しようとする環境省の思惑が合体した産物ではないのかというふうに考えられますけれども、提案者、いかがですか。
奥田議員 省庁の思惑までは私はわかりませんけれども、私どもとしては、この事業を評価する点として、先ほども言いましたけれども、地域の水平的な集まりと意見反映の中から持ち上げられてくるものであるということ、そして、私自身、公共事業のいろいろな批判や何かありますけれども、こういった事業の中で、どうしてもこの法で担保したかったという部分といいますのは、やはり調査、モニタリングあるいは維持管理といったところの、どうしても時間と人の熱意がなければできない部分に対して法の担保をとるというところだと私自身は思っております。
 こういった息の長い取り組みに対して国、行政の方から支援をできるといったことを法のもとで何とか明文化といいますか、明確に示したいというふうに思っておりますので、御理解をいただきたいと思います。
藤木委員 そこで、今回提案されている法案のモデルとされている自然再生事業ですが、既に釧路湿原で国土交通省、環境省の手で進められておりますけれども、私も先ごろ現地を見てまいりました。
 釧路湿原では、直線化された釧路川を再蛇行させる事業を実施しようとしていますけれども、新たに河道を掘削するのではなく、曲線状の閉鎖水域として残っているかつての河道につなぐだけだとしております。しかし、重機を入れて旧河道の状態まで一気に掘削するなどということをやらなければなりません。これは新たな環境破壊を招くおそれが非常に強いものであります。
 また、東京湾の三番瀬では、干潟と一体になっている浅場を人工干潟と称する新たな埋め立てを行おうとする動きが強まっております。本来干潟でなかった場所に人工干潟をつくろうということは、全く理に反した行為になるわけです。
 自然再生というのは、新たな大型事業を起こすのではなくて、自然の環境を妨げている施設、要因を取り除いて、あとは地域の特性に合わせて、自然による復元力にゆだねるということを基本にすべきだ、私はそう考えております。生物多様性国家戦略でも、自然の回復力、自然みずからの再生プロセスを人間が手助けする形で自然の再生、修復を積極的に進めるとしております。そうでなければ、旧建設省がやってまいりました三面コンクリート護岸の画一化で豊かな自然が破壊されたということがございましたけれども、今回も一律に画一的な多自然型工法が全国に実施されかねないというふうに思っております。
 そこで、大臣にお伺いをいたしますけれども、今回の法案では、自然の回復力、自然みずからの再生プロセスに反して、自然再生の名目による自然破壊を新たに招くおそれが強いものだと言わなければならないと思うのですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。
    〔牧委員長代理退席、委員長着席〕
鈴木国務大臣 私もこの法案を読ませていただきまして、また、先ほどから議論をお伺いいたしまして、この法案は、素直に読めば、過去に失われた自然環境の保全、再生を行うということを定義して、生物多様性の確保や地域の生態系を取り戻すためのものであるということが明確に示されているわけでありまして、先生が申されていた環境破壊のための公共投資をこれで推進するというものではないというふうに思っております。
 ただ、先生がおっしゃったように、例えば新たな川を蛇行する工法においても、また新たな干潟を別途、もとになかったのをつくるとかそういうものにおいても、そこには十分な評価をして、そうした昔の環境を戻そうという工事の中で、環境がそこで工事の過程で壊されるようなことがない、そういうようなことはきちっとしていかなければならないと思っております。
 そのために、まさに多様なNPOの方とか地元住民とか、本当に環境保全に熱心な方が協議会をつくられるということがあるわけですから、当然そういうところでも評価をされるわけでありますし、また、事業の着手後におきましても、そうした自然再生の状況を監視して、その結果を事業にフィードバックするというような、そういう手法もここに盛られておりますので、先生の御懸念は当たらないのではないか、また当たらないようにしなければいけない、そういうふうに思っております。
藤木委員 しかし、釧路湿原では、旧河道や従来からあった三日月沼などが周辺丘陵からわき水の流れ込みを受けるなどしておりまして、既に新たな生態系をつくっているわけですね。旧河道に再度川を切りかえれば自然再生になるという単純なものではないということは、現地のNGOからも指摘をされているところです。
 現地の釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会の旧川復元小委員会で、過去に直線化された河川について、可能な限り蛇行した河川への復元を図るべきであるという提言を達成するまでの施策、旧川復元試験計画案などを議論しております。二〇〇〇年十月の第二回の小委員会では、計画の通水位置は小規模の工事なので自然環境に対するダメージが少なくてよい、一方、新水路との合流部は河道が狭くなっているため、掘削などの最小限度の土木工事が必要であるなどという議論になっておりました。
 ところが、第三回の小委員会になりますと、できるだけ手を加えず、自然の力による自律的な回復を目指すとしながらも、当初十年としていた復元期間を、五年後と固定せず、可能な限り早くした方がよい、よって長くても五年以内にすべきであるという議論になったわけです。
 さらに、第四回の小委員会になりますと、下流への堆積土砂の流出を少なくする復元方法を目指すといたしまして、旧河道を全掘削することで旧川復元試験内容を修正し、調査を実施するということになりました。
 こうした修正に対して、委員からは、川の蛇行は取り戻しても湿地の完全な原状回復にはならない、また、旧河道の掘削は生態系を壊す可能性があるとの批判も出されております。しかし、これまでの公共事業と同じように、一度旧川復元試験計画が動き出しますと、生態系を壊す可能性があっても、計画の中止、見直しとはならないんですね。
 そこで、今回の法案では、実施者が組織した自然再生協議会の協議の結果に基づいて実施者が事業実施計画を作成することになっていますけれども、釧路湿原の旧川復元試験計画のように生態系を壊す可能性があっても、計画の中止、見直しを判断するシステムそのものがないのではありませんか。提案者、いかがですか。
山本(公)議員 今回の法案は、事業の実施計画に対して行われる主務大臣の助言は、自然再生専門家会議の意見を踏まえることとなっておりまして、事業に問題がある場合は、それに応じた助言が適切に行われるものと私どもは考えております。
 また、協議会には自然環境に関して専門的知見を有する者等が参画することが規定をされていることでございますから、協議会の中でこれら専門家が中心となって自然再生事業の科学的評価を行うことによりまして、中止や見直しを含めて、事業へのフィードバックが適切に行われるものと思っております。
 したがいまして、今先生御指摘の釧路の問題等につきましても、この法案が成立をいたしましてうまく機能をいたしましたならば、先生の御指摘のようなことについてもうまく対処をしていけるんじゃないかな、かように思っております。
藤木委員 釧路湿原での問題は、農地化などの実は集水域での開発、これが湿原への土砂の流入を激しくしておりまして、湿原破壊の原因になっていることは明らかです。ですから、土砂の流入による乾燥化の対策、これは中小河川や土砂の排出の源となっている丘陵地域の保全対策を具体化するのが蛇行化よりも緊急な課題だと厳しく指摘されているところです。
 さらに問題なのは、この蛇行化事業の予定地域のすぐ上流で、国土交通省が農地防災事業という農地造成、公共土木事業を開始されているという問題です。この二〇〇八年までに約六十五億円を費やす事業というのは、農地の排水能力を高める事業が基本になっていまして、客土、盛り土もございます。農地から川と湿原へ土砂が流入することは確実です。もっとも、排水路合流部には沈砂池を置くとか土砂調整地を設置するということになっていますけれども、しかし土砂の流入をとめることはできません。
 このように、土砂を排出し排水をよくするという農地防災事業のすぐ下流で、土砂をとめて排水を緩やかにする釧路川の蛇行化、自然再生事業を進めるという、目的が全く相矛盾する事業が上下流で実施されることになるわけです。幾ら環境省が湿原の植生を回復する再生事業をやるといっても、これは間尺に合わない話であります。
 ですから、釧路湿原を保全するために、上流で破壊し、下流で再生するという自然再生型公共事業は抜本的に見直して、ラムサール釧路会議でも指摘されているように、集水域での保全に力を注ぐべきだと考えますが、環境大臣はどのようにお考えでしょうか。
鈴木国務大臣 先生の御指摘のように、ラムサール条約釧路会議によりまして釧路声明というものが出されております。その中では、国際的に重要な湿地保全のために、質が低下した湿地を再生すること、それから集水域の問題を配慮することの重要性がうたわれております。
 今行っております釧路の自然再生事業でありますけれども、これは、湿原集水域からの土砂流入等の負荷を少なくともおおむね二十年前の水準に戻そうということで、多様な主体のもとでこれを実施しているものでありまして、我々といたしましても、釧路湿原の集水域全体の保全というものを念頭に置きつつ再生事業を推進してまいりたいと思っております。
藤木委員 さらに、今回の法案では、実施者が、自然再生基本方針の自然再生事業実施計画の作成に関する基本的事項に基づいた自然再生事業だと主張するならば、その自然再生事業が何らの許認可にも服さず、事業ができてしまうという仕組みになっております。これでは、他の事業との公平性、客観性が保たれません。
 さらに、現在、環境影響評価法の適用を受ける事業についても、今回の法案によって環境アセスメント法が改正され、適用除外あるいは手続緩和が図られる可能性もあって、結果的に環境影響評価法が骨抜きになる危険性すらあるということも指摘されているところです。
 ですから、自然再生の名目による新たな自然破壊を生じさせないためには、行政機関から独立した第三者機関による事前審査や事後審査の制度をぜひとも設けることが必要だと考えますが、提案者はいかがですか。
山本(公)議員 自然再生事業の科学的評価については、再生協議会に参画する専門家が中心となって取り組むべきものだと私どもは考えております。例えば、自然再生協議会の中で専門家が中心となった分科会や小委員会を設置することなどで、科学的評価の結果を各実施者の行う事業に反映していくことができるものと考えております。
 また、主管する省庁が必要な助言を求めるために、自然環境保全の専門家から成る会議を設けることにもいたしておりますので、十分に機能をしていくものだと思っております。
藤木委員 制度の枠組みとしては、基本方針の案を環境大臣が作成すること、事業の構想、実施計画作成段階から住民やNPO、自治体などによる協議が義務づけられていることなど、従来の公共事業実施官庁が一方的に計画を決めて事業を実施してきた仕組みと異なっていることはそのとおりです。しかし、国交省や農水省、林野庁など、これまで公共事業で環境を少なくとも破壊してきた官庁が基盤整備などの中心的事業の実施者となるわけですから、自然再生のために本当に必要な環境破壊施設の撤去だとか、ダム、河口堰、公害道路、大規模林道、産廃処分場あるいは臨海コンビナートなどの抜本的な改善は全く期待できません。
 ですから、これらの公共事業実施官庁が入った自然再生推進会議での連絡調整で、結局、実施者となるこれらの事業官庁がやりたいと思う事業しか行われないということではないのですか。提案者、いかがですか。
山本(公)議員 まず、基本的に私ども、先生がおっしゃるように、公共事業というのが、すべてが自然環境を破壊してきたものだとは認識をいたしておりません。そういう中で、ただ、冒頭申し上げましたが、そういった事業があったことも私どもは否定はいたしません。
 この法案は、そういう意味において、地域の自主性を尊重し、ボトムアップの仕組みをつくり上げました。そういう意味の自然再生の推進を期待するものでございまして、事業の実施者として、行政のみならずNPO等の地域の多様な主体が参画する協議会において、すべての計画、構想を協議を行うことといたしておりまして、先生の御指摘のような、行政側がやりたい事業しか行わないということはあり得ないと私どもは思っております。
藤木委員 さらに、今回の法案では、地域住民やNPOなどが入った協議会でボトムアップ型で事業を進めるとしていますけれども、法案の作成自体が、広く自然保護団体の意見を聞いてつくるということではなくて、極めて一方的に示されたものでした。ですから、これまで失われた地域の自然再生に固有のノウハウをもとに努力してきた草の根のNPOなどが、かえって今までの活動を阻害されかねない、そういう危険性すらございます。
 これまでも、NGOなどを参加させて、一定の自然保護に配慮した事業を行おうという事例がございますが、結局、事業者の意向に沿った団体が多数を占め、自然環境保全の名目のもとに環境を損なう事業となっていく事例が見られます。しかも、協議会で合意されれば、それを科学的に検証する仕組みがないんですね。事業を強行する手段とされる危険性がございます。先ほど来、科学者が入って、専門家が入ってと言われますけれども、それは実施者側からやるわけですから、あくまでも主観であって、客観的とは言えません。
 ですから、今回の法案は、ボトムアップ型の名のもとに、行政や事業者に都合がよい団体が恣意的に選択され、地元の自然をよく知る団体が排除されてしまう危険性、あるいは官僚の天下り先として利用される危険性があると考えますが、提案者、いかがですか。
山本(公)議員 私どもは、藤木先生の御指摘と全く反対のことを考えておりまして、この法案によって、地元の自然を最もよく知る団体が率先して参画をして、その後、いわゆるハードの部分の実施者としての行政機関がついてくるものだというふうにもともと考えております。
 そして、NPOの問題についてよく言われるんですけれども、要するに、協議会にとって都合のいいNPOだけを入れて、都合の悪いNPOは排除するんじゃないかというような御指摘もよく聞くんですけれども、こういうことについても、例えば今度環境大臣の方で自然再生基本方針をつくられますけれども、その中で、例えば協議会の組織に当たっては、地域において広く参加の機会を確保するよう努めるというようなことも入れるような工夫というのはあるんだろうと私どもは思っております。
藤木委員 しかし、私が見てまいりました釧路湿原の自然再生事業でも、十二年以上も釧路湿原の生態系保護を目指しているナショナルトラスト団体が、これまでの活動を阻害されかねない状況がございました。
 この団体は、NPO法人トラストサルン釧路という、地域的活動を進めている民間団体の中では国内最大の土地管理団体です。釧路湿原に約百四十ヘクタールの土地を取得して、保護保全の活動を進めております。このトラストサルン釧路は、釧路湿原の河川環境保全に関する検討委員会の湿原利用小委員会のメンバーになっておりまして、検討委員会の提言に基づいた環境省の釧路湿原自然再生事業にも参加しようとしております。
 ところが、このトラストサルン釧路の用地を、環境省が北海道環境財団を使って、自然再生事業の実施対象地としてぴったりの場所だと、直轄事業の場所として手に入れたがっているということなのです。
 私は、このトラストサルン釧路の杉沢さんにお会いをして、現場も見せていただきましたけれども、杉沢さんは、市民団体の自主性と主体性が侵され、基本財産である土地の所有・管理権をめぐる法的な問題が発生する可能性も危惧されると主張されていました。
 そこで、十月十六日の第三回実務会合では、トラストサルン釧路の主張を取り入れてやっと軌道修正を行い、達古武沼周辺域の自然再生事業では、「「トラストサルン釧路」とのパートナーシップに基づく連携・協働によって、調査・事業を進める。」としておりますけれども、今後、このように地元で地道に活動してきたNPO団体の活動が侵害されるようなことにならないようにすべきだと考えますが、環境大臣、いかがですか。
鈴木国務大臣 先生の御指摘のことでございますが、これは、環境省としても、地元のNPOの方々の活動を何か阻害しようとか、そういうことでなったわけではございません。その後、経緯は今先生のお話のあったとおりでありますが、環境省といたしましては、今後とも、NPO等の主体性を尊重した対等なパートナーシップを構築するように努めてまいりたいと思います。
藤木委員 七月十七日の第二回実務会合で配付された環境省の自然再生調査・事業の全体像という資料を拝見いたしました。達古武沼周辺調査は、トラストサルン釧路の気楽な提案をしてもらったらいい、そういうことで、その後に、専門家や検討委員会の委員長が理事長になっている北海道環境財団によって、詳細な環境調査、事業内容検討を行うということになっていました。しかも、トラストサルン釧路の周辺調査も、環境財団を迂回して委託されることになっていたんですよ。
 ですから、事実上、専門家と環境財団がトラストサルン釧路の用地の管理運営権を支配することになるわけです。トラストサルン釧路の役割は、第三者がつくった計画と指示に基づいて、下請企業のように働くことになりますけれども、本来、トラストサルン釧路の用地というのは、法的に性格が異なる行政だとか外郭団体に無条件にゆだねることは想定されておりません。トラストサルン釧路は、住民参加による自然再生事業では、住民自身が自然環境調査から再生事業のプランまで作成し、ノウハウを住民が蓄積することで、継続的で自主的な自然保全活動が生まれるとしております。
 そこで、十月十六日の第三回実務会合で配付された同じ資料を見ますと、トラストサルン釧路の主張を取り入れて、達古武地域だけ、NPO法人トラストサルン釧路との連携・協働という文字が挿入されることになっているわけですが、環境省が北海道環境財団を経由して、お金と専門家を使って自然再生をやってやろう、あとは事業計画に沿って手足として働くことを求める、こういう連携・協働ではなくて、住民の自主性、主体性、これが確保されて、住民参加が可能になるような事業にすべきだと思うのですが、環境大臣、いかがですか。
鈴木国務大臣 私どもといたしましても、何か自然再生事業を行うときに、環境省が決めた事業計画に基づいて、NPOの方々に手足として働くことを求めようという思いはございません。今までもございませんでした。
 自然再生事業を進めるに当たっては、地元の住民の方とかNPO等の自主性や主体性を十分保障しつつ、積極的に事業参加できる体制を確保することが大切である、そのようにいたしたいと思っております。
藤木委員 思いはそうでなくても、システムができていなければ、こういった事態が起こるわけです。
 また、関東弁護士会連合会公害対策・環境保全委員会の意見書によりますと、茨城県が、湖沼法に基づく霞ケ浦水質保全計画に関連し、九七年から二〇〇一年までに市民団体に委託した事業は合計二十五事業に上るが、霞ケ浦の水質保全にかかわる活動を行っている市民団体やNPOは数多くあるのにもかかわらず、委託先はたった四団体に集約されたとしています。しかも、委託先となった四団体は、茨城県が後押しして設立した社団法人のほかは、いずれも茨城県より職員が出向している団体でした。また、同じ地域内で、資金力、政治力などにまさる実施者の事業と草の根の活動とが競合した場合、草の根の活動が排除される可能性を指摘しています。
 ですから、実施者によってNPO及び専門家の選定が恣意的に行われることで、これまで草の根で活動してきたNPOや専門家が排除される危険性があると考えられますけれども、提案者、どうですか。
山本(公)議員 先ほども申し上げましたように、私どもは、そういう草の根のNPOや専門家を排除するような法案をつくった覚えは全くございません。逆に、私ども期待をいたしておりますのは、今までNPOとかそしてまた専門家というお立場でなかった方が、例えば町内会とか自治会の方々が自発的にそういった自然再生の運動を繰り広げられまして、俗に言うNPOとして認定をされていくような姿になっていければ、この法案がそのきっかけになればいいなと逆に考えているわけでございまして、もともと行政がメンバーを選ぶものではございません。自然発意で生まれてくる、そういう協議会だというふうに認識をいたしておりますので、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
藤木委員 今回の法案では、事業の実施について何ら具体的規定もありません。それぞれの事業法に基づいて実施されることになるわけです。ですから、本当に良好な自然環境の再生になるのか、事業を通じて新たな環境破壊が起こらないのかということについて、何の保証もありません。
 また、法律上では、過去に失われた自然環境を取り戻すことを目的としていますけれども、沖縄の泡瀬干潟の埋立計画などのように、自然再生事業を公共事業で失われる自然環境の代償措置とすること、こういったことで、環境破壊の公共事業を推進する手段にされるおそれがあるのではないでしょうか。
 ですから、自然再生を進めるためには、新たな公共事業推進法をつくるのではなくて、湿地破壊の最大の原因となっている公有水面埋立法やリゾート法などの既存の公共事業推進法を環境保全型に抜本的に改めること、そして、NPOやNGOなどの地域での運動や取り組みを支援して、民主的な論議でまとめ上げる仕組みと体制を築くことこそ必要だと考えますけれども、提案者、いかがですか。
谷津議員 自然環境の保全の強化を図るべきだという先生の御主張は当然であります。
 公共事業につきましても、河川法あるいはまた各個別法に基づきまして、環境配慮やあるいは環境評価、いわゆるアセス法に基づくアセスの実施等を通しまして環境保全の取り組みが適切に行われるということは、もう不可欠の考えであるというふうに思っておりますし、それがために、これはアセス法が平成九年にできまして、しっかりとその辺を導いていくということになっているわけであります。
 今お話がありましたように、この自然再生法案は、これは過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことがその趣旨でございますので、そういった面では、この法律をやはり新たなそういったものとしてしっかりと位置づけていかなきゃならぬだろうというふうに私は思うのです。
 また、本法案、地域住民やNPOなどの、これはNGOも入るわけですが、多様な主体が参画する仕組みであります。そういうことから、地域における協議会あるいはまた自然再生推進会議などが、環境省を初めとする関係各省の横の連携をきちっと確保するということが仕組みとなっておるわけでございまして、事業の着手後におきましても、この自然再生の状況を監視していかなきゃならない。また、その結果によっては、その事業にフィードバックすることなども必要であるというふうに思っておりまして、息の長いこういう組織が必要な仕組みであることは先生もおわかりのことと思うわけでありまして、そういう新しい仕組みが担保されるということによりまして、こうしたこの法案の考え方が定着していくということが私は期待をできるのではないかというふうに思います。
藤木委員 これまで私は、今回の法案について、見過ごすことができないと思う重大な問題点についてのみお伺いをしてまいりました。それぞれの思いはお述べになられましたけれども、とても十分な納得を得る答弁にはなっておりません。このような重要な制度について、公聴会だとかあるいは現場を視察するとか、十分な国民の意見を聞くという場を持たずに、十分な審議も行わずに、仮に拙速に成立をさせるというようなことを求めるならば、これは将来に非常に大きな禍根を残すことになるであろうというふうに私は思います。特に、自然再生をボトムアップ型で進めようとおっしゃるわけですから、なおさらのこと、NPOやNGOなどの現場の実態を十分に踏まえた慎重な審議による国民各層の理解と協力が不可欠だろうというふうに思います。
 ですから、このような自然環境保全の名に恥じるような拙速な審議のやり方はしないということを強く求めて、質問を終わらせていただきます。
松本委員長 金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 自然再生推進法の質問のときがいよいよ来たという思いですけれども、通常国会で成立しなければこの法案はだめになるというお話も伺っていたんですが、臨時国会で審議ができるというのは、いささかあの当時何だったんだろうかということを思いつつ、幾つか質問させていただきたいと思います。
 私も、自然再生ということ、今残された自然を保存していくということは非常に重要なことだというふうに思うんですけれども、この法案がいろいろマスコミで報道されたりした際に一番言われたことは、自然再生も大事だけれども、今さまざまな公共事業やいろいろなことで破壊をされていく自然というものに対して、やはりそれをもっと押しとどめるようなことを考えるべきではないかということがいろいろなところから指摘をされるわけですね。これは提案者の皆さんのところにもきっとその声は届いていると思うんですけれども、私も、まずその精神というものがどうなのか、また、この自然再生推進法を提案された皆さんの中に、この推進法の中にはそういう精神があるというふうにお考えなのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
山本(公)議員 前通常国会では大変御迷惑をおかけいたしましたが、やっと御審議の段取りになりまして喜んでおります。
 今、金子委員から御指摘があった話で、私はいつも公共事業のことを考えるときに、さっきも申し上げましたが、公共事業すべて物事を破壊しているというような、自然環境を破壊しているというような立場には私は立っておりません。また、多分金子先生のお地元も私の地元も相当な田舎だと思っております。そこには人が住んでおりまして、そこに人々が営々と暮らしをしている中で、治山治水の問題を中心として、やはりいまだにいわゆる生活環境の改善を求めている住民のニーズもあるということを考えますときには、やはり必要な公共事業というのはあってしかるべきなんだろうと思っておりますので、申し上げましたように、すべてが破壊しているとは私は思っておりません。
 そういう中で、今回は公共事業ということでいろいろな意味で御指摘を受けているわけでございますけれども、今進んでいる公共事業というのは、私は必要があって進んでいるんだろうと思っておりますし、そしてまた環境アセス法とかなんとか所定の手続を経て進められている事業だという認識を私は持っております。
金子(哲)委員 そういう公共事業が環境破壊をすると先ほどの質問も出ますと、提案者の方からは、すべての公共事業がというお話ですが、私もすべての公共事業がそういうことであるということではありません。しかし、今例えば自然再生事業を行っている、現実的にそういうことに携わっていらっしゃる人たち、また自然環境の問題に非常にかかわりを持ってこられた人たちから既に指摘を受けている公共事業というのは、現に今例えば、例で出せば川辺川ダムもそうですけれども、そういう指摘があるわけですよね。一方で、後ほどの論議にもしたいと思いますけれども、公益性の問題等もあるでしょう。
 しかし、そういうこと全体に対して、今のような公共事業にもいいものと環境破壊するものがあるというようなことではなくて、ということは逆に言えば、現実的に環境破壊をしている公共事業もあるということも提案者も認められているわけですから、そうであれば、例えばこの速度で、今までと同じようなことで公共事業が進んでいくとしたら、また、これからの時代は、一方で進む環境破壊の公共事業に対してはどのような見解を持っていらっしゃるかということを私はお伺いしたわけです。
山本(公)議員 ちょっと金子先生と誤解があったようでございます。私も環境族として長年やってまいりまして、公共事業のあり方を環境という観点から見ておりまして、そういう面からいきますと、今回自然再生という限られた分野ではありますけれども、環境という分野が当初から関与できるという仕組みができ上がりつつあるということを評価していただきたいなと思っております。何せ壁が厚うございまして、一足飛びに金子先生のおっしゃるような姿にはいかないという現実も多分御承知だろうと思いますけれども、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
田端議員 金子先生には先国会から大変お世話になっておりますが、今の御質問、ぜひ共通の認識に立っていただきたいなと思うのは、この法律は「目的」のところで、「生物の多様性の確保を通じて自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与することを目的とする。」こういうことになっています。そして、過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的として、行政機関、地域住民、NPOあるいは専門家、専門的知識を有する者と、多様な主体が参加してという意味で、ボトムアップ方式であるということを先ほど来議論させていただいたところでありまして、この法律が施行されて定着していけば、先生が危惧されている環境を破壊するような公共事業に対して抑止的効果をもたらすであろうということを、私は、この法律の中に明確にそういった意味の精神が込められているということで、ぜひ御理解いただきたいと思います。
金子(哲)委員 大変申しわけございませんが、谷津提案者にぜひ、農林水産業に極めて御貢献の深い方でございますので、その点について見解をお伺いできればと思います。
谷津議員 実は、こういう問題について、一つの例で何を言わんとしているかちょっと気がついたのは、諫早の問題を言わんとしたと思うんです。
 実は、この自然再生法みたいなものを考える前に、私の頭の中にはこの精神というのがあったんですね。それはどういうことかといいますと、今諫早の話でちょっと申し上げるならば、あそこは、いろいろな意見が出ておりましたけれども、第三者機関を立ち上げてもらった、いわゆる検討委員会ですね。その検討委員会は、専門家もいれば、それからずっと地域で仕事をなさってきた、いわゆるNPOと言えるかどうか知らないですが、漁業者も入れてやるべきだというようなこと、と同時に真っ向からあの問題について批判をしておる方もいましたものですから、そういう人たちもみんな網羅して入れる必要があるということで、あの委員会を立ち上げさせてもらったわけです。
 ただ、あの委員会で出された結論を、調査を中長期もやるべきだというようなことで、私は、その委員会の結論というものについては、それを守るべきだというふうに思うんです。これはまさに私はこの再生協議会の一つになるのかなというふうにも思うわけでありますけれども、今それを必ずしも守っていない。また一方、調査することによって、新たないろいろな自然を破壊している要素も出てくるのではないか、あるいは、諫早のあそこだけではなくして、もっと大きな要素があるのではなかろうか、こういうこともわかってくるのではないかということから、調査をすべき、その間工事はやめておけというようなことを私は言っておったわけでありますが、ぜひこれは実施をしてもらいたいというふうにも今でも思っているんです。
 ですから、今私どもがWTOに提案をしております提案の中にも、農業の持つ多面的機能、これがあるわけですね。これは農業協定の二十条の中にあるわけでありますが、それはどういうことを言っているかというと、非貿易的関心事項、NTC、ノン・トレード・コンサーンというんですが、この中に、自然を守る、あるいは国土を守る、環境を守る、こういうふうなものが農業の中にもあるということなんです。
 しかし、実際に土地改良事業なんかの中においてそれが実施されているかということになると、ちょっと私も疑問を持つ点があるんです。なぜかというと、三面にみんなしちゃうんですね、コンクリを三面にしてつくる。確かに水の流れはよくなるかもしれないですけれども、かつては、ああいう水路というのは、みんなで出て草刈りをしたりなんかして共同作業しながら、そういう水の浄化というのもその中で行われてきた。ところが、全くそれが行われないような状況の工事をなさっておる。こういうふうなものをやはりもう一度やり直す必要があるんではなかろうかというふうなことも思います。
 それからもう一つは、土地改良区の中に、その管理水路の中に住宅地ができちゃいまして、住宅地のど真ん中に土地改良の水路があるというようなことで、これは家庭の雑排水とか何かがみんな入ってきまして、非常に水を汚濁しているということもあります。
 こういうようなものを考え合わせますと、この再生法によって、その辺のところをしっかりと自然を取り戻すべき工事をもう一度やらしていただいて、そういう中から、きちっと水を確保していきたいということも必要になってくるんではなかろうかなという思いもありまして、こういう提案をさせていただいたということを御理解いただきたいと思います。
金子(哲)委員 いろいろお話をいただきましたけれども、これまでの公共事業のありようについて見直す、方向性を考え直していくというようなことが、これが押し上げていくだろうという話はお伺いしましたけれども、見直すべき時期に来ているというような話を具体的に聞けないのが非常に残念です。やはり残念ですけれども、そういう精神は不十分かなと思わざるを得ないわけですね。
 それで、先ほど藤木委員も質問が出ました例えば釧路湿原の再生事業のことですけれども、先ほどもお話があったように、同じ釧路湿原の中で、一方では湿原の再生事業が行われる。そして片方では、それにやや問題があると思われる農地九百十七ヘクタールを乾燥化させる事業が六十五億円もかけて行われている。
 そうしてみますと、ちょっとお伺いしますけれども、今度のこの法律で、例えば釧路湿原の再生事業をやっている側から問題ありという指摘は、この農地に取り戻す事業に対して異議ありということは言えるんですか、言えないんですか。
谷津議員 これは、あそこにやった土地改良、圃場整備事業のことなんですけれども、今御案内と思うんですけれども、土地の多面的な活用といいましょうか、多様化する活用というのが必要なんですね。例えば、米だけをつくる田んぼ……(金子(哲)委員「いや、今の事例で具体的にどうなのかということだけお答えください」と呼ぶ)ですから、今のお話ですと、土地改良事業に対して、一方ではそれをやめておけというようなことの話があるかどうかということなんですか。
金子(哲)委員 湿原の再生事業を行いつつ、湿原に戻りつつあるところを国営の農地に転換したいということで、そういう事業が上流部で行われる。一方では湿原をどんどん広げていこうという努力をされ、一方では乾燥化も含めてやろうというようなことが同じ釧路川水系の中で行われているようなことに対して、一体この法案で、その事業を請け負った人たちから、ちょっと待ってくれと言うようなことができるんですかできないんですかということ、そういうことの精神をこの法案の中でお持ちですかどうですかということを端的にお伺いしているので、一般的な農地のどうこうということを聞いているわけじゃありませんから、その点だけ答えてください。
谷津議員 ですから、土地改良の事業が既に行われちゃっているところに、自然を取り戻すために、そこに自然に戻すというふうなものが食い込んできた場合にどうするかということなんですね。その場合には、こっちの法律でそれがやれるかということをお聞きなんですか。
金子(哲)委員 時間がたつのであれですけれども、これは新聞の報道によりますけれども、今年度から六十五億円をかけて新たに農地整備事業をやるわけでしょう。一方では釧路湿原を戻そうということでやっているわけでしょう。片方では乾燥化の作業をやるわけでしょう。だから、公益性の問題はありますけれども、私はその事業がいいか悪いか評価をしてくれということを言っているわけではなくて、例えば釧路湿原の再生事業をやっている側から、これはちょっと問題があるというような指摘はできるんですか、そういうことの話し合いに応じることができるんですかということを私は聞いているわけです。
谷津議員 ですから、土地改良事業をやっているのに、これをちょっと待ってくれというような意見があったときに、その協議の中に入れるのかどうかということを聞いていると思うんですが、それでよろしいんですね。
 私は、その問題については、当然協議の中に入れるべきだと思いますよ。
金子(哲)委員 しかも、これは今年度から始めているわけですね。釧路の再生事業を一方で始めながら、それに影響を与えると思われる事業が今年度から六十五億円もかけて行われるというようなことが、皆さんが一番先進的なと言われて私どもに紹介をいただいた釧路湿原の再生事業の現地の中では、そういう事態が起こるわけですよ。
 だから、私が聞いておりますのは、やはりこの事業というのは、一体本当に公共事業と言われるものとの関係というのはどうなるか。どっちがウエートが高く、これはウエートの問題ではなくて、そういうことがきっちりと、協議はできるけれども、協議はしますけれどもやりっ放しですということでは困るわけですね。その辺はどうなるわけですか。例えば、釧路湿原側の方が、再生事業側の方が、科学者の根拠としてこれはおかしいと言ったら、とめることはできるんですか。その辺はどうですか。
谷津議員 これは、土地改良法でやる先ほども言いました三面のコンクリにするとか何かじゃなくて、それを自然の中でのものの水路にするとか何かというようなことで、協議は幾らでも私はできると思いますね。そういうような形でやるべきだと思うんですよ。それは、いわゆる多面的機能といいますか、農業の持つ多面的機能の一つに私は入ってくると思いますから、当然協議はやっていくべきだと思いますし、その辺については十分私は事業者の方でも理解はできるものと思います。
金子(哲)委員 もうこれ以上この問題で長く時間をとれないのであれですけれども、やはり私は、この法律の中でこれほど自然再生ということを重要視して、法律までつくってやろうとされるのであれば、当たり前のことですけれども、せっかく湿地が回復しそうなところを今年度の事業としてスタートをするような、同じ農林水産省の側にあってやるようなことが一体いかがなものか。
 一方で、国会で議員立法でこういう自然再生という重要なことが提起されている。一生懸命やっていらっしゃる。その上流では、それに逆行するようなことが国の国営事業としてやられる。そういうことが実際には防ぎ切れない。だから、私は最初に申し上げた質問に戻るわけですけれども、この法案では、もちろんそこまでやる法案ではないとおっしゃるかもわかりませんけれども、残念ながら、そういうことに対してやはり歯どめがかけられるようなものではないんじゃないかということを指摘しておきたいと思います。
 次の質問に移りたいと思います。
 この法案の対象となる自然再生事業は、過去に損なわれた生態系その他の自然環境を取り戻すことを目的としている。これはわかりますけれども、しかし、過去に損なわれた自然環境というのは随分たくさんあるわけですね。その中で、自然再生事業としてこれがふさわしいとかどうだろうかというようなことは、一体、さらにどういう基準で決まっていくんですか。
 事業の規模とか、だれが提案するのであるとか、それから、先に行われた公共事業と関連すれば、公共事業がいつ終わって、どれぐらいあったとか、確かに、言われたところは過去に損なわれた生態系の回復ということですけれども、過去に損なわれた生態系の一体何、どういうものを、これは自然再生法ですべてやることはできないと思うんですけれども、それはどういう基準で、どういう判断でやられるわけですか。
山本(公)議員 先生、だれが提起者となり、どういう基準でということなんだろうと思いますけれども、要するに、私どもがイメージしているこの事業というのは、先ほどからお話がありましたように、ボトムアップという言葉が何回も使われましたけれども、基本的にその地域に住んでいる方々から出てくるものであってもらいたいなというのがまず最初のイメージだったんです。
 要するに、自分の隣に流れている川というのはもっときれいだったね、そういう素朴な思いからこの事業が発展をしていければいいなというイメージから出発をいたしております。象徴的に釧路川をお取り上げになりましたけれども、やはり自然再生というのは、身近なところで住んでいる方が一番よくわかっていらっしゃるんだろうと思います。
 ちょっと長くなって恐縮ですけれども、よく東京に住んでいる方が一年に一遍私の宇和島という地域に帰ってみえられます。昔の宇和島はよかったねと言われます。だけれども、一年に一遍帰ってきたら、いいところだけ見て帰られるんだろうと思いますけれども、やはりそこに住んでいる人間というのは一番よく地域のことをわかっています。この部分は手を加えて住みやすくしなければいけない、この部分は残さなければいけない、そういう地域で住んでいる人間の声を一番重視したいというのが私のもともとの発想だったんです。だから、外から見ての自然じゃないんです。そこに住んでいる人の自然の再生をしたいという思いがあったんです。
金子(哲)委員 そうしますと、実施団体とのかかわり、実施者とのかかわりも出てくるんですけれども、そういう人たちというのは、私はそれだけが発議者になるというのはちょっとおかしいと思っております。それは、地域に直接住んでいなくても、そこの自然に触れる機会の多い人たちも随分いるわけですから、それからまた、そういうことを考えてきた人たちもいるわけですから、そういう人たちもなると思うんですけれども、そういう人たちの場合、この法案で言う実施者になれないと私は思うんですよ、それだけの、工事を請け負うだけの力もなかった場合。自分ができない場合があると思うんですよ。そういうときはどのように扱われるんでしょうか。
 私は、今山本提案者が言われたことでもう一つお伺いしたいのは、一体そういう意見は、どこにそういう意見を持っていき、それが例えば妥当かどうかということはだれがどこで判断をするんでしょうか。
山本(公)議員 法律には第十一条に、実施者の相談に応じる体制の整備というのを明記いたしております。ただ、これは主務大臣という表現になっておるわけでございますけれども、私ども先ほど申し上げたイメージをしたときには、多分その町内会の人、自治会の人が何人か集まってきたときには、最初にやはり相談されるのは市町村だと思うんです。一番身近な行政体だと思うんです。我々はこうしたいんだけれどもどうしようという話が多分一番最初に相談されるんだろうと思っておりまして、法律には第十一条で、「主務大臣は、実施者の相談に的確に応じることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。」と書いてございますけれども、この意味は、末端の市町村に至るまでそういう相談窓口をつくってくださいよという趣旨だというふうに我々は理解しておりますから、まずそこに相談されるんじゃないかと思います。
金子(哲)委員 「必要な体制の整備を図るものとする。」ということになっていて、今まだできていないわけですね、そういうものは。十二月一日から実施をするという法案のようですけれども、全然そういうものが整備されていない。そして、自治体もそんな意識はまだない。現実的に行ったとき、では一体今だれが受けてくれる。
 そしてまた、私が重要だと思いますのは、地域の住民が言ってきたときに、今のお話に出てまいりませんでしたけれども、では、これはそういう事業としてやりますよ、やりませんよ、できませんよという判断というのは、だれがどういう基準を持ってやるんでしょうか。
田端議員 先生御懸念の点はあると思いますが、それは第七条の自然再生基本方針というものをここで策定することになっておりますから、そういった方向性については、あるいは理念、その他具体的な措置等々はこの基本方針の中で方向性が示される、こういうふうに理解していただきたいと思います。
金子(哲)委員 それは、結局中央でそれをつくるわけですか。つくることになるんでしょう。
 つまり、一番提案する側は、まさに山本提案者もおっしゃったように、身近に日常的にその自然を取り戻したいと思っていらっしゃる人たちですね。それと、中央でそんな細かいことまでできるわけはないんですよ。その大きな基準の中で、地域の人が持ってきたことをだれがどう言って判断するんですか。自治体が判断するんですか。どこで最初に受けた人が判断をするんですか、そのことは。そのことを明確に答えてください。
山本(公)議員 今田端さんが御説明になりましたように、とにかくこの事業を現実化しようと思ったら、自然再生協議会を組織しなきゃいけないわけです。私どもはこの法律をつくっておって、多分最大のエネルギーを使うのはその部分だなということを感じながらつくっておりました。大変な組織をまずつくらなかったら思いが現実化しないということは、これは否めない事実だと思っております。
金子(哲)委員 私とは論議がどうもかみ合わないわけですね。一番もとに、協議会までいけばそれはいいですよ。その前に、提起をした、例えば、私は広島県におりますから、瀬戸内海のあの海岸を取り戻したいと提起した。県に行くんですか。広島市に行くんですか。そして、そのときにはだれがどういうことで、協議会を立ち上げるまでには、この事業はそこまでこれから進んでいこう、自治体も入っていこう、こういうことになるまでに切り捨てられる可能性があるじゃないですか。その判断はだれがどの基準でやるのかということが、この法律の中でどこに書いてあるかということを聞いているんです。
山本(公)議員 窓口に相談に行かれまして、それは自治体だと思います。自治体の窓口に、例えば金子さんが何かの事業をしたいと窓口に相談に行かれた。相談窓口においては、まず協議会をおつくりになってくださいという示唆を受けるんだろうと思います。その協議会はこうこうこういう構成員で成り立っております、それをまずあなたの力でつくってくださいということになっていくんだろうと思います。
金子(哲)委員 それを聞きましてよくわかりました。全く本当に純粋な気持ちで地元の住民がそういうことを提起しようとしたら、これは到底この法案では適応できないということです。そんな力が、それは大きな団体もあるでしょう。だけれども、そんな一つの地域の例えば町内会がそこまで、協議会、いろいろな学者を連れてきてやるような、立ち上げるようなことは、私は到底難しいというふうに思います。いいです、答弁はいいですから。
 やはりこれは、私は最初からこの法案があったときに一番の疑問に思っていたことですけれども、おっしゃるように、損なわれた自然というのはたくさんあるわけですよ。そこの中で、結局のところ、それは協議会まで立ち上げるというのは、力がある団体がやりなさいということになるんですよ。力のないところ、だけれども、この自然はどうしても取り戻したいという思いの強い人たちの気持ちというのは、残念ながらこの自然再生推進法の中では吸い上げていただけないなということがどうもはっきりしたように私には思えてなりません。
 それから、公共性の問題ですけれども、先ほど前にアサザのお話がありました。例えば、今回大きな問題をめぐって出てきたのは、冬期の水位を上げるかどうかという問題が出てきたと思うんですね。これはまさに、私はある意味の公益性の問題にかかわってくると思うんですよ。
 第六条の中に、他の公益との調整ということが書かれておりますので、こうして見てみますと、特に公共事業の場合、まさに公益性のためにそもそもいろいろな公共事業は行われてきたと思うんですよ。そうしてまいりますと、最終的に、やはり結局のところは公益性というものが優先をされていくのではないかという危惧をこれは持たざるを得ないわけですね。
 今度の私どもが聞いている問題でも、アサザの問題も、まさにそこから問題が派生をしているわけですね。国土交通省の出先機関とアサザ基金の皆さんとの中に意見の対立が出ている。本当はこれが一番最優秀のいわばボトムアップ型のことということで御説明をいただいたわけですけれども、しかし、残念ながらそこでもそういう問題が出てきている。
 それは、どうもそのやり方を見ても、そういう円卓会議の申し入れをしたら、その人と話をするということよりも先に記者発表で、そういうことはできない、実施はしますというようなことが発表されるような実態が、この自然再生推進法の中ではモデルとも言われて私どもが説明を受けた実際の中で、実は結局のところ官の主導で最終的にはそっちのところに意見が進んでいくのではないか。
 では、NPOの団体を全部入れます、先ほど、希望があればその協議会の中に全部入れますという話が答弁ではありましたけれども、いや、本当に実際そういうことになるんですかということを私自身は、私自身が考えても、たくさんのNGO、NPO団体があって、それらがすべていろいろ意見を言う、まとまらなくなることだってたくさんあると思うんですよ。そのときに、私は、例えばどういうことでそのNPOの団体なども意見を聞かれるんだろうか、どういうことに結局なるんだろうか、今は答弁ではどこでも入れますというふうにおっしゃっていますけれども、実際上、そんなことが可能なのかということに疑問を持たざるを得ないし、それから、環境省からもきょうお見えですから、先ほど言いましたアサザ基金で今起きていること、まず先に霞ケ浦で今起きていることをどのように評価されているか、まず環境省の御意見を伺いたいと思います。
岩尾政府参考人 霞ケ浦では、アサザの保全、復元等、自然再生への取り組みとして、市民団体等々が連携しながら、植生回復などの湖岸の再生をしているということを承知しております。
 ですから、先ほど申し上げましたが、この法律の成立また施行後におきまして、この法律の趣旨を踏まえて、自然再生協議会に参加した多様な主体が今後とも霞ケ浦の再生ということで進んでいくものというふうに理解しております。
金子(哲)委員 それぐらいの情報しか伝わっていない。それぐらいの認識しかなくて、よく答弁できたと私は思いますよ。
 先ほど来話が出ているのは、もう具体的な問題が起きているということを指摘されているわけでしょう。それに対して環境省としてどういう見解を持って、例えば取りまとめ役になれるんですかなれないんですか、そういうことをお伺いしているので、今のような一般的な、しかもこれがモデルといって環境省の皆さんも私どもに説明したわけでしょう。推進法ができましたらそういうところに行きますということでなくて、まさにそれをモデルとして、この法案をつくってきた原型とも言われている。その原型とも言われているところで現に問題が起きていることに対して、どのように考え、どのように対処されようとしているか、それをお伺いしたいんです。
岩尾政府参考人 環境省としては、地元のアサザ基金を中心に自主的な活動ができるような補助をこの数年ずっと行ってきております。つまり、私どもとして、霞ケ浦の自然を戻すということで、そのアサザを植える運動その他に対して補助をしてきたという経緯がございます。
 そのようなものと国土交通省の行う事業というのが現状では両々進んでいるということで、補助事業なども行われてきているというふうに思っておりますので、先ほど国土交通省の方からも答えているかと思いますが、今後意見交換会などをつくってやっていこうということですので、そのような現状というのは今後見守っていきたいというふうに言っているわけでございます。
金子(哲)委員 しかし、皆さん方がこれまで説明されたアサザ基金の事業のあり方、NPO法人としての評価があったわけでしょう。今は結局、国土交通省の言い分が通るように見守っていくわけですか、それともNPO団体の皆さんがおっしゃっていることを通るように環境省としては考えられるんですか、どちらですか。
岩尾政府参考人 ですから、事業の実施主体あるいはその地域に住んでいる方々の合意形成ということが必要なわけで、そのために今度の法律では再生協議会というものをつくっていただくわけです。私どもとしては、国の要綱、あるいは環境大臣それから他の農水大臣、国土交通大臣と調整しながら、推進会議というのを設けていこうということですので、法律ができた後にはそのような連絡はより密になるものというふうに理解しております。
金子(哲)委員 では、重ねて伺いますけれども、今のアサザでのプロジェクトの実施者はだれとお考えですか。もし仮に今法律ができたら、実施者はだれだとお考えですか。
岩尾政府参考人 アサザプロジェクト自体は、私の理解では、アサザ基金その他の、NPO法人アサザ基金などを中心とする多様な集合体という理解をしております。
金子(哲)委員 そうであれば、実施者の意見がもっと通っていいんじゃないですか。実施者が円卓会議をやろうと。そして、国土交通大臣も話し合いをしようと。あの参議院、大臣今席を外されましたけれども、大臣はあそこの答弁の中でも、アサザ基金こそ、アサザプロジェクトこそこの自然再生推進法のモデル事業で、私は高く評価しております、こういう話をされているところで問題が起き、それで私は実施者ということを聞いたわけですよ。
 実施者がもしアサザ基金の皆さんであるならば、アサザ基金の実施者の人たちの提案がもっと受け入れられるような体制をつくっていく、応援をしていく、そういうことが必要じゃないですか。
岩尾政府参考人 ですから、先ほども最初の答弁で国交省の方からあったかと思いますが、この法律の成立、施行後に、法に基づく自然再生協議会に参加して、市民団体あるいは行政機関などと一緒に積極的に対応したいというふうに答えたというふうに理解しております。
金子(哲)委員 提案者の方どなたか、今の質問にお答えいただけませんか。
田端議員 私、つい先日、現地へ行ってまいりましたが、おっしゃるような問題といいますか点が提起されています。
 端的に言いますと、人事交流があって、所長さん以下課長さん等全部入れかわってしまった。そういう意味で、そこで人的なつながりがうまくいかなくなってこういう問題が生じているというのが率直な御意見のようでございました。その旨、私もこれは大変なことだと思いましたので、国土交通省の方にもお話ししまして、せっかくこういうモデルケースとして頑張っているアサザの皆さん、あるいは小学校や中学校の皆さん、一緒になってやっているわけですから、そういうことはぜひこれ以上トラブルのないように何とかそこをうまくできないかということで、私の方からも助言させていただいております。
 つまり、この法律との関係でいきますと、現実にアサザの方が先に進んでいると思うんですよね。そういう意味では、非常に先駆的役割を果たしていると思いますが、この法律で考えていけば、そこには当然、国土交通省とか茨城県とか石岡市とか、そういう地元のグループも入ってくることになると思いますから、そこのところはそういう意味のきちっとした議論が協議会の中で必要になるのではないかと思います。
 だから、今起こっている事件とこの法律で言わんとしていることとは、そこは少し温度差を持って御理解いただきたい、こういうように思います。
金子(哲)委員 時間がなくなりましたので終わりたいと思いますけれども、この法案ができたときにまさに中心的な役割を果たさなければならない環境省が、その責任者が今ぐらいの認識しかなくてこの法案を、提案されたのは議員の皆さんですけれども、理解をしているということであれば、これは言われているように環境省がかなりイニシアをとれることのできる法案だなどと説明を受けても、実態上は、従来のとおり、最も権益の多い国土交通省、農林水産省に押し切られて、環境省は実際の指導力を発揮できない、これがこの自然再生推進法の中身だということを、今論議をさせていただいて改めて痛感させていただきました。
 以上で質問を終わります。
松本委員長 次回は、来る十五日金曜日午前九時十分理事会、午前九時二十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    正午散会


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