衆議院

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第9号 平成17年4月26日(火曜日)

会議録本文へ
平成十七年四月二十六日(火曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 小沢 鋭仁君

   理事 大野 松茂君 理事 桜井 郁三君

   理事 竹下  亘君 理事 西野あきら君

   理事 奥田  建君 理事 近藤 昭一君

   理事 肥田美代子君 理事 石田 祝稔君

      宇野  治君    大前 繁雄君

      加藤 勝信君    城内  実君

      小坂 憲次君    鈴木 淳司君

      砂田 圭佑君    根本  匠君

      能勢 和子君    鳩山 邦夫君

      船田  元君    松宮  勲君

      水野 賢一君    荒井  聰君

      佐藤謙一郎君    田島 一成君

      長浜 博行君    松本  龍君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      高木美智代君    土井たか子君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   環境大臣         小池百合子君

   経済産業副大臣      小此木八郎君

   環境副大臣        高野 博師君

   環境大臣政務官      能勢 和子君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           樋口 修資君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           木谷 雅人君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      大島  寛君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           深野 弘行君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            岩井 良行君

   政府参考人

   (気象庁長官)      長坂 昂一君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       滝澤秀次郎君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  小島 敏郎君

   参考人

   (株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長)   永里 善彦君

   参考人

   (財団法人地球環境戦略研究機関理事長)      森嶌 昭夫君

   参考人

   (財団法人世界自然保護基金ジャパン気候変動日本担当シニア・オフィサー)  鮎川ゆりか君

   参考人

   (特定非営利活動法人気候ネットワーク常任運営委員)            畑  直之君

   環境委員会専門員     遠山 政久君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     水野 賢一君

  土井たか子君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  水野 賢一君     宇野  治君

  山本喜代宏君     土井たか子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七九号)


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     ――――◇―――――

小沢委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長永里善彦君、財団法人地球環境戦略研究機関理事長森嶌昭夫君、財団法人世界自然保護基金ジャパン気候変動日本担当シニア・オフィサー鮎川ゆりかさん、特定非営利活動法人気候ネットワーク常任運営委員畑直之君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず永里参考人にお願いいたします。

永里参考人 おはようございます。旭リサーチセンターの永里でございます。

 私は現在、環境省の中央環境審議会の地球温暖化部会の臨時委員を仰せつかっております。また、日本経団連における検討にも参加しておりまして、本日は、産業界に身を置く者として、地球温暖化問題に対する産業界の自主的な取り組みの状況や基本的な考え方なども紹介しながら、今回の温暖化対策法につきまして若干の意見を陳述させていただきたいと存じます。

 御承知のように、二月十六日に京都議定書が発効し、我が国は九〇年度比六%削減という重い約束を達成することが義務となりました。申し上げるまでもなく、地球温暖化問題は、我々がこれから未来永劫に対応していかなければならない長期的でかつ地球規模の問題であります。この問題に対応するために、国民一人一人、政府、地方自治体、企業などのあらゆる主体が、みずからの問題としてとらえ、それぞれ自覚と責任を持って行動を続けていくことが何より重要であると考えております。

 この自主的な取り組みに関し、産業界の行動の中心となっているのが日本経団連の環境自主行動計画であります。経団連では、一九九二年の地球サミットに先駆けまして、一九九一年に経団連地球環境憲章を策定し、また、一九九六年には経団連環境アピールというものを策定しております。さらに、これらを受ける形で、京都議定書に先立つ一九九七年に、二〇一〇年度に産業部門及びエネルギー転換部門からのCO2排出量を一九九〇年度レベル以下に抑制するよう努力するという統一目標を掲げ、経団連環境自主行動計画として、社会にコミットし、行動することで大きな成果を上げているところであります。

 本日の温暖化対策推進法の報告・公表制度にも関係いたしますが、経団連の自主行動計画は、目標の設定、行動、取り組みのフォローアップ、計画の結果の公表という、政府が今般京都議定書目標達成計画で行おうとしているPDCAサイクルと同様の手法を用いております。経団連自主行動計画には現在三十四業種が参加しており、我が国の産業部門及びエネルギー転換部門の約八割強をカバーするに至っております。

 二〇〇三年度のフォローアップ実績も既に公表したところでありますが、これによりますと、九〇年比で〇・六%の削減、これには原子力発電所の停止が影響しておりますが、これを考慮いたしますと、実質的には三・八%の削減を達成している計算になります。

 産業界といたしましては、おのおのの業種の実態を最もよく把握し、最も効率的な手法で環境と経済の両立を図っていくためには、自主的な取り組みを強化していくことが最善かつ不可欠であると認識しております。今後とも、透明性、信頼性を一層向上させながら、自主行動計画を着実に達成することで我が国の温暖化対策に貢献してまいりたいと考えております。

 また、環境問題に対する企業の取り組みを積極的に情報公開していこうということで、昨年一月には環境報告書等の三年間倍増計画を宣言いたしまして、会員企業各社に呼びかけを行っております。

 経団連が会員企業を対象に昨年行ったアンケート調査によりますと、環境報告書を作成している企業は回答企業のうちの五四%、また自社のホームページに環境情報を掲載している企業は七四%にも上ります。また、近い将来に作成する予定と回答した企業も多数あり、企業の環境に関する自発的な情報提供の意識は急速に広がっております。今や環境問題に対する企業の取り組み姿勢自体が投資家などによる企業評価につながっており、企業価値を高めるためにも環境情報の提供が重要な経営課題の一つとなりつつあることを示しております。

 このように、企業サイドでは、環境問題に対して自主的な目標を社会に掲げ、その達成のためにみずから行動することを取り組みの基本姿勢としております。

 今般の京都議定書発効を受けまして、現在、政府では京都議定書目標達成計画を策定中と伺っております。計画案によりますと、経団連の自主行動計画は産業・エネルギー転換部門における対策の中心的役割を果たすものとされておりまして、我々といたしましても、役割の重要性を改めて認識しているところであります。

 さて、今後我が国が目標達成に向けて着実な対応を継続していくためには、個々の対策について定期的に定量的な評価を行い、その進捗状況を把握しながら、追加的な対応が必要か否かを判断していかなければいけません。そのためには、今回の温暖化対策推進法や省エネ法の改正で求められるような、排出量に関して一定の報告や公表を制度化することも必要であろうと存じます。

 産業界といたしましては、先ほど申し上げたとおり、環境報告書などを通じた自主的な環境情報の開示が最も効果的であると考えてはおりますが、規模の大きくない企業やサービス業などの第三次産業では、まだ自主的な取り組みが十分でない部分もございます。また、情報の統一性を図るという観点からも、法律により一定の報告を義務づけることは、温暖化対策を進める上で有用であろうと考えているところであります。

 法律に基づきまして排出量の報告や公表を行う場合に、企業として最も御留意いただきたい点は、やはり企業秘密に当たる部分の扱いであります。この点に関しましては、今回の法案におきましても一定の御配慮をいただいているところでありますが、なぜ温室効果ガスの公表が企業秘密に当たるのかにつきまして、例えば半導体を例にしまして、この機会に御説明させていただきたいと存じます。

 我が国の産業を支えている半導体産業では、炭酸ガスに比べて極めて高い温室効果を持つSF6、PFC、N2Oなどの温室効果ガスが、半導体や液晶の特定の製造工程で、性能などを決定する反応ガスの一つとして使用されています。この反応ガスの役割は、具体的にはトランジスタや配線を形成するのですが、製品を加工し、性能、品質、生産性を決定する重要な要素の一つになっています。これらのガスは限られた特定用途の製造工程でのみ使用されますので、工場の排出量やガス名の報告、公表により、競合企業は歩どまりを推定でき、製造コストを推定できます。また、新技術を開発して製品化すれば、ガスの種類と使用量もおのずと変わってきますので、新製品の開発状況が推定できます。これが、国内だけでなく、韓国、台湾、中国にも筒抜けになりますので、まさしく敵に塩を送るようなもので、国際競争力の低下につながります。

 したがって、半導体各社はこの反応ガスに関する情報の企業内管理を徹底して行っています。すなわち、技術部門では、ガス流量などは製造指示書として担当の技術者が指定し、技術文書として企業秘密にしています。製造現場では、製造指示書は管理監督者、担当者以外の閲覧は不可能になっていて、これも技術書として企業秘密にしています。また、購買部門でも、ガスに関する情報は材料購入価格などと同様の重要な購買データとしても管理され、製造原価を決める重要な要素として企業秘密にしています。

 以上のように、温室効果ガスの公表の仕方によっては、そのまま企業の生産プロセスや製造コストが明らかになってしまうことにつながります。このことは、繰り返しになりますが、単に国内企業他社との関係のみならず、我が国産業の秘密を諸外国にさらすことにもつながり、ひいては我が国産業の国際競争力を低下させることにもつながりかねません。今後、地球温暖化問題を考えていく上で、いかに経済と環境とを両立させていくかという点が最も重要な課題でありますが、そのような観点からも、企業の秘密の保護に関しましては、どうかよく御理解をいただきたいと存じます。

 京都議定書の発効に伴いまして、産業界といたしましては、みずからの取り組みを一層強めることによって温暖化対策に貢献してまいりたいと考えております。また、これまで取り組みがおくれていた民生や運輸部門に関しましても、よりすぐれた省エネ型製品やサービスを充実したり、物流を合理化したり、あるいは従業員の家庭での省エネを支援するといった取り組みを通じて貢献してまいる所存です。環境と経済の両立を目指して、国や地方自治体、関係諸団体との連携も深めながら行動してまいりたいと考えておりますので、何とぞよろしく御理解を賜りたいと思います。

 私からの意見陳述は以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

小沢委員長 ありがとうございました。

 次に、森嶌参考人にお願いいたします。

森嶌参考人 おはようございます。森嶌でございます。

 私は、本日、この委員会で審議していただいております地球温暖化対策推進法を含みます政府の地球温暖化対策の諸対策につきまして、地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議という大変長い名前の政府の会議がございますが、その会議の議長といたしまして、また、前中央環境審議会の会長といたしまして、現在、政府で閣議決定に向けて最終的にその策定の作業を進めておられるということでございますが、京都議定書目標達成計画の中環審における策定にかかわってまいりました立場から、本日の意見の陳述をさせていただきたいと思います。

 御案内のように、地球温暖化対策推進法は平成十年に成立をしておりまして、実は、私はその際に参議院の国土・環境委員会で参考人として意見陳述をさせていただいております。この法律は、その平成十年の前年の京都会議で、日本は京都議定書が成立いたしますと、温室効果ガスを六%、一九九〇年を基準として削減をするという義務を負うということになっていたものでございますから、そこで、京都議定書が発効する際に向けて、まだ具体的な詳細は決まっておりませんでしたけれども、温室効果ガスは国民各界各層にかかわっているものでございますので、国、地方公共団体、事業者、国民、すべてがその削減に向けての責務を負うという観点からその体制を組もうということ、それから、政府がそれに向けて総合的、有機的な施策の体系をつくるということで基本方針をつくるべきであるというようなことから、いわば一種の枠組みの法律をつくろうということで、具体的な内容はそれほど詳細に権利義務を決めたものではございませんでしたけれども、法律をつくったわけでございます。

 そして、さらに平成十四年に改正をいたしております。これは、前年にマラケシュでCOP7という第七回の締約国会議がございまして、ここで京都議定書の運用細則が決まりまして、いよいよ、どういうふうに京都議定書が動きそうだということが決まってまいりました。そして、我が国の議定書の締結に向けて国内法の整備をする必要があるということで、改正をしたわけでございます。まだ京都議定書は発効しておりませんでしたけれども、京都議定書が発効した場合には、こういう権利義務にもかかわるようなことも含めて、我が国ではこういうことを始めるということで法律を改正したわけでございますが、この際にも、私はこの委員会に、当時、中環審の委員でございましたので、やはり参考人として意見陳述をさせていただきました。

 ここでは、まだ京都議定書は実効性を持っておりませんでしたので、実効性を持った場合にはということで、条件つきではございましたけれども、京都議定書目標達成計画を法律上のものとして規定する、そして内閣に地球温暖化対策推進本部を法律上のものとして置く。これは既に実際上に置かれておりましたけれども、これを法律上のものとして置くということでありました。そして、その改定の際に、一部に、温室効果ガスの排出量の算定を国がいたしまして、京都議定書の義務としてそれを記録して報告する、国としてそういうことをしなければなりませんので、それを算定する。そこで、そのためにそういう作業を行って、それを公表するという、環境大臣がそういうことをするということもうたってございます。これは、いずれも京都議定書が発効してから実際に法律的に行うということでございます。

 そこで、今回の改正は、そうしたものを前提として、いわば京都議定書の発効に伴う改正でございます。それで、今回の改正は、実はこの法律の一部改正だけという点を考えてみますと、ささいな改正と申しますと大変失礼な言い方でございますけれども、それ自身は非常に小さな点のように見えますけれども、実は、これは先ほど申しました京都議定書目標達成計画などとの、我が国が京都議定書の目標達成のさまざまな施策を推進していく一環として、この法律の改正も位置づけられているわけでございます。

 ことしの二月に京都議定書が発効することになったわけですが、それ以前から、中環審、それから経済産業省に置かれております産構審、産業構造審議会というのがございますが、私はそこの委員でもございますけれども、そこで現在我が国の温暖化対策はどういうふうに進んでいるだろうということをチェックしてまいりましたが、残念ながら、進んでいないどころか、現実にはふえております。

 産業部門は、これも削減というわけにはまいりませんけれども、一生懸命努力しておられますけれども、計画の上では一応達成よりもちょっとふえておりますけれども、民生部門、運輸部門などはふえておりまして、御案内かと思いますけれども、二〇〇三年の速報値では八%プラスでございまして、そうだといたしますと、六%を削減しなきゃならないということになりますと一三%ぐらいの削減をしなければならない。といたしますと、これは追加的な対策をこれからどんどんととっていかなければならないということで、中環審、それから産構審等で大いに議論をいたしまして、これから、二〇〇八年の京都議定書の現実の義務化が始まる前に何とかしなければならないということで、現在、先ほど申しました京都議定書目標達成計画でいろいろな措置を考えているわけであります。

 同時に、先ほど申しました合同会議におきまして、私も総理にお目にかかって、実際に計画で書いてあるけれども、それをどう実行するかということが大事であると。まず政府が率先して実行すること、さらに、政府の各省がばらばらにやっていたのではだめなので、これを政府間で連携をして、協力をして、政府が一体となって進めていかなければならないし、また、それぞれの施策も、それをポリシーミックス、ポリシーを組み合わせてやらなければ、ばらばらにやっていたのでは、いい政策も実現の効果が上がらないということを申し上げて、ぜひ総理のリーダーシップをお願いするということで、達成計画がもうすぐ閣議決定されるのだろうと思いますけれども。

 そして、法律の面では、本日御審議を願っておりますこの推進法の一部改正と、それから省エネ法の改正、それからもう一つ、流通業務の統合化及び効率化の推進に関する法律ということで、これは、なるべく生産と流通と、それから輸出等の問題、こういうものを省エネで効率よくやろうというような法律でございますが、これは私のきょうの課題ではございませんので、いずれ出てくることだろうと思いますけれども、これらはいわばワンパッケージでございます。

 私、何回か参考人に呼ばれておりますけれども、きょう非常に難しいのは、この法律だけがどういう意味であってというふうに御説明をしてお願いをするのでは十分でない、全体の中でこの法律がどういう意味を持っているということを御説明しなければならないのではないかという点で、繰り返し申し上げますけれども、この推進法の改正はあくまでもパッケージの一つであり、しかも全体の中の一環であるということでございます。

 そこで、では、この法律の改正は何があるのか、どういう点が改正されるのかということでありますが、まず一つは、長期的展望に立った温暖化対策の実施の推進に関する総合調整を、先ほど申しました推進本部の役割とするということが法律に書き込まれます。つまり、計画をつくってということだけではなくて、実施の推進をする、そのために毎年チェックをする、合同会議もチェックをするということでございます。そして、政府の間で連携を図って、一体化をして進めていくということでございます。

 それから二番目が、先ほど永里参考人の方からもお話がございました、温室効果ガスの算定・報告・公表制度を導入するということでございます。

 これは、一つは、国にとっては、先ほど申しました、これは、大企業、事業所、これは新しく運輸も入りますけれども、事業所からの温室効果ガスの排出量の報告を受けて、国としてそれを把握するということでございます。企業ごと、業種ごとに把握して、これを施策に国として全体として反映をさせていくということでありますし、都道府県ごとに集計して、都道府県などの地方自治体の政策に反映させるという意味でのデータとなると思います。事業所、事業者は、みずからそれを毎年集計することによって、みずからが、では、これからは自分たちでどういうふうにして削減していくかという、みずからの取り組みに反映をさせていくということであろうかと思います。

 そして、一般の人にとって見れば、公表をするということを通じて、最近、はやりでございます、いわば透明性があることによって、世の中はどういうふうに動いているか、それを通じて、情報的手法と申しますけれども、ですから、どこが何をしているかというよりも、世の中がどう動いているかということによって、自分たちも何をしなければならないか、先ほど申しましたように、実は民生などは非常に排出量がふえておりますので、事業者は何をやっているか、自分たちも何をしなければならないかということを自覚して参加をしてもらうということであろうかと思います。それぞれ意味が違うと思います。

 そこで、最後にお願い申し上げたいのは、国民各界各層が参加をしないと、今の状態ではこれはとても間に合わない。先ほど申しましたように、今の状態では、今の施策を進めても、恐らく六%は足らないというような感じでございます。

 そこで、国会の先生方もぜひリーダーシップをとっていただきたい。総理もリーダーシップをとるというふうにおっしゃっていただきましたけれども、ぜひリーダーシップをとって、この法律だけではなくて全体を見て、我が国がこの温暖化の問題についてリーダーシップをとれるような施策をぜひ進めていただきたいと思います。よろしくお願いをいたします。

 どうもありがとうございました。(拍手)

小沢委員長 ありがとうございました。

 次に、鮎川参考人にお願いいたします。

鮎川参考人 おはようございます。WWFジャパンの鮎川です。

 WWFは、御存じだと思いますけれども、一九六一年に設立された世界最大規模の自然保護団体で、約四百六十万人と約一万社・団体のサポーターによって支えられております。百カ国以上の国で活動しており、プログラムとしては、森林、淡水、有害化学物質、生物の種の保全及び気候変動プログラムが展開されています。気候変動プログラムでは、二十五カ国、五十名から成るグローバルなチームが編成されておりまして、私はその中で日本担当をしております。二一〇〇年までの世界の気温上昇を二度未満に抑えるべく、最大の排出セクターである電力部門に焦点を当てたパワー・スイッチ!キャンペーン、企業の自主的取り組みとして削減目標を掲げ、それを第三者機関に検証、認証してもらうクライメート・セイバーズ・プログラム、そして日本においては、大規模排出者に向けた国内排出量取引制度の提案、及び一般の方たちの参加できる温DOWN化計画キャンペーンなどを展開しております。

 ことし二月十六日京都議定書が発効し、ようやく国際的な取り組みが始まったということで、そうした中で、日本は京都議定書の約束を達成するために京都議定書目標達成計画案を立てたことは評価したいと思います。しかし、この計画案は、以下の点で残念なものとなっています。

 それは、九〇年以来日本の温室効果ガス排出の増大傾向をとめられなかった反省に基づいておらず、増大傾向が続いている分野や、特に排出量の多い事業者に対する新たな政策、施策が定められていない。それから、長期的に見て、脱温暖化社会構築を促す枠組みがなく、この達成計画案は排出を減少方向に向かわせるものとなっていない。新たなものと言えるのは、省エネルギー法の改正による省エネの取り組み強化、拡大と、本日議論されております温暖化対策推進法の改正による排出量算定・報告・公表制度でありますけれども、これ自体が排出削減につながるわけではなく、排出量削減を担保するものともなっておりません。しかし、これは、排出実態を把握し削減対策を立てる上での第一歩でありますので、それについて以下のことを述べさせていただきます。

 まず、排出の抑制という言葉があちこちで使われているんですけれども、これはすべて削減とするべきではないかという点です。

 例えば、第一条「目的」のところに「温室効果ガスの排出の抑制等を促進するための措置」とありますけれども、これは排出の削減とするべきでありますし、ほかにも、「国の責務」「地方公共団体」では「削減」となっているのに、「温室効果ガス総排出量が相当程度多い事業者について温室効果ガスの排出の抑制」となっていますし、四章のタイトルも「温室効果ガスの排出の抑制」となっています。

 既に先ほどもお話があったように、二〇〇二年時点で排出量は九〇年レベルより七・六%増大しており、今は抑制等ということで済む話ではなく、削減を担保しなくてはならないということが問題なので、すべてこの法案では抑制という言葉を削減に置きかえるべきだというふうに思います。

 それから、公表の中身と方法についてなんですけれども、それについてはいろいろ二十一条に書いてありますが、一般の人たちが見やすい形で公表されるのかどうかということは不明です。そして、集計されたものでなく、個別の企業、業種、都道府県の排出量を私たちが知るためには開示の請求を行わなければならないのだとすると、本当の意味での公表に相当することにはならないと思います。

 それで、排出量の情報開示は企業の社会的責任でもあり、そうした観点からも、本法律改正によって、企業単位、事業単位、都道府県単位の排出量がデータベース化され、ウエブなどで開示されて、私たちが自由にアクセスできるようにするべきです。その方が、一々開示請求をして、それに対応するという行政側の負担も軽くなるはずです。また、そういうふうにすると、企業にとっての削減インセンティブもわきます。にもかかわらず、もし情報開示請求というハードルを国民に対して置くのであれば、それがなぜ必要なのかを説明していただきたいと思います。

 それから、二十一条の八で、「温室効果ガス算定排出量の増減の状況に関する情報その他の情報を提供することができる。」とありますが、これは重要な点だと思います。というのも、この制度の運用に当たっては、ただ単に排出量を公表するだけではなく、事業者がどのようにして排出削減計画を立て、どのようにして実施し、その結果としてどのような削減量が獲得できたかということが適切に反映されるような公表の仕方にするべきであります。そうすれば、達成計画案でも述べられているように、国民、事業者全般の自主的取り組みの促進へのインセンティブ、そして機運を高めることにつながるからです。

 その努力の中には、例えば、現在は寄附としてしか扱われていない自然エネルギー発電からの電力をグリーン電力証書という形で購入するいわゆるグリーン電力制度なども、排出量から削除する、あるいは削減量として記載し報告、公表できるようになれば、グリーン電力証書購入の大きなインセンティブにつながり、事業者にとってはグリーン電力の購入が費用効果的な対策になり、欠かせない手段となります。そうすると、日本のおくれている再生可能な自然エネルギー事業全体の拡大、発展に寄与し、再生可能エネルギーの割合を高めることになると思います。

 次に、温室効果ガス総排出量が相当程度多い事業者についてですけれども、先ほども言いましたけれども、これに対しては政策がなく、排出抑制のための今回のこの公表制度以外は何ら政策がないわけです。

 WWFジャパンは、昨年来、国内排出量取引制度を導入するべきだと提案しております。この制度は産業界の方々に統制経済であると大いなる誤解をされていますが、実際は全く異なり、むしろ、排出枠の売買を行うことにより最も安いところで削減が行われる、コスト効果の高い制度であります。

 国内排出量取引は、確実に削減量を確保でき、対象部門の削減費用を最小化し、CDM、JIなどの活用の明確なインセンティブとなります。また、直接規制に比べて個々の主体がとる対策の自由度が高く、余剰削減分が売却できるため、水準以上の努力をするインセンティブが働くなどの点において、大規模排出者に対しては有効な制度であります。また、CO2排出をコストとすることで企業の経済活動の中に温暖化対策を必然的に組み込むことになり、これは、長期的に投資の傾向や金融市場における企業評価にも影響を与え、社会を脱炭素型へと誘導していく枠組みになります。

 お手元にお配りしておりますWWF提案の概要をごらんいただきたいと思います。制度設計は、ここでも述べているように、いかようにもできるので、この方向さえ確認できれば細部のルールについての議論が始められると思いますし、むしろ、早急に議論を始めるべきだと思っています。

 というのも、御存じのように、EUではことしの一月より域内排出量取引制度のパイロットフェーズを動かし始めました。そして、既に第二フェーズに向けた制度の見直しが行われております。ノルウェー、スイス、カナダ、オーストラリア、そしてアメリカでも国内排出量取引制度導入を検討中で、これもEUとのリンクを見込んで制度設計しています。

 これらの制度が互いにリンクし合うことになると、日本だけがその取引市場から取り残されてしまうことになります。これは日本経済にとってもマイナスになりかねません。また、こうした排出量取引制度のリンクによって、長期的には、実質的にアメリカを温暖化対策の枠組みの中に巻き込んでいくという戦略も考えられますので、国際的な観点からもこの制度は重要です。

 こうした取引制度はこれからの環境政策の主流となるというふうに考えられておりまして、各国とも、やってみながらどんな制度にしたらいいかを学んでいるところです。制度におけるさまざまな基準やノウハウの蓄積が、日本が何もしないうちにどんどん欧米諸国では進み、このままではまた欧米諸国に先に基準をつくられ、国益の観点からもこの制度に対する検討は重要だというふうに思います。

 さらに、そのほか、目標達成計画の問題点はいろいろあるんですけれども、民生に対する対策がないということで、これは政策が必要であります。国民運動だけでは一人一人のライフスタイルを変えていくことにはつながらないので、特に、環境税などのような制度も重要だというふうに思います。

 それから、再生可能エネルギーについても、相変わらず新エネルギーという言葉が使われているんですけれども、これは、未利用エネルギーとともに、再生可能エネルギーというふうに、世界で使われている言葉に改めるべきだというふうに思います。それは、RPS法と言われている法律のRはリニューアブルということで、再生可能エネルギーというふうに訳されますし、このように世界で統一された言葉を使わないと、日本の状況は世界に理解されないということがあります。

 そしてまた、日本の再生可能エネルギー導入量が非常に低いことを考えると、RPS法だけではなく、再生可能エネルギーによる電力の固定価格買い取り制度、いわゆるフィード・イン・ローを考えるべきだと思います。特にバイオマスエネルギーに関してはこういう制度を導入し、またさらに、木質バイオマスによる地域分散型発電、コージェネレーションなどを導入して、日本の森林を活性化させるべきだというふうに思います。

 次に、原子力発電なんですけれども、原子力発電は、発電の際にCO2を排出しないとしても、ウラン採掘、燃料精製、濃縮、加工、製造、輸送、放射性廃棄物の処理などについては多大なエネルギーを使い、温暖化対策としては不適切で、京都メカニズムのCDM、JIの対象事業としても外されました。

 そしてまた、日本の原発は既に二十年以上たつものが多くなり、その老朽化があらゆる問題を起こしておりまして、その典型的な事例として、昨年、美浜原発事故が起きました。CO2排出原単位を向上させるために原発の設備利用率を上げるということが挙げられていますけれども、こうした事故の危険性をさらに増すことになります。

 その前には東京電力による定期検査のデータ捏造が発覚し、すべての原発を停止して、改めて検査をし直さなければならないという事態が起こりまして、その場合に、代替電源として火力発電が使われたわけです。

 そのように、原発は安定的な電源とは言いがたく、そして温暖化を防ぐために原発を主柱に置くということは、不安定、不確実さをもたらすということが明らかになったわけです。ぜひ、温暖化対策として原発を柱に置くことは考え直していただきたいと思います。

 さらに、達成計画案には、原発の推進だけではなく核燃料サイクルの確立ということまでもが言われているんですけれども、これは国際的に見て非常に問題だと思います。

 核燃料サイクル自体は、日本のエネルギー保障上の悲願ではありますけれども、これを確立している国は世界じゅうどこにもなく、非現実的なものであります。実際に日本でも、「もんじゅ」が事故を起こして以来とまっておりますし、プルトニウム利用は今MOX利用が中心になっていますが、これも進んでいません。

 そういうふうにプルトニウムの需要がない中で六ケ所の再処理工場が稼働に向けて動き始めていますけれども、これは核拡散の観点から非常に問題であり、アナン国連事務総長も、三月二十一日付の国連改革に関する勧告において、ウラン濃縮及びプルトニウムの分離の能力については各国が自発的に差し控えるようというふうに述べ、核拡散の防止措置の強化の重要性を強調しました。なので、そうした世界情勢の中で京都議定書という国際公約を達成するために核燃料サイクルの確立が必要だと達成計画に書き込むことは、非常に問題だと思いますので、削除してほしいと思います。

 それから、長期目標の必要なんですけれども、IPCCは、気温上昇が二度以上になると、特有な種の絶滅など、サンゴの白化とかいろいろな影響が出てくると予測しています。既に〇・六度以上上昇しているということがあり、そして、WWFとしては、この十二月に発表した報告の中で、温暖化の現象というのは、気温だけではなくて、それによって起こる異常気象であるというふうにリポートしました。その中で、気温上昇を二度に抑えることでは不十分で、一・五度に抑え、その割合も十年に〇・〇五度以下にするべきだというふうにしています。

 さらに、一月に発表したリポートですと、この二度の気温上昇は、このままいくと二〇二六年から二〇六〇年の間に達成されてしまう。つまり、私たちが生きている間にも起こってしまう可能性があるということが報告されました。

 三月下旬なんですけれども、EU閣僚理事会においては、二度未満という目標を決め、そして、それのためには、二〇二〇年までに一五から三〇%の削減をする必要性があるという結論を出しました。また、我が国の国立環境研究所を中心とした二〇五〇年目標検討チームも、地球の気温上昇を二・六度に抑えるためでさえ、日本は二〇五〇年までに七八・三%から八四%の削減が必要であるというふうに言っております。それから、先日開かれた中央環境審議会の国際戦略専門委員会でも、二一五〇年までに気温上昇を二度に抑えようとすると、二〇五〇年で世界規模で約五〇%の削減をしなくてはならないと。

 そういう意味で、日本がまずやらなくてはならないことは、二一〇〇年という長期目標に向かって、地球の平均気温をどこで抑えるのかということを決め、それに対して、二〇五〇年、二〇三〇年、そして今、何をしなくてはならないかということを明確に示すことです。それでないと、その上で京都議定書目標を達成するというようなシナリオを書かないと、説得力を持たないわけです。

 二〇一二年以降の地球規模での削減に向けて日本がリーダーシップをとりたいと思えば、まずそういうように長期的目標を示し、そこに到達するための一里塚として、京都議定書の目標を経済効果的な方法で達成するビジョンを示すことだと思います。

 最後に、この京都議定書目標達成計画は、このまま五月に、パブコメが二週間ありましたけれども、国会で議論も経ずに閣議決定されるということなので、この法案と同様に、ぜひ国会の場で、皆様方、先生方に、幅広く透明の議論を行って決定していただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。(拍手)

小沢委員長 ありがとうございました。

 次に、畑参考人にお願いいたします。

畑参考人 おはようございます。畑でございます。

 私の所属しております気候ネットワークにつきましては、皆様のお手元に、きょうは青い、こういうニュースレターを配らせていただいております。地球温暖化問題に取り組んでおります環境NGOでございます。御参考までにごらんいただければと思います。

 私の意見は、お手元に配らせていただきましたレジュメに沿ってお話をさせていただきたいと思いますので、そちらの方をごらんいただければと思います。

 それではまず、本日の審議にかかっております地球温暖化対策推進法の改正案についてでございます。

 ここでは、温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度、これが導入されるということで、これは、基本的にもちろんいいことでありますけれども、当然のことであって、遅過ぎたくらいかなというふうに思っております。それについて幾つか申し上げさせていただきたいのですが、まず公表の中身とその方法についてです。

 排出量のデータは、事業者から報告される種類別の量も公表するようにしていただきたいというふうに思います。この本制度のエネルギー起源CO2の部分は省エネ法の定期報告制度によるわけですが、省エネ法では、化石燃料の種類別の使用量、重油ですとか石炭ですとか、そういったものは経済産業省に報告されているわけでございます。したがって、この制度でも、燃料種類別の排出量も公表するようにすべきと考えます。

 それから、新しい部分であります代替フロン等三ガス、HFC、PFCについては、地球温暖化係数の違う物質が幾つかありますので、それぞれに報告される仕組みになると考えられますので、その種類別についても公表するようにしていただきたいというふうに思います。

 それから次に、データの公表についてですが、法案には書かれておりませんけれども、公表されるのは企業別などに集計されたデータというふうに伺っております。ですけれども、これは、データはコンピューターでデータベース化して保管されるでしょうから、公表は容易でしょうし、もともと公表対象であり公表可能なはずなのに、なぜ事業所単位のデータがこのような面倒な開示請求が必要なのかというのが、少し腑に落ちません。ぜひ、事業所単位のデータも開示請求なしで最初から見られるような形にしていただきたいというふうに考えます。仮に開示請求が必要な仕組みとなるとしても、開示請求を行ったのに事業所単位のデータが開示されないということはないようにしていただきたいというふうに思います。

 それから次に、いわゆる企業秘密の扱いについてでございますけれども、温室効果ガスの排出量が企業秘密に該当するというのは、さまざまな分野を見ても、常識的には余り考えにくいのではないかと思います。先ほどPFCの例というようなお話もございましたけれども、企業秘密に該当するかどうかについては、やはりきちんとした基準を設定して、公表を原則とした厳格なものとしていただきたいというふうに思います。

 PRTR法、いわゆる化学物質の排出量の把握管理の法律においては、行政手続法で秘密情報の審査基準というものが設けられておりますので、そのような厳格なものにしていただければというふうに思っております。

 また、企業秘密となる場合でも、もとの情報を主務大臣も持つような仕組みとすべきではないかというふうに考えております。

 続きまして、先ほどから議論に上っていますこの法律も含めて、地球温暖化防止のための京都議定書目標達成計画について幾つか意見を申し上げさせていただきます。

 まず、策定過程等についてですが、まず一点目としましては、京都議定書目標達成計画の案の策定においては、従来の政策、ここでは、一九九〇年地球温暖化防止行動計画、その後、九八年、二〇〇二年と地球温暖化対策推進大綱があったわけですけれども、これの政策がやはり不十分であったということで、現在まで日本の二酸化炭素排出量がふえ続けているということに対する従来の政策の分析とか総括、反省というのをきちんと行うべきであろうということであります。

 それから次に、策定過程についてでありますが、これについては、開かれた部分も従前よりは多少はありますけれども、どちらかといえば、やはり情報公開が不十分な中で行われているということは変わっていないのではないかと思います。市民参加といえば、非常に形式的な審議会のパブリックコメント、意見募集だけでありますし、国会の審議はおろか、承認も必要ないということであります。

 特に、今回の達成計画案に対する意見募集は、通常いろいろな意見募集は一カ月程度なわけですが、その半分の二週間と極めて短いものでありました。これは、いかにパブコメといわれるものが形式的で、政府が市民の意見を真摯に反映するつもりがないのかということを示していると思わざるを得ないですね。

 温暖化対策というのは、実施においてすべての主体の参加が必要で、一部の大企業とか一部の市民だけがやればいいという話ではありませんから、策定過程におけるこのような参加の欠如は大きな問題だと考えております。

 次に、内容についてであります。

 まず、全体に、この達成計画の案は六%ぎりぎりという形で組み立てられていますので、どこか一部でもうまくいかないと、その分だけ直ちに外国から買ってくる京都メカニズムでカバーせざるを得ないという形になっていますので、もっと余裕を持って確実に達成できる全体構成とすべきだろうというふうに考えます。

 次に、全体の目標の数値は、そこの表一に示したものになっているわけですが、基本的に、森林吸収源と京都メカニズムに合わせて五・五%を依存し、国内削減分はマイナス〇・五%にすぎないという点は従来の大綱と同じでありまして、率先して国内で削減して先進国としての責任を果たすというものにはなっていないという点で大変残念に思います。エネルギー起源CO2の目標については、むしろ、従前はマイナス二%だったものをプラス〇・六%に大幅に緩めてしまった、後退したという面もあるかと思います。

 このエネルギー起源CO2ですとか、この後触れますが、代替フロン等三ガスの目標を強化すれば、現在森林吸収と京都メカニズムで五・五%の分を四%は減らして、一・五%まで依存を減らすことが可能だというふうに考えております。

 次に、京都メカニズムについてですけれども、達成計画の案の中では京都メカニズムは一・六%というふうになっているわけですが、それ以外に、既にエネルギー起源CO2の対策の中で電力のCO2排出原単位の低減の一部として京都メカニズムを使うということが明記されております。これは一・六%の要するに外ということになっておりますが、これはやはりできるだけ国内で目標を達成するということで、京都メカニズムは一・六%を上限とし、特に、エネルギー起源CO2の計画案ではプラス〇・六%の目標になっている区分の部分に関しましては、京都メカニズムは用いないで国内削減に限るべきであろうというふうに考えます。

 次に、代替フロンの目標についてですが、これはその次の三ページの右上の方に図一というグラフをつけてございますけれども、現在まで非常に減っているにもかかわらず、達成計画案では、二〇一〇年に向けてV字型に大幅に増加を容認するという形になっております。これは、代替フロンについては、現時点からふやさないという目標値にすればマイナス二%まで引き下げることができると考えます。

 それから次に、エネルギー起源CO2に関する経済成長率、それから原発の設備利用率の問題に関してでございます。

 エネルギー起源CO2の各部門の目標は、三ページの表二のようになってございますが、そこで、一つは経済成長率の設定を途中で変更しているということがあります。ことしの一月の閣議決定があって、その策定過程の途中で下方修正されたわけですけれども、それが表三ということでお示ししているものです。

 これ自体の是非をとやかく言うものではございませんけれども、経済が上向いたからといって目標達成が危うくなることがないように、余裕を持って目標を達成できる計画の組み立てにすべきだろうということであります。

 それから次に、原発の設備利用率に関しては、目標達成計画案に出てきます八七から八八%という数字は、過去に一度も達成したことがない非常に高いものであります。これは、最初の大綱のときに、原発二十基増設という、絶対に実現不可能なものが含まれていたのですが、ほとんどそれと同じことであろうというふうに考えます。原発の設備利用率の引き上げは、やはり安全性の確保が前提であり、それが示されない限りは行うべきではないですから、目標達成を危うくするような極めて高い数字で数字合わせをするということは改めて、安全に配慮した、余裕を持った設備利用率とすべきであるというふうに考えております。

 次に、三ページの一番下のところから、産業部門の目標を強化すべきだろうということであります。これは、次の四ページの方に参りますが、一部産業界の方などが、産業部門は努力してCO2排出量を横ばいに抑えているというふうにおっしゃいますが、そこの表五でお示ししましたけれども、二〇〇二年までの変化を見てみますと、生産量、生産指数は約八%減っているのに対して、CO2排出量は横ばいであって、生産減と同程度には減っていないわけです。つまり、効率は悪化しているということで、横ばいは努力の結果というより生産減のおかげであるというふうに言えますので、この八・六%削減というのは自然減程度でありますから、もっと目標の強化が図れるだろうというふうに考えております。

 ただ、誤解のないように申し上げますが、私は日本の企業の努力を否定するものではありませんが、むしろこういったことを進めることで、省エネ、自然エネルギー等の分野、日本企業の競争力も増して、日本の経済にもプラスになるというふうに考えております。

 最後に、政策についてでございます。

 肝心なのは、やはり数字合わせではなくて削減対策を推し進める政策、規制ですとか経済的手法等の裏づけであるということで考えるんですが、達成計画案のその部分は残念ながら非常に弱いということであります。具体化されているのは、本日審議をされている地球温暖化対策推進法の改正、それから運輸部門の事業者等に計画策定等を課す省エネ法の改正、それから流通効率化の法案にとどまっているわけです。この達成計画案では、政策手法の総動員という言葉が出てきますが、残念ながら実態はそのようになっておらず、政策の裏づけが非常に乏しいというふうに考えます。

 私はそこに幾つか挙げてございますが、炭素税、環境税、石炭火力発電の抑制策、それから住宅、建築物の断熱基準の規制化、機器や住宅の性能表示の義務化、代替フロン等三ガスの使用規制といった実効性の高い政策措置が入っていないわけですけれども、こういうものを早急に入れていくべきだろうというふうに考えます。特に炭素税、環境税については、規制が及びにくい民生、運輸部門を含め、すべての主体に課税による価格インセンティブ効果で削減を促すことができる必要不可欠な政策だと考えます。達成計画案では、「検討を進めていくべき課題」というふうにされておりますが、これではやはり不十分だというふうに思います。

 国内で削減を余裕を持って確実に達成していくというためには、政策の実効性を抜本的に強化することが急務であるというふうに考えます。達成計画案に盛り込まれていない実効性の高いこれらの政策措置を、仮に達成計画がこのまま決定されても、その内容にかかわらず、早急に実施に移していただきたいというふうに考えます。

 それに際しては、国会の議員の皆様方のリーダーシップですね、ぜひ政府を叱咤して、こういった政策を早急に進めていただければというふうに考えます。

 以上でございます。

小沢委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野松茂君。

大野(松)委員 おはようございます。自由民主党の大野松茂でございます。

 本日は、参考人の皆さん方には、大変お忙しい中をおいでをいただきまして、それぞれのお立場から示唆に富む貴重な御意見を賜りまして、心からお礼申し上げます。時間の制約がありますので、本題に入らせていただきます。

 京都議定書が本年の二月十六日に発効になりました。我が国といたしましても、国際約束である六%削減目標を遵守するために、総力を挙げて取り組んでいかなければならないわけでありますが、今回の法改正の柱の一つでありますところの温室効果ガスの排出量の算定・報告・公表制度の導入は、これが直ちに排出量の削減につながるものではないものとも思われますけれども、国民にとりましては知る権利の拡大につながります一方で、事業者にとりましては環境対策への一層の取り組みを進める動機づけになるものと考えております。

 この算定・報告・公表制度の導入につきましては、それぞれ触れていただいているところでございますが、改めて、この制度の意義、またその効果につきまして、各参考人の方々の御見解、また忌憚のない評価をお願いできればと思います。恐縮でございますが、順次お願いいたします。

小沢委員長 それでは、永里参考人から順次お願いいたします。

永里参考人 永里でございます。

 この法律は、一定の報告を義務づけるわけですけれども、今回の公表制度というのは、企業秘密に属することに留意していただければ、情報の統一性を図るという観点からも、温暖化対策を進める上で有用だと考えています。また、排出量を意識している企業と意識していない企業では、意味合いが全然違います。そういう意味で、この法律は意識させますので非常に有用だろうと考えています。

 また、民生、運輸に関しましては今までどうも効果が上がっていませんが、そのところに関しましては非常に効果を発揮してくるんではなかろうか、こう考えております。

 以上です。

森嶌参考人 私は法律家ですので、一つの法律で何から何までやることはできないわけですが、この法律は規制法ではございません。先ほど申し上げましたように、国にとってみれば、現在の排出量を企業別あるいは物別に何が出ているかということを把握するということがまず第一ですし、そして、国が施策を立てていくために今後どういうふうな施策を立てていけばいいかという、国にとっての問題であります。

 それから、義務を課せられている業界にとってみれば、それを把握することによって、公表するかどうかにかかわらず、自分たちとしては何をするかということのインセンティブになるわけです。

 それから、一般の人にとってみれば、それを知ることによって、知る権利、情報的な手法と申しましたが、それによって規制をしようとかということではありません。それからまた、知る権利を通じて、自分たちも何をしなきゃならないかということのインセンティブになるわけですから、くれぐれもこれで規制の手段にするということではありません。

 また、危険な化学物質に対してそれを監視する制度ではありません。

鮎川参考人 この公表制度というのは削減のまず第一歩です。自分たちがどのぐらい排出しているかということを把握することによって、何によってどのぐらい排出しているのかということがわかることによって対策が立てられるわけです。ですから、そういう意味で、これは本当に削減の第一歩です。

 私たち、クライメート・セイバーズというのをやっているんですけれども、やはりそのベースラインというか、その企業がどのぐらい排出しているかというまず数字を把握して、その上でどのぐらい、どの部門でどうやったら削減できるかということを計画が立てられますので、これは本当に基本なことで、それをやはり国民も、どこの企業がどのぐらい出していて、そして、どういう努力をしてどういうふうに削減したのかということがわかるようになれば、もっとすごく社会が透明になっていって、削減に向けたインセンティブというのが沸き起こると思いますので、これはぜひ実現させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

畑参考人 やはりこの制度はすべてのベースになるものだろう、この排出量の報告・公表ということですね、非常に必要なものだというふうに考えております。

 今、大野委員おっしゃいましたように、やはり国民、市民の立場から、知る権利とか情報公開とかそういう点でも非常に重要だというふうに考えております。これは企業にとっても、努力をしている企業、進んでいる企業というのは正当に評価をされるという意味でも非常に重要なものだと思います。

 この中で、追加情報というか参考情報というようなものも一緒に報告できるということになっておりますから、先進的な企業はそういうところできちんと説明をして取り組みを報告することもできますし、いろいろな事情についても説明することができるようになっておりますから、そういう点でも、企業のそれぞれの取り組みがきちんと評価をされるということにおいても非常に重要な一歩になるというふうに考えております。

大野(松)委員 ありがとうございました。

 現在、政府におきまして策定の手続が進められている京都議定書の目標達成計画、このことについて森嶌参考人にお伺いいたしたいと思っておりますが、今後の地球温暖化対策の基本的考え方といたしまして、点から面、あるいは面、ネットワーク、こうしたことの対策という発想が打ち出されたと伺っております。

 これまで行われてきましたように、個別のエネルギー機器の性能を高めるであるとか、あるいはまた個別の工場ごとに規制を行ったというようなところから、地域あるいはまた都市といった面的な単位で対策を行っていこうとするものがございます。これは、全国民が総力を挙げて連携して対策に取り組むといった意味におきましても非常に重要な考え方であると思っておりますが、面あるいはネットワーク、こうした対策の意義、効果につきまして、中環審でも要職をお務めになられてこれらを進めておいでの森嶌参考人の立場からお伺いいたします。

森嶌参考人 なかなか新しい技術を開発してというのは時間もかかりますしお金もかかるんですが、今ある単体を組み合わせることでかなり効果があると。特に、各省庁がばらばらにやっていることを、協力して、各省が連携をして、そして各業種が連携をするということで、例えば一つの例ですと、余り個別の名前は挙げませんけれども、モデル地域をつくりまして、ガス事業と電気事業と、天然ガスを燃やして冷房、暖房をある地域で新しく開発するときに、一万二千戸ぐらいの地域開発で、東京のあるところで一緒にやりますと、冷房、暖房を全部地域で協力してやりますと、ばらばらにやるのに比べて二七%CO2が削減できたそうです。

 それを今、内閣官房がイニシアチブをとりまして、各省を集めまして、たった今で十幾つかのプロジェクトを始めましてモデル事業をやっております。それはいろいろな試みをやっておりまして、総理も大いに乗り気で、これをここ一年ぐらいのうちにどんどん広げようということでやっております。恐らく、国会でも御質問なされば、具体的な名前とどんなふうにあれするかというので。これはコストの面でもそれから各省の連携も、私は伺っていて、思ったよりはスムーズにできる。規制なんかも、今までやればできたものが各省ばらばらにやっているものですからできなかったとかということですので、私は将来に向けて非常に効果のあるやり方だと思います。

 各省庁の連携も若い人たちがやるとうまくいくのではないかと思っていますので、面的に広げる、あるいはネットワークを組んでやっていく事業というのは、思ったより効果が上がるものだというふうに考えております。

大野(松)委員 ありがとうございました。

 永里参考人にお伺いいたしたいと思います。

 経団連におきましては、そうした異業種間の連携というようなことも進められているようでございますが、経団連では、自主行動計画を策定いたしまして、着実に効果を上げて評価を受けていると思っております。

 さまざまな情報の収集を行い、それを分析、研究して企業に提供する、こうしたお仕事を進めておられるお立場から、今後の我が国の温室効果ガスの削減効率の観点から、今回の法改正についての評価についてお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

永里参考人 お答えします。

 絵にかいたもちではよくないので、実際にむだなことを排し省力化していくということに関しましては、今までやられていなかった日本のコンビナートなどの異業種提携ということについてちょっと御説明したいと思います。

 原油からナフサをつくる石油会社とナフサから各種素材をつくる化学会社が協力体制を築き、効率化する異業種提携というものを今、後押ししております。生産過程で出る余分な副生物の相互作用に加え、共同施設や合弁会社を設置する動きも出てきております。

 具体的には、いろいろなコンビナートがあるんですけれども、例えば千葉県の話をします。

 エチレン生産量が国内最大の千葉地区では、四月、三井化学と出光興産が合弁でポリエチレンなどの主要二樹脂の事業統合会社を発足させています。生産販売の合理化などで、二〇〇八年までに年一千億円のコスト削減を目指す、コスト削減ということは、要するにエネルギーを使わない、炭酸ガスを出さないということであります。ことしの二月に包括提携を結び、ナフサ輸送船の共同運航、それからナイロン繊維の原料となるベンゼンの需要逼迫に対応した生産設備の再稼働など、次々と手を打ってきております。

 これで、理論値としての、省エネポテンシャルといいますが、この千葉一地区、六十四万キロリットル年間削減できることがわかったんですね。これは国内の原油消費量の一日分に相当します。こういうようなことは、これはポテンシャルというか理論値ですから歩どまりというのはあるんですけれども、八地区コンビナートがありまして、そういうところでやっていけばかなり効果が出てくると思っております。

 以上です。

大野(松)委員 時間もなくなってきたんですが、鮎川参考人にお伺いしたいと思います。

 実は、たしか前回、平成十四年度の本法の改正のときにも参考人として御出席をいただいた記憶がございます。貴重な御意見をお聞かせいただいたところでございますが、そのときと比べて我が国の地球温暖化対策というものはどのように変化したと思われておりますか。あるいはまた、順調に対策が進んでいるのか進んでいないのか、あるいは後退したと考えるのか、進んでいるとお考えになるのか。あわせて、あるべき姿についてもお聞かせいただければありがたいと思います。

鮎川参考人 ありがとうございます。

 一番冒頭にも述べさせていただきましたけれども、進んでいないと思います。

 実際にあのときに大綱が批准に向けてつくられたんだと思いますけれども、大綱の時点でも、結局それまでの温室効果ガス排出の増大傾向に対する対策は何ら立てずに、国民運動とか自主行動計画に依存した部分でやってきたと思いますけれども、今回も、公表制度と省エネ法強化以外には何ら削減量を担保する法案は入っていないんですね。ですから、本当に残念だということを思います。

 昨年一年かけて第一ステップをすごく細かに情報を集めて検討、分析してきたにもかかわらず、今回出てきた目標達成計画は、そういった増大の要因分析が不十分で、その要因のところに対する策というもの、そして増大している部門に対する策というもの、そしてさらに四〇%以上を占める大規模排出者に対する策というものが全くないので、私としては非常に残念ですし、これからの見通しとしてはより難しいと思うので、やはり二〇〇七年の見直しのときには、環境税も含め、国内排出量取引といった確実に削減量の得られる経済的措置を導入していただきたいというふうに思っております。

大野(松)委員 貴重な御意見をいただいてありがとうございました。これからの審議の中に生かさせていただきます。

 ありがとうございました。

小沢委員長 次に、長浜博行君。

長浜委員 民主党の長浜博行でございます。

 きょうは貴重な機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。

 また、すばらしい参考人の方々に来ていただきまして、十五分ではなかなかポイントしかお聞きすることができないわけでありますが、私、一番私と全く問題意識が同じだなと思われた部分は、改正案の第一条、これはなぜ「抑制」という言葉を使うのかということですね。

 CO2の削減を考えなければいけないというのは、日常会話でもしておりますし、別にこの法案だけではなくて、森嶌参考人がおっしゃられたように、この法案自体は、この問題を取り扱っている人間からすると本当にささいというか一部の部分でしかすぎませんが、全体の地球温暖化の問題を考える一つ一つのステップの中の一部分という考え方の中で論ずるときに、まず第一条という頭の段階からちょっと問題認識のとらえ方が間違っているんではないかなと。

 この委員会は与野党ともに非常に環境意識の高い議員の集まりでありますから、この法律の書き方の中における、たかだか漢字二文字でありますけれども、こういう意識のとらえ方であると、これもまたある参考人の方がおっしゃられた、別に今の状況で言っているわけじゃないですが、過去の歴史を反省していないというか、その状況の認識の仕方が甘い。別にローマ・クラブの「成長の限界」のときを基準とする必要はないですが、せめて京都議定書の九〇年を起点としても、もう既に十五年ぐらい年月がたつわけでありますから、そういった中における、この第一条の中での削減と抑制の問題をどうお感じになったか、永里参考人からお願いします。

永里参考人 お答えします。

 一般的に、たくさん温室効果ガスを排出していることは悪いことだ、こう言われても困るんです。

 というのは、評価というのは原単位の改善ですべきなんです。例えば、液晶の場合なんかを考えますと、液晶をつくる過程でエネルギーをかなり多く使用します。しかし、できた製品は極めて省エネ製品になっています。製品を、つくる段階、使用者に運ぶ段階、使う段階、廃品になり回収する段階、すべてのトータルで温室効果ガスの排出量を少なくする、削減するのが一番いいのでありまして、そういう意味では、各自が一生懸命努力してやるというところに意味があるのでありまして、削減はおのずとみずからがやるべきことだというふうに考えています。

 抑制ということで産業界が甘んじているわけではないんです。自分たちはちゃんとやろうと。そして、そういうことをやらない会社、企業というのは世間から脱落していくというふうに考えております。環境に優しい企業、環境対策に熱心な企業を消費者は評価し、その企業のサービスや製品を購入するというのが望ましいのでして、先端的な企業は自主的に温暖化ガスを公表し、企業の社会的責任、CSRを追求しています。そういう意味で、自主的にこういうことは削減していきたいと考えております。

長浜委員 同じ質問ですが、森嶌参考人にお願いします。

森嶌参考人 立法のときに、平成十年の立法ですから、私もそこで議論をしたはずですけれども、申しわけありません、テクニカルな議論は、今詳細は覚えておりませんけれども、当時の考え方としては、安定化ということを考えておりました。それから、国民各界各層ということで、抑制等という形で考えておりました。

 ビヨンド京都を考えるときには、恐らく削減ということを使っていかなければならないと思いますけれども、テクニカルには、全体を含めて、しかも安定化ということで抑制を使ったのではないかと思いますけれども、あのときにどういう経緯があって抑制という言葉を選択したか、ちょっと覚えておりませんけれども、少なくともこの言葉は、当時の、平成十年のときの言葉です。

 しかし、法律家ということを離れて、テクニカリティーを離れて考えますと、現時点では、やはり削減ということで、少なくとも精神的には削減という言葉で考えていかなければならないと思いますけれども、これはあくまでも技術的に使って、全部をひっくるめて、しかも安定化ということで考えたことではなかったかと思うんですけれども、ちょっと今、そのときにした議論ははっきり思い出しません。

長浜委員 鮎川参考人には問題を提起いただきましたので、畑参考人、お願いします。

畑参考人 今、長浜委員がおっしゃって、私も全く同じように思います。削減というふうにやはりすべきだろうというふうに考えます。

 これは今、森嶌さんもおっしゃったように、平成十年とか九八年の、最初にこの法律ができたときから抑制というふうになっていたと思います。そのときにも、私ども環境NGOでは、これはやはり削減というふうにすべきだということで意見を申し上げておりましたけれども、ずっと抑制で来ているということがあるんだろうと思いますが、本当に、私も、これはやはり今後長期的にも減らしていくということを含めて、削減という言葉が適切だろうというふうに考えます。

長浜委員 基本的には、どういう国づくりがいいのかと言われれば、法三章のごとく、余り法律などをつくらずに、決め事をつくらずに、成熟した民主主義の社会の中で、意識の高い方々がほぼ一〇〇%という状況の中で、自主的努力をして結果が達成されればいいんですが、そうじゃないので、だれも規制緩和の時代の中で強化する分野が存在し続けるということは喜ばしい範囲ではありませんけれども、やはり性善説の限界、これはちょっと言い過ぎかもしれませんから、自主的努力の限界の中において、こういう法律をきょうも論議せざるを得ないということは、ぜひ参考人の皆様にも御理解をいただきたいと思います。

 我が委員会の委員長におかれましても、CSRの観点からいっても、環境情報の公開には大変熱心な方で、法律案などつくられて、御努力もされているようでありますけれども、その価値をどう高めていくかという中における企業の役割、これも大事であります。

 もう一点、やはり、この間も質疑のときに、良識ある与党の議員の方からも指摘がありましたけれども、達成計画案のパブリックコメントが二週間というのはちょっと短いのではないかと。あるいは、きょうの参考人の御指摘にもあるように、この計画案が、パブリックコメントが形式的に受け取られただけで、あとは国会で審議もしない、こういったことはどういう状況なのかということは、まさに自分が責められていることであって、別に総理大臣を責めているとかじゃなくて、ここにいる環境委員会のメンバーが全員責められているようにも感ずるわけであります。

 政府が決定をする前のこの段階での、この法律を超えてでありますけれども、京都議定書の達成に向けてというものは、国会での質疑は十分足りていると思っておられるのか、まだすべきであると考えておられるのか、短くお一人ずつお聞かせをいただければと思うんですが。

小沢委員長 時間がかなり制約がありますので、手短にお願いします。

永里参考人 短くお答えします。

 私は、先生の御指摘のとおり、パブリックコメントも少なかったし、そういう点では、もっともっと国民各主体の意識を高める意味からも、もっともっと検討してもらいたいと思います。

森嶌参考人 私も中環審におりまして、ぜひ国会はもっとコミットしていただきたいというふうに思っております。

鮎川参考人 私も、ぜひ国会でもっと議論をしていただいて、それがニュースになってテレビで報道されるというようなことで、国民の関心を高めていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

畑参考人 私も、もっと議論をしていただきたいと思います。

 皆さん、やはり、今回の目標達成計画では目標達成が危ういんじゃないかと思っていらっしゃる方、国会議員の方も多いと思うんですね。やはりそういうところをもっと十分に議論していただきたいというふうに思います。

長浜委員 もう一つ、短いコメントをお願いしたいんですが、永里参考人から、経済と環境をいかに両立させるかということで日々お悩みをされていると。

 これは、環境問題、いろいろなお立場の方がいらっしゃいますけれども、経済成長は限りなくていいんだという方も少ないでしょうし、環境悪化の一途で構わないという方もいらっしゃいませんので、多分議論としては、本来ならば中間点に落ちつくという、経済学じゃありませんけれども、落ちつくはずなんですが、落ちついていないという状況の中で、この法案の中では、やはり企業秘密ということが一つ問題提起をされています。

 この企業秘密のあり方、この法案の中にも細かく書いていないわけでありますから、これをどう認定するかということが、実際の運用上の中においては、この法案が法律になった後の問題になってくると思いますが、極めて厳格にとらえるべきか、それとも、自主的な企業の努力の中によって企業秘密というのを担当大臣が判断していけばいいのか。これについてどうお考えでしょうか。

永里参考人 先ほどの性悪説か性善説かということでありますと、性悪説に立っていきますと、どんどんどんどん規制が進んでいきます。

 ちょっと簡単に言いますと、私は、こういうことについて報告していって、逆に責任官庁の方でそういうことがちゃんと、秘密が漏えいしないんだったら、それはそれでいいんだろうと思うんですね。ところが、それがどういうことか漏れていくようなことになってはいけないので、例えば、一事業所で単一のエネルギーを使っているような事業所があった場合に、そこの製品というものはコストがわかってしまいます。そういうことは、先ほども言いましたけれども、コストがわかるような情報を公表してもらったら、そこの企業はもうそれだけで敵に塩を送るというか、いわゆる戦略的な情報を内外に流してしまいます。あるいは取引先に教えることになりますので、そういう点は守ってほしい、そういう観点から言っております。

森嶌参考人 私は法律家で消費者行政なんかにもかかわってきましたが、何のための公表で、何が秘密で守らなければならないかということで、一般論で申しますと、安全にかかわるものであれば、多少秘密にかかわることであってもこれはできるだけ公表しなければならないけれども、周りの人の安全にかかわらないものであるならば、何のために公表するかとの関係でバランスを考えなければならないので、一般論として考えるというわけにはいかない。この場合に、それとの関係で考えていく必要がある。知る権利というのも、何のために知るかということと関係するから、公表することによってどういう利益が社会にあるかということとの関係で考えていくべきだというふうに考えております。

鮎川参考人 私は、企業秘密という定義というか、運用の仕方がすごく危ないなと思っていまして、すべて企業秘密の枠にくくられてしまうようなことになると、せっかくこの公表制度ができたのに穴だらけになってしまうというようなことがないように、やはり企業秘密はどういう場合だということを細かく定義して、そしてその基準というものがみんなわかるようにして、そういうような形で企業秘密の扱いをしていただきたいと思います。

 すべてが黒塗りで出てくるような、そういうような状況は起こってはならないし、この法律をつくる意味がなくなると思いますので、その辺をよろしくお願いします。

畑参考人 私ども気候ネットワークでは省エネ法に関する情報開示請求なども行いまして、そこではかなり黒塗りというようなこともございました。

 やはりこれに関しては、原則公表というか、厳格な制度にしていただきたいというふうに考えております。

長浜委員 きょうの参考人からの御意見でも、地球温暖化対策の中でのこの法案というのは本当に一部分でしかすぎないということが一つと、それから、今の御意見を拝聴する中においても、国会での質疑がまだ十分ではない、その国会を通して国民に周知徹底も十分でないという意見も開示をされましたので、委員長におかれましては、閣法、つまり提出されている法案以外にもこの環境問題というのは論ずる必要があるということでございますので、今後の国会の会期等を含めて、十分な質疑時間を確保されてこの問題を論じられるようお願いをして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

小沢委員長 次に、石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。

 きょうは、四名の参考人の皆様、大変に貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございます。

 法案のこれからの参考に資するということで貴重な御意見を承ったんですが、私は、まず、今回四名の方に率直な御意見を、一つだけ、最初にお伺いしたいのです。

 今、この法律をつくったり、また、経済産業省、国土交通省、いろいろな省がそれぞれの省の中で政策を設けてこの地球温暖化対策に取り組んでおります。正直申し上げて、私も今のままの政策で達成できるのかなと思っているんですが、皆さんの現在の実感として、第一約束期間で六%削減が今のままでできるかどうか、これは率直な個人の御意見でも構いませんので、それぞれ、まずお聞かせいただきたいと思います。

永里参考人 大変難しい質問で、私自身もどうお答えしていいか。個人的に言うと、達成は非常に難しいと思います。

 ですが、実は、そのために京都メカニズムなるものが用意されております。したがって、ここを柔軟に活用することによって達成できるのではないかというふうに考えております。

森嶌参考人 端的に申しますと、できません。現に、中環審の予測でも、九%ぐらいできない。京都メカニズムも、もしもサプリメンタリーということであるならば、一・六%ということであるならば、それを、一・六%京都メカニズムを利用しても七%ぐらい足らないということになりますので、一層の追加的な対策を立てなければならないということになります。

鮎川参考人 私も、追加的対策、つまり経済的な仕組みをつくらない限り、難しいというふうに思います。

畑参考人 今おっしゃった、今のままではという点では、やはり難しいと思います。

 ですから、目標達成のためには、先ほど私申し上げましたが、いろいろな政策をまさに総動員していくということを今からやれば、何とかできるかなというふうに思います。

石田(祝)委員 それぞれ御意見をお伺いしましたが、ある意味では今のままでは難しいという御意見だっただろうというふうに思います。

 それで、じゃ、具体的にどうするか。私たちももちろん知恵を絞ってやらなければいけませんし、特に民生の部門について、お一人お一人の行動というものもやはり大変大事になってくると私は思います。しかし、残念ながら、環境の問題については、例えばきのうときょう、きょうとあす、その違いがお一人お一人ではなかなか実感ができない。こういうこともあって、やはり民生での取り組みが十二分ではない、私はこういうふうに思っています。

 そういう中で、先ほどどなたかの議論の中でも、環境についてもっともっと関心を持ってやってもらいたい、こういうお話もありましたが、例えば、きょうこういう形で四人の皆さんに貴重な御意見を伺っても、これは多分あしたの新聞に、一般紙が取り上げるかというと、これはなかなか取り上げるところは少ないのではないか。環境専門の新聞とか雑誌であれば、またこれは別であろうと思いますけれども、なかなか皆さんの貴重な御意見が目に触れる機会というのは、私は、少ないのではないか。

 しかし、これが逆に、そういう大事な議論ではなくて、これから国会も、我々自身が率先垂範ということで、例えば背広とネクタイをやめて半そでのシャツにしたら、その絵だけは多分ニュースになると私は思います。しかし、本当の大事な議論というのがそれ以上進まないのではないか。これは私たちの責任ももちろんあるわけですから、これから大いに取り組んでもいきたいというふうに考えております。

 それで、皆さんの方から余り、大丈夫だというお声は先ほどももちろんなかったわけでありますけれども、そういう中で、これからの政策として、私お聞きをしたいのが、一つは環境税であります。

 これについてはそれぞれいろいろな立場の方の御意見もあろうかと思いますが、環境税の中身についての細かい議論はいたしませんが、いわゆる環境税と言われているものについて、それぞれ参考人の皆さん、率直にどうお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

小沢委員長 それでは、順次、端的にお願いいたします。

永里参考人 お答えします。

 税というものは、一たん導入しますと非常に硬直化し、そして肥大化していくというのは、戦後、先生方御存じのとおりでありまして、これが縮小していった税なんというのはあり得ないわけであります。したがって、新税を導入するときには非常に慎重にならなきゃいけません。

 私は、この環境税の考え方である、そのもとになる地球温暖化対策ということについてのフィロソフィーといいますか、それは非常に賛成しております。そういう意味では、何としてでも地球温暖化に関する対策は打っていかなきゃいけない。その対策の一つとして環境税というのは出てきたわけですけれども、大きな政府につながる新税の導入ということに関しましては、まずやるべきことは、今ある税の中をちょっと見直して、特にエネルギー関係の税を見直してもらって、その辺をちょっと削ってもらって、そうして、そのところにこういう概念のものを入れてもらったらいいんだろうと。私は、小さな政府を目指してほしいためにこういうことを言っております。

 以上です。

森嶌参考人 先ほどの私の答弁、ちょっと修飾語をつけ加えさせていただきますけれども、今のままでということは、皆様おっしゃいましたので、念のために、今のままでいくとどうしても足らないということでございます。

 そういう観点から申しますと、環境税につきましては、私は、環境税に関する小委員会の委員長をやっておりまして感じましたのは、環境税がいいか悪いかという前に、国民は環境税に対して必ずしも十分理解をしてくださっているわけではありませんから、今のままでは、このままでは温暖化対策はできない。そうだとすれば、環境税というのは何のために要るのかということも含めて、社会全体が変わっていくために環境税はどういう意味を持っているのかということをみんなで議論しながら、税全体の中の位置づけ、社会の中の位置づけということを議論しながら、環境税を、多分六%の削減だけじゃなくて、将来ずっと必要だと思いますけれども、その中で環境税を導入していくということが私は必要かと思っています。

 社会の理解を得ながら、社会の全体の中に位置づけていくという中で、私は、環境税というのは必要ではなかろうかというふうに考えております。

鮎川参考人 私は、一般的に考えたタックスというふうに考えていただきたいんですけれども、ですから、昨年度から議論されていた環境省提案の環境税がいいと言っているわけではないんですけれども、一般的に、CO2を排出するということに対して、これが環境に影響を与えているという意識を持つために、環境への負荷料金だというふうな考え方でやるべきだと。

 ですから、税という言葉を用いたことが間違っていたのかなと思いますけれども、例えば家電リサイクル法で、家電を処分するときにはリサイクル料金を払うわけですよね。では、そういう法案と同じ考えで、CO2を排出することに対して払うCO2料金みたいな、そういうような形でやることによって、例えばそれがレシートの段階で各消費者に、幾ら自分はCO2を排出したからそれを払っているんだというような意識を持ってもらうためにも、そういういわゆる炭素税の考え方というのは、炭素排出を削減する上で非常に重要な一つの経済的措置だと思います。

畑参考人 私は、この環境税、炭素税というのは非常に重要な、必要不可欠な政策であって、早期に導入すべきだというふうに考えています。先ほど石田委員も民生部門というようなことをおっしゃいましたけれども、民生、運輸部門に対してそういう削減を促せる政策手法というのがほかにないわけですね。そういうことからしても、ぜひ早急に入れていくべきだと思います。

 それで、これは今少し議論がありましたが、昨年の環境省等の提案の財源調達型ということではなくて、本来これは課税によって価格効果を上げる、いわゆる価格インセンティブ効果ということで削減を促せる、ですから民生や運輸にもきくということでございますので、その際はほかの税を減税するという形で税収中立型の制度設計ということも可能ですから、そうすれば、大きな政府、小さな政府という点でもニュートラルな仕組みで導入することも可能でございますので、ぜひ早急に導入すべきというふうに考えます。

石田(祝)委員 それぞれ、ありがとうございました。

 税はどっちにしろ、取られるときの一つの痛税感、それによってその税に対する意識、そして、なぜこの税が導入されているのかという、本人に対する覚せいというんでしょうか、そういうものもあると思いますし、また、その集められた税を使うという、いわゆるいただくときの痛税感とそれからそれをどういうふうに使うかという財政的な問題と、私は二つの面でいろいろとこれは考えていける、工夫ができるものではないか、こういうふうに思っております。

 そういう中で、石油、石炭については現在でも大変な負担をしていただいておりますので、そういうものとの整合性も、これはもちろん考えていかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

 最後になりますけれども、原子力発電で若干お聞きをしたいんです。

 確かに、発電所をつくるときの最初の段階から、廃棄、そしてそれを閉鎖して、最後のところに行くまでのエネルギーを全部計算すると、これは果たしてどうなのかという御議論もあろうかと思いますが。既にこれは発電所があるという前提の中で、現在稼働しているわけですから、その現在から、これから将来に向かってのCO2の排出という観点で、この原子力ということをどうとらえていくか。

 この点について、もう時間がありませんので、永里参考人と鮎川参考人、それぞれに、ちょっと短くお願いしたいと思います。

永里参考人 時間がありませんので、結論だけ言います。

 安全に非常に気をつけて稼働させることによって、原子力は、日本のエネルギーセキュリティーの観点から必要である。これは地球温暖化対策のCO2を発生させないという意味でも意味があることであります。このことを持つこと自体が非常に意味のあることだと思っております。

鮎川参考人 私は、自分の先ほどの中で長々と述べさせていただいたんですけれども、現在稼働しているのは安全に使ってやるということで、設備利用率を上げるというような危ないことはしてほしくない。

 将来にわたって、今何が原発の問題かというと、予算の物すごい膨大な量が原発に向けられているんです。ですから、そういった開発研究費用をもっと自然エネルギーとか省エネルギーとか、今できる、もっと安全でそして確実な削減量が得られるところに向けるというようなことに社会をシフトしていかなくてはならないという意味で、将来においてはやはりもう主柱とは置かないで、主柱をもっと再生可能エネルギーとか省エネルギーとか、そういった方に向けて、今、振り向けられている予算の大半が原発に向けられているということがあるので、そこら辺は改めていただきたいというふうに思います。

石田(祝)委員 大変貴重な御意見、ありがとうございました。これからの質疑に参考にさせていただきたいと思います。

 では、終わります。

小沢委員長 次に、土井たか子さん。

土井委員 きょうは、参考人として御出席の皆さん、お忙しい中を、本当に貴重な御意見、ありがとうございます。

 それで、きょうは参考人の皆さんの御意見を承ったり、また質問に対してお答えいただいている中身をお聞かせいただきながら、つくづく思いました。先ほど民主党の長浜さんが委員長に要望されておりましたけれども、私も同感です。

 それで、特に今回の問題は、京都議定書に対しての対応というのが日本としては終始問題になっている基本なので、京都議定書という問題を取り上げて、具体的にその中身の経緯に対してしっかり責任を持つというためにも、当委員会がやはり集中的に、その担当として、現場に御出席で、逐一中身に対してよく御存じの方にここに来ていただいて、一度そのことに対してしっかり、基本を改めて固めるということも大事だろうと思いますから、これもまた委員長の方にお願いを申し上げさせていただきます。

小沢委員長 はい、承りました。

土井委員 さて、まことにプリミティブなことを申しますけれども、今回の法案、そして大綱、もう言うまでもなく、地球温暖化対策推進大綱ですが、これが実施されてきたものの、現状では、試算したら、京都議定書の基準年の排出量より約八%も温室効果ガスの排出が増加しているということが言われています。これは、非常に私は後々深刻だと思うんですね、停止しているわけじゃないんだから。だから、そういうことを考えてみると、我が国で、六%削減目標と合わせまして、約一四%もの温室効果ガスというのを第一約束期間の間に削減しなきゃならない。ということになりますと、この二月の十六日に京都議定書が発効いたしまして、今後はこれまでの大綱にかわって何とかしなきゃならぬで出てきたのがこの京都議定書目標達成計画という形なんですね。

 そう理解すると、我が国の六%削減目標の達成は、この目標達成計画の中身によって約束されていないと、どうにもこの達成計画を出す意味がないというふうにすら思えるわけで、きょう参考人として御出席の方々の中で、先ほどは鮎川参考人がこの中身に対して問題点をしっかり指摘してくださいました。私、全く同感なんですが、そういうことを具体的にしていくことのためにはどうしたらいいかというのをきょう御出席の参考人の皆さんから改めて、これは繰り返しになる部分も含めてお聞かせいただければと思います。

永里参考人 お答えします。

 この法律の趣旨は非常に重要でありまして、この趣旨、要するに、はっきり言ったら、意識改革を進めていくということ。だけれども、これは一部でありまして、これによって九〇年比六%削減ができるということにはならないわけでして、先ほどから出てまいりましたけれども、国民の意識を高めて、家庭とか民生の方で本当に意識改革して、頑張って努力しなけりゃだめですし。

 それから、原子力は悪いということを言っていても、原子力でCO2の削減を稼がないといけませんので、ということは、要するに、石油化学燃料を使えば使うほどCO2がふえてくるわけですから、そういう意味で、原子力も必要であるということですし、こういう点では、アメリカとか中国も一生懸命これから、二〇二〇年にかけて原子力を、中国は二十七基つくるし、アメリカは二十基つくるというようなことを考えております。アメリカなんかは、二〇五〇年までに原子力発電は五十基もつくるというようなことも言っています。

 私、原子力発電について非常に国民がアレルギーがあるのは残念だと思っておりますけれども、アレルギーのある方がいらっしゃったとしたら、それだったら、民生の方で一生懸命頑張ってほしい、自分たちの方の生活において省エネをやっていってほしい、こういうふうに思います。

森嶌参考人 本日の参考人の依頼は、推進法の一部改正についての意見ということですので、私は、一部改正についての意見を申し上げる、それの必要な限りで、私は土井先生と同じように出は法律家ですから、余計なことは言わない、十五分で言わなきゃならぬことを言うということですので。

 今御質問でしたので申し上げますと、この六%をどうするかということについては、先ほどちょっと申しましたけれども、中央環境審議会それから産構審でそれぞれ、別にと申しましてはあれですけれども、連携をとりながらではありますけれども、昨年から議論をしてまいりまして、ファーストステップといいましょうか、三年間やりましたことを議論しまして、それぞれ大綱の見直しをしまして、こういうことをやらなきゃならないということで、それぞれ議論をした結果を出しました。

 大変難しいということで、それに基づいて今度閣議決定を出したわけですけれども、それによりますと、一応、産業部門は、これは産業部門が半分以上を占めているんですけれども、何を産業にするかによりますけれども、六割以上を占めているんですが、これですと、九〇年に比べますと〇・〇二%ぐらいのマイナスなんですけれども、本来産業部門はもうちょっと下げてほしいところなんですけれども、ほぼ平準化しているんですが、運輸部門が一九・五%プラスなんですね。それから、業務、こういうところも含めたオフィスなどが三六・九%プラス、四〇%ぐらいプラスしていまして、それから、家庭部門が二八・九%、我々がシャワーを浴びたりなんかするのが約三〇%ふえているわけですね。

 それに対してどういう施策をとるかということで、今度の推進法は、むしろ産業部門、それから運輸部門の一部、これを抑えようと。抑えようといいましょうか、先ほど言いましたように、規制ではないんですけれども。

 そこで、難しい、難しいと申しましたのは、オフィスだとか家庭部門などをどうやって抑えるかと。先ほど畑さんが言われたように、それでは税でいくかということになりますと、先ほどの石田委員だと思いましたけれども、取られる方からすれば、何で取られるんだということになりますので、やるときにどういう議論をするかというのはなかなか難しいんですが、そこで私が申し上げたのは、ぜひ国会でも、注目されないかもしれませんけれども、御議論いただきたい。

 まだ二〇〇八年から二〇一二年まで、まだというか、もうないというか、あるんですが、問題は、ビヨンド京都という、この先がまたあって、これは先ほども、鮎川さんだと思いましたけれども、おしゃったけれども、今度は五〇%。六%じゃなくて五〇%下げなきゃならないということで、ことしの終わりぐらいからまたネゴシエーションが始まります。そうすると、日本あたりはまず、おまえのところ五〇%下げろよという話でやられるはずですが、そうすると、今どころの騒ぎでないことを我々はやらなきゃならないので、中環審にしろ産構審にしろ、政府のために議論をしなきゃならないわけですから、私は、もう本当に第一歩ですので、ぜひその点でも、ここは並々ならぬ、ある意味では国難が今我々のもとに来ていて、先生方にぜひそこを、細かい点はともかくと申しましょうか、ぜひいろいろなものを総動員してやらなきゃならない時期に来て、先ほどちょっと申しましたけれども、きょうのお話はそのうちのほんの一部に取っかかっているんだということをぜひ知っていただきたいと思っております。

鮎川参考人 これは、端的に言うと、民生や運輸に対しては先ほど言った炭素税のようなもの、そして大規模排出者に向けては国内排出量取引制度の導入ということが、まず二つあるんですけれども、さっきちょっと言わなかったんですが、民生の家庭・業務部門に対しての政策としては、例えば家電製品の買いかえのときは省エネ型のものに買いかえるようにもっとラベリング制度を徹底させるとか、あと、メーカー側から、消費電力ももちろんなんですけれども、この機器を使うことによって年間排出量がどのぐらいあるかということもあわせて、広告の中でこの機器はこれだけCO2を排出しますということを言わせるということを義務化させるとか、あと、買った側にとって、補助金とかポイント制とかマイレージのような、何らかのメリットがあるような、そういうものを集めると何か賞がもらえるとか、そういうようなインセンティブを、国民の方にモチベーションをかけるというようなことが政策として必要じゃないか。

 あと規制とかで、住宅に関して、新しいビルに関して、もっと断熱基準を強化したり、照明の基準を設定して、それ以上やらないとか、二重窓の義務化とか、太陽光発電の設置義務とか、そういうようなことを法案化して、そういうような基準を強化することによって民生業務の方の政策があるんじゃないかというふうに思います。

 そういうようなさまざまな方法がありますので、そういったことをやっていっていただきたいと思います。

畑参考人 京都議定書目標達成計画の案では、やはり非常におぼつかない。

 それで、私は、今回のパブリックコメントに、気候ネットワークとしての意見以外に、私の個人の意見を出しまして、個人の意見では少し過激なことを書いたんですが。それは、この計画案は、閣議決定を延期して、あと半年ぐらいもっと抜本的に議論をして、先ほど申し上げたようないろいろな実効性の高い政策をきちんと入れて、つくり直すべきだというようなことを申し上げました。今でも本当はそうすべきだろうというふうに思っています。

 ただ、それが難しいとしても、政府の予定では二〇〇七年が次の見直しの年ということになるわけですが、それではもう遅過ぎると思うんですね。今までも、九七年からもう八年間も、ほとんど強い政策を打ってこなかったからどんどんふえてきてしまったということがありますので、これを二〇〇七年までまた先延ばしするということでは、ますますその目標達成が危うくなるというふうに思いますので、先ほども申し上げましたけれども、達成計画が閣議決定されるとしても、国会におかれては、ある種それに余りとらわれずに、もっと進んで、前進的に議論をしていただきたいと思います。

 ですから、例えば先ほどから議論に出ている炭素税、環境税等については、環境委員会で何かイニシアチブをとっていただいて、ほかの関連する例えば財務委員会とかですかね、その委員会と共同で何かそういう検討を進められるとか、そういうようなことも含めて、ぜひ国会でリーダーシップをとって、その実効的な削減という点で、政府がやらなくても、例えば法律を制定してしまうとか、そういうようなことも含めて、ぜひ前向きにやっていただきたいというふうに思っております。

土井委員 もう時間ですから終わりたいと思います。少し国際的なことを聞いてみたい、御意見を拝聴したいと思っていましたが、時間が先に来てしまいました。

 ありがとうございました。

小沢委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時四十四分開議

小沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省大臣官房審議官樋口修資君、文部科学省大臣官房審議官木谷雅人君、文部科学省大臣官房文教施設企画部長大島寛君、経済産業省大臣官房審議官深野弘行君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長岩井良行君、気象庁長官長坂昂一君、環境省総合環境政策局環境保健部長滝澤秀次郎君及び環境省地球環境局長小島敏郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。水野賢一君。

水野委員 自由民主党の水野賢一でございます。

 温暖化対策推進法の改正についてお伺いをしたいと思います。

 この地球温暖化対策推進法は、今までも京都議定書を達成するための国内担保法だというような説明をされておりましたし、今までの経緯を見ても、そういうような流れの中にあったわけであります。九七年の十二月に京都議定書が採択をされて、それを受ける形で、その翌年、九八年にこの法律が成立をいたしましたし、二〇〇二年に日本が京都議定書を批准をしたときに、その年にまず最初のこの法律の改正も行われた。そして、ことし、京都議定書が発効をしたという年に、さらに再度この法律の改正も行われるという、いわば国内担保法的な色彩を持っているわけでもございます。

 ところが、この温暖化対策推進法にはちょっと妙な点があるわけですね。というのは、担保されるべきところの京都議定書というのは、温室効果ガスの六%削減ということをうたっているにもかかわらず、この国内担保法であるべきところの温暖化対策推進法では、例えば、国とか自治体とか事業者とかに対して、そういう各主体に対して削減計画をつくれと求めているわけではなくて、排出抑制計画をつくれというふうになっていたわけですね。いわば用語においてややずれがあったわけであります。

 だからといって、実際には、各主体は何%を今後何年間で削減しますという計画をつくっていましたから、実害はなかったというふうには言えるかもしれないけれども、用語においてずれがあったのは事実なわけでありまして、そういう点こそ、一部の人たちからは、政府はやる気が不十分なんじゃないかというようなことを指摘されたりするもとにもなっていたわけですね。

 今回のことしのこの改正案によって、国とか地方公共団体の責務に関しては、排出抑制というような言葉が削減というふうに変えたわけであります。この点は余り注目されていない部分ではあるんですけれども、私はこの部分は非常に意味があることだというふうに思って評価をしておりますけれども、そのとおり、まさに政府のいわゆる実行計画というかそういう部分に関しても、削減という言葉を使うようになったわけですから、しっかりとやっていただきたいというふうにまず要望をしたいと思います。

 そして、削減にせよ、抑制にせよ、計画をつくるということが本来の目的なのではなくて、つくった計画をきちんと実行を果たしていくということが目的なわけですが、いわゆる政府の実行計画、これはもう既に存在しているものですが、これの達成自体も非常に厳しい、ほぼ不可能に近いのではないか、現行の政府の実行計画の達成というのは難しいんじゃないかと思いますけれども、しっかりやっていくというそのあたりの決意をまず大臣に述べていただきたいというふうに思います。

小池国務大臣 委員におかれましては、今回の計画をつくる際にも、その前から、抑制か削減かということで非常に御議論をいただいて、そしてまた削減という言葉を盛り込むということにも大変御尽力いただきました。

 まず、事業者や国民の参加を得て地球温暖化対策を進めるわけですけれども、国、地方公共団体が率先して取り組むということが重要でありまして、そこで削減という言葉になるわけでございます。

 実行計画ですが、間もなく現行の計画を引き継ぐ新たな計画を策定することといたしております。これは政府の事務事業に関しての温室効果ガス排出の削減についてでございます。なかなか難しいというお話、きょうのやりとりの中でもあったのかもしれません。また、大変活発な御議論があった、この旨伺っているところでございます。

 環境省とすれば、まず、ことしの八月でございますけれども、自動車に先駆けて、定置型がこれから進みます燃料電池の設置など、その先頭に立って取り組む所存でございます。

 また、地方公共団体の実行計画の策定、実行については、環境省として、策定する際のマニュアルをお配りしてその技術的な支援をするであるとか、実行計画に基づいて率先的な施設整備に対します補助を行ってきたわけで、今後とも一層、関係省庁との連携を図りながら支援に尽力をしていきたい、このように考えているわけでございます。

 ということで、この抑制か削減かという言葉遣いでございますが、なかなか法律用語として、量なのかテンデンシーなのか、その辺のところで、議論も実際の現場ではあったというふうに聞いております。いずれにいたしましても、京都議定書で六%の削減を約束しているわけで、おっしゃいますとおり、計画でございますけれども、それは手段であって、目標は六%の削減を達成すること、さらには、その後の地球温暖化対策に対して我が国が世界をリードしていくという大きな大きな目標に向かっていくその第一段階である、このように考えているところでございます。

水野委員 今回の法改正の根幹の部分は、一言で言うならば、事業者が今どれだけの温室効果ガスを排出しているのかということをきちんと算定して報告してそれが公表されるという、この制度を、この仕組みを新たに導入するということが根幹になると思うわけであります。排出削減ということが大切なわけですけれども、そのためにも、今現在どれだけ出しているのという、そのことをしっかりと、これがわからないと話も進まないわけですから、こうした公表の制度というものができ上がるということは、私は非常に意味があることだと高く評価をするわけです。

 さて、今回、この算定・報告・公表制度を法律で義務づけることになるわけですが、今まで別に法律に義務づけられていなくても、自主的に公表している企業というのは、これは幾らでもあるわけですね。例えば環境報告書などで、我が社は今何トン出していますので、今後何年間で何%削減しますというようなことを独自に出しているという会社はあるわけであります。しかしながら、自主性に任せているだけでは、やるところとやらないところがあるから、だから最低限のことはきちんとやってもらおうということで法律で義務づけるようになったと思うわけですけれども、これは、お伺いしたいのは、現時点で自社の温室効果ガスの排出量をきちんと公表している事業者、企業というのはどのぐらいありますでしょうか。

高野副大臣 お答えいたします。

 環境省が行いました平成十五年度の企業行動調査の結果によりますと、これは東京、大阪、名古屋、各証券取引所の一部、二部上場企業及び従業員数が五百人以上の非上場企業等六千三百五十四社を対象に調査をいたしまして、有効回答数が二千七百九十五社からありまして、そのうちのCO2排出量の情報を公開している企業等は七百二十一社になっております。

 したがいまして、全体、有効回答した企業あるいは事業者の四分の一程度ということでありますが、我が国全体で見た場合には、公表している事業者はさらに小さくなるということだと思います。

水野委員 今、そういう一部、二部上場の企業というのは、いわば日本を代表するような企業と言っていいでしょうけれども、そこが四分の一、しかもそれは回答した上の四分の一ですから、回答率、今の話を聞くと、六千三百五十四社のうち二千七百九十五ですか、回答率がさほど高くないということを考えると、これは当然きちんとやっているところの方が回答する率は高いということは容易に想像つくわけですから、実際にはもっと、四分の一よりもさらに自主的に公表している例というのは少ないだろうというふうには言えるわけですね。そう考えると、だからこそ、こうした法律をつくる意味というのが大きくあるのではないかというふうに思うわけであります。

 さて、さはさりながら、すべての事業所に対して報告、公表しろというわけにもなかなかいかないわけでしょうから、やはり一定規模以上のものに対してこういう義務をかけていくというのは物の道理として当然だと思うわけですけれども、要するに、一定の規模以上のところで何らかのすそ切りをするということになるわけですね。

 では、これは法律事項じゃなくて政令事項だと思いますけれども、これはどのぐらい以上の規模の事業者を対象に、事業所を対象にしようとしているのか、お答えいただきたいと思います。

小島政府参考人 この制度は温室効果ガスの六ガスを対象にしておりますけれども、日本におきましてはエネルギー起源の二酸化炭素が非常に多いということでございます。このエネルギー起源の二酸化炭素に関しましては、既に省エネ法がございますし、今国会で、省エネ法の改正で運輸部門も新たに報告の対象となるということでございますので、まず省エネ法の対象事業者をこの対象にしたいと思っております。

 この省エネ法の対象を見てまいりますと、熱については原油換算で千五百キロリットル以上、電気については六百万キロワットアワー以上、今度の改正で、電気、熱合わせて千五百キロリットル以上というように改正をしていくということになっておりますので、これを換算いたしますと、熱の千五百キロリットル以上は二酸化炭素でおおむね四千トン、電気の六百万キロワットアワー以上というのは二酸化炭素でおおむね二千トンということでございますので、省エネ法の対象というものが、この間、おおむね三千トンぐらいでバランスをするかと思っております。したがいまして、他のガスについては三千トンということを目安にすそ切りをしていきたいというふうに思っております。

水野委員 では、三千トンというのは、例えばガスごとに三千トンという理解でいいんでしょうかね。というのは、例えば、二酸化炭素を二千五百トンで、ほかの温室効果ガス、SF6を七百トンという場合は、合計で三千二百トンになりますよね。そういうような場合というのは対象になるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

小島政府参考人 排出量のすそ切りについては、微量な排出についての算定はまた事業者の負担にもなるということを考えまして、それぞれ個別の温室効果ガスごとに三千トンかどうかを判断するということにしております。したがいまして、御指摘のような、排出量を合算して三千トンという場合には報告の対象とはならないということでございます。

水野委員 こうした算定・報告・公表制度というのは、諸外国でも既に導入しているところがあるわけですね。EUしかり、カナダしかり、また、イギリスは独自のものを導入しているというようなことがあるわけですけれども、当然そうした国々でもすそ切りはあるわけですが、そのレベルというのは、二酸化炭素の場合でも結構です、二酸化炭素のすそ切りは諸外国ではどのぐらいでしょうか。

小島政府参考人 諸外国の例を見てみますと、EUは十万トン、イギリスは一万トンということでございますので、日本の三千トンというのはかなり小さな発生源までカバーする、国際的に見るとそういうことになっております。

水野委員 確かに今回のこの制度の導入というのは、EUなどに比べて時期としてはおくれたわけですけれども、その厳しさにおいてはそれよりも格段に厳しいということが言えるんではないかというふうに思います。それだけ世界に冠たる環境立国を目指すのにふさわしい法律だというふうに高く評価をさせていただきたいと思います。

 一方で、カバー率の問題というのがあるわけですね。カバー率、つまり、この新制度が対象とする二酸化炭素の排出量が、全国の温室効果ガスの排出量の何割ぐらいをカバーしているのかというと、大体五割ぐらいだという説明が今までありましたね。五割で少ないという質疑もあったかもしれないんですが、私は、五割というのは実は非常に高いと思うんですね。なぜならば、この制度が対象にしているのは産業部門がかなり主になるわけですね。例えば、家庭なんかは抜かれる、最初から対象になりようがないわけですから。その中で全国のカバー率が五割というのは相当高いというふうに私は思っていますけれども、日本の新制度のカバー率が何%なのかということを改めてお聞きするのと、これはEUの場合は何%ぐらいになっているのかというふうにお聞きしたいと思います。

小島政府参考人 EUの制度は、すそ切りが十万トンということと、対象となる産業を列挙しているということでございます。先にEUの制度が進んでおりますが、二〇〇一年のEUの十五カ国の実績は、二酸化炭素で見ると、総排出量の四二%をカバーしているということであります。

 我が国の新制度は、これから実績を具体的に見ていかなければなりませんけれども、二酸化炭素の排出量でいえば、おおむね五四%がカバーされるのではないかと思っております。

水野委員 もう一点、カバー率の話でお聞きしたいと思うんですけれども、五四%といっても、これは二酸化炭素の全国の全分野の話ですよね。産業部門だけに限れば、ほとんどの工場とかは、重立った工場ですけれども、この新制度で対象になるというふうに思いますけれども、産業分野だけでいえばカバー率はどのぐらいになりますでしょうか。

小島政府参考人 産業部門だけで申し上げますと、九割強がカバーされるというふうに計算しております。

水野委員 非常にそういう点では、私は、改めて申し上げると、世界に冠たる立派な法律が、今審議をして、成立をすればできることになるのではないかなというふうに思っておりますし、その運用についてはしっかりとやっていただきたいというふうに、環境省、経済産業省にもお願いを申し上げたいと思います。

 さて、今回のこの報告制度ですけれども、これは事業所ごとに報告をして、そして発表するときは国が事業者ごとに公表するというふうになっているわけですね。もうちょっとわかりやすく言えば、発電所など、電力なんかを例にとれば、一個一個の発電所ごとに報告をして、そして国が、東京電力とか何とか電力というふうに、関西電力とか、そういうような形で公表する。もちろん、これは情報公開請求なんかがあった場合は別ですよ、一般的にの話ですけれども、そういうふうな制度になっています。

 というと、国が、いわば集まってきた情報を名寄せして、企業ごとに名寄せするというような、そういう理解でよろしいのでしょうか。

能勢大臣政務官 今回の制度では、御承知のとおり、事業所ごとの報告になじまない運輸部門の事業所を除きまして、原則として事業所ごとの報告をしていただくということになっております。国におきましては、企業別、業種別、それから都道府県別に集計いたしましてこれを公表いたすことになっております。

 したがいまして、排出量のデータを企業単位でまとめる、先生が今言われましたいわゆる名寄せというのは、国において行うことにいたしておりますので、よろしくお願いいたします。

水野委員 あと、この報告・公表制度ですけれども、例えば二酸化炭素の排出量といったときに、一般的な、工場で石油を燃やしたとか、石炭を燃やしたというときは、係数を掛ければすぐどれだけの二酸化炭素が出たということを計算できますから、これは話はわかりやすいんですけれども、問題は電気だと思うんです。電気を使った場合にどういうふうにCO2に換算するのかという話ですが、これは、もちろん換算係数はあるわけですが、このときにどういう換算係数を使うのか、いわゆる全電源平均を使うのかとかという話ですね。これは、それによって、いわゆる炭素集約度をどういうふうに反映させるのかという話と同じになりますけれども、この辺は局長、どうですか。

小島政府参考人 まず、現在の温暖化対策法の施行令でございますけれども、電気につきましては二つの区分に分けております。一つは、一般電気事業者、これは東京電力等々でございますが、それとその他の電気を供給する者という二つの区分であります。

 一般電気事業者については、全電源平均で、原子力でありますとか、火力でありますとか、水力でありますとか、そういうものを平均して一本の数値を出しております。〇・三七八キログラム・キロワットアワーのCO2でございます。その他の電気を供給する者につきましては、火力平均で、これも石炭等がございますので一般電気事業者よりも高い値になりますが、これが〇・六〇二キログラム・キロワットアワーのCO2、こういうことでございます。

 御指摘のように、各電力会社ごとに係数をつくっていけば、原子力がある電力会社は小さく、原子力を全く持たない沖縄とかは大きくなるわけでございますけれども、一般電気事業者というようなくくり方をして、現在のところは全電源ということで一本で計算をしているということでございます。今後どうするかはまた検討してまいりたいと思います。

水野委員 私は、こうした排出量の公表は義務化するべきだというようなことを、かねてから、年来ずっと言い続けてきたわけであります。そして、三年前にこの温暖化対策推進法が改正をされたときも私はこれは強く主張したんですけれども、そのときは残念なことに盛り込めなかったわけなんですね。

 では、どういう論拠でだれが抵抗していたのかというと、はっきり言えば、経団連も強い抵抗をしていました。鉄鋼連盟なんかは特に強い反対でしたね。経済産業省もかなり反対をしていたんですが、そのときに、反対の論拠というときに、では、何で温室効果ガスの排出量を公表するのはだめなんだということに対しては、いろいろな論拠がありましたけれども、反対論者の大きい論拠は企業秘密だという議論があったんですね。私は、それは企業秘密のわけはない、特許にかかわるようなものとか、そういうものは企業秘密ではあるだろうけれども、二酸化炭素の排出量が企業秘密のわけがないと。一方で、売上高とか従業員数とか、そういうようないろいろなものは公表しているわけですから、資本金とかですね、これは企業秘密のわけはないと言ったわけなんだけれども、しかし、そういう面での抵抗が非常に強かったというのは事実なわけですね。

 今回の法律の中では、一方で、本当に企業秘密に当たる場合には保護される規定というのは盛り込まれております。実は、いろいろ議論をしていくと、二酸化炭素は僕も企業秘密じゃないと思うんですが、温室効果ガスの中の一部、例えば液晶とか半導体とか、そういうところをつくるとか、SF6とかは、これがほかの企業にわかるとどうにもならないとかというのは確かにあるらしいんですね。かなり技術的な話なので、そこまで私も、これは企業秘密じゃないだろうとまでは断言できないわけなんですけれども。

 ですから、本当にこれは守られなければいけないという部分があれば保護される仕組みというものはあっていいと思うんです。ですから、そういう制度が盛り込まれていることはいいと思うんですが、少なくとも、企業側がこれは秘密だと言ったら秘密だと認定するというようなことはないように、これはしっかりと、きちんとした判断基準のもとに公平にそういうような基準を設定していただきたいというのをまず要望しておきたいと思います。

 さて、先ほど能勢政務官の方からの御答弁の中にありましたけれども、運輸事業者などは、事業所ごとじゃなくて企業単位の、企業一社、つまり、ヤマト運輸ならヤマト運輸、日本通運なら日本通運という一社での報告という形になるというような含みの話がございましたけれども、それはわかるんですが、一方、例えばコンビニエンスストアとか、チェーン展開しているもの、マクドナルドでも吉野家でも結構です。一店一店の事業所ごとに見たらこれは非常に小さいわけですね。しかし、全国規模で見たら非常に大量のCO2を排出しているであろう、こういう全国展開をしているようなチェーンストアなどの場合は制度の対象になるんでしょうか。

小島政府参考人 コンビニエンスストアでございますけれども、今回の制度は、固定発生源としては事業所単位ということでございますので、全国展開するコンビニの場合、一つ一つを見るとフランチャイズで営業はされておりますけれども、個々の経営主体は非常に小さい規模だということで、今回の制度の対象とはならないということでございます。

 ただ、京都の条例におきまして、こういうものを全体でつかまえるということにしてはどうかというような試みもあります。多店舗で展開している企業体の取り扱いをどうするかということにつきましては、実情を踏まえながら、今後さらに検討をしていきたいと思っております。

水野委員 こうした排出量の公表制度というものを義務化するということは、一方においては、こういうことをきちんと公表されるということになれば、事業者も、野方図な排出とか、無計画なCO2の放出とか、そういうようなものは自制しようという心理は働いて当然なわけですね。そういう点からも効果があるわけなんですが、私は、そういうようなことに加えて、新たな別の施策を打ち出すときの一つの基盤になり得ると思っているんですね。

 例えば、キャップ・アンド・トレードの国内排出量取引、これを行うようなときに、今何トンCO2を出しているのかということがわからなければ、キャップ・アンド・トレードというのはもうそもそも成立し得ないわけですね。私は、こうした制度が導入されて、キャップ・アンド・トレード型の国内排出量取引に向けても基盤ができたんじゃないかというふうに思いますし、こういうものは前向きに考えるべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

小池国務大臣 御指摘のように、排出量取引というのは、一定の削減量を実現するためにはコストパフォーマンスが極めていい、最小化できるという費用効率的な制度でございます。

 既にことしの一月から、EUでは対象施設指定型の域内排出量の取引制度が導入されているということでございますし、また、カナダにおいても国内排出量取引制度の導入が検討されております。また、カナダとEUの制度とのリンクということも検討されているというのが世界の状況でございます。

 我が国では、平成十七年度から自主参加型排出量取引制度を実施していくということにしておりますけれども、その制度そのものについては、京都議定書目標達成計画案で、ほかの手法との比較、そしてその効果など幅広い論点で総合的に検討していくべき課題であると位置づけられているところでございます。

 今後、キャップ・アンド・トレード型の排出量取引についても、そういった意味で議論を深めていくということ、それから今世界がそうやっていろいろと動いていることにも私どもは注視をしてまいりたいと考えております。

水野委員 今法律についてずっとお伺いをしてきましたけれども、実は一番大切なのは、もちろん京都議定書の六%削減を達成するということも大切なんですが、さらに大切なのは、実は大気中の温室効果ガスのレベルを安定化させるということなわけですね。それによって気温の上昇を防ぐということなわけですし、だからこそ、気候変動枠組み条約でも究極の目標としてCO2のレベルの安定化ということをうたっているわけですが、では、その安定化というときに、何ppmぐらいで安定化させるのか、もしくは気温の上昇というのがどのぐらい以内におさめるべきだというふうに、大臣、お考えでしょうか。

 これはいろいろな科学的な知見を積み重ねていかないといけないわけですけれども、しかしながら、かなり政治的な問題でもございますので、大臣、お願いします。

小池国務大臣 御指摘のように、目標達成計画をつくる、そして六%削減ということをこれからしっかりと実行していかなければならないんですが、今、そもそも論で、究極の目的は何だということを振り返ってみますと、気候変動枠組み条約にあるとおり、温室効果ガスの大気中濃度を安定化させるということが、このことを達成させるということが重要になってきます。

 ただ、この究極目標をどのようにして具体化するのか、温室効果ガス濃度安定化の水準はどうなっているのか、温度上昇の抑制水準についてはどうなのか、こういったことについてはまだ国際的な合意がないわけでございます。ただ、このような究極目標についての具体化というのは、重要な検討課題の一つであると認識しておりますし、また、地球環境部会のもとでの国際戦略専門委員会で、この条約の究極目標の具体化について、ただいま御論議の真っ最中ということでございます。

 また、EUでは、先駆けて気温上昇の抑制という目標を定めています。明確な目標を定めるということでありますが、ただ、これはただ勢いで言ってしまうとか、そういうものではございません。科学的な知見に基づいてされなければならない。EUはこの数値を挙げるに当たって、科学的な知見の裏づけをもとにされておられるというわけでございます。

 これも、中環審の専門委員会で御論議をいただきまして、そして、しっかりとそういった科学的な検討を踏まえながら、地球温暖化対策でリーダーシップが振るえるように、そういったこれからの流れというものを総合的に見詰め、またその中でしっかりと働いていきたいと考えております。

水野委員 時間ですので、最後の質問にしたいと思いますけれども、今回のCO2などの排出量の報告・公表制度というのは、報告や公表をするというときには、当然それが正しい報告であるということが大前提なわけですよね。

 実はこれ、似たような制度でも、既に経済産業省の所管している省エネ法という法律があります。これも非常に似ていて、CO2の量の報告ではないけれども、どれだけの石炭を使ったとか、天然ガスを使ったとか、そういうようなことを報告する義務が現行の省エネ法でもあるわけですね。似ているからこそ、その省エネ法のスキームを今回使いながら温暖化対策推進法も改正をする、そういう仕組みになっているわけなんです。

 ここで、経済産業副大臣にお越しいただいて恐縮なんですけれども、特に省エネ法の場合、省エネ法で経済産業省に報告をされたデータというのは、原則としては国民に対して開示されていないわけですよね。ですから、国民の目で見て、報告されたデータが正しいのかどうかというのはだれもわからないわけですね。なぜならば、開示されていないわけですから。

 きちんとしたデータが報告されているんだろうというふうに本当は信じたいわけなんですけれども、しかしながら、最近、日本を代表するような企業でデータ改ざん事件というのが相次いでいる。例えば、三井物産のDPFのデータ改ざん事件があった。そして、これは私の地元なんですけれども、千葉市のJFEスチールが水質データを改ざんして報告をしていたということが、ことし明らかになったわけですね。

 というように、要するに、こうした日本を代表するような企業が、きちんとした数字じゃないものを報告しているという例が相次いでいることを見ると、特に省エネ法のデータの報告などの場合は、これは国民がチェックできないわけですから、正しいのかどうか、経済産業省の方で、疑わしいものに関してはやはりきちんと立入検査などをしてチェックをする必要があると思うんですね。現行の省エネ法でも立入検査の規定はあるんだけれども、事実上ほとんどやっていないわけですね。ゼロとは言いませんよ。

 そういう点で、今後、こういうような疑わしいものに対して、省エネ法に基づくところの立入検査というのをしっかりやるべきではないかというふうに私は思いますけれども、いかがでしょうか。

小此木副大臣 委員の御指摘のとおりだというふうに思いまして、この立入検査は必要であるというふうに思います。

 過去のこの立入検査につきましては、年間に数回ということでありまして、これをもうちょっと積極的に、この省エネ法というものを実効性の高いものにするためにも、あるいは国民に安心していただくためにも、立入検査を積極的にやってまいりたいというふうに思います。

 具体的に、過去五年間のエネルギー消費原単位で極めて悪化した工場を中心に、ことしは三十以上を立入検査をしてまいりたいというふうに思います。

水野委員 ありがとうございました。

 時間ですので、終わります。

小沢委員長 次に、村井宗明君。

村井(宗)委員 民主党の村井宗明です。

 質問に入る前に、昨日の尼崎市のJR福知山線で発生した脱線事故の皆様について心よりお悔やみ申し上げ、御冥福をお祈り申し上げたいと思います。また、負傷された方々に対し、お見舞いを申し上げたいと思います。

 さて、環境委員会の皆様方、先輩方に御配慮いただいてこうやって何度も地球温暖化問題について発言をさせていただく場をいただいて、本当にありがとうございます。私もこの問題、ライフワークとして取り組みたいと思っています。

 その中で何度も申し上げるように、京都議定書の目標を数字の上で達成すればいいというのでは大間違いなんだ、CO2を初めとする温室効果ガスを削減することが一番大事な目標であって、京都メカニズムだ、森林吸収だ、そういったことで数字だけ合えばいいなんというのでは、決して地球温暖化は防止できないんだ、私はそう思うわけです。

 大臣、京都議定書目標達成計画についてお伺いします。

 あくまで国内のCO2など温室効果ガスを減らすことが一番重要なんだと。そして京都メカニズムなど数字上で目標を達成したというのはあくまで補足的なものだと思うんですが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

小池国務大臣 京都議定書でございますけれども、先ほどもお答えをしたところでございますが、やはり温室効果ガスの安定化ということ、これが究極の目的と定められているわけであります。そしてそのためにどうするかというのが京都議定書ということでございます。よって、京都メカニズムについては、マラケシュ合意でもそうなんですけれども、あくまで国内対策に対して補足的であるべきということとされております。京都議定書目標達成計画案でも、その観点から、省エネ、新エネ対策、吸収源対策などの国内対策を基本とするということをうたっております。

 また、森林吸収源については、御承知のとおり、三・九%程度の吸収量の確保が目標となっておりますけれども、それでもなお京都議定書の約束達成に不足する差分については、補足性という原則を踏まえながら京都メカニズムを活用してまいりたい、このように考えております。

村井(宗)委員 今、大臣が京都メカニズムを活用したいというふうにおっしゃられました。

 今、そういった目標達成計画、私は一個疑問に思っていることがあるんです。京都議定書の目標達成計画自体を閣議で決定すればいいということになっています。本来、重要な問題は、この環境委員会、そして国会できちんと議決されたり議論されたりしなければならないんですが、この京都議定書目標達成計画というのは、閣議で決定されさえすればいい、この国会でちゃんと議論しなくてもいいほど軽いものなのか、それともここでちゃんと議論すべき重要な問題なのか、大臣はどうお考えでしょうか。

小池国務大臣 こういった問題につきましてはこの委員会でもかねがね御議論もいただいているところでございます。皆さんのこういった議論を通じましてしっかりと受けとめさせていただきまして、閣議決定を経て実際実行していく、これについては変わっておりません。

村井(宗)委員 大臣の今のお答えだとすると、この京都議定書目標達成計画をきちんとこの委員会に提出し、今回のそれに近いような法案を審議する中で話すんじゃなくて、目標達成計画自身をこの委員会でちゃんと議論する場が必要だと思うんですが、どうでしょうか。

小島政府参考人 今回の京都議定書目標達成計画は、温暖化対策推進法は二回目の改正でございますけれども、前回、京都議定書を批准する段階で改正をしていただきまして、この計画は、法律で位置づけられた、総理を長とする推進本部が案をつくって閣議で決定をするという改正をしていただきました。その法律の手続にのっとって今回は閣議決定の段取りをとっているわけでございます。

 もちろん、京都議定書目標達成計画のプロセスにおきましても、あるいは今後におきましても、その検証ということで国会その他いろいろなところで御議論をいただくことは当然だと思っておりますけれども、今回の閣議決定の手続は、前回の改正法の手続に従って行っているものだということでございます。

村井(宗)委員 私は、本来きちんとこの場で、目標達成計画について、今特に私が主張している、京都メカニズムなどに頼り過ぎないんだ、きちんとCO2の排出量、それから温室効果ガスの排出量を減らすんだという目標達成計画をきちんとつくるべきだというふうに主張し、次の課題に移らせていただきたいと思います。

 さて、大臣、今そちらでひざかけをしておられます。夏場は、よくそうやって暑い中、冷房をがんがんかけてひざかけをつけたりすることはございますでしょうか、どうでしょうか。

小池国務大臣 私、先ほどからちょっと風邪で熱がありましてぞくぞくする。

 そもそも夏の日本の冷房は、これは私個人のみならず、女性の多くは冷え過ぎで寒いということで、これははっきり言って体によくありません。ということで、京都議定書の目標を達成し、かつ女性の健康も害さないという意味では、ウイン・ウインのシナリオで夏の軽装というのをどの場所でも徹底していただきたい、このようにお願いをするところでございます。

 また、ぱらぱらとしていても意味がないので、みんながせいので外すことによって、それぞれの、ホテルにせよ、役所にせよ、オフィスにせよ温度を上げることができるのであって、皆さんで本当にそろってやっていただく、そのためには格好いいとか着やすいとか、余りお高くなくて手ごろとか、幾つかのファクターがあろうかと思っております。

 いずれにいたしましても、きょうはちょっと、それに花冷えでもないんですけれども、ちょっと寒い日かなと思います。

村井(宗)委員 さて、きょう、本論として、本当に全部弱冷房でいけるぐらい日本人のライフスタイルを変えなければならないというお話をしたいと思うんです。

 私たち、今こうやって背広を着ています。当時、日本はもともと和服だったにもかかわらず、すべて西欧のまねをすることがいいことだ、それが文明の進歩なんだというふうに勘違いをしてまいったんじゃないかな、私はそう思うんです。

 ところが、西欧、進んでいるというふうにしてまねはしたのはいいけれども、当然緯度は我々日本よりも高いところで起きた文明なんです。それをまねをした。ワイシャツ、背広、ネクタイ、まねをしたのはいいけれども、実際、我々より緯度が高い、つまり涼しいところの文明をそのままとってきたところで、夏場、これが日本の実態に合うはずがなかったんです。

 ところが、それをやることがおしゃれだ、それをやることがマナーだ、それをやることが文明の進歩なんだというふうにやってきた。ところが、春、それから秋、そして冬は西欧のまねをする文明でいいのかなと思うんですが、夏場は、私はその文明、無理やり言うことを聞く必要はないのかなという気がしています。

 夏場で日本の天候に合わないような格好を無理やりして、そしてその結果、いや、暑苦しいのでがんがん冷房をかけた。このままではいけないんです。本格的にそれを改善するような国民運動を展開していかなきゃならないと私は考えるんです。

 そこで、小島地球環境局長にお聞きします。冷房の温度を一度全国で上げるとすると、どのぐらい地球温暖化を防ぐことができるのか、CO2換算でお答えください。

小島政府参考人 これはちょっと前提を置いて計算をしなければなりませんけれども、全国で、まず世帯が五千万世帯あります。この五千万世帯とすべての事業所、総床面積で計算しますと十七億平米ありますけれども、ここで一度分上がった、つまりそれだけ電力の消費が減るということでございますが、そういう前提を置いて計算をいたしますと、一日当たりおよそ一万トンから二万トン、一夏でおよそ百万トンから二百万トンの二酸化炭素の削減ができる、こういう計算になります。

 これは、今回の計画の中で、二〇〇二年から二〇一〇年まで、民生部門、家庭と業務その他でございますが、合わせて約六千万トンの削減をするということになっておりますが、その二%ないし三・五%に該当するという計算になります。

村井(宗)委員 ありがとうございます。

 さて、この弱冷房のために必要な話をしたいと思うんですが、インターネットに死語辞典というサイトがあるんですね。これは死んでしまった後の死後じゃないんです、使われなくなった言葉の死語辞典なんですが、例えばどんなものが載っているかといいますと、DDT、シラミ退治に使った戦後の薬品ですね。それから赤チン、これは傷薬です、製造中止になったものですけれども。お立ち台、これはバブルのときのディスコで三種の神器と言われていたものですね。それから猿股とかも載っているんですけれども、そして、何とあの省エネルック、これも死語辞典に載っているわけです。今の若い人は省エネルックを知らないんです。

 そこで、小池大臣にお伺いいたします。

 日本の夏の軽装、ノーネクタイ、上着なしはなぜ普及しなかったんでしょうか。大臣はどうしてだと思われますでしょうか。

小池国務大臣 余り私に言わせない方がいいと思いますけれども。

 基本的には、トップの意識、それから慣行の問題が大きいというふうに思います。それから、役員や管理職の人は、なればなるほど、上着、ネクタイの着用率は実際高いですね。今回、軽装を行うにしましても、やはり上から変わってくれないと、下の者は楽だけれども変えられないんだという声はもうずっと聞いております。ですから、今回は閣僚以下、役所については徹底してやっていこうと思っております。

 それから、よくその点について聞いてくださいといってお話が来ますのは、やはり営業で回る方々なんですね。営業で行くと、ネクタイをしないで行くと、何考えているんだといって営業にならない、むしろ追い返されてしまうということなんですけれども、これから、特に環境関連のビジネスをやっておられる方は、いや、私は環境産業ですからといって堂々とネクタイなしで行ってください、むしろそれを徹底することが、例えばその企業のイメージにも合いますよというようなことを言うんですが、会社の組織というのは、役所もそうかもしれませんが、なかなか上が変わらないと変えられないということだと思います。よって、ぜひともこれを上から変えていきたいと思っております。

 あとは、ことしも入省式なんかにいますと、去年は一人だけジーパンをはいてきた剛の者がいましたけれども、とにかくみんな目立たないというのが日本の心地よく生きていく方法だというのが一つあるんじゃないか。私は各国、各国とそんな大げさじゃないですけれども、幾つかの国でお葬式に行ったことがありますけれども、こんなに真っ黒のお葬式をやる国はめったにない。中にはグレーの人、そこに真っ赤は着てきませんけれども、いろいろな色があるわけですよね。

 だから、日本人というのは、そうやって集団の中で目立たないことが生きる方法であるということを、特にこの二、三十年でそのすべとして得てしまったのかな。私のおじいさんの時代というか、明治生まれぐらいの方が、帽子をかぶったり真っ白の靴を履いたり、随分格好いい。大正のロマンといいましょうか、いろいろなことをやっていたはずで、何かこのところ画一的になっているというのは、ファッションの世界だけではないような気がいたします。よって、どうぞ皆さんも、ネクタイをとる、だって私は環境委員なんですよと言っていただきたいと思っております。

村井(宗)委員 ありがとうございます。

 上の人の意識が変わらなきゃならないという話もありました。かつて、私の尊敬する元某総理大臣は、省エネルックを着ておりました。彼は、高温多湿で資源もない日本で、長そでを着て、冷房をがんがんかけながら環境問題を議論するなんてナンセンスはやめるべきだとおっしゃられました。まさにそのとおりだと思います。その元総理、羽田さんは、総理になる前から、そして議員になる前からこの省エネルックを実践しておられました。単なる総理大臣のパフォーマンスではありませんでした。

 しかし、この省エネルックをつくっておられるお店によりますと、残念ながら売れ行きは余りよくありません。年間の注文数は国会議員や労働界などから四、五十着だったそうです。やはりしっかりとブームにしなければならない、私はそう思うわけです。

 ネーミングも何とかしなければならないと思っています。例えばテレビのアナウンサー、某国営放送のテレビのアナウンサーなんかも省エネルックでニュースに出ていただくように呼びかけるなんというのも一つじゃないかと思うんですが、どうでしょうか。

 もう一度小池大臣にお聞きします。

 日本の夏の軽装、ノーネクタイ、上着なしを普及、定着させる具体的な方策、アイデアをぜひ教えてください。

小池国務大臣 もうアイデアが山ほどあって、どこまでやろうかと思って、みんなはらはらどきどきして私のやることを見ているのが現状でありますが、名称については、省エネという言葉がもう死語になったということでございます。また、省エネルックと言っている限りは、新たな広がりはないというふうに思っていますので、きのう、実は既に公募をしておりますので、三千通ほど参りましたが、その中から何点かに絞り込みをしているところでございます。漫画家の弘兼憲史さんとか、環境について大変熱心に取り組んでおられる作家の新井満さんとか、服飾の御専門の方とか、吉本の木村元常務とか、いろいろなトレンドとかファッションとかに大変敏感な方にお選びいただいて、あす、実は発表することといたしております。

 その言葉が定着すると同時に、コンセプトの定着と、いわゆるソフトである部分のデザイン、つまり、ああ、僕も着てみたいというふうに思わない限り、一過性のもの、一過性のカは夏かもしれませんが、一過性になるかもしれません。いずれにしましても、アパレル、デザイナー、それから流通ですね、そういった新たなファッションを起こすつもりで、そういった関係者をみんな巻き込んで、楽しく今それについてやらせていただいております。

 ちなみに、前も申し上げましたけれども、沖縄のかりゆしはもう定着しておりますので、かえって、かりゆしの皆さんの中にネクタイをしていくと、一体どうしたんだと言われるということも聞いております。ファッションとか常識とかはそういうものだというふうに思っておりますので、皆さんに、これは自分も着てみたいと思えるような、そういう提案の方向にしていきたいと思っております。

村井(宗)委員 今せっかく言った新たなファッション、もちろんこれは本当にぱっとみんなが見るところで広げなきゃならないわけなんです。例えば環境省が呼びかけた、ポスターを張ったといったってたかが知れとるがです。やはり一番みんなに伝わるのは何か。マスコミですよね。

 特に、民間のマスコミまでそれを、無理を言うのはちょっと難しいのはよくわかるんですが、環境省が呼びかけたはいいけれども、テレビを見ておっても、だれもそんなものやらぬ、マスコミはだれもそんなのをやられるのは難しいと思うがです。例えば、国営放送のアナウンサーについてはどう思われますでしょうか、大臣。

小池国務大臣 我が国には国営放送というのはないんですね、まず。NHKだと思いますけれども、余りこっちから言っていくと政治介入と言われてしまいますので。

 そこは冗談といたしましても、ですから、最初、そういった目立った人にもやっていただきたい。それからあと、何人かキャスターの方々でノーネクタイでやっていらっしゃるけれども、何か余りにもカジュアルで、ビジネスのシーンには合わないと皆さんがやはり判断されているんだろうと思います。

 私が今提唱しようとしているのは、カジュアルウエアは好きなファッションをお選びになればいいので、私が今提唱すべきだと思っているのは、ビジネスのシーン、それからこういった国会などでも、はたまたそれでお葬式に行ってもしかられないというか、それが定着するということを考えていきたいと思っております。

村井(宗)委員 それでは、何を着てもよく似合う高野副大臣にお聞きいたします。

 本当に軽装、そして弱冷房を徹底させていくために、一部の特定の官庁や特定のビルだけではなく、都市全体、社会全体、世の中全体に浸透させていく必要があると思うんですが、その取り組み、お考えをお伺いいたします。

高野副大臣 お答えいたします。

 議員がおっしゃるように、温暖化対策としてはライフスタイルを変えていくということが必要であります。その一つとして夏の軽装というのはCO2排出削減にも大きく貢献するというふうに理解しておりますが、そのためにはやはりワークスタイルを変えるということが重要であろうと思います。そのために、国、これは環境省ばかりじゃなくて各省庁、そして国会も含めて、そしてまた各企業のトップから率先してやるということが必要だろうと思っております。それとあわせて、電車とかバスとか、これも国土交通省でこれからやっていくというふうに伺っておりますが、それを弱冷房車にするとか、あるいはデパートとかホテルとか映画館とか、こういう公共の施設においてもそういう取り組みが必要だろうと思っております。

 環境省としましては、本年六月の環境月間を中心に国民的なキャンペーンをやっていくということでありまして、その中で夏の軽装についても広く国民に呼びかけていくということをやっていきたいと思っております。

村井(宗)委員 一般的に公的なところはいろいろあります。その中で一つ学校を取り上げてみたいと思うんです。

 小学校、中学校とかいった公立の学校で冷房というものがそもそもどれだけ設備されているのか、そして、その設備されている設定温度はどのぐらいなのかというのが一点目。そして、また別の方に答えていただいても結構なんですが、文科省の方に同じくお伺いするのが、小中学校の教職員の夏季の服装、現状はどうなっていますでしょうか。それぞれお答えください。

大島政府参考人 お答えさせていただきます。

 小中学校における冷房設備の件でございますけれども、まず公立をお答えします。

 公立小中学校における冷房設備につきましては、平成十六年八月に文部科学省で調査をしておりますが、保有教室の総数、全部で九十六万六千六百十二教室ございまして、このうち十七万七千二百八十一教室、一八・三%に当たります、これが冷房を設置しているという状況です。

 また、国立についてもお尋ねがございましたが、国立につきましては、普通教室、それから多目的教室、特別教室、こういった総数が全部で四千三十五ございますが、このうち六百九教室、一五・一%、これについて設置されている状況にございます。

 これについての設定温度でございますけれども、毎年、夏の省エネルギー対策ということで通知を出しておりますが、これで、冷房中の室温につきましては二十八度Cを下回らないように適切に調整に努めてほしい、こういうことで、エネルギー消費について適正な管理を行うよう、これを各国公私立大学長、それから各都道府県教育委員会の教育長等に要請をしているところでございます。

樋口政府参考人 お答え申し上げます。

 学校におけます教員の軽装につきましては、教師の夏季間中の状況につきましては文部科学省としては具体的に把握を行っていないところでございますが、毎年夏前に、私ども、「夏季の省エネルギー対策について」といたしまして、各都道府県教育委員会等に対しまして、暑さをしのぎやすい服装でございます軽装の励行に努めることを含む省エネルギー対策への協力を文書により依頼をさせていただいております。

 文部科学省といたしましては、TPOに応じて、教職員としての服務にふさわしい服装のあり方について考慮しながら、各教育委員会や学校におきまして教職員の服装について適切に御判断をいただきたいと考えております。

村井(宗)委員 そういった本日取り上げてまいりました弱冷房と軽装の問題について、たしか京都議定書目標達成計画の中の一部として国民運動の予算をつくっていると思うんです。その国民運動の予算の中にそういったものの運動が含まれていくのかどうなのか、お答えいただければと思います。

小島政府参考人 端的にお答えいたしますが、それを含めてPRあるいは各企業にも呼びかけを行っているところでございます。

村井(宗)委員 最後に大臣にお伺いいたします。

 そういった形で予算もしっかり組んである中、本当に京都議定書目標達成計画に向けた弱冷房推進、そして何としてでもエネルギーを使う量を減らしていくということについて、政治家小池百合子先生としての目標達成の自信のほどをお聞かせください。

小池国務大臣 政治家というよりも、やはり今は環境大臣を務めさせていただいております。そういったことで、京都議定書の目標達成をしていくというのは環境大臣としての第一の使命であると思っております。全力でしっかりと仕事をしてまいりたいし、また目標が達成されるように全力を尽くしてまいりたいと考えております。

村井(宗)委員 どうもありがとうございました。終わらせていただきます。

小沢委員長 次に、荒井聰君。

荒井委員 民主党の荒井でございます。

 今回、法律の審議をしているわけですけれども、温暖化に関する枠組みの協定ができたのが一九九四年、それから、それの実施プログラムである京都議定書ができたのが一九九七年、そして発効したのがことしの二月。しかし、一貫して世界の炭酸ガス排出量というのは、抑制どころかふえているのではないか、少なくとも日本はふえている。どういう努力を今までしてきたのか。今審議しているこの法案によってそれが抑制できるのかどうか。私は大変疑問だと思うんです。

 基本は、やはり日本のエネルギー政策と環境政策の整合性ということに、もう一つしっかりとした議論がなされていないのではないか。エネルギー政策というのは、化石燃料からどうやってクリーンエネルギーに切りかえていくのか、炭酸ガスを出さないエネルギーに切りかえていくのかということなんだと思うんです。そのための技術開発でありますとか社会のあり方でありますとか、そういうものが議論の中心になるんだと思うんです。

 私は、ある意味では、この化石燃料から新しいエネルギーに切りかえていく、社会構造を切りかえていく、新しい技術を開発していくというのは、日本の得意な分野なのではないかと。現にガソリンが大変値上がりをしたときに、日本の技術陣は、自動車メーカーを中心に、エネルギーコストのいい自動車をつくって、それが結果的に世界市場で大きなメリットを出すような行動ができたわけなんですけれども、そういうことの議論が、太い枠の議論が私はまだできていないように思います。

 そこで、私、かねがね疑問に思っております新しいエネルギーを開発していく開発研究、そういうものに関する疑問をまず最初に議論をしたいと思います。

 ここに、先月号だと思いますけれども、文芸春秋に立花隆さんというのが「日本の敗北 核融合と公共事業」という論文を発表いたしました。私はこれを読んでびっくりしました。時々学者や研究者の中から、日本が進めている核融合政策、つまりITERという政策は見通しがないのではないかということを指摘する研究者がいまして、議論が難し過ぎて、その当時よくわかりませんでした。しかし、この論文は極めて的確にというか、あるいはわかりやすく書かれているのではないかと私は思います。

 核融合というのは太陽で行われている現象なわけですけれども、その核融合の研究費に今までどのぐらいのお金をかけてきたのか、そしてこれからもどのぐらいお金をかけようとしているのか、そしてその結果実用化するまでにどのぐらいかかろうとしているのか。これは、どなたかお答えできませんか。

木谷政府参考人 お答え申し上げます。

 現在ちょっと手元に予算についての資料を持ってございませんが、ITERプロジェクト、これは国際的なプロジェクトとして核融合実験炉をつくろうというプロジェクトでございまして、建設期間十年間、そして運転段階二十年間、廃棄まで考えますと三十五年間という長期間の国際プロジェクトでございますが、これに要する費用というものが一兆三千億円というふうに見積もられております。これはもちろん、これに参加するすべての極が負担する、そういう前提の数字でございます。

荒井委員 一兆三千億というお金は、全部日本が負担するわけではないんだと思うんですけれども、極めて巨大な資金ですよ。

 日本が全部で使っている研究開発費というのはどのぐらいあるかわかりません。私は、一九九四年の、当時村山政権のときの予算づくりに携わりましたけれども、そのときに、日本というのはやはり技術立国、科学技術立国でなければ将来の日本というのはやっていけないということで、私自身も、科学技術予算の大幅な増額というのに、そのころ、さまざまな形で仕事をした覚えがあるんですけれども。

 四十年先実現するかどうかわからない、そういうプロジェクトのために、たとえそれが国際的な約束ということがあったとしても、一兆三千億使うというのは、これはどうなんですか。文科省としてはどういうふうに思っているんですか。これだけの予算を使うとすると、科学技術関係の予算というのを全部使っても足りないですよ。そう思いませんか。しかも、それが四十年かかっても実用化するかしないかわからない、そういうものであるということに不安を覚えたことはございませんか。

木谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ITER計画への我が国のかかわり方について、確かにさまざまな考え方もございますけれども、政府におきましては、これまで多くの研究者や専門家の御意見を踏まえながら幅広い検討を行ってきたところでございまして、特に、平成九年から十三年にかけては、原子力委員会のITER計画懇談会でさまざまな分野の専門家による広範な検討を行ったところでございます。さらに、総合科学技術会議において、平成十三年から十四年にかけまして、さまざまな考え方を持たれる研究者からのヒアリングを含めて科学技術政策上の観点から検討が行われ、平成十四年五月に、ITER計画は国家的に重要な研究開発であり、国内誘致を視野に入れて政府間協議に臨むことが閣議了解をされ、この方針のもとにこれまでITERの国内誘致に向けて取り組んできているところでございます。

 そして、先ほど申しました総合科学技術会議の検討におきましては、このITER計画につきましては、他の重要な科学技術政策上のプロジェクト等に大きな影響を与えるようなことがないよう原子力予算の範囲内でこれに参画するということも決められておるところでございまして、私どもとしては、その枠組みのもとでこのITER計画に参画するということで進めているところでございます。

荒井委員 立花隆さんはこう言っていますね、「科学技術の世界に、公共事業的お金の使い方、お金の流れ方がどんどん広まっていくと、よほど注意しないと、長年にわたって日本の国家を蝕んできた、公共事業に起因する諸々の害悪がこの世界にも広まっていく」。私はそのとおりだと思うんですよ。

 アメリカの今の熱核融合の現状というのは御存じですか。私は検証していないからわかりませんけれども、アメリカでは、このITERというものに対して非常に批判的で、むしろ別な方式、NIF方式というのを採用しようとしている。このNIF方式は点火目前だと書いてあるんですけれども、そのあたりはどう見ておられるんですか。

木谷政府参考人 ITER計画の科学技術的な可能性でございますとか、核融合研究開発における意義ということにつきましては、国際的にも共有をされているわけでございまして、それだからこそ、我が国のみならず欧州、アメリカ、ロシア、韓国、中国の六極が国際協力によってこれを推進しようとしているわけでございます。

 そして、アメリカにつきましても、二〇〇三年十一月にエネルギー省が定めた科学プロジェクトの長期計画というのがあるわけでございますが、その二十八あるプロジェクトのうちITERは最優先順位、第一番目に位置づけられておりまして、二〇〇六年度の予算教書におきましても、この関係予算を五百万ドルから五千六百万ドルというふうに大幅に増額をしておるわけでございます。このように、アメリカはITER計画を将来のエネルギー開発上の重要な計画と位置づけて、積極的に取り組む姿勢を示しております。

 御指摘のように、NIFという、ITER型の磁場閉じ込めによる核融合のほかに、いわゆるレーザー核融合、慣性核融合というふうにも呼ばれますが、そういうものも推進するということをアメリカは考えておるわけでございますが、このアメリカの核融合研究開発計画、二〇〇三年五月にエネルギー省の核融合科学諮問委員会がまとめた報告書によりますと、これらのそれぞれを進めるということにしてございまして、決して慣性核融合、NIFの方に転換、そちらの方に進むということを決めているということではございません。

荒井委員 そうすると、今の説明は、立花隆さんがこの論文で書いたような説明と少し違うふうに思います。これはもっときちっと検証した方がいいんじゃないかと思いますし、日本では、ノーベル学者の小柴さんがこの方式について非常に批判をしている。今の日本の、日本のというか、進めようとしている熱核融合というのは、物理の理論的にも、あるいは磁場を閉じ込める材質にも、いろいろ問題があって、将来の実用化には向かない、そういう批判をしたところ、小柴さんが進めようとしているあるプロジェクトに科学技術庁の予算がつかなくなってしまったというようなことまで、これは暴露していると言うとおかしいんですけれども、そこまで書かれています。

 これは、私、深刻な問題だと思いますよ。こういう問題というのは非常に専門的でなければわからない部分ですけれども、しかし、大変なお金を使う、科学技術予算全部を使ってもまだ足りないようなそういう巨大プロジェクト。しかし、それを始めてしまったからもうとめられない。これは公共事業の予算の中で、どこかで言ったような話と同じですよ。そして、やはり間違えていた、四十年たっても実用化できなかったといったときの責任は、決めた人はもうその責任から外れていますからどうにもならない。これはエイズで、昔厚生省でそんな事件がありましたけれども、昔の人がやったから私は知りませんというような話があったけれども、それと同じようなことが今起きようとしているのじゃないか。

 私はなぜこういうことを言うかというと、これから京都議定書なり、あるいは炭酸ガス、省化石型の社会をつくっていくためには、新しい技術開発が必要だ。その新しい技術がないのかといったら、あるんですよね。燃料電池でありますとか自然のエネルギーでありますとか、もう実用化がすぐ目の前に来ているようなエネルギー開発に、どうしてお金をもっと集中的につぎ込まないのか。わけのわからないところに何千億みたいな金をつぎ込むようなやり方というのは、国家政策としておかしいし、あるいは、科学技術庁と環境省なり、あるいは官邸全体とが省エネルギー型の社会をつくっていくためにどういうことが必要なのかという議論をしっかりとやったのかねということを私は言いたいんですよ。このあたり、どうですか。

木谷政府参考人 お答え申し上げます。

 ITER計画への我が国のかかわり方ということにつきましては、先ほども申しましたように、政府部内において、さまざまな会議等において数多くの研究者、専門家、核融合の専門家のみならず、より幅広い専門家、あるいは有識者の方々の御意見を伺いながら、総合科学技術会議において科学技術政策上の観点から検討が行われたわけでございまして、それを受けまして、平成十四年五月に閣議了解というものもされて、その方針に基づいて、政府、関係方面一丸となって、この計画の推進に向けて取り組んでいるところでございます。

 私どもとしましては、そうしたITER計画の、これは国際的にも共有されておりますITER計画というものの意義、核融合の意義というものにつきまして、社会の御理解を得ながら、その実現に向けて取り組んでまいりたい、このように思っているところでございます。

荒井委員 理解できないと言っているんですよ、私は。しかも、ある意味では日本のオピニオンリーダーと目される人が、理解できない、反対だと言っているんですね。そしてさらに、日本が誇る物理学者である方が、やはりおかしいと言っているんです。国際条約を結んで、日本でどういう方が中心になってやられたかわからないんですけれども、ここまで指摘をされれば、やはり、それだけのお金を使う意義があるのかどうかということを含めて、ぜひもう一度検討してみてくださいよ。私は、行政評価局に行政評価の一つの課題として、しっかり、ある意味ではこういう専門的なものはなかなか行政評価できない、だけれども、こういうことをしっかりやっていかないと、大型の公共事業をやめるという、あの問題と同じことが起きますよということを指摘させていただきます。

 次に、新しいエネルギーを開発していくという意味では、燃料電池というのは物すごく大きな可能性があると思うんですね。この燃料電池の現状は、実用化に向けて今どの段階まで来ているのか。京都議定書の終了年度である二〇一〇年度のときにはどのぐらいの状況が望ましいと思われているのか、あるいはそのときのエネルギーの使用状況も含めて、エネルギー庁のどなたか来られていると思いますので、御説明いただけますか。

岩井政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘いただきましたように、燃料電池は、エネルギー効率が高く、CO2排出抑制に資するなど、環境負荷が低いことに加えまして、エネルギーセキュリティーの向上、あるいは産業競争力の強化や新規産業の創出などの観点からも極めて重要な技術分野であると認識をしております。

 現状でございますけれども、例えば燃料電池自動車につきましては、二〇〇二年から試験的市販が開始され、現在では五十六台が公道を走行しておりますし、また、定置用燃料電池でもこの春から商用機が導入されるなど、格段の進展を見せてございます。

 委員御指摘の二〇一〇年の見通しでございますけれども、燃料電池実用化戦略研究会の見通しによれば、二〇一〇年において、燃料電池車約五万台、定置用燃料電池約二百二十万キロワットというような意欲的な見通しを示しておられまして、そういった中長期的な目標のもとに、その達成を目指して全力で取り組んでいるところでございます。

 具体的には、十七年度予算といたしまして約三百五十四億円を計上いたしまして、燃料電池の耐久性や経済性といった、なお克服すべき課題のための技術開発、あるいは水素を安全かつ低コストで製造、利用するための技術開発、燃料電池自動車につきましては、首都圏において水素ステーションの実施を含む大規模な公道走行試験といったものを実施して、いち早く実用化に達することを目指して努力をしているところでございます。

 以上でございます。

荒井委員 この燃料電池の現実性をもっと広めて、もっと促進するために、どのぐらいの研究開発費が必要だと推測されていますか。これはだれか推測した人がいるだろうか。エネ庁、どうですか。今四百億と言いましたよね、年間。

岩井政府参考人 燃料電池あるいは水素を利用するためにどういった点が必要であるかというような、具体的な課題につきましては抽出をしてございますけれども、先ほども申し上げましたように、かなり商業段階に達しているということもございますので、公的な資金でどの程度助成が要るかというようなことにつきまして、まとまった数字を算出したデータは、残念ながら持ち合わせてございません。

荒井委員 聞くところによりますと、燃料電池の車というのはまだまだ高いんですね。それは、研究開発のコストがその車の中に転嫁されますから、どうしてもそうなってしまわざるを得ないわけですけれども、しかし、化石燃料を削減していくということになれば、自動車の場合はどうするか、あるいは発電の場合はどうするかという、その一つ一つについて、代替エネルギーを議論していく、研究していくということが必要だと思うんです。

 そういうための研究開発コストとかあるいは税制のコストとか、そういうものを環境省が主体的になって提案していく、提言していく、それが結果的には京都プロトコールを守っていくことにつながるんですよ。これは突然だけれども、小池さん、どうですか。

小池国務大臣 やはり我が国は少資源国でございます。そしてまた、京都議定書の目標を達成しなければならない、そういう場に立たされているわけでございます。

 ですから、さまざまなエネルギー源、そして新たなエネルギー源、これを国家としてどういう形で最もパフォーマンスをよくするか。こういったエネルギー問題につきましても関係閣僚が集まりました会議もやっております。これは、まさにしっかりと連携をとりながら進めていくというのが少資源国の日本のあるべき姿であり、またそういった技術を開発するということこそが日本の環境で生きていく道、環境と経済の統合ということが実現するんだろう、このように思っております。

 最近のニュースを見ておりますと、これは真偽のほどは御本人からまだ確認しておりませんけれども、ハイブリッドの技術を日本がいち早く取り入れたということで、むしろ日本の自動車会社がアメリカの自動車会社をちょっとサポートしようかみたいな動きになってきております。

 ハイブリッドの次はやはり燃料電池の闘いになってくるわけでございまして、これから、まさに技術開発競争、それはどっちの方向を向いているかといったら、日本であれアメリカであれ欧州であれ、みんな省エネの方向に、省エネルックではなくて省エネの方に向いている。こういった競争というのは、人類のためには大変プラスの競争になっていく。それを推し進めていくためにも、日本の関係省庁というので連携をとることが極めて有効だと考えております。

荒井委員 私は、炭酸ガス削減の世界的な潮流をつくり上げたこの動きというのは、日本にとって極めてフェーバラブルな風だというふうに思うべきだと思うんですよね。日本の得意分野で勝負するということですよ。

 そして、外交の基軸というのも、日本の外交の基軸というのはよくわからない、アメリカと一緒になってやるという、そんなふうにも見えるんだけれども、もしも独自の外交の主軸というのをつくるとすれば、私は、環境というのは物すごくいい主軸、世界にアピールできる、日本の技術をアピールし、あるいは日本の今までやってきた経験、そういうものを世界に訴えていくという、極めて効果的な外交の主軸だと思います。どうですか、小池大臣。

小池国務大臣 外交の主軸というのは、一国だけの都合でごりごり押すと、結局外交にならない場合があると思います。アメリカなどもいろいろと批判もされますけれども、アメリカ外交は、人権とか非常に普遍的なテーマをばしっと出すことによって、それでかなり自国の国益にも合った方向をいつの間にかつくっていくという意味では、ある意味で非常に巧みだというふうに思います。

 その意味では、環境ということは、地球の自然環境を、温暖化も含めて、守るというのは、人類の観点からいって極めて普遍的なテーマであろうと思っておりますので、今御指摘ございましたように、環境ということを軸足にして、主軸にして行う外交というのは極めて有効であろうと思います。

 普遍的テーマというのは、すなわち、だれもそれに対してはノーと言えない、わかりやすく言えばそんなところだというふうに思っております。

荒井委員 そこで、この夏にG8サミットがあるんだと思うんですね。G8サミットでは、イギリスがいち早く環境問題を取り上げ、特に炭酸ガスの削減問題を取り上げて、主要なテーマにしようという情報が流れています。私は、ここは日本がアピールする非常にいいチャンスだというふうに思いますし、また、G8の中で京都プロトコールに参加していないアメリカを、どうやってG8のほかの国々の人たちが説得をするのか。私は、アメリカと今非常に良好な関係を日本はつくっているわけですから、この京都議定書から離脱していったアメリカ抜きには、世界で最大の炭酸ガス排出国ですよね、そのアメリカに対してどういう説得の仕方をするのか、これは日本の大きな戦略であると思うんですけれども、そこはどうですか、小池大臣。

小池国務大臣 今お話のありましたことしのG8サミット、ホスト国がイギリスでございます。そして、そこで、イギリスみずからが選んだテーマ、毎年テーマがセットされるわけですが、御承知のように、気候変動とアフリカというこの二つのテーマでございました。

 せんだっていろいろとお騒がせいたしました私の出張の件も、産業革命を起こした、始めたイギリスがこの時期にG8のサミットにおいて気候変動をテーマに挙げるということは、人類の歴史的な節目の中にあって、そして、それをG8、先進国で取り上げるということは極めてチャレンジングだというふうに思ったからで、はってでも行こうというふうに私はそのとき思ったわけでございます。

 その中で、G8の議長国であるイギリスとの協力、また、環境省というよりも、外交の舞台で、外務省など関係府省との連携が重要でございますけれども、そういった中で、G8の首脳が地球規模での取り組みが求められます気候変動問題について話し合う、その場をとらえて、英国との連携のもとで、アメリカにしろその他のG8諸国にも呼びかけをしていきたい、このように感じているところでございます。もともとサミットに私は参りませんで、総理ほかがいらっしゃるわけでございますが、そういったこともお伝えをしてまいりたいと考えております。

 また、この週末は、スリーRの閣僚会議がこの日本で、私が逆にホスト、ホステス、どっちかわかりませんが、いたしますけれども、アメリカからは、まさに気候変動のホワイトハウスにおける長の方が、それを扱って、スリーRがテーマでございますけれども、担当の方が日本にいらっしゃいます。日米の貴重な接点の確保ということでもそういった場を生かして、アメリカの説得にも当たってまいりたい、またポスト京都への模索というようなことも努めてまいりたいと考えております。

荒井委員 これは、世界全体の排出量の内訳というのが、米国のオークリッジ研究所のデータというのが出ているんですけれども、米国は全体の二四・四%、つまり全排出量の四分の一なんですね。それに対して日本は五・二%、五%なんですよ。世界的に見れば、日本の負荷量というのは米国よりもはるかに小さいんですね。そして、中国は一二・一%、インドが四・七%という数字になっていますね。

 日本はせっかく京都プロトコール、京都で、炭酸ガスの排出、温暖化対策を積極的に進めていくその原動力の国として名乗りを上げたわけですから、私は具体的に、アメリカやあるいは中国、そしてインド、こういう国に対してどういう働きかけをしていくのか、どの機会にどういう働きかけをするのか、そこをもっと僕は外交のプロセスとして、国民にも説明をし、あるいはアメリカの国民にも、私は、かつて田中眞紀子さんたちと一緒に、ワシントン・ポストだったかな、アメリカが京都議定書離脱をしてしまったのに抗議して、一人たしか二十五万円ずつだったかな、広告を出して載せたことがありましたけれども、そういう具体的なことを僕はやる必要があるんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。

小池国務大臣 具体的なことで、先ほど、今週末のスリーRの閣僚会議におけるアメリカとの接点についてもお話をさせていただきました。

 御承知のように、アメリカは、先ほど二四・四%で、排出量ナンバーワンと、それから第二位が中国でございますけれども、中国とインドといった途上国、京都議定書をそれぞれ批准していますけれども、数値目標は課せられていない国々でございます。しかし、排出量が今後ともさらに大きくなるであろうという国々なわけでありまして、中国については、レギュラーで、日中韓の三カ国大臣会合なども持っております。地球温暖化問題に関しての共通認識の醸成に努めてきているところでございますし、また、クリーン開発メカニズムなどを通じての排出抑制対策の支援などを通じての接点強化ということもあるわけでございます。

 あと、いつどうするというお尋ねであったかと思いますけれども、この五月ですけれども、専門家によりますセミナーがドイツのボンで開かれることになっております。これは、将来の気候変動政策を見据えて開かれるもので、非常に意味のあるというか、非常に関心も、どういうセミナーになるのか、いろいろな意味を込めて、大変関心の高い瞬間でございます。

 いろいろな機会を活用しまして、中国であるとかインド、そして先ほどのアメリカへの働きかけというのを間断なく続けてまいりたいと考えております。

荒井委員 外交というのは、概して取引なんですね。ロシアが京都議定書に調印をしたのも、たしかWTOに参加する、そういう外交的な取引ということで参加をしていくと。

 私たちの国は、結構アメリカと取引する材料はたくさんあるんですね。例えばBSE問題で今牛肉の輸入問題が議論されていますけれども。これもどうも押し切られそうな感じですけれども。そういう問題と、さまざまな形で、どこを国益なのかということを判断しながら進めていくというのが外交だと私は思うんです。どうも縦割りで、牛肉なら牛肉の輸入問題だけというような形で、大変私は拙劣な外交をしているのではないかなというふうに思います。

 ところで、日本が環境問題を主軸にしながら外交を進めていくというときに、一番問題になるのは、それじゃあんたの国はどうなってんだねというふうに言われるのが必ず最後の落ちだと思うんです。そこで出てきたのが今回の法案だと思うんですけれども、これは、多くの人たちが見るところ、午前中の参考人の説明でもそうだと思うんですけれども、結果的には、京都議定書が終了するその年になっても、それで目標とした数値は日本の場合は達成できないだろう、非常に危ない。したがって、京都メカニズムという、排出権を買ってくるというような方策で、私は、これは一種の、ある種の糊塗だと思うんですよね。それをやらざるを得ないんだということだと思うんです。これはある意味で僕は恥ずかしいことだと思うんですよ。

 それにしても、そういう手法を使ってでも、何とか国際的な枠組みの中で処理をしていくということをやらざるを得ないんだと思うんです。しかし、それに関する財政的な裏打ち、どのぐらいどこからというような、具体論というのはほとんど聞こえてこないんですけれども、そこはいかがでしょうか、大臣。これを最後の質問にいたします。

小池国務大臣 いわゆる京都メカニズムクレジットでございますけれども、これは基本的に、政府がクレジットを取得しなければカウントされないといったルールがございます。そして、現在CDM、JIの事業に対しての設備補助を行って、その補助額に応じて政府がクレジットを取得するという制度を実施しているわけですが、といっても、現時点ではまだ一件でございます。より広範な事業を対象として、効率的にクレジットを取得できるような仕組みをできるだけ早く検討していく、そして必要な措置を速やかに講じていかなければならないと思っております。

 幾らかという話ですけれども、基準年度の総排出量比の一・六%、それから第一約束期間の五年間の総計で約一億二酸化炭素トン、それが具体的な数値でございますけれども、それは、だから、一二酸化炭素トンが幾らになるかということにかかってきているわけでございまして、そのところは、今幾らですということでここで申し上げるということはなかなか難しゅうございます。これからの需要と供給の形で決まってきますので、こういった今後の排出量取引の京都メカニズムについては、今後とも世界の動きなども注視してまいりたいと考えております。

荒井委員 これで終わりますけれども、私は、サミットに小池環境大臣はぜひ行くべきだと思います。そして、日本の環境政策というのを積極的に訴えていくという機会に使っていくべきだというふうに思います。その希望を述べまして、終わります。

小沢委員長 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 朝から参考人質疑等ずっとございました。地球温暖化の影響に関するリスクにつきましては、年々深刻の度合いを増しているということで、大変今注目をされているところでございます。

 二月の初めに開催されました温室効果ガスの安定化濃度に関する科学者会合では、危険な地球温暖化のレベルとそれを避けるための方策について議論が行われたと伺っております。中でも気候変動の影響評価につきましては、多くの場合、影響のリスクは以前考えられていたよりもさらに深刻であるという、これが今恐らく世界共通の認識であると思っております。

 そこで、初めに、きょうは気象庁長官がお見えくださっておりますので、こうした地球温暖化の危機感につきまして、日本における危機感、これをどのように認識をされていらっしゃるか、率直にお伺いをさせていただきます。

長坂政府参考人 気候変動に関します現状と今後の見通しを簡単にお話しして、後で今の質問にお答えいたします。

 まず、気候変動の最近の状況でございますが、国連の専門機関のもとにございます気候変動に関する政府間パネルが二〇〇一年に取りまとめました同パネル第三次報告書によりますと、二十世紀の世界の気温は、ここ百年間に約〇・六度上昇しつつある、また、強い降水現象が北半球の中高緯度の多くの地域で増加している可能性が高いと言われております。

 我が国におきましても、データの整っています一八九八年以降について見てみますと、ここ百年間で平均気温が約一度、一・〇度でございますが、上昇いたしております。また、アメダスの観測によりますと、一九九〇年代以降、時間雨量五十ミリ、これは非常に強い雨でございますが、こういった大雨の発生回数の増加が非常に目立つ傾向にございます。

 これから先につきましても、いろいろな仮定のもとに、スーパーコンピューターを使った複数のシミュレーションが日本を含めまして多くの国で取りまとめられております。現在もこの作業は続いておりますが、二〇〇一年に出されましたIPCCの取りまとめによりますと、二一〇〇年には、一九九〇年に比べまして一・四ないし五・八度世界の気温が上昇するということと同時に、強い降水現象が世界の多くの地域で増加する可能性がかなり高いと言われております。

 これは世界全体のことでございますが、気象庁で行いました主に日本付近を対象としました局地的な気候予測シミュレーションによりましても、今申し上げましたようなIPCCの見通しと同様な平均気温の上昇あるいは短時間の大雨の増加傾向が予測されております。

 こういった中で、我々としては、気候問題は深刻に考える必要があろうというふうに考えております。現に気候の温暖化が進行しつつあるという認識のもとに、これから先、我々の取り組みが必要という認識でございます。

 以上でございます。

高木(美)委員 もっとさらに詳しくお伺いしたいところでございますけれども、きょうは法案の審議でもございますので。お越しいただきまして大変ありがとうございました。

 そこで、まず最初にお伺いしたいのは、今EUにおきましては、きょうの朝の参考人質疑の中でもございましたけれども、全球気温上昇を二度に抑えたいというはっきりとした政治的メッセージを出していらっしゃいます。先ほど長官がお話をされましたIPCCの二〇〇一年のときの見通し、ここからまたさらに事態が進行しているという、これがまた今の長官の大変深刻であるというお話にも裏づけられていると思っております。

 そこで、日本のこうした全球気温上昇、これをどの程度に設定を考えていらっしゃるのか、また、そのとき日本が受ける影響についての研究といいますのは今どのように進められているのか、このことについてお伺いをいたします。

小島政府参考人 従来、EUにおきましては、産業革命前と比べて二度Cを超えないということと濃度五五〇ppmという二つの数字があったわけであります。最近では、二度Cを超えないということと、それを達成するためには、どうも五五〇ppmではだめで、それをもっと下回らなければいけないんじゃないかというふうになっております。出発点が産業革命前でありますから、既に〇・六度上昇しているということですから、あと一・四度という計算になるわけであります。これは、先ほどのIPCCの第三次報告書の下限の数字であります。これがEUの今考えているものであります。

 日本はどうかということでありますけれども、この作業は、条約の究極目標を具体化する、具体的にはどの数値なのかという作業でありまして、科学的な検討が必要ということで、現在中環審の専門委員会で科学的な知見を整理していただいているところであります。一度ぐらいでサンゴの白化というような生態系への影響もありますし、気温上昇二度ないし三度ということになると、いろいろな側面で影響が起こる。あるいは、先ほど引用されましたイギリスでの研究成果、今世紀中は起こらないと考えられていた破局的な事象も三度Cを超えると起こる可能性もある、こういうような研究成果も最近出てきているわけでございまして、そのようなものを含めて今知見の整理をしているところであります。

 日本への影響という場合には、日本という国土における影響、例えば日本の農業という場合には日本の国土における影響でありますけれども、日本の食料といった場合には、日本は国土の中で全部食料を賄っているわけではございませんので、いろいろな各地で受ける影響がどういうふうに日本にも及んでくるかということを考えなければいけないというようなことも指摘されておりまして、そういう研究も現在行われているというところでございます。

高木(美)委員 大変にありがとうございました。

 今、農業の受ける影響ということで、食料問題のお話がございました。日本は今食料自給率三〇%という、本当に考えられない国でございますので、特に世界のこうした、水がなくなる、また、こうした地球温暖化の影響、食料の面でも、また気候変動の面からも、疫学的な面からも、最も受けやすいのがまた日本であるとも思っております。やはり、こうした研究をぜひ早急に取りまとめていただく努力をお願いしたいと思っております。

 今、環境税、また温暖化につきまして、さらに国内排出権取引をこれからどうするかとか、さまざま論議がございますけれども、ベースになるデータ、これをどのように考えられるのか、これが一番の基準であると思っております。そうでないと、やはりこれは説得力のない、環境税を導入するとかしないとかといいましても、せっぱ詰まっているから、これだけ影響があるから、だからやらざるを得ないという、もう一歩最終的な判断というところに結びつかない、こういう危惧を受けている一人でございます。この点につきまして、また早急な御検討をお願いいたします。

 そこで、法案につきまして質問をさせていただきます。

 一つは、この法案の中で、報告する責務を負う一定のすそ切り量以上の温室効果ガスを排出する事業者等という、こういうふうな内容がございますけれども、この事業者等というのはどういう範囲を考えていらっしゃるのか。当然、特定事業者としましては、例えば、国も地方公共団体も責務を負うことになると思います。ここを実効性あらしめるものにしていけるかどうか。やはり、隗より始めよで、足元の省庁の建物はどうなるのか、また議員会館はどうなるのか。まず私たち国会議員から始めていくという姿勢が大事であると思いますので、あわせて伺いたいと思います。

小島政府参考人 この制度の対象となるものは、先ほど申し上げたように、省エネ法の対象、それから、ガスについては三千トンということでございます。

 具体的にどういうものが対象となるかということでございますが、行政機関でいきますと、環境省が入っている厚生労働省のビル、国土交通省のビル等の行政庁のビルもそうでございますし、官邸も対象になります。それから、東京都庁もこの報告の対象になるということでございます。衆議院、参議院につきましては、議員会館も含めてそれぞれ衆議院、参議院ということで対象になっておりますので、事務局の方でしかるべくこの報告の作業を行われるということになると思います。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 これも、現状、そしてまたこれから、どういう温室効果ガスを排出する、これについて削減をしていくかという目標も大事であると思っておりますので、また、私も含めまして、しっかり取り組ませていただきたいと思います。

 次に、地方公共団体の施策についてお伺いをいたします。

 これは、現行の第二十条、今審議している法案では二十条の二項になっていると思いますが、「都道府県及び市町村は、京都議定書目標達成計画を勘案し、その区域の自然的社会的条件に応じて、温室効果ガスの排出の抑制等のための総合的かつ計画的な施策を策定し、及び実施するように努めるものとする。」努力義務が盛り込まれております。また、次の第二十一条には、こうした実行計画を「策定するものとする。」義務が書かれております。

 こうした法によりまして、これまでにどれだけの自治体が施策の実施、また計画の策定を行ったのか。これは、環境省とされましても積極的に推進されるべき内容であると思っております。このことについて質問をいたします。

高野副大臣 温暖化対策推進法に基づく推進計画と実行計画ですが、都道府県レベルでいいますと、四十四の都道府県が推進計画をつくっております。それから、実行計画については、すべての都道府県がこれを策定しております。市町村のレベルでいいますと、推進計画は五十六市区町、実行計画については千六十六の市区町村が策定をしております。

 環境省としましては、地方の自主性を尊重するということを大前提としまして、地域推進計画策定のためのガイドラインをつくっております。各地方自治体がこれに基づいて取り組めるようにしております。それから、実行計画につきましては、これもマニュアルをつくっておりまして、それで、技術的な支援、あるいは、実行計画に基づく、自治体が取り組む施設整備等に対する補助も行っております。例えば、バイオマス発電とか、燃料電池の導入とか、あるいは低公害車普及事業、太陽光発電設備等でありまして、十六年度は約十億、十七年度も約十億円を計上しております。

 以上です。

高木(美)委員 こうした地方公共団体、確かに自主性の尊重が大事であるとは思いますけれども、都道府県が四十四でございますので、残りは四つでしょうか、まだでございますし、市町村におきましてはまだ千少しという、これは大変少ない、恐らく、市町村合併でまたさらに考えなければいけないと思っておりますが、また総合的にさらに推進をしていただきたいと思います。これは強力なリーダーシップがどうしても必要でございますので、いい取り組みをしているところを紹介していただくとか、また何かしらの検討をぜひともお願いしたいと思います。

 最後に、これは大臣にお伺いしたいと思うんですが、実は、京都議定書発効の日、二月十六日、この日を前にしまして、こうした法案につきましても、国民や事業者全般の自主的取り組みのインセンティブ、また機運を高めることが法改正の一つの趣旨である、こういうことからも質問させていただきたいのですが、この京都議定書発効の日の前日、我が党の地球温暖化対策プロジェクトチームで申し入れをさせていただきました。浜四津代表代行を中心に伺わせていただきまして、その一項目めが、この二月十六日、京都議定書発効の日を新たな環境の記念日にしてはどうかという内容でございます。地球温暖化ストップの日とか、環境立国の日とか、いろいろ定めて内外に宣言すると同時に、国際社会に共通の記念日として提案をしてはどうかと。

 私は、地球環境の日とか、何かしら国民にもう一つわかるものが必要であると思っております。六月五日は環境の日となっておりますけれども、これだけの地球温暖化を実感しながら、このままでいいのかという思いがございます。このことにつきまして、大臣の決意を伺いたいと思います。

小池国務大臣 京都議定書に関連いたしましては、二月十六日の発効した日、そして採択されたのが九七年の十二月十一日でございまして、この十二月十一日というのも、地球温暖化対策にとっては一つの重要な節目の日というふうに受け取れるわけでございます。今後も、これらの日を、地球温暖化対策を初めとします地球環境対策の重要性を訴えて、思いを新たにする、そんなきっかけの日としてまいりたいと思っております。

 六月五日が環境の日、十一月二十二日がいい夫婦とか、いろいろあるようでございますけれども、そういった機会をとらえまして、国民への呼びかけのきっかけにしてまいりたいと考えております。

高木(美)委員 ぜひ、この二月十六日、やはりこれは地球総体挙げて環境を考える日ということで、日本も国民の休日にして、二酸化炭素排出をストップするとか、これを削減するということからは、やはり休日はすばらしい取り組みではないかと思っております。ぜひこのことの推進をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小沢委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本です。

 最初に、水俣病問題についてお伺いをいたします。

 環境省は先般、「今後の水俣病対策について」というものを発表いたしました。それによりますと、冒頭、「昨年十月の関西訴訟最高裁判決において国及び熊本県の責任が認められたことを受け、規制権限の不行使により水俣病の拡大を防止できなかったことを真摯に反省し、国として、ここにすべての水俣病被害者に対し謝罪の意を表する。」というふうに、謝罪の意は表しているわけでございますが、実際の内容を見ますと、この最高裁の判決が開いた新しい事態を正しく認識しているのかどうかということについて大変疑問があるわけでございます。

 この新しい対策という中身でありますが、「公健法の認定申請や裁判とは別の救済を図る道として、拡充後の保健手帳の申請受付を再開する。」というふうにあるわけでございます。これだと、平成七年の政治解決の枠組みをほとんど出ていないというふうに思わざるを得ません。国の責任が明確でなかった時点の政治解決を基本として解決策を考えているということでは、最高裁の判決の重みを果たして認識しているのかどうかということについて非常に疑問があるわけですが、このことについて御見解をお願いします。

滝澤政府参考人 平成七年の政治解決におきます被害者救済、それから、地域の再生、融和を、ともにあわせて実施するという基本的な考え方は引き続き重要であると考えておりまして、今後とも踏襲していくべきものと考えております。また、御指摘の最高裁判決でございますが、そこで示されました国の責任につきましては、行政として何をなすべきかという点から重く受けとめているところでございます。

 このような観点から、今回お示ししました今後の水俣病対策に基づきまして、医療対策等の一層の充実でありますとか、水俣病発生地域の再生、融和の促進等を行いまして、すべての水俣病被害者の方々が地域社会の中で安心して暮らしていけるようにしていきたいと考えたものでございます。

山本(喜)委員 この新しい対策という中で、小池大臣の方から、行政の失敗の本質は何だったのかをあぶり出し、繰り返さないために何が必要かを考えたいということで、第三者による懇談会を設置するということになったようでございます。この懇談会の趣旨といいますか、今後どのようにしていこうとなさっているのか、お伺いします。

滝澤政府参考人 お話がございました懇談会でございますが、四月七日に環境大臣の私的懇談会の設置という形で公表させていただきました。この水俣病問題に係る懇談会でございますが、来年は水俣病公式確認五十年を迎えます。また、昨年の十月の最高裁判決も踏まえまして、この水俣病問題に対するこれまでの行政の取り組みのあり方でありますとか、その責任も含めまして、水俣病問題が持つ社会的、歴史的意味について総括するために開催するものでございます。

 このような観点から、幅広い分野の有識者の方々に委員として御就任いただいているところでございまして、水俣病問題について包括的な検証を行うとともに、これからの取り組みを実施するに当たって必要な助言を得ることも考えているところでございます。

小池国務大臣 今何か、行政に限るようなそういうニュアンスが強かったかもしれませんけれども、やはり行政と政治というのはある種一緒の部分がございますし、行政も何とかしようと思っていたのが、政治がむしろストップをかけていたような時期もあったかもしれません。あったと思います。それとか、あとマスコミですね。マスコミがどのようにしてそれを全国レベルで報じてきたかといったところも、少し考える必要があるんじゃないか。

 私は、その意味で、まさに社会的、歴史的な意味をあらゆる方面からの切り口でもって、今回この水俣病が抱いてきた問題点、これを解明していきたい、検証してきたい、なかなか解明できないかもしれませんが、検証していきたいと思っております。それはすなわち、今後、そういった過ちにつながらないためには何をすべきかという、そういったことも教えてくれるものだ、そのように考えているということもつけ加えさせていただきたいと思います。

山本(喜)委員 来年は水俣病の公式確認から五十年というふうな状況ですし、被害者の方々もかなり高齢化しているという状況にもございます。この被害実態の全容究明ということも含めて抜本的な対策、今後、こういう過ちを繰り返さないということでの政府の対応をしっかりお願いしたいというふうに思います。

 次に、この法案についてでございますが、今回の京都議定書目標達成計画の実効性については、各方面から、果たしてこのとおりいくのかどうかということで疑問が出されているわけでございます。

 経団連の方は、九七年に環境自主行動計画を策定して温暖化対策に取り組んでいます。産業部門のCO2排出量というのが極めて大きいわけでございますから、この経団連の取り組み、これは大変大事になっているわけですが、この経団連の取り組みに対して、経産省、二〇〇四年度自主行動計画フォローアップということで今検証しているようでございますが、これによりますと、二十七業種について今評価をしているようでございますが、そのうち十一業種については、さらなる努力により目標達成が可能というふうに判断しているようでございますが、こうした業種に対する今後の対策、あるいは、達成が困難だというふうに判断した場合の義務化というふうなことも政府は考えているのかどうか、お考えをお示し願いたいと思います。

深野政府参考人 お尋ねのありました経団連の自主行動計画についてでございますけれども、これにつきましては、経済産業省として、毎年、産業構造審議会と総合資源エネルギー調査会、そこで合同の小委員会をつくりまして、その進捗状況についてフォローアップを行っているところでございます。

 今御指摘がございましたように、ことしの二月に二〇〇四年度の評価作業を行いまして、私どもで評価をしました二十七業種のうち十六業種につきましては、目標達成に向けて順調に推移して、このまま目標が達成できるだろうという評価になりまして、残りの十一業種につきましても、今後、さらにしっかり対策を講ずれば目標達成が可能というふうに評価をされたわけでございます。

 これらの十一業種につきましては、今それぞれの業種で省エネ設備の導入の拡大とか、あるいはコージェネレーションの導入の促進、製造工程における効率の改善、そういった個々の対策に取り組んでおりまして、こういった対策をきちっとなし遂げることによりまして、目標達成が可能な範囲にあるというふうに私どもは評価をしているところでございます。

 こうした状況を踏まえまして、現在、私どもとして、自主行動計画の義務化といったことは考えておりませんけれども、今回の目標達成計画案にもございますように、このような産業界の自主的取り組みにつきましては、今後とも毎年関係の審議会でフォローアップをしていく、そういったことを通じまして、その着実な実施が図られるように対応していきたいと考えております。

山本(喜)委員 経済界の自主的な取り組みについてフォローアップをしていくということでございますが、この京都議定書の達成計画、ここでは、国内の排出量取引制度ということで、他の手法との比較やその効果、産業活動や国民経済に与える影響等の幅広い論点について総合的に検討していくべき課題であるというふうに環境省は言っておりますが、これに対して経団連の方は、日本の実情に合わないというふうに言っているようですが、これについて環境省の御見解はいかがでしょうか。

 それから、二月から自主参加型国内排出取引制度ということで、今参加者を募集して、四月十一日までということでやっておるようですが、この自主参加型の排出取引制度、これは現状どのようになっているのか、その評価についてお伺いします。

小島政府参考人 排出量取引でございますけれども、これ自身は市場メカニズムを活用して一定の削減を実現する上での、非常にコスト効率のよい制度であるというふうに考えております。ただ、第二ステップにおきましては、企業の自主性を最大限尊重して、いい結果を引き出していくというのが基本的な姿勢でございます。

 排出量取引につきましても、このような排出量取引の特徴を生かし、かつ、企業の自主的な取り組みを促進するということで、自主参加型の国内排出量取引制度を実施するということにしております。四月十一日を締め切りとしておりましたが、参加企業は、これまで三十八件の応募がございました。この一つの試みを行うのに十分な数というふうに思っておりますが、現在これらについて審査を行っております。この審査を終了し次第、具体的に自主的な排出量取引を行っていきたいと思っております。

 また、京都議定書目標達成計画案で示されております、排出枠の交付総量を設定した上で排出枠を個々の主体に配分するというような国内排出量取引制度でございますけれども、この制度自体は、EUでのキャップ・アンド・トレード、ノルウェーやスイスで既に動きつつありますし、またカナダでも二〇〇八年に向けていろいろな検討が進められております。こういうような国際的な動向も見据えながら、計画案にありますように「総合的に検討していく」ということでございますので、議論を深めてまいりたいというふうに思っております。

山本(喜)委員 今EUのこともお話しありましたけれども、欧州の場合は、一月から始まって、二十五カ国、一万二千の施設ということに対する割り当てが進んでいますね。日本は三十八件。これは企業数ですか、それとも、どういう中身なんでしょうか、三十八件というのは。

小島政府参考人 EUの方は義務的な割り当て制度ということで、各国に割り当てをして、各国でその割り当ての計画をつくってやっているということで、もう本格的な制度になっているということでございますが、環境省の場合は、まずこれは一つのトライアル、進んだトライアルの段階ということでございます。

 三十八件は、三十八社でございます。

山本(喜)委員 今回三十八社ということで、今後やっていくのに検証可能だというふうなことでございますが、ヨーロッパの方では、もう既に本格実施ということで、強制力を持たせる罰則、ルールということもあるわけでございますね。今後、その検証のいかんによっては、そうしたEUのやっていることも参考にしながら進めていくことは検討の余地になるのかどうか。

小島政府参考人 排出量取引制度はいろいろな仕組み方がございまして、EUの仕組みもありますし、イギリスのような仕組みもございます。どういう仕組みがあり得るのか、あるいは、それを我が国において導入しなければ目標が達成できないのかというようなことも含めて、いろいろな側面から総合的に検討するということでございますので、まさに総合的に検討していきたいと思っております。

山本(喜)委員 以上、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小沢委員長 次回は、来る五月十日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十四分散会


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