衆議院

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第13号 平成19年5月25日(金曜日)

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平成十九年五月二十五日(金曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 西野あきら君

   理事 石崎  岳君 理事 宇野  治君

   理事 桜井 郁三君 理事 鈴木 俊一君

   理事 竹下  亘君 理事 末松 義規君

   理事 田島 一成君 理事 江田 康幸君

      上野賢一郎君    大塚  拓君

      北川 知克君    小杉  隆君

      木挽  司君    近藤三津枝君

      坂井  学君    篠田 陽介君

      中川 泰宏君    並木 正芳君

      野田 聖子君    原田 憲治君

      藤野真紀子君    馬渡 龍治君

      盛山 正仁君   山本ともひろ君

      石川 知裕君    近藤 昭一君

      西村智奈美君    松野 頼久君

      三日月大造君    村井 宗明君

      吉田  泉君    田端 正広君

    …………………………………

   環境大臣         若林 正俊君

   環境副大臣        土屋 品子君

   厚生労働大臣政務官    菅原 一秀君

   環境大臣政務官      北川 知克君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官)          石野 利和君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局企画部長)         齋藤 晴美君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      舟木  隆君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総合観光政策審議官)     柴田 耕介君

   政府参考人

   (国土交通省総合政策局次長)           福本 秀爾君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            西尾 哲茂君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  冨岡  悟君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十五日

 辞任         補欠選任

  小杉  隆君     盛山 正仁君

  とかしきなおみ君   原田 憲治君

  長浜 博行君     松野 頼久君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 憲治君     大塚  拓君

  盛山 正仁君     小杉  隆君

  松野 頼久君     三日月大造君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚  拓君     とかしきなおみ君

  三日月大造君     西村智奈美君

同日

 辞任         補欠選任

  西村智奈美君     長浜 博行君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 エコツーリズム推進法案起草の件

 環境保全の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

西野委員長 これより会議を開きます。

 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年総括官石野利和君、農林水産省農村振興局企画部長齋藤晴美君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長舟木隆君、国土交通省大臣官房総合観光政策審議官柴田耕介君、国土交通省総合政策局次長福本秀爾君、環境省総合環境政策局長西尾哲茂君、環境省地球環境局長南川秀樹君及び環境省自然環境局長冨岡悟君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。盛山正仁君。

盛山委員 自由民主党の盛山正仁でございます。

 きょうは、質問の機会をちょうだいしまして、まことにありがとうございました。

 まず、エコツーリズムについてお尋ねをしたいと思います。

 エコツーリズム、環境と観光の両立を図るということで、環境省では、平成十五年度に検討の委員会をつくり、そして十六年度から十八年度まで三年間、全国十三カ所でモデル事業を行っていると承知しております。

 こういうモデル事業を通しまして、各地域あるいはいろいろなジャンルについて、いろいろな成果、各地域での進展もあろうかと思いますし、また、あわせて、どういうふうにしていけばこのエコツーリズムが定着していくのか、課題もこの三年間で明らかになってきたのではないかと思います。

 まず、そのあたりについてお尋ねをしたいと思います。

冨岡政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのエコツーリズムに関しますモデル事業につきましては、三つのジャンルに分けましてモデル事業を実施いたしたところでございます。

 一つは屋久島、白神地区のような豊かな自然の中での取り組みのパターン、もう一つは裏磐梯、六甲のような多くの来訪者が訪れる観光地での取り組み、もう一つのパターンは、埼玉県の飯能・名栗地区、長野県の飯田地区のような里地里山の身近な自然、地域の産業や生活文化を活用した取り組み、この三つのタイプで実施いたしたところでございます。現在、この結果を取りまとめておるところでございまして、エコツーリズムの推進に取り組む他の地域の参考となるよう、その成果と課題をまとめております。

 現在のところのこういった事業の実施の結果についての認識を少し申し上げますと、このモデル事業の結果、地域における自然環境の保全と利用についての意識の共有など推進体制の構築が図られ、自然環境を保全するためのマナーやルールづくり、地域資源の再確認などの他地域の参考となる一定の成果が上がったものと考えております。

 一方におきましては、プログラムやガイドの質の確保、豊かな自然タイプにおきます有効なオーバーユース対策、それから里地里山タイプにおきます広報や採算性の確保等の課題も抽出されているところでございます。

 環境省といたしましては、これらの成果、課題を踏まえまして、エコツーリズムの推進マニュアルの改定等を行いまして、普及啓発に努める考えでございます。

 以上でございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 エコツーリズム、オーストラリアやニュージーランドではもう観光の三割を占めるという大変メジャーな、定着した観光の一ジャンルになっているというふうに伺っているわけでございますが、日本では、モデル事業をやっとスタートさせたというところで、普及をするというには、残念ながら、まだこれからかなというような感じじゃないかと思います。

 しかしながら、私は、エコツーリズムといいますのは、せっかくの観光資源を持続的に長く使っていく、また、そういういろいろな体験を入れることによりまして、環境、自然への理解ですとか、それから教育的観点その他、いろいろ多方面に、広範にその影響が及んでいって、地域の活性化にも役立つし、いいことじゃないかなと思うんです。ますますエコツーリズムが日本でも普及をしていってほしいと思うわけでございます。

 さて、そのエコツーリズムの推進を図るためには、残念ながら、いろいろなところでいろいろな人が取り組んでいただいているんでしょうけれども、ガイドの質、あるいは現在提供されているエコツアーの、提供されている事業というんでしょうかプログラムの質について、ばらつきがあるというふうにも聞いているところであります。将来的には、国のチェックが場合によったら必要かなというふうにも思っているわけでございます。

 エコツーリズムの質を向上させていくために、今後いろいろ検討課題があるんじゃないかと思いますので、政務官からお考えを伺えればと思います。

北川(知)大臣政務官 盛山委員におかれましては、エコツーリズムに常日ごろから深い御理解をいただいておりまして、また、今回の推進法の取りまとめに関しまして御尽力をいただきまして、敬意を表する次第であります。

 ただいま委員の方から御指摘のありましたエコツーリズムを推進していくためには、やはりガイド、プログラムの質の担保、また、将来的には公的な認定制度等も踏まえながらその質の確保を図るべきであるという御意見であります。

 環境省におきましては、地域におけるエコツーリズムの適切な推進に当たりましては、自然や歴史、文化を紹介するガイドの質及び提供するプログラムの質の確保を図ることは大変重要であると認識をいたしております。

 また一方で、ガイドの内容やプログラムは、実施する場所、対象、利用者の興味、ガイドの個性等が一体となって構成されるものであり、法律により全国で画一的に評価することについては、慎重な検討を要すると考えておるところであります。

 まずは、関係者の意見や、NPO等による、各種資格制度を初めとする各地域の自主的な活動を尊重しつつ、全体の質の向上が図られることが望ましいとも考えておりまして、今後、政府において人材育成やプログラム開発を行い、地域におけるエコツーリズムの取り組みを支援していきたいと考えております。

盛山委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお取り組みのほどお願いしたいと思います。

 それでは、国土交通省にお尋ねをしたいと思います。

 昨年の暮れ、臨時国会の最終で、観光立国推進基本法が成立したところでございます。これまで長らく観光基本法が改正されていなかった。ところが、今回、新たに観光立国推進基本法ということで、政府全体でしっかり前向きに取り組もう、こういうふうになったわけでございます。その中の一つの分野としてエコツーリズムも位置づけられるものだと思っております。

 このエコツーリズムというのは、環境だけに軸足を置くものでも観光の方に軸足を置くものでもなく、両方バランスがとれたものということでやっていきませんと、俗に言う環境オタクの人たちだけのものであれば広がりができませんし、また、マスツーリズムの方に行ってしまいますと、ともすれば、せっかくの貴重な自然が荒らされる、そういうふうにもなる懸念があるわけでございます。

 両方、両々相まってということが一番大事なことだろうと思っているわけでございますけれども、そのエコツーリズムをこれから日本で普及、定着させていくためには、国交省のバックアップあるいは観光業界、旅行業界の全面的な支援、取り組みが必要であると思うわけなんですけれども、国土交通省のお考えを伺いたいと思います。

柴田政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、観光立国推進基本法ができまして、十三条、二十三条、二十四条といったところで、天然記念物などのすぐれた自然の風景地、良好な景観に関する観光資源の保護育成及び開発、また、自然体験活動等を目的とする観光旅行の普及など、また、観光旅行者による自然体験活動を通じた環境の保全に関する知識の普及や理解の増進に必要な施策を講ずるものというふうにされております。

 いわゆるエコツーリズムに限らず、日本人の古くからの知恵とも言われる自然と共生するという視点に立ち、環境と調和のとれた観光の振興を図っていくということが大変重要であろうというふうに考えております。このことは、基本法の前文でも触れられております、観光の持続的な発展ということを図る上でも大変重要なポイントであるというふうに考えております。

 最近では、特に中部山岳につきまして、特にオーストラリアの方とか欧米の方々にも大変人気が高いということも聞いてございますので、そういうものも生かしながらこの観光振興を図っていくというのは、大変重要なポイントではないかというふうに思っております。

 国土交通省といたしましては、今年度から開始するニューツーリズムの創出・流通促進事業、先ほど環境省の方からもお話がございましたが、プログラムの内容でございますとか、ガイドの質でありますとか、そういうものも備えた形で、こういう流通促進によりまして、地域地域の取り組みを大きなマーケットにつないでいく、こういった事業を初めといたしまして、観光業界の積極的な協力を得ながら、調和のとれたエコツーリズムを推進してまいりたいというふうに考えてございます。

盛山委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、農林水産省にお伺いしたいと思います。

 私の家もそうなんですけれども、私が子供のころは周りに、私は大阪生まれでございますけれども、田んぼや畑が幾らでもあったんですね、カエルが鳴いてうるさいというような状況だったかと思うんですが。残念ながら、今の都心では、もうそういう田んぼや畑が身近なものではなくなった、そんなふうに思っております。子供たちが田んぼでオタマジャクシをとるだとか浮き草を取るだとか、畑に入って何かをもいでくるだとか、そういうようなことも、残念ながら今の環境では難しいのかなと思うんです。

 農林水産省の方では、グリーンツーリズムということで農山漁村との関係、いろいろこれまでも一生懸命やってこられたと思うわけなんですけれども、このエコツーリズムは、グリーンツーリズムと相当範囲の部分でオーバーラップしているかと思います。各省でばらばらに施策をしていいことは全くないわけでございますので、その都市と農山漁村との共生・対流の施策あるいはグリーンツーリズムその他、農林水産省がこれまで取り組んでこられたものと一緒に連携を図っていくことが、これから大事じゃないかなと思うわけでございますが、農林水産省の積極的な御協力をお願いしたいと思うんですが、いかがでございましょうか。

齋藤政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省におきましては、農山漁村地域において自然、文化、人々との交流を楽しむ滞在型の余暇活動でありますグリーンツーリズムの取り組みを初め、農山漁村と都市との地域間交流に関する取り組みを積極的に推進しているところでございます。

 具体的には、心安らぐ農業水路のせせらぎや美しい農村景観を楽しみながら散策を行う水土里の路ウオーキング、ビオトープの造成等の自然再生や環境学習に取り組むNPO等への支援、里地や棚田、ため池などの地域資源の保全整備など、エコツーリズムの推進にもつながる取り組みを行っているところでございます。

 さらに、内閣官房副長官及び関係八府省の副大臣から成ります都市と農山漁村の共生・対流に関するプロジェクトチームでは、これまで関係府省が連絡いたしまして、エコツーリズムやグリーンツーリズムを含めて共生・対流の推進に取り組んできているところでございます。

 農林水産省といたしましても、今後とも、エコツーリズムとも積極的に連携を図りながら、都市と農山漁村の共生・対流の推進に努めてまいりたい、このように考えております。

盛山委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、文部科学省にお尋ねをしたいと思います。

 さっきの話とも大分つながるんですけれども、大人でもそうなんですが、なかなか子供たちが自然の恵みというのを実感できない時代になってきたんじゃないかなと思うわけでございます。私が子供のころは、御飯粒を残しても、お百姓さんが汗水垂らしてつくったお米を残して何ですかというふうに怒られるような時代だったわけですが、現在はもう飽食の時代で、とにかく無理しなくていいから残しなさいといったような、そんな感じになっているんじゃないかと思います。

 それから、トマトにしてもキュウリにしてもそうですけれども、スーパーに行けばラップにくるんで売ってあるもの、そういう感覚で、実際にどこでどんなふうに育っているのか、自然の恵みで我々人間が生きているんだということをなかなか実感しづらい、大変便利な世の中ではあるんですが、自然から大分離れてきている、そんな環境になっているのかな、こう思うわけなんです。

 それで、このエコツーリズムといいますのは、親子で、あるいは学校で、勉強するだけではなくて、楽しみながら、環境について、自然について、それを体で覚えながらというんでしょうか、感じていく、あるいは自然の恵みの大事さを理解していく、そういうものに大変いい手段ではないかなと思うわけでございます。

 生涯学習の一環で、例えば親子が手ごろな価格でエコツーリズムへ行って一日遊ぶというのでもいいでしょうし、あるいは学校で、課外活動で林間学校その他で行くときに、いろいろなところへ行って、体育館に行ってバレーボールをしたりだとかもあるんですけれども、そういうものの一環に、例えばこういうエコツーリズムを入れていただくと、学校の先生にとっても、アウトソーシングで、そこの専門家の話を聞くと、先生にとっても勉強になるでしょうし、何といっても、それに参加をする子供たちが、この草はどういう草なんですよ、ここに落ちているふんは何のふんですよ、この足跡は何です、あるいはここに飛んでいる鳥はこうなんですよというようなのを一つずつ聞いていくと、関心も高まると思いますし、自然あるいは環境に対しての感謝という気持ちも出てくると思うんですね。

 そういう点で、エコツーリズム、教育の観点でも大変大きな効果があると思うんですが、文部科学省にも積極的に取り組んでいただきたいと思うわけですが、いかがでございましょうか。

石野政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、子供たちが自然に触れる機会は大変少なくなってきておりますけれども、子供たちが、豊かな自然の中で、日ごろ経験することができない体験活動をすることは、それ自体が環境教育の機会になりますとともに、異なる地域あるいは文化に触れることで、物の見方を広げたり、自然と共生することを学ぶことができる意義深い取り組みであるというふうに考えております。

 このため、文部科学省におきましては、学校内外におきます自然体験活動の推進に向けた施策を行っているところでございます。例えば、自然豊かな地域におけます児童生徒の長期宿泊活動の推進、あるいは都市の青少年が農山漁村等で生活する短期山村留学の実施を各自治体に促しておりますし、また、関係省庁と連携いたしまして、地域の自然、文化、人材などを活用したりする体験活動プログラムの開発に取り組んでおります。また、農業体験や登山、自然観察などの体験活動を家族で行い、家族のきずなを深めるための取り組みも推進しているところでございます。

 今委員より御指摘がございましたエコツーリズムの活動を十分踏まえながら、文部科学省といたしましても、子供たちの環境の保全に関する意識を高め、豊かな人間性を培うために、今後とも自然体験活動を十分推進するように取り組んでまいりたいというふうに考えております。

盛山委員 ありがとうございました。ぜひよろしくお願いします。

 それでは、大臣にお尋ねをしたいと思います。

 きょうはお招きしていませんが、例えば地域の活性化にもこのエコツーリズムは役立ちます。環境省、国交省、農水省、文科省、そして総務省その他いろいろ、このエコツーリズムというのは、相当範囲が広いというんでしょうか、関係者が多い分野にわたるものだろうと思うんです。

 観光のジャンルの一つではあるんですけれども、自然をよく理解してもらう、環境を理解してもらうという点では、環境行政にも大変大きく貢献するものじゃないかと私は思うのでございます。このエコツーリズムを国民に定着するようなものになっていただけるように、大臣にぜひ御尽力していただきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。

若林国務大臣 盛山委員は観光政策に大変造詣が深く、知見をお持ちでございますし、先ほど来の質疑を通じまして、改めてこのエコツーリズムの持つ意味の深さというようなものを認識を新たにしたところでございます。

 御意見の中にありましたように、エコツーリズムというのは、自然環境とかあるいは歴史、文化を体験しながら学ぶという要素が非常に大きいわけでございまして、そういう自然環境や歴史、文化などを保全するということに責任を持っていく、そういう観光のあり方を進めようというものではないかと私なりに受けとめているわけでございます。

 そういう環境などを保全しながら、地域の振興や環境教育を推進するということになるわけでございまして、ひいてはそのことが持続的な地域社会の形成にもつながっていく。

 そういう意味で、我が国におきますエコツーリズムというのは、原生的な自然から里地里山まで、その対象が大変広く、農山漁村における地域振興とか子供たちの原体験の推進ということに大変有効である、こう考えているところであります。その推進に当たりましては、観光施策や都市、農村の共生・対流の施策、あるいは教育関連施設と連携を密にとりながら取り組みを進める必要があるというふうに認識しておりまして、委員が御指摘のように、幅広い、数多くの関係者がいるわけでございます。

 関係省庁との連携のみならず、観光に取り組む事業者やあるいは関係の団体、NPO、そして地方公共団体の意見を幅広く取り入れながら、これらとの連携を図って、その普及、定着に邁進をしてまいりたい、そのような思いでございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと残る時間、地球温暖化についてお尋ねをしたいと思います。

 きのうの夜、安倍総理が、「美しい星へのいざない」というんでしょうか、二〇五〇年までに地球全体、世界の温室効果ガスの排出量を半分にするという、大変意欲的な、野心的なという言葉を使うと怒られるかもしれませんが、大変すばらしい目標を掲げられました。びっくりいたしたところでございますが、言うはやすく行うはかたしで、これからが大変だなと改めて感じた次第でございます。

 私の理解が間違っているのかもしれませんが、これまで政府の中でも、大分各省によっていろいろ御発言に温度差があったのではないかと思います。また、産業界あるいは広く国民によく理解をしていただいて、一枚岩になって、日本全体が総理がおっしゃる温室効果ガスを五〇%に削減するということをやっていくのは大変困難ではないかと思うんですけれども、これからどのようにして取り組んでいかれるのか、副大臣からお答えをいただければ幸いでございます。

土屋副大臣 今盛山委員がおっしゃったように、今後、六%削減目標に向けては大変厳しい状況にはあるわけでございますけれども、昨晩、総理が美しい星50という声明というか発表を世界に向けてしていただいたということは、これは私たちにとっても大きな後押しになったと思いますし、また、既にもうヨーロッパでも反応が出てまいりましたし、アメリカでも反応が出てまいりました。そういう中で、国内をしっかりまとめることが重要であろうと思いますし、そのために、総理がチームリーダーとなって、チーム・マイナス六%、これも進めているわけですけれども、この人数は、今現在百十万人以上の個人と一万社以上の法人ですけれども、これはまだまだ少ないと思っておりますので、さらに啓蒙を続けていきたいと思います。

 それから、各省の取り組みですけれども、現在、目標達成計画の見直しに当たっては、中央環境審議会と産業構造審議会の合同会合を開催しております。これは各界各層の御意見を聞きながら進めているわけですけれども、政府、産業界、国民が一体となって、ありとあらゆる知恵を絞って目標に向けて頑張っていきたいと思っております。

盛山委員 ありがとうございました。

 今副大臣から、ありとあらゆる知恵を絞って取り組んでいくという力強い発言をいただいたわけでございますけれども、最後に、大臣にお尋ねをしたいと思います。

 これから国際会議がメジロ押しだと思うんですね。来月はドイツでハイリゲンダム・サミットがあります。その後もいろいろな国際会議があります。この暮れにはCOP13ですか、バリ島であると思いますし、来年の五月と伺っておりますが、私の地元神戸でも、環境大臣会合、そしてG20の会合がその後にあって、そして来年の夏、洞爺湖での日本が議長国のサミットと、環境が来年のサミットに向けてもう世界じゅうで一番大事な課題と言ってもいいという状態じゃないかと思うんですが、総理がきのうの夜しっかりと大きな目標を掲げられた、すばらしいことだと思うんですけれども、国内もそうでございます。

 それから、目を世界に転じますと、まずはアメリカ、それから発展途上国、中国、インド、ブラジル、こういう今京都議定書の削減義務を負っていない国、ここをどういうふうにして取り組んでいくのか。大変困難な、どうすればいいのか、なかなか先の見えない、大変大きな課題だろうと思うんですけれども、これから日本が、ぜひ来年に向けてリーダーシップを発揮して取り組んでいっていただきたいと思うわけですが、どういうふうにこれからやっていこうと思っておられるのか、お尋ねをできれば幸いでございます。

若林国務大臣 盛山委員は、地球環境問題にも大変に積極的なお取り組みをいただいてまいったことを私も承知いたしております。その委員から、長期的な目標として排出を全世界的に二〇五〇年に半分にするというのは容易ならざる決意、決断だし、これを実行するというのは大変なことだという御指摘がございました。

 そのとおり、これは大変重いものと受けとめておりまして、国を代表する立場でこのようなことを明らかにしたのは日本が初めてということであります。世界各国にいろいろな意味で反響を呼んでいるところでございます。

 委員がおっしゃいますように、これからドイツのハイリゲンダム・サミットの後、国連のもとに置かれておりますG20におきます協議とか、あるいはCOP13でありますなど、そして、来年はいよいよ日本の洞爺湖でのサミットがあります。その準備として、G8を中心とした各国の環境大臣会合が神戸で行われる。そういう意味では、メジロ押しのいろいろなスケジュールがございます。あらゆるこのような国際的な場を通じて、きのう発表、提言をいたしました美しい星50、それへのいざないという考え方を御理解いただけるように努力していかなければならないと思うところでございます。

 委員もおっしゃられましたように、全世界の特に主要な排出国のすべてが参加する形でなければ温暖化をとめることはできないわけでございますし、そのポイントは、中国、米国、インドなどの積極的な取り組み参加を求めていかなければならないわけでございます。

 そのためには、多様でかつ柔軟な枠組みというものを用意しなければいけませんし、そして、半減することを達成するためには、今までの技術の延長線上ではこれは難しいわけでありますから、革新的な、新しい、省エネを初めとする技術の開発、普及ということにも力を入れていかなきゃいけませんし、同じ途上国でも、中国やインドなど発展している国とは別に、今なおテークオフできないでいます最貧の国々、ここに被害が集中していくわけですから、こういう国々に対する国際的な協力をしての資金供与などの資金メカニズムも開発していかなきゃいけません。

 課題は山積でございます。これらについて一つ一つきめ細かく丁寧に対応をし、世界全体がまとまっていけるように全力を挙げて取り組んでいく決意でございますので、ぜひともいろいろと御指導のほどをお願い申し上げたいと思います。

盛山委員 大臣、ありがとうございました。

 来年からは、京都議定書の第一約束期間が始まる年でもあります。ぜひ、美しい国、美しい星づくりのために、これからも頑張っていただきたいと思います。ありがとうございました。

西野委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 きょうは、また委員長を初め各党の皆さんにこうしてお時間をいただきますこと、感謝を申し上げます。

 今回、昨年の十二月からこの環境委員会におきまして、実は三回目のお時間をいただいて、犬、猫の殺処分の問題について、また再び質疑をさせていただきたいと思うんです。

 資料は配られていますね。質疑に入る前に、ぜひこれは皆さんに見ていただきたいんですが、資料の十六ページ、カラーコピーでつけておりますけれども、大変胸が痛むような写真であります。全国で犬や猫が四十万匹こういう形で殺処分されている、これが実態の写真でございます。ぜひ、これに基づいて、この数を少しでも減らしたい、こういう思いで質疑をさせていただきますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 まず、菅原政務官にきょうは来ていただきました。前回、四月十日の質疑で私が指摘をさせていただいた点について、全国の都道府県並びに政令指定都市、特別区に通知を送っていただきました。環境大臣も同じでございます。資料を冒頭につけてあります。

 このことには大変感謝を申し上げると同時に、全国で狂犬病予防法、動物愛護法の現場で働いている職員さんからも、もちろん、厚労省では前からこういう運用なんですよということをきのうレクの段階でおっしゃっていただいていますが、実際にはこういう運用をしてもいいんだということを知らなかった自治体の職員さんがたくさんいまして、私のところにも電話やメールで随分いただいております。今までは本当に、現場で働いていても、法律のもとで三日目以降は処分をしなければいけない、その処分の仕方は殺すことだけだと思っていて、自分でも胸が痛い思いをしながら、でも仕方がないということで処分を行っていた。

 ただ、この通知が出たことによって、大きく改善ができるのではないかというような声を大変いただいておるのと同時に、以前から私の地元を一つ例にとりまして御説明をさせていただいていましたけれども、私の地元の熊本市は日本で有数の命を助けている自治体でありますけれども、熊本県が同じ基準の中でやはりワーストフォーだったということなんですが、いよいよこの熊本県も百八十度方向を転換して、命を助ける方向に変えなければいけない、こういう動きに実際なってきております。この通知は非常に大きな意味を持つ通知だったのではないかというふうに思っております。

 さて、実際には、この通知を出していただいて、まず、資料一の通知を見ていただければありがたいんですけれども、昨年の十二月に指摘をさせていただいた生後九十日以内の子犬に関しては、狂犬病予防法の適用外だということを明記していただいております。そしてまた、四月の十日に政務官から御答弁をいただいた、処分とは殺処分だけではない、これもしっかり自治体に明記をいただきました。

 ただ、現実にそうなると、では、今まで三日目に殺処分をしていた自治体が方向転換をして、例えば、三日目からは動物愛護法のもとに移して、そこで譲渡先を見つける、要は、飼養に適すると判断をされた犬や猫に関してはできるだけ生存の機会を与えるように、いわゆる動物愛護法の精神にのっとって運用をしようとした場合には、これが一週間なのか十日なのか二週間なのかわかりませんけれども、現実問題としては、保護する数と期間が長くなってくるわけです。そうすると、施設も必要である、えさも必要である、もしかしたらワクチンも必要である、現実的に今度費用がかかる問題というものが出てくるわけです。

 そういう中で、実は私も総務省の方に、狂犬病予防法ではなく動物愛護法、狂犬病予防法はもう既に交付税措置の対象になっていますからあれですけれども、動物愛護法の保護管理に関して交付税措置が今なされていないんですね。要は、一般財源の中で各自治体が行うということですけれども、実際に、それでは、現実問題として各自治体はお金がない中で、本当にその改善がなされるのかということで、今総務省の方で検討していただいているんです。

 ぜひ大臣も総務省の方に検討を働きかけていただきたいんですが、その検討する中で幾つか今問題点があるということがございます。

 まず、どれぐらいの施設を用意したらいいのか、また、どれぐらいの期間の滞留で、その滞留、保護されている期間に何匹ぐらいいるのか、ひいては、えさ代がどれぐらいかかるんだろうか、ワクチンがどれぐらいかかるんだろうか等々、そのことについてきょうは幾つか質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 まず、全国ベースでお伺いしたいのは、毎年狂犬病予防法に基づいて捕獲され、要は抑留をされている犬の数、動物愛護法に基づいて、引き取り義務に基づいた形で持ち込まれる保管が必要な犬の数、こういうきちっとした合わせたデータというのはあるんでしょうか。それぞれお答えいただければありがたいと思います。

菅原大臣政務官 厚生労働省の方で、各年度ごとの抑留の頭数を把握いたしておりまして、直近の十七年におきましては八万八千六百八十七頭、このように今手元に資料がございます。

若林国務大臣 各年度ごとに、引き取っている犬、猫の数、そして抑留をいたします犬の数、そしてそれらの殺処分をいたしましたものの数といったようなものは、今手元にございますのは昭和四十九年からでございますが、平成十六年度まで手元に用意しております。

松野(頼)委員 資料の六を見ていただきたいと思うんですが、狂犬病予防法の条文をつけてございます。これですと、二日間公示の後に、市町村長に通知をし、通知を受けたときには二日間公示をしなければならない、この政令の定めるところにより、処分することができる。

 その政令を読むと、「あらかじめ、適当な評価人三人以上にその犬若しくは同条に規定する動物を評価させておかなければならない。」狂犬病予防法施行令の第五条、下の方に書いてありますけれども、これを見ていただければありがたいんですが、この評価をさせなければならない、要は、処分の前に評価をさせなければならないということの規定が書かれているんですね、狂犬病予防法には。

 これはどういう評価で、この評価によってどういう選別をするのか、お答えをいただければありがたいと思います。

菅原大臣政務官 御通告いただいていないもので、正確にお答えできるかどうかあれですが、その犬のそれぞれの評価そのものというふうに認識をしているわけでございますが、御質問の趣旨と今のお答えが、定かじゃないものですから。

松野(頼)委員 済みません、一応ざくっと狂犬病予防法ということで通告をさせていただいたんですが、ここまで細かいところはしていないんですけれども、要は、飼養に適するものか飼養に適さないものか、狂犬病予防法でも分けているのか分けていないかというところを聞きたいんですが、それは後で事務方を通じて御報告ください。

 いずれにしても、何が言いたいかというと、まず、狂犬病予防法で抑留をした犬、動物愛護法のもとに基づいて持ち込まれた犬、これが今四十万匹処分をされているということなんですね。要は、この持ち込まれた犬の今九割が殺処分されているんです。ですから、大体四十二、三万匹が持ち込まれているのであろうというふうに思うんです。

 その中で、自治体によって、この間も御紹介しましたけれども、例えば我が熊本の自治体においては、殺処分率は十八年度は八・数%、ただし、生存率、返還率は七五%。二五%から八・数%を引くと、やはり十数%は飼養に適さない犬や猫であったり病気だったりして、これはやむなく殺さなければいけないということです。ですから、こういうやる気のある自治体と、全くそのデータがなくて、やる気のない自治体の中でばらつきがあるんです。

 この平均値をある程度とらなければ、例えば熊本市だったら、六百頭から八百頭年間収容されてくる、その中の七五%が飼養に適したりすることで譲渡ができる、その八・数%も加えると約八割近くが飼養に適するので、頑張れば命を助けられる。とすると、大体六百頭から八百頭の七五%というと、四百頭から六百頭ぐらいです。それを三百六十五日で割ると、大体一日二頭平均。それを十日間なり二週間ということでもし保護をすると、二十頭から三十頭ぐらいの施設が必要ですね。これが補助基準面積に、人口六十七万の中核都市の場合には補助基準面積になるんじゃないでしょうか。例えば、二十頭が十日間のえさは大体これぐらいですねといって割り出せるわけですね。

 ですから、この自治体のばらつきをもう一度ある程度平均化をして、そしてそこで補助基準面積を割り出したりということをしないと、交付税の対象になかなか難しいのではないか。また、全国の引き取りの、例えば譲渡のときには、動物愛護法に基づいて持ち込まれた犬に対して、引き取り手数料を取っている自治体と取っていない自治体があるんです。そこもばらばら。また、譲渡を受けるときに、もらう側に費用を幾ら払っているのかもばらばら。これがばらばらですと、結局、自己財源、自己収入の金額がばらばらなので、要は、一般費、運営費として補助をする場合に一体幾らしたらいいのか、半分は国が見ますよといっても、幾らしたらいいのかというのがわかりません。

 ですから、ここのところを、施設また頭数に関して、どうか早急に割り出していただきたいと思うんですが、大臣、どうでしょうか。

若林国務大臣 松野委員から、実態の分析を詳細に行っていただいて、具体的に問題を明らかにしていただきました。

 委員がおっしゃるように、交付税の対象として要求をする立場としますと、やはりそういう政策的な判断を加えながらの実態に即した数量的な把握というものがなければ説得力もありませんし、受けた方も処理をするのに大変難しいことになると思いますので、今委員が御指摘になりましたような実態を基礎にしながら、どの程度の水準のものを自治体に要請をするか、それに関連した自己収入についての考え方、見通しも含めまして、要求するのに足りる資料整備を早急に行って、交付税措置は総務省にしっかりと要請していきたい、こんな思いでございます。

松野(頼)委員 もちろん、全国的な基準、私も環境省とお話をさせていただいたならば、結構あるんです。ただ、自治体によって、前回から御答弁いただいているように、運用がばらばらなんです。

 もちろん、やりたくない自治体まで、これはしようがないことですけれども、もうこういう状況になって、今回の五月一日の通知をいただいたので百八十度方向を転換したいという自治体が結構全国に出てきているんですね。その自治体に対して、やる気のあるところはこういう基準を守っていただければ交付税措置として、項として項目を立てますよということに、私も実は取り組んでいるんですけれども、ぜひ大臣に取り組んでいただきたいのと、来年度のシーリングが九月から始まります。十二月には概算要求が始まります。この辺で、来年度できないものなんでしょうか。ぜひそこの時期的なものを答弁いただければありがたいと思います。

若林国務大臣 委員のいろいろの深い知見と持っておられるデータなどの御指導もいただきながら、来年度要求できるような体制を整えていきたい、このように思います。

松野(頼)委員 総務省の方には今実態把握、全国調査をしていただいていますので、大臣からしっかり要求をしていただければ、必ず、まず第一、第二ということで、全国いよいよスタートできますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 私も、けしからぬ、けしからぬと言って、けしからぬだけの議論で終わるのではなくて、やはり建設的な形で、どうやったら殺処分数を減らして命が助けられるのかという議論をさせていただいているつもりでございますので、ぜひ大臣の御尽力をお願いしたいと思います。

 少しそれに関連をするんですけれども、今度は資料の八、この新聞記事を見ていただけますでしょうか。これも、これから基準をつくっていただく施設整備にかかわるところなんですが、これは二〇〇四年の一月三十一日の毎日新聞の記事でございます。

 要は、収容施設の環境が悪い、そして基準がないという、線を引いたところ、施設の衛生状態が悪く、一たん収容されると病気にかかりやすくなる、里親に引き取ってもらうことが難しくなり、殺処分の増加につながる、線を引いた上の段です。下の段では、現在、都道府県動物収容施設に関する明確な基準はないというふうに締めくくっておりまして、全く明確な基準がないんです。

 次に、資料の九、十、これもカラーでつけてあります。

 この写真を見ていただきたいと思うんですが、これはこの二つだけじゃありません、実際の保護施設なり抑留施設の例として、こういうのが全国にたくさんあるんです。とてもこれは飼養にたえ得るものが見つかったときに、十日間、二週間そこに保護して、新しい飼い主を見つける施設では私はないと思います。

 そしてまた、環境省の動物愛護法のもとで定めている、施設の設置基準みたいな指針が一応あるんですね。

 資料の七をごらんください。

 まず、犬、猫の引き取り、上の段です。動物の所有者または占有者の責務、義務、命あるもので動物の所有者または占有者としての責任を十分自覚し、その動物、その種類、習慣等に応じて適正に飼養し、または保管することにより、これは一応自治体も含まれる内容なので、その適正にということが非常にあいまいな文言です。その下、一番下の段をぜひ見ていただきたいと思いますが、犬、猫の引き取り及び負傷動物の収容に関する措置、保管、返還及び譲り渡し、構造等が適正な施設及び方法によって保管をすること、要は、この保護のところでは全く基準が定められておりません。ただ、その真ん中の家庭動物の飼養及び保管に関する基準、ここの「所有者等」、等に、一の健康及び安全の保持の下ですね。等の下に、等は自治体の保護も含むということでありますので、そうすると、飼養施設の設置に当たっては、適切な日照、通風等の確保を図り、施設内における適切な温度や湿度の維持、適切な飼養環境を確保するとともに、適切な衛生条件の維持に配慮することということなんです。

 この文言とこの写真をぜひ見ていただきたいと思うんですけれども、全くその文言とはかけ離れた施設であります。風通しがあるのかもわからない、温度がある程度一定に保たれているのかもわからない。そして、ここに一週間、二週間置けるものでは私はないと思うんです。

 大臣、ぜひこの施設の改善と、例えばこの施設は、狂犬病予防法のもとにおける抑留施設なのか、動物愛護法のもとにおける保管施設なのか、ここもぜひ整理をしていただきたいと思うんですが、まず大臣にお願いします。

若林国務大臣 私も実は犬が大好きでございます。議員になってからは、適正な飼養管理ができませんので、孫が地元におりまして、孫に預けております。また、東京におります孫が非常に犬を欲しがったものですから、今の自治体の方に申し出てみろということを言いましたら、東京都の方に申し出て、すばらしい犬をあっせんいただいて、今、これは中型犬ですが、家の中で飼養しているというようなことでございます。

 そういうような私自身の心情からしますと、委員がお示しになられましたこの劣悪な施設の状況を拝見して、本当に胸を痛めております。このような状況にあります飼養管理の状況は、ぜひとも改善が必要であると思いますので、全国の各自治体の状況を全部一度、状況を正確に把握するのは難しいでしょうけれども、全体の傾向、状況がわかるような調査に努力をいたしまして、この基準の徹底を図るようにしていきたい、努力したい、このように思います。

菅原大臣政務官 ここ数回の御議論を賜っておりまして、大変松野委員のこの問題に対するお気持ち、とうといものがあると認識いたしております。すべての生あるものに対する生命の尊厳というものは極めて大きなものがあるわけでございまして、その意味において、狂犬病予防法、この趣旨の中で動物愛護の観点を阻害するものではないわけでございます。

 しかしながら、現在の法のもとにおきましては、人への狂犬病の感染を防ぐ公衆衛生上の観点から必要な規制を求めるということが主眼となっておりまして、今るる御議論がございました、同法に基づいて抑留された犬の取り扱いに関しましては、動物愛護の観点の規定というものが現在設けられておりません。

 そういう意味では、動物愛護法に基づいた適切な取り扱いによるものである、このように厚生労働省としては認識をいたしております。

若林国務大臣 失礼いたしました。

 先ほど、狂犬病予防法上の抑留施設と動物愛護法上の保管の施設との関係整理をすべきだというお話がございました。

 現在、その重複状況を自治体に対して問い合わせをいたしておりまして、その実態を把握した上で、厚生労働省ともよく協議して、その整理をきちっとしていかなきゃいけないと思っております。

松野(頼)委員 ぜひ、この施設を見ていただいて、狂犬病予防法の施設なのか、動物愛護法の施設なのかというのは非常にあいまいなんですね。少なくとも、動物愛護法の施設であれば、動物愛護法及びその関連法規の中で示されている施設には適さないわけです、この施設は。ただ、狂犬病予防法の、抑留して三日目に今まで殺していた施設ですよと言われると、ああ、そうだろうなというふうに思うんですね。

 ですから、去年から再三言っているのは、やはり狂犬病予防法の整理と動物愛護法の整理をしてもらいたい。要は、中央レベルでは、この資料の四、これも二月に出していただいた通知ですけれども、こういうチャート図にしていただいているんですが、このチャート図で見ていただいても、狂犬病予防法と動物愛護法、最後に一致するのは殺処分のところだけで、あとは別の線なんですよね。ただ、受ける自治体はごっちゃなんです、施設は。動物愛護法に基づいた施設がある地域とない地域と、運用している自治体とそうでない自治体というのが実際に現場でごっちゃになっているので、そこのところをぜひ整理をしていただきたい。

 同時に、菅原政務官、きのうは随分事務方と議論をさせていただいたんですけれども、狂犬病予防法においては、これはまことに申しわけないけれども、犬の愛護の部分は入っていない。ただ、受ける方の自治体は同じ二つの法律ですから、要は、狂犬病予防法に基づく二日間の抑留期間、動物愛護法に基づく、飼養に適する犬、猫に関してはできるだけ譲渡の可能性を探るようにという動物愛護法と、犬から見ると同じ保護、抑留されている期間に二つの法律がまだかかわっているんですよ。

 では、ちょっと極端な例でお話をさせていただくと、狂犬病予防法で抑留をしている二日間にえさを与えなくてもいいんでしょうか。例えばその間にけったりしてもいいんでしょうか。ちょっとそこを具体例としてお答えをいただきたい、これは極端な例で申しわけありませんが。

菅原大臣政務官 現在の狂犬病予防法の中で、先ほども答弁の中で申し上げたとおり、動物愛護の観点を阻害するものではない、こういう思いの中で、今挙げられた例については、あってはならない、このように認識しておりますけれども、この問題については、二つの法律にまたがって、またそのすき間の中でいろいろな課題があり、先生からも御指摘をいただき、また本委員会において御議論されておりますから、今後、環境省とよく協議をしながら、この点は問題点を浮き彫りにし、また収れん化していく方向に向けて努めていきたいと思っております。

松野(頼)委員 できれば厚労省にお願いをしたいのは、たとえ狂犬病予防法に基づく抑留期間でも、動物愛護の観点を忘れずに、もし、その後、三日目に動物愛護として運用するようになった場合、要は、飼養に適する犬を譲渡することも処分の一つだというふうにこの間通知を出していただいたので、その二日間においてもしっかりと、譲渡をして里親に上げたときにもちゃんと健康管理ができるような状態にぜひしていただきたい。このことを政治家としてちょっと前向きに答弁をしていただけないでしょうか。

菅原大臣政務官 大変重要な御指摘であると認識をいたしております。あくまでも狂犬病予防法の中で、先ほど来繰り返しになりますが、動物愛護の観点を排除するものではない、あわせて、二日間ということにおいては、当然そこにおいての責任があろうかと思っておりますから、今の御指摘を踏まえたことを実効性を上げるべく努めていきたいと思っています。

松野(頼)委員 どうもありがとうございます。

 非常に前向きな答弁をいただいたというふうに、できれば、こういう施設を改善するときに、またどっちの予算でやったらいいんでしょうか。狂犬病予防法で交付税を要求するのか、動物愛護法で、新たに基準をつくっていただいて交付税を要求するのか、ちょっと御答弁いただけますか。

若林国務大臣 狂犬病予防法と動物愛護法と、両方にまたがって、それを同じ自治体で受け、現場がその扱いによって困惑し、混乱している自治体もあるやに承りまして、その関係をきちっと整理をすることは先ほどお約束を申し上げましたが、整理すると同時に、いずれにしても、どちらの法律に基づいて飼養管理をするにしても、やはり命を大切にするんだという基本的な考え方に立って処理をしていかなきゃいけないんですが、施設整備については、どちらの方で施設の整備をしていくのか、その後もその施設をこのまま使っていくというような方法もあるのかないのか、そんなことも含めまして、つまり整備した後ですよ、これから両省間で十分協議をし、両省間が重なることがないように、また両省間の考え方が同じ方向を向いているように、要求段階できちっと整理をした上で総務省に交付税措置の要求をしていくようにしなきゃいけない、こんな思いをいたしております。

松野(頼)委員 時間があと五分になりましたので、前回ちょっとお願いをしました、資料十三をごらんください。

 「動物の処分方法に関する指針」、ここで、第2の定義の(3)、処分、殺処分、致死させることをいう、これは環境省の文書なんですけれども、これは非常に紛らわしいので直していただきたいということを四月十日に申し上げました。直していただけましたでしょうか。

若林国務大臣 これを改善する、直すということをお約束申し上げました。そこで、これを直すという方針はもう決めているわけでありますが、告示でございまして、告示の改正は、中央環境審議会の意見を聴取するということが必要になってまいります。中央環境審議会にかける、このこと自身は、多分、かければ当然のこととして同意いただけるものと思っておりますが、この機会に、中央環境審議会の動物愛護の関係に、このことだけをかけるんじゃなくて、その他の事項についても意見を聞いて、改善すべきことがあれば改善をした方がいいんじゃないか、そういうふうに私の方から指示をしていることもありまして、何の審議をお願いするか、今整理しているところでございます。いたずらに長引くことがないようにということで、夏までにはこれを整理して、中央環境審議会の方に意見を聞くような形にしたいというふうに考えております。

松野(頼)委員 大変前向きな御答弁をいただいたと受け取らせていただきます。

 ぜひ、さっきの施設及び今のこの殺処分数を減らすこと、もうこんなものは小さいことなので、ただ、これで混乱をしているということもあるし、これを入り口にして、この動物愛護行政とまた狂犬病予防法の行政のやり方をぜひ根本的なところから改善をしていただきたいということをお願いいたします。

 ちなみに、御参考までに申し上げると、日本の殺処分数というのは世界の中でも高いんです。資料十二につけてございます。これは環境省の資料ですけれども、日本、イギリス、アメリカというデータをとられていますが、日本は、犬、猫、約九割以上、イギリスでは二割から一割以上、アメリカで五割以上。ちなみに、アメリカの下に、民間のシェルターを活用した、要は保護施設を活用した譲渡のやり方みたいなチャート図も、ちゃんと環境省の方でこういうデータを持っているわけですから、これを見て、改善をするところの根本的な議論をぜひしていただければありがたいと思いますし、非常に諸外国に比べて、世界に恥ずかしい数字だというふうに思っています。

 どうも環境省の外郭団体がつくられたパンフレットでは、外国に紹介する日本の動物愛護では、すばらしい施設と、犬と人間が遊んでいる絵とか阪神・淡路大震災のときの絵と、いいところだけが写されていて、さっき御紹介させていただいたような保護施設、抑留施設の写真は全くありませんでした。その姿を見ても、非常に今の現状というものが世界に恥ずかしいというふうに思っていらっしゃるんではないかというふうに思いますので、ぜひ改善をお願いいたしたい。

 あと最後に一点、資料の最後の十七から十八、十九、環境省が平成十七年につくられた、日本動物福祉協会というところに千百四十万相当でつくっていただいた動物検索サイトなんです。これが支出負担行為決議書ですけれども、この千百四十万相当が随意契約ということだったので会計法に照らしてどうなのかなということもあるんですけれども、まあそれはさておいて、実際にこれを稼働させてほしい。

 最後の十九ページをちょっと見ていただきたいと思うんですが、ある民間団体のホームページにこんなことが書いてありました。

 余談ですけれども、佐世保市も環境省収容動物データ検索サイトをことしの三月ごろ導入しようと環境省に問い合わせたところ、その導入の手続が年に一回しかされていないので、四月になったら連絡しますよと言われた、それっきり返事がありませんということが書いてあるんです。

 昨年の十二月に委員会で私が指摘をさせていただいた、資料の十七というのがいわゆるその動物検索サイトなんですけれども、十二月の段階では十三しかつながれておりませんでした。その後、指摘させていただいたので、十八にふえました。ですけれども、きのうの夜検索をしましたら、譲渡動物の検索はまだ十六枚しか写真が載っていないんです。迷子動物は、少し頑張られて九十八件写真が載っていました。ただ全国です。

 まず、百幾つある当該の自治体に対して十八しかつながれていない。一千百四十五万を払って、毎月五十万の管理費を払っている検索サイトに対してこの活用では、余りにもお金の無駄なんではないでしょうか。そして、何でこんなにつながれないんだろうといろいろ環境省に言われても、こういう、問い合わせたところ何の返事もありませんという状況ですので、時間が来ましたので、大臣、これは早急に改善する、どんどんつないでいくということを答弁いただいて、質問を終わりたいと思います。

若林国務大臣 まず、佐世保市の案件についてでございます。

 この御指摘を受けて聞きましたところ、誤解があったようでございまして、これは県を通じて委託をしているということもあって、手続は実はいつでも受け付けているということでございまして、そのことをきっちり佐世保市の方に、また関係者にお伝えをしなきゃいけないというふうにいたしております。

 なお、このデータベースネットワークが有効に活用されていない。これだけの努力をしてシステムをつくり、費用もかけて管理しているわけですから、委員がおっしゃるように、これがもっと有効に使われなければ意味がないわけでありますので、有効に使われるようなことをどのような形でアピールしたらいいのか、工夫をしながらもっと積極的に使われるようにする指導をしていきたい、こう思います。

松野(頼)委員 どうもありがとうございました。

西野委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 松野委員に引き続き、きょうは久しぶりに一般質疑の時間をちょうだいいたしましたので、大臣以下関係の皆さんに明快な答弁をぜひお願いしたいと思います。

 近年の環境問題の深刻さ、そして、マスコミも含めてその重大さに気づく国民の数は明らかにふえてまいりました。しかしながら、その問題の多くが、環境省の所管だけではなく、さまざまな課題がまたいでいるケースが随分目立っております。その中で、省庁間の連携のまずさであるとか、力かげんでその結果が出されてしまう、そんなことがあってはならないという気持ちを大変強くさせていただく今国会でもありました。

 ついせんだっては、食品リサイクル法で農林水産省そしてまた国土交通省などと非常にかかわりの深い部分もありましたし、私自身も、環境省がどういった観点でその法の施行を行い、監視体制、チェック体制を進めていくのかという点を強く指摘し、お願いをしてきたところでありますが、きょうも、その辺のことも踏まえながら、今回、まださまざまな省庁との連携のまずさ、またその実態の問題について指摘をしていきたいと思っております。

 冒頭、まず、済みません、これは農林水産省とも非常にかかわりの深い捕獲の禁止解除、とりわけ雌のニホンジカの捕獲の禁止解除についてお尋ねをしたいと思います。

 大臣の方から中環審に諮問をされました、「狩猟鳥獣を定めること」それから「対象狩猟鳥獣の捕獲等の禁止又は制限を定めることについて」ということで、ちょうど一月前、四月の二十七日に中環審の野生生物部会で答申が出されたところであります。

 この中では、この委員会でも大変問題にしてまいりました、カワウが新たに狩猟鳥獣に指定をされる、そしてウズラが捕獲禁止対象になる一方、ニホンジカの雌を捕獲禁止されていたものが解除されるという結果になりました。

 このニホンジカの被害については、それこそ農家の皆さんからもいろいろと苦情を聞かせていただいている一人でもあります。生態系、それから農林水産業に深刻な被害を及ぼしている。お伺いしますと、毎年四十億円を超える被害総額が出ているということを踏まえながらも、今回、この省令改正がきょうにでも発令される、公布されるというふうに仄聞しているわけですけれども、果たして本当にこの雌ジカの狩猟禁止解除が生息状況等に影響がないのかどうか、この点、疑問を抱かざるを得ません。

 農家からの苦情はもちろんある中で、科学的知見というものがまだまだ不足をしている日本において、そう簡単に狩猟禁止解除という手に入っていくことが本当にいいのかどうか、私は疑問に感じるわけでありますが、その点についてどのようにお考えか、お答えをお願いしたいと思います。

冨岡政府参考人 お答え申し上げます。

 環境省で実施しております自然環境保全基礎調査の結果によりますと、ニホンジカの生息分布は、二十五年前に比べまして一・七倍に拡大しております。一方、シカの捕獲数を見ますと、二万頭から年間十八万四千頭に増加しております。このような状況のもとで、ニホンジカによります農林業等への被害も深刻な状況にございまして、先生御指摘のように、ニホンジカによる被害は年間約四十億円と推計されまして、これはイノシシに次いで多い額となっております。

 それでは、ニホンジカの個体群管理に関する点について申し上げますと、研究者のシミュレーションによる研究によりますと、例えば、一定の頭数のニホンジカにつきまして個体数を一割減らすといったようなシミュレーションをした場合に、雄と雌をどのように捕獲するかによって結果が違うというふうなことが言われております。例えば、雌と雄を半数ずつ捕獲する場合には個体数はそれほど変動はしないけれども、雌を非常に多くとるといった場合には個体数が減少する、一方、雄に偏った捕獲では増加傾向に影響を及ぼさない、このような傾向があるという研究結果が出ております。

 最近のシカ全体の増加傾向、こういったことを踏まえまして、こういうふうな研究結果を勘案しまして、私どもは中央環境審議会に諮問し、答申をいただきました。中環審におきましては、雌ジカの捕獲禁止措置の解除が適当という答申をいただきまして、本日、官報に告示しまして、六月一日に施行したい、かように考えております。

 一方で、今後の話でございますけれども、捕獲禁止措置の解除後、適切な個体数調整がまた重要でございますが、特定鳥獣保護管理計画を作成して科学的なモニタリングを行うことが重要と考えております。現在、ニホンジカの特定鳥獣保護管理計画は三十二の都道府県において作成されております。中には、シカがかなり生息しておる状況で特定計画がまだ作成されていないという県もございますが、そういったところにもこういった作成に向け促進方をお願いするとともに、技術的な援助を申し上げたいと思っております。

 以上でございます。

田島(一)委員 今いみじくも、特定計画が三十二の自治体でしか策定されていないという数字もお示しをいただきました。

 科学的知見というのは、それこそ環境省だけで把握できるものでもなく、先ほど、必要性ということで、科学的なモニタリング調査の実施も御指摘をいただいたわけであります。そういったデータを積み上げていくことが今優先すべきであって、やみくもに野生生物の管理に殺処分で、捕獲ですべて片をつけるという安易な考え方、これはやはり見直しをしていかなければならないというふうに考えます。

 そんな中から、雄でも雌でもというのではなく、雌ジカというような結論に至られたのだというふうに思いますけれども、各自治体の温度差が特定計画の策定ができているかできていないかというその数字にもあらわれているように、各自治体でのこの計画を進めるための人材であるとか技術、また予算、組織の整備といったものにもっと力を入れていかないと、やみくもに、この生息状況への悪影響というものにもつながりかねないというふうに考えます。

 その点について、今後の見通しとしてお答えを一度いただきたいと思います。

    〔委員長退席、竹下委員長代理着席〕

冨岡政府参考人 先生御指摘のように、データに基づきまして、科学的な知見に基づきまして個体数管理を行い、計画をつくり、適切に管理していくということが大変重要なことだということでございます。

 そのために環境省といたしましては、今後とも、技術マニュアルの作成、こういったものを普及していく、それとともに、都道府県の担当職員に対します研修の充実、こういったことを通じまして、より適切な対策が講ぜられるよう努力してまいりたいと考えているところでございます。

田島(一)委員 日本というのは、地形もそうですし、生物相も非常に特有な、複雑な状況にあります。それだけに、欧米のデータがすべて日本で通用するというわけではありません。日本独自の生物相をきちっと分析し、技術開発そして人材育成に力を入れていかなければならない、そのことは御理解と御認識をいただいているようであります。しかしながら、自治体の予算不足等々からもそのしわ寄せが大きく来ているのも実態でありますから、どうかその点の御配慮を心からお願い申し上げて、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 さて、エコツーリズムについてお尋ねをしたいと思います。

 今し方私が取り上げた生物相また野生生物の管理等も含めて、我々人間と野生生物がいかに共存をしていけるか、生物多様性をこの日本においてしっかりと確保していくか、この点についてはこれまでも随分議論を重ねてまいりました。とりわけ、エコツーリズムという概念における生物多様性の確保は、絶対に見落としてはならない重要な課題であろうかというふうに思います。

 しかしながら、今日、西表島のマングローブがジェットスキー等々の及ぼす波で根が引き起こされたりであるとか、前人未到と言われるような自然界の中へツアー客がどんどん踏み入ることによって、いわゆる地形が大きく変わっていく、植物等の生態系が変わっているというような被害の実態も数多く報告をされています。

 そう考えていくと、エコツーリズムの推進の一方で、生物多様性を確保していくというこの大命題をしっかりと位置づけていくことが私は何よりも肝要だというふうに考えますが、冒頭、大臣のお考えをぜひ聞かせてください。

若林国務大臣 エコツーリズムの意義については、先ほど来、当委員会におきましても、いろいろな御意見をいただき、考え方を申し述べてきたところでございます。

 何といっても、自然環境とか歴史、文化を体験しながら学ぶというところに重点がありまして、それら環境の保全にも責任を持つ形で観光が行われるということが基本でございますが、心ない観光客あるいはそれをあっせんする事業者がいることも事実でございます。

 そのためには、何としても、こういう自然教育といいましょうか環境教育という視点というものを、関係業者を初め観光にかかわる人たちにもPRをしていかなければいけないというふうに思いますが、委員御指摘の生物多様性の問題については、殊さら地味な世界なものですから、これを理解をいただくこと、重要性を理解いただくことがなかなか難しい。

 これは日本だけではないようでございまして、今度、ドイツのサミットでは、温暖化とあわせて生物多様性の問題も首脳会議の議題に上げると聞いておりますけれども、報道の方もほとんど温暖化に占められておりまして、生物多様性が論じられるというようなことは余り報道されておりません。それほどこの生物多様性問題というのは、わかってもらうのが難しい。しかし、重要さにかけては大変重要な課題でございまして、人間もこれは生物でありますから、そういう環境変化に伴って多様性を損なわれていくということ、持続性がなくなるということは、人間の生活にも実は非常に密接に関係しているんだというような視点をもっとPRしていかなきゃいけないなというふうに思います。

 その意味で、このエコツーリズムについて、法律の中で生物多様性ということが位置づけられたということは、私は大変意義のあることだというふうに受けとめているところでございまして、この成立を見た暁においては、そういう生物多様性ということを教育の面で大いにPRしながら、エコツーリズムを観光の中にあっても重視するように、いろいろな機会に普及啓発をしていきたい、こう思います。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 地味なジャンルだというふうな御指摘がありましたけれども、私は、決して地味だとは思わないんですね。おろそかにしているだけであって、もっと教育の場面で、また、こういう産業を通じて、この生物多様性の確保というものを知らしめていかなければならない。ある意味では、政府全体がそういう概念に立脚した形で立法作業に入っていかなければならない、実はそんなふうに考えております。

 ついせんだっても、海洋基本法というものができました。しかしながら、生物多様性という視点が十分に盛り込めなかったと私自身は反省をしているところであります。

 いみじくも、先ほど人間も生物だとおっしゃってくださいました。この生物多様性の中で生かせていただいている私たち人間がどのような位置にあるのか。ピラミッドの構図にもし変えたとした場合、その一部分でも、一層でもなくなれば、私たち人間が生きていくことすら危ぶまれるという重要な課題に立って、これからはぜひ生物多様性の確保という視点をさまざまな法律の中にも照らし合わせていただきたい、このことを強く要望しておきたいと思います。

 さて、そう考えると、このエコツーリズムにおいて、いよいよ環境への配慮というものが重要視されてくるようになりました。しかし、観光事業、観光産業全体を見渡したとき、まだまだ足りないのではないかという気がしております。

 私の生まれ育った地元彦根には国宝彦根城というのがございまして、今、築城四百年を祝ってのイベントが行われています。随分多くの観光客がお越しをいただくのでありますが、これは文化遺産に対する観光でありますが、まだまだ、環境に対する視点、配慮というものを持って観光客がお越しくださっているかどうかと見渡すと、非常に疑問であります。

 そう考えると、私は、エコツーリズムにこだわらず、観光産業全体に環境への配慮、生物多様性を先ほど申し上げましたけれども、その配慮ももちろんですけれども、環境全体への配慮というものの視点を盛り込まなければならないと考えますが、その点についていかがお考えか、お答えください。

    〔竹下委員長代理退席、委員長着席〕

若林国務大臣 広いとらえ方をいたしますと、観光というのはいろいろなジャンルがあって、直接環境とかかわらないような観光もないわけではありませんが、観光産業という意味でとらえていきますと、やはりその観光の対象は、自然の資源や、歴史、文化などの人文資源、景観というものが、直接目的でないにしても非常にかかわり合いが深いものでありまして、観光の中で配慮さるべき重要な点に位置づけられているというふうに思います。

 貴重な自然が損なわれることがないような、特に配慮を要するエコツーリズムをこれから推進していく中で、観光関連の事業者あるいは旅行者の意識の向上を図って、環境配慮についてその普及の促進を図っていくべきだ、こんなふうに考えております。

田島(一)委員 今後、このエコツーリズムを推進していくに当たっては、やはり地域ぐるみの推進体制の構築が重要になってまいります。

 そんな中で、今回起草される推進法案では、自治体に、事業者であるとかNPO、また専門家や土地所有者などを交えて協議会を組織できるというふうにいたしました。この協議会のあり方が私は大変重要になってくるのではないかと思います。

 いろいろな利害、また背景をお持ちいただく方々が、主体的にこの推進協議会にお入りいただいてエコツーリズムを進めていこうと取り組まれるわけであります。その協議会の協議の中でさまざまな合意形成に向けた意見交換なり議論が重ねられると思いますが、中には、利益を追求する余り自然観光資源の保全というものがおろそかになりがち、またその一方では、自然観光資源の保全に力を入れ過ぎる余り観光という視点が欠落するといったような問題点も出てくると思います。

 そして、観光という視点に立てば、事業者の経験値にはかなうわけありませんから、地元地域の住民やNPOがこの協議会の中に入ったとしても、必然的に、イニシアチブをとっていくのは観光事業者等ではないかな、そんな心配も実はするところであります。

 自然観光の保全をおろそかにしないために、この地域の協議会がどのような議論で合意形成を進めていくのか、また、その過程で、観光事業者等がイニシアチブをとって強引に進めていくというようなリスクを回避する、そんな手だてが私は必要ではないかというふうに考えますが、この歯どめ策についてどのようにお考えかをお答えいただきたいと思います。

冨岡政府参考人 お答え申し上げます。

 各市町村で設置されますエコツーリズム推進協議会は、エコツアー業者、土地所有者、地域住民等の関係する方々のみならず、NPOや学識経験者、関係行政機関等の幅広い関係者により構成されるものでございます。

 そういうわけでございますので、この推進会議では、それぞれの立場からさまざまな意見が出されることが想定されます。そういった場合に、エコツアーの対象となる自然観光資源が失われたり劣化すると、ツアーそのものが成り立たなくなる、それから、地域の健全な活性化を望む点ではそれほど違った立場ではないのではないかというふうに考えられるわけでございまして、こういうことから、前向きな議論が期待できるのではないかと考えております。

 私どもが平成十六年度から先駆的に取り組みました十三のモデル地域におきましては、それぞれの地域におきまして、前向きに、資源の活用とか保護といったことについて議論がなされましたし、学識経験者の方や関係の専門の方の調整等により、特に問題なく合意形成が行われ、計画がつくられたといった経緯があるものと承知しております。

 さはさりながら、万一、必ずしもうまくいかないような地域があった場合につきましては、提案を予定されている法案におきましては、主務大臣が認定するという制度がございますので、そういった際に、十分主務大臣が注意するといったことが講ぜられることと思いますし、国が示します基本的な方針におきましても、偏った協議会の中身にならないように十分注意するような事項を盛り込んでいくこととなると思っております。

田島(一)委員 もちろん、このエコツーリズムを推進していくに当たっては、今申し上げた地域協議会でのきちっとした計画の立案、合意形成に導いていただくことが何より大事だというふうに考えますが、この先、自然観光資源の保全を図っていくという観点から、エコツーリズムを進める余り、その影響がいろいろな面に及ぶ可能性もあろうかと思います。

 ある意味では科学的な追跡調査というものが今後必要になってくるのではないかというふうにも考えますが、その点についてはどのようにお考えかをお答えください。

冨岡政府参考人 今議論されております法案におきましては、エコツーリズムを実施するに当たりまして、自然観光資源の適切な利用方法や監視、科学的な評価を行うということが基本理念に明示されているところでございます。

 エコツーリズムが行われる地域は、原生的な自然から里地里山までさまざまなエリアが想定されるところでありますが、先ほど申し上げました規定の精神を踏まえまして、それぞれの地域の状況に応じました適切なモニタリングが行われて、適切な保護が図られていくことが重要なものと認識いたしております。

田島(一)委員 あと、今後、全体構想というものが設定をされていく地域で、例えば、全体構想に合致しないツアーというものが実施されるといたしましょう。その中で、自然環境に大きな影響を及ぼしてきたというような事実が生じた場合、政府としての対応策、どのようにしていこうと考えられるのか、そこをちょっと、はっきりお答えいただけますか。

冨岡政府参考人 御指摘のような心配が生じました折には、主務大臣におきまして、議論されております法案の第十三条に、主務大臣が技術的助言等を行うということができるようになっております。

 まず、そういった場合には、大事な自然観光資源を指定して保護すべきといったような助言、それからよく見回り等をしっかりして失われないように保護していくといったような助言を行うということが大事なことであるし、第一歩であると思っております。

 そういったいろいろな助言等を通じまして、それでもなおかつ本来の趣旨に沿わないといった場合には、最終的には認定を取り消して、国としてはこれは推奨できないものということになると考えられます。

田島(一)委員 認定取り消しなんということが出ないことを心から願うわけでありますけれども、しかしながら、助言だけでなかなか改善できない場合は、やはり毅然たる姿勢を持っていただきたい、このことだけは強くお願いをしておきたいと思います。

 この先、基本方針を作成していただくわけでありますけれども、私たちは、今回、地元の推進協議会や党にも、しっかりと市民の声、国民の声が反映される計画づくりができるような法案づくりをしてきたつもりであります。

 それだけに、国としても、基本方針を作成していくに当たっては、自然保護団体であるとかNPO、市民活動の団体の声を広く聞いて作成に当たっていただきたい、そんなふうに考えるわけですが、その姿勢をお聞かせいただきたいと思います。

冨岡政府参考人 基本方針の案を作成しようという場合におきましては、あらかじめ広く一般の意見を聞かなければならないというふうに法案でなっておりますが、この基本理念を踏まえまして、自然保護団体の皆様やNPO等の各主体の意見に広く耳を傾けて作成してまいりたいと考えております。

田島(一)委員 ありがとうございました。

 それでは、次に、最後の質問、戦略的環境アセスメントについてお尋ねをしたいと思います。

 三月二十三日に、我が党の近藤委員からも戦略的アセスについての質問がありました。この質問の議事録等も改めてひもときながら、今回の環境省が進めていく戦略的環境アセスメントのガイドラインについて質問をさせていただきます。

 きょうは、実はお手元に、参考資料ということで、新聞の記事を配らせていただきました。

 いきなりこの見出しが、毎日新聞の夕刊ですが、「計画段階の環境アセス」から「発電所は対象外」という大きな文字がごらんいただけるかと思います。しかも、「環境省方針」と書かれた下には「経産省に押され」という文字が躍っています。

 これまで事業実施直前に行われてきた通常のアセスメントでは、十分な環境配慮ができないこと、それから実質的には計画変更ができないといったような理由から、事業計画案が検討されるいわゆる意思決定段階からアセスメントを行う必要がある、そういう考えに基づいて、SEA、戦略的環境アセスメントの導入がこれまで検討されてきました。

 ようやく日本でも、世界全体を見渡してもほとんどの先進国が導入をしておりますし、アジアでも、お隣の中国や韓国、台湾でももう既に導入されている、そう考えると、日本では遅過ぎた対応ではないかとさえ思うくらいでありましたが、ようやく今回SEAのガイドラインがつくられる運びとなりました。このことは私は歓迎をしたいと冒頭申し上げておきたいと思います。

 しかしながら、この具体的なガイドラインの中身が、今新聞の見出しを御紹介したとおり、当初は十三の事業が対象に盛り込まれていたところ、発電所だけが対象から外されたというニュースを拝見いたしました。

 もう二カ月も前のことでありましたが、一般質疑のチャンスがこれまでなかったもので、大変色あせてしまった議論になるかもしれませんが、まず冒頭、私が今申し上げた戦略的環境アセスメントと現行のアセスメントの違いについて、この認識で間違いがないかどうか、お答えをいただきたいと思います。

西尾政府参考人 環境アセスメントは、事業の実施に当たりまして、公害でありますとか自然環境などさまざまな環境要素につきまして、事業の実施前に十分な配慮を事業者が行っていただくということで行っておるものでございますが、現在は、法律になっておりますのは事業段階でのアセス、こういうことでございます。

 ただ、こういうアセスメントをやるに当たりまして、もう少し早い計画の段階で、あらあらの環境配慮ということをやっておく方が環境にとってもいいし、また事業にとっても合理的に進められるのではないか、こういう議論がございます。そういうことで、上位の計画の段階でそれなりの環境配慮を行うというのが戦略的アセスメント、こういうふうに考えております。

田島(一)委員 それだけに、私も期待をしてこのガイドライン作成の成り行きを見てきたところなんですけれども、残念なことに、十三の事業が対象となるはずだったのが、発電所が対象から外れた。

 「結論が得られなかったことから、個別ガイドラインの作成等のSEAへの取組を求めないこととしております。」というふうに報道も発表されていたようでありますけれども、私、実はこの研究会の議事録を拝見させていただきました。どう見てもこの議論の流れと異なる結果が出たように思うわけであります。一体これはどういうふうに受けとめたらいいのか、御説明をいただけませんか。

西尾政府参考人 今般作成いたしましたSEAの共通ガイドラインは、これを踏まえて、関係の省庁でさらにその具体化が図られて、そういう具体化が図られたものに従って、関係事業者が具体の事案について、実地についてやっていく、こういうことで進んでいかなきゃいけないものでございます。

 ですから、私どもといたしましても、SEA総合検討会、専門家による議論を進めていただくということとともに、並行して関係省庁、関係事業者のできる限りの御理解を得られるよう調整作業も行ってまいったところでございます。

 この検討会の中でもヒアリングとか、あるいは委員の意見の中に、一方では懸念を示す論点がございます。

 現実に、SEAの利点は複数の案を提示することなんだけれども、発電所は非常に難しいんじゃないかという現実論、それから、海外でもやっているというけれども、それは、オランダや米国では、国が発電所のサイトなんかを決めるとき、公的関与がやるときにやっているもので、少し違うのではないかと、幾つかの論点が出されました。それはそれなりに考慮すべき論点であると思います。

 他方で、もちろん、検討会の委員の間では、SEAを推進する見地からの積極論、これもたくさん出されました。

 そういう論点について、意見の隔たりが詰まらないものかということにつきましては、公式、非公式にいろいろと調整も図ってまいったわけでございますが、意見の隔たりが大きいということでございますので、これを実施していく、発電所についてこれが進められていくということはこの際困難であるということを考えまして、発電所を除外するということで、SEAの実施を求めないという判断をいたしたものでございます。

田島(一)委員 きょう参考資料でお出しをいたしましたこの毎日新聞、ラインを引いているかと思いますが、下から三段目、ごめんなさい、その上ですね、「今月十五日には、自民党の経済産業部会と電源立地及び原子力等調査会の合同会議で、環境省の幹部が約四十人の議員から追及された。経産部会長の平井卓也衆院議員は「現行のアセスメントで何が不十分なのか説明がなく、反対だと伝えた」と話す。」この記事は事実ですか。お答えください。

西尾政府参考人 御指摘の自民党の会議において、SEAの検討状況の御説明を求められて御説明をした、いろいろな御意見があったというふうに存じております。これに限らず、過程でいろいろな方がいろいろな御意見を言われたということでございますが、それによって発電所を除外したということではなく、先ほど申し上げました、検討会での検討、それから並行しての関係省庁、関係方面との調整の結果、意見の隔たりが大きいため、今回は除外をするという判断をしたものでございます。

田島(一)委員 もう一枚の、日経新聞、裏側をごらんいただきたいと思います。

 日経新聞がつけた今回のこの環境アセスの見出し、「無理が通って道理は…」とあります。アンダーラインを引いた部分、ごらんいただけるでしょうか。

 実は、特定外来生物被害防止法を施行する直前で、対象動物の指定リストからブラックバスを外すかどうかという議論が行われました。私の住む滋賀県の琵琶湖でも、この外来魚であるブラックバスが随分繁殖をしている。その漁業被害等々もあって、ブラックバスは絶対に入れるべきだと主張する人と釣りを目的とする団体等との間で熾烈な議論、やりとりがありましたが、このときは、世論の反発を受け、当時の小池百合子環境大臣が、外すとした事務局の方針を覆して、ブラックバスは特定外来生物のリストに返り咲いた、そういう経緯もありました。

 私は、まるでこれと同じような大臣のリーダーシップが、今回のSEAでのこのリストから、発電所を入れるかどうかという決断が迫られているのではないかというふうに考えます。この小池大臣の当時の足跡をごらんになられながら、私は、今回、大臣こそ、経産省や自民党の部会の議論の後押しを覆してでも、実効性のある戦略的環境アセスメントを日本につくるべきだと主張なさるべきだったのではないかというふうに考えますが、大臣、いかがでしょう。

若林国務大臣 発電所を対象としないという判断に至ったということは、大変残念なことだと私は思っております。

 しかし、にもかかわらず、これを制度的に業者に強制をするといいましょうか、法的にこれを実行せしめるというような仕組みになっていないので、あくまでも、納得をしてもらい、そういう行政指導の中でこのようなSEAを推進、実行していこう、そういうことであるために、余りにも関係者間の認識、隔たりが大き過ぎるということでありますから、ブラックバスの例を挙げましたが、こういう法的な措置をとれるという権限に基づいてやるのと違う今の状況でございますので、残念でありますが、今回、これを対象としないことはやむを得ないと判断をしたものでございます。

田島(一)委員 本当に私も残念であります。大臣から残念という言葉を聞くことほどむなしさを感じることはありません。

 このSEAの総合研究会の中で、座長の浅野委員は締めくくりで、ガイドラインそのものは固定的なものではない、さらに研究会を続けてやらせていただきたいというふうにコメントをされています。

 この先、この研究会の継続性であるとか、ガイドラインの見直しというものも進めていく気持ちがあるのかどうか、それだけでも大臣からの前向きな答えをぜひいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

若林国務大臣 研究会としてこれを継続的に検討を続ける、そういう検討の場としての研究会は、お願いをした場づくりというのは一応終わったものというふうに考えております。したがって、研究会として引き続き検討をいただくということにはなりませんけれども、大きな課題であるということの認識はかなり広く持っていただいたと思います。

 具体的に発電所の立地ということが問題になりますと、やはり、関係の地域はもとよりでございますが、関係者側から、なぜもっと早く協議をしてこないんだというようなことは、自治体を含め非常に強く出てくると思うんですね。そういうような、現実が先行するような形で、事業者側の認識というものも変わってくることを期待しながら、我々としては、行政側としては、何が実行上問題になるかということは引き続き検討していきたい、こう思っております。

田島(一)委員 国土交通省も当初反対されていましたけれども、ダムであるとか、それから道路の戦略的アセスには合意をされました。その点、高く評価をしたいと私は思っています。しかしながら、経産省だけがのまなかったという足跡だけが残りました。この省庁間の大きな壁をどう取り払っていくか、そして政治的な圧力に屈せずにこうした重要な政策課題を進めていくか、まだまだ課題は多く残っております。

 きょうはもう時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、こうした大きな問題、引き続きぜひ御検討をいただきたい、心からお願いを申し上げて、終わります。

 以上です。

西野委員長 次に、三日月大造君。

三日月委員 民主党の三日月大造です。

 きょうは、環境委員会で質問をさせていただく機会をいただきました。エコツーリズムについて質問をしたいと思います。

 その前に、きのう、緑資源機構の理事初め六名の方が官製談合の疑いで逮捕をされるという事実がありました。

 大臣、緑の羽根をおつけになって、環境整備や森林整備、こういうものについても旗振り役をお務めいただいていると思うんですが、この環境や森林を食い物にするかのような事態の発生を私は重く受けとめています。

 通告にはありませんでしたけれども、冒頭、大臣に、この件についての御所見をお伺いいたします。

若林国務大臣 大変残念な事案だと思っております。

 これは、公正取引委員会がこのことを調べ、そして摘発したことを契機として、今司法上の前段としての展開がなされているわけでありますから、このこと自身についてはそのような部局の判断にまちたい、こう思います。

三日月委員 きょうはこの件についてさらに質問することはしませんが、一点お願いをしておきます。

 この緑資源機構への環境省からの再就職者数、そして、今回問題が指摘をされた法人への環境省からの再就職者数、この提示を求めたいと思いますが、いかがですか。

若林国務大臣 突然のお話でございますので、そういう事実があるかどうかを含めて調査をいたしまして、委員の方にはお知らせをしたいと思います。

三日月委員 その上で、エコツーリズムについて御質問をいたしますが、私は、美しい国というスローガンや、そしてきのう発表された美しい星ですか、そういうお題目そのものを否定するつもりはありません。しかし、美しくないやり方で美しい国を目指そうとすることが行われることについては、私は、厳に指摘をし、慎むべきだというふうに思っています。このあたり、ぜひ環境省も環境大臣も認識を新たにしていただきたいと思います。

 それで、今エコツーリズムというものについて、平成十六年度以降ですか、国も、環境省を中心に、農水省、国交省、関係省庁も巻き込んでこの取り組みを行い、私の選挙区である滋賀県でも、湖西地域がこのモデル事業地域に指定をされて、里地里山を保全しながら多くの方々に訪れていただき、自然についても理解を深めていただくということが行われていると思うんですが、一方で、今、一千万人の観光客数を日本に来てもらおうというビジット・ジャパン・キャンペーンも行われています。

 一点提案なんですけれども、環境大臣、日本が推奨する観光ですとか旅行というものについては、私は、およそすべてこのエコツーリズム、エコツアーの概念を盛り込んでいくべきだと思うんですけれども、このあたり、大臣はどのようにお考えですか。

若林国務大臣 御承知のように、春夏秋冬、四季を通じてそれぞれ美しい自然に恵まれているというのは日本の環境条件だと思いますし、そういう中ではぐくまれた人間の共生、そしてそこで住んでいる人たちがその自然を守るために努力をしてきた、その中から歴史、文化というものが形成され、各種の文化的な施設もあり、また地域のコミュニティー形成もあって、非常に魅力的な社会ができていると自負いたしております。

 そういう角度からしますと、ビジット・ジャパンのお話がございましたが、ぜひ諸外国の方に日本を知ってもらうために訪問をいただき、そして楽しんでいただきたい。そういう思いでアピールをしていく中に、おっしゃるように、日本の自然と、そして自然と共生してきた人間の心の問題、いわばもてなしの心といったようなことも含めまして、日本はすばらしいというキャンペーンはぜひしていっていただきたいと思うんですが、すべての観光客、観光に、このエコツーリズムの思想、環境でなければならないというわけにはまいらないと私は思うんですよ。

 例えば先端的な技術を見たいといったような観光もあるわけですし、いろいろな形の観光があり得るわけですから、すべてと言われて、そうだな、こういうふうには申し上げられませんが、趣旨としては、我々が外国に誇り得る日本の資源として、環境というのが重要なファクター、位置づけになるということは、委員のおっしゃることと同じ認識でおります。

三日月委員 いろいろな旅行やいろいろな観光のスタイルがあるということは私も認識をしています。しかし、日本に観光に来ていただく方には、旅行に来ていただく方には、エコの感覚を持って来ていただきたい、日本の長い歴史、自然、その中ではぐくまれた文化、技術、そういうものについて感じ取っていただくようになってもらいたいんだということだけで答弁はよかったと私は思うんです。

 それを何か、国交大臣だとか経産大臣のような御答弁を私は求めたわけではなくて、環境大臣なんですから、そのあたりはぜひ、私は、美しい星を総理大臣がいろいろなところで言われるのであるならば、また国を挙げてビジット・ジャパン・キャンペーンをやるんだったら、環境を預かる者として、エコツーリズムについても、これから法整備もして推進していこうというんだから、一千万人には、先端技術を見に来るときだってスポーツを見に来るときだって、ごみの問題や日本の自然のことについて、それを侵すということはあってはならないんだというメッセージを発するべきだと思うんです。それは立脚点の違いかもしれません。

 では、ちなみにお伺いいたしますけれども、そういうことは大事だ、日本は自然が豊かで四季もあって、そういう考え方を入れた旅行を推進していければいいというお話がありましたが、国交省でも環境省でも結構です、現時点でそのようなPRなり取り組みはどのように行われておりますか。

柴田政府参考人 先生御指摘のとおり、日本の自然というのは諸外国と比べても、日本人の生き方にもこれはかかわっていると思いますが、先生が先ほどおっしゃいました里山とかそういうものも、人間の手を入れながら、自然との共生ということで考えてつくられてきたものだ、こういうふうに思っておりまして、都会に来られても、そういった日本人の生き方に触れていただくことが大変大事なことではないか、こういうふうに思っております。

 ビジット・ジャパン・キャンペーンの中でも、日本の自然のよさとか美しさとか、こういうものも含めまして、いろいろな形でキャンペーンを展開させていただいております。

 ただ、旅行者の側のお気持ちは、必ずしもそればかりではないという方々もございますので、ニーズに応じながら、しかし、日本のアピールするものは何か、こういうことを重視しながら対応を進めていきたいというふうに思っています。

 それから、一般に旅行において、環境配慮の問題でございますが、この問題につきましては、毎年八月に観光週間というのをやってございまして、この中でも、関係団体と連携いたしまして、旅行、宿泊、交通等の事業者に対しまして、自然環境を含みます観光資源の保護や観光地の美化等に対する啓発活動を行っております。また、例えば日本旅行業協会におきましては、会員の募金によりまして環境基金というものを造成しまして、地域の活動に対する支援を行うとか、そういう活動もやっているところでございます。

 こういうことを含めまして、環境にも十分配慮し、日本の観光を持続的に発展していきたいというふうに考えておる次第でございます。

三日月委員 環境省にお伺いをいたします。

 観光というものまた旅行というものの経済的側面からとらえた効果の測定や影響というものについては最近よく目にすることがあるんですが、観光旅行というものの環境への影響、効果、これは、プラスの部分とマイナスの部分、正負両方あると思うんですけれども、これは現行どのような手法で内容を把握されていますか、また、今後どのような形でこれを把握しようと思われていますか。

冨岡政府参考人 お尋ねの観光の環境に対する影響という点につきましては、全国の観光旅行に伴う影響を包括的に把握したデータは今のところないと思います。観光旅行等によります自然資源の過剰な利用や不適切な利用によりまして、悪影響が生じている事例というのは全国に見られると思います。

 例えば、自然体験等を目的とした観光旅行等におきまして、登山道や散策道のすれ違い、この場合に、道路を外れまして踏み荒らすということから、植生の破壊とか土壌流失、こういったことが見られるというマイナス面は見られると思います。

 それから、例えば、一つの例としては、ウミガメの上陸、産卵期に、夜、観光目的で光を当てまして、それをウミガメが嫌がりまして、結局、産卵をあきらめたといったような例もある。それから、そういった場所に、車や人による踏みつけ、こういった悪影響があるといったことも言われているところでございます。

 ただ、これを全国的にデータとして、どれぐらいの価値が損なわれているかとかなんとかいうデータはなかなか難しいわけでございまして、現在のところ把握しておりませんが、これから提案されるという法案の中で、それぞれの地域におきまして計画をつくりまして、協議会において計画をつくりますと主務大臣が認定するという制度が盛り込まれておりまして、その場合にはそれぞれの地域から報告を求めるといった制度も盛り込まれております。

 そういうことによりまして、ただいま先生御指摘のような点についても、エコツアーという観点から、そういったような情報を収集して全国的に把握できるシステムが盛り込まれたのかな、そのように思っております。

三日月委員 いや、盛り込まれたのかなということではなくて、先ほど国交省側から、観光週間というものもあって、また環境基金というものもあって、旅行業者や交通事業者やホテル、旅館業者への指導もしているということがありました。しかし、環境省の方は、事例として把握をしているだけで、全国的にそういうものを取りまとめたものもないんだということでした。

 私は、観光や旅行というものが自然環境に与える影響というものもある程度把握をして、これから法制度によって報告が求められるならば、それをきちんと整理して、それを関係業者に、指導や助言のときに活用していくというスキームをつくる必要があるのではないかと思うんです。

 大臣、今お話を両省からお伺いになって、感想なり所見なりをお願いいたします。

若林国務大臣 観光旅行が非常に拡大して、発展しているということは好ましいことだと思います。やはり、生活の中で多様性を求めながら、特に自然との触れ合いなどを求め、あるいは旅行というものを通じていろいろな地域の風物に接するということの喜び、ますます強まってくると思います。

 そういう中で、環境の破壊あるいは劣化にかかわるような心ない観光に参加している人たち、また業者がいることも事実でございます、これはもう率直に申し上げて、かなりあります。

 だから、そういうことがないようにというような意味で、PRをし、環境を大切にしていただきたいというような普及啓発は大いにしていかなきゃいけませんが、事例として、こういう事例がある、こういう事例があるというのは、全国的な状況の中で調べて、そういうものを生々しくお示しするということは大事なことだと思いますが、統計的に把握というのはなかなか難しいですね。

 だから、例えば尾瀬なんかはいろいろ工夫をしていますけれども、ああいう木道の整備というようなものも、気をつけながら、そこから出ないようにしてもらう。そういうことをやりますと、やはりそれに従って動いていただけるんです。

 私は長野県ですけれども、上高地でありますとかあるいは志賀高原でありますとか、各地に自然との触れ合いに適したところはありますが、高山植物をつい失敬してしまうとか、数が多くなって人気が出ると踏み荒らしがいっぱい出てくるとか、そういうのは枚挙にいとまがありませんので、やはり地域が守ってくれるという、地域の協力を得て、そういう体制をつくって、みんなで守っていこうやという状況をつくらないと、これは守れないように私は感じております。

三日月委員 いや、だからですよ、大臣。ですから、いろいろな事例を、統計的でなかったとしても、事例だけでも結構ですから、きちんとまとめて、局長に答弁を求めないと報告をされないということではなくて、もちろん旅行者のモラルもあります、事業者が悪いということだけではありません。旅行業者であるとか交通業界であるとか、またホテルや旅館業を営む方々にも、省を超えて情報を提供して、指導助言に役立ててもらうべきではないですかと申し上げているわけで、そのことに大臣から余り異論を挟まれると、私は非常に残念なんです。

 一点、お伺いをいたします。

 エコツーリズムをやろう、推進しようということで、こういうパンフレットもおつくりになって、「エコツアー総覧」というエコツアーの情報をインターネットで発信されているのを私も見ました。いろいろな地区のいろいろな旅行案内を、国でホームページをつくってやっていらっしゃるんだなということを知ることができたんです。

 国交省にお伺いいたします。

 こういう形で、旅行を提案する人、ツアーを提案する人、つくる人がふえていると思うんです。エコツアーを実施、提供する人は、いわゆる旅行業者なんでしょうか。旅行業法の手続の面で必要なことというのは何なんでしょうか。

 時間もありませんのでまとめてお伺いしますけれども、私は、こういう形でいろいろなタイプの旅行がいろいろな形で提案され、提供される時代になってきました。ならば、旅行業が取り扱う範囲、また、そこで守らなければならない理念や何かに、新たなものを、エコツーリズム、環境という視点から加えていくべきではないかということも思っているんですけれども、いかがでございましょうか。

柴田政府参考人 エコツーリズムの推進主体にはいろいろなものがあるというふうに考えてございます。ただ、宿泊施設や交通機関の手配、それからこれらを含むパッケージツアー、これを実施する場合には旅行業法に基づく登録が必要だというのが今の現状でございます。この旅行業法に基づく登録制度につきましては、基本的に、旅行取引にかかわる消費者保護を図るための制度というふうに考えております。

 それで、先生の御質問とは直接には関係しないかもしれませんが、いわゆる中小の旅行業者、これが地域密着型の旅行商品を造成する、この取り組みをやりやすくするために、いわゆる第三種の旅行業者につきましては、企画旅行を募集、実施できるように、ことしの三月に省令を改正いたしまして、この五月から施行させていただいているところでございまして、これにつきましては、いろいろな団体、NPOみたいなものを含めましてお問い合わせもございますので、これを活用していただくことによりましてエコツーリズムの幅も広がっていくのではないか、こういうふうに考えております。

三日月委員 私は、エコツーリズム、大いに推進すべきだと思います。だからこそ、主にこれまで所管をしてきた環境省がもっと前に出て旗を振って、旅行業者を運ぶ、または商品をつくる、それを所管する国交省や業界に対しても強くアピールをするという省庁間の連携が私は必要だと思うんです。

 このあたりを指摘して、さらに引き続き検証していくことを誓い、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

西野委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 きょうは、きのう安倍総理が、国際交流会議ですか、「アジアの未来」というところで講演された地球温暖化に対するイニシアチブ、それについてお伺いをしたいのと、あと、エコツーリズムについてお伺いさせていただきたいと思います。

 まず、安倍総理の、インビテーション・ツー・クールアース50と非常にネーミングは新しい感がするんですけれども、そこについてお伺いしたいと思います。

 民主党としても、この前、五月九日に脱温暖化戦略というものを出しました。それで私ども、これまで考えてきたことをまとめたわけでございます。

 ここでちょっと幾つかお伺いさせていただきたいんですが、この中で、世界全体のCO2等の温暖化ガス排出量を現状から二〇五〇年までに半減すると言っております。これはIPCCが出したシナリオを踏襲したのかなとも思うんです。ただ、日本については、では中期的な目標はどうなんだということについては一切言及されていませんが、その点についてはいかがですか。

若林国務大臣 昨日発表いたしました提案というのは、もう委員御承知のとおりでございますが、三つございまして、一つは、長期戦略を提起したということであります。その中に、今、吸収量と排出量とがバランスして、自然の吸収量以内にしなきゃ温暖化はとまらないという意味で、二〇五〇年という長期ではありますが、期限を切って半減するということを提案した。これは世界の共通の目標にしたいということであります。

 そのもとで、それでは、具体的にどういうふうにこれを実現するための措置をするかというのは、提案の二番目にございまして、二〇一三年以降の国際枠組みをどう構築するか、その中では、三つの原則を示して世界に提案をしているわけでございます。

 それらはいずれも数値目標という形になっておりませんが、三つの原則は、もう一々言いますと時間がかかりますので申し上げませんけれども、要は、何といっても、世界の主要排出国全体が乗ってこれるようなものでなければならない、それが乗ってこれるような多様性のある柔軟な枠組みでなくてはいけないというようなことを、原則を言うにとどめているわけでございます。

 まずは枠組みについて主要排出国が世界的な規模の中で合意が成り立たない中で、今の段階で日本だけが、いや、日本は幾らにするというようなことを示すということのプラスマイナス、いろいろ考えながら、やはり世界の動向をよく見て決めていきたいということが本心であろうかと思っております。

末松委員 日本は環境技術と取り組んで本当に一生懸命やってきました。そういった意味で、そこで自動車にしてもハイブリッドとか、または環境技術の水準は世界第一位だと言われるぐらいになってきた。それが今度はまたビジネスにつながって、大きな日本の産業力になってきている話でございます。それは厳しい制限というものもございました。

 私ども民主党は、そういうこれからの環境ビジネスというものを踏まえて、日本の産業の競争力を強めていく、この観点も含めて、日本自身が二〇五〇年までに一九九〇年の排出量の基準で五〇%削減しようということをしっかりと決めております。

 大臣のおっしゃり方だと、日本は、世界が決めるのを見ながら日本も決めるので、そういうことがいいんじゃなかろうかというお話でしたけれども、それだと、本当に日本が世界をリードしていくという、よく大臣が言われていますけれども、そういったことを主導的にリードしていけるのか。まず日本の、環境、特に温暖化防止に対する決意といいますか、その政治的意思をはっきりさせなきゃいけないと思うんですが、もう一度答弁いただけますか。

若林国務大臣 御承知のように、日本は来年のサミットの議長国になるわけであります。ドイツのことしのサミットで、枠組みについてどこまで世界が合意できるか。特に中国、米国が、その枠組みの中で舞台に乗ってこれるのかどうかというのがまだ今全く見当がついておりませんで、その辺を乗せていくということがこのドイツ・サミットの中心的課題になるだろうと思っております。

 そのために、世界の首脳に先駆けて、昨日、二〇五〇年半減ということを打って出て、そこに至るプロセスについて日本の考えを述べたということでございます。

 ドイツでそういう舞台に乗ってこれるような状況をつくり上げていくということに最重点を置いたということでありまして、御承知のように、EUは独自でこういうことをするよ、こう言っているんですけれども、日本もこうするよと言った途端に、世界の今の動きからいいますと、何だ、日本はEUと同じかという意味で、乗るか乗らないか、今大変難しい状況にあります米国や中国が、日本プラスEUというふうにとらえられた結果、日本の指導性といいますか、日本の説得をする立場、特に議長としてみんな乗せていくという立場を弱くするんじゃないかなということを大変心配いたしております。

 来年の洞爺湖サミットに至る過程にはいろいろな国際会議が予定されております。そういう過程を通じて、できるだけ、先進国グループはどの程度やるんだと今度の中で言っていますが、途上国と今まで一くくりにしておりましたけれども、途上国の中を、中国やインドのような先行途上国と、まだテークオフできない途上国というようなものは違いがあってもいいじゃないかという提案もしているわけですね。

 そういうことを、考え方の合意を取りつけるということをした上で、状況を見て日本は乗っていくという意味ではありません。そういうことの指導的立場をとっていくには、やはり日本が示すことがむしろマイナスになる場合もあるということを考慮しながら、世界の枠組みづくりを進めることに重点を置いたのがきのうの発表でございます。

末松委員 途上国、アメリカを乗せたいという、それは確かに私たちも、まさしくそこは必要性を感じ、そのために提案をしてきて、排出権取引市場創設も含めて、私たちは思い切った民主党としての脱温暖化基本戦略というものを発表したわけです。

 ここでちょっと、例えば資金メカニズムという、これはどういうことなのかというのも後で聞きたいと思うんですけれども、一人一日一キログラム削減、これは国内対策でございますけれども、こういったもの、ちょっと唐突な感じも私はするわけですね。

 この一人一日一キログラムなんというのは、前提として、国民に対して、これは一人というから国民なんですよね、一キログラムというのは二酸化炭素等の温暖化ガスでしょうけれども、どうやってわかるんだということ、これに対する提案が全くないわけですね。

 そういった場合に、私ども民主党は、やはりカーボンディスクロージャーという、例えば、ガス代の請求書に、CO2はどのくらいこのガスにかかっていますとか、あるいは有価証券報告書に、うちの会社はどのくらいのCO2を出していますとか、そういう見える化というんですか、CO2の見える化ということを、これは産業界の御協力をいただきながら一生懸命に進めていって、要は、CO2の削減で一番大切なのは、各国民の皆さん、あるいは産業界の一社一社の会社の皆さんに対して、どれだけうちはCO2を使っているか、こういうことをはっきりと頭に入れるといいますか、通常の会話の中でも、CO2の排出量というのは、フードマイレージじゃないけれども、そういったマイレージの中のCO2の量が示される、目に見える、そういうことが一番重要で、それがあって初めて一キログラムというような話になるわけですね。

 だから、こういうところはどう考えているんですか。単に一キログラムとぱっと出てくると、何でわかるんだという話になるんですが、いかがですか。

若林国務大臣 きのうは、「アジアの未来」という、アジアの政治的、経済的にリーダーとして御活躍のマハティールさんとか、そういう皆さん方のお集まりの場で、いわばアピールする意味で、そこを発表の場にして口頭でお話をしたことでございます。

 当然、それらを進めていく中で、それぞれについてその考え方、それを進める方法、これらを持っていなければならないと思います。

 今、委員が御指摘の一人一日一キログラムということについて言えば、後ほどまた御説明いたしますが、こういう資料をつくっておりまして、これは、国民運動という三本目の柱の中の一つに、わかりやすく国民に取り組んでもらうという意味で、こういうことを一つのアピールとして言っていこうということでございます。

 この一キログラムというのは、炭酸ガス一キログラムというのはなかなか実感が出ないんですね。どのぐらいなんだ、まずはそこから始まりますが、サッカーボールの大きさにして百個の大きさだそうであります。さて、それでも日常の生活の中でガス化していないわけですからね。では、テレビを一時間消せばどうだ、あるいは温度管理で一度下げて、それを十時間下げていればどのぐらいだといったようなわかりやすい指標が必要になってくるでしょうし、同時にまた、委員がおっしゃられた見える化というような中で、いろいろな商品だとかそういう中で、これにはどのぐらいの炭酸ガスが含まれているのかというようなことを、商品によっての差も出てくるでしょうから、そういうようなことをわかりやすく見えるような状況で国民にアピールしていく必要があると思います。

 そういう意味での国民運動というのは、これからかなり大々的にきめ細かく展開をしていこうという決意を申し述べたんだと御理解をいただきたいと思います。

末松委員 今、大臣、見える化というのは私たちがつくった言葉ですね、述べられました。民主党でそれは述べられている言葉です、基本戦略の中で。

 ただ、一番の問題は、そういった見える化をすることにどれだけ協力が得られるか、そこをしっかりとやることは、産業界を含めて大変な努力が要る。そこをまだ環境省の方は努力が足りませんよ。そういうことをやられていない。やられていなくてこういうふうなことをぽんと出すから、これは余りやる気がない、アドバルーンだねという話を私たちはせざるを得ないわけですよ。

 そこの一つ一つ、物すごく産業界からの協力を得なきゃいけない、理解を得なきゃいけないんですよ。そこをもっと環境省は進めていかないと、本当に、単に絵にかいたもちを国民に売っているだけじゃないか、こういうことになりますよ。

 私はもう一つ聞きたいんですけれども、ここで、「京都議定書の六%削減目標達成に向けて、京都議定書目標達成計画を見直す。」と書いてある。一九九〇年から六%削減と言いながら、今八・一%もCO2レベルが上がってしまって、合計一四・一%削減をしなきゃいけなくなっちゃった。結局は、このままでいったら、カナダと同じように手を上げて、もう目標達成断念です、そういう話をやらざるを得ない。

 でも、それをしたくないということで京都議定書目標達成計画というものをつくって、環境省がずっと言ってきたように、これで達成できるんだとずっと言ってきたわけですよ。でも、これを見たら、見直すと書いてある。見直すというのは、達成計画そのものが不十分だから見直すということにならざるを得ないわけですね。

 ここについて、大臣の今までのお立場と総理のこの発表の非常に大きな違いがあると思うんですね。ということは、では、目標達成計画は実は不十分だった、だから見直して、またしっかりしたものにするんだ、そういうふうに普通はとらえますけれども、大臣、何かございますか。

若林国務大臣 実は、見直すというのはきのう初めて申し上げたわけではなくて、政府の方針として、見直しを前提に、セクター別に中央環境審議会そして産業審議会合同でヒアリングをずっと続けてきているわけでありまして、そのヒアリングも、ほぼヒアリング自身は終わり、さて、それではどの部分を深掘りしていくのか。今までの実績見通しをヒアリングした結果として、ここはもう少し深掘りできるんじゃないか、あるいは今まで対象になっていなかった業務用の部分で、学校でありますとか病院でありますとか、いろいろ今までは求めていなかった部分というのがあるんですね。不完全であるといえば、そのとおりであります。そういう部分も巻き込んで、それらを付加していくべきかどうか、そういうようなきめ細かな今点検をしているわけであります。

 特にこの計画とそごが大きく出ていますのは業務用の部分と家庭用の部分ですから、その部分でこの計画どおりにそれが実行できるようにという見直しをすると同時に、産業部門についても運輸部門についても、実はセクター別に決めてありますから、そのセクターを見た上で、それをもっとさらに強化する余地はないかといったようなことを今やっているわけであります。その結果を受けて、これが達成できるように内部を、中を見直していこうという趣旨であります。

末松委員 そのためには、やはり本当に思い切った措置をとらなきゃいけませんよ。私ども民主党は、産業界の方からもいろいろな質問とかをいただいていますよ。CO2排出権取引市場の創設ということを言うだけでも本当に大きな話であり、これはもうヨーロッパ、EUはやっていますよね、アメリカも一部やっているところもある。そして、これからアメリカの民主党の大統領選の候補者とかあるいは共和党の候補者なんかも、排出権取引市場創設とか言っていますよ。

 こういう形で、キャップ・アンド・トレードという、一応キャップという枠を設けて、そしてそういったことを努力した人がある意味ではビジネスにもできる、そういうことを、やはりこのまま産業界のとおりにというよりも、むしろもっと説得をしていって、それがビジネスにもつながるんだというところまでしっかり持っていかなきゃいけない。

 きょうはエコツーリズムについて話をしようと思っていたんですが、ちょっと時間がなくなってしまって、私自身も恐縮なんでございますけれども、ぜひこの温暖化対策、これはもうしっかりと、思い切った、むしろ環境省が本当はそういったものを主張したいんだと思うんですね、排出権取引市場なんかも。それを言えないということは、これは大臣、大臣の大きな力でもって政府部内を説得していく、そのぐらいの意欲でやっていただきたい。そこの思いを述べまして、きょうの質問を終わらせていただきます。

若林国務大臣 委員の積極的な温暖化防止に対する姿勢、さらに、過日、民主党が党として方針を出されたことを私どもとしては敬意を表しながら、それらも含めてしっかりとこれから検討していきたいと思いますし、この問題はなおなお突っ込んで意見交換をしなければならない重要な課題だ、こう思っております。

 今後ともひとつ御指導をいただきながら、大いに議論をしてまいりたいと思います。

末松委員 どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

西野委員長 次に、エコツーリズム推進法案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において協議してまいりましたが、本日、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得ましたので、委員長から本起草案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 エコツーリズムにつきましては、自然環境の保全、地域における創意工夫を生かした観光の振興及び環境の保全に関する意識の啓発等の環境教育の推進において重要な意義を有していることから、国の施策として推進が図られてまいりました。

 しかしながら、その趣旨が十分に浸透、実践されていないといった状況もあり、本来保全されるはずの自然環境、特に世界自然遺産地域などの原生自然を有する地域におきましては、大勢の観光旅行者が訪れることによる踏み荒らしやごみの廃棄など、自然環境への悪影響が問題となっており、自然保護に配慮した観光の推進が求められております。

 また、近年の環境問題への関心の高まりとともに、実際に自然と触れ合い、その仕組みや大切さを理解することがより重要となっております。

 このような状況のもと、エコツーリズムに関する施策を総合的かつ効果的に推進するため、本起草案を得た次第であります。

 次に、本起草案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、エコツーリズムは、自然観光資源が損なわれないよう、生物の多様性の確保に配慮しつつ、適切な利用の方法を定め、その方法に従って実施されなければならない等の基本理念にのっとり、政府は、エコツーリズムの推進に関する基本方針を定めなければならないものとしております。

 第二に、市町村は、エコツーリズムを推進しようとする地域ごとに、当該市町村のほか、事業者、NPO等、専門家、土地所有者、関係行政機関等から成るエコツーリズム推進協議会を組織することができるものとし、同協議会は、エコツーリズムの実施方法や自然観光資源の保護育成のために講ずる措置等を内容とするエコツーリズム推進全体構想を作成するものとしております。

 また、市町村は、その組織した協議会が全体構想を作成したときは、当該全体構想について主務大臣の認定を申請することができるものとしております。

 第三に、主務大臣は、インターネット等の方法により、認定した全体構想の内容について周知するとともに、国の行政機関及び関係地方公共団体の長は、当該認定全体構想に基づくエコツーリズムに係る事業が円滑かつ迅速に実施されるよう、許可等の際に適切な配慮をするものとしております。

 第四に、当該市町村の長は、認定全体構想に従い、保護措置を講ずる必要がある自然観光資源を特定自然観光資源として指定することができるものとし、その指定した特定自然観光資源が多数の観光旅行者等の活動により著しく損なわれるおそれがあると認めるときは、当該特定自然観光資源の所在する区域への立ち入りの制限をすることができるものとしております。

 また、特定自然観光資源の所在する区域内においては、何人も、その汚損、損傷、除去及びごみの廃棄等をしてはならないものとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び主な内容であります。

    ―――――――――――――

 エコツーリズム推進法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

西野委員長 お諮りいたします。

 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

西野委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


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