衆議院

メインへスキップ



第3号 平成20年3月25日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十年三月二十五日(火曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 小島 敏男君

   理事 小野 晋也君 理事 大前 繁雄君

   理事 木村 隆秀君 理事 北川 知克君

   理事 西野あきら君 理事 岩國 哲人君

   理事 伴野  豊君 理事 江田 康幸君

      あかま二郎君    飯島 夕雁君

      上野賢一郎君    小野 次郎君

      小杉  隆君    木挽  司君

      近藤三津枝君    坂井  学君

      鈴木 俊一君    土屋 品子君

      とかしきなおみ君    土井  亨君

      中川 泰宏君    並木 正芳君

      葉梨 康弘君    藤野真紀子君

      山本ともひろ君    末松 義規君

      田島 一成君    田名部匡代君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      高木美智代君    江田 憲司君

    …………………………………

   環境大臣         鴨下 一郎君

   環境副大臣        桜井 郁三君

   環境大臣政務官      並木 正芳君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            西尾 哲茂君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       石塚 正敏君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            竹本 和彦君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     飯島 夕雁君

  鈴木 俊一君     葉梨 康弘君

  中川 泰宏君     小野 次郎君

  渡部  篤君     土井  亨君

同日

 辞任         補欠選任

  飯島 夕雁君     あかま二郎君

  小野 次郎君     中川 泰宏君

  土井  亨君     渡部  篤君

  葉梨 康弘君     鈴木 俊一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公害健康被害の補償等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第二六号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

小島委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公害健康被害の補償等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長由田秀人君、環境省総合環境政策局長西尾哲茂君、環境省総合環境政策局環境保健部長石塚正敏君及び環境省水・大気環境局長竹本和彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小島委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。久々にきょうは環境委員会で質問をさせていただきたいと思います。

 まず、この公害健康被害の補償等に関する法律の審議を始める前に、私の方でこの前の予算委員会でもいろいろと質疑をさせていただきましたけれども、鳥インフルエンザH5N1、新型インフルエンザですね、これの予防、これからも国家危機管理という形でやっていかなきゃいけないという深い認識を私も持っておりまして、私も、この二年間、オオカミ少年ならぬオオカミ中年と言われ続けながら、ずっとこの鳥インフルエンザの危機対応について一貫して政府の対応を急がせてきたところでございます。

 その観点から、大臣はお医者さんでもございますので、この新型インフルエンザの対策について、今各省でいろいろな国家危機管理というものをやっておりますが、環境省として今どういうふうな対応を考えておられるのか、そこをまずお聞きしたいと思います。

鴨下国務大臣 今お話しになりました新型インフルエンザの発生に備えた対応、これはもう世界的に急務になっているわけであります。特に、例えば今、大陸の方でも、トリ・ヒトはもう感染経路がはっきりしているようでありますけれども、ヒト・ヒトも場合によるとあり得るんじゃなかろうか、こういうようなことも予測されておりまして、先生おっしゃるように、パンデミックになる前にいかに防ぐかということは、危機管理上極めて重要な問題だというふうに認識しております。

 環境省としましては、情報の共有や対策の連携を図るため、新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議に参画をしているわけでありますけれども、実際に環境省として何ができるかということにつきましては、まずは高病原性鳥インフルエンザウイルスの保有状況調査、さらには渡り鳥の飛来経路の解明、そして高病原性鳥インフルエンザ発生時の都道府県向け対応マニュアルの作成等を実施しているわけでありまして、私も、先生と同様に、これはいかに早く見つけ対策を早く打つかということが極めて重要なことだろうと思っておりまして、緊張感を持って対応に当たりたいというふうに思います。

末松委員 今、都道府県マニュアルも作成中ということでございます。

 私が個人的に気づいたこととして、今民主党でも検討し始めているところでございますけれども、特に、あれは鳥だけじゃなくて動物にもうつりますので、強毒性ということで非常に恐ろしい病気でございます。そういった意味で、H5N1に感染した動物の調査とか、あるいは、特に問題なのは、パンデミックになったとき、大流行時に、ペットの感染、これは当然人間にもまた感染をしていくという話にもなってまいりますし、ペットも人間の数に近いほどたくさんいる可能性がありますので、そういったところ、さらに、H5N1ウイルスの汚染廃棄物の処理といったことについてもぜひ検討していただくべきだろうと考えております。

 また、水俣病の患者の施設とかいろいろな施設における緊急時計画についても今しっかりつくられているところだと思いますけれども、ぜひそこは、今大臣おっしゃられたように、緊張感を持って検討を進めていただきたいと思います。

 それでは、その次の質問になりますけれども、これも本論に入る前の質問でございますが、私の方で、岡山県等での浄化槽の調査をこの前の質疑のときに話しまして、そこで大臣の方から、早速調査をしっかりと行う、その結果をまた国会にも報告するというお話をいただきました。今の調査の状況及びスケジュール、どんな状況であるのか、それをお伺いしたいと思います。

鴨下国務大臣 これにつきましては、昨年十月の環境委員会で先生の方から御質問がありました。それを踏まえまして、今、岡山県、広島県及び兵庫県における浄化槽の維持管理に関する実態調査を本省の職員を派遣して実施しているところでございます。

 これは、岡山県につきましては二月の中旬に、広島県については三月の中旬、そして兵庫県につきましては今まさに調査をしている最中でございますけれども、それを受けまして、四月の中旬までには調査の結果が出そろうということでありますので、これらの調査結果が取りまとめられ次第、御報告を申し上げます。

末松委員 四月中旬に調査は終わられて、それから速やかに調査の報告書をまとめられるというお話でございました。そこから再度また国会の方で私は審議をさせていただきたいと思いますので、ぜひそこは速やかによろしくお願いを申し上げます。

 それでは、この公害健康被害の補償等に関する法律についてお話をさせていただきます。

 まず、昨年、東京都の大気汚染訴訟に関しまして進展があって、これは非常に喜ばしいことだと私も考えております。そういうことを踏まえて、我が国において、特に大気汚染ですね、まだそこは依然深刻なところがあるんじゃないかと私も思うんです。平成二十二年度の総量削減目標というものもございますが、目標の達成度、あるいは今調査をされておられる現況についてお願い申し上げます。

竹本政府参考人 ただいま……(末松委員「大臣が手を挙げたら、大臣からお聞きしたいと思いますね」と呼ぶ)事務的な点をまず最初に……(末松委員「大臣からお願いしたいと思います」と呼ぶ)

小島委員長 それでは、鴨下環境大臣。

鴨下国務大臣 今、平成二十二年度に達成する、こういう見込みにつきまして御質問がありましたけれども、これは、自動車NOx・PM法の基本方針、平成十四年四月の閣議決定でありますけれども、平成二十二年度までに二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る大気環境基準をおおむね達成することを目標にしているわけであります。

 大気環境の状況は改善傾向にあり、今後も対策地域全体として改善が見込まれております。環境省において実施した将来予測によりますと、平成二十二年度に対策地域全体としては環境基準をおおむね達成できるというような見込みでございます。

 環境省として、環境基準の早期達成に向けまして、自動車排出ガスの単体規制の強化、自動車NOx・PM法の着実な実施、さらには低公害車の一層の導入等の対策を引き続き総合的に展開する、こういうようなことで大気環境の改善に全力を尽くしてまいりたいというふうに思っております。

末松委員 この大気汚染などについて、第一種地域というものの指定が解除されてから基本的に法律上はこの問題がない、こういう形にもなっているんですね。そういったところで、工場とかについてはかなりの程度の進展が見られたということでございますし、車についても、改造等によってかなり対策がとられてきて善処されておられるところはあるんですが、車の量も非常に多くなりまして、そういったところを全国的に見たら、まだまだちょっと深刻な状況があるんじゃないかと思います。

 そこは現状では、環境省は、特にさほど深刻なところではない、改善が見られて、基準値の達成状況としてはおおむね順調にいっているという今の大臣の判断が一つございましたけれども、全国的レベルで見てもそれはそういう状況なんですか。

竹本政府参考人 全国的に見て、NOx、SPMともに、先ほど大臣の方から答弁申し上げたとおり、全般として改善の傾向、ただし、大都市部の自動車交通が非常に集中するいわゆる局地と言われているところにつきましては、現状においてはまだ依然として今後の改善を必要とする部分がございます。

 そういう意味におきまして、先般の国会でも御審議いただきましてNOx・PM法の改正をしていただきまして、自動車が集中するところに重点的に対策ができるように、その施策を導入できるようにしたところでございます。

末松委員 昨年八月の東京大気汚染訴訟の和解を踏まえて、今、環境省としてどういう取り組みがさらになされていますか。

竹本政府参考人 和解条項で幾つか大きなポイントがございます。

 東京都の予防事業に充てるために、公害健康被害予防基金から東京都に六十億円を拠出するということを決定しているところでございますが、これの事務的な調整、円滑にできるような調整を現在進めております。

 そして、二点目でございますが、先ほど申し上げました環境対策、特に、自動車NOx・PM法を改正いたしましたが、これに基づく諸対策の推進、また単体規制では、ポスト新長期規制適合車の積極的な導入、さらには低公害車の導入、そしてエコドライブ等々、これらの環境対策を積極的に進めておるところでございます。

 加えまして、PM二・五、いわゆる微小粒子状物質の健康影響評価につきましても、鋭意検討を進めてきたところでございます。

 いずれにいたしましても、和解条項に示されました環境対策などを着実に実施してきているところでございます。

末松委員 予算的にはことしはどのぐらいなんですか、今るる御説明されましたけれども。

竹本政府参考人 詳しい資料は手元にございませんが、先ほどの六十億、これは予算ではございませんが、例えばそれ以外の対策について、低公害車の導入につきましては、補助金を一億三千万計上いたしておりまして、これを実際に活用する。そのほかにつきましてはちょっと手元に資料がございませんが、今申し上げたような一つの事例でございまして、低公害車、特にクリーンなディーゼル、新しい規制に適合したディーゼル車を積極的に導入していただこうということで、補助金を活用しておるところでございます。

末松委員 全体の大気汚染関係の予算の総額なんかも一応頭にちょっと入れておいてくださいよ。

 それと同時に、今、クリーンエネルギーというか、そういったエンジンの開発なんかは、経産省だけじゃなくて環境省としてもそこに対する補助金等はあるんですか。

竹本政府参考人 環境省の方で補助金を持っておりまして、これを積極的に活用しております。

 それから、クリーンディーゼルの導入につきましては、先生御指摘のとおり、関係各省、とりわけ経済産業省そして国土交通省と一緒になりまして推進できるように今取り組んでいるところでございます。

末松委員 もう少し聞きますけれども、経産省と、あるいは文科省もあるのかどうか知りませんけれども、あるいは環境省、そういったクリーンなエネルギーとか、特に例えばそういう技術開発、これはどういうデマケーションというか役割分担になっているんですか。

竹本政府参考人 基本的に、産業界の積極的な技術開発という点では経済産業省が中心になります。環境全般を改善していく立場から、やはり環境省も人ごとではなくて、経済産業省とも協力しながらクリーンディーゼルの開発にも協力をしている。

 具体的には、やはり産業界、経済界といいましょうか、民間の活力を活用するという点において経済産業省、それから国土交通省も交通関係で大変自動車業界との密接な関係もございます。そういう点で、三者が協力して、実は、先般一月に、クリーンディーゼルを積極的に開発しようという懇談会も設置されたところでございます。

 デマケといいますとそれぞれの役割はあるんですけれども、環境省としましては、全般的に環境対策、環境を改善するために、大きなフレームの中で積極的導入を図るべく要請をしていく、こういうことになろうかと思います。先ほどの補助金なども積極的に活用してまいりたいと考えております。

末松委員 これは一刻を争う状況でもございますから、ぜひよろしくお願いします。

 それから、この前、川崎市の方から、東京都で和解が成立したということで、東京都だけが大気汚染で苦しんできたわけじゃない、川崎市を含めほかのところもそういう東京都の例に倣って、自分たちとしても環境省に対してしかるべく救済措置等を求めていくということで、私ども民主党にも陳情がございました。それについてはどういうふうな御見解をお持ちですか。

鴨下国務大臣 東京大気汚染訴訟は、これは一連の大気汚染に係る訴訟の中で唯一残されたものでありまして、これはもう先生御存じのように、当時の安倍総理が、本訴訟の早期解決を図るという見地に立って東京都への拠出を政治的に決断された、こういう経緯でありますけれども、具体的には、国としてできる限りの対応として、医療費を直接負担するというようなことではなく、予防事業として拠出することにしたわけでございます。

 例えば川崎市等からも同様のことを要望されているということは私どもも承知しているわけでありますけれども、環境省では、公害健康被害予防基金の運用益を活用した予防事業に加えまして、平成二十年度において新たに自立支援型の健康被害予防事業を実施することにしておりまして、川崎市等の自治体におかれましてはこれらの事業を活用していただきたい、こういうところが基本的な考え方でございます。

末松委員 東京都以外で健康被害者が出ているわけですから、公平性の観点からも、少なくとも東京都の対応と同じようなレベルの救済ということを、これからもいろいろな調整あるいはアレンジも必要だと思うんですね。そこも踏まえながら、ぜひ強力にこの救済に対してもやっていっていただきたいと思います。

 ちょっと時間が押していますので、水俣病関係の健康被害についてお話を申し上げたいと思います。

 水俣病の関係で、新潟県の水俣病問題懇談会で、国の認定基準を超えて、新潟水俣病療養手当の創設など新潟県独自でいろいろな支援策を出してきている提言がまとめられたんですけれども、これに対する環境省の見方を教えてください。

鴨下国務大臣 三月二十一日に新潟水俣病問題に係る懇談会が最終提言書を取りまとめた、今先生がおっしゃることにつきましては私どもも承知しておりますが、この最終提言書は、懇談会が新潟県に対して、新潟水俣病対策について独自に取り組む施策を提言したものという認識でございます。私ども環境省がそれについて評価をする立場ではないというのが基本的なスタンスであります。

 ただ、環境省としましては、引き続き、与党のPT、それから関係県市と連携しながら、水俣病被害者の救済策の実現に向けてあらゆる努力をしてまいりたいというふうに考えております。

末松委員 私ども民主党も、今、水俣病のプロジェクトチームをつくって松野信夫参議院議員を座長にしてやっておりますし、この前水俣市にも出張しまして、いろいろな最新の実情を踏まえた形で、この救済策について、五月をめどに、水俣病の救済の法律案を国会に提出することを今予定しております。

 そういうところから見て思うには、認定基準、私どもはここを一番問題視しているところでございます。このかたくなな認定基準を何とか変えていかないといけないということを私どもは考えているわけでございます。

 その中で、調査義務ですね。環境省がいろいろな形で調査していくことがどうしても患者の救済にとって必要になるんですね。それは、いろいろと救済のために患者の皆さんが裁判をしても、結局、因果関係というところですべてはねられてしまう。つまり、調査をやるような余裕は患者さんにはありませんからね。それを、やはり国として、義務として調査を行うあるいは行わせる、そこが必要だと私どもは考えております。

 その観点から、今、私ども、関係の施設にも行っていろいろと問題意識をまたさらに深めてきたんですが、水俣病の二世、三世といった方々の調査、これはどういうふうになっているのか、教えてください。

鴨下国務大臣 二世、三世への影響についてどういうふうに考えるかということでございますけれども、水俣病そのものは、魚介類に蓄積された有機水銀を経口摂取することにより起こる神経系の疾患でありますから、有機水銀が、暴露を受けた母体から胎盤を介して胎児に移行する、こういうことで胎児性の水俣病が起こるということはそのとおりでございます。

 この胎児性水俣病につきましては、これまで、国立水俣病総合研究センターを含めまして、環境省においてその実態把握のための調査を行ってきているところであります。

 ただ、今先生御指摘の、この胎児性の水俣病患者を含めた水俣病患者の子や孫である二世及び三世は、有機水銀に直接暴露しているということはないわけでありまして、一般的な中毒学の考え方からすると、有機水銀の影響が生じるというようなことはないと考えられまして、二世、三世への影響につきましては、現在のところ調査をすることにはなっておりません。

末松委員 もう時間がないので、さっきの大気汚染の件も、別に大臣の答弁に納得したわけではなくて、これからこれらについて審議をやっていくということで、この二世、三世の問題も、これも今いろいろと世界的に問題にもなっている、調査をされているところもありますので、それを踏まえた形で、またここでそれを専門に議論させていただきたいと思います。

 きょうはちょっと時間がないので、あとは、最後になりましたけれども、私どもがプロジェクトチームで話をしていたときに、これは私の方からも強く問題提起をしたんですけれども、今現在、現地に行って、私の家内も水俣出身ということで、家内からもいろいろと話を聞き、家内の親戚にもちょっと会って話も聞いてみたんです。やはり現地は、非常に複雑、いまだにトラウマみたいな感じがありまして、水俣病と言われると、何か水俣の方みんなが水俣病であるかのような意識を持たれていて、非常にそこは心苦しい思いをされておられる方もありますね。例えば、昔ありました四日市ぜんそくなんというと、何か四日市の方がみんなぜんそくにかかっているかのような妙な誤解を生む危険性がある。

 そういった意味で、水俣病という言葉、地域の名前をつけるような、これはやはりよした方がいいんじゃないか。そういうことで、私なんかは、メチル水銀中毒症というか、そういう形の、法案にも、水俣病という言葉は民主党の法案には書かないというようなことを今検討しているところなんですけれども、そこは大臣としてどういうふうにお考えになられますか。

鴨下国務大臣 先生がおっしゃる趣旨は私も理解をいたしますが、水俣病という病名は、これは我が国の学会だけではなく国際学会においても認められて、文献上もそのように取り扱われているわけであります。またさらに、水俣病そのものは、魚介類への蓄積、その摂取というような過程において公害的要素を含んでいる、こういうようなことにおいて水俣病という病名の特異性が存在するんだろうと考えるわけでありまして、病名として水俣病というようなことを採用するのは適当だろうというふうに今のところ我々は考えているわけであります。

 今おっしゃったように、例えば水俣に住んでいらっしゃる方々が、心の中に、水俣病というような、ある種のトラウマというふうにおっしゃいましたけれども、そういういろいろな意味で大変なものを持っていらっしゃるということについては我々も十分配慮しなければいけないと思いますが、ただ、それをメチル水銀中毒と呼ぶかどうかということについては、多分これはいろいろな議論があると思いますので、御意見は御意見として受けとめさせていただきます。

末松委員 これで終わりにしますが、ぜひそういう細かい配慮も踏まえながら検討していっていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小島委員長 次に、田名部匡代君。

田名部委員 おはようございます。田名部匡代でございます。

 きょう、質問させていただくんですけれども、私、この法案を読ませていただいて、これまでの委員会の審議の中でも取り上げてこられたのかもしれないんですけれども、どうしても腑に落ちないという点がありまして、そもそも論なのかもしれないんですが、ちょっと大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

 言うまでもなく、昭和六十三年に地域の指定が解除されて、新たな申請、認定がされなくなったわけなんですけれども、この負担金について自動車重量税が充てられているということでありますけれども、これは本当に自動車ユーザーの皆さんの理解、納得が得られるのかなということで非常に私は疑問を感じておりました。

 これは制度ができたときには、その原因として、工場だとか自動車の排ガスが要因であろうということで負担金をそこから取るということにしたわけですけれども、現在ではその因果関係が明らかではないということで新たな認定はしない、認定はしないんだけれども負担金を取るところはそのままということになっているわけなんです。

 私は、単純に、例えばこれは全国の自動車ユーザー、自動車を保有している人たちから取るわけですから、今後公害における健康被害があった場合には皆さんからいただいたそのお金の中で皆さんに対してもしっかりとした救済、補償をしていきますよというならば、これは理解ができると思うんですけれども、この負担金のあり方について大臣の御見解をちょっとお聞かせいただけますでしょうか。

鴨下国務大臣 公健法に基づく公害健康被害補償制度については、民事賠償責任を踏まえまして、認定患者に対する補償給付等の費用を汚染原因者がその寄与に応じて負担する、こういうことが原則であります。

 したがいまして、大気汚染にかかわる、先生がおっしゃっていたいわゆる旧第一種地域におきましては、工場あるいは事業場とともに自動車も総体として大気汚染に対する寄与度が相当程度あった、こういうようなことでありまして、自動車に対して費用負担を求めるというようなことを決めたわけでありますけれども、その費用負担方式については、本制度発足時にもいろいろと議論され、いろいろと検討もされました。その結果、最終的には、自動車重量税が自動車の走行がもたらす諸社会的な費用に充てるために創設されたこと等を踏まえて、自動車重量税の一部を引き当て措置することになったというふうに私も認識しております。

 ですから、これはそれぞれ御意見があったんでしょうけれども、その中で自動車重量税が最もふさわしいのではないか、こういうような結論に至ったというふうに認識しております。

    〔委員長退席、西野委員長代理着席〕

田名部委員 苦肉の策なのかなというふうにも感じるわけなんですけれども、自動車重量税というのは保有しているだけで課せられる税金でありまして、例えば汚染物質を排出するという意味であれば、ほかに揮発油税だとかいろいろな議論もこれまでにもあったのかもしれないんですけれども、過去の被害に対する補償、救済ということに対して、きょう車を購入した人も自動車重量税を払って負担をしていくということなんだろうと思うんですね。

 やはりこういう機会に一度この負担について改めて見直すべきだったのではないかなというふうに思っておりますし、さらに言えば、工場、自動車だけではなくて、飛行機や船といったほかに汚染物質を排出していると思われるところに対しての負担については考慮なされなかったんでしょうか。

石塚政府参考人 移動発生源の負担のあり方につきましては、この制度が発足する際にさまざまな議論がございました。これは一年以上の長い議論がございまして、最終的に、先生が御指摘になられましたように苦肉の策といいますか、これしかないだろうということで自動車重量税に落ちついたという経緯がございます。

 それ以外の負担方式についてはどうかということも議論がなされました、航空機であるとか船舶であるとか。それについても確かに議論はあったのでございますが、排出量のトータルの量、総体量としては大変小さいものである、あくまで大きいのは固定発生源である工場と、そして移動発生源としては自動車だということで、審議会の中でもそういう結論に達しました。それで工場と自動車から徴収したというような経緯でございます。

 今回、この延長問題がある際に、中央環境審議会の環境保健部会というのを開催いたしまして、これはさまざまな関係者にもお集まりいただいております。そういうことでいろいろな立場から御議論いただいたのでございますが、これまで三十数年間にわたりましてこの方式が定着しているということ、それで特段これについて関係者の間で異論が出ていることもないということで、この方式を継続するということになったところでございます。

田名部委員 環境問題が我が国においても世界においても非常に重要な課題となっている中で、きのう御説明いただいたときも同じような、その制度をつくったときに一番汚染物質の排出が大きい二つに絞ったというような御説明をいただいたんですけれども、大きさだけでよかったんだろうか、汚染物質を排出しているところに対してはきっちりとその意識づけをしながら同じように負担をしていただくということの方が私はふさわしいんじゃないかなというふうに思うんですけれども、大臣はどんなふうにお考えですか。

鴨下国務大臣 汚染原因者が汚染への寄与度に応じて負担をするというような意味においては、やはり工場、事業場から出る汚染物質あるいは自動車の単体から出る排気ガス、こういうようなものが寄与度としては非常に高いというふうな認識です。

 先生おっしゃるように、航空機あるいは船舶、それから列車、電車、こういうようなものも全くゼロということではないんでしょうけれども、例えばぜんそく等の罹患に関して航空機からの排気ガスがどこまで寄与しているか、こういうような客観的な事実から見ると、工場、事業場、さらには自動車、こういうようなものがやはり適当なんだろうというふうに思います。

    〔西野委員長代理退席、委員長着席〕

田名部委員 冒頭申し上げたようにちょっと腑に落ちないなというふうに思うわけですけれども、自動車の保有台数が多い、少ないにかかわらず重量税でその負担金を賄っている。こういったことを、もう一度、負担金のあり方、公平性というものを機会を見て見直していただきたい、検討していただきたいなというふうに思います。

 また、こういった問題に関しては、環境に対する、また公害に対する国民の意識の向上というものも非常に重要になってくるんだと思います。今、環境再生保全機構においても公害健康被害予防事業を実施しているというふうに聞いておりますけれども、きのう私の見た資料の中では、その対象の地域が、旧第一種地域の四十一地域と、これに準ずる地域として定められた六地域だけ。特定の地域において、また健康被害のあったその地域の中で、健康相談だとか健診というものを行っていく、これも大切なことだと思うんですけれども、しかしながら、企業や国民全体に対してしっかりとした意識づけをしていくことも必要だと思うんです。

 これは環境省の方で、学校教育の中でとか、また企業に対して何らかのそういう意識づけというか意識の向上を図るような取り組みをしていらっしゃるんでしょうか。

石塚政府参考人 環境教育についてのお尋ねというふうに受けとめております。

 公害問題といいますのは、長い歴史もございますし、日本の高度成長に付随して発生したということでございます。これは先生御指摘のように、こういった公害の教訓というものは決して忘れるべきではないと思いますし、また、国内のみならず海外に対しても、特に発展途上国に対しても、こういう日本の経験というものは伝えていかなきゃならない、啓発をしていかなきゃならないというふうに考えております。

 具体的にどういうプログラムでということは今ここにちょっと資料がございませんけれども、あらゆる機会をとらまえまして、そうした啓発普及、環境に対する改善の重要さというものについては対応していきたいと考えております。

田名部委員 具体的な計画を立てることが非常に大事だと思いますし、これは文部科学省なりとも連携をとってしっかりと取り組んでいく必要があると思うんですけれども、大臣、いかがお考えですか。

鴨下国務大臣 今おっしゃるように、例えばぜんそくで苦しんでいらっしゃる方はその地域だけじゃありません。ですから、自動車を運転するとき、あるいは工場から煙を排出しているそれぞれ事業者、工場、こういうようなところがあまねくそういう意識を持っていただくということは重要だというふうに思います。

 加えて、特に呼吸器疾患等で悩んでいらっしゃる方々というのは日本全国どこにでもいらっしゃるわけですから、そういうような方々が、環境との関係、必ずしも因果関係が明確ではない場合も多いですけれども、少なくとも大気が汚れるというようなことが多分病気の増悪因子にはなるんだろうというふうに思っておりますので、そういうようなことを踏まえて、子供のころからあるいは地域社会の中で環境というようなことを意識して、なおかつ、環境負荷の少ないライフスタイルをしっかりと学んでもらう、こういうようなことは非常に重要だと思っております。

 そういうような意味で、いわゆる呼吸器疾患に限らず、勉強する機会を、我々も文科省あるいはそれぞれ地域社会とも連携をしながら、環境についてより意識を持っていただくために私としても先頭に立ってやってまいりたいというふうに思います。

田名部委員 ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 先ほど御答弁の中で諸外国に対してということがありましたけれども、今、中国の大気汚染が日本に与える影響というものが少し懸念されているところでありますが、そういった近隣諸国に対して具体的な取り組みがあれば教えていただきたいんですが、ごめんなさい、質問通告していないので、わかる範囲で結構です。

鴨下国務大臣 今、中国の汚染、特にオキシダント等の汚染について、これは国境を越えて移動しているのではないか、こういうような懸念があります。特に九州の長崎等で、もともと大気汚染がそんなに多くないところで光化学スモッグの被害が出るというようなこともありまして、我々としては、中国だけではないのかもわかりませんけれども、国境を越えて汚染物質が広がることについて、昨年、日中間の環境大臣会合がございまして、その中でもぜひ共同して取り組もうと。こういうようなことについては、我々みんなで議論したところであります。

 特に中国に関して言えば、前に二国間で、コベネフィットアプローチといいまして、大気汚染等に取り組んでいただく、その援助を日本がすることによって、プラスアルファ、地球温暖化対策にも資する、こういうようなことで覚書を取り交わしたところでありまして、日中でより緊密に連携をして、国境を越えて移動する汚染物質についてどう取り組むか、こういうようなことについてはしっかりとやってまいりたいというふうに思います。

田名部委員 ぜひ諸外国の、他国の取り組みがどういう状況になっているのかという情報交換もしっかりしていただきながら、世界全体でこの環境問題に取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、先ほど低公害車の話が末松先生の御質問の中にもありましたけれども、環境負荷の少ない低公害車の導入の促進、これの目標設定とかというのはあったんでしょうか。

竹本政府参考人 政府におきましては、関係省庁、具体的には経済産業省、国土交通省、そして我々環境省、三省庁で合同いたしましてこの会議を設けておりまして、平成十三年に低公害車開発普及アクションプランというものをつくっております。目標は、一千万台の低公害車を緊急に、早急に導入しようということを目標として掲げております。

田名部委員 目標達成率はどのぐらいでしょうか。

竹本政府参考人 この目標に対しまして、私ども、あらゆる施策を動員いたしまして、結果的に、現在、既にこの目標を達成しております。具体的には、平成十八年度末で一千四百四十万台の普及を見ております。

 ただ、この目標達成に甘んじることなく、今後とも、積極的に低公害車の普及をさらに加速化するように頑張っていきたいと思っているところでございます。

田名部委員 十九年度版の環境・循環型社会白書、これは環境省がお出しになっているもので、その中にも「低公害車の普及促進」という項目があります。この低公害車に関しては税金の軽減措置がとられてきたわけですけれども、ことしの三月三十一日でそれが打ち切られるというか、これは何で軽減措置をおやめになるのか、理由を教えていただけますでしょうか。

竹本政府参考人 事実関係を申し上げますと、税制優遇措置、自動車税のグリーン化、それから低公害車に係る自動車取得税の軽減措置は、この三月で切れることなく、引き続きこの税制優遇がなされるということでございます。

田名部委員 わかりました。ことしの三月三十一日で切れるのかなというふうに私は理解していたものですから、税金が安いから低公害車を買おうというユーザーは多いと思うので、ぜひ打ち切ることなく継続をして普及に努めていただきたいというふうに思います。

 次に、この法律の中で、冒頭にも申し上げましたように新たな認定はしないということになっているんですけれども、今、いろいろ調査を環境省の中でもされていると思うんですが、平成二十二年にその調査結果が出されるということですけれども、その平成二十二年にいろいろな調査の結果が出されたときに、新たに因果関係などが出てきた場合、認定をしなければならない、されるべき方々が出てくる可能性というのはあると思うんですけれども、そういったところはどのようにお考えになっているのでしょうか。

石塚政府参考人 今お尋ねの平成二十二年に結論が出る調査といいますのは、通称「そらプロジェクト」と呼んでおります局地的な大気汚染の状況調査というものでございまして、これは平成十七年度から逐次、学童でありますとか幼児、それから成人ということで、十七年、十八年、十九年とその調査規模を拡大しながら、幹線道路沿いの住民の方の健康状態と大気汚染の状況というものを把握するための調査でございます。

 この調査の目的としましては、幹線道路沿いの主に自動車の排ガスによります大気汚染の状況と呼吸器疾患がどういう関係にあるのかということを明らかにするための調査でございます。これは平成二十二年度に取りまとめを行うという予定になっております。

 この結果がどのようなものになるかというのはまだ予測できないところでございますので、その結果によって今後の公健法のあり方をどうするかということについては、直ちに、まだ申し上げられる段階ではございません。私どもとしては、そうした新しい患者さん、特に呼吸器系の患者さんが発生することがないように、大気汚染の状況の改善というものを進めていくことについてさらなる努力を進めていきたいと考えております。

田名部委員 二十二年に調査の結果が出るわけですから、今回の法案では十年間の延長ということをうたって、附帯決議で五年以内の見直しとなるようでありますけれども、であれば、私は二十二年に一度見直しをするべきじゃないかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

鴨下国務大臣 見直しにつきましては、逐次、いろいろと状況の変化があったらその時々で考えるべきだというふうなことについては、先生おっしゃるとおりであります。

 ただ、今回の延長につきましては、これは制度としておおむね定着しているというようなこともありますけれども、患者団体からは恒久化をしてくれというようなこともありまして、こういうようなことを踏まえてバランスをとらないといけないというふうに思っております。

 本措置が自動車重量税の存在を前提としていることでありますので、同税についての見直しが行われる際には本措置についてもあわせて再検討することでありますので、例えば自動車重量税そのものがどういう形で推移していくか、こういうようなこととある意味で並行して考えるべき部分もあるんだろうというふうに考えます。

田名部委員 自動車重量税を広く国民からいただいた中で補償、救済を行っているわけですから、私は、もう認定はしないんだ、もう申請は受け付けないんだという姿勢ではなくて、これまでの被害者の方々に対しての救済というのは当然行っていくべきだと思いますけれども、今後新たに健康被害が出たときに、しっかりとそれを受け入れて救済をしていくということが必要なんだろうというふうに思っているんです。

 それでいえば、東京大気汚染訴訟に伴って、予防基金から六十億円を拠出したということがありました。これに関する環境省さんのコメントは、この件は十一年にわたる裁判であることや総理の決断によることなど特別な事情があったから六十億円を拠出したんだというふうに話しておられるんですね。さらにその後に、今後このような高いハードルを満たす訴訟が出てくる可能性は低く、予防基金の追加的な取り崩しはまず考えられないというふうに話しておられるんです。

 総理の決断以外に特別な事情、特別な事情というのはどういうことなのかわかりませんけれども、今後、こういう取り崩しはまず考えられない、考えられないとおっしゃっている根拠も私にはわかりませんので、もしその根拠があるなら教えていただきたい。

 逆に、長い裁判にならなければこういう救済がされないとなれば、被害者の方々というのは日々の生活の中で非常に苦しんでおられる、まさに命のかかった問題でもあるというふうに思うのですが、こういう長い裁判だからとか特別な事情があったからということではなく、幅広く救済をしていく必要があると思いますし、先ほど申し上げたように、二十二年、因果関係があるかないかによっては新たに健康被害者が出てくる可能性というものは私は十二分にあるんだろうというふうに思っているんですけれども、その辺についていかがお考えでしょうか。

石塚政府参考人 まず、再生保全機構における基金の取り崩しがなぜできないかというお尋ねでございますけれども、東京都にこの六十億を拠出した場合は、繰り返しになりますけれども、当時の安倍総理の政治的決断というふうに受けとめております。

 では、今後その取り崩しがなぜできないかということでございますけれども、もともと全体が五百億の基金でございまして、これは指定地域を昭和六十三年に解除を行ったときに、今後、主に旧第一種地域の方々、患者さんの病状悪化というものを予防するという目的で集められた基金でございます。基金でありますので、その果実をもって予防事業というものをこれまで運営してきたところでございます。ですから、基金の取り崩しというものを第二、第三と行っていきますと、当然、基金が減れば果実も減る、それによって広範に行っている予防事業の妨げになるということもございます。

 ちなみに、六十億を取り崩した部分につきましては、それを補てんする観点で新年度、平成二十年度予算で二億円の補助金というものを予算要求し、これは政府の予算案の中に盛り込まれているということでございます。

 今後も、患者さんの病状悪化というものを予防していくという観点で、この予防事業についてはさらに進めていきたいと思います。

田名部委員 予防基金をなぜ取り崩せないかということではなくて、新たにしっかりと認定をしていく体制をつくるべきじゃないかということを申し上げたいわけでありまして、例えば、これまで各地域において大気汚染の訴訟が行われてきました。そういった中で、同じような環境下にあって、同じような疾病、体の健康状態の悪化というものがあって、しかし、片や認定をされて、片や同じであるにもかかわらず認定をされない人たちもいらっしゃるんじゃないかと思うのですが、そういった現状把握はされておりますか。

石塚政府参考人 新たに新規患者の認定ができないかというお尋ねでございます。

 これは、旧第一種地域の指定解除によりまして新しい患者さんの認定はできないという状況になったわけでございますが、当時のいきさつとしましては、大気汚染の状況が大幅に改善されたということをもって、民事責任に基づく救済、要するに汚染原因者に民事上の負担を負わせて救済を図るという公健法のシステムによって新規の患者さんの認定を行っていくというこの制度は、大気汚染の大幅な改善によって非常にそこが難しくなったということで、当時の審議会でかなりの議論が行われた結果、そう決定されたところでございます。

 では、今後どうなんだということでございますけれども、今後につきましては、平成八年以降、本格的にサーベイランス事業というものを実施いたしまして、大気汚染が六十三年以降どういうふうに推移しているのか、また、それとぜんそくの患者さんの発生との因果関係はどうなっているのかといったような調査を進めておるところでございますが、現在まで、この調査、サーベイランス事業でございますが、その結果に基づくところによりますと、例えば大気汚染濃度の高いところで患者さんの有症率あるいは発病率が高いというようなデータは得られておりません。

 今後どうなっていくかということについては全くわかりませんが、こうした調査というものを継続的に進めながら、こういった再指定が本当に必要なのかどうかということについては科学的にまた議論していきたいというふうに考えております。

田名部委員 もう時間が来たので終わりますけれども、ぜひとも、認定をされた方、同じような健康被害があるのに認定をされていない方、こういった人たちがどのぐらいいらっしゃるのか、そういう実態調査もしていただきたいというふうに思います。

 この法律ができたとき、制定当時の考え方として、公害問題、健康被害との因果関係の究明には相当の時間もかかるということでありますし、被害者の方々の健康状態がどんどん悪化していく、生活がどうなっていくのかわからないというようないろいろな問題があってこの法律ができたというふうに私は認識をしておりますけれども、民主党は新たに取り組みをしているところでありますが、ぜひとも幅広い健康被害の方々の救済、迅速な原因究明と救済というものを、しっかりと新たに法律をつくるなり、この中で枠を広げていくなりしなければならないというふうに思います。

 最後に、そのことに関して大臣から一言いただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

鴨下国務大臣 汚染者がいて、それの被害をこうむる、こういうようなことについては時代が変わってもあり得るわけでありますから、特に呼吸器疾患はいろいろな原因でふえていることもあって、今先生おっしゃるようなことも十分に配慮しながら、もし実際に健康被害に遭う方がさらにまた出てくるようなことがあってはならないわけでありますから、しっかりとモニターをして、しかも因果関係をきちんと科学的に究明する、こういうようなことについては環境省としてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

田名部委員 ぜひともスピード感を持って取り組んでいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小島委員長 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。

 きょうは、鴨下環境大臣にイタイイタイ病の政治的解決のお願いをしたいと思っています。

 今、自民党の皆さん、与党の皆さんも含めて、水俣病、肝炎は政治的解決に導いてどんどん前へ進んでいますが、もう一つの大きな課題であるイタイイタイ病は、まだ政治的解決の道筋が立っていません、終わった課題ではありません。今でも、どんどんと行政に認定をお願いしながらも不認定、却下される。そして、不服審査をしてもまた却下されるという状態にあります。なぜこの問題がこうやって取り残されるのか。

 公害問題はすべて同じような経過をたどります。それは、行政がそのまま裁判官も務めるのと同じ状態にあるということです。野球の試合で一方のチームの監督が審判も兼ねれば当然不公平になるのと同じように、この公害の問題も行政側が認定審査会をやるため、どうしても次から次へと不認定にされていく。だから、水俣病にしても肝炎にしても政治的解決をしたのと同じように、イタイイタイ病も今こそ政治的解決に導いていただければ、鴨下環境大臣の株が、評価がぐっと上がるものと私は確信をしています。

 その上で、認定のときに却下されている具体的な事例についてお話をしたいと思うんです。

 環境庁の通達に基づいて不認定にされているケースが非常に多いんですが、その通達の中身では「腸骨を基準として、」という文言があります。御存じのとおり、イタイイタイ病、具体的に言えば骨軟化症になった場合は、骨のまだ石灰化ができていない類骨という部分が非常にふえる。そして、そこを染めれば、類骨があるかどうかで骨軟化症かどうかを判断するわけなんですが、腸骨に類骨が発生しているかどうかを今基準としています。

 しかし、腸骨になくても、例えば肋骨に類骨がある場合でも、当然骨軟化症と認定をしてもいいと思うんですが、大臣はどう思うでしょうか。

鴨下国務大臣 今お話しになった認定要件の一つであります骨軟化症の有無の判定のために、骨を採取して検査を行う場合があるわけでありますけれども、特に、例えば骨の生検をするときに一番採取しやすいところということで腸骨ということを申し上げているわけでありまして、例えば肋骨あるいは骨所見の発現しやすい部分については、検査を行って同様の変化があればそれは一つの所見として認めるわけであります。ただ、技術的に言って、特に腸骨というのが一番生検をしやすい場所ということは間違いないわけでありまして、そういうようなことから腸骨ということを一つ前面に申し上げているわけでございます。

村井委員 ということは、今の大臣の答弁は、「腸骨を基準として、」というふうにこの通達に書いてあるんですが、腸骨以外のところでも発見されれば当然骨軟化症と認定されることがあるという解釈でよろしいですね。

鴨下国務大臣 ただ、例えば肋骨だとかほかのところの骨を生前に検査するというのはなかなか技術的に難しいです。ですから、腸骨が一番現実的で具体的だというようなことであります。

 ほかのところから採取するのができればいいんですけれども、例えば肋骨からとるというような場合には、これは亡くなられた後に解剖所見としてあるかどうか、こういうようなことについては、もし所見として認められれば、それは一つの重要な判断になるというふうに思います。

村井委員 ありがとうございます。

 こういうふうに環境庁の通達を解釈して大臣の文言をいただいたというのは、今後の認定審査に大きな影響を与えていただけるというふうに思っています。

 そしてもう一つは、骨の中には皮質と髄質、海綿骨とも言うそうですが、こういう部分があるわけですが、このどちらに類骨がついていても、当然、機械的な判断をするわけではなく総合的に類骨が多数認められる場合は骨軟化症と認定するということでよろしいでしょうか、大臣。

鴨下国務大臣 イタイイタイ病の患者認定は、富山県に置かれました医学の専門家により構成される認定審査会で審査を行って認定される、こういうようなことであります。

 この認定審査会における医学的審査に当たりましては、認定要件の一つである骨軟化症の有無の判定のため骨を採取して検査を行うこともあるわけでありますけれども、この場合には、骨の特定の部位の所見のみで判断を行うわけではなく、医学的知見に基づき、必要に応じて骨の皮質の部分や血液検査等の他の所見とも組み合わせて個別の事例ごとに総合的に判断をする、こういうようなことでありますので、先生おっしゃることについては、私たちもそういうふうに考えているということでございます。

村井委員 ありがとうございます。

 さて、そうやってどんどん通達の文の解釈を明示していただくことによって、ますます認定審査会はやりやすくなるし通りやすくなるんですが、この認定審査会の具体的な人員についても私はちょっとお話ししたいと思うんです。具体的に、主治医の人たちは認定審査会に入っているでしょうか。何人入っているでしょうか。

 なぜそういうことを言うかといえば、ほとんどの人たちは、病院に行って、主治医さんから、あなたは骨軟化症です、つまりイタイイタイ病ですというふうに病院から言われて申請をしているのに、申請をしてみるとほとんど却下されている。つまり、主治医の人たちと認定審査会との間に大きなずれがあるんです。

 私は、主治医の人たちも認定審査会に入っていくべきだと思うんですが、実際、今認定審査会に何人主治医が入っているでしょうか。お願いします。

石塚政府参考人 お答えいたします。

 環境省といたしまして、富山県の設置した認定審査会の委員のイタイイタイ病に関する診療経験等については残念ながら把握できていないというところでございます。

 現在、カドミ暴露を受けました方の高齢化または骨軟化症の治療法の発達によりまして、イタイイタイ病の新たな患者さんは数が極めて少なくなっているという現状から、イタイイタイ病患者の診療経験のある医師のみならず、内科、整形外科、病理学の各分野の専門家も交えて審査会を構成するというふうに聞いております。

村井委員 各分野の専門家はいいんですが、具体的に診た主治医も審査会の一人に入れていくべきだと思うんですが、その点についてはどうお考えでしょうか。

石塚政府参考人 さまざまな御意見もあろうかと思うのでありますが、主治医の場合には、その診断をつけた当事者でございますので、客観的、第三者的な認定という業務につきましては、いろいろとまた議論もあろうかというふうに考えております。

村井委員 大臣にもぜひ聞いていただきたいんですが、なぜ、こうやって主治医の人たちが骨軟化症と認めて申請しても、認定審査会が却下していっているのか。ここの大きなずれについて、やはり人員の見直しなども一度考えていただければと思います。

 次に、もう一つは、次から次へと却下されている事例の中で、納得をせずに当然不服審査をしている人たちがたくさんいます。この不服審査の理由の一つとして、却下された場合でも、申請者に対してその議事録を公開していない、そして却下した理由をちゃんと開示していないという問題があります。もし本当に却下すべき場合でも、きちんと理由を開示したり議事録を公開するべきだと思うんですが、大臣はどう考えますでしょうか。

鴨下国務大臣 富山県の認定審査会においては、審査会の委員が自由闊達に意見を述べ合う、そして場合によると否定的なことも言わざるを得ないこともあるんだろうと思います。そういうようなことを妨げる懸念があったということで、これまで議事録そのものを作成してこなかったというようなことがあるようであります。

 ただ、今御指摘のように説明責任を果たすというような意味と、できるだけ議論の内容については透明化を図るというようなことで、今般、議事の概要の作成の検討を始めたと聞いております。

 したがいまして、一人一人の委員がどういう発言をしたかというのをすべてつまびらかにするのが果たして適切かどうかという議論はあると思いますので、議事の全体的な流れについてわかるような取り組みは環境省としても重要なことだというふうに思っておりますので、我々としては、今現在はそういった考えで進めたいというふうに思います。

村井委員 ありがとうございます。

 そうやって環境省からも、議事の概要でも結構です、却下した場合でも、なぜ却下したのかをちゃんと言うことが患者や遺族に対しての説明責任として必要だと思うのです。今大臣がそう言っていただいたことをきちんと認定審査会の皆さんにも伝えさせていただきたい、そして環境省からも伝えていただきたいと思っています。

 さて、主治医の人たちが骨軟化症じゃないかとやって、もしくは弁護団が骨軟化症じゃないかと思っているものを次から次へと却下していく中で、どうしても私はこの不服審査の部分についても一つ問題点を提起したいと思うんです。

 行政から次から次へと却下されて、不服審査をやる、その不服審査の相手が第三者機関じゃないということです。上級の行政庁である環境省が所管しているところで今不服審査をやっているということは、やはりそれは第三者機関じゃないという意味で公正な審理ができていないんじゃないかと思うんです。

 特に、今のこの不服審査をやっている機関については、担当者が六名いて、常勤者が四名、その常勤者四名のうち半分がいわゆる元役人の天下り。こういうことで公正な審理ができるかどうか、そして、公正な審理をするために大臣はどういうふうに改善をしていかなければならないと考えているかについてお答えください。

鴨下国務大臣 今先生おっしゃったように、委員は両院の同意を得て環境大臣が任命をする、委員の数は六名で、常勤が四名というようなことでありますけれども、不服審査そのものについては、都道府県知事が行った公健法の認定、給付に関する不服審査については、公害健康被害補償不服審査会において取り扱われているわけでありますけれども、これは独立性を確保された第三者機関であって、冒頭申し上げましたように国会の同意によって選ばれた委員の合議によって公正な審査が行われている、こういうようなことでございますので、今現在、私どもは、それは極めて客観的、科学的な知見に基づいて公平に審査が行われているものと認識しております。

村井委員 公平な審査であるとしたならば、まず認定審査会で却下される、それから不服審査会へ行く、不服審査会でも却下される、そうしたら司法へ行ってしまう。本来は司法に行くことがないように不服審査会があるはずなのに、行政側を相手にしてやっている不服審査会の中身が、元行政マンが常勤者の半分。そこでもう一回却下されたら、どうしてもやはり司法の方へ訴訟してしまう。私は、ここに非常に無理、信頼の欠如というものがあるんじゃないかなと思っています。また、今後の人選においては、厳格に対応していただければと希望だけ申し上げさせていただきます。

 次に、カドミウム腎症の救済問題についてお話をしたいと思うんです。

 大臣はお医者さんですから当然私以上に詳しいと思うんですが、カドミウムを摂取したからイタイイタイ病で骨が折れるわけではありません。カドミウムを摂取して障害が出てくるのは、尿細管という腎臓の中の一部に障害が出てくる、腎臓がおかしくなってから骨がもろくなっていくということが言われているわけですが、では、イタイイタイ病という骨そのものが障害を帯びる前に、腎臓にβ2マイクログロブリンなどが異常値を示され、そして尿毒症や腎臓病などに発展したら、骨がイタイイタイ病、骨軟化症などにならなくても公害病と認定するべきだと思うんですが、大臣はどうお考えでしょうか。

鴨下国務大臣 カドミウムの汚染地域では、腎臓の近位の尿細管の機能異常により、今先生御指摘になったβ2マイクログロブリン等の低分子のたんぱく質の値が尿中に高値を示すケースが多いということは認識しています。それは、例えばカドミウム汚染の早期な発見には非常に有効なことだろうというふうに思います。

 ただ、尿中の低分子たんぱく質が高値であることはイタイイタイ病に特異的なことではないわけで、他の例えば薬物等の腎障害でもそういうようなたんぱくが出てくることもあるわけでありますから、これをもってすべてがイタイイタイ病を発症することにはならないんだろうというふうに思っておりまして、重要なメルクマールではありますけれども、それを例えば補償、救済の対象とすることについては、特異的でないというようなことにおいて必ずしも適切ではないのではないかというふうに私は考えます。

村井委員 先日、環境省からいただいた研究レポートというのがあります。これは徳島大学の先生が出されたものなんですが、環境カドミウム暴露による尿細管機能の低下は死亡率の上昇と関連しているという資料をいただきました。がんの罹患率の上昇は見られなかったというのとセットで書いてあるわけですが、少なくてもカドミウム暴露による尿細管機能の低下があれば死亡率が上昇しているというのは環境省としても認められますでしょうか、どうでしょうか。

石塚政府参考人 データを解析する上でそういった結果が出る場合があることは承知しております。

村井委員 八九年に出された環境省のレポートにおいても、カドミウム腎症は一定のレベルに達すると自分たちで治っていかず不可逆的であるということ、それから、腎障害というのはカドミウム暴露が終わった後でも進行するというレポートがありますが、それも認められますでしょうか、どうでしょうか。

石塚政府参考人 そうした知見があるということについては、あり得るものと考えております。

 ただ、腎不全に至る場合にはさまざまな要因がございます。例えば高齢化であるとか、ほかの要因も、合併症、ほかの病気を持っていることによる影響というものもあり得るというふうには考えております。

村井委員 もちろん、カドミウム以外のもので腎不全に陥るケースがあるというのは十分認めるんですが、この環境省がやられた八九年の「環境保健レポート」を見る限りでは、一万二千五百五十九人に受診してもらい、二百二人に腎障害が認められた、しかしカドミウム非汚染地域ではゼロ人だったということであるのですが、少なくても尿細管障害になる可能性はカドミウム汚染地域であれば数千倍になるはずなんです、もしくは何百倍にはなるはずなんですが、当然、カドミウムと尿細管障害の因果関係は、一〇〇%ではないにしても、因果関係があるというふうに認められますよね。

石塚政府参考人 それは疫学上のリスクの評価であるというふうに認識いたします。他の地域と比べてそういったリスクの程度が上回っているということについては認識しております。

村井委員 ぜひそういった意味で、イタイイタイ病、骨軟化症にまで発展しなくても、腎臓に尿細管障害が起これば死亡率が上がったり、さまざまなリスクがあるということを考えて、そこも大臣の政治的解決の決断があれば、大臣の評価がずっと上がるんじゃないかなと思って期待をしています。

 その上でもう一つお話をしたいのが、今、このイタイイタイ病の過去の資料、これは私たちにとっての大きな財産です。人類が今までやってきた工業発展の歴史の中で、なるほど、こういう失敗もしたんだ、だからこそ今後は解決をしていかなければならない、そうならないように予防しなければならないという教訓を後世に向かって残していかなければなりません。

 今、例えば水俣などは公的なお金も入れて資料館をつくっていますが、実は富山は清流会館という、民間の人たちが、被害者の人たちが賠償金でつくった資料館があるだけなんです。きちんと後世に向かってこういった資料を蓄積し、今後発生させないというふうに誓っていくためにこそ、公的な資金も注入し、資料館づくりや資料確保などを進めるべきだと思うんですが、大臣はどうお考えでしょうか。

鴨下国務大臣 環境省としては、イタイイタイ病に関する資料の保存、活用というようなことについては、過去の大変痛ましい被害を私たちは忘れないというような意味においては、これは重要なことだというふうに思います。特に患者の皆様の貴重な臨床記録の保存、あるいはこれを活用して次の調査研究に資する、こういうようなことについてはしっかりと取り組んできたところであります。

 また、汚染地域の住民の方に対して健診を実施して保健指導につなげるなど、この資料を一つの糧に住民の健康管理を推進していくことも重要だと思います。

 環境省としては、イタイイタイ病に関する取り組みの推進に当たっては、これは富山県を初めとする関係者と十分に連携を図って進めているところでありますが、ただ、新たに資料館を建設することについては、ハードの面、乗り越えないといけないこともいろいろあるんだろうというふうに思います。そういうような趣旨で、現時点では、我々は、調査研究の充実や健診の適切な実施をより手厚くすることが重要と考えております。

村井委員 今海外でも、ほかの国ではカドミウム汚染、カドミウム鉱山などの問題が出ています。そういった人たちが日本の行政に来るか。実は、行政ではそういう公開をやっていません、過去の賠償金で民間の人たちがつくったところを見に来るという状態になっています。ちょっとやはりそこは私は違和感があると思っています。

 ハードの面にするかどうかはともかくとして、そういった資料の保管や開示など、過去の賠償金も延々と続くわけではありません、そういった意味で、きちんと環境省なりに資料の保管などについての支援策を検討していただけますでしょうか、どうでしょうか。

石塚政府参考人 大臣の方から御答弁申し上げましたように、さまざまな課題がまだ残っていようかというふうに考えております。まずは、住民の方々の健康をどうするか、そして今苦しんでおられる方々の救済をどうするかということもあります。

 資料館の問題につきましては、水俣病についての例をお話しいただきましたように、地元の方がどう考えるか、特に地元自治体の方がどのように受けとめているのかということについては、県の見解というものも伺っていきたいというふうに思います。

村井委員 最後に大臣の決意を聞きたいと思うんです。

 ごらんのとおり、水俣病などは政治決着を目指してどんどん前向きに進めたこと、多くの国民から賛同の声、もちろんそうじゃない声も一部ありましたが、いろいろな注目が集まっています。そして、肝炎についても、昨年あったとおり、政治解決を目指したことによって一時的にしろ支持率がぐっと上がりました。

 そういった中で、イタイイタイ病についても大臣が政治的解決を目指して新たな取り組みをされるつもりはあるのか、その上できちんと調査研究を進めていただきたいと思うんです。特にそういった決意についてお聞きしたいと思います。

鴨下国務大臣 今、村井議員からも、「イタイイタイ病の未解決論点」というようなことで資料をいただいています。そういう中で、被害に遭った方々あるいは今現に苦しんでいらっしゃる方々、さらには、もしかすると将来に発症する可能性のある方、それぞれおいでになるんだろうというふうに思います。

 そういう中で、環境省としては、公害健康被害をいかに未然に防ぐか、あるいは実際に被害に遭った方々に対してどういった形で国が救済策をやれるのか、こういうようなことについて常にしっかりと目を光らせて対応してまいりたいというふうに思っております。

 いろいろと問題について御意見をいただきましたので、これはこれとして受けとめさせていただいて、イタイイタイ病に限らずに、公害健康被害に遭われた方々にしっかりと環境省として対応をしたいというふうに考えます。

村井委員 水俣病などが終わっていないのと同じように、イタイイタイ病も決して終わっていません。次から次へと認定が却下されるという今の現状に対して、今後しっかりと大臣が取り組んでいただき、注目していただければと思います。

 ありがとうございました。

小島委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党、吉田泉です。

 私からも公害健康被害の補償等に関する法律の一部改正案について質問をいたします。よろしくお願いします。

 この法律は昭和四十八年に制定されたわけですが、それ以来、大気汚染の原因者は工場と自動車の二つであるというふうに考えて、この二つに健康被害に関する費用負担を課してきたわけであります。そのうちの自動車の分について、もう三十年余り、自動車重量税の暫定税率が延長されるたびに、こちらの法律もそれに合わせて延長してきたという経過がございます。

 しかしながら、今回は新しい事態を迎えております。すなわち、きょうは三月二十五日、もう年度末まで一週間もありませんが、御存じのように、暫定税率延長の方の論議がはかどっていない、年度内成立は大変微妙だ、こういう状況になっているわけです。

 そこで、最初の質問は、暫定税率の方、つまり租税特別法の改正がもし年度内に成立しなかった場合、もしくは、今後修正協議等が入って暫定税率を縮小しようとかやめようとか、さらには一般財源化しよう、こういうふうになった場合、公健法にどういう影響があるのか、まずお伺いします。

石塚政府参考人 お答えいたします。

 現行の措置につきましては、公健法上平成十九年度までとされておりますために、仮に本法案が年度内に成立しなかったという場合には、補償給付の財源が不安定な状態に置かれまして、患者さん方が安心して療養を受けることができなくなるという事態に陥ります。

 また、事業者、これは工場等でございますが、そこから毎年四月一日に徴収を開始しております汚染負荷量賦課金の賦課料率を決定することができない、そのために徴収を開始することができないという状況になります。

 したがいまして、ぜひとも年度内に公健法成立というものをお願いしたいと考えているところでございます。

 なお、暫定税率の問題についてのお尋ねでございますけれども、公健法の規定上は、この引き当てというものは、単に自動車重量税の税収の一部から行うこととされているところでございます。暫定税率を含めました自動車重量税の税収が十分に確保されるということが、この自動車重量税引き当て方式によります補償給付の安定的な実施にも資するものと考えております。

吉田(泉)委員 公健法が成立しなければ四月一日からの支払いは大変ですけれども、租特法の方、これについては、結論がよくわかりませんでしたけれども、直接この法律に影響するものではなかろうというふうに今解釈したところでございます。

 今まで十回ほど延長をされてきたわけですが、今までは二年ないし三年、せいぜい五年、こういう延長を繰り返してきたわけであります。ところが今回は、租特法の暫定税率延長案が十年ということになったせいか、こちらも足並みをそろえて十年延長という案になっているわけであります。

 ただし、聞いたところによりますと、一番若い認定者の方、まだ二十歳という方がおられると。ということは、この救済制度は、場合によっては五十年、六十年、これからも続く可能性がある。今まで三十年続いてきたわけですよね。そうすると、百年近い長年にわたる救済制度になる可能性が大いにあるわけでございます。十年とか五年とかいうんじゃなくて、先ほどもちょっと出ましたけれども、恒久化できないものでしょうか。

鴨下国務大臣 環境省におきましても、本措置は、既に制度創設以来三十年以上たっているということもありまして、制度としてはこれは定着をしている、こういうような認識でございます。加えまして、患者団体からも恒久化をぜひしてもらいたい、こういうような要望を私も直接承りました。

 ただ、本措置は、これは自動車重量税の存在を前提としておりますから、同税について見直しが行われる際には、本措置についてもあわせて再検討する、こういう可能性もありますから、従来より時限措置とされているものであります。

 今般の改正案では、今申し上げましたような状況を踏まえまして、他法における時限的措置を考慮して、延長年限をできるだけ長くというようなことで、十年ということにしたわけでございます。

吉田(泉)委員 今回の改正案の一番のポイントが財源のあり方ということですので、また後ほど改めてお伺いしたいと思います。

 次に、もう一つの負担者、つまり工場等の問題について伺いたいと思います。

 三十年前に法律ができたときに、工場と自動車の負担の割合は八対二だということになりました。その根拠としては、昭和四十八年から六十一年までの十四年間、工場それから自動車、それぞれのNOx及びSOxの排出量を測定して、それを単純合計した。そうしたところ、大体八対二ということになったので、負担もそうしたという経緯がございます。

 そこで、まず、その根拠とされたNOxそしてSOx、それぞれの物質と健康被害との因果関係をどこまで解析、解明されたのか、お伺いします。

石塚政府参考人 お答えします。

 昭和四十九年十一月の中央公害対策審議会、これは現在の中央環境審議会の前身でございますけれども、この審議会答申によりますと、大気の汚染の指標として使われる硫黄酸化物、窒素酸化物、浮遊粒子状物質のうち、硫黄酸化物についてはかなり以前から広く測定されてきておりまして、健康被害との関連につきましても、実験的、疫学的に相当明らかにされているということでございました。

 一方、窒素酸化物それから浮遊粒子状物質につきましては、健康影響があるということは知られておりましたけれども、十分に研究がされていないということ等の理由から、大気汚染の健康影響というものは、昭和四十八年当時、硫黄酸化物で代表された大気の汚染の程度というものによって示すということとされております。あくまでこれは指標として硫黄酸化物を代表させたということでございます。

 昭和四十四年、四十五年ころまでの疫学的な調査報告に基づきまして、大気汚染の影響による健康被害の程度というものを区分することとされ、自然有症率、これは環境が大変自然に近い、汚染のない状況での患者さんの発生率、有症率というものを標準として、おおむね二、三倍以上の有症率が説明し得るかどうかなど、有症率の程度と大気の汚染の程度との関係というものを検討することによりまして第一種地域の指定がなされたということでございます。

 しかしながら、昭和六十三年の第一種地域指定の解除以降、現在に至るまで、大気の汚染の程度につきましては著しく改善してきているということでございます。

 現在、長期的かつ予見的な観点を持ちまして、地域人口集団の健康状態と大気汚染との関係というものを定期的、継続的に観察しているところでございます。必要に応じまして所要の措置を講ずることを目的としまして昨年十月に取りまとめました平成十七年度の環境保健サーベイランス調査結果におきましては、大気汚染物質濃度の高い地域ほど呼吸器症状有症率が高くなるということを示す結果は得られなかったという状況でございます。

吉田(泉)委員 いろいろ答えていただきました。

 もう一回お聞きしますけれども、SOxと健康被害の関係は明らかである、NOxは不明であるというふうに今お伺いしましたが、その不明なNOxをなぜ八対二という一番基礎となる数値を出す計算式に取り入れたのかということなんです。

石塚政府参考人 先ほど御答弁いたしました際に、NOxにつきましても、そうした健康影響を与えるということについてはそれまで知られていたということでございます。ただ、SOxに比べますと、濃度が上がることによる直線的な患者さんの発生率の上昇というようなSOxほどのデータというものは得られていない。NOxについても健康影響があるということはそれまでも知られているということでございましたので、総体としてSOxとNOxというものを八対二の計算の根拠としたところでございます。

吉田(泉)委員 計算はNOxとSOx両方取り入れて計算したと。実際に工場に賦課金をかけるときには、今度はSOx一本でかけるわけですよね。これはどうしてなんですか。

石塚政府参考人 実は、NOxにつきましては、健康影響があるということは先ほど申しましたけれども、工場のばい煙の中でどういうNOxが測定できるかという当時の技術上の問題としまして、非常にデータの変動が大きいとか、SOxに比べて大変不安定なところがございます。

 汚染負荷量賦課金、要するにお金を徴収する根拠としてデータをとる際には、NOxというのが大変不安定なデータであるということから、やむを得ずSOxの方に代表させたということでございます。

吉田(泉)委員 やむを得ないところもあったとは思いますが、私は個人的にはSOx一本で、これはSOx一本だと自動車と工場との割合が九五対五ぐらいになるようですけれども、そういう確かな数字でやって、この五については道路特定財源とかいうんじゃなくて、それも含めた一般財源から公費を出すというような、今さらではございますけれども、私はそんなふうに感じたところでございます。

 ちょっと飛ばしまして、先ほども出ましたけれども、予防基金のお話を伺います。

 六十三年、この第一種地域の指定解除がなされた、これ以上はもう新規の認定は行わないということになったわけですが、一方で、公害健康被害予防基金をつくる、そしてその運用益で予防事業を行うということになりました。もう二十年近くそういう仕組みが動いているわけであります。

 この基金をつくるに当たっては、民間千二百社からの拠出金が四百億円、国が六十億円、自動車メーカーが五十億円、合計五百十億円余りの基金ができたということであります。そうしているうちに、昨年八月、東京大気汚染訴訟の和解があったわけであります。政府は、総理大臣の判断で、この予防基金を取り崩して東京都へ六十億円拠出するということになったわけであります。

 まず、この取り崩す根拠及びこの金額を六十億円という金額にした根拠を伺います。

西尾政府参考人 予防基金の取り崩しでございますが、これは委員御指摘のとおり、安倍総理大臣の政治的な決断ということで取り崩しをするということにしたわけでございます。したがいまして、これは和解条項の中にも、そういうことを、国の和解に当たってやるべき事柄ということで位置づけられているところでございます。

 なお、その取り崩しをする制度的な手続はどのようになるのか、こういうことでございますが、これは、独立行政法人でございますので、通則法に基づきまして環境大臣からそういうことをしてほしいという指示をいたしまして、公健法に基づく基金取り崩しの認可を環境再生保全機構の方から出していただいて認可をする、そういうことをいたしました上で、公健法に定める予防事業に充てるための拠出ということで東京都に拠出していくということでございますので、既存の法制度の中に一応そういう手続があったということでございますので、これを政治決断に沿って運用するということでございました。

 六十億円はいかにして算定されたか、こういうことでございますが、算定基礎というものを私どもが用意していたわけではございません。安倍総理大臣の決断でございますけれども、他の大気汚染の訴訟、それらは既に和解をしてきた、東京だけが長きにわたって残っている、こういう状態でございました。環境省としては、先ほどからも出ております「そらプロジェクト」などの調査をなお続けなきゃいかぬということではございましたけれども、しかし、この訴訟を終結させるという政治決断の中で、しかも、東京都も和解を図っていこうとしておられるわけですから、そういう東京都の努力も見まして、適切な規模ということで総理が提案されたもの、そういうふうに考えております。

吉田(泉)委員 東京都の方は、これは新聞の報道ですが、その六十億円を活用して未認定患者の医療費の全額助成に乗り出すという新聞報道がありましたけれども、事実関係はどうでしょうか。

西尾政府参考人 この際の東京大気汚染訴訟の和解の主要部分は、二つのことがございます。

 東京都はこういう医療費助成制度を講じるということが一つございます。それとは別に、国が医療費を直接出すということはできないんだけれども、東京都に対し、予防事業ということで、基金から六十億円を拠出するという、二つのことがあり、これは別々の二つの事柄ということで和解にセットされたわけです。

 それで、今おっしゃいました、東京都がやらなければいけない医療費の助成につきましては、これは、都内に引き続き一年以上住所を有する気管支ぜんそく患者で一定要件を満たす者を対象にして、本年五月から医療費助成制度への受け付けを開始して、八月から助成を開始する、そういうことで東京都は準備されている。東京都がやらなきゃならないということの部分につきまして東京都は進めておられる、これは事実でございます。

 それと、基金から予防事業として拠出するという話は、和解条項でも別の事柄ということで認識しております。

吉田(泉)委員 新聞報道が誤報であったということだと解釈します。

 今おっしゃったように、この六十億というのは、公健法に定める予防事業の実施に充てるんだというのが和解の条項であります。それをどうやって検証するおつもりですか。

西尾政府参考人 これは、和解条項上、別個の事項でございます。和解条項を誠実にやっていくというのは、東京都も国も同じだと思っています。

 それから実務上も、実は東京都は、医療費助成をやるための基金というものとそれから別途予防事業に充てるための基金、ですから私どもから拠出すればそれがそこに充当される基金というのは、それぞれに設置して運営をしようということで、今条例案も作成されて準備を進めておられるということでございますので、そういう和解条項の趣旨がきちんと達成されるようにこれからもよく連絡をとってまいりたいというふうに考えております。

吉田(泉)委員 この五百十億という基金は、全国四十七地域の予防事業に使おうという趣旨ですので、ひとつ不公平にならないように配慮していただきたいと思います。

 今回の法改正に当たって、私は改めて公健法全体を勉強させていただいて、いろいろな問題を感じたわけであります。例えば、公害被害の対象範囲が極めて限られている。それから、先ほど申したように、救済は長期化しているわけですが、財源の保障が短期でしかない。また、費用負担のあり方では、先ほど申し上げましたが、因果関係のはっきりしないNOxを入れて八対二と決めておいて、今度はSOxだけで賦課するというようなところも少し乱暴じゃなかろうかなと。さらには、会社が解散しちゃうともう取れない、汚染者の責任を問えないというところも問題だろうというふうに思います。

 先ほど同僚議員からもありましたけれども、当時生まれていなかったような若いドライバーにも今後負担をさせるというのもいかがなものかな、そんなことを思っているわけですが、現行の公健法、そんな問題点も含めて、どういうふうに評価されておられるのか、お伺いします。

石塚政府参考人 現行の公健法の評価というお尋ねでございます。

 先ほども御答弁申し上げましたように、ぜんそく患者さんの救済という公健法の制度は昭和四十九年にできまして、新規患者の認定は昭和六十三年までで終わってしまったわけでございますけれども、それ以前に認定した患者さん、まだ四万七千人残っておられます。その患者さん方に安定した療養生活を送っていただくための仕組みとして、この公健法というものが現在も機能しているというふうに認識しております。

 御指摘のように、幾つか課題といいますか、そういうものがあるわけでございますけれども、これまで三十数年にわたりまして安定した救済というものがなされてきたというふうに私どもは考えておりますし、見直しのたびに専門家によります審議会の議論というものを経て、この事業というものを従来と同じように継続していいかどうかということも議論していただいているところでございます。

 今回も、中央環境審議会の環境保健部会の方で、関係者、専門家に集まっていただきまして議論をしたところでございますが、従来からの方式というものを今後も継続すべきであるというような御意見を賜ったところでございますので、私どもは、この仕組み、この制度というものが十分機能していっているというふうに評価しているところでございます。

吉田(泉)委員 これからもこの仕組みでやるべきだという答申があったというお話ですが、最後に、大臣から御所見を伺いたいと思います。

 いろいろ、東京も含めて、大気汚染の訴訟がありました。ぜんそくの患者さんも全国的に増加傾向にあるとされております。今後、この法律を生かすのか、もしくはまた別な法律を考えるのか、そういうことも含めて、公害健康被害の予防及び補償の仕組みについてもう一度根本的な検討がなされるべきであるというふうに思いますが、いかがでしょうか。

鴨下国務大臣 今先生おっしゃるように、ぜんそく患者の数は、これは厚生労働省の患者調査における受療率で把握はされているわけでありますけれども、特に近年のぜんそく患者数は長期的に見ると増加をしている、それから文部科学省の学校保健統計では、ぜんそく患者の割合も増加している、こういうようなことであります。

 これは個人的な話ですけれども、私も医者になりたてのころ、約十年ぐらいはぜんそくの患者さんを専ら診る医者でありましたから、よくその成り立ちについてはわかっているつもりでありますけれども、そういう中で、これは大気汚染だけではなく、例えば、一番根本的なところはアレルギーの問題、あるいはダニ、喫煙、そういうような問題、さらにはストレスだとか何かの問題、こういうようなものが複合的になって発症するということでありまして、ぜんそくが必ずしも大気汚染と直接的に関与するというケースはどこまであるのかということについては、これはなかなか科学的な知見も十分でないというふうに思います。

 ただ、今先生おっしゃるように、これから公健法のあり方、こういうことについては、我々が予知しないさまざまな汚染あるいは健康被害が起こる可能性がございます。そういう中で、いわばあらゆるリスクをきちんと我々は踏まえた上で、公健法等も運用していかなければいけないんだろうというふうに思っております。

 現在のところは、きょう、こうして御審議いただいておりますように、この公健法を改正していただいて、今現に公害で健康被害を受けていらっしゃる方の対策に万全を期したい、こういうふうに考えております。

吉田(泉)委員 この法律の骨格は、汚染原因者負担ということで、民事賠償の考え方でやる、これは私も当然であるし、正しいと思います。ただ、今以上に、この患者の認定それから費用の負担のあり方、公平さを担保できるような仕組みを検討する必要があると申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

小島委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日は、この後、自民党の方の質疑はございませんので、与党を代表する思いで質問に立たせていただきたいと思っております。

 本法律案は、公害被害の特殊性にかんがみて、民事責任を踏まえ、公害健康被害者の迅速かつ公正な救済のために行政上の補償制度を決めたものでありまして、その財源として自動車重量税の一部を確保することを目的とした法律の改正であると承知しております。

 この補償給付ということにつきましては、現在対象になっておりますのは全国約五万人、私は東京選出でございますので、東京都では一万八千人の患者の方が対象となっていらっしゃいまして、これはまさに権利であり、また命綱であると承知をしております。

 ただ、この方たちも今御高齢になられ、ほかに収入がなく、これを頼りにされている方も多くいらっしゃいます。患者の多くの方たちは、死ぬよりつらい、そう言われるほどの発作に苦しみながら、学校にも仕事にも行けない、今なおその苦しみと闘いながら生きていらっしゃる。こういう状況を伺いながら、この方たちから今言われておりますことは、道路特定財源の審議を聞いているだけで病状が悪くなってしまう、私たちは果たしてこのまま補償を受けられるのだろうか、現実にそのような心配のお声が寄せられているところでございます。

 先ほど来、多くの審議がございましたとおり、この法につきましても、今まで五年の見直しを積み重ねてまいりました。でも、そうではなくて、安心するために恒久法にしてもらいたい、このような要請があったことも先ほど大臣からお話があったとおりでございます。十年間という今回の時限につきましては、十年間これで安心できる、こういう患者の方のお声でございます。

 私は、そういう中にありまして、先ほど来るるお話がございましたけれども、本法律案が年度内に成立しない場合どのような事態が起こることが想定されるのか、また、先ほど来の自動車重量税等の暫定税率の問題につきましても、その財源が確保されない場合どのような事態が起こっていくのか、このことを質問させていただきたいと思っております。

 先般、大臣に対しましても、全国公害患者の会連合会の皆様から要請があったと伺っております。要請された内容は、一つは、改正法案の年度内の成立の確保であり、また二点目に、自動車重量税等の暫定税率の廃止が議論される中で、公害患者への給付に影響を与えることがないよう配慮をお願いしたいという、この二点の内容であったと伺っております。

 先ほど来審議の中でも、この暫定税率がもし今回確保されなければどのようになるかという質問に対して、直接影響はなかろうというような審議の中での御発言もございました。果たしてそうなのか。これは患者の方にとりまして、生活にかかわる、命にかかわる大変大事な問題でございます。どのような事態が起こることが想定されるのか。副大臣に、その想定と、また政治家としての御信念もあわせて伺わせていただきたいと思います。

桜井副大臣 高木議員にお答えさせていただきます。

 今御指摘されましたように、全国公害患者の会連合会からの環境大臣への要請、要望書が来ております。その中で、今お話ありましたような、補償給付は患者にとっては命綱です、そして年度内に成立させていただきたいという、今お話ありましたようなかなりしっかりした考え方、こういうことで、今回、年度内にぜひ成立させていただきたいというお話がございました。

 御指摘のとおり、仮に本法案が年度内に成立しなかった場合でございますが、補償給付の財源が不安定な状態に置かれまして、先ほど要望書にありましたような、患者が安心して療養を受けることができないということだろうというふうに思います。

 また、これに加えまして、自動車重量税相当分の政府からの交付金が決まらないと平成二十年度以降の賦課金の賦課料率が決まらないという関係にあることから、工場等からの徴収を行うことができないという事態が生じるわけでございます。

 政府といたしましては、ぜひとも年度内に成立させていただきたいというふうに考えております。

高木(美)委員 今御答弁ございましたように、私は、患者の皆様が不安を受けるのではなくて、そのような思いになるのではなくて、むしろ治療に専念できるようにするということが私ども政治家の務めであると思っております。

 このような国民の皆様のお一人お一人の痛みにどのように対応していくのか、そのためのこの法律案であり、それを本日この委員会におきましては採決に至ったという、このことにつきまして、私は安堵をしているわけでございます。

 ただ、いずれにしても、この原資となります財源が確保されないことには、総額約六百億という多額でございます、これをほかから捻出するといいましても、またそれが時を超えて、いつになったらそうなるのかという、そうした大変不安定な要素では、まさに患者の皆様の不安は募るばかりであると思っております。大臣の御所感を伺いたいと思います。

鴨下国務大臣 先生御懸念のようなことが起こらないように、我々は万全を期さないといけないというふうに思います。

 特に、昨年、東京都に予防事業として六十億円を予防基金から拠出した結果、その運用益が若干縮小する、こういうようなこともありますので、これは二十年度予算としまして、自立支援型予防事業として二億円を計上しております。こういうようなことで、運用益の部分、そしてこの二億円を合わせまして、事業が縮小しないように、我々としては最善を尽くしたいというふうに考えております。

高木(美)委員 こうした点を踏まえまして、与野党ともに、歩み寄るところは歩み寄り、国民の皆様のための政治の確立にともに努力をさせていただきたいと思っております。

 今大臣御答弁いただきましたのは、東京大気汚染訴訟の予防事業のことでございましたでしょうか。(鴨下国務大臣「包括的にです」と呼ぶ)包括的にですか。失礼いたしました。申しわけありません。

 私は先ほど申し上げましたように東京選出でございまして、先ほど来の御審議を伺っておりまして、東京がやったのになぜ全国に広げていかないのか、そうした議員の方たちの心情を受け取っていたもので、このことにつきましても、この予防事業が縮小しないようにぜひとも対処していただきたいという、このことを大臣に伺わせていただこうと思っておりました。ただいまの大臣のお答えをそのまま受けとめさせていただきたいと思っております。

 もう一点、大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 公害による健康被害ということですが、今、日本と同じようなことが中国で起き始めていると感じております。中国の大気汚染は深刻で、北京のオリンピックに影響も出始めております。ぜんそくを持つ選手が不参加を表明したり、また、アメリカのオリンピック協会は、競技の直前までぜんそく防止用の特殊マスク着用を勧告しているという状況でございます。また、カドミウムに川が汚染されまして、イタイイタイ病に酷似した症状の死者が出ている、これを現実に見た、こういう日本人の報告も寄せられております。このように、日本がたどった公害の道をたどらせてはならない、二度と繰り返させてはならない、このように思うわけでございます。

 そういう意味では、日本が今、環境問題の解決のために日中協力をしながら、さまざまなスキームを立ち上げて努力をしていただいておりますが、この対中環境協力のメニューの中に、ぜひとも公害健康被害問題をはっきりと位置づけていただきまして、人体への影響がどうなのか、原因究明がどのようになされるべきなのか、その治療法はどうあるべきなのか等につきまして、日本のノウハウを中国に伝えて、中国のお一人お一人の公害で苦しむ方の命を救うという、これもまた日本が中国に行っていく大きな人道援助ではないかと思います。また、それが日本の責務と考えております。

 このことにつきまして、大臣のお考えを伺わせていただきたいと思います。

鴨下国務大臣 今お話しになった点は、私も大変重要だというふうに思います。

 特に、私たち日本は、高度経済成長のときにさまざまな公害を経験しました。そして、それによって多くの被害者も出したわけでありますから、同じ轍を中国に踏んでもらいたくないという意味においては、隣国である友人として言うべきことは言う、こういうようなことが重要だというふうに思っております。

 特に、これは昨年の日中間の環境大臣会合でも、あるいは私が中国に訪問をしたときにもですけれども、当局と、この公害問題、そして地球環境問題、この二つを合わせたいわば技術的な協力をしようじゃないかというようなことで、コベネフィットアプローチについて局長さんとの覚書を取り交わしたりしまして、技術面、あるいはさまざまな科学的な知見の情報交換ということについて連携を深めよう、こういうようなことを今現在しているところであります。

 先生の御指摘を含めまして、日中の環境のことにつきましての協力をより一層充実していくということが、日中は戦略的互恵関係というふうに言っておりますけれども、環境、特に公害問題についてはまさしくそういうような分野だろうというふうに思っておりますので、環境省としてもぜひ積極的に進めてまいりたいというふうに思います。

高木(美)委員 恐らく、公害被害問題といいますと、どちらかというと厚生労働の関係に踏み込む案件もあるかと思います。もちろん、そのもとの公害を防止するということが一番の大きな点でございますが、そこから派生する、こうした人を救済していくという観点からも、ぜひとも大臣の積極的なリーダーシップを心より期待いたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小島委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

小島委員長 この際、本案に対し、北川知克君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。北川知克君。

    ―――――――――――――

 公害健康被害の補償等に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

北川委員 ただいま議題となりました修正案につきまして、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、その提出の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 本修正案は、汚染負荷量賦課金の納付義務を負う事業者に対し、その納付の準備に必要な期間を確保するため、本改正法の附則において、平成二十年度におけるばい煙発生施設等設置者の汚染負荷量賦課金の納付期間を、本法第五十五条第一項に規定する「年度の初日から四十五日」に、「年度の初日から本改正法の施行期日の前日までの日数」を加えた期間としようとするものであります。

 以上が、本修正案の趣旨及びその内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

小島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

小島委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、公害健康被害の補償等に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、北川知克君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小島委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小島委員長 起立総員。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

小島委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、小野晋也君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。末松義規君。

末松委員 私は、ただいま議決されました公害健康被害の補償等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    公害健康被害の補償等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。

 一 ぜん息等の疾病にかかり苦しんでいる多くの人々がいる現状にかんがみ、当該疾病の種々の原因の早期解明と効果的な予防・回復方法の確立と普及に政府が一丸となって取り組むこと。

 二 各種低公害車の開発・普及の促進、エコドライブの推進、公共交通機関の利便性の一層の向上、交通流対策の促進等、自動車排出ガス総量削減に資する対策について、政府が一体となって取り組むこと。

 三 治癒等により被認定者ではなくなった者についても、健康被害予防事業等によるフォローアップに十分努めること。

 四 主要幹線道路沿道等における自動車排出ガスと健康被害との因果関係に関する各種疫学調査等を精力的に推進し、そこで得られた科学的知見に基づき、必要な被害者救済のための方途を五年以内に検討し見直すこと。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

小島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小島委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。鴨下環境大臣。

鴨下国務大臣 ただいま御決議のございました附帯決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、努力する所存でございます。

    ―――――――――――――

小島委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.