衆議院

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第10号 平成20年6月3日(火曜日)

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平成二十年六月三日(火曜日)

    午前九時三十三分開議

 出席委員

   委員長 小島 敏男君

   理事 小野 晋也君 理事 大前 繁雄君

   理事 木村 隆秀君 理事 北川 知克君

   理事 西野あきら君 理事 岩國 哲人君

   理事 伴野  豊君 理事 江田 康幸君

      あかま二郎君    井上 信治君

      上野賢一郎君    木挽  司君

      近藤三津枝君    佐田玄一郎君

      坂井  学君    鈴木 俊一君

      土屋 品子君  とかしきなおみ君

      中川 泰宏君    並木 正芳君

      橋本  岳君    藤野真紀子君

      山本ともひろ君    菊田真紀子君

      末松 義規君    田島 一成君

      田名部匡代君    村井 宗明君

      吉田  泉君    高木美智代君

      江田 憲司君

    …………………………………

   環境大臣         鴨下 一郎君

   環境副大臣        桜井 郁三君

   環境大臣政務官      並木 正芳君

   政府参考人

   (内閣官房地域活性化統合事務局長代理)      上西 康文君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           前川 喜平君

   政府参考人

   (林野庁林政部長)    島田 泰助君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局次長)           内山 俊一君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 谷津龍太郎君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   由田 秀人君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            西尾 哲茂君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  櫻井 康好君

   環境委員会専門員     齊藤  正君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月三日

 辞任         補欠選任

  小杉  隆君     橋本  岳君

  鈴木 俊一君     井上 信治君

  渡部  篤君     佐田玄一郎君

  吉田  泉君     菊田真紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     鈴木 俊一君

  佐田玄一郎君     渡部  篤君

  橋本  岳君     小杉  隆君

  菊田真紀子君     吉田  泉君

    ―――――――――――――

六月二日

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(参議院提出、第百六十八回国会参法第一一号)

 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律案(内閣提出第六四号)(参議院送付)

五月二十七日

 アスベスト対策基本法の制定、すべての被害者の補償に関する請願(穀田恵二君紹介)(第三三六四号)

六月三日

 すべてのアスベスト被害者を救済するために石綿による健康被害の救済に関する法律の改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三五一三号)

 同(石井郁子君紹介)(第三五一四号)

 同(笠井亮君紹介)(第三五一五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三五一六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三五一七号)

 同(志位和夫君紹介)(第三五一八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三五一九号)

 同(田島一成君紹介)(第三五二〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五二一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三五二二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律案(内閣提出第六四号)(参議院送付)

 石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案起草の件

 環境保全の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

小島委員長 これより会議を開きます。

 環境保全の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房地域活性化統合事務局長代理上西康文君、文部科学省大臣官房審議官前川喜平君、林野庁林政部長島田泰助君、経済産業省製造産業局次長内山俊一君、環境省大臣官房審議官谷津龍太郎君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長由田秀人君、環境省総合環境政策局長西尾哲茂君及び環境省自然環境局長櫻井康好君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 きょうは、質問の機会を与えていただきまして、大変ありがたく存じます。

 さて、冒頭、石綿救済法における指定疾病の拡大というところから入っていきたいと思います。

 現行法における指定疾病は、中皮腫と肺がんの二種類だけなんですね。その他は政令で定めることになっています。労災保険法においては、中皮腫及び肺がんに加えて、石綿肺や良性石綿胸水及びびまん性胸膜肥厚も労災対象として認められています。中皮腫及び肺がん以外の疾病にかかった多くの被害者からも、同じ石綿を原因としながらも、一方は労災で救済され、もう一方の石綿救済法においては救済を受けることができないことに対して、指定疾病の範囲の拡大を求める声が数多く寄せられています。

 石綿救済法において中皮腫及び肺がん以外の疾病を指定疾病に追加しない理由と、追加に向けた検討状況、追加の時期についてお伺いいたします。

鴨下国務大臣 石綿肺につきましては、法制定時、中央環境審議会でさまざまな御議論をいただいたわけであります。その結果、以下の理由によって、これから他の石綿関連疾患とともにさらに知見を収集して、その取り扱いを検討していくことが適当ではないだろうか、こういうようなことが議論されたわけであります。

 具体的には、古くからよく知られた典型的な職業病であるじん肺の一つで労災保険制度が整備されていること、あるいは石綿暴露歴の客観情報がなければ石綿以外の原因による肺線維症、いわゆる肺の中の線維化、こういうようなものと区別して診断するいわば鑑別診断がなかなか困難であること、加えて、予後や発症までの期間について中皮腫のような特殊性がなかなか認められないこと、一般環境経由による発症例の報告はこれまでないことなどがその理由でございます。

 ただ、先生がおっしゃっているようなこともございますので、環境省では、現在、医学的知識やデータの集積、さらには海外の状況の把握等を進めるとともに、健康リスク調査等を通じて職業性暴露以外の暴露による石綿関連疾患の発症状況などを精力的に調査しているところでございます。調査についてはできるだけ早く結論を得て、その結果を踏まえて救済のあり方について検討を加速してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

末松委員 できるだけそこを早く検討していただきたいと思います。

 第二問目ですけれども、この石綿健康被害の救済法に基づく救済として、中皮腫や肺がんの患者に対しては医療費や療養費が支給されているところです。しかしながら、石綿による健康被害の救済措置の課題として、疫学調査による原因究明の必要性、救済基金への拠出金のあり方など、労災保険を含めその救済に関する制度全般の抜本的な検討の必要性が指摘されているところでもあります。

 一方、石綿救済法は、その附則において、「政府は、この法律の施行後五年以内に、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な見直しを行うものとする。」と規定しております。

 さらに、本委員会における附帯決議では、「政府は、本制度の施行状況につき毎年とりまとめて公表するとともに、併せて最新の医学的知見、海外の状況その他の情報の収集と因果関係の解明に努め、その結果を踏まえて、必要があれば、施行後五年を待たずとも本制度について適宜適切に所要の見直しを行うものとする。」としております。

 そこで、このような現状を踏まえ、法施行五年後である二〇一一年を待たずとも抜本的な見直しの検討の必要性があると考えますが、政府の見直しに向けた取り組み方針及び現在の見直し状況について確認をいたします。

鴨下国務大臣 石綿救済法につきましては、今先生の御指摘もありましたけれども、国会の附帯決議等を踏まえて法施行後五年を待たずとも抜本的な見直しの必要がある、こういうような御指摘もいただいているわけでありまして、この石綿健康被害救済法の施行後五年以内の見直しに向けて、環境省では制度の施行状況に関するさまざまなデータの整備あるいは健康影響の実態把握などの取り組みを進めているところであります。

 具体的には、全国六地域において、健康リスク調査として、住民を対象とした胸部エックス線及びCT検査を実施して石綿暴露の地域的広がりや石綿関連疾患の発症リスクに関する実態把握を行うとともに、石綿による健康被害の救済に関する法律に基づきまして認定された方について医学的所見や暴露状況の解析調査も行って、全国的な石綿による健康被害に関する実態把握を行っているところであります。

 こうした結果の取りまとめを急ぎまして、また、関係者の意見を集約して、法施行後五年以内の見直しを適切に進めてまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。

末松委員 あわせて抜本的な見直しですが、今大臣から五年を待たずともという形、五年以内というお話がございましたが、そこはぜひできるだけ早期にお願いをしたいと思います。

 次に、きょうは浄化槽の問題についてお話をさせていただきたいと思います。

 私は、昨年の十月三十日に浄化槽の問題を取り上げました。今、全国で浄化槽法に基づく点検が環境省令で清掃を含めて大体年間四回から五回、これは合併浄化槽の規模によって違うんですが、これが定められているところでございますが、なぜか岡山県だけはこれを毎月行えという形で、全国でも極めてまれなケースなんですけれども、これを一九八六年から指導をし始め、二〇〇三年には岡山県と岡山市あるいは倉敷市の浄化槽水質管理実施要綱として毎月行えという形で定めているものであります。

 これは環境省の基準以上に毎月行わなければいけないということが問題視されているところでございまして、この前、調査を大臣にお願いいたしました。そうしたら、大臣から快くそこは調査をしますということで、実際に調査をしていただいて、大体一月から四月ぐらいまでずっと調査に入っていたという状況でございます。

 この結果についてお伺いをしたいと思うのでございますが、これもいろいろと多岐にわたりますが、私の方でチェックをして、幾つかの点についてこれは本当にどうかなというところを、私の全体的な印象で申しますと、かなりいいかげんなところがあるのではないかという懸念を有しておりますので、そこはぜひこの国会の議論の場で明らかにしていただきたい、そう思うわけでございます。

 まず、資料を三枚ほど配らせていただきました。

 その資料の一枚目なんですが、これは「自治体の要綱に関する判断事項」ということで、岡山県、岡山市及び倉敷市の政策判断について聞き取り調査を行って、その判断が今ここで示されていて、4のところで環境省としての判断、「当該要綱に問題があるとの判断はできない。」というような結論がなされているわけでございます。

 ここで、自治体の要綱に関する判断事項ということで、自治体の政策の説明、そして自治体の政策説明に対して環境省がどう判断したのか、これを御説明いただきたいと思います。

鴨下国務大臣 今先生がお示しいただいた資料は当省で調査した結果そのものでございますけれども、繰り返しにならないように申し上げますが、この資料に書かれておりますようなことを、岡山県が国に行った説明の内容はまさしくこのとおりでございます。

 その中で、我々の判断としては、ここに書いてありますように、浄化槽の消毒剤及び駆動装置の月一回の点検を義務づけている岡山県、あるいは岡山市、倉敷市の要綱は、少なくとも水質の保全や公衆衛生について、例えば、幾つか書いてあります、湖沼法に基づく、あるいは瀬戸内法に基づく、こういうようにダブルで課されているというようなこと、加えまして、平成八年にO157の食中毒が発生したこと、それから、自然環境保護地域であること、こういうような趣旨から理解することができるということでございまして、特段この地域が問題があるというような判断ではなかった、これが調査の結果の概要でございます。

末松委員 そこに対して本当に環境省でしっかりとチェックをされたのか。いろいろ聞くところによると、大臣は結果についてきのう初めて聞かれたという話を仄聞しているわけですけれども、今大臣もおっしゃられました、これは岡山県、岡山市及び倉敷市が示した、聞き取り調査で言ったということでございますが、1のところでございますけれども、「岡山県は、瀬戸内法及び湖沼法に基づく規制がダブルで課せられている唯一の県であり、水質改善に重い課題を課せられている。」、こういうふうに書いて、つまり、こういうふうに言ったということなんですけれども、私もちょっとひっかかるんですよね。

 瀬戸内海の水質を保全するということで法律ができているわけですけれども、もしこれに流れ込んでいる川とかなんとかに対して浄化槽が守らなければいけないということであれば、これは単に岡山県だけじゃなくて、瀬戸内海の関係各県がすべてそういうふうにやる必要があるのじゃないかと言わんばかりの言い方なんですけれども、その辺についてはいかがですか。

鴨下国務大臣 先生おっしゃる考え方も一つの考えだというふうに思います。

 これは、私たちが説明を受けた中で、岡山県あるいは岡山市がこのような月一回点検を義務づけていることを説明したということでありまして、それは近隣の自治体についても同じようにあるべきかどうかということについては、これは多分いろいろな議論があると思います。

 ただ、少なくとも岡山県、岡山市及び倉敷市はこういうような御判断をなさったということでありまして、我々がそれについて不適切だという評価をすることには至らなかったということでございます。

末松委員 では、逆に言えば、ほかの地域は、別に今そういうのは定めていないわけですよ、実際に環境省令で定めてある年四回、五回、これをきちんとやっているわけです。岡山のように毎月毎月消毒剤及び駆動装置の点検は行っていないんですよ。それであっても、全国の基準としてそれがきちんとチェックされていれば大丈夫だと環境省が胸を張っているからこそあの省令ができているわけですね。ということは、岡山のように毎月点検をしなくても、別にほかの県がかなり問題であるという認識も持っていないということですよね。

鴨下国務大臣 それはおっしゃるとおりでございます。

 我々は、浄化槽が十全に機能することが目的でございますから、それぞれの御判断があるんだろうというふうに思っておりますけれども、少なくとも岡山県についてこれが妥当ではないというような判断には至らなかったということでございます。

末松委員 岡山市が、あるいは岡山県が、倉敷市が、こういう形で判断をしているということ、それは県の独自性、地方の独自性も許容していかなきゃいけないという話かもしれませんが、さっき大臣がおっしゃったように、別にそこまでどうしてもしなきゃいけない必要性もない。これを私は実は一つ一つチェックしていきたいんですね、彼らがやった政策判断が本当に適当なのかどうか。

 二番目に移ります。

 さっき言いました湖沼法、これは一九八四年にできたんですけれども、湖沼水質保全特別措置法ということなんでしょうけれども、この中で実は児島湖がこの水質保全の対象になっているんですね。

 それで、資料の三枚目を見てください。上の地図に児島湖というのがございます。これが湖沼法で水質保全の対象になっている。児島湖を守る、つまり、瀬戸内法と湖沼法のダブルパンチだから、岡山県は本当に水質を厳しく厳しく守らなきゃいけない、こういう言い方を岡山県の方でしているわけですけれども、考えてみてください。見てみればわかるんですが、児島湖に流入する川以外にも、全域に対して毎月一回の点検を定めているんですよね。それは児島湖を守るということであれば、少なくともその流域だけでいいはずなんですよ。そこはどういうふうに環境省として判断なさったんでしょうか。

由田政府参考人 今御指摘のように、湖沼法に基づく指定湖沼であります児島湖の水質が依然として改善できず、環境基準は、COD五ミリグラム・パー・リッター以下に対しまして八ミリグラム・パー・リッター、これは十八年度でありますが、依然として達成していない状況にあるわけであります。

 それから、海域に関しましては、瀬戸内法に基づきます児島湾の海域について対策が行われておりますが、環境基準の達成状況は、三海域のうち二海域で未達成の状況であります。

 また、河川のBODについては、三十一水域のうち二十八水域で環境基準を達成しているにすぎないという状況であります。

 例えば、湖沼でありますれば、児島湖水域ということで、昭和五十年から平成十七年に至りますまで環境基準未達成という状況が続いておりますし、海域でありますれば、児島湾の何カ所かやっておりますが、ここのうち二カ所につきまして、昭和五十年から平成十七年まで未達成の状況にあるわけであります。

 このようなことから、岡山県が必要な定めをしているというふうに伺っております。

末松委員 ちょっと由田部長、私の質問をよく聞いてください。書いた答弁を読み上げればいいという話じゃないんですから。

 児島湾とか児島湖が法律で水質保全の対象になっているのはわかる。ただ、それ以外の地域について、どうして全県にわたって毎月一回義務づけなきゃいけないんだというのが私の質問なんです。それに答えてください。

由田政府参考人 岡山県人口のほぼ全域が瀬戸内海地域に居住しているという関係になろうかと思います。

末松委員 いや、私は児島湖と児島湾について言っているんですよ。それに流れ込んでいない川もたくさんあるわけですよ。見てください、岡山県も広いわけですよ。ぜひそこを……(発言する者あり)いや、岡山県を調査して、単に右から左に国会に報告をしているんじゃだめだと言っているんですよ、私は。

 あなた方がきちんと環境省としての判断をしながらやらないと、そこはどうですかということについて多分答えられないでしょう。

鴨下国務大臣 先生おっしゃる意味は、少なくとも児島湖に注いでいる河川以外のところもすべて規制することは不合理だ、こういうようなお話なんですけれども、これはあくまでも県からの説明であります。その中では湖沼法と瀬戸内法とダブルだということでありますので、そのところは両方がかかっているというような判断なんだろうと私は理解していますけれども、これは環境省としての評価ではありません。説明としてそういう判断があるんだろうというふうに思っています。

末松委員 大臣、余り軽々にそこを今言わない方がいいと思いますよ。なぜかというと、私は整理して議論しているわけですよ、瀬戸内海全体であれば、瀬戸内海をきちんと守るための各県の努力というのはあるでしょうと。ただ、岡山は非常に厳しいと。それは、それなりに地方自治としてのあれがあるのかもしれないねと。ただ、それを百歩譲っても、湖沼法で児島湖、児島湾について守るというこのダブルパンチ、だから岡山県は厳しくするんだということをいえば、岡山県でも児島湖に関係ないいろいろな河川がある、そこに対する浄化槽に対してまで月一回義務づけているというのはおかしいでしょうと。要綱でですよ。指導でやるというんだったら、また話は別ですよ。だって、全国は環境省の定めた政令でオーケーでクリアしてきちんとやっているわけですから。

 何でそこで毎月毎月やらなきゃいけないんだ、これはおかしいじゃないですかという私の論理がおかしいですか。

鴨下国務大臣 先ほどから申し上げていますけれども、浄化槽そのものについては、我々は必ずしも月一回というようなことを義務づけているわけではございません。ですから、浄化槽の機能が十全に発揮できるという判断で、三回、四回というようなことも含めて我々としては考えているわけであります。

 ただ、岡山県あるいは岡山市がどういう判断をなさるかということについては、我々は説明を聞いたというようなことでありますから、そもそもそのことについて環境省は岡山県を弁護するのかというような話ではないわけです。

末松委員 ならば、資料に示したように、この資料に何て書いてあるか。環境省の調査結果ですよ。「国として当該要綱に問題があるとの判断はできない。」、つまり、判断まで至っているんですよ。岡山県の説明までであれば、それはそこでいいわけです。でも、環境省としてここは問題ないと言っているから、その判断根拠は何なんだということを私は問うているわけですよ。いいですか。そこで議論が初めてかみ合うわけです。

 では、次に行ってみましょう。

 O157と大臣も言われました。ここでどういうふうに書いてあるかというと、2のところに「腸管出血性大腸菌O157による食中毒が平成八年に県内(邑久町)で生じており、同時期に発生した埼玉での被害は単独浄化槽が原因であったことから、浄化槽の管理体制、特に消毒を十分行うことについての必要性を認識。(岡山県、岡山市)」と。

 これも実はすごいいいかげんなところがございます。O157が邑久町で平成八年に、一九九六年に生じているのと「同時期に発生した埼玉で」と、埼玉というのは浦和の件なんですね、同時期というO157の浦和の件は何年にあったか御存じですか。

由田政府参考人 九一年ではなかったかというふうに思います。

末松委員 一九九〇年なんですよ。きちんとそこは見ておいてください。

 一九九〇年秋に発生しているんですよ。それをもって、ここの報告書は何と書いてあるかというと、「同時期に発生した」と。一九九〇年と九六年は同時期ですか。物すごくこれはいいかげんな形になっているわけですよ。こういうのをきちんとチェックしてから報告書に書いてくれ。県がそう言っても、国の方で、ちょっと待て、そこはおかしいぞというぐらいは言わないと。こんなことを環境省が出したら恥ですよ。それで判断に問題ないと言っているわけだから。いいですか。

 ただ、もう一つここで問題なのがありまして、邑久町の話は、これは浄化槽が原因じゃないですよね。これを確認します。

由田政府参考人 このような事案が起こっておりますが、必ずしも浄化槽ということに確定をしておりません。

末松委員 では、埼玉の浦和で起こった件は、三十数名がこの被害に遭って死者が二名出ています。これは浄化槽が原因なんですか。

由田政府参考人 当時の埼玉県の事案に関しましては、確定的に浄化槽というふうな形での決定的証拠というものは必ずしも見当たっておりませんが、かなりの確度で浄化槽の確率が高いというふうに当時は判断されております。

末松委員 ここでもし浄化槽が原因でO157が発生したとやったら、今浄化槽を推進しようとしている市町村は日本じゅうでたくさんあるんですよ、これが原因だとしたら、大変な話ですよ。これは冗談じゃない話です。もっときちんと原因を調べてほしいんですよ。

 私、報告書を読んだら、報告書は何と書いてあったかというと、井戸水に、九カ所水飲み場があった、そこをチェックしたら一カ所だけO157があった、それと同時にたまたまそこで浄化槽の破損で毎分八リッター漏れていたと。これは破損なんですよ。正常に機能した浄化槽ではないわけです。それが破損して、ひょっとしたらO157の原因となる菌がそこで出てきたのかなということが当時疑われたんですね。でも、浄化槽の汚泥からO157が出てきたというふうな調査結果はないんですよ。

 もしあなたが言うように、環境省が、正常な浄化槽がO157の引き金になったという話だったら、これは全国で浄化槽を推進している人たちはもう大変なことになりますよ。どうですか、それは。

由田政府参考人 当時の事案に関しましては、今委員の御指摘のとおり、ここの浄化槽がかなり疑われたことは事実であります。したがいまして、こういうふうな事案を起こさないためにも、浄化槽の管理をきちんと進めていかないとというふうに考えております。

末松委員 浄化槽の管理と言いますけれども、どういうところをチェックしようというんですか。このときはここが破損したんですよ。破損したから漏れて流れてきて、ひょっとしたら井戸水に関係しているかもしれないねというのが当時の調査報告なんです。今、岡山県でやってきたことは、破損云々かんぬんじゃなくて、消毒剤と駆動装置が適切になされているかどうか、これを毎月行えという話なんですよ。つまり、関係ない話なんです。

 ですから、もしこれを改善するのであれば、破損がないかどうかをしっかりとチェックするのが、今、O157の埼玉県の浦和市の事故、事件から得られる改善策じゃないですか。

由田政府参考人 埼玉県の事件、事案に関しましては、いわゆるし尿処理を扱っているシステムの中にO157などが紛れ込む可能性があるという可能性を示唆したものであるというふうに受けとめておりまして、その結果十二回ということに直ちにリンクするかどうかは別にしまして、しっかりとした消毒を行っていかなくてはいけないというふうに認識いたしております。

末松委員 破損についてはどうなんですか、破損について聞いているんだから。

由田政府参考人 破損等の点検も、必要に応じてきちんとやらなくてはいけないというふうに認識いたしております。

末松委員 破損という話になると、今、三分から十分程度見て、はい、終わりという話だったら、破損ということは見抜けないでしょう。そこはどうですか。

由田政府参考人 破損に関して、外観で見る場合もありますれば、破損して浄化槽から流出等をする場合には、かなり丁寧な形で、通常の保守点検とは別の格好で、汚水などが漏れてきているということで、事案に応じまして浄化槽設置者といいますか管理者と保守点検に当たる者が相談をしながらやっていくようなことが必要ではないかと思います。

末松委員 今、由田部長が言われたように、定期点検はきちんとそこでやっていくということがO157の埼玉の事例の改善策なんですよ。もし埼玉の浦和の件が、何にも破損していない浄化槽から何か漏れ出して井戸水に、あるいは浄化槽の汚泥がどこかで流れて出てきたという話であれば、そこは消毒とか、あるいはそういった駆動装置のところをきちんとチェックをしろということになるのかもしれないんですけれども、そこが全然違う、ピントがずれている中で、岡山県がこういう形で根拠として出してきているということ自体が信じられないんですね。

 それに、もうちょっと言わせてもらえば、O157ということで大々的に岡山県は言っていますよ。でも、見てください。実際に行政指導してきたのは一九八六年からなんですよ。実際にそこから毎月点検を義務づけているわけですよ。そうやりながら、実際にO157が埼玉で起こったのは一九九〇年ですよ。岡山県で起こったO157の事件は一九九六年ですよ。ここに同時期とかいういいかげんな書き方で書いてあるけれども、九六年。そして、要綱に出てきたのが二〇〇三年ですよ。このすごいタイムラグというか、本当にO157が原因なんですかと言われるぐらいにタイムラグが開いているわけですよ。本当にそこに原因があるのであれば、すぐにきちっと要綱を定めるなりなんなりすべきじゃないですか。そこは調査をしていて少しおかしいとは思いませんでしたか。

由田政府参考人 O157の埼玉県における事案が起こる以前に消毒の強化を指導されていたとしましても、恐らく、当時、単独処理浄化槽がかなり多い時代が相当続いておりまして、消毒に関しましても、各自治体でその必要性を認識して回数等について指導をされたものというふうに認識をいたしております。

末松委員 そうしたら、各自治体がみんな毎月点検をやるという話になったでしょうね。ところが、実際には全国都道府県、岡山県以外それはやられていなかったじゃないですか。それをどう説明するんですか。

由田政府参考人 保守点検回数、特に消毒、駆動装置の点検等に関しまして、要綱で定めているという形でやっているのは岡山県の岡山市でありますが……(末松委員「指導だよ、八六年からの」と呼ぶ)行政指導でやっているところというのは、一部あったのではないかと思っております。(末松委員「どのくらいなの」と呼ぶ)

 ちょっとその数値はつかんでおりません。

末松委員 一部というのは言葉のあやなのかもしれませんけれども、ほとんど全部が環境省の基準で、施行令できちんとやっていたんですよ。それがなぜか岡山県だけは毎月毎月点検しなきゃいけない。これはちょっとおかしいんですね。いろいろな業者との関係があるんじゃないかとか、いろいろな懸念とかうわさがなされているところですが、そこは私はここでは言いません。だけれども、ちょっとおかしい。

 次に行きます。

 自然環境保全地区ということで、ここが自然環境配慮ガイドラインに沿って水質保全対策を講じているという話ですけれども、私も民主党の田島先生とかと一緒に生物多様性の法律についてもやってきましたので、このことについてはわかりますけれども、基本的にこういったことで見ても全国で一応環境省のラインでずっとやられてきたということで、実際に岡山県だけが特別なんだというようなことは私には信じられないわけでございます。

 さらに、次の、線は引っ張っていませんけれども、「水についての満足度が極端に悪く、」と、またその次で、七条検査では実は全国平均よりも不適正率が低いがなお改善が必要と書いていますけれども、基本的に、水の点については、実際に十一条検査の不適正割合は、これは合併浄化槽ですが、全国平均が三・二%なのに対して岡山県は一・八%と極めて低い。優秀なんですね。そして、消毒とか駆動装置の点検については、その結果として全国のトップクラスの水質基準を誇っているというふうなことをこの報告書の後になって強調しているわけであります。ですから、ここだけで急にそういうことを最初に言うというのは、ちょっと不自然だなという気がするわけです。

 さらに、ちょっと申し上げますと、平成十五年に、二〇〇三年ですね、ISO14001を取得する企業が多く出てきたから、月一回の浄化槽保守点検を行う根拠を定めてほしいという要請から、県として要綱を定めて明文化したんだというふうに書いています。このISOの話なんですけれども、ISOの話をいろいろと専門家に聞くと、実際にこういう浄化槽を取り扱っている業者さんというのは個人事業主が多くて、あるいは浄化槽の清掃と兼業している事業主、あるいは管工事業を副業として行っている水道業者の方、こういう方々が多いんですね。

 このISOというのは、法令をきちんと遵守しているという信頼の尺度に非常にかかわる話なので、これを取るのに費用的には数百万かかる、こういうふうに言われているわけでございます。そういうことからしても、いろいろと専門家に聞いても、これは全国的にISOを取るために、岡山県だけこの要綱を県としてあるいは市として定めなきゃいけなかったと。これはちょっと私は信じがたいんですけれども、その辺はいかがですか。

由田政府参考人 今、そのように岡山県の方から説明を受けたということであります。

末松委員 だから、私なんかは、ISOの企業がきちんとやるのであれば、環境省令に定めた回数を遵守しているということで十分じゃないかと思うんですね。そういうことをつらつら考えていけば、岡山県あるいは岡山市、倉敷市の政策判断というものが、環境省として本当にきちんとチェックをして、そして自分たちも自分たちなりに勉強して判断をした結果、ここで言っているように全く問題がないと言うには時期尚早じゃないか、こういう気がするわけなんです。

 今私が指摘した、これは一見してチェックしただけでこういう形で出てくるわけですから。特に岡山県下では、O157とかが出る前に、既に県として毎月の消毒あるいは駆動装置の点検を月一回せよと義務づけている。これは一九八六年からですよ。これ自体がおかしいし、それを岡山県の児島湖に全く関係ないところまですべて義務づけていることが果たして本当にいいのかということについて、環境省としてこれは問題ないんだという形になるんですかね。

由田政府参考人 先ほど大臣からもお答えさせていただきましたように、水質保全の観点あるいは公衆衛生の観点、先ほど委員の方からお話がございました自然環境保全の観点から総合的に判断しているものというふうに岡山県から説明を受けておりまして、そこに対しまして、環境省としまして、そこを特に自治体が定めてはいけないというふうな立場に立つものではないという判断をいたしております。

末松委員 大臣も全く同じ考えですか。私が今挙げた点についてもぜひコメントをいただきながら解説というか、やっていただきたいんですけれども。今の由田部長の答弁だと、最初にこの報告書そのものを読み上げたにすぎないんですよ。私は今いろいろと指摘しました。そこの点を踏まえて大臣の感想もおっしゃっていただきたいんですね。

鴨下国務大臣 今先生からるる御指摘がありました。特に時系列的に、八六年に義務づけが行われて、その後のさまざまな事例を挙げて後づけじゃないかというような御趣旨もあったわけでありますけれども、この報告書の中で、我々が最終的に国として当該要綱に問題があると判断ができないという意味をぜひ受けとめていただきたいと思うんですね。

 それは要するに、水はやはりきれいな方がいいに決まっていますし、浄化槽は完全に機能するのがいいに決まっておりますけれども、それに関して、先ほどから先生御指摘いただいているように、ではコストと見合うものなのか、なおかつ岡山県だけが特殊な事情がほかのところと比べてあるのか、こういうようなことについては先生おっしゃるような議論もあってしかるべきだというふうには思いますが、ただ、それを否定して、岡山県の要綱が妥当ではないということを言う根拠がなかったというふうに我々は判断をしたわけであります。

 これは多少一般論でありますけれども、例えば各自治体が国が定める基準を上回って基準を定めることについて、市民やそれぞれ独自の御判断であったときに、著しく合理性を欠けばこれはまた別なんだろうというふうに思いますけれども、そういう趣旨においては、今回の調査をやった限りにおいては、著しく上乗せの基準が妥当でないと我々としては言えなかった、こういうようなことがここに書いてあると私は考えております。

末松委員 そこは、大臣としての見識も今少し示されたんだと思います。

 ただ、著しく云々かんぬんについては、先ほど申し上げました、繰り返しになりますが、児島湖、児島湾に関係のないところまですべて一律で縛ってしまうということ自体、私はどうしても納得がいかないし、そして環境省として、由田部長の説明によると、あたかもO157と若干関係があるんじゃないかというようなことを払拭しない。あれは違うんだったら、環境省として徹底的にO157の事件を、きちんとこれを検査して、それは浄化槽とは関係ないという形にしておかないと。関係があったとしても、毀損されたからああいう事件と関係があると言われるに至っているんだと。でも、これはまだ証明されていないんですよ、浄化槽の汚泥からO157が見つかったという報告はないわけですから。そこははっきりしておかないと。

 今、浄化槽を進めていこうという山間地とか下水道が引けないとかいろいろな事情があるところ、推進していこうといった市町村が全国にありますよ。彼らを不安に思わせるようなことは、「環境省は何だ」という話になるわけですよ。そこはきちんとしてもらわないといけないと思います。

 さらに、今大臣が非常にいい点をおっしゃられましたけれども、コストとの見合い。そして、実際に本当にそこまで義務づけた場合に、岡山県だけどうなのかというところで、私が懸念するのは点検作業についてなんですね。実はほかの地域は、全国では清掃と合わせて年に四、五回で済んでいるんです。そのかわり、きちんとした調査が行われているわけですよ、環境省が定める形で。

 実は、これは皆さんにお示しはしていませんけれども、「浄化槽の維持管理調査の結果について(詳細)」という中で、作業時間について報告がなされております。ここでは、岡山県が法定点検が十分から三十分やられている、そして要綱点検ということで消毒と駆動装置のみ三分から十分ぐらいなされているということなんですね。これに対して広島県では、これは当然法定ですよね、それ以外ありませんから、作業時間は四十五分から六十分、兵庫県で二十五分から三十分、こういう形になっているんです。

 私は、環境省として、これをこのまま聞いて、あれっと思わないのかなと思うんです。岡山県で十分から三十分、平均したら二十分なのかもしれません。これで浄化槽法に定める技術基準、要するにチェックのポイントというのが、環境省関係浄化槽法施行規則の第二条、「保守点検の技術上の基準」ということで、これは前の質疑のときにも私は申し上げました、十八項目にわたって物すごい詳細に調べるというふうに書いているんです。これが本当に、十分から二十分、そんな感じで調べられるんですか。

 これを県から聞いてきて、ああそうですか、十分から三十分ですかということで、この報告を受けたときにえっという話に……。ほかの県ではもっときちんと調べているし、ほかの県の技術が岡山県の業者に比べて著しく劣るという話じゃないと思うんです。みんな何十年もやってきたプロですよ。このプロがそんな十分から二十分近くで全部終わってしまえるものなのか。そこはどう考え、何ら疑問は思われなかったでしょうか。

由田政府参考人 岡山県を含めましたいずれの業者におきましても、業者によりまして作業時間の差異はあるものの、保守点検の内容自体にそれほどの違いが見られなかったことから、作業時間が短いことによりまして問題が生じているとは判断ができなかったわけであります。

 御指摘のように、岡山県では法定点検で考えられておりますのが十分から三十分、それから、広島県で四十五分から六十分、兵庫県で二十五分から三十分という範囲でありました。

 これらの作業の違いにつきましては、現地へ行った者の報告によりますと、例えば透視度計、あるいはひしゃく、残塩、pHをはかる比色計、DOメーターなど、こういう器材を車からおろす際に一度におろすか器材が必要になった都度おろすかとか、あるいは透視度や残留塩素などの測定を行う場合に一回ごとに水道水で器具を洗浄する場合と最後にまとめて洗浄する場合があるなどの違いとか、あるいはDO測定とpH測定など同時並行で測定する場合とそれぞれ測定する場合、あるいは保守点検の記録票を作成する際にハンディーターミナルによる電子入力か手書きかなどの違いが見られたところでありまして、これらの作業の一つ一つに要する時間については小さいのでございますが、全体として見た場合には大きな差となってあらわれているのではないかというふうに現地では判断をさせていただいております。

末松委員 私が配りました資料の二枚目の紙をごらんいただければと思っております。ここに保守点検の作業時間というのが書いてあるんです。これは、出典が、社団法人全国浄化槽団体連合会がつくったものでございます。これが小型合併処理浄化槽保守点検時間測定データということで、作業内容と時間が事細かに書いてあります。これはプロがやっても、一番速い時間でもこの程度かかるというのが書かれています。

 例えば、本当に細かに書いていますね、駐車では〇・五分かかる。管理者へのあいさつが一・三分かかる。作業準備が一・〇分かかる。水質検査が、残留塩素をはかるのに二・〇分、各槽の外観、pH、透視度が五・二分、溶存酸素のチェックに三・〇分かかる。五番目が単位装置の保守点検で、消毒槽は二・八分、沈殿槽が三・九分、接触曝気槽が四・一分、嫌気ろ床槽が二・〇分、流入管渠が一・〇分、放流管渠が〇・四分。六番目に、ブロワー点検が二・三分。七番の片づけ、周辺清掃が一・七分。記録作成と管理者への説明が四・六分。合計が三十五・八分であると。これは秒単位で全部きちんと記録をとってやって、プロでもこれだけかかるという状況を示しているわけですね。

 この中でもし節約できるとすれば管理者へのあいさつで、包括的にとにかく来たら勝手にやっていいよと、あるいは管理者への説明は要らないよというようなこと、この一・三分と四・六分を差し引いても最低三十分近くかかるわけでございまして、岡山県の十分というのが私には信じられないんですよ。

 これは何かの形で、全国で、みんな十分でできるんですか、本当に高度なわざのある人は十分でできちゃうんですかと。駐車するだけで三十秒ぐらいかかっちゃうわけですが、それは本当なんですかと。そういうことを環境省はそのまま認めていいんですか。それは環境省令を本当に遵守している点検作業のあり方なんですかというのを問わなかったんですか。

由田政府参考人 この保守点検の作業時間について、この程度かかるということで示されたものだというふうに承知しております。

 例えば作業の準備でありますとか、あるいは、先ほども御答弁させていただきましたが、残留塩素でありますとか、各槽の外観、pH、透視度の測定、溶存酸素の測定でありますとか、このあたりは作業を並行して行うことができるものもあるわけであります。

 それから、例えば記録の作成とか管理者への説明などにつきましては、特段問題がない場合にはすぐに終わってしまうものではないかというふうにも考えられまして、そのような場合はあり得るのではないかというふうに思っております。

末松委員 では、十分でもできると環境省が公式に認めたということでいいわけですね。

 残留塩素は、今、由田部長が言われましたけれども、これは二分かかるというんですけれども、DPD試薬というのを五ミリグラム入れて、ピンクであれば残留塩素が少しあって、赤色であれば多過ぎるのでよくないとか、そこまでの検査をチェックして判断をしなきゃいけない。これだってかなり時間がかかるんですね。そういったことも全部合理的にやれば十分でできる作業だということを本当に環境省が公式に認めたと言っていいんですか。

由田政府参考人 今申し上げましたように、委員が御指摘された点は、いろいろな測定などが並行して行われたような場合、それから問題がなくて記録の作成、管理者への説明などに時間がほとんどかからないというふうな場合などなどを総合しますと、そのような場合もあり得るのではないかというふうに思っております。

末松委員 では、あなたが言われている並行して行われたというのは、何人ぐらいのチームでやっているんですか。通常、これは日常の業務なんですよ。特別に人数を多くしてやっている話じゃないんですよ。そこはどのぐらいの人数で並行的に行われたと考えていいんですか。

由田政府参考人 通常は浄化槽管理士一人ということですが、補助の人がついてやっている場合も見受けられるということであります。

末松委員 それは、管理する人と補助の人の二人だけで十分ほどでできちゃう話なんですか。

由田政府参考人 失礼しました。管理士二人で現にやっておったということでございます。(末松委員「それと補助ですか」と呼ぶ)そういうことです。

末松委員 もう一回言ってください、管理士二人に補助がつくと。

 横の人に聞かないでください、本当に知っていて言っているのかどうかがわかっちゃいますよ、あなた。もう一回きちんと言ってください、ここは大事なところなんだから。

由田政府参考人 管理士一名だけでやっているところもあったということですが、管理士二名ということでやっていたところもあるということでございます。

末松委員 つまり、私がなぜこういうことにこだわるかというと、結局、年十二回という話になっちゃうと、どうしても一回一回が薄い調査にならざるを得ないんですね。

 確かに、消毒剤と駆動装置をチェックするだけだったら大したことはないという話かもしれませんけれども、これは定期点検も大体同じような感じでやっちゃっているんじゃないか。まさしく、今時間帯を言いましたよね、消毒剤と駆動装置をチェックするだけで三分から十分と書いてあるわけですよ、岡山県の場合。でも、きちんとチェックしたら、その二つをチェックするだけでも十分かかるんですよ。それと同時に、定期点検できちんとやる場合も十分から三十分。つまり、十分とあるから、それはおかしいだろう、十八項目をきちんとやるのにそんなことはないだろう、私は信じられないと言っているだけなんです。

 つまり、年十二回やることによって、人をある意味では酷使するわけですよ。そうすると、サービスの低下を招いて、それが逆に変な事件が起こる可能性がある。そうなった場合は、逆に浄化槽そのものに対する信頼が揺らぐ危険性があるから私はそういうふうに申し上げているわけです。

 事実、例えば岡山県のある業者に聞いたら、住民が浄化槽を頼むといった場合、大体一回当たり千九百七十円必要です、これを十二回費用としてもらいます、そうすると二万三千六百四十円かかりますという話があるわけです。

 実は、この結果の詳細について言っているのが、十二回ということは、結局、定期点検も一回千九百七十円だという発想に立っているということなんですね。だから、それじゃだめだと。定期点検のときはきちんとやって、そして、あとの消毒剤と駆動装置についてはチェック項目が少ないんだと。こういう概念でやらないと、いつもマンネリでやっていると本当にサービスの低下とチェック能力の低下を招くということを、時間となりましたので私もこれ以上申し上げませんけれども、とにかくそういう形をきちんと環境省で判断して報告書にしていただきたいと思います。

 最後に、大臣、この報告書はもう少し検討の余地があるんじゃないかと私は思うんですけれども、いかがでしょう。

鴨下国務大臣 今末松議員からいろいろと御議論があったことは、多分岡山県も注視しているというふうに思います。ですから、もう一度、今御指摘のあった点も含めてフィードバックしまして、より明確にしたいというふうに思います。

 加えまして、浄化槽そのものの信頼性というようなことについては、O157の点は、先ほどおっしゃったように汚泥の中からあった、ないという話については結論はないわけでありますから、本来的に浄化槽というのはすぐれたいわば装置である、こういうようなことについては最後に申し添えておきたいと思います。

末松委員 どうもありがとうございました。

小島委員長 次に、田名部匡代君。

田名部委員 民主党の田名部匡代でございます。よろしくお願いいたします。

 まず最初に、生物多様性のことについてお伺いをしたいと思うんですが、先日ドイツで開かれていた生物多様性の締約国会議において、次回二〇一〇年の開催地が名古屋に決定をいたしました。自然環境の破壊で生物の多様性が地球規模で失われつつある、これは一気に絶滅をするわけではなくて少しずつそういう変化が起こってきているわけでありますが、日本でも三千種以上の動植物が現在絶滅の危機にあるということでございまして、私も驚いたんですけれども、「めだかの学校」の歌にもあるメダカも、現在、絶滅の危機に瀕しているということでありました。

 こうした中、先週、生物多様性基本法が成立をいたしまして、人類の共通の財産である生物の多様性を将来世代にわたってしっかりと守っていこうということが決まったわけでありますけれども、今後、法律が成立をしたということに満足するのではなくて、それをどう生かしていくかということが非常に重要になってくるというふうに思います。

 また、これは各都道府県との連携というものもしっかりととっていかなければならないと思うんですけれども、まず初めに、生物多様性基本法の十三条、都道府県や市町村においても生物多様性地域戦略を定めるよう努めなければならないというふうになっていますけれども、現在、各自治体でどういう取り組みが行われているのか、把握されておりますでしょうか。

櫻井政府参考人 お答えいたします。

 生物多様性基本法第十三条に規定をいたします生物多様性の地域戦略として、第三次の生物多様性国家戦略を踏まえて、平成二十年、ことしの三月に策定されました千葉県の生物多様性ちば県戦略あるいは埼玉県の生物多様性保全県戦略を初めといたしまして、各県では通常、名称はいろいろありますけれども、環境基本計画的なものを定めておりますけれども、それとは別に策定をされました自然環境に関する総合的な計画というものを見てみますと、少なくとも一都九県三市での策定が私どもで把握しているところでございます。

 なお、愛知県、兵庫県、長崎県、名古屋市などでも今後策定予定というふうに聞いておるところでございます。

田名部委員 一都九県三市ということでありますが、ぜひともこの生物多様性地域戦略を各都道府県でしっかりと進めていくように、環境省の方でも指導していただきたいというふうに思うんです。

 あわせて、都道府県でレッドリストを作成しているところもあると思います。都道府県また市町村のレベルでレッドリストの作成状況というのはどうなっているか、わかりますでしょうか。

櫻井政府参考人 レッドリストでございますが、国におきましては環境省で、絶滅のおそれのある野生生物の保護対策を進めていく上で最も重要な基礎資料としてレッドリストを作成、公表しておるところでございます。最近では、平成十八年の十二月と昨年八月に改訂版を公表したところでございます。

 また、お尋ねの各地方におけるレッドリストの策定状況でございますけれども、こういった地方における野生生物の生息状況について明らかにすることも重要であると考えておりまして、いろいろな機会をとらえて、各都道府県に対しましてもレッドリストの作成をお願いしてきておるところでございます。

 現在、都道府県におけるレッドリストの作成状況といたしましては、全国四十七都道府県のすべてで作成をされているところでございます。なお、市町村レベルでの作成状況につきましては、環境省では全国的な状況を把握しておりませんが、個別に市町村レベルでレッドリストを作成している市町村もあるというふうに聞いております。

田名部委員 市町村レベルでも作成しているかどうか、環境省でしっかりと把握をする必要があると思うんですね。各自治体で作成してあるリストと環境省で考えるものと、しっかりと連携をとって希少動植物を守っていくということが大事だと思うんです。実は、私の地元の青森県でも、植物だけでもキンランを初めとする約三百種が絶滅の危機に瀕しています。こういったことを環境省もしっかりと把握しておく必要があると思います。

 それともう一点、このことに関して問題があるのは、都道府県によって野生鳥獣の扱い方がばらばらである、そういう問題があるのを御存じでしょうか。例えば、滋賀県のカワウ、これは害を及ぼすということで駆除をするところもあれば、しっかりと守っていきましょうと、県によって対応が違うという意味です。こういうことが実際起こっているのを環境省の方では御存じですか。

櫻井政府参考人 今、カワウでの御指摘があったわけでございますけれども、環境省でつくっておりますレッドデータブックでは、カワウをレッドデータブックには掲載しておりません。ただ、都道府県においては独自の評価基準あるいは独自のデータで作成しておられると思いますので、中には一部の県でカワウが希少鳥獣になっているということがあるようでございます。ただ、今、私どもの判断といたしまして、全国的にカワウが非常にふえておりまして、なおかつ水産業への被害等も指摘される中で、狩猟鳥獣という位置づけもしておるところでございます。

 都道府県におきますレッドデータブックは、適宜見直しをされているかとは思いますけれども、その辺は県独自の判断があるかもしれません。しかし、国全体としての位置づけというものを踏まえて都道府県でも対応していただけたらというふうに思っております。

田名部委員 国全体の位置づけとしてということであれば、やはりさっきの市町村のそういうリストもしっかりと把握をした上で検討していかなければならないんだというふうに思うんですね。

 このカワウに限らず、各都道府県で対応が違うというときに、広域的に協議を開いて連携をとっていくことも非常に大事だと思うんです。広域的に協議会をつくって話し合いをしている、これは守ろうというところと、いや、そうじゃないんだ、問題があるんだというところで、協議会の中で話し合いが行われるときに、私は、全体のことをしっかりと把握した環境省がやはりリーダーシップをとって調整を図っていく必要があるんだろうというふうに思います。

 これは、全国的にトータル的な取り組みとして、ぜひとも今後、環境省さんにもう少し責任を持ったリーダーシップを発揮していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

櫻井政府参考人 都道府県におきますレッドリストにつきましては、それぞれの県の御判断といいますか、県の判断基準というものもあろうかと思います。そういった独自性というのを一切否定して、国がすべて定めたものでよしとするわけにもまいらないと思います。それは、地域的な問題として、やはり県独自の御判断というのもあり得ると思います。一方で、国の考え方とそごを来すようなところがもしあれば、それはそれでやはり是正をお願いしなければいけない部分もあるかと思います。

 そういった意味で、全国の状況をよく把握しながら、一方でまた地域の独自性というのも尊重しながら進めてまいりたいというふうに思っております。

田名部委員 生物多様性についてはこれで最後にしますが、例えば、各自治体で、これが本当に絶滅寸前なのかどうか、実は情報不足で把握ができない。例えば、一つ例を挙げると、マエアカヒトリというガがいるんですが、私、きょう写真を見たら大変きれいなガなんですけれども、そういったものに関しても、絶滅危惧種であるというところと、情報不足でわからない、また消息不明という、いろいろな記載がされているんですね。

 ですから、そういった情報も、それぞれの自治体と連携をして情報を共有しながら、もしかしたら、守っていくべきものを害であるといって駆除してしまうところもあれば、そうではないのに過剰にというか、守ろうという気持ちはいいことなんですけれどもそれぞれの自治体の都合、状況もあると思いますけれども、やはり自治体の方で情報不足にならないように、その連携はしっかりとっていただきたいと思いますので、その御要望を申し上げて、この質問を終わらせていただきたいと思います。

 次に、私の地元青森県で先般鳥インフルエンザの強毒性のウイルスが検出をされたという問題についてお伺いをいたしてまいりたいと思います。

 秋田県側の十和田湖畔で最初に発見されたんですけれども、秋田県、青森県にまたがる十和田湖畔で収容されたオオハクチョウから高病原性鳥インフルエンザウイルスH5N1型が検出された。これは、迅速な調査としっかりとした情報公開を行いながら万全な防疫体制を整えるということが重要だと思うんですが、今回、鳥獣から発生した場合の明確なマニュアルがないという指摘を受け、青森県からも対応を求められたと聞いております。つまり、家禽から発生した場合はマニュアルがあるけれども、野鳥から発生した場合はマニュアルがない。

 これは、夏までに策定をしますということで間違いないかどうか、まず確認させていただけますか。

櫻井政府参考人 高病原性鳥インフルエンザウイルス発生の場合の対応のマニュアルでございますが、環境省では、平成十六年に山口県、大分県、京都府におきまして高病原性鳥インフルエンザウイルスが確認されたことを踏まえまして、平成十七年に「高病原性鳥インフルエンザ発生時の鳥獣行政担当部局の対応について」という表題のマニュアルを作成いたしまして、各都道府県に配布をしてその活用を促してきたところでございます。

 ただ、この平成十七年のマニュアルは、家禽で、つまり鶏などでウイルスが確認された後の野鳥に関する対応を想定しておりまして、野鳥から発生しているという今回のような事態を想定しておりませんでした。ということもございまして、今回の野鳥の死亡を発端といたしました事例の発生とこれに伴う関係道県の対応を踏まえまして、環境省といたしましては、野鳥やウイルスの専門家の意見も伺いながら、夏ごろをめどとして、都道府県における望ましい対応のあり方をマニュアルとして取りまとめようと考えているところでございます。当然のことながら、この新たなマニュアルについて、都道府県担当者会議等を通じまして周知徹底を図ってまいる考えでございます。

田名部委員 それを策定する過程の中で、都道府県から何らか意見を聞く、そういう御予定はありますか。

櫻井政府参考人 このマニュアルの策定に関しましては、現在、専門家の検討会議を設けておるところでございまして、その中で検討いただこうというふうに考えておりますけれども、都道府県の御意見等につきましても、当然その中に反映をしていきたいというふうに考えております。

田名部委員 ぜひお願いしたいと思います。

 対応する都道府県でも抱える問題等あると思うんですね。そういったときに、どう環境省として協力するのか、また指導していくのか、そういうことも求められてくると思いますので、マニュアルはできたけれども都道府県の方で対応できないというようなことがないように、どうやってその体制をつくっていくか、ぜひ都道府県の声は聞いていただきたいというふうに思っております。

 これは、夏にできるまでの間に同じような野鳥からの検出がないとは言えませんので、これまでの対応を踏まえて、今後の対策ということについてお話を伺っていきたいと思います。

 まず初めに、四月二十一日、秋田県十和田湖畔で回収されたオオハクチョウからH5N1型が発見された。それを受けて、専門家グループの会合を五月十二日に開催することを五月九日に決定しております。

 環境省に設置されている鳥インフルエンザ緊急チームが専門家グループの会合を開くかどうかというのは決定されるわけですか。

櫻井政府参考人 私ども環境省の自然環境局内に鳥インフルエンザ緊急対策チームというものを設置しておりますが、いわばこれは役所の中の内部組織でございますので、そういった専門家の会合を開く等々につきまして、もちろんこの対策チームの中で議論はしますが、この対策チーム自体が何か決定権を持っているとかそういうものではございませんので、事態に当たるための作業部隊、検討するための局内の、文字どおりチームでございます。

田名部委員 最終的には大臣が決定をされるのかもしれませんけれども。

 何が言いたいかというと、専門家グループの会合を開催することを五月九日に決定、これは、強毒性であったことが確認されてから十日後なんですね。私からすると、何か少し時間がかかり過ぎているんじゃないかなというふうに思うんです。

 緊急対策チームの中でも検討されるということですが、二〇〇五年に出されたマニュアルの中に、「「鳥インフルエンザ緊急チーム」は、必要に応じて、「鳥インフルエンザ等野鳥対策にかかる専門家グループ会合」を開催して助言等を受け、関係都道府県に対し情報提供を行う。」こういう意味合いで検討がされたのかなと思うんですけれども、「必要に応じて、」というのが一体どういう場合なのか。十日もかかるという理由が、そんなに検討に時間がかかるのかなというふうにちょっと感じたんですね。

 つまり、強毒性であればすぐに開けるようにしようとか、何か一定の基準があるのかなと思ったら、どうもそうでもなさそうですので、本来、自治体にしてみれば、少しでも早く、風評被害のこともありますし不安な思いをしているわけですから、二、三日で検討して会合を開けるようにするとか、開く必要がないのであれば、ないということを伝えてあげればいいわけでして、そのぐらいの期間でできないものなのかなと思ったんですが、いかがでしょうか。

櫻井政府参考人 今回の秋田県で最初に検出されました鳥インフルエンザウイルスは、二十八日にH5型の鳥インフルエンザウイルスの検出という連絡が検査機関からあったわけでございますが、私どもといたしましては、四月二十八日付で各地方環境事務所、都道府県、関係団体に対しまして監視体制の強化についての指示、要請を行っておるということ、それから、翌二十九日には高病原性のウイルスであることが確認されましたけれども、その翌日、三十日から、本省あるいは地方環境事務所の職員を現地に派遣いたしまして、十和田湖周辺などにおきましてウイルスの保有状況調査を実施してきておるところでございます。つまり、専門家の会合を待たないと何も行動がとれないというわけではなくて、事態を受けて直ちに行動を起こしておるということは言えるのではないかと思います。

 なお、専門家の会合につきましては、四月二十九日以降、十和田湖の周辺それから北海道内での渡り鳥の主要な飛来地におきます調査の実施等のデータを踏まえて御議論をいただこうということで、五月十二日にお集まりをいただいたところでございまして、専門家に提供するいわば議論の素材というものも、単にインフルエンザウイルスが検出されたというだけではなくて、周辺の状況もあわせて情報として十分提供したところでございます。

田名部委員 地方への派遣なども含めてすぐに対応をとられたということであるので、そういった意味では安心をいたしました。ぜひとも今後も迅速な対応をとっていただきたいというふうに思います。

 もう一つ確認なんですけれども、四月十八日に青森県側で衰弱したハクチョウが保護され、県の鳥獣保護センターに収容、二日後に死亡し、廃棄時までの腐乱防止に氷点下十度程度で保存していた、このことを環境省が把握されたのはいつでしょうか。

櫻井政府参考人 十和田湖の青森県側でオオハクチョウの一羽を収容して冷凍保存しているという情報を得たのは、四月二十七日でございます。

田名部委員 この時点で青森県に検査の要請か何かをされていますか。

櫻井政府参考人 四月二十八日でございますが、秋田県側でH5型の鳥インフルエンザウイルスが確認をされたわけでございまして、その後、青森県側でもそういった個体を回収しているという情報を得たため、環境省といたしましては、青森県にもウイルス検査を行うよう要請したところでございます。

田名部委員 そのときに青森県サイドは、日数がたって個体のウイルス検査は難しいというふうに話しているわけなんですけれども、これに対して、京都産業大学鳥インフルエンザ研究センター長の大槻客員教授が、氷点下十度であっても臓器などからウイルスが分離できる可能性があるということをお話しになっておられます。感染ルートの解明の参考になる、早急な検査を求めるということなんです。

 ただこれは、環境省の方では要請をしたとおっしゃっておられますけれども、県の方は国からの要請があれば検討したいと話していて、環境省の担当課の方の御発言として、これは地元でマスコミ報道があったんですが、「国として、県に検査を命令できる立場にはない」「「日数がたち、ウイルスを持っていたとしても、検査で陰性になる可能性がある」という専門家もいる。検査と、県民の安心のために必要な対応をてんびんに掛けた上での判断だろう」と、本県の姿勢に一定の理解を示しているということなんです。

 さまざまな専門家の御意見もあろうと思いますけれども、これは対応がおくれたことの一つの要因なのかなというふうに思っておりまして、既に秋田県側の十和田湖畔で強毒性のインフルエンザが検出されたわけですから、本来、命令まではいかなくても、もう少し強い対応をしてもよかったのかなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

櫻井政府参考人 もう少し正確に青森県側とのやりとりを御説明させていただきますと、先ほど申しましたが、四月の二十七日に、青森県側でもオオハクチョウの一羽を冷凍保存しているという情報を得ましたので、同日、青森県に対しまして、秋田県側での状況を説明して、収容個体について検査を行うように要請をしたわけでございます。一方、県の御判断として、五月一日に青森県からは、死亡個体の保存状態が悪くてウイルス検査ができないというような回答もございました。新聞報道に出ておりますのは、多分、その時点での県の御判断を踏まえて、環境省としてそういった命令をするような立場にはないということでコメントをしたものだと思います。

 ただ、青森県におきましては、五月八日にもまた死亡したオオハクチョウの回収をしたわけでございまして、同日、五月八日に青森県の方から、環境省が検査するのであれば検体を提供しても構わないという御回答をいただきました。これを受けまして、環境省と青森県とで調整をいたしまして、五月十三日に、二羽の検体、つまり四月十八日の個体と五月八日の個体ですね、この二羽の検体の提供を受けまして、鳥取大学の方に送って検査を行った結果、五月二十二日に高病原性の鳥インフルエンザウイルスが検出されたというのが事の経緯でございます。

田名部委員 ありがとうございました。

 私も環境省の担当の方に伺ったところ、青森県にも要請しているし、マニュアルもあるので見ていただきたいということはお話をされているということでありました。これは別にどっちがどうということではなくて、やはりマニュアルを見たときに、県の思うような対応を、しっかりと現場が対応していけるような形のものをつくっていかなければならないという意味で話しているんです。

 今おっしゃったように、五月八日に青森県の十和田湖畔でオオハクチョウ一羽の死亡が確認され、冷凍保存されていた。これは簡易検査の結果陰性であったということでありますが、これは間違いないですよね。青森県で行った簡易検査の結果が陰性であったということだと思います。その時点でも、五月八日、これは新聞発表が八日ですのでその以前なのかもしれませんが、環境省として、検査するかしないかも含め、受け入れ機関なども調整中というふうに話しておられるんですね。

 先ほど申し上げましたようにやはり迅速な対応がとれるようなマニュアルが必要だと思いまして、私も環境省さんでつくったマニュアル本を読ませていただいたんですけれども、冒頭申し上げたようにやはり家禽から野鳥に感染したことが前提でありまして、現場としても、対応に少々てこずったというか、戸惑うところもあったというふうに話しておりました。

 それで、検査についての項目もあるんですけれども、ある意味、今後マニュアルをつくるときにぜひ見直していただきたいというふうに思うんですが、「死亡鳥等のウイルス検査」というところに、「死後日数が経過しすぎているものは検体から除外するなど、効率的に検査することへの配慮も必要である。」その前に「衝突死など鳥インフルエンザ以外の死因が明確な場合や」ということがついているんですが。こういったところも、今後策定されるマニュアルの中ではもう少し明確に示していく必要があるんじゃないかなというふうに考えるんですね。

 県としても、地域住民の安全のために、また、青森県は鳥を飼っている養鶏場が非常に多いですから、そういった意味では非常に気を使いながら対応したんだろうというふうに思いますが、その辺の意思の疎通が図れていなかったのかなと。県側としても、マニュアルを見たけれども、結局は家禽からの感染が前提なのでどうしていいのかわからなかったというところもあると思うので、今後策定されるものには、ぜひその辺も配慮して明記をしていただきたいというふうに思います。

 あと、「国民の皆様へ」という通知の中に、「野鳥が死んでいるのを見つけた場合には、細菌や寄生虫に感染しないよう、死亡した鳥を素手で触らずにビニール袋に入れてきちんと封をして廃棄物として処分することも可能です。」というふうに書いてあるんですね。この間お伺いしたら、「ビニール袋」というところは削除していますというふうに話しておられたんですが、「廃棄物として処分することも可能」、これはその時々の状況に応じて報告を受けなきゃいけないこともあるのかなというふうに思うんですが、この辺はいかがなんでしょうか。

櫻井政府参考人 野鳥が死亡するという現象は、これは全国津々浦々、日々あるわけでございまして、一方で、こういった鳥インフルエンザが野鳥に感染しているというようなことが疑われる場合についての対応として、どこまで注意を払うか。例えば、今回の十和田湖畔でオオハクチョウの死亡個体が回収されるというような場合に、これはそう軽々に扱うべきではないとは思いますが、かといって、都内でスズメが一羽落ちていたときにどこまでやるか、こういうことになりますので、一般論としては、袋に入れて一般ごみとして出すということもあり得るということだろうと思います。

 これは、鳥インフルエンザに関しますいわば危機対応としてどこまでの緊張感を持ってやるかという部分と、一方で過剰な反応をするということもあり得ますので、その辺、これは国民の皆様への呼びかけではございますけれども、そういった点については、行政側でも、十分緊張感を持って対応することと、一方で過剰な反応にならないようにという部分はあろうかと思っております。

田名部委員 あっという間に時間が来てしまいましたので終わりますけれども、今おっしゃったことが本当にすべてだと思いまして、過剰な反応をすることはないけれども、やはり危機感を持って対応していくことが大事だと思うんですね。

 マニュアルを見てもそのとおりで、環境省さん自体も、野鳥からの感染はないだろうとか、野鳥から人への感染も余り想定はできないということが前提なんだろうと思うんですね。でも、そうではなくて、やはり万が一の場合を考えて万全の体制をつくっていくのが環境省としての役割だというふうに思っております。

 先ほど申し上げた簡易検査の結果が陰性だったということに関しても、これは獣医のレベルにもよるんじゃないかというようなお話もありましたけれども、仮にそうだったとしたら、獣医さんたちへの教育プログラムをもっと徹底するだとか、回収する方々も、青森県なんかでは林業職の方々が回収をしたりしているんですね。年に一度、きちんとした会議の中で教育はしているという話でありましたけれども、そういったところもどうしていかなければならないのか。さらには、やはり国民の皆さん方にこういったことを周知徹底して伝えていかなければならない、安全を守っていかなければならないというふうに思います。

 今後策定されるマニュアルの中では、ぜひそういうことも十分に踏まえていただきまして、鳥のみならずネズミやタヌキなど、また、車の移動の問題、人の靴底の消毒の問題、こういったこともきちんと目配りをしながら策定をしていただきたいということを御要望申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小島委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉です。

 私の方からは、きょうは紙を中心としたリサイクルの問題についてお伺いしたいと思います。

 まずは、リサイクルの全体の状況から入りたいと思います。

 先月、五月二十四日、神戸でG8の環境大臣会合というのがありました。そこでは、気候変動そして生物多様性と並んで、スリーR、つまりリサイクルの問題が取り上げられたわけであります。我が国は、二〇〇〇年に循環型社会形成推進基本法というのをつくった、リサイクル率とか最終処分量などの達成目標を定めて邁進中である、そして過去十五年間で最終処分量を何と七〇%削減することができた、こういう報告がなされたわけであります。

 十五年間で七〇%最終処分量を減らしたという数字は大変大きい数字で、ある意味ではよくやれたなというふうにも思うんですが、逆に見ると、大変急激な変化だったのではなかろうか、場合によっては日本の経済社会に何がしかのひずみが出ているのではなかろうかというような心配もされるところではございます。

 まず、この七〇%削減の主要な中身は何だったのか、そして環境大臣はこの成果をどのように評価されているのか、お伺いします。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

鴨下国務大臣 今お話ありました、日本の廃棄物最終処分量が七〇%減ったというような話は、G8の環境大臣会合でも御報告をさせていただきました。

 具体的な話ですけれども、我が国の廃棄物最終処分量は、一九九〇年の約一億一千万トンから、二〇〇五年には約三千二百万トンまで減少してきております。減少してきたうちの主なものは、瓦れき類が約三千万トン、それから汚泥が約一千八百万トンであります。

 また、この間、再生利用量については、約一億一千万トンから一億六千万トンと五千万トンふえております。ということは、要するに、再利用して最終処分量が減ったということになるんだろうと思います。

 これらの最終処分量の削減や再生利用量の増加によりまして、おかげさまで、最終処分場の残余年数が、一九九〇年から二〇〇五年にかけて、産業廃棄物で一・七年から七・七年に、一般廃棄物では七・六年から十四・八年まで延びてきているわけでありまして、依然厳しい状況が続いていることは間違いございませんけれども、循環型社会づくりが順調に進んできている成果なんだろうというふうに我々は認識しております。

 これからも、ことし三月に策定されました第二次循環型社会形成推進基本計画に基づきまして、関連施策を総合的に講じてまいりたいと考えております。

吉田(泉)委員 何か社会のひずみのようなものといいますか、問題意識もお聞きしたかったわけですが……。

 聞くところによると、七〇%削減の一番大きな原因であった瓦れき、三千万トン再利用しているわけですが、今のところ、これを路面材等にほとんど使うことができるわけですが、これ以上公共事業が減ったり再利用が進んだりすると、せっかくリサイクルはしたものの使いようがない、需要に対して供給が上回ってしまう、そういう心配をする向きも出てくる。リサイクルの需給矛盾という言い方をしているようですけれども、そういうこともあると思いますので、やはり全体的な状況を見ながらリサイクルというのは進めていくべきだというふうに思います。

 さて、日本は、二〇〇〇年以来、本格的な循環型社会、リサイクルの推進に取り組んできたわけですが、そんな中で、ことしのお正月明け、古紙リサイクルの偽装問題が発覚したわけであります。きっかけは、はがきの、年賀状の問題でしたが、これが次第にグリーン購入法の対象であるコピー用紙等にも波及をした。結果的に、大手の製紙会社の社長等が引責辞任する、こういう事態に発展したわけであります。

 偽装は許されません。しかしながら、一方で今回のこの事件は、今までのリサイクル促進に何か無理はなかったのか、もしくは、我々が目指している循環型社会という大きな目標の意味合いをもう一回見直す必要があるのではないかというような、何か本質的な問題提起にもなったように思います。

 そこで、最初に今回の偽装問題についてお伺いしますが、事件の発覚からもう五カ月近くたちました。ほぼ事件の全貌が判明したと思います。公正取引委員会からは排除命令も既に出たところでございます。改めて、今回の偽装問題、偽装の期間とか規模とか原因、これをどう押さえているのか、お伺いします。

西尾政府参考人 環境省におきましては、この古紙偽装問題の報道がありましてから、直ちにといいますか速やかに、一月九日に、メーカー十七社に対しまして古紙配合率の実態調査を要請いたしました。回答内容が一部期間に限られるなど不十分なものがありまして、さらに二月四日に再調査を依頼いたしまして、二月二十日に報告を得ております。

 偽装の規模につきましては、コピー用紙、印刷用紙、情報用紙で各社とも非常に多くの複数銘柄で広範にわたって偽装があるということが判明しておりました。その報道の直近でも、月平均で八万トン程度の偽装がずっとなされていた、こういうことでございます。

 それから、これが始まりました時期についてでございますが、各社のそれぞれの銘柄、製品によって区々でございますが、確認できた範囲におきましても、一番古いものでいえば、平成三年から偽装が始まったと回答した製紙会社もありました。

 偽装原因についてでございますが、偽装をしてしまった原因ということで多くの製紙メーカーが挙げておりますのは、品質を優先した、あるいはユーザーの品質要求が高くなったという回答もございました。一方では、他社が再生用紙を売っているんじゃないか、それに対して自分の方が売れないということでは、比較して、商機といいますかビジネスにおける機会を失う、こういうことを恐れたからであるとか、あるいは、基本的には、いずれもコンプライアンス意識が欠如をしていたことであるというような理由を挙げている、このような状況になっております。

吉田(泉)委員 原因としてメーカー側が一番最初に挙げたのは、品質の優先、お客さんからの品質の要求がだんだん高くなってきたというようなことだそうです。そこが大変印象的なんですが、この問題はまた最後に触れたいと思います。

 発覚したのがことしの一月でしたが、その後六月まで、グリーン購入法による政府の購入はどうされたんでしょうか。

西尾政府参考人 この事件が始まりまして、私ども直ちに、グリーン購入法におきましてこういう品目の基準その他を検討しております特定調達品目検討会を開きまして、グリーン購入法におきます信用の回復をどうやって図っていこうか、その他の問題点はどうしようかという議論をしました。

 その中でも、一月の発覚以降ですから、あの場合は、差し迫った十九年度の残りの四半期の調達をどうしようかということがございました。それから、実は、その後の四月からの第一・四半期というのは、もう契約をしなきゃいけない目前、こういう状態でございましたので、差し迫ったものをどうするべきかということがございまして、この検討会でも議論していただきました。

 差し迫った問題についてはやはり何らかの現実対応をしなきゃいけないということで、第一点は、発覚時点で既に納入した製品を返品、回収して廃棄するようなことはかえって環境に悪い、これはやむを得ない。

 それから、発覚後に納入するものについては、例えばコピー用紙で申し上げますと、古紙パルプ配合率一〇〇%の製品の調達に努める。努めるのでありますけれども、現実にはそういう紙が納入できない、こういう事業者があります。その場合には、不足する環境価値について、植林なりなんなりほかの面で何らかの環境保全策をやりますというようなことを申し出た製品、あるいは、そういうことで配合が不足しているものにつきましては、環境に配慮された、十分に持続性を考えたような森林からのバージンパルプが配合されているとか、そういうようなことで何らかの代償的な対応をいたしますというようなことを申し出た事業者から購入するということはやむを得ない。こういうことを検討会で議論いたしました。

 それぞれのタイミングに合わせまして、調達管理部署に当面の対策としてこのようなことで実施していただくようお願いしたところでございます。

吉田(泉)委員 六カ月間、企業に何らかの代償措置を求めながら現実的な対応をしてきたということだと思います。

 問題は七月以降分をどうするかということでありますが、今、有識者検討会の取りまとめ案というものをパブリックコメントにかけている、いろいろ国民の意見を取り入れた上で六月末には新しい購入方針を閣議決定するということでございます。

 そこで、検討会で取りまとめた原案の主な内容をお伺いします。

西尾政府参考人 検討会におきましては、コピー用紙等の基準につきましても、一連の古紙偽装問題が発覚した後、これからどのようにするのが適切かという議論はしていただきました。

 ただ一方で、検討会におきましても、やはりまずは古紙パルプ配合率一〇〇%の製品の調達に最大限努める、メーカーもまず努力をしていただくということがなければいけないだろうと。それから、調達の努力をしてもなお不足するような場合には、場合によれば環境に配慮されたバージンパルプの配合を考慮する、そういう場合には間伐材も活用していくというようなことが許容されるような仕掛けというものはないんだろうか、こういうことでございました。

 通常の検討会まとめでございますと、大体これが結論だということをまとめましてからパブリックコメントをいたしまして、その上でしかるべき手順を次にとっていく、こういうことになろうかと思いますが、この問題は、偽装に端を発したという問題でもございます。国民のリサイクルに対する関心も非常に高いわけでございます。それからもう一つは、製紙メーカーにもなお努力してもらわなければいかぬということがございます。走りながら考えると言うと恐縮でございますが、まずは、一方ではそういうものを調達する、あるいはメーカーにおいても一〇〇%の製品を出していただく努力を片方でしていただく。

 それを注視しながらではありますけれども、もしそれがなかなかできないというような場合にはどのような考えに基づいて環境配慮を行うべきか、こういうことについても多くの国民の皆様からの意見をいただこう、その場合のいわばたたき台といたしまして、一定量につきましては環境に配慮されたバージンパルプへの置きかえを、一〇〇%でなくても、例えば仮に三〇%なら三〇%、環境に配慮したバージンパルプを使うということで置きかえることはできないものであろうか。その場合には、例えば間伐材を利用するということについてはどういうふうにそこに入れていく方法があるんだろうか。こういったようなことにつきまして検討会で考え方を示しまして、今パブリックコメントをしておるところでございます。

 ただ、検討会におきましても、メーカーの出方、これからの努力をしっかり見るということでございますので、最終的な基準の整理に当たりましては、必ずしもこれは予断を持ってこれでいくということもございませんで、国民からの意見を踏まえまして、さらに学識経験者が十分な検討をして最終的な整理、取りまとめをしよう、こういう方針であるということでございます。

吉田(泉)委員 環境に配慮したバージンパルプの配合も認めるような原案になっている、例えばそれは、間伐材のパルプ等も配合を認めよ、こういう原案になっているということであります。

 ちょっと追加で二つほどお伺いしますが、間伐材のバージンパルプを入れた場合に、表示はあくまで古紙配合率一〇〇%という表示のままであるのかどうか。それからもう一つは、間伐材は認めるけれども、日本のパルプ原料の、国内の半分ぐらいを占めている製材残材、これは間伐材と同じように扱えないものなのかどうか。その二点、どうでしょうか。

西尾政府参考人 検討会でもいろいろな議論をされておりまして、基本的には、もし一〇〇%の古紙配合材が調達できない場合には、環境に配慮したバージンパルプを使うということもやむを得ないのではないかと。ただ、その範囲、どのようなものがそれに当たるのかということにつきましては、検討会でも、さらによく詰めなければいけないだろうと。こういう段階でパブリックコメントをしている、こういう状態にあるというふうに認識しております。

 それから、第一点目の表示でございます。この点も検討会でお詰めいただきたいと思っておりますけれども、ただ、そういう別のもので置きかえたものにつきましては、そのことがはっきりとクリアにわかるような表示をするというのが原則でございます。それを古紙一〇〇%であると表示して出すということは基本的にはないことだと思っております。

吉田(泉)委員 話を進めまして、今のバージンパルプの利用と古紙の再利用の比較の問題に移りたいと思います。

 まずパルプの方ですが、日本の製紙業は、パルプ原料の大体七割を輸入していて、残りの三割を国内調達しているということであります。この主な輸入先はどういうところでしょうか。そして、いろいろ心配されるのは、パルプの輸入取引が地球規模の森林破壊につながっているんじゃないかという懸念が一般の人の中にもあるわけですが、その辺のかかわりはどうでしょうか。

内山政府参考人 お答えいたします。

 まず、パルプの原料となる木材チップの主要輸入先でございますけれども、広葉樹チップでは、オーストラリア、南アフリカ、チリでございます。また、針葉樹チップでは、オーストラリア、米国となっております。

 また、木材チップの海外からの調達状況を見ますと、申し上げましたように、輸入先は、持続可能な森林経営が行われておりますオーストラリアなどからの調達が中心となってございます。また、原料別に見ますと、植林材、製材残材が八割以上を占めております。

 委員御指摘の違法伐採問題に対しましては、日本製紙連合会におきまして、製紙メーカーが、植林事業を実施している国の法令を遵守した伐採活動を行うこと、また、違法に伐採され不法に輸入された木材、木材製品を取り扱わないこと、こういったことを内容とします行動指針をまとめまして、当該行動指針に即して実施されている製紙メーカーの違法伐採対策を監査する取り組みを実施していると承知をしております。

 各製紙メーカーにおきましても、当該行動指針に即した木材チップの調達が行われているものと考えております。

吉田(泉)委員 合法的な輸入なら森林破壊にはつながらないということだと思います。

 次に、森林利用率という指標があります。これは、森林の生育量に対してその利用量の割合を示すものであります。世界の先進国の森林大国はフィンランド、スウェーデン、日本の三カ国でありますけれども、OECDの統計によると、フィンランドとスウェーデンの利用率は七割、それに対して日本の森林利用率は四割にすぎない、つまり生育量の六割を日本では利用していない、こういう実態がございます。

 何とかこのパルプ原料の国内調達をふやせないものかというふうに思うんですが、どういう手段が考えられるでしょうか。

島田政府参考人 紙パルプの原料となる木材チップにつきましては、原料用チップの約七割が輸入でございます。

 パルプ原料の調達につきましては、製紙メーカーの判断に基づいて行われているわけでございますけれども、近年、輸入チップの価格が上昇傾向にあるのに対しまして、特に国産の針葉樹チップの価格というのが低位に推移しているところでございます。

 そうした中で、既に製紙業界におきましては、間伐材の利用量の増大に積極的に取り組むということを表明していただいているところでございます。こうしたことから、今後、私どもの方としても、パルプ原料の国内調達をふやしていくということが必要だというふうに考えております。

 一方、パルプ原料の輸入に対する依存度が高くなっているということの原因につきましては、国産原料については大ロットでの安定供給体制が輸入品と比べて十分ではないことが主たる要因であると考えておりまして、林野庁では、本年三月より、製紙メーカー、森林・林業、木材産業界の関係者をメンバーとした間伐材チップの紙製品への利用促進に係る意見交換会というものを開催することによりまして、間伐材チップの円滑な供給から紙製品の原料としての利用までの体制づくりについての意見交換を行っているところでございます。

 さらに、森林施業の集約化、低コスト化によりまして大きなロットでの原木供給の取り組みを進めていくことによりまして、製材用の木材、また合板などに使う木材などと一緒に、チップ用の原木、とりわけ間伐材の安定供給を図ることとしているところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、パルプ原料としての国産材の安定供給体制の確立に取り組んでいくことといたしているところでございます。

吉田(泉)委員 大ロットでの安定供給というのが課題だということ、これは全く不可能なことじゃないと思いますので、意見交換会を大いにやっていただきたいと思います。

 さて、私なんかも、古紙を月に一遍とか回収に出す、それだけで何かリサイクルをしたような気持ちになるわけなんですが、実は、その古紙は、回収された後、インクを抜かなければいかぬわけですよね。脱墨という工程がございます。それから、漂白もせねばなりません。この脱墨、漂白というのは洗濯機の原理のようなことでされているということでありますが、詳細はどうでしょうか。また、洗濯機ですから廃液が出るわけですが、その処理はどのようにされるものでしょうか。

内山政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の古紙パルプの製造工程につきまして複数の製紙メーカーに確認をしたところ、次のとおりと聞いております。

 まず、離解工程、前段階の処理工程でございますが、古紙からパルプ繊維を回収するためには、まず、パルパーと呼ばれる設備で古紙を水に浸してパルプ繊維をほぐします。この過程で、インキはパルプ繊維が溶け込んだ液中に含まれてございます。

 次に脱墨工程でございますが、パルプ繊維からインキを分離させるための洗剤を加えて大量の空気を気泡の形で送り込むことで、分離しましたインキを気泡で捕捉し水面まで浮上させ、これを回収、脱墨して排出しております。

 次に漂白工程でございますけれども、脱墨工程を経て得られました古紙パルプにつきまして、白色度を向上させるため、過酸化水素を加えて漂白を行っております。

 最後に排水工程でございますけれども、これらの脱墨及び漂白工程で発生する廃水につきましては、他の排水と一緒に製紙工場の排水処理工程で処理されております。排水中のインキ、洗剤等の不溶性物質は沈殿させ、固体として除去しております。不溶性物質等が除かれた排水は、環境基準に適合しました管理された状態で工場外へ排出されております。

 以上でございます。

吉田(泉)委員 結局、リサイクルというものには大量の化学薬品を使わざるを得ないわけであります。一方、パルプという更新可能な材料はいわば自然の恵みでございますが、生育量の範囲で利用する分には森林破壊にも当てはまらない。一体どっちが環境によいのか、ここが一番本質的な問題だと思います。

 そこで、総合的に見て、古紙再利用とバージンパルプ利用を比較して、環境負荷はどういうふうに違うんでしょうか。

西尾政府参考人 紙製品の環境負荷を考える上では、紙の原料採取から廃棄に至るまでの全プロセス、ライフサイクル全体を評価して判断していく必要がある、こういうことになるわけですが、これ自体は理想的なんですけれども、専門家の間でも、これを完璧にやるというのはなかなか困難だとされています。それで、ある工程の部分を比較してみる、こういう議論が行われるわけでございます。

 古紙パルプ一〇〇%の紙とバージンパルプの紙を比較しまして、バージンパルプの紙の製造に伴い排出されるCO2を一〇〇といたしますと、化石燃料由来のCO2排出が四二%に当たる。逆に、古紙パルプ配合率一〇〇%の紙をつくろうとすると、その二倍の、一〇〇に対して八三の化石燃料由来の排出量となる、こういう事例もございます。ですから、この場合ですと、バージンパルプをつくるよりも古紙パルプ配合率一〇〇%の紙をつくる方が二倍のCO2を排出する、むしろCO2に対する負荷が高いという計算がございます。

 ただ、同じようなことをいたします場合にも、そこでのエネルギー利用は廃棄物エネルギー利用であって、CO2をうんと減らすということが進んだ工場では、実は古紙パルプ配合率一〇〇%の紙を製造する場合の総エネルギー使用量をバージンパルプに対して六割に下げている、こんな事例もございます。

 ここのところだけで比較いたしましても答えがなかなか出てまいりません。バージンパルプの方が使った瞬間のCO2が少ないという意見もございますけれども、そこでつくった紙はいずれ古紙になっていくわけですね。その古紙を捨ててしまうのか燃やしてしまうのかということでは、これは全く意味がありません。次に、その古紙は、程度のいいものはまた古紙で再生利用される、程度の悪いものは段ボールだとかもうちょっと悪いものになる。段階を経て使われていって、全体が調和をしているというのが一番いい姿でございます。

 段階を経てそういう資源の流れが円滑に進んでいることと、最初バージンパルプをつくり、それから古紙を利用していく、各過程でのエネルギー消費などが一番少ない形に組み上げていく必要がある、そういうような物の考え方で進めていく必要があるというふうに考えております。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

吉田(泉)委員 完璧な比較は大変難しいという感じでございます。

 最後になりますが、今までのやりとりを踏まえて大臣にお伺いしたいんですが、妥当な古紙の利用率という問題ですね。最初に偽装問題というのは品質維持のために起こったというお話もありましたが、リサイクルにこだわり過ぎて品質が悪くなるようでは元も子もないということでございます。いろいろな要素を考えて、ほどよいリサイクル率というのがあると思うんですが、その考え方をお示しいただきたいと思います。

鴨下国務大臣 品質にこだわるということでも、性能としての品質と、それからユーザーの好みと申しますか、そういうような趣旨において、私は、二つに分ける必要があるんだろうと思っております。ですから、多少白色度が落ちるとか、それから表面のざらざら感があるとか、こういうようなものでも、古紙再生そしてリサイクルというようなことで、我々にとってみれば、ある意味で付加価値が高い古紙についてはぜひ御利用いただきたいというのが基本的な考えです。

 そういうことに原則を置いて申し上げますと、まず今般の偽装につきましては、これはグリーン購入の信頼を揺るがすというようなことと同時に、国民の皆さんは、先ほど先生もおっしゃっていましたけれども、いわばリサイクルに出すという善意の行為を裏切ったということにおいては、責められてしかるべきだというふうに思っております。

 そういう中で、今御議論の中にありましたように、では、古紙、リサイクルペーパーとバージンパルプを使ったもので環境負荷はどっちが少ないんだというような話については、いろいろと議論はありますけれども、結果的には、やはり違法伐採につながるとかいうようなこともございますので、アジア全体に広げた観点あるいは世界に広げた観点から考えるべきだというふうに思っております。

 そういうような趣旨において、我々、今、本年三月に定められた循環型社会形成推進基本計画におきましても、古紙の利用を今後とも推進していくということで、二〇一〇年の古紙利用率六二%の目標値を関連資料中に記載しまして、古紙回収の徹底と利用拡大に努める、こういうようなことでございます。

 この利用拡大を実現するという観点からも、印刷情報用紙などは二〇〇六年には古紙利用率が二七%となっておりますけれども、こういうような分野においても、これからぜひ、利用率の低い製品において古紙利用率の向上に努めてまいりたいというふうに思っております。また、政府調達においては、可能な限り古紙の高配合に努めた製品を購入するように努力してまいりたいと考えます。

吉田(泉)委員 六月末の方針決定に向けてより本質的な議論をお願いして、終わります。

 ありがとうございました。

小島委員長 次に、高木美智代君。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 いよいよ洞爺湖サミットが、七月、あと一カ月のところまで迫ってまいりました。今国会におきましても、我が党は何度か地球温暖化対策について質問をさせていただきました。本日は、地球温暖化対策を進める上で、洞爺湖サミットを目指しまして、日本の中で、さまざまな制度の整備であるとか、また提案をしなければならないと思っております。そうした観点から御質問をさせていただきたいと思います。

 大臣におかれましては、G8での環境大臣会合、五月の二十四日から二十六日まで、一週間前に終わったところでございますが、大変にお疲れさまでございました。大きな成果があられたのではないかというふうに認識をしております。

 今回は、中間目標を、いつ、どのような形で発表していくのか。既にEUにおきましては、二〇二〇年までに二〇%削減する、こういう方向でございますし、また一方でIPCCから求められておりますのは、二〇二〇年から二〇三〇年という中期目標におきまして、先進国は二五%から四〇%は削減してほしいという大変厳しい数字が出されております。こうした中間目標を、いつ、どのように発表されるのか、そしてまた、セクター別アプローチにつきましても、総量目標とあわせまして、これがどのような形で今後の仕組みとしてつくられていくのか、まさに世界の関心が高まっている中での今回のG8であったと思っております。

 まず大臣に、今回の成果、そして御感想、また今後の課題につきまして、どのように認識をしておられるのか、答弁を伺いたいと思います。

鴨下国務大臣 G8環境大臣会合では、G8のほか、例えば中国、インドなどを含めまして、十九の国、地域の環境大臣が集まりまして、気候変動、それから生物多様性、スリーRの三分野について精力的な議論を行いました。

 会合の結果につきましては議長総括として取りまとめさせていただきましたが、今お触れになった気候変動につきましては、二〇五〇年までに世界全体の排出量を少なくとも半減させるいわゆる長期目標を洞爺湖サミットでの合意とすることに強い意思を表明、こういう取りまとめをさせていただきました。

 また、低炭素社会の研究ネットワークづくりなど、いわゆる神戸イニシアチブと名づけた今次会合のフォローアップのための活動と主要国の対話の提案に幅広い支持が得られたところでございます。

 また、生物多様性の分野では、自然共生型の自然資源管理をモデルとして生物多様性の保全と持続可能な利用を促進するSATOYAMAイニシアチブの提案などを含む「神戸・生物多様性のための行動の呼びかけ」を合意することができました。

 スリーRの分野では、G8各国でスリーRをさらに推進するため、レジ袋などの使い捨て製品の削減、それから資源生産性の向上を考慮した目標の設定などに取り組む神戸三R行動計画が合意されたところでございます。

 これらの成果を着実に実行に移すとともに、七月の洞爺湖サミットに向けて、我が国が国際的なリーダーシップを発揮できるよう、環境省としても、この成果をしっかりとインプットしてまいりたいと考えております。

高木(美)委員 ありがとうございました。

 福田総理が、一昨日ですが、ドイツのメルケル首相との合同記者会見の折に、サミット前に日本の明確な方針を明らかにしたい、福田ビジョンというものを発表されるという御意思を表明されたようで、そこには二〇五〇年までの長期目標、恐らく今大臣がおっしゃった五〇%削減ということを確認されるかと思いますが、さらに、十年から二十年後の中期目標への立場も示す、このようにおっしゃっていらっしゃいます。

 既に、大臣は、この中間目標につきまして、恐らく多くの方たちから、この目標をいつ出すか、これによってポスト京都議定書につきましても日本のイニシアチブが果たしてどこまでとれるかという、ここにかかってくるのではないか、このような要請も多く受けていらっしゃるかと思います。

 質疑通告はさせていただいていないのですが、この中間目標の発表の時期、総理がされるとおっしゃるものは総理がなさるわけでございますけれども、大臣におかれましてはどのような形が望ましいとお考えなのか、この中間目標の内容また発表につきまして、御所感を伺いたいと思います。

鴨下国務大臣 先ほどのG8の環境大臣会合の議長総括の中で、中期目標については、IPCCの科学的知見を考慮して実効的な目標を設定する必要、こういうようなことについて言及をさせていただいております。

 そういう趣旨が我々環境大臣会合の中である程度共有されたというようなことでありますけれども、今先生おっしゃった我が国の中期目標について、我が国の立場として、いつ、どういう形で発表し、国際社会に問うのか、こういうようなことについては、これは環境大臣会合で申し上げたようなことを踏まえて、これから政府として、あるいは総理として御判断があるんだろうというふうに思っておりますので、より意欲的にそれぞれ考えていただきたい、こういうようなことを考えているところでございます。

 国際交渉の場でのさまざまな駆け引きもございますので、戦略的、あるいは究極の目的を果たすために我々は足元で何をなすべきか、こういうようなことの総合的な判断によって、何らかの形で表明されるべきだ、こういうふうに思っております。

高木(美)委員 大変深甚の御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 国内におきましても、各省庁のさまざまな、また違う意味での駆け引きもあられるかと思いますので、私もしっかりと鴨下大臣を支えさせていただきながら、今回、日本がリーダーシップをとれるチャンスでもございますので、実効性あるものになりますようにしっかりと推進をさせていただきたいと思っております。

 あわせましてもう一点、今回のG8におきましてクローズアップされた課題でございますが、日本は、中国、インド等の新興国とのかけ橋になっていくべき役割があるということを大変実感いたしました。また、途上国に対しますアプローチにつきまして、これは支援のあり方も早くにまとめまして提示をしていただくことが、大臣がかねておっしゃっています、共通だが差異ある責任であるとか、またウイン・ウインの関係を築く、この考え方におきまして急務であると思っております。

 先ほども申し上げましたが、G8では、先進国が二〇五〇年までに五〇%、このような方向で何らかの形で取りまとめることになるかと思います。しかし、一方で、先進国はそのような厳しい目標を自分たちに課す。課すから、このように途上国についても支援をさせていただくから、一緒に枠組みに入って頑張っていただきたい、こういうメッセージの発信が大事ではないかと思います。

 途上国への支援また配慮につきまして、同時進行で検討をしていただくということが必要ではないかと思いますが、具体策をどのようにお考えか、桜井副大臣に御答弁をお願いいたします。

桜井副大臣 世界全体での温室効果ガスを大幅に削減することは大変重要であります。排出量が急増している新興国の削減行動は必要不可欠でありますし、先進国であり、洞爺湖サミット、G8議長国である日本はしっかりした支援を率先して行わなければならないだろうというふうに思っております。さきに高木先生からお話しありましたように、先進国に対しても支援を呼びかけるというかけ橋的な役割を日本は担っているんだろうというふうに思います。

 先ほど鴨下大臣からG8環境大臣会合のお話をいただきましたが、これからの温暖化対策を進める上では、コベネフィットが強調されたところでございます。このことについては、日本と中国、あるいは日本とインドネシアは、それぞれ、昨年の十二月一日、十二月十一日、鴨下環境大臣との間で、両国のコベネフィットを具体的にどう進めていくかというような取り決めをさせていただいたところでございます。

 また、排出抑制のみならず、低開発国や島嶼国など温室効果ガスをほとんど排出しないが、温暖化の被害を大きく受けている国に対する温暖化への適応対策の支援も重要である点で一致をしたところでございます。

 途上国における温暖化対策への支援については、福田総理が、本年一月に百億ドル規模の資金メカニズムであるクールアース・パートナーシップの構築を表明したところでございます。

 環境省としては、中国、インド、そのほか新興国を含めた途上国における排出削減が適切に行われるよう、関係省庁と連絡をしながら、必要な支援を行ってまいりたいと思っております。

高木(美)委員 そこで、先般行われましたTICADですが、アフリカ五十二カ国だったでしょうか、日本にお越しくださいまして、まさに人類の、また日本人のルーツでありますアフリカの方たちとの深い交流、そして意見交換がございました。

 その中で、深刻な食料高騰問題が途上国にもたらす飢餓の影響につきまして論じられたところでございます。日本からも米の収穫量を倍増させる等の支援策が発表されましたけれども、原因の一つと言われておりますバイオ燃料の拡大につきまして、日本の姿勢もこの際はっきりさせるべきではないかと考えます。

 京都議定書目標達成計画におきましては、二〇一〇年までに五十万キロリットルを導入する、また一方で、農水省におきましては、二〇三〇年までに六百万キロリットル、こうした数字の大きな差といいますのはどこかで政府としてまとめていただく必要があるのではないかと考えます。

 既にブラジルのバイオエタノールの大手の会社は沖縄に拠点を設けまして、そこを拠点として輸入を始めようとしております。

 そうやって、日本ははっきりとした数値も決まらない。またバイオ燃料、もちろんこれは食料と競合しないセルロース系が望ましいということで先般大臣からも答弁をいただき、また我が党もそのように今推進をしているところでございますが、まず日本政府としての方針をはっきりと示すべきではないかというふうに考えます。

 この方向につきまして、環境省にお伺いいたします。

谷津政府参考人 お答え申し上げます。

 バイオ燃料の拡大でございますけれども、これは温暖化対策の観点から世界各地で進んでいるわけでございますけれども、一方、食料との競合という点が非常に大きくクローズアップされているわけでございます。したがいまして、食料問題といかに競合しない形で、環境に優しい、CO2の排出につながらないバイオ燃料を確保して使っていくかという点は非常に大きな課題だというふうに認識しております。

 そういう中で、先生御指摘の、農水省また経産省、それぞれ異なる観点から目標を設定しているということでございます。これにつきましては、そういう事情がございますので一概に比較できないところでございますけれども、全体の施策は、政府としては今どういう形で調整をしているかといいますと、バイオマス・ニッポン総合戦略推進会議の場などを通じて、関係省庁間での施策の調整が行われている、これが現状でございます。

 一方、先ほどの農水、経産の目標年次は大体二〇三〇年ごろという極めて長いスパンで対策を考えておられるわけですけれども、温暖化対策につきましては、先ほどの京都議定書目標達成計画という中で、原油換算五十万キロリットルの導入という点につきましてしっかり位置づけ、毎年その進捗状況を点検するということでございます。

 環境省としては、この目達計画の達成、六%削減目標の達成、その中でのバイオ燃料の利用の拡大という点で、関係省庁と連携をとりながら、しっかりやっていきたいと思います。

高木(美)委員 これは技術がどこまで進むかという、大きな費用対効果の問題も恐らくあるかと思っております。しかしながら、やはり国といたしまして、食料と明らかに競合するという今の世界の流れを考えますと、何らかの明確なメッセージを早期に取りまとめていただきたいと重ねて要望させていただきます。

 もう一点、グリーン電力証書につきましてお伺いをいたします。

 今回の洞爺湖サミットの開催につきましては、グリーン電力証書を使い、三日間開催されると報道を伺いました。実はこの制度につきまして、企業からは多くの要望をいただいております。寄附金にしかならない、使い勝手が悪いというお声をいただいておりまして、私も、議員になりまして一年半たったころ、今から三年前になりますけれども、日本を代表する大手の自動車会社の方から要望を承りました。

 その会社は、年間二百万キロワット、約八百万円で、十年間契約で風力発電を購入している。通常の電力料金であれば約半額の四百万円で済むんだが、二倍の料金で買っている。しかしながら、例えば北海道の会社と契約をした場合、北海道に工場を持たなければ、それはまさに寄附金扱いになってしまう。財務省では、通常の値段より高く買うということは社会貢献に当たるではないかと寄附金扱いにしかしてくれない。

 しかし、寄附金だと、会社において手続が実に煩多である。寄附金では経費に計上できない、損金として落とせない、こういう欠点もある。その会社は、内規によりまして、寄附金は透明性が問われるために少額でも取締役会にかけなければいけない。しかも、三年限度の寄附金というふうになっているので、十年契約を風力発電のエネルギー会社とした場合は、三年ごとに取締役会にかけなければいけない。社内手続に実に手間がかかる。我が会社におきましては、風力発電、こうした新エネルギーの利用につきましては、値段の問題ではなくて手続の煩雑さにあるんです。ここを何としても改善してもらいたい。自分たちは環境に配慮した自然エネルギーを購入し続けたいし、またそのようにして社会貢献もしていきたい、それがひいては我が社のイメージアップにつながると信じている、こういうようなお話を承りました。

 今は、既にこのような社会貢献とか環境付加価値とかそういう時代ではなくて、CO2削減の量がどこまで削減できたのかという実質が問われる時代に入っております。むしろ、グリーン電力証書の使い勝手をよくすることが新エネの普及を大きく進めることになるのではないかと考えます。

 政策上、明確に位置づけることが必要でございますし、例えば会計上の処理をCO2削減対策費用とかそのような形で認めていただきまして、寄附金ではなくて課税所得から差し引ける、そのような損金にできないだろうか。それは実質的な法人税の減税になるのではないかと思われます。

 また、国内排出量取引制度が今検討されておりますけれども、排出枠が明確になりました場合、排出枠との互換性などを認めていくべきではないか、このように思います。

 先般、温対法の質疑のときに南川局長から御答弁いただきましたが、CDMについて、京都議定書の目標達成のためにどれだけ必要量を買わなければいけないかという購入量を伺いましたら、恐らく政府、民間合わせて三億トンぐらいではないかという答弁をいただきました。恐らく金額的には、日本のコストで考えますと、約一兆円程度に相当するのではないかと私は考えております。

 そういうところにお金を使うのではなくとそのときに申し上げたと思いますが、このようなグリーン電力証書を使い勝手よくするなど、むしろ国内のシステムをしっかりと見直していただきまして、国内法の整備をしていただくことは国内産業の活性化にもつながりますし、また、目に見える形でそのようにCO2が削減をされている、新しいエネルギーが使われている、それは国民運動の推進力にもつながるのではないかと考えております。

 今後の政策上の位置づけとしてどのようにお考えか、環境省にお伺いいたします。

谷津政府参考人 グリーン電力証書に関するお尋ねでございます。

 グリーン電力証書は、風力、太陽光、バイオマスなどによって発電した電力の価値を証書化して温暖化対策につなげていくという、今は民間の自主的な取り組みということでございます。私どもとしても、極めて有意義な取り組みではないかと高く評価しているところでございます。

 まず、税制上の取り扱いについてのお尋ねでございます。

 この点につきましては、私どももさまざま伺っておりまして、先生御指摘の点も含めて、現在、国税当局において所要の検討がなされているというふうに私どもとしては承知しております。

 それと、クレジットの互換性についてのお尋ねがございました。

 私ども、ことし二月でございますが、我が国におけるカーボンオフセットのあり方に関する指針を策定いたしました。これを踏まえまして、ことし三月から、グリーン電力証書などの国内で削減を行うもの、あるいは国内で吸収源を拡大するといった取り組みから生み出されるクレジットの扱いについて検討に着手しております。

 また、国内排出量取引制度での位置づけもお尋ねがございました。

 このように国内の排出削減活動から得られたクレジットのうち、例えば既存の対策とのダブルカウントでない新たな追加的な削減と認められるもの、またその量が確実に把握できるといった一定の要件を満たすものにつきましては、国内排出量取引制度の中でそれなりの位置づけを与えていくことも十分あり得るんじゃないかということで、現在、検討の課題としておるところでございます。

高木(美)委員 大変前向きな御答弁をいただきまして感謝いたします。

 これは実に有効な、民間の活力を使って、意識の高い企業、そしてまたさまざまな団体が参入できるという大事な制度だと思います。恐らく財務省は、先ほど申し上げましたように、法人税の減税につながるのではないかとさまざま懸念をされるかもしれませんが、まさに回り回って、国外に日本の税金を流出することなく、インセンティブをさらに高めることができる大事な方策であると思いますので、ぜひとも強力な推進をお願いいたします。

 本日は、内閣府の地域活性化統合本部事務局の方にお越しいただいております。

 環境モデル都市の取り組みにつきましてお伺いをいたします。

 極めて有効であるということで、既にこの委員会でも御質問があったところでございます。今、既に公募が終わり審査中と承知しておりますが、改めましてこの背景と意義につきましてお伺いをいたします。さらに、我が国の特区の経験を生かしまして、規制であるとか税制であるとか、さまざまな面で国が総合的な支援を行っていくべきと考えます。このことにつきまして御答弁をお願いいたします。

上西政府参考人 お答えを申し上げます。

 今お話がございましたように、環境モデル都市につきましては、今国会冒頭の総理の施政方針の中で、低炭素社会への転換のために、我々のライフスタイルであるとか、あるいは都市や交通のあり方など社会の仕組みを根本から変えていく必要がある、そういった考え方に基づきまして、高い目標を掲げて先駆的な取り組みにチャレンジしていく都市、地域を選んで環境モデル都市をつくることで社会の仕組みを変えていく道筋を示していく、そういったことが考え方の背景、目的としてあるものだと思っております。

 委員御指摘のとおり、私ども四月から募集をいたしまして、五月二十一日に提案の募集を締め切りまして、全国、大都市から小さな町に至るまで、八十二件の御提案をちょうだいしたところでございまして、現在、有識者の懇談会の中に分科会を設けまして、その先生方の助言をいただきながら、七月ごろの選定に向けて鋭意作業を進めているところでございます。

 選定されました都市あるいは地域への支援におきましては、それぞれの自治体からの提案に基づくアクションプランを策定いたしまして実施に取り組んでいただくということになりますけれども、国といたしましても、このアクションプランの円滑な実施に向けまして、関係の省庁とも連携をして総合的な支援を行っていきたいと思っております。その中では、例えば、地区を特定してそこで規制の特例を設けるというような特区的な手法が有効であれば、そういった考え方もあるのではないかと思っております。

 こうした環境モデル都市の取り組みを国内外に波及させるため、あわせて施策の展開や情報の発信に努めていきたいと思っているところでございます。

高木(美)委員 極めて有効な取り組みでございますので、また今後とも推進をよろしくお願いいたします。

 本日は、文科省にもお越しいただいております。

 持続可能な開発のための教育につきましては、我が党も推進をさせていただいているところでございますが、学校教育におきまして、先般、総理が環境科の設置という提案をされたと伺っております。どのような御提案なのか、それをまた今後どのように実施されるのか、文部科学省にお伺いいたします。

前川政府参考人 総理の環境科についての御提案というのは、実は私どもつまびらかにしておりません。

 ただ、教育再生懇談会におきましてそういう御議論があったということは承知しておりまして、五月二十六日に教育再生懇談会から、これは総理の御出席のもとで開かれました懇談会でございますが、この教育再生懇談会の第一次報告の中で、「例えば全ての小学校で一年生から環境教育に取り組むよう、「外国語活動」的な「環境教育活動」の時間を設けることについて検討する。」こういう御提案があったところでございます。この御提案につきましては、今後、環境教育活動を設けるかどうかにつきまして、諸外国の状況あるいは我が国における今後の取り組み状況などを踏まえつつ検討していくべき課題と考えております。

 環境問題が世界共通の課題となっております中で、持続可能な社会を構築することが求められております。そのためには、環境教育を推進していくことが大変重要であると認識しておるところでございます。

 本年一月の中央教育審議会の答申では、環境に関する学習に関しまして、各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間のそれぞれの特質等に応じて行われるようにする必要があるとされたところでございます。これを受けまして、本年三月に告示いたしました小中学校の学習指導要領の改訂におきましては、他教科から独立させて環境教育活動の時間を設けるということはしておりませんが、社会科や理科、技術・家庭科など、関連の深い教科を中心に環境教育に関する内容の充実を図ったところでございます。

 具体的には、例えば小学校の理科で、身近な自然の観察の学習を新たに追加するといったこと、あるいは中学校の社会科の公民的分野におきまして、持続可能な社会の形成の観点から解決すべき課題の探求、こういう学習を新たに追加いたしました。また、中学校の理科におきましては、自然環境の保全と科学技術の利用のあり方について科学的に考察し、持続可能な社会をつくることの重要性を認識する、こういった学習を新たに追加したところでございます。

 また、環境教育の充実のための具体的な支援施策といたしまして、全国的な実践発表大会の開催など、全国各地のすぐれた実践事例の普及を図ることをねらいといたしまして、環境教育推進グリーンプラン、こういった事業を初めといたしましたさまざまな施策を、環境省などの関係省庁とも連携を図りつつ、実施しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、こうした取り組みの推進によりまして、今後とも各学校段階にふさわしい環境教育の推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。

高木(美)委員 ありがとうございました。ぜひ、ライフスタイルを変える教育という点でお取り組みをお願いしたいと思います。

 今、青年たちの間で、洞爺湖サミットを目指しまして、クールアースデーを創設したいということで、携帯電話で署名を展開しているようでございます。昔は紙で署名でございましたが、携帯電話でアクセスをしまして、名前を登録して、それで署名をする。こういうことで、クールアースデーをぜひ創設したい、そうした国民運動を盛り上げながら、六月二十一日から七月七日、夜の一定時間にライトダウンを行うなど、みんなで地球環境を考える、そういう日を創設したい、このような取り組みを進めているようでございます。

 このような次の地球を担う青年たちの取り組みがぜひ実現されますように、環境省におかれましても、大臣を先頭にぜひ御支援を賜りたいとお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

小島委員長 次に、石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来各会派間において協議してまいりましたが、本日、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得ましたので、委員長から、本起草案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 現行の石綿による健康被害の救済に関する法律は、平成十八年に、石綿による健康被害の迅速な救済を図るため、石綿による健康被害を受けた者及びその遺族に対し、医療費等を支給するための措置を講ずるために制定されたものであります。しかし、認定申請のおくれによる不利益への対応や、特別遺族弔慰金等の請求期限の延長等を求める声が多く聞かれるところであります。

 そこで、我々立法府としては、このような深刻な石綿による健康被害の救済を求める切実な声に対し、一刻も早く、適切にこたえていくことが急務であります。そうした強い認識から、石綿による健康被害を受けた者及びその遺族に対する救済の充実を図る必要があるものと判断し、本起草案を得た次第であります。

 次に、本起草案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、被認定者について、医療費及び療養手当を、原則として、療養開始日にさかのぼって支給するものとしております。なお、医療費等の合計額が特別遺族弔慰金の額に満たないときは、その死亡した者の遺族に対し、その差額を救済給付調整金として支給するものとしております。

 第二に、指定疾病に関する認定申請をしないで本法施行日以後に死亡した者の遺族に対し、特別遺族弔慰金及び特別葬祭料を支給するものとしております。

 第三に、本法施行日の前日までに死亡した労働者等の遺族であって、労災保険法上の遺族補償給付を受ける権利が時効によって消滅したものに対し、特別遺族給付金を支給するものとしております。

 第四に、特別遺族弔慰金等及び特別遺族給付金の請求期限を延長するものとしております。

 第五に、国は、石綿を使用していた事業所の調査やその結果の公表並びに本制度の周知を徹底するものとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及び主な内容であります。

    ―――――――――――――

 石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小島委員長 本件について発言を求められておりますので、順次これを許します。佐田玄一郎君。

佐田委員 今委員長から趣旨の御説明がありました、石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党を代表いたしまして発言をさせていただきます。

 石綿による健康被害の救済に関する法律は、アスベストによる中皮腫、肺がんなどで苦しんでいるすべての人を救済するという考え方に立ち、与党アスベスト対策プロジェクトチームを中心に立案され、平成十八年三月に施行されてから二年余りが経過しました。

 この間、本年五月末までに累計三千五百二十名の方が救済給付に係る認定を受けており、おおむね順調に被害者の救済が図られているほか、学校や病院などの施設で使用されたアスベストの除去等も進められております。また、救済法施行時には承認されていなかった中皮腫の治療薬(アリムタ)も承認され、使用可能になるなど、対策が進められてきました。

 他方、施行後二年を経て、例えば、死亡後に解剖の結果初めて中皮腫だとわかった方など、お亡くなりになる前に認定申請をしていない方には一切給付がない、中皮腫だとわかるとすぐに入院などをしなければならず、申請がおくれてしまう方もいるが、そのような方々は十分な給付が受けられない、法施行後に労災時効を迎えたため救済法の対象とならないなど、幾つかの課題が明らかになってきました。

 中皮腫といった重篤な石綿健康被害で苦しまれているすべての方を対象として、安心して医療を受けていただくという制度の趣旨にのっとった救済を実現することが必要であります。

 法制定時の経緯を踏まえ、本年四月、与党アスベスト対策プロジェクトチームを再開し、民主党とも協力して、迅速に合意を取りまとめてまいった次第であります。法案の取りまとめに御協力いただいた各党関係者の方々に感謝いたします。

 続いて、今後の課題について幾つかの指摘をさせていただきます。

 まず、政府において、本制度の周知徹底を行っていただきたいと思います。

 今回、改正案で対応策が講じられることとなった特別遺族弔慰金や特別遺族給付金の請求期限の延長、新たに労災申請の時効を迎えた方への対応といった問題は、いずれも周知の不足に起因しています。

 今回、本法案の施行期日を公布後六カ月以内としたのは、現在給付の対象となっていない方々を可能な限り早く救済するためでありますが、政府においては、改正法について十分な周知を行うとともに、施行の準備に万全を期していただきたい。

 次に、制度に関連する情報の開示に努めていただきたい。労災を含めた救済制度の運用状況、石綿関連事業所に関する情報などを適時適切に提供することにより、制度の周知と円滑な施行が可能になります。

 さらに、政府においては、アスベスト除去対策、中皮腫の治療薬の認可や診断に関する研究開発など、総合的なアスベスト対策を進めていただきたい。

 救済法は、平成二十三年までに法施行後五年以内の見直しを行うこととなります。与党においては、今回の改正法の施行状況や残された課題について、政府の取り組みをフォローし、引き続き被害者の迅速な救済を含めた総合的なアスベスト対策を推進していきたいと考えております。

 本法律案を速やかに可決、成立していただくことをお願いいたしまして、私の発言とさせていただきます。よろしくお願いします。

小島委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。

 ただいま委員長から趣旨説明がございました石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、民主党を代表して意見を述べさせていただきたいと思います。

 二年前の二〇〇六年一月三十一日、私は、本会議場におきまして、内閣提出の石綿による健康被害の救済に関する法律案に対し反対討論に立たせていただきました。

 当時、民主党からは、国、地方公共団体、そして事業者の責務を定め、国民と一体となってアスベストの問題に総合的に取り組むための基本的な枠組みを定めるアスベスト総合対策推進法案を、政府に先駆けて提出させていただいておりました。しかし、内閣提出のこの救済法案は、政府の責任には触れることなく、表裏一体であるはずの労災補償との格差やすき間や不備が目立つ制度であると指摘をし、私どもは反対をしたところであります。

 本来ならば、改めて私どもからアスベスト総合対策推進法案を提出したいところではありましたが、既に施行されている現行法において、遺族への救済給付調整金が打ち切られていたり、法施行後も労災補償を受ける権利が時効成立で奪われている現実、隠れた被害者の実態が一向に明らかにならない現実を黙って見過ごすわけにはまいりませんでした。

 命の値段の差を埋めるという緊急的な見直しが必要な課題に対処するため、私ども民主党は、四月の二十四日に現行救済法の改正案を参議院に提出させていただいたところであります。

 二年前の当時ならば考えられなかったことでありましたが、一緒に考え、まとめて今国会で成立させましょうと、今回は与党PTの皆さんと認識を共有し合い、実務者レベルでの協議を重ねて、今回の合意に至ることができました。

 与党の皆さんにも、私ども民主党が主張する改正点を十二分に御理解いただき、当面、現行法が抱えるさまざまな問題点や不備、そして救済のすき間を埋めることができたものと考えております。改めて、与党の関係者の皆さん、そしてこの法案提出に至るまで支えていただいた関係者の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。

 この機会に、ぜひ関係省庁にお願いがあります。

 まず最初は、中皮腫、石綿肺がん以外のアスベスト疾患の救済が待たれているところです。環境省として、ぜひ救済の対象疾病を労災並みに拡大するよう、政令改正の作業に直ちに取り組んでいただきたいと思います。

 そして、現行法の不備で救済を断念してこられた被害者や遺族の皆さんに対して、環境省、厚生労働省は、今回の改正を正しく通知し、周知徹底を図っていただきたいと思います。

 また、特別遺族弔慰金や特別遺族給付金に係る請求期限の見直しの検討をするためにも、死亡年別の労災補償件数や特別遺族給付金の支給件数など必要な情報、基礎的なデータを、関連するそれぞれの機関からも公開するように取り組んでいただきたい。

 そして、今回の改正は、あくまで救済を受ける権利を失うことがないようすき間を埋めただけのことであり、救済法の抜本的な見直しの期限である法施行五年、つまり二〇一一年の三月二十七日までにこの抜本的な見直しを検討するように取り組んでいただきたいと思います。

 また、関係閣僚会合の開催など、今回の議論の中でも浮き彫りになってきた縦割り行政の弊害を克服し、政府一丸となってアスベスト対策に取り組むこと。

 以上、五点を強く要望させていただきたいと思います。

 健康被害者への救済は、アスベスト対策の最重要課題であります。しかし、それだけがすべてではありません。今後、少なくとも数十年間続いていく取り組みは、私たちの身の回りにあるアスベストをいかに計画的、段階的に除去、廃棄し、無害化するかにかかっています。

 今回の法改正は、マラソンに例えるならば、折り返し地点手前の給水ポイントに到達したにすぎません。

 国民の健康と安全を守り、環境汚染の防止を総合的に推進するために、アスベスト総合対策推進法を制定して、一日も早く築くべきノンアスベスト社会というゴールまで、私たち民主党もアンテナをさらに高く掲げて、全力で取り組むことをお誓い申し上げます。

 どうぞ委員各位の御賛同を心よりお願い申し上げて、発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。

小島委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 今、委員長から趣旨の御説明のありました、石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、公明党を代表して発言をさせていただきます。

 石綿健康被害救済法は、アスベストによって健康被害を受けた方々を一刻も早く救済するため、与党において大変な努力を重ね、成立した法律でございます。

 本法の制定時には、平成十七年六月に工場周辺住民などへのアスベスト被害が表面化したことに端を発して、この問題に対する社会不安が巻き起こりました。与党では、環境省、厚生労働省を初めとする関係省庁や関係団体の協力を得ながら精力的に検討を行い、事件の発覚からわずか半年余りのうちに法律の成立、施行に至りました。

 短期間にもかかわらず、資金を拠出する関係の事業者、地方公共団体等の御理解も得て、五年間で七百六十億円規模の基金を造成し、緊急に思い切った措置を講じることができたものと自負しております。

 このような経緯から緊急に生まれた法律でございますので、今般、平成十八年三月に施行されて以来二年が経過する中で、さまざまな方々からこの法律について意見を伺うと、例えば認定の申請を行わずに亡くなられた方々は救済の対象とならないといったすき間があることが明らかになってまいりました。これらの課題につきまして、法のすき間を埋め、石綿で苦しんでいる方々を迅速に救済しようということで、いわゆるねじれ国会の中ではありますが、与党、民主党とも一致協力して早期に成案を得るべく協議を重ね、ここに委員長提案として提出することとなったものでございます。

 本改正案が成立し、施行されれば、これまで申請がおくれたため十分な救済を受けることができなかった方、法施行後に未申請のまま亡くなったため全く救済を受けることができなかった方、さらには、法施行後労災の時効を迎え救済対象から外れた方など、これまで法律から漏れて救済されることができずに苦しむ方々をしっかりと救済することができるものと考えております。

 この際、政府に対して、幾つかお願いをしておきます。

 まず、政府においては、引き続き、法律を適切に運用し、被害者の迅速な救済を進めていただきたいと思います。具体的には、救済制度や石綿関連疾患について、これまでに救済された方々の数は、中皮腫でお亡くなりになられた方々の数に比べると大幅に少ない状況にあります。今般の法改正によって法律のすき間は埋めることができるものの、国民の方々が制度を知らなければ救済を受けることができないことに変わりはありません。国民及び医療関係者を初めとする関係の方々に対し、制度の周知を徹底していただきたい。特に、被害者の方々と直接向き合う医療機関の役割は重要であり、関連疾患に関する診断技術の向上や知識の普及、専門家の育成について、対策を急いでいただく必要があります。

 また、政府においては、石綿による健康影響について、関係機関と協力しながら、石綿関連事業場の周辺住民を対象とした調査の拡充強化や、最新の研究成果などの知見を収集することにより、実態解明を進め、国民の不安の解消に努めていただけるようお願いをしておきます。あわせて、この調査の結果を活用しながら、法律の施行状況を点検することにより、今後三年以内に行われる法律の見直しについて、真摯に取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、今回の見直しに御尽力をいただいた関係者の皆様に感謝を申し上げるとともに、本法案を速やかに可決、成立していただくことをお願いして、私の発言を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

小島委員長 以上で発言は終了いたしました。

 この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。鴨下環境大臣。

鴨下国務大臣 石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、政府としては異議はありません。

小島委員長 お諮りいたします。

 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小島委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

小島委員長 次に、内閣提出、参議院送付、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。鴨下環境大臣。

    ―――――――――――――

 愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鴨下国務大臣 ただいま議題となりました愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。

 今日、国民のライフスタイルの変化により、愛玩動物、いわゆるペットの重要性はますます高まっており、我が国における犬及び猫の飼育数はおよそ二千五百万匹に達しています。ペットフード産業の市場規模も拡大の傾向にあります。このような中、昨年、米国で、メラミンが混入されたペットフードにより、犬、猫が相次いで死亡する事故が発生しております。我が国におきましても、同様にメラミンが混入されたペットフードが発見され、製品が自主回収された経緯があり、ペットフードの安全性を確保することが強く求められています。

 本法律案は、このような状況を踏まえ、ペットの健康を保護し、動物の愛護に寄与するために、ペットフードに関する規制を行い、その安全性を確保しようとするものであります。

 次に、本法律案の内容を御説明申し上げます。

 第一に、ペットフードの製造の方法もしくは表示についての基準または成分についての規格を定め、これに合わないペットフードの製造、輸入または販売を禁止することといたします。

 第二に、有害な物質を含み、もしくは病原微生物に汚染されているペットフードまたはこれらの疑いがあるペットフードの製造、輸入または販売を禁止することができることといたします。

 第三に、これら禁止の対象となるペットフードが販売等された場合には、農林水産大臣及び環境大臣は、廃棄、回収等必要な措置をとることを命令することができることといたします。

 このほか、ペットフードの製造業者等の届け出義務、立入検査等所要の規定を整備することといたします。

 以上が、本法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小島委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る六日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十四分散会


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