衆議院

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第2号 平成21年3月24日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十一年三月二十四日(火曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 水野 賢一君

   理事 小野 晋也君 理事 北川 知克君

   理事 小杉  隆君 理事 土屋 品子君

   理事 西野あきら君 理事 岩國 哲人君

   理事 伴野  豊君 理事 江田 康幸君

      あかま二郎君    上野賢一郎君

      北村 茂男君    小島 敏男君

      木挽  司君    近藤三津枝君

      坂井  学君    鈴木 俊一君

      中川 泰宏君    福岡 資麿君

      藤野真紀子君    船田  元君

      古川 禎久君    馬渡 龍治君

      山本ともひろ君    末松 義規君

      田島 一成君    田名部匡代君

      村井 宗明君    吉田  泉君

      古屋 範子君    江田 憲司君

    …………………………………

   環境大臣         斉藤 鉄夫君

   環境副大臣        吉野 正芳君

   環境大臣政務官      古川 禎久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  鎌形 浩史君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 西村 泰彦君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        椎川  忍君

   政府参考人

   (公害等調整委員会事務局長)           香川 弘明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小田 克起君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           徳久 治彦君

   政府参考人

   (林野庁森林整備部長)  沼田 正俊君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西本 淳哉君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            羽藤 秀雄君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      西山 英彦君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   加藤 重治君

   政府参考人

   (環境省大臣官房長)   南川 秀樹君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            小林  光君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       原  徳壽君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  寺田 達志君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            白石 順一君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  黒田大三郎君

   環境委員会専門員     吉澤 秀明君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十四日

 辞任         補欠選任

  木挽  司君     北村 茂男君

同日

 辞任         補欠選任

  北村 茂男君     木挽  司君

    ―――――――――――――

三月二十四日

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)

同月十八日

 すべてのアスベスト被害者を補償し、被害の根絶を求めることに関する請願(田島一成君紹介)(第一〇〇二号)

 同(柚木道義君紹介)(第一〇〇三号)

 大口排出源に対する削減義務化等実効ある温暖化対策を求めることに関する請願(保坂展人君紹介)(第一一〇四号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一一三五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案(参議院提出、第百六十八回国会参法第一一号)

 環境の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

水野委員長 これより会議を開きます。

 環境の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官鎌形浩史君、警察庁長官官房審議官西村泰彦君、総務省大臣官房地域力創造審議官椎川忍君、公害等調整委員会事務局長香川弘明君、外務省大臣官房審議官小田克起君、文部科学省大臣官房審議官徳久治彦君、林野庁森林整備部長沼田正俊君、経済産業省大臣官房審議官西本淳哉君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長羽藤秀雄君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長西山英彦君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官加藤重治君、環境省大臣官房長南川秀樹君、環境省総合環境政策局長小林光君、環境省総合環境政策局環境保健部長原徳壽君、環境省地球環境局長寺田達志君、環境省水・大気環境局長白石順一君及び環境省自然環境局長黒田大三郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

水野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

水野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土屋品子君。

土屋(品)委員 自由民主党の土屋品子でございます。

 本日は、質問の機会をいただきましてありがとうございます。時間もないので、早速始めたいと思います。

 周知のとおり、二〇〇七年に発表されましたIPCCの第四次報告書でも深刻な事態を迎えております地球温暖化問題ですけれども、私自身、その実態の一部をかいま見る機会に恵まれましたので、そのことについて少し話をさせていただきます。

 私は、昨年の六月二十七日から七月三日までの間、衆議院議員アイスランド訪問議員団の団長として院から派遣されまして、アイスランド議会との交流促進及び政治経済事情調査を行ってまいりましたが、その際に、首都レイキャビクから数百キロ離れましたヨーロッパ最大のバトナ氷河を視察し、実際の氷河の後退をこの目で見ることができました。

 このバトナ氷河は、アイスランドの国土面積の約一二から一三%を占めている広大な氷河ですけれども、その中のスカフタフェル氷河と呼ばれるところを歩きながら、地球温暖化の影響等についてバトナ氷河国立公園のマネジャーから説明を受けました。そのとき目に触れた、標高の一番高いところで二千百十メートルという氷河のスケールとその後退の規模には、実際に、モレーン、氷堆石という氷河がなくなった跡の土の上を歩きながらだったんですけれども、大変驚きました。

 説明によりますと、氷河は百年ぐらい前から縮小していて、一九〇〇年から一九四〇年の四十年間で約五百メートル後退したと言っています。それで、最近数年間では、二〇〇六年に九十六メートル、二〇〇七年は五十メートルと年によって後退の程度は違うようですけれども、現在、毎日五十センチぐらいの後退で急激に縮小しているとのことで、人為的起源による温暖化の影響は否定できないとのことでございました。

 さて、京都議定書は昨年から実施段階に入りましたが、マイナス六%の約束を堅持しなければならない我が国の温室効果ガス排出量の最新の総排出量速報値は、平成十九年度の速報値で、京都議定書の規定による基準年の総排出量に比べると、総排出量としては八・七%上回っており、議定書の六%削減約束を達成するためには、森林吸収源対策や京都メカニズムでの確保が目標どおりだった場合に、九・三%の削減が必要となると理解していますが、それでよいでしょうか、お答えいただきたいと思います。

寺田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のとおり、我が国の二〇〇七年度の温室効果ガスの総排出量は十三億七千百万トンでございまして、京都議定書の基準年比でプラス八・七%。御指摘のとおり、森林吸収源対策で三・八%、それから京都メカニズムで一・六%を想定しておりますので、これを差し引きますと、マイナス六%達成のためには九・三%の排出削減が必要と考えております。

土屋(品)委員 さてそこで、この数字を達成するための方策についてどのようなビジョンを描いているのかについて、例えば原子力発電所の利用率や家庭部門の排出量削減策を簡単に御説明願いたいと思います。特に、国内の循環型社会への転換に向け、スリーR運動の重要性は言うまでもないわけですけれども、最近のリデュース、リユースの促進策についての地方公共団体や企業等の取り組み状況について、私が環境副大臣のときに始まったと思うんですけれども、杉並区のレジ袋運動、これから全国に展開していったと思うんですけれども、今の全国展開状況とあわせてお答え願いたいと思います。

寺田政府参考人 マイナス六%の削減目標の達成のための施策というのは極めて広範多岐にわたるものでございますけれども、今御指摘のございました、例えば電源について言いますと、最近の電力原単位の悪化というのは、原子力発電所の停止に伴いますところの電力原単位の悪化ということになっておりますけれども、一応、京都議定書の目標達成計画では、過去記録されました我が国の原子力発電所の稼働状況がよかったころ、八〇%以上の稼働率というものを見込んでいるところでございます。

 また、御指摘ございましたCO2の削減にも寄与するレジ袋の削減等の運動でございますけれども、現在、レジ袋の削減の取り組みについて言いますと、全都道府県の約八割、市町村の約四割が何らかの方法でレジ袋削減の取り組みを実施しておりまして、環境省としても、本年一月の全国大会の開催を初めとしまして、先進的な取り組み事例の発信などを通じまして国民運動としての盛り上がりを後押ししていきたいと考えておるところでございます。

土屋(品)委員 原子力の問題はちょっと深刻なのかなと思うんですけれども、八割というと、まだまだ現在の稼働率からすると大変厳しいかと思いますけれども、この辺は住民の理解というのが非常に大事だと思いますので、続けて努力していただきたいと思います。あと、レジ袋運動も、四割というと、これが多いのか少ないのかというのはいろいろ人によって感覚的なものがあると思いますけれども、引き続き、八割ぐらいを目標に頑張っていただきたいと思います。

 さて、京都議定書が失効する二〇一三年以降の次期枠組みについては、ことしの十二月にコペンハーゲンで開催されますCOP15で決定される予定ですけれども、それに先立ち昨年末ポーランドで開催されたCOP14では、先進工業国と途上国の間での意見の溝が埋まらず、あらゆる面で交渉が停滞したと感じております。

 そんな中、我が国として次期枠組みにどうリーダーシップを発揮していくのか、我が国が推奨しているセクター別アプローチについて、昨年十一月にアジア太平洋パートナーシップ鉄鋼タスクフォースが合意した七カ国による試行の評価とともに、その決意についてお聞かせ願います。

吉野副大臣 お答え申し上げます。

 ポスト京都で一番大事なのは、IPCCの求めている科学的知見をどう満足させるかということだと思います。そのためには、全世界の国々が参加をしていくということが一番大事になると思います。

 そのためには、まず先進国があって、主要排出国があって、途上国、この三つの排出国があるわけですけれども、一番公平な基準というものをつくっていかねばならない。そのためには、セクター別アプローチというのは、先進国間においては比較可能性がある、鉄鋼業なら鉄鋼業で同じ物差しで比較できる、そういう公平性の問題が一番担保されると思います。また、主要排出国においても、このセクター別アプローチは、比較できるということでも有意な公平性を担保できる、そういう手法だと思います。

 途上国においては、特に今先生おっしゃったようなAPP、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ、主要七カ国が参加しています。全世界の排出量の約六割を中国、インド、日本、アメリカ、豪州、韓国、カナダの七カ国で排出しているわけですので、ここの具体的な取り組みが行われております。

 先般、十二日に、OECD閣僚級ラウンドテーブルがパリで開催されまして、私も参加をさせていただきましたけれども、そこで、電事連の代表の方がAPPの具体的な取り組みを発表しております。具体的に、中国の電力で、メンテナンスも含めて、どういうところをどういうふうにすればもっと効率が上がるかという本当にすばらしい発表をさせていただきました。

 こういう形でセクター別アプローチというものを我が国が提唱して、そのリーダーシップを発揮していきたいと思っております。まさに、COP15においてポスト京都の枠組みづくり、大事な大事な枠組みでございますので、そこに、我が国は、セクター別アプローチというものをきちんと理解していただいて、リーダーシップを発揮していきたいと思っております。

 以上です。

土屋(品)委員 今、吉野副大臣がおっしゃったように、セクター別アプローチをよく理解していただく、これが非常に大事なことだと思いますので、頑張っていただきたいと思います。

 さて、昨年の洞爺湖サミットで合意いたしました、世界全体として二〇五〇年までに温室効果ガスの排出量を半減するという長期目標に対して、我が国は少なくとも六〇から八〇%削減という目標を掲げているわけですけれども、その実現のためには低炭素社会への移行が不可欠と考えております。そのためには、排出権取引や環境税の導入といったことを通じた意識変革をどうするかが今後の重要な政策課題であると認識しています。

 世界最大のCO2排出国で京都議定書からの離脱をしていますアメリカ、電力供給の約五〇%を石炭に頼っていて石油の輸入率が約六〇%に達したこの国が今後どのような地球温暖化対策をとろうとしているのか、このことは我が国の環境戦略にとっても重要な要因と考えますが、オバマ大統領は、環境分野への集中投資による雇用創出を目指すグリーン・ニューディール政策を掲げ、温暖化防止策でも、中期的には一九九〇年水準へ、長期的には対一九九〇年比八〇%削減という姿勢を明確に示し、次期枠組みづくりにも積極的な対応をしております。

 国連の潘基文事務総長も、COP14の演説で、現在の金融危機は気候変動問題に取り組む機会でもある、経済危機が拡大する今、緑の成長が数百万の雇用を創出すると発言して、中国や韓国、ドイツでも、再生可能エネルギー産業が景気対策の中心として取り上げられています。

 そこで、我が国の環境対策を経済成長のエンジンにとの取り組みについては、環境立国戦略にも方向性として的確な打ち出しがなされているわけですけれども、環境大臣が総理に提言された今回の「緑の経済と社会の変革」の内容について、投資規模、再生可能エネルギー産業界の拡大、雇用創出といった面から、その効果について御説明願いたいと思います。

南川政府参考人 ありがとうございます。

 いわゆる日本版グリーン・ニューディール、「緑の経済と社会の変革」でございます。

 私ども、環境を切り口としまして経済や社会の構造を変えていきたい、そして、あるべき日本の姿を示したい、活力ある日本をつくり出したいと考えまして、現在作業をいたしております。

 内容としましては、CO2を大幅に削減できるような低炭素社会をつくるんだ、そういったことがやはり核になろうかと思いまして、再生可能エネルギーの充実ということも大きな柱になることを想定しております。

 現在、作業をしております。したがいまして、投資規模、雇用創出の規模につきましては数字はまだ持っておりませんが、できるだけ早く出したいと思っております。

 その中で、施策としましては、小中学校を初めとする公的な施設への太陽光発電の大々的な導入とか、それから、エコポイントなどを活用しましてテレビとかエアコンとか冷蔵庫の買いかえを大々的に促進する、また、小水力やバイオマスを活用する、そういった再生可能エネルギーを含めた日本の環境技術、そういったことへの投資が進むような形にしていきたいと思っております。その効果につきましても、できるだけ早く算定できるような努力をしたいと思っております。

土屋(品)委員 ありがとうございます。大変期待しておりますので、頑張っていただきたいと思います。

 次に、排出権取引と環境税についてですけれども、アメリカを見たとき、各州のキャップ・アンド・トレードの取り組みは、二十三州がキャップ・アンド・トレードプログラムを推進し、さらに十州がこれらのプログラムに参加する可能性があるというのが現状の認識なんですけれども、輸送に関しても、特に自動車に関する規制を厳しくしていまして、中には全米の基準より厳しいところもあると聞いています。オバマ大統領は、カリフォルニア等の連邦基準以上の州の規制に関しても支援していくと表明しています。

 これらのことから、現在、各州が取り組んでいる、もしくはこれから取り組むこれらのプログラムは全米基準となっていくと予想されますし、また、期待もされていることだと思います。

 また、企業の視点からは、USCAPに二十七の企業と六つのNGOが参加し、キャップ・アンド・トレードを支持しています。それらの中には、日本でも有名なAIGやクライスラー、フォード、GM、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ペプシコ、それからシーメンス、シェル、ゼロックスといった有名企業が名を連ねていて、彼らは、私たちは、米国経済を成長させながら、米国の排出増加をおくらせ、停止させ、逆転させる道を進むことを約束しますと宣言し、企業活動を推進しています。

 そういった意味では、百年に一度と言われる経済危機で、IPCC第三作業部会の報告にある、二〇三〇年までに排出量を大幅に削減する場合の約一兆ドルとも言われる費用が、この機会に逆に投資として潤沢に世界じゅうを回ることを私は願っているところでございます。

 また、我が国の財政状況を見ましても、年金や医療といった社会保障関係の財源不足は目に見えて逼迫しているわけで、経済状況が好転した時点で、早晩、税制を含めて抜本的な財政改革が検討され、導入されることになると予想することができるわけです。その際に、環境税の導入論議も大いにされるべきと考えますし、ぜひ導入してもらいたいと思うんですけれども、我が国でのキャップ・アンド・トレードと環境税の状況に関しての御所見をお聞かせ願いたいと思います。

古川大臣政務官 排出量取引や環境税の導入、こういうものは、経済的なインセンティブを与えることによりまして、結果的に温室効果ガスの抑制につながると期待されます。例えば、省エネの機器を購入するとか設備投資をするとか、あるいは低炭素型のライフスタイルへの転換を促すとか、そのような形での効果が期待できるわけです。

 したがいまして、先生おっしゃいますように、環境税や排出量取引というもの、市場メカニズムを活用して社会を変えていく、これは非常に大事な、不可欠な手法だと考えております。したがいまして、今後とも、低炭素社会の実現に向けまして、こういう取り組みに積極的にかかわっていきたいと思っております。

土屋(品)委員 どうもありがとうございます。

 低炭素社会実現には国民の意識が非常に大事だと思います。

 そんな中で、きょうは文科省にも来ていただいていますけれども、昨年の中教審答申を受けて改訂されました小中学校の新学習指導要領が昨年三月に告示され、一部が平成二十一年から先行実施、小学校は平成二十三年、中学校は平成二十四年に全面実施予定と理解しております。

 そんな中、持続可能な社会という面から、環境教育の重要性は大変大きいものがあると考えています。今回も教科として環境科が採択されなかったことに関しまして、私は当選以来、このことについてはぜひ推進してほしいと言ってまいりましたので大変残念でございましたが、それにしても、中身としては、児童生徒が環境についての理解を深め、責任を持って環境を守るための行動がとれるようにするため、学校における環境教育の一層の充実を図るとして、さまざまな改善充実が行われることには感謝を申し上げるところでございます。ただし、副読本や教材、環境教育を指導する教員等の育成といった面では、まだまだ十分と言えないのではないかと思っております。

 そこで、文部科学省において、今後十年、二十年先を見据えたとき、環境政策の重要性も加味して、環境を教科として採用し、教科書の選考、採択などをしていくことについて、現状でどういう御所見か、お聞かせいただきたいと思います。

徳久政府参考人 豊かな環境を維持しつつ、持続可能な発展ができる社会を構築するためには、広く国民全体で環境の保全に取り組むことが重要です。このため、学校、家庭、地域社会が連携しながら、子供から大人まで国民一人一人が環境に対する理解と関心を深め、具体的な行動に結びつけられるような環境教育を推進することが重要と考えております。

 現在、学校では、社会科、理科、技術家庭科などの各教科において環境に関する教育が行われるとともに、総合的な学習の時間を活用しまして、既に多くの小中学校で教科横断的な環境に関する教育が推進されているところでございます。

 さらに、今委員御指摘のように、新学習指導要領におきましては、小中学校それぞれにおきまして、持続可能な社会をつくることの重要性の認識とか、持続可能な社会の形成の観点から解決すべき課題の探求に関する学習を取り入れるなど、環境教育に関する内容の充実を図ったところでございます。

 文部科学省といたしまして、委員御指摘の教科として環境科を設けるかどうかにつきましては、中長期的に検討すべき課題と考えてございますけれども、当面は、新学習指導要領の着実な実施を進める中で、環境教育の充実に努めるとともに、新学習指導要領を踏まえた新しい教科書の質、量両面の充実を図ってまいりたいと考えております。

土屋(品)委員 環境の教科をつくるというのは私の夢でございまして、実現できるようにこれからもいろいろなところで発言させていただきたいと思います。

 さて、来年二〇一〇年は国連の国際生物多様性年で、名古屋においてCOP10が開催されるわけですけれども、主催国として今からどのような活動をしていくのか、また、国内での広報、啓蒙活動が不十分な気がするのですが、その取り組み状況についてお聞かせいただきたいと思います。

黒田政府参考人 生物多様性に関しましては、その保全また持続可能な利用につきまして国民の一層の深い理解を得ることがとても大事だ、こういうふうに考えておるところでございまして、本年度から普及啓発また広報のプロジェクトを開始しています。

 具体的に申し上げますと、生物多様性にかかわりの深い著名人によります、いきもの応援団というものを発足させて、講演であるとか報道などさまざまな機会に生物多様性についての広報を図る、そういう取り組み、さらに、国民の生物多様性行動リストの提示、民間参画ガイドラインの策定、コミュニケーションワードとして、「地球のいのち、つないでいこう」、こういうものをつくり、公表するというような取り組みを既に行っているところでございます。その他、例えば今月の二十八日には、環境大臣と子供たちとの生物多様性に関する集いというようなものも実施する予定にしております。

 御指摘のとおり、来年はCOP10が開催されます。また、国連が定めました国際生物多様性年でもあるということでございますので、今後、例えばシンポジウムの実施であるとかNGOや企業との対話会合の開催などを初め、数多くの普及啓発、広報活動というものを重点的に展開していきたいと考えておるところでございます。

土屋(品)委員 本当にいい機会、これをチャンスに、国民が生物多様性ということを理解してもらう機会になればと思います。

 環境立国戦略の策定以来、さまざまな標語、目標がつくられていますけれども、いろいろな言葉ばかりが躍っていて、国民に浸透しているとは言えないものもあると考えておりますので、ぜひ強力に進めていただきたいと思います。

 それから、きのうの新聞に、中国からの大気中に水銀が入っているという記事が出ていましたし、また、数日前でしたか、アホウドリの世界的繁殖地として知られる北太平洋ミッドウェー環礁を含む北西ハワイ諸島で、東アジア地域で出されたごみが流れ着く場所なんだそうですけれども、年間約五十トンの漂着ごみが回収されているとの記事が出ておりました。環境問題というのは、地域や国内での取り組みもさることながら、私は、アジアにおけるASEANプラス3の協力は大変重要であると考えております。

 そこで、最近の日中韓三カ国大臣会合での広域大気汚染と海洋ごみについての成果について、見解をお聞かせ願いたいと思います。

吉野副大臣 広域の大気汚染とか海洋ごみ問題、関係国が集まってこの問題を議論するということは、本当に大事なことだと思います。

 そういう中で、昨年十二月に第十回の日中韓環境大臣会合が開かれまして、二つの点が合意されました。

 一つは、光化学オキシダント汚染や黄砂に係る科学的知見の共有の研究協力について、さらなる協力をしていくということについて合意いたしました。また、海洋ごみについては、中国及び韓国に対して、海洋ごみ削減に向けた取り組みの強化を求めるとともに、各国の対策、経験の共有、一般への意識啓発活動を通じて、海洋ごみ防止に向けて協力をしていくことを合意いたしました。今後とも、さらにこれを進めていきたいと思っております。

 またことしも日中韓の環境大臣会合が開かれますので、そこでも、先生のおっしゃるこの大気汚染問題、海洋ごみ問題、さらに進めていくようにしていきたいと思っております。

土屋(品)委員 ありがとうございます。

 次に、化学物質の管理に関してですけれども、我が国でも、国民生活の安心、安全という側面から、このことは大変関心が増大していると思います。

 二〇〇二年に南アフリカのヨハネスブルクで開催されました環境サミット合意でも、二〇二〇年までにすべての化学物質による人の健康や環境への影響を最小化するとの合意がなされて、EUではREACH規制が二〇〇七年から施行されているのは御承知のとおりですけれども、我が国の化審法については、一九七三年の法制定以降の新規化学物質についてすべて事前の審査を定めたもので、既存化学物質については国が一定の安全性評価をしてきたものの、不十分であることから、化審法見直し合同委員会が法改正に向けた報告書を昨年十二月に公表したところであります。

 そこで、今国会で化審法の一部を改正する法律案の審議が求められているわけですけれども、大臣の所信にもあったとおり、とりわけ小児の環境保健対策は、少子高齢化の中、未来を担う小児の健康を守る非常に重要な政策であると考えております。

 そこでお聞きするわけですけれども、現行の法律や法律案では単体の化学物質に関する規制の側面しかなく、学校や家庭においてシックハウス症候群というのが今多くなっていますけれども、これが、単体では大丈夫なものが集まったときに、複合物質による有害なものが影響しているのではないかというような話も出ております。そういう点で、複合物質による有害物質の規制という観点が、今の法律、今後議論する中には欠落しているのではないかと思えるのですけれども、現状での化学物質の複合汚染に関してどのような対策を講じているのか、また今後どのように規制していくかについてお答え願いたいと思います。

 あわせて、次世代の産業基盤技術であるナノマテリアルについても健康や環境に与える影響が未知数であると思うのですが、今後どのように取り組まれる予定か、お聞きしたいと思います。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、単体の化学物質でなく複数の化学物質による影響、これには、例えば、吸入をするあるいは口から入るというように暴露の形態が複数である場合、あるいは物質そのものが複数ある場合、いろいろな場合があるわけですけれども、それぞれ専門家が、いろいろ複合影響があるだろうというふうに言われております。ただ一方、その影響については、試験評価手法そのものがなかなか確立していないというところが現状でございます。

 このため、環境省としましては、複数の暴露を経由した影響についてのメカニズムの解明や、アレルギーとの関係に着目した複合影響について調査研究を進めているところでございます。今後とも、国内外の情報収集をしますとともに、調査研究を進めて、施策の構築に反映してまいりたいと思っております。

 また、ナノマテリアルにつきましては、これもさまざまな分野での利活用が期待されている非常に重要な物質ではありますけれども、人あるいは動植物への影響が及ばないように、適切な管理が必要だと認識しているところでございます。

 このため、環境省としましては、ナノ材料の使用実態等を踏まえた環境中への放出の可能性と管理手法についての知見の収集と整理を行うために、ナノ材料環境影響基礎調査検討会を設置いたしまして、本年の三月に、工業用ナノ材料に関する環境影響防止ガイドラインとして、今後、事業者等がナノ材料に関する環境保全上の適切な管理方策を選択するための情報を取りまとめたところでございます。

 今後、事業者におかれましてこのガイドラインに基づいて適切な管理を進めていただくため、その周知を図りますとともに、まだまだ未解明な分野もございますので、人及び動植物への影響を評価する方法の開発あるいは確立や、測定方法の開発、またナノ材料に関する直接的な調査研究について今後とも実施をいたしまして、施策に反映してまいりたいと考えております。

土屋(品)委員 時間になりました。

 微小粒子状物質に関する課題とか、まだまだ今後課題はあると思います。また、そのほか、今後の食料、エネルギー問題を考えたときに、バイオマスや地熱発電の取り組み強化などの推進策について、各省との連携を含めて積極的な行動を環境省に期待して、本当は質問したかったんですけれども、ちょっと時間がなかったので。

 我が国の環境行政がこれまで以上に国民の皆様にとって身近になり、国際的にも評価されることを期待いたしまして、本日の私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

水野委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、日本版グリーン・ニューディール関係を主として質問させていただきたいと思っております。

 百年に一度の未曾有の経済危機が今世界を、また日本を襲っているわけでございますけれども、我が国も、二〇〇八年度のGDP成長率は年率でマイナス一二・一%、これまで経験したことのない景気の急降下に直面しているところでございます。世界各国が厳しい経済状況に直面している今こそ、環境・エネルギー政策を未来への投資ととらえて、新たな産業と雇用の創出につなげていくべきでございます。

 公明党は、このため、ことし一月に、三年間で十兆円規模の投資を行って今後五年の間に百兆円の市場規模、二百万人超の雇用を実現する「「グリーン産業革命」への提言」をまとめさせていただきました。太陽光発電装置の全小中学校への設置や、また電気自動車、プラグインハイブリッド車など次世代自動車の普及促進、省エネ家電の購入促進など、具体的な提言を盛り込ませていただいております。

 斉藤環境大臣は、十八日の経済財政諮問会議におきまして、日本版グリーン・ニューディールともいうべき「緑の経済と社会の変革」について、検討中のアイデアの一部を御紹介されました。エコポイント等の活用によるグリーン家電の普及や、また太陽光発電の世界一奪還、次世代自動車の普及促進など、我々が提言した内容も盛り込まれた非常に野心的なプランだと思います。

 本日は、こうした具体的な取り組みの中から主要な施策を取り上げて、具体的な取り組み方針について伺いたいと思います。

 まず最初に、太陽光発電の世界一奪還について伺います。

 低炭素社会づくりのためには、化石燃料から脱却して再生可能なエネルギーを大々的に導入していく必要がございます。中でも太陽光発電は、我が国が世界のトップを走ってきた技術でございまして、導入のポテンシャルも非常に大きい。新築はもちろん、既存の住宅やビルにも設置が容易でありまして、国民や個々の事業者がみずからの意思で地球温暖化対策に取り組むことを可能にすることは非常に大事なことではないかと思っております。

 この太陽光発電を爆発的に普及させるためには、さきに経済産業省が発表しました新たな電力買い取り制度のような仕組みづくりが重要でございますけれども、加えて、国や地方公共団体がみずからの施設に率先して太陽光発電を設置して、需要を生むことによって価格を下げていくことが有効だと思います。また、学校に設置すれば、子供たちに対する環境教育も見込めるわけでございますね。

 公明党は、全小中高等学校を初めとして公的施設への太陽光発電設備の設置を提言しておりますけれども、このような公的施設への太陽光発電の普及に向けた環境省の取り組みの方針をまず伺いたいと思います。

寺田政府参考人 御指摘のとおり、庁舎や学校などの公共施設への太陽光発電の導入拡大は、地域に模範を示す率先的な地球温暖化対策として重要である。さらに、地域における防災機能の強化や学校における環境教育効果、あるいは地域経済の活性化といった視点からも非常に重要な取り組みだと認識しております。

 三月十八日の経済財政諮問会議において「緑の経済と社会の変革」の具体的なアイデアを大臣から御紹介させていただいた際にも、こうした、学校、庁舎、公園など公共部門での率先導入の重要性について御説明したところでございます。

 環境省としては、これまでも、地方公共団体の建物への率先的な導入支援などを行ってまいりました。今後とも、関係省庁と連携いたしまして、導入量の一層の拡大に取り組んでまいりたいと考えております。

江田(康)委員 今、地球環境局長の方からお話を伺いましたけれども、そのような大目標を掲げながらも、幾らお題目を唱えても実質的に設置が進まなければ話にならないわけでございまして、このような自治体の取り組みを進めるためには、私は、学校の耐震化事業のように、国の補助率の引き上げや自治体の裏負担に対する交付税や交付金、また地方債による支援など、自治体の取り組みへのインセンティブが必要かと思いますけれども、これについては総務省にその対応をお伺いいたします。

椎川政府参考人 お答えいたします。

 私どもも、地方公共団体の公共施設等への太陽光発電システムの導入促進を図ることは重要な課題であると認識しておりまして、現在の小中学校施設の建物の改修事業でありますとか新増築につきましては、太陽光発電システムを導入する場合に、補助事業、単独事業ともに特別な地方債の対象といたしまして、元利償還金についても交付税に一部算入するということをしております。

 しかし、そういう制度のない公用施設、公共施設につきましてもあまねく太陽光発電システムが導入できますように、地域活性化事業債という地方債の対象といたしまして、その元利償還金の一部について、後年度、交付税の基準財政需要額に算入する。具体的には、地方債の充当率七五%、元利償還金の算入率三〇%という措置を講じております。

 今委員から御指摘ありましたように、この措置を拡充するということが検討できないかということでございまして、鳩山大臣も自然との共生ということを政治理念にされておりまして、現在、地域力創造プランというものの概要を十二月に発表いたしまして、その詳細を詰めているところでございます。

 その柱の中に、私どもの定住自立圏構想の推進とか、あるいは過疎などの条件不利地域の振興という問題もあるわけでございますけれども、特に自然との共生による低炭素社会の実現という柱も立てまして、今御指摘のような地方公共団体が行う太陽光発電システムの導入の取り組みにつきまして、さらなる財政支援措置の拡充ができないかということを検討しているところでございます。

江田(康)委員 ぜひとも、自治体での取り組みが爆発的に進められるように、さらなる支援措置の検討を早急に続けていただきたいと思うわけでございます。

 さきに、経済産業省が新たな電力買い取り制度の導入を決定されました。この新たな電力買い取り制度の導入につきましては、公明党がこれまで多くの提言や国会質問を通して一貫して主張してきたものでありまして、今回の導入決定を高く評価したいと思います。

 ただし、今検討されているこの制度設計は、十五年の初期投資回収がその前提になっていると承知しておりますけれども、十五年回収では政府目標の達成も難しいのではないかと思っております。公明党は、百年に一度の景気浮揚策として爆発的普及につながるためにも、新たに復活する補助金のさらなる引き上げを含めて、十年で回収できる制度設計について検討を進めるべきだと考えております。

 また、制度導入に伴う電力料金の加算につきましては国民の理解が必要でございますけれども、どのような制度設計で理解を得ようとしているのか、経済産業省のお考えをお伺いします。

羽藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま制度の設計についてのお尋ねがございました。

 先般発表いたしました新たな買い取り制度に基づく投資回収の期間との関係でございますけれども、これは、新築の住宅あるいは既存の住宅においてシステムをどういう形で設置をするかという価格、これにいろいろな差もございます。また、各家庭の生活のスタイルなどによってもこれは幅がございまして、それに対しまして、御指摘のとおり、国の補助金のみならず、税制による支援、それから自治体におけるそれぞれの取り組みの補助金の水準、こういったものを総合的に組み合わせることも想定いたしまして、おおむね十年から最長でも十五年程度で投資回収が可能となるよう、買い取り価格あるいは期間を設定する方向で検討を続けてまいりたい、このように考えております。

 また、理解をどのように得るのかというお尋ねがございました。

 この制度は、国民の全員参加型ということで、電力の需要家に広く薄く御負担をいただくということを想定しております。あわせまして、ドイツのような高額な負担をお願いするというふうな事態にならないように、三年から五年でコストが下がると考えられております太陽光発電に限定する、あるいは買い取りの対象を自家消費を超える余剰電力に限定する、また、発電事業目的で設置されるものについては対象としないといったこと、そして、買い取りの期間そのものについては十年程度とするという工夫を講じますことによって、標準的な一般家庭における負担水準を月額数十円から百円程度に抑えてまいりたい、そのように考えております。

 今後の国会の御審議、あるいは政府といたしましても、費用の円滑かつ適正な転嫁に寄与するための広報活動を通じまして国民に周知を図りまして、その理解と協力を得るように努めてまいりたいと考えております。

江田(康)委員 ありがとうございます。

 この新たな電力買い取り制度の導入については、大変重要でございますので、ぜひとも十年で回収できるような制度設計を、また、国民の自己負担が百万を切るというところがやはり爆発的普及につながる重要なところだと我々は思っております。ぜひとも前向きな検討を続けていただきたいと思うわけでございます。

 きょうは、斉藤環境大臣がもうすぐ途中で出られるということでございますので、私の質問の途中でございますけれども、この後、日本版グリーン・ニューディールを大きく進めていくその柱は、太陽光発電の世界一奪還であり、また次世代自動車の普及促進であり、グリーン家電の爆発的普及、そういうところが非常に大事かと思っておりますが、百年に一度の経済危機に対応して我が国が世界で最初に不況から脱出するためには、環境を切り口として日本の経済社会構造を抜本的に変革するような、百年に一度の大胆な政策パッケージの取りまとめが必要でございます。

 今大臣は、三月末を目指して「緑の経済と社会の変革」の取りまとめに向けて御努力をいただいておりますけれども、ここで大胆な政策提言に向けた斉藤大臣の決意をお伺いしておきたいと思います。

斉藤国務大臣 「緑の経済と社会の変革」の基本的な考え方については、今、江田委員がおっしゃったとおりの考え方で進めております。そして、基本的には、低炭素革命というだけではなくて、循環型社会、また自然共生社会の実現を目指すものということで、思い切った投資、そしてそれによって需要を創出するということを考えております。

 緑の社会資本への変革、これは先ほど委員のお話の中にもありました、太陽光発電の学校への設置、公共施設への設置等がございます。また、緑の消費ということで、同じ買うなら環境配慮の製品を、こういう方向に世の中を持っていくもの。それから、緑の投資、同じ投資をしようとするのであれば、環境配慮型の企業やそういう事業に対して投資をする、そういう社会。また、緑の技術革新、そして緑のアジアへの貢献というものを内容に盛り込みたいと思っております。

 時期ですけれども、三月末ということで進めてきましたけれども、今、政府の経済成長戦略の発表が少しずれ込むということもございまして、その政府全体の成長戦略と整合のとれたものとするためにも少し発表がおくれるかもしれませんけれども、できる限り早く取りまとめたい、このように思っております。

 これらを通じて経済成長や雇用創出につなげていくべく、環境先進国としてふさわしい大胆な政策を打ち出したいと考えております。

江田(康)委員 大臣、ありがとうございました。ぜひとも、経済成長と雇用の創出、新産業の創出、そういうものにつながる大胆な政策パッケージ、周りの雑音に翻弄されることなくこれを提言していっていただきたい、そのように思います。

 大臣、お時間でございましょうから、どうぞ。

 次に、また戻らせていただきますけれども、やはり大事になってくるのは自動車関係でもあるかと思っております。次世代自動車の普及促進についてお伺いをさせていただきます。

 排出ガス性能や燃費性能にすぐれたハイブリッド、また電気自動車などの次世代自動車を普及させることは、環境の保全に役立つだけでなく、輸出や需要の落ち込みで危機に瀕している自動車産業界にとっても、新たな需要を喚起して雇用創出を図る経済対策として非常に重要な課題だと考えます。

 海外の主要国でもその動きが見られまして、アメリカのオバマ大統領も、二〇一五年までに百万台のプラグインハイブリッドを生産、導入する、こういうふうに大きく進めておるところであります。

 我が国でも、二〇二〇年に新車販売台数の半分を次世代自動車とする政府目標を目指して、電気自動車やプラグインハイブリッド車などの次世代自動車の購入を促進するための補助制度を初めとして、与党の税制改正大綱には自動車取得税、自動車重量税の思い切った軽減措置を盛り込んで、今、参議院でその法案が審議されている最中でございます。

 公明党は、新たな経済対策として、政府目標をもっと前倒しして、次世代自動車を五年後に百万台、二〇二〇年に新車販売の七〇%超とする提言を行ってきたところでございますが、そのためにも、この次世代自動車等の補助金や減税に加えて、車齢十年以上の車を燃費基準達成の新車に買いかえる際に補助する、新たなスクラップインセンティブ制度の導入を提言したいと思っております。今の支援措置では次世代自動車というところに限定されるわけでございますので、やはり幅広く、十年以上の廃車を促進する、また買いかえを促進する、こういうような制度としてこのスクラップインセンティブ制度というのは非常に重要かと思っていますし、ヨーロッパの各国でもこれは導入を開始しているところであります。

 世界的な経済危機に直面する今こそ、環境と経済が両立する新たなビジネスモデルが必要かと思いますが、次世代自動車の普及促進に向けて具体的にどのように取り組んでいくのか、環境省の考えをお伺いいたします。

白石政府参考人 委員御指摘のとおり、排出ガス性能それから燃費性能がすぐれた環境負荷の小さい自動車の普及は、都市の大気環境の改善あるいは地球温暖化対策に資するということで、大変重要なのは御指摘のとおりでございます。

 先ほど御指摘ありましたような税制の改正であるとか、あるいは、環境省におきましても、二十年度の補正予算で、市場導入前の電気自動車の地方公共団体等への貸し出し実証事業ということに取り組ませていただいております。

 また、先ほど地球環境局長から御答弁申し上げましたように、去る三月十八日の経済財政諮問会議におきましては、大臣の方から「緑の経済と社会の変革」ということでいろいろ御説明させていただきましたが、その中におきましても、御指摘のありました、経年車を廃車して環境性能がよりよい次世代自動車等に買いかえることを促進する施策、あるいは電気自動車等のさらなる普及に資するモデル事業を実施していくことを検討しておるということを説明いたしました。

 その具体化に当たりましては、関係省庁と緊密に連携して推進することによりまして、次世代自動車の普及が加速して、自動車産業のすそ野の広さということがございます、経済効果、雇用創出効果、環境保全と相まって、よりよい日本のためにということで進めさせていただきたいと考えております。

江田(康)委員 ぜひとも新たなスクラップインセンティブ制度の導入についても政府として検討を進めていただきたいと強く申し上げておきます。

 次に、日本版グリーン・ニューディールの三本柱のもう一つ、グリーン家電の普及についてお伺いをさせていただきます。

 二〇〇七年度の日本全体の温室効果ガス排出量は、先ほど土屋先生からの御質問でもありましたように、九〇年度と比べて八・七%の増加ですよ。中でも、家庭部門が四一%と大幅に増加しているわけです。家庭部門からの排出の約七割は電力由来。エアコンや冷蔵庫のCO2排出量の多い家電製品を省エネ型に買いかえることが非常に重要であると思っております。

 他方、電気・電子業界の売上高は、二〇〇八年度に前年度比マイナス一二%、金額にして約七兆円の大幅な減少となっております。すそ野が広い産業でございますけれども、大変厳しい状況でございます。

 こうした状況を踏まえて、国の支援のもとで性能の高い省エネ家電の大量普及を進めていくということは、まずは地球温暖化対策にもつながるし、景気・雇用対策につながるし、また、電気代の節約を通じて家計にも恩恵をもたらす、こういう一石三鳥のすばらしい対策であると思っております。

 このようなさまざまな効果をもたらす省エネ家電への買いかえを促進するために、国から財政支援を行う新たなエコポイント制度の導入等を政府は表明されましたけれども、具体的にどのような制度なのか、また、新たなエコポイント制度のメリットは何か、経済効果は期待できるのか、環境省にお伺いをいたします。

小林政府参考人 御指摘の省エネ家電への買いかえということでございます。

 先ほど数字の引用がございましたけれども、家庭の電気消費の七割ぐらいは特定の家電ということで、ここに対する効果は大変大きいというふうに考えてございます。

 エコポイント制度でございますけれども、そのメリットいかんということでございますが、これにつきましては、いろいろな環境によい行動をすることが、合計して、足し算でエコポイントとして評価されるということで、いろいろな行動に結びつくという点が大きなメリットでございます。エコ家電につきましても、そういう意味でいいますと、エコ家電に買いかえたということでポイントをためて、そしてさらにエコになるような別の商品を買う、そういったようなインセンティブになるのではないかというふうに考えてございます。

 先ほど江田委員が御紹介になりました「緑の経済と社会の変革」という斉藤大臣の提案の中でも、そうしたことで、エコポイントを活用した省エネ家電への買いかえという提案をさせていただいております。具体的な案につきましては、現在、経済産業省等と一緒になりましてこの案を詰めているところでございますけれども、今委員御指摘のとおり、エコポイントを何か国の関与のもとで発行する方法がないか、さらに検討を進めていきたいというふうに考えてございます。

江田(康)委員 今局長も申されましたけれども、各省連携でこれに取り組んでいかなければならないところでございますけれども、私は、今現在、もう一つの提案もしたいと思っておるわけでございます。

 今、経済産業省がこの買いかえに補助金を検討されているとお伺いをしております。私たち公明党は、経済対策として買いかえの起爆剤となる買いかえ補助金というのは、エコポイント制度と組み合わせて非常に重要なのではないかなと。エコポイント制度は、国からの支援を投入して新たなシステムとしてつくり上げることが非常に重要かと思っておりますが、それの一番最初の起爆剤として、やはり今買い控えが起こっておるわけでございますので、そこに補助金、クーポン券というような形で起爆剤としていくというのは大変重要かと思っております。ぜひともこれは、環境省また経済産業省が連携して大きなものに仕上げていただきたいと思うわけでございます。

 最後になってまいりましたけれども、きょうは、公明党の提言のグリーン産業革命、また斉藤大臣の「緑の経済と社会の変革」に基づいて、主要な政策課題について議論をさせていただきました。大臣も大胆な政策パッケージの取りまとめを行うということで先ほどもお伺いしたところでございますので、ぜひとも大胆な政策提言を行っていただきたい、そのように思います。

 最後の質問になるかと思いますけれども、もう一つ聞かせていただきます。中期目標関係についてお伺いをしたかったんですけれども、時間がございません、大臣もいらっしゃいませんので。

 COP15を目指してこれからの次期枠組みの合意がなされていくわけでございますけれども、その際、我が国が設定する中期目標というのは大変重要な位置づけがございます。この中期目標を達成するためにも、また、今議論をしてきました環境と経済が統合して経済を活性化するためにも、国内体制の整備として、何よりも大口排出者に対する排出削減の義務づけを行うことが不可欠ではないかと考えます。東京都は昨年六月、大企業に二酸化炭素の削減を義務づける都条例を成立させたわけでございますが、国が近い将来における排出規制、排出量取引制度を決定してこそ、そこから本格的な低炭素社会、低炭素革命や新たな設備投資、新たな需要が創出されると考えます。その削減のための企業の投資に対して、政府が無利子融資などの大規模な支援を行っていくことも重要ではないかと思っております。

 現在、排出量取引制度の試行が実施されております。我々は、遅くとも二〇一三年、ポスト京都が始まる段階においては本格的な排出量取引制度をスタートさせるべきかと考えておりますけれども、環境省、副大臣の見解をお伺いしたいと思います。

吉野副大臣 先生御指摘のとおりでありまして、ポスト京都を目指して、ことしから、排出量取引というのはきちんと頭を決めるわけですから、その目標に向かって企業内、事業所内で削減をしていくという大きな目標ができるわけです。そのために、やはり設備投資、いろいろな技術革新、RアンドD等々をしていかねばなりませんので、そこへのインセンティブとして金利政策をしていくというのは本当に重要な政策だと思っています。

 昨年十月に日本でも試行的な排出量取引が始まりました。ここでまずきちんとしたデータを収集して、どこに課題があるか、こういうものをいろいろ検討して、日本でできるようなそういう国内排出量取引制度をこれからつくっていきたいと思っております。

 また、金利政策によってインセンティブが与えられていくということは本当に重要な政策だと思っております。三月十八日に経済財政諮問会議において斉藤大臣が、「緑の経済と社会の変革」ということで、環境・省エネ投資への無利子融資制度などの重要性についても説明をしたところでありますので、環境省としても積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

江田(康)委員 ちょっと時間がございますので、生物多様性の関連で最後にもう一つお聞きをさせていただきたい。

 生物多様性に支えられた豊かな自然は、人間社会に食料、繊維、きれいで安全な水など多様な恵みをもたらす源でございます。しかし、生物多様性というのはなかなかわかりにくく、暮らしの豊かさにつながっていることは忘れがちであって、日本を含めて世界の生物多様性は危機的な状況にあるのが現状でございます。

 こうした中で、我が国は、先進国の中で初めてとなる、生物多様性の保全と持続的な利用を推進する生物多様性基本法を昨年成立させたところでございます。そして、平成二十二年、来年には、愛知県の名古屋で生物多様性条約第十回締約国会議、COP10が開催されます。

 議長国となる我が国は、会議の成功に向けてリーダーシップを発揮しなければなりませんけれども、このCOP10の成功に向けて今後どのように取り組んでいくのか、最後に環境省の取り組みについてお伺いをさせていただきます。

黒田政府参考人 来年、二〇一〇年に名古屋市で開催されますCOP10でございますが、生物多様性の保全と持続可能な利用に係る二〇一〇年以降の新たな世界共通の目標、いわゆるポスト二〇一〇年目標というふうに言われておりますが、この採択など、多くの重要課題が取り上げられることとなっております。我が国は御指摘のように議長国であり、またホスト国であるということで、地球的な視野のもと、生物多様性への取り組みを一層推進していくとともに、議論の国際的な進捗のためにリーダーシップを発揮することが非常に重要だと思っています。

 このため、環境省におきましては、今年度から、我が国の生物多様性の現状を科学的に把握するための総合的な評価を行っております。今後、この作業の進捗に応じまして、我が国としても、ポスト二〇一〇年目標、新たな目標案に関する検討を行うとともに、東アジア諸国等との意見調整も含めて、わかりやすい目標の設定に向けて世界に貢献をしていきたいと考えております。

 また、二次的自然資源の持続可能な管理、利用の方法に関する国際モデルを構築いたしまして、SATOYAMAイニシアチブとして提案するということを考えております。国連大学と連携して国際ワークショップを開催するなどして国際的な検討を進めていきたいと思っておりますし、加えまして、地球規模での生物多様性のモニタリング体制を構築する、これも非常に大事だと。そのための国際的なネットワークづくりに向けて、専門家会合などを通じて世界的な合意形成を図っていきたい、こういうふうに考えております。

 今後とも、これらの取り組みをきっちりと進めていきたいと考えています。

江田(康)委員 以上です。ありがとうございました。

水野委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時八分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時十七分開議

水野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岩國哲人君。

岩國委員 民主党衆議院議員の岩國でございます。

 先日の斉藤環境大臣の所信表明を伺いまして、本日はそれに関連した質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず最初に、最近、雇用の問題が大変取り上げられております。一方、働いても給料をもらえない、あるいはサービス残業という言葉も聞かれております。今、それだけの社会に対する貢献をしながら、そして働きながら、サービス残業を毎年毎年させられている、そういう山や森について大臣はどのようにお考えなのか。

 この環境委員会の中でも、山や森がどれだけ大きな、この地球を守るための、そして我々の生産活動のための貢献をしているか。排気ガスの吸収等に見られるように、一年三百六十五日、土曜、日曜なしで働きに働き続けて、それに対して給料が払われていない、私はそのことを取り上げたことがあります。緑に対して、森に対して、山に対して、これほど大きな貢献を日本は受けながら、いつになったら山や森に対して給料を払える国になるのか。私はそれを何回もここで取り上げてまいりました。

 私の選挙区は横浜市の青葉区、緑区です。名前は青葉、そして緑、この二つです。五月みどりというのは歌手の名前ですけれども、私の選挙区は青葉、緑。私はそれを誇りに思っておりまして、そして、この青葉、緑、まさに健康を象徴し、住環境のよさを象徴する、そこはどのような影響を受けたのか。名前だけではありませんけれども、この緑区は女性が横浜市で一番長生き、青葉区は横浜だけではなくて日本で一番男性が長生き。青葉、緑という名前のメリットというか、ありがたさというのは、住んでいる人もそれを大切にし、そしてその名前、まさに象徴するかのごとく。これが逆だったらどうでしょうか。青葉という名前がつきながら寿命はどんどん短い人ばかりだ、緑という名前がつきながら女性の平均寿命も神奈川県で、日本の中で一番短いというのではなくて、まさに、青葉、緑の名前効果というのはそういうところにもあらわれている。

 私が、山や森について大臣に再三にわたって、これを大切な財産として尊重したい、すべきだということを申し上げたのは、決して選挙区が青葉区、緑区だからではありません。また、私が島根という山や森に囲まれたところで育ったからでもありません。

 私は、仕事の関係で世界の各地、世界の三大都市と言われるところ、ニューヨーク、ロンドン、パリ、そういうところに住んで、いかに大都市に住む人たちが森にあこがれ、緑を大切にするか、それを目の当たりに見、その中で暮らしてきました。また、そのような文化と日本の文化を比べると、日本の文化は、木の文化、木の感性を持っているからこそ自然を大切にする。これも私は、自然環境の中で日本人のそういう特性、特質、感性というのが育てられる、そういう教育的効果にも注目しておりました。

 だからこそ、今、環境の時代と言われるときに、日本の一番世界に誇れる財産であるこの森林、そして緑に対して、木に対して感謝をすると同時に、私は、そういったことに対する新たな施策をしっかりと、世界のどこにもないような施策をやるのが日本の役割ではないか、また、やってこそ世界をリードすることができると思います。ドイツがやったから、どこがやったから日本も一位にならなきゃいけない、そういう発想ではなくて、もともと一位のものをしっかりと守っていく、それが大切ではないかと思います。

 いろいろな国を見てきました。アフリカ、空の上から見ますと、畑がみんな丸い畑ばかりです。なぜか。大臣、おわかりですか。水がないからです。地下水を掘り上げてスプリンクラーでやるから、アフリカの畑は丸い。日本の畑は四角です。水がたっぷりあるからです。このアフリカの丸い畑がいつか四角になる日が来れば、アフリカの食料の問題、飢餓の問題も解決する日がやってくるでしょう。日本はそういうところにも協力すべきだと思います。丸い畑、そして消えていく森林。日本は、四角い畑、消えていくのは森林ではなくて年金です。

 こういう国の違いを見ていますと、やはり日本というのは森林に守られている国だ。私は、そういう発想で、出雲市長のときに木のドクターをつくりました。人間にも命がある、動物にも命がある、そして木にも命があることは大臣も御承知のとおり。なぜ命のある木にだけはドクターがいないのか、私は不思議に思って、出雲市で十人の木のお医者さん、木のドクターをつくりました。林野庁がそれを採用して、今、全国に千七百人の樹医さんがいると伺っています。

 林野庁にまずお伺いいたしますが、今現在、全国で何人、木のお医者さんがいらっしゃるのか。世界で、ほかの国で木のドクターのいるところはあるのかどうか。日本はその木のドクターのために、活動、育成のために予算を幾らかけているのか。まずそれをお伺いいたします。

沼田政府参考人 林野庁でございます。

 樹木医制度でございますけれども、樹木医制度につきましては、平成元年の出雲市の取り組みに始まりまして、財団法人の日本緑化センターによる認定制度として、平成三年から全国展開が図られているところでございます。

 現時点におきまして、昨年の十二月現在でございますが、千六百八十九名の樹木医の方が登録されているというふうに承知しております。

 先生おっしゃられましたように、木も生き物である以上、専門の医師が必要でございまして、医師がこれだけ、千七百名弱でございますけれども、全国に存在しているということは、私ども預かっております森林・林業行政にとって心強く、我が国が世界に誇れる制度だと思っております。

 ただ、ほかの国でこのような制度を持っている国があるかどうかというのは、大変恐縮でございますが、承知していないところでございます。

 私どもとしても、こういった樹木医の皆様方の知見の積極的な活用によって、日本の森林の積極的な保全管理に努めてまいりたいというふうに考えているところでございまして、現在、樹木の保全のための、例えば技術開発関係でございますが、三千万円ぐらいの予算を講じております。その中で特に、樹木医の方が緊急的に治療する、そういったものに対して、年間でございますが五百万円ほどの予算を講じているところでございます。全額補助でございます。

 それに加えまして、私どもとしては、今、美しい森林づくり推進国民運動というものを展開しておりますけれども、樹木医の方々を含めまして、例えばNPOの方々が森づくりをするというようなことに対して、いろいろなソフト的な活動も含めましてやっておりますが、そういったものにつきまして一億八千万円ほどの予算を講じているところでございます。

岩國委員 毎年五月、みどりの週間になりますと、林野庁初め関係団体が、国民の教育のために、山がどういう役割をしているか、森がどういう役割をしているのか、そういうことに対してのパンフレットをたくさん印刷してお配りになります。この日本の森や山の経済価値というのは幾らというふうに林野庁としては国民に説明していらっしゃいますか。そういったものが林野庁自身でなければ、どこか別のところで計算されたものがあれば御紹介いただきたいということで、今お許しをいただいて、資料の一の方で配付させていただきましたけれども、これによれば、林野庁あるいはその関係団体が、日本の森林の経済価値は七十兆円と。

 この七十兆円を守っていくのは、並大抵の仕事ではありません。それに対して政府は幾らお金を使っているのか。この千七百人の木を守るドクターだけが山や森を守るわけではありません。しかし、千七百人がそれぞれの土地の誇りにする木を、森を守るための活動費が年間五百万円。これは、私のポケットマネーとは言いませんけれども、麻生総理のポケットマネーぐらいでできる話でしょう。世界でたった一つの制度、そして日本ほど森林にお世話になっている国はない。学術会議で七十兆円と経済価値を算定しながら、余りにもこれは、感謝の念もなければ、本当に守り育てるという気持ちもないと言わざるを得ないと思うんです。

 大臣、今の質疑を聞いておられまして、環境省の環境という字を支えていくのは、多くの科学技術もあります。しかし、大臣が力説されるように、自然環境、その中心になる日本の森や山、これに対してなぜこんなに少ないお金しか予算に計上されておらないのか。

 二番目に、この樹医制度というものについては大臣も御存じであったかどうか。

 三番目に、もし御存じであったとすれば、今まで何度も国際会議にお出かけになっていますけれども、日本にしかない独特の地球環境を保護していく制度として、一度でもこれを紹介されたことがおありかどうか、それをお伺いします。

斉藤国務大臣 三つ御質問をいただきまして、二番目と三番目から先にお答えさせていただきたいと思いますが、樹医制度、これは当然知っておりました。三番目の御質問で、それを国際会議等でみずからPRしたかという御質問ですが、それはいたしておりません。

 それから、最初の御質問ですが、この七十兆円にもなるすばらしい財産に対してほとんど金が使われていないということに対してどう思うかという御質問ですが、私も、委員と同じ島根の山奥に育ちまして、子供のころは、きこりさんがいて、炭焼きさんがいて、集落の中には必ず製材屋さんがあってということで、本当に山が我々の生活の一部、山と一緒に暮らしていたような気がいたします。

 今、人の手が入っていた山に全く人手が入らなくなった、これは材木の値段の問題とかいろいろあるんでしょうけれども、それが今、日本のいろいろな面での、心の荒廃も含めて、問題を起こしているんだろう、このように思います。

 森林に手を入れる、お金を入れるということは非常に大切で、これを、税金を入れるということではなくて、これから、いろいろな森林吸収源をどう評価するか、また、排出量取引等の制度を設計していくときに、民間のお金も、いろいろなお金が山に入ってくるような形をとっていくことが、山を守り、日本を守り、心を守っていくことにつながる、このように思っております。

岩國委員 今大臣がおっしゃいました、心のあり方、心の荒廃が進んでいると。今我々がここで議論をしている、日本の環境をどういうようにして守っていくのか、よくしていくのか、この議論は、次の時代に引き継がなければ何の意味もないわけです。我々がここでやっているのは、どうやって木を守るかという法律のつくり方の話。

 しかし、実際に木を守っている樹医さん千七百人、あるいは、次の時代、その次の時代に支えていくであろう子供たち、その子供たちの教科書の中に、どの程度この環境問題の字数がふえているか。それを大臣自身がお調べになったことがありますか。あるいは、環境省の中で、小学校の教科書の中に、どの程度この環境問題についての理解を深めるような説明のページ数がふえたかどうか。環境省として、そういう教科書ウオッチャーを設置しておられるかどうか。ただ、いや、教育に大切だ、教育に大切だと大臣同士のかけ声だけで終わっているのでなく、具体的に、おととしよりも去年、去年よりもことしの教科書、見れば見るほど、確かに子供たちに対して一生懸命環境教育に取り組んでいるなということがわかるような教科書の改良がされているかどうか。

 私たちが小さいころは、国語の読み方の本は「サイタ サイタ サクラガサイタ」、木の話で始まったんですね。きれいな花が咲く、そういう環境に恵まれた日本に生まれた喜びを子供たちはまず声に出すんです。今はどうですか。桜は出てこない、竹も出てこない、松も出てこない。出てくるのは、飛行機が出てきて、新幹線が出てきて、自動車が出てきて、環境委員会で悪いと言われているもの、それが最初にみんな出てくるんです。そういう温室ガスを出すようなものだけであって、それを吸収するものは出てこない。

 こういう教科書のあり方について、大臣、どうお考えになりますか。また、教科書のあり方について、どなたか専門のそういう人が担当していらっしゃるかどうか。どうぞお答えください。

寺田政府参考人 私の方から事実関係のみ申し上げます。

 環境教育についての教科書ウオッチャーというお言葉をお使いになられましたけれども、一応環境省では、環境教育は環境行政の中で非常に重要な分野だと考えておりまして、環境教育推進室というセクションを設けて、専門の者が従事しております。

斉藤国務大臣 環境教育の中で森林や樹木について教えるということは、非常に大切だと思っております。今教科書ウオッチャーというお話がございましたが、環境教育の中でどのように扱われているか、しっかりとこれからも見ていきたいと思っております。

 先日も私、今広島に住んでおりますので、庄原に行きまして、森を守るという絵本をその庄原の小学校の子供たちがつくったので、そこに行って一緒に森の中に入ってまいりました。地域の人たちや地域の企業の人たちと一緒に間伐や下刈りの作業をするという試みがされているのを見てきたところでございますが、そういう形で、森を守ることが私たちの社会を守るという環境教育について、環境省もしっかりと文部科学省と連携しながら取り組んでいきたいと思います。

岩國委員 ぜひ環境省の方も、そういう教育に対して、教科書に対しては、よその省の仕事だからという御遠慮をされないで、私は今、環境はもうあらゆる省庁に関する共通のテーマではないかと思うんです。そして、その環境を支える次の世代が育たなければ、環境省の仕事もほとんど有名無実に帰するわけですから、ぜひそういうふうな意識を持ってやってほしい。

 私は、市長のときに看板男、看板娘を一人ずつ指名して、市内の汚い看板を全部たたき落としました。あるいは塗り直すかしました。倒産した喫茶店の看板だけがいつまでも残っている、看板まで片づけて倒産していくという心がけのいい人はめったにおりませんから、その二人が全部たたき落としました。看板男、看板娘、二人がしっかりとした仕事をやり、汚い看板が全部なくなりました。

 やはり環境省の中でも、なぜ環境省がそんなに教科書の中に、教科内容にまでくちばしを挟むんだと言われるぐらいに私はやってほしい、そのように要望しておきます。

 もう一つ、そういう木を守るドクターを日本はしっかりと持っているということは、自慢ではなくて、それはよその国にも同じことをさせるためにも、大臣みずからいろいろな国際会議で紹介していただきたいと思います。

 もう一つは、日本が主導して出雲宣言のもとにできた地球地図というのがあります。世界地図ではなくて地球地図。これは張り合わせた世界地図ではなくて、正確に地球環境の変化が次々と映し出されていく地球地図。これも日本が主導して、世界の百六十四カ国が今参加しているわけです。そういうことについて、国際会議で説明されたことがありますか。まず外務大臣がそんなことを説明するとは期待していません。麻生総理がそれを紹介されるということもありません。紹介されるとすれば、地球環境を守れという、その守る道具、守る正確な地図を持っているのは日本だということを大臣がおっしゃるべきじゃないでしょうか。今まで紹介されたことはありますか。

斉藤国務大臣 ありません。

岩國委員 そういう地理院のPRも足りなかったのかもしれませんけれども、日本がこういう発想、こういう切り口でやっているということ。何も物量作戦だけの競争や、あるいはどこかの環境技術、太陽光の技術がどうなったとか、あるいは原子力発電の台数を幾ら持っている、そういう数の競争だけではなくて、こういう物の考え方、日本という国は、えらい変わった国だ、地球環境に取り込むのに、いわゆる西洋医学ではなくて東洋医学というものはこういうところにあるということをそういうところで声高らかに、そして、誇りを持ってこういうことを支えてきた、日本の国はそのために毎年予算も計上して、税金も使ってきたわけですから、それを紹介しながら、日本の努力というものもぜひ私は御披露いただきたいと思います。

 次に、大臣の所信表明の中で国際協力。私はここでも質問したことがありますけれども、大臣の御認識の中で、世界で一番環境が悪いのはどこだという認識を持っていらっしゃいますか。いろいろな国際機関が世界の環境のいいところ、悪いところ、悪いところの中で、この近辺に一番悪いところはどこというふうに認識していらっしゃいますか。

斉藤国務大臣 世界の中でどこが環境が一番悪いんだという御質問ですが、大気、水質、廃棄物、自然破壊、いろいろな分野がございます。

 例えば二酸化炭素排出量ということですと、今や中国がトップです。それから二酸化窒素、これは各都市のデータがございますけれども、北京、パキスタンのラホール、それから広州、上海と並んでおります。二酸化硫黄ですと、北京、広州、ラホール、カラチ、上海と並んでおります。それからいわゆるPM、粒子状物質ですと、カラチ、ニューデリー、ダッカ、カルカッタ、上海、北京というふうに並んでおります。

 こういういろいろな分野にわたっておりまして、データが必ずしも十分に整備されておりませんので、どこが一番悪いのか厳密に申し上げることは難しいのですが、一般論で申し上げますと、中国やインドを初め、近年経済成長が著しいアジアの国々において、温室効果ガスの排出、大気汚染、水質汚濁、廃棄物の排出、森林破壊等、環境負荷が増大しており、アジアにおける環境対策が非常に大きな課題になっているというふうに考えております。

岩國委員 この二十一世紀、生産活動そしてこれからの経済発展が一番著しいであろうと、いい意味で期待されているのは、このアジアの北東部ですね。だからこそ、大臣がおっしゃるように、環境の悪化が進むであろう、これもごく常識的に考えられるわけです。

 ただ、常識的に考えるだけではなくて、私が調べただけでも五つから七つの国際機関が、その首都だけではなくていろいろな地域の固有名詞を挙げて、毎年毎年、ワーストはどこかというランキングを発表していますでしょう。私は、そういうことも参考にしながら、もうそろそろ日本の政府が、日本の環境省が提案し、イニシアチブをとって、国際協力というときには、どこが悪いかいいかということもわからないでお金を使うわけにはいかないわけですから、日本の技術やお金やあるいは人的資源をどこに持っていけば、そういうところが一番目立ってよくなるのか。そのためには、基礎的な調査、世界各国の環境通信簿というのを科目別に、そして総合点として発表すべきだと思うんです。

 総合点としてワーストというのは、中国の山西省の臨汾というところでした。臨汾は今、そのワーストを脱却するために一生懸命努力しているところです。そういうワーストのところ、もがき、苦しみ、助けを求めているところにこそ、日本の協力の手が差し伸べられるべきじゃないかと私は思います。

 今年度の予算の中に、そういう国際協力、あるいは、ワーストと言われる、日本が既にお金を出しております北京の日中友好環境保全センターの隣の地域ですけれども、そういうところに対してどれぐらいの予算を考え、具体的な協力を考えていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。

斉藤国務大臣 具体的な予算額については後ほど政府委員から答えさせますけれども、基本的には、クリーンアジア・イニシアチブというものを設けまして、水汚染、大気汚染、それからスリーR、循環型社会、ごみの問題等について取り組んでおります。コベネフィットアプローチ、これはもう中身については説明を省略いたします。それから、アジア・スリーR推進フォーラム、技術、規制体系、人材の普及、展開ということで、中国、インドネシア、それからマレーシア、タイなどでモデル事業を実施しようとしているところでございます。

岩國委員 それでは、また資料でいただきたいと思いますけれども、時間が限られておりますので、次の質問を一つ挙げさせていただきます。

 最近、新聞でも報道されておりますけれども、民間企業が、環境関連の投資に対する貸し出しを優遇して取り扱う、これは非常にいいことだと思うんですね。政府に命令されたからやるというのではなくて、資料二を御参照ください、三菱あるいは三井、こうした大手銀行が、環境を改善するためのいろいろな必要資金について優遇して貸し出していこう、金利の面でも少しサービスをしていこうということですけれども、もっと思い切って、こういう厳しい経済環境の中だからこそ、政策投資銀行などが中心となって、こういう長期の環境関連の設備投資、研究投資には、金利そのものも、ゼロ金利ではなくてマイナス金利を適用してはどうかと私は思うんです。

 マイナス金利というのは、目的が温室ガスをマイナスにするための仕事ですから、まじめにやればやるほど仕事が減ることに取り組むわけです。まじめにやればやるほど仕事はふえるから頑張れというのは今までの資本主義のやり方。資本主義の歴史の中で初めて、やればやるほど自分たちの仕事が減っていくという。温室ガスが二十年間に四〇%減る、二〇五〇年に何%減らす、いろいろな発表、いろいろな約束はあります。そういう中間点をとりますと、二十年間で四〇%温室ガスを減らすということは、毎年二%ずつ減らすということです。

 また、二十年後に本当に四〇%減ったら、仕事の対象が、温室ガスを減らそうという対象が今よりも四割減っている。どんどん仕事が効果を発揮すれば、まじめに働けば働くほどお客さんが減る。お客さんという呼び方は変ですけれども、そういう仕事の対象になるマーケットを減らす仕事をさせるわけです。今までは、頑張ればもっとマーケットは広がっていく。ところが、これはマーケットを小さくするための仕事をしてもらわなきゃいけない。

 その認識に立つならば、毎年二%ずつ減らす、したがって金利もマイナス二%。グリーンレートというのは、貸した方が金利をもらうのではなくて、グリーン投資は借りた方が金利をもらうんだと。なぜならば、二%ずつ温室ガスを減らすんですから、それに見合ってマイナス二%の金利を払う。百万円の融資を受けたら、二十年後には六十万円だけ返せばいい、そういうグリーンレートを設定すべきだと私は思うんです。

 マーケットを減らす仕事をさせておいて、その上金利まで取る、これはちょっとおかしいのではないかと思うんです。減らす仕事をさせるんだったら、減らした仕事に応じてマイナス金利を適用する。ゼロ金利までは普通の発想でしょう。しかし、思い切ってマイナス金利を適用することによって、積極的な環境改善、そして温室ガス削減に真剣に民間企業が取り組むことを奨励すべきだと私は思うんですけれども、経済産業省、そういう考えはありますか。

西本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃるとおり、企業それから個人の環境に対する投資を促していくということは、非常に重要な課題であるというふうに思っております。これは、市場を縮小するのみならず、新しい産業を生み出すという側面もあろうかというふうに思っているわけでございます。

 経済産業省といたしましては、太陽電池とか燃料電池、そういう新エネルギーの導入に対して補助金を提供したり、あるいは、エコキュートのような、ヒートポンプみたいな、非常に効率を上げるようなものの導入に対しても補助金を提供するとか、中小企業の投資を促進するために、中小企業のCO2削減を大企業が助けたときにそれをクレジットとして活用できるとか、あるいは税制、省エネ税制、新エネ税制ございますけれども、こういった税制措置等々で、企業、個人の環境に対する投資を促進するというような政策を打っておるわけでございます。

 議員御指摘のマイナス金利制度、こういったものについては、それらの補助金制度、税制等で同様の効果を得ることができるというふうに考えておりまして、今、マイナス金利制度を導入するというようなことの検討は行っておりませんけれども、今後とも、環境投資が前向きに進みますように、そういった環境投資の促進に向けた取り組みを着実に実施してまいりたいと思っております。

岩國委員 こういう民間企業の活動を奨励するには三つの方策、補助金か、減税か、金利か、この三つしかないと思います。補助金、減税よりも、金利を下げる。減税といっても、利益の出ない企業に減税のありがたみは全くありません。利益が出ることが保証されていないような仕事に取り組む企業にとっては、私はやはり金利が一番ありがたいのではないかと思います。

 補助金、減税、金利、斉藤大臣が所信表明でおっしゃった見える化、そういうことが、どれだけ活動しているかということがよく見える。見える化にとって一番いいのは、私は、マイナス金利を設定する、それが一番見えやすい、そして刺激効果があるだろうということを申し上げまして、私の質問時間が終了いたしましたので、終わります。

 どうもありがとうございました。

水野委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 大臣の所信表明の演説の中に、環境健康被害についてもしっかりと救済をしていくというお話がございました。水俣病を初め、日本にいろいろな環境健康被害の救済の必要性がございますけれども、そういった中で、この前、茨城県の神栖市というところに行ってきまして、神栖の毒ガス被害対策チームというのが今民主党の中にできていますけれども、そこのメンバーが同僚議員と一緒に伺ったところでございます。三月の十三日でしたかね。被害者の方々にも会って、実際に現地でいろいろなお話をいただいて、きょうは、そのお話をもとに、この救済対策について大臣及び政府の見解をただしていきたいと思っております。

 まず、この神栖の毒ガス事件といいますか、これはどういうことかといいますと、皆さん御存じだと思いますけれども、二〇〇〇年ごろに、神栖の方々が非常に健康被害を一斉にといいますか、たくさんの方が訴え始めたんですね。どういうことだろうということで、いろいろな調査をしていったら、その地域にあった廃棄場ですか、そこにコンクリートの塊があって、その中にジフェニルアルシン酸という、毒ガスにしか使わなかった、旧軍が使っていた毒ガスがどうもその中に生コンと一緒にまざり合って捨てられていて、多分これは一九九三年以前から捨てられていたんだろうと言われていますけれども、それがどんどん地下にしみ出ていって、その地下水がずっと流れていって、井戸をくんで井戸水で生活をしておられた方が大きな被害に遭った、こういう事件でございます。

 環境省の方からも二名御参加いただきました。室長さん、そして補佐さんですか、そういった方々が、環境保健部長さんですかに報告をされていると思います。大臣にも報告が行ったかどうか、ちょっとそこは私もわかりませんけれども、その印象はどういうふうなものだったか、まずお伺いしたいと思います。

原政府参考人 お答えいたします。

 同行させていただいた職員からは、被害に遭われた市民の方々の生の声をじっくり聞く機会があった、その中で、健康上の問題点や、仕事あるいは生活上での御苦労、また、特に小さいお子さんをお持ちの方からはお子さんの将来に関する不安、これらの切実な訴えがあったというふうに聞いております。

 神栖市の事案は、今委員の御指摘にありましたように、高濃度のジフェニルアルシン酸を含むコンクリート塊を何者かが地中に投入したという犯罪行為を原因とする事件であり、現在も警察が殺人未遂事件として捜査を行っていると承知しております。ただ、被害を受けられた方々にとっては青天のへきれきであるとともに、社会正義の観点からもまことに遺憾な事件であるという印象を持っております。

 私どもとしましては、現在実施しております緊急措置事業を通じて、被害に遭われた方々に対して引き続き治療を促すとともに、健康影響の調査研究を的確に進めてまいりたいと考えております。

末松委員 まさに私も同じような印象を持ったわけですけれども、以下、被害者の救済、そして国の調査、原因究明、再発防止、そういったことにちなんで質問を順次させていただきます。

 今、まずは被害者の方々の救済というのが一番だろうと私は思うんですけれども、とにかく、わけのわからない間に、例えば、神経症状が出てしまったとか記憶障害が出てしまった、あるいは目まいだ、立ちくらみだ、歩行困難だ、あるいは内臓がちょっとまずくなったとか、特に被害者の方が言われていましたけれども、お子さんですけれども、歯がかなり一挙に悪くなったというようなことがございました。

 この救済と毒ガスの影響の因果関係というんですか、そこはどのくらいまでわかっているんでしょうか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 ジフェニルアルシン酸につきましては、旧軍が毒ガスとして生産、保持していたものでございまして、人体への影響について必ずしも明らかになっている段階ではございません。

 ただ、今回の神栖の緊急措置事業の中で、いろいろと調査をしてきているわけでありますけれども、その中では、主として中枢神経症状があるということで、具体的には、今御指摘のありました目まいでありますとか、ふらつき、あるいは左右の手でうまく物が協調できないような障害でありますとか、そのような障害が主として出ていると聞いております。

 ただ、虫歯につきましては、このジフェニルアルシン酸との関係が必ずしも明らかでないといいますか、明らかに低いのではないかと考えられているところでございます。

末松委員 実は、なぜ私がこう聞くかというと、その症状と、ジフェニルアルシン酸、これを略してDPAAというんですが、このDPAAとの因果関係が明らかにならないと、そのための治療費というんですか、医療支援が受けられない、そういう訴えがあったんですね。

 そのときは、虫歯という形ではなかったと思いますが、歯ががたがたになっていく、そういうふうなことを私は聞いたんですけれども、そこが医療の関係で、実際に医者がそういうふうな判断をしたんですか、可能性が低いということは。そこはやられたんでしょうか、私は聞いたことがありませんけれども。

原政府参考人 現在の医療に対する支援でございますけれども、基本的には、先ほど言いましたように、ジフェニルアルシン酸の暴露が人体にどのような影響を与えるかというのは必ずしも明らかでないことから、ジフェニルアルシン酸以外の原因で起こった何らかのものである、ほかの病気であるということが明らかにならない限り、主治医がジフェニルアルシン酸と関連すると考える場合には、すべて対象にしているというふうに承知しております。

末松委員 これは環境省とそれから茨城県、神栖市がつくった「DPAA ジフェニルアルシン酸による健康影響について」、これについて、確かに歯というのは書いてないんですね。ただ、本当にそこで因果関係がわからない、あるいは、歯について実際に調査をしたんでしょうか。そういうことはやられましたか。

原政府参考人 歯についての調査はしていないというふうに聞いております。

末松委員 歯についての調査をしていなくて、どうして歯が問題でないということを言い切るんですか。

原政府参考人 先ほどのように、臨床の状況をいろいろと検討してもらう検討会とか、あるいはその下のワーキンググループ等々でやっておりますが、その中で、ジフェニルアルシン酸による影響としての症状として上がってきているものではないということでございます。

末松委員 ということは、歯についての症状の例がほかになかったということですか。

原政府参考人 先ほど申し上げましたように、先生今お持ちのパンフレットにも出ておりますけれども、主として上がってきた中枢神経系の症状等がいろいろと報告されております。その他にも上がっておりますけれども、その中で歯科に関係する疾病についての報告は上がってこなかったということでございます。

末松委員 だから、一回調べてください。そこをお願いしておきますよ。

原政府参考人 臨床検討会あるいはそのワーキンググループの方に申して、的確な調査をしてみたいと思います。

末松委員 ありがとうございます。

 つまり、何か中枢神経系が砒素による害毒のために、いろいろと体に異常が出てくるんですね。そこが実は一番怖い病気なんですね。

 実際にDPAAというのは、毒ガスで、くしゃみ剤といって、くしゃみを誘発するために開発されたと言っていますけれども、中枢機能がやられていくと、やはりいろいろなところに出てくるんですね。この症状はだめ、これはいいとかいうのはなかなか言いにくいんですね、確かにおっしゃるとおり。だけれども、症状が幾つかある中で、歯についてもあるのであれば、それはきちんと拾っていかないとまずいでしょうということを私は申し上げたい。特に、因果関係がよくわからないということで済まされると、結局、救済から漏れちゃうんですね。そこはまた後で質問しますけれども、ぜひお願いしたいと思います。

 あと、内閣として、閣議了解ですか、緊急時の救済措置が出てきているんですけれども、見ると、害毒による中期的な影響が出てきているんですけれども、これは時限なんですね。時が区切られているんです。

 これは一度延長されて二〇一一年までになったんですけれども、ちょっとそこの辺は、私は、症状がかなりあって救済される必要がある場合、あくまでもそれは緊急時の措置ですから、その措置が途中で時限を切って終わるというのはおかしいと思うんですけれども、いかがですか。

原政府参考人 今現在行っております緊急措置事業につきましては、平成十五年六月の閣議了解において、早急に有機砒素化合物による健康被害者の症候及び病態の解明を図り、もってその健康不安の解消に資するという観点から実施されております。

 このため、平成十五年の際には、有機砒素化合物に関する化学的な情報が十分でない中、当面五年間という形で調査研究が始められました。

 その後、五年の年限を迎えました平成二十年六月に、臨床検討会の委員から、人体への影響について引き続き未解明の点が多く調査研究が必要である、また、事業の対象者の中に健康影響が継続している者がいるということから、この措置事業について、平成二十年七月以降も延長する必要があるとの意見が出されたところでございます。

 環境省としましては、関係省庁と調整した結果、これらの意見を踏まえて、事業を三年間延長して、現在は平成二十三年六月まで実施するというふうに決定したところでございます。

 一応、この緊急措置事業としての意義について、当面、これらの臨床検討会の意見を踏まえて、適切に今後とも対応してまいりたいというふうに思います。

末松委員 順次それで延長されていくのであれば、実態的にはそれほど大きな障害はないんだろうということは想定されますけれども、やはり患者さんというか被害者から見たら、あと三年で終わりますよと言われたら、それは冗談じゃないよという、つまり、見ていると、中枢神経系というのはやはりなかなか回復ができないんですね、私もいろいろなお話を聞いたときに。そこで、この事業は終わりますよということについて、これはちょっと問題だなと思うんです。

 ですから、救済レベルの話なんですけれども、毒ガスの工場というのがあって、例えば広島県の大久野島ですか、そこに毒ガスの工場なんかがございました。製造をやっていましたけれども、そういうときに、従事者の方々が実は被害に遭われていて、その従事者の方々の救済の措置というのが、そこは時限という話ではないんだろうと思うんです。それと同じぐらいのレベルでしっかりとした救済がなされるべきだと思うんですけれども、それはいかがでしょうか。

 もし可能だったら、大臣、お答えになられますか。

斉藤国務大臣 この毒ガスの材料になりますジフェニルアルシン酸、瀬戸内海に浮かぶ大久野島で生産されました。その多くが毒ガスとして中国大陸に運ばれて、ハルバ嶺というところに、七十万発とも二百万発とも言われておりますが、地中に埋められておりまして、十年前ですけれども私もそれを見に行ってまいりまして、基本的に、それをつくった日本が責任を持ってこれを解決しなくてはならないという方向で国会質問等をしてきた経緯がございます。

 また、中国でも、遺棄化学兵器が全く今回の神栖の例と同じような形で、川に捨てられてあったものに子供が近づいて被害を受けたというような例もございまして、そういう方々の救済をしなくてはいけないのではないかということもこれまでやってまいりましたので、今のお話を聞いて、この神栖の例もきちんと国が対応しなくてはいけない、このように感じた次第です。

 大久野島の工場で働いていた方々に対しては、本土の方の対岸に忠海というところがございますが、忠海の国立病院をつくってそのための治療の研究を行い、原爆被爆者と同じレベルでの対応を行っている。これは恒久的措置でございます。今回の神栖の例も、この忠海で行われている、工場で被害を受けられた方と同等の救済がされるべきだ、このように考えております。

 ただ、忠海の場合は国との雇用関係があって、国の第一義責任ということが言えるわけですが、今回の場合は、そこにジフェニルアルシン酸を捨てた不届き者がいた。その不届き者、そこにまず第一義責任があるということから、しかし国が救済措置で、忠海の人と違うレベルで行うということではなくて、同じようにやっていきますけれども、予算措置でやっていくものですから、当然期限はあるわけですけれども、期限というのは一応設定されるわけですが、実質やっていく救済措置は、忠海の国立病院で行われている救済措置と変わらない措置を続けていきたいと思っております。

末松委員 今の大臣のお言葉は、私も感動いたしました。やはりそこは、多くの被害者の方々に大臣のお言葉は大きな光を与えるものだと思っております。

 そこで、今大臣のお話が出ました。これは国の第一義的な責任ではないという話がございました、不届き者がいると。確かに、捨てた不届き者がいるんですよ。それがだれなんだという、その原因究明、これに話が及んでいくわけですけれども、今、警察の方はおられますか、どこまで捜査ができているんでしょうか。

西村政府参考人 お尋ねの事案につきましては、茨城県警察におきまして、平成十七年の八月、殺人未遂及び業務上過失傷害に係る告訴を受理したところであります。

 茨城県警察におきましては、関係者からの事情聴取や現場検証等所要の捜査を推進しまして、業務上過失傷害罪につきましては、平成十八年十二月、検察庁に送付をいたしました。

 しかしながら、殺人未遂罪につきましては、現在まで被疑者の特定には至っておらず、引き続き捜査中であると承知しております。

末松委員 五年たってもわからないということですね。

西村政府参考人 先ほどもお答え申し上げましたが、関係者からの事情聴取等を進めておりますけれども、ジフェニルアルシン酸の出所については現在まで特定できていないとの報告を受けております。

末松委員 ここも、どういう捜査が行われているのか、私も一言言いたくなるわけですよ。

 実は、ジフェニルアルシン酸というのは、そういった軍需工場でつくられた、これは事実なんですね。どこでしたか、二社が、日本染料及び三井鉱山というところ、そして大久野島のプラントで出された。これが一回GHQで、彼らの移管になるわけですね。でも、それからまた同じく戻されるわけですね。

 そうすると、工場の管理というものがなされているのであれば、そこは、どのくらい減ったよとか、どこへ持ち出したよ、こういうふうなものは大体記録されていると思うんです。全くそこがないというのは、特に、毒ガスという、持っているものが大変危険なものである以上、それは当然のことだと思うし、例えば生コンクリートの業者だって、県にそんなにたくさんはいないんですね。そういった意味で、調査をしていけば、全くわからないという話にはならないような気がするんですね。

 そこは捜査ということで、結局わかりませんといったら、私どももそれ以上、どうしてというのは聞けないところが、非常にここはちょっとおかしな話だなと思うんですけれども。何とかそこはしっかりとやってくださいよ。これは要望です。

西村政府参考人 現在捜査中の事案でありまして、捜査の詳細につきましてはお答えを控えさせていただきますけれども、茨城県警察におきまして、所要の捜査を継続してまいると承知しております。

末松委員 とにかく、またちょっと私、この件について聞きますので、これまた同じような回答はもうしないでいただきたいと希望を申し上げておきます。

 そこで、では、犯人がわからなかった、だったら被害を受けた人はだれに文句を言えばいいんだと。そこは、やはり毒ガスというのが蓋然性が一番高いと言われている以上、国がかかわっているのかどうかわからないにしても、これは国の責任として認めるべき事案じゃないでしょうか。それはどなたが答えていただけるんですか。

原政府参考人 ジフェニルアルシン酸の払い下げにつきましては、昭和二十六年に農薬の用途で広島県から払い下げを受けたという事例が一部でございます。今回のものがどうかということはちょっとわかりませんけれども、いずれにしても、非常に昔のことであって、その当時の詳細な経過については記録が残っておりません。ただ、先ほどの事例なんかも含めまして、このジフェニルアルシン酸が政府から民間に払い下げられたということについては、合理的な推測ができると考えているところでございます。

 そのため、そのジフェニルアルシン酸が払い下げられた段階で、国の管理責任は所有権とともにその払い下げを受けた方に移転するものであるというふうに承知をしているところでございます。

末松委員 今の答弁は、国の責任はないという答弁ですよね。

 でも、ここでそういう毒物、つまりこれは産業用には一切使われていないんですね。使い道がないというのが専門家の意見なんですよ。そういったものが、毒物が、払い下げられた、だから後はその民間の業者の責任であって、国に全く責任はありませんというのは、むしろ払い下げた国の方にも問題があるんじゃないですか。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 ジフェニルアルシン酸につきまして、当時どのような認識があったかということも関係はしてくるわけでありますけれども、もちろん戦前、砒素を使った農薬というものも存在しておりましたし、先ほど申し上げましたように、実際に他の有機砒素化合物が農薬の原料に使用されていたという事例もあることもございまして、そういう意味では、そういう砒素と同程度の毒性を有するということについて、払い下げを受けた方が十分認知をして、相応の管理を行うことが期待できたというふうに考えられます。

末松委員 一般論を言っているんじゃないんですよ。DPAAについて、ほかの、肥料として使われた例がありますか。

原政府参考人 それについては承知しておりません。

末松委員 使われた例というのは承知していないということは、今あなたが言われた、肥料としてほかの化合物が使われた例があるということと、その説明は有効じゃないということですよね。DPAAについて。

原政府参考人 先ほど、昭和二十六年に広島県から払い下げを受けたという事例があると申し上げました。これは、目的としては農薬に用いたいということで払い下げを受けたと聞いておりますが、実際には農薬に用いられなかったというふうに承知しております。ですから、その当時の認識として、農薬に使えるのではないかということで払い下げを受けたという方がおられるのは事実でございます。

末松委員 では、ちょっとこれは大臣に、先ほど私はすばらしいお答えをいただいたんです。

 国の責任ということですね。つまり、国の責任は一切ないと部長さんは言っているわけですよ。ですが、犯人が特定できないという以上、国がやはり責任を持たざるを得ないという認識がそこにないと、国の対応ということが出てこないと思うんですね。そこはどういうふうに整理されますか。

斉藤国務大臣 先ほど捜査当局からも答弁があったところでございますが、第一義的にはそれを捨てた者に責任があって、今その捜査が行われているというところでございます。

 しかしながら、現実問題として、被害に遭われて苦しまれている方がいらっしゃる。そういう方に対しては、先ほど申し上げましたような、大久野島で雇用関係にあった方々に国が行っている救済措置と同等の措置をとるということで国の姿勢を示す。医療を受けていただくことを、救済されることを促していくということで現在は整理をさせていただきたい、このように思います。

末松委員 これについては、また別の機会にそこはお伺いするかもしれませんけれども、今の大臣のお言葉、私は今の現時点では評価をさせていただきたいと思います。

 そこで、今、公害等調整委員会で審議がなされているところらしいんですけれども、ちょっと私は、何か対応が遅いような気がするんですけれどもね。二〇〇六年の七月二十四日にこの提訴がなされたということで、そこで、二〇〇八年の三月十日に専門委員の五人を選任したというようなことが書いてあるんですけれども、二年弱ぐらいですね、専門委員の選定だけにそれだけ時間がかかるというのは、何かおかしいな、ちょっと遅いなという気がするんですけれども、これは私の誤解でしょうか。

香川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、平成十八年の七月に、公害等調整委員会に対しまして、茨城県神栖市の住民三十四名から、国及び茨城県を被申請人として損害賠償の支払いを求める責任裁定の申請があったところでございます。また、昨年の九月に、同じ原因による被害を主張する住民の方五名から、本事件への参加の申し立てがございまして、昨年の十一月、参加の許可を行ったところでございまして、私ども公害等調整委員会におきましては、申請受け付け後、裁定委員会を設けまして八回の審問期日を開催するとともに、専門委員の選任を行うなど、鋭意、審理手続を進めているところでございます。

 ただ、若干時間がかかっておりますが、これは先生御案内のとおり、事件によりましていろいろ時間もかかるということもございますので、いずれにいたしましても、早期の解決に向けまして鋭意努力してまいりたいと考えているところでございます。

末松委員 その答弁だと、本当にちょっと私も、いずれチェックしたいと思っちゃうんですよね。だから、とにかくそこは急いでいただきたいと思うんですね。

 要は、住民の方と話してわかったのは、とにかく、二〇〇三年から、これは住民の方が言っていましたけれども、説明が余りないし、調査というのがそれほど自分たちにきちんとやられた印象を持っていない。それから、補償というものもない。だから、公害等調整委員会でやられたのが三百万円の補償という話になるんですね、今提訴されているのが。だけれども、その補償についてだって、実際、見舞金なのか何かわからないような形で、調査に協力をしていますという協力金みたいなことができているので、それが、入院している人で七十万円ですか、一時金。あと、そうでない人が三十万円という話がありますけれども、どうも損害賠償というのは、やはり当然それは必要だと思うんですね。

 そのために、因果関係がわからないと損害賠償の事実関係がわからないんです。だから、一番最初に環境保健部長に言ったのは、症状と因果関係がしっかりしていないと、そういう事件がその症状とかちっとかみ合っていないと、補償も、要するに、実はこういう場合は裁判で補償をとったりするんですね。それが、調査がしっかりされていないと、あるいはある程度段階的な結論が出ていないと、損害賠償までいかないんですよ。結局、裁判所で何と言われるかというと、因果関係が不明なので却下という話になるわけですよ。

 これは別に神栖の事件に限ったことじゃなくて、私がいろいろ環境健康被害のことをずっとやってきて、そして基本法も民主党でつくったんですけれども、この環境健康被害に対する環境省及び政府のよく共通して見られる現象なんですね。だから、私から見たら、調査しない方が裁判で不利にならないからいいじゃないか、何かこういうふうに誤解あるいは思われるような感じになっているんです。

 ぜひそこを、そういうことのないようにしっかりとした調査をしていただいて、先ほど大臣が言っていただきましたけれども、その毒ガス製造の従業員の被害者と同等のことをやっていただくということを改めて大臣から最後に決意をお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

斉藤国務大臣 先ほど申し上げました、原爆の被災者には被爆者援護法がございます。まさしくそれと同等の措置が毒ガス被害者には制度として措置されておりまして、今回の場合、先ほどの責任問題の議論もありましたけれども、国としては、同等の救済措置がとられるようにしていきたいと思っております。

末松委員 どうもありがとうございました。

水野委員長 次に、村井宗明君。

村井委員 民主党の村井宗明です。

 きょうは、最初に太陽光発電、それからグリーンエネルギーの話、そして生物多様性の話と聞きたいと思います。

 今、本当に、このグリーンエネルギー、グリーン・ニューディールというのはチャンスだと思うんです。今、日本経済がぼろぼろの中で、唯一伸ばしてきて成長を引っ張る大事なポイントになってくるのがこのグリーン・ニューディール政策です。そして、与党も野党もなく、今のこのエネルギー転換をしっかり進めていく、そしてそれによって日本の経済を再生させていく、そういう大きなエネルギーになっていかなければなりません。

 その中で、私はまず、政府がこの間発表した余剰電力の買い取り制度の導入、これは本当にいいことだと思っています。そして、高く評価したいと思います。

 その上で、何点かやっていかなければならないことがあります。

 例えば、電事連などは、国民の理解が条件だなどというふうに言っています。我々の方も、これをやるからには、ぜひ国民の理解を得られるような制度づくりをやっていかなければなりません。そして、特に今、余剰電力を買い取る場合、当然、電気代に上乗せが行きます。上乗せが行くということもきちんと明確にしなければなりません。

 そこで、まず経産省にお聞きしたいと思います。

 エネルギー供給構造高度化法案などにもちゃんとこの電気代に上乗せするんだということを明記するべきだと思うし、もしくは国民理解を進めるためにきちんとした対策を打つべきだと思うんですが、どうでしょうか。

羽藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま、太陽光発電に係ります新たな買い取り制度についてのお尋ねがございました。

 これは、御指摘のとおり、国民全員に参加をしていただくということで、広く薄く負担を求めてまいりたい、そのように考えておるものでございます。あわせて、ドイツのように高額な負担をお願いするような事態とならないよう、制度設計をしっかりと進めてまいりたいというふうに考えております。

 具体的には、三年から五年ぐらいでコストが半減するというふうに見通されておりますので、そういう太陽光発電に限定すること、それから買い取りの対象でございますけれども、これも自家消費を超える余剰電力に限定をするということ、発電事業目的で設置されるものについては対象としないということ、こういったことを含めまして、標準的な一般家庭における負担水準については月額数十円から百円程度に抑えたい、そのような形で制度設計を進めてまいりたいというふうに考えております。

 あわせて、国民の理解をどのように得ていくのかというお尋ねがございましたけれども、今後、国会の御審議を通じまして、また政府といたしましても、費用の円滑かつ適正な転嫁に寄与する、そのための広報活動などを通じまして国民に周知徹底を図りまして、その理解と協力を得るよう努めてまいりたい、そのように考えております。

村井委員 重ねて経産省にお聞きしたいと思うんですが、せっかく今回そういう制度をつくるわけです。国民に新たな電気代の上乗せの負担を強いるわけですから、国民の皆さんに御理解いただくためには、新しい義務を課すわけです、当然その義務は国会でちゃんと決めるべきだと思うんです。法律に盛り込むか、もしくは何らかのことを政府や国会で発言し決定するべきだと思うんですが、どうでしょうか。

羽藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 法律上の位置づけも含めまして、これは、私ども今国会で御審議をお願いしておりますいわゆるエネルギーの供給構造の高度化の法案において御審議をいただけるものというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、その高度化法案において、きちんとこの負担についての根拠づけというものを明確にさせていただきたいというふうに考えております。

村井委員 今、今後の審議に応じてという話だったんですが、私は、きちんと明確に法律に載っけてしまう、そして、国民の皆さんに、これから余剰電力を買い取るんだ、今、産業構造を転換して新しいエネルギーをやるためには電気代の上乗せで負担を皆さんに強いるんだということを御理解いただくというのも当然我々政治家の使命じゃないかというふうに思っています。新しい負担になることを避けたり隠したりするんじゃなくて、国民のためになって、未来のためになるんだということを堂々と主張すべきだというふうに思っています。

 さて、次の話なんですが、太陽光発電世界一奪還計画、すばらしい話だと思うんです。世界一奪還という中で、まず、何で私たちが世界一をと言うかというと、それは、たくさんつくることによってコストを減らしていくことができるからだと思うんです。

 そんな中で、世界一の基準というのは二つあるんです。一つは、日本国内でどれだけ太陽光パネルが乗っていて、どれだけ発電しているか、これが一つ目の考え方。もう一個は、日本国内のメーカーの太陽光発電の生産量、これが二つ目の見方です。

 二つ目になると一個目と違って、例えば、日本国内でつくって海外に輸出して設置した分も含まれるわけです。日本国内の太陽光発電のコストを下げていくためには、どちらかというと、設置量じゃなくて生産量で決まっていくはずなんです。

 だとすると、二番目の点、つまり、世界一奪還という中には、今政府が中心に見ている設置量じゃなくて、生産量というのも本当に大事になってくるし、むしろそっちの方が大事だと思うんですが、大臣はどうお考えでしょうか。

斉藤国務大臣 コスト削減のために生産量こそ大切だ、そのとおりだと思います。導入量も大切ですが、生産量も大切です。

 我が国の太陽光発電の生産量は世界一でございます。しかし、各メーカーの状況を見ておりますと、生産されたものの七、八割は海外に輸出されており、今後、コストの削減を図り、我が国を低炭素社会にするためには、本当は国内におけるさらなる需要喚起が非常に重要だ、そして生産量もトップにしていくということが必要だと思います。

 なお、太陽光発電の国内需要の増加は、地球温暖化対策として重要であるだけでなく、国内メーカーのみならず地域の工事業者に対する経済波及効果が期待できる点でも重要だと認識しております。

村井委員 我々が今やろうとしているグリーン・ニューディール政策、もちろん、大臣がおっしゃられている緑の革命、それはそれでいいんです。特に大事なのは、世界全体のCO2排出量を減らすということと、もう一個は、これによって国内の雇用そして産業をしっかりつくることなんです。だとするならば、特に、海外に設置してもいいから、どんどん生産してこれで経済を活性化させ、そして太陽光発電を通じて雇用というものをつくる、そういう政策をとっていくべきだと思うんです。

 そして、もう一つお話ししたいのが、今週の週刊東洋経済という雑誌なんですが、なるほど、おもしろいなと思ったんです。タイトルが「新エネルギーバブル!」というふうに書いてありまして、今、世界全体で経済が悪いと言っているけれども、この分野に関してはどんどん成長して活発になっているという記事が特集で組まれているんです。この点、我々も今世界へ向けてやるべきだし、経済対策としては本当にすばらしいと思うんです。同時に、CO2削減という我々環境委員会の目的も達成できれば、こんなすばらしいことはない。

 その中で、おやっと思った違いを感じたんです。世界全体の中で、特に書いてあるのは、太陽熱発電という話がよく出てくるんです。この特集は、「太陽熱発電が建設ラッシュ 省エネのIT活用も武器に」という記事の中で、おやっと思ったんですね。日本国内は、太陽光発電には注目がどんどんどんどん集まっているのに、太陽熱発電の話は余り出ていないんです。

 同じ太陽なんですが、なぜ日本は太陽熱発電が余り普及できないのか、そして、この太陽熱発電を普及して世界と同じようにこれをやっていくためにはどんな支援が必要なのかについてお聞きしてよろしいでしょうか。

羽藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 太陽熱の利用でございますけれども、これは一つには、委員が今御指摘ございました、太陽熱発電として、太陽光を反射鏡などによりまして集めまして、そして高温の熱エネルギーに変換をして蒸気タービンなどで回していって電気エネルギーを得るという、このシステムが一つございます。

 それからもう一つには、従来から我が国では、太陽熱温水器やソーラーシステムという形で、給湯や空調のシステムとしてこれらが導入をされてきたというところがございます。特に太陽熱温水器やソーラーシステムの経験でございますけれども、これは、用途が給湯、空調の熱利用に限定されておったこと、それから水を取り扱うことから定期的なメンテナンスが必要になった、こういう課題がございまして、そういう意味での太陽熱の利用というものにつきましては、九〇年代をピークといたしまして、それ以降、廃棄量が新規の導入量を上回っている、こういった状況でございます。

 今後、この太陽熱の利用についての支援でございますけれども、私どもは、まず太陽熱利用設備を導入していきます自治体や事業者に対する補助の実施、それから太陽熱の利用設備を導入する事業者に対する税制措置の優遇、こういったことに加えまして、現在は、太陽熱の高度利用のシステムフィールドテスト事業ということに取り組んでおりまして、特に農業分野、福祉施設といったようなところで利用用途が見込まれる、そういったものについての集中的な支援もあわせて実施をしておるところでございます。

 このような取り組みを通じまして、太陽熱利用につきましても、今後、普及促進に努めてまいりたいというふうに考えております。

村井委員 人類は今、どんどんどんどんエネルギーを進歩させてきていると思うんです。昔はまきを使っていた、その後は石炭を使っていて、それから石油の文明に変わって、次は太陽の文明に変わっていく可能性が高い中で、ぜひこういった、太陽光の余剰電力をしっかり買い取ると同時に太陽熱も使っていく、新しい技術をどんどんどんどん、太陽の利用の仕方を広げるべきだと思うんです。

 太陽光といっても紫外線から赤外線まで幅広く光のエネルギーがあって、今のところその一部しか使えていないんですが、例えば新しい技術革新で、もっともっと幅広く太陽のエネルギーを利用することができるはずなんです。こういった技術革新にこそ投資をしていくことで、我々は次の文明へ行くことができる、そしてその次の文明というのが環境分野でも地球に優しいものに変わっていく、ぜひそういった方向へどんどんどんどん進めていきたいと思っています。

 そして、次にお話をしたいのが、この間、私の地元の北陸である判決が出ました。志賀原子力発電所二号機の運転差しとめ控訴訴訟の判決というのが出ました。一審では運転差しとめという話だったんですが、逆転することになりました。

 このことが地球温暖化に与える影響、CO2排出量に与える影響についてお話しいただいてよろしいでしょうか。

西山政府参考人 北陸電力の試算によりますと、志賀の二号機が年間を通じて停止した場合には、日本全体でCO2排出量は年間六百七十万トン程度増加するということでございます。これは、一九九〇年の日本全体のCO2排出量の十二億六千百万トンをベースにいたしますと、約〇・五三%に当たります。

村井委員 今回の判決は二号機だけなんですが、二号機の話が出たのでついでに。

 一号機が今とまっています。これが今後どうなっていくか、そして、一号機が動いた場合、日本が今六%削減というのを打ち出しているわけですが、そのうちの何%ぐらい削減することになるのかというお話、それから今後の見通しについてお聞きしてよろしいでしょうか。

加藤政府参考人 先生お尋ねの件につきまして、まず、一号機の今後の見通しという点について原子力安全・保安院からお答えさせていただきたいと思います。

 この志賀原子力発電所の一号機でございますが、平成十一年の六月に臨界事故を起こしていながらそれを隠していたということが平成十九年の三月に明らかになりました。原子力安全・保安院といたしましては、それを非常に重く受けとめまして、北陸電力に指示いたしまして、原子炉をとめて安全対策の総点検、また再発防止策の検討、実施というものを求めてまいったわけでございます。

 これにつきまして、原子力安全・保安院では、平成十九年度には、特別な保安検査、ふだんより期間を長く強く行うという形の保安検査を行いまして、北陸電力による再発防止対策などが着実に実施されているということを確認いたしました。また、引き続いて、今年度、平成二十年度も年四回の保安検査を行いまして、それらが浸透、定着しているということを確認したところでございます。

 また、この一号機の施設についてでありますが、通常の定期検査を強化した特別な検査というものを平成十九年の七月から実施してまいりまして、これにつきましては、三月の十二日までに、原子炉の起動前に行うべき検査、五十四項目を終了いたしまして、技術基準に適合しているということを確認いたしました。

 それで、北陸電力では、私どもの今年度の保安検査が終了いたしました翌日の三月十九日に、石川県及び志賀町に対しまして運転再開の申し入れを行いまして、それを受けまして、現在、石川県、志賀町におきまして、その扱いについて検討がなされているものと承知しております。

西山政府参考人 北陸電力の試算によりますと、志賀一号機が年間を通じて停止した場合と稼働した場合とを比較いたしますと、その差は年間二百七十万トン程度とのことでございまして、これは、一九九〇年の日本全体のCO2排出量の〇・二一%に当たります。

村井委員 ありがとうございました。

 私自身は、CO2排出量が少ない電力にどんどんどんどん転換していくべきだという立場でいろいろなお話をさせていただいているんですが、太陽光はもちろん、原子力も必要だと思うんです。

 その上で、特に今注目されている太陽光の場合、一個だけ問題がある。それは何かというと、安定性の問題です。たくさん発電している時間もあれば、ぱっと天気が悪くなって発電量が落ちたりもする。そんな中で、しっかりと、逆潮流が起こらぬようにしたり、また、いきなりだっと発電量がふえたときにどうするかという対策なども考えたら、送電網、配電網というものをきちんと整備していかなければならないと考えるんです。特に、自然エネルギーをたくさん導入しようと考えれば考えるほど、送配電網を強化していかなければならない。

 オバマさんのグリーン・ニューディール政策というのを見ていると、公費で投入しているのは、もちろん発電自身のこういったところもそうなんですが、やはり送配電網にこそ公費をどんどん投入して支援をしているわけです。

 日本も、これから本当にそういった形でCO2排出量を減らしたエネルギー革命をやっていくためには送配電網の整備が必要だと考えるんですが、経産省としてはどのようにお考えでしょうか。

西山政府参考人 まさに委員おっしゃったとおり、出力が不安定な太陽光などの新エネルギーの大量導入を実現しながら電力の安定供給を維持するためには、系統安定化対策が不可欠になるものと考えております。

 経済産業省におきましては、資源エネルギー庁の中に低炭素電力供給システムに関する研究会を設置いたしまして、太陽光発電の大量導入時にどのような対策が必要になるかということを検討してきたところでございます。具体的に申しますと、一つには配電網の電圧が上昇した場合の逆潮流の困難化、第二に余剰電力が発生すること、第三に周波数の調整力が不足する可能性があることといった三つの課題について検討いたしました。

 このうち、電圧の上昇対策としては電柱の上にあります変圧器の数をふやすことによって、あるいは、余剰電力対策としては蓄電池などを設置することによりまして、技術的には対応可能と考えられております。今後、太陽光などの導入量に応じた設備の設置が進むものと思われます。

 他方で、太陽光発電の大量導入に伴う周波数の調整力不足対策というのが一つ問題でございまして、系統全体を適切に制御するための先進的なシステムの構築、太陽光パネル自体とかあるいは系統に投入される蓄電池の制御技術の開発などに取り組んでいくことが必要と考えております。

 このために、平成二十一年度政府予算案におきまして、全国二百カ所程度に太陽光パネルを設置して、刻一刻と変化する出力の変動などを実測のデータに基づいて分析する事業を計上させていただいているところでございます。この事業は、今後の関連する技術開発の基礎となるものと考えています。

 経済産業省といたしましては、今後とも、系統安定化のために必要となる対策につきまして積極的な支援を行うことによって、新エネルギーの大量導入と電力の効率的な安定供給の両立が可能となるように、万全を期してまいりたいと思っております。

村井委員 関連でもう一個質問したいと思うんです。

 確かに、電圧の部分、周波数の部分、そういったところをしっかり支援していかないと、どんどんどんどん太陽光パネルをつくるだけじゃだめだと思うんです。今おっしゃられたように、対策する方法はある。変圧器をつけるだとか、また周波数だとか、余剰電力分を蓄電する技術がある。それを本当にやるためには、どこかにコストが必要だと思うんです。

 そのコストをどうするのか。例えば、それぞれ太陽光パネルをつけた人にコストを負担してもらうのか、それとも電気代に上乗せして広く消費者にコストを負担してもらうのか、はたまた公費でその部分を負担していくのか。本当にそれを安定供給し、次世代へ向かった送配電網の整備のためのコスト負担をどうあるべきだと経産省は考えておられるんでしょうか。

西山政府参考人 太陽光発電の大量導入に伴います系統安定化対策を電力会社が行う場合には、その費用負担につきましては、まず原因者が明確に特定される場合には原因者の負担、それ以外の場合には電気料金を通じて需要家から回収するということが基本となると考えられます。

 しかしながら、原因者負担の考え方に関しましては、原因者を明確に特定できるかという問題があります。あるいは、特定できる場合でも、設置者負担とすると太陽光発電の普及が遅延あるいは抑制される可能性があるという御指摘もあります。

 こういったことを踏まえまして、今後、先ほど申しましたようないろいろなプロジェクトを通じて実運用のデータなど客観的な材料を調べまして、それに基づいて公的な支援の要否を含めた検討が必要となると考えられます。

村井委員 次に、別の話へ転換したいと思うんです。

 二〇一〇年にCOP10が日本で開かれます。生物多様性の話の中でいつも気になるのは、なかなか数値化できていなくて客観的に判断しづらい、客観的に議論しづらいというのをすごく感じているんです。

 先日ちょっと見たときに、WWFさんがエコロジカルフットプリントという、きょうお配りした資料なんですが、こういう数値を出していました。何かというと、人類がそれぞれ地球に対して必要な需要、特に資源の供給とか廃棄物の吸収に必要な土地の面積というものを数値化していって、これで需要と供給のバランスを見よう。つまり、必要な土地の量や必要な生物多様性の量と今実際にある分、こういったものを比較するようなシステムをつくると客観的に見やすいと思うんです。

 では、今環境省としてこういったものを認めているのかどうか、そして、もしこのエコロジカルフットプリントもしくはそれに似たような数値を使うとしたら、日本人は一人当たり何ヘクタールぐらいこういった土地が必要と考えるのか、教えていただけますでしょうか。

小林政府参考人 今のエコロジカルフットプリントの御質問でございますけれども、環境省は、さかのぼってみますと平成八年の環境白書でこれを紹介させていただきましたほか、平成十八年に定めました第三次環境基本計画の中でも、環境政策が進捗をしているかどうかの指標ということで、いろいろな指標があろうかと思います、CO2の排出量もあろうかと思いますが、今御指摘のとおり、生態系の総合的な生産性を人間の活動が上回っていないかという観点で大変わかりやすい指標であるということで、これも取り上げさせていただきまして、政策の進捗管理ということに使わせていただいております。

 この指標の中身については今村井委員お配りの資料のとおりでございますので、その紹介は時間の関係で省略をさせていただきますが、結論から申し上げますと、日本の場合には、日本人と同じ暮らしを世界の人がした場合に、地球がもう一個と三分の一ですか、一・三個分余分に要ることになるということでございます。ちなみに、アメリカの場合にはさらに三・五個分余分になるというようなことで、国によって大分差があるようでございますが、大変便利な指標だということで、私どもも活用させていただいているのが現状でございます。

村井委員 CO2の場合は、何トン出した、何トンまでがいい、こういう取引制度というのはすごくやりやすいし、客観的に数値化されるのに、生態系の話というのは数値化されないということが非常に問題だと私は感じているんです。では、国際会議に行ったときもこれが議論できるかというと、数値化されていないから議論しづらいし、見える化されているものはいろいろな話で対策を打てるんですが、なかなか今この問題は対策を打ちづらい状態にあります。

 そんな中で、大臣にちょっとお聞きしたいんです。それまで大臣であるかもしれないという前提でお聞きするんですが、国際会議のときに、議長国として、きちんとこういった数値化をして、エコロジカルフットプリントもしくはほかの指標でも結構なんですが、具体的な数字で議論したり客観的に議論したりするためのこういったものを世界各国に呼びかけて指標として取り扱って国際会議をやるべきだと思うんですが、大臣はどうお考えでしょうか。

斉藤国務大臣 今、国際会議、二〇一〇年ですから来年ですけれども、名古屋市で開催されるCOP10、これはここ十年来で日本で開催される一番大きな国際会議になるのではないか、一万人ぐらい世界から集まってくるのではないかと言われております。

 国際生物多様性年の来年に日本でこの国際会議が開かれる。そこでは、二〇一〇年目標の達成状況、つまり、生物多様性の損失速度を顕著に減少させるという達成状況の評価と、新しい次の目標を決めるという予定でございます。

 そういう中で、達成状況を評価する、また次の目標を決めるというときに、それを定量的に決めなきゃいけない。我々、生物多様性が失われるという非常に感覚的な議論はしているんですけれども、なかなかそれを定量的に表現する方法がないというのは村井委員仰せのとおりでございます。

 生物多様性の現状を科学的に把握するための総合的な評価をどのようにしていくかという検討も今環境省で行っておりまして、いろいろな諸国との意見調整を進めて、わかりやすい指標そして新しい目標を決めたいと思っております。

 そのわかりやすい指標なんですが、いわゆる生態系サービスということで、酸素の供給、植物の光合成、気候の安定、それから安全、安心の基礎、食べ物、豊かな文化といろいろあるわけですけれども、定量的な評価ができるようなものをつくるように努力をしていきたいと思います。

村井委員 ぜひそういった中で、国際会議の中で需要と供給をすべて数値化していって、理想論じゃなくて、どれだけ必要なんだ。CO2の場合は、六%削減という約束にしました。だけれども、生態系の問題でも、実際日本の数字はこれだけで、これだけにしなきゃならないんだ、ほかの国の数字はこれだけで、これだけにしなければならないんだという、具体化すれば具体化するほど実際の対策というのはできると思うんです。そして、国際会議の中で、きちんとそれを数値化した目標値を掲げて、国際的に約束していただければと思っています。

 そんな中で、あと最後にもう一個、二分ほどだけお時間をいただいたので聞きたいと思うんですが、最初の太陽光発電の話にちょっと戻したいと思うんです。

 太陽光発電の中で、たくさんつくればたくさんつくるほどコストは安くなっていきます。大体物事というのは、十倍つくったら値段は半分ぐらいになっていくわけですが、では、そのたくさんの生産量を上げていく中で一個考えなければならないなと思うのは、いろいろな公的な建物があります。市役所でもそうですし、公立学校でもいいです。こういったところには積極的に太陽光発電をつけるんだというふうにどんどんどんどん進めていくべきだし、もっと言えば義務化していくべきだと思うんですが、大臣はどうお考えでしょうか。

斉藤国務大臣 村井委員おっしゃるように、低コスト化のために、一つは技術開発、そしてもう一つは、生産量を増大させることが重要だと思います。

 その生産量を増大させるためには、公的機関への導入ということも非常に大きな柱でございまして、三月十八日の経済財政諮問会議において「緑の経済と社会の変革」の具体的なアイデアを紹介した際にも、学校、それから庁舎、これは国、市町村庁舎、公園など、公共部門での率先導入の重要性について説明を申し上げたところでございます。

 環境省としても、地方公共団体の建物への率先的な導入支援などを行ってきたところでございまして、今後とも、関係省庁と連携し、公的機関への導入を爆発的に図るように頑張っていきたいと思います。

村井委員 ぜひ、やるからには義務的なところにまで持っていって、しっかりと、公的機関はほぼ一〇〇%もしくは九十数%の達成率にしていただければと思います。

 終わります。ありがとうございました。

     ――――◇―――――

水野委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案及び第百六十八回国会、参議院提出、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。

 内閣提出、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案について趣旨の説明を聴取いたします。斉藤環境大臣。

    ―――――――――――――

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

斉藤国務大臣 ただいま議題となりました土壌汚染対策法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。

 土壌汚染対策法の施行から六年が経過し、この間、法に基づく土壌汚染の調査、対策とは別に、一般の土地取引等の際に、自主的に土壌汚染の調査、対策が広く実施されるようになってまいりました。

 一方で、残土置き場や造成地等において、土壌汚染地から搬出された汚染土壌が不適正に処理される事例も見られます。

 こうした現状にかんがみ、土壌汚染の状況の把握のための制度の拡充、講ずべき措置の内容を明確化するための規制対象区域の分類、汚染土壌の適正処理の確保に関する規定の新設等所要の措置を講ずるため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の主な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、土壌汚染の状況の把握のための制度の拡充についてであります。

 土地の形質の変更であって、その対象となる土地の面積が一定規模以上のものをしようとする者に対して都道府県知事への届け出を義務づけるとともに、都道府県知事は、当該土地が特定有害物質によって汚染されているおそれがあると認めるときは、当該土地の所有者等に対して、土壌汚染の調査をすべきことを命ずることができることとしております。また、土地の所有者等は、特定有害物質による土壌汚染の状況について調査した結果、当該土地の土壌が汚染されていると思料するときは、都道府県知事に対して、規制対象区域として指定をすることを申請することができることとしております。

 第二に、講ずべき措置の内容を明確化するための規制対象区域の分類についてであります。

 土壌汚染の調査の結果、特定有害物質による土壌汚染の状態が基準に適合しない土地を、健康被害を防止するための措置を講ずることが必要な区域と、形質の変更の際に届け出が必要な区域に分類して指定することとするとともに、措置を講ずることが必要な区域については、講ずべき措置の内容を指示することとしております。

 第三に、汚染土壌の適正処理の確保についてであります。

 規制対象区域から汚染土壌を搬出しようとする者に対し、都道府県知事へ届け出ること、及び汚染土壌の処理を都道府県知事の許可を受けた処理業者に委託することを義務づけるとともに、汚染土壌の運搬を行う者に対し、運搬に関する基準の遵守を義務づけることとしております。また、当該汚染土壌の搬出をしようとする者が当該汚染土壌の運搬または処理を他人に委託する場合について、当該運搬または処理を委託する者及び当該運搬または処理を委託された者に対し、管理票による汚染土壌の管理を義務づけることとしております。さらに、汚染土壌の処理を業として行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならないこととし、当該許可を受けた者に対し、処理に関する基準に従い汚染土壌の処理を行うこと等を義務づけることとしております。

 このほか、指定調査機関の指定の更新制度等、所要の措置を講ずることとしております。

 以上が、本法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

水野委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次に、第百六十八回国会、参議院提出、土壌汚染対策法の一部を改正する法律案につきましては、第百六十九回国会におきまして既に趣旨の説明を聴取しておりますので、これを省略いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

水野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

 土壌汚染対策法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

水野委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、来る二十七日金曜日、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

水野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る二十七日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十七分散会


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