衆議院

メインへスキップ



第3号 平成22年11月5日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十二年十一月五日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 小沢 鋭仁君

   理事 大谷 信盛君 理事 太田 和美君

   理事 田島 一成君 理事 横光 克彦君

   理事 吉川 政重君 理事 田中 和徳君

   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君

      相原 史乃君    磯谷香代子君

      岡田 康裕君    加藤  学君

      川越 孝洋君   木村たけつか君

      工藤 仁美君    櫛渕 万里君

      斎藤やすのり君    阪口 直人君

      玉木 朝子君    玉置 公良君

      長尾  敬君    橋本 博明君

      樋高  剛君    森岡洋一郎君

      山崎  誠君    井上 信治君

      近藤三津枝君    齋藤  健君

      橘 慶一郎君    町村 信孝君

    …………………………………

   環境大臣         松本  龍君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   経済産業大臣政務官    田嶋  要君

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            白石 順一君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       佐藤 敏信君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  寺田 達志君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            鷺坂 長美君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  鈴木 正規君

   環境委員会専門員     高梨 金也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十七日

            補欠選任

             町村 信孝君

十一月五日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     玉木 朝子君

  岡本 英子君     磯谷香代子君

  阪口 直人君     長尾  敬君

  古川 禎久君     橘 慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     岡本 英子君

  玉木 朝子君     石田 三示君

  長尾  敬君     加藤  学君

  橘 慶一郎君     古川 禎久君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤  学君     岡田 康裕君

同日

 辞任         補欠選任

  岡田 康裕君     阪口 直人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境影響評価法の一部を改正する法律案(第百七十四回国会内閣提出第五五号、参議院送付)

 環境の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

小沢委員長 これより会議を開きます。

 環境の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、去る十月二十七日に行いました生物の多様性に関する条約第十回締約国会議の視察につきまして、その概要を私から御報告申し上げます。

 まず、COP10の主会場であります名古屋国際会議場で行われたハイレベルセグメント開会式に参加いたしました。議長である松本環境大臣のほか、国連総会議長、国連事務総長、ガボン大統領、イエメン首相、世界銀行総裁、国連環境計画事務局長、地球環境ファシリティーCEO、生物多様性条約事務局長、各国の子供たち及び菅内閣総理大臣がそれぞれの立場でCOP10の成功に向けた熱意を語られ、我々も議長国の国会議員としての決意を新たにいたしました。

 次いで、欧州議会環境・公衆衛生・食品安全委員会の代表団との間で、立法府の一員として率直な意見交換をいたしました。

 私どもは、生物多様性の保全に向けてまさに今ここで行動しないと将来の世代に禍根を残すとの認識のもとで、COP10の成功に向けて、ポスト二〇一〇年目標や名古屋議定書の採択に向けた我が国の取り組みを述べたほか、これまでも我が国は生物多様性の主流化に積極的に取り組んできており、生物多様性国家戦略を策定したほか、今国会では生物多様性の取り組みを促進するための法案が国会に提出されていることなどを申し上げました。

 これに対し、同委員会のライネン委員長は、今回の訪日はEUとしてCOP10をぜひ成功させたいためであり、気候変動対策とともに生物多様性の保全が二つの大きな課題である中、ここで一堂に会して議論ができることは非常に喜ばしいと発言をされました。また、欧州議会を含めEUは生物多様性の保全について高い意識を持っており、生物多様性の問題に関し、欧州議会はEU加盟国等に呼びかけてリーダーシップをとりたいと話されました。最後に、同委員長は、メキシコでの気候変動枠組み条約、COP16においてもこのような議員外交の場を持ちたいとの意向を示されました。

 以上、委員会視察の概要を御報告申し上げます。

 次に、生物の多様性に関する条約第十回締約国会議の結果について政府から報告を聴取いたします。松本環境大臣。

松本国務大臣 十月十八日から二十九日まで愛知県名古屋市において、生物の多様性に関する条約第十回締約国会議、COP10が、百七十九の締約国と国際機関やNGO等のオブザーバーも含めて、およそ一万三千人が参加して開催され、私が議長を務めました。この会議の結果について御報告いたします。

 会議の大きな成果として、生物多様性に関する新たな世界目標であるいわゆるポスト二〇一〇年目標、愛知目標と、遺伝資源へのアクセス及びその利用から生じる利益の公正で衡平な配分、いわゆるABSの名古屋議定書の合意が挙げられます。特に名古屋議定書に関しては、条約制定以来議論が続けられてきた条約の三番目の目的を達成するための法的拘束力のある国際的枠組みが採択されたものであり、生物多様性条約にとって新たな時代の幕あけとなったと言えます。また、これら以外にも、保護地域や持続可能な利用など、今後の地球規模での生物多様性の保全と持続可能な利用を進める上で重要な合計四十七の決定が採択されました。

 二〇一〇年までに生物多様性の損失速度を顕著に減少させるとしたこれまでの目標が達成されず、生物多様性の損失がこれまでにない速度で続いている危機的な状況の中で、ポスト二〇一〇年目標について、日本から提案した自然との共生という考え方を長期目標に反映させ、また意欲的かつ現実的な短期目標や具体的な数値が一部盛り込まれた個別目標が空白期間を設けることなく採択できたことは、今後の生物多様性の保全と持続可能な利用の推進にとり大きな意味があると考えます。

 ABSについては、各国閣僚等から合意に向け強い期待が示される一方、事務レベルでの交渉が進展しなかったことから、閣僚級の協議を開催し、事務レベルでの議論に政治的なガイダンスを与えることとしました。しかし、政治的ガイダンスが出されても、事務レベルでは合意を見出すことができませんでした。このため、名古屋で何としても議定書に合意すべき、あるいは合意してほしいという各国閣僚等の思いを酌み上げ、私から議定書の議長案を各地域代表の閣僚等に対して提示しました。そして、この議長案をもとにこれらの閣僚等と議論すること等により、ようやく合意に達し、全体会合で採択することができました。

 名古屋議定書の採択は、今後の遺伝資源へのアクセスと利用の改善の基礎をつくり、生物多様性の保全と人類の福利の向上という、遺伝資源の提供国と利用国の両者にメリットを与える制度になるものと期待されます。

 今後重要なことは、新たな目標に基づき、各国が国家戦略をつくり、具体的な施策を実現することであり、また、名古屋議定書についても各国が早期に批准し、議定書を発効させ、適切に運営していくことです。我が国は、今後二年間、議長国として、今回決定された事項の円滑かつ着実な執行に取り組んでいく考えです。また、国内の生物多様性に係る施策についても、会議の決定を踏まえ、充実させていく必要があると考えています。

 私は、今回のCOP10の成果は、世界の人々の自然や生き物に対する思いが結集した結果ではないかと思います。そして、世界じゅうの人々のこうした気持ちに感謝するとともに、その思いを大切に、国内外の生物多様性の保全と持続可能な利用の進展に向け、全力で取り組みたいと考えております。引き続き御支援をお願い申し上げます。(拍手)

小沢委員長 これにて報告の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として環境省総合環境政策局長白石順一君、環境省総合環境政策局環境保健部長佐藤敏信君、環境省地球環境局長寺田達志君、環境省水・大気環境局長鷺坂長美君、環境省自然環境局長鈴木正規君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田島一成君。

田島(一)委員 民主党の田島一成でございます。今国会、初めて質問に立たせていただきます。

 まずは、松本大臣と申しますか、COP10、生物多様性条約第十回締約国会議議長、松本議長、本当にお疲れさまでございました。私も、事前交渉に多少なりともかかわらせてもらった者の一人として、今回のこの名古屋議定書の採択を初め、COP10の成功を大変うれしく、また心からお祝いを申し上げたいと思うところでございます。大変な険しい道のりであったと想像いたしますし、私も、あの最終日、深夜一時半近くになったかと思いますが、あの議長が満面の笑みで木づちを振りおろされ、そして会場じゅうの方々がすべて総立ちで、拍手鳴りやまぬあの雰囲気を、ネット中継からではありましたけれども拝見をし、万感胸に迫る思いで涙をさせていただいたところでありました。

 今委員長席にお座りいただいている当時の小沢大臣も、そして筆頭理事の大谷前政務官も、私たちも合わせてこのCOP10の成功を期して、それぞれのでき得ることを重ねてきたところでありましたが、今回、このような美しい終わり方、すばらしい議定書を取りまとめいただいた、これはまさしく松本議長の手腕と私どもは高く評価をするところであります。御苦労いただいたことに本当に心から敬意と、そして感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございました。

 さて、今回のこのCOP10の成功は、各方面から非常に高い評価をいただいております。私も一議員として、今回、幾度となくこのCOP10の会議場へと足を運ばせていただき、旧知の皆さんと親交を深めてまいりました。私の心配をよそに、多くの皆さんは日本のリーダーシップに相当期待をかけて今回のCOP10に臨んでいらっしゃったことも肌で感じましたし、必ず議定書を採択させる、そんな強い意思も皆さんから感じることができました。それは、議長のリーダーシップはもちろんのこと、CBDのジョグラフ事務局長、そして関係する機関それぞれが力を合わせて、先ほど大臣からごあいさつがあったとおり、皆さんが同じベクトルに向かって歩んだ成果だったことだと思います。

 それにも増して多くの皆さんが褒めていただいたのは、開催地であります愛知県、そして名古屋市の本当にすばらしいもてなしの心でありました。多くの皆さんがその地元の皆さんの歓迎ぶり、もてなしぶりを本当に高く評価していただいたことも、この場で私の方から御報告を申し上げ、関係する支援実行委員会の皆さん、そして愛知県や名古屋市の皆さんに、心からそのお支えに感謝を申し上げたいと思います。

 さて、多方面から好評をいただいている今回の生物多様性条約第十回締約国会議でありますが、我が国がホスト国としてその責務を果たすのは、このCOP10終了で終わったわけではなく、これがスタートであり、向こう二年間、次のCOP11、インドに引き渡すまでの二年間、その責任は続いてまいります。もう私が言うまでもなく、その挑戦的な取り組みに対して相当な御決意をいただいているものというふうに考えておるわけでありますけれども、御承知のように、気候変動枠組み条約と双子の条約と言われているこの生物多様性条約も、あの大国米国が批准をしていないという問題もあり、まだまだホスト国に対する期待も多く寄せられてくるものと思われます。

 今回交渉に当たっていただいた環境省はもとより、外務省、そして全省挙げて、このCOP10で取りまとめされた名古屋議定書の批准、そして今後、その方向性に向かっての着実な歩を進めていかなければならないわけでありますが、今後の施策の展開について、議長国としての責任を果たしていくという上からどのようにお考えか。まず大臣、そして、きょうは外務委員会も開かれている中、大変お忙しい中、山花政務官にもお越しいただきましたので、外務省のお立場から、それぞれお答えをいただきたいと思います。

松本国務大臣 ありがとうございます。

 私も、冒頭、この場をかりて、小沢前大臣、大谷前政務官、そして今御質問に立たれている田島前副大臣に、私は大臣を拝命して三日目にニューヨークに飛び、国連の場で、ハイレベルセグメントの場でスピーチをさせていただきました。このお三方がしっかり道筋をつけていただいたその上に乗ってやってきたということで、お三方に敬意を表したいと思いますし、このCOP10の期間中、GLOBEでさまざまな先生たちが活躍をされて、これは与党、野党を問わず、だれ一人欠けてもこの成功はなかったな、まさにチームで勝ったということを改めて思っております。

 ちょうど二十六日の最終日でしたけれども環境委員会が開かれて、すぐ新幹線に乗って現地に決死の覚悟で向かいましたけれども、どれ一つ無駄なことがなかったというか、うまくいった。地雷を踏むようなところもありましたけれども、結果的に皆さん方のお一人お一人の力がこの成功に結びついたというふうに、改めて感謝を申し上げたいと思います。

 今言われました、愛知、名古屋という言葉がつきました。今おっしゃったように、ホスピタリティーというか、もてなしが物すごくよかったということが各国の印象でありましたし、議事運営といいますか、そういうのが公平で、いろいろな意味で最も好評だったというふうにも思っております。これもチームのおかげだというふうに思います。

 COP10においては、生物多様性に関する新たな目標、ポスト二〇一〇年目標、愛知目標、そしてABSに関する名古屋議定書など多くの決定が採択されました。我が国は、今後二年間、議長国を務めることとなっておりますので、この愛知目標や名古屋議定書の実施に向けた途上国の努力を支援するなど、生物多様性の保全とその持続可能な利用に向けてリーダーシップを発揮していきたいと思います。

 また、我が国は、国連生物多様性の十年の提案を通じて、米国も含め国連という枠組み全体で生物多様性保全に取り組むことを呼びかけてまいっているところであります。このような機会もとらえつつ、米国に対しても早期締結の働きかけを行ってまいりたいというふうに思っております。

山花大臣政務官 COP10におきましては、二〇二〇年に向けましたいわゆる愛知ターゲットであるとか、あるいはABSなどに関します名古屋議定書が決定されるなど、本当に大きな成果を上げることができたと思っております。これまで多くの方々の御尽力をいただき、また、なかんずく田島委員にもこの成果を上げるに当たっては本当に御尽力をいただきましたことに敬意を表したいと思います。

 我が国といたしましては、これらのCOP10における成果の実施に向けて、議長国としてリーダーシップを発揮してまいりたいと思っております。先ほど委員から、米国についてということもございましたが、残念ながら米国はこの条約を締結いたしておりません。COP10の成果とその意義をしかるべく伝達し、生物多様性の保全とその持続可能な利用の実現のためには本当に全世界が一致して取り組む必要がありますので、そのためにはアメリカ合衆国によります生物多様性条約の参加が不可欠であるという旨を訴えまして、早期の締結を促してまいりたいと考えております。

田島(一)委員 ありがとうございます。非常に前向きな意気込みを感じるところでもあります。

 今回、COP10の中での議論そして課題として大変懸念されてきた部分が、やはり資金の動員戦略でありました。前々の事前交渉からも、途上国は押しなべて、生物多様性の保全の重要性よりも資金をいかに獲得するかということを随分声高に主張されていたのも事実であり、会議の途中では、それこそブラジルから二千億ドルが必要だというようなとんでもない数字までが出てきて、ああ、これは大変厳しくなるなと途中で私ども、NGOと一緒にその成り行きにため息をついたこともございました。

 そういった中でも誠心誠意交渉されたおかげで何とかまとまることができたわけであります。日本政府からも、総理からの発言、そして大臣からの発言等々で多額の運営予算の拠出が約束されたわけでありますけれども、今後この資金を捻出していくに当たっては、やはり決意として表明された以上、国際的な約束事として諸外国が期待をしているわけであります。外務省としては今後どのような覚悟で臨まれていくのか、その見解もあわせてお尋ねをさせていただきたいと思います。

山花大臣政務官 この資金の話というのがいろいろ合意をつくっていく上で非常に大きなハードルであったということは、御指摘のとおりでございます。

 その中で、御質問の日本の側の資金というのは、命の共生イニシアチブ、生物多様性保全に関する分野で、二〇一〇年から三年間で総額二十億ドルの支援を予定している、このことについての御質問であろうかと思いますが、やはりこれについては、これはCOP10において政府としてお約束をしておりますので、議長国として生物多様性の保全に向けてリーダーシップを発揮するという強い決意の表明でございますので、今後しかるべく取り組んでまいりたいと思っております。

 この二十億ドルなんですけれども、外務省の予算という枠ではなくて環境省の部分もございますし、関係の省庁ともしっかりと努力をし、また、お金のことになりますとお願いをしなければいけないしかるべきところもございますので、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。委員からの各方面への応援もお願いを申し上げたいと思います。

田島(一)委員 これはもうぜひ、国際的な約束事としてでありますから決してむげにするわけにはまいりませんので、そこはもうあらゆる方面で協力をし合って、何とかその国際的な約束を果たしていくために努力を重ねていきたいと私どもからも申し上げておきたいと思います。

 資金の捻出も非常に大切でありますが、金だけで解決すればよい、生物多様性の保全が確保できるというものではございません。適切な知見、そして科学に基づく技術力の移転等々が何よりも重要になってまいります。すなわち、言いかえれば人的資源、人材の育成というものをやはりセットに考えなければなりません。新たなこの戦略計画を達成していくために必要な人材確保、これからのその試みが注目されるところだと考えますけれども、環境省として、今後、この人材育成についてどのような取り組みをされようとしているのかをお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘いただきましたように、新たな世界目標に基づきまして生物多様性の保全を図っていくためには、それぞれの締約国の中で国家戦略という形で新しい目標のもとでの政策決定をしていただく、また、そうした計画に基づいて実際の保全活動をしていくということが必要になるわけですが、御指摘のとおり、そのためには資金とともに人材の育成、能力育成が必要になるということだと認識しております。

 我が国といたしましても、議長国でございますので、生物多様性日本基金というのを今回設立することにしておりまして、この基金を活用しまして、条約事務局や国際機関と連携しまして、途上国におきます人材育成等を進めていきたいというふうに思っております。

田島(一)委員 ただいま日本基金を設立するという御説明をいただきました。ぜひ、この資金の運用等々についてもしっかりとそのチェックが入るよう、また、基金を設立する日本の意思がしっかりと働く、そのような機能を十分に持たせていただくことを強く望んでおきたいと思います。

 冒頭の大臣からの答弁にもございました国連生物多様性の十年についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 いよいよ、今回、この国連生物多様性の十年を国連採択するよう勧告することも決定をされたわけでありますが、報道ではもう早々と、開催地でありました名古屋市が、この生物多様性の十年を推進するセンター機能を誘致するなどといったような、提供するといったような報道もなされているところであります。ややもすれば、何か箱物をまたつくればいいやというような考え方にとらえられると、この十年というものがそれで何か収束してしまいそうで私はちょっと心配をしているところでありますけれども、やはり大切なのは、この十年間という長いようで短い期間をどのように計画的に、また着実に活動や取り組みを進めて保全に効果を上げていくかという、中身ではないかというふうに思います。

 予算確保も大切です、そして人材育成も、先ほども答弁あったとおり重要なことであります。この十年間、先のことまでなかなか言及しづらいテーマだとは思いますけれども、どのようにこの取り組みや活動を支えていく予算づけをしていこうとお考えなのか、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

樋高大臣政務官 田島先生におかれましては、前の副大臣ということで、今回のCOP10も含めましてさまざまな功績が大であると認識をいたしておりまして、その実績に恥じないように、しっかりと研さんを積んでまいりたいと思う次第であります。

 今、大切な御指摘をいただいたというふうに認識をしているところであります。今回、COP10におきまして国連への勧告が決定された、今おっしゃいました国連生物多様性の十年におきましては、愛知目標の達成に向けまして、二〇一一年から二〇年までに国連全体で集中的に生物多様性の重要性を周知し、その保全などに向けた取り組みを促すこととされているわけであります。

 環境省といたしましても、この生物多様性の十年に向けまして、国内において生物多様性への理解を深める普及啓発等を進めるために、来年度予算要求を行っているところでございます。さまざまな知恵を絞りに絞って、限られた予算でありますけれども、小さい予算で最大の効果が上げられるというものを、今、予算要求させていただいております。例えば、生物多様性の十年委員会、これは仮称でありますけれども、その運営事業、あるいは地球いきもの応援団事業、あるいはCOP10名誉大使の活動支援、あるいはグリーンウェイブ二〇一一の実施などでございます。

 国連総会で決議が採択をされれば、名古屋市などの自治体を初め関係機関などと連携、協働を図りながら、生物多様性の十年の取り組みを積極的に推進するため努力をしてまいりたいというふうに思う次第であります。日本は生物多様性の十年の提案国でございますので、積極的な取り組みをむしろ模範となってやっていかなくてはならない、このように考えているところであります。

 田島先生におかれましては、お力のあられるところで、ぜひとも予算確保に向けましての御指導をいただければありがたいと思っております。

 ありがとうございます。

田島(一)委員 お願いをする質問のはずが、何かお願いされているようで、私も大変微妙な状況に置かれているんだというふうにも感じているところでありますが、ここは政府と力を合わせて、今回せっかくここまでして採択していただいた議定書でもありますし、何とかしてホスト国としての責任をやはりきっちりと示していくことが何より重要だと思いますし、フロントランナーとしての責任もあろうかと思います。人材育成、そして資金確保、両面にあって世界が注目をしている、その自覚をずっと持ち続けていく、そんな十年間であってほしいと願うところでもあります。

 さて、今回のCOP10と、それに先駆けてMOP5も開催をされて、今回は名古屋・クアラルンプール補足議定書、そして名古屋議定書と、相次いでまとめ上げられたところでもあります。今後はこの批准に向けた取り組みを進めなければならないところでありますが、やはり重要になってまいりますのは、国内法の制定でありますとか改正といった作業であろうかと思います。

 ちょうど二年前、本日もお座りいただいている江田委員も一緒に、私ども、生物多様性の基本法を議員立法で全会一致で成立させていただいた。その基本法に基づいた国内法の整備ということも、もう二年前に既に私どもは問題視をしてきたところでもあります。ようやくこの先、里地里山法という、この基本法のもとでの新たな初めての法案が審議されることとなっているやに仄聞しております。

 今後、この議定書や補足議定書を含めて、国内法の整備等々が、次の通常国会等で法案上程がなされていくのではないかというふうに考えておりますが、せっかくこのCOP10で上がった成果を内々だけで、小手先だけで済ませてしまうのではなく、見える形でアピールをするという意味も含めて、やはり国内法を制定していくことが何より重要なのではないかというふうに考えておりますが、どのようにお考えなのか。

 また、今回のこの議定書の中でも、民間参画、NGOの参画の手続等々が推進の中身として大きく取り上げられたところでもあります。基本法の中にもうたってある。そのような形に沿って、今後、国内法の整備に当たっていただく必要があるのではないかと考えますが、そのお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 御指摘のとおり、今回採択されました議定書につきましては、議長国としてできるだけ早期に締結したいというふうに考えております。

 他方で、議定書を締結するためには、国会の承認をいただくなど、各般の作業が必要となっております。具体的には、議定書の日本語訳をまず確定させた上で、義務の内容の精査や既存の国内制度との関係性などの確認を行った上で、どのような国内制度が適切か、あるいは必要となるかなどの検討が必要になるのではないかと思っております。

 こうしたことから、どのような内容が必要か、またそのために法律の改正等が必要になるかどうかも含めまして、今後よく検討をしていきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、早期の議定書の締結を目指して政府全体で取り組んでいきたいというふうに思っております。

 また、NGOの方あるいは民間の方々につきましても、COP10の対処方針等々につきましても含めまして、いろいろなお考えを伺いながら、今回政府としての考え方を取りまとめてきております。どのような制度内容が必要になるかも含めまして、今後、よくまたその時点その時点で、NGOの方を初めとしまして、民間の方々の御意見も伺いながら作業を進めていきたいというふうに思っております。

田島(一)委員 ありがとうございました。

 二〇一二年にはリオ・プラス20、そして二〇一五年にはMDGsの評価等々が行われ、ある意味ではその過程過程にまだまだハードルもやってまいります。どうぞ、そういった点も踏まえた形での施策の展開を計画的にお進めいただきたい、そのことを強くお願いしておきたいと思います。

 最後に、今回のCOP10の成功は、まさしく、議長のリーダーシップはもとより、各国の本当に前向きな姿勢がつくり上げた成功ではなかったかと思います。過日の委員長の言葉をかりるならば、国際会議の金字塔を打ち立てたと言っても過言ではない成果だったというふうに思いますが、課題もまだまだあります。

 国内での法律の整備をしっかりと進めていただきながら、資金の獲得、そして向こう二年間のホスト国としての責任を果たしながら、生物多様性の十年間を着実に歩みを進めていただきますように心からお願いを申し上げまして、質問を閉じさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小沢委員長 次に、井上信治君。

井上(信)委員 自由民主党の井上信治でございます。

 私は、この環境委員会、初めて委員になりましたけれども、COP10という本当に歴史的なそんな瞬間に議会として立ち会えること、視察をしたり、あるいはきょうこうして質疑をさせていただけることを大変うれしく思います。

 まずは、本当に松本大臣には大変お疲れさまでございました。心からその労をねぎらいたいと思います。大臣だけではなくて、環境省そして関係省庁の皆様方、また参加されたNGOやボランティア関係者の方々、そして、日本の国だけではなくて、世界各国の関係者の方々に心より敬意を表したいと思っております。

 そして、今回、我々も二十七日の日に委員会視察ということで現場も見せていただきました。想像していた以上にと申しますか、本当に大変な熱気でありましたし、他方で、本当に世界各国から大勢の方が来られているわけですから、その中でいろいろ利益のせめぎ合いなどもあって、本当に大変なんだなということを現場に行って改めて感じました。

 しかし、そういう中での名古屋の議定書の採択ということ、これは最大の成果だと思います。私は、党派を超えて本当に、一人の日本国民として、あるいは国会議員として、これは私たちが誇りに思うところでありますし、その前には、やはり前小沢環境大臣を初めとした政務三役の皆様、きょうもいらっしゃいますけれども、そして今の三役の方々、こういった方々の政治的なリーダーシップも非常に貢献したのだと思っております。

 大臣の御報告にもありましたけれども、事務方の事務的な交渉の中でなかなか、これが暗礁に乗り上げかけていたところを、議長案というものを政治的なリーダーシップで出して、そして閣僚レベルでの協議を重ねたということ、それが最終盤で議定書の採択につながったということ、これはまさに民主党さんがおっしゃっている政治主導、真の意味での政治主導の成功例だと私は思います。余り名前は申し上げたくありませんけれども、ほかの民主党の大臣にもぜひ松本大臣を参考にしていただきたい、政治主導をちゃんとやっていただきたい、私はこう思っております。

 しかし、そうはいいましても、もちろん完璧というのはあり得ないわけでありまして、このCOP10におきまして、さまざまな問題点あるいは今後の課題ということがあぶり出されてきたのも事実であります。私は、むしろ、これから生物多様性の保護もますます進展しなければいけないし、そしてこの名古屋議定書の中身の実現のためにこれから取り組まなければいけないわけですから、そのために、そういった問題点を中心にきょうは質疑をさせていただきたいと思っております。

 ちょっと立ち返りますけれども、まずは、今回、日本の国が議長国になったということが最も大きな契機となったわけでありますけれども、この議長国に日本が手を挙げて、そして議長国になったということ、その目的は何だったのかというところ、そこをまず大臣に教えていただきたいと思います。

松本国務大臣 お答えいたします。

 井上委員にも、二十七日、皆さんと一緒に名古屋に来ていただいて、励ましていただきました。そのことも、今言われましたけれども、党派を超えて、これを成功させた大きな力になっていただいた。改めて感謝を申し上げたいと思います。

 実は、二十七日、私はにこやかにしていましたけれども、ちょうど閣僚級会議が始まりまして、二十七、二十八とあって、もう頭はその会議でいっぱいでありまして、二十八日にはほとんど外に出ずに、非公式の閣僚会議でさまざまな人たちと交渉をしておりました。皆さん方がそのときに、力をいただいたということが私はうれしく思います。

 実は、COP10の招致は二〇〇七年に決定をいたしまして、二〇〇八年はドイツであるということが決まっておりましたので、二〇一〇年の招致を日本は決定しました。

 そのときに何があったかというと、二〇一〇年までに二〇一〇年目標がある、つまり生物多様性の損失速度を顕著に減少させるというその目標の設定が二〇一〇年度まであるということと、もう一点、実は二〇〇六年に、ABSの枠組みをしっかりつくる、それも二〇一〇年までにこの枠組みをつくることの検討を終了するということがあったわけですから、この二〇一〇年というのは非常に大きな意味があるということで、自然と共生する、また伝統的に自然を愛する日本が生物多様性に貢献をしていきたいということで、最終的にCOP10の日本開催を招致したところであります。

井上(信)委員 そして、今おっしゃった大臣の大きな目的、これは今回達成できたとお考えか、お答えください。

松本国務大臣 さまざまなことはありますけれども、愛知目標ができました。私はずっと、二〇一〇年以降の空白期間を設けてはならないということで、二〇二〇年までの短期目標、愛知目標をつくりましたし、また名古屋議定書もできました。

 そういう意味では、世界各国の皆さんが名古屋に何で来たのか、やはり空白期間を設けてはいけない、アフリカからヨーロッパから、ラテンアメリカからアジアから、さまざまな人たちが日本に来て、何とか最後は議定書をつくってほしい、そしてポスト二〇一〇年目標をつくってほしい、この思いはみんな共通していましたから、その共通の思いが成就してこのようになったと思います。そういう意味では、生物多様性条約にとって新しい時代の幕あけになった。これは、すべての人たちの、人類の英知の結集だというふうに思っております。

 先ほど閣僚級会議が政治主導であったということを言われましたけれども、まさに新しい試みでありました。作業部会で働いている人たちでは結論がなかなか出ない、だから、二十七日から二十八日に向けて閣僚級会議をやって、私はもう非公式にずっと交渉を行っていって、その我々の閣僚級会議から今度はガイドラインを作業部会に与えて、いわゆる政治主導をしっかり発揮してやったという国際会議は今までに余りなかっただろう。ですから、これからの国際会議の枠組みというか新しいスタイルもこのCOP10で、実験ではありましたけれども、いい結果になったんだというふうに思っております。

井上(信)委員 私も、大臣が今答弁いただいたように、議長国としての日本の国の大きな目的はほぼ達成できたんじゃないか、ここは素直に高く評価をしたいと思っているんです。

 しかし他方で、国際協議、こういった国際交渉の場というものは、もちろん、世界各国が共通の利益のためにいろいろと妥協をしながら、協調しながらその目的を実現していく、特に議長国というのはそのかじ取りをするわけです。こういった議長国としての役割と同時に、いや、もしかしたらそれ以上に大切なのは、やはりそれぞれの参加国がみずからの国の国益を守り、それを貫いていくということだと思うんですね。

 そういう意味では、私は若干残念なのは、このCOP10、こういった国会の審議におきましても、あるいは我が党の環境部会というものがございます、そういった中でいろいろお話を伺っても、一締約国としての日本の立場、日本の国益をどう主張し、どう守っていくのか、こういったことに関する言及がほとんどないということなんですね。これはやはりちょっといかがなものかと思っております。

 とりわけ地球温暖化に関しまして、これについてはいろいろな評価がありますけれども、やはり京都議定書の採択に向けて議長国として頑張った、そして成果を出した、しかし、いざ議定書を採択したら、何だか議長国の日本の国にだけ不利になってしまった内容になっているのではないか、こういったような声があることも事実なわけですから、この生物多様性が同じことになってしまっては困るということ、それを非常に強く思っています。

 あるいは、来週からAPECが開かれます。やはりAPECを成功に導いていくというのは日本の国の責任ですけれども、しかし、今や日本の国の世論はそれ以上に、TPPに参加するかどうか、日本の国益をどうやって守っていくんだ、こっちの方が国民としては実は関心がある。これが国際交渉の現実であり、そして国政に携わる我々の立場であるということも言えるわけです。

 ですから、そういう意味で、一締約国としての日本としてどのように国益を主張し、そしてそれをかち取ることができたのか、あるいは、こういった点については残念ながらかち取ることができなかったのか、そういったことについて御説明をお願いしたいと思います。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 まず、井上委員の環境政策につきましての日ごろの御尽力に、心から敬意と感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 よいお尋ねをいただいたと認識をしております。また、特にABS、いわゆる遺伝資源へのアクセス、またその利益配分につきましても、さまざまな御懸念の声が寄せられているということは私自身は認識をしているところでありますけれども、結論から申しますと、それらの御懸念には至らないということをお話しさせていただきたいと思うわけでございます。

 まず、このABSの議定書につきましてでありますけれども、我が国からは、国内産業、日本国内の産業あるいは研究機関への影響、あるいは制度的実効性の観点から、必要な主張をしっかり行わせていただいたところでございます。

 特に、各界各層からいただきましたいろいろな要望なりあるいは心配の声などにつきまして、ちょっと要約をして端的にお話をさせていただきますと、具体的に申し上げさせていただきたいと思いますが、今回、最終的に合意をいたしました名古屋議定書につきまして、まず一点目といたしまして、遡及適用の規定は入っていないというのが一点目でございます。

 それと二点目でございますけれども、締約国の遵守を確保するためのチェックポイントを一つ以上指定するということがされてきましたけれども、その実施に当たりましては各国の裁量が認められたという点でございます。

 そして三点目、いわゆる派生物の部分でございますけれども、派生物につきましては、議定書の対象としては明示的に規定されないという内容になったわけでございます。

 つまり、遡及にしても、遵守にしても、派生物にいたしましても、我が国も含めた先進国の大きな懸念は解消される内容になったと認識をしているところでございます。

 さらに四点目といたしまして、遺伝資源へのアクセスに関する提供国の制度の明確化や透明化が図られたという点。

 そして五点目といたしまして、学術研究など非商業目的の研究に係るアクセスや、あるいは人の健康などに関する緊急事態への特別な配慮が定められたわけであります。

 以上のように、我が国産業界あるいは学術研究界から要請がありました事項が議定書に盛り込まれるなど、先進国など、我が国にとって受け入れられる内容になったというふうに認識をしているところでございます。

 ありがとうございます。

井上(信)委員 今のABSの点について、いろいろ議論はあると思うんです。ただ、私の質問は、日本の国益として主張し、かち取ったものも紹介してもらいたいんですが、これは百点満点ということはないと思うんですよ。ですから、これは主張したけれども残念ながらかち取ることができなかったという点についても、あわせて御紹介いただけないでしょうか。

鈴木政府参考人 最後は議長からの提案を出したということでございますけれども、議長からの提案の内容というのは、締約国の主張のバランスをとったということでございます。そういう意味で、今政務官が申し上げました先進国が最も気にしている点、三つの問題については懸念が払拭されております。

 他方で、利用国の立場からいいますと、提供国のアクセスについてはできるだけ明確化、透明化を図ってほしいというのが我々の主張でございましたけれども、そこについては、一定の範囲で透明化が図られた、明確化が図られたということは今政務官が申し上げましたとおりでございますけれども、そこには逆に提供国の裁量がかなり認められておりますので、そういう意味で、もともと利用国が望んでいたほどの透明化、明確化というのは図られていないという部分がございます。

 また、利用国の方からは、病原体の問題についてもいろいろ申し上げておりましたけれども、それについては必ずしも十分な、もともと主張していたほどの内容はとられていないということがございます。

 そういうことで、全体として、各国の主張の中で各国が受け入れ可能なバランスを考えて議長が提案されたということでございますので、そうした点については必ずしも利用国がもともと主張していたほどの内容はとれなかったわけですけれども、逆に、利用国がどうしてもこれはできないと申し上げていた遡及適用等三点については懸念が払拭される内容となっているということでございます。

井上(信)委員 私もそのとおりだと思います。

 ちょっと意地悪な聞き方をしましたけれども、でも、そういう意味では、最低限の日本の国益あるいは産業界などからの要請についてはこたえることができたのではないか。しかし他方で、今後の課題ということで残ったのも事実だという、今の御答弁もそういうことだと思うんですね。

 派生物についても、これを本当に含み得るのかどうか、ここはちょっと不透明なところが心配です。あるいはアクセスの改善についても、では具体的にその透明化、明確化、まだまだこれからですよね。もちろん、それぞれの資源国の国内体制をどういうふうにやっていくのかということでありますから、こういったことを引き続き、やはり日本の国益ということを考えてこれからこの環境行政を進めていきたいんです。

 私は、そういう意味ではちょっと残念なのは、今も政務官にお答えをいただきましたけれども、やはり日本の国益を守るその代表者は大臣でありますから、議長国としての、議長としてのお立場もあったとは思うんですけれども、では、もう一度大臣の方から、日本の国益を守っていくんだ、ちょっと決意を聞かせてもらえますか。

松本国務大臣 私は、参議院でもまた衆議院でも、委員会がございましたときに、遡及はどうなんだとかいうことは答えませんでした。というのは、議長でありますから、まだ議長という職についていましたから。ですから、個別のABSの中身についてはほとんど触れませんでしたけれども、議長国が議長としての責任を果たすということが何よりも国益を守ることだというふうに私自身は考えておりました。

 それぞれ、今言われましたように、アフリカの国々は、遡及適用してくれ、してくれ、例えばEUは、チェックポイントの問題、あるいは派生物の問題、伝統的知識の問題等々で、それぞれが真ん中に歩み寄って、国益が私は大事だと思いますけれども、我々の国益を主張したら、今度はアフリカが、途上国が黙っていない、ラテンアメリカのどこそこの国が黙らない。全会一致の原則でありますから、そういう意味では、それぞれが妥協できる、譲歩できる中身をつくっていく。

 正直言いまして、議長案を出すときは地獄の苦しみでありました。このままもう作業が終わってしまえば、ABSがまとまらなかったから、議長として、これで終わりましょうと言うこともできたわけですけれども、議長案を出して、それをけられたら今度は物すごい国益を損するということがあって、結果的に皆さんがこれに同意してくれたからよかったと思いますけれども、綱渡りのような状況の中でまとまった、そして、COP10をさまざまな人々が、成功してよかったなと世界各国の人が言ってくれた。ある意味では、そこに私たちの国益はあったのかな。

 個々の問題はたくさん、今、井上先生おっしゃるとおり、産業界等々もあったと思いますけれども、産業界も、この枠組みができてむしろよかったというふうに私は思います。

 つまり、提供国の中にどうやって入ったらいいのか、企業もどうやってアクセスしたらいいのかというのが全く今までルールがありませんでした。もうここ十数年、個々の企業はそういうことを自分たちで解決しながら、そして、いろいろな時間をかけて、お金をかけながら、他国の会社とやるのか、国とやるのか、他国の企業とやるのか、いろいろなことを練習してきましたから、ある枠組みができたということはよかったと思います。

 ですから、会社の皆さん、企業の皆さんは、これからはコストではなくて、これからかかるお金は投資として利用できるというふうに前向きに考えていただいている産業界の方がむしろ今多いんだろうというふうに思いますので、その辺のところも、それぞれ各国が歩み寄って合意をしたということがよかったのかなというふうに思っております。

井上(信)委員 そうですね。私も、やはり議長国としてちゃんと議定書を採択したというのは、まさに日本の国の最大の国益だと思います。そこは大臣のおっしゃるとおりです。

 ただ、議長国で採択した立場だから、日本が妥協してこれからもそういった交渉をやっていこう、そういう逆の効果にならないように、そこはぜひこれからもお気をつけいただきたいと思っています。

 それと、そういう意味では、日本の国、特に先進利用国の立場としては、今回を総括して考えると、割とかち取る部分が多かったと思いますけれども、その裏には、やはり資金援助の話があったと思うんですね。それは、途上国側の関心はそこに集中をしておりましたから。その中で、日本の国も資金援助を三種類ですか、表明をされました。その中で、私がちょっと違和感を感じたのは、例の命の共生イニシアチブ、あの二十億ドルの話なんですね。

 ちょうど我々が視察に行った二十七日に、菅総理が開会式に出られて、そしてそこで公式に表明されたわけであります。正直言って、驚きましたよ。我々も事前に知らなかったものですから。恐らく与党の中でもそうだったんじゃないんですか。我々、名古屋の行きのバスの中で、当日の朝刊を見ながら、これは何だろうというふうに言った記憶がありますからね。

 ここで二十億ドルの支援を発表した。しかし、残念ながら、この二十億ドルがどこまで国際社会に評価されたのかなという思いがあるんですね。その後の報道などを見ておりますと、二十億ドルというのは大変な額ですよ、しかし、それでもなかなか評価の声が上がっていない。あるいは、日本が二十億ドル出すなら、ではうちももっと出そうよという支援の拠出表明が余り行われていませんよね。一けた、二けた違った小さなボリュームしか各国は表明をしていない。それは一体なぜなのか。やり方が稚拙だった、ちょっとまずかったんじゃないかなと思っています。

 聞くところによりますと、この二十億ドル、これは新規のものではなくて、既存の、今までやっているODA予算の組み替えで、生物多様性に資するものということでカウントしている、そういった話も聞こえてきますけれども、ここのところ、事実関係はいかがですか。

山花大臣政務官 まず、事実関係について申し上げますと、今般表明いたしました支援というのは、ポスト二〇一〇年目標の検討状況を踏まえまして、今後の我が国の生物多様性保全に関連する支援のあり方として新たに整理をして、イニシアチブとしてまとめたものでございます。

 つまり、否定的な評価で御質問いただいているようですけれども、これまで日本の政府として確かにODAの中で、委員も外務省でお仕事をされていたことが、わかるので御案内かと思いますけれども、本当に縦割りの中でさらに細分化されているものがあります。それをいわば、例えて言うと、品書きが本当にいろいろなところに散っている、ところが一覧できるメニューがなかった、これを生物多様性のための保全に関する支援のあり方として一覧できるような形で提供したということで御理解をいただければよろしいかと思います。

 評価について、海外からの評価についても、日本では余りその点を報じていただいていないんですけれども、事務レベルでは非常に評価をいただいています。また、例えば、具体的に言いますと、報道で申し上げますと、ブラジルなどではエスタード・デ・サンパウロ紙という、何か大きな新聞らしいですけれども、日本による二十億ドルの拠出については、新しい目標を実行するための財源を保障するものだと評価をしていただいたりであるとか、あるいは途上国ということでいいますと、マダガスカルのレ・ヌベルという、これも新聞ですけれども、まだコンセンサスができていない状況で日本が二十億ドルの資金拠出を表明したということで報道をいたしております。これについて、今次会議開始以降最も重要かつ時宜を得た提案である、COP10をぜひとも成功に導きたいとする日本政府の強い思いがよく反映されているという学識経験者の見解なども表明をしていただいております。

 ODA予算がここのところ、トレンドとしてはなかなか厳しい状況の中での今回、先ほどメニューを一覧できる形でと申し上げましたけれども、そうした知恵を使って、つまりは、それこそ国益ということでいうと、限られた予算をいかに有効に見せて、そして評価をしていただくかということについては、ちょっと日本のメディアは余り好意的に報じていただいていないようですけれども、実際、現場では評価をいただいていると私どもは認識をいたしております。

    〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

井上(信)委員 ちょっと質問のトーンは否定的に聞こえたかもしれませんけれども、決して否定的ではないんです。

 やはり、これはODAの組み替えという言い方をするとあれですけれども、それにしても、それは二十億ドル出すのは事実ですから、国民の大切な負担で。ですから、これは大変な英断であります。ただ、むしろやり方がちょっと稚拙だったんじゃないか。それは、やはり同じお金を出すなら、最大限の効果を得なければいけないわけです。そういう意味では、御紹介いただきましたけれども、少なくとも日本の報道を見ている限りでは、やはり高い評価を得られていないんじゃないかなということですから。これからもいろいろ外務省として、あるいは生物多様性についてもいろいろな財政支援の機会があると思いますから、そういうことをよく考えながら、うまいやり方でやっていただきたい、これが私のお願いであります。

 では、大臣、ちょっと手短に。済みません、時間がなくなってまいりましたから。

松本国務大臣 二十億ドルの話はいろいろ今されましたけれども、地道に、例えば、ことしの七月、九月、ABSの事務局、ジョグラフ事務局長のところですけれども、七月に交渉がほぼ暗礁に乗り上げました。そのときに、再開をするための費用であるとか、あるいは九月にもう一回それをやろうと、何回も何回も、モントリオールでやるときの費用は日本が負担をしてまいりました。そういう意味では、一億程度の負担ですけれども、こういうことがやはりABSの事務方に対して物すごいモチベーションを上げてきた。額は小さいですけれども、そういう作業もやってきたということだけ、参考までにお知らせをしておきます。

井上(信)委員 ありがとうございました。

 それでは、ちょっと論点をかえまして、ABSについて。

 やはりABS、これは大きなインパクトがあると思っているんです。それは、やはり法的拘束力があるということですね。この法的拘束力があるからこそ、それぞれ、産業界も負担を強いられるわけでありますけれども、日本経済に対する大きな影響、あるいは個別の企業に対してもそうです。そういったことを考えたときに、当然、日本政府として、さまざまな産業界や企業のいろいろな意見を聞き、協議をし、そういった手続、当然のように踏んでいると思いますけれども、そういった手続について、どんなことをやられてきたか、回答をお願いしたいと思います。

鈴木政府参考人 ただいま大臣からお話ありましたように、ABSにつきましては、準備会合が三月、七月、九月というふうに行われております。それぞれの直後におきまして関係団体との意見交換会をやっておりまして、四月には関係副大臣会議におきまして関係団体から、それから八月におきましては、事務ベースですけれども、経団連そして関係業界、それぞれやらせていただきまして、また、最後の九月の準備会合の後には経団連の方と意見交換をやるということで、会議の節目節目で意見交換をしながら今回の会議に臨んだということでございます。

    〔大谷(信)委員長代理退席、委員長着席〕

井上(信)委員 これも日本の報道によりますと、やはりここの協議が十分じゃなかったんじゃないか、企業の方々も大変な不安の声が出ているというふうに出ておりますので、真実はちゃんとやっているというお答えなのかもしれませんけれども、少なくとも、やはりこれは、さっきの国益という話もそうです。それは、生物多様性は重要ですよ。しかし、そのことによって日本経済が大きなダメージをこうむるということになってしまっては、これは政府としては困りますから、ここのところを引き続きよくちゃんと協議を行っていただいて、曲がりなりにもそういった報道が出ないように、ちゃんとしっかりしてもらわなければ困るなというふうに思っております。

 そういう意味では、日本経済全体に与える影響、これはどんな影響があるのかということ、これについてお答えいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 まだ具体的な運用はこれからですので、確定的なことはなかなか申し上げにくいところがございますけれども、ABSの議定書につきましては、先ほどから申し上げていますように、経済界が懸念しておりました三つの点についてはほぼ払拭されているということはございます。

 他方で、先ほど政務官からもお話を申し上げましたけれども、アクセスの制度について、明確化、透明化ということを、提供国の裁量にある程度ゆだねられておりますけれども、求めるというふうな内容にもなっておりまして、今後、遺伝資源の提供国と利用国の間でスムーズなアクセスと利用が進むという基盤が、少し基礎ができたんじゃないかなというふうに期待されております。

 今後、遺伝資源の利用によりまして新しい医薬品等が生まれ、またその利益が途上国等に還元されまして、生物多様性の保全が図られるという好循環を生む基盤ができたんじゃないかなということを期待しているところでございます。

井上(信)委員 ちょっと局長、それはピントがずれていますね。それは、確かにメリットもありますよ、メリットもある。しかし、残念ながら、デメリットもあるのも事実だと思うんですね。

 そして、私が聞いたのは日本経済全体に対する影響なんです。個別の企業だけではありません。個別の企業としては、そもそも民民の契約でそれをやっていく。それは契約行為ですから、いろいろな負担があるでしょう。しかし、日本経済全体としてどれだけの影響になるか。例えば派生物とか遡及適用とか、この派生物や遡及適用が議定書の中でどういう結論になるのか、含まれるのか含まれないのかによって、その経済的なインパクトの大きさというのは全く違いますよね。ですから、そういったことをちゃんと考えたのか。例えば、そういった場合分けをしてシミュレーションなんかをやっているんですかね。

 私は、地球温暖化の問題だって、やはりそういう手続を、産業界との調整をちゃんと踏んでいなかった。あるいはシミュレーション、これだって、メリットばかり強調してデメリットの方を算定していなかった。こういった問題点を我々自民党は指摘してまいりましたよね。これと同じことになるんじゃないんですかというのを心配しているんです。もう一回答弁してください。

鈴木政府参考人 温暖化の場合と若干異なる性格のあるところは、温暖化の場合は、国別の上限を決めるという性格がございますけれども、今回の議定書は、基本的には、加盟国が利用国と提供国という立場でそれぞれの利益を最大限化しようということでございます。日本だけが特に不利益をこうむるとか、そういうことは基本的には制度としてはないような仕組みがございます。

 そういう中で、今回、もともと遺伝資源につきましては提供国が主権的権利を持つということで、国内法を自由に定められるというのが今の大原則でございますので、その大原則の中でどのような国際ルールをつくると遺伝資源の利用がさらに進んで利益を生むことになるのか、そして利益を生んだ結果が生物多様性にどのようにうまく回るのかということをルール化しようというものでございます。

 今回の中身につきまして、遡及適用とか派生物というのは、それぞれ業界の方ともよく相談、意見交換しておりますけれども、そもそも、そういうものを入れては実行可能性はないということを何度も指摘を受けておりまして、その部分は、実は利用国共通の問題意識、そういうものを入れては実行もできなければ、今先生御指摘のように、経済への悪影響も懸念されるということでございますので、そこは日本独自というよりも利用国全体として、遡及適用とか派生物を無定限に対象とするというふうなことはできないというのが共通基盤で、そういうふうな基盤が非常に確固たるものであったことから、今回の議長案でもそのところについては、遡及適用はしない、派生物は対象にしない、こういうふうになったものだというふうに思っております。

松本国務大臣 今、自然局長がおっしゃったとおりであります。

 それぞれ先進国、途上国が歩み寄ってこれができたわけですから、ルールができたことによって、アクセスしやすくなる、利用がしやすくなるというのはあります。今言われたように、遡及の問題、派生物の問題もそういう状況になりました。

 したがって、もし産業界にダメージがあるとしたら、先取りをしなかったとか、この問題について全然取り組まないところにはダメージがあると思いますけれども、先取りをしていきながら、学習をしていきながらやった企業は、まさにピンチじゃなくてビジネスチャンスになってくる。だから、先生、産業界をむしろ鼓舞して、どんどんどんどん、このルールができたんだから、世界に負けないように先取りをしてくれということをおっしゃってください。

井上(信)委員 大臣から頼まれたら、私も微力ながらやりたいと思いますが、それはおっしゃるとおりなんですよ。ですから、そのメリットは十分に評価していますし、それを生かして産業界にも頑張ってもらいたい。しかし、デメリットがまるでないかのような発言はやはりちょっと違うのかなということであります。ですから、そういう産業界に与える影響、個別の企業に対する影響、こういったものをやはりもうちょっと考えないと、美しい世界だけでは通用しないということはやはりあり得ると思うんですね。

 では、ちょっと質問をかえます。

 例えば、大きな関心のある派生物の話、派生物は私もちょっとよくわからないんですけれども、報道を見ますと、派生物は除外されたという報道と派生物は含み得るという報道がありますよね。派生物の定義の問題かもしれない。ケース・バイ・ケースかもしれない。しかし、例えば個別の企業の立場からなったら、では、うちが利用しようとしているこの派生物は含まれるのかどうかということはやはり考えますよね、それがわからないというのでは困りますから。派生物というのは、これは含み得るんですか、どうなんですか。

鈴木政府参考人 現実の今の運用というのは、ちょっと技術的になって恐縮でございますけれども……(井上(信)委員「局長、短目にお願いします」と呼ぶ)はい。遺伝子を利用する際には、当然、提供される実際の土地を所有している民間の方とかそういう方と企業との事前の契約というのと、それから、それぞれの締約国の中で、そういう遺伝子を利用するときの政府としての事前同意というのがございます。

 今回ルール化しようとしているのは、基本的には、政府としての事前同意というところをどうしようかということなんですが、明確になっているのは、政府としての事前同意の対象として派生物は入れないということは明確になっています。他方で、派生物について、実際の契約当事者間の合意、MATと呼んでいますけれども、相互合意の内容は、今でも派生物を入れた合意書が多数ございますので、そこは当事者間にゆだねられているということでございます。

井上(信)委員 私も、個別の企業とかあるいは業界のいろいろな意見も少し聞かせていただきました。やはり、それぞれいろいろな意見があると思うんですね。これは民民の契約だから、むしろ、なるべくいわば余計なことをしないでくれという話。他方で、やはり不安に感じている企業もあって、そういうことに対しては国の関与を求めている部分もあると思うんですね。アクセスの改善だって、本当に改善されるかどうかというのはわからない。今の派生物の定義の話もそうですよね。

 ですから、そういったことをやはり国としても、この事前同意のところだけじゃなくて、あとは民間同士の話、契約の話ですから私は知りませんよというのはちょっと私は違うと思うんです。

 きょうは経済産業省田嶋政務官にも来ていただいていますので、ちょっと産業界、企業側の立場として答えていただきたいと思います。

田嶋大臣政務官 御答弁申し上げます。

 井上委員がおっしゃっておるとおり、一締約国としての国益をしっかり守っていくということで、今後、政府の支援というのは大変重要になってこようかと思いますけれども、まず、もう既に御答弁が出ておりますが、我が国企業の遺伝資源の利用を基本的に制約するものではないという認識をしております。その上で、御指摘のとおり、この合意を契機として、一つのルール、枠組みができたということでございますので、我が国企業による遺伝資源の適切な利用を一層促進していくことが重要であるというふうに考えております。

 そういうもとで、経済産業を所管する経済産業省といたしましては、現在、独立行政法人の製品評価技術基盤機構、通称NITEというものでございますが、を通じまして、遺伝資源提供国に技術の協力、人材の育成を行いながら、当該国と連携をして、微生物を収集、保存をし、そして我が国企業に提供する事業を、これはこれまでも行っておりますけれども、この事業をさらに拡充していくということで、実際、千葉県の木更津にございますこのNITEにはライブラリーがございまして、微生物のそのライブラリーを通じまして、しっかり民間企業を支援していくということでございます。

 また、名古屋議定書や、資源国、諸外国のABSの国内法などに関する情報提供、これから我が国の企業にしっかり行っていき、そして企業からのさまざまな不安、相談に応じる体制の強化を図っていきたいというふうに考えておるところでございます。

 以上です。

井上(信)委員 ぜひ引き続き、産業界、企業の要望も踏まえて、国としてできることはたくさんありますから、これはちゃんとやってもらいたい。ちょっと不十分なんじゃないかなと懸念をしております。

 時間がないので最後になりますけれども、これからの取り組み、課題、いろいろあります。一番大きいのは、さっきもちょっとありましたけれども、やはりアメリカが入っていないというのは非常に問題ですよね。ですから、アメリカをいかに引き込んでいくかということ。アメリカもいろいろな懸念があると思うんですね。手続が煩雑になってしまうとか、あるいは技術や知財の保護が十分でないとか、いろいろなことを言って、参加しなかった。

 しかし、今回のこの議定書あるいは愛知ターゲットも含めて、すばらしい成果を出したというのであれば、これに基づいてやっていけばアメリカの懸念もありませんよ、だからアメリカも参加してくださいと、この採択を取りまとめた議長国として、そうやってアメリカに対して説得をし、引き入れていくのも責任だと私は思います。これについて、いかがですか。

松本国務大臣 おっしゃるとおり、さまざまなルートを通じて条約の加盟を呼びかけていかなければならないというふうに思っております。

 今、経済産業省のNITEの話がありました。実は、条約には入っていませんけれども、アメリカという国はそれぞれやはり知恵を出していると私は個人的に思っています。例えば遺伝資源を保存したり、それこそNITEより大きなものをひょっとしたら持っているかもわからないし、このABSの枠組みができたら、もうそれこそさまざまな機関を通じて学習をしているというふうに思います。

 ですから、むしろ、入る入らない、入ってくれとは言いますけれども、入ってきたときに、産業界が、逆に言うと、我々が先取りをしてしっかり今やっていかなければならないなというふうに思っております。オブザーバーとしてアメリカも参加して議論に参加しようという姿勢も今度は見えましたし、今度、国連生物多様性の十年ということが決定をされれば、アメリカを含む国連全体で生物多様性の保全に取り組むことになろうかと思いますので、そのことに向けてあらゆるチャンネルで呼びかけていきたいと思います。

井上(信)委員 ありがとうございました。

 最後に感想だけ。

 本当に今回の議定書の採択は私も高く評価しています。ですから、そういう意味で、やはり政府が胸を張る気持ちはよくわかります、むしろ張っていただきたい、しかし、やはりそれだけじゃだめだと思うんですね。残念ながら、きのうも事務方にいろいろ聞きますと、いや、問題は何にもないんです、とにかくうまくいきましたという答えが多いんですね。役所というのはそういうものかもしれませんけれども、でも、これじゃ、やはりさらなる発展は望めませんよ。

 ですから、まさに政治主導で、特に大臣は謙虚なお人柄でありますから、やはりここで謙虚な姿勢で、成功したからこそ、問題点、課題も踏まえて、これからますます生物多様性を進めていっていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

小沢委員長 次に、吉野正芳君。

吉野委員 COP10の成功、松本大臣、本当に御苦労さまでございました。

 また、このCOP10の成功の陰には、現委員長であります小沢前大臣、田島前副大臣、また大谷前大臣政務官等の事前の根回し、これがベースになって、そして松本大臣、三役のおかげでこれだけの名古屋議定書、愛知目標が定められて、これに向かって、全世界の方々が生物多様性に向かってこれから進んでいくということで、本当に御苦労さまでございました。

 ちょっと通告にないんですけれども、けさのニュースです。菅内閣の閣僚の一人として御意見を伺います。

 尖閣諸島のビデオ流出、ユーチューブに流れたという、このことについて、菅内閣の閣僚としてどう思われているのか、ちょっと通告にないんですけれども、御答弁願いたいと思います。

松本国務大臣 私、きょうの質問でずっと朝七時から勉強しておりましたので、そういう事実関係すら知りませんので、コメントは差し控えたいというふうに思います。先ほど記者懇でそういうことも聞きましたけれども、ちょっとコメントができない状況であります。

吉野委員 事実関係、ビデオを見ているか見ていないかじゃなくて、これだけのビデオが流されたということについての、閣僚の一員としての大臣の御見解、御意見を聞かせていただきたいと思います。

松本国務大臣 ビデオが流されたということすら私はちょっと知りませんので、申しわけありませんけれども、コメントを差し控えさせていただきます。

吉野委員 はい、わかりました。

 これは重大なことですので、菅内閣の閣僚の一員として、きちんと事実を踏まえ、大臣なりの意見を内閣で述べておいてほしい、このように思うわけであります。

 さて、過日、自民党の田中和徳筆頭と神奈川県にある理化学研究所を視察してまいりました。

 ここは、植物の研究を大いにしているところなんです。それで、ちょっと驚いたことには、人間の体をつくっている物質、それの比較対照について、代謝物質というものが約二千五百、人間はそういう代謝物質で成り立っている。ところが、野に生えているペンペン草、これは五千も代謝物質があるということなんですね。

 なぜ植物にはそういう能力があるのかというと、動けないので、環境の変化に対応するだけの能力を自然に植物は持っているんだ。人間とか動物は動けるから、環境が変化したら寒いところから暖かいところに移動することができるということで、植物にはそういう動くことができないから、環境の変化に対応できる能力がある。

 例えば、ある植物が、自分の実とか葉っぱを食べられる虫が来ると、フェロモンという物質を出して、その虫を追っ払ってくれる虫を呼び込む、そういう能力もある木にはあるということも、理化学研究所から聞いてまいりました。

 このように、生物多様性、植物というものは我々人間にもないすばらしい能力を持つ、人間が一番偉いんじゃなくて人間も自然の恵みを得ながらここまで生きてきたということを理化学研究所を見て勉強させられたことを、まず御報告申し上げたいと思います。

 さて、COP10についての質疑なんですけれども、COP10について、COP10はいろいろな会議が開かれていまして、私たちは、地球環境国際議員連盟、通称GLOBEといいますが、このGLOBEの会議が二十五、二十六日に、いわゆる閣僚会議の始まる前に開かれまして、一つの提言を出した。それを松本議長に、環境委員会が終わってからすぐ名古屋に来ていただいて、まずGLOBEの会議の中に飛び込んでいただきまして、そこで私たちの決議文を提言書として議長に手渡したところでございます。

 その前の二十四日には、サンゴ礁についての議論、これは非公式ですけれども行われて、計三日間、GLOBEで討議をしたわけであります。きょうは、そのGLOBEについて、討議したことを質問させていただきたいと思います。

 まず一つは、自然資本という概念なんです。ネーチャーキャピタルという言葉であらわされていますけれども。

 例えば、森があって、伐採して木材を売って、その収入を測定し記録するということは、いわゆるGDP計算、国民経済計算にその売り上げはカウントされます、測定し記録されております。ということは、国民経済計算、GDP計算にカウントされて、それに基づいていろいろな意思決定、判断をするわけなんですけれども、森が切られたといった時点で、森の持っているいろいろな機能、保水機能とか、それによって洪水を防ぐとか、土砂崩れを防ぐとか、水をきれいにするとか、空気をつくるとか、ここの部分が木材が切られたがためになくなっちゃうわけなんですね。ここのところを測定して記録していくという部分が、全く国民経済計算においてカウントされていないんです。丸太が売れた分はカウントされるけれども、丸太を切った後のマイナス部分はカウントされていない。

 こういう物の考え方から、自然資本という、いわゆる自然も会計システムの中に入れていこう、こういう考えで自然資本という概念ができているんです。

 まさに我々は政治家でありますので、いろいろな政策の意思決定をしていかねばなりません。そういう中で、生態系サービス、自然資本をこれから評価して国民経済計算等々に入れていくことが、意思決定をする政治家として一番大事な要素になるのではないのかなというのが私の考えだし、GLOBEのまとめの意見の中に入っておりますので、この点について大臣の御所見を伺いたいと思います。

松本国務大臣 先生にお答えいたします。

 二十六日にGLOBEの会に参加をさせていただいて、先生が中心になって頑張っておられる姿を見て、心強く思いました。

 今、自然資本という話もすごいですけれども、その前の、代謝物質の、ペンペン草が五千で人間が二千五百という話、委員会が終わったらゆっくりお話を聞きたいと思うぐらいでありますけれども。

 私も、実はこの間ちょっと本を読みまして、ベネズエラのどこかの島の猿がそこの食物連鎖のトップにあって、その猿が木を食べて食べて食べまくって、最後の方は、その木が猿に食べられているのがわかって、その木が毒を持つようになって、だんだんその毒を今度は猿が食べるようになって、猿も死んでしまうということがあって、生物多様性というのはすごいなというふうに思いました。

 今のお話ですけれども、自然資本という考え方は非常に大事だというふうに思います。二〇一〇年目標、いわゆる愛知目標では、遅くとも二〇二〇年までに生物多様性の価値が国家勘定に組み込まれるということを目標として挙げております。これに基づいて生態系の保全や破壊が経済的に及ぼす影響を各国の経済政策や開発政策の企画立案に組み込むことは、私も同様に極めて重要だと思っております。

 COP10において最終報告書が公表された生態系と生物多様性の経済学、TEEBにおきましても、この生物多様性は片仮名が多くて大変ですけれども、TEEBでも、自然の価値を目に見える形で示すことの重要性、また、生物多様性の価値を国の意思決定に組み入れることの重要性が指摘をされております。

 そういう意味では、このことも先生の御意見をしっかりとらえて私も頑張っていきたいと思います。

吉野委員 GLOBEの提言を目標の中に取り入れていただきまして、ありがとうございます。

 GLOBEは、もっと具体的に、財務省に閣僚級の方を置いて、この自然資本の評価をいわゆる国家会計、国民経済計算の中に取り入れて、それを意思決定のために使うべきだという提言をしていますので、ぜひ大臣の方でも財務省に担当官を置くような努力もお願いしたいと思います。

 さて、では、どうしてその生物多様性の評価をしていくのかという測定の問題なんですけれども、国連で開発したSEEAという測定方法がございます。また、世界銀行では富の会計という形で、世界銀行ですから、生物多様性を一つの国の富を評価するときに使っている。今、世界でこの二つの方法がございます。

 SEEAは、今二〇〇三年版を使っていますけれども、二〇一二年版、新しいものも発表されるやに聞いております。ちょっと具体的に、事務方の方で、SEEAと富の会計について概略を説明していただきたいと思います。

鈴木政府参考人 御説明申し上げます。

 まず、国連の方でやっておりますSEEAの方ですけれども、これは環境と経済の相互関係を把握するということを目的に、経済活動量をはかる国民経済計算に、経済活動と環境の関係をあらわしたデータベースであるSEEAを組み込むということで研究が行われていると承知しております。

 SEEAの場合は、生態系サービスの経済的な価値の評価をそのまま行ったということではなくて、森林資源や水資源、漁業資源、エネルギー資源などの自然資源の採取や、土地利用による自然資源への影響を定量的にあらわしたものというふうに聞いておりますが、ちょっと我々もまだ研究が十分行き届いていないところがありますので、そういうふうな説明を聞いております。

 また他方で、今回世銀の方でやろうとしておる富の会計ということで、これからパートナーシップをつくって新しく取り組もうということで、世銀が中心になってやられようとしているところでございますけれども、これにつきましては、まさに国民経済計算の中に経済での破壊、生物多様性の損失部分を組み込んでいこうというような形で今検討されているというふうに承知しております。

吉野委員 ありがとうございます。

 測定方法で、SEEAの場合、四つの視点があるというんです。

 まずは市場価格。これはもうだれもが客観的にできる。では、市場価格のないものは、代替物ではどうなのかという、この評価。例えば緑のダム。日本でも、日本学術会議が多面的機能を金銭的に評価いたしました。これは代替物で評価をしたわけです。例えば緑のダム、もし山がなかったらダムをつくらねばならない、では、このダムをつくるのに幾らかかるんだという、こういう代替物の評価の仕方。もう一つは、自然に対して個人がみずからお金を払う、例えばいい景色を見るためにそこに旅行に行って、旅館に行って泊まる、現実に対価を払って、国立公園の入場料的なもの、こういう形で評価をしていく。もう一つは、それもできなければ、アンケート調査、世論調査をして、国民の皆様、この自然を保全するためにはどれだけお金を出す用意がありますかという世論調査をして評価する方法。いろいろな測定、評価の方法をSEEAの場合は考えております。

 二〇一二年版はもっと新たな考え方が出てくるのかな、こう期待をしているわけです。

 また、富の会計はまさに自然資本の損失だけのカウントで、多面的機能の生態系サービスがどうなるのかというところは、世銀の方では富の会計はまだ使っていないというふうに私はいろいろ理解をしているところです。でも、大事な部分ですので、これからも環境省としていわゆる生態系を評価する環境会計に少し力を入れていってほしいと思います。

 そして、発表した学者の方が、SEEAの手法はいろいろこれから測定、評価を精緻なものにしていかねばならないんだけれども、日本でもSEEAの手法を使って評価しているんだというお話を聞いたんですけれども、それは、どこで、どういう形で使っているのか、お尋ねしたいと思います。

鈴木政府参考人 一九九二年の地球サミットで採択されましたアジェンダの中でこうした考え方が示されておりまして、国連の方から各国に対してこうした形での統計の作成が推奨されているということでございます。

 それを受けまして、平成四年、一九九二年から研究を、当初、一部環境省がやった部分がありますけれども、実際GDPをつくっておられます、今でいいますと内閣府の経済社会総合研究所というところで具体的な検討が行われまして、経済活動と環境負荷を並列的に表記するという形のハイブリッド型の統合勘定というのを平成十六年に発表されていると承知しております。

吉野委員 それは、平成十六年度単年度だけの形だったんですか。そして、それは生物多様性の評価をどのくらいの価値があると、内閣府はある意味で試行的な形で出したんでしょうけれども、わかりますか。

鈴木政府参考人 まだ我々も今勉強が十分進んでいなくて恐縮でございますけれども、平成十六年に研究発表という形で出されておりますので、継続的にされているのではなくて、平成十六年のときに、こういう形で考えられるのではないかという形で発表されたというふうに承知しております。

 その中では、いろいろな形で価値を評価されておりますけれども、過去にさかのぼりまして、年数につきまして、例えば一九九〇年、九五年、二〇〇〇年という形で数字はつくられておりますけれども、まだ私手元に資料を見たばかりで、どの数字を申し上げると一番適切なのかちょっとわからないものですから、また後で御報告させていただきます。

吉野委員 まさに大臣からも、二〇一〇年目標の中で国家会計に生物多様性を評価してという、そういう環境会計と、GDPと生物多様性の評価の統合をするということが載っかっておりますので、ぜひ環境省としても積極的に取り組み、一つの成果を出していただきたいと思います。

 そして、それに基づいて政策の意思決定をしていかねばならないと思います。我々は今までの数字だけで、費用対効果という形で意思決定をしてきましたけれども、これはやはり生物多様性を評価した統合評価の中で意思決定するのとは全く正反対な意思決定が、政策の意思決定が違うと思いますので、ぜひ力を入れてほしいと思います。

 次は、TEEBについてなんです。

 温暖化について、世界の温暖化対策の起爆剤となったスターン・レビューという報告書がございます。これは本当に学問的に、このまま温暖化について対策をしない場合これだけの経済的なダメージがある、対策をした場合はこれだけの小さなダメージで済むというものを科学的に示した、経済と環境、特に温暖化についての報告書でございます。温暖化版がスターン・レビューであれば、TEEBは、まさに生物多様性と経済とのスターン・レビュー版というふうに位置づけてもいいかと思います。ドイツで中間報告が出されましたけれども、今度のCOP10で最終報告が出されました。

 ただ、まだまだ全世界に向かって、スターン・レビューほど理解も含んでおりません。私たち日本についても、森林の損失が三百七十兆あるとか等々、小さな記事でしか紹介されておりませんので、私は、まさにこのTEEBをもっともっと国民に知らしめるべき、また全世界の方々に知らしめるべきだと思っております。

 これも、利用者ごとに本が分かれているんですね。理論編、また行政編、企業版、また国民版という形で分かれていますので、その辺を知らしめるということに環境省としてどう対応していくのか、お尋ねをしたいと思います。

松本国務大臣 先生お詳しいので、答える方も大変ですけれども、先ほど二〇一〇年目標と私は言って、ポスト……(吉野委員「ポスト二〇一〇年ですね」と呼ぶ)私もさっき間違えました、先生も間違えたので、お互い訂正しておきます。

 生態系と生物多様性の経済学、TEEBは、本当にどの生物多様性の書物をとっても重要性を強調されております。まさに大きな意味だというふうに思います。

 先ほど森のことを言われましたけれども、森を伐採したらどういうことになるか。まさに、動植物がいなくなる、CO2の吸収源もなくなる、それから緑のダムがなくなるということで、そういうことを考えていくと、やはり経済学というのは非常に大きなことだろう。マングローブでもサンゴ礁でも、ここは台風が来たら波を吸収することができますし、そこに多様な魚たちがすむわけですから、そこを開発することによって、またなくなることによって何が起こるかということを、経済と生物の多様性というものをしっかり考えるのは非常に重要なことだというふうに思います。

 そういう意味では、環境省では、TEEBの最終報告が国内でも広く活用されるように、日本語への翻訳を行って、その普及を図ることとしております。また、TEEBの取りまとめに当たっては、環境省が実施をする環境経済の政策研究の成果を提供して、協力をしてきたところであります。引き続き、国際的に連携をしながら本研究を進めていくことでTEEBの成果の活用を図っていきたいというふうに思っています。

 そういう意味では、生物多様性の損失による経済的、社会的損失を示すものであって、政策決定者、地方自治体、企業、市民の正しい意思決定に生かせるものというふうに改めて認識を深めたいと思います。

吉野委員 やはり国民の理解があって初めて政策、物は動くわけでありますので、ぜひ、TEEBの中身を日本国民がだれでも知っているというような形まで広めていってほしいと思います。

 さて、GLOBEで二日目に入った中で、海洋保全の議論が出ました。サンゴ礁、ICRIで一生懸命、全世界の方々が取り組んでいるわけですけれども、サンゴ礁海域の三〇%を禁漁区、いわゆるノーテーク、一切何もとっちゃいけないという区域に指定しないと、サンゴ礁の中で魚が卵を産み、稚魚が育って、大きなお魚が育つ地域なんですけれども、三割も禁漁区にしないと魚の生産性が落ちるんだというある学者の御意見を聞いたんですけれども、環境省としてはどのような理解をしているのか、お尋ねしたいと思います。

樋高大臣政務官 GLOBEでの吉野先生の御活躍も含めました御造詣の深いところで、どうか今後とも御指導いただきたいと、先ほどの先生の御高説を伺っておりまして、さまざま学ばせていただきました。ありがとうございました。

 今のお尋ねでございますけれども、とても大切な御指摘をいただいたというふうに思っております。

 委員御承知のとおり、サンゴにつきましては、陸域からの土壌などの流入やあるいは海水温上昇を原因とする白化現象など、さまざまな要因でその生息状況が劣化していると認識をしているところであります。

 GLOBEの会合におきましては、今先生おっしゃいましたけれども、世界のサンゴ礁の三〇%、三割を、ノーテークといいますけれども、いわゆるサンゴだけではなくて魚類も禁漁とする、つまりはお魚もとらないということによる海洋保護区とすることが推奨された一方で、ノーテーク以外にも有効な海洋保護区があるとの議論があったというふうに伺っているところでございます。

 我が国といたしましては、漁業関連の制度に基づきまして、サンゴ礁面積のほとんどを占める沖縄県あるいは小笠原地域のすべてのサンゴ礁でサンゴの採取を今規制しているところでございます。

 また、環境省では、ことしの四月でありますけれども、関係府省並びに都県等と連携をいたしまして、サンゴ礁の生態系保全行動計画を策定させていただいたところでございます。当該計画におきましては、国立公園などの海域公園地区の指定、あるいは自然再生の取り組みなどを推進していくこととしているところでございまして、我が国最大規模のサンゴ礁がございます、先生も御案内のとおりでありますけれども、石西礁湖、いわゆる石垣島と西表島の間に位置する地域でございますけれども、これらの地方自治体あるいは地域住民の方々と連携をして、むしろサンゴ礁の再生に取り組んでいるところでございます。

 サンゴ礁の保全につきましては、各国の事情によってもさまざまな方法を考えられるわけでありますけれども、日本国におきましても、こうしたサンゴ礁の保全の取り組みをしっかりと引き続き行ってまいりたいというふうに思っております。

 ありがとうございます。

吉野委員 先ほど大臣から間違いを指摘していただいて、ありがとうございます。二〇一〇年目標ではございません、愛知目標というふうに、速記の方も訂正を願いたいと思います。

 次に、森林火災についてお伺いいたします。

 アラスカ大学の福田正己教授という方がおりまして、この方が講演なさったんですけれども、衛星を使って、十分置きに全世界の森林火災、ある意味で赤外線ですね、日本なんかは真っ赤っかになっていますから、これは電気がついているということで、多分赤外線だと思うんですけれども、森林火災が起きていることを衛星を通じて本当にリアルタイムで見せていただきました。

 センチネル・アジアというものが二〇〇六年に設立をされまして、東南アジアの地域は、ここでリアルタイムで火災情報を送り、そして各国がすぐ消火に当たるという防災システム、いわゆる観測と防災システムがリンクをした、そういう形でのシステムが今動いているんですけれども、私はこれは、アマゾンにもまたアフリカにも、日本がリーダーシップをとってもっともっと広めていくべきだと思います。IPCCの言葉をかりますれば、世界のCO2の二〇%が森林劣化から生じている、そしてまた、そこから生物多様性も枯渇していくという、森林については本当にそういう二重の部分があろうかと思いますので、その辺について、役所の取り組みについてお伺いしたいと思います。

樋高大臣政務官 引き続きまして、吉野先生からとても大切な御指摘をいただきました。ありがとうございます。

 GLOBEの会合におきましては、森林火災の防止に関するセッションがございました。その中でも、今先生おっしゃいましたとおり、衛星写真でとらえた森林火災の状況を瞬時に知らせるシステムについての事例報告があったというふうに伺っているところであります。

 この森林火災情報のいわゆる国際的な共有についてでありますけれども、日本におきましては、JAXA、宇宙航空研究開発機構でありますけれども、ここが衛星画像の提供を行っているわけでありますが、アジア太平洋地域における国際的な貢献が行われているわけであります。こうした取り組みが、先生の御指摘のように、ほかの地域においても広がることが重要であるというふうに認識をしているところでございます。

 環境省におきましては、国立環境研究所、JAXAと共同で実施しております、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」によります全球観測におきまして温室効果ガス測定を行っているわけでありますけれども、それとは別に、これに加えまして、大規模な森林火災の観測など森林の状況の広域的な観測なども積極的に取り組んでいるところでございます。

 こうした観測により得られたデータはホームページに、私も見せていただきましたけれども、公開して全世界に共有をする。しかも、瞬時に、なるべく早いタイミングで、リアルタイムに近い状況で、今、世界各国のどこで火災が起きているかというのが情報の提供もできるし、共有もできるということでありまして、そのデータの解析においてはNASAとも連携をさせていただいているわけでありますが、こうした世界的な協力も今積極的に進めさせていただいているというところでございます。

 こうした取り組みを通じまして、世界の森林火災の防止に積極的に貢献をしてまいりたい、このように思っております。

 ありがとうございます。

吉野委員 今答弁なさったとおり、本当に実行あるのみですので、ぜひお願いしたいと思います。

 GLOBEでの会議はそこで終わったんですけれども、次に二十七日に、我々環境委員会、先ほど委員長から御報告がありましたように、EUの皆様方との会談をいたしました。その中でチェコの議員から、我がヨーロッパは違法伐採された木材は使わない、そういう制度をつくったんだというふうに発言がありました。これについては、私たち日本が世界に先駆けてグリーン購入法を改正して、違法な木材は使わないんだということを世界に宣言し、今かなりの評価を受けているところなんですけれども、EUのこの違法な木材は使わないんだという制度がどんな制度なのか、ちょっと概要を説明願いたいと思います。

鈴木政府参考人 EUの方では、加盟各国の市場に違法な木材、木材製品の持ち込みを禁止する内容の規則を本年の十月十一日に採択したというふうに伺っております。

 実は、この採択された内容そのものについてはまだ完全には公表されていないのですけれども、ドラフト段階のものが公表されておりますので、それによりますと、こうしたものを禁止した上で、トレーサビリティーの義務ということで、供給者等々の情報を五年間程度保存しなさいという規定があり、また、違法行為に対しては、加盟国は罰則を定め、実施されることを確実に担保するようにというような規定がございます。それで、罰則の中には罰金等々が入るという規定になっているということでございます。

吉野委員 世界に先駆けてやっている我が国のグリーン購入法、ここでの合法木材制度について、今現在どのような形でグリーン購入法で調達しているか、状況をお知らせ願いたいと思います。

白石政府参考人 ただいま御指摘ありましたように、政府におきましては、グリーン購入法に基づきまして環境配慮製品の調達の推進を図っておりますけれども、平成十九年の二月に御指摘のように基本方針を変更いたしまして、紙類、文具類、オフィスの家具、それから公共工事に使う資材、こういったものに関しまして、原料の原木が伐採に当たって原産国の森林に関する法令に照らして手続が適切になされたものであるということを判断の基準に盛り込んで、その方針に基づき調達をしておるわけでございます。

 直近の動きでございますけれども、サンプリングでございますけれども、平成二十年度に調達されました一部の紙、木質製品につきまして、林野庁と協力いたしまして調査をいたしましたところでは、すべて合法的に伐採された木材を使用しているということは確認しておりますが、二省庁のみの調査でございますので、翌二十一年度の調査分につきましては全省庁分で調査をお願いいたしまして、現在取りまとめ中でございます。

 以上でございます。

吉野委員 グリーン購入法の合法木材、環境省はきちんと各省庁をウオッチングしていただきたいと思います。

 時間も押してまいりましたので、先ほど井上議員から二十億ドルのお話がございました。山花外務大臣政務官から、ブラジルでかなりの評価を得ているという新聞報道があるという発表があったんですけれども、実は二〇〇六年、二〇〇七年、二〇〇八年に、生物多様性保全に係る支援額、二国間ODAは、二〇〇六年に十一・七億ドル、二〇〇七年に十七・七億ドル、二〇〇八年に八・七億ドル、三年間の合計が三十八億ドル。我が国は、もう既に生物多様性のODAで支援をしているんです。

 それで、大臣もいらっしゃいましたけれども、菅総理があの場で二十億ドル拠出するという形で発表しました。私の第一印象は、今までのODAプラスアルファという理解をしました。そして、その財源はどこにあるのかなというのが私の最初の印象だったんですけれども、多分、皆さん、あそこにいた世界各国の方々はそう理解したと思います。

 三十八億ドル使っているにもかかわらず、これから三年間で二十億ドルだと。まさに半減なんですね。あれだけの世界の指導者に向かって、ある意味でうそを言っちゃったのかなという思いがするんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

松本国務大臣 吉野先生のお話は応援だというふうに受けとめさせていただきます。

 二十億ドルの多寡についてはさまざま議論があると思います。そういう意味では、これを効果的に使っていくというのが、これから我々に託された話であろうというふうに思います。

 これは参考になるかどうかわかりませんけれども、あのとき私の横にいたジョグラフ事務局長は、二十億ドルと聞いたときに、わあっという顔をしました。多分、ABSの事務局にそれだけ来るんだろうと思ったのか、勘違いしたのかはわかりませんけれども、そういう話もあります。

 限られた資金を効果的に活用していかなければなりません。また、世界の生物多様性の保全を図っていかなければならないということは、御指摘のとおり重要だと思っています。

 環境省においては、二十億ドルの一環として、条約の新しい世界目標、いわゆる愛知目標の実施を支援するために、生物多様性日本基金として今年度十億円の拠出、SATOYAMAイニシアチブの推進等を実施していくこととしております。これらの取り組みを通じて、限られた資金を有効に活用し、世界全体の生物多様性の保全にしっかり取り組んでいきたいとも思っております。

 そういう意味では、いろいろ御支援、また、きょうの質問等々さまざま御示唆をいただいたことを感謝申し上げます。ありがとうございました。

吉野委員 議長として世界の皆様方にある意味で約束をした部分がありますので、世界に笑われないような二十億ドルの使い方をしてほしいと思います。お願い申し上げます。

 最後に、REDDプラスについてちょっとお伺いをしたいと思います。

 大臣もおられましたあの会議で、世界銀行のゼーリック総裁がお話の中で、世界銀行としてはREDDプラスにかなりな部分を向けていくんだ、そして、先ほど冒頭、環境会計、いわゆる生態系サービスを国家会計に入れることも世界銀行として前向きに取り組んでいくんだというお話がございました。それを受けてGEFのモニーク会長が、四十六億ドル増資をして、そのうち十億ドルはREDDプラスに使うんだというお話も伺いました。

 REDDプラスは、我が国はインドネシアを中心に木材のトレーサビリティー等々の技術支援もして、インドネシアと日本とのREDDプラスが行われていると思うんですけれども、この間、我々環境委員会としてインドネシアを訪問させていただきました。その中での話とJBICの担当者の話とを合わせますと、どうもREDDプラスについてはインドネシアは日本を余り相手にしていないといいますか、ほかの国が一生懸命インドネシアとREDDプラスに取り組んでいる、日本がちょっと出おくれているという、そんな意見も私伺ってまいりました。

 そういう意味で、REDDプラスについて、我が国の取り組み方、これは世界との競争でありますので、もっと評価される取り組み方をしていただきたいなと思うんですけれども、御意見を伺いたいと思います。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 REDDプラス、つまり、途上国における森林減少・劣化からの排出抑制、いわゆる防止ということについてだと思いますけれども、REDDプラスにつきましては、国際社会として、二〇一〇年五月、本年でございますけれども、そのパートナーシップが設立をされたところでございます。

 時間の関係で省略してお話しさせていただきますと、我が国はパプアニューギニアとともに二〇一〇年の共同議長を務めたわけでございまして、パートナーシップの活動に貢献をしてきたところであります。我が国からは、総額五億ドルの支援を表明しているところであります。

 また、日本は、来月カンクンで開催されますCOP16におきましてバランスのとれた合意につながるように、議長国として、REDDプラスパートナーシップ閣僚級会合をCOP10に合わせて名古屋で開催をしてきたところであります。

 これらのほかに、我が国は、二〇〇八年に世界銀行が設置した森林炭素パートナーシップ基金に一千万ドル拠出して、同基金の活動にも貢献をしてきたわけであります。

 こうした多国間の取り組みへの貢献に加えまして、今お話がありましたインドネシア、ブラジルなどでの森林資源の保全管理に関するJICAの技術協力、あるいは森林炭素モニタリングの方法論確立に向けた研究開発、生物多様性に配慮したREDDプラスの手法の調査研究も実施してきたところであります。

 これらの取り組みによりまして、REDDプラスを着実に進展させてきたつもりでもございますし、進展をさせていかなくてはいけないというふうに思う次第であります。

 そして、今先生の御指摘の部分でありますけれども、現在、REDDプラスにおける国際貢献の評価の部分であります。これにつきましては、国際的に今議論をしているところではありますけれども、日本国として、REDDプラスを含めて日本の国際貢献が適切に評価される枠組みが必要であることは認識をしているところであります。至極当然のことであろうというふうにも思っているわけであります。

 こうした枠組みの構築に当たりまして、関係省庁とも連携をしながら、日本が途上国において実施した支援事業によって発生したいわゆるクレジットが日本国の貢献に応じて配分されるように、戦略的に取り組んでまいりたい。

 先生のとても重要な御指摘をしっかりと受けとめさせていただきたいというふうに思います。

 ありがとうございます。

吉野委員 これで質問を終わりますけれども、本当に生物多様性、我々人類にとってなくてはならないものであります。生物多様性を保全することが、人類が生き延びる、一人の人間の寿命が長くはなっています。でも、人類の寿命と考えた場合に、私は、恐竜は二億年生きましたから、恐竜よりは生きられないのかなということを思っていますので、これは多様性をきちんと、自然と人間は共生するんだというこの理念をきちんと持てば、恐竜に負けないくらい人類の寿命が長くなると思いますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 ありがとうございます。

小沢委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、さきに行われました生物多様性条約第十回締約国会議、COP10の結果報告を大臣からいただきましたので、それに対して質問をさせていただきます。

 松本大臣、今回のCOP10の成功、まことにおめでとうございます。そして、議長としての大変な重責、また御尽力、大変に御苦労さまでございました。さらには、長期間にわたり尽力をしてきた環境省の皆さん初めNGOやボランティア、さらには世界の締約国の方々の御協力等々に、その努力にまた感謝と敬意を表する次第でございます。

 私も、二十七日の開会式にはこの委員会の派遣ということで出席をさせていただいたわけでございますが、大変な熱気に包まれて、そしてこの中で交渉をまとめていくというのは大変なものだと感じた次第でございます。

 そういう中で、COP10の成果、特にはポスト二〇一〇年目標の策定、またABS交渉、名古屋議定書の制定等々、画期的な結果が得られたものと私は高く評価をいたします。

 そこに日本としてのリーダーシップが問われたわけでございますけれども、報告にもあったように、事務レベルでの合意がなかなか得られない、そういう中で、議長より議長案を提出されて、各国のCOP10の大変大事な合意を導いていかれた。そのことが先ほど報告もなされました。

 まず、大臣、これは質問には通告をしておりませんけれども、COP10のこの結果に対して、大臣の所感をお伺いしたいと思います。

松本国務大臣 ありがとうございます。

 あれから、COP10から奄美大島に行って、博多に初めて帰って、先生と同じ福岡ですから、帰って、月曜日だったと思いますけれども、斉藤前々大臣とお会いして握手して、本当によかったですねということを言っていただきました。もうそれこそ、斉藤前々大臣、小沢前大臣初め、だれ一人の力がなかったらこれは成功していないと思うくらい厳しい局面でございました。

 十八日からCOP10は始まりましたけれども、十七日、記者団に囲まれて、記者団が言うのは、途上国と先進国が対立して、これはもうどうしようもないという話があった。私は、そうは言うけれども、絶対共通の利益が真ん中にあるはずだということを前の日に言って、真ん中にある共通の利益というのは何だろう何だろうとずっと毎日考えていって、それこそ、途上国も先進国も真ん中にあるのは、ポスト二〇一〇年を空白にしてはならないという思い、そしてABSをまとめなければならないという思い、そういうものが真ん中に積み重なってきて、それぞれの国々が一生懸命考えてきて、自分たちも歯がゆい思いをしながら譲歩してきた、そして妥協してきた。こちらの途上国も、遡及適用はできないということになって、それぞれ歯がゆい思いをして、譲歩して妥協してきた。

 その国益といいますか、先ほど国益がありましたけれども、それぞれの自分たちの国益を、少し真ん中の共通の利益の方にそれぞれの国が出し合った。ベネフィットシェアリングはそういうものじゃないかなと逆に思いましたけれども、まさに真ん中にそういう世界各国の人たちの思いが集まって、議長提案ということ、これは完璧ではないと私は各国の人に三度ぐらい言いましたけれども、それぞれ自分の思いを抑えて議長提案に乗っていただいた。

 これは、人類の英知が結集をしたというふうに思いますし、生物多様性をしっかり保全していかなければならない、自然の恵みを大切にしなければならないという世界じゅうの人たちの思いが結集したんだというふうに思います。

江田(康)委員 大臣の、空白期間をつくってはならないというその思い、そして各国の、生物多様性を保全し、また利用していく、このCOP10でその合意をしなければ守っていくことのできないという危機感、共感、これが今回の合意に至ってきたことだと思っております。

 今回の会議の焦点は、皆さんよく御存じのように、第一に、二〇一〇年目標の達成状況の確認とその後の新たな目標、ポスト二〇一〇年目標を策定すること、第二に、生物資源の利用と利益配分、ABSに関する国際ルール、名古屋議定書を創設することであったわけでございます。

 私も、このCOP10の開会直前の二十六日に、大臣の所信の質疑の中でCOP10に関する質問をるるさせていただいたわけでございます。

 今回、COP10を終えて、どのように各合意がなされてきたか、また、今後どのように我が国としてこのCOP10の成果を実効力あるものにしていくのか、こういうようなことが大変重要かと思いますので、改めて質問をさせていただきます。

 まずは、やはり最も交渉が難航したABSについてでございます。

 生物資源の利用と利益配分のルール、大変重要でございます。生物資源は自然豊かな途上国に集中している。先進国が途上国の生物資源を利用して、これを医薬品とか食品とかそういうことに商品化する、その商品化の利益を途上国に配分する国際ルールを創設するということができるかどうかがまさにCOP10の最大の焦点であったかと思います。

 途上国は、先進国から植民地時代から多くの生物資源を持ち出されてきた、こういうような経験から、最後まで強硬だったと思います。ルールの対象については、先進国は生物資源のみとしていたのに対して、途上国は生物資源を化学合成したりすることで得られる派生物にも拡大するように訴えていたわけであります。また、ルールの適用時期についても、先進国はルール発効後を主張して、途上国はこれまでの経緯を踏まえてルール以前にもさかのぼるように求めていたと思います。

 我が国政府は、また議長としても、これらに対して、先進国、途上国双方に利益を得るというウイン・ウインの国際的枠組み、これを何としてもつくり上げるために努力をしてきたかと思いますが、今回の合意では、ルール適用時期は議定書発効後に限定されて、遡及適用は認めないとされました。また、ルールの適用対象について、遺伝資源の利用には派生物の利用も含みますけれども、利益配分の対象は相互合意条件、すなわち契約に基づいて当事者間で決定できるということにしたわけでございます。

 これについて、樋高政務官にお聞きをさせていただきます。

 利益配分の対象範囲については、派生物を規定せずに、当事者間の話し合い、契約で決めることができるとしたことは、我が国、また先進国、利用国側にとって評価できるものと考えますが、しかし、派生物の定義が、今回、やはり双方の顔を立てるということで、不明確になっています。そのことは、先進国と途上国の間でまた利害対立が激化するおそれもあるのではないか。また、そのことで、途上国の遺伝資源が乱獲されて枯渇し、そして守れなくなることもあるのではないか。こういう現場の当事者間の契約にゆだねるということに対しては、場合によっては日本側に厳しい条件が付された契約を結ばざるを得ないような状況もあるのではないかと懸念する次第であります。

 まず、今回の合意について、どのように評価をされているか。また、今後の懸念材料については、我が国政府としてどのように対応、またそういう当事者間を支援していくことができるのか。これについて、考えをお伺いしたいと思います。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 江田先生とは同期当選の仲であります。私は、一回ちょっとお休みをいただきましたけれども。

 先生におかれましては、環境政策のみならず、ありとあらゆるジャンルの政策について精通をしていらっしゃるところでありますけれども、ぜひとも、日本の未来のために、先生の御高説、御指導を今後とも賜りますように、この場をおかりいたしましてお伝えさせていただければありがたいと思います。

 今御指摘の点でございますけれども、このABS議定書におきましては、先生今お話しになられましたとおり、遡及適用問題など、産業界が懸念していた規定は盛り込まれない。むしろ、産業界が求めていたアクセスの制度の明確化やあるいは透明化を遺伝資源の提供国に対して求める内容などが規定をされておりまして、産業界にとっても歓迎される内容であるというふうに認識をしているところでございます。

 一方で、先生が今おっしゃったような、派生物の定義が不明確じゃないかという御懸念があることも承知をしているわけでございますけれども、結論を申しますと、特にこの名古屋議定書によって日本側に厳しい条件の契約を結ばざるを得ない状況にはなり得ないし、ならないようにしなければならないというふうに思っているところであります。

 遺伝資源の利用に伴う利益配分については、遺伝資源の提供者と、一方で利用者との間での、個別の契約にゆだねることが従来からのABSの原則でもあるわけでございますけれども、今回の議定書においてもこの原則は維持をされているわけであります。

 いずれにいたしましても、政府としても、先生の御指摘をよく踏まえて、しっかりと注視をしてもまいりたいと思っておりますが、今回の名古屋議定書の合意によりまして、何らかの不利益をこうむるという事態には至らないということをお話しさせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

江田(康)委員 派生物にはタミフル等も入ることになります。原料をそのまま使えば派生物ではないわけでありますけれども、タミフルなんかは、もともとはこれは中国の八角という植物からとっているもの、ただし、今は化学合成されております。

 国民の命を守る、こういう非常に重要なものに関して、遺伝資源を保全しなければならない一方で、やはりこういう利用が制限されるようなことになってはならない。また、今回は明確ではございませんけれども、やはり新型インフルエンザウイルスそのものとかそういうようなものに対してもどのようになっていくのか、こういうようなことが懸念されるところでございます。

 派生物の利用の件については、今後とも、政府が責任を持ってしっかりと取り上げていっていただきたいと思うわけでございます。

 次に、やはり私、もう一度お話をさせていただきたいのは、アメリカの条約への非加盟に関する問題です。

 これは、COP10を終えて、大臣に改めてお伺いをさせていただきますが、今、遺伝資源の世界最大の利用国はやはりアメリカなんです。そのアメリカが、遺伝資源の利用が制約されることの理由から、この生物多様性条約には加盟していないのが現状です。

 私も、今回、EUとの意見交換会をCOP10の会場でさせていただいたんですけれども、そこでもEUの皆さん方にこの問題を質問させていただきました。大変難しい問題ということでございますけれども、これをそのままにしておけば、アメリカとアメリカ以外の国の間で、とりわけ日米間でのイノベーションの発展の差が拡大する。これは、グローバルに展開する企業の経済活動に大きな影響を与えていくような結果にもなります。ひいては、日本産業の国際競争力が低下する、そこにつながるから、私も大変重要だと思っておりますし、また、気候変動枠組み条約の方においても同様の状況があるからでございます。

 今回、名古屋議定書が採択されました。今後、米国が参加しなければ、まさにこれは画竜点睛を欠く。COP10の大きな目標で、ポスト二〇一〇年目標も、またABSの名古屋議定書においても、やはりそれは実効性のあるものに世界全体でなってくるのかということがございます。したがって、今回の合意された内容が米国が参加し得るものになっているかどうかというのも、一つ大きな分析が要るところでございます。

 そういう意味で、今回のこの内容が米国が参加し得るものになっているかどうか、大臣、お答えいただきたいし、また生物多様性条約への今後の米国の参加をどのように促していくおつもりか、大臣としての所見をお伺いさせていただきます。

松本国務大臣 私も同様の思いを持っておりまして、大切な指摘だというふうに思っております。

 私は、ABSの合意がアメリカが納得できるようになっているかどうかということよりも、なっていくというふうに思っています。つまり、世界の百九十三の国と地域が参加する条約ですから、これはアメリカが無視するわけにはいかない。

 むしろ、もともと生物多様性という言葉ができたのは、私の勘違いであるかもしれませんけれども、マダガスカルのニチニチソウという植物をアメリカが採取して、そこから抗がん剤をつくっていったところから始まったというふうに聞いております。これも随分、三十年か四十年ぐらい前の話だと思いますけれども。ですから、彼らはちゃんと生物多様性を知っているし、また保全に対しても後ろ向きではないと思っていますし、今度の締約国会議でもオブザーバーとして参加し発言する、議論に参画しようという姿勢も見られました。

 何よりも、今度、国連生物多様性の十年が、我が国が提案しましたけれども、これが決定されれば、アメリカも含めて国連全体で生物多様性の保全に取り組むことになるというふうに思っています。

 私も以前からずっと言っておりましたけれども、こうした機会も踏まえて、あるいはさまざまな外交のチャンネル、さまざまな国際管理のチャンネル等々を見ていきながら、さまざまなルートを通じてアメリカに対して呼びかけていきたいというふうに思っております。

江田(康)委員 今大臣にお伺いいたしましたが、私も実は、名古屋議定書が合意された、制定されたということ自体、これがやはり大きな、米国のこれからの参加を促すものになると思っております。大多数の国々が参加する名古屋議定書、ABSのルールでございますので、そこの中に入ってこざるを得ない、そういうような状況になってくることを大きく期待いたします。やはりアメリカを取り込むような、そういう大きな枠組みをこれから本当につくり上げていくということが、生物多様性の保全、また利用にとってキーポイントになるかと思いますので、これにおいても日本がリーダーシップをとっていくことを強く望むものでございます。

 次に、生物多様性の経済的価値ということと途上国支援について、今回も大変重要だったと思いますが、これについて質問をさせていただきます。

 これまで、我々人類というのは、さまざまな形で自然から恩恵をこうむっている、依存している。しかし、生物多様性の保全によりもたらされる利益や便益というか、そういう経済的価値というものが必ずしも十分に認識されていない。さらに一方では、生物多様性の集中している豊かな国々は途上国でありまして、それはやはり資金難で、生態系の保全が不十分なままで開発が行われているといった、こういう状況にこの地球はあるわけだと思います。

 こうしたことから、自然がどれほどの価値を有しているか、これを客観的に把握するために、生物多様性が失われた場合の経済的損失を把握する試みがなされていることは承知のところでございます。一つは、生態系と生物多様性の経済学、略してTEEBと呼ばれる研究の中間報告も公表されている。また、今回のCOP10の最終報告等でもあったかと思いますけれども、これまでの熱帯雨林とか湿地などの破壊が、農作物の減少、水の浄化作用の低下、さらには医薬品の原料となる遺伝資源の減少、これらを引き起こして、過去十年間で毎年二兆から四・五兆ドル、これは日本円に換算して百七十兆円から三百八十兆円、これだけのお金がなくなっているというか経済的損失が生じている、こういう状況でございます。

 こうした事態を避けるために、資金供給の仕組みについて、資金動員のあり方について議論が行われてきたわけでございますが、こういう中には、各国が基金を拠出して途上国の支援を行う地球環境ファシリティー、GEF、そういうようなものがあるわけでございます。しかし、今回のCOP10においては、途上国は、これでは物足りない、さらなる資金が必要である、こういうような要望がポスト二〇一〇年目標や名古屋議定書の合意とセットで行われてきたかと思います。

 今回のCOP10では、結果として、途上国支援としては、しっかりとした指標ができるなどの条件で、COP11において資金所要額の目標について決定を行うという決定を採択したと思います。これは、具体的な目標金額を求める途上国と、所要金額を算定するための指標を検討すべきとするEU、この双方の意見を折衷したような形になって、それはCOP11で決める、こういうふうになったかと思います。

 こうした資金動員の決定につきまして、まずは大臣、どのように評価をされ、今後どのように対応されるか、お伺いをいたしたいと思います。

 時間の関係上、もう一つ加えてでございますが、今回、我が国からは、生物多様性日本基金として十億円、そしてABSに関する途上国の能力構築に向けた支援十億円、これを拠出することを表明なされました。さらに、菅総理は開会式で、命の共生イニシアチブとして二十億ドル、これは額が大変大きいんですね。GEFは、二〇一〇年から一三年までで四十億ドル。そのうちの三分の一が生物多様性ですから、これに匹敵するどころか、これよりも多い二十億ドルの途上国支援を約束されました。

 これらは、今回の合意形成には大きく後押ししてきた、そういう効果があったかと思いますけれども、今後、どのように生物多様性の保全や利用に活用されていくのか。そして、我が国のみならず、ほかの国の途上国支援に対する結果はどうだったのか。これらについて、政府の見解をお伺いさせていただきます。

松本国務大臣 いろいろお話、ありがとうございました。

 今、江田先生が言われたTEEBとか、吉野先生も言われましたけれども、IPBESとかあるいはPESとか、いろいろな単語が出てきて大変なんですけれども、REDDプラスもそうですけれども、前に前にやはり進んできたことはよかったというふうに思います。

 COP10では、COP9で定められた資源動員戦略の進捗状況をモニターするための指標及び目標について議論が行われました。その際、途上国側は具体的な金額目標の明記を強く求めましたが、しっかりとした指標なしに目標を設定することは困難であることから、次期会合で目標を決定することになりました。

 まずは、資金動員戦略の進捗状況について検討の方向性が合意されたことは評価できると思います。今後は、COP10での結論を踏まえ、検討の進め方について、まずは各国と意見交換を行う必要があると思います。

 ここで一つだけ御報告をいたしたいことがあるんですが、すばらしかったのは、議長提案を出して、各七地域の人、全世界の人に渡したときに、議長提案の中で変わったのは一つの単語だけです。マテリアルという言葉がリソースに変わった、これだけです。

 つまり、いろいろなことがあるのに、先進国も途上国もたくさん文句があるのに、何一つ言わなかった。何一つ、ここだけ変えてほしいということを一つも言わなかった。このときのすごさというのは、私は経験して、体が震えました。自分たちが言ったら向こうも言い出す、自分たちが言ったら向こうも言い出すということを、みんな緊張して言わなかった。この大人の対応、世界の人たちの知恵というか、これだけは皆さんにあの場面の御報告としたいというふうに思います。大きな枠組みをつくるときには、それだけすごい大人の対応があったということを御報告したいというふうに思っております。

 最後に、我が国の支援でありますけれども、途上国支援については、愛知目標の達成や名古屋議定書の実施など、途上国におけるCOP10の決定事項の実施に向けた取り組みの支援を行う。具体的には、生物多様性日本基金やABSに関する途上国支援については、愛知目標を踏まえた途上国の生物多様性国家戦略の見直しや名古屋議定書の実施に必要な人材育成を行うこととしています。命の共生イニシアチブについては、ODAのプロジェクト等として、途上国の生物多様性の保全や持続可能な利用を支援するものとして考えております。

 ありがとうございます。

江田(康)委員 もうこれで終わりますけれども、今大臣が御答弁なされましたように、私も前回の大臣所信質問の中でも、この問題は大変重要だ、COP10の結果を左右するということで、途上国支援、やはり生物多様性が集中しているのは事実として途上国である、それを利用国であるところの先進国が大局的な視点に立って合意をしていく、名古屋議定書を取りまとめていく、そうやって生物資源の保全に向けて画期的な一歩を踏み出す、こういうことに対して大変な努力が我が国を初めとしてあったということで、大変評価するものでございます。

 今後、大臣、重要なこととして、新たなポスト二〇一〇年の目標に基づいて、今度は各国が国家戦略を策定して具体的な施策を実施しなければなりません。また、名古屋議定書についても、各国が早期に批准して議定書を発効させて適切に運営していく、これが重要なことであります。

 大臣、この報告の中でも、我が国は今後二年間、議長国として、決定された事項の円滑な着実な執行に取り組むということでございます。どうか大臣、国内の施策も含めて、また、先ほど田島前副大臣がおっしゃいましたけれども、我が国の制定いたしました生物多様性基本法にも、その理念にのっとって、そして国内施策を充実させていかなければならないと思っております。こういうトップとしてのリーダーシップをぜひ大臣に発揮していただきますように心からお願いを申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

小沢委員長 次に、第百七十四回国会、内閣提出、参議院送付、環境影響評価法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。松本環境大臣。

    ―――――――――――――

 環境影響評価法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

松本国務大臣 環境影響評価法の一部を改正する法律案につきましては、第百七十四回国会に政府から提出し、御審議をいただいておりましたが、継続審議のお取り扱いとなりました。今国会において引き続き御審議をいただくに際し、再度、提案理由を説明をさせていただきます。

 平成十一年六月の本法の完全施行以降、環境影響評価の適用実績は着実に積み重ねられてきている一方、法の施行から十年が経過する中で、法の施行を通して明らかになった課題等を踏まえ、さらなる取り組みの充実が必要となっております。

 具体的には、今日の環境政策の課題は一層多様化、複雑化しており、平成二十年六月に公布された生物多様性基本法、地球温暖化対策の推進や再生可能エネルギーの導入促進等の状況の変化を踏まえ、環境影響評価が果たすべき機能や評価技術をめぐる状況の変化への対応が求められております。

 これに関しては、法附則第七条において、「政府は、この法律の施行後十年を経過した場合において、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」こととされており、また、平成十八年四月に閣議決定した第三次環境基本計画においても、法の施行の状況について検討を加え、法の見直しを含め必要な措置を講ずることとされているところです。

 こうした状況を踏まえ、法の施行後の状況の変化及び法の施行を通じて明らかになった課題等に対応するため、本法律案を提出した次第であります。

 次に、本法律案の主な内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、対象事業の範囲の拡大についてであります。

 法対象事業の条件の一つとして、交付金の交付を受けて実施される事業を追加しております。

 第二に、事業計画の立案段階における環境保全のために配慮すべき事項についての検討手続の新設についてであります。

 第一種事業を実施しようとする者は、方法書手続の実施前に、事業計画の立案段階における環境影響評価を実施し、その結果を記した計画段階環境配慮書を作成して、主務大臣への送付及び公表等を行わなければならないこととしております。

 第三に、環境影響評価書に記載された環境保全措置等に係る公表手続の新設についてであります。

 事業者は、事業着手後の環境保全措置の状況等に関し、報告書を作成し、公表及び許認可等権者への送付を行わなければならないこととしております。環境大臣は許認可等権者に意見を述べることができることとし、許認可等権者は事業者に対し意見を述べることができることとしております。

 その他の改正事項として、環境影響評価手続におけるインターネットの活用等の情報提供手段の拡充、地方公共団体の意見提出に関する手続の見直し等所要の措置を講ずることとしております。

 以上が、本法律案の提案の理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

小沢委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.