衆議院

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第8号 平成22年11月30日(火曜日)

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平成二十二年十一月三十日(火曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 小沢 鋭仁君

   理事 大谷 信盛君 理事 太田 和美君

   理事 田島 一成君 理事 横光 克彦君

   理事 吉川 政重君 理事 江田 康幸君

      相原 史乃君    石田 三示君

      大山 昌宏君    岡本 英子君

      川越 孝洋君   木村たけつか君

      工藤 仁美君    櫛渕 万里君

      近藤 昭一君   斎藤やすのり君

      阪口 直人君    玉置 公良君

      橋本 博明君    樋高  剛君

      森岡洋一郎君    山崎  誠君

    …………………………………

   環境大臣         松本  龍君

   環境副大臣        近藤 昭一君

   農林水産大臣政務官    田名部匡代君

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   政府参考人

   (林野庁長官)      皆川 芳嗣君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  鈴木 正規君

   環境委員会専門員     高梨 金也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月三十日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     大山 昌宏君

同日

 辞任         補欠選任

  大山 昌宏君     相原 史乃君

    ―――――――――――――

十一月二十九日

 水俣病特別措置法によるチッソ分社化撤回に関する請願(重野安正君紹介)(第五八四号)

 同(中島隆利君紹介)(第五八五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律案(内閣提出第一二号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

小沢委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ち、自由民主党・無所属の会所属委員に対し、理事をして御出席を要請いたさせましたが、御出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 内閣提出、参議院送付、地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として林野庁長官皆川芳嗣君、環境省自然環境局長鈴木正規君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石田三示君。

石田(三)委員 おはようございます。民主党の石田三示でございます。

 きょうは、環境大臣に御就任後初めての質問に立たせていただきます。精いっぱい頑張らせていただきたいと思います。自由民主党の皆さんがおいでにならない中で、国家戦略とも言える生物多様性に関する会議の中で、非常に残念でございますけれども、頑張ってまいりたいというふうに思います。

 初めに、松本環境大臣には、御就任後、大変重要な国際会議に次々に御参加をされて、COP10を大成功に導かれましたこと、本当に心からお喜び申し上げますし、また感謝を申し上げたいというふうに思います。

 私は、国際会議などというものを軽々しく私たちが言えるようなものではありませんけれども、会議を進める中で、一つ主要なというんですか、核になるところをあらかじめ押さえて、あとは強引に進めていっちゃうというのが通例であるかのように思いますけれども、松本環境大臣のお話を伺うと、各参加者に公平に情報を流されて、しっかり対応されたということを伺いました。これがまた、成功に導いた一つの原因だというふうに思います。私も、短いおつき合いでございますけれども、松本大臣の政治家としての大きさなのかなというふうに考えております。どうも御苦労さまでございました。

 さて、今回、大変長い法文でございますけれども、地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律案、里地里山法というふうに略称がございますけれども、それに関する質問をさせていただきます。

 私の出身は、千葉県の鴨川市でございます。鴨川市といいますと、鴨川シーワールドという海洋レジャーランドがあるわけでございますけれども、大変有名でございますが、私の住んでいるところはそこよりずっと西の方に入った、いわゆる棚田のあるところでございまして、森があり、小川があり、田んぼがあり、畑があり、住まいもあり、そういった中で、非常に生物多様性の富んだ里山でございます。そういった環境にあるということでございます。

 大臣はCOP10において大きな成果を上げられたわけでございますけれども、日本の主導でSATOYAMAイニシアチブ国際パートナーシップが誕生し、愛知ターゲットの中の目標十一のところで「生物多様性と生態系サービスに特別に重要な地域が、効果的、衡平に管理され、かつ生態学的に代表的な良く連結された保護地域システムやその他の効果的な地域をベースとする手段を通じて保全され、また、より広域の陸上景観又は海洋景観に統合される。」というふうにうたわれております。また、農業と生物多様性の作業部会の中では、農業の生物多様性において、特に水田農業の重要性を認識するとともに、ラムサール条約の水田決議を歓迎するとされております。

 本案の長い正式名称の略称が里地里山法と言われております。これは、生物多様性の危機の中でも二番目に挙げられております人間活動の縮小による危機、いわゆる、人間が自然の恵みを受け、適正に管理、利用しながらつくってきた里地里山の生態系が、農村の高齢化や人口減少で人の手が入らなくなったため、耕作放棄地の増加など、さまざまな生物多様性の危機に瀕していることが問題意識というとあるということではないでしょうか。

 今回の質問では、特に、人間活動の縮小による危機の解決にこの法案がどれだけ効果があるかということについて質問をしていきたいというふうに思っています。

 それでは、お伺いをしたいと思うんですが、日本のいわゆる生物多様性保全のためには里地里山の保全、活用が大きなかぎを握ると考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

松本国務大臣 おはようございます。

 御指摘のとおり、人間の手が入らなくなったということで荒廃が進んでいる、大変重要な指摘だというふうに思っております。絶滅のおそれのある野生生物種が集中している地域のうち、約半数近くが里地里山に分布しているなど、生物多様性の保全にとって、里地里山を適切に保全し活用していくことは重要な御指摘だというふうに思います。

 環境省では、関係省庁の協力も得て、本年の九月に里地里山保全活用行動計画を策定して、全国の里地里山の保全と活用を、あらゆる主体の参加による国民的な運動として推進してきているところであります。

 また、里地里山を含めて、さまざまな地域における生物多様性の保全を図る観点から、生物多様性保全活動促進法案、いわゆる里地里山法案を御審議していただいているところであります。NPOなど、地域の関係者による里地里山の保全をしていかなければならないというふうに考えております。

 私は十年ほど前から、ない物ねだりはやめましょう、これからはある物探しをしましょうということをよく言うんですけれども、ない物ねだり、今までかんぽの宿とかグリーンピアとかいろいろな箱物が建って、それが本当に使われなくなってきている、そういう無駄なことはもうやめて、ある物探しをしましょう。里地里山法案は、ある物守りだというふうに思います。そういう意味では、この法案が通ることによってさまざまな地域の自然が保全されるということを期待して、御質問にお答えさせていただきます。

石田(三)委員 ありがとうございました。

 次に、今大臣からもお話があったんですが、環境省が、生物多様性国家戦略二〇一〇の実施方針に向けて、里地里山保全活用行動計画を本年の九月十五日に作成いたしました。

 この中で、里地里山保全活用の意義についての国民の理解を促進し、多様な主体による保全活用の取り組みを全国各地で国民的運動として展開することを目的としているというふうにあります。

 国土全体の生物多様性の危機を、開発による危機を第一、人間活動の縮小によるものを第二、それから外来種によるものを第三ということでしております。

 また、「問題の背景」の「里地里山の現状」では、「本行動計画では、特に人の営みによって維持されてきた里地里山における、人のかかわり方の変化による「第二の危機」に焦点を当てます。全国各地の里地里山では、」「人手が入らず人目が届かなくなることが原因となって、動植物の生息・生育環境の質の低下、野生鳥獣との軋轢、ゴミ投棄、景観・国土保全機能の低下などのさまざまな問題が生じています。」とあります。

 また、「保全活用の基本方針」の「各主体の役割分担」では、「今後の里地里山の保全活用は、農林業者や地域コミュニティだけでなく地域住民、」「企業、行政などの幅広い主体の参加を促しつつ、国民的運動として進めていくことが重要になっています。」とあります。

 そこで、御質問させていただきたいと思いますが、本年度の九月十五日に策定いたしました里地里山保全活用行動計画と、今回提案をされています里地里山法案の目指すところは同じなんでしょうか。また、これから地域連携保全活動計画が策定されていく上でも、里地里山保全活用行動計画とは相互に連携をすべきものであると考えますが、いかがでしょうか。

樋高大臣政務官 石田先生におかれましては、酪農をみずからなさったということ、そして、地域の問題解決に奔走をしてきた、特に中山間地域においてということ、そのお取り組みに対しまして敬意を申し上げると同時に、その御経験を踏まえましてぜひとも御高説を賜りたい、このように考えるところでございます。

 お答えをさせていただきたいと思いますけれども、里地里山保全活用行動計画、これにつきましては、先生今御指摘のとおり、本年の九月に策定をされたわけでありますけれども、里地里山保全活用の意義について国民の理解を促し、多様な主体による保全活用の取り組みを日本全国各地で国民的運動として展開することを目的といたしました国の計画でございます。

 内容といたしましては、地方公共団体、企業、NPO、農林漁業者など、里地里山にかかわるさまざまな、ありとあらゆる主体に対しまして、里地里山の重要性、あるいは保全活用の理念、方向性、取り組みの基本方針及びその進め方を提示するとともに、国が実施する保全活用施策を具体的に示すところであります。

 一方で、地域連携保全活動計画、これは、地域における生物多様性を保全するために、市町村あるいはNPOなど、地域のさまざまな関係者が連携して作成する計画でございます。また、これは里地里山に限定をしておりません。活動範囲は限定をされておりませんで、奥山あるいは海辺なども対象とされているということでございます。

 しかし、先生御指摘のとおりでありまして、本法案が里地里山の保全に貢献することは確かでございますので、これらの計画の調和、連携がしっかりと図られるように、その意味では重なるということでございまして、法に基づく基本方針にその旨を明記するなど、しっかりと努めさせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

石田(三)委員 ありがとうございました。

 次に、農水省にお伺いをしたいと思います。

 本年三月三十日に閣議決定されました農水省の食料・農業・農村基本計画には、「耕作放棄地対策の推進」ということで、「遊休農地解消に向けた取組を推進する。これらの取組を主体として、農用地区域を中心に耕作放棄地の再生・有効利用と発生の抑制を図る。」としております。

 そこで、本年九月に農水省が耕作放棄地の調査をされていると思います。二十一年度の耕作放棄地の面積及び農地として利用すべき耕作放棄地など、その取り組みの概要をお示しいただきたいと思います。

田名部大臣政務官 おはようございます。御質問ありがとうございます。

 耕作放棄地でありますけれども、高齢化であるとか労働力不足によりまして、現在、全国で四十万ヘクタールございます。

 そのうち、耕作可能な状況にある不作付地、これが約半分、二十万ヘクタールございます。これにつきましては、私どももすべてについての作付の再開を推進していく考えであります。

 一方、荒廃した耕作放棄地でありますけれども、これが約半分あるわけですけれども、農用地区域を中心に約十万ヘクタール、これを対象に再生利用の取り組みを推進していきたいと考えています。

石田(三)委員 ありがとうございました。

 ちょっと確認をさせていただきますが、いわゆる耕作の意思のある休耕地が二十万ヘクタール、それから、耕作の意思のない、でもまだ耕作可能ないわゆる耕作放棄地が十九万ヘクタール、草刈りとか耕起とかそういったことをしなければならないのが十五万一千ヘクタール、現状では再生不可能とした耕作放棄地が八万二千ヘクタールということで、今おっしゃられたように、耕作放棄地がほぼ四十万ヘクタールあるということで、再生可能な十五万一千ヘクタールが今後再生していくことになるというふうに考えますけれども、農水省の耕作放棄地対策で今後手当てをされていくのは、いわゆる農用地区域内の八万四千ヘクタールだというふうに認識をしています。つまり、再生可能放棄地のうち六万七千ヘクタールは、農水省のいわゆる事業範疇には入らないんだという認識でよろしいでしょうか。

 それから、同じく食料・農業・農村基本計画の「農村の振興に関する施策」のところで、「都市と農村地域をつなぎ、都市部の人材等を活用する取組」「都市部のNPO、企業、大学等多様な主体との協働により、それらの者が持つ新たな視点、手法で農村の地域資源の発掘・活用を推進する。」とあります。

 私、前回の農水委員会でも質問の機会をいただいたときに、耕作放棄地について取り上げさせていただきました。耕作放棄地を防ぐために、いわゆる戸別所得補償を充実することによって、農家が黒字化し、就農促進がされ、耕作放棄地を減らしていくというようなことを目指すんだということを御答弁いただいたと思いますけれども、現実の問題として、いわゆる中山間地域の高齢化した農業従事者が耕作放棄地をもう一度復元していくということは、なかなか難しいことだというふうに認識をしております。

 これらのことを踏まえて御質問させていただきたいと思いますが、いわゆる再生、有効利用を目指す農用地、または農用地区域に入らないけれども生物多様性保全に重要な役割を果たす耕作放棄地、例えば中山間地域の棚田などでございますけれども、農地として再生、確保し、管理を行っていく、そういうためにはいわゆるNPOや都市住民の力が必要不可欠と考えておりますが、いかがでございましょうか。

田名部大臣政務官 お答えいたします。

 農地に復元可能な土地というのが、今先生がおっしゃっていただいたように十五・一万ヘクタールあるわけなんですが、そのうち農用地区域内が八・四万ヘクタール。それで、この八・四万ヘクタールだけではなくて、その周辺の区域も入れまして十万ヘクタールにつきまして再生利用の取り組みを支援していくということであります。

 それ以外に、農地に復元不可能な土地というものが五万ヘクタールございます。この不可能な土地に関しても、立地条件に応じた農外利用など、それは森林化等も含めて、しっかりと取り組みをしていきたいというふうに考えております。

 先生がおっしゃってくださったように、耕作放棄地を再利用するためには地域住民の力というものが必要不可欠でございます。この支援についてですけれども、市民農園であるとか教育ファーム、こういったことに関しては農用地区域外でも対象としておりますので、地域の力、NPO法人であるとか都市住民であるとか、こういった皆様方からしっかり協力を得ながら取り組みを推進してまいりたいと考えています。

石田(三)委員 農用地区域以外でも、農水省の御支援を受けながら活動ができるというふうに判断をしてよろしいでしょうか。ありがとうございます。

 この法案の成立後、市町村は、多様な主体による地域連携保全活動計画をつくることにしておりますが、主務大臣は、それに向けた地域連携保全活動基本方針を定めるということにしております。

 実際、現場で活動をされている人たちもいるわけでございますし、その人たちがいかに活動しやすくしていくかということは、大きな課題だというふうに思っています。有識者の意見等々も聞きながら作成をしていくことになるんだというふうに思いますけれども、その方針を作成していく段階で現場の声を反映させていくことが重要だと考えます。実際に活動主体となる農業者ですとかいわゆるNPOのメンバーなどを加えていくという考え方はございますでしょうか。

鈴木政府参考人 基本方針の検討に当たりましては、今後、検討会など公の場において議論することを予定しております。

 具体的にはこれから、三省主務大臣になっておりますので、関係省庁と御相談しながらでございますが、その検討のメンバーには、地域における保全活動の実態に詳しい有識者、専門家、あるいは現場において保全活動に従事していただいています団体等にも参加いただいてはどうかというふうに考えております。

 また、パブリックコメントや全国各地における意見交換会を実施するなど、さまざまな御意見を踏まえながら基本方針は定めていきたいというふうに考えております。

石田(三)委員 ぜひ、せっかくおつくりになるわけでございますので、実際かかわる人がやりやすいといいますか、そういった方針を定めていただきたいというふうにお願いをするところでございます。

 次に、第三条の地域連携保全活動基本方針の第二項にございます、基本方針には、地域連携保全活動の促進の意義、地域連携保全活動の促進のための施策に関する基本的事項を定めることになっておりますけれども、そこにはいわゆる農地の生物多様性機能の保全の必要性や耕作放棄地の積極的な利用についてもぜひ明記すべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきたいと思います。

 地域連携保全活動基本方針、これにつきましては、地域連携保全活動を促進するに当たりまして、我が国全体の目指すべき方向性あるいは配慮すべき点などを示すものでございまして、今後、地域において保全活動を促進するための指針となるべきものでございます。

 この地域連携保全活動というのは、農地における活動も対象となるわけでございますけれども、先生おっしゃいますとおり、耕作放棄地などの農地の現状や課題を整理しながら、基本方針において、農地における保全活動の促進の意義について規定していくという考え、認識を持っているところでございます。

 御指摘のとおり、基本方針の検討に当たりましては、広くさまざまな御意見を伺ってまいりたい。例えば、農地における保全活動の実態に詳しい有識者、先生のような詳しい経験者の方、あるいは現場において保全活動に従事する団体などの御意見を聞き、現状の問題点をしっかり踏まえて行ってまいりたいと思います。

 とても大切な御指摘をいただいたと思っております。ありがとうございます。

石田(三)委員 では、検討をするということで、明記するまではちょっと難しいかなということでしょうか。

 基本方針をつくっていく中で、そういった文言が入っているかどうかというのは非常に、作成する段階で、ちょっと一言あるかどうかというのは大変大きなところでございますので、ぜひ、希望としては、そういったところが入っているのは大変ありがたいなというふうに思うわけでございますけれども、その辺は難しいということでよろしいでしょうか。

樋高大臣政務官 御指摘をいただきましたが、先生の今おっしゃっていただいたこと、具体的にはまだこれからの部分がございますものですから、そのことも視野に入れながら、しっかりとまた検討もしてまいりたいというふうにも思っております。

 一つの御見識として、受けとめをしっかりと重くさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

石田(三)委員 ありがとうございます。

 それでは、参加するいろいろな主要な主体が活動しやすい形で、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 最後になりますけれども、この法案が成立し、活動を実効性のあるものにしていくためには、財政的な措置も本当に重要なところになるんだろうというふうに思います。

 実際の活動は、地域が主体になって、地域の実情に合わせた方法、方向でやることが大切だというふうに思いますけれども、生物多様性の保全は国家戦略であります。生物が豊かに存在する国土を守ることは我々の、いわゆる次世代にしっかりつないでいく大きな責任でございます。

 第十四条で、国及び地方公共団体は、地域連携保全活動に関し、情報の提供、助言その他の必要な援助を行うよう努めることとしています。私は、ここにそういった財政的なことも非常に期待をしているところではありますが、そういったことが明記をされていないという中で、推測する以外に方法はないんですけれども、ここで質問をさせていただきたいと思います。国として、本法案が定める生物多様性の保全のための活動の促進に、いわゆる財政的な措置を講じていくという考えがございますでしょうか。

近藤副大臣 石田委員にお答えいたします。

 石田委員は本当に、中山間地域の町おこし、また環境の保全ということで、大変に現場をよく御存じということで御質問あるいは御指摘をいただいている、そういう中で今の御質問もあると思います。

 この法案に基づく地域連携保全活動計画の作成や地域での活動に対して、もちろん国として必要な支援を行っていく、これは、この法案の実効性を高める上で大変に重要なことと認識をしているわけであります。

 御指摘の財政支援については、地域生物多様性保全活動支援事業を通じて、各省とも連携して、必要な予算の確保に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。

 また、今御指摘のありました財政的支援以外についても、各地域で実施されている保全活動についての情報提供、地域連携保全活動計画の作成のための手引書の作成などを通じ、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

 以上です。

石田(三)委員 法文の中にそこまで踏み込んで明記をしていただくことが一番ベストだというふうに思いますけれども、今からこの法文を変えるのはなかなか難しいことだろうというふうに思いますが、今の御答弁の中で、しっかりした財政措置をやっていただけるというふうに判断をさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

 この里地里山法が速やかに議決され、生物多様性の危機に一刻も早く歯どめがかかり、次世代にしっかりとそういったものを残せるように、私たちも努めてまいりたいというふうに思います。

 きょうは質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

小沢委員長 これにて石田三示君の質疑は終了いたしました。

 次に、井上信治君。

 これより井上信治君の質疑時間に入ります。

    〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

    〔大谷(信)委員長代理退席、吉川委員長代理着席〕

    〔吉川委員長代理退席、委員長着席〕

小沢委員長 これにて井上信治君の質疑時間は終了いたしました。

 次に、古川禎久君。

 これより古川禎久君の質疑時間に入ります。

    〔委員長退席、田島(一)委員長代理着席〕

    〔田島(一)委員長代理退席、委員長着席〕

小沢委員長 これにて古川禎久君の質疑時間は終了いたしました。

 次に、齋藤健君。

 これより齋藤健君の質疑時間に入ります。

 これにて齋藤健君の質疑時間は終了いたしました。

 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、生物多様性法案、いわゆる里地里山法案について質問をさせていただきます。

 我が国で開催されましたCOP10におきまして、ポスト二〇一〇年目標、いわゆる愛知目標、及び遺伝資源へのアクセスと利益配分、ABSに関する名古屋議定書が今回合意されましたことは、極めて意義深いものでございます。まさにこれは、日本の松本環境大臣の強いリーダーシップと、先進国さらには途上国の、関係各国の努力によるものと敬意を表するものでございます。

 しかし、この成功の余韻に浸っている余裕はないと思います。生物と共生する社会づくりについて、未来に対して我々世代は新たな責任をこれで負ったことになるわけであります。今後は、これらの新たな保全目標が着実に実施されて、生物多様性の保全と持続可能な利用の実現につながるように、世界全体で政策等を見直す必要がありますし、また我が国は、COP10議長国として、その先頭に立って世界を先導していく重い責任があるわけであります。

 とりわけ、今後の世界の生物多様性保全の戦略計画であるポスト二〇一〇年目標、愛知目標では、個別目標として、自然生息地の損失速度を少なくとも半減させること、それから、農林漁業地域が生物多様性の保全を確保するよう管理すること、さらに、気候変動等により影響を受けるサンゴ礁等の生態系への人為的圧力を最小化すること、生物多様性に特別に重要な陸域の少なくとも一七%、海域の少なくとも一〇%を保全すること、劣化した生態系の少なくとも一五%を回復すること等々が決められています。

 そこで、環境大臣にお聞きいたしますが、これらの目標の着実な達成のために、この法律案は具体的にどのような役割を果たしていくものと考えておられるのか。その位置づけについて、今回のCOP10の議長である松本環境大臣にお伺いをいたします。

松本国務大臣 お答えをいたします。

 今、愛知目標に触れられましたけれども、COP10最終日に、実は愛知目標は一番最後に合意をしたということで、最終日の夜九時過ぎまでかかりましたけれども、本当にあの合意ができたときに大変うれしい思いをしました。まさに、議長としてではなく、日本がチームワークで、本当にそれぞれの部署でみんなが頑張ったおかげで愛知目標ができたというふうに考えております。先生御指摘のとおり、まさにゴールではなくて、ここからスタートだということをしっかり腹に入れながら、これからやっていきたいというふうに思います。

 愛知目標は、すべての国が取り組める意欲的で、また現実的な目標として合意されたものでありまして、この目標を達成するために、国内では生物多様性国家戦略を見直すとともに、世界的な達成を確保するために、途上国支援を進めるなど、必要な措置を講じていくことになります。

 また、本法案は、地域における生物多様性を保全するため、NPOや行政機関等々のさまざまな主体が連携して外来種の防除や希少種の保護増殖などの保全活動を行う場合に、これらを促進しようとするものであります。愛知目標に掲げられた侵略的外来種の制御、根絶、目標九や、絶滅危惧種の絶滅、減少の防止、目標十二等の目標を実現する上で、とりわけ地域における多様な主体が連携して行う取り組みを推進するためのものであると認識をしております。

 具体的には、本法案により、各地域において、希少種の保護を図るためのえさ場となる水辺の整備や外来種の防除、里山の竹林伐採等の活動を促進する等、我が国において愛知目標を達成する上で必要な生物多様性保全の取り組みを支援していくということにしております。

江田(康)委員 そういう愛知目標、生物多様性条約における愛知目標を達成するために、本法律案が果たすべき役割というのが大変重要になってくるわけでございますが、本法律案の提出の背景として、自然に対する人間の働きかけが縮小、減少してきたということがございますし、我が国の持つ豊かな生物多様性への危機として、近年、顕著になってきていると思われます。

 人々の生活様式の変化によって農林業のための里山の利用が減少し、さらに、少子高齢化が進行することによって里地里山の適切な管理が現実的に困難になって、このことで耕作放棄地がふえる、とりわけ伝統的な里地里山をめぐる環境は急速に悪化しているというようなのが現状だと思います。

 それは、海に目を転じてもしかりでありまして、いわゆる里海においても、開発による海岸線の人工化や、また、漁業者の減少や高齢化による藻場、干潟の減少、機能の低下、これを招いて、さらに海岸には漂着物が散乱する。こういうように海洋における生物の生息環境も脅かされる状況にある。こういうような状況の中で本法律案は提出されて、今審議を行っているわけでございます。

 財政支援についてお伺いをさせていただきます。

 本法律案において、市町村が単独または共同して、その区域における地域連携保全活動計画を作成し、その地域におけるNGO等、多様な主体が有機的に連携してさまざまな生物多様性を守るための活動が実施される、このことが期待されるわけでございます。その計画は、生物多様性基本法に基づく生物多様性地域戦略を定めている市町村では、この地域戦略との調和を保つように努力しなければならないとあります。

 そこでまず、COP10が我が国において開催され、我が国における生物多様性の保全に関する認識がより一層高まっていると思われますことから、各市町村において新たに生物多様性地域戦略を策定する動きが出てくることも期待されますけれども、全国の市町村における生物多様性地域戦略の策定状況と、策定に向けた動きについて大臣にお伺いをいたします。

 あわせて、言葉はあるかと思いますけれども、COP10の開催前の十月一日の時点では、この地域戦略を策定している市町村は三市しかなかったわけで、なぜ市町村において地域戦略の策定が進まないのでしょうか。このような状況から推察すれば、本法律案が定めている地域連携保全活動計画の策定を全国の市町村が本当に進めることができるのかを私は懸念するわけでございます。

 やはり市町村における計画の策定を推進するには、国がこの生物多様性の保全活動体制を充実するための施策を行う必要があるわけです。本法律案における国等の援助にかかわる規定では、国及び地方公共団体は、地域連携保全活動に関し、情報の提供、助言その他の必要な援助を行うよう努めるものとするとされておりますけれども、ここには明記されていない財政的支援こそが実際上最も必要ではないんですか。ここがこの法案の魂ではないかと思うわけでございます。

 そこで、この財政的支援の重要性についての大臣の認識、そして、この財政的支援がいわゆるその他の必要な援助に当然に含まれていると思うわけでございますけれども、大臣の見解をお伺いいたします。

松本国務大臣 お答えをいたします。

 前段の市町村における生物多様性地域戦略の策定状況につきましては、これまでに、流山市、高山市、名古屋市、北九州市の計四市が策定済みでございます。また、御指摘のとおり、最近、市町村における生物多様性地域戦略の策定の動きは加速しつつあり、横浜市や佐渡市、福岡市等十三の市町で生物多様性地域戦略の策定に向けた取り組みが進められております。

 今後も、各地域の自然的、社会的条件に応じたきめ細かな取り組みが進むよう、地域における説明会などを通じて、市町村における生物多様性地域戦略の策定促進に努めてまいりたいというふうに思っております。

 二点目の財政的支援の問題であります。「その他の必要な援助」に当然含まれるのかという御指摘でございました。

 この法案に基づく地域連携保全活動計画の作成や地域での活動に対し、国として必要な支援を行っていくことは、法案の実効性を高める上で、委員御指摘のとおり、重要と認識をしております。国の支援の中で財政的な支援を行うことも重要であると考えておりまして、環境省の地域生物多様性保全活動支援事業等を初め、法案の趣旨を踏まえて、各省とも連携をして、必要な予算の確保に努めてまいりたいと思っております。

江田(康)委員 大臣、今、必要な予算の確保に全力で努めるとありましたので、本当によろしくお願いしたいわけでございますけれども、やはり、生物多様性の保全、また里地里山の保全というもの、この活動を支えていく、そういう財政的支援がこの法案では弱い、本当に薄いと思います。これは以前から公明党としても指摘をさせていただいてきたところでございますけれども、やはり財政支援がなければ、法案の実効性は大変低いものとなるのではないかということを懸念するわけで、しっかりこの財政措置をとっていくことを強く要請申し上げます。大臣、しっかりと取り組んでまいるということでございましたので、御期待を申し上げたいと思います。

 次に、今、関心のあるといいますか、所有者不明地問題についてお伺いをさせていただきたいと思っております。本法律案の附則第三条第二項で掲げられております所有者不明地問題についてでございます。

 里地里山のうち、とりわけ都市部から遠い中山間地域、奥山の周辺においては、里山林が利用されずに放置されて、過疎化や高齢化の進行に伴う耕作放棄地が増加するなど、里地里山をめぐる環境は急速に悪化しております。利用されなくなった森林や農地においては、相続や入会権の解消などによって土地の細分化が進む。往々にして、土地の所有者がだれだかわからなくなってしまうことが発生しております。こうした所有者不明地で保全活動を行うといっても、一体だれにその利用許可を求めればよいのかわからないわけでありまして、結局、必要な生物多様性保全活動ができないというような問題が生じているわけであります。

 確かに、所有者不明地における保全活動については、憲法第二十九条の財産権の保障規定に抵触する可能性もあるでしょう。そこで、保全活動で上げた利益がだれのものかというような、法的に解決しなければならない問題も出てくるでしょう。そういうことは承知しております。

 とはいえ、所有者がわからないで荒れ放題になっている場所こそ、そこを保全してもとの豊かな里地里山として再生していく必要性が高いんじゃないですか。例えば、隣の土地が所有者不明地となっていて、外来種などが生態系に被害を及ぼしている場合に、その防除を行いたくても中に入ることができなければ、結局、環境の保全はできないわけであります。

 そこで、お尋ねをいたしますが、この所有者不明地の問題の解決はなぜ難しいんでしょうか。法的にどのような支障があるのか、明確な答弁をお願いしたいと思います。

鈴木政府参考人 今先生からも御指摘いただいたような内容でございます。

 具体的に言いますと、所有者が不明な場合に、例えば、今御指摘にあったような外来種の駆除あるいは立木の伐採などを行う必要が生じるという場合が多々ございますけれども、そうした伐採を行った際に、そのことが土地の財産権に与える影響というものをきちんと勘案する必要があるという指摘がございまして、まさにその財産権は憲法に保障されたということでございますので、そうした憲法上の権利との調整を図る必要があるということでございます。

 したがいまして、問題の所在は我々も十分承知しておりますけれども、この問題の解決のためには、多くの方々、あるいは専門家の方々の御意見を聞きつつ、慎重に制度設計を進めることが必要ではないかということで、その趣旨を法に書かせていただいたということでございます。

江田(康)委員 それではさらにお聞きをしていきたいんですが、最近、外国人等による森林の買収が問題化しているところでございます。この所有者不明地の問題の解決が急がれる背景の一つとして、今、マスコミとか新聞等でも取り上げられておりますけれども、外国人による我が国の森林の買収という問題が挙げられます。

 里地里山は、単に農林業の生産の場としてのみならず、水源の涵養や国土の保全という多面的な機能を有するわけでございますが、しかし、近年、外国人または外国資本の法人が、仲介者やダミー会社を介在させて本当の当事者を明らかにしない形で、我が国の森林、特に水源林を買収しているという話も聞こえてまいります。

 この問題について、我が党の加藤修一参議院議員が提出した質問主意書に対する政府答弁書によりますと、「外国人等による不動産の取得の実態について調査等を行い、詳細を把握することは困難である。」との回答がなされました。これはやはり実態調査をすべしという公明党の主張に対して、この調査は困難であるという回答であったわけであります。

 しかし、その土地でだれが本当の所有者なのか明らかでない状態で、政府として何も手を打たないまま、気がついたときには既に外国人に渡っていて、森林が買い占められてしまっていたことになれば、我が国の森林等の貴重な国土資源の適正な保全にとっては大きな脅威となるわけであります。所有者不明地の問題の解決というのは、やはり政府によって速やかに行われるべき重要課題であると思います。この法案の審議をするに当たって、やはりこういう問題に対してどうしていくのかということが問われるわけであります。

 そこで、所有者不明地の問題に対処するために、関係各省が一層緊密に連携して実態調査をしっかりと行っていくということが大変重要だと思うわけでありますが、この実態調査をいつ始めていくのか、また、法制上の問題も含めてどのように解決をしていくのか、その具体的な取り組み方針が検討されている、またいくのであれば、農林水産省に明確な答弁をお願いしたいと思います。

 また、大臣にも、所有者不明地問題の早急かつ着実な解決に向けてどのように取り組まれていくのか、その点についてもお聞かせをいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

皆川政府参考人 お答えさせていただきます。

 今、江田委員からの御指摘でございますが、森林を適切に管理しなきゃいかぬということがまず何よりも大事でありますけれども、森林所有者の把握、これも森林の管理のためにも大事な点でございます。

 このため、従来から都道府県の方では、市町村ですとか森林組合に対して、地元とつながる中で得た情報、森林所有者の異動情報を提供するように要請して、把握してきております。

 しかしながら、林業生産性が長い間低迷しております。そういった中で、最近、山村からの人口流出も大きい、また相続も発生するという中で、不在地主が増加する。森林所有者の異動情報を確実に把握することにはなかなか大きな労力が必要になってきております。中にはまた、森林所有者の把握がなかなかできないということもふえているというふうに認識をしております。

 そこで、森林所有者の把握には、これまでのような地元とのつながりといった中で活用できる情報収集ということに加えまして、登記簿の情報、さらには地籍調査の情報、さらに国土利用計画法に基づきまして一ヘクタール以上の売買の届け出といったことの情報もございますので、こういった諸情報について、森林所有者の把握ができるような取り組みを、関係省庁とも連携をとりながら進めてまいりたいというふうに考えております。

 例えば、本年十月から、国土利用計画法を所管する国土交通省と連携をいたしまして、外国資本による森林取得の調査も開始しております。これは全国での調査を開始しているということでございます。

 しかしながら、我が国の森林自体は、千七百四十一万ヘクタールの民有林がございます。全体では二千五百万ヘクタールでございますが、民有林が千七百万ヘクタール超ございます。そういった中で、森林所有者の不明地解消ということについて具体的な目標を設定すること自体、労力の点、さまざまございまして、なかなか難しいところがございます。

 そういったこともございますので、私どもといたしますれば、森林・林業の再生プランということを今政府の目標としておりますけれども、その中で、所有者の不明である森林を含めまして、森林が適切に管理できますように、例えば、間伐が進まないといったようなこと、促進するためにどうするか、さらには、適切な路網を入れていくために、不明地があるのでなかなか入りにくいといったこともございますので、そういったことを乗り越えられないかといったことについて、そういった土地使用を可能にするような方策はないかといったようなことについても、森林法の改正といったことも視野に入れながら、検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

松本国務大臣 お答えをいたします。

 外国人による森林の買収ということは、与党、野党問わず、今非常に懸念をされているところで、今林野庁のお話も聞きましたけれども、私ども、連携をして頑張っていきたいというふうに思います。

 私も、じいさんからもらった山があるんですが、その山が、境界線を確定しようと思ってもできない、一年かかってもできないこともありました。つまり、相手方がだれかわからないということもあって、そういう困難も多分あるんでしょうけれども、私どももしっかり連携をしていきたいというふうに思います。

 土地所有者の協力が得られない場合には、その地域での活動が困難となります。生物多様性の保全に支障が生じる事例が、今申し上げましたとおり、たくさん発生をしております。これからは、さらなる事例収集等を通じて、土地所有者の協力が得られない場合における生物多様性の保全上の課題を把握するとともに、農林水産省、国土交通省を初めとした関係省庁と連携をして、さまざまな関係者の御意見を伺いつつ、生物多様性の保全に向けてどのような対策が必要か、先生御指摘のとおり、検討を進めてまいりたいというふうに思っております。

江田(康)委員 森林、また山、そういう所有が明確になっていくことは大変重要で、地球温暖化対策として大変重要な森林であり、また水源の涵養等においても非常に重要、そういうものが外国人によって、外国資本によって買収されていくということは、我が国の環境保全の政策が届かない部分が出てくるということであります。

 この生物多様性法案、里地里山法案においても、これは大きな枠だと思います。政府が連携して、一体となって取り組まないと、里地里山法案で地域での環境保全の活動を幾ら支えていっても、そういう大きなところで環境の保全が図られないようなエリアが生まれてくるということは、その効果、実効性が大変懸念されるわけでありますから、これは本当に真剣に、政府一体となって取り組まないといけないと思います。

 今、林野庁の方からも、この実態調査、森林所有者の把握に努めていく、また、それを関係省庁ともスタートしたところだというお話もありました。また大臣からも、しっかりと連携してこの対応をしていくというお話もありました。ぜひこの問題は、引き続き取り上げていく、また、国会としても、どのような形としてそれができるようになるのかしっかりフォローをしていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

 次に、ナショナルトラスト活動について、残りの時間で質問をさせていただきたいと思っております。

 まずは、里地里山の保全活動の一つとして忘れてならないのが、貴重な自然、また歴史的な建造物を保全していくために、住民からの寄附金等によって土地や建物を取得して保全していく、このナショナルトラスト活動があります。

 平成二十年の五月に、私は当時、公明党の環境部会長として、議員立法である生物多様性基本法の制定に直接かかわりました。ここにおられる田島先生もそうでございますが。この生物多様性基本法の第二十一条三項には、このナショナルトラスト活動を初めとして、民間団体によるさまざまな活動の促進を国に対して求めた規定があります。本法律案の第十二条で定められている規定は、この生物多様性基本法の規定にのっとったものと考えられるわけです。

 さて、ナショナルトラスト活動の発祥の地であるイギリス、ここにおいては、昨年末現在では、国土面積の約一%に相当する二十五万五千ヘクタールという広大な土地がトラスト地として保護されていると聞いております。しかし一方で、我が国におけるトラスト地の面積は、合計一万ヘクタール程度にとどまっております。余りにも差が大きいと思わざるを得ません。

 まず、我が国におけるナショナルトラスト活動がなかなか進まない理由は端的に何なのか、この基本的認識をお伺いいたします。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 江田先生におかれましては、議員立法ということで生物多様性基本法に携わられたということで、心から深甚なる敬意を、そして感謝を申し上げさせていただきたいと思います。

 なかなか進まないというのは、先生御指摘のとおりでございます。その原因として考えられますのは、主に三点申し上げさせていただきますと、まず一点、諸外国と比べまして、公益目的の事業に不特定多数から寄附を募る文化、これが成熟をしていないのではないかというのが一点でございます。そして二点目といたしまして、土地の価格、あるいは土地の所有、利用形態が複雑であるということによりまして、取得が難しくなっているということ。三点目といたしまして、税制措置、民間の団体の土地取得を促進するための支援措置がまだ十分じゃないのではないかということなどが原因として今指摘をいただいているというところでございます。

 ありがとうございます。

江田(康)委員 今、樋高政務官がおっしゃったように、三点ほど、やはり進まない理由というのはあると思います。

 その中でも、我が国で進まない最大の理由として、土地の所有者がナショナルトラスト活動を行うNPOの民間団体に自己所有地を譲渡する際の税制、所得税、法人税、相続税、贈与税等の減免等の優遇措置が設けられていないことが指摘されています。また、民間団体にとっても、土地を譲り受けた際の不動産取得税、さらには土地を持ち続ける際の固定資産税、これがやはり大きな負担となるわけでありますから、たとえ住民から贈与等の申し出を受けても、簡単には土地を所有できない事情があるわけであります。

 本法律案の第十二条第一項をわかりやすく言えば、国は、ナショナルトラスト活動が促進されるよう、国民や民間団体に対し情報提供や助言その他の必要な援助を行うべしと規定されております。しかし、今まで申し上げたとおり、ナショナルトラスト活動の促進を担保するような税制優遇措置が国レベルでは認められていない現状を考えると、先行きは心細いものがございます。

 平成二十三年度の環境省の税制改正要望でも、私もこれまでかかわってまいりましたが、ずっと環境省は要望している。生物の多様性の保全を目的として民間の団体が行う土地の取得または所有に係る税制上の特例措置を要望し続けてきています。しかし、なかなか財務省はそれを取り上げない、こういう状況です。私もこれは必要だと思っております。もちろん、この要望がなかなか通らないという状況にあることはわかりますが、環境省として、ナショナルトラスト活動を国が主体となって進めていかなければならないことをもっと強く、声を大にして主張していくべきではないかと思うわけであります。

 そこで、政府として、本法律案の規定内容にとどまらず、税制上、財政上の措置をいわゆるその他の必要な援助としてこれから着実に行っていくとの意思を明確にしていただきたいと思いますが、この御決意をお伺いいたします。

近藤副大臣 江田委員にお答えをさせていただきます。

 大変に、委員におかれましても、里地里山の保全に対して大きな関心、また活動を行っていただいていることに感謝を申し上げたいと思います。

 私が来年度の税制改正の要望と税制調査会に出席をさせていただいておりまして、御指摘の税制要望については、やはり生物の多様性の保全を目的として民間の団体が行う土地の取得または所有に係る非課税措置について、これについては大変に重要だということで要望をさせていただいているところであります。

 また、財政的支援として、ナショナルトラスト活動を初め民間団体による地域連携保全活動が円滑に行われるよう、地域生物多様性保全活動支援事業の実施等を初め、各省とも連携して、必要な予算の確保に努めてまいりたい、こう考えているところであります。

 こうした税制、財政措置以外にも、今後、土地の買い取りに関する情報提供、先ほども御指摘ありましたナショナルトラスト活動を効率的に行うためのマニュアルの整備を行うこととしております。これらを通じて、引き続きナショナルトラスト活動に対する必要な支援に努めてまいりたいと思います。

 江田委員におかれましても、大きな御支援をいただきたいと思います。ありがとうございます。

江田(康)委員 私も副大臣のときに、白神山地のナショナルトラスト活動に参加してまいりました。そこでナショナルトラストとして寄附をしまして、そして、この土地を、わずかな土地を保全していただいたわけでございます。

 しかし、これは、寄附の文化が日本にないとしても、本当に政府が予算措置等で全部支援できるかというと、そうはできないわけで、山林も、先ほど林野庁長官がおっしゃっていたように一千七百万ヘクタールとか広大な林地や広大な土地があるわけで、やはりそういうナショナルトラスト運動というのは、環境保全をこれから支える非常に大事な活動であると思います。

 そういう意味で、やはりそれを阻害している。税制上、財政上の措置を明確にとっていくことが国に課せられた責任だと思っておりますので、ともどもに、これについては、この税制上、財政上の措置が進みますように、しっかりと私どもも支援をしていきたいと思います。

 もう一つ、最後に環境大臣にお伺いをして終わりたいと思うんですが、ナショナルトラストに関してでございます。

 本法律案の第十二条二項には、自然公園法の特別保護地区など、生物多様性の保全上特に重要な土地を国が国民、民間団体または事業者から寄附されて取得した場合には、環境大臣は当該寄附をした者の意見を聞くものとされております。

 確かに、今言ったように、環境保全には多くの資金や労力を要しますから、土地所有者は負担が多い。そのために、土地を国に寄附して、そして維持管理を任せたい、こういう意思を持つ人たちが多くなってくることは容易に想像ができます。しかし、ここであえて法律で明記されたその理由をお伺いしたいというのが一点。

 なぜ、意見聴取の対象を自然公園法の特別保護地区などごく限られた土地に限定しているのかということをお聞きしたいんです。実際にナショナルトラスト活動が行われているような土地は、国立公園や鳥獣保護区などの保護地域に限られないからでありまして、この法律で守って将来世代に伝えていきたいと考えている土地は、何も奥山に分け入った国立公園の土地に限った話ではないわけでございます。我々の周囲にごくありふれた形である自然環境が、気がついたら消えてなくなる、消えてなくなりそうな里地里山をいかに守って、いかに活用していくか、それこそが里地里山法の存在理由ではないのかと思います。こうした身の回りの里地里山の保全なくして、生物多様性の保全と持続可能な利用は決してあり得ないと考えます。

 そこで、最後に大臣にお伺いをさせていただきますけれども、改めて、土地の取得に伴う大臣による意見聴取の対象をなぜ自然公園法の特別保護地区に限ったのか。さらに踏み込めば、自然公園法の特別保護地区でなくとも、国が大切な里地里山であると判断すれば、その土地の寄附を受けるに当たり、当該土地所有者からしっかりと意見を聞く必要があると思います。それによって土地の保全の促進にもつながっていくと思いますけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。

 大臣はおっしゃいました、地球は未来の子供たちからの預かり物だと。そうおっしゃられている大臣の真摯な所見をお伺いして、終わりたいと思います。

松本国務大臣 ナショナルトラストの話、本当に、イギリスと日本を比べれば、そういう状況かと、逆に言うと驚きましたけれども、意識を涵養していかなければならないと思います。

 国立公園の特別保護地区など生物多様性の保全上重要な土地は、奥山に位置するためアクセスも未整備な場合も多く、その維持管理に多くの費用や労力を要するなど土地所有者の負担が大きいために、所有者が国への寄附を希望することも想定をされております。

 例えば、希少種の保護の具体的な方法などについて、それまでの経験に基づいて、国に提案を行いたい場合もあるというふうに思います。

 このため、環境大臣が所有者の意見を聞き、適切に保全管理を行っていく旨を法律で明示することによって、所有者の懸念を払拭し、寄附がより進むものと考えております。

 特別保護地区の問題でありますけれども、国立公園の特別保護地区等の土地は、我が国を代表するすぐれた自然環境を有しております。特に国みずから維持管理する必要性が高い。これらの土地の民間からの寄附の促進を図るため、法律に、土地の取得に伴う大臣による意見聴取規定を設けることとしたものであります。

 国立公園以外のいわゆる里地里山に関しては、今先生御指摘のとおり、民間の活力も活用しながら保全をしていくこととしておりまして、法案第十二条第一項に規定する、いわゆるナショナルトラストを行う団体への寄附を促進していくことで対応してまいりたいというふうに思っております。

 先生が先ほどから御指摘のとおり、おくれておりますことを、しっかり涵養していきながら深めていきたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございます。

江田(康)委員 これで終わりますが、今回、COP10の愛知目標、ポスト二〇一〇年目標が決まった。そして、それに向けて、世界も体制を整えていく、我が国は議長国としてその先頭に立っていく。そのための、COP10を終えて、生物多様性基本法の制定後、個別法としては初めてのこの法案、里地里山法案であるかと思っております。この法案が実効性のあるものになるように、環境省、大臣を先頭に、しっかりと取り組んでいただきたい。きょうは幾つかの重要なところだけの質問で終わりましたけれども、どうか全力で取り組んでいただきますようによろしくお願いを申し上げまして、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

小沢委員長 これにて江田康幸君の質疑は終了いたしました。

 太田和美君。

太田委員 動議を提出いたします。

 本案に対する質疑を終局されることを望みます。

小沢委員長 太田和美君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小沢委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小沢委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

小沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時七分散会


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