衆議院

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第10号 平成22年12月21日(火曜日)

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平成二十二年十二月二十一日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 小沢 鋭仁君

   理事 大谷 信盛君 理事 太田 和美君

   理事 田島 一成君 理事 横光 克彦君

   理事 吉川 政重君 理事 田中 和徳君

   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君

      相原 史乃君   木村たけつか君

      工藤 仁美君    櫛渕 万里君

      近藤 昭一君   斎藤やすのり君

      阪口 直人君    玉木 朝子君

      玉置 公良君    橋本 博明君

      樋高  剛君    室井 秀子君

      森岡洋一郎君    山崎  誠君

      井上 信治君    近藤三津枝君

      齋藤  健君    古川 禎久君

    …………………………………

   環境大臣         松本  龍君

   環境副大臣        近藤 昭一君

   外務大臣政務官      山花 郁夫君

   経済産業大臣政務官    田嶋  要君

   環境大臣政務官      樋高  剛君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            白石 順一君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  寺田 達志君

   環境委員会専門員     高梨 金也君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月二十一日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     玉木 朝子君

  岡本 英子君     室井 秀子君

同日

 辞任         補欠選任

  玉木 朝子君     石田 三示君

  室井 秀子君     岡本 英子君

    ―――――――――――――

十二月三日

 一、地球温暖化対策基本法案(内閣提出第五号)

 二、低炭素社会づくり推進基本法案(野田毅君外四名提出、第百七十四回国会衆法第七号)

 三、気候変動対策推進基本法案(江田康幸君提出、第百七十四回国会衆法第一五号)

 四、環境の基本施策に関する件

 五、地球温暖化の防止及び低炭素社会の構築に関する件

 六、循環型社会の形成に関する件

 七、自然環境の保護及び生物多様性の確保に関する件

 八、公害の防止及び健康被害の救済に関する件

 九、公害紛争の処理に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

小沢委員長 これより会議を開きます。

 環境の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、気候変動に関する国際連合枠組条約第十六回締約国会議及び京都議定書第六回締約国会合の結果について、政府から報告を聴取いたします。松本環境大臣。

松本国務大臣 十一月二十九日から十二月十日までの間、気候変動に関する国際連合枠組条約第十六回締約国会議及び京都議定書第六回締約国会合がメキシコ・カンクンで開催され、私、山花外務大臣政務官、田嶋経済産業大臣政務官及び田名部農林水産大臣政務官が出席してまいりました。この会議の結果について御報告いたします。

 我々には、子供たちからの預かり物であるこの地球を健全な形で次世代に継承していく責務があります。私は、今こそすべての国は、世界全体の平均気温の上昇が二度を超えないようにすべきとの科学的見解を認識し、地球規模での大幅な排出削減のために行動を起こす必要があるという決意を持って会議に臨みました。

 私は会議期間中、こうした思いのもと、気候変動問題の解決のためには、すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みが不可欠であり、締約国会議の合意として、そうした枠組みの基礎となるパッケージが必要であると訴えてまいりました。また、京都議定書は気候変動への対処の第一歩として大きな役割を果たしているが、世界全体の排出量の二七%しかカバーしていない枠組みであり、こうした枠組みが固定化すれば、真に実効性ある国際枠組みの構築につながらないこと、このため、第二約束期間の設定には賛同できないことなどを主張しました。

 あわせて、地球益を考えて行動している我が国の着実な排出削減努力や途上国支援といった貢献についても主張しました。具体的には、第一約束期間の六%削減目標については誠実に履行すること、二〇一三年以降も率先して一層の排出削減努力を行っていくこと、緩和及び適応に取り組む途上国に対する資金支援を着実に実施していることに加え、本年、我が国は途上国における森林減少・劣化対策等パートナーシップの共同議長を務め、名古屋で閣僚会合を開催するなど、森林保全分野で指導力を発揮してきたことなどです。

 さらに、議長国メキシコを初め、ロシア、カナダ、豪州、ニュージーランドといった先進国、さらに中国、インド、アフリカ諸国など、さまざまな国々と二国間会談を行いました。会談では、交渉のかぎを握る各国の閣僚に、世界規模での真の削減のためにすべての主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みの構築を目指す我が国の立場を丁寧に説明し、理解を求めました。アフリカを初めとする途上国の方々からは、愛知県名古屋市で十月に開催された生物多様性条約第十回締約国会議の成功を祝す言葉も多くいただきました。

 最終的に今回の会議では、議長国であるメキシコのすぐれたリーダーシップと、こうした対話の積み重ねのかいもあり、昨年十二月のコペンハーゲン合意を実施に移す締約国会議決定が採択され、今後我が国が目指すすべての主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みの構築に向けた大きな成果を得ることができました。具体的には、コペンハーゲン合意に基づき表明した先進国の削減目標や途上国の削減行動を、一つの締約国会議決定に公式に位置づけ、削減効果の国際的検証の仕組みの導入に合意しました。また、資金、技術、適応、森林保全等の途上国支援の強化も盛り込まれました。こうした決定は、我が国が目指す枠組みの実現に向けた大きな一歩であると考えております。

 我が国は、今後も、こうした取り組みに加え、各国と協力して、排出削減、適応、途上国支援に取り組むとともに、公平かつ実効性のある枠組みの構築に向けた国際交渉に貢献してまいります。

小沢委員長 これにて報告の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として環境省総合環境政策局長白石順一君、環境省地球環境局長寺田達志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。櫛渕万里君。

櫛渕委員 民主党の櫛渕万里でございます。

 ただいま大臣より御報告をいただきましたメキシコのカンクン会議の結果について、本日は御質問をさせていただきます。会議直後の大変貴重なタイミングにおいてこうして質問の機会をいただきましたことに、理事の先生方には心より感謝を申し上げます。

 松本環境大臣を初めとする政府交渉団及び関係者の皆様、メキシコのカンクンでの国際交渉、大変お疲れさまでございました。十月の名古屋COP10に続いて、今回のメキシコCOP16の厳しい国際交渉の舞台において、我が国が大きな成果を上げ、先進国と途上国間で画期的な決議が採択をされましたことに、心より敬意を申し上げます。

 振り返ってみますと、この地球の資源には限りがあるんだという認識へ世界が大きく変わり、地球環境問題の歴史的な転換点となったのは、あの一九九二年のブラジル地球サミットでございました。そこで誕生した双子の条約と言われております気候変動枠組み条約と生物多様性条約、この二つともに、ことしは、我が国の環境外交が大きな成果を上げ、世界が力強い一歩を踏み出した、このことに私は誇りを感じ、高く評価をいたしております。

 昨年の政権交代なくしてはこの成果はなかった。松本環境大臣の強いリーダーシップはもちろんのこと、民主党政権誕生のもと、昨年、新しい日本の象徴の一つとして地球環境問題の解決を高く掲げ、これまでにない政治の意思を示された鳩山前総理、小沢前環境大臣を初め、多くの皆様の信念と御努力の連続する中にことしの大きな成果があるものと感じております。今こそ私たちは、政権交代を実現した主役である国民一人一人の思いに立ち返って、国民とともにこの成果と今後のビジョンを共有していかなければなりません。

 さて、このたびのカンクン会議では、条約会議と議定書会合、それぞれの一連の決議が一つのカンクン合意として採択をされました。我が国の置かれた状況も、国連の多国間の枠組みも、危機を脱して新しい息を吹き返したものと私は受けとめておりますが、環境大臣、この会議の成果をどのように見るか、改めてお聞かせください。

松本国務大臣 今おっしゃいましたけれども、今回の会合で採択された決定は、先進国と途上国それぞれが削減目標や行動を正式にCOP決定となされた。コペンハーゲン合意はテークノートという形でありましたけれども、そういう意味では大変大きかったというふうに思いますし、今後我が国が目指すすべての主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みの構築に向けた第一歩であるというふうに思っております。

 さらに、資金、技術、適応、森林保全等の途上国支援の強化が盛り込まれましたことは、途上国の取り組みを私ども促していたということで大きな前進であると、また評価をしているところであります。

 国連プロセスについては、カンクンにおけるCOP16や愛知・名古屋における生物多様性COP10においても、多くの国を巻き込んだ交渉の結果、合意に至ることができました。気候変動問題には地球規模での解決策が不可欠であり、国連プロセスはその中心的な検討の場として引き続き極めて重要だと考えております。我が国として、引き続き、すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みの構築に向けて、国際交渉に貢献をしてまいりたいというふうに思っております。

櫛渕委員 松本環境大臣、ありがとうございます。

 昨年のコペンハーゲン会議後、国連のプロセスをもって世界の温暖化防止の枠組みをつくっていくのは難しいのではないか、そんな悲観論も少なくなかった一年間でございました。そうした中で、今回の成果というのは、環境大臣、もう一度改めてお聞きしますけれども、国連のプロセスが息を吹き返したと思ってよろしいでしょうか。

松本国務大臣 そのように私は思っています。

 いろいろな新聞を読みますと、京都議定書以来、気候変動枠組み条約はなかなかいい結果が出てこなかったし、また、生物多様性条約にしても、ABSの問題がずっと取りざたされて、なかなかうまくいきませんでした。

 COP10については、議長国として何とか大役をこなせましたし、これからの国連プロセスの中心的な検討の場として、引き続き私たちは重要な役割を担っていかなければならないというふうに思っています。

 そういう意味では、息を吹き返したとおっしゃいましたけれども、まさにこれからが正念場であると思っておりますので、よろしく御指導のほどをお願いしたいと思います。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 さらに私は、今回の成果についてこう考えております。

 今回の交渉が成果を上げた背景でありますけれども、昨年、我が国が挙げた意欲的な削減目標、すなわち、すべての主要国の目標が合意をされれば、CO2を二〇年までに九〇年比二五%削減するといった政治の意思を国際社会に表明していたこと、また、国内対策として、地球温暖化対策基本法案が継続審議中であること、この二つのことが国際社会の評価と信頼をつないで、我が国の厳しい交渉を支えたものと思いますが、その点、山花外務大臣政務官にお伺いをしたいと思います。

 政務官には、鳩山政権時には、環境委員会の筆頭理事として御指導、御尽力をいただいておりました。今回の成果は、民主党政権が旧政権時代にはできなかった意欲的な目標と対策を掲げていたからこそ、コペンハーゲン合意を経てカンクン合意に至ったという連続性あるものと考えますが、いかがでしょうか。

山花大臣政務官 櫛渕委員にお答えを申し上げます。

 過分のお言葉もちょうだいいたしまして、感謝を申し上げたいと思います。

 今回のCOP16におきまして、先ほど松本環境大臣から答弁がございましたとおり、一定の成果を上げることができたと私どもも考えております。

 また、非常に大きかったのかなと個人的に思っておりますのは、やはりそれ以前にCOP10で松本大臣も議長を務められておりましたので、二国間の会談なんかをやるときにも、本当に多くの国から、よかったねと言っていただいた上で我が国の立場を説明するというようなことがありました。

 率直に申し上げまして、いろいろな立場の国がございました。なかなか、どうしても意見が、お互いやりとりで、よし、わかったというふうにならないケースもあったんですけれども、ただ、そういう中で、一つは、日本という国は温暖化対策については先進的にやっていくし、今後もしっかりと取り組んでいくという姿勢はしっかりと見せながら、その信頼感のバックになったのは、やはりCOP10の成功ということもあったのかなと思います。

 また、さらには、これまで日本として、主要排出国が合意できるような法的枠組みをつくっていこうと。今回の交渉の過程でも、報道ではいろいろありましたけれども、日本は決して、日本にとって損だからとか得だからとか、そういうことではなくて、日本もちゃんとやります、やるんだけれども、その上で、やはりアメリカとか中国を初めとする主要国が入った枠組みをつくっていこうじゃないかという訴えかけが多くの国々から御理解をいただけたというのは、委員御指摘のような背景があったのではないかと私どもも思っているところでございます。

櫛渕委員 来年のCOP17の合意まで気の抜けない交渉がさらに続くことになると思いますが、我が国の姿勢を決して後退させることなく、国際交渉力の強化に努めていただきたいとお願いを申し上げます。

 委員長、山花政務官にはこれにて質問を終わらせていただきますので、御答弁ありがとうございました。

小沢委員長 山花政務官、どうぞ御退席なさってください。

櫛渕委員 さて、一方さはさりながらも、国内では、円高、デフレの深刻な進行により、ことしも大変厳しい経済情勢が続きました。京都議定書のこれまでの秩序では我が国の産業界の国際競争力や雇用情勢に大きな影響を及ぼしかねないという、悲鳴に近い声を私自身も多くいただいてまいりました。

 そこで、田嶋要経産大臣政務官にお伺いをいたしますが、そうした中、今回のカンクン合意に対する産業界の評価はいかがでしょうか。そもそも、我が国は石油ショックのときから省エネに取り組み、他国とは出発点が違います。誇れる環境技術や蓄積が多くあるわけですが、そうした環境技術が途上国などで今後より生かされる国際枠組みへと道を切り開くことになるのかどうかも、あわせて御答弁をよろしくお願い申し上げます。

田嶋大臣政務官 お答え申し上げます。

 産業界に関しましては、おっしゃるとおり、本当に世界の最先端の努力と成果を上げてきた。だからこそ今回強い危機感をお持ちであったと思いますが、その産業界の評価という意味では、積極的な御評価をいただけるのではないかなというふうに私は思っております。

 現地へも経団連も一団を引き連れて来ていただきまして、私たちにエールを送っていただきましたし、また、開催中に緊急提言も発表をされてございます。その緊急提言の中身といたしましては、京都議定書の延長は、経済、雇用を初め国民生活に悪影響を及ぼすばかりか、地球温暖化対策をむしろ停滞させる、そして、地球温暖化問題の真の解決のためには、すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みの構築が必要というふうに主張を展開されておるわけでございまして、基本的に我が国政府と全く同じ考え方でございました。そういう意味で、大変いい結果になったというふうに思ってございます。

 COP16では、米中もコミットしているコペンハーゲン合意が条約のもとで正式なものとして位置づけられた。これを、先ほども出ましたが、カンクン合意というふうに呼んでおるわけでございますが、すべての主要国が参加をする一つの公平で実効的な枠組みの構築に向けて、法的な枠組みの構築に向けて一歩前進することに成功した、そしてさらには京都議定書の延長を回避することができた、こうした成果は官民ともに分かち合えるものというふうに認識をいたしております。

 もちろん、来年の十二月、ダーバンでございますので、COP17に向けまして、引き続き産業界、労働界などと緊密に連携をして、官民一丸となって取り組んでいく。これは、二国間のクレジットのこともございますし、国内クレジットのこともございますが、そういった日本のやり方を世界にアピールしていく一年にしていかなきゃいけないというふうに思っております。

 以上です。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 松本環境大臣初め現場に行っておられた政務官、お三方に早速の御報告をいただきました。ありがとうございました。

 まだまだ積み残した課題があるとはいえ、カンクン合意が採択されましたので、これを大きなステップとして次のステージに力強く踏み出していただきたいと思います。

 さて、幾つかカンクン合意の具体的な内容について質問をさせていただきます。

 まず一点は、気候変動枠組み条約第二条の究極の目標についてであります。

 松本環境大臣、今回のカンクン会議ではこの究極の目標についてどのような前進があったでしょうか。

樋高大臣政務官 恐れ入ります。櫛渕先生からのお尋ねでありますが、済みませんが、私の方からお答えをさせていただきます。

 この究極の目標ということでありますけれども、今回採択されたCOP決定では、工業化以前に比べまして世界の平均気温の上昇を二度以内にとどめるという観点から、地球規模での大幅な排出削減が必要であること、この長期的な目標の達成をするために各国が、世界じゅうの国々が緊急に行動をとるべきだという認識で一致を見たところでございます。

 先生御存じのとおり、IPCC第四次評価報告書によりますと、二度から二・四度の気温上昇にとどめるためには、これは科学的な報告書が上がっておりますけれども、大気中の温室効果ガスの濃度を四四五から四九〇ppmで安定化させるということが必要でありまして、そのためには、世界全体の排出量を二〇五〇年、四十年後でありますけれども、二〇五〇年において少なくとも五〇%削減する必要があるとされているわけでありまして、こうした大幅な削減というのはすべての主要国が取り組まなくては実現できないというふうに認識をしております。

 今回、二度以内にとどめるという認識に合意したことは、すべての主要国が参加する実効性ある枠組みの構築を目指す我が国としても、高く評価をさせていただいているというところでございます。

櫛渕委員 実は、大変これは画期的なことでございます。コペンハーゲン合意は、いつから二度以内ということは明記をしておりませんでした。そこに、今回は、産業革命前から二度C以内ということが明記をされたわけであります。また、二〇〇九年、G8ラクイラ・サミットでも、この数値、認識はされていたものの、政府としての合意はないと説明をされてきたところでございます。こうして、世界が合意に達した国際的な長期目標のもとに、世界全体でどれだけ排出を減らしていくのが必要であるかが、おのずとこれによって導き出されてくると思うところです。

 続いて、我が国の削減目標について御質問をさせていただきます。

 先ほど、松本環境大臣より、国連プロセスが息を吹き返したと言える成果について御答弁をいただきましたけれども、具体的な枠組みでは、コペンハーゲン合意に基づいて先進国が提出した削減目標と途上国が提出した削減行動がリスト化されて、京都議定書と気候変動枠組み条約のそれぞれの決議で留意されることになったわけでございます。

 そこで、お伺いいたしますが、日本については、二五%削減目標は、条件つきではありますけれども、その数字が書き込まれる方向になると私は考えますが、松本環境大臣、それでよろしいでしょうか。

松本国務大臣 それでよろしいというふうに思います。

櫛渕委員 我が国の目標が二〇年までに二五%削減である、このことを削減目標として国際的に表明した、そのことが公式に認識されるということになると思います。この点についても大変画期的な第一歩につながると思っているところでございます。

 そして、この日本の削減目標は、今継続審議になっております地球温暖化対策基本法案の中期目標でもございます。ここで、COP16、終わりましたので、次は国内対策について幾つか松本環境大臣へお伺いをいたします。

 地球温暖化対策基本法案は、臨時国会で継続審議となっております。COP16前に成立を見なかったのは残念でございましたけれども、しかし、大臣がCOP16のステートメントでも、基本法案が継続審議中であること、また九〇年比二五%の削減目標を掲げていること、国内対策をしっかりやっていくことを発表されております。国際交渉を前に進める上でのその重要性について、大臣に改めてお伺いをします。

 また、時間の都合上、続けて質問させてください。COP17までにどのような国内対策をとる必要があるのか、あわせてお聞かせください。排出量取引制度の意義についてもどうお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。

松本国務大臣 御指摘のとおり、国内対策に積極的に取り組むことは、今後の世界で信頼を得ていく我々の国際交渉を行うために、極めて重要だというふうに思っております。

 御指摘のありました、十二月の九日にカンクンでスピーチをさせていただきましたけれども、そのときも、地球温暖化対策基本法案の提出に対して紹介をして、地球温暖化問題の解決にみずから日本も率先して取り組むということを明らかにしてまいりました。こうした積極姿勢を背景としながら、すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際枠組みの構築をぶれることなく主張したことが今回の成果につながったというふうに思っております。

 実は、私は、もう十二月の五日に乗り込んでいって、一つのことは、去年のコペンハーゲン合意を膨らませましょう、深掘りしましょう、それでCOP決定にしましょうということをずっと一方では言い続けてまいりました。行ったときには、日本が一日目にいろいろなことで非難をされていたわけですけれども、それぞれ何回も説得をする中で、私たちの立ち位置といいますか、意思をしっかり相手に伝えながら二国間協議を続けてまいりました。それにまた、山花政務官、田嶋政務官、そして田名部政務官も、それぞれの立場で二国間協議を行っていただいて、いろいろなことが功を奏したんだというふうに思っているところであります。

 そういう意味では、このため、これからの国内対策というのが非常に重要な意味を持っていますし、現在継続審議としていただいている地球温暖化対策基本法案を次期国会で成立していただくとともに、先日閣議決定をしていただきました地球温暖化対策のための税などの国内対策を推進し、排出量取引等々ありますけれども、我が国の積極的な姿勢を示すことを通じて、温暖化問題の真の解決に向けて全力を尽くしてまいりたいと思います。それがやはり国際交渉にこれからつながっていくんだなということも、櫛渕委員が言われましたとおり、私もそのように思っているところであります。

櫛渕委員 CO2の排出量で見てみますと、残念ながら、我が国のCO2排出量は、九〇年比一・六%増加しているんですね。そして、GDPの伸びも先進主要国で最低レベルであるという現状が続いてまいりました。だからこそ民主党政権は、そのような低迷した日本の社会から脱して、世界に誇れる環境先進国、低炭素社会へ大きくかじを切るために、旧政権にはできなかった三つの経済手法を挙げて、地球温暖化対策基本法案を主要施策としたと認識をしております。

 改めて、松本環境大臣、地球温暖化対策基本法案の成立に向けた意気込みについてお聞かせください。

松本国務大臣 COP16で、十二月の九日に言いました。そのときに、やはり京都議定書の第二約束期間の問題もさまざま議論がありましたけれども、私たちは京都議定書の第二約束期間にはコミットをしないと言ってまいりましたけれども、しかし、削減については、しっかり削減をやるんだと。今、議定書の枠組みの中では二七%しか排出していない。つまり、これが固定してしまうと、ほかの主要排出国に、もうこれで終わったんだというふうなことを与えてはいけない。それが、逆に言うと、世界全体のCO2の排出につながっていく。

 ですから、そういう大きな枠組みをつくっていく中で、気候変動枠組み条約というのは、世界全体の、地球全体のCO2を減らすということが究極の目標でありますから、私たちは、正直にそのことをはっきり申し上げて今回会談に臨んでまいりました。

 今言われましたとおり、これからも、温暖化対策について、委員がおっしゃるとおりにしっかり取り組んでいくことをここでお誓いしたいというふうに思います。

櫛渕委員 そろそろ時間になってまいりましたけれども、ここで、各国の状況について一言、排出量取引制度、我が国が検討するに当たって示しておきたいと思います。

 アメリカやオーストラリアで導入に向けた動きがやや低迷をしておりますけれども、EU、アメリカ州政府の幾つかは導入済みあるいは導入予定であります。また、最近、隣の東アジアでも大きな動きが急速に出てきておりまして、韓国は物すごい勢いで、どの国よりも早く環境立国を目指すとして導入の方向を打ち出しております。また、中国さえ、排出量取引市場をつくるということを、施行実施に向けて既に表明しているところであります。

 ぜひ我々も、国内外、大変厳しい情勢ではありますけれども、この排出量取引制度を含めて、しっかりとこうした海外の動向を見ながら検討を継続していくこと、このことを強くお願い申し上げたいと思います。我々が国際交渉をリードしていくためにも、国内対策にしっかりとした取り組みを行うことが国際競争力強化につながると確信をしております。

 また最後に、冒頭で私は、今こそ私たちは政権交代を実現した国民一人一人の思いに立ち返るべきであるというふうに申し上げました。国民の皆さんから、民主党政権になって変わったな、後世の人が歴史を振り返ったときに、このときから我が国が環境経済に大きくかじを切ったんだな、そういうふうに言ってもらえるよう、菅政権を支える大臣初め政務三役の先生方には、ぜひともしっかり取り組みをお願い申し上げまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。

小沢委員長 次に、吉野正芳君。

吉野委員 自民党の吉野正芳でございます。

 松本大臣、本当に御苦労さまでございました。私たち自民党でもCOP16についての検討会を開きまして、そこでのある人の意見なんですけれども、今度のCOP16の我が国にとっての成功は、大臣が一つもぶれなかった、そして一番の功労者は松本大臣であるというのが我が党のある方の発言でありましたので、御紹介をさせていただきたいと思います。本当に御苦労さまでございます。

 でも、これはただ来年に先送りした。京都議定書単純延長、第二約束期間を今回決めなかったということは、まさに勝負は来年、COP17だと私は思っています。

 それで、今まで大臣の説明にもあったように、二国間で日本の立場を丁寧に丁寧に説明をした、これがある程度御理解をいただいたということでありますけれども、ただ、会議に出席した多くの国々はまだ理解不足だと思うんですね。これから、会議の場だけで理解を深める活動ではなくて、来年一年間、日本国が、世界の気候、世界じゅうの気候が壊れています。本当に肌で感じているんです。これは私たち人間が温室効果ガスを出したからということで多くの理解を得ているところでありますので、我が国の立場を一年間かけて、やはり世界の方々に理解を深めていく活動が一番大事だと思うんですけれども、どんな形でやっていくのか、お伺いしたいと思います。

松本国務大臣 大変重要な御指摘だというふうに思っております。

 先生は、COP10もそうですしCOP16も、GLOBEジャパンの副会長としていろいろなお力をいただきました。そういう意味では、COP10に関しましては、だれ一人欠けても成功はしていなかったというふうに私は申し上げましたけれども、本当に一人一人のお力が結集してCOP10は成功しましたし、COP16もそういう意味では一定程度日本の主張が通ったというふうに思っております。

 これからやはり一年間大事だぞという励ましのお言葉は肝に銘じたいと思いますし、我々は、本当に、新しい枠組みをつくるため、アメリカや中国をしっかり巻き込んでいきながら、新しいシステムをつくっていくつもりで、二国間も大事ですけれども、さまざまな取り組みをこれからしていかなければならない、このことは終わった瞬間に実は思いました。そのくらい、日本はこれからの一年間、大変重要な一年間だと先生おっしゃるとおり、私も思いますので、心して取り組んでまいりたいというふうに思っております。

吉野委員 大臣の決意はわかりました。

 具体的に日本国政府として、大いに反対をしている、京都議定書単純延長をしろという国々に対して派遣をして、やはり御理解を求める活動をしていくべきだと思うんですけれども、そういうところまで踏み込んでやるのかやらないのか、大臣からちょっと発言いただきたいと思います。

松本国務大臣 さまざま、いろいろなチャンネルがあると思います。私も、COP10が終わりましてから、外務省、経済産業省等々、いろいろなチャンネルでさまざまなことを訴えていきましょうと、環境省だけではなくて。ある意味では、私も二十近く今度、二国間交渉を行ってまいりました。外務、経済産業、農林水産等々も行ってまいりました。

 ですから、いろいろなチャンネルで、いろいろな外国との交渉ごとに、さまざま、この京都議定書の第二約束期間にコミットをしないという道理といいますか、私たちが言っていることは、ある意味では、これが固定化することは世界を地球温暖化から救うということにはならないということもこれから訴えてまいりたいし、いろいろなことを通じてやっていきたいというふうに思っています。

 特に私が肌身で感じましたのは、アフリカ諸国であります。やはり彼らは、京都議定書の問題は、温暖化の危険にさらされるといいますか、気候変動に対して脆弱な国々ですから、そこのところにしっかりとした説明をしていけば、ある意味では、こっち側は二七%しかないんですよ、これだけでいいんですかということを、私も、コンゴやマリやガーナの人たち、あるいはアルジェの人たちに話しましたけれども、そこのところはわかってくれました。

 ですから、そういう粘り強い交渉がこれから大事だなというふうにも思っておりますから、心してやっていきたいと思います。

吉野委員 そうやって外国の方々の理解を深めて、カンクンでは大臣初め皆さんのおかげでできたと思います。

 そして、それから何日も過ぎない十二月十六日の朝日新聞です。これには私もびっくりしました。「政府の環境政策骨抜き 排出量取引先送り」。これは大臣も、十二月九日の大臣のメッセージの中で、我が国の取り組みという形で、政府は、コペンハーゲン合意に基づき提出した目標を達成するため、国会に、地球温暖化対策税、排出量取引、固定価格買い取り制度、この三つをきちんと名前を出して言っているんですね、その法案を提出して今審議中だ、こうして世界にメッセージを与えているんです。日本の取り組みは、温暖化防止のためにこういう制度をつくって、省エネ対策も全く大事ですけれども、新たなこの三つの制度を活用して取り組むんだという、カンクンで大いにメッセージを出して、そして途上国の方々に御理解を得たと思うんですけれども、それから一週間、十日もたたないうちにこの骨抜き政策。

 そして、翌日の十二月十七日、民主党経済産業部門、環境部門、成長戦略・経済対策PT、ここで結論が出ているんです。地球温暖化対策のための税、これは今回、税制改革で約二千四百億円。地球温暖化対策のための税です。地球温暖化対策というのは、省エネもあれば、適応もあれば、吸収源対策もあれば、すべてに使える税、名前だけから見ればそう思うんですけれども、中身は全く、ほかには一切使えない。そして、石油石炭税だけをちょっと上げて、五割上げてという、ある意味では、私たち、これはちょっと後で通常国会で、環境税については私も思い入れがありますので、大いに議論をしていきたいと思うんですけれども、私からすれば、全くナンセンス、環境税をつくったという、名前を貸したというだけの税でしかないと思っています。

 一番大事な点は、アナウンスメント効果がないんです。国民が、環境のために税金を払っているんだ、こういう意識を全く感じることができない税が、民主党提案のこれから出てくる地球温暖化対策のための税であります。

 また、ここには、再生可能エネルギーの全量買い取り制度、二十四年度からの制度導入を目途として慎重に検討、これは全く後ろ向きです。排出量取引、これも慎重に検討。なぜ、同じ党なのに、カンクンで言ったことと全く後ろ向きなことを党として決めてしまったのか。私は、まさに後ろから弓矢を放たれたのかなと。これがもう全世界に流れているんです。ですから、松本大臣が一生懸命カンクンで説得してきたことが、一瞬のうちに、何だ、あれはうそだったのかというふうに受けとめられる、これは当たり前だと思うんですね。

 そういうことを踏まえながら、これからどうして相手を説得していくのか、その辺のところをお聞かせ願いたいと思います。

松本国務大臣 何かすごい御発言をしていただいて、胸がいっぱいでございます。本当に、そういう意味では、しっかり私たちも、カンクンでスピーチをしたということを前提にしながらこれから取り組んでいけよという先生の御叱咤、お励ましだというふうに考えております。

 税につきましては、来年度からの導入を盛り込んだ税制改正大綱を決定して、御審議をいただくことになっておりますし、また、今、排出抑制効果が余りないというふうに言われましたけれども、私ども、これをお願いしていきながら、税制による地球温暖化対策を強化していきたい、エネルギー起源CO2排出抑制をしていきたい、その諸施策を通じて、導入をお願いして進める上では、貴重な第一歩を踏み込んだというふうに私は思っております。

 排出量取引制度につきましても、民主党の提言は、産業への影響等を見きわめ、慎重に検討を行うというものでありまして、導入を断念したとか検討を凍結したというものではないと私どもは理解をしておりますし、政府としての考え方は、党の提言を踏まえて、年内を目途にこれから私どもも検討をしてまいりたいというふうに思っております。

 いずれにしましても、今後の国際交渉において、先生おっしゃるとおり、国内施策というのは大事なことであります。すべての主要国が参加する公平かつ実効性のある国際的な枠組みというものをこれからも主張していきながら、各国の理解を得るためにも、二〇二〇年、二五%削減という意欲的な目標を掲げて国内施策を強力に推進していこうという姿勢に小沢前大臣のころから変わりはありませんし、各国に対しても、こういう我が国の取り組みについて丁寧に説明をしていきながら、理解を得るように我々も努めてまいりたいというふうに思っております。

 ありがとうございます。

吉野委員 今の答弁の中で、党の提言を踏まえてという言葉が大臣の言葉の中にあったんですけれども、踏まえて政府としてやるべきことはやる、踏まえた結果やらない、どちらなんでしょうか。踏まえてというと、では、今までのことはやらないというふうに聞こえるんですけれども、踏まえた中でも無視してやる、どちらなんでしょうか。

樋高大臣政務官 大変恐縮でございます。いつも先生からは環境政策について御指導いただきまして、心から感謝申し上げます。

 今の御議論につきまして、私もちょっと政務官としてコミットさせていただいているものですから、私の方から答弁させていただくことをお許しいただきたいと思います。

 党の方で御議論をまずいただきまして、党の側で御議論いただいたというのは、言ってみれば、国民の皆様方からの御意見であろうというふうにもひとつ受けとれるわけでございまして、それをまずしっかりと、提言を受けとめさせていただくということは、これは国民の皆様方からいただいた御意見をいただくという意味では大変重要なことではないかというふうに思っておりますし、政府としても耳をきちっと傾けて受けとめをさせていただくということは重要なことであろうと思っております。

 一方で、今度は政府として、特に玄葉大臣のもとで、主要三施策についての基本方針を年内を目途に決めようということでございまして、今まさしく議論をしている真っ最中でございます。今まさしく議論の最中でありますものですから、今ここで結論を出す、こういうふうになるのではないかということはちょっと今申し上げられないわけでございますけれども、一方で私ども、環境省あるいは内閣として、政府として環境政策に対するさまざまな思いがあるわけでございますので、それらをしっかりとそんたくして今まさしくまとめている最中であることをちょっと先生に御報告させていただきたいと思います。

吉野委員 今、政府としてまとめているわけですね。だったら、今出している温対法を取り下げてからまとめるのが本当じゃないんでしょうか、私はそう思うんです。

 もう温対法で、こういうふうにやるんだよ、三つ示しているんです。いついつまでにつくるんだと示しているんです。ところが、今現在検討中だ、党の提言も踏まえて検討中だというのであれば、温対法を取り下げて、新しく出し直すのが筋じゃないでしょうか。

樋高大臣政務官 大変恐縮でございます。

 温対基本法、まさしく先生今おっしゃいましたとおり、主要三施策がしっかりと、特に十三条、十四条、十五条でしょうか、今入っているわけでございますけれども、これと、今行っている議論は、これは私どもは矛盾をしないという理解でございます。

 先ほど大臣からも答弁をさせていただきましたとおり、税、タックスでございます、そしてフィード・イン・タリフ、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度、そしてキャップ・アンド・トレード、いわゆる排出量取引制度、この三施策をしっかりと実施に移すことによって温暖化対策を行っていくという基本的な方針に何ら変わりはないわけでございますものですから、一方で、今継続審議をさせていただいております基本法とは何ら矛盾するものではないと思ってございます。

 なお、先生御案内のとおり、実は私ども、閣法として出させていただいておりますけれども、ことしに入りましてから二回閣議決定をさせていただいておりますので、これがまさしく政府の今の基本方針であろうというふうに思うわけでありますが、一方で、常に、私どもは政治の立場にいる者として、国民の皆様方の御意見をちょうだいするということは私はよろしいことではないかな、このように理解していただければありがたいというふうに思います。

吉野委員 今の議論は次の井上先生にやっていただきますので、時間もありませんから先に進みたいと思います。

 一つ、コペンハーゲン合意をカンクン合意にしたということ、いわゆる文書X、文書Yをきちんと公式に認めた、公式文書にしたということなんですね。ここはどんな意味があるんでしょうか。公式文書にすると、格が上がったというのか、どんな意味があるのか、ちょっとその辺のところをお願いします。

樋高大臣政務官 続けてお答えで大変恐縮でございます。

 公式文書にしたということの違いはどこにあるのかというお尋ねであろうというふうに思うわけでございます。

 昨年のCOP15におけるコペンハーゲン合意におきましては、すべての締約国による採択には至らなかったわけであります。一方で、これに賛同した国の間で政治的な合意があったということでありましたので、同合意に基づき提出された削減目標や削減行動は、これまでの条約のもとでの正式な位置づけがなかったというのが実態でございます。

 そして、今回のCOP16、カンクンにおきましては、各国が提出をした削減目標や削減行動を記載した文書が作成されることになったわけでありまして、それらの目標や行動が条約に基づき正式に提出されたものと位置づけられることとなったわけでございます。局面が変わったということでございます。

 これによりまして、これまで実施されてこなかった各国の削減の目標、削減行動の詳細についての国際的な議論がオフィシャルに行われる、いわゆる透明化と申しましょうか、言葉が適切かどうかわかりませんけれども、見える化によって議論が盛り上がっていくということと同時に、各国の目標達成に向けた取り組みや行動の進捗状況の確認などを条約のもとで行うことも実は今後可能になってくるということでございます。

 今回の決定は、日本が目指すコペンハーゲン合意を踏まえたすべての主要国が参加する公平かつ実効性のある枠組みの実現に向けて、大きな意義があるものというふうに考えております。公の監視に置かれたという意味で、今回は違ったステージに上がったのではないかというふうに思っている次第でございます。

 ありがとうございます。

吉野委員 実は、私もそう思うんです。公のステージに上がったから、自分たちが申告した数字にある意味で縛られるということが、この公式文書化された一番大きな意義だと思うんです。

 例えば、我が国は前提条件つきで二五%を申告しているんですね。これがオフィシャル文書になっちゃったんです。これにかなり縛られるんですね。私は、二五は、我が国にとって、また世界の公平性という点から見て、本当に大変不公平だ、公平性に欠ける、このように思っているんです。

 我が党が出した〇五年一五%、九〇年八%は、真水です。吸収源はありません。これをやって、そしてなおかつ国際合意で決められたプラスアルファ分は、これはこれでやっていく。吸収源とかCDM等々でやっていくという形できちんとしているんですけれども、前提条件つきの二五に縛られるんです。その前提が、ある意味で各国の申告を世界が認める形になりますので、この申告した目標が、日本から見て意欲的な目標じゃないとか前提条件に外れる国々もあるわけなんです。

 ここに縛られると、もし各国の申告はもうそれでいいんだというふうになっちゃった場合、もしそれが前提条件を満たすということになった場合、日本の国は大変な不公平の中に置かれるんじゃないのかなと心配しておるんですけれども、その点はいかがなんでしょうか。

樋高大臣政務官 今先生が御造詣に基づきましておっしゃられたことは、大変重たいというふうに思っております。まさしく今先生が御懸念のことにならないように、私ども大臣を中心に政務三役、そして環境省、内閣として、しっかりと取り組んでまいりたいというふうに思っております。先生の今おっしゃったこと、しっかりと受けとめさせていただきたいと思います。

 感謝を申し上げます。

吉野委員 田嶋政務官がいらっしゃいますので、時間もないものですから、田嶋政務官にお尋ねしたいと思います。技術の問題です。

 今回、技術執行委員会と気候技術センターというものが設立をされたんですけれども、技術には、既存の技術をどう世界に広めていくか、まさに日本の今持っている環境技術をどう世界に広めていくかというのと、中期目標のためにはこれがほとんどだと思います、ただ、五〇年目標のためには、イノベーションがなければ五〇年目標は絶対達成できませんので、技術にはこの二つの面があるかと思うんですけれども、この委員会とセンターの役割、どんなことをしていくのか、お尋ねをしたいと思います。

田嶋大臣政務官 お答え申し上げます。

 今回のCOP16、資金等と並んで技術の要素も大変重要でございまして、今回は、今おっしゃっていただきました諮問委員会ですね、技術諮問委員会と気候技術センター、この二つの組織を設立するということになりました。いずれも途上国の温暖化対策を支援するということでございます。

 技術諮問委員会の方は、各国の専門家によって構成される、温暖化に関する技術開発や技術移転等に関し全般的な助言を行う機関ということでございますが、まだこれから詳細を決めていくということでございます。プロジェクト単位ということではないようでございます。それから、気候技術センターの方は、より個別プロジェクトに密着した形で、技術の移転や訓練その他の支援プログラムの作成、民間セクターとの協力促進など、具体的支援を行う機関としての役割ということで、それぞれ期待されておるところでございますが、両組織のより具体的な役割や機能等については、今後、国連における作業部会の場においてさらに詳細な議論を行っていくということでございます。

 続きまして、御指摘いただきましたとおり、既存技術ということと、まだ見ぬ技術ということがあろうかと思いますが、当然、今何をできるのかということになりますと既存技術ということが大変重要になってくるわけでございまして、その点に関しましては、先ほども申し上げましたが、二国間のいろいろな技術、日本の技術を世界に適用していくことが大変重要になってこようかというふうに思っております。

 各セクターの実情に応じた適切な削減行動を可能とするセクター別アプローチということで全世界で排出削減を進めていく。そして、二国間クレジットの構築は、既存技術による貢献を適切に評価し、その普及を後押ししていく上でセクター別のアプローチの考え方が大変重要になってくるということでございます。

 国連の今のCDMというのは、なかなか日本の技術を認めていただけないというところがございまして、プロジェクトはわずか十四ということでございます。そういう意味では、日本の技術がもっと国際的に評価をされるように、これからの取り組みとして、二国間をしっかりと私たちは世界に向かって発信をして、そして具体的なプロジェクトで結果を示していかなければいけないというふうに考えてございます。

 少し長くなりますけれども、では既存じゃない方はどうするんだという話でございますが、まだ見ぬ技術に関しては、まず国内で日本の政府がどうやって応援できるかということでございますので、これは、例えば予算措置をするということによって、技術の芽、エネルギーの技術開発やイノベーションの推進に資するような技術の芽を応援していくということでございます。

 羅列をするのはちょっと差し控えますけれども、具体的ないろいろな予算措置を今検討させていただいておるところでございまして、エネルギー基本計画にも二〇三〇年で九〇年比三〇%減ということで掲げてございますので、そういったイノベーションを進めて技術を育てていきたいというふうに、既存と新規ということで車の両輪で取り組んでいきたいというふうに考えております。

 以上です。

吉野委員 まさにそのとおりだと思います。特にイノベーションの方では、CCS技術という、石炭をガス化して、そこからCO2を取り除いて地下に貯蔵するという、これは本当に、一番安いエネルギーは石炭ですから、このCCS技術が確立されれば全世界に我が国がかなり貢献できる、そういう技術だと思いますので、積極的にこの技術を開発する。また、環境省におかれましても、CCS技術ができても環境基準ができていなければ、幾ら技術ができても実験できないし実用化できないので、環境基準をぜひつくってください。これは大臣にお願いしたいと思います。

 最後に、ちょっと時間がなくなっちゃったんですけれども、COP16で、会議の持ち方が特にユニークだなというふうに思います。これはCOP15の反省だと思うんですけれども、本当に透明化した中で、そこに大臣も副大臣も参加したと思うんですけれども、共同ファシリテーターをつくって、非公式会談ですけれども、きちんと問題点を明らかにする。文言訂正は作業部会に任せて、自分たちの交渉の場では文書の文言訂正はしないという、本当にユニークな会議の持ち方だったんですけれども、感想をお聞かせください。

松本国務大臣 おっしゃったように、議長を務めたメキシコのエスピノサ大臣は本当に一生懸命やられたというふうに思います。もう何回も透明という言葉と、インクルーシブというか、非公式という言葉も使われました。

 私たちも、COP10で非公式閣僚級会合というのをやって、これはオープンですよ、だれが参加をしてもいいですよという、今までの国際会議でないやり方をやってみたんですけれども、まさにそれが功を奏したといいますか、非公式閣僚級会合、これはもうオープンという形でやった会合を今度は作業部会にガイドラインとして示した。それがどんどんどんどん積み重なっていってCOP10も成功しましたし、そういう意味では、メキシコがやった方式は本当によかったというふうに思いますし、合意の採択に向けて議長国メキシコもよく貢献をされたと思いますし、努力と手腕を高く評価したいというふうに思います。

 COP10の会議は私も議長国として最後の最後に結果を生みましたけれども、今度の会議は、先生おっしゃるように最初から決意がありきですから、最初、結果が、我々の方に決意があって、それが絶対ぶれちゃいかぬという思いがあって私も臨みましたから、逆に物すごいプレッシャーがかかりましたけれども、環境、外務、そして経済産業等々、チームで今度は一定程度の成果を得たというふうに思っております。やはり国際交渉というのは、しっかり、正直に、また丁寧にやっていかなければならないということを改めて痛感いたしました。

吉野委員 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

小沢委員長 次に、井上信治君。

井上(信)委員 自由民主党の井上信治です。

 まずは、松本大臣、また政府の関係者の皆様方の大変な御尽力に心より敬意を表したいと思っております。

 先ほど来お話がありますとおり、私もこのCOP16、一定の評価をしたいというふうに思っております。とりわけ、先ほど吉野委員の質問にもありました、とにかく大臣がぶれなかったという、これは本当にいいことだったと思います。私たち自民党も、ここだけは絶対にということであの京都議定書の第二約束期間の話をしてまいりましたので、冒頭、日本政府が、いかなる状況、いかなる条件であっても認めないという発言をして、そのことによって大分世界各国から文句を言われ、あるいは化石賞を受賞したりといろいろなことがありましたけれども、しかし、そこで妥協せずに、ぶれずにちゃんと主張したということが今回の成果につながったと思っております。

 私自身も、衆議院、参議院から国会議員団として派遣をしていただきまして、小沢委員長に団長になっていただき、我が党の川口順子参議院議員などとともにカンクンに行ってまいりました。ですから、間近に見ていたCOP16がこういう結果になった、そういう意味でもうれしく思っております。

 それで、菅総理も、大きな前進が得られたと評価され、今、松本大臣の御報告にも、大きな成果、そして大きな一歩、こういったような言葉が並んでおります。

 そういうことだと思うんですけれども、ただ、本当にそうなのだろうかという話はやはりあると思うんですね。

 そういう意味では、例えば報道などの評価を見ても、結構両方あるんです。一方には、最悪のシナリオは回避、あいまい決着、京都の延長だけは何とか避けられた、こういったような論評もあります。私も、確かに京都議定書の第二約束期間の設定については免れる、この最悪の事態は回避することができたけれども、しかし、ほかのことはほとんど先延ばしであるということ。

 ですから、そういう意味で、本当に大きな成果と言えるんだろうか。もともと世界各国の中でも、今回のCOP16では野心的な目標の採択は難しいだろうというような共通の意識があったということもあって、京都議定書の延長という話にはならなかったんじゃないか、決して日本政府の功績、そうやって手放しで喜べるものかな、こういった意見も多々ありますけれども、いかがお考えか、聞かせてください。

松本国務大臣 手放しで喜んだことは一度もありません。

 井上議員におかれては、カンクンでお会いしました。我が国の国会議員の代表として、列国議員同盟、IPUの議員会議への出席や、欧州やメキシコやデンマークとのバイとかあったと思いますけれども、各国の議員関係者に働きかけていただいたこと、ここで改めてこの場をかりて感謝を申し上げたいと思います。小沢委員長もありがとうございました。

 実は、京都議定書の第二約束期間にコミットしないということを言い始めたのは、ずっとさかのぼって、十月の半ば過ぎぐらいからEUが少しずつそれに対して変化をしてきたということが一つありました。我々も、そういう意味では危機感を感じながら、十一月の初めにプレCOPで、隣におります近藤副大臣が京都議定書の第二約束期間にはコミットしないということを十一月の四日ぐらいに各国に伝えて、それがどんどんどんどん、日本はそうなんだなということが伝わっていって、最初の日に、今、井上先生が化石賞というふうに言われましたけれども、まさにハレーションが起きましたけれども、やはりそれから我々は丁寧に対応していきながら、なぜそうなんだということをしっかり各国の人々に伝えていきながら、なるほど、そうなんだという理解もある程度いただいたと私は思います。

 そういう意味では、丁寧に丁寧に、我々も二国間協議等々、私だけでも二十回近く、今ここにおられました外務、経済産業、農林水産等々もかなり精力的にやってこられたのが今度の結果だというふうに思っております。今度の結果は、先進国、途上国いずれも削減目標や行動がプレッジされたというか、上に上がっていって、コペンハーゲン合意はテークノートでしたけれども、一つのCOP決定になったということが大きいし、すべての主要国が参加をした枠組みづくりに一歩進んだなというふうに思っております。

 また、資金や技術や適応や森林保全といったものも、途上国支援としてこれから大きく評価をされるというふうに思っております。

 先送りという言い方をされましたけれども、こういう状況の中でCOPがどれだけ何を決定していくかということは、非常にさまざまな課題があって、これからも、MRVも前進はしましたけれども、これからの課題であろうというふうに思います。

 私は、三つのことをいつも腹に入れて交渉に当たりました。一つは、コペンハーゲン合意のようなものをしっかり格上げしてCOP決定にすること。もう一つは、京都議定書の第二約束期間にはコミットしないこと。もう一つは、一番大事なことですけれども、こっちもかなりきつかったのは、日本が孤立をしないこと、日本のおかげでCOPがだめになったと決して言わせないということもしっかり気を配りながら、二つの国益をしっかり見ていきながら、環境省、外務省、経済産業省、それぞれチームをつくって、それぞれが、三人がしっかりまとまって事に当たれということを指示して、責任は私がとると。とにかく私の腹はぶれないということだけ相手に伝えていきながら交渉をしてきたということも、井上先生に御報告をしておきたいというふうに思っております。

 以上です。

井上(信)委員 手放しで喜んだことはないということ、むしろこれからが課題なんだというお話がありましたので、そういう意味では、そういう思いでしっかり頑張ってもらいたいと思います。

 ただ、いろいろ外交交渉のお話もされましたけれども、我々が各国の国会議員団と話しますと、冒頭、日本は何で京都議定書に反対なんだから始まるんですが、それについていろいろと日本の立場を説明しますと、大体は、ああ、なるほどそういうことか、それなら理解できるというところまでは行くんですね。

 しかし大臣、ということは、では、それまでにそういった日本の立場を説明していなかったのか、やはり政府の外交努力、外交交渉が十分に足りていなかったんじゃないか。もちろん、我々の相手は各国の国会議員ですから、直接の政府の交渉団ではありません。しかし、各国の国民の声を代表する国会議員たちが何も日本政府の立場を知らないということでは、これは残念ながら、やはり外交交渉が足りていなかったんじゃないかなと指摘せざるを得ません。

 それで、これから来年に向けてが本当に正念場です。いろいろなことがありますけれども、やはり一番の大きなかぎは米中だと思います。この米中をどうやっていわば巻き込んでいくのかということですよね。

 大臣にお聞きしたいんですが、いろいろ二国間協議もやっていただいたということですが、アメリカとは二国間会談をやりましたか。

松本国務大臣 いろいろ努力をしましたけれども、アンブレラグループというところをかなり私どもは重要視いたしまして、日本、アメリカ、カナダ、ロシア、豪州、ニュージーランド、それとウクライナとノルウェー等々があります、アンブレラグループというんですけれども、そこで、アメリカとは直接私はできませんでしたけれども、私のチームに、しっかりアメリカとの連携をとれよということで話をしました。

 アメリカとの関係だけでいえば、そういう報告になります。

井上(信)委員 やはり、それでは私はだめだと思うんです。アメリカと中国が本当に一番大事だと思っていれば、なぜ大臣が直接話をしないんだ。これは、本当に私は遺憾と言わざるを得ません。ですから、早急にアメリカのいわば所管大臣とちゃんとお話をしてもらいたいと思っています。

松本国務大臣 非公式の場ではアメリカとも会いました。トッド・スターンとも会いましたし、中国の解振華副主任とも会いました。

 ですから、かなり精力的に会ったけれども、トッド・スターンと構えて話をするということは、やはり彼もいろいろな意味で、私も忙しかったし、向こうも忙しかった。ただ、意向はたくさん、交渉官を通じたり外務省を通じたり経済産業省を通じたりしながら伝えているということだけは御理解をいただきたいし、豪州、ニュージーランドとも、ニュージーランドはファシリテーターをしておりましたので、彼のいろいろなさまざまな意見を聞きながら、さまざまな情報を収集していきながら、それならアメリカとはどう交渉するとか、そういう交渉はずっと続けてまいりましたし、ロシアとも、共同歩調をとるということで、しっかり連携をとりながらやっていきましょうということもやってきたところであります。

 さまざま二国間交渉は、私は十二月の五日に参りましてやりましたけれども、今、井上先生がおっしゃるように、当初はやはり日本の立場を理解していただけなかったということの、今おっしゃったことはちゃんと肝に銘じますけれども、最後の五日間は、メキシコのエスピノサ議長ともしっかり腹を割って話しましたし、EUとも腹を割って話しました。

 あるときは険悪な雰囲気にさまざまなったこともありますけれども、しっかり我々の主張をずっと言っていきながら、今言われたように、理解はしてもらえるけれども、理解の先にどう動くかというのは、これはなかなか、先生も思われたと思いますけれども、気候変動の世界は昔からずっとさまざまな世界があって、交渉が物すごく難しい。生物多様性は、私は、共通の利益が世界に絶対あると思って、そこを追求して、ようやく共通の利益や結果が見えましたけれども、気候変動というのは、こっちでこう言う、あっちでこう言う、そうしたら自分のところはどうなんだということも、なかなかそれぞれが本音でしゃべれないということもあって、大変難しい交渉であったということも御理解をいただきたいと思います。

井上(信)委員 もちろん、大臣初め政府がいろいろなことをやられたというのはよくわかっております。

 ですから、私が申し上げたのは、ただ一点、アメリカとのバイの会談をやっていなかったということ、このことについてはやはり反省していただきたいということであります。

 もう一方は中国だと思います。いろいろありますけれども、やはり国民一般から見て、中国が途上国扱いというのがまずおかしいですよね。これは常識的に、今やGDPで日本を抜いて世界第二位になろうという国が途上国扱いになっているところが私は一番の問題だと思っています。

 ですから、そういった、いわばもう卒業した、その卒業論というのも、数年前までは大分そういったような話も聞きましたけれども、ここのところそういう話が聞かれないものですから、中国とは二国間会談をやられたとおっしゃいましたけれども、そもそも途上国じゃないだろう、先進国の方に入れ、そういう話はされましたか。

松本国務大臣 中国の解振華副主任とは、かなり長時間にわたって二国間会談を行いました。

 今、卒業という言葉が出てまいりましたけれども、これもなかなか国際交渉の中では、いろいろな、それじゃ、あの京都議定書の先進国とは何なんだ、1と2はどうなんだということからさかのぼっていかなければなりませんし、アメリカも、署名はしたけれども入ってこなかったということもあります。そういう意味で、中国とのバイ会談においては、卒業ということには直接言及はしておりません。

 しかし、すべての主要国が参加する枠組みが必要であるということ、途上国についても排出削減行動を国際的に明らかにしてその透明性を確保すべきであること、中国の積極的な対応を私どもは求めてまいりました。これに対して、中国自身も責任を果たしていくけれども、国際的な枠組みとして京都議定書の第二約束期間の設定が不可欠という対応があって、こういうふうなやりとりがありましたけれども、私どもも、早期頭打ちの時期を明確にしましょうよ、ピークアウトも早くさせましょうよということも言いながら、先進国の削減目標、途上国の削減行動が結果的にはCOP決定に位置づけられたところであります。

 そういう意味では、いろいろな会談があります、物別れになる会談もありますし、意思の疎通が図られない会談もあったわけですけれども、いろいろな意味で積極的に各国と、中国も含めてバイ会談をやってきたということだけは御報告をしたいと思います。

井上(信)委員 本当に、国際交渉、厳しい交渉でありますし、とりわけ中国というのはしたたかな国ということでありますから、やはりいろいろな切り口で交渉をしていただきたい。そうしないと、中国の土俵に乗せられてしまってはなかなか次の交渉も難しいと思っていますので、お願いしたいと思います。

 それから、日本が、いわば拒否権といいますか、もし議定書が延長された場合でも一方的に義務は負わされない、拒否する権利というものを脚注に土壇場でつけたんだ、そういった報道がありました。そのことについて、それが事実であれば、私はそれはいいことだと思うんです。ですから、もし京都議定書が延長、第二約束期間の設定ということになったときには、ここのいわば留保につけたように、拒否を発動する、あるいは条約を離脱する、こういったことで考えてよろしいんでしょうか。

寺田政府参考人 御説明申し上げます。

 確かに、今回の京都議定書締約国会合決定でございますけれども、こちらには脚注で、京都議定書二十一条七項の権利を留保するという旨が記されております。したがいまして、この文書自身は直接の京都議定書の附属書ではございませんので、先生今御指摘のような、将来そういうことになれば、この二十一条七項を利用する可能性は残されている、そういうものと考えております。

井上(信)委員 そういう意図で脚注を要求したんだと思いますから、そういった選択肢も含めて、厳しい態度でこれからの交渉にも臨んでいただきたいと思っています。

 それから、余り時間がないんですが、さっき吉野委員から続いて質問しろと言われたものですから。例の、部門会議というんですか、プロジェクトチームというんですか、民主党の提言であります。

 いろいろ御答弁いただいたのですけれども、この提言の内容を基本方針にどうやって盛り込むか、ちょっと御答弁を聞いていてもよくわからなかったんですけれども、基本方針はもう年内を目途に検討を進めているわけですね。年内って、きょうは十二月二十一日ですよ。あと何日あるんですかね。それは当然のことながら、いろいろなことがもう大分固まってきているわけですよね。

 そして、それは基本方針の策定前かもしれませんけれども、これは国会ですから、党の提言は国民の声だという政務官の答弁もありましたが、党の提言は、国民の声を踏まえますよ、踏まえるけれども、それを党として提言しているわけですから、それは国民の声だけじゃなくて党の方針ですよね。その与党の方針に対して政府としてどういう対応をするかというのが全くまだわかりませんということは、あり得ないと思います。ですから、そういう意味で、この提言を踏まえて政府としてはどう考え、どう対応するのか、少し具体的に教えてください。

樋高大臣政務官 お答えをさせていただきたいというふうに思います。

 御指摘の地球温暖化対策の主要三施策につきましては、菅総理から玄葉大臣に出された指示を踏まえまして、今先生おっしゃいましたように、年内をめどに政府としての考え方を取りまとめるようにということとしているところでございます。実際に、先週の金曜日でございますけれども、党としての御議論をいただいて提言をいただいた、受け取ったということでございまして、週明け、つまりきのうからでございますけれども、事実関係として申しますと、さまざまな御議論が始まったというところでございます。

 まさしく、先生から今具体的にということでございましたけれども、民主党の提言、文書にはなっているわけでございます。これは報道もされているわけでございますけれども、それらの文書を踏まえて、そしてその過程でどういう議論があったのかも、今あくまでまず精査をさせていただこうというところの、まだスタートしたばかりであるという段階でありまして、政府部内においてこれから年内に向けての結論が出されるものというふうに、今、事実関係としてはこのぐらいの答弁しかできないということを、済みません、申し上げさせていただければありがたいと思います。

井上(信)委員 苦しい御答弁、ありがとうございました。

 政府の温対法を初めとして今までの方針と、この民主党の提言は矛盾しないんだという答弁もありました。

 百歩譲って矛盾しないとしても、少なくとも後退はしていると思うんですね。報道によりますと、これは凍結とか棚上げとか先送りとか骨抜きだとか、結構むちゃくちゃ書かれていますけれども、そういう意味では、やはりこれは一定程度事実だと思いますよ。

 ですから、いわば今までやると言っていたものが、慎重に検討するということになっている。これは明らかに後退だと思いますけれども、いかがですか。

樋高大臣政務官 国内排出量取引制度に係る、いわゆる民主党の提言内容についてでありますけれども、これはさまざまな、例えば日本国内の産業界の影響などもしっかりと最新の状況などを見きわめていきましょう、それを踏まえて慎重に検討していこうというふうに私は受けとめさせていただいておりまして、決して導入を断念するとか、あるいは検討を凍結するというものでは一切ないというふうに理解をしているところでございます。

井上(信)委員 慎重に検討といった場合に、慎重に検討して、では、検討するのにどれぐらい期間というのはかかると思いますか。

樋高大臣政務官 慎重を時間軸でというふうにとらえるよりも、むしろ丁寧に議論をするんだろうというふうに私は理解をしておりますので、時間的な軸でとらえることはできないであろうというふうに思います。

井上(信)委員 基本方針をあと数日間でまとめられるという考えですから、余り時間軸の考え方がないのかもしれませんけれども、御承知のように、温対法の中では、国内排出量取引制度は法の施行後一年以内に法的な策定をするわけですよね。

 これは、物理的に間に合わなくないですか。通常国会で温対法をまた継続審議して仮に成立したとしても、一年以内に中身を策定することができるんですかね。報道だと、やはり三、四年はかかるだろうと政府の方も言っているなんというのもありましたけれども、いかがお考えですか。

樋高大臣政務官 先ほど来御議論にもありますとおり、例えば基本法も出し直すべきではないかというお話もありましたけれども、あくまで私ども政府としましては、環境省としましては、基本法案をしっかりと成立させることが温暖化対策に資するというふうに確信をしておりますので、その成立に向けて鋭意、そしてさまざまな関係の皆様方と御議論を前に進めながら、成立に向けて頑張っていきたいというふうに思っております。

井上(信)委員 いや、それは、政府の立場はそうでしょう。それはよくわかっています。

 しかし、この温対法の法案の中身を実現できないようないわば提言が出てきたわけですよ。

 これは、国内排出量取引制度は、主に時間的に私はどう考えても無理だと思うんですが、例えば環境税だってそうですよね。二五%の根拠というものを我々に示していただけないので積算根拠はよくわかりませんが、しかし、例えば環境税だって、当初一兆円規模といった税収規模を言っていたのが二千四百億ですか、それも五年かけてということです。ですから、どんどんどんどん数字も後退している。では、ますます二五%なんかできないよねと。

 それであれば、やはりこの法案を廃案にして、もう一度検討して出し直すべきだと思いますけれども、いかがですか。

樋高大臣政務官 この基本法につきましては、大変恐縮でありますが、継続という扱いをさせていただいていることもこれあり、来通常国会におきまして、しっかりと御議論をいただいて、何としても成立をさせていただきたい、このように考えております。

 なお、中身が矛盾をするものではないということも申し添えさせていただきたいと思います。

井上(信)委員 決意とか政務官の思いはいいんですが、私は具体的に質問しているので、具体的に答えてほしいんですね、反論されるのなら。これこれこうだから後退じゃないんだとかというお答えはできませんか。お願いします。

白石政府参考人 具体的にということの中に税の御指摘もございましたので、その点についてお答えをさせていただこうと思っております。

 確かに、報道で〇・二%というのはありましたけれども、あれはちょっと私どもの認識と違っておりまして、二千四百億円の規模でございますと、まず価格効果、排出抑制の効果という点では御指摘のような程度にとどまる場合もあろうかと思いますけれども、今回の石油石炭税に上乗せをして課税するものにつきましては、エネルギー起源のCO2の排出抑制対策に使わせていただくというふうな考え方でございますので、財源効果という点を考えれば、私どもの試算では約一%程度の抑制効果があるというふうに考えておりますので、その点は、私どもはそのような認識でおるということを申し添えます。

井上(信)委員 せっかく局長に具体的に答えてもらったんですが、そこは私が具体的に聞いたポイントじゃないんですね。ですから、聞いたことに具体的に答えてほしかったんですが、もう時間もありませんので。

 ですから、私が思いますのは、これはCOP16にもかかわって、次はCOP17が本当の正念場だということですよね。日本は別に自国に不利だからと主張しているわけではなくて、やはり、公平な、そして実効性のある、そういう枠組みが必要だという主張ですよね。そういうときに、何だかこの二五%、少なくともはたから見ていると、政府と与党の間にずれがある、そして今までの方針と違う、本当に日本はやる気があるのかという話になっていますよ。

 ですから、やはり、余り無理な高い目標を掲げるのではなくて、現実的に実現可能な目標を掲げた上で、それに対して日本全体で努力をしていく、こういうふうに方針転換をぜひしてもらわないと、いわば民主党の中でもそういう声が出ているという結果だと私は思いますよ。

 民主党の提言は私も読ませてもらいました。やはり、今経済や雇用が厳しい中で、そして環境と経済の両立、そのことを考えるともっと慎重に検討すべきだ、いわばそういうことですよね。ですから、今与党の中でもそう言っているのであれば、我々自民党や他の党とももう一度話し合って、この温対法を一度廃案にし、さらの頭で考えて、新しい法案をぜひ提出していただきたい。これは最後にお願いを申し上げておきます。

 大臣、何かあればお答えいただければ。

松本国務大臣 いろいろな提言、ありがとうございました。

 三施策の中、それぞれ濃淡ありまして、今、税の話は局長から話され、排出量取引については政務官が話されました。

 ただ、二〇年二五%削減という目標につきましては、私ども、党の、さまざま与党と政府が、今いろいろ言われましたけれども、しっかりそこのところは前提条件をつけながら腹に入れて、このことはしっかりやっていきたいと思います。

 それで、御審議の中でいろいろなお話があれば我々も柔軟に対応してまいりたいと思いますし、いろいろな意味で、このことについては議論をしていただきたいというふうに思っております。

 ありがとうございます。

井上(信)委員 ありがとうございました。年内に基本方針を発表するということですから、これを我々は注視します。そして、やはり世界が見ていると思います。民主党の提言に沿って後退した基本方針を出すのか、むしろ民主党の提言を入れないで、ちゃんと今までの温対法を初めとした政府の方針を貫いていくのか、ぜひ考えて、しっかり出していただきたいと思います。

 ありがとうございました。

小沢委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 きょうは、松本環境大臣からメキシコ・カンクンでのCOP16の報告をいただきましたので、これについて質問をさせていただきたいと思います。また、その後、国内対策、民主党政権の取り組みについて、さらには基本法について質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今回、新聞報道等では、COP16に関して、初日から経産省の審議官が京都議定書の延長反対を表明したことで会議の混迷の度を深めたというような批判もございました。また、交渉の加速化が必要とされる中、冷や水を浴びせたとかそういうような、会議全体を通して、日本の方針や主張について批判も多かったかと思います。

 しかし、私が思うに、日本政府は、COP15で作成されたコペンハーゲン合意を踏まえて、米国、中国を含むすべての主要排出国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みを構築する新しい一つの包括的な法的文書の早急な採択を目標として、カンクンがこれに向けた一里塚になるように、先進国と途上国の排出削減と資金の支援との間のバランスのとれたCOP決定の作成を目指したものだと思っております。

 さらには、京都議定書の単純延長について種々ございましたけれども、この京都議定書の第二約束期間の設定に関して途上国から強い要求があった。しかし、我が国としては、先進国のみに義務を課すような、また米国の参加も見込めない、こういう京都議定書では世界規模の温室効果ガス排出削減につながらない、そういうことから、我が国は第二約束期間の設定に反対する立場を貫いて粘り強く交渉をしたもの、私もそう思っております。これには大臣も、先ほどからありますが、ぶれずにこの姿勢を貫かれた。そういうことが、今回のカンクンでは明確な、何も決まらないというような予想を覆してカンクン合意というものを生み出してきたものではないか、私、そのように解しておりますので、最初に申し上げておきます。

 こういう中で、我が国は、COP15で作成されたコペンハーゲン合意を踏まえて、大臣のこれまでの委員会での答弁にありますように、アメリカ、中国を含むすべての主要排出国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みの構築を目標としてこれを進めてきたものと思います。

 そこで、最初に質問をさせていただきますけれども、今回のCOP16における政府の対応と、またその成果について大臣から明確に示していただくとともに、この目標は前進したと評価されるかどうか、その評価される点について改めて確認を最初にしておきたいと思います。

松本国務大臣 いろいろ御質問いただいてありがとうございました。

 江田議員も本当にいろいろな意味でCOP16に対して御支援をいただいたこと、感謝を申し上げたいというふうに思います。

 出だしからかなり困難な状況で迎えました。しかし、私は三つのことだけを腹に入れました。一つは、京都議定書の第二約束期間にはコミットしない。もう一つは、コペンハーゲン合意のような大きな枠組みを膨らませていかなければ、深掘りをしていかなければ、世界全体のCO2の排出は削減できない、これが二つ目。三つは、これは余り言っていませんけれども、日本のせいでCOP16がだめになることだけは絶対避けなければならない。この三つをしっかり周りの交渉官あるいは外務省、環境省、経済産業省の人たちに言って、そのかわり、自分自身はもうぶれないから、どんどんどんどん交渉を続けてくれということをやってきたところであります。

 いきなりメキシコのエスピノサ議長にバイをしたいということで会いましたけれども、そのときには、ネガティブな雰囲気になっているからポジティブに変えてくださいよというお願いがあって、私も、議長のためならしっかりサポートをしますということで、それからずっと他国との会談を行って、ポジティブな会議に私たちは貢献をしていくということを言ってまいったところであります。

 インドとも会談をしましたけれども、また同じように、第二約束期間を政治的判断すべきというふうに言われましたけれども、私はしっかり自分たちの真意を伝えてまいりました。ロシアは私どもと軌を一にし、カナダもある程度お互いの交渉方針が一致をすることで確認し合いました。豪州、ニュージーランド、さまざま、アフリカも三、四カ国しましたし、南アフリカとはちょっと意見が違いましたけれども、私たちの真意はずっと伝えながら交渉を続けてまいりました。

 だんだん最後の方は、私どもの意を理解する、理解するけれども私たちはそれには反対だということも言われまして、印象的だったのは、アフリカ諸国、アフリカ連合の方々が、コンゴとマリとガーナと、もう一つアルジェリアだったと思いますけれども、私の部屋に訪ねてこられて、まず十五分か二十分ぐらい、COP10、ありがとうございました、議長、本当にCOP10の成功は私たちにとって大変うれしいですというサンクススピーチをしていただいて、最後の方に、京都議定書のことについては、京都議定書でしか法的な拘束力がない、京都議定書しか私たちが頼りにするものはないんだということで、逆に言うと、私は、ああ、京都議定書はアフリカの人たちに本当に頼りにされているんだなということを改めて認識しました。

 ですから、アフリカの人たちに、私たちは京都議定書から逃げようとはしていません、そういう意味では、そこは理解してください、皆さんがおっしゃるとおりに、私どもも京都議定書を愛していますということを言いながら、しかし、これが第二約束期間で固定をされると、地球温暖化ということに関しては逆に悪い結果になるかもわかりませんということはあわせて伝えたところであります。

 資金、それから技術、適応、森林保全等々の途上国援助も入り込みましたし、何度も繰り返しましたけれども、大きな枠組みができたということで、一定程度の成果を得ている。そして、メキシコがよく頑張ったというふうに思いますし、我々は、すべての主要国の公平かつ実効性のある枠組みをつくるために、国際交渉に対してまた貢献してまいりたいというふうに思っておりますので、よろしく御指導をいただきたいと思います。

江田(康)委員 大臣にはCOP16のその成果についてもお聞きしたかったんですが、先ほどからあるように、これは、やはりポスト二〇一三、国際的な法的枠組みの基礎になり得る、包括的でバランスのある決定が採択されたということだと思います。

 また、コペンハーゲン合意のもとに先進国並びに途上国が提出した排出削減目標を国連の文書として取りまとめることができた、これらの目標をCOPとして留意することになった、これは大きいことだと思います。これによって、我が国が目指すすべての主要排出国が参加する公平かつ実効的な国際枠組みの構築に向けて交渉が前進に向かっていった、そのように私は解しております。

 もう一つ、こういうような状況の中で、COP17に向けて、米中を含むすべての主要排出国が参加する公平かつ実効ある枠組みを構築していくために、今後どのような取り組み、働きかけを行っていく考えか。一年しかありません。この一年の国際交渉におけるリーダーシップの発揮に向けた大臣の考えをお聞きしたいと思います。

松本国務大臣 先ほども同じ御指摘がありました。COP16が終わったばかりで、今おっしゃられたことは大変重要なことだというふうに思っております。

 私たちは、アメリカそして中国とこれからも会談を重ねていきながら、二つ合わせて四一・三%の排出量があるこの国々がしっかりとした枠組みの中に入ってこなければならないということを念頭に入れながら、国際交渉の場でも頑張っていかなければなりませんし、そして、そのことも含めて、さまざま外交のチャンネルを通じて、いろいろなアジアの国々、アフリカの国々とも二国間会談を行っていきながら、新しいシステムというか新しい枠組みというか、そういうものをしっかり自分たちの頭で構想を練っていきながら組み立てをしていかなければならないというふうに思っておりますので、皆様方にもよろしくそのことについてお知恵をいただきたいし、御協力も賜りたいというふうに思います。

江田(康)委員 COP17まで一年しかございません。今後、いよいよ新たな枠組みの合意を目指して進むことになるわけであります。新たな枠組みが、この一年ですよ、合意できるかどうか、これがかかってくるわけですけれども、この合意を目指していくわけですから、もうリミットはCOP17なんです。そうなると、合意されれば前提条件が満たされて、我が国は中期目標の二五%を約束することになるわけであります。これまで、前提条件つきで逃げられたかもしれませんけれども、COP17へ向けて、今後の覚悟があるのかどうかということです。

 でも、今の民主党政権にできるかどうかが心配でございます。先ほどから議論があっておりますように、党内の部門会議において、二五%を削減する重要な主要三政策、これは、地球温暖化税の導入、また、再生可能エネルギーの全量買い取り制度の導入、さらに、最も問題な国内排出量取引制度の導入。特に国内排出量取引制度は、先送りもしくは見送る、慎重に検討する、こういうような議論が行われているのは、先ほどから井上先生も、また吉野先生もおっしゃっているところであります。非常に心配であります。マニフェストにも明記して、基本法にも、閣議決定されたものをそんなにやすやすと覆されていくような政権なのか。ここが国際社会においても大変厳しい注目を集めていくことになるかと思いますが、このような状況の中で覚悟があるかどうかということが問われてくるわけであります。

 次に、ちょっときょうは時間がございませんので、残り時間、そういう意味で、国内の取り組みについて質問をさせていただきたいと思っております。

 私、前回のこの環境委員会において、前提条件つきで二五%削減する中期目標と、それと国内において担保するエネルギー基本計画の三〇%削減目標の関係性についてお聞きをいたしました。これについては、大臣の方から、エネルギー基本計画との関係性については、種々の条件が異なるために正確な比較はできないものの両者の間には整合性があること、また、地球温暖化対策基本法に基づき策定される基本計画の中において、このエネルギー基本計画の三〇%削減目標を位置づけることを検討したいという答弁が明確にございました。

 このことは非常に重要でありまして、地球温暖化に関する基本法案に関して、我が公明党は前提条件なし見直し規定ありの二五%削減目標を、政府は前提条件つきの二五%削減目標を掲げているわけであります。しかし、国際交渉がおくれていく中において、この前提条件が宙に浮いて、そしてなかなか日本の中期目標が決まらない、こういうような状況が続くわけでありますが、国際交渉のおくれによってこうやって中期目標が宙に浮いてしまった場合には、何が政府案の掲げる二五%削減の中期目標を担保できるものになるのか、何が日本の本気度を国際社会に示し続けるものとなり得るかといえば、前提条件の付されていない、エネルギー基本計画にある二〇三〇年三〇%削減目標となるわけでございます。

 そこで、国際的な二五%削減目標とともに、国内では二〇三〇年までにエネルギー起源CO2の三〇%削減に向けて進めていく、そしてこの両者が相互に補完し合うという二段構えの戦略的な削減目標の掲げ方については、大臣は基本法にこれを採用する考えがあるのかどうかについて伺います。

近藤副大臣 御質問をいただきました。

 二段構えと申しましょうか、これらの関係を、補完し合うというふうに思っているわけであります。江田委員御指摘のところで申し上げますと、継続審議となっております地球温暖化対策基本法に基づく基本計画においては、二〇三〇年における温室効果ガスの排出量の見通しを規定することということにもされているわけであります。ですから、エネルギー基本計画で定めた二〇三〇年のエネルギー起源CO2排出量の見込みについてもその中で何らかの形で位置づけられていく、こういうふうに考えております。そういう中で補完をし合っていくというふうなことでございます。

江田(康)委員 ちょっと時間が迫っていて私の質問も大分飛んでおりますけれども、次に、それに関連することとして、政府が掲げる二五%削減目標の内訳について、最近、小林事務次官が、二五%のうち、国内対策で少なくとも一五%ぐらいの削減は達成しておく必要があるという発言をされている。二五%のうち、国内分すなわち真水が一五%、海外削減分一〇%が一つの目安であるというのは、これは我が党が、斉藤政調会長が環境大臣のころから主張している話でありまして、私も小林事務次官は妥当な数字を示したものと思っております。

 現在、公明党、自民党、政府がそれぞれ気候変動対策に関する基本法案を提出しております。このうち、一緒には言いたくはないんですが、政府案、公明党案の掲げる中期目標と自民党の掲げる中期目標は、前者が九〇年比二五%削減であるのに対して、後者は九〇年比では八%プラスアルファ削減であるために、この二五対八であれば三倍以上の開きがあるわけで、一見したところ、これはとても両者の主張は折り合わない。しかし、今、二五%のうち一五%が真水であるという小林次官の数字をもとに考えれば、政府案、公明党案、一緒にやりたくはないですが、この九〇年比一五%に対して自民党が九〇年比八%と、その差は二倍以内におさまることになる。

 政府は、これまで国際交渉を理由に、二五%削減に占める真水の割合について明らかにしてきておりません。もし真水の割合を一五%と設定すれば、法案を提出している各党の間には、十分に議論、調整の余地があるように思います。このまま引き続き、国際交渉を理由に真水の割合を政府が明らかにしないということは、こうした国内の地球温暖化法制の議論にも悪影響を及ぼしかねない。また一方で、明らかにすれば、超党派的な合意形成を図ることが可能となる可能性があります。

 超党派的な合意形成が図られない限り、現下のねじれ国会の中では法案はいつまでたっても成立の見通しが立たないことになるわけでありまして、それで、来年のCOP17に向けた国際交渉において、日本は真剣に国内で削減に向け取り組んでいると主張できるのでありましょうか。真水を明らかにすること、国内法制が整備できれば、日本の本気度を示すことになって、我が国はより有利になるのではないでしょうか。

 そこで、松本大臣にお聞きをいたします。

 環境大臣として、今ここで、真水の割合を一五%、海外削減分を一〇%と明言するお考えがないか伺います。大臣がこの点を明らかにすれば、二五%すべてを真水で削減するのであれば海外に生産拠点を移さなくてはならないと不安を抱えている産業界、中小企業の皆さんも一安心するかと思いますが、いかがか。

 また、一五%、一〇%という内訳を明らかにした上で、それを政府の統一見解としてまとめるように、大臣から菅総理を初め関係府省の大臣に対して働きかける意思があるのかどうかについて伺います。

松本国務大臣 今のお話をお伺いしました。江田先生、ずっと委員会で発言をしていただいていることにまず感謝を申し上げたいというふうに思います。

 言えること、言えないこと、たくさんありますので、冒頭、二〇二〇年の中期目標については、企業の設備投資、研究開発投資の判断にとって重要な予見可能性を高める観点からも、国内対策の規模を早期に明らかにするべきとの産業界の意見があることも認識をしています。

 他方、二五%削減目標は、二〇一三年以降の国際枠組みの構築を図る、我が国が掲げた意欲的な目標であって、その内訳は国際交渉を踏まえつつ決定する必要があることを御理解いただきたいというふうに思っております。

 ほかに御質問の点につきましては、副大臣あるいは政務官の方からお答えをさせていただきます。

江田(康)委員 いや、いいです。

 そういうような消極的な姿勢で果たしてこの基本法は成立するのかと大変懸念しますし、COP17まで一年、これはもうリミットであります。ここに向けてどうあるべきなのかというのを本当に判断しないと、先送りばかりやっている今の民主党の政権では本当に大事なことが決まっていかないと思うことを申し上げておきます。

 最後にもう一つお話を、また今後の議題としても大事なのでお話をさせていただきます。

 というのは、海外貢献分に関して、二国間クレジットを次期枠組みにおいて採用するよう、戦略的な環境外交を早期に展開する必要性について申し上げたい。今、国内削減分についてお話をいたしました。これと表裏一体の関係にあるのが海外貢献分であります。これまでと異なって、より戦略的な方向性を打ち出す必要があるのではないかというお話をしたい。

 この海外貢献分については、一部から国富の流出だという主張もなされております。確かに京都議定書のクレジットではお金でCO2の排出枠を買ってくるわけでありますから、そのような指摘も妥当かと思います。同じく、クリーン開発メカニズム、CDMについても、これは、民間企業のもうけとなるもの、それからビジネスになるようなものは認められないなど厳しい条件が課されているわけです。

 私は、二〇一三年以降の次期枠組みにおいて、相変わらず京都議定書のもとでの海外貢献分をお金で買ってくるような仕組みではだめだと思っております。今回のカンクン合意を受けて、COP17に向けて、これからはコペンハーゲン合意を基礎とした新たな枠組みの構築を、もうこれは早急に模索していくことになるでしょう。だったら、アメリカや中国を含む主要排出国が一つの枠組みに入るように呼びかけることはもちろん重要です。これは先ほど来議論があるところです。そして、それと同等以上に重要なのが、この海外貢献分のカウントの仕方について、我が国にとって不本意なシステムにならないようにすることであります。政府として、できる限り早期に望ましい青写真を描いた上で、それをほかの国々に説明して理解を求めて、場合によってはCOP交渉の場で共同提案していくことを通じて、新たな国際ルールづくりの主導権を握ることを目指していくことが重要かと思います。

 この点、今、経済産業省が中心となって実証実験を行おうとされていますいわゆる二国間クレジットは、日本の技術、製品を用いて海外で削減した分のCO2について、相手国と協定を結んで、一定の部分を日本の削減分としてカウントできるというものでございます。

 この二国間クレジットが次期枠組みにおいて採用されれば、日本の進んだ低炭素、省エネ技術、製品が海外に輸出されることを通じて、日本経済が目下のデフレ不況から脱して活況を呈することになるとともに、国内で温室効果ガスを削減するよりも安く済ませ、相手国との協定によって獲得したCO2削減分をみずからの二五%削減目標にカウントすることが可能となる。また、相手国も、日本の技術と製品によって、みずからが行うよりもはるかに安くて、しかも速やかに低炭素社会への移行が実現できる。さらに、日本のCO2排出量は全世界の四%程度にすぎません。世界の二〇%以上の排出量を占める中国、インド、ブラジル、これを相手にして、主要排出国において日本の技術を生かして温室効果ガスの削減を行えば、これは地球全体の排出量は総量として劇的に減るわけでありますから、結果として地球益にも資する。まさに一石三鳥でございます。

 長く演説をしておりますが、そこで、政府にお聞きします。この二国間クレジットを次期枠組みの海外分のカウントに含めるよう、削減されたCO2測定方法の検証のあり方等について早期に研究を行うとともに、賛同国を集めて共同提案するなど戦略的に環境外交を展開していくべきと考えますけれども、政府の現時点における取り組み、これは経済産業省から、また、最後に大臣の今後の考え、決意について伺って、きょうの質問を終えたいと思います。

田嶋大臣政務官 江田委員に御答弁申し上げます。

 今、委員、重要なことを全部おっしゃっていただいたような感じがいたしますが、全く同じ考えでございまして、二国間クレジット、おっしゃっていただきました、今の京都メカニズムにおける、国富の流出を含めいろいろな欠点が明らかになってきております。そういう意味で、国富の流出をとめながら、しかも我が国が提唱する枠組みということで、COP17を目指してこれから戦略的に取り組んでいかなければいけないと考えてございます。

 この二国間クレジットの現状でございますけれども、もう既に予算をいただきながら取り組ませておりますが、現時点で十三カ国、三十件のパイロットプロジェクトを行っております。分母は八十件の応募でございますが、今、現在進行形、アジア、そして議長国のメキシコもその国に入ってございますが、我が国の低炭素技術、製品の普及による貢献を適切に評価する、そしてその結果としてのクレジット化を行うという制度、地球規模での実効的な排出削減を図る上で重要な手段であるというふうに考えてございます。

 また、その十三カ国の中で、特にインドとベトナムに関しましては、十月に首脳級レベルで制度実施に必要な二国間約束に関する議論の開始を合意するなど、アジア諸国を中心に二国間クレジット制度構築に向けた交渉を進めておるところでございます。

 私も、十幾つか、二国間の交渉をやらせていただきましたが、付言いたしますと、アフリカ諸国も、どこも大変な反響でございまして、この二国間に期待を寄せる声は大変大きいというふうに思ってございます。

 残念ながら、まだこの三十件の中にアフリカは入ってございません。きょうも省内で申しましたけれども、ぜひとも、アフリカも巻き込みながら、今度のダーバンに向けては、本当にこれが国際社会で広く認知されるような仲間づくりを成功させていかなければいけないし、それが世界の本当の温暖化対策として実利をもたらすものであるというふうに私自身も確信をして、これから取り組んでいかなければいけないというふうに考えておるところでございます。

 今後とも、関係各省と連携しながら、この二国間クレジット制度の構築を最重要課題の一つとして積極的に推進してまいりたいと考えております。

 以上です。

松本国務大臣 今ほとんど江田先生と田嶋さんで言われたので、言うことはありませんけれども、日本の低炭素技術あるいは製品、インフラ等を海外にも普及させること、また途上国における温室効果ガスの排出削減に積極的に貢献をしていくことは大事なことだというふうに私も思っております。政府として、二国間の協議を進めてまいりたいというふうに思っております。

 環境省も、新メカニズムの構築に向けた知見、経験を蓄積するために、今年度より、東南アジアを初めとする地域における具体的案件の発掘や人材育成を進めております。今後とも、関係省とも連携して、政府一体となって取り組んでいきたいというふうに思います。

 今、田嶋さんの方から言われましたように、アフリカの諸国が本当に日本に対してさまざまな思いを持っておられるということ、例えば廃棄物の問題にしても、グレナダ等々の小島嶼国は、やはり廃棄物のしようがない、何とか知恵をかしてください、そういうこともたくさん話を聞きました。

 ですから、そういういろいろな意味で、知恵を出していけば交渉はできると思いますし、これはもう与党、野党を問わず、自民党の皆さんのお知恵、公明党の皆さんのお知恵もいただきながら、我々は手柄をひとり占めしませんから、とにかく日本がよくならなければならないということだけはしっかり腹に入れていきながら、皆さんの言葉に耳を傾けてこれからも取り組んでまいりたいというふうに思っていますので、よろしくお願いをいたします。

江田(康)委員 これで時間は終わりましたけれども、COP17、一年後であります。いよいよ新たな枠組みの合意を構築していくのが迫る中で、一つは、一五%国内目標を明示して各党間の合意形成を図っていく、基本法成立の道を考えるべきであるし、また、残り一〇%の海外分を、今経済産業省から大変力強い御発言、取り組みが紹介されましたが、こういう二国間クレジットで、日本の技術力で環境も経済も大きく進めていく、こういうような強いメッセージを今の政府が出していくべきであります。

 こういう戦略的な環境外交を進める、そして国内の調整を進める、これが今求められているのではないかと思います。

 以上で、きょうの質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

小沢委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時六分散会


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