衆議院

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第4号 平成24年6月5日(火曜日)

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平成二十四年六月五日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 生方 幸夫君

   理事 大谷 信盛君 理事 川越 孝洋君

   理事 近藤 昭一君 理事 矢崎 公二君

   理事 横山 北斗君 理事 田中 和徳君

   理事 吉野 正芳君 理事 江田 康幸君

      網屋 信介君    岡本 英子君

      柿沼 正明君    金森  正君

      工藤 仁美君    篠原  孝君

      空本 誠喜君    高邑  勉君

      高山 智司君    玉置 公良君

      森岡洋一郎君    山花 郁夫君

      横光 克彦君    吉川 政重君

      井上 信治君    近藤三津枝君

      塩崎 恭久君    丹羽 秀樹君

      福井  照君    古川 禎久君

      斎藤やすのり君    佐藤ゆうこ君

    …………………………………

   議員           塩崎 恭久君

   議員           柴山 昌彦君

   議員           吉野 正芳君

   議員           江田 康幸君

   議員           吉井 英勝君

   議員           服部 良一君

   議員           柿澤 未途君

   議員          松木けんこう君

   環境大臣

   国務大臣

   (原発事故の収束及び再発防止担当)        細野 豪志君

   経済産業副大臣      柳澤 光美君

   環境副大臣        横光 克彦君

   環境大臣政務官      高山 智司君

   政府参考人

   (内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室長)   森本 英香君

   政府参考人

   (内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室副室長) 櫻田 道夫君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     深野 弘行君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長)            班目 春樹君

   環境委員会専門員     高梨 金也君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月五日

 辞任         補欠選任

  柿沼 正明君     網屋 信介君

  篠原  孝君     金森  正君

  岸田 文雄君     塩崎 恭久君

同日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     柿沼 正明君

  金森  正君     篠原  孝君

  塩崎 恭久君     岸田 文雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 原子力安全調査委員会設置法案(内閣提出第一二号)

 地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)

 原子力規制委員会設置法案(塩崎恭久君外三名提出、衆法第一〇号)


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     ――――◇―――――

生方委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案、原子力安全調査委員会設置法案及び地方自治法第百五十六条第四項の規定に基づき、産業保安監督部及び那覇産業保安監督事務所並びに産業保安監督部の支部並びに産業保安監督署の設置に関し承認を求めるの件並びに塩崎恭久君外三名提出、原子力規制委員会設置法案の各案件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、参考人として原子力安全委員会委員長班目春樹君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室長森本英香君、内閣官房原子力安全規制組織等改革準備室副室長櫻田道夫君、資源エネルギー庁原子力安全・保安院長深野弘行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

生方委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

生方委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 規制庁については、もともと四月一日スタートという目標だったわけですけれども、残念ながら、ようやく委員会での審議がスタートということになりました。この間も与野党でも協議がされてきたと承知をいたしておりますし、早期のスタートが望まれるわけですので、与野党の協議は政党間でございますので、衆法提出者の皆さんもぜひ議論を加速していただければと思っております。

 その上で、先般本会議でも質問させていただきましたけれども、細かいことも含め、また、本会議と違って往復でということになりますので、少し議論にわたることについても質疑をさせていただければと思っております。

 まず、この組織のあり方について、政府案と衆法では、基本的には、要するに、推進をするところと規制をするところをはっきり分けようということは同じだと思うんですけれども、ただ、その体制についていささか考え方の違いがあるのかなと思っております。

 まず基本的なことですけれども、例えば政府案ですと、原子力規制庁の長官という人物はどういう人がなるということを想定しているのか。また、衆法ですと委員会なんですけれども、委員長ということになりますね。大体、イメージとしては学識経験者みたいな人がなるのかなというふうに受けとめているんですけれども、まず、そのあたりについてのイメージを、政府側と衆法の提出者、両方に伺いたいと思います。

細野国務大臣 原子力規制庁の長官でありますけれども、やはり二つの要素があるというふうに思っております。一つは、原子炉の安全確保を科学的、客観的に判断をするという専門性の部分、もう一つは、今回の事故を経験をいたしましたので、やはり危機管理がしっかりできるという能力、この二つをどう考えるか、バランスするか、そういう観点から人選をしなければならないのではないかと思っております。

 加えまして、能力的な要素だけではなくて、昨年起こりました原発の事故をしっかりと反省をして、その反省に立った上で新たに規制をやっていかなければならないという、そういう要素も必要なのではないかというふうに考えているところでございます。

塩崎議員 基本的な考え方は今大臣からお話がありましたけれども、特に異論があるわけではありませんが、我々は法第七条で、委員長は、「人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。」ということで、特に、学識経験者、学者とかいうことを前提に、それでなきゃいけないというようなことを書いているわけではないわけであります。

 専門的な知識とか経験をしっかり持っている、なおかつ、規制行政ですから、実務的な行政の能力を兼ね備えた者がやはりいいんじゃないかというふうに思っていますし、諸外国でこのような委員の制度を持っているところ、アメリカとかフランスとか見てみますと、学識経験者、つまり学者バックグラウンドだけではなくて、行政経験、つまり役人出身という人もいるわけですね。

 フランスなんかの場合は、五人のうち二人が役所出身です。それも、日本でいえば産業政策局長までやってから原子力の世界に行って、そのままずっと規制をやっているというような人もおる。二人ともそうですね。ただし、二人とも事務官ではなくて、技術者、鉱山学校の出身のお二人でありまして、そういうことで、何もがちがちの学者というようなことを考えているわけでは全くないということであります。

山花委員 イメージとしては、例えば行政経験者といっても、今御指摘があったように、日本でいうと経産省みたいなところの、技術者だというお話でしたけれども、今回、規制と推進というのを分離するということですから、何かイメージとしては学識経験者かなというイメージを持っていたんですけれども、必ずしもそうではないというお話でありました。

 ただ、いずれにしても、衆法ですと、いわゆる三条委員会ということで、要するに分離独立ということを非常に強調されているわけですけれども、趣旨はわからないでもないですし、かつて我々もそういうイメージを持っていたということは認めるところでありますが、ただ、実際今回の震災などを受けて、やはりちょっと考えなければいけないなというふうに我々も思った上で、与党ということで、政府提出の形の法案について議論をして、それでよしとしてきたという経緯がございます。

 一つは、本会議で他党の方からも、昔、民主党は三条委員会ということを言っていたじゃないかということを言われて、総理の方からも、いや、今回の震災を受けてちょっと検討し直したんだというふうに答えております。

 一つ我々が問題だよねと思っているのは、三条委員会の形にしますと、通常のときはまあまあそれでも何とかなるのかなと思いますけれども、いわゆる緊急事態なども想定をしたときに、それぞれの委員について国会同意人事ということになります。総理が国会の同意を得て任命するという形になるわけで、先ほど、通常のケースであれば問題ないよねと思っていたというふうに申し上げたのは、たまにイレギュラーなことがあって同意が得られないというようなことも、これまでの国会の経験の中で、この問題ではなくて、三条委員会についてはあったわけです。

 例えば国会閉会中であれば、任命して事後に同意をすればいいということになっていますけれども、例えば事後に同意が得られないとこれは罷免するということになってしまいますので、そういうリスクが発生してしまう。そうすると責任体制に空白が生じてしまうのではないかという問題意識を持っているんですけれども、この点について、衆法提出者の方々についてはどのように考えておられるんでしょう。

柴山議員 ありがとうございます。

 今、山花委員から御指摘になられているように、国会が閉会中ですとか、あるいは解散されている等の理由によりまして国会の同意を行うことができないという場合については、これは暫定的に政府の方で指名をするという規定がございます。

 それで、国会開会中について、これまでも、国会の同意を得られずに、国会がいろいろ空転して、記憶に新しいところですと、日銀の総裁の同意人事で再三にわたりまして民主党の大反対によってポストがずっと決まらなかったということもありますけれども、また、そういう事実を踏まえて検討しなくてはいけないということはありますけれども、ただ、あのときと違って、やはり原子力安全規制を担う組織の構成員ということは、まず、今おっしゃったように、人命にかかわる非常に重要かつ緊急性を要する人事である。これについてのコンセンサスは、恐らく、党派を超えて我々議員各位が持っているというように思うんです。それがまず一点。

 それから、あくまで、原子力規制組織ということになりますと、専門技術的な事務を遂行するのに必要な知識と経験を有しているかどうかという判断の客観性というものが比較的担保できるのではないかという、この両者を踏まえるべきだと思います。

 この両者を踏まえれば、政府も、適切な判断のもとに原子力規制委員会の委員長及び委員の人選案を提示することになると思いますし、そうやって提示された人事案について、国会でも迅速に詰めた議論をするということが期待されると思います。

 逆に、政府に人選をお任せするということになると、ともすると、先ほど委員御自身が指摘をされたように、推進側に偏った人選が行われてしまうということが私はあり得ると思いますので、そこはやはり、国会でオープンにかつ迅速に議論をするということがかえって求められるんじゃないかなというように思います。

山花委員 中身について専門的、技術的なことであり、また、判断についても客観性が求められるというお話であります。

 そしてまた、コンセンサスが得やすいのではないかという話ですけれども、性善説と言ってしまうと言い過ぎかもしれませんけれども、うまく回る、要するにノーマルに回る話というのは、これは別にこの話だけじゃないはずで、余り我々も触れたくない話かもしれないけれども、日銀の件だって、一般的に言えばいろいろそういう理屈は立つんだと思うんです。

 ただ、国会同意人事というのはそれだけではなくて、まず、出す段階で情報管理等々いろいろ難しいところも結構あったりするわけでありまして、そこについて制度の問題としてちょっとそういうリスクがあるのではないですかということについては、今の御説明でもまだ解消できないのかなと思っておりますが、きょうは第一ラウンドなので、指摘だけにとどめさせていただきます。

 また、今御答弁がありました政治とのかかわりについても、ここがやはり我々との判断でちょっと違っているのかなと思っているところがあって、これは本会議でも議論させていただきましたけれども、緊急時の総理の権限についてでございます。

 災害時の総理の指示権ということについては、本会議の御答弁では、緊急時だからといって病状を総理に判断してもらいたいという話ではないはずだという御答弁だったと記憶しておりますけれども、ただ、問題はちょっと違うのかなと思っております。

 最終的に重い政治的な決断をしなければいけない、例えばお医者さんの例えでいえば、緊急時にお医者さんが診断したくないと言っているのに対して、ちゃんと診断せよというふうに命じたりということではないかと思っておりまして、塩崎委員からは菅リスクということを言われておりました。

 今、事故調で調査していますので、東電が全面的に撤退を申し出た、それについて当時の菅総理がとめたということについて、それを前提にして話すわけではありませんが、仮定の話としては、例えば、現場がもう撤退したいと言っているのに対して、政治の責任でそれを撤退するなと言うことというのはあり得るんじゃないかと思っております。

 事実関係としてあった、なかったという話をしているのではなくて、もし本当にそういうことがあったとすると、政治の側でかかわるということが必要なんじゃないか。その意味では、最低限、最後の手段としてそういうかかわり合いが必要だと我々は思っていますし、政府案もそうなっていると思っております。

 そうはいっても、そこは提出者が言われているとおりで、余り素人があれのこれのとむやみに指示をするというのは、これもこれで適切でないと思っておりますので、その発動要件について、むやみに指示が発せられないということについて確認をさせていただきたいと思います。

細野国務大臣 緊急時の原子炉の鎮圧については、本会議でも申し上げましたけれども、まず一義的には事業者がしっかりやる、そして、科学的な知見に基づいて、事業者の対策に対する指導、助言、必要な指示ということについては規制機関が行うという、そういうたてつけになっております。

 この規制機関というのは当然科学的、客観的に行うということになりますので、総理の指示権というようなことはここでは想定をされていないわけですね。

 ですから、今山花委員が御指摘をされたように、総理が指示権を発動するようなケースというのは極めて限定的であるべきで、国としての危機管理上の最低限の、かつ最後の手段として行うべきものだというふうに考えています。

 一つだけ、私が経験をした例で申し上げますと、総理が指示を出した中で私が非常に記憶にとどめておかなければならないと思っております指示が、三月二十日に出ております。この三月二十日の時点で何を我々がとにかく取り組んでいたか、やっていたかというと、プールへの放水をやらなければならないということで努力をしておったんです。まさに危機的な状況がまだ続いていたというふうに考えます。

 そのときに、自衛隊も放水能力がある、警察も放水能力がある、消防もある、そして、中では東京電力がそれをしっかりと受けとめてサポートしなければならぬという状況の中で、誰がどういうふうな順番で行くのかということについて、現場の実は混乱がございました。私は東京電力の本店でその調整に当たっておりましたが、どこがどういう判断をして、どういう順番で行くのかということについて大変大きな混乱があって、放水がスムーズにいかないという経験をしたんです。

 これは、本当にまさに危機的な状況の中で一刻の猶予もないということでありましたので、何らかの調整ができるような準備をしなければならないということで総理が指示書を出されたという、そういう経緯がございます。

 そこでは、さまざまな、そういう放水にかかわるような調整については、これは、自衛隊が中心となって調整をして決定をする、そして、一元的な管理を現地に派遣をされる自衛隊が現地調整所において行うという、この指示書がなければ放水というのはスムーズに行うことができなかったというふうに考えています。

 したがって、こういう事故を二度とは起こしてはならないし、撤退の議論なんかも本来あってはならない話でありますけれども、本当にこういう極めてシビアなケースになった場合に、最後の手段としての総理の指示権というのはやはり必要ではないかと、この一例をもってしても私はそのように考えているところであります。

山花委員 大変貴重なお話を聞かせていただきまして、ありがとうございます。

 我々も本当に今回みたいなケースというのは二度とあってはいけないと思っておりますが、他方、今回あったことについてやはりちゃんと検証して、その教訓を生かしていかなければいけないと思うわけであります。

 衆法ですと、原災本部長の緊急時の指示の対象事項から委員会の所掌に関する事項を除いておりますので、そうすると、本会議でも御答弁ありましたけれども、今例えば国務大臣の答弁を聞かれて、そういうケースがあるんじゃないかということなんですが、我々としては、そういった意味で、最後のところでやはり政治がかかわる可能性というのは残しておいた方が、本当の緊急の事態のときにはいいのではないかと思っているんですけれども、衆法のたてつけだと、いわば切り離すというのは一つの理屈ではありますけれども、こういうケースでできるんですかと言われれば、できるとお答えになるんでしょうけれども、そういう極めて重たい政治責任を委員会の委員長が負うという形になってしまうと思うんです。本当にそれで適切でしょうか。

 そして、本当に三条委員会の委員長がそうした緊急時の最後の決断について担うということであって、政治が全く切り離されてしまう可能性があるわけですけれども、そこが適切なのかどうかということについての御認識を伺いたいと思います。

塩崎議員 極めて重い政治責任を負わされるんじゃないか、委員長に対して、委員会に対してという御質問でございますけれども、この点についてはかなり誤解が蔓延をしておりまして、非常に我々も迷惑をしているというか困っているというか、ですからこれは、委員会審議を通じて早くやろう、それで誤解を解いていこう、こんなふうに思っていたところであります。

 緊急時に原子力災害対策本部を設けて本部長のもとで緊急対処をするということについては、現行制度も今回の政府の提案も我々も全く変わらない、同じであるわけでありますし、自公案でも、政治の責任で判断すべき事項については引き続き総理が指示権限を有するということであるのでありまして、一方、総理の指示対象から外しているのは、委員会の所掌事務、すなわち、科学的知見に基づいて専門的に判断されるべき事項、これに限るわけであります。

 さっき菅直人リスクの話がありましたが、この間も私がテレビでもちょっと説明しましたけれども、別に菅直人さん個人を攻撃しているわけじゃなくて、要は、我々は皆同じなんですね。素人です。素人が専門技術的なことに口を突っ込んで大混乱をもたらしてリスクを高める、これを私は菅直人リスクと、申しわけないですけれども使わせていただいたということなんですね。

 そこで、もう一つ抜けていることは、何か三条委員会だと、全然遠いところに行って、月のかなたにいて、もう何もできないというようなことをお考えになっていらっしゃる方が多いんですけれども、世界の言ってみれば原子力規制当局に詳しい経験者が皆言っているのは、独立は孤立ではないと。つまり、独立していても、これはウェートマンの去年の六月の報告書にもあるように、緊密な協力というのは、この委員会と、それからあらゆるところがしっかりとやっていかなきゃいけない。ですから、一番やらなきゃいけないのは、総理とこの委員会がぴったしいつも一緒になっていなければいけないということだろうというふうに思うんですね。

 それで、誤解の典型は、プールへの放水とかあるいは海水注入とか、海水注入はともかく、プールへの放水は自衛隊にお願いするということなんですけれども、これは委員会がやるというふうに誤解されている方が多いんです。

 例えば毎日新聞の六月一日の社説にも、「最終判断は、国民の負託を受けた政治家の仕事である。自衛隊や警察、消防の出動なども同様だろう。」こう言っちゃっているわけですね。それは全然違う話であって、出動要請するのは、当然、本部長たる総理、これがおやりになるということなので、何ら変わるわけではないということを申し上げなきゃいけないんだろうと思うんです。

 要するに規制委員会は、専門技術的事項について科学的知見に基づく判断と対応をするのであって、政治的な決断を求められるわけではなくて、政治的な決断はやはり総理が、本部長がおやりになっていくというので、何も変わらないんだろうと思うんです。

 一方で、しかしそうはいいながら、今までとは違う独立性を持たせる、そして専門性を格段に高めるこの委員長及び委員会のメンバー、こういう人たちは、これまでとは違った重い責任はやはり負うわけであって、それは政治責任じゃなくて、この我々の法律に基づくマンデートに対する責任と覚悟をやはり持ってもらわなければいけないということが大前提で、それで、さっき申し上げた大事なことは、緊急時であろうと平時であろうと全く役割は変わらないけれども、しっかりとこの委員会と、それから総理を初めとする他の行政各部が協力を緊密にやっていくという中で、言ってみれば、事態を打開して安定を取り戻すということだろうと思います。

山花委員 今御説明があったんですけれども、ただ、たてつけとしては、委員会の所掌に関する事項を原災本部長の緊急時の指示の対象から除いていますので、ちょっと限界事例かもしれませんけれども、例えば先ほど例として挙げた、撤退することが適切かどうかというのは、かなり専門技術的な知見が必要かもしれない。

 そして、実際にあったかなかったかじゃなくて想定ですよ、そのときに、ひょっとすると本当にその現場にいる人たちの命が危ないかもしれないけれども、でもとどまってくれというような話というのは出てくるのではないかという、限界事例じゃないかと言われるかもしれないけれども、そういうケースについて、書き方としては委員会の所掌に関する事項から外れるのかどうかというのが、申しわけないけれども、今みたいな御説明だと、普通の典型的なケースは当てはまるんですけれども、まさに限界的なケースについて、委員会の所掌なのか原災本部長がまだ依然として権限を持っているのかというところが必ずしも明らかではないのかなと思っているんですけれども、もう一度お願いできないでしょうか。

塩崎議員 明らかなことは、原子炉が異常な状態で危機的なところまで来ているというときにどうするかという判断をするのがこの規制委員会であって、これは炉規法に基づいてやるわけですね。そこの判断が専門的な、技術的な知見に基づいて行われる判断ですから、そこがやはり最終的には、この炉に対してどうするのか、そして、そこに対して鎮圧をするやり方としてどの位置にいながらやるかとか、そういうことについてはやはり判断をしなきゃいけないわけですね。

 退避をするとか、そういうようなことも、ですから、どの距離でやるのかとか、そういうことであって、すぐれてこれは専門技術的な問題に基づくもので、それをすべきかどうかというようなことは、当然、委員会が判断をして決断をしなければいけないと思いますが、先ほど申し上げたように、そういう大変重大なときには、特に、先ほど申し上げた緊密な協力関係、相談というものがあってしかるべきであって、本部長としては全体に対して責任を負っているわけです。その一部に、規制委員会の、言ってみればこの炉規法の世界で、オンサイトで頑張らなきゃいけないという責務があるわけでありますので、当然、本部長並びに他の関係者との間で緊密な協力と連携がこの委員会との間でなければいけないので、そういった一次退避を、どこまで、どういうふうにするのか。

 だって、やめてどこか旅行に出るわけじゃないのであって、技術的な判断の延長線上で退避をするかとかそういう選択肢が出てくるけれども、それが本当に正しいのかどうかというのは技術的な観点から判断をしなければいけないので、それは総理はできないということは先ほどお認めになったとおりであって、そういうことを総合的に、さっき言ったように一体不離でぴったしやっていくということが一番いい結果をもたらす最短の道だというふうに思います。

山花委員 済みません、時間が迫ってまいりまして、ちょっと通告したのを全部できそうもないんですけれども、もう一つ、防災体制についてお伺いしたいと思います。これも本会議で少し議論をさせていただいた話です。

 広域にわたる避難とかモニタリングなどを円滑にやろうとすると、自治体の首長さんだとか、場合によっては自衛隊を動かすみたいな話が出てきて、平素からの調整というのが必要だと思うんですけれども、これについて、政府として具体的にどんなケースが想定されるのか、どんなことを想定しているのかというのを教えてください。

 あわせて、衆法の提出者については、もう一回聞く話ですけれども、できるんだというようなことを本会議でおっしゃっておられましたけれども、本来は、やはり原子炉の安全任務、先ほど、技術的な、専門的なということを言われた。そこを任務としている人たちが、こういった自衛隊との連携ということでやるのはちょっと現実的に難しいんじゃないかと思うんですけれども、改めてそこについて教えてください。

細野国務大臣 先ほどの件について一言だけ。

 塩崎先生の御答弁を聞いて、考え方としてそごはないなということで、正直、安心をいたしました。共通認識ができると私は思います。

 ただ、一つだけ、これから大事ないろいろな修正の議論も行われると思いますので懸念を申し上げると、原子力規制委員会設置法案を読ませていただいたんですけれども、ここについては、所掌の事務として、オンサイトもオフサイトも防災の部分は全て書かれているわけです。そして、その部分についての指示権は原災法上除かれているわけですね。ですから、科学的なものに限定をするんだとおっしゃるけれども、法律のたてつけとしてはそこは完全に除かれていて、そこを乗り越える指示権を発動できるようにはどうしても法律的には読めないということを私自身は考えておりまして、ぜひそこは詰めた議論をしていただきたいと思います。

 ちなみに、先ほど申し上げた放水の場合の指示の対象は、警察庁長官、消防庁長官、防衛大臣、福島県知事に加えて東京電力の社長となっておりまして、それぞれ省庁、考え方がかなり差がありましたので、かなり総理が強い指示権を発動しなければこれができませんでした。ですから、まさにこういったものに対応できるようなものが必要ではないかということを申し上げたいと思います。

 その上で御質問についてお答えをいたします。

 具体的には、事業者や自治体や関係省庁に対する放射線モニタリング、さらには、住民避難などについてのさまざまな、例えば輸送手段、スクリーニングの段取り、避難所、病院、介護施設の受け入れ先の確保、さらには、避難者への救援物資の調達や輸送なども今お話があった中に入ってまいります。

 ですから、そこも含めて平素から連携をして、政府全体として取り組まなければならない課題であると考えております。

塩崎議員 本会議でもお答えをいたしまして、そのときと同じことを言わざるを得ないというふうに思いますけれども、緊急時にちゃんとやれるためには平時からが大事だということで、平時についての防災対策に関する理解とか習熟、さまざまな事態を想定して、明確に目的を定めた上での訓練をやはりやっていかなきゃいかぬということで、さっきもお話があったように、原子力事業者、国、それから地方自治体、関係機関の責任体制、連絡調整の事前準備というのはやはりやっておかなきゃいけないんだろうというふうに思うんですね。

 NRCとか、ああいうところでも、これは住民なんかを巻き込まないで、NRCが主体となって地域の防災体制というのはふだんからやっているというのが当たり前でありますし、政府案でもたしかそうなっているんだろうと思うんですけれども、自公案では、原災法で改正を行って、対策の円滑な実施を確保するための指針をつくるとか、あるいは、事業者に対する防災訓練の報告の義務づけなどの予防対策の充実等に関する規定を新たに設けるとか、これらの事務を委員会にやらせるということに今しているわけでありまして、担当大臣がいるかどうかということは余りこの中身とは関係ない話であって、事務の実施に特に差異が、大臣がいるからできる、いないからできないということにはやはりならないんじゃないかなというふうに私は思っています。

 あのときも申し上げたように、我々は、この附則の六条六項で、政府は、東日本大震災における原発事故を踏まえて、速やかに、原子力災害が発生した場合における国、地方公共団体、原子力事業者等の間及び関係行政機関間のより緊密な連携協力体制を整備するため必要な措置を講ずるものと規定をしておって、今回、細野さんも御苦労されたわけでありますけれども、事前にいろいろなことが定められていなかったということで大混乱ということで、緊急時の対策を実効的に機能させるために、ふだんからやはり事前にあらゆる手順を決めておくということをやるということを、我々は附則で改めて政府に要望をしているところであります。

山花委員 終わります。ありがとうございました。

生方委員長 次に、柿沼正明君。

柿沼委員 民主党の柿沼でございます。

 本日は、質問の時間をいただきまして、まことにありがとうございます。

 きょうは時間の都合で衆法提出の皆様への質問はございませんが、少し触れるところはありますけれども、そういう意味では、ちょっと申しわけございませんでした。

 福島の事故から一年三カ月がたちました。これまで、この規制機関ができるのが少し遅いんじゃないかという声も聞かれます。

 この福島の事故は、IAEAの国際原子力評価尺度、INESでレベル7、非常に過酷な、深刻な事故であると。今までレベル7というのは、チェルノブイリだけであります。あの有名なスリーマイルはレベル5で、その後、アメリカの原子力政策は、当面新設ができなくなった。

 そのことを踏まえますと、この福島の事故というのは、日本のエネルギーだけじゃなくて、生活も含めて、非常に大きな影響を受ける出来事だったということであります。そして、世の中の、世論を含めた国民の意識も大きく変わりました。ある意味、パラダイムは転換したということだろうと思います。

 そこで、今回の地震は、マグニチュード九、五百キロ近い地盤が動いた。震度も七、六強、非常に大きな地震でした。津波も、非常に大きな津波が来た。事故が起こった直後、政府も含めて想定外ということを言ったと思いますが、この想定外というのが大きな批判も招きました。

 まさにこの原子力規制行政というのは、想定外というのがあってはいけない。想定外だったんじゃなくて、想定を間違っていたんだという修正をしていただいてこれからに対応していただきたい。同じことが起こったとき、次はもう言いわけできない、想定外というのは絶対に言えない、そういうことだろうと思います。

 いろいろございますが、原子力規制庁は非常に大きな役割を担うものでありますし、逆に言うと、この規制庁が信頼されなければ、原子力というものはもう稼働もできなければ、新しいものもつくれない。そのくらい大きな役割を担うものというふうに思います。

 二〇〇七年六月、塩崎先生、官房長官のころでしょうか、IRRSというものが、これはIAEAのレビューですね。(塩崎議員「僕は官房長官じゃない、もう終わっている。十二月だろ」と呼ぶ)終わった後ですか。六月から七月に検査はしています。発表は次です。福田内閣です。

 この助言と勧告がありまして、非常に示唆に富む助言と勧告をIAEAからいただいています。保安院と原子力安全委員会の役割分担が明確でない、もっと明確化した方がいいんじゃないかと。それと、これは今回のことに非常にかかわりますけれども、保安院のエネ庁からの独立をしっかりした方がいいというものをいただいています。これから五年が過ぎているわけであります。

 きょう、多分この後御質問になられるでしょうけれども、共産党の吉井先生からも質問があると思いますけれども、国会では吉井先生も、福島第一事故に関して、非常用電源の問題について質問もされています。こうしたシビアアクシデント対策も含めて、おくれてしまった。いろいろなことが反省材料としてあると思います。

 そこで、原子力規制行政を新たに体制を構築するというタイミングですので、少し総括的な質問をさせていただきたいんですが、事故前に対処すべきだったことは何だったのか。事故後の対応の失敗は、これはかなり報道もされていますけれども、どういうものだったのか。今後の新体制でそうした反省、総括をどう生かすつもりなのか。

 ちょっとマクロの質問ですが、まずこれにお答えいただきたいと思います。

細野国務大臣 柿沼委員から今、IRRSのことについて御指摘がございました。

 二〇〇七年というのは、我々は野党の立場でありましたけれども、政権をとってから事故まで二年近くがたっていますので、その間も含めて、行政のあり方を推進サイドからしっかり切り離すという判断を、行政も、そして我々立法府もできなかったということに関しては、これは深刻な反省が必要だろうというふうに思っています。

 エネルギーの供給や原子力の推進というものが一つの大きな前提としてあって、その中で安全や規制のことについては考えていくという、私は優先順位を間違ったんだろうというふうに考えています。

 それが具体的な姿としてあらわれたのが、一つは、過酷事故は日本では起こらないという思い込みにとらわれて、いわゆる安全神話にとらわれてきたということ、そして、それの当然の帰結として、さまざまな新しい科学的、技術的な知見というのが、これが本来は取り入れられるべきなんですが、そういったことに積極的になってこなかったというそういうことが、今回のシビアアクシデントがまさに現実のものとなってしまった、シビアアクシデントによってこれだけ放射性物質が外に出てしまったということにつながった、そのように考えているところであります。

柿沼委員 ありがとうございました。

 もう本当にこれは、どの党派か関係なく、これまで立法、行政に携わった全ての人が反省して次に進めていかなくちゃいけないということだろうと思います。

 今の大臣の御答弁の中にも出てきましたけれども、過酷事故は日本では起こらない、多くの国民も、少なくない国民と言った方がいいかもしれませんけれども、原子力安全神話、絶対安全神話、それに近いものを信じていました。もしかしたら信じさせられていた。言ってみれば、少しリアリティーが管理されたかなということがありました。

 本当に悲しい出来事でありましたけれども、いろいろなことが報道を通じて言われております。浜岡原発のことを言っていいのかわかりませんが、あそこはどう考えても大きな地震が起こり得る場所だということは、去年わかったわけじゃないです。昔から言われている場所でした。ところが、あそこに原発は実際に立地しました。これは、ここが安全だから立地した、ある意味の安全神話の中で、安全だという中で立地したんだと思います。

 その後、つい先月ですか、敦賀原発、ここも何か断層の真上に建てたということが言われております。今まさに調査をされているんだと思いますけれども、もしこういうことが起こってくると、この安全神話というのは何だったのかと。安全だから立地したというのは、恐らく、当時のまさに安全神話を神話ならしめるために言っていた言葉だろうと思います。立地できたところを安全だと言ったんだと思いますね。

 それはもう過去の出来事でありますけれども、そういうことを通じて、もう既にこの国には、五十四基、原子力発電所が立地されているんですね。その中には、使用済み燃料も含めて大変危険な状態がもうあるんです。つくっちゃったわけです。それをどうやって安全なものにしていくかがまさにこの規制庁であるということだと思いますし、先ほどのシビアアクシデント対策のおくれも含めて、こういう原発安全神話にどう対応していくのか。

 私は、これはちょっと大臣にもお聞きしたいんですけれども、この安全神話というものを、もうこれは金輪際終わりにしなくちゃいけない。まだ信じている人は余りいないと思いますけれども、ぜひ大臣の口からも、もう安全神話はないんだということも含めてしっかりとお答えいただきたい。

 安全神話と並んで、やはりこの国の原発政策の非常に大きなところを占めているのが、原子力村と最近言うんでしょうか、安全神話をまさにこの原子力村の論理の中で構築していったものというふうに思います。これから、既にある原子力発電所をどう管理して、どう安全なものにしていくのかも含めて、原子力規制庁、今度新しくできるこの新しい体制が信頼されなければ、とてももう社会がもたない、そんな状況だろうと思います。

 そこで、ちょっと自分ばかりしゃべっちゃいけないんですけれども、原子力安全神話は恐らく崩壊してきていると思います。安全規制行政にもゆがみを生じさせてきた、そのことについて大臣のお考えを、ぜひこれは、もう安全神話は終わりなんだということも含めておっしゃっていただきたい。

 それともう一つ。原子力村論理に立脚した今までの政府の論理構成、それに対する不信感は物すごく高まっています。そんなことはないと思いますけれども、大飯原発再稼働をめぐるいろいろな動きの中で、多くの国民の皆さんが見せられたあの切り取った画像では、まだこの原子力村の論理があるんじゃないか、こういう不信も持たれているわけですから、そこはそうではないということも含めて、安全神話の部分と原子力村の論理の破壊、もう破壊させていくんだということも含めて、ぜひ所見をいただきたいと思います。

細野国務大臣 今御指摘をされた二点は、非常に重要だと思います。出発点として、しっかりとそれこそ我々が肝に銘じてやっていかなければならないことを御指摘をされたというふうに考えます。

 まず安全神話でございますけれども、これは完全に払拭をしなければ、そもそも、新しい原子力規制機関そのものの信頼を取り戻すことができないと考えております。

 安全神話というのは、ここまでやればもう絶対安全で問題がない、そう考えることなわけですね。そういうふうに考える結果として、それ以上のシビアなケースについての対応を怠るということにもなるわけです。ですから、そこはそういった神話に陥ることがないように、厳にそこは我々が肝に銘じてやっていかなければならないところであるというふうに思っています。

 そこで、原子力の安全確保や防災体制の強化ということについては、常に高いレベルを目指していく必要があります。終わりはありません。そして、それを、これだけの事故を経験をしましたので、我が国は常に世界の先頭になってやっていく、これが安全神話を克服する唯一の道であるというふうに考えております。

 制度としては、当然、推進サイドから独立をさせるとか、当たり前のことでありますが、そういったことがありますが、どういう組織になったとしても、安全神話にとらわれない、今申し上げたような発想に立つことは極めて重要であるというふうに考えます。

 もう一点、原子力村でありますが、これもやはり大きな問題の一つだ、そのように考えます。

 私も、エネルギー政策そのものについては、議員になってから私なりに野党時代から関心を持ち、かかわりを持ち、原子力の関係者ともそれなりにつき合ってまいりましたが、やはり、事故を受けて改めて、いわゆる原子力村と言われるような方々ともいろいろなコミュニケーションをとるようになりました。

 そこで感じましたことは、原子力の関係者というのは、規制側も含めて、原子力の推進という大前提があって、そして、その中で安全を確保するというそういう発想にどうしても立ちがちだということです。そこをやはり根本的に改めなければいかぬだろうと思います。

 したがって、新しく誕生する原子力規制機関は、まさに安全と規制をやる機関として専らそれをやります。ですから、そのことによって、原子力の推進が常にちらつくということとは組織としてははっきり離さなければならないと思います。そういう発想に立つ中で、当然、事業者の側にもやはりそれを求めていかなければならないと思います。

 これまで原子力産業というのは原子力の推進という大前提があったわけですが、むしろ、どのようにすれば安全を高めることができるのか、どのようにすれば環境をしっかりと維持をすることができるのか、そのことを追求していくような規制機関のあり方、さらには産業のあり方というものにそこはもう大転換をしていかなければならないというふうに考えます。

 その意味では、これまで言われてきたような原子力村そのものは、一度これはもう徹底的になきものにして、やはり新しい原子力の専門家というのを育てていかなければならない、そのように考えます。

柿沼委員 大臣、ありがとうございます。

 今の言葉を多くの国民の皆さんもずっと期待していたと思います。なかなかそういう言葉が政府から発せられることがなく、事故後一年三カ月たちましたけれども、今は非常にありがたい、ありがたいというか、国民としてありがたい言葉だなというふうに思います。

 今、大臣がお話しになりましたけれども、まさに原子力の規制行政が信頼されるためには、やはり推進部門との分離ですね、規制と推進がしっかりと分離されること、そして、独立性というのは、今、山花議員の御質問でもいろいろありましたけれども、難しい面も多々ありますけれども、独立して、ある意味政治的なものにかかわらずに判断もできる部分も必要だということ、これにこの今回の法律は尽きるんだというふうに私は思います。

 そこで、ちょっといろいろあるんですけれども、先ほど、塩崎先生からも菅直人リスクという言葉が出てきましたけれども、事故後のことについては、マスコミから本当にたくさんたたかれ、政治家も官僚も財界も、事故調も含めて社会的制裁も受けているだろう。事業者である東京電力さんも、大きなリストラをしているわけであります。ただ、事故前の、本当に責任がある立場にあった原子力村の主導者、そういう方が、特定の名前は出しませんけれども、ほとんど問題にされていない。事故後の人たちはいろいろと批判され、たたかれ、社会的制裁を受けている。でも、事故前の人たち、特に公務員の方々は、何か責任をとるといっても、そのとりようもない。いわゆる首になるとか、そういうのもないですし、政治家のように落選の危機に遭うとか人気が落ちるということもない。民間企業のように、リストラになって給料が下がるということも余りない。

 そういう中で、今回、新しい原子力規制庁、そこの職員は、保安院と安全委員会、保安院の方が多数を占めると思いますけれども、そこが移籍するようなイメージだと思いますけれども、これは、箱が変わっただけで人が全部一緒だ。昔、まさに政策失敗とは言いませんけれども、原子力規制行政のいろいろな問題点をつくってきた人たち、その失敗をしてきた人たちがそのまま移ってくるというのでは、看板のかけかえじゃないか、同じ人がやっているんじゃないかと。

 もちろん、人間ですから、今までとは変わるんだ、もう自分たちは原子力村の論理からは離れるんだということでやってもらえればいいと思いますけれども、その辺についてはやはり不信感があると思いますね。

 その辺についてどういうふうに移籍人材というものを選定したりしていくのか、ちょっとそこについてお伺いしたいと思います。

細野国務大臣 新しく誕生する原子力規制組織の人材というのは、当面はやはり、これまでの原子力の規制に携わってきた、そういう経験を要する府省からの出向に求めざるを得ないというふうに考えております。

 ただ、そのときに注意をしなければならないのは、まずは、特に規制そのものにかかわる人間に関して言うと、これまで、特に経済産業省のもとで、必ずしも専門性を有していない人材もローテーションで回ってきていたという面があるわけですね。これはやはり改めていかなければならないだろうと思います。原子力に関する規制や技術について熟知した職員をまず集めるというのが大変重要ではないかと、こういうふうに思っております。

 その上で、もう一つ重要なことは、新しい組織のもとで、しっかりとそこで取り組むべき課題を明確にして個人の意識を変えていくということがなければ、恐らく看板のかけかえという御批判に応えることにはならないだろうというふうに思います。人選ももちろんでありますけれども、そうした組織の文化そのものを意識的につくり直す取り組みはぜひしていきたいというふうに思っております。

 これを当初は新しい規制機関ができる前に準備段階でやろうかとも思ったんですが、それはやめました。なぜなら、新しい規制機関をつくって、それこそ中で徹底的に議論をして生み出さなければ、その原則は絵に描いた餅になりかねませんので、新しい規制機関ができた段階でそのことをしっかりと議論をして方向性を打ち出し、そして、組織ももちろんでありますけれども、個人も変わるという面がなければならないのではないかと、こういうふうに思っております。

 そのほか、当然のことでありますけれども、人材という意味では、民間の研究機関などから人材も求めてまいりたいというふうに思っておりますし、中でもしっかりと育てていかなければならないというふうに思っておりまして、できるだけ幅広い人材を集めることができるような体制はぜひつくりたいというふうに考えているところでございます。

柿沼委員 少し小さな質問を。

 この移籍は、出し手側の、例えば保安院とか安全委員会を所管する文科省、経産省が決めるのか、それとも受け手側の環境省が人材の選定をするのか、どちらなんでしょうか。

細野国務大臣 私は、今回の原子力の事故を受けまして、規制組織にかかわる主要なメンバーはほぼ全て一緒に仕事をしましたし、それぞれの人材のいいところも悪いところも見ておりますので、私なりに思うところはございます。

 ただ、野党の皆さんからの御意見も御批判もあり、余り政治が直接関与することは必ずしも好ましくないというお話もございますので、私なりに思うところはございますけれども、その組織のあり方については、トップの人選をして、そのもとでしっかりとやっていくということが重要ではないかというふうに思います。

 そのときに、私自身ももともとそのように考えておりましたけれども、ぜひお願いをしたいのは、何とか省から推薦をされたのでその人材を採るとか、人事のローテーション上、今そこにいるから採るというようなことがあっては絶対ならないと思います。そこは、個人の資質、一人一人をしっかりと見て判断をするということはぜひやっていただきたいと思います。

 懸念があるとするならば、私は一年半やりましたからわかりますけれども、本当に人選をきちっとやっていただけるような、そういう形での人事構成をいかにしたらできるかということについては、ぜひ与野党で胸襟を開いて議論をしていただきたいなと、そのように思います。

柿沼委員 余り時間がなくなっているので。

 今回の規制庁は環境省の外局ということでありますけれども、環境省そのものは、今までの原子力の推進という意味での強いアクセル役ではなかったと思います。それはそれとしても、地球温暖化という意味では、環境省自身も原子力に対して、積極的にと言うかどうかはわかりませんけれども、アクセル役の一部を担ったということであります。

 規制庁の大きな位置づけとしては、やはり、独立性に加えて、推進と規制の分離というのが非常にあると思います。この辺はどうお考えなのか、環境省の外局になることでそこは問題ないのかどうか、ちょっと御意見をお聞かせください。

細野国務大臣 今回、新たな法律の中で、原子力安全規制の目的として、人と環境を守るということを明確にしております。今、環境省は、除染や福島県内の廃棄物の問題に取り組んでおりまして、いかにこういう原発の事故が起こったときに環境が破壊をされるか、そして人の生活が破壊をされるかということについて、最も深刻な影響を間近に見て対応している、そういう役所であるというふうに感じております。

 そういった意味で、先ほど温暖化の御指摘がございましたけれども、地球温暖化の手段として原子力を推進をするという立場にはもはやありません。それは、安全規制をしっかりやる中でしか原子力というのはあり得ないという、そういう大前提に省全体が立つ状況に今なっているということを申し上げたいと思います。

 その上で、環境省のもとに置かれる原子力規制庁という存在ではありますけれども、その独立性というのはしっかりと確保していくことが重要であり、法律的にもそのようになっております。

 具体的には、原子炉等の規制にかかわる行政判断については、法律上、長官に委任をされておりますし、予算についても、しっかりとしたそういう枠を設けてこれからやっていくという方針を出しております。

 したがいまして、環境省そのものも原子力の推進サイドという立場には立ちませんし、その環境省のもとに置かれる規制庁についても、独立性をしっかりと確保することで安全規制そのものをやり切る組織をつくっていきたいと考えているところでございます。

柿沼委員 ありがとうございます。ちょっと感想も述べたいんですけれども、時間がなくて申しわけありません。

 環境省が原子力のもはや推進役ではないというお話がありました。今回のことは、いわゆるノーリターンルールがあるという話もありますけれども、ノーリターンルールの、ルールの細かいことはちょっとわかりませんけれども、推進側の役所にいた人がこの規制庁に来て、規制側をやってまた推進側に行くのはもうないという意味に私は捉えているんですけれども、逆に言うと、環境省が推進側ではないということになれば、例えば環境省の幹部から規制庁に来て、戻って事務次官になる、要するに、推進側ではないからリターンできるんだということになるのかどうか。

 この規制庁長官人事というのも非常に多くの関心が寄せられると思いますけれども、今の現時点での大臣のお考えを聞かせていただきたい。

細野国務大臣 人事については、余り私が個別にああした方がいいとかこうだと言うことは、今、国会審議をいただいていますので、多分、申し上げない方がいいんだろうというふうに思います。

 一点だけその点で申し上げると、新しい規制庁が環境省の外局という形で来るとしても、それが例えば環境省の指定ポストになって、ポストがふえて環境省が得をするというようなことがあるというのは、これはもう論外だというふうに思います。

 したがいまして、環境省であろうが、経済産業省であろうが、文部科学省であろうが、原子力安全委員会であろうが、規制と安全に強い意欲を持ち、それをやり切る人材を採るということであって、どこかの省庁からこのポストは必ず来るというようなそういう種の人事をやることは、これは極めて不適切であるというふうに考えます。

柿沼委員 ありがとうございます。

 もうほとんど時間がないんですけれども、原子力安全調査委員会、非常に立場が曖昧だなという感じがしております。本当は御質問したかったんですけれども、きょうは時間がないので。ここの意味では、与党の質問で言っていいのか、衆法提出の方が少し、いいと言ったらあれですけれども、わかりやすいなという感じもしているんですけれども。

 そこでちょっとお伺いしたいのは、衆法提出の皆さんの立法のやり方もあるんですけれども、政府の方の安全調査委員会、ここを三条委員会化する。要するに、安全調査委員会は規制庁に対して指揮命令権がないんですね。そこを三条委員会化して指揮命令権を与えるというのは、そういう考え方はないのかどうか。

 それと、もう時間がないのでまとめ質問にしますけれども、去年、私は原賠機構のまさに衆法提出者になりまして、こういう答弁を受ける立場になりました。今回の件は、賠償関係は一切触れられていないんですね。そこはどこが担っていくのか。まあ規制庁ではないんだろうと思いますけれども、明確にちょっと言ってほしいなと。

 二問、お願いします。

細野国務大臣 今回の制度をつくるときに私どもが意識をしたのは、きちっと規制をやる、危機管理をやる組織といろいろなことについてチェックをする組織は、これは分けた方がいいのではないかというふうに考えたんです。

 ですから、規制庁そのものについては、規制そのものをやるし、そして、実際に危機管理の部分についても直接担う。一方で原子力安全調査委員会というのは、例えば、その規制庁がおかしなことをやらないかどうかをチェックをする。事故が起こった場合には、その事故についてもさまざまなそれこそ調査を行う権限を持つというような、そういう役割分担を考えたわけです。

 ですから、自民党・公明党案で出てきている規制委員会のもとに規制庁という考え方とは、そこは若干出発点が違うということでありまして、調査委員会を三条委員会化して指示を出せるという考え方は、むしろ自公案に基づく考え方にかなり近い発想で今言われたのかなと、そのように思います。

 したがいまして、この制度を前提にそれをそのままするというのは、少しちょっと無理があるのかなというふうに思っております。

 ただ、これは率直に申し上げますけれども、政府案を出しております。これが我々ベストな案だというふうに考えますが、各党各会派の議論の中であるべき姿というのが示されるのであれば、そういったことについてはできるだけ柔軟に対応していきたい、そのように考えております。

 最後に、賠償制度についてでありますけれども、これも政府内で議論をしました。議論しましたが、賠償というのは、まさに原子力をやるときの、万が一のことがあったときに備えるものでありますから、これは、規制側に置くのとはちょっと性格が違うだろうということで、この組織改編の中には入れなかったという経緯がございます。今後の原子力政策のあり方の見直しの結果などを踏まえて、しっかりと検討していく必要があるというふうに考えているところでございます。

柿沼委員 まだまだあるんですけれども、時間になりましたので、ありがとうございます。終わります。

生方委員長 次に、矢崎公二君。

矢崎委員 民主党の矢崎公二でございます。本日は質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 原子力規制庁、原子力利用における安全を確保する意味で、本当に少しでも早く動き出さなければいけないという思いでおります。東日本大震災が発生してから既に一年以上がたっております。ようやく議論が始まったということでございますけれども、この委員会の場で議論を尽くして、できるだけ早く規制庁を動かすということが大切かというふうに思います。

 当初の政府案では、原子力安全庁という言葉が使われました。民主党内の議論で、安全庁ではなくて規制庁だろうという議論がたくさん出まして、それによって改められた。これは当然のことと思います。無用な規制というのは非常に問題がありますけれども、環境あるいは原子力に対してはきちんとした規制が必要だというふうに考えます。

 さて、本日の質問ですけれども、大きく二点ございます。一つは、原子力発電所の運転期間の年数期限の導入について、そしてもう一つは、シビアアクシデントが発生したときの緊急時の対応体制についてでございます。この二点について、内閣提出の政府案、そして衆法提出の皆さんにも御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 まず、原子力発電所の運転期間の年数制限についてです。

 細野大臣は一月三十日の記者会見で、既に四十年を超えている原発の再稼働はあり得ないということをおっしゃいました。法案では、原発の運転期間の制限を四十年と設定して、法的に運転年数の制限を設けております。

 さまざまなものには耐用年数というものがございます。国税庁の減価償却資産の耐用年数、それを見ますと、電車であれば十三年だそうです。消防車、救急車、こういった命を守るものについては五年という設定がされております。住宅は四十七年、病院は三十九年というふうに言われております。

 その一方で、日本では、原子力あるいは水力、火力発電所のいずれも、耐用年数の規定をするものはありません。原子力発電所について、それを構成する機械装置類の適切な保守、交換などと、法律により義務づけられている定期検査などに合格することによって、理論上、半永久的に運転を継続することができることが現在は可能でございます。

 その上でお伺いしますが、原子力発電所について運転年数の制限を法的に設ける狙い、その制限を四十年と設定した根拠を御説明いただきたいというふうに思います。

細野国務大臣 原子力発電施設の経年劣化については、国民や自治体の間にも、これまでもさまざまな議論が存在をしておりました。ただ、そういう議論はありながらも、運転制限制度というのは我が国においては導入をされてこなかったという、そういう経緯がございます。

 まず一般論から申し上げると、設備や機器類というのは、使用年数の経過に従って当然劣化をするわけでありまして、その安全上のリスクというのは増大をいたします。したがいまして、このリスクを低減するために、発電用の原子炉の運転制限制度を導入をすることとしたものでございます。

 この運転制限の期間につきましては、原則として四十年以上の原子炉の運転はしないということにいたしまして、経年劣化の状況を踏まえまして、延長する期間において安全性が確保されれば例外的に運転を継続をするという形にしておりますが、そこは、科学的にしっかりと確認をした上で、申請に基づいてやるということでありますので、極めて限定的なケースになるというふうに考えております。安全上のリスクを低減するというのが、この運転制限制度の目的ということでございます。

 なぜ四十年なのかということでありますが、幾つか根拠として考えたものがございます。

 まず一つは、いわゆる圧力容器の中性子の照射による脆化であります。これは、温度が下がった場合に、シビアアクシデントになると水を入れて下げるということになる可能性があるわけですが、そういった場合に、どこまでこれが脆化をするかということについてこれまでさまざまな蓄積がございますけれども、そのデータの中で一定の懸念というものが生じてくるのが、この四十年というあたりに一つの線があるのではないかと考えられることが一つ。

 もう一つは、さまざまな機器についてのいわゆる工事の計画の認可の申請書における、どの程度それを使うのかということについての想定をした回数というのがございます、それぞれの機器について。そういった想定をされる回数というものが、一つのラインとしておよそ四十年程度を目安になされているというのがございます。

 したがいまして、原子炉圧力容器の強度の問題に加えまして、発電所というのは、プラントというのはシステムでありますから、いろいろな機器がいろいろな形で当然稼働いたします。作動するそのそれぞれの機器の耐用年数というものも考慮にした中で四十年というところの数字を導き出したということでございます。

矢崎委員 ありがとうございました。

 現在の、経産省が定める省令に基づきますと、運転開始後三十年を経過する前とその後の十年を超えない期間ごとに事業者は、経年劣化というんですか、こういう非常に難しい言葉で一般の方にはわからないと思いますが、いわゆる老朽化のことだと思いますけれども、老朽化の技術的評価を実施するということになっていました。その意味では、四十年という制限を設ける、これは大きな意味があるというふうに私は考えます。

 一方で、アメリカでは、今回の日本の法案と同様に、運転期間を四十年と定めております。その意味では、アメリカに倣ったというような見方もされているようでございます。その一方で、ドイツは約三十二年で例外なく廃炉にすることを決めております。

 私は、大切なことは、四十年という運転の年数の制限を設けて、日本にある原発を廃炉にする工程をきちんとつくっていく、それをもとに再生可能エネルギーへの転換をできるだけ早く進めていくということが、エネルギー政策上必要なことだというふうに思います。

 ところで、政府案では、運転年数の制限を四十年としていますけれども、四十年を経過した後にさらに一回に限って二十年以内で更新できるという、延長を認める例外規定を設けております。二十年延長もオーケーということでございますけれども、こうしたことに対して、原発の立地自治体などからは疑問の声も上がっております。

 この辺はきちんと説明をしないといけないと思いますけれども、なぜ運転期間の延長を認める可能性を残しているのか、例外的に運転期間が延長できるのはどのようなケースなのか、さらに、運転期間の延長の上限を二十年としたのはどういう意味があるのか、その点について御説明をお願いをいたします。

細野国務大臣 まず、経年劣化についての考え方ですが、先ほど、四十年のところに一つの線を引いた根拠を申し上げましたが、一方で、四十年をたてばそのときから急に危険になって、四十年までは全く問題がないということでもないわけですね。つまり、そういうリスクが高まるという中でどこに線を引くかということになるわけです。

 したがいまして、若干、これまで十分に伝え切れていないところがありますけれども、バックフィットという制度を導入しますので、四十年を待たずとも、これはリスクが高いということになれば、そこで運転をとめるということも制度としてはあるわけです。

 ですから、そういう四十年までは絶対動かし、そして、もうそこだけが基準だということではないということをぜひ御理解をいただきたいと思います。

 その上で、延長を認める可能性についてでありますが、その可能性についてなぜ考えるのかということについては、個々のプラントによって状況というのは、これはやはり異なります。PWR、BWRというのも原発としては随分性格が違います。さらには、技術的な知見という意味でも、四十年前の原発と今の原発とではまた随分違うというのも、これも紛れもない事実です。

 そういうそれぞれの状況というのがございますので、運転期間の例外を一切排除するという考え方をとるのではなくて、一定の要件を満たして許可を受けた場合には、運転期間の延長を可能とする余地も残したということであります。

 この運転延長につきましては、この許可基準は、法律上、長期間の運転に伴い生じる劣化の状況を踏まえて、延長しようとする期間において安全性を確保するための基準を環境省令で定めることとしておりまして、これは、ですから申請に基づくわけですね。ですから、それぞれの事業者が、何年間延長するのかということも含めて判断をして、その申請をしっかりと厳格に見ていくということになろうかと思います。

 したがいまして、逆に言うと、四十年以上をあり得ないと申し上げたのは、この基準ができるまでは四十年以上は絶対動かないわけですから。そういった意味も含めて、それこそ、なし崩し的なことはあり得ないという趣旨で以前私発言をしたということであります。

 その上で、なぜ二十年なのかということにつきましては、これまで、高経年化の技術評価で、運転開始後六十年を見通した経年劣化の評価を行ってきていること、これは一つの材料としてはございます。米国においても、運転許可の更新を二十年を超えない期間としていることも、これも参考とはいたしました。

 そういったことを一つの材料といたしまして、延長するとしてもその上限というものは、設けるとすればやはりこういうところではないかということで規定することを考えたということでございます。

矢崎委員 ありがとうございました。

 政府案の四十年の運転期間、それを過ぎた後二十年以内の延長の規定という、その理由はわかりましたけれども、現行の制度では、上限は、上のふたはされていませんけれども、運転開始後三十年、十年ごとに評価するというシステムになっております。

 その意味で、四十年以降、新しい法律ではさらに二十年ということですから、四十年からさらに二十年の間、この期間がどうなるかという心配があると思います。法案ではきちんとした規定はされていないと思いますが、現行法よりもむしろ後退してしまうのではないかというような懸念もございますけれども、その点について、四十年から六十年までの間のいわゆる十年ごとの定期安全レビューとか、そういうものを実施していくことになるのかどうか、その点を確認をさせてください。

細野国務大臣 三十年以降十年ごとに行う安全性の評価というのは、これはこれからもやっていく必要があるというふうに考えております。

 したがって、三十年でまずそこのものが来て、四十年はまた違う意味で、これはもう運転制限そのものですから、しっかりと厳格な判断というのがなされるということであります。

 そこは新しい規制機関のもとでしっかりと議論をした上で方針を出していただきたいというふうに思っておりますが、四十年以上というのは、極めて例外的だというそういう制度になっておるんですね。その例外的に適用されるものが出てきた場合に、その後の安全規制についてどのようにしていくのかということは、これは、専門家の中で徹底した議論をしていただく必要があるのではないかというふうに思います。

 今の時点で法案のたてつけとして申し上げるならば、バックフィット制度がありますから、当然、これは四十年以上に例えば例外的になった場合も常に適用されますので、十年ごとということを待たずに常に最新の知見でチェックをされ、それでクリアできなければそこでもうだめなわけですね。そういう制度が維持をされつつ、なおかつ、また十年というところでそういう制度をするかどうかという議論は、そこは新しい規制機関のもとで行っていくべきものではないかと思います。

 いずれにしても、以前よりも規制のレベルが下がるということはこれはあってはなりませんので、そこは、厳格な適用は当然なされることになろうかというふうに思います。

矢崎委員 ありがとうございました。

 米国では運転期間四十年と定められております。連邦政府の独立機関であるNRCが定める連邦規則によって、さらに二十年の運転を認める規定がございます。恐らく日本もこの方式だというふうに思いますけれども、そのほかの各国の状況を見てみますと、フランスでは耐用年数に関する法的な規定はありません。イギリスでも耐用年数に関する法的規定はない。それぞれのフランス、イギリスでは十年ごとに定期安全評価を実施することになっていますが、こちらは、実質的に半永久的に運転を継続することも可能なようになっております。

 一方でドイツ、二〇二〇年までに、現在稼働している九基の原発を段階的に運転を停止するとしています。平均運転年数は約三十四年ということになります。ベルギーでは、運転期間を一律四十年。四十年に達したものから順次閉鎖していく。スペインでは、四十年の運転年数を超える原発の順次閉鎖の方針を示しています。

 そのほか、フィンランド、スウェーデン、スイス、韓国では、耐用年数や運転期間に関する法的規定はありません。

 今述べたことは国立国会図書館による調べでございますけれども。

 やはり日本は、そういった世界状況を見ながら、その中でも、より厳しい、そういう規定をきちんとつくっていかなければいけないというふうに私は考えております。

 改めてですけれども、日本の法的規制について、その画期的と言える意味について、大臣の御見解をお伺いします。

細野国務大臣 私も各国の例は調べました。ドイツは、たしか運転時間か何かではかっていて、平均すると三十四年ぐらいになるというような、そんな形だったかというふうに思います。

 若干一般論になるわけですけれども、私、ちょうど四十歳になるものですから、四十年前と今との技術の違いというのは、これは、私ならずとも誰でもわかるわけですね、例えば電気製品をとっても、車を見ても。四十年前の技術で今そのまま通用するものは、逆に言うとほとんどない。それぐらい大きな技術革新がなされているわけです。

 原子力発電所に関しては、四十年前も大丈夫ですということを、やはりこれまでちょっと安易に信じ過ぎていたのではないかと。今回、四十年というところで一つの運転の制限をして、高経年化については、相当厳しくこれから日本国内でさまざまな研究をしていかなければならないというふうに思います。

 それを我が国がまずやることで、それこそ原発の先進国と言われる国々はもちろんですけれども、これから原発を導入しようとか導入をし始めたとか、そういう国に対しても、高経年化については、常に日本が最新の知見を蓄積をし、それを発信をし、それを他国にも反映をしていくように、言うならば促していくという、そういった役割を担うべきではないかというふうに思います。

 その意味で、四十年というところに運転制限を設けたというのは、極めて大きな意味があるのではないかというふうに考えております。

矢崎委員 ありがとうございました。

 この四十年について衆法の提出者の皆さんにも御意見をお伺いしたいんですけれども、運転年数の制限を設けることについてどのように受けとめていらっしゃるか、導入すべきと考えているのか否か、お聞かせください。

吉野議員 自公案は組織論だけを議論しました。というのは、規制当局に独立性がもしあったならばあの事故は防げた、私はこのように思います。

 きのうの産経新聞のニュース、ごらんになったと思います。平成四年に、全電源がとまった場合はどうするのかというワーキンググループを原子力安全委員会は立ち上げました。そのことを本当に議論して、全電源がとまった場合はどうするということを定めていれば、この事故は起きなかったんです。すなわち独立性です。独立性がきちんと保たれた組織論を私たちは議論していましたので、この運転年数については、正直言って一個も議論しておりません。

 ですから、四十年がどう合理的に正しいのかどうか、この辺も含めてこれから議論していきたいと思っています。

 以上です。

矢崎委員 吉野先生の個人的な御意見でもよかったんですけれども、具体的に聞けなかったのはちょっと残念でございます。

 次に、二番目の質問に移ります。

 シビアアクシデントの発生時の緊急対応体制についてお伺いをいたします。

 三月十一日の東日本大震災による福島第一原発の事故の反省点は幾つかあると思います。一つは、原子力災害対策本部において迅速な情報と専門知見による意思決定が円滑に行われなかった、あるいは、SPEEDIの情報が伝わらないなど関係機関の連携が円滑に進まなかったこと、さらには、平時から重大事故を想定した準備ができていなかったことなどが挙げられます。

 オンサイトの原子炉の鎮圧とオフサイトの住民避難誘導などの両面での体制の強化が必要だということは、皆さん同じ御意見だというふうに思います。関係機関の役割分担や、特に、政府内での防災体制の中核となる機関を明確に定めることが不可欠でございます。

 そこで、衆法提出者の皆さんにお伺いをいたしますが、自公案は、本会議での趣旨説明によりますと、オフサイトの対応については、政府、すなわち原子力災害対策本部が責任を持ち、規制委員会が、これに対して職員の派遣、専門的知見の提供等で協力する立場と説明をされました。にもかかわらず、規制委員会は、設置法上、原子力事故による災害の防止の事務を所掌し、原災法上も、関係機関の役割を定める災害指針の策定、オフサイトセンターなどの指定など、オフサイト対策のさまざまな事務を所掌をいたします。

 この二つは大きな矛盾があると考えますけれども、自公案でオフサイト対策の中心となるのはどの機関になるのでしょうか。

江田(康)議員 矢崎先生の御質問にお答えいたします。

 自公案でオフサイト対策の中心となるのはどの機関かということでございますが、原子力災害が発生した場合の緊急時におきましては、そのオフサイト対策の中心となるのは、原子力災害対策本部であります。これは自公案も政府案も変わらない。

 自公案では、原子力災害対策本部は、原子力施設外のオフサイトに関する事項全般についてその事務を遂行するわけでございますが、原子力委員会からの必要な助言を受けてオフサイト対策を行うことになる。他方、原子力規制委員会は、原子力災害時にも、独立した役割と責任を持ってオンサイトの専門技術的な事項にかかわる事務を行います。オフサイトはその助言を行って連携を図る。

 その上で両者の緊密な連携協力は、これは不可欠でございますので、原子力災害対策本部の副本部長として原子力規制委員会の委員長が加わって、その職員の派遣も想定している、そういう役割分担であります。

 以上です。

矢崎委員 今の説明を伺うと、平時の場合は規制委員会、有事の場合は政府というふうな認識にも聞こえますけれども、いわゆる自治体とか防衛とか警察を含む関係省庁との調整について、平時は誰が行うのか。有事は今のお話ですと政府ということだと思いますが、平時と有事で責任者が変わってしまうという、そうするときちんと対応ができないのではないかというふうに懸念をしますけれども、いかがでございましょうか。

柴山議員 お答え申し上げます。

 緊急時の際の対応については、関係省庁との調整を含めて、あらかじめ定められていたことを実行するのが原則なわけです。このことは、国会事故調の中間報告におきましても、大規模災害に対応できるだけの体制を事前に整備をして、関係省庁や関係地方自治体と連携して、関係組織全体で対応できる体制の整備を図る必要があるとされているところなんですね。ですので、関係省庁との調整、まずこれは平時にやっておかなくてはいけないということなんです。

 私たち自公案におきましては、平時におけるそういった調整は原子力規制委員会が行うこととなります。そして、有事における関係省庁との調整については、オフサイトに関する事項全般の事務を遂行するのが原子力災害対策本部ということで、ここがメーンになるということは、御指摘のとおりであります。

 ただ、今おっしゃったように、この二つが違ってだめなんじゃないかということは、私はそれは当たらないと思っております。関係省庁との連絡調整において、政府案を見てみると、政府案でも、平時においては環境大臣が所掌することとなっておりますし、緊急時においては原子力災害対策本部長、すなわち総理が行うということになっているわけなんです。すなわち、原子力規制委員会か環境大臣かの差はあれ、政府案と我々自公案において、そこのところに本質的な違いがあるわけではありません。

 むしろ、平時のそういった防災連携について、担当大臣がいるかどうかでそういった事務の実施に差が生じるわけではないと思っておりますので、そこはやはり、専門家たる原子力規制委員会がそこをしっかりとグリップをするということでよいのかなというように思っております。

 むしろ、私から逆に政府案に対して、平時と緊急時の違いをちょっと過度に強調し過ぎじゃないかなと思うのは、まさしく、原子炉の炉周りの規制の部分なんですね。ここは再三我々も本会議などで再三答弁していますけれども、平時においても、また緊急時においても、そういった原子炉周りの規制機関について、独立性を持った、やはり権限のある者が圧力を受けない形で行わなければいけない。これは、二〇一一年六月のIAEA国際専門家調査団の報告書にも書かれている部分なんですね。ですから、我々の案は、そういった原子炉周りの技術的な事項については、平時においても緊急時においてもこの委員会がやるということで一貫をしているんです。

 ただ、今おっしゃったような形での防災連携、これについて、やはり平時においては専門的な観点から委員会がやる、政府案は環境大臣のもとでやる、そして、緊急時においては本部長である総理が災害対策本部長として必要な指揮をとる、こういうような形で整理をしている部分であります。

 以上です。

矢崎委員 ありがとうございました。

 緊急時、有事の際に、総理、政治の責任者の権限がオフサイトの方に及ばないということがないように、それをどうやって知恵を絞ってこの法案に盛り込んでいくかということが大事だというふうに思います。

 東日本大震災によって宮城から茨城県にかけての太平洋沿岸の原子力発電所は、軒並み津波に襲われました。福島第一原発は、メルトダウンから水素爆発に至りました。その一方で、女川原発、そして東海第二原発は、瀬戸際で危機を乗り越えたと言われております。

 女川原発第一号機については、東北電力の副社長が、十二メートルの津波想定という意見に対して十五メートルを主張して、十四・八メートルの高台に建屋など主要施設を建てた。それが女川原発を救ったのだというようなことが、東京新聞など、美談で語られています。

 しかし、政府の事故調の中間報告によりますと、実際は、津波のしぶきは堤防を越えて、補機冷却海水ポンプは使えなくなりました。二号機では、原子炉建屋地下三階に浸水をして、非常用ディーゼル発電機三台中二台が停止した。一台が生き残った。これは単なる運がよかったということだというふうに私は思います。

 東海第二原発についてもさまざまな美談が語られております。茨城県の津波浸水想定区域図に基づいて、震災の二日前に防波壁の関連の工事が終了した、これが大きな事故に至らなかった理由だということが報じられておりますが、しかし、これも実際は違うようでございます。

 政府の事故調中間報告によると、工事の一部は震災が発生したときに完成していなかった。たまたま、工事をしていた作業員が、この穴も塞ごうよということで、非常用ディーゼル発電機につながる穴というか空間を塞いで、それが海水が入るのを防いだという話もございます。たまたま運がよかったとかいうことでは片づけられない問題だというふうに思います。

 私は、四十年を限度に、閉められる原発はできるだけ早く廃炉にしていくことが必要だというふうに思います。そのためには、環境の整備を急ぐ必要があります。そして、そうした姿勢を政治が目に見える形で国民に示していかなければ、今後の原発政策に対する理解は得られないというふうに思います。

 そのことを強調させていただきまして、質問を終えたいと思います。

 どうもありがとうございました。

生方委員長 次に、工藤仁美君。

工藤委員 民主党の工藤仁美でございます。きょうは、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 昨年三月十一日の福島第一原発の事故から、間もなく一年三カ月がたとうとしております。今、原子力行政の規制にかかわる法案の審議を始めることになりまして、直接的に被害を受けた被災地の皆さんはもちろん、多くの国民の皆さんが重大な関心を持ってこの議論を見守っておられます。

 私の地元の事務所それから会館の事務所にも、この数日、たくさんのファクスや電話が入りました。私もそういった国民の思いを強く感じながら質問に立っておりますので、御答弁の方、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、福井県の大飯原発の再稼働について細野大臣に質問をいたします。

 この法案審議と時を同じくして、野田総理は、福井県の大飯原発の再稼働をまさに判断されようとしておられます。昨日は、細野大臣が福井県知事にお会いになられたというふうに聞いております。

 私は、民主党の原発事故収束対策PTにも出席して、再稼働には慎重に慎重を期すべきという四月十日付のPTの緊急提言をまとめる議論にも加わっておりました。夏の電力供給不足を予想されての再稼働の御判断とは考えますけれども、国民の中にも、原発の再稼働については反対という意見も多くあります。

 そこで、細野大臣、この大飯原発の安全性の評価というのは、今回提出された法案の考え方からして、問題がないというそういう御判断なのか、ぜひお話しいただきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

細野国務大臣 政府としても、原子力の安全の問題については、慎重にも慎重を期して判断をしてまいりました。

 他国の例でありますけれども、旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故、あれだけの事故がありましたが、ソ連は、その後、原子力発電所をとめてはおりません。アメリカではスリーマイルアイランドの事故がありまして、その後、新しい原発の新設は確かに行われませんでしたが、他の原発は動かし続けました。

 そうした過去のさまざまな国の取り組みと比較をしても、我が国は、今全ての原発がとまっているというこの現状において、まさに慎重に判断をしてきた結果があらわれているというふうに考えております。

 今回、政府が、特に四大臣として判断をいたしました三つの基準というのは、特に基準一と基準二で、東京電力の福島原発を襲ったのと同様の事象が起こったとしても、炉心が損傷する、そういう状況には至らないということについて、さまざまな専門家の議論を一年以上にわたって積み重ねて、そして判断をしたものであります。

 ただ、一方で、安全にはこれは絶対はありません。したがいまして、これまた専門家の皆さんの議論を経て、三十項目、将来的にしっかり確保すべき安全の考え方というのがありますので、それをできる限り前倒しをして、そして、現状において大飯についても反映をしたのが基準三ということになります。前倒しをいたしました。そのことによってさらに安全性が高まったというふうに考えております。

 なお、それでも申し上げますが、三十項目全てが達成されたとしても、安全に絶対はありません。ですから、常にその上をしっかりと目指して安全性を高めていくということは極めて重要である、そのように考えております。

 今回提出をしている政府法案との整合性で申し上げるならば、新しい知見ができたときにはそれは反映をするというバックフィットの考え方をとりますが、法律ではまだできておりませんが、さまざまな新しい今回の事象を受けての知見というのが出てきておりますので、それを取り入れて炉心損傷に至らないことを確認をしたという意味では、そのバックフィットの発想に立って新しいさまざまな取り組みをしているという意味では、整合性があるものであるというふうに考えております。

工藤委員 大臣、ありがとうございました。今の大臣の御答弁を聞きましても、なおのこと、この法案審議、与野党でいい結論を得るよう、私も議論に参加していきたいというふうに思います。

 大飯原発の再稼働については、この質問については終わります。

 次に、規制のための組織体制のあり方について、内閣提出法案と衆法の提出された法案の中身では、争点になっております、衆法では規制委員会、そして内閣提出法案の方では原子力安全調査委員会ですか、この点について質問をいたします。

 先ほど来、前の委員からも独立性ということについて質問がありましたけれども、重なる面もあると思いますが、非常に重要な点ですので、ぜひとも私の質問に対しても、衆法提出者の先生方、よろしく御答弁をお願いいたします。

 先日、五月二十九日の衆議院本会議での塩崎先生の趣旨の説明では、新しい原子力規制組織は、国際的な規範であるIAEAの安全基準にのっとり、平時、緊急時のいかんを問わず、原子力推進官庁からの独立はもとより、他の省庁や政治から独立していること、権限、人事及び予算の独立性が与えられた専門技術的な規制が行える規制機関とすべきこととして、さらに、職員についても全員にノーリターンルールを適用しと述べられ、そして、そのためにはいわゆる三条委員会とするしかないというふうに結論づけておられます。そしてまた、規制委員会の下に規制庁を置くとしていますけれども、この規制庁は、事務局を規制庁と呼ぶという位置づけになっております。

 私も、原子力の利用推進と規制を担う機関というのを切り離さなければならないということは全く同じ考えであります。また、規制機関の独立性ということについては、昨年十二月末に出されました顧問会議の提言にも厳しくその点は指摘をされているところなんですけれども、しかし、今までの段階で御説明を聞いている段階なんですけれども、ここまで独立性が高いということは、非常にいい面もありながらも、その一方で、こういった独立した委員会がやっていることに対して一体誰がチェックをするのかという、非常にそこのところは疑問でございます。

 他の行政機関からも政治からも独立して職権を行使できるということになると、委員長それから委員の任期中、言葉はあれなんですけれども、いわゆる暴走をしたような場合、誰が一体それをとめることができるのか、そして、政治からも独立というふうに説明をされておられるので、国会もこの規制委員会が行うことについて関与することができないのかという点について、ぜひ御説明をお願いいたします。

    〔大谷(信)委員長代理退席、委員長着席〕

江田(康)議員 工藤先生の質問にお答えさせていただきます。

 国会は独立性に対してどう関与をできるのかということと、委員会を監視する機関が必要ではないか、その旨の質問だったと思います。

 この原子力規制委員会については、委員長や委員の任命をこれは国会同意人事としておりますことが一点、そしてまた、政府特別補佐人である原子力規制委員会の委員長等への委員会質疑等を通じて行政監視を行う、これらによって国会の関与は図られるとしております。

 また、この原子力規制委員会は三条委員会として設置されますので、委員長、委員の職権の独立行使が認められる以上、その職務遂行をチェックするための特別の第三者機関を新たに設ける必要はないと考えております。必要なチェックは、先ほど申しましたように、国会による行政監視により行われることになります。

 以上であります。

柴山議員 今、提出者江田議員から御説明があったとおりなんですけれども、ちょっと補足をさせていただきますと、全くチェックができないのかというところに関して言えば、今回、私たちが提出している法案の九条に罷免の条項がございます。

 九条二項におきまして、「内閣総理大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、あらかじめ原子力規制委員会の意見を聴いた上、」これはデュープロセス上の要請ですね、「意見を聴いた上、両議院の同意を得て、これらを罷免することができる。」このような形で、全くチェックができないということではありません。

 以上です。

工藤委員 ありがとうございました。

 次に、細野大臣にお伺いしますけれども、政府提出法案の原子力安全調査委員会なんですが、これは、原子力安全調査委員会設置法案の第三条で原子力安全調査委員会の所掌事務というものが規定されておりますけれども、その内容を見ますと、その役割というのは非常に重要となっております。しかし、この重要である役割を果たすためにも、安全調査委員会の委員の人選が適切になされなければその役割は果たせないものと私は考えております。

 先ほど来、細野大臣より、人事についてはなかなか答えることができないというようなお話がありましたけれども、私は、人事というのではなくて、原子力安全調査委員会の委員の人選の方針というものをぜひ細野大臣にお伺いしたいと思います。

 といいますのは、つい最近も、毎日新聞などでは大きく報道されておりますけれども、これは内閣府の方の安全委員会の、何といいますか、非常に隠蔽的な体質の中での村会議みたいなものについて開催されたというような記事も載っておりまして、そういったことがあるとすれば、なかなか原子力規制行政全体に対する国民の信頼というものは、それは一部の事象かもわからないんだけれども、規制行政全体がやはり何か国民の目から見てうさん臭いといいますか、不信感を持たれるようなことになろうかと思いますので、そのためにも、その委員の人選というのは非常に重要だというふうに思っております。

 ですので、ぜひ、大臣のその人選のときの方針についてお伺いしたいと思います。

細野国務大臣 工藤委員から今、重要な御指摘をいただいたというふうに思います。

 原子力安全調査委員会の役割というのは、規制機関が本当に国民から見てもきちっと機能しているかチェックをし、そして、それこそ万が一にも事故が起こった場合には、そうした対応がなされているかというのも確認をする、そういう場でございまして、自公案、私もしっかり真摯に受けとめさせていただきたいと思っておりますし、柔軟にと思っておりますが、このチェック機能がどのように果たされるのかというのは、ぜひ国会でも御議論をいただきたいというふうに思います。

 私は、今回の東京電力の福島第一原発のこれから三十年、四十年にわたって行われる廃炉がきちっとなされるか、さらには事故原因が何かということも含めて恒常的にしっかりと見られるような形というのは、やはり何らかの形で必要ではないかというふうに思っておりますので、ぜひそういった御議論をいただければ大変幸いだと思っております。

 委員会の委員でございますが、法案の中では、要件として「科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者」となっております。すなわち、中立的な立場から科学的、専門的な知見に基づいて判断できる有識者であることが必要であります。

 ただ一方で、私も原子力の専門家と随分この間さまざまなやりとりをしてまいりましたが、原子力の専門家といっても非常に多岐にわたりまして、それぞれの専門分野ごとにやはりかなりの違いがあります。

 そこで、例えば一例でありますけれども、原子力の分野はもちろんでありますが、耐震の分野の専門家、さらに危機管理の専門家、そして、放射線障害というのはこれはまた別の専門でありまして、放射線防護の専門家、そういった分野からバランスよく配置をしなければそうした委員会というのは機能しないのではないかというふうに思います。

 この調査委員会も独立をさせますが、独立をさせたときに、何かそこに万能な人がいて全てやってくれるというものでは、なかなかやはりこれはそういったふうにはなりにくいですから、そこも含めて、どういった組織であれば機能するのかという議論は、これは、我々が出している原子力安全調査委員会はもちろん、自民党・公明党案で出てきている原子力規制委員会も含めて、そこは、あり方そのものに踏み込んだ議論も国会では必要ではないかと思います。

 なお、特に、原子力事業者の従業員など原子力安全行政に利害関係を持つ方は委員には適さないと考えておりまして、そこは、明確に法律の中で欠格条項として位置づけることとしております。

工藤委員 今、細野大臣より、委員の人選についても、非常にきめ細かく、御丁寧な答弁と、そして考え方を持っておられるということが私にも理解できました。

 しかし、あえてさらに申し上げさせていただきますけれども、ぜひこの委員の人選に当たっては、今現在利害関係がある人はもとより、昨年三月十一日まで、いわゆる原子力村に属する、原子力の利用推進を標榜してきたような学者、研究者、評論家、官僚出身者、また、原子力で利益を得ていた事業者の関係者などなど、そういった方は決して選んでいただきたくないということを私は強くお願いをいたしたいと思います。

 そうでなければ、その委員会でのいい議論もないと思いますし、また、やはり、どういった方が人選されたかというところを国民は政府の考え方を判断する一つの基準として注目しているのではないかというふうに思いますので、ぜひともそこはよろしくお願いをしたいと思います。

 次に、規制の具体的内容にかかわることについて質問をしたいと思います。

 今回の政府提出法案の中で、原子炉等規制法と電気事業法の改正も同時に行われるという法案になっておりますけれども、その二つの、原子炉等規制法と電気事業法改正について質問いたします。

 原子力施設全体の安全規制について今まで電気事業法それから原子炉等規制法と分かれていたものが、今回の法の改正によって、原子力施設全体の安全規制について原子炉等規制法に一元化し、そして、新たに法案として提出しております規制庁が責任を持つ、こういった内容になっているというふうに理解しておりますけれども、そのような理解でよろしいんでしょうか。

櫻田政府参考人 御説明申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今回の法案におきましては、原子炉等規制法と電気事業法の改正を行いまして、これまで二つの法律で行っていた原子力施設に対する規制を一元化する、それを新しく設置されます原子力規制庁において運用する、こういう形にしてございます。

 その中身でございますが、今、原子力安全規制におきましては、公共の安全の確保上特に重要な設備につきましては、国が工事計画の認可を行い、使用前検査で確認をする、また、運転開始後においては定期検査でこれを確認する、こういう仕組みになってございます。

 こういった対象の設備というのは、原子炉の周りとか、非常用炉心冷却設備とか、そういった主要な設備になってございますが、この対象になっていない機器につきましては事業者が保守管理を行う、この保守管理活動が適切に行われているかどうかについて国が確認をする、こういう仕組みになってございます。

 先ほど申し上げましたように、従来はこうした規制を、原子炉等規制法と電気事業法、この二つの法律によって実施してきたところでございますが、今回は法案によって一元化して、原子炉等規制法一本で規制をする、こういう形にしてございます。

 ちなみに、その対象についてこれまでと変更があるということではなくて、二つの法律を一元化するという、そういう法改正を御提案をしているということでございます。

工藤委員 昨年三月十一日の福島第一原発の大事故の直後は、私もテレビで保安院の方の説明を、よく保安院の方が紙に書いた原子炉の絵というんですか、図柄を持って説明をされていたのをずっと見ておりましたし、また、党内の会議においても、そういった図面、原発の絵を見ながら説明を聞いていたんですが、事故後かなりたってから実際の写真が公開されまして、私は北海道なんですけれども、地元にも泊原発三基ありますので、それまで私は外からは原子力発電施設というものは遠目には見たことがあるんですけれども、その内部には入ったことがありませんでしたので、そういった絵をずっと見ているうちに、何か原子力発電施設というのは物すごく単純なものというふうに勘違いをしていたんですが、しかし、実際に大事故を起こした内部の公開された写真を見まして、これは全然自分が思い描いていたイメージとは違うものだと。

 それは、原子炉本体はもちろんですけれども、電気関係の大小さまざまな機械がたくさん入り組んでおりまして、そして、その機械類を膨大な管と線がつないでいるという、そこが大事故を起こしてぐちゃぐちゃになってしまったという映像を見まして、それで、そういった原子力発電施設全体の安全性を求める上での点検、管や線など、細々したねじ、くぎに至るまで、そういったものがちょっとした破損をすることによって放射能に汚染された気体や液体などが外部に漏れるわけですから、そういった細々した設備、施設全てにおいて厳しくチェックをしていくことが求められていると思うんですけれども、それを規制庁が責任を持つというふうに今回の法改正でなるということなんです。

 しかし一方で、検査のやり方ですね。例えば民間事故調などでは、その報告の中で、規制を厳しくすると、それは書類の数がふえるだけではないか、本当に実効ある検査の仕方になっているのかというような民間事故調の指摘もございますし、やはり今後は、国民の安全のために、そして安全規制を高めるためにも、検査や審査というものが形骸化していない、そしてさらに、効率よい、そういった審査、検査のやり方というものが求められるのではないかというふうに思います。

 このような民間事故調、またさまざまな分野からの指摘を含めて、原子力発電施設全体の安全のための規制の実効性と効率性を高めるために今後どのような取り組みを強化していこうというふうに考えておられるのか、ぜひお聞きをしたいというふうに思います。

細野国務大臣 原子力の安全審査でありますが、事業者の皆さんともこの間、私も中に入り込んでおりましたので若干議論いたしましたけれども、本当の意味での安全を高めるというよりは、形式に落ちて、形式ばかりがどうも目立つ部分であるとか、また、ペーパーワークが多くて膨大な書類があってそれに忙殺をされているとか、そういう指摘があるのは事実でございます。

 今回、規制を強化をすることになるわけですので、本当にしっかりやらないと、逆に形式ばかりがまた膨らんで、実質的な部分が空になるということにもなりかねないというふうに思っております。

 そこで、どう現場を重視した審査、検査、これをやっていくのかということについて、各国からもぜひさまざまな知見を集めて、我が国として最善のものをやっていきたいというふうに思っています。

 NRCの関係者なんかとも話をしましたけれども、それこそ現場の事業者よりも詳しく、しっかりと急所を捉えて物事を判断できるような検査官、これを育てていかなきゃならないわけですね。これは並大抵のことではないというふうに思っておりますが、研修やOJTはもちろん、国際的にも通用するような人材をつくることによりまして、実質的な意味で安全を高めることができるような審査体制をつくっていかなければならないと考えております。

工藤委員 私の質問に対して細野大臣の本当に熱意のある御答弁をいただき、感謝をしております。

生方委員長 時間は終わっています。

工藤委員 時間がなくて一つ質問ができませんでしたので、衆法提出者の皆さん、申しわけありません。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

生方委員長 次に、田中和徳君。

田中(和)委員 自由民主党の田中和徳でございます。

 政府提出の原子力の安全の確保に関する組織及び制度を改革するための環境省設置法等の一部を改正する法律案及び自民党並びに公明党提出の衆法、原子力規制委員会設置法案外二案の四法案について質問をしてまいります。

 私の感ずるところ、これは、今審議が行われております社会保障と税の一体改革の法案と同じぐらいに、それ以上に重要な法案で、まさに私たちにとって非常に重い責任がある、このように認識をしております。

 まず委員長に申し上げます。

 我が国は、未曽有の原発事故を起こした国として、しっかりと事故の反省と教訓を反映し、発想を根本から転換する原子力規制組織の抜本的改革を行わなければなりません。私自身、自民党の議員ということでございまして、長年にわたり政府・与党の立場にあったわけでして、原子力発電所の行政も事業も推進してきた立場でございます。当然、深い反省がなければならないと私自身肝に銘じてこの質問にも立たせていただいているところでございます。

 そのためには、これから審議する法案の審議時間は相当なものになると思われます。会期も、今の国会の状況を考えれば延長ということになるのではないかと、このように私も思っておりますので、そういう状況で頑張ってまいりたいなと思っております。六月中に出る国会事故調の最終報告も十分に織り込んでいくことができればなと、こういう思いも持っております。

 不安と不満、まさしく憤りが募っておりまして、国民の原子力に対する目は極めて厳しくなっています。徹底的に議論を尽くしても、それでも、国民、とりわけ原発立地自治体の地元の皆さんの不安は解消されないかもしれない、こういう思いでございます。

 日本が今回の事故から学んだ教訓をしっかりと生かすために、法案審議のスピードよりも大事なことは、日本の原子力規制の仕組みを根っこから大転換することだと思います。看板をかえさえすればよい、こういうわけにいかないわけでございます。

 参考人の聴取についても、とりあえず次の定例日の六月八日の予定が決定しましたが、例えば、組織論と緊急時対策、予算と人材育成対策、新たな原子力規制策など、今後の原子力規制を託す機関についてしっかりと有識者の意見を聞かなければならないと思います。おのおの最低でも一日ずつ時間をかけないといけないような重要なテーマではないかとも思います。

 しっかりと中身を詰めた議論を行うため、十分な審議時間と、参考人聴取等が行える機会をしっかりと確保していただくことを委員長に特にお願いをしておきたいと思います。

 また、重要広範議案でございますので、委員会審議に野田総理大臣の出席を強く求め、ここに申し入れをさせていただきたいと思います。

 委員長、よろしくお願いいたします。

生方委員長 田中委員の今の御指摘をしっかりと受けとめて委員会運営に当たっていきたいと思います。

田中(和)委員 それでは、どうぞひとつよろしくお願いします。

 細野大臣に申し上げます。ここは環境委員会の場でございますけれども、原発事故担当大臣としてもお尋ねをしてまいりますが、環境大臣の立場とあわせて、双方の立場でお答えをいただければと思います。

 まず大臣にお聞きします。あなたは、この閣法の提出者として対案の自公案についてどのような評価をお持ちですか。また、修正協議にどのような姿勢で向かおうとなさっているのか。まずお聞きをいたします。

細野国務大臣 田中先生におかれましては、環境行政を常に大変牽引をしていただいておりますし、この原子力規制のあり方についても、野党側の責任者として対応していただいております。心より感謝を申し上げます。ありがとうございます。

 出てきております自民党・公明党案についてということでございますが、私は政府案を出している立場でございますので、政府案が我々として出しているベストのものだというふうに考えてはおりますが、一方で、政府案と自公案というのは、共通する部分も非常に多いというふうに感じております。

 それは、推進側からの独立という考え方はもちろんでありますけれども、できる限り規制組織を一元化をするという考え方、そして、規制のレベルをやはり上げていくというこの方向性についても、一致をする部分が非常に多いというふうに感じております。

 そういう中で、組織のあり方として、我々は原子力規制庁というのを提案をさせていただいている一方で、自公の皆さんは原子力規制委員会というのを提案されていて、そこの組織のあり方がやはり若干違うところがあるということでございます。

 そこで、私も原子力規制委員会というものそのものを否定的に捉える考えはございません。独立性をしっかりと高めた形で規制を強化できるということであれば、それも一つの考え方として十分に傾聴に値し得るし、考え得るというふうに私は思っております。

 一点だけその部分について懸念を申し上げると、どう危機管理と合議制の独立した委員会というのを両立をさせていくのか、ここについてぜひ国会でも御議論をいただきたいし、各党でもさまざまな考え方のすり合わせをしていただければ大変幸いだというふうに思っています。

 総理の指示権の問題やオンサイト、オフサイトの扱い、きょうの議論の中でももう既にいろいろ出てきておりますが、そのあたりも含めて、ぜひお互いの考え方を一致させるような形での御議論をいただければ幸いであると考えているところでございます。

田中(和)委員 今の大臣の御発言は、私としては非常に歓迎をする。弾力的な対応をするということですが、政府案の審議が始まったその瞬間の答弁とすれば、非常に異例な御発言ではないか、このように思うんです。悪く言えば自信がないのかなと、このようにも思うわけでございまして、いずれにしても、私ども、理事として修正案の協議をするということをもう既にスタートしておるわけでございますので、責任を持って頑張っていきたいなと、こう思っております。

 大臣、きのうは福井県出張、御苦労さまでございました。六月四日、きのうの時点で、再稼働が妥当であるという原発は、大飯の三と四、四国電力の伊方の三号機ということで、この三つですね。ということなんでしょうか。そして、あとの十九の原発が保安院のチェックを今受けている。五月三十日に行われた閣僚会議で野田総理が、立地自治体の判断が得られれば、最終的に私の責任で再稼働を判断する、こう言明されまして、関西電力の大飯三号機、四号機の再稼働をいわば決断をされた、こういう流れだと思います。

 細野大臣も、原発事故担当として当然その場でいろいろな御発言もされたんだと思います。今審議をする法案が進まないから原発の再稼働に影響する、早く審議をしてほしいとの話が私のところにも随分あったんですけれども、そんなことはないような流れでございますが、どうでしょうか。

細野国務大臣 原発の再稼働の問題でありますけれども、大飯の三号機、四号機に関しましては、ことしの三月末までに、原子力安全・保安院、さらには原子力安全委員会も含めてさまざまな確認が終了いたしました。そこは、もともと規制庁の発足が四月というふうに予定をしておりましたので、その予定をされていた発足時期よりも前に最終的な専門家の確認ができたということで、それも踏まえて四閣僚として判断をしたという経緯でございます。

 一方で伊方でございますけれども、この原発について原子力安全・保安院の方での手続が進んでいるのは、先生御指摘のとおりでございます。ただ、原子力安全委員会ということに関して言いますと、その確認作業というのは進んでおりませんので、そういった意味で、四大臣として再稼働について判断をしているという段階ではございません。

 今後でございますけれども、もちろん、今も規制組織が原子力安全・保安院そして原子力安全委員会ということで現存をしておりますし、安全確認も含めてそうした機能がしっかりと果たされるのが、これが大前提だというふうに当然考えます。

 しかし、その一方で、四月以降は新しい規制機関が誕生するという予定になっている中で、どこまで原子力安全・保安院、安全・保安院はまさにその役そのものをやるべきだということで今もやっておるわけですが、原子力安全委員会が先に進むかということについては、独立した委員会でもございますので、委員の皆さんにもいろいろな御意見がございます。

 そうした皆さんの意見も踏まえながら、私としては、大飯の三号機、四号機以降の原子力発電所については、できれば、充実した審議をしていただいた上でできるだけ早く原子力の規制組織を誕生させていただいて、その組織のもとでしっかりとした厳格な判断がなされるのが最も望ましいのではないかと、そのように考えております。

田中(和)委員 大臣、実は、この修正協議も含めて時間をかけてやらなければいけないと私が今言ったばかりなんですね。一方において大飯の方におきましては、もう既に政府の方は相当な動きをしておられるわけですよね。今の答弁だけですと、ちょっと私は納得いかない状況にございます。

 もともと、関西の、関西だけじゃありませんけれども、この夏の電力不足はもうわかっていたわけですから。とっくにわかっていた。この夏、全部原発がとまればどういう状況になるかというのは、昨年、あの事故が起きた直後に、我々も含めて、専門家はもちろんのこと、みんなが議論をしていたわけですね。その後、菅さんの発言、ストレステストの問題もあって、ルールをどんどんと変えられたのは民主党、政府の皆さんなんですよ。そして、実は今日に至っているわけですから。

 ですから、今の我々の行う修正協議が調わなければこの規制庁の制度はできていかないわけですから、これと大飯の原発をリンクさせるのかさせないのか、非常に重要なことをお尋ねしているわけですから、お答えをいただきたいと思います。

細野国務大臣 大飯の三号機、四号機に関しましては、ことしの三月までの間に、政府としての、さまざまな専門家の検討や四大臣としての判断というのを、基本的には基準という意味でも終了しておりますので、この規制庁の議論と直接かかわりなく、さまざまな手続が進められるものというふうに考えております。

 ただ、一方で、福井県知事からも、さらには関西連合の皆さんからも我々もう本当に繰り返し繰り返し言われておりますのは、何とか早く原子力の新しい規制組織を誕生させてもらえないだろうかという、そういう話をいただいておるんです。

 それは、関西や福井の皆さんだけではなくて、私は福島のこともどうしても気になります。といいますのも、福島第一原発はもう発電所ではありません。あの発電所ではなくなってしまった、ダメージを受けたところをぴっちりと安全を確保する高いレベルの取り組みというのが求められるわけですが、そういう法整備がまだできておりません。

 もう一点だけ済みません、御質問とは外れますが率直にお話をさせていただくと、防災指針というのが、これが法定化されておりません。したがいまして、動いていない原発も含めて、本来はプールの中に燃料がありますから、さまざまなそれこそ自治体の取り組みというのをしっかりと我々は促していかなければならないわけでありますが、原子力防災指針が法定化されていない中で全国の自治体の取り組みも、これも十分にまだできていない部分があるのも率直に事実なんですね。

 そういったことも含めて、もちろん慎重に議論をいただいてさまざまな御検討をいただく必要があるというふうに思いますが、そういうかなり切迫した状況であるということを、ぜひそこは私の方からお伝えをできればというふうに考えた次第であります。

 大飯については、この法案審議とはまた別のところで政府としてのさまざまな手続を進めていくということでございます。

田中(和)委員 一言に言うと、非常にタイミングが悪いんですよ。

 この法案の審議を行う。本会議をやって、委員会に付託されて今始まったわけですね。これは今から私、大臣とのやりとりをしますけれども、それは全て政府・与党側に原因があるわけです、はっきり言って。そして、この一方において、関西の状況を十分知っていながら、どんどんと原発始動についての議論は遅くに遅くに実は誘導してきた。

 安全というのは当たり前なんですね。国民の不安を払拭するのは当たり前です。これはもう政府の一番の責任なんですよ。だけれども、国会軽視に映りますし、国民から見ると何かちぐはぐで、矛盾していて、何でこんなときに大飯原発の再稼働と私たちのこの重要な議案、法案の審議が重なってしまったんだろうということで、国民の皆さんによほど説明をしないと、これは大変な誤解を与えるし、今後の政治の原発行政に対しての信頼感を失う。私はこういう心配をしているわけですね。

 さて、我々野党が審議に応じられなかった理由は、大臣、何だと思いますか。

細野国務大臣 私どもは、今、行政の一翼、一つの役割を担わせていただいている立場から申し上げて、できるだけ政府が提出をしている法案を御審議をいただきたいというそういう立場でお願いをしてまいりましたが、御審議いただけなかった一つの大きな要因といたしましては、問責決議案に対する対応等があったと承知しております。

田中(和)委員 これは第一と第二がありまして、第一の方は、大臣がお出しになった一月三十一日の法案にこれは問題があったんです。

 本当に我々から見れば、これで国民の信頼が得られるのかと。三条委員会のことも含めて、独立性のことも含めて、菅直人リスクも含めて、本当にそれを反映しただけの議案、法案になっているのかと。我々が見たときに、これは問題あり、こういうことで我々も、塩崎提案者おいでですが、我が党の中では大変な危惧とともに議論をして、対案をつくるために公明党さんにも御指導いただきながら、今日あるわけですね。

 そして、我々が提出したのは四月二十日なんですよ。時間がかかってしまいました。でも四月二十日。この日に実は問責が前田、田中両大臣に可決されてしまったわけですね。

 当然、大臣としては、これだけの重要な法案を抱えているわけですから、総理に対して、この二大臣を早くやめさせてください、これだけの重要な法案を審議しなきゃいけない障害になっているんだからどうしますかということを、どのように御協議されましたか。

細野国務大臣 もちろん、私は法案を出している責任者でございますので、この法案の重要性については、総理や官房長官を初め、皆さんに累次にわたって説明をしてまいりました。また、国会の関係者の皆さん、これはもちろん与党ということもありますけれども、でき得る限り私の及ぶ範囲で野党の皆さんにも、ぜひ重要性をここは踏まえて御審議をいただきたいということで、お願いをしてまいりました。

 そういう努力はしてきたつもりでありますけれども、この時期まで審議が進んでこなかったということについては、やはり、行政、そして法律を出しているという立場でいうならば、全ては私に責任があるというふうに思っておりますので、そこは国民の皆さんに大変申しわけないという、そんな思いでおります。

 その中で、政府の中で問責の問題についてどうだったのかというそういう御質問でございますが、そこは私自身が申し上げるべき立場ではない。総理自身が総合的にいろいろなことを当然お考えになっているわけでありますから、そのことについてお考えになるのは、もうこれは総理しかおられないというふうに考えましたので、直接的なやりとりをしたことはございません。

田中(和)委員 私はもう時間の関係ではしょっていきますけれども、小沢さんの会談が終わった途端に大臣の入れかえをされた。本当に政府・与党の皆さんは国民に目を向けているんだろうかと。我々野党の方に目が向いていないのはしようがないにしても、国民の不安、これだけの事態が起きているときに、本当に国民の生活や心というものに対してどう向き合っているんだろうかと。小沢さんは民主党の一議員さんですよ。確かに有力な方かもしれません。そういうことを考えたときに、歴然とした主権者不在の姿というのが明らかじゃないですか。

 大臣は、非常に嘱望されて、お若いし、非常にシャープだといって評判もいいんです。これから総理大臣にもなられるという人が、原発の担当をし、環境省の大臣をやってこれだけの重責にありながら、なぜ野田総理ともっと膝詰めの話をしなかったんですか。問責の大臣をここまで交代ができなかった、罷免ができなかったという事実を、私は、これはこの場でしっかりと説明してもらわないといけない、このように思います。

細野国務大臣 私は、経験もありませんし非常に未熟者ではありますが、原発の事故への対応と、この原子力の新しい組織を誕生させなければならないということに関しては非常に大きな責任があるというふうに思っておりますので、その面で、総理に対しても何度もこのことの重要性は率直に説明をさせていただきました。

 その一方で、内閣総理大臣というのは、このエネルギー問題や原子力の問題だけではなくて、今議論されている社会保障と税の問題も含め、国全体のことを動かさなければならないお立場ですので、それは、本当にすさまじいプレッシャーの中で日々さまざまな判断をされているというふうに私は感じてまいりました。

 したがって、そういう総理というお立場でいろいろ御判断をされなければならないことについて、私の所掌の部分については強く申し上げます、私の担当しているところについては率直に申し上げますけれども、それ以外の全体のことを考えておられる総理に対して、今、田中先生の方から御指摘をされたようなことというのは、これは私の立場として申し上げるという立場でももちろんありませんし、これはやはり申し上げるべきものではないというふうに考えたところでございます。

田中(和)委員 大臣は、事故当時、昨年の三月十一日当時、総理補佐官をお務めでございました。総理補佐官も極めて重要なお立場ですよね。政治主導ということで政権をとられた民主党の皆さんが、先ほど来より議論がありますように、菅直人リスク、まさしく政治主導が結果として大事故、大災害を起こす原因になった、こういう議論が、民間の事故調でも、議会の事故調でも、マスコミ報道を初め各方面の話でも、国会の審議でもあったわけですよ。これは当然、大臣も重要なお役についておられたんですから、そのときの責任も重いものがありますね。

 政治主導とか菅直人リスクだとかもろもろのことが言われているんですけれども、このことについて大臣はどのように反省の弁をされるのか、また、どういうふうに思っていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

細野国務大臣 御指摘のとおり私は、事故発生当時は補佐官でございました。補佐官というのは総理をサポートする役割でございますので、菅総理に対してさまざまな厳しい御意見、さらには、事故を防げなかった、事故後の対応についても、これも万全というふうにはいかなかったということに関して総理に御批判があるということは、すなわち、全て私もその御批判をしっかりと受けとめなければならないそういう立場であるというふうに思っております。

 そのことについて率直に責任を認めた上で、菅前総理の対応についてはさまざまな御批判がありますが、当時の政府の責任者として、まさに当事者としてどう原子炉を制圧していくか、国民の生活をもとに戻すかということについては、総理としては、しかるべきときのしかるべき判断や当事者としての判断を逃げなかったという意味において、私は、そこは評価をされていい部分もあるのではないかと、そのように考えております。

 一つ一つの個別のことについてきょうここで御説明をする場面ではないというふうに思いますので、全体として申し上げるならば、菅前総理については、私は今そのような考えを持っております。

田中(和)委員 何か事故があったときの本部長は当然総理大臣ですね。これは、これから議論する規制委員会、規制庁がどんなに独立しようとも、総理大臣は一番重要な役割を果たすんですよ。その総理大臣がここまで重大な指摘を多くの人たちからされて、そして、チームワークも結局国民のために機能しなかった。これは、私たち、政権にあるときにこういうことがあったらということをやはり考えなきゃいけないんですけれども、本当に重大なことが起きている。

 ということで、ここからなんですが、今回の政府案の独立性は、我々の案からすれば非常に弱いと思うし、独立性が保たれていないように思えるんですが、大臣は、独立性を政府案はどのように保っていると認識をしておられますか。

細野国務大臣 まず、一般的に独立性と言う場合に、かつてのIAEAのIRRSなどでも指摘をされておりますが、まずは推進サイドからの独立性というのが、これがもう大前提になるわけです。その面においては、原子力の規制組織がこれまで原子力安全・保安院という形で経済産業省のもとにありましたので、そこからは完全に分離独立をするという意味では、ここは完全なる独立性を確保できているというふうに思っております。

 今、御指摘は、政治からの独立をどのように果たしていくのかということだと思います。

 政府案の考え方というのは、オンサイトのさまざまな技術的な問題については権限を原子力規制庁長官に委任をする、法的なそういうことになっておりますので、そこで独立性について確保するという、そういうたてつけになっております。

 加えまして、委員会を設けましてそこでチェックをするという役割も果たしますので、そこで独立性をさらに補強するというそういう考え方に立っておりまして、その面では、最後の総理の手段としての指示権というようなものについては、残すという考え方をとっておりますが、それは極めて例外的に行使をされるべきものというふうに位置づけられておりますので、政治からの独立性という観点に関しても、政府案は確保できているというふうに考えているところでございます。

田中(和)委員 衆法の提出者の方にお尋ねをいたします。

 今、大臣から答弁もありましたけれども、私は、手前みそというのか、自公案こそ、この衆法案こそ独立性が保てる、政府案よりもはるかにそれはちゃんとしていると思っておりますけれども、ひとつ御答弁を願いたいと思います。

塩崎議員 ありがとうございます。

 今、細野大臣から、政府案について独立性があるというお話でございましたけれども、まず第一に、長官人事、これは閣議決定でありますから、結局政治の影響を受け、そしてまた、環境大臣の任命でありますので、逆に言えば罷免もできるということで、極めて不安定な形で政治的な影響を受けるということは変わりがないということでありますから、形だけ、経産省の下にぶら下がっていた保安院が環境省の下に来たということでは、完全に独立というお言葉をさっき大臣は使われましたけれども、それはもう全く違うし、本質は何も変わっていない、第二保安院だ、こういうふうに申し上げているわけであります。

 ノーリターンルールについても、またいろいろこれから議論があると思いますけれども、管理職以上の本当にごく一部に限られているということで、結局、今の政府部内にいる人材を考えれば、いわゆる推進官庁から来るということが多いわけで、そこにまたリターンしていくということであれば、これはもう独立がない。

 結局、今までの原子力村というのは何かというと、原子力のことは詳しいけれども、安全を軽んじて推進の方を優先した、これが原子力村の定義だろうと私は思うので、それも何も変わっていない。ですから、原子力村のお引っ越しということだろうと思います。

 それから、緊急時については、先ほど限定的にという話がありましたけれども、法律上は、専門技術的な領域に至るまでオンサイトのことについて口が出せるというふうに本部長に権限を与えているということでありますから、これも独立性がないということで、言ってみれば、最終的にIAEAの安全基準が言っているのは、独立した規制上の判断と決定が担保されていないといけないということでありますけれども、ほとんど何一つと言っていいほど担保されていないということだろうと思います。

 それに対し我々は、ちゃんと三条委員会でありますから、今のような人事の面も、国会同意人事の後罷免をされないという身分保障を与えられるということであり、権限も人事も予算も、そしてまた、原子力事業者からの独立は当然ですけれども、他の行政機関あるいは政治全体からの影響というものにも独立性を保てるということであります。

 ノーリターンも、我々は、上から下まで原則としてこれはノーリターンを適用することによって、一つは独立性、もう一つは、その中できちっと育てるという意味においての人材育成の独立性というものも確保しているということであります。

 それから、災害時も、これは先ほど来少し議論になりましたけれども、技術的な事項についてはあくまでも規制委員会が決めるということで、本部長からの指示は受けないということでありますし、それから大事なことは、他のいろいろな機関との緊密な協力をもって、ばらばらな今回のようなことではなくて、やはり一体的に事に当たるということで、我々としては、委員長を副本部長として原災本部に入れるという形で貢献をし、なおかつ、連携をするためにそういった形にとっておりますし、いろいろなレベルにおいてインプットあるいは人材派遣というものを委員会からしていこう、こんなふうに思っております。

 言ってみれば、政府の方は、形は独立したかのように見せながら、実は独立をしていない。我々は、実質的にも形式的にも独立をさせたということでございます。

田中(和)委員 政治の独立についても後ほどちょっとお聞きしたいと思いますが、今の御答弁の続きをと思っております。

 自公案も、結局政府案もそうですけれども、原子力安全規制組織というのが新しく生まれるにしても、当初は、原子力安全・保安院だとか原子力安全委員会だとか、今まで原子力安全を担った現行の行政組織の職員が横滑りをする、こういうことがやはり国民の目から見れば、仕方がないという一面、何となく箱の入れかえみたいな話で、箱の中身は一緒だ、こういう批判が出ておるのは当たり前のことだと思うんですね。

 これをどうするか、国民の信頼をどうやって確保するのか、こういうことは本当に、当初、スタートのときに一番重要なことだと思うんですね。

 また、職員の皆さんもちょっと大変な話だと思うんですよ。自分たちがそういう目で見られているんだという一方で、本当にどうしていいのか、何をどう変えていいのか、これはなかなか難しい話だと思うんです。

 提出者の方から先にお話を聞いて、大臣からも、その点どのような制度設計を考えているのか、特に、出身官庁に関係する再就職をとにかく国民に疑問を持たれない、こういうことは大変な難しいことではあると思うんですが、御答弁を願いたいと思います。

江田(康)議員 田中先生の御質問にお答えいたします。

 先生御指摘のとおり、原子力規制委員会の独立性を確保するために重要なことは、原子力安全規制にかかわる者が原子力推進官庁や事業者に属する者から影響を受けることのないように制度的に担保されることが大変に重要であります。そのための措置がいわゆるノーリターンルールということであります。これによって原子力規制庁の職員は、原子力事業者や原子力利用の推進官庁からの不当な影響を受けることがなくなるものと考えられます。

 また、御指摘のように、例えば、新組織に配職後に退職を迎える者が原子力関連以外も含めた出身官庁の関係団体や関係企業に再就職するようなことを認めるのであれば、出身官庁からの影響は免れないことになります。

 そこで、自公案においては、原子力規制庁の職員について、その職務の執行の公正さに対する国民の疑惑または不信を招くような再就職も、厳として規制することとしているところでございます。

細野国務大臣 田中先生の方から最後に御指摘をされた再就職については、極めて重要であるというふうに考えております。国民の疑念を招くことがないよう、国家公務員法に基づく再就職のあっせんの禁止、利害関係企業などに対する求職活動の禁止、再就職者による働きかけの禁止などの規制が既に設けられておりますので、規制庁についても、特にこれらのルールにのっとって厳格に対応していく必要があるというふうに思っています。

 この面で国民の疑念や不信を招くような事態が起これば、これは原子力の規制、安全に対する信頼を非常に大きく傷つけることになりますので、そこはしっかりとやっていく必要があるというふうに思っております。

 それと人材に関してでございますけれども、私は、しっかりとした人材を確保する上で、鍵は採用にあるというふうに思っております。

 採用する組織でないと人を育てることができません。内閣府の特命担当大臣も昨年の六月からしておりまして、かなりの数の内閣府の組織に私はかかわりましたが、その多くの組織では採用ができておりません。そうなりますと、結局は借り物の人材でやっていかなければならないという事態になるわけですね。

 内閣府のもとにあるさまざまな組織の中で、きちっと採用ができていて、そこで人事のマネジメントができているのは、これは公正取引委員会ぐらいではないかと思います。公正取引委員会がそういうことになるまで一定のやはりいろいろなプロセスがあったのも含めて考えますと、原子力の新しい規制組織でしっかりと採用して人を育てるということを、できるだけ早くしていかなければならないというふうに思います。

 確かに、先ほど、提出者である塩崎先生の方から、ノーリターンルールについて政府案というのは限定的だという御批判がありましたけれども、当初は、有為な人材を集める方法として課長職以上ということで限定をするという判断をいたしました。

 ただ、中で人材を育て採用し、きちっとマネジメントをやり切ることができれば、私はしっかりとした規制組織ができるというふうに思っておりまして、そこに責任を持って対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

田中(和)委員 政府案は経産省から環境省に所管官庁を横滑りさせるだけで、もとより、十分な縦割り解消とか独立性を期待ができづらい、このように私は思っております。

 出身官庁からの独立性をいかに確保するか、また、出身官庁に関係する再就職についても、先ほど申し上げましたけれども、独立性の確保のためにも重要なことがたくさんございますけれども、そういう中で私は、この部分、難しいにしても、相当きちっとしていかないといけない、このように思っております。

 ノーリターンルール、キャリアパスについてちょっとお尋ねを自公の衆法提出者に申し上げますけれども、先日の本会議の質疑では、ノーリターンルールについて、政府の考え方と自公案の違いが浮き彫りになったというところがたくさんございました。

 自公案は職員全員にノーリターンルールを適用、また、非管理職についてもノーリターンルールを基本的に適用、こういうことなんですね。政府案の方は、昨年十月二十五日の衆議院の環境委員会において細野大臣が、「若手のときは違うところにも行っていろいろなそれこそ修業をしてきた方が人材は育つと思う」と御答弁をされておられますけれども、非管理職についてはノーリターンルールを適用しない、こういうことになっています。

 ノーリターンルールを徹底すると、意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念されると政府は言っておりますけれども、自公案提出者としてはどのように考えておられるのか、何か経過措置が設けられているのか、お尋ねをいたします。

吉野議員 お答え申し上げます。

 ノーリターンルールを徹底すると優秀な人材が集まらないという政府側の考え方ですけれども、これは全く逆であります。

 国会事故調の論点整理の中でも書かれております。規制当局に行くことは、ある意味で腰かけ意識、そこのポストを踏まえて次に出世していく、そういう意味で本当に安全文化をつくっていくというその志、これが欠けている、このように指摘をされております。

 こういうことを踏まえると、他省庁の組織の論理からきちんと独立をして本当に原子力の安全というものを考えていく人材、これが一番大事なわけであります。それを徹底していくのがこのノーリターンルールである、私たちはこのように考えているところです。

 さて、経過期間です。

 確かに、規制委員会に入って適性問題等々ございます。私たちは三年から五年の経過期間を考えております。この経過期間を過ぎて本当に残った者、志のある者が、規制委員会、規制当局に入るわけですから、本当に原子力の安全をきちんと心から考えていく、そういう有能な人材が集まる、このように思っているところです。

田中(和)委員 吉野先生の大変力強い説明ではあったんですけれども、やはりよそに行かれないということになると、何となく我々から考えると、心配する向きもあるんじゃないかな、お給料の面だとか待遇の面でもよほどやはりきちっとしてあげなきゃいけないんじゃないかな、このようにも思うわけですね。

 また、事故調が五月十七日に発表した「現時点での論点整理」においても、これまで原子力推進官庁を含む役所の中でのローテーションという腰かけ意識が原子力規制組織の安全文化の醸成を妨げてきた、こういうことで指摘していますね。

 自公案では、職能に応じたキャリアパスがある人事制度を構築する、こうしておられるわけでございますが、具体的にはどんな案をお持ちか、御説明を願いたい。

江田(康)議員 職員の処遇やキャリアパスについてどういう構想をお持ちかという御質問にお答えをさせていただきます。

 先ほども述べられたとおり、自公案では、職員の専門的な知識、能力の向上を図るためのこの具体策として、国の内外の専門家の積極的な登用、また、国際機関や大学との人材交流の実施、さらには、研修体制の整備について、政府に必要な措置をとるよう義務づける規定を設けております。また、原子力規制庁の職員に関して、専門的な知識及び経験を要する職務と責任に応じて、資格等の取得の状況も考慮した給与の体系の整備そのほかの処遇の充実を図って、有能な人材が集まるように政府が必要な措置を講ずる、このように義務づけているところでございます。

田中(和)委員 アメリカでは、原子力潜水艦を持つ海軍が、原子力に関する独自の人材供給源として非常に重要でありました。また、米国NRCは、大変人気の高い職場として、米国内で一定の権威と信頼を有しております。

 我が国は、これだけの事故が起こった後ですから、なおさら、それに負けない人材確保と育成策が必要であります。NRCほか諸外国の実態等も踏まえて、衆法提出者のお考えを伺いたいと思います。

江田(康)議員 先生の、NRCほか諸外国の実態を踏まえて人材確保と育成策についてどのように考えるかということにお答えをさせていただきます。

 アメリカの政府職員に対するアンケート調査によりますれば、NRCの職員については、能力管理や仕事の満足度において高い満足度が得られている。そして、職員のNRCへの評価が高い理由の一つは、自分の専門性に合った仕事が行える、また、独立機関で働く責任感と充実感があることとのことでございます。さらには、その給与水準が高いことも理由に挙げられております。

 そこで、自公案では、アメリカのNRCほか諸外国のキャリアパス制度も参考にいたしまして、原子力規制庁の職員に関して、給与その他の処遇の充実、国の内外の専門家の積極的な登用、国際機関や大学との人材交流の実施、研修体制の整備等について、政府に必要な措置をとるように義務づけたところでございます。

田中(和)委員 最後の質問になるかと思います。

 原子力安全基盤機構、いわゆるJNESは、当機構のホームページによると、平成二十四年四月現在で、理事長一名、理事三名、監事二名、職員四百十七名から成る組織でございます。自公案では、このJNESを原子力規制委員会へ移管する、こうしておりますけれども、そうなれば、四百人超の職員が新たに公務員となります。

 さきの五月二十九日の衆議院本会議でも野田総理は、行政組織の肥大化を招くこと、公務員制度の枠内では柔軟な人事管理が難しいことを指摘しておるわけでございます。

 行政改革の観点から公務員の人数の抑制が主張される時代に原子力安全規制の分野だけを例外扱いできるのかどうか、どのように整理をする考えなのか、衆法提出者にお伺いをしておきたいと思います。

塩崎議員 これまで原子力規制というのは、安全委員会があり、そして保安院があって、このJNES、基盤機構があるという三層構造になっていました。

 この間の事故のときに、私が聞いている範囲では、一番専門家がいるこの基盤機構の中で、どうしたらいいかということを例えば百アドバイスが出たら、保安院に行くと十になって、官邸に行ったときにはもう一になっている。そのくらいこの三層構造、分断されている構造というのが、いかに機能的に本当にうまくいっていなかったかということがよくわかり、また、今までの事務官支配というか、ゼネラリスト支配で専門家がどちらかというと軽んじられてきた。この文化の典型が、この基盤機構に一番優秀な人がいながら、一番下にあって、上の方の意思決定にはなかなか加われていないということがありました。

 そこで我々は、このJNESを新しい規制庁あるいは規制委員会のもとの一つの組織の中に入れようということで、行政の無駄を整理することが行革であって、これは、無駄を出すということではなくて、むしろ国民の信頼を再醸成といいますか、それに非常に重要な我々としての提案であって、これは決して総理がおっしゃっているような行政組織の肥大化とか、そういう一面的なことを考えて、野田さんの頭の中には何のためにそもそも今回改革をやるのかということはどこかに飛んでしまって、ただ行政の肥大化だというようなことだけを言っているのであって、我々は、そんなことではない、今までの欠点をなくそうと思えばそれしかないし、もう一つは、もちろん税金をどう使うかの話でありますから、これは気をつけなきゃいけない。

 そこで我々は、独自財源を考えよう。イギリスは九八%独自財源、つまり、原子力事業者から取る検査料とかそういうので賄っています。アメリカは、約九割がNRCは独自財源でやっています。

 したがって、それを自分の裁量でもってやることで、たしかメザーブさんは、この間、国会事故調でボーナスという言葉を使いましたが、何らかの形で、そういう処遇も考えながらやるということで、少なくとも一般会計には御迷惑をかけない形を工夫しながら、何しろ実を上げる、つまり、安全性を高めていくというためにこのJNESはやはり一緒にすることが大事なんじゃないかなというふうに思っております。

田中(和)委員 時間が参りましたのでまた次の機会に質問させていただくこととして、これで終わります。

 ありがとうございました。

生方委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

生方委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。塩崎恭久君。

塩崎委員 環境委員会で初めて質問をさせていただきたいと思います。

 きょうの質問に入る前に、配付資料を配っておりますので、委員長にお願いでありますが、たしか理事会で合意をいただければ議事録に掲載をしていただけるという話を聞いておりますので、御検討をお願いしたいと思います。

生方委員長 理事会で協議します。

塩崎委員 ありがとうございます。

 政府案に対して御質問申し上げたいと思うんですが、私は自公案の提案者なものですから自分の方には質問ができないということなので、きょうは細野大臣にいろいろとお教えをいただきたいというふうに思っております。

 その前に、先ほど田中筆頭の質問の中で、なぜこんなにおくれたんだという話がありましたが、その中で再稼働の話がございました。大飯の三号、四号についてはどうもこのままいくということでありますが、私の愛媛県、伊方原発がございます。三号機が去年のたしか七月でしょうか、本来は再稼働のはずだったものがいまだにとまったままということでありますが、先ほどの大臣のお話ですと、どうもかなり先になりそうな雰囲気がございました。

 この法律が通らなければ、新しい組織ができなければというふうにおっしゃるわけでありますが、もともと去年の臨時国会で出してこなきゃいけなかったものを一月の終わりに出し、それももう予算で審議ができるはずがないタイミングだった。それで四月一日なんて、もともと無理筋を言っていたわけですよ、皆さんは。でありますから、この法律を人質に、さっき田中筆頭が言ったように、再稼働の問題、もちろん私の地元でも賛否両論あります。いずれにしてもしかし、それは俎上に上がらないというのがいけないのであって、改めてお聞きをいたします。

 この法律が通るということになると、これは委員長にお願いですけれども、何かこの金曜日は参考人だけかと思ったら、連合審査までやる。そうすると火曜日に採決ですかと心配をするぐらいハイペースでやっているものですから、これはもっとしっかりと議論しなければいけない、先ほど田中筆頭が言ったとおりでありますが。仮に七月の頭にでも我々の方が通ったとすると、三月のうちに施行になります。そうすると、七、八、九、国会をやっていなければ同意人事はなかなかできませんよね。そうすると秋、さらに、それがスタートしてから安全基準を新たにつくる、年を越えるかもわからないじゃないですか。

 そういうことを計算してみると、では、大飯の後の伊方から、その次は一体どういうことになるのか。とりあえず伊方のことだけで結構でございますけれども、どういうスケジュール観を持っていらっしゃるのかを教えていただきたいと思います。

細野国務大臣 私は規制の側の担当で、安全の確認をする側の担当でありますから、どういうスケジュールで再稼働を考えているかということについて私自身が判断をするという立場ではありません。むしろ、それを考えてしまうと安全がないがしろにされる、規制が緩くなるというそういう失敗を重ねてまいりましたので、そういうスケジュール観を私自身が持っているということではありません。昨日も福井県に行ってまいりましたけれども、安全性についてのこれまでの取り組みについて説明をしたということでございますので、そこは明確に分けたいと思っております。

 その上で申し上げますと、大飯三号機、四号機に関しましては、三月末までに原子力安全・保安院のストレステストの評価、さらには、それについての安全委員会としてのこの評価というのがなされておりましたので、そこは、その後のさまざまな自治体とのやりとりも含めて、現在進行中ということであります。

 一方で、伊方三号機に関しましては、三月いっぱいをもってそういう手続が完了しているという状況ではありません。そういう状況の中でこの規制組織の審議が行われておりますので、国民も、早く規制組織を誕生させろという声をあちこちで私は聞いておりますので、それが恐らく最も適切な考え方ではないかと、そのように考えております。

 ただ、別に、人質をとるとか、それがあるからもうこっちの審議がとかということを、私はこの場で申し上げるつもりは全くございません。

塩崎委員 私どもの地元の愛媛県の中村知事も、県民が早く判断できるようなということで一生懸命頑張っているわけでありますので、俎上にはできるだけ早く上げていただいた方がいいんじゃないかなというふうに思いますので、また引き続き御努力を願いたいと思います。

 そこで、まず独立性の話でありますが、政府案の独立性ということについては、先ほど来も、御自身でも余り独立性がないかのような雰囲気の御発言をされておりましたが、実に私もそのとおりだと思っておりまして、きょう改めてIAEAの安全基準、特に独立性に関しての、もう今さら読みませんけれども、きょう田中筆頭が大分これを言ってくれたので。要するに、初めて見る方もおられるといけないので、一応念のために配りました。このとおりやらなければ、いわば、独立性に関して真っ当な規制機関としては見られないということであります。

 ところが、ことごとくこれらが守られていない。先ほど、人事の問題を含めて形だけはやっているけれども、そうじゃないと。

 例えば、政府事故調の十二月のあの中間報告がありましたけれども、この中で、政府内の位置づけを変えるだけでは不十分だ、組織として自律的に機能できるために必要な権限、財源、人員を付与しないといけないなどと指摘を、政府の事故調がしているわけであります。

 それから、三月六日に細野大臣はウェートマンさんと電話会談しました。国会の質問を受けて答弁の中で、お墨つきをいただいたかのようなことをおっしゃっていますけれども、よく見ると、特に英文で読むと、前のハウエバーじゃありませんが、構造上の手当てはしたけれども、権限などの独立性は不十分ではないか、こういうことを事実上言っているような表現にもなっている。ですから、私もいろいろな世界の人々とこの問題について話をしますけれども、やはり独立性は不十分だという感じを我々も受けるわけであります。

 それから、この中で、さっきも原子力安全調査委員会の話が出ました。これも考えてみれば、何で今までの安全委員会とそれから保安院の二重構造みたいなものをまた持ち込んできて、やっていて独立性のない、つまり、皆さんだったら原子力規制庁、この単体で物事を決めればいいのに、それを一々何かお墨つきをもらうというかチェックをするという形になっているのがおかしいな、独立した判断基準ができない事実上の証左になってしまうということだろうと思います。

 それからもう一つ、許認可をする際に、審査専門委員という非常勤の二年任期の方を選んで、非常勤ですよ、言ってみれば、その人たちにお墨つきをもらうという審査専門委員という制度も設けているんですね。何で皆さん方の規制庁独自で許認可すら判断ができないのだろうか、何で意見を聞かなきゃいけないのか、私はそれは全く理解ができない。

 何でまた二重構造をつくっているんだということで、本当にこれらを見ても、独立性、自律性がない規制当局だということしか我々からは見えないということを申し上げたいと思うわけでございます。

 それで、炉規法で実は許認可をする際に、推進官庁、つまり経産省であったり文科省、こういうところに同意をするという制度があるんですね。これ、皆さん方でいけば炉規法の七十一条であって、環境大臣は、許可をする場合には、条件を付す場合、あらかじめ、各号に定める大臣の同意を得なければならない。先ほど来、繰り返し細野大臣は、推進と規制を分断しないといけない、こうおっしゃっているんですね。

 ところが、この推進母体である経産省とか文科省の同意を得ないと許認可を与えられない、こういうことになっているのは我々にはとてもじゃないけれども理解ができないので、一体これは何のために同意を求めているのかということを、まず最初の質問で聞きたいと思います。

細野国務大臣 まず独立性ですが、若干、短くコメントさせてください。

 塩崎委員の方から、IAEAの基準、要件四の二の八をお示しをいただきましたけれども、これは総合的にぜひ見ていただきたくて、この前に二の七というのがございます。塩崎委員もよく御承知だと思いますが、そこにはこう書いてあります。「独立した規制機関は、他の政府機関から完全に分離されないであろう。」すなわちこの分離というのは、政府そのものとのある種の関係の中で保たれるべきもの、そういうふうな文面があるわけです。その上で予算や権限についてという、そういう文脈で書かれております。

 ウェートマン博士ともそのことを議論いたしました。その中でウェートマン博士からは、「日本の規制機関についての提案は、原子力の推進機関や不当な政治的な影響からの構造的な独立性を確保している。」そういう発言をいただいております。その上で、「柔軟性についての独立性を与えられることが推奨される。」ということが書かれておりますが、仕組みはできているので、それを実際に運用上もしっかりやるようにという、そういう見解が示されているということを私の方から御紹介を申し上げたいと思います。

 そこで、御質問にお答えをいたします。

 原子炉等規制法の七十一条第一項におきまして、原子炉の許可をする場合には、これは、関係大臣の同意を得る旨の規定が存在をいたします。これは、関係をする施策を実施する行政組織の間において整合性を持って法律を執行していくことが重要であるから、それで設けられているものであります。

 一方で、今般の政府の改正案においては、この同意が必要となるのは、原子力規制庁長官が設置を許可するときと条件を付すときなどに限られております。逆に、許可を取り消す場合、停止命令を行う場合には、これは同意は必要ではありません。つまり、許可をする場合には同意があるということですから、規制機関として許可をする場合は、安全性について確保するわけですね。

 逆に許可を取り消す場合、これで同意を得る必要ということになってくると、いや、それは、原子力は必要なので同意できないということになると規制機関としての役割を果たすことができませんから、そこは同意は必要なしとされております。これは、今回の改正案で同意を必要なしとしたものであります。

 つまり、そこはもう明確で、推進側から完全に独立をして判断をできるように、設置については同意を求めるけれども、許可については同意を求めない、通知のみでやる、そういう形になっているということをぜひ御理解をいただきたいと思います。

塩崎委員 一通りの説明はわかりましたが、同意と言いますけれども、そもそも、例えば経産省の場合でいけば、恐らくエネルギー庁と相談をして、詰めた上で申請を出してくるというのが、アメリカでもこの間何十年ぶりかでありましたけれども、そうなっているんだろうと思うので、あえてまたここで同意が要るという必要は私はないと思うんですね。

 ですから、それは許可取り消しのときだけとおっしゃいますけれども、そもそも、許可をするときだって同意というものを持っている必要は私はないと思っておりますので、これはまたさらに問題にさせていただきたいと思います。

 そこで、先ほど来、人事の話が出ていますが、改めて聞きます。以前も聞きました。

 身分保障を、長官、それから我々でいえば委員五人ですけれども、皆さんでいえば指定職七人、これについて身分保障はない、つまり罷免可能だということでよろしいですか。

細野国務大臣 先ほどちょっと説明をはしょってしまいました。もう少しだけつけ加えさせていただいてよろしいでしょうか。

 許可の方の話ですけれども、原子炉の……(塩崎委員「もういいよ、それは済んだからいい」と呼ぶ)では、後ほどまた文面でお届けをします。

 御質問は、規制庁の長官の人事ということでよろしいでしょうか。(塩崎委員「と幹部」と呼ぶ)幹部ですか。

 規制庁の長官そして幹部については、専門性を確保した上で委任をして、そしてそこで権限を行使できるという、そういう身分保障が与えられております。もちろん、そこはしっかりとした判断ができるということを前提に、言うならば、全権を委任されて専門的な判断をするという形になっております。

 任命そのものは、これは行政官でありますので、規制庁の長官として、通常の手続にのっとって行われるということでございます。

塩崎委員 いや、身分保障があるかというので、今初めて聞いたような身分保障の定義をおっしゃったけれども、要するに、特に公取とかそういうところで身分保障があるところがありますが、それはありますかと聞いているので。今、最後、行政官ですからないということを事実上言った。

 これは実は世界の非常識であって、アメリカでも、それからイギリスでも、それからフランスでも身分保障はちゃんとあって、ですからこそ独立性が保たれ、独立性のある判断ができるわけであって、身分がいつも危なくなるという中でのぎりぎりの判断というのはなかなかできないわけであって、与党の皆さん方にも知っておいてもらいたいのは、世界の非常識を今の政府案はやろうとしている、つまり、この規制を決める立場の人たちに身分保障が与えられていないということを改めて申し上げたいというふうに思うんですね。

 委任規定があるからというような話を今もちょっとお話しされましたけれども、それは権限の話であって、人事はまた別問題でありますので、政策で対立をすれば罷免されるおそれがあるということで、これは独立性がないというふうに思います。

 規制庁の予算の要求折衝というのはだれがやるんですか。

細野国務大臣 この予算については、規制庁として安全組織をきっちりやっていくということでございますので、そこで立案をされるということになります。

 その上で、やはり予算がしっかりと確保できるということが極めて重要でございますので、そこを、しっかりと勘定として別のものができるようにということで現在準備を進めているということであります。

 予算全体としての要求は、これは環境省として行うということになろうかと思います。

塩崎委員 いろいろおっしゃいましたけれども、結局、環境省大臣官房会計課がやるということだと思うので、そういうことでよろしいですね。イエスかノーか、こくでいいですよ。

細野国務大臣 予算全体としては環境省として要求をするという形になります。

塩崎委員 ですから、規制庁自体で予算を要求したりする、管理をしたりするわけじゃないということで、管理は自分でやるんでしょうけれども、会計課がやるということであります。

 それから、規制庁内の人事の話、ちょっとさっき出ましたけれども、これは誰がやるんですか。

細野国務大臣 これは、規制庁の長官が人事をやっていくということになろうかというふうに思います。

塩崎委員 三月六日、私の予算委員会の答弁で、指定職以上は私が直接面接をする、こうおっしゃったのは覚えていますか。これをどう思いますか、独立性との観点で。

細野国務大臣 その御指摘もございましたので、私は一年半一緒にやってきましたので、この人間なれば安全規制をきっちりできるというふうに考えている人間はおりますが、それを一本釣りしてきたり、そこをもう確定をしたようなことはやっておりません。

 逆に、ただちょっと危惧をしておりますのは、原子力規制庁の長官の人事にしても、自民党案で出ている原子力規制委員会の人事にしても、それぞれ来ていただくとしても、そこは、それこそ専門家とはいえ、マネジメントにはかかわっていない方があるときから入るということになるわけですね。その方が、個性を全部把握できて、いい人を引っ張ってこられればいいですけれども、それは、私は一年半やりましたけれども、本当にいい人材かどうかと見きわめるのは極めて難しいです。

 そうなってまいりますと、その人が決め切れなかった場合はどうなるかということを考えるわけです。そうなると、結局は、それこそ各省から出された人材をそのまま認めざるを得ないことになるんじゃないかというのを危惧しているんです。

 これは、決して例えば私が権限を行使したいとかいうことを言っているわけじゃなくて、本当に強い規制機関をつくるためには、人材が宝なんですね。その人材は今の政府の中にあまたいるかというと、いません。どうしても、能力のある人間とかこの事故の教訓を得ている人間というのは、そんなにいないんです。その人材をどう有効活用するかという実質面でぜひ御理解を賜りたいというふうに思います。

塩崎委員 人材が大事なことは、我々もよくわかっているがゆえにノーリターンルールとかをいろいろ考えているわけでありますので、最初がなかなか難しいことはともかく、みずからやるということを公言するということは、やはりそこら辺の独立性ということがよくわかっておられないんだなということを世の中に発した、私に対する答弁だったということを申し上げたいと思います。

 それで、ノーリターンルールですけれども、ノーリターンルールは、先ほど来いろいろ言っていますけれども、大臣は大事だと思っていらっしゃるのかどうか。

細野国務大臣 ノーリターンルールは極めて大事であると思っております。私、それぞれ文科省そして経産省と、どういうやり方でやるか協議をいたしましたが、やはり当初は指定職のみでどうだろうかと、そんな話もございました。

 ただ、それでは十分ではないということで、これは、課長クラス以上、政令職についてもやはり原則ノーリターンということで交渉いたしまして、そこまでそれぞれの省庁も納得をして今準備を進めているという状況であります。

 したがいまして、極めて大事であると考えております。

 先ほどの午前中の質疑の中で吉野先生の方から、三年から五年という猶予期間を設けてと、そういう御発言もございましたので、そういったやり方も含めて我々も検討していかなければならないというふうに思っております。

塩崎委員 大事だというふうにおっしゃっているんですが、私の三月六日のあの質問のときに、きょうお配りをしております「「原子力規制庁」の人事ルール」、二月二十四日に出たものですけれども、このときに、大臣、あなたは政令職の人数を知りませんでしたよね。あのとき答えられなかったんですよ。だから僕はあのときに、ああ、ではこれは、大臣がほとんど見ていないでつくっちゃったんだな。だって、指定職が七人で政令職が十二人ぐらいのことは、誰でも一度聞いたらわかりますから。さんざん今、指定職だけにというお話はしましたけれども、これを知らないということは、これは事務方がつくったんだなと思いました。

 それで、その下を見ていただきたいんですね、皆さん。二枚目の「人事ルール」のところでありますけれども、この中で、いいことも書いてある。「腰掛け人事は一切行わない。」これが大事だと思うんですね。だからこそ我々はノーリターンルールだと言っているのですが、その次に例えば、「ただし、規制庁に所属後、一定期間を過ぎても馴染めない場合や適性に課題がある場合の復帰は可能。」だと。だから、ちょっといろいろ問題で、余り俺は好きじゃないよみたいな話だと、希望すれば大体復帰できる。「また、成果を挙げ、役割を果たした後で、本人が希望する場合も、復帰を認める場合がある。」成果も上げない、役割を果たさないという人は大体いなくて、減点主義じゃないこの公務員の世界というのは、基本的に、みんな何らかの成果を上げて次に行くという形に人事はなっています。

 そうなると、これを見ると、もうほとんど誰でも、本人が希望する場合は帰れるというふうにしか思えないんだけれども、一体ここをどのぐらいのことを考えているのか。

 それから、政令職の原則としてノーリターンの、原則じゃない、やはり本国に帰るというのは、どういう場合に帰るんですか。その二つを教えてください。

細野国務大臣 余り感情的なやりとりにならないようにしたいんですが、塩崎先生、私、全部組織は見ているんです。この間の御質問は何人ですかと言われたので、その正確な人数はその場で把握していなかったので答えませんでしたけれども、どういう組織にするか、オンサイトはこういうことにしよう、オフサイトはこうしよう、自衛隊の人はこう入れよう、全部私自身がかかわって、ここはもう本当に半年間、一年間私がずっとやってきた仕事ですので、それを全面的に否定するような言い方はぜひ控えていただきたいというふうに思います。

 その上で申し上げますが、なぜこういうふうなことを書いたかというと、一つは、事務の職員について考えたわけです。

 技術職の職員は、原子力の専門家としてやっていたり、もしくはこれからも原子力でさらに伸びていこうという職員が、これはもうまさに主翼を担わなければなりませんので、そういう職員については、もうこれはノーリターンということでぜひやっていきたいと思います。

 一方で、やはり組織を回していくためには、事務の人間も必要です。いわゆる文科系の人間です。文科系の人間は、それぞれわけあってそれぞれの省庁に入っています。たまたまそのときに、いろいろなやりくりの中で、原子力は専門ではないけれども、人事をやったりいろいろなマネジメントをやる人間が一人もいないというわけにいきませんから、そういう人間についても全部片道でいいのかと言われれば、それは、それぞれ皆さん、人生の選択があるから、例外全くなしというわけにいかぬだろうということがあったわけです。

 ですから、繰り返しになりますが、いい組織にしたいですから、それはもうできる限りそこでしっかりと人を育てていきたいというふうに思いますよ。思いますけれども、初めにやはりいい人材を集めるためには、がちがちの組織をつくってしまうと本当に、今原子力が問われているから、もしかしたら日本で原子力がなくなるんじゃないかというふうに思っている人も当然いるわけですね。そういう中で、ノーリターンですよ、もうこれであなたは官僚としてここでずっとやっていくんですと言われたときに、それは腰が引ける人もいますよ。原子力をやってきた人間はそれはそれで一つの考え方だけれども、事務職まで、そこまで本当にやれますかということを考えて、こういう書き方になっておるということであります。

塩崎委員 お言葉ですけれども、恐らく、事務職の方々がこれまでの霞が関の論理でこの人事政策をつくったな、私はそう思っています。

 ウェートマンさんに聞いてもメザーブさんに聞いても、ほとんどの人が、やはり一生同じ組織にいるという世界ができているわけですね。我々はそれを目指さないといけないのであって、我々、三年から五年の経過期間はもちろん置きますよ、生身の人間を扱うわけですからめちゃくちゃなことはできないので。それはわかっています。

 しかしながら、やはり我々がこれだけの事故を起こして、これだけの不十分なことを、我々自民党時代からやってきたことが中心だけれども、反省するならば、ここはもうほかの霞が関の組織の論理とは全く違うのをやらなきゃいけないし、そんな人事交流なんかしている余裕は恐らくないぐらい、バックフィットと同じように、人間のバックフィットをいつもやっていかないといけない。こういうことだと思うんですね。

 したがって、私が今まで勉強した限りでは、これはかなり厳密にやっていかないといけないし、では、何で連邦政府の中で一位、二位の人気がある組織になっているのか。これをもうちょっと前向きに我々は考えた方がいいと思うんですよ、何でこんなになっちゃうのかなと。だから、ぜひそこのところは、余りがちがちしないようにとあなたは言うけれども、やっていった方が私はいいと思っています。

 ちょっと話をかえますが、班目委員長もおいでになっていただいていますけども、これはまず細野大臣に、例の防災指針検討ワーキンググループの「中間とりまとめ」、これについてなんですけれども、この間の答弁で、本会議で、「中間とりまとめ」を踏まえるということを大臣はおっしゃってくれました。「中間とりまとめ」、我々も勉強会をやりましたけれども、非常によくできた、反省を込めたいい提案が私はされていると思うんです。

 その中は、要は、「一般災害に対応する組織が、一般災害対応と原子力災害に係る「公衆の防護」の対応の両方を実施することが合理的である。」というふうになっていて、オフサイト対策は一般災害に対応する組織、すなわち災害対策本部がこれに当たるというふうになっているんですね。

 ところが、政府の方は原子力規制庁が原災本部の事務方となるということになっているものですから、この政府の案では、独立性に反するとともに、公衆の防護は一般災害に対応する組織が当たり、原子炉事故の収束は規制機関が担うという、オフサイト、オンサイトの役割分担を明確化しようとしている安全委員会の「中間とりまとめ」にも反しているんじゃないかというふうに思うんですね。

 そこで、細野大臣はそこのところをどう考えるのか。さっきもちょっと話がありましたが、我々の提案している案でいくと、例の、規制委員会の所掌事務を除くということで御心配をされていますけれども、我々は、基本的にオンサイトが委員会でオフサイトは原災本部、これが見るというふうには思っているんですけれども、この「中間とりまとめ」に書いてあることはちょっと政府の考えていることと違うんだろうと思うんですけれども、それはどうでしょうか。

細野国務大臣 この「中間とりまとめ」は、原子力安全委員会の原子力施設等防災専門部会の防災指針ワーキンググループというところで、三月末で原子力安全委員会としての役割を終えるということを前提に、班目委員長が陣頭指揮をとって、非常に精力的に議論を重ねて出していただいたものだというふうに考えております。その意味では、きょうは委員長が来られていますけれども、その御努力は非常にこれは大きなものがあったということを皆さんに知っていただきたいというふうに思います。

 これに基づいて原子力災害対策指針というのはこの法律の中でさせていただきたいというふうに思っておりますし、その法定化された原子力災害対策指針のもとで、地域の防災計画をできるだけ早くつくっていただけるような体制を政府としてつくりたいと考えております。

 オンサイト、オフサイトの役割分担でありますが、私どもも、炉の問題については、これは原子力規制庁が専らやる、そしてオフサイトについては原子力災害対策本部が行うという、そういうたてつけにしております。

 ただ、このオンサイトとオフサイトというのは、極めて密接にかかわっております。オフサイトにおける例えば避難やモニタリング、そういったことも含めてそこは極めて綿密にかかわっておりますので、事務局機能はどこかがしっかりと担わなければならないと思います。

 自民党案を拝見しましたが、原子力災害対策本部の事務局をどこが担うのかというのが明確ではありません。明確でないということは、平時の防災訓練も含めてその準備ができないのではないかということを懸念をいたします。

 そこで、政府案では、平時においても常に防災訓練をして、そして自治体の防災計画をしっかりと現実化していくという意味で、オフサイトについても、常に原子力災害を想定して、担当する担当官を置いて、その部隊も置きます。ここは、常に有事に備えてやる組織をつくり、そして、本当に有事になってしまった場合には原災本部のもとで対応するという、そういう体制を考えております。

塩崎委員 班目委員長にもちょっと簡単にお答えいただきたいんですけれども、ここの問題は、オンサイトのデマケの話じゃなくて、公衆の防護は一般災害に対応する組織が当たるということが問題なのであって、原子炉の収束は規制機関がやるのは当たり前なんですけれども、そこの点、この一点だと思うんですよ。一言でお願いします。

班目参考人 お尋ねの点については、我々のまとめでは、おっしゃるとおりな形でやるべきだというふうに提言してございます。

塩崎委員 ありがとうございます。

 ですから、これから防災の体制を考えるときに、修正協議をするときにどうするかというのは、この取りまとめ案をベースにやはり考え、我々の考え方と同じだと思うんですけれども、それをやはり考えていくべきじゃないかなというふうに思います。

 次に移りますが、ウェートマン報告というのが、去年六月にIAEAの調査団、その報告というのを一番最後につけてあります。要するに、平時でも緊急時でも、電力事業者それから規制機関、政府の役割というのは変わらずに、それで、緊急時だからといって混同してはならないというふうに指摘されているわけです。

 つまり、混同すべきじゃないということは、実は日本は混同していたということを事実上言われちゃっているわけであって、ですから、緊急時になったらもう役割とか何かがぐちゃぐちゃになっちゃってよくわからなかったというのが日本であったと思うんですね。

 ただ、これは細野大臣とは何度も議論していますけれども、そうはいいながら、ハウエバーといって、とはいえ、特に過酷事故などのときには緊密な協力が必要だと。これがやはりこれからいろいろ原災本部の、あるいは、どういう体制にするかは別にして、災害が起きたときの対策をつくるときの基本的に大事なところなんですね。

 これは、緊密な協力を持っているけれども、何度も言いますけれども、コオペレーション、クロース・コオペレーションと英語でこれは言いますが、コオペレーションというのは、もともと、二つの対等のものが同時にオペレートするという意味ですから、対等なものであって、その一つ前にある、これは原子力安全庁時代に準備室がつくったものですけれども、事故のときの原災本部の事務を事務局としてサポートするのがこの規制機関の役割だというのが政府案なんですね。これは違うだろうと。それは下になるんじゃなくて、対等のものだろうというふうに言いたかったわけであります。

 そういうことで、我々にとって大事なのは、さっきちょっと答弁で説明しましたけれども、原災本部長たる総理と、我々のだったら規制委員会が、やはり一体不離でやっていく。だから、そこに認識のギャップがないようにいつもクロース・コオペレーションをしていくということが大事なので、何となく、三条委員会で独立していると、勝手なことをやって自由がきかないみたいなことになっていますけれども、そんなために我々はつくるんじゃないんですから。やはり、事故が起きたときにはちゃんとみんなで、内閣を挙げてと言っていますけれども、我々も同じように、内閣を挙げて、国家を挙げて、一緒にこれを押抑え込むというために我々は提案をしているわけであります。

 これからちょっと幾つか質問をするんですが、前提として言わなきゃいけないのは、やはり今までの組織は、どうしてもまず独立性がなかった。それから専門性も、人材的にJNESに固まっていっちゃったり、いろいろあって知見も必ずしも十分高くなかったわけですけれども、いずれにしても、今度新しい組織をつくったときには、独立性を確立させる、そして専門性も、専門性の高い人、やる気のある人材を集めるということでありますから、使命感も覚悟もこれまでよりもはるかに多く、強く持ってもらわなきゃいけない。それで、持ってもらえるだろうということを前提にしなければいけないと思うんですね。

 それをやることを前提に、我々のだったら委員長は認証官ですから、言ってみれば大臣クラスですよ。何か政治家の大臣じゃなきゃいけないという話がありましたけれども、何か、防衛大臣で政治家じゃない人がおなりになられたような話をきのう聞きましたが、まさに人の命を預かる防衛大臣が政治家じゃなくなったですよね、今度。そういうことについての意見もちょっとお聞きをしたいんですが。

 そういうことで、これからは変わるんだということを前提に申し上げたいと思うんですけれども、まず最初の質問は、メザーブさんがこの間事故調で来られたときに私も話をいろいろ聞いたりしていましたが、そのときに、最も情報が集まって、最も知見を持っている人が最もリスクの低い判断をするということをメザーブさんはおっしゃっていました。これについて細野大臣は御同意されますか。最も情報が集まって、最も知見をたくさん持っている、そういう人こそが一番リスクの低い判断をするだろうということについてどうでしょう。

細野国務大臣 メザーブ氏とは私も何度か会って話をしていまして、元NRCの委員長として、専門家で、世界でも有数の、この世界のオーソリティーだというふうに思います。

 済みません、ちょっとどういう趣旨でおっしゃっているのかわからないんですが、専門家がまずしっかりと判断すべきである、専門家が判断するその前提として、事業者がまずさまざまなことについてしっかり取り組む、そういうことを意味しておられるのであれば、おっしゃるとおりだというふうに思います。

塩崎委員 情報が一番集まって、そしてその道に一番知見がある、そういう人が、やはり厳しいときの判断は一番リスクが低いんじゃないかと。つまり、情報も持っていなくて、そして知見もない人が判断するときというのは、やはりこれはリスクの高い結論を出す可能性が十分あるということだろうと思うんですね。

 今、一般論としては認められたわけですけれども、そうすると、やはり現場に近くて知見がある人が緊急時も判断をすべきだと。だからこそIAEAの安全基準も、原子力事業者がまず責任を負え、こういうふうに今のこれにも書いてありますが、なっているわけです。

 そうすると、専門的なこと、緊急時におけるいろいろ原子炉の鎮圧等は、これが専門的であることはよくわかっているとおりですけれども、やはり、官邸にいる政治家がやることではないんじゃないかなというふうに思うんですね、その専門的なことを。その点はどうですか。

細野国務大臣 塩崎委員とこうして議論をしておりますと、相当距離は近づいているなという感じはするんです。ですから、今の御指摘は、私もそのとおりだと思います。

 つまり、事業者が責任を持って炉の鎮圧をすべきです。その責任はそこにあります。そして、それを監督して、場合によってはさまざまな技術的なことについて指導していくことは、これは規制機関の専門家がやるべきです。そこまでは全く一致をします。そして、政治家がそれに安易に口を出すべきでもないというところも全く同意をいたします。

 ただ、これだけの事故を経験をしていて、先ほど一つだけ例を挙げましたけれども、例えばプールに放水をしなければならないというようなケースに、これは、自衛隊に対する指示権だけではなくて、ほかの行政機関や事業者に対しても何らかの指示権が行使をできるような最後の権限を残しておかないと、本当に、ある種技術を超えた、泥臭い力が必要な作業が出てきたわけですね、今回も。そういったところについてはぜひ考えていただけないかというのが、私どもの、唯一残っている違うところということになれば、そういうことになるのではないかというふうに思います。

塩崎委員 やはり、こういう議論を重ねるというのはいいことだと思うんですね。

 海水注入で今回いろいろありましたね。本当は海水注入やらなきゃいけないのに、再臨界大丈夫かという一言で一回中断しましたね、民間事故調のあの報告書なんかを見ていても。いや、中断というのは、五時五十五分に海江田さんがやれと言って、六時に総理が入ってきて、それで再臨界大丈夫かと言って、次に総理を入れて会議をやったのは七時四十分ですから。一時間四十分リハーサルをしていたと書いてあるんですね、民間事故調には。一発で菅さんをしとめないといかぬというのでやったというふうになっていますけれども。

 そこで質問は、規制委員会、我々にとっては規制委員会、規制当局が海水注入をすべきだと言ったときに、今の法律でいくと、二十条二項でいけば総理は逆の提案ができちゃうわけです。つまり、海水注入をとめろと言うことをできるようになっていると私は理解していますが、そういうことですよね。そういう判断をすればできますね、二十条二項で。

細野国務大臣 先ほど私が申し上げた海水注入は、ちょっと認識が、済みません、そこは合っておりませんで、プールへの海水注入を申し上げたんです。自衛隊と警察と消防と、そして……(塩崎委員「わかっている、それはまた後で言うから」と呼ぶ)ああそうですか。そこについて申し上げたので、そこは、済みません、ちょっと御指摘の部分とは違うんです。

 総理の指示権というのは、もともとこういう規定になっています。「特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、」というふうになっていますから、その範囲で指示権を行使をするということであります。

塩崎委員 いや、今大臣がおっしゃったのは二十条三項の話を言っているので、私は二十条二項のことを言っているんですね。だから、これを、ベントじゃなくて、まあベントでもいいんだけれども、やれと言ったことをだめだという指示権を出せるというふうに理解をしているので、それはやはりよろしくないねというふうに事実上細野さんはおっしゃっているけれども、そういう理解でいいかと。

 それで、三項の一般的な指示権の話はちょっと別の話で、二項の話で海水注入をやれという命令を出しているのに、もう一回逆のことをやると言うことがあるんじゃないかということです。もうイエスかノーかだけで結構です。そこから次に行きたいと思います。

細野国務大臣 ですから、そこは抑制的に行使をするということを累次にわたる答弁で申し上げています。

 それで、塩崎委員がそこまでおっしゃったので、ちょっと逆に、私は質問する権限はないので、意見だけ申し上げます。(塩崎委員「申しわけない、質問権ないんだから、僕は時間がないから、さっきの大事な話に戻るから」と呼ぶ)一言だけ申し上げます。

 自公案で私が懸念していることを一言だけ申し上げると、四条の七で、「原子力利用における安全の確保の観点からの原子炉の運転等により生じた事故による災害の防止に関すること。」原子力の災害の防止に関すること全体が原子力規制委員会の所掌になっているんです。そして、そこについては全て総理の指示権から除外をされているんです。

 ですから、今の私が言ったような放水の場面も含めて本当に指示権は行使を出されるのかというところについて、せっかくちょっとかみ合ってきたので、懸念を持っているということを申し上げたいと思います。

塩崎委員 要するに、二十条二項だったらばとめることができるというふうに否定しなかったから、そうだということでいいですよね。しかし、細野さんは余り専門的な分野に首を突っ込むなと言いながら、抑制的にとおっしゃったから、これはやはりまだできるということをおっしゃったんですね。

 さっきのプールへの放水の話は、私はそれを聞いてよかったと思うんです。つまり、そんなことを我々が委員会にやらせようなんてことには全くなっていませんから、そこのところはまた議論しましょう。我々はそんなことは考えていなくて、当然総理がやるべきこととして整理をしていますから、そこのところはよく理解をしてもらわなきゃいけないなということだと思うんですね。

 そういうことで、先ほどおっしゃっているのは、今度は一般的な指示権でどうだということを言っているので、我々が規制委員会の所掌事務を除くというふうに言っているのは、さっき申し上げたような、専門技術的なことについて口を挟んでもらったら困りますよということを込めた、括弧内の原子力規制委員会の所掌事務を除く、そういう意味ですから、だから、それ以外のことは総理は当然一般的に指示ができるわけですよ。そのかわり、規制委員会が下す専門技術的な判断と違うことをやってもらったら困るし、そうじゃないことを言ってもらっても困る。つまり、委員会が決めていないことも言ってもらったら困るというのが我々の考えですよ。

 だから、細野大臣も、専門的な、技術的なことに政治家が首を突っ込むべきではないということははっきりおっしゃってくれたので、そこは、だから二十条の二項、これは本当は削除していいんじゃないかなというふうに思うんですね。それは炉規法上の命令の指示ですから、それは必要ないというふうに、私は、今の答弁から見れば当然そういう帰結になると思うんですね。

 したがって、あと、さっきの準備室がつくったコオペレーションというのは、対等で初めて政府とこの規制委員会が一緒に協力してぴったしでいくということですから、それが、今の皆さんの案でいくと、事務局としてサポートをする、主従関係になる、これは間違いじゃないですかと。それがまた専門技術的なことについてまで首を突っ込んできて大混乱を、つまり、これがあの菅直人リスクだということを申し上げているんですね。

細野国務大臣 委員のお考えはよくわかりました。ですから、あとは、そこまで初日に言うのは何でございますけれども、今のお考えは、やれることはしっかり残しておく、政府として指示権を。しかし、技術的なことについて政治が口を出すべきではないというのは全く一致します。ですから、それを法律的にどう書くのかということについて、ぜひ前向きな御議論をいただけるとこれはいいのではないかなというふうに思います。

 その上で、今の部分については若干懸念がございます。

 というのは、原子力災害対策本部というのは、常設をされている組織ではありません。常設をされていない組織が、いざ緊急事態になった場合に設定をされて動くわけですね。なぜ原子力規制庁を事務局にするかというと、原子力規制庁は常設ですから、常にオフサイトについても備えをすることができます。ですから、塩崎委員がおっしゃるクロース・コオペレーションをやる手段として、事務局にしっかりと置くべきではないかというのが我々の発想なんです。

 ですから、そこも考え方は一致をするというふうに思いますので、どういう組織ならば平時から有事にスムーズに対応できるのかということについて、ぜひ御検討いただければ幸いであります。

塩崎委員 そもそも、シビアアクシデントが起きたときの、原災本部が立ち上がったときの規制組織のやるべきことというのは、何しろ、原子炉をどう鎮圧するか、もうこれに全てなんですね。あとは、本部が全体に対して責任を持っているわけですから、だから、原災本部の回しをやるような余裕はどこにもないんですね。

 委員長を我々は副本部長で入れていますけれども、人によっては、おまえ、そんな余裕があるわけないじゃないか、そこに行っている余裕なんか絶対ないぞということで、やるべきことは、実はサイトの方をみんな向いていないといけないわけです。ところが、今回はみんな官邸の方を向いていたから、何だかこっちがおろそかになっちゃった。ただ、たまたま吉田さんが頑張ったときがあって、うまくいったときもあるけれども。

 そういうようなことで、本当に役割が、御経験されているからもちろん私よりも知っていることはたくさんおありなんだけれども、役割分担をもっとはっきりしていかなきゃいけないんじゃないかなと。

 そして、イギリスにはサイエンスアドバイザーというのが必要な役所にはほとんどあって、プライムミニスターズオフィスにはチーフサイエンティフックアドバイザーがいるのはこの間お会いになったとおりで、イギリスのONRの人に話を聞いたんです。この間、大飯のときに一月に来たでしょう。その後、私のところに来てくれて話をしたんです。日本の場合には政治家が細かな技術的なことに首を突っ込むんだけれどもと言ったら、じっと考えて、イギリスでは科学的にわからないことに口出す政治家はいませんと言われましたよ。これってすごく大事で、サイエンスアドバイザーがいない日本ですから、そういう文化がないというのかもわからない。

 こんなところからも直していかなきゃいけないんですけれども、きょう大分議論して争点が、争点というか論点がわかってきたので、ぜひこれはいい結論を出して、結論から言うと我々の案になるんだろうなというふうに思いますけれども、ぜひ話し合いをしたいと思います。

 終わります。

生方委員長 次に、井上信治君。

井上(信)委員 自由民主党の井上信治です。

 いよいよこの原子力規制組織の法案が委員会審議にかかるということで感謝をしておりますけれども、けさも何名かの委員の方が指摘をされたように、本来であればもう少し早くできていなければいけなかったなということで、これは政府・与党だけに限らず、我々も含めてこれは反省をし、そして、しっかりしたものをつくっていかなければいけないと思っております。

 そういう意味では、もう一年三カ月たっておりますけれども、遅くなってしまったから、だからこの国会審議もとにかく早く終わらせて早く成立させよう、スタートさせようというのは、これはちょっと違うと思いますから、やはり徹底した審議、慎重な審議をしていただく、例えば、細野大臣はもちろんですけれども、野田総理大臣にもこの委員会の場にも出てきていただいてちゃんと我々の質問にも答えてもらう、そういうことも含めて、ぜひ理事の先生方、委員長もお考えをいただきたいなと私は思っております。

 ただ、非常によかったなと思いますのは、やはり自民党、公明党から対案としてきちんと議員立法が出てきたということだと思っております。塩崎先生は、もう国会事故調の法案のときからこの原子力関係の問題に大変な情熱を持って、そして関心を持って取り組んでおられたということ、それから吉野先生は、福島が地元でありますから、そういう意味でも本当にすばらしいそういう方ですし、また、柴山先生は法律の専門家であり、江田先生は、ちょっと褒めようと思ったんですがいませんけれども、原子力そして環境行政全般に大変な知見を有する、いわばベストメンバーの自公の方々が法案を提出していただいた、本当にありがたく思っております。

 細野大臣も、ちょっと何だかお疲れのように見えますけれども、福井に行かれたり、被災地福島、そして関西と、本当に大活躍をされて、けさも朝からほとんどお一人で答弁をされて大変なことだというふうには思いますよ。しかし、やはり本当に大事な案件でありますから、引き続きぜひ頑張っていただきたいと期待をしております。

 私は、これは本当に大部にわたる法案でありまして、論点も多岐にわたります、ですから、そういう意味ではもう切りがないものですから、おかげさまで、五月二十九日の本会議で代表質問をやらせていただきましたので、そこの論点に少し絞って、また、逆に言うと、残念ながら、やはりちょっと総理、細野大臣のその答弁、不十分だな、すれ違いだな、おかしいな、ちゃんと答えてもらいたいな、そう思った点も多々あったものですから、この委員会審議の中で少し深掘りをさせていただきたいと思っております。

 まずは、これは全くのすれ違い答弁しかいただけなかったんですが、民主党さんのインデックス二〇〇九、このときに、「国家行政組織法第三条による独立性の高い原子力安全規制委員会を創設する」と約束を国民にされていたわけですよね。議員立法もこれに基づいてやっておられます。しかし、今回の与党になってからの閣法は全く違うものになってしまった。むしろ、自公案の方が三条委員会方式ということでありますから。ですから、このことに関しては明らかにマニフェスト違反ではないかなと思います。

 野田総理からは答弁として、今般の法案は、党の政策を大災害の経験と教訓から発展させて危機管理対応を強化したものだ、こういう答弁だけなんですね。ですから、明確に、マニフェストに反しているのか反していないのか、そこについてまずお聞かせいただきたいと思います。

細野国務大臣 井上委員には、いろいろ済みません、御配慮いただきましてありがとうございます。温かいお言葉をいただきましたので、しっかりと取り組んでまいります。ありがとうございます。

 この政策集、インデックスの位置づけなんですが、ここをまず正確にお伝えをすべきであろうというふうに思います。

 確かに私ども、選挙のたびにマニフェストを示しておりまして、それと時期を若干前後して、前のケースが多いと思うんですが、政策インデックスというのを出しております。ただ、この政策インデックスというのは、実は質的にマニフェストとは全く違う性質のものであります。これは、これまで国会で取り組んできたことを実績として整理をしたのが政策インデックスなんです。

 ですから、そういうこれまでの実績を整理したインデックスと、これからやるべきことをマニフェストで書いたこのものというのは、そういった意味で違う性格を持っているということはぜひ初めに申し上げたいと思います。

 したがって、マニフェスト違反かと問われれば、それは、お示しをしたマニフェストができていない部分は御批判は当たるわけですが、そこには書いていないという意味では、これはちょっと違う問題だということであります。

 ただ、御指摘のとおり、そういう独立した三条委員会という考え方を民主党が野党時代とってきたことは、これは事実です。ですから法案も出してきました。

 その考え方がなぜ実際に導入をするに当たって変わったのかということになってまいりますと、それは、今回の非常にシビアな事故というのを経験して、緊急対応に責任を持って当たるという意味においては、独立をした三条委員会、合議制というそういうやり方よりは、内閣の責任のもとで迅速な意思決定が行われるそういう行政組織の方が適切なのではないかという判断をして、今回、こういった形で法案を出させていただいているということでございます。

    〔委員長退席、横山委員長代理着席〕

井上(信)委員 最初は褒めさせていただいたんですが、ちょっとがっかりしたのは、やはりそういう詭弁を弄されない方がよろしいと思いますね。民主党の整理はそうかもしれない。しかし、国民にはわかりませんよ、そのインデックスと本物のマニフェストの違いというものは。やはり、これはもうマニフェストだと国民は思っておりますから。

 ですから、いいんです、素直にお認めをいただければ。違反じゃない、それでもいいですよ。しかし、政策変更したのは間違いないということですから、そういう意味では、ここを余りここで議論しても仕方ないことですが、でも、私は、やはりそういう詭弁を弄さない方がいいということだけは言わせてもらいたいというふうに思っております。

 確かに、未曽有の大震災の教訓を生かしていかなければいけないというのは、これは当然のことだとは思うんですけれども、ただ、他方で、本当に大きな事件や事故が起きますと、何でもやはり制度が悪い、今の制度がこういう制度だから、この制度を変えればよくなるんじゃないか。これは我々政治家も悪いんだと思うんですね、制度を変えれば何か仕事したような気になって。

 でも、そんな単純なものじゃないですよね。やはり、そのときにいた人材の能力ややり方の問題、そしてその制度の運用の仕方、そういったものがちょっと複雑に絡み合っているはずなので、そこのところがちょっと制度論ばかりをしているような気が若干いたしますので、そこをちゃんと考えていただきたいと思うんですよ。

 我々の議員立法のときにもいろいろな議論がありました。菅直人リスク、あるいは、御本人が先ほどまでいらっしゃって、いないのかな、ちょっと言いにくいんですが、班目リスク、どっちが悪いんだ、あるいは両方悪いんじゃないか。では、どうやればいいのか。

 これは、よりふさわしい適切な人がそのポストにいれば何の問題も起きなかったかもしれない。しかし他方で、どんなにいい制度をつくっても、いわばよくない人がついてしまえば、その制度も失敗する可能性はありますよね。だから、そこのところを少し精緻に議論をしてもらいたいなというのが私の印象です。

 一番の違いは、やはり独立性だと思うんです。これはもう朝からいろいろな方がいろいろな議論をされているので、ちょっと私はこの独立性は次の機会にとっておくといたしまして、一元化の問題。

 御承知のようにこの一元化についても、例えば今回の事故の教訓ということでいえば、SPEEDIの試算結果、これが迅速に公表されなかった。この原因としてはやはり、放射線モニタリングが文科省、原子力安全規制は保安院や原子力安全委員会、所管がばらばらで役割分担も不明確だった、一貫した責任体制がなかった、これが原因の大きな一つだとは思います。

 あるいは、昨年九月の国連ハイレベル会合において野田総理大臣も、規制の一元化を図ると明言されました。しかし、残念ながら政府案では、きちんとした、徹底した一元化というのがなされていない。一体なぜなのか。これ、やはり総理の答弁を聞いてもよくわからないんですね。

 例えば、保障措置について私が本会議で質問をいたしました。総理の答弁は、核不拡散の保障措置規制は原子力の安全規制とは異なる、この一言だけなんですね。これは余りに不誠実で、それは異なったら一元化しないでしょうけれども、何がどう異なるのか、全く説明がない。

 ぜひ細野大臣、詳しく教えてください。

細野国務大臣 確かにそこは、本会議での答弁というものは、極めて限られた時間でありますので、若干舌足らずの部分があったのではないかというふうに思います。

 そこで、若干込み入った話になりますけれども、説明の機会をいただきましたので、説明をさせていただきたいと思います。

 いわゆる安全規制、セキュリティーとかセーフティーの世界になりますけれども、そういったところというのは、政府が基準を定めまして、原子力事業者に対して審査、検査などを行うという、言うならば、規制をする側とされる側という単純な構図になるわけですね。そこに、まさに二者以外の関係者が直接立ち入るということはありません。いろいろアドバイスをもらったり、各国間で調整をしたり、お互いに情報を共有し合ったりすることはありますけれども、基本的には二者の関係になるわけです。

 一方で、保障措置に関しましては、これはNPTに加盟をしている非核兵器国の義務として、IAEAによる査察を日本として受けるということになるわけですね。その場合はIAEAが査察をしますので、日本政府の立場が微妙になるわけです。日本政府は、一つの立場としては、IAEAから査察をされるという立場です。

 一方で、日本政府は、この保障措置をきちっとやるために、日ごろ事業者に対して、言うならば、さまざまな実質的な規制をする、ちゃんと核物質を管理しなさいよという規制もする立場。

 ですから、日本政府が規制される立場と規制する側と両方の立場になるというそういう意味合いがありまして、若干関係は込み入るわけですね。

 そういう意味で総理は、保障措置の場合には安全業務とは性格が異なるという、そういう説明をしたということであります。

 ただ、一方で日本政府が、スリーSということを、あれはたしか洞爺湖サミットだったでしょうか、発言をいたしました。セーフティー、セキュリティー、セーフガード、我々がよく参考にするNRCは、この三つをセットでやっています。多くの国はこれをセットでやっている。なぜかというと、この三つには、核物質をきちっと管理をし、そして安全を確保し、テロにも備えるという、共通した一つの言うならば方向性があるからですね。

 ですから、そういう考え方を各国がとっている中で我が国がどこまで一元化をするかという議論は、さらに深めていく必要があるというふうに思います。

 政府内では、まずやれることとしてこういう案を提示しておりまして、保障措置については、年内をめどにしっかりと再検討するということになっておりますので、国会での議論というのは、これはいろいろな御議論が当然あるというふうに思いますので、大いに私も聞かせていただきたいと考えているところであります。

    〔横山委員長代理退席、委員長着席〕

井上(信)委員 前向きな御答弁だと思うんですが、年内に検討するなら、なぜこの法案には盛り込んでいなかったんですか。そこが自公案の方には入っているわけですから、ちょっとそこを説明してもらえますか。

細野国務大臣 去年の夏の菅政権の最後のときに法案として方針を出しました。閣議決定をいたしました。その中で、来年いっぱいにということの閣議決定もなされたわけであります。

 法案の作業というのは、一月になったことはこれは遅いという御批判があれば、それはもう甘んじて私どもは承らなければならないと思いますが、実際には膨大な作業で、かなり急ピッチで行いました。

 ですから、去年の夏に方針を決めて、法案をつくるのにまずその方針でということでいきましたので、今回出している法律の中では保障措置については入っていない、そういう経緯でございます。

井上(信)委員 そうすると、まさにそのタイミング、時間的余裕の話だということですから、少なくとも、この保障措置も一元化をする方向で見直すというところまで明言してください。

細野国務大臣 私は政府案を出している立場ですので、政府案を出させていただいているという立場で言うならば、そこには確かに入っておりません。

 ただし、保障措置についてそういう御議論が、スリーSは全部一緒にすべきだという御議論があるのは、もうこれは私もよく理解をできますので、それについては、できる限りしっかり我々は耳を傾けて、柔軟な対応をしていく必要があるのではないかと考えているところであります。

井上(信)委員 方向性をやはり示してもらいたいんですよ。お立場はあると思いますが、ただ、大臣のお話を聞いていると、やはりこれを一元化すべきじゃないのかというふうに聞こえるものですから、方向性でいいですから、決めたとこの場では言えないでしょうけれども、ぜひお願いします。

細野国務大臣 保障措置も含めて一元化をすべきであるというお考えについては、理解ができます。

井上(信)委員 年内の見直しの検討を待つまでに、恐らく自公案との修正協議などもあると思いますから、これはむしろ理事の先生方に申し上げる話かもしれませんが、大臣の思いのうちは何となく伝わってきましたので、そういう方向でぜひやってもらいたいなと思っております。

 それから、そういう意味では、モニタリング、このモニタリングも完全に一元化されていないですよね。やはり、これはどう考えてもおかしいなと思うんですね。

 緊急時のモニタリング、そして平時については司令塔機能のみを規制庁に移管するとされておられますよね。何でこれは司令塔機能だけなのかということ、そして、平時と緊急時とのその対応に違いがあるということで、これで有効に機能するかどうか、これは疑問に思うと思うんですけれども、ぜひここについても御説明ください。

細野国務大臣 今回の事故の反省点といたしましてよくSPEEDIのことが話題になるんですけれども、私は、SPEEDIと同等か、もしくは、それ以上にモニタリングのことを反省をしなければならないのではないかと思っているんです。

 SPEEDIはあくまでシミュレーションですので、いろいろなことは当然やれるわけでありますけれども、正確な情報かと言われれば、そこは若干いろいろな議論があるわけですね。一方で、そこでモニタリングができれば、それはもう厳然たる事実ですから、この情報は国民にすぐお伝えをできるわけです。

 ところが、昨年の三月十一日までの制度というのは、そういう緊急時においては、モニタリングは自治体がするということになっておったわけです。そういう緊急時が発生したときに、自治体がどれぐらい大変な事態になって混乱をするかということについての想像力がやはり欠如していた、そういう仕組みだというふうに私は思います。

 ですから、モニタリングのあり方については、相当根本的に改めて、国の役割を明確にして、そういった場合にははかることができるような仕組みにはしなければならないというふうに思います。

 率直に申し上げると、ここもいろいろ政府内でも議論がございました。

 その中で、モニタリングというのは、文部科学省が一番大きな役割をやっているんですが、そのほかにも、実は私が所管をしている環境省も水のことについてやっておったり、水産庁もやっておったり、それぞれの省庁がかなりいろいろな形でかかわっておりまして、それを全部一元化をするのは、これは余り現実的ではないだろうと。

 その中で、では、どの部分を一元化すべきかということでさまざま議論がありまして、原子力規制庁が司令塔機能を担うことといたしまして、モニタリングに関する指針の策定であるとか、関係省庁による各種のモニタリングの全体計画案など、言うならば、全体をしっかりと方向性を出した上で、関係省庁が行う事故の影響の調査のためのモニタリングの予算については原子力規制庁に一括計上して関係省庁の調整を行うという、ちょっと説明が長くなりましたが、こういったところで落ちついたという経緯があります。

 ただ、ここは、どういうところまで一元化するかというのは、さまざまな御議論は確かにあり得るだろうというふうに思います。

井上(信)委員 平時のモニタリングの一元化については現実的でないというふうにおっしゃいましたが、何がなぜ現実的じゃないんですか、一元化すればいいと思いますが。

細野国務大臣 私が現実的ではないと申し上げましたのは、例えばモニタリングでいいますと、文部科学省が全国的なものについて確かに一番かかわっているんですけれども、例えば学校や保育所については、文科省以外にも厚労省がかかわっています。食品については厚労省、水産庁がやっています。港湾とか空港とか公園、下水などは国土交通省がやっております。水や廃棄物については環境省がやっていまして、海域については文科省、環境省、水産庁、海上保安庁、農地については農水省という、実は、ざっと挙げただけでも両手でもおさまらないぐらいの省庁がかかわっているので、それを全部一元化するというのは、これは必ずしも現実的ではないのではないかということで申し上げました。(井上(信)委員「なぜですか、なぜ現実的じゃないんですか」と呼ぶ)

 それは、それぞれの省庁がこれまで管理をしてきたところについてはかっていますので、人員の確保も含めて、では、全ての省庁から人を寄せていくということが現実的かということについて、必ずしも現実的ではないのではないかと、そういう議論をしたということであります。

井上(信)委員 全くわかりません。全ての省庁から人を寄せればいいんじゃないんですか。一元化の大切さがわかったわけですよね、今回の大震災で。それで一元化していこうという議論になっているときに、いや、全ての人を寄せるわけにいきませんよね、モニタリングの人が各省庁にどれだけいるか知りませんよ、しかし、それをやるのが一元化でしょう。だから、現実的に人の数の問題とかそんなことでできないというのは、これは納得いかないと思います。

 やはり、一元化をすることによってどんな弊害が出るのか、一元化するよりしない方がいいという理由があるなら教えてください。その理由がなければ、一元化をちゃんとやってください。

細野国務大臣 一元化をしない、もしくは、それをやることで弊害が出るという面があるということではありません。ですから、一元化をすることが望ましいのは、今、井上委員がおっしゃったとおりであります。

 ただ、それぞれ対象によって、例えばはかり方であるとか専門性であるとかそういったことも、これまでこれがあったのも一つは事実なんですね、そういったことも含めてどこまで一元化をするかという議論の中で、今回はこういう形になったということであります。

 平時と有事で当然連続していた方がいいのはもうおっしゃるとおりでありますから、平時のモニタリングをどこまで一元化をし、では、有事についてそれをどう本当に情報を集めていくのかというのは、これからさまざまなやはり検討は必要であるというふうに思います。

井上(信)委員 かなり苦しい答弁だと思いますよ。大臣も本当は心の中では一元化した方がいいとお思いになっているんじゃないかなと私は思いますよ。秘書官が何か耳打ちしていたから、自分の思いと違う話をされているような、そんな言い方に聞こえました。だって、一元化して何も弊害がないけれども、一元化の方がいいとは思う、ではすればいいじゃないですか。それはそうですよね。

 やはり、役所の今までの組織の論理とかそういうものにとらわれちゃっている。あるいは、さっきの保障措置の話と一緒ですよ。時間的な検討の時間、これが足りなかったのかもしれない。しかし、やはりベストなもの、理想のものを追い求めなければ、こんな改革をやる必要性はありませんよ。だから、私は大臣のその答弁では全く納得がいきません。

 ですから、お考えがあればもう一度聞きたいのと、保障措置はとりあえず年内に見直すと先ほど明言されました。では、このモニタリングの一元化について、少なくとも見直すお考えはおありですか。

細野国務大臣 昨年の夏行いました閣議決定の中で、一元化、いろいろな積み残した課題がございます。そういったものの中に、私の認識ではこのモニタリングも入っているというふうに思っております。

井上(信)委員 では、きょうはこれまでにしますけれども、見直しの対象に入っているということですから、ぜひこれを本当に見直してください。残念ながら、大臣のその答弁では国民は納得しないと思います。

 それと、これは先ほど来塩崎先生の質問やいろいろなところで話題にもなっております、緊急時の指示権の話です。これは本当に大事な問題だと思いますし、いわば、なかなか歩み寄れない、積み残した課題の大きな一つだというふうに思っています。

 私が本会議で伺ったとき、細野大臣は、「国家の命運を誰に託すか」、「国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段としては、不可欠な存在である」、こういわば格好よく述べられまして、この映像ばかりテレビニュースで使われていたものですから、何か国民もちょっと誤解していると思うんですね。さっきもちょっとそのやりとりがありました。報道でも、緊急時の指示権、自公案だと何か総理には何もないように言われているんですね、残念ながら。

 何かさっきのを聞いていると、大臣もひょっとしたら誤解していたのかなと思うぐらいの話であって、これは、自公案におきましては、やはり国家の命運を誰に託すかということ、この命運というのは具体的に何を指しているかというのはちょっと不明ですけれども、ただ、少なくとも、本当にこの日本の国家が将来どうなるかということに関する重大な事項の重大な判断としては、自公案でも当然これは総理が判断をし、総理に指示権があると思うんですね。規制委員会というのは、先ほど来おっしゃっているように、技術的、専門的な事項、そしてオンサイトの事項ですから、そのことを国家の命運というふうにおっしゃっているわけじゃないと思うんです。

 この点について自公の提出者の方、御説明をお願いします。

塩崎議員 役割分担の話につきましては、私の質問の中でも大分議論になりまして、だんだん整理はされてきているんだろうと思うんですけれども、やはり今先生御指摘のように、誤解が多いような感じがしてならない。

 原則は、オンサイトが規制委員会、オフサイトが総理を初めとする原災本部全体が責任を持つということで、規制委員会は、炉規法に基づく専門技術的な問題についての問題については唯一決定をすることができるところだというふうに理解をしているわけでありまして、先ほどの国家の命運をという、本当に命運というのは何だかよくわからないけれども、確かに格好はよかったですけれども、中身は実は非常にぼわっとしていてわからない。何かというと、結局とどのつまりは、原子炉がどうなっているのか、これにどうするのかということしかないんですね。

 これは、すぐれて専門技術的な問題で判断をしなきゃいけなくて、あとは、先ほどの誤解として出てきたように、自衛隊の出動要請とか消防に出動していただくとか、そういうようなことについては規制委員会がやるんではなくて、規制委員会の出した結論で当然必要になってきた自衛隊の出動とか消防の放水とか、そういうものについて原災本部長が、国家のトップリーダーとしてまさに命運というんですか、原子炉を鎮圧するというためにみんなが一体となって自衛隊あるいは消防に出てきてもらう、そういうことを一体不離でみんなでやる、こういうデマケじゃないかなというふうに思うんですね。

 あくまでも技術的なところは規制委員会でないとわからないことでもありますから、これはさっき細野大臣も、細かな専門的なことはやはり政治家が口を出すべきじゃない、こういうことでありました。

 ですから、あと本当に大変なことになるときというのは、その技術的なものの積み上げで起きてきていることですから、そこの情報と知見で判断をしたものを、どう今度は総理がちゃんとそれをやるかということだろうと思います。

井上(信)委員 わかりやすくありがとうございました。

 まとめてしまうと、要は、国家の命運はやはり総理大臣に託して、そしてその指示のもとにみんなで一体となって対処をする、そういうお答えだと思うんです。

 ですから、私は細野大臣が本会議で答弁されたことは誤解だと思いますが、いかがですか。

細野国務大臣 今、塩崎先生が答弁者としておっしゃったことができるのであれば、私の誤解だというふうに思います。

 ただ、法律的なところをぜひちょっと御教授いただきたくて、少しだけ私の方から、逆にこちらの側で質問するようで変な話なんですけれども、ぜひここを聞いていただきたいんです。

 原子力規制委員会の設置法案の第四条の七号に、原子力防災全般について原子力規制委員会がやると書いてあるわけです。これは、オンサイトもオフサイトも基本的には全て含むように読めるわけですね。この原子力規制委員会がやるオンサイト、オフサイトのこのものについては、総理の指示権が及ばないような形に原災法が改正をされているわけです。ですから、原子力規制委員会の所掌となった時点で総理の指示権が及ばないと読めるわけですね。

 この七の中に、実は、そういうシビアアクシデントにおけるさまざまな放水であるとか、撤退は絶対にあってはならないことでありますけれども、例えば仮にそういったことが議論されたときには、いや、とどまれというようなことは、原子力規制委員会のこの第四条の七号のところに入らないということが明確にならない限り、総理の指示権は出せない形になっているんですね。

 ですから、そこが確認されるということであれば、そういう法律になっているということであれば、それは私が誤解をしていたということになろうかと思います。

井上(信)委員 これはちょっと私に聞かれても困るものですから、それはここで提出者の方に伺ってもいいんですが、これはよく両者で話していただいて、私がそれぞれの仲介役をするというのも変なものですから。

 ただ、もし大臣がおっしゃるように法文に不備があるということだったら、むしろ法文を直せばいいことですから。それは、塩崎先生がおっしゃったのが自公案のいわば思いだ、趣旨だということであれば、それはお認めになって、やはり、それだったら国家の命運はちゃんと総理に託しているんだ、ここの理解をお願いしたいと思っております。

 うなずいていただいたので、次に入りたいと思います。

 答弁の後段部分、「国家の命運を誰に託すか」、「国としての、危機管理上の最低限の、かつ最後の手段としては、不可欠な存在である」と述べられた今度は後段部分ですけれども、最低限あるいは最後の手段、こうおっしゃっていますよね。これは多分、原災法の二十条二項あるいは三項のその指示の話だと思うんですね。さっきも議論がありました。適切、迅速、必要な場合とかいろいろ限定をかけておりますから、そういう意味で最小限だったりあるいは最後の手段だ、こういう御趣旨だと思うんですが、私はこれは実は違うと思っております。

 自公案では二十条二項を削除していますよね。三項では括弧書きで除外をしています。その趣旨は、最後の手段とか最低限とかという順番とか程度の問題じゃないと思うんですよ。やはり、オンサイトなのかオフサイトなのか、技術的、専門的なことなのかそうじゃないのか、こういうことでちゃんと切り分けないと、では、何が適切なのか、何が迅速なのか、何が必要な手段なのか、これはやはり抽象的ですから、判断によって変わってきますよね。

 その教訓というものが、やはりあの大震災のときにもあったわけですよ。これは、政府の事故調の中間報告でもそのような趣旨のことが述べられて、やはり菅総理が、ある意味、余りにも関与をし過ぎてしまった。これは原災法を根拠にしてやられているのかどうだかは知りませんけれども、少なくともその法律があるから、総理にいろいろなこと、細かいこと、技術的なことまで言われて、そこでストップしてしまったということですよね。だから、こういう規定を残しておくと、やはり、過度に介入をしてしまう、その危険性は残ると思っているんです。

 ですから、私は、そういう意味では、ちゃんと事柄として切り分けている自公案の方が適切だと思いますが、いかがですか。

細野国務大臣 そこはなかなか悩ましいんです。

 時間も限られておりますので簡潔に申し上げますけれども、例えば去年の四月、私が一番悩んだのは、海水の汚染水を流出させるのはどうかというのは悩んだわけです。当時は、極めて低レベルの汚染水がたまってきまして、それを一部の専門家では、もうこれは流した方がいいという話でした。ただ、私は、それは漁業のことも考えたり国際的なことを考えたら、流すべきではないと考えまして、一回とめました。それは科学的には流しても問題ないのかもしれないけれども、当時の状況からすれば、少なくとも一旦はとめるべきだという判断をしたからです。

 それは、総理が明確に指示権を出したということではないけれども、私は総理の半ば名代的な位置づけで東電にいましたから、それでこれは流すべきでないと言えたという経緯があるわけです。

 結局、それは後で違う形になりまして、もっと高いレベルの水がたまってしまって、それが流れて、とめなきゃならなかったものですから、濃い方をためておく場所として薄い方を流さざるを得ない状況になりまして、結果的に、それをしっかりと皆さんに事前に十分な説明をしませんでしたので、御説明したつもりだったんですが、やり切れていなかったので、大変厳しい御批判をいただきました。

 ただ、何が言いたいかというと、汚染水を流すというそういう科学的なことに思えることについても、社会が受けとめるかどうかというところで実は判断が非常に微妙なケースがあるんですね。ですから、確かに法文に書ければ一番いいんですけれども、オンサイトは専門家、オフサイトはこれは指示権が及ぶという切り分けもちょっと難しいです。オンサイトにおいても、これもやはりどうしても最後、指示権に基づいてやらなければならないことが多分出てくると思います。

 技術的なことについては、政治家はもう基本的には口を挟むべきではないと私も思います。思いますが、これだけシビアな事故になればなるほど、技術的にはこうなんだけれども、それをいつのタイミングでやるかとか、どういうふうに説明をするかとか、そういったことについてどうしても、ある種の社会的な判断が求められる部分があるんですね。ですから、そこをどう書き切るかということが極めて難しい。

 その事柄が難しいものですから、そういう最後の判断権限は残しておいた方がいいんじゃないかということで、政府が出している指示権は、非常に限定的な行使を前提とはしておりますが、一般的な書き方になっているということでございます。

井上(信)委員 これは私も同じ懸念を持っていまして、確かに、何が専門的、技術的なのか、何がオンサイトなのか、これは単純ではありません。あるいは、そうじゃないこととの関連性もいろいろありますよね。だから、そういう意味では、やはり自公案の方も、より正確に書いていく、あるいは解釈を示す、こういう作業は当然必要だとは思います。

 ただ、だからといって、では、今の原災法の二十条二項や三項をそのまま残すのがいいかというと、これは論理の飛躍ですよ。それだったら、やはり少なくとも明確に、どういう場合の指示権かというのをもうちょっと書き下さないと、これは危険ですよ。同じことが起きてしまう。今の規定だとそれを防げませんよね。これは私は無責任だと思う。だから、そういう意味では、そこはよくお考えをいただきたい。

 自公の提出者の方にも、やはりこのポイントというのはすごく大事なところだと思いますので、ぜひお願いをしたいと思います。

 そういう意味で、本会議の答弁のときに非常に気になったのは、「今回の事故では、オンサイトからの撤退が検討されました。」と細野大臣が答弁をされました。多分この趣旨は、オンサイトからの撤退については、これは国家の命運がかかること、でも、それが自公案だと、やはり規制委員会の権限になっているという話だと思うんですね。

 そういう意味では、では実際、自公案の解釈として、本当にそういうときに総理の、災害対策本部長の指示権が全く及ばないのかということについて、自公案の提出者の方、御説明していただきたいと思います。

塩崎議員 何度も申し上げますけれども、全ては、原子炉が不正常、超不正常になっているからこそいろいろ問題が起きてきて、人間を守る、あるいは環境を守るということをやるには、この原子炉がどうなっているのか、どうすればこれが人間を守ることになるのかということがわからないといけない、そういうことだと思うんですね。

 したがって、総理の指示権の問題は、これは、さっき一時退避の話をおっしゃっていましたけれども、本部長、総理が原子力事業者に対して、我々の解釈では、やはり規制委員会がすぐれて専門技術的に判断をした結果が、退避をすべきかするべきじゃないか、どっちもあると思うんですけれども、その規制委の意向に反して総理が一時退避をするなとかしろとかいう逆方向のことを言うということは、私は、指示権としてはあってはならないことだと思うんですね。

 そのために、我々はあそこに括弧で、二十条、我々でいえば二項、政府案でいけば三項、その中に括弧で規制委員会の所掌事務を除くというふうに入れているわけで、これはもう何度も細野大臣も認めているように、技術的な、専門的なことについては政治家が判断するのではなくて、やはり専門家が判断すべきだ、こういうことでありますから、定義上、それは規制委員会がすることですので、その意に反した指示をするということはあり得ないというふうに我々は理解しております。

井上(信)委員 そうすると今の話も、規制委員会の意向に反してはできないけれども、規制委員会の意向といわば同じであれば、これは指示もできると。

 ですから、そういう意味で、細野大臣がオンサイトからの撤退が検討されたとした答弁、その趣旨が、自公案では、そのことに対しても総理が指示できないという趣旨であるとしたら、それは誤解だったということに多分なると思うんですね、今のお答えを聞いていると。(柴山議員「違います」と呼ぶ)違いますか。では柴山さん、お願いします。

柴山議員 それはある程度しっかりと整理をする必要があると思っています。

 要は、原災本部長と原子力規制委員会が同じ方向を向いていたら総理が指示をできるのかというと、それは、法律上は権限は及びません。及びませんので、そこの例えば指示を、原子力安全委員会がやっていないという事態に、では、総理がそれをかわってできるかといえば、これは明確にできません。

 ただ、さっき塩崎委員から、クロース・コオペレーションというようなお話がありましたけれども、本来行うべき職務を緊急時にあって委員会が懈怠をしている、要するにぐずぐずしているという場合には、当然、それは本部長が規制委員会に対して、しっかりと仕事をしてくださいということを相互連携の一環としてきちんと協議をする、あるいは督励をする、そういうことはできるわけです。

 それからまた、原子力安全委員会が例えば安全確保のために措置をするように命じる、でも、事業者がなかなかそれをやらないというときに、一旦指示されたその指示について総理が、法律上は権限はないんだけれども、事実上、重ねてお願いをするということは、これは法律上の権限ではなくても、枝野さんも答弁でおっしゃっておられたように、では、法律に書かれていないことを一切総理としてできないかというと、そういうことではないわけですね。

 それは、少なくとも委員会が既に表明していることについて総理が事実上同じことを言及するということについては、これは原子力安全委員会の権限をオーバーライドしているものではないわけですね、それをただ重ねて事実上言及しているというだけですから。

 だから、法律上は、少なくとも、原子力安全委員会が本来業務としてやるべきことに対する総理の法律上の権限はないというのが私たちのたてつけであります。

井上(信)委員 法律上、明文化はしていないけれども、そういう意味では総理が規制委員会の意向と同じような指示をすることができる、多分そういう答弁だと思うんですが、では、これをお聞きになって細野大臣、この点についてはいかがお考えですか。

細野国務大臣 今の御答弁、塩崎先生の御答弁と柴山先生の御答弁と若干解釈の問題もあるようですので、一度きちっと議論をさせていただきたいというふうに思います。

 ちょっと個別のことは、もうここまで来ていますので余り言わない方がいいと思うんですが、あえて、大事なことですので私の思いを申し上げると、本当に国家の命運をかけた判断ということはあり得ますし、それもやはり考えなきゃいかぬぐらいの経験を我が国はしたわけですね。

 そういう経験をした立場からすると、あえて申し上げますね。技術的なこと、専門的なことに政治家は関与すべきではないと思うし、それはきちっと担保すべきだとも思いますが、それをはるかに超えて国家の命運がかかった場合には、規制委員会がこうだと言っても総理は逆の判断をしなければならない場面は、私は想定をしておいた方がいいと思います。

 そういう意味でいうならば、そこは誤解であったかと……(柴山議員「何を言っているのか」と呼ぶ)ちょっと……

生方委員長 ちょっと控えてください。

細野国務大臣 つまり、撤退をするかどうかというようなシビアなケースは絶対起こしちゃいかぬと思います。それはもう私の骨身にしみた教訓ですけれども、そういったこともどうしても考えなきゃならないような場合は、規制委員会の判断を超えても判断をしなければならないし、最後は伝家の宝刀として持っていなければならないんじゃないかというのが、私の今回の事故から得た経験であります。

井上(信)委員 お考えとしてはそういう考えもあるなとは思いますけれども、だから私がさっき申し上げたように、それならもうちょっとちゃんと書き切った方がいいですよ。あの原災法の規定は、あれでは菅リスクは防げません。教訓を生かし切れていない。

 自公案については、これはまたちょっとよくお話をしていただくということで。

 時間がもう余りないものですから、本当は、これまた大きな議論になっていた三条委員会の合議制の話をちょっとしたかったんですが、時間がなくなってしまったもので、また次の機会にというふうに思っております。

 きょうもいろいろ、私の質疑もそうですし、塩崎先生初め皆さんとの質疑も聞いていると、非常にいい質疑ができたなというふうに思っておりますので、ぜひこれを与野党協議の中にも生かしていただいて、よりよいものをつくり上げてもらいたいと思っているんですね。

 私はその中でちょっと一点だけ注文があるんですけれども、大臣、覚えていらっしゃると思うんですが、三月十六日、この環境委員会において私は大臣に伺ったんです。見直し規定の話、きょうも、その一元化で保障措置やモニタリングについて年内に見直ししますと明言されましたよね。確かに八月の閣議決定にそのことも書いてありますよ、漠とした書き方ですが。これを閣法の法案の中に書いていないんですよ。これはおかしいですよ。自公案については、三年以内ということで、例の国会事故調の報告の話もありますよ。それは見直さなきゃいかぬですよ。国会軽視と言われてしまいます。

 ましてや、閣議決定もし、そして今の御答弁でもやるとおっしゃっているんだから、少なくとも見直し規定を入れるという修正だけは、もちろんほかのもやってもらわなきゃいかぬのだが、これだけはちゃんとやると明言してください。

細野国務大臣 非常に重要な御指摘をいただいたというふうに思います。

井上(信)委員 もうちょっと踏み込んで。これはそんなに中身にかかわる話じゃなくて、閣議決定しているんですから、むしろ、これをやらないと言ったら閣議決定軽視ですよ。もうちょっと踏み込んだ答弁をお願いします。

細野国務大臣 ちょっと近藤理事の顔色を見ながらでありますが、政府案としては法案を出しておりますが、しっかりと見直すべきであるという御指摘は、私も全く思いを同じくいたしておるところであります。

井上(信)委員 この辺で了解をしたいと思いますけれども、あともう一つ。

 これから法案の修正協議なんかも入られると思いますけれども、実は、組織の新設という話でいえば、最近は復興庁がありましたよね。あのときも、私も委員をやっていていろいろやりましたが、閣法と議員立法と、やはり妥協案みたいな形にだけはしないでほしいんですよ。結局、それをやってしまうと、何だか間に落ちて、ちゃんとワークしなくなってしまった。申しわけないが、復興庁でもそういう声が被災地で上げられていますよね。ワンストップだと言いながら、結局、ワンストップじゃなくて、むしろ入り口がふえちゃったみたいな話とか。だから、そうならないようにしてほしいんです。

 そのためには、やはり自公案を丸のみしてもらいたいと思っていますので、これは大臣に言うことじゃなくてこっちかもしれませんが、とにかく、国民のためになる新しい組織をつくっていただくようによろしくお願いしたいと思います。

 どうもありがとうございました。

生方委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、原子力規制組織及び制度改革について質問をさせていただきます。

 私も塩崎先生と一緒で、提案者でございますので、自公案に対しては聞くことができません。本日は政府に対してのみ質問をさせていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 公明党は、東京電力福島第一原発事故を直視して、今こそ本格的に、原発に依存しない、安全・安心エネルギー社会への移行に取り組むべきと考えております。そのためには、思い切った省エネの推進、再生可能エネルギーの導入、また、化石燃料利用の高効率化を推進し、原発の新たな着工は認めずに、段階的に原発を縮小していくべきである、こういう公明党のスタンスを持っております。

 その上で、既存の原発については、科学的、客観的な規制を実施して安全性を確保していかなければなりません。そのために、原子力規制組織のあり方が極めて重要になってくるわけでございます。

 公明党は、この規制組織には、独立性、中立性、そして専門性、強い規制権限が必要であり、内閣から独立した地位が与えられている独立行政委員会として設置すべきと主張してまいりました。この点において自由民主党と見解を同じくして、原子力規制委員会設置法案を共同提案しているところでございます。

 改革に当たって重要となる論点が、まずは独立性、中立性、専門性であり、次に危機管理、また規制強化であると思っております。本日は、この三点を中心に質問をさせていただくとともに、公明党が重要と考える申告制度についても質問したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、独立性、中立性、専門性ということについてでございます。

 政府案の一番大きな問題点は、先ほどからももう出尽くしておりますけれども、規制機関の独立性、中立性、専門性の欠如にあります。

 さきの衆院本会議において、公明党の佐藤茂樹議員から、政府は、なぜ、かつて民主党が主張していた三条委員会のような独立性の高い規制組織とせずに、環境省の外局として規制庁を設置することにしたのかと、こう質問をいたしました。これに対して野田総理からは、原子力安全規制の権限は全て環境大臣から原子力規制庁長官に委任して、原子力安全調査委員会が継続的に監視することにより、原子力規制庁の独立性を担保するということでございました。

 しかしながら、依然として政治の関与の余地を残しておりまして、IAEAの安全基準から見ても、政府案の規制庁は、独立性の点で甚だ不十分と言わざるを得ません。

 私が最も懸念しているのは、原子力規制庁長官の任命権、解任権を政治家である環境大臣が持っているということにあります。環境大臣は、原子力安全規制の権限を原子力規制庁長官に委任するとしておりますけれども、人事上の任命権、解任権を持っているということは、これは長官に対する多大な影響力を持つということであり、例えて言うならば、環境大臣は政治の思惑に合わせて原子力規制庁長官をコントロールすることが可能ということになり、その結果、原子力安全規制は不当な圧力によりねじ曲げられてしまう、こういう可能性があるわけであります。

 ここで大臣に質問をいたします。

 環境大臣がこの原子力規制庁長官の任命権、解任権を持っている仕組みであるにもかかわらず、政府はどのような理由でこの原子力安全規制の独立性を担保できると考えておられるか。一歩踏み込んで大臣のお話をお伺いしたいと思います。

細野国務大臣 独立性については、これも再三答弁をさせていただいておりますけれども、まず第一に、やはり、推進側から明確に独立をするということを考えました。これはIAEAからも実質的な勧告もあった件でございますので、そこはしっかりと確保するということで、規制庁を提案をさせていただいております。

 今、江田先生の方からの御指摘は、それに加えて政治的な独立性ということについての御質問かというふうに思います。

 そこについては、総理からも答弁がありましたとおり、主に二つの仕組みで確保するという考え方であります。

 一つは、法律上の判断権限というのを長官に委任をされますので、そこに介入する余地というのは法的に大臣にはないということが一点であります。

 しかし、法的にはないんだけれども、何らかの形でそれこそ恣意的に介入をするようなことがないのかということに関しましては、これは、原子力安全調査委員会、国会の同意人事でつくられるわけでありますが、ここが原子力規制庁の独立性を常に監視することとなっておりますので、大臣が長官に対して不当な政治的な影響を及ぼすような場合には、チェックをする仕組みができているというふうに考えているところであります。

江田(康)委員 想定する答弁でございますけれども、やはりいずれにしても、この原子力規制庁長官の任命権、解任権というのが環境大臣に残っているものであるのは間違いないわけで、やはり、この点が独立性が不十分であると指摘せざるを得ない。三条委員会にすべきものと考えております。

 総理の答弁で、この独立性の確保のあり方については、今後、国会での審議の中でしっかりと議論していくとありました、さきの本会議の答弁でありますが。これは大臣、政府案の規制庁ではなくて、自公案の独立性の高い三条委員会を設置するということを意味しているのか。

細野国務大臣 そこは野田総理の思いが答弁の中に込められているのではないかというふうに感じました、私も聞かせていただいて。その思いというのは、政府案を提出をしておりまして閣議決定していますから、それは、政府としては国会にお願いするという意味で責任ある立場であります。

 しかし一方で、原子力の規制組織というのは、これは会派、党派を超えて極めて重要なものでありますから、それこそ、各党各会派からさまざま御提案いただいていることに関してもしっかりと柔軟に対応すべきだという思いを総理自身がお述べになったものではないかと考えているところであります。

江田(康)委員 それでは、この規制組織の一元化、このことについてお伺いをさせていただきたいと思っております。

 規制機関は、その能力、資源、責任、これを集約して、原子力の安全確保に向けては最大限の実効性を確保していく必要があるわけですね。原子力安全を担うこの行政機関は、これはばらばらであってはいけないわけで、しっかりとこれを一元化して、独立性を持って専門的な能力を発揮しなければならないわけです。

 本年二月末に公表されました民間事故調の報告書においても、その点、指摘があります。複数の組織が絡む日本の原子力行政が安全規制のガバナンスの無責任状態の元凶であったと、こう指摘しております。

 これは、二〇〇一年の省庁再編、このとき、原子力安全規制のガバナンスを一元化して強化するチャンスはあったわけであります。それにもかかわらず、文科省、経産省と、その体制を補強する原子力委員会、原子力安全委員会というこの二元推進体制、また二元審査体制、このことが維持されました。

 原子力の安全規制は、そのことによって経産省の原子力安全・保安院と原子力安全委員会がともにこれは担うことになったわけでありますけれども、文部科学省の抵抗があり、試験研究炉の規制、さらには、放射線モニタリング、放射線防護、核不拡散の保障措置などの権限が残されたわけであります。その結果、安全規制はより複雑なものとなった。

 今回の事故で、一元化されていない結果、最も大きな問題を引き起こしたのは、SPEEDIであります。

 このSPEEDIは、今回のようなシビアアクシデント時に、速やかにその試験結果を発表して住民避難に役立てるものであるはずでありました。三十年近くにわたって開発もしてきたわけです。これを所管する文科省は、放出源のデータがとれないという不確実性を理由に、SPEEDIの活用や公表には極めて消極的でありました。

 さらには、SPEEDIの公開の是非が政治問題化するや否や文科省は、その評価や公表の任務を原子力安全委員会に押しつけた、こういうようなこともささやかれているわけでありまして、国民の安全に直結して出すべき情報を出さない、また、役所間が責任のなすり合いをしていく、これが国民の信頼を失墜した大きな要因の一つになったものだと思っております。

 やはり、限られた原子力安全の組織、人材、英知というのは、結集されなければならない。この点から、政府案の原子力安全業務の一元化の考え方は中途半端と言わざるを得ないんです。今回の事故でも問題がありました、この民間事故調でも安全規制のガバナンスの問題点が指摘されているにもかかわらず、政府の法案では、文部科学省にモニタリングの実施、放射線防護、核不拡散の保障措置等の多くの機能が残ることとされております。

 先ほど来から、これは井上先生も御指摘でありますけれども、政府は、このような中途半端な一元化の体制が、原子力の人的資源を集積して、原子力の安全向上を進めて今後の事故に備える上で適切なものと本当に考えているのか、そうではないのか、大臣、また一歩踏み込んで大臣のお考えをぜひとも聞かせていただきたいと思います。

細野国務大臣 今回の法案の中では、従来の組織改編そして一元化の議論で問題になっていたところも含めて、最大限の一元化をしていこうというところがスタートとしてはございました。

 したがいまして、例えば、これまで文部科学省にあった研究炉なんかの安全規制も、今度は規制庁に移ります。これも文部科学省が従来持っていた権限になりますが、それは一元化をするという形になるわけですね。江田委員御指摘になったようなSPEEDIなんかも一元化の対象になりました。

 そういった意味では、かなりの程度一元化が行われ、そうしたベースとなる放射性物質、放射能に対する検討の場でもある放射線審議会、これも、放射線防護に関する業務のうち、原子力規制の一層の向上に寄与することが期待できるものということで、一元化の対象になったという経緯があります。

 一方で、先ほども井上委員からもありました、今、江田委員の方からも具体的な御指摘がありました。放射線モニタリングについては、司令塔を担い、関係省庁においてそれぞれ行うモニタリングを総合調整をするというところにとどまっております。

 放射線防護に関しては、これもなかなか悩ましいところがあるんですが、どうしても、例えば医療などで放射能を使うものというのは結構ございまして、そこを果たして厚生労働省から持ってくることが本当にこの目的に沿うのだろうかというような、実はかなり技術的な検討もした上で、ちょっとそこは性質的に違うのではないかという経緯があって残った部分がございます。

 そして、恐らく国会でも一番議論になろうかと思いますのはいわゆる保障措置でございまして、これについては、IAEAが政府をもある意味でしっかりと監視をする、政府をですね、そういう面もありますので、原子力のいわゆるセキュリティー、セーフティーとは若干性質が違うということで今回の一元化にはならなかったという経緯がございます。

 八月の閣議決定において、当面の対応として今御説明を申し上げたような形になっておりますが、年内にさらに検討を進めて方向性を出すということになっておりますので、この国会での議論も踏まえながら、我々もさらに検討を進めていく必要があるというふうに感じております。

 最後にもう一点だけ。

 江田委員から非常に重要な御指摘だなと思いながら聞いておりましたのは、やはり人材なんですね。それぞれの省庁が持つ行政の事務については、それなりの理由があってそれぞれの場所に残るということは、確かに理屈としてはあり得るんだけれども、もう一つやはり考えなければならないのは、これだけ原子力の安全が問われている中でもっと専門家を一元化をしていかないと強い組織ができないのではないかというのは、極めて重要な御指摘だというふうに思います。

 その意味で、分散化している部分があるとすれば、それもやはりどんどんとしっかりと一つのところに一元化をすることで強い組織をつくっていくという必要性については、思いを同じくするところであります。

    〔委員長退席、大谷(信)委員長代理着席〕

江田(康)委員 一元化については今大臣が繰り返しおっしゃっていることでございますけれども、やはりモニタリング一つとっても、それは司令塔であり、実際のモニタリングの計測実施というのは文科省に残っているという非常にアンバランスな、それを総合調整するというようなことで果たして今回起こったような緊急の事態に対して的確に対応できるのか、同じ轍を踏むのではないか、こういうような問題がありますし、放射線防護や保障措置に関しては、年内、検討を進めて結論を出すとあります。

 この大臣の答弁は評価をするわけでございますが、ここのところは、本当に原子力行政を一元化していくことが、独立性もまた担保でき、そして専門性も確保して、国民の期待に沿う原子力規制組織ができ上がる非常に重要なところだと思っておりますので、今後の課題を、これは絶対に先延ばししてはならないと思います。そういう意味では、結論を出すとおっしゃいました、そういうことをしっかりと我々も議論してまいりたいと思っております。

 次の質問でございますけれども、今、一元化の問題、これは行政機関だけに限らないわけでありまして、その傘下にある支援機関、研究機関たる独立行政法人までこれは及んでいるわけであります。さきにおっしゃいましたけれども、平時において独立行政法人が有する高い専門的知見を取り入れていくということはもとより、緊急時においては、これらの法人の持つ能力を結集させる、これが非常に重要であると指摘されております。

 これまでの縦割り行政のまま、原子力安全で最も重要な独立行政法人である原子力研究開発機構、JAEAや放射線医学総合研究所は文部科学省の所管であります。原子力安全基盤機構、JNESは経済産業省の所管のままとなりました。このため、今回の事故でも、これらの機関は定められた行動だけをとった。相互の連携協力、これは全くとることができなかった。

 我々は、これでは緊急時に対応ができない、また、我が国の原子力安全規制のレベルを上げていくことができないと強いその問題意識を持って、この放射線医学総合研究所だけでなくて、原子力に関する科学的知見が最も豊富なJAEAも文部科学省と原子力規制委員会が共管することにしたわけであります。

 これに対して政府案では、JAEAに対しては原子力規制機関が関与できない仕組みとなっているわけでございます。

 これでは、この事故から一体何を学んだというのか。また、行政組織の一元化もできない。いつまでも役所の縄張り意識、縦割り行政の範疇から抜け出せないというのでは、これは、国民の命を守るのと役所の既得権益を守るのと、どっちが大事だと考えているのかと問わざるを得ないわけであります。

 そこで、大臣にお聞かせいただきますが、政府はなぜ原子力規制庁がJAEAを所管しないことにしたか。自公案のように、原子力規制委員会がJAEAを所管することによって、原子力安全に関する新しい知見を取り入れて今後の事故に備えることができると考えるわけですが、大臣のいま一度の答弁をお願いします。

細野国務大臣 独立行政法人の問題は非常に大事だというふうに思っております。

 御指摘いただきましたとおり、原子力安全基盤機構については、今保安院のもとにありますが、これを規制庁がしっかりと担っていく。公明党さんの案では、役所と一元化をするという案も出てきていますので、そういったあり方も含めてさまざま検討する必要があるというふうに思います。

 一方で放医研については、これもいろいろ議論があったんですが、やはり福島の健康管理についてもこれからしっかりとやっていかなければならないだろうということで、これも共管という形にいたしまして、提案をしております。

 そして、そうならなかったのが、今御指摘のとおり、JAEAということであります。

 もうよくよく御承知かと思いますが、JAEAの場合は、もともと、いわゆる基礎的な研究や応用研究をする旧原研と高速増殖炉を主にやっております旧動燃と二つの組織、これが合わさる形で独立行政法人としてのさまざまな業務をやっております。専門家が我が国においてどこにいるかということを見渡すと、このJAEAには大変人的な蓄積があるというのは紛れもない事実です。したがって、どういった形になるにしても、新しい規制組織のもとでこのJAEAとの連携というのは、大変重要であるというふうに考えています。

 そこで、今後のあり方なんですが、一つの我々の考えた理由といたしましては、この原子力研究開発機構の中で、旧動燃のいわゆる高速増殖炉の部分などはむしろ推進サイドに近いという面がございますので、そこは規制サイドと必ずしも融合性というか、全く一致をするというものではない面がある。一方で、いわゆる旧原研がやっていたような放射能全体に対する研究であるとかさまざまな基礎的な知見であるとか、そういったところは我々もぜひそういった皆さんの力をかりたいというふうに思うわけですね。

 ですから、そういう皆さんの力をどのようにすることでかりることができるのかということについては、これは大いに検討する余地があるというふうに思いますし、規制庁もこのJAEAに共管という形で関与せよという御提案をいただいておりますので、それについては私どもももう一度しっかりと考える必要があるのではないかと、そのように感じたところであります。

江田(康)委員 まさに今大臣がおっしゃったことと私も全く同意でありまして、大変安心したわけでありますけれども、ぜひとも、このJAEA、旧原研のその専門家はここにいるわけでありまして、専門家集団のこのJAEA、もう何らかの形でこれは今回の規制組織に一元化といいますか、合流していく、そういうようなことにしなければと強く思っておりますので、ぜひともこれは、さらに努めて結論を出していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 さらに続けて、専門性ということについてお伺いをさせていただきます。専門性の高い人材の確保ということですね。

 今回の事故で原子力安全・保安院は、専門能力の低さを、国民に対して、また世界に対しても暴露してしまったわけであります、露呈してしまいました。民間事故調も、保安院は、規制機関としての理念も能力も人材も乏しかったと指摘しています。痛烈に批判しています。

 保安院は、結局のところは、安全規制のプロフェッショナルを育てることはできなかったわけでありまして、事故の際、保安院のトップは官邸の政府中枢の質問にもまともに答え切れなかったのは、国民みんながテレビ等でも見ていたわけでありまして、大変残念であります。事故収束の対応に向けて専門的な企画も立案もできなかった。東京電力に対しては、事故の進展を後追いするだけで、これは御用聞き以上の役割を果たすことはできなかったとも言わざるを得ない。

 これに対してアメリカの原子力規制委員会、NRCは、みずから原子炉を動かすことができる複数の職員を有しているわけです。専門性の高い四千名から成る職員を抱えております。我が国の原子力安全・保安院と比べると、余りの能力の違いに愕然として、大変残念に思うわけです。

 これを改善するために、自公案では、原子力規制に関する専門能力を有する原子力安全基盤機構、JNESの職員を基本的に原子力規制委員会の職員とすることとして、人材の質を高めることとしたわけであります。

 翻って政府案を見れば、専門性の高い人材の確保に向けて何ら法的な手当てをしていないところが重大な問題だと思っております。

 ここで大臣に質問をさせていただきます。

 政府案では、このJNESを原子力規制庁のもとに所管させるだけとしているわけでありますが、このような体制で、大臣もそうは思ってはいらっしゃらないと思いますけれども、原子力規制機関の専門性、これを高め続けることができるのか、国際レベルに近づけていくことができるのか、大臣、そこのところはどうですか。

細野国務大臣 NRCの体制は、日本でいうならば原子力安全・保安院にJNESを加えたような、検査の実務に加えてさまざまな研究、いわゆる検査にかかわるような検討も幅広くできるようなそういう組織になっているわけですね。ですから、自公で提案をしていただいている考え方は、そういったNRCの例なども考えると、一つの御提案だというふうには思います。

 いずれにしても、本当に優秀な人材を確保するという意味で、当面、政府案の中で考えておりましたのは、JNESというのはさまざまな技術的な専門性を確かに持っておりますし、実際にそのJNESの知見に基づいて保安院がさまざまな規制をしてきたという面があるわけですね。ですから、そういった意味でのしっかりとした人事交流もしながら技術のレベルを高めていくという、そういうことを当初考えていたということであります。

 なぜ、では一元化をしないのかということについては、これは総理が本会議でも答弁をしておりますとおり、率直に申し上げまして、積極的な理由というよりは、これまでのさまざまな行政改革の流れというのがあるというのがその理由であります。

 行政組織の肥大化を招くであるとか、公務員制度の枠内では独立行政法人と比べて柔軟な人事管理が難しい、これはどちらかというと行革とは違う理由でありますけれども。あと三番目といたしまして、公務員でない職員を公務員とする、これまでは言うならば独立行政法人の職員という非公務員型の独立行政法人であったものを公務員にするわけですから、公務員の数がふえますよね、かなりの規模の組織ですから。そういったことについて検討すべきだということで、そういう形を当面考えておったということでございます。

江田(康)委員 何をやりたいのかということですよね。やはりこの東電の事故を踏まえて、我が国には、原子力規制組織、専門性の高い、また独立性のあるその組織がなかったわけで、これをつくり上げようというのが今の我々の仕事であるわけで、政治家の責任でございます。

 その際に、JNESを使わなければ、あそこに専門家はずらりとおるわけですから、そこの五百人を一元化していけば千人体制になってくる。そういう中で初めてこの原子力規制委員会、規制組織が本当に専門性のあるものとして、また職員の皆さん方は、キャリアパス等で非常に夢を持って、希望を持って、誇りを持ってこの規制の仕事をやり抜いていける。JNESというのはこの柱中の柱といいますか、非常に大事なことであります。

 今回、我々自公案がこのように国会に提出されて、まさに、これからその修正協議も踏まえて一つの形をなそうとしております。これまで乗り越えられなかった、やはり先ほどおっしゃっているのは縦割り行政の弊害であって、各官僚の、省庁の言い分にすぎないわけであって、それをやはり変えていくのが我々国会ではないですか。

 そういう立法府の役目を本当に今回は果たしていくべきだと思いますので、これは大臣、腹の底では一緒でございますので、本当に実効力のある、専門性の高い規制組織をつくるためにJNES等の一体化はぜひとも実現してまいりたいと思います。どうぞ頑張りましょう。よろしくお願いします。

 ノーリターンルールについてお聞きをさせていただきます。

 政府案では、原子力規制庁の職員のほとんどは原子力を推進してきた経済産業省と文部科学省から寄せ集めることとして、言い方は悪いかもしれませんが、規制と利用の分離を担保するためのノーリターンルールも幹部職員に限定する、こういうことで、私どもからいえば、大変弱い、骨抜きにされたものではないかと思っております。

 これに対してこの自公案では、ノーリターンルールを徹底して、さらに、さきに述べたように、JNESと一体化することによって専門能力を持った職員をしっかりと確保していくことをこの目的としているわけであります。先ほどこれは大臣からも、重要な御指摘ということで評価をしていただいています。

 先週の本会議で、我が党の佐藤議員からノーリターンルールや人材育成について質問をいたしました。野田総理はそのとき、原子力規制庁の立ち上げに必要な全ての職員をノーリターンしてしまうと、強い意欲を持って規制業務への参加を希望する優秀な職員が少数にとどまることが懸念されると述べられました。我々はびっくりしたわけでありますが、この答弁は大きな矛盾を感じます、逆ではないかと。ノーリターンにしなければ出向した職員はいつかは経産省などのもとの役所に戻ることができるわけですから、当然、もとの役所を見て仕事をして、意欲のない人材ばかりが集まるのではないでしょうか。

 また野田総理は、人材育成については適性のある職員の採用と適材適所の配置をして、将来の管理職や幹部となる人材を含めて職員をしっかり育成していくと。これは当たり前のことを述べているだけで、全くこれは具体策がないと思います。

 ここで大臣に質問をいたします。

 ノーリターンルール、これを厳格に適用するとなぜ意欲がある職員が集まらないと考えておられるのでしょうか。

    〔大谷(信)委員長代理退席、委員長着席〕

細野国務大臣 新しく創設をいたします原子力の規制組織というのは、やる気と能力に満ちた職員をできるだけ数多く集めたいというふうに思っています。

 あくまで現段階の私の感触でございますけれども、原子力にかかわっている人間にとってはここはまさに正念場でございますので、技術系の職員については、これはしっかりと確保していかなければならないし、また、できるのではないかというふうに思っています。彼らは、ノーリターンの範囲に入っていようがいまいが、原子力でやっていくというふうに腹を決めていれば、これから安全と規制が本丸になることはよくわかりますから、そこでしっかりとやってくれるのではないかという、そういう感触を受けております。

 一方で、悩ましいのは事務系の職員でございまして、文部科学省や経済産業省に事務系で入った職員の場合は、例えば文部科学省であれば、科学技術で幅広く全体をバックアップしていくであるとか、科学技術庁は比較的事務系の職員は少ないですけれども、経済産業省であればエネルギー政策であるとか産業政策であるとか、そういったこと全体をやるために入っている職員なわけですね。その職員が、例えば、原子力規制庁の人事管理とかマネジメントをするからどうしてもではおまえ来てくれと言われた場合に、彼らのキャリアパスというようなことを考えたときに、全員それを強制をするというわけにはいかないのではないかというようなこともあるわけですね。

 そこを、例えばノーリターンですよということで初めから全員がそういう形でしか来れないということになってしまうと、特にマネジメントにかかわるようなところというのは人材を集めにくいのではないか、そういう懸念を今私は持っております。

 マネジメントができないというのはかなり深刻なことでありまして、採用ももちろんそうでありますし、人材をどうこれから育てていくか、それこそ組織をどう強化をしていくか、あらゆる面でそういう職員はやはり重要です、必要です。ですから、そこも考えたときに、ノーリターンをどこまで適用するかということについてぜひ実質的な御議論をいただければ、私どももそこはしっかり耳を傾けたいと思っているところであります。

江田(康)委員 今、実質的なところで大臣からの御指摘もありましたが、これはやはり努力していかなければならないと思っているんです。何をやらなくてはならないか、それはやはり、専門的能力があって意欲がある職員を確保して、また、独立性を確保していくことでありますから、やはり、ノーリターンルールというのが基本にないと育たないと思うんですね。

 そういう意味では、JNESと一体化して職員を一千名程度の規模としていく、専門性を高めていく、こういうことが基本ではありますけれども、事務系、マネジメント系、ここもしっかりとこれは実態に即して我々も十分議論をして結論を出していかなくてはならないと思いますが、やはり基本的には、ノーリターンルールというものを大きく掲げるということが必要ではないかと申しておきたいと思います。

 時間も少なくなってまいりましたけれども、次に、私、大事だと思っているのは、先ほどからもありますけれども、危機管理についてであります。まず、総理の指示権にもかかわるところですので、これについてお聞きをいたします。

 平時の原子力安全規制において独立性を確保することは、これは言うまでもないことでありますが、しかし、これは緊急時においても同様で、原子炉の安全対策、いわゆるオンサイト対策は、あくまで科学的な判断のもとに専門家が進めるべきであって、政治の介入は極力避けなければならない。

 今回の事故で、先ほどからも指摘されておりますけれども、官邸の現場への過剰介入が大きな問題となったわけです。事故直後には、現場が必死で対応している中に菅総理がヘリコプターで現場を訪れて、吉田所長を初めとする多くの関係者が、最も重要な初動対応の時期にこの総理の受け入れの対応に追われた。また、この最たるものでは、原子炉への海水注入に当たって総理が納得されないために、一時中止を命じさせた。ここらのところにおいては、これからの国会事故調や政府の事故調等々で明確になってくるわけでありますけれども、こういうような現場の危機を増大させるような事態まで、これは政治の介入が引き起こしたわけであります。

 民間事故調の報告書にも、総じて官邸によるこういうアクシデントマネジメントへの介入が、ほとんどの場合には全く無駄だったというか、影響を与えていない、無用な混乱やストレスを高めただけであるというような指摘もしているところであります。

 自公案では、このような官邸の現場への過剰介入を阻止するために、緊急時における総理の指示権、これを削除しているところであります。これによってオンサイト対策については、政治の介入を受けることなく、原子力規制委員会が高い専門性を持って科学的、客観的に対応することが可能となります。

 先週の本会議においても、この件についてまた我が党の佐藤茂樹議員から、総理や政府が原子炉鎮圧について介入する是非についてどう考えるかと総理に問い尋ねました。そのとき総理は、総理や政府の介入は、国として危機管理上最低限のかつ最後の手段であり、抑制的に行使されるものと答えておりました。

 しかしながら、今回の事故の菅総理の対応を見れば、これは政府がオンサイト対策に全面的に介入していて、野田総理が言うような抑制的なものとはとても思えない、こういうことが実際に起こるということを我々は経験したわけであります。

 ここで大臣に質問をいたします。

 政府案では依然として総理の指示権を残しておりますけれども、先ほど来からこの御質問の中で答弁はされておりますけれども、その意味するところは何ですか、どういう理由を持っていらっしゃるか、そこを逆に我々は問い尋ねたいと思うわけであります。また、今後、今回の事故対応のような総理の過剰介入をこれで避けられる、こう思っておられるのか。

細野国務大臣 緊急時の原子炉の鎮圧については、事業者が一義的な責任を持つということはまず明確に申し上げておくべきだろうと思います。

 それを申し上げた上で、専門家である規制組織がこれを監視をし、科学的知見に基づく客観的な判断から、事業者の対策に対する指導、助言、さらには、本当に必要な場合については指示をしていくということが基本となってまいります。

 そういった基本的な枠組みを考えますと、原子力災害対策本部長たる総理が指示をするケースというのは極めて限定的であるべきだし、特に技術的な部分について介入をすることは、厳に慎むべきだと私も思います。そういう意味では、今、江田委員の方がお話しになりましたことに私も全く異議はございません。賛同いたします。

 その一方で、先ほど来幾つかの例をお示しをしましたけれども、オンサイトでもどうしても総理の指示というのが必要となるケースというのがございます。典型的な事例としては、自衛隊によるプールへの放水の総合調整というのを総理の指示で出しましたが、あそこは、総理の指示があったから回り出したというふうに私は思っております。

 ここは、技術的な側面というよりは、どちらかというと、非常に力わざというか、泥臭いけれども現場の調整というようなことになるものですから、いわゆる専門性とか科学性ということとは若干離れて行使をできる余地を残すということもやはり必要ではないか。

 ここは恐らく各党各会派、御賛同いただけるのではないかというふうに思いますが、最後に恐らく残ります論点というのは、いわゆる国家存亡のときというようなことが絶対に来てはならぬわけですが、万々が一やってきた場合に、そのときに総理の指示権というのをどう考えるか、ここは議論の余地があるところではないかと感じているところでございます。

江田(康)委員 先ほど来から議論があっているところですので、私の考えも申し上げたいとは思いますが、確かに、細野大臣が幾つか事例を挙げられました。汚染水を流すときの判断、さらには、例えば東電が撤退するといった場合の命にかかわる職員、その方たちを考慮してどう政治判断していくか、ここはまさに政治判断の大きなところが予想されるということは、私も実は思うところであります。

 ただ、それに対して具体的に最後の手段としてというのが、幾つか具体例がそうやってから挙げられますけれども、総理が介入する必要性というのは、そういう意味では理解できるところもあるわけです。

 ただ、政府案では、その総理の過剰介入を防止する手段、こういうことが十分というか全く示されていない中で、最後の手段というような具体例を挙げながら言われても説得力がないわけでありまして、そういうようなところにおいてどのような政治の過剰介入を防止していくこの具体策をとっていくのか、ここにおいてぜひとも逆にもう一度問いたいと思うんですが、こういうところを十分にこれから審議をしていかないといけない重要なところだと思っておりますので、何かありましたら。

細野国務大臣 非常に悩ましい点について御質問いただいたと思います。

 今、私が幾つか、二つ、三つ例を挙げましたのは、今回の事故を本当に一つの偶然というか、そういう役にたまたまございましたので、本当に間近で経験をしたから挙げることができた例でございまして、これからいろいろなことが考えられる中で全てのケースを予見することは、とてもこれは不可能だというふうに思っています。

 したがって、どういったケースに指示権を絞り込んでいくのかというのは、これはなかなか難しいと思うんです。法律の中でも、既に、「特に必要があると認めるときは、その必要な限度において、」ということで絞り込まれています。絞り込まれている中でどう抑制的な行使の余地を残すのかということについて、ここはやはり知恵を絞っていく必要があるのではないかなというふうに感じております。

 全てを予見をすることが難しいとはいいながらも、過度な濫用はやはり防止をするということも検討する余地があるというふうに思いますので、私自身も、どういったやり方があり得るのかということについては少し考えてみたいというふうに思います。

江田(康)委員 さらに、平時における危機管理体制の強化を質問していきたいと思います。

 今回の事故の反省を踏まえれば、強固な危機管理体制を構築すべきであることは我々も全く異論はありません。政府案では果たして本当に危機管理体制が強化されているのか、これをしっかりと確認する必要もあります。

 今回の事故を改めて振り返りますと、政府はシビアアクシデントに対する備えが全くできていなかった。想定したこともない事故が発生し、マニュアルも不十分、関係者の能力も不十分、情報共有の体制も整備されていない中で、専門知識、経験を欠いた少数の政治家が中心となって、次々と思いつきだけで場当たり的な対応を続けたと言われても仕方がないようなこともございました。当初予定していた危機管理体制は全く機能しなかったのではないか。大変に残念であります。

 このような危機管理体制が、民間事故調の言葉をかりれば、まさに稚拙で泥縄的な危機管理と言われたわけであります。

 この稚拙で泥縄的な危機管理という言葉は、政府が平時から事故に対する備えが全くできておらず、いざ緊急事態になったら、役割分担もわからず、何をしてよいかわからず右往左往していることをあらわしているわけで、つまり、緊急時対応というのは、やはり平時からの連続で、平時において危機に備えていなければ十分に対応できないということがこれは逆にわかったわけであります。

 ここで大臣に質問をいたします。稚拙で泥縄的な危機管理とならないように、平時における備えをしっかりとしておく必要がありますが、そのための平時の取り組みとしてどのような仕事があるか。この委員会の中でもなかなかそういうようなところまで具体的には質問があっておりませんでしたので、どんな仕事があって、誰がどのように進めていくというようにされているか、そこを明確にお示しください。

細野国務大臣 今回の事故対応で反省を一言だけ申し上げますと、御指摘のとおり、事前の準備が極めて不十分でありました。しかし、不十分ながらも行っておった事前準備がほとんど機能をいたしませんでした。

 一番典型的な例は、オフサイトセンターが早々にもう機能しなくなって、次に考えておった場所もどうもだめそうだということで、早々に県庁に行くということになったわけですね。ですから、当初は、オフサイトセンターに地元の自治体の皆さんも来ていただいて現場で判断というそういういわゆるマニュアルになっておったわけですが、そこが全く機能しなかったということがございます。

 そこで、いろいろなレベルの事故があり得るというふうに思いますので、それぞれのレベルの事故に応じてしっかりとやはり備えるということが基本中の基本になってくるだろうというふうに思います。

 そこで、今回の改正案の中で、原子力の防災指針、これまでは法定化されておりませんでしたけれども、これも法定化をして、しっかりと国として指針を出します。その指針に基づいて、地域でそれぞれ防災計画をつくっていただきたいというふうに思います。ですから、その防災計画であるとかそのもとでつくられますマニュアルの策定について地方を全面的に支援をして、国としても、そうしたマニュアルや基本計画に沿った防災訓練についても全面的に見直して対応していく、これが重要ではないかと考えております。

 そして、そういうことをやる専門家を育成をしていかなければなりません。自公案を拝見しておりまして、そこはぜひちょっと御議論いただきたいなと思うんですけれども、政府案は、原子力地域安全総括官というのを置きまして、これをオフサイトの防災の専門家としてフル活用いたします。

 もうかなりいろいろなことが煮詰まっておりますので、正直申し上げますと、そこは警察から人を引っ張ってきまして、相当責任あるポジションに据えます。この人間を初めとしたチームが常に全国で防災のさまざまな取り組みについて巡回をして回る形をとって、準備ができていないところがあればそこは底上げをしていくという、そういう体制をとるわけです。

 そういう体制をとるからこそ、逆に万々が一事故が起こった場合には、原子力災害対策本部の、しっかりとした事務局も含めて全体の回しができるようなたてつけの方が、平時から有事ということでスムーズなのではないかというふうに考えたところでございます。

 また、担当大臣についても、必要ないのではないかというそういう御意見がございました。確かにそういう考え方ももしかしたらあり得るのかもしれませんが、私の経験から申し上げると、いろいろ防災対策をする場合は、どうしても地域の首長さんとの関係であるとか、さまざまな事故が起こった後の対応も含めて、福島がまさにそうでありますけれども、政務とそして現地の首長さん方とのやりとりというのはかなり頻繁になります。

 そして、政府全体で、原子力規制庁だけではなくて、原災本部全体としてやり得る事前の準備という意味では、各省を巻き込まなければなりません。そういう各省も巻き込むことも含めて、相当の力わざが恐らく求められるところについて担当大臣がない方がいいのかというと、ちょっと私はそこはいかがなものかなというふうに思案をしているところでございまして、ぜひそういったことも含めて御検討いただければ幸いでございます。

江田(康)委員 私も、平時のオフサイト対策の重要性というのは、規制組織の議論、また研究、勉強をしていく中において非常に重要であるということに気づいております。

 それは今おっしゃったように、関係機関との調整事務、防災訓練の実施にかかわる地方自治体との関係との連絡調整から、さっきおっしゃった、重要な原子力災害対策マニュアル、防災指針、それから、警察、消防、防衛との調整、緊急時における住民の避難、被災者の健康管理や風評被害対策、それから、放射線モニタリングの司令塔としての実施機関を調整とか、ハイレベルのものだけでもこれだけある。だから質問が複数これまでも出ているわけだと私も思っておりますが、平時のオフサイト対策で、今、自公案並びに政府案ともにこれはひとつ十分な審議をして、それらの調整を、本当に動いていけるその体制をつくることが非常に重要だと私は思っています。

 実は、今回のこの事故でも最も望まれてくるのは、こういうようなオフサイト対策であろうかと思んですね。それを平時からきちんとつくり上げていくというのは、私も重要ではないかなと思っております。

 そういう意味で、大臣が必要か必要でないかというようなところはもっと深くやはり議論していってもいいんじゃないかと。自公案、政府案ともに平時のオフサイト対策は、今提示しているものよりも現実に起動する、そういう体制をつくらなければならないのではないかと思っております。

 提案者がこういうことを言っていいのか、塩崎先生がそこからにらまれておるんですが、率直にこれは十分審議をし尽くしていけばいいのではないかなと思っております。

 もう最後の時間でございますので用意したものが全てできませんが、それでは規制については次の議論としまして、最後に、地方自治体の関与のあり方、誰も質問をなされておりませんので、ここを先にやらせていただきます。

 危機管理とか防災体制の強化は、地方自治体のもう最大の関心事項であります。原発事故があった際にその影響を最も大きく受けるのは、地域住民の方々です。また、地方自治体は、原子力の安全規制に何ら関与できないにもかかわらず、原発事故の際にはいきなり当事者となって、地域住民の避難を初め、地域住民を守らなければならない立場にさらされます。

 このような立場を改善すべく、一部の地方自治体は、原子力事業者と地域協定を結んで、地域の声を取り入れるべく努力をされていますが、こういう取り組みはあくまで自主的なもので、法的な位置づけは全くありません。

 このような中で、地方自治体からは、みずからが関与する仕組みをつくるべく、国に働きかけが今行われ始めました。本年四月には、山田京都府知事、また嘉田滋賀県知事の連名で提案書が出されています。その中に、「確固たる安全体制づくりに向けて、地元自治体と地元住民参加の仕組みの創設を図り、安全性を住民とともに追求する意識の醸成を図るべきである。」また、「国民理解を得るためには、まず国民の判断基準となる情報を徹底的に公開すべきである。」こういう提案がございます。

 フランスでは、原子力安全透明化法という法律の中で、地方自治体、国、事業者との間で協議の場をつくって、徹底的に情報公開を行って、地域の声を拾い上げて、それを原子力の安全性の向上に生かすための取り組みが構築されております。

 ここで大臣に御提案であり、質問をいたします。

 地方自治体は原子力事故の際に大きな影響を受ける。したがって、放射線による有害な環境から人と環境を守るための原子力の安全体制づくりとして、地方自治体が関与できる仕組みを構築することは大変重要だと思いますが、大臣の見解を最後にお伺いいたします。

細野国務大臣 大変重要な御指摘を最後にいただいたというふうに思います。

 これまでは、立地自治体及び隣接の自治体に対してのさまざまな原災法上の関係というのはございましたけれども、自治体においては、それ以上に事業者との安全協定というのがむしろ重視をされてきた面があったやに私は感じております。やはりそれは、国としてのコミュニケーションのあり方として、それ自体は否定をしません、これからもいろいろな役割を担うというふうに思いますが、やはり、もう少し密なるコミュニケーションをとるべきであったのではないかという反省は必要だというふうに感じています。

 特に、指針の中間報告でも、UPZという形で範囲を拡大をするというようなことも本格的にこれから検討されますので、その中で、地元の自治体との事業者も含めた建設的なコミュニケーションをどのように深めていくことができるか、ここは知恵の出しどころだというふうに思っています。

 余り慌てるよりは、じっくり地元の自治体と少し協議をした方がいいのではないかというふうに思っておりますので、新しい規制組織ができた暁には、真っ先にそうしたことに取り組みたいと考えておるところでございます。

江田(康)委員 時間でございます。きょうは十分な審議をさせていただきました。

 ありがとうございました。

生方委員長 次に、斎藤やすのり君。

斎藤(や)委員 新党きづなの斎藤やすのりでございます。

 今後の原子力規制機関のあり方と大飯原発再稼働の話というのは、切っても切れない話だと思いますので、きょうは、最初にこの大飯原発再稼働のことについて質問をしていきたいというふうに思います。

 今週中に大飯原発再稼働決定という報道がなされております。細野大臣、関係閣僚会議というのは今週いつ設定されているんでしょうか。

細野国務大臣 昨日、私、福井県に行ってまいりまして説明をしてまいりました。そうした福井県に対する説明、さらには受けとめ方というのも、これもしっかりと確認をした上でこれから検討されるものというふうに考えておりますので、まだ時期について設定をされているという状況ではございません。

斎藤(や)委員 非常に国民が不安に感じていまして、慎重にお願いしたいと私から強く訴えたいと思います。

 というのも、世論調査、もう皆さん御存じのように、各社出ております。朝日新聞の世論調査が五四%が再稼働反対で、毎日新聞が七一%が再稼働は急がなくてもいい、そういう結果を出しております。

 この再稼働の是非というのは、実は国会の採決がございません。しかし、この原発というのは、一回トラブルが起きますとこれだけ取り返しのない災害になる、被害になるというのは、今回、本当によくわかったわけでございます。国民生活に多大なる影響が出てしまう原発でございますから、今、原発がゼロになって、これから再稼働するかどうかというのは、国民の審判なり、あるいは国民の代表たる国会議員が審判をする、そういう機会があっても全くおかしくないほど重要な事案であるというふうに私は思います。

 私は、これは個人的な思いですが、選挙をやってもいいと思いますし、あるいは国民投票をやってもいいんじゃないかというぐらいのレベルの話だと思います。しかし、残念ながら、それの国会採決もない。

 そして民主党の中でも、先ほどNHKの報道を見ていたら、百二十名の方が再稼働反対の署名を出したという報道を私は見ました。政党を超えて、これは拙速だろうというそういうムーブメントも非常に強く上がっている中で、細野大臣、大変失礼なんですけれども、四人の専門家でない政治家の責任でこの原発を動かすというのは、国民は納得しないんじゃないか。そしてその四人の政治家の中には、これも厳しい言い方ですが、多くの福島の子供たちを被曝させてしまった、そういう責任を持っている方もいるんじゃないか。しかも、その福島原発の事故原因もまだわからない。これはわからないんですよ。

 細野大臣に一つ質問です。国会の事故調の結果報告というのはいつごろ出るんでしょうか。わかりますでしょうか。済みません、通告していないんですが。

細野国務大臣 済みません、六月の末ごろに出るというふうに伺っておりますが、詳細については、済みません、承知しておりません。

斎藤(や)委員 いろいろ国会日程のこととかもあるとは思いますけれども、六月末ごろにその事故の結果報告というのが出るというのであれば、それを見て再稼働の是非を決める、あるいは、この規制庁の採決などもその結果が出てからでも私はいいのではないかというふうに思います。

 福島原発の事故の原因がわからないわけです。こんな状況で本当に動かしてもいいのか、安全は確保されているのかというのが、国民に今渦巻いている不安と疑問の声なんです。

 改めて聞きます、細野大臣。安全は、大飯原発、確保されているんでしょうか。

細野国務大臣 まず、斎藤委員は宮城県御出身で福島ではありませんけれども、いろいろな、間接的なものも含めて、被災をされている方々のその思いを受けとめておられますので、そういった皆さんの思いを代弁して今おっしゃっているということはよく承知をしておりますし、そうした皆さんに対してのどうした説明をしていくべきなのかということについての、まだ課題を抱えているというのも事実だろうというふうに思います。

 その一方で、ここはしっかりと御説明をさせていただきたいんですが、四大臣で判断をしたこの基準というのは、この四大臣が勝手につくったものではないんです。四十回以上にわたりまして専門家がさまざまな議論を積み重ねてきて、それを言うならば集約をする形で判断をしたというものであります。

 基準一と基準二は、これは、東京電力の福島原発で起こったものと同じ津波が来ても炉心溶融には至らないというそういう判断基準。そして基準三は、最高水準の安全を目指すという意味で、三十項目の最終的に達成すべき、最終的にというのはちょっと言い過ぎかもしれません、達成すべき目標として設定をしたその三十項目を前倒しをしたもの、それができているものについて確認をしてつくったのが三つ目の基準。そういったことも含めて安全性について判断をしたということであります。

 その一方で、斎藤委員の方から、安全なのかということで御質問がありましたが、こういうことは申し上げられます。東京電力の福島原発と同じ津波が大飯原発を襲っても、同じような事象が起こったとしても、それについては炉心溶融には至らないということは、私もセカンドオピニオンも含めてさまざま聞きましたので、そこは大丈夫だというふうに言えます。

 しかし、安全について、ではそこで終わったのかといえば、そうではなくて、いろいろなリスクが考えられますし、それについて常に高いレベルを目指していかなければなりませんので、その取り組みはこれからも続けていかなければならないというふうに考えております。

斎藤(や)委員 先ほど、午前中の柿沼委員の質問の答弁で、安全神話に陥らないようにしっかりやらなければいけないということに基づいた、今の細野大臣の答弁だったというふうに思うんですけれども、とはいっても、今回の再稼働に関しては、野田総理も細野大臣も枝野大臣も、やはりこれ、言葉は厳しいですけれども、リスクに目をつぶって再稼働させているような私は気がしてなりません。

 やはり新聞報道等々でも言われているように、その防潮堤も、まだくいも打たれていない、工事も始まっていないという情報も入っております。完成は来年度だということですし。それから、何といっても、ストレステストの中に水素対策が評価されていない。それから、この原発の形が加圧水型で、容器内で水素爆発が起こり得る原発であるということ。それから、今回、福島原発で現場作業を支えた免震重要棟が大飯原発にはない。そして、大きな道路が一本しかない、土砂災害が起きたときなどはどうするのだ。

 こういうことをやはり一つ一つ潰して、一〇〇%安全だということが確保されなければ、やはり今の日本は原発を動かす資格はないというふうに私は思っているんです。どうもやはり、再稼働が先、対策は後ということに私はなっているのではないかなと感じております。

 実は、本会議のときにも言いましたけれども、この大飯原発の地震の想定には、一五〇〇年代の天正地震というものの災害の想定、ボーリング調査はされておりますけれども、西暦七百一年の大地震、大宝地震の検証は行われておりません。この前も言いましたけれども、大飯原発のある若狭湾の海沿い、高さ三十メートルの場所に、波せき地蔵という、ここまで津波が来たという言い伝えがある。この一五〇〇年以前の大地震や大津波の検証がほとんどされていない原発を、今まさに再稼働しようとしているそういう現実があります。こういうところも、ぜひ野田総理もそして細野大臣にも耳を傾けていただければ幸いです。

 そもそも、なぜ大飯原発をそんなに再稼働を急ぐのかという点を細野大臣にお聞きしたいと思います。

細野国務大臣 斎藤委員にここはぜひ申し上げたいんですけれども、なぜこれまで根本的な対策が打たれてこなかったのか、そういう防潮堤のようなものもそうだし、免震重要棟も、東京電力はつくりましたが、ほかの電力会社はつくっていませんね。いろいろな根本的な対策がなぜおくれてきたのか、これは根本的にしっかり考え直した方がいいと思うんです。

 なぜかというと、それをやると言った瞬間、では危険なんだろう、できるまでは動かしちゃいかぬという議論が出てくるだろうと思って怠ってきたんですよ。それを安全神話と呼んでいるんです。

 そうじゃないんです、今やらなきゃならないのは。常に高いレベルを目指して、何年かかっても、やらなきゃならないことはどんどん上を目指していく。そして、今できることはやっていく。常にそれをやり続けていかないと、本当の意味でのリスクを管理して、そして安全性を高めていくことはできないですよということなんですよ。

 ですから、その繰り返しを余りしてしまうとむしろ安全体制が進まないということにもなりかねないので、それはもうやめようというのが、これが安全に対する考え方なんだということを、ここは本当に心配をされている斎藤委員だということがよくわかりますので、あえて申し上げたいと思います。

 そこで、波せき神社なんですが、本会議で御質問いただいて非常に記憶に残りまして、私も調べました。私は綾部で生まれておりまして、宮津市は隣なんです。土地カンがございます、すぐ近くですから。どういったところにあるのかも確認をいたしました。確かに三十メートルぐらいのところに神社があって、そしてそこにお地蔵さんがいて、そこに確かに立て札が立っているという写真も確認をいたしました。

 ただ、例えば古文書があるかとか、これまでのさまざまな周辺の調査なども含めてそういう科学的なデータがあるかといえば、それは今のところ確認をされていないということなんです。

 もちろんずっと検証はしますから、ないことを証明するのはなかなか難しいですから、やり続けなきゃならないというふうに思いますけれども、現段階においては、さまざまな知見を集約して、どうもそういう事実は必ずしも認められないのではないかということをしっかりと確認をした上でこういう判断をしているということは御理解をいただきたいと思います。

 ただ、何度も申し上げますが、安全神話に陥ってはいけませんので、地震対策、津波対策、何が来たのかということについて最新の知見を常に探って、そして新しい知見が出てきた場合にはバックフィットをする、それでこれはおかしいということになれば、それは勇気を持ってしっかりととめていくということはやっていかなければならないと考えております。

斎藤(や)委員 あともう一つ、済みません、大臣。なぜ大飯原発をそんなに急ぐのかというところですね。お願いします。

細野国務大臣 大変失礼いたしました。

 大飯原発だけを急いでいるということではないんです。なぜ大飯原発三号機、四号機を先行してこういう形でやっているかと申し上げますと、ことしの三月までに手続が終わっておりました。新しい規制組織は四月以降に誕生させる予定でありましたので、三月までは既存の組織でしっかりやろうということが当初からの考え方だったわけですね。

 それにのっとって出てきたものですから、それについては常に上のレベルは目指していくんだけれども、現行組織のもとでしっかりと判断をして、そして、それに基づいて再稼働についても検討していくべきだろうという判断をしたものでございます。

斎藤(や)委員 その既存の組織が、堂々めぐりになってしまいますけれども、福島の原発事故を起こしてしまった。既存の組織がつくったその基準で本当に大飯原発を再稼働させてもいいのかというのが、今の国民の世論の声なんですね。これからまさに新しい規制庁の下で新しい安全基準をつくる。であるならば、事故後新しくできたその規制庁で、新しい基準のもとで大飯原発を再稼働するべきなのではないかということが国民の世論に今なっております。

 二つ確認があります。

 これから新しい規制庁の下で新しい基準をつくるということなんですが、大飯原発以外はこの新しい基準で再稼働するかしないかを決めるんですねということと、それから、この大飯原発も、再稼働するにしても、あくまでこれは夏の電力不足を補う意味で使う、秋にもう一度とめて、この新しい基準で再度判断するんですか。

 この二つをお伺いしたいと思います。

細野国務大臣 大飯原発三号機、四号機以外の原子力発電所については、新しい規制組織が誕生して、そこで判断をしていくというのが適切であると考えております。

 そして、大飯原発三号機、四号機についても、今の基準でもちろん動かすことを今検討しておるわけでありますが、新しい規制機関が誕生した時点で、この基準の是非についても判断をし、そして、その基準そのものが例えばおかしいであるとか、こういったことについて対応しなければ稼働させるべきではないという判断がなされた場合には、それは稼働を停止することはあり得るということであります。

斎藤(や)委員 続きまして、原子力規制機関の任務についてちょっと質問をしたいと思います。

 政府案では、この規制機関の任務、これはいわば目的ですけれども、政府案では何のためにこの原子力規制機関を置くんでしょうか、そもそも論なんですが。

細野国務大臣 政府提出法案では、放射線による有害な影響から人の健康及び環境を保護することを基本的理念といたしまして新しい組織をつくり規制を強化する、そういう考え方をとっております。

斎藤(や)委員 それでは、自公案の方は、この任務についてはどう明記されていますでしょうか。

柴山議員 お答え申し上げます。

 私たちの法案では、原子力規制委員会の三条で、「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全並びに我が国の安全保障に資するため、原子力利用における安全の確保を図る」ということを任務としております。

斎藤(や)委員 ぜひ、そこをきちんとこれから自公と民で、政府の方で修正されると思うんですけれども、必ず、国民の生命それから健康及び財産の保護、環境の保全というのを入れていただきたいんです。そこをぜひお願いいたします。

 今までは、とかく原子炉の安全というところばかりがフィーチャーされていましたけれども、やはりこれだけの大きな事故があったわけですから、国民の安全というところに焦点を当ててぜひ盛り込んでいただければというふうに思います。よろしくお願い申し上げます。

 さて、原子炉の運転期間について、午前中、矢崎委員からも質問がありましたけれども、何度も言っていますが、福島原発事故の検証が終わっていないわけで、場合によっては延長を二十年するということなんですけれども、実は福島第一原発一号機も、これは運転開始から四十年たっていたということなんですが、もしかしたら、劣化とかプラントの構造が古かったのが原因で事故が深刻化したということが考えられないでしょうか。このあたりはどうでしょうか。

 なぜ、例外といっても延長を認めるのか。この原因がわからない中で延長を認めるというのは、ちょっと国民の方は納得いかないのではないかなと思うんですが、そのあたりはどうでしょうか。

細野国務大臣 福島原発におきましては、四つの原発が事故を起こしたわけでありますけれども、東京電力の福島第一原発においては四つの原子炉が事故を起こしたわけですが、一号機が一番初めに水素爆発をいたしました。これはICの操作の問題も含めていろいろなことが言われているわけですが、結果として、一番古いものが事故を起こしたという面はあるわけです。

 そこも含めて、高経年化というものがどのような影響を原発に及ぼすのかというのは、相当厳しく我が国は見ていかなければならないだろうと思います。

 これまでは、とかく、いわゆる放射性物質による、中性子による脆化の部分、格納容器のまさにかたさの問題が注目をされてきたわけですが、むしろ私は、システムそのものの古さにどう向き合っていくのかということをこれから議論していくべきだというふうに思います。そこも含めて徹底的な検証が行われた上でこの四十年というものを運転期間として設定をし、それが、延長が例えばあり得るとすればどういったことなのかということについては、科学的にしっかりとお示しをしなければ、これはとても延長を認められるものではないというふうに考えます。

斎藤(や)委員 世界では五十年以上稼働した原発はないということ、それから、矢崎委員も言っていましたけれども、ドイツでは三十二年で廃炉にしているというのがありました。

 午前中、細野大臣が、圧力容器は原発の運転で出る中性子を浴び続けるともろくなるという答弁がございましたけれども、これ、その発言の後に私もちょっと調べてみました。プラントに仮にトラブルがあって、急激に冷やすと割れるおそれがあるということのようです。

 金属の場合、劣化が進むと、ある温度より低くなると、まるで陶磁器が割れるように小さな力であっさりと割れてしまう。この温度を脆性遷移温度というそうなんですけれども、原発の脆性遷移温度を見てみると、やはり新しいのが温度が低いんですね。運転から七年の女川三号機はマイナス四十五度。でも、古いプラントは軒並み高くて、四十年たった美浜一号機は七十四度、三十五年たった玄海一号機は九十八度。冷やすためにはいわば熱湯をかけなきゃいけない状況になっているわけで、九十八度の玄海一号機の原子炉は、いわば本当に陶器のような状況になってしまっていて、簡単にひび割れして破断してしまうおそれがあるということでございます。

 福島の事故は深刻ですけれども、それでも放射性物質の九割は容器内に残っているというふうに言われております。この圧力容器が割れたら大変なことになります。

 何を言いたいのかというと、古い原発というのは、もう皆さん御存じのとおり、リスクがあるということでございます。運転期間の延長というのは、事故リスクを高める。技術への過信、検査しているから大丈夫だというのは、それこそやはり安全神話に取りつかれているというふうに言わざるを得ません。

 ここで提言なんですけれども、経過年数による厳しい制限を設けて、例えばドイツ並みの三十二年でキャップをかけて、午前中もありましたが、廃炉というのを目指すべきですし、そして、それともう一つ、やはり脆性遷移温度というものを厳しく管理するということも重要だと思います。あれだけの事故があっても、例外とはいえども、六十年の超高齢原発を認めるのかということなんですが、このあたりの見解、細野大臣、よろしくお願いします。

細野国務大臣 斎藤委員がごらんになっているグラフと同じものを私も手元に持っているんですけれども、このグラフをごらんいただいてもおわかりのように、四十年というところに明確に線があって、それ以上は危険でそれ以下は安全ということではないわけですね。年数がたてばたつほど脆化が進む、つまり、高い温度で脆弱になってくるということなわけです。

 だからこそ、まずは運転制限でどこかにやはり線を引くべきだろうと考えたわけですね。そしてその線を引くべきは、このデータからも出てきている温度のレベルからいっても、それぞれの機器の耐用年数からいっても、やはり四十年ではないかということなわけです。

 ただ、四十年で全てそこで線が引けて、それ以前について安全だ、完璧だというふうに考えているわけではありません。

 そこで機能してくるのがバックフィットなわけですね。先ほど御質問があったような、津波の知見や地震の知見はもちろんですが、こういう高経年化についての影響についても、これから新しい知見が出てくると思います。我が国がそれを探っていかなければなりません。

 そういったものが出てきた場合は、それをバックフィットすることによって、例えば三十年でもその基準を満たさないものについてはしっかりととめていく、場合によっては廃炉をしていく、そういう制度を今回提案をしておるんです。

 ですから、四十年というところで線を引いて、そこで安住するという趣旨ではないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

斎藤(や)委員 今細野大臣が言ったことも含めて、やはり新しいルールをその新しい規制機関で設けるべきなんじゃないかなと思います。

 そういう点では、午前中、吉野委員が、独立性を担保した新しい機関でこのような点も議論すべきだという答弁をされていましたけれども、私も実はそれに賛成をしておりますので、このあたりもぜひ修正案で検討していただければというふうに思います。

 最後、時間がないんですが、一問、四号機の燃料プールの安全性について。私、週末にタウンミーティングをやりましたら、複数の方からこれを聞かれました。恐らく報道の影響だと思うんですけれども、四号機の燃料プールは大丈夫か、プールの耐震、建屋の崩壊のリスク、冷却システム、千五百本の核燃料は安全な状態なのかということを聞かれました。

 細野大臣、大丈夫なんでしょうか。

細野国務大臣 四号機のプールの燃料の健全性は、昨年の三月からずっと日本政府としてさまざまな検証を行い、そして必要な対応をしてまいりました。そして、その検討の結果といたしまして、震度六強の地震が発生をしても十分な耐震性を有しているということを、これは専門家も含めてしっかりと検討した上で判断をいたしております。

 去年の六月ですから、ちょうど今ごろも、四号機のプールの補強というのをやっておりました。先日、私、その現場に、責任者としてやはりここは行かないかぬだろうということで行ってまいりましたけれども、大変厳しい環境の中で作業員の皆さんが歯を食いしばって補強してくれたことがよくわかりました。そこは、政府としても、また事業者としても、万全の体制をこれまでも敷いてきたし、これからもさらにしっかりとその体制を強化をしていかなければならないと考えているところでございます。

斎藤(や)委員 その細野大臣の視察の様子も見ました。確かに、プールの底が鉄柱で補強されていて、プールの耐震性というのが強化されているんだなというのは目で見てもわかったわけなんですが、肝心の建屋がぼろぼろで、外壁が反り返っている部分などもありました。事故後、恐らくあの建屋の構造計算などもほとんどされていないというふうに思いまして、それを皆さんが心配されているんだと思います。

 細野大臣、大臣です、閣僚ですからなかなか言いにくいとは思うんですけれども、四号機のプールで巨大地震が起きたときにどんなことが起こり得るか、また、それを想定して作業のシミュレーションはしているのかというのを、ちょっと単刀直入にお伺いします。どうでしょうか。

細野国務大臣 それはしております、去年から。最悪のシナリオも想定をして、それでも水が入り続ける。さらには、最悪の最悪を想定しても外に放射性物質を出さないということについては、設備も準備をしておりますし、人も配置をして昨年から備えてまいりました。

 詳細に説明をすることは、時間的な制約もありますので控えたいと思いますが、やっておりますので、そのことは皆さんに御報告させていただきます。

斎藤(や)委員 きょうは衆議院テレビのネット放送で皆さんがたくさん見られていると思いますので、その言葉を私は信じたいというふうに思います。

 今我が国がやるべきことというのは、徹底的な福島原発事故の検証とその情報公開ということに尽きると思います。そして、既存の原子力規制当局が機能しなかったことで原発事故が発生したんだよ、そして、これは言いにくいですが、誤った政治主導で原発事故が拡大したのかもしれないという反省に立って、原発村から距離を置いた、独立性の高い三条委員会としての規制庁を設置することが私は重要なのではないかというふうに考えております。

 その規制組織を、国民の安全の確保のために汗をかく、組織に身をささげる、脱原発のマインドを持った専門家集団でその組織があるべきだという意見を述べまして、私の質問を終わりにさせていただきます。

 大臣、誠意ある答弁、ありがとうございました。

生方委員長 この際、お諮りいたします。

 議員吉井英勝君、服部良一君、柿澤未途君及び松木けんこう君から委員外の発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

生方委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 吉井英勝君。

吉井議員 日本共産党の吉井英勝です。

 ただいま委員外発言を許可する決議をいただきましたので、今から質問に移らせていただきたいと思います。

 最初は、原子力安全委員長に来ていただいておりますが、まず、原発立地に当たって、安全評価審査指針において、運転時の異常な過渡的変化と、それを超える事態により、放射性物質が放出する可能性のあるものを事故として評価するということにしていますね。事故については、「周辺の公衆に対し、著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと。」としております。

 周辺の公衆の実効線量の評価値が事故発生時に何ミリシーベルトであればリスクは小さい、それを超えるものについては原子炉設置を認めないという、この基準の値というのがありますね。この基準の値を幾らにしておられるかをまず伺います。

班目参考人 御質問は、異常の過渡と、あと、いわゆる各種事故と言われているものだと思いますが、この場合の目安線量は五ミリシーベルトということになってございます。

吉井議員 それで次に、指針の適用に関する判断のめやすについてという一九六四年の原子力委員会決定の別紙一、重大事故、仮想事故を挙げていますが、別紙二の方で、要するに、被曝線量についての判断する目安の線量としてここで挙げているのは、全身に対しては二百五十ミリシーベルト、これは当時ですね。今は百ミリシーベルトというふうにしていると思うんですが、この基準をどのように定め、どのように取り組んでいらっしゃるかを伺っておきたいと思います。

班目参考人 目安線量につきましては、国際的な動向を踏まえて決めてきてございます。したがいまして、ICRPなどの勧告をもとにそのような判断をしてございます。

吉井議員 当初は、炉心損傷で定義してきたのは大体一千度Cぐらいまでだったんですね。しかし、核燃料が二千八百度Cでメルトダウンを実際にする、これを考えていなかったのがこれまでの基準だと思うんです。

 それでやはり確認しておきたいんですが、福島第一原発と大飯原発の敷地境界における、立地審査指針で定めている放射線量基準は、これは今おっしゃったように、昔は二百五十ミリシーベルト、現在は百ミリシーベルトということで臨んでいるわけですね。確認しておきます。

班目参考人 おっしゃるとおりでございます。

吉井議員 次に、原子力安全・保安院の方に伺っておきたいんですが、福島第一原発の事故後一年間の敷地境界における累積線量というのは幾らになっていますか。

深野政府参考人 お答えをいたします。

 震災による事故以降のおおむね一年間の線量でございます。

 昨年の四月一日から本年の三月末までをとったものでございますけれども、これを見ますと、モニタリングポストごとにかなり線量が違っております。その中で一番線量が高いものがモニタリングポストの七番というものでございますけれども、これについては九百五十六ミリシーベルトでございます。一番低いものはモニタリングポストの一番でございまして、これは四十五ミリシーベルト程度でございます。

吉井議員 今お答えいただいたように、風向、風速とか、年間を通じての全体としての傾向がありますから、当然、モニタリングポストの位置によって変わってくるのは当たり前なんですが、MP七については九百五十六ミリシーベルトと。ただしこれは、三月十一日の事故直後の、三月末までの最も厳しいときのデータがないんです。

 ですから、四月一日からことし三月三十一日までの一年間のデータとして今お答えいただいたわけですが、そうすると、福島第一原発というのは、累積線量で九百五十六ミリシーベルトですから、立地審査指針の基準値である現在の百ミリシーベルトを大きく超えているということになります。

 設置許可については、原子炉規制法の担当大臣は枝野さんということになりますが、今まさに事故に直面して、事故担当として細野大臣は座っておられるわけです。大臣として、これは経産大臣と諮ってということになるかもしれませんが、福島第一原発は設置許可を取り消すということをやはりきちんとやらなきゃいけないと思うんですが、どうですか。

細野国務大臣 法的な設置許可そのものは、これはもう本当に厳密に法律に定められていて、これは、今の規制機関である原子力安全・保安院、そして枝野大臣のもとで行われているものであります。

 したがって、それについて、私が幾ら事故そのものの担当をしているからといって、直接こういう国会の場において関与を表明をするのは、これはちょっとやはり控えるべきではないかというふうに考えます。

吉井議員 実は、ことし三月三十日に東京電力の方から、電気事業法第九条一項の規定により一号機から四号機は廃止しますという届け出がありますね。ですから、相手は届け出ているんですけれども、国として、これは基準に反しているんだから許可をもう取り消すんだと、この取り消しというのをきっちり判断しなきゃいけないと思うんですが、どうも大臣の方がためらっておられるので、これを担当する原子力安全・保安院の方、これは経産大臣ときちんと相談をして、原子炉規制法三十三条に基づく許可の取り消しというのをきちんと取り組まれるべきだと思うんですが、どうですか。

深野政府参考人 今御指摘の福島第一原子力発電所でございますけれども、これにつきましては、正確に今手元にデータ、資料がございませんのであれでございますが、電気事業法につきましては廃止ということで、発電をもうしないということで、いわゆる電気工作物としての取り扱いというのはなくなっている、そのように承知をしております。

 一方で、原子炉等規制法につきましては、これにつきましては、まだその廃止措置に移行するような燃料棒の取り出しということもできておりませんので、これについては、むしろ、現行の原子炉等規制法によりましてきちんと安全を確保していくということが必要ではないかと考えております。

吉井議員 これは、原子炉としてやっていくことの許可をやめても、これは、将来の廃炉も全部一緒なんですよ。時間がかかるのは当たり前なんです。

 問題は、これまで、こういう明確に敷地境界での累積線量が基準値を超えている、こういうふうな実態にありながら、相手の方からは廃止しますという届け出は来たけれども、国としては、許可を取り消すんだときちんとやっていないんですね。私は、こういう態度ではやはり問題じゃないかというふうに思うんです。ですから、これは直ちに取り組んでいただきたい。

 次に、保安院長にまた伺っていきますが、これまで炉心溶融を考えないで仮想事故の場合、事故発生後に放出される核分裂生成物の量は、炉内蓄積量に対して希ガス一〇〇%、沃素五〇%の割合と考えてきました。

 ところが、ずっと長時間運転してきた場合の大飯原発の設置許可申請書では、この希ガスと沃素のそれぞれの炉心内の蓄積量が幾らなのか、大気中に放出される量をそれぞれ幾らと見込んで申請を出してきているのか、これを伺っておきたいと思います。

深野政府参考人 お答えいたします。

 大飯原子力発電所の仮想事故における放射性物質の放出量でございます。

 これにつきましては、沃素が百二十テラベクレル、一・二掛ける十の十四乗ベクレルということでございまして、希ガスにつきましては、八・五掛ける十の十五乗ベクレル、八千五百テラベクレル、こういうことを想定しております。

吉井議員 ですから、設置許可申請のときにはそれだけの放出量を想定していたわけです。

 では、現実に福島で、一年前になりますが、二〇一一年六月六日現在で大気中に放出された放射性物質は希ガスと沃素でそれぞれ幾らなのか。これはちゃんとデータをとっておられるわけですから、伺っておきたいと思います。

深野政府参考人 お答えをいたします。

 福島第一原子力発電所でございますが、一号機から三号機までの各号機から放射性物質の放出があったわけでございますけれども、今の三つの号機を合計いたしまして、希ガスでございますと、これはキセノンで代表しておりますけれども、一・一掛ける十の十九乗ベクレルでございます。

 それから沃素につきましては、沃素131で代表いたしますと、今の三つの合計を合わせまして、一・六掛ける十の十七乗ベクレルでございます。

吉井議員 ですから、大飯原発で設置許可申請書の添付十に記載している仮想事故の中で、地上放出分と放射性プルーム、スカイシャイン効果による敷地境界外における最大の甲状腺被曝線量とかガンマ線被曝線量などを挙げているわけですけれども、今お答えいただいたものからしても、現に、大飯が出した申請書の数値よりも福島事故で出した分というのは、三桁から四桁多いんですよ。

 ですから、大飯原発の問題というのは、現実に発生した福島第一原発の事故による累積被曝線量は、昨年四月一日以降の一年間で九百五十六ミリシーベルトで、立地審査指針で定めている放射線線量基準である百ミリシーベルトと比べても、福島第一原発の設置許可申請書で当時福島で最も高いと想定しておった値と比べても、はるかに大きいものが現実に発生したわけです。

 だから、事故を発生させないというのはこれは当然のことなんですが、仮にやはり考えておかなきゃいけないのは、私、一昨年もこれは経産委員会で当時の経産大臣相手に議論したんですが、全電源喪失になれば炉心溶融になるだろうと、そうしたら、メルトダウンは起こさない構造になっています、これが当時の答弁だったんですよ。

 細野大臣も、けさほど来お聞きしておりますと、そういう事故を起こさせないように取り組んでいるんだ、頑張っているんだというお話は随分伺いました。その取り組みは当然のことなんですよ。ただ、当然のことだけれども、それを超えた場合に、実際に事故をやった場合に、放射線被曝量も敷地内にとどめるというその対策なりその基準なり、そういうものを何かお考えなのかどうか。あれば伺っておきたいと思います。

細野国務大臣 昨年の事故を受けまして、特に深刻な影響を与えた津波についての対応として、先ほど来御説明をしておりますとおり、仮に東京電力等の福島原発と同様の津波が来た場合にも炉心損傷には至らないという、そういう考え方をとって基準一、基準二というのをクリアしたということで皆さんに御説明をさせていただいております。

 つまり、今、吉井委員の方が御指摘になったそういう事態が起こらないための対策をして、そのもとでさらに安全性を高めていくという判断をしているということでございます。

吉井議員 昨年の津波にしても、もともと、敷地内で十五・七メートルの津波というのは東京電力自体が想定しておったんですよ。それは、津波の場合もそうなんです。押し波もそうなんですが、引き波の場合にはそもそも冷却水がとれなくなる。そういったこともずっと議論してきたんだけれども、全然真面目に取り扱おうとしなかったわけですよ。それであの事故をやっちゃったわけですね。

 今の対策というのは物理的な対策なんですね、今おっしゃっておられたのは。それは暫定基準を設けてやっているんだという話はよく伺ってきているんですけれども、しかし、今度の法案でも、第四十三条の三の二十三でバックフィット制度を入れるわけです。これは、新しい知見が出ればバックフィットする。新しい知見というのは、まさに福島第一原発事故でどれだけの放射線量が出たのか、そのことに基づいて、事故そのものを起こさない対策は当然の話なんですよ、しかし、それで出たときに、それでも敷地内の中にとどめられるような対策なりなんなりの基準をきちんと考えておかなかったら、それは、事故が現実に発生したときに国民の安全が守れるかどうかというのが、今度の福島第一原発事故の最も大きな教訓なんですね。

 その教訓に立って新しい知見をバックフィットするんだと言うんだったら、放射線の放出についても、実際に出るものをどう抑え込むのかとか、やはりそれは簡単な話じゃないということは私はよくわかるんですが、しかし、そういったことを考えたときに、そもそも福島事故からバックフィットだと言うんだったら、まだとてもじゃないが再稼働の条件に達していないじゃないかと。

 そのことをやはりきちんと見ておかないと、敷地境界のところの線量をはるかに三桁も四桁も超えるぐらいの事故をやっておいて、いや、バックフィットやりました、もう放射線被曝の問題は心配ありません、バックフィットの問題もクリアしたから、考えていくから再稼働の条件が満たされたんだ、こういうことで細野大臣初め四大臣でそれでも再稼働を決めるのか、今はそのことが問われているときだと思うんですよ。どうですか。

細野国務大臣 吉井委員は本当に専門家でおられますし、三・一一の前に、最もある意味こういうことを想定されていた方でありますから、そういう方のお話ということで、しっかり今のお話は承らなければならないというふうに感じております。

 そのことを申し上げた上で、バックフィットでございますけれども、これは、法律に基づいて、さまざまな新しい知見が出てきたときに、これまで動いていた原発についても当てはめていくということでありますから、今、バックフィットの制度が法律に基づいてできているということではありません。

 私がバックフィットの考え方に基づいてやっていると申し上げたのは、津波が来た場合に、どういった形で炉心溶融に至ったのかということについてのかなりの部分の蓄積がございますので、それにならないような部分を反映しているということであります。

 今、吉井委員の方が御指摘をされた、放射性物質が外に出てしまったではないか、それも含めて基準そのものから見直せというその考え方がこのバックフィットということと適合するのかどうかということについては、これはちょっと私自身も、専門家の意見も聞きながら検討させていただきたいと思います。

 今の私の理解では、バックフィットというのは、さまざまなケースを想定し、さまざまなそれこそ技術的な知見を踏まえて、地震や津波も含めて事故に至らないようなさまざまな取り組みをしていくという趣旨と受け取っておりますので、それについては、そういう発想に立ってやれることをまさにやっているということであります。

吉井議員 時間が来たという紙が回ってまいりましたので終わりますけれども、法律上まだないものでやっていくのは無理があるみたいな話をしながら、一方では暫定基準というのも、これは法律にまだないわけですよ。だけれども、これだけは前倒ししてやっていこうというわけですね。

 これはどう考えてもおかしいわけで、福島原発事故からすると、風向、風速など考慮して大飯原発三、四号機の申請時の仮想事故の冷却材喪失による敷地境界における最大被曝線量を見ると、指針に示す基準値をはるかに超えておるわけですよ。現実に福島で超えたわけです。

 そういう中で、暫定基準値もまだ法律前からやると言いながらこっちの方は曖昧にして、とにかく何が何でも再稼働だというのは、これはとても考えることのできない論外の話だということを申し上げて、時間が参りましたので質問を終わります。

生方委員長 次に、服部良一君。

服部議員 社民党の服部良一です。

 きょうは委員外議員として質問の機会を与えていただきまして、委員長あるいは理事各位に心から御礼申し上げます。

 今も議論ありましたけれども、まず冒頭、政府が大飯三、四号の再稼働を強引に進めているということに対して厳しく抗議をいたします。

 昨日の毎日新聞でも、世論調査、再稼働を急ぐ必要がないが七一%、それから、市民団体が全国五十四カ所で行った街頭投票でも、くしくも反対が七一%という数字が出ております。賛成は一三パー、わからないが一五パーと、国民の方はよく冷静に事態の推移を見ているなというふうに私は感じました。

 大臣、再稼働を経済界の一部は喜ぶかもしれませんけれども、拙速な判断は、本当にもう政権にとっても命取りになるんじゃないですかと私は思います。

 先ほど田中委員の方からも、この委員会でも、ぜひ規制組織の問題、徹底審議をお願いしたい、あるいは総理入りの審議の要求も出ました。全く同感であります。修正の話も出ておりましたけれども、この法案は、いわゆる政局の具にするような対決法案でもありません。修正も含めて、ぜひとも全会派が入った丁寧な議論を進めていただくように、委員外議員の立場ではありますけれども、ぜひ委員長にもよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 私の事務所にも多くの市民からファクス等を多数いただいております。その中で、原子力規制組織の審議中に政府が再稼働を決定するようなことがあれば、それは国会軽視ではないかというような声が幾つも寄せられているわけですけれども、大臣、この規制組織の審議中によもや再稼働をするというようなことはないですよね。

細野国務大臣 この規制組織のあり方もそうでありますし、事故の検証もそうですし、さまざまな新しい知見もそうなんですが、常に新しいものが出るわけですね。それでさらに安全性については上を目指していかなければならないというのが、昨年の事故の最大の教訓だというふうに私は思っています。

 規制組織を早期に誕生させることも当然重要であります。国会の事故調査委員会が六月の末に見解をお出しになるということですので、そこに耳を傾けることも、これはもう極めて大切な調査委員会でありますから、当然、我々はそれをやっていかなければならないと思っています。政府の調査委員会はその後に恐らく結果を出すと思います。年末には、IAEAが日本政府と一緒に事故についてのさまざまな検証を行う、そういうシンポジウムを行う予定をしております。

 つまり、その時々に常に新しいさまざまな取り組みがなされるわけですね。それにしっかりと対応していくというのが、安全神話に陥らない、常に最高レベルの安全を求める政府がやるべき手続だというふうに思っております。

 したがって、そういった手続はしっかりとやっていきながら、最新のさまざまな取り組みに基づいて原発の再稼働についても判断をしていくということになります。

服部議員 いろいろおっしゃったわけですけれども、きのう、福井県知事にもお会いになったと思いますが、NHKのニュースの言いぶりからして、西川知事は、新しい原子力の規制機関を早急に発足させることなどを求めたということもあります。

 ですから、ちょっともう一回お聞きしますけれども、まさにこの規制機関の審議中に再稼働をゴーサインさせるようなことはないですね。イエス、ノーだけで結構です。

細野国務大臣 審議中かどうかということでいうならば、去年の夏にはもう閣議決定をして、新しい規制機関についての考え方をまとめておるんです。そして、年明けには法律を出しておるわけです。ですから、できるだけ早く規制については新しい組織をつくって、より厳格なものを導入しようと、もう一年近くにわたって政府として取り組んできたわけですね。

 その問題と、この再稼働をどう考えるか、安全性を現段階でどう高めていくのかというのは、これはやはり並行してやっていかなければならないというふうに考えます。

服部議員 どうもちょっと歯切れが悪いなと思うんですけれども、まさにこの規制機関をどうするかという国会の審議中に再稼働を認める、ゴーサインを出すということは、これは国会軽視じゃないかという国民の多くの声が寄せられて、そういう懸念もあってそれは西川知事もおっしゃっているんじゃないかなと思うんですけれども、そういう一般論じゃなくて、まさにこの審議中にゴーサインするということはあり得ない話だと私は思いますけれども、済みません、ちょっと話がくどいので、もう一回、端的に御答弁をお願いいたします。

細野国務大臣 昨日、西川知事と直接私は会話をしておりますので、そこで私が受けとめた中身で申し上げるならば、西川知事は、再稼働そのもののタイミングであるとか是非ということとはまた別に、例えば再稼働の後ということも含めて、規制機関をしっかりつくって、そこで厳しい規制をかけていくべきだという、そういう御趣旨の御発言と私は受けとめております。

服部議員 いや、私は本当にこういうことはあり得ないことだというふうに思います。まさにこの国会の審議中に再稼働するなんというようなことは本当におかしいということを、もしそうなればですよ、強く申し上げておきたいと思います。

 先ほど、新規制組織が発足した後に大飯の稼働をとめることもあり得るということもおっしゃいました。これは大変重要な発言だというふうに私はお聞きしていたわけですけれども、また一方で大臣は、この大飯の再稼働の判断基準については、暫定的なものであるということも認めておられます。

 私、この間の議論の中で何回聞いても本当に理解できないんですけれども、新たな独立した規制機関で事故の検証を踏まえた基準をつくられるわけですよね。そしてバックフィットも導入される。それなのに、古い保安院とか安全委員会で検討した暫定の基準で再稼働を判断されるということの意味がどうしてもわからないわけなんですよ。ですから、暫定基準での再稼働というのは私はあり得ないというふうに思います。

 即時、再稼働の手続を中止すべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

細野国務大臣 私と服部委員の考え方は、やはりそこは考え方を異にするなと感じました。逆に、新しい規制機関ができ、新しい規制が誕生するまでの間は何もしなくていいということになりませんか。

 再稼働せずとも、ついこの間までは、定期検査に入るまでは原発は動いていたわけですね。プールがあるものは原子炉として存在するわけです。それに対して、最新の知見に基づいて、法律は改正できないけれども、より高いレベルの安全性を確保していくというのは、これは政府としては当然の措置だというふうに考えます。

 そして、新しい規制機関が誕生したら、果たしてこれまでやってきた基準なり考え方は正しいのかということについて厳しく検証していただくのも、これも当然のことではないでしょうか。

 この考え方というのは、常に安全について、絶対はないわけですから、高いレベルを目指していくというこの一貫した考え方に基づいた措置でありますので、矛盾をしているというふうには考えておりません。

服部議員 いや、私はどうしても理解ができないわけですね。新しい規制機関で厳しく基準を見直して検証していくということであれば、何でその前に再稼働という形でゴーサインを出されるのか、そこがどうしても理解できない。

 結局、いかにも安全を確認したプロセスを踏んできたというふうにおっしゃるわけですけれども、要するにこの再稼働に踏み切られるその本音は、電気が足りないということなのか、あるいは安全が確認できたということなのか、あるいは、電力会社がその対策にコストをかけたくないということでそのことに配慮をされているのか、この再稼働の本音というのは一体何なんですか。

細野国務大臣 安全性についての確認、これが最も重要な点であります。

 チェルノブイリ事故が起こった後も旧ソ連政府は原発を動かし続けました。そして、スリーマイルアイランドの事故が起こった後もアメリカでは原発が動いていました。我が国は、慎重に判断したがゆえに原発が一基も動いていない状況になっているわけですね。

 そういう状況の中で、安全性について、東京電力の福島原発を襲ったものと同様の津波が襲ったとしても炉心の損傷には至らないということが、これが技術的に確認をできた。さらには、高いレベルの安全性を求めるという意味でやらなければならないことをできる限り前倒しをして対応できた。そのことを確認した上での再稼働の判断ということでございます。

服部議員 今、国会事故調の中に、津波でなくて地震によって配管系が破損をした可能性もあるじゃないか、そういうことを主張されている田中三彦先生も事故調の中に入っておられるわけですね。そして、まさに福島の事故の検証をやられているわけですよ。

 ですからこそ、この検証で一体何が福島で問題があったかを徹底的に検証して、それを反映させるということ抜きにやはり再稼働はあり得ないということが私が言いたいことであって、今、津波は大丈夫ですというふうにおっしゃいましたけれども、やはり国民は納得しておりません。そのことをちょっと申し上げておきます。

 きのう、福井県知事にお会いになって、県知事はボールは国にあるというふうにおっしゃっています。野田総理が国民に直接説明し理解を求めることを要求されたと。福井県の判断はその後との認識だと。一方、細野大臣は、政府の考えはしっかり説明したので福井県の判断を見守るというふうにおっしゃっていますけれども、逆にボールは福井県にあるというふうな認識なんですけれども、結局、ボールは今どちらにあるんですか。

細野国務大臣 ボールとおっしゃっておりましたので、そうやってキャッチボールをしているということではなくて、政府は政府として安全性を確認をしている、そして、福井県は福井県でずっと専門的な知見を蓄積をして判断をされているわけですので、そこは私は、こういう事態を受けて、半ば共同作業でそれぞれが進めているという認識でおります。

 きのう福井に行ってまいりまして、その後、福井県がどのような御見解を持っておられるのかということについては、きょうは一日この委員会におりますので、私は確認ができておりません。

 したがって、そこは福井県の県知事を初めとした皆さんのお考えというのもしっかり伺った上で、今後どのようなプロセスを踏んでいくのかというのは、政府全体として判断していくべきものというふうに考えます。

服部議員 福井県知事、運転再開の必要性について説明を求める中で、原子力の基幹電源としての必要性とか、あるいは経済への影響、国際的なエネルギー問題など、あらゆることについて国民に対して明確に説明をしろ、それから、使用済み燃料についても検討体制をつくるということを求めたというふうに、報道ですけれども、この再稼働について、今後そういったことも全部ひっくり返して議論されるということなんですか。福井県知事はそれを求められているんですけれども、国としてはどうされるんですか。

細野国務大臣 使用済み燃料、もしくは使用中も含めて燃料の管理の問題は、これは、三月十一日以前も含めて、我が国において非常に深刻な問題なわけですね。特に福井の場合には、発電をしているのは福井県ですが、電力を使っているのは関西ということで、そこが言うならばずれますので、むしろ消費地も含めてこの燃料の問題については考えるべきではないかと、そういうふうに私自身は受けとめております。

 ただ、これは、何か突然物事が解決をするとか、ましてや誰かが持っていってくれるとか、そういう種の問題ではありません。日本全体でどう考えていくのかというのを、相当これは議論を煮詰めていかないと問題は解決をいたしませんので、例えば、それがすぐに解決をしなければ稼働そのものにかかわるというような意識で福井県知事がおっしゃったというふうには受けとめておりません。しっかりとそういったことも政府として責任を持って検討していかなければならないという、そのように考えましたので、私の方からは知事にそのことをお伝えをしたところであります。

服部議員 いずれにしても、再稼働の前に福井県知事には、そういったことを含めてトータル的に総理から説明をされるということなんですね。ではないんですか。

細野国務大臣 そこは福井県知事としてどのようなお考えなのかというところを、これは慎重にしっかりと受けとめなければならないというふうに思うんです。総理は、これまで何度か総理としてのお考えを大飯についても発信をされています。自分の責任でという趣旨の発言も、この間の四大臣会合でございました。

 そうした中で福井県が今どのようなことを国に対して求めておられるのか、そこはしっかりと受けとめた上で政府としての対応を検討する必要があるというふうに思っております。

服部議員 何かいま一つ、どうされるのかよくわかりませんでしたけれども。

 あと、政府は、規制庁発足までの間、特別な監視体制をとるために政務三役を現地に常駐させるというふうに表明されていますけれども、一体、政務三役って何をするんですか。何か役に立つんですか。

細野国務大臣 これは東京電力の福島原発の経験からいっても言えることなんですけれども、やはりオフサイトにおいても、特にオフサイトということが重要になると思いますが、地元の自治体の首長の皆さんに対する説明であるとか、政府として責任を持って対応するという意味において、私は政治家の存在というのは重要だというふうに思っています。それは決して、さまざま皆さんが懸念をされているような技術的な分野に踏み込むであるとか、その判断をそれこそ曲げるであるとか、そういったことをするということでは全くありません。

 地元の自治体に対して政府としてしっかりと取り組んでいる、そして、それこそあってはならないことでありますけれども、何らかのトラブルが生じた場合には、それをしっかりと政府全体で受けとめた上で対応するという意味においても、常駐というのは、現地にいるということ自体は意味のあることだというふうに思っております。

服部議員 お手元に資料をちょっと配らせていただきました。大飯原発の敷地内の活断層の評価の問題です。

 かなり専門的な資料でもありますので、またゆっくりお目通しをいただきたいわけですけれども、地形学の専門家である渡辺先生が、原発周辺の活断層評価が明らかに間違っており、過小評価が横行しているというふうに警鐘を鳴らしておられます。

 このF―6断層の問題が検証されていない、F―6断層は活断層だということをおっしゃっているわけですけれども、ちょっと大臣、このF―6断層の問題、あるいは活断層の連動の問題、三つの活断層が連動するじゃないかということも言われておりますけれども、こういった科学的検証は尽くされたというふうにお考えでしょうか。

 私は、こういったことが明確な結論が出るまでは再稼働の判断は保留すべきだというふうに考えますけれども、それもあわせていかがでしょうか。

細野国務大臣 御指摘のF―6の破砕帯ということについては、トレンチ調査、穴を掘るという方法ですが、そうした調査によって、破砕帯の上に乗っている地層に変位を及ぼさない、つまり、それが原発の健全性そのものに影響を及ぼすというものではないという確認がされているという報告を受けております。

 常に新しい知見に基づいてさまざまなことについて検討していくということは、極めて重要であるというふうに思います。

 ただ、服部委員の御質問を聞いておりますと、常に新しいことについてチャレンジし、新しい知見に基づいて考えていくわけですね。そもそも、原発の事故の最終的な全てのことがわかるのも、恐らく三十年、四十年になると思います。

 つまり、服部委員がおっしゃっていることは、そういう常にいろいろなことが新しくわかるので、それがわかるまでは原発はもう動かさないということですから、言うならば、それはもう全てこれから原発を動かすなということをおっしゃっているわけですね。というように私はとれます。

 そうではなくて、安全神話に陥らずに、常に最新の知見に基づいて、そして、安全性に問題があればバックフィットをして、とめるわけです。その考え方をベースの部分で御理解をいただかなければ、これはなかなか議論がかみ合わないなという、率直にそんな印象を受けました。

服部議員 時間が来ましたので終わりますけれども、私、考え方は脱原発ですよ。しかし、今言うているのは、例えばこの審議期間中に再稼働するんですか、あるいは、前も国会でやらせていただきましたけれども、国会の事故調の報告の前に再稼働するんですか、あるいは基準の見直しもしない前に再稼働するんですか、そういうことを私は聞いているわけで、別に、三十年、五十年とか、原発ゼロとか一〇〇とか、そういう話をしているわけではないので、そこはよく受けとめていただきたいというふうに思います。

 いろいろ質問が残りましたけれども、これで質問を終わります。どうもありがとうございました。

生方委員長 次に、柿澤未途君。

柿澤議員 みんなの党の柿澤未途でございます。きょうは、委員外発言ということでこういう時間を与えていただきまして、まことにありがとうございます。

 まず、衆法提出者の自民党さんにぜひお伺いをしたい、こういう点がございます。

 一月三十一日の政府提出法案の閣議決定に当たって、国会事故調の黒川清委員長は次のような声明を出しております。国会事故調は、その設置法において、今般の事故を踏まえた行政組織のあり方の見直しを含む提言を行うことを任務の一つとしている。その国会事故調が調査中であるにもかかわらず、行政組織のあり方を定めた法案を政府が閣議決定してしまうというのは、これは私には理解できません。こういう二月二日付の黒川清委員長の声明であります。

 これについて自民党の議員さんも公明党の議員さんも、やはり同じように、政府はおかしいんじゃないのか、こういうふうに国会質問等で批判をしてこられたのではないかというふうに思うんです。

 ところが、今回、その自民党さんが公明党さんと一緒に政府提出法案の対案を出してきた。国会事故調の提言は今もって出されていないわけです。国会事故調を尊重しろ、そう言ってきた方々までもが、政府と同じように、その国会事故調の提言に先んじて、行政組織のあり方はこうだ、こういう法案をつくって提出をしてしまったわけです。

 これは、今までに言ってきたことと自己矛盾を来してしまっているのではないかと思いますが、この点、どうお考えになられているのか、お伺いをしたいと思います。

柴山議員 柿澤議員にお答えいたします。

 確かに、今委員が御指摘のとおり、国会の事故調が判断をするに先立って、特に、政府提出法案のような形で、政治からの独立性が必ずしも十分でないと我々が批判をしている法案が提出をされ、そしてそれが四月一日から施行されてしまうということに対しては、私たちは非常に強い懸念の意を表明してまいりました。

 ただ、我々が対案をこういう形でずっと議論をしてまいりましたのは、まず一つ、ベクトルが逆だということは御理解をいただきたいと思います。つまり、まさしく黒川委員長が御指摘のように、しっかりと政府から独立した形での事故分析をなす、そしてその意見が十分反映される組織というものを目指しているという方向で私たちは対案づくりをしていこう、そういう意図があったということをまず御理解をいただきたいというように思っております。

 そして、この段階での対案提出ということなんですけれども、まず一つ、国会事故調の報告書は、先ほど来お話があるように、今月にも出されるというように伺っております。そして、恐らくその中で、現行体制の問題として明らかになっている事項というものが多々出てくると思われます。そして、それらに早急に対応して、原子力利用における安全の確保を強固なものとして国民の不安を取り除くということは、これは私は政治の使命であるというように思っております。

 そこで、現時点で、IAEA、国際基準などにも照らして考えられ得るベストの案を、先ほど申し上げたように、恐らくその黒川委員長の意に沿うような形で、政治から独立を徹底するという案を法案として提出することといたしまして、原子力規制委員会をひとまず立ち上げて運用させた上で、三年以内に、今申し上げた国会事故調査委員会の報告の内容等を踏まえた形で、場合によっては組織のあり方の見直しを行うという整理をさせていただいているところであります。

柿澤議員 黒川委員長がこういうふうに恐らく考えているだろうから、その方向を酌み取って法案化したので、だからいいんだと。これはちょっと、なかなか苦しいものがあるなというふうにも思います。

 もう一度繰り返しますが、国会事故調の設置法の第一条だったか第二条だったか、とにかく、今般の事故を踏まえた行政組織のあり方の見直しを含む提言を行う、これはまさに事故調の任務の一つでありますから、それを踏まえて国会がこうした新しい規制機関のあり方について立案し、成立をさせていく、こういう流れであるべきでありまして、この点において、政府が足早に新しい原子力規制機関のあり方について法案を閣議決定した時点では皆さんがおっしゃったとおりだなと思っていたんですけれども、この段になって、あのとき言っていたことと今こうやって審議入りされていることとどういう整合性になっているのかな、こういうふうにも思えてしまうわけであります。

 次に、関西電力大飯発電所の再稼働について、国会事故調の提言を待たずに再稼働の政治判断を行うのは、やはり国権の最高機関の全会一致の意思を無視している、したがって白紙撤回されたい、こういう趣旨の国会決議案の提案を作成し、有志の議員に今お持ちをさせていただいております。恐らく、塩崎先生も吉野先生もそれはお手元にお持ちだろうと思います。

 現に、再稼働の判断根拠となっている政府の安全性に関する判断基準については、四月十八日の国会事故調でも質疑の対象となっていて、安全に稼働するために必要な対策が先送りされている批判的検証が加えられております。

 国会事故調が今なお調査中であり、事故を踏まえて厳しい批判にさらされている保安院、安全委員会にかわる新しい規制機関が今こうして審議中でありますから、設置をされる前に既存の機関がつくった暫定的な安全基準に基づいて政治判断による再稼働を行う、こういう野田内閣の方針は衆法提出者さんは妥当なものだと思っているのかどうか、これを確認させていただきたいと思います。

柴山議員 お答え申し上げます。

 私も、今の御質問に関しては柿澤議員と問題意識を共有しております。一連の野田内閣のこの再稼働への対応を見ると、やはり、今般の原子力事故からの教訓を学んでいないのではないかというように感じざるを得ません。

 原子力利用における安全の確保に関しては、もちろん物理的な客観的基準ということも大事なんですが、私、本会議でも答弁を申し上げたように、国民の不安を払拭してその信頼に応えるということが最も重要だと思っております。

 これまで我々も、与党時代、しっかりと本来であれば反省しなければいけなかったんですけれども、原子力村が構築してきた安全神話のもとで安全性が軽視されてきたという反省に立って、国民の信頼を回復するための努力を丁寧に尽くすべきであるというように思っております。

 ですので、その安全基準は、科学的知見に基づき、そして、その決定プロセスも国民に明らかにされる中でつくられるべきものであります。

 にもかかわらず、申し上げたとおり、民主党政権のもとでは、政治的に決定をされているというようにどうしても映ってしまうんですね。

 例えばストレステストについても、法律の枠組みに沿ったものというよりは、いわゆる三大臣、すなわち、内閣官房長官、経済産業大臣、特命担当大臣の取りまとめ、これによって菅総理の思いつきの体裁を整えたものであるというふうに感じております。

 また、例えば、再稼働に当たっての安全性の判断基準とされております、先ほど斎藤委員からの御質問にもあったと思うんですけれども、いわゆる四大臣の判断基準、これも、中越地震のときに問題とされたフィルターつきベント管あるいは免震事務棟、これの設置などについても、事業者による実施計画を求めるということにとどまっているわけでありますし、また、過去の地震などについての検証というものが本当に十分になされているのか、細野大臣からは、何度も何度も議論をした上で出されたんだというようにお話があったんですけれども、やはり疑問を拭い去ることはできないわけであります。

 野田内閣の再稼働の進め方は、やはり余りにも稚拙、拙劣でありまして、安全よりも需給対策を優先させたと。先ほどお話があったんですけれども、安全性をしっかりと確保するから全てとめたというのは、これは私は詭弁だと思うんですね。やはり、世論の反発があるから全部とめざるを得ない状況にあるわけです。そして、再稼働についても、需給対策がやはり優先をされてしまっているということは透けて見えてしまっております。

 たび重なる方針変更、そして、専門知識に欠ける閣僚が再稼働の判断を行ったということで、政府の原子力政策に対する国民の信頼を失った事態になっている。

 これをやはり解決するためには、本会議で私が答弁申し上げたように、「新たな原子力規制組織のもとで新たな基準が定められるのが望ましい」というように思っております。

柿澤議員 しからばこの御答弁は、自民党は現時点で暫定的な安全基準に基づく大飯発電所の再稼働の政治判断には反対する、こういう立場であるわけですか。ちょっとここは御答弁をいただければ。

柴山議員 ですので、今申し上げたとおり、再稼働のためには、「新たな原子力規制組織のもとで新たな基準が定められるのが望ましい」というふうに明確に答弁申し上げております。

柿澤議員 反対だ、こういうふうに解釈できる御答弁だったと思います。

 細野大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 今、お話がるるありました四閣僚会合、そして総理の政治判断による大飯発電所の再稼働の判断というのは、これはいかなる法的根拠に基づくものなんですか。それとも、これは一種の超法規的措置と解するべきものなんでしょうか。お伺いしたいと思います。

細野国務大臣 現在、定期検査で停止中の原子力発電所は、現行法令にのっとり安全性の確認が行われております。昨年七月に三大臣が取りまとめた方針において、ストレステストの一次評価を実施をするということを事業者に求めました。これは、それを求めた上で政府として再稼働の可否を判断することといたしました。これは行政指導の一環であります。

 その判断が出るまでの間は再稼働を行わないということを求めた結果として、各原子力発電所の運転が再開されない状態が続いているということであります。

 今後、四大臣会合において個々の原子力発電所の再稼働を認めた場合、これは、当該原子力発電所について、昨年七月以来の再稼働を行わないように求める行政指導を行った、それを解除するものというふうに位置づけられるということであります。

柿澤議員 これは要するに根拠法はない、こういうことでいいですね、イエスかノーで。

細野国務大臣 先ほど柴山議員の答弁を聞いて、若干私も自民党さんがそうだったのかということで改めて認識したんですが、私どもは、新しい規制機関ができて新しいルールができなければ、判断はあらゆるものは保留するという考え方はとっておりません。

 新しい法律というのは国会審議をいただかなければなりませんので、そこは一定の時間もかかるし、当然慎重な検討が必要です。そういったことが全て終わる前においても、常に新しい知見ができ、新しい安全についてやるべきことができた場合には、それは、目の前の問題について対応すべくしっかりと対応していく、その考え方に立っております。

 これを私どもは、安全神話から脱して、しっかりとやれることをやるという対応としてこれからもとっていく必要があるというふうに考えております。

柿澤議員 ちょっと的が外れた御答弁をいただいてしまいましたが、基本的には、法令に基づいたことではないということを御答弁をいただいたと思います。

 いわゆる暫定的な安全基準と呼ばれている「原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準」及び保安院の技術的知見、この策定とそれに基づく安全確認に原子力安全委員会はどのようにかかわったのか、これをお伺いしたいと思います。

班目参考人 安全基準の策定等については、原子力安全委員会は直接的には何らかかわってございません。

 しかしながら、具体的な安全基準に関しましては、これは規制行政庁の方でしっかりと策定していただければよろしい。それも、これからいろいろなことが明らかになってくると思いますが、最新の知見を反映して、安全性を常に高めていくという方向でやっていただければ結構だというふうに考えているところでございます。

柿澤議員 班目委員長、原子力安全委員会の根拠法である原子力委員会及び原子力安全委員会設置法、ここには何と書いてありますか。原子力安全委員会の所掌事務として、原子力利用の政策のうち安全確保に関すること、原子炉規制のうち安全確保に関すること等々、これらのことについて原子力安全委員会が「企画し、審議し、及び決定する。」十三条に書いてあるではありませんか。この法律のとおり全く行われていない、こういうことを班目委員長はみずから委員長として認めたことになりますよ。いいんですか。

班目参考人 原子力安全委員会のそこに書いてある任務というのは、まさに、原子力の安全確保のための規制に関する基本的な考え方の提示でございます。

 これに対して、具体的な規制をどのようにやるか、これは規制行政庁の所掌だというふうに考えてございます。

柿澤議員 では、今回のストレステスト、その後の暫定的な安全基準による再稼働の判断、ここで、十三条に基づいて安全委員会が企画、審議、決定した場面がどこにあったのか、あるいはなかったのか、お伺いします。

班目参考人 原子力安全委員会といたしましては、本会議の場に保安院からいろいろな状況を聴取し、それに対して個別具体的にいろいろな指導は行ってきております。

柿澤議員 そもそも、ストレステストの導入時、昨年七月十一日の枝野官房長官、海江田経産大臣、細野大臣、三閣僚名による「我が国原子力発電所の安全性の確認について」、これでは、再稼働に関し、保安院による安全性の確認について疑問を呈する声も多い、こう言った上で、安全委員会による確認のもと、評価項目、実施計画を作成し、事業者の自己評価を保安院が確認をして、「安全委員会がその妥当性を確認する。」こういうことになっていたわけです。

 その上でストレステストの一次評価を行ったわけですけれども、結局、一次評価をパスしたことがイコール安全ということになるのかどうかについて、班目委員長はずっと論評を避けています。すると政府はどうしたか。保安院に新しい安全基準の作成を指示して、それをクリアしたから大丈夫だ、こういうふうに言い始めたわけであります。

 保安院がだめだからストレステストだったのに、安全委員会に今度はだめ出しを食らったら、また保安院に逆戻り。これでは法律も何もあったもんじゃないというふうに思うんですよ。再稼働ありきで基準をあれこれいじっているだけのことではありませんか。私は、ここに全ての問題があると思っているんです。

 現に、効力を発揮し政府を拘束している既存の法律の定めをすっ飛ばして、総理が政治決断したんだからいいんだというのでは、これでは法治国家とは言えない。政府首脳の意思として、法に定められた適正手続がこうやってないがしろにされるのであれば、新しい規制機関、安全基準をつくる以前の問題、法案審議以前の問題だというふうに思うんですよ。

 こういうことをやっていることについて、細野大臣、また班目委員長、時間もないですが、ぜひそれぞれ御答弁をいただいて終わりたいと思います。よろしくお願いします。

細野国務大臣 四大臣で決定をいたしましたあの三つの基準というのは、原子力安全委員会を含めた専門家の意見を伺いながら、公開の議論を通じまして慎重に知見を集約をした、それを取りまとめたものであります。そうしたプロセスにおいて安全委員会が保安院から議論を聴取してさまざまな知見を出してきたことについては、先ほど班目委員長がおっしゃったとおりであります。

 したがいまして、そこをしっかりと判断をして、最終的には、やはり東京電力福島第一原発の津波をしっかりと防止できる、ここはしっかりと確保しなければならないということでありますから、それについても判断を加え、さらには最新の知見をできるだけ前倒しをして反映していく、そういうことができているというふうに考えております。

班目参考人 安全委員会といたしましては、今回議論されているような新規制機関において、今後も、安全神話に陥ることなく、しっかりとその安全性の向上の努力を図っていただきたい、それに尽きると思っております。

柿澤議員 全く何一つ法的根拠に基づかずに今の大飯発電所の再稼働が行われ、そして、今、安全基準のもとにこうした判断が下されようとしている、このことがはっきりこの質疑によって明らかになったと思います。

 終わります。

生方委員長 次に、松木けんこう君。

松木議員 委員外でお話をさせていただく機会をいただきました。委員長さん、本当にありがとうございます。そして与野党の理事の方、そして委員の皆さんも、本当にありがとうございます。

 それでは、いろいろ質問をつくってきたんですけれども、答えていただいたところとかいろいろとあってちょっと変わっちゃいますので、ただ、答えづらいようなものは余りないと思いますので、進めさせていただきます。

 まず江田先生、よろしいですか。江田先生も、今、柴山さんが再稼働反対だということだったと思うんですけれども、同じような御意見でよろしいですか。

江田(康)議員 再稼働、今、この新たな組織で新たな基準にのっとって再稼働はきちんと決められていくものと考えておりますので、そのように考えております。

松木議員 ということで、これで自民党も再稼働はもうちょっと後の方がいいかなという話、そして公明党の先生方も基本的にはそうである、そして、ちょこっと後ろで聞いてきたんですけれども、共産党の方々もそう、社民党もそう、そして新党大地・真民主の我々もそうです。そして、多分みんなの党の皆さんもそうなんだろうなと思うんです。

 まあ、余り無理しないで、僕はずっと細野さんの顔を見ていました。もともとイケメンだけれども、それ以上に本当にあなたは真剣な顔をしてずっと答弁していましたよ。そして、自民党の方々、公明党の方々も本当に真剣な顔でされていました。吉野先生なんかはまさに地元ですから。その中でこういう委員会が開かれて、いろいろなものが決まる前の再稼働に対してはいろいろな意見が出ましたよね。

 今は答えなくても、もしあれだったらいいですけれども、私は、何かこのままいったら民主党だけが悪者になるようなそんな気がする。ぜひもう一度よく考えられたらいいんじゃないかなというふうに思いますけれども、お気持ちがあればお答えください。余り無理しなくていいよ。

細野国務大臣 ほかでもない、愛情に満ちた松木けんこう委員からのお話でございますので、そこはしっかり承ります。

 ただ、これだけはぜひ御理解をいただきたいんですが、一年以上たった中で原発が一つも動いていないということに関して、それは安全性を確認したからではなくて国民が受け付けないからだ、そういうお話もございましたけれども、そこは、安全性について非常にこれは慎重に検討してきたんです。これはもう事実なんですね。その上で……(松木議員「それはわかったから、だからもう一回話し合いしてみて、それだけでいい」と呼ぶ)はい、もちろん話し合いはしっかりとしなければなりませんので、ありがとうございます。

松木議員 一度また関係大臣で、委員会でこういう話が多かったんだということをぜひ反映されるということで、私は細野大臣の決めたことだったら何でも従っていきたいと思うんだけれども、なかなかそうもいかない部分もあるわけでございまして。

 自民党の皆さん、公明党の皆さんも法案を出されて、政府も出されて、そして建設的な討論がずっとなされてきた。私は、やはりなるべく早くこういうことは決めていくべきだというふうに思っております。

 その中で、原発再稼働が目的でやるというのは私はいかがなものかなという気持ちはありますけれども、それは別にして、それぞれの我が法案のこういうところが肝なんだよというのはお互いにあると思うんですね。そして、ちょっとそれぞれここが違うんだ、だからここら辺をのんでくれたらいいなというのを三分以内でお互いにちょっとお話をしていただければありがたい。どちらからでもいいですよ。

吉野議員 ありがとうございます。

 松木議員の奥様の実家は大熊町であります。私も何度かお訪ねをしていろいろお世話になっている。本当に御苦労なことでございます。

 そういう中で、きょう朝の議論から、まさに政府案と私たち自公案の違い、いろいろな方々の質問の中で明らかになってまいりました。

 私たちの自公案は、誰の圧力も受けないで原子力の安全についての規制を行えることのできるような組織をつくりたい、すなわち、独立性をどうかち取るかというこの一点に尽きると思います。私たちの自公案については、まさに独立性、人事の独立、政府からの独立、お金の独立、全てを含めた独立性は私たちの方がまさっている、このようにある意味で自負をしているところです。

 もう一点、一元化です。

 特に政府案については、保障措置、モニタリング等々はまだ文科省に残っております。私たちはこれをも含めて一元化に取り組んでおります。スリーSをきちんと規制当局でやっていく。

 この辺が大きな違いであり、また、私たちの自公案のすぐれている点であるというふうに思っております。

 以上です。

細野国務大臣 政府案の考え方については、趣旨説明でも申し上げましたし何度も申し上げていますので、それについては省かせていただいて、大きな方向性として、自民党・公明党案とそして政府案というのはいろいろな点で共通していると思います。推進サイドから独立をさせていくであるとか一元化をしていくであるとか、そういったことについてかなり共通していると思います。

 従来、総理の指示権のあたりが、政治家の関与のあたりが、これがやはり違うのではないかと言われておりましたが、きょうの質疑を通じてそこはかなり近いものがあるということを確認をできたのは、非常に大きな収穫でした。

 その上で、まだ若干詰めの作業が必要だなと思いますのは、私どもは規制の中身にも踏み込んでいる点を自公の皆さんがどうお考えになるか。具体的には、シビアアクシデントの法制化、そしてバックフィット、四十年の運転制限制、これらについての御見解をできれば早目にお示しをいただけると非常にありがたいなというふうに思っております。

 もう一つだけ申し上げると、マイナーな論点のように言われますけれども、私が気になっていますのは、事故調査を初めとした何らかのチェックをする機関というのは、これはあった方が、これからの原子力行政というのを考えるといいのではないかなと思うんです。

 我々はそういう委員会をつくるたてつけにしておりますが、それが今のところ自公案の中では見られないものですから、そこが何らかの形で方向性が見えてくれば、私は、一致点はもう十分見出せるのではないかと感じております。

松木議員 私が聞いた限りは、お互いにベストミックスでつくることは私は可能じゃないかなというふうに思いました。

 総理大臣のことに関しては、かなり特別に変な人だったからというのもありますよ、はっきり言って。そう思います。本当に私はとんでもなかったというふうに思います。それをちょっと割り引いてそこら辺は自公の皆さんもお考えになったらいいのではなかろうかな、私は本気で本当にこれは思っています。

 どうでしょう、塩崎先生、何となくこれはいけそうだなという感じがしませんか。

塩崎議員 先生がおっしゃるとおり、きょう、大臣の答弁を聞いていて、これはいけるんじゃないかと。基本的には私たちのラインでいけるなというふうに思いました。

松木議員 なるほど。しかし、ぜひ譲り合ってくださいよ。決められない政治だとか言われているじゃないですか。

 そもそも皆さん、私思うんだけれども、国会議員の定数を減らせなんというのが随分世の中にあるでしょう。これは寂しい話ですよ。いやいや、国会議員はもっとふやせ、我々の気持ちを代弁してくれるんだって言われるぐらいにならなきゃ、政治家は。本当に寂しい。ちょっとこの話とは違いますけれどもね。そんなことでお互いにぜひ頑張っていただきたいというふうに本当に思っております。

 それともう一つ、原発のことでいうと、最後の処理の問題というのがありますよね。例えば脱原発ということになっても、原発を動かすことになっても、いずれにしても、最後にこの処理というのをどうするのか。要するに、立派なマンションにトイレがないんだという話をする方がいましたけれども、まさにそういうことだと思いますので、ここはやはりどんなことになっても、処理はこれから脱原発しても必要なんですからね。そういう方々に対しての何というんですか、研究者を大切にしていくということはやはりいずれにしても怠っちゃいけないんだというふうに思いますけれども、細野大臣、そこら辺どうですか。

細野国務大臣 松木委員がおっしゃるとおりだというふうに思います。

 使用済み燃料を初めとした、これをどう取り扱っていくかというのは、中間貯蔵も含めて非常に深刻な問題です。ましてや最終処分ということになってまいりますと、これはリサイクルしようがしまいが、最終的には何らかの最終処分が発生をしますから、これはさらに深刻な問題なわけですね。

 ですから、今回の事故を、一つの本当に極めて厳しい教訓ではあったけれども、改めてその教訓を受けとめた上で、会派を超えて最終処分の問題について考えていく必要があるというふうに思います。

 それは、ひいては、日本だけではなくて、世界全体の問題にどう日本が向き合うかということにも密接にかかわってくると考えているところでございます。

松木議員 ありがとうございます。

 ちょっとローカルな話をさせていただきますけれども、先ほど、吉野先生に私の父の話をしていただきました。実は、私はかみさんを大熊町からもらっています。二十四歳のとき結婚をさせていただきました。今五十三歳ですから、もう二十九年たって、一番初め、うちのおやじに会ったときに町議会議員をやっていたんですよ。怖そうなおやじだったんですよね。ちょっと会うのも嫌だなと初めは思っていたんですけれども、一番初め行ったら連れていかれたところがあるんです。それが実は原発なんです。それで、原発の温排水で魚の養殖をやっているとか、そういうところも見させていただきました。

 そのおやじがこう言っていました。今会うと、郡山の方に今は避難生活していて、もう体育館じゃなくて普通のところにはいるんですけれども、私の顔を見ると泣くんですよ。もう八十幾つで、こういうことは見たくなかった、俺が死んでからこうなってもらいたかった。

 それで、実はうちの父はどちらかというと自民党系ですから、最後は推進したんですけれども、やはり地元で随分反対が本当はあったそうなんですよ、一番初めは。ところが、だんだん押し込まれていって、結局やはり、うちの父に言わせると、大熊町というのは東北のチベットだからなと、これは言葉が悪いですけれども済みません、そういう話がありまして、やはり原発を持ってくるしかなかったという話もありました。それを聞くと本当に寂しいなと思うんですけれども、その中でよく言われていたのが、電力会社が地元に余り本当のことを言わないと。そのことで随分うちの父は怒っていましたよ、何回も。

 これはこれからどういうことになるかわかりませんけれども、そういうことは政治家がやはりきちっと見ていくべきだというふうに思っておりますので、ぜひそこら辺を御留意いただきたい。

 先生、せっかく来てくれたんですから、もし今のお話に意見があれば一言、せっかく来たんですから。

柳澤副大臣 松木議員とは公私ともに大変親しくさせていただいておりまして、去年の九月から私も原子力災害現地対策本部長として福島に入らせていただいていまして、おかげさまで、皆さんの御協力で復興庁もできまして、本当に一日でも早く、一人でも多くの方に戻っていただくという体制にしたいというふうに思っております。

 福島の皆さんは、できるだけ去年の三月十一日以前の生活に少しでも戻りたいというのが本音だというふうに思っておりますので、また一生懸命頑張らせていただきますので、御協力よろしくお願いいたします。

松木議員 終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

生方委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りいたします。

 ただいま本委員会において審査中の各案件に対し、関係委員会から連合審査会開会の申し入れがありました場合には、これを受諾するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

生方委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、連合審査会において、政府参考人及び参考人から説明または意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求め、説明等を聴取することとし、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

生方委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、ただいまお諮りいたしました連合審査会において、委員でない議員から発言を求められた場合には、その取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

生方委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、委員長間で協議の上決定いたしますので、御了承願います。

 次回は、来る八日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十六分散会


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