衆議院

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第15号 平成25年6月11日(火曜日)

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平成二十五年六月十一日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 吉野 正芳君

   理事 泉原 保二君 理事 うえの賢一郎君

   理事 北川 知克君 理事 土屋 品子君

   理事 冨岡  勉君 理事 篠原  孝君

   理事 河野 正美君 理事 斉藤 鉄夫君

      赤枝 恒雄君    秋本 真利君

      穴見 陽一君    井野 俊郎君

      井林 辰憲君    井上 貴博君

      石川 昭政君    岩田 和親君

      小倉 將信君    鬼木  誠君

      小林 史明君    佐々木 紀君

      齋藤  健君    助田 重義君

      藤原  崇君    生方 幸夫君

      吉田  泉君    阪口 直人君

      丸山 穂高君    江田 康幸君

      杉本かずみ君    中島 克仁君

      野間  健君

    …………………………………

   環境大臣         石原 伸晃君

   農林水産副大臣      江藤  拓君

   環境副大臣        田中 和徳君

   環境大臣政務官      齋藤  健君

   環境大臣政務官      秋野 公造君

   政府参考人

   (内閣府規制改革推進室次長)           舘  逸志君

   政府参考人

   (文化庁文化財部長)   石野 利和君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  矢島 鉄也君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬食品局食品安全部長)       新村 和哉君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           藤本  潔君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           小林 裕幸君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房総括審議官)         日下部 聡君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           後藤  収君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   梶原 成元君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局環境保健部長)       佐藤 敏信君

   政府参考人

   (環境省地球環境局長)  関 荘一郎君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            小林 正明君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  伊藤 哲夫君

   政府参考人

   (原子力規制庁審議官)  山本 哲也君

   政府参考人

   (原子力規制庁原子力地域安全総括官)       黒木 慶英君

   環境委員会専門員     仲川 勝裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     鬼木  誠君

  大久保三代君     秋本 真利君

  藤原  崇君     佐々木 紀君

  小沢 鋭仁君     丸山 穂高君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     大久保三代君

  鬼木  誠君     石川 昭政君

  佐々木 紀君     藤原  崇君

  丸山 穂高君     小沢 鋭仁君

    ―――――――――――――

六月七日

 大気汚染公害被害者に対する新たな救済制度に関する請願(阿部知子君紹介)(第八三一号)

 同(笠井亮君紹介)(第八三二号)

 同(渡辺喜美君紹介)(第九〇五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環境の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

吉野委員長 これより会議を開きます。

 環境の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府規制改革推進室次長舘逸志君、文化庁文化財部長石野利和君、厚生労働省健康局長矢島鉄也君、厚生労働省医薬食品局食品安全部長新村和哉君、農林水産省消費・安全局長藤本潔君、農林水産技術会議事務局長小林裕幸君、経済産業省大臣官房総括審議官日下部聡君、経済産業省大臣官房審議官後藤収君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長梶原成元君、環境省総合環境政策局環境保健部長佐藤敏信君、環境省地球環境局長関荘一郎君、環境省水・大気環境局長小林正明君、環境省自然環境局長伊藤哲夫君、原子力規制庁審議官山本哲也君、原子力規制庁原子力地域安全総括官黒木慶英君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉野委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井野俊郎君。

井野委員 皆さん、こんにちは。自由民主党、群馬二区選出の井野俊郎でございます。

 今回、環境委員会において初めて質問に立たせていただきます。本当に、皆様の胸をかりるつもりで頑張って質問させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、今回は、環境省の今年度予算における重点施策の一つであります生物多様性国家戦略に基づく取り組み強化について、この委員会において議論させていただき、日本の環境保全、そして生物多様性保全が少しでも前に進んでいけばと思っております。

 言うまでもなく、日本は、北は北海道、南は沖縄と、その自然環境は多様であり、また、そこに住む生物も多様であります。近年、小笠原諸島が自然世界遺産に登録されたように、日本は数多くの自然世界遺産が点在している地域でございます。このような自然環境は、まさに日本が誇るべきものであり、そこに息づく生物も日本の環境に適した進化を遂げており、日本固有種が数多く生息しているわけであります。

 このように、日本列島には多様な生物が生息しており、また、生物が生息する自然環境の保全及び生物の保全は、日本の自然のみならず、日本の伝統文化を守ることでもあると考えております。そういった意味で、日本の自然環境及び生物多様性の保全は、環境省の重要な責務であると思います。

 そこで、環境省の今年度予算における新規事業として、生物多様性及び生態系サービスに関する科学政策プラットホーム推進費、この予算として三千六百万円を計上されております。まず、この事業の中身及びその期待する効果をお伺いさせていただきます。

伊藤政府参考人 昨年、国連総会における採択を受けまして、生物多様性と生態系サービスに関する動向を科学的に評価し、科学と政策のつながりを強化するための政府間科学政策プラットホーム、IPBESと呼んでおりますけれども、これが設立されました。事務局はドイツのボンに置かれている次第でございます。

 御指摘の事業は、このIPBESが設立されたことを受けまして、我が国がIPBESに貢献するために開始する事業でございます。

 具体的には、国内における生物多様性等に関するさまざまな情報を環境省に集約いたしまして利用可能な状態にするとともに、例えば身近な自然の喪失などの生態系等の変化が暮らしにどのような影響を与えるのかということについて評価、予測を行い、これらの取り組みから得られる知見をIPBESに提供していこう、こういうものでございます。

 この事業によりまして、生物多様性と生態系の重要性がより広く国民に認識され、その保全や持続可能な利用に向けた取り組みが一層推進される、こういったことを期待しておりますし、あわせて、IPBESに対する我が国の貢献となることを期待しているところでございます。

井野委員 具体的に、この三千六百万円の使い方といいましょうか、例えば、どういう会社に、またどういう調査を依頼するというようなことを予定しているのでしょうか。

伊藤政府参考人 まず、生物多様性に関するさまざまな情報を環境省に集約するということでございます。これは、学者先生方とかいろいろな調査機関で既にやられている情報を、私ども環境省の生物多様性センターというのを山梨県に置いてございまして、そこに集めるということで、そのためのいろいろな経費はかかるだろうというふうに思っております。

 それから、生態系の変化が暮らしにどのような影響を与えるかの評価、予測、これにつきましては、調査のやり方について、こちらがその概要を決めまして、いろいろ競争入札等で入札していただいて、最も適切なところに調査を発注したい、こういうふうに考えている次第でございます。

井野委員 概要はわかりました。

 もう一点。この事業としては、これはあくまで日本全国の生態系を調査し、そして地域ごとに、北と南、また都会と田舎、本当にいろいろな環境がありますけれども、日本全国のということでよろしいでしょうか。

伊藤政府参考人 まさに、生物多様性の状況につきましては、日本全国のいろいろな情報を集めたいというふうに考えております。先生から御指摘ございましたけれども、日本は非常に多様性に富んだすばらしい自然がありますので、それらの情報についてはできるだけ環境省に集約をしたい、こういうふうに考えている次第でございます。

井野委員 わかりました。

 続いて、今回、政府は、COP10で採択されました新たな世界目標をもとに、「生物多様性国家戦略二〇一二―二〇二〇」を平成二十四年九月二十八日に閣議決定されております。これは、二〇二〇年までに生物多様性の損失をとめるために効果的かつ緊急な行動を実施するということで、約七百の具体的な施策を示されております。

 しかしながら、我が国は、申し上げましたとおり、環境の多様性から生物の多様性が導かれておりますので、各地域によって環境保全及び生物多様性の保全方法は異なってくるものと思います。

 そこで、生物多様性の保全のために、各地域の実情に沿い、かつ、各地域が独自に生物多様性保全のための施策を実施していく必要があると思います。この基本計画となる生物多様性地域戦略は、生物多様性保全の実効性を確保するために、まさに必要不可欠なものであります。

 しかしながら、この生物多様性の地域戦略策定事業は、これは各地域が策定するわけでありますけれども、全額国の補助事業であるにもかかわらず、策定した都道府県は四十七都道府県中二十三にとどまっている。この策定状況からすると、必ずしも策定が進んでいるというようには思えないわけであります。

 そこで、地域戦略の策定がなかなか進んでいない原因について環境省はどのように考えているのか、お伺いいたします。

 また、世界遺産に登録された地域などは特に地域戦略の策定が急がれるように思いますが、こういった策定に向けた動きがあるのか、また、その支援についてもお伺いいたします。

齋藤大臣政務官 井野先生、きょう初めて環境委員会での御質問ということで、先生と切磋琢磨しながら鋭意環境行政を推進していきたいと思いますので、こちらの方こそどうぞよろしくお願いいたします。

 今御指摘のように、生物多様性の保全には、各地域ごとに自然的社会的条件に応じた主体的な取り組みをしていくということが大事なことは言うまでもございません。

 このため、生物多様性基本法においても、都道府県や市町村に、先生御案内の生物多様性地域戦略の策定努力を求めているところでありますが、残念ながら、現在、策定をしているのは二十三都道県ということであります。

 ただ、他の多くの府県においては、まだ策定中または策定を検討中の状態ということでありますので、今後、前進が見込まれていくと思っております。

 進んでいないと思われる原因につきましては、やはり、初めて策定するような話でありますので、手法がまだまだよくわからないですとか、また、既存の事例なんかが大分積み上がってきてまいりますので、これらをきちんと情報を追加する形で、今手引をつくっているんですけれども、これを充実させていきたいなと思っております。

 また、地域生物多様性保全活動支援事業というのがございまして、委員も御指摘でありましたけれども、策定費用を全額支援するということを十府県に現在しているわけであります。これらの取り組みで、引き続き、策定の後押しをしていきたいというふうに考えております。

 また、世界自然遺産地域については、まず国がみずから責任を持って管理するというのが原則であります。このため、遺産地域の管理計画は、生物多様性地域戦略とは別に、国が中心となって、地元自治体等と協力して策定を、もう済んでいるところでございます。

 これに加えまして、遺産地域の周辺も含めました地域全体での生物多様性に向けた取り組みも重要だと考えております。これまで登録されている四つの世界自然遺産地域については、関係する五つの都道県がございますけれども、北海道と東京都では地域戦略を既に策定しておりますし、残る三つの県でも、現在、県全体の地域戦略を策定中でありまして、我が省としても、支援事業等を通じて、早期の戦略策定に向けて支援をしていきたいと考えているところです。

井野委員 先ほどの地域戦略についてなんですけれども、私もこれが事実かどうかちょっと確認していないところなんですけれども、ある県によると、例えば地域戦略、こういったものをつくることによって開発がなかなか進んでいかないんじゃないか、それが制限されるんじゃないかとかいう心配をされる方も中にはいらっしゃる。

 恐らくそういうことは確実にないとは思うんですけれども、この地域戦略は開発とは全く無関係で、あくまでも生物多様性を保全しなきゃならない、そういう中での計画だという意味で、そういう説明といいましょうか、心配を払拭するようなことはやっていかなきゃならないと私は思っているんです。その点はいかがなんでしょうか。

齋藤大臣政務官 生物の多様性を守っていくということと開発というのは、常にバッティングする悩ましい問題だと思いますけれども、環境省としては、これまでもさまざまな知恵や事例が重なってきておりますので、よく相談をしながら、生物多様性が守れるように努力していきたいと思っております。

井野委員 続きまして、生物多様性と関連する鳥獣被害について御質問させていただきます。

 生物多様性を保全するための環境保全対策としては、人間による環境破壊と、そのほかにも外来生物や野生生物による鳥獣被害、こういった二面性があると思っております。

 近年、日本全国において、鹿による環境破壊が深刻となっていると聞いております。鹿は植物の若い芽を摂取するということもあり、鹿がそういったものを食べ荒らした地域は新たな芽が出てこないという意味では、本当に深刻な環境被害が生じていると聞いております。鹿による被害対策は、早急に実効性あるものにしなければならないと思っております。

 そこで、まず、日本全国において、鹿による被害状況、特に生物多様性という観点から、どのような動植物の生息に影響を及ぼしているのか、現状についてお伺いします。また、ハンターの高齢化などが深刻な問題となっている中、現時点において環境省としてどのように鳥獣被害対策を講じていくおつもりなのか、その対策についてもお伺いいたします。

伊藤政府参考人 御指摘のとおり、近年、鹿の増加によりまして、その食害が非常に深刻化しております。

 平成二十三年度において見ますと、全国で約六千ヘクタールの森林被害が生じているという状況でございます。加えまして、まさに先生がおっしゃられたとおり、若い芽を食べちゃうといったことで、南アルプスの高山植物などは顕著に減少しております。そういったことで、植物に多大な影響を及ぼしておりますし、また、鳥や昆虫など、まさにそこにいた生物全てが大きな影響を受けている、こういう状況にあるというふうに認識しております。

 このため、環境省では、鳥獣保護法に基づきまして、各都道府県に対しまして、特定鳥獣保護管理計画を策定し、狩猟期間の延長などを図りながら、個体数の調整、被害防除対策等を総合的に実施するよう指導助言しているところでございますけれども、なかなか今の枠組みの中では限界があるということも我々承知をしております。

 このため、今、鳥獣保護法をさらに抜本的に強化できないかということで、中央環境審議会に諮問いたしまして、御審議をいただいております。ぜひ、年内にも結論を得て、必要があれば必要な制度改正まで持っていきたい、こういうふうに考えている次第でございます。

井野委員 制度改正といいましょうか、それは鹿を駆除するというふうな方向で考えているのか。もっと具体的な対策といいましょうか、どういう方向、今、審議会の方にということでありまして、結論を先にというのはなかなか難しいのかもしれませんけれども、いずれにしても、これは深刻な問題がもう生じているわけですね。鹿をどう駆除し、また、ある意味生息地域を分けるといいましょうか、そういう必要があるかと思いますけれども、もうちょっと具体的にお聞かせください。

伊藤政府参考人 実は、昨日も審議会で、有識者でありますとか関係団体とかNGOとかのいろいろ意見のヒアリングを行いました。

 その中ではさまざまな意見が出ておりますけれども、例えば、鹿の駆除ということについては、やはり専門的にそういったことができる人たちが必要じゃないかとか、そういったいろいろな意見が出ました。そういったいろいろな意見を踏まえて、今後、幅広く検討していきたい、こういうふうに考えている次第でございます。

井野委員 先ほどの鳥獣被害については、これは私の地元の話になりますけれども、本来自然環境が保たれなければならない国立公園における鹿の鳥獣被害が深刻になっております。この点、環境省においても、国立公園における鹿対策事業として、前年度比約四倍の一億七千万円もの予算計上をされ、鹿対策という部分に力を入れているということが見てとれるわけであります。

 私の地元、尾瀬に国立公園があるわけでありますけれども、鹿による深刻な被害が発生しており、地元の新聞等においてもこういう鳥獣被害が、特に鹿の被害が取り上げられております。

 尾瀬では、平成十二年にシカ管理方針を策定し、鹿の捕獲等を実施していたようでありますけれども、さらに鹿被害が深刻化した結果、平成二十一年三月にまた新たなシカ管理方針が策定されております。しかしながら、尾瀬ケ原におけるニホンジカ確認頭数は平成二十一年以降もふえている状況にあり、また、平成二十一年に策定された新たなシカ管理方針の実効性についても、果たしてそれがうまくいったのかという意味では疑問視されているところであります。

 そこで、かかる現状について環境省としてどのように考えているのか、また、問題点や原因の分析状況についてお聞かせください。特に、このシカ管理方針では、群馬、福島、新潟、栃木と四つの県をまたいでいることから、シカ対策協議会を設置して、連絡調整、連携協力するということをしておりますが、かかる協議会の実効性、そういう点についてもお聞かせください。

伊藤政府参考人 尾瀬国立公園におきましても深刻な鹿被害が生じているということを、我々も十分認識しております。

 環境省では、夜間にスポットライトを当てて鹿の頭数を確認する、ライトセンサスというふうに言っているんですが、そういった手法や、あるいは鹿にGPS受信機を装着して移動経路あるいは行動範囲を把握するような、そういった調査等も行っておりまして、尾瀬のニホンジカの生息動向の把握に努めておるところでございます。春から秋のこういった頭数確認や移動経路を踏まえて、次の冬から春を中心に捕獲をきちっとやっていこう、こういう体制でやっております。

 また、ニッコウキスゲなどの植物被害状況の把握ということも当然やっていまして、その結果から、逆に鹿による被害の状況あるいは捕獲の結果の検証ということも行われているわけでございます。

 尾瀬国立公園における鹿による被害は、本当に依然深刻であるというふうに考えておりますけれども、いろいろモニタリングの結果からは、鹿による食害の拡大傾向には一応歯どめがかかりつつあるのではないかな、そういった意味で、捕獲による一定の成果は得られているものとは認識しておりますが、さらに対策を強化していかなければならないというふうに考えております。

 また、尾瀬国立公園シカ対策協議会でございますが、これは、尾瀬国立公園全体での鹿対策について、関係する国、県、市町村などが情報を共有し、調査や捕獲などを連携して推進する場として開催しております。

 この協議会の議論を踏まえまして、本年度から、尾瀬沼に小型の囲いわなを新たに設置するとか、あるいは群馬県、福島県における鹿の個体数調整事業の支援を行う、こういったことなど、関係行政機関、団体との連携をより密接にしながら、捕獲を軸とする対策強化に取り組んでおるところでございます。

 引き続き、この協議会を活用し、対策強化を図ることで尾瀬の生態系被害の低減に効果をぜひ上げていきたい、こういうふうに考えております。

井野委員 時間が来ましたので終わりにさせていただきますけれども、環境保全というものは県をまたぐとなかなか難しいところがあるものです。環境省が主導的にやっていただきたい国立公園ですから、ぜひよろしくお願いいたします。

 終わります。ありがとうございました。

吉野委員長 次に、岩田和親君。

岩田委員 自民党の岩田和親でございます。

 限られた時間でございますが、二つのテーマについて質問をしていきたいと思います。

 まず一点目、PM二・五について質問をいたします。

 PM二・五の問題がマスコミでクローズアップをされて以来、引き続き現在も国民の不安は大きいものであると考えております。

 私の身近な人たちの間でも、喉の痛みがとれなくて病院に行ったら、PM二・五が原因ですよと言われたという話、また、黄砂に対しても、毎年春ごろに飛んできているわけですが、ことしは特にいつもより気になるというふうな話でありました。そういう話を聞いておりますと、私も何か喉がいがいがするような、そんな気もするわけでありますが、特に北部九州ということで、敏感に反応している様子というものを私も感じているところであります。

 ただ一方で、観測データの推移や健康に対する影響、原因の特定などの、科学的見地から見て不確かな点が多いにもかかわらず、国民の不安だけが先行しているという感があります。よって、今後は科学的な調査解明とその内容の国民への周知が重要だという観点から、質問を進めてまいります。

 まず、PM二・五について、ことし最初ごろから国民の注目が集まってきているところでありますが、では、実際にはどうであるのか。観測データは、以前と比較をしてことしが多くなってきているのかという点を客観的に踏まえておくべきであります。観測データの推移を国としてどのように認識しているのか、また、そのことについてどのように分析をしているのか、お尋ねします。

小林(正)政府参考人 PM二・五につきまして、測定をしっかりし、情報提供をしていこうとしているところでございます。

 御指摘がございましたように、日本国内では、西日本の一定の地域で、環境基準の日平均値のレベルを超える濃度のPM二・五が一時的に観測されました。ことし一月のデータを昨年、一昨年の同時期と比較いたしますと、これは専門家の見解も得ておるわけでございますが、高い傾向は認められるが、大きく上回るものではないということでございます。

 中国でも大変高い濃度が問題になっております。中国の濃度を日本と比べますと、これは大変大きな違いがございまして、大幅に日本国内は低いレベルでございます。そういう意味で、両国の状況には大きな違いがある、こういう認識を持っております。

 なお、幾つかの地点で長期的にPM二・五の濃度をはかってきております。これを見ますと、これまで取り組んでまいりました大気汚染防止法や、あるいはNOx・PM法という地域の特別法、こういうものに基づきます自動車排ガスの規制、あるいは工場、事業場のばい煙発生施設の規制、こういうことによりまして、PM二・五の国内の年間の平均的な濃度は漸次低減してきておる、こういう傾向にございます。

岩田委員 ニュースとしては当然注目されるようになったわけですが、客観的なデータとしては、それがふえているというわけではない、私はそのように受けとめたところであります。

 次に、PM二・五による健康への影響についても、大変微小な粒子であるということで、気管支を初めとしてその影響がいろいろと言われているわけですが、この科学的な見地というのは現在どのようになっているのでしょうか。また、その発生の原因などについては科学的にどのように言われているのか、お聞かせください。

小林(正)政府参考人 PM二・五の健康影響でございます。

 これにつきましては、呼吸器系あるいは循環器系への影響などが国内外の科学的知見によりまして示されているということがございます。こうしたものを踏まえまして、専門家の検討を経まして、平成二十一年の九月に環境基準というものを設定したところでございます。

 一方で、そこの検討の際にも指摘がございましたが、我が国におけるPM二・五の健康影響に関する科学的知見が、国外の知見と比較しても余り多くないということが指摘をされております。こうしたこともございますので、長期継続的に疫学調査などを進める必要がある、こういうことで、現在も進めておりますし、今後も健康影響に関する知見の集積に努めることにしているところでございます。

 また、今回我が国で観測されました一時的なPM二・五の濃度上昇の原因につきまして、専門家の会議を持って検討を加えたわけでございますが、大陸からの越境大気汚染の影響もあるであろう、一方で、国内の都市汚染の影響も複合しているというように考えるべきではないか、こういうことでございます。

 さらには、PM二・五につきましては、環境基準設定からまだ余り年数がたっておりませんので、今、測定網の増強を地方自治体にお願いして進めているところでございます。

 この中で、PM二・五というのは、実は、ほこりが巻き上げてくるようなもの、あるいは海塩粒子というようなもの、そういうものの影響もございます。それから、もちろん物が燃焼したすすの中からも出てまいります。さらには、空中のガス状のものが二次的に粒子状になる現象もあるということで、大変複雑なメカニズムを持っているということが専門家から指摘をされておりまして、一体どこからどの程度出ているのかということについてはさらに解明をしていかなければいけない、そういうような状況にあるところでございます。

岩田委員 健康への影響に関しても、やはりまだまだこれから十分に知見を深めていくべきである、そしてまた、原因についても非常に複合的であるというふうなことをお示しいただいたわけであります。

 もちろん私は、これだけ国民の皆さんが心配されているわけですから、国は第一に、国民の不安が増大していることについて的確に対応していただかなければならない、そのように考えます。しかし一方で、申し上げていますように、根拠があやふやなまま、皆さんの不安感だけが増大していくということは決して好ましくない、そのようにも考えているわけであります。

 国としては、PM二・五が健康に与える影響についての研究をさらに進めていただきたいわけですし、注意喚起についても、とにかく厳格にやるということになれば、必要以上に地域住民の皆さんの不安をあおることになってしまうのではないか、そういう心配もしております。やはり、科学的見地に立った注意喚起のあり方なども検討を継続していただくということが重要であると考えております。そして、それらの情報を的確に周知、公表していただいて、いわば国民が冷静に注意をするというような状況になるべきであると考えております。

 こういった視点から、今後の対策の方向性についてお伺いします。

小林(正)政府参考人 今、先生からも御指摘がございましたように、PM二・五の濃度が上昇した場合におきましての注意喚起の暫定的な指針を設けまして、これを自治体に運用していただいております。これもしっかりフォローをしていくということが重要でございます。

 この注意喚起の暫定指針を決めた際にも、専門家会合で幾つか今後の課題が指摘をされているところでございます。

 さっきも申しました、PM二・五の常時監視体制の強化というふうなこともございます。

 それから、発生のメカニズムの解明。この中には、シミュレーションによる濃度予測、これも今後いろいろ活用の道がございますので、こういうことも含めて検討せよ、こういうような指摘がございますし、検討課題としているところでございます。

 それから、今先生いろいろ御心配の御指摘がございました健康影響に関する知見については、引き続き、国外の情報も含めまして、また国内の調査も含めまして、しっかりやっていく必要があると思っております。

 また、この暫定指針の運用については、地方公共団体と十分連携をとり、フォローアップをし、妥当性の評価、検討ということも必要だと考えているところでございます。

 あわせまして、先生御指摘ございましたように、情報の提供が非常に重要でございます。

 従来から、大気汚染の常時監視のデータについて、そらまめ君というようなホームページ上の仕組みを使いまして、逐次リアルタイムで情報が見られる、こういうことをしておりましたが、これの増強を図り、また、今回の課題を契機といたしまして、環境省のホームページ上に専用の情報サイトを開設したところでございます。この中では、PM二・五とはどういうものであり、専門家でどんな検討が加えられたかというふうなこともございますし、それから、一般向けのわかりやすいQアンドAというふうなもの、さらには、各都道府県のデータなども逐次見られるようにということをやっておりまして、引き続き、国民へのわかりやすい情報提供に力を入れてまいりたいと思います。

 そういう意味で、科学的な面と情報提供、両々相まって対策が進むようにということを心がけてまいりたいと考えているところでございます。

岩田委員 ニュースが先行いたしますと、何だかわからないけれども怖いというふうなイメージがどうしても増強してくるわけであります。今御答弁いただいたような形で、ぜひともしっかりとした科学的見地に立って進めていただきたいとお願いをいたします。

 さて、五月五日、六日に北九州で開催されました日中韓三カ国環境大臣会合、この中でもPM二・五を含みます大気汚染の問題が大きなテーマになったと聞いております。その議論の内容と成果、これがどうであったのか。

 そしてまた、日本としては、やはり日本にもさまざまな影響があるという点ももちろんでありますが、日本はいわゆる公害対策の先進国でもありますので、やはり中国に対していろいろ協力できる点があろうと思います。中国の大気汚染に対して今後どのように取り組んでいくお考えか、お聞かせください。

秋野大臣政務官 お話しいただきましたように、五月の五日から六日にかけまして、北九州市内におきまして日中韓環境大臣会合を開催させていただきました。

 これまでも日中両国は戦略的互恵関係に基づきましてさまざまな協力を推し進めてまいりましたけれども、環境分野におきましても、御指摘をいただきましたように、公害を克服した経験と環境技術を生かして、日中友好環境保全センターを通じた協力を初めとして、これまでさまざまな協力を行ってきたところであります。

 先生が指摘をされましたPM二・五を初めとする大気汚染につきましては、本会合における重要な議題となりまして、新たに大気汚染に関する三カ国政策対話を設置させていただきまして、これから日中そして日韓、中韓でしっかりと対話をしてまいりたいと思っています。そして、アジア地域の大気汚染の問題の重要性に鑑みまして、これまでの地域的な取り組みをさらに活用して協力を進めていくということに合意いたしました。

 今後、この新たにできました三カ国政策対話や既存の地域的な取り組みを活用して、中国などの大気汚染に関する具体的な協力内容について、さらに検討を深めてまいりたいと思います。

岩田委員 わかりました。それでは、ぜひしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 続きまして、二つ目のテーマ、福島第一原発四号機の作業についてお尋ねをいたします。

 先日、五月二十日に環境委員会の委員の皆さんと一緒に福島第一原発へ視察へ行ってまいりました。一言で申し上げますと、除染に関する地元の皆さんの話を伺い、また原発内で懸命に作業を進めておられる関係者の姿をじかに見まして、避難者の皆さんの一刻も早い帰還、汚染水対策、廃炉など、福島第一原発に関係する問題を着実に解決していかなければならないという思いを新たにしたところであります。

 そこで、今回は、廃炉に向けた最初の大きな関門と言える四号機での作業について、ぜひ頑張っていただきたい、そういう思いを込めまして、質問をしてまいります。

 まず、四号機の状況について、幾つか確認をさせていただきます。

 四号機の震災時の炉の状況、核燃料棒の数などの状況はどうであったのか、そして震災直後はどういう状況になったのか、御説明いただきたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 平成二十三年の三月十一日に福島第一原子力発電所の事故が発生したわけでございますけれども、その際は、四号機は定期検査で停止中でございました。そして、シュラウドという装置の取りかえ工事のために、原子炉内にあります全ての燃料を使用済み燃料プールに取り出した状態でございました。

 そのため、使用済み燃料プールには、全ての貯蔵容量の九七%に相当します燃料千五百三十五体が貯蔵されておった状態でございます。また、使用済み燃料プールの水位は満水の状態でございました。

 そして、震災の直後でございますけれども、まず、地震によりまして外部電源が喪失いたしました。これによりまして使用済み燃料プールの冷却ポンプが停止いたしまして、プールの冷却が停止した、こういった状況にあったものでございます。

 以上でございます。

岩田委員 今、全電源の喪失が起こったというふうなことでありましたけれども、こういう状況の中で、核燃料棒の冷却は十分に行われたのでありましょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 事故の状況につきましては、これまで国会、政府などにおきまして事故調査報告書が取りまとめられておりまして、基本的な事象の進展につきましては整理がなされているところでございます。

 それで、この中におきまして、四号機の使用済み燃料プールの冷却の問題でございますが、津波の襲来によりまして全交流電源が喪失いたしました。そして、海水のポンプ、これは冷却をするためのポンプでございますけれども、これも機能を喪失したことによりまして冷却機能が失われました。その後、原子炉のウエル、これは原子炉の中に水をためておりますけれども、それと使用済み燃料プールの間のゲートの水密性が失われまして、この使用済み燃料プールに原子炉ウエルの方から水が流れ込んできたことによりまして、燃料プールには一定の水位が保たれていたものではないかというふうに整理されておるところでございます。

岩田委員 いわば偶然と言っていいんでしょうか、表現は難しいところでありますが、そういうふうな状況の中で、何とかそこの使用済み核燃料の冷却ができていたというふうなことであります。

 しかし、この四号機に関しては、水素爆発が起こっているわけですね。冷却はできていたということでありながら、こういう爆発が起こった。これはなぜだったんでしょうか。

山本政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申しましたように、事故の状況につきましては国会等の調査報告書で整理されておるところでございます。

 この中におきまして、四号機が水素爆発をいたしました原因でございます。

 三号機において発生いたしました水素、これは、燃料が溶融をいたしましたので、水と燃料棒が反応することによって大量の水素が発生したわけでございますけれども、三号機と四号機の間で共用をされておりました排気筒、これは排気筒の根元で三号機と四号機のパイプがつながっているということでございまして、そこで四号機の側にこの水素が逆流をしたということが一つの原因であるというふうに考えられておるところでございます。

 それで、さらに詳しい原因につきましては、私ども原子力規制委員会におきましても、検討会を設置いたしまして、継続的に、より詳細な分析を進めていきたいというふうに考えておるところでございます。

岩田委員 ちょっと時間の関係もありますので、ぜひ簡潔にお答えいただきたいと思います。

 そういう中で、核燃料棒の取り出しのための工事が現在進められております。概要はちょっとおいておきまして、課題について簡潔にお答えいただきたいと思います。

後藤政府参考人 お答え申し上げます。

 課題でございますけれども、今後、四号機の使用済み燃料を、今度は四号機の近くにございます共用プールに移していくということになるわけでございます。

 そのために、共用プールの中に全ての燃料棒を移換するためのスペースを確保しなければならないわけでありますが、そのスペースが現在のところございません。

 このため、現在共用プールの中に入っております、事故前から冷却されていた燃料を別途敷地内のドライキャスクという方式で移していくということをやらなければならないことになっておりまして、これらのための準備のスペース、それから機材の発注をしているところでございます。

岩田委員 廃炉に向けた作業というのは遠い道のりだというふうに思いますが、これを着実に進めていく、またそのことを国内外に示して信頼を得ていくということが重要であると考えております。その最初の関門が、この四号機の燃料棒取り出しであると位置づけております。

 一義的には事業者である東京電力が取り組んでいるところでありますが、やはり国としても主体的に廃炉に向けて取り組んでいくべきであります。

 廃炉措置等に向けた中長期ロードマップ改訂のための検討のたたき台というものが、ちょうど昨日、六月十日に公表されたところでありますが、今後の国の取り組みについて伺いたいと思います。

後藤政府参考人 今のお話がありました今後の取り組みでございますが、まさに、事業者任せにするのではなく、国としても万全の体制をとってまいりたいというふうに思っております。

 そういう意味では、まず、放射性物質の分析や遠隔操作ロボット等に対する開発など、研究拠点の整備ということをしっかりやっていきたいというふうに思ってございます。

 そういう意味では、今回、ロードマップにつきましてもさらに見直しを行うということで、一号機から四号機まで号機ごとに異なる状況を精査いたしまして、燃料デブリの取り出しのスケジュールも見直したという状況になってございます。

 これ自身は、今後、福島県、地元自治体、それから有識者等からの意見を踏まえて改訂を進めてまいりたいというふうに思っている次第でございます。

岩田委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

吉野委員長 次に、阪口直人君。

阪口委員 日本維新の会の阪口直人でございます。

 きょうは、除染を切り口に、福島第一原発の周辺を将来的にどのようにしていくのか、お尋ねをしたいと思います。

 この環境委員会でも、先日、福島第一原発の内部を含めて、周辺の除染作業についても視察をさせていただきました。とにかく膨大な、大変な事業である。大変な思いをして作業員の方々も取り組んでいるし、住民の方々も、一刻も早く戻りたいという切実な思いを彼らに託している。それが現実だと思います。

 国は、最も線量の高い原発の周辺の地域を直轄で除染特別地域として除染を行い、また、市町村は、各自治体の中で必要と思われる場所を独自に除染をする。そして一方で、比較的線量が低い地域においては、自治体やNPOなどが、線量低減化活動支援事業ということで、有志で除染活動を行って、これは基本的には福島県の事業でありますけれども、それに対して国が助成を行う。こういったすみ分けで除染が行われていると聞いております。

 まず、全体の除染、私は、環境省が取りまとめる、管轄をするというふうな意識でいたんですが、最後に指摘をさせていただいた線量低減化活動支援事業、有志の方々が行う活動を支えるものについては、もともとは内閣府が管轄をしていて、今は経産省が行っている、このように聞いております。

 このようなすみ分けがなされている理由と、では、実際の司令塔になるのはどこなのかということについて、まずお伺いをしたいと思います。

小林(正)政府参考人 除染につきましての政府全体の体制という御質問かと存じます。

 まず初めに、これは、除染に対応する法律もございませんでしたので、そういう意味で、内閣府が中心になっていろいろな生活支援を行ったというように承知をしております。

 その後、法律ができまして、除染については環境省が責任を持って行うということで現在進めているところでございますが、これも、いろいろな復興のインフラの整備でありますとか、さまざまな復興のための事業とも連携をしてまいりますので、最近では、復興庁が全体の司令塔となる形で、環境省の除染と、インフラなりいろいろな生活の問題、これを各省の連携を図る、そういう体制ができてきて、その中で進めている、そういうように認識をしているところでございます。

阪口委員 市民の方々の自発的な意思、これを最大限生かして、例えば、子供の通学路の近くなどについては彼らが主体的に行っていく、これは非常にいい考え方だと思います。

 ただ、この実態について私もいろいろとヒアリングをしたんですが、実際には、そういった子供たちが多い市街地であればあるほど、実際に仮置き場として使える場所がない。これは、仮置き場を設定することが大前提でありますから、実際にはなかなか使いにくい制度になっていて、当初想定した、期待したほどにはこの事業が十分な成果を果たしていないのではないかという、そういった声も聞きました。

 関係者の方々は一生懸命やっていらっしゃると思いますが、ここまでのところのこの事業についての評価、十分に検証が行われているのかということも含めて、どのように評価しているのかということについてお伺いをしたいと思います。

日下部政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のありましたいわゆる福島県の県民健康管理基金というものを、百八十億円の予算をつけまして、補正予算で計上しております。

 確かに、実績を見てみますと、平成二十三年度、予算額三十六億円に対して執行額十六億円、全体で支援件数三千件となっております。翌年度二十四年度、予算額二十億円を計上して五億円の実績、それで支援件数一千五百件となっております。

 一方で福島県の方は、この事業、本年度についても継続をしたいという意向がございまして、十二億円の事業予算を用意してくれているということでございます。

 国としては、県の方で継続の意思があるということでございますので、そうした意思を尊重しながら対応していきたいというふうに考えてございます。

阪口委員 除染作業全体が、本当にさまざまな矛盾、ジレンマとの戦いだと思います。

 この事業についても、私、例えば各自治体の議会の議事録などもいろいろ読んで、ジレンマの中身についてもいろいろと調べてみたんですが、例えば都市によっては、表土の剥ぎ取りをしないように呼びかけているところもあります。路面洗浄や草刈りだけを行う。しかし、土砂を取らないと効果は薄いんですね。

 例えば石川町などは、小学校や中学校の周辺では一センチの土砂の剥ぎ取りを行った。しかし、全体の効果としては一〇%から多くて五〇%程度の効果でありまして、五センチ剥ぎ取った場合は大体九〇%程度の効果がある。すなわち、効果を上げようと思うとなるべくたくさん表土を剥ぎ取らなければいけないけれども、たくさん剥ぎ取ると、それを実際に仮置き場に置いておくことができないというジレンマがあるわけですね。

 こういったさまざまなジレンマがあるので、先ほどお答えいただいたように、期待されるほどはこの事業が活用されていないということだと思います。

 住民の方々の自発的な意思を尊重したこの事業について、もっと実効性を高めていくにはどうすればいいのか。現時点でお考えがあれば、お聞きをしたいと思います。

小林(正)政府参考人 今先生御指摘ございましたように、除染というのも、どういうやり方でやるかというのは、結構模索して進めてきた経緯がございます。

 そういう中におきまして、やはり、線量がそれなりに高いところにつきましては、しっかり表土を剥ぎ取るというような作業も行っております。

 一方で、必ずしも高くないところについてどうしても剥ぎ取りたいというような御要望もあるのではございますが、その効果と、それから仮置き場の問題もございますし、経費の問題もございます。そういうこともあわせまして、今、それなりにルール化をして進めてきているところでございます。

 先生も御承知のように、今、二十四年度、二十五年度で、生活回りについては、国あるいは市町村がつくっていただいている計画をとにかく実施をしてめどを一定のところまでつけたい、こういうことで進めております。この進捗もいろいろございますが、この夏以降、しっかりそこの評価をして、次の段階にどう進んでいくか、そういう議論をする段階かと思っております。

 今先生御指摘ありましたところは、特に市町村がどうお考えになるかというところも非常に大きいと思いますので、よく意見を聞いて、そういう見直しの中で議論してまいりたいと考えているところでございます。

阪口委員 今お答えいただいたように、さまざまなジレンマ、矛盾した状況の中で、頑張って除染を行っている状況。これは本当に福島の方々にとっては切実な問題だけに、できる限りその結果が伴うように、政治としても後押しをしていかなくてはいけないと思います。

 将来戻れる可能性がある場所については、苦労しながらも除染を行っていく。しかし、福島第一原発の周辺の地域、極めて近い、線量が高い地域においては、近い将来戻れるかもしれないと住民の方々に期待を持たせた状況でいるのか、いたままでいいのか、それが政治の意思として本当に誠実な態度なのかということについても、私は、我々自身に問いかけを行わなくてはいけないと思っています。

 我が党の中田宏衆議院議員も、予算委員会においてこの問題について問題提起をいたしました。ふるさとに一刻も早く帰りたい、これは本当に切実な思いだと思います。しかし、線量が高い地域の有効活用をするのが本当にこの除染を行うことなのかどうかということについて、もう一度、私自身も問いかけてまいりたいと思います。

 まず、この除染作業によってどれほどの汚染土壌また廃棄物が生まれるかということなんですけれども、さまざまな情報によると、一千五百万立方メートル、最低でもそれぐらい、場合によっては倍ぐらいが想定されていると聞いています。これは、十トンダンプカーであれば二百万台に相当するということです。これを、最終処分場、これは県外に運び出すということになっておりますから、そうすると、二十七年かかるということでございます。

 一方で、廃炉に向けた中長期のロードマップ、これは東京電力と政府がともに策定しているものですが、廃炉に向けては三十年から四十年かかるということですね。

 したがって、本当にある程度の除染が終わったとしても、いつまたメルトダウンするかわからない、あるいは、地震が来たときに再び以前のような状況になってしまうかもしれない福島第一原発を近くにして、本当の意味で安心して戻ることができるのか、こういったことについても考えなくてはいけないと私は思います。

 したがって、私の提案は、これは中田議員が提案されたことと同じなんですが、膨大な除染をしても現実的には戻れる可能性が薄いところについては、政治の意思として立入禁止地域にする。そして、現在、中間貯蔵施設をどこに置くのか定まっておりません。また、当然、最終処分場の場所も決まっていない。しかし、一番近い、福島第一原発の周辺にその膨大な放射能に汚染された土を運び込むことによって、そういった先行きが全く見えない除染作業と最終処分の問題をいわば解決していく、こういった政治的意思を示すことも必要なのではないかと思っています。

 少なくとも、そういった可能性についても検討するのが、本当に切実な思いで帰宅できる日を待ち望んでいらっしゃる福島の方々にとって誠実な態度なのではないか。彼らがしっかりとした人生設計ができるように、中途半端な期待を持たせるのではなくて、まずはその場所を徹底的に有効活用する、その上で、三十年、四十年かけてでもきっちりと廃炉を実現をして、周辺の除染も行った上で、帰れる状況になれば帰っていただく、そういうビジョンを政治が示すことも必要なのではないかと思っています。

 安倍総理はこの問題に対して、検討しながら判断したい、このような答弁をされておりますが、実際、では検討したのかどうか、まずはお伺いをしたいと思います。

秋野大臣政務官 先生から先ほど御指摘をいただきましたように、地元の方々にとっては、帰りたいというお気持ちを持っていらっしゃる方も相当数まだいらっしゃるものですから、そういった意味では、このさまざまな意見について私どもがしっかり見きわめていく必要があるとは思っております。

 ですから、この問題は多くの分野にかかわる問題でありますので、政府全体として受けとめるべき課題として、ただ私どもは、そうは言っても、全力で除染を進めていきながら、中間貯蔵地については責任を有しておりますので、中間貯蔵地の施設の予定地となった土地については、適切な補償により地権者の方々から買わせていただく方向とさせていただいております。

 どうしてもこの中間貯蔵施設が福島の除染の推進に必要不可欠な施設でございますので、その設置に向けて地元の御理解をいただけるよう、まずは努力をしてまいりたいと思っています。

阪口委員 これは、本当に地元の意見をしっかり聞いた上で最終的に政治が決断することだと思いますが、私の提案としては、特に線量が高い地域、除染についても相当な労力が必要で、実際になかなか安心して帰ることは少なくとも数十年は不可能であろうという地域に関しては、今申し上げたように、最終処分地域をそこにつくってしまう。そして同時に、原発がどのような状況をもたらすのかということについての研究の場や、日本国民あるいは世界の方々が学べるようなそういった場所をつくっていく。

 そして、最終的に時間はかかるかもしれないけれども、膨大な放射能に汚染された土壌などがそこに運び込まれて、それによって周辺の除染が進み、また、最終的にそこが、人々が生活できる、少なくともそこに人がマスクなどをつけずに戻れるようになった時点で、例えば太陽光のパネルを敷き詰めた、再生可能エネルギーの拠点にするなどの、要するに、この地域を本当に知恵とアイデアを使ってシンボリックな意味で最も有効活用する、そういった地域にしていく政治的決断も必要なのではないかと思うんです。

 ここは、政治だけが一方的に決めるというのは私はさまざまな問題をもたらすと思いますが、安倍総理も、住民の気持ちに寄り添っていく必要があるとおっしゃっているわけですから、例えば住民投票を行って、今私が申し上げたようなことも含めたさまざまな選択肢を提示した上でこの地域の方々の意思を反映させて、しかし、政治としては、言いにくいかもしれないけれども、最も有効にこの場所を使えるような提案をしっかりしていく、そういった決断、政治的意思の示し方も私は必要だと思っております。

 この点について大臣のお考え、最後にお伺いをしたいと思います。

石原国務大臣 阪口委員の議論を聞かせていただきまして、一つの見識であるな。

 環境省としては、秋野政務官からお話をさせていただきましたとおり、この除染と中間貯蔵施設というのは、コインの裏表の関係にございますので、ともかく地元の方々の御理解を得て、もう間もなくでございますが、中間貯蔵施設のボーリングももう既に始まっておりますので、どこにつくるということが専門家の中でここが適材適地であるということが明らかになった後には、地権者の方々からその土地を買わせていただいて、そこに中間貯蔵施設をつくる。

 そんな中で、これも秋野政務官の答弁の中にあったように、帰りたい方、もう帰りたくない、心配だという方がいらっしゃいますので、そういう皆様方の意見をしっかりと聞かせていただいて、対処をさせていただきたいと考えております。

阪口委員 ありがとうございます。

 どちらにしても、自分たちには何の責任もないのに人生設計が本当にままならないような状態で、でも早く帰りたいと思っていらっしゃる方々、その方々の思いをしっかり受けとめた上で、やはり政治的に決断すべきときはしっかり決断をする、そういったリーダーシップを環境大臣には期待をしておりますので、この件については、私も、現地でのヒアリングを今後も続けていく中で、またさまざまな提案をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

吉野委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 環境の基本施策に関する件について一般質疑をさせていただきたいと思います。

 まずもちまして、エネルギー需給の問題と環境負荷のバランスについて、最初にお伺いしたいと思います。

 先ほど、阪口委員からも、原発事故のお話、除染のお話がございました。三・一一以降、我が国のエネルギー環境が大きく変わったということは、こちらの環境委員会でも、また、私が所属しております経産委員会でも、常々議論されているところでございます。

 現在、政府の方で、エネルギーをどの発電によって生み出していくのか、どのエネルギーの原料から生み出していくのかということのベストミックスのあり方も含めた上で、エネルギーの基本計画の策定を年内を目途に進められているということでございますけれども、エネルギー需給の問題と、そしてまた、京都議定書もございますけれども、CO2の排出等を含めた環境の負荷の問題のバランスにつきまして環境省としてどのようにお考えでしょうか。お答えいただければと思います。

    〔委員長退席、土屋(品)委員長代理着席〕

石原国務大臣 ただいま委員が御指摘になりました環境負荷の側でございます。地球の温暖化ということが一つの大きな問題だと思うんですけれども、残念ながら、ナショナルワイドで見ますと、この話題は今は埋没しがちなのかな、こんなことを強く思っております。

 しかし、今委員が御指摘になられた質問の中であるように、需給と環境負荷のバランスというものをどうとっていくかということが、これから、日本の経済発展と地球を守っていくことと非常に密接な関係がある。

 そこで、これは言い尽くされた言葉でありますけれども、環境の観点から、私どもは三つのEという言葉をお話しさせていただいております。エコノミックエフィシェンシー、エナジーセキュリティー、エンバイロンメント、すなわち、経済的でなきゃだめだよね、しかし、安定的にエネルギーが来てこそ初めて生活が成り立つよね、しかし、その重要なものは環境だよね。この三つのEを一体に考えるという形でこの問題を考えていかなければならない。

 まさに、委員の御指摘のとおりだと思っております。

丸山委員 やはり経済産業委員会におきましても、このベストミックスのお話、エネルギー基本計画はどうなっていくんだという議論をしておりまして、先ほど大臣がいみじくもおっしゃいましたスリーEの中の最初の二つのEに関しましては、やはり議論が主流になっております。

 その中で、エンバイロンメント、大臣がおっしゃった最後のEの部分がどうしても、その安定供給や、そもそも、どうやって生み出していくのかという議論の中でなかなか見落としがちでございますので、そういった中で、環境省さんの位置といいますか、環境省さんがいらっしゃる存在意義というものがやはり際立ってくるものと思います。

 年末の策定に向けて、ここで細かい議論としましてどのようにお考えかということをお答えいただくことはまだまだ難しいとは思いますけれども、しっかりその観点を基本計画に盛り込んでいただけますよう、強くお願い申し上げます。

 そうしたベストミックスの関係、そしてCO2排出の関係で少し先ほど申し上げましたが、京都議定書の関連に関しまして、この後、御質問させていただきたいと思います。

 先日、ダーバン・プラットホームの特別作業部会の第二回会合でございまして、これが開催されたというふうに報道等で認識してございますが、これに関しましてどのような成果が得られたのでしょうか。まず、そのあたりにつきましてお答えいただければと思います。

関政府参考人 第二回のダーバン・プラットホーム、ADPと呼んでおりますけれども、これは、先週から今週いっぱいということで、ドイツのボンにおきまして現在開催中でございます。これは、二〇一五年までに二〇二〇年以降適用される新たな温暖化対策の国際ルールを決定するという合意のもとに準備作業として議論が進められているものでございまして、特に結論というのが出ているわけではございませんけれども、それぞれの国が、どういう方向で、どんな点に留意しながら新たな枠組みをつくるべきかということについて意見交換を行っている、こういう状況でございます。

丸山委員 そうした現状において、現在、日本政府としまして京都議定書の位置づけをどのように考えられているのかということを詳しくお伺いしたいと思います。

 今回の会合を含め、次回会合を今後予定されていくと思います。また、十一月にはCOP19の開催が予定されているということを聞いておりますが、政府としましては、この議定書、もう既に第一約束期間は終了ということでございますけれども、今後の第二約束期間や、もっと行けばポスト京都議定書に関しまして、やはり、エネルギーの環境が大きく変わる中で環境省としましてどのようにお考えかというところにつきまして、より詳しくお伺いしたいと思います。

田中副大臣 委員も御存じのとおり、我々日本の国が京都議定書の第二約束期間というものに対して一定の指針を示して取り組んでいるということは、御存じのとおりでございます。

 日本は、二〇二〇年までの国際枠組みとして、京都議定書の第二約束期間ではなく、主要排出国全てが参加しているカンクン合意の着実な実施に向けて取り組んでいくということは一番ポイントでございます。

 二五%の削減目標については、十一月のCOP19までにゼロベースで見直すこととしておりまして、現在、新たな削減目標を含む地球温暖化対策計画の策定に向けて、検討に着手をしております。

 また、二〇二〇年以降の国際枠組みのあり方については、二〇一五年までに合意を得るべく、国際的な議論が進められております。

 二〇二〇年以降の枠組みには、世界全体の排出削減につなげるために、アメリカ、中国、インド等の主要排出国の参加が不可欠だと存じておりまして、十一月のCOP19に向け、公平かつ実効性のある枠組みとするための提案を行っていく考えであります。

 以上でございます。

    〔土屋(品)委員長代理退席、委員長着席〕

丸山委員 外交交渉ということで、詳しくをお伺いすることは難しいとは存じ上げておりますけれども、やはりエネルギーの環境が日本で大きく変わっているということ、そして何より、この京都議定書の話も含めて、先ほどいみじくもおっしゃった主要排出国をどうやって巻き込んでいくかというときに、いや、見たら日本は三・一一以後変わってしまったじゃないかというときに、そこの交渉の部分が極めて一番の鍵になってくると思います。

 そうした中で、環境省さんとして今は苦しい立場にはあるとは思うんですけれども、責任ある政府の立場としてしっかり推進していただきますようお願い申し上げまして、このお話は一旦終わらさせていただきたいと思います。

 そして、先ほど阪口委員からお話しのありました除染作業に関しまして、詳しくお伺いしていきたいと思います。

 まず、除染作業のスケジュールにつきまして、東京電力の福島第一原発事故を受けて除染作業が現在進められておりますけれども、ホームページ等でスケジュールにつきましても手順につきましてもかなり詳しく公表されていることに関しましては、見ていて、すばらしい取り組みだというふうに思っておりますが、一方で、スケジュールにおくれが出ているんじゃないかという懸念の声も多く上がっております。このあたりに関しまして、政府の御認識としていかがでしょうか。

小林(正)政府参考人 除染作業を進めながら、これをしっかり公表していくということも心がけているところでございまして、引き続き努力してまいりたいと思っております。

 御指摘ございましたように、現在の計画では、例えば、国直轄で行います十一の市町村の除染の計画につきまして、地元と御相談をした上で計画をつくりまして実施をしているわけでございますが、平成二十四、二十五年度の二カ年で除染を終わろう、こういうことで取り組んでいるところでございます。

 その進捗状況でございますが、おっしゃいましたように、市町村によって大分違いがございまして、順調にもう当初計画どおり進んでいるところがある一方で、除染に直接実はかかわらない、例えば、区域の見直しですとか賠償問題がまず片づいてからというような地元の御要望によって計画づくり自体もまだできていないところが、例えば二カ所あるというような状況がございます。

 また、計画に沿って除染を始めた後も、同意をとってやっていくというようなことが一つ大きな課題でございますし、もう一つ、仮置き場を確保して、そこに除染したものをしっかり収容して安全に保管していく、こういう作業がございます。この仮置き場の確保にどこもいろいろ御尽力をいただいているのでございますが、順調にいっているところと必ずしもいっていないところ、そういうところでおくれが出ている、こういうことがございます。

 そんなことがございますので、計画期間の半年前でございますことしの夏ごろをめどにいたしまして実施状況を点検して、必要に応じてスケジュールを見直していこう、こういうことを考えているところでございます。

丸山委員 無理に進める必要はないと思いますけれども、きちんとやはり御説明していくことが必要だと思います。

 そうした中で、除染の手順について少し詳しくお伺いしていきたいんです。

 まず、どのような手順で除染を行っていて、特に、今お話しのありました説明ということなんですけれども、どのタイミングで、また、どういった方法で地権者の方や住民の方に同意を得ているのか、そういう活動をされているのか、そのあたりについてさらに詳しくお伺いしたいと思います。

小林(正)政府参考人 除染を進めていきます手順でございますが、今し方申しました計画に沿ってやっていくということでございます。

 計画ができました上は、プロセスといたしましては、まず、土地、建物、こういったものの所有者などを調査いたしまして把握をいたします。その上で、敷地内に立ち入って状況の調査をするということについての了解をいただきます。そして、事前に放射線量の測定をいたしまして、線量とまた建物など、そこの場所の状況に応じて適切な除染方法を見通しをつけまして、その実施方法について住民の方から同意を得る、こういう手続でございます。

 これにつきましては、特に住宅などに入る場合には、直接お話をして了解をもらうということを原則にしておりますが、例えば農地などですと、複数の地権者がおられたりというような場合には、郵送ということもあわせて使うような方法も併用しているところでございます。

 こうして同意を得た上で、その内容に沿って除染を実施し、終わった後に放射線量の測定を行って、結果を住民の方に報告する、こんなプロセスでやっているところでございます。

丸山委員 今、地権者の方や被災地の方々に直接お話を聞く場合と郵送で確認する場合があるというお話がございました。

 我が党も、また、私も被災地に足を運ぶ中で、敷地への立ち入り許可や除染の同意の取得方法について地域の方からいろいろ聞く機会が多うございます。被災地においての除染の同意の手続が粗いんじゃないか、一言で言うとそういうお声なんです。

 というのは、具体的には除染特別地域、かなり原発に近い方のところでございますけれども、先ほど、郵送という話がございました。業者から郵送だけ送られてきて、そこで具体的な説明がないのにもかかわらず、ぽんと実印を押して送り返してくれというだけだと、どうしても住民の人はためらってしまうんじゃないかと。もうちょっと詳しい説明をしてもらわないと、そもそも除染とはどういうもので、メリットもあればそれはデメリットもあるだろうと。そのあたりの説明について、どうしても地域の方ではできない、限界がある中で、恐らく委託されている業者さん等は、全部を当たっていくのは限界があるということで郵送等もされているんだと思うんですけれども、そういったものではなくて、時間がある程度かかってもしようがないから、きちんと説明してもらわないと実印なんか押せないよという形で厳しい声をいただくところがございました。そうしたお声一つ一つ聞いていくことが、やはり全ての方々を助けていくことにつながっていくと思います。

 ただ、マンパワーも限界がございます。私も役所におりましたので、その辺のバランスが難しいのは重々承知しておりますけれども、このお声に対しまして政府としての現在の認識と、そして、できれば、何か対応策等がございましたらお答えいただければと思うんですけれども。

秋野大臣政務官 御指摘ありがとうございます。

 除染につきましては、住民の方々の理解を得て行うものでありますので、除染の実施方法については御説明をさせていただきまして、同意をいただくための同意取得というものは丁寧に行う必要があると私どもも認識してまいりたいと思います。

 今、局長の方からも御答弁をさせていただきましたが、環境省としては、住民説明会を開催した上で、できる限り所有者の方に立ち会っていただきまして同意をいただくようにしております。

 ただ、農地など、関係者が多いため、郵送と電話で同意取得を行う場合もありますが、これも、必要に応じまして、御要望等ございましたら、きっちりと現地立ち会い等の個別対応も実施するようにしておりますので、こういった形で住民の方々に御理解をいただけるよう、引き続き丁寧に対応してまいりたいと思います。

丸山委員 そのときに言われた言葉でずっと自分の心に刺さっていることがございまして、国会議員は七百人もおるけれども、七百人もおって何やってんのや、何も現場の声を聞いてくれへんやないかと言われたんですよ。もちろん、そんなわけがないのはわかっているんです。被災地の選出の先生方だけじゃなくて、国会議員だけじゃなくて、政府の方々も現場に足を運んで声を聞いているということは十分わかっているんですけれども、それでもなお、まだまだ声を聞くのがなかなか行き渡っていない、またはスピード感がうまくいかないというフラストレーションのお声がずっとたまっているのをお聞きして、自分自身も去年の十二月に当選させていただいたまだまだ新人ではございますが、国会議員の一人として、返す言葉がなかったという現状でございました。

 そうした中で、この問題は与党も野党もないと思います。我々もできる限り協力させていただきますので、しっかり皆様のお声を聞いていただいて、よくやっていると言っていただけるように変わるように、お願い申し上げたいと思います。

 除染の話は引き続きまた議論を進めていくところではございますが、また少しお話をかえて、別の視点の点をお伺いしたいと思います。それは、女性用のクールビズの点でございます。

 きょういらっしゃる先生方もノーネクタイの方々もいらっしゃいますし、昨今、クールビズはかなり普及してきているところかなというふうに感じるところでございます。これはひとえに、環境省さんのお力で進められていること、すばらしいなというふうに感じております。

 一方で、先日、女性用のクールビズというのを発表されたということでございますが、まずこの点につきまして、女性用のクールビズを出したということは、クールビズの男女別の普及率みたいな形で何か差があるという根拠やデータに基づかれて出されたものなのか。その辺の出された根拠というか現状認識等を、政府の方であればお伺いしたいと思います。

関政府参考人 クールビズは二〇〇五年に導入させていただきまして、二〇一一年、東日本大震災以降、スーパークールビズということで打ち出させていただいております。

 これまでのものは、ネクタイを外す、あるいはスーパークールビズですとかりゆしやポロシャツということで、主に男性を想定した涼しげな衣服というものでございまして、一方、ことしから女性用のスーパークールビズということも提唱させていただいております。

 ただ、女性の方がクールビズに無関心であったというわけではございませんで、アンケートの結果によりますと、男性よりも女性の方の方が室温二十八度を守ろうということを小まめにやっていただいておりまして、多くの企業の中でも、クールビズということで、夏場の冷房温度二十八度ということにしていただいております。

 その中で、女性の方は特に汗をかいたりいろいろなことがございますので、スーパークールビズを維持しながら、より快適にするためにはどのような工夫があるのかということを、例示的に今回示させていただいたものでございます。

丸山委員 ありがとうございます。

 そうした中で例示的に示されたということでございますが、例えば洗濯のときに使う香りつきの柔軟剤の話だとか制汗剤を勧める内容等を幾つか私も拝見して、かなり細かく設定されているなという、もちろん、考案された方に女性の職員の方もいらっしゃってしっかり見られたものだというふうにわかっておるんですが、一方で、それに関しまして、例えば香料などの化学物質の問題から市民団体さんが、おかしいんじゃないか、それだと問題が生じるから撤回してくれというお声だとか、もっと行けば、ちょっと細か過ぎるんじゃないか、何でもかんでも官が決めるんじゃなくて、逆に、民間でできることは民間でではないですけれども、そこまでやたら細かく提案されてもおせっかい過ぎるんじゃないかというお声があったり、そうした、反発まではいかないとは思うんですけれども、大事なことではございますが、一方で戸惑いの声や撤回を求める声があるということでございます。

 そして、それに対して環境省さんの方でも、アレルギー等化学物質の件に関しましては削除の方針というふうに報道等では聞いておりますが、このあたりにつきまして、事実関係と経緯、また、環境省さんとしての見解をお伺いできればと思います。

関政府参考人 女性の服装まで細々と提案するのはおせっかいであるというふうな報道をいただきまして、ただ、おかげさまで、それがテレビ等に引用されて、スーパークールビズの知名度がより上がったというふうな思わぬ効果もございました。

 そういうところでございまして、決して私ども押しつけるわけでもございませんで、コンセプトとしまして、快適に、健康に、美しく、暑い夏を冷房をどんどん入れずに過ごすためにはどういうふうな工夫があるかということで、スタイリストの方に御相談をいたしましていろいろなアドバイスをいただいたものを環境省の責任でまとめて、例えばこういうものはいかがでしょうかということで、例示的にいろいろなものを示させていただいたところであります。

 ただ、先生御指摘のように、やはり香り等については嫌だという方もいらっしゃるので、役所が余り前面で推奨するのはいかがなものかという声もございましたので、決して意図はそういうことではありませんで、市販のいろいろなものをうまく工夫してやってくださいということではありますけれども、そういう御意見もあるのでありましたら、あえてそういう芳香剤等々を載せる必要もないだろうということで、その部分につきましては削除させていただいたところでございます。

丸山委員 前段はともかく、後半の部分の削除した理由につきまして少し詳しくお伺いしたいんですけれども、報道等では、やはり香料や化学物質に対して、肌の問題だとか、そういったところから各種一定の団体さんから撤回を求めるような声があったということでございますけれども、環境省さんとしては、そういった意味での撤回をされたということではないということでよろしいんでしょうか。

関政府参考人 化粧品等さまざまなものにつきましては、その安全性というのはそれぞれ個別の法律で担保されているというふうに私ども考えておりまして、そういう市販に出回っているものが人体に影響がある、ないということではないと思っております。

 私ども、あくまで、市販に出回っていて、国民が利用しても問題ないさまざまな化粧品等を使って、よりいかに快適に夏を過ごしていただけるかということでありますので、問題があるということではございませんけれども、あえて推奨しているということはいかがなものかということでありますので、例示として記載するのを控えさせていただいた、こういう経緯でございます。

丸山委員 時間もあれですので。難しい問題で、特に提案という部分でございますので、国がどこまで示していくかというのは、経産委でも、クール・ジャパン法案の話をしているときに、私も官庁にいたので、クールじゃない官庁がクールな民間に提案できるのかみたいな話がありまして、まさしく、厳しい、言葉に詰まってしまうところではございますけれども、コンセプトは大事なコンセプトでございますので、やはり反応を見ていただいて、提案のされ方をきちんとやっていただけるようにお願い申し上げます。

 最後に、H7N9型の鳥インフルエンザに関しまして御質問して終わりたいと思います。

 環境省さんの方で国内の野鳥の調査を行ったというふうな報道を聞いております。この調査の詳細につきましてお伺いしたいのと、この問題、かなり中国の方で広まってきているというお話がありまして、地元に帰っていても、このインフル大丈夫なのかというお声をよく聞きます。これに関しまして、特に今後の対応につきましてお伺いしたくて、環境省さんとしてどのように対応されていく予定なのか。

 そして、人にうつった場合、厚労省さんの御担当だと思いますので、厚労省さんの特に今後の御対応に関しまして、何かあったとき等の御対応につきましてお伺いできればと思います。

伊藤政府参考人 環境省では、平時より野鳥の鳥インフルエンザに関するサーベイランス、監視活動として、秋冬に飛来するガンカモ類のふん便及び死亡鳥獣についてウイルスの保有状況調査を実施しております。その結果について、国民への情報提供も行っておるところでございます。

 四月十六日に、中国の南京市の野生のハトから鳥インフルエンザH7N9ウイルスが検出されたということで、野鳥が感染を拡大する可能性もあるというふうな指摘もございました。このため、念のため、ハトそれから春夏に飛来する可能性のある渡り鳥などについて、追加的なウイルス保有状況調査を環境省で実施したところでございます。

 具体的には、四月下旬から五月下旬にかけて、本州以南の干潟などにおいて、ハトやシギ・チドリ類などの生体を捕獲しまして、喉の奥などから粘膜を採取するとともに、サギ類の集団繁殖地においてサギ類のふん便を採取し、それぞれウイルス検査を実施いたしました。

 その結果、全国七カ所から採取された計三百三十八検体について、鳥インフルエンザウイルスはいずれの検体からも確認されておりませんでした。その結果については、先日公表したところでございます。

 我が国に渡り鳥が飛来するシーズンは春と秋が中心でございまして、現時点においては春の渡りのピークは終了しております。

 環境省では、この秋以降も引き続き全国サーベイランスを実施し、監視を行ってまいりたいというふうに考えております。

矢島政府参考人 鳥インフルエンザH7N9についてでございますが、三月末に中国での発生が報告されて以来、厚生労働省では、世界保健機関、WHOでございますが、世界保健機関ですとか中国政府等を通じまして迅速な情報収集を行い、検疫所のホームページやポスター等を通じまして、中国への渡航者や、それから、中国からの帰国者に対しまして注意喚起を行ってきたところでございます。

 また、その鳥インフルエンザA、H7N9を、感染症法におきます指定感染症及び検疫法における検疫感染症に指定をいたしました。関係法令の整備を行うことによりまして、患者さんに対します検査体制を全国的に整備をいたしました。

 万が一、国内で患者さんが発生した場合には、入院の勧告ですとか就業の制限等、国内での蔓延の予防に必要な措置がとれるというふうな体制になっております。

 引き続き、発生動向を注意しつつ、関係省庁や自治体等とも連携をし、適切に対処してまいりたいと考えております。

丸山委員 やはり不安に思う方のお声が多うございますので、先ほど万が一とおっしゃいましたが、万が一にもあった場合に迅速に対応できますよう、しっかり広報の方もやっていただきますようお願い申し上げまして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

吉野委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 大臣、副大臣、御苦労さまでございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思っております。本日は、循環型社会形成推進基本法に基づいて実施されております容器包装リサイクルに関する質問をさせていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 御承知のとおり、容器包装リサイクル法は、一般の家庭で排出されるごみの約六割が瓶や缶、そして袋、ペットボトルといった商品の容器や包装であることに着目して、大量生産、大量消費、大量廃棄型社会から脱却して循環型社会への変革を図るべく、各種リサイクル法に先駆けてつくられた法律であり、最終処分量の大幅な軽減に大きく貢献してきたところでございます。

 この容器包装リサイクル法でありますけれども、プラスチック製の容器包装のリサイクル手法をめぐって、法律が制定された当時の理念が昨今軽視されつつあるのではないかと私は強い危惧を持っております。このことについて、きょうは二十分の中で質問をさせていただきたいと思っております。

 この容器包装プラスチックのリサイクルの手法というのは三つあります。材料リサイクル、そしてケミカルリサイクル、さらにサーマルリサイクル。材料リサイクルというのは、プラスチックをプラスチック製品の原材料として利用するものであります。また、ケミカルリサイクルというのは、プラスチックを熱で分解しますので、炭素や水素ができますが、それを製鉄などの還元剤にして使う。サーマルリサイクルは、その名のとおりでありますが、燃やして熱として使う。そういう三つのリサイクルの手法がある。

 ケミカルとサーマルは、私から言わせれば、リサイクルというよりもリカバリーと言われておるものでもございます。

 これらのプラスチックのリサイクル手法としては、もともと、制度本来のあり方として、プラスチックが持つ本来の性質に着目して、プラスチックをプラスチック製品の原材料として利用する、いわゆる材料リサイクルをまず進めるべきとされていたはずでありますが、近年、費用が安いという理由で、プラスチックを熱で分解してガスなどをつくるケミカルリサイクルを推奨する声を耳にいたします。

 こうしたプラスチック製の容器包装の材料リサイクルとケミカルリサイクルの特徴について、改めて秋野政務官にお尋ねいたします。

秋野大臣政務官 御答弁申し上げます。

 今お話ありましたように、材料リサイクルの方は、プラスチックの容器包装ごみを原材料としてプラスチック製品をつくるという手法でございますので、リサイクルの輪がつながっているというのが誰の目にも明らかな手法ということになります。そのために、容器包装リサイクル制度を支える、分別排出を行う市民の皆様方の御協力をいただくという大きな長所がありまして、循環型社会づくりへの社会全体の参加の理解が得られやすい、そういう特徴、長所があるかと考えております。

 また、ケミカルリサイクルは、これも御指摘をいただきましたが、分解などの化学的手法により化学原料として利用する手法でありまして、リサイクルにより生じる残渣が少ないというのが一つの長所かと思います。二つ目は、御指摘いただきました、材料リサイクルに比べて安価といった特徴があるかと考えております。

江田(康)委員 政務官、ありがとうございました。

 今御答弁していただきましたとおり、材料リサイクルというのは、政務官の言葉で言えば、リサイクルの輪がつながっているとおっしゃいました。まことにそうでありまして、市民の皆さんに、もったいないの環境意識を根づかせるという重要な利点がございます。

 容器包装リサイクル法は、その制度の根幹に市民の方の分別排出を位置づける、世界でもまれに見る法律でありまして、リサイクルの輪の質を高めるために、日本人のもったいないの意識を制度に組み込んでいるものでございます。もし市民の方がこの分別排出に協力していただかなければ、真の循環型社会は成り立たない。

 この材料リサイクルでございますけれども、平成十二年に容器包装リサイクル法に基づくプラスチックの分別収集が始まったころは、確かに産業としてはまだまだ歩み始めたばかりでありましたけれども、分別収集の広がりに合わせて、リサイクル事業者の皆さんの努力で、取り組みが大きく進んできております。

 具体的にお聞きいたしますが、平成十二年にプラスチック製の容器包装がリサイクルされ始めた当時と現在の分別収集の量、それから、同じく平成十二年当時と現在の材料リサイクル事業者の皆さんのリサイクル設備の能力のそれぞれについて、梶原廃棄物・リサイクル対策部長にお尋ねいたします。

梶原政府参考人 お答え申し上げます。

 プラスチック製容器包装の分別収集の量でございますけれども、平成十二年度につきましては約十万トンの実績でございます。平成二十五年度、これは分別収集の計画量でございますけれども、約八十五万トンということでございます。

 それで、プラスチック製容器包装のリサイクルの能力、これは材料リサイクルの能力でございますけれども、平成十二年度におきましては年間約二万トンの能力でございましたけれども、現在、平成二十五年度では約八十四万トンということで、分別収集の計画量と同水準のレベルに至っております。

江田(康)委員 今、梶原部長からおっしゃっていただきましたように、材料リサイクルの産業は、プラスチック製の容器の分別収集量にしても十万トンから八十五万トン、それから、その能力においても二万トンから八十四万トンと大きく伸びてきているわけであります。

 このリサイクルの取り組みを我が国が世界に誇る環境技術としてさらに発展させて、新しい循環型社会形成推進基本計画でも目指している3Rの分野での国際環境協力、そして我が国循環産業の海外発展にもつなげていけるものだと思います。

 さらにちょっと別の視点からお聞きいたしますけれども、リサイクル事業者の皆さんが材料リサイクルを実施する際の平均費用についてお伺いいたします。平成十二年の制度導入当初と現在のそれぞれについてお伺いしたい。また一方で、ケミカルリサイクルの平均費用の推移についてもお聞かせいただきたいと思います。

梶原政府参考人 リサイクルに関する平均費用でございます。

 まず、材料リサイクルの平均費用でございますけれども、平成十二年度は一トン当たり約十万九千円でございました。これが、平成十八年度ぐらいまでは十万円台ということで推移しておりましたけれども、現在、平成二十五年度は約六万六千円ということでございます。そういう意味では、平均費用は下落傾向にあるということでございます。

 また、ケミカルリサイクルにつきましては、同じ年度、平成十二年度では一トン当たり約九万四千円、平成二十五年度は四万二千円ということでございます。

江田(康)委員 今答弁がございましたように、材料リサイクルにおいても、制度導入当初から十数年の間に、リサイクルによるプラスチック原材料の付加価値を上げるなど、事業者の皆さんの努力によって、約四割にも上るコストカットが実現しているわけであります。

 確かに、ケミカルリサイクルは経済コストの面では、先ほどのように、若干有利です。しかし、国民の皆さんの理解をいただく努力は欠かせませんけれども、真の循環型社会の実現には一定のコストが必要かと思います。そのコストも、材料リサイクルの事業者の皆さんにより削減が進められているわけであります。

 そうした中では、循環型社会形成推進基本法の3Rの優先順位の原則に照らせば、目先のコストではなくて、現時点では多少は高くとも、将来性から判断して材料リサイクルを優先させるビジョンを示していくことが必要ではないかと思いますが、秋野政務官、いかがでしょうか。

秋野大臣政務官 おっしゃるとおりだと思います。

 容器包装リサイクル制度の導入の当初からお力をかしてくださいました材料リサイクル事業者の方々が循環型社会構築に向けた努力というものについては、私どももしっかり敬意を払っていかなくてはならないと考えています。

 その上で、材料リサイクルについては、委員御指摘のとおり、コスト面について課題がありますけれども、プラスチックからプラスチックに再生利用できるということで、消費者にとってわかりやすく、同じ答弁になりますが、廃棄物分別排出への消費者の参加を促す、そういったことに貢献するという大きな側面があります。こういったことを生かしながら、循環型社会形成推進基本法に基づく基本原則を踏まえつつ、材料リサイクルの推進を図ってまいりたいと考えています。

 今、お話がありましたが、材料リサイクル手法の質の向上を目指しまして、環境省では、例えば玩具、レールみたいなものをつくったりする、そういう玩具のより高い品質が要求される製品について、再生プラスチックの使用可能性について検証を行っているところであります。

 こういった取り組みを後押しすることによって、材料リサイクルの高付加価値化へ向けて、取り組みをしっかりと推進していきたいと思います。本当にありがとうございます。

江田(康)委員 ありがとうございます。

 こういう質問の流れの中で、大臣にお聞きをさせていただきたいと思います。

 プラスチック製容器包装のリサイクルを材料リサイクルで行うか、またはケミカルリサイクルで行うかは、これは制度の入札で決定されることになっております。しかし、単に価格だけで決定することになりますと、相対的にコストが安いケミカルリサイクルが多くを占めることになりまして、環境政策と産業政策の両面から進めてきたこのリサイクル制度の趣旨が損なわれると思います。

 このため、環境省の中央環境審議会と経産省の産業構造審議会の合同会議における長期間の議論を経て、材料リサイクル事業者のみでまず五〇%を入札して、そして残りの五〇%を両者が同条件で入札するという形の現在の制度ができ上がったわけであります。

 私ども公明党は、環境政策と産業政策の両面で容器包装のリサイクル制度を推進して、材料リサイクルを育てていくという観点から、今後もこの五〇%を維持することが重要だと考えておりますけれども、大臣は、今後、このプラスチック製容器包装のリサイクルについてどのように進めていくお考えか、お聞きをさせていただきたい。

石原国務大臣 この議論は、たしか前々回ですか、斉藤先生ともさせていただきました。

 今、江田委員がおっしゃったように、値段からいえばケミカルの方が安いんですが、やはりプラスチック製品というのは、できるだけ使えるものは使うというのがリサイクルの基本でございますので、今般のこの方法が非常に重要であると私も認識をしております。

 第三次循環型社会形成推進基本計画において、これまで進めてきたリサイクルの量を増大させる取り組みに加えまして、素材の質の低下を最大限抑えるような質の高いリサイクルを目指すとしているところでございますが、ここは非常に重要だと思います。

 リサイクル品が粗悪品であるというイメージをやはり払拭していくことが大変重要でございます。プラスチックについても、その循環の輪がさらにしっかりしたものになっていくように、今後も高度なリサイクルの推進に私どもは取り組んでまいりたい、こんなふうに考えさせていただいております。

江田(康)委員 確かに、きょうの質問は、私の同僚、公明党の斉藤鉄夫幹事長代行が質問されたことでもございまして、大変重要ということで、再度これは取り上げさせていただいておるんです。

 材料リサイクルは、先ほど秋野政務官がおっしゃいました、分別排出を行う消費者にとって非常にわかりやすい、環境を保全するという意味においても非常にわかりやすい。

 また、二点目は、材料リサイクルは循環の輪でできている。しかし、ケミカルは、ガス化して消費していくものですから、ここは循環の輪が途切れるわけでありまして、また石油化学製品等を海外からも輸入してこなくてはならないというような意味において、循環型の価値が違うわけであります。

 さらに、今回、やはり五〇%の優先性が残されてこそ環境型の材料リサイクルは生き残るわけでありますが、もしその優先性が損なわれれば、事業者は破綻するようなことにもなりかねない。

 御存じのように、地域に根を張って地域の環境保全に貢献している、そういう中小企業がこれを担われております。地域の雇用にもやはり貢献している企業の皆様方であります。

 ともかく、循環型基本法の理念に即していけば、材料リサイクルというのは特別に配慮をしていくものではないかと思っております。

 最後に、規制改革会議の議論が今行われておりますので、それについて内閣府にお伺いをいたします。

 今般の規制改革会議の議論において、検討項目としてプラスチック製容器包装のリサイクル入札制度の適正化が挙げられておりますが、優先的に検討すべき事項ということで、まさに今、その状況にあるわけです。

 先ほど申しましたように、中環審と産構審で関係者の皆さんがこれまで長年にわたって積み上げてきた議論とは別に、規制改革会議で経済面とか産業政策面といった規制改革の観点だけでこのプラスチックのリサイクルのあり方を議論するというのであれば、これまで容器包装リサイクルを議論して法体系をつくり、そしてまた循環型社会を目指してきた我々にとって、大変大きな不安があります。

 この点について、規制改革会議ではどのようにこの議論を進めようとしているのか。また、我々公明党は、環境政策と産業政策の両面を踏まえた合同会議での議論をきちんと反映して進めるべき、そのように主張しているわけでございますが、いかがでしょうか。

舘政府参考人 お答え申し上げます。

 規制改革会議におきましては、六月五日に答申を出させていただいております。この内容としては、プラスチック製容器包装の再商品化及び入札のあり方について、平成二十五年四月に容リ法附則に基づく見直しの時期が到来したことを踏まえ、所管する府省において、入札制度を含め、プラスチック製容器包装の再商品化のあり方を根本から再検討することを求めております。

 ただ、もちろん、これは先生御指摘のとおり、検討の場があるわけでございまして、今後、中央環境審議会と産業構造審議会の合同会議において審議が行われるものと認識しております。

 規制改革会議としましては、当該会議における審議状況を注視してまいりたいと考えております。

江田(康)委員 今御答弁をいただきました、合同会議での議論を踏まえるということは大変重要であるかと思っております。環境政策を十分に踏まえて、また産業政策も踏まえて議論されてきたその議論を十分踏まえて、規制改革会議の議論を進めてもらいたいと思います。

 規制改革会議の資料には、どうも、「根本から再検討する。」とかですね。そして、「環境負荷低減の効果、」これはよし。「経済コストの低下、再商品化製品の価値評価といった観点での検討が重要である。」と。おっしゃるとおりなんだけれども、どうもこれは、経済性が前面に出て、規制改革だ規制改革だとおっしゃっているような気がする。

 しかし、先ほどからずっと議論してきたことをもう一度しっかりと踏まえていただきたい。それは、この合同会議でも十分に、長期間にわたって議論されてきたことでございます。どうぞ、環境政策と産業政策のバランスのとれた、特にまた環境政策に配慮された、そういう規制改革の議論を進めていただきたいことを強く要望いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

吉野委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 きょうは大変梅雨らしい天気で、前回のときは梅雨の晴れ間だったわけです。ふるさと山梨は農繁期で、本来であればお田植えの時期であるはずなんですが、水不足ということでお田植えができない。

 そんな現状の中で、きょうは大変梅雨らしい、逆に蒸し暑い午後ではございますが、環境の基本施策に関する一般質疑ということでございます。地球温暖化問題、そして富士山の環境問題、さらに太陽光パネルのリサイクル問題、いつも質問しております原発事故後の健康被害、ちょっと時間が足りるかどうかわかりませんが、できるだけ簡潔に御質問をさせていただければと思います。

 まず、国連気候変動枠組み条約第十九回締約国会議、長い名前ですが、俗にCOP19は、ことしの十一月にポーランドのワルシャワで開催予定となっております。その準備会合に当たる特別作業部会が、四月二十九日から五月三日までドイツのボンで行われたのに引き続き、今月三日から再びボンで始まり、十四日まで行われることとなっております。

 この二回の準備会合の後は十一月の本会合まで公式な会合は存在しないことから、今回の準備会合における各国の主張、日本の主張に対する各国の反応などを、COP19に向け、分析する必要があると思います。

 京都議定書に参加していない米国は、前回の会合で積極的な発言、動きを見せていると報道されております。米国の提案、特にカンクン合意との異同について、その概要についてお伺いするとともに、米国提案の長所、短所、提案に対する我が国としての評価はどのようにしているのか、お尋ねいたします。

関政府参考人 先生御指摘のとおり、現在ボンにおきまして、第二回の準備会合、ADPというのが二週間、今週末まで開催されております。

 アメリカは、ことしの四月でございますけれども、二〇二〇年以降に適用される新しい枠組みを二〇一五年までに決定するということで準備会合を行っておりますけれども、一言で申し上げますと、ボトムアップ的なものであると。

 具体的には、二〇二〇年以降の温室効果ガスの排出の目標というのは、各国がそれぞれみずから案を定めて、それを事前に国際社会に提示すること。あわせまして、この提示しました目標の案について、各国や国際機関、NGOなどが検証して、最終的に目標を確定する、こういうプロセスも導入することということです。みずから提案して、みんなで検証して、妥当かどうかということを経て決めよう、こういう提案でございます。

 現在、ドイツのボンで第二回のADP、準備会合が開催されておりまして、ここでは、このアメリカの提案も含めまして、二〇二〇年以降の枠組みのあり方について事務レベルで議論が進んでいるところでございます。

 米国の提案に関しましては、中国、インド等新興国、途上国の見解はまだ明確にはなっておりませんけれども、先進国はおおむねこの提案を前向きに捉えておりまして、目標案の提出の時期、検証の進め方、各国の目標のあり方など、さらに具体的な論点について議論を進めようとしているところでございます。

 日本といたしましては、二〇二〇年以降の枠組みは全ての国が参加する、これが最も重要だと考えておりまして、いかに世界全体の排出削減につながる実効性ある枠組みにするかが重要との観点から、米国の提案は興味深いものである、このように考えているところでございます。

中島委員 それぞれの国が独自に削減目標を設定するボトムアップ型というふうに言われました。これは長所、短所あると思うんですが、要するに、何かカンクン合意と似たタイプということでよろしいんでしょうか。恐らくそういうことだと思うんです。

 先ほど御答弁にもありました、米国がそのような発言をしたことは非常に重い発言だな、一歩踏み込んだ発言かなというふうには考えておりますが、これは、国際的な協議により目標が積み増しされる方式でもあるということにもなると思います。各国、最初から低く設定して、真面目に水準の高い目標を設定した国が逆に損をしてしまうような、そんなやり方にもなりかねない。そういう意味で、いわゆるモラルハザードのおそれがないのかどうか。

 先ほど最初の質問にもしたように、日本として、これをいい面と捉えているのか。米国の発言としては一歩踏み込んだというふうになるとは思うんですが、このボトムアップ式がいいのか悪いのか。さらに、モラルハザードの問題についてはいかがでしょうか。

関政府参考人 京都議定書はアメリカが最終的に参加しておりませんでしたので、全ての国が参加するということを考えますと、それぞれの国の状況を十分勘案すると、ボトムアップ的なアプローチというのが受け入れやすいという面はございますけれども、先生御指摘のように、モラルハザードになるかもしれない、あるいは正直者がばかを見るかもしれない、地球全体として温室効果ガスの削減量がそういうボトムアップ的なもので十分になるのかという懸念はございます。

 対極的なものがトップダウンということで、必要な量を割り振っていくということだと思いますけれども、こういうふうな考え方にしますと、そもそもそういうルールに参加しない国が出てくるおそれがあるということで、ボトムアップとトップダウンの間でいかに実効性を確保し、公平で意味のあるルールにするかということについて、現在国際社会の中で議論がされている、このように認識しております。

 我が国も積極的に、両方の顔が立つうまい方法がないかという観点から貢献していきたい、このように考えております。

中島委員 先ほどの御答弁にもございました、恐らく、先進国、島嶼国、そして新興国、それぞれの立場で、それぞれにいい顔というとおかしなことになるかもしれませんが、それぞれの反応があったと思います。

 我が国においては、全ての国が参加するということが前提だとは思いますが、二〇二〇年までの削減目標がない中で、準備会合においてどのような主張を行ったのかということは先ほど言っていただきましたけれども、それに対しては各国からどんな反応があったのか、教えていただきたいと思います。

関政府参考人 我が国は米国のようなはっきりした日本提案というのはいまだしておりませんので、そういう意味では、きょうまでの時点におきまして、特段の反応はございませんでした。

 一方、二五%の目標を実質的に見直すということについて、さまざまな御意見があるのかなというふうに考えておりましたけれども、それにつきましても、先週からきょうまで、批判という意味では特段の意見はないというふうに現地から報告が来ております。

中島委員 踏み込んだ発言がなければ、余りということだと思います。

 この準備会合が終わりますと、十一月の本会議ということでございますので、ぜひ、今後しっかりとした方向性を一刻も早く見出していただきたい、そんな思いでございます。

 先ほども申し上げましたように、先進国と途上国、新興国の隔たりの一方で、先月にハワイ島の観測所でCO2の平均濃度が観測以来初めて四〇〇ppmを超えたということが報道されました。産業影響を受けない太平洋のど真ん中のハワイにおいてこの数字が観測されたことを国連気候変動枠組み条約のフィゲレス事務局長は重要視して、温暖化は危機的な状況にあるというふうにも発言されております。日本においても、気象庁の観測で、岩手県の大船渡を初め他の二カ所でも四〇〇ppmを突破し、月平均が四〇〇ppm以上というふうなことも報道されておりました。

 この四〇〇ppmの意味、本当に地球温暖化は深刻な領域に入ったのか、このことは今後の国際交渉にどう影響するのか、環境省のお考えをお聞かせください。

関政府参考人 先生御指摘のとおり、人為的な影響を受けにくいハワイ島のマウナロア観測所におきまして大気中の二酸化炭素の日平均濃度が四〇〇ppmを先月超過したということが大きく報道されたところでございます。

 この事実から、二酸化炭素の濃度がこれまでの人類史で体験したことのないレベルに達しているものと認識しております。

 大気中の二酸化炭素濃度をどのレベルで安定化するかということについてはさまざまな御議論がありますけれども、おおむね四五〇ppmから四九〇ppm程度で安定化することが必要である、こういう観点から考えますと、刻々とその水域に近づいているというのは事実だと思います。

中島委員 要するに、危機的状況にもう迫っている。そういう中で、十一月のCOP19に向かって日本はまだ明確な態度を示せていない、これが現実だと思います。

 温暖化の問題、ハワイ諸島近辺、アメリカでもそうです、ハリケーンの問題、日本においても内陸中心にハリケーンも多発している、そういう中で、前回の質問でもいたしましたように、各自治体はそれぞれ、高い設定をとっている、対策を練っている自治体も各地にはあります。ただ、それは全体で取り組まなければ何の意味もないというふうに理解をしておりますので、ぜひ一刻も早く方向性を見出していただきたいと強く願っております。

 続きまして、毎回質問させていただいておりますが、福島原発事故後の健康被害、特に小児甲状腺がんの問題について御質問させていただきます。

 先日の新聞報道でもありました。福島の県民健康管理調査の結果、第一次検査を終えた十七万五千四百九十九人のうち、甲状腺がんの子供は十二人、疑いは十五人となっておりました。数カ月前には、確定三人、疑い七人ということであったわけですが、この結果をどのように受けとめられているのか、お尋ねいたします。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 議員の御質問にありましたように、これまでは、平成二十三年度に検査を実施されました方三万八千名ぐらいの中から、三名ががん、そして七名が疑いという状況でございましたけれども、先週六月五日に開催されました第十一回の福島県県民健康管理調査におきまして、御質問の中にありましたように、二十三年度分から、がんが七名、それから疑いが五名、そして、二十四年度分で、がんが五名、疑いが十一名ということですから、合計いたしますと、十七万余の中から、十二名ががん、そして疑いの方が十六名ということになります。

 検討会における専門家の御見解によりますと、原発周辺地域の子供たちの甲状腺被曝線量、特に初期の評価は総じて少ないという理由から、現時点では原発事故によるものとは考えられないとされております。

 ただ、新聞の中にもありましたように、これまで知られているもの、つまり、症状があったり、あるいは別な病気で医療機関を受診して見つかった方の中では、やはり、十万人とか二十万人とか、十万人オーダーに一人ということでございますから、十七万人の中から十名を超える方ががんとして発見されたというのは、非常に高いということは言えると思います。

 ただ、これも、これまでこういう精度の高い検査を無自覚、無症状の方に実施したということはありませんでした。今の繰り返しになりますけれども、熟練したお医者さんに極めて高性能の機械を使って超音波検査をしていただいておりまして、また、最終的な精密検査も大学等の関与でかなり高いレベルでやっていただいておりますので、こういう形でやると、一般のお子様の中にもこれくらいの確率で発見される可能性があるということを示しているんだろうと思います。

 いずれにしましても、今後とも、こうした方については長期にフォローしていく必要があるだろうと考えております。

中島委員 恐らく、まだ一次、一通りの検査が終わっていない段階で、要するに、分母がふえて、当然比率的にはその割合がふえているという認識だと思います。ただ、新聞報道でそういうふうな報道がされますと、やはり地元の方を含めて不安も広がる。

 一方では、昨年末から行われた検査で甲状腺がん疑いの方が出たことを受けて、三月に青森、長崎、山梨の三県でスクリーニングを行って、その結果、差異はないということは何度も御説明いただいておりますが、その分母の量はやはり圧倒的に少ない。あとは、放射線が福島原発の周囲からどのぐらい、例えば近ければ近いほどその割合が広がっているのか、そんなことも危惧されていることもあります。

 とりあえずということではなくて、毎回毎回私は言っていて大変恐縮ではございますけれども、とにかく、この健康被害対策、一刻も早く取り組んで、はっきりとしたデータを見せていただければなというふうに思います。

 資料の一枚目にございます、これは「チェルノブイリ原発事故 ベラルーシ政府報告書」というものでして、ベラルーシ共和国非常事態省チェルノブイリ原発事故被害対策局が編集した報告書の翻訳版です。

 先日出たばかりなんですが、その冒頭に、在日ベラルーシ共和国特命全権大使のセルゲイ・ラフマノフ大使の日本の原発事故後の課題を挙げています。課題の一番目に、正確な汚染マップをつくることが提言されています。

 実は、この内容、ちょっと確認がとれませんで、資料としてお出しすることができなかったんですが、これは原本です。この間出たばかりで、私も全部目は通してはいないんですが、非常に詳細にデータが出ておりまして、それぞれのお立場でのお考え、そして提言というものがなされております。ぜひ読んでいただければなというふうに思いますが、続きに戻ります。

 その課題の一つ、まず第一番目に挙げられていたのが、現在公表されている汚染マップはモデル図のようなもので、現実を反映していないと指摘されています。現在の汚染マップの測定方法の信頼性について、この指摘についてどのように考えられるか、お聞かせください。

黒木政府参考人 お答えします。

 御指摘の点は、要するに、ベラルーシでは土壌を採取してマップをつくっている、それに対して、日本では航空機モニタリングによってマップをつくっている、ゆえに正確性に欠けるという御趣旨だと思います。

 しかしながら、日本においても、福島第一原子力発電所から百キロ圏内の二千二百カ所以上におきまして、土壌を採取して放射性セシウム等の測定を行っております。その結果をマップにして公表いたしております。したがいまして、航空機モニタリングだけがマップではないということでございます。

 以上です。

中島委員 では、現在の日本における、種々出ておりますけれども、その信頼性は間違いないということでよろしいですか。

黒木政府参考人 それぞれのマップをつくる際に、いろいろな手法を用いますが、測定そのものにつきまして、国際的なさまざまな機関がありますが、そこから、この方法はおかしいとか、あるいは日本の放射線の測定がいいかげんであるとか、そういった指摘は寡聞にして存じておりません。

 以上です。

中島委員 これは別に責めているわけではございませんで、御指摘の中に書いてある。

 ここの文章にも書いてあるんですが、とにかく、ベラルーシの持てる情報は制限なく無償でお伝えすることができる、私たちは既に日本の専門家から要請があったさまざまな文書を日本政府に引き渡しています、チェルノブイリ事故のベラルーシ政府がつくった報告書、汚染マップ、子供たちの行動指針を示した手引書などですと。

 そういった、恐らく、ベラルーシ共和国から日本の政府へ提言がなされているとここに書いてあるんですが、やはり大使も言っておられます、とにかくベラルーシはチェルノブイリの経験を何とかやはり日本、福島の問題に生かしたいと。

 そういった手引書なんかはもとにされているんでしょうか。

黒木政府参考人 原子力規制委員会の立場でございますので、全ての政府機関を代表してという話ではございませんけれども、当然、そういった機関とはいろいろな形のコンタクトをとっておりまして、そういった中でいろいろな情報を収集しております。

 したがいまして、原子力規制委員会の所掌に関しましては、当然のことながら、チェルノブイリの経験というのは非常に大きな意味を持ちますので、その点については十分注意しながら、必要な情報収集に努めてまいりたいと思います。

 以上であります。

中島委員 チェルノブイリの方と、私はちょっと言葉が余り通じなくて、正確には話ができているかどうかあれなんですが、現地に行かれた菅谷先生初め多くの方々に話を聞いておったところ、チェルノブイリは二十六年前になりますか、これから日本は、先ほども申し上げましたように、やはり甲状腺がんの問題は、あと二年後にはずっとふえてくる可能性もある。その指標となる汚染マップがもし信頼性が乏しいということになりますと、先日国連でも発表されました、被曝量がチェルノブイリに比べはるかに少なく、がん患者の増加は考えられないという報告自体も全く無になってしまう、意味がない情報ということになってしまいます。

 とにかく、私自身も、これからいろいろチェルノブイリの現状を含めながら御協力していきたいと思いますが、こういう提言、経験のもとのことをぜひ生かしていただければなというふうに思います。

 続いて、次の話題に移りたいと思います。

 資料の二枚目、「富士山 進まぬ対策」という表題です。

 御存じのとおり、富士山の世界文化遺産登録がほぼ確実となりました。私の地元は山梨県でございますが、地元の山梨も沸き立っております。

 しかし、その一方で、世界遺産に登録された他の地域では、観光客の急増で環境破壊などの問題が浮上した例もあり、地元自治体も対策に頭を悩ませている、そういう現状です。そこで、登山道や森林の整備などに充てる入山料も検討されているのですが、観光業界、各自治体で意見はさまざまとなっています。

 今後どのような対策をとるべきなのか。これは、自治体の問題といえばそうなんですが、ゴールデンウイークも、期待度から、ふだんよりもかなり観光客が多かったようです。道路の渋滞の問題、一番はやはり環境の問題だと思います。国内、国外問わず、成功した事例また失敗した事例などがありましたら、教えていただきたいと思います。

伊藤政府参考人 富士山が世界文化遺産に登録される見込みであるということにつきましては、環境省としても非常に喜ばしいことだと思っておる次第でございます。

 現在、山梨、静岡両県におきまして、利用者負担制度の導入という観点から、入山料の導入について検討が進められているというふうに承知をしております。

 一般的には、自然環境の保全の観点から、利用者負担の考え方を導入することについて地域の実情に応じて検討するということは、非常に意味があることであるというふうに考えております。

 一方、導入に当たっては、入山者を含めて幅広く理解が得られる必要があるため、その目的や使途、徴収対象者、実施箇所、金額などさまざまな課題を整理し、地域の関係者などにおいて十分な議論をしていただくことが必要であるというふうに考えております。

 環境省としても、国立公園の保護と適正な利用という観点から適切なものとなることが重要であると考えておりまして、いろいろ知恵も出していきたいというふうに考えております。

 なお、国内の国立公園の中で、入山料で、国立公園にお金を払わないと入れない、そういった制度はとっておりません。

 アメリカでは、全て国有地のところが国立公園になっておりまして、例えばヨセミテ国立公園におきましては、車一台二十ドル、徒歩で入る場合は一人十ドル、年間のパスが四十ドル、こういった制度もあるようでございますけれども、日本では、日本の国立公園は民有地にも指定しているということで、そういった制度はとっておりません。ただし、特定の地域について、その地域の森林を整備する協力金という格好で、例えば、これは屋久島の何かであるんですけれども、屋久島の一部地域について協力金をいただいている、そういった例はございます。

中島委員 国内でですけれども、入山料、国立公園ですからちょっとあれなのかもしれませんが、世界遺産は関係なく、そういうふうな事例とかはございますか。

伊藤政府参考人 自然遺産はほとんどが国立公園の一部であるわけですから、そういった意味では、そこの広い地域について、入るためには入山料を必ずもらうといったことを導入した例はございません。

中島委員 先ほども申しましたように、文化遺産登録されようとしていることは、地元としても大変喜ばしいことでもございます。なおかつ、富士山はやはり日本の象徴でもございまして、世界の方々にその価値を認めていただく、そういった意味で、環境保全に相反するようにならないように、誰もが納得できる方法で、これは環境省、文化庁さんも関係あることだとは思うんですが、いい案がございましたら、ぜひ指導力も発揮していただきながら御指導いただければと思います。

 次に、三枚目の資料です。

 太陽光パネルのごみ問題、リサイクル問題について御質問させていただきます。

 昨年七月に始まりました、再生可能エネルギーを高目の固定価格で買い取る制度を受け、設置が簡便な太陽光発電の導入は飛躍的に進んでおります。太陽光パネルの耐用年数は一般に二十年から二十五年と比較的長いのですが、数年先には加速度的に使用済みのパネルの量がふえることが予想されております。この太陽光パネルは有害な物質を含むため、適切な分別やリサイクルが課題となっています。

 この太陽光パネルの処理、リサイクルについて環境省として現在どのようにお考えになっているのか、お聞かせください。

梶原政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生が御指摘されましたように、固定価格買い取り制度の導入により、太陽光発電設備の設置が急速に進んでいるところでございます。

 具体的な数字を挙げますと、二〇〇八年には二十三万キロワット程度でありましたけれども、二〇一一年には百四十万キロワット、二〇一二年には三百三十万キロワット程度の太陽光発電が導入されている。それで、将来、廃棄される量も増加するというふうに考えております。

 このため、環境省におきましては、昨年度からでございますけれども、使用済みの再生可能エネルギー設備の処理について、国内外の動向、あるいはどういった技術があるのかといったようなことについて調査を開始しておるところでございます。

 その調査の中では、将来の廃棄量としまして、パネルの耐用年数とかパワーコンディショナーの耐用年数なんかの前提をどう置くかによって大分変わってまいりますけれども、パネルが二十年あるいはパワコンが十年だとして、二〇三〇年では三十五万トン程度の排出がある可能性があるというふうな推計もしております。

 また、一部の太陽光パネルにつきましては有害物質も含まれているということもおっしゃられております。また、有害物質ということではないんですが、逆に希少物質、希少金属も含まれているということもございます。

 ただ、パネルの種類によっては、使われているものとかあるいは濃度、使われ方がさまざまでございますので、含有量の分析とか、あるいは溶出試験を実施してその実態を把握することも必要だというふうに考えております。

 現在は、まだ廃棄物という形で出てきているものは少ないと思っておりますけれども、将来にわたって適正処理あるいはリサイクル処理がきちんとできるように、関係事業者あるいは関係省庁とも連携しながら、実際に使用済みになった場合にどういった撤去、運搬、処理の流れがあるのか、あるいはその課題がどういったものなのかといったようなことについて明らかにしてまいりたいというふうに考えております。

中島委員 今御説明があったように、急激に発電力もふえていますよね。一般に、簡便に取りつけられるということもあって、やはり、今現在、足元を見ればそんなに問題はないかもしれないんですが、二年先には七から九万トンが使用済みとなるというふうにも言われております。

 パネルの内部に、今御説明がありましたように、希少金属もある一方で、やはり鉛とかカドミウム、有害な重金属も含まれるということでございます。これまた不法投棄ということになりますと、一気に環境被害につながりかねない。環境に優しいはずの太陽光発電が環境被害の原因となってしまう、そういうことも危惧されます。

 もうこれから先ふえるということがわかっているのであれば、廃棄技術、リサイクル法に関してはこれから積極的に取り組まれていくにしろ、技術開発と同時に、争点となるその負担方法、家電のリサイクル法と似たようなルールづくりは早目にされた方がいいのではないかと思います。

 私個人といたしましては、家電リサイクル法のようなルールづくりは必要かなということなんですが、その辺については何かお考えがありますでしょうか。

梶原政府参考人 昨年から、本件につきましては実態をまず調査するということで、文献調査から始まって、そういうデータ集めをしております。

 それで、本年度は、実は委託先ではございますが有識者の方々にも集まっていただきまして、関係省庁にも声をかけまして、さらに、日本の実態はどうなのかといったようなこと、あるいは、今後想定される処理フローというのはどういう形になっていくのかといったようなことを調査したいと思っております。

 先生御指摘のいろいろなシステムをつくるという意味では、EUにはもう既にそういったシステムもできているようでございます。そういったことも含めまして、実態を調べた上で、我が国でどういったようなことができるか、考えてまいりたいと思っております。

中島委員 ありがとうございます。

 一番負担が少ないのは、家電リサイクル法と同じように、メーカーが負担していく方法が手っ取り早いかなというふうには思いますが、先ほども申し上げたように、環境に優しいはずがかえって環境被害につながってしまう、そういうことのないように、ぜひ早期の取り組みをお願いしたいと思います。

 時間になりました。質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

吉野委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原です。

 最後の質問になるかと思います。今シーズンは環境省は六本の法律がございました。ちゃんと通りました。あと四日審議日が残っておりますけれども、時と場合によっては最後の委員会日になるかもしれませんので、皆さんも身を引き締めてお聞きいただけたらと思います。

 私は、きょうは非常に重大な問題、ネオニコチノイド農薬、この一点に絞って質問したいと思っております。

 まず、このネオニコチノイド系農薬というのは、有機燐酸系農薬というのは、皆さんも、余りこういうのに関心を持たない方でも聞いたことがおありになるかと思います。余り長ったらしいので、ネオニコ系農薬、ニコチンというふうに覚えてください。大体たばこはよくないので、悪いものというイメージでおわかりだろうと思います。

 この農薬、日本では一体いつごろから、どんな用途で、どのぐらいの量が使用されてきているんでしょうか。それから、空中散布には問題があるんですが、後で一番最後に触れますけれども、空中散布なんかにはよく使われているようなんですが、どんなような使用状況でしょうか。

江藤副大臣 その使用量についてまずお答えをさせていただきます。

 ネオニコチノイド系農薬は、平成四年度に初めて農薬の登録がなされました。現在では七成分が登録されておりまして、稲、野菜それから果樹などに使用されております。

 現在の出荷量は、初めて出荷されました平成五年度が二千七百トン、平成十九年度に一万九千トンまで増加しまして、その後、平成二十三年度までに一万八千トンから一万九千トン、今の使用量は横ばいとなっております。

 また、空中散布におけるネオニコチノイド系の農薬の使用量、これを正確に把握することはちょっと統計上難しいんですけれども、大体その実施面積から推計をいたしますと、年間大体三千四百トンほど空中散布では使用されているというふうに考えられます。

篠原委員 副大臣にわざわざおいでいただきましてお答えいただいたんですが、例によって資料を用意してありますので、いろいろ私も調べてありますので、また資料を見ていただきたいと思います。

 十一ページにわたる資料でございますけれども、まず一ページ、今は有効成分をトンで言ったりしましたのでちょっと違ってきていると思いますが、副大臣がお答えいただいたとおりでございます。これだけ使われてきているんです。世界の例でいうと、もう有機燐酸系農薬と匹敵する量だそうです。

 下の方に主なネオニコチノイド系農薬を書いてあります。これは名前が傑作なんですね。ちょっと見ていただきたいんですが、一番上真ん中のところに、アセタミプリド、マツグリーンというのがある。松枯れ防止に使われているんです。それから、後で触れますけれども、非常に有害であるというのでEUで禁止されるんです、この十二月から。ダントツというんです。断トツに危険な農薬ということだろう。嫌みでつけているんじゃないかと思う。フルスウィング、日本人にわかりやすい英語なんですね。よくわかりませんけれども、それからニテンピラム。その上の三番目のはベストガード、一番よく守るというような名前。何か変な名前をつけているんです。

 それで出荷量、下を見ていただきたいんですが、こんなふうになっているんですよ。相当多く使われている。これはまた後で触れますけれども、北海道や岩手で、一九〇〇年代の後半から事故が起きているんですけれども、二〇〇〇年代に大きな事故が起きているというのがあるんです。

 それで二ページを見ていただきたいんです。しようがないんですけれども、もともと、日本は半分亜熱帯です。ですから、リンゴ、我が地元はリンゴの生産地なんですけれども、北緯五十度ぐらいで降雨量が六百ミリぐらいしかないところで長年ブリーディングされてできた果物なんです。日本では、まともに育てるには農薬を十回以上しなくちゃいけないんです、しようがないんですけれども。このとおり、面積当たりの農薬使用量というのは、こんなものを一番、二番を争ったってしようがないんですが、韓国が日本を抜きましたけれども、長らく日本が一位だったんです。日本はいろいろ規制したりしていますので、少しは改善されたんです。

 恐ろしいんですけれども、その下を見ていただきたいんです、右側の太い線の線グラフの方です。生産量、国内出荷量は副大臣にお答えいただいたとおり大体頭打ちなんですが、輸出量がこんなに伸びているんです。何を意味しているんでしょうか。海外に輸出されて、海外でもってばかすか使われて、それが日本に入ってきて、それが我々の口にも入っているということなんです。

 それで、ネオニコチノイド農薬の害というのは、大分前から、有機農業研究会とかダイオキシンの国民会議とか東京の反農薬ネットワークとか、いろいろな人たちが心配して活動してきているんです。一番大きな影響はどこに出ているかというと、ミツバチなんです。これは養蜂業があるからなんですが、ほかにもトンボやチョウなど、いろいろ減少してきているんです。後で資料を示します。

 こんなことについて一体環境省は、農林水産省だけの問題じゃないんです。生態系に物すごい悪影響を与えている。これはちょっとわかりにくいんですけれども、空中散布量だってわからない。これは業者なんかをきちんと調べればわかるはずなんですが、わからない。だけれども、自然界のもの、トンボやチョウやスズメがどれだけふえたか減ったかというのはわからないんですけれども、これについて気にして調査されたことはあるんでしょうか。

秋野大臣政務官 御答弁申し上げます。

 生態系への影響について、生息環境の変化など多くの要因が関係するものですから、農薬のみの影響というのを把握するのは困難ではありますが、環境省におきましては、農薬の使用に伴う生態系への悪影響が生じないように、魚類、甲殻類、藻類を対象としまして、農薬の毒性試験結果をもとに、水産動植物の被害防止のための農薬登録を認める基準の値を設定してございます。これを超える農薬使用は行われないという仕組みになっております。

 さらに、先ほど先生もおっしゃいましたが、農薬による生物多様性への影響をより低減させるために、個体レベルの試験だけでなく、生物群集に着目することによって、農薬による影響を的確に把握する試験法の研究を現在実施しているところでありまして、こういったことを通じまして、農薬による生態系への影響をより低減することができるように取り組んでまいりたいと思います。

篠原委員 余りきちんと調べてはおられないんだろうと思います。

 しかし、このネオニコチノイド系の農薬というのは非常に害があるんです。農薬は、虫に悪いものは人間にも悪いんですね、大量になれば。大体そうなんですけれども、原発の安全神話と同じで、いや、虫には悪いけれども人間には悪くないと言う。これはうそですから、絶対に。悪いのはどっちにしろ悪いんです。遺伝子なんかいっぱい共通するものがあるわけです。

 どこが悪いかというと、有機燐系の農薬も同じなんですが、浸透移行性というのは、入ってしまってその中にずっといる。例えば、私はリンゴをつくっています。消毒はいっぱい、真っ白になっている、洗って食べる、皮をむいて食べる。全然意味ないんです。中にみんな入っちゃっている。だから、稲の葉っぱにつく、稲をちょっと虫が食べる、それでころっと死ぬ。

 それで、どういうふうに使われているかというと、育苗の段階から使われているんです。皆さん、農業の現場をよく御存じないかもしれませんけれども、稲の育苗の六割にこのネオニコチノイド系の農薬が使われています。それから、真っ赤になったりしている種子消毒というのが大事なんです。そういうことをやっているんです。物すごい汚染度合いなんです。それが我々のところにも悪影響を与えるということですね。

 それから、ほかのものと一緒になったりしたら毒性が倍加する。有吉佐和子さんの「複合汚染」というのがありました。複合すると毒性が十倍、百倍、千倍になる。わからないんです。

 それから、体の中に入る。放射能と同じです。皆さん、放射能のことが相当この一年、二年頭の中に入ったので比較してもらうとわかるんですが、体の中に入ってそのまま残って、代謝後、違うものができて毒性が高まったりしているんですね。どこでどういう影響があるのかがわからないんですよ。

 では、今度は三ページと四ページを見てください。

 この一の四番目のイミダクロプリドというのがアドマイヤーで、絶賛するという意味なんです。これが、右側の方の九八・二%、九八・二%、どれだけ虫が死んでしまったのか。ほとんど一〇〇%死んでいるんです。

 ちょっとネオニコチノイド系農薬と違うんですが、フィプロニルというのがプリンス、これもまた変な名前。いい名前ばかりをつけているんです。悪いことをしているから、いい名前をつけてだましているんだと思いますけれども。プリンス粒剤というのがある。これも、一時間では死なないけれども、二時間でほとんど死んでいる。

 それで、皆さんはおわかりになりますか、赤トンボが物すごく減っているんです。羽化を見てください。私の小さいころは、長野の田んぼの中で赤トンボを棒でいっぱい落としていたんです。今は飛んでいないです。どうしたのか。

 もちろんほかの原因もあるでしょう。ミツバチの方だっていろいろ言われているんですが、ほかに原因があるだろうと言われているんです、ネオニコチノイド系の農薬だけが原因じゃないといつも言うわけです。我々が疲れたなんて言ったって、仕事をいっぱいして疲れたと思っているけれども、いっぱい飲み過ぎて疲れているのをそう言っている人もいるし、原因はわからないわけです。

 ストレスだ、人間並みのストレス。何でかというと、移動させられて、ビニールハウスの中で授粉させられている。環境が悪いところでやっている。それからダニとか、虫にだって病気がありますから、ウイルスがあるとかですね。それから地球環境全体の問題、気候変動とかああいうのもあったりする。いろいろなことがあるんでしょうけれども、やはりネオニコチノイド系の農薬が原因になっているということもあると思う。

 もう一つ、トンボのほかに、今度は四ページです、我々に身近な鳥。これはいろいろきのうネットで調べたんですけれども、左上は、この前はこの場で成蹊学園でもって富士山の見える話をちょっとしましたけれども、同じように、自由学園で、子供たちが同じ場所でスズメを何羽見られるかというのをずっとやっているんだそうです。これを見てください。だんだん減ってきている。

 右側は農林水産省絡みです。副大臣、ごらんになったかどうか、スズメによる被害、すごいですね。ネットを張ったり、それからスズメおどし、ガス鉄砲でバーンバーンとでかい音がしている。ところが、これをほとんどやらなくて済むようになった。この棒がそれなんですよね。被害面積が減って、被害量も減っているんです。どういうことでしょうか。スズメが減っているんです。

 今、長野で、私の地元では、小林一茶生誕二百五十周年というので、一茶にまつわるいろいろなイベントがあります。一茶の句、皆さん、御存じですね。「雀の子そこのけそこのけお馬が通る」、それだけスズメは身近にいたんです。「やせ蛙まけるな一茶これにあり」、だけれども、カエルも減っているんです。スズメも減っているんです。やはりこれは捨ておけないんです。

 ほかので言うと、狩猟者の結果、それから、捕らえては放鳥するという、これも同じところで大人がやっているのですけれども、これだけ減ってしまっているんです。

 だけれども、一番問題になったのはミツバチなんです。

 ほかの国でもミツバチがいっぱいだめになっていたんですが、日本でも、二〇〇五年、さっきの表で岩手県が北海道に次いで二位だったですけれども、ミツバチの大量死の問題がありました。二〇〇八年から九年にかけてミツバチ不足になって、授粉してもらわなければならない農家、イチゴだとかスイカだとか果樹全般ですよ、野菜、果樹、授粉しなければいけないもの、ポリネーターと呼ばれていまして、授粉の仲介者です。それが不足して大弱りだったんです。農林水産省はこれは困ったはずなんです。こういうふうに農業に対して影響があるからというので困って、生態系なんか無視ですね、そのときは困ったはずなんです。

 このときに、農林水産省は一体この原因を何だと考えて、どういう対策を打ったんでしょうか。

江藤副大臣 先生はプロでいらっしゃいますから、役人答弁をしても余り通用しませんので率直にお答えをいたしますが、私もこのときのことはよく覚えております。

 二〇〇八年、ハウス内の授粉用の蜂がいなくなって輸入をしたりして、大変困りました。

 そのときに、一応、日本の独立行政法人の農業・食品産業技術総合研究機構、ここを中心に研究をしたんですが、現在に至っても、最終的な要因特定には至っていない。ダニだとか病気だとかストレスだとか、もちろんその中に農薬も入っていて、総合的要因によるものだというふうな報告にはなっておりますのですけれども、最終的な特定には至っていないというのが現状でございます。

篠原委員 私は、完璧に因果関係を明らかにするのはなかなか難しいと思います。それはそうなんですが、蓋然性が高くて可能性が高かったら、いろいろ手を打っていく必要があるんじゃないかと思います。

 これは、有機燐系農薬も同じなんですが、ネオニコチノイド系農薬も同じなんですが、アルコールと同じなんです。昆虫を興奮させるんです。それで、記憶喪失にかからせるんです。アルコールと同じです。

 だけれども、違うのは、アルコールは幾ら飲んだって、あれは余り害がないといえばないので、飲み過ぎると肝臓にちょっとは悪いんですけれども、大事な違いは方向感覚なんです、帰巣本能。皆さんも御記憶があると思います。飲んだくれて、どこで飲んでやっていたんだか知らないけれども、いつの間にか家にはたどり着いていた。だから、アルコールは害がなくて、玄関でひっくり返って、だけれども、どうやって帰ってきたんだかわからない。

 ところが、その反対で、このネオニコチノイド農薬は、ミツバチが巣箱に戻れなくなってしまう。だから、巣箱の周りで死んでいることがない。もちろん、農薬がばかっとかかったのはあるんですけれども、いつの間にかいなくなっていて、どこでどうやって死んでいるかわからない。方向感覚を失わせるんです。ひどい病気だなと私は思います。

 五ページのところを見ていただきたいんですが、さっき副大臣が言われたところです。これだけいろいろなところで困ったんです。宮崎県、左下の方に書いてありますね。「ミツバチ不足深刻」、「西洋ミツバチ異変 巣箱前で大量死 飛びたたないケース」、もうわからなくなっちゃって、弱って飛び立てなくなったりしているんです。あちこちでこういうのが起きているんです。私の地元の長野県では、右側の方ですけれども、県北部で農薬が原因と見られるミツバチ大量死が発生して、県でもってミツバチ危険被害対策連絡会議というのが発足したと。

 このとき、原因究明をきちんとしたかどうか。やっているんですね。農林水産省の研究者は大したものだと思いますよ。だから、上の方がそれを採用してちゃんと手を打つかどうかが問題だと思います。

 死骸の九割からネオニコチノイド系農薬が発見されているんです。ほかのもあると思います、ストレスとか。そんなのは人間と同じで、あるのは決まっている。みんな複合的な要因だとは思いますけれども、もうそれはよくないんだ。

 このときに二億匹ぐらいのミツバチが死んだと言われています。ミツバチの箱のが大量死しちゃうんですけれども、箱でも一万箱ぐらいがだめになったと言われているんですね。

 これは大問題でして、こういうことは相関関係がどうかというので、これは私が本当はつくるべきだったんですが、農林水産省にきのう資料要求していたときに役所の人に来ていただきまして、六ページ、相関関係があるんじゃないかと。何かというと、このネオニコ系の農薬を使い始めてからミツバチが減っているんじゃないかと。蜂群、これはコロニーといっていますが、コロニーの数が減ったんじゃないかというので、相関関係があるかどうかというのを表にしてくれと言ったんです。

 余りいい表じゃないんですけれども、だんだん減っている。このぐわっとふえているのが出荷量です。このふえた分と同じように減ってはいませんけれども、ずっと減り続けているということはこれでおわかりいただけると思います。やはり、これをちゃんとやっていかなくちゃいけないんですね。

 それで、なぜこの問題を私がここで取り上げているかというと、僕は、こういうのはずっと前からフォローしていますのでわかっているんですけれども、余りぎゃあたら言いませんでした。しかし、EUが五月二十四日に、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムという三種類のネオニコ系の農薬を、現実的なんです、今あるのは十一月末まで使っていい、それから二年間使用禁止、今買ったりしているもの、在庫にしているものは使っていい、しかし、一時的に二年間禁止する、そして二年間の間に検討して、本当に禁止するかどうか決めるという。賢いやり方だと思います。

 こういった各国の研究成果というのはちゃんと我が国は把握しているんでしょうか、それで、それを参考にして何か手を打とうとしているんでしょうか。

江藤副大臣 二〇〇八年、九年のことは、先ほど申し上げましたように、よく覚えておるんですけれども、ただ、そのときに私の地元でもあったのは、中山間地域の、人家のないようなそういったところでも蜂が一斉に消えたんですよ。ですから、そのとき私も個人的には農薬の影響というものを極めて深く疑ったんですけれども、例えば、椎葉村の山奥の、畑も全くないようなところでも蜂が突然消えてしまって、これは天変地異の前兆じゃないかなと思ったことを、先ほど先生のお話を聞いていて思い出したんです。

 海外でのこの検証については、農林水産省としても把握はいたしております。一番最高権威はOIEですから、こちらについては、寄生虫、ウイルス、微生物、農薬、低栄養等の複合的な要因によって起こったのではないかというのがOIEの考え方。

 他方、平成二十四年三月の、フランスの研究グループとイギリスの研究グループのミツバチ等への影響についての調査は、科学誌のサイエンスに発表されております。

 フランスの論文においては、先生が先ほどおっしゃったように、巣に帰ってくる能力が有意に低下する、そういう可能性、そして、蜂群が崩壊するという可能性について言及をしております。

 イギリスの論文は、マルハナバチにこれを与えた場合、巣の重量が小さくなってしまうんじゃないか、それから、女王蜂が出現する数が有意に低下するという現象が起こるということもイギリスの論文の中には報告をされております。

 両論文とも、野外での実験結果をもとにした貴重な研究結果でありますので、農薬投与量等の条件について議論はありますけれども、欧州食品安全機関として、明確な因果関係はそちらの方でもまだ判断はされていないというふうに承知をいたしております。

篠原委員 今、副大臣の答弁を聞いていますと、明確ではないですけれども、相当の因果関係があるというふうに聞こえるんじゃないですか。皆さん、どうですか。と僕は思いますけれども。では、副大臣どうぞ。

江藤副大臣 日本の農林水産省としての見解ではなくて、フランスとイギリスが発表したこの論文の内容については、確定的ではないけれども言及をしているということを農林省としては承知をしているということでございます。

篠原委員 皆さん、これは全部覚えている。レイチェル・カーソンが「沈黙の春」という本を書いて環境問題について警鐘を発した。昔は環境庁もなかったんです。今は環境省になっているんです。そして大物大臣を迎えているんです。それだけ大事になってきているんです。「ハチはなぜ大量死したのか」という本もできているんです。

 EUでなぜそれを禁止したかというと、因果関係が明らかになってきたからなんです。トウモロコシの種子処理にやはり使ったんです。そしたら、それでばたばたミツバチが死んで、困るんです。養蜂業者が困るというのは同じです。

 しかし、もう一つ困るのは、皆さんヨーロッパに行かれたことがあると思いますけれども、ヨーロッパの空港におり立つと、春は菜種で真っ黄色です。夏はヒマワリで真っ黄色です。両方ともミツバチの助けが必要なんです。これがだめになりかかったんです。それは農家にとっては大危機ですから、だから、それはよくない、何やっているんだということで、ちょっとばかりほかの虫が死んでも、もともと実らなくなったらどうするんだということで決めているんですよ。どっちがいいかなんですね。

 だから、今は影響試算というのがありますけれども、そんなに影響はないないと言っていますけれども、私は日本も相当あるんだろうと思います。環境省もぜひ調べていただきたいんです、調査研究したかどうかというのをですけれども。

 それで、ヨーロッパのことを今は副大臣がおっしゃいました。ヨーロッパでいっぱいやっているんです。なかなかしっかりしていまして、これは御存じだろうと思いますけれども、ことしの一月ぐらいからすったもんだしていて、一回、EUの委員会のEFSAという欧州食品安全機関でリスク評価報告書が一月上旬に出て、では、この関係をやる委員会で禁止しようかと思ったら、半分賛成国がなかったんです。それで二回目の審議が行われて、やっと二十七カ国中十五カ国が賛成し、八カ国が反対、棄権が四カ国、そして多数になったので、やっと使用禁止になったんですよ。

 だけれども、さっき言いましたように、日本は農薬をほかの国と比べて飛び抜けて多く使っているわけです。さっきの表をちょっと見ていただきたいんですが、さっきの二ページの表です。スウェーデンとかアメリカの十五倍から二十倍なんですよ。ほかのヨーロッパの国と比べたら、物すごく多いんです。それだけ影響が大きいんですよ。だから、それだけ真剣にやらなくちゃいけない。

 それを、全く逆で、EUはこれをやりましたけれども、ドイツ、イタリア、フランス、それからオランダ、こんなこと言っては悪いんですが、EUの中でもみんなきちんとした国です、先進国。これはもう二〇〇〇年代の前半からやめさせているんです。だから、日本は何をやっているんですかねと思うんです。

 さっき、ちょっと研究されたというふうに言っていましたけれども、本当にどこでどうやって研究させておられるのか私は余り知らないんですが、ちょっと資料のところにあるんですけれども、日本こそきちんとやるべきだと思うんですが。やられたんでしょうか、原因究明。

江藤副大臣 先ほど言いましたような農研機構とか農環研、二つの機構でいろいろ調査をいたしておりますけれども、ただ、日本と欧州では作物の種類も違います。それから、先生が言いましたように、気候も全く違う。高温多雨である、多湿であるという状況もありますので、作物とか使用方法が異なることがありますので、それをそのままヨーロッパの基準イコール日本に当てはめるというのは、ちょっと無理があるのではないかということを思っております。

 今後は、これまでの研究で明らかになっていなかった、先ほども先生が言われました稲の花粉への農薬の移行の程度、これをちゃんと調べなければならない。それから、ミツバチが死に至る正確な農薬の経口投与量、どれぐらいの量で死に至るのか、そういったものについても調査を実施して、ミツバチの死亡要因を明確にしたいというふうに今考えております。

篠原委員 まずは農家の皆さんにも納得していただくために、わからないでもないんです、農薬は大変です。鳥獣の被害も大変ですけれども、農薬で一網打尽というか、全くとれなかったりする、高齢化してきている、だから楽な農薬というので、一回打ったら、さっき言いました浸透性ので作物の中に入っているから、後から違う農薬は必要なんですけれども、ある面では非常に効くという、これでやっていくというのはいいんだろうと思います。

 ただ、研究とか、変なほかの方向に行っているんですよ、私から言うと。このネオニコ系農薬にも負けない立派な強いミツバチをつくる、それもいいと思いますけれども、それだったらやはりIPMです。総合防除、天敵や何かを利用して自然にやっていく。

 今、電力の世界でだって、バイオマスエネルギーとか風力エネルギーだ、自然の再生エネルギーだとか言っているわけです。まして農業の分野なら、生物との戦い、生物を人間に都合のいいように使うという世界ですから、なるべく自然のものを有効活用してやっていくような方向にやっていくべきだと僕は思うんですね。

 それで次です。ここから大事なんです。副大臣にぜひと言ってこだわって来ていただいた。石原大臣にもお答えいただきたいんですけれども、EUはなぜこんなふうにぱっとできるのか。では、日本でなぜできないのか。

 この前、原発で大事故が起きて、浜岡の原発停止なんというのは、どこの法律を見ても書いていないんです、そんなことができると。それをやったわけです、停止で。まだ完璧に廃止じゃないです。廃炉じゃなくて停止。

 これだけ影響が起こったりして、EUがやったりした。もちろん、アメリカとカナダはまだしていませんけれども、それだったら日本もやってもよさそうな気がするんですが、農林水産省はそういう気構えはあるんでしょうか、ないんでしょうか。

江藤副大臣 率直に申し上げまして、今委員の御指摘を受けてすぐ禁止の方向に検討するという態勢には今なっておりません。

篠原委員 では、資料の八ページをちょっと見ていただきたいんですけれども、私はけしからぬと思いました。

 さっきの表のところでは、前の方のところ、一ページの横の方に、クロチアニジンなんかは住友化学なんです。住友化学が深くかかわっているんです。別にどこかの会長が憎いから言っているわけじゃないですけれども。住友化学はすぐ見解を出しているわけです。何たる見解かというんです。発表内容はこうだ、EUの官報であったと。その後の文章を見てください。「EU委員会」から始まる二行目、「因果関係について何ら明確な判断がなされなかった」、それから五行目、「多数のEU参加国の反対を省みず行われた」結果だと。さっき言いましたが、十五だから多数なんです。多数決は多数決なんです。それから数行下、「ネオニコチノイド剤がミツバチの大量死、大量失踪の主たる原因ではないとする当社の見解に何ら影響するものではありません。」こういう見解を出して記者発表をしているんです。

 農林水産省は大臣談話みたいなのを出して、影響ないとやったんでしょうか。私の知る限りでは、農薬の担当室長が、あるいは補佐のコメントが新聞に載っていただけです。僕はちゃんと明確に談話を出すべきだと思いますけれども、どうされたんでしょうか。

江藤副大臣 大変不勉強を恥じますけれども、私もこのペーパーを今初めて見させていただきましたので、役所に帰りましたら大臣とちょっと相談をしたいと思います。

篠原委員 役所の方が、これについてどうだということを私は出すべきだと思います。それは厚生労働省や消費者庁やなんかもそうだと思うんです。

 それで九ページを見ていただきたいんですが、日本は何もこの分野でおくれていたわけじゃないんです。これをよく見ていただきたい。石原大臣、ぜひこれをちゃんと見ていただきたいんです。

 皆さん知っていると思いますが、DDT、これは一九四八年から使われたんですが、発がん性、内分泌攪乱、要するに環境ホルモンですが、どこかおかしくする、残留性がある、生物に濃縮していくというので、一九六二年、さっき言いましたレイチェル・カーソンさんの「沈黙の春」がありました、二十四年後に、日本がほかの先進国に先駆けて、一番最初に使用禁止しているんです。

 その下、パラチオン、メチルパラチオン(ホリドール)、僕はこのホリドールをさんざんリンゴにぶっていたんですね、よく覚えているんですが。これは一九五二年から使い始めた。だけれども、ここにあるように、いろいろおかしいと。そして、農村地帯で自殺に使われたんですね。そうすると、六九年に製造を禁止して、二十年後の七一年には全面禁止しているんです。環境庁はできていないんですよ。環境庁ができたのは七二年でしたかね。なぜかしらアメリカとEUは余りホリドールは禁止しなかったんですが、二〇〇〇年代になってから禁止しているんです。

 問題のネオニコ系の農薬、一九九一年から使い始めています。こういうことに余りきちんと動かないあのアメリカでさえも、見てください、いいですか、二〇〇九年、環境保護庁が登録を再検討する。この登録についてのやり方がでたらめだったんです、バイエル社なんか。そして、二〇一二年にはクロチアニジンの禁止についてパブリックコメントを募集し始めた。一万件以上がもう来ているそうです。そして、ウィキリークスで企業との癒着なんかが明らかにされたんです。そして、右側は先ほど申し上げました。三種を禁止している。だから、先進国で何も動いていないのは日本だけなんです。

 農林水産省だけの問題じゃない。ここで頑張っていただきたいのが環境省なんです。石原大臣、これについて意見を言って、ぜひ早く何とかしろというので言ってけしかけて、環境省の中でもそうですけれども、農林水産省にも考えてほしいということを言っていただいてもいいような気がするんですけれども、いかがでしょうか。

石原国務大臣 専門家でないので非常に主観的な話しかできないんですが、実は、この話はもう農水委員会で話題になっているという話を承知しておりまして、きょう朝、農林水産大臣と話をしたんです、この件については。きょう環境委員会でもこの話が出ますよと。午前中の環境委員会でも、友党の公明党の加藤先生からこの問題について議論がありました。

 素人から考えますと、これからもう少し知見が集まって、二〇〇八年、二〇〇九年に養蜂のミツバチの大量死亡が見つかって、この農薬を使うのをやめたらそれがとまっていれば因果関係というのはより明確化すると思うんですけれども、その後の二〇一〇年、二〇一一年、二〇一二年の数字を私は把握しておりませんので、本当にどこまで因果関係があるかということは言えないと思います。

 しかし、この農薬の使用をめぐっては環境省にも責任がありまして、環境への悪影響防止の観点から、農薬登録を認める基準の値を設定して、例えばこれを超える農薬の場合は、農林省の方に対してこれは不可ですよというような話をするという仕組みもございますし、また、環境への悪影響の懸念がある場合、特にこの農薬系は水分に非常に溶けるということでございますが、そこで田んぼに生息するものがいなくなった、確認できると思うんですね。そういう場合はリスク評価を実施していく。

 リスク評価をやるのは水・大気環境局の農薬環境管理室、こういう部屋まで実はあるわけですので、ネオニコチノイド系農薬については、特に農林省と連携して実態把握に取り組んでいかなければならない、そういう時期に来ているんだと考えております。

篠原委員 大臣から前向きな答弁をいただきまして、ぜひそうしていただきたいと思います。

 法律的にも、浜岡原発の停止と比べて、できるようになっているんです。農薬の登録を取り消す、これは因果関係が完全に明らかになっていないからよくないかもしれませんけれども、農薬取締法の三条に、「使用に際し、危険防止方法を講じた場合においてもなお人畜に危険を及ぼすおそれがあるとき」はと言う。では、人畜におそれがあるのかどうかというのが問題なんですね。

 さっき言いましたように、虫には悪いけれども人間には影響ないんだと。ところが、ニコチンというのはおわかりのとおり、お母さんがたばこを吸ったりするのは非常に悪いという。皆さんは科学者じゃない、私も同じ程度ですが、ニコチン系のものは胎児や何かに悪いんです。それで、そういうことがだんだん言われ出してきているんです。

 これも外国なんですが、米国アカデミーという非常に権威のある、日本で言うと学術会議みたいなところですけれども、子供の発達障害、異常行動の約三分の一は農薬等の化学物質が原因であるということを二〇〇〇年に言ったんです。二〇一〇年には、注意欠陥多動性児、ADHDと言われているもの、これに大きく関係がある。ネオニコチノイドの残留による子供への悪影響、これが相当あるんだと言われ出しているんですよ。

 それで、ちょっと十ページを見ていただきたいんですが、十ページは私が今言っているのと全然違う数字なんです。これはきちんとした調査じゃないんですけれども、一生懸命いろいろ調べていましたら、国立教育研究所の全国学力・学習状況調査をもとに、舞田さんという方が統計でもって推計しているんです。発達障害児の出現率が各県別にどうかというのを調べたんです。それで、今は物すごくこのネットを見ている人が多いんだそうです、初めて知りましたけれども。偏りがあるんです。滋賀県が多いんです。いじめの云々があったから、それで関係があるのかというので見た人がいるんだそうです。

 下を見てください。大都市、中都市、その他の市、町村で、大都市の方が多いんですよ。だから、私の言ったのと違う。農村地帯でというのとは違うんですね。今のところは社会的な問題だということで、愛着障害、子供たちが余り父親、母親と接してもらっていない人たち、そういう人の方が自閉症になったりこのADHDになっている確率が強いと言われているんです、心理学的な問題でということですね。だけれども、必ずしもそうじゃないというふうに言われてきている。

 そして、このネオニコチノイド系の農薬というのは、何でも効くので、ガーデニングだとか虫よけスプレーだとか、住宅の建材の中にも入っているんです。シロアリ駆除なんかです。だから、物すごく、知らない間にばんばん入ってきちゃっている。

 こういったことについて、厚生労働省は関心を持ったりして研究したりしているんでしょうか。

新村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、食品中の農薬の残留基準につきましては、食品安全委員会による、人への健康影響評価を踏まえて設定をしております。食品安全委員会におきましては、脳及び神経に対する影響を確認する毒性試験データ等を含む最新の科学的知見に基づいて評価しております。

 その中で、一部のネオニコチノイド系農薬につきましては、動物を用いた神経毒性試験の結果、高用量の場合には一定の症状が見られたということはございます。ただ、これは、一日当たり摂取許容量、ADIの根拠といたします無毒性量を大幅に超える用量を投与した場合であったということでございます。

 それから、食品安全委員会の委託調査として、平成二十二年度に、神経系に作用する農薬と注意欠陥多動性障害、先生がおっしゃいましたADHDを含む発達障害との関係についての疫学的な研究の文献を集める、そういった調査研究がされております。

 その中では、ネオニコチノイド系以外の農薬については文献があるようですが、このネオニコチノイド系農薬に関しての、疫学的なそういった発達障害との関連に関する研究、文献はまだ見つかっていないということでございました。

 いずれにしましても、厚生労働省も含めまして、ネオニコチノイド系農薬の人への健康影響については、引き続き、科学的知見に関する情報収集を行ってまいりたいと考えております。

篠原委員 まだちょっと動きが鈍いんですね。

 最後のページを見てください。日米EUの残留農薬基準値の比較表です。今、ADI、アクセプタブル・デーリー・インテーク、一日摂取許容量という話がありましたけれども、一番右側の方を見てください。この農薬名、ネオニコ系の農薬のADIはほとんど一緒なんです。〇・〇七一と〇・〇七、〇・〇六と〇・〇五七、どうしてちょっとずつ違うのかよくわからないんですけれども、これはしようがない。

 ところが、左を見てください。何倍というのが、真ん中に一番大事なのがありますけれども、残留農薬基準は日本が圧倒的に甘いんです。何でなんですか。放射能についてなんか、一ミリシーベルトだ二十ミリシーベルトだ、マイクロシーベルトだとか、さんざっぱら言われました。だけれども、国際基準というのがあると言われています。

 理由がわからないでもないんですよ。いっぱい食べたりしたりするのとそうじゃないというのでもって、うんと食べたりするのはきつくしなくちゃいけないんだろうなというのがあって、だから米のところはきつくなっていますよ、いっぱい食べるから。だけれども、ほかのイチゴやリンゴやスイカ、EUと比べてスイカのところで三十倍の緩さになっている。アメリカとはちょっと違うんですけれども、何でこんなに乖離があるのかなと思うんです。

 何というか、地道にやるということで、人間にも悪影響があるということがわかったんだったら、そういう文献があったりしているということで外国もそれを気にし出したと言うんだったら、まずイの一番にやるのがこの基準の改定じゃないかと思いますけれども、厚生労働省は、それについてはどうするつもりですか。

新村政府参考人 御指摘ありましたように、ADIにつきましては国際的にも基準がございますし、米国、EUともうほとんど同じ数字になっております。その中で、各作物ごとに基準値を定めていくわけでございますけれども、それぞれの作物での基準値とその作物を摂取する量とを掛け合わせてその総和を出した場合に、ADIの中におさまるようにするといったような設定の仕方をしております。

 そして、作物ごとの基準値を定める場合には、国内の、その農薬を使った場合に作物の中に残る値、作物残留試験データと申しますけれども、このデータに基づきまして設定する場合、あるいは国際基準を用いる場合、あるいは、外国からの要望があって、それに基づいて用いる場合等々ございます。先生おっしゃいましたような摂取量の違い等もございますし、農薬の使い方、効き方等の違い、そういったこともありまして、総合的に決まっている。

 いずれにしても、その基準値と摂取量とを掛け合わせてADIの中におさまっているということでございますし、実際の摂取量を調べますと、ADIに比べてもごく小さい場合がほとんどであるということで、現時点では安全性に問題はないと考えておりますが、ただ、いろいろな新しい科学的知見、これは当然収集しなければいけませんし、それをもとに、また改めて食品安全委員会と御相談していくこともあろうかと考えております。

篠原委員 この数字を見たら明らかです。イミダクロプリドはまあまあでいいんですが、ほかのは乖離があり過ぎます。これを直すのは当然です、気にすればみんな乖離しているんですが。

 最後に一つだけ、大臣と副大臣から、簡単でいいですから、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。

 やはり農薬は必要で、しようがないと僕は思う。しかし、きちんと丁寧にやるんだと思う。そこのところが丁寧じゃなくなっているのは、規模拡大して効率一点張りでやって、無人ヘリコプター、有人でもいい、ヘリコプターで空中散布です。子供たちはふらふらになるんです、あれを間違って浴びたりすると。私は、そんなことまでして効率を追い求めるべきでは絶対にないと思います。空中散布こそ即刻禁止すべきだと思いますけれども、まず農林水産副大臣、そして環境大臣にお答えいただきたいと思います。

 以上、これで私の質問を終わります。

江藤副大臣 悩ましい問題だと思います。

 もう先生は農政のプロですから、現在、その無人ヘリが高齢化が進んでいる農村地域でどれほどその作業効率の向上に資しているかということは先生が一番よく御存じで、昔のように、竹ざおを長くしたようなものでこうやってまいていくものは、まく本人にも非常に労働的にも負担がありますし、まく人間にも負担が大きいということもあります。

 私は、私の個人的意見として聞いていただきたいんですが、農林副大臣としても、やはり、無人ヘリをやめさせるというのはいささか乱暴だと思います。しかし、これの運用の仕方については、周辺に学校があるとか人家が近いとか、何時にまくのか、例えば登下校の時間は外すとか、そういった気配り、目配りは、今まで以上に、先生の御指摘のとおり、やるべき必要があるなということを今実感しております。

石原国務大臣 今、江藤副大臣がおっしゃられたとおり、やはり運用の部分、すなわち、どういうふうに事を行った場合にどういうリスクが発生するのか、環境省としては、このリスク管理を今検討して、まだ結論は出ておりませんけれども、しっかりとリスク管理を行うことによって農薬の空中散布による懸念というものを払拭するように、農林水産省、厚生労働省とともに取り組ませていただきたいと考えております。

篠原委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

吉野委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時九分散会


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