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第9号 平成26年6月6日(金曜日)

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平成二十六年六月六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤信太郎君

   理事 泉原 保二君 理事 田中 和徳君

   理事 盛山 正仁君 理事 吉野 正芳君

   理事 吉田  泉君 理事 河野 正美君

   理事 斉藤 鉄夫君

      赤枝 恒雄君    穴見 陽一君

      安藤  裕君    井野 俊郎君

      井林 辰憲君    井上 貴博君

      石川 昭政君    岩田 和親君

      小倉 將信君    大久保三代君

      勝俣 孝明君    川田  隆君

      小林 史明君    助田 重義君

      田野瀬太道君    中村 裕之君

      藤原  崇君    牧原 秀樹君

      八木 哲也君    荒井  聰君

      生方 幸夫君    近藤 昭一君

      小沢 鋭仁君    杉田 水脈君

      浮島 智子君    中島 克仁君

      林  宙紀君    野間  健君

    …………………………………

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    石原 伸晃君

   環境副大臣        井上 信治君

   環境大臣政務官      牧原 秀樹君

   環境大臣政務官      浮島 智子君

   政府参考人

   (内閣官房原子力規制組織等改革推進室長)     鎌形 浩史君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房原子力災害対策担当室長)     黒木 慶英君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       香川 剛広君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 五嶋 賢二君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 加藤 重治君

   政府参考人

   (水産庁次長)      香川 謙二君

   政府参考人

   (環境省大臣官房長)   鈴木 正規君

   政府参考人

   (環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長)   梶原 成元君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            清水 康弘君

   政府参考人

   (環境省水・大気環境局長)            小林 正明君

   政府参考人

   (環境省自然環境局長)  星野 一昭君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   森本 英香君

   環境委員会専門員     仲川 勝裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     八木 哲也君

  井野 俊郎君     安藤  裕君

  井林 辰憲君     川田  隆君

  大久保三代君     中村 裕之君

  生方 幸夫君     近藤 昭一君

  百瀬 智之君     杉田 水脈君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     井野 俊郎君

  川田  隆君     井林 辰憲君

  中村 裕之君     勝俣 孝明君

  八木 哲也君     田野瀬太道君

  近藤 昭一君     生方 幸夫君

  杉田 水脈君     百瀬 智之君

同日

 辞任         補欠選任

  勝俣 孝明君     大久保三代君

  田野瀬太道君     赤枝 恒雄君

    ―――――――――――――

六月五日

 大気汚染公害被害者に対する新たな救済制度に関する請願(青柳陽一郎君紹介)(第一一九九号)

 同(大西英男君紹介)(第一二〇〇号)

 同(河野太郎君紹介)(第一二〇一号)

 同(篠原孝君紹介)(第一二〇二号)

 同(菅原一秀君紹介)(第一二〇三号)

 同(大熊利昭君紹介)(第一二二二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一二二三号)

 同(上田勇君紹介)(第一二八四号)

 同(後藤祐一君紹介)(第一二八五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一二八六号)

 同(高木美智代君紹介)(第一二八七号)

 同(吉野正芳君紹介)(第一二八八号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一三二七号)

 同(吉野正芳君紹介)(第一三二八号)

 瀬戸内海環境保全特別措置法改正に関する請願(桜内文城君紹介)(第一二〇四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律案起草の件

 環境の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 環境の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房原子力規制組織等改革推進室長鎌形浩史君、内閣府大臣官房原子力災害対策担当室長黒木慶英君、外務省大臣官房地球規模課題審議官香川剛広君、外務省大臣官房審議官五嶋賢二君、文部科学省国際統括官加藤重治君、水産庁次長香川謙二君、環境省大臣官房長鈴木正規君、環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長梶原成元君、環境省総合環境政策局長清水康弘君、環境省水・大気環境局長小林正明君、環境省自然環境局長星野一昭君、原子力規制庁次長森本英香君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 小会派ながら最初に質問させていただくということで、各会派の理事の皆様に御配慮いただきました。初めに御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず初めに、最近報道されております政府事故調、福島第一原子力発電所事故の政府事故調査委員会の報告書、その資料の取り扱いについて、大臣にまず質問させていただきます。

 この政府事故調のヒアリングは、非公開で、任意の協力で行われたものと聞いております。そのような性格のヒアリング記録が御本人の意思に反して公開されてしまうと、今後、政府が何かの調査でヒアリングをしたいと思ったときに誰も協力しなくなってしまうという懸念があると思います。しかし一方、当時の証言から得られる教訓が広く共有されるということも非常に重要だと思います。

 菅官房長官は、昨日の記者会見で、本人の同意があれば開示可能と述べておられました。責任大臣である石原大臣のお考えと、現在の検討状況はどのようになっているのか、御質問させていただきます。

石原国務大臣 ただいま斉藤委員が御指摘されましたとおり、この案件については、事故当時の状況をできる限り詳細に、隠すことなく、包み隠さずお話しいただくために、原則として非公開を前提に、ヒアリングをされた方々の同意をもとに行われたものでございます。その上では、斉藤委員が前半おっしゃられたとおり、ヒアリング記録というのは不開示の扱いであるんだと思います。

 しかし、これも委員がおっしゃられましたとおり、本人の同意があれば、かなり貴重な記録だと私も思います、第三者の権利利益や国の安全に関する部分を除きまして開示するということは、官房長官が申しているとおり、問題はないんだと思います。

 七百七十二人の方から延べ千四百七十九時間にわたってヒアリングをしておりますので、この、本人の同意を取りつける上でも、人を確保して一対一で当たらせなければならない、そういう案件だと思っておりますので、既に事務方には、そのことを行うことのできる人間の確保も含めて指示を出させていただいております。

 本人の同意の得られたものにつきましては、委員の御指摘のとおり、情報公開法の規定に基づきまして、先ほど申しましたとおり、必要な範囲で開示してまいりたい、こんなふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 七百人を超える方にその御意向を確かめるというのは大変な作業だと思いますけれども、しっかり進めていただいて、多くのヒアリングの対象者の方から協力が得られて、それが貴重な人類の財産になるということを期待したいと思います。よろしくお願いをいたします。

 次に、私、きょうは、浄化槽、合併浄化槽のテーマでお聞きしたいと思っております。

 現在、いわゆる下水道、農村集落排水、また合併浄化槽、これらの普及率は、人口で、先日環境省からいただきました、全国平均で八八%の人がその恩恵に浴しているわけですが、逆に言うと、一二%の人はまだ、いわゆる汚水処理という文明の恩恵に浴していない方がいらっしゃるわけで、その方々にいかにそういう汚水処理を進めていくかというのは、いわゆる水環境という観点からも大変重要だと思います。

 これを見てみますと、やはり、密集地を抱えている大きな都市につきましては、下水道を中心に、例えば人口百万人以上の都市ですと九九・四%ということで大きく進んでいるわけですが、五万人未満の市町村におきましてはまだ七四%ということで、四分の一の方がまだその対象になっていない。

 ここを普及させていく必要があるわけですけれども、残った地域は、ある意味で密集地ではない人口分散地。そういうところに、今も、基本的には下水道管を敷設して進めていくんだという都市計画のところもまだたくさん残っておりますが、現実には、やはり合併浄化槽を設置していくという方が、トータルのコストで見た場合、また、市町村の負担を考えた場合、合理的であるのではないか。

 もちろん、出てくる水が下水道と同じような水質の水である必要はありますけれども、合併浄化槽の普及というのは、これから地方財政を考えたときにも非常に重要だ、このように思っておりますけれども、この点について、環境省として基本的にどのように考えているか、まずお伺いします。

梶原政府参考人 お答え申し上げたいと思います。

 今、浄化槽の特徴につきましては、先生がおっしゃられるように、水環境保全上、十分な処理水質が得られる、あるいは、特に人口が集中していない地域においては比較的に安価にできるということ、そしてまた、工事が非常に短期間で終わるといったような、すぐれた特徴を有しておるものでございます。

 そして、今後の汚水処理施設の整備は、これも委員がおっしゃられたように、人口の散在している地域が中心になるというふうに認識をしております。そのため、浄化槽の役割というのはこれまで以上に重要になると認識をしているところでございます。

 地域におきまして、こういった下水道、農村集落排水施設、あるいは浄化槽といったような施設整備が、適切な役割分担のもとで、かつ計画的に実施されていくために、効率的な汚水処理施設整備のための都道府県構想というものを策定しております。そして、この見直しをするためのマニュアルを本年一月に国交省、農水省とともに作成し、自治体の方に送付し、使っていただいているところでございます。

 環境省といたしましては、このマニュアルが活用され、人口減少等の社会情勢の変化あるいは集合処理の設備に十年以上を要するなどの状況に応じて積極的に活用されまして、集合処理から浄化槽への見直しも進むのではないかと期待をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、ますます浄化槽は重要なものだと考えております。この推進に努めてまいりたい、かように考えております。

斉藤(鉄)委員 今おっしゃったように、都市計画そのもの、将来ここには下水道がつくんだという都市計画のところは、合併浄化槽を個人で設置してもそれは無駄な投資になるわけです。しかし、いつ下水道がつくかわからない、こういう状況の中で、大変迷っていらっしゃる方もたくさんいらっしゃると聞きます。

 そういう意味では、その都市計画をきちんと見直すという地方自治体の努力がまず第一なんでしょうけれども、合併浄化槽が先ほど挙げられたいろいろな意味で有利だということを、環境省はもっとPRすべきではないかと思います。

 それからもう一つ、国交省が下水道、農水省が農村集落排水、環境省が合併浄化槽なんですが、その最初の国交省と農水省の補助事業だけは国庫補助率が二分の一、合併浄化槽は国庫補助率が三分の一。合併浄化槽については、特別な、低炭素社会対応型浄化槽については二分の一ということになっておりますけれども、そうではなくて、ある意味では、下水道や農村集落排水と同じスタートラインに立てる国庫補助率というのも今後の普及に重要だと思いますが、この点、努力はされているんですか。

梶原政府参考人 斉藤先生が環境大臣でいらっしゃったときに、その御指示を受けまして、例えば、市町村が設置する浄化槽や、窒素や燐が除去できるような高度処理施設の浄化槽、あるいは省エネ型の浄化槽といったものを集中整備するためのモデル事業を開始させていただいたところでありまして、そのモデル事業が、現在、平成二十二年度からでございますけれども、電力使用量を抑えた省エネ型の浄化槽については二分の一補助金ということでさせていただいているところでございます。

 なかなか財政状況が厳しい中ではございますけれども、この低炭素社会対応型浄化槽整備推進事業につきましては、平成二十六年度も実施させていただくということで進めさせていただいておりまして、引き続き、市町村の御要望に応えられるようにしっかりと財政支援をしてまいりたいというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 先ほどの、モデル事業としては二十三年度で終了しているけれども、個人設置型については引き続きやっているということでございますが、全ての合併浄化槽にこれが適用されるように、また拡大に、我々も頑張っていきたいと思いますが、環境省もよろしくお願いをいたします。

 それから、個人設置型合併浄化槽に対して、やはり、農村集落排水という考え方がございましたけれども、いわゆる市町村設置型の合併浄化槽、農村集落排水ではない市町村設置型の合併浄化槽の整備事業が、今後対応策の一つになっていく。そのためには、将来ここは下水道を引くんだということで残っている地域を、そういうことで変更しますよという都市計画の変更が必要になってきますが、そういうことも含めて進めていくべきと思いますが、いかがでしょうか。

梶原政府参考人 市町村設置型の浄化槽でございますけれども、これは、下水道事業と同様に市町村が主体となって進めるものでございまして、個々人の負担感を軽減するとともに、適正な管理を公的な責任のもとでやるというもので、期待できるものとして考えてございます。

 地域の実情に応じて、個人設置型の事業を推進するという市町村につきましては、引き続きこれを支援する一方で、市町村設置型の普及推進をぜひ図ってまいりたいというふうに考えておるところでございます。

 また、市町村設置型の事業の推進に当たりましては、例えば、近年の地方自治体の厳しい財政事情に鑑みまして、PFI等の官民連携の活用も考えられるところでございます。

 環境省といたしましては、平成二十四年から有識者による検討会を設置いたしまして、市町村設置型事業やPFI等の官民連携の活用の導入手順、また方法を整理しておりまして、自治体向けのマニュアルとして近くこれを情報提供という形で進めさせていただきたいと思っております。

 そのような形で、ぜひ、個人設置型に加え、こういった市町村設置型の推進についても進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

斉藤(鉄)委員 市町村設置型の利点の一つに、水質の管理に対して信頼性が高いということもございます。

 下水道を進めるべきだとおっしゃっている方の御意見を聞きますと、やはり、特に個人設置型の合併浄化槽は水質の信頼性に乏しいと。それは、定期点検など、ある程度きちんとやらなくてはならないわけですけれども、本当に、定期点検、個人設置型できちっと皆さんやっていらっしゃるかどうか、そういうことを考えると、やはり、下水道の方が水質はきちんと管理できるんだ、このようにおっしゃるわけです。

 そういう意味で、検査ということをしっかりやっていかなくてはいけない、信頼性を上げていかなくてはいけないと思いますが、この点についてはどうでしょうか。

梶原政府参考人 浄化槽の維持管理につきましては、例えば、新しく設置をした場合の検査、あるいは毎年の保守点検、清掃、それと、これは十一条検査、定期検査と呼んでおりますけれども、性能を確認するための定期検査というものを定めておるところでございます。

 そのうち、今、私ども重要だと思っているところは、浄化槽法十一条に基づきます定期検査、これは法定検査でございますけれども、この受検率が、近年上がってはきておりますけれども、平成二十四年度の段階で、全国平均としてはまだ五三%にとどまっているという実態がございます。これは必ずしも十分な水準のものではないというふうに考えております。そのため、前回の浄化槽法の改正に基づきまして、都道府県の維持管理の指導権限の強化といったようなものもしていただいたところでございます。

 こういった都道府県等によります維持管理の状況把握、そして、それを踏まえた指導監督の徹底など、関係機関やそれぞれの業者の方々との連携による取り組みを進めていくことが非常に重要だと考えておるところでございます。

斉藤(鉄)委員 今までの議論をまとめまして、最後に、大臣に質問させていただきたいと思います。

 合併浄化槽を推進していくためには、そういう意味で、都市計画の変更等、国土交通省、そして国土交通省の所管している下水道との関係、また、農水省の所管をしている農村集落排水との関係等、各省庁にまたがる、そして、ある意味で、領域境界部分ではかなりいろいろな議論がある、そういう分野でございます。

 しかしながら、トータルで考えて、今後、残された一二%の方々への水処理技術の普及ということを考えると、合併浄化槽というのは非常に大きなポイントになる。そういうことを含めまして、省庁間の調整、そして、浄化槽法そのものの根本的な改定、極端に言いますと、今後の水処理の基本になるのは合併浄化槽なんだ、そういう思想に基づいて浄化槽法の改正等も視野に入れていくべきではないか、このように考えておりますが、大臣のお考えをお伺いします。

石原国務大臣 委員の御指摘のとおり、これからの汚水処理は、やはり人口が少ないところが中心になるんだと思います。

 そしてまた、国土交通省、農林水産省、環境省と、汚水処理において手法によって分かれているということも事実そのとおりだと思います。そして、この合併浄化槽の果たしてきた役割と、これから合併浄化槽が果たすであろう役割が大きいということも、今の御議論を聞かせていただきまして、まさにそのとおりだと思ったところでもございます。

 今、後段の御質問でございました浄化槽法の施行状況、これを十分に把握させていただきながら、必要があるならば、御指摘のとおり、具体的な事項も含めまして、さらにこの浄化槽が普及できるような施策の充実というものを図り、全く何もない、そしていい水質のものを排出していただく、そういう形で取り組ませていただきたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 以上で終わります。

伊藤委員長 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)委員 おはようございます。民主党の近藤昭一でございます。

 きょうは、この環境委員会で質問する機会をいただきましたこと、委員長を初め委員、関係の各位にまず感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 関連ということで質問させていただきたいと思うんですが、自民党議員提案の議員立法の、地域の自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律案に関連をした質問をさせていただきたいと思います。

 まず大臣にお伺いをしたいわけでありますが、この法案に対して日本ナショナル・トラスト協会から意見書が提出されているわけであります。この意見書では、日本のトラスト活動というのは、自然保護行政の枠組みでは守り切れない自然環境を何としても開発の危機から救いたいという市民の強い自発的な意志を源とし、寄附金を集めて土地を買い取って守るという、主に民間団体が行う活動として展開されてきたとあるわけでありますが、この点について、環境省としてはどのように、大臣としてはどのように考えておられますでしょうか。

石原国務大臣 ただいま近藤委員が御指摘されましたとおり、ナショナルトラスト活動というのは、日本の良好な自然をしっかりと守っていこうという、民間団体の皆様方を中心に、全国で展開してきたものだと認識しております。

 先日、私、知床を視察してきたわけでございますけれども、そこは、町も一緒にコミットいたしまして、地方自治体が中心となって展開された活動のいい例ではないかと思っております。

 やはり、良好な自然、そして生物多様性をしっかりと守っていく、こういう意味では、市民団体の皆様方、これまでナショナルトラスト運動を中心的にやってきてくださった方々と行政が互いに連携していくことが重要ではないか、こんな認識でございます。

近藤(昭)委員 石原大臣、どうもありがとうございます。

 民主党としても、こうした民間の活動を推進していくことは非常によいことだ、重要なことだと考えております。

 ただ、一方では、過去のことではありますが、地方自治体については、トラスト活動団体に協力するとして土地を確保し、利用者優先の公園計画や観光施設の整備を推進し、結果的に良好な自然環境の保全につながらなかったという事例があると聞いておるわけであります。

 この法律が制定されるとそのような事例が増加してしまうんではないか、こういうおそれでありますが、あるのではないかと危惧している団体も数多くあるということでありますが、環境省はこの点についてどのようにお考えでありましょうか。

星野政府参考人 民間団体がナショナルトラスト活動を通じて取得した土地で地方自治体が観光施設等を整備し、利用の推進を図る場合には、地域住民、民間団体などの関係者と十分に合意形成を図りながら進める必要があると考えております。

 また、地方自治体がみずから寄附金を募り、ナショナルトラスト活動を実施する場合には、あらかじめ使途を明確にした上で寄附金を集めることが重要であると考えております。

 寄附金の使途につきましても、関係者と合意形成を図り、その目的に反した使われ方がなされないようにすることが必要だと考えております。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 ただ、そうしたことがあっても危惧があるということだと思うんです。寄附金は、使途を明確にして、そういった意味で募集し、そして合意形成を図っていく。ただ、それでも仕組みとして、違うところに違う使われ方をしてしまうのではないか、こういう危惧があると思うんです。そういったことに対する担保といいましょうか、保証といいましょうか、そうしたことについてはどのようにお考えでしょうか。

    〔委員長退席、盛山委員長代理着席〕

星野政府参考人 ナショナルトラスト活動は、良好な自然環境を国民または地域の財産として保存していくことを目的として、寄附金等による土地の取得を行い、その土地を維持管理する活動であります。

 このため、ナショナルトラスト活動により取得した土地につきましては、取得した団体が存続する限り、売却等による処分や、トラスト活動の目的と異なる利用がなされないことが原則であると考えております。

近藤(昭)委員 その原則がいかに守られるかということが大事だと思います。私は、そういうところの仕組みをしっかりとつくることが大事だということを改めて要請したいと思います。

 また、ナショナルトラストというのは、発祥の地が英国であるわけでありますが、この英国では、トラスト活動を通じて取得をした自然、今お答えがあったわけでありますが、良好な自然のまま大切な財産として永久に保存していく、これを原則としている、今まさしくおっしゃったことであります。

 しかし、私は、今も申し上げましたように、そのことがどう担保されていくかということが大事、そして今、それは原則ということをお答えになったわけでありますが、先ほど冒頭に御紹介させていただきました、日本ナショナル・トラスト協会からの大臣に対する要望書というのも、こうした基本方針はそうだ、原則はそうだ、では、それがどう守られていくかということが大事だと思うんです。

 どうでしょう。大臣、要望書を受け取られた立場として、改めて、そうした原則、原則はわかったんです、それをどう担保していくか、このことについてはどうお考えでありましょうか。

石原国務大臣 先ほど、ナショナルトラスト運動についての、概略についての認識をお話しさせていただきましたけれども、間違いなく、公と民でいうならば、民間団体の方々がこれまで中心になって、このままでは乱開発で自然が保全できなくなる、生物の多様性が維持できなくなるということで、先駆的にやられた方々がナショナルトラスト運動の原点であるということは、やはり肝に銘じまして、ただいま星野局長の方から御答弁をさせていただきましたとおり、しっかりと対応させていただくというふうに御理解をいただきたいと思います。

近藤(昭)委員 ありがとうございます。

 冒頭に大臣が基本的な立場をお話しいただいて、そして今、星野自然局長からも、そういう原則を守っていくんだということがあって、そして改めて大臣からも、そうした自然団体が目指してきたことを守っていくんだということでお答えをいただきました。ぜひ、そういう中で、本来の意味を貫いていっていただきたいというふうに思うわけであります。

 また、もう少し関連をして質問させていただきたいわけでありますが、民間のトラスト団体は、土地を取得するため、それぞれが創意工夫して寄附金を集め、それを多くの団体ではトラスト基金という名称で積み立てているわけであります。

 こうした中、法律案にあるように、地方自治体が自然環境トラスト活動基金を設置するということになりますと、民間のトラスト団体への寄附金が先細りしていくという心配はないのでありましょうか。そもそも地方自治体というのは、他の社会資本、インフラ整備と同様に、まずは税金で良好な自然環境の保全に取り組むべきと思うわけでありますが、いかがでありましょう。

星野政府参考人 各地方公共団体におきましては、限られた地方財政の中で自然環境の保全に取り組んでいるところでございます。一方で、十分な予算が確保できない場合には、基金を設置して、寄附金により自然環境の保全を行うことも有効な手段の一つとなり得ると考えております。

 地方公共団体が基金を設置して、みずからナショナルトラスト活動を実施しようとする際、既に地域で活動している民間団体がある場合には、これらの団体等と十分に連携することが必要だと考えております。

近藤(昭)委員 それは、やはり官民一体となって、それぞれよいところを力を合わせる、足りないところと言うとあれですが、ある意味で、いろいろなことが及ばないところはチェックし合う、補い合うということが大事だと思うんです。

 ただ、連携という意味はどういう意味かと局長にお伺いをしたいわけでありますが、民間の方でやはり心配をしているのは、非常にそうした団体、もちろん、それぞれの団体が、大きい小さいではなく、小さくても長い歴史の中でしっかりと活動してくる、それは、それぞれの団体の自己責任といいましょうか、そうした信頼の責任でもあるんだと思います。

 ただ、初めて寄附をするというようなときに、自治体のつくったそういうトラスト基金に対する信頼性の方が高いんだというのは、どうしても出てくるんだと思います。そこに対して民間の団体が危惧をしているということに対するもう少し、何というんでしょうか、不安といいましょうか、そうした不安、あるいは実際にそういうことが起こらないように対する担保をどうするかということをお聞かせいただきたいと思います。

星野政府参考人 私ども環境省といたしましては、地域に住んでいる方々が地域の宝として自然環境を保全する、そうしたトラスト活動は大変重要な活動だと認識しております。これまでも、そうした活動に対してさまざまな形で支援をしてきたところでございます。

 今後とも、そういった活動がまさに、ひいては日本全体の自然環境を守っていく上でも極めて重要な役割を果たしているということについて、その地域だけではなくて、広く国民に伝えていきたいと思っております。

近藤(昭)委員 どうもありがとうございます。

 広く伝えていただくだけではなくて、しっかりとそうしたものが、まあ、寄附する側に伝えていただくということだと思うんですが、そうしたことを広く伝えていただくとともに、これは自治体のことになるわけでありますが、国としても自治体とよく連携をし、国、自治体、そして民間団体と連携をして、本来の趣旨というか、もともと発祥したとき、先ほど申し上げた、そういうところが確実に生かされるようにお願いをしたいと思います。

 それでは、次の質問に参りたいと思います。

 原子力規制委員会の委員の同意人事についてということを質問させていただきたいと思います。

 二〇一二年六月に原子力規制委員会設置法は成立をしたわけであります。この第一条で、法の目的について、「一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消するため、」とあるわけであります。

 この原子力規制委員会設置法、私は、当時与党であったわけでありますが、与野党修正協議の与党側の座長として、田中先生、吉野先生、また公明党の江田先生と連日修正の議論をしたわけであります。

 当初、民主党政権であったわけでありますが、政府案から大幅に修正をされました。根本的なことであったと思います。それは、政府から独立した、いわゆる三条委員会として設立をさせていく。もう非常に大きな、修正というよりも、基本的な考え方というか、私たちも、きちっと規制をしていくことはどういうことが大事なのか、そういう中でこの設置法はやってきたわけであります。

 そういう中で、当時、自民党から、より確実に独立した、いわゆる規制と推進が今まで同じところにあった、それが大きな問題なんだ、国会事故調査会、政府事故調査会、民間事故調査会、それぞれの中で、日本の原子力行政の中で大きな課題として推進と規制が同じところにあった、このことによってある種のなれ合いあるいは課題が生じたんだ、だから規制と推進を分けなくてはならない、こういうことであったわけであります。

 そして、規制委員会を設置するとき、いわゆる推進の側で来た経済産業省ではない環境省の側に置く、こういうことになった。そして、当時の民主党政権のもとで政府案ができた。しかし、あの事故の中で、より独立したものを明確に国民の皆さんに見せるべきだという自民党からの提案もあり、そして、当時与党であった私たちも、そういう中で、では、独立した三条委員会でやっていこう、こういうふうに進んできたわけであったと思うわけであります。

 そういう中で、今回の人事の提案については、非常に私は違和感と危惧を持つわけであります。

 大臣にまずお伺いをしたいわけでありますが、これは政府、総理から国会に同意人事として提案をされるわけでありますが、環境省がかかわる原子力規制委員会の同意人事であります。まず大臣に、田中知さんの同意人事の相談はあったのかどうか、お聞きをしたいと思います。

石原国務大臣 ただいま近藤委員が、あの三・一一の大きな災害の後、原子力災害が発生し、大変混乱している中で、当時の与党民主党と野党自民党、田中委員も一緒になりまして、独立性の高い三条委員会、しかも、これまでの、原子力の利用と規制がエネ庁の中にあったというものを大きく変えて、利用の推進と規制と分けられてこの制度をつくられたということに、私は、原子力規制庁を外局として抱える環境大臣として本当に感謝を申し上げたいと思っております。

 そんな中で、今、人事案について認識していたのかという話でございますが、認識をはっきりとしておりましたし、相談には参画をしているということは申し述べさせていただきたいと思います。

近藤(昭)委員 そういう中で、私は先ほど、違和感があるということを申し上げさせていただきました。石原さんが非常に原子力の推進にかかわるところの組織に所属をしておられたということが、私は、かなり推進側におられたということだと思うんですね。

 そういうことで、石原大臣としては、そういった相談があった、そういう中で、石原さんに対してどういうふうな認識を持たれたのか……(発言する者あり)失礼しました、大臣。田中さんにどういうことを思われたのか、もう一度お聞かせいただきたいと思います。

石原国務大臣 私は原子力の推進側にはいないということを改めて申し述べさせていただきたいと思います。

 そして、くどいようですけれども、人事の、三条機関の委員の任命でございますので、外局で抱える環境大臣は、あくまでも相談という形で参画はしておりますけれども、任命権者は総理でございます。

 総理は、今回の人選に当たりまして、やはり、人格高潔、原子力に関して高い専門性、経験、そして高い見識、これは法律上の要件でもありますけれども、こういうものにのっとって適切な人選を行われたと私も思っております。

 三条委員会の議論がございました。独立性を持って、専門的知見に基づき、さらに、やはり大切なことは中立公正だと思います。この立場から原子力規制委員会の職務を全うする上で、私はこの方の人選というものはベストであると認識しております。

近藤(昭)委員 石原大臣のそういう御認識とはおっしゃるわけでありますけれども、当時、与野党協議の中で、新しく設置をされる規制委員会、この委員の選任に当たっては、まさしく今大臣も冒頭におっしゃったような趣旨で与野党が協議をして、そして、そのことを外から見たときに、なるほどということがわかりやすいようにというか、任命のときにある種の担保をしていく、チェックをしていくということで、いろいろと、欠格要件、あるいは欠格要件に準ずるということで、そうしたルールをつくろうということでやったわけであります。

 議員立法であったものがつくられる、しかし、その後、政府が、当時は民主党政権でありますが、その法律を受けて、政府としても、その欠格要件、そしてそれに係るガイドラインのようなものをしっかりつくる。そして、そのことに対して、逆に言うと、国会からは、そうした議員立法でつくるものに対して政府が要件やガイドラインをつくる、そのことに対するある種の不安といいましょうか、そういうものが随分出たんです。しかし、そういう中で、当時、私たちの政権もしっかりとそういうものをつくっていこうということで、要件とガイドラインを文書にしたわけなんですね。

 そういう中で、大臣、ちょっとお考えを聞かせていただきたいのでありますが、では、推進の側はどういう人たちを指すのか。あるいは、人によっては、推進にいたけれどもその中で非常に慎重な人なんだ、こういう言い方もされたりすることもあるわけであります。

 原子力事業者を定義するというときに、平成二十四年八月二十四日付の文書がありますが、議院運営委員長に提出した文書において、電力会社に加え、電力会社の子会社等経済的に強いつながりが認められるものとして、規制委員長、委員候補向け調査票に例示したものとして、日本原子力産業協会というのが明記をされているわけであります。そういう中で、田中さんは、この日本原子力産業協会の役員であったわけであります。このことに対してはどういうふうな認識でおられますでしょうか。

石原国務大臣 その点については、先月でございますか、官房長官がもう既に御答弁されておりますが、交通費等々も支給をされていなく、無報酬であった、こういうふうな認識をしているところでございます。

近藤(昭)委員 確認でありますが、官房長官のそのお話は私も聞きましたが、日本原子力産業協会の役員、これは三年間でしょうか。(発言する者あり)二年間。では、年数と、無報酬だったかということを改めて確認したいと思います。

森本政府参考人 お答え申し上げます。

 田中候補につきましては、平成二十二年六月から二年間、一般社団法人の日本原子力産業協会の理事ということでございましたが、当時において、交通費も含め全くの無報酬、非常勤ということでございます。

近藤(昭)委員 それはそれぞれの団体のあれかもしれませんが、交通費も含めて無報酬でどうしてやっていけるのかというか、それぞれの気迫というか何かあるのかもしれませんけれども、しかしながら、そういう無報酬であったということは確認をしました。

 では、そうした無報酬であるけれども、日本原子力産業協会というところの役員であった。先ほども申し上げました文書の中で、わざわざといいましょうか、例として日本原子力産業協会が明記をされているわけでありますね。しかしながら、無報酬だからいいということになるのでありましょうか。

森本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣からお話がありましたように、今回は、法律の要件に基づいて人選ということが行われ、当時のガイドラインを直接適用されるというものではございませんが、当時のガイドラインの運用におきましても、団体等の役職員については、無報酬の場合にはこのガイドラインの対象外というふうにしておりまして、非常勤かつ無報酬の理事であった田中氏の場合には、当時のガイドラインを当てはめたとしても欠格要件に該当するというものではないと考えております。

 なお、田中委員は、当時、現在もそうですが、東京大学の教授でございまして、いわゆる人材育成の観点から提言をするといった立場、産官学の人材育成の協力という立場から物を言うという観点から理事になられたというふうに承知してございます。

近藤(昭)委員 森本次長に改めて確認をしたいんですが、無報酬であればそれには該当しないということがガイドラインには書かれているということでよろしいでしょうか。

森本政府参考人 お答え申し上げます。

 ガイドラインは、非常に簡単なものでございまして、一枚紙で内閣官房の原子力規制組織等改革準備室のクレジットで出されたものでございますが、そこでは、いわゆるそういう原子力事業者等あるいは原子力等の団体というふうにしか記載してございません。

 ただ、実際に候補者がそれに該当するかについて調査をいたしておりまして、その調査票の中で、有償の場合のみ、報酬を受けている場合のみ報告をしてくださいという形で、調査票の方で明確にしておるというものでございます。

近藤(昭)委員 そこの関係をどう見るか、どう見るかというかどう理解していくかということだとは思いますが、報酬のある場合ということがあって、そして、その団体の例示の中に、今申し上げた、田中さんが所属をしていた団体があったということ。

 ガイドラインをどういうふうに理解をしていくかということはまたちょっとお伺いしますが、今次長がおっしゃったガイドラインは、今の政府においては継承されているのか継承されていないのか、そのことを改めて確認したいと思います。

石原国務大臣 先ほど、この人事案について、法に定められた要件を簡単に説明させていただきました。人格高潔、専門性そして経験、高い見識、これに照らして、今次長の方からお話がありましたとおり、情報収集も独自にさせていただきまして人選に当たったというのが事実でございます。

 民主党時代のガイドラインについては考慮しておりません。

近藤(昭)委員 民主党時代のガイドラインは考慮をしていない。

 そうすると、今は、自民党政権としてのガイドラインはあるのでありましょうか。

石原国務大臣 ガイドラインはございません。

近藤(昭)委員 そうすると、先ほど申し上げましたが、それは、私だけではなくて、当時、冒頭申し上げましたように、私は与野党協議の座長をしたんです。座長をしたときに、それは民主党も自民党もなく、とにかくあの事故の中でどういうふうな規制をしていくのか。それは原子力に対する考え方は意見が分かれるところではあるかもしれない、しかしながら、例えば推進であろうと、規制というものは徹底的にやっていかなくちゃいけない。

 ある種、逆の見方をすると、推進するという観点からすると、こういう事故が起きて、実は、原子力規制委員会の設置法があります。これは、もともと政府案で出たものを議員立法で多くの修正、三条委員会という大きな、根本的な仕組みも変えたわけでありますが、しかしながら、議員立法でつくったその規制委員会の設置法の前文にあるのは、少し前文を修正したところがありまして、改めてちょっと「目的」というところを読ませていただきたいんです。

 第一条の「目的」のところに、「一の行政組織が原子力利用の推進及び規制の両方の機能を担うことにより生ずる問題を解消するため、原子力利用における事故の発生を常に想定し、」事故の発生を常に想定するんだ、こういう文言が入っております。

 これは、民主党側から提案をし、与野党の協議の中で入れ込まれた文章なんですけれども、原子力を利用する側からも事故の発生を常に想定するんだ。つまり、推進するためという立場の方、推進するためにも徹底的な規制が必要なんだ、だから規制と推進を分けるんだと。

 そして、規制委員会の委員を選ぶときには与野党が合意をして、ガイドラインは当時の政権のもとでつくられているわけでありますが、そうしたガイドラインをつくって、徹底的にこうした人選については注意、注意というか原子力村からの離別というか、原子力村と分かれたところで人選をしていこうということだったんです。そういう中で、ガイドラインがないというのはいかがなものかと思うわけであります。

 大臣が冒頭おっしゃった精神はよくわかりました。そうした事故がないように、そうした人格あるいは知識、それは当時からもずっと言われていたんです。しかし、それをどう担保するかを、ガイドラインで担保していこうということだったんであります。いかがでありましょうか。ガイドラインがないというのは理解しがたいです。

石原国務大臣 前半もお話をさせていただきましたとおり、当時、非常事態の中で、与野党の垣根を越えて、三条委員会にして独立性を担保し、利用と規制を分けた。ここは、私は、当時幹事長でございましたけれども、政調会長等々、また、田中委員等々から報告を受けて承知をしているところでございます。

 そんな中で、民主党政権がガイドラインをつくられたという事実も承知しておりますが、私どもは、法にのっとって厳正中立なる、公平中立なデシジョンをしてくださる方として、自信を持って田中さんを委員として推挙させていただいていると御理解いただきたいと思います。

近藤(昭)委員 大臣がおっしゃる、自信を持ってそうした人選をしたと。しかし、これも繰り返しになります、当時、民主党政権ではありますが、与党も野党も協議をして、そうしたことをどう担保するかということで決めたんです。そして、当時は、さっき申し上げましたように、議員立法、まさしく自民党側からの修正の要請があり、提案があり、修正をした。修正したことによって、政府提案ではなくて議員立法になった。そして、議員立法になったけれども、その中で政府としてガイドラインをつくることになった。

 私は、本来、そういった意味では、当時、政権としても、いわゆる閣法としてきちっとそうしたガイドラインといいましょうか欠格要件というようなものをもっともっと書き込むべきだったというふうに思うわけであります。しかしながら、ガイドラインもつくった。そのガイドラインのつくり方は、とにかく与党も野党もなく、共闘して、このガイドラインでしっかり国民の皆さんにも、ああ、なるほど、こういう人選なんだということをわかってもらおうということでつくったはずなんです。それを、今大臣がおっしゃるように、そういう人物なんだ、だから大丈夫なんだと言われても、それは納得できないということなんですね。

 ガイドラインをこれからもつくる予定はないんですか。

石原国務大臣 ございません。

近藤(昭)委員 そうすると、大臣、国会事故調、政府事故調、民間事故調、それぞれが規制と推進、形ばかり分けてもだめなんです。経産省のもとにあったものを環境省と経産省、二つにきちっと分けた。しかし、分けたけれどもそこに来る委員が原子力村に関係が深い、いや、それは私がそう思うんだ、こうおっしゃるかもしれません。でも、だからこそ、そう思われないようにガイドラインが必要なんです。

 それをこれからもつくることがないというのはどうも、当時のことを考えると、与党も野党もなく、ましてや自民党側から三条委員会という非常に独立した委員会で、これはまさしく我々も考えたのは、外から見たとき独立性をしっかり持つということで、三条委員会、なるほどなと。国民の皆さんの生命を守っていく、本当に徹底的な規制をするためには独立委員会、そういうことをお互いに協議をし、理解し合って三条委員会にした。そして、委員は、そうした独立した人をきちっと選ぶ。そのことを担保していくためにガイドラインをつくった。

 私は、そのガイドラインをこれからもつくるつもりがないというのは、いささか、いささかというか全く理解できないわけでありますが、大臣、もう一度お聞かせをいただきたいと思います。そうしたことをどう担保していくつもりなのか。

石原国務大臣 ちょっと私もわからないんですが、ガイドラインは民主党政権の政策であって、自民党政権としてそのガイドラインをつくらないというのが政策でありますので、これは政権の側にぜひお任せをいただきたいと思います。

 そして、田中委員のことでございますが、私、経歴を見させていただきましたけれども、専門性は間違いなく、多くの方々が認識しているとおり、十分なものを持っていらっしゃる、また経験も、後輩の育成という形で東大で教授もされている、そして見識も持っていらっしゃる、報酬も受けていない。何でこの人がだめなのか、理解に苦しむところでございます。

近藤(昭)委員 それは、原子力の専門家かもしれない、専門家なんでしょう。しかし、規制の専門家ではないということだと私は思っています。

 それで、ちょっと時間がなくなってまいりましたので、もう一問質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど公明党の斉藤委員も質問されておられましたけれども、吉田当時所長の調書にかかわることであります。

 とにかく規制をきちっと独立してやっていこうということで、規制委員会の設置があったわけであります。そして、当時、私たちも政権にありましたから、そこをどうしていくかというのは本当に考えなくてはならなかったというふうには思っています。

 しかし、改めて、あの吉田調書というのが出てきて、新聞を通して読んでいるところでありますけれども、今必要とされているのは、万が一起こってしまった事故、残念ながら、大変な、今なお福島では十四万人もの方が避難生活を送っていて、自分の住んでいたところにも帰れないというところ。そして、吉田調書を見ると、残念ながら吉田所長の指示に従わなかった方が九割ぐらいいたというような、報道を通して私もそうだったのかということを知るわけでありますが、これは、いざとなったときの事故対応、緊急事故対応のときはどうするのかということについて、どうお考えなんでしょうか。

 つまり、非常に命がけ、命をかけなくてはならないような状況の中で、しかし、それをやらなくては、さらに大きな事故につながったときに多くの命が失われる、この中でどう対応していくかということについてはどうお考えなのか。いかがでありましょうか。

森本政府参考人 その点でございますけれども、福島第一原子力発電所の事故を踏まえての厳しい安全規制というのを導入して、それに基づいた審査を進めてございます。

 今回の規制に当たりましては、いわゆるシビアアクシデントが起きた場合の対応といったものを保安規定で盛り込むということ、それに基づいた手順というものを決めておくこと、そしてそれを事業者がしっかりと実施する、そういった点を審査の対象にしてございますので、そういった形で担保をさせていただくということかと思います。

近藤(昭)委員 そのことはわかっているわけです。

 私が改めて確認をしたいのは、いわゆる放射線量が高い中で作業をしなくてはならない、目に見えない。緊急的な措置として、いわゆる被曝量を緊急的に上げるわけでありますけれども、例えば、当時は緊急に上げたわけであります。そうではなくて、今度は、ああいう事故があったわけでありますから、それにどうしていくかということが詳細に決められていかなくてはならない。ですから、被曝量をどうするのか。

 しかし、その被曝量が高い中でもやらなくてはならないときがあるかもしれない、あるだろう。では、そのときに、あの吉田調書を見て感じたといいましょうか、私が認識したのは、やはり、ああいう中で命がけで行けということを、誰がどういう仕組みの中で命令を、命令というか指示をできるのか、そういうことが決まっていないのではないか、こういうふうに思うわけであります。いかがでしょうか。

森本政府参考人 繰り返しになりますけれども、そういった緊急時にしっかりした対応ができるように制度上の担保をするということに加えまして、事業者自身がそういった安全対策をやる、そういったいわば訓練をするということが必要かというふうに考えてございます。

近藤(昭)委員 利用者自身とおっしゃるけれども、森本次長だけの責任ではないんですが、お聞かせをいただきたいんです。

 さっき申し上げた、当時、本当にあんなことが起きてはならなかったわけでありますが、ただ、そういう中で、緊急的にいろいろと対応が行われていて、自衛隊が出動したり消防庁が出動したりしたわけですよ。利用者というか事業者というところで責任を持っていくということではとても、なおかつ、ああいう、吉田さんが証言をされたことが起きたわけですね。とても対応できるような仕組みがあるとは思えないわけであります。

 そういう意味で、大臣、最後に一つだけ質問させていただきますが、吉田調書というのは、私は、御本人の意思云々が報道もされておりますけれども、やはり、あの三・一一が起きた、その中で最も重要な調書ではないかと思います。そして、今申し上げたように、いざというときに、誰がどういう仕組みの中でその対応をする、まさしく命がけの対応を指示することができるのかということは、まだ決まっていないんだと思います。そして、そういうことはきちっと、当然つくらなくちゃいけない。そのことがないのに、再稼働なんてあり得ない。そして、そういうことをつくっていかなくてはならない、対応ということでつくっていかなくてはならないということでいうと、あの吉田調書はしっかりと公開をして、それを対応に生かしていくべきだと思いますが、いかがでありましょうか。

石原国務大臣 吉田調書がヒアリングされたのは、近藤先生を初めとする民主党の皆さん方が政権のときでございます。その政権が、非開示ということをお約束してヒアリングをされた。亡くなられて、今になってそれを公表するというのは、やはり余りにも乱暴なんだと私は思います。

 上申書を私は読ませていただきましたけれども、あの上申書は、やはり、シビアアクシデントを経験した経験を後世にしっかりと伝えていかなければならないという思いが非常に出てまいりました。その上で、ヒアリングの調書を事故調の皆さん方がエキスとして吸い取りまして、報告書を出されている。その報告書の中に思いはしっかりと入られているものだと認識をしているところでございます。

近藤(昭)委員 質問時間が終わりましたけれども、私は、吉田調書の、吉田さんがもともとヒアリングを受けた、そのことをしっかりと生かしていく、そのことのために、私は必要だというふうに思っております。

 以上です。ありがとうございました。

盛山委員長代理 次に、河野正美君。

河野(正)委員 日本維新の会の河野正美でございます。

 久々の環境委員会というイメージですけれども、今回、四十分時間をいただいておりますので、おつき合い願いたいと思います。

 今回は、我が国の環境政策についてお尋ねをしていきたいと思います。

 また、現在、我が党は、結いの党、みんなの党、生活の党、四党共同で、廃棄物の集積又は貯蔵等に起因する周辺の生活環境の保全上の支障の除去等に関する法律案、通称ごみ屋敷禁止法案というのを提出させていただいております。近い時期にぜひ御審議、御議論をいただけますよう、お願い申し上げたいと思っております。

 一方で、自民党さんを中心として、地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律案が検討されることとなりました。

 幾つか確認させていただきたいと思います。先ほどの近藤委員との重複もございますが、改めてよろしくお願い申し上げます。

 本法案提案の背景は、地域の自然環境を保全し、及び持続可能な利用を推進するためには、公的資金を用いた取り組みに加えて、利用者による負担、民間団体等が寄附金を募って行う土地の取得、管理など民間資金を用いた地域の自発的な取り組みを促進する必要があるということであります。

 いわゆる入山料などの形によって、一般の利用者からお金をいただくことになります。対象となる自然環境は、極めて広大な土地も想定されると思いますし、この場合、当然ながら、民間の土地が含まれていくことになってくると思います。

 法案では、地域計画作成に当たり協議会を設置できるが、組織されない場合は、土地所有者と協議になるということになっております。

 いずれにせよ、いただいたお金が明朗に使用されるのか危惧される声も聞こえてくるわけであります。また、協議会が設置されたとして、構成メンバーの選定基準が恣意的であったり、密室で議論が進められたりする懸念もあるのではないかと考えますが、そうした点について、どのように認識をされていらっしゃるでしょうか。

星野政府参考人 一般論として申し上げます。

 入域料等で集めた資金につきましては、あらかじめ使途を明確にして、利用者等の理解と協力を得ることが必要であると考えております。

 入域料等の検討に当たって協議会等を設置する際の構成メンバーにつきましては、土地所有者はもとより、地域にかかわる関係団体、地域住民、学識経験者等、幅広い関係者で構成することにより、公正さを確保することができると考えております。

 また、検討の過程や集めた資金の使用結果については積極的に公開するなど、透明性の確保が図られることが重要であると考えております。

河野(正)委員 次に、この法律が制定された際の影響についてお尋ねをいたします。

 法の制定後、入域料を取る地域は、法律に基づく場所と、そうでないところの二種類が存在することになります。利用者にとって、なぜ、何を根拠に入域料を徴収されるのかが不明確となるのではないかと思います。納得を得にくい場合もあると思いますが、法律による地域と、そうでないところが並立することは、利用者や国民を惑わせるだけではないかという懸念の声があります。いかがでしょうか。

星野政府参考人 特定の地域に立ち入る利用者に費用の負担を求めている事例が各地にございますが、その中には、自治体が条例等を定めて、税として費用を徴収している例や、協力金として任意で費用をいただく場合など、さまざまな方法がとられていると認識しております。

 一般論といたしましては、いずれの場合においても、費用の負担を求める場合には、その根拠を明らかにするとともに、徴収した資金の使途を明確にすることなどが重要と考えております。

河野(正)委員 お金をいただくわけですから、しっかりと、そういった明朗な形で運営をしていただきたいなと思うところであります。

 我が国では、自然環境を保全するため、古くからナショナルトラスト運動が行われてまいりました。その活動では、我が国固有の自然をありのままの姿で次世代に引き継いでいくことを重視しております。

 本法律案では、一定の特例措置を設けることなどによって利用を推進することを定めています。地域によっては、これまでのトラスト運動と矛盾を生じる心配も出てくるのではないかなと思います。

 こうした懸念はあるものの、いずれにせよ、我が国の豊かな自然環境を将来に受け継いでいくことを前提に施策を進めることが重要と考えておりますけれども、先ほども御答弁いただいたかと思いますが、改めて、大臣の認識をお伺いしたいと思います。

石原国務大臣 良好な自然を保全するだけではなくて、それをやはりしっかり管理して利用していただくということも、実は、民間主導のナショナルトラスト運動の中で行われているんだと思います。

 私、かつてテレビで見たんですけれども、イギリスの例として、民間の家の中、家といってもすごく広いんですけれども、全体がトラスト地になっていて、たまにドアをあけましてエコツアーなんかを入れている、そういう例もありますし、日本でもやはりそういうものがあるんだと思います。

 この点で、やはりしっかりと自然を守っていく、そして適切に利用して、そういうものが大切であるということを多くの方々に知らしめる。バランスをとりながら進める上で、今回の自然環境行政との不整合というものは実はない。

 ただ、いろいろな御懸念があるということはこれまでの議論の中でも明らかになっておりますので、そういう御懸念に対しては適切に対処をしていく、そういうものではないかと思っております。

河野(正)委員 ありがとうございました。

 次の話題に移りたいと思います。

 国連に所属する環境関連の条約としては、国を越えた連携により、直接的、間接的に我が国の自然環境を保全し、我々の生活を豊かにするというふうになっております。我が国は、ラムサール条約を一九八〇年、生物多様性条約と気候変動枠組み条約を一九九三年に批准して、国内的にも保全を進め、また国際的にも貢献をしてきたものだと認識しております。

 まず、国際的な環境関連条約への加盟の際の我が国の考え方についてお尋ねをしたいと思います。そうした条約を批准する際、あるいは批准をしないという場合、どのような考えで判断しているのか。あるいは、判断の根拠となる基準などがあればお示しいただきたいと思います。

香川(剛)政府参考人 お答え申し上げます。

 一九七二年の国連人間環境会議というのを大きな契機といたしまして、生物多様性、海洋、化学物質、廃棄物といったさまざまな分野におきまして、種々の環境条約がこれまで採択をされてきております。

 我が国といたしましては、これらの環境条約を締結する際の具体的な理由はさまざまであるわけですけれども、地球規模の環境問題について幅広く関係国と協力して取り組むという基本的な考えのもとで、それぞれの条約を締結してまいっておる次第でございます。

河野(正)委員 しかし、日本がこれら国連の環境条約の中で長年批准を行っていない条約がございます。それが、移動性野生動物の種の保存に関する条約というものであります。一九七九年にドイツのボンで採択されたことから、通称ボン条約とも呼ばれ、一九八三年に発効しているわけであります。もう三十年以上たっているということになります。

 当然ですけれども、野生生物、動物には国境がありません。地球上を広く移動する野生の動物種を関係する国が連携して保護を図るための条約がこのボン条約であります。現在、百十九カ国が加盟をしているというふうに聞いております。

 我が国がなぜこれを批准しないのか、疑問に思っているところでございます。ボン条約に加盟しないのはなぜなのか。これまでの交渉過程、経緯、批准しない理由をお示しいただけますでしょうか。

香川(剛)政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のとおり、ボン条約につきましては、一九七九年に採択されて、一九八三年に発効しております。

 本条約につきましては、条約が定める規制対象種等において、ワシントン条約初め我が国が既に締結した関連条約との関係で重複もございますし、その整理が必要だという判断でございまして、本条約の締結によって我が国が新たに負うことになる義務と、これら既存条約によって我が国が既に負っている義務との関係について十分に整理を行った上で本条約を締結するか否か決定をしてまいりたいというふうに考えている次第でございます。

河野(正)委員 検討ということで、今もう三十年たっているわけであります。

 例えば、渡り鳥やウミガメなどの種が、ある季節を東南アジアで過ごし、再び日本に移動するような場合、双方の国が保護努力を払わなければ種の保全というのは図れません。そういったことから、条約による取り決めのもとで国内での保全を進める一方、その動物が移動する国々が持っている制度や情報、保全のための技術、方法、これを共有することも極めて大切な要素になってくるんだと思います。

 特に、太平洋の移動ルートにも位置する島国である我が国において、そうした移動性の動物たちにとって重要な餌場や繁殖場所を提供しているという点を鑑みますと、この条約をできるだけ早急に批准することも重要ではなかったのかと感じております。

 さらに、私自身、医師としての立場から申し上げますと、昨今の、野生動物のもたらす、国を越えて伝播している伝染病予防などのためにも、事前の情報を共有しておくこと、これは有効かつ重要な問題ではないかと考えるわけであります。

 そこで、本日は、環境省、農林水産省、外務省の方々にお尋ねをいたしたいと思います。

 まず、環境省として、ボン条約の批准に向けてどう取り組んできたのか。批准が実現しなかった理由についてもお尋ねしたいと思います。

星野政府参考人 我が国がボン条約を批准していない理由につきましては、平成二十四年九月に閣議決定した、生物多様性国家戦略二〇一二―二〇二〇、これに記載しているとおりでございまして、「本条約で捕獲が禁止される動物について意見を異にする部分があるため、」ということでございます。

 なお、ボン条約への締結及び関連する協定、覚書への参加につきましては、その締結等により我が国が負うこととなる義務と、我が国が締結済みの他の条約により我が国が負っている義務との関係について十分な整理が必要であることから、慎重に検討しているところでございます。

河野(正)委員 実際、環境省がこれら移動性の野生動物の保全を推進する上で、この条約に加盟することで生じるデメリットというのも、今ちょっとお話しいただいたんですけれども、改めて具体的にお聞かせいただけますでしょうか。

星野政府参考人 平成二十四年九月に閣議決定した国家戦略に書いてあるとおり、政府として、こういう認識のもとに現時点で締結しておりませんけれども、現在、この条約に基づく義務、さらには関連する条約の義務等について検討しているところでございまして、そういうことでお答えとさせていただきたいと思います。

河野(正)委員 先ほどお話にありましたように、生物多様性国家戦略には、ボン条約については「継続的な情報の収集に努め、必要な場合には、本条約または関連する協定・覚書への対応も検討します。」というふうに文言が書かれているかなと思います。

 この対応状況について、改めて、これは外務省さんでしょうか。どちらかお願いします。

香川(剛)政府参考人 お答え申し上げます。

 このボン条約の規定につきましては、締結から時間がたっておりまして、見直しが行われておりますし、他の条約についても見直しが行われて、新たな規制とか、導入されているところがございます。

 そうした各協定の動向を十分見定めながら、先ほど申し上げましたように、我々が負うことになる義務、他の条約との関係というのを引き続き整理して、検討しているということでございます。

河野(正)委員 引き続き検討がもう既に三十年たっているわけですから、その点で疑問に思って、きょうは質問させていただいているところであります。

 次に、農林水産省の方にお尋ねをいたしたいと思います。

 ボン条約が対象としている野生動物について、農林水産省としては、具体的に、どこがどのようにデメリットとなると判断されているのかをお聞かせいただきたいと思います。

香川(謙)政府参考人 このボン条約の附属書1には、ウミガメ、海鳥、それから鯨類の一部が掲載されておりまして、締約国はこれらの採捕が禁止をされるということになっております。

 我が国は、小笠原諸島でウミガメ類を漁獲しております。一方、また、ウミガメ類等は定置網漁業、マグロはえ縄漁業で、海鳥はマグロはえ縄漁業でやはり混獲をされております。

 我が国は、ウミガメ及び海鳥の混獲回避措置を推進しております。これは、いわゆるFAOの措置あるいは地域漁業管理機関の決定に従って行っているものでございます。

 私どもとしましては、これらの資源、既存の漁業条約との関係を整理する必要があると思っておりますし、一方、また、本条約に加盟した場合、混獲の関係、それから将来の商業捕鯨との関係で実施が困難になるという可能性も懸念しているところでございます。

河野(正)委員 ウミガメ、海鳥、鯨ということを言われました。

 具体的に、改めてお伺いしますけれども、どの種が一番問題となっているわけでしょうか。

香川(謙)政府参考人 まず、本条約附属書1に掲載されておりますアオウミガメにつきましては、小笠原で漁獲をされております。また、附属書1に掲載されております全てのウミガメ類、それから、海鳥ではアホウドリ、ハワイシロハラミズナギドリ等は、定置網及びマグロはえ縄漁業で混獲されております。

 鯨類につきましては、附属書1掲載種のうち、イワシクジラとマッコウクジラが商業捕鯨の対象種となり得るところでございます。

河野(正)委員 三番目に鯨というふうなあれでしたけれども、一般的には、鯨が問題になってこの条約が締結されないのではないかなという声が大きいんじゃないかなと思います。

 この点、ボン条約では留保という選択肢がございます。留保は、加盟国で資源利用などする種に関して、条約の適用を除外される措置であると思いますけれども、こういった措置をすれば、鯨というのが仮に問題であったとしても、留保をしておけばいいのではないかなと思います。実際に、同じ捕鯨国でもありますノルウェーは、捕鯨対象種を留保した上で批准をされているわけでございますけれども、この点について、障壁となる可能性、あるいは、こういった留保ということを使って批准をするという可能性について御見解をお聞かせいただきたいと思います。

香川(謙)政府参考人 ノルウェーが捕鯨対象種を留保して本条約に加盟しているという事情は、事実は承知しておりますが、その理由等を私どもは完全に承知しているわけではございません。

 農林水産省といたしましては、我が国においては、捕鯨だけではなくて、先ほど申し上げましたウミガメ漁業が存在していること、それから、定置網及びマグロはえ縄漁業におけるウミガメ類及び海鳥類の混獲問題を抱えているということがございます。それから、一方において、既存のFAO及び地域漁業管理機関においては、このような混獲に関する削減措置が既に決定されているという状況がございます。

 したがいまして、私どもとしましては、既存の漁業機関との関係を整理するとともに、我が国漁業に対する影響も踏まえて、これらの種を留保して本条約に加盟するかどうか、慎重に検討する必要があるというふうに考えております。

河野(正)委員 続きまして、外務省の方にお尋ねをしたいと思います。

 ラムサール条約や生物多様性条約、気候変動枠組み条約など、我が国が積極的に貢献している条約は幾つもあるのではないかなと思っております。こうした貢献が、国際社会において我が国が地球環境保全に力を入れているということを内外に示すとともに、我が国の信頼を高めているものだと思っております。逆に、それらの条約に加盟していることによって我が国が受けているデメリットがあるとすればどういった点でしょうか、お聞かせください。

香川(剛)政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生がお挙げになりましたラムサール条約、その他のさまざまな条約がございます。そうした条約に国際社会とともに、関係国とともに取り組んでいくということについての意義は高いものがあるというふうに考えております。

 ただ、外交上どうメリットがあるのか、デメリットがあるのかというのは、それぞれの条約を十分検討した上で判断していくものだというふうに考えておりまして、外交上の意義については、国際協力を進めていくという意義は十分あるというふうに考えておりますけれども、具体的には、さまざまな条約との関係、国内担保措置とか、さまざまな観点から総合的に判断していくものだと考えております。

河野(正)委員 では続きまして、ボン条約について、先ほど来お話があるように未加盟なわけですけれども、この未加盟なことによって外交上不都合な点、我が国にとってデメリットはあるでしょうか、外務省さんとしての見解をお尋ねいたします。

香川(剛)政府参考人 ボン条約は、移動性の野生動物種の保全を国際協力、国際社会とともに取り組んでいくという趣旨でございまして、そうした意味では一定の外交の意義があることはもちろんでございます。

 ただ、本条約を締結する際の我が国の対応としては、先ほど来申し上げているように、既存の条約等の整理から検討してまいりたいということでございます。

河野(正)委員 引き続き、検討、整理をずっとされているということなんですが、過去、この条約を取り上げた国会審議というのも幾つか見られます。平成五年四月二十七日火曜日に開かれました衆議院外務委員会、気候変動枠組み条約、生物多様性条約審議におきまして、当時、川島実委員が質問されております。

 政府は、ワシントン条約、ラムサール条約とボン条約の対象に重複があること、ボン条約締結により発生する義務と既存条約による義務との整理が必要なので、十分に整理し、慎重に検討するとの趣旨で答弁をされておられます。これは平成五年でございます。

 これまで、どのように整理し、慎重に検討、相当慎重に検討されていると思いますけれども、いかがでしょうか。

香川(剛)政府参考人 先生が御指摘いただきました衆議院外務委員会での答弁のとおりでございまして、引き続き、このボン条約を締結した場合の影響について検討しているということでございます。

河野(正)委員 三十年前の条約で、平成五年の外務委員会から相当慎重にされていると思いますので、今度はもっとスピード感を持って検討して、早急に結果を出していただきたいものだと思います。

 前後しますけれども、渡り鳥についてお尋ねをしたいと思います。

 条約となっております野生生物のうち、渡り鳥については、二国間で協定を結ぶことでその保護を図っていると聞いております。これらの具体的な状況について環境省さんの方に教えていただきたいと思います。

星野政府参考人 我が国では、アメリカ、オーストラリア、中国及びロシアとの間で、渡り鳥やその生息地等の保護に関する二国間条約、協定を締結しており、これらの枠組みに基づき、渡り鳥の捕獲規制や希少種に係る共同調査などを行っているところでございます。また、韓国との間でも、日韓環境保護協力協定に基づき、渡り鳥の保護等に係る協力を行っているところでございます。

 加えまして、東アジア、オーストラリア地域を飛来する渡り性水鳥とその生息地の保全を図るために、我が国とオーストラリア政府が中心となって、関係する国、国際機関、NGO等から成る国際的な枠組み、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップを設立し、その保全活動の促進を図ってきたところでございます。

河野(正)委員 しかし、二国間の渡り鳥条約は、今お話がありましたけれども、機能していない例も見られるということであります。

 シマアオジというものは、日本では北海道に渡ってくる夏鳥で、越冬地は主に中国南部というふうにされております。この鳥は環境省のレッドリストにも掲載されており、越冬地である中国での保護活動が極めて重要な問題になってくるんだと思います。しかし、にもかかわらず、中国で大量捕獲ということが指摘されております。

 渡り鳥条約では、一方の国で保護対策を行う対象となっていれば、相手国に通報し、協力を求める条項がございます。しかし、中国との条約にはその規定がないため、保護を進める有効な手段がないということであります。

 日本がこうした通報を受けた種は、種の保存法の国際希少種に指定されます。

 このように、二国間で結ぶ渡り鳥条約が種の保全にとって役立たない例もあり、しつこいようですが、ボン条約を締結することが有意義ではないかと思いますけれども、こういった問題についてはいかがでしょうか。

星野政府参考人 日中渡り鳥保護協定では、日中両国におけるシマアオジを含む渡り鳥の捕獲を禁ずるとともに、その生息環境の保護及び管理のため、適正な措置をとることなどが求められております。また、中国とは、定期的に会議を開催し、協定に基づく渡り鳥の保護の推進を図っているところでございます。

 シマアオジに限らず、日本に飛来する渡り鳥を保護する上では、二国間条約等の相手国だけではなく、渡りの経路上に位置する東南アジア諸国等との協力も重要となります。

 そのため、先ほど申し上げましたフライウェイ・パートナーシップなどの取り組みを積極的に進めてきたところでございます。

河野(正)委員 次に、調査捕鯨について伺いたいと思います。

 調査捕鯨につきましては、現在、国際的にいろいろ言われているところであります。また、ことし三月末の出来事でありますけれども、国際司法裁判所が、南極海における我が国の調査捕鯨の中止を命じました。

 事前の予想に反して、日本の完敗といった報道もございます。事前の予想に反してということですから、どのように予想されていたのか、そして、完敗と言われる理由について見解をお聞かせ願いたいと思います。

五嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 政府といたしましては、あり得べき判決の内容につき種々検討を行い、あらゆる可能性を排除せずに判決に臨んだところでございます。

 その上で、判決において、裁判所は、第二期南極海鯨類捕獲調査、JARPA2が国際捕鯨取締条約第八条一の規定の範囲にはおさまらないと結論づけておりますが、その理由として、JARPA2の計画及び実施が、表明された科学的な目的を達成するために合理的であることを証明していないとの指摘がございました。

 我が国といたしましては、政府関係機関が一体となり、また内外の有力な専門家の全面的な協力を得まして、ICJの裁判に誠実かつ真摯な姿勢で臨み、日本の立場と考えを全力を尽くして明確に主張したつもりでございますが、結果的には、説得力が不足していたことが敗因の一つではないかと考えております。

 今後、外務省といたしましては、日本が国際約束に基づいて実施する措置や事業が、その当該国際約束や関連の国際法と整合的にあるかについて、より高い意識を持って関係当局と協議をし、また、関連の情報収集それから分析を入念に行っていくよう努めてまいりたいと思っております。

河野(正)委員 この報道によりますと、最強の布陣をもって臨んだ、そして、最低でも数千万円単位の弁護報酬を使ったというふうに報道されております。

 一体幾らぐらいかけたのか、お答えいただけますでしょうか。

五嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十二年度から二十五年度の四年間にわたる本件の裁判の関連費用でございますが、全体で約三億三千五百万円となってございます。

河野(正)委員 三億三千五百万かけて完敗をしてしまったということで、しっかりと今後は頑張っていただきたいと思います。

 改めまして、調査捕鯨は科学目的であるという点をしっかりと主張していかなければならないんだと思います、そうしないと国際社会で理解を得られないというふうに考えておりますが、調査捕鯨は科学目的であるという点についてどのような認識をされているのか、お聞かせいただきたいと思います。

香川(謙)政府参考人 我が国は、鯨類は他の水産資源と同様に重要な食料資源であるということで、科学的根拠に基づき持続可能な形で利用されるべきとの基本的認識に基づきまして、商業捕鯨の再開を目指して、そのために必要な科学的情報収集を目的として鯨類捕獲調査を実施してきたところでございます。

 裁判におきましては、政府関係機関が一体となりまして日本の立場と考え方を全力を尽くして明確に主張いたしましたが、判決においては、第二期南極海鯨類捕獲調査が国際捕鯨取締条約第八条一、これは科学目的のための捕殺の規定でございますが、この範囲にはおさまらないというふうにされたところでございます。

 主な判決の指摘といたしましては、目標サンプル数の根拠が不十分であるということと、非致死的手法の実施に対する検討が不十分であるということは指摘をされたところでございます。

 私どもといたしましては、四月十八日に、その後発出されました農林水産大臣談話で述べられておりますように、農林水産省としては商業捕鯨の再開を目指すという基本方針を堅持しつつ、平成二十七年度以降の南極海鯨類捕獲調査については、本年秋までに、判決で示された基準を反映させた新たな調査計画を国際捕鯨委員会科学委員会へ提出すべく、関係府省連携のもと、全力で検討を進めることとしているところでございます。

 なお、国際司法裁判所の判決は、第二期北西太平洋鯨類捕獲調査の中止は求めておりませんが、いかなる将来的な特別許可の発給に際しても、本判決に含まれる理由づけ及び結論を配慮するということを期待するとする部分がございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、本年度の北西太平洋鯨類捕獲調査については、判決に照らしまして、目的調査を限定するなどして、規模を縮小して実施しているところでございます。

河野(正)委員 調査捕鯨は科学的根拠に基づいているという点を確立した上で、国際社会でしっかりと発信していただきたいと思います。

 今回、誤解されていらっしゃる方も少なくないのではないかなと思いますが、中止命令というのは、あくまで南極海での調査捕鯨についてであります。にもかかわらず、北西太平洋など、南極海以外でも中止論が出てきたと思います。実際に、出航直前まで政府の考え方が示されなかったがゆえに、現場の方々が大変に苦慮、困惑されておられました。実際に、その方々のお声も聞きました。

 我が国の外交姿勢に関しては、辛辣な言い方をすれば、弱腰ではないかという方もいらっしゃるかと思います。南極海の中止命令で、ほかの地域もやめておこうかといった、こうした姿勢についてはいかがなものかと思いますが、政府見解をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

香川(謙)政府参考人 三月三十一日の国際司法裁判所による南極における捕鯨訴訟の判決を受けまして、政府において、具体的な対応につきましては、判決の内容を慎重に精査した上で真剣に検討を行ったところでございます。

 委員御指摘のとおり、今回の判決は、第二期南極海鯨類捕獲調査についてなされたものでございますが、その判決の中では、条約第八条一のもとで、いかなる将来的な許可を与える可能性を検討する際にも、本判決に含まれる理由づけ及び結論を考慮することが期待されるという部分がございます。

 このため、私どもといたしましては、北西太平洋における調査捕鯨の実施計画を決定するに当たりまして、判決において示された基準を考慮した内容となるよう慎重に検討を行った上、計画を策定し、実行しているところでございます。

河野(正)委員 若干話題がそれるかと思いますけれども、ウナギというのも保護について議論があるのかと思います。我が国に限らず、ウナギというのは食文化として大変重要な種であると思いますが、この点について、今後食文化が守られていくのか、現状の御認識をお聞かせいただきたいと思います。

香川(謙)政府参考人 今漁期のシラスウナギの採捕量は、昨年漁期を上回ったと承知しておりますが、長期的に見ますと、八〇年代以降低水準で、かつ減少基調にございます。

 シラスウナギの採捕量は、年ごとの海流などの海洋環境の変動により増減するものと考えられており、今漁期、漁模様が良好であったということをもって、直ちにニホンウナギの資源が回復したと判断すべきではないと考えております。

 委員御指摘のとおり、ウナギは日本の重要な食文化でございます。そのためにも、将来にわたって持続的利用が図られるよう、引き続き、国内外での資源管理対策の取り組みを進めていく必要があるというふうに考えております。

河野(正)委員 ウナギは、御承知のように、稚魚を育てるという形でシラスウナギをとってきて、養殖が行われるというふうになっていると思いますけれども、根本的に、一〇〇%養殖をするということは技術的に可能なんでしょうか。技術あるいは研究開発の状況を教えていただけますでしょうか。

香川(謙)政府参考人 シラスウナギの人工生産につきましては、平成二十二年に独立行政法人水産総合研究センターが、委託プロジェクトの研究の成果として、実験室レベルでの完全養殖、これは子供から親、親から子供を生産するという完全養殖に成功したところでございます。

 さらに、平成二十五年には、新たに開発した大型水槽、これは約一トンのサイズでございますが、ここでのシラスウナギの生産にも成功しております。

 しかしながら、シラスウナギの人工種苗の大量生産実現のためには、抜本的な省力化や省コスト化を図る必要がございます。このため、本年度から、給餌システムの改良、飼育水の効率的な交換等の実証試験を開始したところでございます。

 今後とも、シラスウナギの大量生産システムの早期実現に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。

河野(正)委員 ぜひ、よろしくお願いいたします。

 時間もありませんので、最後の質問に移りたいと思います。

 ことし五月九日の信濃毎日新聞夕刊に、環境省が生態系保全のために重要海域を設定するという見出し記事がございます。海に生きる多様な生物を守るため、環境省の有識者会議は、日本の排他的経済水域内で生物学や生態学の観点から重要な場所を重要海域として初めて選定したということであります。沿岸域で約二百八十カ所、沖合は表層と海底に分けて約五十カ所に上るということであります。海域の具体的区域や特徴などの説明を完成させた後、ことしの夏に公表する方針ということでございますが、そろそろ季節的には夏も近づき、暑くなってまいりました。現時点での進捗状況がわかりましたら、教えていただきたいと思います。

    〔盛山委員長代理退席、委員長着席〕

星野政府参考人 環境省では、平成二十三年度に専門家による検討会を設置して、平成二十五年度までの三年間をかけて、生物多様性の観点から重要海域を抽出する作業を行ったところでございます。

 現在、環境省におきまして、公開することで違法な採取等が起こる可能性のある希少種等の情報について精査しているところでございまして、こうした点を整理した上で、この夏ごろには公開をしたいと考えております。

河野(正)委員 ありがとうございました。結果は夏ごろ発表されるということでございますので、それを待ちたいと思います。

 きょうは、ボン条約、調査捕鯨についても含めてお尋ねをしてまいりましたけれども、やはり三十年来放置されている条約があるということは非常に問題があるのではないかなと考えておりますし、しっかりと早急に検討、相当慎重に検討され続けておりますので、結果を出していただきたいなと考えております。

 最後になりますけれども、我が党が提出しておりますごみ屋敷禁止法案、しっかりと審議していただけますようお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、井林辰憲君。

井林委員 自由民主党の井林でございます。

 きょうは質問させていただく時間をいただきまして、ありがとうございます。通告にのっとって質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、環境政策の基本的な問題の一つといたしまして、やはり一般廃棄物行政というものが極めて重要なテーマだというふうに考えています。

 この施設、やはり整備をしていく上では個別具体の議論というものもございますけれども、私の地元、静岡県藤枝、焼津で構成をする志太広域事務組合において、現在、二つの清掃工場と一つのリサイクルセンターが稼働中でございますけれども、ダイオキシン問題等で建設がピークを迎えた時期からかなりの時間が経過をいたしまして、老朽化も進んでいるところでございます。

 循環型社会の形成を見据えた新たなクリーンセンターの整備事業を行っているところでございます。こうした事業は、地元の理解も進めながら事業を実施しているところでございますけれども、環境省が所管をしている循環型社会形成推進交付金をいただきながら事業進捗を図っているところでございます。

 まずは、環境省として、その事業進捗、把握している部分をお教えください。

梶原政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘の志太広域事務組合のクリーンセンターでございますけれども、その本体工事は平成二十八年度から予定をされている、そして、本年度二十六年度と来年度二十七年度につきましては、その工事に先立ちまして、測量や環境に関する調査等を実施する予定であるというふうに承知いたしているところでございます。

 これらの調査事業につきましては、循環型社会形成推進交付金といたしまして、平成二十六年度において、要望額に対しまして九二%の内示をしているところでございまして、入札等の手続を経て順調に事業が進捗するものではないかと考えておるところでございます。

 今後とも、事業の進捗に支障が生ずることがないように、市町村からの御要望の中身についても把握をしていきたいと考えております。

井林委員 ありがとうございます。

 平成二十六年度、十分な予算の手当てをいただいているということでございますけれども、循環型社会形成推進交付金は、平成二十五年度では日本全体の要望額に対して六四%という、非常に厳しい状況だというふうに伺っています。

 また、先ほど申し上げましたダイオキシン問題等で清掃工場等の建設が一斉に行われた背景もあり、これからその交付金の需要が非常に伸びてくるというふうに考えられます。

 また、こうした施設というのは、地元とやはり理解を深めながら、呼吸をしっかりとりながら整備を行っていくということが非常に重要だというふうに思ってございます。

 これから自治体のそうした呼吸でうまくこの整備が進められるように、十分な交付金の予算確保を今後とも安定的にしていくことが必要だというふうに思いますけれども、予算のことでございますのでなかなか難しいとは思いますけれども、ぜひ環境省の強い決意をお示しいただきたいというふうに思います。

井上副大臣 お答えいたします。

 市町村が整備する一般廃棄物処理施設、委員の御指摘のように、地域の生活基盤を支える大変重要なインフラとして必要不可欠なものであると考えております。

 他方で、やはり地元にはいろいろな御意見もある中で、恐らく自治体の方々、地元の方々が大変な苦労をされながら調整をされているという施設だと思っております。

 そして、ダイオキシン対策のため整備した多くの施設がちょうど老朽化によって一斉に更新期を迎えているというのが現状である。ですから、今その需要が増大をしつつあるということで、それであれば、やはりしっかり我々も財政支援をしていかなければいけないと考えております。従来から大幅に増額をいたしまして、平成二十五年度補正予算で六百四億円、また、平成二十六年度当初予算においても三百四十三億円を確保したところであります。

 環境省として、市町村が一般廃棄物の処理をしっかり行っていただくためにも、本交付金予算の確保が極めて重要と考えておりまして、引き続き、可能な限りの対応に努めてまいりたいと思います。

井林委員 ありがとうございます。大臣も手を挙げていただいたということで、大変強い決意が環境省の当局にあるということを確認させていただきました。

 次に、ちょっとテーマをかえさせていただきまして、自然環境保全とそれを持続可能な状態で利用するということについて質問させていただきたいというふうに思います。昨年登録されました富士山世界文化遺産登録と環境保全というテーマで質問させていただきたいというふうに考えています。

 富士山は、まず、昭和十一年に富士箱根伊豆国立公園に指定をいただきました。その後、昭和二十七年には特別名勝、そして、平成二十三年には史跡、そしてさらに、昨年の平成二十五年六月二十二日には関連する文化財群とともに、「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」という名で、日本の文化遺産としては十三件目の世界文化遺産に登録をいただきました。また、今国会では、山の日も国民の祝日として制定をされました。

 今後も富士山に多くの方に親しんでいただかなければなりませんし、文化遺産とはいえ、その象徴的な施設である富士山のスタートはやはり国立公園であるということ、そして、信仰の対象と芸術の源泉としての富士山の環境保全について伺いたいというふうに思っています。

 環境保全を行うには、まずその実態把握ということが極めて重要だと考えています。環境省では登山者数の把握のために平成十七年から調査を行っていると聞いておりますけれども、平成十七年と昨年までの利用者数をお答えいただくとともに、その傾向をお答えいただきたいというふうに思っています。特に、文化遺産登録後の富士山の利用の動向をどのように把握しているか、また、その結果について環境省としてどう評価をしているかということをあわせてお伺いいたします。

星野政府参考人 環境省では、富士山の登山者数を把握するため、平成十七年から各登山道の八合目付近に赤外線カウンターを設置して、開山期間中の登山者数調査を実施しているところでございます。

 調査を開始いたしました平成十七年の登山者数は二十万二百九十二人でありました。これと比較して、平成二十五年の登山者数は三十一万七百二十一人になり、大幅にふえているところでございます。

 また、遺産登録直後の昨年七月の登山者数は、前年七月と比較して大幅にふえたものの、最終的には平成二十四年の登山者数三十一万八千五百六十五人をやや下回ったところでございます。これは、世界遺産登録効果による混雑を避ける人が多かったこと、さらには、マイカー規制の期間が拡大されたこと等が理由として考えられます。

 環境省では、把握した登山者数のデータを活用して、登山者が特に多いと推定される日を特定いたしまして、この期間にパトロールを重点的に行い、清掃、利用案内、安全指導、救護等に努めてまいりたいと考えております。

 なお、世界遺産に登録をされた昨年には、石原大臣の御指示を受けて、本省の職員も含めて環境省職員を現地に配置いたしまして、パトロールの強化を図ったところでございます。

井林委員 まずは十分な実態把握と、そして、できる限りの保全活動をしていただいているということで、また改めて御礼を申し上げます。

 一年間で三十万人を超える水準で推移をしている富士山利用者に対しまして、地元市町村は、駐車場や下山道の整備や標識、そして案内所の充実などさまざまな整備、そしてまた、快適に使っていただくためのそうした努力を行っています。

 こうした中、例えばですけれども、小山町では、富士山の登山口である須走五合目に新たなインフォメーションセンターの設置や、バス発着所、そして駐車場の設置等、さらなる充実を図る計画があるというふうに聞いています。国立公園内でありますのでいろいろな制約もあると思いますけれども、こうした、自治体がしっかりと将来を見据えて整備を行っていくということは、環境保全と両立した利用ということでは進めていかなければいけないことだというふうに思っています。

 今の現状と、そして環境省としてどういうような支援をしていただいているのかということをお答えください。

星野政府参考人 富士山の各登山口における利用施設につきましては、国立公園として、さらには世界文化遺産としてふさわしい整備のあり方を景観面、機能面、必要性等の観点から関係者と検討して、認識を共有した上で進めていくことが重要であると考えております。

 須走口五合目におきましては、時期によって既存の駐車場の容量を大幅に超える路上駐車が確認されているところでございます。このため、平成十九年より車道のマイカー規制が実施され、その取り組みは年々強化され、混雑緩和の成果が見られているところでございます。

 こうした成果を踏まえまして、須走口五合目周辺における新たなインフォメーションセンターやバスの発着所、駐車場等の整備につきましては、その必要性も含めた議論が必要であると考えております。安全かつ適正な利用の推進を図るため、地元町を含めた関係者と十分調整をしながら、具体的な検討をしていきたいと思っております。

井林委員 ありがとうございます。

 こうした世界文化遺産にも登録された富士山でございますので、地元として誇りある施設だというふうに地元の方々は思っていると思いますので、ぜひ、地元のそうした熱意に応えるような、そうした対応を積極的にとっていただければというふうに思います。

 さて、富士山のような、自然環境保全と持続可能な利用を両立させ、推進するためには、先ほど申し上げましたような、自治体の整備や、さらには国の支援のほかに、民間や利用者などから利用料などという形で、寄附ということになるんでしょうか、を募りながら、自発的な取り組みを推進する必要もあるというふうに考えています。

 昨年度、静岡、山梨の両県では、富士山保全協力金の試行といたしまして、登山者から任意で千円の協力金をいただくという試行を十日間行いました。ことしからはこれを本格的に導入するというふうに聞いています。

 このように国立公園等において利用者から料金を徴収することについて、国立公園を所管している環境省としてどのように受けとめているか、まずはお考えをお聞かせください。

星野政府参考人 富士山を初めとするすばらしい日本の風景地、我が国を代表する自然の風景地が国立公園になってございます。そういう国立公園には、登山者や観光客、多くの方々が訪れて、その自然に親しまれているというところでございます。

 一方、利用者が集中することによるトイレの混雑や管理コストの増大への対応、利用マナーの普及や利用者の安全確保、関連する情報提供の充実などが課題となっているところでございます。こうした課題に的確に対応していくためには、一定のコストが継続的に必要になると考えております。

 このため、地域の実情に応じて関係者との丁寧な合意形成、使途の明確化など、適切な過程、手法のもとで、利用者にも費用の一部負担をお願いしていくことは、自然環境の保全と持続可能な利用の充実に資するものであると考えております。

井林委員 ありがとうございます。

 一定の合意形成を丁寧にとりながらという答弁をいただきました。

 実際に、文化遺産登録をされました富士山は、登山口が四カ所ございまして、それも山梨、静岡両県にまたがっております。そしてさらに、八合目以上は浅間神社が土地を所有しているというふうに、多くの関係者が存在をしていて、そこに三十万人以上の方々が毎年登っていられるというような状況でございます。

 それぞれの県や登山口ごとの歴史や実情も、また抱えているものが個別にございます。やはり、ある程度国がリーダーシップをとって方向性などを見せていくことが必要であると考えますし、また、富士山の総合的な保護管理の推進に向けて、国立公園を所管している環境省として今後どのように取り組んでいくつもりなのか、最後に大臣にお答えをいただければというふうに思います。

石原国務大臣 昨年世界文化遺産に登録された富士山は、人類共通の宝だと私は思います。

 ことし、私ごとで恐縮ですが、後援会の旅行会で、富士宮の方からあの登山道のところへ行かせていただきまして、あそこの湧水もすばらしいですし、また、徳川公が寄進された神社も本当にすばらしいものでございました。こういうものをしっかり保護管理していかなければならないと思っております。

 これまでも、自然公園法に基づいて開発規制は十分に行ってきたと思いますし、登山道等々のばらばらな標識もいけないので、統一的なものにするような取り組みも行ってまいりました。

 また、昨年は、富士山ビューポイント、ここから見るといいですよというようなところの設定や整備。やはり、多くの方々が、ああ、ここ、いいね、魅力の向上に資するような政策というものをやっていかなければならないと思います。

 先ほど星野局長からも答弁させていただきましたとおり、たくさんビジターがいらっしゃるときにはレンジャーも増員をいたしまして、レンジャーの制服も新しくなりましたので、ことしも、要所要所で皆さん方に、すばらしい山であるからこそ、来山される方々をしっかり守ってください、そういうことを、現地の管理体制の強化というものを図らせていただいたところでございます。

 関係する静岡県、山梨県、関係団体で構成する協議会、これもございますので、関係者で連携して、まだまだ課題はあると思います、山積する課題の解決に向かって努力してまいりたいと考えております。

井林委員 ありがとうございました。

 大臣も富士山に行っていただいたということで、地元も大変喜んでいるというふうに思います。文化遺産でございますけれども、やはり富士山そのものの自然環境のすばらしさと、そしてそれを多くの人が利用しているからこそ文化遺産として登録できたというふうに考えてございます。

 ぜひとも、環境省におきましては、これからも、富士山の環境保全とそして持続可能な利用ということを通じて、この文化遺産登録をさらによりよいものになっていく一つの契機として、御支援をいただけますようにお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、小林史明君。

小林(史)委員 自由民主党の小林史明でございます。

 このたびは、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。先輩方のお気遣いに心から感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきたいと思いますが、まず、趣旨からお話をさせていただきたいと思います。

 もともと環境省というのは、水俣病を代表するような公害が発生をする、こういうところをどのように抑えながらこの日本の美しさを守っていくかというところからスタートしたというふうに理解をしております。

 私自身も、そういったところは大変大事だというふうに思いながら勉強させていただいておりましたけれども、地元や各地域の方々の話を聞いていると、少し状況は変わってきて、企業や民間の方々、地域の方々と一緒に環境保全という課題を乗り越えてきた。そして今、きれいに保たれる中で、今度は、観光や例えば水産資源など、その地域でなりわいをどうやって成り立たたせていくか、こういう、全体を含めた豊かさをどうやってつくっていくかというところに視点を移していかなければいけないのではないかというふうに思うようになってまいりました。

 実際に、環境省さんの政策もそのような方向に移ってはいるんですが、ぜひそれをより強く打ち出していただきたい、そういう思いで、きょうは、地元、故郷の瀬戸内海を中心にお話をお伺いしたいというふうに思っております。

 私も、瀬戸内海再生推進議員連盟というところに所属しまして勉強させていただいたんですが、実は、この瀬戸内海は、水質を再生しようということで、瀬戸内海環境保全特別措置法というのがございました。瀬戸内海というのは工業地帯にもなりまして、一時期は、たくさん有機物が流れ出すというところから赤潮が大量に発生する、こういうことを防止しようということでできた法律でありますけれども、実際今どうなっているのか、まず現状把握をさせていただきたいと思いますので、この瀬戸内海における水質の環境基準の達成状況、そして赤潮の発生状況などをお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 ただいまお尋ねがございました、瀬戸内海における水質の状況でございます。

 今先生から御指摘ございました瀬戸内海環境保全特別措置法、また水の関係の基本法であります水質汚濁防止法に基づきまして、水質の総量削減という取り組みをしてまいりまして、陸から流入してまいります有機性の汚濁であるCODですとか、あるいは栄養塩類であります窒素、燐、この流入負荷量は大幅に削減をされてきたということでございます。

 その結果、瀬戸内海の水質は全体として改善の傾向にございまして、例えば、平成二十四年度の窒素及び燐の環境基準達成率は九八・三%となっております。同様の閉鎖性の海域であります東京湾が八三・三%、あるいは伊勢湾が五七・一%にとどまっているところと比べますと、相対的には高い水準にあるというふうに考えているところでございます。

 一方、平成二十四年に豊後水道において、十億円を超える赤潮による被害が発生するというふうなこともございまして、一部の海域で、いまだ、赤潮、あるいは酸素濃度が減る貧酸素の水塊の発生というふうなことが確認をされております。また、秋から冬にかけて、栄養塩不足によるノリの色落ちという被害の報告もございます。

 そういう意味で、海域ごと、季節ごとに課題がさまざまな形であるのかなというふうに考えているところでございます。

 また、最近注目していくべき生物多様性の観点からは、魚類を初め多くの生物の生息、生育の場として重要な藻場ですとか干潟、こういうところの減少が確認されているというのが現状でございます。

小林(史)委員 ありがとうございます。

 まさにおっしゃるとおりで、その湾ごと、地域ごとによって、また状況が違うと思いますし、非常に難しいのは、この赤潮の発生要因というのが科学的にはなかなか解明をされていないという状況で改善をしていくというのは非常に難しいのかなというふうに思います。

 お答えにもありましたけれども、地元の中でも、水がきれいになり過ぎて魚が減ったであるとか、本当に、ノリに色がつかない。まさになりわいに影響が出るような状況もあるんだという厳しいお声もいただいておりますが、その認識及び今後の対応についてお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 今御指摘ございましたように、水質をきれいにするということで、いろいろな関係者と協力をして取り組みを進めてきたところでございますが、一部の海域におきまして、流入する栄養塩類が減ったことによって漁獲量が減るという現象がないのか、こういう御指摘がございます。

 こういったことを科学的に議論してまいります中央環境審議会におきましても、専門家などでこういった議論が行われたことがございます。その議論の中におきましても、いろいろな御意見があるわけでございますが、栄養塩類と漁獲量の間の明確な関連性は必ずしも確認されていない、もう少し研究の余地があるというような議論の経過でございました。

 魚介類に影響を及ぼします要因といたしましては、先ほども申しましたような、魚介類の生息、繁殖の場としての藻場とか干潟の存在がどうかということ、それから、特に底層の方でございますと、溶存酸素量が十分あるかどうかというようなこと、それから、漁獲量でございますので、水産資源の管理方法ですとか、そういった社会的な要因もかかわってまいります。

 そういった観点も含めまして、今後、研究者と連携を図りながら調査研究を進め、科学的知見の蓄積や栄養塩類の適切な管理のあり方の検討をしていくことが必要、そういう認識に立っております。そういった、専門家と協力しての研究というのも開始しているところでございます。

小林(史)委員 ありがとうございます。

 この質問で環境省の政策を非難したいわけでは決してなくて、非常に残念だなというふうに思ったことだけを、ぜひ何とか前向きにやっていただきたいなというのが、地元の漁業者からは、これはきれいにし過ぎるからだめなんだ、要は環境省が厳し過ぎるんだということでお怒りをぶつけになる。環境省としては、水質をきれいにしたいんだという本来目的を達成しようとするというところなんですけれども、本来は、地域の海を豊かに使うということを考えるならば、目的は一緒であって、決して利害関係が対立するものではないはずなんですね。

 こういったお話があってから、いろいろ御協力をいただいて、環境省さん、そして水産庁さんとお話をしていただいて、地元漁業者ともお話をいただいて、一つの方向に向かっていくような体制をおつくりいただいていることを心から感謝申し上げたいと思いますし、これからも引き続き、前向きな議論を進められるような体制をぜひ続けていただきたいということをお願いしたいと思います。

 一点だけお願いをしなければいけないのは、水質を改善するというのは大事なことなんですが、見た目で水の透明度を上げるというところにもし着目をすると、水の中のプランクトンがふえれば間違いなく透明度は下がる、これは間違いないことですね。透明度を上げようとすると、これはプランクトンを減らすということですから、プランクトンが減れば魚も減るということになってしまいます。

 まずプランクトンがふえて、それを魚が定期的に食べて、そのバランスがとれている状態というのが、一番水質が安定して、いい状況だと思いますので、このあたり、順番もいろいろあると思いますけれども、ただ単に見た目にきれいにするというところにいかないように、ぜひ注意をいただきたいというふうに思っております。

 さて、少し海の中の話がありましたけれども、実は、海の上、瀬戸内海では漂着ごみというのも問題になっております。さまざまな河川から流れてきたり、島も多い地域なものですから、潮流によって多くのごみが島に漂着をするというものがあります。

 瀬戸内海の環境保全を図るためには、環境省としても、この漂着ごみへの対応も支援を行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。

浮島大臣政務官 小林委員にお答え申し上げます。

 漂着ごみ対策といたしましては、平成二十四年度の補正予算で、海岸漂着物地域対策推進事業といたしまして、二十五年度、二十六年度の二カ年の基金で約百億円創設をしているところでございます。また、瀬戸内海を含めまして、全国各地域で海岸の漂着物の回収、処理、発生抑制等の対策に対して効果的に御活用いただいていると承知をいたしているところでもございます。

 私も、何カ所か漂着ごみの視察に行かせていただいたんですけれども、あるところでは、人魚の里と書いてありまして、どんなにすばらしい海かと思って入りましたら、ごみの里で、とても驚きました。

 それと、漂着物というのは、一旦きれいにしたらそれで終わりということではなくて、継続的にやっていかなければならないものと考えております。そんなところからでもそうですけれども、数多くの地方自治体、公共団体等の方からも、二十七年度以降も財政支援が必要だという強い御要望をいただいておりますので、環境省といたしましても引き続き努力をしてまいります。

小林(史)委員 ありがとうございます。同じ瀬戸内海を抱える浮島政務官のお答え、大変心強く思います。

 その中でもあったんですけれども、平成二十四年度の予算で二カ年の基金をつくっていただいたということで、大変活用いただいているということなんですが、これは大変いい施策だというふうに思っています。

 私のいる瀬戸内海の地域でも、漁業者と地域の若者とが連携をしてごみを回収しに行く。しかも、無人島になんですね。これは年に二回やっていまして、一回に二、三百人参加をして、多くの若者から子育て世代、そしておじいちゃん、おばあちゃんまで参加をして、非常にその島を楽しんで帰って、さらにはその予算も少し広げて使わせていただいて、環境を啓発するような、そういったところまでやらせていただいております。これは大変大きな施策だと思います。

 ぜひ、継続して予算を獲得していただいて、来年度以降も使えるようにしていただきたいと思いますが、ここも注文をつけて大変申しわけないんですが、実は、その地元でやっている団体というのはもう何十年もやっているんですが、毎年毎年、県からアンケート、調査を受けているんですね。それで実態を把握しているにもかかわらず、この基金の予算、実は手を挙げていないんです。毎年調査をかけて、相当手間をかけてアンケートに答えているのに、何でそれを教えてくれないんですかねと。これは普通の人の気持ちだと思うんですよね、把握しているのになぜ助けてくれなかったんだろうと。

 これは、いろいろな政策判断が県でもあったんだと思うので、県を非難するものではないですけれども、ぜひ環境省の皆様にお願いをしたいのは、実施主体が県や市などの自治体になっていますけれども、実際に実行しようとすると、地元の団体とかNPO法人とかこういうところの協力というのが必ず必要だと思うんですね。彼らがやりたいと言わない限りはなかなか実現できないと思いますので、そういう属性の団体にはぜひ周知をするような、こういう広報もぜひ工夫をしていただけるようにお願いをしたいというふうに思います。

 それでは、少し話が移りまして、今度は、先ほどの御質問でもありましたけれども、富士山の話もありましたが、瀬戸内海が、実は、国内では初めての国立公園に指定をしていただいた地域であります。ことしで八十周年を迎えている地域でございますので、こちらの活用について少しお話をお伺いしたいと思います。

 二〇二〇年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されるということで、海外からたくさんの旅行客の方が訪れるということに我々は期待をしておりますけれども、やはり、この方々になるべく地方に行っていただくということが大変重要なのではないかというふうに思っております。

 二〇五〇年には人が住まない地域がたくさん出るというふうに言われておりますけれども、やはり、日本全国の各地域に、特に過疎地と呼ばれるような自然豊かな場所に対して人が行き、そして、そこで観光客からお金をいただき、なりわいを立てていくことができれば、人がそこに定住をし、そこから人が住まなくなるということはなくなるというふうに思っております。

 そういった意味でもこの観光というのは大変重要だと思いますが、国立公園など各地方のすばらしい自然景観を生かして海外からの観光客を地方に誘致すべきと思いますけれども、環境省のお考えはいかがでしょうか。

星野政府参考人 海外から日本を訪れた観光客の数は、二〇一三年に一千万人の大台を突破したところでございます。東京オリンピック・パラリンピックが開かれる二〇二〇年に向けて、政府一丸となってさらなる増加を目指しているところでございます。

 訪日観光客数をふやし、観光立国を実現するためには、東京や大都市だけではなく、日本各地に世界じゅうから観光客が訪れる必要があると考えております。

 国立公園は、日本を代表する自然の風景地であり、世界じゅうの来訪者を引きつけるに十分な潜在的な魅力があると考えております。ナショナルパークという言葉は世界のスタンダードになっておりまして、どこの国の国民も、国が責任を持って大事な自然を守って、そこへ行けばすばらしい自然に会えるという場所でございます。

 先生御指摘されたように、ことしは我が国の国立公園が誕生して八十年、節目の年でもございます。環境省といたしましては、外国人目線による課題の抽出や、インターネットを活用した海外向け情報発信サイト、外国語版のリーフレットの作成など、外国人が訪れやすい国立公園の実現に向けて、鋭意努力していきたいと考えております。

小林(史)委員 大変前向きな回答をいただきまして、ありがとうございました。

 そういったことを考えると、今度は、国立公園の、地方自治体が整備している観光客用の施設というものもたくさん存在しております。こういう整備をしっかりやっていかなきゃいけない。これは国の方針としてあるんですけれども、これは、地方自治体のものであればやはり地方自治体の予算として整備をしていかなきゃいけないというところで、大変な負担もありますし、なかなか財政的な余裕がないというところもあります。この老朽化した施設をどのようにしていくかというのを考えねばならないと思います。

 例えば、観光地に行って、なかなか、自然豊かなところですから、アスファルトで舗装された、そんなきれいなところではないですけれども、急に外国人の方が行かれて、例えば、そこのお手洗いが和式だったりとか、余り美しくないとか、そういうことがあればがっかりされるでしょうし、外国人観光客の不満のトップスリーに必ず入ってくるのは、無線LANの環境であります。

 観光立国だということで、今政府としても無線LANの配備というのは力を入れるという方針を出していただいておりますけれども、地方の国立公園にもあるということは必要なんじゃないかなというふうに思うんですね。やはり、美しさが売りだ、景観が売りだということであれば、その美しさを発信していただかなきゃいけないと思うんです。

 今、ソーシャルネットワークが非常に発達をして、個人の発信力というのが大変重要になってきていますし、外国人観光客個人が発信している情報こそが、実はさまざまな外国人観光客をさらに誘致するエネルギーになっているというふうにも言われています。

 井林先生を応援するわけではないですけれども、富士山の山頂から見える景色というのも大変すばらしいですね。ただ、あそこというのはなかなか、エリア設計というのは非常に難しいですし、個別の携帯会社の電波というのは入っているんですけれども、外国人観光客の方がやはり使いたいのは無線LANなんですね。我々が海外に行っても、どこに無線LANの基地局はあるんだろうなと探しに行くような場面もあったりします。外国人観光客の方にとっては、そういった環境整備が大事だと思います。

 こういった整備に対して、地方自治体にも何らかの支援が必要かと思いますが、それを含めてお考えをお伺いしたいと思います。

星野政府参考人 国立公園内で地方自治体が整備した施設の老朽化が進んでいるということは、私どもも十分把握しております。御指摘のとおり、和式トイレも多く残っている現状にございます。

 今後、国立公園を訪れる外国人観光客の数が増加していくという状況に対処するためにも、外国人にとっても快適に利用できる公園利用施設を整備する必要があると考えております。

 そのため、案内施設や解説板の外国語表記の推進、トイレの洋式化など、公園利用施設の国際化対応のための整備に対する地方自治体への支援も検討しながら、国立公園における外国人観光客の受け入れ環境を充実してまいりたいと考えております。

 また、今先生が御指摘された無線LANの環境整備につきましても、これは自然地域でございますので、地域の特性によってさまざまな問題、課題があるとは思いますけれども、先生の御指摘を受けまして、検討させていただきたいと思います。

小林(史)委員 大変前向きな回答をいただきまして、ありがとうございます。

 これで、もう質問を終わる方向に行きたいと思いますけれども、今、こうやってせっかく皆様が、環境省の政策として美しい日本を守ってきた。これがいよいよ、この土台をもって花を開かせて、多くの観光客に来ていただいて、地域に経済の活性化をもたらす大変大きな政策になるんだというふうに思います。

 それもこれも、やはり環境省の皆さんがこうやって努力をして守ってきた土台があるからこそだと思いますので、ぜひそれを今度は前向きに活用するような、そして、今、東京一極集中だと言われているものを、やはり、地域にも我々はしっかり目を向けていくんだ、日本全体で元気にしていくんだということを考えると、日本全国にある美しい自然環境、国立公園を代表とするような場所を活用するということをぜひ前向きにお考えいただきたいというふうに思います。

 地元の鞆の浦というところも、国立公園に指定をしていただいて、大変活用いただいて、今は映画のロケ地にもなって、大変多くの観光客に訪れていただいております。こういったところも、なかなか老朽化が進んでいるというところもありますので、ぜひ細かいところに目を向けていただいて、行き届いた支援をいただけるようにお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 本日は、ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。

 本日は、一般質疑ということで、私にもお時間を頂戴いたしましてありがとうございます。

 本日は、何度もこの委員会でも言わせていただいておりますが、私は山梨県が地元ということでありまして、山梨県に関連した、ユネスコエコパークのこと、そして、リニアの新幹線、中央新幹線について御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 先ほど、与党の委員の方々からも富士山の話題も出ました。私は、山梨県の一番北の端、北杜市というところで、北側には八ケ岳、南側には富士山、そして西側に南アルプスがずっと連なっておるというところでして、山の景色、自然が大変豊かなところでございます。

 この南アルプス山系は、ユネスコが実施する生物圏保存地域として申請をしておりました。そして、本年の五月の十五日、ユネスコ生物圏保存地域国際諮問委員会が承認の勧告をしたということが文部科学省から発表されました。

 今後、六月にスウェーデンで開催されるユネスコ人間と生物圏計画国際調整理事会において登録の可否が審議、決定されるという見込みになっておりますが、今までは、勧告された後、登録されなかった例はないということから、ほぼそのようなことになるのではないかというふうなことが言われております。

 資料の一枚目でございます。これはもう御承知のとおりなんですが、改めてユネスコのエコパークについてということで、世界遺産が手つかずの自然を守ることを原則とする一方、ユネスコエコパークは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和ということ、そして、その機能としては、保存機能、経済と社会の発展、学術的研究支援、この三つの機能を達成するために、相互に依存する、右の、核心地域、緩衝地域、移行地域と。これは、人間と自然の共存というか、非常に現実的なものだとして、私は大変評価するものであります。

 今、日本全国では、志賀高原、屋久島を初め五カ所が登録をされておるということになっておりますが、昨年の八月に行った国立公園に関する世論調査によりますと、国立公園、国定公園、都道府県の県立自然公園、ジオパーク、世界自然遺産、ユネスコエコパークの中から知っているものを尋ねたところ、国立公園を挙げた割合が九〇・四%、世界遺産を挙げた割合が八五・二%、以下、国定公園が六四・四%、県立自然公園が四七・五%、ジオパークが二五・六%、それに対してユネスコエコパークは一七%にとどまっておると。

 資料の二枚目は、行ってみたいところとして世界自然遺産を挙げた方が七〇・二%と最も多くて、続いて、国立公園、国定公園、そして、ユネスコエコパークに関しては一九・八%と大変低い割合になっておりまして、先ほど言った、人間と自然、自然と社会との共存のあり方としては、やはりエコパークは非常に現実的なことだなという認識なんですが、残念ながら、そのエコパークの認知度は大変低いような印象を受けます。

 そこで、きょうは文部科学省にも来ていただいておりますので、ユネスコエコパークの重要性についてどのように位置づけているのか、また、普及啓発に向けたこれまでの取り組み状況、今後どのように強化していくつもりなのか、まずお尋ねをしたいと思います。

加藤政府参考人 委員御指摘のとおり、ユネスコの生物圏保存地域事業は、生物多様性の保全と持続可能な利活用の調和、また、自然と人の共生といった大変重要な理念を持つ事業でございますが、ただいま御指摘のとおり、国内での認知度が低いという声があることは十分認識しているところでございます。そのため、日本ユネスコ国内委員会といたしましても、幾つかの策を講じてきてございます。

 一つは、正式名称が、和訳しますと生物圏保存地域、また、英語ではバイオスフェアリザーブ、略してBRということで、なかなかかたいあるいはわかりにくいということがございましたので、平成二十二年から、国内での呼称としてユネスコエコパークと呼ぼうということを始めてございます。

 また、このほか、一般向けのパンフレットの作成、配布、また一般向けのシンポジウムの開催、また、専用ウエブサイトを設けまして、各種の情報発信といった取り組みを行っているところでございます。

 ユネスコエコパークは、自然や環境について実践的に学ぶ教育の場、特に、持続可能な開発のための教育、ESDの実践の場としても非常に重要でございまして、積極的に活用されることが期待されるものでありますことから、引き続き、関係省庁また各自治体とも連携して、このユネスコエコパークの認知度向上に向けてさらに強力に取り組んでまいりたいと考えてございます。

中島委員 今のお答えのとおりだと思うんですが、平成二十四年の九月に閣議決定された、生物多様性国家戦略二〇一二―二〇二〇によりますと、我が国の主要行動目標として、「生物圏保存地域の仕組みを活用する新たな施策の展開などの検討を進める。」とされております。

 これについて、本年の三月にまとめられた、生物多様性条約第五回国別報告書では、今も御答弁いただきましたが、今後もユネスコエコパークの活動を推進するとともに、関係省庁が連携し、各地域の取り組みを支援していくというふうに明確に言われております。

 関係省庁ということになると、今御答弁いただいた文部科学省、そして農林水産省、環境省ということになるわけですが、今、連携という言葉もいただきました。ただ、具体的にどのような連携をとって進めていくつもりなのか、具体的なことをちょっと教えていただきたいというふうに思います。

加藤政府参考人 ユネスコエコパークは、生態系の保存と持続可能な利活用の調和を図るといったことを目的とする事業でございますので、法的に保護された地域を中心に設定する必要がございます。

 このため、我が国の場合ですと、国立公園、国定公園でございますとか、国有林の保護林などとの関係が重要でございますので、ユネスコ国内委員会の事務局たる私ども文部科学省と、環境省、農水省、林野庁などの関係省庁が緊密に連携して事業を推進してございます。

 具体的には、我が国のユネスコエコパークに係る施策について審議を行います日本ユネスコ国内委員会の人間と生物圏計画分科会に関係省庁も参画していただいているほか、関係省庁の担当者による事務レベルの連絡会も頻繁に行ってございます。

 また、ユネスコエコパークへの申請を希望する自治体からの相談に対しましては、関係省庁が一体となって対応させていただいているほか、各地域のユネスコエコパークを管理運営する協議会などには、関係省庁がそろって参画して、専門的、行政的見地からの助言、情報提供を行ってございます。

 さらに、関係省庁におきましては、ユネスコエコパークの核心地域や緩衝地域を構成する国立公園、保護林などの適切な保全管理や野生動植物の保護管理に努めておられるなど、各省庁の施策や事業を通じました支援を展開しているところでございます。

 引き続き、関係省庁との一層の連携に努めまして、我が国におけるユネスコエコパークの活性化に努めてまいりたいと考えてございます。

中島委員 冒頭にも言いましたように、このエコパーク、自然と人間社会の共生という趣旨のもと、大変現実的に進めていくべきものかなと。ただ、残念ながら、認知度が大変低く、関心度も低い。世界遺産というのは、先ほどの統計の数字を見ても、そのまま自然を保全するということで、認知度も高いわけですが、また、関係省庁がまたがるということで、主管がどこかというよりは、なかなか連携がとりづらい。これは今回の問題だけではないですが。

 ぜひしっかりと取り組んでいただきたい、そのように思いますので、よろしくお願いいたします。

 これに関連して、南アルプス山系、エコパーク登録間近ということになっておるわけですが、同時に、私、先ほども言ったように、地元山梨県、もう一つ、待望というか願望というか、山梨県民も大変望んでおるリニア中央新幹線、この中央新幹線、予定が発表されたわけですが、まさに南アルプスに及ぼす影響ということが大変懸念をされております。

 私、実はまだリニア新幹線に試乗もしたことがないんです。石原大臣、五月十四日にリニアに試乗されたというふうに、私は新聞報道でしか見ていないんですが、ちょっと、私が乗ったことがないということもありまして、石原大臣に、リニア新幹線の試乗、その感想でも構いませんのでお聞きできればというふうに思います。

石原国務大臣 実は私、記者時代に宮崎の試験線にも乗りました。当時は、電気が遮断されていないから、クオーツの時計を持っていくととまるよというような話を人から聞いたもので、クオーツの時計を持っていって置いたんですね。そうしたら案の定とまりまして、その程度のものだったんですね。

 しかし、今回試乗しましたものはもう、線さえできればあすからでも営業ができるというような車両でありまして、日本の技術力の高さというものを実感したんです。

 その一方で、山梨県の試験線でございまして、山梨県を走るから、乗ったお客さんも、富士山が見えなきゃ何のためにという思いはやはりあると思うんですね、新幹線でも富士山が見えるとすごく楽しいわけですから。しかし、地中を八割以上走りますので、いろいろ工夫があって、試験線のところで富士山がほんの数秒見えるところはあるんですけれども、なかなか自然を満喫するような乗り物ではないな。

 また、逆に、トンネルが多いですから、掘った残土をどうするんだろうと。新幹線のときもありましたように、湧水が出て、その水をどうやって川に戻すんだろうといったような環境保全のところも考えさせられる部分が多々ございましたので、アセスに当たっては、事務局に、やはりそういうことは、世界最高の技術を持つJR東海がやるんだから、最高の環境基準も保全してくれ、そういうお願いをさせていただいたところでもございます。

中島委員 私も乗ったことはないんですが、以前の宮崎からすると大変進歩したという御発言がございまして、一方で、ほとんどが地下を通るということの中で今回の計画が予定をされてきておるということになっております。

 平成三十九年の開業予定ということになっておりますが、昨年の九月にJR東海から公表されました環境影響評価準備書、これによりますと、南アルプスにまたがる山梨、静岡、長野の三県で、中央新幹線の建設が南アルプス地域の環境に多方面での影響を及ぼす可能性が指摘されておる中で、このJR東海から提出された環境評価書では、路線の一部は厳重に保護され、核心地域や、研究、レジャーに利用される緩衝地域を通過するが、南アルプスでは全てトンネル構造となるため、地表面は改変しない、そのようにされておりました。

 先ほど大臣からも答弁ありました。地下を通る水脈の影響、それが生態系などに及ぼすことは大変懸念される。これも私、新聞報道でしか石原大臣のコメントを見ていないんですが、やはりそのように感じられたと。

 その上で、くしくも、実はきのう、私、この通告をした後、昨日の環境影響評価書に対して示された環境相意見というもの、これに対して、石原大臣が五月十四日に乗られたそのときの感想も含めてこの意見書がまとまっておったと思います。

 その意見書の内容ですが、自然環境を保全することは我が国の環境行政の使命と、しっかりと明確に示して言及しておる、地元との連携に配慮した、踏み込んだ指摘があったというふうに評価する一方で、具体性がないというふうに指摘する声も聞かれておるというふうに、今のところ聞いております。また、山梨県知事が求めた景観変化の予測地点追加が反映されないなど、長期間の追加調査や抜本的な見直しは求めない内容というふうにも評価をされているとも聞いております。

 そんな中、先ほど冒頭に言ったエコパークとの関連性ですね。そうなったときに、先ほど残土の話が出ました。トンネルを掘っていったその残土の置き場。これは、JR東海の報告書を見ていきますと、核心地域や緩衝地域の地下を中央新幹線が横断すること、移行地域を発生土置き場とすることが、エコパークの理念、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的とするその理念に反しないのかどうか、この辺、きのうの意見書とちょっとオーバーラップして前後するかもしれませんが、エコパークとリニア新幹線、その工事の調和というか、整合性についてお尋ねをしたいと思います。

星野政府参考人 南アルプスユネスコエコパーク登録申請地の地下を中央リニア新幹線がトンネルで通過し、移行地域の一部では発生土置き場等の設置など、自然環境の改変が行われるというふうに承知しております。

 ユネスコエコパークは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的としており、南アルプス登録申請地においても、関係市町村は、すぐれた自然環境の保全と持続可能な利活用に共同で取り組むこととしております。また、移行地域の一部は国立公園の拡張候補地の一つに選定されており、環境省としても、自然環境保全上重要な地域であると認識しているところでございます。

 これらを踏まえて、昨日、国土交通大臣に提出した、中央リニア新幹線に係る環境影響評価書への環境大臣意見におきましては、水環境の保全や発生土による自然環境への影響防止について十全な対策を講じることのほか、本事業の実施がエコパーク登録申請地の資質を損なうことがないよう、関係自治体と十分調整し、その意向を尊重することについて述べたところでございます。

中島委員 まさに、先ほど言った、勧告されて、その後落ちるということはないとは思いますが、やはり、このリニア新幹線、まさに南アルプスの真下を貫通するということで、JR東海の報告書は余りにもちょっと乱暴だなという印象は持っておったわけです。

 そんな中で、昨日、環境相、環境大臣から意見書というものが出されて、あくまでも自然環境を保全すること、環境相としての立ち位置でしっかりとした意見を出していただくことは、先ほども言ったように一定の評価はするんですが、やはり、現実的に余り、具体性に欠ける部分があるということは、確かにそうかなという部分もあります。

 さらに、この意見というものが、国交省の事業認可の際に考慮はされるけれども強制力はない、そういうことになっておりますので、事業者の裁量で何とでもなってしまうのではないか。JR東海の今までの対応を見ると、本当に真摯に向き合って環境問題と並行してやっていただけるかは、やや疑問を感じるところでもあると思います。

 やはり、地元山梨県にとってもその二つは大変念願のものでもありまして、もちろん、環境省としては環境保全というところに非常に軸足を置いておる、当然でございますが。今後しっかりと指導力を発揮してもらうために、大臣の御決意を一言お伺いできればというふうに思います。

石原国務大臣 今委員が御指摘された点は私も懸念していて、先ほどいいところばかり言ったんですが、通過するとき、やはりすごい風圧なんですよ。ということは、騒音も思ったよりきっとあるんだろうし、トンネルに入るときに振動みたいなものも自然に対する影響としてきっとあると思います。

 南アルプスは行ったことがなかったもので、今度、国会が終わりましたら南アルプスの山もちょっと歩いてきて、あそこは意外に活断層が通っているということでございますので、計画がどの辺をどう行くかというところまではわかりませんので、それによって、具体性がないという御批判もいただきましたが、具体的に工事等々が始まって、湧水があったり、残土が鉛系のものが出たり、何が出るかわかりませんので、そういうものは逐一しっかりと環境省として把握して、環境の保存に万全を期したいと思っております。

中島委員 時間ですので質問を終わりますが、何度も言うようですが、地元山梨にとっては、その二つ、この両立は念願のものであります。もちろん、両立はなかなかということもありますが、だからといって着工が、計画がおくれたりということにならないように、ぜひ、関係省庁と連携をとって、しっかりとした整備、そして、石原大臣、南アルプスにも来ていただけるということですので、そのときにはぜひお声かけをしていただければ、そのように思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、林宙紀君。

林(宙)委員 結いの党の林宙紀でございます。

 私でラストの質問者ということで、おつき合いをお願いいたします。

 まず最初に、前にも何度か質疑をさせていただいておりますが、宮城県の指定廃棄物処分場についてお伺いしたいというふうに思います。

 五月の二十六日に、この処分場の詳細調査候補地に係る関係者会談というものを地元宮城で行っていただいたということです。今度は週明けの六月九日に予定されているということなんですが、前回の五月二十六日の関係者会談で、対象となっております三つの自治体、栗原市、加美町、それから大和町といったところから、前回同様にいろいろな質問ですとか意見が出まして、次回はそれに対して正式に資料を添付して御説明に行っていただけるということなんですけれども、その当時の会談の中でどういった懸念等々が示されたのか、簡単に教えていただけますでしょうか。

梶原政府参考人 お答え申し上げます。

 五月の二十六日の関係者の会談におきましては、栗原市長、大和町長、そして加美町長からさまざまな御意見をいただいたところでございます。

 幾つかの例を挙げさせていただきますと、例えば、候補地並びにその周辺については、地すべりの危険性があるのではないかといったような御指摘、あるいは水源への影響があるのではないかといったような御指摘、さらには埋蔵文化財とか雪崩とか、そういったような御懸念をいただいたところでございます。

 六月の九日、今委員がおっしゃられたとおり、次回の会合を予定しておりますけれども、その際には文書でもって丁寧に回答させていただきたいと考えているところでございます。

 これまでの選定作業あるいは現地確認に加えまして、詳細調査の実施を通じまして、科学的、技術的な観点から必要となる情報をさらに得るということで、文献調査やボーリング調査を実施することといたしたいと思っております。今回いただいている御指摘についても、そういったようなデータを用いて、さらに誠実にお答えすることができると考えております。

 今後とも、私どもの考え方をしっかり御説明申し上げて、詳細調査の実施に御理解をいただけるように取り組んでまいりたい、かように考えております。

林(宙)委員 今教えていただいたとおりなんですが、基本的にはその要望等々は変わっていないということなんですね。いまだにそれが出るということは、ほとんど進展がなされていないと私は判断しています。

 これを少しでも前に進めていただきたい。前に質問させていただいたときには、井上副大臣から、雪解けを待って春になってから、調査ができるかどうか進めていきたいというふうに御答弁いただいていたわけなんですけれども、できるだけ早く、そこの、調査ができるのか、それとも、そもそも調査ができない状態になってしまうのかというところをはっきりとさせていただきたいというふうに思っております。

 副大臣、御多用だということですので、ちょっと一問だけ質問させていただきますが、これは前回とほぼ同じなんですけれども、御相談の相手方というのは、知事だったり市長だったり町長という、やはりそれぞれの自治体のトップが来られているわけです。これはいい悪いの話ではなくて、環境省からは、トップといえば石原大臣ですが、井上副大臣が御出席をされて事に当たるということなんですけれども、これは何度か地元とお話をされていて、副大臣は何となく違和感があったりとか、いや、それはそれでやはり副大臣としての責務として当然であるというふうにお考えなのか。その点だけ簡単にお答えいただけますでしょうか。

井上副大臣 そういう意味では、副大臣の責務として当然のことだというふうに思っております。

 この指定廃棄物の処理の件につきましては、環境省の中では私とそれから浮島政務官が担当ということで、市町村長会議、あるいは関係者の会談、これも毎回石原大臣から丁寧な指示を受けて、また国会の許可をいただいて、環境省の代表として出席させていただいているということで、ぜひ御理解をお願いします。

林(宙)委員 井上副大臣には、大変なお仕事をずっと根気強くやっていただいているなという意味で、本当にありがたいことだと思いながらも、やはりこの先、進展を見るには、何らかの次の手を打っていかなきゃいけないんじゃないのかなと率直に感じているところでもあります。またぜひその辺は一緒にお考えいただければというふうに思います。

 井上副大臣に対する質問は以上になりますので、もし必要であれば御退席お願いします。

 続いてお伺いするんですけれども、今、副大臣に御出席をいただいてさまざま御尽力いただいているというお話をさせていただきましたが、一方で、石原環境大臣は、この間、五月二十六日が井上副大臣に宮城に行っていただいた日なんですけれども、その翌日になります二十七日に、こちらは石原大臣が福島県、例の中間貯蔵施設の件で行かれているということであります。

 これはたしか一月だったか二月だったか、済みません、ちょっと詳細は今覚えていませんが、前回もこういった地元との話し合いがあったときには、前日に井上副大臣が宮城、そして翌日に石原大臣が福島県という形で行っておられるんですけれども、はたから見れば、これはトップが福島にこのような形で二度連続で入られているということは、やはり政府の御認識としては、より災害の程度が大きい、指定廃棄物のレベルも高いということで、この福島の中間貯蔵施設というものを重視されているというような位置づけになっているのかどうかという点で、大臣にお伺いをいたします。

石原国務大臣 政策に甲乙をつけて、何が最優先かということは、やはりないと思うんですね。つかさつかさの責任者がその政策を一番と考え、最善の方策を尽くす、これに尽きるんだと思います。

林(宙)委員 もちろんそのとおりでして、井上副大臣にも何度も何度も宮城の方の問題については扱っていただいているので、ある意味では、分担という形で担当されてきているというような形は一つありだと思うんですね。

 しかしながら、何度も申し上げているとおりなんですが、地元としては、一度でいいから大臣と話がしたい、こういう要望はやはり強いわけであるというところもぜひ御勘案をいただきたいんです。

 それで、私としては、できるだけ早い段階で、一度、大臣みずから足を運んでいただいて、大臣が赴かれることで事態が打開できる部分があるのであれば、ぜひやっていただきたいというふうに思っているんです。なぜこれを言っているかというと、今、たまたま宮城という、私の地元の話だからしているというわけじゃなくて、これからほかの県でも起こり得る事態だということになるわけです。栃木の方でも今その辺の関心が非常に高まっているというところもありますし、宮城でどういうことになるのかということは非常に注視されているわけなんです。

 ということで、済みません、大臣、これは責めているわけじゃなくて、いつか、どこかのタイミングで大臣は足を運ばれて御説明いただく機会があるのか、そして、そういうことがあるとしたら、どういったタイミングで行かれようとしているのか、今もしお考えのところがあったら教えていただきたいと思います。

石原国務大臣 先ほども井上副大臣から御答弁させていただきましたとおり、六月二日に第二回の会談を開催して、議論を深めていく。外から見ているとなかなか進まないという思いもおありかと思いますけれども、やはりこれは、押しつけるのではなくて、御理解をいただかない限りはできないものでありますので、議論を深め、今後のあり方についてはさらに検討を深めてまいりたいと考えております。

 六月九日でございます。失礼いたしました。

林(宙)委員 その六月九日の議論も、進展が見られるようにぜひ御尽力をいただきたいなというふうに思っています。

 というのは、これは本当に難しい問題だと思うんですね。物が物ですから急がなければいけないという側面もある一方で、急いで事をなすとそれは住民の合意形成に反するところが出てくるという、非常に難しいかじ取りを迫られている。ということで、大臣の手腕をぜひこちらで、宮城の件でも発揮していただきたいというのが再三にわたる私の願いでもありますので、ぜひそのあたりを御勘案いただきたいなというふうに引き続き御要望申し上げたいと思います。

 ちょっとこの話からは離れて、先ほど民主党の近藤委員も質問されていましたが、いわゆるトラスト基金のお話のところで一つ、二つ質問させていただきたいなというふうに思っております。

 あらかたのところは先ほど御質問にあったとおりだと思いますので、本当に細かいところになるとは思うんですけれども、まず一つは、今度、自治体がみずから土地取得をするという目的でトラスト基金を集めていくというような流れなんじゃないかなと思うんですが、一方で、自治体が民間のトラスト団体の活動を支援するという目的で基金をつくるという可能性もあり得るのかなというふうに思っています。

 というのは、自治体が基金をつくってお金を集めました、自治体が直接手を下す、下すと言ったら変ですね、そこで自治体が活動をやるということではなくて、そこで集めた基金を半ば財源のようにして、民間の活動団体に、では、この分だけ使ってくださいというようなことをやる可能性もあると思うんですけれども、環境省としては、そのあたりについてはどのようにお考えか、お聞かせください。

星野政府参考人 どのような目的で基金を設置するかは各地方公共団体の判断によるものと考えますが、民間団体によるトラスト活動を支援するための基金の設置は、トラスト活動全体を促進するための有効な手段の一つと考えております。

 なお、地方公共団体が基金を設置する場合に、既に地域で活動している民間団体があれば、これらの団体などと十分な連携が必要と考えております。

林(宙)委員 どうもありがとうございます。

 多様な活動が想定されるということで、そのあたりは、先ほどの質問にもありましたけれども、ぜひ透明性をしっかりと担保しつつやっていただけるようにお願いしたいなというふうに思っております。

 やはり、民間のトラスト団体が非常に精力的に活動してくださっているということもあって、行政がカバーできないというところも実は非常にうまく保全されてきている部分が大きいんじゃないかなと思うんですが、一元的に考えるわけではないんですけれども、やはり自然環境というのは基本的には公共財というものでありまして、自治体ができる限り責任を持って取り組むべきだ。

 そこにはちょっと公費が絡んでくるところもありますので、全てを、では、そこに税金を使うということに対しては議論もいろいろあるとは思うんですけれども、今申し上げたとおりで、自治体が責任を持って取り組むというのが最優先であろうという考えもやはりあるわけで、この点については、環境省としてはどのように受けとめられていますか。

星野政府参考人 生物多様性基本法という法律、生物多様性の保全と持続可能な利用の基本法がございます。この第五条に定められておりますように、地方公共団体は、それぞれの地域の自然的社会的条件に応じた生物の多様性の保全及び持続可能な利用に取り組む責務を有することとされております。

 一方、同法第七条に基づき、民間団体は、生物の多様性の保全及び持続可能な利用のための取り組みをみずから行うとともに、他の者の行う取り組みに協力するよう努めることとされております。

 このように、地方公共団体は、みずからその責務を果たすとともに、地域で活動している民間団体とも相互に連携協力をして、それぞれの地域の自然環境の保全を推進することが重要と考えております。

林(宙)委員 ありがとうございました。

 本当に、自然環境を保全していくというのは、一方で、経済が発展していく上で、開発しなければいけないというわけじゃないかもしれませんけれども、そことのバランスというのは非常に重要だと思っていて、きょうは、先立って皆さんから、いろいろな質問の中で、やはり環境を保全することの重要性というのは随所で強調されていたと思うんです。

 ぜひ、このあたりは、民間の方々がやはり動きやすい環境をつくるというのも一つ環境省としては大事なことなんじゃないかなと思いますので、そこも重視して施策を進めていっていただきたいなというふうに思っております。

 ほかにも質問をつくっていたんですけれども、ある程度、ちょっとかぶったりしていたところもありますので、金曜日で皆さんお疲れというところもございますと思いますし、ちょっと早いですけれども、私の質問は以上で終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

     ――――◇―――――

伊藤委員長 次に、地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来理事会等において協議してまいりましたが、本日、お手元に配付いたしておりますとおりの起草案を得ましたので、委員長から、本起草案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。

 我が国の国土には、自然の風景地、記念物に係る名勝地等が数多くあります。これらは国立公園、国定公園等の自然公園として整備されることで、広く国民に自然環境の恵沢が享受されてまいりましたが、一方で、利用者数の増加等により植生の踏み荒らしや不適切なし尿処理等が問題となり、各地で自然環境への悪影響が懸念されております。

 このような現状に鑑み、国立公園、国定公園等の自然環境を保全し、及び持続可能な利用を推進するためには、公的資金を用いた取り組みに加えて、利用者による負担、民間団体等が寄附金を募って行う土地の取得、管理など民間資金を用いた地域の自発的な取り組みを促進する必要があることから、本起草案を得た次第であります。

 次に、本起草案の内容について御説明申し上げます。

 第一に、地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進を図り、もって地域社会の健全な発展に資することを目的としております。

 第二に、都道府県または市町村が、国立公園、国定公園等の自然の風景地、記念物に係る名勝地その他の自然環境の保全及び持続可能な利用の推進を図る上で重要な地域において、当該地域の自然環境を地域住民の資産として保全し、及びその持続可能な利用を推進するために実施する事業であって、当該事業を実施する区域内への立ち入りについて、当該区域内に立ち入る者から収受する料金をその経費に充てるものを地域自然環境保全等事業とすることとしております。

 第三に、都道府県または市町村が、当該都道府県または市町村の区域における自然環境を地域住民の資産として保全し、及びその持続可能な利用を推進するため、自然環境トラスト活動を促進する事業を自然環境トラスト活動促進事業とすることとしております。

 第四に、地域自然環境保全等事業が実施される区域及び自然環境トラスト活動促進事業に係る自然環境トラスト活動が行われる区域を地域自然資産区域とすることとしております。

 第五に、環境大臣及び文部科学大臣は、地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する基本方針を定めなければならないこととしております。

 第六に、都道府県または市町村は、単独でまたは共同して、基本方針に基づき、当該都道府県または市町村の区域に係る地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する計画を作成することができることとし、この計画に基づく事業または活動の実施について、環境大臣等の協議、同意を経たものについては、自然公園法の許可等を不要とする特例措置を設けるものとしております。

 第七に、第六の計画を作成しようとする都道府県または市町村は、この計画の作成に関する協議及び計画の実施に係る連絡調整を行うための協議会を組織することができることとしております。

 第八に、都道府県及び市町村は、自然環境トラスト活動促進事業等に充てる経費の全部または一部を支弁するため、地方自治法第二百四十一条の基金として、自然環境トラスト活動基金を設けることができることとしております。

 第九に、国は、この法律の目的を達成するため、必要な助言、税制上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとしております。

 第十に、国及び都道府県は、地域自然資産区域内の土地が、国立公園の区域内に含まれるものである等の理由により、自然環境の保全及び持続可能な利用の推進を図る上で特に重要であると認めるときは、当該土地を取得するよう努めるものとしております。

 なお、この法律は、一部の規定を除き、公布の日から一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。

 以上が、本起草案の趣旨及びその内容であります。

    ―――――――――――――

 地域自然資産区域における自然環境の保全及び持続可能な利用の推進に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

伊藤委員長 お諮りいたします。

 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

伊藤委員長 起立総員。よって、そのように決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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