衆議院

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第10号 平成28年4月22日(金曜日)

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平成二十八年四月二十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 赤澤 亮正君

   理事 伊藤信太郎君 理事 石川 昭政君

   理事 北川 知克君 理事 助田 重義君

   理事 藤原  崇君 理事 福田 昭夫君

   理事 松田 直久君

      井林 辰憲君    小倉 將信君

      鬼木  誠君    木村 弥生君

      田中 和徳君    高橋ひなこ君

      寺田  稔君    根本 幸典君

      比嘉奈津美君    福山  守君

      細田 健一君    前川  恵君

      牧原 秀樹君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    吉野 正芳君

      神山 洋介君    菅  直人君

      田島 一成君    真山 祐一君

      塩川 鉄也君    小沢 鋭仁君

      河野 正美君    玉城デニー君

    …………………………………

   環境大臣政務官      鬼木  誠君

   参考人

   (福岡大学名誉教授)   浅野 直人君

   参考人

   (特定非営利活動法人気候ネットワーク理事)    平田 仁子君

   参考人

   (ジャーナリスト・環境カウンセラー)       崎田 裕子君

   参考人

   (東北大学教授)     明日香壽川君

   環境委員会専門員     関  武志君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     宮路 拓馬君

  白石  徹君     比嘉奈津美君

  堀井  学君     宗清 皇一君

  前川  恵君     木村 弥生君

  中島 克仁君     神山 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     前川  恵君

  比嘉奈津美君     根本 幸典君

  宮路 拓馬君     穴見 陽一君

  宗清 皇一君     井林 辰憲君

  神山 洋介君     中島 克仁君

同日

 辞任         補欠選任

  井林 辰憲君     細田 健一君

  根本 幸典君     白石  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  細田 健一君     堀井  学君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)


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     ――――◇―――――

赤澤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、福岡大学名誉教授浅野直人君、特定非営利活動法人気候ネットワーク理事平田仁子君、ジャーナリスト・環境カウンセラー崎田裕子君、東北大学教授明日香壽川君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、大変御多用のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいというふうに存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、浅野参考人、平田参考人、崎田参考人、明日香参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。

 それでは、まず浅野参考人にお願いいたします。

浅野参考人 本日は、地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律の衆議院環境委員会での審議に際し、参考人として意見を述べる機会を与えていただきましたことを感謝いたします。

 この温対法は、平成十年に、省エネ法改正によって規制をすれば十分、このような法律は不要との反対もあった中で制定されたものでございまして、当初は、国等各主体の責務、政府による基本方針と実行計画の策定、さらに、地球温暖化防止活動推進員や地球温暖化防止活動推進センターの設置、国による温室効果ガス総排出量の算定、公表を規定する十六カ条の簡潔なものでございました。

 しかし、お配りした資料の二ページ後半以降にありますように、その後、平成十四年以降五回の改正を経まして、既に六十九カ条のかなり大きな法律に成長してまいりました。

 平成十四年の改正では、京都議定書目標達成計画を法定計画とし、内閣に地球温暖化対策推進本部を設置、地球温暖化対策地域協議会を法定し、森林吸収源対策の強化が盛り込まれました。

 続く十七年改正では、地球温暖化対策推進本部の所掌事務に長期的展望に立った地球温暖化対策の実施の推進に関する総合調整が追加され、事業者の排出量算定、報告、公表制度が新設されたほか、十八年改正では、京都メカニズムクレジット、割り当て量口座、管理口座制度が位置づけられました。

 また、二十年改正では、地方公共団体の実行計画に区域施策編を追加する、事業者の排出抑制指針制度を新設、国民の日常生活での排出抑制への事業者の寄与の責務等を規定したほか、温暖化防止活動推進センターの政令市への拡大などが行われました。

 直近の二十五年改正では、京都議定書の第一約束期間終了に伴う措置として、京都議定書目標達成計画にかえて地球温暖化対策計画制度が設けられましたほか、地球温暖化の定義を拡張し、温室効果ガスの追加が行われました。

 今回の改正でこの法律の内容がさらに充実していくことは、大変喜ばしいことだと存じます。

 今回の改正では、三条の国の責務に普及啓発を位置づける、また、八条の政府の地球温暖化対策計画に盛り込むべき内容として、啓発普及と国際協力が位置づけられております。

 温暖化対策や循環型社会形成のような政策課題は、規制だけに頼ってその実現を図ることは困難で、各主体がその行動のあり方を変え、自主的な取り組みによって政策目的を達成させることが重要であります。このためには、さまざまな政策実現手法を統合させていくことが不可欠でございます。

 情報的な政策実現手法としての啓発普及は、政策実現手法の基礎的、基盤的な位置にありますから、地球温暖化対策計画に盛り込むべき事項として啓発普及が加えられることは適切だと思います。

 なお、温対法の制定当時から地球温暖化防止活動推進員の制度や中央及び各地域の地球温暖化防止活動推進センターが制度化され、また、さらに、十四年の改正で地球温暖化対策地域協議会の制度がつくられましたが、これらは普及啓発の施策の推進に多くの役割を果たしてきております。しかし、これらの組織の働きについての政府の理解が十分であったとは言えないように思われますし、環境省のこれらの組織の育成支援が十分組織的に行われてきたとは評価できません。

 既存の組織を育成し活用することは、新たな組織をつくるような派手さがありませんので、とかく目新しい仕掛けをつくることに力が注がれがちでありますけれども、次々に新しい運動や組織をつくることだけに予算が配分されるのではなくて、地道な取り組みが着実に伸びていくということが必要であると思います。

 我が国の温室効果ガスの排出量は世界の三%の割合であることを考えますと、日本の世界での役割として、着実な国内対策による国内での温室効果ガス排出量を国際約束どおり着実に実行することによって世界に範を示すことはもちろんでありますが、それだけではなく、国境の外での日本の貢献による地球全体の温室効果ガス削減への寄与を図ることにも大きな意義があります。国際協力推進に関する事項が温暖化対策計画に追加されることも適切だと評価いたします。

 現在策定準備が進められております政府の地球温暖化対策計画は、大筋では適切な方向を示しておりますので、今後、計画に沿って着実に温室効果ガス排出削減への取り組みが進んでいくことを期待しておりますが、改正法案の内容も、その中に先取りしてしっかりと位置づけられることが必要だと思います。

 さらに、現行二十条以下の改正によりまして、地方公共団体の実行計画については複数の地方公共団体の共同での策定、実施が可能なものとされること、実行計画の区域施策編に掲げられるべき施策の例示として、その利用に伴って排出される温室効果ガスの量がより少ない製品や役務の利用、あるいは都市機能の集約の促進が加えられます。これは、地域の実行計画にどのような内容を盛り込まなければならないかという点について、より具体的なメッセージを発信するものでありまして、これによって、地域での温暖化対策がより総合化されたものになることが期待できることになりますから、この点も評価されてよいと考えております。

 地方公共団体の実行計画はこれから改定作業が進められる地域が多いと思われますので、今回の法改正は、より充実した地域の実行計画の策定に資することになろうと思います。

 ところで、四月から電力の小売自由化が始まりまして、多くの電力小売事業者の新規参入が始まりました。さきにも述べましたように、温対法には平成十七年改正で事業者の排出量算定、報告、公表制度が新設されました。こういうような報告手続を義務づけるという仕組みは、手続を通じて、自分の活動による環境負荷の状況を把握させまして、自主的な負荷低減に向けての取り組みを促進させるという意義を持っております。また、報告のデータは、地域での温室効果ガス排出の状況を行政機関が把握して地域での施策の改善に資するという意義もあります。

 現在の温対法は、特定排出者に政令で定める方法によって算定することを求めておりまして、これを受けた施行令では、他人から供給された電気については、環境省及び経済産業省の省令による係数の使用を定めております。そして、これについて定めた省令及びこれに基づく告示では、主要な電気事業者ごとに、電気一キロワット当たりのトンで表示した二酸化炭素の量としての係数が示されています。しかし、告示で示された供給事業者別の係数によることができない場合には、全国一律の係数で代替可能ということが、省令の二条四項三号、告示にも示されております。

 現行の二十一条の十一、改正された後が三十五条でございますが、エネルギー供給事業者がエネルギー供給の相手方に二酸化炭素排出量の把握に必要な情報の提供に努めなければならないと規定はしておりますけれども、これは努力義務にとどまっておりまして、強制力がない点が少々気になる点でございます。

 現行の二十一条の九、改正の三十三条でございますが、主務大臣が排出量算定の適正な実施のために特定排出者への技術的助言、情報の提供その他の援助を行うものとしておりますから、これらの規定が的確に執行されまして、報告制度による数値の信頼性が危うくならないように、制度運用上の努力が払われることを強く希望いたしております。

 今後の課題としてこの際指摘しておきたいことの一つは、パリ協定を初めこれまでの国際的な合意の中でも、また、我が国のこれまでの環境基本計画の中でも、気候変動の対策は緩和と適応をその両輪として進めていくべきであるということが広く認められている点でございます。日本でも、この緩和と適応という二つの政策課題を気候変動対策の中で適切に体系化していくということが課題だろうと思います。

 もっとも、適応の施策は、緩和のための施策以上に、例えば防災、減災でありますとか農作物の品種改良でありますとかいった関連する他の領域において、しかもしばしば既に先行して展開されている政策、施策との関連が深いものがございます。

 現行の温対法は、平成十年の法制定時の温暖化問題への一般的な理解、あるいは法律制定当時の事情などもありまして、温室効果ガスの排出削減を中心課題とする、そして全ての者の自主的かつ積極的な取り組みの重要性を強調するという枠組みを持っております。この現行法の枠組みをそのままにいたしまして、ここに適応も必要であるという形で条文を付加するという対応だけでは、済まされない面もございます。

 ですから、適応と緩和の全体をいかなる政策体系として整えていくべきか、また、これをどのような立法の形で対応すべきかということにつきましては、既に昨年十一月に閣議決定をされました気候変動の影響への適応計画の実施や評価についての知見を深めながら、丁寧な検討をする必要があると思われます。

 ただし、余り長い時間をかけることなく、しかし関係者間では十分に議論を重ねた上で合意を形成して、必要な答えを出すべきであろうと思います。

 なお、政府の温暖化対策計画案には、長期的に二〇五〇年に八〇%削減を目指すということが明記されております。このことは既に、平成二十四年に閣議決定されました第四次環境基本計画にも書かれていることでございまして、当然のことであると考えておりますが、その実現を目指してこれからどのように政策を進めていくのかということについては、より具体的な見通しを立てていくことも必要であろうかと思います。

 日本学術会議の大西隆議長を座長といたしまして、伊藤元重経済財政諮問会議委員や川口順子元外務大臣もメンバーに加わられました懇談会が、この二月に既に、社会構造のイノベーションが必要であるという提言を丸川環境大臣に提出しております。

 こういった提言などを踏まえた着実な検討も急がれるということを申し上げまして、私の意見の陳述を終えさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

赤澤委員長 浅野参考人、ありがとうございました。

 次に、平田参考人にお願いいたします。

平田参考人 本日は、意見陳述の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私の気候ネットワークという団体は、一九九八年、気候変動枠組み条約第三回締約国会議、COP3を機に設立されたNPO法人でして、地球温暖化、気候変動対策を市民の立場から進めるということで取り組んでおります。ここで審議されております地球温暖化対策推進法の制定も一九九八年ということで、京都議定書がきっかけで生み出されましたので、私たちも、そして私自身も、まさにこの法律と同じ年月を重ねて活動してきているというところでございます。

 まず、審議に当たりまして、私たちがどのように立法に向けて市民の立場から取り組んできたのか、若干振り返らせていただければと思っております。

 京都会議直後の九八年二月、地球温暖化防止活動推進法案というものを提出させていただきました。そのときには、図にありますように、短期のみならず中長期、超長期に向けて大幅削減を目指しながら重層的に削減計画をつくること、強力なリーダーシップがとれ、各セクターが参加する開かれた委員会を設置し、役所と審議会だけが主導する政策決定システムを変える必要があると提案いたしました。

 しかし、ちょうどそのころ、この温対法の策定が環境庁によって進められておりまして、当時、国会議員の皆様と対話させていただく中では、市民案への支持をいただけたこともありましたけれども、政府法案は悪い法律ではないということで、市民案が日の目を見ることはありませんでした。

 そして、この温暖化対策推進法は、京都議定書の実施のための最初の一歩を踏み出すためのものとして、中身はほとんどないまま、まずはスタートいたしました。二段ロケットの一段目と当時言われていたのが象徴的だと思っております。ただ、その後、今、浅野先生がおっしゃったように、幾度と改正を重ねて中身を備えてきたところです。

 そして、二〇〇八年、国際的に中長期的な対策に向けた機運が高まっており、洞爺湖G8サミット前後のころ、メーク・ザ・ルール・キャンペーンというものを立ち上げまして、気候保護法案を提案いたしました。

 レジュメの二ページの骨子案をごらんいただきますとおわかりいただけますが、二度未満に気温を抑制するため、短期の京都議定書の目標達成に加え、中長期の目標を設定し、国内排出量取引制度や炭素税などの炭素への価格づけをする仕組みの導入や、固定価格買い取り制度の導入、そして適応計画の策定、情報の開示や市民参加の仕組みなどを提案いたしました。

 この法案には、登山家の三浦雄一郎さんを初め、たくさんの著名人が呼びかけ人となり、全国の百二十三の地方議会が同法案の提出を求めた決議、意見書を採択し、また百四十名を超える学識経験者がこれを支持いたしました。

 これに呼応するように、政治の場でも、民主党が地球温暖化対策基本法を提案し、また、自民党、公明党も中長期的な目標を掲げた対案を提出いたしました。しかし、政治情勢の変化の中で、これらの法案の実現にはなりませんでした。

 ここで言えますことは、私たちは、この十八年にわたって一貫して、長期を見据え、気候変動を防ぐことに資する国内法の整備を提言し続けたということであります。そして、きょう私が申し上げたいことも、それをさらに強調することにほかなりません。

 といいますのも、今はパリ協定後の新しい脱炭素化時代に突入したからです。資料三枚目、参考資料をつけておりますのでそちらも御参照いただければと思いますが、パリ協定の幾つか重要だと思う点を改めてハイライトしたいと思います。

 一つは、明確な長期目標を設定し、これを法的拘束力ある国際法の条文に記載したということです。一・五度ないし二度未満の気温目標、さらに世界の排出量の頭打ち、そして人為的な排出と人為的な吸収を均衡させるということを盛り込みました。実質排出ゼロを意味します。図で見ると、富士山の尾根を描くように、今を頂点に大幅な削減をしなければいけないという非常に意欲的な目標でございます。

 この長期目標から言えることは、世界が向かうべきは脱炭素化、脱化石燃料の社会経済であるという明確なシグナルです。

 パリ協定の合意には、この目標に向けた各国の二〇三〇年までの目標案は、全くその二度を達成する水準には足りないということも明記されています。これから、今計画しているよりもさらに行動を引き上げなくてはならないということです。

 第二は、持続的な行動強化システムをビルトインしたことで、五年ごとに目標を設定し、それを国際的に公表、評価することで行動を引き上げていくということを狙うものです。

 そして、その対象は、排出削減を指す緩和だけではなく、適応や技術移転、資金なども含まれ、包括的なものとなりました。

 さらに、パリ協定は、前文や十二条に明らかなように、気候変動を防ぐということは、人権を保護し、先住民や子供、障害者など弱い立場にある人々を守り、また、女性の権利の向上を図り、世代間公平を尊重するということでもあり、市民参加と情報へのアクセスを拡大しなければならないとも規定しています。

 パリ協定が、これからの未来に向けて、誰もが不平等に扱われず、包摂し、共生していく精神に立った社会的仕組みをつくるものであるということがここに指し示されていると思っています。

 きょうは、ニューヨークでパリ協定の署名式が行われているという記念すべき日です。この歴史的合意を受け、日本はどのような法律を整備するべきなのか、これから述べさせていただきます。

 さきに申し上げたように、日本にはまだ中長期を見据えた法律は存在しないと思っております。地球温暖化対策推進法は、京都議定書の実施を念頭にした法律としてスタートしたものであって、これから中長期に取り組んでいくパリ協定を踏まえた国内体制整備にふさわしい内容にはなっていません。

 レジュメの三ページをごらんください。今回、法整備として提言したいことを六点書いております。パリ協定の実施を担保し、気候、エネルギー政策を統合する気候変動防止のための国内法の整備が私たちは必要だと考えています。

 ただし、内容の詳細は改めて読み上げません。なぜなら、ここに書かれているのは、二度未満ないし一・五度の気温目標の明記、長期目標の明記、炭素の価格づけや再生可能エネルギーの拡大計画、適応計画の法定化、そして科学的知見の反映と市民参加の仕組みの導入といった項目でありまして、さきの気候保護法案とほぼ同じ内容だからです。

 ただし、パリ協定後の今は、九八年とも二〇〇八年とも違い、今こうした議論が改めて必要だと考えています。まさに、長期を見据えた国際法ができたこと、そしてそこに向けて五年ごとに実施を促す仕組みが義務としてつくられたこと、こうした国際的な進展があったからです。二度目標の明記、長期目標の明記をすることは、パリ協定に準じた法制定の必要性を意味しており、その必要性はこれまで以上に高まっていると考えています。

 こうした問題意識と照らしますと、今回の法改正項目である普及啓発、国際協力の推進、地方自治体の実行計画の共同策定という内容は、パリ協定を受け長期的に取り組んでいく足がかりとしては全く不十分ではないかと言わざるを得ません。パリで非常に大きなモメンタムと時代の変革の兆しを私自身感じましたが、この今回の改正内容との落差には正直落胆を隠せません。今がどのような時代の転換期にあるのか、見えていないのか、それとも見ようとしていないのかと疑問も抱きます。

 しかし、今回の法改正も、もしかしたら大勢が、悪い改正ではないということで容認されていくのかもしれません。私自身も、可もなく不可もないと表現したいようなこの改正案ですが、悪いとは申しません。

 しかし、今ここで御議論いただいていることが、これからの日本にとって、国際社会の中でいかにこの問題に行動していくのかということで必要とされていることと比べてどれだけのギャップがあるのか、どれだけの大きな宿題を残し、まだその宿題に取りかかっていないのかを的確に見据えた上で御議論いただけると幸いに思っております。

 最後に、政府によってこの法案に基づいて策定が進められています地球温暖化対策計画案についても若干コメントさせていただきます。

 私が申し上げました一・五度ないし二度未満の気温目標や日本の八〇%削減という長期目標は、法改正ではなく、この計画に記載されています。言うまでもありませんが、この計画にこれらを盛り込んでいくことは必要最低限であります。国連では長期の低炭素戦略をつくることも要請していますので、二〇五〇年の長期目標を点で示すだけではなく、さらにそこへの道筋を示すことも必要になってきます。ですから、八〇%削減の明記は最低限のことであります。

 二〇二〇年、三〇年の目標は、エネルギー政策の見直しや大きな国民的な議論もなく、パリ協定採択前の目標がそのまま記載されることになりました。しかし、二〇三〇年目標については、正式に二〇二〇年までにもう一度提出しなくてはなりません。そのときに必ず再検討が必要と考えます。なぜならば、国際的に二〇三〇年目標は不十分であるという認識がなされており、日本を含めてどの国にも引き上げが要請されるからです。

 削減目標はエネルギーミックスを所与としていますが、その中でも大きな懸案は、CO2を最も出す石炭火力発電の新設計画です。

 参考資料の最後のページにグラフをつけておりますが、驚くほどのスピードで新規計画が進んでおります。先進国の中でもこのようなトレンドは日本唯一です。このままでは政府の二六%削減も危ぶませると思っておりますが、この問題への対応は電力小売事業者に対して自主的な取り組みに委ねることに寄りかかっており、この点は特に近々に見直しが必要です。

 ここ数年、国際的な研究機関、そして論文で、高効率な石炭火力発電の新設は二度未満とは矛盾するということが指摘されるようになりました。化石燃料の八割は埋めておかなければならないとも指摘されるようになりました。このことと日本の石炭火力発電の新設は完全に矛盾していると思います。

 進めるべき再生可能エネルギーも岐路に立たされています。足踏みをする再生可能エネルギー事業者の直面する障壁を取り除く仕事にも取りかからなくてはなりません。排出量取引制度や炭素税など、CO2を排出することには相応の責任を持たせ、一方、削減で努力することには優遇をするような仕組みも、まだまだこれから検討を深めるべき課題です。

 このように、日本は課題山積です。気候とエネルギー政策は一体的に議論し、温室効果ガス削減を進める施策についてさらなる検討をしていく機会を改めてつくり出す必要があります。

 以上のことを申し上げまして、今国会での法改正の審議におかれましては、改正内容の審議にとどまらず、これからの日本の気候変動対策のあるべき姿と長期展望に向けて着実に行動を実行させる仕組み、そして政策措置の強化について十分に御議論いただき、日本が脱炭素化に向けて世界をリードしていただけるよう、政治のイニシアチブを期待したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。(拍手)

赤澤委員長 平田参考人、ありがとうございました。

 次に、崎田参考人にお願いいたします。

崎田参考人 どうも、崎田裕子と申します。

 今回、このような場で発言をさせていただく機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 こういう流れにふなれで、私、今回資料を準備させていただいておりません。大変申しわけございません。きょう、これからのお話をじっくりと聞いていただければありがたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 私自身、ジャーナリストとして、二十五年ほど前から、環境・エネルギー分野で仕事をさせていただいております。その中で、環境課題の解決には一人一人の実践が大変重要ではないかというふうに感じまして、環境学習や多様な主体の参加、協働による持続可能な地域づくりの応援、こういうことに取り組んでまいりました。

 具体的には、代表理事を務めておりますNPO法人新宿環境活動ネットというところでは、新宿区立環境学習情報センターの指定管理者として、ここ十二年ほど、地域の環境学習の推進に携わっております。そこでは、地域住民の方々や事業者を対象にした環境活動の交流拠点として、市民、事業者参加型で運営するという方法をとらせていただいております。

 また、もう一つ、理事長を務めるNPO法人持続可能な社会をつくる元気ネットという団体がございます。これは循環型地域づくりに取り組む全国の団体のネットワークですが、スリーRに関する人材育成や、市民、事業者、行政の連携による対話の場づくりなどに取り組んでおります。

 このような経験を踏まえて、これまでの地球温暖化に対する啓発活動や国民運動の課題を考えてみたいというふうに思っております。

 京都議定書の目標に向けた取り組みを進めていた時期にかなり環境意識は高まってきたというふうに考えておりますが、暮らしの中での実践行動の定着やライフスタイルの変換には、まだまだ危機感が足りないのではないかという実感を持っております。

 先ほどお話ししたNPO法人元気ネットで、二十六年の秋に全国約五百人を対象に、環境配慮商品と消費行動をテーマにアンケートを実施いたしました。この際、環境に関心がある、あるいは少しあるというふうに答えてくださった方は九四%という高い数字でした。ところが、買い物の際、環境配慮商品を選択しておられるか聞いたところ、グリーン購入を実施していると答えてくださったのは一七%という数字でした。

 環境への関心は高いものの、効果的な行動にはまだまだ結びついていないという傾向は、この私どもの非常に小規模のアンケートだけではなく、環境省が毎年実施しておられる大規模な調査でも同様な結果が出ているというふうに考えております。

 平成二十六年に全国二千六百人を対象に実施した、環境にやさしいライフスタイル実態調査というのがございます。ここで、関心ある環境問題として地球温暖化と答えた方は七〇%を超えて断トツでした。実際に行っている環境行動として省エネという項目を挙げた方は七三%もいらしたのですが、もっと具体的に、環境配慮商品を選択したことがあると答えた方の場合、省エネ家電では三八%、環境配慮型自動車は一四%、高効率給湯器は一三%と非常に少なくなっております。

 日々の省エネ行動はもちろん大事ですけれども、環境への関心を、身近な実践だけではなく消費選択する際の視点にきちんとつなげていく、そして長期的にはライフスタイルの転換につなげていく、そういうことを考えれば、まだまだ道半ばであるというふうに考えております。

 ただし、実践行動や消費選択、そしてライフスタイルの変革につながる普及啓発として、二〇〇五年に呼びかけが始まったクールビズ、これはかなり成功した例の一つではないかというふうに思っております。

 それまでは、暑い季節にスーツとネクタイをしっかりと締めて仕事をする男性の方に合わせて、オフィスの中では薄着の女性がぶるぶる震えながら仕事をしていた、そういうときもありました。そういう呼びかけに対して、手軽に実践できることもあり、多くの国民が夏のオフィスでの軽装に賛同し、冷房設定も高くするというようなことが定着してきたというふうに思っております。

 また、企業のトップの方にまず実践を働きかけるというような戦略も明確にありました。そして、ネクタイなしでもおしゃれなシャツを開発するような産業界、経済界にも大きな流れが生まれてきました。

 こういうような流れがかなり定着してきたと思いますが、ただ、クールビズも、今のように世に知られ、普及するのにかなり年月がかかったというふうに感じております。

 残念ながら、その後の普及啓発、もちろんしっかりといろいろなものに取り組んでいますが、ライフスタイルの転換ということを見据えたことを考えれば、まだまだ大きなうねりにはなっていないのではないかというふうに感じております。

 私たち国民は、これまでの報道などに接して、世界全体の温室効果ガスの削減が大変重要で、日本も削減目標を設けてそれを達成していくこと、そして途上国に日本の技術を広げて国際貢献をしっかりすることが重要だということ、こういうことは理解しているというふうに考えております。

 ただし、それが自分にとってどういうふうに関係があるのか、例えば、ここ十年の温室効果ガスの排出量が、家庭部門や身近な事業者部門が増加しており、私たちの暮らしや地域での大幅な削減こそが今回期待されているということまでイメージできていないのではないかというふうに考えております。

 また、もし省エネ性能のいい機器を選んだ場合、購入費用は高いけれども、使用する電気代が減って、しかも長もちするというような、負担する費用とメリットの関係が短期的にはどうなるのかということとか、子供世代の将来など長期的にはどうなるのか、そういうようなことを具体的にまだまだイメージできていないのではないかというふうに考えております。

 こういうふうな考えから、国民に対し、地球温暖化に対する危機意識、自分事として考える当事者意識の浸透を改めてここで強化すべきというふうに考えております。

 先ほども申し上げたように、温室効果ガス削減目標の達成という国のメリットの説明だけでは不十分です。国民としてどういうメリットがあるのか、一人の市民としてどういうメリットがあるのかということを入り口に、しっかりと伝えていただきながら、国民一人一人と地球温暖化防止の関係を具体的に伝え、構築していくということを考える時期ではないでしょうか。

 そのためには、物づくり、エネルギー、地域づくりもそうですが、いろいろなことに関係する、そういう各省庁と十分に連携、協働し、またエネルギーを使うような製品はもちろん、住宅、建築物にかかわる業界とも連携するということが重要だと思っております。

 また、伝える方法にしても、パンフレット、ポスターの作成とかホームページによる情報提供ではなく、最近は動画を初めとするインターネットの技術も活用するなど、世代に応じて随分取り組み方が違ってきておりますので、このような対象に応じた、国民にわかりやすく伝えるツール、コンテンツを積極的につくり出していくということが大事ではないかというふうに思っております。

 このような身近な取り組みがしっかりと効果を上げるのかというふうに疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。先ほど紹介した、私どものNPOが実施した消費行動アンケート調査の中に、環境のためならライフスタイルを変えてもいい、あるいは仕方がないと肯定的に答えてくださった方が合計八二%いらっしゃいました。これは大変うれしい材料だというふうに思っております。ライフスタイルを変える強いきっかけや明確な情報、実践できる仕組みや社会システムが暮らしの身近にあるという状況を整備することが重要だということを意味していると考えております。

 普及啓発の課題という視点で今お話をしてまいりましたけれども、地球温暖化対策に関する今後の取り組みのポイントを整理させていただきます。

 今まで申し上げた中で三つ挙げさせていただきますと、一つ目は、地球温暖化に関する危機意識、当事者意識を浸透させ、国民一人一人の自主的な行動を促すということ。その際、先ほどもお話ししましたが、国民にとってのメリット、光熱費のこと、暑さ寒さの影響が少なく快適な暮らしになるというようなこと、こういうことの積極的なアピールとか、国民をやる気にさせるような大きなムーブメントをつくっていく。国民運動というふうに今回いろいろ出ておりますが、こういうことが必要なのではないかと思っております。

 二番目は、それに関係する業界や各省庁など、広く関係者との十分な連携、協働体制をつくっていく、そして、国民だけではなく、地域社会そして経済、こういうような方々を巻き込んで大きなうねりにしていくということが大事なのではないかと思っております。

 三番目は、働きかける相手に合わせその内容などを考え、効果的な普及啓発手法の工夫、こういうようなのがやはり大事だというふうに思っております。

 こういう視点から、今回の地球温暖化推進法改正案について若干意見を申し上げたいというふうに考えております。

 二〇三〇年の削減目標達成に向けて、これまでなかなか削減できなかった家庭、業務部門の省エネ努力は非常に重要だというふうに思っております。

 地球温暖化対策計画の検討に私も参加しておりましたが、家庭、業務部門はそれぞれ四割程度の削減が期待されており、これはかなり本格的に取り組まないと達成できないという数字だと考えております。もちろん、この四割という中には電力の低炭素化で達成される部分もありますが、省エネ努力などによる削減分が、家庭では一四%相当、業務で一五%相当であり、暮らしや地域での対策行動の見える化、そして定量化というのが大変重要になってくると考えております。

 今回、啓発活動、国民運動にてこ入れをしてこれを強化していくというような内容になっておりますが、これは大変意義があるというふうに考えております。

 環境省が、クールチョイスという呼び方を旗印にして低炭素製品への買いかえをまず呼びかける、こういうようなことを考えておるようですが、市民にとって、関心はあるけれども何を実行したらいいのかわからないというようなときの具体的な情報として、まずは意義ある呼びかけだというふうに感じております。

 もちろん、省エネ家電だけでなく、二重窓で気密性を高めたり、自宅の改修をするときは断熱材を入れる、いろいろな分野を広げていくことで多様な分野で低炭素型の市場の拡大につながってくるというふうに考えております。

 さらに、今後の長期大幅削減に向けては、ライフスタイルの変革や転換に向けることが重要だというふうに思っております。

 低炭素市場の拡大、創出による技術の広範な定着と、一人一人の暮らしの知恵を合わせたハードとソフトの連携が進めば、公共交通や公共施設、自転車や車をシェアする、今クールシェアとも呼ばれていますが、こういうことを定着させたり、自然の恵みを大事にする暮らしなど、低炭素な暮らしと町づくりにつながる将来のライフスタイルの変換、転換にもつながっていくと期待しております。

 最後になってまいりますが、このような一人一人の行動の変化を支える情報とか知恵、人材をしっかり確保し、地域戦略を立てるためにも、自治体がしっかりとした地域計画を立てる、そして実行するということが重要になってくると考えております。

 今回の改正案の中には、地域における温暖化対策も明確に視野に入れ、地域によっては自治体が計画を共同して作成するなど、広域的な対応も視野に入れておられます。そういうことを強化している視点は大変重要だと考えております。

 今、地域では、地球温暖化対策への思いと、地方創生、地域活性化を願って、地域の未利用資源を活用した再生可能エネルギーづくりとか、地域らしい取り組み、持続可能な未来に向けて個性ある地域をつくっていこうというような町もふえてまいりました。消費地らしい取り組みや自然豊かな地域の取り組み、そして自治体やNGO、事業者などの連携でそういうことをつないでいく、そういうことが大変重要になってきていると思っております。

 こういう地域の広い面的な広がりを支える基本として、今回、温暖化推進法の改正案をきっかけにして、自治体や地域の事業者、国民、そして温暖化対策、適応する暮らしや町づくりに関係する企業の方々、そして多くの関係者が自主的な参加と連携による大きな場をつくっていく、こういうようなうねりをつくっていくことが重要なのではないかというふうに感じております。これをきっかけに、意識啓発から消費選択、実践行動、そしてライフスタイルの転換に続く道をつくっていく、それこそが本当に大事だというふうに心から期待しております。

 どうもありがとうございました。(拍手)

赤澤委員長 崎田参考人、ありがとうございました。

 次に、明日香参考人にお願いいたします。

明日香参考人 きょうは、このような機会をいただき、どうもありがとうございます。東北大学の明日香と申します。

 私は、パワーポイントを用意してきましたので、それをごらんになりながら、それに沿ってお話をさせていただきたいと思います。特に読む原稿は持ってきていないので、いろいろ自分の言葉でしゃべりたいと思っております。

 先ほど、前の参考人のお話にもありましたように、今回の法案は可もなく不可もなく、私もそう思います。それはどうしてかというと、具体的なことが余り書いてないので、なかなかうまくコメントできないというところがあるかと思います。

 なので、きょうは皆さんに、地球温暖化問題で世界で何が起きているか、日本でどうして地球温暖化対策に対する取り組みが弱くなるのか、そういう根本的なことについて、私の考えを述べさせていただきたいと思います。

 パワーポイントに沿ってお話をさせていただくので、ごらんになっていただければ幸いです。

 タイトルは、「日本の温暖化問題(エネルギー問題)におけるガラパゴス化を憂う」というちょっと刺激的な言葉を選ばせていただきました。内容は、世界、日本、なぜ日本は温暖化問題でガラパゴス化するかということで、私の考えを述べさせていただきたいと思います。

 本日伝えたいメッセージとしましては、温暖化対策、エネルギー政策と全く同じです、において日本はガラパゴス化しており、それは現在、国際社会から非難を浴びていて、かつ日本の経済成長も損ねているということを私のメッセージとしてきょうお話をさせていただきます。

 最初に、世界の動きについて、パワーポイントで写真がありますので、ごらんいただきたいと思います。

 二週間ぐらい前の朝日新聞に、ベトナムで百年に一回の干ばつというニュースがありました。その下は、四日前なんですが、ロシアで大規模洪水、原因は急激な気温上昇というニュースが流れておりました。

 次のページで、アメリカのヒューストンで洪水、五人死亡、数百人が避難とあります。その下は、オマリー・メリーランド州知事、民主党候補のナンバースリーであった方ですが、彼が、二〇一四年の段階で、シリア難民問題と気候変動問題の関連性についてテレビのインタビューで答えています。

 その次は、サンダースさん、皆さん御存じだと思いますけれども、彼はインタビューで、アメリカの国家安全保障に対する最大の脅威は何かと問われて、気候変動というふうに答えています。最近でも、IS、イスラム国よりもクライメートチェンジの方が重要な問題なのか、悪いのかという質問で、アブソルートリー、もちろんだというふうに答えています。

 なので、世界は温暖化の被害が激しくなっていることもありますし、それにかなり、特にアメリカの政治は、政治家が気候変動に関していろいろな場でコメントをしているというのが現在の流れです。

 その背景にあるのが温暖化被害なんですが、どうしても日本では、温暖化被害というと、せいぜい百人、千人、万人ぐらいだというようなイメージを持っている方が多いかと思います。ですが、実際、温暖化で被害を受ける方は千万から一億人です。

 実は、温暖化の被害というのは洪水、干ばつがほぼ七割、八割を占めるんですが、洪水で既に被害を受けている方が二千万人、毎年世界にはおります。その人たちが、二度Cだったらその二千万人ほども変わらないんですが、三度、四度、五度という世界になると、その人たちの数が五千万人、一億人、二億人になる、それが気候変動問題でありまして、だからこそ安全保障問題というふうに認識されています。

 石炭の話を少ししたいと思います。

 二度目標、一・五度目標、何となく頭では数字はわかるんですけれども、それは何を意味するかというのは、多くの方は御存じないかもしれません。例えば、一・五度目標というのは、石炭火力発電所は先進国ではもうほぼ使えず、途上国でも新設は無理だというようなことを示しています。それが科学的な事実です。

 なので、今日本は、後でもお話ししますけれども、石炭火力発電所を新設しようとしているんですが、これは完全に一・五度Cなり二度Cというパリ協定の目標を無視しているというふうに国際社会からは認識されています。

 そういう流れの中で、一つ、ダイベストメント運動というのが今起きています。そこにありますように、化石燃料企業からの投資撤退、たくさんの企業、都市、財団、年金が、五百ぐらいの組織が今あるんですが、そこがもう化石燃料会社の株とか債券を買わないということを宣言しています。ですが、日本で実はこういうダイベストメントを表明している組織はまだ一つもありません。これが現実です。

 もう一つ特徴的なのは、裁判が今たくさん起きています。

 一つ興味深いのは、オランダのNGOが、オランダ政府を数値目標が低過ぎるといって訴えて、オランダのNGOは一審は勝っています。

 今、ニューヨーク州ほか幾つかの州がエクソン・モービルという会社を訴えようとしています。まさにこれはたばこ裁判と同じような展開になっています。

 最近も、アメリカで若者たちがアメリカ政府を訴えています。それは、若い世代が温暖化の被害を受けるのはおかしい、憲法違反だというふうにアメリカ政府を訴えています。

 フランスですが、フランスはエネルギー転換法というのを去年つくりました。そこでは、企業活動なり投資ポートフォリオが二度目標に適合しているかどうかを情報開示することを義務づけています。なので、これからビジネスの世界では、二度目標に整合性のある投資をしないといけない、しないと、非常に、逆に、インベストメントバンカーなりそういう人たちが責任を問われるというようになっています。

 これは全てつながっていまして、いわゆる個人、企業、政府が持つ法的責任や損害賠償をめぐるさまざまな告発や訴訟が各地で増加すると予想され、これまでとは異なるレベルのリスク認識及び管理が必要となるとされています。

 簡単に日本のエネルギーミックスの問題の話をしますが、基本的にこれは、原発、石炭火力重視で、省エネ、再エネ軽視のエネルギーミックスが日本の数値目標を非常に低いものにしています。

 日本では、日本の数値目標は遜色ないというふうに思っている方が多いかと思うんですが、国際社会ではそういうふうに思っていません。国際社会、幾つかの研究機関が各国の数値目標を比較しています。その中で、日本の数値目標というのは米、中、EUよりも低いというふうにランクづけられています。なので、まさにこれも、日本が遜色がない、日本の数値目標はすばらしいと思っている人たちというのは、日本の本当に一部の人たちだけです。

 では、何で数値目標がおかしいかというと、結局エネルギーミックスです。

 一つは、長期エネルギー需給見通しでの省エネの量が非常に少ないということです。

 十九枚目のスライドの写真がよくわかるんですが、これは、配管保温断熱材、工場にいろいろな配管の断熱材があるんですけれども、それがかなり今、剥がれていたり、壊れていたり、そういう状況です。これだけでも実は原発七基分相当のエネルギーがロスされています。

 実は、こういう省エネポテンシャルはたくさんあるんですが、それを計算しないでエネルギーミックスをつくっていて、そのエネルギーミックスに基づいているので、日本の数値目標は非常に低いという構造になっています。

 もう一つ、日本の温室効果ガスが減らないのは、石炭火力がふえているからです。これはもう明白です。

 二十枚目のスライド、二十一枚目のスライド、全てそうなんですが、先進国の中で過去二十年間、震災前も含めまして、石炭火力をこれだけふやしてきた国は日本だけです。ほかの国は、フランスは原発をふやしましたり、ドイツは再生可能エネルギーをふやしましたし、天然ガスをふやしている国もあります。ですが、日本だけがふえた需要の分を石炭火力で賄っています。なので、CO2の排出量が減るはずはない状況です。

 では、そういう日本は今、G7の中でどう評価されているかというと、二十二枚目のスライドですが、脱石炭火力という観点からは、一番下の七番目にランクされています。これが現状です。

 もう一つ問題なのは、日本政府による海外石炭プロジェクトへの公的資金支援問題です。これも、日本、韓国、中国、この三つの国が圧倒的に多く、公的資金で石炭火力発電プロジェクトをファイナンスしています。

 日本の技術はという話もあるんですが、少なくとも国際社会からは、日本は、ちょっと古い言葉ですけれども、エコノミックアニマルというふうに見られています。日本人は日本企業の利益と地球益が同じものだと自分で勝手に思い込んでいるというのは海外の人の声ですけれども、基本的にはこれは事実だと思います。

 では、日本の技術は効率が高いから、技術は非常にすぐれているからいいのかという議論がありますが、実際、石炭火力発電所に関しては、日本のJBICが支援している石炭火力発電所の効率は、実は世界平均と同じくらい、または低いという調査結果が出ています。なので、日本の技術は効率が高いからいいんだというロジックは、世界には通じない状況になっています。

 結局、政府の建前というのは、石炭火力も、多分まさに原発の問題も同じだと思うんですけれども、安全、高効率、クリーン、安い、あと中国もやっているからということで輸出に支援をしているんですが、結局は、海外からどう見られているかというと、単なる自国企業への輸出補助金なんじゃないかというふうに見られているのが日本の現状だと思います。

 一つ、原発の話にちょっと触れましたので、原発がなくても温暖化対策と経済成長の両方が可能だということについて話をしたいと思います。

 これは単純でして、ドイツがそれを示しています。ドイツの数値目標というのは日本よりも三七ポイント高いです。ですが、御存じのように、ドイツは原発をやめることを決めています。なので、原発がないと温暖化対策数値目標は高いものが持てないというのは全く、うそというのは言い方がよくないかもしれませんけれども、やり方次第では、ドイツのように数値目標、温暖化対策も高い目標を持つことができますし、かつ原発もなくてもそれが実現できるということはあります。

 経済はどうかというと、御存じのように、ドイツの経済は今、ほぼひとり勝ち状況です。

 なので、よく、脱原発と経済成長と温暖化対策というのは全てジレンマ、トリレンマにあるというふうに言われるんですが、そんなことはないです。

 では、何で日本はガラパゴス化するか。簡単に、十二考えていたんですが、ちょっと十二全部お話しするのは難しいので、幾つかを選びたいと思います。

 現在、やはり福島の原発事故の影響はあったと思います。原発事故の後、特に、温暖化対策の話をすると原発推進と思われるんじゃないかというような懸念を持つ人がいます。ですが、それも結局は、原発は温暖化対策に必要だという政府なり企業の方々の言説が、みんなそれを信じてしまっているということかと思います。

 あとは、日本は環境立国だとか、日本は技術がすぐれているというような話があります。確かにそういう面はあるかと思うんですが、温暖化問題というのは技術の問題ではないです。技術はもう既にあります。それをどう普及するかの話でして、技術を革新するという話でなくて、技術をどう普及するか、どう制度をつくるかという話です。

 三十一枚目に書きましたように、日本では、やはり、電力システム改革、再生可能エネルギー普及が欧米より、少なくともヨーロッパよりは二十年おくれています。

 かつ、今の原発と石炭火力発電所に依存したシステムをやはり維持したい人たちがたくさんいまして、その人たちの勢力が強いということなんだと思います。基本的に、エネルギーミックスを決めますと一義的に温暖化対策数値目標というのは決まってしまいますので、エネルギー政策が一番重要なんですが、環境省も含めて、なかなかその政策立案にコミットできないというのが日本の政策決定プロセスの問題だと思います。

 まとめたいと思います。

 私は、楽観も悲観もしていません。温暖化問題というのは公平、責任の問題、モラルの問題で、なかなか難しい問題であることは確かだと思います。ですが、温暖化対策は、基本的には省エネと再エネです。やり方次第では国全体及び地域に経済的な利益を及ぼすことは、ドイツなりほかの国が証明しています。

 そうはいっても、どこの国でもそうなんですけれども、いわゆる抵抗勢力の人たちはいます。その結果、日本の温暖化対策数値目標というのは非常に低い、国際的にも非常に低い評価しかもらえていない状況だと思います。

 かつ、この前決まったパリ協定でも、実はそれほど強い内容ではなくて、多くの問題は先送りされています。

 ですが、一方、冒頭にお話ししたように、いろいろな努力を市民社会が今行っています。一つは訴訟です。それは、企業が訴えられる場合もありますし、国が訴えられる場合もあります。いろいろな人たちがこれから、そういう訴訟を今用意しているのが現状だと思います。

 そういう意味で、世界の状況も日本の状況も変化しつつあり、成功、失敗のお手本はあって、希望はあると思います。

 希望のその一なんですが、三十六枚目のスライドを見ていただければと思います。これがある意味では一番希望をもたらすグラフかもしれません。

 これは、アメリカですけれども、各発電技術の発電コストを比較したものです。これはラザードという、毎年発電コストを計算して発表しているんですが、ごらんのように、太陽光、風力が原子力、石炭よりもかなり安くなっています。いろいろあります。結局は、CO2の排出を削減するためには、太陽光、風力をふやして、省エネをふやすしかないです。国民運動といっても、結局、絵に描いた餅で終わる。

 そのときに、ふやすのにどうすればいいかというと、結局、ビジネスでお金が回らなきゃいけない。ビジネスの上でお金が回るためには、やはり価格が安くなければなりません。アメリカの場合は、ヨーロッパもそうですが、太陽光、風力が原子力、石炭よりも安くなっています。日本はまだ実はいろいろな問題があって高いんですが、いずれ、コモディティー化していますので、太陽光、風力の値段は世界の価格に日本も近づいていくと思います。数年かかると思いますが、数年でそうなると思います。そうすると、原子力、石炭は、もうただ単純に高いということで要らなくなるということです。

 希望その二ですが、三十七枚目、最後になります。

 ドイツでは、約三十七万人の再生可能エネルギーによる雇用者が今います。一方、原子力は約四万人です。日本でも、再生可能エネルギーによる雇用者数は今二十二万人と言われています。これは六大CO2排出産業、鉄鋼、電力、セメント、製紙とか製油、六大CO2排出産業と原子力産業を合わせた数字よりも大きい。

 なので、実はもう、産業という面から見ると、将来性という意味では、コストという意味でも雇用という意味でも、再生可能エネルギーが、そうではない、いわゆる重厚長大産業の雇用を凌駕しているというのが現状です。

 最後になりますが、原発も石炭もそういう意味では世界では大きく、世界最大の石炭会社のピーボディーという会社が一週間ほど前に倒産しました。今、石炭会社の株価は一番高いときの一割ぐらいです。多くの会社が今倒産しようとしています、実際倒産しています。だから、世界はそういうふうに動いています。原発も同じように、今先進国で建てている国はほとんどない、御存じのようにない状況です。

 そういう産業をどう考えるのか、再生可能エネルギーのような将来性がある産業をどう考えるか、それによってCO2をどんどん減らすことができるかどうか、雇用をどうするか、全て同じ、つながっている問題でして、日本の経済成長につながる問題だと思います。

 なので、繰り返し言いますが、脱原発と経済成長と脱温暖化というのは、共存できますし、それを目指して、今回の法案では数値目標というのは特には触れられていませんが、一年後、二年後、三年後の日本での温暖化対策の数値目標、温暖化対策に関する議論に資するような議論をこれから活発にしていかなければと思っています。御協力をよろしくお願いしたいと思います。

 きょうはどうもありがとうございました。(拍手)

赤澤委員長 明日香参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

赤澤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。吉野正芳君。

吉野委員 おはようございます。自民党の吉野正芳と申します。

 参考人の皆様方、貴重な御意見をいただいて本当にありがとうございます。

 パリ協定の評価をちょっと伺いたいと思います。

 実は、私は、GLOBEインターナショナルという世界の環境を考える国会議員の集まりがあります、そこのGLOBEジャパンに所属をしておりまして、ある意味で議員外交という形でパリまで行ってまいりました。ここにおられる田中議員も、これはIPUという別な世界の国会議員の団体で、やはりパリに行ってきたわけです。

 京都議定書とパリ協定をちょっと比べてみると、パリ協定で一番ここが違うんだというところは、全ての国が参加をしたということなんです。していない国は北朝鮮とシリアともう一カ国ぐらいだと聞いていますけれども、全ての国も、温暖化は人類共通の敵であって、それに戦っていくんだという。国はさまざまであります。ただ、できるだけ、自分でできる範囲のところを世界各国の国々が協調してパリ協定を結んだというところが、私は一番大きなところだと思います。

 それで、平田参考人はもうパリ協定はこうだということをお述べいただいたんですけれども、ほかの三人の参考人の方々がパリ協定をどういう形で評価しているか、見ているか、お聞かせ願いたいと思います。

浅野参考人 ただいまの先生の御指摘の点でございます。

 私も全く同じように考えておりまして、全ての国が参加したということが京都議定書に比べると格段の差であるというふうに思っていますし、さらに、現実的なアプローチをとっていますので、前のようにトップダウンで決めるのではなくて、各国が自分の状況に応じて目標を決めていくというアプローチは大変合理的だと思います。

 それから、もう一つやはり強調しなきゃいけないのは、世界全体が目指すべき目標を明確にしたということだと思っておりまして、二度目標が明確になったということと、さらに、とかく日本ではちょっと、余り認識されない傾向があるんですが、累積的な排出量が問題だということがIPCCで出てきましたので、そのことがはっきりしてきた、これはもう少し我が国も真剣に認識しなければならないというふうに考えております。

崎田参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、今御指摘いただいたように、今回のパリ協定は、世界全体が取り組む、やはりここが、何といっても、地球の将来に関してしっかりと責任を持つということが明確になったということが特徴だというふうに受けとめております。だからこそ、対策と適応策、そういう全体が非常に重要になっているのではないかなというふうに思っております。

 なお、これを実行するというのがすごく大事だというふうに思っておりますので、どういうふうに世界全体がこれを評価していくのか、そして、五年ごとにそれを見直していく、こういう世界全体のPDCAサイクルをしっかり回していく、そういうやり方を明確にしていくというのがこれから大変重要なところだと考えております。

 よろしくお願いいたします。

明日香参考人 私は、ちょっとあまのじゃくかもしれませんが、パリ協定は、いいところもあるんですけれども、問題もあるというふうに考えています。

 先ほど全ての国が参加するというふうにお話がありましたけれども、京都議定書の場合も全ての国は参加していました。先進国だけが数値目標を持っていたんですが、京都議定書の場合も全ての国は参加しています。

 参加すればいいというものではなくて、基本的に、数値目標をどれだけ厳しいものを持つかというのが一番大事です、二度目標達成のためには。なので、参加だけが強調されるのはちょっとおかしいかなと。

 二度目標、一・五度目標という数字が出ましたけれども、では、今できるレベルでの温暖化対策、数値目標というのを各国がやるだけでは、今の状況だと四度、五度になります。二度と四度、五度のギャップというのをどういうふうに埋めるかというのは、国際社会は今ノーアイデアという状況だと思います。なので、そういう意味では、パリ協定ができたから頑張ろう、それで大丈夫だというふうにはとても思えないです。

 ですが、一つポイント、いいことがあると思うのは、まさに先ほど、ビジネスとか司法とか、立法とか行政というのはなかなか動きにくいんですけれども、ビジネスとか司法を動かすきっかけにパリ協定がなる可能性があります。お金の流れというのは、そのような気候変動のリスク、裁判で訴えられるリスク、そういうものに非常に敏感ですので、お金の流れが非常に変わると思います。

 実はさっき言わなかったんですが、金融安定理事会という世界の中央銀行総裁のグループがあるんですけれども、そこも、気候変動リスクと金融システムということで、企業により情報開示を求めようとしています。

 そういうつながり、また裁判がつながってお金の流れが変わる、そういう意味では、私、パリ協定は漢方薬みたいなものかなと思っています。すぐに効くかどうかわかりませんし、誰に効くかよくわからないんですが、じわじわと社会を、体質を変える可能性はあると思っています。

 以上です。

吉野委員 ありがとうございます。

 温暖化を防ぐということは、世界の、今六十億、七十億の一人一人がきちんと意識をしていくということが一番大事だと思うんです。

 これはちょっと崎田先生にお伺いしたいんですけれども、我が国は日本国ですから、まず日本人の意識づけでありまして、実は私は福島県なんです。それで、京都議定書ができてしばらくたってから、福島議定書というのをつくったんです。

 これは、まず子供たち、小学校、中学校の子供たちに、去年まで使っていた水道代と電気代、これを自分で、この学校はどれだけ下げますという形で約束をするんです。そして、その電気代と水道代が目標を達成すれば知事から表彰状一枚を渡していたんです。これがどんどん広まって、企業も参加するようになりました。企業はある意味でお金を寄附してくれて、今は子供たちには図書券も配れるくらいになりました。

 ここで、水道を出すと、箸の太さで十分手が洗えるし、物が洗えるということを子供たちは学校で学びました。そして、それを家に帰ってから、おばあちゃんが洗い物をするときに、水をじゃあっと出すんです、おばあちゃん、箸の太さと言って、おばあちゃんも水道の節約をしていく、そういう運動が福島県の場合はかなり広まっております。ですから、意識づけというところが一番私は大事になろうかと思います。

 今、私たちは温暖化対策税を払っているんです。誰も払っていると気がつきません。でも、温暖化対策税を払っているんです、プラス二千六百億。ことしから第三段階で二千六百億円を払っているんですけれども、誰も気がつかない。

 やはり、自分は温暖化対策税を払っているんだということをきちんとわからせるためには、例えばガソリンを入れた場合、あれはリッター幾ら払っているんですから、リッター幾ら払っているということをきちんとガソリンを買った場合の領収書に書くべきだと思います。そして、自分は温暖化対策税を払っているんだという意識をきちんと持つこと、これがパリ協定の、各国が意識を持ったという最初の出発点でありますけれども、そういうことにつながろうかと思います。

 そういう国民運動について、崎田先生の御意見をいただきたいと思います。

崎田参考人 国民運動について御質問いただきまして、ありがとうございます。

 今、福島の方で福島議定書という形で子供たちの取り組みを応援しているという話を伺いまして、やはりそういう動きが本当に大事だなと思って伺っておりました。

 三つくらいすてきな、お話を伺って、いいなと思うところがあるんです。

 まず一番目は、やはり子供たちにまず環境を伝えるということがすばらしいと思います。それに、家に帰ってこういうことを学んだよという、先ほどのおばあちゃんにお話ししたという話、やはり大人は子供とか孫から言われることではっと気づくということがありますので、子供に伝えるというのがまず一番いい作戦だというふうに思います。

 二番目は、自主的にそれぞれの学校が目標を立てるという、やはり自主的に目標を立ててそれを取り組む、そこが自発性を広げるのには大変重要なところだと思いますし、それを褒め合う、最後にきちんとそういう場をつくるというところがまた効果的だというふうに思っております。

 なお、こういう仕組みが事業者さんにも広がっているというふうに今お話がありましたが、事業者さんの中には、東京などでは一番CO2を出しているというかエネルギーを使っているのが大学だったりするんですが、研究施設もありますので、事業者さん、いろいろと広げて、同じように取り組んでいただくというのは大変重要だというふうに思っております。こういうやり方を全国で広げていくというのは、基本としては大変重要なところだと思います。

 なお、ガソリンなどを買ったときのレシートにきちんと記載をするような、そうして国民、私たちみんなが温暖化対策税を払っているということを自覚するような形をした方がいいんじゃないかという御指摘がありました。これもなかなかすばらしい御指摘だなと思うんです。

 最近の事例としては、レジ袋の削減という大きなムーブメントがありました。物を大切にするというきっかけで、私たちが買い物に行くときにマイバッグを持っていく。そして、レジ袋などは二枚目、三枚目をお断りするというときに、レジ袋を断ってくださってありがとうというふうに一言書いてくださるようなスーパーが出てきたり、有料化しているところは二円いただきましたと書いてあったり。そういうことが進んでくることで、かなりみんなに、地域全体、関心のある人だけではなくみんなに広がるということが、いい効果があったというふうに感じております。

 ですから、温暖化対策税もガソリンを買ったときのレシートにきちんと書いてある、本当にそういうことは一つ一つ大事だと思っております。

 御提案ありがとうございます。これから広げていければと思います。

吉野委員 ありがとうございます。

 福島のやり方を全国に広めていきたいなというふうに思っているんですけれども、まずは文科省の方にお伝えをして、広めていきたいと思います。

 浅野先生に、先ほど緩和と適応、適応という問題がいわゆる温暖化の中で余り議論されてきませんでした。でも、適応がやはり温暖化対策の中では重要な部分になってきました。

 適応計画もやっと日本でも発表されるようになりましたけれども、農林水産省でつくった適応計画書を見ると、余り、今適地適作しか書いていないので、適応というと品種改良というくらいしか農林水産省はやっていないんです。でも、長期にわたって、品種改良くらいではやはり適地適作がきちんとなされなくなっちゃうというのが温暖化の恐ろしいところだと思います。

 適応をもっと広めていくにはどういう方策というか方法があるのか。浅野先生、お願いしたいと思います。

浅野参考人 ただいまの先生の御質問、なかなか難しい御質問でございまして、分野が大変広うございますからそれぞれの分野ごとに考えなきゃいけないだろうと思いますが、何よりもやはり情報を的確に発信するということがそれぞれの領域ごとにきちっと行われなければなりません。

 既に中央環境審議会には小委員会がございまして、作業をし、意見具申も出しましたが、この作業を中断させてはいけないと思いますので、こういう組織をしっかり維持して、今後も情報をそろえていくことが必要だと思います。

 その上で大事なことは、やはり地域ごとに取り組みの仕方が当然違ってきますので、中央省庁が全国一律に何かこのようにやればいいといって発信しても、それでは実情に合わないと思います。やはり何としても、各地域ごとに、自分のところでは何が必要なのか、何をやればいいのかということを本気で考えなきゃいけないと思います。

 例えば、宮崎県は台風が多いので、米から撤退してしまって別のものをつくるということもやってこられたわけですが、これなどはやはり地域をよく考えて政策を立てておられるわけですね。同じようなことは多分それぞれの地域ごとにあるだろうと思いますから、その点をもっと強調しなきゃいけないというふうに思っております。

吉野委員 再度、浅野先生にお伺いします。

 ノーベル賞をもらった天野博士の、全部LEDにすると日本の発電量の七%を削減できるというお話を伺いました。と同時に、窒化ガリウムという、これまた天野先生が研究しているんですけれども、充電器とか、インバーター、直流を交流に直すとか。いわゆる充電器をやると、あったかくなっちゃいますね。あの熱を出すことで電気がロスをしていく、こういう考え方なんですけれども、そのところを、窒化ガリウムという材料を使うと全く低減できるという素材なんですね。

 そういうものを使えば、これで九・何%減って、合わせて一五、六%、全ての日本の発電量の一五、六%がこの窒化ガリウムだけで低減できる、そういう技術開発が今ある意味で実用化をされておりますので、これについて御意見を賜りたいと思います。

浅野参考人 先生御指摘の窒化ガリウムの技術が大変すぐれたものであるということは、私も伺っております。こういう技術の開発をするとともに、それがいかに広く広がるかということが一番重要ではないかと思っています。当然、エネルギー消費量を削減するというのはまず対策の一番ポイントになりますので、その点でも寄与するだろうと思います。

 とかくいろいろな形で予算を投入し、研究の支援もやっているんですが、残念ながらなかなかそれが広がらないですね。実用化されるというところにもっと力を注がなきゃいけませんので。今、窒化ガリウムについては、どうやってそれを本当に広げるかということ、これは政府も真剣になって考えていただかなければいけません。

 先ほど言いましたように、二〇五〇年の八〇%という大きな目標がありますから、そのことは企業もしっかりお考えいただいて今から蓄積をしていくということが必要だろうと思いますから、先生のおっしゃるような技術についてはぜひ大事にしていく必要があるだろうと思っております。

吉野委員 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、参考人の皆様、お忙しい中お越しいただき、審議に資する御意見を賜り、本当にありがとうございます。

 早速質問をいたします。

 最初に、浅野参考人と崎田参考人にお伺いをいたします。

 今回の法案の中で、二〇三〇年度二六%削減目標達成に向けてということで、家庭、民生部門での四割の削減、特に家庭部門での四割の大幅削減というのは、もちろん電力の低炭素化や供給側の責任も大きいわけであります。

 その際に、国民がこの国民運動という中でどれだけの負担を求められることになるのか、その点をお聞きしたいんですが、国民運動の強化ということで、低炭素製品への買いかえとか低炭素サービスの選択とか、こういうことがあります。もちろん、ライフスタイルの転換ということもあるわけですけれども、そういったクールチョイスを掲げております。

 こういった中で、低炭素マーケットの拡大、創出というわけですけれども、これは当然、支払う側もあるわけで、実際、このクールチョイスと言われるような、こういう取り組みで国民の負担額というのはどのぐらい見積もられているのか。そういうものというのは、何かこれまで出されているもの、目安となるようなものがあれば教えていただけないでしょうか。

浅野参考人 実は、残念ながら、まだ明確に数字が幾らぐらいということについては考えていないというのが実情だと思います。何をどうすればいいのかというプログラムを先にしっかり立てませんと計算もできないだろうと思いますから、頭から幾らというような形の議論はなかなかやりづらいのではないかというふうに思っております。

 しかし、必ず、最終的には、今先生がおっしゃるようなことを考えていかなきゃいけないことは事実だと思いますから、これから審議会でも話題にしていかなきゃいけないと思っております。

崎田参考人 ありがとうございます。

 実際のクールチョイスのときの費用負担に対してどのくらいになるか、全体的にどうなるかというのは、やはり国の方できちんと積み上げていただきたいというふうに思っておりますが、市民感覚からいうと、やはり本当にわずかな金額でも大変大きな影響を感じるというのが現実だというふうに考えております。

 ですから、先ほどいろいろお話があった温暖化対策税というのがここ数年で徐々にふえてきて、ことしの四月からきちんと入っているというふうに理解をしておりますけれども、こういう温暖化対策税を、クールチョイスをするような消費者あるいは事業者にきちんと支援をする、そういう仕組みをつくっていただく、そういうような流れをつくっていくことが大変重要ではないかなというふうに感じております。

 よろしくお願いいたします。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、平田参考人にお伺いをいたします。

 お話の中で、パリ協定では法的拘束力のあるものとして明確な長期目標を設定したとお述べになりました。地球温暖化対策推進法に長期目標を明記することを求めておられます。

 しかしながら、政府が長期目標を国内法整備に位置づけていない。それはなぜなのか、何が障害なのか。その点についてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

平田参考人 ありがとうございます。

 パリ協定から戻りまして、地球温暖化対策計画の議論を審議会等でされているのを拝聴してまいりましたけれども、私が驚いたのは、長期目標が明確に設定されたパリ協定ができた後、最も議論が活発に行われたのが八〇%という日本の目標を計画に記載するか否かという議論で、むしろそれを書かない方がいいというような、あるいは二度目標ということも含めて書かない方がいいというような意見を言う方がかなりおられるというのを見てまいりました。

 私の立場ではないですけれども、そこに見られる理由としては、将来のことは約束できない、不確実性も伴うし、そこまでの技術的な裏づけもない中で、そうしたことを法律に書き込む、あるいは計画に書き込むということは適切ではないのではないかという議論があったのを受けております。

 しかし、これは私は適切な問題の捉え方ではないのではないかと思っております。

 長期目標というのは、確かに、数値目標のような、京都議定書のような義務として掲げよと私たちも申しているわけではありません。法律という形で、ルールということで、政治がこれから向かうべき社会の方向性を指し示し、そこに向かって、経済活動を行う人や社会活動を行う人たちに安定的な、制度的な仕組みを整えていくというためのものであります。これがないがために、今、石炭火力発電でいいのではないかといった将来展望のないことが容認されていくようなことを生み出しているのではないかと思います。

 ですから、明確な義務として、不変のものとして書くというよりは、将来目指すべき二度、一・五度という目標、そして、日本が既に閣議決定している八〇%目標ということを、今計画では目指すという表現になっていると思いますが、私はその表現のままでいいと思いますが、日本のこれから向かっていく方向としてしっかり明記するということは非常に重要で、さきに申し上げたような理由は余り当たらないのではないかと思います。

 また、これがあれば、ビジネスは、先ほど明日香先生がおっしゃったように、明確に、この脱炭素化の社会の中で、これから何を目指していくのか、どうやって利益を生み出していくのかということの知恵を大いに生み出すきっかけになるのではないかと思っています。

塩川委員 ありがとうございます。

 次に、平田参考人、それから明日香参考人にお伺いいたします。

 石炭火力のことなんですけれども、主要国は、エネルギー対策、温暖化対策として、石炭火力抑制の方針を打ち出しておられます。このことについては、意見陳述の中でもお話を伺ったところです。

 日本の石炭火力発電の新設計画がこのような世界の流れに逆行している、そういう点での世界の主要国と日本との違いは何なのか。この点についてお考えをお聞かせいただけないでしょうか。

平田参考人 一つは、パリ協定を受けて、これから化石燃料依存から大きく脱却しなければ実現できないような目標を掲げた、そこに日本も含めて合意したということでありますが、この気候変動問題に対して世界が約束したことへの認識がまだ薄いのかなというふうに思います。つまり、気候変動問題への認識、そしてリスクとしての認識が、日本の政策あるいは日本の経済活動の中に十分落ちていないのではないかと思います。

 高効率の石炭火力発電所を建てることは従来と比べて効率がいいのでCO2が減るというのは、確かに現状で比べればそうなんですけれども、むしろ、世界の認識としては、累積の排出量が気候に与える影響が気温上昇をもたらすということでありますので、むしろ、既存の古い発電所でも五年ぐらい動かしてそこから再生可能エネルギーに行った方が、高効率の発電所を建ててこれから四十年動かす方が圧倒的に累積の排出量が多いわけです。

 このインパクトは見逃すことができないというのが世界のさまざまな研究者、そして国の認識になって、それが政策の変更を引き起こし、ここ数年では、五年ぐらいの間で、計画も撤退、それから既存の発電所も撤退、イギリスでは二〇二五年に既存の発電所も全部なくす、そうした政策変更が起こっています。

 こうしたことが国内に響かないのは、やはり、長期的な展望がないということに加え、非常に短期的な利益、特に、原子力の再稼働のめどが立たない中で、いわゆるベースロード電源として安定的だと言われて当面安い電源に走っているという現状にあるのかなと思っておりまして、やはり先見性を持った判断というのが欠けているからではないかと思っております。

明日香参考人 私も、そのように、やはり認識が不十分だということが一番だと思います。

 ですが、その辺の理由がまた幾つかありまして、一つは、やはり、特に日本においては、原発事故の後、原発よりは温暖化の方がいいという、単純な、間違った比較をする人が多いかと思います。あと、先ほども申し上げましたように、価格がどうしても石炭火力は安いというのが現状なんですが、それは、逆に言えば、省エネをやりたくない、してほしくない人たちがいるというのと、再生可能エネルギーの値段が世界の価格よりもかなり高いところでまだとまっているということです。そういうものを変えないと脱石炭というのは現実的には難しいと思います。

 なので、私の、十二の理由というのを書いたんですが、そこにあると思いますし、石炭火力発電所に関しましては、私、原子力村という言葉がいいかどうかは別にして、原子力、化石燃料村というものが存在しているというふうに思っていますし、現実的に石炭火力という経営資産を維持していたい今の大手電力会社の姿勢というのが一番大きな問題だと思います。

塩川委員 ありがとうございます。

 明日香参考人にお伺いいたします。

 パワーポイントの資料にも書いておられましたが、日本の石炭火力の効率性のお話がございました。公的資金支援をされている日本の石炭火力の効率は高くない、実際にはJBICが支援している石炭火力発電設備の効率は世界平均と比べても低いということなんですけれども、何でこんなふうになっているのかというのがよくわからないんですが、高いと宣伝しているのに実態はこうだという。

 その辺については日本の政府当局の認識というのはいかがなのかなと思うんですが、その点についての所感がありましたらお聞かせいただけないでしょうか。

明日香参考人 その数値自体は私がまとめたものではなくて、気候ネットワークさんなりJACSESさんの研究者の方がまとめたものです。

 ですが、やはり、一般的に日本の技術はすぐれているからいいんだというようなことというのは、ある意味では神話になっているのが現実だと思います。

 十年前は確かに違ったと思う。日本は石炭火力発電所も非常に効率のよいものをほかの国に比べて生産していたと思いますが、現実的には、今は、中国、韓国、全てほぼ同じようなレベルの石炭火力発電技術を持っていますし、それも問題なんですが、韓国も中国も同じように政府が支援をしているのが現状です。

 なので、日本が悪いというわけではないんですが、日本も悪いという状況だとは思います。

塩川委員 ありがとうございます。

 平田参考人、明日香参考人に原発についてお伺いをいたします。

 日本の二〇三〇年度二六%削減目標は、電源構成比率二二から二〇%を原発に依拠するものとなっております。林経産大臣の答弁でも、四十年を超える運転期間の延長を行い、震災前の七割の稼働率を八割にするとすれば三十基程度という計算になると述べているわけであります。政府の目標達成のためには、四十年を超えた老朽原発を動かし、震災前よりも高い稼働率で運転するということになりかねません。あるいは、リプレースですとか新設など、新たな原発建設に踏み出すことになります。

 このようなエネルギー政策における今の政府の原発の位置づけについてどのようにお考えか、お聞かせいただけないでしょうか。

平田参考人 御質問ありがとうございます。

 この電源構成の中での原発二〇から二二%という数字は、今ある原子力発電所を可能な限り最大限使うということを示した数字だと理解しておりますけれども、福島原発事故後の多くの、マジョリティーの国民の原子力に対する思いを反映していないとまずは思っております。

 また、気候変動政策という観点でいいますと、これまでも、原子力発電はCO2を出さないということで、温暖化対策の前提に位置づけられておりましたが、原発事故の前、最大限推進していた時期であっても計画は計画どおり進みませんで、そしてそれによって気候変動政策自体が総崩れになって、石炭火力は順調にふえる中でCO2排出も一〇%とふえていったというようなことを見てまいりましたので、ここに、非常に非現実的とも言える原子力発電の推進を温暖化対策としてもスライドさせて位置づけているということ自体が、また気候変動のこの二六%という私たちが低いと思っている削減目標ですら危うくさせる、極めて危ういものだと思っております。

 では、CO2削減は原発なくしてできるのかということですけれども、むしろ、私たちが見てきた中では、原子力発電を中心に置いてきたからこそ、進めるべきエネルギー転換をおくらせてきたと思っております。

 この大規模な集中型のエネルギーシステムは、石炭のようなバックアップ電源も必要としますし、その構造転換を難しくするという意味では、CO2を大幅に削減していくためにまた二〇三〇年に向かって原子炉を再稼働させて最大限利用していくというのは、適切ではない方針だと思っております。

 ですので、エネルギー基本計画は来年ぐらいにまた見直しになる、時期的になると聞いておりますけれども、この原子力の部分については、ゼロに向かって、ここに依存しない方向に決定するべきだと思いますし、その分は再生可能エネルギーを拡大させ、石炭を減らしていくというような方向に見直すということが急務だと思っております。

明日香参考人 原発に関しては、何回も繰り返し申し上げますが、やはりドイツが反証になっていると思います。反証というのは、日本でも、フランスでも、かつてドイツでも、原発がないと温暖化対策が進まないということは政府の方がずっとずっと言ってきました。それに対して研究者がそんなことはないという反論をもう十年、二十年、ずっとやっています。

 実は、IPCCでも、原発がなくても二度目標達成の世界全体でのコストはそれほど変わらないという計算を出しています。それは、結局、どうしてかというと、原発はやはり高いんですね。高い原発をわざわざ使わなくても、より安いまたは同等の価格の再生可能エネルギー、省エネをやれば二度目標も達成できるというのが実はIPCCの結論です。ですが、そういうことが日本ではなかなか伝わっていないというのが現状だと思います。

 ドイツ、数字に関して申し上げますと、五五%削減です、一九九〇年比。日本の場合は一八%削減です。ドイツは日本よりも三七%高いんですが、原発をドイツはやめようとしています。

 なので、やり方はありますし、それが先ほど国民の負担というふうにおっしゃいましたけれども、負担がない形でそれを実現する方法はあると思います。ですが、それをさせない人たちがいますので、そことのやはり政治的な対立がどこの国でも難しいというのが現状だとは思います。

塩川委員 ありがとうございます。

 最後に、再生可能エネルギーの急速な普及のために何が必要か、こういう観点で、申しわけありません、四人の参考人の方、短くで結構なんですけれども、再生可能エネルギーの普及のために、逆にいうと障害になっているものは何かということでも結構ですし、普及のために行うべきこと、必要なことは何かということについてお答えいただければと思っております。

浅野参考人 何よりも系統をしっかり整備する、そのために投資を今徹底的にやるということが必要だと思います。

 それがない限りはどうしてもうまくいきませんし、さらに、再生可能エネルギーにしても組み合わせをちゃんと考えませんと、特定のものだけに偏ってしまいますと、発電がないときのバックアップのために大変な負担がかかってしまうということになります。

平田参考人 幾つか簡単に申し上げます。

 まず、日本の再生可能エネルギーはまだまだ普及し始めたところでありますので、固定価格買い取り制度はなお引き続き必要だと思います。

 それから、今は原子力それから石炭火力発電所が優先して給電されるというような状況にありますが、これを逆転させて、再生可能エネルギーから優先的に給電するということが必要かと思います。

 また、再生可能エネルギーの多くは変動する電源ですので、これを広域的に運用できることを加速度的に進めていくことが必要だと思います。

 最後に、電力自由化が始まりまして、多くの国民、市民は再生可能エネルギーを選びたいと思っていると思いますが、現在、選ぼうとする会社がどのように電気をつくっているのかということの表示が義務づけではございません。ここを、私たちが選択できるように表示を明確に、必ず全ての事業者が行うということを義務づけするということが重要かと思います。

崎田参考人 ありがとうございます。

 再生可能エネルギーをきちんと導入するために、私たち市民が電気代の中に賦課金をきちんと払っているという現実があります。これが徐々に高くなっている。それをきちんと社会が認めた上で自分たちの省エネにもつなぐ、そういうバランスのいい社会をつくっていくということが大変重要ではないかというふうに思っております。

 なお、事業者の皆さんにとっては、今、固定価格買い取り制度に頼らない、将来的に安定した、社会にきちんと定着する事業として、いろいろな、報告義務もきちんとやるとか、リサイクルとかそういうこともやるとか、そういうようなきちんとした安定した事業者になっていただくということが大事だと思います。

 地域の視点からは最後に一つ。地域型のエネルギーというのをしっかりふやし、地域の発展に貢献させる、そういうところが大変重要だと考えております。

 ありがとうございます。

明日香参考人 私も、石炭、原発がベースロードというふうに政府で位置づけておられる限り、再生可能エネルギーが欧米諸国のような割合まで普及するのは難しいのが現実だと思います。

 単純に、私の知り合いで、再生可能エネルギーへの投資を考えていた人がいるんですけれども、いわゆる九電ショック、つくり過ぎるから、もう再生可能エネルギーから買わないといったときに、やめました。というのは、銀行からお金が借りられなくなったからです。

 それのやはり原因というのは、原発なり石炭火力発電所を、今のシステムを維持したいという人たちの存在だと思います。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、田島一成君。

田島(一)委員 民進党の田島一成でございます。

 きょうは、四人の参考人の先生方、本当にありがとうございました。

 六回目となります温対法の改正に当たります。とりわけ、COP21、パリ協定を受けての今回の改正でありますから、私どもも相当期待を申し上げてこの審議に臨んできたところでもございました。

 審議会の中でいろいろと御議論をされた経緯も拝見し、やはりこれは短期的な、中期的な目標だけではなく、長期の目標に立った形でしっかりと着実にこの温暖化対策、CO2削減に当たっていくんだろうというふうな想定で法案上程を待っておったところでございましたが、何人かの先生からも、大変がっかり、もしくは可もなく不可もなくというような、そんな表現をいただいたところでもございました。

 もちろん、何もしないよりやった方がいいというような観点で、これまで改正案、私にとっては百点ではなかったですけれども、中腰で起立して賛成してきた法案でもありました。非常に言いにくい話ではありましたけれども。

 そういう意味で、今回も実は、中腰で立つべきか、やはりこのままでは、座っていた、反対した方がいいのか、非常に悩んでいるところでもございます。

 そこで、四人の参考人の先生方に、客観的な表現で、今回の改正案について評価をいただきたいと思っているところであります。

 長期目標を達成していくに当たって、この法改正は百点満点にして何点差し上げられますか。マイナス部分は、何のポイントがこのマイナス要素になるのか。満点だとおっしゃる方にはそれは望みませんけれども。恐れ入りますけれども、浅野先生から順次皆さん、何点で、マイナスポイントはこれとこれとこれだというふうにお答えいただければと思います。お願いいたします。

浅野参考人 私は、法律の教師でありますので、絶対に百点はつけないという、恩師から厳しく指導を受けております。とはいえ、八十というのはやや厳しいかな、どう考えても七十点台かなという感じがいたします。

 というのは、やはりやや抽象的過ぎるということと、それから、特に、地域の実行計画について、もう少しきちっとしたガイドラインをこれからつくっていって、それが地域で生かされるという仕組みをつくっていかなきゃいけないだろうと思いますが、列挙してあるだけという点は、やや残念な点があるということでございます。

平田参考人 後ろに環境省の方もおられるので、ちょっと率直過ぎるかもしれませんけれども、先ほど、この法案、不十分じゃないかと申し上げたとおりなんです。二十点ぐらいとつけさせていただきます。ただ、それでも二十点加算させていただく理由をむしろ説明させていただきたいと思います。

 一つは、反対するような強力な理由が見つからないということでありまして、この気候変動の問題は、余り政治の中で十分議論される機会がない、なくなってきたところでありまして、しかし、今回この法改正があったことによって、私もこうしてきょうここで話をさせていただく機会も得ましたし、いろいろな議論が国会で交わされるということの意義はあると思っております。

 また、きょうは詳しく触れませんでしたけれども、自治体の計画を共同で策定することができるということは、地域にとって、これが運用されればメリットがあるのかもしれないと思っております。

 例えば、小さな、特に基礎自治体なんかでは、運輸部門なんというのは排出がどうかもわからないし、電気の排出についても、自分のところの自治体の電気の使用量について電力会社から情報がもらえないとかいうことで、非常に小さな単体になったりすると、取り組みの選択肢もすごく減ってくる。しかし、これを少し広目でやると、運輸部門にしても、再生可能エネルギーの可能性にしても、広く議論ができる余地があるのではないかと思っております。

 しかし、この程度でありまして、恐らく目玉である国民運動につきましても、先ほど来議論もされて、一人一人の行動は非常に重要だと思いますし、私も二人の小学生の子供から、改めて学校でやっているエコ活動で教えられることもありますし、大学でも教えておりますが、多くの学生は一人一人の取り組みが大事だと口をそろえて言います。

 そういう意味では、わざわざ法改正しなくても、一人一人のこの問題に対して行動しなきゃいけないということは、ある程度、この二十年来の温対法に基づいてとってきたところでしみ渡っているんじゃないかなと思っておりまして、むしろ、一人一人が行動すれば何かなるような、そして、国民一人一人がみんなでざんげしなきゃいけないかのようなことが、大きなシステムを転換することへの移行を難しくしている側面もあるんじゃないかと思っておりまして、私はちょっと、この改正には意義があるのか懐疑的です。

 マイナス八十点になりましたのは、先ほど言いましたとおり、長期の目標についても、これから大きな施策をとっていくフレームワークにしても、十分備えていないということであります。

 辛口で申しわけありません。

崎田参考人 ありがとうございます。

 私は、点数からいうと、先ほど、家庭で削減しないといけないのが一四%ですので、百から十四を引いて八十六点、そのくらいにしておこうかというふうに思いました。

 どうしてそう高いのかというと、これは、こういう制度の改正をもとに、国民や事業者みんなで主体的に取り組んでいかなければいけない、みんなで盛り上げていくような制度だからこそ、みんなで取り組み、褒め合っていく、そういうところが大事だというふうに思っております。

 一点のみ、環境学習センターの指定管理をやる中で、福島の事故の後、節電をみんなで取り組もうと呼びかけて、熱心にやった人百人に夏場三カ月のデータを出していただいたところ、百人の平均で一五%マイナスができました。ただし、その方たちと話したときに、自分たちは熱心だからできるけれども、多くの町の方たちが本当にこれをやるというのは、個人の努力だけに頼るのではなく、きちんとしたシステムを取り入れなければいけない、きちんとした社会の流れにしなきゃいけないということを皆さんが強くおっしゃったということが、今でも大変強く印象に残っております。

 よろしくお願いします。

明日香参考人 点数をつけるとき、多分重要なのは、期待値がどれだけ高いかということなんですね。例えば、これが世界の二度目標の達成につながるかというと、そういう観点からは多分一点もないと思います。

 真剣に、例えば、ツバルの人たちなりアフリカの人たちで、もうすぐ移住しなきゃいけない、難民になっている、家がなくなるという人たちが、日本の国民運動に訴えましょうというような話を聞いてそれで納得すると思いますか。彼らは何点つけるかということですね。

 だから、我々が何点つけるかということは実は重要ではなくて、被害を受ける人たちが何点をつけるかという視点が日本には全然ないと思います。

 あと、国民運動をよく言われるんですが、結局それは一億無責任なんじゃないのかなと私は思います。

田島(一)委員 ありがとうございます。

 点数なんて本当に客観的な数字ですからね。必ずしもこれの平均点をとって参考にしようとかという思いでは私は決してございません。

 ただ、やはり完璧な法案ではないということはどなたも口々におっしゃってくださったんだろうと思います。本当に言いにくい数字を示していただいたことに心から感謝を申し上げます。

 私も、実は、長期目標に随分こだわりを持たせていただいております。中期目標を達成するために、単純に毎年同じパーセンテージで削減をしていけることはあり得ないとは思いますけれども、単純計算いたしますと、中期目標達成のためには毎年一・七%減らしていかなきゃいけないという数字になるんですね。それが、長期目標を達成しようと思いますと、その後、二〇三〇年から五〇年にかけては二・七%の削減ということで、削減量が二〇三〇年以降には約一・五倍に膨れ上がっていくわけであります。

 二〇三〇年度以降に革新的な技術発見、発明等々があり得るとはどうも考えがたい、できれば前倒しでどんどん削減量を早く減らしていく努力というものを重ねなければならないと考えるんですけれども、どうも長期的な目標達成の方がハードルが高くなってしまう。子供や孫にツケを押しつけてしまうのではないかというような、そんな数字が中期目標のような気がしてなりません。

 中期目標こそ高くして、長期目標はもう少し安定的にとするのが今を生きる人間としては常識なんじゃないかなというふうにも私は思うわけでありますが、はなから、この法律、長期目標を書き込まなかったということは、長期目標なんというのは全然関係ないんだ、絵そらごとなんだと言わんばかりのような認識を植えつけるような気がしてならないところであります。

 浅野参考人にぜひお伺いをしたいんですけれども、こうした数字のアンバランスも含めて、長期目標自体が何か形骸化していくような気がしてならないんですけれども、先生はどのようにお感じになっていらっしゃるのか。正直なところをお聞かせください。

浅野参考人 たびたび審議会でも長期目標については発言があるわけですが、私が申し上げておりますのは、目標という言葉には二通りの意味があって、必ず達成しなきゃいけないという意味の縛りのかかる目標と、それから、この辺まで行かなきゃいけないだろうという目安を立てるということと二通りがあるだろうと。

 長期目標というのは、どうも前者の意味の目標という意味で使われてしまうものですから、そこに誤解があるだろうということはたびたび申し上げています。目指すところを示していくということがあって、それはひょっとしたら達成できないかもしれないけれども、でも、限りなくそこに近づいていかなきゃいけない、そういうものだと。

 ですから、どうも長期目標という言葉自体が日本語として非常に難しいものだなというふうに思っています。

 そうはいいながら、そのことをではどういう形で言いあらわしていくのかということはなかなか大変なことなんですが、法律というものは、やはり単に理想を示すとかというようなものではなくて、具体的に何をしなきゃいけないかということを書いていくものですから、政策目標的なものについてはもう少し別の形で示していくということがいいのかもしれません。

 だからこそ、第四次環境基本計画の中に、相当の抵抗を受けましたけれども、八〇%ということを書いたわけですね。そのときに、目指すところというふうに意見があったので、そのように直しても一向に構わないと思ったから、そのようにしたわけでございます。

 ですから、今のところ八〇ということについて、私の考え方は、今申し上げたようなことで、ずっと変わっておりません。

田島(一)委員 第一回国際金融経済分析会合でスティグリッツ教授が御発言されたものを少し御紹介させていただきたいと思います。

 気候変動への対策として行う投資は、世界経済にとって必要な刺激策となるだろうと指摘をされて、その後、パリ協定を受けて、炭素に高価格を設定することは、気候変動に対応する世界経済への改革に向けた投資を促すというふうに御指摘をされています。今後、炭素税を含めた環境税の引き上げで相当な歳入を得られて、経済のパフォーマンスも改善するだろうというふうに御提言をされたこと、恐らく皆さん御承知のことだろうというふうに思います。

 今回、この四月で三段階目の地球温暖化対策税が引き上げになったわけでありますけれども、スティグリッツ教授が御指摘をされるような、世界経済への改革に向けた投資を促すほどのボリュームにはまだまだなっておりません。そう考えていくと、やはり、炭素に価格をきちっと設定して、そして、それを引き上げることによってまたCO2削減等々のインセンティブにつなげていくことが何より今求められているのかなというような、そんな御提言であったというふうに私は受けとめております。

 四人の先生方、もちろんそれぞれのお立場でいらっしゃろうかと思いますけれども、炭素に価格をつけていく、さらには、今の地球温暖化対策税をさらに引き上げていって、脱化石燃料に大きなインパクトを与えていくということについて、それぞれ皆さんはどのようにお考えなのか。そして、加えて、現在の税率等々も踏まえながら、将来的にはどれぐらいにまで引き上げていくことが必要だというふうにお考えなのか。よろしければ、簡潔に、それぞれお答えいただけませんでしょうか。

赤澤委員長 それでは、簡潔に、順番にお願いをいたします。

浅野参考人 炭素に価格をつけるということは、いろいろな方法があると思いますが、やはり環境税というのが一つの方法としてあるべき姿だろうと思っています。

 ただ、どのぐらい上げるべきかということについては、ちょっと私は専門ではありませんのでなかなか直ちには答えの出しようがないんですが、しかし、石炭の方が安いのでどうしても石炭火力に流れてしまうというのは、どう考えてもフェアではないというふうに思っております。

平田参考人 私も、炭素に価格づけをする制度というのは、これからの気候変動対策を進めるためのかなめの施策だと思っております。

 どれぐらいの税率でということなんですけれども、現在の地球温暖化対策税、石油石炭税の税率の上増しということで入っている税率は、トン当たり三百円に至らないような水準であります。この税収は、温暖化対策に使うという形になっております。しかし、低税率で、温暖化対策をすることによって削減効果を見るということであるので、価格インセンティブは非常に低い。先ほど、ほとんど気づかないとおっしゃっていたように、低いと思います。

 しかし、この法改正と関連づけて申し上げるなら、例えば、国民運動を引き起こそうとしたときに、私たちのお財布にどういうふうに影響があるのかというようなインセンティブ、CO2を出さないような選択をするインセンティブと相まってやはり国民は意識づけをされるわけです。単に呼びかけるだけではなかなか、キャッチコピーが美しくても、気づかない人はずっと気づかない。しかし、価格効果によって、むしろ逆に、関心のない人でも経済的なインセンティブで動いていくということがあります。

 ですので、ずっとこのように実質的目的税として使途を温暖化対策にひもづけするのかどうかということは、場合によっては、年金や福祉関係の税率を低減するということで税収中立の方向を志向するということも含めて考えるなら、税率は一万円以上、将来的に上げていく必要があるのではないかと思っています。これは、二〇〇〇年ぐらいから私たちが提案してきた炭素税、地球温暖化対策税の提案の金額を申し上げております。

崎田参考人 ありがとうございます。

 炭素に価格をつけてきちんと進めていくというのは、長い目で見れば、必ず必要なことだというふうに思っております。

 今回のいろいろ議論に参加させていただいて、そこのところは割に全て抜け落ちているという印象は持っておりますので、やはり今回は足元から現実を変えていくというところで、国民運動とか普及啓発に特化するという方針、私は賛成をしておりますけれども、将来的にはきちんと考えていくことは重要だと思っておりますし、今、町の中で普及啓発をやっておりますと、町の中の暮らしだけではCO2を削減できないことがある。そのときに、森林のところの、森林を育てるものにちゃんと投資をするような、そういうカーボンオフセットという事業をずっと続けてきております。

 やはり、そういう視点は必ず必要だというふうに思っております。

明日香参考人 よく誤解があるんですが、炭素税なり排出量取引制度というのは結局は手段なんですね。まず目的という数値目標があって、それをどう公平公正、効率的に達成するかという手段の中で、炭素税が一番いいと、世界じゅうの、九九・九%の経済学者は言っています。

 では、幾らぐらいかということなんですが、もちろんそれは計算がいろいろあるんですが、例えば、今、アメリカの石油、先ほど出ましたエクソン・モービルなりシェルというのは、自分たちの会社の投資計画において、四十ドルまたは六十ドルのカーボン価格を計算して投資計画を進めています。アメリカ政府も、環境省は、三十ドル、四十ドルぐらいの、そういう指標となるカーボン価格を使いなさいというような指導をしています。

 もう一つ、IEAが最近出した数字なんですけれども、二度目標達成のためには世界全体で百四十ドルの炭素税が必要だというふうな、こういう計算もあります。

 いずれにしろ手段であるので、それが目的ではありませんし、でも、一番公平で効率的な手段という認識は重要だと思います。

 あともう一つ、日本において、排出量取引制度のときもそうだったんですが、その税収をどう使うかというところが余り議論されなかったと思います。多分これから日本では、ほかの国も今そうなんですけれども、いわゆる税収中立ということで、社会保障の引き下げなり、そのように、どういうふうにお金を使うかということも重要だと思います。

田島(一)委員 ありがとうございました。

 時間があれば石炭火力についてもお尋ねしたかったんですけれども。

 御承知のように、アメリカのロックフェラー基金は、石燃関連業界への投資を中止するという決定もいたしました。イギリスにあっても、二〇二五年には石炭火力発電所の全廃を決めた。世界の潮流はやはり脱石炭火力であります。にもかかわらず、日本は相も変わらずエネルギーミックスの中での二六%の枠は堅持しているというような状況にある。またこのあたりについても、今後政府の方には尋ねていかなきゃいけない課題だというふうに思っております。

 ぜひ、皆さんからきょういただいた御意見をもとにこの採決に臨んでいきたいというふうにも思っておりますので、感謝の気持ちを込めて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、真山祐一君。

真山委員 公明党の真山祐一と申します。

 参考人の皆様におかれましては、本日は、お忙しい中、このように時間を割いていただき、意見陳述をいただきましたことに心から感謝を申し上げる次第でございます。

 さまざま示唆に富む御意見を賜ったところでございまして、またこれからの法案審議、またその先の具体的な実行をしていく段階でも生かしていかなければいけない、そういったものをただ実感したところでございます。

 今回の法案は、パリ協定を踏まえて、地球温暖化推進法の改正ということでございますけれども、大きく三点あると思います。先ほど来議論がありますとおり、国民運動の強化、普及啓発でございますし、そしてまた国際貢献のあり方について、位置づけと言っていいんでしょうか、そしてまた地方における計画の共同策定、大きく言ってこの三点に集約されると思いますけれども、そういったポイントに絞らせていただいて、少し質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、国民運動の強化について、これはぜひ四人の参考人の皆さんにお伺いをさせていただきたいと思います。

 御承知のとおり、約束草案におきまして、日本は民生部門で四割削減を掲げたわけでございます。そして環境省としては、本法律案の位置づけとして、国民運動の強化ということで、特に運動を主体とした、クールチョイスという国民運動を展開していこうということを盛り込んでいるわけでございます。

 御承知のとおり、クールビズ、ウオームビズよりクールビズの方が有名だと思いますけれども、クールビズは大きく国民運動として展開したわけでございますけれども、なかなか、国民運動として展開することは、先ほど来意見の中でもありましたとおり、時間もかかるし、また、非常に取り組みとしては工夫が必要であるということは言うまでもないことでございますけれども、いずれにしても、何かしらのそういった運動が必要である。

 そして、このクールチョイスというのは、やはり、我々消費者が例えば家電を買う際に、省エネ性能の高いものを選ぶのか、そうでない安いものを選ぶのか、簡単に言えばそんなチョイスも含まれてくるわけでございますけれども、実態の中で、確かに、お金にゆとりがあればそういったクールチョイスをしたい、しかし、なかなか予算的なものがあって選べない、こういった生活者の心情というのも非常にわかるところでございます。

 例えば、過去にやりましたエコポイント制度のように、そういったインセンティブをつけて大きく展開をするということもこれまではやってきたところでございました。しかし、こういったエコポイントのような制度は、大きな財源も必要である、また、なかなかハードな展開でございますので、恒久的な施策になかなかできないという実態があるわけでございます。

 そうした中で、今回のこの国民運動の強化の中で、一つ、環境問題に対する、地球温暖化、気候変動に対する国民の理解、認識というものをやはり一番根底に据えなければいけないのではないかというふうに思っております。先ほど来の意見陳述、また質疑の中でも既にお話しされている部分もありまして、重複してしまう部分もあろうかと思いますけれども、やはり広く国民に、気候変動の危機であるとか、また影響、それで起きる災害、そして、それに対して我々ができる行動、こういった直面する課題をしっかり伝えていく。

 また、適応計画も策定をされました。閣議決定されたわけでございますけれども、この適応計画自体もなかなか国民の皆様には知れ渡っていないものでございますけれども、しかし、中身は、非常に国民生活に近いところで起こっていることを取り上げているのが適応計画でございまして、こういったことの普及啓発というか、環境教育を充実させていかなければいけないと思っているところでございます。

 この充実をいかに図っていくかということと、どういうふうにアプローチしていくのがより広く浸透していけるのかということに関して、参考人の皆さんの御所見をいただきたいと思います。では、順番にお願いいたします。

浅野参考人 いろいろな方法があるだろうと思います。

 国立環境研究所でやっていました研究の成果なんかを見ていますと、やはり、報道の仕方、新聞、マスコミの取り上げ方と理解というものとが非常に深いかかわりがあるということが言われておりますから、何としても、一番国民に接するところからの情報発信というのが必要なんだろうと思いますね。

 パンフレットを幾らつくって配ってみても、それはしょせん限りがありますし、それから、費用がかからないので、つい、ホームページに載っければそれでもう情報は伝わったものと思い込んでしまっているんですが、それは決してそうでもないような気がします。

 ですから、やはり、マスコミにいかにしっかり理解してもらえるか、永続的にきちっと報道を続けていただくか、この辺が大事なことではないかと思っています。

平田参考人 難しいところでありますけれども、この問題への認識を高めるために必要なことは、今、適応計画ともおっしゃいましたが、気候変動が私たちにとってどれだけのリスクなのかということをきちんとシステマチックに理解するということがこれまで十分できていない。土砂災害があったり、竜巻が起こるようになったり、熱波がふえたり、伝染病がふえたり、大きな台風が来たり、いろいろな、今まで見たことのないような異変に遭遇していますが、単体の災害として終わっていないでしょうか。

 それを串刺しにして、そしてさらに、これから起こってくる日本における災害や気候変動の被害をシステマチックに理解すると、ああ、これは私たちの人命にかかわる問題であって、そして海外の影響も影響しますので、私たちの食料の安定供給の問題にも影響するし、そして経済活動にもすごく大きなかかわりを持つ、私たち日本の安全保障の問題ではないかということに行き着くのではないかと私は思っていますが、残念ながら、そういう問題の認識がこれまではなされておらず、それをする仕組みもなかった、適応計画ができるまで。ということで、何となくふわっと、エコとかCO2削減というぐらいでこの問題を認識してきたというのが現状なのかなと思います。

 ですから、適応計画を法定化と書きましたが、それは、強靱な社会をつくるという対応策ということはもちろんそうなんですけれども、それ以前に、気候変動が私たちに与えるリスクをきちっと評価して認識するというプロセスであって、それがあると、もっともっと切実に、島国である私たちはこの問題に最重要課題として取り組んでいかなければならないという形になるのではないかというふうに思っています。

 その上で、では、クールチョイスというチョイスをどういうふうに促し、国民運動を展開するのかということですけれども、チョイスを促すためには、選択できる情報が適切に与えられなくてはなりませんし、また、選択肢が与えられなくてはならない。

 そういう両方から見ますと、私は、そのいずれも非常にまだ心もとないと思っておりまして、情報提供でいうと、これから恐らく気候変動にかかわる非常に大きな選択は、電気の戦略、どの電気を選ぶかというエネルギーの選択を、国民が選べるようになったということですけれども、どの電気を選びたいのか、情報が伝わらない状況です。これでどうやってチョイスをしてもらうんでしょうか。

 また、再生可能エネルギーを選びたいと思っても、まだまだそれを供給できる事業者は少ない。では、どうやって選択肢をふやしてあげるのか。高効率の家に住みたい、すき間風は嫌だといっても、コストが高い、そして十分な選択ができないといったとき、どうやってその技術のコストを下げていくのか。

 むしろ、国がやるべきことは、そうした選択肢をふやして、それを国民に伝えることじゃないかと思っております。だから、私は仕組みだというふうに強調しているわけでして、国民運動は単なる呼びかけだけでは空中を舞い続けるだけに終わるのではないかと思っておりますので、声がけに応える人たちがちゃんと選択できる材料を用意するということが今非常に重要かと思います。

崎田参考人 ありがとうございます。

 今御質問いただきまして、最後に、環境教育に対してどうアプローチをしたらいいと思うかというふうにおっしゃっていただいたので、まず、そこから入っていきたいというふうに思います。

 今、小学校、中学校などで環境を伝えるということは、家庭科とか社会とか工作とか、いろいろなところで取り組んでいるので、いわゆる環境問題に関しては、かなり今の子供たちは知っている、教育は受けている、情報は知っているという状態になっているというふうに感じております。

 では、何が課題なのかというと、それをどういうふうに自分事、自分との関係を考え、そして自分がでは何を実践したらいいのか、自分たちの知識をどう行動に移すか、そこにきっかけをどう与えるかという、そこが大変重要になっているのではないかなというふうに思っております。

 それに関して今どういうことに取り組んでいるかというと、例えば、学校の先生だけが一生懸命一般的な情報で授業をやっても、一般的な話しか伝わらない。そういうときに、地域社会の中でみずから取り組んでいる住民グループの方あるいは企業の方たち、そういう方たちが地域側の先生として学校と連携をしながら環境学習をする、学校と地域が連携をしながら子供たちの環境学習を支える、そういう場が大変広がってきているというふうに考えております。

 そういう視点で、では、私たち大人が実際に消費行動に移るとかそういうときに、適切な情報があるかどうかというところが大事だと思います。

 そういう視点からいくと、例えば、今、環境省のホームページの中で、一生懸命探していくと、一休さんのような小坊主さんが、「しんきゅうさん」と言っているページがありまして、家電を買いに行くと、そこにマークがありまして、そこをかざすと、いろいろな、昔の機種と今の機種でどのぐらいのCO2の差があるかというようなデータがすぐ出てくるような、そういう情報があります。ただし、それを知っている人というのはとても少ない。

 やはり、いろいろな情報をきちんと必要な人に伝え、それが取り組んでいくような、先ほどお話がありました大きな社会システムとして成り立たせていく、それが今回のこういう法案が普及啓発が大事だというふうに出てくるところの意義なのではないかというふうに思っております。

 よろしくお願いいたします。

明日香参考人 やはり、一番大きな問題は、温暖化問題とエネルギー問題が同じだということを国民が理解していないということが重要だと思います。

 震災の後に、ラジオのキャスターというんですか、ナビゲーターが言っていたのは、日本は温暖化対策は頑張っているけれども、エネルギー政策は頑張っていないねというコメントをしたんですね。まさに、そういうレベルなのが国民なんだと思います。

 これは、逆に、政府が温暖化対策は日本は頑張っているよという間違ったメッセージをずっと出してきたことが問題だとは思います。それによって、今回の法案でも、国民運動というのも、国際貢献というのも、ちょっと厳しく言えば、結局、ほかの誰かがやればいい、自分はそれなりにやっているし、日本もそれなりにやっているんだから、ほかの誰かがやればいいというようなのに逆につながっている可能性があると思います。

 あと、鶏と卵で、かつ、この場でしか言えないことだと思うんですけれども、去年十月、アメリカの民主党大統領候補のディベートというのがラスベガスでありまして、そのとき、五人の候補者のうち四人が冒頭の二分間のオープニングスピーチで気候変動について触れています。そのうちの二人のサンダースとオマリーが、アメリカの国家安全保障に対して一番の脅威は気候変動というふうに答えています。チェイフィーという知事は、あなたの一番の、最大の敵は誰ですかと聞かれて、石炭ロビー、気候変動問題で戦ってきたからと。

 だから、やはり、議員なり政治がそういうふうに気候変動問題を取り上げないと、国民も変わらないのかなとは思います。

真山委員 ありがとうございました。

 次に、地方公共団体の実行計画に関連してお伺いさせていただきたいと思いますけれども、これは、ある意味、ちょっと女性の視点も入れていただいて、平田参考人と崎田参考人にお聞きをさせていただきたいと思います。

 地域における実行計画をこれから共同でも策定できるようになっていくということが盛り込まれまして、先ほど参考人の意見の中でも、少し具体性がなくて弱いという御指摘もいただいたところでございますけれども、一方で、先ほど浅野参考人からは、ガイドラインのようなものが必要ではないかというような御指摘もございました。

 いずれにしましても、そういった意見を踏まえまして、やはりこれが実効性のあるものに昇華していかなければいけないということは言うまでもないわけでございますし、また、地域分散型エネルギーシステム社会の構築におきましても、実行計画の共同策定というのは、一つ、十分ではないかもしれませんが、大きな一歩になるのではないかと私は思っているところでございます。

 そういったことも含めて、この共同策定に関する御所見を少しいただければと思いますが、よろしいでしょうか。

平田参考人 女性の視点を入れられるかわかりませんが、お答えさせていただきます。

 先ほど申し上げましたように、この実行計画の共同策定ということには、これが適切に運用されればいい効果を生む余地があるのではないかということを申し上げました。

 しかし、私も幾つかの地域の実行計画の策定にかかわらせていただいた経験から申しますと、自治体によってもさまざま、そして、つくるだけで終わっていて実効性がないということもありまして、必ずしも十分機能できていない部分もあると思います。

 しかし、地球温暖化問題、気候変動の問題は、実施は本当にやはり地域がかなめでありまして、特に建築物や住宅の対策ですとか、あるいは交通対策、町づくりといったことは、地域が主体的に動かなければなかなか現場は動いていかないというような問題があります。

 ですので、この共同策定ということを一つ機に、やはり、どういったことを地方自治体に期待するのか。もっともっと私は、国からおろしていくということだけではなくて、地域に主体的に仕事をするという役割を与えていいのではないかというふうに思っています。そういう意味では、ガイドラインのようなもの、それに右に倣えということではなくて、創意工夫をもって、地域で、市民参加で議論していくような実行計画がつくれるようなガイドラインをつくるということも一つだと思います。

 以上です。

崎田参考人 ありがとうございます。

 私も地域の実行計画づくりにかかわっている地域もあるんですけれども、そこで考えるのは、最近いろいろな制度が変わっている、変わったり改正されたりという中で、自治体の方が、どういう制度をうまく活用し、自分たちの地域と一番特性が合うようなやり方はどういうやり方だ、なかなかそういう判断をしていくというのが難しいのではないかという感じがしております。

 そういう意味で、本当に地方公共団体の担当の方がきちんと、今の自分たちの地域のよさとさまざまな制度をミックスするとどんな将来を描けるのかをちゃんと考えていただけるような、そういう状況にしていく、そういう自治体支援をちゃんとしていくということが大事だと思っております。

 やはりそれは、地域に根差している私たち、いろいろな地域のメンバーが参加をし、ともに話し合っていく。それは市民だけではなく、やはり事業者の方が一緒に入ってくださることで地域の特性というのが出てきますので、そういうきちんとした協議の場をつくっていくようなところが大変重要ではないかというふうに考えております。

 よろしくお願いします。

真山委員 ありがとうございました。

 時間もなくなってまいりましたので、恐らく最後の質問になろうかと思いますけれども、浅野参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 意見陳述の中でも少し触れておられましたけれども、社会構造のイノベーションということでお話がございました。当然、二〇三〇年度二六%温室効果ガス排出削減をするためにさまざまな施策を展開していくわけでございますけれども、先ほど来お話がありますとおり、やはり二〇五〇年の八〇%削減ということも見据えながら、今回の温暖化計画にもこういった表記はされるわけでございますけれども、なっていくわけでございます。

 しかしながら、先ほど来御指摘がありますとおり、そこに至るには相当なハードルがあるというのは、これは皆さんも御承知のとおりでございまして、そういったことも踏まえて、先ほどの二月の提言を踏まえて、エネルギー・環境イノベーション戦略、こういったことも策定いたしたわけでございますけれども、それに対する評価をお伺いさせていただきたいと思います。

浅野参考人 まともにお答えをすることにならないのかもしれませんけれども、やはり、先をちゃんと見ておかないから、ロックインという言葉を私ども提言の中にも書きましたけれども、今つくってしまったものがそのまま四十年、五十年使われるとどういうことになるのかということを考えなきゃいけない。だから、今やることについて、先をちゃんと見た行動ということが必要なのではないか。

 ある自動車メーカーは、五〇年には全部こうするというようなことを早々と発表されましたけれども、そういう視点というのが本当に欠けていて、次の株主総会をどうするかというようなことしか考えないという企業活動では困るんですね。

 そういう意味で、政府も余り目先のことに引きずられるというようなことだけではなくて、温暖化の問題に関しては先をちゃんと見た方向を考えなきゃいけない。さっき私が、再生可能エネルギーについてもちゃんとしたインフラ整備、系統の整備に全力を挙げなきゃいけないと申し上げたのはそういうことなんですね。そこ抜きに再生可能エネルギーみたいな話だけやっていても、とても二〇五〇年の話にはたどり着かない。

 だから、やはり、今何をすべきかということは、常に先のことを考えて今やることを考える、これをやっていかなきゃいけないと思います。残念ながら、エネルギーの政策なんかでも、長期的といいながら、どうしても目先の二、三年、五年ぐらいのところまでしか考えないというのは困ったことだなというふうに思っております。

真山委員 以上で終わります。ありがとうございました。

赤澤委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 おおさか維新の会の小沢鋭仁でございます。

 まず、四人の参考人の皆さん、本日は御出席をいただいて貴重な御意見を賜りましたことに感謝申し上げます。ありがとうございます。

 今回の温暖化対策推進法の改正案、先ほど来からさまざまな評価も出てきておりますけれども、共通しているのは、不十分だね、こういう話はあったやに受けとめさせていただきました。

 これは、パリ協定を受けて、それに対応する国内対策、こういう話でやった割には、何か気の抜けたビールというか、本当にそういう感じがしますね。反対するほどの理由もない、こういうところもあるのかもしれませんけれども、さてどうするかな、こう思っているところであります。

 自民党政権から民主党政権にかわって、私は環境大臣をやらせてもらって、隣の田島さんは副大臣をやらせてもらって、あのときに温暖化対策基本法をつくらせていただきました。

 こういう話と決定的に違うのは、まず、数値目標を長期、中期、明快に書き込んだことですね。それから、その目標に向かって具体的な政策、これは自民党政権ではできなかった話として大きく三つ掲げました。温暖化の対策税、再生エネルギーの買い取り制度、それから排出量取引制度創設、この三つを掲げたんですね。自分で言うのもなんですけれども、明快だった、こう思います。

 そこで、まず、そういった観点から四人の先生方に端的にお尋ねしますが、今回のこの推進案、目標数値がないですね。これを長期も中期も入れるべきだ、私はこう思っているんですが、それに対してそれぞれ御意見をお願いいたします。

浅野参考人 私は、法律で書くことと、それから法律に基づいてつくられるさまざまな次のドキュメントに書くもの、これはやはり書き分けをしておいた方がいいだろうというふうに思っていまして、時々に変えなきゃならないようなものについては、余り法律できちっと縛ってしまうというよりは自由にした方がいいという面もありますから、目標に関しては、抽象的な表現での目標というのはあるかもしれませんけれども、数値に関しては、法律に一々入れていく、変えるたびにまた法律を変えなきゃいけないというようなことになってしまいますから、それは必ずしもそうでもないだろうと思っております。

平田参考人 ありがとうございます。

 長期の目標、一・五度ないし二度の気温目標、それから日本の目指すべき八〇%の削減目標は、法律に明快に書くべきだと思っております。これはきょう一番申し上げたいことのうちの一つです。

 ただし、中期目標については、これからどんどん私たちは引き上げていただきたいと思っておりまして、二〇二〇年は近過ぎるのかもしれませんが、二〇三〇年の目標は、正式にもう一度提出するのが、二〇二〇年前にその機会が訪れます。そのときにもう一度、私は、この目標でいいのか、エネルギー政策とあわせて議論する必要があると思っていますし、その先も、もっともっと科学的な知見が明らかになって、状況が厳しくなったら引き上げるということもどんどん検討していかなければいけないのではないかと思っていますので、そこは定期的な計画で見直し、そして引き上げていく。

 後戻りはできないとパリ協定には書いていますので引き下げはないんですが、引き上げていくということを仕組みとして入れていく、そして、必ず、長期目標と比べて適切に、リニアに行動ができているのかのチェックシステムを入れるということで位置づけるのがいいと思います。

崎田参考人 ありがとうございます。

 目標に関しては、やはり明確に目標というのはあった方が、私たちが何か行動するときの方向性を示してくださるので必要だというふうに思っております。

 ただし、今回、この対策法の計画を検討する場に参加をさせていただいて、やはり、数字をはっきりさせ過ぎるということがこれほどまでも大きな議論になるのかという現場に参加をさせていただいておりました。

 ですから、やはり取り組むことが、方向性は大事だということをみんなで共有した上で、納得できるような形で法律を明確につくっていくという今の状態でやっていただくというのが、今の判断では大事ではないかというふうに私は考え、この案に賛成をしてきょう立っております。

 よろしくお願いいたします。

明日香参考人 私も数値目標は非常に重要だと思います。

 先ほど、引き上げをどうするかということが重要だというふうに皆さんもおっしゃっていると思うんですけれども、それをどういうふうにやるかという道筋が全然見えていないんですね。よくPDCAと言うんですが、例えば誰がどういう基準でいつまでに何をやるかというのが全然見えない、ただPDCAをやりますと。そういう誰が何をやるかというところは全然書いてないというのが今回の法案なんだと思います。

 なので、こっちとしても、突っ込みようがないというか、頑張ってくださいとしか言いようがないのが現状なんだと思います。

 数値目標に関しては、そもそも、では何で八〇%なのか、何で四〇か四五とIPCCが言っているのかというところから、日本はもっと議論をしなきゃいけないと思います。

 そのときに大事なのがやはり公平性なんですね。というのは、結局、アメリカはやっていない、中国はやっていない、何で日本だけがやるかという話に絶対行きますので、そのときに、では、どういう基準で、どういう判断で、IPCCはどういうことを考えていて、世界の研究者はどういうことをやっていてというようなプロセスを、考えるプロセスを早急に日本でつくらなきゃいけないと思うんですけれども、そういうきっかけが全然見えないのが今回の法案だと思います。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 パリ協定で決めたことくらいは、それを受けての国内法ですから、書いたらいいんじゃないかと私は思っているんですけれども、いずれにしても、いろいろな意見を聞かせていただきました。

 あと、きょう、お話をいただいた中で、私としても依然として関心を持っているのは、先ほどもちょっと話が出ましたが、炭素に価格をつけるということですね。さっき申し上げた三つの大きな政策の中で、温暖化対策税はできました、十分かどうかはわかりませんよ。それから再生可能エネルギーの買い取り制度もできました。排出量取引制度はできていないんですね。

 特にこれは平田先生がおっしゃっていただきましたので、平田先生にお尋ねしますが、炭素に価格をつけるという話は、さっきちょっと税の話で出てきていましたが、税はコストを上げる、こういう意味で、価格をつけるにも近いのかもしれませんが、どちらかというと、いわゆる京都メカニズムの中で生まれてきた概念ですね。日本はまだそこまで行っていないんだけれども、やはりこれから本当にCO2を削減していくという話をやっていくのであれば、まさにこれは、明日香先生が言う、ビジネスの人たちにもその気になってもらうというのは物すごく大事な話で、そういった意味では、価格メカニズムというのは極めて重要かな、こう思っているんです。

 ただ、世界的にもなかなか、今それはある意味では頓挫しているみたいな状況なんですが、依然として平田先生の方は、そういった方向を進めるべき、こうお考えでしょうか。

平田参考人 ありがとうございます。

 先ほど炭素税、地球温暖化対策税のお話をしましたけれども、こちらは手段でありますので、炭素に価格づけをする、やり方は違いますけれども、税をかけるのか、排出量取引で、各主体の排出に上限をかけることによって、取引を認めて、価格にインセンティブをきかせるのか。いずれも同じ効果を生み出しますので、両方ということにはならないんですけれども、確実に排出削減を引き出す手段としては、私は、排出削減に義務をつけ、そこに取引を認める排出量取引は、これから日本で真剣に向き合って議論すべき、そして導入を検討すべき施策だと現在でも強く思っております。

 これは、確実に排出を削減するということと同時に、各主体がみずから排出削減努力をするということだけでなくて、もっと大きく削減したところから買ってくることも認める、むしろ経済的な手法であって、税よりももしかしたら選択肢が多いかもしれないということであって、私は、これから低炭素に向かっていく中で、なぜ事業者がそんなに強く反対するのか、なお理解ができないところであります。

 中国でも、韓国でも、台湾でも、今、この排出量取引制度に進んで、導入もしているところもありますので、私は、これは頓挫した仕組みではないと思っておりますし、東京都の排出量取引制度の成果報告会は毎年聞きに行っていますが、義務が課された事業者は、萎縮しているのではなく、その中で、事業者の中でいろいろな創意工夫や社内の仕組みをつくったりして目標を達成している。おもしろい動きがたくさん生まれています。

 そうした企業の積極的な取り組みを促すには、私は、非常に重要な、そして意味のある効果的な仕組みだと思っておりますので、この議論はまた近いうちにぜひ審議をしていただくようなレベルで、国内の議論として進めていっていただきたいと思いますし、私たちもそれを盛り立てていきたいと思っています。

小沢(鋭)委員 ありがとうございました。

 やはり、CO2を削減したら利益になるという、そのモチベーションは極めて大きいんですよね。ただ、問題はキャップをどうつけていくかという話がありますので、そこが問題なんですけれども。そういった意味で、経済的な要因を入れていかないとなかなか本気になってみんな取り組んでくれないというのは事実だろうと思うし、引き続き私も検討を続けていきたい、こう思っています。

 そこで、明日香先生のお話の中で、いろいろ新しい話をきょう幾つか聞かせていただいたんですが、一番私がびっくりしたのは、十九ページの省エネのところなんですが、乾いたタオルではないと。

 これはもうずっと経済界からは聞き続けていて、ですから、産業界、地域、それから家庭、こう三つに分けて我々は考えていて、産業界はまあええか、どちらかというと地域と家庭だよねという話で今回のこの推進法なんかもできてきているんですが、依然として乾いたタオルではないというのは、私、極めて新鮮で、特にその中の、配管保温断熱材劣化によるエネルギーロスという極めて具体的な話があって、これをちゃんとやると原発七基相当分だという話なんですが、これはもうちょっと詳しく聞かせていただきたいというのと、企業の方は何でこれをやらないのか、少し詳しくお聞かせいただければと思います。

明日香参考人 どうもありがとうございます。

 これは、実は、省エネルギーセンターというところは、もっと、一一%のエネルギーロスと言っていますので、もしその数字が正しかったら原発二十基分ぐらいになります。御存じのように、省エネルギーセンターというのは経産省管轄のそういう省エネを専門にやる研究機関ですので、それなりの自信があって出している数字だと思いますし、この数字自体は政府のエネルギー需給見通し委員会で二年ぐらい前に発表されているものです。それで、毎日新聞がちょっと取り上げています。

 では、どうしてこういうのができないかというと、いろいろな工場を見て省エネでどこがまだ足りないとか言う人、そういう人たちがいるんですけれども、そういう人たちの話を聞くと、やはりトップが認識していないんですね。基本的には、そういう省エネ投資というのをやればいいと何となく思ってはいるんですけれども、それほど重要性を感じていないので、なかなか実行されないというのがあります。

 もう一つ、では、どうして長期需給見通しの数字に入らないかというと、そもそも、あれはどうやってつくっているかというのがわからないというのがあります。研究者から見れば、かなりブラックボックスです。

 そのときに必ず出てくるのが、投資回収年数を何年で切って入れているのかとか、割引率を何年で何%にして入れているのかと。例えば、割引率というのは、大きく計算すると省エネ投資というのは損になる、損になるというか、もうからないというような結果になるんですね。そうすると、それでその業界は省エネできないというような数字ができます。そういう研究結果の数字を出して、それがいろいろ使われてということがあります。ですが、例えば三%という低い割引率で考えると、省エネ投資というのは非常に、五年、四年、三年ぐらいでもうかるものだという計算ができます。

 なので、研究者でそういう数字が違って、政府が多分一方の数字を使っているので、長期需給見通しがなかなか、特に産業界での省エネの数字が小さいということになるかと思います。

 ですが、根本的な問題は、ブラックボックスでよくわからないというのが問題だと思います。

 基本的には、今申し上げましたように、この配管の投資というのは多分数千万か数億円する場合も多いとは思うんですが、大体三年から五年で回収できるものです。ですが、それはまさに、そういうカーボンプライシングみたいなのが入ったり、政府がもっともっと省エネをやりましょうとメッセージを出せばどんどん入ると思うんですけれども、やはりそこが弱いんだとは思います。

    〔委員長退席、北川委員長代理着席〕

小沢(鋭)委員 これはすごく具体的な話だし、今トータルで幾らぐらいかというのは別にして、各社数千万ぐらいで三年ぐらいで回収できるんじゃないかという先生のお話ですが、ということであれば、これはやらない手はないですよね。

 環境省、与党はこれから補正予算でしょう。ですから、僕は、環境公共事業というコンセプトを立てろとずっと言い続けているのは御存じだと思いますが、ぜひ、こういう話はすぐにでも取り入れてやったらいいんじゃないですか。原発七基分ですから。毎年でしょう、これはずっと。だから、本当にそういうのを補正予算ではぜひ考えてもらったらいいと思いますね。

 ついでに、崎田さんに補正予算の関係でもう一点質問ですが、国民運動で、やはり国民の皆さんにメリットを感じてもらわないとなかなか浸透しない、こういうお話がございましたよね。そのとおりだと私も思います。

 そういった中で、国民がメリットを感じるという話の一つとして、エコポイント制度というのがありましたね、家電のエコポイント。私のときに住宅のエコポイントを入れました。これは補正予算の関係でも十分やれると私は思っているんですけれども、やはりもう一回ここは考え直して復活させたらいいんじゃないかと思うんですが、崎田先生の御意見をお伺いします。

崎田参考人 ありがとうございます。

 エコポイントのお話ですけれども、エコポイントが実施されたときは、本当に全国的にかなり動きがあって、大きな影響があって、すばらしい政策だったと思っています。今同じことをもう一度やるというのは、もちろん効果はあると思います。

 私は、もう少し考えてみると、例えば、先ほど来お話をしていますが、身近な省エネからきちんとした消費選択に移り、その後、自分たちがどういうふうに暮らしの仕方を変えていったらいいのか、かなりじっくりと考え方を深めていただく、行動に移していくというところが大事だと思いますので、一つ一つのポイントにするというだけではなく、もう少しきちんとした助成の制度にして、ほかの専門家がその方たちのライフスタイルにきちんとアドバイスをして支えるような、少しそういうような形をつくってもいいのではないかという考え方もしております。ですから、そこはいろいろと工夫をしてやっていってはいかがかというふうに思っております。

 よろしくお願いします。

小沢(鋭)委員 ありがとうございます。

 それでは、最後になると思いますが、浅野先生に。

 地域における対策の推進というのが今回の大きな柱になっているんですが、具体的な中身の話は恐らく基本計画の中でという話になるんだろうと思うんですね。ですから、割と広域的な取り組みができるようになるというような話とかが法案の中では主になっているわけですが、ただ、そういう一般論じゃなくて、浅野先生がお考えになる、こういう取り組みをしたらいいんじゃないかという具体的な何かアイデアがありましたら、ぜひお聞かせいただけるとありがたいのでございます。

    〔北川委員長代理退席、委員長着席〕

浅野参考人 地域では、やはり国の政策の中では漏れてしまう部分というのがあります。例えば、農業、水産業、漁業、あるいは中小企業ですね。こういうところはどこもエアポケットになってしまっていて、そんなものは国の機関がやるんだろうといって自治体は何もしないとか、あるいは、国の方は、大きいところはにらんでいるけれども、小さいところはそれはちょっと無理ですよといってほったらかしになってしまっている、そういう谷間の部分があります。

 これはどう考えたって、やはり自治体がしっかり地域の問題として取り組まなきゃいけませんし、県が何かやってくれるだろうから市は知りませんというような動きがあったり、市がやるだろうから県はやりませんみたいなことになってしまったり、この辺のネットワークをしっかりつくっていくということが大事であります。

 今回の改正で、広域で共同作成ができるというふうになっていますから、これをいかに上手に利用するか、その地域の持っている課題を解決するためにどうすればいいかというのは大きな課題になるだろうと思っております。

小沢(鋭)委員 ありがとうございました。

 終わります。

赤澤委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 生活の党と山本太郎となかまたちの玉城デニーと申します。

 きょう、私が参考人の先生方に最後の質問バッターということになりますので、幾つかまた質問が重複することもあるやに思いますが、先生方、参考人の皆さんのお考えをどうぞ聞かせていただければと思います。

 さて、今回の温対法の改正案なんですが、これまでのさまざまな取り組みを振り返ってみて、まず浅野参考人にお伺いをしたいんですが、きょうの御意見を聞かせていただいて、これまでの取り組みで、十分に日本として世界各国とともに取り組んできていること、しかし、まだまだ課題が大きく残されていることなどのお話を伺いました。

 その中で、やはり長期的戦略の検討ということが私は一番重要ではないかというふうに思っております。なぜなら、今から始めないといけないこと、今始めておく方が先々もっと工夫ができること、あるいは、今から例えば五十年先を見た場合の地球全体の気候のあり方を考えた場合に、やはり長期的な戦略、あるいは超長期的と表現してもいいかと思いますが、その戦略の検討こそ重要であるというふうに思います。

 まず、その点について浅野参考人のお考えを聞かせていただきたいと思います。

浅野参考人 今の点については、全く先生の御指摘どおりだと思います。

 これまでにも、中央環境審議会の中では何度も、八〇%削減のために、どうしたらできるんだという報告を出しているんですね。もう既にそれは小沢大臣のころにも出しました。そうだ、そうだとみんな言いながら、何にも実現していないんですね。ですから、今までつくったものをもう一遍掘りくり返してみるだけでも、長期的な見通しというのはすぐ立つんだと思うんですよ。それはぜひとも環境省あるいは経産省がしっかり考えてやってくれなきゃいけないと思います。

 新しくつくらなきゃいけないと思うから気が重くなるんですが、あるもので十分できる、そのことを忘れてはいけないと思います。

玉城委員 ありがとうございます。

 さて、私は手元に、先生から出していただいた資料、気候変動長期戦略懇談会の資料を拝見させていただいております。

 二〇五〇年八〇%削減の方向性ということなんですが、私が少し気がかりなのは、二〇五〇年八〇%、その先の大幅削減を実現するためには次の三つの取り組みを並行して進める必要があるということで、一、可能な限りのエネルギー需要を削減する、これは省エネを進めるということです、それから、二、エネルギーの低炭素化を進める、三、電化を促進するとあります。この二のエネルギーの低炭素化を進めるというところに、例示として、電力の場合は、再エネ、原子力、CCSつき火力等の低炭素電源を九割以上、CO2排出をほぼゼロにする、それから熱は、バイオマス、地中熱、太陽熱など可能な限り再エネ熱を利用する、CO2排出を削減するというふうにあります。

 しかし、今現在では、この熱の部門において、バイオマスや地中熱、太陽熱などの再エネ熱の利用というのは非常に低いのではないかというのが私の認識なんですが、それについて浅野参考人の御意見を伺いたいと思います。

浅野参考人 太陽熱の利用につきましては、ひところ、屋根の上に温水器などをつけてというのが随分ありましたけれども、どうも何かうまくいっていません。前からの、温対計画の前の目達計画なんかでも大分残っていたんですけれども、何となく消えてしまっていますね。

 やはりあれは建物の構造そのものの問題があったり、老朽化をどうするのかという問題が出てきてあんなことになってしまったんですが、恐らく似たような問題はほかの熱利用についても出てくるんだろうと思います。

 バイオマスに関しては、一番の問題は、やはり安定的にきちっとバイオマスのエネルギー源を供給できるかどうかという課題が残っておりますし、それから、地中熱については、やろうと思えばできると思うんですが、余りにも情報が不足していてやられていないというようなことだろうと思います。

 ですから、おっしゃるとおり、この部分については、なお十分に考えて工夫をしていけば可能性がいっぱい残っているだろうと思いますが、バイオマスに関しては、先ほど言ったような供給の問題をどうするか。しかし、これは、地域の振興、地域づくりということとつないで考えていくことによってしっかりした答えを出すことが可能だろうと思いますから、今後なお考えなきゃいけないと思っております。

玉城委員 ありがとうございます。

 次に、平田参考人にお伺いをいたします。

 今、浅野参考人から、地域全体での取り組みも重要であるというお話をいただきました。

 今回、改正する規定の内容で、地域における温暖化対策の推進ということがありまして、地方公共団体実行計画を共同して作成することができる旨を規定し、その広域的な対応を促進するとともに、計画における記載事項の例示として、都市機能の集約等を追加する等の改正とあります。

 先ほど、私、平田参考人のお話を伺いまして、「国内法整備として必要な内容」の課題の中で、実は、世界的な取り組みの中で、先ほども私が申し上げました我が国の中長期目標を明記するということと、それから、今回の法改正の中で、地方自治体の実行計画の共同策定は、パリ協定を受けた長期的に取り組んでいく足がかりとしては不十分ではないかという御指摘をいただきました。

 その不十分ではないかという御指摘、特に地域計画において限定して提言をいただくとすれば、どのような計画にさらに地域全体で取り組むべきか、それを国がしっかり率先して、世界の取り組みと並行して行っていくべきかということをあわせてお伺いしたいと思います。

平田参考人 ありがとうございます。

 先ほど申し上げた不十分ではないかといった今回の改正の三項目ですけれども、これらの改正だけでは不十分ではないかというふうに解釈していただきたいと思います。

 一つ一つで申し上げますと、先ほども少し触れましたが、地域の実行計画の共同策定というものは、奨励されるべきものだと思っておりますし、いい効果を生むのではないかと思っております。ただ、この規定をもってどれだけ地域で実施がなされるのかは、今までの温対法に基づく実行計画の規定によってつくられてきた実行計画の策定と運用を見ると、ちょっと心もとないなとは思います。

 法改正のレベルでどこまでできるかは難しいところがあるかもしれませんが、この共同策定をできるようにすることによって、地域がよりみずからの課題としてこの問題に取り組み、実行計画を共同でつくるという可能性を探り、そして、これから自由化して、自治体にとってもエネルギー政策をみずからのものとして考えていく機会が生まれますので、そうしたことも含めて、どこまで自分たちが地域で行動できるのかということを考えるきっかけとなり、そして、この実行計画が効力を持って地域のさまざまな動きを起こしていくようなものになってほしいと思います。

 そのために十分な規定になっているかどうかはちょっとよくわかりませんが、この部分を指して不十分だと申し上げたということではございません。

 また、パリ協定では、初めてノンステート・アクターという表現を使いまして、政府以外のアクターの行動を加速させるということを盛り込みました。まさに、このパリ協定の目標の実施は、あらゆる主体が総力を挙げて実施しなくてはならなくて、その中で地方自治体の役割というのは非常に重要だということが認識されていますので、その一つにこの改正がなればというふうには私も願っております。

玉城委員 ありがとうございます。

 崎田参考人に一点お伺いいたします。

 実は私は出身が沖縄でございまして、沖縄は、もう一年じゅうクールビズ、いわゆるかりゆしウエアという装いが定着しております。冬になれば上着を着ずにかりゆしの長袖を着て、それで、年じゅう、暑くなれば半袖に切りかえ、長袖を着てというふうに選択する、これを私はクールチョイスの先進的事例であるというふうに思いますが、二〇〇五年からクールビズが始まってから、省庁でも、公的機関でも取り上げたということは非常に大きい前進だというふうに思います。

 ところが、実は先ほど、私のところに環境省のクールビズの担当の方がお見えになって説明したところ、今までは五月から十月までがクールビズの期間だったんですが、ことしから、十月一月はそんなにクールビズに無理してしなくても、スーツに戻してもいいんじゃないかというふうな説明を受けて、何で、一年クールビズにすればいいじゃないの、それで、好きだったら暖かいものを着て、涼しければ涼しいものを着るというふうなことで、やはりそれぞれのクールチョイスのライフスタイルこそが、この期間というふうな形での定義づけとか意義づけというものは本来余り意味がないのではないかというふうに思っております。率直なお考えをお聞かせください。

崎田参考人 ありがとうございます。

 クールビズに関しての期間設定というのは確かに最近どんどん長くなっていて、ちょっと長くなり過ぎじゃないかというような感じもあったりしますので、それぞれの地域が、自分たちの地域性に合って、我が県はこうしたいというふうにやっていただくような、そういう柔軟なやり方でやるのが一番だというふうに思っています。

 クールビズはやはりクールチョイスのスタートだというふうなところも、私もそのとおりだと思いますが、最近いろいろな人にクールチョイスということを一生懸命話すのですが、どうもクールチョイスというものの語感がまだぴんとこない方が多くて、クールというのは涼しいだけじゃなくて格好いいなんだから、格好いい暮らしを選ぼうみたいな、そんな感じでやりましょうよと言うと、何か皆さん、年配の方はすとんとくるんですね。

 みんなでそういうふうに、消費選択から自分たちのライフスタイルに行くんだ、そういう全体が広がるような形でこの国民運動をしっかりと広げていくということが本当に大事なのではないかなというふうに感じております。

 よろしくお願いします。

玉城委員 そういう観点から考えますと、まさに日本国民が、この日本国のあらゆる地域で生活しやすい御自身のライフスタイル、地域のライフスタイル、それが多様な、寛容な国民性と相まって、よろしいですねというふうなお互いを認め合うような生活をする、それが私は一番、クールチョイスと最も接点がつくりやすいところではないかというふうに思いまして、先ほど沖縄におけるかりゆしウエアの事例を述べさせていただきました。ありがとうございます。

 最後に、明日香参考人に少しグローバルな観点でお伺いをいたします。

 明日香参考人が、二〇一五年の「世界」という雑誌に寄稿された、「原発なしの温暖化対策こそが平和と民主主義と経済発展を取り戻す」という資料を拝見させていただきました。実は、地球温暖化の問題は、ひいては人類全体の問題であるということを非常にしっかりと書いていらっしゃるところに、私も強く改めて、ああ、そうなのかということを考えたんです。

 実は、日本もそうですが、古くから考えますと、例えば気候変動、干ばつなどによって農民の皆さんの一揆がいわゆる為政者に対して行われたりしてきた歴史の観点から考えると、まさに、例えばノルウェー難民評議会国内避難民監視センターの資料によりますと、二〇一四年に洪水や干ばつなどの気象災害によって一千七百五十万人が避難を余儀なくされ、そのうちの九五%は途上国に住む人々であったというふうに記されています。それから、農業生産の低下、水不足、商品価格の上昇、栄養不良などによって、世界全体で七億二千万人の人々が貧困層に逆戻りすると報告しています。

 こういうことを考えますと、気候変動を全体で取り組むという大きな目標、長期的な目標、取り組みと、そして今、日本国、日本国民としてできることをつなげて考えること、グローバルな観点からもっと啓蒙啓発につなげていくべきではないかということをお伺いしたいんです。その点について参考御意見をお伺いいたします。

明日香参考人 つなげたいと思うんですけれども、どうやってつなげるかという問題かと思います。きょう、ずっと議論があったように、どう国民に理解してもらうか、政治家の方にどう理解してもらうかということが重要なんだと思います。

 ちょっとまぜ返すようで恐縮なんですが、やはり何が本質的に問題なのかというのがまだ見えていない。クールビズも大事なんですけれども、多分それをやってもやらなくても、日本全体の温室効果ガスの一%とか二%とかせいぜいそれだけなんですね。ですが、今要求されているのは四〇%とか五〇%、一桁高い数字を削減しなきゃいけない。そのときに、では日本でどこが一番出しているかというのを冷静に考えたら、やはり産業界なり発電部門なんですね。

 発電部門は日本のCO2の四〇%を出していまして、例えば今の石炭の目標が達成できたとしても、八〇%を二〇五〇年に削減できたとしても、そのときには逆に、日本全体でのCO2排出量で発電部門が占める割合は六〇%になる計算になります。逆にふえちゃうんですね。そんなのは絶対あり得ない話でして、どんどん発電部門のCO2をゼロにしなきゃいけないんですけれども、逆に、今の目標だったら六〇%になるというのが今の日本の政策です。

 なので、やはりもっと、何が必要で、では、そのためにはどういう政治システムが必要で、政策決定プロセスシステムが必要でということを考えるべきであって、これはちょっときついかもしれませんが、国民運動なり国際貢献なり地方というのも、結局そういう本質的なところから目をそらしているんじゃないかなと思います。

 いつも数字でいろいろ議論しているので、どうしてもどうそれを変えるかということになるので、ちょっと厳しい話になりましたけれども、率直な意見です。

玉城委員 日本でも、今、子供たちを取り巻く貧困の問題、家族の貧困の問題、これは、非正規雇用の数がふえればふえるほど、将来自分の人生設計においても見立てることができない、方向性、計画性をつくることができない、だから今に甘んじてしまわなければならない、そういう状況が我が国でも現実化していると思います。

 しかし、その一方で、世界的な貧困への取り組みはやはりこの地球温暖化を食いとめることにほかならないという先生からの御指摘は、非常に大きな意味を持っていると思います。

 ですから、このライフスタイルが今だけに終わらず、今のライフスタイルを変えていくということが、例えば、富裕層の方々が買いかえるエコスタイルのシステムへの、ライフスタイルの質の転換ではなくて、今ある生き方が、より自然に近い形でみんなが共有できるスタイルを認め合うということが非常に大きいと思うんですね。そこから実は貧困問題を脱していき、その貧困問題を脱した先に、社会全体で、地域全体でお互いが助け合っていくという共生のスタイルこそ、日本における環境教育の第一歩であり、ひいては地球温暖化につながっていくこと、そこを私は先ほどつなげていくという文脈の中でお話をさせていただいたんです。

 最後にお伺いいたします。

 先ほど、ドイツが脱原発を掲げてその政策に進んでいくということをパワーポイントの資料で説明していただきました。政府による日本は環境立国という誤ったイメージの刷り込み、こういう、政府がどう発表していくか、省庁がどう取り組んでいくかということについて、世界が向かっている方向と日本が進めようとしている方向について、より多くの情報をしっかり共有しなければいけないのではないかと思います。

 そのことについて、世界の方向性と日本の方向性を、こういう形でもっと関係性を高める、あるいはそういう情報を啓発していくべきであるという点で、お考えがあればお聞かせください。

明日香参考人 どうもありがとうございます。

 研究者がまだ経験がないと思ってはいるんですが、日本の研究者はまだやはりばらばらなんですね。どっちかというと、経産省系の研究機関の人たちと環境省の研究機関の人たちが違う数字を出して、中身がよくわからなくてそのままというようなのが現状だったと思います。なので、もっともっと研究者同士で議論をする必要があるかと思います。

 あと、メッセージという意味では、私、何人かの研究者と一緒に、日本の数値目標とエネルギーミックスを考える研究者グループという組織みたいなものをつくっていまして、研究者の中でも共有してそれを発信していこうと思っています。アメリカの場合は、そういう研究者ともう一人の個人であって、研究は公平だけれども、個人はある意味では意見を持って発言するという土壌があるんですが、どうしても日本はそこが少ないんですね。なので、そういうのを少しずつ変えていきながら、研究者として、どういう数字であって、違う数字だけれども中身はどうだという細かいことをどんどんやっていかなきゃいけないのかなとは思っています。

 クールビズもすごく大事なんですけれども、多分クールビズだけではやれないので、ではそのために何をするか、まさにバックキャストで考えていくしかないんだと思います。

 あと、やはり難民は今本当に大きな問題になっていまして、逆に、日本で温暖化問題が意識されないというのは、難民がいない、いないというのはちょっと言い方が変ですけれども、例えばヨーロッパとかだと、アフリカから物すごい難民が十年ぐらい前からずっと来ているんですね。それが実は大きなモチベーションになって、ヨーロッパでの温暖化問題のリーダーシップというのがあると思います。

 だから、そういう意味では日本は恵まれているんですが、では、それでいいのか、まさに本当にガラパゴスでいいんですかということですし、逆に、温暖化対策が経済成長につながるということは何回も何回も強調していかなきゃいけないとは思っています。

 ありがとうございました。

玉城委員 ありがとうございました。

 宗教やあるいは国家間の国境による紛争だけが難民を発生させているのではなく、地球温暖化によって食料を奪われている方々の多くが難民になっているということもさまざま指摘されております。我々は、そういう視野を広げてもっと取り組んでいきたいと思います。

 参考人の皆様、きょうはどうもありがとうございました。

 以上で終わります。ニフェーデービタン。

赤澤委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人の皆様におかれましては、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、おかげさまで大変活発な議論ができました。まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る二十六日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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