衆議院

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第12号 平成20年3月18日(火曜日)

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平成二十年三月十八日(火曜日)

    午後零時一分開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 小此木八郎君 理事 根本  匠君

   理事 吉田六左エ門君 理事 竹下  亘君

   理事 三ッ林隆志君 理事 金子 恭之君

   理事 川端 達夫君 理事 仙谷 由人君

   理事 石田 祝稔君

      あかま二郎君    井脇ノブ子君

      伊藤 忠彦君    小川 友一君

      大塚 高司君    奥野 信亮君

      亀岡 偉民君    清水清一朗君

      藤井 勇治君    御法川信英君

      若宮 健嗣君    小川 淳也君

      大畠 章宏君    中川 正春君

      三日月大造君    谷口 和史君

      丸谷 佳織君    佐々木憲昭君

      日森 文尋君    保坂 展人君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議長           河野 洋平君

   副議長          横路 孝弘君

   事務総長         駒崎 義弘君

   参考人

   (日本銀行総裁候補者(国際協力銀行総裁))    田波 耕治君

   参考人

   (日本銀行副総裁候補者(日本銀行政策委員会審議委員))          西村 清彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十八日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     小川 友一君

  清水清一朗君     伊藤 忠彦君

  小川 淳也君     中川 正春君

  三日月大造君     大畠 章宏君

  谷口 和史君     丸谷 佳織君

  保坂 展人君     日森 文尋君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     清水清一朗君

  小川 友一君     奥野 信亮君

  大畠 章宏君     三日月大造君

  中川 正春君     小川 淳也君

  丸谷 佳織君     谷口 和史君

  日森 文尋君     保坂 展人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政治資金適正化委員会委員指名の件

 本会議における議案の趣旨説明聴取の件

 本日の本会議の議事等に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 まず、政治資金適正化委員会委員指名の件についてでありますが、同委員に、お手元の印刷物にあります諸君を各党から届け出てまいっております。

    ―――――――――――――

 一、政治資金適正化委員会委員指名の件

  委員候補者

   1弁護士   一名

                上田 廣一君

   2公認会計士 一名

                小見山 満君

   3税理士   一名

                池田 隼啓君

   4学者及び政治資金に精通した有識者 二名

                谷口 将紀君

                牧之内隆久君

    ―――――――――――――

笹川委員長 本件は、本日の本会議において指名を行うことに賛成の諸君の挙手を求めます。

    〔賛成者挙手〕

笹川委員長 挙手多数。よって、そのように決定いたしました。

 なお、この指名は、その手続を省略して、議長において指名することになりますから、御了承願います。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、趣旨説明を聴取する議案の件についてでありますが、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の両件は、本日の本会議において趣旨の説明を聴取し、これに対する質疑を行うことに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件の趣旨説明は、増田総務大臣が行い、本件の趣旨説明に対し、民主党・無所属クラブの森本哲生君から、質疑の通告があります。

 質疑時間は、十五分以内とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、質疑者の要求大臣は、お手元の印刷物のとおりであります。

 また、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件の趣旨説明は、高村外務大臣が行い、本条約の趣旨説明に対し、民主党・無所属クラブの近藤昭一君、日本共産党の赤嶺政賢君、社会民主党・市民連合の照屋寛徳君から、それぞれ質疑の通告があります。

 質疑時間は、近藤昭一君は十五分以内、赤嶺政賢君、照屋寛徳君はおのおの十分以内とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、質疑者の要求大臣は、お手元の印刷物のとおりであります。

    ―――――――――――――

 一、趣旨説明を聴取する議案の件

  放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

   趣旨説明 総務大臣 増田 寛也君

   質疑通告     時 間  要求大臣

 森本 哲生君(民主) 十五分以内 総務

  日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二十四条についての新たな特別の措置に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定の締結について承認を求めるの件

   趣旨説明 外務大臣 高村 正彦君

   質疑通告     時 間  要求大臣

 近藤 昭一君(民主) 十五分以内 外務、防衛

 赤嶺 政賢君(共産)  十分以内 官房、外務、防衛

 照屋 寛徳君(社民)  十分以内 官房、外務、防衛

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。

駒崎事務総長 まず最初に、政治資金適正化委員会委員の指名を行います。この指名は、動議により、その手続を省略して、議長において指名されることになります。

 次に、放送法第三十七条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件につきまして、増田総務大臣から趣旨の説明がございまして、質疑が行われます。

 次に、日米地位協定第二十四条についての新たな特別措置協定につきまして、高村外務大臣から趣旨の説明がございます。これに対しまして、三人の方々からそれぞれ質疑が行われます。

 本日の議事は、以上でございます。

笹川委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時二十分予鈴、午後零時三十分から開会いたします。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、次回の本会議は、明十九日水曜日午後零時三十分から開会することといたします。

 また、同日午前十一時理事会、正午から委員会を開会いたします。

 午後三時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時開議

笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 まず、日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件についてでありますが、本日の理事会において、大野内閣官房副長官から、内閣として、日本銀行総裁に国際協力銀行総裁田波耕治君、同副総裁に日本銀行政策委員会審議委員西村清彦君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、日本銀行総裁及び同副総裁の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として日本銀行総裁候補者・国際協力銀行総裁田波耕治君、日本銀行副総裁候補者・日本銀行政策委員会審議委員西村清彦君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、田波参考人、西村参考人の順で所信をお述べいただきます。その後、懇談形式で、それぞれの参考人の所信に対する質疑を順次行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、田波参考人にお願いいたします。

田波参考人 田波でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 私は、平成十三年に国際協力銀行の副総裁を拝命いたしまして、昨年の十月に総裁を拝命いたしました。

 現在、我が国は、激動する国際経済情勢の中で、特に、エネルギー、企業の国際競争力、また地球環境、さらには開発途上国等に対する経済協力といった喫緊の課題に直面をしております。

 国際協力銀行におきましては、資源産出国との関係を強化しながら、我が国の資源関連企業によるエネルギー、資源確保の支援を行い、また、我が国企業の輸出競争力の確保、そして海外事業展開を支援することに努めてまいったところでございます。

 その間、私自身、総裁、副総裁を通じまして三十六回の海外出張をいたしまして、例えばIMF・世銀総会であるとか、あるいはダボス会議等へも出席をさせていただきまして、世界経済が激動する中で、そういった議論にも参加させていただいて、日本の立場を説明してまいったつもりでございます。

 現在、世界経済は、新興国が比較的堅調な成長を維持していることもありまして、緩やかに減速しながらも拡大を続けていると思われますけれども、サブプライム問題を背景とする米国経済の減速や金融市場の大きな変動、そして原油価格の動向等、下振れリスクが高まっております。

 その中で、日本経済は、改正建築基準法の施行に伴う住宅投資の落ち込みは収束に向かいつつあるものの、石油、原材料高などによりまして、中小企業の収益環境は厳しくなっております。物価の上昇もうかがえます。このように、内外の情勢は厳しさを増しております。

 しかし、バブル崩壊後の十数年間、何より民間の方々の御努力によりまして、過剰債務、過剰設備等の問題が解消され、企業体質は改善され、金融システムの安定性は高まっているというふうに思います。私は、日本経済は、人口減少という課題を抱えているものの、世界経済の減速にも対応し、成長を持続する堅固な力があるというふうに考えております。

 金融政策運営の基本的な考え方でありますけれども、このような日本経済の力を発揮させるためには、日本銀行法にございますとおり、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」との理念に基づきまして金融政策運営を行っていくことが重要であるというふうに思います。

 その際、現在の内外経済で下方リスク、不確実性が高まっているだけに、種々のリスク要因を綿密に分析し、予断を廃して政策判断を果断に行うことが求められていると考えます。

 また、国民や市場との対話を十二分に行うことを通じまして、日本銀行法改正によって高められた金融政策の独立性と透明性を確保し、国民の皆様に信認いただけるように努めたいと思います。

 日本銀行にとりまして、金融市場と金融システムの安定を図ることも大きな役割であります。現在、大きな変動を見せているグローバルな金融市場の中にありまして、日本は、過去の金融市場の混乱の経験を経て、金融機関あるいは市場参加者が金融の高度化に対応したリスク管理に努めてまいりました。しかし、金融市場はグローバルなものであるだけに、油断は許されません。日本銀行の金融調節のノウハウは世界の中央銀行の中でもすぐれていると承知しております。これらのノウハウを十分に活用し、市場の動向に細心の注意を払い、金融市場と金融システムの安定に努めてまいります。

 さらに、銀行券の流通や日銀ネットの運行なども日本銀行の重要な任務であり、業務の適切な執行を行い、資金決済の円滑な確保、信用秩序の維持に努めてまいります。

 私は、公務員として奉職して以来、現在に至るまで、与えられた職責において全体の奉仕者の一人として最善を尽くしてまいったつもりでございます。世界経済、日本経済の不確実性が高まっている中、重責を担う機会を与えていただくことになりますれば、私は、日本銀行総裁として、副総裁や政策委員、さらには理事以下の日本銀行の職員とともに、日本銀行法に基づきまして、独立性と透明性を確保しつつ、適切な金融政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。

 どうもありがとうございました。

笹川委員長 ありがとうございました。

 次に、西村参考人にお願いいたします。

西村参考人 本日は、このように所信を述べる機会を与えていただきまして、大変光栄に存じます。

 私は、東京大学で、長く理論経済学と経済統計学の研究と教育に携わってまいりました。平成十七年四月に日本銀行の審議委員を拝命しましてからは、約三年間、政策委員会での討議を通じて、金融政策運営を初め、広く政策、業務、組織運営全般に関する意思決定に参画してきました。このたび仮に副総裁を拝命することになりました場合には、これまで蓄積した学問上の知識と日本銀行における実務上の経験を融合して、全力で職務を果たしたいと思っております。

 日本経済は、現在、足元のデータを見ますと、減速しつつも、基調としては緩やかなまま拡大を続けています。しかし、同時に、米国サブプライム住宅ローン問題に端を発した国際金融市場の動揺、原材料高を背景とする中小企業の収益環境の悪化や、ガソリン、食料品の値上がり、また、特に米国で顕在化している経済の減速傾向の強まりなど、数多くのリスク要因を抱えています。こうした中で、日本経済が物価の安定のもとで経済のしっかりとした成長を実現していけるよう、金融政策の面でも極めて注意深い政策運営が必要であるというふうに考えております。

 これまで私は、金融政策決定会合において、執行部から提供される多種多様の情報をもとに、自分なりの経済、物価の現状認識と先行きの見通しを構築し、それに応じて最も適切と考える政策を提案してまいりました。日本銀行の組織としての経済、金融情報の収集力、分析力は極めて高い水準にあり、これを十分に生かして適切な政策決定につなげていくことが、副総裁となりました場合の私の第一の役割だと思っております。

 そうした丁寧な経済、物価の分析を前提とした上で、当面の金融政策に関する私の考え方については、これまでも講演等を通じて明らかにしております。すなわち、第一に、現在の景気を動かす基本的なメカニズムに変調が見られないのであれば、これまでの基本的な考え方を維持するのが正しいと思います。しかし、第二に、先ほど申しましたようなリスクが現実化する蓋然性が高まるような場合には、その影響の深さ、広がり、期間を勘案して柔軟な対応を考えていくということであります。

 また、私は、これまでの経歴を通じまして、海外の学界、実業界、中央銀行などに多くの知己を得ております。経済と金融のグローバル化が進展し、しかもその変化のスピードが極めて速い中で、こうしたネットワークを使って、日本銀行が国際的な役割を果たす上で貢献していければと考えております。

 この三年間の審議委員としての仕事を通じて、日本銀行の組織や人についても多くを知ることができました。組織、業務運営の面でも、白川さんと協力しながら総裁を補佐してまいりたいと考えております。

 このたびの副総裁候補としての御指名は突然のことであり、正直驚いております。日本経済を取り巻く環境が大変な時期にある中で、現に日本銀行の政策の一翼を担っている者として、さらなる重責を負う覚悟でございます。副総裁として任命いただけることになれば、私の持つすべての力を今後の五年間に注いで職務を遂行していきたいと考えております。

 本日は、本当にどうもありがとうございました。

笹川委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 理事会申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席願います。

 また、西村参考人は、お呼びいたしますまで別室にてお待ちいただきますようお願いいたします。

 これより懇談に入ります。

    〔午後三時十五分懇談に入る〕

    〔午後四時二十七分懇談を終わる〕

笹川委員長 これにて懇談を閉じます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいまの懇談の記録は、本日の会議録の末尾に参照掲載するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔懇談の記録は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

笹川委員長 以上をもちまして日本銀行総裁及び同副総裁の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十八分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 懇談の記録

    午後三時十五分懇談に入る

笹川委員長 これより懇談に入ります。

 なお、懇談は、理事会申し合わせに基づき、速記を付し、その記録を公表することになっておりますので、御了承願います。

 これより田波参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内ずつ質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 なお、御発言は着席のままで結構です。

 竹下亘君。

竹下委員 自由民主党の竹下亘でございます。

 田波さん、本当に御苦労さまでございます。

 先般、武藤さんの不同意ということがあってから、まだそれほど日もない中で総裁候補に御指名をされて、本当に大変であろうなというふうに推察いたしますし、並大抵の覚悟では日銀の総裁というのは務まらないだろう。特に、サブプライムローンを初めとして世界経済が大変な時期にかかっている。ですから、いつこのお話を聞いて、どういうことを考えて、よし、やってみようとお考えになったのか、これが第一点でございます。

 それから、日銀の総裁というのは、先ほど海外経験のお話をされましたが、日本の金融の顔であると同時に、物価の番人であると同時に、今、日本は世界の金融市場の中で非常に大きな、というより安定的な役割を果たしていると私は感じております。そういう中で、これからの金融のかじ取り、特に、世界の中で、あるいは、かつてアジアの通貨危機ということもあったわけでございますが、そういう世界のいろいろな動きの中でどういう方向で運営をしていこうという抱負を持っていらっしゃるのか、これが第二点でございます。

 そして、第三点でございますが、かつて田波さんが次官をしていらっしゃる当時、たしか小渕内閣の当時でございますが、あの当時、バブルの崩壊を受けて、変な言葉ですが、金融国会とあのときは言われた国会でございまして、まさに金融の問題が最大の争点になっていた。あの中で、金融監督部門を金融庁という形で分離をされた、そのことをされた次官であるというふうに私は認識をいたしておりますが、その意味では、財金分離という問題はそこで一つの決着がついておるのかなという感じもいたしております。

 そして、世界の中の中央銀行の総裁の顔ぶれを見てみますと、例えばヨーロピアン・セントラル・バンクのトリシェ総裁のように、やはり財務省での経験を持っていらっしゃる方というのは結構いらっしゃる。財務省にいたことが総裁として不適格であると言わんばかりの論調が一時、残念ながら日本でも流れておったことは事実でございますが、その問題についてどのようなお考えを持っていらっしゃるのかお伺いをさせていただきたい、こう思う次第でございます。

 以上でございます。

田波参考人 どうもありがとうございました。

 それでは、簡単に、私の考えていることを。

 第一点でございます、いつ、どうしてというお話でございます。

 伺ったのは、割合、非常に近い時期というのが率直なところでございます。

 では、どうしてここに出てくることになったのかということでございますけれども、私なりに国際協力銀行の窓口から見ておりまして、今、例えばエネルギー価格にしても原材料の高騰にしても、いろいろな事象があるのですけれども、その中で、金融の働きというのがあらゆるところに影響を及ぼして、やはり、この金融の安定ということがきちんとできない経済というのは、世界的に、混乱が起きるばかりで伸展が望めないというような気持ちをずっと最近持つに至りました。そういう意味で、命ぜられたことが第一の要因でございますけれども、そういうことであるならば多少お役に立つかなという意味でここに参ったわけでございます。

 それから、二番目の点は非常に大事なところだと思います。先ほどの所信でも申し上げましたけれども、今、グローバルな金融市場が動揺しているわけであります。直接はサブプライム問題でありますけれども、これはもう釈迦に説法ですが、証券化商品等を通じてあらゆるところに影響を及ぼすということでございまして、市場参加者がリスクを避けるというような行動に出るということになれば、ますます世界的に動揺が広がるということで、私は、おっしゃいました九八年、九九年と次官をやっておりましたけれども、ちょうど十年前、まさに金融の大混乱が日本発であった状態と思っております。日本は、いろいろな後遺症は率直に言ってまだあると思いますけれども、それを克服してきたわけで、まさに世界の中央銀行と連携をとりながらこれを一つの経験として広めていくということが、今、日本の中央銀行に課せられた課題ではないかなというふうに思っております。

 それから、まさに財金分離でございますけれども、ちょうど私が事務次官になりました九八年の一月の終わりでございました。その前の年からやはり財政と金融を分離すべしという非常に強い御議論がありまして、いろいろな過程は経ましたけれども、私、これは次官の力とかなんとかということではないと思いますが、ある程度の合理性と、それから国会を初めとする皆様方の御決断によって、一応の結論はその段階で得られたというふうに見る点については、先生と同じような意見でございます。

笹川委員長 仙谷由人君。

仙谷委員 民主党の仙谷でございます。

 時間の関係で、先輩の田波総裁に失礼な聞き方になるかもわかりませんが、今の、九八年、九九年のころでありますが、大蔵次官時代にまさに金融クライシスが発生した。次官時代になさったことは、実は、佐々波委員会による中途半端な資金注入であったり、あるいは、なみはや銀行の特定合併であったり、護送船団方式と言われた方式から大蔵省が全く脱却できない、公的資金注入とかいうことについても、財政的観点からする、もう出し惜しみ一方で、結局、危機管理ができなかったという総括を私はしているんですね、我々の金融再生法によってようやくこの危機脱却の方策ができたと。

 今また証券会社ベアーの問題から始まって、世界規模で十倍の危機が発生しているんじゃないかと見るんですが、当時の、十年前のことをどのように田波総裁が総括をし、これから世界金融危機に臨もうとしているのか、その所信をお伺いしたいのが一点。

 それからもう一点は、やはり日銀が一兆二千億の国債買い切りオペを延々と続けている。超低金利・円安政策を延々と続けて国民の懐に三百兆も打撃を与えているという紛れもない事実があって、現時点で、ボンドマーケットの規律を侵す、今資料もごらんいただきましたが、この政策についてどのようにお考えになって、これからどうしようとされるのか、この点についてもお伺いしたいと思います。

田波参考人 ありがとうございました。

 最初の点でございますけれども、九七年の後半から九八年というのは、日本の金融機関の危機が来ると同時に、アジア危機という非常に大きな波がございました。その中で、日本経済は非常に困難な状態になってきたわけでありますけれども、そのときに、解決の方法として、金融機関をどうするかという問題があったことは、仙谷先生おっしゃるとおりであります。佐々波委員会というのをつくりまして、資本注入を、これは少し横並び的な注入であったということは認めざるを得ないと思いますけれども、行いました。

 ただ、その後、ここが私は金融の怖いところかなというふうに思うんですけれども、金融の悪影響というのは、今のちょうどアメリカのサブプライム問題に発したいろいろな悪影響と同様に、なかなか正確につかみ切れない、どこまで行くのかわからない、こういう経験を私は実感しました。したがって、究極的には、先生方の御尽力によって大規模な公的金融資金を入れまして、これによってやはり何とか日本発の世界同時不況は免れたという評価はできるんだろうと私は思います。

 したがって、今考えますのは、その後、証券化商品というような形で、非常に目に見えない形、しかも小口のものを一つにまとめて売って売ってというようなプロセスをできるだけ正確に、前広につかむ努力ということがないと、どうしても、その時点でつかまえてみたらもうちょっと大きかったというのが今ちょっとアメリカで起きていることなので、この辺は率直に反省をしなければいけないというふうに私は思っておりますが、逆に言えば、こういった経験を今後我々としては生かしていくべきではないかというふうに思います。

 買い切りオペにつきましては、基本的に物の考え方は、日本銀行が成長通貨を供給するときの手段として、国債を買って通貨供給をする、その一環でありまして、これはどういう立場から見ても、財政が金融の分野を踏みにじってやるような、例えば日銀の直接引き受け、これは財政法で厳にきちんと禁止されているわけなので、そういう種類の性格のものではないというのが私の考え方でございます。

 それから、量的にいっても、ちょっとデータを私持っておりませんのであれですけれども、日銀の保有国債は、残高でいうと徐々に今減りつつあるのではないかなというふうに認識をしております。あるいは、ちょっとそこは勉強不足かもわかりません。おいおいよく勉強してまいりたい、こう思っております。

笹川委員長 石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。端的に何点かお伺いをいたしたいと思います。

 まず一点は、日銀の中立性、独立性ということでございまして、事務次官経験者だからだということではありませんけれども、これまでの議論の中でも、やはり独立性、中立性について心配の向きもあります。これについて、先ほど、独立性と透明性を確保する、こういうお話もございましたが、いま一度お考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

 それから、田波候補者は、金融政策について直接的なタッチされたことが余りなかったように私は思っておりますが、これは誤解かもしれませんけれども、金融政策への知識とか経験について、これから対応に十分なのかどうか、お答えをいただきたいというふうに思います。

 それから、先ほどの所信の中で、中小企業は厳しい、こういうお話があったと思います。実は日銀の短観の中で、見ていく先が、どうも中小企業に対してのデータのとり方が十分ではないのではないか、日銀短観にそれが反映されているのか、こういう見方もございますけれども、今後、総裁になられたら、もうちょっと中小企業にも目を配って短観に数字を入れていくとか、実感できるような反映ができるか、この点をお伺いいたしたいと思います。

 以上です。

田波参考人 最初の中央銀行の独立性でございますけれども、二番目の質問と若干関係がございますけれども、私は、実は次官になる前に内閣の内政審議室長というのをやっておりました。そのころ、新しい日銀法をつくるのでということで、慶応の鳥居先生を座長として中央銀行研究会という会をやりました。その事務局みたいなものをやらせていただいた経験がございます。

 そのとき、いろいろな角度から日銀の独立性というようなことが一番大きな焦点として議論されたわけですけれども、私の理解では、今の新しい日銀法のもとで、日銀の独立性は大きく三つの条文でしっかり担保されていると。

 一つは、第二条の「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ということでございます。つまり、経済と物価というものをここでリンクさせている。二点目は、まさにずばり「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」これははっきり書いてあるわけでございます。そうはいっても、やはり政府との関係が要るということで、日銀法の四条には、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」

 この三つの条文がセットになって、政策委員会の構成、あるいは政府からの出席、議決権を認めない、そういったことが決められたわけでございますので、制度上ははっきりここは担保されているというふうに私は理解しております。

 それから、金融政策をやったことがないじゃないかというお話でございますけれども、私は、まさに銀行局や何かの経験はございませんけれども、総務審議官という時代がございました。これは今でいえばまさに財政と金融のリンクみたいなものでございますけれども、日銀の方々とはよくその間のいわば議論を、これは事務レベルでございますけれども、一生懸命させていただいた経験があります。それはいわば金融政策そのものの議論だったと思います。

 それから、理財局長というのをやっておりますけれども、私は実は一つ確固たる信念を持っていまして、財政投融資というのがあるんですけれども、これは従来は何となく予算的な扱いだったんですけれども、これはもうはっきり金融だというふうに割り切りまして、その後、財投改革に結びつけたつもりでございます。また、理財局はいわば国債の発行をしておりますので、枠組みは財政的な見地から決まるわけですけれども、これをどうやって国民の方々にスムーズに買っていただくかということはまさに金融そのものだというふうに思っております。

 以上でございます。

石田(祝)委員 ちょっともう一つ、中小企業について短観に入っていないということ。

田波参考人 大変失礼いたしました。

 実はそこのところは、私、短観のあり方、中小企業と大企業が分かれているのはよく存じていますけれども、どういった改善の余地があるかについてはちょっと今知識を持っておりません。

 ただ、中小企業の金融というのは非常に大事だというのは、日本の金融危機のときもそうでございましたし、これは明らかなので、もし改善の余地があるのであればチャレンジをしてみたいというふうに思って、今後よく検討したいと思っています。

笹川委員長 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 田波さんが事務次官をされた九八年一月から九九年七月というのは、先ほども少し議論がありましたが、公的資金の投入を行った、こういう時期で、私どもは、この公的資金の投入そのものについては批判的な見地を持っておりました。といいますのは、銀行業界としての責任というのは一体どうなのか。つまり、この危機を招いた経営者の責任を十分問うこともなく国民の血税を投入するということは問題があるというふうに思っておりました。

 そこで、お聞きしますけれども、この銀行業界としての責任というものをどのようにお感じなのかというのが一点です。

 それから、私どもは、預金保険機構を活用して銀行の保険料を適切に引き上げ、銀行の自己負担で自己責任をしっかりと果たすべきだという考えを持っておりました。この点についてどのようにお考えか。

 それから二つ目は、八五年九月のプラザ合意、これ以後五回にわたって公定歩合の引き下げが行われて、アメリカのドル高是正に協力をしたわけですが、当時、超低金利政策と言われました。ドイツは早々とその政策を打ち切って金利を上げたんですが、日本は、二年間、長期にわたって続けて、低金利が続きました。このことについてどのようにお考えか。日銀の三重野元総裁は、もう少し早くブレーキをかけていれば経済への振幅は少し小さなものになったのではないか、こういうふうに言っているわけですが、どのようにお考えかということです。

 それから、バブル経済の背景にこの低金利政策があったという認識があるかどうか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。

 それから、アメリカとの協調を優先し過ぎると、国内経済、生活を犠牲にしかねない面もありますので、その点をどのようにお考えか。

 最後に、次官になられる直前に大蔵スキャンダルというのがありまして、大変大きな問題になりました。その後、福井総裁の村上ファンドの問題もありました。こういう問題についてどのようにお感じか、見解をお聞きしたいと思います。

 以上です。

田波参考人 銀行業界のその後の責任は、金融庁にその舞台が移ったこともあって、直接財務省に残った、当時は大蔵省でございますけれども、あれではありませんけれども、一つは、やはり公的資金を入れた銀行というのは、これは先生のお立場からすれば厳しくないという見方もあるいはあるかもわかりませんけれども、それぞれ皆さん責任をとっておられるという事実はあると思います。

 それから、公的資金導入そのものがおかしいんだという議論でございますけれども、さっき仙谷先生がおっしゃられた、最初のスタートというのは、やはり預金保険法の改正なんかで何とか処理ができないかというようなチャレンジをしたわけですけれども、その後、非常に不良債権のボリュームが広がることによって、それではやはりできないという認識のもとで決断された政策だというふうに思っております。

 それから、低金利政策によっていろいろな面で国民生活に影響があるのではないかという御質問でございますけれども、なぜあそこまで財政が出なければいけなかったか、それから金利を下げなければいけなかったかということは、やはり、何とか世界恐慌を阻止し、それからデフレ経済からの脱却を図らなければいけないということについての挑戦だったと思います。その結果、ある程度の効果が出て、その後の日本経済は経済自体としてはある程度の立ち直りが見えたことも、これは事実だというふうに思っております。

 むしろ、私が当時考えておりましたことは、ああいう非常に大胆な政策をとった後、どういうふうに国民のコンセンサスを得て、その状態から少しずつでもいいから何とか脱却できないかというような考え方を持っていたところであります。

 それから、例のいろいろな意味でのスキャンダル、これはもうまことに申しわけないということに尽きるわけでございます。私はあの事件が起きた後に行ったんですけれども、これはやはり基本から全部きちんと調べなきゃいけないということで、千名以上の職員を全部調べまして、合計でたしか百十二名の方々だったと思いますけれども、私としては非常に、率直に言って個人的には心の痛む仕事ではありましたけれども、そういった格好で主観的にはけじめをつけたと思っております。

笹川委員長 保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 ちょっと角度を変えて、現在、議院運営委員会で日銀総裁候補としての同意人事に向けて、意見聴取二回目が行われております。御案内のように、非常にぎりぎりのタイミングである。そして、現在の国際的な経済の危機、株安、円高と、急激にここ数日で進行しております。

 田波候補自身が、こういう形でぎりぎりに審査が行われて、そして、いわば任期の本当にぎりぎりという中でこういった聴聞というか意見聴取を行っていることについて、率直に、大蔵省事務次官、顧問、そしてJBIC総裁という立場から見て、国際的にどういうふうにこの状況を見られるのかということについて、お考えがあると思いますのでお聞きしたい、これが一点目です。

 二点目に、先ほどから、事務次官になられて、財金分離、金融監督庁を発足したというお話が出ておりますが、私は多分、内政審議室長をされている当時の連立与党自社さ政権当時、何度かお目にかかっていると思います。恐らく、そのときに内政審議室長としての田波候補は、必ずしも財金分離に積極的ではなかったのかなと。行革会議などでの御議論を振り返ると、あの当時、つまり、次官になられてからではなくて、政策決定が行われる前、内政審議室長としてどのような動きをされ、お考えがあったのか、それをちょっと明確にお答えいただきたい。

 三点目なんですが、JBICの副総裁の時代に、私は予算委員会に六年前にお招きをして、ケニアのODA事業について御意見を伺ったことを思い出しているんですが、現在でもNGOなどから、マレーシア導水事業であるとかインドネシアのコタパンジャン・ダム、こういった巨大プロジェクトについて、環境社会配慮のためのJBICガイドラインがありますが、これについて国際標準と合わせてより厳格化してほしい、居住する先住民や住民の諸権利、それからニーズと本当にかみ合っているかどうかなどのことも指摘されているんですが、これをどういうふうに国際的な環境の中でのODA事業の環境という問題でお考えになっているか。

 最後に、JBIC職員の天下り問題なども利害関係者と指摘されている記事もありますが、そういうことについてのお考え。

 この三点を伺います。

田波参考人 最初の国際株安、円高の中で、時間がなくてぎりぎりということでございますけれども、私の今までの生活というのは、自分が何らかの形でお役に立つのであるならば、余り環境のことは考えることなく、やるべきことはやる、そういうことに今まで徹してきたつもりでありますので、これは全体の環境の中でいろいろな事情があったんだろうと思いますけれども、もし私がそういうことになれば、不退転の決意でやるということに尽きると思います。

 それから、財金分離の話でございますけれども、多少誤解があったかもわかりませんけれども、あのときに、中央銀行研究会の事務局をさせていただきましたけれども、これも私ははっきり割り切って公言をしておりましたけれども、ああいった委員会というのは、やはり委員さんが決める委員会なのであって、事務方がどうだああだ誘導するというようなことは厳にすべきではない、こういうことでありまして、当時の委員さん方もその点は十分にお認めいただいていると思いますし、事務局においてもそうだったと思います。したがって、私が財金分離を進めたということでは必ずしもないということであります。委員会の運営をされて、その中での議論の中で骨格が固まってきたということだろうと思います。

 それから、JBICの問題でございますけれども、ケニアの件で先生から御質問を受けました。これはちょっと余談になっちゃって申しわけありませんけれども、現場を見に行かれた先生方、私も行きましたけれども、プロジェクトとしては、環境も含めて、それほど大きな問題ではないと思いますけれども、環境というのはやはりこれから非常に大きな問題です。これは地球環境だけではなくて、大きなプロジェクトをやる場合に、環境ということはほとんど半分ぐらいの要素を持っているような印象を僕は持っております。

 ちょうど今、環境ガイドラインができて五年になろうとしていますが、いろいろな見方はあると思いますけれども、JBICの環境ガイドラインについては、国会の先生方も含めまして、ある程度の評価を実はいただいているというふうに思っております。しかし、これはもっとブラッシュアップしなきゃいかぬということで、今その作業中ということでございます。いろいろな有識者の方々の御意見を拝聴しながら、いいものになればと思っております。

笹川委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 私も数点質問させていただきますが、三月十九日に今の日銀総裁の人事というのは任期切れになるわけでございます。そこで田波さんがいらっしゃったわけでございますが、今、国際協力銀行の総裁ということでございますが、現在の日本経済、これを客観的にどのように見られていらっしゃるのかということが一点。

 それから、今後の、任期は五年間ございます、その間に、日銀の総裁になられた場合、どのようなビジョンをお持ちで、どのような日本にしていくおつもりなのか、そのことをお聞きしたい。

 それから、前回、武藤候補は、総裁候補だったんですが、不同意になりました。そこで、今回、田波候補がなられているんですが、副総裁はとりあえず一人決まっている段階になっています、そういう中で、日銀の総裁が不在になるということになった場合、どのような影響があるというふうにお考えなのか。これは、御本人がこれで不同意になるか、同意になるかということは今後のことですからわかりませんけれども、万が一不同意になった場合は不在になる可能性が極めて高いわけですね。そういうことを考えたときに、世界的に見て、今後どのような影響があるのか、それをお答えいただきたいというふうに思います。

田波参考人 ありがとうございました。

 最初の、日本経済をどう見ているかということでありますけれども、基調はちょうど、長い間の、少なくとも指標の上では好況が続いて、秋にかけて上りかかるかなという見方が経済界の普通の見方だったと思います。そこにサブプライム問題があらわれた、こういうことであります。

 サブプライム問題の影響というのは私は二つあると思うんですが、一つは、やはりアメリカ経済の実体経済、これは住宅から端を発しているんですが、やはりある種の逆資産効果というか、これはいろいろなもので、例えばローンだとかというのも、自動車でも何でもあります。それから、生活の中で信用で借りて物を買っている方々も非常に多いので、これはなかなか、アメリカの実体経済がどうなるかということについては十分注視をしなければいけない。この影響は日本にも及んでこないとは限らない。

 それから、二点目はやはり金融的な面でありまして、これは率直に言って、今の私がどれくらいの情報量を持っているかと言われると確たることは言えませんけれども、やはり日々のこの進展を見ていますと、徐々にいろいろなところに波及効果が世界的に出ているということでございますから、この行方に十分注視をしなければいけない。願わくは、年後半にかけて、今企業が持っている収益力を十分生かして回復過程に努めればいいなという願望を持っております。

 それから、今後のビジョンをどうするかという話でございます。

 今、金融の、中央銀行をめぐっての御議論でございますから、これは三番目の問題と一緒に答えさせていただいた方がいいと思うんですけれども、私は、やはり中央銀行であるとかあるいは中央銀行の総裁というのは、金融の一つのインフラとして非常に重要な位置を占めているというふうに思います。つまり、中央銀行に確たる情報量もない、見通しもない、決断もないということは、やはり経済にも非常に大きな影響を及ぼすというふうに思います。

 そういった意味で、中央銀行の総裁が、どういう言葉を使っていいのかよくわかりませんけれども、不在というような状態は、やはり世界の国々から見ても、いわば日本の金融のインフラの元締めはどうなっているのかなというような危惧を持たれる可能性はあるのかなと。余りそれ以上の出過ぎた発言は私は差し控えたいと思っております。

笹川委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただくようお願いいたします。

 なお、発言は、一人一問一分以内ずつとしていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

根本委員 自由民主党の根本匠です。

 ただいまのお話の中で、田波さんは、日銀の独立性、特に改正日銀法に精通しておられる、さらに日銀の金融政策にも詳しい、国際的な経験も豊かであるということがわかりました。

 私は、特に日銀法の三条と四条との関係、日銀の独立性と経済政策、金融政策、要は政府と日銀の目標の共有のあり方、政府とどのように関係を築いていくか、この点について、当時の御自身の体験も踏まえられて、お尋ねをしたいと思います。

田波参考人 多少断片的になるかもわかりませんけれども、私の当時の議論を拝聴していた記憶で申しますと、例えば政策委員会、日銀の独立性というのは、一言で言えば政策委員会の独立性ということなんだろうと思うんです。その中では、自由闊達な議論をして、審議委員の間で決めていく。

 その過程において、透明度は高く、政府からの意見を聞くという仕組みが入り、それから議決停止権といいましたか、ちょっと言葉が正確ではないのですが、そういったぎりぎりの、先生おっしゃる調整の仕組みがまさにこのときに入った。それはそれでワークしているのではないか、透明性と一種の相互の連関性が保たれた仕組みになったのではないかというふうに思っております。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 一分一問ということでありますので端的に聞いていきたいと思うんですが、バブルに至る過程、それから克服をしてくる過程の中で深く関与をされたということを前提にして、政策の失敗だったと思うんですね、日本も。

 どこにその政策の失敗があったかということを踏まえて、今、サブプライムローンの議論が出ましたけれども、アメリカに対して、特に先週アメリカは、ベアー・スターンズで破綻ということになって、また、〇・二五%ですか、金利を下げてやったということに対して、マーケットはこの政策を非常に批判的に見ているんですね、間違っていると。いわゆる公的資金の注入を前提にした政策がなければ動かないんじゃないかというふうなことがあります。

 この今のアメリカの政策に対して、過去の経験でもって率直にアドバイスするとすれば、何をすべきだということを考えておられるのかということ、そのことを関連させて答弁をいただきたいと思います。

田波参考人 最初の、バブル克服の過程での反省でございますけれども、私は、一番大きく反省すべきことは、将来に対する予見性だと思うんです。

 というのは、私どもも含めて、やはり当時は右肩上がりの経済がずっと続くんだという前提で物事を考え、その上に立っていろいろな政策が組み立てられていたということは否定できないように私は実は思っております。

 したがって、これは中央銀行だけではありませんけれども、データをきちんと蓄積して将来の予見性をつくる、そのときに、やはり世界的な視野で物事を見ていかないと、一国の中だけでは、これはもう予見ができない時代になってきているということは肝に銘じなければいけないというふうに思っております。

 それから、アメリカに対するアドバイスという大きなことは言えませんけれども、やはり今やっておられる、まずは流動性の確保をするんだということをかなり大胆に打ち出しているわけですけれども、やはりまず流動性を高め、そしてどうやって自己資本を充実させていくかということが当面一番大きな課題であり、即効性と言うのも変ですけれども、やるべきことではないかなというふうに思っております。

 自己資本の充実については、いろいろな手段が場合によってはあり得るのかもわかりません。

石田(祝)委員 一問だけお伺いしたいと思います。

 日銀のこれまでの金融政策への評価ということをお聞きしたいんですが、つい最近までやられたことで、ゼロ金利の解除とか量的緩和の解除、また公定歩合の引き上げ、こういうことも日銀はやられてきたわけです。それは必ずしも、財政当局と一致をした、そういうことではなかったんじゃないかと私は思いますが、この日銀の金融政策について、率直な御感想、御意見をお聞きしたいと思います。

田波参考人 一言で言えば、一つは、まずデフレスパイラルからの脱却。現在は、スパイラルまではいかないけれども、いろいろなデータのとり方があるんだと思いますけれども、非常に雑駁に言えば、まだ完全にデフレ経済から脱却をしていないという状態のもとでとられた政策だというふうに思っております。

 先ほどの、先々を予見していくという、この勉強、つまり物価の安定が日銀の最大の使命であるならば、やはりインフレというようなことも真剣に勉強し、阻止をすることを考えておくべき段階ではないかなというふうに思います。

 それから、財政の注文でというところは、実は、私も総務審議官なりなんなりで日銀の方々といろいろ接触しましたけれども、本当に率直に言って、財政の都合でどの程度の影響を受けているかについては、全くコメントする余地がないというか、必ずしもそういう力が働いたわけではないんじゃないかなと、最近の状況については、率直に個人的には思っております。

竹下委員 日銀は物価の番人ということを言われておりまして、確かに、物価の安定を通じて経済の成長に寄与するというのが大きな使命であります。

 ただ、経済活動が活発になることによって経済の体温がある程度上がることは、いい体温と言ったらおかしいですが、そうではなくて、例えば今起きております現象は、原油高あるいはレアメタル等、世界じゅうで資源の買い占め合戦みたいなものになって、輸入物価が部分的に異様に上がってきておるという状況の経済になっておるわけであります。

 こういうときに、中央銀行の総裁としてはどういう手段をとれるのか、とる方法があるのか、あるいはないのか、あるいは、中央銀行の総裁としてこういう局面では何をしなければならないのか、今お感じになっていることをお話し願えたらと思います。

田波参考人 ちょっと技術的にお答えするだけの用意が今ありませんけれども、私は、率直に個人的な意見を言わせていただければ、中央銀行そして総裁は、やはり積極的に経済についてのいわば見方なり意見を言っていっていいじゃないかと。

 これは、局面にもよりますし、それ自体が中央銀行そのものの仕事ではないと言われちゃうかもわかりませんけれども、現に、先ほどの日銀短観でもって鋭敏に経済の動きを見ていく。それは先ほどのお話のように、中小企業までよく見ていかなければいけない。そういうことを見て分析した、これは原油高もそうだと思いますし、原材料もそうだと思いますし、最近ではレアメタルなんという話は、なかなか中央銀行だけでは解決がつかないわけですけれども、それでも、経済をどういうふうにしていったらいいかということについては、少なくとも中では活発な議論があっていいし、場合によっては、いろいろな形、論文のような形で発信があってもいいのかな、そういう大きな取り組みが当面やはり必要なんじゃないかなというふうに思います。

笹川委員長 予定の時間になりましたので、これにて田波参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 参考人は御退席いただいて結構です。どうも長時間ありがとうございました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、西村参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をしていただきまして、一人一問一分程度でお願いいたします。

仙谷委員 民主党の仙谷でございます。

 資料の三枚目ですが、マネーサプライを九六年、九七年ぐらいから十年にわたってこんなにふやしてきた。名目GDPがほとんどふえてこないという状況に日本はなっています。このマネーサプライのふえ方と、多分、国債発行高、日銀の発券高、国債の発行残高、あるいは日銀の保有残高というのは、一九四四年レベルまで大体到達している。

 一つは、これだけのマネーサプライを供給しながら、名目GDPがふえなかったのはどこに原因があるのかということと、現時点でのGDPに対する発券高あるいは国債の発行残高、保有高という、このリスクについてどうお考えになるのかということをお伺いしたいと思います。

西村参考人 まず、最初の貨幣供給量とGDPとの関係ですが、九八年ぐらい、九六年、この時期からそうなんですが、日本だけではなくて世界でも、Mと、日本の場合はM2プラスCDですか、それとGDPとの関係が非常にあいまいになってきております。例えば米国のフェデラルリザーブでは、このM2プラスCDはありませんが、それを一つおきM3というのがあったんですが、これに関してはもう情報価値がないということで発表しないというふうな形になっております。

 その理由の裏には、やはり金融の革新がいろいろ起こりまして、このMとGDPとの関係との間に安定した関係があるということは人々が貨幣を使って取引活動をするということが裏にあるんですが、いろいろな形で取引の仕方が随分変わってきてしまっているということがあるわけです。そのために、MとGDPとの関係に大きな動きの差が出たというのが一つであります。

 もう一つは、少し学者的になって申しわけございませんが、余り言われていないことなんですが、実は、例えば金融危機のときには何が起こったかといいますと、名目GDPは下がって、そして貨幣供給量はふえているんですね。つまり、負の相関があるということがあります。

 だから、今の状況では、貨幣量と名目GDPとの間の相関というのは、金融の教科書の最初にあるような単純な関係ではなくて、非常に複雑な関係になっていますので、全体として見るならば、そういった複雑さを頭の中に入れておいて我々は考えていかなきゃいけないというふうに思っています。

 その次の時点での、現時点でのマネーの量と、それから例えば国債の買い入れの金額ですが、国債の買い入れの金額というのは、当然、御案内のように、貨幣の供給量に対応した条件があるという形になっております。ということはどういうことかといいますと、いわば経済をうまく動かすための流通財といいますか、うまく滑らかに動かすためのものとして、貨幣を供給するために国債の買い入れというのを続けているわけです。その部分は変わることがないんですが、一つは、したがいまして、場合によって、もし貨幣供給量が収縮した場合には、長期国債の買い入れも当然それに対応して対処していかなきゃいけないという形になりますが、現在のところ、そういう状況には至っていません。そして、買い入れはしておりますが、償還もかなり多いものですから、残高として見ますと、日本銀行の持っている国債の残高というのは減少しております。

 そういうことから考えれば、差し当たってすぐにリスクがあるということではないと思いますが、長期的に見れば、やはり経済のいわば体温に合った状況に対応するような貨幣の供給量が必要ですし、それに対応する国債の買い入れの政策というのは必要だというふうに考えております。

吉田(六)委員 自由民主党の吉田六左エ門と申します。西村さん、大変御苦労さまです。

 サブプライム問題はもちろんですけれども、そうした今大変な世界じゅうの金融、経済の環境の中で、国民が今、日銀の船長さんがいなくなったらどうなんだろうなという心配をすごくしていると思うんですよ。それを避けるべく、こうして最大級の努力をしているわけですけれども、そうしたあたりにかかわって、何かお考えがあればちょっとお聞かせいただけたらと思います。

西村参考人 日銀法の精神は、内閣が指名し、国会が承認された方を日銀としてお迎えして、一たん日銀としてお迎えしたその時点からは独立して行動するという形になります。

 したがいまして、私はまだ候補ですけれども、候補の立場からとしても、やはりそういったプロセスそのものに私が何か申し上げるということはふさわしくないというふうに考えます。

 ただ、一般論としまして、私がここにいて、そういうようなことが起こるとはとても思えませんので、そういうことはないと私は確信しております。

石田(祝)委員 西村副総裁候補にお伺いしますけれども、これまで審議委員として三年間お務めになってこられて、これから副総裁になられた場合、経済統計学を専攻されたというふうにお聞きしましたが、副総裁として、そういうものも使ってどういうふうに金融政策に、運営に携わっていかれるのか、そのお考えをお伺いしたいと思います。

西村参考人 経済データというのは極めて難しい、複雑で、しかもしょっちゅう変わる、そういう性質があります。したがいまして、足元の出てくる数字で余り右往左往しますと、とんでもないことになります。それからもう一つは、金融政策というのが効果が出てくるまでには時間がかかります。この二つをきちんと考えて、金融政策の決定に誤りのなきようにしなければいけないというふうに考えております。

 もう一つ申し上げますと、真実は一つなんですが、その一つの真実をあらわすいろいろなデータが実はあります。つまり、いろいろなデータにはすべて誤差があります。いろいろなデータを組み合わせながら、その誤差をできるだけ小さくして、そして今現在がどうなっているのか、それから今後それがどういうふうに変化していくのかということをきちんと見据えながら金融政策をやるというのが、やはりこれが一番本質的な点だというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 西村さんが三年前に政策委員会審議委員に就任されたときの記者会見の記録を見ておりましたら、量的緩和政策についてこうおっしゃっています。

 量的緩和というのは、はっきり申し上げてモルヒネである。モルヒネを打ちながら、非常に大きな困難を乗り越えてきた。劇薬は当然のことながらとめてしまった方がいいわけだが、しかし、劇薬を急にとめるとそこに非常な痛みが生じてしまう。頭ではわかっていても、痛みというものは体に来てしまう。

 こういう発言をされていますね。この発言の意味、趣旨はどういうことなのか。

 それからもう一つは、日銀が行ってきたこれまでのゼロ金利政策、量的緩和政策というものは、国民の家計に影響、痛みというのが非常に大きかったと思いますが、それはやむを得なかったというふうにお考えなのか。この点をお聞きします。

西村参考人 まず最初に、量的緩和はモルヒネであるということは、量的緩和は、申し上げますと、これはやはり非伝統的な政策であります。やはり金利政策が伝統的な政策であります。その意味で、非伝統的な政策が量的緩和ですので、非伝統的な政策というのはかなりいろいろな副作用があります。その副作用のことを考えながら、モルヒネという言葉を使いました。

 副作用というのは、一つは、痛みを和らげるといういい部分もありますが、しかし、どうしても物事を先送りにしてしまうという副作用もあります。つまり、痛みが弱いうちにそういったことに対応するようなことを我々はすべきであるというふうに考えていますし、この時点でそういうことをしたのではないかというふうに考えております。

 ゼロ金利政策に関しましては、これが家計に大きな痛みを伴ったということは否定できない事実でありますし、逆に言えば、それほどの犠牲と、それから、こういうモルヒネを打たなければ、あの時点からのその後の脱却、私はまだ脱却の途中だと思っていますが、その脱却に向けての道をうまくつけることができなかったということだと思います。その意味で、金融政策をやっている者として、こういった痛みというものがあるということは常々頭の中に入れて、頭だけではなくて、心にやはり感じていなければいけないんだというふうに考えております。

中川(正)委員 その上で、新しい経済環境を見据えていくときに、財務省のサイドからいけば、やはり金利上昇に耐えられないというか、財政的に高い、いわゆる名目GDPよりも高い金利に持っていかれるということに対して財政的にもたないというわっぱみたいなものが片方にあって、それを日銀として受けとめるとすれば、それはそういうことなんだとすれば、基本的に金融政策というのはもうそこで上限が決まって、それ以下の範疇でしか政策を考えることができないという限界があるということなんだろうと思うのですが、先生はその考え方に立っておられるのか。それとも、そこのところは、もっと違った観点の中から金融の理論というのは展開できるんだというふうに考えておられるのか。そこはどちらですか。

西村参考人 財政政策もそれから金融政策も、大きく見れば経済政策の一部です。したがいまして、財政政策と金融政策は、当然のことながら整合でなければいけません。したがいまして、例えば、金融政策を固定しておいて財政政策を考えるということもおかしいですし、財政政策を固定して金融政策を考えるというのもおかしいわけです。それを両方あわせたところに一番望ましいポリシーミックスがあるという形になると思います。

 それから、もう一つは、そういった財政的なポリシーミックスの基礎になる部分というのは、これはもう世界的な過去の経験から見て物価の安定なわけです。その物価の安定をきちんと背景としてつくり出すというのは日本銀行の最大の使命です。そのもとで財政政策と金融政策の間の整合性というものをつくり上げていくということが独立性を保つ日本銀行としての役割だというふうに考えております。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 きのうからけさにかけてというんでしょうか、一ドル九十五円という為替レートになったということで、日本の主に輸出メーカーというのは大変な状況に入ってきているというような話でございます。

 その一方で、日本人の個人資産というのを合わせると一千五百兆。ドイツとフランスとイギリスの国民の資産を合わせた分だけ持っているんですが、ここのところがどうも日本の場合にはうまく活用されていないというのも実態だと思いますね。円高、原油高そして株安という状況の中で、じりじりと物価が今上がり始めていまして、同時に、地方の自治体は金がない、中央にどうしても集まる傾向があって、日本の社会の中で不均衡が非常に顕著になってきている。

 こういうことで、先ほど竹下先生も総裁候補の方に質問されていましたが、こういう複雑な、確かに解がないという話もありましたけれども、日銀としては、こういう状況の中では、やるべきことというのは、もしも三つ挙げるとすればどういうことが注意してやるべきことなのかということを教えていただきたいと思います。

西村参考人 もしかしたら三つよりもたくさんあるかと思いますが、もし、強いて三つということでありますと、まず最初に日本銀行として見ていなきゃいけないことは、今、足元の問題であります。

 先ほど、九十五円までいったというお話がございましたが、経済活動というのは、価格が、為替も一つの価格ですけれども、価格がゆっくりと動いている部分においては、対応は比較的可能で、かつ、それほど大きな、調整に必要なコストというのは少ないんです。今まで日本の為替というのはそういう動き、十年ぐらい前までは非常にボラティリティーが高かったんですが、最近非常にボラティリティーが低くなってきて、よい状況だったんですが、御案内のように、米国発のあのサブプライムの問題、それが金融不安という形になっておるということからいろいろな状況が生じている。これについては十分注意して、そして各国中銀と連携しながら対処しなきゃいけないというふうに考えております。

 それからもう一点は、日本銀行が持っている政策の、できることということですが、日本銀行は、基本的には、今、金利政策に、伝統的政策に戻りましたので、金利です。金利ということは、マクロの金利を一本として、最も望ましいという形に持っていきたいというふうに考えております。ただし、これだけばらつきが大きくなりますと、マクロの一本ではなかなか難しいということになります。

 その意味で、私は非常に重要だと思っているのは、日本銀行が持っている情報を集める能力というものだと思っています。日本銀行としましては、特に地方の支店をできるだけ活性化して、そこに情報がたまり、そしてその情報がうまく流れるように、情報がたまるだけではだめで、流れなきゃいけないわけですが、その流れを円滑にするように、組織も考え、そして職員の意識も今向上していっていると思います。と申し上げますと、例えばさくらレポートというのをこの間から、一年ぐらい前からですか、始めました。あのさくらレポートを読んでいただくとわかりますが、いかに地方の支店がいろいろと情報を集めているかということがわかります。

 ただ、必要なのは、情報を集めて中央に流すだけではなくて、中央からの情報を地方に流す、そして地方の中にある情報を地方間で流すということがやはり重要ですので、それまでにはまだいま一歩かなというふうに思っております。そういう意味での今後の精進というのは必要だというふうに思っています。

 第三点は、金融システム、今アメリカで起こっていることは、この金融システムに対するいろいろな不安が生じてきて、それが実体経済に大きな影響を及ぼすという形になってきております。この金融システムのかなめというのが、実は、やはり今でもこれは銀行なわけです、商業銀行であるわけです。商業銀行というかなめがしっかりしていないと、そこでリクイディティー、流動性が枯渇するといろいろな問題が生じるというのは皆様御案内のとおりだと思います。

 この商業銀行の最終的な流動性を見、そして問題が生じないように、常にうまく流動性が流れるようにするというのが日本銀行の役割であります。そういう意味をこれからもきちんと、これは中央銀行の最も中央銀行である使命ですが、この使命を守るというのが日本銀行の役割だと思います。

 最後の二つを両方あわせますと、情報を流し、そして流動性を流し、円滑にし、そして日本の経済の、企業が、企業というのは単に営利企業だけじゃなくて非営利企業も入れたものですが、それを入れて、それから地方自治体とか、そういう企業体を含めて、それがうまく発展していくというふうな土台をつくるというのが日本銀行の役割だというふうに考えております。

笹川委員長 それでは、時間が参りましたので、西村参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 参考人は退席していただいて結構です。

 これにて懇談を閉じます。

    午後四時二十七分懇談を終わる


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