衆議院

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第21号 平成20年4月8日(火曜日)

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平成二十年四月八日(火曜日)

    午前十一時一分開議

 出席委員

   委員長 笹川  堯君

   理事 小此木八郎君 理事 根本  匠君

   理事 吉田六左エ門君 理事 竹下  亘君

   理事 三ッ林隆志君 理事 金子 恭之君

   理事 川端 達夫君 理事 仙谷 由人君

   理事 石田 祝稔君

      井脇ノブ子君    浮島 敏男君

      大塚 高司君    奥野 信亮君

      亀岡 偉民君    清水清一朗君

      藤井 勇治君    御法川信英君

      若宮 健嗣君    大畠 章宏君

      中川 正春君    谷口 和史君

      佐々木憲昭君    保坂 展人君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議長           河野 洋平君

   副議長          横路 孝弘君

   事務総長         駒崎 義弘君

   参考人

   (日本銀行総裁候補者(日本銀行副総裁))     白川 方明君

   参考人

   (日本銀行副総裁候補者(一橋大学大学院商学研究科教授))         渡辺 博史君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     浮島 敏男君

  小川 淳也君     大畠 章宏君

  三日月大造君     中川 正春君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     あかま二郎君

  大畠 章宏君     小川 淳也君

  中川 正春君     三日月大造君

    ―――――――――――――

四月八日

 衆議院憲法審査会早期開会に関する請願(中山太郎君紹介)(第一三五八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件

 本会議における議案の趣旨説明聴取の件

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 まず、日本銀行総裁及び同副総裁任命につき同意を求めるの件についてでありますが、昨七日の理事会において、大野内閣官房副長官から、内閣として、日本銀行総裁に日本銀行副総裁白川方明君、同副総裁に一橋大学大学院商学研究科教授渡辺博史君をそれぞれ任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、日本銀行総裁及び同副総裁の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として日本銀行総裁候補者・日本銀行副総裁白川方明君、日本銀行副総裁候補者・一橋大学大学院商学研究科教授渡辺博史君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、白川参考人、渡辺参考人の順で所信をお述べいただきます。その後、懇談形式で、それぞれの参考人の所信に対する質疑を順次行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、白川参考人にお願いいたします。

白川参考人 白川でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、所信を述べる機会を与えていただき、光栄に存じます。

 私は、三月二十日付で日本銀行副総裁を拝命しましたが、就任後今日まで、総裁が欠員であるため、総裁代行としての職務を果たしてまいりました。この間、私が最も強く意識したことは、こうした異例の事態が続く中で、日本銀行の業務がいかなる意味でも滞ることのないように運営することでありました。

 今回、全く図らずも総裁候補としての御指名をいただき、事態の急激な変化に戸惑っています。総裁空席という事態は明らかに異例であり、そうした事態は早急に解消される必要があります。私としては、熟慮を重ねた結果、国会の場で自分なりに所信を申し上げ、その上で同意がいただけるのならば、総裁としての職務を果たすために全身全霊を傾けて努力をする覚悟を決め、その旨、総理に御返事を申し上げた次第です。

 日本経済は、現在、国際金融市場の動揺や世界経済の減速、エネルギー・原材料価格高騰による中小企業の収益環境の悪化や生活関連物資の値上がりなど、内外ともに多くのリスク要因を抱えています。先行きの日本の景気につきましては、当面減速するものの、その後は緩やかな成長を続けるという姿を相対的に蓋然性の高いケースとして想定しています。

 ただ、最大のリスク要因である国際金融市場の動揺について見ますと、米国では、一九三〇年代の大恐慌以来の深刻な金融市場の動揺が続いています。このような状況のもとで、日本銀行として重要なことは、予断を持つことなく、見通しの蓋然性と上下両方向のリスク要因を注意深く点検することであり、それに基づいて、必要かつ適切な政策を機動的に実施することであると思っています。

 昨年夏以降の国際金融市場の動揺とそれへの中央銀行の対応を見ていますと、中央銀行の本質的な機能が、流動性の適切な供給や配分を通じる金融市場、金融システムの安定維持であり、危機管理であることを改めて痛感します。幸い、日本の金融市場では現在までのところ混乱は生じておらず、相対的に安定を保っていますが、今後とも、市場機能を維持するために細心の注意が必要であると考えています。

 次に、現在の経済金融情勢への対応を離れ、金融政策運営に関する基本的な考え方について申し上げます。

 内外の通貨の歴史を振り返りますと、景気や財政、為替レートへの短期的な配慮が優先される結果、通貨の発行が過大となり、経済が混乱したことを示す事例には事欠きません。そのような経験を踏まえ、中央銀行という組織に対し、金融政策決定の権限を与え、持続的な物価安定の実現という目的に専念させるという考え方が生まれました。これが金融政策の独立性という考え方であり、中央銀行の行動を律する重要な原則であると理解しています。

 しかし、それと同時に、独立性が独善に陥ってはならないことも強く自覚しています。日本銀行としては、金融政策に関するみずからの判断の根拠を国民や市場参加者に対して丁寧にわかりやすく説明すること、すなわち、透明性を確保することが非常に大事であると考えています。私は、独立性と透明性という日本銀行に課せられた二つの重要な原則に基づいて行動することを肝に銘じています。

 金融政策の運営に当たっては、一方で、短期的な景気、物価動向に対して十分な注意を払う必要がありますが、他方で、金融政策の効果が経済全体に及ぶには一年から二年程度の長い時間がかかること、金融と実体経済の間には複雑な相互依存関係があることから、足元の動向だけでなく、中長期的なリスクについても十分な目配りをする必要があります。これは、従来より日本銀行がフォワードルッキングな金融政策という言葉で表現している考え方です。

 もとより、経済の先行きは常に不確実性に満ちており、中長期的なリスクを的確に認識することは容易ではありません。それだけに、予断を持つことなく、いつも謙虚な姿勢で幅広く情報収集に努め、その上で、日本銀行内に蓄積されている知識を最大限活用して、適切な政策決定を行うことが求められています。

 最後に、総裁という職務遂行に当たっての私自身の心構えを申し上げます。

 第一に、物価の安定と金融システムの安定という日本銀行に課せられた公的な使命の達成に向けて、責任を持って取り組みたいと考えています。その際、金融政策や金融システム、決済システムを初め日本銀行でのさまざまな業務の経験をベースに、専門家として誠実に仕事をしたいと思っています。

 第二に、日本銀行という、我が国にとって極めて重要な組織であり、また大きな組織のリーダーであることを十分自覚して仕事に取り組む覚悟です。市場や国民に対しては、日本銀行の政策運営の考え方をわかりやすく説明することに努力します。政策委員会の議長としては、メンバーの多様な意見に十分耳を傾けた上で、必要なリーダーシップを発揮し、政策委員会として適切な政策決定に到達できるように努力します。職員に対しては、モラールを高め、専門的能力が最大限発揮されるような職場づくりに取り組む考えです。

 第三に、各国の中央銀行との関係で、あるいはより広く国際金融社会において、人的な信頼関係を構築し、緊密な情報交換、意見交換を重ねることによって、日本経済、ひいては国際経済に対して貢献したいと願っています。

 私は、みずからが微力であることは十分認識していますが、仮に総裁に選任される場合には、この職務に求められる役割、責任を意識しながら、努力を重ねることによって、一歩でも二歩でも前に進むために全身全霊を傾けて職務に励む覚悟です。

 御清聴をありがとうございました。

笹川委員長 ありがとうございました。

 次に、渡辺参考人に所信を承るわけでありますが、先ほど理事会におきまして、昨日、政府に、三冊の著書があるということで著書の御提供をお願いいたしましたが、残念ながら、けさほどまで提供がございませんでした。そのことに関して御本人に先ほどお尋ねいたしましたら、政府から御本人には全く何の連絡もなかったということで、提出をしなかった責任は御本人にはありませんので、そのことをまず皆様方にお知りおきいただいて、お聞きをいただきたいと存じます。

 渡辺参考人、どうぞ。

渡辺参考人 おはようございます。渡辺でございます。よろしくお願いいたします。

 今、委員長からお話がありましたように、委員の方々に御迷惑をおかけしましたことをまずおわびさせていただきます。

 それでは、今御指示をいただきましたように、所信を述べさせていただきます。

 最近におけます世界的な資金の流れを見ますと、潤沢さを増しました資金が、金融資本市場という範疇を超えまして、原油等の資源市場にまで、その移動する範囲の外延を拡大しながら、高利回りを求めて、かつ瞬時に世界じゅうを移動するようになっております。

 また、新興市場国の貯蓄の拡大をも要因といたしまして資金が潤沢になった結果、それぞれの市場が同じ方向に動くようになり、正の相関というか共振性というものが強まってきております。この結果、リスクに対するヘッジが難しくなり、市場全体の振幅が増す方向に働いているわけであります。

 そうした中、米国のサブプライムローン問題に起因いたしまして、昨年夏以降、国際金融資本市場は大きく変動するようになり、ことしに入ってから、ますます調整の度合いを深めています。為替相場は約十二年ぶりに一ドル百円の水準を割り込み、原油価格の高騰も続いております。

 このような急激な市場の変動は、市場参加者の予見可能性を奪って対応力を損なわせるため、経済を一層減速させるおそれがあります。

 このように、サブプライムローン問題を背景とした金融資本市場の変動は、特に短期の金融市場の収縮を通じて、投資、消費の両面で米国の実体経済を減速させています。また、ともに振れるという意味での共振性が高まる中で、為替市場の変動や資源市場の需給が窮屈になることなどに伴う世界経済の下振れリスクが高まっております。

 我々が現在直面する課題に取り組むためには、切迫感というか時間の制約という感覚をきちんと持つ必要があります。そして、これへの対応を我が国が必ずしも適切に行えなかったことが、長年にわたって世界経済の重要な担い手であった日本が、ここ数年、ややその存在感を低下させている背景であります。

 今や、米国経済の景気後退に伴い、日本経済においても減速感が高まっています。国内要因であった改正建築基準法施行の影響は収束しつつありますが、国際的なエネルギー価格や穀物価格の高騰は続いており、中小企業等や家計に悪影響が及ぶことが懸念されます。

 また、中長期的には、人口減少という問題がございます。これは、経済全体の生産性などに大きく影響を与えるとともに、相対的に低い金利という環境の中でどのように持続的な年金経理を仕組んでいくかという課題にもつながるものでございます。一億人という大きな人口を抱える国において急速な高齢化が進行するのは、日本を嚆矢といたします。我々には、この難しい問題に取り組む道筋を全世界に対して示すことが期待されております。

 以上申し上げたことは、この四月から始まりました一橋大学大学院における学生教育においても若い人々に訴えようと考えていたものでもあります。問題意識を持ち、みずからそれへの対応を設計し、かつ、みずからの汗を流して実行していく必要のある、また、彼らの世代そのものにとっても大きな課題であるからであります。

 このように、世界経済そして日本経済が短期的にも中長期的にも重大な局面を迎える中で、日本銀行の金融政策のかじ取りはますます重要となっております。仮に副総裁を拝命した場合には、金融政策の理念、すなわち、物価安定を通じた経済の発展を実現するため、力を尽くして総裁をしっかりと支えてまいりたいと考えております。

 その際、国民の信頼にこたえられるような適切な判断を自主独立の立場で下していくためには、国際的な経済情勢の不確実性が高まっている時期であるだけに、内外の経済情勢や市場動向について幅広く情報収集するとともに、多くのリスク要因について、予断を持つことなく、さまざまな角度から丹念に分析するよう努めたいと考えております。

 私は、昨年七月に退官するまでの三十五年間、公務員として勤めてまいりましたが、この期間中の最後の約十年は、財務省国際局あるいは財務官の職にあって、国際金融市場の発展や安定のために尽力してまいりました。

 また、財務省を退官した後も、国際金融情報センター顧問あるいはハーバード大学シニア・ビジティング・フェローとして、引き続き、世界経済や国際金融市場の抱えている課題に取り組み、それぞれ関係の方々と意見交換をし、情報の分析に努めてまいりました。その関係者には、先進国のみならず、近時の世界経済の重要な成長点となっておりますアジアの方々も含んでおります。

 この面からも、我が国経済の持続的な成長に対して、いささかなりとも貢献できればと考えております。

 また、金融政策における中央銀行の独立性と透明性は、金融政策の信認を得る上で極めて重要であると考えております。市場との対話を通じて説明責任を果たすよう努め、金融政策の独立性と透明性を確保し、国民の皆様に御信認いただけるよう努力してまいります。

 信用秩序の維持、すなわち金融システムの安定を図ることも日本銀行の大きな使命であります。

 グローバル化した金融市場において、中央銀行間の連携協力は極めて重要です。金融市場における緊張感が高まる中、日本銀行は、世界で最もすぐれたノウハウや知識を持つ中央銀行として、国際金融市場の安定化に貢献することが重要であると考えております。

 また、金融システムの安定には、内外の金融市場や金融機関の実態をしっかりと把握することが重要です。さらに、銀行券の流通や日銀ネットの運行など、資金決済の円滑な確保も中央銀行としての重要な業務であります。

 こうした中央銀行としてのさまざまな業務についても、総裁をしっかりと補佐してまいりたいと考えております。

 私は、公務員として奉職以来、いかなる職にあるときも、与えられた職責を全うするよう最善を尽くしてまいりました。日本経済と世界経済が極めて難しい局面にある中で、日本銀行副総裁という重責を担う機会を与えていただくこととなれば、日本銀行法の理念に忠実に沿い、持てる力をすべて注いで職務に取り組みたいと考えております。

 御清聴ありがとうございました。

笹川委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 理事会申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席願います。

 また、渡辺参考人は、お呼びいたしますまで別室にてお待ちいただきますようお願いいたします。

 これより懇談に入ります。

    〔午前十一時十八分懇談に入る〕

    〔午後零時三十一分懇談を終わる〕

笹川委員長 これにて懇談を閉じます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいまの懇談の記録は、本日の会議録の末尾に参照掲載するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

    〔懇談の記録は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

笹川委員長 以上をもちまして日本銀行総裁及び同副総裁の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、趣旨説明を聴取する議案の件についてでありますが、内閣提出の介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案は、本日の本会議において趣旨の説明を聴取し、これに対する質疑を行うことに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、本法律案の趣旨説明は、舛添厚生労働大臣が行います。

 本法律案の趣旨説明に対し、自由民主党の松野博一君、民主党・無所属クラブの菊田真紀子君から、それぞれ質疑の通告があります。

 質疑時間は、松野博一君は十分以内、菊田真紀子君は十五分以内とするに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

 なお、質疑者の要求大臣は、お手元の印刷物のとおりであります。

    ―――――――――――――

 一、趣旨説明を聴取する議案の件

  介護保険法及び老人福祉法の一部を改正する法律案(内閣提出)

   趣旨説明 厚生労働大臣 舛添 要一君

   質疑通告     時 間  要求大臣

 松野 博一君(自民)  十分以内 厚労

 菊田真紀子君(民主) 十五分以内 厚労

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。

駒崎事務総長 まず最初に、日程第一につき、下村法務委員長の報告がございまして、全会一致であります。

 次に、日程第二及び第三につき、茂木厚生労働委員長の報告がございます。両案を一括して採決いたしまして、全会一致であります。

 次に、介護保険法及び老人福祉法の一部改正案につきまして、舛添厚生労働大臣から趣旨の説明がございます。これに対しまして、二人の方々からそれぞれ質疑が行われます。

 本日の議事は、以上でございます。

    ―――――――――――――

 議事日程 第九号

  平成二十年四月八日

    午後一時開議

 第一 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律及び総合法律支援法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 戦没者の父母等に対する特別給付金支給法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第三 駐留軍関係離職者等臨時措置法及び国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

笹川委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時五十分予鈴、午後一時から開会いたします。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、次回の本会議の件についてでありますが、次回の本会議は、明九日水曜日午後零時三十分から開会することといたします。

 また、同日午前十一時理事会、正午から委員会を開会いたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十三分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 懇談の記録

    午前十一時十八分懇談に入る

笹川委員長 これより懇談に入ります。

 なお、懇談は、理事会申し合わせに基づき、速記を付し、その記録を公表することになっておりますので、御了承願います。

 これより白川参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内ずつ質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 なお、御発言は着席のままで結構です。

 竹下亘君。

竹下委員 自民党の竹下亘でございます。

 ほんの三週間前にこの席でお話を伺ったばかりでございますが、副総裁から総裁になられる、これは会社でいいますと、平社員と副社長の差よりも副社長と社長の差の方が大きいんだということはよく言われておりますが、今、どんな実感で受けとめていらっしゃいますか。これが第一点でございます。

 それから、日本銀行というのは、ほかの世界の中央銀行と違いまして、支店網をしっかり持っておる。例えば日銀短観、直接聞き取りによる経済統計手法を持っておる中央銀行、これは世界で唯一の機関であります。これをもっともっと前面に出して生かしていただきたいなという思いがありますが、この短観あるいは経済統計についてどのようなお考えをお持ちなのかお伺いをしたい。これが第二点であります。

 それから、今、国内よりもむしろ国際金融の世界あるいは国際金融市場の世界の動きの方が非常に速い、あるいは動揺しておるという状況にあります。通貨マフィアという言葉がございますが、国際金融に通暁した数人あるいは十数人の皆さん方がそれぞれの国益を前面に出して闘うと同時に、しかし最後は協調をするというか足並みをそろえて、金融秩序の維持のためにどこが譲れるか、どこが譲れないかというぎりぎりの話をする場が通貨マフィアたちの会議であり、それは一つは、この十一日にも予定をされております先進七カ国の蔵相・中央銀行総裁会議。それだけではなくて、電話でのやりとりも含めまして、通貨マフィアたちの動きというのが非常に大事な局面を今迎えておるというふうに私は感じておるわけであります。

 そういう中で、白川さんは国際社会の中でどのような主張、今、日本の金融市場は世界の中では安定しておる方ではございますが、世界の金融秩序を安定させるために基本的にどういうことを考えて臨んでいこう、総裁として日本を引っ張っていこうと考えていらっしゃるか。

 この三点についてお伺いをさせていただきます。

白川参考人 お答えいたします。

 先ほど所信表明で申し上げましたけれども、この数週間の変化は、私は、率直に言って、非常に戸惑っているということでございます。三週間前に副総裁の辞令を拝命いたしまして、それ以来、総裁が不在という事態の中で、日本の経済、世界の経済に対していかなる意味でも迷惑をかけることができない、そのために、自分自身が全霊を込めて仕事をやるということに専心してまいりました。

 その間、総裁が不在ということについて副総裁としてどういうふうに思うのかということをいろいろな場で尋ねられました。私としては、この現在の状態は異例の状態である、これをできるだけ早く解消してほしいということを繰り返し申してまいりました。

 今回、総裁の候補としての御指名をいただいて、私自身は当惑しているわけですけれども、しかし、総裁がずっと空白であるというのは、これはやはり異例でありまして、日本の経済、金融だけじゃなくて、世界の経済、金融に対しても潜在的にいろいろなリスク要因を抱えてしまうというふうに思いました。

 一方、私自身、長い間日本銀行に勤務しまして、中央銀行の仕事の重要性というのは、自分自身、非常に実感しております。そのことはまた、多くの人に言ってきた。その人間が、今回政府からこういう御提案をいただいたときに私自身が逃げるということは、これは許されないというふうに思いました。自分自身の非力は十分認識した上で、最大限ここは頑張る責務があるというふうに思って、お引き受けした次第でございます。

 二つ目の、短観あるいは経済統計一般でございますけれども、議員御指摘のとおり、短観というのは世界に誇る統計でございます。私自身、地方の勤務、大分支店の支店長を勤務いたしましたけれども、そのときに感じましたことは、一方でこの短観もそうですし、それから地域の経済界、これは必ずしも地域の有力企業だけでなくて、かなり小さな企業も含めていろいろな経営者の方と話をする機会がございました。その結果、私自身は、本店に長く勤務しましたけれども、本店だけでは得られないいろいろな感覚、知識というものをそこで何がしか身につけたような気がいたします。そういう意味で、私としましては、短観ももちろんそうですけれども、経済のいろいろな接点を持つ努力をかなり意識的にしないといけないという感じを強く持っております。

 それで、統計プロパーについて聞きますと、現在、経済が大きく変化していまして、従来の統計がうまく動きを捕捉できないという事態が生じております。例えば、今御指摘の短観ですけれども、これは基本的に単体ベースでとらえております。しかし今、企業は世界的に連結ベースでやっておりますので、少なくとも大企業につきまして言うと、これは一方で、連結の方が望ましいという面もある。しかし、連結でいきますと、これは日本の経済でなくて世界の経済をとらえるという側面もありまして、その統計の設計がなかなか難しい面はございます。しかし、経済の環境の変化に合わせて統計をしっかり見直していくのは日本銀行の大事な仕事であるというふうに認識しています。

 それから、通貨マフィアといいますか、そういう世界の中でどのような構えで日本の主張をしていくのかということであります。

 現在のこの局面でのお話を先にさせていただきますと、私、三つあると思います。

 一つは、マクロ経済政策の面ですけれども、この面では、各国が全く同じ政策をとるということではなくて、それぞれの国の状況に応じて適切な金融政策をとっていくという意味で、各国が責任を持って金融政策を運営するということが大事であるというふうに考えております。

 それから二つ目は、現在起きているこの金融市場の混乱に対する対応でございます。日本のバブル以降の経験が示しますように、金融市場が動揺しますと、これは経済に非常に大きな影響が出ます。その意味で、まずは、いろいろな議論はありますけれども、金融市場の安定を確保するということが中央銀行の最大の責務だというふうに私は思っています。と同時に、民間金融機関に対しては、ディスクロージャーを進めて必要な自己資本の調達を進めていくことを促していくということが大事であるというふうに考えています。

 三つ目は、少し長い対応でございますけれども、今後こういうことができるだけ起きないようにするために、金融機関の規律をつけるためのいろいろな制度の設計、この面で改めていろいろな議論をする必要があると思います。

 この三つを、G7を初めとしていろいろな場で主張していく必要があるというふうに思っています。

 現下の問題を離れて一般的に申し上げますと、国際金融も、最後は人と人の関係、トップの人と人の関係がある。そういう意味で、私自身は、そういう海外の中央銀行の首脳の方と個人的な信頼関係をつくって、それぞれの国の経済、金融で起きていることについてビビッドな感覚を持って、その上で責任を持って政策に臨んでいきたいというふうに考えております。

笹川委員長 仙谷由人君。

仙谷委員 民主党の仙谷でございます。

 総裁候補におなりになられましたので、前回と違ってちょっと、ガバナンスといいましょうか、日銀の独立性についてのお考え方を聞きたいわけでございます。

 といいますのは、十年前までは、法制上は余り日銀というのは独立していなかったといいましょうか、要するに大蔵省の管理監督のもとにあった、こういうふうに言われておりますし、法制上もそうだったと思いますが、いろいろな議論があって、当時の大蔵省サイドからの大変強い抵抗のもとでここまで来たということなんだろうと思います。

 ただ、私が現時点でもまだ法制上不十分だと思っておるのは、日銀法の二十三条の四項に、「理事及び参与は、委員会の推薦に基づいて、大蔵大臣が任命する。」こういうことになっておりまして、理事及び参与、つまり会社で言えば執行役員、理事、これについては日銀総裁ではなく大蔵大臣に任命権が残されているというまことに不可思議なことになっておるわけであります。監事あるいは審議委員というのは内閣任命ということに変わったわけでありますが、理事及び参与だけが大蔵大臣の任命。むしろ、こここそ日銀総裁の任命権だというふうに私は思うわけでありますが、これが残っておるわけであります。

 現に、この間、理事にどういう人が任命されたか、監事にどういう人が任命されたかというのを追っていきますと、あたかも、理事は財務省の局長の次の指定ポスト、監事はもうワンランクか半ランク下と言われておる方々の指定ポストがずっと切れ目なく続いておるんですね。

 私は、このことはやはり、日銀総裁が委員会の議論を経て自由裁量のもとに任命できるように変えた方がいいんじゃないか、我々の仕事でありますが、そういうことを考えておるのでありますが、その点について所見をお伺いしたい。

 もう一つは、反対に、財務省設置法の四条の一項五十九号に、財務省の所掌事務として「日本銀行の業務及び組織の適正な運営の確保に関すること。」というのが残っているんですね。こうなりますと、例えば今度の人事問題についても、どうも財務省が、総裁、副総裁の人事についても、人事案をつくるのはこの規定に基づいてむしろ財務省の権限と責任であると言わんばかりの感じが何となく漏れてくる。つまり、なぜこんなものが残っているのかということについて私は不可思議に思っておるわけでありますが、この点についての御所見をお伺いしたいと思います。

 もう一点は、やはり先般もお伺いしましたけれども、量的緩和あるいは低金利政策、仕方がなかったんだというお話が随分いろいろな候補者からあったわけですが、そうなりますと、現在も続けていらっしゃること、そして、先ほどから国際金融あるいは為替レート、通貨価値というふうに考えますと、バブルの実質実効レートが一番高いときから見ますと、日本の円が約半分ぐらいになっていたわけですね。これが国力の問題とか成長の問題と関係しておるのではないかと私は疑っておるんですが、この実質実効レートというものをこれからの政策展開でどう考えていくのか。発券高の依然として上昇傾向というようなこととも絡めて、御所見をお伺いできればと思います。

 以上であります。

白川参考人 お答えいたします。

 最初の理事、参与の任命プロセスに関する御質問でございますけれども、これは、中央銀行の独立性あるいは中央銀行のガバナンスをめぐる基本的な論点の一つだというふうに思っております。

 十年前の日銀法改正のときに、日銀の独立性、ガバナンスについて議論が随分なされましたけれども、しかし、これは私の個人の見解でございますけれども、まだまだ十分なガバナンスをめぐる議論が煮詰まっていない面もやはりあったなというのが、現在、率直な感じでございます。

 ただ、これはどの中央銀行も実はどのガバナンス制度がいいのかについて模索をしているというのが、これまた率直な事実の評価だというふうに思います。アメリカ、欧州それから英国、それぞれやはりガバナンス制度を持っておりますけれども、私どもの目から見てやはりそれぞれ問題も抱えているなという気がいたします。

 そういう意味で、私は、十年前の日銀法改正でもうこの問題は終わったというふうにはもちろん考えていません。そういう意味で、今後とも、日本の中央銀行制度、そのために一番ふさわしいガバナンス制度を考えていくということは、これは私は必要だというふうに考えております。

 理事、参与の任命でございますけれども、これは現在、御指摘のとおり、政策委員会の推薦を経て大蔵大臣が決めるということになっております。これは日本銀行法で定めている規定でございます。私としましては、その規定の中で一番そのポストにふさわしい人を推薦し、任命していただくということが大事だというふうに考えています。

 理事のメンバー構成につきましても、これは固定的に考えていくということではなくて、日本銀行が政策、業務を遂行する上で一番ふさわしい人を政策委員会自身がまず推薦をするという責務を負っていると思います。政策委員会メンバーの推薦なしに全然異なる人を大臣が任命する、これは難しいわけであります。そういう意味で、これはまず日本銀行自身の推薦の責任だというふうに考えていまして、その制度の中で、私は、最大限努力をまずしていくというのが私の義務だというふうに考えております。

 それから、二番目の財務省設置法の話でございます。

 財務省設置法自体については私詳しくは存じ上げませんけれども、私が理解しているところによりますと、これは、日銀の独立性を議論するときに、政府がいろいろな形で関与する結果として金融政策の運営がゆがめられること、これは決してあってはならないと思う。したがって、その面ではしっかり日銀の独立性を担保する。しかし一方で、日本銀行も組織でありますから、組織自体が法律に従って行動をしないということもあり得る。そういう意味で、適法性という観点でのチェックは、これは第三者がする必要がある。その仕組みを日本の統治機構の中でこういう形で解決をしたというのが私の理解だというふうに考えております。

 この点も、日本銀行制度全体のガバナンス制度の中で、もちろん議論の対象になり得ると思いますけれども、現在はそういうことであるというふうに理解しております。あくまでも、これは政策ではなくて、適法性という面からの監督であるというふうに理解しております。

 それから、三番目の実質実効為替レートをどういうふうに見ているかという話でございます。

 議員御指摘のとおり、実質実効為替レートというのは非常に重要な概念であります。実質実効ということの意味は、釈迦に説法で恐縮でございますけれども、実質というのは、単に名目の為替レートだけでなくて、内外の物価上昇率の格差を調整して考えようということであります。したがって、例えば、この近年、日本の物価上昇率は低かったわけですけれども、このことは、実質ベースで見て円の為替が減価をしているということであります。これは、どうしても我々は表面の為替を見がちですけれども、実質ベースで見るということは大事なことであります。

 一方、実効の方は、これは輸出の貿易金額でもって加重平均をして見ていこうということでありまして、現在、確かに円はドルに対しては強くなっていますけれども、しかし、ユーロに対しては決して強くなっているわけではございません。貿易構造も随分変わってきていますから、円・ドルだけに注目した議論というのは明らかに不適切になっているというふうに思います。そういう意味で、実質実効為替レートというのは非常に大事な概念であると思います。

 その実質実効為替レートで見ますと、プラザ合意当時の水準にまで実は円安が進行していて、足元、これが若干修正をされているということでございます。そういう意味で、表面の為替レート、それも円・ドルだけに着目して、ある固定的なレート運営をしていくというふうになりますと、これは、経済が最終的には混乱をするというふうに思っております。

 以上でございます。

笹川委員長 石田祝稔君。

石田(祝)委員 公明党の石田祝稔です。白川総裁候補にお伺いをいたしたいと思います。

 まず、今回、国会の同意が得られましたら、十一日からのG7の財務相・中央銀行総裁会議に出席をしていただくようになるわけですけれども、いろいろとマスコミ報道等も見ておりますと、そのときに各国は、日本の金融危機から教訓を得たい、こう思っているのではないか。そして、当時の日銀の実務担当であった白川総裁候補にいろいろとお聞きをしたいことがあるのではないか。そういう場合に、世界経済の安定という観点からどういうアドバイスをお考えになっているのか。

 二点目は、現在の日本の景気、経済の現状をどう認識されておって、どういうふうに対処をこれからされるおつもりか、これが二点目であります。

 三点目は、これは決意をお伺いしたいんですが、今回、総裁候補、副総裁候補それぞれ同意が得られたら、五十歳代のトリオ、こうなるわけですね。ある意味でいえば大変若い総裁、副総裁のトリオができるわけです。総裁が一番の責任者でありますが、鉄のトライアングルでぜひ頑張っていただきたいんですが、その御決意をお伺いいたしたいと思います。

 以上、三点であります。

白川参考人 お答えします。

 最初に、日本の金融危機から学ぶ教訓ということであります。

 これは、どの時点から議論するかにもよりますけれども、現に危機が起きてしまったというところからまず議論をいたしますと、第一に重要なことは、流動性の危機、流動性に原因を発した金融システムの危機を絶対に回避をするということが大事だというふうに思います。

 振り返ってみますと、九七年以降、やはり一番大きかったのは、九七年の三洋証券のコール市場におけるデフォルト、このインパクトが私は非常に大きかったというふうに思います。そういう意味で、金融市場の安定を保つということがまず大事だというふうに思います。

 第二点は、しかし、流動性は中央銀行がなし得る最大の貢献ではありますけれども、このこと自体で問題が解決するわけではないことも明らかであります。問題の本質は、資産価額が下落をして資本が不足をしてしまったという事実でございます。そのことがまたさらにいろいろなルートを通じて実体経済への影響を与え、資本が減っていくという悪循環になるわけですから、問題は、資本をどうやって補てんするかということであります。これは、もちろん民間ベースの努力が最優先いたしますけれども、その上で、もし資本が不足したような場合には、公的な対応もあり得る話であります。

 いずれにせよ、まず損失の額を確定し、最終的に資本を何らかの形で補てんしていく努力を促していくというのが二つ目であります。

 三つ目は、先ほど危機が起きた後の対応を申し上げましたけれども、今度は危機が起こる前の話でございます。

 過去二十年間、内外の経済を見ますと、いろいろな形でバブル的な現象が、以前に比べると発生の頻度がふえております。日本のバブルもそうですし、アジア危機もそうですし、LTCM、ITバブル、それから今回の住宅バブルという形で、明らかにそれ以前の二十年に比べますとこの二十年はバブルがふえております。

 この間、なぜバブルが発生したかということを考えた場合に、これは私は金融政策だけで発生したというふうには思いませんけれども、しかし、長期間にわたって低金利が続くという期待が生まれたことがバブルを生む一つの原因になったことは間違いないというふうに思います。

 そういう意味で、金融政策の運営というのは、これは長期的に物価の安定を目指していくわけですけれども、しかし、余りにも短期の、足元の状況に左右されますと、結果として経済の大きな変動を引き起こす可能性もある。そういう意味で、先々のリスクを見据えた金融政策、これは時としてその時点では不人気ではありますけれども、そのことも必要であるというふうに思います。

 この三つが、私自身が日本の経験、それからその後の海外の経験も踏まえて引き出している教訓であります。そうしたことをいろいろな場で申し上げたいというふうに思っております。

 それから、日本の景気でございますけれども、去年は建築基準法の改正に伴う住宅投資の減少、これから景気は減速傾向になりましたけれども、足元はそれ以上に、エネルギー価格あるいは食料品価格の上昇、こうしたものがいろいろな形で日本の経済に対して今マイナス方向に作用しているというふうに思います。景気はそういう意味では減速をしているというふうに思います。この点は、今般の短観にも明確に出ているという感じがいたしますし、それから、設備投資の数字を見ましても、足元は少し弱目のスタートになっているなという感じがいたします。

 ただ、一方で、今回足元の状況を見ますと、幸いなことに、設備それから雇用、在庫の面で過剰を抱えていないというのは、これは非常に大きな違いであります。過去の景気後退はすべて、そういう過剰があったところに負のショックが加わって景気を下押ししていくということでございますけれども、今回は、そういう意味での過剰は、現状は観察されておりません。

 いろいろな不確定要因はございますから、注意しながら景気を見ていく必要がありますけれども、標準的なシナリオとしては、見通しとしては緩やかに成長をしていく、足元は減速しているけれども、少し長い目で見ると緩やかに成長していくということであるというふうに思っています。

 ただ、繰り返しになりますけれども、不確定要因について十分目を配る必要があるというふうに考えています。

 そういう中で、金融政策ですけれども、現状、短期金利は〇・五でございます。物価上昇率を差っ引きますと、実質ベースでは今ゼロという感じでございます、これは数字のとり方で若干変わってまいりますけれども。それと経済の潜在的な力を比較してみますと、今潜在的な力は、成長率は多分一%台の半ばから後半というような感じだろうと思いますけれども、足元の金融政策が景気に対してどういうふうな作用を及ぼしているかという面からいきますと、これはそういう力を発揮している。

 ただ、これも、この後、実はきょう、あした、また決定会合がございますけれども、先ほど申し上げたような景気情勢も含めて、慎重に、入念に点検をしていきたいというふうに考えています。

 それから三番目の、鉄のトライアングルということでございますけれども、私自身五十八ということで、日本の重要な政策形成を担っている方、あるいは財界の方、いろいろな方と比べまして年齢的には若いということももちろん十分に認識していますし、何よりも、つい一カ月前までは大学の教師をしていまして、若い人に対して教育をする、今度は全然違う世界に入りまして仕事をやっていく、そういう意味で当惑がないかというと、これは明らかに当惑はございます。

 ただ、若さだけがもちろんすべてではございませんけれども、この若さを、それは弱さでもありますけれども、これを強さにして、いろいろな改革に取り組んでいきたい。もう一回、いろいろなことを自分の目で見て実現していきたい。若いころから日本銀行の仕事に対していろいろな思いはございましたけれども、それを、たまたまこういうことでもし御指名をいただくことになりましたら、その夢といいますか思いを実現すべく頑張りたいというふうに思っております。

笹川委員長 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、投機資金についてどう対応するか、お考えを聞きたいと思います。

 最近、物価が非常に急上昇して国民生活を直撃しております。その背景に、実需から離れた国際的な投機活動があると思うんです。その背景に、サブプライム問題、低金利、世界的な過剰流動性などがあって、短期的な利ざやをねらったヘッジファンドなどの投機資金が国際的な原油市場あるいは穀物市場などに流入する、こういう構造になっております。

 したがって、この巨大な投機資金、その国際経済、金融市場への影響、これをどのように把握しておられるか。また、その投機資金について国際的な規制の強化、これも議論されていると思いますが、間接的な規制には限界があるので、税金などのような直接的な規制が必要ではないかという議論もありますが、どのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

 もう一つは、総裁となりますと、大変大きな責任と決断力が求められると思います。とりわけ、日本の通貨・金融政策の対外的な自律性、自主性というのが求められると思うんです。国内的には、財務当局からの一定の独立性というのが求められると思います。副総裁の場合よりもそのことが強く求められると思いますが、その決意はいかがでしょうか。

 例えば、政府から、国債の大量増発を背景とした量的緩和への圧力とか、あるいは事実上の国債大量引き受けにつながるような要求を受けた場合、どのようなスタンスで対応されるか、この点をお聞きしたいと思います。

 以上です。

白川参考人 お答えします。

 まず最初の投機資金への対応でございますけれども、現在、国際商品市況は大変上がっております。この背景は、一つは、世界的に先行きのインフレ傾向を懸念するという動きでございます。

 二つ目は、その背景にある要因でございますけれども、新興国が非常に成長していく、その結果、原材料あるいは食料品に対する需要が長期的にふえていくということを見越しての物価の上昇でございます。

 三つ目は、これは多少テクニカルな要因でございますけれども、今、証券化商品が非常に複雑になって、その結果、そのリスクがわからないためにこれをみんな売っているわけですね。そうすると、比較的簡単な商品は何なのかといいますと、これは国際商品で、非常に構造が単純であります。したがって、こっちに資金が向かっているということだというふうに理解しています。そういう意味で、投機資金がこういう国際商品に向かっているというのはそのとおりでございます。

 それでは、これをどうするか、どうやって把握をするかということでありますけれども、まず、把握の面でいきますと、世界のいろいろなファンドの動きを中央銀行自身がつぶさに理解をする、把握するというのは、これはなかなか難しくなっております。

 と申しますのは、まず、余りにも多くの主体がいるということもありますけれども、これは、中央銀行がある主体から、おまえのすべてのポジションを、財産を明らかにしろということは、逆に言いますと、それに伴う義務というものが発生するわけであります。つまり、規制をしていくということになってくるわけであります。そうしますと、今度は逆に、問題が起きたときにそのファンドを、規制の裏腹は、いざという場合に救済をするということになってきやすい面があって、これは、情報をとればとるほど、実はそういう潜在的な保護の範囲を拡大してしまうという問題がございます。ここはやはり市場の活力を使った方がいいという面はございます。

 そういう意味で、中央銀行自身が直接的に強制的に情報を集めるというのは、基本的にはやはり銀行それから証券会社というところにして、その外縁部につきましては間接的に情報を集めるというアプローチの方が結果として望ましいだろうという判断をしております。

 今、各国の中央銀行、監督当局が行っていますことは、与信を行う銀行に対して、ファンドに対してどういうふうに与信をしているのかということについて、従来よりかは情報を集めるようにしております。そういう間接的なアプローチをとっておりますけれども、私としては、そういう間接的なアプローチの方が、トータルで考えた場合には望ましいのではないかというふうに思っております。

 それから、税金を使ってはどうかということであります。

 これは、三十年前ぐらいに、アメリカで有名なトービンという学者が、税金を課してはどうか、トービン・タックスということを提案いたしました。

 しかし、これは、今もそうですけれども、物すごい勢いで先々商品が上がっていくというふうに投機家が思ったときに、仮に税金を五%かけても一〇%かけても、やはりそれ自体としてその投機的な動きを抑えるだけの十分な力はない。本当に熱狂的にこの商品が上がると思った人に対しては、税金というのは、これはしょせんわずかなものであります。もし本当に税金でこの投機資金を全部つぶしてしまおうと思いますと、これはもうとてつもなく高い税金をかける、そうすると、今度は経済自体が破壊されてしまうというジレンマに逢着いたします。

 そういう意味で、私は、税金というアプローチはなかなかワークしにくいんじゃないか、それよりか、情報をできるだけ開示していく、これは直接の開示もありますし間接の開示もありますけれども、そういうことを通して全体をコントロールしていくという方が望ましいのではないかというふうに考えております。

 それから、三番目の、財政から圧力が加わったときの覚悟いかんということであります。

 これは副総裁のときもそうでございましたけれども、改めて日本銀行法の規定を読み返しますと、この規定というのは非常に重たいという感じがいたします。物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということが目的としてうたわれております。それから、決済の円滑な運行を確保して金融システムの安定を確保するということが掲げられております。

 日本銀行の政策は一人がやるわけではなくて、もちろん政策委員会で最終的に決定いたしますけれども、私自身が副総裁あるいは総裁という立場で一票を投じるときに、私自身が何によって評価をされるのかといいますと、この一点において評価されるわけであります。しかも、その評価というのは、その時点の評価ではなくて、少し長い時間を経て、この結果日本経済がどういうふうになったか、その一点において私は評価されるという感じがいたします。

 私が日本銀行に入りましたのは偶然的な事情で入りましたけれども、あるときから、中央銀行の仕事というのは非常におもしろいし、奥が深いし、大事である、そういうふうに思って仕事をやってまいりました。それだけに、自分自身が今度こういう立場になって、その目的、使命を果たせなかった場合、自分自身のプロフェッショナルといいますか職業人としての誇りというものが失われるという気がいたします。

 そういう意味で、私自身、政府からのいろいろな御意見、これは当然、日銀法に定めた規定に従いまして対応する方針でございます。つまり、日本銀行法の第四条は、「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」というふうに規定しております。この規定は一方で十分に受けとめ、他方で、最終的に中央銀行の金融政策の目的である物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということに、最後はこの原則に従って判断をしていくという覚悟でございます。

笹川委員長 保坂展人君。

保坂(展)委員 社民党の保坂展人です。

 バブル崩壊後の超低金利で三百四兆円もの資産が家計から消失し、その影響を一番受けたのが高齢者、年金生活者だろうと思います。

 四月一日から後期高齢者医療制度が始まって、やがて保険料も年金から天引きされる、その後、住民税、既に介護保険料と。私たち街頭に立っておりますと、この七十五歳以上という方たちから、これ以上天引きされたら生きていけない、とらの子の預金を食いつぶしても限りがある、こういう怨嗟の声を聞くわけですけれども、今後の日本銀行の政策決定において、どのような方針と配慮が必要だとお考えになっているか、これが一点です。

 二点目は、その年金にかかわって、公的年金百六十兆円の積立金、共済も合わせれば二百兆円を大きく超える積立金の運用について、三分の一くらいはハイリスク・ハイリターンのアクティブ運用があっていいんじゃないかというような声が政府部内から一部聞こえてきていることに私はちょっと危惧を感じているわけです。

 国が預かる資金の中で最も神聖不可侵の積立金は、リスクを極力排除して国民への支払い義務に備えるべきだと。各国共通の原則かと思いますが、この点についてどうお考えになっているか。

 三点目ですが、サブプライムローンの破綻が実体経済に与える影響の評価について。

 半年前、財務省筋の関係者の中で、この問題を余り深刻に過大評価すべきではないし、アメリカ経済に与える影響は極めて限定的なものではないか、また、日本はサブプライム関連商品にほとんど手を出していないので日本の金融システムあるいは経済に深刻な影響を与えるようなことはないというふうに述べていた方もいらっしゃいましたが、結果としてこれは甘い認識だったのではないか。

 白川総裁候補が、昨年秋の時点、半年前ということになりますが、どのようにサブプライム問題を見ておられたのか。今の時点で何かできることがさかのぼってあったとしたら、お答え願いたい。

 この三点でございます。

白川参考人 お答えします。

 金融政策にはいろいろな側面がございますけれども、最も中心的な内容が金利の変更であります。金利を上げる場合でも下げる場合でも、これは、債権者と債務者、あるいは輸出企業と輸入企業によって、直接的な影響は全く正反対になってまいります。

 私自身、金融政策運営に携わるという仕事を長くやっていまして、いつも肝に銘じていますことは、直接的な影響だけに着目しますと、これは申し上げたようにあらゆることに影響を与えますので、最後、中央銀行が政策を判断する場合には、金融政策が物価安定のもとでの持続的な成長に貢献をする、その一点に照らして判断をしないといけないというふうに思っております。

 その点の判断の軸がぶれますと、日本銀行の政策に対する信頼はどの人からも失われてしまう。確かに短期的には痛みはあるけれども、しかし、日本銀行は、長期的に経済が持続的に発展するためにやっているんだと、その点において疑念をいただかないような政策をする、これが一番大事だというふうに思っています。

 ただ、それと同時に、その間、もちろんその影響を受ける人が、これはプラスにもマイナスにもあるわけですから、そのことを十分理解する理解力と感性を持って、しかし最終的には、先ほど申し上げた点に即して判断するということを肝に銘じたいというふうに考えております。

 それから、公的年金の運用の問題でございます。

 私自身、公的年金の専門家ではございませんけれども、公的年金の特色というのは、長期的な資金を国民から預かっているということだと思います。長期的な資金は、その特性として、長期的に考えてリスクを勘案した上で一番リターンの高い投資を行えるという特質を持った資金だというふうに思います。

 短期的な資金ですと、長期的に幾らプラスであっても、短期的に実現するかもしれない損失を恐れてリスクをとりませんから。そういう意味で、長期の資金であれば、その分、長期的なリスクをとってリターンを高めていくということは、一般論として望ましいというふうに考えています。

 その上で、アクティブ運用の是非でございますけれども、年金の運用は、アクティブ運用それからパッシブ運用、両方あると思います。アクティブ運用は、私自身の考えですと、これは年金には必ずしも向かないなという気がします。ただ、一方で、専門家はベンチマークという言葉を使っていますけれども、標準的な基準を定めて、この資金の性格を考えますとこの程度のリスクはとった方がいいということを計算した上でベンチマークを設計して、そのベンチマークをできるだけ実現するような運用を専門家にゆだねていくということは、国民の貴重なお金を運用する上で大事なことだというふうに考えております。

 三つ目、サブプライム問題についての、去年夏時点での認識ということでございます。

 これは、大きなショックが加わったときに、いつもそうなんですけれども、やはり二つのことを意識した方がいいというふうに思っています。

 一つは、いろいろなシナリオが考えられますけれども、しかし、最悪のケースだけ、あるいは一番いいケースだけを想定するわけではなくて、まず蓋然性が相対的に高いと思われるシナリオを想定する。その上で、最悪のケース、こういうことが起こり得るということを考えていく、そういう複眼的なアプローチが必要だというふうに考えます。

 去年の夏の段階で振り返ってみますと、これは、大方のエコノミストの議論も含めて、当局もそうですけれども、今から振り返ってみますと楽観的であったという面はあったと思います。ただ、それでは去年の夏の段階で、今アメリカで大恐慌以来の金融の状況であるということ、それを最初から前提にしてもし行動しますと、これは結果として不適切な対応になる可能性もやはりあったというふうに思います。そういう意味で、当局として大事なことは、標準的なシナリオとリスク要因を認識した上で、その上でみずからのその時々の判断に過度にスティックしない、状況が変わっていけば、その状況に合わせて変えていくということがやはり必要だというふうに思います。

 去年の夏の時点では、私は、実はある新聞社からインタビューを受けて、そのときに申し上げたのは、これはまず、流動性の問題として発生している、この流動性の問題が、ソルベンシーといいますか支払い能力の問題に転化するとこれは大変なことになるから、そういう意味で、まず流動性の面でしっかり対応することが基本だということを申し上げました。

 その面でいきますと、これは後講釈になりますけれども、もう少しその面で対策、対応が工夫されてもよかったかなという面がないでもありません。しかし、より本質的な問題である資本の不足という問題に対しては、これはなかなかスピードが十分ではない。これは、日本との比較で見ますと随分早いという議論がありますけれども、しかし、それでもアメリカはやはり十分ではなかったなという気がいたします。

 以上でございます。

笹川委員長 糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 私も三点お伺いしたいと思います。

 まず、この三月二十日から白川副総裁が総裁の職務代行をされていらっしゃるわけでございますが、日銀総裁が空席になってから今までの間に、何か総裁が不在で問題があったのかどうかということをお聞きしたいというふうに思っております。

 そういう中で、もし白川総裁が、この国会での同意を得られれば総裁になられるわけですけれども、そうしますと、G7に出席をされる場合には、白川総裁代行としてではなく白川総裁という立場で出席されるわけですが、総裁として出席することに対する意義というものをお聞きしたいというふうに思っております。

 三点目でございますけれども、サブプライムローンとか、こういう海外からの要因によって日本の金融というのも非常に影響を受けるようになってきておりますが、こういう中で、例えばお隣の中国というものを見たときに、中国の金融市場というのが今非常に巨大化をしていっているわけでございまして、今後、万が一でございますけれどもバブルが崩壊したりとか、そういう場合に日本経済に及ぼす懸念というのは非常にあるわけでございます。そのために、今から海外に、特にアジアの金融市場に対して日本が政策的に対話をしていかなきゃいけないんだろうというふうに考えていますけれども、白川総裁候補が総裁になられた場合に、対中国というものに関する対話の仕方、そして、情報収集というのは非常に困難であるというふうに思いますが、この情報収集をどのように行っていくつもりがあるのか、特に日本に流入してくる資金が非常に多くなってきているということもございますので、この点についてもお答えいただきたいというふうに思っております。

 以上です。

白川参考人 お答えします。

 まず、総裁が空席であり、代行であることの影響でございます。

 私は、二つに分けてお話をしたいんですけれども、一つは、日本銀行は金融政策をやる組織であるというイメージが非常に強いわけです。しかし、実際の日本銀行は、金融政策に限らずいろいろな業務を行っております。約五千名の職員を抱える非常に大きな組織であります。どの組織もそうですけれども、その組織を運営するのに伴ういろいろな仕事がございます。最終的にだれかが判断をしないといけないということがございます。そういう日本銀行の内部の組織運営の最後のかなめであるという仕事と、それから、対外的に政策について情報発信をしていく、そういう仕事、この両方を一人の人間がやっていくというのは、時間的な意味でなかなか制約があるなという感じがいたしました。

 海外の中央銀行を見ましても、総裁、副総裁の間である種の分業がなされているわけであります。そのときの総裁と副総裁の組み合わせにもよりますけれども、そういう観点から見ますと、組織運営とそれから政策ということについて、今はなかなか分業がしにくいという状況でございます。これは物理的な問題でございます。

 それから二つ目は、私自身が発言すること、その発言した内容について、国民一般、それから市場関係者がこれをどういうふうに受けとめるかということでございます。これは、当事者が評価すべき話ではございませんし、情報の受け手がどういうふうに評価をするかということでございますけれども、仮に、受け手が、これは代行である、したがって、本格的に総裁であった場合に対応することとは必ずしも違うかもしれないとか、あるいは十分なリーダーシップを発揮しないんじゃないかというふうにもし言われれば、それはその分割り引かれてしまいますから、市場に対しても、経済に対しても、やはり潜在的に悪い影響があるという気がいたします。

 そういう意味で、影響というのは二つの点で出てくるというふうに考えております。

 それから二つ目の、G7に仮に代行ではなくて総裁として出席する場合の意義でございますが、これは基本的に、今申し上げました第二の点において、やはり代行と総裁では意味合いが違ってくるんじゃないかというふうに思います。

 それから三つ目の、中国の台頭のもとでどういうふうに対話を進めるか、情報を収集するかということであります。

 アジアの中央銀行との関係で、日本銀行は、EMEAP、これは英語の頭文字をとりましてEMEAPという組織を実はつくっておりまして、総裁レベル、副総裁レベルそれから専門家レベル、いろいろなレベルで会合を行っておりまして、これはもう過去、その前身も含めて考えますと二十年近くこの活動を、今強化しております。

 それで、日本銀行はこのEMEAPの事務局を果たしておりまして、実はEMEAPの中央銀行間独自のまたイントラネットを設けましていろいろな情報交換も行っておりますし、これは担当者レベル、スタッフレベルの情報交換でございます。それから、幹部クラスでは、今申し上げた、いろいろな会合を持って情報収集、交換を行っております。

 その中で、中国というのは最も大きな影響を持つ国であるというふうに思っています。仮に私が総裁に選任されることになりました場合には、中国との関係を、従来以上にまた緊密な意見交換、情報交換の環境をつくって、その上で、いろいろな、日本から見た経験ということをまず話していきたいというふうに思います。

 私が前回日本銀行にいたときの経験でいきますと、中国は、日本の高度成長期の中央銀行のあり方、それからバブル期の日本銀行の対応、バブル崩壊後の日本銀行の対応、いろいろな側面において非常に関心を持っている。繰り返し繰り返し、このテーマについて中国の人から聞かれたことがございますけれども、中国自身、やはり日本がたどった軌跡を、全く同じではありませんけれども、経済的にもそれから社会的にもたどっていくということも念頭に置いた上での質問だというふうに思います。

 中国の政策自体はもちろん中国の当事者が決める話でありますけれども、非常に大きな影響を受ける、少なくとも共通の利害のある国の中央銀行のトップとして、しっかりと私なりの意見を申し上げていきたいというふうに思っております。

笹川委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 実は、これから自由に御質疑をいただきたいと思っておりましたが、お約束の時間でございまして、多少、副総裁候補の時間を延ばしたいという先ほどの理事会の議決もございますので、これにて終了させていただきます。

 白川参考人、退席していただいて結構でございます。

    ―――――――――――――

笹川委員長 次に、渡辺参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 挙手をしていただいて発言を願いたいと思いますが、時間の関係がありますので、一人一問一分程度で順次回していきたいと思っております。

根本委員 渡辺副総裁候補は、財務官も経験され、国際金融の専門家、そして海外の政策当局者との人脈も幅広い、副総裁として即戦力と高い評価を受けております。

 先ほどの所信におかれましても、世界の資金の流れやあるいは世界経済の動向分析、私は、的確な現状認識であり、分析をされたと思います。国際経済、国際金融に非常に精通しているという印象を受けました。

 ちょっと具体的な質問をさせていただきたいと思いますが、財務官とはどういう仕事か、要は、財務官としてどのような政策課題、仕事に取り組まれたか、そして、その財務官としての経験、もちろんそれ以外にも豊かな国際経験を有されておられますが、財務官としての経験が副総裁としてどのように役立つか、あるいは生かされるか、この点についてお伺いをしたいと思います。

渡辺参考人 それでは、お答えさせていただきます。

 財務官の仕事といいますのは、財務省の仕事の中で対外的な局面を扱っております国際局、関税局、あるいはそれ以外の部局の国際部門の一応取りまとめという仕事をしているわけでございます。ただ、どうしても、皆様方の印象からいいますと、例えば為替であるとか、あるいは開発援助であるとかというようなことに割合ハイライトが当たってきていることがあると思います。

 最近の例で申し上げますと、先ほどちょっと私申し上げましたが、先進国との関係のみならず、アジアとの関係というのもこれから日本としても非常に重要でございますし、その中で、どういう形でアジアのそういう通貨あるいは金融についての統合を図り、どうやって日本がイニシアチブを発揮するかということは喫緊の課題であるというふうに認識しておりましたので、私どもの前任者が始めた仕事を負いまして、それを深めていくということをやってきたところであります。

 それから、御承知のとおり、国際通貨基金というのが世界の通貨、金融を取り扱っている機関でありますが、その中で、アジアの人たちの、あるいはアジアの国の発言権というのがこれまで極めて限られてきたわけであります。やはり、一九四四年、まだ戦争中にできたときの国の大きさをベースにして、そこから徐々に日本は改善をして今二番目というポジションにありますが、中国を初め東南アジアの国々というのが、本来の国の力よりはるかに低いところに抑えられていたという状況が戦後数十年続いてきたわけであります。

 二〇〇四年、五年からこの問題に取り組みまして、実は、今度のIMFの春の会議というのがG7とほぼ同じ時期にワシントンで開かれるわけでありますが、そのときに、アジアのそういう過小評価を改善するということについて全世界の合意が得られるということにもなりましたので、そういうことについて日本が活躍したということはアジアの諸国から評価をされているんですが、そんなことをさせていただいたというのが概略でございます。

中川(正)委員 ちょっと中長期的なというか一つの世界観のようなものに基づいてお話を聞きたいと思うんですが、日銀が独立性を保っていくということ、このことを具体的に考えていくと、アメリカのいわゆる金融政策に対してどう自立をしていくかということ。

 それからもう一つは、それを受けて財務省というのが、日銀法改正前は本当に連携をした形で日銀に対して施策を及ぼしてきたといいますか指導してきたという過去がある。それを、今の現状、それからこれから先の将来の話に持っていくと、ドルが揺らいできている、その大きな原因というのは、直近はサブプライムの話もあるんですが、もっとそれ以上に、双子の赤字とアメリカ自体の国力というものを前提にした上での揺らぎということだと思うのです。

 一つそれに関して世界観を聞きたいんですが、渡辺さんは、こうしたドルの揺らぎを是正する形でアメリカにしっかり物を言っていく、双子の赤字を是正すべきだという話で持っていくという考え方に立っているのか、それとも、世界は、基軸通貨としてはドルから恐らく、ユーロが今形成されましたけれども、それ以外にもアジアでも基軸通貨をつくっていきながら、多極化をしていくような金融の流れをつくっていくべきだというふうに世界観を持っておられるのか。その辺、具体的な形で述べていただければありがたいというふうに思います。

 それから、それに関連して、金利が今、日本の場合は、財務省の中の国債の破綻といいますか、そのことによって、名目のGDP以上に上げるということは非常に大きな影響を及ぼす、こういうことになってきているわけですが、それに関して、そういう前提で日銀が手足を縛られたような形での金利の運営になっていくのか、そうじゃないという世界観をお持ちなのか、その辺、関連した形で話していただければありがたいと思います。

渡辺参考人 それでは、お答え申し上げます。

 まず第一番目の問題につきましては、委員御指摘のように、中期、長期、本当は分けて考えなければいけないと思っておりまして、中期的にはまだドルが中心の通貨制度であるということは間違いないと思っておりますが、ただ、御指摘がありましたように、ユーロというものが非常に広範に使われるようになりまして、それから実際に力強さも増してきたということから、徐々にユーロのウエートが高くなってきているということはございます。

 ただ、そういう中で、先ほど申し上げましたように、割合近場のところではまだドルが中心になっている制度であることは間違いないわけですから、そのドルがみずからの経済運営の間違い等によって急激に安くなるということはやはり避けなければいけないということで、例えば、二〇〇五年から二〇〇六年におきまして、IMFの中で多国間協議というのをやりまして、ユーロ・ゾーン、それから日本、アメリカ、中国そしてサウジアラビアという、今の金融資本市場におけるメーンプレーヤーが集まりまして、それぞれの地域が何をやるべきかということについて議論をしたわけであります。

 私どもの方からは、アメリカに対しては、家計が消費をし過ぎて貯蓄をしない、それによってどんどん貿易の赤字が増すということで、国際的不均衡の問題、それが双子の赤字の一つになるわけですが、それを是正しないような対応を続けるということはやはり世界経済全体を揺るがすということで、強く求めまして、多国間協議の結論といたしましては、アメリカがそういうものについての是正策を講ずる、例えば借金をした方が税金が安くなるという構図は少なくともやめる、それ以上に、どういう形で消費と貯蓄のバランスをとるかについてアメリカ政府は真剣に考えるというところまで彼らが言うというところまではやってきたわけであります。

 今後、ユーロが強くなり、あるいは、その中で、今御指摘がございましたように、アジアの中にもそういった共通通貨のようなものをつくっていくかということについての動きがもう始まっておりますので、それについては可能な限り日本としてイニシアチブをとっていくということがこれまでの財務省での私の仕事であったわけでありますが、日本銀行においても、そういう通貨の問題を考える中で、日本としてリーダーシップがとれるということは必要であるというふうに考えております。

 それから、金利の問題につきましては、日銀が抱えております政策金利の問題と、それから国債市場における中期の金利というのは必ずしも連動しているわけではありませんけれども、私は昔、理財局の国債課でボンドの発行をしておりましたし、当時入札をやっていたわけでありますが、やはり金利というのはマーケットで決まる要素が強い。それを人為的に高くする、あるいは人為的に抑えるということは、極めて短期的にはできないわけではありませんが、それは結局、ある日大きなおもしとなってはね返ってくるということがありますので、そこは、マーケットをある程度重視した運営をすることが必要だということで、何らかの基準を持って高くする、低くするということで対応するというのは適切ではないと思っております。

 それで、財務官の後半二年、日本の国債を世界で売るために、いわゆる民間がやっておりますIRということをやって世界じゅうを回ってきましたけれども、そのときにもやはり、適切な国債は適切な利回りがある、それでなければ外国の投資家が見向きもしないということを指摘されたところでありますから、そういう意味では、やはり自然な形で金利が決まるのであればそれをなるべく尊重するということは必要な心がけではないかというふうに思っております。

谷口(和)委員 公明党の谷口でございます。

 渡辺候補の副総裁への人事については、財務省出身ということで、財金分離という観点からの批判も出ているわけでありますけれども、けさの一般紙等を見ておりますと、おおむね好意的な見方が多いように思われます。例えば朝日新聞なんかは、ここは、出身がどこかよりも人物本位で判断すべきだ、こういうふうな見方も出ております。

 そこで、確認をさせていただきたいんですが、渡辺候補は、この財金分離ということについてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、ここを確認させていただきたいと思います。

渡辺参考人 お答えいたします。

 財金分離ということが非常に大きな課題になっていたことは承知しておりますし、当時財務省にいて、その内容については熟知しているところであります。

 ただ、いずれにせよ、金融の問題、財政の問題というのは、連携をしなければいけないという要素と、そのときに、いずれか一方にどちらかが従属する、あるいはいずれか一方が他方に対して優越に立つということではなくて、それぞれがみずからの識見を持って意見を闘わせて最終的な調整に持っていく、それが日銀法の三条なり四条の精神だというふうに思っているところでございます。

 そういう意味で、財金分離というのは、お互いにお互いの領分を侵すことなく適切な立場に立って協調し合うという意味で分離をするべきだということからいえば、私は、まさに財金分離は必要であると思いますし、そういう形で独立性、自主性を中央銀行に持ってもらう、付与するというと言葉が変なんですが、中央銀行がそういう形で運営に当たられるような環境をつくるということが日本の経済にとって必要であるというふうに信じております。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 二つ、過去の政策の評価を聞きたいと思います。

 一つは、バブルを引き起こした要因として、プラザ合意後の低金利政策があったという認識があるかどうか、そこからどのような教訓を引き出しておられるか、これが一点。

 二点は、一九九八年の金融危機の際、三十兆円規模の国民の税金を注ぎ込む公的資金投入が行われました。私たちは銀行業界の責任と負担ということが重要だということでこれに反対をしましたが、その公的資金投入について、現時点でどのように評価をされているか。

 この二点、お聞きしたいと思います。

渡辺参考人 お答え申し上げます。

 プラザ合意の後に円高が、多分その当時の担当者などの想定を超えて進行した、その結果、非常に日本経済に対して重荷を与えたという状況がありますが、そのときに、財政もやや過剰に反応いたしましたし、金利の方も、本来、先ほど申し上げましたような理由で形成される金利よりもやや低いところで維持されたというところがございます。

 いずれにせよ、経済が大きく崩れていくときにはカンフル注射的なものを入れるということも必要な場合があるわけでありますが、それについては、いつそれをやめるか、つまり入っていったものをいつやめるかということについての強い意思を持っていかないといけないということで、一方的に低くする、一方的に高くするということについては、これからも我々としては身を引き締めて考えていかなければならないというふうに思っているところであります。

 それから、九八年の金融危機のときの問題でありますが、金融システムというのが、特に銀行システムというのが日本の場合には非常に大きなウエートを占めておるわけでありますから、そういう意味で、システムが崩壊するのを避けるということでの措置が必要であったというふうには思っておるわけでありますが、正直申し上げまして、住専の後、いろいろな御批判を受けたために、やや初動動作においておくれがあり、結果としてその投入額が大きくなったのではないかという反省を我々はしているところであります。

 御指摘のように、責任をとるべきものは責任をとり、その中でどうやってなるべく有効に資金を活用していくかということは、これからもそういうことが起こってほしくはありませんけれども、最近の欧米での状況を見ておりますと、そういうことについても我々は気を配りながら対応をしていく必要があると思っておりますが、そのときにはやはりなるべく国民の負担を小さくするということから、適時適切にどうやって対応するかということについて常にシミュレーションを、今でもやっておりますが、そういうことを考えていきたいというふうに考えております。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 サブプライムローン問題についての御認識を伺いたいと思います。

 最近、日本国内からは、サブプライムローンについては被害者的な発言があるわけでありますが、ある方が、日米の金利差がアメリカにおけるサブプライムローン問題を生んだ、いわゆる金利差で日本から大量のお金が流れて、それがアメリカのバブルというものを生んだのではないかという御指摘がございました。

 この現在の日米の金利差とサブプライムローンの発生というものをどのように御認識されておられるのか、このことについてお伺いしたいと思います。

渡辺参考人 お答え申し上げます。

 日米あるいは日本とヨーロッパとの間の金利差があるということから、日本で資金を調達し、それをほかのマーケットで使うということで、一時、円キャリートレードということが話題になったわけでありますが、そういう実態があったことは事実でございます。

 ただ、サブプライム自体の問題は、本来借りることができる能力のない者に対して、やや甘い審査でお金を貸す、それによって、一部はそういうことを理解しながら、住宅市場の振興のため、あるいは低所得者に対して住宅を与えるために必要だということで動いていたところがありますけれども、そういう形で、信用が本来なければいけない長期のローンに対して、実はその信用というものがほとんどチェックされていないという変わったシステムをつくったというところがサブプライムの問題でありますので、おっしゃっていたような日米の金利差と今のサブプライムの仕組みとの間の直接の関係は、私はないと思っております。

 ただ、サブプライムがああいう形で問題になりまして、今起こっていることは、サブプライム絡み、あるいはもう少し広げてモーゲージ絡みという不動産に関連した商品だけの価格が下がっているわけではなくて、ありとあらゆる証券化商品について、皆さん、マーケットプレーヤーが慎重になっているために値がつかない。値がつかないで、たまにできた取引をやりますと物すごく低い値がつきまして、それに対して資産評価を変えなければいけないということから、各金融機関あるいは事業法人、年金等に大きな負担が出ているということでありますから、そういうことについて考えていく必要があります。

 したがいまして、アメリカの場合は特に、日本と違って、銀行の占める金融セクター全体に対する割合が小さいわけで、直接調達、例えばCPを発行するとかボンドを発行するとかあるいは株式で調達する、こういうウエートが高いわけでありますが、そこで資金が調達できなくなっているというところがありますから、ちょっと日本の場合と形が違っているわけであります。

 最近、アメリカの同僚に言わせると、アメリカは日本の九七、八年の轍を踏まないようにやっていると。意味は、なるべく迅速に必要なことをやっていこうということが言われているわけでありますから、そういう意味で、日本としても、過去に正しいこと、間違ったことをいろいろやっているわけでありますから、そういうことについて適切な情報を彼らに提供して、なるべく早くこの混乱から離脱できるように、我々としても協力をしていきたいというふうに思っております。

笹川委員長 時間が参りましたので、渡辺参考人に対する質疑は終了させていただきますが、委員長から一言お願いいたします。

 渡辺参考人には、テレビあるいは新聞等々でいろいろな報道がなされまして、大変心境に乱れがあったということは察するに余りあるものがございますが、政党として国会として純白な気持ちで対応していただきたい、委員の皆様方に委員長として特にお願いを申し上げます。

 もし選任されたときには、同意されたときには、正々堂々と、日銀のために独立性を確保して、国家国民のために働いていただきたいということを特に御要望申し上げまして、終わりといたします。

 渡辺参考人、お帰りいただいて結構でございます。

 これにて懇談を閉じます。

    午後零時三十一分懇談を終わる


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