衆議院

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第11号 平成24年3月27日(火曜日)

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平成二十四年三月二十七日(火曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 小平 忠正君

   理事 松野 頼久君 理事 山井 和則君

   理事 笠  浩史君 理事 田名部匡代君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 佐藤  勉君

   理事 高木  毅君 理事 遠藤 乙彦君

      相原 史乃君    大山 昌宏君

      太田 和美君    川内 博史君

      坂口 岳洋君    浜本  宏君

      水野 智彦君    森山 浩行君

      伊東 良孝君    齋藤  健君

      塩崎 恭久君    橘 慶一郎君

      穀田 恵二君    渡辺浩一郎君

      服部 良一君

    …………………………………

   議長           横路 孝弘君

   副議長          衛藤征士郎君

   事務総長         鬼塚  誠君

   参考人

   (人事官候補者(人事院事務総長))        吉田 耕三君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十七日

 辞任         補欠選任

  相原 史乃君     大山 昌宏君

  小泉進次郎君     橘 慶一郎君

  佐々木憲昭君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  大山 昌宏君     相原 史乃君

  橘 慶一郎君     小泉進次郎君

  穀田 恵二君     佐々木憲昭君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 人事官任命につき同意を求めるの件

 議院に出頭する証人等の旅費及び日当支給規程の一部改正の件

 本日の本会議の議事等に関する件


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     ――――◇―――――

小平委員長 これより会議を開きます。

 まず、人事官任命につき同意を求めるの件についてでありますが、去る二十三日の理事会において、齋藤内閣官房副長官から、内閣として、人事官に人事院事務総長吉田耕三君を任命いたしたい旨の内示がありました。

 つきましては、理事会申し合わせに基づき、人事官の候補者から、所信を聴取することといたしたいと存じます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本日、参考人として人事官候補者(人事院事務総長)吉田耕三君の出席を求め、所信を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

小平委員長 まず、議事の順序について申し上げます。

 最初に、吉田参考人に所信をお述べいただき、その後、参考人の所信に対する質疑を行いますので、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。

 それでは、吉田参考人、お願いいたします。

吉田参考人 吉田耕三でございます。

 本日は、所信を述べる機会をいただき、まことにありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。

 国家公務員制度は、我が国行政の円滑な運営を確保するための基盤となる制度であります。国民主権を定める憲法のもと、公務員は全体の奉仕者として規定されております。その趣旨を実現するため、一般職国家公務員に適用すべき根本基準を確立することなどによって、公務の民主的かつ能率的な運営を国民に対して保障することを目的とする国家公務員法が制定されております。

 国家公務員法は、人事行政を担う中心的機関として人事院を設けました。人事院は、内閣の所轄のもとに置かれた合議制機関であり、全体の奉仕者である公務員に係る人事行政の公正の確保及び労働基本権制約の代償機関としての役割を担うとともに、人事行政の専門機関として、社会情勢の変化等に対応した人事行政諸施策の提案、推進などの役割を担ってきています。

 そのため、人事官には、人事行政に関する識見に加え、全体の奉仕者たる国家公務員としての強い自覚と高い倫理観が求められるだけでなく、広く国民各層や関係方面からの御意見を伺いつつ、誠実かつ公正に職務に当たることが求められると思っております。

 今日、人事行政は多くの課題を抱えており、国民からは、公務及び公務員に対してさまざまな厳しい御指摘、御批判を受けております。このような状況を改革していくため、公務員制度改革の取り組みも進められてきました。また、厳しい経済状況のもとで、特に公務員給与のあり方について国民の理解が得られるよう、より一層の努力が必要であると認識しております。

 これらを踏まえ、時代に適応した公務員制度や人事運用の改革を進め、職員がその能力を十全に発揮して能率的な公務運営が実現できるよう、人事院としても積極的な役割を果たしていく責任があると考えます。

 現在、協約締結権の付与や公務員庁の設置などを内容とする国家公務員制度改革関連四法案が国会に提出されております。今回の改革は公務員制度の根幹にかかわるものであり、かつ、改革は実行可能なものである必要がありますので、かつての公社、現業の経験や諸外国の公務員の給与水準決定など、今後の議論の参考となる論点や情報を提供していくことは、専門機関としての人事院の責務であると考えております。

 私は、昭和五十年に人事院に採用されて以来、国家公務員の人事行政にかかわり、現在は、人事院事務総長として、総裁、人事官を支える任にあります。仮に私が人事官に任じられた場合には、これまでとは異なって、人事院会議の構成員として判断にかかわることになりますので、その自覚と責任感を持ち、長年にわたり培ってきた人事行政の経験や知見を生かし、国民の代表である国会での御議論を初め、国民各層や関係各方面の意見に謙虚に耳を傾けながら、先任のお二人の人事官と協力して誠実かつ公正に職務に当たり、人事院の使命達成のため、努力してまいりたいと存じます。

 以上、簡単ではございますが、私の所信を述べさせていただきました。

 本日は、このような機会を与えていただき、まことにありがとうございます。

小平委員長 ありがとうございました。

 これにて参考人からの所信の聴取は終了いたしました。

 理事会申し合わせに基づき、報道関係の方々は御退席をお願いいたします。

    ―――――――――――――

小平委員長 これより吉田参考人の所信に対する質疑を行います。

 質疑は、まず、各会派を代表する委員が順次三分以内で質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。

 吉田参考人、本日はありがとうございます。

 今回、内閣から人事官の候補者として吉田参考人が提示をされ、おおむね十日程度の審議を経た後に、この質疑も含めてですけれども、国会の方で認めるか認めないかを判断させていただくということでございます。ぜひよろしくお願いをいたします。

 まず最初に、吉田参考人は、一九七五年から人事院で勤務をされ、人事行政に精通されているということでございます。今、所信の中で、時代に適応した公務員制度や人事の運用の改革をやりたいというふうにおっしゃいましたけれども、具体的にこのことについてお聞かせをいただければと思います。

吉田参考人 公務員制度は制度と運用から成っておりますが、世の中の動きにつれまして、公務員制度自体が硬直化しているのではないかという御批判や御指摘を受けております。こういった問題については、今まで、制度がこうなっているから、それに単純にといいますか、そのままただやってきたという点については改めていく必要があるのではないかというふうに考えております。

 例えば、人事の一番基本になります任用につきましては、よくキャリア制度という言葉で言われますけれども、採用試験あるいは採用年次というものが人事を非常に規定している。これは各省の運用実態としてそういうものがあるわけですけれども、やはり、個々の職員の能力や実績というものを踏まえて適正に昇進管理をする、あるいは給与上の評価もしていくということが必要でございます。

 そのためには、前提となる評価制度というものが整備されませんと、どういう基準で昇任するのか、あるいはどういう基準でボーナスを査定するのかということがわかりません。この評価制度についても、本格的な導入は数年前からというような状況になってきております。こういったものの定着をさせるということが、時代に適応した公務員制度を具体的につくっていくことになるんじゃないかというふうに考えております。

松野(頼)委員 今、評価制度というふうにおっしゃいました。実は、人事院にとって、給与の決定に関して、ことしは非常に大きな節目の年になったのではないかと思います。

 それは、人事院というのは労働基本権制約の代償として給与水準を勧告するということでずっと来ましたけれども、今回、私どもは、政府として、労働基本権を含む特例法を国会に提出しています。そしてまた、その法案が通る前に、これもまた特例法で、人勧の〇・二%以上の七・八%の給与削減を法律によって行いました。ある意味では、これは人事院の制度を否定するかのようなことでございます。

 これは立法府の判断で行ったことでありますが、そのことについて、一言、感想でも、意見があればお聞かせをいただきたいと思います。

吉田参考人 今委員の御指摘は、先般成立した給与特例法の件だと思います。

 これにつきましては、昨年の六月に、政府から、公務員給与を平均七・八%引き下げる法案と、それから、先ほどちょっと申し上げました国家公務員制度の改革の関連四法案というものが同時に提出をされた。そして、その中で、今先生御指摘のような議論がなされたわけでございます。

 現行制度のもとでは、労働基本権が制約されておりますし、人事院として、国家公務員法上、社会の情勢に適応した給与水準を維持することを求められております。したがいまして、昨年は、震災の影響もありまして勧告の時期がおくれましたけれども、人事院の勧告を行ったところでございます。

 最終的には、国会での御議論を踏まえて、人事院勧告を実施した上で、千年に一度の大災害に対する対応として公務員給与を特別に引き下げるということを御決定いただいたというふうに認識しておりますので、今の状況というのは、先生言われたような、人勧がなくなっているといいましょうか、機能していないというふうには私は認識しておりません。

松野(頼)委員 要は、人勧の廃止を含む法案を、今、国会に提出しているわけです。きちんと労働基本権を公務員に付与し、そして、代償措置の人勧という形ではなく、それぞれが労使交渉によって給与を決めていくことを私どもは提案しているという、非常にことしは激変、劇的な年になる可能性があるということをぜひ御認識いただければと思います。

 そして、江利川総裁はこのようにおっしゃっています。今回の特例法に関しては人勧を内包しているとしているが、両者は趣旨、目的、内容が異なっている。特例法は東日本大震災の復興の財源確保の一環として公務員給与のあり方を考えているが、一般論として、財政事情を理由に公務員給与を下げることは疑問である。あくまで公務員給与の水準は民間準拠が確保されるべきだというふうにおっしゃっているんです。

 時代に即した公務員給与の水準ということで、吉田人事官は、要は、財政状況等を公務員給与の勧告に入れることはいかが考えますか。

吉田参考人 大変難しい問題の御指摘だと思っております。

 私も、現在、人事院で事務方をしておりますが、これまでのいろいろな議論の中で、公務員給与の決定に当たって財政事情を考慮すべきかどうか、あるいはどのように考慮するのかということについてのコンセンサスが得られればそういうこともあると思いますけれども、例えば、今先生が言われたことと若干矛盾するわけですが、人事院制度が残っていて、人事院が、オールマイティーで、財政事情を考慮して給料を上げるとか下げるとかいうことが許されるかどうか。それが社会的にも許され、あるいは国会からそういうことを授権されればそういうことをやる余地はあると思いますけれども、それをどういう条件でどういうふうに発動するのかということについては、やはり国民的なコンセンサスが必要なんじゃないかというふうに思います。

松野(頼)委員 終わります。ありがとうございました。残余は後ほどまたやらせていただきます。

小平委員長 次に、橘慶一郎君。

橘(慶)委員 吉田参考人、きょうは御苦労さまでございます。

 私は、二回に分けて四点、二問ずつ質問させていただきたいと思っております。

 昭和五十年から人事行政に携わってこられたということで、逆にその点では、余りにも実務に精通されている分、答えづらいかもしれませんが、きょうはあくまで客観的に、個人のお気持ちで、そういうことを私どもはお伺いしたいということで、また、答えにくいところは簡単に答えていただいてもいいということでお願いしたいと思います。

 最初に、二つお伺いします。

 今ほど松野委員からもお話のありました国家公務員の給与改定。人事院勧告を実施した上で、平均七・八%を、二十四年度、二十五年度の二年間の暫定措置ということで引き下げるということを行うわけであります。

 昭和五十七年に人事院勧告を凍結した際に、最高裁までこのことについては争われた経緯がございます。その際、やむを得ない事情ということが一つの憲法判断になっているということに照らした場合に、今回のこの措置というものがどういうふうに判断されるべきなのか、どうお考えであるかというのが一点目でございます。

 二点目は、昨年秋に、人事院は国家公務員の定年延長に係る意見の申し出をされました。内閣は希望者の再任用で対応するというような報道があるわけであります。

 そこで、今後の国家公務員の雇用のあり方についての吉田参考人のお考えをお伺いいたします。あわせて、民間には余り例のない勧奨退職制度をやめて、この際、民間でやっているような希望退職制度の方がわかりよいのではないか、勧奨退職であれば、やはりそこに国民から見て紛れが生じるのではないか、これは私の意見でありますが、こういうことについてのお考えをお伺いいたします。

 以上、二点お願いいたします。

吉田参考人 まず、給与改定についての御質問でございます。

 今般成立いたしました給与特例法は、先生御指摘のとおり、二十四年、二十五年と二年間にわたって七・八%引き下げるという内容になっております。これにつきましては、今先生御指摘のように、五十七年の人勧凍結に係る裁判、これは最高裁まで行っておりますが、この判決に照らしてどうかということになると思います。

 私が個人的にいいとか悪いとか言うような話ではないと思っておりますが、その五十七年の凍結のときの最高裁の判決というのは、当時の政府は人勧を尊重する、継続して尊重するという姿勢を持っていた、それから、その状況というのが、財政非常事態宣言が出るなど、公務員給与だけでなくていろいろなもの、例えば、当時の非常に大きな意味があった、米価を抑制したとか、あるいは年金スライドとかそういうものも抑えたとか、つまり、公務員給与以外の全般的な財政抑制の中の一環としてそういうことが行われた等々の諸条件を考慮して、いわば代償機能がまだ画餅に帰したわけではないというのが判決の考え方でございます。

 ですから、今回これがそういうことで争われたときにどうなるのかということについては、非常に難しい部分もあるかと思いますけれども、ただ、本年の人勧を実施していただいておりますので、人勧を尊重するという前提は崩れていないというふうに考えております。

 それから、二点目の定年延長問題でございます。

 人事院は、昨年、これまでの長い検討の結果、公務のような事務・技術職種、それから、長期雇用が続いている、そういう職場においては、定年延長することによってむしろ能率的な働き方ができるんじゃないか、ただ、社会全体が再雇用という形で行っている中で、例えば、給与水準は大幅に下げる、あるいは短時間勤務や希望退職等を導入して、全員が一律に六十歳を超えて働くということではなくて、多様な働き方を準備する、そういうことで、基本を定年延長にすることが適当なんじゃないかということを申し上げたところでございます。

 今般、再雇用の義務化を基本として対応するということが決まっておりますが、これは、今後、三年に一歳ずつ延びていくわけで、その中でさらに見直すということも入っているようでございますので、今後の検討というものに期待したいというふうに考えております。

橘(慶)委員 勧奨退職、希望退職のところは、もしお答えが可能であればお答えいただくとして、あと二点お伺いをいたします。

 平成二十四年度からは、国家公務員の採用試験が大幅に変更になります。1種、2種、3種ということから、総合職、一般職に変わるわけであります。

 こういう節目のときではあるんですけれども、非常に厳しい状況の中、内閣では新規採用の大幅削減という方針が打ち出されているわけであります。公務を志す若者たちには大変厳しいメッセージにならざるを得ない。公務職場においても、年齢構成がいびつになるなど、後年度に影響が及ぶことも懸念される部分ではございます。お考えをお伺いいたします。

 最後の質問になります。

 先ほどお話がありますように、国家公務員は全体の奉仕者であります。しかし、この全体の奉仕者である国家公務員に対する国民の目線はいつになく厳しくなっているということを私も感じます。また、公務職場において対応すべき行政課題は大変複雑多岐にわたっている、そういう時代だと思っております。

 ここは、今までほど政策のお伺いではありません。これからの国家公務員に求められる能力、人物像はどういうものであろうかということについての個人的なお考えをお伺いできれば大変幸いでございます。

 以上であります。

吉田参考人 失礼いたしました。

 先ほどの希望退職、勧奨退職の件でございますが、希望退職というものがどういう定義なのか。本人が手を挙げて第二の人生を設計していくという意味であれば、先ほど申し上げましたように、むしろ場合によったら、四十代ぐらいからそういうチャンスがいろいろあるような制度設計にしていくということは今後必要かなというふうに私も思っております。

 ただ、勧奨退職をやめるという点については、これは民間企業の中でも、新陳代謝を図るために、特に管理職員につきましては一定の交代をされておりますので、そこのところはやはり必要なんじゃないかというふうに思っております。

 それから、新規採用の抑制につきましては、これは、使用者側であります政府において必要な採用数を決定しまして、その採用数に応じて人事院は試験を公正に実施する、こういう役割分担になっておりますので、一義的には使用者としての政府の判断だというふうに思っております。

 ただ、これは民間で過去こういう例があったわけでございまして、そういうものの調査によりますと、年齢構成がいびつになるとか、近い将来中堅層の職員が減ってくるとか、いろいろな弊害というようなことも指摘されておりますので、そういう点も含めて対処をお願いしたいというふうに考えております。

 それから、これからの公務員像でございますが、特に近年、公務員希望者の中で、公務をぜひやりたいという人は従来と同じように少なからずいるんですけれども、私の個人的な感じでは、その層というのが少し減ってきているといいましょうか、薄くなってきているような感じはいたします。これは、一つは、公務に対する社会的な批判が非常に厳しいという中で、公務の仕事というものに対するイメージが必ずしもよくないという部分があるんだろうと思います。

 そういう意味では、私たちとしては、誇りを持って働けるような職場、あるいは社会的な信頼が得られるような働き方ということができるようにしていくのが責務かなというふうに思っております。

橘(慶)委員 終わります。ありがとうございました。

小平委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦です。

 吉田参考人にお伺いいたします。

 前の方も御質問されたわけなんですけれども、新規採用の著しい抑制、極端な抑制という問題なんです。

 岡田副総理は八割削減ということまでおっしゃっておられるようでございます。背景のいろいろな財政事情等は理解できるわけですけれども、特定のやりやすいところだけ極端にしわ寄せをすることはいかがなものかということ、将来の公務員の人事体系に大きな支障が生じてくるのではないかということと、それから、民間への影響です。

 特に、つい最近内閣府が発表した報告によりますと、二〇一〇年の新卒者、大卒、高卒ですね、当初の就職内定率が約九割、実際に就職したのは約七割、三年後、離職者も多数あり、ちゃんと正規の職についている人は約五割だということで、大変に深刻な事態が今あるわけでして、こういったことに対して非常に悪影響を与えるんじゃないかと非常に危惧いたしております。この点についての所見をお伺いいたしたい。

 特に、使用者は政府だ、それが決めた方針を守るだけだと言っていましたけれども、人事院としては、やはり根幹にかかわる問題でありますので、もう少し踏み込んだといいますか、見識を示すべきじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

吉田参考人 先生おっしゃるように、新規採用という問題は、組織にとっては非常に重要な問題でございます。

 あるところの採用が極端に減れば、先ほど申しましたように、そのときはもちろんですけれども、五年後、十年後になると、そういう世代が非常に少ない、そのために組織管理上も問題が生ずる、あるいは、組織の中の技術といいましょうかノウハウといいましょうか、そういうものの伝承にも影響が出てくるというようなことがございます。ただ、そうであれば、中途採用で穴埋めをすればいいのではないかというような議論も多分あるんだと思いますけれども。

 いずれにいたしましても、先生御指摘のように、今の雇用情勢というものを鑑みますと、公務だけでなくて、民間はより全体として厳しい。おっしゃられたような非正規問題というようなものもあるわけでございますから、なるべく公務がそういう雇用の場を提供するということは必要なんじゃないかなというふうに個人的には思っております。

遠藤(乙)委員 もう一点。

 今後の公務員の望まれる資質なんですけれども、今まで公務員といいますと、要するに形式的な、合法性あるいは公平性、そういったことを非常に重視してきたと思いますけれども、今の御時世は、端的に言って、公務員といえども一種の広い意味での経営感覚がないとこれからこの日本という国家を支えるのは非常に困難ではないか。より少ない予算の投入でより大きな効率を上げていく、そういう視点が極めて重要であって、全て金銭勘定というわけにはいかないと思いますけれども、より少ない投入でより大きな効果を出すという発想がないと国家の運営は厳しくなるのではないかというふうに思います。

 それから、もう一点。

 評価という問題ですけれども、一生懸命やる人とそうじゃない人はやはり相当いるわけであって、もう少し評価軸をきちっとして、ちゃんとやっている人はきちっと評価していく、または能力主義を導入して賃金等の面でもきちっと評価をしていくことによって、初めて、本当の意味の国民のための公務員制度というふうになるんじゃないかと思いますが、この点についてはいかがお考えでしょうか。

吉田参考人 効率性への試み、あるいは人事評価の運用といいましょうか、活用についての御質問をいただきました。

 おっしゃるように、公務においても効率的な運用ということを心がけることは非常に重要ですし、ともすれば、去年と同じようにことしもやっておけばいいというふうになりがちな組織形態というか職務執行形態がありますので、先ほど申しましたように、時代に適応して日々改革をしていく、改善に取り組むということは大変重要だろうと思います。

 ただ、コストというものだけでいきますと、実際に必要な行政ニーズを切ったり、そういうことも実はある。やはり、そういう意味では、総合的な判断というのが求められるんじゃないかなというふうに思っております。

 それから、その評価でございますが、評価制度は、導入して、もう始めているわけですが、これは先生も御承知のとおり、公務の場合には、組織で行う、チームで行うというものが非常に多うございます。単年度で見ても、一人だけ目立つプレーヤーがいてもうまくいかないので、目立つプレーヤーを支える余り目立たないプレーヤーがいて、そこがくさらずにちゃんとやることで間違いのない安定的な行政執行ができるという面、保守的と聞こえるかもしれませんが、そういう行政分野というのは非常に多くございます。

 そういう意味で、全体としての底上げを図りながら、かつ、本当に頑張っている人の意欲をそがないように、むしろそういう人をエンカレッジするようなことを考えていかなきゃいけない。

 それから、長期的に見ても、いつも単年度で終わるわけじゃなくて、三年計画、五年計画で進んでいく仕事もあります。人が努力して成果が出なかったけれども、三年目で実ったときに、担当だったからといってその人だけが偉くなるということでは、これもやはり組織はうまくいきません。

 そういう意味では、公務の特質といいましょうか、仕事の特性というものを見ながら成績をうまく活用していくということが必要ではないかというふうに思っております。

遠藤(乙)委員 以上で終わります。

小平委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 私は、二つ質問します。

 一つは、国家公務員の労働基本権の早期かつ完全な回復の問題です。

 憲法二十八条が保障する労働基本権、すなわち、団結権、団体交渉権、争議権、これは、本来、公務員にも保障されるべきものであります。

 ILOが、消防、監獄職員の団結権や一般公務員の争議権、労働協約締結権の保障など、国際労働基準に沿った公務員制度改革をするように勧告しています。私は、我が国の国家公務員の状態が、国際労働基準に照らして重大な問題を持っていると考えますが、どのようにお考えかということです。

 二つ目は、先ほど来意見もありましたけれども、私はどちらかといえば別な角度の方から質問しているわけですけれども、国家公務員給与改定臨時特例法についてです。

 今国会では、この法案が、民主、自民、公明の三党によって提出され、成立しました。これは、国家公務員の労働基本権の回復なしに、いわばその手足を縛ったままで、人勧水準をはるかに超える平均七・八%もの給与削減という不利益を二年間にわたって強要するものであります。これは、憲法にも反し、労働基本権制約の代償措置である人事院制度をも否定するものだと言わなければならないと私は考えます。しかも、提出会派は、国家公務員を代表する労働組合に対し、法案についての説明、交渉、合意どころか、意見聴取さえも行っていませんでした。

 これらの問題についてどのようにお考えか、御所見を承りたいと思います。

吉田参考人 まず、ILO、国際労働基準についての御質問です。

 ILOについてはいろいろな議論が紹介されておりますが、我が国の労働基本権については、ILOの考え方として、国の行政に従事する国家公務員といいましょうか、国の行政に従事する者の交渉権については、制約があったとしても、それがILOの原則に反するものではない。他方、国の行政に従事しない公務員については、これは協約権を含んで交渉権を付与すべきであるという考え方をとっていると私は理解しております。

 その中で、我が国の場合には、そのILOの条約を批准する際に、広く公務員、特に非現業の公務員、地方公務員も含めてですが、これを国の行政に従事する公務員というふうにしているために、結果として全て制限される対象になっているというのが現状で、ILOから言われていることは、日本は国の行政に従事する公務員の範囲をきちんと整理すべきであるというふうに指摘を受けていると私は理解しております。

 それから、二点目の給与特例法の関係でございますが、この件につきましては、先ほどちょっと触れましたけれども、東日本大震災という千年に一度と言われる未曽有の国難に対処するために、国会において大所高所からの検討がなされ、結果として今般法律が成立したというふうに我々としては受けとめたいと考えております。

 なお、このプロセスにつきましては、非常に臨時異例の形がとられ、職員団体等の関与がどうだったかという議論もあったというふうに承知しておりますけれども、これは、できるだけそういう機会があることが望ましいというふうに私は思っております。

穀田委員 いろいろ意見を承ったということにしておきたいと思います。

 ただ、先ほど、最後にありましたように、私どもは考えを一定異にしている。しかも、もともとことしの法律を通した場合のその趣旨を見ますと、単なる千年に一度という話じゃないんですよね。この法律の中身を出すときに、消費税増税のための身を切る改革と位置づけたということについても知っておいていただければと思っています。

 以上です。

小平委員長 次に、渡辺浩一郎君。

渡辺(浩)委員 新党きづなの渡辺浩一郎です。

 今、各党からるるいろいろな御専門の話、質問等々がございましたけれども、吉田参考人は、長きにわたって人事院の中でずっと実務を体験されてきたわけですけれども、今度、人事官としてのお立場になるとすれば、そういった実務をベースにして、ある意味では大所高所の判断をしなきゃいけないということになるわけですね。これはどの分野もそうですけれども、私どもも、例えば政策を述べるに当たっては、そのバックにある基本的な考え方、哲学というか理念というのがあって、それを判断にして、一つ具体的なことを取り決めをするわけです。

 したがって、きょうは、せっかくこういう機会ですから、吉田参考人に、そうした実務の中で、基本的な物の考え方、今までの経験を踏まえて私はこう思うというような率直な考え方を、三つに分けて私ちょっと質問させていただきますので、それにお答えいただければと思っております。それを今回の同意人事の判断の基準にさせていただきたいと思うんですが、ふだんから思っている自分の率直な考え方、細かい技術的な事実関係のどうのこうのではなくて、その辺のことを、ふだん思っていることでも結構ですけれども、お答えいただきたいと思います。

 一つは、今、評価制度が公務員の中でありますけれども、これをここしばらくやっているみたいですけれども、これに対して、今後これを続けていった方がいいのかとか、あるいは、これについての自分なりの問題点がもしもあれば、ちょっとお答えいただきたいことが一点。

 それから、もう一つは、公務員というのは行政府の方に所属するわけです。一方、きょうもそうですけれども、立法府として私たちがいるわけですから、公務員と政治家とか、あるいは行政府と立法府との関係が、今はこういう状況になってはおりますけれども、自分としてはこうあるべきだとか、あるいはこうしてみたいとか、何かお考えがあれば、二つ目としてお伺いしたいということ。

 それから、三つ目は、労働基本権というのが今議論になっておりますけれども、これに対する吉田参考人の、先ほど来からILOの問題が出ておりますけれども、労働基本権のあり方についてのみずからの基本的な率直な考え方をお聞かせ願えればということ。

 この三つを質問させていただいて、私の質問を終わらせていただきます。お願いいたします。

吉田参考人 三つ御質問いただきましたが、まず、評価制度、評価についてでございます。

 今の評価というのは、個々の職員に目標を設定させ、その実績をはかる、あるいは職務にあらわれた能力を評価するという形で、いわばシート方式で個々人について行われるようなやり方が行われております。

 こういうやり方がなぜ必要になったかというと、やはり、顔の見えない人たちを大量に処理する場合には、こういうフォーマットに落とした評価というのをしなければならない。その方が合理的だということだと思うんですけれども、顔が見えていれば、ふだんつき合っている中で、仕事ができるとかできないとか、そういうことがわかってくるので、そういう形式的な評価は不要になる。

 その顔が見える範囲というのがどれぐらいかといえば、恐らく百人か二百人ぐらいが限度なのかなというふうに思うわけですけれども、従来は、そういう意味で、各省では、まさに顔が見える範囲といって、具体的な評価シートなどによらないで評価をやってきたわけですね。ですから、そのことが全く悪いというわけではないですが、そうすることによって多くの普通の人たちの評価というのがないがしろにされてきたという部分はあろうかと思っています。

 ただ、今やろうとしている評価制度にも限界があって、実は直接見た方がよく評価できるという部分もあるので、そこはどういうふうに組み合わせていくのか、大きな課題だと思っております。

 外国の公務員制度などを調査したり意見を聞いたりしても、どこの国も、長期雇用をして、しかも、資格任用ということですので、採用試験をやって採っている外国の公務員の場合には、この評価で悩んでおります。評価制度をつくっても結局うまく活用できないということで、我が国も恐らく同じような悩みに当たると思うんです。そこは、今後いろいろ研究していく必要があるかなというふうに思っております。

 それから、二点目、行政府と立法府の関係。

 非常に難しい御質問ですが、我が国の場合は議院内閣制ということで、基本的には、国会から選ばれた大臣が内閣で行政を行い、そして、それを国会がチェックする、そういうやり方になっております。その中で国会自身の役目をどういうふうに考えるかということは、議院内閣制を否定するような形にはならないと思いますけれども、やはりチェック機関としての議会というのは非常に重要でございますので、両者はそういう関係になることが望ましいのではないかというふうに思っております。

 それから、労働基本権についてどう考えるのかということでございます。

 これは、憲法で勤労者には保障されている、公務員も勤労者であるということでいえば、国家公務員についても協約権やスト権があっていいんじゃないかという議論が当然あるわけでございます。他方、今の憲法のもとでは、公務員は全体の奉仕者である、あるいは公務の基準というのは法律で決めなければいけないということも決まっております。

 そういう流れでいえば、公務員の勤務条件というようなものもやはり法律で国会が決めるということがあるわけでございまして、そこのバランスをどちらにとるのかということだと思っております。

 本当に労使で決めるということをやるんだとすれば、それはやはり議会のコントロールを少し緩くしてといいましょうか、その分はもう内閣に任せるというところまでいけば労使交渉もあると思いますが、最終的には国会が決めるというままでは、なかなか本当の意味での労使交渉というのはできないのではないかというふうに考えております。

 いずれにしても、そこは国会において大所高所から御議論いただいて、どちらにするかということをお決めいただく問題だというふうに考えております。

渡辺(浩)委員 質問を終わります。どうもありがとうございました。

小平委員長 次に、服部良一君。

服部委員 社民党の服部良一です。

 今回、江利川総裁がおやめになるわけですけれども、じくじたる思いも持っておられるんじゃないかなというふうに想像します。

 と申しますのは、人勧を大幅に上回る給与削減というのは憲法違反のおそれがあるという発言をされまして、憲法という言葉まで持ち出されたわけなんですけれども、総裁を支えられてきた立場として、江利川総裁に成りかわって、憲法違反というふうにおっしゃったお気持ちをぜひ代弁していただければありがたいなと思います。それが第一点です。

吉田参考人 私も、事務総局において、総裁を支えて、特にこの給与特例法についてはかかわってきた人間でございます。

 人事院としては、労働基本権制約のもとで、公務員給与というのは民間準拠で決めるものが基本だ、そういう考え方でいたわけですけれども、公務員給与を、七・八%、民間準拠とは別のルールで下げる、そのときに、まだ労働協約締結権というものが法律上用意されていない段階で、一部の職員団体と合意したのでというようなロジックも見え隠れいたしましたので、そういうことだとすれば、それは憲法上疑義があるんじゃないかということを人事院としては申し上げたということでございまして、私もそういう考え方を持ってそこには加わっておりました。

服部委員 今後、もしなられるとすれば、ぜひその思いを受け継いで頑張っていただきたいなというふうに思います。

 それから、もう一点、先ほどから、若者の雇用といいますか、国家公務員の雇用の制限の問題が出ていますけれども、私も非常に懸念をしています。この前、自衛隊からヒアリングさせていただいたときも、最大の公務員組織の自衛隊そのものがもう高齢化しているということが非常に問題になっておりました。

 先ほどのお話の中では、年齢のバランスがいびつになるんだ、中堅層が手薄になるんじゃないかという御指摘がありましたけれども、同時に、現場職員に対する影響です。例えば海上保安官とか、そういったところの影響というのが、もし一律に削減されるということになれば大変出てくるんじゃないかという問題。

 それから、先ほど遠藤委員の方からも話がありましたけれども、三年以内の高卒、大卒の離職率、これが高卒の場合は四〇%、それから大卒の場合も三五%という高い率になっているわけですが、もし御存じであれば、国家公務員の三年以内の離職率がどの程度のものかということを知りたいのと、やはり、国家公務員として積極的に若者を採用することによって若者の雇用に対する前向きの役割を果たしていく側面もあるというふうに思いますけれども、その点に対する所見をお伺いいたします。

吉田参考人 今御質問の現場への影響ということにつきましては、私どもも、例えば刑務所であるとか海上保安庁であるとか、そういう厳しい現場を持っているところでは、これまでも、定年退職でやめた人について後補充をする。それで辛うじて勤務体制、結局、土曜も日曜もなく交代制勤務でやっているわけですので、そういうものが成り立っているところへ人が来なくなるということは非常に勤務あるいは意欲に影響が出てくるという話は、各省からはよく伺っております。

 それから、離職率でございますけれども、手元に数字はありませんが、今おっしゃられたように、一〇%、二〇%というような高い数字ではないというふうに認識しております。

 これは、もともと公務員になりたいといって試験を受けて入ってきた方々でございますし、入ってきて職場に失望するということも今のところない、基本的にはないということでやっているんじゃないかと思いまして、おっしゃられたように、多くの離職者が出ているという状況はないというふうに思っております。

服部委員 もう一つ、若者を国として採用することで資するということが必要なんじゃないかということです。

吉田参考人 失礼いたしました。

 雇用につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、日本全体の中の若者の雇用の状況というのは非常に厳しい状況がございます。公務というのは、そういうときには人を採用する、これはケインズ政策の基礎のようなことですけれども、そういうことをやっていくことがマクロ的には必要なんじゃないかというふうに私は思っております。

服部委員 ありがとうございました。

 終わります。

小平委員長 これにて各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 質疑される方は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。

 また、発言の際は、所属会派及び氏名をお述べいただき、一人一問一分以内としていただきますようお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

高木(毅)委員 自由民主党の高木毅でございます。

 時間に限りがありますから、簡潔にお伺いしたいと思います。

 政府が提出をしております公務員制度改革関連法についてでございますけれども、一つは、人事院の廃止あるいはまた公務員庁の新設というのがあります。それについてのお考え。そして、もう一点は、幹部人事の一元管理というのも盛り込まれているわけでございます。これはなかなか実際の運用は難しいんだろうと私は思っておりますが、参考人の御意見を賜りたいと存じます。よろしくお願いいたします。

吉田参考人 四法案の中では、労働協約締結権を付与し、公務員庁をつくり、同時に人事院を廃止するということになっております。

 先ほど来申し上げているとおり、これを十分御議論いただいて、仮にそういうことになれば、人事院が廃止され、公務員庁あるいは新しい委員会ができることになるというふうに私も思っております。

 それから、一元管理の問題でございますが、一元管理というものをどこまでを言うかという問題があると思います。

 現在出されている法案では、任命権は各大臣にあるわけですけれども、それを、特に幹部については内閣官房でその人選のコントロールには関与するというようなものが出されていると承知しております。

 ただ、日本国公務員という意識づけをしていく意味では、一元管理というよりも、例えば内閣が任命するとかあるいは内閣総理大臣が幹部を任命するとか、そういうやり方もあるのではないかというふうに個人的には思っております。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤です。

 先ほどに続きまして若干の質問をしたいと思います。

 最近の日本は、いろいろな問題が起こって、非常に横断的な取り組みが必要になってきております。ところが、官僚制が、縦割りの硬直化が指摘をされている、それからまた、現場感覚に欠けるという点が非常に強く指摘されております。

 具体的に言いますと、今回の東日本大震災の復興、予算はしっかりかなりついているし、法律もできているけれども、実際の現場の執行は非常におくれているというのが言われております。その背景に、縦割りの硬直化と現場感覚の欠如、また、現場のフィードバックがなかなか上に行かないといったことがあるわけでありまして、こういったことをどうやって乗り越えるかということが非常に重要だと思っています。

 例えば、若手の官僚については、被災地の現場に派遣して、現地のボランティアなんかとも協力させて、被災者の声を生に聞いたり、復興に向けてのさまざまなアイデアを現場から発想させる、こういうことが非常に大事だと思っております。そういった意味で、かなり大規模に若手の官僚を現場に派遣して、一種の研修も含めてやらせるということが一つの提案です。

 それから、もう一つは、グローバル化への対応ということがあって、いやが上にもグローバル化が進行していきます。ところが、なかなか日本の官僚、一応、若干の人たちは英語ができたり海外留学経験もありますが、もっともっと大胆に海外留学をさせて、例えば、英語の能力とか交渉能力とか、あるいは経営感覚を学ぶ必要があると思っている。

 例えばMBA等、いわゆる経営大学院等にもっともっと大量にそういった若手の官僚を派遣して国際感覚あるいは経営感覚を養わせることも大事だと思っていまして、今の二点の提案について感想をお聞かせください。

吉田参考人 まず、現場感覚を養うこと、セクショナリズム対策でございますが、今回の東日本大震災を受けた復興の現場には、各省庁から、特に、今、都市の再生等が問題になっておりますので、国土交通省であるとかあるいは経済産業省であるとか、そういったところだと思いますが、各自治体に相当数、若い人を中心に出しております。それが首長さんからかなり評価されているという話も聞いておりますので、そういう試みというのをもう少し長期的に組織的にやるというのは意味があることではないかというふうに思っております。

 それから、グローバル化への対応でございますが、人事院では、長期在外研究員という外国留学の制度を持っておりまして、毎年百人以上をアメリカ、イギリス、ドイツ、フランス等の大学院に出しております。

 さらに、ことしからは、今先生言われたようなグローバル化に対応するためには、マスターでは足りないので、PhD、ドクターなどを取れるような、希望し成績が優秀な人についてはさらに長くいられるような仕組みというようなものも用意して、能力の開発には努めていきたいというふうに考えております。

松野(頼)委員 民主党の松野でございます。

 先ほど、ちょっと時間がなくて質問できなかったことを質問させていただきたいと思っているんですが、例えば国家公務員制度改革基本法において、第十三条では、国家公務員制度改革を集中的に推進するために「国家公務員制度改革推進本部を置く」という形で、制度改革本部が置かれているんです。そして、「本部は、次に掲げる事務をつかさどる」となっていまして、「国家公務員制度改革の推進に関する企画及び立案並びに総合調整に関すること」というので、実は、行政府の中に国家公務員制度本部が法律にのっとって置かれ、そこが企画、立案、総合調整まで担うといって、平成二十年に設置をされているわけです。

 ですから、要は、人事院と、法律に基づく、行政府の中にある、内閣にある本部との両方で公務員制度、給与体系を考え出すから、例えば今回の、国会は七・八引き下げの法律を出し、人事院は〇・二三を勧告しというようなことが今現実に起こっているのではないかと思うんです。

 長年人事院で勤務をされ、昨今の、特にこの公務員制度改革に関する立法府及び行政府の動きに関して何か御意見があれば、ぜひお聞かせをいただきたいと思います。

吉田参考人 公務員制度改革本部と人事院の仕事の仕分けということでお答えしたいと思います。

 公務員制度改革本部は国家公務員法を改正するための準備をしておりまして、ですから、改正案をつくることについての総合調整は、当然、公務員制度改革本部で行うということになるわけですが、改正されるまでの間、つまり現行法のもとでは、人事院は、国家公務員法に基づきまして、今の給与でいえば、労働基本権制約の代償機関としての役割を担えということが書いてございます。その点は、公務員制度改革本部と我々との間で、認識の違いはございません。

 ですから、先ほど来御質問がありましたように、労働協約締結権が付与されるということになれば、人事院も廃止をされ、そして、政府の中で勤務条件を一元的に取り扱うということに制度としては完結するわけでございますので、それまでの間といいましょうか、法律が成立するまでの間、人事院としてはやはり労働基本権制約の代償機能を担わないと、これは法律違反ということになってしまうというふうに私たちは理解しております。

齋藤(健)委員 自民党の齋藤健です。

 私は経済産業省で人事企画官をやっておりまして、公務員の制度改革に大変関心があって、そのころから吉田さんとは意見の違うところがたくさんあったんですが。

 一つだけ質問しますが、公務員の採用が、なかなかいい人が採れなくなってきているということが長年続いてきております。この原因を何だとお考えになり、どうしたらいいかというのを改めて一言お伺いできたらと思います。

吉田参考人 齋藤先生には随分長いおつき合いをいただいておりますが、公務員にいい人が採れなくなってきているのではないかということについては、我々も、例えば、試験問題をつくっていただく大学の先生などと話をしていて、そういう感じを持っております。ただ、倍率そのものは比較的いいところを維持したりしておりますので、実態と形式というのはなかなか見分けがつかないところがあると思います。

 ただ、そういうふうに言われている背景には、先ほどもちょっとお話ししたんですけれども、やはり公務員の仕事に対する評価というのが非常に厳しくなっている。それから、現実に、昔だと、若い時代に係長や補佐でかなり責任のある仕事あるいは中身のある仕事をやれた、そういう達成感とか充実感があった、そして、先輩が、学生さんに、こういう仕事だから、いいから来いよと言えたということだと思います。

 ただ、最近はそこのところが非常に、仕事が上振れしているといいましょうか、昔係長がやった仕事を課長がやっているんじゃないかというふうにやゆされるような状況もありますし、それから、政治主導と言われる中で、行政との仕分けというところも必ずしも省庁によってはうまくいかなかったところもあるように思います。

 ですから、役人の我々の世代に聞きますと、自分の子供も公務員試験を受けたいと言ったけれども受けさせなかったというような人も出てきている状況がありますので、先生が御心配になるように、やはり全体としての環境を整備していかないと、ただPRをすればよくなるというものではなくて、深刻な問題があるというふうに私自身は思っております。

穀田委員 共産党の穀田です。

 一つは、先ほど給与の点について、社会的に適応した水準というお話がありましたけれども、一九九八年から十二年間で、実際は国家公務員の給与は下がっているわけですね。どの程度下がっていると認識しておられて、それが社会的水準に適応しているとお考えか。

 もう一つは、総裁江利川さんは、新聞のインタビューで、課長級以上の職員の賃下げというのは一〇%以上ありまして、そのときに、一〇%のカットは懲戒処分の水準だ、このように述べておられるんですけれども、こういう点についての認識と、そして、この場合、どういう例が当たるのかということについてもあわせて、それは一番よく御存じでしょうし、例示していただければ幸いです。

吉田参考人 この十年間の公務員給与の引き下げというのは、月例給、いわゆる月給のマイナス分と、それからボーナスのマイナス分と、両方ございます。特に、給与構造改革をしたということもありまして、地方では引き下げ幅が大きく、恐らく二割弱、一五%を超えて二割に近いような水準に下がっているというふうに思います。本省でも一割を超えている、そういう実態があります。これは、結局、民間が、この十年間、ある意味デフレ傾向の中で賃金が下がってきたものを、公務員が反映してそれだけ下がったというふうに我々は認識をしております。

 それから、課長級の一〇%の引き下げというのは非常に大きな引き下げでございまして、それを懲戒処分の例を出して江利川総裁が説明されたということだと私は認識をしております。

 どんなものがそういう具体例なのかというのは、今ちょっと、ここでにわかに正確にお答えしかねます。

川内委員 民主党の川内です。

 齋藤さんの御質問に関連して、吉田さんが、昔の官僚には達成感があったようだということを御発言されているわけですけれども、昔の官僚の皆さんも今の官僚の皆さんも、私は、その優秀性という意味においては余り変わらないというか、今の官僚の方が、よっぽど知識も多いし、さまざまに勉強もしているというふうに思います。しかし、達成感がもしないとすれば、そこはもう本当に大きな問題であるというふうに思います。

 要するに、昔は、あしたはきょうよりよくなる、来年はことしより必ずよくなる、右肩上がりの成長の期待あるいは国家としての成長の期待というものがみんなにあった。そういう中で、官僚の皆さんも、自分たちがやっていることが国民の生活の向上につながっているのだという実感、達成感というものを確信することができた。しかし、今はそれがないというところが一番の問題ではないかというふうに思うんですね。

 では、今度、人事官におなりになるわけですから、そういうところを人事制度の中でどのようにしていくのがよいのか。私は、給料の問題とか、実はそういうことじゃないと思うんですね。国としてのもっと大きな問題があるのではないかというふうに思っているんです。ちょっと雑談みたいになりますけれども、御所見をいただきたいと思います。

吉田参考人 大変鋭い御指摘をいただいたと思っております。

 確かに、右肩上がりのときは、みんなそれぞれが、よくなるということで具体的な達成感を持てたわけですけれども、特に昨今の状況の中では、どちらかというと、行政の仕事も、抑制したり引き下げたりということ。それはそれで、そういう制度を具体化するというのは達成感はあるわけですけれども、おっしゃるような意味でのポジティブさというのが欠ける部分があるかもしれないと思っています。

 ただ、政官関係というのも、昔の調整型、国会の中を飛び歩くことがいいというのではなくて、むしろ専門性を重視してどっしり構えた公務員像というのがこれから目指すべき公務員像になっていくんじゃないかと私は思っておりますので、先ほど先生から御指摘があったように、外国のMBAを取ったり博士号を取ったり、あるいは外国の公務員と伍して闘えるような、そういうところで自分の能力を発揮するというんでしょうか、それは当然国内でも、民間企業のそういう方と伍して、ともに進むのか、あるいは規制と被規制で闘うこともあるかもしれませんけれども、そういうところで能力を十分発揮して、達成感が得られるようになっていけばいいんじゃないかというふうに感じております。

小平委員長 もう少々時間がございます。せっかくの機会でありますので、どうですか、質問されていない方はいませんか。余りこういう機会はありませんから。

 では、松野君。

松野(頼)委員 昨今、いろいろメディアを見ていると、いわゆる公務員バッシングみたいなものが非常に横行しております。例えば、どこに比較をしてかわからないけれども、給与を取り過ぎであるとか、根拠のない、ある意味、非常に見るにたえないような批判がございます。

 そういう中で、先ほど川内さんがお話しになったように、やりがいとか、例えば自分の息子を公務員にしたいという部分で、そういう誇りとか、一生懸命やって社会に感謝をされるとか、そういう部分も非常にあるのではないかと思います。

 ぜひ人事院として、きちんとした意見なり反論なり、余りにもひどい誹謗中傷に関しては何らかのコメントを発するなり、やはり制度の中で公務員の皆さんを守るということがあってもいいのかなというふうに私は思っております。

 私たちが公務員の皆さんとつき合っても、朝も夜もなく本当によく働いているし、私は個人的にはその働いている労働に対するペイは決して高いものではないということを身をもって感じますので、ぜひ人事院としても少し新しい感覚でそういうことに取り組んでいただければありがたいというふうに思いますので、御意見をいただければと思います。

吉田参考人 大変温かい御支援、ありがとうございます。

 私たちも、公務員に対するいろいろな御批判に対しては、PRが足りない部分もあるんじゃないかということで、いろいろな機会を通じて、マスコミの関係の方と話をしたり、あるいは学者の先生方とも話をしたりして、いわば広報を通じた理解の促進ということに、これまでも努めてきましたけれども、これからより一層努めたいというふうに考えております。

小平委員長 それでは、これにて吉田参考人の所信に対する質疑は終了いたしました。

 吉田参考人、ありがとうございました。御退席いただいて結構です。

 以上をもちまして人事官の候補者からの所信聴取及び所信に対する質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

小平委員長 次に、本日農林水産委員会の審査を終了した競馬法の一部を改正する法律案、鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案の両法律案について、委員長から緊急上程の申し出があります。

 両法律案は、本日の本会議において緊急上程するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小平委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

小平委員長 次に、議院に出頭する証人等の旅費及び日当支給規程の一部改正の件についてでありますが、事務総長の説明を求めます。

    ―――――――――――――

 議院に出頭する証人等の旅費及び日当支給規程の一部を改正する規程案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鬼塚事務総長 議院に出頭する証人等の旅費及び日当支給規程の一部改正の件につきまして御説明申し上げます。

 本件は、国家公務員の給与の改定及び臨時特例に関する法律により政府の審議会等の委員の日当額が減額改定されたことに伴い、これに準じて委員会等に出席した証人・参考人等の日当額を引き下げようとするもので、本年四月一日から施行することといたしております。

 よろしく御承認のほどをお願い申し上げます。

小平委員長 それでは、議院に出頭する証人等の旅費及び日当支給規程の一部改正の件につきましては、お手元に配付の案のとおり決定すべきものと議長に答申するに賛成の諸君の挙手を求めます。

    〔賛成者挙手〕

小平委員長 挙手多数。よって、そのように決定いたしました。

    ―――――――――――――

小平委員長 次に、本日の本会議の議事の順序について、事務総長の説明を求めます。

鬼塚事務総長 まず最初に、日程第一につき、海江田財務金融委員長の報告がございまして、共産党が反対でございます。

 次に、動議により、農林水産委員会の二法律案を緊急上程いたしまして、吉田農林水産委員長の報告がございます。採決は二回になります。一回目は競馬法改正案で、みんなの党が反対でございます。二回目は鳥獣農林水産業被害防止特措法改正案で、全会一致でございます。

 本日の議事は、以上でございます。

    ―――――――――――――

 議事日程 第八号

  平成二十四年三月二十七日

    午後一時開議

 第一 保険業法等の一部を改正する法律案(内閣提出)

    ―――――――――――――

小平委員長 それでは、本日の本会議は、午後零時五十分予鈴、午後一時から開会いたします。

    ―――――――――――――

小平委員長 次に、次回の本会議及び委員会は、追って公報をもってお知らせいたします。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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