衆議院

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第5号 平成14年11月27日(水曜日)

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平成十四年十一月二十七日(水曜日)
    午後一時開議
 出席委員
   委員長 中井  洽君
   理事 田野瀬良太郎君 理事 棚橋 泰文君
   理事 蓮実  進君 理事 吉田 幸弘君
   理事 大谷 信盛君 理事 玄葉光一郎君
   理事 河合 正智君 理事 塩田  晋君
      荒井 広幸君    石田 真敏君
      佐藤  勉君    笹川  堯君
      松本 和那君    八代 英太君
      吉野 正芳君    渡辺 喜美君
      中川 正春君    中村 哲治君
      長浜 博行君    楢崎 欣弥君
      牧  義夫君    石井 啓一君
      矢島 恒夫君    植田 至紀君
    …………………………………
   参考人
   (政策研究大学院大学教授
   )            福井 秀夫君
   参考人
   (株式会社三菱総合研究所
   研究理事)        平本 一雄君
   参考人
   (芝浦工業大学工学部建築
   工学科教授)       大内  浩君
   参考人
   (明治大学政治経済学部教
   授)           市川 宏雄君
   衆議院調査局国会等の移転
   に関する特別調査室長   内野 隆正君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十七日
 辞任         補欠選任
  河村たかし君     中村 哲治君
  小林  守君     楢崎 欣弥君
  大島 令子君     植田 至紀君
同日
 辞任         補欠選任
  中村 哲治君     長浜 博行君
  楢崎 欣弥君     小林  守君
  植田 至紀君     大島 令子君
同日
 辞任         補欠選任
  長浜 博行君     河村たかし君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 国会等の移転に関する件


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     ――――◇―――――
中井委員長 これより会議を開きます。
 国会等の移転に関する件について調査を進めます。
 本日は、参考人として、政策研究大学院大学教授福井秀夫君、株式会社三菱総合研究所研究理事平本一雄君、芝浦工業大学工学部建築工学科教授大内浩君及び明治大学政治経済学部教授市川宏雄君に御出席をいただいております。
 参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、極めて御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 本委員会におきましては、現下の厳しい社会経済状況を踏まえ、移転規模、形態や新たな移転手法などのコンセプトの見直しについての検討を行っているところであります。
 本日は、そのような観点から、福井参考人には、国会等の移転の規模、形態についてのお考え、その具体的な方法論、また、東京都との比較考量についてのお考えなどを中心に、平本参考人には、大規模災害による損害と防災対策についてのお考えを中心に、大内参考人には、東京一極集中の是非についてのお考えを中心に、市川参考人には、首都機能移転論議の問題点と今後の方向についてのお考えを中心に忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、議事の順序についてでありますが、まず各参考人から十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
 念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることとなっています。また、参考人は委員に対し質疑をすることはできないことになっておりますので、あらかじめ御了承をいただきたいと存じます。御発言は着席のままで結構です。
 それでは、まず福井参考人にお願いいたします。
福井参考人 本日は、このような場で意見を述べる機会を与えていただきまして、まことに光栄に存じます。
 私からは、大きく三点申し上げたいと思います。
 第一は、首都機能移転の意義の再検証ということでございます。
 お示しの移転の規模、形態についてでございますが、これについては、そもそも何を目的として首都機能を移転するべきかという前提の認識によって大きくその結論が異なってくると思われます。この観点から、九九年の国会等移転審議会答申を踏まえた一極集中の是正、防災対応力強化、国政全般の変革という三つの目的を再度検証してみたいと存じます。
 一つ目は、東京一極集中の是正という目的でございます。
 歴史的に、東京圏への人口や企業本社の集積は長年の潮流でありました。これに伴って、交通混雑、環境悪化などの集中に伴う弊害が発生してきております。しかし、企業の取引等には集中に伴う規模の利益もあります。フェース・ツー・フェースのコミュニケーションが容易であるために、集積がかえって交通混雑や移動時間の浪費というむだを節約しているという側面もございます。集積は、多種多様なサービスの選択肢を市民に提供するだけでなく、東京圏の就業機会の多様さや求人量は際立っているということもございます。
 集中に伴う弊害とは、帰するところ混雑の弊害に帰着いたします。交通渋滞や環境悪化なども混雑の一種でありまして、一極集中対策とは、集中そのものを規制したり排除することではなく、混雑に対する直接の対処たるべきではないかと考えます。集中を抑制することは、混雑を解消しますけれども、集中の利益そのものをも壊滅させて、角を矯めて牛を殺す結果を招くことともなりかねません。現在の首都機能が混雑の発生原因であることは前提としつつも、その他地域への移転によって集中を是正するという趣旨であれば、今度はほかの地域で集中の弊害が発生する一方、東京での集中の便益が確実に低下するということになります。
 集中源を移すことは、ほどほどの便益とほどほどの弊害を発生させるだけでありまして、利益と不利益とがトレードオフの関係となるため、結局は集中問題の根本的解決とはならないと思われます。一極集中の是正のためには、混雑そのものをコントロールする、例えば混雑税や環境税といった独立の手段を講じるとともに、国家の権限などが過剰に混雑を発生させるという今の仕組みを変革するということが本質的課題になると思われます。
 二つ目の、防災対応力の強化という目的でございますが、災害のリスクを避けるというための首都機能移転でありましたら、災害時に想定される被害が東京と比べて明白に安全であるという地域を移転先として想定するか、または、首都機能の何カ所もの地域への分散を図ってリスクを分散するということが考えられます。
 しかし、前者は地震予知が現在困難である以上余り現実的ではありません。また、後者は同一の機能を複数の地域に分散するのでなければバックアップ機能を果たせないため、膨大な額に上る分散投資を上回るだけの効果があるか否かは疑問と思われます。
 さらに言えば、既存のブロックの中枢都市などがそのままの形で首都機能の一部を受け持つことでは足りずに、新たに白地から新首都を構築すべきという根拠は見出しがたいという問題点もあります。
 三つ目に、国政全般の変革であります。
 国政の課題として、官から民へ、国から地方へといった権限移譲は長年の潮流でありますが、首都移転がこれに寄与すると言い得るためには、具体的な課題に対して実質的に貢献するものであることが必要です。本来は、国政上の課題の実現と首都機能配置とは独立の論点だという批判もあり得ます。
 しかし一方で、長年にわたって官と民あるいは国と地方の特殊な関係が濃密に繰り広げられてきた東京では、望ましい関係の再構築が困難かもしれません。首都機能移転は、いわば強制的な東京からの人為的集中発生源の離別でありまして、新首都訪問に障壁を築くことによって権力的な構造が緩和されると考える余地もあります。仮に、濃密なコミュニケーションを前提とした従来の関係に変化がないままに首都機能移転が行われるのであれば、民間や自治体にとっての訪問のコストは耐えがたいものとなりかねません。
 その場合には、移転によって具体的にもたらされる構造変革の内容や程度についてもあらかじめ明らかにしておくべきと思われます。具体的には、行政運営について、情報公開法を超えて、例えば政策決定過程をすべて開示すること、行政の許認可、行政指導、補助金交付等におけるあいまいな裁量を立法によって明確化、透明化すること、国民の権利救済と行政の適法性を確保するために使い勝手のよい行政訴訟制度を構築すること、こういったことが必要不可欠と思われます。中央政府の権限や財源を必要最小限度に絞って、地方分権を徹底し、自治体や民間が主役となる社会構造に変革することも重要と思われます。
 さらに、全国的な改革のみならず、差し当たり新規に建設される首都を対象として、土地利用規制、税制、法規制などに関するさまざまな社会実験を行うことも想定できると思われます。現在、いわゆる特区法案の審議が進められておりますが、全国一律に適用するためにはデータが乏しいという制度について、新首都をいわば規制改革の特区と位置づけて全国の先駆けとなるさまざまな新しい試みを行うことも考えられると思われます。例えば、容積率規制を撤廃して自由な土地利用を確保すること、交通混雑を抑制し都市環境をも向上させる鉄道、道路の時間差料金制、すなわちピークロードプライシングを導入すること、環境税等を導入した循環型社会のモデル都市を構築することなどが考えられます。
 第二の論点、首都機能の規模、形態でございます。
 民間や自治体との接点が多く、かつ接触の密度が濃い組織ほど移転の優先順位が高いと考える根拠があると思われます。逆に言えば、集中発生源ではない機能について、わざわざ新規に用地を取得し建設費を負担してまで遠方に機能、職員を移転させることの意義は小さいと言わざるを得ません。このような組織のみを前提とするのであれば、人口規模を絞り込むことは可能と思われます。
 新首都への機能の移転後に全国から来訪する頻度と重要度の高い機能ほど移転の必要性が強いと言いかえることも可能でありまして、ただ、もっとも移転後に同じ権限を発揮し続けることとなっては意味がないということも当然のことであります。
 国家機能の三権の中では、司法、すなわち最高裁判所の機能は下級審と異なり、国民、企業との接触も少なく、移転の費用に見合う便益はほとんど期待できないと思われます。
 一方、中央官庁の行政機能は、現実に多くの自治体が接触拠点として東京事務所を置いていることからも明らかなように、権限等を背景とした集中原因の筆頭格でありまして、これらの中枢管理機能、対外的な指導窓口部局を移転させることには、一定の意義があり得ると思われます。
 国会は、立法、予算の決定が役割ですから、対外的な接触の必然性は行政機関よりも小さい。しかし、国会がこういったことに専念する環境を整備するという意味で、また実質的に行政庁に対して多大な移動のロスを生じさせないという意味で、これを近接した場所に移転することは望ましいと思われます。
 なお、クラスターといったブドウの房状の首都形態を想定する議論もありますが、本来、中枢管理機能は近接していた方が効率的で環境負荷も小さい。コンパクトなエリアの中で効率的で環境確保型の土地利用が実現できるわけでありまして、必ずしも合理性がないと思われます。
 最後に、第三点に、東京都との比較考量を一言申し上げますが、国政上の構造変革を伴わないままに東京以外の地域に莫大な建設投資を行うことは、社会的便益のないままに損失を存続させる、拡大させる結果を招くこととなりかねません。いわば、制度変革のないままの首都移転は、東京に首都を存続させる選択肢と比べて劣ったものとなると考えられます。一方、首都機能の集積の誘発効果を手放さないために東京に存続するべきだという議論は妥当ではありませんし、また逆に、首都機能の移転先に莫大な建設投資があることに意義を見出すような移転論が妥当でないということも当然と思われます。
 以上でございます。
中井委員長 ありがとうございました。
 次に、平本参考人にお願いいたします。
平本参考人 平本でございます。
 きょうは、このような場にお招きいただきまして、どうもありがとうございます。
 私は、一枚、簡単な資料に書いてございますように、東京の地震被災とテロ行為などに対する危機管理の脆弱性という点につきまして、災害による損害と対策という点について意見を述べさせていただきます。
 まず、東京の地震被災と対策という点ですけれども、東京にどのような地震が発生する可能性があるかということですが、これは、南関東直下型地震、そして相模トラフ沿い海溝型地震、これは第二関東大震災と俗称されますが、この二つの可能性がございます。このうち、直下型地震につきましては、切迫性があるというように地震学者には言われております。また、第二関東大震災につきましては、現在のところ、百年から二百年先に起こるのではないかという意見が多いようです。
 それで、この第二関東大震災が起こる前に、直下型地震が数回、東京に発生するだろうというふうに通常言われております。したがって、現在、東京の震災予想をする場合には、直下型地震についての予想をすることが中心になっております。
 それでは、この直下型地震の被災の被害がどれくらいになるかということですが、これは東京都や各種の機関で調査しておりますので、整理したものをきょうは説明させていただきます。
 まず、地震の想定としましては、東京都の区部の直下が震源になりまして、マグニチュード七・二、最大震度六強というものが起こる可能性が強いという形で予測がなされております。この最大震度六強というのは、阪神・淡路の大震災が七でございましたから、それよりちょっと低いという値でございます。
 こういったものが東京で起こりますと、直接的な被害としまして、人命では、死者が約七千二百人ぐらい出るだろう、阪神の場合六千三百人でございましたが、そして罹災者などが二百三十三万人ぐらいまで至るだろうという予測がございます。また、建物は、全壊が約四万三千棟、焼失が三十七万棟ぐらいに至るだろう、また被害総額は約三十八兆円程度と予測しております。
 こうした数字の実態はどのようなものかといいますと、東京が震災に見舞われますと、恐らく都心部の建物これは、新耐震の構造建築物というのは一九八一年以降がそうなっておりますが、それ以前のものが東京中心部に三分の二ぐらいございますので、かなりの建物が崩壊の可能性があるということです。
 また、東京の都市構造の特徴としまして、環七沿いに木造密集地域がずっと環状に広がっておりますので、そこにほとんど、多分、神戸の長田のような火災が発生します。そうしますと、東京の中心部は火の輪に包まれた場所というふうになるのではないかということが予想をされます。
 また、交通や通信のインフラは、使用が一時期不能になるということが当然予想されます。そうしますと、災害時の東京は、混乱と不安で制御が不能になるんではないかということを私自身は予想しております。
 こういう状態で、間接的な被害として、経済状況はどうなっていくかということですけれども、東京都をとってみまして、建物被害とか労働力減少によって、約三十二兆円ぐらいの被害が恐らく出るだろうと言われております。ただ、これは震度六強というときでございまして、仮に阪神並みの震度七ということ、これが起こらないとは限りませんので、起こった場合には、ここには書いてございませんが、約九十兆円ぐらいになるんではないかと言われております。
 また、国内経済。東京都は企業の中枢が集まっておりますので、他の東京以外のところへの影響というのも非常に強い。これにつきましては約十二兆円という数字が出ておりますけれども、私は、恐らくもっと、これ以上のものが出てくるのではないかと思っております。
 また、復旧復興につきましてはどれくらいのコストかということですが、約四十から八十兆円ぐらい。本格的な復興は、時期としましては五年以上かかるだろうと思われます。また、復旧の速度でございますが、道路系統は二カ月ぐらい、あと、ライフラインと呼ばれます、電力につきましては一週間、都市ガスは二カ月ぐらいということが考えられます。
 こうした被災の予想ができるわけですが、これに対しまして、どのような災害対策を考えるかということですが、まず第一点は、当然、地域的に、自治体、住民による対応力というのは第一でございますが、それ以外に、東京は現在首都でございますので、その首都機能というもの、これの司令機能というものを安全に確保していかないといけないと思われます。
 現在、首都機能の要員、例えば霞が関の職員の方が当日どれくらい役所にやってこれるかといいますと、大体三分の一ぐらいだろうと言われております。一週間たっても三分の二までしか集まれないだろうというふうに言われております。そういう点では、司令塔としての安定的な機能というのは発揮できませんので、私は、安全な場所に安全な装備をしつらえて、新たに首都機能を移転しまして、そこで安定的な司令塔の機能を発揮できるような状態に今後していくべきである、いわゆる東京からの首都機能移転というのは必要であると考えます。
 特に、こうした震災の場合は発生後三日間が非常に大事だと言われておりまして、ここの段階で自衛隊などの早期の全面的な投入を図る、そうしますと、人命のかなりの部分が助かるんではないかと思われます。また、自治体だけでは部分的な情報しか収集できないということがありますので、そこから一たん安全な場所にあって広域的な情報を収集して、そして全国、また現場に対して発信していくという、総合支援・調整機能というものが非常に必要であると考えております。
 また、復旧復興段階になった場合には迅速、適切な活動というのが必要でございまして、その速度が非常に求められます。交通インフラを緊急に回復する、そして、法制度、予算を、緊急に対応措置をするということによって、かなりの間接的な被害を小さくすることができるかと思います。
 その中身としましては、国内の社会秩序の維持というものがあります。これは国政にとって非常に重要でございます。また、日本経済の安定性を維持する。
 例えば、情報ネットワークというものは、コンピューター機器の大体四割が多分損傷をするだろうと言われておりまして、企業活動は一時停止してしまいます。また、それに伴い、関東大震災のときも金融恐慌が発生しましたが、こういう金融不安ですとか連鎖倒産の可能性、こういったものを回避する必要がありますし、現在は非常に国際的な経済活動が中心になっておりますので、日本の信用というのを維持し、また国際的な金融不安というのを起こさないようにする、また海外企業が日本から脱出しないようにする、いわゆる日本の信用を維持するということが非常に重要かと思います。こういった点に適切に対応できないと、日本の国際競争力というものに大変なダメージが起こるのではないかと考えております。
 あと、移転跡地というものを活用しまして、東京の防災性能というのを強化するというのも非常に重要かと思われます。
 それから第二点目に、テロ行為などに対する危機管理の脆弱性でありますけれども、東京というのは、東京一極に集中し過ぎているということで、かなり危機管理が困難になっております。ニューヨークは、WTC、世界貿易センタービルが崩落しまして、あのビルの地区だけ崩落したのに、都市機能、経済が麻痺しまして、心理的にも大変なダメージを受けてしまったということであります。これに比べまして東京というのは、機能中枢の集積度合いはニューヨークの比ではないわけでございます。ここが何らかのダメージを受けた場合に、日本国土全体がかなりのダメージを、より大きいダメージを受けるということになります。
 IX、これはインターネットの接続拠点という意味でございますけれども、これも実は東京の大手町に集中してしまっておりまして、こういったところにピンポイント的な何らかの攻撃が行われると、我が国の活動がストップしてしまうという状況に東京は置かれております。
 余りにも何もかもが東京に集中し過ぎるというのが問題でございますので、これに対する基本的な対策としましては、危機管理しやすい政治行政都市の建設と経済中枢の分散が必要であると考えます。政治行政都市といいますのは、今後かなりの形で政治行政が電子政府化してまいりますので、こういう電子ネットワークに対する完璧な防御ができる新しい都市をつくる、その方が恐らく東京の改造より安上がりだろうと考えます。
 また、経済中枢の分散というのは、こういう情報ネットワークはどうしても需要見合いで集中してまいりますので、経済活動自体をある程度分散しないといけないということがございます。
 こうした点で、首都機能を東京から移転し、また、経済中枢などを東京からもう少し分散していくということが災害のためにも必要ではないかと考えます。
 以上でございます。
中井委員長 ありがとうございました。
 次に、大内参考人にお願いいたします。
大内参考人 大内でございます。ありがとうございます。
 東京一極集中の問題と国会等の移転に関しまして、私どもの考え方を述べさせていただきます。
 私どもは、政策には、緊急性を要する政策と問題の重要性を論ずべき政策の二種類があると常々考えております。
 本件に関しまして緊急性を要する政策とは、ただいま平本参考人からもありましたが、大地震あるいはテロリズムなどへの対応を考えて、政治の中枢のバックアップをとるものと考えられます。永田町と霞が関に政治の中枢が集中している現在のシステムは、その意味で緊急時に対して大変脆弱であるというふうに思います。
 二点目の、我が国の国政にとっての重要性の高い政策とは、明治以来つくり上げてきた政治、経済、文化が首都東京に集中するという国のあり方を変えるべきときが来たのではないかという課題であります。政治の世界と経済、文化はある程度の距離を離して、分散型のネットワーク社会をつくるべきであるという問題であります。
 では、一番目の、政治の中枢のバックアップをとるとは、具体的にどういうことか。
 この首都東京が、ただいまもありましたように、七十九年前の関東大震災規模の地震に見舞われる危険度は残念ながら高まっております。地震のエネルギーが蓄えられていると考えざるを得ないからですが。地震による東京の首都機能不全は、我が国だけでなく、世界の政治経済まで大変な影響を及ぼすことは必至であります。
 そこで、東京と同時に被災する可能性のないところに小規模の国会都市を建設することが望ましいと考えます。なぜならば、災害の被災者が復興の支援者になるということはできないからであります。あの神戸の震災に際しましても、国会におかれましては大変多くの緊急立法をお願いいたしましたが、東京が今のままで震災に遭うことは想像したくないくらい恐ろしいものであります。
 もし新しい国会都市の建設が難しいのであれば、今あるどこかの自治体の施設を借用して、例えば特別国会を開催することはできないのでしょうか。大変な作業にはなると思いますが、結果として、東京に中枢機能が集中していることの問題点を明確にして、最小限の対策をとることにつながるというふうに考えております。
 次に、二番目の政策の重要性として、国の形を変えるために首都機能の移転を図るという考え方についてであります。
 まず、首都機能の移転が東京一極集中の問題解決と関連するという問題提起については、一つの誤解があるというふうに思います。それは、首都機能の移転によって東京の人口や経済の集中問題は解決しないのではないかという問いかけでございます。例えば、東京都による反論はそのような反論がございます。それは、私はそのとおりであるというふうに思います。首都機能に関係する数十万人の人口が東京圏から仮にいなくなったとしても、いわゆる巨大都市東京の問題は解決いたしません。企業の本社機能の約六割近くが現在東京圏に存在する、あるいは、外国法人の九割が東京圏で活動しているという問題も、余り大きくは変わらないと思います。
 変えるべきものは、政治、経済、そして文化までもが一極に集中しているという我が国の国の形、あるいは、国のシステムを変えるべきであるということであります。
 明治以来つくられてきたこの形は、確かに、戦前の殖産興業や、あるいは戦後の復興、あるいは経済大国の立国には有効なシステムであったと考えられますが、それはある意味で発展途上国型のものであり、今や古いシステムとして、むしろ弊害が大きいように思います。現在懸案の構造改革がなかなか進まないことにもその一端があらわれているように考えております。
 私どもは、中央の政治が責任とリーダーシップを発揮すべき分野は、国家の安全と外交の課題であって、福祉、教育、都市開発、産業振興などに関する政策は、地域の自治体や民間企業、さらには市民活動に任せていくべきであると思います。自立した強い市民社会や企業を育てるためにも、政府の役割を小さくするべきと考えております。特に昨今は、IT技術の革新によってそれが可能になってきたように思います。
 民間の活動は既に分散型のネットワークシステムを採用する時代に変わってきております。我が国の企業でグローバルに活動している企業の中には、地方都市に本社を立地させているところもたくさんございますし、複数の本社機能を備えているところもございます。NPOの活動拠点なども、必ずしも大都市立地とは言えません。そうした分散型のシステムを政府も採用する時代が来ているように考えております。
 では、具体的にどのような首都機能移転が我が国にとってふさわしいのか。イギリスとドイツの例が参考になると思います。
 英国は、首都はロンドンのままでありますが、首都機能の半分以上を地方都市に移転させてきました。かつてはロンドンを第二次大戦の戦火から守るための手段でありましたが、七〇年代からは、中央政府のコストを削減する、そして、同時に地方での雇用創出を図るといった地方振興が目的であり、現在もその趣旨に従って行政改革が進められていると聞いております。七〇年代といえば、英国病と呼ばれるくらい英国の財政や経済が苦しい中で、その打開のためにとられた政策であります。
 一方、統一後のドイツは、ボンにもかなりの省庁を残す形でベルリンに首都を移しました。もともと連邦制のもとで政治、経済が分散していたこともございますが、ベルリンでは古い建物の再利用を図るなど、低コストで首都移転を図った手法は大いに参考になると思います。しかも、新しいドイツの議会は、ガラスのドームによって非常に明るく、フラットなスペースを採用するなど、新しい時代の議会を上手に演出しております。
 さて、二十世紀は、高層ビルによる巨大都市をつくる都市デザインが礼賛された世紀でもあります。私は、二十一世紀は環境共生がその最大のテーマですから、コンパクトで機能的な小規模の都市が望まれる時代であるというふうに思います。新しい国会都市がそうした環境共生都市のモデルになることを期待しておりますし、できれば日本人の心象風景の中にある里山のような風情を保ちながら、ハイテクを駆使した都市のデザインを夢見ております。
 また、現在の国会議事堂、これは建築の先人たちの努力によって純国産でつくられた最大の建造物として由緒ある近代建築であります。しかしながら、大変失礼ながら、建築的な意味でのデザインという意味では少し古いものであり、現代の国民にとって余り親しみの持てるイメージがございません。
 さらには、新しい国会都市や新議会のデザインが、周辺のアジア諸国や世界に対して、日本が国の形を変えたことをメッセージとして伝える役割を果たすことに期待しております。
 以上、第一に、政治の中枢を災害等の危険から守るために、国会のバックアップをとることをぜひお考えいただきたい。第二に、これまでの集中型の国の形やシステムを変えるために、小規模な首都機能移転を図るべきであるというふうに思います。私は、既存の都市を活用する分都のような形態でもよいと考えております。
 最後に、分散型のシステムを採用することなどで国政のコストを削減して、新しい国会のイメージをつくり上げることを期待しております。
 以上でございます。
中井委員長 ありがとうございました。
 次に、市川参考人にお願いいたします。
市川参考人 御紹介にあずかりました明治大学の市川でございます。
 本日は、発言の機会をいただきましてありがとうございます。
 きょうお話しいたします議題は、そこにございますように、レジュメ一枚、それから図表がございますが、まずタイトルでございます首都機能移転論議の問題点と今後の方向ということで、大きく二つ申し上げます。一つは、首都機能移転の意義と効果に関する疑義であります。これは四点ございます。それから、二つ目に、これからの方向、これは二点ございます。
 まず、首都機能移転の意義と効果に関する疑義でございますが、首都機能移転の意義と効果には、東京一極集中の是正の効果、災害対応力の強化、国政全般の改革の三つがあるとされてきました。しかし、私は、そのすべてについて疑問を感じております。
 まず一つ目に、東京一極集中の是正です。
 バブル経済のピークとも言える時代になされました国会等の移転に関する決議には、移転理由として幾つかの文言がちりばめられていました。しかし、実体としては、当時急速に進行しておりました東京への諸機能の一極集中をとめることにその主点が置かれていたと思われます。
 このときの議論のポイントは二点ございまして、一つは、一極集中によって地方の衰退が引き起こされたという点、それからもう一点は、東京では渋滞や混雑などが悪化したという大都市問題の深刻化です。国会等の移転によってこれらを解決しようという論理なわけですけれども、しかし、残念ながら、国会決議以来の長期にわたる議論の中で、その考え方の妥当性が立証されたとはとても思えません。
 しかも、こうした物理的な一極集中現象は、首都機能移転ではほとんど解消されないということが既に判明しております。まず、図表の一ページをごらんください。これは東京圏におきます鉄道混雑率の状況でございます。既に、移転決議がなされた時期から見ますと、大幅に混雑率は下がっております。これは東京圏の鉄道整備による効果でございます。これを仮に、かわりに首都移転をやった場合の効果は、右にございますが、ほとんどないという結果でございます。冷静に考えましても、東京圏の人口が三千三百万人、首都圏が四千万人でございますから、このうちで最大ケース、五十六万人の減少では非常に微弱であるということがわかるわけです。
 決議から既に十二年が経過し、社会経済状況は激変をしつつあります。そうした中で、二〇〇六年には、日本全体で人口の増加がとまります。そして減少に向かいます。また、東京圏でも、二〇一〇年から一五年ころには人口減少が始まります。これは、きょうお手元の図の二番でございます。このように、ピークを打って下がっていくということが現在言われております。
 すなわち、バブルのさなかに考えました、集中は悪、集中は悪いという論理は既に破綻しつつあると思われます。これからの時代は、いかに既存のストックを活用してその集積を生かしていくのか、それによってグローバリゼーションの中でいかにサバイバルができるのか否か、これが大きな課題となっていくと思われます。
 一極集中の弊害ばかりを声高に叫ばずに、世界にたぐいまれな東京における多様な機能の集積と、政治と経済、すなわち霞が関と丸の内の近接性を再評価しなければならないと思います。
 図の三を見ていただきますと、これは東京の場合と今回の候補地であります岐阜・愛知を比べたものでございます。同じ縮尺で書いてありますので、いかに今回の計画が大きいものであるか。さらに、このクラスター間を新交通システムで結ぶということが言われておりますが、その利用の状況を考えても、採算が立つめどは立っていないと思われます。かつて政治と経済の癒着が問われたバブルの時代は、確かに過去の悪夢ではありました。しかし、現在、国際社会での競争を考えれば、これからは政治と経済の緊密な連携が改めて必要と思われます。特に経済の最先端をつかさどる東京に政治と行政があってこそ、国の活力の回復が望めることとなります。
 二つ目に、災害対応力の強化についてです。
 九五年に阪神・淡路大震災が起きましたときに、殊さらに大都市の災害に対する脆弱性が強調されました。そして、それが移転の理由の大きなポイントになりました。ところが、移転先候補地には、活断層の巣に位置するものや周囲を活断層に囲まれるものなどがあります。移転すれば首都が安全に機能するとの保証がありません。
 これにつきましては、図の四をごらんください。これは、今回の三候補地についての活断層についての状況を見たものです。この図中の黒い線が全部これは活断層であります。
 こういう状況を考えれば、むしろ、東京に災害が発生した場合のバックアップをまずつくることが先である、すなわち、同時被災しないでしかも短時間に移動できる場所にそれを準備しておくことが重要であるということが考えられます。一万三千五百平方キロメートルもあります東京圏内には、そうした候補は幾つもあるわけです。お手元の図の五番をごらんください。これは東京圏におきます現状でのバックアップの状況でありまして、さいたまと立川にこれは国の防災拠点があります。
 こういう形で、霞が関との関係で考えますと、例えばさいたまアリーナを使って臨時国会をするという話もあるようでございまして、具体的に現状ですぐできることがあるわけです。
 しかし、それでもさらに足りなければ、第二、第三のバックアップをネットワークして東京圏外に置くことで解決されるかと思います。この場合も、東京から遠くては意味がありませんので、大体百キロ圏ぐらいに考える。それから、さらに、バーチャルであれば、これは仙台でも金沢でもいいと思います。この場合も、平常時には他の用途に使用しておいて、緊急時にだけ使用できる施設があれば足りるということです。新たに首都機能を移す移さないという議論にはならないと思います。
 第三点の、国政全般の改革でございます。
 首都機能移転と国政の諸改革とは車の両輪として一体的に推進されるべきだとされています。しかしながら、どうも現状では、諸改革の進行がままならない状況下で、移転こそがその契機となるとして、移転を先行して行おうとの雰囲気になりつつあります。私は、これこそ本末転倒だと言わなければなりません。
 そもそも今回の移転論議で模範とされましたのは、移転調査会の最終報告書で示されたように、アメリカのワシントンとニューヨークの例をもとにした政経分離の方式です。しかし、忘れてならないのは、アメリカは各州が強い権限を持つ連邦国家であることです。また、よく成功例として出されるキャンベラを首都とするオーストラリアも連邦制です。
 こうした例を見るならば、両輪のもう一方は、明らかに完全な地方分権のもとでの道州制などの政治の仕組みの実現が前提になければならないことになります。そうしたシステムができ上がらなければ小さな政府は現実のものにはなりませんし、その担保がなければ首都機能移転の論議をそもそも進めるべきではないと思っております。
 そして、以上の三点を考えまして、四番目として、移転の論拠の説得力です。
 バブル経済の時代には、日本の国土計画の大前提でありました均衡ある発展という考えが存在しました。しかし現在、二十一世紀に入りまして、国内的には成熟社会への移行が始まり、対外的には国際的な競争力が必要とされています。こういう中で、均衡ある発展の考え方はその役割を終えつつありまして、新たな考え方を求める時期だと思います。これにつきましては、国土審議会でもそういった議論をしているというふうに聞いております。その意味では、二十世紀におきまして設定されました均衡ある発展という考え方から生まれた首都機能移転の論議はここで終止符を打って、次のステップへ向かう必要があると思っております。
 先ほどの図二にありましたように、二〇五〇年には日本の人口は現在より二割以上減少すると言われております。東京圏でも一割程度減少するでしょう。そうすれば集中圧力からは解放されることになりまして、もはや、一極集中は罪悪であるという構図だけを追っていては、これから起きる議論はすべて不毛で、何も生まないことになります。必要なのは、既存の集積を生かして、いかにして国の活力を回復するかにあると思います。
 続きまして、これからの方向を申し上げたいと思います。
 一つは、まず、審議の信頼性でございます。国会等移転法の第二十二条では、移転の検討は、国民の合意形成の状況、社会経済情勢の諸事情に配慮し、東京との比較考量をするということになっております。国民の合意形成につきましては、各種のアンケート結果を見ても、長きにわたる議論で移転賛成の意見は高まることもなく低下していると思われます。また、社会経済情勢を考えてみれば、効果の明らかでないものに極力費用をかけないということは現在常識になっております。さらには、東京との比較考量については、比較対象としての移転候補地を一カ所に絞り込むということができずに、最近では分散して分都する案まで浮上してきています。
 そもそも、審議会で候補地の重みづけ手法による総合評価で上位となった候補地が、なぜそのまま選定されないのでしょうか。あるいは、選考過程における不十分な情報公開の状況や、二十人の専門家の評価も決定打にならないというのであれば、今後行われる比較考量についても不安が残ります。比較考量では、その評価に当たって信頼に足る第三者を多く入れて、しかも十分な情報公開をして、最後の結果を尊重するなどの大前提が必要かと思われます。
 また、移転費用の試算についても、算出根拠のわからないものがあるのではないか、あるいは第三セクターの事業を民間投資として公的負担を避けているのではないか、あるいは多額の費用のかかる周辺の整備、すなわち広域インフラの試算はこの中に入っていないのではないかといった、とかく費用に関する過少見積もりに対する疑念が消えておりません。少なくとも、国民の合意を目指すのであれば、公平かつ透明な決定がなされなければならないことは自明の理と考えております。
 最後に、今後の進め方を申し述べます。
 移転の審議が長引く中で、移転を決めた国会決議の意味は重いとの指摘がされることがあります。しかし、決議から十二年たち、法律の第二十二条をまつまでもなく、移転の意義が失われたとわかったのであれば、国会で移転中止を再度決議すればいいと思います。
 しかし、移転をやめたにしても、長きにわたった審議の過程で判明した課題もあります。これからはその課題解決について、首都機能移転ではない国家プロジェクトを次に進行させればよいのではないでしょうか。もちろん、小さな政府を実現するための大胆な権限と財源の地方への移譲は実現しなければなりません。しかし同時に、すぐにでも実行に移さねばならないのが、首都のバックアップ都市を至急に準備しておくことだと思います。そしてさらに、低迷する日本の活力を回復するために、東京を初めとした大都市圏での当面の集中的な整備が不可欠です。そうすれば、それが結果的に国の活力の回復を促し、そして豊かな地方を生み出す早道だと考えております。
 御清聴ありがとうございました。
中井委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
中井委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 委員各位に一言申し上げます。
 議事整理のため、御発言は、一回につきおおむね三分以内でお願いいたします。また、御発言は、挙手の上、委員長の許可を得た後にお願いいたします。御発言は着席のままで結構です。
 それでは、挙手をお願いいたします。
松本(和)委員 自民党の松本です。きょうは大変御苦労さまでございます。
 福井参考人にちょっとお尋ねしたいんですが、今お話の中では出てこなかったんですが、先生のお書きになった資料の十ページ、国会等の移転費用の軽減に関する検討というところでございますけれども、先生は、PFI、不動産の証券化等はそれなりに有効な手法だけれども、抜本的な移転費用の軽減にはならないという指摘をされているわけですが、前回の参考人の方の中の寺島参考人が、日本発信のメガプランというのは日本には今までなかったという形の中で、PFIを駆使して国際的な民間資本、要するにグローバルスタンダードの中で国際的な民間資本で推進すべきだというお話がございました。
 私も、移転跡地は、短期間で多額の資金調達ができる。例えば不動産の証券化。特に、霞が関ですから都心の一等地ということで。先ほどちょっとお話が出ました容積率、そういったものを相当倍増させて計画に当たれば、不動産証券化というのは大変おもしろいんじゃないか。
 ただ、移転先地に関しましては、PFI事業という話もあるんですけれども、その辺のちょっと難しさがあるんですが、この辺の先生のお考え方をもうちょっと詳しくひとつお聞かせ願いたいのと、その後に土地収用法という形のことがうたわれておりますけれども、この点についてちょっとお話し願いたい。
 以上です。
福井参考人 まず第一のPFIについての御指摘でございますが、当然これはPFIですとかあるいは不動産の証券化の意義を否定するものでは全くございません。
 基本的に、土地利用については、例えば都市計画のような形で、政府が何らかの土地利用が望ましいとか、あるいはどうすべきだという規範を中央集権的に定めるよりは、できるだけ民間の自発的な創意工夫で土地利用がなされて、それがいわばほかの人の土地利用なりに迷惑をかけない形で自由な発露があるというのが基本であるということで考えますと、こういった民間手法には非常に意味があるということは大前提でございます。
 しかし、現在のPFIはまだ使い勝手が大変悪うございまして、例えば管理業務だけを民間に任せるというような形の、非常に限定的なPFIが中心になっておりまして、そのような形では抜本的なものとはなりにくいということでございます。
 それで、きょうはちょっとお話を割愛したんですが、この資料の後ろの方には出ておりますが、できるだけ丸ごと任せるという意味で、例えば借地ですとか定期借家を利用した形で、土地利用のデザインも含めて民間の創意工夫にゆだねる、政府部門はそのいわば迷惑のコントロールだけ行うというような徹底的な分業を行う形であれば、民間活力の活用の土地利用というのは大変意味があるというふうに考えております。
 それから、これにもかかわるんですけれども、もう一つの御指摘の土地収用でございますが、やはりどこか新首都の候補地が決まりますと、当然民間の方は土地投機を考えますので、いわば土地の先買いや買い占め的なことが必ず起こります。その際に、いわば税制や収用制度の現在のような枠組みのもとでは無秩序な土地の投機がかなり過熱する蓋然性もありますので、土地の収用権を背景にした土地の先買い権のようなもの、あるいは土地税制で開発利益を吸収するような仕組み、こういったものを事前に整えた上で新首都の具体的な候補地が決まるという、その制度的な手当てをできるだけ事前に講じておくということが重要ではないかと考えております。
大谷委員 福井先生にお伺いしたいんですけれども、集中の発生源を分析して効率的に移していったらというお話だったと思うんですが、私は、確かに司法が市民、国民に密に接してないから集中を生んでいないというのは理解できるんですけれども、首都機能の移転となった場合は、三権がそろっていないと首都機能移転の意味、目的というものが達成できないのではないかというふうに思うんですが、その辺はいかがお考えですか。要するに、この国の形態、求められている効果を達成するためにも三つ一緒であるべきだという考えなんですけれども。
福井参考人 おっしゃるとおり、確かに三権相互の憲法上の関連を想定いたしますと、これがばらばらであっていいということにはならないという点、確かにおっしゃるとおりだと思います。
 ただ、ここでの私の問題提起の趣旨は、繰り返し申し上げましたように、首都移転そのものが自己目的であってはならないのではないかということが出発点でございまして、首都移転に関連して、それが一体何のためなのかということを突き詰めて考えますと、先ほど私申し上げましたように、集中是正、防災是正ということも確かにそれなりの論拠はありますけれども、やはりどれだけ国政上の構造変革の契機となり得るのかということを中心に考えたいと考えております。
 その観点からしますと、国のある機能が自治体や民間を呼び寄せる吸引力が非常に強い、あるいは逆に、例えば最高裁判所のようにめったなことでは口頭弁論は開かない組織もあるということからすると、優先順位をつけるとすれば、むしろバリアになるような機能が外に移ることで不自由になるという認識こそが国政上の変革の起爆剤となり得るのではないか、こういう思考回路で考えて、あえて優先順位をつけてみればあのようなことになるのではないかということで申し上げました。
八代委員 四先生、どうも御苦労さまでございます。
 中でも、市川先生の御発言は我が意を得たりの思いでございまして、大変感動をしながら聞いておりました。
 この委員会では多勢に無勢でありまして、私の発言は時には後回しにされたり、いろいろ大変でございます。
 しかしながら、いろいろお話を聞いておりまして、やはり日本という国全体を考えましても、八五%は山また山、そしてその中に集落が存在して、東京圏があって、そしてまたいろいろ首都は移り変わって今は集大成の形でこの東京というものが存在をしているわけなんですね。
 言ってみれば、東京は、東京都民のものでもなく、まさに日本国民のものであり、この狭い日本列島に一億二千六百万いるという、この機能そのものが、ここに東京があればこそという思いも私たちは気持ちの中にはあるわけでありますが、そうした中で、これから少子高齢化時代を迎えて百年後には恐らく日本の人口も六千万人ぐらいになるだろう、このように言われております。
 六千万人ぐらいになりますと、自給自足になっても、国土形成はゆったりとした形になっていきまして、今のような一極集中の弊害とか、あるいは首都をどこへ移すというようなこと、いろいろ考えましても、今こそ、この近代国家の集大成の中に三権がいい位置で配された、そしてまた政治と経済というものが不可分の形で存在する、これを切り離して考えるという意見もあるのですけれども、私はやはり、日本の集落主義それからまた護送船団民族的な発想を持ちますと、別にグローバル社会に何でもかんでも分断するのはよくないと思いますし、そういう意味では、まさに東京の現状というものが、これからリスクを伴ういろいろな経済のことを考えましても、今こそこの東京に磨きをかけて、そして日本の首都として、あるいは国会等三権のいわば中心的な立場としてやっていくということが大事ですが、きょうのほかの先生方も、それぞれ災害ということを大変強くおっしゃっておりました。
 この委員会で渡辺喜美議員がバックアップ機能ということをよく御発言されまして、あるいはアメリカにはキャンプデービッド的なものもある。そういうことを考えますと、大げさに首都機能移転だの、国会等移転だの、もう百何回も委員会をしていまだ結論は出ず、本来は五月に出さなきゃならぬものがずるずると来て、またいろいろな人たちが、賛否含めた繰り返し同じ議論がオウム返しのように行われているということを考えると、三権の中の立法府の責任においても、まさに市川先生がおっしゃったように、移転中止の決議ということも僕は政治の決断で必要だと思うのです。
 いろいろ背景を考えても、平成二年の当時とは全く状況が大きく変わっているということを考えましても、私は、そういう思いを大変持っているわけですね。
 そこで、お伺いしたいのですが、今、栃木・福島という候補と、それから愛知・岐阜という二つ目の候補と、三重・畿央という、審議会の方々もこういう無責任な選び方をして内閣に提出されて、それを今度は国会でその中から選べ、こういうことですが、国会は大変いい迷惑だろう、私はこのように思っているのです。
 そこで、三人の先生方、バックアップという発想のもとに、やはりそうはいっても首都東京とは距離がとてつもなく遠くでいいというものじゃないし、そのバックアップを考えてもどのあたりがいいだろうということを三先生に伺いたいと思うことと、それから、市川先生には、この三つの候補地がいかに、だめであるかということは別に声を大にすることはないんですが、そこと東京との相違点、もしここから五十万なり六十万の人たちが移ったとしても、そこはまさに霞が関を中心として空洞化になるわけですね。日本の経済が空洞化というのは、これは、中国へ移転する、東南アジアに技術移転をされて、まさにその空洞化ということが大きく後遺症として存在するだろうと僕は思うのです。
 そういう意味での、移転することの中における市川先生の三候補地の問題点を伺えれば、このように思っております。
大内参考人 今、八代先生からのいろいろの大変有意義な指摘をいただいたのでありますが、私が考えておりますのは、確かに東京に磨きをかけるということは一つの考え方だと思うのですが、例えが適切かどうかわかりませんけれども、一度引っ越しをしてみると、その引っ越しをしてみたことによって実にいろいろ古いものを抱えていたということがわかってくるということが、私自身も経験しておりますし、例えば企業の本社などがそういうことをやってみて、それまで仕事のやり方として非常に大きな古いやり方を引きずっていたということで、企業がそれを契機に非常に軽い形でやりやすい形に仕事のやり方を変えていくということをよくしております。
 例えばそういうことが一つは言いたかったということと、それから、バックアップをとる場合に、全く新しい国会都市をふだんは使わない状態でやるというのは、やはり非常に大きなむだになることは事実だと思うのです。
 ですから、私が申し上げたいのは、できれば一年に一回ぐらいどこかで、臨時国会なのか特別国会なのか、この辺私は余り詳しくはございませんけれども、例えば一時的に国会を、どこかの自治体にお願いをする形になりますけれども、そういうものを開いていくということは、結果的に、いろいろな形の国政が集中している、意思決定が集中しているということをあらわにすることになるんだろうと思うのですね。
 そこで、いろいろなことのシミュレーションをしていく。ですから、地震と同時に被害を起こさなくて済むという意味では、やはり百キロ程度離さなきゃいけないということだと思うのですけれども、そういう意味では、非常に小規模で、しかもどこかの自治体にお願いするという形のバックアップをとりあえず非常に早い段階でぜひ試みていただけるとありがたいというのが私の趣旨でございました。
平本参考人 バックアップの機能に関しまして、地理的にどのあたりがいいかという御質問があったかと思いますが、まず、バックアップ機能を果たすには、そこに機器だけがありまして、そして災害時に緊急にそこに人が行けばいいというものではなくて、やはりその機能を発揮するためには、常時人がいて、そこでいろいろな機器及びシステムを動かしている必要があるかと思います。
 また、東京が災害に見舞われたときにそれに対応するような危機対応能力のためにはかなりの総合力が要ると思われますので、そうした点では、かなりの人員、さまざまな分野の人員が要ります。
 そういう点で、望ましくは、やはり首都機能移転という総合的な移転を東京からするのがいい。ただし、それができない場合には、最低限はバックアップ都市というのが必要である。ただ、その場合のバックアップ都市も、何らかの形で常に人がいる、そして動いているということが必要だろうと思います。
 そして、地理的にといいますと、これは防災のことだけで考えますと東京に近い方がいいというような考え方になりますが、首都機能移転自体が防災の点だけでなくもっと総合的な意味を持ちますので、必ずしも東京に近いところがベストということにはならないなと思っております。
 以上です。
福井参考人 私の申し上げたかったことも、バックアップについては、余り首都移転に意義を見出すことはできないのではないかという問題提起でございます。
 そういう意味で、実際に防災対応ということであれば、新たに白地に新首都をつくるというよりは、東京が何らかの壊滅的打撃を受けたときにかわり得る機能を既存の都市で受け皿としてあらかじめ用意しておくということで足りるわけでありまして、それは首都移転とはある意味では別次元の対処で、もちろん必要ではありますけれども、首都移転固有の問題ではないのではないか、こういう問題意識でございます。
市川参考人 私に対する御質問は、恐らく、移転に伴う東京並びに日本の産業の空洞化だと思います。
 それで、そもそも私、今回のこの首都機能移転の議論の中で、地方分権による地方への財源と権限の移譲が担保されなければすべきでないという議論でございますので、初めから、どこに行けばいいかという議論まで行かないというのがスタンスでございます。
 そのとき思うことは、やはり、決議が行われた時期を思い浮かべていただきますと、あのバブルのさなかで非常に問われましたことは、政官の癒着だったわけですね。要するに、政官、民もありますけれども、みんな癒着しちゃっているんだということがあって、それがやはり大きな契機になって、政経分離しようという契機が結果的にこの議論につながったと思います。
 問題は、今御質問の中にもありましたように、やはりこの十二年というのは非常に大きな意味がありまして、この十二年間は戦後の日本の成長の中でも特異な時期でありました。かつてオイルショックのときは、何とか十年以内にリカバーしました。しかし、今回は、どうも簡単には直らないという状況になっております。
 そういう中で、かつての政官民癒着については厳しい批判があったという中で、今、これから新たな次のステップに向かっているわけです。そういう中で、今一番貴重なのは、日本が生きていくこれからの道は、平和国家として経済をいかに立て直すかにかかっているわけですね。そういうときこそ、これから新たな船出をします政府、行政の姿勢と、現実にそれをつかさどる民間の力が、お互いに協力し合うことが非常に重要である。そう考えますと、もう癒着ということはこれからはないんだというふうに考えればいいわけで、そうしますと、この東京という場所に両方があることは大変重要なことである。これからの日本の新たな方向を、言ってみれば、指針をつくるべきすべての母体がいるわけですね。これを離すということはそもそも初めからあり得ないというのが私の実感です。
 ですから、十二年前と今、一番違うのはそこでありまして、今、日本が置かれた状況は、世界の中での国際競争力が問われているわけです。これにどう対応するかということを考えてみれば、今回議論がなされてきました首都機能移転自体がもはや時代おくれであって、それに対応できないというふうに考えております。
 あと一点、バックアップにつきましては、私が考えておりますイメージは、緊急時にすぐ避難できるところを東京圏につくっておく。これは既に政府のバックアップがありますけれども、それをさらにふやしておくということ。それから、恒久的に、対外的に、国内外のプレゼンスを考えれば、日本はそういうバックアップ都市を持っているんだということに対しての議論がもし煮詰まれば、東京から百キロ圏から百五十キロ圏ぐらいにそういう場所をつくっておく、しかし、それはあくまでも、自然災害だけではなくて、さまざまな人災、要するに、すべての危機に対応できる強固なバックアップ都市をつくっておくということが、今後の議論の中でもし危機管理上必要であれば、あってもいいとなれば、それは否定し得ないと私は思っております。
 以上でございます。
玄葉委員 とりあえず、二、三お尋ねをしたいと思うんですけれども、市川先生にお尋ねをしたいと思います。
 多分私と見解が違うんですけれども、その理由は、一つは、危機感と時代認識の違いというのがあるのではないかというふうに思っています。もう一つは、いわば政治への信頼度の違いというか、改革に対する政治への信頼度の違い。市川先生は大変政治を信頼しておられる、私は余り信頼していない、この違いがあるのではないかというふうに思っています。
 それで、一つお尋ねをしたいなと思っているのは、政治と経済、政経の近接性の再評価というのが必要だとおっしゃっていますけれども、これは一体何なのか、なぜ政経不可分でなければ日本は発展し得ないのかということを、まずお尋ねをしたいというふうに思います。
 それと、参考までに、私自身がなぜ国会等移転が必要かということを申し上げているかといいますと、最大の理由は、複数の情報発信都市、地域をつくらないといけないのではないかということ。ちなみに、御存じかもしれませんけれども、日本の情報発信の九割以上は東京からになっていますが、私は、これは健全だと思っていません。これからの日本の発展を考えたときには、大変な阻害要因だというふうに思っています。
 二つ目は、お上依存といいますか、その構造を変えたいということです。先ほど福井先生のメモかレジュメにもありましたけれども、移転することで必然的に変えざるを得なくなるという側面もあるんですよね、実際に。ここは先生といわゆる政治に対する信頼度の違いが出てくるところかもしれませんけれども、このままではどうにもならないという、ここの違いがあるのではないかというふうに思いますけれども、そのことも含めて、いかがですか。
市川参考人 今の御質問につきまして、まず危機感に対する時代認識という一般論と、それから政治への信頼ということでございますが、初めの方の御質問の中での、政経一体がなぜ必要かということについてまずお答えします。
 戦後、日本がこれほど急速に回復した中に、さまざまの要素はございますが、先進国に例がない形での、意思決定の場所と、それからそれを実行する場所、さらに民間で動かす場所が極めて近くにあった、これに対する効率性の高さというのは、これはだれも否定し得ないと思います。特に、日本の国土は山がちでありまして、住むところが少ないという中で、集約してここですべてをやったことが結果的には大変な効果を生んだということについては、まずそれに対する御批判はないと思うんですね。
 恐らく、それについて問題だというのは、それが余りにも緊密になり過ぎてしまったということだと思うんですよ。緊密だということは、要するに、インサイダーのことでいろいろなことが起き始めた、そこに、いわばだれもがわかる状況ではないことが起きてくるということの中で、ちょうどバブル経済が来て、それで癒着構造に至ったということになったわけでありまして、そもそも政経は一体であっていいと私は思うんですね。ただ、一体になった中で生まれてくるあしき部分、それをどう考えるかだと思うんですね。
 私は、それについて、もちろん癒着については非常に批判の気持ちを持っておりますが、しかし、これからの時代、そのまま癒着でいけるかどうか。もはや、今、世の中は癒着を許していないわけですよね。ですから、先生のような御立派な政治家がいろいろ言ってくださいますから、癒着はないんだと、そういうことでもう一回考え直せば、かつて日本の成功体験だった政経一体部分はもう一回活用できるだろうというのがまず一つの流れとして、さらに、もはや政経を離してこれからの透明性を保とうというような時間がないんじゃないかと、時代認識にかかわりますけれども、私は、かなり今切迫しているという状況を考えております。
 そういう意味では、政経一体なるものが今までの流れの中でうまくいった部分を考えれば、その悪い部分を取り除いて、これからもそれを使っていくのがいいのではないかというのが大きな流れでありまして、そういう中で、今回の首都機能移転の方式は、非常に憂えておる状況でございます。
 そして、次の、情報発信が偏っているんじゃないかということでございますが、では情報発信が分散していればいいのかという議論に行くと、分散していても中身が低ければ何ら意味がないわけですよね。分散というのは、分散して、それぞれが非常に有効なものを持っていて、独自性があって、違うことを出しているということが前提になるわけです。
 それを考えていきますと、やはりこれは、その国ができた歴史があるわけですね。
 アメリカがよく例に出ます。そのとおりです。アメリカは連邦国家です。それぞれが自分たちの、言ってみればドメインといいましょうか、場所を持っていて、おのおのが独自のものを持って発信しているという歴史があって来たわけですね。そういう流れの中でのワシントンDCですから、それは順番が逆なわけですよね。
 もっといい例は、一番分権が進んでいるドイツの場合。これはもう、州といっても、実は、もとは国みたいなものですから、違う国が固まってできている、だから首都はどこでもいいという議論が成り立つということもあります。どこでもいいから、小さくても大丈夫だという議論がある。
 そういう歴史的経緯を考えていく中で、日本はどうかというと、もし日本がそれをまねしようと思うと、やはり順番が逆じゃないかと思うんですよね。それは、アメリカがこうだからというなら、アメリカは連邦国家なんだから各州がそれぞれの独自性を持っているじゃないか、だからできるんだということを考えないと、日本の現在の体制で、そっちへ持っていこうということの気持ちはわかりますけれども、それは実現可能かどうかを考える必要があるというふうに考えております。
 そして、最終的な部分で、お上の思想とかお上の依存とか政治家の不信でありますが、私は、政治に絶望しておりませんで、まだまだこれからだと。それは、危機になれば人はやはり結束するわけですよね。今、日本は危機にあると思えば、これはもう結束しかない。そういう中で、やはり頑張れるのは政治家である。
 あと、お上への依存というのは、これからの流れの中で、もはや、一般市民とか多くのお上ではない人たちが、今、NPOを立ち上げたりして動いています。ですから、これはもう、お上の思想があったというのは過去の話になっていけばいいわけで、これから変わっていくということで、前向きに考えたいと私は思っております。
植田委員 社会民主党の植田至紀です。
 きょうは、福井先生に二点ばかりお伺いしたいんです。
 私自身の問題意識、私も一知半解の部分もありますので、見当違いのことがあればお許しいただきたいんですけれども、私なりの首都機能移転にかかわる問題意識をあらかじめ申し上げておきますと、先生も同趣旨のことをおっしゃっておられましたが、少なくとも、未来構想、将来のビジョンが明確でないまま、不鮮明なままで首都機能移転論だけが即物的に語られてきた、そうした側面がもしあるとするならば、やはりそれは問題であったろうと私は思います。ただし、過去、そうした議論が行われてきたにせよ、だからといって、今、首都機能の移転にかかわる論議を不断に行うことが意味がないのかというと、決してそうではない。むしろ、こういう時期だからこそ、改めてその移転論のありようを再検証して、新たな論議をつくっていかなければならないなと思っておりました。
 そういう意味で、先生のこの「国会等の移転の規模及び形態等の見直しに関する検討」、この文章、興味深く読ませていただいたわけでございますし、とりわけ、一極集中の是正であるとか災害対応力の強化という従来言われてきた論に対する御見解については、私自身首肯できるところがたくさんあるわけでございます。ただ、私自身、もう一度原点に返ったときに、改めて、首都機能とは何なのか、将来求められる首都というのはどんな機能を持つべきかということをもう一度洗い直したいなと思っています。
 というのは、いわゆる、この間も、きょうも議論がありましたけれども、いわば三権と経済がある種一体であるということが絶対必要条件、十分条件だというふうに立てた瞬間、議論の帰着するところは、東京やったら何で悪いねんということにいくだろうと思うのです。むしろそれを、言ってみれば止揚する首都機能移転論というものがこれからあるべきじゃないかという問題意識に立ちまして、二点伺いたいのです。
 一つは、そもそも論で、非常に初歩的ですが、これから、将来、我々が新たな首都というものをイメージするときに必要とされる必要最小限の機能とは何かという点が一点。
 もう一つ、首都というものの存在は、ある意味で国民にとって象徴的存在であるということも一つの要素だと私は思います。これは、ある意味で精神的な部分ですけれども。その際、やはり文化的な機能を持っているということは重要だろうと私は思っております。いわゆる多様な文化の発信基地であると同時に、やはり営々と民衆が、我々の祖先が積み上げてきた文化的土壌に根差した存在である、首都がそういう存在であるということも重要な要素になるんだろうかなと私なんかは考えているわけですが。
 この二点について、先生なりの御見解をお伺いできればと思います。
福井参考人 まず第一点の、将来の首都に対するイメージ、特に必要最小限度の機能というお尋ねの件でございますが、まず、私、首都の中の行政の機能に特に着目したいと考えております。
 といいますのは、立法府は、法律、予算の制定機関でもあり、また国権の最高機関でもあられるわけでして、そういう意味では、政策立案のいわば殿堂であるということに本旨がございますので、ここはある意味で一番大事な機能ですけれども、直ちに、さまざまな集中ですとか弊害の根源的な要因とみなすことはできない。司法についても、比較的最高裁については薄いということも、先ほど申し上げたとおりでございます。やはり、現在の首都機能の中で、いろいろな意味で一番問題になり得るのは、行政の機能だろうと考えております。
 私自身、建設省の官僚を十五年やっておりましたけれども、基本的に、やはり行政庁、特に日本の中央省庁の権限は巨大でありまして、フェース・ツー・フェースで、自治体の方とか民間の方が直接に霞が関もうでをして、いろいろと運用に携わる人間と議論をしたり接触をしないと物事が進まないという場面が非常に多々あるわけですね。こういった機能が、もし必然性を伴うものであればいいんですけれども、必ずしもそうでない面が随分含まれている。
 そうしますと、やはりこういう側面では、いわば明確な立法を国会がつくっていただいたことを前提として、できるだけ淡々とこなせるような行政運営が望ましい。そういう意味では、それは霞が関に必ずしもなくていいのでありまして、できるだけ自治体のレベルや民間のレベルで自立的に動くようなシステムとして、これは立法府が構築しておかれるのが望ましいということがあると思います。そういう意味で、行政庁はできるだけ小さい方がいいということは前提になると考えております。
 それで、そういうふうにするためのいわば一つのきっかけなり手段として首都機能移転をとらえるということでございます。したがって、そういう前提でとらえた首都は、できるだけ行政機能がスリムになったものであることが望ましいというふうに考えております。
 それから、二つ目の文化的機能についてのお尋ねでございますが、これはおっしゃるとおりでございまして、首都をどこに定めるにしても、それが日本の文化ですとか地域の文化と一体であるべきであろうということについては、お示しのとおりでございます。
 ただ、繰り返し申し上げますが、私が強調したかった点は、やはり、ただ首都が移るという物理的な移転の問題とか建設の問題としてではなくて、それによって国家機能をいかに見直していくのかという根源的な議論の一つの場にしていただければという趣旨でございます。
河合委員 公明党の河合正智でございます。
 参考人の皆様には、大変に御多忙のところをありがとうございます。
 これからお聞きすることは、市川参考人のおっしゃったことと裏表になるかもしれませんけれども、私は、分権的分都についてお伺いさせていただきます。
 その前に、市川参考人に対しましては、レジュメにございます、二十一世紀は新たなテーゼを求めて次のステップへ向かわなければならない、新たなテーゼというのは、参考人としては何だとお考えかということをお伺いしたいと思います。
 それから、福井参考人の、何のためにこの首都機能移転の議論を行うかというこの目的論は、私は、まことに大事な御指摘だと思います。参考人は、それは構造改革のためであると、その構造改革の具体的な例として、地方分権と規制緩和の改革を挙げておいでになりますが、例えば、大内参考人のおっしゃっておりますイギリスとドイツの例をとりますと、これはまさに、イギリスはユナイテッド・キングダム、むしろ地方自治から国をつくったという歴史がございますし、ドイツは、先ほどお述べになっていたように、州の分権に基づく連邦制という形でございます。
 それから、平本参考人につきましては、危機管理という角度から、政経分離、政治の都市と経済中枢の都市との分散ということをお述べになっておりまして、ともに、分権もしくは分散的分都論という共通の御意見をお述べになっております。
 さらに、福井参考人におかれましては、特区というものの活用ということもお述べになっております。
 三権を分立して、そして議院内閣制をとり、しかも象徴天皇制を持ったこの日本国憲法下におきまして、三権もしくは象徴天皇制も含めまして、どのように分散もしくは分権的に分散できるのか、具体的にお考えがあったら、三人の参考人の御意見をお伺いさせていただきたいと思います。
市川参考人 今の私に対する御質問は、均衡ある発展が言ってみれば二十世紀の考え方であれば、二十一世紀の新しい考え方は何かという御質問かと思います。
 均衡ある発展というのは、戦後の日本の発展の中で、言ってみれば、日本全体が幸福になろう、そしてくまなく整備していこうという大きい国土計画の流れでした。私、これは非常にそれなりの成果を上げたと思います。これは、言ってみれば、伝統的な分散政策の流れになったと思います。
 では、二十一世紀はどうなのかということでございまして、言葉は私まだでき上がっていませんけれども、概念は持っておりまして、要するに、これからは成熟社会になりまして非常に資源が限られます。これは、財政的にも、それから人的資源、さまざまなものが限られてくる。ですから、限られた中でどうやって有効に使うかという戦略が要るんではないかというふうに考えております。
 そこでの前提は、一つは、やはり核となる都市をまず考えろと。その都市は一定の集積と今後の発展の潜在力を持っているところを考えなさいというふうに思っております。
 それで考えていきますと、大きくいいますと、日本は幾つか島がございますが、簡単に言うと、日本を三つに分けて、北海道と本州と九州、四国は本州の西につくというふうに考えまして、このおのおのに、今言った前提の、一定の集積の、将来的に資本注入というか積極的な投資を行える場所を決めるというふうに考えますと、現状で一番いいと思われますのは、これは東京と名古屋と大阪、これはもう一体である。ですから、本州大都市圏と考えなさいと。これはいずれ、リニア新幹線等の話もございますから、一時間で結ばれるのであれば、これはもう一体である。ですから、本州の中でそういった中心部は東京、名古屋、大阪、本州都市圏である。
 それから、九州は福岡ですね。既に福岡は、戦後の日本の中で、非常に自立して、九州と圏域、それから九州と中国大陸、独自に結ぶという動きをして活性化している都市でございます。これはある種、一つの流れだと思っておりますので、九州はきっと福岡を中心とした場所であろうと。
 それから、もう一つは北海道、これは札幌ですね。戦後、北海道で起きた現象は、すべての都市の人口を札幌が吸い上げてしまった。これを戻せという議論もありますけれども、せっかくそういう流れが来たのであれば、これは生かしていくということで、北海道というテリトリーを札幌がいわば面倒を見るという形で考えたらどうかということです。
 都市が力が及ぶ範囲をテリトリーとして、日本を大体三つぐらいにして運営したらどうかと。これは、ただ均衡ある発展ではないし、それから均衡ある発展の延長上にあった多極分散でもないんですよね。ですから、三つぐらいに分散するけれども集約するという考え方を考えておりまして、それが、これからの成熟社会の中で日本が生き残る、あるいは世界にまた大きな力を発揮していく一つのステップではないかというふうに考えておりまして、ちょっと言葉はまだつくっておりませんが、概念は現在そう考えております。
福井参考人 まず、三権のあり方、分散をどのように行うのかという件でございますが、先ほども少し触れましたように、基本的には、現在の国家の三権はいわば途上国型のシステムを百年以上引っ張ってきておりまして、いまだに邦家万能、行政庁優位という形で歴史的な伝統がそのまま確立していると思われます。やはり、行政の権限がいわば不明確なままにじみ出して、そこに際限のない判断やあるいは権能が流れ込んでいるということを是正するということが三権のあり方の最大の課題だと思います。もう少し権限をスリムにして明確化するということです。
 これは、言いかえれば、現在の立法は、ほとんどの行政庁の権限の要件の中に不確定概念と呼ばれる、例えば、適正かつ合理的とか、正当な理由とか、公益上の必要、こういった不確定概念がいっぱい入っておりまして、これをすべて行政庁の運用にゆだねている。そういう意味では、立法府がつくられる建前の法律ではありますけれども、かなりの程度、行政の裁量をかなり広く許しているという問題があります。これはやはり、立法がもう少し明確化されて、行政の権限をきっちりと画するような立法活動を日々営んでいただくということ、そういう意味での立法府の優位を図っていくということが大きな課題の一つだと思います。
 それからもう一つは、現在の日本の司法は非常に弱いわけでございまして、これは最高裁がどこにあるかにかかわらず、日本の最高裁というのはほえない番犬でありまして、違憲立法審査権はあるけれどもほとんど抜いたことはないという、ドイツ、アメリカと比べても著しく司法消極主義の司法であります。こういった司法では、行政のいわば事後チェックもままならない。そういう意味で、行政訴訟が現在活性化していないということも、こういった行政と司法の非常にいびつな関係に根源があると考えております。
 そういう意味では、立法府の事前の明確な立法、それから事後的な行政チェックのための司法の役割、こういったものを踏まえて、三権のあり方が抜本的に見直されるべきではないかと考えております。
 一例を申し上げれば、けさほども、総合規制改革会議の私メンバーなんですが、法務省と競売法制について大議論をしてきたところでありますが、現場の債権回収者の意見を一度も面前で聞いたことがないということを公言している法務省という組織が、現在の民事執行法というのはやくざの食い物になっている、反社会的集団の食い物になっているわけですが、この食い物になっている立法を絶対変えたくないと言って、きょう現在まだ頑張っておられる。これはやはり立法府で判断していただくべきものだと思われます。
 そういう意味で、立法府が国民の利害を代弁して法律をつくっていただくということをもっと徹底的にやっていただくための首都機能移転であってほしいと考えていますし、また、お話の出た特区についても、これも私、いわば法律的な理論武装のお手伝いをいたしましたが、自治体の条例制定権には限界があるので、とりあえず官から民、あるいは国から地方ということを一部の地域で国法で試してみようじゃないかということで、まさにこういう大きな潮流の一つのきっかけになるものではないか、突破口になるのではないかと期待しております。
大内参考人 私どもの考え方も、どちらかといいますと福井参考人の考え方にかなり近いというふうに考えております。
 私自身は、全国のかなりたくさんの町のまちづくりをお手伝いするということを日ごろやっておりますので、そちらの例から幾つか申し上げたいと思いますけれども、いろいろなまちづくりの現場では、最近、どういうまちづくりをしようかということに関するさまざまなアイデアでありますとか情報というのは、かつては、例えば中央の方、お役人の方々にいろいろと御指導を仰ぐとか、場合によっては役人の指導のもとでやるということがかなり行われていたわけですが、現実にまちづくりの現場でありますと、もう海外も含めて、非常にいろいろなアイデアが飛び込んでくる状況にございます。それぞれの、非常に元気のいいまちづくりをやっている方々は、ある意味でテリトリーというものを完全に飛び越えて、日本の国内のさまざまなところとお互いにアイデアを交換し合うなり、あるいは外国の方たちともやりとりをしながらまちづくりをするということをしておるんですけれども、残念なことに、新しいことをやろうとして、そしてその場合に、場合によってはやはり国の許可を得なきゃいけない、場合によっては指導を仰がなきゃいけないということがたくさんあるのでございます。そのときに、例えば、前例がないからそれは許されないというようなことにぶつかってしまってとんざするということがたびたびございます。私は、そういう種類のことを何とかやめることをそろそろしないと、まちづくりの現場の人間からいうと、もう自分たちで、場合によっては失敗したら責任も自分たちでとるから、もう少し自由にやらせてほしいというのが正直な気持ちではないかと思うんですね。
 そういう意味で、福井参考人が申されていたように、いわゆる行政がいろいろな形で指導をしていたりアドバイスしていたことというものの中に、やはり、もっと地域に任せたらいいものが相当たくさんあると思います。
 私、今回の参考人のこの招致の前に、事前に、イギリスの、一九七三年に出されましたハードマン・レポートをちょっと読み直すということをしてみましたが、イギリスの場合は、非常に経済の苦しい状況の中で、国政のコストをどうやって下げられるかということをかなり真剣に検討した経緯がございます。そのときに、単純に、国がどういう面積を占めて、確かにロンドンの地価が上がったということもハードマン・レポートの背景にはあるんですけれども、もっと、特に行政のレベルの仕事を地域に移していくことによって、結果的にトータルの国政のコストが下げられるということをハードマン・レポートは実証してみせたわけですね。そういうことを前提にいわば地方分権が進んでいるというのがイギリスの状況であると思います。
 ですから、私は、例えば立法府と行政府と司法府というものをこの議院内閣制のもとですぐに分散しろということを言っているわけではなくて、もっとトータルの、国の、国政のコストを下げるための工夫が今必要ではないか、そのためには仕事のやり方そのものを変える必要がある。私は、非常に不幸なのは、公務員の削減というような議論にそのときに集中してしまうことを非常に憂えております。むしろ、仕事のやり方を変えるということによって、国の、国政のコストを下げるということをお考えいただきたい。そして最後に、特に立法府がもっと力を持っていただきたいというのが私の考え方でございます。
平本参考人 私は、危機管理と分散という関係で意見を申し上げたいと思います。
 まず、危機管理上、分散が意味があるかといいますと、これは非常に単純な、数学的な確率論でして、分散して多くのものになれば被災の確率は当然低くなるわけですから、これは当然である。したがいまして、例えば、政経分離ということで政治と経済の中枢が分離していると、これは地震災害にもテロにも非常に確率的に有利になる。
 例えば、同時多発テロでニューヨークとワシントン両方やられたわけですけれども、ワシントンは比較的軽傷でしたので、連邦政府の中枢自体は健全でしたので、すぐに対応策をやっている。まあ対応策の中身は問題ですけれども、非常に迅速な対応ができたということがございます。こういうような行政のあり方というのは必要であろう。
 そして、政経分離を新しい首都移転によって行いました後には、地方の中枢都市に、分権ですとか、また企業の中枢の機能を一部分散していくというような段階的な形で、分権的な国家にしていくべきだろうと思っております。
 それから、第二点としまして、これからは我が国もかなりの形で電子ネットワーク社会が進んでまいります。そのときにこの危機管理をどうするかということですけれども、この危機管理のシステムというのは、これは刻々新しい技術が導入されていっております。こういうIT技術の発展というのは、どちらかといいますと、古いシステムを持っているところよりもむしろ持っていないところ、例えばアジアなどは、かなりITの面で急速に成長しておりますのは、何もないところに新しいハイテク機器を即導入できてそれを使いこなしていってしまうということで、古いストックを持っているところよりも有利ということがございます。
 そういう意味では、東京を改造してこの電子ネットワーク社会に対応した危機管理システムのある都市にするよりも、ある部分に限っては、新都市の中に危機管理対応のシステムを満載したものをつくって最新技術をそこに導入するという方が、極めて効率的、そして迅速にできると考えております。以上でございます。
矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。
 四人の参考人の皆さん方から大変貴重な御意見を承りました。時間の関係で全部の先生方に質問はできないかと思いますが、まず最初に市川参考人にお聞きいたします。
 私ども、この法案が出されたときから、あるいはこの構想が出されたときから反対してまいりました。そして、一極集中の問題でも、あるいは、いわゆるバブル時に計画されたこの首都機能移転という問題が、現在、経済財政の今日の状況の中で果たして大型公共事業の問題としてどうとらえるべきかというような点も含めて、反対をしてまいりました。
 市川参考人のこのきょうのお話、全く同感だというように聞いてまいりました。今後の進め方のところで、一番下の方ですか、移転中止の決議というのがございました。私どもは、この移転法の廃案を今後提案したらどうかというので、中身についても検討しているところです。
 そこでお聞きしたいのは、もっと基本的な問題になるかもしれませんが、また新しい問題かもしれませんが、いろいろな条件が首都機能移転の理由として上げられてまいりました。もちろん、いわゆるバックアップ機能という問題も出ました。その中で、人心一新というのが後になって出てきたんですね。このことについて上智大の猪口先生が、行き詰まると、この際人心一新だ、新しいところへ行く、こういうのは焼き畑農業の思想だというお話がありました。先生の何か書いたものの中にこの問題を取り上げたものがあったような気がするんですが、この考え方についてどういうふうにお考えか。
 それからもう一つは、いわゆる世界都市、国際都市、こういう問題について、これは先ほど来の政治と経済の分離や集中の問題にもかかわってくるかと思いますけれども、どういうお考えか。
 この二つについてお尋ねしたいと思います。
市川参考人 今のお尋ねの点につきましてお答えいたします。
 まず初めに、今回の移転の意義の中で人心一新があるじゃないかということでございまして、ただ、これは、私の知っている限りでは、後から出たわけではなくて、初めからあったと思います。
 なぜかというと、実は、遷都というのは、歴史的に人心一新が多いんですね。要するに、制度改革とか、人心一新するときに行う。ですから通常は、政治体制が変わったとか、独立したとか、あるいは民族対立が起きたといった経緯で行うことが多いんですね。これは人心一新だと思います。
 私は、初めから疑問に思っていたのは、日本はそのどれにも当てはまらないんですね。当てはまらないけれども人心一新だと言っていたところに、ずっと確かに私は違和感がありました。人心一新という大義名分が弱いのではないかということが初めから印象としてありましたので、これは、確かに移転の意義としては、今、十二年たってみたら人心一新になるのかなという部分は、やはり依然としてわだかまっていると思っております。
 それで、猪口先生がおっしゃった焼き畑農業の話ですけれども、私の趣旨は、この言葉につきましては、まあ、どうとらえるかなんですけれども、公共事業については、私は決して公共事業は悪いと思っていません。公共事業は必要だと思います。国が生きるために公共事業がなければ生きていけない。問題は、今問われているのは、公共事業で、本当に、その費用対効果といいましょうかニーズに合ったものをつくっているかどうかという、そのマッチングのことを言っていると思うんですね。マッチングの中でその公共事業がいいか悪いかという議論をすればいいんだということを言っていると思います。
 それで、猪口さんがおっしゃったことは、その焼き畑農業だという発想は、要するに、私の解釈では、そのお読みになった本のもっと後がありまして、なぜそうかというと、東京が完全にでき上がったので次に行くんならいいんだけれども、東京が中途半端でまた次に行っちゃう、それが問題だということを私は言っておりまして、立派なものができ上がって次へ行くならいいんですよ、しかし、それが中途半端で、またあっちを焼く、こっちを焼くとなるとやはり焼き畑農業だという、その猪口先生の御意見は私も賛成でありまして、ですから、もっとちゃんとしてからにしてはどうかというふうに考えております。
 それで、なぜちゃんとしてからにというふうに言うかと申しますと、昨今非常に景気の不況が長引いておりまして、やはり日本の競争力が問われている状況にあります。そういう中で、改めて東京は一体何だったのかという議論が私はあると思います。
 東京は、いろいろな言い方がありますけれども、やはり日本を引っ張ってきた大変な原動力で、国家運営上は、どこかでだれかが富を生んでそれを国が全体でうまく分け与えるというのが運営上の仕組みですから、やはりその役割は担っていたと思うんですね。その中でできてきたさまざまの批判に対して、都市問題もあります、それから、それが逆に地方からすべてを奪い取ったという言い方もあるかもしれませんが、しかし、やはりそういう役割は大きかったんだと。それが改めて、この不況が長引く中で再認識されている。だれかが頑張らなければならない、だれかが頑張らなければまた日本はその活力が持てないとなれば、やはり東京が今一番それにふさわしいわけですね。
 そういう中で、焼き畑農業の延長で考えると、ほかを焼かずにとにかくまず東京を仕上げてくれと。仕上げた結果は、それは結果的に東京は世界を引っ張っていけるような世界都市になるという脈絡で考えればいいので、かつてバブルのときに言われた世界都市じゃなくて、世界のリーダーとなれるような、都市空間のみならず、人の生活、考え方、環境問題、すべてを含んだ意味での世界の模範となる都市をつくればいいわけですね。それをすることが先だというふうに考えております。
 バブルのときに、ニューヨーク、ロンドン、東京という世界三極構造としての金融センターの世界都市がありましたけれども、私は、二十一世紀の世界都市というのは、世界の模範となる都市をまず東京でやる。それで、今ならすぐできる。今までのさまざまなストックがありますから、それをとにかくもうちょっと仕上げればいいんだというふうに考えておりまして、そういう意味では、世界都市、これからの世界都市は私はいい意味でとっておりまして、我々の誇りになるものをつくりたいというふうに考えております。
 最後に、首都移転がなぜ私はおかしいかと思っておりますのは、こういうそれだけの世界に範となるすべてを含んだ多機能の都市を簡単につくれると思っていいのかと。やはり歴史を見てみれば、それは部分的につくっているケースはあります。しかし、それはあくまでも部分であって、立派な建物をつくったとか、何か中にあるシステムがいいんだということで誇るのではなくて、トータルで、国を代表する都市として胸を張れるかどうかというのが世界にそのプレゼンスを示せる都市である。そう考えますと、やはりこれから東京に対する整備をもっともっとしていただく。その結果、それは結果的にみんなのためになる、日本全体のためになるというふうに考えていただければいいと思っております。
 以上でございます。
中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。
 それぞれ四人の先生方にお尋ねをしたいんですが、本来は、ひょっとしたら我々自身の議論なんだと思うんですが、端的に言うと、この問題の決着をつけるのに、私は、最終は国民投票が一番ふさわしいんじゃないかというふうに思っておりまして、それを主張し続けているんです。その考え方に対してそれぞれ御意見をいただきたい。
 失われた十年といいますけれども、考えてみれば、まあ三カ所に絞り込んできたわけですが、それぞれの自治体が自分のところに町をつくるわけですが、その町をつくるのに、どれだけそれに対して主体的に、この国会移転というのが、分権議論とあわせて、システムを変えていく、国のあり方を変えていくという議論をしているにもかかわらず、それに関与しつつある自治体が、最近は、いつまでこんなもので引っ張っていくんだ、大概にしておけ、こういう雰囲気になってきている。
 そういうことじゃなくて、本来は、そのシステムを変えるのであれば、自治体が自分たちの町をつくるんだという主体性と、それから、これだけのことは私たちの手でやりますよ、そういうものが出てくるというその迫力を出そうと思うと、国がやはりはっきりしていかなきゃならない大きな枠組みだと思うんですよね。国が、どれだけお金を出すか、何を移転させるか、東京も含めて、東京をそのままにしていくということも含めて、それだけのものを提示すれば、今度は、主体になってまちづくりをするところがそれにこたえてどういう絵をかくか、それを国民が見て選んでいく、その緊張感の中でこの議論が発展をしていくということで次の時代が見えてくるのかなという気がいたしておりまして、そういう意味から、これは憲法と同じですから、憲法の予備選みたいなもので国民投票ということだと思っているんですけれども、どうでしょうか。
平本参考人 私は、国民投票は基本的にやるべきだと思っております。ただ、投票すべき国民の方が、ある程度の知識、それからいろいろな意思を持った上での投票でなくてはいけないと思いますので、それに至るまでに、例えば首都機能移転に賛成する有識者ですとかまたいろいろな方々、それからまたそれに異議を唱える批判派の方々、こういった人とかなりの議論をやる。徹底的にテレビですとかマスコミなどを通じて議論をしまして、国民がある程度判断ができる形にした上で、全国的に国民投票のような形で国民の意向というのを探るというのは非常に有効ではないかと思っております。
 ただ、拙速に国民投票をやりました場合に、なかなか、それだけの知識がないまま投票をやるということは逆に避けるべきではないかと思っております。
 以上でございます。
大内参考人 私も基本的には賛成なのでありますが、私が申し上げました、国の形というものが具体的にどういう形を想定した国会あるいは首都機能移転なのかということについて、やはり複数、できればかなり、まあそれほど多いということが必要だとは思いませんけれども、幾つかの、できれば三つないし四つのいわばケースを提示して、それをかなりいろいろな形で国会の先生方あるいは専門家等々の知恵で、例えば行政のシステム、あるいは行政と立法府との関係はこういうことであるとか、そういったことまで含めて、あるいは地方分権というのをどういうふうに進めていくのかということも、そういった国の全体の国政のシステムがどういう形になるかということを、それを議論した上で、それを提示した上で、どういう形の首都になるか、あるいは首都機能移転になるかということを投票にかけるということであれば、大変いい、実りのあるものになるんではないかと思うんですね。
 ただ、残念ながら、前回の場合には、いわば先に箱物をつくってしまった、先に箱を提示してしまったということが、逆に、国民の方からすると、非常にローカルな問題に問題が切りかわってしまった、そういう不幸があったように思いますので、それは避けたいというふうに考えております。
市川参考人 初めの御質問の国民投票の件ですけれども、これは移転調査会の最終報告書で国民投票は行わないとなっておりまして、理由も書いてありましたが、要するに、国民投票をするときには、それに至る過程ですね。今までの審議内容を見ると、情報公開というレベルで考えますと、多分情報不足ですね。ですから、万が一国民に聞くんであれば、すべてを出してください、もうプラス、マイナス全部出していただいた上で禍根がないようにするという前提がない限り、これは国民投票といっても、誘導があればそれまでだという不安があります。ですから、もしやるんであれば、すべてが情報公開の中でかんかんがくがくやる。これについてだけ了承できるだろう、それ以外は危険であると思っています。要するに、何らかの方向を出そうと思って特定の情報で行えば結果は見えてしまうということはあると思います。
 それから二つ目は、地方の主体性なんですけれども、今回の議論の中で、例えば首都が一回来ればプライドが上がるとか、首都が来ればそれは役立つんだという議論があって、私は非常に、まあそういう気持ちもわかるんですけれども、自分たちの町をどうするかという主体性が先にあれば、そうじゃないかもしれないという議論も欲しいんですね。
 ですから、今回の流れの中でやはり非常に不安なのは、候補地になって首都が来ればいい、首都機能が来ればいいという議論をしていても、実はその背後に大変な地元負担があるわけです。これはよく見れば地元負担は書いてありますけれども、何も表に出ないですね。ですから、そのあたり、もし地元負担がすごいとなったら違う町を考えたいと言うかもしれないということを考えれば、やはりこの首都機能移転の議論をきっかけにして、一体自分たちはどういう町をつくりたかったのかということを地元の方でぜひお考えいただきたいというふうに考えております。ちょっとこのあたり、お答えにならないかもしれないけれども、トップダウンではない、ボトムアップの、地元は何か、都市は何かという議論ですね。
 今回の首都機能移転で考えられます都市というのは、中身は余り細かく出ていなくて、非常に美しい都市なんですね。美しいだけでもつかどうかという議論もぜひしていただきたいと思います。
福井参考人 私も、今各参考人からお示しがございましたように、最終的には国民投票というのは非常に意味がある手段だと思いますが、やはり、その前提をかなり整理していただく必要があるかと思います。特に国民の各層、各地域あるいは各層にとっての利害得失のバランスシートを具体的に示してさしあげないと、なかなか一概には答えにくいということがございます。
 それから、繰り返し申し上げておりますように、首都機能移転によって国の仕組みを一体どうするのか、国政上一体何がこれで国の経済社会の将来にとってメリットをもたらすのかということについて十分詰めた調査研究あるいは選択肢の提示をしていただいた上で行っていただく。ですから、具体的に言えば、いきなり国民投票というよりは、やはり世論調査のようなものを先行させていただきまして、その上で国民投票、最終的には国会の御議論で決めていただく、こういう流れではないかと思います。
蓮実委員 自民党の蓮実でございます。
 きょうは、四人の先生方、お忙しいところありがとうございました。
 ちょっとそれぞれの先生方に御質問申し上げたいんですが、平本先生、平成十一年にこの委員会においでをいただきましてありがとうございました。そのときにもちょっと私御質問申し上げたわけですが、今日、我が国の政治、経済、社会あるいは文化、教育、生活、すなわち国家を再生するために首都機能の移転の重要性を歴史的に指摘され、その社会経済効果を算出されていますが、現時点でのお考えを簡単にお聞かせいただきたいと思います。
 それから、私も、今デフレ克服という課題を解決するには、従来のようなばらまきの公共事業ではなく、国民に夢と希望を与える国家プロジェクトが必要だろうというふうに考えています。いかがでございましょうか。
 また、今都市再生、東京改造をやって目に見えてよくなるという実感を一体先生はされておるでしょうか。先生はむしろ、首都機能を移転してその跡地を利用して本格的な国際都市づくりを提案されていますが、具体的に御説明をいただければありがたいと思っております。これは平本先生です。
 それから、大内先生にちょっと伺いたい。
 安全保障の観点から、政策の緊急性、重要性をキーワードに首都機能移転を考えるべきだと言っておられますが、東京のこの厳しい環境情勢あるいは地震などの天災を踏まえて、現時点でその解決を急ぐべきだと私は思っています。いかがお考えか。
 それから、市川先生、首都圏の直下型の大震災に関連して、補都という下河辺先生の提言を挙げられておると思います。私、先生の本をちょっと読ませていただきました。「「NO」首都移転」、こういうことですが、そのところに補都というのがあるんですが、どういうことなのか、御説明いただきたいと思っております。
 以上であります。
平本参考人 二点、御質問にお答えしたいと思います。
 まず、国家再生の効果でございますが、これにつき、前回お招きいただいたときにいろいろ意見を述べさせていただいております。その点については、考え方は基本的には変わっておりません。そしてむしろ、今、その行うべき必要性が高まっていると考えております。
 現在、都市再生というような政策がございまして、東京にかなりの高層ビルがどんどん建つような傾向になってまいりましたけれども、私は、あれは決して都市再生ではないと思っておりまして、むしろ、先ほど震災のところで申し上げましたような木造密集地域のようなところを、そういう危険の高いところを再生するのが東京のあるべき再生であると考えております。
 それと別に、先ほどの首都機能移転による効果という点でまいりますと、新都市をつくるとき、これは非常に総合的に行うべきであると考えておりまして、これはかなりITの技術、また環境上の技術、こういったものをかなり複合的に研究開発していく一大国家プロジェクトであるというように考えて、その投資によってかなり日本の産業がまた新たに再生して世界をリードしていく、そのための投資であると考えるべきだと思います。これは、通常の土建型の公共投資ではなくて、将来の日本の産業を飛躍的に成長させるための投資であるというように考えるべきであると考えます。日本の経済がこのように沈滞しているときほど、より一層この効果があるんではないかと思っております。
 それから、第二点の、跡地利用の具体性でございますが、これは東京の都市再生と関係してまいるかと思います。それから、首都機能を移転したとはいえ、東京都というのは、これは市川参考人のおっしゃるのと同じように、世界都市としてやはり成長すべきであるのは、これは間違いないところでございます。
 その場合に、移転跡地につきましては、私のペーパーにもちょっと触れましたが、オープンスペースとしての利用ないし木密地域整備の種地としての利用、この二つのどちらかに活用していくべきだと思っております。
 オープンスペースとしましては、これは都市公園のような形にしまして、できるだけ建物の非常に必要なもの以外は取り去りまして、グリーンのスペースとする。そして、実際震災が起きた場合には、避難の場所、帰宅困難者の収容、物資輸送の拠点として使う。そして、かなりこういった広大な緑地というのは都心部にできることになりますから、これは先ほどの、世界都市として東京の魅力をアピールするには絶好の場所になるんではないか。ここを売り払って民間のディベロッパーに超高層ビルを建てさせるというようなことは避けたいと考えております。
 また、別の方法として、木密地域の種地、これは霞が関の地域よりも、むしろ各官舎の跡地、いろいろ都内に分散しておりますが、こういったところが適当だと思っておりますが、この木密地域を東京都が整備しなくてはいけないんですが、恐らく東京都の悩みというのは、その木密地域を再開発するときに、そこにいる人をどこかに移して、そして整備したらまた戻してあげる、そのための種地が必要なんですが、現在のところは東京都内にはそういうものはほとんどありません。したがって、この各地に分散している官舎跡地というものを上手に活用することによって木密地域の都市再生というのが可能になるのではないかと考えております。
 以上でございます。
大内参考人 先ほど蓮実先生から御指摘のことですが、バックアップをとるためにある種の練習をしてみるというか、先ほどちょっと引っ越しをしてみたらわかるではないかという、大変ちょっと失礼ながらラフな例え話をしてみましたが。
 もう一つの問題は、東京は今非常に便利につくられている。そういう集中をしていることの利便性を超えてまで、それを場合によっては見捨ててまで、なぜバックアップあるいは別の都市をつくるんだという疑問が時々呈されます。
 ただ、私は、システムの問題としては、便利であるがゆえに怖いという問題があるわけです。つまり、ある種の異常時というのは通常使われているシステムは機能しないということを前提に、常にリスク管理というのは危険分散ということをしなければいけませんので、いわばここで皆さんが集まっていろいろな審議をしていただいている、あるいは、先ほども申し上げましたように、大きな災害が起きたときに国会で緊急立法等々を考えていただかなきゃならないということが現実に起きると思うのですね。そのときに、本当に国会が機能していただけるのかどうかというと、かなりちょっと心配であるということが私の趣旨でございます。
 したがって、とりあえず、もし新しい小規模の国会都市をつくるということが、いろいろな意味で、財政上の問題ですとか、国民の理解が得られない等々のいろいろな問題があるんであれば、場合によっては、どこかの自治体あるいはどこかの行政の施設を借りてでも何らかの形で試行、訓練をされておくことの方がいいんではないかというのが私の趣旨でございます。
市川参考人 お尋ねの補都につきましてでございますが、まず初めに、下河辺先生の出された案というのは、私の記憶では、かつて国会等移転審議会で私案として出されたものでございまして、これは複都という名前でございました。それで、その考え方は、とにかく緊急に北関東ないしは東北四県にまず首都機能を移してしまおう、五十年後に名古屋に持っていったらどうかという案だと思います。
 これは私のちょっと考えておりましたのとは若干違います。私が提案しましたのは補都という考えであります。この補都というのは英語のサブシディアリー、補完という意味です。補完の補をとりまして、補都としたわけです。
 この考え方は、きょうお話ししましたように、東京の、首都東京の災害に対して何らかのバックアップが要るだろう、バックアップの一つとして、恒久的に一つ補完都市をつくったらどうかという提案だったわけです。
 それは、東京から余り遠くてはいけないということで、百キロから百五十キロ圏ぐらいのところがいいんではないか。つくる以上は、お金をかけてはいけないということで、新規に基盤整備をしなくていいところ、例えば新幹線や高速道路がもう走っている、それからさらに、用地買収にかかわる問題が起きないような一定規模の平たんな国有地があるといったところを選んで補完都市をつくったらどうか。これはあくまでもバックアップとしての都市であって、首都機能の移転ではございませんが、首都に何か危機があったときに、これをつくったらどうかという提案でございます。
 ただ、この提案は前提と条件がございます。
 一つは、前提につきましては、今回の発想で言えば、バックアップは実体もバーチャルも現状でできるわけです。ですから、バーチャルには日本国内の主要都市を結べばいい、それから実体としては、首都圏内あるいは特に東京圏内に幾つかのバックアップ都市を置いておけばいいということで、可能でございますが、前提というのは、そうであっても、やはり対外的それから国内的に、何かあったら大丈夫だよという意味での象徴的なプレゼンスをつくる必要があるという議論が危機管理に対する対策として起きた場合について、まず考えが起きてもいいんじゃないかという前提でございます。
 仮に、つくるんであれば、二つ条件がございます。
 一つは、災害に対してすべて安全であること、自然災害だけではなくいろいろなことが最近は起きますので、人災も含めたすべての災害に対して耐え得る都市をつくることということが一つと、それから二つ目は、お金がかからない都市でありましても、いきなり使うのは、一たん事が起きてから使うのでは非常にスムーズにいかないかもしれないということで、できれば年に一回、夏、臨時国会をそこでやるといったような形で、ふだんから何かあったときの対応の言ってみれば事前演習をしておくというような形で運営すべきであるということを提案したのが中身でございます。これが私が提案しました補都でございます。
玄葉委員 福井先生に一つお尋ねしたいんです。
 先ほども出ていましたけれども、国会の移転の問題、規模とか形態というのは明確な目的との対応が大事だ、これは私も、とても納得といいますか、改めて認識をして取り組まなきゃいけないなというふうに思ったところです。
 それはそれとしてなんですが、前回、堺屋さんがこういうことをおっしゃったんですね。情報通信社会の確立、情報発信機能の多源化、文化的多様性の確保の観点から、二、三地区に分けて移転したらどうか。つまり、国政機能というのは、立法府と行政府の企画、審議部分が一つ、二つ目に調査、研究、統計、こういった基盤部分が二つ目、三つ目は司法、保全機能、こういう考え方についてどのようにお考えになられるかというのをお尋ねをしたい。
 ごめんなさい、もう一つだけ。先ほど市川先生に反論する機会を私いただけなかったので、一言だけ反論したいと思いますけれども、政経の近接性が必要だというのは、やはり私は、追いつけ追い越せ型の発想ではないかというふうに思っています。
 あと、癒着の弊害だけを取り除けばいいのではないかということでありましたけれども、多分これは問題の所在の認識の違いがあって、私は、そういうたぐいをもう超えている、つまり、依存するという気持ち、あるいはもたれ合いになっている現状、これを変えないといけないということではないかというふうに思っています。
 あと、東京はそれほど国会におんぶにだっこしなきゃいけないのか、国会がないと生きられないんですか東京はということを申し上げたいということと、各候補地の方々といいますか、新しい都市づくりについては、まさにおっしゃったとおり、ボトムアップ型で既に新しい都市づくりの提案がなされているのではないか、そういう認識を持っているということです。
 以上です。
福井参考人 多元的な移転地区ということは十分あり得ると思います。
 ただ、これも、繰り返し申し上げておりますとおり、やはりそのそれぞれ、例えば三カ所なら三カ所に分かれた首都機能がそれぞれ莫大な人を呼び寄せる力を持ったままですと、これは元も子もないということになりますので、よりスリムになって、どこにいても、ある意味ではそれ自体完結していて、余り集中発生源にはならない、特段のフェース・ツー・フェースのコミュニケーションを絶対的に要求するような機能でないというような国政上の変革とぜひセットであれば、いわば何カ所、どこにあっても支障がない、こういう世界になるのではないかと思います。
市川参考人 今の御質問の点、三点ございますが、初めの一点、二点は私は一緒と考えておりまして、先ほど私が政治家に期待し過ぎているという御意見がございましたが、むしろ先生は首都機能移転に期待し過ぎていると私は思っております。
 なぜかといいますと、癒着というのはどこでも起きるわけですね。ですから、東京から離れたら癒着はなくなるという論理は原則的にはおかしいわけですね。むしろ怖いのは、東京から離れた場所の方が癒着は起きやすいと私は思っております。東京ならば、これは衆人環視のもとですから、今の時代は衆人環視のもとで動く必要がありますから、むしろ監視しやすい。ですから、首都機能移転でどこか遠くへ行っちゃったら余計怖いというのが私の意見でございまして、そこのあたりがちょっと意見が違うかなと。
 それから、東京に国会は要るかという議論をしているんじゃなくて、日本にとって何が重要かであって、東京云々ではないということは、ぜひ確認していただきたいと思います。
 それから最後に、頑張っている都市もあります、確かに、ボトムアップで。ただ、これは、やはり日本全体の流れとなって、みずから頑張るんだという部分がふえてこなきゃいけないんじゃないかというふうに私も考えております。
中井委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 福井参考人、平本参考人、大内参考人、市川参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五分散会


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