衆議院

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第2号 平成15年2月5日(水曜日)

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平成十五年二月五日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 中井  洽君
   理事 佐藤 静雄君 理事 棚橋 泰文君
   理事 蓮実  進君 理事 玄葉光一郎君
   理事 永井 英慈君 理事 塩田  晋君
      荒井 広幸君    石田 真敏君
      金子 恭之君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    高木  毅君
      松本 和那君    宮澤 洋一君
      宮本 一三君    八代 英太君
      吉田 幸弘君    吉野 正芳君
      渡辺 喜美君    石井  一君
      河村たかし君    小林  守君
      齋藤  淳君    鈴木 康友君
      中村 哲治君    松本  龍君
      西  博義君    佐藤 公治君
      矢島 恒夫君    山口 富男君
      菅野 哲雄君    江崎洋一郎君
    …………………………………
   参考人
   (元国会等移転審議会会長
   )            森   亘君
   衆議院調査局国会等の移転
   に関する特別調査室長   五十島幸男君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月五日
 辞任         補欠選任
  大谷 信盛君     中村 哲治君
  中山 義活君     鈴木 康友君
  石井 啓一君     西  博義君
  塩田  晋君     佐藤 公治君
同日
 辞任         補欠選任
  鈴木 康友君     中山 義活君
  中村 哲治君     大谷 信盛君
  西  博義君     石井 啓一君
  佐藤 公治君     塩田  晋君
同日
 理事塩田晋君同日委員辞任につき、その補欠として塩田晋君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 参考人出頭要求に関する件
 国会等の移転に関する件


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     ――――◇―――――
中井委員長 これより会議を開きます。
 国会等の移転に関する件について調査を進めます。
 参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本件調査のため、本日、参考人として元国会等移転審議会会長森亘君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中井委員長 本日は、これまでの国会等の移転の経緯について、平成十一年十二月に国会に報告されました国会等移転審議会答申を中心に、森参考人から意見を聴取いたしたいと存じます。
 参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、極めて御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
 森参考人には、国会等移転審議会答申が報告された直後の平成十二年二月十八日に引き続き、当委員会に二度目の御出席をお願いした次第であります。本日は、当時の経過に直接関与していない委員の方々を中心に質疑をさせていただきたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 なお、議事の順序についてでありますが、まず森参考人から三十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
 それでは、森参考人にお願いいたします。
森参考人 ただいま御紹介いただきました森でございますが、本日、このような場にお招きいただきまして、意見を述べる機会をお与えくださったことに御礼申し上げます。
 私なりに、勝手に、こういう事柄でもお話しすればよろしいかと考えて若干整理をしてまいりましたので、五項目ほどにわたってこれから申し上げたいと存じます。
 まず、ただいま御紹介のありました国会等移転審議会というものの役割がどのようなものであったかということを申し上げたいと存じます。
 この審議会は、実は、それに先立って存在いたしておりました三つの組織、すなわち、首都機能移転問題に関する懇談会、それから、首都機能移転問題を考える有識者会議、そして国会等移転調査会という、この三つの委員会あるいは審議会の後を受けて発足したものでございます。したがって、国会等を移転する、あるいは首都機能の移転とも呼んでおりますが、そのこと自体の是非あるいは意義はどこにあるのかといった基本的な問題については、既に、今申し上げました私どもの審議会に先行した三者において十分に論議されたというふうに教えられております。
 国会におかれましては、この三つの委員会が発足する以前、既に平成二年には、移転を行うべきであるという結論を出しておられますので、その御結論がこの三つの委員会によっていわば裏書きされた形になって、では、その場所としてはどこが適当なんだ、そういう御諮問をちょうだいした、その課題についてよく考えよという御命令をいただいた、それが私どもの審議会の使命でございました。したがって、主たる役目は、地区の選定あるいは推薦ということでございました。
 こういう難しい事柄を論議するに当たりまして、私どもが最も注意いたしましたのは、いかなる意味においても中立でありたいということでございました。そのためには客観性と公正という二つのことを大事にいたしまして、そのために、あらゆる判断はできるだけ専門学術的、客観的な根拠に基づくよう注意いたしました。
 また、今申し上げましたように、私どもに与えられた使命はあくまで適地候補の選定ではございましたものの、移転というこのような大事をめぐる基本問題は極めて重要な事柄でございますし、また候補地の選定とも無関係ではございませんので、折に触れて私ども、そのような基本的な問題にもさかのぼって意見を交換いたしました。
 このような経緯を踏まえまして、私どもの審議会では、膨大な専門家たちの頭脳、それから専門家の方々のエネルギーを使って、それから長い年月をかけて真剣に討議いたしました。その間、国会初め各方面からちょうだいいたしました多くの御支援には感謝いたしますとともに、与えられたあるいは得られた結果については、国内外の批判に十分耐え得るものであると自負する次第でもございます。
 以上が、私どもの審議会の役割について簡単に御説明したところであります。
 第二といたしまして、今日の国会等移転の意味合いとその重要性、これは先生方、篤と御存じのことであろうとは存じますけれども、私どもの、あるいは私どもなりの理解を一応申し上げておきたいと思います。
 今日における国会等移転の意味合いでございますが、いまだ時折、首都移転という四文字を耳にし、あるいは目にすることがございますが、これは、私どもの仲間ではいわば昔の言葉でございまして、私どもが当面しておりました審議会より以前に存在した三つの、首都機能移転懇談会、有識者会議その他の折には盛んに用いられた言葉のようでありますけれども、その後、多くの論議を経て、少なくとも私どもの周辺に関する限り、今やほとんど死語となっております。国会等移転あるいは首都機能移転というのが正しい言葉でございまして、正しい意味、まさしくそのとおりのことで、意味あるいは精神は、あくまで国会等移転あるいは首都機能移転でございます。
 基本的事項の一つとして、では、首都というものはどのような条件を備えた場所かという問題があります。この点については、世界各国でいろいろな理屈とともにいろいろな実例がございますが、私は、何によらず、日本では日本人らしい考え方に基づくというのが一番いい、最もふさわしいことであろうかと存じております。
 この場合、審議会委員の多くが、これは首相談話にもあることでございますけれども、皇居が東京にとどまるのであれば、いわゆる移転後も首都は東京である、そういう考えを多くの委員が持っていたと感じております。
 したがって、要は、首都はあくまで東京であり、後に述べる理由によってその機能の一部を他に移して、別都と申しますか、別首都と申しますか、あるいは副都、副首都とするというのが私たち委員の大部分の考えでございました。これは、十五年ほど前の政官民一般の空気に比べますと大きな違いであったと申してよろしかろうと存じます。
 では、首都機能の一部を移転することの利点は何か。これは大問題でございます。過去、幾つもの審議会、委員会その他で論じられております。いろいろと時代の移り変わりによって論議の深まりがございましたけれども、今日では、基本的には一極集中の排除であります。
 ただ、その内容としては、過密状態を緩和することによって東京の都市再生を助ける、あるいは、よりよい政官の関係を築き、地方分権を推進する、あるいはまた、恐らく起こるであろう災害に備えて対策を講ずるなどが一般に言われているところでございます。この三つの項目は、それぞれ非常に大切なことでありまして、日本国の将来にとっても大きな意味を持つ事柄であり、首都機能の一部移転がそれぞれに何らかの寄与を果たすことは間違いないと考えております。
 ただ、私どもの審議会では、その性格上、この点について改めて正面から論議することはいたしませんでしたが、折に触れての言葉のやりとりの中から私が抱いた印象といたしまして、率直に申して、現在考えられるような規模の移転で果たして東京の過密緩和にどれほどの寄与ができるかということに関しては、疑問を呈する委員が多かったという印象を抱いております。
 また、地方分権の推進には、首都機能を物理的に分散する必要もさることながら、より決定的な要件は国民全体の意識改革であろうとして、単なる首都機能移転そのものに対する過大な期待を戒める向きもまれではございませんでした。
 それらに反して、災害を予想しての対策をという考えには異を唱える者が一人もなく、むしろ緊急に実現させよという意見が圧倒的でございました。東京を含む地域に災害が起こる可能性とか、あるいは起こった場合の災害規模、それによってこうむる被害の程度、そういったことについては、ここで改めて申し上げる必要はないと存じます。
 ただ、ここで一言つけ加えさせていただくとすれば、そのような災害対策といういわばやや守りの姿勢だけでなく、さらに積極的な意見、すなわち、世界の中の一流国として恥じないような政官情報機構の本拠をいわゆる新首都に築いて、平素から東京を中心とした在来の情報機構とともに車の両輪として機能させ、あわせて、いざという場合の災害対策拠点として使おうとする考えには賛同する委員が大変多かったということを御紹介しておきます。
 今になって振り返りますと、そのころは、主として縦割りと呼び得る傾向を持っております日本国政府の情報機構の欠陥を補うべく、横割りの新しい機構を新しい場所につくり、そのすそ野を広く各都道府県に及ぼすことによって、地方分権を進めるとともに中央政府のスリム化を図ると説いております。しかし、その点は、最近の電子政府構想などによって大いに改善されつつあります。また、情報技術の進歩はこの三年の間でも大変著しく、いわゆる新都市に形として巨大な情報センターを設けるような構想には意義が少なくなったと感じております。
 しかし、何らかの意味で情報機構の分散化を図る必要性には変わりなく、そうした新しい政府関係情報網の頭脳の役割を果たすべきセンターの場は、新都市に与えられてしかるべきものと考えます。
 他方、災害を予想してのいわゆるバックアップ体制整備の必要性は前にも増して大きくなったと認識され、今日、災害とは必ずしも天災だけを意味するものではないことも、一昨年九月以来特に強調されるようになりました。すなわち、電子政府あるいは新しい情報機構の機能を処理するコンピューターは必ずしも一カ所に集中しておく必要がないとは存じますけれども、事実、ネットワーク化により全国に分散することができますが、しかし、これらを行政と一体となって統制、運用するセンターは、現在の首都及び首都と地理的に隔離された新都市に重ねて置く必要があると言われております。
 ここで私個人のやや乱暴な考えと言葉をお許しいただけるならば、委員一同、決して非現実的な大きなことを考えていたわけではございません。むしろ、当面は小さな出発を図り、そしてそれを育てるということを考えていたと私は理解しております。どうか皆様方も、国会等移転というこの言葉を当面過度にかたくお考えになることなく、むしろ、ややのんびりと、若干のゆとりを持って弾力的にお考えいただくのがよろしかろうと存じます。
 基本的には、繰り返しになりますが、東京を首都として維持し、その上で、一つの別都、別首都、我々の庶民のレベルで申せば別荘でありますが、それを設けることとも解釈できます。国会議員の方々も、一年のうち何カ月かをそこで過ごされ、いい環境の中でいい知恵を絞って、そして国家百年の大計を論じていただきたいと存ずるものであります。
 現在の日本を拝見いたしますと、巨額の費用をかけて首相官邸を新築し、控え目ながらも諸官庁の建築が進み、永田町、霞が関全般にわたって首都機能を一部なりとも移転しようとする兆しが少ない中、いろいろな説明が行われておりますものの、多くの人々は、外国人も含め、外国人も多くの人たちが大変この事柄に注目しておりますが、そのような人たちも含め、国会議員の方々の真意をはかりかねております。これは、同時に国会不信、政治不信にもつながり得る事態であり、この際、むしろ、今私が申し上げたような柔軟な、多くの国民に支持され、そして実現可能な青写真を示されることが大切であろうと私なりに考える次第でございます。
 具体的には、かつて考えられていたように、東京の中の首都機能部分、例えば、国会と官邸のある永田町、中央官庁のある霞が関、最高裁判所のある隼町、そういったものがすっかりほかに移る、大変昔の表現で恐縮でございますが、いわば戦艦大和を旗艦とする連合艦隊が一斉に動くような規模とはほど遠いものと私は想像いたします。移るのは、せいぜいイージス艦数隻の程度でありましょう。それに伴って現地にもたらす経済効果も、当面は目をみはるほど大きいものではないと考えております。
 ただ、これらはあくまで形としてあらわれ、目に見える事柄でございまして、その背後、深奥には極めて大きな意義と効果があります。災害時の活動もさることながら、平時におけるコンピューターシステム、情報機構の整備、運営こそが、政官民を問わず、今後の社会活動の根幹をなす一要素であることは明白であります。
 しかも、日本の現状は諸先進国に比べてややおくれており、早急に対策を講ずべきであると言われております。この際、在来のものを手直しすることは必ずしも容易ではなく、むしろ新しい設計に基づく新しい構築を考えた方が、効率もよく、より経済的であるとは、その道の専門家のお言葉であり、ここに新しい都市が果たす役割は極めて大きいと考えられます。
 ついでに、再び艦船の例に例えるとすれば、昔の六万七千トンの戦艦大和に比べて、現在の小さな七千トンのイージス艦の方がどれほどすぐれた性能、機能を有するかは、皆様よく御存じのとおりであります。
 世界のことをここで申し上げる必要はないかと思いますけれども、一例だけ申し上げるとすれば、ドイツでは、ボンとベルリンに分散された政府機能の連携を図るためにいろいろと工夫がなされている。今後、我が国においても首都機能を物理的に分散するに当たって、大いに参考とすべき事柄であろうと考えております。
 そして、将来、このようにしてできた別都あるいは副都、別首都、副首都に対してさらに何を求めるか、どのように育てていくかということは、次の、あるいは次の次の世代の人たちに任せ、今から余り大きな縛りをかけないというのも一つの見識であろうかと存じております。
 以上が、意味合い並びに重要性についての私の考えでございます。あるいは審議会での印象でございます。
 その次に、一応三年前に答申をさせていただきました会長の立場から、国会に望むことを、僣越ながら申し上げたいと存じます。
 このように参考人としてお招きいただき、意見を申し上げることは、まことに光栄に存じております。
 この委員会での今日までの御論議について私は詳しく存じ上げているものではございませんけれども、きょうこのような機会をお設けいただいた意図が、あるいは次のようなものであるかと想像しておりますので、披露して、誤りがあれば正していただきたいと存じます。
 やや話が飛んで恐縮でございますが、私どもが大学で入学者選抜を行いますときに、次のような方法をとることが決してまれではありません。それは、まず通常の学科試験を行いまして、そこで得た得点を単純に機械的に処理して、受験者のうち上位の、ある程度定員を超えた数を残します。その後で、その人たちは一応同じ水準にあるものといたしまして、口頭試問その他で優劣をつけ、そして最終決定といたしますが、そのような方法で、口頭試問その他で優劣がつかない、あるいは試験官によって意見の違いがあるときには、再び原点に立ち戻って、改めて学科試験の成績を詳しく検討して最終的に及落を決める、こういうことをいたした覚えがあります。
 平成十一年の十二月に、私どもの審議会から当時の小渕総理に対して答申を差し上げましたとき、一部のマスコミからは、審議会では一カ所に絞れなかったという評をちょうだいいたしました。
 しかし、実は、絞れなかったのではなくて、絞らなかったのでございます。それは、今御披露いたしました入学試験の方法と同じく、専門的、学術的の判断、点数だけでは、それがすべてではない。もしかするとそのほかにも、私たちが気づかなかった面、別の切り口からの評価があるかもしれない。そこで、上位の三カ所を答申いたしまして、その後の判断は国会にお任せしようというのが私たちの考えでございました。
 そして、きょうのこの参考人招致でございます。もし、今回このような機会を設けられるに至った皆様方の審議経過なり御意図が、私が申した入学試験の例と同様のもの、すなわち、一応の評価にたえ得るとして推薦された三つの候補地につき、大まかな獲得点数も含め総合的な判断を試みられた、しかし、いずれも兄たりがたく弟たりがたい面があるので、このたび再び審議会の意向なり専門的、学術的評価に立ち戻って、その内容を聞いてみよう、できればそれを採用しよう、そのようにお考えになった結果であるとすれば、そのようなお考えは私にとって非常に理解しやすいものでもございますし、また、私どもの審議会に改めてお払いくださった敬意に深く感謝申し上げる次第でございます。
 冒頭に申し上げましたように、この国会等移転の問題は、今日までに幾つかの段階を経て、その都度、その時点での英知を尽くして今日に至ったものであります。したがって、物事の筋から考えても、国会におかれましては、既に決定された段取りに従い、この際、速やかに候補地を決定され、実行に移されることが内外の信を失わない最良の方法であると愚考する次第でございます。
 しかし、他方、十余年前の国会決議はその当時のお国の経済情勢を背景としたものであり、それが著しく変わった現在、かたくなに昔の決定に固執するのは正しいことではないという意見があることも承知いたしておりますが、やはり、当時国会で決議をなさった方々が軽い気持ちでなさったとは考えられませんので、どうかそのときの初心に返って、そして当時のいろいろな事情も御勘案の上、速やかに決定していただくことを希望する次第でございます。
 さらに一言つけ加えさせていただくとすれば、国会等移転が有するであろう幾つかの利点のうち、今日最も多くの人々の支持を得ていると思われ、かつ、実際に重要と思われますのは、先ほども申し上げましたとおり、災害対策でございます。とすれば、これは緊急を要する問題であり、できるだけ速やかに実行する必要がございます。
 この際、そうした対策を怠り、後世、実際に大きな災害が生じたとき、今日の国会における怠慢が世の批判を浴びることのないよう、十分御考慮いただく必要が今あると考えております。
 これが私の、当時の会長の立場から国会の先生方に望む事柄でございます。
 さて、具体的な事柄に入りたいと存じますが、実際の審議会では、移転候補地を決定する際に点数を用いました。その事柄について御説明いたしたいと存じますが、検討すべき事柄を十六あるいは十八、くくり方によって若干異なっておりますが、その項目といたしまして、それぞれの専門家たちが資料を集め、研究いたして、慎重審議、採点いたしました。
 ただ、項目と申しましても、それらの性格は必ずしも一様でなく、同格同等とみなすわけにもまいりませんでしたので、委員全員が知恵を絞って、それぞれの重みづけ、いわば重要度の比較を加味いたしました。
 それらを集め、表にしたもの、すなわち全般の結果について総合的に審議し、推薦が適当でないと判断された箇所は順次削除してまいりました。そして、最後に残った三カ所については、それぞれの特色を整理、さらなる検討を加えましたが、先ほど申し上げた理由により、それ以上は絞り込むことはせず、答申といたしました。お手元に恐らく資料が配られていると存じます。
 答申内容の根拠、すなわち私ども審議会の結論を導くに至った理由をここにごく簡単に申し上げるといたしますと、まず、多くの候補地の中で最後に残ったものは、大まかな分け方として、栃木・福島、岐阜・愛知、三重・畿央の三地域でございました。ここではまず、それぞれの地域についての特徴を述べたいと存じます。
 前にも申しましたように、審議会では検討すべき事柄を選び、専門家たちによって詳しく分析いたしました。その結果をもとにした上で、私どもは各項目について五点満点で全員がそれぞれ評価し、平均をとりました。
 仮に四点以上、すなわち百点満点に直して八十点以上を利点と考え、二・五ポイント、すなわち百点満点で五十点未満を欠点といたしますと、栃木・福島地域については、利点とされるものが、地形の良好性、景観の魅力、自然環境との共生の可能性、東京とのアクセス容易性、地震災害に対する安全性、水害・土砂災害に対する安全性、大規模災害時の新都市と主要都市間の情報・交通の確保であり、他方、欠点は、新しい情報ネットワークへの対応に難ということでございました。
 次に、岐阜・愛知地域では、利点が、外国とのアクセス容易性、全国からのアクセス容易性、火山災害に対する安全性、水害・土砂災害に対する安全性、新しい情報ネットワークへの対応容易性、土地の円滑な取得の可能性であり、欠点としては、地形が良好でない、東京とのアクセスが容易でない、地震災害に対する安全性に疑問という点が指摘されております。
 そして、第三の三重・畿央地域については、利点として、全国からのアクセスが容易、火山災害に対する安全性、東京の過密の緩和が期待され、他方、欠点として、国土構造改編の方向、文化形成の方向、自然環境との共生の可能性、東京とのアクセス、地震災害に関する危険、新しい情報ネットワークへの対応、これらが問題とされました。
 これらの総合といたしまして、三つの地域に最終的な評点を与えましたが、それぞれが獲得した点数は、栃木・福島が三百五十三ポイント、岐阜・愛知が三百四十ポイント、三重・畿央が三百二、三重のみでは三百十ポイントでございました。
 結局、答申には上位二地域、すなわち栃木・福島と岐阜・愛知を僅差のものとして特に順位はつけず答申し、三重・畿央については若干の条件を付して、合計三地域を候補地として答申した次第でございます。
 さて、以上が候補地決定に当たっての点数制、あるいは各候補地の特徴でございますが、最後に、ここで申し上げたいことは、審議会の結論は端的に言ってどういったことであろうかということでございます。
 私どもに与えられました最も重要な、あるいは唯一とも言い得る課題、すなわち候補地の選定につきまして、審議会が到達した結論は、あくまで答申申し上げた三カ所であります。それ以上踏み込むことは座長として僣越である、越権であると考えますし、また、委員たちの了解を得たわけでもございません。したがって、ここでこれ以上申し上げることには若干のためらいを感じますが、私自身記憶しております限り委員の総意を損なわないよう注意しながら、基本的には個人の意見としてここに五点申し上げたいと存じます。
 ただ、その際に、前提といたしまして、先ほどから申し上げております事柄、すなわち国会等移転なるものを今日の日本における諸情勢に照らして現実的に考えた場合、当面、形式上、移転先は首都東京の別荘、別邸にも例うべきものであろうということ、しかしながら、機能的には極めて斬新な、高度の性能を有する政官情報機構の中心であり、平時には東京を中心とした現機能と協調して活躍することが期待されるとともに、災害の折にはその被害を最小限に抑え、社会としての機能回復にこの上ない力を発揮するであろうということ、この両者が基本となっている点をお許しいただきたいと存じます。
 まず第一は、やはり総合評価の点数であります。
 再び入学試験の例を持ち出して恐縮でございますが、学力試験で相応以上の点数を獲得した受験生たちを一応同列とみなし、口頭試問その他で優劣をつけようとした場合に、なおかつ甲乙がつかなければ、再び学力試験の成績に立ち戻ります。その際、内容について詳しく再検討いたしますが、結局は点数に頼らざるを得ません。僅少差でどうしてという反論はもはや成り立たなくなってまいります。このような意味からすれば、私たち審議会で慎重審議の結果与えられた総合評価の点数が最も高い地域をお選びいただくというのが一つの、だれもが納得できる合理的解決であろうと考えております。
 第二は、それら総合評価の基礎となった内容であります。
 先ほど説明いたしましたように、検討項目は全部で十六から十八もあり、それぞれについて点数が算出されました。それら項目は各種各様であるため、必ずしも同等の重みを持つとは限らず、この点を考慮して多少の補正が施されました。
 それにしても、その内容にはいろいろな意味が含まれております。差し当たりここでは、三重・畿央地区が全体的に評価低く、委員全体の支持も三者のうちでは最も低かったことを述べておきたいと存じます。特に、そこで予定されている土地の多くが民有地であることがあるいは致命的な欠陥となるかもしれないとの指摘が、一部の委員によって強く行われました。したがって、この地域には、推薦に当たって若干の条件が付せられております。しかし、今日に至る間、それらの状況が格段に改善されたとは伺っておりません。
 第三に申し上げたいことは、同じく総合評価の内容でございますけれども、最も重要とされる機能の一つ、すなわち災害に対する防護の場としての適否であります。
 この点に関しては、まずその移転先が安全度の高い地域である必要がありますが、私たちの論議の過程で、岐阜・愛知地域の危険性について極めて厳しい指摘が専門家によってなされました。地震の専門家であるその委員の言葉をかりるならば、東海地方が直面している高度の危険性を考えるとき、そのような場所を候補地の一つに加えること自体極めて不見識であると力説された記憶がいまだに鮮明であります。
 移転先の安全度に関しては、栃木・福島地域について、同じく那須火山爆発の危険性が指摘されました。
 これらの結果、すなわち三地区の有するそれぞれの弱点、土地収用、地震災害、火山爆発について、三者の専門家を招き、特別の集中論議を私ども第二十八回審議会として行いました。火山爆発により予想される被害についても詳しく検討されましたが、当該地域に関する限り、他の災害に比べてその可能性が低いこと、予知がより正確に行われること、被害、これは主として降灰、灰が降ることでありますが、被害の程度がより限局的かつ軽いであろうことなどのために、東海地方で予想される地震被害ほどには深刻な議論を呼びませんでした。
 第四は、別都、副都、あるいは別首都、副首都、いわゆる別荘、別邸構想であります。
 現実問題として、このように柔軟な、ゆとりを持った考えを抱くことは決して不謹慎ではなく、むしろ百年の大計としてはすぐれたものと言えると思います。
 ある委員は、幸い那須には御用邸があるではないかと申しました。例えば、当面は形式上、夏の首都として栃木・福島地域を定め、その期間、国会をそこで開催、それに必要な政府機関もそこで動くといった考えも傾聴に値します。必要に応じて国事の一部もそこで行い得ましょう。もちろん、夏以外の時期にも、恒常的にそこに移した方がいい政府機関には移転を奨励いたします。
 そして、このような、当面は首都別荘、別邸であり、有事の際の避難場所、しかし情報機構に関する限りは日本の新しい中心として機能する別首都、副首都が、将来どのような、さらなる任務を背負い、いかに発展するか、すなわちこれをどのように育てるかは、今後の世界の移り変わりとともに、次代の人々に任せることが賢明であろうと存じます。極端な場合、将来こここそが日本の真の首都になってもおかしくはないと考えております。
 最後に、一分ほど締めくくりの言葉を申し上げたいと存じますが、第五といたしまして、移転先は一つであるべきであるということを申し添えたいと思います。
 日本社会の弊害として、このような場合、幾つもの移転先を考えて機能を分散し、結局は八方円満にといった解決が図られることもまれではございませんが、今述べた種々の条件を考えるときに、私は、その移転先は一カ所、集中的に事を行うことが肝要であると考えております。
 以上の五点を私の個人的な結論としたいと存じますけれども、私が理解しております限り、委員大多数の意向に決して逆らうものではないと信ずる次第でございます。
 大変時間を超過いたしまして申しわけございませんでしたが、御清聴ありがとうございました。これをもって説明を終わらせていただきます。(拍手)
中井委員長 長時間にわたり、ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
中井委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高木毅君。
高木(毅)委員 おはようございます。自由民主党の高木毅でございます。
 私は、今国会から当委員会の委員となったわけでございますけれども、その冒頭、早速こうした質問の時間をいただきまして、本当にありがとうございます。大変光栄に思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 また、森参考人には、本日、大変お忙しい中、委員会に御出席いただきまして、大変貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございました。
 また、特に、縛りをかけてかたく考える必要はないだとか、あるいはまた、東京を首都として、別首都というふうに考えてもいいんだというお考え、さらには別荘的発想でもいいんだなどとおっしゃっていただきまして、私ども初めて委員となった者といたしましては、何やらほっとしているというような気持ちで今臨ませていただいております。
 時間に限りもございますので、質問をさせていただきたいというふうに思います。
 今も森先生の方からお話がございましたけれども、審議会答申から、政治、経済、社会、文化、教育など、取り巻く環境が随分変わってきたわけでございますけれども、私は、二十一世紀の課題という観点から、私たちが進むべき目標として、国会等の移転問題は、全国会議員が真剣に、そろって考え、取り組む必要があるというふうにも考えておるところでございます。
 審議会をまとめてこられました先生は、先ほど来いろいろお話をいただいておりますけれども、また、今、随分様子も変わってきたとも思いますので、ここで、現時点でのこの移転問題についてのお考えを改めてもう少し詳しくお聞かせいただきたいなと思います。よろしくお願いいたします。
森参考人 私の理解では、私どもが論議いたしましたのは今から考えますと三年以上も前のことでございますので、その後いろいろ情勢が変わっているであろう、その情勢の変化に対応しておまえの考えも変わったのではないか、そういう御趣旨であろうかと存じますし、もし変わらないとすれば以前のことを再確認せよというお言葉であろうかと存じますが、確かに世の中が随分変わってきたことは承知いたしております。
 ただ、首都機能移転といったような問題は、それこそ百年の大計と申しますか、末梢的なことは大変変化の大きなこの時世でございますけれども、本当に首都機能の一部なり、あるいは将来百年、二百年の後には全部も移転するのかどうかといったようなことは、私は、世の中の変転がいかに激しかろうとも、そう簡単に変わるものではないと考えております。
 それからまた、皆様方の先輩の方々がこの国会の場において何年も前に真剣に論議なさったことは、恐らく百年、二百年の先を見据えて、その上で、その当時の状況も勘案されながら御論議になったことであろうと存じますので、端的に申し上げますれば、私が今申し上げたこと、これは今から何年か前の私どもの委員会、審議会での結論でございますけれども、特に大きく変化しておりません。
 ただ、物事を進めるに当たっては、それを十年でなし遂げるか、あるいは三十年かかってするか、そういう、どのぐらいのお金をいっときに投ずるか、あるいは事をどのぐらい急いで先に進むかということは、それは非常に変わる可能性があると存じますので、皆様方におかれましては、将来の目標は将来の目標としてきっちり見きわめられ、そして、その実行に当たっては、その時々の許される範囲で事を進めていただければ、私ども答申をさせていただいた人間としては大変うれしいものである、そのように感じておりますが、これでお答えになりますでしょうか。どうも失礼しました。
高木(毅)委員 どうもありがとうございました。
 私、さっきも申し上げましたけれども、初めてこの委員会に配属をさせていただいて、私なりに少し勉強もさせていただきましたので、私といたしましてはかなり突っ込んだというふうに思っておりますが、先生にはとてもそうは思っていただけないかもしれませんけれども、少しお話しさせていただきたいと思います。
 審議会がまとめられた報告を拝見させていただきまして、そのモデル的試算についてちょっとお伺いをしたいというふうに思うんですけれども、人口、面積、費用について、審議会では、一つは最大ケース、一つは二分の一ケース、そして第一段階というこの三つのケースで試算されているというふうに思います。これは大変に興味深くて、かつ示唆に富む内容だと思ったわけでございます。
 特に費用につきましては、いわゆる公的負担、そして民間投資・負担という、この二本立てで積算されておりました。現在のデフレ状況のもとでは金額はかなり圧縮されるというふうに思いますけれども、少ない公的負担で大きな民間投資・負担を引き出すことができるというのは非常に魅力的ではあるというふうに思います。財政出動と民間需要喚起というものは常に問われているところでありますけれども、目に見える形で考えて取り組んでいくためにも、実行してみる価値はあるというふうに思います。
 そこで、先生には、この試算の基本的なお考え、試算の基盤である組み方などをお尋ねいたしたいというふうに思います。
 とりわけ第一段階についてですけれども、国会中心に先行しようというものでありまして、国会そのもののあり方、すなわち、官僚との関係だとか、あるいは地方分権だとか規制緩和、日進月歩のIT技術を駆使しての新しい法案審議システムなどの確立、さらには、緊急を要する危機対策の面から考えてみても、費用も三分の一ということにもなっておりますので、私は、想定されたこの三つのモデル的試算の中では最も取り組みやすい内容になっているんではないかなというふうに思うんでありますけれども、その点の考えを先生にお聞かせいただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。
森参考人 今の御質問は、移転費用の試算、試しの算出ということであろうと存じますが、非常に率直に申し上げまして、私自身、このような試算の計算には余り携わってもおりませんし、その道の専門家でもございませんので、必ずしも詳しいお答えはできません。
 ただ、私が承知いたしております限り、第一段階あるいは二分の一ケース、最大ケースといったような幾つかの選択肢がそこに与えられていると思います。
 それから、文書には出ておりませんけれども、そういったものをどのぐらいの速さで事を進めていくかという要素がこの数字のほかに存在しているかと存じますけれども、試算金額そのものは変化ないものといたしましても、時代によって多少変わってくるかもしれませんが、仮に変化ないものといたしましても、その進め方の速度によって、例えば最初の五年にどのぐらいを投じるか、最初の十年にどのぐらいを投じるかといった、そういうことは十分しんしゃくの余地と申しますか応用の余地があると考えます。
 ただ、世の中の悪い意味での波に押されて非常に細々と、そして長い長い期間をとって達成するといったようなことでは私個人としては実は上がらないと存じますので、こういう事業が有意義であると認められた場合には、許される範囲で、やはり集中的に、ある限られた時期に少なくともその第一歩を踏み出すためにはかなりのものを投じていただければありがたいと考えております。
 このようなことでお答えにならなかったかもしれませんが、現在できる範囲のお答えでございます。
高木(毅)委員 どうもありがとうございました。
 先ほど、点数の話をしていただきまして、ここに資料もあるわけでございますけれども、十六から十八ある項目でそれぞれの地域が点数による優劣があるわけであります。
 先ほど、三つの候補地のいわゆるマイナス要因といいますか、一つは民有地が多いだとか、あるいはまた災害、地震が心配だとか、火山の問題等お話をしていただいたわけでございます。
 これは大変大切なことではあるというふうに思いますが、逆に、先生は、点数、十六から十八項目あるわけでありますけれども、その中で最も重んずるべきというか、そういったものは何だというふうにお考えになっていたのか、あるいは何と何がそうであろうというふうにお考えになっていたのか。点数、表がありますのでそれをじっくり精査すればおのずと答えは出るのかもしれませんけれども、ぜひ先生の方からそういったことも御説明いただきたいなというふうに思います。よろしくお願いいたします。
森参考人 わかる範囲でお答えいたします。
 これは、むしろ私個人の考えでございますので、お許しいただきたいと存じます。
 確かに、御指摘のように、十幾つもの項目が並んでおりまして、それぞれに点数が与えられております。ただ、その中には、将来改善し得るものあるいは努力によってつくり得るものといったような要素のものと、それから、どうしても将来人間が幾ら努力しても克服できないものといったようなことが混在していると考えます。
 例えば、一例を挙げるといたしますと、地形がいいか悪いかとか、あるいは天然の自然の災害に対する安全性はどうかとか、それから、水などは場合によってはほかから供給を仰ぐことができるかもしれませんけれども、例えば水の問題であるとか、そういう人間によってあるいは人間の努力によって克服できない項目がこの中には幾つもございます。
 他方、外国とアクセスする容易性がどうか、東京との交通はどうか、そういう項目もございまして、こういう項目は、私個人の考えといたしましては将来の努力によって克服できるものではないかと考えております。
 したがって、ここにたくさんの項目が掲げられておりますので一々申し上げることはできませんが、総論的に申し上げて、これからの人間の努力によって克服できるものは、新首都ということが決定した上の努力が必要であるし、また克服可能であると思いますけれども、人間の力によってどうにもできない、例えば自然災害といったようなことは、これはこの際、非常に重視しなくてはならないのではないか、そんなように考えております。
 個々の項目についての説明ではございませんが、こんなことでよろしゅうございますでしょうか。
高木(毅)委員 どうもありがとうございました。
 残り時間も非常に少なくなってきたわけでございますけれども、私、冒頭から何度も申し上げておりますが、今回、本当に初めてこうした委員に加わらせていただいて、国会議員でありますから、本来ですとこういう立場にならなくてもしっかりと勉強しておかなければならなかったんだというふうに思いますけれども、せっかく先生には十分御審議をしていただいて答申を出していただいたわけでもございますが、どうも私たち当の国会議員がいささかそれに十分こたえていなかったんではないかなというようなことを実は反省しておるわけでございます。
 先ほども少しお話をいただきましたけれども、改めてここで、審議会の会長として答申を出していただいた先生のお立場から、今の国会議員に、とりわけ私のように今まで正直申し上げて余り関心を持ってこなかった、地域も関係ない地域でもございますし、そういった国会議員に対して、あるいはもちろんそれぞれの地域の議員の先生方も同様かと思いますけれども、先生のお立場で、これからの国会議員に何を望んで何をするべきかというようなことを御示唆いただいて私の質問を終わらせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。
森参考人 お言葉、恐れ入りますけれども、実は、私自身もそういった大所高所からの示唆を差し上げるような見識を持った人間ではございませんが、一つだけ申し上げたいと存じます。
 首都機能移転という事柄自体も非常に長い歴史があるようでございます。そのときそのときにいろいろな事柄が焦点になっていたようでございますが、少なくとも今日の一番大きな焦点は、やはり災害に対する防護といいますか、将来起こり得る、しかもかなりの確度で起こり得る災害に対して今のうちから何とか手を打っておかなくてはと。殊に、このようにいろいろな文明が発達して複雑になってきております大都市では、一たん破壊されて、しかもかわりのものが何もない、それで何かが麻痺するということになりますと、これはもう庶民の生活すべてにわたって非常に大きな不幸が訪れることはまず確実でございます。
 したがって、首都機能移転という事柄の中には、いろいろな、非常にたくさんの重要な要素が含まれていることは承知でございますけれども、今日のこのような財政状況からして、あるいはまた世界情勢からして、やはり今の時点で最低、災害を想定しての場というものを早急にお考えいただきたい。そのように考えて、やや乏しい意見でございますけれども、これでお許しいただきたいと思います。
高木(毅)委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。
中井委員長 次に、齋藤淳君。
齋藤(淳)委員 民主党の齋藤淳です。
 きょうは、委員長、発言の時間をお許しいただきましてありがとうございました。
 また、森参考人には、多年にわたる審議の過程、御多用中にもかかわらず御開陳いただきまして、本当にありがとうございました。
 私は、三候補地以外の選出の議員、また、新人という基準できょうのお時間をいただいたものですから、比較的ゼロベースに近い形でいろいろと先生の御高見、確認させていただくことをお許しいただければと思います。
 私は、昨年十月の補欠選挙で山形から選出されましたけれども、その直前まで実はアメリカ合衆国において五年間留学生活を送っていました。
 アメリカにはいろいろといい点も悪い点もたくさんありますけれども、政治の中心はコロンビア特別区、経済の中心はニューヨーク、学術の中心はボストン、エンターテインメントはロサンゼルス、こういった形でいろいろな国土の機能分散が進み、円滑に運営されているという点は、日本でもいろいろ見習わなければならない点が多いのではないかな、そういう印象を率直に持っていました。
 翻って、私が候補者としての活動を始めたときに、私は現在三十三歳ですけれども、十五年前卒業した高校の同級生の名簿を見たところ、半数以上が東京へ出ている、そういう一極集中の現状もありました。
 さて、私、アメリカ留学中の最も印象に残る思い出の一つに、二〇〇一年九月十一日のテロの事件がございます。先ほど来、状況の変化といったことが議論になってまいりましたけれども、テロ対策という意味でこの首都機能移転、防災の観点からも同様かと思いますけれども、議論された経緯がございましたどうか。我が国でもオウム真理教の事件もございましたことですし、一言御説明いただければと思うんですが、よろしいでしょうか。
森参考人 お答えいたします。
 私の記憶にある限り、テロ対策という言葉は出てこなかったように思っております。
 ただ、委員の心の中には、テロを含めたいろいろな災害ということは頭の中にあったことは間違いないと思いますけれども、テロ対策という言葉は私の記憶する限りなかったかと思います。
齋藤(淳)委員 ありがとうございます。
 そこで、防災のバックアップ機能ということを森先生は非常に重視されておられるようですけれども、この防災のリダンダンシーという点は、首都機能移転を推進する立場では最大の根拠なわけです。
 一方で、首都機能移転に頑強に反対しておられる立場の方々ですと、例えばこういったリダンダンシーを確保しなくても、首都圏の広域行政、広域的なネットワークで対処できるのではないかというような意見をお持ちの方々もおられるようです。例えば、首都圏の東京直下型地震の場合でも、首都圏の県庁ですとか、あるいはコンベンションセンターを議会のかわりに使用するとか、そういったプランで対応可能なのではないか、だから移転する必要はないのだという意見がございます。
 また一方で、災害が広域に及んだ場合にはそういった議論は適用できない、だからこそ首都圏以外の場所にやはり副都ないしは新都を設置すべきだというような議論もございますようです。
 こういった中で、森先生の御見解、いかがなものでしょうか。
森参考人 これはもう全く私の個人的な考えで、間違っているかもしれませんが、いろいろな災害その他について、私どもは医学でございますので、個人の健康についても将来をいろいろ予測いたしますが、予測というのは必ずしも的中いたしません。それで、今回のスペースシャトルのような問題もそうかもしれませんが、いろいろと災害対策などを考えてみましても、いわゆる東京圏だけで対処できるという試算があったといたしましても、それはそれとして、やはりもうちょっと距離を置いた、そして平素から十分な準備をした場所というものの確保が私は個人的には必要ではないかと考えております。
 物事は、崩壊するときには極めて簡単であります。しかも連鎖的に崩壊してまいりますから、近い距離にあるものは本当に引き続き引き続き、予想もしなかったようなスピードで、それから予想もしなかったような広がりを持って崩壊してまいりますので、やはりちょっと離れたところにこういうものをつくるということが個人的には必要ではないか、そのように感じております。
齋藤(淳)委員 ありがとうございました。
 次に、視点を変えてもう一つ、この首都機能移転ということが声高に叫ばれた時点からの状況の変化ということを経済的な側面からとらえ直してみたいなと思っております。
 ここ十年、十五年、日本経済の中に起こりましたこと、例えば、グローバリゼーションの中で製造業がどんどん海外に流出して、雇用の場、特に地方の雇用の場が失われているという状況がございます。そのような中で、むしろ地方で、第三次産業の雇用の場として、行政、計画、研究の部門を移転というよりはむしろ分散していくニーズがここ十五年ぐらい高まってきているのではないかな。もちろん、現在地方で失業している皆さんの再雇用の場として、直接研究の場ですとか計画の場ということを、行政の場ということを考えるのは難しいかもしれませんけれども、地域のリーディングインダストリーとして、研究ですとか行政の場を位置づけることができないか。そして、その目的を達成するために、分都ですとか分散ということを考えられないか。
 以前に比べると、移転よりもむしろ分都、分散への需要というのが高まりを見せているのかなという状況認識を私は抱いているのですけれども、先生の側といたしましては、この分都、分散、そして従来からの移転の構想の関係について、どのような形で整理しておられますでしょうか。
森参考人 私個人にとっては最も不得手な領域の御質問でありますが、分都、分散というお言葉はそのとおりであると思います。
 ただ、いかがなものでございましょうか。むしろ、その前にできるだけ中央政府をスリム化するなり、できるだけ地方の重みを増して、そして、中央たるものは、できるだけスリム化はするけれども、やはり一カ所にまとまっているというのが私個人としてはふさわしいのではないかと考えておりますので、現状のまま中央を幾つにも細分するよりは、できるだけ中央の持っておられる機能を分け与えられて、そして、中央をできるだけスリム化された上でやはり一つというのが私の個人的な考えでございますが、これは私の専門のことでもございませんので、誤っているかもしれませんが、お許しください。
齋藤(淳)委員 森先生、ありがとうございます。先生の御見解に私は非常に意を強くいたしました。
 アメリカと日本を比べて、日本で最もこれは問題なのかなということは、人も金も情報も何から何まで東京に集中している、その状況を何とかしたい、それが私が政治家を志したそもそもの原点でありました。
 そのような中で、この一極集中を是正するための政策的な手段として首都機能の移転をどうとらえておられるのか。その段階で、首都機能移転を名目に、そもそも進めるべき地方分権の改革のレンズを曇らせてはいけないなという意見を私は個人的に抱いておったのですけれども、先ほど森先生の御意見を伺いまして、方向性としては同じようなことをお考えなのではないかなということを認識いたしましたところです。
 移転法四条でも、地方分権、国会機能の移転の中で明確に位置づけられておりますけれども、いま一度、先生の御見解として、地方分権と国会機能の移転、車の両輪なのか、あるいは、どちらかを優先して進めるべきなのかわかりませんけれども、先生の御見解をもう一度お示しいただけませんでしょうか。
森参考人 地方分権の推進とそれからこの首都機能移転ということが相互にどのような関係にあるのかというお言葉であります。
 これも全く私は素人でございますが、基本的には別の事柄とは存じておりますけれども、ただ、この機会にというやや高級でない考えもございまして、私は、やはりこういう機会をとらえてできるだけ権限を、地方に譲ると申しますか、むしろ戻して、そして移転するものはスリム化したものを、場合によっては極度にスリム化したものが移転すればそれでいいのではないか、そのように個人的には考えております。
齋藤(淳)委員 森先生、ありがとうございます。
 そこで、極度に集中した首都機能を移転する、ないしは分散するという形で、海外の実例ということで先ほど先生はベルリンの例を挙げておられましたけれども、むしろ日本の現状にとって、国の仕組みを踏まえた場合参考になるのは、例えば、イギリスにおけるロンドンの分散の問題ですとか、スウェーデンにおけるストックホルムの首都機能の分散の問題ですとか、こういった実例に関して、審議会の方で、ないしは先生個人の御見解としてどのような御意見をお持ちか、確認させていただきたいんです。
森参考人 私の記憶にあります限り、審議会で特にそのような事柄に、ある時間を費やしたことはなかったと思います。参考資料として、外国の情景あるいは状況を拝見したことは当然あります。
 ただ、私がそれとなしに感じておりましたのは、外国の事情というのは学ぶべきところが非常に多いけれども、日本の今日の現状をすぐ、外国のどこの国のどのような首都に合わせてという短絡的な考えはむしろ危険であるという意識を委員は持っておりました。
 したがって、外国の事情を十分勉強する、しかしそれは勉強のためであって、いざ日本のことを考えるときには、今までの歴史を考え、それから、ちょっと極端な申しようでありますけれども、日本人の国民性といったものも考えて、やはり日本独自のものを打ち出さなくてはいけないという、私の理解では大方の委員がこのようなことを思っていたと理解しております。
 ただ、外国の状況も、文献として、あるいは参考資料としては勉強させていただきました。
齋藤(淳)委員 森先生、ありがとうございました。
 私、実はこの参考人質疑が初めていただいた委員会質問の時間でして、先ほど、外国の例はあくまで参考に、やはり私たちは、日本の歴史を踏まえて、文化を踏まえて将来を考えていかなければならないという御意見をいただきまして、本当に勇気づけられたと言えばいいですか、この日本の歴史を見ても、いろいろと遷都が繰り返しされてきた中で、国家百年ないしは千年の大計になるかもしれない、こうした国会機能移転の委員会の場で初めて質問のお時間をいただきましたことに、また、先生の御高見をお聞かせいただく機会をいただきましたことに改めて感謝申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
中井委員長 次に、西博義君。
西委員 公明党の西博義でございます。
 森先生には、きょうは、大変御多忙のところ、この委員会においでいただきまして、貴重な御意見をちょうだいいたしました。
 実は、私も初めてでございまして、この答申をいろいろと勉強させていただいて参加したんですけれども、先生御自身からお伺いして、ようやく若干すっきりしたなという感じがしております。そのことも踏まえまして、若干の御質問をさせていただきたいと思います。
 先ほど齋藤委員からもお話がありましたように、私も実は、諸外国の例というのが一つの要件として参考になるんではないか、こういうふうな考えを持っておりました。
 もちろん、時代とともに距離感覚も違ってまいりますし、首都と副首都、その感覚も違ってくるとは思うんですが、その諸外国のねらいといいますか、それから、その移転を行ったことの効果とか、またそれに対する全体的な、経済的な、もとの首都がどういうふうに機能的によみがえったのかとかいうようなことは、若干日本でも基本的なことは参考になるんではないか。
 今まで、日本の過去の歴史、例えば奈良、京都、さらに鎌倉、江戸というふうな形の移転とは違って、近代的な首都移転というのは、国民皆さんの議論の上に成り立つ計画的な新都市という意味ではかなり参考になる面もあるんではないかというふうに思いましたものですから、私も実は同じことを質問させていただこうと思っておりました。
 ただ、日本は日本独自の生き方、また文化的な伝統もございますし、その辺も十分考えて、地理的な違いもあるということも踏まえているんですけれども、そこはまたそこで参考になる面がありはしないかなという思いがしたものですから、ひとつコメントだけ申し上げておきます。
 何か追加的な御意見がございましたらおっしゃっていただければと思うんですが、よろしいでしょうか。
森参考人 ありがたいコメントをちょうだいいたしまして、感謝いたします。
 追加的な意見というものは特にございませんけれども、このようにして、先生方が御熱心にこの日本国の将来について御論議いただいておりますことに、私ども委員会を構成していたメンバーの一人として、改めて感謝申し上げます。
 今まで、かなりの時間がたってしまいましたけれども、その間に大きな天災が起こらなかったことは本当に幸いであったと思っておりますし、もちろん私は個人としても将来ともそういう天災の起こらないことを願っておりますけれども、やはり自然というのは恐ろしいものでございまして、統計的に何年に一度こういうことがあると予告をされますと、もちろん何年かの誤差的な前後はございますものの、やはりそういうものは起こってこざるを得ない。
 本当に私どもは現在そういった意味では危険な土地の上に住んでいるわけでございまして、どうか先生方、お許しいただければ、そういった大自然の怖さあるいは偉大さというものを改めて御認識いただいて、乏しい人間の力ではありますけれども、それに対応できる方策を可能な限りおとりいただければありがたいと考えております。
 いろいろとこの委員会の先生方にはそれぞれのお考えがおありとは存じますけれども、私どもの委員会も、三年の歳月を使って、そしてそれぞれの専門家の本当に大きな努力の結果として答申申し上げた事柄でございますから、どうかそのあたりの事情をお酌み取りいただいて、もし可能であれば、私どもが多くある候補地の中でやはり最もお取り上げいただくのにふさわしいところはここだと申し上げたところをできれば早急にお決めいただいて、そして早急に大自然の脅威というものに対して何らかの対策を講じていただければ本当にありがたい、そのように考えております。
 大変失礼いたしました。
西委員 元会長の本当に真情を吐露されたお話を伺って、感銘いたしました。
 続きまして、今回のこの答申を拝見させていただいて、非常に中立的で、またはっきりと数値を挙げて答申をされている、この御努力に本当に感謝を申し上げたいと思います。
 それで、先ほどもちょっと申し上げたことにも関連するんですが、十六ないし十八の項目をそれぞれ選定されて、それにファクターをつけて、いわば十六項の足し算の方程式を解くような、それぞれをパラメーターとして足し算しているという、いわば非常に理知的な解法を採用されているということもよく理解させていただきました。
 そこで、基本的なことをお尋ねするんですが、この十六項の項目立てでございます。これはそれぞれに大変私も納得できる重要な項目なんですが、この項目立てについて、もとは多分、ここに書いております国政全般の改革とか、東京一極集中の問題、さらには災害対応能力の現況という移転問題を取り巻く中長期的な情勢の中から基本的には選ばれたんではないかなというふうに推察をしているんですけれども、この十六項目ないし十八項目の取り上げ方、いずれの計算でも答えは出てくるんですが、その項目それぞれの取り上げ方を教えていただきたい。
 それと、それぞれの項目の重みづけをなさっておられます。その重みづけも、拝見しましたところ、やはり災害ということが大変重要なファクターとして挙がってきている、こういう印象を受けております。その重みづけの議論の中でのそれぞれの皆さんのお考え、この辺のところを少しお伺いをしたいと思っております。
森参考人 御指摘のありました項目でございますが、これは、委員会の中で当初論議がかなり深く行われて、それで決まったものと承知いたしております。実は、私がこの委員会に参加させていただくようになったときには既にこの項目は決まっておりましたけれども、後からお話を伺うと、この項目を決めるに当たっては、非常に慎重に審議をされて、時間をかけられたというふうに聞いております。
 それで、いわば重みづけと申しますか、それぞれについてということは、これは委員全員で、大体この項目についてはこのぐらいの重みづけをつけていいのではないかという、投票ではないと思いますけれども、それに近いことをいたしまして、それで決められたものということで、項目どれ一つとして不適切なもの、あるいは重要でないものもございますけれども、そのときの重みづけという点ではかなりの差がついております。
 ただ、一つそこで抜けていることがあるといたしますと、将来この項目がどういうふうに変わっていくかということでございます。先ほどの御質問に対して申し上げましたように、地形が良好であるとか、水害がどうであるとか、そういうことは比較的将来とも変わり得ないことでありますが、ただ、外国とのアクセスの容易性とか、東京とのアクセスがどうか、それはこの時点での事柄と承知しております。ですから、どこか一カ所に決まりました場合には、ここで悪い点がついている項目に関しては、やはりそれなりの補強なり、あるいは集中的に是正をしていく必要があろうと思いますけれども、この調査をいたしました時点ではこれは大変真っ当な項目であり、それから真っ当な重みづけであった、そういうふうに理解しております。
西委員 ありがとうございます。
 私も、全く、その時点での現状認識としては、基本的にはこういう重みづけとこの評価というのはそれなりに理解できるんですが、社会状況の変化、また交通でいいますと交通の状況の変化、そういうものが変わったときにはまた決定する要件も若干変わってくるんではないかなということをお尋ねしたかったわけでございます。
 さらに、この社会情勢の諸事情の、先ほど申し上げました国政全般の改革、東京一極集中、災害対応能力、この三つが主な柱、その十六項目をまとめますとこういうことではないかなというふうに私自身は理解しているんですが、その理解が正しいのかどうかということ。
 それと、この三つにさらに重みづけをいたしますと、結局、災害ということが最大のポイントとして、一つにしろと言われれば災害対応能力というものが最大の重みを持ってきて、続いて東京一極集中という重み、さらに、今国政全般の改革というのは、これはそれぞれの、総理初めリーダーシップをいかにとるかということがかかってくるとは思うんですが、そのような大ざっぱなこの三つのそれぞれについて認識をしているんですが、その点についての御感想をお伺いしたいと思います。
森参考人 ありがとうございました。おっしゃるとおりであると私も感じております。
 ただ、一つつけ加えさせていただくとすれば、仮にこの場で、あるいはさらに国会の中でどこそこというふうにお決めいただいて、実際に工事が進み、第一歩を踏み出したとしても、実は、私個人の考えとしては、より大事なのはそれより先であろうかと感じております。
 ですから、成否は一にかかって、どこを選ぶかというよりは、むしろ選ばれたところをどういうふうにして育てていくかということにあろうかと考えておりますので、今の時点で、私たちの知のうを振り絞って、最適の場所を選んでいただいて、ただ、どうかそれに御満足いただくことなく、それからやはりいかにして育てていくかということを、次のジェネレーション、あるいはさらにまた次のジェネレーションにわたって、長期間にわたって御努力いただくことが必要ではないか、個人的にはそのように考えております。
西委員 時間がもう迫ってまいりましたので、最後の質問になると思うんですが、私も今参考人、森先生おっしゃったまさしくそのことが、この構想を実現できるかどうかの瀬戸際といいますか、一番肝心なことだなというふうに思っておりまして、全く同感でございます。
 最後に、今地方分権が急速に進んでおりまして、この行き着く先といいますか、もう少しやはり、日本一極集中を解消するための手段として、今市町村合併等が行われておりますが、さらにこれが、道州制とかそういう大きなブロックでの、かなり自治を持たせるとかいうような発想が議論としては起こってくるんではないかなという気がしております。
 そういうときの首都、要するに国の機能、それからそれぞれの道とか州とかいうレベルの機能というものが今と若干変わってくるんではないかなということも考えられるんですが、これは先生の調査された範囲のことは若干超えるかと思いますが、先生としてもし個人的に御見解がございましたらお教え願いたいと思います。
森参考人 御質問の趣旨は理解いたしました。ただ、御指摘のように、私がお答えできるかどうかわかりませんけれども。
 恐らく、中央政府あるいは中央をスリム化したいということは、だれしも多かれ少なかれお考えのことではないかと思いますが、人間の常として、現在の生活を続けている限り、なかなかスリム化ということはできない。そのためには、何か一つの契機のような、きっかけのようなものを必要とすると存じますが、私の個人的な願いといたしましては、ぜひこういう機会を活用なさって、それをもってスリム化を促進する一つの有効な手だてにしていただければ大変ありがたいように個人的には考えておりますが、こんなことでお答えになりますでしょうか。
西委員 大変わかりやすい丁寧な御答弁をいただきまして、ありがとうございます。
 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。
中井委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の衆議院議員、佐藤公治でございます。
 本日、こういった機会をいただきましたことを心より感謝を申し上げたいと思いますと同時に、森先生の今までの御苦労に対し、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。
 私も、ここにいらっしゃる皆さん方とは違って、この辺に関しては専門家とは言いがたい。また、失礼な質問もするかもしれませんので、ちょっとお許しを願えればありがたいなと思います。
 今先生のお話をずっと聞かせていただいて、平成元年または平成二年のころを思い浮かべながら聞かせていただきました。当時はまさに、メディアを通じても、首都機能移転、国会移転、地方分権、道州制、こんなことが非常に盛んに議論され、そして国民、また国全体でそんなことが盛り上がっていた時期だったと思います。
 しかし、そういったことを思い浮かべながら私もいろいろと考えてみたんですけれども、いろいろな議論が今出てきております。こういったものは、いろいろと議事録または参考資料を見て、読ませていただいて、自分自身もわかる部分もございますが、そういった議事録を振り返ってみる中で、例えば平成十二年の二月十八日、このときに先生もいらっしゃっていただいて、この委員会において説明をされております。
 議員の先生方、委員の先生方が先生にもこの国のあるべき姿、大計というものを聞かれておりますけれども、私がずっとこういったものを見たりまたは聞いている中ですごく感じることは、果たして、今の政治、政党、政権というものにこの国のあるべき姿という青写真というものが本当にあるのかどうか。また、そういったものが先生はあるとお感じになられているのか、あると思われているのか。また、そこの部分をわかりにくいと思われているのか。その根本論のところがどうしても私は理解できないところがある部分があります。
 先生、今の政権において、もしくは政党において、この国のあるべき姿というものが本当にあるのか、感じられているのか。まずはあるかないかでお答え願えればありがたいかと思います。
森参考人 大変難しい御質問を賜りましたけれども、私は、やはり、この国のあるべき姿を皆様方が追求しておられると信じております。
 ただ、人間にはそれぞれ個人差というものがございまして、人の言葉というのはなかなか自分の中にあるコンピューターでは理解できないこともございますので、私の持っておりますコンピューターに関する限りは、理解できないお言葉もそれはたまにはございますけれども、それは個人個人が持っておりますコンピューターの違いでありまして、私は、総論的には、皆様方はあるべき姿を追求しておられる、そのように信じております。
佐藤(公)委員 今の森先生のお話からすれば、追求はしているけれども、そのあるべき姿はないということにとらえられるんでしょうか。
森参考人 あるべき姿があるかないかというのは難しゅうございますが、理想というものは、恐らく個人個人のお持ちになっている理想の間には差があると思いますから、むしろ、もし、あるべき姿というお言葉を理想というふうに解釈していただくとすれば、それは個人個人があるべき姿をお持ちであろうけれども、その間には多分に個人差というものがあるのではないか、そのように感じております。
佐藤(公)委員 やはりそこの部分がとても大事なところで、政権をとり、政党としてやっていくためには、あるべき姿というものをきちんと持って、その方向性の中でやはり会長なり先生方に御審議をいただくというのが筋道だと思うんですけれども、そういったものがきちんと見えないまま候補地の選定をするとか議論していくということは、三百六十度状態で、なかなかまとまりにくいのかな、まさに丸投げ状態というのと同じなのかなという気がするところがあると思います。
 これに関しては、先生もお答えにくい部分もあると思いますので、この程度にさせていただきますけれども、そこの部分というのは、私たちも当然ですけれども、先生におかれましても、やはり政府に対してそういったところをきちんと明確に打ち出していただくこと、それをわかりやすくという部分というのがとても大事なことなんじゃないかなという気がいたしました。
 二点目ですけれども、先生は表現の中で、学生さん、試験、学校というのをよく例にあらわされますけれども、先生はやはり医学、医療の面に関してその道で非常に御経験を積まれていらっしゃる方だと私は思います。
 今、その日本ということをまさに患者に例えた場合に、一体全体どこが問題なのか。やはり病んでいる部分というのが、先生がお思いになられているところ、またそれを治すために今回のこの国会移転ということも一つの方法論、治療の一つとしてあり得ると思いますけれども、一番、先生がお思いになられているこの国または政治、社会が病んでいるものというものは、一体全体何なのかな。これを医療、お医者さんの立場で見た場合に、どういうところが一番この国の問題点とお考えになられているのか、お聞かせ願えればありがたいかと思います。
森参考人 これは、大変難しいお言葉でありまして、確かに、医師、少なくとも医療上の免許を持っている人間は国手と呼ばれておりますので、そういったお言葉にありますような日本の病んでいる事柄についても、私としてお答えをせねばならないのかと思いますけれども。
 ただ、完全な健康というのは、これは論ずることはできても実際にはほとんど存在し得ないことでございまして、私は、医学の中でも、実は患者さんを拝見することは、そんな能力はございませんで、亡くなった方を解剖することばかりを、そして病気の原因を突き詰める仕事をしておりますけれども、そういう場合にも、やはり完全な意味で健康な人体というのはなかなかないものだということを悟るようになりました。
 したがって、今、病んでいる、あるいはどこを焦点としてその治療に当たるべきかという御質問であろうかと思いますけれども、病気そのものはある方が普通でございまして、健康でないことを病気と定義すれば、若干健康にもとることはある方が普通でございまして、それで、日本人全体が今どういう病気を持っているかということは、これはなかなか私には判断しかねることで、むしろ先生方の方がお詳しいことと思います。
 妙なことをだらだらと申し上げましたけれども、一言で申し上げるとすれば、完全な健康というものはなかなか得がたいものであって、どこにもやはり健康上の欠点というものは存在している。それは各人が努力して、少しでも減らしていく以外には方法がないというふうに心得ているという、そんなお答えでは御満足いただけないでしょうか。
中井委員長 佐藤委員にお願いがございますが、せっかくの参考人質疑でありますから、国会移転の中身で御議論を賜りまして、御議論そのものは大変楽しく聞かせていただいておりますが、時間もありますし、先生にも余分な御負担をおかけいたしますので、順番、筋もあろうかと思いますが、よろしくお願いいたします。
佐藤(公)委員 委員長からおしかりをいただいたのかもしれませんけれども、私自身は非常に大事なことを先生に問いかけているつもりだったのですけれども、そういう部分でいったら、私は、個々における細かい議論というのは、まさに時間というものを、短い時間の中では、もういろいろな資料を読ませていただいて、大分、自分自身いろいろと理解をさせていただいたつもりでございます。でも、やはり本当にまさに今この国で考えなきゃいけないということは、その大もとの基本の部分の、国のあるべき姿、これがきちっとすれば物事は進みやすく動いていくというふうに私は考えているところがあり、先生に大変失礼な質問だったかもしれませんが、投げかけさせていただきました。
 ついでにと言っては失礼なんですけれども、委員長からおしかりをいただきましたけれども、もう一点だけ最後に質問させていただければ、平成二年のときにいろいろな議論を聞かせていただき、国会決議もしたときに、まさに、当時私は三十歳でございました。若い自分たちが将来どういう国において住んでいきたいのか、そういった意見というものは余り聞いていただけないまま、自分たちの思い込みの中で物事が進んでいったというような思いがございます。
 最後に、また委員長からもおしかりを受けてしまうかもしれませんけれども、もう時間がございません。先生の、国会移転、これに関しての、今後、若い人たちがどういう考え方を持ち、この国会移転を議論していくのかというポイントを、もしもございましたら、生徒に話すようなことでの話し方で結構でございますので、お願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
森参考人 御質問でありますけれども、実は、私自身、それほど高尚な考えを持っているわけではございません。
 ただ、一つ申し上げるとすれば、恐らく、この国会等移転という話が出たころに比べれば、今日の国の財政状況などは非常に変わっていると考えます。ただ、やらなくてはならない事柄というのが、いろいろな種類があろうと思いますけれども、その中でどうしても一つ急ぐことということに的を絞るとすれば、それはもしかしたら起こるかもしれない災害に備えて、早急に、中心となるものだけでも何とかつくっておかなくてはいけないということであろうかと存じますので、百年の大計をもって、これから長い期間、いろいろと事をお進めいただくにしても、まず早急に、本当にいつ来るかわからない自然災害に対して、せっかくこういう論議が起こっているときに、どのように対処するか、そういうことをお考えいただければ、国民一同、大変納得するのではないか、そのように考えております。
佐藤(公)委員 本当に貴重なお時間をありがとうございました。また、委員長、失礼をいたしました。
 これにて私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
中井委員長 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
 きょうは、森参考人の方から、首都機能の移転の問題につきまして、個人的な見解も含めて、大変率直な思いを私たちに伝えていただいたと思います。ありがとうございました。
 私、まずお伺いしたいんですけれども、先ほどの意見陳述の中で、首都機能移転の問題で東京の一極是正や緩和の解消という話がこの答申の中にも盛り込まれていたわけですけれども、これにかかわって、審議会の中では、この程度の規模の移転で果たして一極是正の問題などについて寄与し得るのかという疑問の声が多数あったという紹介がありました。
 となりますと、この答申は、確かにきょう森参考人がおっしゃいましたように、この審議会の前の三つの組織が基本問題を検討していたというお話だったんですけれども、やはりこの答申の中にはきちんとその移転の意味合いが位置づけられているわけですね。
 それで、今の問題でも、首都機能を分離することにより、東京はゆとりと活力ある経済、文化都市として生まれ変わるということが書かれているんですけれども、これはどうして審議会の中で疑問の声が多数あったのにこういう中身の答申になるのか、そのあたり、まずお伺いしたいと思います。
森参考人 これは、御質問の内容が内容でございますので、若干私の個人的意見になる部分があろうかと思いますが、お許しください。
 この程度の規模で本当に寄与し得るのかどうかということで、私がここで申し上げたいことが二点ございます。
 その第一点は、先ほどもちょっと申し上げたことでありますけれども、中央に集まっているいろいろな権限と申してよろしいんでしょうか、言葉遣いが間違っているかもしれませんが、そういったものをだんだんと他に移譲していく、移していくと申しましても、人間というのはなかなか現状のままでは実行が不可能でございます。したがって、何か機会をとらえて、新しいものが起こるときをとらえて、そういう権限の移譲のようなこともあわせて進めていくということが現実的であろうと私は考えております。
 したがって、このような機会と申しますのは、首都機能移転といったような機会をできるだけ大幅にとらえて、そして、そういうたびごとにどんどん移譲できる権限は移譲していかれるのが適切ではないか、個人的にはそう思っております。
 それからもう一つは、全体像、新首都という言葉を使っていいかと思いますけれども、新首都の全体像にいたしましても、これは時間のかかることでありますし、エネルギーを要することでありますし、同時に、お金も伴うことでありますから、それは社会情勢のいかんによっては短期間で完成し得ることもあろうと思いますし、現状のようなことでは非常に長い時間を必要とすることも当然考えられますので、首都機能移転と申しましても、徐々にあるいは順を追ってということでよろしかろうかと思います。
 ただ、先ほど申し上げましたように、余り、のんべんだらりという言葉は適切でないかもしれませんが、だらだらして、一体何だというようなことになっても効果は上がりませんので、一定の歯どめをかけた上で、やはり一つ一つ順を追って、時間をかけてということが一番いいのではないか、個人的にはそう考えております。
山口(富)委員 私はやはり、審議会の答申でも五十六万規模の移転ですから、これでは、首都圏三千万余を超える人々が住んでいらっしゃいますから、とてもこれをもって過密の解消論にはならないし、先ほどお述べになりました、審議会の中に疑問が多数あったというのは、今日においてもその疑問は続いているということだと思うんです。
 それから、もう一点お尋ねしたいんですが、災害対応の問題なんですけれども、この答申以降をとりましても、新しい首相官邸が生まれ、また中央省庁の相次ぐ新築が続いております。これも全部、災害対応を一つの名目に、名目といいますか建前にしているわけですね。
 当然、災害対応は必要なことなんですけれども、となりますと、この首都機能の移転という問題と、最近起こっております一連の、災害対応の名のもとでの中央官庁や首相官邸、こういうものの新築というのは、審議会の答申からいいますとどういうふうに考えたらいいんでしょうか。
森参考人 首都機能移転という方針と、それから今東京都の特に霞が関近辺で行われている災害対応の方策との関係をお問いになったものかと思います。
 確かに、理屈から申せば、首都機能を移転するということであれば、この東京都内における災害対応はもうちょっと待った方がいいのではないかという論理が成り立つと思いますけれども、現実はそうではない、災害はいつ起こるかわからないということがあろうかと存じますので、やはり首都機能移転ということは移転として、どんなに短く見積もってもやはり何年、場合によっては何十年という期間を要することでございますから、現在皆様方のお住まいのところの災害対応というものは同時に進めていかなくてはならない。
 後から考えれば、何事もなかったんだから、ああ、これはちょっと国費のむだ遣いをしたなとお考えになることがあるかもしれませんけれども、それはあくまで後になっての振り返ってのお考えであって、やはり事前には十分なことをなさっておくということが私個人としては適切ではなかろうか、そのように考えております。
山口(富)委員 移転の費用なんですけれども、審議会の答申ですと、大体十二兆三千億円、そのうち公費負担が四兆四千億円で、新都市の整備にかかわって地元の方も応分の負担をいただきますよという答申になっております。
 最近、東京都は、これを計算し直すと二十兆円規模の移転になるという試算も出しておりますが、今のこれだけの財政難の折に、こういう国家的プロジェクト、これが一体可能かどうか。これは、審議会ではどういうお考えのもとでこれだけの試算をお出しになったんでしょうか。
森参考人 審議会のこの費用算出について、私は必ずしも詳しく記憶しているわけではございませんけれども、かといって、現実を無視して理想的な数字を挙げたとも考えておりません。
 ただ、費用というものは、例えば土地の値段一つにしてもいろいろと変わっていることでございましょうし、時代の流れとともに変わっていくということが一点と、それからもう一つは、幾らの費用がかかるにいたしましても、それを十年で使って完成させるのか、二十年、三十年で完成させるのかということによって、随分その時々の出費というものは変わってくると考えておりますので、現在出ております費用というものは、これも私の個人的な見解でありますけれども、あくまで概算であって、実際にそういうことが行われるとすれば、その時点で、そして何年の時間をかけてどのぐらいのものを出すかという現実的な数字は再試算する必要があろうかと個人的には考えております。
山口(富)委員 現実的に試算いたしますと膨れてくるというのが大体の見通しだと思うんです。私は、地方でも国でもこれだけの財政危機にあえいでいますから、はっきり申し上げまして、別荘どころか、やはり無謀な国家プロジェクトになってしまうというふうに思うんです。
 それで、先ほど森参考人の方から、特定の地域の名前が挙がりまして、条件整備が進んでいないという指摘がありました。私は、これはその地域にとってはなかなかショッキングな指摘だと思うんですけれども、結局、移転ということで考え始めますと、そこから選定されない地域が生まれてしまうわけですね。そこにとっての地域経済やまちづくりの点での大きな負の問題というものをやはりきちんと見る必要があると思うんです。
 最後にお尋ねしたいんですが、この答申の末尾で、首都機能の移転というのは、やはり非常に世紀を越えた、もう越えちゃいましたけれども、国民的な問題だということで、国民的議論が結局一番大事だという強調がされております。しかし、見ておりますと、結局この問題では国民的な議論は起きていないわけですね。この点は今どういうふうに見ていらっしゃいますか。
森参考人 ちょっと前半のことから触れさせていただきたいと思いますけれども、国家投資というものが無謀というか、とにかく無理なのではないかというお言葉がありましたけれども、これから先、このような方策が実現する過程で、プランのつくりようによっては、やはり民間も魅力を感じるようなプランというものはでき得ると私は考えておりますので、実際にそういうことを行うとすれば、そのときの民間の資力、資金というものにも、別に依存するわけではありませんけれども、むしろ喜んで参画してくれるような方策なり案を講ずれば、御心配のような点は多少は緩和されるのではないか、そのように考えております。
 それからもう一つは……(山口(富)委員「国民的議論」と呼ぶ)国民的議論ですね。それは、私どもも公聴会的なことを少しはいたしましたけれども、そのように大きな範囲での国民的議論というものはいたしておりません。
 したがって、これは次の方たちの使命になろうかと思いますけれども、実際にこのことを進める方針がしっかりとお定まりになった場合には、今、当面の目標としております、災害に対する防御といったようなことでは大体国民の納得も得ていると私は個人的には思っておりますけれども、さらに念を入れて、国民的議論を企画される、あるいは国民の意思を確かめられるというような、そういうこともあるいは必要かと考えておりますが、それはむしろ、先生方のお考えあるいは方策としておとりいただくことかと感じます。
山口(富)委員 時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
中井委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党の菅野哲雄でございます。
 貴重な御意見を賜りまして、本当にありがとうございます。
 平成十一年の十二月二十日、答申がなされたわけですけれども、この答申がなされるまでの経過というものを先生から少しお聞きしておきたいというふうに思っています。
 平成二年に国会決議がなされて、そして平成四年に法律が制定されていく、そして平成七年に国会等移転調査会の報告がなされて、審議会に移っていくわけですけれども、こういう流れも先生からお聞きしました。平成八年から十一年にかけて計三十一回、答申書を見させていただきましたけれども、三十一回の審議会あるいは二十一回に及ぶ調査部会というのが精力的に行われた、その様子を拝見することができました。
 それで、先ほど先生は、こういう論議を踏まえて、あえて一カ所にしないで三カ所を示したということを申されました。そして、その一方では、災害に対応するためには急を要するんだということが言われて、今、国会でこういう経過をたどっているということは怠慢だという言葉も使われて、今の審議状況を憂慮されていたというふうに思います。
 私は、国会等の移転に関する法律の第十三条一項を見させていただきました。このこと、この条文でいえば、審議会に与えられた、答申の中身というものが絞られてくるものと当時の人たちは期待していたと思うんです。それがなぜ一カ所に絞り切れないで三カ所を示さざるを得なかったのか、ここが私は、今日、怠慢と言われる状況を生み出しているんではないのかなというふうに思うんですけれども、当時の審議の中で、会長としてこの辺の経過を若干説明していただきたいと思うんです。
森参考人 ちょっと、先ほど怠慢という言葉をおっしゃったかと思いますけれども、私どもがそういう言葉を使ったとすれば、それはちょっと言葉の誤りでございまして、怠慢という言葉は意識して申し上げたつもりはございませんので、もし無意識で申し上げたとすれば、取り消します。
 さて、一カ所でなく三カ所というお言葉でありますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、やはり私どもとして、当時、委員の間で投票すれば、あるいはあえて投票しなくても、雰囲気では、一カ所に絞ろうと思えば絞れないことはなかったと思います。それは最終の評点で一位を獲得している地域でございます。
 ただ、あえてそれをいたしませんでしたのは、我々の考えはこうだと、ただ、我々が気づかなかった点あるいは国会の方々からごらんになればまた新しい切り口といいますか、断面があるかもしれないので、複数の答申をしておきましょう、そういうことになりましたので、当時、私どもが一カ所に絞らなかったということを落ち度とおっしゃれば甘んじて受けますけれども、実は、絞れなかったのではなくて絞らなかったのでございます。
 先ほども申し上げましたように、そういう生の材料に近いものをお出しして、それで先生方が熱心に御討議いただいて、それでもまだ結論がないようでございましたら、大変恐縮な言いようでございますけれども、もう一回私の方にお戻しいただくということではありませんけれども、私の意見をお聞きくださるのかなと思って、それできょうはその三カ所の中で、やや、私どもの委員会の中での順位めいたものを以前よりははっきり申し上げたつもりでございます。
 ですから、何も他意はございませんで、これは当時、私どもの委員会の中で言われていたことでございまして、このまま答申をするという可能性もないわけではございませんでしたけれども、我々の気がつかないところで、先生方が何か別の角度からごらんになって気づかれることもあるかもしれないということで、余地を残しました。
 それがおくれにつながったとすればおわび申し上げますけれども、今からでも、こうして私を再度お呼びいただいたわけでございますから、大体申し上げるべきことは申し上げましたので、気持ちをお酌み取りいただいてお決めいただけばありがたい、そのように考えております。
菅野委員 会長というかつての立場を離れて、きょうは参考人として、最後の方に五点お聞きいたしました。この点について、先生の思いが込められているなというふうにはお聞きしたんですけれども、それでは、このことに返って、どうしてこれから絞っていくのかというのは大変な作業であるという、一方では私どもも思っているわけで、ぜひ参考にさせていただきたいというふうに思っています。
 それからもう一つ重要なことは、今答申から約三年経過しました。答申の中で最後に、国民的議論等が十分でない現時点においては、当時、平成十一年の現時点においては、移転先候補地の選定を行うことは時期尚早ではないかという声もあったというふうに述べられています。そして、国民の間で広範囲にわたる論議が一層進むことを期待して、答申を行うこととしたという文章が答申に書かれております。
 やはり、重大なことを決定するというのは、多くの国民的議論というものがあって進んでいくというふうに私は思うんですが、答申がなされて今日、三年経過しておりますけれども、その機運というものが、答申したにもかかわらず、大きく盛り上がっていないという思いが私はいたします。
 前の委員も同じことを言っていたんですが、森先生としては、今日的な国民の世論というものをどう受けとめておられるのか。会長として答申なさって以降、なかなか世論が盛り上がっていないと思うんですけれども、その辺をどう感じておられるのか、お聞きしておきたいと思います。
森参考人 世論が盛り上がっていないのをどう見るかという御質問であろうかと存じますが、世論が果たして盛り上がっているか盛り上がっていないかは、ちょっと私そのつもりで拝見しておりませんのではっきりしたことは申し上げられませんけれども、ただ、自然災害ということを考えた上で、今のこの東京のままでいいのかということは、これは国民一人一人にもし聞くことができれば、かなりの人が考えていることだと思いますね。
 ただ、どなたかがそういう旗振りをしていただかないとなかなか盛り上がりには欠けることだと思いますけれども、恐らく国民の一人一人、殊にこの近くの人たちは考えていることだと思いますので、私はそういうことは余り心配しておりません。恐らく、これで国会の方々が方針をお決めになり旗を振ってくだされば、私は、多くの国民は納得して協力するものと信じております。
菅野委員 どうしても、答申がなされたことによって世論の盛り上がりを期待するということを書いておりますから、そのことと、答申なさったことが具体的に進んでいないな、世論の盛り上がりに寄与していないなという思いがいたすものですからお聞きしたわけです。
 先生、最後になりますが、急を要する、災害に備えるために急を要するということをおっしゃっておられますけれども、急を要するがゆえにやはり慎重にならざるを得ない部分も一方ではあるんではないのかなというふうに思います。
 この急を要するというのを、私が言うのは、急を要する、急を要するという形で国民の合意形成というものが無視されてはいけないんじゃないのかなと思うのですけれども、その辺をどう考えておられるか、最後にお聞きして、終わります。
森参考人 簡潔にお答えするといたしますと、私は、急を要するということと、それから国民の合意形成をなおざりにするということは、これは両者相反するものではないと思います。
 先生方が急を要すると本当にお感じになり、なぜ急を要するかということを説いていただければ、私は、多くの国民は納得するのではないか、そのように考えております。
菅野委員 ありがとうございました。
中井委員長 私がお聞きした範囲では怠慢という言葉をお使いにならなかったように思っておるのですが、議事録を見てまた御相談させていただきますので、お願いをいたします。
 次に、江崎洋一郎君。
江崎委員 保守新党の江崎洋一郎でございます。
 森先生におかれましては、本当にきょうは貴重なお時間とともに貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。
 私も、新しい委員としてきょうは簡潔に、最後でございます、御質問をさせていただきます。
 まず、冒頭に先生からの意見陳述にもございましたが、首都機能の移転の意義、効果にはさまざまなものがあると認識しております。
 国政全般の改革として、行政組織の効率化、地方分権の推進、政官民の新たな関係あるいは横断的情報ネットワークの構築、そして先ほど先生もおっしゃられた東京一極集中の是正につきましては、やはり過密状況の緩和でありますとか、あるいは文化面での多様性ということも挙げられようと思います。そして、最後に災害対応力の強化ということが挙げられると思いますが、これらを大きく分けると、物理的に解決できる問題と制度的に解決しなければいけない問題、これが大きく二つに分けられるのではないかというふうに考えております。
 いずれも早急に対応を迫られているという大きな課題ばかりだと思いますが、首都機能の移転がその問題解決に果たす役割にはおのずと違いが出てこようかと思っております。特に、制度的な課題というものに関しましては、首都機能を移転しただけでは解決しないという問題もあろうかと思います。
 こうした課題や目的、例えば行政組織の効率化、先ほど先生も中央機能のスリム化という表現でおっしゃっておられましたが、こういった問題、あるいは政官民の新たな関係に、首都機能の移転というものが具体的にどのように影響を及ぼすのか、御意見を伺いたいと思います。
森参考人 大変広範な領域に関係している難しい御質問であろうと思いますけれども、確かに、移転のみではなかなか物事は解決しないというお言葉で、私も正直そう感じております。
 ただ、物事を改革してまいりますためには、何かのきっかけと申しますか契機というのが時に非常に大事なことでございまして、我田引水を申し上げれば、人間の健康というものもやはり何かのきっかけ、何かの契機というものが非常に大事な場合が多うございますが、移転といったような場合でも、それを一つの、あるいは小さなことであっても一つの契機というものを求めて、それをきっかけとして波紋を広げていく、あるいはそういう小さなことの積み重ねとして大きな問題の解決に資するということが可能ではないかと個人的には考えております。
江崎委員 ちょっと次には違う観点からの御質問なのでございますが、予備的調査報告書におきましては、一括移転というのが前提で議論された経過があろうかと思います。しかし、その後の経済情勢の変化等もございまして、委員会におきましても、規模の縮小の議論ですとか、あるいは分都などの形態の見直しということについても議論が出ておるわけでございます。
 先ほど森先生の御意見としては、やはり分都あるいは分散というよりは、一つにまとめて一括移転だというようなお話ではございましたが、審議会の中で、三地域の候補先がございますが、仮に議論として、今委員会でもございます規模の縮小あるいは分都となった場合には、三候補地というのが適当と思われておられるのか。その辺について、先生の御意見をいただきたいと思います。
森参考人 ちょっと一番最後のところを聞き漏らしましたけれども、途中までのところでお答えになるものならば。
 新しい候補地を見つける場合に、一括してどこか一カ所か、あるいはさらに分割して二カ所あるいは三カ所という方策もあるのではないか。私が拝見いたしましたところでも、参考人としてこのような場に呼ばれた方でそういう何カ所かということを意見を述べられた方がおられることも承知しております。
 ただ、私の個人の考えとしては、あるいは私どもの委員会での議論といたしましても、さらに分割して小さな形で東京のほかに二カ所、三カ所もということは、私の記憶しております限りほとんど話題に上りませんでした。
 それで、新たに設けるとすれば、東京のほかには一つだ、それもやはり少なくとも当分は東京が主であり、そして新しいところは従である、そういう関係は揺るがすことができないのではないか、そういうことでございました。
 それで、分割をいたしまして、幾つかにこの際分けるといたしますと、恐らくそのおのおののところはもうそれ以上の発展はないと思います。しかし、ある程度広大なところを用意いたしまして、そこで、東京にかわるとは申しませんけれども、東京を十分補うことができるほどの面積と、それからいろいろな意味での力を備えているところを用意いたしまして、そこにとりあえず小規模のものを一つ、二つ、三つというふうにする方が、私は、何十年先の日本の首都あるいは首都圏のあり方ということから考えればよりいいのではないか、そのように考えております。
江崎委員 そうしますと、やはり先生のお考えでは、あくまで三候補地というのは一括移転が前提であるというお考えでよろしいんでしょうか。
森参考人 はい、おっしゃるとおりでございます。
江崎委員 ありがとうございました。
 続きまして、もう時間も限られておりますが、最後の質問にさせていただきます。
 日本の将来を考えていく上で、議論として、この首都機能の移転とは別かもしれませんが、やはり地方分権という問題が重要かと思われます。
 仮に、この三候補地においても、首都機能を移転すれば、そのそれぞれの候補地に、今既存であります地方公共団体に属することになるわけですよね。いわゆる新たな特別区のようなものを設けるということではなく、恐らく、今ある三候補地のそれぞれの自治体の中の市となるのか、あるいはニュータウン的な位置づけになるのか、そういう位置づけになろうかと思いますが、先生のお考えというのは、具体的にはそこまでのお考えという認識でよろしいんでしょうか。地方公共団体にそのまま属する、首都機能が移転したその新しい町というのは、何か新たな別の制度的な枠組みの中で別途設けるのではなく、既存の地方公共団体に属するというお考えでございましょうか。
森参考人 御質問の趣旨は十分理解いたしましたけれども、まことに申しわけありませんが、私として、それにお答えするだけの知恵を持ち合わせておりません。
 もし東京都のほかにそういうある地域が生まれたとして、それを行政上どのようにお取り扱いになるかということは、まことに申しわけございませんが、ちょっと私にそれだけの知識と準備がございませんので、お許しいただきたいと思います。
中井委員長 それは、審議会でも御議論はなかったわけですか。
森参考人 はい、ありません。
江崎委員 この三候補地、最後にまたいろいろ議論を詰めていく上で、やはり、いわゆるこの三候補地とも、現段階において、自治体としての規模がプラスアルファで膨らんでくるわけでございますよね、仮に吸収するとなりましたら。その中で国会という大きな機能が町に付加されてくるということでありますので、その町自身の急速な都市化ですとか規模の拡大ということが起こってくるという現実があると思います。
 そういった意味で、この三候補地を選ぶに当たって、重ねて地方行政体制のあり方というものも同時進行で考えていかなければならないのではないかなというふうに私個人では考えております。
 以上でございまして、質問を終わらせていただきます。どうもきょうはありがとうございました。
中井委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人に一言お礼を申し上げます。
 森参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、長時間まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
中井委員長 理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に塩田晋君を指名いたします。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時十四分散会


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