衆議院

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第3号 平成15年2月19日(水曜日)

会議録本文へ
平成十五年二月十九日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 中井  洽君
   理事 佐藤 静雄君 理事 田野瀬良太郎君
   理事 棚橋 泰文君 理事 蓮実  進君
   理事 玄葉光一郎君 理事 永井 英慈君
   理事 塩田  晋君
      荒井 広幸君    石田 真敏君
      金子 恭之君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    笹川  堯君
      高木  毅君    松野 博一君
      宮澤 洋一君    八代 英太君
      吉田 幸弘君    吉野 正芳君
      渡辺 喜美君    石井  一君
      大谷 信盛君    小林  守君
      齋藤  淳君    鮫島 宗明君
      中山 義活君    牧  義夫君
      松本  龍君    西  博義君
      東  祥三君    矢島 恒夫君
      山口 富男君    菅野 哲雄君
      江崎洋一郎君
    …………………………………
   参考人
   (東京大学空間情報科学研
   究センター教授)     八田 達夫君
   衆議院調査局国会等の移転
   に関する特別調査室長   五十島幸男君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月十九日
 辞任         補欠選任
  松本 和那君     松野 博一君
  河村たかし君     牧  義夫君
  石井 啓一君     西  博義君
  塩田  晋君     東  祥三君
同日
 辞任         補欠選任
  松野 博一君     松本 和那君
  牧  義夫君     鮫島 宗明君
  西  博義君     石井 啓一君
  東  祥三君     塩田  晋君
同日
 辞任         補欠選任
  鮫島 宗明君     河村たかし君
同日
 理事塩田晋君同日委員辞任につき、その補欠として塩田晋君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 参考人出頭要求に関する件
 国会等の移転に関する件


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     ――――◇―――――
中井委員長 これより会議を開きます。
 国会等の移転に関する件について調査を進めます。
 参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本件調査のため、参考人として、本日、東京大学空間情報科学研究センター教授八田達夫君、また、来る二十六日午後一時、エコノミスト・元経済企画庁長官堺屋太一君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
中井委員長 参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、極めて御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。八田参考人には、国会等の移転について反対のお立場から、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。
 なお、議事の順序についてでありますが、まず八田参考人から十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。
 それでは、八田参考人にお願いいたします。
八田参考人 八田でございます。
 本日は、この委員会にお招きいただきまして、どうもありがとうございました。
 首都機能移転に関しましては、さまざまな論拠が与えられておりますが、この問題、現在考えられている首都移転について非常に具体的にその問題点を明らかにされたものとしては、この委員会に前に呼ばれた市川先生の参考人陳述書が非常に明快だと思います。
 それで、私は、今回の移転の案についての細かな吟味については市川先生の論述にゆだねて、本日は、むしろ首都移転をしようということの前提、なぜ首都移転をしなきゃいけないかという議論の前提として言われていることについて、多少の吟味をしていきたいと思います。
 前提は三つあると思います。
 まず第一は、一極集中という現象が起きているわけですが、これの根本的な原因は政府があるからである、政府が東京にあるから一極集中が起きているんだ、したがって、政府を動かせばさまざまな一極集中の弊害が除ける、一極集中自体を抑えられて、その弊害を除くことができる、そういう前提があるように思います。
 果たして、一極集中の原因が東京に政府があることに基づいているんだろうか、そのことが、まず第一に検討したいことです。
 それから第二に、政府があって一極集中するということは東京自身にとってまずいことである、そういう前提があると思います。東京に混雑をもたらすから、東京の住民にとってまずいことであると。東京都の人たちにとっては、それは余計なおせっかいだと言いたくなる面があるかもしれませんが、少なくとも議論ではそういう議論が行われている。
 それから第三に、一極集中という現象は日本全体にとってまずい。第一に、これは地方分権に大変な支障を引き起こすし、それから地震対策にもならぬ。したがって、日本全体の観点から見ても、一極集中を抑えるべきだから政府を動かすべきだ、そういう議論が、もともとの首都機能移転の考え出された動機にあると思います。
 これらを検討していきたいと思うんですが、同時に、それらを検討するに当たっては、現在、東京が、香港だとか上海だとかいうアジアの大都市と競争関係にある、そこと戦っていく、競争していく状況に置かれている、その観点から見て、首都はどこにあるのが望ましいのか、そういう観点が今までの首都移転の議論には必ずしも織り込まれていなかったように思う。特に、これが決議されてから、中国の進展、特に上海の進展というのは非常に目覚ましいものがございますから、そういうことも視野に入れて検討してみたいと思います。
 まず、一極集中の原因が東京に首都があるからかということなんでございますが、これについてはさまざまなアンケートがございまして、例えば、東京に本社を持っている企業に、なぜ本社を東京に持っていますかというようなアンケートが、これはもう何種類もございますが、八〇年代の末に行われた国土庁の調査が一番早かったと思います。そのとき既に、九業種のうち七業種は、東京で自分の業界や他の業界からの情報を得ることができる、それを第一に挙げておりました。そして、首都が東京にあるから、政府が東京にあるからだということを第一の理由に挙げたのは一業種だけでありました。それは、実は金融業だったんですね。ほかの業種は、政府があることではないと。
 その後、東京都でも、それからほかの民間のシンクタンクでもさまざまな調査がありますが、大体似たか寄ったかで、上の方に来るのが、情報が得られるから、それから次に来るのが、人材が得られるから。そういうような理由が多くて、首都が東京にあるからというのは、非常に理由として低い。
 それから、きわめつきは、三菱総研が九三年ぐらいに行ったアンケートがございまして、それは、東京に実際に本社を持っている約四百社に、新首都ができたら本社を移しますかということを聞いて、全部を移すと答えたのは五社に満たなかった。それで、大部分が東京に本社を残しますということを答えた。そういうことがございます。
 したがって、首都があるから本社が東京に移ってきて一極集中になっているということではないと思います。
 それで、実は何が原因かということでございますが、まず、きょうお渡ししましたレジュメの二ページ目の絵をごらんいただきたいと思います。
 これは、高度成長のピーク時の一九六五年からバブルブームのピークの九〇年まで、要するに、好景気の二つの年を、二十五年隔てておりますが、比べたものであります。この間にどれだけ昼間人口がふえたか。ということは、オフィスだとか学校だとかに勤めている人口、ですから、必ずしもその都市に住んでいる人じゃなくて、外から通っている人も含めた人口ですが、それが各政令指定都市でどのくらいふえたかというのを示した絵であります。
 これから明らかなように、一極集中というのは正しくない。要するに、日本は多極集中したわけであります。基本的に、この間、高度成長の後半から今までの間、札幌とか福岡とか仙台とか広島とか、そういう大都市が非常に伸びた。それから、これは地震の前のデータでありますから、神戸も京都も含めて、関西圏もある程度伸びている。
 こういう多極集中が実態であるということは、基本的には、日本は第三次産業化した、そして、大都市の役割が非常に大きくなった、しかも、交通が便利になったために、今まで小都市が果たしていた役割を地方の中枢都市が果たすことができるようになった、そういうことが根本的な原因だと思います。要するに、サービス産業化、第三次産業化ということが起きたわけです。したがって、東京もそのような多極集中の一翼を担ったという側面がございます。
 ところが、もう一つ問題がございまして、この絵を見ますと、実は昼間人口が減ったところが二つございます。北九州ということがあるんですが、北九州は鉄鋼の町だったのでやむを得ないという面がありますし、それからまた、これが福岡と非常に連携して、福岡の広域的な都市圏の一部になったという側面もございます。
 問題は大阪です。ほかの大都市がふえているのに、大阪が減っている。これはどういうことか。これはさまざまな要因がございましょうが、基本的には、大阪から本社機能が東京に移転していった、それが一番大きな原因であります。
 それはなぜ本社が移ったかというと、結局は、戦前は大阪が西日本経済圏の中心でございました。西日本経済圏の中心としての大阪ということがなぜ必要だったかというと、交通の時間が非常にかかる、交通のコストがかかる。それで、九州から東京まで行くのは片道で二十四時間かかる。大阪ならば半日で済む。したがって、本社を大阪に置いておくのならば機能できるが、東京では遠過ぎるということで、西日本経済圏の中心として大阪があった。したがって、九州も四国も中国地方も、大阪を中心とした経済圏に存続したということであります。
 ところが、交通費が安くなり交通時間が短くなったら、何も西日本経済圏というものをわざわざ置いておく必要がなくなっちゃった。そこに本社を置いておく必要がなくなったので一挙に東京に移ってきた、そういう事情がございます。したがって、さまざまな地方中枢都市が発展したのは、その経済圏において交通が便利になったということがあるんですが、日本の全体の本社機能を果たしていた大阪の機能は、交通費の低下によって急速に低下していった。
 その役割を東京が担ったわけですね。したがって、今まで西日本経済圏と東日本経済圏が分かれていたものを、日本全体が一つの経済圏になって大阪から本社機能を奪った、それが、一極集中と呼べる東京の成長の特異な側面であると考えることができると思います。これは、要するに技術が変わったから東京が成長したということであります。
 さて、それだけではありません。もし東京がそのような事情で全国の本社機能を一挙に引き受けてしまうとすると、今度は集積の利益ということが発達いたします。集積の利益というのは、これは堺屋先生がここの委員会でたびたびおっしゃっていることですが、もうフェース・ツー・フェース・コンタクトは不要になった、ITだけで済むんだということを言っていらっしゃるんですが、これは全くの間違いだと私は思っております。ITが進めば進むほどフェース・ツー・フェース・コンタクトが非常に重要になるという側面がございます。
 例えば、ここでお話ししていること自体が、顔を合わせて、皆さんが退屈していらっしゃるか、もうこんなことはわかり切っているから退屈していらっしゃるか、それとも、これはもうちょっと聞かせてほしいと思っていらっしゃるか、それをお顔を見て話すことができる。それは、すべての交渉はそういうものだと思います。それを全部手紙かEメールでしていたら、とてつもない時間がかかるし、多くの誤解が生じる。
 それから、有楽町のガード下で飲む。この飲むことが役に立たないわけではなくて、それは会社の中でのコミュニケーションをすることの最も貴重な手段でありまして、フェース・ツー・フェース・コンタクトこそが都市の命だと考えることができると思います。
 それで、問題は、フェース・ツー・フェース・コンタクトでしなくても済むようなことまで今までそれをやってきた。それはITの技術がなかったためにそういうことをやってきたんですが、ITで済む、Eメールで済むことは全部外に回してしまえばいいわけで、そういう技術が進んだならば、東京はまさにフェース・ツー・フェース・コンタクトに特化した、それこそ、一杯飲んだりいろいろな人ときちんとアイデアを交換したりするところとして発達する場所だと思います。
 これの一番いい証拠は、東京の中心は大手町だと普通考えられると思うんですが、大手町をよく見ると、結構金融系の会社は多いんですが、製造業は必ずしも大手町じゃない。例えば、日立は御茶ノ水ですし、ホンダは青山一丁目ですし、それからソニーは品川です。製造業は必ずしも大手町にいないわけですね。それは、それほど高いオフィス賃料を払ってほかの会社と会うということが利益になるとは考えていないからだと思います。
 要するに、大手町は高いんです。だから、それほどの大会社ですら、わざわざ大手町に立地してほかの会社とたくさん会うということがそれほど重要ではない。そのかわり、八王子には行かない。やはり東京の都心の周辺部にいる。ところが、金融業にとっては、いつも会わなきゃいけないということですから、フェース・ツー・フェース・コンタクトが非常に重要である。
 したがって、これは度合いによるんですが、すべての産業がフェース・ツー・フェース・コンタクトをどの程度しようかということで都市に移っているわけですから、東京に一極集中するとますます東京の機能が高まる、そういう側面がございます。
 そして、実際、香港と東京とを比べると、香港三菱商事の社長さんから伺った話ですけれども、夕食の後、四件ぐらいパーティーをかけ持ちする。それは、香港セントラルというところにたくさんのビルがあるから、招かれて、一つに行くからほかをお断りするというわけにはいかないと。そういう集積が魅力なんですね。そして、その社長さんが言っていらしたけれども、実は昼もそんな調子で、多くの会社と会えるんですよということを言っていらした。だから、集中が起きたことがますます東京を集中させてきたという側面がありますし、それをつぶすべきではないだろうと思います。
 最後に、この一極集中の原因についてですが、先ほどのITが進むということですが、ITが進んでも、例えばシリコンバレーというところは立地の集積が起きたわけです。それは、顔を合わせて話ができるからシリコンバレーというものが起きたわけで、ITが進んだから全部がばらばらにできるわけではない。むしろ、ITが進むから都市は集中する必要がないんだという議論には惑わされないでいただきたいと思います。
 さて、そうすると、そういうふうに集積してきた東京というものが非常に貴重な役割を果たしているということですが、では、一極集中は東京にとって悪いことかということです。
 一番悪いことは、通勤のラッシュが起きる、混雑が起きるということであります。
 これに関して、六十万人の人口移動はどれだけ有効かということを、前にここで参考人として述べられた市川先生も疑っておられて、実は混雑率が大幅に東京は低下しているわけですね、この十年。それの原因が供給力の増大によっていて、それは六十万人の移動などということよりもはるかに大きな役割を果たしてきていると言っておられる。
 それと同時に、恐らくピーク時は三十分か一時間ですから、その間だけ高い混雑料金を取る、そして、ほかの時間帯に乗客を移す、そういうような手がございます。
 例えばアメリカのワシントンDCでは、プリペイドカードで、ピーク時に乗ると高く取られてオフピークには安く取られるという制度がございますが、そういうシステムを導入するということが混雑対策の王道でありまして、そういうことをしないで非常に高いお金をかけて新都市をつくるというのは、東京の混雑への対策として非効率な対策だろうと思います。
 ついでに言えば、ピーク時に料金を高く取るということは、それを地下鉄やその他交通手段の整備の原資にすることもできます。
 さて、一極集中は日本全体にとって問題であるかということです。
 これも繰り返し言われてきたことですが、地方分権について、一極集中しているから、首都が東京という大都会のすぐそばにあるから地方分権が進まないのではなくて、地方分権をやろうと思えば、首都を移すとか移さないとかに関係なく、別な決断をすべきだろうと思います。
 そして、もし今のままやったらばどういうことになるかというと、新しい首都ではお役所はやり切れなくて、各役所は出先のオフィスを東京につくり、結局は二重投資になると思います。ブラジルでもそういうことが起きたようです。
 それから、地震対策。これは結局、神戸にもし首都が移っていたらどうなったかということを考えればわかるわけで、神戸には地震が起きると思っていた人は余りいないわけですね。だから、あそこに首都を移していたら壊滅したわけです。したがって、どこに移すということではなくて、基本的には、バックアップの体制をとる必要があると思います。
 東京の霞が関、永田町かいわいのビルというのは非常にきちんと今整備されつつありますから、緊急の事態になったときにいつでも来られるというお役人にその近くに住んでもらう、そういうことの体制、それから、そういうことの訓練を繰り返す、そういうことが必要ではないかと思います。
 それで、結論に入りたいと思いますが、基本的に、この一極集中は、政府が東京にあるから起きたことではなくて、技術の進歩の結果、起きたことです。それは、交通費の節減、そして日本全体が小さくなった、そういうことによって起きたことです。それから、近くにオフィスがあれば、ほかの会社があれば集積の利益がある。これも、言ってみれば技術的なことです。そういうことで起きたことである。
 それに対して、日本はどういうふうに第三次産業化に対応してきたかというと、一九七〇年までは大量の人口が大都市に移動して、そのたびに給料が倍になって、そして日本の高度成長ということが起きたわけですね。そこで、人口移動を自由にして一次産業から二次産業に変わったわけですが、七〇年前後から国土の均衡ある発展ということを言い出して、大都市から上げた財源を地方にばらまくという列島改造論が七三年に出ましたが、国土の均衡ある発展というスローガンでもって三十年間やってきた。そして、それが全総の基礎になり、その後の地方交付税の大きな膨らみの基礎を与えた。それによって日本は、二次産業から三次産業への転換が大きくほかの国におくれをとったわけですね。要するに、オフィスのスペースの賃料も非常に高い、東京の賃料は高い、そういうような状況にしてしまった。
 それからもう一つは、やはり東京を分散させろという圧力が非常にあった。幕張に分散させたり、みなとみらいをつくったり池袋をつくったりして、本当に集中させることのメリットを評価せずに、ニューヨークで容積率が二〇〇〇%なのに、東京では基本的に一〇〇〇%という非常に低い水準に抑えてしまった。それで国際競争力を失ってきたわけですね。要するに、賃料が高いということになってしまった。これは何とかして第三次産業を復活させなきゃいけない。そのときに首都がどういう役割を果たすか。これはもうサービス機構ですから、サービス機関です、コンサルティングファームと似たようなものですから、なるべくお客さんの近くにあればいい、なるべく大手町の近くにあるのが一番都合がいいわけで、離れていたら、その分、コミュニケーションするのに時間がかかり、お金がかかる。
 だから、東京がこれから、今までの歴史をひっくり返して、東京の集中をきちんと進めていって海外の諸都市と競争できるような都市にするのならば、その一環として、政府という非常に重要なサービスプロバイダーを東京の真ん中に置いておく、そして、コミュニケーションになるべくコストがかからないようにする、そういう必要があるのではないかと思います。
 以上、長くなりましたが、陳述を終えさせていただきます。(拍手)
中井委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
中井委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石田真敏君。
石田委員 自由民主党の石田と申します。
 八田先生には、本当にありがとうございます。御苦労さまでございます。
 今日まで、この特別委員会にたくさんの参考人の先生方がお見えになられまして、それでいろいろとお話をお聞かせいただく中で、なるほどなと思う御意見もたくさんいただいたわけでございます。私の考え方から申し上げますと、先生の考え方とは少し違うかなというふうに思っておりまして、私が納得をしたといいますか、なるほどと思ったそれぞれの先生方のお考えを一度御披露させていただいて、先生がそのことについてどのようにお考えであるか、お聞かせをいただきたいというふうに思います。
 三点、先生御説明をいただきましたので、三点について順次御質問させていただきたいというふうに思います。
 まず一点目は、東京になぜ集中するのかということでございます。
 これにつきましては、堺屋太一先生が、もう十年も前になりますか、その著書の中で述べておられるわけでございます。ちょっと簡単にですけれども、引用させていただきます。
  なぜ、日本だけがこれほど首都圏集中になっているのか。それは、官僚たちが熱心に首都圏集中を追求したためだ。じつは昭和十六年の「帝国国策遂行要領」の制定の際、国家社会の頭脳機能を東京に集めることにした。ここでいう頭脳機能とは、経済産業の中枢管理機能、全国的な情報発信機能、そして文化創造活動の三つである。官僚統制で規格大量生産社会をつくるために、これら三つを官僚の監視下に置いたのであった。
  まず第一の経済産業の中枢管理機能は、国家総動員体制で物資統制を行なうために官僚の監視下に置かなければならない。そのため、あらゆる産業と職能に全国団体をつくらせた。自動車工業会、鉄鋼連盟、電気事業連合会、弁護士会、医師会などの全国組織をつくり、この本部事務局を東京都に置かせた。こうすると、社長が全国団体の会長に就任すると、毎日のように役所と本部事務局に呼び出される。これでは東京以外に住めなくなる。これを繰り返すと主要企業の本社機能は、すべて東京に集まる、と考えたのだ。
  第二は、情報発信機能である。書籍や雑誌の出版社は発行物を取次業者に流すのだが、戦時中に取次業者を東京だけに集約した。このため、事実上、東京でなければ大型の出版活動ができない仕組みになった。テレビ放送では「キー局システム」という世界中にまったく例のない方式をつくり、キー局は東京にのみ許可した。このため、全国放送のためには、東京のキー局を通さなければならない。地方発の番組もすべて東京の局の意向に沿ったものになってしまうわけである。
  こうして、情報発信はことごとく東京から、という仕組みができあがった。まさに「東京の声」は「天の声」であり、「日本の世論」ということになってしまうのである。
  第三の文化創造活動を、東京に集中するためにはどうしたか。まず特定目的の施設は東京以外にほとんどないことにした。歌舞伎座やシンフォニーホール、あるいは格闘技専門体育館といったものは東京以外にはほとんどない。
  結果として、劇団も楽団もすべて東京に集中することになった。東京は、世界で最も交響楽団の多い都市である。
  分散化を意識的に進めないと、人や機能は東京に集まりつづけ、ますます東京の世論が日本の世論になり、国の単一化が助長される。この悪循環を断ち切るために、やはり国家百年の計として首都機能の移転を実現すべきであろう。
こう述べておられまして、私は非常に説得力があるなというふうに思っておるわけでございます。そうとするならば、やはりシステムとして東京一極集中が助長されているということになるわけでございまして、であるならば対策が必要ということになってくるかと思いますけれども、先生はこのことについてどうお考えになられるか、お答えをいただきたいと思います。
八田参考人 まず第一に、自動車工業会その他業界団体が東京にあるということですが、アメリカを見ますと、とにかくワシントンのベルトウエーの周辺にありとあらゆる業界団体がある。ベルトウエーバンディットというのですが、とにかくワシントンの成長というのもなかなかすさまじいものなのですが、これはもう業界団体の集合です。首都をつくれば、そこに業界団体はできます。そして、日本も首都を移せばできるわけで、この歴史的な経緯というのは、確かにその段階ではあったかもしれませんが、現在では、私は余りほかの国は知りませんが、アメリカは十八年住んでおりましたので割とよく知っているのですが、これは移しても、首都の周りに業界団体は当然動きます。
 それから、テレビ局でありますが、確かに歴史的にそういう側面があったのかもしれません。しかし、テレビとか情報とかいうもの、特にテレビに関しては、これからはまさにデジタルの時代で、実に多くの局ができ出すわけですね。これが地方からの発信を格段に容易にするだろうと思います。首都移転が必要なわけではなくて、むしろ、そういう技術革新を利用することが必要であろうと思います。
 それから、音楽ホール、スポーツ施設、これは、日本ほど全国に豪華なものがあるところはないと思います。
 それで、こういうことを申しますと、要するに、外国と比べ、それから今の技術の水準を比べ、地方にいろいろな分散をするということはどうしても必要なわけですけれども、その分散をする手段が、技術を使ったり、それから規制を緩和したりするということで可能なんであって、首都移転ということがそれに対する正しい方策だとはどうも考えにくいと私は思っております。
石田委員 歴史的にそういう背景があったというふうにお認めをいただきましたけれども、今、現実に困っているんですね。その歴史が今まだ続いておるわけでございまして、これについて、先輩の皆さん方、今まで本当にいろいろと努力をされてきたけれども、それが実現できないという中で、何とかこの首都機能移転を考えようということになっておるんだろうと私は思います。
 時間がないので次に進みますけれども、地震についてでございます。
 先生は、地震についてはバックアップ機能をつくる、それだけでいけるんではないかということですけれども、実は、昨年の十一月にここに参考人にお見えいただきました皆さん、御心配をされておられましたが、堺屋先生の意見をもう一度引用させていただきます。
  私は、阪神・淡路復興委員をいたしまして、震災の翌々日から神戸に入りましたけれども、そこではっきりしたことは、まず第一に、被災をした人が救済はできないということであります。特に十キロ以上離れている人は、出勤、通勤がほとんど不可能になります。
  したがって、東京で被災が起こったとき、東京の通勤者、二十四キロが平均でございますから、ほとんどの人は帰れない、出てこられない。ところが、今の救済体制というのは、すべて人々は出てくるという前提になっているんです、これは東京電力も、ガスも、東京都も、国の政府もみんなそうなんですが。そうすると、これは絶対に不可能だということが考えられまして、大変な問題が起こるだろう。
  そういった点からいいますと、別の首都機能があって、そこが情報を発信し、企画管理をできるという状態をつくらなけりゃいけない。このために、私、IT担当大臣のときにも、随分お金をかけて、ある一点に集中しておりますインターネットを迂回するようなことをするために大変な努力をいたしましたけれども、結果としては、猛烈に集中が進んだだけでございまして、その一点をテロ攻撃されると日本は危ないような状態になっておりますが、ぜひこの点も、安全性の問題も大きな課題だと思います。
このように述べておられます。
 また、三菱総研の平本先生もこの場にお見えになられました。バックアップ機能だけでは不十分である、まず震災復旧能力として、特に最初の一日、二日が最も重要で、そのときに相当な態勢が整えられるかどうかだというふうに述べておられます。
 こういう点でいいますと、今度新しい首都機能をもしつくるとなれば、当然、震災対応力の十分整った町にしていけるんではないかと考えておるわけでございまして、この地震の問題についての先生のお考えをお聞かせいただきたいんです。
 もう一点、我々政治家という立場から申し上げますと、首都機能を震災から守るということ以上に、住民をどう守るかということが大事になってくるわけです。そうしますと、先生が言われるように、大都市の集積の利益ということを強調されて、どんどん集積すればするほど危険度が増すとも考えられるわけでございまして、この点についてのお考えもお聞かせをいただきたいと思います。
 それから、もう一問ございますので、答弁はちょっと手短にお願い申し上げます。
八田参考人 まず、神戸の経験ということですが、神戸は全く準備ができていなかったと思います。
 これは、例えば、被災したときにどういうことをやるかという訓練が必要だと思います。それから、先ほども申し上げましたが、地震が起きたときの当座に必要な政府の役割というのは非常に小さなところですから、何もそこでもって全部、文部省の教育から何から、全国の教育体制について、非常事態にすぐに二週間でもって全部維持するという必要はないわけで、とにかく、被災を何とか軽減するということが役割ですから、そのために必要な人に東京の都心部に住んでもらう、そしていつでも集まれるようにする、そういう体制をつくり、また訓練をする必要があると思います。
 それから、もし東京がつぶれてどうしても動かなかったときには、例えば大阪だとかにいる高級官僚の方たちに、ある程度、官僚に対する指揮をとってもらえるような仕組みをつくるというようなことが必要だろうと思います。
 それから、最後の危険度に関してですが、神戸の例を見ると、結局は低層密集の住宅を残しておくということが非常に危なくて、高層のきちんとした住宅やビルをつくるということが地震に対して非常に強い町にする。したがって、東京で一番重要なことは、集積をすること自体が危ないことではなくて、むしろ、周辺部に残っている低層密集住宅を高層に変えていくということが被災を小さくする手段だと思います。
石田委員 ありがとうございます。
 それでは、最後の質問になるわけですが、これは地方分権といいますか、地方分散についてでございます。
 先生は基本的には、こういうことは、交付税とかそういうような見直しの中でやっていけばいいという御意見であったかと思うわけですけれども、実は、これはもう本当に長い間皆さんが御苦労されてこられています。堺屋先生もここでの参考人の意見として、私は二十年以上これをやってきているけれどもなかなか進まない、やはりそのパラダイムシフトというような意味で首都機能移転をやらないと仕方ないんじゃないかというような御意見を言われております。二十年以上もそういう努力を皆さんがしてこられていて、なおかつ地方分権、分散が実現できていないということについての先生の御意見。
 それから、官僚が東京にいて、先ほどもちょっと触れましたけれども、東京情報に埋没しているという感じがします。そうしますと、地方の声は耳に入らないし、あるいは地方の現実も見えないということになるわけでございまして、私は、東京以外の地から日本全体を見るということが非常に重要なことになっていると思うんですけれども、そういうことについての先生のお考えをお聞かせいただきたい。
 それからもう一つ、先生の文章も読ませていただきましたけれども、先生のお話は、地方については物すごく誤解が多いと思いますね、何か偏見に基づいておられるんではないかなと思うぐらい誤解が多いわけでございます。先生の論理でいけば、これから東京一極集中はまだまだ続く、これは当然なんだということになるわけですけれども、それでは、その行き着く先、東京の将来、地方の将来はどのようになるのか、先生のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
八田参考人 まず、私は地方分権に賛成であります。それから、地方の声がなるべく吸収されるような仕組みにすべきだと思っております。それはまず申し上げておきたいと思います。
 まず、東京というのは、特に集積の利益を得るという観点から見たら、世界にまれな有利な都市なんですね。要するに、東京はモータリゼーションがおくれて起きたために、大量の通勤輸送手段がある。こんな国はないわけです。
 例えばニューヨークと比べますと、ニューヨークの中央線と言えるようなものは、ニューヘブンラインという鉄道がグランドセントラルステーションに来ておりますが、それが、ラッシュ時で二十分に一本です。そして例の、グリニッジとかスタンフォードとかそういうところへ来ているんですが、しかも、そこの駅に朝バスが来ているかというと、驚くかな、何にもない。バスはない。結局、奥さんが自動車で駅まで送っていくか、自分でもって運転していってそこにパークする。
 東京はこれだけ密集して、大変な大量の鉄道が動きますから、二分置きに動くということで、鉄道も採算に乗るし、それからバスや何かも採算に乗る。こういう、ある意味では集積の利益をフルに利用できる町なんですね、もう世界に冠たる町だと思います。
 ところが、いろいろなイデオロギーがあって都心部を抑圧していたために、全く、ニューヨークの都心と比べて、夜間の人口密度も昼の就業者密度も低い、そういう状態にしている。実にもったいない状況である。これを活用するということは、日本がやはり世界に打ちかっていくためのキーであろうと思っております。
 それから、今度は地方との関係でありますが、そうやって活用させれば、当然、スペースがふえても東京の賃料が高くなります。そうすると、やはり地方と東京の交通がきちんとしていれば、地方で分担できることというのはおのずから出てくる。
 そこで必要なことは、やはり東京と地方の交通関係をきちんとすることだと思います。例えば、この霞が関とか東京駅から羽田まで十五分で直行の便、鉄道があって、途中ノンストップで、しかもグリーンカーもある、そういうようなことを当然つくるべきです。それが、東京にとっても地方にとってもいいことではないかと思います。
石田委員 どうもありがとうございました。
 以上で終わります。
中井委員長 次に、小林守君。
小林(守)委員 民主党の小林守でございます。
 八田先生には、貴重な御意見、そして刺激的な御発言、ありがとうございます。
 今日まで首都機能移転、今日では国会等の移転という言い方がされておりますけれども、私は、この十年来の国会における議論というのは、やはり、この日本の閉塞した現在の状況をどう打破して、二十一世紀の日本のあり方あるいはビジョン、そういうものをどう求めていくか、そして、そのビッグプロジェクトとして国会等の移転というものが取り上げられてきているのではないのか、このように思う一人でございます。
 この間の中で、多極分散型の国土の形成とか、あるいは政治と経済の分離というようなものが一つの大きな柱になっておりまして、中央集権的な明治維新以来の東京時代というか、これを、やはり多極分散型の、多軸型の国土形成に国のあり方を変えていこうというような視点が強く出されてきたのが今日までの経過ではなかったかというふうに思います。
 それから、ある先生におかれましては、やはり日本の一つの歴史転換というかパラダイム、文化の転換というのは、首都の移転というか、都の移転という遷都によって大きく時代を画してきたというのが事実でありまして、そういう視点に立って考えるならば、やはり今日の日本の閉塞した状況を打破していくためにも遷都というものがあるのではないかと言う学者もいらっしゃいます。
 私も、一面、そういう点では共感をするところでございますが、九九年、平成十一年の十二月二十日に国会等移転審議会の答申が出されて、北東地域、栃木・福島地域が評価の点で第一等の予定候補地ではないかというような答申が出されてきたという経過がございます。
 それで、きょう先生のお話をお聞きしまして、東京は、現在、香港や上海とどう戦うかという、東アジアにおける経済拠点都市の覇権と言っていいか、一つの中心をめぐって大きな競争下にあるというようなことであって、今日までそのような議論が欠けていたのではないか、このような御指摘があったところであります。私もそのとおりだというふうには思いますし、いかにして東京をパワーアップさせていくかというような視点は極めて重要なことだろうというふうに思う一人でございます。
 しかし、香港にしても上海にしても、首都は北京ですよね。ということになりますると、必ずしも東京に首都がある必要はないじゃないか、あるいは国会がある必要はないじゃないかというような考え方ができるのではないかというふうに思います。ですから、一つとして、東京のパワーアップ、都市再生をどうするかというのは当然考えなければならないことですけれども、しかし、それが国会等の移転とは直接かかわりないじゃないかというふうに思いますし、いわゆる集積のデメリットというか、政官業の癒着の構造とか、もう一つ、フェース・ツー・フェースの問題についても、私は、確かにコミュニケーションの、本音での取引とか交渉というのはフェース・ツー・フェースが最後の決め手になる、大きな基盤になるとは思うんですけれども、しかし、これだけの情報化社会の中で、情報通信技術が発達した中では、相当の部分はフェース・ツー・フェースではなくてできる時代になっているのではないか、このように思うんですね。むしろ補完的機能というものがフェース・ツー・フェースのコンタクトに求められているのであって、どうも先生とはそこがちょっと違うなという思いはしている一人でございます。
 そういう点で、むしろ、フェース・ツー・フェースというのが政官業の癒着などを生んでしまう、あるいは閉鎖的な階層をつくってしまうというようなデメリットの方が大きいのではないか、このように思います。経済界が、みずからの情報収集の効率とか経済効率の観点で東京に集まっている、首都が移ったって行きませんよというような発想を持たれるのは大いに結構だと思うんですけれども、しかし、政治とか行政というものが何も東京になくてもいいじゃないか、むしろ、デメリットを解消する意味で分散した方がいいのではないかという視点はずっと変わらないのではないか、私はこのように思います。
 そこで、第一点として、なぜ東京に首都機能がなければならないのか。香港と上海と戦う上からいってもその必然性はないではないか、北京は別にあるじゃないかというようなことをお聞きしたいというふうに思います。
 それから、第二点でございますけれども、地方分権それ自体は目的を持って制度的に改革しなきゃならぬというのは、私は全く同感でございます。そういう視点に立って考えるならば、政府のリーダーシップが、今日まで分権、分権と言われながら、今日においては、むしろ逆に、市町村合併というような方向で集権化が進んでいるのではないか、このように思わざるを得ないんですけれども、分権を基盤として国のあり方をつくっていくという視点については、きっと先生も同じだというふうに思うんですね。
 それで、分権を基盤にした国づくりという視点に立って考えるならば、首都機能を移転することについて先生は賛成なされるかどうか、その辺についての確認をしておきたいというふうに思います。
 それから、バックアップ機能の件ですが、私は栃木・福島地域出身の者なのでそういう見方がされてしまうことがあるかもしれませんが、もっとフリーな立場に立って、やはり首都の、東京都の地震対策という視点あるいは防災対応力の強化という視点に立って考えるならば、バックアップ体制の必要性というのは全く同感でございます。
 しかし、では、それをどこに求めるかということの中で、先生のほかの委員会等における参考人の意見陳述の中では、例えば大宮とか名古屋とか大阪とかあるいは横浜とか、そういうお言葉があったと思うんですけれども、私は、では、なぜ、東京から至近距離にあって一時間以内ぐらいで到達できるような栃木・福島地域じゃだめなのかということを逆にお聞きしたい、このように考えます。
 それから、先ほどの御質問にもありましたが、最後の質問ですけれども、先生は、このような東京への集積のメリットを生かして政治機能まで置いておいた方がいいんだというようなお考えだと思うんですけれども、これはやはり分離分散した方が、二十一世紀の国の形を考えるならば必要だと私は思うんですが、先生の二十一世紀の日本のあるべき姿というものがちょっと見えていない現状だと思うんです。その辺をお聞かせいただければというふうに思います。
 以上でございます。
八田参考人 イギリスではロンドンが政治と経済の中心でありますし、それから、フランスはパリが経済と政治の中心であります。アメリカは南北という歴史的な事情があって、何もないところにワシントンというのをつくった、そういう非常に政治的な理由があったと思うんですね。
 私は、正直申し上げまして、そういう南北の分離という政治的な問題がなかったら、もちろんワシントンはニューヨークのそばにつくるのが一番いいと思うんです。三十分置きに飛行機が行っているわけですけれども、随分むだな話ですし、私も、家族はニューヨークに住んで、ワシントンに勤めるということをやりまして、毎週帰りました。いつも飛行機で、結構有名なテレビのキャスターとかそういう人に会いましたけれども、それは本当にむだなことだと思います。近くにいるにこしたことはないと思います。
 それから、癒着を防げるのではないかということですが、私は、ワシントンにあるために癒着がなくなったとは全然思っていないです。先ほどから申し上げましたように、業界団体は全部ワシントンにございまして、そして、ニューヨークと業界団体の中でいろいろ行き来していますけれども、癒着は全く残って、癒着するのに多少お金がかかるようになるというだけのことだろうと思うんです。行き来に時間がかかる。だから、癒着を廃止するには、首都移転じゃなくて、もっと適切な政策手段をとらないと、全く残ってしまうということになると思うんです。
 それから、東京をパワーアップするということが必要だ、それは国際競争力のために必要だということなんですが、では、それで今度首都を移転したらば日本がつぶれるかというと、つぶれもしないだろうと思います。東京をきちんとパワーアップすれば、それでつぶれることはないと思いますが、近くにあればやはり大きなむだが省けると思います。
 実際、政府の機能は、私、よく大学のことで言うんですが、大学の先生が大学にいて学生だけ相手にして本だけ読んでいたら、全く世の中のことにはおくれてしまうんですね。本に書いてあるということは、現実に動いていることが随分決まってから後で書かれるわけで、やはり何が動いているかということを、例えば経済学の人間なんかは、業界の団体の方やお役人の方に直接お話ししないと、今何が起きているかわからない。それをそうやって象牙の塔にいるということは全く無意味で、人と会わなきゃいけない。それはお役人だって全く同じだと思いますよ。お役人も、日本で何が起きているかということをやるのに、新首都でぽつねんとじっとしていたって何にも情報は集まらない、どんどんいろいろな人に会っていかないといけない。それに一番いいのは東京だと思います。
小林(守)委員 例えば、分権を進める基盤の上に首都機能移転をするということについてはいかがかというふうにちょっとお話しさせていただいたんですが、そのことと、もう一つ、なぜバックアップ機能が、栃木・福島地域の名前が出てこないのかということ、それからもう一つは、先生の二十一世紀のビジョンというか考え方というか、日本のあり方というのはどんなふうにお考えになっているか。例えば、日本は遷都によって時代が変わってきた、パラダイムが転換してきたというような歴史や事実なんですけれども、その辺についてどうお考えになるか。
八田参考人 これも、ロンドンもずっと遷都していないですし、パリもずっと遷都していないですし、それから、日本でたまたま遷都が起きたことが、それは遷都はあったかもしれないけれども、遷都したことが本当によかったのか、そういう吟味もない。それから、権力の基盤になる経済的な中心地が移っていくときには当然首都も移っていいと思うんですが、東京のように、これから第三次産業が中心の世界の中で、そこで生きていくという、まさに東京の重要性が増す国で、この時代に移す理由がわからない。もともと、四百年ごとに首都を移すべきだという仮説自体が全く根拠のないことではないかというふうに思います。
 それから、袋小路になっている日本経済をどうするかということは、もう本当に、これは今まで考えていなかった集中ということが非常に重要なんだという認識をして東京を生き返らせる、そして、オフィス賃料や都心に住む賃料を安いものにする、たくさんのスペースを供給して安いものにする、それこそが日本を全く変える、リバイタライズする方法で、このまま国際間で競争に負けていったら、どんな首都をつくったって日本を復活させることはできないと思います。それが私の二十一世紀に関する考えです。
 それから、なぜ福島について言及していないかと申しますと、大阪というのは、私は大阪に住んでいたからわかるんですが、近畿財務局長だとか大阪国税局長だとか大阪通産局長、建設局長、一流の人材がいるんですよね。それは、後ですぐ本省に戻ってくるような人がいるから、少なくとも省庁に関するコントロールに関しては、やはり人材的には随分、そこでもって次を待っている方たちがいるから、その人たちに訓練して、非常のときにはこう動くんだよということをやるのは意味があるだろうということがあります。
 それから、大宮のように近いところは、もちろん、ある意味では非常のときには歩いていけるという距離ですから、それはそういう利点がまた別にあるだろう、そういうふうに思っております。
小林(守)委員 まだ時間がちょっとあるようですから、お聞きします。
 分権を徹底して進める中で、私たちは、分権連邦型国家というものを目指していこうというような議論を党内ではしているんですが、今日の国際情勢からいっても、アメリカへの政治、経済、軍事の一極集中、そして世界一極支配みたいな状況が進められているということですね。これからの国際平和とか地球環境ということを考えると、多文化共生みたいな、多元主義的な形の中で国際機関がきちっと政府機能を果たしていくというような、EU的なものがやはり国際的な社会の中でも求められているのではないかと私は思うんです。
 それで、日本のあるべき姿として、例えば国際政治都市的な機能を移転した都市が持つとか、あるいは地球環境の視点からいって、例えばゼロエミッションの循環型、持続可能な社会を目指した都市をつくっていく、モデル都市をつくるとか、そういう一つの実験都市みたいなものをイメージして、しかも政治と経済の中心地が分離するというようなことが望ましいのではないかというふうに思うんですけれども、先生の方は、分権といわゆる国会等の移転については全く、もう要は東京にあった方がいいんだという考え方ですから、分権は必要ないという考え方になるんですか。
八田参考人 私、アメリカに住んでおりまして、日本と随分違うなと思うのは、町の趣が町ごとにまるっきり違うんですね、アメリカは。例えば、ニューヨークは、御存じのようにスカイスクレーパーがありますし、ワシントンは非常に高さがコントロールされて、ある意味では、私、高層ビルは大好きですけれども、そういう人間が見ても、ワシントンはなかなか明るいいい町だなという雰囲気がある。ただし、ポトマック川を越えると、もうアーリントンは高層ビルが許されている。そうやって、各町が独自の考えでもってそういうことを自由に変えていく。それから、もちろん学校制度なんかも町によってまるっきり違います。
 私は、地方分権というのは、基本的にはそういうことだと思うんです。町が独自の考えを持って、市のデザインから学校の制度からいろいろ考えることができる。そこにまた人々が移り住んでいく。私は、それはもう大いにやるべきことだと思います。
 しかし、今度は日本全体のかなめとして東京とか政府とかをどう設計するかというのは、ちょっとそのレベルの分権とは違った観点からやはり考えるべきではないかと思いまして、私は、東京の機能というものは、ある意味で東京の都民には任せられない、国全体でもって非常に効率的なものに設計していく必要があるんじゃないか、そういうふうに考えております。
小林(守)委員 終わります。ありがとうございました。
中井委員長 次に、西博義君。
西委員 公明党の西博義でございます。よろしくお願い申し上げます。
 きょうは、大変お忙しいところおいでいただきまして、貴重な御意見をちょうだいいたしまして、ありがとうございます。
 先ほどからの先生のお話を聞いておりまして、私は、先生の御議論といいますのは、東京という現にある首都、これを将来に向かって、国際競争力もにらみながら、どうシェープアップしていくか、理想的な形をつくっていくかということが非常に大きな観点だというふうに認識をさせていただきました。
 その中で、しからば、都市といいましても東京だけではなくて、大都市は全国散らばっておりまして、程度の差こそあれ、それぞれ過密に向かって、人口増加に向かって進んでいる、そういう状況も拝見をいたしました。その中で特殊なことは、もちろん規模も若干違いますけれども、東京というのは、立法、行政、司法の機能が付加しているということが最大の特徴ではないか、この最大の特徴を生かしてどういうふうに、特に東アジアの中で、近隣の中で、都市としての機能、競争力を増していくかということの先生の御説ぶりだったというふうにお聞きをいたしました。
 一方では、会社なんかの本社機能は必ずしも重要な要素として、行政機関等に近いということは大きな要素ではなさそうだ、こういうお言葉もございました。しかし、そういうことも若干、同じ業界の中でのフェース・ツー・フェースの懇談とか、あるときには政府とのやりとりとかいうことも現実には起こっているんだろうと思うんですが、そんな中で、首都におけるいわゆる国会等、この三つの立法、行政、司法の重要性といいますか影響力といいますか、この東京全体または周辺を見回したときに、その持つ機能の影響力、これを先生はどのようにお考えか、まず初めにお聞きをしたいと思います。
八田参考人 首都の影響力ということなんですが、私は、首都というもの、政府というものは、やはり全国民が活用すべきものだと思っておりまして、それで、それが、例えば今のIT化によってホームページで出てくるというようなことで、東京に住んでいなくても全国でもって情報が得られるようになった、あれは非常に大きなことだと思います。
 それから、さまざまなことに関して、最終的な答申が出る前に全国から意見を聞く、そういうようなこともできるようになった。したがって、そういう技術を活用すると、確かにそういう側面では、全国でもって首都を活用できる。
 今度、直接フェース・ツー・フェース・コンタクトでやる必要があることに関しては、やはり交通機関をできるだけ全国と近づけるという努力をすべきだと思います。そして、私は、特に飛行機、羽田と都心の間の交通機関が非常に不備なことが地方の人が首都を活用するのに障害になっているし、それから、羽田が十分整備されていないために飛行機代が高いということも障害になっている。要するに、輸送の費用を非常に低くして、時間の費用を低くして、全国民が活用できるようにすべきだと思います。
 その際に、全国民が活用できるんならどこにあってもいいじゃないかとおっしゃるかもしれないけれども、やはり交通の頻度ということが非常に必要で、東京にあればほかの仕事のついでにも来られるわけですから、交通の頻度が非常にある。
 だから、そういう観点で、コミュニケーションの技術で済むところは済ませる、それから、それ以外は交通の仕組みをなるべくつくる、そういうことで全国民が活用できるようにすべきではないか、そういうふうに思っております。
西委員 確かに、頻度ということも大事な要素だとは思いますし、その機能は私もわかるような気がいたします。
 前回の当委員会での議論は、森亘先生に来ていただいて、国会等移転審議会の答申を中心に御説明いただき、審議をいたしました。非常に詳細な調査並びに分析をなさっておりまして、大別して、これからの中長期的な諸情勢についての分析、これをどうしていくかということで、たくさんの要素を加味して、それに重みをつけて、評価を数字で出すというところまでなさっておられます。
 そのことについて私も質問をさせていただいたんですが、三つの大きなポイントがございまして、国政全般の改革、東京一極集中、それから災害対応についての三つのポイントそれぞれについて、重みをつけて分析をされているんです。その中で、この三つに重みをつけた、私自身は、災害対応ということが一番大きなポイントとしてこの議論の中では挙がっているんではないか、こういうふうに質問させていただいたところ、そのとおりである、災害に対してどう対応していくかというポイントが一番重要なこととして国会等の移転を考えている、こういう結論でございました。
 確かに、東京中心の大震災、想定される大震災を考えますと、もちろん、先生のおっしゃられるように、特に中低層の部分の早急な改善等も当然必要だと思いますけれども、それにも増して、激烈な地震の可能性が大きく論議されております。
 そういう意味で、そこの少なくともバックアップは私は必要だというふうには思っているんです。その上で十分な調査をされて、最適な地という議論を踏んでこられているんですけれども、先ほども若干、先生、災害、地震についてはお触れになっておりますけれども、この現状についての御認識をもう一度お伺いしたいと思います。
八田参考人 バックアップというのは、さまざまなレベルのバックアップがあるんではないかと思います。
 まず、例えば、多くの損害保険会社がデータを大阪に維持しているというようなことはございます。それに類したデータを東京以外のところにコンピューターでもって置いておくというようなことは必要かと思いますし、それはもう場所を選ばないだろうと思います。
 それからもう一つは、やはり災害時に、当面、復旧に必要な人員を調達し、指揮をする、そういう人たちが要ると思います。そこでは、私は、はっきり言って自衛隊の役割は非常に大きいと思いますが、同時に、国土交通省のそういう方たちが動かなければならない。それをやるのを、先ほどの繰り返しになりますが、そんなに、日本の政府全部の人が出勤できなきゃいけない仕事ではないと思うんですね。やはり、そこで必要な人たちというのは最初から限定して、そして訓練を積み、そして都心に住みという、そういう緊急対策をきちんとする、その訓練を今やっていないんではないか。
 私は、そういう意味で、バックアップというのは、必ずしも物をどこかにつくるんじゃなくて、人的な訓練をしたり、いざというときの指揮命令系統をきちんとそろえておく、そういうことだろうと思います。それをまずやるべきではないかなというふうに思っております。
西委員 確かに、政府は残って東京は全滅だったというような、そんなことはあってはならないことですし、東京都の都市の防災ということも十分これからは考えた上での対策が必要だろうというふうに思いますが、当面のことが一つとして、当然、その後も引き続き政府としての機能は存続させていくということは、これはもう一刻も余裕の置けない事態であることも、これまた事実であります。
 大震災のために政府機能が一カ月も二カ月も十分機能しなかったということはあってはならないことですし、その辺の見分けは、私は、また、短期の問題と、少し継続していかなければ、例えば外交、防衛とか、そういう一刻のすき間もあってはならないという部分もございますので、そこはもう少し詰めた議論は必要ではないかというふうに私自身は考えております。
 それから、先ほどから先生のお言葉で、私どもも、国全体のありようをどう考えるかということだと思います。上海も、先生御存じのように、大変に大都市化して機能的になってまいりましたけれども、人口の流入というのを極度に抑えている、意識的に住民票なんかの移動を禁じているという事態が起こっております。
 必然的に、そういう意味では、便利な都会、都市、また高収入ということを目指して、日本はずっと都市集中、これは東京だけではありません、先生がおっしゃるように、各地の大都市集中を繰り返してきたわけですが、一方では、やはり国土が全般的に、ある意味では、私は役割を負いながら発展していくということは当然必要だろう。先生の著作の中で、東京が得た収入を地方に回している、結果的にはそうなっているんですが、それは当然のことでございまして、高収入で機能的な、そういう本社機能を中心とした、そういう製造業なんかも集まっていますし。
 そこで、国全体として国土をどう設計していくかということは当然必要なことで、地方は地方でもう疲弊するのはやむなしという極端なお考えを先生は当然お持ちではないかと思うんですが、地方の役割、これは東京だけではございません、大都市と地方の考え方の中で、地方の役割ということについて先生がどういうお考えを持っておられるのか、少しお伺いをしたいと思います。
八田参考人 やはり東京の役割というのは本社機能であって、地方に実際大部分の人が住んでおられて、そしてそこで日本経済というのは動いているわけですから、もちろん地方が、ある意味では主役であります。そこのかなめとして東京があるということであります。だから、ありとあらゆる経済活動が地方で行われて全然おかしくないと思います。
 ただし、先ほど申し上げましたように、中枢都市は大きくなっているのに小さな都市がますます減っている、この問題をどうしたらいいんだろうかという御質問かと思うんですが、これは、急激にはできないけれども、やはり、先ほど申し上げましたように、交通費が低下して、コミュニケーションが低下して、それぞれの地区で中心都市ができてくるというのはしようがないと思うんですね。
 例えば九州で、私は小倉出身ですけれども、小倉の同級生が、そこら辺の電気の配電をやる会社ですけれども、今は鹿児島の仕事をとるわけですね。昔では考えられなかった。それは要するに、福岡に行けば、鹿児島のディベロッパーも本社を持っているし、自分のところも支社を持っている、そこで全部契約もできるし仕事も見つかるという。それは、コミュニケーションのコストが安くなって、それから交通費が安くなったから起きたことで、そういう集中というのは、やはり地方のレベルでもある程度はやむを得ないんだろうと思います。しかし、それは、地方がなくなってしまうとかそういうことではまるっきりないので、新しい技術に沿った対応がそれぞれの町で起きていくということだろうと思います。
西委員 もう時間ですので、一言だけ。
 結局、先生、この東京という都市、将来のあり方というのは、先ほど先生がおっしゃられたことは、もっともっと機能をシェープアップして、いわゆる都市としての構造改革が必要ではないかということではないかというふうに思うのですが、一言でお願いをいたしたいと思います。
八田参考人 そのとおりであります。そして、東京をこの近くに置いておくということがその効果をますます助長すると思います。役に立つと思います。
西委員 ありがとうございました。
中井委員長 次に、東祥三君。
東(祥)委員 自由党の東祥三でございます。
 当委員会で初めて発言させていただきますが、私も首都機能移転反対論者であります。反対論者であります八田先生が来られるということで、多分議論にならなくなってしまうかわからないのですが、先生のお話を聞かせていただき、また論文等も詳細に読ませていただきました。極めて情緒論を排して論理的に、そしてまた戦略論の上から東京という問題を論じられていることに対して、私は、極めて感銘した人間のうちの一人であります。
 とりわけ、国のかなめである東京というものをどういうふうにとらえるのか。当然、すべての力を傾注させてこの国のかなめの地域をさらに再生させていかなくちゃいけない、こういう視点で貫かれているんだろうというふうに思うのです。その意味におきましては、八田先生が言われていること、また論理の展開における枠組みそのものに関して、私は全く異論がありません。
 ただ、先生御案内のとおり、日本の社会というのはどうしても、究極の核である、核の問題といいますか中心課題であります、安全保障の問題というものを横に置いて今日まで来ちゃっているんだろうというふうに思うのです。とりわけ戦後五十数年の間、この問題というのがほとんど全く積み上げられることなく来てしまっている。その弊害が逆に、ある意味で今日の東京における一極集中にあらわれてくるのではないのか、そのことを心配しているのです。
 それはどういうことかといいますと、一極集中の問題を安全保障の視点から考えたときにどういうふうになるのか。経済あるいはまた産業の中枢東京、あるいはまた情報産業の中枢の東京、政治の中枢である東京、そしてまた文化、伝統を発信していく、文化創造を発信していく、その中枢である東京、そしてまた、日本の歴史をある意味で支えております皇室を抱えている、その中枢にある。
 しかし、先ほど来議論されている、例えば天災でありますとか、そういう問題に対しての発想というのは一方においてあるわけでありますけれども、これから二十一世紀というのはどういう社会になっていくのか。僕は、間違いなく混乱していくんだろうというふうに思うのです。種々のいろいろな形での安全保障の問題というものが大きく取り上げられてくるんだろう。そのような準備というのは、この国は全くしていないわけですね。
 先ほど八田先生が言及されておりました、アメリカにも長く住まれていた。ニューヨークあるいはまたワシントン、建物それ自体が極めて安全の側面から、どこからも襲われないように、また襲う人間があらわれてきたときにどこから来ているのかということもよくわかるようなつくり方もしている。建物の中へ行けば鏡だらけであって、何で自分のドアの前に鏡があるのかと、はっと驚かされる。そういう形での、危機管理体制というふうに総称して言っていいんでしょうか、そういうものがちゃんと完備された上ででき上がっているわけですね。
 ところが、この国は、先生が御指摘されるとおり、先生の論理立てにおけるフレームワークにおいては結果としてそういう状況になっているわけですが、全く、安全保障という角度から考えたときに、これほど脆弱な中枢部分というのはないんじゃないのか、このように思わざるを得ないのであります。
 したがって、安全保障の角度から見たときに、そしてまた、今の、欠陥といいますか、これは政治が基本的に機能してこなかったんだろうというふうに思うわけでありますが、政治そのものが機能していない。それはまた別のところで議論していかなくちゃいけないわけでありますけれども、そういう状況の中で、先生がおっしゃられる、例えば軍事のバックアップ体制あるいはまた政治のバックアップ体制、統治そのものが崩れるかもしれないわけですね、同時多発テロみたいなものが日本で起こったときに。そんなこと、だれも考えていませんよ。一瞬にしてこの国会がこっぱみじんにされるかもわからない、そのとき一体この国というのはだれが統治するのかということも、今の状況では考えられていないわけですね。
 そういうことを考えたときに、今の現状下において、東京における一極集中というものを先生はどのようにお考えになられ、そしてまた、それをどのように矯正していけばいいというふうにお考えになりますでしょうか。
八田参考人 安全保障の問題は非常に難しい問題で、これは大都市だけではなくて原子力発電所の問題もあると思うのですけれども、これに対する有効な国防上の措置が講じられているのかというと、甚だ心もとない。それと同じように、東京が攻撃を受けたらどうかということ、私、国防上のことは詳しくありませんが、それは非常な危険があるだろうと思います。
 だけれども、それが首都移転によって緩和されるかというと、同時多発テロ事件がまさにその象徴だったのですが、ニューヨークもやられ、ワシントンもやられたわけですね。私が思いますには、国防上の問題は非常に大切な問題なんですが、分散化することが国防上の問題を軽減するのに役に立つというふうに特に思えない、そういうことだと思います。
 したがって、ちょっと根本問題に対しては、また、もうおっしゃるとおり、日本は、一つは憲法上の制約があるでしょうし、そういうことに関しての限界があるんでしょうけれども、首都移転が役に立つかと言われると、私は、余り役に立たないだろう、そういうふうに思っております。
東(祥)委員 以上です。
中井委員長 次に、山口富男君。
山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。
 首都機能移転の問題というのは、首都機能の移転がなぜ必要かという基本のところ、きょうの参考人のお話ですと前提ということになりますが、その問題が常に強い批判を受けてきたというのが一つの特徴だと思うのです。
 特に、首都機能の移転で東京の一極是正が進むということに対しては、そういう効果を持たないんだという非常に強い批判があります。きょうのお話もその一つだと思うのです。
 私も、その点ではこの一極是正論に大義名分がないというふうに考えているのですけれども、ところが、一極是正論というのは、いろいろな形をとりながら、結局あらわれてくるわけですね。
 この点についてはどういうふうに、つまり、これだけ批判があるのに、なお首都機能の移転といった場合に一極是正論が出てくる、その背景についてはどのようにお考えですか。
八田参考人 私、御質問の趣旨を正確に理解しているかどうかちょっとわからないんですけれども、こういう国会の場で申し上げるのもおかしな話ですが、私が地方から選出された議員ならば、やはり地方にできるだけ予算をよこせ、それから、なるべく東京の拡大はとめろという地元の声を、内心そうかなと思いつつも、結構反映したことを言うだろうと思うんです。
 だから、一極集中を是正しろということは、今の選挙制度で地方から出ておられる方にとっては、よほど大局的に物を見る方でない限り、御主張なさるのが当然ではないかというふうに思います。それを、いや、やはり大局的には違いますよという議論をほかのだれかがやらなきゃいけないし、心ある議員の方たちは、短期の地元の利益を捨てても、長期の国のことを考えようとお考えになるということじゃないかと思います。
 したがって、一極集中是正論というのは、どうしても政治的に受け入れられやすい議論なんではないか、そういうふうに思っております。
山口(富)委員 どうも率直な御意見、ありがとうございました。
 それからもう一つ、移転論の理由づけとして、よく災害対応力の強化という話が出ます。きょうのお話では、移転ではなくて、さまざまなバックアップの体制の構築こそが大事だというお話がありました。それで、やはりこの問題も、政治や経済の拠点で災害対応力をどう強化するかという問題と同時に、結局、そこで暮らしている国民の皆さんの安全をどう確保するかというところが据わらないと、話は完結しないと思うんですね。
 それで、きょうのお話ですと、この災害対応力にかかわる問題というのは、前提のAの3のbに少し出てきて、それからもう一つは三の項目で「地震対策」というところで少しお話がありましたけれども、参考人の首都機能移転反対論の中で、災害対応力の問題、これが理由づけになった場合に、これは理由にならないよという話はどういう形で位置づけられてくるんですか。もう少し詳しくお話しいただきたいと思います。
八田参考人 それは、要するに、新しく移った場所で地震が起きたらどうするかということなんですね。全く新しい場所でも起き得る可能性というのは排除できないわけですから、ただ場所を移すだけではしようがないだろう。それから、今度、新しい場所に移したときに、東京で震災が起きたときにどうしたらいいんだろうかというと、やはりこれだけの大都市なんだから、最初からそれに対する対策を立てておかなきゃいけないだろう。
 そうすると、私は、移すこと自体が政府の機能をきちんと守ることにはならないので、移そうが移すまいが、政府自身に対するバックアップも必要だし、東京に対する対策も立てる必要がある、そうすると、一遍に東京をきちんとすることが必要なんではないか、そういう理屈です。
山口(富)委員 今御指摘あったように、実際に政府自身が、首相官邸の建設でも、中央官庁の新しい建設でも、災害対応力の強化という問題でやっておりますからね。事柄は非常にはっきりしていると思います。
 それから、私、もう一つ、前提にかかわる問題と同時に、首都機能移転計画が国民生活や地方政治にどういう問題を生み出すのかということの吟味がやはり欠かせないと思うんです。その点で、一つの大きな問題は、やはり費用の問題、財源にかかわる問題だと思うんですね。
 それで、以前の審議会の報告では、移転費用で大体十二兆三千億というふうにみなされていて、最近東京都は二十兆円ぐらいかかるんではないかという試算も発表しておりますけれども、今の日本の財政状況などを考えると大変無謀な話になってくると思うんです。
 参考人は財政学が専門ですけれども、そういう立場から見ましても、これだけの財政状況のもとで巨額の費用がかかるような計画、これはどういう財政上の問題をはらむと思いますか。
八田参考人 いや、私は、役に立つことなら金を使ったってやればいいと思いますけれども、そもそも役に立たないことですから、これは財政以前の話だと思います。
 それから、財政に関して非常に重要なことは、では、首都移転の財源をどこに求めるかというときに、今の霞が関や永田町の土地を売って稼ぐんだという考えがありますね。費用便益分析なんかで、いつもそこが便益として挙げられる。
 しかし、売って稼ぐのなら、それを買う人がいなきゃいけないので、それはまさに民間の会社がやるわけで、一極集中するわけですね。そこにそれだけのオフィスビルができなきゃ、そもそも財源ができない。これをもし、全部公園にしてしまうという手もあるかもしれないけれども、そうすると大変な金が、価値がむだになってしまって、別な税金から賄わなきゃいけない。
 そういう問題があって、移転論者は、必ずしもそこに関して意見が一致しているように思いません。いろいろ分散していると思います。だけれども、これをできるだけ高額の価格で売るというのは、もともとの一極集中反対という議論と矛盾していると思います。
山口(富)委員 もう一点、地方政治にかかわる問題なんですけれども、幾つか候補地が挙がっておりますね。そして、そこには条件整備を求められているわけですね。
 実際に候補地あるいは条件整備を求められている地域というのは、日本の県の数でいきますと、四十七都道府県のうちの十前後のところまでそういう対象に入ってきてしまう。となりますと、実際にこれが、移転の是非の問題を別にしたといたしましても、最終的に候補地が決まった場合に、その他の地域というのは逆に打撃を受けるわけですね。このあたりをどういうふうにごらんになっていますか。
八田参考人 その他の地域が打撃を受けるかどうかというのが、まさに首都機能を移転すべきかどうかという議論の核心だと思うんですが、やはり首都機能移転が必要だとお考えの方は、それによって日本全国がよくなるんだということを御主張になっているんで、必ずしも地元に金が落ちるからやりたいなどということは夢にも思っていらっしゃらないんだろうと思います。
 ですけれども、したがって、基本的に日本全体に役に立つかどうかという議論ですから、それは先ほど申し上げましたように、そもそも役に立たないんではないか、むだなわけですから。それはほかの候補地だけじゃなくて、日本全国にとって損失だと思います。
山口(富)委員 時間の関係で最後になりますけれども、今お触れになった点にかかわるんですが、この首都機能の移転というものが地方分権論に結びつけて議論されることが随分ありますね。しかし、きょう参考人、繰り返しお話しになったように、それは別の次元の問題なんだという指摘がありましたけれども、いろいろな議論の中で錯綜してお話しになりましたから、最後に少しまとめてお話しいただけませんか。
八田参考人 私は、地方分権というのはどうしても必要なものだと思います。そして、今のように、新幹線の駅をおりたらどこでも同じだというのはまずい、やはりその土地土地でいろいろなことを考える自由度が与えられるべきだと思います。
 そして、お金も、それは大都市からお金を集めて地方に配分するのはある意味では当然のことで、特に、国民の非常に基本的な権利である教育を受ける権利とか、それから消防とか警察とか、そういうようなことに関して国からお金が来たり、全然問題ないと思います。しかし、それをどう使うかということに関して最大の自由を与えるべきだと思います。
 しかし、それは首都を移転したらそういうことができることには、保証は全くないと思いますし、移転しなくても、そういうことはやろうと思えばできることだと思います。
山口(富)委員 ありがとうございました。
中井委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 先生の御意見を伺って、首都をパワーアップしていくことの大切さというのは承知したつもりでございます。ただ、それとこの首都移転という関係がどういうかかわりを持つのかという点が、私自身がまだまだつかみかねているということなんですね。
 一方では、六十万人の人口移動という形が交通緩和に役立つのかという問題提起をしていますけれども、それでは、このパワーアップのために、その六十万人移転がどう障害になっていくのか、逆の面でどう考えられておるのか、その点、まず冒頭お聞きしておきたいというふうに思っています。
八田参考人 パワーアップの観点からどういうことがマイナスになるかというと、まず、東京に集積することをやめさせることが国の利益ではないということを前提としますと、全国から新首都に行くのが実に不便になるわけですね。今ならば、東京に来れば、霞が関にも行くけれども、ついでにほかの業務もやれる。それだけでなくて、霞が関だけに来る目的で来ても、飛行機が実に頻繁にある。ところが、これが新首都になったらば、そこだけに行くわけですから、当然、交通も不便になる。したがって、これは日本全国にとって困ることになる。
 それから、今度は東京自身のパワーアップということでいえば、私は、東京自身の弊害よりは、むしろ政府にとっての弊害が起きると思うんですが、先ほど申し上げましたように、政府というのはさまざまなインフォメーションをとらなきゃいけない、日本全国からとらなきゃいけない。そのインフォメーションをとるときに、東京に立地しているというのは、東京の会社からインフォメーションをとるだけではなくて、全国の人が来て、インフォメーションを政府に対して与えるのを容易にする。そういう意味で、私は、場所を移して交通が不便になるということがそもそもの目的なんでしょうが、それは本当にマイナスなことであるというふうに思います。
菅野委員 はい、わかりました。
 先生の論文、きょう配付になった論文を見させていただきましたけれども、第一次産業から第二次産業、そして第三次産業という産業構造の変化の中で、首都のパワーアップという問題を提起されていると思うんですけれども、そういう一極集中という経済構造の中で、それじゃ、国土の均衡ある発展という観点をどう政治的に行っていくのか。これは、一方の側面として、政治の大きな課題だと私は思っているんです。
 私の出身は宮城県の片田舎の一地方都市でございますから、第三次産業にずっと移行していく中で、地方がどうしても産業構造上取り残されていくという姿が、今日、地方を取り巻いている状況だというふうに思うんですね。
 そのことをどう是正していくのかという形で、分権、地方分権という形が言われていると思うんですけれども、その地方分権といえども、税源移譲がなされていない。税源移譲ということは、大都市で国が管理しているお金を地方で自主的に使えるような構造にしていく。それは、大都市から上がった税金を地方にどう分配していくかの問題だというふうに思うんですね。
 その点ではいろいろな議論が行われておりますけれども、国土の均衡ある発展と分権という形を東京のパワーアップという観点から考えて、どう政治的にコントロールしていったらいいのかという先生の御見解をお聞きしておきたい。
 それと同時に、もう一つの命題は、大都市と地方都市の共生というのが、私は、国にとっても、国の施策にとっても、重要な課題であるというふうに思っているんですね。そして、これまで戦後五十数年たどってきたときに、私も戦後生まれの人間でございますけれども、私の地方からも、大都市をパワーアップするために農村地域社会から大きな人口移動がなされたという状況があると思います。この人口移動が日本経済を支えてきて、今日の第三次産業まで到達できる経済構造に達したというふうに思うんですね。
 そういうふうに考えたときに、第三次産業というものを発展させていくことは、地方を切り捨てるという形になっちゃいけないというふうに思うんですね。大都市と地方都市の共生というものを先生はどうお考えになっておられるのか。
 この二点についてお聞きしておきたいと思います。
八田参考人 今御指摘になったことが、要するに、日本の国政の一番難しい、かつ、重要な問題だろうと思います。
 産業構造が変われば、農業から工業にかわり、それから第三次産業になれば、それは、人口移動が起きなきゃそういうことはできないわけですね。まず、農業中心のときから工業中心になれば、工業地帯に人口が移動する。それから今度、第三次産業になったら、大都市、地方中枢都市も含めて移動する、これはそれなしにはできないわけですから。
 要するに、基本的には、国土の均衡ある発展というのは経済が成長するなと言っていることと全く同じで、均衡ある発展というのは最初からできない、国土というのは不均衡にしか発展できないということがまず非常に冷たい事実としてあると思うんです。
 それから、一方でいえば、私の子供のときには山に行けば炭焼きが幾らでもいましたが、炭焼きさんたち、産業が変われば石油や石炭は使うんだけれども、炭焼きさんも全部残そうよ、残すけれども石炭や石油を使えるようにしよう、天然ガスを使えるようにしよう、そういうことは不可能なわけですね。両方ともは両立できない。ところが、炭について考えれば、それはもう今、備長炭は物すごい人気があるわけです。そして、そこに才覚を持った人はちゃんとそれで非常に大きな需要を得ているわけですね。
 それから、地方分権というのは、まさに地方に競争をしてもらうということですから、今申し上げたように、地方が全部生き残るということは初めから不可能なんですが、工夫をして競争した人はその中で勝ち抜いていくことができる。独特の、独自の産物をつくったり、観光資源に工夫することができる。
 そうすると、地方分権とそれから国土の均衡ある発展を両立するにはどうしたらいいかという御質問に対しては、結局は、国土の均衡ある発展というのを字義どおり解釈したら、そういうことはあるべきでない。それがもう日本の非常に間違った政策だったと思いますが、地方分権をやるということは、まさに地方に競争してもらって、国土の不均衡ある発展の中にも、地方が全国に向かって大きな意義を見出して、場所によりますけれども、そういうチャンスを与える、そういうことではないかと思います。
菅野委員 地方の都市の持っている、あるいは農村地域社会の持っている経済効果というものは、第一次産業の多面的機能という形で言われておりますけれども、国土の維持、あるいは災害から守るために果たしている役割というのは、私は非常に大きいというふうに思うんですね。それで大都市というものも災害から守られているという側面は非常に大きいと思うんです。そこをどう大事にしていくのかという観点を国民全体で考えていく必要があるというふうに思っております。そういう意味では、首都機能移転というものがどういう観点で果たしていくのかなという、今まさにその点を議論しているというふうに思います。
 先生、本当に、首都機能移転という部分が地方都市との関係において、一極集中を是正していくという観点においては、ほとんどそれは是正効果はないと言っていますけれども、そういう意味では、それじゃ、首都を移転しないとしても、地方をどう発展させていくのかという点をしっかりと持つ必要があるんだというふうに思うんですけれども、最後、その点だけ一点お聞きしたいと思います。
八田参考人 もう、それは賛成です。それで、地方は、しかし、やはり工夫が要るだろうと思います。そして、できるだけの自由が与えられて、裁量が与えられて、そこで工夫をする余地をつくるということが国の役割ではないかと思います。
菅野委員 では、終わります。
中井委員長 次に、江崎洋一郎君。
江崎委員 保守新党の江崎洋一郎でございます。
 八田先生におかれましては、本日、大変お忙しい中、当委員会におきまして御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
 私も今国会からこの委員会に所属をさせていただきまして、中立的な立場で、前回森先生、また本日八田先生から御意見をいただきまして、私なりの論点整理を今後させていただきたいというふうに考えている次第でございます。
 その中で、先生に、きょういろいろ先生の御意見をいただいたわけでございますが、何点か先生のお考えを確認させていただきたいというふうに考えております。
 先生の御持論の中で、首都機能移転だけでは一極集中は解決できない、私もまさしくそのように思うわけでございますが、先ほど来の御議論の中で、一極集中というものの是正が東京においては必要ないんではないかというふうにもやや聞こえるわけでございます。
 従来の東京中心主義というものから脱皮をしたらどうかという議論がこの国会移転の議論の原点にあろうかとも思いますが、果たして、何らかのまた別の首都機能を持った、東京と類似するような都市が必要ではないのか、あるいは商業圏が必要ではないのか。日本の国土面積あるいは人口から踏まえて、先生のお考えでは、東京だけで十分であるというふうなお考えというふうに理解してよろしいんでしょうか。
八田参考人 日本が東京だけになればいいとは全然思っておりませんで……(江崎委員「そういう意味ではございませんで、中心主義という意味でございます」と呼ぶ)まず、地方中枢都市が戦後随分伸びておりますが、この傾向はますます続くだろうと思います。
 私は、道州制を採用すべきだ、そういうことを特にここで申すつもりはありませんが、実質的に道州的なところの首都みたいなものがどんどんでき上がりつつあると思います。
 それから、大阪について、大阪の再生策について私自身いろいろな考えがあるんですけれども、とにかく地盤沈下をしていると思います。
 その地盤沈下は、一つは本社を失ったことですからそれはやむを得ないんですが、それに加えて、大阪というところが全く都心の集中策を持たなかった。梅田と新大阪を離して、それから大阪ビジネスパークというものをつくり、南港というものをつくり、もうばらばらにしてしまった。それから、地下鉄は郊外電車と乗り入れがほとんどない、そういう教科書に書いてあるような悪例だと思うんです。
 そういうこともありますから、私は、今ほど大阪が地盤沈下する必要はないと思います。きちんとした集中をすれば、それなりに日本の都市の仕組みの中で役割があると思いますが、しかし、先ほど申し上げましたように、東京が本社機能を持って大阪のかわりをやったということは、もう間違いないことだろうと思います。
 その東京の機能を支えていくには、先ほど申し上げましたように、もともと鉄道という世界にたぐいまれな資産を持っているところなんですが、とにかく都心に対する規制が激しい。
 例えば、容積率を規制するというのは、基本的には、余りオフィスができると通勤客がふえて通勤鉄道が爆発するから適当に抑えようよということが根底にあると思うんですが、それでは、その同じ容積率を住宅に当てはめる必要は全くない。ところが、住宅に対してもきつい容積率を当てはめる。これを伸ばすことによって都心の居住をふやせば、やはり東京のポテンシャルというのは今どころの騒ぎじゃない、非常に大きなポテンシャルがあると思います。
江崎委員 ありがとうございます。
 東京は日本のへそであり続けるべきである、しかしながら、同時並行的に地域もそれぞれに発展していくべきであるという理解でございますよね。まさしく同感であると思うんです。
 先ほど来、全国民がひとしく東京に来られる機能を強化していく、いわゆる交通頻度を高めるとか、そういう御議論もあったように思います。今、先生もアメリカにお住まいだったということでございますが、私もボストンとワシントンに住んでおった時期がございます。どうも私は、日本は交通コストを含めて、頻度という先生の御意見も含めて、狭い国土をさらに狭く使っているというふうにも感じるわけであります。そういった意味で、逆に、面を大きく使うという意味においては、この交通頻度が高まれば首都機能というのはどこにあってもいいんじゃないかなというふうにも思えるわけでございます。
 例えば、アメリカの東海岸、ボストンは学術都市でもあり、商業あるいは港湾の都市でもある。また、ニューヨークは商業を中心とした都市である。また、ワシントンにおいては政治を中心とした都市であるということで、東海岸のこの三都市というのは非常に飛行機での行き来も楽で、またコストも低い。
 先生先ほどちょっと不効率であるということはおっしゃいましたけれども、しかし、日本の国土をもう少し移動コストを安くして広く使っていくというのも、これから二十一世紀の新しい発想につながっていくんではないかなとは思うんですが、いかがでございましょうか。
八田参考人 大賛成でございます。
 日本の国土を広く使うのは、本当に一にかかって交通を便利にすることだと思います。そして、その余地が幾らでもあると思います。
 特に飛行機、先ほどおっしゃったボストン、ニューヨーク、ワシントンは、ともかく三十分置きにいつでも乗れるわけですから、スケジュールを見ないで乗れる。そういうふうな体制にするには、ネックはやはり羽田ですから、東京にきちんと投資することによって地方との結びつきがよくなると思います。
 ただし、では、新首都が別なところにあってもそれでいいかというと、それはやはり東京に来る頻度とは全く違うものになると思いますから、地方から政府に来る便利さというのは随分落ちるようになると思います。
江崎委員 先生の御意見では、既に東京には十分立派なインフラもあるじゃないか、それを再活性、再利用、さらに機能強化をしていけばいいということで、新たに全くの新しい都市を誕生させる必要はないんではないかという御議論かと存じます。
 そこで、最後、一点確認をさせていただきたいんですが、今回の主たるテーマではございませんが、地方分権というものについて、先生のお考えを伺いたいんです。
 私は、首都機能移転という議論を積み上げていくにしても、本来は、将来あるべき日本の姿ということで地方分権の議論があって、その結果として首都機能はやはり移転した方がいいんじゃないか、あるいはそのままでいいんじゃないかというような議論があってもおかしくないんではないかなと思っている一人なんでございます。
 先生のお考えでは、先ほど、東京の発展というのは中央集権の産物であるという御意見もあったようにも思うわけでございますが、地方分権論そのものについては、地域の独自性、町づくりであるとか教育というものに反映させれば十分であって、その財源については引き続き中央を中心に地方へ分配していく、そういう仕組みでも十分ではないかというお考えでございましょうか。
八田参考人 財源について、完全に地方分権したらば、もう日本は徹底的な一極集中になっちゃうと思います。それを、すべて地元で集めたお金でやりなさいよということにしたらば、例えばもう北海道なんて全くやっていけなくなると思います。学校の施設も悪くなるし、図書館もなくなるし、みんなだめになって、全部人口は東京に移ってくると思うんです。だから、完全に地方でもって自立した財源を設けるというのは最初から不可能だと思います。
 結局は、何らかの形で、国で集めた金を分配するという仕組みが必要で、問題は、そのときに、今までのように、分配する金にああでもない、こうでもないという制約をつけ加えて地方に渡すのか、それとも、どうせ渡すのならば一切ひもをつけないですっきりした形で渡すのか、その選択だろうと思います。
 したがって、人口とか面積とかに依存した非常に簡単な形でもってすぱっと渡して、あとは自由に使いなさい、私は、それが国にとっても地方にとっても一番いいんではないかというふうに思っております。
江崎委員 きょうは、本当に貴重な意見をいただきまして、どうもありがとうございました。
中井委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 参考人に一言お礼を申し上げます。
 八田参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。(拍手)
     ――――◇―――――
中井委員長 理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員になっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
中井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 それでは、理事に塩田晋君を指名いたします。
 次回は、来る二十六日水曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十分散会


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