衆議院

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第1号 平成14年2月27日(水曜日)

会議録本文へ
平成十四年二月二十七日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 津島 雄二君
   理事 伊藤 公介君 理事 木村 義雄君
   理事 北村 直人君 理事 小林 興起君
   理事 藤井 孝男君 理事 枝野 幸男君
   理事 城島 正光君 理事 原口 一博君
   理事 井上 義久君
      石川 要三君    岩崎 忠夫君
      衛藤征士郎君    大原 一三君
      奥野 誠亮君    亀井 善之君
      栗原 博久君    小島 敏男君
      小西  理君    七条  明君
      高鳥  修君    中本 太衛君
      中山 正暉君    野田 聖子君
      葉梨 信行君    萩野 浩基君
      菱田 嘉明君    細田 博之君
      三塚  博君    宮本 一三君
      持永 和見君    八代 英太君
      山口 泰明君    吉野 正芳君
      赤松 広隆君    五十嵐文彦君
      池田 元久君    岩國 哲人君
      河村たかし君    今野  東君
      鮫島 宗明君    津川 祥吾君
      筒井 信隆君    中沢 健次君
      野田 佳彦君    松野 頼久君
      松本 剛明君    山内  功君
      青山 二三君    赤松 正雄君
      達増 拓也君    中井  洽君
      中塚 一宏君    佐々木憲昭君
      矢島 恒夫君    辻元 清美君
      横光 克彦君    井上 喜一君
    …………………………………
   公述人
   (野村総合研究所研究理事
   )            富田 俊基君
   公述人
   (メリルリンチ日本証券株
   式会社クレジットリサーチ
   ・マネージングディレクタ
   ー)           小関 広洋君
   公述人
   (学習院大学経済学部教授
   )            岩田規久男君
   公述人
   (阪南大学流通学部教授) 石田  護君
   公述人
   (文京女子大学経営学部教
   授)           菊池 英博君
   公述人
   (大阪大学社会経済研究所
   教授)          小野 善康君
   公述人
   (大阪商工会議所副会頭) 小池 俊二君
   公述人
   (神戸大学発達科学部教授
   )            二宮 厚美君
   内閣府副大臣       熊代 昭彦君
   総務副大臣        佐田玄一郎君
   財務副大臣        尾辻 秀久君
   総務大臣政務官      河野 太郎君
   農林水産大臣政務官    宮腰 光寛君
   環境大臣政務官      奥谷  通君
   予算委員会専門員     大西  勉君
    ―――――――――――――
委員の異動
二月二十七日
 辞任         補欠選任
  石川 要三君     小西  理君
  大原 一三君     菱田 嘉明君
  野田 聖子君     七条  明君
  萩野 浩基君     吉野 正芳君
  河村たかし君     山内  功君
  野田 佳彦君     津川 祥吾君
  佐々木憲昭君     木島日出夫君
  山口 富男君     矢島 恒夫君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     中本 太衛君
  七条  明君     野田 聖子君
  菱田 嘉明君     大原 一三君
  吉野 正芳君     岩崎 忠夫君
  津川 祥吾君     野田 佳彦君
  山内  功君     今野  東君
  木島日出夫君     佐々木憲昭君
  矢島 恒夫君     山口 富男君
同日
 辞任         補欠選任
  岩崎 忠夫君     萩野 浩基君
  中本 太衛君     石川 要三君
  今野  東君     鮫島 宗明君
同日
 辞任         補欠選任
  鮫島 宗明君     河村たかし君
    ―――――――――――――
本日の公聴会で意見を聞いた案件
 平成十四年度一般会計予算
 平成十四年度特別会計予算
 平成十四年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――
津島委員長 これより会議を開きます。
 平成十四年度一般会計予算、平成十四年度特別会計予算、平成十四年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。
 この際、公述人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。平成十四年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見を賜りますようにお願い申し上げます。ありがとうございます。
 御意見を承る順序といたしましては、まず富田公述人、次に小関公述人、次に岩田公述人、次に石田公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、富田公述人にお願いいたします。
富田公述人 御指名をいただきました野村総合研究所の富田俊基でございます。
 日本経済と財政運営のあり方につきまして意見を申し述べさせていただきます。お手元の資料もごらんください。
 国債は、将来の税収を担保に発行されており、国内では利払いと償還が確実な唯一の金融資産であります。国債以外の他のすべての金利は、最も信用力が高い国債の金利に信用リスクを上乗せして決まっております。現在、日本国債十年物の金利は一・五%程度で推移しております。歴史をひもときましても、十七世紀初頭のジェノア共和国にまでさかのぼらないと見出すことのできないほどの低金利が続いております。
 このように国債の金利が低いので、国債を増発してもまだまだ大丈夫と思い込みがちであります。しかし、海外では日本国債の信用が揺らいでおります。資料の一ページでごらんのように、既にマーケットでは、日本国債の金利が円建てイタリア国債の金利を上回り、その格差が最近急速に拡大しております。
 資料の二ページ目をごらんください。
 昨年末に、欧米の格付会社は相次いで日本国債の格付を引き下げ、自国通貨建て長期債務の格付は先進主要七カ国中で最低となり、アジアでは台湾、韓国、ヨーロッパのスロベニア、南アメリカのチリといった国々とほぼ同等となってしまった。さらに引き下げられると、アフリカのボツワナと同じ格付になるとさえ言われております。
 経済規模やいわゆる国力から考えると、この格付は極めて奇異に思えます。しかし、国税負担率が欧米先進主要国よりもはるかに低く、デフォルトに陥ったアルゼンチンやロシアと並ぶ水準にあること、そして、今後急速な高齢化が進展する中で、将来にわたって確実に財政健全化を行う強い意思が持続するのかどうかなどを考えれば、この格下げをあながちに否定することはできないようにも思えます。
 では、なぜ日本国債の信用がここまで低下したのか。一九九〇年代以降の経済と財政運営を振り返っておきましょう。
 冷戦の終えんを契機として、旧計画経済の諸国だけではなく、かつては南の国々と呼ばれた発展途上国のほとんどが経済改革を進めてまいりました。これによって先進国からの直接投資が増大し、安価で豊富な労働力と先端設備とが結合し、これらの国々で、衣類、履物にとどまらず、耐久消費財さらには半導体などの生産が飛躍的に増大いたしました。
 先進国の経済は、このような市場経済の爆発ともいうべき世界レベルでの産業構造の大変化の影響を強く受けてきました。安価な輸入品の急増を通じてインフレが急速に鎮静化するとともに、機械設備が陳腐化し、供給力が弱体化いたしました。このため、九〇年代前半に、先進国は例外なく景気後退に直面いたしました。
 国民が豊かになると、相対的に賃金の安い国々からの競争にさらされることは不可避であります。したがって、国内の産業構造を付加価値のより高い分野に向けて転換することが、先進国であり続けるために不可欠であります。
 資料の三ページをごらんください。
 アメリカ、イギリスでは八〇年代から、また、冷戦が終わり、計画経済、大きな政府のもたらした悲惨な結末を目の当たりにした大陸ヨーロッパ諸国では九〇年代に入ってから、歳出削減、税制改革、規制緩和を推進してまいりました。多くの国々では、マイナス成長の景気後退期にもかかわらず財政再建を始めました。歳出削減に加えて増税を行い、同時に規制緩和を推進して、企業のダイナミズムを引き出そうとしてきました。
 これに対して、我が国は、冷戦後の世界の潮流に逆行してきたように思えます。世界の産業構造変化に対して柔軟な対応が求められてきたにもかかわらず、景気停滞の原因は需要不足であるといたしまして、大規模な需要追加策を繰り返してきました。九二年八月の総合経済対策から二〇〇〇年十月の新発展政策に至るまで、累計で十回、規模にして合計百三十六兆円もの景気対策が発動されました。
 企業や銀行の経営も財政金融政策頼みとなり、市場経済の原点である自助努力、自己責任は軽視され続けました。行政への依存心が強くなり、アニマルスピリットがなえてしまいました。財政支出の拡大が労働力と資本を低生産性部門にくぎづけにしてきました。このことが新たな事業創出の制約になったことは否定できないでありましょう。失業率は五%を大きく超えておりますが、労働市場が硬直的であるために、このうちの約四%は、景気が回復しても失業として残る構造的失業率と見られます。
 このように、九〇年代以降の景気低迷は、需要不足によるものではなく、世界レベルでの産業構造の変化に十分適応することができなかったことにあった。加えて、不良債権の処理のおくれが日本経済のおもしとなっている。景気が悪いから不良債権がふえたのではなく、生産性の低い産業、企業に人とお金を不良債権として固定化し、その処理を先送りしてきたことが景気低迷の原因となっている。
 さらに、景気対策という間違った薬を繰り返し大量に服用したことの副作用が九〇年代末からあらわれ始めている。
 九九年三月から始まった景気回復も、第二次世界大戦後で最も短い期間で終わってしまった。二〇〇〇年には輸出・IT主導で企業収益が急回復し、設備投資は一〇・四%も増大した。しかし、それは、過去の景気回復期のように個人消費の拡大にはつながらなかった。消費を世帯別に見ると、住宅ローンを抱えた家計での低迷が著しい。九〇年代に景気対策として住宅建設の促進が繰り返し行われたが、その副作用が二〇〇〇年以降にあらわれたのであろうと考えられる。
 また、消費を年齢別に見ると、六十歳以上の世帯では堅調であるが、若い層では不振が続いております。九九年から、国、地方を合わせて九・四兆円もの恒久的減税が実施されているが、その効果はあらわれず、逆にその副作用が非ケインズ効果の兆しとしてあらわれ始めているのではないだろうか。現在の高齢者は高水準の公的年金と老人医療制度の恩恵にあずかることができるが、国債が著しく累増したために、中年層以下ではこれらのセーフティーネットが将来にわたって維持できるのであろうかという不安が増大している。このことが中年層以下の消費を抑制している大きな原因ではないかと考えられる。
 既に我が国の財政赤字は持続可能な水準を超えた。新年度の税収見積もりは、一九八七年度の水準にほぼ等しい。十五年前に比べ、名目GDPが三七%、百三十兆円もふえたにもかかわらず、減税を繰り返したために税収はふえず、一般歳出すら賄い切れていない。
 さらに、資料の四ページにごらんのように、これまでに大量に発行された国債が次々に満期を迎える。その償還のために借換国債が大量に発行されざるを得ない。借換国債の発行は、五年前の推計に比べ著しく増加している。これは、推計の誤りによるものではなく、九八年から二〇〇〇年度にかけまして極めて巨額の国債発行が行われたことによるものであります。借換国債の増加によって、新規国債の発行が三十兆円であっても、新年度には百兆円を超える国債がマーケットに発行されることになります。
 また、国債の保有構造を見ると、アメリカとは違って銀行の保有比率が極めて高い。国よりも信用力の低い銀行が、国内で最も信用力が高い国債を大量に保有して預金金利や経費を払い続けるという構造は、果たして持続可能であろうか。
 国債金利が低いので、まだまだ財政出動の余地があるという主張がある。しかし、国債金利が低い最大の理由は、緩やかなデフレが今後とも持続すると多くの人々が予想しているからであります。また、消費者物価の上昇率が安定的に前年比でプラスになるまで量的緩和を続けるという日銀の金融政策によって、わずか千分の一%程度で推移している短期金利が、中期物そして長期債へと波及しているからであります。
 ここまで国債が累増し、日本経済が閉塞してくると、何が国債金利上昇の要因にならないとも限りません。日本は貯蓄超過であるから、また、個人金融資産が一千四百兆円もあるからといって安心はできない。戦時のブロック経済とは異なり、現在は国境を超えてお金が自由に移動する時代であり、資本流出規制などは行い得ないからであります。円安が持続するという予想が支配的になると、日本からの資本流出は増大し、国債金利の上昇の要因となります。
 国債は、日本国内では唯一の信用リスクフリーの借金で、最も信用力が高い金融資産であります。国債の金利が上昇するとなると、単に国債の価格だけではなく、日本のすべての金融資産の価格が下落いたします。そうなると、日本経済はデフレ下の金利上昇という厳しい事態に遭遇し、国民生活と企業活動は大きな混乱に陥ってしまいます。
 したがって、景気対策から決別し、構造改革を推進していくことが必要です。昨年六月に政府から骨太の方針が発表されました。そこには、「日本の潜在力の発揮を妨げる規制・慣行や制度を根本から改革する」とうたわれております。そして、財政については、受益と負担のアンバランスが著しく拡大し、もはや持続可能な状態ではないとし、国債費を除いた財政収支であるプライマリーバランスの黒字化に向けた取り組みが必要であると述べられています。
 これを踏まえて、先月、「改革と展望」が発表されました。構造改革が実行されない場合には、二〇一〇年度までの年平均成長率は〇・五%程度、そしてプライマリーバランスの赤字は拡大し、政府債務残高の対GDP比の発散的上昇が続く。この場合、国債への信頼性がさらに低下し、長期金利が急上昇し、景気後退へのリスクが高まると指摘されています。一方、改革が進むと、今後二年程度はゼロ成長を甘受せざるを得ないが、二〇〇四年度以降は実質一・五%程度の民間主導の成長が実現すると展望しています。
 この政府が描くシナリオは、私が勤務しております野村総合研究所が昨年十一月十五日に発表した中期経済予測とほぼ同じ内容です。構造改革が進み市場機能が十全に発揮されることによって、企業が自由な競争を通じて生産効率を高め、日本経済の真の実力が開花し、供給力の強化と需要増加がもたらされるからであります。
 さて、財政構造改革についてです。
 その目的は、非効率な分野に投入されてきた資源を効率部門にシフトさせ、同時に、財政を今後とも持続可能な状態にすることにあります。
 持続可能な状態とは、政府債務残高の対GDP比が少なくとも発散しないことであります。そのためには、プライマリー黒字が定着する必要があります。なぜならば、金利が名目経済成長率よりも高いという八〇年代以降の主要国の傾向を前提といたしますと、所得と税収の伸びよりも借金残高の伸びの方が速いわけですから、国債発行と国債費とが等しいプライマリーバランスの均衡では不十分で、プライマリー黒字が必要となるのです。
 十四年度予算は、国債発行額三十兆円以下という目標のもとに編成されました。こうした国債発行ひいては歳出規模にシーリングを設けるという方法は、欧米主要国でも財政健全化のために用いられてきた方法であります。拡大する国債発行に歯どめをかけ、財政の持続可能性についての国民とマーケットの信頼を確保し、歳出効率化を進めるための手段と位置づけることができます。この方針のもとで、公共投資とODAが一割削減され、特殊法人等への財政支出が一兆円削減されるなど、歳出効率化が進みました。プライマリー赤字も、十三年度補正後に比べて縮小いたしました。
 しかし、ここで気を緩めてはなりません。資料五ページの最後の図にごらんのように、十四年度予算で採用されております政策、制度が今後そのまま適用されますと、高齢化等によって歳出は再び拡大し、十七年度、二〇〇五年度には国債発行は四十兆円を超えてしまいます。縮小し黒字化すべきプライマリー収支が、逆に赤字を拡大させることになります。
 このため、十四年度予算を財政構造改革の第一歩とし、財政健全化の実現に向けた確固たる方向を今後とも堅持しなければなりません。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 次に、小関公述人にお願いいたします。
小関公述人 御指名いただきましたメリルリンチ証券の小関と申します。
 私は、現在メリルリンチで債券部門の調査の責任者をやっておりますけれども、本日は、専門が銀行分野ということでありまして、銀行アナリストとして、金融再生の問題点の整理、それから銀行の現状と見通しについて私なりの見解を簡単に申し上げた後、金融再生のあり方、そして政策課題について意見を申し述べさせていただきたいと思います。お手元に資料、メモをお配りしてございますので、これを御参照しながら話を聞いていただければ大変幸いでございます。
 まず、銀行問題の問題点の整理を行いますと、言うまでもなく、不良債権問題、それから株の持ち合いに象徴される過大なマーケットリスク、収益力の低さ、そしてシステミックリスク、この四点に大きく集約されると思います。
 現在、株価の低迷によりまして銀行システムの安定性が改めて問われているわけでありますけれども、四月以降は預金の移動によって流動性の問題が発生する可能性が非常に濃厚になってきた。そこで忘れてならないのは、問題の背後には、単に流動性の問題だけではなくて、銀行の過少資本の問題が存在するということだと考えております。いずれ預金保険機構の預金保護の原資が枯渇して、問題が九八年当時の振り出しに戻ってしまうおそれがあるのではないかと私は考えております。
 政策課題としてこれをとらえた場合、既に一九九九年体制の行き詰まりが現在明らかになっている。すなわち、現実とスケジュールとのギャップが拡大し、いわゆる経営健全化計画に基づいた回復シナリオが限界であるということがはっきりしてきたわけであります。ここで、一九九八年の金融再生策及びその達成状況がどうなっているのかということを再評価した上で、銀行問題解決に向けた制度的な枠組み、そして予算措置を原点に返って議論していただきたいというのが私の申し上げたいポイントでございます。
 ここで、なぜ問題が解決しなかったのか、あるいはしないのかということをもう一度考えてみたいと思いますが、まず、不良債権問題、銀行問題の把握と診断が妥当であったのかどうかということが問題になってくると思います。不良債権の規模の認識、そして銀行の財務状況の認識が正確であったのかどうかということを検証する必要があると思います。
 また、いろいろな議論の前提条件となった認識の妥当性でありますけれども、景気低迷で不良債権がふえたということがしきりに言われたわけでありますけれども、私はこれは、本質は資産の査定と引き当て不足の問題ではなかったかというふうに考えております。
 また、不良債権処理と産業構造改革は表裏一体である、あるいは不良債権の最終処理で産業構造改革が進むんだという議論があるわけでありまして、これは言葉としてはそのとおりなんだと思いますけれども、政策目的の妥当性として見た場合どうなのかということを問わなければならないのではないでしょうか。
 金融システム対策と産業再生政策とは、実は政策目的としては異なった側面が強く、また、過去の議論においては、問題の本質と周辺的な技術論、この区別があいまいであったのではないだろうか。本質は銀行の引き当て不足と過少資本の問題であるわけですけれども、実際の議論は、最終処理の形態であるとか整理回収機構の改革など、方法論に議論が集中してきた、そのために問題解決に結びつかなかったのではないかと考えられるわけであります。そして、過去の政策の制約というのも当然あったと考えられるわけであります。
 ここで、具体的に銀行セクターの現実の状況を見てみたいと思います。お手元のメモで四ページになりますけれども、ここではいわゆる経営健全化計画というものの全体像をお示ししてございます。大手銀行の計画の数字をまとめたものでありますけれども、この計画によりますと、業務純益が向こう四、五年で約四割ふえる、その一方で、不良債権の処理費用はどんどん減っていって、向こう二年たつと総貸出金の〇・三%程度に落ちていくんだというふうに想定されているわけであります。これは、このように想定をしないと利益が出ない、したがって公的資金が返済できないというためにこうなっているわけでありますけれども、この前提条件とマクロ的現実との乖離は非常に大きいと考えられます。
 例えば五ページに、現実のマクロ的な数字ということで倒産企業の負債総額の推移が示されておりますが、現在、倒産企業の負債総額というのは、大体十五兆円とか十六兆円とか、GDPの三%ぐらいになっているわけでありますけれども、これが銀行が言うように貸出金の〇・三%になるためには、では、この数字がどうならなければならないのかということを逆算してみますと、何と倒産企業の負債総額が二兆円とか三兆円に減少しなければそのとおりにはならないんだ、すなわち、バブルのピークが復活しなければそういう計画は成り立たないということでございまして、私にはそうなるとは到底考えられないわけであります。これは、言いかえると、現在の状況下において銀行の引き当てが不足しているということを示しているのではないだろうか、さらに一歩踏み込んでいけば、実質的には銀行の過少資本というのが非常に大きな問題になっていて、場合によっては九九年に入れた公的資金が既に毀損している可能性についても検証が必要なのではないかと考えられるわけであります。
 さらに、銀行構造改革と産業構造改革がコインの裏表だという議論について若干コメントをいたしたいと思いますが、六ページにお示しした表では、バブル期以降増加した銀行貸し出しの業種別の推移が示されております。ここで明らかなのは、非製造業、しかも特定の業界における負債の増加が銀行のバランスシート問題の本質であるということでありまして、これは特定の非製造業のセクターに集中している。したがって、金融システム対策と産業政策とは、コインの裏表という一面がある一方で、政策目的としてはおのずと異なるはずでありまして、この混同が議論を複雑化しているということが言えるのではないでしょうか。
 それから、現在関心は大手銀行に集中しているわけでありますけれども、日本では金融市場の過半を地域金融機関が占めているわけでありまして、これはよく引き合いに出される北欧の国々のケースとは大きく異なるというわけでありまして、私どもとしては、システミックリスクの問題を非常に大きな問題としてとらえなければならないと考えておるところであります。
 八ページに地域金融機関の不良債権比率の分布を示した表がございます。ここで不良債権比率というのは、書いてございますように、引当金控除後の不良債権の自己資本に対する比率を見たものであります。私どもは、経験値として、この比率が五〇%を超えた銀行についてはかなり重大な財務上の問題があると見ておりますけれども、現在、この表にあるとおり、約三分の二以上の銀行が異常値を示しておりまして、三分の一は抜本的な処理が必要なのではないかと考えられるわけであります。
 そして、現在、公的資金を入れるべきか、あるいは必要なしといった議論が盛んに行われているわけでありますけれども、私としては、今まで申し上げましたとおり、問題の大きさ、そして銀行財務の実態から見て、公的資金の投入は恐らく不可避であろうと考えておるところであります。むしろ、一番議論として大事なのは、その入れ方に関する吟味ではなかろうかと考えております。
 資本注入を行う場合の形態として一般的に考えられるのは、一九九九年の三月に行ったのと同じような形態、あるいは経営危機に陥った一部の銀行に対して注入を行う方式、そして多くの銀行を過少資本と認定した上で資本注入を行う、こういったようなパターンが考えられるわけでありますけれども、過去の経緯をよく分析して、もしボタンのかけ違いがあるのであれば、それを繰り返さないということが必要であるわけでありまして、効果的でない方法で資本注入をすることは非常に時間とお金のロスにつながる、この部分の議論を尽くしていただく必要があるのではないかと考えているところであります。
 十一ページに参りまして、公的資金の議論、この延長線上には、さらに資本注入を行っても結局銀行を国有化してしまうことにつながるんじゃないか、銀行を国有化してどうするのか、こういった議論が存在すると思いますけれども、銀行の国有化が是か非かということを問われれば、これは端的に、経営に直接介入することは余り効率的ではないのではないかと思われるわけでありまして、私としては、基本は民間の自立的な経営であって、あくまで一時的な措置である、そうした措置を可能にするための枠組みを検討することが、国有化してもしようがないから銀行に資本注入を行うことができないという議論よりは説得力があるのではないかと考えておるところであります。
 地域金融機関への対応ですけれども、申しましたように、地域金融機関の状況は深刻でございまして、将来、地域経済に非常に大きな悪影響を与えることが考えられます。したがって、大規模な破綻処理、資本注入、再編等が喫緊の課題になっているということでございます。
 いずれにいたしましても、問題解決のための課題は個別銀行の経営努力の範疇を超えている部分が非常に多くありまして、これはすぐれて政策的な課題と言えるのではないかと考えております。原点に返って金融再生の青写真をつくり直す必要があると申し上げているゆえんでございます。
 そして、金融再生は単に不良債権の問題を処理すればいいということではなくて、よく言われますように、オーバーバンキングの解消を目指さなければならない。
 ここでオーバーバンキングの意味というのをよく考えてみますと、これは、決して銀行の数が多い少ないということではなくて、マクロ的に見て現在の銀行業界がその経費をカバーできないという構造になっていることが問題なわけで、これを回復するためにドラスチックな改革をする必要があるということであります。公的資金投入を検討するに当たっては、こうしたドラスチックな改革を促するような仕組みを考えていかなければならないと考えております。
 適切な処理が行われないことで問題解決のおくれがもたらすコストとは何なのかということを考えてみますと、直接的な影響として信用不安の影響がある。あるいは間接金融の機能不全による中長期的な経済活動への影響がある。
 これは言うまでもないことであると思いますけれども、先ほどの、景気が悪くなったから不良債権がふえた、そういう命題に対してのアンチテーゼという意味でいけば、不良債権問題が終わらなければ不動産を中心とする資産デフレの継続もとまらないということが経験則としても存在すると私は考えております。
 そして、流動性対策としてのゼロ金利政策、すなわち金融政策だけに過大な負荷をかけるような状況が長く続けば、資産運用の果実の先取りとして、国民の将来の富を侵食するのではないかと私は考えます。そして、その先にあるのは、将来、政府の財政が一気に悪化するという可能性でありまして、金利上昇によって問題の悪性化が現実のリスクとして出てくるのではないかと考えております。
 それでは、必要な改革、政策対応とは何なのかということでありますけれども、必要な政策対応のプロセスは、資産査定の厳格化と引き当ての適正化、その結果としての銀行の過少資本の認識、それに対応する政策としての公的サポート体制の再構築、すなわち破綻処理、資本注入をどうやって行うのかといったようなことを再構築する。最後に、その結果として、整理回収機構を通じた不良債権の最終処理、すなわち出口戦略というものが考えられて、それと同時に産業リストラが進む。こういう極めて正攻法的な考え方しかないのではないだろうか。公的サポートのあり方の検討とあわせて、予算措置の再検討も必要になってくるということであります。
 正攻法による解決しかないということで申しますれば、九八年の秋に議論が行われた、その精神が生かされるような具体的な進捗がその後の三年間においてなかったということをここで我々は提起させていただきたい。
 私どもの推計によりますと、銀行問題の解決には最終的に何らかの形でGDPの一五%程度のコストが必要と推計しておりますけれども、そうした巨大な負のコストを、金融再生の設計図に基づいた資金配分の見直しというものによって原点に返って議論すること、これが、冒頭に申しましたように、ぜひ必要と考える次第でございます。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 次に、岩田公述人にお願いいたします。
岩田公述人 私は、きょうは、デフレを脱却することが最優先課題になるべきであり、そのためには日本銀行の金融政策が根本的に変わらなければならない、特に金融政策のレジーム転換が不可欠であるということをお話ししたいと思います。
 基本的な金融政策のレジーム転換とは、金融政策の考え方あるいは方針を根本的に転換するということでありまして、それは、基本的にデフレはマイルドであっても悪であるというはっきりとした立場に立つ、デフレは不況をもたらしさまざまな負の影響をもたらす、それに対して、マイルドなインフレこそが日本経済を再生する必要条件である、はっきりと金融政策がそういう立場に立つということであります。一時期、日銀は、よいデフレであるとかあるいは当然のデフレであるというようなことを言ってきたわけでありますが、そういう立場に立っている限り、金融政策はある程度デフレ容認と見られますので、そういうものから、マイルドなインフレを目指すということにはっきりと転換する必要があるということであります。
 なぜそのように申しますかというと、一つは、デフレという中では、いろいろな資源、土地や労働あるいは資本といったものが成長産業になかなか移らない、産業構造の調整がおくれているのが日本経済の低迷だとよく言われているわけでありますが、それは私は、デフレのときには、成長産業といえども、いろいろなリスクがあって設備投資等をして参入することが非常に困難だということでありまして、むしろ、デフレ下で失業が生じたり土地が余ったりしても、成長産業そのものが基本的に出てこないわけでありますので、そこへ資源が移動しない、そのために産業構造調整がおくれるのであって、産業構造の調整のおくれは、デフレの結果であって原因ではないんだということを認識する必要があるかと思います。
 また、今、不良債権の処理の問題が随分言われているわけでありますけれども、果たしてデフレが不良債権をもたらすのか、逆に不良債権がデフレをもたらすのか、そういう議論がずっとされてきたわけでありますが、最近の計量的な経済分析によって、やはりデフレそのものが不良債権をもたらしているということがはっきりと立証されてきております。
 バブル崩壊による不良債権の処理という問題は九五年の住専とかその辺でほぼ終了していて、その後、不良債権がどんどんふえて、処理しても処理してもふえているのは、デフレ下で企業収益が上がらない、そのために優良な債権でも不良化していく、それが不良債権をふやしている状況で、そのデフレという根っこ、原因を正さずに一生懸命不良債権を処理しようとしても、次から次へと不良債権がふえるという問題を解消することはできないということであります。
 また、デフレ下で財政を再建しようということは、基本的にどだい無理なことである。デフレというのは名目所得や名目消費が伸びないという状況ですから、名目所得や名目消費に所得税や消費税はリンクしておりますので、税収はデフレが続く限り決してふえないということで、赤字がどんどんたまっていく。それでは、それを歳出の削減から始めようとすると、そのこと自体がデフレをもたらし、税収の減少をもたらすというこの悪循環から逃れることはできない。したがって、財政はデフレである限り再建不能で、破綻の道を突き進むだけである。
 それから、銀行の危機も不良債権の処理ができませんから進みますし、よく銀行はリスクをとったような十分な金利をきちんと取っていないと言われて、最近は、もっとリスクに見合って金利を取るようにということは新しいビジネスモデルだとして言われることがあるわけです。しかし、デフレの中では、金利を上げていってリスクに見合って取るということ自体が無理でありまして、金利を上げれば相手の企業、借り手が返せなくなるだけということで、そういうデフレ下でのビジネスモデルの変化による銀行の体質改善ということも基本的に無理である。
 また、生命保険が危機を迎えていますが、株価がどんどん下がる、あるいは金利が今非常に低いという状況では、逆ざやを解消することは生命保険にとっては無理でありまして、後でお話しします、インフレの中で緩やかに名目金利が上がってこそ初めて生命保険の危機も脱出できるということであります。
 さらに、公的年金制度も、これも生保と同じメカニズムでありまして、今、デフレにスライドして年金の支給額が減るわけではありませんが、逆に、年金保険料収入は名目所得にリンクしておりますから、デフレ下ではどんどん減っていくということで、生保危機と同じように年金危機も深まるばかりということです。
 この何年間、デフレがマイルドだからといって安心し切っていたと思うんですが、今このような危機が深まっているのはすべてデフレのせいであって、これを解消しないで何か違った経済政策から進めようとすることは、かえって問題を深刻化するだけで、いよいよ解決不能に陥る。デフレは、今、GDPデフレーターで見れば一・五%程度にとどまっておりますが、これがもし三%だというようなところまで行ったとすれば、ほとんど経済は再生不能に陥ることは間違いないと思います。
 そうなりますと、何としてもデフレから脱却するということでありますが、これは、ほかに幾つかの、財政支出を需要創出型にするとかいった政策ももちろんありますが、しかし、基本的な、根本的な政策は、何よりも金融政策がレジーム転換しなきゃいけない。
 デフレ脱却のためにはどうするかということでありますが、まずインフレターゲットを金融政策の目標としてきちっと設定する。インフレターゲットはどのくらいがいいかということを見ますと、先進国やいろいろな国でインフレターゲットを九〇年代ぐらいからずっと採用している国が多いわけですが、そういう国でうまくいっているというのは、大体一―三%の間にインフレターゲットを設定しております。この九〇年代の十年から最近までの経験を見ると、どの国も二、三%、二・五%ぐらいから二%程度にインフレをきちっと抑え込んでおります。そのような経済は、すべてやはり日本経済より成長率が高いというふうにして、非常に順調にいっている。これは、先ほど言った、デフレ下ではいろいろな問題があるということが、逆に、マイルドなインフレの中ではうまく解決するからであります。
 そのためにそういうインフレターゲットを設定する。しかし、設定しても、いつまで達成するのかということが明示されないものはだれも信用しないわけでありまして、いつまで達成するかをはっきりさせる。恐らく、これからお話しする過去の例を見まして、一年以内に十分インフレターゲットを達成できると私は思います。したがって、一年以内というようなことで達成時期を明記して、そして、そのためには日本銀行はできることは何でもやるという姿勢が必要であります。
 現在、日本銀行は、例えば長期国債は月に八千億円に制限するとか、あるいは日銀が保有する長期国債の残高を日銀券の発行残高に抑えるというような制約を設けておりますが、そのような制約はすべて取っ払うことが必要だと思います。それを取っ払った上で長期国債をどんどん買っていく、あるいは外国債を同時に定期的に買うというようなことも有効であります。
 このような政策によってデフレ収束。それは、どんどんマネーが市場に出てくるわけであります。現在、マネーはじゃぶじゃぶだと言っておりますが、それでもまだのみ込まれるように皆マネーを保有している、現金や預金を皆さんが保有しているということは、まだまだデフレ期待があって、マネーを持っていれば、デフレだけ、例えばデフレが一・五%であれば一・五%の利子がつくのと同じですから、そのようにして皆さん持っている。ですから、それをのみ込むほどマネーを供給することが必要であって、そうなればデフレはやがて収束、あるいはインフレ期待も出てくる。
 そのことで、まずすぐ起こることは、資産価格、株価を上げる、あるいは地価の下げどまり、あるいはドルの資産価格を上げる、つまり円安になる、そういう効果を最初発揮し、次第にそれが物への支出へと向かってくるというのが、過去のデフレから脱出する場合の経験法則であります。
 そういったことが果たしてうまくいくのかということを疑問に思われると思いますので、過去のデフレを脱出した二つの例をちょっとお話ししたいと思います。
 デフレというのは、戦後、日本しか今ないわけでありますので、デフレを脱却した大きな例としては、何といってもアメリカの一九三〇年代の大不況と、日本の三一年の後半ぐらい、三二年ぐらいからの昭和恐慌を乗り越えた例が一番参考になるかと思います。
 アメリカでは一九三〇年ぐらいから大不況に入ってくるわけでありまして、当時のフーバー政権のもとで緊縮財政をとる、そして、FRBは金本位制が一番望ましいと思って頑固に金本位制を維持する。金本位制というのは、為替レートを固定するとともに、金の保有量にリンクして貨幣を供給するということですから、貨幣供給量は金の保有量によって制約を受けて、デフレ下でも十分に貨幣供給量をふやすことができないという制度でありますが、そういう制度をとって、フーバーは、緊縮財政で、今で言う構造改革を非常に推進しようとするわけであります。
 フーバー大統領のそういう政策によって、物価が一〇%あるいはそれを超えるというような下落をし、失業率が二五%にもはね上がるというような状況がいわゆる大不況であります。
 この状況を、デフレを反転させたのは、フーバーから一九三三年三月にルーズベルトがかわり、即座に金本位制を放棄します。これによってドルは三〇%ぐらい切り下がる。そして、中央銀行総裁のFRB議長もかわって、どんどん国債の買いオペを大量に始めます。それによってマネーがどんどん出てくる。このようにしてルーズベルトは、フーバー政権のデフレ容認から、当時リフレ政策、リフレーション政策と言われた、ある程度のインフレを容認するという政策ですが、はっきりとそれを宣言する。
 現在大不況の研究がかなり進んでまいりまして、そのことによって人々の期待をデフレ収束からインフレ期待へと変えるという力があった。それがきっかけとなって、すぐ株価が反応して上昇に転じます。そして消費者物価も上昇に転ずるわけですが、最近の大不況の研究によりますと、通常のマネーの増加率以上にマネーを大量に供給したということがこのデフレからの脱却をずっと維持して生産を拡大した要因であったことを、計量経済学的な手法で明らかにする論文が幾つか出るようになっております。アメリカは、第二次世界大戦による財政支出、軍事支出ですが、そういったものを中心として初めて大不況を克服したんだとよく言われてきたわけでありますが、最近の研究によると、財政支出あるいは赤字は、ノーマルな水準よりもこの時代は決して多かったわけではないということが実証され、マネーサプライを通常の状況よりもはるかに多く供給したことがやはり一番効果があったという研究が出てきて、それが支持されるようになっております。
 実際に、大不況は世界不況だったわけですが、不況から脱出した国というのは、金本位制を放棄しマネーサプライを大量に供給するという政策に転換した国からどんどん景気が回復していって、最後まで金本位制に固執し、貨幣供給量をふやすことをしなかったフランスが一番最後まで低迷を続けることになったわけであります。
 それでは、日本の場合は昭和恐慌がありますが、お手元にお配りしました私の二枚紙のうちの図の五というのを見ていただきたいと思います。
 金輸出再禁止というところが線が引いてありまして、これは三一年の十二月十三日であります。その前が、ちょうど井上財政が二年間あって、この井上財政のもとで日本は金輸出禁止を解除して、旧平価の割高な円相場で金本位制に復帰し、財政も緊縮財政をとるという、いわゆるデフレ政策をとるわけであります。そのときも、構造改革こそが日本経済を再生する道だということで、そういう政策を井上財政はとったわけでありますが、たちまち物価が一〇%ぐらいも低下し、失業がふえる、生産も落ち込むという不況に陥ったわけであります。
 そこで政変が起こり、高橋是清大蔵大臣のもとに再び金輸出が禁止される。つまり金本位制を離脱した。これによって円レートが三〇%ぐらい切り下がります。それによって期待が変わって、まず小売物価、そこを見ていただくと黒い丸に点々としたものが東京地区小売物価でありますが、それが上昇に転ずる。これは指数ですから、右上がりになるということが上昇に転ずる。つまり、強烈なデフレからマイルドなインフレに反転いたします。
 しかし、株価を見ていただきますと、まだ下がっております。これはなぜ下がっているかといいますと、実は金輸出再禁止はしたんだけれども、金融緩和はしなかったのであります。金融緩和を始めるのは三二年十一月二十五日で、財政を国債の発行で賄い、その国債を直接日銀が引き受けてマネーをどんどん供給するという金融緩和政策を大々的に打ち出す、それによって株価が急反転し、急上昇していることが読み取れるかと思います。これによって、当時のデフレ政策から、マイルドなインフレ政策あるいはリフレ政策への金融政策のレジーム転換がはっきりすることによって、生産数量というのは拡大の一途を遂げるということがわかると思います。
 このような例から、今金融政策のレジーム転換こそが非常に重要だということをお話ししたわけでありまして、やはりそういう政策に大きく転換してみるということが必要だ。
 しかし、それに対していろいろの反対論があります。時間が許す限り、反対論に対して私の反論をしたいと思います。
 まず第一は、現在は不良債権を銀行がたくさん持っているために、どんなに日本銀行がじゃぶじゃぶに資金を供給しても、銀行の手元に残っただけであって銀行の貸し出しがふえない、したがって景気は回復しない、これが圧倒的な支持を得ていると私は思います。
 しかし、それでは、銀行の貸し出しがふえることが経済の回復に不可欠でしょうか。この点を、もう一回図の五を見ていただきたいと思います。
 図の五で銀行の貸し出しというのはポチの三角で実線です。これは指数ですから、右下がりである限りは減っていることを示します。それを見ていただきますと、金輸出再禁止あるいは日本銀行の国債引き受けが始まって、生産は拡大し、消費者物価もマイルドなインフレに戻ります。しかし、銀行貸し出しは三四年まで減り続けているというところに注目していただきたいと思います。銀行貸し出しが初めてふえる、右上がりになってくるのは三五年であります。ですから、金融政策のレジーム転換をした後、三、四年もたってからようやく貸し出しは伸びるわけであります。
 それでは、なぜ貸し出しが伸びないのに生産は拡大し、設備投資は拡大するのかということを疑問に思われると思うのですね。一体どうやって企業はファイナンスをするのかということであります。それが図の六であります。
 図の六を見ていただきますと、これはフリーキャッシュフローといって、企業の税引き後の純利益と減価償却から設備投資を引いた残り、フリーなキャッシュをどれだけ持っているかを企業の資産で割ったものであります。不況のどん底である三一年、それから三二年の後半ぐらいから回復を始めますが、そのころ法人企業のフリーキャッシュが大きくプラスになっていることがわかると思うのです。
 つまり、デフレが一番深刻になっている年というのは、生産も拡大しないから、だれも設備投資も何もしないわけです。法人といえども資金余剰主体になるのですね。もちろん、個々の企業の中で不足しているところはありますが、全体としては資金が不足していないんですね。そのために、これからそんなデフレというのが永久に続くわけではない、デフレが収束しインフレになる可能性もあるという、つまりインフレのリスクを人々に感じさせるということが大事なんですが、そして、実際に株価も上がり、資産デフレもとまってくるということになると、企業はその余った資金を初めて生産の拡大のために使うということがわかると思うのです。そして、いよいよ資金が足りなくなってきます、だんだん三四年ぐらいから足りなくなってきますね、マイナスになりますから。そうして初めて銀行の貸し出しがふえる。つまり、銀行にとって初めて資金需要がそこで出てくるから、銀行は貸し出すのであります。
 同じことは、図の七、次のページを見ていただきますと、アメリカも実は大不況を脱出する過程では、インフレが起こり、生産が拡大する後、やはり三、四年後に初めて銀行の貸し出しがふえるんですね。それまでは銀行の貸し出しはどんどん減ります。
 なぜ減っても生産が拡大していくのかというのが図の七でわかると思うのです。三三年の三月にルーズベルトがかわってレジーム転換する、そのころには法人企業の中でキャッシュフローが十分にたまっているわけです。十分なお金を持っている。ですから、デフレが何とか収束するという期待、インフレが少し出てくるんじゃないか、あるいは株価とかそういうものも上がってくる、資産デフレも終わってくる、そういうことが初めて企業に生産の拡大意欲をもたらして、自己資金でやっていく。もちろん、その場合に中小企業などは資金がない企業もあるわけですが、そういう企業は企業間信用で生産を拡大していくということで、銀行に必ずしも頼らないということであります。
 それでは、現在はどうか。図の八を見ていただきますとわかるように、現在、二〇〇〇年、二〇〇一年とフリーキャッシュフローが大きく法人部門にたまっていて、法人部門は実は資金余剰部門だということがわかります。したがって、銀行の貸し出しがなくても、最初の経済再生のときにはこの資金を使って再生が可能であり、中に、資金不足のところは、取引を通じた企業間の信用でもって拡大する余地があるということでありまして、この政策の有効性を私は示しているというふうに思いまして、必ずしもこれからの日本経済の回復にとって銀行貸し出しが先にふえなきゃならないということが必要条件ではないということをお話しいたしました。
 以上です。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 次に、石田公述人にお願いいたします。
石田公述人 阪南大学の石田でございます。
 私は、今大学教授をやっておりますけれども、生涯の大半を伊藤忠商事で暮らしてまいりました。したがって、経済の現象あるいは経済学につきまして、現場の体験に合うのか合わないのか、それをいつも理論とチェックしてやっていく習慣がついております。体験と理論に合致しないことは言わない、合致することだけ、納得したことだけを言うということにしております。きょうの話はそういう話でございます。
 レジュメの最初の数行で、言わんとしていることの要約を書いております。
 今、経済グローバル化時代、企業というのは、伊藤忠もどこの企業でもそうですけれども、各国の立地条件の優劣をいつもテストしています。そして投資の場所を決める。そうすると、その国に生産と投資が行われる。その結果の総計が一国の生産と雇用であります。今の不況は、日本が投資の場、投資のロケーションとしての競争力を低下させた結果だというのが私の認識であります。
 私は、小泉改革を熱烈に支持しています。支持していますが、今のままでは多分成功しないというおそれを持っています。成功とは何か。それは、経済が自律成長に復帰する、あるいは少なくともその見込みが立つ、国民がそう思うということだと思います。私は、投資の場所としての日本の競争力強化というものを構造改革の中核思想として小泉改革を組みかえていただくか、あるいは全く新たなそういう考え方の改革プログラムを策定する必要があるだろうと考えています。そのようにして経済成長への道筋が示されますと、構造改革と景気対策の両立は可能になるというのが私の主張であります。
 病気と一緒でありますけれども、病気の原因がわからなければ治療法はわからない。今の不況の本質は何だろうか、それが経済政策を規定します。
 景気循環不況からです。これは、金融財政政策という景気循環対策を打ってきた、財政はもう限度に来た、これをちょっとでも減らせば景気が失速するという構造問題だけが残った。金融政策はどうか。ちょっと岩田先生の話と合いませんけれども、これでは景気は回復いたしません。
 では二番目、よく言われている資産デフレはどうか。私は、今の岩田先生のお話で、資産デフレに非常なデメリットがあるというのは全く同感です。だけれども、それでは資産デフレで、企業と銀行がリストラを完了すれば景気が自動的に成長軌道に復帰するかといえば、それはあり得ません。それは、必要条件ではあるが、十分条件ではないのです。
 三番目、これが私の主張なんですけれども、日本は投資の場所としての競争力を劣化してきたんじゃないか。であれば、経済政策の目的、構造改革の目的というのは、競争力回復のためのいろいろな措置をとるということでないといけない。
 国内に今投資機会は不足しています。これはなぜでしょうか。日本は、先進工業国に比べてもコストが高い、規制が多い、それから税制が経済活動に不利になっている。随分いろいろな試みはされましたが、パッチワーク的で、徹底的な改革になっていない。不況の本質は、日本が投資と生産の場としての競争力を失ったことにあるというのが私の認識であります。
 一つの例として、電機産業ですけれども、日本の大手電機産業は何をしているか。日本で研究開発と試作品をつくっています。試作品でこの商品だというのがわかれば、大量生産は中国なんです。もう最初からそうなんです。今にこの研究開発自体も中国に移る。ある大メーカーでこの間聞いたら、四、五年はもつけれども、それから先はわからないというふうに言っています。ですから、日本は高付加価値製品をどんどんつくり続ければ勝っていけるというのは間違いなんです。やがてつくれなくなる。つくっても、生産はすぐ中国に行くということなんです。
 そこに書いておりますが、中国では集積が集積を呼び、我が国は集積が失われておる。これが産業立地の最も恐ろしいところなんです。中国は、珠江デルタで五万社という会社があって、電機産業、電子産業の集積ができています。そこに、日本ばかりか、アジア諸国の産業が吸い寄せられていっておる。日本は東大阪市だとか大田区の中小企業の技術の集積が失われているという状況があります。
 このように、国内で生産が行われない、海外に生産がシフトする、これが実は重大なデフレ効果を及ぼしています。
 そこには一、二、三と書いていますが、一つ、投資需要が日本から落ちてよそへ行くというだけでGDPが減る。二つ、低価格輸入品のデフレ効果が経済全般に浸透する。これは、いろいろな数字をごらんになるとわかりますけれども、輸入品の価格が下がり、それにつれてそれと競合するものの価格が下がり、さらに一般物価が下がるという構造ができ上がっているわけです。それから、土地の問題ですけれども、工場が移転すれば土地の需要が少なくなる、供給がふえるわけです。これで地価が下落する、また銀行の資産内容が悪くなるということであります。
 ここのところを結論的に言いますと、一国の生産と雇用の水準を決定するのは企業である、その企業も、伊藤忠の中でよくわかっていますが、事実上部課長クラスの決定なんですよ。部課長クラスが調べてこうだと言って経営者に出す。そうすると、いいとか悪いとか言う。それがひっくり返ることは余りないです。というのは、経営者が部課長クラス以上の調査能力を持っているわけじゃないんです。(発言する者あり)いや、本当にそうなんですよ。それはやはりできないんですよ、広く見ていますから。
 そういうことでありまして、スーザン・ストレンジというイギリスの国際政治論の方が「国家の退場」という本を岩波から出していまして、これは私の同僚が翻訳して出した本なんですけれども、彼女はパワーは国家から企業に移ったということを言っています。ですから、そうなりますと、政府の役割というのは、投資の場所として日本の競争力を回復することに尽きるということになります。
 それから、次のページをごらんください。三行ほどドイツの新聞の引用があります。これは、実は、私が九四年二月二十三日の週刊東洋経済で紹介したのです。「資本は常に各国立地の優劣をテストしている。政府が資本を規制と課税で虐待し、労働者が過大な賃金を要求すると資本収益率が低下し、資本は有利な立地に逃亡する。逆に収益率が上昇すると追加投資が行われ、雇用と賃金の支払能力が向上する」ということであります。今日本では、この前半、逃亡しているのが起きているわけです。
 そこで、ドイツやアメリカはどうしたかということを御紹介したいと思います。
 ドイツとアメリカは、九〇年代の初頭に国としての国際競争力が落ちてきたということに気づいたんです。それを目的とする改革に着手しています。
 一つ、ドイツ経済省は九三年にこういう報告書を出しています。失業率増加の九割が産業の立地悪化による構造失業である。つまり、先ほどからの金融政策とかなんとかで治療できないものがそれだけあるということであります。そのときコール首相は、随分いろいろなことを言っておるのですけれども、東欧の旧共産主義諸国はドイツの戸口に立ちあらわれた競争者なんだ、これらの国々はマーケットだけと見たら大間違いだという警告をしています。それから、国際競争力のある職場が五百万人分足りないと。何か今の日本の政府の五百三十万人と合う数字ですけれども。長年の慣行を見直し、新たな優先順位を決めようじゃないか。九四年の総選挙が実は迫っていまして、ドイツの産業立地の将来確保をこのときの最大の争点にしようと言って国民に呼びかけております。
 コール政権は倒れましたが、例えば、日本でも話題になっております、ドイツでどうして個人投資家がこんなにふえたかということは、資本市場の振興税制という中で、シュレーダー政権がコール政権の改革を引き継いで実施したものであります。
 それから、アメリカは、一九八八年、オムニバス貿易及び競争力法を制定させまして、競争力政策諮問委員会をつくりました。これが議会と大統領に報告を行うことになっております。
 下に示していますのは非常に要約の要約なんですけれども、アメリカはどうして競争力が低下したか、二つのことを言っています。一つは、グローバルな考え方が欠如している。つまり、グローバル化経済への対応の必要性の認識が不足していたという意味だと私は考えています。それから二つ目、競争力を劣化させる、悪くさせるようなインセンティブが経済に組み込まれている、特に税制でこれが顕著だと言っています。私は、これは二つとも今の日本に当てはまる、アメリカは十年も前にこれに気がついたと考えています。
 それから、日本の構造改革の基本文書と比較します。そこにあります今後の経済財政運営等々といいますのは、いわゆる骨太の方針であります。これは、日本経済再生のために、不良債権処理、金融システムの安定、財政改革等々、七分野に分けて必要な改革をやっていくという文書です。
 私は、極めて不思議なことなんですけれども、これを読み通しましたら、国際競争力という視点がない。国際競争力という言葉が一カ所出てくるのですが、それは大学なんです。私ら大学に身を置いている者としてそれは本当に納得したのですけれども、それだけでは済まないと考えております。
 それから、ことし出ました「構造改革と経済財政の中期展望」、これは、二年程度のうちに財政構造改革、規制改革等々をやりまして、民間需要主導の成長が実現すると説明されております。しかし、率直に一国民として申し上げますが、筋道が見えないのです。国民は筋道が見えないことに不安を感じています。そういう国民は、何かあると小泉政権支持から離れていくかもしれないというふうな気がいたします。
 我が国の構造改革というのは着手が十年おくれただけじゃない。小泉改革では、国としての国際競争力回復という目標に絞り込まれていない。国であれ企業であれ、重点を絞らずに、よいことは何でもやるというのは、これは失敗の処方せん。企業の改革で失敗するのは必ずこれです。みんなが提案して気のついたことは全部やる。重点がない。
 あの日産リバイバルプランを見ればすぐわかりますけれども、目標は極めて明快、競争力を強化する。手段は二つ、コストカット、それから魅力のある商品を出す。コストカットは、仕入れをこうする、村山工場を閉鎖する。全部が一つの目的のために、ピラミッド形に明快になっているのですね。新車開発にフランス人、どこかのデザイナーを連れてくるとか、いろいろなことがありますけれども。これでマーケットも日産の社員もよくわかった、それで日産の構造改革はうまく成功したと私は理解しております。
 なぜ日本経済の再生でなくて、投資の場としての国際競争力強化かということを次にお話しします。
 これは結果が違うのです。二ページのおしまいに書いていますけれども、国際競争力を指導原理とした改革。これを指導原理としていろいろな改革を評価してまいりますと、例えば連結納税付加税などは出てくるはずがない。それから、先般の非常に複雑怪奇な証券税制改革などのようなことは、これはあり得ないです。
 それから、電力、通信、運輸などの産業のインフラでは、やはり日本は高いのですよ、国際水準の料金体系への引き下げが目標となる。
 道路公団の民営化、高速道路の凍結問題では、国内の陸運コストの引き下げが具体的な目標になる。トラック一台を十年間持つと、日本の業者が払う税金は三千六百万です。アメリカは六百万から千三百万、ドイツは九百万です。これは全部物流コストにはね返っているのですよ。日本の物流コストが高い高いといって日本の産業界から文句が出るというのは、こういうところにあるのです。だから、改革はこういうところを直していただきたいのです。
 それから、アメリカ型の住宅税制にすれば、これは私の持論なんですけれども、住宅投資をGDP比一、二%引き上げることになるのではないか。これらの措置は、みんな税収減になったり、財政負担増があります。優先度が低い支出を削減してこういうものを実行していく、それが構造改革ではないか。企業だったら、間違いなくこれをやります。
 次に、サービス分野なんですけれども、製造業が海外にシフトする、これはやむを得ない、必然だ、だからサービス産業で雇用を創出しようじゃないかという議論が非常に盛んです。私はサービス分野で雇用を創出するということを非常に重要だと思っています。だけれども、これに依存し過ぎる、期待し過ぎるのは危険だと思っています。
 まず、このサービス分野というのは、経済活動全体のインフラです。だから、これらのコストが高いまま、あるいは規制過剰なまま置いておくと、これは日本全体の競争力を下げてしまうということになります。
 それから、既にサービス分野は競争力がないものですから、どんどん海外に仕事が流出しています。事務処理や設計など、これは私、固有名詞を知っています、大企業ですが、設計はインド、事務処理はフィリピンに出ています。その分だけ日本の雇用が失われています。
 それから、年五兆円のサービス収支の赤字がありますが、三兆円は旅行収支です。日本の観光産業は効率が悪いのです。
 サービス分野での雇用創出で製造業の雇用減を吸収できるとは私は思えないのです。政府は五百三十万人とおっしゃっておられますが、例えばこの中で一番大きいのが家庭向けコンシェルジェ、何でもやります、百九十五万人。これは可能なんでしょうか。
 長期的に競争力が低下する製造業とサービスの輸出で将来の輸入を払えるか。残念ながら、円は基軸通貨ではないのです。アメリカのように赤字を垂らして払い続けるわけにはいかないのです。私は、構造改革というのは、やはりここまで見通してやっていただきたいと思っています。
 それで、私は、今の小泉内閣のジレンマというのは、今まで対症療法を重ねて根本治療を先送りした結果、金融財政政策がデフレを抑える余地を失った中で、かつデフレを伴う構造改革を進めなければならないということです。
 この袋小路、袋小路というのはムーディーズの表現をかりたのですけれども、これから脱出する方法は、私は、国としての国際競争力回復を指導原理として小泉改革を組みかえていただく、あるいはそれができないのであれば、新たな改革プログラムを策定するということだと思っています。
 そうしますと、先ほどの日産の改革のように、各分野の個別の改革が、競争力回復達成の手段として、その重要性と緊急度に応じて位置づけられます。緊急度の低いものは先送りすればいい、重要性の低いものは無視してもいいのです。そうしますと経済活動活性化への道筋が見えてくる。そういう文脈の中で財政支出が若干ふえるにしても、またそれが改革に結びつくものであれば、国民やマーケットはこれを肯定的に受け取るはずです。そうすれば、税制、年金、医療改革等への国民の支持も得られるだろう。私は、これこそ本来の雇用対策、デフレ対策だ、対症療法だけでは雇用対策、デフレ対策にならないと考えております。
 それからもう一点、実は為替が非常に重要なんです。この為替の安定というのは産業立地条件の非常に重要な一要素です。日本はずっとこれに欠けてきた。一ドル八十円というのを見た製造業の経営者が、今さら若干安くなったからといって日本に大きな設備投資をすることはありません。私、そういう人と話していますが、する気は全くないと言っています。必要なのは、円・ドルレートが安定する仕組みなんです。仕組みがあれば、そういうことも徐々に起きてくる。私は、これは、今アメリカは日本が復活してくれないと困っているわけですから、やはりアメリカに働きかけるべきだと考えております。
 最後に、日本は時間がないので、小泉改革の組みかえでも新たな策定でもいいんですけれども、とにかくこれは緊急だということを強調して、私の話にいたします。
 どうもありがとうございました。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 公述人各位の御意見は、まことに参考になるものでございました。
    ―――――――――――――
津島委員長 これより公述人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小西理君。
小西委員 自由民主党の小西でございます。
 四人の先生から大変貴重な御説を賜りまして、本当にありがとうございます。幾つか質問をさせていただきます。
 富田先生にちょっと御質問申し上げたいと思います。
 現在、デフレ下で不良債権というのが増加基調にある、このように認識しておるわけでございますけれども、強力なデフレ対策なしに不良債権処理を進めますと、産業構造の転換を待たずにデフレが悪化して経済が窒息してしまうんじゃないか、こういう議論があるわけなんですけれども、この点についてどういうふうにお考えか。
 それと、インフレターゲティング、これの有効性に関しての先生のお考え方、この二点をお伺いしたい。
 あと、三点目として、国債のシーリングが非常に必要だということをおっしゃっているわけでございますけれども、三十兆円枠と今言われていますが、年限を限ってこれを引き上げて、五十なり四十、数字はいろいろありますけれども、これを短期的に一年、二年ということで上げることに関しての先生のお考え方、この三点をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
富田公述人 まず一点目の、デフレ対策なしに不良債権の処理を進めることの問題という御指摘でございますが、私は、そもそも民間の銀行が自己責任と自助努力でもって不良債権を決まったルールで粛々と処理を進めるということがまず第一になすべきことであって、それをいろいろと次善的に、公的資金が注入されるんじゃないかとか、あるいはこれまでもやってもらえたからということで、不良債権処理がかえっておくれてしまうという問題があろうかと思います。そういう意味で、やはり決められたルールの中で金融機関は自己の責任として不良債権処理を粛々と進めるということが基本であります。
 二番目の、インフレーションターゲティングの有効性ということでございますが、インフレ、デフレというのは、基本的には貨幣的な現象であることは間違いないと思います。
 しかしながら、現在の物価鎮静化の原因がどこにあるのかということについて考えますと、単に景気が悪いからということで物価が下落しているわけではなしに、やはり世界レベルでの大きな産業構造の変化の中で起こっているという認識が重要であろう。そこで、インフレーションターゲティングを設定して、それに向けてなりふり構わず何でもかんでも中央銀行が購入するということになりますと、既に海外での信用が揺らいでおります日本国債の信用がさらに揺らいでしまうことになりかねないということでありますので、私はインフレーションターゲティングの問題は極めて慎重に議論する必要があると存じます。
 シーリングの問題なんですけれども、年限を決めて国債を増発してはどうかというふうな御指摘だったと思うんですけれども、私は、では、今、日本経済の底が抜けてしまうほどの景気悪化なのかということをやはりよく考えてみる必要があると思います。
 ヨーロッパでは、財政赤字をGDP比で三%を超えて拡大しても許容されるというために不況の定義がございまして、経済成長率がマイナス二%以下の場合には許容されるということであります。
 では、一体、マイナス二%を超えるほど、あるいは昭和恐慌や大恐慌を超えるほどの不況かということをよく冷静に判断する必要があろうかと思います。我が国の経済、深刻な構造問題を抱えておるわけですけれども、構造問題を抱えた中でも景気は循環するわけでございます。その間に企業は、景気が悪いときに、次のその企業の発展可能な分野を自己責任で探し出して、そこに人とお金を集中していくことが重要であるわけでして、国債を増発して、それで持続的に景気がよくなるということではないと思うわけでございますので、やはり長期的な観点に立った財政の健全化を推進することが重要と存じます。
小西委員 富田先生の陳述の中で、日本の産業構造の転換が必要だというのは、まさにそのとおりだと思います。
 お説の中でございました、企業活力を増進するために、税制改革、規制緩和というのが大変重要な切り札になるということをお伺いしました。こういうのはちょっと恐縮かもしれませんけれども、具体的にどういう分野での改革、緩和というのが一番即効性があり、有効であるというふうに先生がお考えか、ちょっとお説を伺えればと思います。
富田公述人 私は、企業が生き生きとその活力を発揮できるためには、競争条件というのがすべての産業、企業にとって共通していること、また個人においても、特定の消費行動とか、そういうものを優遇するということは決してよくないことだと思います。そういう意味で、二十一世紀の最初に当たりまして、税制改革というのはやはり競争条件を均質にしていくことが重要だろうと存じます。
 規制緩和につきましても、我が国は現在、物価鎮静化が、他の先進国よりは少し速いテンポでデフレ的現象が進んでいるわけですけれども、その原因をたどれば、これまでさまざまな規制によって内外価格差が発生した、内外価格差の是正ということもあって、他の国よりも少し物価下落のテンポが速い状況だろうと思うわけですけれども、やはり、国民が生活の豊かさを実感できるという方向に向けて、規制の緩和を内外価格差の是正という観点からも進めていくことが重要であろう。
 特効薬ということなんですけれども、経済、企業というのは生き物でありまして、それに何か効くものを探してもなかなか、探すというよりも、やはり個々の企業、個人がそれぞれ見出すということの方が私は重要と存じます。
小西委員 最後の質問になりますけれども、総括という意味で、富田先生お考えの中で、今一番重要なものはやはり企業の自己責任である、これによって経済を再生するのが一番の王道である、こういう理解でよろしいのでございましょうか。
富田公述人 私ども、市場経済と民主主義の国に生きているわけでありますので、そこにおける基本原則というのは、企業そして個人が、自己の責任において、自分の行動、投資行動であれ消費行動であれ、それがもたらすリターンとリスクを厳密に計算し、それに基づいて行動をすることである。そのためのインフラづくりというのは政府の役割であると存じます。
小西委員 ありがとうございました。
津島委員長 次に、井上義久君。
井上(義)委員 公明党の井上義久でございます。公述人の先生方には、きょう、御多忙の中、貴重な意見を賜りまして、心から御礼申し上げる次第でございます。
 まず初めに、富田公述人にお伺いいたしますけれども、先ほどのお話の中で、景気対策と決別して構造改革政策に転換をしなければいけないと、かなりストレートな表現があったわけでございます。
 先ほどからお話が出ていますけれども、今、日本経済、緩やかなデフレ状態にあって、これをこのまま放置いたしますとデフレスパイラルに陥る危険性が極めて高いんじゃないか、また、構造政策といっても、やはりこのデフレ克服が前提じゃないか、こういう議論があるわけでございます。
 このデフレということについての認識と、それから、やはりこれを克服していくというためには需要政策というのは私はある一定程度必要だと思いますし、最近の雇用情勢なんか見ていますとミスマッチの部分というのが非常に大きいわけですけれども、需要不足というところが顕著になってきているということで、今回の予算で、重点七分野ということでかなり将来の投資につながるようなところに特化して予算編成されているわけですけれども、需要を掘り起こす、需要政策ということについて、先ほど景気対策と決別してというお話があったものですから、その辺についての御認識をまずお伺いしたいと思います。
富田公述人 まず、九〇年代の我が国におきます景気の長期停滞、もちろんその中にも、景気が回復いたしました九六年そして二〇〇〇年という年があったわけですけれども、そのときに、景気が悪いのをいつも需要不足と考えて景気対策をどんどんやったんですが、それが持続的な効果をもたらしていない。
 問題の所在はどこかというと、企業、個人における行動が、この十年間で、どうも行政への甘え、景気が悪くなったら公共事業をやってくれたり減税をやってくれたりするんだということで、市場経済の規律をきちんと守るような行動が緩んでしまったということであったとすれば、これは我が国の将来に大きな禍根を残すだろうと思うわけでございます。
 景気、確かにだれにとったって悪いよりいい方がいいに決まっているんですけれども、私、懸念いたしますのは、例えば、株主より企業の代表取締役が、おたくの企業の業績悪いじゃないかと言われれば、いや、景気が悪いからです、そしてまた、社長より部長、課長が、君の部門の業績よくないと言われれば、また、いや、景気が悪いと新聞でも国会でも議論していますということで、問題の所在を自分の責任から景気全体にすげかえてしまっているというふうな風潮に陥っているとすれば、それが一番大きな問題だろうと思うんです。
 したがいまして、これまで十年間、景気対策をどんどんやってきたんですけれども、効果が出てこないということをやはり十分に踏まえていくことが大事だろう。現在においても、他の主要国には見られないほど大きな財政赤字、つまり、それは、景気に対して当然拡大効果を持っているわけでございますので、それが行われているという認識も重要だと存じます。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
井上(義)委員 そういう企業の自己責任ということも含めて、また、財政の規律ということも含めて極めて重要だと思いますけれども、やはりデフレスパイラルに陥らないということを考えますと、いわゆる構造改革が進まないまま経済が縮小していくということを一番心配するわけでございます。
 そういう意味でいいますと、こういう機会に、将来必要な都市再生ですとか、あるいは高齢化社会に対応した社会基盤整備とか、そういったことを思い切ってやるということも日本の将来を考える上で今重要なんじゃないか、こう思うんですけれども、重ねてもう一回、ちょっと。
富田公述人 私も、先生御指摘の分野というのは国民にとって極めて重要な分野であり、財政支出のあり方をそういう新しい分野にシフトさせていく、非効率的な分野から、将来国民にとってより重要なインフラとなる分野にシフトさせるということは、先生御指摘のとおり、極めて重要と存じます。
井上(義)委員 次に、岩田公述人にお伺いいたします。
 私どもも、デフレ克服こそ経済政策の最優先課題ということで、党内に経済問題対策本部を設置いたしまして、先般、総合的なデフレ対策ということで、第一次の提言をさせていただいたところでございます。その中に、先ほど先生からお話がありましたように、政府と日銀の連携強化といいますか、我々も、デフレ阻止に向けて物価安定についての緩やかな目標、どの程度かということは、CPIプラス一%程度というふうに考えておるんですけれども、政府、日銀がそういう共通認識をきちっと持つということで思い切った対策をやるということが非常に重要だと思っているわけでございます。
 そういう意味で、先生からごらんになって、今の政府、日銀の対応についてどのように感じておられるかということ。それから、レジーム転換ということを先生はおっしゃっているわけでございますけれども、デフレ対策を重点に全面的にやろうということと、もう一つは、個別の、例えば不良債権処理の促進とか、あるいは税制の問題とか、その他の個別対策について、先生、具体的なお話がございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
岩田公述人 現在の日本銀行の金融政策をどう考えているかということでありますが、政府と日銀の連携がデフレ阻止に向けて必要だということは、そのとおりであろうと思います。
 そういう点から見ますと、現在の日本銀行がインフレターゲットの設定に対して非常に消極的であるというのは、十分デフレ克服に断固たる姿勢を示していないのではないかということで、やはりインフレターゲットの設定とその達成時期まで踏み込んだ連携を政府と。
 そして、その場合によく日銀は、長期国債なんかをどんどん買っていくと、それに安心して政府が国債をどんどん発行して赤字を垂れ流しするんじゃないか、それによって国債の信認がなくなって金利がむしろ上昇するんじゃないかというふうなことを心配されます。
 ただ、私は、小泉政権の中では、三十兆円の枠をはめたりしてむしろ緊縮的でありますから、そういうことは考えられないと思いますが、それでも心配だということであれば、国債の発行に関するある程度の政府と日銀の合意というんですか、赤字国債を垂れ流しするというようなことをどんどん続けてはいかない、そういうある程度の合意は必要かと思います。
 それから、きょうは短い時間でしたので金融政策だけに絞って申しましたが、個別の対策では、やはり何とか需要創出をするような構造改革、あるいは財政構造改革でも、需要を創出するようなもの、需要を創出するというより、特にそれは民間投資を呼び込むという政策が必要であって、公共投資などでも、例えば都市の再生のために環状道路とかそういったものをつくることは、その周辺に民間投資を呼び込むということがありますし、あるいは都心の容積率を緩和してもっと高い建物を建てやすくするとか、あるいは今おっしゃった社会基盤を整備してやる、そういうところに財政支出を向ける、それは、人々の将来設計を非常に安心させるといいますか、そういう効果があって、いたずらに消費を抑制するというような効果、それに対しての抑制効果が働くということ、あるいは、これからある程度デフレ調整を進めるときのセーフティーネットとしてもそういう政策は必要だというふうに思っています。
井上(義)委員 以上で終わります。
北村(直)委員長代理 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 各公述人の皆さん、本当に御苦労さんでございます。
 私は、四人の公述人の方に簡単な御質問をいたしたいと思うんです。
 まず、富田公述人、日本の経済再生のために構造改革が中心になるべきである、こういうことでありますが、構造改革といいましてもピンからキリまでありまして、一体どういうことを主として言っておられるか、その内容を明らかにしていただきたいと思います。
 それから、もう一点は、最近、平成十四年度予算が成立しますと、あと補正を続いてやれというような意見もあるわけですね。つまり追加的な財政支出をしろということだと思うのでありますが、これについてどういうお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
 次に、小関公述人でありますが、いろいろと言われておりますこと、うまく整理をされていると思うのでありますけれども、金融再生のためには、これまでの延長線上でない、よりドラスチックな対応が必要だということでありますが、構想があれば、その中身をお聞かせいただきたいと思います。
 それから、岩田公述人は、インフレターゲットを設定すべきだということであります。超金融緩和をすれば、外債を買うというようなこともあるだろうし、あるいは株を買うということもあるだろう、こういうことも言っておられますが、片や、要するに銀行の貸出高がふえなくたって経済はよくなっていくんだ、こういうことも言っておられるのでありまして、言わんとするのは、そういう目標をきちっと決めて宣言をすればそれなりの大きな効果がある、こういうことを言っておられるのか、その辺を確かめたいと思います。
 それから、最後に石田公述人でありますけれども、これからの経済財政政策の中心は、日本の国際競争力を向上させるというところに原点を求めて、対策もそこに集中すべきである、こういうことであります。幾つか書いてありますが、より具体的に、どこの分野にどういうようなことをおやりになるのか、お聞かせいただきたいと思います。
 以上であります。
富田公述人 構造改革とは何かという大変難しい御質問なんですけれども、構造改革とは、人と資本という市場経済におきます生産要素を、より生産性の高い分野、需要の増大が見込める分野にシフトさせる、そのシフトにおいて阻害要因となっているものがあれば、それを改革していくということだと存じます。
 企業においても当然構造改革が必要でして、選択と集中をして、次に伸びるべき分野に人とお金を集中する。国においては、やはり人については労働市場における弾力性の確保ということが大事でありますし、お金におきましては資本市場の整備ということが重要でありまして、そのためには、人々がきちんとリスクとリターンを評価できるようにしておくことが重要というのが構造改革の基本と存じます。
 そして、二番目の御質問の補正予算の話でございますけれども、私は、それをやると、かえって逆効果といったものがだんだん出てき始めている。我が国の国債の信用が海外では非常に低下しているわけでございますし、国債金利が上がるとすべての金利が上がってしまいます。また、日本国債の国際的な信用が低下しているということは、本邦企業の海外現法の資金調達に支障が出てまいるわけでございまして、冷戦後の相互依存世界における企業の国際的な展開に大きな支障を来してしまうということで、景気対策から決別して、財政におきましては資源配分機能をより重視するということが重要と存じます。
小関公述人 金融再生の長期的課題ということで御質問をいただきましたけれども、問題点としては、商業銀行の、業として呼ぶに値するような収益性を確保していくことができるのか、そのために、コーポレートガバナンス、これがキーワードになるかと思いますけれども、経営そのものをどのように革新していくことができるのかということが課題になると考えております。
 まず、収益性について申しますと、現在の不良債権の問題が完全に片づいた、普通の状況に戻ったと仮定しましても、ROE、株主資本に対する利益率ということでいけば、大体四%あるいは五%という非常に低い収益率しか上がらない仕組みになっている。これはすなわち、戦後、高度成長時代に長く培われた産業政策であるとか、あるいはフローでの収益が低くても含み益がふえることによってトータルで価値がふえてきたといったような歴史的な背景に根差しているわけでありますけれども、現在の環境下では、そういった含みの、右肩上がりの資産の価値の上昇がなく、しかも、フローの収益は弱いままということになっているわけであります。
 日本の銀行業界の総資産に対する粗利益といいますか、幾らお金をお客さんからもらっているかということでいきますと、大体一・二%であります。世上よく言われるのは、銀行は金利が低過ぎるから上げればいいじゃないかというようなことで、金利を上げろと言われますけれども、日本の銀行の貸し出しというのはGDPと同じぐらいあるわけでありまして、銀行が一%金利をふやすことは、国民経済的に見れば、借り手から銀行セクターに一%もの資本というか利益の移動を行うということでありまして、そういうことは当面こういった環境下ではあるわけがないわけであります。
 したがって、大規模な経費の削減ということがテーマになってくるわけでありまして、その間、いろいろな要因から私としては銀行の経費をあと三〇%とか四〇%下げていくことが可能だと思いますし、それをやっていかなければならないんではないか。
 それから、コーポレートガバナンスでありますが、現在の状況というのは、バランスシートの信憑性、信頼性に疑問が呈せられているという状況で今日の金融危機があるわけでありますけれども、これが仮に、だれでも信用できる、国際的にも信用できるという信認が定着してくれば、銀行を買収するとか、これは国内、国外を問わず、そういった形で一気に経営の革新が進んでいくということもあり得るのではないかと考えております。
    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
岩田公述人 インフレターゲットを宣言するだけでいいのかということですが、宣言をしてその達成時期をはっきりする、これはまず必要不可欠の条件でありますが、ただそれだけでいいかというと、それはそうはいかなくて、宣言したとおりのことを実行するということが必要であります。
 そのためには、先ほど言った金融の超超緩和といいますか、あるいはインフレターゲットを設定したものを達成するためのあらゆる手段を使う。伝統的な手段の短期金利の低目誘導だけにこだわらず、長期国債を買う、あるいは外債を買う、それでもどうしてもデフレが続くという場合には、これは慶応の深尾先生などが提言されていますが、TOPIX連動の株式上場投信であるとか、そういったものも買わなければいけなくなる可能性はあるわけです。
 私は、すぐそれをする必要はなく、まず長期国債の大量購入から始めればよくて、恐らく、気持ちとしては、銀行が持っている国債を全部買うぐらいの気力があれば、かなり効き目があると思っていますが、それでもだめな場合には、ほかの手段だってとり得る、とるのだという姿勢が大事でありまして、そういうものは伝統的に中央銀行はやっていないからだめだ、だめだと言ってしまうと、効果はまずなくなる。
 ということで、実際にやる。やるということによって、銀行が貸し出しをした場合にも民間にマネーが出ますが、銀行がいろいろな資産をとにかく買えば、マネーというのは民間に出てまいります。銀行が国債を買う、社債を買う、株式を買う、CPを買う、あるいは外債を買う、とにかくそういうことをすればマネーが出てきて、マネーをマネーだけで持っているというのがデフレ経済ですが、しかし、それが相当潤沢になってくれば、やはり投資信託に向かう、株式に向かうというふうにして資産に向かう、あるいはさらに土地住宅にも向かう可能性もある、あるいは耐久消費財に向かう可能性があるということによって、資産デフレが最初にとまってくるということであります。そして、外債を買えば、それは円安になってきて、円安自体は輸入財の価格の上昇に始まって、必ずインフレ効果を持ってくるわけであります。
 そういう意味で、とにかくインフレターゲット達成の断固たる姿勢ということは、まず最低限していただいて、それを実際に担保するような金融政策の運営をするということが不可欠だと思います。
石田公述人 お答えいたします。
 具体的にどういうことをするのか述べよというお話でございまして、私は二点について述べたいと思うのですけれども、一つは、やはり日本産業のインフラであるいろいろなもののコスト。
 先ほど物流のことを申し上げましたけれども、実に、電気とか水道とかガソリンとか工業用地地価だとか、みんな高いです。こういうものを下げないと、日本の企業は、日本でやる場合はそれだけげたを履いて高いコストを払ってやるのだから、とても競争力はない。それで外へ行くわけですね。だからこういうことをと。
 例えば、これは発想の転換が必要なんじゃないかと思いますが、道路公団の民営化で、そもそも道路というのをああいう形でつくるのか、普通の税金でつくって道路税は取らないというようなこともあり得ないのかと。それに財源が要るわけですけれども、それはほかの公共投資をその分減らしてやるとか、そういうのが構造改革なんですね。企業だと、不要不急のものを売って緊急のところにお金を回す、そういうことが必要なんだろうと思います。
 それから、もう一つは税制です。
 これは、さっきの、アメリカが反省してみると、経済を悪くするインセンティブがいっぱい経済の仕組みに組み込んであった。日本は税制もそうだと思うのです。証券税制などはやはりドイツに見習ったらいいですね。資本市場の関係、それから投資優遇税制だとか、住宅だとか。住宅税制も、猫の目のように変わって、わからなくなる。アメリカのようなああいう利子所得の控除というふうなことを恒久制度化としてやってみたらいい。
 人によっていろいろ意見は違いますけれども、私は、日本の住宅需要なんというのは随分潜在需要があると思います。一千四百兆の個人金融資産がどこに出てくるかと……(井上(喜)委員「住宅減税」と呼ぶ)そうです。住宅減税を、アメリカですと、五千万円のものを買うと七百万円ぐらい税金で戻ってくるのですよ。日本は大分よくなりましたが、それは時限立法ですから、またもとへ戻る。(発言する者あり)それは私はちょっとよくわからないのですけれども、住宅は、リフォームを含めて、随分需要があります。日本人の住宅というのは本当に貧し過ぎる。建設省の紙で住宅小国と書いてあったけれども、私は本当だと思います。
 ちょっと雑然としましたけれども。
井上(喜)委員 ありがとうございました。
津島委員長 次に、松本剛明君。
松本(剛)委員 きょうは、富田先生、小関先生、岩田先生、石田先生、本当にお忙しいところを御足労いただきまして、ありがとうございます。それぞれ二十分の時間でプレゼンテーションをいただきましたことにつきまして、私なりに気になった点を幾つか御質問させていただきたい、このように思っております。
 まず、小関公述人に、金融のシステムのことについてお伺いをさせていただきたいと思います。
 先ほど、不良債権の処理がおくれることは資産デフレの解消がおくれるということにもつながるのではないか、こういった御説明がありました。
 デフレと不良債権との関係という全体については、大変またいろいろな議論があるところであろうかというふうに思いますが、きょう夕方、また経済財政諮問会議の中でデフレの対応策が議論されるというふうに私どもも聞いておるわけであります。そういった中身の幾つかがきのうの予算委員会でも若干出ておりましたけれども、報道されている内容からいきますと、金融システムの安定ということで、今後、金融危機のおそれがあり、法令に照らして必要があると判断される場合には、資本増強を含むあらゆる措置を講じ、金融システムの安定を確保する。今ある現行の制度のもとで、いわゆる金融危機対応勘定で資本増強も、まあ公的資金注入ということになろうかと思いますが、検討の対象になった。
 これまで公的資金注入に頭からネガティブであったことを思うと、随分ニュアンスが変わったのではないかなという評価ができると思いますが、一方で、先生、先ほどのプレゼンテーションの中で、九九年の資本注入の評価といったようなものをおっしゃっておいででございました。九九年の注入が機能していなかったのではないかというふうに私たちも見ているわけであります。認識はほぼ近いものがあるのではなかろうかと思いますし、九九年の資本が既に毀損されているおそれがあるというような御説明もございました。
 効果的なものでなければ時間とお金のロスだ、こういうお話があったわけでありますが、改めて、公的資本注入が今議論されている中で、必要である、不可避であるというお話でしたので、どういう形で行うべきなのか。今回、こういった形で、現行の制度下で危機対応勘定で行う。これは、金額的にも先生がおっしゃったものとははるかに違う金額になろうかと思いますが、その辺について御所見を承りたいと思います。
小関公述人 お答え申し上げます。
 恐縮でありますけれども、お配りしましたメモをちょっと引っ張っていただきまして、九ページ、十ページを御参考いただけると大変ありがたいのでございますけれども。
 私も、一納税者としては税金の投入には決して賛成しているわけではございませんで、銀行みずからがその体力においてやるというのが基本的な原則であるということを考えております。
 ただし、現在の状況を見ておりますと、あたかもレントゲンでがんが写真に写っていても、症状が出なければ病気ではないと言っているような状況ではなかろうかと認識しております。したがって、言葉をかえますと、予防的な資本注入という概念は、既に自己矛盾といいますか、言葉として矛盾しているのではないだろうか。資本注入というのは、決して予防的にやるのではなくて、既にがん細胞がレントゲンに写っている、それに対する治療としてやむなく行うものだという認識でございます。
 九九年の資本注入、なぜこれがボタンのかけ違いと私が認識しているかと申しますと、すなわち、建前と実態、建前としては銀行は健全である、自己資本比率は十分にあるんだから銀行は健全だと言う一方で、資本不足への対応として資本注入を行う。これを、政策目的の混同とあわせて、説明としては、金融システム対策と貸し渋り対策というものが混同されてその根拠になってしまっているということなのではなかろうかと思います。
 その結果として、銀行は健全なんですから、収益によって公的資金は返済できるはずである、そういったシナリオが、先ほど御説明申し上げました経営健全化計画だということなんですけれども、その後三年たちまして、そういった収益弁済の計画が非現実的になりつつあるということがはっきりしていて、それを踏まえた上でのやむなき公的資金の投入であるということだろうと思います。
 したがいまして、資本注入について考えられる三つの形態、すなわち、九九年型の優先株による資本注入というのは極めて効率の悪いやり方ではなかろうかと私は思いますし、したがって効果は限定的であり一時的である、金融危機が周期的に繰り返される可能性が大きいのではないかと考えております。
 十ページにグラフがございまして、資本注入とその効果という非常に簡単なグラフで、日経平均株価とTOPIXの銀行株の推移を比較したものがございます。
 一九九九年三月に第二回の資本注入がございましてから株がどんどん上がって、その効果が二〇〇〇年の十一月ぐらいまで続いたわけでありますけれども、ちょうどこの枠でくくった部分がほぼ前回の資本注入に対応する効果が生きていた部分ととらえることができるのではないかと思います。もちろん、株価は銀行の金融システム問題だけで動いているわけではございませんで、いろいろな要因があるということは承知の上でございますけれども、例えて言うならば、ちょうど一万四千円から二万円まで上がりましたが、この一年半の平均でとってみますと大体一万七千円ぐらいまで、すなわち、株価を二〇%上昇させた効果が一・五年ぐらい続いたということではなかろうかと思います。
 仮に、現在、報道等で見られますように、十兆円規模の資本注入が九九年と同じ形で行われたとしても、私の予想としては、その効果は前回よりも小さくかつ短いものであるだろう。しかも、そのベースになるスターティングポイントが一万円のところから二〇%上がって、それがより短い期間続くとすれば、これは非常に効率の悪い方法であって、財政にも大きな悪影響を与える可能性があるということであります。
 それではどうしたらいいのかということでありますけれども、銀行が本来やるべき資産の査定を行って予防的な引き当てというものをやるとすれば、恐らく、大幅な引当金の積み増しによって実質的に減資をするといったような事態になってくる可能性があると思います。したがって、そういった状況下では、普通株によって資本注入を行って、もし国がそれを納税者の資金として回収するんだということであれば、返済によって回収を受けるのではなくて、将来よくなったら、ドラスチックな改革を経て、銀行セクターが立ち直った後で市場で売却してその資金を回収するという発想に転換する必要があるのではないかと考えておるところであります。
 それから、危機対応勘定での対応をどう思うかという御質問でありましたけれども、同じ資料の十五ページに、参考として、現在の枠組みを私どもなりにちょっとまとめた資料がございます。
 九八年の際には、ある程度、どういう銀行の処理をするのかと、それぞれ預金保険機構に異なる勘定を設けて、それぞれの目的に応じた予算配分を行っていたわけでありますけれども、現在は、使った枠、終わってしまった枠というのがあって、実質的にワークするポイントとなるのは危機対応勘定の十五兆円ということになっておるわけですけれども、先ほど来申しました実効性のある資本の投入といったことを考えれば、この危機対応勘定で全部どんぶり勘定でまとめてしまうのではなく、金融再生の青写真に基づいた予算配分の再議論が必要になってくるのではないかというのが私の意見でございます。
松本(剛)委員 小関公述人にもう一つお伺いをさせていただきたいと思います。
 今言われているデフレ対策、不良債権処理の中で、RCCによる積極的な不良債権買い取りということが挙げられております。有力な政治家の方が簿価買い取りというお話もおっしゃったようでありますが、これは資本注入のやり方と同じで、私たちも、また小関公述人のペーパーでもRCCの活用ということは触れておられるわけでありますが、やり方によっては効果が全く変わるというのは資本注入と同じことではなかろうかと思いますが、この点についての御意見を伺いたいと思います。
小関公述人 お答えいたします。
 RCC、整理回収機構が、不良債権の処理、その出口において大きな役割を果たすということは間違いないわけでありまして、バランスシート問題は、RCCの活用なくして問題解決はないと私は考えております。
 しかしながら、これはどこの国でもそうでありましたけれども、こういった整理回収機構的な機関が不良債権の処理を効率的に行うためには、まず、引き取る不良債権が買い取りの時点で、マーケット価格、時価という概念も非常にあいまいでありますけれども、マーケットで売れる価格になって調整されている。すなわち、銀行の引き当てされたものから、その後で、ちゃんと適正な価格になった状況で整理回収機構に不良債権が集められるということが大事なのではないか。
 私見を申し上げれば、簿価で買い取るということ、これは一見、公的資金をそこでうまく活用するという効果があるように感じられますけれども、私としては三つ大きな問題を指摘させていただきたいと思います。
 まず第一点として、銀行において、銀行が最初に損失の認識を行わずに不良債権を公的機関が買い取るということは、非常に大きなモラルハザードの温床になるということであります。すなわち、私企業の経営における自己規律というものが損なわれてしまう可能性があるのではないか。
 それから、RCCが回収、売却等の最終処理を進めることは、当然、二次ロスを認識するという可能性が非常に強いわけでありまして、この二次ロスを出すということは、恐らく政府もRCC自身も余り望まないことではないか。納税者としても、一般論から言えば、それを認識するということは非常につらいことだと思います。したがって、RCCが最終処理を行うインセンティブが大幅にそがれてしまう可能性があるのではないか。
 三点目ですけれども、その結果として、不良債権がRCCに長期にわたって滞留をしてしまって処理がなかなか進まない。しかも、これに、RCCみずからのマネジメントによって産業再生を図るという複雑な課題まで盛り込まれますと、恐らく、管理されないまま長期的に不良債権が塩漬けになってしまう危険が非常に大きいのではないか。モラルハザードとその経済的効果、この二点において問題が大きいのではないかと私は考えております。
 以上です。
松本(剛)委員 ありがとうございました。
 厳格な査定と、それに見合ったしっかりした引き当てが必要だという認識は、私も、また私たち民主党も一緒であります。私たちもそれに基づいて金融再生のファイナルプランというのを発表させていただいて、ぜひ金融の再生を進めていきたいということで、御意見をまた反映させていただいた形で政策に反映をできるようにさせていただきたいと思います。
 次に、石田先生にお伺いをさせていただきたいと思います。
 先ほども、インフレターゲット論を含めて、金融政策がさまざまな話題になっております。富田先生からも質問に答えてインフレターゲットについてお話がありましたし、岩田先生もインフレターゲットについてお話がありました。石田先生のお話の中でも、ポイントは競争力をというお話でありましたが、一方で、金融政策についての御意見もうかがえるようなお話であったかというふうに思います。
 改めて、このインフレターゲット論、金融緩和論というのが今回の経済の危機にどのように役に立つのか、また、そういう効果をどう見ておられるのかについて御意見を承りたいと思います。
石田公述人 お答えいたします。
 最初に申しましたが、私はもともと実務家でありまして、実務の現場感覚で納得できないことは間違っていると思っています。その意味で、このインフレ目標論ぐらい間違っているものはないと考えます。
 インフレ目標が効果があるには、それを人が信用して、その緩和措置もとんとんになったものでいいんですけれども、信用して企業が投資する、家計が消費する、その結果、需給がよくなって物価が上がるのでありまして、インフレ目標が出たので突然信用される方、もしこの中におられたら非常に珍しい方だと思います。
 去年のちょうど今ごろ民主党に呼ばれまして、慶応大学の深尾光洋先生と対決したことがあります。私がそのとき言いましたことは、私の知っている企業経営者で、インフレ目標論が出て、しめたしめたと思って投資する人は一人もいない、もしいたら、マーケットから即刻追放される、個人でそういう人もいないだろうと。皆さん、民主党の議員の方にですけれども、これは大変だ、車や家やテレビを急いで買おうと思われますかと質問した。特にお答えいただけませんでした。そんな人はいないんだろうと思っています。
 では、なぜ企業はそんなものを信用しないかというのは、こういうことなんです。
 企業は、今バランスシートを一生懸命圧縮しています。これは優良企業といえども、例えばAの格付の人はダブルA、ダブルAの人はトリプルAを取得しようと思っています。それには、バランスシートのスケールはできるだけ小さく、自己資本比率は高くと、死ぬ思いでこれをやっています。
 そういうときに、まず、岩田先生がおっしゃる、企業は何か売るものを持っているだろう、国債だとか社債だとか株とか。持っていないです。つまり企業には売るものがないんです。企業は、例外はあるかもしれませんけれども、日銀のオペ対象になるものはないんです。だから、企業には金は入らないんです。仮に入ったとしましょう。入ったとしてもそれは使わない。というのは、今、資産を持つことがリスクなんです。資産を持てば必ず若干のリスクが出るんですよ。だから、できるだけ資産を持たないようにしていようと。
 それから、資産を持つ場合にも、典型的には設備投資ですけれども、企業というのは目標利益率を持っています。今、これは具体ケースですけれども、名前を出すわけにいきませんが、私の知っているある企業では、それはリスク資産に対して八%です。つまり、ミニマム八%、かつそれは戦略的な投資でないといかぬと。バブルのときのように、何かもうかりそうであるからやるんじゃないのです。自分の企業の将来に戦略的に重要だというもので、リスク資産利益率が八%以上ないとやらないという目標を持っています。今、それが少ないのが問題なわけです。
 それで、緩和論の方がよく長期金利が下がるとおっしゃるのですけれども、今、長期金利が下がるといったって、長期国債が一・五%ぐらいですから、三%も五%も下がらないのですよ。〇・一とか二、下がるのです。これが八%に影響を与えるか、これは影響皆無なんです。
 だから、インフレターゲットも金融緩和論も、現状では企業の投資をふやすことにならないと私は考えています。
 それから、家計の方ですけれども、これも日銀が別に懐に日銀券を突っ込んでくれるわけじゃない。あれは一枚十七円がコストだからどんどん増発すればいいと言う人がいますけれども、その人たちは、贈与と貸借の区別がつかない人じゃないかと思います。
 私は、インフレターゲットがあっても、決して私の消費行動を変えません。つまり、インフレ目標、緩和があって、それが投資や消費に結びつかなければ、需給がよくなって物価が上がらないのです。マクロ経済学者の人はよく勘違いするのですけれども、ミクロで起きないことがマクロで起きると思う人がいるみたいです。だけれども、日本じゅうの企業がそれで投資しなかったら、マクロの投資という統計の数字はふえないのです。消費も一緒なんです。
 それからもう一つ、実務体験からいいますと、どうしてインフレ目標論がインフレには効果があるがデフレに効果がないかというのは、こういうことなんです。
 私のいた伊藤忠なら伊藤忠にしましょう。投資機会がある、もうかる機会があるから銀行に金を借りに行く。そうすると、第一勧銀が金を貸してくれる。第一勧銀はそれの手当てを短期金融市場に取りに行くわけです。そのときは景気過熱で、日銀が景気を抑えようとしておれば、日銀が市場に供給しないのですよ。そうすると、伊藤忠さん、これはだめだ、金を取れないからあきらめてくれというので、その投資はできなくなる。だから、インフレを抑えることができるのです。だけれども、今みたいなとき、そもそも銀行に借りに行かない。借りに行かないものをどうして日銀が需要を起こし出すことができるか。だから、デフレにはきかないのです。
 私は実務体験と言いましたが、内生的貨幣供給論というのがあります。これは、信用乗数論が、日銀からスタートして、日銀が日銀当座をふやせば銀行に行き、企業に行きと。これと全く逆で、企業の資金需要のあるなしからスタートしまして、それに日銀がアコモデートする。日銀がそれを景気過熱のときには抑え込み、景気が悪いときはどんどん金を出すということで対応するという内生的貨幣供給論というのがありまして、私は、実務体験からこれを信用しています。ですから、それに基づいてお話しいたしました。
 以上のようなことで、インフレ目標論、それから、今、日銀にこれ以上の措置を求めても一切役に立たない。役に立たないどころか、何か役に立つような幻想を持つ人が中にはいまして、構造改革に集中すべきこの時期に、構造改革に集中する力がちょっとでもそがれるという非常に大きなマイナスがあると思っています。
 もう一つ、日銀は、できないことはできないとはっきり言ってほしいと思っています。できないんだけれども、何か態度があいまいなところがありますから、それははっきりしてほしいと思っています。
松本(剛)委員 実務体験ということでありますし、私たち多くの議員も、それぞれ多くの企業であったりまた個人と接する機会が多いわけで、それぞれの経済主体がどう動くかということがこれからの経済の大きなポイントだということは、私も認識が一緒でございます。
 せっかくの実務の御経験ということでもう一点。伊藤忠という商社にいらっしゃった経験も踏まえて、最後の方に、ペーパーにも書いておられましたが、現在の日本の為替の状況、そしてこれからの為替の政策のあり方について、御所見がありましたら承らせていただきたいと思います。
石田公述人 お答えいたします。
 為替というのは、私の伊藤忠の生活を通じて私を悩ませ続けてきたものであります。リスクをとって、眠れない思いをしてきたのですね。
 それで、今の問題は、ドルの問題と人民元の問題があると考えています。
 ちょっとさかのぼりますが、どうして日本がこんなに為替に困るようになったのかというのは、これは大きな貿易黒字をつくり過ぎた。日本がひとり勝ちで世界じゅうが平和なはずがない。それを、アメリカ主導で日本の貿易黒字を削減させようという試みがプラザ合意だったわけですね。プラザ合意でむちゃくちゃな円高をやった。八五年に二百四十円だったものが、八七年のルーブル合意のときはもう既に百五十円になった、九五年四月に八十円も割れたというむちゃくちゃなことがあったんです。
 これは、企業の身になってちょっと御想像していただきたいんですけれども、一億ドル輸出していた企業がある、二百四十億入っていたものが、二年たったら百五十億になった、さらに、九五年になったら八十億になった。これは、企業はやっていけないんですよ。つぶれるほかないんです。だから、海外に生産をシフトしたわけです。
 それともう一つ。それをやってもやっても黒字がなかなか減らなかった。それで、アメリカがわんわんわんわん言って圧力かけてくる。そこで、財政支出で人為的に有効需要をつくった。そうしたら、それを長年続けたものだから、今は財政支出をちょっと減らすだけで不況に落ち込むという経済構造をつくってしまった。私、日本の苦境の原因というのは、もとをただせば、世界が受け入れられない貿易黒字をつくったこと、それの削減を、一つは為替レート、一つは日本の財政支出でやろうとしたということであったと思っています。
 それで、現在の円安は、若干操業率をプラスします。既存設備の操業率をプラスする、若干景気にプラスの影響はある。しかし、百三十円になったから、しめしめといって、中国の工場を閉鎖して日本に移す人はない、中国に行こうと思っていた人が日本に投資することもない。これはなぜか。あの八十円を覚えておるんです。皆さんが企業経営者とお話しになればすぐわかります、とても心配だと。あれを覚えている限りだめなんですよ。
 そうしたら、次善の策はアメリカと日本がある協定を結ぶ。これは、経済学者の人は、そんなものできないと言う人がほとんどなんですけれども、私はできると思っています。できると言っている人もたくさんいる。スタンフォード大学のマッキノンさんとか、日本だと大野健一さんなんかもそうなんですけれども、これはできるんです。する気がないだけのことなんです。今アメリカが、日本が復活してくれないと困ると、とても心配しているんですね。今こそこれを申し入れるベストのチャンスがやっと訪れたというのが私の認識なわけです。
 それで、もしドルと円のレートが安定いたしましたら、人民元はドルにペッグしておるんです。アジアの国はまだたくさんドルにペッグしています。だから、アメリカとアジア全体という非常に大きなところに通貨の安定圏ができるということで、これはアジアと世界のために非常にいいことだろうと思っています。そういう仕組みができれば、中国というのは誇り高い国ですから、日本が人民元切り上げろと言ったって、これは反発を受けるだけで、不毛な議論で何にもならないと思いますが、そういう仕組みの中で中国をうまくアジアの安定のために取り入れていくということは、当然考えられるというふうに考えております。
 それで、一つ肝心な点を申し上げたいんですけれども、通貨政策というのは高度に政治的なものなんですね。IMF体制はなぜできたか、これはルーズベルトとチャーチルのリーダーシップ。欧州通貨制度、ユーロはなぜできたか、これはヘルムート・シュミットとジスカールデスタンがひざを合わせて協議したり、自分たちで国内の反対を抑えて、首脳外交をやってつくった。日本はそういう伝統がないんです。日本は、通貨は、今だと財務省、はい、財務省だということになっておる。唯一の例外が、多分、あの榊原さんのAMF構想、それから、九九年の一月に小渕総理をヨーロッパに連れていって、ドイツとイタリーとフランスの首脳に会わせて、ユーロと円の安定構想をやろうとしました。あんなのは例外で、ほかにないんです。
 私は、今アメリカとそういう交渉をする非常にいい機会が訪れているというのであれば、これは政治が出る世界だと。小泉さんがリーダーシップを発揮して、小泉さんは指揮すればいいわけで、自分で実務する必要ないんですから、指揮して財務省の国際局に構想をつくらせればいい、それを持ってアメリカと交渉する。これは、日本の投資の場としての国際競争力を回復する非常に重要な一つの条件であると考えております。
 以上です。
松本(剛)委員 時間が参りましたので、残念ですが終わらせていただきます。
 石田先生のおっしゃったように、私もここで財務大臣に為替は政治の意思が必要ではないかということを申し上げた記憶がございます。私見でありますけれども、これは、WTOの中に、環境であるとか労働であるとか、こういったものまで盛り込んでいる中からすると、国際的に適正な為替というのをどういうふうにするのか、こういった国際的な場の中で日本のきちっとした経済に直結する為替の問題も議論することを考える余地があるんではないかな、こんなことを考えております。
 富田先生それから岩田先生にも御発言の機会をお願いしたいと思っておりましたが、時間がなくなりましたので、まことに残念でありますが、御発言の機会を御提供できなかったことをおわび申し上げたい、このように思っております。
 とりわけ、インフレターゲットについては議論が伯仲をいたしました。一つだけ、インフレターゲットは、石田先生言われたように信頼が大事だと思いますが、先ほど二つの例を挙げたのは、いずれも政権交代があって信頼を得てインフレターゲットが実現をしたんではないか。そのことは、私の感想を申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
津島委員長 次に、中井洽君。
中井委員 自由党の中井洽です。
 四人の公述人の皆さん、大変ありがとうございます。十分間という時間しか与えられておりませんので、四人のお方に聞くわけにまいりません。最初に富田公述人、岩田公述人にお尋ねをし、時間があれば小関公述人にお尋ねをしたいと思いますので、石田さん、お許しをいただきたいと思います。
 今、議論をいたしておりまして一番頭の痛いのは、政府・与党内の経済政策というのが非常にぶれがあって、なかなかどういう方向へ行くのか私ども判断がつかない。ここら辺に困惑もございます。そういう意味では、予算の公述人の方が、与党御推薦でありながら、富田公述人と岩田公述人で全く違う方向でお話しなすったというのもこれらをあらわしているか、このように聞かせていただきました。
 そこで、お二人の公述人に、昨日政府が取りまとめ、きょうにもまた経済財政会議等で決めていこうといたしますいわゆるデフレ対策、これについてどのようにお考えであるのか、お尋ねをいたします。
 特に、富田公述人におかれては、景気対策と決別してでも財政再建、そして税制改革あるいは不良債権処理を急ぐべきだ、こういうことをはっきりと述べられました。デフレ対策イコール景気対策だ、私はこう思うんですね。ここら辺をどう御判断なさるか、お尋ねをいたします。
富田公述人 だれだって、物価が上がっている方がいいというふうに思いがちであります。しかしながら、例えば、インフレーションターゲティングが設定されて、それで人々がインフレになると本当に信じた瞬間に、これは長期金利が上昇してまいります。そうすると、実質金利と申しまして、企業の経済活動にまた経済全体に大きな影響を与える実質金利は、その場合ですと今と変わらないわけでして、それによって経済活動を変えることはできない。したがって、インフレ期待がどのように市場にあらわれるか、そういう不確実なものに依存して政策を行うということになるわけです。
 それで、財政規律がきちんとこれから先守られて、現在の高齢者だけじゃなしに、これからの若い人のセーフティーネットも維持できるようなものになるように財政赤字の抑制が図られるという前提の中で国債の買いオペがふえる、あるいは日銀券の発行残高の範囲内で国債の買いオペを行う、そういう枠なり規律というものがありませんと、不幸なことになってしまいかねない。
 戦前、高橋是清大蔵大臣が国債の日銀引き受けをやってうまくいったかのようなお話がありますけれども、それに先立って、昭和七年七月には資本逃避防止法という形で、外国にお金が流れないようにしてブロック経済、まさにブロック経済の時代でありまして、それで、国内で金融緩和をしたので物価が上がったということであります。
 私は、高橋是清大蔵大臣の金融緩和政策で景気がよくなったという面以上に、それに先立って企業が必死に事業の再構築を行っていて、かなりの部分あく抜けしていて、その結果として昭和八年以降景気がよくなっていったという面を無視できないと思います。そういう意味において、企業が自己責任でリスクとリターンを計算していくということが極めて重要だと存じます。
中井委員 岩田公述人にお尋ねをいたします。
 デフレ下で財政再建は無理だ、このようにおっしゃいました。そういう意味で、今回発表されましたデフレ対策についてどのように御判断をなさっておられるのか。同時に、インフレターゲットを初め日銀の活用ということを言われましたが、私どもはやはり、財政再建というものも頭には入っておりますけれども、三十兆円枠というのもこの際少し考えて、思い切った景気対策をやらなければ、日銀の政策だけではデフレというのをとめられない、このようにも考えておりますが、岩田公述人はいかがお考えでしょうか。
岩田公述人 政府のデフレ対策でありますが、やはり私は、先ほど言ったインフレターゲットの量的緩和といいますか、そういう政策が基本の柱になっていなければいけない。それが政府のデフレ対策、政府ですので、日銀の管轄ということもあって遠慮していると思いますが、それが基本に据えてなくて、日銀に働きかけるというところが十分見えないところが心配であります。それなくして、むしろ不良債権の処理等を早めるとかそういったことが割合前面に出てきてしまって、これは、去年のまだデフレ問題が余り言われなかったときの緊急経済対策から抜け出ていないのではないかと思います。
 例えば、不良債権の処理がどうしてデフレ対策になるのかと思うのです。まだ何となく、不良債権を処理すると銀行が成長産業を見つけ出して急に貸し出すのではないか、こういうふうに思っていらっしゃるのだと思うのですが、デフレの中で不良債権を処理した銀行が、なぜ急にきょうから、成長産業がここにあったよと気づいて貸し出すのでしょうか。なぜ急によりよい投資先が見つかるのでしょうか。もしもよい投資先や成長産業があるなら、幾ら不良債権があっても既に銀行は貸しているはずです。なぜならば、不良債権があっても、有利な借り手には貸した方が利益が上がりますから、その利益から初めて不良債権は償却できるはずであります。不良債権を処理しないと成長産業に資金が回らないというようなことはあり得ないということです。むしろ、現在、不良債権の処理を早く進めれば進めるほど、企業倒産が起こり、デフレが起こって、なお一層の不良債権になる。それを、引き当てを積みなさいといっても、引き当てする資金がないわけでありますから、それは無理な話だと思います。
 問題は、結局、インフレターゲットつきで量的緩和をやれば、みんながインフレになると信じてやるかどうかという点でありますが、これは、最終的に言えば、やってみなければわからないという答えしかないわけであります。なぜならば、こういう政策をやること自体が実験でありまして、部分的にこの辺で実験しようということはできないわけなんです。これが経済政策の宿命であります。
 そういう場合には、過去の事例はどうだったんだろう、そういうことが一つの参考になるのでありまして、過去にそういう政策をしてデフレ脱却があったわけです。逆にそういう政策をとらなかったフランスの場合、いつまでもデフレ脱却できなかった。そういうことが一つのメルクマールになる。
 そういっても、今度は、そういう議論をすると、当時と今では違うじゃないか、こういう話になる。それは当然ですね、当時は私も生まれていませんから、それは当然違うと思う。あらゆるところで、違うことは幾らでも探せるわけでありまして、そういうあら探しといいますか、とにかく否定するためには、実は議論は幾らでもできるんですね。当時とは違うんだ、昭和恐慌を脱出したときと違うんだとか、大不況をアメリカが脱出したときとは違うんだと幾らでも言えるわけでありまして、つまり、反対論は、言おうと思えば幾らでも言えるということを気をつけなきゃいけないと思います。
 したがって、最後は、ではどこが問題かといいますと、きく、きかないの議論をいつまでやっていてもらちが明かないということであります。一生懸命こうやって、過去の例とかいろいろな例を調べたり、いろいろ言ったって聞かないわけですね。きかないと言う人はもう聞かないんですよ、それこそ。ですから、これは説得はだめなんですね。
 ということになると、きかないと言う人は、つまり、インフレターゲットの徹底的な量的緩和をどんなにやっても、いつまでたってもインフレが起こらないで、貨幣が来るとみんなただ貨幣を持っているだけだ、こういうふうに言っているわけですね。そうである人には、それだったらそれでいいじゃないかと私は開き直りたいと思います。要するに、この政策はきくという可能性があると言っているので、それを信じないで、貨幣を持ったらずっと貨幣を持ったきりだ、これはデフレ経済の特色ですが。そうであれば、この政策、インフレターゲットつきの量的緩和をやると日本経済が奈落の底に落ちるんだということを言ってほしいと思うのです。つまり、この政策は、きかないんじゃなくて、悪くなるんだと言ってくれれば私も納得するんですが、悪くなるという論拠が示されたことがないんですね。
 今、富田さんが悪くなる一つの論拠として言ったのは、インフレターゲットのインフレ期待が起こったときに、長期金利はインフレ期待を反映してすぐ上がってしまって実質金利は変わらないじゃないかという議論でありますが、これは基本的に、デフレギャップがある世界では、長期金利や名目金利はインフレ期待だけでは上がりません。理論的にも上がらないし、歴史的にも上がっていません。
 例えば、昭和恐慌でこういう政策で徹底的に日銀が国債を買っていくわけでありますが、そういう中で一〇%のデフレから三%のインフレにたちまち変わるわけです。つまり、一〇%下落から三%ですから、足し算して一三%インフレ率が上がった。したがって、人々もそれだけぐらいの期待をしたとする。しかし、名目金利は下がっています。上がらないんですね。
 どうしてそういうことが生じるのかというのは、理論的に考えるとわかるのですが、まず、もしも一三%のインフレになって一三%だけ名目金利が上がったとすると、実質金利は富田さんのおっしゃるように下がりませんね。下がらないと、設備投資は依然として有利になりませんから、設備投資は起こりません。耐久消費財を買うことも有利ではありませんから、需要がふえないんですね。需要がいつまでたってもふえないということを富田さんはおっしゃっているんです。実質金利が変わらないということは総需要がふえないということを言っていらっしゃるんです。
 総需要がいつまでたってもふえない、そうすると、足元ではいつまでたっても物価が上がりませんね。いつまでも物価が上がらないで、なぜインフレ期待が生まれてきたんでしょう。インフレ期待自体が生まれないんですね。自己矛盾に陥っているわけです。最初は、インフレ期待が起こるから名目金利が上がると言ったけれども、足元ではいつまでも物価が上がりませんから、インフレ期待が間違いだという修正が起こるはずですね。
 したがって、なぜインフレ期待が起こって物価が上がってくるかというのは、インフレ期待が上がったほど名目金利が上がらないで実質金利が下がるから、在庫投資から始まるでしょう、設備投資や耐久消費財の支出がふえてくるというメカニズムがあるから需要がふえてくる。したがって、デフレがとまってじりじりと物価が上がり始めるんです。
 そして、このときになぜ実質金利は上がらないのだろうかというと、そうやって総需要がふえてきますと所得がふえてまいります。所得がふえると人々はその一部を貯蓄しますね。その貯蓄資金が設備投資や在庫投資をファイナンスする資金になるんです。だから実質金利は上がらないで済むんです。
 つまり、名目金利はインフレ期待ほどしばらくは上がらないんです。しかし、デフレギャップがなくなってしまうと名目金利は上がり出すんです。ですから、デフレギャップがなくなる過程ではそういうことは起こらないということです。そういう意味で、今おっしゃったのはきかないという例ですね、あるいは悪くなるという例に対する一つの反論です。
中井委員 ありがとうございました。終わります。
津島委員長 次に、矢島恒夫君。
矢島委員 四名の公述人の皆さん、本当に貴重な御意見、いろいろとありがとうございました。日本共産党の矢島恒夫でございます。
 私は、デフレについてのいわゆるインフレ目標の問題だとか、あるいは公的資金の再投入の問題だとか、いろいろとお聞きしたいと思いましたが、ほとんど今までの同僚議員の方から質問がありまして、それぞれ公述人の皆さん方の御意見を拝聴いたしました。
 そこで、少し観点を変えまして、公述人の皆さん方のきょうの意見陳述とは直接的なかかわりはないのですが、御感想などを承れればということで、まず小関公述人にお尋ねしたいのです。
 提案されております来年度の予算です。小泉首相は、国債発行についてはいわゆる三十兆円枠を守った、あるいは公共投資については一兆円削減した、こういうようなことで自画自賛している予算であろうかと思うんですが、しかし、その内容を見てみますと、一つには四兆円という隠れ借金の問題もありますし、それから、既に今年度の第二次補正予算で二兆五千億円という公共投資積み増しをやっているというようなことをあわせますと、数字上のごまかしという予算だ。
 こうじゃなくて、私たちは、今の景気の状況や国民の願いというものから考えると、まずもっともっとむだや浪費を省くべきだ、とりわけ公共投資についてはきちんと見直せということ。そして一方、社会保障に対しては非常に国民は不安を持っておりますから、そういう面では充実させる方向での予算の組み替えを要求するという方向で今取り組んでいるわけですけれども、予算組み替えという問題について、何か御意見ございましたら、お聞かせいただければと思います。
小関公述人 お答えいたします。
 予算の全般について教書を全部把握しているわけじゃないので、若干御質問の趣旨にありました感想といったような形になるかと思いますけれども、私見を述べさせていただければ、先ほど来各委員から御説明があった中で、私としても、三十兆、財政規律を厳しくやっていく、厳しい運用をしていくということは、非常に現在の国の全体からして大切なテーマであると考えております。
 しかしながら、中身において非常にわかりにくいといいますか、予算の投入と成果の検証がわかりにくいシステムになっていて、例えば、本年度の予算を論ずる際に、過去一年ないし三年の予算の評価もあってしかるべきじゃないかといったようなことを考えておりますけれども、予算を守るという考え方と、それから景気対策、これは気持ちとしてはやはり何らかの追加的なものを求めたいという気持ちがあるわけでありますけれども、ただ、規律という方を私としては気持ちとして前面に押し出さなきゃいけないのは、やはりそれが非効率な使い方をされてきた経緯があり、予算の枠をふやすことがすなわち財政悪化の方の結果に結びつきやすいということを危惧しているからだと。
 これでお答えになっているかどうかわかりませんけれども。
矢島委員 ありがとうございました。
 今度、石田公述人にお聞きしたいんですが、実務体験を中心、基盤にした御意見をいろいろと承り、大変貴重な御意見として拝聴いたしました。
 そこで、先ほども小関公述人にお聞きしたのと同じようなことなんですけれども、先生方の御意見とは直接かかわりはありませんが、景気が依然として低迷を来している、その基本的な部分、主要な部分として、個人消費が依然として冷え込んでいる。なぜ個人消費が伸びないのか、その辺についていろいろな御意見はありますけれども、一つには、社会保障に対する不安だとかあるいは将来不安だとか、そういうものが国民の消費を低迷させてしまっているという部分も相当あるんじゃないかと思います。
 そういう意味で、今回、これからこの委員会でも論議をやっていくことになるんですが、社会保障の充実の問題、とりわけ医療制度についての改革という名において、サラリーマン、今度は三〇%の負担だ、自己負担が二割から三割に引き上げられる、あるいは高齢者医療についても、お年寄りに対する負担増が計画されるというようなこと、やはりこれは、将来不安といいますか、国民の消費を一層冷え込ませてしまうんじゃないか。そういうような改革という名における痛みの押しつけはやめるべきだと私たちは言っておるんですけれども、これらの問題についての御感想をお聞かせいただければと思います。
石田公述人 お答えします。
 先生と私、ちょっと感触が違うかと思うんですけれども、個人消費が低迷している中には二つほど非常に大きな原因があって、一つは、私が先ほど申し上げました、日本で経済活動が不利な制度になっていて、その結果どんどん海外に経済活動が移っていく、そういう状況で、個人がリストラされたし、雇用不安を抱えている人が今いっぱいいます。そういう人が、実際に収入が減り、あるいは収入が減るおそれがあって、消費が控えぎみになる、そのもとのところが、言ってみれば、産業空洞化というかそういうところにあるというのが一つ。
 それから、先生がおっしゃったようなことですね、年金とか医療とか高齢者ケアの将来、あるいはそれの個人の負担が上がりそうだということと両方あると思うんですけれども、ここの点で私ちょっとニュアンスが違うんですが、もしそういうことで、例えば今のサラリーマン三割で、ほかの根本的な医療改革が達成されまして、将来の心配が少なくなる、医療もそうだし、財政の心配も少なくなるというのだったら、これはやはりプラスになる。だから、消費にとりわけ悪いということにはならないんじゃないかと思います。
 私が教えています大学は、レベルは中ぐらいですけれども、彼らが何を心配しているといって、今の政府債務の累増ですね、あっという間に六百六十兆になって、これはあっという間に恐らく千兆になってしまう、一体どうなるんだ、それが彼らの、余りできのよくない子たちですけれども、心配の根本です。ですから、そういう枠組みでこれを見ますと、やはり改革はきちんとして、こういう制度が安心できるものができるということは非常に重要なことなんじゃないかと思います。
矢島委員 時間が非常になくなりました。岩田公述人、ペイオフ解禁の問題で、本当に短い時間なんですが、先生が書かれていた文章をちょっと読んだ記憶がありますので、残された時間は一分程度しかありませんが、申しわけございません、どういうお考えか、ペイオフの解禁について。
岩田公述人 ペイオフの延期ということに関してなのかとも思いますが、基本的に私は延期はすべきじゃないと思います。
 結局、ペイオフを受けて、もしも金融のシステミック不安が出てきて、システムが崩壊するような危機には危機対応勘定で対応するというのが筋で、そうでないと、銀行はいつまでたっても公的資金に頼るような状況から抜け出せなくなってきて、やはりペイオフというのは市場の監視機能を強めるというところで有益だ。
 ただ、それだけをやっていくとやはり大変なことになるので、先ほどから、デフレを脱却するための金融の政策を同時に徹底的にやらなければいけない、そういう立場です。
矢島委員 終わります。
津島委員長 次に、辻元清美君。
辻元委員 社民党の辻元清美です。
 本日は、予算委員会にお越しいただきまして、貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。まず最初にお礼を申し上げたいと思います。
 時間が十分ですので、数名の方にお聞きすることになるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、小関公述人にお伺いしたいんですが、二点あるんですけれども、原点に戻って問題を議論する必要があると強調されました。
 その中で特に、九八年以降、問題解決が進まなかったと。この原因、幾つか触れていただいたんですけれども、特にこの委員会でも、この間、責任問題というのが出ていまして、どこに一体責任があるんだろうというような激論が闘わされています。この原因と責任、どこにおありとお考えかが一点目なんです。特にその中で、不良債権処理に伴いまして経営責任の問題なども出てきていますが、日本における経営責任のあり方についての御意見。
 そしてもう一点は、具体的なことについてお聞きしたいんですけれども、ダイエーの処理について小関公述人はどのようにお考えか。ちょうど約一カ月ほど前に、私は代表質問で、このダイエーの処理について中途半端ではないかという自分の意見を申し述べたんですけれども、この件についてどのようにお考えか、お聞かせください。よろしくお願いします。
小関公述人 お答えいたします。
 まず、原点に戻ってということで、九八年以降の原因あるいは責任問題をどう考えるかということでございます。
 私としては、個々の責任問題を直接論ずる立場にはいないと考えておりますけれども、そうした責任の所在のあいまいさの最大の根源にあるのは、冒頭プレゼンテーションの中で申しましたように、例えば、景気が悪化したから不良債権がふえちゃったんだ、環境に責任転嫁をした議論が、これは銀行経営においても、あるいは、ちょっとあれですけれども、金融当局の認識にもないことはないのではないかと考えております。
 もちろん、景気が悪化したデフレ的な環境の中で自然に不良債権がふえるわけでありまして、決してそれ自体が間違っているわけではないんですけれども、例えば、九九年の資本注入に際して、銀行が提出し、かつ金融当局が承認したところの計画によれば、二年目以降、処理費用は大幅に減少するはずだった。ところが、ふたをあけて三年たってみたら、毎年毎年、業務純益より大きな償却が出てきて、株が高いうちは何とかそれで補ってきたという構成なんですね。
 確かに、景気は、一・五%ないし二%の経済成長からゼロないしマイナス一に落ちてきたという環境はあるわけですけれども、不良債権の処理費用が当初見積もっていたものの例えば五倍、十倍とふえるということは、景気悪化にその責任のすべてを帰することは余りにも不自然ではなかろうかと考えております。そういったところの環境要因がどれだけあって、あるいは、マネジメントといいますか、問題を管理する、その仕方の問題がどのくらいあったのかということを厳密に検証する必要があるのではないかと考えております。
 それから、経営責任に関してでありますけれども、これは非常にデリケートな問題ですのであれですが、私として現在一番感じているのは、決算の数字の信憑性というものに少なくとも市場では大きな疑問を持っている。その決算を承認している金融当局と監督される銀行業界、銀行経営者との間に、いわゆる健全なスーパーバイズ、監督する者とされる者の健全な緊張関係がこの三年間培われてきた、保たれてきたかどうかということに、私としては若干の疑問を持っているところであります。
 それから、ダイエー問題でございますけれども、個別の問題ですので、私としてここでお答えするのはちょっと差し控えさせていただきたいと思うんですけれども、一般的にマーケットで言われている意見といいますか、余り根本的な解決になっていないのではないかという論調が非常に多いかと思いますけれども、私としてはそれに賛同しているということであります。
辻元委員 ありがとうございました。
 それでは、次に富田公述人にお伺いしたいんですけれども、財政再建の必要性をお聞かせいただいたわけなんです。そういうお立場で、小泉政権になってからの予算手法といいますか、本委員会でも、予算の組み方そして予算のあり方について、これも議論の焦点の一つが三十兆円の枠ということ。
 結局、三十兆の国債発行枠といいつつも、隠れ借金のことがここでは大分議論になりましたが、今回も一・五兆円程度の隠れ借金で賄っている。そして、第二次補正予算というのがこの間審議されまして、そこでも約二・五兆ということになっておりまして、結局、一次補正、二次補正いうてずるずる補正を出していくし、かつ、国債の発行枠の枠をはめても、隠れ借金に手をつけるというのは財政規律を損なうということで、一見、財政再建というように銘打っているわけですが、実態は何ら変わってないじゃないかというような意見が多々出されています。
 そこで、富田公述人に、今回の予算案、それからこの間の流れ、どのようにお考えか、お聞かせください。
富田公述人 三十兆円という国債発行枠を決めて、そこから歳出のシーリングを決めるという手法が新年度予算でとられたわけですが、こうした歳出のシーリングなりキャップという方法は、他の主要国においても予算編成において採用されている方法であって、これは歳出を効率化するための一つの、一つのというか、ほかには余りないんですけれども、方法だと思います。
 その結果、今、辻元さんがおっしゃったのは、隠れ借金があるというふうなことで財政規律を損なったんじゃないかというお話だったと思うんですけれども、私は、隠れ借金とはいえ、結局それは、明らかになっている、例えば地方交付税特別会計の借金というものであると思います。
 やはり財政は、景気調整機能、積極的な景気対策ということは行う必要は私はないと思うわけですけれども、景気に応じて、ビルトインスタビライザーと申しまして、自動安定化効果というのを持っているわけでして、税収が当初見ていたよりも落ちたら、やはり三十兆ということも守ることはできなくなる、そういうことが起こるということで、透明性がその三十兆枠によって欠如してしまったんじゃないかというふうには私は考えておりません。
 むしろ問題は、地方交付税の借入金というものについて、さらには、その背景にある地方交付税制度そのものについて、そのあり方をやはり検討すべきであろう。財政の自動調整機能の結果、偶然出てきた、隠れ借金とおっしゃったんですけれども、明確に予算書にも出ており、国民も広く知るところなわけですが、その背景にある問題である地方交付税の決まり方とか、そういうことについて国民が広く議論する機会が逆にできたのではないかと思います。
辻元委員 ありがとうございました。
 ちょうど時間が来てしまったんですけれども、きょうは本当に長い間、私が最後の質問者ですが、御意見をいただきまして、ありがとうございました。これで終わります。
津島委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人の皆様におかれましては、貴重な御意見をまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時五十九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
津島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 平成十四年度総予算についての公聴会を続行いたします。
 この際、公述人の皆様に一言ごあいさつを申し上げます。
 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。平成十四年度総予算に対する御意見を拝聴いたしまして、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようによろしくお願い申し上げます。
 御意見を承る順序といたしましては、まず菊池公述人、次に小野公述人、次に小池公述人、次に二宮公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、菊池公述人にお願いいたします。
菊池公述人 御紹介いただきました菊池でございます。
 きょうは予算委員会にお招きいただきまして、私の所見を述べさせていただく機会を与えていただきましたことを大変光栄に思います。
 私は大学の教員でございますので、政治的には中立の立場で、客観的データ、それから、それに基づきます私の所見を申し述べたいと思います。
 お手元に資料をお配り申し上げました。ちょっと資料が多うございますけれども、一番上に公述要旨というのがございます。それをあけていただきますと、黄色の線が引いてあるペーパーでございますが、アメリカの大恐慌時代、フーバー大統領時代のむしろデフレを加速した時代、それからルーズベルトになってそれが解消に向かう時代、どういう政策であったかという政策的な教訓をここでお話ししたいと思います。
 その次のページに参りまして、カラーコピーの図表がございますが、日本の債務問題、国債の問題でございます。これにつきまして私がここで申し上げたいことは、日本の国債については大変誤解が多い、もう一度しっかりと実態を把握した上で、何が問題なのかを考えるべきじゃないかということをここで述べさせていただきたいと思います。
 それから、最後には、現在の金融不安を解消するにはどうしたらいいんだろうかと、つい最近私が書きました、拙稿でございますが、これをつけさせていただきました。この中で、金融安定化政策をきちっと確立すべきではないかと考えておりますので、そのことを申し述べさせていただきます。
 まず最初に、平成十四年度予算についてでございます。
 私は、平成十四年度予算につきましては、基本的に賛成でございます。現下の経済情勢から見て、できるだけ早く成立をさせていただきたいと思います。しかしながら、日本経済の状況は一段と厳しさを増しております。諸般の客観情勢を十分考慮して、早急に抜本的な対策をとっていただくということが不可欠ではないかと思います。
 まず、十四年度予算の性格でございますが、これは典型的なデフレ型予算と言っていいのではないかと思います。御案内のとおり、一般会計で一・七%減の八十一・二兆円ということでございまして、これは前年度予算に比べて一・四兆円のマイナス、四十七年ぶりの二年連続緊縮予算でございます。特に、税収が七・七%減、四十六・八兆と、前年度に比べて三・九兆円減るという予算でございますが、現下の情勢を考えますと、これ以上に税収が減るのではないか、その点、私は危惧いたしております。ですから、緊縮財政をとりながら、結果的には赤字が拡大するということにならないんだろうか。この辺のところを十分考えながら新年度の経済運営をしていくのが必要じゃないかと思います。
 小泉総理の提唱されます構造改革は必要なことでございまして、今後も中長期的な課題として推進していくべきものと考えております。しかしながら、構造改革の二本の柱、一つは財政再建を優先した緊縮財政、もう一つは金融機関の不良債権の処理ということかと思います。もちろん、その他公益法人問題とか幾つか多くのテーマがございますけれども、これは中長期的に一歩一歩対処していかなければいけない性格のものでございます。
 特に、現在のようにデフレが進んでいる現状では、デフレ政策をとっていくことが果たしていいものかどうか。歴史的に見まして、デフレ経済のもとで、デフレを強化した経済政策をとって財政再建に成功した例はございません。むしろ、すべて失敗しております。
 昨年十二月に、自由民主党の内部でデフレ対策委員会が設置されまして、広範囲にデフレ対策を検討され始めましたことは大変タイムリーなこととして高く評価できるものと思います。次いで、二月八日のG7の会合、十八日の米国ブッシュ大統領との会合、そういう政府筋での会合もございまして、本日、デフレ対策というのが新聞に出ておりますが、そういう意味では、デフレ解消、むしろデフレ問題を真剣に考えなければいけないというところに現在到達したのかな。そういう意味では、デフレ対策、デフレを何とか解決しようという第一歩だというふうに評価できるかと思います。
 本格的なデフレ対策を実行していくというふうにいたしますと、政府の経済政策の大前提を変えることになるのではないか。これを契機といたしまして、抜本的に経済政策を見直し、需要喚起対策を具体化していただくということが必要ではないかと思います。
 私は、デフレ対策といたしましては、財政政策を積極的に取り上げて、財政政策と金融政策を両輪といたしまして、さらに、金融不安を解消するためには、金融安定化政策、これは中長期的視点に立った金融秩序維持政策でございますが、後ほど細かく私の意見を申し上げたいと思いますけれども、これをしっかりと立案して、それによって、現在加速しておりますデフレ的な要因、こういうものを根絶していくような対応が必要ではないかと思います。
 政府の政策は、失礼な言葉かもしれませんが、やや財政呪縛に陥って、財政政策をアンタッチャブルのような、余り触れないで、金融ばかりにデフレの解消策を求めていこうというような感じが見受けられます。私はいつも思うことでございますが、日本の財政というもの、特に国債問題についても大変誤解が多くございます。これはこの後申し上げます。
 総債務から金融資産を控除いたしましたいわゆる純債務という概念で見れば、日本はまだまだ財政支出の余力がございます。アメリカのエコノミストなんかはこういう意見でございますし、恐らく米国政府にもこういう強い意見があるのではないかと私は感じております。
 本年四月以降、デフレ解消のために早目に補正予算を組んでいただいて、大幅なマイナス成長に陥らないように財政支出を増加していただくことが必要ではないかと思います。過去二年余りで、財政支出は約十兆円ほど減少しております。これを一挙に埋め合わせる。小出しにいたしますと、本年度のように、五兆円結局出るんですけれども、余り効果が出ないということにならないか。
 それから、やはり、こういう補正予算、財政支出、あるいは予算に対する政府の姿勢というものは、国民、経営者に対しまして大きな心理的な影響を及ぼします。政府が財政支出をして景気を好転しよう、こういう姿勢を強く示せば、民間からも、じゃ投資をしよう、先行き、物を買おう、支出しようということも出てくるのではないか。ですから、そういう意味では、デフレムードを何とか払拭するために、ひとつそういった手をお考えいただけたらと思っております。
 次に、デフレスパイラルということが最近言われておりますが、私は、実はデフレスパイラルはもうとっくに始まっているのではないかというふうに解釈しております。
 といいますのは、通常のデフレとデフレスパイラルはちょっと違うんではないか。通常のデフレといいますのは、皆さん御案内のとおり、物価が続落いたしまして企業収益が落ちます。それで景気が後退します。すると失業も出ます。しかし、賃金が下がりますし物価も下がりますから、何か投資をしようという人が出てくる、そうすると景気が回復してくる、そういうことだと思います。
 デフレスパイラルという場合には、景気が後退し物価が下落する、企業収益が悪化する。それとともに、なかなか新規投資が出てこない。出てこないような要因があるわけですね。そして、そのために実体経済が収縮していく。そこで不良債権が起きる。そうしますと金融不安が起きる。それから金融機関が破綻をしていく。生命保険会社とか銀行がどんどん破綻あるいはそれに近い経営危機に陥る。それで貸し渋りが起きる。それで信用収縮が起きる。この信用収縮が起きるということが、実は経済規模を縮小させる大きな要因でございます。現在既に起きております。
 ですから、現在の不況ということを考えるときには、こういった性格のデフレというのは、恐慌型のデフレというふうに私は解釈したいと思っております。
 恐慌型というのはどういうことかといいますと、市場に任せておいて市場原理のまま放任しておけば、むしろ悪い方向悪い方向に行ってしまう。経済実態が、むしろ均衡するどころか破壊的に動いていくんじゃないか。これがまさに恐慌型のデフレあるいは恐慌型の不況ということではないかと思います。現在はまさにそういう状況ではないかと私は解釈しております。
 昨年の後半から特にこの傾向が強まってまいりまして、株価が暴落して企業や金融機関の資本勘定を直撃し、生命保険会社とか年金基金、こういうのが軒並みの赤字でございます。しかも、ここで四月からペイオフ実施ということになれば、金融不安が一段と拡大し、これがむしろ金融不安にスパイラル的な要素になるのではないか。
 しかし、九九年以降、九八年とか七年にございましたような、ある意味では株式市場等にどかんというような大きな不安感が起きないじゃないかという意見もあろうかと思いますが、これは結局、大手の金融機関に既に公的資金が入っております。ですから、海外から見た場合には、大手の銀行はつぶれないなと思っているわけです。
 ですから、かつてあったいわゆるジャパン・プレミアム、日本の銀行だったらほかの銀行よりも一%高いよ、そういうリスクプレミアムというものは、今はほとんどございません。これが前回と大きな違いだろう。ですから、公的資金の効果というのは、そういう意味では、信用の底支えとしては非常に大きいのではないかと思います。
 それから、もう一つ最近のデータで非常に懸念すべきことは、設備投資が続落しておりますので、純投資、新規の投資と減価償却によって実際に減少していく投資、この差額を純投資というふうに言っておりますが、この純投資がマイナスになってきております。一部上場会社では既にマイナスであるという統計が出ております。これがマイナスになっていくということは、経済規模がどんどん小さくなっていく、つまりマイナス成長というものが広がっていくということだと思います。これは、決して海外等に対する投資がふえたからではなくて、国内がデフレ経済になってきた、これからデフレを控えている、ですからそういう方向が出てきている、これはゆゆしき現状だと私は思います。
 ですから、ぜひとも、財政支出ばかりではなく、減税政策、住宅減税とか投資減税、特に投資減税には非常に力を入れて、新規投資については税額控除をするとか、新規分についての加速償却、償却度を短くする、そういったことを入れて、何とかして国内投資の環境を向上させていただくような、そういう投資優遇策が必要ではないかというふうに考えております。
 次に、お手元の資料をごらんください。
 デフレの問題が今非常に話題になっておりまして、政府も方針を出しております。そこで、参考になるかと思いますので、一九三〇年代のアメリカのデフレ、どんなふうに起きたのか、そしてルーズベルトがどういうふうに解消したのかということの表がございます。それをごらんいただきたいと思います。
 まず、一九二九年から一九三三年二月までのフーバー大統領時代、これは有名なフーバー・デフレと言われる時代ですが、このときの特徴は、デフレ下でも均衡財政をとった。結果としては、財政は大幅に赤字になる。
 それから、銀行の破綻をそのまま放任したものですから、次々と連鎖反応が起きて、信用収縮が起きている。マネーサプライが年率で一〇%も減る。この四年間で、実は五〇%、つまりマネーの量が半分になってしまった。ですから、物価も大幅に下がりました。
 それから、考え方としましては、市場原理主義といいますか、倒産とか破綻は放任していいんだ、そうすれば新しいのは元気なものが出てくるからいいんだという考えに立ったわけですね。
 その結果が、その一番下にちょっと黄色の線がかいてありますが、この二九年からどんと落ち込んだ三三年、実に国民所得が四六%減少いたしました。それが、その後一九四〇年まで七年間かかってようやく戻ったということでございます。
 では、それはどういうふうにして戻したのか。それが、その右側のルーズベルト大統領のデフレ解消策です。
 一口に言いまして、まず、一九三三年の六月に銀行の株式保有を禁止しました。同時に、時価会計を廃止いたしまして、取得原価主義、金融機関は取得原価主義でいいんだということにしたわけですね。つまり、市場のそういう価格変動を金融機関の資本勘定から遮断しようということを思い切ってやった。
 それから、マネーサプライを年率一〇%ぐらいふやしまして、新たにニューディール政策をとって、国債も発行しました。しかし、国債は市場で発行いたしますけれども、市場で発行しますとすぐ既発債の国債を中央銀行が買っていくということで、買いオペを同時にやっていくということにいたしました。
 そういうようなことをいたしまして、三三年から四七年、この十四年間、戦争の四年間がございましたけれども、平均いたしますと物価は二%から三%上昇しています。一時、国民所得が大幅に落ち込んだときには、その回復過程で七、八%上がったこともございます。
 それから、金融安定化政策というのをとりまして、公的資金の注入とか金融機関の再編、そういうものを政府主導でどんどんやっていったわけですね。こういう時代には市場規律とか市場原理は機能しない、民間に任せておけば右往左往するだけですから、そういうことをいたしました。
 それから、その後、低金利政策をとりまして、これは実に三三年から五一年まで十八年間続いております。財務省と中央銀行が協調いたしまして、短期は〇・三七五、長期は十年国債で二・二五ということをずっと続けていったんです。こういうふうにして国債管理政策というのをきちっとして国債を管理する、同時に、長期金利を低利で多く、それをまさに主導的にした。それによって、民間が安心して投資ができるような客観情勢をつくっていったわけですね。
 一たんデフレで金融システムあるいは資本主義システムが崩壊いたしますと、なかなか秩序が得られませんから、その秩序をつくり上げたというのがこの特徴でございます。これは現在でも当てはまることだと思います。
 それでは、その次の資料をごらんください。
 これは日本の国債でございます。日本の国債につきましては非常に誤解が多いと私は申し上げましたけれども、その誤解の多い理由は、まず第一には、総借り入れ、つまり六百六十六兆とかそういう総借り入れだけで見ている。しかし、日本には二〇〇〇年度末で約四百兆の金融資産がございますから、これを引きますと、政府の純債務というのは二百五十兆ぐらいしかございません。それから、資金的にはそれは順調に回っております。
 もう一つ誤解が多いと思いますのは、現在借りている国債、これを現代の世代だけで返すべきだ、次世代にツケを回しちゃいかぬというような方が多いと思いますが、しかし、日本のように貯蓄がたくさんあって、しかも社会資本が不十分な場合には、将来にわたってその国債のツケというか負担が回ってもいいんじゃないかと私は考えます。
 それから三番目には、国債管理政策、そういうものがほとんどない。先ほど申し上げましたとおり、アメリカでは、現在でも三〇年代以降からの継続で、これははっきりとしております。そういう政策をとっておるわけです。
 そこで、データを見ていただきますと、その左のところに「日本の資金循環」というのがございます。これは、千四百兆のお金がこういうふうに回っておりますので、政府だけ、右から二番目を見ていただきますと、負債が六百六十兆あっても、金融資産が四百二兆ありますから、純債務は二百五十八兆しかございません。それから、その下、日本は正味資産がありますので、資産超過の国です。
 右をごらんください。これは国債の保有状況です。これを見ていきますと、右の方に書いてありますけれども、「政府等」、これは郵貯ですとか簡易保険とかそういったものを全部合わせまして三八%を保有しております。これは二〇〇一年六月末の日銀統計からとったものです。日銀も加えますと五二・六、つまり、発行済みの国債の半分ははっきりと政府及び政府等で保有されております。
 残りの分が外国人とか家計なんですが、外国人は五・三%と極めて少ないわけですね。これは、日本というものは資金循環がうまく回っているという証左です。
 その下を見ていきますと、今度はアメリカの国債の状況です。
 アメリカの状況を見ますと、非居住者で三四・七。つまり、外国人が三分の一を持っている。このうちかなりを実は日本が持っているんですけれども、外貨準備として。それから、中央銀行が一五・五。ですから、あと公的部門等とございますが、政府等を合わせますと二三・一%となり、やはりアメリカの国債も政府等が保有しております。そのほかが生保とか年金ファンドという形でございます。
 こういうふうに見てまいりますと、日本の国債の保有の内訳は極めて安定しております。ですから、しっかりと国債の管理政策というものを持って、価格の維持それから量的なコントロール、そういうふうにしていけば、千四百兆という個人資産があるわけですから、安定的に政府支出もできるのではないか、こういうことがはっきり言えるのではないかと私は思います。
 最後に、ちょっと時間の関係もございますので、金融システム、金融不安のことを一言申し上げたいと思います。
 現在、金融システムといいますか、これは非常に不安な状況でございまして、政府もいろいろお考えでございますけれども、率直なところ、私は、やや混乱と混迷のような状態になっているのではないかと思います。
 それには、先ほど申し上げたように、政府に金融秩序維持政策といいますか、これは欧米ではプルーデンシャルポリシー、プルーデンシャルというのは慎重なということですから、慎重にきちっとやらなきゃいかぬというのはやはり金融のベースなんでしょうね。プルーデンシャルポリシーという、金融安定化政策とか信用秩序維持政策というのが乏しいのじゃないか、現状ではほとんどないのではないかと思います。
 では、一体どうしたらいいのか。
 まず、大手行で見ていきますと、まだ株式の問題が残っております。保有制限というものを昨年十一月に制度化いたしましたけれども、これはまだまだ不十分で、私は、やはり銀行本体から株式を切り離すべきだ、これをぜひとも具体化していただきたいと思います。
 それから二番目には、大手行に対して公的資金を入れるという話が出ておりますが、現在では、これは先生方はもう十分御案内のことと思いますが、金融危機ということが来たときには、総理が金融危機対応会議を開いて、そこで金融危機宣言をする、そうすれば預金保険法の百二条で、特定の金融機関の依頼を受けて資本注入ができることになっています。
 しかし、信用不安を解消するため、健全行ですとか破綻していない銀行に入れることは、事実上、法的には不可能だと思います。ですから、ここには、例えば金融機関資本充実法とか、こういうような法律をつくるべきじゃないかと思います。
 そして、これは大手行、八%行、それから地域金融機関、別の形にして、別の法律でもいいと思いますが、別々にして、いずれにしましても、日本の金融機関はデフレで大変痛めつけられております。次々と償却をしなきゃいけない、検査をしなきゃいけない、これは当然ですけれども、しかし、それを追い打ちをかけていったら、もう小さくなってしまって破綻していってしまう。金融機関が破綻しますと実体経済が破綻しますから、これはデフレはますます加速します。ですから、デフレ解消のためにはこういう法律をつくって、金融機関をきちっと、システムの核をつくる、そのかわり、もちろん経営責任とか株主責任はとらせる必要があると思います。
 それから、地域金融機関についてでございますが、現在は、御案内のとおり、金融庁が検査をいたしますと、そこへ不良債権が出てくる、そうすると、ある銀行とか金融機関が債務超過になる、そうすると、すぐそこで、はい、おたくの銀行は破綻ですよ、こういうふうに言われるんですね。
 そうすると、地方経済については、そういうところ、特に信用金庫さんなんかですと、中核でございますから、非常に波及が大きい。たちまちこれは地域社会に影響を及ぼします。ですから、ますます信用収縮が広まってまいります。昨年の十月ごろからこの傾向は非常に強まっております。これはもう直ちに私はマイナス成長に結びついてくるんじゃないかと思います。ですから、地域金融機関につきましても、一定のルールをつくって資本注入をする。
 それから、不良金融機関といいますか、そういったものについては、すぐつぶすのではなくて、一定の期間を置いて整理統合をしていく、そういう一つの基準をつくるべきじゃないかと私は思います。
 最後に申し上げたいことは、現在、市場原理主義といいますか、そういう主義で物をやっていこうというような考えが強いと思いますが、資本主義システムというものが破綻に瀕しているようなときには、そういう方向ではなくて、政治、政府主導で秩序をつくっていくということが必要だろうと思います。一番こういうところにすぐれている国はアメリカだと思います。ですから、アメリカの具体的な例、これは先生方よく御存じと思いますが、そういうことを考えますと、ぜひ、政府あるいは先生方におかれましても、そういった皆様方主導で新しい秩序づくりをしなきゃいけない、こうしなければデフレの本質的なものは解消しないのではないか。デフレについては、五年間ぐらいの計画を立てて、こういった核になるものもきちっと調整し直すということが必要なのではないかと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 次に、小野公述人にお願いいたします。
小野公述人 ただいま御紹介にあずかりました小野でございます。
 私が思う本年度予算案の印象を述べさせていただきたいと思います。
 本年度予算の印象というのは、これは非常に広く広まっている、いわゆる小泉改革を非常に忠実に具体化したものではないかというふうに私は思います。
 それでは、小泉改革というのはどういうふうに特徴づけられるかというと、まず生産効率主義、すなわち、景気がこのように悪くなったのは、日本経済がこのようになったのは生産効率が下がったからである。その生産効率が下がった理由は、システムが遅いとか制度疲労だとか、そういういろいろな言葉がちりばめられていますが、しかし、いずれにしても生産効率が下がったというそのことが日本の経済をこのようにしてしまった理由であるという発想です。ですから、生産効率を上げることが景気を回復することであるというふうに考えている。
 二番目に、不良債権処理なくして景気回復なしということをいつもおっしゃっていて、これは不良債権処理をすれば景気が回復するということを宣言しているということだと思います。
 不良債権処理というのは、御承知のとおり、具体的にどういうことかというと、経営の行き詰まった企業があった場合に、そこに資金を貸し出している銀行は困難に陥るから、そこを早く整理して、そこの企業を整理あるいは倒産に追い込む、つぶすということをやって、それは実は、一番最初に申し上げた生産効率主義とつながっていまして、効率の悪い企業はさっさと整理して効率のよい企業を残していこう、それによって日本経済の体質は改善するのである、こういう発想だと思います。
 それで、その間に痛みというものはある、これは具体的には失業、倒産による失業だと思いますが、それは覚悟しなければいけない、その覚悟を乗り越えてこそ景気の回復があるんだ、こういう発想だと思います。
 以上、この二つは、いわゆる供給効率、生産効率の向上を目指すという発想でありますが、同時に第三点、今度は需要側についてはどういうことを小泉さんはおっしゃっているかというと、国家財政は危機に瀕している。ですから、政府が物を買う、公共事業その他を通して、あるいは社会福祉支出、そういうのを通して政府が需要を生み出すということについてはもう限界がある。もっと言えば、それをやればやるほどさらに国家は危機に瀕するので、それをなるべくカットすべきである。実際に、本年度予算も昨年よりも歳出規模を縮めているわけですね。
 すなわち、どういうことかというと、供給力は増強して需要はカットしよう、こういう政策だと思います。
 それで、具体的に本年度予算の概要等を拝見いたしますと、例えば、五兆円を縮減して二兆円は重点項目に回す、それによって三兆円を倹約しようということ。あるいは、改革なくして成長なし、この改革というのは構造改革であって、それは効率化である。それから、そういうことによって中期的な生産性向上を目指すべきである、このようなことが書いてあります。
 それで、私は、今申し上げた小泉政策はどういう政策か、その評価は、時期が全く間違っていた、大変な間違いだということであります。これが一九八〇年代終わりに出てきたとしたら、私は拍手して、これはすばらしい政策であると必ず言ったと思うんですが、今やると全く間違っているということをこれから論証させていただきたいと思います。
 もう一つつけ加えさせていただきますと、もう一つの特徴は、こういうことによって痛みが伴う場合には社会保障を充実しよう。これは、失業手当の充実とか実際に失業保険を引き上げるというようなこともやっていらっしゃると思いますが、そういうことによって痛みを分かち合ってセーフティーネットは充実しよう、こういうことだと思います。
 さて、まず効率主義、市場主義という発想からコメントさせていただきたいんですが、これは、個々の企業が生産効率を上げれば、もちろん個々の企業にとってはよくなる。すべての日本じゅうの企業が生産効率を上げるように努力しましょう。これは具体的には、スリム化して、余った人を解放して個々の企業の体質をよくしよう、こういうことであります。ですから、不良債権がそういう意味では良好、優良債権になるのかもしれない。同様に、政府も同じようにスリム化して、人員を切って、あるいは支出を減らして、コストのかからない体質にしよう。これは全く企業改革と同じ発想で行われている。
 そうしますと何が起こるかというと、日本じゅうよくなるからよくなるじゃないか、こういう発想になると思うんですが、これは大間違いでありまして、一つ大きなものが抜けている。これは失業であります。
 すなわち、カットされた人たちというのはどこで吸収するかという発想が一切ない。今申し上げたように、日本じゅう、政府を含めたすべての機関が人をカットしようというわけですから、吸収するところがないのでありますから、これは失業がふえるということしかない。すなわち、私が申し上げたいのは、個々の企業の経営をそのまま政府の経営にするという物すごい愚を犯している、全く混乱しているというふうに思わざるを得ないわけです。
 それで、私は、私自身の本なんかで繰り返しているんですが、政府は国民を解雇できないということに気づいていないのではないか。すなわち、個々の企業を体質改善するときには、余った人材を解放して解雇してしまえば、その企業は当然よくなるわけです。ですから、銀行としても、そういう企業にはでは金を貸しましょうという気になるかもしれない。
 ところが、政府というのは絶対に人を首にできない。人というのはだれかといったら、政府機関ではなくて国民であります。もし国民を首にできるのであれば非常にいい。国民を首にできて、あなたはもう日本人ではないといって解放すれば、中にいる人たちは働いている人たちだけが残って、景気が回復するかもしれない。しかし、実際にそれはできないわけですから、そうすると、企業の経営になぞらえるならば、決して人を首にできない、現在の人員はカットできないという前提で、では、その企業の体質をどういうふうによくしたらいいかと考えるのが政府の考えることであります。
 現在の政策は全くその視点がなくて、解放された人、失業者はもう実は失敗者であると。さらにひどいことを言う人は、こういう人を下手に救うと構造改革が進まないということまで言う人が出てくる。これは大変な間違いであります。
 それで、こういうことを続けると中期的には回復する、こう言っているんですが、どうして中期的に回復するのか、私は全く理解できない。こういう政策の先には二極分化があります。すなわち、非常に限られた数のすぐれた企業と、とてつもない失業が残っているわけです。そのことだけで、これはいわば所得の分配である、かわいそうな人と成功者と失敗者の分離であると。私は、かわいそうな人を救うべきであるというようなことをここでわざわざ申し上げることもないと思うんですが、そういういわば倫理的なものを省いて、冷徹な経済学の原理で実は考えていっても、これはとんでもないことだと。
 なぜか。それは、失業者をふやすことによって、実は需要が減ってしまうわけですね。それで、需要が減ってしまうと、体質強化するべき残っていた企業までが困難に陥る。すなわち、どういうサイクルが起こるかというと、不良債権を処理して、処理すればするほど倒産と失業がふえて、そうすると、良好債権であった企業も需要がなくなることによって不良債権化して、さらに不良債権がふえてくる、こういうサイクルであります。
 具体的に、過去一年、二年の、特に小泉政権が発足した後の不良債権の量を見ていると、最近どんどんふえている。つまり、処理は進んでいるのでありますが、どんどんふえているのであります。これでよくなるはずがない。
 私が申し上げたいのは、需要不足で不況になっているのに、需要を減らして生産性を向上させる政策をすると、これは典型的なデフレ助長政策である。すなわち、デフレ対策は重要であると言いながら、こんなデフレ助長政策をこの時期にやるというのは、私は歴史に残る政策ではないかとぐらい思うわけであります。
 さて、不良債権のことを申し上げましたけれども、よく不良債権処理ということをおっしゃいますが、私は、この言葉は非常に誤解されることであると。すなわち、不良債権は決して処理ができない。
 これはどういうことかといいますと、私はマクロ経済学の専門ですので、そういう立場で申し上げると、不良債権というのは何かといったら、株価が下がり、地価が下がり、我々の持っていた資産の価値が下がってしまったということによって、それをどこか銀行なり企業なりが、あるいはゼネコンかもしれませんが、そこが背負ったということがいわゆる不良債権問題であります。これを処理するというのは、マクロ的に見て、地価も上がらず株価も上がらない状態で処理できるはずがない。すなわち、再分配するだけである。もう少し言えば、ツケを回すだけである。
 ですから、銀行に公的資金を導入するのはいいでしょう。私は、そのこと自身反対すると言っているわけではありません。金融制度の安定化は大変重要なことですから、そのこと自身反対はしませんが、しかし、それによって景気が回復するなんというのはとんでもない。なぜかといえば、その銀行の負担を減らした分、今度は国民が例えば納税で資産が減るわけですから、合計額は必ず同じであります。必ず同じなのに景気が回復するというのは、完全な欺瞞かあるいは誤解であるというふうに私は思います。
 さて、今のような企業をどんどんつぶすような改革、需要を減らすような改革を続けていますとどういうことが起こるかといえば、先ほど来申し上げている倒産が起こってさらに不良債権化が進むということですが、同時に社会保障費もふえる。つまり、小泉政権はセーフティーネット充実も重要であるということで言っているわけですから、これは社会保障費もふえる。さらに、所得は減るわけですから、税収は減る。社会保障費がふえて税収が減ればどうか。財政負担はますます広がる。
 すなわち、こういう形で財政のプライマリーバランスなりなんなりを図ろうとすると、どんどん縮小して、結局、日本経済の活動がストップしたときに初めて均衡するというような状態にさえなりかねない。これをバランスさせるためには、拡大する方向しかあり得ないのであります。
 拡大するというのはどういうことかというと、私は増税することだと思うんですが、その増税というのは、誤解のないように申し上げますけれども、生産活動を引き上げれば税の支払いがふえてくるわけですから、そうすれば税収がふえてくるという形で増税、つまり、率を上げるということよりも税の幅を広げるということです。
 現実に、日本もアメリカも、景気のいいときになぜ財政の中身がよくなったかといったら、税収が自然にどんどんふえたからでありまして、これは否定しようのない事実であります。先ほどのお話にもありましたけれども、経済規模を縮小しながら財政再建ができた国なんというのは一つもない、少なくとも私の知っている限りはないと思います。
 さて、では、不良債権処理はできないと私は申し上げましたが、実は一つ方法がある。それはどういうことか。まあ易しくはないんですが、それは企業に仕事を与えることです。企業が仕事を与えられれば、その企業が回転し出すので、不良債権が良好債権になってくるかもしれない。すなわち、良好債権をふやすということが本当の意味での不良債権処理になっている。その方向に回さない限り、どんどんマクロに不良債権をふやしておいて、ツケを回しておいて、これで不良債権処理で景気がよくなるというようなことは絶対にあり得ないということを強調させていただきます。
 それでは、どういうふうに経済政策を考えたらいいかというと、経済的にいい状態というのはどういうものかということをはっきりと認識しなければいけない。これは実は簡単でありまして、働きたい人が存分に働ける場にある、それが経済的によい状態であります。
 景気のいい状態というのはまさにそれでありまして、人々が欲しい物がいっぱいあってどんどん買うので、働く場はもう目が回るほど忙しい。人手不足が大変である。そういう意味では、将来不安なんかないわけですね。そうすると、それがどんどん回れば、所得も上がり、株価も上がり、不良債権どころか良好債権がどんどんふえ、それによってみんな豊かになる。そういう形で、実は自分がお金持ちになったかどうかという付帯条件がついていますが、そのことが重要ではなくて、その状態のもとで人々が働く場を与えられて喜んで働く、こういう状態ができているということが好況のいいことなんであります。
 そういう意味でいいますと、今は全くそういう状態にないわけですから、では、そういうふうにするにはどうしたらいいかといったら、政府が介入するしかないわけであります。政府が仕事をつくるしかない。
 ここで、誤解はないと思いますが、一応整理させていただきますと、だから、ばらまき型の積極財政をやればいいかというと、そういうことでは一切ないのであります。そのことは私自身、本の中で書かせていただいたんですが、すごく簡単に言えば、実は、ばらまき型積極財政、例えば公共事業ですね、それと今言っているセーフティーネットあるいは失業保険、失業手当、これは全く同じだということをこれから申し上げたいと思います。
 例えば、むだな公共事業というのはどういうのかというと、穴を掘って埋めて賃金を渡す、これがむだな公共事業ですね、最もむだな公共事業です。穴を掘って埋めるかわりに、穴を掘って埋めないで、その現場で労働者に寝ていていただいて、その方に賃金を渡す、これは同じことであります。
 来るのが面倒くさいと自分の家で寝ている人に、では賃金を渡そう。これは賃金という名前では困るので、社会保障あるいは失業手当という名前をつけよう。これは小泉改革であります。すなわち、穴を掘って埋める公共事業をやめるべきだと言いながら、実は同じことをやっている、これが現在の政策であります。
 このような政策を続けていて、これは改革である、景気がよくなると言う意味が全くわからないというのが私の印象であります。
 結局、今強調したように、労働力をいかに活用するか、これが一番重要なものでありまして、実は、再分配よりもそのことをやるべきなんですね。再分配ということは、失業手当とか社会保障というのは重要な項目でありますが、実はこれは純粋な再分配であって、それよりも、どうせただでお金を渡すぐらいなら、そのお金を賃金として払って仕事をしていただいた方が何かプラスになるじゃないですか。
 そうすると、今私が皆さんに期待するのは、いかにむだな支出を減らすかということで競い合うのではなくて、この政策をするといかに我々国民の働く場がつくられ、いいものができるか、そのことで競争すればいいわけです。
 社会保障費や失業手当についても、ちなみに、失業手当というのは国費の上では余り大きな額ではないように見えますが、現実には、働いている人はその何倍もの失業保険を払っているわけで、これは払う方にとっては税金と全く同じであって、ただのばらまきですから、この規模を大きくして仕事を減らすのではなくて、こんなものは払うのはやめて、かわりに仕事をつくり、そこで働いていただいて賃金で払う、こういうことを考えるべきだと思います。
 では、具体的にどういう仕事をつくったらいいかということが次に出てきて、これは大変難しいことでありますが、幾つか申し上げると、一つは、政府事業を実際やるということであります。
 そういう意味で、先ほどの穴を掘って埋める公共事業との比較でいうと、まだ従来型だ何だと言われている公共事業の方がましだということが皆さんはおわかりになったと思いますが、それよりもさらにいいものであれば、もちろんその方がいいわけですね。そういうものをいろいろ考えていただきたい。
 私は、例えば、ごみ処理施設とか産廃施設を全部直すというようなことをやったらどうだということを申し上げているんですが、それを、ことしはそういうものについて幾ら回しましたというような形で臨時のような形で出すのではなくて、例えば今後十年間で全部かえるというようなことを宣言してやったとすると、これは大変なマーケットができるということであります。
 ほかにいろいろそういうのがあるでしょう。高齢化の問題、ITインフラの問題、いろいろあると思います。だから、そういうアイデアは幾らでも出せると思うんですが、そのことを競っていただきたいということであります。
 さらにもう一つお金がかからないでやる方法というのは新たなマーケットをつくるということでありまして、新たなマーケットというのは、実は規制が必要なんです。規制が必要だと言うと、おまえ何言っているんだと言われそうですが、実は、規制と一般に言われているのは参入規制ですけれども、参入規制はとんでもない。参入規制というのは、せっかく新たな事業を始めようという企業に対して、中にいる既得権者だけを守るようなものですから、これはとんでもない。
 そうではなくて、私が申し上げている規制は、例えば環境規制や環境税等。アメリカも、昨日ですか、新聞で出ていた例の省エネ優遇税制なんかを置きましたが、これはかつてのマスキー法を思い出せばわかるように、これで大きなマーケットができる。しかも、ことしだけやります、来年だけお金やります、公用車を何台、省エネカーで買います、こんなけちなことじゃ何にもならない。
 例えば、省エネカーを国家財政で七百台買いますと言ったら、大トヨタが、では、省エネカーに大きな投資をしようなんて思うか。決して思いません。ところが、こういう制度をちゃんとつくって、こういうマーケットがこれからずっとできるぞと言ったら、本気になって投資するだろう。本気になって投資するとどういうことが起こるか。雇用もふえてくるだろう、株価も上がってくるだろう、税収もふえるだろう、そうすれば消費もふえるだろう。これは単に好況の回転が始まったということであります。そういうようなアイデアを競うことこそが一番重要であると思います。
 この予算を読ませていただいたんですが、予算の書き方でちょっと要望があるのは、各項目、都市再生だとか何だとかということがいろいろ書いてありますが、私は、これは単なる再分配政策である、あるいは、新たな労働雇用を何人つくり、どういうものができる政策である、こういう形で分類していただきたい。今までどおり、単に項目を、道路をつくって、道路はけしからぬ、しかし、都市の道路はオーケー、これでは単なるラベルの組みかえでありまして、全く何を言っているかわからないというのが私の印象であります。
 ですから、アカウンタビリティーという意味でいえば、これは単なる再分配であるか、それとも有効利用であるか。単なる再分配はばらまきというふうに言ってもいい。ただ、もちろん、弱者を助けなきゃいけないというのは事実ですが、私は、弱者を助けるのであれば、弱者に仕事を与えて助けるべきであるというふうに思います。
 もう時間がないので、金融政策に頼るということについて一つだけ申し上げさせていただくと、今、金融政策は最もきかない時期である。しかも、今のインフレターゲット論、私は、デフレがなくなったら景気がよくなるという経済理論についてはそのとおりだと思って、私自身の著作にもそういうことが書いてありますが、どうやってインフレを起こすかということが全くわかっていない。それの背景となっている経済理論というのは実は貨幣数量説というもので、これは仮定であって、全然経済学的に証明されたものではないんですが、それを金科玉条のごとく信じて、ただただ機械的にやればデフレは解消する、こんな稚拙な経済理論でデフレ対策と言うのは信じられないのであります。
 結局、結論から言えば、今回の政策すべて見て、デフレ助長政策で、不況の最悪時期にデフレ助長政策をやった政権ではないかというふうに私は思います。
 以上です。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 次に、小池公述人にお願いいたします。
小池公述人 大阪商工会議所の副会頭をしております小池俊二でございます。
 私は、平成十四年度政府予算案について、特に中小企業政策関連予算案について意見を申し上げたいと思っております。
 第一に、経済産業省、中小企業庁関連の平成十四年度の予算額は一千三百七億円で、平成十三年度当初予算比二・一%減、財務省及び厚生労働省計上の五百五十四億円を加えた中小企業対策費総額は一千八百六十一億円で、四・四%減ではありますけれども、平成十四年度予算の施行を前倒しした第一次補正二千五百九十八億円、これは財務省計上分一千六百九十八億円を含んでおりますが、それに第二次補正予算案六十二億円を加えた実質的な十五カ月予算で見ると、当初要求額を大幅に上回る予算規模となっていることについて評価できるというふうに思っております。
 第二に、平成十四年度予算編成に当たって、経済再生等の推進過程で、能力ある中小企業までが破綻に追い込まれる事態を回避するための金融セーフティーネット対策、二番目に、五年間で創業を倍増するという目標を実現するための創業支援、三番目に、中小企業の新事業への挑戦、努力を支援する経営革新支援、四番目に、個性と活力ある中心市街地を実現するための中心市街地、商店街の活性化、以上の四項目を重点とし、対策費を計上したことについては適切であったと考えております。
 さて、景気の動向と中小企業の現状について申し上げたいと思います。
 政府の一月の月例報告の基準判断は、景気は悪化を続けているとしていますが、二〇〇一年の平均の全国消費者物価指数は、二〇〇〇年を一〇〇とした場合、物価変動の激しい生鮮食料品を除いて、前年比〇・八%の下落であります。これは戦後初の二年連続の下落で、デフレが改めて確認されたものと考えられます。
 中小企業の従業者数は、民間の総従業者数五千三百五十九万人の八〇・六%を占めております。そういうことから、消費動向のかぎを中小企業が握っていると言っても過言ではないと思います。中小企業の活力なくしては成長なしといった考え方でデフレ対策を進め、日本経済の創生を図ることが肝要ではないかと思います。
 大阪商工会議所の調査によれば、二月中旬時点での金融機関の貸し出し姿勢は昨年の同期に比べて厳しくなったと回答しているのは、大企業で二一・一%、中小企業で三五・五%、小企業で五六・三%。計三六・四%でございますけれども、規模が小さくなればなるほど金融不安が増幅しているのが現状でございます。したがって、デフレを阻止するためには、金融システムを安定化させることが当面の緊急課題と考えられます。
 次に、大阪の経済について申し上げますと、大阪の経済はまさに日本経済の縮図というふうに言うことができるのではないかと思っております。
 完全失業率は、十二月において、近畿では六・一%、全国では五・六%。地価の下落は、商業地について、東京圏ではマイナス八・〇%、大阪圏ではマイナス一一%。それに倒産の増大、さらに鉱工業生産指数の低下などから判断して、大阪は既にデフレスパイラルに陥っているのではないかと危惧をしているわけでございます。
 特に大阪は中小企業の比重が高く、製造業出荷額において、大阪府はそのシェアは六四・五%、全国では五一・六%でございます。また、アジアとの貿易の密接度も強く、輸入については、近畿圏では五四・四%のシェア、全国では四七・三%、労働集約型の中小企業の製造業の空洞化が急速に進んでいるのが現状であります。
 大阪の中央区の谷町は紳士服の生産地でございます。地場産業でございますけれども、昨年の紳士服の輸入量は一千万着を超えております。その中でも九百万着が中国からの輸入でございます。実際に国内の需要は九百万着。したがって、国内の生産を考えますと、需要をはるかに供給が上回っているわけでございます。要するに、輸入の圧力は大変なものでございます。地場産業は壊滅しているというふうなことが言えます。そのほかの産地でも同じことが言えるんじゃないかと思っているわけでございます。
 また同時に、不良債権の処理による構造改革の進展の過程で、健全な中小企業の破綻回避や雇用に係るセーフティーネットの構築、それに国際競争力強化の経営革新、それから創業・ベンチャー振興による産業力の強化、企業活動の舞台でもある都市機能強化が大阪経済の再生の条件であると思っております。
 次に、銀行貸し出しについて申し上げたいと思います。
 銀行貸し出しの残高は極めて減少しております。都銀、信託、地銀百三十行の貸出額は、一九九六年の五百三十七兆円に対して、二〇〇一年には四百四十兆円と百兆円減少しておりますが、これは、不良債権処理のための債権放棄等の原因で減額しているほかに、いわゆる貸し渋り、貸しはがしによる貸し出し制限によると思っております。さらに、昨年の十二月末の民間金融機関の貸出残高は、前年比で四・三%も減少しております。
 一方、九政府系金融機関は、同時期二十六兆円増加していますが、国民生活金融公庫など中小企業向け政府系金融機関の昨年十二月末の貸出残高は合計二十九兆一千七百億円で、前年同月比一・六%減少しております。二〇〇一年度当初予算で六百三十億円、第一次補正予算で中小企業の安全網の強化を理由に九百億円の財政支出をし、不良債権処理に追われる民間金融機関の補完を期待するものでありましたけれども、中小企業向け貸し出しの拡大につながっているとは言えない状況であります。
 昨年来、特殊法人としての政府系金融機関の見直し論が横行したため萎縮し、信用収縮につながることになり、民間補完の役割の限界を示しているものではないかと懸念されております。特に、不用意な民営化論によって、市場から貴重な資金を調達している政府系金融機関の資金調達コストが上昇し、円滑な融資に支障を来している事実も否定することができないのが現実であります。
 次に、中小企業のセーフティーネットに関する所見について、七項目にわたって申し上げたいと思います。
 日本銀行の再三にわたる金融緩和政策にかかわらず、資金は金融機関レベルに滞留し、中小企業の現場に還流されていないのが現実であります。このような金融機能不全環境の中で、本格的な不良債権の処理に伴って本当の痛みを受けるのは、雇用の大多数を抱える中小企業であり、その経営者であります。
 まず第一に、検査マニュアルの適切な運用を求めるものであります。
 金融機関の昨今の厳しい貸し渋り、貸しはがしの原因の一つとして、金融庁の検査姿勢があります。例えば、収益の赤字を理由に債務者区分を要注意先に指定するなど、企業の保有する技術力、それに成長性、経営者の資質、資産に関する総合的な判断を欠く場合が往々にしてあり、検査マニュアルの適切な運用を図ることが求められております。
 マニュアルには、適用に当たっては、中小企業の規模や特性を十分に踏まえ、機械的、画一的な運用に陥らないよう配慮する必要があると記述されております。しかし、金融機関が検査マニュアルを理由に健全な融資先に対して貸し出しを拒んだり、資金を回収したりするなど、不適切な事例が多発しております。第一線の検査官や金融機関責任担当者の資質の向上と教育が極めて重要であります。
 また、金融機関には一定の公共性が求められておりますので、特に地方において金融機関が限られていることから、中小企業向け融資残高を定期的にディスクロージャーすることによって地域金融の信頼性を高めるマニュアルが必要ではないかと考えております。
 二番目に、セーフティーネット貸付・保証の円滑な運用について申し上げたいと思います。
 潜在能力とやる気のある中小企業が連鎖的な破綻に巻き込まれないように、金融機関や保証協会にはセーフティーネット貸付・保証制度の円滑な運用を図ることが求められております。最近、保証協会までもが保証渋りを行っていると苦情が多数寄せられております。一方、保証協会による代位弁済も急増していることも事実で、このままでは持続的な制度の運用も難しくなるため、金融機関も一部リスクを負う部分保証制度導入によって、信用リスクに応じた保証料の設定、担保によらない、事業の将来性などに着目した保証制度の本格的な導入などの制度改革を進める必要があると考えられます。
 また、特別信用保証制度の返済条件の柔軟な変更について、信用保証協会や金融機関が中小企業の実情を正しく把握した上で、返済期間の延長などの弾力的な対応を実施すべき経済環境にあるというふうに考えております。
 三番目に、売掛金債権担保融資の積極的な推進について申し上げたいと思います。
 中小企業の資金調達の手段の多様化を進めるために売掛金債権担保融資制度が創設され、特定社債保証制度、中小企業の私募債への公的保証でございますが、これも拡充されましたけれども、前者につきましては、まだ新しい制度でございますので利用率が極めて低く、この制度の普及を図るとともに、債権譲渡特約の緩和を図るなど、中小企業にとって活用しやすい制度にするよう円滑な運用が極めて重要であると考えられております。
 四番目に、中小企業向けの政府系金融機関の存続についての問題でございます。
 金融システムが安定していない段階で、中小企業に対する公的融資の役割は非常に重要であります。見直しについて経済財政諮問会議で検討し、年内に結論を得るとされていますが、経済情勢が好転するまでその見直しは慎重に検討されるべきであります。特殊法人改革の必要性はありますけれども、中小企業向け三政府系金融機関のシェアは中小企業金融全体の九%程度で、民間圧迫に当たるとは考えられず、少なくとも民間金融機関が中小企業に対する融資機能を回復するまで政府系金融機関の基本的な枠組みを存続すべきであり、また、凍結するべきであるというふうに考えております。
 民間金融機関が破綻した場合、緊急に必要な資金は短期資金と手形割引でありますけれども、このような融資に応じられる政府系金融機関は極めて限られており、中小企業への機動的な政策金融の役割の重要性は今後一層高まるものと予想されております。
 五番目に、個人保証制度のあり方について申し上げたいと思います。
 中小企業では、融資を受ける場合、代表者が個人保証しているケースが八〇%に上っていますが、会社が破綻した場合、代表者は、現金二十一万円と二カ月分の生活必需品、年金の受給権を除き、すべて手放すことになっております。創業・ベンチャー支援として、再起できる保証制度を検討すべきであります。米国の例では、現金三百六十万円と、州によって異なりますけれども、一定金額までの住宅は引き続き所有できることになっております。
 六番目に、官公需の中小企業向け発注の拡大について申し上げたいと思います。
 中小企業にとって、資金繰りを安定させるために、国、公団、事業団の官公需のうち、中小企業向け発注を最低五〇%まで拡大するべきであります。平成十二年度には四四・五%でございます。同様に、地方自治体の中小企業向け発注の拡大を推進すべきものと考えております。
 七番目、最後になりますけれども、中小企業税制によるデフレ阻止について申し上げたいと思います。
 財政金融政策が手詰まりな状態の中で、租税政策の役割は非常に重要であります。地方税制は、現状でも国税に比べて法人課税への依存度が高く、地方税体系を、公平かつ中立、簡素、応益性の観点から抜本的に見直す段階に来ていると思われます。現在、議論過程にございます外形標準課税の導入は、中小企業の経営の根幹にかかわる重要な問題でございます。
 そのほか、投資減税あるいは存在根拠のない留保金課税の廃止、それから、事業用資産に対する包括的な税源措置を柱とした事業承継税制の創設、後継者問題の解決と雇用の維持にも有効な中小企業のMアンドAに係る促進税制の導入、要するにMアンドAによる譲渡益課税の大幅軽減など、それに、土地の流動化に向けての税制さらには規制改革を実現することが求められております。
 これらは財政支出に基づくものではございませんので、要するに三十兆円枠を十分守ることも可能なわけでございますので、税制改革と規制緩和は積極的に進めていただきたいというふうに思っている次第でございます。
 以上でございます。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
 次に、二宮公述人にお願いいたします。
二宮公述人 二宮でございます。
 最初に、意見陳述の機会をいただきましたことを感謝したいと思います。
 私は、時間の制約上、当面日本に求められている課題、優先順位の高いところから五点を挙げまして、それに基づいて来年度政府予算案の評価について述べてみたいというふうに思います。
 五つといいますのは、まず第一番目、予算案が、先ほどから問題になっておりますように、現代の日本の経済危機、その打開や経済再生に対して果たしてこたえるものになっているのかどうか、これが一点目であります。
 二点目は、それに関連をしまして、倒産や失業の増大、それから、現代日本は戦後最大の国民生活の不安の高まりというのが特徴だと思いますけれども、それにどういうふうにこたえているのか。
 第三番目は、少子高齢化の進行、そしてまた新しい生活不安の高揚に伴って必要とされている長期安定的な社会保障の計画、これにどういうふうにこたえているのか。
 四点目は、今、地方財政も、国家財政と並んで大きな危機に直面をし、各自治体は、準用再建団体への転落を恐れてさまざまな取り組みを進めておりますけれども、分権と地方自治の拡充という視点から、この予算案はどういう性格を持っているのか。
 最後、五点目は、財政危機に対していかなる対応、すなわち財政再建への着手をきちっとやっているのかどうかということです。
 以上の五点を順に申し上げたいと思いますけれども、まず結論を申し上げますと、これらの五点の課題に即して、総じて来年度の政府予算案は、私は十分な解決策を提示しているというふうには思えません。むしろ、その課題に逆行しているという側面が主要だ。先ほど小野先生からも指摘がありましたように、今回の予算は改革断行予算ということで、構造改革を具体化するための初年度の予算編成ということになっておりますけれども、国民的な課題という視点から見れば、これは改革断行ではなくて、私は、逆行予算だというふうに思います。
 その理由は、要するに、構造改革路線といいますか、小泉改革路線を基調に据えて、ベースに据えて、その上で予算編成がなされた、ここに最大のボタンのかけ違いがある、そういうふうに思います。
 問題の構造改革というのは一体どういうものなのか。これは菊池先生も小野先生もお触れになりましたけれども、私自身の理解では、竹中経済担当大臣がかねてより主張してきておりますけれども、一言で言えば、これは日本経済の中にあるいわゆる三つの過剰の破壊、これが構造改革の最大のねらいといいますか特質になっている。これは竹中大臣が繰り返し述べているとおりです。
 三つの過剰といいますのは、御承知のとおり、設備の過剰、それから労働の過剰、金融ないし不良債権の過剰です。この三つの過剰を破壊する。日経新聞は、小泉政権の政治を破壊政治というふうに特徴づけたことがありますけれども、まさにこの破壊というのが現在の構造改革路線の最大の特質を形成しているというふうに思います。
 問題の、破壊の対象が三つの過剰なんですけれども、これが一体どこから出てきているのかというのをつかみ損ねると、日本経済の再生になかなか役に立たない。私は、現在問題になっている不況の最大の背景でありますところの過剰というのは、大きく言うと、九〇年代の半ば以降に進行した日本経済の、文字どおり構造転換と結びついている。これは単なる需要不足であるとか、日本の経済が循環的に生み出した単なる過剰というものではなくて、非常に根深いその背景があるというふうに思います。
 大きく言いますとそれは二つありまして、一つは、先ほど小池公述人からも大阪を例にとってお話がありましたけれども、要するに、日本の経済は、これまで輸出主導型で、つまり輸出を第一にして伸びてきたというところがありますけれども、九〇年代の半ば以降、日本の企業の海外進出が非常に強くなって、それでいわゆる多国籍企業の時代を迎える。そういたしますと、国内で、主に加工組み立て型の産業でありますけれども、今まで輸出主導型で伸びてきたものが、企業の海外進出に伴って過剰化してくる。この構造というのが非常に大きな現在の日本のデフレスパイラルの背景といいますか、ベースをつくり出している。
 いま一つは、これは主に、いわゆる重厚長大というふうに言われておりますが、鉄だとかセメントに代表されますような公共事業、それからそれに関連する土木建設産業、こういうところで吸収されてきた産業構造が、この間の財政危機の中で公共事業も限界に直面をしておりますし、自治体の単独事業なんかは御存じのとおり計画どおりには進まない、実際には七割以下に落ち込んでいるという実態がありますけれども、これによって主に素材産業が過剰化する。これによっていわゆる三つの過剰という問題が出てきているわけでありますけれども、これをすなわち破壊するというのが現在の構造改革路線になっています。
 破壊ばかりやっていると経済の再生というのは進行しないわけでありまして、これは小野先生が先ほど、供給サイドで企業の力を強めるために、弱い企業であるとかあるいは中小企業であるとか地場産業であるとか、こういうものを破壊して失業者を大量に出す、だからデフレスパイラルが進行するので、経済が再生するとか需要が回復するということはあり得ない、こういう御指摘だったと思いますけれども、私もその限りでは全く同じ見解を持っています。
 したがって、構造改革路線がまず手をつける不良債権の処理という課題も、結局のところ過剰を破壊するわけでありますから、不況を進行させて、不良債権が、イタチごっこのように、処理されても処理されてもまた新しく生み出されてくる。
 現に新聞報道なんかによりますと、大手十五行を取り出しますと、過去一年間で不良債権は二割方増加をしておりますし、全銀レベルでも、昨年の半年間でおおよそ三・一兆円、不良債権が増大しています。だから、不良債権の処理を、先ほどから御指摘があったように、サボっているんじゃなくて実際にはやっているわけですね。ところが、やっている不良債権の処理の規模以上に新しく不良債権が生み出されてきて、不良債権の規模というのは、全国銀行レベルでいきますと、ある意味で史上最高。これが過去一年間に進行してきた現実であります。
 したがって、今、金融機関の特別検査を強めて、それで不良債権の処理をこの三月決算に向けてさらに強めようとしていますけれども、それは、今進行中のデフレスパイラルをむしろ加速化して、マスコミなども三月不安説というのを出しておりますけれども、そういう不安感が一層強まっていくのは当然でありまして、そういう予算編成は、国民の生活の課題からして、およそ十分な経済の再生であるとかあるいは日本経済全体の活性化につながらない。これが第一の問題点だというふうに思います。
 そういう構造改革をベースにして、まず第一番目に、今回の政府予算案は、形といいますか規模だけ取り出しますと緊縮型になっています。御存じのとおり、一般歳出でありますと前年比二・三%減でありますから、規模だけ取り出しますと、従来型の財政構造をまだ維持したまま縮小。したがって、これはマクロ経済風に言いますとデフレスパイラルをさらに加速化する。問題は、需要不足そのものではなくて、本来、需要回復であれば、財政の構造をその線に即して変えていかなければいけないんですけれども、それをいわばサボりながら規模の縮小に入った。これによって一層日本の不況は深化する。こういった点が第一番目の問題点です。
 さて、第二番目でありますけれども、今述べましたように、従来型の財政構造を基本的に踏襲しながら、現在進行中の失業や倒産の増大、それから、高まる生活不安の打開に解決方向を示していない。
 今の日本経済の現状と国民生活の構造からいたしますと、いわゆるマスコミの言うところの土建国家型の財政、そういうものを福祉国家型の財政に本来切りかえなければならない。ところが、今回の予算案を見ますと、土建国家型の財政構造については一部見直していることは確かなんでありますけれども、全体としては、福祉国家型の財政に大きく踏み出すとか構造を切りかえる、そういうことになっていない、したがって国民の生活から出てくるところのニーズにこたえていない、こういう問題点を指摘できるというふうに思います。
 確かに、一般会計予算では公共事業費は八・四兆円で、昨年度の九・四兆円から一兆円削減をしたり、あるいは道路公団に対する三千億円の出資を見合わせる、こういうことをやって一部見直しをしてはいるんですけれども、しかし同時に、来年度の政府予算案とセットにされた補正予算でもって、公共事業拡張型、依存型の財政構造はなお続けられている。それから、道路財政につきましても、すったもんだありましたけれども、基本的には建設計画については見直しを進めていない。こういった問題点があって、要するに現在の雇用、生活不安の増大に対応できていない、こういうことであろうと思います。
 私自身は、先ほど言いました過剰という問題があることは確かでありますので、日本の経済の内需、それを大きく福祉国家型に切りかえていく、そのための第一歩として財政構造の転換が必要だというふうに思っています。
 大づかみの数字で申し上げますけれども、例えば欧米諸国と比較してみて、御存じだろうと思いますが、内需の構成を仮に総投資と総消費、投資は公共投資と民間の設備投資、両方に分かれますし、消費は公共の消費とそれから民間の家計消費、この二つに分かれますが、大づかみで言えば、日本の場合には三対七の構造になっています。これは、公共事業と民間の設備投資が中心になって日本経済が回転してきた、これは伝統的にそうだったものですからそういう三対七という構造になっているんですけれども、ヨーロッパの場合には福祉支出が高いとか公共消費が高い、それからアメリカの場合には個人消費が高い、こういう理由に基づきまして、三対七ではなくておおむね二対八ぐらいの構造になっている。つまり、日本は先進諸国の中では一割方多く投資に資源、資金、人材を振り向け過ぎているといいますか、そこに大きなゆがみがあるわけですね。
 公共事業だとか民間の設備投資であるとか、あるいは輸出を引き金にした全体の経済の底上げ、そういうものにもう依存できないのであれば、少なくとも先進国型、すなわち投資対消費の割合をおおよそ二対八ぐらいの構造に切りかえる方向で日本経済の再生を考えていかなければいけない。そのために財政を有効に使う。
 つまり、これが福祉国家型財政というふうに今述べてきたことなんでありますけれども、そういう方向性を示すのが筋だと思うんですが、それがなされていない。だから、私は、今の構造改革路線を突っ走れば突っ走るほど、日本経済は、文字どおり、下手をするとこれは破局的な事態に陥る可能性があって、その意味での危機意識を国会議員の先生方にも、まあ持っていただいていると思いますけれども、ぜひ対応していただきたいという希望を申し上げておきたいと思います。
 さて、第三番目は社会保障についてであります。
 これについては、今どこでも、長期安定的な社会保障のビジョンというのが強く求められるようになりました。これは少子高齢化ということもありますけれども、新しく福祉需要が国民の暮らしの中から高まっている。ジェンダーエクイティーの問題もそうでありますし、今まで、企業に依存するとか地域社会に依存する、これでもって何とかカバーしてきたそういう福祉構造が、今、企業社会の見直しであるとか企業城下町の見直しであるとかいったものの進行過程で崩れてきた。そこから、非常に強い、揺りかごから墓場に至る社会保障の需要というものが高まっているわけでありまして、これに少なくとも方向性を出して対応しなければいけない。
 ところが、今回の予算案の社会保障であるとか国民の生活にかかわる分野、これに目を向けますと、例えば、一番大きな問題になりました医療費の抑制、それから、学生でありますと授業料値上げであるとか無利子奨学生の削減であるとか、あるいは児童扶養手当の削減であるとか、そういう、むしろ社会保障を抑制するような、あるいは構造的に将来ゆがみをつくり出すような流れ、そういう構造をつくり出している。
 特に医療費について、これは小泉首相御自身も認めていらっしゃいますけれども、健保本人三割自己負担。三割自己負担というのは、もう社会保障としては限界状況まで来ている。ここまでやって、かつ、せんだっての政府と自民党の合意でしたか、文書を見ますと、さらに、診療報酬体系の見直し、あるいは公的な保険給付の範囲の見直しであるとか、また、高齢者医療制度の創設であるとか、懸案の課題ではありましたけれども、文字どおり医療保険の構造を大きく切りかえる。構造の切りかえというのは、私自身は、全体として今までの医療保険の構造を介護保険のような形に切りかえることだというふうに理解をしておりますけれども、その方向を打ち出しながら、国民の負担を、健保本人につきましても老人につきましてもふやした。これは非常に大きな、つまり、ことしの政府予算案が、長い社会保障の歴史の中で影を落とした一つのあらわれだというふうに思っています。
 ですから、医療制度を中心にして、これからむしろ社会保障の充実が国民サイドから求められているわけでありますから、それをもっときちっと積極的方向を示さなければいけないというふうに思います。
 さて、第四番目は地方財政の問題であります。
 地方自治の視点から見ると、予算案は、自治体行政が今陥っている、簡単に言ってしまえば、財政危機であるとか分権化に伴ってふえる行政需要への対応、これらの諸課題を中央の方からバックアップするということにおくれをとっているといいますか、先ほど言った言葉で言えば逆行しているというふうに思います。
 とりわけその具体的なあらわれは、これは地域に行きますと非常に大きな問題として主張されておりますが、地方交付税の算定の見直しですね。つまり、小規模自治体に非常に冷たいいわゆる段階補正の見直し。それから、交付税を誘導手段に使って市町村合併を強引にやる、こういう方策が出てきております。
 朝日新聞の二月十三日付でありますけれども、富山県福岡町の石沢義文さんという町長さんが、「交付税が少なくなれば、税収の少ない町はどう生きていけばいいのか。兵糧攻めで自治体を合併に追い込む国のやり方はおかしい」こういうふうにおっしゃっているわけでありますけれども、まさにこのような声に耳を傾けなければいけないというふうに思います。
 最後、時間がなくなりましたので、財政危機にだけ触れて終わりたいと思います。
 御存じのとおり、地方もそうですけれども、今回の予算案で国債発行枠三十兆円というのを出発点にしましたけれども、実際には財政危機というのはさらに深刻化しています。赤字国債の発行は二十三・二兆円でありますけれども、これは規模からいたしますと過去二番目の水準のものでありまして、先ほどから問題になっていますように、国債残高は四百十四兆円、国、地方の累積債務残高も七百兆円に近づく。こういう状況で、財務省の試算によりますと、これから〇・五から二・五%程度の成長を見込んだとしても、二〇〇五年、歳入不足は四十兆円ぐらいに達する、こういう状況であります。
 今、この委員会でも、ODA疑惑の問題であるとか、あるいは軍事費だとか公共事業の浪費だとかむだ、こういったことを問題にされているようでありますけれども、そういう浪費だとかむだの構造を剔抉して、税収面でも、不況の打開とあわせて、回復を示すような方策が求められているのではないかということを申し上げまして、私の意見にしたいと思います。
 失礼しました。(拍手)
津島委員長 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
津島委員長 これより公述人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中本太衛君。
中本委員 自由民主党の中本太衛でございます。
 本日は、公述人の皆様方、お忙しい中ありがとうございます。時間が短いということなので、早速質問をさせていただきます。
 最初に、小野先生に質問させていただきます。
 先生から公共事業の効率化というお話をしていただきましたけれども、私、予算そのものが余り効率的ではないと思っております。それは、日本の予算のあり方が単年度会計であるからということでございます。国会の議決を経た明許繰り越しであるとか事故繰り越し、それ以外の予算におきましては、年度内に全額使用するか不用を立てるかしなければいけないことになっております。
 先生が先ほど御指摘されました穴を掘って埋めるという事業が行われるのは、やはり単年度会計の弊害だと私自身も思っております。もちろん、憲法にも単年度会計の原則というものが書かれておるわけでございますが、しかし、余った予算のむだ遣いをする余裕は、今の日本にはないと思います。多年度会計への移行も考える時期になっているのではないかと私自身思っておるんですけれども、法的措置も含めて、先生の御意見をお聞かせください。
小野公述人 では、ただいまの点について、私の思うところをお答えいたします。
 全くおっしゃるとおりであると思います。先ほど私がお話しさせていただいた中で申し上げたのは、安定した市場をつくり出すということが重要であって、ですから、ことしはこれだけ買う、来年、いつどれだけ買うかわからない、あるいは、ことしこれだけマーケットができる、来年からはわからない、こういう状態であると、企業は本格的に投資もできなければ、マーケットができるとも思えない。そういう意味でいうと、制度の問題は私は詳しくないのでわかりませんが、たとえ単年度としても、これから本気になってやるんだぞということを示すような政策が必要である。その意味で多年度会計も必要ではないかという気がします。
 あと、お金をつけるということと同時に制度をつくることも重要であって、そうなると、いわゆる会計年度ということ以外に、先ほど省エネ優遇税制みたいな話をしましたけれども、同時にもう一つ申し上げたいのは、例えば環境関係であればリサイクル規格のようなもの、これは何だというと、JIS規格というのがあって、実はJIS規格というのはすごく重要な役割を果たして、スタンダードを決めたから大きなマーケットができて、アジアまで巻き込んで大きなマーケットをつくったわけですね。同じような意味で、例えばリサイクル規格みたいなものをつくるというのは、単年度ではなくて、いわば大きなマーケットという意味でできるんじゃないか。当然ただでは無理ですので、今の御質問の点はもうそのとおりだと思いますけれども、同時にそのことも言える。
 ただし、多年度の場合に重要なのは、それが硬直化するのはまずいから単年度だといういわば原則があったと思うんですね。なぜ硬直化したらまずいかというと、例えば景気がある程度よくなってきた、その段階でも、国はこれだけの権利をとったからこれを維持しなきゃいけないというふうになるのがまずいんだろうと思うんです。
 ですから、多年度にする場合には、例えば民間への圧迫というものがこのぐらいになった場合にはやめるというような条項を入れるのであればいいんじゃないかというふうに思います。
 以上です。
中本委員 小池副会頭、民間人の方から見て、こういった政府の予算のあり方の非効率性を見てどのようなお考えをお持ちか、お聞かせください。
小池公述人 中本先生のおっしゃるとおりでございます。これは、今、小野先生おっしゃったとおりでございまして、要するに、単年度会計の弊害は既に出ておりますので、そういう点は我々民間側からも同じことが言えるかというふうに思います。よろしいでしょうか。
中本委員 先生方のお話で、本当に、小泉内閣に対する厳しい御指摘というものがお聞かせ願えたと思います。
 ただ、私自身も思いますのは、幾ら構造改革を行ったとしても、国の予算、支出というものが八十一兆、それを税収どおり四十七兆まで持っていくことはおろか、プライマリーバランスの均衡化というのはなかなか難しいと思いますし、また、これは近い将来のうちには不可能かなといった感じがいたします。
 その中で、積極財政、デフレ対策というものを先生方おっしゃられておるわけでございますけれども、減税、減税というお話がたくさん出ました。ただ、逆に、そうして考えていけば、予算という考えからすると、税収、歳入の方は一体大丈夫なのかな、そういったことはどうすればいいのかなといった感じがいたします。
 最後の二宮先生のお話の中で、社会保障負担がもう限界だというお話をいただいておりますけれども、他国との比較をしてみれば、日本の対所得国民負担というものが大体アメリカと同じぐらい、イギリス、フランス、ドイツに比べれば圧倒的に低い状況になっているのかなという感じがいたします。
 まだまだ税収をふやすという余地はあるのではないか、そういった観点から例えば税収のことを考えた場合、新税の創設であるとか、また、増税の是非、これに関して、菊池先生、お聞かせ願えればありがたいと思います。
菊池公述人 確かに、中本先生おっしゃるとおり、減税して景気を刺激していく、そういうことは必要なんですけれども、では、税収をどういうふうに上げていくか、これは一番重要なことだと思います。
 私が思いますことは、まず第一に、現在、所得税でまず見ますと、税収の構造が随分ゆがんでいるんじゃないかと思います。一つよく言われますのは、所得税の課税最低限をもう少し下げてもいいんじゃないかということなんですね。
 これにつきましては、私は実は賛成でございます。学生とも接しておりますし、それから学生のOG、あるいはどこかで会った若い男性なんかに意識して聞いたりするんですけれども、これについてははっきりと、いや、私どもは税金を余り払わなくていいから旅行もできるんですよなんということを学生から聞いたこともあります。ですから、いろいろな面で、そういった単身者、可処分所得の高い人たちに対しては税率が低過ぎるんじゃないか、課税最低限の引き下げということは考えてもいいんじゃないか。
 しかし、もしこれを実行されるのであれば、現段階では、やはり中間層の、家族を抱えて、子供も学齢期に入っているそういう人たち、デフレでかえって負担がふえていますから、そういう人たちの減税とかいうことも考えなきゃいけないのではないかと思います。
 それから、先ほどから、単年度じゃなくて二年、三年必要じゃないかということでございますが、税収それから政府の支出、税収効果、そういうものについては、少なくとも二、三年をレンジにしてきちっと把握していく、そういう考え方を植えつけていく必要があろうかと思います。
中本委員 ありがとうございました。
津島委員長 次に、赤松正雄君。
赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。
 四人の公述人の皆様、きょうは、非常に刺激的な、示唆に富んだお話、本当にありがとうございました。
 時間の制約もありますので、私は、小野公述人と小池公述人、お二人に絞らせていただいてお話を伺わせていただきたいと思います。
 さっき、小野先生からはデフレ助長予算、また、二宮先生からは改革逆行予算という非常に手厳しい評価が下されました。私は、三歩前進を表示して、二歩後退一歩前進小泉内閣、こういうふうに勝手に思っているんですけれども、それはどうでもよろしい。
 まず、小野公述人、実は、さっき部屋に帰りましたら、先生の本がどなたからか届けられておりました。今慌てて全部を読もうとしたんですけれども、全部は読めませんので、一番最後の、今やるべきことは何かというところだけしっかり読ませていただきました。今やるべきことは、小野先生を経済担当大臣にするべきなのかなという気も、さっきのお話を聞いていていたしておりましたけれども、この中で三つおっしゃっております。これについて、私、もう少し補足をこの場でしていただきたいなという気がいたしますので、三つについてお伺いします。
 まず一つは、これからの日本経済に必要なのは、さっきのお話にもありましたけれども、生産優先から生活優先へ。この言葉はしばしば我々も使いますし、ある意味で、失礼ですけれども、非常に手あかのついた言い方だと思うんですね。ここでお聞きしたいのは、現在の制度は、省庁の構成にしても税制にしても、生産優先である、生活優先じゃない、こうおっしゃっているんで、生活優先の省庁のありよう、また、税制のありようというものについてお聞かせ願いたいと思います。
 それから、二つ目の、人材の活用が重要だとおっしゃっていますけれども、これもちょっと茫漠としておりまして、三番目のことと絡むのかなという気がするんですが、人材を生かす政策の具体的ありようというものについて簡潔に教えていただきたいと思います。
 それから、三つ目は、要するに不況期こそチャンスだというお話ですね、それで、残された重要な事業は幾らでもあると。さっき先生もアイデアの壮絶な競争というようなことをおっしゃっていた。こっちで私がアイデアを述べるべきなんでしょうけれども、先生、さっきお時間がなかったんで、そういう不況期になすべき課題について、残された宿題について若干お考えを聞かせていただきたい。以上三点です。
小野公述人 それでは、ちゃんと答えられるかどうかわかりませんが、お答えさせていただきます。
 まず最初に、生活優先というのはどういう意味であるかということについてですが、一つ例でお答えのかわりにさせていただこうと思います。
 例えばITということ、これもやはり使い古されている。現竹中大臣も、昔、ITということをさんざんおっしゃったと思うんですが、そこでITというのは二つある。一つは、流通を効率化する、あるいは生産の例えばロボット化であるとか、要するに人を使わないようにする、こういうITであります。
 私は、そこの本の中でも書いた生活優先というのは、同じITでも全然別のがあるだろうと。それは楽しいITだ。例えば、今私はコンピューターを持っていますが、そこでインターネットでいろいろ見るということ自身が、いわば商取引を超えて、いろいろな情報が入ってきておもしろいというのがある。そうすると、かつて日本の生活の中に電気製品がどんどん入ってきたように、IT関連でいかに生活が豊かになるかということは、専門家の方だったら随分夢があると思うんですね。
 そうすると、そういう生産効率を上げるためのITではなくて、それによってどんなに生活が楽しくなるかということを具体的に見せていく、それで、それが欲しいなというふうに思わせるような状態にしていく、それで物を買い出すと実は景気が上がっていく、それが先ほどのメカニズムです。例えばそういう発想がいろいろな場面であるのではないか。
 税制の問題については、やはりそこで書きましたけれども、例えば生産側のトラックやディーゼルに対しては低い税で、普通の自動車に対しては高い、あるいは高速道路料金もそういう形である、これはやはり全然反対だと思うんですね。そういうような、すべて含めて、個々にいろいろあるのではないかということであります。
 それから、二番目の人材活用について具体的に言え、こういうふうにおっしゃっていたと思うんですが、正直言って、私自身がそういうアイデアがあったらどんどん出していきたいんですが、あるいはもっと言うと、では、私が企業を創設してどんどんやればいい。
 ただ、一つ申し上げたいのは、少なくとも、今小泉政権がやっているように、家で寝かせていて、その分社会保障を充実するというより、それを基準に考えてみようと。そうしたら、皆さん、大胆にいろいろなことが言えるんじゃないか。まさにそのことを申し上げたかったということであります。
 済みません、もうやめた方がよろしいんでしょうか。
津島委員長 いえ、どうぞ。時間ありますので。
小野公述人 いいですか、済みません。
 最後の点、不況期こそがチャンスであるということで、では、具体的にどういう政策があるか。
 これについても、先ほどちょっと申し上げましたけれども、私は、環境関係のことについて大きなマーケットがあるんじゃないかということを申し上げたんです。これは何十兆というオーダー、あるいはもっとすごいオーダーである。そうすると、社会保障で毎年一兆出すぐらいなら、あるいは、かつての橋本政権のときに十兆円も減税していっているんですが、それだったら、今後毎年十年間一兆円ずつ、例えば産廃施設、ごみ処理施設を直していくということを言ったとすると、これはごみ処理関係の企業にとっては大変な市場だ。それで投資が起こると、実は将来の戦略産業にもなるんじゃないか。
 そういうような意味で言うと、何しろ家で寝かすよりましなものというふうにして、安心していろいろなアイデアを例えばインターネットで皆さんが集めるとか、そういうことをやっただけでも随分出てくるのではないか、そういうふうに思います。
 以上です。
赤松(正)委員 ありがとうございました。
 小池公述人にお伺いいたします。
 先ほどのお話の中で、平成十四年度予算編成に当たって、四項目を重点とした対策費を計上されたということについては適切な対応であったと言える、こういう御評価がございました。その中で、中長期的な課題としてのいわば中小企業の創業支援、あるいは中小企業の新事業への挑戦、努力を支援する経営革新支援ですか、それからまた、中心市街地、商店街の活性化。これはいずれも、お金を多少つけたからといってなかなか難しい課題だと思うんですが、この三つについて、現場で商工会議所の副会頭をなさっているお立場から、アイデアといいますか何かお考えがありましたら聞かせていただきたいと思います。
小池公述人 まず第一に、創業支援の問題でございますけれども、これは、日本について申し上げますと、一九九六年から九九年の開業率は四・一%、それから廃業率は五・九%。大変政府で、創業・ベンチャーフォーラムなど、いろいろと支援策を打ち出していますけれども、必ずしもその成果が上がっていないというのが現状でございます。
 これは、一つこういうことをやればこうだということじゃなくて、ここにデータがございますけれども、スイス・ローザンヌにあります国際経営開発研究所、IMDの調査によりますと、四十九カ国でございますが、四十九カ国中、日本の場合、大学教育の充実度、これが四十九番目。開業のしやすさ、これも四十九番目。新規事業の志向度、これも四十九番目。それから産学連携が三十二番目、ビジネスの効率度は三十位と、まさに創業条件が非常に基盤としてできていないということにあるかと思います。
 これは単に創業の志というだけじゃなくて、大学教育の問題だとか、例えば学生時代からインターンシップ制度で企業に行って勉強する、こういうようなことが欠けているわけでございます。
 例えば、私の住宅の近くに工業大学がございますけれども、そこの学生が焼き鳥屋でアルバイトしているんです。私は、工学部の学生だったら、すぐ近くに旋盤のうなっている工場があるから、そこでアルバイトしたらどうか、こういうふうなこともその青年に言うことがあるわけでございますが、そういう青年の時代から創業の志と結びつくようなアルバイトの仕方だとか、それからそういう大学の雰囲気、こういうものがないと、これはなかなか難しい。
 したがって、大阪商工会議所では、キッズ・マートということで、小学生に、一定の日にちを設定して、現実に商品を与えて、それからお金も与えて商売をする訓練をしているわけなんです。私は、やはりそういう教育が必要だというふうに思っております。
 それから、産官学の連携が現実にはなかなかできていない。TLOがようやく各地区で始まっておりますし、大阪でも、大阪TLO、関西TLO、あるいは兵庫TLOというふうな形で技術移転機関ができてきつつありますけれども、まだまだスタートしたばかりで、研究開発の技術というのは、日本は大変すぐれているわけでございます。米国で取った特許のうち七つまでが日本企業だ。そういう意味で、研究開発の能力は、今、先ほどのデータでも日本は二番目という状況にございますが、これは、学内あるいは企業の研究部門にとどまって、実用に向けて商品が具体的につくられるということに結びついていないという点があるかと思います。こういう点が一つ。
 それから、経営革新でございますけれども、これにつきましては、政府もいろいろの形で、SPIRだとか支援制度、それからまた、それに対する助成措置を行っておりますけれども、これは開業精神と全くイコールしていることでございまして、いずれにしても、担保によってお金を借りるということから、経営の成長時に対して支援をしていただく、こういう基盤をつくっていくという種を現在まいている最中で、これが実るのは相当先じゃないか。これができるようになりますと、日本の経済力は活性化してくるというふうに思います。
 それから、商店街の活性化の問題でございますけれども、簡単に申し上げますと、高齢化が大きい問題でございます。
 現在、大阪の商店街、非常に著名な商店街がたくさんございますけれども、ほとんど高齢化が進行しておりまして、おじいさん、おばあさんがその店を守っているということで、若い人たちが商店を継ごうというふうな形になっていない。したがって、承継税制だとか、そのほか魅力ある、ITの問題もそうでございますが、そういうことに対して高齢者の場合は関心を持っていないということでございますので、やはりその辺から基本的にやり直さないと。商店街の活性化、これは高齢化がぐんぐん進んでおりますから、例えば二〇〇〇年では六十五歳以上の人が一七・四%、二〇二五年には二八・七%、二〇五〇年には三五・七%というレベルになりますので、やはり商店街はいずれにしても縮小していく傾向にございます。その後をどう埋めていくかというのは、保育所をつくるとかいろいろの形もございますので、その変更もしていく必要があるんじゃないか。
 以上でございます。
赤松(正)委員 ありがとうございました。終わります。
津島委員長 次に、井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 私は、菊池公述人に御質問をいたしたいと思うのであります。
 今日のような経済情勢になりますと、財政金融政策を総動員して対策をとっていく、そういう意味では、先生の言っておられることはまことにオーソドックスだと思うのでありますけれども、日本の財政状況なりあるいは金融関係の状況というのは、なかなかフリーハンドのそういう政策をとるということが難しくなってきていると思うんですね。
 確かに、おっしゃいますように、国債について言いますと、国債の発行残高は大きいとはいったって、純負債というんですか、そういうものから見たら必ずしもそう大きくはないので、まだまだ発行していく余地があるんじゃないか、このようなお考えかと思うのでありますけれども、しかし、そうはいいましても、国債の格付機関がどんどん格付のランクを下げてくるとか、あるいは国債価格に影響を与えてくるというようになりますと、なかなかそうもいかないと私は思うんですね。
 今の日本の国債の発行状況、例えば平成十四年度は三十兆円ですけれども、建設国債が十兆円足らずでありまして、特例国債が二十兆です。建設国債というのは、御承知のとおり、残るものをつくる、そういう財源に充てられるものでありますけれども、二十兆の国債相当部分というのは、社会福祉を初め、そういう経費に充てられているものなんですね。だから、こういうようなものが歳出の中に構造的に組み入れられてきますと、これはなかなか、そういう構造を脱出するというのは難しくなってくるんじゃないかと思うんですが、そういうような懸念は持っておられないのかどうかというのが第一点と、もう一つは、積極的に財政を拡大していく、そのために国債を発行していった場合に、どういうところに投資をするといいますか、使っていくのか、お考えがあったらお聞かせいただきたいと思います。
菊池公述人 今、井上先生のおっしゃられた点についてでございますが、確かに現下の情勢で、私はやはり、先ほど申し上げましたとおり、財政支出なくしてこのデフレは解消できないということだと思います。
 それで、まず国債の格付でございますけれども、この格付について、日本でも、世論といいますか、新聞等を拝見していましていつも感じることは、何か、国債の発行高が非常に多いんだ、そればかりで、結果的に格付が下げられるような論調が多いんです。これは本当によく読んでみますと、格付機関で御存じのムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズ、SPと両方ございますけれども、ムーディーズはかなり総債務的なものにウエートを置いていることもあります。しかしながら、ムーディーズもそれからスタンダード・アンド・プアーズも格付を下げなければならない理由は、結局、デフレ傾向が出ているんだということなんですね。ですから、デフレ政策をとっては絶対にまずい。
 それで、何を指標にしているかといえば、結局は、分母にGDP、国内総生産を持ってきて、分子に純債務。SP、スタンダード・アンド・プアーズは完全に純債務でこれは見ております。それから、ムーディーズの場合は総債務のウエートが少し高いんですけれども、ムーディーズは、はっきり申し上げましてかなり日本には厳しい評価をいつもしてくる、いろいろな考え方があるんだと思いますけれども、そういうことであることは事実だと思います。
 そこで問題なのは、我々が認識しなければいけないのは、いつも、国債の発行高が多いんだ、だからそれを落としていかないといけないんだ、だから、例えば、一つは三十兆円の枠だ、こういうふうに来てしまうんですね、発想が。しかし、問題は、実体経済がこういうデフレ傾向になってくると、結果としてそういう比率が上がるでしょう。上がるということは、逆に言うと分母のGDPが名目で落ちるからですよ、端的に言うとそういうことなんですね。ですから、基本的に、まず我々の認識として、原点に戻りますけれども、このデフレ政策に対して徹底的な反省をしていかなければいけないんじゃないかということが一つあります。
 それから、これは即のお答えにはならないかもしれないと思いますが、もう一つ我々が強く認識しなければいけないことは、では、なぜデフレ傾向が強まっているかということになりますと、例えば減損会計とか時価会計、これを今並行してやっているわけですね。時価会計は、金融機関についてはもうことしの三月、強制することになっている。しかし、これ、一種のグローバリズムでずっと来ているわけでございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、一九三〇年代の後半、デフレから解消するときに、アメリカなんかは金融機関に対しては時価会計の採用を取っ払っているわけです。ですから、日本でも、何もそういうものを一挙に入れることはないわけです。
 何かこのデフレ傾向の一つの背後には、こういったグローバリズムに対して、日本の国益に本当に合っているかどうか、こういうことを考えずに、言葉がちょっときついかもしれませんけれども、盲従しているところがあるんじゃないか、そういうことについては本当に反省をしてみる必要があるんじゃないか。
 ですから、私は、このデフレ対策に対しましては五年計画としまして、ペイオフについてもそうなんです、ペイオフも減損会計も時価会計も五年間延期する、このぐらい思い切ってやる必要があると思います。
 ペイオフについても大変誤解があるわけですね。ペイオフというのは、もともと金融を安定化させるために一九三四年の一月にルーズベルトが導入して、それを入れた途端にみんな、たんす預金、アメリカではマットの下、マネー・アンダー・ザ・マットと言うらしいですが、そのお金を銀行に持ってきたんだ。だから、金融を安定化させるための政策だったわけです。
 ところが、今はどうかといいますと、このペイオフというものを一つの武器として金融機関の整理をしていくということなんですが、結果としては、デフレを加速するどころか信用収縮を加速する。言うならば、国民におどしをかけて、そして効率化を進めようとしている、これは全くの逆行じゃないか、これは大変なデフレ効果だと私は思います。
 ですから、この四月一日からもう実行するならば、制度上はしようがないかもしれませんけれども、これは事実上五年延期するということは総理の判断でできると思います。そういうことをきちっとして総合策を考える必要があるというふうに私は思います。
 それから、国債の問題につきましても、確かに今後、今経費の問題とかそういうのもございましたから、建設国債なんかのこういった問題について、一挙には落とせない、これはどうなるかですけれども。
 それじゃ過去の、例えば九九年から二〇〇〇年にかけての状況を見ますと、二〇〇〇年度というのは税収が五十・七兆円に乗っております。それで、このときの法人税が七・七兆円増収になっておりますから、確実に九九年から二〇〇〇年にかけて積極財政をとった。補正でも、九九年のあの補正では、真水で九兆出していると思います。こういうのは効果は出ているんですね。ですから、それを減額しないで続けていたら、こういうデフレ傾向にはならなかったと思います。それと、そういった総合的なこと。
 ですから、その辺のところをきちっと考えて、真剣に今デフレ対策を考える、これが一番重要なことじゃないかと私は思います。
井上(喜)委員 それから、金融政策でありますけれども、同じく菊池公述人にお伺いしたいんであります。
 金融政策、日本銀行は非常に緩和をしている、こういうことでありまして、今じゃぶじゃぶ金融機関にお金がたまっているんだということを言うんですね。もっと超緩和をすればというような意見もありますけれども、余り金融政策というのは効果がないんじゃないかというような意見もあるわけです。
 菊池公述人はどういう金融政策をお考えなのか、それはどの程度の効果があるものなのか、お伺いをいたしたいと思います。
菊池公述人 金融政策でございますけれども、日本銀行が今盛んに、これはもう限度だということを言っておるわけでございますけれども、私はこういうふうに考えております。
 流動性のわなという表現がございますね。これは確かに金利が非常に下がってしまっている。それで、量的にもかなり自由にあるんだ。しかしながら、それについて、では、それを使って設備投資でもしようかと思っても、金利がこんなに安い、また下がるかもしれぬというような懸念だとか、それから、いつでも使えるんじゃないかというような懸念があるから、結局、なかなかそういう設備投資とか投資にお金が向かないんだ。だから金融政策はもうこれ以上無理なんだというのが、流動性のわなという、政策面から言った一つの言葉だと思うんです。
 確かに、現在、通貨供給量はかなりふえてはきたと思います。しかし、これが実体経済に進んでいかない理由は二つあると思うんですね。
 一つは、やはり需要を喚起するような政策、あるいはそういう社会的なムードといいますか、端的に言えば、デフレではなくてインフレ的な傾向。今買ったら、将来利益は上がる、投資収益率は上がるんだ、こういうムードがないわけですね。むしろデフレ。小泉政策というものは、はっきり言えばデフレ政策を強化してきたわけですから、これをこの際思い切って転換するんであれば、先ほど申したような政策をとって、将来に対しても、インフレといいますか、インフレと言うと言葉が悪いんですが、一九三〇年代のアメリカでは、先ほどお話ししたとおり、リフレ政策。リフレというのは、落ちたものを引き上げるわけですね。そういうふうにして正常な形に戻すんだということをしっかりととる。そして、やはり需要喚起政策を並行してやらないといけないだろうと思います。そうしませんと、これだけ不況が落ち込んでおりますから、そういうことができないんじゃないか。
 それからもう一つは、幾ら緩めても、例えば中小企業とか必要な人にお金が行かないというのは、結局は、金融システムの問題もあるんですが、金融機関自身が、例えばBIS規制というような規制があって、自己資本比率規制で、自己資本比率規制というのは、自己資本の一定の倍率しかお金を貸しちゃいけないと。八%のところにおったら十二・五倍ですし、四%のところにおったら二十五倍です、融資限度額規制ですね。不況になりますと自己資本が減ってきます。そうすると、当然融資限度額も減ってきますから、金融機関自身が貸せなくなってしまうわけです。これは特に中小金融機関はそうです。
 ですから、このBIS規制というようなものについても、中小金融機関に対しては適用しないと。確かに自己資本規制というのは行政上は必要ですから、一つのメルクマールとしては使う。しかし、それをもって金融機関を追い込むようなことをせずに、先ほど申し上げたとおり、三年とか五年のレンジで増資をちゃんとさせる、再編成をさせる、そういう条件をつけて、そして、そのレンジで金融機関にも努力をさせる。
 今、金融機関にそういう融資限度額規制なんかで追い打ちをかけているものですから、そちらの面からも金融機関が今度はお金を貸せなくなってしまう。デフレでリスクはとれない。一方、そっちの金融機関自身も貸せなくなる。何かダブルパンチになってしまう。だから、金が入れられてもこれ以上回らないということです。
 しかし、やはりデフレを解消するためには、財政政策、金融政策、金融も一段といろいろな角度で緩めなきゃならないことは事実です。それから、両者がもっと相まって一元的な政策を立てていく、ここを強く私はお願いしたいなと思っております。
井上(喜)委員 どうもありがとうございました。
 他の公述人の皆さん方には、時間の関係で御質問できませんので御了承いただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。
津島委員長 次に、野田佳彦君。
    〔委員長退席、北村(直)委員長代理着席〕
野田(佳)委員 民主党の野田佳彦でございます。
 四名の公述人の皆様におかれましては、大変お忙しいところお時間をお割きいただいて、大変貴重な、示唆に富んだ御意見を御開陳いただきまして、心から感謝申し上げたいと思います。
 お話をされた順番にお聞きをしていきたいというふうに思います。一問一答でいきますので、ゆっくりとお答えいただいて結構だと思います。
 まず、菊池公述人にお尋ねをしたいんですが、お話をされた、デフレスパイラルにもうとっくに入ってしまっているという認識であるとか、中小企業金融は地獄絵である、金融庁検査が地方をつぶすとか、こういう認識は、基本的には私も一緒でございます。その意味では、問題意識が共有できると思ったんです。
 ただ、少しわかりにくかったのが冒頭の御発言でございまして、この平成十四年度予算、基本的には賛成というお立場なんですね。ですけれども、本当にデフレを根絶するんだったら積極型補正予算が必要とおっしゃっているわけであって、ということは、やはり今回の本予算は欠陥があるということではないでしょうか。本当に積極型補正予算を今の時期から必要だと認識しているんだったら、今のうち、この欠陥をできるだけ是正して組み替えをするのが私は筋だと思うんですけれども、その辺が少しわからなかったものですから、お話をお聞きしたいと思います。
菊池公述人 お答えを申し上げます。
 確かに、冒頭、賛成であると申し上げて、実は問題点を多々申し上げましたので、果たして賛成なのか反対なのかわからないという御印象をお持ちだったかと思います。公述人の立場から、組み替えていただきたいとかいうようなことまでは、僣越で申し上げられないと思いますので。
 ただ、私が思いますことは、現在、やはりとにかく予算案を早く通していただいて、次いで、デフレ対策をもう今、本日この日に政府が発表されたということは、現在の経済政策の大前提である、デフレ政策をとって構造改革を進めようというのが小泉経済政策の根幹だと解釈しておりますから、そうであれば、大前提をこれで少し見直さなきゃいけないんだということになってきたと思います。ですから、では原点に戻って、この予算までそこまでいってくださいといっても、これは時限性もございます。したがって、とにかく早く通していただきたい。
 しかし、もうそういうふうに原点に対して見直そうということであれば、これはある意味では、このデフレ対策というものをもっと突き詰めていけば、先ほどから私が申し上げておりますとおり、相当根が深い、しつこいものでございます。ですから、かなり根本的に、抜本的に対策をとり直さなきゃいけないんじゃないか。そうすると時間もかかりますけれども、早い時期にそういうものを具体化していく必要があるんじゃないか。
 ですから、まずは通していただきたい。しかし、その後、もう今、既にきょうスタートしたような時点で、もっとこれを詰めて具体化していただきたいというのが私の意見でございます。
野田(佳)委員 余り突っ込んでいくつもりはないんですけれども、もう少し自分の理解が足りなかったかと思うんですが、日本の資金循環は安定をしていると、国債のお話などもされました。結論的に言うと、金融機関であるとか企業であるとか、政府の穴があいた部分は、個人の金融資産千四百兆円があるから基本的には安心の構造であるということなんだろうと思うんです。
 ただ、金融の御専門の先生に釈迦に説法のことを言ってもしようがないわけですけれども、お金は、要はボーダーレスであって、金利の低いところから高いところへ動きたがるし、それはもう国境を変える可能性だってあるわけです。不安なところより安心なところへ、もっと自由なところへと移動することは十分にあり得るわけで、個人金融資産の千四百兆円を安心材料と見ることはちょっと私は心配じゃないかと思うんですが、この辺の御意見はいかがでしょう。
菊池公述人 先生がおっしゃられた点は、確かに一つの、一番のかなめのポイントだろうと思います。
 それで、現在、この千四百兆がどうしてうまく回らないのかということと、それからもう一つは、そこの資料にも書きましたとおり、国債の保有状況、アメリカなんかに比べてむしろ安定的ではなかろうか。しかしこういう財政危機というようなことが言われている、一体どうなのかということについてですけれども、その点につきましては、確かに、国債というものをもっと活用しよう、あるいは広く売っていこうというような努力ももう一押しまだ足らないんじゃないかな。これはむしろ政府の問題だと思います。
 それで、現在では、日本は間接金融中心でございますから、政府等が持っているという場合に、そこには郵貯がございますね。これは個人の預金の変形でございますから、個人預金が国債を買っているわけです。それから、金融機関の場合にも、そこにあります表でごらんいただきますと、金融機関の持っている保有内容、これは金融機関は、都市銀行とかそれから生保なんかも入っております。そうでございますけれども、民間銀行なんかでも、原資は個人預金でございますから、そういうところでは回ってはいるわけです。
 しかし、もう少し国債を、一つは魅力あるものにする。例えば、先ほど、銀行の株式保有を禁止したらどうだ、すべきだ、私のかねがねの持論でございますが、まだ不十分だ。これについても、買い上げ機構というのがございました。それで、何か最近はまたこれをもっと活用しようと言っておりますけれども、使い勝手が悪いとか、また、一番の問題は、資金は銀行が全部出すからリスクが銀行に残ってしまうじゃないか。これにつきましても、例えば国債を、政府保証債を直接市場で売る。これにつきましては、岩國先生なんかが転換国債というアイデアを出されて、これもかなり話も進んでいるんじゃないかと思いますが、これはきちっと、そういう魅力あるものにして国民に売っていけば、国民はやはり買っていくんじゃないかと思います。ですから、そういうふうにして、幾つかいい意味での味つけをして国債を売っていくこと。
 それから、先生が懸念されておられますキャピタルフライトが起きるんじゃないかということでございますけれども、これについては私自身は余り懸念はしていないんです。
 といいますのはどうしてかというと、やはりそれには大きなリスクがありますし、確かに都会の、ある意味ではそういう面にたけた方はそういうふうに資産を動かすかもしれません。しかしながら、一般の日本人はまだまだ円でうまく、少しでも利回りがよくいかないだろうかということを考えておりますから、そういった極端なケースが出る前にやはりきちっとすべきだ。
 それから、国債について一番大切なことは、国債管理政策をきちっと確立することです。
 それで、アメリカの例、ごらんのとおり、アメリカは三四%も海外が持っておりますけれども、これは、一九三〇年代後半から今日に至るまで、中央銀行が、長期金利、つまり長期国債の先物のオペレーションは常に管理して、むしろ相場をつくっておる、そして財政負担の軽減まで考えてつくっておる。安定度とコストまで考えるということです。そこを日本がしなければいけない状況になってきているんじゃないかと思います。
 そういうことをきちっと考えれば、私は、この千四百兆というものをもっともっと、結果的に、国債を通して実体の経済に活用できる。活用できて、その結果必ず税収が上がるような形、さっき申し上げたとおり、減税でも、投資減税だとかそういったものに含めていけばいいのではないか、こういうふうに考えております。
野田(佳)委員 では、もう一問ちょっとお聞きしたいと思います。
 この後にお話をお伺いする小野公述人は、いわゆる調整インフレ論、この時期の金融政策は全く意味がないという一刀両断のお話でございましたが、先生はどのようにお考えでしょうか。
菊池公述人 調整インフレ論というのをどういうふうに解釈するかでございます。
 単に、経済の成長性が伴わない、つまり実質国民所得がふえないで、ただただ物価だけが上がっていくということであれば、これはやはりマイナスの効果が大きいと思います。しかし、実体経済を引き上げながら物価も上がっていくということであれば、これは結果としては大きなプラスになるわけで、むしろそういう方向へ持っていくべきだ。
 それで、やはり物価を上げないと、つまり、リフレ政策で物価を上げて名目国民所得を上げない限り現在の我々の窮状は救えないんじゃないか、このことだけはしっかりと我々は念頭に置いて考えるべきじゃないかと思います。それが調整インフレだろうとリフレ政策だろうと、いろいろありますけれども、実体経済の生産性を上げて、結局、経済活動を活発にする、そしてそれが税収の増加にもなる、そういう方向を三年から五年のレンジできちっと考えて、そしてそういう政策をとっていく、そうすれば、物価も必ず私は上がってくると思います。需要が伸びてくれば物価は上がってくるわけですから。ですから、そういう意味では、結果としてそれが、調整インフレという言葉かどうかは別にしまして、私はリフレ政策と言いたいんですけれども、必要以上にデフレで落ちている物価を、まさにリフトで引き上げて、正常に戻して軌道に乗せるんだ、こういう考えに立ってそうすべきじゃないか。
 くどいようですが、とにかく名目GDPをふやす、これをしなければ、全体で窮状は救えないと思います。
野田(佳)委員 次に、小野先生にお尋ねをしたいんです。
 小野先生の基本的な立場は、今回の予算で一応国債の発行枠三十兆円とありましたけれども、恐らくそんなのは意味がないというふうに思っていらっしゃるお立場だろうと思うのですね。実態としても、隠れ借金がありますので、三十兆円は事実上突破しているわけなんですが、不況期における国債の発行は次世代に負担を残さないという論説をたしか以前見たような記憶があるんですが、その辺をちょっとわかりやすく御説明いただければありがたいと思います。
小野公述人 お答えしますが、その前に一言だけ申し上げたいんですが、先ほどの調整インフレを一刀両断ということで。
 私がちょっとそのことについて申し上げたいのは、インフレを起こさなきゃだめなんです。それは確かなんです。インフレというのは、ひどいインフレじゃなくて、わずかなインフレ。ただ、今の金融緩和の状態では、インフレは起こらないばかりか、害だけがあるということで一刀両断した。その意味では、菊池さんのおっしゃったことと全く同じ意見を私は持っています。
 それはちょっとおいておきまして、今の国債次世代負担の問題。
 これは、前に、九八年にもやはりここにお招きいただいて、その話をちょっとしたんですが、そのときは、次世代負担というより国民負担という話があった。国民負担というのは全くでたらめであるということをそこで私は強調しました。それは何かといったら、簡単でありまして、国債が存在しているということは、それは民間部門にとっては、その分もちろん資産である。ところが、政府にとっては、イグザクトリー・ザ・セイム、ちょうど同じ額で負債である。合計すれば消えるんだから、国民負担というけれども、これは、政府の負債ではあるけれども日本国の負債では全然ないということを申し上げて、その後、国民負担という言葉はしばらくして消えました。それで、最近になってそれがよみがえって、しかし、同じ国民負担というのは芸がないので、今度は次世代負担ということになった。これも実は全く同じことであります。
 そのことを簡単に御説明しますと、こういうことであります。
 次世代負担があるというのは、現在世代が国債を発行して、現在世代はいい、なぜかといえば国債だけ資産がふえるじゃないか、その分だけ自由自在に使えるだろう、ところが税金を払う次世代はどうだ、けしからぬじゃないか、こういう話だと思うのです。
 国債が残っているからこそ、次世代は税金を払わなきゃいけないんですね。ところが、国債が残っているということは、資産としての国債が現在世代から次世代に回っているということです。もしそれが回っていなければ、そもそも国債を返す必要がない。なぜかといえば、国債がないわけですから。
 要するに、次世代負担の問題というのは税金を払うことだけが目につくんです。それだけを見て負担だ、こう思うのですが、実は、現在世代から引き継ぐ資産は、そのまま、国債分だけ大きいわけです。現在世代、例えば私が死んだとして、息子に残すときに、もし国債を持っていたら、私は冥途には国債は持っていけないわけで、必ず息子の世代に回すわけですから。それで、その国債分を息子は税金で払う。だから、これも国民負担と全く同じ話で、そういう意味で次世代負担と言うのはうそだ、つまり、税金をその分だけ増税しなきゃいけないから負担と言うんだけれども、その分の資産は必ず前の世代から、マーケットによる収入や相続税による財政資金の増加あるいは直接的な遺産相続を通して受けている、こういう話であります。
 ちょっと複雑な話なんです。時間が余りないのでこれでやめますが、もしこれ以上詳しいことを聞いてくださるのでありましたら、私、喜んで、どなたにでもお返事します。
 一つだけ確認したいのは、三十兆円は幾らでも解放していいなんということは私は思っていません。それは、次世代負担論や国民負担論で国債をコストだと言うのは全くのうそであるということはずっと言っていますが、これも菊池先生とかなりシェアしますけれども、国債は資産として非常に重要だ、しかも、どういう資産かというと、金融資産である。これは、日銀券を日本銀行が発行しているように、国債はいわば政府が発行しているお金であります。ちなみに、お金という意味でいったら、実は、バブル期は民間も発行していた。それは、バブル分の株価であり、あるいは土地の権利書だったわけです。つまり信用ということです。それで、その信用を保つことが非常に重要であるということで、その意味でいうと、幾らでも発行していいというのは、逆に言えば、日銀が幾らでも金を発行すればいいという話とつながってきて、そんなことはないということであります。
 以上です。
野田(佳)委員 また、先ほどのお話の中で先生が、小泉さんのやっている、例えば雇用対策に対して批判的だったのは、要は、臨時雇い的なそんなものばかりじゃ意味がないということをおっしゃりたかったんだと思うのですね。もっと長期的に、本当にいい仕事だと思って就業できるものをつくれというお話だったと解釈をしたのですけれども、その中で、事例として産廃の問題とか取り上げていらっしゃいました。
 要は、我々が何をして食っていくのかという極めて戦略的な問題、これは大事な問題だと思うのですが、先ほどの事例だけじゃなくて、もう少しその辺の御示唆をいただければありがたいというふうに思います。
小野公述人 正直申し上げて、技術的な知識は私は欠けているので、それについて、例えばこの産業がいいというふうに私は言うことはできないのですが、これは正直、そうであります。
 ただ、先ほど申し上げましたけれども、少なくとも今のような政策で、失業者をふやして失業手当をするとか、あるいは臨時雇いで、それが森林の作業員、それから駐車場の駐車の違反取り締まり官、これをふやすことより、まともな仕事というのは山のようにあると思うのです。それを着実にやっていく。
 そうすると財政は大変じゃないか、こう言うのですが、私は、十分に税金を取ればいい。先ほどどなたかの御質問で、減税をということでしょうかとおっしゃっていましたが、私は減税派ではなくて、実は減税しても景気効果はないということをずっと言っていて、裏を返すと、増税しても景気を悪化する効果はほとんどないのであります。それは、増税をした分、必ずそのお金で仕事をつくるということを国民にはっきり具体的に示して、そうするとこれだけ所得が来るぞということがわかれば国民は安心するんだけれども、今の方法だと、何か、増税すると、自分は取られて、取られた分、仕事もないくせに、だれか悪いやつのところに行くぞと思っている。そこに不信があるのだろうと思います。ですから、そこのアカウンタビリティーが必要だと思います。
野田(佳)委員 それから、私も先ほど「誤解だらけの構造改革」というのを、部屋に戻ったらあったのですが、後ろの方も見ていませんですから全然内容がわからないのですけれども、表題だけ、目次だけぱあっと見た中で、好況期にはこういう特殊法人改革なんかやるべきだけれども、不況期ではやるべきではないというスタンスの目次がありました。
 私は、特殊法人改革はやはりやるべきだというように思っているのですが、実際の政府のあの合理化計画を見てみると、先生が心配するほどの効果は何も出てこないだろうと思っているのです、逆に言うと。逆に僕はそれは残念に思っているのですけれども。特殊法人改革等の政府の事業を縮めることはおかしいという、その理屈についてぜひお尋ねをしたいと思います。
小野公述人 それは、なぜ政府がやってはいけないかということからまず御説明して、それであれしますが、好況期に政府が余計なことをやる、例えば特殊法人をどんどんふやして、その活動をふやす。そうすると、そういう組織は、利益とかコストとか、何が役立つかとかいうことは余り考えずにできるわけですね。ですから、そういうのを活用されたら困る、これは構造改革の発想であります。私も、まずその点はそのとおりだと思います。
 ただし、では、なぜ好況期にそれがいけないのか。好況期というのは定義上どういうことかといえば、国民はすべて忙しいのであります。暇なことをやっている暇はない。みんな働いている。しかも、旺盛な需要を背景にしていますので、非常に効率的に使われている。その状態なのに、わざわざ、今インフラが足りないから、例えばこれをつくれ、あれをつくれといって連れてくる。これが大変なむだだということで、そういうときにはどんどん特殊法人とかやめてしまえというふうに言うわけです。
 では、今はどうでしょうか。先ほど申し上げた基準は、何もしないで家で寝ている人よりはいいものというのであれば、いろいろなことが考えられるだろう。現に我々は、高齢化の問題もある、ITの問題もある、それから環境の問題もある、いろいろあるわけですね。そうすると、今それをやればいい。そのときに背景として使うのは、実は稼働率の下がった企業であり、それから家で寝ている、家で寝ているというのは変な言い方ですが、失業者であり、そういうことなわけです。
 なぜ今やってはいけないかというと、それは、むだな、悪い部門、つまり、私はあえて特殊法人の効率の悪い部門だと呼びますが、その部門を縮小して事業をやめる。例えば道路をつくるのをどんどんやめる、それで、その後、そのかわりに何ができるかといったら失業者ができる、これがまずいと言っているのであります。
 そのかわりにもっといいものができてくるということであれば、大いにやっていただきたい。でも、今のような状況では、今は、いいものがというか労働者が使えない状態が問題であって、人手不足が問題ではないわけですから、それだったら、まず最初にどんどんカットするのではなくて、どういう事業がいいかということを一生懸命考えることが重要である、そういう意味合いで申し上げたのであります。
野田(佳)委員 もっとその辺、お聞きをしたいところですけれども、せっかくですから、お二人の公述人にもお聞きをしていきたいというふうに思います。
 それでは、小池公述人です。
 大阪の地域経済の現状を踏まえた、本当に身につまされるいろいろなお話があったと思うのですけれども、その中で一つ、中国との関連で、産業の空洞化が進行している、その御心配をお話しされました。これは、まさにそのとおりだと思うのです。
 製造業部門だけではなくて、これからは多分ソフトウエアの部分にも影響が出てくるでしょうし、部品は日本は大丈夫と思ったけれども、部品も追いつかれてくる、金型までは追いつかないだろうと思ったけれども、金型もわからなくなってくるという状況が恐らくこれから出てくるだろう。しかも、人件費は、御存じのようにけた違いの安さです。
 こういう産業の空洞化を食いとめていくためには、現場の感覚としてどういうものが必要というふうにお考えでしょうか、ちょっと難しい問題かもしれませんが。
小池公述人 私どもが非常に問題視している点についての御質問でございます。
 私の企業も一九七八年に中国に進出し、現在、中国あるいはベトナム等に工場を持っておるわけでございますけれども、急速に中国への進出が進んだというのは、一つは、実は、今回の国会で廃止になると思いますけれども、工場等制限法、要するに、大阪を中心にして、東大阪あるいは神戸の一部、尼崎の一部ということで工場等制限法が長く施行されていたわけです。
 その当時は、均衡ある国土の発展だとかそれなりの価値があったと思いますけれども、いずれにしても千平米以上の工場はできない。同時に、大学も大阪から、工場等の等というのは大学等のことを指すわけでございますので、大学も環状線から全部消えてしまう。したがって、そういう形の中で地方に行った。地方が今度は、若い人がいませんので、高齢化してしまったものですから、海外へ行った。
 その間、工場等制限法の廃止をいろいろ求めたけれども、全然これに対して政府は変更しようとしないということで、ようやく昨年、国土審議会で廃止することを答申しまして、国会にかけられるという状況でございますけれども、その間、工場が作為的に、政策的な作為によって中国に行ったのが始まりでございます。これができたのが昭和三十九年でございますから、もう既に三十八年になるわけでございますので、この間どんどん外へ行った。これは、繊維産業を初め電機産業、すべてそこに行った。
 したがって、今後の問題としては、私どもの工場では現在七工場稼働しておりますけれども、その基本的な生産体制としては、高度化を図っていると同時に、雇用について、若い人が来ませんから、中国からいわば研修実習生を迎えているわけでございます。要するに、中国でつくるか中国人を呼んでつくるか、どっちかなんですね。もし中国人がいなかったら、私の七つの工場は全部廃止するという段階まで来ているわけでございます。
 しかし、それは五%という極めて制限された雇用の条件でございます。要するに、これだけ雇用が深刻でございますけれども、外国人を導入しなければ生産を維持できない。例えば、五人がいるがために百人の工場が存在しているわけでございますが、もしこれが不可能であれば、この工場は閉鎖して中国へ移ってしまうという悪循環になっておりますので、やはり外国人労働問題について真剣に考える時期に来ている、私はこう思っております。
 中国がなぜこういうふうな国際競争力を持ったかというと、高質な労働力と、賃金も安いことがございますけれども、労働をいとわずに、真剣に生産に従事するという姿勢がございます。
 いずれにしても、そういう意味で、こういう形をとればすべてよくなるということはございませんが、外国人労働問題も、要するに、労働力の国際流動化の中で考えるべきことだというふうに私は思います。
 以上、簡単でございます、一つだけ例を挙げたわけでございます。
野田(佳)委員 本当は、こういう傾向についてもう一個聞きたいことがあるのですが、二宮公述人への時間がなくなってしまうかもしれないので、もしまた時間があれば、もう一回戻ってお尋ねをしたいというふうに思います。
 二宮公述人にお尋ねをしたいことは、例えば、サラリーマンの医療費の負担の三割の問題とかをお話しされました。確かに、痛みは具体的にいろいろなものが見えてきました。だけれども、構造改革の先が見えない不安、道筋が見えないところがやはり一番問題だと思うのですね。手術は痛いぞと言われる。だけれども、手術した後に前よりもうまく酒が飲めるとか飯が食えるという状態にしてくれるかどうか。その、構造改革の後の姿が見えないことの不安がすごく大きいと思うのです。
 今回の平成十四年度の予算にも、その辺の姿というのがよく見えていないように思うのです。これこそ最大の問題であって、改革逆行予算と厳しく指摘をされましたけれども、こうした私の所見について、どういう御感想でございましょうか。
    〔北村(直)委員長代理退席、委員長着席〕
二宮公述人 私は逆行という表現を使いましたけれども、これは、現在の小泉政権が掲げる構造改革に逆行しているという意味ではなくて、今御指摘の、国民の暮らしの安定であるとか長期的な見通し、これが必要になっている、つまり、国民的需要から見て逆行している、そういう意味での逆行型であるというふうに言ったつもりです。この点は御理解いただいていると思います。
 御指摘の、構造改革をやった、あるいは進める過程で長期的な人々のビジョンなり見通しというものが出てこないと、一層生活の不安感、将来に対する不安感が高まって、これが経済にも悪影響を及ぼす、それはまさにそのとおりだと思います。
 といいますのは、今、御存じのとおり、社会保障というものが、例えば年金にしましても医療にしましても、また介護問題にしましても、最も大きいのは雇用保障の課題だろうと思いますが、ここが揺らいでくると将来不安が高まりますので、所得水準が下がっているにもかかわらず、いわゆる消費性向が下がる、つまり、貯蓄性向が上がってしまう。将来が不安だから、肝心の消費需要が盛り上がらない。結果として、経済がさらに冷え込んでしまって、失業者が出てくる、それから、社会保障の見直しが進む。これによってますます将来不安が高まりますから、消費が萎縮する。いわゆる、経済学で言う合成の誤謬ですね。
 それが進行しているというのが実態でありますので、現在の個々の社会保障の諸部門、企業の中のいわゆるリストラが、結果的には合成の誤謬を呼び起こして悪循環をつくり出している。そういうふうに見れば、まさに今の構造改革は、将来不安を高めて、つまり、長期的見通しにむしろ陰りをもたらすようにして悪影響をもたらす、こういうふうに見ていいのではないかというふうに思っています。
野田(佳)委員 では、もう一回小池公述人、簡単で結構なんですけれども、政府系金融機関についての言及がございました。
 現下の情勢の中で、中小企業のためにもっと頑張ってほしいというお気持ちが非常に強いということはよくわかったのですけれども、この経済情勢を乗り越えた暁に、これはちょっとどれぐらい先かというのは難しいところですが、少なくとも集中改革期間中には、やはり各省庁別に政府系金融機関があるというのは尋常ではない姿だと私は思っているんです。だから、今言うのはなかなか難しい話ですが、将来についてはこれはやはり変更する考えでよろしいでしょうか。
津島委員長 小池公述人、時間が来ておりますので、簡潔にお願い申し上げます。
小池公述人 私は、政府系金融機関については中小企業というベースで考えております。これが何省であろうと関係ないわけなんです。要するに、中小企業をきっちり守る、今現在、民間金融機関が守れませんので、それを少なくも補完していく政府系金融機関が必要であって、決して省庁別の問題じゃございません。要するに、中小企業をどうするかというマクロの視点に立って政策を進めていただきたいということを強調したいと思います。
 以上でございます。
野田(佳)委員 ありがとうございました。
津島委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 自由党の中塚でございます。
 公述人各位、大変御苦労さまでございます。
 小野公述人にお伺いをいたします。
 大変簡潔に歯切れよく先ほど意見を陳述いただきまして、もう尽きているというふうに思いますけれども、一応、今話題になっている課題について御意見をいただきたいというふうに思います。
 二月十三日にデフレ対策というものの指示があって、本日、経済財政諮問会議においてそれが発表されるということになっておるようですけれども、その中に不良債権処理というのが入っているんですね。不良債権処理自体がデフレ圧力を伴うものであって、デフレ対策として不良債権処理があること自体もう異常だというふうに私ども考えておるんです。景気対策もないわけですし、全然不良債権の処理だって進まないんですけれども、不良債権の処理がデフレ対策になり得るものなのかどうなのか、御意見をいただけますでしょうか。
小野公述人 全くならない。その不良債権処理というのが本当の意味での不良債権処理であればいいんですが、そうではなくて、不良債権ツケ回し処理ということであるので、それで効果があった方が不思議であります。
 さらに、不良債権処理というのは不良債権をなくすような政策ですから、それは企業収益を上げるしかないわけで、それは仕事をつくるしかないということであります。ですから、そういう政策をしてほしい、その意味での不良債権処理をやっていただきたいということでございます。
中塚委員 それで、そのデフレ対策ということなんですが、デフレ対策と言うこと自体すごくインチキくさいというふうに思っていまして、今まで経済対策とか景気対策とか言ってきた。ところが、金がないから財政出動ができないということで、先ほどからの御意見のとおりで、財政出動だけが需要政策ではないと私も思いますけれども、ただ、今までの財政出動ができないから、景気対策、経済対策と言えずにデフレ対策というふうに言っているんじゃないかと思うんですけれども、御意見いかがでしょうか。
小野公述人 全くそのとおりであります。自分の手を縛って日銀に責任を押しつけているということであります。
 それから、一つ加えておきたいのは、デフレ対策ということの背景に、要するに、金融を本当は広げる、つまり、日銀がお金をもっと発行して金融緩和をして思い切ってやれ、そのためには国債を買ってでもどんどん発行しろというようなことを言っているんですが、私は、これはいわゆる流動性というものの解釈が全く間違っているんじゃないかと。それはどういうことかというと、流動性は別に現金だけではなくて、先ほども申し上げましたけれども、国債も生み出しているし、それから、実は株式も土地も生み出している。この総体として流動性があるわけです。
 では、今、流動性はどうなっているかというと、バブル崩壊以降、実は一千兆、二千兆、金融収縮した状態ですから、これは大変な収縮政策をやっている。そのときに、日銀の思い切ったというときに、これから一千兆貨幣を発行するというぐらいしなければ意味がないわけで、一千兆も貨幣を発行したらもちろん信用がなくなって、ハイパーインフレということになるでしょう。すなわち、そんなことはできないのであります。やるのは唯一、先ほど来申し上げておるように、仕事をつくって企業の業績を上げて株価を上げるという形で流動性をふやす、あるいは地価を上げる、これだけだと思います。
中塚委員 今ほどちょっと御言及がありました金融緩和ということなんですけれども、景気対策、経済対策と言えないでデフレ対策と言う以上、逆に筋の悪いものが入ってくるんだろうというふうに思うわけです、きょうの夕方わかるわけですけれども。その筋の悪いものの中に、国債の直接引き受けであるとかインフレターゲティングとか、そういうことになるんだろうというふうに思うのですが、そもそも物価の下落を食いとめるデフレ対策ということで、そのやり方が金融緩和というのは本当に有効なんでしょうか。
小野公述人 全く有効でないと思います。
 それも、先ほども申し上げましたけれども、流動性の総体が物価と関連するわけであって、別に日銀券だけが物価と関係するわけではない。これは、何十年も前の古い学説をそのまま何の反省もなく引き受けて、日銀が金を発行すると物価がそのまま上がるというふうに思ってやっている政策ではないかと非常に疑います。
 いずれにしても、流動性がこれだけ収縮しているのに物価が上がると言う方が不思議でありまして、私がもし企業の経営者でありましたら、日銀がこれからインフレターゲットである、来年は一・何%物価は上がる、金融はこれだけふやす、では、あしたから物価を上げましょうと決して思いません。ですから、そんなことはあり得ないと思います。
中塚委員 それで、この予算委員会でも政府の関係者、大臣なんかとよく議論をするのですが、物価が貨幣的現象だという言葉がよく出てくるわけですね。確かにそうなのかもしれませんが、ただし、貨幣的現象であるとしても、やはり需要というものがなければ物価というものは上がらないし、デフレ対策にはならないんだろうというふうに思うんですね。
 そういう意味で、需要政策ということの必要性について御意見をいただけますでしょうか。
小野公述人 貨幣的現象というのを、ちょっと経済学ですが、もう少しちゃんと申し上げると、実はこれは物とお金という、金融資産との相対価格が物価であります。ですから、貨幣的現象と言うけれども、要するに、物が欲しいかお金が欲しいかということでやっているので、これは物の現象が背景にある。そうすると、金より物が欲しいと思えばインフレが起こるわけでありますが、物よりも金が欲しいと思えばデフレが起こる。そういう意味では貨幣的現象であります。
 ちなみに、デフレが起こるというのは、これはお金の価格が上がっているわけですね。物の価格が上がるのは物価上昇ですから、お金の価格が上がるのをデフレという。
 それで、物とお金との競争でお金が勝つからデフレが起こっているという状態で、ということは、裏を返すと、物に対する魅力とか物に対する需要をふやせば、それがまさに貨幣的現象であっても物価上昇になる。だから、物を無視してお金をまけば物価が上がるということは、全く私は経済学を理解していないのではないかというふうに思います。
中塚委員 それでは、需要政策として、小野公述人のアイデア、今までいろいろとお話しいただきましたけれども、それをさらに補足するようなものがございましたら御意見をいただけますでしょうか。
小野公述人 済みません、その点は非常に歯切れが悪くてしようがないのですが、要するに、これと言うと、そんなのじゃ足りないだろう、こう言われそうですが、もし私が独裁者であれば例えばどうするかといったら、私は、先ほど来言っている、ごみ処理も全部やる、規格も全部つくる、それから、省エネ対策をする。省エネについては、ある程度以上の省エネができるような製品については減税するけれども、逆のものには重税をかけるというようなことをやる。それから、高齢化もITもそうですけれども、そういうことすべて含めて総合的にやると、かなりの規模のマーケットになると思います。先ほどもおっしゃいましたけれども、環境だけでも数十兆になるということですから、私は、今の雇用を百万、二百万はふやすことはできると思います。
中塚委員 最後に、財政の健全化ということを伺いたいのです。
 今の内閣は三十兆円の国債発行枠というのを設定しているんですけれども、私どもとしては、これを守れ、守るなというよりも、守れないだろうということをずっと言ってきたわけです。そうやって財政の手足を縛っておいて、景気にデフレインパクトを与えて税収を落ち込ませれば、いつまでたったって財政は健全化しないし、そもそも一年や二年、三十兆円枠に抑えたって何の意味もないということをずっと言ってきたんですが、これについては御意見はいかがでしょうか。
小野公述人 全く同感であります。
 要するに、やればやるほど収縮するという形で、さらに税収が下がって、またもっと下げてということの繰り返しをやっている。それを今まで言うとそれほど説得力がなかったんですが、先ほど菊池さんもおっしゃっていましたけれども、どんどん収縮するという現象がことしになってはっきり目に見えている、これを見てさらにこれを続ければいいと思っているのは、非常に不思議だと思います。
中塚委員 終わります。
津島委員長 次に、佐々木憲昭君。
佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。
 公述人の皆さん、本当に御苦労さまです。余り質問の集中していない二宮公述人と小池公述人に、特にバランスのために集中してお聞きをしたいと思います。
 まず、二宮公述人でありますが、昨年の秋ごろから景気が急に悪くなってまいりまして、その理由ですけれども、これは政治、政策と非常に関連があるのではないかと私は思っております。とりわけ小泉改革、構造改革あるいは不良債権処理、これはまだ初期段階でございまして、不良債権処理は二、三年で最終処理というわけですから、まだ始まったばかり。これがこれからかなり深刻な影響が広がるのではないかと思いますけれども、現在の景気の実態、それから今後の展望について、二宮公述人にまずお聞きをしたいと思います。
二宮公述人 御指摘のように、小泉政権が発足後、景気は、統計的に見ましても悪化の色をさらに濃くしている。
 森政権の当時までは、大ざっぱに言って三つぐらい景気を支える要因があったと思います。一つは、アメリカが好調でありましたので、輸出が、日本のお家芸でありますけれども、それが多少日本経済を支えた。それから、大盤振る舞いでありましたけれども、公共事業のばらまきが行われた。それと、ITの投資ブームがまだ、残り火でありますけれども残っていた。これらが、小泉政権の発足の後、文字どおり総崩れでありまして、一切なくなってしまった。
 そこへ、構造改革というのは、さっきも申し上げましたように破壊でありますから、一切、先ほどから話題になっているような需要面から景気回復を図るというそのやり方を放置して、それで供給サイドで破壊をしていく。したがって、投資も消費も伸びない。それを不良債権の処理でさらに強化するということであります。
 私は、今度の国会の冒頭の経済演説で竹中大臣が、アメリカの景気回復に伴って今年後半に輸出が回復すれば、日本の経済成長が辛うじてゼロ%ぐらいに終わるんじゃないかというふうなことを述べていらっしゃいましたけれども、まさにそれは本音だろうと思うんですね。つまり全く見通しがないという状況でありますから、まず視点を内需の回復というところへ置きかえて、構造改革とは違う道を選択すべきだというふうに思っています。
佐々木(憲)委員 その内需の回復でありますけれども、その際に、やはり財政の役割というのは非常に大きいと思うんですね。ところが、来年度予算が提案されましたが、財政構造、とりわけ公共事業は、一兆円マイナスとはいいますけれども、今年度の補正予算を合わせますと逆にふえるという形で、長期にそういう状況が固定化しているというふうに思うんです。その理由はいろいろあると思いますが、例えば政官財の癒着構造、こういうものがあるために、そしてまた、そこにしっかりメスが入らないために、この構造が依然として続いている。
 二宮教授は福祉型財政への転換の必要性を先ほどお話しになりましたけれども、そういう方向へ転換しようという場合、この構造そのものを深く究明し、メスを入れるというようなことが必要ではないかと思うんですが、その点、どのようにお考えでしょうか。
二宮公述人 まさにおっしゃるとおりだと思います。
 今回の公共事業関係の予算は、御指摘のように、来年度の予算案では一割削減、名目でありますけれども、それから、補正予算で二・五兆円積みましたので、総額としてはやはり公共事業依存型の財政構造を続けている。これはなぜそうなったかということは、これまでの経過からすると、いわゆるマスコミ流の言い方からいたしますと、構造改革派と抵抗勢力との妥協といいますかなれ合いというか、結果がそういうことになったと思うんですね。
 ですから、そこに根本的にメスを入れないと政官財癒着の構造を断つことができない。では、それを真剣にやっているかといったらば、予算委員会で佐々木議員がODA疑惑について質問している姿をテレビ等々では拝見しておりますが、そのほかの分野でももっとやっていかなければいけない。
 その際に、福祉型財政への転換といいますのは、先ほどの言葉で言いますと、投資依存型の今までの経済構造を、財政を引き金にして、消費依存といいますか消費掘り起こし型の内需に切りかえていかなければいけない。そのときに、消費は個人消費と公共消費と二つに分かれますけれども、公共消費は主に社会保障、福祉分野に回っているお金でありますから、ここを差し当たり拡充すると、先ほども質問がありましたけれども、人々の将来見通しが安定しますので、例えばスウェーデンのように福祉国家が確立していると、国民の貯蓄率がゼロといった、つまり安心して消費ができる。だから、個人消費の拡大とそういう社会保障を中心とする公共消費の拡大を、まさに現在の癒着構造にメスを入れながら、結びつけて達成するということが今最も日本に求められているのではないかということを申し上げておきたいと思います。
佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 小池公述人にお聞きしたいと思います。
 企業の経営で大変御苦労なさっていると思うんですけれども、不良債権処理ということでかなり強力に推進をされているように思いますが、日銀の量的緩和が過去最高レベルで、いわばじゃぶじゃぶと銀行の前のところまではお金が来ている、銀行までは行っている。ところが、その先にはなかなか行かない。その理由ですけれども、それは私は、資金需要が低迷している、つまり、景気が悪い、実体経済が悪いからだというのが一つ。それから、銀行の側が不良債権処理によって貸し出し姿勢が非常に厳しくなっているのではないか、そういう感じがいたしますけれども、実態的にはいかがでしょうか。
小池公述人 まさにおっしゃるとおりでして、日銀がじゃぶじゃぶ金融緩和しても、中小企業、先ほどちょっと私申し上げましたけれども、雇用も八〇・六%を中小企業が引き受けているわけなんですね。大企業は、リストラということで一万人、二万人というものを簡単に解雇する。リストラするということで何千億の債務処理をするわけなんですね、債権を放棄していただくと。ところが、実際に倒産の三分の二は中小企業なんです。要するに、そこにはお金が全然流れません。
 というのは、特に大手行は統合、合併等で自分のことで精いっぱいでございます。現実に、支店の担当者がぐるぐるかわって、過去の経緯なんて一切彼らは存じていないということで、極めてマニュアル的に、どちらかというと非人道的と思われるような措置をするんですね。長期の計画を持っていっても、ちゃらちゃらと見て、私どもの支店ではこれ以上どんな担保があったって上げられませんとか、八日前に手形の銘柄を持ってきてくれ、そうでないと選別して手形割引もできないという、お互いに合併する金融機関同士の台所を締めているようなものでして、要するに、彼らのレベルにおいては自分たちのいわばそれぞれのポジションを確保するのに精いっぱいでございまして、もう余力がないと見ていいわけですね。それほど今大手行の中身は劣化しているわけです。これから具体的に合併していくようなところ、つい最近したところなんかは特にそうでございます。
 したがって、そういう意味で、中小企業にはほとんど、どんなに日銀がじゃぶじゃぶ流しても回ってこないというのが現状でございます。
 以上でございます。
佐々木(憲)委員 ありがとうございました。
 終わります。
津島委員長 次に、横光克彦君。
横光委員 社民党の横光克彦でございます。
 きょうは、公述人の皆様、本当に御苦労さまです。
 菊池先生にお尋ねをいたします。
 先ほどお話ございました、この予算案について基本的には賛成である、とはいいながらデフレ対策が大前提であるというようなお話でございます。ということは、デフレ対策としてはこの予算案は十分対応できているというわけではないわけですね。
菊池公述人 現在御審議いただいている案では、はっきり申して、これはデフレ型予算と言わざるを得ません。
 ただし、デフレが問題なんだなということにつきましては、特にことしになってからかなり意識が始まったんじゃないか。これは特に、自民党さんの中で昨年十二月にデフレ対策委員会を設けられたということが非常に大きな前進だったと思います。それから最後、ある意味では、二月のG7と、それからブッシュ大統領との会談という、いわば外圧といいますか、そちらサイドから、やはりデフレというものはまずいんだという認識を新たにされたんだ。そういう意味で、その大前提に対して、再検討されて一歩前進される。
 したがって、はっきり申し上げれば、補正予算をやはり早く組んでいただく、それから、具体的にそういう案を出していただく、それが非常に重要です。それを期待した上で私は基本的に賛成をしている、こういうことでございます。
横光委員 詳しく説明を受けたんですが、二次補正が必要ということは、デフレ対策になっていない予算であるということなんですね。
 お話の中に、構造改革は中長期的な課題であるというようなこともおっしゃられました。これはどういう意味でしょうか。
菊池公述人 確かに、日本の経済構造が、民と官営、官営といいますのは政府系の特殊法人、そういうものの存在価値も大きいことも事実でございます。それで、ある意味では、この両々相まって、高度成長からずっと、石油危機も乗り切ってきたし、いろいろなことで来たことも、これもいわば日本株式会社ということで事実だろう。
 しかしながら、その中で活力が失われてきていないだろうか。それから、公共部門、特殊法人部門のウエートが高くなり過ぎていないだろうか。そういうアンバランスが非常にはっきりしてきたのは、やはり九〇年代の後半ぐらいからなんではないか。ですから、それに対してメスを入れて、そしてそれを調整していかなきゃいけないということは事実だと思う。
 そういう意味で、現在、構造改革として小泉総理以下進められているようなことに対しましては、一つ一つやはり着実にやっていく必要は私は認識しております。そういう意味でございます。
横光委員 現下の経済状況の中では、財政政策なくしてデフレ解消はできないんだというお話でございました。
 この財政政策、いわゆる財政の出動をするならば、デフレ解消のためにどのような分野に財政は出動すべきだというお考えなんでしょうか。
菊池公述人 財政政策はやはり二つに分けて考えるのが望ましいのではないか。一つは財政支出でございます。それからもう一つは減税政策でございます。
 それで、財政支出につきましては、確かに、効率的な財政支出というのが必要だということは、ここずっと政府・自民党さんあるいは野党さんでも検討されてこられましたし、国会でも随分議論がされてこられましたので、かなり中身の改善は進んできているんじゃないかなと思います。そういうものが進んできて、例えば道路とかそういうことよりは、もっと別の方へ。
 例えば、今福祉型の財政が必要だというお話も二宮先生からございましたけれども、そういう面で、では、今福祉施設をそういう政府支出で、公共資金でどんどんつくっていく、これはもう大変にプラスだと思います。国民が安心します。それから、老人の方たちは、なるほど、そういうところへ入れるのならば消費しようじゃないかという形になっていくでしょう。ですから、そういう形でウエートを掲げてやっていけば十分いかれるんじゃないか。
 それから、減税につきましては、私は、やはり投資減税を最優先していただきたい、先ほど申し上げたとおりでございます。
横光委員 どうもありがとうございました。
 小野先生にお尋ねをいたします。
 小泉改革はデフレ助長政策であるというふうに、まさにばっさりと切り捨てたわけでございますが、ということは、小泉改革が今やるべきことはデフレの克服である、こっちの方が優先して取り組まなきゃいけないというお考えなんでしょうか。
小野公述人 デフレの克服というのは結果であって、最初にやらなきゃいけないのは、何しろ余っている人を、つまり、働きたい人に働く場を提供せよと。これは実は、まず最初にというよりも唯一無二だというふうに申し上げているんです。その結果、当然デフレは解消していきます。なぜかといえば、雇用状態がよくなってくるわけですから。そういうことでやっていただきたい。
 それで、あと、私は減税反対と申し上げましたが、政策減税はいいんですけれども、一般減税というのは全くのばらまきになっておるのではないか。そういう意味でいっても、いわゆる働きたい人に働く場を与えるという意味でいえば、そういう効果はほとんどないんじゃないか。つまり、こっちから持ってきてこっちへ払うだけ。そういう基準で見ていただきたいと思います。
横光委員 しかし、デフレの克服の必要性は今言われたわけですが、そのときに、やはり最大の課題は不良債権の処理だと思うんですね。しかし、これは決して処理できないんだ、ツケ回すだけだというお話でございますが、やはり、それでもこれから不良債権の処理には政府は取り組んでいかなきゃならない、金融関係の課題でございますし。
 そうすると、いわゆる公的資金の注入ということが非常に大きな問題になってきます。この点についてはどのようにお考えでしょうか。小野先生に。
小野公述人 緊急避難的な意味で、つまり、九八年のように金融収縮がどんどん起こってしまうということであれば、そもそも流動性全部が縮んでしまうわけですから、緊急避難的な意味でそういうのが一つのアイデアだというのはそのとおりだと思います。
 ただ、私が申し上げている不良債権処理というのはあって、それはやはり仕事をつくる。何度も申し上げていますが、そのことがまさに不良債権処理になってくると思います。というか、それしかないと思います。
横光委員 どうもありがとうございました。
 小池副会頭にお尋ねいたします。
 この予算案、中小企業関係では評価できる、あるいは十四年度予算案は適切な対応であるというようなお言葉もございました。といいながらも、大阪ではデフレスパイラルの状況に入っている。しかも、本格的な不良債権処理に伴って本当に痛みを受けるのは、雇用の大多数を抱える中小企業であるというようなお言葉もございました。
 その本格的な不良債権の処理が小泉改革の最大の課題で、これからいよいよ始まろうとしているのです。この小泉改革についてどのようにお考えでしょうか。
小池公述人 構造改革イコール不良債権処理というふうに結びつけておりますけれども、そういう側面があっても、必ずしも構造改革イコール不良債権処理とは限らないと思います。要するに、中小企業対策というのは、不良債権処理とはかかわりない側面も多々ございます。
 したがって、現在の与えられる条件の中では精いっぱい、与党三党の予算案というのは、私は、小泉さんの主張する一つの姿勢をちょっと乗り越えたレベルに落ちついたんじゃないかというふうに思っております。
 そういう意味で評価したわけでございまして、小泉さんが進める不良債権処理が、中小企業を犠牲にするような形で行われることは極力避けてほしい。セーフティーネットはいろいろございますので、もっときめの細かい不良債権の処理が必要じゃないかというふうに思っております。
横光委員 どうもありがとうございました。
 では最後に、二宮公述人にお尋ねをいたします。
 このまま構造改革を突っ走ると日本経済は危機的な状況になるというようなお話がございました。とはいえ、デフレの克服の必要性は恐らくお認めになっていると思います。
 このデフレ対策として、先生はどのような対応をまず第一にとるべきであるかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
二宮公述人 きょう決まっているはずのデフレ対策というのは、政府の場合、先ほどからも指摘がありましたけれども、一言で言えば金融緩和ないしは金融面からのてこ入れで、デフレ対策といっても、つまり、物価の下落を回復する、ここに焦点が行っていると思うんですね。
 私は、現在のデフレというのは、もともと単なる物価現象ではなくて、不況を伴って、いわゆるデフレスパイラルというのは、物価が下落し、企業収益だとか消費が低下して、さらにその悪循環が進行していく。ですから、それを克服するためには、今の金融面ではなくて、先ほどから強調していますけれども、やはり財政なら財政を活用して、一言で言えば需要面ですね、消費であるとか投資の需要面を回復するということがないと現在のデフレ問題というのは克服できないというふうに思っています。
横光委員 終わります。
津島委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。
 公述人の皆様におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。
 明二十八日の公聴会は、午前九時から開会することとし、本日の公聴会は、これにて散会いたします。
    午後四時一分散会


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