衆議院

メインへスキップ



第1号 平成28年2月24日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十八年二月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 竹下  亘君

   理事 石田 真敏君 理事 金田 勝年君

   理事 菅原 一秀君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 関  芳弘君 理事 平沢 勝栄君

   理事 柿沢 未途君 理事 山井 和則君

   理事 赤羽 一嘉君

      青山 周平君    赤枝 恒雄君

      秋元  司君    秋本 真利君

      穴見 陽一君    井野 俊郎君

      井上 貴博君    石原 宏高君

      岩田 和親君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    小倉 將信君

      小田原 潔君    越智 隆雄君

      大隈 和英君    大見  正君

      奥野 信亮君    勝沼 栄明君

      門  博文君    門山 宏哲君

      木村 弥生君    小林 鷹之君

      佐田玄一郎君    佐藤ゆかり君

      斎藤 洋明君    鈴木 俊一君

      中川 郁子君    長坂 康正君

      根本  匠君    野田  毅君

      原田 義昭君    細田 健一君

      堀内 詔子君    前川  恵君

      宮澤 博行君    保岡 興治君

      山下 貴司君    山本 幸三君

      山本 有二君    井坂 信彦君

      緒方林太郎君    大串 博志君

      大西 健介君    階   猛君

      玉木雄一郎君    西村智奈美君

      福島 伸享君    伊佐 進一君

      浮島 智子君    角田 秀穂君

      濱村  進君    吉田 宣弘君

      塩川 鉄也君    高橋千鶴子君

      藤野 保史君    足立 康史君

      松浪 健太君    小熊 慎司君

      重徳 和彦君    村岡 敏英君

    …………………………………

   公述人

   (株式会社大和総研執行役員調査本部副本部長チーフエコノミスト)      熊谷 亮丸君

   公述人

   (慶應義塾大学ビジネススクール准教授)      小幡  績君

   公述人

   (関西大学政策創造学部教授)           白石 真澄君

   公述人

   (武蔵野学院大学SMB研究所所長)        松田  元君

   公述人

   (株式会社三菱総合研究所政策・経済研究センター副センター長

   チーフエコノミスト)   武田 洋子君

   公述人

   (弁護士)

   (関西大学客員教授)   郷原 信郎君

   公述人

   (慶應義塾大学経済学部教授)           竹森 俊平君

   公述人

   (東京工科大学教授)   工藤 昌宏君

   予算委員会専門員     柏  尚志君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     赤枝 恒雄君

  岩屋  毅君     大見  正君

  小池百合子君     前川  恵君

  長坂 康正君     宮澤 博行君

  古屋 圭司君     細田 健一君

  保岡 興治君     青山 周平君

  山下 貴司君     中川 郁子君

  松野 頼久君     井坂 信彦君

  浮島 智子君     伊佐 進一君

  赤嶺 政賢君     藤野 保史君

  高橋千鶴子君     塩川 鉄也君

  重徳 和彦君     鈴木 義弘君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     保岡 興治君

  赤枝 恒雄君     大隈 和英君

  大見  正君     岩屋  毅君

  中川 郁子君     山下 貴司君

  細田 健一君     穴見 陽一君

  前川  恵君     木村 弥生君

  宮澤 博行君     井野 俊郎君

  伊佐 進一君     角田 秀穂君

  塩川 鉄也君     高橋千鶴子君

  藤野 保史君     赤嶺 政賢君

  鈴木 義弘君     村岡 敏英君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     秋本 真利君

  井野 俊郎君     斎藤 洋明君

  大隈 和英君     岩田 和親君

  木村 弥生君     小池百合子君

  角田 秀穂君     浮島 智子君

  村岡 敏英君     小熊 慎司君

同日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     堀内 詔子君

  岩田 和親君     勝沼 栄明君

  斎藤 洋明君     門山 宏哲君

  小熊 慎司君     重徳 和彦君

同日

 辞任         補欠選任

  勝沼 栄明君     秋元  司君

  門山 宏哲君     長坂 康正君

  堀内 詔子君     古屋 圭司君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 平成二十八年度一般会計予算

 平成二十八年度特別会計予算

 平成二十八年度政府関係機関予算


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

竹下委員長 これより会議を開きます。

 平成二十八年度一般会計予算、平成二十八年度特別会計予算、平成二十八年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多忙中にもかかわりませず御出席を賜りまして、まことにありがとうございました。平成二十八年度総予算に対する御意見を拝聴いたしまして、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げる次第でございます。ありがとうございます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず熊谷亮丸公述人、次に小幡績公述人、次に白石真澄公述人、次に松田元公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、白石公述人は、電車が遅延しているため出席がおくれておりますので、到着次第、御意見をお聞きすることとし、議事を進めます。

 それでは、熊谷公述人にお願いいたします。

熊谷公述人 おはようございます。大和総研の熊谷と申します。

 本日は、お招きいただきまして、心より光栄に存じます。御審議の御参考としていただきたく、平成二十八年度の予算案につきまして賛成の立場から意見を申し述べたいと思います。

 お手元の資料で、こちらの「日本経済と財政の動向について」という資料をごらんください。

 まず、一枚おめくりいただきまして、一ページでございますけれども、ポイントとしては三つ申し上げます。

 第一点として、日本経済の展望ということでございます。

 日本経済は、国内の状況はかなりよくなってきている。ただ、海外については、そこにあるような四つぐらいのリスク要因が存在する。中国経済、そして、アメリカの出口戦略に伴って新興国からお金が引き揚げられる可能性、地政学的なリスク、ユーロの動向ということでございますが、この中で、中国については、これからも下振れリスクとして細心の注意を払っていくことが必要である、これを第一点目として申し上げます。

 二点目は、アベノミクスに対する評価及び課題ということでございます。

 私は、基本的なアベノミクスの方向性は正しいのではないか、こういう考えをしておるわけですけれども、ただ、これからまだ課題が残っている。例えば、社会保障制度の抜本的な改革ですとか、第三の矢、成長戦略の強化、さらに、分配政策をこれからさらに推進していくことが必要である。

 三点目として、財政再建という話でございます。

 経済成長すればそれで財政再建ができるかというと、そこまで今の日本の状況は甘い状況ではないのではないか。経済成長と増税、それから歳出のカット、これを三位一体でバランスよく行っていくということが必要である。

 私からきょう申し上げたい点は、以上の三点ということでございます。

 二ページ以降は、ちょっと簡単に御説明をしていきたいと思いますけれども、まず二ページ、一番上のところに書いてございますが、一六年度の経済成長は〇・九%程度、ただ、一七年度は増税を一応見込んでおりますのでマイナスの〇・一%、こういう見方をしております。

 三ページをごらんください。

 日本経済は踊り場という状況でございますが、黒い線でお示しをしているのが生産の動き、赤い線が輸出ということでございますけれども、昨年は、四―六月期以降、一旦、日本経済は若干厳しい状態に入った。ただ、今は、一進一退のいわゆる踊り場という状況でございます。

 四ページ以降で、日本経済を支える要因が四つあるということを申し上げます。

 まず一点目としては、いわゆる在庫循環ということでございます。縦軸が出荷の伸び、横軸が在庫の伸び。時計回りでぐるぐると回るわけでございますが、少し前までは右下のところにあって、在庫調整の局面であった。ところが、現状は左上の方に動いてきているわけですから、国全体として見れば、在庫の負担はかなり軽くなってきたということがございます。

 五ページをごらんください。

 二つ目のプラスの要因でございますけれども、原油が安いことが、中長期的に見れば、日本経済を支えていく。

 五ページの左上の部分に赤い丸を打っているところがございますが、これが、私どもがマクロ経済モデルを使って原油が百五ドルで高どまりしていたときと現状で比べたときに、これから日本経済がどの程度支えられてくるか。経常収支が改善することですとか、もしくは物価が落ちて実質所得が上がってくるということがございますので、百五ドルのときと比べると、日本経済は二〇一七年度には〇・九%程度支えられてくるという形でございます。

 六ページ、三つ目のプラス要因ということですが、実質賃金。ずっと二年余り低迷してきたわけでございますが、ここに来て、原油安で物価がゼロ近傍の状況ということでございますので、足元で見ると実質賃金はかなりプラスの方向に動いてきている。

 国民にとって重要なのは、そこの左下の凡例で下から二つ目に書いてある、一人当たりの賃金に雇用者数を掛けた国民の懐に入るお金の総額、紫色の白丸で打ってあるものでございますけれども、これは前年比で二%以上伸びている状況でございますので、実質賃金は今着実にプラスの方向に回復してきた。これが三点目です。

 七ページ、四つ目ということでございますが、アメリカの消費者コンフィデンスは比較的良好な状態が続いている。グラフで灰色で網かけをしてある部分が日本の景気後退期、そしてブルーの線がアメリカの消費者コンフィデンス、消費者がどういうようなマインドでいるかということでございますが、日本の景気に対して最もクリアな先行性を持っているのがアメリカの消費者コンフィデンス。ここは比較的しっかりした状況だということです。

 以上の四つぐらいの理由が日本経済を支えてくるという見方です。

 八ページは、一七年に消費税増税を行ったときにどれぐらい影響があるか、私どものモデルを使ったシミュレーションでございます。

 右側の赤で囲んであるところですが、一六年度は、GDPが駆け込み需要によって〇・三%程度上がってくる。他方で、一七年度は〇・六%程度落ちていく。そして、その下の部分に一・一と書いてあるところがございますが、軽減税率の導入によって、かなり、駆け込みですとかその後の消費の落ち込みを支える効果、一・一兆円程度の消費に対する下支え効果が出るということでございます。

 九ページをごらんください。

 先ほど来申し上げているように、国内経済はそれほど悪い状況ではありませんけれども、海外経済についてはいろいろなところに地雷が埋まっている。特に、中国経済については細心の注意が必要であるという考え方です。

 十ページ。ここで中国の全体のイメージをお示ししておりますけれども、金融の過剰がおおむね一千兆円程度、設備の過剰が四百兆円程度。これに対して、まだ財政出動余地は、諸外国と比べれば、六百兆円から八百兆円程度、理屈としては存在する状況だということでございますので、こういう人類が経験したことがないような未曽有の金融の過剰などがある中で、本当に中国がソフトランディングを図れるかどうかというのが、これが中国問題の本質である。

 次のページは、三つシナリオが書いてございます。一が標準シナリオ、おおむね六%台は維持する、こういう考え方が一般的でございますが、ここではリスクシナリオを二つお示ししています。二のシナリオは、設備の過剰が調整に向かったシナリオ、三は、メルトダウンシナリオという、かなり厳しい設備の調整が起きるという三つのシナリオでございます。

 この三のメルトダウンシナリオ、十二ページのところに詳細をお示ししておりますが、この悪いケースのときは、潜在成長率、実力の成長率が一・六%程度まで落ちる可能性がある。

 グラフで見ていただくと、経済成長は三つの要因があるということで、技術要因、資本要因、労働要因でございますけれども、これから、悪いシナリオとしては、ピンク色の技術が大幅に停滞をしていく。それから、ブルーの部分の資本というのが、これから設備の調整が起きる中で、中国の実力の成長率がゼロに近いところまで落ちてしまう。こういうシナリオを頭の片隅に置いておくということが必要であると思います。

 十三ページ以降は、アベノミクスの話でございます。

 私は、基本的な方向性は正しい、こういう考え方をしておるわけでございますが、そこにあるのは、財界の首脳の方が命名されたと言われる追い出し五点セット、もしくは電力不足だとか日中関係の悪化などを含めて、日本企業は七重苦にさいなまれてきた。これを、今、アベノミクスは全て反対の方向に転換をしてきた。

 例えば、十三ページの七というところでいえば、日本が原理原則を曲げなかったことによって、むしろ中国サイドが秋波を送るような形で、今、日中関係は雪解け、改善の方向に向かってきた。

 これらの面で、私は、基本的なアベノミクスの方向性は決して間違っていない、こういう考え方をしております。

 十四ページは、経済の好循環。

 三つ線がございますけれども、一番上のブルーの線が企業の売上高、二番目のオレンジの線が個人の所得、三番目の緑の線が物価でございますけれども、微妙に右斜めに傾きをつけてこの三つを一定の時間差で重ねていくと、比較的似たような動きをしてくる。

 申し上げたいことは、景気回復の一丁目一番地というのは、まずは、一番上のブルーの部分、企業が元気になって、企業の売上高だとか収益などが上がってくる、そこから今賃上げの動きが徐々に進んでいるわけでございますから、経済のサイクルから見れば、まずは成長戦略を打って、そこから三年たって分配政策を打つという、この政策の手順は正しい方向で打たれている、私はこういう考え方です。

 十五ページをごらんいただくと、ずっと、雇用がふえても非正規ばかりである、こういう批判がなされてきたわけでございますが、足元で見ると、前年比では、正規の伸びが非正規の伸びを上回ってきた。

 経済は、残念ながら今の仕組みからすれば、最初は非正規が伸びるということですが、体温が温まってくると徐々に正規が伸びてくる。加えて、これから同一労働同一賃金の原則をさらに議論していくということでございます。

 十六ページをごらんください。

 アベノミクスの課題ということで申し上げると、一つは社会保障制度の抜本的な改革、二点目として成長戦略、従来の第三の矢の強化、三点目として分配政策を今まで以上に推進するということでございますが、きょう私が強調したい大きなポイントとして、三の分配政策だけで経済が上がるということにはなりにくい。二と三は一体の課題であって、二の成長戦略と三の分配政策、これを同時並行的にバランスよくやっていく、これが最大の課題です。

 なぜそう考えているかというと、次の十七ページでございますけれども、日本でなぜ賃金が低迷しているか。時間当たりの実質賃金を日米独で比較をしておるわけですが、この中で日本が低迷している理由、一の労働生産性、二の広い意味での企業の競争力、三の労働分配率、この三つの要因に分解をしたものです。この三段の数字は寄与度といって、三段の数字を足し込んでいくと、一番上の段の賃金の伸び率に一致をする。

 最初に御注目いただきたいのは、一番下の三の労働分配率。確かに日本の労働分配率は若干賃金を下げているわけですけれども、諸外国もほとんど同じぐらいのペースで下がっている。国際的な潮流にはなかなか逆らえない部分もあるわけですから、日本が分配政策だけで賃金を上げようとしても、そこの伸び代はかなり限定的なものにならざるを得ない。

 どこに問題があるかといえば、一の労働生産性、二の広い意味での企業の競争力。これらは分配政策では上がらないわけでございますから、従来の三本目の矢の成長戦略、TPPへの参加であり、法人税の減税であり、岩盤規制の緩和、こういうものをやって一と二を上げていくことこそが、国民の賃金を持続的に上げるための鍵であるということでございます。

 十八ページ。ここから財政の課題ということですが、経済成長だけで財政再建をしていくというのはなかなか難しいのではないか。

 ドーマー条件と書いてございますけれども、名目成長率が長期金利より高いというこの条件が満たされるのであれば、プライマリーバランスを均衡すれば、あとは財政が徐々に改善の方向に向かっていく。そういう意味で非常に重要な条件でございますけれども、左の図表の右上のところに、我が国におけるドーマー条件の勝率が書いてございますが、ここはやはり、過去の例で見ると決して勝率は高いものではない。

 右の図表、これはOECD諸国の中でドーマー条件を満たした国の割合をお示ししておりますが、一時的にバブルなどが起きるとドーマー条件は満たされる。ただ、これは、長い目でならして見ると、なかなかドーマー条件を持続的に満たすのは難しいということでございますので、結論として、やはり、経済成長だけではなくて、歳出のカットですとか社会保障制度の合理化、それから一部は増税、これらをバランスよく行っていくということが、財政再建のための鍵であるということです。

 十九ページは、財政の再建に成功するためにどうすればいいか。

 大分時間も押してまいりましたのでポイントだけ申し上げますと、景気頼みだけでやると、過去の事例で見ると、また景気が悪くなると税収が落ちるということを繰り返してきた。やはり、社会保障制度を中心とした抜本的な改革をして歳出をしっかりと抑える、それから成長をしていく、一部は増税をする、これを三位一体でバランスよく行うことが必要であるということです。

 二十ページ、二十一ページ。これは、私どもの財政の中長期のシミュレーション。かなり改革をしっかりと行っていかないと、中長期的な財政状況は厳しいということでございます。

 ちょっとおめくりいただいて、二十三ページをごらんください。

 このグラフは、縦軸が長期金利から短期金利を引いた長短スプレッド、横軸が政府の債務状況でございますが、国際的に見ると、大体一本の均衡線の上に並んでくる。今、日本は、日銀が大胆な金融緩和をやって、かなり実力より金利を抑えている状況でございますが、長いスパンで見ると、やはり、しっかりと財政の規律を守っていかないと、この線上に日本が来てしまうリスクというのが一定程度存在するということでございます。

 最後に二十四ページで、せっかくの機会ですので、一つ明るい話をさせていただきます。

 これは、一九〇一年の、今から百年以上前の報知新聞の正月の特集でございますけれども、二十世紀の予言といって、当時から百年後の二十世紀にこんなことができたらいいという夢のような話を二十三項目取り上げた。

 この中で実現していないのは六項目あって、まだ人と動物が自在に話せるようにはなっていない。他方で、十七項目は当然のように実現をしている。八十日かかった世界一周が七日でできればいいと思ったのが、もう七日もかからない。人声十里に達すというのは電話のことでございます。写真電話というのはテレビ電話。そして、買い物便法というのは、これは、インターネットショッピングのことが百年以上前に夢のような話として予言されていた。暑寒知らずは、読んで字のとおり、エアコンのことでございます。

 そういう意味では、五十年、百年の時間軸で見れば人類の技術進歩には限界はないわけであって、しかも日本は、物つくりだとかイノベーションの面では圧倒的な強さを持っている。その意味で、これから日本としては、こういう科学技術だとか物つくりだとか、そういうところに力を入れていけば、私は、日本の五十年先、百年先の将来というのは決して暗いものではないのではないか、そういう考え方をしております。

 私からの御報告は以上でございます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

竹下委員長 ありがとうございました。

 次に、小幡公述人にお願いいたします。

小幡公述人 御紹介いただきました小幡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 資料は、熊谷さんの派手な資料の下に埋もれている資料で、「経済状況について」というものでございます。

 経済の現在の危機といいますか、経済自体は本来それほど悪くないんですけれども、過剰な政策による危機というものについて、ぜひ、この機会をもって、党派を超えた危機感を共有していただければと思います。

 ということで、タイトルは「静かな金融危機と着実な不況」と書いてありますが、その下を順番に説明していきたいと思います。

 日銀のマイナス金利導入後から、二月に入って市場は大混乱しておりますが、これはどうしたことかといいますと、本質的には、過剰な金融緩和のツケが一気に噴き出したということでございます。

 昨年から、マーケット、市場は荒れているわけですけれども、昨年あるいはことしの一月、中国あるいは原油ということが言われていましたが、実は、二月以降、これは銀行不安というものに全くさま変わりしてしまった。こうなると、原油市場崩壊というのは、原油バブルだったので、そこの一つのバブル市場が崩壊するだけですので部分的な危機なわけですけれども、銀行危機となりますと、金融市場から実体経済に危機が移ります。

 つまり、バブルで損失を受ける、あるいは金融的な損失を受ける。それが、普通に地道に経営を行っている企業、中小企業、個人へも、銀行融資の引き揚げという形で波及するということで、銀行危機というのは実体経済にとって本物の危機であるということで、二月から危機が急に実体を帯びて本格化してきたということです。

 銀行危機になぜなったかといいますと、そこに四つの圧迫要因が書かれていますけれども、要は、一方で収益機会がなくなり、一方で、リーマン・ショック後、金融規制が強まり、リスクをとる機会がなくなり、あるいは資本積み増しを要求され、コストが物すごく高くなった。両方から圧縮されて、銀行はやっていけないということでございます。

 典型的には、二月の頭にドイツ銀行の危機ということが最もクローズアップされて話題になったわけですが、ヨーロッパでは、昨年秋から、イタリアの銀行破綻、ポルトガルの銀行破綻、まあ、破綻というよりは危機ぐらいで言った方がいいかもしれませんが、起きておりますので、ヨーロッパではもともとあった。それが、日銀のマイナス金利によって再度クローズアップされ、また、アメリカが景気後退するのではないかという不安から、アメリカも金利が低下するのではないかと。

 金利低下による銀行圧迫、つまり、マイナス金利というのは銀行に負担になるということですけれども、実は、マイナス金利そのものよりも、国債金利は今やもうゼロですから、これは、銀行、とりわけ地方の地域金融機関は、融資先がありませんので預金を主に日本国債で運用している、その収益がゼロになるわけですから、国債を売って何かリスクをとれと言われてもリスクがとれないわけで、これは縮小均衡に行かざるを得ない。ですから、マイナス金利によってデフレが加速するという構図になってございます。

 ただ、これは日本だけの現象ではございませんで、世界的な現象だ。その根底には、リーマン・ショック、この敗戦処理といいますか、後遺症ということだと思います。

 一枚めくっていただきまして裏側を見ていただくと、危機はリアルだということで、先ほど御説明したように、リスク資産市場のバブル崩壊というものから実体経済の危機の可能性。ただ、まだ可能性ですので、すぐ、あす、あさって世界が崩壊する、あるいはリーマン・ショックのようなインパクトがあるものが起こると言っているわけではございません。

 ただ、静かに、着実に、銀行、とりわけ弱い金融機関から、イタリア、ポルトガルというのは弱い国ですから、国内でいえば、地方の弱い金融機関から追い詰められていく、そういうことが日本国内では起こる。ですから、これに対応する方法としてはダウンサイジングしかない。預金も受け入れない、融資もしない。そうすると、経済全体が縮小均衡になってデフレが進むということでございます。

 その下は、基本的な銀行危機の構造に加えまして、従来言われております原油危機、そして中国経済というものが上乗せされて、まさに世界的にも、リスクテークしなくなりますので、リスク資産価格も下落する、この逆資産効果も出てくるということです。

 裏に行っていただいて、次のページに「政策手段がない」、これは一番の問題ですね。これは、金融緩和をし過ぎたことによって国債の利回りが世界じゅうで下がって、これが銀行を追い詰めているというのが危機の根幹ですから、打つ手がないわけですよ、政策をやり過ぎたことが壊しているわけなので。では、これ以上金融緩和しろということになると、ますますよくない。

 つまり、黒田日銀総裁が三回サプライズの緩和をしたわけですけれども、一回目はイメージ戦略としてはプラス効果がありました。二度目は賛否両論です。今回はどう見ても非常にネガティブだということに市場ではなっております。なぜかというと、明らかにもうやり過ぎているところにさらに緩和を進めるという方向ですので、それが間違っているということです。

 ここではちょっと、自殺行為と書きましたが、金融市場の側あるいは投資家サイドとしてはそれを求めるわけですね。いわば金融緩和依存症、中毒症のようになっていますので、短期的には、そこで盛り上げてもらわないと短期に盛り返せないと。ところが、長期的には、それがどんどん金融市場をも追い詰めていく。

 実体経済はもともと影響がほとんど関係なくて、日本経済でいえば、投資すべきところには投資している。ただ、人口も減りますし、経済も縮小均衡だ。これは量から質の時代だ、それで皆さん、質に向けて一生懸命努力されている、その中で量をばらまいても、これはリスク資産で、いわゆる金融市場、投機にしか向かわないということで、リスク資産市場だけバブル的になる。そこへ持ってきて、バブルをも起こせないといいますか、限界に達してきたというのが現状だと思います。

 下の「今回の危機の構造」、これからもうちょっと細かく危機のことを説明しますが、昨年の夏にいきなり暴落が始まった、これは原油危機です。原油が下がったことによって、いわゆるシェールガス開発の関連の会社はジャンク債というリスクの高い債券でやっていた、その市場が破綻した、そうすると、そこに投資したファンドなどが破綻する、そのファンドなどがほかの株なんかを売るので、リスク資産市場全体に危機が波及した。

 一枚めくっていただいて、ことしの一月、昨年末から原油下落の継続によってこれがさらに広がって、さらに深く広くなったということでございます。これは、特徴なのは、中国、ロシア、日本が下がったんですけれども、なぜか日本が一番株が下がった。

 中国というのは、これは後で時間があれば説明しますが、これも実はリーマン・ショックの後遺症で、リーマン・ショック後、金融緩和をやり過ぎたという話を今までさせていただきました。一方、実体経済も、中国が頑張ってくれたという言い方もありますが、財政出動を物すごくして、設備投資を物すごく刺激して、設備をつくり過ぎたために供給過剰になって、今、中国を中心に大変な実体経済の不況になっている。ただ、これは量的な不況ですので、中国も質的な向上が沿岸部、富裕層を中心にあって、そこで補っているという状態です。

 ですから、中国が危機の中心、ロシアは原油ですから下がる、当然なんですが、なぜ日本なんだと。

 これは、昨年、日本株だけが物すごく上がりました。一種の日本株バブルと言って差し支えないと思います。GPIFの株の買い増し、日銀も株を買う、追加緩和もあったということで、ややミニバブルになってしまった。その部分が一月に調整で弾けたということで説明がつくということでございます。

 一応補足で、原油の下落というのは日本経済にプラスではないかという議論がありますが、これは世界全体で見ればプラス・マイナス・ゼロですね。産油国は困ります。日本はプラスです。プラス・マイナス・ゼロですが、現時点では世界全体は非常にマイナス。

 なぜかというと、今世界で経済が一番いいのはアメリカです。日本もまあまあです。ヨーロッパはいまいちになってきて、新興国は大変だ。弱いところがいじめられているということなんですね。原油で何とか稼いでいた国が、原油がやられちゃうと収入源が全部なくなって困る。日本とアメリカは、多少困難があっても、強い経済ですから何とかなる。ですから、世界経済の一番弱いところを攻められているので危機が始まったというのが現状ですので、それはマイナスだということです。

 一枚めくっていただいて、危機第三弾、この二月からというのは、先ほどから説明しております世界的銀行危機が始まったということでございます。

 細かいプロセスは下に書いてありますが、欧州の銀行が弱っていたところに日銀のニュースが重なり、アメリカの景気後退懸念というのが重なって起きたということです。

 一枚めくっていただいて、先ほどから説明しているように、この危機の根底にあるのはリーマン・ショックの後遺症だ。

 つまり、あれだけ大きなバブルが崩壊して、ただ、日本は一番うまくやったわけですけれども、意外と皆さん生き残っている。というのは何かというと、全て先送りにしてきた。異常な金融緩和で国債市場も下がった、そして財政出動をしてその国債を金融が買い上げたという構造です。その痛みが今来ているということでございます。

 下に行っていただくと、つまり、実体経済もやられたわけで、あそこで実体経済に出動する意欲は誰もありません。ところが、金融バブルが崩壊したのに、金融がとことん傷むのを抑えるために、そこを支えました。ということは、ミニバブル、あるいは違う形の国債市場バブルや不動産市場バブルをつくることによってしのいできたということでございます。

 そうなると、投資というのは、長期安定した将来を見通してリスクをとる、本当のリスクをとる、実体のリスクをとるということですけれども、今や短期的にしか動けないので、金融市場のリスクをとる。

 金融市場のリスクというのは、値動きの方向を当てるということです。今や、金融市場の値動きというのは、中央銀行の政策に左右されている。そうなりますと、中央銀行の政策を読み合うという、まさにギャンブル市場のようなものになってしまい、全員が投機家にならざるを得ない。

 その中で、長期的な投資家、安定的な国債投資家、地方銀行も含まれますが、そういう人たちが市場を追い出され、今、国債がいわば値上がりしているわけですね、金利が下がると。円も円高になっている。これはなぜかというと、日本の今後の金融政策が読めないということで大混乱しているので、この機会に乗じて投機家、トレーダーがいっぱい集まってきているということでございます。

 一枚めくっていただくと、根底には、金融機関に対する規制強化というのも一方でございます。BIS規制も強化された。これは当然のことですが、現状ではちょっと裏目に出てしまったということで、本質的なリスクがとれない、だから、国債とか形式的に安全なものを大量に保有する、その利回りもなくなってきたということで追い詰められているということでございます。

 三というところでは、先ほど申し上げた中国、これは実体経済における過剰がリーマン・ショックの反動として起きてきていたということでございます。

 一枚めくっていただいて、とどめを刺したのは、マイナス金利が最後にタイミング悪くいったということです。

 マイナス金利は、為替安をもたらすという意味で、一国経済にとっては短期的にプラスになる可能性はありますが、実は為替は日本一国では動かせなくて、ドル高の流れが変わると、世界的なドルの流れの中で一瞬でかき消されてしまう。そうなると、過大な金融緩和という副作用しか残らないという状況で、悪くなってしまった。

 下に行っていただいて、これは日銀だけを責めるわけにはいかなくて、世界じゅうで金融緩和をやり過ぎているわけで、世界的な病なわけです。

 ただ、日銀が今回最も失敗したというのはサプライズ戦略で、ショック療法、第一弾のときは日本経済が凍っていた、それでデフレマインド脱却というかけ声とともにやったのは、イメージ戦略としては成功しました。ところが、それをずっとやり続けているために、その後、全て副作用、やり過ぎというまさに本質的な悪い効果が出てきたということで、そのとどめを刺したのがマイナス金利、しかもサプライズ戦略。

 サプライズになりますと、さっきも言ったように、混乱して将来を読めない。ここで国債をやめて投資しろと言われても、先が読めない中では誰も投資も融資もできないというのが現状でございます。

 一枚めくっていただいて、先ほど申し上げたように、国債市場は投機家の狩り場になっているということでございます。

 下に行っていただくと、国債市場というのは、安全資産ですから、危機のときの逃げ場なんですね。その危機のときの逃げ場を失ってしまっては港に帰れない。今、漂流しているような状態でございます。

 もう一回危機を総括しますと、地味な世界不況というふうに書きましたが、リーマン・ショックの後遺症、敗戦処理を今まで先送りしてきたので、これから少しずつやっていかなきゃいけないということで、金融緩和中毒からどう抜け出すかということです。中毒ですから抜け出すのはなかなか大変で、ゆっくり慎重にいかなきゃいけないということでございます。

 一枚めくっていただいて、これは本質的には、もっと長期的に言うと、ずっと拡大志向で来た資本主義というのがどこかで縮小しなきゃいけないということで、一九八〇年以降、金融市場の自由化とともに膨らんできたものの反動という面もあると思います。

 もう一つ、政策マーケット。我々も責任があると思うんですけれども、何かやれと。例えば、アベノミクスであれば、アベノミクスはよくないとか金融緩和はよくないと言うなら、おまえ対案を出せと言われる、対案はありませんと言うと物すごく怒られるわけですが、実は、最後に申し上げますが、今、やり過ぎが問題なので、我慢のしどころだというふうに思っています。

 サッカーでいえば、アウエーの戦いでゼロ、ゼロで逃げ切らなきゃいけない。その中でゆっくり中毒から抜け出すということですから、どんなにやれと言われても我慢する。やれば投機家は喜びます。それ以外喜ばない。実体は迷惑する、それで地方銀行も困るというのが現在の構図でございます。

 一点だけ補足しますと、消費刺激というのも現状では実はマイナスで、景気という問題としては、今は普通なんですね。ところが、長期の成長力が落ちている。ゼロ成長です。これが一番の問題で、景気対策を打ち過ぎた余り、長期の成長にお金が向かわない、目先のことにばかり資源がとられるということで、長期成長力が落ちてきたということが問題でして、これを立て直さなきゃいけないということで、景気刺激策も実はよくないということです。ですから、政策的には手詰まりですが、我慢するしかないということです。

 一枚めくっていただいて、今後、一応、為替と日本経済の見通しを申し上げますと、これは、円高はやむを得ません。四つの状況、何をとっても、円安方向に振れ過ぎている。妥当なところは百円というコンセンサスですし、経常収支も黒字になり、アメリカも利上げしないという方向であればなる。それで一気に投機的な円買いポジションが膨らみ始めたところですので、この流れには逆らえないので、円安効果を狙う政策は空振りに終わり、むしろ副作用だけ残るということでございます。

 日本経済、現状を説明します。停滞してきましたが、これは今まで、随分株高もあって、ちょっとバブル的に、実力以上、実力ゼロ%の中で一%を超える成長をしてきたわけですから、GDPが増大してきたので、その反動が来ているということでございます。その中で異常な金融緩和の反動が来ていますから、とりわけ地域金融機関、上場したてのゆうちょ銀行、これらが一番困るということで、地方、弱いところがやられる。

 これまでの金融緩和自体、この三年を振り返っても、地方になかなか回らないという議論がありますが、これは当然です。地方にとっては金融緩和は地域金融機関を弱めることにすぎませんから、地域の中心である地域金融機関が弱くなれば、それは地域がよくなるはずがないので、金融緩和政策というのは実は地方を弱くする政策、この三年そうであったということでございます。今後は、これがさらに膨らみますと実体経済の不況にもなるということでございます。

 では、どうするかということで、一枚めくっていただきますと、「現状認識と政策対応」。もう一度まとめますと、これから緩やかな危機がやってくる。金融緩和、財政出動も実はマイナス、とりわけ金融緩和は一番よくない。中国も財政出動というのをやり過ぎた反動が今来ているわけですから、やれないので、彼らは金融緩和でしのごうとしているわけです。世界全体で政策協調といっても、緩和をやり過ぎていることをやめるぐらいしかないわけですけれども、それもなかなか難しいとなると、非常に難しい。

 では、日本はどうするかといいますと、先ほど申し上げたように、我慢のときなので動かないというのがあるわけです。これから危機は、静かなゆったりした不況ですけれども、着実に来る。それは先です。今先手を打っておいても、これは何の意味もありません。要は、金融機関にじわじわ来て、そこへ世界不況がやってきたときに、地域金融機関を支えるとか、そのような形で財政出動等、将来必要になってくるので、そのときまで力をためておくということでございます。金融緩和も景気刺激にならず、追い詰めることになるだけだと。

 予算委員会ということで、予算関連で、一番最後、補足ですけれども、そういうことで財源は非常に重要ということで、エコノミストや経済学者の間では、軽減税率は経済的には効果がない、ただ、導入上、政治的に痛みを和らげる政策としては全員に緩和が及ぶということで支持されているという理解です。ただ、増収効果は非常に弱くなりますので、これから先、非常に厳しいことを考えますと、財源が必要であることを考えますと、非常によくない。

 なぜかといいますと、今後、例えば、将来さらに消費税を引き上げるときにも軽減税率は残るわけで、一緒に上げていくというのはなかなか難しくて、政治的に痛みを和らげることにも使えない。その痛みを和らげるということでは、補助金などを配る方が、その一回配るごとに政治的なベネフィットがありますので、政治的効率性は高い。軽減税率というのは、そういう意味では政治的コストが高いということでございます。

 あと一つ、年金運用でございますけれども、これは、一部の国では、その年の運用成績に応じて給付を削るという国はございます。ですから、マクロスライドというのがありますけれども、予定利回りも同じように、予定利回りを下回った場合には、それに連動してその年から給付を下げる、あるいは財源的手当てをするということが安定のためには必要だと思いますので、蛇足ながら付言させていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

竹下委員長 ありがとうございました。

 次に、白石公述人にお願いいたします。

白石公述人 皆さん、おはようございます。関西大学政策創造学部の白石真澄でございます。

 私からは、保育サービス拡充のための施策というテーマでお話をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 お手元資料、横長のパワーポイント資料でございます。

 私からのお願いは、社会保障費用の中で、日本は超高齢社会を突き進んでおりますので、やはり高齢者関連の予算がふえていくわけですけれども、保育や教育といった次世代のための措置をぜひお願いしたいということでございます。

 釈迦に説法とは存じますが、最初に、子育て、保育に関する現状と課題をお話し申し上げ、今後お願いしたい点については、お手元資料の六ページ目にまとめさせていただいております。

 平成二十八年度の予算案については、一億総活躍社会の実現を掲げていただき、特に社会保障関係では、希望出生率一・八、これは平成二十六年で一・四二でございますので相当上がりますが、これを達成するための子育て支援の拡充を盛り込んでいただいておりますし、また、一月二十二日に閣議決定をしていただきました経済財政運営の基本的態度では、夢をつむぐ子育て支援という項目を盛り込んでいただいております。

 早速でございますが、お手元資料を二枚めくっていただき、二ページ目をごらんください。

 これはよく皆さんが目にとめていただいている資料かと思いますけれども、この左側のグラフは、一人目のお子さんを出産した女性が仕事を続けられているかどうかというものを、一九八五年、つまり今から三十年ほど前からの推移を見たものです。

 育児休業をとって続けているのと、育児休業をとらないで続けているというのが下から二つ目の柱でございますけれども、ここを比較しますと、一九八五年は女性全体の二四%が就業継続をしておりますが、二〇〇五年から二〇〇九年にかけては二六・八%と、ほとんど変わっておりません。いろいろな法律ができ、施策が後押しをしているんですけれども、働き続けられている女性というのはほとんどふえておりません。

 この中で、家庭に入って自分自身で子育てをしたいという自発的退職は女性全体の三九%なんですけれども、会社から退職勧告を受けたとか、六割がやめたくなかったのにやめてしまったという方でございます。

 その理由というのは右側にお示しをしたんですけれども、両立が難しかった理由としては、勤務時間の問題、会社に両立の雰囲気がないということや、体力が続かない、こうした問題が挙がっているんですけれども、六番目に、保育園に入れないというのが五人に一人でございます。保育の問題も非常に重要だと思います。

 皆様、既に御案内のとおりかと思いますけれども、最近、ニュースやワイドショーで取り上げられております匿名のブログでございます。保育園落ちた、日本死ね、一億総活躍なのに、何やってるんだ日本という非常に厳しい文言が並んでおりますが、これがあっという間にインターネットで拡散をされて、保育活動、保活の難しさというものを浮き彫りにしたということでございます。

 政府は、四年後に就業継続率というのを女性全体の五五%、現在三八でございますが、これを上げていくということですので、保育園の整備は非常に重要だということでございます。

 三ページ目をごらんください。これは保育所の数と待機児童の数です。

 左側の図でごらんいただきますと、一・五七ショックと言われたのが平成二年なんですけれども、それ以降ふえてはいるんですけれども、一方、右側の待機児童というものは二万人を割り込むことはないんですね。

 二〇〇一年に待機児童の定義が変わりまして、既に認可保育所に入っていてほかの園を希望している人は、待機児童のカウントから外れております。したがって、平成十七年、平成二十年のところでごらんいただくと、左側の柱が見かけの待機児童、実際の待機児童は黒い、高い方の棒グラフなんですね。

 現在、政府が発表しております待機児童というのはいわば見かけの数字でございまして、はなから諦めている人というものもいれば、実際の十倍から二十倍いるというようなことが推定されております。厚生労働省の推定では、待機児童数は四十万人。つくってもつくってもそこが埋まっていくというのは、潜在的ニーズが表面化するからでございます。

 その中で、ゼロから二歳、低年齢児の待機児童が八割でございます。育児休業が明けて、子供の預け先が見つからない、復職ができない方たちがたくさんいらっしゃるわけでございます。

 次が四ページ目でございます。四ページ目は保育士の賃金水準というものが書いてございます。

 私自身も、大学の教員を務めながら、民間企業の保育の社外取締役というものを六年間務めていた時期がございました。

 保育所の開設が決まっていて、どこに何人規模の保育所をつくるということが決まっていても、現在、保育士が集まりません。

 待機児童の多い、特に、二十三区内の世田谷区では保育士に八万円の家賃補助、横浜市も上限六万円の家賃補助、こうした財政力の比較的豊かなところは独自の補助ができるんですね。私が在籍しておりました民間企業でも、後輩を連れてきて就職に結びつければ社員に報奨金を出すという涙ぐましい自助努力をしていたんですけれども、現状でも保育士の需給というのは逼迫しておりまして、保育士不足は深刻でございます。

 四ページの左下にございますように、保育士の養成学校を出ても、半数が保育士になっておりませんし、保育士の資格を持ちながら求職活動、仕事を探している方でも、半数が保育士を希望しておりません。

 その理由はなぜかというと、右側の一番上のグラフにございますように、やはり賃金ですね。賃金が非常に安い。そして、体力面。ゼロ歳から二歳の子育てというのは本当に大変でございますけれども、日々そういう子供たちとおつき合いをするわけでございます。また、休暇がとりにくい。こうした項目が挙がっておりまして、給与の面だけではないということが明らかでございますし、こうした理由が解消されれば、保育士が保育の現場に戻ってくる、こういう可能性は大きいと思います。

 厚生労働省も、潜在保育士の掘り起こしをしたり、無資格で今保育の現場で働いている方に保育士の資格を取っていただくための助成、さらには給与のアップのための運営費、これは民間保育所の給与を五%程度改善する補助金のアップでございます、こうしたことを行ってまいりましたけれども、依然として保育士不足は続いております。

 民間企業では、新規開所がおくれる、決まっていても開設できないという可能性も出てきております。政府の試算では、平成二十九年度末までに保育士は七・四万人不足すると試算されております。

 保育士の賃金水準で見ていただきまして、これは女性だけを比較したんですけれども、全職種と比べまして、保育士というのは相対的に安いということがおわかりいただけると思います。

 五ページ目が、既にもう決定されております子ども・子育て支援新制度というものの概要でございます。

 この内容というものは、消費税が一〇%になる段階から、七千億円を充当して実施するものでございます。保育の量、そしてさらに質をともに拡充する目的で実施されるわけでございますけれども、内容を平たく申し上げれば、従来の認可保育所だけではなく、認定こども園と言われる教育と保育を総合的に提供する施設や、家庭的保育である保育ママ、これは定員五人以下でございます、さらに小規模保育、六人から十九人が定員、こうしたものも組み入れて、保育所のパイの拡充をしていこうという狙いでございます。

 また、専業主婦の御家庭の中にも保育のニーズが強いわけでございますし、皆様御案内のとおり、児童虐待で、少し保育の手を休めたいというようなニーズは顕在化しております。こうした専業主婦家庭も、保育の必要度、介護保険と同じように三段階に分けて、その段階ごとに保育サービスを提供するというようなことが始まっております。ぜひ、このために確実な予算措置をお願いしたいと思います。

 例えば、両親ともにフルタイムですと保育所に預けられる、両親のどちらかがパートだと保育所だけではなく幼稚園と一時預かりというふうに、いろいろな保育を組み合わせてメニューをつくっていくということでございます。今までの認可保育所だけではない、いろいろなバリエーションが入ってきて選択肢が広がるわけでございますけれども、これをもとに新たな懸念も出てくるのではないかと思います。

 さて、そろそろ私が申し上げたいページ、六ページでございます。

 ここにお示しをした内容は、私がお願いしたい五項目でございます。

 一点目は、保育士の給与のさらなる引き上げでございます。待遇改善のための人員配置というものもつけ加えて申し上げたいと思います。

 保育士さんというのは、保育園で子供と遊ぶことが仕事でしょうというふうに言われることがあるんですけれども、日常、親がわりとなって子供の命にかかわる仕事をしておりますし、生涯にわたる人間形成にかかわる基礎を培っていく大切な業務でございます。

 先ほど申し上げたように、賃金表で見れば非常に安い、他職種と比較しても安い賃金で働いております。最近では、アレルギーを有するお子さんもふえておりますし、障害の概念が広がることによって、発達障害など支援を要するお子様方もふえております。

 保育士の平均在職期間というのは五年未満とも言われておりますけれども、この原因としては、賃金が安いことのほかに、園長と主任といて、あとはフラットな、文鎮型の組織であるがゆえに、将来が見通せない、賃金カーブが上がっていかないというようなことも起因しているのではないかと思います。

 賃金の全体的な底上げは確かに大事なんですけれども、特別支援教育の知識を有し、現場で技能や経験を積み、マネジメント能力や保護者とのコミュニケーション能力に富む、こうした保育士の資格を持ち、さらに幹部候補生となっていくような上級保育士というものを認定し、賃金を集中して上げていく。職種に希望が持てるような措置というものが必要ではないかと思います。教職では教職大学院というものがスタートしてもう数年過ぎましたけれども、保育士においても、専門的教育ができる保育士の育成が大事なのではないかと思います。

 現場では、非常に多忙をきわめて、その多忙さから研修やキャリアアップができないというような声もよく耳にします。保育の質とは、人材の質の向上でございます。潜在保育士の再就職支援や、保育で補助をしている人たちの雇用支援など、平成二十七年度の補正予算で五百六十六億円が手当てされております。しかし、これは地方が十分の一負担をしてやる事業でございますので、確実に自治体がこれをやるかどうかということが懸念されます。

 二番目は、保育士の配置基準の緩和です。

 皆様御案内のとおり、認可保育所というのは、国基準で非常に厳しい基準がございます。全員保育士でなくてはいけません。ゼロ歳三人につき一人とか、一、二歳は六人に対し一人とか、そういう基準があるわけですね。一方、東京都独自の認証保育所という制度は、認可が十一時間開所なんですけれども、認証は十三時間開所をしております。

 この七ページ目に認可と認証の違いをまとめているわけですけれども、保育士基準、全体の六割でいいわけですね。四割は保育士の資格を有しなくとも働いてもいいということです。

 昨今の保育士不足を受けまして、厚生労働省に緊急的な取りまとめをしていただきました。朝夕、子供の少ない時間帯は保育士の資格を有しない者でもいい、三歳児以上は幼稚園教諭や小学校教諭でもいいというようなことを決めていただいて、平成二十七年度中に省令改正して、二十八年度から実行できるようにと。しかし、この緩和策というのは、保育士の需給関係が逼迫している待機児童が解消するまでという方針を決めているんですね。国が決めても、自治体が従うかどうかというのはまた別物ではないかと思います。

 私は、認可保育所の基準を恒常的に認証保育所並みに改めてもいいのではないかと思います。多様な幼児教育の専門家、例えば音楽の専門家とか保育ママの経験者とか、いろいろな資格を持つ人たちが保育の現場に入ってくる。認証保育所の保護者調査では、十三時間開所しているという長時間保育に加え、いろいろな保育メニューがあるということで、保護者の満足度は高く、過去に死亡事故は一例も起きておりません。

 また、スウェーデンやフィンランドなど、いろいろな保育園にお邪魔すると、親が保育所の運営に携わったり、ボランティアとして保育の現場に入ってくるという例もございます。事故や安全性に配慮することはもちろんのことでございますけれども、仕事を探している人の、パートを探している人たちの求職と研修の場に充てるといった考えなどを入れれば、保育の現場に多様な方たちが入ってまいりますし、現在の保育士の休暇のとりにくさなども解消するのではないかと思います。

 三項目めでございますけれども、家庭的保育、保育ママや事業所内保育、小規模保育といった認可保育所で保育するということがもう当然のようになってきているわけでございます。利用者の選択肢が広がることは、これはありがたいことでございます。間口が広がるということは、質のチェックをどうしていくかということが大事でございます。

 昨年十二月、神奈川県の平塚駅前のビルの中にある保育所で、生後四カ月の男の子が亡くなるという、何とも痛ましい事故がございました。二〇一〇年、認可外の保育施設では死亡事故が七件、一一年十二件、一二年も十二件というように相次いでおります。県の立入調査では、当時、職員が一人しかいなかったことが確認されております。

 この小規模保育所の認可基準というのは、国の基準を踏まえて、各自治体に裁量があって、各自治体が定めておりますし、保育ママがどういう研修をしているかというのも、自治体によって異なります。利用者からは非常にわかりづらいんですね。したがいまして、どういうことをやっているのか、アレルギー対応をしているのか、情報公開を徹底することはもちろんのこと、保護者からの声、第三者評価を開示していくこと、監視の強化、さらに、だめなところがあればそこを改善するための予算措置、後押しをお願いしたいところでございます。

 四点目は、民間企業が保育園を運営する、保育所開設のために非常な手続の煩雑性があるということで、これは予算とは少し関係がございませんけれども、お話をさせていただきたいと思います。

 例えば、横浜市では、待機児童を非常に少なくして目覚ましい成果を上げておりますけれども、開園一年前の時点で、園長候補というものを既に提示しなければいけないんですね。施設長の確保は重要なんですけれども、これだけ保育士が困難な状況では、一年前に提示するということは難しゅうございます。また、園長の資格についても、杉並では、職員の半数が五年以上の保育経験が必要で、園長は保育経験七年以上、世田谷では、私立の園長の異動を五年間してはいけないということ、これは国基準よりもいずれも厳しくなっております。

 国が幾ら緩和をしても、自治体のところでそういうブレーキをかけてしまうような行動があれば、保育園はふえてきませんし、民間企業が参入障壁を感じているということは確かでございます。

 施設整備の面でも、首都圏の主な自治体は、都市公園を代替して園のお庭にしていいということを決めているんですけれども、三鷹では園庭が必須でございます。都市部で広いお庭をとるというのは非常に困難なんですね。ぜひ、仕様規定、何々であらねばならないという基準から、性能規定に着眼点を移していただきたいと思います。

 最後、五点目でございますけれども、皆様御案内のとおり、保育所の運営形態の中で、社会福祉法人が八六%、民間企業は株式会社と有限を合わせて六・五、そのほかNPOやさまざまな運営形態が参入しているんですね。

 借地で保育所をスタートでき、資本市場から資金を調達できる株式会社のメリットというのは、人材育成やおもちゃの購入など、スケールメリットを生かせることでございます。

 しかし、八ページ目に記載しましたように、株式会社と社会福祉法人というものは、税制の面や補助金の面でイコールではございません。私は、スケールメリットを生かして開設のスピードが速い株式会社が参入をするために、こうした面のイコールフッティングというものをお考えいただきたいと思います。

 また、私がかかわっておりました民間の会社でも、社会福祉法人から経営を譲渡したいという複数の案件が持ち込まれております。後継者不足や設備の更新ができないということから売りたいと言うんですけれども、今の法律、制度の中では、民間の株式会社が社福の保育所を買って、それを連結に組み入れるということは困難でございます。

 この大変な中で、社福の保育園を一園でも閉鎖させないようにするためには、事業継承の仕組み、こうした会計の仕組みなどについても再考をお願いしたいと思います。

 最後に、女性の就労支援、次世代の育成というものは、時間もお金もかかることでございます。しかし、女性が仕事を続け、生涯賃金、たくさん稼いでいただき、九十年間生きる、生涯にわたる自立ができるということや、女性が就業することによってさまざまな面の消費がふえてまいります。化粧品を買ったり、衣料品を買ったり、教育支出を、自分のために投資をしたり、支出もふえていくわけでございますね。こうした投資に見合う効果というものが得られることは間違いございません。

 ぜひ社会保障費用の中で、子育て、教育について、予算措置をもう少し手厚くしていただけるようお願いしたいと思います。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

竹下委員長 ありがとうございました。

 次に、松田公述人にお願いいたします。

松田公述人 皆様、おはようございます。御紹介にあずかりました公述人の松田元でございます。

 本日は、こうした場所にお招きいただきましたことを大変光栄に存じます。

 お手元に青い資料がございますけれども、衆議院予算委員会公述人資料というのをごらんいただきながら、私からの御提言を申し上げたいというふうに思ってございます。

 まず初めに、私からは、今回の予算、そして現状の政策、政府の皆様の政策に関して、賛成の立場をとらせていただきながら、その中で提言をさせていただきたいというふうに思っております。

 実は、かく言う私自身が、大学で教員をさせていただく傍ら、自分で事業をやっている経緯もございまして、投資会社の代表をやっている関係もありますので、ぜひ今回のアベノミクスには成功いただかないと困るという個人的な思いも大変強く入っておりまして、二〇一三年度、二〇一四年度は大変恩恵を賜りまして感謝を申し上げたいと思っております。その上で、昨今の金融情勢が荒れているものですから、この損失を何とか取り返したいという思いもございますので、あわせてお聞きいただければ幸いでございます。

 雑談が過ぎましたけれども、今回私の方からは、基本的には賛成という立場で現状の政策に関しての御提言を申し上げたいんです。一方で、先ほどもお話ございましたけれども、今明らかにリスクとして想定され得る国債に関するリスク提言というのを三点ほどきょうはさせていただきたいと思っております。

 まず、一ページ目でございますけれども、下の方のスライドで、提言の全体像というのを書かせていただいてございます。

 量的緩和政策、追加緩和、マイナス金利を含めてさまざまな政策が行われているわけでございますけれども、現時点において大きく三点ほど本質的なリスクが介在しておりまして、こちらを念頭に置いた上で今後の政策を展開しないと、非常に、国債の格付のダウン、それから空売りのリスク等々があるというふうに考えてございます。

 まず、一点目でございますけれども、後ほど御説明させていただきますが、異次元緩和、それからマイナス金利の導入に伴う実体経済に対する影響のリスクでございます。

 このマイナス金利の導入が本当の意味で実体景気に好影響を与えるかどうかということは、後ほど、欧州で既に導入している各国のデータを比較してお見せしますが、必ずしも好転しているという保証はございませんので、マイナス金利導入に伴う実体景気の悪化というのが非常に大きな一つのリスクとしてございます。

 それから、二点目でございますけれども、提言の全体像の左下の枠にございますが、実は、格付会社と、外国人勢の空売り、ヘッジファンドによる空売りというのが往々にしてセットで来るケースが多くございます。

 格付会社といいますと、代表する会社が数社ございますけれども、基本的には、海外の格付会社の格付の基準というのが、勝手格付と言われるケースも非常に多く、なぜか我が国の国債の格付が不当に低く評価されたりするケースが多くて、個人的にはこれに非常に疑問を感じるんですけれども、この格付が下げられるところとあわせてヘッジファンドの売りが来るケースが非常に多くて、これが同時に発動した際の国債リスクというのは非常に高いのではなかろうかと個人的には考えてございます。

 それから、三点目でございますけれども、先ほどもある資料にございましたが、バーゼル委が現在、日本国債に限らず世界の銀行の国債を、今まではリスクゼロアセットで評価していたんですが、これをやめていこうという、いわゆるリスクアセット化に向けた検討を始めているようでございます。これが同時に来ますと、今大量に国債を国内で償還されているわけでございますが、国債が日本国内で償還されているから日本は大丈夫だよという理屈がだんだん通じなくなってまいります。

 以上申しました三点のリスクについて、私から御提言を申し上げたいというふうに思ってございます。

 何点かデータを御参照いただきながら、一つ一つ御説明を申し上げたいというふうに思ってございますが、まず、めくっていただきまして、二ページ目の下のスライドでございます。

 御参考資料といたしまして、異次元緩和以降の日銀、金融機関の国債保有率の推移というのがデータとして出てございます。これは、いわゆる民間銀行が緩やかに日本国債の保有比率を下げてきていて、一方で、中央銀行でございますけれども、日銀が保有比率を上げているというデータをあらわしたものでございます。

 三年前にいわゆるアベノミクスが始まりまして、日銀がかなりのボリュームで量的緩和をしておりますので、政府、日銀が保有する国債が上がるのは当然ではございますけれども、一方で、民間銀行の保有比率がやや下がりぎみでありまして、この下がっている比率が非常に多い状況でございます。

 国内で果たしてこのまま国債が順調に消化されるのか、あるいは保有され続けるのかということに関してやや疑義の残るデータが出始めてきておりまして、こちらのデータはぜひ注視していただいた方がよろしいのではないのかなというのがまず御提言としてございます。

 次でございますけれども、めくっていただきまして、四ページ目のスライドでございます。

 実は、海外投資家の国債保有額、それから保有割合というのが緩やかに上昇傾向にあるというデータも出ております。これは平成十七年末でございますけれども、当時四・四%ほどでございました海外投資家の日本国債保有比率でございますが、現状、倍以上になってございます。

 つまり、海外の機関投資家、それからヘッジファンド、政府が日本国債を保有する比率が上がるということは、その比率が上昇した分、国内の保有比率が下がるというケースにございますので、日本国債の緩やかな国外流出が起こっているという考え方もございます。

 それから、もう一つおもしろいデータがございまして、少しデータが飛んで恐縮でございますけれども、九ページ目をごらんいただきたいんですが、下のスライドでございます。

 実は、勝手格付と私は今回引用させていただいておりますが、格付会社が日本国債の格付を下げるとなぜか海外の保有比率が上がるという、やや奇妙なデータが出ております。

 なぜここで、格付会社が日本国債の格付を下げた際に、海外の機関投資家やヘッジファンド、それから政府が日本国債を購入しているのかはやや疑義が残る点ではございますけれども、非常にこのあたりの格付会社の恣意性といいますか、恣意的な格付によって当国の国債のリスクが上がるということは、御提言の価値が一つあるのではないのかなと個人的には考えてございます。

 それから、少しページを戻っていただきまして、五ページ目をごらんいただきたいんですけれども、これは、冒頭申し上げました、マイナス金利の導入が果たして我が国の実体景気に影響を与えるのか、これの御参考データを記述させていただいてございます。

 大きく分けまして四つの比較データをこちらで記載させていただいてございますけれども、ECB、それからデンマーク、スイス、リクスバンクと、先行してマイナス金利を導入しているそれぞれの各国のデータがこちらに挙がってございます。

 御参考までに、ECB、デンマークをごらんいただきますと、中銀預金金利をマイナス〇・一%にすることを決めまして、今はマイナス〇・三%まで拡充されていると記憶しておりますけれども、ずっと継続をしておりますが、現時点においては、マイナス金利の効果が本当にECBで出ているかどうかというのはわからないというコメントが出てございます。

 それから、最も早く明確な傾向として効果が出ていると評されるデンマークのデータが非常に興味深いわけなんですけれども、デンマークは、二〇一二年七月にマイナス金利を導入いたしまして、通貨クローネの急上昇がとまって成長率が安定しました。一方で、市場に合わせて変動するタイプの住宅ローン、これをマイナスにする機関が出てきており、借り手の金利負担を金融機関が肩がわりすることになり、銀行側の負担がふえている。要するに、マイナス金利が導入されて借り手の負担を銀行がかぶる、一方で、金利の低下によって住宅価格の上昇を招いている。

 これは、景気指数で申し上げると、やや改善傾向にあるように捉えられるわけなんですけれども、今後、住宅価格が極大に上がっていきますと、当然ながらバブルが発生してまいります。バブルが発生した際には、ある程度の金融引き締めによって金利を引き上げてくる、金利の暴騰につながる可能性がございますので、短期的には景気に対する好影響は出てきておりますけれども、果たしてこれが本当にバブルの始まりにならないという保証はないという状況でございます。

 したがいまして、マイナス金利の導入によって実体経済が確実によくなるかというデータはまだ出ておらず、まさに未曽有の挑戦になっているというのが現状の分析でわかるようになっております。

 それから、行ったり来たりで恐縮でございますけれども、少しまたページをめくっていただきまして、七ページ目のところでございます。三点目のリスクで申し上げましたバーゼル3、それから今後のBIS規制の強化に関してのコメントをさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、下の方のバーゼル3の概要というところでございますが、ロイター、ブルームバーグが記事を書いてございます。これは読み上げさせていただきますけれども、二〇一九年にはリスクアセットの加重割合が一〇%に拡充される予定でございますという記事でございます。左側がロイターの記事でございまして、右側がブルームバーグの記事でございます。

 ロイターの方は、二〇一五年の方ですね、国債のゼロリスク評価を見直ししますと。今までは、国債というのはリスクゼロの資産だということで、それを前提に中央銀行が量的緩和政策等々、組み込んできたわけでございますけれども、今度、国債を対象とする資産評価がリスクゼロじゃないよというふうになった場合に、その国債を保有することに対するある程度のリスクを織り込まなきゃいけなくなりますので、金融機関それぞれに対して、自己資本比率に大きな影響が出てくるだろうということが想定されております。

 それから、ブルームバーグの方でございますけれども、同じような記事でございます。これはことしの一月十五日に出てきたものでございますけれども、現状のリスク加重資産の割合というのが、これまでの規則のもとで今までは六%であったものが一〇%に引き上げられるということが記事となってございます。

 これも、いわゆるバーゼルのBISの規制の強化に伴って、金融機関に対する圧迫につながりかねないという状況が出始めておりますので、この三点目のリスクというのは非常にリスキーだなと個人的には感じてございます。

 一方で、もう一回一ページ目に戻っていただきまして、一番最初の下のスライドでございますけれども、申し上げた、マイナス金利の実体景気に対する影響と、格付会社と外国人、ヘッジファンドに伴う空売りのリスク、それからバーゼルのリスクという三つのリスクがございます。

 このリスクを踏まえると、当然ながら、量的緩和をちょっと気をつけようとか国債を買うのをとめようという提言につなげたくはなるんですけれども、一方、現状のマーケットで、今度は投資会社の代表として考えたときに、このまま政策をとめてしまったことの金融ショックの方が、さらに実体景気に影響を与えるケースが非常に多いと考えております。

 したがいまして、次のページに御提言をまとめておりますけれども、当然、基本的な姿勢としては、国債のアセットリスクについてしっかりと認識を皆様で持っていただきたいというのがまず御提言でございますが、一方で、だからといって、これから金融引き締めをやるともっと大変なことになってしまいますので、ある程度の量的緩和、それから、特に私が強く感じておりますのが積極的な為替介入でございます。

 極端に、二月一日から、百二十円近辺をつけていた為替が十日で十円落ちるというのはちょっと異常だなというふうに感じてございます。これは、私自身が一トレーダーとして、投資会社の代表をやっておりますので、マーケットを見ておりますけれども、明らかにヘッジファンドに売りを仕掛けられております。材料とデータと売りで実体景気以上に売り込まれているというのを私個人としては強く感じておりまして、これは早急に為替介入をしていく。

 もちろん、G20の各国協調の姿勢を合わせる必要はあるとは存じますけれども、その一方で、このまま円高に振れていくのを放置し続けた方が、当然、輸出産業に対する実体景気のダメージも大きいわけでございますし、これは介入するべきだなと非常に強く感じている次第でございます。

 それから、恐らく三月でしょうか、決定会合で御検討の話題に上がるとは思うんですけれども、量的緩和の拡充というのも視野に入ってくると思います。

 同時に、私自身が思っております緩和の一つの方策といたしまして、郵政マネーというのが今二百数十兆眠っていると言われているんですけれども、基本的には、ゆうちょ銀行が、貸し出しができない状況の中で、マイナス金利を導入されて最もダメージを受けると言われております。ゆうちょ銀行に眠っている莫大な国内の国民の金融資産というのをこのままマイナス金利で毀損してしまうのは非常にリスキーなものですから、この郵政の中に眠っている資金を、アセットアロケーションの変更等々を考慮に入れて、前向きな形で株式市場にポジティブに影響を与えられるような、いわゆるマネタリーベースの政策というのもあわせて検討いただきたいというふうに思っております。

 私自身がトレードの現場におりまして、当然研究者という立場もあるんですけれども、一番まずいのは、表現は少し荒いんですけれども、要するに、なめられることなんですね。日本政府やあるいは日本の政策の姿勢が外資系ヘッジファンドそれから外国金融機関になめられて、空売りがはまったときのショックというのは、トレードをしている現場の人間でないと非常に表現が難しいんですが、じくじたる思いがございます。

 十分に日本国という実体経済の力、それから、もちろん、GDP比率で見たら債務比率は二倍以上でございますけれども、ほとんどの国債がまだ現時点においては国内で償還されているわけでございますし、実体景気でいったら文句なくいい国で、いい財政状況でございますし、基本的にアベノミクスの方針も非常にすばらしいと思っている一方で、理屈をつけて格付を下げられて、格付を下げられたと同時にヘッジファンドの空売りが入りますと、問答無用で、よかろうが悪かろうが下がるのはマーケットの実情でございます。

 ですので、ここのいわゆるタイミングといいますか、今の日本政府が置かれている状況、そして日本政府の実体景気の状況、財政状況という事実はもちろん大事でございますけれども、その事実をマーケットに対して最も効率的に情報発信していく、メッセージを発信していく。よく市場との対話なんという表現をされますけれども、この市場との対話というところを重視していただきまして、ぜひ継続して、より効果的な金融緩和の政策を続けていただきたいというのが私からの御提言でございます。

 ただ一方で、繰り返しになりますけれども、現在、日本政府、それから中央銀行が置かれている現状といたしまして、国債の格付に対するリスクというのは非常に高まってございます。バーゼル、格付ダウンと空売り、それからマイナス金利の影響というのは、ぜひ皆様の頭の片隅に置いていただきまして、動向を注視していただきたいというふうに考えております。

 私の方からは、以上をもって御提言とさせていただきたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

竹下委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木馨祐君。

鈴木(馨)委員 自由民主党の鈴木馨祐であります。

 きょうは予算委員会の公聴会ということでございまして、公述人の皆様方におかれましては、大変お忙しい中をおいでいただきまして、大変ありがとうございました。心から感謝を申し上げますとともに、きょういただきましたさまざまな御意見をしっかりと予算の方でも参考にさせていただきたいというふうに思っております。

 十五分と限られた時間でございますので、お一人お一人に質問もさせていただきたいと思いますけれども、二分程度でそれぞれお答えをいただければありがたいというふうに思っております。御理解を賜れれば幸いでございます。

 安倍政権も三年たちまして、四年目ということになりました。この間、経済政策、よくアベノミクスと言われておりますけれども、続けてきたわけであります。

 きょう御意見にもありましたけれども、やはり金融政策、そして財政政策、この三本の矢のうちの最初の二本は当然極めて大事なわけであります。しかし、それはあくまで、その間に三本目の矢である改革をしっかりと進めるということが大きな前提でありますし、同時に、日本の経済を考える中で、私はよく思うんですけれども、政治であるとか政府が景気を支える、あるいは引っ張る、これは若干おこがましいところでもあるんだろうと思います。

 一番大事なことは、やはり何といっても、プレーヤーである民間の企業の皆様であるとか、あるいは個人の方であるとか、こうした方々にしっかりと自律的に回していただけるような、そういった経済をしっかりとつくっていかなくてはいけない、これが大前提になっていくんだろうと思うんです。恐らく、きょうさまざまいただいた御意見でも、そうした思いというものがその中心にあったんだろうと思います。

 そうした中で、これから、潜在成長力という話もありました、どのようにしてこうした民間セクターの中で、人あるいは物、お金、こうしたところをしっかりと回していただける環境をつくれるのか、このことが極めて大事な点になってくるんだろうと私は思います。

 そうした中で、まず熊谷公述人にお伺いをしたいんです。

 この間、特に昨年から、例えばコーポレートガバナンスの改革であるとか、あるいは株の持ち合いの問題であるとか、言ってみれば、企業の経営の中でしっかりとリスクをとっていただきやすいような後押しをする、こういった政策を我々も打ってまいりました。しかし、正直なかなか、設備投資に十分に回っているかといえば、よく内部留保の話もされますけれども、キャッシュの積み上がりも大きい。そうした中で、これが十分ではないというところがあるんだろうと思うんです。

 あるいは、今回のマイナス金利にしても、経済環境によってはこれは貸し出しへの圧力になっていく。ある意味、お金を回していくような循環になるはずが、なかなかそうなってこない。むしろ逆に向いてしまっている。

 この背景となっているファクター、この点についてどうお考えになるか、御示唆を賜れれば幸いでございます。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 例えば、今、設備投資がそれほど大きくは出ていないわけですけれども、データで調べてみると、設備の前に先行するデータというのがあって、企業などに対するアンケート調査で、どれぐらい期待成長率が高まるかというアンケート調査があって、キャッシュフロー、自由に使えるお金の中で設備投資に使った割合、これに期待成長率が三四半期先行している、そういう傾向がございます。

 そういう意味では、やはり三本目の矢の成長戦略は、例えば岩盤規制で、いわゆる農業、医療、介護、労働等の、かなり既得権が強いところまで踏み込んで規制の緩和をしていく、もしくは法人税の減税等々、これらをやることによって企業の期待成長率を上げていくということが設備投資の発火点になる。

 例えば、過去二年間で調べてみると、実は、企業は決して投資をしていないわけではなくて、事業投資というのは全部で五十兆円程度やっている。問題は、その中で国内での設備投資は十八兆円しかなくて、三十二兆円ぐらいが海外でのMアンドAの資金などに流れている。ここが本質的な問題です。

 その意味では、法人税の減税というのは、すぐれて国内立地にかかわる問題ということでございますから、これを大胆に下げた。当初は二〇%台に行くのに三年から五年かかると思われていたものを、政治主導で、二年間で前倒しで二〇%台に下げたということは極めて象徴的な意味があって、そういうさまざまなことをやってビジネス環境を整える、企業経営者の先行きの期待を上げていくということが最も本質的な問題ではないかと思います。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 先ほどおっしゃっていた日本企業が抱える七重苦、まさにこの解消に向けてまだまだ当然やり足りない部分もありますので、ここのところはしっかりと深掘りもしていかなくてはいけないと思います。

 そして、法人税という話がありました。税制というのは、恐らく社会政策的な側面と経済政策的な側面、当然両方あるんだろうと思うんですけれども、そういった中で、今のグローバル経済の中での日本の立ち位置を考えれば、これまで以上に経済政策的な側面、どう成長を阻害しない税制にしていくのか、こういったことも我々はしっかりと追求していかなくてはならないと思います。

 まさに分配との両立という中で非常に厳しいナローパスでありますけれども、これは、当委員会の議論も含めて、今後の政策にしっかりと寄与していきたいというふうに思っております。ありがとうございます。

 次に、小幡公述人にお伺いをしたいんです。

 先ほど、金融に関する話を中心にいただきました。しかし、もともと経済全体を幅広くごらんになっておられる小幡さんでございますので、今の最初の質問にも若干関係しますけれども、よく三本目の矢ということが言われます。確かに、安倍政権がスタートしてから、それぞれの骨太であったりとか各種成長戦略の中で、いろいろな規制緩和あるいは減税といったものも打ってまいりました。しかし、もちろん、まだまだこれは十分ではないという評価もマーケットでもあるわけであります。

 一体、これから具体的にどういった三本目の矢というものを進めていく必要があるというふうにお考えになるのか、その点をぜひお聞かせいただければありがたいと思います。

小幡公述人 お答えいたします。

 私は、成長戦略は政策で実現することは無理だと思っておりますので、いかなる政権においても成長戦略というのは成功しない。つまり、民間の経済ですから、支える、基盤をつくること以外にはできない。ですから、成長戦略を少なくとも五年以内の短期で掲げることは、そもそもどの政権においても誤りだと思っております。あえて言えば、私は、やはり教育で人を育てるということだと思います。

 そもそも経済学者にも責任がございまして、GDPの増大を経済成長と呼んでいること自体誤りで、四―六月期の経済成長率は、成長じゃないんだ、単なる調子がいい悪いですから、潜在成長率という二十年、三十年タームのことだけ呼んでいただきたい。

 そうしますと、結局、人が育つということにしかない。しかも、量から質への時代ということであれば、一人当たりの価値を上げていく。そうなりますと、やはり基礎力を上げる。それは個人の問題ですし、企業が人を育てるのは企業の問題です。ところが、その基礎力というのは政府にしかできない。それはやはり、公立学校、小学校、中学校、あるいはその前の幼稚園、保育園、そこの教育を強化する。

 とりわけ、所得格差が教育格差につながっておりますので、私は個人的には、放課後の充実といいますか、学童を公的に学校の中でやって、塾を呼んでもいいですから、放課後教育を七時ぐらいまでやる、希望者には全部やる。そうしますと、共働きの家庭にも支障がありませんし、子供たちは勉強できるということで、例えばそういうことを考えております。

 そのように、公的教育、しかもそれは、小中学校あるいは幼稚園、保育園という低年齢の子供に対する基礎教育を強化するということに尽きるというふうに思っております。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 今最初におっしゃったように、成長戦略、これが例えばある意味大きな政府的な関与であったりとか、そういったことであっては当然いけないわけでありまして、先ほどおっしゃっていたような環境整備をどうやってやっていくのか。今言った教育の話もそうでしょうし、あるいは社会保障、さらには労働規制、これはいろいろな改革もあるんだろうと思いますので、こういった点を、しっかりとまたこれから取り組みも進めさせていただきたいと思います。

 次に、白石公述人にお伺いをしたいのであります。

 先ほど、保育に関するお話をいただきました。そうした中で、今最後に小幡さんの方からも、共働きというものをしっかりと進めていくためにはという話もありましたけれども、やはり女性にこれからどう参加をしていただくのかが決定的に大事なんだろうと思います。

 特に、労働人口も減っていく中でありまして、恐らく労働市場は、しっかりと労働人口を維持していくためには、外国人、女性、そして高齢者の方、それぞれに活躍をいただかなくてはいけない。そういった中で、女性の参加、特にM字カーブの問題もありますけれども、保育以外にもさまざまなボトルネックというものがあるんだろうと思います。

 そうした中で、どういった点を今、特に問題意識を持って保育以外の点でごらんになっていらっしゃるのか、その点をお伺いできればと思います。

白石公述人 御質問ありがとうございます。お答えをさせていただきます。

 女性の就業ということで御質問をいただきました。

 女性の就業継続に関しては、日本の女性も非常に多様性を呈しておりまして、ずっと働き続けたいという方や、一旦途中でやめて仕事に復帰したい、こちらの方が今大多数だと思うんですね。そういう点を考えますと、再就職支援をどうしていくのか、これを政策でやり遂げるということは非常に難しゅうございますので、民間企業の協力を得ながら、再就職できる女性の後押しをするということではないかと思います。

 さらに、今の税制なども女性の働き方を大きく規定しているのではないかと思います。国会でも議論されておりますけれども、配偶者控除の壁とか、年金を負担しないのにそれをもらう人たちの存在、これは有職女性対専業主婦の間の対立というふうな呼び方をされておりますけれども、日本の税制や制度が女性の働き方を規定しておりますので、女性の社会参加のためにはそういう点の見直しも必要ではないかと思います。

 ありがとうございました。

鈴木(馨)委員 ありがとうございます。

 今御指摘がありました税制もそうですし、あるいは高齢者雇用ということもそうですけれども、やはり企業、受け手の側の意識、あるいはさまざまな制度、こういった点もあるんだろうと思います。これから決定的に人の問題が極めて大事でありますから、その点もしっかりと取り組みをさせていただきたいと思います。

 実はあと二分を切っておりまして、若干私も急ぎながらと思っておりますが、最後に松田公述人にお伺いをしたいと思うんです。

 先ほど来、マーケットのさまざまなお話をいただきました。確かに今、国債を中心に債券マーケットは、マーケットの機能ということでも極めて懸念があるわけでありますし、若干見通しがしづらい状況でありますけれども、いつかそのうちに直面をしなくてはいけないのは、いわゆる日銀のイクジットというかそういったこと、恐らくどこかのタイミングではこれは出てくるんだろうと思います。

 マーケットを見られている松田公述人のその点に関する率直な御意見を最後に承って、終わりとしたいと思います。

松田公述人 御質問ありがとうございます。

 まさに、日銀の量的緩和の出口戦略に関しましては議論がたくさんございます。

 実は、私の資料に一部記載だけさせていただいたんですが、日本政府のヘッジファンド機能強化ということを書かせていただきました。

 基本的に、日銀及びいわゆる公的資金、鯨とよく称されますけれども、これがETFを買い、そして日本のマーケットを買い支えていて、この日本の買いに対して外資の売りが来ると出口が非常に難しくなってくるわけでございますけれども、より高度な、トレーディングの能力の高い方々をぜひ政府の中枢に置いていただきまして、日本政府売りの外資買い、いわゆる売買状況の逆転を起こしてしまえば、かなり効率的にキャピタルゲインがとれるだろうというふうに考えております。

 やや暴論になってしまうかもしれませんが、ETFを買う際に、ある程度出口を、国内でしっかりコンセンサスをとったら、今度は売りのETFを買う、ダブルベアを買うぐらいの発想の転換が必要でございます。要するに、国内の資金をしっかりと守って外資の売りに耐えるというような戦略的なヘッジファンド機能というのが、恐らく次のフェーズでは必要になってくるのではなかろうかなと個人的には考えてございます。

 もちろん、今は、量的緩和の資金の供給に限界は見えてはいるものの、バッファーはございますので、まだ買い一辺倒でいいかもしれませんが、必ずそのうち買い一辺倒だと厳しくなってまいりますので、売りに対してもしっかりとれるような、いわゆる外国人投資家勢と国内投資家勢の本当の意味での戦いの勝利に至れるように、売りの機能を強化いただければよろしいんじゃないかなと個人的には考えてございます。

鈴木(馨)委員 時間になりましたので、質問を終わります。どうもありがとうございました。

竹下委員長 次に、浮島智子さん。

浮島委員 おはようございます。公明党の浮島智子でございます。

 本日は、四人の公述人の皆様方に貴重なお時間をいただき、また御意見を賜り、心から感謝でいっぱいでございます。本当にありがとうございます。

 私の方からは、関西大学の教授として、また、バリアフリーのまちづくり、少子化問題、働く女性の支援の専門家として活躍されるとともに、千葉県の教育委員会、小中学校のPTAの会長として教育行政また学校運営にも参画されてこられました白石公述人の方にまずお伺いをさせていただきたいと思っております。

 いろいろ資料を読ませていただいたんですけれども、白石教授は、海外で、働いている女性が多い国ほど出生率も多い、日本でも、女性の就業率が最も高い山形県やあるいは福井県は出生率が高く、少子化の原因として女性の社会進出が進んだからというのは全く逆であるとおっしゃられております。

 また、女性が働きながら子育てをする環境づくりというのは喫緊の課題で、進めていかなければなりません。先ほども白石公述人の方から、保育に関する提言五つということで、極めて重要な提言もいただきました。私も、これもしっかりと進めていかなければならないと思っております。

 子育てと仕事の両立、働き方の改革、これが必要と思っておりますけれども、子供を持つ人に安心を与えて、これから子供を産み、そして育んでいこうとしている若い世代に何より必要なのは、私は、目の前の地域の子供たちが輝いている、そしてそれぞれが幸せを感じていること、これが重要であると思っております。

 今の子供たちが生き生きと輝いていなかったり、あるいは幸せを感じていないとなると、子供を産もうとしている若い方が産もうという気持ちにもならないし、また、子供たちがそういう状況で育って成長していったら、家庭を持ちたいとも思わないのではないかと私は思っております。女性が輝く社会の大事な土台が、子供が輝く社会をつくっていくことであると考えているんです。

 そこで、まず白石教授に、子供たちが学校や家庭、地域に居場所を見つけて輝くために、特に、先ほども音楽の専門家や保育ママのお話がございましたけれども、幼児教育や小学校教育が果たすべき役割、また幼稚園の教諭や小学校等の活用、そして子育てをしている保護者への支援、あるいは、子供たちが確実に語彙の力をつけて、感情をしっかりと言葉で表現できる力を育むための授業の充実などについて、お考えをお伺いさせていただきたいと思います。

    〔委員長退席、関委員長代理着席〕

白石公述人 御質問ありがとうございます。

 今、浮島議員がおっしゃいましたように、子育て支援や子供の健全育成というものは政策パッケージが必要でございます。私がきょう申し上げたように、保育園、保育所の拡充だけではなく、地域での子育て支援や、親の経済状況にかかわらず学び続けられる、学び直せるような環境づくり、さらには親育てと言われるような地域社会での親支援、いろいろなことをやっていかなくてはいけません。

 先ほど御質問がございました、女性が働いている地域ほど子供がふえていく、これは事実の一つでございます。それ以外に、職住近接で、男性の家事時間や育児時間の長さというものも関係してございますし、祖父母世代の近居というものも関係しております。つまり、一言で言えば、夫が早く帰ってきて、おじいちゃん、おばあちゃんが手伝ってくれて、通勤時間が短くて、お母さんも働いて経済的な自信がつけば、子供がふえていく地域が幾つかあるということでございます。

 子供の健全育成にとってまず大事なことは、先ほど申し上げたとおり、全ての子供の幼児教育の保障ということでございます。当然、保育を受ける権利や幼稚園で教育を受ける権利というものは保障されなければいけませんし、経済状況でお困りになっている御家庭が今お子さんを持つ家庭の六人に一人ということで、なかなかその保障ができていないことも私は直視すべきではないかと思います。

 全ての子供の教育、保育の保障が必要でございますし、これを全て公費で賄おうとすれば大変なことでございます。

 例えば、福井県では、御近所のお母さんたちがワンコインで子育て中のお母さんのサポートに入ったり、子育て支援ができるというような独自の政策を組み込んでおります。地方の既存資源や創意工夫をしながら、お金のかからない方法というのもたくさんあると思いますので、ぜひ、そういった地方を応援するというような後押しをしていただければと思います。

 ありがとうございます。

浮島委員 ありがとうございます。

 今もございましたけれども、男性の協力もとても重要だと思っておるところでございますし、また、昔は、何かあれば地域みんなで助けていくということもあったと思いますけれども、今は、自分の生活と時間に追われて、なかなかそういうことができなくなってきてしまっているのも現状だと思っているところでございます。

 今、白石公述人の方からもお話がございました地域との連携というのが私はこれからとても重要になってくると思っているところでございますけれども、ふと私、いろいろなところでいろいろな方とお話をしていますと、今社会全体で、子供たちが社会の宝だという考えがちょっと希薄になってきてしまっているのではないかと感じているところでございます。

 我々公明党は今、学校の校長先生、教頭先生、教員のみで構成される明治以来の学校の組織に、スクールカウンセラーなど新しい専門のスタッフ、地域の人材、こういう方々に入っていただいて、そういう方をどんどん巻き込んでいって学校の機能の強化を図っていくチーム学校というのをやっていこうということで推進をしております。

 今までPTAの会長も経験されている白石公述人は、育児は育自であるというふうにおっしゃって、親も成長しているということをよく言われておりますけれども、親の成長のためにも、地域が子供を社会の宝として支援をしていくことがとても重要であると考えております。

 そこで、今、福井のワンコインのお話もありましたけれども、地域と学校、そして家庭との連携を促進していくために具体的にどういうふうにしていったらいいとお考えか、御意見をお聞かせ願えればと思います。

白石公述人 地域、学校、家庭の連携促進についてお答えをさせていただきます。

 今、地域全体で子育てを支援するという御質問がございましたけれども、私は、現代社会はそれが非常に難しくなってきているのではないかと思います。

 皆様御案内のとおり、マタニティーマークというのは、過去は非常に大きなマークでございましたけれども、それが昨今小さくなっているのをごらんになったことがございますでしょうか。あれを電車の中でつけていると、優先座席に座りたいのかということを言われたりとか、保育所ができるとなると、地域に反対運動が起こります。また、小学校のスピーカーが真っすぐではなく斜めを向いているんですね。校長先生になぜ斜めにしているんですかというふうに申し上げると、うるさいと苦情が出ると。バスや電車の中ではベビーカーを畳めというふうな論争がある。

 私は、子育て支援を地域でするというのは非常に当たり前のことで大事なことだと思うんですが、それが難しくなってきているのではないかと思います。ただ、救いの一つとして、地域の中にいろいろなボランティア団体や子育て支援の団体ができているんですね。

 私が政策参与をしておりました名古屋でも、まず団体やボランティアの人たちを育成して、その人たちに地域に帰っていただき、先輩ママさんとして虐待を防止するためのさまざまな活動をやっていこう、人材を育てて地域に戻っていただくことから始めました。社会全体としてはなかなか取り組みにくく、何からやったらいいかわからないことでございますけれども、人材育成なら簡単にできるのではないかと思います。

 ありがとうございます。

浮島委員 重要な御提言ありがとうございます。

 あともう一点、先ほどもちょっとお話がございました一億総活躍社会。

 私は、一億総活躍社会をつくっていくためには、一人一人が輝き、活躍できる社会をつくっていかなければならないと思います。その中でも、今政府におきましては、出生率を一・八に上げていこうという話でございます。

 私は、今いろいろな現場の方から、特に女性の方からもお話をお伺いしておりますけれども、子供を産み育てたい、そして子育てをしていきたいという若い女性とたくさんお話をしていますと、若いころに奨学金を借りて、勉強して、卒業して、そして今は就職をしている、でも、返すのは当たり前のことでございますけれども、返していかなければならない。でも、今若い世代に多いんですけれども、御夫婦とも奨学金を借りていて、そして結婚されて、子供を産み育てたいと思っている中で、二人とも返済をしていかなければならないので、本当は子供を産み育てたいんだけれども、とても難しくてできないというお声をたくさんいただいております。

 そんな中で、とても両立が難しいという声の中で、就労する女性の出産、子育ての支援の観点から、子育て世代の奨学金の返済の猶予、減免を積極的に進める、認めていくべきだと私は考えているんですけれども、白石公述人の御見解をお聞かせ願いたいと思います。

白石公述人 ありがとうございます。奨学金についての御質問をいただきました。

 私の教えております学生でも奨学金を借りている者がたくさんおりまして、私自身も、大学四年間、大学院二年間、たくさん借りて返済に苦労した記憶がございます。

 今、学生全体、短大、四年制を合わせて、大体四割ぐらいが奨学金の恩恵にあずかっているのではないかと思いますが、財団や一部の篤志家がやっていらっしゃる給付の奨学金以外に、課題となっているのは有利子の奨学金だと思うんですね。

 日本学生支援機構が出している奨学金も一種と二種がございまして、利子がつく奨学金の延滞が問題になっております。三カ月返さないとこれが信用保証会社に行きますので、将来、ローンを組んだり、子供の教育ローン、住宅ローンのときにブラックリストに載ってしまうというような不安もあるようでございます。

 やはり、奨学金ではなく、国の教育ローンというふうに呼びかえてもいいのではないかと思いますが、浮島議員がおっしゃったように、安心して学ぶためには、返済期間をもう少し長くしていくということですね。今、十六年から二十年で返しているんですが、もう少し長くしていって、一回当たりの返済額を少なくしていく。

 これは平均ではなかなか申し上げられませんけれども、例えば四年間で二百四十万円借りていますと、返済は毎月一万三千円ずつです。初任給の五%がこの奨学金の返済に回っていきます。これは厳しいと思うんですね。

 日本は十八歳で大学へ入りますけれども、大学進学率は、ノルウェーやオランダ、ドイツを見ても日本よりも高いです。日本の大学進学率は五一%ですけれども、七〇から九〇の諸外国がたくさんありまして、平均入学年齢は二十五とか三十です。十八歳、六・三・三・四というのをやめて、自分が働いて大学に入る、そのための試験制度にすることによって、親がぎりぎりなのに十八歳で大学に入るということもなくなっていくのではないかと思います。

 大学年齢の柔軟化、返済期間の引き延ばし、さらには、今借りていらっしゃる方の有利子分をチャラにすると、一年間で一千億円の予算措置があれば何とかなります。これを全部国の予算でやっていただきたいとは申しませんけれども、困窮すれば一部免除をするとか、何か社会奉仕的なことをすれば少し軽減されるとか、そういうこともアイデアの一つにお加えいただければと思います。

 ありがとうございました。

浮島委員 貴重な御提言ありがとうございました。

 最後に、熊谷公述人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 関連資料というのを読ませていただいたんですけれども、その中で、労働生産性の向上の王道は教育であるというふうにおっしゃられております。この王道は教育であるということはどういうお考えなのか、お聞かせ願いたいのと同時に、今お話がございましたけれども、子供たちを社会の宝として育んでいくための地域との連携、これについてどうお考えか、お伺いをさせていただきたいと思います。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 我が国の労働生産性がなぜ低いかというと、これはいろいろな理由があるんですけれども、その中で一つ大きな理由として、ITの投資はそれなりにやっている、ただ、無形資産という言葉を使いますが、そのITを活用する人材に対する投資だとか教育に対する投資、例えば、特に会社の中などでそういう人に対する投資が明確に今減ってきている、こういう問題がございます。

 ですから、その意味では、やはり、職業教育などをある程度会社がやることも必要だと思いますし、一部で国家がそれをやっていくというようなことを含めて、最終的に生産性の根源というのは人でございますので、人に対する投資というものを官民挙げてやっていくということが重要ではないか。

 その中で、先ほど来御指摘ありますように、地域の中でお互いに助け合いながら、いろいろな道徳のようなところも含めてしっかりと教育をしていくということがやはり非常に重要なポイントではないかと思います。

浮島委員 ありがとうございました。貴重な御意見を賜りました。

 私も、日本の柱は教育、これが重要だと思っておりますので、これからも皆様の御意見をいただきながら頑張ってまいりたいと思います。

 本日はありがとうございました。

関委員長代理 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 四人の公述人の皆さん、本当に貴重な意見、ありがとうございました。大変参考になりました。

 短い時間ですので端的に質問をしていきたいと思います。

 熊谷公述人にまずはお伺いしたいと思うんですが、私は、成長をどうしていくのか、小幡先生は、成長というのはどうかなという話もありましたけれども、定義のいかんにかかわらず、成長をどう考えるのかということは大事だと思うんですが、一つ、七重苦とよく言われましたよね。私も、これはいろいろ過去分析したことがあるんですが、その中でも、一つ、高い法人税、これについて実はずっと注目してきているんです。

 例えば、これは有名な話ですけれども、二〇〇八年から五年間、トヨタは一円も法人税を払っていませんね。これは私が言っているのではなくて、一昨年五月のトヨタの決算発表のときに豊田章男社長が、やっと法人税が払えるようになったという話なんですが、そのときでも、実は税引き前利益が数兆円あるということなんですね。

 何をお伺いしたいかというと、これはたまたまきょう松田公述人が出してくれた資料の主要税目の税収というのがあって、バブル期も含めてここ数十年間の税収の動きが書いてあるんですが、最近一番よかった法人税収というのが平成十九年ぐらいにピークが来ているんですが、そのときと今を比べても、法人税の払いというのは実は非常に少ないんですね。主要税目の中で唯一税収が減っているのが法人税であります。

 その意味では、マクロで見たときの我が国の企業部門の法人税負担というのはむしろ下がる傾向にあって、そのことが障害になって成長を阻害しているというようなことが、なかなかイメージがしにくいのかなと。むしろグローバルで活躍している企業ほど、例えば海外子会社の配当については九五%益金不算入という租特がありますから、払わなくていい。

 そういうことがあるので、我々がイメージしているような、外との競争の中で、法人税が高いからなかなか勝負ができないというよりも、むしろ勝負している企業ほど、実質、リアル実際法人税みたいなものが低いんじゃないのかということを思っているんです。

 そのことについての見解をいただきたいのと、もう一つは、そうはいっても、総理がおっしゃっているような、二〇二〇年ごろまでに六百兆円の経済成長をなし遂げていく、これはぜひやったらいいし、やりたいなと思うんですが、どう分析してもたどり着かないんですね。

 というのは、成長の三要素があって、労働と資本と、そして生産性の向上、よくTFPであらわされますけれども、これが、内閣府の中長期試算を見ると、例えばことしから来年に、経済成長シナリオだと、二〇一六年の〇・五から、来年から急に生産性の向上が〇・九に、倍ぐらいにはね上がるんですね。過去、バブル期も含めて見てみても、単年度の生産性の向上が一年間で倍になったケースというのはさすがにないんです。絶対値で二・二とか二・三とか高いのはあるので、それを目指していくのはわかるんですが、たった一年間で生産性の向上が二倍になるというのはなかなかない。

 質問は、六百兆円を二〇二〇年までに達成できるのかなと。

 この二点をまずお伺いしたいと思います。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、法人税の減税というところで申し上げると、私自身は、これはやはり政策の柱としてやるべきである、こういう考え方でございます。

 一つは、まず政策の手順として考えたときに、先に分配政策をやれば企業はかなり疲弊をしてしまうということがありますので、まずは分配の原資をつくって、次のステップとして分配政策をやっていく。

 もう一つは、国際的な潮流ということで考えたときも、今、世界の税制の潮流というのは、法人税を下げて企業を活性化して、他方で消費税を上げて全体の財政を健全化していく、これが大きな潮流でございますから、方向性としてはこれにのっとったものではないか。

 もう一つ申し上げたいのは、法人税というのが、あたかも実体のない法人に帰属をする、言ってみれば企業優遇というような考え方があるわけですけれども、これは、さまざまな実証研究によれば、決して実体のない企業に帰着するわけではなくて、最後は、配当や給与などを通して個人の所得にほとんどの部分が、法人税で減税した部分は帰着してくる、こういうことがございます。

 それから、先ほど申し上げましたが、日本は、事業投資全体は五十兆円やっているわけであって、その中で、海外に流れているMアンドAなどの資金が三十二兆円あるわけでございますから、すぐれて企業立地にかかわる問題としてこの法人税の減税というのが重要ではないか。

 もう一つは、御指摘の中で、大企業がかなり恩恵を受ける、こういう話がございましたけれども、実際はかなり中小企業がこれを利用しているというところもあるわけであって、例えば研究開発税制などでいいますと、七割は中小企業が利用している。それから、所得拡大の促進税制というのがありますが、これも九五%ぐらい中小企業が利用しておるわけでございますから、その意味では、決して恩恵は大企業だけに及ぶわけではなくて、中小企業などにも広く薄く及んでくる。

 その意味では、今までの日本の政策というのが、どちらかといえば傾斜生産方式というか、大企業だとか一部の製造業、ここにかなり恩典を大きく与えてきたわけですけれども、これを広く薄く、中小企業だとか非製造業などに恩典を与えるという意味で、課税ベースを広げながら実効税率を下げるということが非常に重要なポイントではないか。

 そして、もう一つ御指摘のあった受取配当金の益金に対する不算入制度ということでございますが、これは諸外国でも一般的にとられている制度であって、二重に課税をしなくてもいい制度、つまり、子会社などが現地で課税される一方で、もう一度課税すれば二重課税になってしまうわけでございますから、そこの部分を含めてこういう制度がとられているということであって、これも決して大企業を優遇してそういう形がとられているということではないのではないかと思います。

 それから、後段の部分の、成長の御質問でございますけれども、ここは、六百兆円というのはかなり高い目標であるというのは確かである。ですから、その意味では、私ができるかできないかというのを予言するのはちょっと難しいわけですが、べき論としては、細かい工程に分けて、こういうことをやるという工程表をつくりながら政府が実現をしていくということが必要である。

 実際、今、経済財政諮問会議等で、設備投資の促進で十兆円程度、それから訪日外国人の消費で七から十兆円程度、少子高齢化だとか介護のところで六から八兆円というような、そういう形で徐々に今ブレークダウンが行われている状況でございますので、ここをさらに具体化して、六百兆円を国策として達成していく、これが非常に重要なポイントではないかと思います。

玉木委員 ありがとうございます。

 法人税に関して言うと、私もこれはまだ確信が持てないんですけれども、アメリカは法人税が高いですよね。でも、どんどんイノベーションが出てくるというのは、一体何があれを支えているのかなということについては、イメージ論ではなくて、しっかりと分析していかなきゃいけないなと。

 十億円以上の資本金、もっと言うと百億円以上の資本金の企業が受けている、さっき言ったRアンドDの租特とか、そういったものが非常に大きいのも事実なのと、あとは、実際のリアルな法人税率というのは、資本金の額が大きくなればなるほど、確かに中小企業もそうなんですけれども、非常に大きくなっているというところは私もよく分析をしていきたいなと思っております。

 次に、小幡公述人にお伺いしたいんですが、GPIFについてお伺いしたいんです。

 株式の投資比率を高めていますけれども、そのことによってボラティリティーが非常に高まっているのはそのとおりだと思うんですが、お伺いしたいのは、大きいので、非常に小回りがきかないのではないのかと思うんですね。

 私の質問は、よってもってGPIFは、もちろん効率的な運用はするんですけれども、高づかみしがちな傾向があるんじゃないのか、大きいがゆえの制約があって、効率的な運用が、一生懸命努力しても、そのずうたいゆえに難しいということがあり得るんじゃないのかと思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

    〔関委員長代理退席、委員長着席〕

小幡公述人 お答えいたします。

 おっしゃるとおりだと思います。とりわけ、大幅に、いわゆるアセットアロケーション、日本株への割合を倍増させるというような行動を短期にしたということ自体が、それをさらに拡大しているというふうに思います。本来、大きなポートフォリオは、静かに、隠れてじっくりと変えるものだと思いますし、それを急激にやったことが、今おっしゃられたような、常に本源的に存在する問題点を増幅させているのが現状だというふうに思います。

玉木委員 ありがとうございます。

 次に、白石公述人にお伺いしたいんですが、私、お伺いしたいことは、そのとおりだと思うんですね。資料にあったように、一兆円の財源をかけてこれからやる、消費税で一応〇・七兆円確保したんだけれども、残り〇・三をどうするんだと。ここがまさに質的な充実とかにかかわってくるんですが、軽減税率を導入するということになったので、六千億、財源をさらに見つけていかなきゃいけないというようなことになって、プラス〇・三兆円を見つけること自体が非常に困難になっていて、そこが非常に心配しているところなんですね。

 一つお伺いしたいのは、きのう私ちょっと財務金融委員会でも聞いたんですが、今回、予算と税制で、三世代同居住宅というのをかなりなお金をつけてやっているんです。これはいろいろな議論があるんですが、そもそも、三世代同居住宅を支援するといっても、三世代同居住宅を全く交付の要件にしないで補助金をつけたり、交付の要件にしないで税の優遇をしたりすることになっているので、そのこと自体、非常に問題だと思うんですが、三世代同居を進めていくということが希望出生率一・八を実現するという観点からどうなのかなというのを、率直なところをちょっとお聞かせいただければと思います。

白石公述人 御質問ありがとうございます。

 三世代同居について政策的な効果はということでございますけれども、私自身も三世代同居の中で子育てをしてまいりまして、確かに祖父母世代からの支援、家事支援や子育て支援というものは有効性がございました。残業もできますし、出張もできます。

 ただ、家族形態としては、今、親との同居世帯というものは減っております。経年的に減っておりまして、むしろ少数派でございます。自分の親と同居をするのか、夫側の親と同居をするのか、ここも選択性のあるところで、望まない人も多いのではないかと思います。

 ですから、全体に政策的な効果が行き渡らないというところで私はちょっとクエスチョンマークがともりますし、同居という形態よりも、祖父母が近くにいて支援をするとか、そういう実質的な支援の方が大事ではないかと思います。

 以上でございます。

玉木委員 私もそう思います。今おっしゃったような近居というのは非常に大事かなと思うんですね。ですけれども、税金を使って同居を政策的に進めていくのは、確かにちょっとどうかなということを思います。

 最後に松田公述人にお伺いしたいんですが、資料を見ていて非常に興味深かったんですが、長期金利が上がるとか国債が暴落すると言うと、オオカミ少年だとよく言われるんですね。でも、そういうリスクについて記述をされていますけれども、長期金利が急騰すると言うことをオオカミ少年だというような意見があることについてどう思われますか。

松田公述人 御質問ありがとうございます。

 確かに、国債暴落論を展開すると、オオカミ少年あるいは都市伝説等々、いわゆるいわれなき批判を受けやすい傾向はございますけれども、もちろん、根拠薄弱な国債に対する過剰な危機あおりというのは私は決してよろしくないとは存じますが、一方で、国家を健全に運営していくに当たりまして、現状、既にもう可視化されているリスクというのは明確になってきておりますので、そのリスクを想定した上で国債が下がるリスクがあるということを伝えていくのは、健全な財政運営においては必要なんじゃないかなと、個人的な見解で申し上げておきたいと思います。

 以上でございます。

玉木委員 ありがとうございました。終わります。

竹下委員長 次に、藤野保史君。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 きょうは、四人の公述人の皆様、大変貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきたいと思うんですが、まず、予算審議の中身に入る前提のお話なんですけれども、四人の公述人全員にお聞きしたいなと思っております。

 前提といいますのは、予算審議の中で、私どもだけではないんですが、要は、総理が、自画自賛と言う方もいらっしゃいましたけれども、自分の都合のいい数字を引っ張ってくるといいますか、そういうことをよくやられるんですね。経済の専門家として、こうした総理の答弁の姿勢というのをどう思われるのか。

 例えば、私、二月五日にこの委員会で質問させてもらったんですけれども、安倍総理が、それまでの、二月五日までの衆参の質疑で、安倍内閣の三年間で正規雇用がプラスに転じた、こう何度も答弁されましたので、あえてその土俵に乗りまして、では安倍内閣の三年間というのはいつからいつまでですかとかいろいろ聞いて、結局、労働力調査などの政府の統計を使って、それは成り立たないということをお示しさせていただきました。

 実際、二月十六日には労働力調査の詳細集計も出ました。それによりますと、安倍内閣、二〇一二年の十―十二から二〇一五年の十―十二で見れば、正規雇用は二十三万人減っている。非正規雇用が百七十二万人増加している。ですから、いわゆる安倍内閣の三年間といった場合に、正規雇用がマイナスに転じているんじゃないかと聞きましたら、総理も、その時点では否定できないと。

 ところが、話はここからなんですけれども、要は、この三年間が使えないと見ると、安倍総理は十九日の当委員会でこういうふうに言ったんですね。別の数字を持ち出してきて、平成十九年の第一次安倍内閣以来八年ぶりに、しかも前年比で正規雇用がプラスに転じたとおっしゃったわけですね。三年間というのが使えないとなると、今度は、何と第一次安倍内閣以来八年ぶりと。

 データ自体はそうかもしれません。統計の専門家の皆さんでいらっしゃるので、データというのがとり方によるというのもおわかりだとは思うんです。しかし、要は、自分で政策を正当化するために繰り返し用いていたそういう数字が否定をされたら、また全く別の期間の数字を持ってきて、また正当化する。これでは私ちょっと、予算審議が深まっていかないというふうに思うんですね。

 ですから、四人の方にそれぞれ、感想で結構ですので、こうした姿勢で審議が深まるのか、この点についてちょっとお考えをお聞かせください。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 ちょっと私、事実関係を正確に存じ上げませんので、コメントすることはなかなか難しいと思いますが、国会で活発な議論が行われるということ自体は、国民から見て非常に望ましいことだというふうには思います。

 それで、先ほど御指摘のあった雇用の面は、私の資料、先ほど十五ページというところにございましたけれども、残念ながら、やはり今の日本の仕組みを前提にすれば、雇用がふえるとき、正規からふえるのは難しくて、まずは非正規のところからふえていく。ただ、そこから時間がたって、今ようやく正規のところがふえ始めたということがありますし、また、政権が大きな柱として、同一労働同一賃金の原則、これはまさに正規と非正規を一体化するわけでございますから、その意味で、方向としては非常に正しい方向に行っているんじゃないか、こういう認識でございます。

小幡公述人 お答えいたします。

 雇用の数字はなかなか難しいという面は確かにございまして、最近、雇用者数がふえているという話はよくあるんですけれども、よく調べてみますと、実はこれは七十歳以上の雇用者数が物すごく伸びていて、六十五以下は減っているという事実がございまして、これは、雇用がふえているといっても、いいことなのか、お金がみんな足りないので七十を過ぎても働かなきゃいけない人がふえているのかというふうに、解釈が難しいところがございます。

 確かに、統計というのは非常に慎重にいろいろな角度から見なければいけない、そういうふうに思います。

白石公述人 私も、全体の議論を詳細に把握しているわけではございませんので、評価についてここで述べることは控えさせていただきたいと思いますが、やはりデータや統計を用いるというのは、何らかの仮説があり、それを検証するために使うというのが常識的だと思うんですね。

 今、議員の御質問にございましたように、正規がふえた、非正規が減る、非正規がふえた、正規が減る、これは一つの一面的な見方かもしれませんけれども、では日本の社会として、どういう雇用の仕方、どういう雇用形態をゴールとしていくのか。

 オランダなどでは、パートタイム法というのがございまして、育児中の女性や男性がパートにかわっても、同一労働同一賃金が保障され、また正規に戻っていくことができるという、乗りかえが可能な社会でございます。日本のように、非正規と正規というふうに、非常に苦しい正規で賃金が高いか、不安定で賃金が低い非正規かという択一ではございません。

 ぜひ、こうした全体の議論と、目指すべきゴールを設定していただいて、国会の中でも実効性あるデータをお使いいただければというふうに願っております。

 以上でございます。

松田公述人 御質問にございました、データについてでございますけれども、データというのは、先ほどもございましたけれども、何らかの主張を支えるためのデータでございますので、その主張者にとって若干ポジティブな、データが偏ってしまうということはいたし方ないのかなというふうに理解しております。

 一方で、主張者にとってのデータが偏り、そのデータに対する反論をし、その反論のデータがより正確であれば、反論者に対して軍配が上がるわけでございます。

 まさにそれぞれの主張者にバイアスのかかったデータ同士の戦いが最終的な議論の深まりにつながるのではないかなと、個人的な見解でございますけれども思いましたので、そうした展開というのはいいことなんじゃないかな、まさに予算審議が、議論が深まっている証拠じゃないかなというふうに感じた次第でございます。

 以上でございます。ありがとうございました。

藤野委員 ありがとうございます。

 中身について聞いていきたいと思うんです。

 当委員会で麻生財務大臣もお認めになりましたけれども、GDPをとり始めてから七回、日本経済というのがいわゆるマイナスを経験してきている。麻生大臣も、実質GDPの成長率がマイナスになったことは過去七回あるけれども、このうち、資本金十億円以上の企業というものの、いわゆる大企業と言われるものの経常利益が対前年度比で増加したというのは二〇一四年だけでありますと、十九日の当委員会で答弁をされました。

 つまり、これまでは、いわゆるGDPがマイナスになったようなときは大企業も経常利益は下がっている、要するに連動しているということですね。逆もあるんですけれども。しかし、二〇一四年度は、大企業は史上最高益を更新したけれどもGDPは下がってしまった。

 いわゆるトリクルダウンというのは、かつては、機能する基盤のような、連動性がある程度あったのかもしれませんが、これが失われつつあるんじゃないかということだと思います。二十三日の日経新聞でも、海外利益がふえた、しかし還流が停滞しているというような記事も紹介をされておりました。

 これは熊谷公述人と小幡公述人にお聞きをしたいと思うんです。

 グローバル化、円安、いろいろ要因はあると思うんですけれども、かつてと比べて、過去七回の景気循環などと比べて、大企業のもうけが、もうかることが悪いと私たちも言いませんけれども、大企業のもうけが日本経済全体に波及しにくい構造になっているんじゃないかと思いますが、その原因といいますか、背景といいますか、お考えをお聞かせいただければと思います。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 恐らく、今委員が御指摘になったように、従来と比べれば、大企業の収益がふえたときに、なかなか中小企業のところまでは波及しにくくなっている可能性というのがある。

 これは、一つ大きな要因としては、日本の企業が海外に生産移転をしましたので、円安になっても、そのことで企業の収益は連結ベースでふえるわけですけれども、数量ベースでいえばなかなか大きくはふえないということがありますから、これが中小企業の業績などにはすぐには直結しないというような、そういう要素がございます。

 ただ、他方で、申し上げておかなくてはいけないのは、私の資料の中に一部試算がありますが、アベノミクスによって、例えば中小企業、非製造業、大企業、製造業、こういうところがどれだけメリットを受けたか、こういう試算を行っておるわけですが、結論としては、中小企業全体、非製造業全体で見れば、やはりプラスの効果が出ている。ただ、大企業は非常に恩恵が大きいので、そこの全体の格差は若干広がっているわけですが、日本全体がよくなる中で格差が若干拡大している。これに対しては、これから安倍政権が分配政策を強化することによって次の手当てをしていく。

 ですから、私は、基本的な政策の方向性は決して間違っていない、こういう考え方をしております。

小幡公述人 お答えいたします。

 経済が多様化しておりまして、プレーヤーごとに、日本全体がいいからといっていいわけじゃないというのは、どこの国でも同じだと思います。とりわけ、今回の現象は円安に尽きるというふうに思います。

 円安というのは、一部の大企業あるいは海外に投資しているところの見かけ上の円換算の利益を膨らますだけで、それ以外に余りいいことはない。一方、消費者にとっては、輸入コストが全て上がりますから、マイナスである。今や、労働者数と消費者数で、日本国民全員消費者ですけれども、働いている人は半分ですので、消費サイドの方が重要だ。

 中小企業というのは、基本的に内需で消費依存ですから、日本国内の消費が悪いということになりますと、影響はマイナス、ところが、一部の大企業は、海外で上げた収益の円換算が大きいので大きくなっている、そういうことだと思います。

藤野委員 今、消費サイドでというお話もありました。要するに、かつてに比べれば大企業の利益が国内に波及しにくくなっている、もうそういう状況が生まれつつある、構造になりつつあると私は思うんですが、その構造のもとで、消費税の増税によって、日本経済の六割を支えている個人消費を冷やすというのは、やはり経済に対する大変な悪影響があるというふうに思うんですね。しかも、消費税増税への耐性といいますか家計の体力といいますか、そういう点でも、かつてよりも悪化してきているんじゃないのか。

 甘利大臣は、消費税を八%に上げるときに、消費税増税の影響はワンショットだと。私、大変印象深く覚えているんですけれども、要するに、一時的なものだと説明されたわけです。しかし、その後、先日総理自身もお認めになりましたが、消費に対して消費税の影響があり、それが今日まで続いていると、総理自身答弁をされました。結局、ワンショットどころか、二年以上この影響が続いている。

 これも、九七年に増税したときよりも、期間的にも、そして消費の落ち込みの程度としても、今回の方が、八パーに上げたときの方がやはり大きい、長期化しているというふうに思うんですね。

 小幡公述人にお聞きしたいんですけれども、ちょっと時間もあれなんですが、公述人は九七年の増税時大蔵省主税局にいたと伺っております。当時さまざまなことをごらんになったと思うんですけれども、消費の実態といいますか、消費税の影響といいますか、今回どのようにお感じになっていらっしゃいますか。

小幡公述人 確かに、私、当時大蔵省の主税局で税制の経済効果を担当しておりまして、内部で、増税したら景気がよくなるという論文を書けないかと言われまして、それは無理だというふうにお断りしました。

 増税は、常に景気にはマイナスです。これは当然です。それは、短期的な効果、二年でも経済的には短期になりますので、短期的には景気を悪化させるのは、増税ですから当然です。

 一方で、世界的にも、財政構造を改革しなければならない理由というのは、長期の成長力というのは、財政が健全である方が成長力が高いということがわかっておりますので、長期には成長率を低下させるということで、現状では、日本の長期的な成長力の低下というのは、財政がずっと悪いこと、これによるものではないかというふうに思っております。

藤野委員 時間の関係で最後の質問にさせていただきたいと思うんですが、白石公述人にお聞きしたいと思います。

 公述人は先ほども、要するに親の経済状況のいかんにかかわらず子育てができる環境というふうにもおっしゃられましたし、いただいた資料の中で、二〇〇八年の日経新聞でしたけれども、要するに、心配なのは、家計が縮む中で子供の教育費まで抑えているということを心配されているというふうにも伺いました。

 その点で、やはり消費税の増税が社会保障改革と相まって、削ってはいけない消費にまで影響を与えているんじゃないかと思いますけれども、その点について最後に御見解を。

白石公述人 削ってはいけない消費にまで影響を与えているのかどうかという御質問でございますけれども、家計の中で教育費の占める割合というものは、親の実質賃金が低下する中、非常に大きくなっております。

 私はやはり、今、軽減税率の議論もされておりますけれども、こうした教育費にかかわる部分というものはそこから抜いていくべきではないかと思いますし、低所得の方たちの支援については、現金給付なども含めて目配りをしていく必要があるのではないかなと思います。

 子供たちが夢を持てないといいますか、貧困の御家庭に生まれて、教育もつけられない、そして思った仕事につけないという中で、こういうことを放置すればこの国の未来は暗いというふうに思います。

 以上でございます。

藤野委員 終わります。ありがとうございました。

竹下委員長 次に、松浪健太君。

松浪委員 本日は、四人の先生方、ありがとうございました。松浪健太であります。

 私は経済の方に特化をしようと思いますので、かなりランダムに質問させていただきますので、もしかしたら白石公述人にはお答えいただくことはないかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。

 最初に、松田公述人の方から随分と、バーゼル委員会等がこれからBIS規制を新たにしていって、国債のリスク資産化というようなこともあり得ると。また、実際トレーディングにかかわっていらっしゃる立場から、格付会社というのは、ダウンレーティングと、それから、もうけるところが関連会社になっていて大変な結びつきがあるというのは、一般の国民にはなかなかわからないところだと思うんです。

 最初に、いかに、ダウンレーティングと空売りとか、そういういわゆるアンフェアなシステムが実はこの中に存在するという説明と、それから、日本国債が、先ほども暴落の話がありましたけれども、我々も、まさか地震で原発の電源を喪失するとは誰も想像していなかったわけで、そうしたリスク等を加えて長期金利が一旦上昇してしまったときに、どれぐらいの割合でどういうことが起き得るのかということをまず伺いたいと思います。

松田公述人 御質問ありがとうございます。

 まず一点目の御質問から申し上げますと、いわゆるトレーディングの現場で申し上げれば、関係者の方がいらっしゃって恐縮なんですけれども、証券系のシンクタンクによる格付ですとか、それから外資系大手金融機関の格付というのは、大体、往々にして真逆のことが起こり得ます。要するに、やや下振れリスクがあるという機関が出てきたら実は買いだったり、これは大丈夫です、いわゆる株価レーティングは好調ですというときに空売りが降ってきたりというのは往々にしてございまして、基本的には、シンクタンクや格付会社のレーティングというのは、実際のトレードの売買と真逆の動きをする傾向が非常に多くございます。

 これは、なぜこういうことが起こるかといいますと、金融資本主義の若干ねじれたといいますか、ゆがんだ部分でございますけれども、レーティングを発する会社と実際にトレーディングをするヘッジファンドの部門に若干の資本関係があったりするケースが多いものですから、ポジショントークになってしまいがちでございます。

 要するに、格付会社が格付をしたときに真逆のトレードをすると当然そのギャップでもうけられますので、一応、建前上はフリー、フェアなんですけれども、かなり余計な力が加わっているケースが多くございます。

 その最たる機関といいますのが、いわゆる国債、国が発行する国債を格付する会社なわけでございますけれども、その国債の格付会社ですらも、具体的にどういう根拠と基準に基づいて日本国債がここまでレーティングを下げられているのかが非常に不可解でございます。その格付会社の関連する資本関係のヘッジファンドがもしかしたら空売りを準備している、あるいは売り崩しを狙っているというケースは重々考えられる状況でございます。

 まず大前提として、今後、金融政策、それから継続するアベノミクス、追加緩和等々を御検討される際には、マーケットがすごくフリー、フェアに見えて実はそうでない、極めてリーズナブルな動きをしそうで実はそうではないという、非常に不可解な動きが必ず加わるということを大前提の前提条件に組み込んでいただいた方が、恐らく市場との対話というのはしやすいのではなかろうかというふうに感じております。

 これは所感でございますけれども、私自身がトレーディングの仲間と投資会社の代表としてトレードをするときに、よくニュースを皆さんで共有し合ったりするわけでございますが、例えば、どこどこの某大手証券会社がこの株のいわゆる目標株価を上げたので空売りしようみたいなのは、ある種常識の会話になっているぐらい、ほとんど当てになりませんというか、真逆のポジショントークであるケースが非常に多いものですから、そこはぜひ御念頭に置いていただいた上でマーケットとの対話を御検討いただきたいというのは強く希望してございます。

 それから二点目、国債暴落に関してでございます。

 先ほど委員からも御質問いただきましたように、どうしても、こういう状況下で量的緩和をし、日銀がかなり積極的に国債を買い上げ、二百兆、三百兆と残高を積み上げている状況の中では、なかなかこういうリスクを申し上げるとオオカミ少年と言われがちでありますし、私も余り根拠なくそういうことを申し上げるつもりはないんですけれども、一方で、連綿と確実に積み上がっていく国債、それで、今後、日銀の当座預金にマイナス金利が適用されることになりますと、これはいわゆるブタ積みという表現をするんですけれども、民間銀行が日銀の当座預金にブタ積みすることもできなくなってきて、ますます国債が買われていく傾向が強くなってまいります。

 私、個人的に、非常にいびつな関係だなと思っておりますのが、国債というのは、当然ながら、信用が高ければ長期金利が下がってまいりますので、買われれば買われるだけ超長期金利がマイナスになるという、非常に不可解というか不思議な状況にございまして、これを解決する、ないしこの次に起こる事象というのは一体何なのかというのは、まだ解決されていない、まさに未曽有の状態でございます。

 ですので、本当に国債が人気が出て、もっと言い方を変えますと、実体景気が悪くなったときに、運用先が国債しかないので国債を買い続けて、結果的に国債のクレジットが上がって長期金利がマイナスになるというのは、我々の今回体験しているいわゆる金融バブルの最後の行き先がどこに行くのかが全く不明瞭な状態にいるのは事実としてございます。だからといって、もちろん、いきなりテーパリングないし緩和をやめるという議論にはなりづらいとは思いますが、そういう国債の暴落リスクは高いというふうに考えております。

 それを受けて長期金利が上がれば、当然、不動産の住宅ローンの金利が上がってまいりますし、我々のような企業からすれば借入金利が増大しますので、その借入金利が増大した分はPLにダイレクトにヒットしますから、非常に景気状況が悪化してくるというのは容易に想像できるかなというふうに思っております。

 以上でございます。

松浪委員 ありがとうございました。

 国債のリスクにかかわって、トレーダーという、この間、今井雅人さんという我々の仲間が五千万稼いだといって有名になりましたけれども、公述人は一年間で十三億稼いだという実績もあるそうでありますので、本当に、けんかの強いやつというのはどこにもいるもので、僕はそういう人間の言うことは真実味を持って聞くんです。

 一言でお願いしたいんですが、先ほど御指摘をされた、恐らく今の日本政府に必要なのは、日本をなめさせないこと、ダウンレーティングさせないこと、もう一つは為替介入。でも、これは今、G20の申し合わせで、この二十年間の為替介入を見ても、かつては非常に頻繁に介入していたのに、リーマン・ショック以降はほとんど為替介入をしていない状況にあるわけでありますけれども、この点、極めて短く御答弁いただけますか。

松田公述人 御質問ありがとうございます。短目にということでございます。

 非常に為替介入しづらい状況が協調の中で続いているのは事実でございますけれども、一方で、私、個人的な見解でございますが、一カ月、正確に申し上げると十日でドル・円が十円ほど下がると、一カ月でかなりの金額のボラティリティーが生まれているというのは日本経済にとって非常にリスキーな状況でございますので、個人的には介入をするべきであるというふうに見解を述べたいと思います。

 以上でございます。

松浪委員 ありがとうございます。

 次に、小幡先生に伺いたいんですけれども、私も随分小幡先生の御本は、「ハイブリッド・バブル」とか、いろいろな本を読ませていただいて、大変な一ファンではあるわけでありますけれども、リフレ派というのは、リフレをするとよくなるよと。先ほどおっしゃったように、反リフレということになると、なかなか打つ手がないなというふうな見方をされると思うんです。

 先ほど松田公述人がおっしゃったような、今の日本の危機について、例えば日本をなめさせないとか、為替介入を求めるというような、こうした考え方については小幡公述人はどのようにお考えになりますか。

小幡公述人 お答えいたします。

 私は、誰よりも日本経済に対して楽観的でございまして、長期的には健全な経済が続くと思っております。

 その中で、金融政策、中央銀行の政策の不透明性だけが高まって、それが長期の投資家、地方銀行などの長期の国債保有の投資家を追い出して、短期の値動きあるいは乱高下を狙うトレーダーを呼び込んでいる、この状況が状況を悪化させているということがずっと継続しておりますので、一刻も早く、日本銀行の使命は信用秩序の維持、金融市場の安定が一義ですから、それに専念するために、物価上昇率目標二%はやめて、金融市場の安定に邁進していただきたい。それが投機を減らすこと、それが海外投資家になめられないようにすること。

 つまり、このような乱高下が続くことによって、海外のトレーダー、投資家ではなくてトレーダーですね、短期の値ざやだけ狙うので、常に彼らは一定数いるわけですけれども、投機家の割合を高めている、この状況を脱却していただきたいというふうに思っております。

松浪委員 ありがとうございました。

 それでは、次に熊谷公述人に伺いたいんですけれども、先ほども、経済成長と増税とそれから歳出削減、この三つを結びつけていくんだという御意見をいただきました。

 私どもの政党も、考えておるのは、少なくとも消費税については我々はしばらく延期をすべきだという考え方を持っております。

 私も先般のこの予算委員会の議論で指摘をさせていただいたんですが、先ほども質問で、六百兆円、どうだという話がありましたけれども、しかしながら、内閣府がつくっております中長期の経済財政に関する試算ですら、この一月の試算では既に六百兆円を下回って、二年前は六百十七とか書いていたものが今は五百九十二兆円まで落ちてきているということを指摘させていただきました。

 これも経済再生シナリオの一番いいパターンでありまして、十種競技で全部日本記録が出たらそこまでいくかなというような感覚だというふうに私は思っております。ベースラインではもっと、五百五十兆円台ぐらいまで落ちていたと思います。

 それから試算をしまして、この数字だけから試算をすると、先般、私もこの予算委員会で、消費増税しない場合の試算をもって、これをもとにプライマリーバランスを計算すると、消費増税をしない場合に経済再生シナリオを行った方が、実は増税しない方がプライマリーバランスも回復するんだというような我々の試算でありますので、それを政府にもお願いしたところであります。

 こうしたことも踏まえて、本当に消費増税すべきなのかどうかということを伺いたいと思います。

熊谷公述人 御質問ありがとうございます。

 次の一七年の四月に増税をするかどうかということでお答えをさせていただきますと、前回、一度増税を見送ったことによって、リーマン・ショック並みのことが起きない限りは原則として増税をしていくということでございますから、その意味では、もちろんこれは夏場に最終判断をするということになると思いますが、現時点では日本の実体経済がそれほど悪いわけではありませんので、原則として増税は予定どおりやっていくということではないか。

 ただ、中国を含めて、私が御説明したように、やはり相当、世界じゅうに非常にいろいろな問題があるわけでございますから、世界経済それから金融市場が大きく混乱したときについては、そこは決して硬直的に考えるべきではないだろう。ただ、原則としてはやっていくということではないかと考えます。

松浪委員 今の点なんですけれども、私はあくまで内閣府の、政府の数字による試算を申し上げたわけでありまして、もし内閣府の試算が、これをもとに政府も計算し直すと、プライマリーバランスも、消費増税をしない場合にこれがさらに回復するということが説明できれば、私は、海外マーケットにも、リーマン・ショックほどの経済危機がなくても、我が国のためにはこれでいけるという説明は十分立つと思うんですけれども、熊谷公述人、いかがですか。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 確かに、経済は生き物でございますから、硬直的に、増税をすればという話には多分ならないと思います。

 ただ、他方で、一九七〇年代、大平内閣のころから、増税の前にやることがある、そういうことがずっと言われてきて、もう四十年ぐらいにわたって言われてきた。増税の前にやることというのは、成長であったり歳出カットであったりするわけですが、ただ、このキャッチフレーズがどういう効果を持ったかといえば、増税をしろと言われたときに、いや成長が先だ、いや歳出カットが先だ、いや増税が先だということで、論点がずれてしまって、結果において、なかなか財政再建ができずに、今、世界最悪の財政状況になっている。

 そういう部分でいえば、これは硬直的に考えるべきではないと思いますが、やはり日本のこれからの高齢化などを考えれば、残念ながら、長い目では消費税はかなり上げていかざるを得ない状況でございますので、そこを含めて、原則は、よほどの、リーマン・ショック級のことがない限りにおいては、予定どおり増税をするという判断になるのではないかと思います。

松浪委員 時間になりましたので、これで私の質疑を終わらせていただきます。

 本日は、四人の公述人の方、ありがとうございました。

竹下委員長 次に、村岡敏英君。

村岡委員 きょうは、予算委員会公聴会に四人の公述人の先生方、ありがとうございます。三時間ほどおつき合いいただきましたが、最後ですので、もう少しおつき合い願えれば、こう思っております。

 きょう、四人の先生方の資料を見ました。資料を見ると、アベノミクスに肯定的な人はカラー刷り、あとは白黒。これは偶然だと思います。ところが、国民の中にこういうことはあるんです。アベノミクスに肯定的な人は大企業、大都会。そして中小企業、地方の人は、アベノミクスの恩恵がない、そういうふうに感じているんです。

 その恩恵がないという形の中で、熊谷先生にお聞きいたしますけれども、先ほど七つの項目を挙げておられましたけれども、その七つの中で考えてみると、追い出し五点セット、円高、自由貿易のおくれ、環境規制、労働規制、高い法人税、比較的これの恩恵を受けるのが大企業というイメージになってしまいます。

 地方に対して、政府も、それぞれ税制とかいろいろな対策をとっている、こう言われておりますけれども、なぜ地方や中小企業がアベノミクスに対して、恩恵を受けていない、そして格差を感じているのか、それはどの点だと思われますか。

熊谷公述人 先ほどちょっと一部御説明をした点と重複してしまうかもしれませんが、今回の場合、輸出主導型の回復ということでございますから、昔と比べれば、日本の企業が海外に拠点を移転してしまって、結果的にはなかなか輸出の数量が伸びにくくなっている。数量が伸びないと、中小企業は、数量がふえないわけでございますから、従来と比べれば、やはりそこのトリクルダウンと言われるようなものがなかなか起こりにくくなっているということはあると思います。

 ちょっと、私の資料の中で、五十四ページというところ、カラーの資料をお開きいただきたいと思います。

 五十四ページで、上のピンクのところに書いてございますけれども、これが、アベノミクスの円安でどういう企業がどれだけ恩恵を受けたか。左上のピンクの部分で、全規模の産業では四・三兆円のメリットがある。ただ、やはり中小企業だとか非製造業は相対的には少ないということでございます。

 ただ、ここでもう一つ強調しなくてはいけないのは、一部で言われる、あたかも中小企業全体、非製造業全体がマイナスの影響を受けたかと言われれば、それはやはり違っている。中小企業全体、非製造業全体で見れば、経済がよくなる中で着実にそのメリットは受けている。

 ただ、大企業のメリットは大きいので、その中で格差は若干広がりつつあるわけですが、これに対しては所得の再分配政策をやっていく。所得や資産の少ない地方の方々ですとか、中小企業、非製造業、それから若年層だとか子育て世代、これから一億総活躍ということで、そこに対してきめの細かい配慮をしていくということだと思います。

村岡委員 もう一度熊谷先生にお聞きしますけれども、確かに、データ的には、大企業が恩恵が多く、中小企業も受けているんだというデータはあります。しかし、地方というのは、企業のみじゃなく第一次産業もたくさんあります。そして、高齢化になっています。当然、働く人たちも少ない、年金生活者が多い、そういう状況ですから、経済政策のみで日本全体を景気が回復したと判断するのは早いんじゃないか、こう思っているんです。

 地方への対策が、決して企業だけではない、第一次産業だったり高齢者であったり、そして雇用の環境が悪い、そういういろいろな、景気という気持ちの部分でいけば、気持ちがデータだけではあらわれてきていない。経済学者の人たちは、景気をデータで判断して、全体がよくなるということをテレビとかそういうので言っていますけれども、その実感がないということは、やはり東京と違って、人口構成から職業構成から、それが違うんだという認識のもとのデータがないんですね。その点はどう感じておられますか。

熊谷公述人 ありがとうございます。

 ただ、例えば有効求人倍率などで見ても、地方を含めて、かなり雇用情勢などはよくなっているというのは事実である。また、株価などが上がったことによって、これは将来的には年金の給付にかかわる問題でございますから、その部分で見ても、高齢者だとか年金の受給者にとっては、長い目で見ればプラスの影響というのは出てくる。

 おっしゃるとおりで、要するに、確かに今の時点はまだアベノミクスは道半ばであって、ただ、大事なのは政策の手順である。最初に分配からやると、企業が疲弊をしてしまって、結果的には国民の賃金は減ってしまう。まずは従来の三本の矢によって経済を温めて、分配の原資をつくる。そこから三年たったところで、次のステップとして分配政策に動いていく。

 その過程の中では、先ほど御指摘のあった農業などについても、これは小泉進次郎委員長などが中心になって、かなりきめの細かい対策を検討されているわけでございますから、そのあたりを含めて、次の課題としては、分配という課題が政権の中心課題になってくるということだと思います。

村岡委員 それでは、大分相反する御意見の小幡先生にお聞きしますけれども、今、この金融政策、金融緩和、円安、そして株高という政策でどんどんやっています。小幡先生の方は、政策手段がない、金融緩和のやり過ぎによる危機、さらなる金融緩和は自殺行為、世界的な財政出動ということで、三つの点を挙げておられます。

 まさに、小幡先生がもし国会質問でこちらに立って総理に言うと、何も政策がないじゃないか、対抗策もないじゃないか、こう言われると思うんですが、その点に関して、今、政策手段がないときに、ここでとめるべきだ、ストップするべきだということをもう一度お答え願えればと思います。

小幡公述人 お答えいたします。

 先ほど申し上げたとおり、今は動かないのがベストの戦略。理由は二つあります。

 一つは、景気循環で見れば、一時とてもよかったんですけれども、そこから比べて落ちたとはいえ、いまだに景気は順調、短期では。これは、金融緩和、株高、財政出動、全部あると思います。

 一方、長期的な成長力低下ということが問題です。そして、これから先起こる危機というのは世界発のものですから、日本国内で今手を打ってもどうしようもないということで、将来それが日本にも波及してくる、特に地域金融機関に波及してくる、そのときの手当てのためには、今動かないことによって力をためて、次動くことにする。

 金融政策でいえば、動けば動くほど、今や株に対してもマイナスになってきたということは、もうやればやるだけ何に対しても悪いということですので、すぐさま拡大をやめる。ただ、ではあすからすぐ全部もとに戻すわけにもいきませんので、出口へ向けてゆっくり、まずはさらなる追加緩和をやめるということから始めることが重要だ。

 そして、物価上昇率目標というのは、まさにそれは目標のための目標であって、金融市場を壊してまでみずからの設定した目標に固執するというのは本末転倒ですので、すぐさま撤回すべきだというふうに思います。

村岡委員 相反する御意見をお伺いさせていただきました。

 松田先生にお聞きします。

 松田先生の方はアベノミクスの恩恵も受けたようですけれども、両方のお話を聞いて、その上で、出口戦略とよく言われますけれども、それに関しては松田先生はどう思われているでしょうか。

松田公述人 御質問ありがとうございます。

 アベノミクスの恩恵を受けましたが、この年末でかなりやられましたので、損得両方とも体験しております。

 先ほども御質問をいただきましたが、アベノミクスの出口、量的緩和の出口というところは、恐らく、ずっと永久にこれから議論されてくると思います。

 特に、アメリカが今回、FRBが去年の年末に年四回利上げをするという話をしましたけれども、結果的に、今、恐らく三月も利上げを見送り、六月も見送り、年に一回ぐらいになるのではないのかという、アメリカが先に逃げることすらもできなかったぐらい、量的緩和についての出口というのは非常に難しい状況に来ていると思います。

 先ほど私、日本政府としてのいわゆる投資戦略のオプションをもっとふやしていくべきであると。要するに、買い一辺倒ではなくて、オプションの、横なぎのときにリターンがとれたり、売りで入ったりという、選択的な投資戦略があれば出口戦略がより見えてくるのかなというふうには思っておりますけれども、ひとまず、今は、とめると破綻し、突き進み続けると破綻しますので、非常にバランスをとりながら、セレクティブな投資戦略というのを本邦でしっかりつくっていくのが重要かなというふうに認識しております。

 以上でございます。

村岡委員 なかなか出口戦略というのは厳しい状況にあるなと感じております。

 白石先生にお聞きします。

 先ほど、子供の教育という中で、保育施設をいろいろつくっていくという充実のことを言っていただきました。その中で、働きながら保育所に預けるということも大切ですけれども、一方、育休をとっていくというのがなかなか進んでいないことがあります。

 先生の著書の中に、ブレア首相が育休をとったということがありました。そういう意味でいくと、育休をとっていくときに、確かに、全員が育休をとれる大企業であったりすればいいんですけれども、なかなか中小企業でありますと。まず率先して、イギリスではブレア首相がとったように、例えば官庁とかそれから県庁とか、そういうところが育休をとっていく。

 その育休をとっていくときに、そこで仕事に穴があくという話があるんですね。それは結構皆さんに言われます。私なんかは、逆に、今、県庁とかですと六十歳定年なんです。そうすると、そこですぐやめた方々は、育休で休んだ方々を応援していただく、こういう案も、公務員から実践していくことによって広げていく。

 日本全体が、働いている女性が、保育所も充実させる、もう一つは育休をしっかりとっていく。そのときに、仕事に穴をあけないように、高齢者の活躍する舞台をつくっていく。これはむしろ公務員からやっていくべきだ、こう思っておりますけれども、どのように思われるでしょうか。

白石公述人 御質問ありがとうございます。

 私の資料がカラー刷りでないのは、たまたま、事務局に送って、経費をかけないで白黒で印刷をしていただいたからで、アベノミクスの賛否の姿勢表明ではございません。

 今、育休の御質問、ありがとうございます。

 ゼロ歳児保育、一人の子供に補助金を出して、その一人当たりのコストを考えますと、四十万ぐらいかかるんですね。それよりも、お母さんもしくはお父さんがしっかり休んで家で見ていただく方が、社会的コストを低減できるというふうに思います。

 育休は、今、法律では一年、保育園、保育所に入れない場合は一年半まで認められているわけですけれども、なかなかここが難しくて、育休から復帰できません。子育ては一年ないし一年半で終わるわけではございませんので、育休や短時間保育を組み合わせて働き続けていただくことが大事だと思います。

 御質問の、県庁から率先してということなんですけれども、非常に大賛成でございます。

 実は、大企業と中小企業を比べますと、子供を産んだ女性の復職率や育休取得率なども中小企業の方が多いんですね。制度が整っているのは大企業でございますが、それをしっかり運用できているのは、やはり中の空気が働きやすかったり、トップマネジメントが休んでこいという号令をかけやすいところがあるのではないかと思います。

 隗より始めよではないですけれども、霞が関や官庁を初めとして、男性も女性もでございますけれども、育休を一〇〇%とっていただいて、範を示していただければと思います。

 以上でございます。

村岡委員 カラーで賛否ではなくて、偶然のあれだと思っております。

 それで、県庁が率先してやるというのは、例えば公務員に女性をもっと積極的に、女性の割合が少ないですから、公務員に入っていただく。そのときに、女性の割合がふえると仕事に穴があくという声があるんです。だからこそ、逆に、育休を県庁から、また官庁から始めるということで考えております。

 最後になりますけれども、松田公述人にお聞きします。

 先ほど、消費増税が来年度から始まる予定で進んでいると。景気条項もなくなりました。これは、するべきなのか、そして、したときには景気にどう影響があるのか、それを最後にお聞きしたい、こう思っております。

松田公述人 御質問ありがとうございます。

 私個人としましてはアベノミクス賛成でございますけれども、今般の消費税増税に関しては、延期ないし延期と同等の効果が起こるような政策提言をしたいなと思っております。

 お渡ししました資料のグラフにもございますけれども、消費税を三%、そして五%、八%と増税した結果、税収、歳入トータルで見ましたら、ふえているというデータでは特にございませんので、非常に実体景気に対しての影響が強く出てくると思います。

 それから、先ほど委員のお話にもございましたけれども、消費税を増税しますと、輸出産業といいますのは、海外に物を売っているものですから、増税分がそのまま還付される仕組みになっているわけでございます。ですので、まさに消費税増税は大企業にとって非常にプラスであって、中堅・中小企業にとっては、下請ですから大企業に価格転嫁ができないので、非常に実体景気にとってマイナスになると私は考えております。

 ですので、消費者主体にとってももちろんネガティブですが、恐らくそれ以上に、中堅・中小企業に転嫁される消費税の増税に伴うコスト、そして、その増税の還付分が大企業に偏ってしまうといういわゆる分配機能の低下、この二点が非常にリスキーかなと個人的には感じておりますので、増税は何かしらの手段で代替していただきたいと思っております。

 以上でございます。

村岡委員 時間が参りましたのでやめますけれども、公述人の四人の先生方、本当にありがとうございました。

 終わらせていただきます。

竹下委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、まことに貴重な御意見をお述べいただきまして、大変ありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時四十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

竹下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 平成二十八年度総予算についての公聴会を続行いたします。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多忙の中御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成二十八年度総予算に対する御意見を拝聴いたしまして、予算審議の参考にいたしたいと存じておるところでございます。どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようよろしくお願いを申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず武田洋子公述人、次に郷原信郎公述人、次に竹森俊平公述人、次に工藤昌宏公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、武田公述人にお願いいたします。

武田公述人 三菱総合研究所の武田と申します。

 本日は、貴重な機会を頂戴し、まことに光栄でございます。

 私は、平成二十八年度予算案につきまして、賛成の立場から、マクロ経済の視点を中心に意見を述べさせていただきます。

 早速でございますが、お手元の資料の一ページ目をごらんください。

 アベノミクス始動からの三年間を振り返りますと、幾つかの経済変化がございました。特に二つの大きな変化がございました。一点目は、企業収益が明確に改善したという点です。左のグラフの経常利益をごらんいただきますと過去最高水準、右の図、企業の倒産件数も減少傾向にございます。

 二ページ目をごらんください。

 注目すべき二点目の特徴は、労働市場の改善でございます。有効求人倍率は一九九一年以来の高水準です。失業率も一九九七年以来の低さでございます。また、右の図、新卒内定率も上昇傾向にあり、若い世代へ労働市場の改善の恩恵が広がっております。

 一方で、日本経済の好循環が十分に実現したかと問われれば、残念ながら、まだそう言い切れる状況には至っていないと考えております。

 確かに日本経済は、現在、収益は既往最高水準、労働市場は完全雇用という、企業部門、家計部門ともに極めて良好な所得環境にございます。この先、こうした良好な所得環境が前向きな支出につながる動きが広がれば弾みがつくということだと思います。

 この点について、三ページ目のデータをごらんください。

 企業の経常利益は過去三年で五割程度大幅に増加した一方、設備投資の伸びは二割弱程度の増加でございます。これでも七年ぶりの高水準でございますので評価できるわけでございますが、収益に比べれば弱いと言えます。

 また、右の図、家計を見ますと、賃金が伸びる中で所得は緩やかに回復しております。しかし、その伸びは、収益の改善幅と比べれば鈍い状況でございます。さらに、消費という観点では、所得よりも緩慢なペースにとどまっております。

 企業収益から設備投資あるいは賃金、そして雇用所得から消費へという、所得から支出への前向きの動きに十分に弾みがまだついていない背景について御説明いたします。

 良好な収益環境のもと、企業は、二〇一五年前半の設備投資計画において、投資に前向きな姿勢を示していました。ところが、実際には緩やかな増加にとどまりました。この背景には、昨年年央ころから中国経済を中心とした海外経済に対する懸念が高まったことが大きいのではないかと考えております。

 四ページ目の左のグラフをごらんください。

 企業収益が既往最高水準まで改善する中で、設備が伸びてはいるけれども伸びが足りないということは、それだけ資金が余るということでございますので、この結果、企業の現預金保有は高まっております。

 また、右のグラフでございますが、人数掛ける賃金で算出される雇用者報酬全体はそれなりに伸びておりますが、その中身を見ますと、一人当たり賃金は確かに上昇はしておりますけれども、その伸びが加速しているという状況ではございません。

 続いて、五ページ目をごらんください。

 今申し上げたとおり、企業は、海外経済の先行きが不透明なため、様子見姿勢をとらざるを得ない面もございます。一方で、手元現金預金が豊富にある今こそ、中長期的な市場開拓に取り組む余裕は生まれているのではないかと考えます。

 しかし、左のグラフは政策投資銀行によるアンケート調査結果をお示ししておりますが、大企業の五割から六割、中堅企業では六、七割の企業が、中長期的な成長市場開拓に取り組む予定はないと回答されていらっしゃいます。なぜでしょうか。政策投資銀行は、取り組む予定はないと回答した企業にその理由を質問されています。右グラフにございますとおり、最も多かった回答理由は、本業で収益確保が見込まれるためというものでございます。

 企業経営者が起業家精神を取り戻し、一歩前に踏み出すことがなければ、どんなに企業収益がふえても持続的な好循環にはつながりません。デフレマインドから脱し切れていないのは、企業だけではございません。消費者のマインドも、雇用市場が良好な中で改善基調にはございますが、賃金の伸びが弱い中で、力強いとまでは申し上げられません。また、将来不安が残っていれば、貯蓄をするという行動は非合理的とも言い切れません。

 では、アベノミクス開始以前と現在では、消費者は何に対する不安を解消し、何に対する不安を感じ続けているのでしょうか。

 六ページ目は、弊社の生活者市場予測システムを用いた、全国の消費者三万人を対象とした意識調査結果でございます。

 今後、日本社会で不安に思うことは何かという問いに対し、二〇一一年の回答を青で、二〇一五年の結果を赤で、並べて比較してみました。最も解消した不安は、失業や就職難が恒常化することへの不安でございます。これは五六%から二四%へと大幅に低下しております。生活者の感覚として、この項目がここまで下がったことは大きな進歩であり、大きな成果ではないかと思います。特に、若い世代にとって大きいと思います。

 しかしながら、二〇一一年時点で最も不安の理由として高かった回答は、実は、二〇一五年でも高水準でございます。一番左端、高齢化によって社会保障の面で財政が悪化するとの回答でございます。

 したがって、消費者マインドを改善するには、第一に、持続的な賃金上昇によって現在の良好な雇用・所得環境が続くという期待を醸成することでデフレマインドを払拭すること、第二に、積み残された課題として、社会保障制度の改革、そして財政健全化に本気で取り組むことが極めて重要であると存じます。

 次に、デフレ脱却の進捗状況について、七ページをごらんください。

 左の図をごらんいただくと、エネルギーを除く消費者物価の前年比は二十七カ月連続でプラスであり、最近では一・三%まで上昇しております。したがって、見方によっては、既にデフレではないと考える向きもございます。

 一方で、原油価格はピーク時の四分の一まで値を下げています。このため、エネルギーを含む総合指数の伸びが下がっているのも事実です。

 いずれにせよ、重要なことは、デフレ脱却に向けて進めてきた取り組みをここで後戻りさせることはあってはならないということです。

 翻って、デフレ期の日本では何が起きていたのか、右の図でごらんください。米国とドイツで比較した図から明らかなとおり、その一つが賃金デフレです。

 企業や家計のデフレマインドが変わるには時間はかかると思いますが、労働力人口が減少する中で日本企業が優秀な人材を確保していくためには、賃金を上げる時代に入っていると思います。

 賃金が上昇すれば、幅広い物価上昇率が高まります。そうなれば、先ほどお示しした企業による現金保有には合理性がなくなります。つまり、現金を保有することが経営者から見ても損な行動になります。むしろ、手元現金を前向きな支出、人的資本投資、研究開発投資、設備投資などに向けていくことが将来の成長や競争力を生み出す力になると思います。その意味で、デフレ脱却の本質は、デフレマインドから脱却することにほかなりません。

 ここで、海外経済について一言触れておきたいと思います。

 年明け以降、国際金融市場が不安定化していることは御案内のとおりかと存じます。その背景には、米国金融政策をめぐる期待の変化、中国経済の減速、資源価格動向などが相互に影響を及ぼしていることがございます。

 八ページ目のグラフをごらんください。

 左図は、リーマン・ショック後から二〇一三年にかけての世界経済の構図を示したものです。バブルの大きさは、世界の成長率に対するその地域の寄与をあらわしています。

 リーマン・ショック後、大きくは三つの動きがございました。第一に、米国を中心に先進国が大規模な金融緩和を実施したこと。第二に、四兆元もの景気対策を打った中国を中心に新興国が高成長をしてきたこと。第三に、新興国経済の成長期待もあって、資金が資源国市場へと流れ込んだことです。

 ところが、一昨年以降は、その三つの状況が変化してまいりました。右の図でございます。

 では、こうした国際金融市場や海外情勢を踏まえ、今、何が必要でしょうか。私は、日々のアップダウンに一喜一憂せず、政府、日銀そして民間企業が引き続きやるべきことをやるということに尽きると思います。

 まず、デフレ脱却は重要です。先ほど申し上げたとおりです。しかし、金融緩和でデフレ脱却を実現したとしても、潜在成長率の上昇を続けるには、民間の取り組みを後押しする環境づくりも重要であろうと思います。また、幾ら環境が改善しても、結局は、民間と政府が当事者意識を持って成長力の強化に取り組まなければ、成長持続は実現いたしません。

 したがって、政府は成長戦略を着実に実行し、民間の稼ぐ力を高め、根本的に日本経済の体質を改善させていくことが必要だと思います。そうすることが新三本の矢として掲げられた三つの的に近づく道かと存じます。

 続いて、九ページ目でございます。

 では、持続的成長を実現するには何が必要でしょうか。さまざまな論点はございますが、ここでは、一、人的資本、二、生産性向上、三、持続可能性という三本柱として整理いたしました。

 十ページ目をごらんください。

 一つ目の柱は、人的資本の再構築でございます。日本の人口、社会、労働市場の構造を振り返ってみますと、実は、一九九五年ごろを境に三つの変化がございました。

 第一に、生産年齢人口が減少に転じたことです。第二は、共働き世帯が専業主婦世帯を数の上で逆転したことです。第三に、若年層での非正規雇用比率がこのころより高まり始めたことです。つまり、家族の形、労働者の形、それまで標準だったものが変わりつつあったということでございます。

 しかし、人口構造、社会構造が急速に変化したにもかかわらず、税制や社会保障制度、さらには雇用慣行など、見直されず維持されてきたというのが、失われた二十年の一つの正体であったと思います。したがって、人的資本の再構築が必要な時代となっていると思います。

 まず一つは、少子化対策です。日本の少子化問題の本質に、不本意な非正規労働者を失われた二十年の間でふやしてきたこともございます。これは、先ほどの賃金デフレとも深く関係した帰結でございます。つまり、少子化問題は、労働市場の問題でもあります。

 また、仮に出生率が反転上昇したとしても、労働力が増加するのは二十年、三十年のタームで、時間がかかります。このため、シニアと女性の労働参加率を十分に引き上げることができれば、左のグラフの青の部分、現状の延長の労働力人口を黄色のレベルまで押し上げることができます。実際、安倍政権発足後は女性の労働参加率が顕著に上昇しており、この点は今後も進展に期待したいと思います。

 十一ページ目で、二つ目の柱として、生産性の向上について御説明いたします。

 今世界で、第三の産業革命、インダストリー四・〇などと呼ばれておりますとおり、ビッグデータやAIが産業構造やビジネスの形を大きく変えようとしております。重要な問題は、こうした新しいテクノロジーを何に使うかです。

 左のグラフをごらんください。

 世界の経営者に質問した調査結果を見ますと、グローバル全体では、六割が新たな収益源の創出に貢献と回答しております。これは、新しいテクノロジーは新しい市場を創出すると認識していることを意味しております。一方、日本の経営者の七割はオペレーションの効率化と回答し、新たな収益源の創出は三割にとどまりました。これは、先ほど御紹介した中長期の市場開拓への意欲とも関係すると思います。

 政府は、企業の市場開拓意欲を高めるためにも、成長戦略を実行し続け、企業の前向きな行動を後押しすることが重要だと考えます。

 そこで、右のグラフをごらんください。

 百八十九カ国・地域を対象に、世界銀行が発表するドゥーイングビジネスのうち、規制や制度的環境などを比較評価したビジネス環境ランキングをごらんいただきますと、日本は、二〇〇〇年代半ばの十位から、一六年には三十四位へと順位が落ちております。成長戦略のKPIでは、二〇二〇年までに先進国三位への上昇をうたっておりますが、一六年は先進国ベースで見て二十四位でございます。

 三年が経過した今、成長戦略の進捗状況を一旦棚卸しし、進んだ点を評価するとともに、まだ進みが足りない部分については、成長戦略を見直し、取り組みをさらに加速させていく必要があるように思います。

 十二ページ目、三本目の柱は、持続可能性でございます。

 私は、人口減少や高齢化は、確かに大きな課題ではございますが、イノベーションを生み出すチャンスではないかとも捉えております。しかし、企業も家計も将来不安を抱えたままでは、前向きにチャレンジしにくいというのも事実かと思います。そうした不安の大きな要因として、財政や社会保障の持続可能性に対する不安もあるように思います。

 現在の日本の政府債務残高の対GDP比率は、第二次世界大戦直後の水準にまで達しております。国際比較でも、ギリシャを上回っていることは御案内のとおりです。つまり、歴史的に見ても、国際比較で見ても、日本の政府債務水準は異常な水準であることは明らかでございます。

 まずは、二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化という目標達成が必須ですが、実は、問題はその後です。私は二〇二二年問題と呼んでおります。二〇二二年は、左上グラフのとおり、団塊世代が七十五歳以上になり始める年です。左下グラフのとおり、七十五歳以上になりますと、一人当たりの診療費はそれまでの四・五倍にはね上がるため、社会保障給付費の急増が高い確度で予想されます。

 財政の健全化を進めるためにはさまざまな取り組みが必要ですが、特に、政府が国の財政運営に対する国民の納得性を高めること、また、社会保障制度の改革が全国民にとってプラスである点を国民に粘り強く説明し、給付の抑制と応能の負担の引き上げに対して真正面から取り組んでいくこと、この二つが必要と考えております。

 以上、日本経済の現状と課題について述べさせていただきましたが、一言まとめを申し上げたいと存じます。

 私は、人口減少をただ嘆き、皆がリスク回避的な行動を行うのではなく、課題を克服するために必要な改革の実行やイノベーションに人々の英知を結集すべきであり、また、そうすることが日本は可能な国だと信じております。悲観や批判ではなく、チャレンジする人を皆で応援することによって、日本は、質の高い成長と持続可能な社会を両立し、世界から信頼を集める、そんな成熟国になれると信じております。

 私からは以上でございます。

 御清聴いただきまして、まことにありがとうございました。(拍手)

竹下委員長 ありがとうございました。

 次に、郷原公述人にお願いいたします。

郷原公述人 郷原でございます。

 本日は、このような場で意見を申し述べる機会を与えていただき、感謝いたしております。

 私は、二十三年間検察に在籍し、その間、政治資金や贈収賄等に絡む事件の捜査にもかかわり、法務省の研究所でも、それらを含めた犯罪に関する刑事政策的研究にも従事してきました。検事退官後も、そうした実務経験に基づき、その種事犯に関して、さまざまな場で所見を述べています。

 本日は、まず、そうした立場から、本予算委員会の審議の中でも取り上げられております甘利前経済財政・TPP担当大臣の問題に関連して、いわゆるあっせん利得処罰法の背景、罰則適用の範囲等と国の予算策定、執行との関係等を踏まえて、事実解明の必要性について意見を述べたいと思います。

 また、私は組織のコンプライアンスを専門にしておりまして、二〇一〇年から一二年までは総務省顧問・コンプライアンス室長を務め、行政評価局の行政監視・評価を通して、独立行政法人を含む公法人の問題等にもかかわりました。

 十年前の二〇〇六年にもこの公聴会にお呼びいただき、コンプライアンスと予算について意見を述べましたが、本日は改めて、コンプライアンスの観点から、今回の甘利問題を通して、独立行政法人URの組織や活動のあり方、政治との関係性についても所見を申し述べたいと思います。

 これまで、多くの政治家に関して、政治と金という非常に曖昧な言葉で、性格の異なる問題が十把一からげに混同されて議論をされてきました。そこにまず根本的な問題があると思います。それが、後にお話しするように、今回の甘利氏をめぐる問題が、これまでの政治と金の問題と同列に扱われ、正しく理解されていないことにつながっているように思います。

 私は、政治と金の問題は、賄賂系の問題、政治資金の公開系の問題、そして寄附制限系の問題の三つに大別することができると考えております。

 第一に、賄賂系の問題です。

 公務員としての政治家がその職務の対価としての賄賂を得るという賄賂罪は、公務の不可買収性、廉潔性を害する癒着、腐敗の最たるものでありまして、国民にとっても、また国会議員全体にとっても到底容認できない行為であります。

 しかしながら、国会議員の場合、その直接の職務権限は議会での質問、表決等で、その対価として賄賂と認められるものの範囲は限られており、実際に国会議員に収賄罪が適用される例は極めて少ないというのが実情です。むしろ、国会議員の場合、職務権限を背景として行われる行政官庁等へのいわゆる口きき等で対価を受け取る行為が厳しい社会的批判を受けるケースが多いことを踏まえ、いわゆるあっせん利得処罰法が制定されており、国会議員等の政治的公務員については、賄賂罪による処罰の範囲が拡大されていると見ることができます。

 第二に、政治資金の公開系の問題です。

 金のかからない政治を実現すべきだとされながらも、必ずしもそうはなっていない現実があり、また、政党や政治家の政治活動に対する国民の支持、支援を政治献金という形にあらわすことも、民主主義の重要な要素でもあります。

 そこで、政治献金そのものは容認した上で、それが誰から、どの政党、政治家に、どれだけの金額で行われているのか、また、その政治献金がどのように使われているのかを政治資金収支報告書によって公開し、政治家や政党の活動が政治資金によってねじ曲げられたりしていないか、不当な使い方が行われていないかを国民の不断の監視に委ね、選挙における有権者の選択に反映させようとの趣旨で行われているのが、政治資金規正法による政治資金公開の制度です。

 政治資金の寄附を受けたのに政治資金収支報告書に記載しない、あるいは過少に記載する、また、費消先に関して虚偽の事実を記載するなどの行為は、政治資金の公開の義務に反する行為として違反に問われることになります。

 第三に、寄附制限系の問題です。

 原則として許容され、公開の対象とされている政治資金の中には、それ自体が政治に対して好ましくない影響を与える、あるいは国民に不信感を生じさせるものがあるので、そのような政治資金の寄附に対しては政治資金規正法によって制限が設けられています。企業、団体から政治家個人への寄附、連続赤字会社、補助金受給企業、外国企業からの寄附が禁止されているほか、一個人、一企業からの寄附額によって政治活動が不当な影響を受けている疑いを受けることがないよう、寄附の量的制限も設けられています。

 これまでうんざりするほど取り上げられてきた、そして、中には国会審議にも重大な影響を与えてきた政治と金の問題の多くは、第二、第三の問題です。

 第二の政治資金の公開に関する問題、そして寄附制限の問題の多くは、政治資金処理の手続上の問題で、正しく公開されなかった背景に第一の賄賂系の問題があるのではないかという疑いが生じる場合もありますので、まず、それが意図的な不記載、虚偽記載か否かが問題とされることになりますが、意図的に行われたものでなければ、基本的には、政治資金を正しく公開すること、そしてルール違反が行われないよう再発防止を行うことが重要となります。

 それに対して、第一の賄賂系の問題というのは、政治的公務員の職務の信頼性にもかかわる問題であるだけに、事案の真相を解明した上で、厳正な処罰が行われる必要があります。しかし、この種の事件が国会議員について表面化した事例は、この十年以上ありません。

 そして、国会議員等の政治的公務員の賄賂系の問題に対して適用される極めて重要な罰則規定が、あっせん利得処罰法です。

 この法律は、一九九〇年代に公共工事をめぐる口ききが贈収賄事件等に発展するケースが相次いでいたこともあって、国会議員やその秘書が口ききによって報酬を得る行為のうちの一定の範囲のものを処罰することで、職務の廉潔性を確保することを目的に、二〇〇〇年に公明党を中心とする議員立法によって成立し、二〇〇一年に施行されたものです。

 しかし、一方で、国会議員等の政治家が支持者、支援者等の国民から依頼され、裁量の範囲内での行政行為について行政庁等に働きかけて依頼に応えようとすることは、国民の声、要望を行政行為に反映させるための政治活動として必要なものでもあります。

 そこで、あっせん利得処罰法の立法に当たっては、そのような政治活動全般を萎縮させることがないよう、看過できない重大な事案だけが処罰の対象となるよう配慮がなされています。

 あっせん利得処罰法であっせん、口ききの対象とされているものの一つは、特定の者に対する行政庁の処分です。これは、法令に基づき行政庁の認定によって行われるべき行政処分に政治家が介入すること自体に問題がある、だから政治活動として保護する必要は低いと考えられたからだろうと思います。

 もう一つが、国、自治体及び国が二分の一以上を出資する団体の売買、貸借、請負その他の契約に関するあっせんです。これは予算に関連するあっせんだと言えます。

 配付資料二をごらんください。

 二の国会における予算案の審議、議決、四の国会での決算の審査、承認が国会議員の直接の権限に基づくものであるのに対して、一の各省庁における政策、施策、事業計画の具体化による予算案の作成、三の予算執行は、直接的には行政庁等が主体になって行うものですが、国会議員等の政治家が、二、四に関する権限を背景に支持者、支援者等の要望を行政庁に伝え、それを予算の作成、執行に反映することも政治家の政治活動の重要な役割です。

 この中でも、予算の策定段階での行政庁への働きかけは、特定の個人や企業に有利な面があったとしても、基本的には政策実現を目的として行われるもので、政治活動の自由が保障される必要性が高いと言えます。

 それに対して、予算執行の段階で行われる事業者等との契約というのは、法令上の手続に基づいて適正かつ公平に行われるべきものであり、政治家が契約の相手方や契約内容に介入することは正当な政治活動とは言いがたい面があります。

 そこで、契約に関する行政庁等へのあっせんによって利得を得る行為は、行政処分への介入と並んで口ききによる弊害が大きいと考えられ、あっせん利得処罰法の対象とされたんだと思います。

 そして、このような行政処分と契約に関するあっせんが処罰の対象とされるのは、権限に基づく影響力を行使して行われ、報酬を受けた場合です。

 権限に基づく影響力については、この立法において中心的な役割を果たされた公明党の漆原良夫議員の解説書等で、権限に直接または間接に由来する影響力、すなわち職務権限から生ずる影響力のみならず、法令に基づく職務権限の遂行に当たって当然に随伴する事実上の職務行為から生じる影響力をも含むと。影響力を行使してとは、被あっせん公務員の判断に影響を与えるような形で、被あっせん公務員に影響する権限の行使、不行使を明示的または黙示的に示すことだとされています。

 国会議員の場合、権限に基づく影響力の典型は、議院において法律、予算等を多数決で成立させることに関して、他の議員への働きかけを行い、多数の意思を形成することです。法律や予算は、通常は議会において多数を占める与党の賛成で成立するものであり、この点に関しては、与党内で影響力を持つ有力議員であることは、この影響力の大きさの要素だと言えます。

 このように、あっせん利得処罰法は、あっせんの対象を行政処分と契約に関するものに限定した上、権限に基づく影響力を行使した場合に処罰の対象を限定することで二重の絞りをかけています。政治活動を不当に萎縮させないように配慮しつつ、行政庁等に不当な影響を及ぼし、依頼者の個人的利益を図ろうとする目的が顕著な、悪質な口ききで利得を得る行為を処罰の対象にするという、まさに適切な立法と評価できると思います。

 このような立法が与党の一員の公明党が中心となって行われたことは、大変意義のあることだと思います。

 この法律の施行後、国会議員やその秘書に対して同法の罰則が適用された例はありません。検察当局等の捜査機関の摘発の姿勢による面もあろうかとは思いますが、法律が施行されたことで、悪質な口ききによって利得を得る行為に対して一定の抑止効果も生じたと見ることができるのではないかと思います。

 ところが、今般、現職有力閣僚であった甘利氏とその秘書をめぐって、独立行政法人のURとの補償交渉をめぐるあっせん利得処罰法違反の疑いが表面化し、しかも、そのような口ききを依頼したと告白している者から、現職大臣が大臣室で現金を受領したという信じがたい事実も明らかになりました。

 私は、この問題が週刊文春で報じられた際にも、記事中で同法違反の成立の可能性についてコメントしました。そして、その直後から、個人ブログ等で、絵に描いたようなあっせん利得であり、検察が捜査をちゅうちょする理由はないと述べてきました。

 詳しくは、配付資料の四、五をごらんください。

 まず、URとの補償交渉は最終的に補償契約によって決着するわけですから、契約に関するあっせんであることは明らかです。依頼者の一色氏が残していた録音記録によると、甘利氏の秘書は補償の金額にまで介入して、その報酬として多額の金銭や接待を受けた事実があったようですので、不当なあっせんであることは明白だと思います。

 また、国会議員の権限に基づく影響力についても、現職閣僚で有力な与党議員であり、二〇〇八年に麻生内閣で行革担当大臣に就任した甘利氏は、二〇一二年に自民党が政権に復帰して以降、組織のあり方や理事長の同意人事など、URをめぐる問題が与党内で議論される場合には相当大きな発言力を持っていたものと考えられます。甘利氏自身も秘書も、議員としての影響力の行使が十分に可能な立場だったと言えます。

 甘利氏をめぐる問題は、二重の絞りがかけられ、ストライクゾーンが狭く設定されたあっせん利得処罰法の処罰の対象の、まさにど真ん中のストライクに近い事案です。

 検察当局としては早急に強制捜査に着手して証拠を確保すべき事案だと考えられますが、東京地検がUR職員から聴取などと一部で報じられた以外、甘利氏自身はおろか、UR側に直接あっせんを行った秘書に対しても捜査が行われている形跡は全くありません。

 また、甘利氏は、大臣辞任後に国会には全く登院しておらず、辞任を表明した記者会見で、元特捜部の弁護士に調査を依頼しているなどと述べたようですが、甘利氏の説明からして、果たしてそのような元特捜弁護士というのが存在しているか否かも疑問です。

 この点については、配付資料六に詳しく書いております。

 この問題が、大臣辞任ということだけで何ら真相解明が行われず、うやむやにされるとすれば、国会議員の政治活動に関する倫理観の弛緩を招くことになりかねず、与党の一員である公明党を中心とする議員立法によってあっせん利得処罰法が制定されたことの意味も全くなくなってしまいかねません。

 検察当局が捜査にすら着手しないということであれば、国会においてみずから事実解明に乗り出す以外に方法はないと思います。具体的には、甘利氏や秘書の証人喚問、参考人招致等を行うことによって、URに対する口ききとその報酬の受領について事実解明を行うことが必要だと思います。

 最後に、コンプライアンスは法令遵守ではなく、組織が社会の要請に応えることだという私の持論の観点から、公的な住宅供給を担う独立行政法人URの組織の問題として、今回の甘利氏をめぐる問題を考えてみたいと思います。

 資料七は、独立行政法人をめぐる制度の概要をまとめた総務省の資料、その中に出てくる中期計画のURの最新のものが資料八です。

 URは、財政投融資による住宅等の資産、十二兆円もの大きな資産を保有する巨大な公益法人です。事業の内容が民間の住宅建設、住宅供給と競合することから、これまで事業の効率化、合理化が求められ、民営化がしばしば俎上にのせられてきましたが、その一方で、これからの超高齢化社会を迎え、また若年世代の貧困も大きな社会問題となっている現状において、住宅供給を民間のみに任せておいてよいのか、衣食住の基本と言える住のセーフティーネットを確保していくため、膨大な公的住宅資産を有するURがどのような役割を果たしていくべきなのかというのは、社会的にも極めて重要な問題だと思います。

 まさに、このような問題について、国民、地域住民から幅広く、公的住宅供給をめぐる声を、UR、国交省に伝える、それはよい意味での健全な口ききと言えるんじゃないでしょうか。

 公益法人としての経営の効率性、合理性を追求する一方で、社会的に必要があれば、公費を投入してでも住のセーフティーネットの役割を果たしていく必要があります。そして、最終的には、介護、年金等の社会福祉の問題とも関連づけて、こういったことを国会の場でしっかり議論していく必要があると思います。まさにそれが、URにとって社会の要請に応えるという真のコンプライアンスだと思います。

 ところが、今回の甘利氏の問題で明らかになったことは一体何でしょうか。公有地を不法占拠する建物への補償交渉という、いわば薄汚い口ききに介入する、それによって、秘書は多額の金品を受け取り、頻繁に接待を受ける、大臣は大臣室で現金五十万円も受け取る、URの幹部はこういう与党の有力議員や秘書の顔色をうかがう。こんなことで、公的住宅供給を通して社会の要請に応えるべきURの本当の役割が果たせるでしょうか。

 まず、こういうゆがんだ関係のもとで一体何が起きたのか、どういう事実があったのかということを早急に解明した上で、今後のこうした問題についての政治のあり方、UR、国交省との関係等を前向きに、建設的に議論していくべきだと思います。そのためには、まず大前提として、今回の甘利氏の問題についてしっかり事実解明を行うことが不可欠だと思います。

 本来、先ほどから申し上げているように、検察が刑事事件として取り上げ、捜査の対象にすべき案件です。しかし、それが全く行われていない現在、私は、この問題の重要性、国会審議の前提としての重要性を考えれば、国会における事実解明ということも必要になってくるものと思います。

 そういった面での事実解明が行われる必要性を強調して、私の意見陳述を終わりにさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

竹下委員長 ありがとうございました。

 次に、竹森公述人にお願いいたします。

竹森公述人 慶應大学の竹森俊平と申します。

 国会で発言するのは初めてで、しかも財政の問題というのは日ごろ話すことは余りないんですが、お呼びがかかりましたので、割とテーマは自由でいいというふうに聞きましたので、いろいろと話させていただきます。

 私は、非常に不勉強ですが、昨年十二月に財務省で次年度の予算の説明会があって、珍しく出席しましたけれども、そのときに財務省の方が、今回は誇りを持って出せる、自慢ですというようなことをおっしゃいました。

 そういうふうにおっしゃるのは、ある意味ではわかって、それほど違和感はなかったんですが、ただ、予算が本当によかったかどうかというのは、ある意味では事後的にわかる。本当は結果の数字を見ないとわからない部分がありますから、そういうことも含めてきょうはお話をしたいと思うんですね。

 恐らく財務省が自信があると言ったその理由というのは、一般会計は六・三兆円ですか、増加したんですが、しかし、新規国債の発行を二・四兆円削ることができた。安倍政権ができた二〇一二年度と比較して、十兆円近く削れている、減額できているということだろうと思います。

 その理由を考えてみると、税収増が非常に大きいわけであります。これはちょっと日経からとった数字ですけれども、一二年度決算から十三・六兆円ふえていて、一四年度の消費税八%の増税効果を除いても七・三兆円の増収がある。これがポイントだというわけですね。

 事後的に誇れるものになるかどうかというのは、この税収についての予想というのか、それから、成長についての予想がどうなるか。政府の予想というのは、二十八年度が、GDPの実質が一・七%程度の成長で、名目が三・一%程度の成長だという予想ですけれども、それが実現できるかどうかということだろうと思います。

 私は、先ほど、本当に武田さんが見事に全てを網羅した説明をしていただきまして、基本的に私は全てその点に賛成ですから、それほどつけ加えることはないんですが、やはり円安の効果というのが大きかっただろうと思います。

 一ドル八十円から一ドル百二十円になりますと、一ドル分売って五〇%手取りがふえるわけですね。まず、企業収益が膨れ上がるわけです。その企業収益が賃金に回るようになれば、賃上げになって、これでデフレが終わるし、一番大事なことは、先ほど武田さんもおっしゃいましたけれども、設備投資に回るようになれば、これで成長率が高くなるわけですね。それで低成長を抜け出られる。これまでのところ、一応そういうシナリオ自体はできてきたんだろうというわけですね。

 ところが、ちょっと済みません、急いで書いたのでいいかげんなレジュメを配りましたけれども、今の問題というのは、円高が進行している。けさ見ましたら百十一円まで進行したみたいですけれども、一体これがどうなるかということが非常に大きいわけです。

 つまり、今までの好循環というのは、円安、企業収益の増加、それが賃上げもしくは投資の増加につながる、そういうサイクルであったものが、その一丁目一番地である円安というのが消えてなくなると、このサイクル自体が消えてなくなる危機があるということであります。

 昨今の円高というのは、私は、多分に外的要因が大きくて、政府が放置しているとかいう問題ではないんだろうと思います。これは、一言で言って、セーフヘイブン効果ですね。これは何と日本語で訳すのか、安全地帯と訳すんでしょうか、安全地帯効果というのがあるわけです。日本はセーフヘイブン効果というのが物すごく強いんですね。

 ちょっと一つ例を挙げますと、二〇一一年の三月の地震、津波、原発事故、これが重なったとき、皆さん覚えていらっしゃると思いますけれども、私は、あれが起こったときは、さすがに日本もだめになるから円安が進むだろうと思ったら、何が起こったかというと、史上最高の円高になったんですね。これは一種のセーフヘイブンというか、要するに、何か問題が起こるとそれをカバーする仕組みがあって、この場合は、企業が外国にためている資産を日本へ持ってくるわけですね。ドルを円に直すわけですから、それでばあっと円高になるというような、そういう効果があったわけです。

 そういうことがあって、これからこのセーフヘイブン効果がどうなるかというのは、先ほど武田さんも挙げましたような要因で、三つ、世界的な要因として注目すべきなのは、今まで世界の鉄の半分をつくっていた中国が減速し出して、そうすると、資源とエネルギーの消費が減るので新興国が困っているというのが、これが第一ですね。それから二番目に、どうも怪しくなってきたなというので、米国連銀が利上げするはずだったのがしなくなっている、これが二番目ですよね。それから三番目が、金融規制を強化したんですが、ちょっと進め過ぎたためにアメリカやヨーロッパの銀行がちょっと困っていて、その影響が出ているわけです。

 このどれをまとめてみても、中国が一番大きな要因なんですが、ここで中国が成長率が下がると、これは国家の存亡問題ですから、そうはしないだろう。中国さえ何とか乗り切れれば何とかなるというのが私は割と現実性が高いシナリオだと思いますけれども、ただ、ヨーロッパでは、もう金融政策も財政政策も目いっぱいやっていて、もう一回危機が起こったらちょっと打つ手がないかもしれないというようなことを心配していますので、下振れは大きな問題。

 今後、円高が進んでいる一因として、日銀が、量的緩和もマイナス金利も、これが目いっぱいだろうというふうにマーケットが予想しているところがあるわけですね。これが、さらに一歩を打ち出せるかどうかというのが非常に大きな問題で、日銀の役割は非常に重要だと思います。

 これは武田さんがおっしゃったことをもう一回私も後づけ的に言うわけですが、これだけ不安があると、設備投資が本当に盛り上がるかどうかということですね。それは、減税策とかいろいろやっているけれども、一番大事なのはやはりシナリオであって、投資をするシナリオが頭の中に浮かばなければ企業は投資しない、それはどうだろうかという問題であります。

 恐らく、私がお呼びをかけられたのは、消費税のことに関して何か書いたのを読んでいただいたということを公明党の方から言っていただいたので、ちょっと消費税のことについてお話ししたいと思います。

 日本の財政状態は先進国で最悪だということはよく知られていますけれども、戦争以外の理由でこれだけ公債残高がGDPに対して上がったという例は余りないんですね。イギリスは、二〇〇%になったのが十九世紀に一回と二十世紀に一回ありますけれども、それはどっちも戦争が理由なんです。戦争以外でこれだけ上がったというのはないわけです。戦争で上がった場合は、要するに、戦争をやめれば大分楽になりますから簡単なんですけれども、戦争以外でこれだけ上がっているものをどうするかというのは大きな問題なんです。

 それで、消費税増税ということを今議論されていて、これからも議論されていくんだろうと思いますけれども、しかし、それが財政状態の改善につながるかどうかというところで、一つキーポイントになるのは財政乗数なんですね。財政乗数がどうか、ここに尽きると思うんです。

 IMFなんかが、ある国の財政状況が持続可能かどうかということを見るために、公債残高とGDPの比率を見ます。これから公債残高比と呼ばせていただきますが、それを見ます。その二つをつなぐものが財政乗数でありまして、今、十兆円公債残高を減らしたとして、それで十兆円GDPが減った場合、これは財政乗数が一であります。同じだけGDPが減るというわけです。

 財務省や何かの議論では余り出てこないんですが、この間、IMFのセミナーがあったときに行って、日本について財政乗数はどれぐらいと考えているのかと聞いたら、すぐ教えてくれて、公共事業で一だろう、消費税は三分の二と見ていたけれども、ちょっとそれは少なかったと今反省しているというようなことを言うわけですね。

 一と聞いたときに、私はちょっと落ち込んで、二週間、ちょっと暗い気持ちになったんですけれども、何でかということを考えてみると、今、簡単な経済を考えてみて、GDPが百兆円、公債残高が二百兆円で、比率をとると、二、二〇〇%という経済があったとします。

 今、公債残高から十を取ると、上は百九十になります。GDPからも十を取ると、九十になります。九十分の百九十というのは、九十の二倍は百八十ですから、二より大きいわけですよ。つまり、その場合、財政再建をしようとして、かえって公債残高比は高くなっちゃうという問題があるわけですね。

 私は、最近の財政学者の議論を見ていて、私は財政学者グループには属していないので、彼らがどんなことを言っているのか見たんですけれども、ちょっと疑問に思ったのは、彼らは公債残高比が一〇〇%より低い国の経済を考えて議論をしているんじゃないかと思うわけです。

 アメリカでもイギリスでも、かなり性急な財政再建をやりましたけれども、どちらも、アメリカもイギリスも、公債残高比は一〇〇%より低いですから、たとえ財政乗数が一でも公債残高比を減らせるわけですよ。ところが、今挙げた数値例でわかると思いますけれども、日本の場合は二倍以上ですから、〇・五でもうだめなんですね。

 ということは、いろいろな議論が出ていて、いつまでに財政支出をどれだけ削るとか、いつまでに何々をしろとかいう議論が出ていますけれども、それをやって大事なことは、公債残高のGDP比がどうなのか。

 まず、IMFが債務の持続性を言うときにこれを見ます。それから、今、ヨーロッパで新財政協定を言うときもそれを見ます。日本でも当然それがまず議論されるべきだし、二番目に、その際に財政乗数についてどういう仮定をしているのかということを明らかにするべきだ、今後の議論はそうなってくるべきだ、それをちょっと一つ言いたくて、きょう来たようなわけであります。

 それから、最後の点として取り上げたいのは、軽減税率であります。

 私がこの間どなたかと話したら、経済学者の何と九割が軽減税率反対だということで、私のような者は仲間内に入れてもらえないのかもしれませんけれども、恐らく公明党さんが呼んでくれたのは、日本で珍しく軽減税率に賛成している経済学者というので呼んでいただいたのかもしれません。

 ただ、私はへそ曲がりなので、いろいろ読んでみて、まず、財政の理論で、消費税についての理論で、一番基本的で、どんな教科書でも一番出だしに書いてあって、今でも一番基礎になるものは、フランク・ラムゼーという経済学者が一九二七年に書いた論文にあるものです。

 彼のルールというのはラムゼー・ルールといって、恐らく公務員試験とかにそれぐらい出てくるんだろうし、いろいろな人をつかまえて、ラムゼー・ルールを言ってみろと言ってみれば、それは消費の弾力性の逆数だろうとか、それぐらいはみんな知っているんですね。

 ところが、私はいろいろな人に聞いてみたんですが、何でラムゼーは一律税率を否定したのかということを聞いてみて、答えられる人は少ないんですね。恐らく、日本の経済学者を全部試験してみたら、ちゃんと答えられる人は一%いないんじゃないかと思います。恐らくそれが、九割が軽減税率反対だという理由なんだろうと思います。

 ラムゼーが何で一律税率を認めないかというと、我々は消費をするということもある、その反対に、何にもしないでだらだらしているということがあるわけですよ。ごろんとうちの中で寝ているということがあるわけですよ。これを経済学でレジャーというんですけれども、レジャーを選ぶことはできる。消費については課税をすることができるけれども、ごろっとして何もしないことに対して課税できないというんですね。

 ラムゼーのすごいところは、もし仮に、何もしないことに課税できたらどうなるか。そのときは一律税率がいいんですよ。いいですね。ところが、もし何もしないことに対して課税できないならどういうことが起こるかというと、もし消費税がかかると、一部の消費はごろごろしていることに取ってかわられるわけですよ。

 例えば、ごろごろしていても、おなかはすきますよね。だから、食品が代替されるということは余りないんですね。食事が代替されるということはない。だけれども、映画に行くとか美術館に行くとか本を読むとかいうのは、これはごろごろしていることと簡単に代替できるわけですよ。

 ラムゼーに言わせると、そういうものに消費税を同率で課すと、つまり食品と同率で課すと、そういうものは消費がうんと減ってしまう、それが経済に対するゆがみをつくるというのが彼の基本的な考えなんですね。恐らく、そのことをわかっている経済学者は、日本の中で一%もいないと思います。

 ラムゼーの結論というのは、だから、食品に対しては高い消費税率で、趣味、芸術に対しては低い税率をということなんですけれども、そのことを日本の財政学界はどう扱うかというと、見てごらん、これは逆進的な意見だろう、食品に税率をかけるというのは逆進的だろう、累進性を考えたらこれは間違っている、だけれども、累進性とラムゼーと、間をとって、二で割って、では一律税率だったらどうだ、そういう理屈で一律税率を進めているというのが財政学者の考え方なんですね。

 私は、めちゃくちゃな議論だと思います。よく考えてみたら、何でそんなことが今までまかり通ってきたのかと思うぐらい、めちゃくちゃな議論だと思います。

 今、消費税の軽減の中に、新聞と、本が入るかどうか、書籍が入るかどうかですよね。書籍と新聞について見ますと、これは代替されるものとして、ごろごろしている以外にも、もっと強力なものがあるわけです。それは何かというと、スマホであります。皆さんは、みんな、何か最近、本を読まないでスマホをして、スマホをしているから本を読む時間がないんだねと、そうじゃないんです。スマホで情報がとれるんです。スマホで情報をとるときにはただだと思っていて、本を買うと消費税まで払わなきゃいけないんですね。

 最近、自民党の松島さんのブログを見ていたら、何か、林真理子さんが、本が本当に売れない時代になった、急に売れなくなったということを書いているわけですね。それは、無料な媒体と比べて有料な媒体が非常に不利になった結果、本屋に行ったって、千五百円を超える本なんか全然置いていないです。このまま二〇%いったら、本当に本なんかなくなりますよ。本棚に何もなくなる。

 それで、何が起こるかというと、その場合は、スマホや何かの情報ですけれども、これは広告収入でファイナンスされている情報だけが行くことになるんです。広告収入でファイナンスされるというのはどういうことかというと、結局、スポンサーは、アクセスの多い情報は喜ぶけれども、少ない情報は喜ばないわけです。ですから、真面目な議論というのは全部消えてなくなって、それで本当に、ベッキーがどうだとか清原がどうだとかいう情報ばかりが出回るような世の中になると思います。

 この点はぜひ議員の方々に真剣に考えてもらいたい。それは、面倒くさいからというので消費税率を一律にして、たとえ本がなくなったとして、ああ、日本人は勉強しないからしようがない、我々のせいじゃないと言うことはできるかもしれないけれども、明らかに消費税の効果はあると思っています。

 一律税率を原則としないのであれば、それ以外のいろいろな考え方もあると思うんですが、例えば食品にしても、低所得者にとっては食品の比重が大きい。ということは、食品の費用が大きくなった場合どうなるかというと、それは貯蓄を減らすか、ほかの消費を減らすかですよね。貯蓄を減らすのは余り減らせないから、となると、ほかの消費を減らすということで、結局それも書籍に行くんだろう。本なんか読めないよ、俺は貧乏人で、食費も上がったから、本なんか読まないよ。結局は、やはり日本の文化の問題につながっていくと思うんですね。

 ということで、私は、これは日本みたいな文化国はやはり真面目に軽減税率を取り上げるべきで、フランスもドイツも文化予算については軽減税率を認めているということを最後に言いたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

竹下委員長 ありがとうございました。

 次に、工藤公述人にお願いいたします。

工藤公述人 東京工科大学の工藤と申します。

 予算に関する意見の前提といたしまして、私は、まず日本経済の現状についてお話ししたいと思います。

 御承知のように、日本経済は、一九七〇年代のオイルショック、それから九〇年代のバブルの崩壊を起点として、二段階で沈み込んでおります。特に、一九九〇年代以降は、全体として、長期にわたって停滞しております。現在の停滞は、いわば、戦後の高度成長を支えてきました内需と輸出、この二つのエンジンがともに失速している、出力を低下させている、これが原因になっているわけです。

 GDPの推移を見ていきますと、九〇年代初めに、最初にバブル崩壊によって停滞をいたしました。それから、九〇年代の中ごろからは、輸出競争力強化のために、日本の企業は猛烈なリストラをしていったわけです。それからおかしくなった。それから、九〇年代後半になりますと、消費税の増税、それから金融危機に見舞われまして、これもまた停滞していく。

 それから、二〇〇〇年代になりますと、若干中国経済の景気がよくなりまして、日本の輸出が伸びまして、よくはなったわけです。ある程度輸出は伸びたわけです。けれども、不良債権の処理に絡みまして、企業が続々倒産してしまう、こういう状況になっていきました。それから、二〇〇八年のリーマン・ショックの後、さらに長期停滞に落ち込んでいます。その後、二〇一一年の東日本大震災に見舞われる、これは御承知のとおりでございます。

 その後、二〇一〇年から一三年にかけまして、日本経済は若干プラス成長に転じます。ですが、その中身を見ますと、内容は、エコポイント、家電エコポイントとかエコカー減税、エコカー補助金、復興需要。それから、二〇一三年度後半は、消費増税の駆け込み消費ということでございました。つまり、景気拡大によるプラス成長ではないということになります。それから、二〇一四年度は、御承知のとおり、消費税増税で、実質でマイナス一%。それから、今年度に入りまして、一五年の四―六月期はマイナス〇・三%、七―九月期はプラス〇・三%になりましたが、これもちょっと怪しい。

 これは設備投資が急激に修正された点なんですが、これはちょっと割愛しますが、いずれにしましても、需給ギャップは、七―九月期まで、実に二十九期連続でマイナスになっている。要するに需要不足だということが言えるわけです。この需要不足は前よりもふえている、実数にして八兆円ほどの需要不足ということになります。

 それから、昨年の十―十二月期は、御承知のとおり、実質でマイナス〇・四%。この主な原因は、個人消費の落ち込みがマイナス〇・八%ということであります。つまり、一三年度以降も停滞し続けているというのがこの国の現状だということになります。

 一方、EUの十九カ国のGDPは、二〇一五年十―十二月期で、若干ですけれどもプラスになりました、プラス〇・三。これは、十一四半期連続でプラスになっています。

 こういう実態と比べますと、余りにも日本の経済の実態と対照的であるというふうに言うことができるわけです。雇用とか所得環境が悪くて消費が低迷しているわけですから、GDPが低迷するのはいわば当たり前のことだというふうに認識しております。結局、今回のマイナス成長というのは、日本経済の停滞構造を改めて浮き彫りにしたのではないかというふうに思います。

 それから、今後はどうなるかということですけれども、今後も、鉱工業生産指数の動きなどを見ますと、余り期待できないということになります。

 問題なのは、この間、日本経済に何が起きていたのかということでございます。お手元の資料に、経済の循環構造をお配りしておりますけれども、まず、循環構造の変化が起きているということなんです。

 九〇年代以降の停滞局面で、まず起きたのが負の連鎖、つまり各産業分野で同時に、連鎖的に停滞していく、こういうことです。その次に、各部門間での負の連鎖が発生いたしました。自動車、家電などの停滞が、鉄鋼や石油化学などの生産財部門の停滞に波及していきます。それによって経済全体が停滞していきます。

 その次に起きたのが、連鎖の破断、これは特に九〇年代後半以降起きているんですけれども、特にリーマン・ショック以降です。この破断というのは、反応が鈍くなっているということでございます。各部門で連鎖が破断してしまう、希薄化してしまう。

 どういうことかというと、生産が伸びても投資につながらない、投資がふえても雇用につながらない、雇用がふえても非正規労働者の増大で所得につながらない、所得がふえても消費につながらない。それから、円安になっても、円換算での輸出収益が伸びても、生産、投資、雇用には慎重で伸びない。こういう構造であります。

 こういう連鎖の破断は、今度は各生産部門間の破断にまで波及しております。そして、内需を停滞させているわけです。それによって生産部門は海外に逃げ出しているということでございます。こうなりますと、もはや一時的な所得増大ではもう戻らない、経済循環は再生しないということが考えられるわけです。

 この連鎖の破断を通じまして、産業構造、労働市場、それから貿易構造も連鎖的に変化していきました。こういう構造になります。

 この構造変化の原因ですけれども、これは、まず第一番目には、一九九〇年代以降の猛烈なリストラ、これはもう異様なリストラと言っていいかもしれませんが、これが大きな原因であります。それから二つ目は、そこに国民の負担が重なってきた。税負担とか社会保険料の負担でございます。それから、そういう中で、国民の将来不安が助長された。医療、年金、介護、こういう問題が重なっていきます。こういう問題が循環構造を破壊的に変容させてしまったということになります。つまり、雇用、所得、消費の停滞を起点とした循環構造の破壊が起きているということになります。

 内閣府の資料によりますと、雇用者報酬ですけれども、一九九七年を起点にした場合、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツでは軒並み伸びているんですけれども、ひとり日本だけがマイナスに落ち込んでおります。それと並行して、GDPも日本だけが落ち込んでいく、そういう状況になっているわけでございます。

 さらに、循環構造におもしがかかってしまいました。

 この循環構造に沿ってごらんいただきたいんですけれども、雇用ですけれども、非正規労働者が非常に増大しまして、上からおもしがかかる。二〇一四年の十月時点で、非正規労働者の比率が全体の四割を突破したという報道がなされておりますけれども、これはそのことを意味します。それから、正社員に関する有効求人倍率は依然として一以下のままでございます。こういう状況があります。

 世の中では、労働力不足がありまして、賃金が上昇しているというふうなことも言われていますけれども、その背景にあるのは、一つはサービス産業で不足しているんです。これは低賃金で、非常に離職率も高いんです。こういう部門では労働力不足が慢性的に発生する。それから、労働力人口も減少しておりますし、団塊世代の大量退職、それから、総務省の調べでは、介護離職が非常にふえている、こういうことも影響しているのではないかというふうに考えられます。いずれにしましても、景気拡大による労働力不足ではないということははっきりしております。

 それから、上からおもしがかかっているのは、所得です。円安誘導により、輸入物価の上昇によって、所得にもおもしがかかっております。御承知のように、実質賃金が二〇一二年度から一五年まで四年連続で減少しているという事実がそれを物語っているわけです。

 それから、消費です。これも上からおもしがかかります。消費増税、社会保険料の引き上げ、こういった問題が消費におもしをかけているということになります。

 こういうおもしが国内の生産活動を海外に追い出してしまった、こういうふうに考えることができます。海外で、サプライチェーン、いわば部品供給の連鎖でありますけれども、これを既につくっている。これが国内に戻ってくるということは実際には考えにくい。ここまで追い込まれているということでございます。当然、国内の設備投資も低調で、設備投資があっても老朽設備の更新か省力化投資。ですから、これは雇用の増大にはつながらないということになっています。

 企業も将来不安などから内部留保を増大させておりまして、九〇年代の後半以降、増大傾向を示しております。二〇一四年度でついにその額は三百五十四兆円、これは法人企業統計の示すとおりでございます。

 以上が、先進国と言われる中で、唯一マイナス成長を繰り返し、しかも長期にわたって停滞している主な原因、こういうふうに判断することができます。

 こういうふうになりますと、では、今後、日本経済はどうなるんだろうかということになりますと、これはもとに戻りにくいというふうに判断できます。経済システムというのは生きている、森のようなもので、ある程度壊れても自分で蘇生する力を持っているものなんです。ところが、今の日本経済は、その戻る力が非常に弱い。長い間停滞していまして、その蘇生力が弱くなっているということではないかというふうに考えられるわけです。

 こういうふうな状況になってきますと、次に何が起きるかといいますと、一つは、従来の経済政策がききにくくなるということになります。

 まず、財政政策ですけれども、需要が停滞して資金循環が停滞しておりますから、つまりお金が流れにくい状況になっていますから、そこにお金を流し込んでも財政の波及効果は薄いということです。支出された分は、銀行にたまるか、企業の内部留保となってたまってくるか、そういうことで回らないということになります。こうなりますと、法人税を引き下げたり、あるいは軽減税率を適用しても大した効き目はないだろう、こういうふうに考えられるわけです。

 企業の収益も毎年増大しているんですけれども、設備投資は低調なままです。一四年度の日本企業の経常利益は、一二年度から比べて約十六兆円増大して、六十四・六兆円という数字になっております。しかし、その割には設備投資は低調だ、つまりつながっていないということになります。

 それから、金融政策でありますけれども、そもそも金融に需要を喚起する力は期待できないというふうに思います。まして、経済循環構造が壊れている中で金融政策を投じても効果は期待できないというふうに思います。

 それからさらに、日本経済は内需が非常に弱くて、外需に非常に振り回されます。したがって、金融政策をやっても外国為替相場とか海外の株価に振り回されてしまいまして、金融政策の効果は発揮できないということで、従来型の財政金融政策ではもう到底日本経済の再生にはつながらないのではないか、そういうふうに考えるわけです。そういうことが言えると思います。

 重要なことは、需要を喚起する財政政策や予算編成、これが必要になるのではないか。しかも、一時的なものではなくて、長期的、安定的に拡大する政策ということであります。要するに、国民の生活基盤の安定策、これが非常に重要なことになるのではないか、これ以外に経済を再生する道はないというふうに考える次第でございます。多少時間がかかるかもしれませんけれども、それが唯一の、最善の道ではないかというふうに思っております。

 こういう観点から今回の予算案を拝見させていただきました。平成二十七年の六月三十日閣議決定で、経済財政運営と改革の基本方針二〇一五ということで、その中で、経済・財政再生計画を策定する、これに沿って、今回の予算はその初年度予算であるというふうに位置づけられております。

 数字については割愛させていただきますけれども、全体として、ざっと見たところ、非常にさまざまな分野に広く予算がつけられております。それから、先ほどのお話にもありましたけれども、歳入の中の公債金削減など、一定の工夫とか調整がなされている、この点は評価できると思います。

 ですが、やはり問題もあると思っております。

 一般会計予算の問題点として、まず歳入ですけれども、先ほどもお話がありましたけれども、予算の前提となる経済見通しについて、平成二十八年度のGDPの実質成長率プラス一・七%、名目成長率三・一%、この数字はやや甘いのではないか、こういうふうに思われます。この成長率の中には、消費税増税前の駆け込み消費の増大が盛り込まれております。これは非常に危ういと思います。

 それから、鉱工業生産指数がプラス三・二%と想定されています。これも、平成二十七年度の勢いからすれば、大幅な上昇はちょっと期待できないのではないか。それから、設備投資も住宅投資も雇用も個人消費も、緩やかに増大するというふうに書かれております。それから、輸出も、世界経済の緩やかな回復で増大するとしております。

 そして、こういう前提のもとに、所得税が一兆五千三百三十億円プラスになる、それから法人税もプラス一兆二千四百三十億円である、消費税もプラス七百三十億円である、こういうふうな数字が出されているわけです。しかし、この辺も、消費税、所得税の増収、この辺に期待をした予算編成であるということで、ちょっと危ういなというふうな感じがいたします。

 それから、歳出面です。歳出面では、配分の仕方が変えられておりまして、保育対策費の増額など、さまざまな配慮が見受けられております。

 しかし、細かに見ると問題がありまして、全体としては、国民生活の安定に直結する部分が非常に弱いというふうに思います。

 例えば、医療費補助はふえておりますけれども、後期高齢者医療補助金が削減、それから国立病院の補助金も削減。それから介護給付費はふやされておりますけれども、これは力不足で、逆に介護扶助等に必要な経費が、七百億円と少ない上に、減額されている。それから子育て支援対策費は、プラス三千四百万円となっていますけれども、額が少なくて、これも力不足。それから社会福祉費用が削減されております。それから雇用労災対策費も大幅に削減されている。それから地方交付税交付金、これが非常に問題ですけれども、これによって地方の負担が非常にふえる。それから文教及び科学振興費が削減。中小企業対策費が削減。こういうふうなことになっております。

 全体としては、国民生活の安定に直結する部分が、弱いというよりも減らされているというのが実態となっております。つまり、生活不安を和らげるものではなくて、雇用や所得も刺激できないだろうというふうに考えられるわけです。これでは、経済再生効果は余り期待できないのではないかというふうに思います。全体として、経済再生にはなかなかつながらないのではないか、特に経済再生予算という性格は非常に見えにくい、そういう予算の内容になっているように思います。肝心の雇用、所得、消費の拡大につながらないということです。

 経済再生につながらない以上は、財政再生にはつながらないと思います。そういうことで、経済・財政再生計画の初年度予算という目的からすれば、やや問題がある、ちょっとずれているということになります。だとすれば、最終的に累積債務をさらに増大させることにつながるのではないか、財政再建からもますます遠ざかってしまうのではないか、そういう印象を得た次第でございます。

 少し早いのですが、以上でございます。(拍手)

竹下委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

竹下委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山下貴司君。

山下委員 自民党の山下貴司です。

 本日は、公述人の先生方から平成二十八年度予算について貴重な御意見を伺いました。お礼を申し上げます。

 さて、予算委員会の所管事項は予算であります。予算委員会は、この国の形をつくる、この国の進むべき進路を決める予算を審議するところであります。当たり前のことでありますが、最近、そのことを忘れている質疑が多いとの地元の方の苦言があったので、あえて申し上げました。

 そのことを申し上げた上で、武田洋子公述人から御意見を承りたいと思います。

 武田先生からアベノミクスを初めとする我々の取り組みに積極的な評価をいただき、お礼を申し上げます。

 ただ、民主党の方から実質GDPの伸びは民主党政権時代の方が多いと主張されることがあるんですが、そういう主張について、先生はどのようにお考えでしょうか。

武田公述人 足元で実質GDPの伸びが鈍いのは事実でございます。それにつきましては、海外経済の情勢がやや悪化しておりまして、それが日本経済にも悪影響を及ぼしているものと理解しております。

 したがって、やや長い目で見た場合には、二〇一二年ごろから今という比較においてはプラスの面があろうかと思います。

 以上でございます。

山下委員 実質GDPというのは物価と、そしてそういったものがあると思うんですが、それとの関連についてはいかがでしょうか。要するに、物価の伸びとかそういったこととの関連があろうかと思うんですが、それとの関連、名目GDPとの関連においてはいかがでしょうか。

武田公述人 御質問ありがとうございます。お答え申し上げます。

 名目GDPは伸びておりまして、もちろん、その分、デフレーターで除去した実質GDPと、そこの乖離が出るのは御存じのとおりかと思います。

 しかし、まずは、先ほども申し上げたとおり、企業収益が改善し、それが雇用市場の改善につながり、それが賃金上昇また設備投資へ回っていくことによって、所得から支出の好循環が生まれ、ひいては実質GDPの持続的な成長に資するものと考えております。

 ありがとうございます。

山下委員 この委員会では、ドル換算でGDPが減っているじゃないかというふうな指摘もされたんですけれども、そういう指摘については先生はどのようにお考えでしょうか。

武田公述人 御質問いただき、ありがとうございます。お答え申し上げます。

 為替は日々変動いたしますので、当然、日々変動する結果にはなりますけれども、基本的には、私どもの日本円で日ごろ評価しております。

山下委員 ありがとうございます。

 結局、円高だったら、ドル換算でGDPは見かけ上はふえるわけですよね。では円高がいいのかというと、決してそういうことはない。そういう御意見だと承りました。

 それでは、例えば、四ページの名目雇用者報酬というのがあります。これが政権交代後伸びておるというところは見えるんですが、ただ一方で、特に民主党の皆様から、実質賃金は上がっていないじゃないかという御指摘を受けることもあるんですが、その点について先生の御見解を伺いたいと思います。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

武田公述人 御質問いただきまして、ありがとうございます。お答え申し上げます。

 私どもの見ております、重視しておりますGDP統計におけます実質雇用者報酬はプラスで伸びておりますので、まず伸びていると理解しております。

 ありがとうございます。

山下委員 先生から、九ページの日本経済の持続的成長に必要な三本の柱として、人的資本、生産性向上、持続可能性が大切であり、これは、私たちの一億総活躍社会、あるいは地方創生、アベノミクス全体と目指す方向が重なっていると思います。大いに意を強くいたしました。

 ただ、これらの点についていろいろ御指摘はあったんですけれども、十一ページの資料によると、先生御指摘のとおり、ビジネス環境ランキング、これが急落しているというふうに思われるんですが、その原因について教えていただけますでしょうか。

武田公述人 御質問いただき、ありがとうございます。お答え申し上げます。

 まず、ビジネスランキングの詳細につきましては、非常に多数の項目がございますので全て本日申し上げることはできませんが、日本の評価が下がったというよりは、むしろ、海外の取り組みが加速していることによって相対的に順位した部分があるということと、それから、事業設立であるとか、さまざまな手続の日数が他国に比べると長いという状況があるのは事実でございます。

 したがって、成長戦略のもとでビジネス環境を一層改善していくこと、これは非常に重要ではないかと考えております。

 以上でございます。

山下委員 武田先生、ありがとうございました。武田先生の御提言、十三ページの日本経済の発展に向けてとの御提言もしっかりと踏まえながら、予算早期成立に向けて頑張っていきたいと思います。

 さて、郷原先生からは、コンプライアンスやあっせん利得の解釈についてお話を伺いました。

 御発言があった以上、触れざるを得ないのですが、郷原先生と同じく元検事として捜査機関に身を置いた法律家としては、個別の事件について捜査機関のように振る舞うことは、断じて国会の役割ではないと考えております。

 それは、第一に、国会が法制度や予算に対する建設的議論を脇に置いて個別の事件追及にきゅうきゅうとするのは、捜査機関や司法権に対する国会の介入になりかねないからであります。

 そして第二に、法律家として、民事、刑事にかかわらず、個人の法的な責任の有無について国会の場で取り上げることについては相当慎重でなければならないと考えるからです。特に、あっせん利得罪については、その権限に基づく影響力を行使してというのは新しい構成要件であり、その解釈についてはまだ固まっておりません。

 例えば、この要件について郷原公述人が書かれた「検察の正義」、たしか百十五ページだったと思いますが、いわゆる陸山会事件に触れたくだりで、議員の職務としての活動より政治活動が中心になっている国会議員や秘書がこの罪で摘発された事例は過去にはない、野党議員の場合には権限に基づく影響力というのは一層考えにくいとやや消極的に述べておられますが、郷原先生、このとおり、間違いないですか。今、うなずいていただきました。

 また、郷原公述人が主任弁護人となった美濃加茂事件、これについては、収賄に加えてあっせん利得についても無罪になりました。現在控訴中だということでありますが、やはりさすがです。この点、ウエブでも公開されている判決書によれば、無罪判決の主な理由は、金を渡したとする者の供述が信用できないということであります。この種事件においてはよくあるお話でございます。

 ただ、裁判では、あっせん利得罪の、その権限に基づく影響力の行使の有無についても争点となっております。先ほど申し上げたように、ウエブでも手に入れられる判決書の争点整理の項によれば、市議会議員の市議会での質問を行使することを示したことについて、郷原先生を含む弁護側は、概要、以下のように述べておられます。

 当時、市議会議員であった被告人は市議会で質問権を行使したこともないし、市職員にとって、議会で再質問されることは一般的なことであって、特に負担になるものではないから、これを恐れて対応することは考えられず、市議会議員としての権限に基づく影響力の行使に該当するとは言えない、市が動いたのは市として必要があったからであり、被告人の権限に基づく影響力の行使によるものではないというふうに主張されております。

 この美濃加茂事件について、影響力の行使要件について、そのような御主張をされたことは間違いありませんか。今、うなずいていただきました。

 私が言いたいのは主張の当否じゃないんですよ。このように、解釈が分かれ、しかも、当てはめも事案によって異なる法律の個別事件の法解釈について、国会の、特にこの予算委員会で延々と取り上げることについては疑問があるということなんです。

 さらに、民主党政権時代、陸山会をめぐる政治資金規正法違反事件について、小沢一郎さんやその秘書について予算委員会での参考人招致や資料提出を求めたことがありました。別件ですが、鳩山由紀夫さんやその秘書についてもそうでした。

 特に、陸山会事件をめぐっては、民主党政権時代の予算委員会の政治と金の集中審議において我が党の柴山昌彦議員が問うたように、二〇〇九年、陸山会から小沢チルドレンと呼ばれる民主党の候補者約九十名におおむね各五百万円、二百万円の方もおられるようですが、合計四億円を超えるお金が提供されたことも問題になりました。提供を受けたとされる方には、まだ現職の方もおられます。政治のあり方に大きな影響を与える政治と金の問題でしたが、結局、民主党側は証人喚問や参考人招致をしませんでした。

 私は、個人的には、この民主党政権のころから、国会が個別事件について、特に捜査権や司法権の行使に影響を及ぼすような委員会の権限行使をすることについては謙抑的になったんだろうと思っております。

 重ねて言いますが、予算委員会は、捜査機関でも週刊誌記事検証委員会でもありません。この国の形をつくる、この国の進むべき進路を決める予算を審議するところであります。そして、そのことを私は繰り返し申し上げたいと思っております。

 その予算の話に戻りますが、今申し上げたことに何かございますか。

郷原公述人 私と同じように検事出身の山下委員であるだけに、一般論としては全て正しいと思います。

 しかし、まず、美濃加茂市長事件については、もう御存じのように、授受自体が否定されている上に、質問をした事実自体が基本的にないわけです。我々は、ずっと弁護人としてはそういう主張をしてきました。

 そして、重要なことは、彼は市議会議員時代のあっせん利得で起訴されたわけですが、しかし、それは一人会派です。与党でもなければ、政党に属しているわけでもない、まさに影響力などほとんどないので、およそ論外だという主張をした上で、個別の事実関係についても、およそあっせん利得処罰法違反には該当しないということを述べているわけです。

 先ほど来山下委員が述べられている話は、一般論としてはそのとおりなんですが、個別の事案の中身についての違いが全く踏まえられていません。

 特に、もう一点だけ強調したいのは、私が申し上げているのは、一般的に、どのような事件でも、まさにこれまで繰り返し繰り返し問題にされてきたような政治と金の騒ぎみたいなことはやるべきじゃない、しかし今回の案件は違うということを申し上げたいために、ここでいろいろ申し上げたわけです。この件をほっておいたままでは国民の信頼がなくなってしまうということを申し上げたかったわけです。

 以上です。

山下委員 今、いろいろるる申し上げました。私は、個別事件に踏み込むつもりはないんですよ。結局、この予算委員会がどういう場であるのか、国会の議論がどういう場であるのか、そういうことについて伺いたかったんですね。

 私が申し上げたかったのは、このまだまだ固まっていない解釈について、個別事件について踏み込むべきではないということであります。このことを重ねて申し上げたいと思います。

 そして、最後に竹森公述人に伺います。

 軽減税率の効果についてお話をいただきました。ちょっと簡単に、軽減税率というのがどういうふうに経済的な効果があるのかについて、また教えていただけないでしょうか。

竹森公述人 全部の消費に対して同じにかかれば所得税と同じことになるんですが、先ほど申し上げたのは、何もしないでごろごろしていることには税金がかからない場合は、代替効果が働くんですね、安い方に動く、そういうことです。

山下委員 ありがとうございました。

 持ち時間が経過していますので、以上で終わります。ありがとうございました。

菅原委員長代理 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 本日は、四名の公述人の皆様に大変貴重な御意見をいただきました。大変にありがとうございました。

 まず、この予算委員会、今審議している予算につきましては、経済・財政再生計画の初年度の予算であるということでございます。

 武田公述人にまずお伺いしたいというふうに思うわけでございます。

 社会保障費が、今、普通に考えていけばどんどんどんどん増大していくというこの状況の中で、今回、新規国債発行額は二・四兆円削減したわけでございます。このことについての評価、まずこれをお伺いしたい。

 また、先ほど、武田公述人の資料によれば、九ページ目に経済の持続的成長に必要な三つの柱、これについて、持続可能性として財政健全化と社会保障を大きな論点として挙げられております。この観点からも今回の予算をどのように評価されておられるのか、お伺いできますでしょうか。

武田公述人 御質問いただきまして、ありがとうございます。お答え申し上げます。

 まず、今回の予算につきましては全体として評価、賛成の立場からお答え申し上げます。

 御質問いただきました社会保障費の今年度の予算での抑制でございますが、こちらは、経済・財政再生計画で掲げられておりましたその目安の範囲におさまっておりますので、その点はよかったのではないかというふうに考えております。

 ただし、中長期的に見ますと、これから高齢化が進む中で、社会保障費が一段と拡大していくという予想がございますのは事実でございます。したがって、社会保障制度改革をしっかり行うことによって財政の健全化の動きを進めていくことが重要ではないかと感じます。それが全国民にとってプラスになるのではないかというふうに私は考えております。

 第一に、財政や社会保障制度の持続可能性が損なわれれば、一番お困りになるのは、生活の基盤を社会保障に依存していらっしゃいます現在の御高齢者となります。

 第二に、世代間で現在受益と負担のバランスが悪化しているがゆえに、現役世代の将来不安を生み出しているという調査結果もございます。

 第三に、日本の社会保障制度は、全国民の生活の安定の基盤であるということでございます。誰でも予期せぬ病気あるいは事故に遭う可能性はございますので、老後だけのための社会保障ではなく、人生のための社会保障だという点でございます。

 つまり、社会保障制度改革は、高齢者にとっても若い世代にとっても、世代を超えて必要な取り組みとなると考えております。

 以上でございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 この社会保障制度改革、非常にポジティブな評価をしていただいているということを確認させていただきました。

 続きまして、竹森公述人にお伺いしたいというふうに思います。

 きょうは、レジュメを頂戴いたしました。その中には記載されておられたんですけれども、時間の都合上お触れになられなかった点についてお伺いしたいと思うんですけれども、マイナス金利ですね。

 マイナス金利について伺いたいんですが、今、市場関係者の皆さんとかとお話をさせていただきますと、非常にネガティブなお話が多いです。これ以上どういった施策が打てるのかということで、選択肢の幅を狭めたんじゃないか。先ほどの竹森先生の資料によれば手いっぱいというような文言も書かれておりましたけれども、その認識が基本的な市場関係者の皆さんの認識だとは思うんですけれども、先生は多少違う見方をされておられるのではないかな。

 というのは、先行している国と比較しても今回は限定的なマイナス金利であるというところで評価されておられると思いますので、その点についてお伺いできればと思います。

竹森公述人 それを話し出すとなかなか終わらないんですけれども、まず、今回非常にうまくやったというのは限界的なところですね。つまり、全体に対しては、要するに、マイナス金利というのはペナルティーですよね。だから、そこにお金を置いておくだけでお金を払わなきゃいけないということですよね。それをやると銀行の経営にちょっと影響が大き過ぎるというので、中央銀行は、これだけ持っていなさいという部分は金利を差し上げますけれども、それを超えて持つんだったらペナルティーをかけますということですね。

 景気対策に、先ほど武田さんがおっしゃったいろいろな、プルというのでしょうか、夢があって、夢が経済を引っ張ってくれるというのはあるわけですよ。成長シナリオというのがあって、新規市場を開発してというプル要因というのがあるんですね。それと同時に、プッシュ要因、何もしないでだらだらしていると、おまえ、やっていけないよというプッシュ要因があるわけです。

 今、景気対策がプル要因とプッシュ要因とやっているんですが、残念ながら、武田さんの話も私の話もある程度重なるんですが、プル要因は弱いんですね。というのは、今、世界経済が不安定なんです。そこで、プッシュ要因を進めるんです。

 これは今後何が起こるかというと、ヨーロッパもマイナス金利をやって、日本よりもどんどんやっています。日本がマイナス金利をヨーロッパよりやらないと、円にお金が移ってくる。ヨーロッパにお金を置いていてもペナルティーがかかるから日本に来ようというので、円高が起こります。これからは、マイナス金利を進めない国は通貨が高くなって、そもそもこれはスイスがマイナス金利をやったんですけれども、そのような問題が起こってくるんじゃないかと思っています。

 済みません、長くなってしまって。

濱村委員 ありがとうございます。

 確かに、この話をし出すと延々長くなるとおっしゃる趣旨もよくわかるので、端的にまとめていただいて、ありがとうございます。

 もう一点お伺いしたいところ、ラムゼー・ルールに関連してお伺いしたいというふうに思うわけですけれども、まず、我々、軽減税率を推進していく中で、いわゆる複数税率を導入することによって消費行動をゆがめてはいけないというようなことは念頭に置いてやってまいりました。一方で、ラムゼー・ルール、あるいは消費税の基礎理論としては、一律税率が経済をゆがめるんだというような理論でございます。

 我々、恐らくもっと基礎的なレベルでの考え方なのであろうというふうには考えるわけでございますけれども、今、軽減税率の対象品目、これの選定基準は非常に重視しなければいけない点なのであろうというふうに、伺いながら考えておりました。

 言ってしまえば、今我が国はこれが大事なんですよということを国として選択していくという作業にほかならないというふうに思うわけでございます。例えば、食料品を選定した理由、こういったものも、低所得者の皆さんへの生活負担を軽減するということを国として大事にするということが趣旨なのであろうというふうにも思いますし、新聞に対する対象品目への選定というのも、先ほど竹森先生がおっしゃったとおりなのであろうというふうに思うわけでございますが、今回の対象品目の選定について、先生からもう一度、評価をどのようにされておられるのか、お伺いできますでしょうか。

竹森公述人 私はちょっと経済理論の立場で申しましたけれども、やはりコモンセンスというのは結構ちゃんとしているもので、経済理論の立場からは、文化費というのは上げると遊んでいることに入れかわってしまうという感覚が、何となくみんな人間の頭の底にあるんだと思うんですね。ですから文化費を選んだ。それからもう一つは、低所得者のポケットの問題ですね。

 ほかの国で軽減税率をやっている国を見てもらえばいいですけれども、大体ここへ落ちつきますね。つまり、文化費関係と食品のようなものだと思います。ですから、それはいいと思います。

 ただ、今、図書について随分悩んでいるようですけれども、私は、結局、何がいい、何が悪いということに余りこだわるのではなくて、この場合、このままでいくと図書文化がなくなって、そのかわりインターネット、スマホによる広告媒体としての情報だけしか伝わらなくなるけれども、それでいいのかという立場からの議論を進めていただきたいと思っています。

濱村委員 ありがとうございます。

 今、非常に大事な御指摘をいただいたかと思います。文化としての図書、本というものがなくなっていくのか、それがスマホであったりネットに代替されていくのか。これは、今後のことを考えると非常に大きな論点であるかと思いますので、引き続き検討していかなければいけないんだろうというふうに感じた次第でございます。

 次に、工藤公述人にお伺いしたいというふうに思うわけです。

 先ほど、経済システムというのはエコシステムだということでおっしゃっておられました。私は、労働力の不足について、維持していくことは大事であろうよというふうには思うわけですが、一方で、機械化であったりとかIT化であったりとか、そうしたことを同時に進めていく必要があるのではないかというふうに思っております。

 そうしたことによるイノベーションのチャンスなんだというようなこと、武田公述人の方からもさまざまありましたけれども、ぜひこれも、工藤公述人の方からも、今後、どのようにしていって日本のシナリオを描いていけばよいのか。設備投資をして成長していくということがなかなか今なっていない、これだけ円安が進んでいるにもかかわらず、なかなか輸出もふえていないという状況がございます。これをどのように脱却していくのか、先生の御所見をお伺いできればと思います。

工藤公述人 私見でございますけれども、今の御質問に答えさせていただきます。

 確かに、設備投資がふえて、雇用がふえて、所得がふえて、消費がふえる、これは理想的な道筋でございます。ですが、問題なのは、どうして設備投資がふえないのかということですね。これは誰もが思っていることなんです。設備投資がふえないということは、設備投資しても収益が上がらないだろう、見通しがない。なぜ見通しが悪いんだろうというふうになりますと、やはり国内の消費力が弱い、最終的にはそこに行き着くわけなんですね。

 今先生がおっしゃったとおり、労働力の問題は深刻な問題だと思います。機械化が進んだりIT化が進みますと、どうしてもそういったところはやはり雇用が排除されてしまうということがあると思います。

 ですが、長い目で見ますと、そういう機械化が進んだりIT化が進むということは、少ない労働時間で生産性を維持する、そういう積極面もあるわけなんです。そうすると、労働者は自由な時間を確保できるということですので、労働時間を短縮してもいいだろう。これが一つ。

 それからもう一つは、ヨーロッパでやっているようなワークシェアリング、これも一つの手法ではないかというふうに思います。特に、共働きがふえておりますので、御夫婦でチェンジして働くとか、やはりそういう工夫が必要になってくるんじゃないか、今そういう段階に日本の経済システムは来ているんじゃないか、そういうふうに思っております。

 以上でございます。

濱村委員 ありがとうございます。

 まさに今、今回の予算においても、労働生産性を上げて賃金を上げていこうというようなことをしっかりやろうという話でございますし、また、働き方の改革によって、ワークシェアなども進めながら、労働力をしっかりと満遍なく補っていこうというような取り組みがなされている予算であるというふうに思うわけでございます。

 本来であるならば、郷原公述人にも、再三再四、与党である公明党があっせん利得処罰法をという御言及をいただきましたので、本来は質問したいところでございましたが、時間の都合上できょうは断念させていただきます。

 大変にありがとうございました。

菅原委員長代理 次に、大西健介君。

大西(健)委員 民主党の大西健介でございます。

 四人の公述人の先生方、本当にありがとうございました。

 武田公述人からは、消費者の不安を解消するためには、社会保障制度の改革、財政健全化に本気で取り組む必要があるという御意見がありました。

 また、工藤公述人からは、経済循環が壊れてしまった以上は従来の改革はきかないんだ、国民の生活基盤を安定させるしか日本経済再生の道はないんだというお話がありました。いずれも、我々も非常に同感のところであります。

 また、竹森公述人からは、消費税がこのまま上がってしまったら書籍や文化が壊滅的な打撃を受けるんじゃないかというお話がありました。非常に興味深いなと。ただ、では、なぜ新聞だけが軽減税率なのかなというのを改めて思わせていただきました。

 ただ、ちょっと時間が限られておりますので、私からは、ぜひきょうは、元東京地検特捜部の検事として実務に当たってこられて、そして、政治と金の問題やコンプライアンスの問題について幅広く言論活動をされている郷原先生にお聞きをしていきたいというふうに思っております。

 郷原先生の先ほどのお話の中で、あっせん利得処罰法というのは、政治活動全般の萎縮を招かないように二重の意味でストライクゾーンを非常に狭くとっているんだ、にもかかわらず、本件はそのど真ん中に当たる事案なんだということがお話にありました。

 一方で、先ほど山下委員が質問されていましたけれども、検事もいろいろな方がいるんだなというふうに思いますけれども、郷原先生と同じく元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は、東京地検特捜部が捜査すべきといった意見がありますが、私はあり得ないと見ています、その一つの理由として、経済再生担当相としての甘利氏が国交省の所管の都市再生機構、URに口ききするにしても、権限に基づく影響力があるかといえば微妙ですということを述べられているんです。

 同じ東京地検特捜部の検事出身の弁護士でありますけれども百八十度違うんじゃないかなというふうに思うんですけれども、こういった意見があることについて、郷原先生から御見解をお願いしたいと思います。

郷原公述人 率直に申しまして、高井先輩の見解は完全に誤っております。恐らく条文を読み違えられているんじゃないかと思います。

 配付資料三をごらんいただきたいんですが、公職者あっせん利得では、衆議院議員、参議院議員または地方公共団体の議員もしくは長が主体になっております。そして、その権限というのは、これらの人たちの権限です。国務大臣の権限じゃないんです。

 ですから、URが国交省の所管だから大臣の担当が違う、権限が違うということは全く関係ありません。それ以上に重要なことは、先ほど申し上げたように、与党における有力な政治家で、与党としての意見の取りまとめに大きな影響力を持っている、しかも過去に行革担当大臣も行っておられる、こういう方こそがまさに権限に基づく影響力を行使し得る立場だと思います。

 もし高井先輩のような考え方をするとすれば、贈収賄と全く変わらないということであって、公明党で中心となって立法された意味が全くないということになってしまいます。

 以上です。

大西(健)委員 私も議員立法が審議されたときの会議録等も読ませていただきましたけれども、例えば、与党内における役職だとか、あるいは当選回数だとか、そういうことも影響力ということを考えるときに当然考慮されるということになれば、甘利前大臣の影響力というのは相当大きなものだというふうに私も思います。

 郷原先生は、先ほどのお話にもありましたけれども、本件について、絵に描いたようなあっせん利得と指摘をされてこられました。

 先ほどもちょっと話がありましたが、あっせん利得処罰法、公明党が中心になってせっかくつくったんですけれども、国会議員本人や国会議員の秘書についてはこれまで適用例がないということであります。ただ、過去の首長とか地方自治体議員に関してあっせん利得処罰法が成立をした事例というのは当然のことながらあるわけですけれども、先ほど少し美濃加茂の事件の話も出ておりましたけれども、他の事案との均衡で何か御教示いただける部分があれば、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 また、これに関連してですけれども、有識者の中には、甘利前大臣本人に関してあっせん利得が成立するかどうかについて、五十万円二回で百万円ということは、ちょっと額が小さいんじゃないかということを言っている人がいるんですけれども、他の事件との均衡ということも踏まえながら、額が小さいということがこの罪が成立するかしないかに影響するのかどうなのか、この部分についてもお話をいただければと思います。

郷原公述人 お答えする前提として、先ほど山下委員から聞かれたことについてお答えする時間が十分になかったものですから、ちょっとその点について先にお答えしたいと思うんですが。

 私は確かに、先ほどの御指摘で、「検察の正義」という本に書いたことを思い出しました。小沢氏の秘書が逮捕された際に、あっせん利得というのがいろいろ取り沙汰されていましたが、恐らくそんなものが使われることはないであろうということを言いました。

 それはなぜかというと、少なくとも野党議員であれば、こういう議員の権限に基づく影響力というのが一般的には非常に考えにくい。野党議員じゃなくても、確かにこれまで適用例もありませんし、普通は考えにくいなということを私自身も思っていました。「検察の正義」に書いたとおりです。

 その私にとって衝撃だったのは、今どき、こんな絵に描いたような事案が存在するのかということに私は本当に驚いたわけです。それを率直に申し上げているまでです。

 ですから、これも先ほど山下委員が言われていたような、何でもかんでも国会の場でそういう刑事事件に当たるようなことを追及することがいいとは私は決して思っていません。むしろ、これまで、そういうことをすべきじゃないということを「検察の正義」にもしっかり書いていますから、もう一回よく読んでください。

 そうではないんです。まずは、検察が本来はこれは捜査すべき案件です。しかし、検察の捜査の対象以外に、やはり国会審議の前提として、例えば、URのあり方としてどうなんだと。事前に予算資料をいただきましたけれども、財政投融資のところに一ページだけURのことが書いてあります。それについてきちんと議論をしていくためには、URをめぐってこんな薄汚いことが行われている、これが政治家の対応だということではまともな議論ができないじゃないか、だから、検察が動かないのであれば、これはやむなく国会で取り上げるしかないのではないかということを、私も残念ながらそういうふうに申し上げているということです。

菅原委員長代理 大西委員、今の質問、いいんですか。山下さんの質問に関しての答弁があったけれども、大丈夫ですか。

大西(健)委員 他の事案との均衡という話、もし何かあれば再度お願いしたいと思いますが、加えて、今、もし検察が動かなければというお話がありましたけれども、今のところ、まさに検察は動いていないわけです。

 早く捜査しなければ、証拠が隠蔽されたりするようなおそれもあるというふうに思いますし、今回の事案でいえば、テープだとかメモだとかがたくさん残っているわけです。ですから、早くこれをしっかりと確保して、私は捜査に早期に着手しなきゃいけないと思うんですが、今のところ着手の動きはありません。その点について、何で検察が動こうとしないのか、その理由を郷原先生にお聞きしたいと思います。

郷原公述人 検察が動いているかどうか、それはわかりません、確かに。わかりませんけれども、これまでの実務経験に照らしていえば、この種の事案というのは、基本的に、身柄をとるということをやらないと、強制捜査でなければ解明できない案件だということを私は一般的に考えます。ですから、少なくとも、今までのところ、検察の捜査の動きが本格的に行われているようには私は思いません。私の個人の見方です。

 それから、もう一点。これまでの事案との比較で金額が少ないんじゃないかという話がありましたが、最近、検察は、こういう贈収賄とかその種の案件に対して、非常に金額を下げて、ハードルを下げているように思います。

 その典型例が、現職市長を三十万円の収賄で起訴した美濃加茂市長事件です。これは授受が認められず無罪の判決をいただいていますけれども、こんなことも昔は考えられません、現職市長を三十万で逮捕するなどということは。

 ということなので、現職大臣が五十万というのが、これは多いのか少ないのか、簡単には言えないことではないかと思います。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

大西(健)委員 ちょっと時間が限られていますのでまとめてお聞きをしたいんですけれども、まだ動いていないんじゃないかと。

 その理由として、いろいろなことが考えられると思いますけれども、やはり検察も政権与党に配慮をするところがあるんじゃないかということを私は思います。それから、もしそうじゃないなら、指揮権を持っている法務大臣が、遠慮せずにどんどんやってくれ、別に遠慮する必要ないということを言われればいいんじゃないかというふうに私は思います。

 また、あわせて、ちょっと関連でまとめてお聞きしますけれども、四月には、北海道五区、そして京都三区で補欠選挙があります。それから、七月には参議院選挙がある。こういう選挙が捜査をちゅうちょすることに影響するんじゃないかという人もいますけれども、この辺まとめて、検察が捜査をちゅうちょする理由、それに対して、政権への配慮があるのか、あるいは、こういうときに、指揮権を持つ法務大臣はどういうことをやるべきなのか、また、選挙が捜査に影響するところはあるのか、この辺について御意見をいただきたいと思います。

郷原公述人 あくまで一般論としてなんですが、検察の側で、いろいろ、法務省あるいは政権、党の意向をそんたくして対応するということが過去になかったかというと、必ずしもそうではないと思います。ですから、今、大西委員がおっしゃったような、本件のような事案について、こういう事案について、むしろそんたくなどしないで、早急にきちんと検察が事実解明をした方がいいんじゃないか、それによって疑いを晴らすんだったら早く疑いを晴らした方がいいんじゃないかという判断で、法務大臣が、検察庁法十四条に基づいて、厳正かつ適正な捜査を速やかに行うようにという指示を行うことは、私は検察庁法の趣旨には反しないと思います。

 そして、それは、過去に、指揮権発動で、政権与党を守るような指揮権で国民から大変な批判を受けた事例がありますけれども、それとは全く違う方向ですから、かえって国民の支持が得られる。それによって国会で行われるべき審議が行われるということであれば、かえって望ましいんじゃないかと私は思います。

 選挙の関係というのは、これはいろいろな考え方があろうかと思います。国政選挙等、既に秘書をやめている方、そして、今、国会では余り活動されていない方の刑事事件を捜査することがどういう影響を及ぼすと考えるか、これはいろいろな考え方があるんだと思いますし、私は、捜査というのは必ずしもできないとは考えておりません。

大西(健)委員 本当に時間がなくなってまいりましたので、最後に一つ聞きたいんです。

 先ほども少し触れられましたけれども、甘利氏本人による唯一の説明であった一月二十八日の記者会見で、この調査結果は元東京地検特捜部検事である弁護士によるものだということを繰り返されていましたけれども、その弁護士というのは、今まで一度も公の場にも出てきていなければ、名前さえ明らかにされていない。本当に実在するのかという声もあるんです。

 こういうことがこの記者会見の正当性の根拠になっているんですけれども、これは私はおかしいと思うんです。この点について御意見をいただければと思います。

郷原公述人 ブログでも詳しく書いておりますが、第三者調査というものの性格からして、私、企業不祥事などの第三者委員会も多くやってきましたが、やはりその第三者調査を誰が、どういう形で責任を持って行うのかということが明らかにされなければ、そもそも意味がないと思います。

 そういう意味で、ブログにも書いておりますが、甘利氏本人が会ってもいないと言われる元特捜検事が調査をしているという事実があるとは、私には全く考えられません。ですから、存在しないのではないかという率直な疑問をここに書いたものです。

大西(健)委員 先ほど来、与党からは司直の手に委ねるべきという声があります。私も別にそれに反論するつもりはありませんけれども、少なくとも、今、郷原先生のお話を受けるにつれて、これほど明確な事例について捜査を行わないということはないだろう、もし行わないならば、これは国会が真相解明にその役割を果たすべきだというふうに私は思います。

 もう一つは、国会議員みずからがつくったこの議員立法、公明党が中心になってつくられたわけですけれども、これで全く何のおとがめもないということになったら、これは何でもありの世界になってしまう、あるいは、公明党がせっかくつくったこの法律がざる法ということになってしまうと思いますので、ぜひ私は捜査をしっかりやっていただきたいと思うし、やらないならば、きょうの郷原先生のお話を、アドバイスをしっかり受けながら、我々も真相解明に引き続き努力してまいりたいと思います。

 終わります。

竹下委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 四人の公述人の皆さんに貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。

 最初に、武田公述人、竹森公述人、工藤公述人に伺います。

 この間、予算委員会でも議論されておりますけれども、大企業は過去最高の収益を上げるとともに、なかなか、労働者の賃金や非正規雇用の正規化の改善との大きな乖離があるという問題の議論が行われております。

 そういうものとも関連して、大企業と取引先中小企業の関係の問題もございます。この点につきましては、過去最高の大企業の収益がありながら、取引先の中小企業が必ずしも経営状況が改善しているわけではない。政府としても、この点については要請をするということになっておるわけです。

 民間で働く方の八割がお勤めの中小企業でもあります。この経営状況の改善というのが大変求められているときですが、そういうときに、消費税の増税というのが、こういう中小企業の経営に対して大きなおもしになりかねないのではないのか、こういう懸念を持つところです。この点について、お三方からお答えをいただきたいと思います。

武田公述人 御質問いただきまして、ありがとうございます。お答え申し上げます。

 まず、大企業の収益が改善し、それが中小企業の収益に十分回っていないのではないかという御質問がございましたと思いますが、収益は改善しているというふうには思います。

 ただ、より一層、大企業から中小企業へ、あるいは所得から支出へという好循環を進めるためには、より一層、大企業が中小企業に対して、収益改善分は価格転嫁というのを認めていくことも、中小企業への収益波及効果としては重要なチャネルではないかというふうに感じておるところでございます。

 消費税に関しましては、安倍総理がお答えされているとおり、リーマン・ショック級のような世界的な出来事が起こらない限り、予定どおり確実に実施するのが適切であるというふうに考えております。

 以上でございます。

竹森公述人 どうもありがとうございます。

 先ほど、財政乗数という考え方を申しまして、増税なりあるいは公共事業の削減なりをするとGDPが減るということは常識になっているということを申しました。それが一ぐらいだということは先ほど申したと思いますから、それをどこが受けるにしろ、中小企業ももちろん影響を受けます。大企業の場合は輸出比率が高いから、恐らく中小企業の方が影響が大きいことは確かだと思います。

 ですからこれは、それ自体をとればいいことは何もないんですが、ただ、財政再建とどう折り合いをつけるかという問題で、私としては、できるだけ乗数効果の少ない、GDPが減らないようなものを選んでいけということなんですが、ともかく、何らかの両立を図るしか方法がないことは確かだと思います。

工藤公述人 お答えいたします。

 今委員がおっしゃられましたように、中小企業への打撃というのは、幾つかのラインで強烈な打撃を与えるというふうに思います。一つは、大企業からの圧力が一つ加わってくると思います。それからもう一つは、消費税そのものが中小企業に与える影響、これも非常に大きいというふうに思っています。特に中小企業は、内需に依存いたしますから、大企業のように外へ出る逃げ道がないということで、直接影響を受けるというふうになろうかと思います。

 今後、一七年の消費税の増税ということになりますと、この打撃は、私の個人的な考えでは、ちょっとはかり知れない、考えにくい、考えるのも嫌だというふうなことになると思います。

 そうなりますと、この打撃が、日本の経済構造では、内需では中小企業がメーンになっておりますから、国内の景気が非常に悪くなるだろうと。そうしますと、これは税収にも打撃を与えて、財政再建という観点からも逆の道筋になっていくのではないか、そういうことも恐れております。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 続けて工藤公述人にお伺いをいたします。

 お話の中で、この間の日本経済における経済循環構造が壊されてきた、そういう中で、雇用、所得、消費の拡大につながらない、経済再生につながらないというお話でございました。そのお話の中に産業構造の変化ということがございまして、生産拠点の海外移転の影響の問題などのお話がありました。

 当然、需要のあるところに企業が出ていく、また企業の動向の問題も当然あるわけですけれども、政府の産業政策もそういった産業構造の変容に大きな影響を与えたのではないのか。政府の経済政策という観点でどのような影響があったのか、この点についてお答えいただけないでしょうか。

工藤公述人 非常に難しい質問でございますけれども、産業構造の変化というのは、一つは、生産拠点が海外に出ていってしまって、そこでもうサプライチェーンをつくってしまう。これを一旦壊して国内でもう一回つくるということは非常に難しいだろうというふうに思います。これが一つの側面。

 それからもう一つは、製造業がそれに伴って衰退してしまっている。これが雇用削減や雇用不安の原因になってくる。それと同時に、今度はサービス業の比重が非常にふえているということなんですね。サービス業というのは、これは雇用不安を非常に引き起こしやすい側面があります。それから、所得の低下を引き起こしやすい、そういう側面もあります。

 それから、産業構造の変化の中で見逃せないのは、企業間関係の変化です。系列の再編成ですね。これは淘汰を伴っております。それから、いわゆる企業集団的な関係、これも大きく変わっております。こういう中で工場の移転とか企業破綻を引き起こしているわけなんです。

 今御質問のように、政府の産業政策について私見を言わせていただきますけれども、どちらかというと大企業の海外投資を積極的に推し進めていく、このことの持つ意味、これを私たちはもう一回捉えなければならないのではないかと思います。

 国内の需要の停滞が、今、全体の日本の経済の停滞の根源になっておりますから、海外投資というよりも国内でどうするか、どうやって産業をここで引き戻したり育成するか、そういったところに重点的に予算をつくっていく、そういう政策が望ましいのではないかというふうに考えております。

塩川委員 ありがとうございます。

 もう一点、工藤公述人にお伺いをいたします。

 こういった経済循環構造の関係で、雇用、所得、消費の拡大につながらない、こういう問題のところに、やはり雇用をめぐる環境の悪化の問題があるのではないのか。そういう点でも、特に一九九〇年代の半ば以降におきます労働法制の一連の規制緩和という問題は看過できないのではないのか、こういう点が経済の構造にどういう影響を与えたと考えるか、その点についてお示しいただけないでしょうか。

工藤公述人 お答えいたします。

 先ほど少し労働市場の変化について言及いたしましたけれども、これはもう皆さん御承知のとおりでございます、失業率の非常に高い水準での定着ということ、それから失業期間が長期化している、これは、やはり日本の経済の今の現状を象徴しているように思います。

 確かに、情報機器の普及とか、そういうこともありますけれども、それ以上に、慢性的に、九〇年代から今日に至るまで企業の方はリストラの手を休めていない、こういうことだろうというふうに思っています。

 そういうことで、労働市場をどういうふうに改善していくかということですけれども、まず一番大きな問題は非正規雇用の問題、これが続いている限りは日本の経済に未来はないというふうに思っています。場合によっては、こういう非正規雇用を誘導するような労働政策というのは、今の日本にとってはとても耐え切れないのではないか、そういうふうに考えております。

 終身雇用がいいかどうかわかりませんけれども、そういう長期雇用と安定的な雇用を何らかの形でつくっていく、これがまず最優先課題になるだろうというふうに思っております。

 以上でございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 それでは、郷原公述人にお伺いいたします。

 甘利氏のあの政治と金の問題で、もともとそういう幾つもの事件が過去にあって、二〇〇〇年代以降、政治家が企業に口ききをして見返りに金を受け取るというのはだめなんだという国民世論が大きくある中で、先ほどお話のあったようなあっせん利得処罰法なども出てくる。その実効性の問題なども当然あるわけですけれども、そういう流れの中での今回の甘利氏の事件だったということであります。

 それは、やはり企業献金というのが賄賂性を伴うものなんだ、こういうことが大もとにあって、それが結果として主権者である国民の基本的権利を侵害することになっているんじゃないのか。

 そういう企業献金が持つ賄賂性の問題について、郷原公述人のお考えをぜひお聞かせいただけないでしょうか。

郷原公述人 企業献金そのものが一般的に賄賂性を持っているかどうかということについて、これはいろいろな考え方があろうかと思います。

 非常に厳しい考え方をすれば、そもそも企業が自分たちの利益にならないような金を贈るわけがないんだから、あまねく賄賂性があるという考え方もあろうかと思いますけれども、やはり、企業にもそういう政治的な活動としての政治献金を行う権利を認めるべきだという考え方もあろうかと思います。

 ただ、その中では、口ききと言われるような行為によって政治的公務員の廉潔性が害され、国民から大変な不信感を招くというようなことが多発してきたことも間違いありませんし、悪質な事案に対してきちんとした厳正な対処をすることによって、本来あるべき国民の声を行政にあるいは公的な団体の運営に活用する、生かすというようなことをあわせてやっていくために、やはり法律をしっかり適用するときには適用していくということが必要なんじゃないかと思います。

塩川委員 企業献金、政治献金に関連して、パーティー券の問題についてお尋ねをいたします。

 この間の一連の報道などを拝見し、甘利氏がその業者から大和事務所で受け取った企業献金五十万円について、パーティー券にしてくれと依頼したという話がございました。このことについて、その後の記者会見で甘利氏は否定しておられません。

 そういうことで見ますと、パーティー券収入というのが形を変えた企業献金なのではないのか、こういうことも、当然のことながら如実に示すものではないかなと思っています。一千万を超える収入を伴うような特定パーティーについて、自粛と言いながら大臣がそろって実施をしているということも、この間、国会で取り上げてまいりました。

 こういった、形を変えた企業献金であるパーティー券の収入の問題について、現状のままでいいのか。我々は、パーティー券収入を含む企業・団体献金の全面禁止を掲げておりますけれども、この点についての郷原公述人のお考えをお聞かせください。

郷原公述人 パーティー券の問題については、私、検事として現場で捜査をしていたときから問題意識を持っておりました。表でも相当多額なパーティー券収入があるのに加えて、裏でパーティー券のお金が、収入が裏に回って不透明な使い方をされているような案件を捜査の対象にしたこともあります。

 そういう意味で、パーティー券の収入というのをどのように政治資金規正法の規制の対象にしていくのかというのは、今後、政治浄化を目指していく上で非常に重要な問題ではないかと考えております。

塩川委員 時間が参りました。ありがとうございました。

竹下委員長 次に、足立康史君。

足立委員 おおさか維新の会の足立康史でございます。

 きょうはありがとうございます。

 順番に、特に経済の話を中心にお話を伺うつもりでおりましたが、きょうはちょっと予想外に、郷原公述人がいらっしゃることもあって、山下委員の方から冒頭スキャンダル周りの話があって、それに対して大西委員の方からも議論があった。私がこれをほっておくわけにいきませんので、十五分しかありませんが、できればそれにも少し時間を割きたいと思います。

 ただ、本来、この予算委員会は、山下委員がおっしゃったように、そういう問題を扱う場所ではありません。したがって、こんな貴重な機会でもありますので、一点ずつ、武田公述人初め皆様にもお聞きをしたいと思います。

 まず、武田公述人でございます。

 おっしゃっていただいた一連のお話はよく理解のできるところでありますが、社会保障というか高齢化、人口減少、この問題への対応がやはり最重要のテーマの一つだということでお話をいただきました。それへのソリューションとしてどういう議論があるかなということで、社会保障を安定化させなあかんとか、子育て支援とか、そういう議論もありますが、なかなか国会が踏み込んで議論できていない問題に、移民の問題というのがあります。

 移民と難民はよく分けて議論しておく必要があると思いますが、武田公述人、そういう外国人の、技能労働者の問題もあるし、これもまた一大議論ですから、本来、五分、十分で議論できる問題ではありませんが、もし、きょう公述人がおっしゃったテーマについて、移民というような切り口あるいは外国人という切り口で何か御関心事項があれば御紹介をいただきたいと思います。

武田公述人 御質問をいただきまして、どうもありがとうございます。お答え申し上げます。

 私自身はその問題について大きなポジションというものを持ち得ているわけではございませんけれども、既に高度人材それから高度な技術をお持ちの方々が日本で日本経済にも貢献されていたり、あるいは、海外からいらっしゃった留学生の皆様が日本で多くを学ばれているというふうに思います。

 一般論といたしましては、そういった高度人材交流あるいは留学生での交流ということは重要ではないかというふうに感じております。

 以上でございます。

足立委員 ありがとうございます。

 もう本当に、ほかにもたくさん伺いたいんですが、時間の関係がありますので、竹森公述人に。

 きょうはありがとうございました。おっしゃっていただいたラムゼー・ルール、どこかで聞いたことがあるなというぐらいで、勉強不足で大変恥ずかしい限りでありますが、インターネット、スマホという話と、それから文化、読書というお話を最後にいただきました。

 ただ、一方で、インターネットというのは、よく流れを考えてみると、その前にはテレビ放送があって、これも、竹森公述人がおっしゃった、広告をビジネスモデルの中に組み込んだ無料放送ですね、日本は。その前にはラジオがあります。ラジオがあって、地上波のテレビ放送があって、その先にインターネットという形になってきている中、一方で、消費税の軽減税率についても、新聞を軽減するんだったら、インターネットの接続料も、あるいは携帯電話の、スマートフォンの通信料も軽減すべきだ、こういう議論がある。

 これは、文化の問題、メディアの問題、知る権利の問題、もうさまざまに議論がありますが、その辺、あと一言補足をいただければと思います。

竹森公述人 これも話し出すと長くなるかもしれませんが、まず、インターネットや何かを安く利用できるようにするというのは、これはもう国際人としてのいわば常識になっているわけですね。

 それから、今おっしゃったように、テレビから始まるというのが、我々のコンセンサスとかコモンセンスというのは同じ媒体を見ているというところから生まれてきますから、それはそれで必要なんです。それと同時に、何か深いことを絞って勉強していこうとかいうことになると、やはり本を読まないとわからない。本を読んで、文献リストを見てこれを、というようなことがある。これはやはり両方必要なんです。

 幸い、インターネットの場合、最初にどかっと投資をすれば、あとは一回ごとの追加的コストは要らなくなるんですが、本の場合にはそれが、本を買うたびに、一回ごとのコストがかかる。要するに買わなきゃだめなんですね。ですから、そこを余り高くしちゃうと、一回インターネットをどかっと入れれば本はもう買わないという人がどっとふえてきて、それでインターネットだけになると、余りにも常識だけで動く。

 今、アメリカの大統領選挙で何でトランプがあんなに出てきているか。私は、インターネット文化ということを考えないと、何でトランプが共和党の一位になりそうなのかということを理解できないと思っています。

足立委員 ありがとうございます。

 興味深いお話で、先生、また機会がありましたら、うちの党の部会とかにもぜひよろしくお願いします。

 さて、もう十分、終わりましたが、郷原公述人、きょうはありがとうございます。

 ちょっと根本的なところからなんですが、個別の話じゃなくて。山下委員がおっしゃったように、私も実は同じような感覚をふだんから持っていまして、予算委員会でこの話をやるかということはあります。予算委員会以外にも国会にはさまざまなそういう取り扱う場があって、そういう場でやるべきだよなということが今、政党間でいろいろ議論があります。

 そういう意味では、この問題は政治家の問題ですから、基本的には国会の中で政党対政党で議論をするべきものだと思っていますが、その場に、郷原先生のようないわゆる専門家が、特に法曹界、元検事であられる先生が、わざわざ、恐らく民主党の推薦だと思いますが、それは山井さんなのか今井雅人さんなのかわかりませんが、そういう御要請に基づいて、特定の政治的ポジションを代弁するかのようにとられてもおかしくない、ここにお出ましになられたそのこと自体について、どういう整理で来られているのか。

 公述人の方になぜ来たのかと言うのは大変失礼だと思いますが、これは大事な問題ですので、ぜひ専門的見地から御答弁ください。

郷原公述人 私の話を最初から最後まで聞いていただければ多分御理解いただけたと思うんですが、私は組織のコンプライアンスを専門にしております。組織がどうやったら健全に社会の要請に応えていくのかということを常日ごろから考え、そのための活動をしております。

 今回の問題というのは、私は、広い意味で、公的な機関がどのようにしてきちんと役割を果たしていくのかということに関して、まず、国民の信頼がなければいけない、その信頼の前提が損なわれようとしているというところに重大な問題があると考えてきました。

 それだけに、ずっと言っておりますように、まさに、およそちょっと想定できなかったような、絵に描いたような事案が発生していることに対して、私はずっとブログ等でも意見を言ってまいりましたが、それを国会審議の参考にされたいということであれば、私のコンプライアンス論の立場から、しっかり意見を申し述べるべきだろうということで、本日参りました。

足立委員 こだわるようでありますが、今まさに、先ほど私が申し上げたように、この甘利前大臣の問題については、国会でも再三取り上げられ、また、捜査等の当局が動いているかどうか、これはわかりませんが、動くべきものがあれば法律に基づいて動くでしょう。それは当然ですね、当たり前のことです。

 そういう中で、私の理解では、先生のようないわゆる法曹界の専門家の方は、特に、そういう政治的問題について、特定の政治集団から法的なアドバイスを求められれば、法的なアドバイスをその政治集団にすればいいのであって、こういう公の場でその専門的知見を開陳することは、逆に、郷原公述人の、外形的公正性というか、そういうものを著しく毀損している。普通の人は、ああ、郷原さんというのは民主党の応援団なんだな、こう思って、今後、郷原さんには仕事を頼まないということになる、私はそう思いますよ。どうですか。

郷原公述人 繰り返しお答えしなければいけないんですが、先ほどから申し上げているように、私は基本的に、この問題を、組織のコンプライアンスの観点からも重大な問題だという考え方を持っておりますので、どちらから呼んでいただいても同じ答えをしています。どの党であれ、同じ答えをしています。

 それは、世の中に対して言うべきだと考えていることを、どこかから依頼を受けて、こういう場で言ってくれと言われれば、私は申し述べます。それが特定の政党とか会派にプラスになる、プラスにならないというのは、それは最終的に、それが正しいか正しくないかというのは世の中が評価すべき問題でありますし、社会が評価すべき問題であり、最終的には国民が評価すべき問題だと思います。

足立委員 郷原公述人は、実は我々維新とも大変深い関係であられます。

 二〇一五年の十月二十一日付で、「「弁護士たる政治家」としての橋下徹氏への疑問」というブログを公開されています。

 そのブログに何が書いてあるかというと、維新の党が分裂をするときに、その二つの集団の中で、要すれば、我々、偽新と呼んでいますが、維新の名をいまだに、やっと維新の名前を返してくれるということなのでほっとしていますが、その偽新の党と、それから、もともと、発祥の原点である、おおさか維新の会が分党騒ぎになったとき、郷原さんは、今井幹事長側に立って意見書を書かれました。それも、意見書を出すだけじゃない、それをネットに公表されました。それは何でですか。

郷原公述人 その問題はブログでも正確に説明しているはずです。

 私はそのとき、維新の党の方から法律の専門家としての回答を求められ、あくまで法律の専門家としての立場で意見書を書きました。それとは別に、法律家として、弁護士として、橋下徹氏のやり方には、多々誤りもあり、日ごろから思っている点もあるので、あわせてブログで批判をしました。

 というふうに整理をして考えていただきたいと思います。

足立委員 ありがとうございます。

 五年前の、四年前か、初めてのダブル選挙、去年の十一月のダブル選挙も勝利をさせていただきましたが、我々が最初に大勝利を与えていただいたのは、五年前の十一月のダブル選挙でありました。

 そのとき、郷原さんは、民主党から大阪府知事選挙の出馬は要請されましたか。

郷原公述人 そういうことをおっしゃるのであれば、もう少し背景も含めて、正確に事実を確認してから聞いていただきたいと思います。

 私は、最初に、確かに、まだ話がはっきり固まっていない段階で、民主党、自民党、公明党の三党が推薦するような形での知事選への対応というような話があり、検討したことは間違いありません。しかし、諸般の事情があり、最終的にはそういう話はお受けいたしませんでした。それだけの話です。

足立委員 当時、二〇一一年十月二十二日の報道で、郷原さんは、そういう出馬の話があるのかということに対して、マスコミに対して、知事の仕事に以前から関心があったことは確かだということで、含みを持たせておられます。恐らく、民主党の平野先生からアプローチがあったんだと仄聞をしておりますが、そして、何日か後に、大阪府庁で会見をされて、やはりやめたと。結局、郷原さんは専門家じゃないんです、政治家なんです。━━━なんですね。

 私は、こういう形で、この予算委員会の場で、そうした━━━━をされたことについて批判を申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

竹下委員長 次に……(発言する者あり)静かにしてください。(発言する者あり)

 ちょっと静かにしなさい。ちょっと待ってください。(発言する者あり)あれを静かにさせてくれ。静かにしてください。

 与党の理事の皆さん方にお願いします。今の件で、今の足立君の質疑について理事会で議論をしたいという申し入れがありましたので、これは与野党の理事でしっかり議論していただきたい、こう思います。

 次に、小熊慎司君。

小熊委員 改革結集の会の小熊慎司です。

 本日は、公述人の皆様におかれましては、本当にお忙しい中おいでいただきまして、ありがとうございます。

 まず初めに、竹森さんと工藤さん、それぞれにお伺いいたしますけれども、消費税の話がありました。軽減税率の話もあります。私も地元に帰るといろいろな意見をいただきますし、ちょっと縁戚に国税庁の人間もいるものですから、税金というのは、やはり、公平で透明性があって簡素でなきゃいけないというふうに思います。

 この軽減税率を入れている国のところもいろいろ調べると、いろいろなメリットもありながらデメリットもある。全ての制度、全ての税制が完璧なものはありませんから、これはメリットもありデメリットもあるのでありますけれども、先ほど、竹森さんの方からもメリットの点を御紹介いただきましたが、私的には、メリットもありながら軽減税率のデメリットもあって、二つ並べてみるとデメリットの方がちょっと多いのかなという感じがするわけであります。

 このメリット、デメリット、その上でもやはりメリットが多いからこれはいいのか悪いのかというのを、改めてお二人にお聞きしたいと思います。

竹森公述人 どうもありがとうございます。

 メリットですが、まず、それは簡素だという点ですね。ですから、一番大きいのは、何を対象にしないで何を対象にするかということを選ぶというときに、もめる、これも大事だ、これも大事だということになると、結局、決めようがなくなるということですね。

 ですから、軽減税率というのが今後定着するかどうかは、今回の決まり方で、これで何かあれもこれもということがどんどんどんどん来て決まらないようであれば、ああ、これはやはり日本じゃ無理かなということも出てくるかもしれません。

 ですが、今申したように、軽減税率の場合、何かユニホームにやるのがともかく早い、タックスベースが広い、これでいこうと。ただ、日本の今の状況を考えると、それでどんどんどんどん進めれば財政再建が進むわけでもないし、今申しましたように、過去はインターネットもスマホもなかったけれども、そういうものが台頭しているということは厳然としてあって、日本人がどんどん本を読まなくなったというのも、これも大変な問題としてあると思うんですね。

 ですから、それを考えに入れて、何を守るべきで何を守るべきじゃないかというのを、これをちゃんと議論して、集約するような形でぜひ運営してもらいたいというふうに思っています。

工藤公述人 お答えいたします。

 これもまた私見でございますけれども、私は、軽減税率については詳しくありませんので、ざっとしか申し上げられませんが、まず、新聞などで見ますと、非常に手続が煩雑だな、特に中小企業にとっては非常に面倒くさいだろうな、それから消費者にとってもこれはどうかなというふうに思います。

 そもそも、消費税について私は反対なものですから、その上で、あえて、もしやるのであるならば、やはり簡素化ということが重要だろうと思います。少なくとも生活必需品には一切かけない、ヨーロッパの例を少し参考にされていくのがいいかなというふうに思っております。

 以上でございます。

小熊委員 軽減税率といいながら、一〇パーか八パーかで、これがゼロだったらまた話は別だという話もあります。

 先ほど、足立さんのあれで二つのグループというのが、私は同じ党だったんですけれども、二つのグループじゃなくて三つ目のグループだったんですけれども、一緒に仲よくやっていたころは、消費税は地方税にという、これは権限の移譲の問題で、なおかつ、人口が減っていく中で、所得税とかいろいろな法人税とか、人口のパイで自治体の努力も決まってしまうということであれば、やはり交流人口をふやしていく努力をできるということで、消費税は地方税がいいだろうと。ただ、付加価値税のままでは地方税には持っていけないのも承知をしているところであります。

 これは、今、今回の制度、予算ということではなくて、将来的なものとして、付加価値税とは変えて、消費税を地方税にしていく、アメリカの消費税みたいなものだというふうにざっくり言えばありますけれども。ああいう形になれば、品目ごとに変えても、付加価値税ではありませんから、税率が違う、消費税が違うといってもやりやすいのではないかなというふうに思います。

 こうした提言をしている党が幾つかありますので、この消費税を地方税化していくという点について、ちょっと御見解を竹森先生にお聞きしたい。

竹森公述人 そのことに詳しくないのですが、今、依然として国から地方に対する交付金というのはあると考えています。ですから、それを減らすかわりに消費税の一部を移管するとかいうことはあり得ると思います。

 基本的には、地方と国のバランス関係をどうするか。今おっしゃったのは、各地方について収入と支出をマッチさせると。私はむしろ、東京生まれというふうに言ったら申しわけないけれども、東京は余りにも損をしているというふうに考えていて、そういう意味では、議席数の問題でも同じような問題があると考えております。

小熊委員 東京が損をしていると。損とか得というのは、余り地方と東京で争わない方が私はいいと思っています。

 次に、武田さんにお聞きいたします。

 安倍政権の経済政策についての評価がありました。確かに、地方と都市部との格差は、数字で見ると縮まってきているというのも事実です。

 ただ、これは都道府県ごとのデータであって、市町村ごとに見ると、例えば私は福島県で、福島県内でもばらつきがある。人口の減りぐあいも、例えば国立社会保障・人口問題研究所の推計だと、東北の秋田が二〇五〇年には四八%になるといいながらも、では、秋田全体を見ると、秋田市の減る率と周辺町村の減る率が違っています。

 私の地元でも、福島県は全国的に珍しい分散県、人口が分散していて県庁に集中はしていないんですけれども、それぞれの市の方に周辺町村から寄っている。所得を見ても格差があるということですから、都道府県ごとに見れば、それは格差が、データを見れば十年前よりは、今、東京が断トツですけれども、最下位の方からいうと、縮まっているのも事実。だけれども、市町村ごとに見れば、これはやはり広がっている。また、都道府県ごとに見れば、市町村のばらつき感も都道府県ごとにやはり違いますから、これを見ると、やはり格差が広がっているという実感と感覚を、国民の地方の皆さんが持っているというのは当たり前の話だと思うんですよね。

 そういうふうにフォーカスしていかないと、単純に都道府県ごとのデータだけを見て、格差は解消されていますねと私は言えないと思うんですけれども、どうですか。

武田公述人 御質問いただきまして、ありがとうございます。意見を述べさせていただきたいと思います。

 確かに、都道府県ごとに見ますと、アベノミクスのもとで、雇用を中心に格差が縮小している、地域にも好循環の効果が及んでいるということはデータで確認できております。

 ただ、市町村ごとにばらつきがあるということでございますが、私、市町村ごとを全てチェックできているわけではございませんが、やはり人口の減少が背景にあるのではないかというふうに思います。

 長い目で考えますと、やはり、人口が減少していくということは、市町村全てにおいて同じような状況が続くというのは、現実問題として難しい部分もあるのは事実ではないかというふうに思います。今すぐということではなくて、少し長いビジョンでもって、どういうふうに、町が活気ある状況であるためには、一定程度、人口という観点では、集積していくということをやっていけばいいのかというのを、これは短期的には難しいと思いますので、長いプランで検討はしていくべきではないかというふうに思っておるわけでございます。

 また、それが、集積をすることによって、経済という意味では生産性の上昇に寄与するという経済的な分析結果もございます。また、実際にお住まいになられる方々も、集積したエリアに、医療であるとか介護であるとか教育であるとかその他の公共施設などがあることによって、生活の質が上がる部分もあろうかと思いますので、簡単ではないことは承知しておりますが、長い目で取り組んでいくという必要はあろうかと思います。

 ありがとうございます。

小熊委員 長いスパンで取り組まなきゃいけない。

 人口問題というのは最大の課題だと私は思っていますし、ただ、実は昔から起きていた危機であって、長いスパンでやらなきゃいけない部分もあるんですが、日本のあちこちの中山間地域だと、例えば私の地元だと、この十年間で福島県内の市町村ごとの平均でいうと五パーから七パーの間で減っているんですけれども、山間部においては、極端な町では二五%以上減っている。四分の一減ったんですよ。では集積しましょうといっても、例えば学校一つとっても、周辺の町村も山間部ですから、幾つかの町村で、広域的に小学校一校にしても複数クラスにならないという現状もあって、長い取り組みでやっていきましょうといってもこれはなかなか、今どうするのという話もあります。

 あとは、集積をするときに、ユニバーサルなサービスを隅々までやっている国というのは、多分先進国の中でも日本だけで、ドイツだって逆に、過疎のところは済みませんという、アメリカだってそうですよ。でも、この隅々どこでも行政サービスを提供していくということはもう限界に近いなというのは感じています。ただ、政治家の我々も、それをなかなか、そういうところに行って、もう難しいから町中に住んでくださいよとは言いにくいというのも事実であって、ただ、誰もそういうことを言わないと、気づいたら限界集落がいっぱいあって、でも行政サービスは提供していたから財政負担も多くなってどうしようという、こういうところまでもう来てしまっているなというふうに思います。

 そういう意味では、山奥までユニバーサルサービスを提供し続けるということは、やはりやっていった方がいいんですか。どこかで英断を下した方がいいのか、ちょっと最後にお聞きいたします。

武田公述人 御質問いただき、ありがとうございます。お答え申し上げます。

 同じ山奥でも、その状況は本当に多様だと思いますので、一言でこうだというふうに申し上げられる話ではないかと存じます。

 ただ、人口減少が起きていることは事実ですし、今お話を伺って、相当スピードも進んでいるという状況もございますので、その取り組みは長期間かかるとしても、長期ビジョンというのは比較的早い段階で考えていくということで、その中で、ユニバーサルサービスをやめてしまうというよりは、その方々が受けられるように集積いただくという方法を、いろいろな工夫を通じて行っていくべきではないかと思います。

 また、それは、ICT技術が発展したからこそ、できることもふえてきているのではないかというふうに考えておりますし、インフラの観点でも、全てあまねく維持し続けるのはもはや無理でございますので、よりその技術を使って、どういったところに集中と選択をしていくのかという御判断を御検討いただく時期に来ているというふうには考えております。

 ありがとうございます。

小熊委員 これまでも、各地方、また過疎地域でも、その地域の人、また首長さんや議員さんたち、みんなで頑張ってきていても結果が出ていない、今、一億総活躍、地方創生とはいえですね。短期的にすぐ数字が出るわけではないんですけれども、やはり都市に流出していくという流れは変わらないということでありますが、これに対してはしっかりと、多極分散型の国家を目指していくということは与野党を超えてやっていかなきゃいけない、国家最大の危機だというふうに思っていますので、またいずれの機会にいろいろ御指導いただければと思います。

 時間がなくなりました。郷原さんにもお聞きしたかったんですが、私の前で大分体力を使ったでしょうから、私はこれで終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

竹下委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位に申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多忙中、御出席をいただき、本当に御貴重な意見を述べていただきました。まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 公聴会は、これにて散会いたします。

    午後三時四十八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.