衆議院

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第2号 平成13年3月2日(金曜日)

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平成十三年三月二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 亀井 善之君

      高鳥  修君    江崎洋一郎君

      小泉 俊明君    首藤 信彦君

      仙谷 由人君    今川 正美君

      辻元 清美君    森田 健作君

   兼務 大石 尚子君 兼務 松本 善明君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      斉藤斗志二君

   国務大臣

   (金融担当大臣)     柳澤 伯夫君

   内閣府副大臣       村井  仁君

   防衛庁副長官       石破  茂君

   外務副大臣        荒木 清寛君

   会計検査院長       金子  晃君

   会計検査院事務総局第一局

   長            石野 秀世君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   吉井 一弥君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    首藤 新悟君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    伊藤 康成君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    高木 祥吉君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学

   術政策局長)       大熊 健司君

   内閣委員会専門員     新倉 紀一君

   財務金融委員会専門員   田頭 基典君

   安全保障委員会専門員   鈴木 明夫君

   予算委員会専門員     大西  勉君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  仙谷 由人君     首藤 信彦君

  辻元 清美君     北川れん子君

同日

 辞任         補欠選任

  首藤 信彦君     江崎洋一郎君

  北川れん子君     今川 正美君

同日

 辞任         補欠選任

  江崎洋一郎君     小泉 俊明君

  今川 正美君     大島 令子君

同日

 辞任         補欠選任

  小泉 俊明君     仙谷 由人君

  大島 令子君     中川 智子君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 智子君     原  陽子君

同日

 辞任         補欠選任

  原  陽子君     辻元 清美君

同日

 第四分科員大石尚子君及び松本善明君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十三年度一般会計予算

 平成十三年度特別会計予算

 平成十三年度政府関係機関予算

 〔内閣及び内閣府所管(防衛庁、金融庁)〕




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     ――――◇―――――

亀井主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。

 平成十三年度一般会計予算、平成十三年度特別会計予算及び平成十三年度政府関係機関予算中内閣及び内閣府所管について審査を進めます。

 防衛庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。

首藤分科員 おはようございます。民主党の首藤信彦です。

 きょうは、だんだんと周辺に危機が、脅威が迫ってきていると言われる東アジア情勢において、日本の防衛というものを根本的なところから考えてみたいということで質問させていただきます。

 まず、斉藤防衛庁長官にお聞きします。

 防衛庁長官として、日本の防衛にかかわっている最も基本的な武装は何であるか、どのように認識されておられるか、御回答をお願いいたします。

斉藤国務大臣 御案内のように、国際情勢が不透明また不安定の状況の中で、私ども国防というのを考えなきゃなりません。その中で、海もあるし空もあるし陸もある、また各種の装備も多様化する中での対応ということでございますので、どれが一番ということはちょっと言い切れないということでございます。

首藤分科員 自衛隊には約二十四万人と言われる職員の方がおられるということを理解しておりますが、その中で一番大きいのは、言うまでもなく、十五万人に達しようという陸上自衛隊の方々です。

 その方が持っている最も基礎的な武装というものを当然ながら防衛長官として指摘されると考えておりましたけれども、それを指摘されなかったのはなぜか。そしてまた、陸上兵力が持っている最も基礎的な武装、最も中核的な武装は何であるとお考えであるか、防衛長官の御回答をお願いいたします。

斉藤国務大臣 先ほどの答弁の中で、主に装備品のことについて御答弁申し上げたわけでございますが、委員御指摘のように、防衛庁の中、自衛隊、隊員として二十六万余の方々が最前線で頑張っておられます。もちろん後方も含めてでございますが、そういう人的な要員というのが一番大事なものの一つだというふうに思っております。

 その中で、陸上に関して御指摘ございました。戦車並びに火砲、こういったものが重要なものの一つになってくるというふうに思っております。

首藤分科員 それは私は違うと思うんですね。兵の基本は歩兵にあって、そしてその方々が一人ずつ、身を守るため、あるいは防衛線を守るために持たれている基礎的な武器が重要だと思っているんですが、それを何であると御理解いただいていますか、斉藤防衛庁長官。

斉藤国務大臣 お答えいたします。

 小銃とか機関銃、そういったものも重要なものだと考えております。

首藤分科員 私は、そういうことを聞いているのではないんです。防衛とは何か、兵とは何か、兵が身を守るとはどういうことか、最前線において兵が戦うということはどういうことか、そのことを聞いているんです。最前線において兵が身を守り、兵が最前線を守るためにどのような武器を基本として使うかということを私は聞いているんです。斉藤長官、そういう状況においてどのような武器をもって最も基礎的な武器と考えられますか。

斉藤国務大臣 小銃その他必要な装備をもちまして、その時々、またそれぞれのケース・バイ・ケースによっても対応が変わってくるかと思いますが、そういうことだと思います。

首藤分科員 それでは、斉藤防衛庁長官にお聞きしたい。では、現在の兵士が持っている小銃はどういうタイプの小銃ですか。

 防衛庁長官に資料を見ないで答えていただきたい、これは防衛の最も基本的なところです。

斉藤国務大臣 委員、小銃の件で御指摘でございますが、例えば八九式小銃、これは二千八百丁整備することといたしているのが平成十三年度予算案でございまして、こういった装備が主力、主なる装備ということになってくると思います。

首藤分科員 長官、ありがとうございました。予算に触れていただきまして、本当にありがとうございます。

 それで、ここは予算委員会ですから、兵が持つ最も基礎的な武装である小銃についてお聞きしたいと思います。

 私が資料として用いるのは、防衛庁から提出されました平成十三年度防衛力整備と予算の概要というものであります。そこの三十五ページに、正面装備予算総括表というものがついております。そこにおいて、八九式小銃というものが当然、一番最初に出ています。このように、防衛においては小銃というものが一番重要でありまして、それだからこそ、ここの正面装備の最初に載っているということは、防衛関係者ならば基本的に理解されている点だと思います。

 そこで、お聞きしたい。二千八百丁となっておりますが、現実に十四万九千の陸上兵力に装備されている小銃はどのような小銃でしょうか、防衛庁長官。

斉藤国務大臣 お答えいたします。

 最初に、八九式小銃でございますが、平成十三年度は二千八百丁ということで御説明を申し上げました。現在約四万一千丁の数に上ってまいりますし、また六四式小銃では約十一万四千丁ということになりまして、比率も申し上げますと、八九式小銃の比率は約二七%になるというふうに思います。

首藤分科員 ただいま六四式小銃ということがようやく出てきたわけですが、六四式というものは有名な欠陥小銃であるということが多くの経験者によって指摘されています。私も現場で見て、現場の操作を見て、これは非常にジャミングしやすいといいますか、突っかかりやすいものであるということが理解されています。これを当然のことながら、現在の通常の、世界で使われている小銃の基本的な仕様に近づけていく、例えば口径を五・五六ミリにするとか、そうした小銃にするために八九式というものをつくり出したわけですが、三千丁毎年使っていたら、一体十四万、十五万の兵力に行き渡るのにあと何年かかるとお思いでしょうか。長官、いかがでしょうか。

斉藤国務大臣 大変期待にこたえられないお答えになるかもしれませんが、現在では決められないという状況でございます、減勢もございますし、その他の要因もございますので。

首藤分科員 私は、その御回答を聞いて非常にがっかりしたわけです。

 今、東アジアにおける脅威論があったり、あるいは朝鮮半島における、あるいは緊急事態における有事法制とか、さまざまなことが一方では言われながら、最も基本的な武装である小銃に関しても、六四式から八九式に変わっていくにはあと三十年ぐらいこのペースだったらかからざるを得ない。こんなことで果たして、一方では防衛の大綱を決めながら、防衛の計画を決めながら、現実には何にもそれに具体的な対応ができていないという状況を防衛長官としてはどのようにお考えでしょうか。――防衛庁長官。

石破副長官 委員長の御指名ですので、お許しをいただきたいと思います。

 先生御指摘のようなことは確かにあろうかと思っております。ただ、六四式が全く役に立たないかどうか、そしてまた、諸外国がどのような装備を持っておって、それがどのような性能であるかということを総合的に勘案する必要があるだろうと私は思っておるところでございます。

 そういたしますと、私も現場に行って聞きました。実際に使っておる人にも話を聞きました。六四式小銃とはいかなるもので、本当に世間で言われるように全く使い物にならないものかといえば、それは決してそうではない。それは実際に、部隊の人たちの命を預かる現場の自衛官、指揮官からそのような報告を受けております。もちろん先生御指摘のように、八九式にかえていくということが早かるべくよう、そのような認識は持っておりますが、六四式もまだ十分に使えるということは、現場から聞いて私は了知をしておるところでございます。

首藤分科員 せっかくの副長官の御説明でありますが、それは勉強が不十分でありまして、何が問題かというと、銃の口径が根本的に違う。七・六二ミリと五・五六ミリでは、もう世界の主流となっている五・五六ミリの銃弾というのは――流通していないわけですから、この七・六二ミリで日本が十分な銃弾の備蓄を持っているならばそのような状況はあるかもしれませんけれども、現実にはそういうことはないわけですから、それは対応できないということであります。

 では次に、予算委員会でありますから、その予算についてお聞きしたいと思います。

 この中において最も小さな予算というものは九ミリ機関けん銃であるということが言われております。九ミリ機関けん銃、いわゆる九ミリけん銃と言われるものですけれども、それの世界における流通価格というのはお幾らでしょうか。長官、お答え願いたいと思います。

斉藤国務大臣 これは来年度予算ということでございますが、新たな体制に向けて師団等について逐次改編しているところでございまして、御指摘の九ミリ機関けん銃につきましては、改編に伴い必要となる数量を逐次整備しているところでございます。

 それで、その価格の件でございますが、私ども防衛庁といたしましても、調達改革等により価格の抑制に努力しているところでございまして、七十丁の整備を行った平成十一年度の平均調達価格が四十三万八千円でありましたのに対しまして、十三丁を整備する平成十三年度の予算案では、平均調達価格は三十一万二千円まで抑制してきておりまして、今後とも一層の経費抑制に努めてまいりたいと思っています。

首藤分科員 私の質問はそうではなくて、現在、自衛隊が持っている九ミリけん銃というものは、SIGザウアーというところのスイスの製品のライセンス製だと言われております。SIGザウアーの市場価格は大体幾らぐらいだと御存じでしょうか。

石破副長官 御指摘ではございますが、この機関けん銃とSIGザウアーというのは、多分用途が違うのだろうと思っております。したがいまして、それを比較すること自体の意味というのを、私としては、はかりかねておるところでございます。

 つまり、この機関けん銃は幾ら撃てるかというと、一遍に撃てるわけですね、たくさんの銃弾が撃てる。しかしながら、SIGザウアーというのは五発ぐらいしか撃てないわけでございます。ただ、SIGザウアーを御指摘でございますので調べてみましたが、価格は約四十四万円というふうに了知をしておるところでございます。機関けん銃につきましては、先ほど大臣から答弁をいたしましたとおり、約三十万円強というものでやっておるところでございます。

首藤分科員 それでは、石破副長官にその結果を公表していただいて、その探された資料というものが一体どういうものかを、公開の場で、後ほどまた討議させていただきたいと思います。

 九ミリけん銃、SIGザウアー、この軍用けん銃は決して四発とか五発とかを撃つものではなく、SIGザウアーのけん銃というのは、昔から多数の銃弾が撃てるようなけん銃ということになっております。そして、これの市場価格というのは、平均して大体五万円程度であるということが流通価格として認知されているわけです。それに対して、日本の九ミリけん銃というのは三十万円を超える価格になっている。

 自衛隊の装備品が国際価格より著しくかけ離れて高いということは、これはもう世界の常識となって、恐らくこの委員会でも何度も何度も問題になったと思うのですが、ここで特に問題となっているのは、今回の十三年度の予算において、九ミリけん銃が十三丁のような小ロットで購入され、しかもその価格が、明らかに市場価格の何倍もの価格でここで計上されている。

 こうしたことは、現在の日本の緊縮財政の状況を見て、少しでも減らさなければいけない。ODAですら三%減らしていこうという状況において、何倍も高い。まさか農水省の米の予算ではないのですが、何倍も高いということは、国民としてこれはもう受け入れがたい、そのように思いますが、防衛庁長官はどのようにお考えでしょうか。――長官に聞いています。

石破副長官 委員長の御指名をいただきましたので、お許しをいただきたいと存じます。

 その九ミリ機関けん銃の整備状況につきましてですが、これはどういう場合に使うかというと、例えば空挺団というようなものを想定しております。空挺団が落下傘でおります、そのときにおりた姿勢は当然不安定なわけであります、そのときに敵からねらわれた場合に連続して発射をする、そのような意味で機関けん銃というものを採用しておるわけであります。護身用として全部の自衛官が持つとかそういうようなことではないのは、先生御案内のとおりです。

 しかしながら、空挺団、先生もあるいは体験をされたかもしれません。私も実際に行って見ました。そうしますと、持ちますものは護身用の銃だけではございません。いろいろな、無反動砲ですとか、そういうようなものを持たねばなりません。それは何キロもする重いものであります。そうしたときに、機関けん銃との相互運用性がどうなのかということを今、検討しておるところでありまして、そういうことでそのような調達の数になっておるわけでございます。これは将来的にふやすことは当然あり得べしでございますが、一番空挺団のニーズが高いもの、そしてニーズに合致するもの、それらも考えましてこのような調達の個数になっているわけでございます。

 価格につきましては、先生御指摘でございますので、もう一度先生の方に公表させていただきたい、かように思っておるところでございます。

首藤分科員 委員長にお伺いします。

 私は長官を指名したのに、なぜ副長官にされたか、その根拠をお聞きしたい。

亀井主査 最初に副長官から挙手がございましたので、説明を申し上げるに一番適当かと思って指名いたしました。

首藤分科員 今後は、ぜひ私の指名したとおりでやっていただきたいと思います。

 それでは、けん銃のことだけではなくてほかのことを、これはもう当たり前のことですが、時間もございませんので、ここで私の口から言わせていただきます。

 八九式小銃、これは大体一丁三十二万ということになっています。八九式小銃、これからの最新鋭の小銃と言われているのが三十二万であるのに対して、どうして九ミリのピストルが同じ値段なのか、どう考えてもおかしいではないですか。それから次に、五・五六ミリの機関銃、MINIMIというのがあります。これはFNCと言われるもので、ファブリカションナショナールというベルギーの製品なのですけれども、これもベルギーにおける市場価格の約二倍から三倍高い。十二・七ミリ重機関銃、実はその間に六二式機関銃というのがあるのですが、これもまた有名な欠陥機関銃で、これはここに計上されていないのだと思います。それもまた、アメリカでの流通価格の約二倍と言われています。このように、上から下まで、この正面装備総括表に書かれている価格は、すべて二倍から七倍高い。

 これは、今までは許されてきたかもしれないけれども、もはや許されない水準に来ているということです。特に、冷戦構造が崩壊した今の状況において、世界各国の軍隊というものが少しでも経費を削減しようというときに、日本のような、孤立主義でこうした製品をつくり、国際市場では全く流通しないようなそうした製品を、また、国際的に流通しているよりも同じものがはるかに高いという状況で生産しているこの装備品というものは、これから根本的に変えていかなければいけない、そういうふうに考えております。

 ただし、こういうことを話していれば、とても私の持ち時間では足りないので、これはまた安全保障委員会の方で続けて話させていただきます。

 そこで次に、いろいろ質問したいわけですが、経費という点では先ほど石破副長官がいろいろ専門的なことを言っておられるので、石破副長官にお聞きしますが、石破副長官は、最近ゴラン高原を視察されましたけれども、PKO活動についてどのようにお考えでしょうか。

石破副長官 それは、我が国が国際的な責任を果たすという意味において、今後さらに展開をしていかねばならない。しかし、どういう場合に日本が出るべきかということは十分に議論されてしかるべきであろうというふうに考えております。どういう場合に自衛隊が出たら一番そこの場の平和を維持するのに役に立つのか、何でもかんでも出ればいいというものではございません。その点について、国民の御理解と、そして最も日本の自衛隊が役に立つような、そういう場面にはもっと出てしかるべきか、かように考えております。

首藤分科員 石破副長官は、ゴラン高原からテルアビブに戻る際にヘリコプターを使用されたと聞いております。そのヘリコプターの費用、これはどのような経費で払われましたか。

石破副長官 イスラエル軍の御好意によって飛ばせていただいたと了知しております。

首藤分科員 それではお聞きします。

 日本の防衛責任者が他国の軍隊の好意によって飛ばされるということは、何か事前の協議があるんでしょうか。副長官、いかがですか。

石破副長官 あちら側の便宜供与ということであろうと思っております。つまり、イスラエルの装備、イスラエルのいろいろな現場、そういうものを外国の防衛の責任者に、見学という言葉は適切を欠くかもしれませんが、それは相互の交流であり、相互の理解を深めるということであり、そういうようなことに資するものであった、そういうような向こうの御判断かと思っておる次第でございます。

首藤分科員 私の理解するところでは、軍隊というものは非常に厳しいものがあり、同盟関係にあればともかく、同盟関係にない場合、そのようなことはさまざまな外交手続を経てされるというふうに理解しておりますが、どのような外交的な手続を経てそこに到達されましたか、副長官。

石破副長官 あるいは十分なお答えにならないかもしれません。いついつ、だれが会って、どのようなことをやったというところまで私は存じません。しかしながら、手続は外交当局を通じまして適切にやられております。いささかも恥ずるところはございません。

首藤分科員 これがどのような手続をされたかということに関しては、もう時間も限られておりますから、ぜひ外務省関係者、その関係の手続について後ほど報告していただきたいと思います。委員長、いかがでしょうか。

亀井主査 予算委員長に、また理事会等にお諮りをして、検討していただきたいと思います。

首藤分科員 今状況が、日本を取り巻く環境というものは非常に厳しくなっているということは御存じのとおりであります。その一方、日本でさまざまな行動をしていかなければいけない。一方では兵力を近代化しつつ、一方では今まであった古いものを除去していかなければいけないということは理解されるわけであります。また、地雷の問題のように、国際社会の圧力によってこれを考えていかなければいけないという問題もあります。

 地雷に関しては、約百万個、日本が保存しているわけですが、その地雷の破砕状況について石破副長官にお聞きしたい、そういうふうに思います。

石破副長官 破砕状況のお尋ねでございます。

 平成十一年度以降は民間の事業者に委託をいたしまして、爆発、分解、焼却等によって処分を行っておるところでございます。平成十三年二月末までに二十二万個の廃棄を完了いたしておるところでございまして、残りの対人地雷につきましても、廃棄の期限までには確実に廃棄をいたします。

首藤分科員 着実に進めていただきたいと思います。

 同じようにお聞きしたいのですが、旧式化した六四式けん銃の廃棄に関してはどのような手続をとっておられますか、石破副長官。

石破副長官 恐縮でございますが、詳しくは存じておりません。

 ただ、耐用年数というんでしょうか、それが過ぎましたときから順次それを更新してまいる、その過程においてそれはなくなるものだというふうに理解をしております。

首藤分科員 当然のことながら、七・六二ミリの銃弾というものを廃棄していかなければいけないんですが、その分に関してはどのような状況にあるでしょうか、副長官。

石破副長官 廃棄という言い方は正しくなかったかもしれません。あるいは、管理がえと言うことが正しいかと思っております。

首藤分科員 名称はどうでもいいんですが、具体的にそれを、例えば焼却する、それを実際に発射する、それを化学的に処理する、さまざまな方法があると思いますが、どのような形でそれを処理しておられますか。

石破副長官 減耗したものを更新するという形でございますので、減耗したものはそれぞれ適切なルール、ルールといいますか規則にのっとりまして処分をいたしております。

首藤分科員 ちょっと質問の意味がおわかりになっていないと思いますが、今非常に、いわゆるスモールアームズ、小型武器の銃弾及びその武器の廃棄に関しては大きな問題となっています。それが世界じゅうに流れるであろうということが言われているわけですが、まさか日本から流れていることは絶対ないと思いますが、国際社会でその透明性を明らかにするために、日本ではどのような形で処理されているかをお聞きしているところです。手短にお願いします。

斉藤国務大臣 不要になりましたそのような備品、装備品等々、これはきっちりと処分をさせていただくということで、誤解のないような対応をさせていただいております。

首藤分科員 それは、子供の話ではないんですから、これはきちっとどういう形で処理をしているか、海中投棄だっていろいろな形があるんですね。海中投棄をすれば今度は海洋法条約に触れるとか、さまざまな問題があるので、それは専門的な立場から、副長官で結構ですよ。

石破副長官 大変失礼をいたしました。破砕によりまして使えないようにいたしておるところでございます。

首藤分科員 だんだん時間がなくなりましたので、最後に、大きな問題についてお聞きしたいと思います。

 日本の防衛というのはこれからは大変難しい状況にありまして、災害対策にしろ、それから防衛本体の業務にしろ、あるいは防衛の分野でさまざまに言われていますように、インサージェンシーといいますか、テロとか騒乱とか、さまざまな問題にも対処していかなければいけない。今までのように、某国が大量に航空機を送って攻めてくる、こういうような状況ではない。そういう新しいセキュリティーというものが求められているということは、私も十分に理解しております。

 それに対して、まず最初に、災害対策ということが日本の中で多く言われるわけですが、また現実に今度の予算も含めて、組織的には変えようとしている点が多く見られます。しかし、これは現場で見ればよくわかると思いますが、現実には今までの装備の流用にすぎないのでありまして、本当の災害対策用の装備というものは極めておくれていると思うんですが、その部分は予算案上どの程度反映されているか、その点を指摘していただきたいと思います。防衛庁長官。

斉藤国務大臣 委員御案内のように、新しい対応の中でゲリラとか特殊部隊等々の問題がございますが、御指摘いただきました災害対処につきましては、今四つの分類に分けて対応させていただいております。一つは都市部での災害、二つ目が山間部での災害、そして三つ目が島嶼部での災害、そしてさらに四つ目に特殊災害といった、このようなさまざまな災害に対してより迅速かつ適切に対処し得るよう、各種トラック、ダンプ、野外炊具、ヘリコプター映像伝送装置、さらに化学防護器材等、災害派遣に有効に活用し得る装備品の調達を行うことといたしております。

首藤分科員 時間がないので残念ですが、ぜひ防衛長官にはちょっと勉強していただいて、こういうことに細かく答えられるように研さんを積んでいただきたい、そのように思っております。よろしくお願いします。

 では、最後に、やはり同じような問題ですが、これから八月には東ティモールの選挙が行われるということで、またPKOの問題が出てくるでありましょうし、それから何よりも、アフリカにおいてはコンゴの動乱ということで、コンゴに対してもPKOの派遣ということが国際社会に多く求められています。その意味で、PKOというものはもう待ったなしである。それが、例えば本体業務を切り離してするのか、あるいは本体業務まで踏み込むのか、あるいは五原則の問題、さまざまな論議があると思いますが、少なくとも、求められていて即応しなきゃいけないということは、これはもう避けられないことだと思うんですね。

 そういうものに関して、今までは輸送調整隊とかそういうもので送っていったわけですが、それでもやはり、これからの本格的に難しい現場というのはこなし切れない。やはり基礎的なトレーニングが必要だと思います。私自身、例えばピアソン・センターという訓練センターで、PKOの研修を受けたこともあります。しかし、私ですら、そのピアソン・センター、私で二人目と言われています。ですから、日本でいかにその専門家というものがトレーニングされていないかということが言われるわけです。

 この計画を見ても、この研修計画は十分ではないのではないか、そういうふうに思いますが、そうした将来の展望も含めて、防衛庁長官は、PKOあるいは新しく出てくるさまざまなセキュリティー上の問題に対してどのように研修予算を組まれておられるか、それを明確にお願いしたいと思います。

斉藤国務大臣 委員御指摘のように、PKOの役割というのはますます高まっているところでございます。したがいまして、国際平和協力業務を行う隊員に対しまして、派遣前に、自衛隊の学校等において、語学や国際平和協力法、参加することとなる国際連合平和維持活動、現地情勢等についての教育を実施しているところでございますが、委員のアドバイスもございます、より一層こういった面について促進させていきたいというふうに思います。

石破副長官 先生がピアソン・センターへ行ってらっしゃったことは、私も外交フォーラム等々で拝見して存じております。

 私どもといたしましては、今までも、国際平和協力本部事務局に出向しております陸上自衛官一名、昨年の十月、研修に行っております。また、今の大臣のお答えの中にもございましたが、平成十三年度におきましては、陸上自衛官一名を同センターに派遣をするということで、先生の御指摘も踏まえましてやらせていただきたい、かように思っておるところでございます。

首藤分科員 私はこれで終わりますが、最後に、もう一言だけ言わせていただきます。

 このように、今までは防衛というものをこういうハード中心のものとして考えておりましたけれども、研修とか訓練とかの計画、作案とか、あるいは情報収集、これが極めて重要となってくる分野であり、こういう問題に関しても積極的に取り組んでいただきたい、そのように私は考えております。

 以上をもって私の質問を終わります。

亀井主査 これにて首藤信彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、今川正美君。

今川分科員 私は、社会民主党・市民連合の今川正美でございます。

 まず最初に、このたび、アメリカの原潜グリーンビルが大変な事故というよりも事件を起こしまして、えひめ丸の乗組員の皆さん初め、大変な被害を受けたわけであります。今、この原子力潜水艦、原潜問題に関しては国民の大きな関心がありますだけに、私は佐世保におりますが、横須賀そして沖縄、日本には三つの港に頻繁に原子力潜水艦が入港しております。この問題に関して、まず外務省関係にお尋ねしたいのであります。

 この事件、事故を起こしたグリーンビルというのは、一九九八年に佐世保、横須賀、沖縄に都合五回寄港いたしております。そしてまた、同じタイプのロサンゼルス級原潜は、昨年一年間だけでも五十一回寄港しています。佐世保には、一九六四年以来、通算百六十回を数えます。実は、この原潜グリーンビルが事故を起こした、日本時間で言いますと二月の十日、同じ日に、佐世保にもトピーカという原潜が寄港いたしておりました。

 振り返ってみると、原子力潜水艦が日本に初めて寄港したのは、言うまでもなく私の住む佐世保でした。一九六四年であります。このときは、全国規模の大闘争になりました。いろいろな反対の理由はありましたが、当時から地元の佐世保地区労や当時の社会党あたりが反対の理由に掲げていたのは、大きく二つあります。二つの核に反対する。一つは、当時搭載されていたと言われる核爆雷サブロック、戦術核兵器です。いま一つは、推進力が原子力であるということで反対をしてまいりました。

 一九六四年に初めて米海軍の原潜が佐世保に入るまでの間、日米両政府間でもいろいろな交渉、やりとりがございました。当時、政権側の自民党の中から、あるいは外務省の官僚から漏れたと言われたことなんでありますが、原子力潜水艦みたいに非常に危険で厄介なものは横須賀に、首都圏に入れるのは非常によくない、日本の足の裏である佐世保に入れろ、そういうやりとりがあったらしくて、当時の辻佐世保市長は、佐世保というのは足の裏なんだ、そういうことをおっしゃったいきさつがございます。

 それはさておき、当時、一九六三年、日本の原子力委員会の見解、米国の原子力潜水艦が寄港するに当たってあくまでも安全性を最大限尊重すべきであるということが見解として出されていますし、これを受ける形で、米側からもエードメモワールというものが出され、口上書も出されています。

 私が問題にしたいのは、この長い間、原子力潜水艦だけじゃなくて、原子力動力艦にかかわる事故、あるいは搭載していると思われる核兵器に関する事故、あるいは原子炉にかかわる事故というのが思った以上にたくさん起こっているんですね。

 これは、今から十三年前、一九八八年の六月に発行された「日本の港に停泊した軍艦における核事故」、アメリカのジャクソン・デイビス博士が出されたものでありまして、昨日、外務省の方にもお渡ししています。佐世保、横須賀、呉にアメリカの軍艦が入ってきたときに、仮に、搭載していると思われる核兵器にかかわるアクシデントあるいは原子炉にかかわる事故が起こった場合にどういう被害が出るかということをシミュレーションしたものであります。実際に佐世保でも、世界初の原子力空母エンタープライズが佐世保に寄港したのが一九六八年でありまして、その年の五月二日に、アメリカの原潜ソードフィッシュ号が放射能漏れ事故を起こすということで、大変な問題になりました。

 そういうさまざまな原潜にかかわる事故なり経緯を佐世保の場合には背負っておりますので、そういうことを念頭に置きながら、次のことを質問いたします。

 まず最初は、原子力潜水艦の原子炉の出力が果たして何万キロワットなのか、そのことをお尋ねしたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 米国の原子力潜水艦の原子炉の出力数についてのお尋ねでございますけれども、私ども承知している限り、米国政府は原子力潜水艦の原子炉を含みます軍艦の設計等、技術の情報については公開していないものと承知しておりまして、私どもも承知しておりません。

今川分科員 私は二つの資料を持ってきているんですが、一つは、一九九八年七月十五日付の西日本新聞に、横須賀に停泊中の原子力潜水艦トピーカ、先ほど申し上げた、先月の十日、佐世保に入った同じ原潜でありますけれども、その艦長、アンソニー・コーテジー艦長は次のように語っています。これは原潜の内部を報道陣に公開したときの発言なんですが、皆さん方のすぐ後ろに原子炉がある、日本の商業用原発、百万キロワット級に換算すると、四分の一程度の出力などと説明をしたというふうにございます。

 もう一つは、「隠された核事故」、梅林宏道さん、横浜に住んでおられる方ですが、彼のこの本によりますと、百五ページに、「ロサンゼルス級原潜のS6G型炉の熱出力は、機械的な効率の向上を考慮に入れると、スキップジャック級の約二倍の約百六十メガワット(十六万キロワット)と推定される。」これは熱出力ですから、電気出力に置きかえると約三分の一と言われますので、五万キロワット強ということになろうかと思うんです。

 こういう長い年月にわたって、佐世保や横須賀や沖縄に米海軍の原子力潜水艦が来る。当時から、米国政府の方も、唯一の被爆国という認識が十分にあるだけに、一九六〇年代のいろいろな日米両政府の文書を見てみると、この放射能、原子力というものに対する非常に厳しい認識があるわけであります。

 ところが、たびたび日本の港に出入港する原子力潜水艦の、何万キロワットに相当するのかということも把握できないということで、果たしてその周辺住民、市民の皆さん方に対して安全だよという説明ができるんですか。その点をもう一度御答弁ください。

藤崎政府参考人 今、原子力潜水艦の安全についてのお尋ねでございますけれども、今般のえひめ丸の事件の謝罪のために訪日いたしましたファロン特使、海軍の作戦部次長でございますが、森総理、河野外務大臣と会談いたしました際に、河野外務大臣より、原子力潜水艦を含む米艦艇の本邦寄港に当たりましては、安全問題につき非常に大きな関心があるので、一層注意を払ってもらいたいという申し入れを行いまして、先方は、当然である、ぜひ自分たちもそういう努力をしていきたいというところを述べたところでございます。

 私どもといたしましても、原子力潜水艦を含めます米艦艇の本邦寄港に当たりましては、安全性ということが非常に重要なポイントでございますので、今後、米側に対しまして、機会をとらえて、きちんと申し入れをしていきたいというふうに思っております。

今川分科員 佐世保の光武市長は、先月の二十六日付で河野外務大臣に対して、「米国原子力潜水艦「グリーンビル」のハワイ沖における衝突事故について」という要請文書を提出されております。やはり佐世保市民の生命と財産、安全を何よりも優先して守る立場から、こういう佐世保市側からの申し入れ、要請があったと思うんであります。

 きょうはパネルを持ってきていませんのでごらんになりにくいかと思うんですが、佐世保の港には一九六四年に初めて原潜が入ってからちょうど米ソの冷戦が終結をする一九八九年まではどこに停泊をしていたかといいますと、港の奥の方の一号ブイと言われるブイに停泊をしていました。米海軍側からすると非常に不便で不安定なんだけれども、間違いなくこの一号ブイについておったんです。ところが、冷戦が終わってから、翌々年、一九九一年からは、この一号ブイではなくて、米側に提供されている赤崎岸壁、ここに接岸するようになりました。

 そうしますと、何が問題になってくるかというと、私らが問題にしてきたのは約十年前からですが、先ほど申し上げた約五万キロワットから六万キロワットと言われる原子炉を抱えているわけですから、仮に一週間そこに接岸すれば、いわば商業用原子炉の約五分の一から六分の一の原子炉が一週間、仮に設置されるといった状態になる。

 このことに関して、ここに「市長ごめんなさい」という本を持ってきております。この市長というのは、もう亡くなられましたが、当時、原子力船「むつ」の受け入れをめぐっていろいろなやりとりがあった、運動もあったわけですけれども、そのときの辻市長です。書かれたのは、佐世保の基地対策課長などを務められた中本昭夫さんです。この本の百八十九ページに次のようなことがあります。

 原子力船「むつ」の修理を受け入れる際にどこに係留するかという問題で、当時の辻市長は、いろいろな対策、過激派からの対策も含めまして、米海軍の立神岸壁に置いてもらった方が一番安全だということをおっしゃった。そのことを聞いた当時の米海軍佐世保基地司令官のマクパードン司令官は、次のようにおっしゃっているんです。中本さんを呼んで、

 米国では、軍艦であろうと、商船であろうと、原子力を推進力とする場合は、係留場所は、少なくとも住宅地域から五〇〇米以上離れた所でなくてはならず、それは、原子力装置が起動停止の状態にあっても同じで、米本国はもちろん海外の基地でも米軍が管理する施設に適用があり、しかも米国の原子力委員会の了承を必要とする

と司令官はおっしゃったわけです。

 このことは非常に重要なわけでありまして、先ほどお示しをした一号ブイに停泊をした場合には、この原子炉から半径五百メーター以内に民家は一戸もかかりません。ところが、一九九一年以降、赤崎岸壁に接岸しますと、この半径五百メーター以内に、老人福祉施設も含めまして民家が約三百世帯ほどすっぽりと入ってしまう。これは、今申し上げたマクパードン司令官の説明がそのまま正しいとすると大変な問題ではないかと思うわけであります。

 そこで、今私が申し上げたことに関して、原潜の原子炉と民間の居住区域との距離に関して、外務省の方としてはそういう認識はございますか。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 その前に、今議員から御指摘のございました光武佐世保市長からの御要請につきましては、大臣が御多忙であったために、代理で私がお会いいたしまして受け取りまして、直ちに大臣に報告をいたしました。大臣からも、こういう問題は極めて重要であるから、安全性の問題について米側ときちんと話していくようにという指示があったところでございます。

 今議員から御質問のございました御本にございます指摘でございますけれども、私ども承知しております限り、米側の説明によりますと、係留地の選定を含めまして、米国内の関係法令に基づいて、本邦に寄港するに当たりましては、すべての手続は厳格に守られているということでございます。

 具体的な、今お示しになりました数字につきましては、私ども承知しておりません。原子炉に関するかかる数字というものについて、アメリカ側がそういうことを発表した、あるいは有しているということは、私ども全く承知しておりません。

今川分科員 具体的な数字は承知していないという答弁のようでありますが、この点は非常に重要に思いまして、地元佐世保では、社民党や佐世保地区労などが十年前ほどから、最近では一九九七年、九八年、いずれも文書で何度となく佐世保市を通して外務省にお尋ねをしている重要案件であります。

 したがいまして、きょう私がぜひお願いしたいのは、当時の、当時というのは一九七八年になりますが、マクパードン司令官の説明にありますように、ぜひ米国政府に対して、こういう原子炉にかかわる安全基準、例えば、申し上げた、居住区域から少なくとも五百メーター以上離れていなければならないというものの安全基準なり、あるいは根拠となる法律なり規則なり、そういうものが必ずあるはずなので、これを外務省として責任を持って調査して、後ほど提出していただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 次に移ります。

 アメリカの原子力軍艦に関しまして、佐世保はもとより横須賀や沖縄も、原子力軍艦の災害にかかわる防災マニュアルを、昨年、それぞれがつくっております。動機となったのは、東海村のジェー・シー・オーの事故であります。大変な衝撃を受けて、政府の方としても、原子力災害対策特別措置法を二年前の十二月に改正されたわけであります。そのときに、佐世保など三市は、その特別措置法を米国の原子力軍艦にも適用してほしいということを要請したわけでありますが、そのときの日本政府の対応というものは、米国の原子力軍艦には適用できないというやりとりがあったはずであります。しかしながら、その後、例えば佐世保の場合には、平成十二年の十一月に、原子力軍艦の防災マニュアルというのをしっかりとつくりました。

 「防災マニュアル策定のための基本方針」の中では、このようにあります。「国における原子力災害においては、原子力軍艦の防災対策が策定されていない現状では、本市計画の指針とすべきものを見出せない現状である。」という認識があったわけです。その後、「平成十二年五月、国は防災基本計画を修正し、下記の文言を追加した。「なお、原子力艦の原子力災害に関しては、地域的な特殊性をかんがみて必要とされる場合、関係自治体の防災計画において、その対応に留意するものとする。」」こうしたことを受けて、今申し上げた佐世保など三市は、原子力軍艦に関する防災マニュアルを作成したわけであります。

 しかし、それでもなお、次のように佐世保市などは言っているわけです。「さらに米海軍原子力軍艦に係る問題は、日米安全保障条約とそれに基づく地位協定によるものであり、日本国政府と米国政府との間で責任を持って確認又は解決すべき問題である。」要するに、日本政府が責任を持って、根拠となる法律も含めまして、こうしたアメリカの原子力軍艦が日本の港に寄港するに当たっての安全性、万が一事故が起きたときの防災体制といったものを一地方自治体だけに負わせるのは余りにも負担が大き過ぎるということでありますので、このことは、今申し上げた平成十二年五月の国の防災基本計画の一部修正をさらに前に進めて、佐世保など地方自治体が求めていることに対してぜひ善処していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

吉井政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生御指摘のとおり、昨年五月三十日に、国の防災対策の基本となります防災基本計画を修正いたしまして、この際、関係省庁と連携をとりながら、関係地方公共団体が原子力艦における原子力災害が発生した場合を想定した地域防災計画を策定し得る根拠を明記したところでございます。

 国といたしましては、原子力艦の原子力災害が発生した場合、情報収集、放射線のモニタリング、専門家の派遣及び救助救急等のことを担当することと思われますが、現在、政府部内におきまして、その役割分担を明確にすべく検討中でございます。

今川分科員 引き続きまして、今、佐世保に原潜などアメリカの原子力軍艦が寄港するに当たって、放射能モニタリングポストを四カ所設置してありますが、これも、先般、光武佐世保市長などが政府に対して、今私が説明申し上げました原潜の係留場所、赤崎岸壁にもモニタリングポストを増設していただくように要請が既にあっていると思います。この点をぜひ私の方からもそのようにお願いしたいのでありますが、どうでしょうか。

 あわせて、冷戦が終わるまでは、アメリカの原潜は間違いなく日本の外務省を通して少なくとも入港の二十四時間前に通告がございましたが、これも皮肉なことに、冷戦が終わってから、九一年以降、たびたびアメリカの原潜はこの二十四時間前の事前通告を破って入ってきております。このことも、日米安保や地位協定に基づいて日米間の取り決めで入ってくるわけでありますので、そういう約束を破ると、かつての科学技術庁、今は文部科学省になるのでしょうか、ここから職員さんがわざわざ佐世保まで二人やってこられて、モニタリング調査などを行うわけであります。そういった点も含めて、御答弁をお願いしたいと思います。

大熊政府参考人 御説明いたします。

 モニタリングポスト関係の方につきまして、文部科学省として御説明をさせていただきたいと思います。

 原子力軍艦の寄港に際しまして、文部科学省としましては、海上保安庁及び地方自治体等と協力して、厳重な放射能調査、放射線監視に取り組んできております。先生御案内のように、実際のところ、モニタリングポストによる定点の連続測定のほかに、調査艇による湾内の移動測定もいたしておりまして、総合的に放射能調査を実施している、こういうふうに思っております。

 御指摘の赤崎岸壁の問題でございますけれども、モニタリングポストの増設につきましては、放射能調査、放射線監視体制のより一層の充実を図る観点から、先生先ほどおっしゃられましたように、佐世保市からの要望も踏まえまして、当省としてその実現を図ることとし、既に防衛施設庁福岡防衛施設局を通じて米軍との調整を開始しているところでございます。

 当省としましては、今後とも、万が一の事態にその状況を的確に把握する上で重要な役割を果たすモニタリングポストの高度化を図るなど、放射能調査、放射線監視体制の維持強化を図ってまいりたい、こういうふうに思っております。

 モニタリングポストの関係は、以上でございます。

今川分科員 ほとんど質問の時間がなくなってきましたので、外務省に対して、例の原潜の場合には核、非核両用の巡航ミサイル、トマホークを搭載しておりますので、この核の持ち込み問題に関しても本来なら二十世紀中にしっかりとけじめをつけておくべき問題だったと思いますし、例の日米間における密約問題もただしておきたかったのですが、時間がありませんので、省略をいたしたいと思います。

 次は、防衛庁長官の方に、限られた時間でちょっとお尋ねをしたいのです。

 私が住む佐世保には、今度の中期防なりの中で、一つは、通称、対ゲリラ部隊なるものが六百六十名で新たに設置をされるということが報道されておりますし、また、二〇〇三年度に高速ミサイル艇を一隻配備するということも新聞で報道がございました。この二点について、具体的な中身を説明してください。

斉藤国務大臣 お答えいたします。

 多数の島嶼を有する我が国におきましては、ゲリラや特殊部隊からの攻撃を初めとする島嶼部への侵略行為や島嶼部への災害派遣に対して迅速かつ機動的に展開し、初動対処を行う機能は重要でありまして、しかしながら、現在の陸上自衛隊においては、その機能が十分でないというふうに考えております。そのため、島嶼部での対処能力の充実強化を図ることを目的としまして、御指摘のように、平成十三年度に西部方面普通科連隊を長崎県佐世保市にございます相浦駐屯地に新編することといたしまして、平成十三年度予算案に盛り込んでおります。

 この部隊は、御指摘のように、約六百六十名から成りまして、すべてヘリコプターに搭載可能な装備により編成するとともに、島嶼部での活動に適した高い情報収集能力や通信能力を有する部隊を予定しております。

 もう一つ、ミサイル艦艇の話もございましたので、お答えしたいと思います。

 ミサイル艇につきましては、我が国の有事の際、着上陸侵攻をできる限り洋上で撃破するという観点から、日本海側の三個地方隊、これは大湊、舞鶴、佐世保でございますが、それぞれ三隻配備することを目標に平成二年度から整備を行ってきております。

 そこで、佐世保へのミサイル艇の配備については、就役年度の編成時において正式に決定されることとなることから、現時点では確固たることは申し上げられない状況ではございます。

 以上でございます。

今川分科員 質問時間がなくなりました。最後に、一言だけ申し上げておきたいと思います。

 この新しい中期防に関しては、私の意見だけ表明して終わりたいと思いますが、ここに盛られておりますように、今、中国やロシアなどにも大変な警戒感を起こさせているTMDの問題、これも研究からやがて開発段階に入るのではないかということが言われています。あるいは、これまで海上自衛隊で最大の排水量トンを持っていたのは大型の輸送艦、八千九百トンでしたが、排水量トンでいくといきなり一万三千五百トン、ヘリコプターを四機運用できる大型ヘリ護衛艦、これも、諸外国並みに軽空母を持つのではないかという疑念もぬぐい切れません。

 いずれにしましても、空中給油機の問題も含めまして、今、国の借金も大変な実情にあるわけですから、こういう財政事情を勘案すると、これから五年かけて二十五兆円を超える、つまり、単年度で五兆円を超えるような大変高価な買い物が多過ぎるのではないか。今の日本を取り囲む国際情勢の状況に合わせながら、もっと軍備は計画的に、着実に縮小すべきであるということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

亀井主査 これにて今川正美君の質疑は終了いたしました。

 次に、江崎洋一郎君。

江崎分科員 民主党の江崎洋一郎でございます。

 本日は、厚木基地の騒音問題に関しまして質問をさせていただきたいと思います。

 申し上げるまでもございません、都市化が進みました厚木基地周辺の人口は百五十万人にも及んでおります。この人口密集地の基地を使用します在日米海軍の艦載機による騒音が地域住民の平穏な生活を著しく脅かしているという問題でございます。

 昨年七月から九月にかけまして、神奈川県が厚木基地周辺の生活環境調査を十八年ぶりに実施いたしました。去る二月二十七日、その結果が公表されまして、私も厚木基地騒音対策協議会の顧問を務めさせていただいております、報告書を入手したところでございますので、この問題につきまして御質問をさせていただきたいと思います。

 この調査自体について一点お話しさせていただきますが、政府に対しまして、かねてから、この航空機騒音につきまして、周辺住民における健康等への影響につきまして、国の責任で実態調査を実施するようお願いをしておりました。しかし、今回なぜ神奈川県が実施したかと申しますと、残念ながら長年実施のめどが立たないというようなこともございまして、神奈川県の調査が行われたという経緯もございます。ようやく国の方でも調査を近々していただけるというふうに承っております。きょうは、この神奈川県の調査報告書をベースに質問をさせていただきたいと思っております。

 また、あわせて、今回防衛庁さんからNLPの実施状況ということで資料を提出いただきました。これもかねてからお願いを申し上げてきた資料なのでございますが、今回初めて御提出をいただいた資料でございます。平成三年から十二年にかけてのNLPの実施状況の実績があらわしてあるわけでございますが、今後とも継続してこれらの御公表もお願いしたいと思います。

 それではまず、NLPの厚木基地からの移転についてお伺いしたいと思います。NLPというのは、空母艦載機によります夜間連続離着陸訓練のことでございます。

 今回の調査におきましても、騒音の最も激しい地域の住民の九割が、NLPの厚木基地からの全面移転を望んでいるという結果が出ております。県及び周辺市から政府に対しましても、硫黄島での全面実施に向けて、今までにも増して積極的に米側と調整する、もし硫黄島で一〇〇%実施できないならば、騒音被害の解消に向けて抜本的な解決策を講じるように国に要請がされております。

 また、去る二月二日に、在日米海軍のチャプリン司令官が神奈川県知事と面談をされたわけでございます。この際、チャプリン司令官から、アメリカも騒音問題の解決に努力するが、日本側も恒久的な訓練施設を見つける努力をしてもらいたい、いわゆる日本側も恒久的な訓練施設を見つけてほしいという意見が出ております。この辺の意見は、県や基地周辺と米国側との意見というのも一致しているわけでございます。また、この中でも、アメリカ側はあくまで硫黄島は暫定利用だという認識に立っておるようでございます。この辺には変わりはございません。また、硫黄島というものが訓練の場としてやや条件に合わない、これは遠いとか環境の問題もあろうかと思います、そういう声も聞かれておる現状でございます。

 周辺住民が騒音に悩まされる現状は、日米両政府が本腰を入れて解決策を探らない限り解消はないと考えておる次第でございます。この策について政府はどのようにお考えになられているか、またその取り組みについてお考えをお聞きしたいと思います。また、その結果を地元にどのようにお伝えになられる御予定なのか、斉藤防衛庁長官、きょういらっしゃっていただいていますので、防衛庁長官及び外務省の御見解をいただきたいと思っております。

斉藤国務大臣 お答えいたします。

 御案内のように、厚木飛行場のNLPによる周辺住民への騒音軽減を図るために、おっしゃるように、暫定措置として硫黄島において訓練ができるよう所要の施設整備を行ってきたところでございまして、平成五年九月以降、硫黄島において本格的に当該訓練が実施されてきているところでございます。しかしながら、米側によれば、硫黄島は厚木飛行場から約一千二百キロの遠距離にある、また即応態勢等の面での問題や天候不良等の不測の事態が生ずるおそれがあり、訓練の全部を同島で実施することは困難であるということの主張も聞いておるところでございます。

 そこで、私どもとしては、従来から、飛行場周辺における騒音の軽減は重要な課題である、そういう認識のもとに、できる限り訓練が硫黄島において実施され騒音の軽減が図られるよう米側の理解と協力を求めてきているところでございますが、さらに、私どもも努力をしなければいけないという中で、この騒音軽減の重要性にかんがみまして、私ども防衛庁としては、三宅島に代替訓練場を設置することが適当と考えましてそのための努力を続けてきたところでございますが、依然として住民の反対が強うございます。また理解が得られていない状況が現在でございます。

 三宅島にNLPを行うための代替訓練場を設置することについては、同島は現在活発な火山活動の影響から、全島民が島外へ避難している状況にございまして、同島におけるNLPを行うための代替訓練場の設置については、火山活動の状況等を見守っているところでございますが、同島は代替訓練場の設置場所として立地条件がすぐれているという認識を持っておりまして、その観点から、状況が許されるようになれば広報活動を再開するなど、今後とも粘り強く地元の理解が得られるよう努力してまいりたいと思っております。

江崎分科員 やはり国の安全保障という問題は大変重要な問題でございます。しかしながら、住民の生活権ということも今の時代は十分に配慮していかなければいけない時代だと思います。これらを並行して考えていくということをぜひともお願い申し上げたいと思います。今、三宅島の話もございました。今、島民の皆さんは大変災害でお苦しみになられている最中でございます。その中でのまた移転というお話はなかなか進めにくいということではございますが、厚木基地からのNLPの移転という問題につきましては、引き続き御検討のほどをぜひともお願い申し上げたいと思います。

 次に、デモンストレーションフライトの廃止問題ということにつきましてお伺いしたいと思います。

 米軍は厚木基地において、年に一度デモンストレーションフライトというものを実施しておるわけでございます。厚木基地においては、大体昭和六十三年ごろからでしょうか、基地開放日に空母艦載機による展示飛行というものが実施されております。これが通称デモフライトと呼ばれているものでございます。

 今回の神奈川県による調査におきましても、デモフライトについて、最も騒音の激しい地域の住民の多くは、騒音が激しいのでぜひやめてほしいという回答を出しております。また加えて、事故の不安を感じるのでやめてほしいとも回答しております。昨今、海外での事故でございますが、デモフライトを中心としていろいろな事故が起きているということで、これらのニュースを通じて、やはり住民の方も不安に思われているというあらわれではないかと思います。

 一方で、米軍はどのように見解を話されているかというと、多くの人が楽しんでいるではないかということを理由に、デモフライトを実施したいという意見をお持ちのようでございます。しかし、神奈川県のアンケートによりますと、楽しい催しであるので続けてほしいという意見はわずか五%にも達しない状況でございます。この点で、今回の調査で、米軍と地元住民の意識にはかなり乖離があるなということが明らかになったわけでございます。

 これほど住民の拒否感が強いデモフライトの実施は、地域としては、むしろ友好国である米国との間の友好交流を図る上での障害にもなってしまうのではないか。また、基地周辺市も毎年廃止を強く訴えているという現状にあるところでございます。

 私の手元に「航空ファン」という雑誌の四月号の記事がございます。これによりますと、ことしの厚木基地エアショー、WINGS二〇〇一と言うそうでございますが、六月に開催を予定するといううわさが流れている、しかしWINGSでの飛行展示については周辺自治体からの中止要請が厚木基地に対して出されており、基地司令ケビン・マクナマラ大佐は二月五日、大和、綾瀬両市長それぞれとの会談の席上で、太平洋艦隊司令官、在日米海軍司令官もいろいろな検討をしている、地域の事情を配慮し対応が決定されるだろうと述べておられるそうで、中止の可能性を示唆しているというような記事もございます。

 この問題につきまして、政府としましても、地元の意向を踏まえて米側に十分に働きかけていただいていることは承知しておるわけでございますが、今後、廃止に向けましてより踏み込んだ取り組みをすべきと考えております。これにつきまして、ぜひとも政府の御見解を承りたいと思います。

藤崎政府参考人 お答え申し上げます。

 このデモンストレーションフライトでございますが、当初の目的は、今議員御指摘のとおり、友好親善ということでございますが、私どもといたしましては、この騒音問題、安全問題等に関します周辺住民の方々の声、自治体の方々の要請、こういうものは重く受けとめておりまして、従来より、米側に対しまして、本来の目的に十分即さないのではないかということを指摘いたしまして、中止を要請してまいったわけでございます。

 本件につきまして、私どもは引き続き米側に対しまして鋭意申し入れを行いまして、本件につきます政府の一貫した姿勢を示してまいりたいというふうに思っております。

江崎分科員 このデモンストレーションフライトの廃止につきましては、NLPの移転という問題よりは序列としては容易にまだ解決できる問題ではないかなというふうに考えます。どうか地元住民の声をぜひとも御尊重いただいて、廃止の方向に向けてさらに一歩踏み込んだ御努力をお願い申し上げたいと思います。

 次に、少し技術的なお話になりますが、このNLPに係ります周辺地域で現在住宅防音工事が実施されておるわけでございます。この住宅防音工事につきまして、今回の神奈川県のアンケート調査によりましてもいろいろな結果が出ております。この点につきましてお尋ねを申し上げたいと思います。

 神奈川県の調査報告書によりますと、まずこの住宅防音工事の実施状況という点でございますが、国が指定をいたします住宅防音工事対象区域であるAゾーンというゾーンがございます。これはいわゆるうるささ指数、W値という値で示されておりますが、このW値が八十以上の地域がAゾーン。次にBゾーン、これはW値が七十五以上八十未満という数値でございます。これらの地域で、既に私たちは住宅防音工事をしましたよという方々の比率は、Aゾーンの方が六一%、Bゾーンの方が五一・六%ということで、住宅防音工事がかなりの比率でされているわけでございます。しかし、残念ながら、他方でまだしていないよという方も四割から五割いらっしゃるという結果とも読み取れるわけでございます。

 では、なぜ防音工事をしないのですかという問いに対して、その回答として返ってまいりました一番多いのは、建設時期が制度の条件と合わないというのが一番多いようでございます。Aゾーンにおいては、その点につきまして、自分が住んでいる地域が騒音があることを知っていたという認識を持って居住している方、その中で三六・二%が建設時期が合わないと答えています。またBゾーンにおいては、三一・九%の人がそのように答えているということでございます。

 また、さらにちょっとこれは問題じゃないかなと思いますのは、自分が住んでいるところが騒音地域だと知らなかったという方も何といらっしゃるわけでございます。これは、不動産を購入されたときにどういう形で勧められたのかなという別の観点からの問題ではないかと思いますが、その方々がお答えになるに、建設時期が条件に合わないというのは、Aゾーンの地域では二三・九%、約四分の一の方がそれを理由に挙げておられるわけでございます。また、中には制度を知らなかったという方もあるわけでございまして、そういう意味ではさらに周知をさせていく必要もあるのかなというか、制度を知らなかったという人たちがいるというのもちょっと驚きに値する数値ではないかと思います。

 住宅防音工事をしていいですよという区域が決められているというわけでございますが、この区域指定というのは、昭和六十一年の九月十日に最後の追加指定告示というものがなされております。今から考えますと十四年以上が既に経過しているという状況にございます。当然、その後に建てられた住宅も多数あるわけでございます。今回の調査に参加した住民も、四割以上の方が昭和六十一年以降にこの地に移り住んできたという方々でございます。

 こうした住民にも配慮をしていただいて、住宅防音工事の区域の指定後に建てられた住宅に対しても、六十一年以降に建てられた住宅に対しても、経済的な波及効果も考え、国の助成の対象にすべきではないかと考えます。

 また、この制度の対象区域については、先ほど申しましたように、知らなかったという方もいらっしゃるわけでございます。さらに一層の周知を図っていただきたいと思いますが、政府としてのお考えを伺いたいと思います。

伊藤政府参考人 ただいま、住宅防音工事につきまして、神奈川県のアンケート調査をもとにいろいろ御質問いただきました。県の方の調査結果というのは、私どもも先般いただきまして、よく研究してまいりたいと思っております。

 それで、今先生御指摘の点、幾つかでございますが、私ども、実は厚木周辺だけで約十二万戸でございますか、十二万世帯と申し上げた方がよろしいかもしれません、現在防音工事の希望があるということで、これは平成十三年度予算をお認めいただきますと、全部一〇〇%完了するということになってはおるわけでございます。

 ただその中で、今まさに御指摘のように、このアンケートの中で、制度を知らなかったと。知らない方は希望できるはずはないわけでございますので、この十二万には入ってこないのかもしれません。かねてから私どもは、関係市にお願いをして、市の広報に載せていただくとか、いろいろPRの作業はしておるわけでございますけれども、引き続きその点は努力をしてまいりたいというふうに思っている次第でございます。

 それから、第一種区域というふうに呼んでおりますが、住宅防音工事を行います区域、これは、御指摘のとおり、六十一年に指定をしたものが最後でございます。六十一年のこの指定日現在建っていなかった建物、いわばその後から新築された建物につきましては、現行制度上は住宅防音工事はできないということでございます。これは、いわばうるさいということを承知の上でお建てになったのでございましょうというところに理屈はあるわけでございますが、かねてから私ども、そういう御要望があることは十分承知しております。

 ただ、現段階におきましては、厚木のみならず、全国の飛行場周辺の住宅防音工事の対象世帯数というのは極めて数が多いわけでございますので、限られた財源のもとでは、まず現在対象となっておりますところを解決していくのが先決であろうということでやっておるわけでございますが、さはさりながら、厚木飛行場周辺の住民にとりまして、この騒音問題というのは大変深刻な問題であるということは私どもも認識しておるところでございまして、今申し上げましたように、制度上難しいところはありますけれども、なお私どもも検討課題として勉強してまいりたいと思っている次第でございます。

江崎分科員 ぜひとも六十一年以降に住宅を取得された方にも御配慮をいただけるような施策、工夫をまた御努力いただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 さて、六十一年当時環境庁でございますが、今は環境省になりましたが、この省が定めた民間航空機に適用される航空機騒音に係る環境基準というものがございます。住宅を中心とする地域の基準値、騒音という意味でございますが、これが先ほどのうるささ指数でいうとW値七十以下というふうに定めております。

 今回の調査では、住宅防音工事の対象区域となっていないW値七十以上七十五未満の地域の住民の五六・六%、約六割の人が、非常にうるさいまたはうるさいと回答しております。また、そのうちの六割近い方々が、住宅防音工事区域について、広げてほしい、先ほどAゾーンとかBゾーンとかいろいろ区域指定をしているというお話を申し上げましたが、この枠を広げてほしい、自分たちは一応今指定区域ではないけれども、ぜひとも指定をしてほしいというような回答も出てきております。

 こうした住民の実情を考えますと、飛行活動の規制というのはなかなか難しいと思いますが、これらの対策以外に、対象区域の拡大というものも一つの検討材料になろうかなと思います。先ほど来の、財政事情が厳しいわけでございますので、なかなか思うように区域が広げられないよということについては十分わかるのですが、その点につきまして、少し展望を踏まえて御見解をいただけないかと思います。

伊藤政府参考人 御指摘のとおり、厚木飛行場に係ります住宅防音工事の対象となりますいわゆる第一種区域、これは七十五W以上ということでございますが、これにつきましては、昭和六十一年の九月に区域指定ということで、相当期間が経過しております。

 したがいまして、私どもとしては、現状の騒音状況をより的確に把握いたしますために、飛行場周辺で自動騒音測定器を適切な場所に増設し、あるいはまた移設をするというようなことをいたしまして、昨年、平成十二年の四月から測定を開始したところでございますので、これは若干の期間をいただかないと結果が出てまいりませんが、その結果等を見きわめまして、改めて検討してまいりたいというふうに思っております。

 なお、念のため申し上げますと、七十五Wというところを基準に検討するということでございます。

江崎分科員 ぜひとも御検討のほど、よろしくお願い申し上げます。

 次に、技術的な話ばかりでございますが、防音工事の効果について質問させていただきます。

 平成五年には硫黄島の艦載機着陸訓練施設が全面的に米軍に提供され、それ以降NLPの多くが硫黄島の方で実施されるということになりました。また、住宅防音工事も、平成十一年度までに、対象となっている世帯の約九割に当たる、先ほど御答弁にもございましたが、十二万世帯で実施されたと承知しております。

 これら騒音の影響を緩和するための施策が進捗しているにもかかわらず、騒音に対する苦情件数というのは相変わらずこの調査でも高水準で推移しております。今回の調査でも、過半数の方が、防音工事の効果について、全くないあるいは余りないと回答するなど、大変残念なことですが、地域住民の多くが被害を受けている状況には変わりないというのが、どうやらこの調査の結果の中でもあらわれているのではないかと私自身も感じております。

 国の助成によります防音工事を実施した住宅においては、屋外、工事を施した室内、施されていない室内それぞれで騒音計測というものを県が実施しております。この結果を見ますと、工事仕様で計画された遮音量、音を防ぐ量ということでございますが、Aゾーンという一番うるさい地域では二十五デシベル以上。デシベルというのは騒音のいわゆる計測値でございます。Aゾーンで二十五デシベル以上、Bゾーンでは二十デシベル以上と定められておりまして、この計画遮音量はほぼ達成されている、また効果があるというふうにこの結果では出てきております。

 しかし、一方で、先ほど申し上げましたように、効果がないと回答された方々の現実もあるわけでございます。騒音の程度、これは外の騒音というのも、一応八十とか八十五を基準に、恐らくAゾーンでも二十五デシベルくらいを遮音すればいいのじゃないかということを想定されているのじゃないかと思いますが、場合によっては百デシベルとか、極端な音が出ることもあるわけでございますね。騒音の程度によっては、依然として、防音工事を施した室内においても高い騒音が計測されるということもございます。現状の計画遮音量では、十分に騒音被害を解消できないのではないかというふうにも見受けられる部分もあるわけでございます。

 せめて防音工事をした部屋に関しては、そこに暮らす住民が静かに暮らせる状況が実現できる、そういった遮音量を実現いただけないかというふうにも思うわけでございますが、この遮音量についての見直しというものがあるのかどうか、その点につきまして最後に御質問させていただきます。

伊藤政府参考人 先生御指摘のとおり、二十五デシベルというようなのが一つの基準としてございます。これは八十W以上のところでございます。

 このもとは、まさに環境庁の告示で、航空機騒音に係ります屋内の環境を六十W以下にするという基準でございますので、したがって、屋外が例えば八十五だとすれば、二十五デシベル下げますと六十になるという理屈になっておるわけでございます。したがいまして、今先生も御指摘のとおり、それだけの効果は得られているはずでございますが、ただ、W値は、これも釈迦に説法でございますけれども、いわば一日の平均値を示しておりますので、恐らく、瞬間的な意味での騒音というときには、よりうるさいとお感じになるケースもあるかもしれません。ただ、現状では、基本的にはやはりこの環境庁告示というのをベースにせざるを得ないということでございます。

 ただ、今のようなお話もございますし、私どもとしては、より騒音の高いところにはそれなりの工夫をしておるつもりでございますけれども、さらに、今後この遮音量を増加する工法というものがあるのか、そういったことについては、引き続き調査検討を進めてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。

江崎分科員 以上で私からの質問は終了させていただきますが、先ほども申し上げましたとおり、国の安全保障と住民の生活権、これらは並行して考える時代に入ってきていると思います。政府におかれましても、財政事情が大変厳しいということにつきましては十分承知しておりますが、今回の神奈川県の調査、あるいはこれから実施されます国の調査におきまして、この騒音対策というものにつきまして今後も十分に御検討をいただきまして、さらなる御配慮をいただきたいというふうに思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

亀井主査 これにて江崎洋一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、大石尚子君。

大石(尚)分科員 民主党・無所属クラブの大石尚子でございます。

 本日は、愛媛県立宇和島水産高校海洋実習船えひめ丸と米海軍原潜グリーンビル、この衝突沈没事故に関連いたしましてお尋ねいたしたいと存じます。

 まず冒頭、このえひめ丸に乗船しておられた方々及び御家族の方々に、心からお見舞いの気持ちをあらわさせていただきます。

 この事故を再び起こしたくない。かつて、一九八一年、日昇丸という我が国の貨物商船が、鹿児島沖でやはり米潜水艦にぶつけられたという事故もございました。二度と再び起こしたくない。そして、今度の事故が、二十一世紀日本の水産業をしょって立ってくれるはずの人たちの夢を奪っているのではないか、あるいは水産業等々の人材育成に影を落としてはならない、この災いを土台にして必ず発展へつなげていきたいという気持ちから、質問させていただきたいと思います。

 昨今、ちょっと私心配しておりますのが、日米関係の悪化につながると思われる幾つかのコメントが出だしていることでございます。

 ハワイの方たちは、えひめ丸の家族の皆さんに対して募金活動を始めてくださったとか、あるいは、向こうのテレビ局、マスコミの方たちは、どんどんと米海軍に先んじて実態を明らかにするよう努力してくれている。また関係筋の皆さん、いろいろと大変努力をしておられて、特に、二十七日には、ファロン米特使が日本に来られて、ブッシュ大統領の書簡を持参され、謝罪をされた。また、昨日は、望月外務政務官に原潜のワドル前艦長から、家族の方々へと、直接おわびの手紙を託された。そういうようなこともございますが、どうもアメリカの中で、日本に対する反発のコメントが出だしている。

 二月の二十七日に、これはワシントン・ポスト、オピニオンコラムニストのコーエン氏が、日本の戦後処理に絡めて、また沖縄に駐留している米海軍に対する日本人の感情に絡めて、我々は日本にもう十分謝罪したのに、日本人だって戦後処理、十分謝罪していないじゃないかというような、事実を誤認した報道がなされた。それに対して、日本の柳井米駐在大使は、その記事に対して批判をなさる一方、こうした議論は今後も出てくる可能性があるというコメントも、記者会見で述べられているようでございます。

 先んじて、これは毎日新聞、二月十九日の報道でございますが、ハワイ沖実習船沈没に関連して、アメリカの排日メッセージについて、これは、カリフォルニア州のエリック・ガリスさんという方が、ホームページに米海軍の行動に対しての批判を載せられた。そのホームページに退役軍人の方々らが反日メッセージを、日本の船が真珠湾に近づく権利はないとか、あるいは、海を支配するのは米国だ、ほかの国の船は出ていってほしいというようなメッセージをホームページに寄せられた。

 パールハーバーは、思えば、アメリカの若者たちがたくさん眠っているハーバーでもございます。それゆえに、せっかく日本の文化が少しずつ理解され出して、日米の文化の違いなどが双方の国民の中に認識され出しているやさき、残念な気持ちがしておりますので、この日米関係の悪化については、各国の報道のコメントを見ましても、危惧を寄せられている面もかなりございました。

 それゆえに、今後、何とか悪化しないように、今まで以上のいい日米関係をつくり出す。特に、若者たちが、水産高校の生徒を含めてこれから水産業に従事していく日本の若者たちの交流を含めて改善されるように、いい方向へ向くように、日本のこの問題に携われるすべての人が努力していく必要があるのではないか、そんな気持ちを持っております。

 そして、斉藤防衛庁長官にまずお尋ねいたしたいのでございますが、これは、朝日新聞のホームページに、三月一日に掲載されていた記事でございますけれども、「日米防衛首脳、十九日に会談実施 原潜事故協議へ」という見出しで、斉藤防衛庁長官とラムズフェルド米国防長官との首脳会談が三月十九日に内定したというような記事が出てございました。これが本当に十九日に実施される予定であるのかどうか、そして、どういうお話し合いをなさるおつもりなのか、原潜事故問題に関しては特に何を御主張なさるおつもりでおられるのか、お尋ねいたしたいと思います。お願いいたします。

斉藤国務大臣 お答えいたします。

 ただいま大石委員のお話を承っておりまして、大変悲しい事故が起きた、しかしながら日米の関係というのもしっかりと築き上げていかなければならないと胸を打たれたところでございます。

 御質問の、新聞記事による、私が十九日にアメリカのラムズフェルド国防長官との会談ということは、確かにニュースとしては流されましたが、まだ日程は調整中でございまして、完全にコンクリートされているわけじゃございませんものですから、まだまだ流動的なものがあるということでございます。

 が、今後の調整の中でこのような機会がいただければ、私としては、今回、非常に不幸な事件でありました米原潜とえひめ丸の関係、これについてもテーマとして取り上げて、特に、日本の場合、日本の国民、さらに御家族の方、関係者の方が納得するような形でこの事件が、事故が決着できれば、解決の方向へ向かってくれればというふうに思っておりますので、そのような方向で話を進めていければというふうに思っております。

大石(尚)分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、いずれ近いうちに会談が持たれることになるのだと思いますので、お立場、御努力くださいますように、よろしくお願いいたします。

 それに関連いたしますと存じますが、これはCNNのやはりホームページから拾ってまいりましたもので、米海軍の査問会議、これは審問委員会と言ってらっしゃるところもあるように聞いておりますが、日本側から、海上自衛隊舞鶴地方総監部の小澤勇海将補が招聘されて、招かれて出席されるようになった、これは日本の報道にもあったかと存じます。

 この海将補がどういうお立場で参加されて、そして、この参加される査問会議あるいは審問委員会、これはどういう方々のどういう構成になるのか、そして、日本の立場として小澤さんが何を主張なされることができるのか、また、この委員会というものは、あるいは会議というものはどれくらい予定されているものなのか、事情をお聞かせいただけませんでしょうか。

斉藤国務大臣 委員御案内のように、今回のような事故を二度と繰り返さないためにも、米側に対して事故状況の徹底的な究明を再三にわたって働きかけてきた経緯がございます。そういったところへ、米側より、本件事故の徹底的な調査を行うために開かれる米海軍審問委員会、これは英語ではコート・オブ・インクワイアリーと申すのだそうでありますが、その委員会に日本から海上自衛隊の将官をアドバイザーとして派遣するよう要請がございました。それに基づきまして、潜水艦艦長を経験いたしました海上自衛隊の将官である小澤勇、これは海将補でございますが、これを外務事務官に兼任の上、派遣をいたしたところでございます。

 この審問委員会は三月五日に最初は開かれるというふうに聞いておりますが、米側の説明によれば、アドバイザーは、審問委員会構成員にアドバイスを言うほか、証人及び当事者に質問することもできるということでございまして、また、特定の事項が調査されるよう要請することができる、そういった権限も有するという説明でございました。ただ、アドバイザーは投票権がないメンバーだということでございまして、アドバイザー個人または日本政府が委員会の決定に対して責任を有することはない、この点については米側と確認済みでございます。

 この審問委員会、なかなか聞きなれない言葉でございますが、重大事件の事実関係を明らかにするための行政的な機構でございまして、三人以上の将官によって構成される委員会でございます。その審問委員会には、法律アドバイザーを任命するほかに、必要に応じて技術アドバイザーを任命できる、また、法律アドバイザー及び技術アドバイザーを任命できるが、しかしながら、それらの人々は投票権を持たない、こういった内容のものでございます。

 防衛庁としては、本件審問委員会において、小澤海将補の専門的知見が活用され、早急かつ徹底的な調査が行われ、適切な勧告が行われることを期待いたしているところでございます。

 なお、どの程度の期間がかかるかということでございますが、先日、ファロン特使にお会いいたしましたところ、何カ月という単位ではなくて、何週間の単位だということを申しておりました。

 以上です。

大石(尚)分科員 ありがとうございます。

 小澤さんは技術アドバイザーとして参加されて、いろいろと御質問もおできになるように伺いました。そして、審問委員会と今度から言わせていただきますが、この審問委員会には傍聴者も傍聴できるようにちょっと耳にいたしております。

 荒木外務副大臣にお尋ねしたいのでございますが、むしろお願いになるかと思うのですけれども、専門家のお立場で小澤さんがアドバイザーとして出席していただける、そのほか、法律的な立場と申しますか、弁護士さんとかあるいは法律学者とか、これは、日本側の関係者がいろいろな取り調べにいずれ証人としてお立ちになるようなことが出てくるのではないかと思いますので、ぜひその審問委員会に法律家あるいは弁護士を傍聴者のお一人として派遣なさることをお考えいただいた方が、後日の展開のためにいいのではないかなと思っております。

 それともう一つ、防衛庁長官に、首脳会談にお臨みになられましたときに、これから、審問委員会の後、その結果、軍法会議が開かれるのかどうか、あるいはその後、刑事的なあるいは民事的な裁判へと発展していくかもしれない今回の事件でございますので、家族の方々の思い、あるいは関係者の思いを考えれば、ぜひスピーディーにこれらのことが取り運ぶように、これは防衛庁長官も、あるいは外務副大臣のお立場からも、いろいろの場で臨んでいただきたいと思うのでございます。

 以上のことをお尋ね申し上げます。

荒木副大臣 日本から派遣をいたします技術アドバイザーの小澤さんのフォローアップについては、外務省としてもしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 ただ、御指摘の、法律家あるいは学者あるいは弁護士を傍聴に加えるという点につきましては、傍聴について日本側に割り当てられる傍聴席数が限定されているという関係もありまして、もちろん御家族がまず優先されるべきでありましょうし、困難な面があることは確かであります。

 しかし、審問委員会での議論を我が国としてきちんと把握できるように、しかるべき形でフォローをしてまいりたいと思っております。

斉藤国務大臣 重ねて、日米防衛首脳会談において、申し入れることをしっかり申し入れろというお話でございました。

 現在、日程を調整中でございますが、国会の日程もこれあり、まだ具体的な日程、議題等については確定したわけではございませんが、かねてより、原因追求、また引き揚げ等々について、私どもたび重ねて要請をしてきた経緯がございますので、早急かつ徹底した事故原因の究明を行っていただき、事故の再発防止に万全を期すよう要求する、さらに、船体の引き揚げについても強く相手側に申し上げていきたいというふうに思っております。

 なお、今後の事故調査の見通しでございますが、米側の説明によれば、審問委員会には定められた期限はございませんで、事故に関して十分かつ公平な調査を確保するのに必要な期間、開催されるということでございますが、先ほどお答えいたしましたように、大体数週間ということが予測されるのかなというふうに思っております。

 また、こうした調査の後、委員会による事実認定、意見及び勧告が、委員会招集権者たるファーゴ米太平洋艦隊司令官に提出をされまして、ファーゴ司令官は、この勧告に基づき行動いたしますが、報告をより高位の者に伝達することができるとの、そういったシステムになっております。

大石(尚)分科員 ありがとうございます。

 ぜひ双方のお立場で、御家族の方々が納得されて、そしてこの問題が早く解決できるように、特に船の引き揚げの問題は、これは技術的に、今までしたことのない大変難しい問題を抱えていることだけに、いろいろな実態に基づいた情報を、これは家族の方にも関係者の方にも情報を開示していただきまして、そして皆様方のお気持ちが納得されて、事の解決に当たっていただけるよう御努力いただきたいと思います。

 それでは次に、ちょっと細かいことで恐縮でございますが、ことしの三月一日の週刊文春の記事に関連いたしまして、一、二、お尋ねいたしたいと思います。

 この週刊文春の中に、これは元米海軍のチーフを務めていた方のコメントとして、えひめ丸は白い船体でございます。特に、今、日本の水産学校の実習船、二十隻ほどあるようでございますが、海洋実習はほとんどハワイに行っているようでございます。ハワイのオアフ島というのは、そこら辺の景色が白っぽいそうでございまして、それからあと、波の砕ける色は白でございます。それゆえに、潜望鏡で目で見た場合、大変見にくいことがある。これが事故につながった原因とは考えられないと思いますが、少なくとも、ハワイの海で走っている向こうの漁船やヨットや何かは、大変カラフルな色に塗ってあるそうでございます。

 したがって、いわゆる私どもの努力目標としては、水産高校側の船、これは実習船でございますから、白い色でいいのかどうか、やはり色は塗り直した方がいいのではないかと私、今考えておりますものですから、どなたか御専門の立場で意見を聞かせてくださる方がおられたら、御答弁いただきたいと思います。

首藤政府参考人 一般的に、同じ背景の色の中に同じ背景の対象物があると見えにくいということは当然だろうと思いますが、今回の事故がどのようなことであったかにつきましては、今後、審問委員会の場でいろいろと原因究明がなされるものと考えております。

 それから、実習船の色をどのような色にしたらよいかというのは、大変申しわけございませんが、現在、関係の人が来ておらないというふうに存じておりますが、防衛庁の方からどうこう申し上げるのはちょっと差し控えさせていただきたい。(大石(尚)分科員「白で見にくい」と呼ぶ)一般的に、先ほど申しましたように、背景と同じ色のものというのは見にくいというようなことはあるかと存じますが、他方で、普通、海原に出ました場合は、海は青い、あるいは空が曇っている、さらには夜間はもちろん暗いといったような中で、白というものはそれなりに非常に識別しやすい色である場合もある。いろいろなケースがあろうかと存じます。

大石(尚)分科員 ありがとうございます。

 実習船側からレーダーを回しておりますと、それが潜水艦側の方で浮上してきたときに、あるいは潜望鏡が上がってきたということは、やはり海上に出てきたときだと思いますけれども、そのレーダーを受信するような装置があると伺ったのでございますけれども、実習船がレーダーを回す、あるいはお魚の探知機を回しているということ、それが身を守ることにもつながることもあるのでしょうか。

首藤政府参考人 先生の御質問を私、的確にとらえているかどうか。仮に潜水艦の方が、漁船その他の商船が発するレーダーを探知する装置を持っていればつかまえやすいということであれば、一般的にはそう言えると思いますけれども、ただ、潜水艦はその名のとおり通常は潜っておりますので、その場合はレーダー波は水面の下には届かないということがあろうかと存じます。

 それが逆に、先生の御質問が、実習船の方が相手の方のレーダー波を探知するという装置を持っていればということでございますれば、それもそのとおりだと存じますが、これまた潜水艦は浮上するまでは、レーダー波あるいはパッシブソナー、潜っている間はレーダー波を発することはあり得ませんので、そういったことだろうと存じます。

大石(尚)分科員 実習船側が潜水艦を探知できるレーダーを持つということは、これはもう不可能なことだと承知しております。

 それで、いわゆる波間に隠れる、それから映像がはっきり見えにくいというようなときに、実習船側でレーダーを発信していれば、浮上した潜水艦がそれをキャッチできるかという意味だったのでございます。それはできるということがわかりましたので、これも一つ、頭の中にしまっておきたいと思います。

 最後にもう一つ、これも同じ、先ほどの三月一日の週刊文春の記事の中に、今回の事故発生時のことを、軍事専門家と称する方のコメントとして、いろいろとあります記事の中の一節でございますが、「実際、官邸に軍事のわかる者など一人もいないのに、事故の後、官邸と統幕あるいは官邸と海幕の間に、何の連絡もありませんでした。」というくだりがあるのです。これは私の知る限りでは、完全な事実誤認だと思っております。官邸の中に制服組の方々がいられることを、もう既に執務していらっしゃると思いますので、これをちょっと、事実はこうだということを表明していただけませんでしょうか。

斉藤国務大臣 官邸にというお話でございますが、防衛庁は現在、内閣官房副長官補というところに三名、さらに内閣情報集約センターに五名の自衛官を、それぞれ派遣いたしてございまして、四六時中ずっと情報はとれる体制をとってございます。したがいまして、一たん事があってニュースが入った、これは大変なことだといった場合は、直ちに総理に連絡が行くシステムになっております。

 したがいまして、全く総理との接点がないということはおかしいというふうに、私は、その記事がちょっと信頼性に欠けるかなというふうに思っております。

 また、ちょっと質問がずれちゃうんですけれども、先ほど委員は、船の色等々、例えば蛍光色を使えとか、子供さんが夜歩くのに黄色だとよく見えるとか、そういうようなことも含めて、御参考に御発言いただいたんではないかと思っておりますので、これは担当が文部科学省でございますので、そちらの方ともよく打ち合わせをさせていただきたいというふうに思っております。

大石(尚)分科員 ありがとうございます。ただいまの官邸と統幕あるいは海幕との間の連絡についての記事でございましたが、これは当然なされていると私は認識しております。

 それで、もう時間が参っていると思います。今回の本当にあってはならない、悲しい事件でございましたが、現に、さきに取り上げましたワシントン・ポストのリチャード・コーエンさんの記事を受けて、これまたそれを受けた形で次の記事が、これは昨日の読売新聞の夕刊によれば、フランシス・フクヤマさんという日系の方が、謝り方に関する日米の文化の違いを述べながら、日本をカバーしながら、なおかつ日本にも考え直すところがあるんじゃないかというような論文、コメントを、これは既にウオール・ストリート・ジャーナルに寄稿しておられる。

 したがって、柳井駐在大使が危惧されたように、何か今回の問題が他の問題に広がって、いろいろと日米間あるいは日本の文化が論ぜられるような雰囲気が米国の中に出てきているのではないか。したがって、私どもも注意して、日米関係の悪化につながらないように、なおこれを土台にしていい日米関係、お人とお人との交流が実現するように努力してまいりたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたしたいと思います。

 ありがとうございました。

亀井主査 これにて大石尚子君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして防衛庁についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

亀井主査 次に、内閣について質疑の申し出がありますので、これを許します。松本善明君。

松本(善)分科員 官房長官、内閣官房報償費について、一昨日も内閣委員会で質問をいたしましたが、続いて質問をさせていただきたいと思います。

 やはりこれは政治不信の最大の問題の一つになっていて、本来、内閣官房報償費の横領であるにもかかわらず外務省の問題にして、内閣官房としての調査だとか再発防止の決意の不足を質問の中で私は痛感したのであります。

 一昨日、官房長官は、私たちの提起をしております「報償費について」という文書についての筆跡鑑定、私の方でやったらどうかというお話がありましたが、これは私の方、赤旗でやりまして、天野瑞明さんという日本調査業協会事務局長に鑑定を依頼しまして、やはり古川さんの筆跡であるという鑑定が出ました。内閣官房でもおやりになる気はありませんか、この間もお聞きしましたが。

福田国務大臣 前内閣委員会でそのようなお話がございまして、その文書なるものも、その前の、志位委員がこの予算委員会でお示しをくださったというようなことで、そのことでおっしゃっているんだろうというふうに思いますけれども、私ども、実際、この文書そのものが雑誌やら何かに数年前から出ているというように記憶いたしておりまして、今回初めてというものでないというように私は承知しております。

 その出所が、はっきり申しまして、よくわからないんですよ。確かに、便せんに内閣という字が書いてございまして、それらしきものであるように見えますけれども、しかし、あの便せんそのものが極めて特別なところにあるというわけでなくて、多分、この国会の中にも置いてあるんじゃないかなというように思います。割合方々に置いてあるというようなものでございますし、筆跡鑑定というお話がございましたけれども、その文書の根拠がはっきりしない。根拠がはっきりしないものについて一々取り上げて、そして調べなきゃいかぬということ、そのことがちょっと私どもには納得いかない、こういうことなんです。

松本(善)分科員 変わらないということですね。

 ここに、「夜に蠢く政治家たち」という、料亭大野の玄関番をしていたという人の小高正志さんの著作、福田さん御存じのものだと思いますけれども、これは福田内閣時代のもので、当時の官房長官は安倍晋太郎氏、官房副長官は森喜朗氏、福田官房長官が総理大臣秘書官をなさっていた時期のものであります。

 この書物を改めて見ますと、はしがきに、「なぜか連日のように飲み食いに訪れる総理秘書官、」とか書かれている。それから、「こんなお金がどこから出るの? 総理秘書官の料亭遊び」「イヤなお客は総理秘書グループと外務省のお役人と相場はきまってる」というような目次の小項目もあります。

 福田秘書官のことは、ここ、さっと見ただけで、この赤い附せんのあるところは結構たくさんあります。福田秘書官の風貌、振る舞いまで書かれている。もちろん、連日のように訪れる総理秘書官が福田さんという意味ではないと思いますけれども。

 こういう費用は一体どこから出ていたんでしょうか。報償費からではありませんか。あなた、よく御存じでしょう。

福田国務大臣 その本自身、もう二十数年前の話でしょう。私も、当時、そういうのが出たので見ましたよ。見ましたけれども、その内容について信憑性はどのぐらいあるのか、こういうこともまずございます。私のことについても間違えている記述が大分ありますし、たくさん附せんをつけておられるけれども、全部トータルしますと、私なんか、月に一回行っているか行っていないかというぐらいな感じです、見ていただければわかりますけれども。連日なんていうのは私の場合にはなかったし、ほかの秘書官も、そんなに連日というふうに書かれるほど行っていなかったと思いますよ、当時の秘書官の名誉のために申し添えますけれども。

 そんなことで、ちょっとその本自身が、おもしろおかしく、またプライバシーについて、私どもじゃないですよ、政治家とか財界人のプライバシーについて書いている暴露本。憶測も随分入っていますね。例えば、その方は下足番でしたかね、だけれども、部屋の中で何をしているかみたいな想像的なことも随分書いているということで、世に誤解を招く本だというように私は思っております。

 その費用がどうなのか、それは、失礼ながら、私どもは事務所の経費もございますし、いろいろなやり方があるわけでございまして、そういうことでもって結びつけて考えられては困るというように思っております。

松本(善)分科員 ここにあることがすべて真実だというふうに言っているわけではありませんけれども、この費用については、私たちの党の、亡くなられた中川利三郎代議士が質問をしておりまして、その議事録の中で、小高さんは中川さんに請求書は内閣官房に送ったと証言しているということを紹介しております。

 そのほか、報道では、総理官邸、首席内閣参事官が官邸名義の口座を持っている銀行に依頼した支払いリストにずらっと高級料亭や割烹の名が並んでいることを報道したものもあります。この種の請求は内閣官房に来ていたんじゃないですか。

福田国務大臣 私はそういうことを承知しておりませんけれども、ではその証拠を出せと言われてもちょっと困ることで、当時、もう二十数年前のことですから、記録も残っているかどうかわかりませんし、調べようもないし、それは何とも言えません。報償費を払う方の立場として、報償費の使途については申し上げないというようなことになっておりますけれども、そういう印象だけで言われても困るというように私は思います。

松本(善)分科員 今、非常に疑惑の焦点の一つになっているわけですよ。毎日でないにしたって、総理の秘書官に料亭通いをするだけの金があるとも思えない。そういうことはなぜやっているんだろうかというのは当然の疑問なんですね。私は、そういうことを解明する責任もあろうかと思います。

 それで、ちょっと形を変えて聞きますが、官房長官は予算委員会で、社民党の辻元さんの質問にこう答えていらっしゃる。「せんべつ、せんべつとおっしゃいますけれども、これは内閣がかわりますと、やり方が変わるということもあるのかもしらぬけれども、かつてあなたの政党でそういうふうにやっておられたのかどうか知りませんけれども、」これは村山内閣のことを言っていらっしゃるのですかね、どうかわかりませんが、「基本的にはそういうことはないと私どもは理解しております。」と答弁をされました。

 この答弁は、過去はともかく、少なくとも福田官房長官はせんべつに使わないということを言われた趣旨が含まれているんでしょうか。

福田国務大臣 そのように御理解いただいて結構です。

松本(善)分科員 そうすると、せんべつに使わないということはわかりました。国会対策あるいは野党対策に使用することもすべきではないと思いますが、いかがでしょう。

福田国務大臣 ですから、報償費の使途については、内容を言わないことになっているんですよ。これは伝統的にそういうことでございます。それを言うことが外交、内政上の支障を来す、そういう可能性があるということで言わないことになっておりますので、そうやって具体的に聞かれますと、いろいろすべて言わなければいけなくなってしまうということを含みますので、私は使途については申し上げないということで御理解を賜りたいと思います。

松本(善)分科員 今、せんべつに使わないということで理解していいと言ったじゃないですか。

福田国務大臣 いや、だから……。

松本(善)分科員 ちょっと慌てないで。

 せんべつに使わないということが言えて、野党対策に使わないということが言えないというのはおかしいんじゃないですか。

 それから、あの「報償費について」という文書の中では、自民党外交対策費というのもありました。これの真偽はあなたは認めておられませんけれども、では、例えば自民党外交対策費、自民党のために使うということもあってはならないように思いますが、そういうことは否定するということはできますか。

福田国務大臣 使途に当たることは申し上げない、こういうことになっております。

 その前に一つ申し上げておきますけれども、せんべつ云々というのは、これは私はしていないけれども、ほかの方がどういうふうにやっておられるか、知らない。それはわかりません。私はしていない、こういうふうに申し上げたのであって、これは特別サービスだ、このように思ってください。

松本(善)分科員 していないのはわかりました。する考えもないんですか。

福田国務大臣 報償費は使途を言わないということにおいて、これは使う人の責任というのは極めて重いんだというふうに思っております。そういうことから、厳正に使用するということに徹しなければいけない、そんなふうに思っております。私もそのことに徹してやろうということで、今やらせていただいておるわけでございます。

松本(善)分科員 厳正に使うということだけでは済まなくなってきているんですよ。私的な流用、横領はいけない、これはもうはっきりしていますね。

 しかし、国会対策費、野党対策、自民党外交対策費、せんべつ、そういうものについては、言わないということは使うことはあり得るということになるんです。国民はそう思いますよ。今までのいろいろな報道、例えば野坂浩賢さんとか塩川正十郎さんとか官房長官経験者、その他何人もいろいろな発言をしていらっしゃいますよ。それは国民の中の疑惑を消すことは絶対にできないと思うんです。

 こういう状態で、報償費の使い方の改善はしませんか。今までは、使途を言わないと。だけれども、これだけ国民の疑惑が集中しているんですよ。私は、報償費の使い方の改善は当然しなければならぬと思うんです。その気は全くありませんか。

福田国務大臣 報償費については、もう何度も繰り返すように、その内容は申し上げることはできない。このことは、機密費と言われるものもそうかもしれませんけれども、例えば外務省なんかでも、情報活動のためにその内容については言えないということを再三申し上げているわけですけれども、私は、そういうものは内政においても外交においてもあり得るべきものだと思っております。したがいまして、ほかの国におきましても、ある程度のものは皆認められているというようなことも、いろいろ調査してわかってはおりますし、そういうものはあり得るものだというふうに思っております。ですから、会計検査とかそういうことも免れている国もあるようでございますし、これは必要な経費として考えるべきではないかと。

 その内容について申し上げるということにつきましては、これはいろいろと支障があるから言わないだけであって、言えるものであったら言ったらいい。そういう意味において、これから改善する余地があるかどうか、これは検討させていただきたいというように思っております。

松本(善)分科員 例えば外国からの情報収集費とか、そういうようなことならまた国民が理解する場合もあるかもしれぬけれども、国会議員が外国へ行くときのせんべつだとか、野党対策費だとか自民党の中で使うとか、それは到底理解できないですよ。そこを否定しないということ自体が問題だと思います。

 予算の減額の問題にちょっと移ろうと思います。

 松尾室長の横領分は最終的に捜査の結果どういうふうになるかわかりませんけれども、外務省の告発は五億六千万円ぐらいです。それから、現在は実費支払いということになっているようですが、総理同行の場合の宿泊差額を九億六千万円渡したということのようですね。これはわかっているものだけでも一定金額の予算が減額できることは明白だと思うんです。予算の減額をする考えはありませんか。

福田国務大臣 今回、金額を今おっしゃいましたけれども、実際に損害を受けた金額というのはまだ確定していないわけですね、今捜査の途上にあるということでございますから。そういう意味においては、これからそういう被害金額がはっきりするという状況において全貌はつかめるわけで、我々もその段階においてどういうことが起こったのかということを知り得るということになるわけであります。

 そもそも報償費というのは、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行する、その都度の判断でもって機動的に使用する経費であるということでございまして、何回も繰り返しますけれども、国政運営上不可欠のものであるということでございます。

 我が国の予算の規模、経済規模が大分拡大している、そしてまた首脳外交とかいう外交の場面も随分ふえているというような状況の中で、ここ十年ほどは予算規模はほとんど変わっていないんです。ということもございますので、我々としてはこれを減額するという考えは今持っていないということを申し上げたいと思います。

松本(善)分科員 この報償費は、戦前の機密費の流れだというふうに言われています。御紹介したいと思いますのは、戦前、尾崎咢堂がこれを追及しているんですよ。そして、なかなかこれは詳細に軍の使っている機密費その他を調べたわけですよ。こういうことを言っている。

 「機密費ノ名義ニ欺カレテ之ヲ国家有用ノ為ニ使ハレルト思フ者ガアルナラバ、全ク政界ノ裏面ヲ知ラナイ素人」「極ク悪イモノハ議員買収費ニ使ヒ、更ニ軽キモノハ宴会費其他ニ使ッテシマフノガ大部分デアル」腐敗事件をあいまいに付するほど国家に危害を与えるものはありません。この議事録があるんです。なかなか詳細に調べていまして、学ぶに足るものでありますが、その結びは、「諸君ノ良心ニ訴ヘル」で結んでいるんです。

 官房長官、これを聞かれてどう思われますか。良心の痛みはありませんか。

福田国務大臣 随分昔の機密費のお話をされましたけれども、当時の機密費というのは、私もよくは知りませんけれども、それは巨額の機密費だったんじゃないでしょうか、だと私は思っております。ですから、今の報償費の金額と比較できるかどうかなというように思っております。

 先ほど申しましたような、使途を明確にできない、そういう性格から考えまして、この運用は厳正かつ効果的な運用、これをしなければいけないわけであります。こういうようなことが起こりましたからには、さらに点検を強化して、そして、さらに厳正な運用に努めるということ以外にないんだろうというふうに私は思っております。

松本(善)分科員 尾崎さんは、軍が使っている機密費というのはごく少ない、議員買収費や宴会費にほとんど使っているということを言っているんです。

 それで、一昨日、内閣委員会でも紹介しました二十二日付の日経の社説は、予算の成立を急ぐ余り、KSD疑惑、機密費流用疑惑について究明をおろそかにしてはならぬ、与党の方から減額修正ということもある、減額修正という形できちんとけじめをつけないと政治不信はますます募るばかりである、こういうことを言っています。それから、政府・与党はきょう、衆議院で採決しようとしておりますけれども、仮に衆議院を通過しても、成立するまで減額修正することはもちろんできます。成立してからも減額の補正をするということもできます。これは衆議院で採決したからといって終わるものじゃないですよ。自公保政権が続く限りずっとついて回りますよ。だから、これを解明しない限りは国民は絶対に納得しない。きょうは衆議院段階でもうその減額修正の余裕はないかもしれませんけれども、そういう問題について、減額修正を考えるお考えはありませんか。

福田国務大臣 今回の事件の全貌をまず見たいと思います。

 いずれにしても、先ほども申し上げたとおり、この報償費については、ここずっと変わっていない、そういう状況がございますので、我々としては、今これを減額しなければいけないというようには思っておりません。

松本(善)分科員 これでは政治不信はますます高まると思います。

 野党共同の今年度予算共同組み替え要求の第一項目では、「内閣官房報償費及び外務省報償費等の仕組みの抜本改革と適正額への大幅削減」ということ、野党はこれを中心に位置づけております。そのくらい重要な政治問題です。私はやはり、官房長官にこの点の重要性の認識が極めて薄いと思います。

 内閣官房報償費及び外務省報償費等の仕組みの抜本的改善と適正額への大幅削減を要求して、官房長官への質問は終わりますので、あとは会計検査院に聞きますので、御退席いただいて結構です。

 会計検査院長に伺います。

 今、尾崎咢堂さんの演説の一部を紹介いたしましたが、戦前の会計検査院法二十三条は「政府ノ機密費ニ関ル計算ハ会計検査院ニ於テ検査ヲ行フ限ニ在ラス」として、機密費は会計検査の対象から除外をしておりました。ところが、憲法九十条は「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、」となっている。戦前のように機密費扱いはできなくなったのですね。ところが、現在、この報償費は機密費の流れをくむと言われておりますけれども、尾崎演説と同じことが行われて、政治不信の最大の原因の一つになっているのではないかと非常に大きな疑惑があるわけです。

 ところで、本委員会で我が党が「報償費について」という文書を提示して質問しまして、これが大きな波紋を呼んで、テレビ朝日系ニュースステーションは、四人の専門家の筆跡鑑定をするとともに、ほぼ断定的に、筆者は官房副長官古川貞二郎氏と報道いたしました。私どもも独自に筆跡鑑定をして、そういう結論を得ております。古川氏は否定をしておりますけれども、ほかの党も同一文書とニュースステーションの報道を前提に質問をしております。世間はみんなこれをそうだと思って扱っております。

 この文書には、「官房長官が取り扱う報償費は、予算上、内閣官房と外務省に計上されており、形式的には外務省計上分を内閣官房に交付する形をとって」ということで、もしそのとおりだとすれば、これはもちろん財政法違反でありますが、この真偽を確かめないで会計検査をすることはできないと私は思うんですが、今回の会計検査については、この文書についてどう扱われますか。

石野会計検査院当局者 お答えします。

 今回の事態につきましては、会計検査院としまして、現在、内閣官房の報償費ということで検査を実施し、今お話しの事実関係の把握に鋭意努めているというところでございます。

松本(善)分科員 この文書について調べますか。調べないでやるんですか。事前にこの文書もニュースステーションのことも紹介してありますので、検討はしていると思いますが。

石野会計検査院当局者 お示しの文書は、内閣官房で作成された文書ではないというふうに官房長官が予算審議の場において答弁されているというふうに承知しております。

 検査院といたしましては、さまざまな資料等により事実の把握に努めることが肝要だというふうに考えております。

松本(善)分科員 検査院長に聞きますが、官房長官が言っていることをそのままうのみにしていたのでは、私は、会計検査院の役目は果たせないと思うんですよ。この問題については、国会も存在意義が問われると言われています。会計検査院はますますです。これは官房の言うとおりにやるというのならば、会計検査院なんか要らないんですから。重要な資料として野党も提供し、筆跡鑑定でも同一だというのはいっぱい出ている。筆跡鑑定を含めて、会計検査院としてこの問題を調べないで会計検査できないと私は思いますけれども、院長、どう思いますか。

金子会計検査院長 ただいま局長の方から御説明申し上げましたとおり、会計検査院といたしましては、さまざまな資料を前提として事実の把握をしていきたいというふうに考えております。

松本(善)分科員 そうすると、私どもの提供した文書も一つの資料として検討するということですか。

金子会計検査院長 さまざまな資料というふうに申し上げましたけれども、その中に含めて取り扱っていきたいというふうに考えております。

松本(善)分科員 その際に、国会議員外遊の際のせんべつ、国会対策費、野党対策費、それから、自民党外交政策費というように自民党のために使う、政権党のために使うというようなこと、こういうことは許されないと思いますが、そういう立場で会計検査をおやりになるんでしょうか。

石野会計検査院当局者 内閣官房の報償費につきましては、国の事務または事業を円滑かつ効果的に遂行するために、その状況に応じまして最も適当と考えられる方法により適宜適切に使用される経費であるというふうに承知しておるところでございます。したがいまして、今お話しの、適切な支出であるかどうかということにつきましては、具体の支払い状況に応じて判断していくべきものであると考えております。

松本(善)分科員 やはり院長に聞きましょう。

 内政、外交を円滑に遂行するためというのは官房長官の言うとおりなんですよね。報償費という言葉どおりからするとそういう中身は出てこないんですが、官房長官の言うとおりやるんだろうか。私は、すべて官房長官の言うとおりにやるなら、本当に会計検査というのは意味がないことになると思うんですよ。

 今私が提起しましたように、あるいは世間から提起されているように、報償費は、国会議員外遊の際のせんべつだとか野党対策費だとか自民党のために使うとか、そういうことは許されないというのが世論だと思うんですね。私は、そういうことを基準として、それは許されないという立場でやるのかどうかというのが会計検査院の存在が問われる問題だと思うんですけれども、院長の答弁を聞きたいと思います。

金子会計検査院長 報償費の問題につきまして、現在、事実関係を把握するということに努めております。どういうようなものに使われたかということについても、事実関係を把握し、そして、その上で評価をしていきたいというふうに考えております。

松本(善)分科員 それで、私はさっき、これは戦前の機密費と同じ流れで、同じことになっているということをちょっと言いましたけれども、計算証明規則十一条のいわゆる簡易証明の方法というのが、実際には、事実上の運用では領収書なしで使えるような、そういう乱脈なところがあるからこういう問題が、松尾のような事件も起こるし、やはりそこのところへきちっとメスを入れないといけないのじゃないか。

 私は、この機会に、これだけ大きな問題になっているので、計算証明規則十一条の適用の仕方の問題も含めまして会計検査の方法について、特に報償費の会計検査の方法について抜本的な改善が必要なのではないか、そういうことを検討する用意があるかどうか、院長に伺いたいと思います。

金子会計検査院長 予算委員会において何遍かのお答えを申し上げているのですが、今御指摘の十一条に基づく制度というのは、領収書を含めまして証拠書類が要らないという制度ではありませんで、経費の性格上、多くの人の目に触れさせるということを避けるという趣旨から、いわゆる証拠書類については当該官庁において手持ち保管を認める、そして、会計検査院の方では検査に当たって必要なときに提示を求める、そのときに提示をしてもらうという形になっております。

 なお、予算委員会でも申し上げましたけれども、今回の行政改革に伴って省庁の再編が行われました。それに伴いまして、十一条に基づく申請を再度出してもらうという必要も生じております。こういう機会をとらえまして、現在認められている報償費につきまして、関係省庁から改めて申請をお出しいただいて、そして、報償費の支出について適切な支出が確保できる、チェック体制を含めましてそういうものが整備されているかどうか、また、現実に機能しているかどうか、そういう点を十分留意して把握した上で十一条を運用していきたい。その上で、今後の検査については、そういうチェック体制が果たして十分に機能しているかどうかということを確認しながら、個々の支出についての適正さというのも検査をしていきたいというふうに考えております。

松本(善)分科員 時間なので終わりますが、十一条の仕組みはもう承知の上なんですよ。だけれども、事実上、六年間も松尾の横領事件が検査の対象にならなかったんでしょう。それはやはり検査方法その他、会計検査院は重大な反省をしなければならぬ問題ですよ。

亀井主査 時間が超過しておりますので、御協力をいただきたい。

松本(善)分科員 だから御質問をしたということで、質問をこれで終わります。

亀井主査 これにて松本善明君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

亀井主査 次に、金融庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。小泉俊明君。

小泉(俊)分科員 民主党の小泉俊明でございます。

 柳澤大臣、先ほどの財金から引き続きまして、御苦労さまでございます。よろしくお願い申し上げます。

 先ほど財金の委員会で宮澤財務大臣にもお聞きしたのですが、まず最初に、十年間にも及ぶ長期的な景気の低迷、そしてKSD事件、外交機密費の問題、えひめ丸の問題、検察官と裁判官の証拠のもみ消し事件など、さまざまな問題が噴出し、我が国の戦後の歴史の中でも今ほど立法も行政も司法も、三権のすべてに対する国民の信頼が失われたことはないと思います。国民の心の中には、今、どうしようもない閉塞感や不平不満、怒り、これが満ち満ちております。

 こういった状況の中で、我々政治や行政に携わる者にとって一番大切なことは、今謙虚に国民の声そして国民の思いを聞き、これにこたえることにより信頼を取り戻す以外にないと思うのであります。特に金融は、今後の日本経済の浮沈を決する国の要諦であり、ここに対する国民の信頼なくして日本経済の復活はあり得ません。

 まず、柳澤金融担当大臣の今の日本の政治全体に対するお考えと、金融行政を担当していかれる御決意をお聞かせいただきたいと思います。

柳澤国務大臣 大変難しい大きな問題を提起されましたので、行き届いた御答弁というわけにはいかないと思いますが、私が今御質問を聞きながら感じたところを率直に申させていただきたい、このように思います。

 私は昨今の、今先生御指摘の、立法、行政、司法、三権にあらわれている問題というのは、結局、一つの制度を余り長く維持することによって起こっている、制度疲労というような表現でよく言われることが多いのですけれども、そうした問題ではないか、このように考えておるわけでございます。

 そして、制度が長く維持されておりましても、その制度が本来の機能を発揮して、少々のいろいろな問題を持ちながらも、国民経済あるいは国民生活、あるいは国家の機構、組織といったようなものについてそれなりの成果を上げておれば、その制度疲労も局所的な対症療法というような形で対処することも可能だと思うわけでございますが、どうやらそういう問題ではなくて、と申しますのは、この現状の制度というのが、ここへ来まして急速にいい成果を上げられなくなった。スキャンダルのような話以外にも、本来その制度が機能を発揮して、国民、国家あるいは経済といったようなものにもたらすべき恩恵をもたらし得なくなっているということからして、私は、これについては相当大きななたを振るっていかなければいけないのではないか、このように考えているわけでございます。

 そういう中に我々の所管する金融という問題もあるわけでございますが、例えば私どもの国は、実はずっとこのところ間接金融に頼って、直接金融というものについてはそのウエートが非常に小さくなったままにこれを維持してきたわけでございますけれども、ここまで経済がボーダーレスになり、それぞれの経済主体が非常に広範な活動をするということになりますと、当然リスクも大きくなるわけです。それを金融仲介機能を担当する金融機関だけが背負い切れるかという問題が、昨今、一九九七年の十一月ころから顕在化した我々の問題である、こういう認識をいたしております。

 当座、臨時異例の措置として、これらが負った傷に対しては国民の税金でもってこれを修復するということをやったのでございますけれども、そういうものをいつまでも続けていくわけには当然まいらないわけでありまして、制度のかなり抜本的な改革が必要だということが、現在いろいろなところに出ている問題が表現していることであろう、このように考えているわけです。

小泉(俊)分科員 大臣、ありがとうございます。

 それでは、通告に従いまして、お手元に紙を配らせていただきましたが、一ページ目のA4の冊子をごらんいただけますでしょうか。

 これは、昨年、平成十二年十一月二十二日、新聞やテレビなどでも大変大きく取り上げられました、実は私の地元であります茨城県つくば市を中心といたします、ここに書いてありますが、地方公営企業であります筑南水道企業団を舞台に、企業団の一次長が、平成十二年、去年の二月二十一日になりますが、信金中央金庫から不正に自己名義の口座に何と百億円もの借り入れをしたという事件、これについて、金融機関に対する監督権限を持つ柳澤金融担当大臣にお尋ねいたします。

 まず、この事件は、これを見ていただくとおわかりになると思うのですが、貸し手側が信金中央金庫、振り込みを受けた側が地銀の関東銀行という二つの銀行が絡んだ百億円という前代未聞の不正借り入れ事件でありますが、大臣はこの事件について、テレビや新聞等では御存じでございましょうか。

村井副大臣 報道等を通じまして、私どももその限りでは承知をいたしております。

小泉(俊)分科員 この図を見ていただければ大変わかりやすいのですが、これは大体御理解できますか、事件の全容を非常に単純明快に書いたものでございますが。

 この事件は、地方公営企業が借り入れをしております政府資金や公営企業金融公庫の資金、いわゆる財投資金の金利が高いために、民間の金融機関から低利でお金を借り入れてこれを借りかえるという名目で不正に借り入れがなされていることが出発点となっております。

 そこで、基本的なことになりますが、後学のためにも教えていただきたいのですが、こういった財投資金が地方公営企業体に融資をされるような場合は通常、大体で結構でございますが、何%くらいの金利でございましょうか。

村井副大臣 私どもの所管ではございませんので、大変申しわけございません、責任を持った御答弁はいたしかねますが、その時々におけるいわゆる財投金利に何らかの上乗せをするとかいうような形で、そのあたりの金利が形成されているとは承知しております。

小泉(俊)分科員 それでは、また基本的なお話でございますが、公営企業が、民間でもよろしいのですが、今民間機関から仮に百億円借り入れた場合は、通常、金利は何%くらいだか御存じでございましょうか。

村井副大臣 これは、金利というのはある意味では貸し付けに対します対価でございますから、借り手により、案件により、また貸し手によりいろいろ区々でございまして、一概に申し上げることはできないと思います。

小泉(俊)分科員 それでは、もう一つ基本的な質問をさせていただきます。

 今回の事件、これは起債の借りかえをするという名目でなされました。それでは、このような政府資金の繰り上げ償還というのは認められておりますでしょうか。所管がちょっと違うかと思いますが、金融の非常に大ベテランの御先輩方ですので、ひとつよろしくお願いいたします。

村井副大臣 大変申しわけございません。これこそ私にとりましてはまさに権限外のことでございますので、やはり答弁は控えさせていただく方が適切ではないかと存じます。申しわけございません。

小泉(俊)分科員 政府委員はいらっしゃいませんか。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 実は私も所管外で、地方債の関係については余り経験がないものですから、ただ、一般的に全く繰り上げ償還がないかどうかということは、必ずしもそうでもなかったような気もいたしますが……。

小泉(俊)分科員 後ほど、根拠条文等ありましたら、私のところにお持ちいただきますようお願い申し上げます。

 実は、私はレクを受けまして、認めていないというのが大蔵の方の御見解でございます。資料もいただきました。

 政府資金の繰り上げ償還が認められていないということは、地方自治体や公営企業の長や職員というのは当然、何十年も役所にいるわけですから、これはわかっておりますよね。

村井副大臣 先ほど高木局長からちょっとお答えをした経過もございますが、そのあたりを踏まえまして申し上げさせていただきますと、財政投融資を運用しております側からしますと、既往の貸し付けを繰り上げて償還をされるということは、いろいろな意味で大変なことでございますから、大変消極的になるということは当然でございます。ただそれが、いろいろな事情を勘案いたしまして、現実にはある程度それに応ずるという場合もあるわけでございまして、そのあたりのところはケース・バイ・ケースの話になるのではないかと承知しております。

小泉(俊)分科員 では、今のお答えをまとめますと、原則は認められないけれども、例外的には認められる場合もあるということでございますね。それでは、後ほどそれも根拠条文を私どもの方にいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。政府委員でいいですよ。

 ただ、今回の融資は実は平成十二年二月二十一日に実行されたわけですが、事実は、二月十日に、貸出先の企業債担当の係長と不正事件を起こした次長が大蔵省関東財務局水戸財務事務所に出向きましてお願いしたけれども、繰り上げ償還はできない旨回答されているそうでございます。

 すると、先ほどのあれでは、政府資金の繰り上げ償還が原則的にはできない、例外的に一部あるとしても。今、金融でかなり大ベテランの大先生方が、知らない、できないだろうという原則論を最初は申し上げましたね。そうすると、民間の金融機関も、政府の繰り上げ償還ができないと思っているのが普通ですね。それでありながら、今回の事件は、民間の金融機関が借りかえ目的の資金を融資するということになっているのですけれども、これは場合によっては、原則論が妥当するとすると、貸し手側に重大な注意義務違反はありませんか。

村井副大臣 そのあたりのところは、個別の金融取引でございますので、何とも私どもの判断を申し上げられる環境ではないと思います。

小泉(俊)分科員 二枚目の紙をごらんいただきたいと思います。

 これは実は百億円、不正に融資を自己の口座に振り込ませた次長本人が説明のためにつくった文書なんですね。上の方に鉛筆でちいちゃく書いてある、これも本人が書いたものなんですが。これは中ほどを見ていただくと、償還交渉という下に「場合、状況により、」うんたらかんたらとあるんですね。

 それでは、借りる側も貸す側も、政府資金の繰り上げ償還が、これだけベテランの方がいても、原則できないというようなことがわかっていながら、一体何でこんな融資が起きたのか。まさに、これを読んでいただくとわかるんですが、ここに、今回の不正借り入れを行った企業団次長本人が作成した低利借りかえの説明文書であります。「事務局が交渉を行っているが、事務レベルの交渉では展望が開けない場合、状況により、政治的打開策による最終決着も考えられる。」という記述があります。重要なのは、ここに私が傍線を引きましたけれども、「政治的打開策による最終決着」ということですが、これは有力な政治家に働きかけるということを意味していると思うんですね。それであれば、自民党の有力な政治家が動いたり働きかけると、先ほど例外でできるとおっしゃいましたが、有力な政治家が働きかけると繰り上げ償還はできるんですか。

村井副大臣 そのあたりになりますと、これはもう何ともお答えのしようがございませんが、私は、やはり公の資金を貸し付けているわけでございますから、それはやはり基本的にルールに基づいて判断がされているものだと思っております。

小泉(俊)分科員 実はこれは、本来大蔵はできないと言っているのですけれども、今副大臣はできるというお話なものですから、それを前提でお話をさせていただきます。

 実は去年の二月二十一日、企業団の次長は、この一ページ目を見ていただくとわかるのですけれども、本来なら筑南水道企業団代表者だれそれという口座に振り込むはずなんですけれども、矢印が、見ていただければわかりますけれども、企業団の次長であります筑南水道企業団企業出納員、今回の事件を起こした次長の名前ですね。それで、これは百億が二十一日に振り込まれたのです。そうしたら、その日のうちに二億円の現金をトランクに入れて東京に運んだということまでわかっています。これが実は今百億のうちの返済されない二億五千万のうちの二億円なんです。これが今使途不明金になっております。これは何かほかの話と非常によく似ているのですね。最近、中小企業安定化資金のあっせん事件でも問題になった金融あっせんの手数料にも思えるわけですね。単なる一企業団の一次長がこれほどの百億近いお金を、貸し手の信金中央金庫の理事長はどなたですか。

村井副大臣 報道等で私ども承知しています限りでは、つくば市長が企業長でございますか、そのように承知しています。

小泉(俊)分科員 それは筑南水道企業団であって、貸し手の方の信金中央金庫の理事長はどなたでしょうかという質問でございます。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 信金中金の理事長は宮本保孝さんでございます。

小泉(俊)分科員 前職は何ですか。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 これは、この前身のいわゆる全信連の理事長をやっておられました。その前は農林漁業金融公庫の副総裁をやっておられたと思います。その前は大蔵省の理財局長をやっております。

小泉(俊)分科員 もう一つあると思うんですけれども、その前は何でしょうか。

高木政府参考人 その前は大蔵省の銀行局長をやっております。

小泉(俊)分科員 大蔵省の銀行局長ですよ。これは大変、金融のプロ中のプロの方がこの信金中央金庫の、天下りで今ここに行かれていると思うわけでございますが、これは知らないわけはないですよね。なおかつ、副理事長も私の調べでは日本銀行の方ですね。かなり金融のプロがやっている銀行ですよ。

 次に移りますけれども、この紙の中に問題点がもう一個あります。

 二つあるのですが、信金中央金庫が百億円を振り込んだ先が関東銀行に開設されました筑南水道企業団企業出納員だれそれという、これは法律を少しやっている人はだれでもわかるんですけれども、個人名義の口座なんですよ。公的機関と取引をしている金融機関が融資をする場合、自治体や公営企業の本体名義の口座ではなく、職員の個人名義の口座に振り込むことはあるんでしょうか。

村井副大臣 これはまさに取引のいろいろな形があるわけでございますから、それはないとは言えないと思います。

小泉(俊)分科員 これは明らかに犯罪行為です。銀行をやっている方で、他人名義の口座に振り込む、そこに振り込まされるというのは、明らかに詐欺か業務上横領かですよ。それで、そんなことはあるわけないと思うんですけれども、もう一度答弁をいただけますか。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 いずれにしても、これは筑南水道企業団出納員という名前で振り込まれているわけでございまして、たしか新聞報道等によりますと、振込書等も企業団長の公印が押されている、こういった報道もなされております。それ以上の詳細は承知していないのですが、そういうことで、これが適切かどうかということは個々の具体的な事案、実態に即して判断すべきものだというふうに考えております。

小泉(俊)分科員 通常、金融庁は、銀行法の一条と二十四条を見ればわかりますけれども、銀行の業務の適切な運営とか監督権があるんですね。逆に言えば、こんなお粗末な手にひっかかる銀行員を監督しないでいいんですか。

村井副大臣 個別のお話でございますので、私どもの方からただいまの御質問につきましてコメントするのは、申しわけございません、控えさせていただきます。

 ただ、当たり前のことでございますけれども、一般論として申し上げれば、私どもとして、金融機関がその業務に当たりまして健全かつ適切な運営を怠るというような事態がございましたら、それは法に照らしましてきちんと処理をするということを申し上げるしかございません。

小泉(俊)分科員 ここでちょっと角度を変えまして、信金中央金庫についてお尋ねいたしますが、これは政府委員の方で結構です、年間幾らぐらいの資金運用をされている金融機関でございましょうか。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 十一年度で申し上げますと、貸出金で申し上げますと約五兆円の平均残高があるという規模でございます。

小泉(俊)分科員 資金運用の総額は幾らですか。

高木政府参考人 資金運用勘定全体で十九兆でございます。

小泉(俊)分科員 その中の、国内の貸し出しは幾らになっていますか。

高木政府参考人 お答え申し上げます。

 貸出金は約五兆八千でございます。

小泉(俊)分科員 資金運用額で年間約二十兆円、国内貸し出しが五兆八千億ですね。これほどの貸出額があると、こんな手に簡単にひっかかる金融機関であれば、五兆八千億のうち、ほかの地方自治体や公営企業と当然これは取引していますから、似たようなケースが十分予想されませんか。

村井副大臣 私どもといたしましては、金融機関を監督する立場から、それはいろいろな形でチェックをいたしておるわけでございまして、ただいまの御質問に対しましては、もし法令に違反するような事実がございましたらきちんと処断をしてまいる、そういうことをしっかりやってまいるという方針を申し上げるにとどめさせていただきます。

小泉(俊)分科員 いずれにしろ、こんな簡単に百億円もの大金を、信金中央金庫ももとは全部一般預金者のお金を集めて運用しているわけですから、本当に預金者はたまったものじゃないんですよね。安心して預金することもできないわけですよ。

 それで、これは、他の金融機関や自治体、実は皆さん余り御存じじゃないようですので私が申し上げますけれども、地方自治体と地方公営企業は、実は財投の金利が高いのにすごく苦しんでいるんです。ですから、借りかえをしたいという気持ちはみんな持っているんですね。金融機関も、そんないい話があるなら二%ぐらいで貸してくれるんですよ。大体、今回これ、四・六%を二%ですから、十年で五十三億円も浮くという話なんですね。ただ、大蔵省はこれを認めていないんですよ。

 ただ、ここにいらっしゃる副大臣の方とか、そちらにいらっしゃる政府委員の方ですら、繰り上げ償還が原則できないとか、例外は厳格にというんですから、必ず要件あるんですよ。ですから、そういったものを全く存じ上げないということは、これは、一般の金融機関の方もみんな、地方自治体の方も知りませんね、皆さんが知らないんじゃ。それであれば、同じようなことはたくさん起こり得るべきですから、銀行法上の趣旨に基づいて、やはり、今回これだけの事件が起きているんですから、ちゃんと立入検査するなり事実関係を明確にして、それで全国に、起債の借りかえというのは認められるか認められないのか、そういうところまで指導してあげなければ、預金者の保護という第一条の目的は達成できないんじゃないですか。

村井副大臣 いわゆる財投をベースにした金の借りかえの問題につきましては、これは恐縮でございますが、私どもの所管ではございませんので、さような意味で、責任を持った御答弁は、これは控えさせていただきたいと存じます。

 それから、個別の金融機関の行動につきましては、私ども、こういう事態につきまして、新聞報道などではある程度承知しておりますが、風評の問題とかいろいろな問題がございますので、調べるとかなんとかいうことも含めまして、これはコメントを差し控えさせていただきたい、そういうことでよろしくお願いいたします。

小泉(俊)分科員 先ほど、御答弁の中で、銀行法上の法令に違反する行為があれば、これはやると。たまたまここの担当の金融機関が、元大蔵省銀行局長を御経験された方とかそういう方が中にいる場合でも、一応法令に違反していれば公平にやっていただけるという御答弁だけいただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

村井副大臣 当然のことでございます。

小泉(俊)分科員 どうもありがとうございます。

亀井主査 これにて小泉俊明君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして金融庁についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事に終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後零時六分散会




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