衆議院

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第2号 平成15年2月28日(金曜日)

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平成十五年二月二十八日(金曜日)
    午前九時開議
 出席分科員
   主査 持永 和見君
      亀井 善之君    中山 正暉君
      大石 尚子君    中村 哲治君
      平岡 秀夫君    細川 律夫君
      松原  仁君    赤羽 一嘉君
   兼務 黄川田 徹君 兼務 西村 眞悟君
   兼務 阿部 知子君
    …………………………………
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   国務大臣
   (金融担当大臣)     竹中 平蔵君
   国務大臣
   (防災担当大臣)     鴻池 祥肇君
   内閣府副大臣       伊藤 達也君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   内閣府大臣政務官     木村 隆秀君
   政府参考人
   (内閣官房内閣参事官)  伊藤 哲夫君
   政府参考人
   (防衛施設庁長官)    嶋口 武彦君
   政府参考人
   (防衛施設庁施設部長)  大古 和雄君
   政府参考人
   (防衛施設庁業務部長)  冨永  洋君
   政府参考人
   (金融庁監督局長)    五味 廣文君
   政府参考人
   (消防庁次長)      東尾  正君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局軍
   備管理・科学審議官)   天野 之弥君
   政府参考人
   (財務省理財局次長)   楠  壽晴君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房総括
   審議官)         鈴木 直和君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局総務課
   長)           仁木  壮君
   政府参考人
   (厚生労働省雇用均等・児
   童家庭局長)       岩田喜美枝君
   政府参考人
   (厚生労働省老健局長)  中村 秀一君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房地域
   経済産業審議官)     鈴木 隆史君
   政府参考人
   (資源エネルギー庁次長) 肥塚 雅博君
   政府参考人
   (国土交通省道路局次長) 榊  正剛君
   内閣委員会専門員     小菅 修一君
   財務金融委員会専門員   白須 光美君
   安全保障委員会専門員   小倉 敏正君
   予算委員会専門員     中谷 俊明君
    ―――――――――――――
分科員の異動
二月二十八日
 辞任         補欠選任
  中村 哲治君     大石 尚子君
同日
 辞任         補欠選任
  大石 尚子君     平岡 秀夫君
同日
 辞任         補欠選任
  平岡 秀夫君     松原  仁君
同日
 辞任         補欠選任
  松原  仁君     中村 哲治君
同日
 第二分科員阿部知子君、第三分科員西村眞悟君及び第七分科員黄川田徹君が本分科兼務となった。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 平成十五年度一般会計予算
 平成十五年度特別会計予算
 平成十五年度政府関係機関予算
 〔内閣及び内閣府所管(防衛庁、金融庁)〕


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     ――――◇―――――
持永主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。
 平成十五年度一般会計予算、平成十五年度特別会計予算及び平成十五年度政府関係機関予算中内閣及び内閣府所管について審査を進めます。
 防衛庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西村眞悟君。
西村分科員 これから三十分、実り多いかどうかはわかりませんが、我々政治家としては、制度の中で生きつつも、その制度に対する点検を怠らず、そして、その制度も改革が必要ならば改革の議論をする、これが我々の任務でありますから、省設置、防衛省、国防省設置のこと、レッテルのことだけが議論されて、その中身の自衛隊法、防衛庁設置法についての点検の議論が余りないと思われますので、文民統制下で一番重要なことである補佐の体制、これについて少々御質問したいと思います。
 私は、文民統制というものの原点は人民の武装権だと思っております。人民は、我々、現憲法でも、家族と祖国を守る基本的権利を有している。そのための手段である武器を保有する権利を有している。しかしながら、その武器を保有し祖国を守る権限を軍隊に移譲して国民の軍隊をつくる。したがって、その国民の軍隊を指揮する者は国民から選ばれた政治的最高の責任を負う者である。これが文民統制の原理であって、単に、戦後、現在も内局等で言われるように、軍隊というものは危険だから軍隊以外の者が管理しなければならない、これが文民統制だとは思いません。これは質問事項にないので、確認はしませんが。
 さて、文民であるということは、軍事専門家ではないということですね。また、行政専門家ではないだろう、我々は選挙で選ばれるわけですから。したがって、両方の補佐が必要である。補佐の体制が完璧であるか完璧でないかによって、文民統制下の軍隊が祖国を守れるか守れないかが決まる。
 そこで、現防衛二法についてちょっとお尋ねしますが、補佐の体制がどうなっているかという観点から見れば、防衛庁設置法十六条と同法二十一条でございます。防衛庁設置法十六条は、御承知のとおり、「官房長及び局長は、その所掌事務に関し、次の事項について長官を補佐する」という文言。同法二十一条は、各幕僚監部は「それぞれの隊務に関する長官の幕僚機関とする。」とうたっておりますが、この「幕僚機関」とは軍事領域において上官を補佐する機関のことを言っておるのだ、このように解されるが、これでよろしいですか。
石破国務大臣 二十一条の読み方は、そういう読み方も可能だろうというふうに思います。ただ、それが、十六条と二十一条というのを、これをセットで読むのかどうかということだと思うのですね。これは、したがって、十六条にそういう書き方がしてあり、二十一条にそういう書き方がしてあり、ただ、十六条と二十一条の書き方は違うわけだと思っているんです。ですから、その十六条が専ら軍政的なもの、二十一条が専ら軍令的なものというふうに解して、これを全体で読むべきかどうかという法律の読み方は、私は、必ずしもそうではないのだろうという気もしています。
 ただ、委員は答弁は要らないというふうにおっしゃいましたが、文民統制の本質というのは、人民の武装権についてはこれまた議論をいずれさせていただきたいと思っています。そういう見解があることは私もよく存じておりますが、文民統制というのはどういうものなんだという認識につきましては、私は、委員と見解をほとんど共有するものでございます。
西村分科員 「幕僚機関」というのは補佐機関でしょう。言葉が違うから十六条の「補佐」とはまた違うのだろうということで、その辺についてお聞きしますが、言葉が違うと。だったら、一人の長官を補佐する、その補佐の言葉が違うわけですから、重複しておるのか重複しておらないのかということが問題になって、重複しておるならどこが重複しているのか、重複していないのならどこが重複していないのか、また、重複するとしたらその補佐の上下があるのか、権限の優劣があるのか、それとも、そういうものはすべてなく、長官がどの補佐を選ぶかは専権に任されておるのかという、いろいろな問題がありますね。
 ちょっと聞きますが、長官は、自衛隊法八条によれば、「自衛隊の隊務を統括する」という権限をお持ちである。その「隊務を統括する」長官の権限のうち、十六条では、各自衛隊の「各般の方針及び基本的な実施計画の作成について」の「指示」、それから、各自衛隊の「方針及び基本的な実施計画について」の「承認」だ、次に「一般的監督」だ、こういうものに関しては「官房長及び局長は」「長官を補佐する」のだと書いてあります。
 それで、二十一条では「隊務に関する長官の幕僚機関」であるということでありますから、この「隊務」というのは何かといえば、極端な例では自衛隊法七十六条の「防衛出動」の命令、この防衛出動の命令については、幕僚機関であるというところから、長官を補佐するのはこの幕僚監部であろうと思いますが、十六条が命令という明確な文言を使っていない。「基本的な実施計画の作成について」の「指示」であるとか、「基本的な実施計画について」の「承認」であるとか、「一般的監督」である。
 だから、極端な例から言いますと、隊法七十六条、防衛出動命令についての補佐機関はどこなのか。条文の解釈上どこになるのかというのは深刻な問題ですから、明確にお答えいただけますか。
石破国務大臣 そういう意味では、防衛出動について、だれが補佐をするかということになりますと、これは、内局、そしてまた幕僚監部、それが両々相まって補佐をすることになるだろうというふうに思っています。
 確かに、では防衛出動というのはだれが起案をするのだ、どういう形で補佐をしていくのだということの実際の検討というのは、私は、必要なんだろうと思っている。確かに、委員がおっしゃるように、条文上、読んでいったときに、では防衛出動というものは、だれが起案して、どういう形で大臣まで上がってくるんだというシミュレーションをきちんとやってみなければいかぬ。実際、内々にはやっておるわけですが、これを本当に、シビリアンコントロールを行うべき大臣、そういう者がよく理解をしてやっていきませんと、とんでもないことが起こりかねないというふうに思っておるところでございます。
 私、繰り返して申し上げますと、防衛出動等につきましては、内局も、そしてまた幕僚監部も、両々相まって補佐をするというような認識で今はおります。
西村分科員 それは一般的なお答えとしていいわけですが、内局と幕僚監部というのは、内局は軍事専門家ではない、行政専門家である、幕僚監部は軍事専門家である、この二つの違いがあるわけですね。
 両々相まってといいますよりも、軍事的専門領域においては幕僚監部の補佐を受けるということではないのですか。この十六条の書き方と二十一条の書き方、そして、隊法七十六条の防衛出動命令の事態については、こういうふうにならざるを得ない。シミュレーションはこの前提でしなければならない。そうでなければ、長官の命令に軍事的整合性がなくなる。担保しがたい。軍事的整合性の担保しがたい命令を発するときに、防衛出動の目的は崩壊する。
 これは国家の運命のかかった問題ですから、だれの話を聞いてもいいんだということにはならぬのだと私は思いますが、どうですか。
石破国務大臣 これも委員とも何度か議論させていただいたことですが、要は、軍政と軍令というのが、きちんと、ようかんを切るように分けられるかというと、分けられない部分が多々あるんだろうと思っているのですね。これは軍事専門的なことである、まさしく、予算とか法令とかそういうことではなくて戦略、戦術、いわゆる軍事と言われることなのだというふうに概念上は決められるのですが、そして、軍政というのは予算だ、人事だ、法律だ、こういう話になるわけですが、本当にきれいに分けられるかというと、分けられない部分があるんだろう。
 そしてまた、戦前も、文民統制の仕組みというのはあれこれ置いてあったわけですね。統帥権独立だったからいけないのだというふうにすぐ言いますが、必ずしもそれのみが原因ではないことは御案内のとおりです。あるいは、例えば、戦前の軍人には選挙権もなければ被選挙権もないというような形もあった。
 しかしながら、いろいろな形で、それだけではなく、文民統制のいろいろな仕組みはあったのだけれども、うまくいかなかった。その反省のもとに、シビリアンコントロールという新しい概念、確かにその言葉を聞いたのは戦後が初めてだったのだろうとは思いますけれども、そういう形ができていった。そういう中で、軍政と軍令というのはそんなにきちんと分けられるんだろうか。
 問題は、シビリアンたる、要は自衛隊員ではない防衛庁長官あるいは内閣総理大臣というものが、本当にそれをうまくハンドリングしながら判断する能力を持っているのだろうかというところにもかなりの比重がかかるような気が私はしているのです。
西村分科員 こういう席での問答で、なかなかかみ合わない。ただ、シビリアンコントロールの政治家の決断とするのは、私は、記憶に残る言葉としては、第二次世界大戦が始まったときに、アメリカの指導者は、もはや事態解決は君たちの領域に移したんだ、こういうことですね。
 長官を補佐するといったって、あらゆる細かいことを両様補佐されて一々決められない。これは当たり前ですよ。これはナポレオン以前の、クラウゼヴィッツ以前の軍隊ですよ。ナポレオンの軍隊は、ナポレオンの体力の衰えとともに衰弱していった。こういうことになる。
 したがって、政治のシビリアンの判断としては、軍事的領域に事態解決を移すか移さないか、これだけなんです。これです。移したと決断すれば、それこそ、軍政、軍令一体となって、むしろ軍政を動かして、予算獲得、銃器の部品の提供の事態を長官は指揮しなければならない。現場の状況を見ていろいろ補佐を受けていたら、神経が破綻して、そういう軍隊は、近代国家の軍隊、ナポレオン以後の軍隊ではないわけであります。
 そこで、根本の問題は、我々は自衛隊を軍隊と思っているのか、軍隊と思いたくないのかということに尽きる。私は、軍隊であると思っている。イージス艦を持って、九〇式戦車を持っているところが軍隊でないはずがないし、こういう議論をするのは、世界広しといえども日本だけ、日本以外の国はすべて自衛隊を軍隊だと思っています。
 これで、次に何をお聞きしようかなと思うのですが、長官、両々相まって、両方の補佐を受けるんだと。わかります。わかりますが、議論の流れるままにお聞きしますが、事態を軍事領域の解決に移した後のことは、余り文民が口を挟むことはないのではありませんか。
 つまり、前に、アフリカに部隊が出るときに、機関銃が二丁ではだめで一丁でやるとか、それから、ベトナム戦争の敗因の一つになった、ジョンソン大統領が執務室に地図を掲げて、次はここを爆撃しろ、次はここを爆撃しろ、ここを爆撃しろと、軍事的整合性がないけれども、自分の、大統領の何かの演説の前にぱっと花火を打ち上げてもらいたかったようなことをやっている。こういうことを政治がやれば、一たん軍事的専門領域に事態の解決をゆだねながら政治がやれば、だめなんではないのでしょうか。
 ここは非常に重要なことであります。事前に言っていませんが、お答えいただくならばお答えください。
石破国務大臣 それはそうだと思います。私も、ジョンソンなり、あのときはマクナマラでしたでしょうか、いろいろと口を挟んでベトナム戦争が泥沼化していったという歴史の事実は承知をいたしておるところです。
 ですから、要は軍人の、日本の場合にはそういう議論がある、そういう日本だけの議論があるということは委員のおっしゃるとおりだと思いますよ。また、これは議員と議論させていただきたいことですが、要は、自衛隊というのは軍なんですか、警察なんですか、どっちでもありません、では何ですかというと、だから自衛隊です、こういう不思議な議論もありますわけで、それは看板のかけかえではだめだとおっしゃるのもそのとおりですが、あえて軍人、かぎ括弧つきでとりあえず申し上げますと、そのきちんとした補佐を、政治家は聞く耳をちゃんと持たなきゃいかぬのだと思っているんです。自分の政治的野心とか、そういうものによって、軍事専門家のきちんとした、軍事合理性に基づく意見を退けることがあってはならないのだというふうに思います。
 あわせて、私は、多分、委員をモデルにしたのだろうと思いますが、「アメリカが日本を捨てる日」という小説がありまして、その中に、委員をモデルにしたとおぼしき防衛政務次官がいろいろなことを取り仕切られる場面が出てくるわけですよ。読んでいらっしゃいませんか。
 つまり、政治の任に当たる者が、そのときに、委員とおぼしき人は、違うかもしれませんが、政務次官になったわけですがね、その任に当たる者が、きちんと軍事専門家の意見を、自分の政治的野心とか、そういうものを捨象して判断する見識を持っているだろうかというところがまた一つのシビリアンコントロールにかかわるところ。
 そして、シビリアンコントロールとは何なのかというと、ポリティカルアポインティーの人間を選んだ国民それぞれの責任でもあるということなんだろうと思っているのです。それはもう、やはり文民統制というものは、国民によって選ばれた政治家、それが統制を行うのだ、それは同じように、そういう人を選ぶのかどうなのかという国民の意識にもかかわることではないかというふうには私は思っておるところでございます。
西村分科員 いろいろな議論があるところですけれども。
 百年前のことを考えれば、一九〇三年、これは、前年に「三笠」が日本に回航されてきた、それから、日英同盟が締結された、日本がロシアと開戦が避けられないという決断をした一年後でありますね。このときに、政治的指導者は何を言ったかといえば、早く開戦しろという声に対して、私は軍艦の数と大砲の数に相談しているんだ、これが政治の責務ではないのかなと。補佐を受けるという消極的な立場よりも、補佐を受けつつ国運が何にかかっているかということを政治が判断するならば、大砲の数と軍艦の数に相談して軍隊をいかに動かして国運を開くか、この思考をめぐらすのが政治家と軍政の任務だと。
 ちなみに、回航されてきた「三笠」の代金を支払うことができなかった。しかし、西郷海軍大臣は、公金を流用しよう、これを国民が、議会が許してくれなければ我々は二重橋の前で腹を切ろうじゃないか、こういう決断をして臨んだのが九十九年前の開戦の決断だったということでいろいろお聞きしたわけですね。
 さて、百年前の状態というのは、三十八度線までロシアが南下してきて釜山に軍港を建設しようとしておった、一日逡巡すればシベリア鉄道によって兵員が満州に運ばれてくる、勝機は一日一日遠のいていくという状態でありました。現在はどうであるか。現在は、発射すれば七分から十分で東京に落ちる、この飛び道具を持つ者が三十八度線以北に百万の軍隊を集中させている。圧力としてはどちらが深刻かという判断はともかく、百年前は七分間でこっちに到達する飛び道具はなかったけれども、今はあるということ、銃後がやられるということです。
 さて、我々は、その飛び道具、ミサイル基地を探索し、燃料注入開始かどうかを判断し、攻撃し、撃破し、帰還する能力が、パイロットが帰還してくる能力があるのか。また、パイロットが行かなくても、それをミサイルで直ちに撃破する能力が現在あるのかということについては、長官、どう判断されていますか。
石破国務大臣 現在、ありません。そのことは余りあいまいにしない方がいいのだろうと思っています。
 私ども、要撃戦闘機であるF15というのを持っている。日本の場合には、要撃戦闘機とか支援戦闘機とか、余り世界が使わない用い方をしていますが、仮にF15に支援戦闘の兵装を積んだ場合に、それは、通常爆弾を十二発積むとか、空対空ミサイルを二発積むとか、そういうことになるわけです、空対地はございませんが。それで行きました場合には、これはF15を導入いたしますときに明らかにしておることでございますけれども、そういうような兵装をいたしましたときには、行動半径は二百八十マイルですから、これは行ったら帰ってこれないということに相なります。
 そしてまた、そういうような距離のかなたにあります軍事施設というものを、それでは地上から弾道ミサイルのようなものでたたけるかといえば、そのようなものはもちろん保有いたしておりません。
西村分科員 ということは、百年前の政治指導者が、私は軍艦の数と大砲の数に相談しているのだ、祖国は守るが、相談するのは東大で御高説を垂れている人ではないというふうに言い放って開戦の決断をしていった、では、我々はいかにして我が国民を守るのかということであります。ないならどうするのかということが次に来るわけであります。そして、これは、実は一刻の猶予もならぬのであります。核の問題についても、最大の安全確保策は、核のスイッチに手をかければ北の独裁者自身も死ぬ、おまえが死んでもいいのか、確実に死ぬぞという体制をつくることであります。
 今ないというお答えをいただいた以上、いつまでにその能力をつくるのかということについて、お答えいただけますか。
石破国務大臣 これはもう委員御存じの上でのお尋ねだと思います。
 百年前と違いますのは、日米安全保障条約があるという点が違うことは当然であって、したがって、日米安全保障条約あるいは日米防衛協力のための指針、そういうものにおいて、仮に弾道ミサイルが使われた場合には、米国はその打撃力を行使するということになっておりますし、古くは、三木総理大臣とフォード大統領との間で、そういう場合にはアメリカ、そういう場合にというのは日本が攻撃を受けるような場合には、アメリカは必ず日本を防衛するというふうに確言しておるということもございます。ですから、百年前と今とは状況は違う。
 しからばどうするのかというお尋ねでございますが、現在は、日米安全保障条約あるいは防衛協力のための指針、そういうものによりまして打撃力はアメリカ合衆国に依存する、こういう形になっておるわけでございます。
西村分科員 日本人の一人として情けないと思って言われているのか、それでいいんだ、おれたちの国はと思って言われているのかということは、あえてお聞きしません。情けないと私は思っております。私は、朝鮮半島の脅威に関しては、みずからその脅威を除去する、先ほどの例えばのミサイルの話では、持つべきだと思っております。
 時間が五分ぐらいあるということですが、日米安保条約で機能するのかどうかについては、前にもちょっと御質問したように、我が国が集団的自衛権は持っているが行使しないという奇妙きてれつな論理が、長官の今言われた、我が国の国民の数十万の命の保障ができるかどうかを分けると思いますね。
 だから、ぼつぼつ――小泉内閣、妙だなと思っているのは、去年の九月十七日以降、何かが消極的になってきましたね。靖国神社に八月十五日に行くんだと。行けなかったということから、この消極性が始まっているのじゃないですか。今生きている人間との約束じゃなくて、英霊との約束をたがえて、ざんきの念にたえないという声明を発した総理大臣は、やはり祖国を守るための任務に今までの惰性を超えて踏み込むことができなくなったのじゃないですか。
 だから、私は、集団的自衛権の見直し、行使できないということの見直しも含めて小泉内閣はやるんだと言ったときの状況を覚えておりますが、それから比べれば、もうしないと言ったつい最近の小泉さん、それから、ミサイルに対する防衛はミサイルが一発落ちてからだ、あの神戸の地震のような惨状に一たん我が国土がならなければ防衛に立ち上がれないと言った去年の答弁、何かがおかしいなと。
 さはさりながら、長官、私のように、どういう立場になろうとも、ふだんしゃべっていることをしゃべるというのも、これはまた問題でありますが、そこの席に行ったらめちゃめちゃ慎重になるというのもまた問題で、我々の世代は積極的にやりましょうよ。
 質問を終わります。
持永主査 これにて西村眞悟君の質疑は終了いたしました。
 次に、大石尚子君。
大石(尚)分科員 民主党の大石尚子でございます。
 私の選挙区に、皆様御存じの逗子市がございまして、現逗子市でございますが、ここに、戦前から日本海軍が弾薬庫を持っておりました。この弾薬庫の中に弾薬が入らなくなりまして、四半世紀になります。二十数年前から、逗子市民が前面に立ちまして、そして市議会も、それから市長ももちろんのこと、一体になって池子の弾薬庫跡地の全面返還の運動が展開されました。
 そして、途中から、そこに米軍の家族住宅を持っていきたいという話になりまして、市長さん、当時の三島市長さんは、三十三項目の条件を生み出して、条件闘争に切りかえられました。それで、半分の市民は、それを納得し、条件闘争でそこに住宅を受け入れようとされたのですけれども、半分の市民は、絶対に反対、全面返還ということで、一九八四年から一九九四年にかけまして、市民同士、市を二分する争いというか、大変不幸な十年があったわけでございます。
 それから、最初の三十三項目の条件をもって、さらに五項目の合意をつくって、そして住宅を受け入れるようになって、現在に至っております。これは、皆様、既に御承知のとおりでございます。
 そこで、これに関しまして、まず最初に、防衛施設庁長官にお尋ねいたします。
 一月二十二日のNHKニュース、さらに続きまして、二月一日の神奈川新聞、ここに報道されましたことは、横浜市内の米軍基地を返還するということの中に、根岸にまだ必要な住宅地区があるのですが、返還に伴って、それが池子に移ってくるのではないかという報道があったわけでございます。
 詳しいことは割愛させていただきますが、二月四日、逗子市長が防衛施設庁長官にお会いになっているはずでございます。その交渉記録を拝見いたしますと、とにかく、神奈川新聞の報道によれば、「米軍から住宅の追加建設の話が出る可能性はあり、その場合、市長とも会わなければならない」というような長官の発言記事があった。市長がそれでびっくりして、お訪ねになった。また、議会の方もびっくりして、NHKのその報道の翌日には、全員で各関係機関へただしに行っておられるわけでございます。それからまた、市民の方も、それこそ市民の協議機関もびっくりして、行動を起こしている。
 そういう中で、長官は、これは全然言っていることではない、自分はそのようなことを言った覚えはないし、そのような話になっていない、これからも国と逗子市と神奈川県との約束を守って、池子に新しい米軍住宅を建設するということは進めないと解釈させていただいていいのかなと思う御発言の記録がございます。
 私の申し上げていることに間違いがないかどうか、お尋ねいたします。
嶋口政府参考人 お答えいたします。
 逗子市長さんが、今先生お尋ねの件で、私のところに来ていただきました。まさに、先生がおっしゃったようなことを言われました。
 そこで、私が申し上げたのは、たしか、その前に、先立った記者会見で、逗子に仮に住宅を建てるというふうなことがあれば、そういうふうになれば、確かに、お会いしなきゃいけないのかなというふうに記者会見でお答えしました。しかし、それは仮定の話であって、アメリカの方から、具体的に、逗子に住宅を建てる、そういう話はございませんということは申し上げました。その点を逗子市長にはっきり申し上げました。
 では、どうなのかと言われましたところ、それに対しまして、今申し上げたとおり、現段階では米側がどんな条件を付されるのかわかりませんから何とも申し上げられませんけれども、三十三項目、その中に、追加の住宅は建てないということを私も十分承知しています、そういうことを、市長さん、また市民の方々のお気持ちを十分念頭に置いて米側とこれから話し合ってまいりたい、このようにお答えしたところであります。
大石(尚)分科員 逗子は、今、あそこに小学校の本設校舎、これは、米軍の子供たちが、仮設校舎で小さい子供さんたちは勉強しているのですが、本設校舎が欲しいということで、その建設へ向かって環境アセスメントに着手することを逗子市民、逗子市議会、逗子は容認したわけでございますね。しかし、これも、三十三項目にはなかったことなのですが、子供さんのことだからと、本当に苦渋の決断をしてアセスメントの実施を容認した。そういう経緯がございます。これはもちろん、皆様御承知のとおりでございます。
 それで、それもなかったから大丈夫だということになりますと、今後、すべての交渉において、国と市、国と市民側、逗子市との約束事が守られているという信頼感が前提にあって今後すべての交渉事は成り立っていくわけでございますから、ぜひこの問題は慎重に扱っていただきたいと思います。
 それで、今どういう状態にあるかと申しますと、市民と米軍の家族並びに米海軍との交流が大変いい形になってきておりまして、例えば一、二例申し上げますと、逗子の商工会の青年部が基金を集めて、桜の苗木というよりも若木を二十三本寄附して、米海軍の皆さん、家族の皆さん、逗子市民の皆さんたちと一緒に基地の周辺にこの若木を植えたということ、これはついこの間の話でございます。
 また、家族の方たちが逗子市内で食事をするときに、飲食店、レストラン等に行ってもメニューがわからないので、共同で食事のメニューをつくろうというようなこと、あるいはお買い物マップをつくろうというようなこと、いろいろと共同作業が始まっておりまして、大変いい形の国際都市ができ上がりつつあるところでございますゆえに、ゆめゆめ、交渉事の中でその信頼関係が壊れてまたもとへ戻ってしまうことのないようにお願いいたしたいと思います。
 お気持ちをお聞かせいただけますか。
嶋口政府参考人 お答えいたします。
 やはり基地の運営、設置運営というものは、地元の住民の皆様方の御理解、御協力もなければ円滑な運営というのは到底期待できません。何より大事なことは信頼関係だと思います。そういうことも十分念頭に置いて、今後、米側と話し合っていきたい、このように考えております。
大石(尚)分科員 よろしくお願いいたします。
 それでは、第二問の方に移らせていただきます。
 昨年五月三十一日に、私は、総理大臣あてに、質問主意書を出させていただきました。その質問主意書の中の項目に沿って、一、二、三は今の本設小学校校舎の問題でございましたので、質問主意書の四項目め、逗葉地域医療センターの入り口までの進入路。
 これは、京浜急行の線路を渡ってゲートを入るとすぐ、線路に沿って道があるわけでございます。それをずっと西の方に参ります道が今は共同使用になっております。これは医療センターの入り口までの進入路でございますので、それを返還してほしいという、このお話はかなり煮詰まっていると聞いております。
 そして、去年の五月二十七日に、横浜防衛施設局長さんあて、それから財務省の関東財務局長さんあて、市長さんの方から返還の申請が出ているわけでございます。しかし、いまだに返還されていないのでございますけれども、なぜなのか。その進捗状況を踏まえて、見通しをお教えください。
嶋口政府参考人 先生御指摘のとおり、昨年、要請書を横浜局長に出されたということを受けまして、私どもも、横須賀の米海軍司令部と今鋭意やっているところでございます。前向きに取り組んでまいりたいと思います。
大石(尚)分科員 見通しとして、いつごろ返還されるのでございますか。
嶋口政府参考人 具体的な時期は申し上げられませんので申しわけありませんけれども、できるだけ急いでやっていきたい、このように考えております。
大石(尚)分科員 できるだけ急いででは、いつも急いでくださっているのだろうと信じたいのでございますが、既に申請書が出てからもうそろそろ十カ月になんなんとするわけで、まだそこまではいかないでしょうか、とにかく、あそこは医療センターへの進入路でございますから、問題なく返還していただける、無料で返還していただけるところだと思いますので、できるだけ早くと言わずに、ぜひ来年度前半くらいに成立するように御努力いただきたいと思います。
嶋口政府参考人 先生初め地元の皆さん、市長さんもそうですけれども、大変強い要望があるということは十分わかっておりますので、私どもは、相手方もあることでございますので、具体的な時期は申し上げられませんけれども、繰り返しになりますが、できるだけ急いで取り組んでまいりたいと思います。
大石(尚)分科員 相手方、米軍の方も大変いい感触のようでございますので、ぜひこれは実行していただきたいと思います。
 次に、第三問目に移らせていただきます。
 ちょうどその医療センターに入っていく道に一部面して、四百メートルのトラックを持つ運動場がございます。これを、三十三項目の中にある条件でございますので、市民が自由に使わせてほしいということがございます。しかも、そこは調整池なんですね。大雨が降ったときの調整池になっているから、河川法上、これは市が管理しなければいけない調整池だろうと思います。しかし、今まだ管理がはっきりしていないのと、それから、今どうなっているかというと、自由に市民が使えない。そして、米軍関係者と一緒のときのみ使える。サッカーとかいろいろな競技に使っているのですけれども、なぜ、日本人だけで、市民だけで自由に使えないのか。これは項目にも大変反していることでございますが、どうなっているでしょうか。
嶋口政府参考人 御指摘の施設は、調整池兼運動場ということになっております。ということで、私どもは米側に提供しております。米側に提供したということは、つまり、米軍が今管理しているということでございます。
 それから、運動場を自由に使いたいという要望についても、私ども、承知しております。その気持ちもよくわかります。そういうことで、できるだけ自由に使えるようにということで米側に申し入れております。管理権は米側にありますので、私ども、それ以上勝手に決めるわけにはいきませんけれども、できるだけ地元の市民の方々が使えるようにということで、先ほどの診療所の話と同様、米側に申し入れているところであります。
大石(尚)分科員 これは不思議な話がございまして、一日だけ、市民が自由に使えた日があったわけでございます。これはちょうど二〇〇〇年になる一月のことで、その当時の平井市長さんと米軍の方で話し合いが実りまして、そして、自由に市民に使っていただこうということになって、一日実行されたら、その二日目から、これはミレニアムテロの危機管理を理由にでございましょうか、それがポシャってしまったのでございます。
 その運動場の奥に野球場とかテニスコートもあるのですけれども、それは自由に使わせていただけるようで、これもちょっと不思議な話でございますので、これはぜひ、一日実行したのですから、もとへ戻していただきたい。日本の市民、逗子市民だけでも使わせていただけるように、ぜひ早急に詰めていただきたいと思います。
嶋口政府参考人 先生御指摘のように、率直に申し上げますけれども、やはり九・一一テロ以降、逗子だけではありません、全般的に、米軍は管理運用が非常に厳しくなっているということでございます。そのことはやはりテロ問題に対するアメリカの考え方というものがございますので、私ども、直ちにそれを撤廃して自由に使わせてくれというのはなかなか難しい面がございますけれども、施設の特徴等を考えながら、また、地元の皆様方の御要望等を考えながら、できるだけ自由に使えるように米側に申し入れていきたいとやっているところでございます。
大石(尚)分科員 今私が申し上げましたテロは、九・一一テロではないわけでございます。二〇〇〇年のときですから、まだ九・一一テロはなかったはずでございます。ですから、何か別の理由があったのだろうと思いますが、場所を見ると、ここだけ自由に使えない、その奥は使えるのにというのはおかしなことでございますので、ぜひこれも早急に詰めていただきたいと思います。
嶋口政府参考人 今先生の御指摘の二〇〇〇年について、まことに申しわけございませんが、私は、その間の事情をよく承知しておりません。ただ、テロ以後、全般に非常に厳しくなったということ、それから、今思い出したのですけれども、日米友好親善だということで共同して使おうということであるようでございまして、そのために、単独で日本側だけが使うのはいかがかというような考え方もあるようでございますけれども、今先生の御指摘の点も踏まえて米側と話し合ってみたいと思います。
大石(尚)分科員 それでは、時間がだんだん押し迫ってまいりましたので、次の問題に移らせていただきたいと思います。
 次は、質問主意書の六項目め、これは旧軍港都市転換法、軍転法絡みの質問でございました。
 御回答がここにあるのですけれども、とにかく、昭和二十五年の六月、軍転法の賛否を問う住民投票が横須賀市で行われたわけでございますが、そのとき、逗子市は横須賀市だったわけでございます。それで、現逗子市民も当然その投票に参加して、横須賀市に軍転法が適用されるようなことになった。そして、二十五年の七月一日に施行になったわけでございます。
 ところが、さっき、一日の不思議がございましたが、今回は、三日の不思議というよりも、その三日後に、横須賀市から逗子市が独立してしまったわけでございます。したがって、そのときから、逗子市の池子弾薬庫周辺の接収地が軍転法から外れてしまった。そのために、あれは横須賀の軍港とつながって弾薬庫があったわけでございますから、以降、軍転法と同じような適用があってもいいはずではないか、あるいは、軍転法の適用に逗子市を加えてほしいという運動が続いていた。今でも、そういう動きで続いているわけでございます。
 それを御質問申し上げました回答に、ちょっとここだけ読ませていただきますと、
  旧軍港市転換法第一条に規定する横須賀市とは、地方自治法上の地方公共団体としての横須賀市をいうものと解されることから、逗子市について軍転法の適用はないものと考える。
これは、法を解釈すれば当たり前のことで、そこの経緯、たった三日で逗子市が独立した、それ以前の行動はすべて一緒だった、そういう実態があるから御質問しているのに、こういう答えが返ってくる。これはどこがお書きになったのかという問題もございますが、
  なお、軍転法は、先の大戦により甚大な被害を受けた旧軍港市を「平和産業港湾都市に転換することにより、平和日本実現の理想達成に寄与すること」を目的としており、戦後五十有余年を経過した今日において、軍転法を改正して、これを新たに逗子市に適用する意義に乏しいものと考える。
これが、小泉純一郎総理大臣の名のもとに回答された文言でございます。
 こういうのを、木で鼻をくくった、人間として血の流れていない回答というのじゃございませんでしょうかね。逗子の事情を全然わかっていない方がこれをつくられたとしか思えない。私は、回答を受け取って、本当に心外でございました。
 そこで、軍転法に「逗子市」と第一条に改正して入れれば、この問題はすべて解決すると私は思っているのですけれども、これに関する御答弁がございましたら、どちらからでもお願いいたします。
楠政府参考人 お答えいたします。
 逗子市が、旧軍港市転換法施行当時、横須賀市の一部であったことは承知しております。
 ただ、先生御指摘の点につきましては、昭和五十九年の衆議院予算委員会において内閣法制局より答弁しておりますとおり、軍転法第一条に規定する横須賀市とは、地方自治法上の地方公共団体としての横須賀市をいうものと解されることから、逗子市について軍転法の適用はないものと考えております。
 また、軍転法は、さきの大戦により甚大な被害を受けました旧軍港市を平和産業都市に転換することにより……(大石(尚)分科員「それはさっき私が読みました」と呼ぶ)失礼しました。平和日本実現の理想達成に寄与することを目的としております。戦後五十有余年を経過した今日におきまして、軍転法を改正いたしまして、これを新たに逗子市に適用する意義に乏しいものと考えておるところでございます。
大石(尚)分科員 ただいまの御答弁は不要でございます。私がいただいている答弁とどこが違うのですか。質問主意書の回答を私がわざわざ読み上げて、そして、この答弁はおかしいのじゃないのですかと申し上げているのに、何で同じ答弁をなさるのですか。
楠政府参考人 平成十四年六月に、先生の方から、質問主意書をちょうだいいたしました。それで、その回答につきましては、私ども財務省それから内閣法制局、関係省庁で調整いたしました結果、先生の御質問に対する政府の見解として、先ほど先生が読まれましたようなこと、また、私が答弁いたしました見解をまとめたということで御理解賜るようお願いいたします。
大石(尚)分科員 沖縄も、基地の面積は一一%と言われております。逗子は何%あるか、おわかりでございましょうか。逗子は小さな市でございますが、その一四・五%がこの池子弾薬庫なんです。
 ですから、ここのスペースというものが市民にとってどんな宝物か。しかも、緑が保存されている。そして、そこに住宅を受け入れるときの、並々ならぬ市民のいろいろな苦渋の決断があった。その歴史をお考えになれば、どうして今のような答弁が、一言もつけ加えずにおできになるのでしょうかね。あなた様に申し上げても、これは無理なことと思います。
 これはぜひ、今後、軍転法の改正という方向へ、市民も考えていくと思いますし、私も努力したいし、関係者の皆様方の御努力をお願いいたしたいと思っております。または、改正ができないなら、それに準ずる、こういうことなら市民に対して横須賀市民と同じような権利をお渡しすることができる、サービスを提供することができるというような案でもあれば、ぜひ今後また御提示いただきたいと思います。
 時間があと五分になってしまいまして、これは要望だけにさせていただきますが、二月二十一日付で「お知らせ」というのをちょうだいいたしました。これは防衛施設庁の方からちょうだいいたしました「お知らせ」で、二月二十一日付でいただきました。それは、「神奈川県における在日米軍施設・区域の整理等に関する施設調整部会の開催について」ということで、二十一日金曜日に開催されて、関係者がお集まりになられて、その中の「会議概要」の中に、「日本側からは、これら施設・区域に係る地元事情や国会での議論等を説明した。」という一項があるのでございます。
 これに関しては、今お尋ねする時間がございませんので、また別途お尋ねさせていただきたいと思います。
 あとわずかでございます。最後に、防衛庁長官に一言お尋ねさせていただきたいと思います。
 昨年の暮れに、イージス艦がインド洋に向かって出港いたしました。私は、現地の状況、それから、今緊迫している北朝鮮との問題等から、イージス艦が日本列島を離れて大丈夫なんだろうかという気持ちがございまして、それで、インド洋の自衛艦、現地へ行って見てこようと思いまして、行ってきたわけでございます。
 そのときに一番感じましたのは、十二月の半ば以降半月間に、補給艦「ときわ」が米軍あるいは英軍の艦船に補給した燃料の量と、前任艦の「とわだ」が二カ月で補給した量と同じであった。既に四倍の補給量があった。そうわかったときに、ああ、これはもうテロ対策特別措置法での範疇を脱してイラク・オペレーションと絡まっているのではないかというような印象を受けました。
 これを法的にどう解釈していったらいいのか。最後に一言だけで結構でございます。申しわけございません。
石破国務大臣 これは、テロ特措法の範囲内で行っておりますし、交換公文も締結いたしております。目的外に使われることはないというふうに私は確信しております。
 先生が現地をごらんいただきましてそのような印象をお持ちになったということであるとするならば、それは、なぜそのような印象をお持ちになるに至ったのか、私どもとして御説明が不十分なところがあるのか。私どもの自衛隊は、先生よく御理解いただいておると思いますが、法に反したことというものをすることを最も嫌う組織でございます。そして、その法の範囲内でいかにして国際平和の実現のために責務を果たすかということでやっております。
 ただ、先生がそのような印象をお持ちであったとするならば、どのような点でお持ちになったのか。私どもとして、きちんとしたことをやっておりますが、どのような形でさらに国民に御理解をいただくのか。状況がこういうようなことでもございますので、さらに御教示をいただきまして、万全を期してまいりたいと存じます。
大石(尚)分科員 どうもありがとうございました。
持永主査 これにて大石尚子君の質疑は終了いたしました。
 次に、平岡秀夫君。
平岡分科員 民主党の平岡秀夫でございます。
 私の出身地は山口県の岩国でございますけれども、御存じのように、岩国には米軍岩国基地がございます。昨年、岩国基地へのCH53Dヘリの配備に関しまして、二月四日付で、防衛施設庁長官の方から、いろいろな地元の要望に対する回答というのをいただいております。その中の一つに、岩国市民、そして近隣の市町村の方々の悲願であります岩国飛行場における民間空港の早期再開問題についても、防衛施設庁長官から、ある意味では前向きな回答をいただいているということでございます。
 ちょっとそのくだりを読みますと、
  日米両政府は、岩国飛行場滑走路の沖合移設完成後の軍民共用化について、米軍の運用に重大な影響を与えないことを含めた諸条件が確保されることを前提に、真剣に協議する用意がある旨を表明した。この協議においては、地元から提示される具体的な計画が考慮される。
ということでございました。
 この方針に基づいて、ことし二月六日に、日米合同委員会の施設特別委員会のもとにあります施設調整部会において、この岩国飛行場の民間空港再開に関する問題について協議を行っていくということが決定され、そして、二月二十日に第一回の会合が行われたというふうに聞いておるわけでございます。
 そこで、まず最初に、この施設調整部会で行われる協議はどういうことが対象になっているのか、その点を御教示いただきたいと思います。
石破国務大臣 先生、先刻御案内かと思いますが、これは、既に、岩国飛行場の民間空港再開と米軍の運用との関連についてどういう問題があるのか、まずその問題点を整理いたしましょう、そして、問題点を整理し、その解決のためにはどのように行ったらいいでしょうか、そのような方策を協議するということになっているところでございます。そういたしました後に、一定の方向性が出ます。出ました後に、日米で共通の理解を得る。そして、それを得られた場合には、先生の御地元であります山口県等々、自治体にお知らせをするということでございます。
 現在、その問題点の整理、解決の方向性について協議を行っておる、そういうことだと承知をいたしております。
平岡分科員 今の御答弁でいきますと、基本的には、技術的な問題点についていろいろと協議することが中心であるというふうに私としては理解させていただいたわけであります。
 仮にそうであるならば、ある程度の期間というものも必要でしょうけれども、技術的な問題であれば、ある程度の解決に向けての見通しといいますか、どの程度時間をかけて検討すれば大体の結論が出るかというようなことがわかるのではないかと思うのですが、今後の協議の見通しとして、タイムスケジュールといったようなものについてはどのようなお考えを持っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
大古政府参考人 お答えいたします。
 岩国飛行場の民間空港再開につきましては、山口県初め地元岩国市等の御要請が非常に強いということでございますので、この協議会については、できるだけ早急に認識の一致を得たいと思っております。
 ただ、しかしながら、米軍等、いろいろ運用上の調整とかもございますので、現時点で、この協議について一定の成果を得るというめどを具体的に述べられる状況にはないということで御理解いただきたいと思います。
平岡分科員 今の時点で、将来のことを見通してここで説明していただくことは非常に難しいのかもしれません。ただ、それぞれの地域の人たちにとってみれば、これからどうなっていくのかということについて非常に重大な関心を持っているわけでありまして、できる限り早急に結論を出していただくということが必要だろうと思いますけれども、そのためには、開催頻度といいますか、大体どのぐらいの割合でどういうふうに開催していくのか、その程度のことぐらいは教えていただけるのでしょうか。
大古政府参考人 この協議会につきましては、役所が、外務省とか防衛施設庁とか東京のメンバーのほか、米軍につきましては、横田の司令部、岩国の部隊の方、それから、海兵隊の司令部のございます沖縄の方もおられまして、できるだけ頻繁に開いて、できるだけ協議の成果を上げたいと思っておりますけれども、現時点で、どういう頻度でということも含めて、今後、いろいろ日程調整した上で決まるということになっておりまして、具体的なめどはちょっとまだ言えないということを御理解いただきたいと思います。
平岡分科員 何にも言えないというのも、ちょっと幾ら何でも、これから大きな課題に取り組んでいこうという立場にある人にとってみれば無責任な話であるし、我々の、民間空港再開をできる限り早期にと訴えている立場からしてみても、そういう不誠実な対応であるならば、地元における施設として米軍に提供している財産を抱えている地元としても、本当に真剣に協力していっていいものかどうかという点について、ある意味では非常に疑問に思うというか、そういう気持ちがだんだんにうせてしまう、そういう問題であるということも十分に御理解いただいて、真剣に、そして誠実に、早急に検討を進めていただきたい。
 まずは、先ほど言いましたように、この協議の場というのは技術的なことが中心で、どういうところに問題があるのかということをそれぞれが提示し、そして、どう解決していくかという問題でありますから、何も政策決定をここでしようということではないわけでありましょう。いずれは政策決定の場も必要になってくるのだろうと思いますけれども、そういう意味では、できる限り本当に誠実に対応していただきたいということをお願い申し上げたいと思います。
 そこで、この施設調整部会において行われる協議というのは、そういう技術的な問題が中心になるということだろうと思いますけれども、米軍との関係あるいは米国政府との関係はこういう場で地道に詰めていくということでいいのだろう、それがまず必要なのであろうというふうに思いますけれども、他方、もう一つの問題は、日本の、我が国における空港整備のあり方というものをどのように考えていくか、所管でいえば国土交通省の所管事項ということがあろうかと思うのですね。
 実は、平成十三年、おととしの六月に、「国土交通省における公共事業改革への取組み」というものが発表され、そして、昨年の十二月には、交通政策審議会の航空分科会というところでも、「今後の空港及び航空保安施設の整備に関する方策について」という答申が出されております。
 この中を見てみますと、地方空港の新設について、こういうふうに言っております。
  地方空港の新設については、「国土交通省における公共事業改革への取組み」(平成十三年六月公表)の中で地方空港の配置は概成しつつある状況を踏まえ、「今後の地方空港新設については離島を除き抑制」という方針を明確にしたところであるが、引き続きこの方針を維持する必要がある。
というように出されております。
 他方、私も、実は、昨年の決算行政監視委員会の分科会でも、国土交通大臣に、この問題について質問させていただきました。もう一つ、国土交通省としては、既存ストックの有効活用というようなことも言っていました。この岩国飛行場も、国土交通省所管のストックではありませんけれども、国民全体から見れば一つの既存ストックであるというようなことから、その活用ということも考えられるのじゃないかというような議論もさせていただいたところでございます。
 ただ、いずれにしても、「地方空港の配置は概成しつつある」という判断を民間空港の所管省庁である国土交通省がしているという状況の中で、防衛施設庁の方が米国政府あるいは米軍との間で技術的な詰めを一生懸命やっていただいても、最終的には、民間空港、地方の空港整備、そういう範疇の問題が生じてくるわけであります。
 そこで、防衛施設庁の方では、国土交通省との関係というのは今どのようになっているのか、そして、ついでに、これからどのように国土交通省との調整を進めていかれようとしているのか、その見通しをお聞かせいただきたいと思います。
大古政府参考人 本件につきます国土交通省との調整につきましては、山口県等の地元自治体が実施していくものと承知しております。ただし、防衛施設庁といたしましても、米側との調整状況につきましては、節目節目で、適宜、国土交通省に伝えているところでございます。
平岡分科員 確かに、民間空港再開というのは地元の人たちの非常に強い要望であるということで、この人たちもしっかり頑張って、国土交通省に対して、その必要性なり、この空港を利用することについての効率性といいますか、経済性といいますか、こういうことについてもしっかりと説明しなければいけないのですけれども、国政全般の、全体のあり方として、これだけの広大な施設を、空港を軍に使わせてあげている、我々から見れば、我々の貴重な土地であったものを軍に使わせてあげている、こういう気持ちでいる住民が多い中で、地元の住民の人たちが直接国土交通省にやることであって、防衛施設庁は、今、何か技術的なところは何たらかんたらとかと言われましたけれども、他人事のような答弁をされると、私も、これから、防衛施設庁との間では、常に敵対関係に立って何事も攻撃していかなければいけないというような立場に立ってしまわなきゃいけない。
 そうではなくて、もっと協調関係で、防衛施設庁と我々が一緒になって、地域住民の、基地を抱えた地域の人たちの気持ちを何とかいろいろな国政の場に生かしていく、そういう立場に立っていただかなければいけないというふうに思うのですね。
 これは、防衛施設庁長官に聞いても答えてくれないかもしれません。ぜひ、政治家たる防衛庁長官あるいは副長官にお答えいただきたいというふうに思います。
赤城副長官 お答えをさせていただきます。
 今の施設部長の答弁、決して突き放したようなという趣旨ではございませんで、地元、山口県等と、そしてまた国土交通省、米軍、それぞれの関係がございます。両々相まって調整を進めていく、こういうことで、防衛庁としては、米軍との、米側との調整状況について国土交通省に伝えるということでこの問題について促進をしていきたい、こういうことでございます。
平岡分科員 ついでに、長官にも御見解を承りたいと思います。
石破国務大臣 今、施設部長あるいは副長官からお答えしたとおりですが、きのうも、沖縄の東門議員と議論をさせていただいた。今の大石議員もそうでいらっしゃいますし、先生もそうですが、これは、基地を持っておられる方々の立場に立って私どもが、少なくともスタンスとしては、気持ちとしてはそういうことでなければいかぬのだろうと。もちろん、それは国土交通省の権限でございます。ですけれども、私たちは、米軍基地があって日米安全保障条約というものの体制が維持されておる、しかし、全国三千三百市町村に基地があるわけじゃないのであって、基地があるところとないところとある、日本国民としてみんなが共通に利益を受けているわけですから、その御負担をいただいているところの気持ちに立つ、それが少なくとも我々防衛庁の気持ちではあるべきだというふうに思っております。
 権限は国土交通省でございますが、私ども、副長官が今お答えいたしましたようなこと、そういうような気持ちを持って当たっていきたいというふうに思っておるところでございます。
平岡分科員 ぜひ、基地を抱えた地域の人たちの気持ちというものをできる限り酌み取っていただくような、そうした政治、行政をしていただきたいということを重ねてお願いいたしたいと思います。
 そこで、平成十五年度予算について見ますと、岩国飛行場の民間空港再開に関する調査費というものが、明示的に予算書の中に書いてあるわけではございませんけれども、幾らかついたというようなことも説明を受けておりますけれども、どのような予算がどれだけついて、そして、それについてはこれからどのように使用していかれようとしているのか、この辺の方針等について御説明いただきたいと思います。
赤城副長官 平成十五年度予算案に計上しています調査費についてでございますけれども、民間空港関連施設を岩国飛行場内につくるということになりました場合に、米軍の施設利用との調整を要するわけでございます。そこで、飛行場内の既存施設の現況等を調査する、こういうことで調査費を計上してございます。
 具体的には、既存建物及び工作物の位置関係を把握するための現況平面図を作成する、そういう測量調査でありますとか、既存の建物、工作物の規模、構造、形状や使用実態等を把握し整理するための既存建物等調査ということで、約千三百万円を平成十五年度予算案に計上しております。
 今後の見通しでございますが、この平成十五年度予算が成立した後、米側と基地への立ち入り等について調整した上、できるだけ早期に実施してまいりたいと考えております。
平岡分科員 できるだけ早期にというお話ですけれども、調査が終了するのは大体いつごろを見通しておられるのでしょうか。
大古政府参考人 お答えいたします。
 平成十五年度予算案の成立後は、執行段階の検討はございますけれども、できるだけ早く整理したいと思っておりまして、年度の前半ぐらいには成果を得たい、こういうことで今考えております。
平岡分科員 今のは、調査結果は、大体、年度の前半には終了したいというふうに御答弁があったのでしょうか。――はい、わかりました。
 次に、岩国基地の滑走路の沖合移設問題について触れていきたいと思います。
 この予算については、国庫債務負担行為で平成八年度から予算化されているというふうに承知していますけれども、当初の予定が、工事が進行している中でいろいろなトラブルがあったというようなこともあって、工事が少し時間がかかるようになってしまったというようなことが言われております。特に、芸予地震の際に液状化現象が生じてしまったというようなこともあったようであります。
 そうした埋立地の液状化現象のために遅延しているというふうに聞いているわけでありますけれども、現在の工事の進捗状況としてはどのように把握しておられますでしょうか。そしてまた、今後の工事の進捗の見通しについてはどのように考えておられますでしょうか。両点について御説明いただきたいと思います。
冨永政府参考人 岩国飛行場につきましては、運用上、安全上、それから騒音の問題を解決しまして、米軍の駐留を円滑にする、また、同飛行場の安定的な使用を図るために、また、地元からの強い御要望を受けまして、岩国飛行場滑走路移設事業を推進しているという状況でございます。
 この事業に係ります工期、事業費につきましては、当初、工期十年程度、事業費約一千六百億円と見込んだところでございます。しかしながら、先生の方からお話がございましたように、当初計画策定後に阪神・淡路それから芸予地震が発生いたしまして、そういった地震の教訓を踏まえまして、液状化現象に対する安全確保の観点から技術的な検討を加えました結果、液状化対策工事、地盤改良工事を十分実施する必要があると判断されたこと等を踏まえまして、昨年八月に、工期十三年、これは最終年度が平成二十年度ということになりますけれども、総事業費約二千四百億円というふうに見込んだところでございます。
 工期につきましては、従来の工事ペースで進めましたとしたら十四年と見込まれましたところを、今後、工事促進の努力をするということで、十三年というふうに見込んだところでございます。
 進捗状況でございますが、本件事業につきましては、平成五年度から調査設計等を開始しまして、平成八年度から本工事に着手しております。現在、南地区においてはおおむね埋立工事等が完了いたしまして、また、今、平成十三年度から北地区の工事に着手しまして、現在、護岸工事等を行っているというところでございます。
 私どもとしましては、今後とも、平成二十年度に完成すべく、できるだけの努力をしてまいりたいと思っております。
平岡分科員 今、工事の進捗状況、そして今後の見通しについてお話しいただいたのですけれども、実は、この埋立工事は、沖合移設工事というのは、地元における愛宕山開発という、つまり、愛宕山にある土砂をこの埋め立てのために使うというようなことで、愛宕山開発というのと並行して進められているという事業であります。
 そうなると、工事が後ろにずれてしまうと、その愛宕山開発の事業そのものも完成がおくれてしまう。そして、愛宕山開発というのは、開発が終わりましたら、その後、その場所で造成された土地を販売していく、そういうような形で収支相償っていこう、そういう計画であります。
 となりますと、工事がおくれてくると、その分だけ販売開始が遅くなってしまう。遅くなってしまうと、その間の借入金で賄っていた資金についての金利負担、あるいは早く販売できないことによるさまざまな経費がかかってきてしまうわけでありまして、この問題について、地域の方では、どのように負担されるのだろうか、我々が、というのは地域が負担すべきものであるのだろうか、そういう疑問も多くの人が持っているわけでありますけれども、この問題についてはどのようにこれからお考えになられるのでしょうか。
 皆さん方、この工事がおくれてしまったことに対する負担というものについての対応をぜひとも国の方でお願いしたいというふうに思っているわけでありますけれども、お考えをお示しいただきたいと思います。
冨永政府参考人 今お話ありましたとおり、岩国飛行場滑走路移設事業の全体計画の見直しによりまして、愛宕山の新住宅市街地開発事業用地からの土砂の搬入期間が延伸されることになりました。このことによります土砂購入費への影響につきましては、現在、まさに山口県岩国市それから山口県住宅供給公社と調整を行っているところでございまして、今後、関係法令等を踏まえ、適正に対処してまいりたいと思っております。
平岡分科員 不適正に対処されたのじゃ困るのです。それは当然、適正に対処していただかなきゃいけないのですけれども、その適正という範囲として、どういうことが考えられるのですか。国としてやはり負担すべきものもあり得るということでしょうか。どうでしょう。
冨永政府参考人 全体計画の見直しにより工期が延伸されたことによりまして用地からの土砂搬入期間が延伸されることになったということによります土砂購入費への影響につきましては、先ほど申しましたとおり、まさに山口県岩国市それから山口県住宅供給公社と調整中ということでございまして、現段階、確たることを申し上げられませんけれども、例えば、一般論として言いますと、ベルトコンベヤーといった搬出設備購入といったものに係ります借入金利息あるいは運転費等、そういったものについては、土砂搬入期間の延伸に伴いまして引き続き必要となる経費であると考えられますので、こうした経費については、今後、土砂購入費の算定に際して考慮の対象になり得るというふうに考えております。
平岡分科員 ぜひ、これもある意味では基地を抱えた地域におけるさまざまな問題が絡み合っていることでございますので、できる限りの適切な対応を考えていただきたいというふうに思っておりますので、御要望いたしたいと思います。
 それから、地域の問題ばかり取り上げて大変恐縮でございますけれども、基地問題というのはある意味では地域問題でございますので、もう一つ、実は、岩国市では、市役所の建てかえということで、新庁舎をこれから建てていかなければならない、こういう状況に置かれているわけであります。
 多くの基地周辺に所在する市町村の庁舎についても、さまざまな、建設であるとか建てかえというような問題があろうかと思うのですけれども、こういう市町村の庁舎建設に対する国からの、防衛施設庁からの補助というのはどういう仕組みで動いているのかということについて御教示いただければと思います。
大古政府参考人 防衛施設周辺の地方公共団体が庁舎を整備する場合の防衛施設庁からの助成でございますけれども、この点につきましては、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律、この第八条の規定に基づきまして、飛行場等から生ずる音響による障害の緩和に資する部分について助成する場合が主要になってございます。
 ただ、このほか、庁舎等の中でも、修改築とかございますれば、そういう部分につきまして、一定の範囲内で助成していくというところでございます。
平岡分科員 一定の範囲内という一定というのがどこまで入るのかというのがようわからないのですけれども、制度は制度としていろいろあるということだろうと思いますけれども、個々具体的な話としてこの岩国市の新庁舎、岩国市も多分、今、広域合併の話が進展しておりますから、現実には、今の岩国市だけじゃなくて、周辺の町村も合併した状況でこの新庁舎が使われるという可能性は非常に高い状況にあるのだろうと思いますが、この岩国市の新庁舎に対する補助についての防衛施設庁の方針、この考え方について御説明いただきたいと思います。
大古政府参考人 岩国市庁舎の建てかえの問題につきましては、平成十五年度予算案に、市庁舎整備に係る基本設計等に要する助成経費として約六千万円を計上しているところでございます。
 この岩国市庁舎の建てかえの助成につきましては、岩国市の方の具体的計画がまだ決まっておりませんので、その具体化の進展、それから岩国市の要望、それから我々も財政当局との調整もございますけれども、この補助につきましては、先ほど申しました環境整備法の八条に直接基づくものではございませんで、その趣旨に準じて補助する、いわゆるSACO関係経費ということで、SACO補助として考えておりますので、今後、岩国市の方のお考えをよく聞きながら施設庁としても誠実に対応していきたい、こう思っております。
平岡分科員 いろいろな仕組みの中で誠実に対応していただけるということでありますから、ぜひその趣旨を全うしていただきたいと思います。
 最後に、これは通告はしてなかったのですが、きょうの某新聞に、テポドンの噴射実験があったということが出ておりまして、「今年一月にミサイルのエンジン部分の噴射実験が行われたことが明らかになった。」というふうにあるのですけれども、防衛庁長官、防衛庁としては、これは、いつの時点で、どういう内容のことがわかったのでしょうか、そして、それはどのようにしてわかったのでしょうか。
 これは、先日、予算委員会で、長官が、ミサイルの発射準備をしている、燃料注入時点でいろいろなことが判明すれば、そこに対して我が国から攻撃することもあり得るというような、認められ得るというような御発言をちょっとしておられましたので、それとの関連で、このテポドンの噴射実験について、先ほどお聞きしましたように、いつの段階で、どういう方法で、どういうことがわかったのかということを御説明いただきたいと思います。
石破国務大臣 先般、お答えいたしましたのは、要は、東京を灰じんに帰すというようなことを言って、そのために燃料を注入し始めたということになれば、我が国は恐れだけでは自衛権は行使できない、攻撃に着手しなければできないので、法理上、それを着手と見ることはあり得るだろうということを申し上げたわけでございます。委員、法制局にいらっしゃいましたから、これはもうよく御案内のことかと思います。
 今回のことでございますけれども、現状におきまして、そういうような報道がありましたことは存じておりますが、今回、報道にありますようなことにつきましては、これは、現段階で、私自身、個別的具体的なものに接しておるわけでは実はございません。ですから、いつ、だれからというようなことは、当然、申し上げることではないと思っております。
 私、先般来申し上げておることですが、国民の皆様方にとって、本当にミサイル発射の兆候があるとか極めて危険な、これはとにかく国の平和と安全に影響のあることだ、そして、国民の皆様方にお知らせせねばならないということは、それはきちんとお知らせしたいと思っています。ただ、どこからそれを知ったのかというようなことになりますと、これは、情報源を明らかにすればもう教えてもらえないということになりまして、かえって不利益をこうむることもございます。
 これはお教えせねばならない、公表せねばならないということは適切に開示してまいりますけれども、今回のことにつきましては、私は今、そのような情報に接しておるわけではございません。
平岡分科員 必ずしも納得する答弁ではございませんでしたけれども、時間がございませんので、これで終わります。
持永主査 これにて平岡秀夫君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして防衛庁についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 次に、内閣について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田徹君。
黄川田分科員 自由党の黄川田徹であります。通告に従い、順次質問していきたいと思います。
 まず最初に、構造改革特区についてお尋ねいたしたいと思っております。
 省益、縦割りあるいはまた前例主義などの霞が関の常識が日本の活力を阻んでおると私は思っております。そしてまた、これはとかく改革に背を向けようとする日本病でありまして、その根本は、裁量を働かすことができるのは自分たちだけだという独善的な官僚の発想にあるのではないかと思っております。
 経済の閉塞感が強まる中にあって、小泉内閣は、経済活性化戦略の柱であります構造改革特区を導入しまして、規制改革を推進し、地域の個性ある発展を目指したわけであります。この特別区の設定に関しては、地方独自の発案による知恵と工夫の競争であると私は思っております。
 昨年の八月末の一次募集及び本年一月十五日までの二次募集の提案を見ますと、地域経済の活性化を目指すなど、さまざまな工夫がいろいろな形の中で提案されておると私は思っております。
 しかしながら、各省庁の回答を見ますと、規制緩和の特別区域を認めるものとはほど遠く、むしろ、現行規制を守る回答がほとんどであったと思っております。具体的には、一次募集の後ろ向き回答は約四〇%だったのでありますけれども、二次募集では四分の三も否定的で、拒否率は一次募集の二倍近くにも達している。そしてまた、省庁の抵抗は強まっている、そういう感じを受けるわけなのであります。このような状態では、構造改革特区が目指す地方経済の活性化、これが一番大事なんでありますけれども、どこまで図れるか、すごく疑問に思うわけであります。
 教育、医療、農業等への株式会社の参入など、重点項目は経済財政諮問会議に場を移しまして集中審議を行うと聞いておりますけれども、それらの重点項目以外にも、地域通貨の発行の容認あるいはまた地域独自の宝くじ発行の容認など、地方経済の活性化につながる宝物が多いと私は思っております。特に、去る十七日の経済財政諮問会議で、小泉総理は、地方から出された提案をすべて実現するつもりでやってほしいと述べられております。
 そこで、昨日ですか、構造改革特別区域推進本部で決定されました百二十四の項目以外の規制改革の要望について、政府は今後、どのように実現していくつもりであるのか、大臣の具体的見解を求めておきたいと思います。
鴻池国務大臣 ただいまの委員の御指摘のように、第一次から第二次にわたりまして、地方また民間の知恵の結集と申しますか、この地域を何とか活力を持たせたいという思いの御提案を大変多くちょうだいいたしました。規制をしいている省庁と我が特区室で、精力的に調整を行ってまいりました。そして、昨日、御高承のように推進本部を開かせていただきまして、方針の決定をさせていただいたところであります。四十七を特区において実施する事項、また七十七、これは副産物と我々言っておりますが、全国で実施しようというようなものが誕生をいたしました。
 今回、大変大きな提案といたしまして平行線をたどったまま昨日まで至りました医療の分野、教育の分野に自由競争を取り入れる、その緒についたというようなことでありますので、小泉改革の一つの大きな目玉が、百メーター前進したとは言いませんが、一歩前進、二歩前進というところまで来たと思っております。
 また、御質問の、残された項目につきましては、総理から引き続き前向きに検討するようにということでありますし、当然のことでございますので、六月に予定されております、第三次の御提案をいただく、その際に、あわせて一次から積み残しているもの、二次から積み残しているもの、そして六月の第三次御提案をいただく、これをあわせて真剣に、宝物として取り組んでいきたい、このように思っております。
黄川田分科員 いずれ、地域の活力を閉ざさないように、積極的な対応をお願いいたしたいと思っております。
 そこで、一次募集の結果でも明らかであるのでありますけれども、各地域から提案されている特区は、各種規制をパッケージとして緩和することで地域が元気を戻せるというものが随所に見られるわけなのであります。しかしながら、国側の規制緩和に当たっての検討結果はどちらかというと縦割りでありまして、パッケージとしての議論がされることはほとんどないのではないか、私は、こう思っているのであります。
 一例を挙げてみたいと思います。
 私の地元の岩手県の遠野市の日本のふるさと再生特区は、旅館業法、道路運送法、酒税法、特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律等をパッケージとして規制緩和を図りまして、農業が伝えてきた発酵文化を生かしながら、そして中山間地域の活性化が一番大事だと思いますけれども、そういうものを考えておるわけなのであります。しかしながら、どぶろく等の一部の規制は緩和されつつあるものの、虫食い的な緩和となっていると私は思っておるのであります。本来的な規制緩和による総合力を発揮できないのではないか、こう思っておるわけであります。
 そこで、地方の創意工夫を生かすために、地域の提案を虫食いではなくてパッケージで実現するよう、規制改革に消極的な省庁には重点的に折衝するなど、大臣としての強力なリーダーシップをお願いするわけであります。さまざまな規制緩和を原則認める方向で検討していくべきと思いますけれども、重ねて大臣の意気込みをお尋ねいたしたいと思います。
鴻池国務大臣 委員の御出身地、実はついこの間の土曜日に、半分プライベートなことなんですけれども、訪問させていただきました。そして、いろいろな方にお目にかかり、こういった話題も随分出てまいりました。まさに縦割りが、いろいろな民の活力を阻害しているということは、私も担当いたしまして痛いほどわかっておるつもりでございます。
 例えば、どぶろくに関しましても、財務大臣が決断をなさって、やろうということに相なりました。そういったことで、農家、民宿プラスどぶろくといったような明るい話題が一つのパッケージとして出てまいりましたけれども、今後も地方から、地域から、パッケージで考えてくれ、パッケージでやれば大変おもしろくなるといったような御提案は積極的に取り上げて、関係省庁、また関係大臣と私も直接調整役を果たしていきたい、このように考えておるところであります。
黄川田分科員 遠野市の場合、都市と農村の交流であるとかグリーンツーリズムの推進策ということで具体的な提案をしておりますので、特段の配慮をお願いいたしたいと思っております。
 それはそれとして、本来的に法律等は原則として全国一律であるべきでありますし、そしてまた、地方公共団体が申請すれば特定の地域において規制緩和を認めることは、本来的な規制緩和の趣旨を取り違えた考えであると私は思っております。原則は、不要な法律は改正あるいは撤廃して、本来的な意味での規制緩和をすればよいだけの話ではないかということもつけ加えておきたいと思います。むしろ、全国どこでも民間の力が自由に発揮できる、そういう規制撤廃ルールをつくっていくのが本来的な国の仕事だと思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは次に、パイプラインと地域経済振興についてお尋ねいたしたいと思います。
 政府の総合資源エネルギー調査会では、天然ガスを一三%から二〇%に利用拡大を図る提言を行っておるところであります。しかしながら、先般の予算委員会で私が触れたとおり、現状のままではLNG船にしろあるいはまた海底パイプラインにしろ、点から点への移送にとどまるため、これ以上のガスの利用の拡大は望めないのではないかと思っております。
 そこで、点から線へ、線から逆に面へ広げていく必要がある。そういう意味で、陸上幹線パイプラインの整備は喫緊の課題であると思っております。そのインフラ整備に関しては、二つのことを検討しておかなければならない。すなわち、ガス需要の開拓、それから制度的なフレームの整備であると思っております。そこで、この二点をお聞きしたいと思っております。
 最初に、ガス需要の開拓についてであります。
 天然ガスの幹線パイプラインのインフラ整備において、特に政策的に大型のガス発電所を起爆剤として使うのはヨーロッパ、中国あるいは東南アジアなどで多く見られるわけであります。また一方、時代の変遷とともにエネルギー経済の環境が変わりまして、また自治体との立地調整の問題もありまして、原子力発電のあり方を議論しようという声も高まってきておるところであります。
 例えば、青森県の下北半島東部で計画中または着工準備中の原子力発電所が四基ありますが、総発電量は約五百五十万キロワットにも及ぶわけであります。ある調査によりますと、例えば計画の半分の二基、二百七十五万キロワット分を原子力発電から天然ガス発電に振りかえれば、約二百七十万トンの新しい天然ガスの需要が生じるということであります。それだけの新規需要があれば、寒冷地の北海道、そして北東北まで陸上を敷設する経済性が成り立つわけであります。
 二〇〇七年にはサハリン島南端まで来ることは確定しているので、安い天然ガスが入ってくることになれば地域経済の活性化に大きく貢献することになりまして、先般の京都議定書のCO2削減プランにも寄与すると私は思っております。要は、政策転換を柔軟に行うことで地域社会を大きく変えられる、そう思っております。
 そこで質問であります。
 大変疲弊した地域経済の活性化のためにも、以上の考え方を総合資源エネルギー調査会に諮るなどして、エネルギー政策の転換を早急に図るべきではないかと私は思っておりますけれども、資源エネルギー庁の見解はいかがでしょうか。
肥塚政府参考人 お答えさせていただきます。
 総合エネルギー調査会の天然ガス小委員会の報告でも提言されておりますけれども、天然ガスの利用拡大を図るためには、先生お話しのように、陸上海上にかかわらず、幹線パイプラインの整備が重要な政策課題の一つだというふうに認識しています。
 経済性のあるパイプラインの整備、導入で供給形態が多様化できれば競争が促進されますし、天然ガスの価格が引き下げられるというような効果が期待できます。それからまた、今お話がありましたように、地域分散型の電源の促進を通じて地域経済の活性化にも貢献する可能性があるというふうに考えています。
 私ども経済産業省としては、エネルギーセキュリティーと環境問題への対応という観点から、天然ガスの利用の拡大を期待しておりまして、パイプラインの導入環境の整備にも積極的に取り組んでいきたいというふうに考えております。
黄川田分科員 イラクなどの現下の国際情勢あるいはまた国内外で原子力政策のあり方、こういうことが問われているときでありますので、時代の状況変化にマッチしたエネルギーのベストミックスが重要であると思います。柔軟な対応を求められると思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 第二に、陸上幹線パイプラインは重要な社会インフラでありますけれども、道路や電線と同様、人々の生活を支える役割を担っておると私は思っております。北海道あるいは東北は、人口密度が低い理由でそういうものはバイパスにしてしまおうという考え方ではなくて、地方分権改革による活力ある自立した自治体の育成を唱える小泉総理の方針に沿った形で進めなければいけないと思っております。日本経済の景気回復は、まず地方経済の活性化なくしてはあり得ないと思っております。くどいようですが、そのためには、陸上幹線パイプライン建設のため何らかの枠組みが必要なのだということは、重要な課題だと私は思っております。デフレ経済から脱却すべく、財政出動が求められているものの有効な手段を見出すことができないというのが現状でありますので、地方経済を立て直す大きなプロジェクトになるのではないかと私は思っております。
 そこで、重ねて質問であります。
 関係各省庁の壁、障壁を意識することなく迅速な行動を起こすことが真の構造改革につながるものと私は思っております。そのため、以上の論議の重要性にかんがみまして、経済産業省は、この陸上幹線天然ガスパイプラインの建設を、政府の共通課題として横断的な検討体制を整えまして、強力な指導性を発揮することが大事であると私は思っておりますけれども、この地域経済の活性化の視点を踏まえまして、経済産業省の見解を求めておきたいと思います。
鈴木(隆)政府参考人 お答え申し上げます。
 先生のおっしゃいますように、天然ガスの輸送インフラ整備につきましては、これが経済性のある形で整備されれば、エネルギー供給形態の多様化による市場の競争促進、価格の引き下げ、ひいては我が国産業の競争力の向上等に資するものであるというふうに認識をしております。
 また、パイプラインが整備されますれば、その周辺地域ではエネルギーコストが低減されることなどによりまして、企業立地の促進につながるとか、厳しい状況にある地域経済の活性化に貢献する可能性も大いにあると認識をしております。
 経済産業省といたしましては、ガス事業法、高圧ガス保安法など、当省所管関連法について、現在、包括的な安全基準の整備、整合化を進めております。また、今般のガス事業制度改革の一環といたしまして、ガス導管事業というものを法的に位置づけまして、土地の利用などに関する公益特権を与えるといった環境整備も行っていく所存でございます。
 さらに、必要に応じ、今後、関係府省とも密接に連携を図りつつ、必要なインフラ整備が着実に進むよう、先生おっしゃいますように、環境整備について積極的に取り組んでまいりたいと思っております。
黄川田分科員 ある研究機関の試算によりますと、年間二百七十万トンの天然ガスの初期需要があれば、サハリン南端のコルサコフから、寒冷地の北海道、北東北まで約千キロの陸上幹線パイプラインを敷設する経済性でありますけれども、ROIが一二%、ペイアウトが七・二年とされているところであることも、ここで紹介しておきたいと思います。
 それでは、次に、地域課題であります道路であります。特に、中山間地の地域の道路は、どの程度、地域住民の生命を支えるのに役立っているのでしょうか。東北地方の事例で恐縮でありますけれども、岩手県立大の元田教授の興味深い調査結果があるので、紹介したいと思います。
 同教授は、国道百六号、盛岡市から宮古市間でありますけれども、この全線で発生した交通事故に伴う救急搬送について、盛岡、宮古両市の出動記録を分析しておるところであります。その分析結果によりますと、両市の市街地の救急搬送時間は約二十九分であるのに対して、農山村部では約一時間十三分もかかっているとのことであります。命の時間の格差が二倍以上もあるというのであります。また、東北六県で、救急センターなど三次救急医療施設に六十分以内で到達できる地域は約六〇%でありますけれども、逆に六十分以内に到達できない地域が約四〇%もあるということであります。
 そこで、以上の観点から、全国的に、都市部と農山村部では救急搬送時間にどの程度の違いがあるのか、そして、その主な要因は何であるのか、消防庁にお尋ねいたしたいと思います。
東尾政府参考人 お答え申し上げます。
 平成十三年の数値がございますので、それで申し上げます。
 あくまで都市部と農山村部の救急搬送時間の比較の参考でございますけれども、県庁所在地のある消防本部の搬送時間と、その県で最も管内人口の少ない消防本部の搬送時間を単純平均しますと、県庁所在地のある消防本部では約二十五・五分、最も人口の少ない消防本部で約三十三分と、この間約七・五分も、管内人口の少ない消防本部の方が搬送時間が長くなっております。
 また、一方、所属する消防本部からその外の医療機関へ搬送される人員を見ますと、人口が小さくなるほど管外搬送率が高くなる、こういう傾向が顕著でございます。十三大都市の平均が、管外へ出すのが約四%となっているのに対しまして、人口五万未満の単独消防本部では、これが約四六%に及んでいる、こういうことでございます。
 これらの要因について、詳しく分析したわけではございませんけれども、一般的にはやはり、農山村部においては、高度の救急医療施設が少ない、また管内面積が大きいということから、病院までの搬送時間が長くなるということに加えまして、道路整備のおくれ、さらに積雪、凍結など道路事情が悪い、また、一般の人に比べますと、搬送により時間を要する高齢者の搬送件数が多い、こういうことなどが搬送時間を長くしている要因と考えております。
黄川田分科員 消防庁の方からお話をいただきましたけれども、関連して、高速道路を利用した救急搬送についてお尋ねいたしたいと思います。
 状況によっては、救急車が高速道路を有効に利用することによりまして、救急搬送時間がより短縮されると考えられます。道路公団では、救急センター等へアクセスするため、高速道路近辺などで特別の誘導路を設置している事例が、東北地方では山形県にあると聞いております。
 そこで、一方、私の地元の三陸縦貫自動車道でも、大船渡市の平成十七年供用開始予定区間で、わずか七、八十メートルのところに、県立の大船渡病院の救急救命センターがあるわけであります。
 そこで、国土交通省にお尋ねいたしたいと思います。救急センターや消防署など、地域住民の生命、財産にかかわる施設の特定の車両が、もちろん地形や距離など地域の状況にもよりますが、高速道路にアクセスが可能な施設を設置すべきであると私は考えるのでありますけれども、いかがでしょうか。特にも、大船渡市の場合は、三陸縦貫自動車道をクロスする農道が既にあることでもありまして、取りつけ道の設置を求めておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 あわせて国土交通省にお尋ねいたします。
榊政府参考人 お答え申し上げます。
 私ども、道路と申しますのは、国民の日常生活から経済活動に至るまですべて、経済社会活動に密接不可分な、最も基礎的な、かつ重要なインフラだというふうに思っております。特に、医療施設へのアクセス性の確保につきまして、安全で安心できる質の高い暮らしを実現するために、道路が担っている最も重要な機能の一つだというふうに認識しております。
 したがいまして、高速道路、一般道路限らず、安定した高次医療サービスを享受できるように、安全、安心度の高い生命線である幹線道路につきましてこれを整備し、高次医療施設のアクセスにも十分配慮してまいりたいというふうに思っておるところでございます。
 御指摘の三陸縦貫自動車道でございますけれども、岩手県内では約六十キロメートル区間で事業をやっておるというところでございますが、大船渡から三陸町に至ります大船渡三陸道路は十七・六キロメートルございまして、そのうち、平成十年度までに、大船渡インターから三陸インターまでの八・七キロが供用されております。現在、平成十七年度の供用を目的といたしまして、残る大船渡南インターから大船渡インターまで工事を実施中ということでございます。
 それで、先ほど先生から御指摘いただきました県立大船渡病院でございますけれども、平成七年度に開設されまして、平成十年に救急救命センターができたということで、私どもの道路計画をつくった後に救命センターができたということでございます。したがいまして、アクセス道路を急に全部設置するというのは大変難しかったわけでございますけれども、先ほど御指摘がありましたような、搬送時間の短縮ですとか患者への負荷の軽減を図るということを目的といたしまして、緊急退出路を設置するというようなことにつきまして地元の大船渡市から強く要望されているところでございますので、関係機関と十分連携をいたしまして、そういう設置ができるような方向で検討をしたいというふうに思っておるところでございます。
黄川田分科員 よろしくお願いいたしたいと思います。小泉内閣は大都市の再生が大きな柱であるようでありますけれども、やはり国家は地方が元気になることがさらに懐が大きくなるということでありますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 残り時間わずかでありますので、通告二問していましたが、前段の一問で終わりそうであります。
 それでは、育児支援についてお尋ねいたしたいと思います。
 仕事と子育ての両立支援の観点から、保育所の整備を初めとする保育施策など、政府はこれまでさまざまな政策を講じてきたものと思っております。しかしながら、現在、共働き家庭に比べ、専業主婦家庭においても子育てへの負担感とか孤立感が高まっているという事実があり、これまでの取り組みではまだまだ不十分であると私は思っております。
 例えば、保護者の就労形態や病気などによりまして、緊急的あるいは一時的に保育を必要とする子供に対して、一時保育事業の実施市町村数は、平成十三年度八百八十余りで、全市町村の四分の一程度にすぎないわけであります。そしてまた、保護者の病気などによりまして短期間預かるショートステイ事業等の実施市町村数は、これまた平成十三年度で、二百六十余りにとどまっておるわけであります。全市町村の一割にも満たないという現状であります。
 そこで、厚生労働省にお尋ねいたします。
 こうした状況を踏まえまして、政府においては、専業主婦家庭を含むすべての家庭に対する子育て支援を市町村が行う仕組みを整備するため、児童福祉法の改正案を今国会に提出を予定していると聞いております。今回の改正案ではどのような支援策が検討されているのか、また、十五年度予算案では具体的にどのように措置されているのか、あわせてお尋ねいたしたいと思います。
岩田政府参考人 今、先生おっしゃいましたように、専業主婦家庭の子育ての負担感が大変高まっておりますが、一方では、地域における子育て家庭に対する支援の取り組みは十分なものにはなっていないというふうに現状認識をいたしております。
 現在の児童福祉法は、保育対策ですとか、虐待を受けた児童の入所措置など、いわゆる要保護児童対策が中心になっておりまして、すべての子育て家庭を支援する、そういった積極的な取り組みを行えるよう、児童福祉法の整備をしたいというふうに考えております。
 具体的には、地域における子育て支援事業として、三つの類型を考えております。
 一つは、子育ての相談に応ずることができる事業、二つ目には、親が病気や育児疲れのときに子供を一時預かることができる事業、そして三つ目には、子育てヘルパーを家庭に派遣するなど居宅における支援事業、これらを児童福祉法の中に位置づけまして、市町村に努力義務を課すことによって市町村における取り組みを促進したいということを考えております。
 また、あわせて、こういった子育て支援事業についての情報提供を子育て家庭にいたして、必要な利用をあっせんするなど、いわば子育て家庭と子育て支援事業の間のコーディネートの事業を市町村に実施することを義務づけるということも検討しているところでございます。
 御質問の十五年度の予算案についてでございますが、保育所における一時預かりや、子育て中の親が子供を連れて集まれる集いの場づくりなど、必要な予算を計上しております。これらにあわせまして、新たに、地域における子育て支援サービスの情報を一元的に把握し、それを提供し、利用のあっせんをする、子育て支援総合コーディネート事業を創設することにいたしておりまして、利用者の利便の向上に資したいというふうに考えております。
 これらの対策を推進することによりまして、子育ての孤立化、負担感を軽減いたしまして、安心して子育てに、そして喜びが感じられるような環境を、特に市町村の力をおかりして推進してまいりたいというふうに考えております。
黄川田分科員 全国三千二百余の市町村も、合併の動きということで、いろいろなことが動いております。しかしながら、中山間地における首長の最も大事な政策として、高齢化に対する対応、そしてまた、特に少子化対策であります。厚生労働省等も一生懸命頑張っていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。ありがとうございました。
持永主査 これにて黄川田徹君の質疑は終了いたしました。
 次に、阿部知子君。
阿部分科員 社会民主党の阿部知子です。
 本日は、福田官房長官にお越しいただきまして、私の地元となります藤沢と、それに隣接する寒川町という町でこの間起こっております、毒ガス、戦争中に相模海軍工廠という毒ガス兵器を作製する工場がございまして、そこで廃棄した毒ガスが、戦後五十七年たって、相模縦貫道という道路を通すときに見つかった問題で、ぜひとも内閣としてのリーダーシップをとっていただきたいことがございまして、きょうは大臣にお願い申し上げました。
 まず、福田官房長官、ちなみに、相模海軍工廠というのはこれまでお聞きになったことがおありでありましょうか。
福田国務大臣 以前、私、これは質問を受けたことがあるんですよ、実は、そのとき初めて知ったんですけれども。そういうことでございます。
阿部分科員 それでは、概略を御承知であろうと思いますが、一九四三年から、特に、現在大変に問題になっております大量破壊兵器に当たりますところの化学兵器をつくっておりました工場で、その地域の学徒を動員いたしまして、現在、湘南高校と言われるような高校とか、幾つかのいわゆる旧制中学の若者をも動員いたしまして、毒ガス兵器をつくっておった。それが、敗戦過程で、米軍の進駐を前に、毒ガスというものが見つかっては大変にまずいということで、周辺地域に廃棄しておりまして、戦後そのことはずっと不問に付されてきたわけです。
 今回、相模縦貫道と申しまして、神奈川県の海側から内陸部、山側に向けて縦の道路をつくろうと思ってボーリングしておったところ、ビール瓶が見つかって、何だろうかと思って作業員がさわったところが、毒ガスによる、イペリットというびらん性のガスでございまして、粘膜被害を起こしたということで、昨年の九月二十五日から問題になっております。
 直後、十一月ごろに、私以外にも、民主党の江崎議員あるいは自由党の樋高委員もいろいろ御質疑でございますが、実は、事態は一面進展しております。しかしながら、根本的に解決しておらない点があると思いますので、きょうはその点でお願いしたいと思います。
 一番の問題は何かと一言で申しますと、相模縦貫道という道路を通す予定地については、国土交通省がこれまでいろいろな意味で熱心にお取り組みくださいまして、ある程度の地域の調査、並びに二月の十七日からは再度ボーリングも始まるということで進んでおりますが、道路に関係しないところも含めて、相模海軍工廠の跡地となっております。
 それで、国土交通省が管轄するところ以外の場所の安全性はどうかという問題が、やはり住民にとっては払拭されない。例えば、小学校とか昔、池であったところとか、そういうところの安全対策、今後についてどう考えるかということでございますが、冒頭、官房長官に御答弁をお願いいたします。
福田国務大臣 委員からさきに御質問がございまして、そのときに安倍官房副長官からお答えしていると思います。その部分は省略いたしますけれども、例えば道路敷地内の安全性の確認につきましては、二月の十七日にボーリング調査を開始いたしまして、今後とも、関係省庁などと連携をしながら、国土交通省において主体的に対策を進めていくことといたしております。
 御指摘の道路敷地以外の地区に関しましては、道路敷地内の調査結果等も踏まえ、関係省庁等の間で連携を密にして、検討していく必要がございます。このため、内閣官房が、担当する省庁を定めるというような必要な調整を行いまして、適切に対応してまいりたいと思います。
 いずれにしましても、周辺住民の不安を払拭するように努めてまいらなければいけないと思っております。
阿部分科員 例えば、二月四日に明らかになりましたことは、官房長官が今おっしゃいましたように、道路のところではなくて、ちょっと道路の外側でやはり割れたビール瓶が発見されておりまして、今の国の手順ですと、まず道路の部分からやっておるんだよというお話でありますが、やはり汚染地域はより広がっておるという実態もございます。先ほど私が申しましたように、国土交通省はそれなりに担当官庁としてやるべきことをやっていただいておると思うのでありますが、それがわかってからというのでは、なかなか対処し切れない住民不安というものが現実に起こっておるという段階なのであります。
 例えで恐縮ですが、今後、例えば小学校の敷地内で偶然見つかってしまうとか、先回見つかりましたのも一・五メートルほど掘ったところでございますので、比較的どこでも起こり得る、深くボーリングしてじゃないんですね。となりますと、住民にしてみれば、どこかを掘ったら出てくるのではないかという不安を持って当然でございます。例えばですが、小学校の校庭などで見つかる場合を想定した場合に、今の、国土交通省のあずかる道路予定地内以外である場合は、担当省庁窓口というのはどのように考えられるのでしょうか。
福田国務大臣 これは、どこにあるのかということは多様でございまして、予測がつけばいいんですけれども、なかなかつかないようなこともよくあるのではないかということでございますので、この辺はいろいろ調査するしかないんですね。その上で対応を考えていくということになると思います。いずれにしても、必要に応じて内閣官房を中心にして関係省庁の連絡会議を開催して、関係省庁間で連携して政府としての対応を行います。
 しかし、道路敷地以外の問題につきましては、今のような政府の対応をしますけれども、いずれにしても、内閣官房が中心になって対応していくということにならざるを得ないと思います。そういうふうな考え方でございます。
阿部分科員 大変ありがたい御答弁で、実は、内閣官房に本当に担当していただきたいので、きょう御質疑をさせていただいているのです。この相模海軍工廠に関しましては、一九九九年に、その工廠に勤めておった、あるいは廃棄に携わった方たちの健康障害について、国は毒ガスによる障害者の補償ということで既に救済措置はしたのです。ただし、そのときに、今後、その周辺で住民に害が及ぶ、あるいはこのようにほっくり返して事が出てくるということを予測しませんで、一九九九年のは従事者対策に終わっていたわけです。
 私がここで強くお願いしたいのは、実は、相模海軍工廠にかかわるいろいろな資料や、あるいは当時のことを知る証人と申しますか、現実にまだ生きておられる、御存命の方たちも既に七十歳代の半ばを過ぎておられて、現在であればさまざまな聞き取り調査も実施できる段階でございます。これは、防衛庁というか防衛研究図書室などにも資料もございますし、やはり廃棄の実態が敗戦当時どのように行われたか、ぽつぽつとは聞けるのです、あそこの池に捨てたよとか、今マンションの建っているあの下だったよとか、それは私が個別に地域の住民に伺えばぽろぽろとは出てくるんですけれども、そうしたものを、今おっしゃった、例えば内閣官房のどこかの室でおあずかりいただいて、きちんとした聞き取り調査を一度行っていただきたい。これは都道府県では無理ですし、国土交通省でも無理です。それが、事前にあらかじめ汚染の広がりがこれくらいだよということが、それは完全ではないです、でも、ある程度今ならまだ情報収集できる余地を残しております。寒川の町史に編さんされたものや、あるいは当時の学徒動員の方たちが記録に残されたものを書いた方もまだ御存命でいらっしゃいます。
 私は、どこかに資料を集積して、ある程度の事実、実態を残しておくという作業がないと、住民の不安はもちろんのこと、今後に起こり得ることが起きてから事後対処しますということにどんどんどんどんなっていきますので、これは、私は、きょう福田官房長官にお願いですし、戦後処理という大きなテーマでありますので、やはり内閣が中心になってそのようなことも検討していただくということをお考えいただけまいかと思いますが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 いわゆる戦後処理というのは非常に多岐にわたります。態様もさまざまでございます。例えば、旧日本軍の老朽化化学兵器が発見されたという場合には、発見された場所とか状況とか、態様がさまざまでございまして、あらかじめ処理の実施省庁などを決めて対応するということは困難でございます。そのために、その都度、必要に応じて内閣官房を中心に関係省庁連絡会議を開催するなど、関係省庁間で連携をして、補償問題等も含めて政府としての対応を行ってきたところでございます。
 今後は、遺棄された老朽化化学兵器が発見された場合には、これまでの類似事例への対応が有効に活用されるように配慮しながら内閣官房が総合的な調整を行うとともに、所管が定まっていない事案については、内閣官房がこれを定め、関係省庁間で連携を密にして、迅速かつ的確な対応を図ってまいりたいと思います。
 いろいろな調査を内閣官房で、こういうお話もございましたけれども、これはやはり、どういう調査かという、かなり専門的なことにもなるようなこともありますし、その時々の対応は関係省庁間でよく相談して、効果的な調査及び対応をさせていただきたいと思っております。
阿部分科員 私の質問の趣旨がちょっと御理解いただけなかった分もあると思うのです。
 私は、現在まだ御存命で当時の状況を知る方もおいでなので、せめてそこの部分は聞き取って、少なくとも、得られる情報からどのような廃棄の実態であったかということをおまとめいただく省庁は内閣官房ではないか。その作業はだれもできませんので、しかしながら極めて重要な、そして戦後初の、実際に人体が被害をこうむった毒ガス問題なのでありますから、非常に極めて重大に認識されて、聞き取り調査についてもリーダーシップをとっていただきたいと重ねてお願い申し上げるものですが、いかがでしょうか。
福田国務大臣 具体的な調査については、そういう調査は必要であるということを認識した上で、どこが担当すべきかということは、やはり効果的な対応をするというような観点からもよく相談して決めてまいりたい。しかし、どういう決め方をするか等、内閣官房が中心になって、担当を決めるとかどういう内容のことをするかとかいったようなことについては、よく協議をさせていただきたいと思います。
阿部分科員 再度主張するようで恐縮ですが、聞き取り調査等々は内閣官房がやはり率先しなければできない事項で、事が起きた後の事後処理を内閣官房がどこにきちんと指令を下すかということとあわせて、両輪ですので、よろしくお願い申し上げます。
 そして、あと、実際に健康被害を受けた方たちの実態がどうなっておるかということを担当の厚生労働省の方から若干お願いいたします。
鈴木(直)政府参考人 実際に被害を受けられた方の状況ということでございますが、私どもとして、こうした問題に即対応できるところは対応するということで、具体的に情報を得てから災害調査を実施いたしまして、その中で、九名の方については、労災保険制度の中で、調査の後、支給決定をしているところでございます。
阿部分科員 では、これも確認で短目にお願いいたしますが、その九名の方は状態として大分改善されておるのかどうか、国土交通省の方にお願いいたします。
榊政府参考人 お答え申し上げます。
 作業員の方十一名の方が被災ないし被災の疑いがあるというふうに診断をされまして、そのうち五名の方は現在も通院されているというふうに聞いております。
 以上でございます。
阿部分科員 せんだって私はこれを厚生労働委員会でも取り上げまして、労災扱いで扱い切れないところ、例えば後遺症が残り、労災の一定の休業給付とか、そうしたものが打ち切られた場合に、残余の部分は国として責任を考えていくという御答弁を厚生大臣にもいただいておりますので、そのような方向と確認させていただきまして、あと、もう一点。
 この件は、いわゆる大量破壊兵器の、特に化学兵器にかかわります国際条約から、申請をして、廃棄過程を査察を受けなければいけないと思いますが、その方の進捗状況を外務省の方にお願いいたします。
天野政府参考人 お答えいたします。
 相模縦貫道工事現場で発見された不審物につきましては、我が国は、昨年の十二月十二日に、化学兵器禁止条約上の老朽化した化学兵器として、化学兵器禁止機関技術事務局に申告いたしました。昨年の十二月の十二日でございます。また、その後、この不審物の保管方法が改善されましたことに伴いまして、ことしの一月三十一日に必要な追加の申告をいたしました。
 今後ですけれども、我が国の情報の提出を踏まえまして、化学兵器禁止条約技術事務局より、この不審物が老朽化した化学兵器に該当するかどうか確認するための査察が行われる見通しでございます。また、我が国は、この不審物を廃棄するに当たりましても、査察の結果を踏まえ、条約の関連規定が適用されることになります。さらに査察などを行う可能性もございます。
 外務省としては、今後、この不審物にかかわる化学兵器禁止条約上の手続が迅速に進み、早急に廃棄が行えるよう、技術事務局及び我が国関係機関と緊密に連絡していく考えでございます。
阿部分科員 今御答弁をいただきましたように、かかわる省庁が、外務省、国土交通省、厚生労働省と多岐にわたっております。現在、神奈川県では、県警で、例えば大量で、もしまたこういうイペリットというガス等が見つかった場合の出動形態なども討議するというような、総務省にもかかわるような部分でも連携が密に必要ということで、先ほど福田官房長官に繰り返し御答弁いただきましたが、やはり全般にわたっての目配りを内閣官房としてよろしくお願いしたいと思います。
 では、最後でございます。いわゆる大量破壊兵器問題に関しまして、今、イラクにおける大量破壊兵器の査察、その後の廃棄という問題で、国際的に緊張が高まっておるやさきでございますが、先般、内閣並びに小泉総理大臣の決断で、イラクに特使を派遣なさるということをお決めになったというふうに報道で伺っております。イラクへの特使派遣ということは、いつごろから検討され、この時期、どうしたお考えで決断に至ったのかについて、官房長官からお願いいたします。
福田国務大臣 いつごろからかという話になれば、そういう可能性というものは、行くべきかどうかということはずっと検討していたことだと思います。二十四日に国連安保理へ米英スペインの共同提案ということで提出をされた決議案がございます。これによりますと、イラク問題の平和的解決のための真に最後の外交的圧力の一環である、そういう内容であるという理解をしておりまして、そのために、我が国としても、外交努力を通じて、主体的にかつ積極的な役割を果たしていかなければいけない、こういうように考えております。
 そういう考え方に立ってイラク問題の平和的な解決を追求し、中東の平和と安定に向けた意見交換を行うことを目的といたしまして、来週、総理特使をイラクを含む中東諸国に派遣することといたしております。イラクだけでなくて、周辺のトルコ、シリア、エジプト、サウジアラビア、ヨルダン、イラクに、三人の方々に行っていただく、こういうことになっております。
 イラクに対しましては、安保理決議一四四一によって与えられました最後の機会に即時にこたえるべきであり、平和的な解決のためにみずから積極的に疑惑を解消し、大量破壊兵器の廃棄を初めとするすべての関連安保理決議を履行することを強く求めて、最後の翻意を促す、こういうことを考えているわけでございます。
 また、周辺国との間では、イラク問題を中心に地域情勢に関する意見交換を行い、その中で我が国は、国際社会が一致団結し協調して対応し、断固たる姿勢をイラクに対し示すべきという立場から、そういう周辺国からイラクへの一層の働きかけをしていただきたいという要請をする予定でございます。
阿部分科員 もう一点だけ、御答弁いただきたいのですが、私は、同じ質問を二月の十二日の日に、逆に川口大臣に特使を派遣してはどうかというふうに予算委員会の場でお伺い申し上げました。そのときに川口大臣の御答弁は、イラクに特使を派遣することを考えはしたが、イラクを利することになるので派遣はしない、そういう御答弁でした。
 それが二月の十二日でございまして、時局、先ほど官房長官がおっしゃいましたが、二十四日に国連の安保理でのさまざまな動きもございましたのですが、一番大きな変化、イラクに特使を派遣したらイラクを利することになると考えていたものが、現在、その当時もイラクも含めて中東諸国に、特使ですからお送りになることだったと思いますが、状況判断を変更された大きな理由はございますでしょうか。
福田国務大臣 二月の十二日の時点で、私も、ちょっとその時点がどういう状況だったか、今思い出せないんですけれども、正確に。しかし、いずれにしても、非常に微妙な判断であろうかと思います。その時々の情報、また客観情勢をよく調べながら対応していく。ですから、行く、行かないというのは極めて慎重に判断をしていかなければいけないということでありまして、十二日に絶対に行かないという選択肢もなかったんだろうと思いますよ。
 だけれども、慎重に判断した結果、あの時期は、外務大臣がどういうお気持ちで答弁されたかは私はわかりませんけれども、微妙な駆け引きというか、やりとりを国際社会とイラクとの間で行われている、その国際社会にも意見がいろいろある、こういうふうな状況を見て、そのときは行かない方がいいんではないかという判断をされた。
 しかし、今度は決議が出まして、最後の最後、そういうふうな感じもいたします。ですから、これはやはり最後に行って、そして最後の最後に至る前に何とか平和的な解決を目指すことはできないかというようなことも含めまして、これからイラクに対して翻意を促す、こういうことでございます。
阿部分科員 私は、問題は二点あろうかと思います。それは、日本の国の外交姿勢に関してですが、川口外務大臣にも二月の十二日の御質疑で申し上げましたが、いわゆる国民に対しての説明責任、何を国民に対してメッセージしながら外交を行うかという場合に、基本的な認識として、二月の十二日、あのときは、独仏ロが査察の継続という形で主張し、米英は軍事行動、今と基本的に同じ構図をとっておりました。そういうさなか、日本が何を望み、イラクの人々に、そして日本の国民に何を伝えながら外交を行うかというところで、非常に外交の中身が見えない、顔が見えないのではないかと申しました。
 私は、今回の事態でも同じであると思うのです。十二日の日に、もちろん外交ですから、状況はありますが、行けばイラクを利することになるという御答弁と、今回それが十二日間で変わっていった経緯、何が変わったかということがやはり国民には見えないし、外務省側あるいは政府からはきちんとしたメッセージが発せられないのが一点。
 あともう一つ、私が一番問題と思いますのは、外交は、信なくば立たずと申しまして、やはり相手国との信頼関係がどの程度醸造されたかによって、お互いぎりぎりの中で行われるものだと思います。そうした場合に、イラクに対する我が国の態度が、本当に大量破壊兵器の廃絶を強く求めて、そのためにどんなにか友好的に、どんなにか真摯にそのことを伝えていくかという姿勢がなければ、事は成就しない。前回おっしゃったように、イラクを利することになるからというような態度を心の底に持って行けば、やはりこれは圧力として行くにすぎないことになってしまいまして、私は、そうした外交というのは国を危うくすると思うものでありますが、もう一度官房長官にお願いします。
 私は、十二日の段階と現在に至るまでの大きな状況の変化は基本的にはないと思います。そして、閣内でどのように論議されて、川口大臣のお答えがあり、また今日の特使の派遣が決断されたか、私は、基本的に特使の派遣は賛成です。しかし、どのような誠意を持って、気持ちを伝えることをもって特使を派遣するかにおいて、結果が吉にも凶にも出るだろうと思いますので、その点について、もし、もう一点御答弁いただければ、お願いいたします。
福田国務大臣 日本の姿勢というのは一貫して変わらないんですよ。変わっていないでしょう。変わっていますか。変わっていないと思うんですよ。一貫して、イラクが大量破壊兵器を放棄することが必要だということを述べているんです。
 大量破壊兵器をイラクが持っていていいんですか。さっきイペリットの話がございましたけれども、そういうことが起こらないようにするために今必要なんでしょう。イラクがその決断さえすれば、これは平和的にできるんですよ。何も、その後大きな問題にならない。そういう可能性があるのに、イラクはそれを聞かない。それも今だけの話じゃない。過去十数年間にわたり、そういう態度を続けてきた、国際社会を欺き続けてきたんですよ。違いますか。
 だから、そういう意味で、今も日本は同じことを言い、そして行動は同じことをやっているわけです。そういうことを正確に委員も伝えていただきたいと思います。そうすれば、国民は誤解しないで済む、そういうことになります。
阿部分科員 私は、極めて正確に伝えているつもりでありますし、後ほど、福田官房長官、私の今申しました質疑の議事録をよく読んでいただければと思います。私は、大量破壊兵器は廃棄しなければいけない、そのために信頼を醸造して、そのことに向けて真摯に日本が働きかけなければいけない、安易に敵対的な態度をとれば事が成就しなくなると申し上げた、そう受けとめていただきたいと思います。
 これにて私の質疑を終わらせていただきます。
持永主査 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして内閣についての質疑は終了いたしました。
    ―――――――――――――
持永主査 次に、金融庁について質疑の申し出がありますので、これを許します。松原仁君。
松原分科員 民主党の松原仁であります。
 竹中大臣に質問をするわけでありますが、今、日本の経済は大変に厳しい環境にあります。今、自殺者は年間三万人とも言われておりますが、実態はそれをはるかに超えるだろうというふうに思っております。先般も、私の大変に親しくしている人間が、お葬式というか、亡くなって、私はそこに参りまして、心筋梗塞というふうに聞いたわけでありますが、話を聞きましたら、心筋梗塞ではない、自殺であったということを、身内ではなくて親戚から聞かされて、愕然といたしました。
 そうやって考えますと、三万人という数字ではない、恐らく、その数倍の人たちがこの大変な経済の苦境の中で命をみずから絶っているという状況があると思います。この状況について、竹中大臣はまずどう思うか、お伺いいたします。
竹中国務大臣 みずからの命を絶つというのは、これはもうまことに痛ましい限りであるというふうに思います。かつ、その数がどんどんどんどんふえている、その中でも、経済的な理由だと考えられる方の数がやはりふえている。委員御指摘のように、自殺というのはなかなか表に出ない分がかなりございますでしょうから、その実態に関しては非常に深刻に受けとめなければいけないというふうに思っております。
 その背景、これはもちろん、自殺全体はいろいろな要因によるわけでございますが、経済に関して言うならば、やはり経済状況が非常に厳しくなっている。これは、失業率の高さ、倒産の多さということに集約されていると思いますけれども、そうした中で、経済を活性化させていくということが我々にとっての大変重要な責務であるというふうに考えております。
 同時に、失業率だけをとりますと、例えば、日本は今かなり高いわけでありますけれども、諸外国を見ますと、日本より高いところもある。しかし、さらに加えて、自殺という問題がこれだけ日本で社会的に大きな問題にならざるを得ないというのは、経済の問題に加えて、その社会的な側面といいますか、ビジネス、例えば個人保証等々、失敗すると無限責任を問われてしまう、ないしは破産等々の場合に残される財産等々が非常に少ないのではないか。その意味では、社会的な側面からの法の整備というものについても、やはりこれは早急に、これまでも取り組んではきているわけですけれども、加速をさせなければいけないというふうに思っております。
松原分科員 私は、今の自殺者の急増問題、竹中さんはそういうふうにおっしゃるけれども、大変にそれが、経済の運営の仕方にやはり原因があるんじゃないかというふうな気がしているわけであります。
 この問題は非常に大きな問題でありますが、後で時間があれば、もう一回やりたいと思います。
 今、地球規模の経済というものができてきて、グローバリズムと言われております。しかしながら、グローバリズムに反対する声というのは、またこれは大変に根強いものがあって、グローバリズムを目指すような集会が世界の、例えばカナダのどこかで行われるとかいうことになれば、そこに大挙して反グローバリズムの人たちが押し寄せる現象が起こっている。このことについて、竹中大臣はどんな認識を持っているか、簡潔にお答えください。
竹中国務大臣 経済の活動が地球規模で行われるようになっている。これは、物だけではなくて、お金や人間という生産要素、さらには情報まで含めて、物すごい速度で国境を越えて動くようになってきた。その中で、企業だけではなくて、個人の行動も地球規模を視野に入れて行われるようになってきている。非常に強い流れが、特に九〇年代以降加速しているわけでございます。
 委員御指摘のように、そういった非常に大きな経済の流れ、それはそれで経済にメリットをもたらす面もあるけれども、一方でさまざまなグローバル化による悪い影響を懸念する声が広がっているということも、これまた間違いない事実であろうかと思います。むしろ、国境を越えて、地球規模でいろいろなことが経済で進めば進むほど、みずからの、例えばアイデンティティー、文化的なアイデンティティーでありますとか言語の問題であるとか、そういうようなものに対して、非常に強い意識が逆に広がっていっている。
 ですから、経済の統合とある意味で各意識の分散的自立のようなものが同時に進行している、これがまさに今の地球社会なのではないのかなというふうに思っています。その調和をとることが当面の非常に大きな課題であって、これはやはり問題を見据えて、しっかりと対応していかなければいけない問題であるというふうに思います。
松原分科員 竹中さんは大変なエリートであります。英語ももちろん使いこなせるし、何カ国語かできるのかもしれません、私はよく存じ上げませんが。
 今のグローバリズムという考え方において、私は、若干それは軌道修正をしていただきたいと思っております。
 というのは、地球規模での活動を行っているのは、お金は地球規模での活動を行っているわけです。例えば、日本円で百万円はアメリカへ行くと八千ドルぐらいですか、今のところ、それぐらいで動く。どこに行っても、それは無国籍で動く存在であります。
 また、竹中さんのようなエリートの労働者は、エリートサラリーマン、エリートは世界どこに行っても通用するでしょう。また、単純作業をする人間は、同じように、どこへ行っても通用するかもしれません。ただし、これは国境を越えて自由に動けるかといえば、簡単にアメリカに行って働こうといっても、それはできなかったりする。国境の壁はある。
 お金においては、そういった国境の壁というのは極めて今は撤廃をされている。ある日キャッシュディスペンサーで入れたお金が、その日のうちに地球を一周回って戻ってくることも可能でありますが、旅行者だったらそれもなかなかできないだろうけれども、それは三日もあれば世界一周ということもあるでしょう。労働者がお金のように三日もあって世界を一周する、そんなことはできない。エリート労働者であれば、まだ一カ月あればできるかもしれない。
 しかし、ドイツの労働者は、基本的にはドイツ語がしゃべれなければドイツで労働はできない。中国の労働者は、中国語がしゃべれなければ中国で労働はできない。同じように、フランスの労働者も、フランス語がしゃべれなければできない。日本の労働者も、日本語ができなければできない。
 私が申し上げたいことは、極めてエリートの、人口の一%にも満たない人間はどこでも通用するかもしれない、しかし、実際は通用しないかもしれない、いろいろな規制があって。大多数の、九八%の労働者は、今のグローバリズムにおいて、お金がグローバリズムに適応するように、物がグローバリズムに適応するようには、人は、エリートは別です、単純労働者は別です、しかしながら、それもいろいろな法規制はある。一般の労働者はグローバリズムには適応できないということを私は申し上げたいんです。今の日本の一番大きな問題はそこにある。
 私は、竹中さんはエリート過ぎるからわかっていないと思う。今の日本の労働者が、例えば日本で失業をして、アメリカにすぐ行けるか、行けないわけであります。英語はできるのか、これはできない場合が多い。中国語ができるのか、簡単にできない場合が多い。私が言いたいのは、そういうことにおいて、労働のグローバリズムというのは、雇用のグローバリズムというのは、お金のグローバリズムのようにはなっていない。そこに今一番大きな労働疎外の現状があるんだろうと私は思っております。
 マルクスはかつて、「資本論」を書く前に、若いころ労働疎外というのを経済的論文で書いていたけれども、ある意味では、あのときと違った労働疎外が、グローバリズムという中において新しい労働疎外が起こっているというふうに私は思っておりますが、このことについて大臣の所見を伺いたい。
竹中国務大臣 私は、労働に関して委員が今おっしゃったことは、全くそのとおりであるというふうに思います。
 先ほど、国境を越えて地球規模で行動するというふうに私、申し上げたと思いますが、そのことは、日本の消費者を見ても、例えば、どこの国の製品がよいかということをよく知っている、海外旅行も日本の場合は一般の方がたくさんいらっしゃる、そういう意味で、その行動の中に地球的な概念が入ってきているということを申し上げたかったわけでありますが、しかしながら、まさに御指摘のように、お金は一瞬にして国境を越えますけれども、いわゆる普通の労働者というのは、国境を越えて移動はできないわけであります。
 このことは、これはもう委員よく御承知だと思いますけれども、私自身大変印象深かったのは、アメリカの労働長官をやったロバート・ライシュが、政府の中に入る直前に、「ザ・ワーク・オブ・ネーションズ」という中で、とにかくこれからの経済問題というのは、国境を越えて容易に移動できない普通の人々がどのようにして生きていけるかということを考えることであると。今、委員がおっしゃったのは、まさにその点であろうかと思います。
 しかしながら、重要な点は、例えば中国で安い人件費で物がつくられてきている、それが日本に入ってきている、日本の高い人件費ではなかなか対抗できないようなものが入ってきている。しかし、中国の人件費は以前から安いわけであります。しかし、それが今日これだけ日本で存在感を持つようになったのは、単に賃金が安いだけではなくて、賃金の安い彼らが高い技術力を持てるようになった。その意味では、日本の国境を越えて我々は容易に移動はできないわけですけれども、やはり我々としては、彼らが高い技術力を持ったことを十分認識しながら、我々自身がより高い技能を持つことによって今の高い生活水準を維持していけるような努力をしていかなければいけない、そういうことに尽きるのであろうかと私は思います。
 したがいまして、国境を容易に越えられない労働、その御指摘は、私は委員の御指摘のとおりであるというふうに思いますし、それに対応していくためには、やはり、今の我々が享受している高い生活水準、高い賃金を維持できるように人間力を高めていくということが、私たちの社会にとっての大変重要な課題であろうかと思っております。骨太の方針等々では、人間力ということをそういう観点から非常に重視して、さまざまな政策を打っていこうというふうに考えているところでございます。
松原分科員 一番大事なことは、国が何をやるかというのはいろいろな議論があります。できる会社というのはやはりどんどんやっていくわけであります。変にいろいろな規制がない方が国際競争の中でやっていけるというのは、しばしばあるわけであります。やはり、国の使命というのは幾つかありますが、もちろんそれは、知的所有権の部分で、新しい、私はあれは知的植民地みたいなものだと思っておりますから、これはこれでやっていかなきゃいかぬ。しかし、私が、それ以上に、国の使命として行うべきものとして思うのは、やはり雇用をどうやって守るのか、自国民の生命財産、生活そして経済環境をどう守るかということが極めて重要であろうと思っておりまして、そういった意味では、今のグローバリズム、特に金融においてのグローバリズムの入れ方というのは、私は、自殺者の数のことは冒頭申し上げました。私は、もちろんいろいろな原因があると思いますが、経済的理由というのが昨今、極めて高くなっていることは間違いないと思うし、それは三万という数にとどまらないということも申し上げているわけでありまして、そういったことを考えたときに、私は、国民経済を守るという観点でグローバリズムに対処しているのかと。
 つまり、竹中さんは、日本の国の国民経済を守る方の大臣として存在しているわけであって、その大臣として日本の国民経済を十分に守っているのかということを考えたときに、私は、今の貸しはがしの現状等を考えると、そうではないんじゃないかというふうに思っているんですが、このグローバリズムによって、例えば国民経済においてどんなメリットがあったのか、どんなデメリットがあったのか、今思いつくままに具体的におっしゃっていただければと思います。
竹中国務大臣 国民経済を守るというのは、委員御指摘になった言葉は、本当に、政策を考えていく上での最も重要なキーワードであるというふうに思います。
 直接のお尋ねは、グローバリゼーションによって、それが具体的にどのような変化を我々にもたらしたのかという御指摘だと思います。例えば日本の産業の中で、日本のリーディングインダストリーというのは、世界のマーケットを相手にして、そこで高い外貨を稼ぐことによって、日本としては、例えば原油等々の必要な資材を、これは外貨があるからこそ輸入ができるという形で、それが今日の我々の、まあエネルギーを消費し過ぎるということはよくないかもしれませんが、やはり我々の国民の高い生活水準に結びついてきているということなのだと思います。
 さらには、これはちょっと例が非常にミクロ過ぎるかもしれませんけれども、海外から安いものが入ってきて、それによって消費者がメリットを受けるということも、これまた一つのメリットであろうかと思います。
 一方で、デメリットとしては、当然のことながら、いわゆる空洞化に象徴される問題というのは厳然として日本にあろうかと思います。特に地方の都市等々で、その地方都市を支えてきた大きな企業の工場が中国に生産の場をシフトさせる、それによってやはり地域の経済が非常に大きなダメージを受けているという例は確かにあるというふうに思っております。
 重要な点は、このグローバル化のメリットはメリットとしてできるだけ活用しながら、それに伴って出てくる今の空洞化のような負の側面に対して、日本が持っている強い潜在力をさらに発揮できるような体制をとっていく、そういう政策的な枠組みをつくる、それに基づいて、やはりここは、企業、国民が、厳しい、このグローバルな経済環境の中で、今まで我々がなし得てきた大きな成果に自信を持ちながら、さらに努力をしていくということなのではないかと思います。
松原分科員 国民が自信を持ちながらと言うけれども、自信をみんな持っていない。持ちながらと竹中さんが言えば言うほど国民は自信を持たない。それはなぜなんでしょうか。なぜ国民は自信を持たないのか。
 竹中さんは学者をやってこられて、今、大臣でありますけれども、国民を守るという強烈なメッセージが竹中さんからは伝わっていないんじゃないかと私は思うんですよ。本当に日本の国民を守るんだ、労働疎外を受けて自殺に追い込まれるような一人一人の労働者にとって、彼は頼りになるリーダーだという印象が恐らく持たれていないんだと思うんですよ。
 いろいろな議論がありますが、竹中さんが日本を向いてさまざまな行動をとっているのか、それともアメリカを向いてとっているのかわからないという議論すら、多くの国民は、これは一般の世論としてあるんですよ、私がそう思っているということではなくて。そのことを深く認識をしてもらわなければいけないし、大臣の立ち居振る舞いというのは当然断固たるメッセージを伝えるものでなければいけないと私は思っているんです。
 今、日本の金融機関が大変に厳しい状況になっております。日本の金融機関が、例えば結果としてどんどんと外資の資本が入っていって、実際、カルロス・ゴーンさんは、外から来て日産、ルノーの社長をやっているわけでありますが、こういうふうな形になっていくということがこれから当然起こり得る、大変高い確率であると言われておりますが、そのことについて、つまり、外資が日本の金融機関に対しての支配力を現実にふやしていく可能性が高いことについてどうお考えか、お伺いしたい。
竹中国務大臣 委員が前半で御指摘の御批判の部分については、それはそれとして謙虚に受けとめて、私はやはり、この国の国民経済を守るというために非常に強い信念を持って仕事をしておりますので、そのことは、今御指摘のとおりしっかりと伝えられるように努力をしていきたいと思います。
 それと、国民は自信を持っていないではないかという御指摘がありました。その意味では、八〇年代等に比べたら、日本の自信が揺らいでいるという側面はあると思いますが、少なくとも私がタウンミーティング等々でいろいろな議論をする中で、日本の国民というのは非常にしっかりと将来を見据えて、今は苦しい時期だけれどもこれをやっていこう、その先に私たちの子供たちの社会の新しい未来が開けるはずだというような自信を持って、しっかりと皆さんはそれぞれの立場で運営をしておられるというふうに私は認識をしております。
 それで、直接のお尋ねであります外資の問題でございますけれども、これはいろいろな考え方があろうかと思います。しかし、日本はこれまでやはり、その時々に必要な、例えば技術でありますとかノウハウでありますとか、場合によっては資本とかそういうものを、外のものでも内のものでも、利用できるものを積極的に活用することによって今日まで発展してきたのだというふうに思っております。
 自動車の例が少し挙がりましたが、日本には十一の自動車メーカーがあって、しのぎを削って競争している。その競争の中で、世界最高の技術というものが生まれ、また維持されてきたのだと思います。今、しかし、その十一の日本の自動車メーカーのうち七社が海外との資本提携で、まさにグローバルな観点からビジネスを展開するために一生懸命新しい戦略を練っている。しかし、その場合に、それによって日本の企業の国民経済が大きく失われるのかということを考えますと、それは必ずしもそうではないというふうに私は思います。
 それはまさに、この国の中でしっかりと生産の基盤を持ち、営業の基盤を持ち、そこで国民をしっかりと雇用して、国民に対して、消費者に対して、消費者を満足させるすばらしい製品を供給していっているかどうなのか。私はその点が問われるべきなのだと思います。もちろん、これは私も安易に外資が何かの会社を買いに入って、それを少し形を変えて売って売り逃げのような形で逃げていく、そういうことは、国民経済にとってそれだけでプラスになるとはとても思えないわけであります。
 繰り返し言いますが、資本においても、ノウハウにおいても、人材においても、技術においても、やはり日本の経済、国民経済をよくするために積極的に活用すべきものは日本の経済はこれまでも活用してきたというふうに思いますし、安易に外資に利用されるというようなことは排除しながら、やはり日本の経済を将来的に活性化していくためにはどうしたらよいかという、その本道に立って我々は事態を評価していくべきなのであろうかというふうに思います。
松原分科員 しばしばウィンブルドン方式というのが言われているわけでありまして、テニスコートは貸しましょう、プレーする人はどこの人でもいいですよと。私は、これはイギリスでは成立をすると思うんですよ。日本でウィンブルドン方式というのは、経済において必ずしも成立をしない。短期的には、今、竹中さんがおっしゃるように、それは成立しているかもしれない。しかし、長期的な、いわゆる国が自分の名誉と誇りを持ちながら自立してやっていくという観点からいくならば、ウィンブルドン方式は日本において私は成立をしないと思っております。
 この間、私が経済産業委員会で平沼さんに聞いたときも、私はウィンブルドン方式は成立しないと思うと言ったら、平沼さんも、私も成立しないと思うとおっしゃった。イギリスは世界の七つの海を支配し、世界の公用語はまさに英語になっている、トップエリートの世界では英語になっている。そういう中において、イギリスはウィンブルドン方式はあり得るだろう。しかし、日本がウィンブルドン方式というので大丈夫だと思うのは、余りにも危機意識がなさ過ぎる状況だろうと思っております。
 大臣は、ウィンブルドン方式が経済において日本で成立すると思うかどうか、お伺いしたい。
竹中国務大臣 イギリスのビッグバンとの関連で、いわゆるウィンブルドン現象というものが言われる。それに対して、そういうようなやり方が日本で起こり得るのか、そのことをどう評価するのかというお尋ねでございますが、私は、そのようなやり方は日本では起こらないと思いますし、これは日本にとってふさわしくないというふうに強く信じております。
 これは、ビッグバンとの関連で出てきましたので、金融の例でぜひ考えてみるべきだというふうに思うんですが、このウィンブルドン現象というのはまさに、今テニスコートを貸すというふうにおっしゃった。シティーという非常に使い勝手のいい場所がある、マーケットがある、そこには国際弁護士も国際公認会計士もいて、マーケットとしては非常にいい、場所をお貸ししますと。そこでいろいろなプレーヤーが世界じゅうから来て、金融仲介でありますけれども、お金はどうするのかというと、世界じゅうからお金を持ってきて世界じゅうに貸す。その意味では、ちょっとこれは極端な言い方かもしれませんが、イギリスのやり方というのは、ある意味で、まさに委員御指摘のように、場所貸し的なものであろうかと思います。
 これは財務省の研究所で金融市場の類型ということをいろいろ勉強した時期があるようでございまして、私は大変参考になったものなのでございますけれども、それはイギリスの一つのやり方であろう。
 それに対して、非常に極端なもう一つのやり方というのは、例えばドイツのように、国内でしっかりとした経済があって、それで貯蓄があって、それを活用していろいろな金融行政を行っていく。アメリカはではどうかというと、まさにイギリスとドイツを足したようなものなのである。
 私は、日本というのはどちらかというと、ドイツに近いのだと思います。世界で最大の貯蓄を私たちは持っていて、家計部門だけで千四百兆。これは企業分も合わせればもっとあるわけでありますから、それを活用することによって金融業というのは成り立ち得るわけでありますから、場所を貸して外からお金を調達して外で運用するというものでは、決して日本の金融業はあり得ない。
 その意味では、各地域、中小企業等々に非常に強いネットワークを持っていて、金融業にとっては貯蓄というのは一種の原材料に当たるものだと思います。それを持っている日本の金融業というのは、本来、非常に強くなれる可能性を持っているわけでありまして、これはやはり、私たちでないと、日本の機関でないとできない面というのが非常に強い。
 その意味では、少し長くなりましたが、ウィンブルドン現象のようなことは私は、日本では容易には起こらないと思いますし、起こることは好ましいことではないというふうに思います。
松原分科員 そうすると、かつての長銀の問題を含め、外資が入ってきた。ある種のウィンブルドン的現象というふうに思うわけでありますが、これに対しては大変遺憾であった、こういうふうに思っておられますか。
竹中国務大臣 非常に、短期に、長銀や日債銀の個別のことを今の時点で正確に評価することはまだ難しいと思いますが、一般論として、例えば、外資が急に入ってきて、それで高く売って、売るというようなことは、金融業の本来のあり方として決して好ましいことではないというふうに思っております。
 むしろ、長銀等々の場合に、私は、大変問題になることがあったとすれば、やはり破綻したということだったと思うんですね。破綻したから、それを国有化して、それをさらに新しい経営に引き継ぐ必要があったわけです。
 私たちが今考えている金融再生プログラムというのは、破綻ということを前提にしないような、破綻しないような、破綻しないでしっかりと強くなっていくようなプログラムをつくるということに最大の主眼があったわけで、そこは、御指摘のように、破綻して、それに安く買いが入って、それが売り抜ける、そういうようなことは、私たちはやはり避けていく必要があるというふうに思います。
松原分科員 そういった意味では、それを守り切ることはできなかったと私は申し上げたいんですね。
 今、ウィンブルドン方式は否定すると、私は、それは国民経済を守る大臣としてふさわしい答弁だと大変に評価しますよ。当然、それは、一方において、さっき言ったグローバリズムの、お金と労働は違う、雇用を守るということにもつながっていくんです。しかし、現実は逆行している。最後に、壇ノ浦の潮目のように、変わってくればいいけれども、今のこの状況でどうなのか。
 私は、今の答弁は、大臣は、外資が買ったということは、それは破綻したといえども、遺憾であったという認識の表明だと僕は思っているんですよ。それでいいと思う。それでいいと思うけれども、それだったら、それを行動に示していかなければいけないわけであって、今回、銀行のいわゆる税効果を見直す、厳しくすると。これは最大五・五%までなる。全部、これ、締め上げる対象になるんですよ。
 金融機関は何をやるかといえば、貸しはがしをしてキャッシュに変えていって自己資本比率を上げるか、もしくは外資からお金を入れるか。どうも聞くと、国有化みたいなのは冗談じゃないと。それは、国に対する信用がないんですよ、残念ながら。
 例えば、たくさんの施設が、今厚生労働省の方でデータがあるけれども、非常に安く出ている。いろいろな理由を言ったって、これはいわゆる不良債権と実態は同じじゃないか、不良債権以下ではないかという議論は、これは町場が言っている、私が言っているんじゃなくて。その国が、我々を買い取るのかと、冗談じゃないという声があっても、私はしかるべきだと思う。それだったら、かつてギリシャのテミストクレスか何かが、ペルシャに亡命して、自分が守ったギリシャをかつて攻撃したと。同じことを人間というのは逆上してやるかもしれない。
 それは日本の国民経済にとって大変なマイナスである。そういうときに、何でこういうことをするのか。結果として、国際金融市場に対して塩を送るようなまねを何でするのか、結果として、多くの人がさらに死ぬようなことを何でするのか。私の知り合いも、きのう、ある地元の信用組合が、今月いっぱいでRCCに送りますと通告してきた。たくさんある、それは。こういう現状をどうとらえるのか。
 時間がなくなって大変に残念でありますが、私は、国民経済を守る大臣としては、思いはいい、現実が全然ついていない、もう本当にこれは物すごい深い反省を求めたいと思います。ちょっと、答弁。
竹中国務大臣 委員、非常に重要なことをたくさんおっしゃいましたので、全部カバーできるかちょっとあれなんですが、ちょっと、先ほどので誤解のないように申し上げたいと思いますが、長銀、日債銀等々のときは、やはり国民の負担を最小化して、そのためにはどうしたらよいのかということをやはり政策当局としては考えたということも、一つつけ加えておかなければいけないのだと思います。
 それで、直接お尋ねの、税効果会計でございます。
 税効果会計のルールをどうするかということは、これはまさに、今金融審でワーキンググループをつくって、非常に幅広い観点から議論しなければいけない問題でありますので、議論している最中でございます。税効果会計をどうするかということに関して、少なくとも、私なり金融庁が今の時点で結論を持っているということではございません。
 税効果会計は、言うまでもありませんけれども、会計上認められた資産であります。税金の前払いであります。これは間違いないところである。ところが、市場から見ると、これは将来の収益が前提となっているものでありますから、資産性について、やはりマーケットの声があったということも事実なのだと思います。この点を踏まえてその問題を議論しようとしているところでありますので、これは、自己資本充実という観点から、いろいろな形で今後、議論が進んでいくものであるというふうに思っております。
 銀行としては、やはり自己資本充実の中で、国に頼らないで、自己で調達しようというような観点から、いろいろな戦略を今立てている。これに対しては、これが国民の負担によらないでそれが実現するものであるならば、それはそれで歓迎すべき面があると思いますので、しっかりとルールにのっとってやっていけるかどうかということを、我々としてはしっかりと見ていきたいと思います。
 最後に、RCCのお尋ねがございました。RCCというよりは、企業がこのような中で破綻していっているということをどのように受けとめているのかという、より広いお尋ねであったかというふうに思います。
 我々としては、RCCというのは、RCCにもし企業が送られたらそれでもう終わりということでは決してなくて、再生の機能をRCCに持たせて、まさにバランスシートをきれいにして、それでしっかりと本来の収益力を持ってやっていけるところの企業にはやはりやっていってもらいたい。再生というのが常にそれについて、我々としてはそれを前面に出して、まさに日本経済の活性化をしたいというふうに思っているところでございます。
 ちょっと、時間があれなので、大変……
持永主査 時間がありませんので。
松原分科員 終わりますが、最後に一つ申し上げたいのは、結局、今の話で、それは、一兆円の瑕疵担保条項もある中で、本当に国民が損していないと言えるのかということも含め、もう答弁は結構ですから、私は非常に疑問だと思っている。私じゃなくて、一般の国民がそれを思っている。
 それで、今のこの日本の状況について言うならば、今はいいですよ、理論は、竹中さん立派だ、歴史は、竹中さんのこの経済政策を、今のままいったら、恐らく失政という烙印を押すだろうと、そういった意味では、大いに頑張ってほしいというエールを送って、以上で私の質問を終わります。
持永主査 これにて松原仁君の質疑は終了いたしました。
 以上をもちまして金融庁についての質疑は終了いたしました。
 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 分科員の先生方に御協力をいただきまして、本分科会の議事を無事に終了させていただくことができましたことを厚く御礼申し上げます。
 これにて散会いたします。
    午後零時六分散会


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