衆議院

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第2号 平成16年3月2日(火曜日)

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平成十六年三月二日(火曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 松岡 利勝君

      伊藤信太郎君    伊吹 文明君

      倉田 雅年君    井上 和雄君

      池田 元久君    泉  房穂君

      市村浩一郎君    中川  治君

      西村智奈美君    村井 宗明君

      遠藤 乙彦君    桝屋 敬悟君

   兼務 西川 京子君 兼務 高山 智司君

   兼務 塩川 鉄也君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (男女共同参画担当)   福田 康夫君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (青少年育成及び少子化対策担当)         小野 清子君

   国務大臣         金子 一義君

   国務大臣

   (防災担当)       井上 喜一君

   内閣官房副長官      細田 博之君

   内閣府副大臣       佐藤 剛男君

   内閣府副大臣       中島 眞人君

   政府特別補佐人

   (人事院総裁)      中島 忠能君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  春田  謙君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   尾見 博武君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   山本信一郎君

   政府参考人

   (内閣府男女共同参画局長)            名取はにわ君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 関   一君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    人見 信男君

   政府参考人

   (文化庁長官官房審議官) 森口 泰孝君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           平田憲一郎君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           谷口 克己君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           鈴木 久泰君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 榊  正剛君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局次長) 杉山 篤史君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 桜井 康好君

   参考人

   (都市基盤整備公団理事) 古屋 雅弘君

   内閣委員会専門員     小菅 修一君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  伊吹 文明君     伊藤信太郎君

  井上 和雄君     市村浩一郎君

  池田 元久君     村井 宗明君

  遠藤 乙彦君     斉藤 鉄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     江渡 聡徳君

  市村浩一郎君     泉  房穂君

  村井 宗明君     中川  治君

  斉藤 鉄夫君     桝屋 敬悟君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     伊吹 文明君

  泉  房穂君     西村智奈美君

  中川  治君     池田 元久君

  桝屋 敬悟君     富田 茂之君

同日

 辞任         補欠選任

  西村智奈美君     井上 和雄君

  富田 茂之君     遠藤 乙彦君

同日

 第二分科員高山智司君、第六分科員西川京子君及び第八分科員塩川鉄也君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十六年度一般会計予算

 平成十六年度特別会計予算

 平成十六年度政府関係機関予算

 〔内閣及び内閣府所管(内閣府本府、警察庁)〕


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     ――――◇―――――

松岡主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。

 平成十六年度一般会計予算、平成十六年度特別会計予算及び平成十六年度政府関係機関予算中内閣府所管について審査を進めます。

 警察庁について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。市村浩一郎君。

市村分科員 おはようございます。きょう、トップバッターで質問させていただきます民主党の市村でございます。私は、宝塚市を含みます兵庫六区の選出でございます。

 私の住んでおります宝塚市でございますけれども、有名ないわゆるパチンコ条例というものがありまして、宝塚市におきましては、商業地域を除いて、パチンコ、遊技場、そしてラブホテルといった三つの業種に限って、その出店を条例で規制しておりました。

 ところが、昨今、パチンコ店の進出がありまして、住民のいろんな反対運動もあったりとか、行政の方も訴訟を起こすなどして、できる限り条例に沿った町づくりをしていきたい、こういう観点で宝塚市はやっておったんですが、結果としては、パチンコ店が出店をするということになっております。

 私は、パチンコ店とか遊技場とかラブホテルとか、そのものが悪いとかいいとかいう議論をここでするつもりはありません。私がやりたい議論は、少なくとも、ある都市が、ある町がそういうものは要らないと言っているものに対して、それが出店されてしまう。それが実は、一つの理由として、風俗営業法、いわゆる風営法、実際名はもっと長いんでしょうけれども、いわゆる風営法を盾に、根拠に出店というものがされている。もう一個、実は建築基準法もあるらしいんですが、それについてはまた別の機会に質問したいと思います。

 少なくとも、風営法というものを盾に、根拠に、営業許可が認められるべきだ、許可はされるべきだ、しなくてはならない、こういうことで、県の公安委員会の皆さんも苦慮されたと思いますけれども、結局パチンコ店が出店し、かつ、最近、どうも宝塚市はもともとそういった意味ではマーケットとしてよかったのか、パチンコ店が出店する、また、その他の遊技場もたくさん出店するということで、町の風景が変わりつつあるというところでございます。

 ですから、何度も繰り返しますが、そのもの自体が悪いということではありません。パチンコ店を欲しいという地域もあるわけですから、遊技場が欲しいという地域もあるわけですから、それはそれで、どんどんそういうのは誘致していただければいいんですが、少なくとも、要らないという都市があって、地域があって、その業者が風営法を根拠に出店するということがあったわけでして、私としては、この風営法に改善の余地があるのではないかというふうに考えているんですが、警察庁の方の御見解を伺わせていただきたいと思います。

関政府参考人 風営法におきましては、都道府県公安委員会は、良好な風俗環境を保全するため、都道府県条例で定められました営業制限地域以外の地域におきましては、パチンコ店等の風俗営業の許可条件を満たす申請に対して、これを許可しなければならないとされているところでございます。

 そこで、営業制限区域とは、政令で定める基準に従い都道府県条例で定めるものでございまして、住居集合地域及び学校、病院等からの一定の距離の範囲内の地域を言いますが、御指摘の宝塚市の条例におきましては、兵庫県の風営法の施行条例で制限する地域にも当たりませず、かつ、必要な設備等の許可条件も満たしていたため、兵庫県公安委員会が営業を許可したものと聴取いたしております。

 現行の風営法や政令における規制につきましては、風営法の目的である善良の風俗、清浄な風俗環境の保持というものと、営業の自由との調和を図るという観点から定められているものでありまして、妥当なものと考えておりますが、営業制限地域の範囲につきましては、これを緩和すべきである、あるいは厳格にすべきであるという相対する意見があるものと承知しておりまして、こうした議論を踏まえつつ検討を行っていく必要があるというように考えております。

市村分科員 まさに対立した意見がある、そうだと思います。ですから、風営法をめぐって対立した意見があるわけですから、ぜひとも、その点を踏まえて改善していただきたいというふうに私は思っているわけでございます。

 確かに、私も今回いろいろ議論させていただき、勉強させていただいて、風営法というのは、本当に、営業の自由と良好な風俗環境をつくっていくということのバランスをどうとるかということで苦心された法律だとは思います。ただ、現実として、実態として、今、それが現実にそぐわない。恐らくいろんな、要らないという意見からも変えろ、要るという意見からも変えろとなっているわけですから、やっぱりここは改善の余地がある法律になっているんじゃないかと私は思うわけでございますから、ぜひとも改善をする。

 そのためには、これは当然、法律ですから、それを改善していくのは立法府の責任だ、私はこう思っておりますし、立法府をつかさどる議員の一人として、これをやっていかなきゃならないという思いではありますけれども、やはりそれは、今執行をしていただいている警察庁の方ともいろいろ意見を交換させていただきながら、いいものをつくっていく、よりよいものをつくっていくことにつきましては官も政もないと私は思っていますので、ぜひとも、いろいろ協力関係をつくっていってやりたいと思っております。

 私の風営法の改善点の一つの考え方としましては、今、地域主権という流れがあるわけです。やはり地域のことは地域で考え、地域のことは地域で決めていくという流れがあるわけですから、風営法、今局長がおっしゃったように、都道府県というものにゆだねているわけですけれども、これは市町村というところにこうした権限をもっと与えていく。その市、その町、その村単位で、例えばカジノを日本にもという話もあるわけですから、今後、我が町はぜひともカジノが欲しい、パチンコが欲しい、こういうふうな町があってもいいわけです。

 それはそれで、その町、その都市のあり方として考えればいいことでありまして、やはり私としては、都道府県という範囲ではなくて、もっと基礎自治体にそれを落としていくことが求められているというふうに考えておりますが、また、それについての警察庁の見解をお聞かせいただけますでしょうか。

関政府参考人 風営法におきましては、風俗営業の営業制限地域の規制につきまして都道府県条例で定めることとされております。

 議員御指摘の市町村の意向というものは、まず都道府県において尊重、検討されるべきものというふうに考えます。

市村分科員 ありがとうございます。

 今お話しの中で、じゃ、都道府県で検討すればいいということもありますので、もちろん都道府県、私も知り合いの兵庫県議会議員を通じて、これについては県議会でもいろいろ話をしてもらおうと思っています。

 ただ、先ほどから申し上げておりますように、やはり風営法そのものの改善点もあるだろうと私は思いますので、繰り返しになりますけれども、要らないというところと欲しいというところ双方から、これは改善をすべきだという話が出ているのであれば、これについてはもう一度、その規制のあり方について、やはり見直すところに来ておるのではないか。

 特に、これから町づくりということの中で、例えば、私、アメリカに三年住んでおりましたけれども、ミネアポリスという町は、まさにそういう風俗営業店みたいなものを要らないということを特徴にしている町づくりを行っているんです。ですから、もちろん、ミネアポリスというのは何かつまらない町だなという意見がある一方で、安心して子育てができるというふうに言って、わざわざミネアポリスに住むという人たちもいるわけであります。

 これからは、地域のことは地域で決める、考えるということになってくるわけですから、やはり都市が、特に宝塚市みたいに、要らない、商業地以外には要らないと言っているところに関しては、今後、そういうものが風営法を盾に、また建築基準法を盾に出店がなされないような改善もしていっていただきたいと思うわけでございます。

 これにつきましては、補足でございますけれども、結局、パチンコ条例の訴訟までいきました。それで、結局、最高裁は棄却をする。そのとき、何と、これまでは建築基準法に基づいて出店をしようとしたときに仮処分で対抗してきたんですね、市とかは。ところが、今、仮処分すらできなくなってしまっておりまして、結局、なし崩し的に、法律に適合したら、もうめちゃくちゃですね、何ともできないと。市の方は何ともできないことがあるということを、ちょっとこれは警察庁と関係がないので、この場では別に答弁を求めません。

 結局、今、町づくりというのが、そういった意味で、風営法という一つの例をきょう挙げましたが、混乱をしているということ、これをやっぱり私たちはしっかりと認識をして、私としては、立法府がしっかりとこれについての務めを果たしていくべきだ、こう思う次第でございます。

 本当に、この条例につきましていろいろ議論したいんですが、きょうのところはちょっとこれまでにさせてください。また改めて、これは町づくりの観点からも議論をしなくちゃいけませんので、また、国土交通省の皆さんも含まれて、ぜひともどこかでやらせていただきたいと思っておりますので、きょうのところは、この風営法に関してはここでとどめさせていただきます。

 それから、次に参りたいと思いますが、私の地元ではないんですけれども、兵庫県の中に阪神国道七号線というのがございます。北神戸線という言い方もされていますけれども、私も、神戸市に出るときとか、よくこの阪神国道七号線や北神戸線を利用しているわけでございますけれども、これは速度規制が六十キロ規制になっております。

 私も走っていて、こんなこと言っていいのか、あれなんですけれども、この六十キロ規制を守るのはなかなか容易ではないなと実際上思います。六十キロ規制で走っている車といえば、道路公団のあの黄色いパトロールカーかパトカーぐらいなものでありまして、残念ながら、それが逆に怖いぐらいだと。それをよけるのに、みんな大変苦心をしているといいますか、ほかの車は。

 結局、私が何を言いたいかといいますと、要するに、守れない速度規制をしているのではないか。すなわち、ほとんど守れない、もっと言えば、守ってないというよりも、守りたくてもあれは守れないんですね。六十キロであのくらいの道路を走っていると、余計に怖いんですね。後ろから追突されはしないかと思うんです、本当に恐怖心を感じるぐらい。

 一遍私も、一遍と言わないですけれども、六十キロぐらいで走ってみたこと、もちろんあるんです。しかし、これはなかなか、逆に、後ろからどんどん追い抜かれていって、後ろから追突されないか、前をちゃんと注意していない車がどんと後ろから追突してこないかという恐怖心すら感じるような状況でございまして、すなわち、法律を守ろうとしますと、結局、逆に、怖い、安全性が損なわれる、こういう状況に阪神国道七号線はなっているのではないかなというふうに思っております。

 たまたま今、私はこの阪神国道七号線、北神戸線を例に挙げましたけれども、ほかにも恐らく、実態上そういう道路が全国にあると思うんです。私は、やはり速度規制につきましては、もっと実態に即した規制をしていかなければならないんじゃないかな、する必要があるんじゃないかなというふうに思っております。つまり、守れない規制をして、では、六十キロ規制をしておいて、百キロで飛ばしていて捕まったら、これは六十キロから四十キロオーバーということで罰金も決まってくるわけです。

 あと、この北神戸線に関しましては、自然の流れで行きますと、明石のあたりで第二神明道路に入っていくんですけれども、これの規制は、たしか私は八十キロだと思っていたら、ある人に言わせると七十キロと言っていますが、ちょっとその辺はゆっくり見なくちゃいけませんが、いずれにしても六十キロではないんです。道路がつながっていて、それまで六十キロだったのが、突然七十キロや八十キロの規制に変わっていくわけで、非常にわかりにくい。では、そこで何か突然違いが感じられるかというと、そうでもないわけですね。

 ですから、やっぱり守れない規制ではなくて守れるような規制にしていくべきだ、こう思っていますが、その辺を含まれて、一度大臣の方から、ちょっと御答弁いただけますでしょうか。

小野国務大臣 先生から、高速道路の速度あるいは規制に関する御質問がございました。

 高速道路の規制速度につきましては、まず道路の設計速度というのが、設計をしたときの計算上から出てくるわけでございます。それから車線の問題とかトンネル等、こういうものの道路構造とか通行量、さらには安全施設、それから交通事故発生状況のいろいろな要素を踏まえまして、その結果、決定されていくものだと思いますけれども、御案内のとおり、時間帯によりましても相当交通量が違ってまいりますし、なかなか、その辺あたりの速度に関する問題は、先ほど申し上げた問題とあわせて、決定するのに非常に慎重にならざるを得ないというところがございます。

 道路構造の変更やあるいは交通実態の変化に応じて、適宜見直しが行われているものと承知をいたしておりますから、通常の高速道路と、さらにおり口のところになりますと、速度がさらにダウンしておりますことなどもその配慮だと思います。

 しかし、一般道路が例えば事故が一〇%であれば、高速道路の場合には三〇%、三割というふうに多くなることも事実でございます。そういったことを考えますと、規制速度の引き上げというものについては、私どもといたしましては、慎重に検討すべきもの、そのような認識を持ちながら、合理的かつ適正な交通規制の実施について、各都道府県警察を指導するように、引き続き警察庁を督励してまいりたいと思っております。

市村分科員 ありがとうございます。

 恐らく、今、大臣御答弁いただきましたことは、官僚の皆さんにとってみれば、素直なお答えだ、このように思います。

 私は、特に自分も使っていますから、実態を見てみますと、結局、ほとんど守っていない。一台も守っていないという言い方を私は最初していたんですけれども、それは極端な言い方としても、ほとんど守っていない。守りようがないわけですね、あれは。守りようがないものを放置したままにしておくというのは、私もそれを見て見ぬふりをするということはできませんので、全国のこうしたスピード規制のあり方につきましては、やっぱりもう一度ここでちょっと見直していただいて、実態に即したことにしていただく。

 では、もしこれを、六十キロ規制を八十キロ規制にして、交通事故の数が、例えば北神戸線における交通事故の数がふえた、こうなってしまうと、私も、こうやって質問しているのが、そのおかげでふえて、おまえのせいでこんなに人が亡くなった、けがしたと言われたら、大変切ない思いになりますけれども、実際上、八十キロ規制にしてもそう実態は変わらない、こう思いますし、また、取り締まりにおきましては、私は厳正にやっていただきたい、このように思うわけでございます。

 ただ、その取り締まり方法につきましては、やはり取り締まることを、実はちょっと次の質問に関係してくるのでありますけれども、単に、ためにする取り締まりとか、納得いかない取り締まりではなくて、やはり、もともとは何のために取り締まるのかという観点も重要だ、このように思います。

 ですから、今回の北神戸線のことも含めまして、やはり今、警察庁としては、交通事故の死亡者数をもっと減らしていこう、こういう大きな目標を立てていらっしゃるということですし、私も本当に、それはぜひともどんどんやっていかなければならない、やっていただきたいという思いでございます。ただ、それが、取り締まりを強化したから減るのか、また、速度規制を実態にそぐわないものでもいいから六十キロにしていれば減るのかというと、私はちょっとそれは違うという思いもあります。

 やはりもっと実態に即して速度規制はしていただき、かつ取り締まりにおいては、もっと、よっぽどその他の交通を邪魔しているというようなものがあったら、それは厳しく取り締まっていただかなくちゃいけないんですが、今、車の性能もいい、道路もいいとなると、一々スピードメーターを見て走ってないわけですから、前を見て走っていると、ついつい、ほかの車との車間距離を考えていわゆる安全運転をしようとすると、思わぬうちにスピードがスピード規制値より出ている場合もあるわけでございまして、そういった場合に、それを一々とめられて取り締まられると、これはちょっと納得いかないよ、こっちは安全運転しているのにという思いもあります。だから、その辺のところは、バランスよく、現場の警察官の取り締まりの判断があると思います。

 また、取り締まりに当たりましては、先ほどちょっと述べましたけれども、やはりためにする取り締まり、私も何度か遭遇したことがあります。自分が遭遇したこともあり、また、友人の車に乗っていて遭遇したこともありますけれども、どう考えてもそこではそういう違反を犯すだろうという場所にわざわざ待っていまして、そこで切符を切るという行為をされているわけですね。

 では、ここでそういう違反が多発するということであれば、その前に多発しないような手段を講じておいて、それでもなおかつ違反を犯す者に対しては厳しく取り締まってもらってもいいのですけれども、そういう手段は講じず、まあ、ここにいればたくさん違反切符が切れるだろうみたいな、どう見てもそういうふうにしかとれない取り締まりがどうもあるんですね。そうじゃないとおっしゃるかもしれないけれども、やはりどう見てもそうなんです。一般市民、庶民の感覚からすれば、そうとるんですね。

 だから、そういう取り締まりをされると、ためにする取り締まり、これは納得いかない取り締まりだと思いますけれども、されると、警察に対する不信感がやはりそこでわいてくるのですね、何だと。結局、善悪の判断ではなくて損得の判断で物事を考えてしまう。結局、不運だったと。悪かったというよりも、これは法律違反を犯した、スピード違反を犯した、もしくは左折禁止を犯してしまった、一時停止を犯してしまった、悪かったなと思うよりも、ちくしょう、捕まって損だったな、不運だったな、こういう意識しか残らないんですね、取り締まられた方は。

 そうではなくて、取り締まりに当たりましては、もっとその状況を見て、現場の警察官の方は一生懸命やっているんです。言われたとおり、命じられたとおり、ちゃんとやれと言われたらちゃんとやっていらっしゃるのです。だから、そういう現場の警察官の御努力は重々私も承知しておりますが、やはり取り締まりに当たりましては、もっとおおらかなものというか、世知辛くなくておおらかなものであってほしい。

 どう見てもこれは悪質なものというものか、それとも、例えば、昔、私が子供のころ、家族で運転をしていました。父親がどうも何か捕まったと思います、スピード違反か何かで。そのときに、私がよく記憶しているのは、子供心に覚えているのは、警察官が、あなた、子供を乗せているんだから危ないぞ、きょうは家族もいるし、取り締まらぬけれども、今度、あなたたち気をつけなさいよということを言っていた覚え、記憶があるのです。ちっちゃいころ、よく覚えているのです。

 だから結局、その現場の警察官の判断は、子供が乗っている前で父親の取り調べをしていると子供の心を傷つけるだろう、まさか子供を乗せていてそんな乱暴な運転はしないだろう、子供の命もかかっているんだから、そういう御判断で恐らく、まあ行けと、こういう御判断だったと思います。私は、やはり何かそういうことが最近警察の取り締まりに欠けているんじゃないかなというふうに思います。

 もちろん、現場で後ろの車から、何だあれ、あっちはいいけれどもおれは取り締まるのかということもあるかもしれないけれども、しかしながら、それはまさに現場の判断でありまして、だから、その辺のところをやはり現場の人たちがもっとおおらかな判断ができるような形になってほしいと思っているのですが、大臣、ちょっとその辺について大臣の御答弁をいただけますでしょうか。

小野国務大臣 先生のお話をお伺いしながらいろいろ思いをめぐらしておりますけれども、交通違反を起こさせないということがまず第一義の指導的立場であるということを今先生は一生懸命おっしゃられました。

 ですから、東京のような場合には、注意勧告というのがベルトになったものが出されておりますから、取り締まり中とか、それから制限速度を守りなさいとか、そういうアピールがありますけれども、これが全国的展開になってきますと、看板を、ただいま取り締まり中とか、そういうものも出せているところと出せないところもございます。

 そういった意味では、事故を起こさせないことを第一義に、注意を喚起するという意味の指導をもう少し徹底していくということがまずあろうかと、今のお話を伺いながらそのようにも思いました。

 取り締まりのための取り締まりではなくて、国民が納得いくようにというお話でございますけれども、事故の発生場所とかそういうところが、結構よく起きる場所というものもあるようでございます。そういった場合には、今の勧告のような事故注意事項と同時に、交通事故の発生実態のほか、時間とか事故の原因、そういうものを詳しくキャッチしながら、取り締まりに対する国民の要望を踏まえて、特に悪質だったり、音を高く出したり、吹かしたり、近所の方々に迷惑がかかるような件もたくさんございますので、そういった交通の秩序を確立いたしまして、本当に安全で円滑な交通環境というものを実現していくということがともどもにとってよきことではないか、そのように思っております。

 ですから、取り締まりのための取り締まりではなくて、いわゆるそういう批判を受けないように、適正に取り締まりが行われますように、警察庁を督励して事故の防止を図ってまいりたいと、改めて今感じているところでございます。

市村分科員 大臣、ありがとうございます。本当にぜひとも今大臣がおっしゃっていた方向で、取り締まりのあり方につきましても改めて考えていただきたいと思う次第でございます。

 これから特に警察官も増員をされるということでありますし、警察の機能というのは国家において、やはりもともと国家というのは警察国家がスタートだと言われるように、警察の役割というのは大変大きいと私は思っております。だから、警察がしっかりとみんなから信頼されてその役目を果たしていただけるようにという観点から私は話をしているつもりでございます。

 そういった意味では、愛される警察といいますか、信頼される警察という意味では、現場の取り締まりが何か運不運で物事が考えられるような取り締まりだと、やはり国民の中にいい感情は生まれませんので、ぜひともそういった立場を踏まえつつ、そして大臣がおっしゃったように、やはりいかに交通事故を起こさせないかという観点から、暴走運転とかこんなのはぜひともびしばしと取り締まっていただきたい、このように私は思っている次第でございます。

 最後に、以前これは議論というか、前に私も新聞、雑誌等で読んだことがありまして、交通安全協会というのがございます。

 交通安全協会というのは、普段は余り聞きませんけれども、免許の更新のときは必ず耳にするものでございます。これはもともと何かというと、財団法人とか社団法人とか、地域によっては任意団体でやっているところもあるようなんですが、免許の更新のときに出てくる交通安全協会というのは、どうも財団、社団、すなわち公益法人なわけでございます。

 その公益法人というもののあり方から考えますと、入会金もしくは会費の徴収というのは、これはやはり任意で行うべきものでございまして、私の公益法人はこういうふうな趣旨で運営されている公益法人ですから、ぜひとも皆さん会員になってください、そうしてお金を集めるのが本来の趣旨であります。

 ところが、どうも現場の対応は、私も実際体験しておりますけれども、行くと、何かいかにも免許の更新と同時に義務であるかのような言い方で、一応協力してくださいという言い方はおっしゃるのですけれども、いかにもこれは義務であるかのような言い方で、交通安全協会の会費について、はい幾らでございますと、こう出てくるのです。

 公益法人、これはいわゆるNPOというのでございますけれども、日本ではなかなかNPOというのが公益法人を含む概念だというふうにとらえられていないので残念なんですが、いわゆるNPO、非営利法人というのは公益法人を含む概念なんですが、やはりアメリカなんかでは、NPOというのは会費獲得や事業資金獲得のためにエネルギーの五割以上を割くわけですね。そして、一生懸命お金集めをして、集めたお金を社会のために使っていくという努力をしているわけです。

 ところが、特に交通安全協会だけやり玉に上げるつもりはないのですが、交通安全協会はNPOであり、NPOの一種である公益法人なんですが、何かどうも徴収方法が強制的に感じさせる。以前から大分改善されているとは聞いているのですが、そういった意味では、そういうところでまだ改善されていないところもあるように思います。

 ですので、これにつきましては、やはり窓口を分けるなり、また別個にブースを設けて頑張るように、民間なんて、郵便局へ行きましたら、郵便局の入り口のところで机を置いて、カードに加入してくださいと一生懸命やっているわけですね。そういうのだったらわかるのですけれども、何か窓口でいかにも義務的徴収みたいな形で取られるというのは、ちょっとこれは公益法人のあり方からして、NPOの本質からして適当でない、このように考えます。

 ですので、最後にその辺について、また実態につきまして、また今後のあり方につきまして御答弁いただけたら幸いでございます。

人見政府参考人 ただいまお尋ねの点についてお答え申し上げます。

 免許の更新時に運転者から会費を安全協会が徴収しているところでございますが、これはあくまで免許更新者の自由な意思で、任意に安全協会への加入をしていただくということが大事だろうと思っております。

 警察庁といたしましても、これは警察の業務であるかのような誤解を与えているのであれば極めて残念でありますので、そういった誤解を受けないように、窓口の分離あるいは窓口職員の明確化を図りますとともに、その趣旨、目的、使い道、あるいは当該会費が任意のものであるといったことにつきまして、看板やチラシ等によりまして明確に説明するよう、各都道府県警察を通じて安全協会を指導しているところでございます。

 今後ともよろしくお願いします。

市村分科員 時間になりましたので、これで終わらせていただきますが、警察の皆さん、一生懸命やっていらっしゃる。私も現場の方のいろいろな話を聞きます。本当に一生懸命やっていらっしゃるんです。時間がないのに、いつも、生活相談まで受けているということもあります。

 ですから、ぜひとも警察に頑張っていただきたいし、また、生活相談等はOBの皆さんに御活躍いただくようなことも考えていただきながら、本当に警察がよくなるような方向で進んでほしいなという思いを込めまして、エールのつもりできょう質問させていただきましたので、また今後ともよろしくお願いします。

 どうもきょうはありがとうございました。

松岡主査 これにて市村浩一郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、塩川鉄也君。

塩川分科員 おはようございます。日本共産党の塩川鉄也です。

 私は、産業廃棄物の不法投棄問題についてきょうは質問をさせていただきます。

 ことしの一月に、小泉総理は、産廃不法投棄の現場としても知られております香川県の豊島を視察いたしました。その際、ごみの問題は小泉内閣の最重要課題だと強調されております。

 昨年の予算委員会、我が党の矢島恒夫衆議院議員が追及をいたしました群馬県太田市の利根川河川敷への産廃不法投棄事件には、大きな反響が寄せられました。日本共産党の独自調査で、その不法投棄現場から、基準値を上回るダイオキシンや重金属が出てきたからであります。その水域は、東京や埼玉、千葉、茨城の市民の飲み水となっております。

 済みません、大臣に地図をお渡ししたいんですが。

松岡主査 はい。

塩川分科員 これが現場の地図であります。

 A地点、B地点とピンクで色をつけたところが、一昨年から昨年にかけて、具体的に産廃の不法投棄が明らかとなったところであります。あわせて色がつけてありますところが、現地の地元の方の井戸水となっている水源がぞれぞれ八カ所ございます。そこに括弧して深さも書いてありますけれども、左手の方から見ますと、四号井、四号の井戸は五十六メートルですとか、その右上の五号の井戸が七・七メートルですとか、右の方に移りまして、B地点と書かれた場所の左手の方、百九十五メートル、その左下の方は十一・九メートルと言われているように、実際に浅い井戸というのも数多く含まれております。

 そこで、その後の調べで明らかになったのは、この不法投棄がされた河川敷には、近隣の太田市、それから尾島町、大泉町などの飲料水をくみ上げている井戸があるということであり、この産廃不法投棄の現場というのが、この八本の井戸の真ん中にあるという衝撃的な事実でした。付近の住民の方からは、水道の水が飲めないという不安の声も出されております。

 そこで、小野国家公安委員長にお尋ねいたします。

 昨年の矢島質問の際に、当時の谷垣国家公安委員長は、この事件は、今後環境犯罪に対処するときに十分に教訓にしていかなければならないと答弁をしておられます。その教訓をどう生かし、どう取り組んでこられたのか、お尋ねいたします。

小野国務大臣 お答えをさせていただきたいと思います。

 産廃物、産業廃棄物の事犯というのは、生活環境を破壊する、人々の健康を害する重大な犯罪である、そのような認識を持っております。警察が力を入れて取り組むべき重要な課題であると認識をさせていただいているところでございます。

 警察庁は、御指摘の群馬県太田市の事件を踏まえまして、この種の事犯の早期発見、そして早期の検挙を推進させていただき、環境破壊の拡大防止を図るように、都道府県警察を指導しているところでございます。

 今後とも、警察におきましては、このような取り組みが強力に推進されるように督励してまいりたい、そのように考えております。

塩川分科員 この太田の産廃不法投棄の現場についての捜査はどのようになったのか、お聞きいたします。

関政府参考人 この事件は非常に社会的反響の大きい事案であるということを踏まえまして、昨年の十一月十二日に、事案を解明しまして、証拠品とともに、前橋地方検察庁太田支部へ書類送致しております。不法投棄の被疑者が一名、委託基準違反被疑者が一法人と一名を特定いたしまして、いずれも時効になっておりましたけれども、事案として送致いたしております。

塩川分科員 搬出事業者と実際に運び込んだダンプの業者が送致をされたということですが、実際に直接不法投棄を行ったグループについては、いまだ特定をされておりません。

 そこで、廃棄物行政の担当であります環境省にお聞きします。

 昨年の矢島質問の際に、当時の鈴木環境大臣は、本地点は首都圏の水源の保全の観点から重要な問題である、そのように認識をしていると述べ、水質監視の確実な実施や不法投棄者を特定し撤去させることなど、適切な対応を約束しておられます。その後どう対応されたのか、お聞きします。

桜井政府参考人 本件不法投棄事案につきましては、昨年二月の本予算委員会におきまして、鈴木前環境大臣から、県における水質モニタリングの的確な実施及び原因者によります撤去などの措置の促進のために、関係機関との情報交換を通じ、環境省としても適切な対応を行う旨、お答えをしたところでございます。

 その後、環境省といたしましても、モニタリングの状況及び原因者追及の進捗等につきまして、群馬県と情報交換を行いまして、その中で、措置命令の発出あるいは支障の除去などについても適切に対応するよう、県に対し要請したところでございます。

 群馬県におきましては、環境省の要請も踏まえまして、本年二月、先月でございますが、新たに不法投棄地の三地点で掘削調査をし、その結果に基づき、現在、今後の対応を検討しているというふうに聞いております。また、法に基づく報告徴収及び立入検査の実施など、原因者への責任追及につきましても、今後本格的に行っていくというふうに聞いておるところでございます。

塩川分科員 県の方が新たに二月にB地点での試掘を行い、検体の採取、分析中ということであります。同時に、まだ全容が解明されていないということですから、引き続きこの解明を求めていくわけですが、その際に、この不法投棄の告発をしました富宇賀氏は、県が試掘をしましたB地点に隣接をしている自動車解体業の東金属の所有地にも不法投棄が行われていると指摘をしております。

 群馬県警が実況見分のため試掘をしたと聞きます。この東金属の所有地から何が出てきたのか、お聞きします。

関政府参考人 御指摘の土地につきましては、群馬県警察におきまして、平成十五年の二月八日に実況見分を実施しまして、八カ所ほど掘削しております。その際、各掘削箇所から、御指摘の会社が過去に適法に処分して埋め立てられましたものと考えられますシュレッダーダストなどを確認したとの報告を受けております。

塩川分科員 シュレッダーダストということで、新たな産廃の存在が明らかとなりました。首都圏の水源地であり、近隣住民の飲み水の井戸があるこの場所だけに、極めて重大であります。シュレッダーダストは、さきに述べました香川県の豊島でも大問題となったものであります。それ以外の有害物質も投棄されている危険性もぬぐえません。

 シュレッダーダスト以外にも、木くずですとか角材など、その他のものが出たと聞いておりますけれども、その点、いかがでしょうか。

関政府参考人 掘削いたしました八カ所のうち、一カ所から土砂まじりの木くず、角材等を確認いたしております。

塩川分科員 シュレッダー以外にも産業廃棄物の投棄が確認をされているわけであります。

 そこで、環境省に伺いますが、シュレッダーダストを含む東金属所有地内の産廃投棄の全容はどうなっているのか、この点を確認したいと思っています。

桜井政府参考人 東金属所有地内に埋め立てられているシュレッダーダストを含む当該地域内の産業廃棄物の全容ということでございますけれども、太田市古戸町の利根川及び石田川に挟まれました河川敷の東金属株式会社の敷地約一万二千平米に、昭和四十六年ごろから五十二年ごろにかけまして、同社がシュレッダーダストを埋め立てていたということを県から聞いているところでございます。

 ただし、この最終処分場につきましては、昭和五十二年三月以前の設置のものについては届け出義務がございません。群馬県も、そういう、ここでシュレッダーダストの埋め立てを行っているということは承知はしておったようでございますけれども、届け出もなされておりませんため、埋め立て容量等の詳細については把握をしていないところでございます。

塩川分科員 実際に、首都圏の水源地であり、また近隣の住民の皆さんへの井戸水をそこから取水する、その場所に大量の産業廃棄物が投棄をされていたわけであります。届け出義務がないという、昔の話だから時効だというわけにいかない、健康、命にかかわる重大問題だと考えます。

 豊島の際にも、有害物質が流出していることなどを含めて、この撤去を含めた取り組みが行われたわけでありますけれども、シュレッダーダストというのは、現在ではどんな処分が求められている廃棄物なのか、その点、お答えください。

桜井政府参考人 シュレッダーダストの埋立処分に関しましては、平成七年以前と平成七年以降、基準が変わっております。

 現在の扱いは、平成七年以降の基準に基づきますけれども、シュレッダーダストを埋立処分する際には、水質汚染を未然防止するための遮水シート、あるいは浸出液の処理施設が設置されている管理型の最終処分場において行うということが求められております。この管理型最終処分場といいますのは、有害ではないけれども、雨水に接すると水質汚濁が生ずるおそれがある汚泥や木くずなどの産業廃棄物を埋め立てているところでございます。

 なお、繰り返しになりますけれども、平成七年以前におきましては、安定型の処分ということで、こういった水質汚染の未然防止措置、あるいは処理施設等の設置は求められておりません。

 東金属所有地内に埋め立てられているシュレッダーダストにつきましては、埋め立てられてから既に三十年を経過しているということでございまして、この処分場から今後汚染が生ずる可能性は低いのではないかというふうに考えておるところでございます。

塩川分科員 現在、シュレッダーダストというのは、水の処理施設が必要だ、遮水シートをして水をためて、本来であれば有害物質が出ることが想定されるという形でそういう対応がもともと求められている、処分場に管理する、処分場に埋め立てることが求められているわけです。

 ですから、過去のいろいろなシュレッダーダストの廃棄物については、自動車というのはいろいろな化学薬品を使っていることはもう御承知のとおりで、鉛ですとか亜鉛ですとかあるいはPCBなど有害物質が含まれている危険性が高い、だからこそ、こういう形での処分場での適切な管理、処分が求められているわけです。

 三十年前だから危険性が低いということでは納得ができない。何よりも、利根川に接している場所ですから、首都圏の皆さんが蛇口をひねると出るこの水もここから流れてきているわけですから、昔のものだからと放置をできない問題だと思います。

 率直に、本当に安全だと言い切れるのか、改めてお聞きします。

桜井政府参考人 先ほども答弁させていただきましたように、東金属株式会社所有地へのシュレッダーダストの埋め立てから既に三十年の年月が経過をしているところでございます。この間、太田市あるいは県で水質検査を実施しておりますけれども、周辺に汚染が生じているという状況は今までのところ見られないということでございます。

 先ほど、今後この汚染が生ずる可能性は低いのではないかというようなことを申し述べましたけれども、群馬県も、この東金属株式会社の処分場から今後汚染が生じる可能性は低いのではないか、当該処分場につきまして新たに特段の対策を講じる必要性はないと判断しているというふうに聞いておるところでございます。

塩川分科員 いや、これまでも、昨年で明らかになった不法投棄についても十分な対応がなされていない上にこのシュレッダーダストですから、こういった産廃の投棄に対して大いに地元から心配の声が上がっているというところを出発点に行政として対応すべきだと考えます。

 東金属所有地内の産廃については、シュレッダーダストがある、それに加えて木くずなど、その他の産廃についても投棄が行われているということですから、改めて環境省に、ぜひとも地元の群馬県などとも連携をして、この現地での、東金属所有地においての産廃投棄の全容を明らかにすべきじゃないか、また、土壌調査をしっかりと行うべきじゃないか、その上でしかるべき安全対策をきちんととるべきだ、このことを改めて求めたいと思うんですが、いかがでしょうか。

桜井政府参考人 環境省といたしましては、将来にわたりまして汚染が生じるということがない、そういうことを確認するために、引き続き太田市及び県によります水質モニタリングによる監視を継続するということが重要と考えているところでございます。

塩川分科員 産廃の不法投棄に当たって、それが住民の皆さんにとって大きな影響を与えるということであれば、ふさわしく県が代執行するということも当然スキームとしてあり得るわけであります。県が仮に代執行という形で対応するということであれば、環境省がしかるべくそのスキームにのっとった対応をする、その点を確認したいんですけれども、いかがでしょうか。

桜井政府参考人 今後、県の方から処理につきまして相談があった場合には、ちゃんときちっと対応してまいりたいというふうに思っております。

塩川分科員 警察庁にお尋ねいたします。

 今回、太田の河川敷の現場での不法投棄を指摘された富宇賀氏の告発文書に、具体的に不法投棄に関与をした複数の人物について指摘があります。この人物についてどんな捜査を行ってきたのか、お聞きします。

関政府参考人 御指摘の文書その他の情報に基づきまして、群馬県警察におきましては、関係者からの事情聴取や証拠資料の精査など所要の捜査を遂げまして、平成十五年の十一月に、被疑者二名、一法人を検察庁に送致しているところでございます。

 その捜査の過程におきまして、具体的にどのような人物に事情聴取をしたかという点につきましては、個人のプライバシーに関することでもありますので、答弁を差し控えさせていただきます。

塩川分科員 関与したと言われる複数の人物のうちの一人が一酸化炭素中毒ということで不審死をしている事件があります。これについて、昨年の矢島質問の際の答弁で、放火の可能性も視野に入れて火災原因の解明等により、全容を解明するために鋭意捜査を行っているとのことでしたが、その後の捜査はどうなっているのか、お聞きします。

栗本政府参考人 御指摘の事件につきましては、群馬県警におきまして、その後も関係者からの事情聴取や、亡くなられた方に係りますトラブルの捜査など、あらゆる可能性を踏まえた捜査を行っておりますが、本件事案を解明するに足る具体的な事実の把握には至っておらず、現在も捜査を推進中と承知しております。

塩川分科員 まだ事件が解明されていないわけですから、引き続き厳正に対処をお願いしたいと思っております。

 その上で、関連する産廃問題についてお聞きします。

 この富宇賀氏の告発文書に基づいて、今回の群馬県太田市の産廃不法投棄事件が明らかになりました。これによって、この告発文書の内容が事実であることが裏づけられたわけであります。その告発文書には、栃木県足利市の採石場の不法投棄問題についても指摘をしております。

 この栃木県足利市の採石場での不法投棄問題について、警察はどのような捜査、対応をされたのか、お聞きいたします。

関政府参考人 御指摘の栃木県足利市における産業廃棄物の不法投棄に関する容疑情報につきましては、栃木県警察におきまして、提供された情報に基づいて採石場の特定や関係者からの事情聴取を行うなど、所要の事実確認を鋭意推進しているとの報告を受けております。

塩川分科員 ぜひとも解明のために努力をいただきたいと思っております。

 産廃の不法投棄グループというのは、広域での連携をとった行為を行ってまいります。特に、首都圏から大量に搬出をされる産業廃棄物に対応して、東北自動車道沿いに連携をとった不法投棄グループの存在ですとか、あるいは千葉から銚子の方に向かう東関東自動車道沿いのそういったグループの存在ですとか、こういうことが、この間の廃棄物行政にかかわる方からの指摘もありますし、また、環状線としての国道十六号ですとか、あるいは国道五十号線に沿った形での連携などということも指摘をされております。

 そこで、こういった広域的に暗躍をする不法投棄グループの存在がうかがわれるわけですが、太田の産廃不法投棄事件で送致をされたダンプ業者、搬入者は、栃木県の鹿沼市在住だとのことであります。栃木の鹿沼市ですとか、あるいはその周辺自治体からのごみがこの太田の不法投棄現場に持ち込まれたということはないのか、この点を確認したいと思います。

関政府参考人 群馬県警察におきまして証拠資料の精査をいたしました。その結果、太田市以外からの地域、具体的には東京都、埼玉県、栃木県などにおいて排出されたと思料されます廃棄物が含まれているということを確認したとの報告を受けております。

塩川分科員 栃木というのは具体的にどこなのか、教えてください。

関政府参考人 群馬県警の調査におきましては、栃木県においては宇都宮市、そして那須郡でございます。

塩川分科員 そういう点でも、東北自動車道沿いのつながりですとか、それとの関連で五十号線沿いのかかわりとかというのもうかがわれるような事態であり、こういった広域的なグループに対する対応が今改めて求められていると思うんです。

 警察庁として、こういった広域的な不法投棄グループにどういう対処をされてきたのか、あるいは今後対応しようとしているのか、簡単で結構ですから、お答えください。

関政府参考人 まず、廃棄物が捨てられていたということを早期に発見いたしまして、その廃棄物をどこから持ってきたか、議員御指摘のように、他府県から持ち込まれるということがございますので、私どもとしましては、関係警察の共同捜査というものを、早目にそういった体制をとるように指導しておりますし、また、今後とも積極的に指導してまいりたいと思います。

塩川分科員 環境省にお聞きします。

 昨年の廃棄物処理法の改正で、こういう広域的なグループについての対応ということを新たに措置されたというふうにお聞きしております。たまたま新聞の夕刊などでも、産廃不法投棄で環境省が地方での監視強化と、日本経済新聞の夕刊で出ておりますけれども、ここに、昨年の廃棄物処理法の改正では、「投棄場所が県境をまたいだり、同一グループが複数の県で不法投棄を繰り返すなどの広域事案への対応方針を決めた。」と書かれております。

 具体的に、こういった広域的な不法投棄グループにどう対応していくのか、環境省としての立場、方針、お答えください。

桜井政府参考人 不法投棄につきましては、その不法投棄の未然防止ということが肝要であろうというふうに考えております。そのため、地方公共団体におきまして、不法投棄の監視体制というのを充実強化するように図っておるところでございます。

 また、不法投棄事案に対する対応といたしまして、昨年、不法投棄の未遂についても処罰の対象とするという廃棄物処理法の改正をいたしたところでございますけれども、今国会に廃棄物処理法の改正案の提出を今検討しておるところでございますが、その中では、不法投棄の目的で運搬をしている者などについても処罰の対象にできるような法改正をしたいというふうに考えておるところでございます。

塩川分科員 重ねて環境省にお聞きしますが、この新聞でも、違法業者の動向などの情報を交換するんだ、自治体との連携をとる、そういう際に環境省が調整役を果たすんだというふうに指摘をされていますが、こういった違法業者の動向などの情報を交換するという点で、この間、具体的に取り組んでこられていることを御紹介ください。

桜井政府参考人 環境省の広域的な対応ということにつきましては、環境省の出先で、まだ組織が十分ではございませんけれども、ブロック単位で地方環境調査官事務所というのを設けております。その事務所におきまして、広域的なブロック単位の各県の情報交換なり対応についての意見交換などを行っているところでございます。

塩川分科員 昨年の二月十七日付の毎日新聞に、毎日新聞が廃棄物行政を担当する都道府県などのアンケート調査を行っています。この中に、二十一自治体で脅迫ですとか暴力が行われているということが指摘をされております。例えば、千葉市では、職員が廃棄物パトロールの現場で業者に取り囲まれるのは日常的で、ここ数年は防弾チョッキを着用して仕事をしているとか、おどしの電話が家族にかかって、家族構成を知っているんだぞということなんかがある、こういった問題というのが極めて重大であります。

 廃棄物処理行政にかかわる自治体職員が身の危険を感じながらやっているという現状を小野大臣はどのように認識をされ、また警察庁としてどう取り組むのか、この点をお聞きしたいと思っています。

小野国務大臣 先生からただいまお話がございましたように、近年、暴力団等の反社会的勢力が、不正な利益を得る目的で、国や地方の行政機関またはその職員に対しまして違法あるいは不当な行為を行う、いわゆる行政対象暴力が顕著に見られるようになってきていると私は認識をいたしております。

 このような状況を踏まえまして、警察庁といたしましては、暴力団の資金源を封圧する、とめてしまうということですね。それで、行政の健全性、公正性を確保するという観点から、行政対象暴力を徹底して排除する必要があるとまずは考えております。

 平成十四年の十一月に、全国の警察に対しまして、行政機関との連携の強化、行政対象暴力の取り締まり等の強化、それから保護対策の推進等を内容といたします行政対象暴力対策の推進について指示をさせていただいたところでございます。

 今後とも、関係行政機関との緊密な連携のもとに、行政対象暴力対策を強力に推進していきますように、警察庁を、当局を督励してまいりたい、そのように考えております。

塩川分科員 市の幹部職員が犠牲となりました栃木県鹿沼市の事件も、広域的な不法投棄グループの関与も指摘をされております。御家族の方は、一刻も早く本人の姿に接することを願っておられます。こういった事件が二度と繰り返されないように、断固とした対応を求めて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

松岡主査 これにて塩川鉄也君の質疑は終了いたしました。

 次に、桝屋敬悟君。

桝屋分科員 この第一分科会、公明党の桝屋敬悟でございますが、質疑をさせていただきたいと思います。

 私は、警察庁所管、そして国土交通省も所管をされて、いわゆる共管であります自動車運転代行業の問題について、この時間議論をさせていただきたいと思います。

 毎年の予算の分科会でもうおなじみになりましたけれども、ことしもまた議論をさせていただきたいと思います。交通局長もおかわりになりましたし、ぜひ人見交通局長の御認識も改めて伺いたいと思っておりますし、特に、きょう議論、まあ毎年のように議論しておりますが、いわゆる適正化法、自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律、これが十四年六月に施行になりまして、二年を経て、いよいよことしの六月から第二種免許が義務づけされる、こういう状況に相なるわけでありまして、今までの二年間の準備の状況なり、まあ、大きな山を一つ迎えるな、こう思っておりますから、そういう意味で、きょうはこの時間、さまざまな角度から議論をさせていただきたいと思います。

 最初に、適正化法というふうによく言われておりますが、私は、適正化法といいますか、できればこの山を乗り越えて運転代行業の事業法をぜひ将来的にはつくっていきたいなと考えている一人でありますけれども、この二年間の施行状況を見ておりますと、今日の認定事業者は、この法律ができる前に比べますと、私はどうなるかなと思っておりましたが、結果的に相当数がふえている、こういう状況があるわけであります。

 聞いておりますと、これは都道府県の公安委員会が認定をするわけでありますが、その認定の業者が昨年末現在、全国で五千二百五十七事業者あるということを伺っております。これは、この法律ができる前は、私の記憶では三千を超えることはなかったわけでありまして、二千五百とか二千六百とかという数字をよく聞いておりましたから、それから比べても、相当の伸びになっているわけであります。二倍ぐらいふえているわけであります。そして、その事業に従事される方も、あるいは随伴の自動車の台数も、それに応じて随分ふえている、こういう状況があろうかと思います。

 時代がまことに厳しいということもあったかもしれませんが、今日のこの代行業の認定の事業者数、規模というもの、全国の五千二百五十七事業者、この数字は、法律の目的、すなわち、代行事業が適正に行われる、国民の利便を向上するために適正に事業が運営をされるということを求めた法律でありますが、この法律の趣旨からいたしますと、この今の五千二百五十七という数字をどのように評価されているのか、最初に伺いたいと思います。これは共管でありますから、警察庁並びに国土交通省、政府参考人で結構でございますが、御見解を伺いたいと思います。

人見政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる運転代行業法は、平成十四年の六月一日から施行になりまして、先生御指摘のとおり、昨年末の時点で全国で五千二百五十七の業者が、都道府県公安委員会の認定を受けて自動車運転代行業を営んでおるところでございます。

 この法律案の策定に当たりまして、平成十二年の五月末に把握していた自動車運転代行業者は、二千七百十五業者でございました。法律に基づく認定の件数は、これを大きく上回っておるところであります。これは、認定制度が導入されるにつきまして、その周知が図られ、申請が適正に行われたことや、あるいは法律の施行を契機として新規参入が相当数あったためである、こう考えておるところでございます。

 警察庁といたしましては、各都道府県公安委員会における自動車運転代行業者の認定が円滑、適切に行われ、所期の目的は達成した、こう認識しておるところでございます。

 引き続き、地域の実情に応じた監督等適切に行いまして、自動車運転代行業の業務の適正な運営を確保していくことが重要であると考えておるところでございます。

谷口政府参考人 お答えさせていただきます。

 自動車運転代行業の認定事業者数の伸びにつきましては、ただいま警察庁の答弁の方にありましたように、国土交通省といたしましても、法律の施行を契機として新規参入が相当あったことや、自動車運転代行業の適正化に向け、業界の法令遵守意識の高まりが形になってあらわれてきたためというふうに認識をしております。

 今後とも、交通安全の確保、利用者保護の実現に向け、法令の適正な運営に努めていくことが重要であるというふうに考えております。

桝屋分科員 ありがとうございます。

 両省から評価を伺いました。恐らくそういう御答弁だろうと思っておりましたけれども、私も、先ほどの人見局長の評価、法律の所期の目標は達成をしている、あるいは法令遵守の精神といいますか、業界全体にこれが広がっている、こういう評価でございましたけれども、そこは私も一定の理解はするわけであります。

 しかし、両省にぜひ申し上げておきたいんですが、もちろん、法律ができまして大きな前進はあったものの、その現状の姿というのはなかなかに簡単なことではないということも、恐らくそういう認識はされておられると思いますが、困難な現状もあるということを私は申し上げておきたいと思います。

 さて、そこで、そうした状況で今日まで来まして、いよいよこの六月一日から、随伴自動車については、ドライバーは第二種免許が義務づけされるわけであります。

 これも数字を伺っておりますが、昨年末の把握では、専従の従業員の中で三五%ぐらいの方が二種免許を取得されているという実態ではないか、あるいは、アルバイトの従業員では一五%の方が二種免を取得している、こういう状況だというふうに伺いました。

 この実態は、この六月からまさに義務づけされる、二種免の義務づけという事態に対応する、いわゆる準備ができているというふうに考えていいのかどうか。今回、道路交通法の改正も予定されているようでありますが、私は、やはりこの業界がしっかりそれぞれの地域で機能しなければならない。でないと、やはり飲酒運転あたりの防止ができないわけでありますから、ぜひ、この六月一日を曲がり角にして大変な混乱が現場に生じるということがあってはならない、こう思っているわけであります。

 そういう意味では、今私が伺いました数字、三五%の取得率、これは、準備がそろそろできた、二年間準備をしてきたわけでありますから、そのような認識かどうかということについて、人見局長から見解を伺いたいと思います。

人見政府参考人 お答えいたします。

 第二種免許の義務づけにつきましては、先生御指摘のとおり、本年の六月一日に施行されるところでございます。専従員では約三五%、現在取得しておりまして、また、アルバイトでは約一五%、大体、一年間で六千人ふえておるというような状況でございます。

 昨年末現在で調べました第二種免許の取得者数について、取得予定のない従業員というもの、約二万八千人ほど存在しております。これは、アンケート調査などしておりますので。こういう取得予定のない方を除きますと、先ほどの数字、三五%、一五%というのは、専従者で約四五%、アルバイトの従業員ですと三四%、総数で三九%の取得率、こうなっておるところであります。

 警察といたしましては、引き続き、運転代行事業者に対する指導を行いまして、運転代行業に従事する方の第二種免許の取得を促進してまいる所存ではございます。

 これまでの第二種免許の取得者数の増加数とか、あるいは取得予定者数を見ますと、おおむねではございますが、円滑な法律の施行がなされるのではないか、こう考えておるところでございます。

桝屋分科員 重ねて人見局長に伺いますが、二種免が義務化されて、今三五%ですが、皆さん方、現場に指導監査にも入られるだろうと思いますが、どうなんでしょうか、どれぐらいの方が持っていれば、何とか円滑にこの事業は日本全体として進んでいくんじゃないか、そういう目安みたいなものがあればお聞かせいただきたいと思います。

人見政府参考人 お答えいたします。

 なかなか、目安を一概に申し上げるのは大変困難でございますが、現在、取得予定者数を除くと四五%、取得者は全体の三五%、専従者の場合でございますが、大体五割前後というのが、二人で組んでいきますので、目安かな、こう考えておるところでございます。

桝屋分科員 局長がおっしゃったように、五割程度があれば一定の準備が完了したと。完了といいますか、でき上がっている、そんなに大きな混乱はないだろう、こういう御判断だろうと思います。

 ただ、いずれにしても、全体の、この五千二百五十七の事業者の中で、多くは、八割強の方が個人事業者でありまして、アルバイトの出入りも多いわけであります。せっかく二種免を取らせても、それがタクシー業界に流れていくというようなこともあったりして、やっぱり現場はなかなか大変でありまして、本当にうまくいくかどうか、実は大変心配しているわけであります。

 そこで、今後の課題でありますが、私は、この六月一日というのが、二種免の義務づけということが一つ大きな山であろうと。この適正化法、運転代行のための法律ができてから、この六月がまさに大きな山であろう、こう思っているわけであります。

 今日までの経緯を見ますと、やっぱり正直者がばかを見るような事態もあって、結構、無認定で営業したり、あるいはよく聞く話は、公安委員会の認定では台数あたりもきちっと届け出をしているわけでありますが、我が社は十台というようなところが、例えば、土曜、日曜にはやっぱり繁華街のニーズに応じて倍になってみたり、あるいは年末には大変多くの代行の台数が走っている、こういう実態もあるわけであります。

 今日まで、無認定営業あるいは損害賠償の措置義務違反などで厳しい監査をされたり、あるいは行政処分、中には検挙というようなこともあったようでありますけれども、これから、六月一日を経て、今まで所轄の警察も、なかなか人員も大変でありますから、指導の徹底というのはなかなか困難な問題もあったわけでありますが、六月一日以降はいよいよ集中的な取り締まりが始まるんじゃないか、大変な取り締まりがあるのではないかと、業界の皆さんは懸念を持っているところもあったり、いや、いい機会だからしっかりやってもらいたいという声があったり、いろいろな声があるわけであります。

 二つお聞きしたいんですが、一つは、二種免許を持ってない者が、もし、随伴自動車を運転して、お客さんを乗せて六月一日以降走っているということになりますれば、それはどういうことになるのか、これを一つ、まず御説明いただきたいと思います。

人見政府参考人 お答えいたします。

 普通二種免許または大型二種免許を受けていない者が、本年六月一日以降、代行運転の普通自動車を運転した場合、これは、道路交通法の六十四条、すなわち、無免許運転の禁止の違反に当たります。これは、罰則は一年以下の懲役または三十万円以下の罰金が科されることになります。

 また、この運転者に対する免許に係る行政処分につきましては、基礎点数十九点が付与されますので、当該運転者に違反の前歴がない場合であっても、運転免許の取り消し処分が科されることとなるところでございます。

 また、次に、運転代行業者あるいはその安全運転管理者等でございますが、これは、自動車運転代行業の業務に関して、無免許運転を下命したりあるいは容認した場合、同じく、一年以下の懲役または三十万円以下の罰金が科されます。

 さらに、公安委員会から、自動車運転代行業の業務の適正な運営が害されるおそれがあると公安委員会が認めるときには、当該運転代行業者に対しまして、必要な措置をとるべきことを指示することができ、その指示に違反した場合等には、運転代行業の全部または一部の停止を命ずることがある、こういうことでございます。

桝屋分科員 今の御説明のとおり、もし、六月一日以降、二種免を持っていない方が業務に従事すれば、随伴自動車を運転すれば、まさに無免許運転ということになるわけでありますし、業者についても免許の取り消しという事態にも立ち至るわけでありますから、そうした罰則等についても十分周知をいただきたいと思います。

 その上で、六月一日以降、今の二種免のみならず、無認定の事業者あるいは事業の適正な運営を確保するためのさまざまな法に基づく対応について、現場のその業界の皆さんに取り組んでいただくいい機会だろうと思っております。

 そういう意味で、昨年も、自動車運転代行業の業務の適正な運営の確保に向けた取り組みの強化というような指導通知も出されているようでありますが、警察庁並びに国土交通省、国土交通省におかれては旅客運送適正化推進室という組織もあるようでありますが、これから、それぞれの地方の出先の機関と連携をして、どのような指導監督を進めていかれるのか、今後の取り組みについて、警察庁並びに国土交通省から伺いたいと思います。

人見政府参考人 お答えいたします。

 法律の施行以降、警察庁におきましては、自動車運転代行業の業務の適正な運営を確保するために、国土交通省と連携いたしまして、自動車運転代行業者から必要な報告を求め、あるいは、自動車運転代行業者に対する立入検査などを実施したほか、法令違反が認められた場合には取り締まりを行ってきたところであります。

 ちなみに、法律の施行後の運転代行業務従事中の死亡事故の発生状況、これを見ますと、平成十四年は十五件、平成十五年が十三件と、事業者数が増加する中では横ばいとなっておるところでございます。

 また、他方、取り締まり面で見ますと、無認定の営業あるいは損害賠償措置義務違反、無保険営業でございますけれども、あるいは道路運送法違反、白タク行為でございますが、これで五十九件、六十名の検挙をいたしておるところでございます。また、先ほど申し上げました法律に基づく指示などで三百四十三件の行政処分を行っておるところでございます。

 警察庁といたしましては、交通の安全と利用者の保護を図るために、国土交通省との連携を一層強化しつつ、引き続き、第二種免許の取得を促進するなど、地域の実情に応じた指導監督、取り締まりが徹底されるよう都道府県警察を指導してまいる所存でございます。

谷口政府参考人 お答えいたします。

 国土交通省といたしましては、現場における指導監督等事後チェック体制の強化を図るために、自動車運転代行業の業務の適正な運営を確保するために、昨年五月に、地方運輸局等に対しまして通知を発出しております。この通知の中で、集中的な街頭指導、立入検査の実施、監査実施計画の策定を指示いたしたほか、無保険営業等の違法行為につきましても処分手続等の明確化を図っております。

 地方運輸局、運輸支局等においては、これに基づきまして、重点的、計画的な自動車運転代行業の監査等に努めておるところでありまして、平成十四年六月の適正化法施行以来、千三百四十件の監査を原則として警察と合同で実施するとともに、損害賠償措置義務違反、随伴自動車の表示義務違反等の違法行為百十二件について、適正化法に基づく指示などの行政処分等を行っております。

 国土交通省といたしましては、今後も、警察と密接な連携を図りつつ、交通安全の確保、利用者保護の実現に向け、事後チェック体制の充実強化に努めてまいりたいと考えております。

桝屋分科員 ありがとうございます。

 いずれにしても、大事なときを迎えております。私は、両省にお聞きしたのは、やはり私もこの問題にずっと取り組んでおりますが、国土交通省とそれから警察庁、共管とはいいながら、おのずと、考え方といいますか、同じ法律ではありますが、その法律の運用に当たっては、やはり自分の省の文化といいましょうか、目的といいましょうか、若干温度差があるような気がいたします。やはり現場においてはしっかり連携をしていただいて、適切な御指導に当たっていただきたいということを重ねてお願いしておきたいと思います。

 そこで、残された時間、ちょっと提案というかお尋ねなんですが、やはり私は、何も取り締まることが目的ではなくて、現場において本当に国民の皆さんにしっかり利用していただける利便性のあるサービスとしてこの代行業が定着をしてもらいたい、こう願っているわけであります。

 そういう意味でも、先ほど、事業者はこれほどふえてきた。こういう背景の中で、長野県あたりは公安委員会がホームページに今の認定事業者の一覧をディスクローズしている、情報公開している、こういう状況もあるようであります。

 これはなかなか難しいこともありますが、やはり法の目的からしますと、私は、一つのアイデアではないかな、知恵ではないかな、こう思っておりまして、そうした認定の事業者の状況を公表することによって、やはり適正化がまた進んでいくということがあるのではないか。できれば、それぞれの事業者がどれぐらいの台数を持ってそれぞれの地域で事業を運営しておられるのか、そんな情報が一般の国民から見てわかるというような状況も私はいいことではないかな、こう思っているのでありますが、警察庁人見局長のお考えをお聞きしたいと思います。

人見政府参考人 お答えいたします。

 長野県の方におきまして、例えば事業者名とかあるいは代表者名ですか、これを公表しているということは承知しておるところでございますが、それ以外の情報まで公にするということについてはなかなか、業者の競争上の地位とか正当な利益を害するおそれがあるのではないかとか、いろいろ考えますと、慎重に対応すべき、もっともっと検討すべきかな、こう考えておるところでございます。

 他方、運転代行業法では、自動車運転代行業者に対しましては、認定証を主たる営業所の見やすい場所へ掲示せよとか、あるいは、営業所において利用者に見やすいように利用料金を掲示する、あるいは、随伴用自動車に、公安委員会の認定を受けて自動車運転代行業を営んでいる旨の表示をしなさいとか、こういったことを義務づけて、業務の適正な運営を確保することとしております。

 今後とも、これらの遵守を指導してまいりたい、それによって法の目的が達成されるように考えておるところでございます。

桝屋分科員 人見局長、長野がおやりになっていることが行き過ぎだという認識をお持ちではないんだろうと思っておりますが、私は、できれば、これは情報公開でいきますと本当にいいのかどうかという議論はあると思いますが、今これほどのITの時代に、そうした情報をディスクローズするということがあっていいのではないかと。公安委員会がやるとなると困難性があれば、それは業界の皆さんと連携をしながら、要は、いい事業者がしっかり国民の皆さんに利用されるということが大事でありまして、ぜひ、業界の皆さんとも機会を見つけて相談をしながら取り組んでいただきたいな、こう思っているわけであります。お願いをしておきたいと思います。

 最後になりますが、私は何度も言いますが、運転代行事業者をしっかり取り締まればいいという発想で先ほどから議論しているわけではありません。本当に交通安全の立場から、しっかりとそれぞれの地域でいい事業者が適正なサービスを展開する、こういう事態を希望しているわけであります。

 そういう意味では、これからの業者の皆さん方の取り組み、あるいは、行政が業者の皆さんに、業界の皆さんに指導するという立場からも、法人の事業者とそれから個人の事業者、大体八割ぐらいが個人事業者だと思いますが、法人化ということもある意味では国民の信頼を得るということでは大事な手法だと思います。そんな努力を業界みずからもしてもらいたいな、こう思っておりますし、そんな協議もしていただきたい。

 あるいは、六月一日からの、先ほどありましたように、例えば集中的な取り締まりをされる場合も、特に国土交通省にお願いしておきたいわけでありますが、白タク行為、いわゆるAB間という問題については、それは違法なものは違法でありますが、この業界の、この業の特徴として、やはり利便性のあるサービスということが大事でありまして、国民の皆さんから見放されるようなサービスであってはまた意味がないわけであります。要は、飲酒運転を少しでも少なくするということが大事なわけでありまして、AB間の取り締まりについても十分配慮して取り組んでいただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

松岡主査 これにて桝屋敬悟君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして警察庁についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

松岡主査 次に、内閣府本府について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。

伊藤(信)分科員 自民党、宮城県選出の衆議院議員伊藤信太郎でございます。

 きょうは、内閣府に、政府の地震・津波防災対策について質問をさせていただきます。

 昨年は、五月二十六日に宮城県沖地震、そしてまた七月二十六日には宮城県北部地震、そしてまた二カ月後の九月二十六日には十勝沖地震というのが二カ月ごとに起きまして、それぞれ大変大きな人的、物的被害というものをもたらしたわけであります。

 もともと、日本というのは火山国であるといいますか、海溝に囲まれておりますので地震国でございますし、また海洋国であるということから、津波の被害というものも非常に大きいわけでございます。ですから、やはり政府はこの日本の特質というものをよく踏まえて地震・津波防災対策というものに万全を期さなくてはならないと考えるわけでございますけれども、その中で、特に今回地震があった地域のこともよく考えてきょうの質問をさせていただきたいと思います。

 まず、全体の政府の取り組みでございますけれども、これは、もちろん法治国家でございますから法体系というものを基礎になされるわけでございますが、今、地震・津波対策に関してはどういう法体系、法の構造の中でその施策が行われているかについて井上大臣にお伺いしたいと思います。

    〔主査退席、倉田主査代理着席〕

井上国務大臣 今お話しになりましたように、日本あるいは日本周辺といいますのは、大変大きな地震が起こる地域だと言われておりますし、世界のマグニチュード六以上の地震の二〇%が日本周辺で起こっている、こういう状況のようでございまして、また、これに伴いまして津波も発生するという状況であります。

 普通、災害の場合、あるいはもっと広く有事の場合は、何か基本法がありまして、そういう中から対策がずっと体系的に出てくるというのが本来でありますが、地震の場合は、そうはいいましてもなかなか、現実にどういう地震が起こるのか、どういう対応をするのかというのはその時々で違ってまいりますので、今の地震の法律体系といいますのはそういう地震の経験に徴しまして法律がだんだん整備をされてきた、こういう状況だと思います。そういうことで、一見、なかなか法律の体系がわかりにくいというようなことになっているかと思います。そういうことで今の御質問が出たと思うのであります。

 まず、災害対策全般の基本は、御案内のとおり災害対策基本法でございまして、これはまさに国がやるべきこと、あるいは地方自治体がやるべきこととか民間がやるべきこと、そういう基本について記述してある、規定をしている法律であります。だから、これが大前提であります。

 それから次は、全国の地震を対象にしました地震防災対策特別措置法というのがございまして、これは地震の一般法ということだと思いますね。地震につきましての一般法が地震防災対策特別措置法ということであります。

 それからさらに、地震の予知ができる、例えば東海地震なんかの場合ですね、まあまあ予知ができる段階まで来たんじゃないかと言われておりますけれども、こういう予知が可能な地域を対象にしました大規模地震対策特別措置法ですね。これはかなり具体的に対策を立てていこうということでありますし、また、その次の財政支援につきましても地震の財政の特別の支援の法律がございます。これが一対になっておりますけれども、そういう法律体系。

 それからさらには、東南海・南海地震を対象にしました東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法というのが制定されておりまして、これも御案内のとおりでございます。

 こういう法律体系の中で、具体的に、ハザードマップを作成したり、どういうような被害が起こるかという想定のもとにいろいろな対応を考えていくということをやっておりまして、ソフト、ハード両面の対応をしている、こういうことでございます。

伊藤(信)分科員 予知といいますと、普通の方は何年後とかいうことですけれども、いわゆるここで言う予知というのは、四十八時間とかそういう単位のものだと思いますね。

 そうすると、東南海・南海というのはあの阪神・神戸の大地震の反省から生まれた議員立法でできているわけですけれども、ここの地域が三十年以内に地震が来るという可能性が研究、調査によると四〇%から五〇%というふうに言われているわけでございます。

 反面、宮城県を含む地域でございますが、この日本海溝、千島海溝というのはもっと、発生確率が非常に高いわけですね。例えば、宮城県沖では三十年以内に九九%の可能性で来ると言われている。また、三陸沖北部も九〇%ですね。そしてまた十勝沖、根室沖も八〇%、また色丹島沖、択捉島沖等も九〇%ということで、この日本海溝沿い、そしてまた千島海溝沿いに多くの地震の発生源がありまして、ここから海溝型地震が発生する確率は極めて高い。ただ、現在のところ、この地域に対する東南海・南海におけるような特別措置法というものはないわけでございますね。

 ですから、日本全体のバランス、また地震の起きる蓋然性ということにかんがみますと、やはり今の法体系では若干欠落なりバランスを欠いた部分があると思うんですけれども、この千島海溝、日本海溝沿いの海溝型の地震に対する特別措置法を内閣府としてお出しにならない理由というのはどんなところにあるのか、お聞きしたいと思います。

井上国務大臣 御承知のとおり、この日本海溝とか千島海溝では大変大きな地震が特に最近多発をしていると言っていいと思うのでありまして、また大きな津波も時として押し寄せる、こういう状況だと思います。

 今、中央防災会議の中でこの千島海溝、日本海溝につきましての専門調査会を設置しております。私もそこに出席して話を聞いておるんですけれども、どうも、地震といいますのは、ある種の架空の理論によって予測するんじゃないんですね。過去に起こったそういった地震を検討して、ある程度理論的な補強もいたしまして、いろいろな予測を出してくるわけですね、この地域でこういう被害を伴うような地震とか津波があるぞということなんですが。これはやはり記録にありませんとなかなかそういった研究もできにくいということで、東南海とか南海地震の方が先行しました。

 これは、いろいろな要素がありますけれども、一つは、やはり地震なんかについてのデータが割かしそろっていたということだと思うんですが、東北地方については大体四百年と言われていますね、四百年ぐらいしかいわゆる文字で記述した記録がない。それから、北海道になりますと大体百五十年ぐらいと言われておりまして、そんなことから研究がややもすればおくれがちになりまして、そんなようなことが多少国の取り組みにも影響してきているのではないかと思うんです。

 しかし、そのままで置いておってもいいはずはありませんので、この中央防災会議に千島海溝、日本海溝につきましての専門調査会を設置しまして、来年の秋を目途に一応の結論を出していこうと。つまり、どういう地域にどのような被害が起こるのか、何をすべきなのかというようなことをやろうということで、若干おくれましたけれども、鋭意取り組んでいきたいと思います。

伊藤(信)分科員 昨年の六月三日に行われました災害対策特別委員会で、私は、その専門調査会の設置と、それから、この地域を対象にした特別措置法の早期制定というものを強く訴えたわけでございます。

 専門調査会は、今大臣お答えのとおり、昨年の十月から開催されているようでございますが、今のようなお考えのことから、またいろいろな理由もあるんでしょうけれども、禍根を残さないということで、政権政党たる自民党が中心となって、この地域を対象にした特別措置法の立法措置というものを進めてきたわけでございます。今、自民党も公明党も了承して、今国会に出すという段になっております。

 このモデルとなっておりますのは、もちろん東南海・南海の地震特措法でございますが、その中で、やはり推進地域の指定ということが図られているわけですね。推進地域の指定に当たっては、大きな被害が想定されるということが文言として書かれているわけでございますけれども、この推進地域の指定の選択基準というものをもう少し明確にする必要があるのではないかなと思うわけです。

 それから、やはり東南海・南海、まあ千島海溝、日本海溝の法律がまだできておりませんから、すぐ比較するのが適当かどうかあれでございますけれども、やはりその地理的条件、気候的条件や都市環境が違いますので、必ずしもその大きな被害というものの概念規定が同じかどうかということもあるんです。

 ですから、参考までに、既に施行されております東南海・南海の推進地域の指定に当たっては、まだ指定されていないようですけれども、どのような選択基準を想定されているのか、その辺、お答えいただきたいと思います。

尾見政府参考人 それでは、お答えを申し上げます。

 先生が御指摘になりました東南海・南海地震に係る推進地域の指定のことでございますが、その特別措置法におきましては、著しい地震災害が生ずるおそれのある地域を推進地域に指定する、こういうことになっております。

 具体的にはどういうことかと申しますと、これは中央防災会議へ諮問させていただいて、答申をいただいて、それで指定をするという手順でございますが、具体的には、専門調査会で検討された結果におきましては、推進地域についてはメーンの点は二点ございます。一つは地震の揺れでございますが、揺れにつきましては、震度六以上の地域を指定する。それから、二番目は津波でございます。津波につきましては、沿岸では津波高が三メートル以上、もしくは浸水深二メートル以上、これは陸に上がってという形ですが、それで堤防整備が十分でないなどの要件を満たす地域を推進地域として指定する、こういう考え方でございます。

伊藤(信)分科員 昨年宮城県で起きた地震の経験、私も被災地を六回りぐらい回っておりますけれども、やはりそのことに対しては、二次災害、三次災害ということももう少し入れた方がいいのではないかと思います。

 例えば、鹿島台町のように、地盤が脆弱であったり、天井川のあるような地域においては、地震によって堤防が決壊する、あるいは川がはんらんすることによってさらなる被害というものもありますので、地盤の脆弱性とかそういったものも含めた方が、推進地域の指定というものの合理性の上でもう少し重層性を持つと思いますので、日本海溝、千島海溝沿いの法律はまだ法制化しておりませんけれども、その際には、やはり少し別の観点も入れて推進地域を指定するということを省令なりに書き込むということが私は必要だと思います。

 この推進地域は、推進地域に指定されますと、推進計画を策定して実施するというわけでございますけれども、実施主体というものが非常に複数なわけですね。それぞれ、中央各省庁もありますし、指定された自治体というものもあります。そうしますと、非常にいろいろな問題がございまして、各省ばらばらにやる、あるいは地方自治体と中央省庁のいろいろな違いというものが、地震防災対策あるいはその後の復旧復興対策に、いろいろなインバランスといいますか、ずれを生じているんですね。

 例えば、今度の宮城県の例で申しますと、鹿島台ばかり出して恐縮ですけれども、鹿島台でいろいろな被害があります。例えば、堤防とかそういうものは即直る、まあ、これは国土交通省さんが早いということかもしれませんけれども。それで、次に、小中学校ももちろん被害を受けたわけですけれども、小中学校については、七月の地震に対して、九月の新学期までに直っている。ところが、厚生労働省所管の病院については、まだ調査が緒についたばかりで、できるまで多分二年くらいかかるだろうと思います。

 ただ、住民あるいは国民の立場からいうと、被害を受ける、あるいは被害を受けないようにするということについては、公平であるべきであって、役所の所管が違う、あるいはそれが地方自治体だからということでおくれとかずれというのは、やはり国民感情として納得いかないんだろうと思います。

 ですから、推進計画を策定、実施するに当たっては、縦割り行政とか、あるいは地方自治体と中央省庁とのいろいろな考え方の違いというものが余り出ないように、どこかが中心になってイニシアチブを握って統合していく、そして、そういう時期のずれや助成基準のずれというものが防災計画や復興復旧計画に悪い影響を与えないようにするということが私は必要だと思うんですね。

 その立場に一番立ちやすいのは内閣府ではないかなと私は思っているわけでございますけれども、この推進計画を実施するに当たってのイニシアチブのとり方についてのお考えをお伺いしたいと思います。

尾見政府参考人 推進計画の整合の確保をどう図るかというような御指摘でございます。

 我々も、その点は非常に大切なポイントだというふうに思っております。したがいまして、推進計画のベースとなる中央防災会議で国が基本計画を決めます。その際に、推進計画に当たっては、どういうことをきちっと対応するのか、その考え方についての中心的な命題をそこで整理させていただきますので、その基本計画に基づいて推進計画がきちっとつくられれば、御懸念のような問題も払拭できるのではないか、こういうふうに考えております。

 国としましては、地域の特性を十分考えて、各機関の推進計画の間で整合性が図られるように、関係省庁の連携というものも十分図って、基本計画を定めて、さらに推進計画の作成作業を進めていく、こういう手順で考えているところでございます。

伊藤(信)分科員 既に制定、施行されている全国を対象にした地震特措法でも、防災計画の進捗率が県によって相当差がありますね。例えば、宮城県と岩手県では二〇%ぐらいの差があって、宮城県の方が低いわけですけれども、それと同じような問題が、今度の新しい特措法が通った場合でもやはり起きるのではないかなと思うんですね。

 ですから、地方自治体というのは、それぞれ、財政需要とか知事の物の考え方とか、こういったものが反映するので、基本計画に盛られているような基準なり考え方というものが遵守されなかったり履行されなかったり、あるいは進捗率がおくれたりする場合というのは往々にして考えられる。

 その場合、国を守る、また国民を守るという立場から、中央政府たる内閣府がどれぐらいの権限なり指導力を持ってできるかということが、具体的な実効性を担保する上では非常に重要だと思うんですけれども、その点についての考えなりあるいは法的根拠についてお聞かせ願いたいと思います。

井上国務大臣 確かに、ある法律に基づきまして、県なり市町村なり、あるいは関係のところが計画をつくる場合にも、これは余りばらばらじゃいけないわけでありまして、やはり基本的なところはきちっと押さえる。

 ただしかし、今お話しのように、地盤の問題にしましても、そのほかの気象条件とかその他にしましても、これは違うわけでありますから、地方自治体ごとの差異は差異として、それが反映できるような計画にならないといけないと思うんですよね。ですから、最低限のところは、それはもう共通できちっとやる。しかし、その地方団体ごとの差異については、それも許容するような計画じゃないといけない、こんなふうに私は思うんです。

 確かに、都道府県の取り組み方は、これはどういう理由かよくわかりませんけれども、私も知事さんなんかと話しましたところでは、県ごとに違うわけですね。防災館なんかを設置してかなり積極的にやっておられる県もあるし、まだそこまでいっていないようなところもありまして、それは差異があります。ですから、防災につきまして、いま一度、人間の命とかあるいは財産にも大変関係することでありますので、そんなことも考えてきちんとこれから対応していただきたいというようなことは言っていかないといけないと思います。

 問題は復旧事業ですね。これにつきましては、余り各省庁ばらばらなのもいかがかと思うので、できるだけ調整をとりまして、同じようなスピードで復旧が進んでいくということが一番いいと思います。

 ただ、その場合の権限としまして、指揮命令をするとか、あるいは財源の配分について調整をするとか、そういうことは内閣府は持っていないわけでありまして、あくまで調整官庁なんですね。それぞれの権限を持っている役所の御意見を伺いながら、調整できるところは、もちろん関係各省も同意をしないとどうにもなりませんが、同意を得ながらできるだけの調整をしていく、うまくやっていく、こういうことじゃないかと思います。まだ、一つの統一的な機構で、その指示のもとにこういう対応を考えていくという段階までは来ておりません。

伊藤(信)分科員 丁寧な御答弁、ありがとうございました。

 内閣府としてはもう少し力を発揮したいところだけれども、予算面とか権限がないということだろうと思います。いずれ、やはり国民保護法制とも多少関連するかもしれませんけれども、こういう大きな災害が起きたときに、非常に大きなリーダーシップなりある程度の予算、権限を持ってそのことを運営する組織なり法体系が必要だと私は考えますので、そのことを最後に申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 復興復旧の中で非常に問題になるのは、道路とか港湾とか、あるいは学校とか病院とか町役場とか、公的な施設あるいは基盤については国あるいは自治体の財政措置によって賄われるわけですけれども、民家ですね、私有財産といいますか、民家が壊れた場合の措置については、これはなかなか、国民の税金を私有財産の補てんに使っていいのかというような御議論もありまして、今まで進まなかったところでございます。

 ただ、実際、地震が起きた地域を回ってみますと、一番切実なのはそこなんですね。特に、宮城県のように高齢の農家が多くて、家が壊れた場合、とても直せない状態で、結局、五千軒からの家が全壊、半壊しておりますから、地域全体の復興復旧も進まない。しかも国民の生命財産を守るという意味においても、このことにいつまでも目をつぶって復興復旧するわけにもいかないと思うわけです。

 そういう考え方から、今度政府の方でも、被災者生活再建支援制度を拡充するということで、その中で居住安定支援制度を創設いたしまして、この居住安定支援金というものを払って、全壊の場合は二百万、半壊の場合は百万払うということでございますけれども、これも被災者の立場からいいますと、何に幾らかかるというのを全部見積もりを立てて、あるいはかかって、領収書を持ってからもらうということでは、結局、そんなことやってられないということで、いつまでも壊れたままの家になっているということですね。

 ですから、被災者の立場になると、お金を払うにしても、やはり円滑化された形で払うということが非常に必要だと思うわけでございますけれども、その点に対して、今度の法改正あるいは新制度の創設に対してどんな工夫がなされているか、お伺いしたいと思います。

井上国務大臣 今度の居住安定の支援制度につきましては、特に被災者の方というのは、住宅の再建について国がもっと積極的に支援をしてもらいたい、こういう気持ちが非常に強いわけですね。片や、やはり税金を個人資産に投入していいのか、こういう強固な意見もあることも事実でありまして、なかなかこの議論が収れんしないんですね。

 そういうことで、財政政策の方も、なかなか、私有財産の最たるものであります住居につきまして、ストレートに、それじゃ再建のためにお金を出しましょうというところまで行かないわけでありまして、我々としてはそこまで行かなかったけれども、その周辺の部分につきまして、それじゃ、まず制度をつくっていこうじゃないかということで、二百万円を限度にいたしまして、今回提案しておりますような制度にしたわけでございます。

 ただ、非常に細かい議論をしますので、余りぎすぎすしますとこの制度の円滑な運用ができないということになりますので、その点は円滑な支給ができますように、できる限りいろいろなことを配慮しながら運用していきたい、こんなふうに考えております。

 具体的なやり方については、まだこれから知事会とか市長会なんかとよく協議をしないといけませんので、そういった協議を通じまして、今申し上げましたような方向で運用できるようにしてまいりたいと思っています。

    〔倉田主査代理退席、主査着席〕

伊藤(信)分科員 そうすると、その中で概算払い等のことも視野に入っているということでしょうか。

尾見政府参考人 今大臣から御答弁させていただきました考え方に基づきますと、現行の考え方では概算払いという考え方が、制度があります。例えばそういうものを活用するということが第一義的に考えられます。そのほか、申請に当たっていろいろな書類がありますが、それをできるだけ簡素化するとか、あるいは事務手続も審査の点とかいろいろございますが、そういう問題もできるだけ簡略化して、できるだけ円滑に支援金が被災者の方の手元に届くということを考えていきたいと思っております。

伊藤(信)分科員 宮城県の例ばかり出して恐縮ですけれども、今度の地震でも、やはり裏山が崩れてくるというところがすごく多くて、崩れた裏山によって民家が押しつぶされている。そうしますと、その裏山というのはまだ崩れつつあるんですね。ですから、新しい家を建てるにしても、同じところに建てたらまた崩れてくるわけで、やはり自分の田畑に整地して建てるということも必要だし、そのことに対してはちょっと農振法のあれもありますけれども、そのことは別として、そういった場合に、田畑を住宅用にするためにはやはり整地も必要ですね。そういった整地の費用に対しても今度の法改正で行われる居住安定支援金というのは使うことが可能かどうかについてもお伺いしたいと思います。

尾見政府参考人 お答え申し上げます。

 少々長くなりますが、よろしくお願いします。

 今度の制度におきましては、解体撤去、整地につきましては、住宅の再建、補修の際に被災者の方が現実に負担する経費の軽減を図るという観点から、従前居住しておられた地域、敷地においてみずから居住するために建てかえや補修をする場合、そういう場合に支援対象にする、こういうのが基本的な考え方であります。

 今例に出されたような事情で、やむを得ない事情によって従前の敷地以外の土地で移転再建を余儀なくされた場合にはどうか、こういうお尋ねだというふうに考えておりますが、この問題については、一番最初に申し上げました考え方の趣旨に即して考えるということが適当なんだろうと思います。そうしますと、住宅の解体撤去、それは従前のところの解体撤去があります。移転先の整地費もやはり対象とすべき、こういう考え方に一応なるんではないかというふうに思います。

 ただ、先ほどの考え方のベースとしては、従前居住地で再建する場合に認める整地費の考え方は、災害や家屋の解体作業に伴って、例えば宅地の形状が変質した場合の原状復旧に要する費用を想定しているということでございまして、移転先の整地費も同じような考え方でやっていく。それで、具体的に、例えば農地を宅地化するというものにつきましては、これは付加価値を高める一種の造成に当たりますので、造成費は対象にするというわけにはいかないというふうに考えております。

 いずれにしましても、さきに申し上げました基本的な考え方を踏まえて、やむを得ない事情というのは一体どうなのか、具体的にはどういうものをやむを得ない事情として考えたらいいのかとか、いろいろな運用の問題がございますので、その公平を図るために、できるだけきちっとした基準とか要件というものをこれから慎重に考えていきたいと思っております。

 以上でございます。

伊藤(信)分科員 そうすると、原則的には可能ですけれども、それには厳しい要件がつくという理解でよろしいでしょうか。

 これで質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

松岡主査 これにて伊藤信太郎君の質疑は終了いたしました。

 次に、村井宗明君。

村井(宗)分科員 民主党の村井宗明です。よろしくお願いします。

 本日は、大雪の問題、雪害対策、豪雪地帯対策について質問をさせていただきます。

 私の選挙区は、北陸の富山県です。富山県には現在三十五の市町村がありますが、豪雪地帯対策特別措置法により、三十五市町村すべてが豪雪地帯に指定されています。さらに、そのうち十三町村は特別豪雪地帯に指定されています。

 県内全域が豪雪地帯に指定されているわけですが、毎年、積雪による被害、特に交通機関の麻痺が繰り返されています。道路の通行どめ、鉄道の運休、空港の閉鎖といったぐあいに、車も鉄道も飛行機もとまってしまう状況が、毎年冬になりますと数回は起きてしまいます。富山県内と東京や大阪や名古屋など県外を結ぶすべての足がとまってしまうわけです。

 もちろん、県外との交通に限らず、県内の道路や鉄道の麻痺によって、県内の日常生活は大きな不便をこうむっています。バスも電車も走らなくなりますと、高齢者や子供たちは全く足を奪われてしまうわけです。とりわけ、身体に障害を持つ人や介護を必要とするお年寄りは、全く動きがとれなくなってしまいます。また、健康な大人でさえ、道路を歩くのに大きな危険が伴います。

 ただ単に生活の足が奪われるだけでなく、緊急自動車の遅延や、医療、福祉関係のサービスの低下、生鮮食料品の輸送の途絶や郵便物の遅延など、日常生活のあらゆる分野で影響を受けています。特に、ひとり暮らしのお年寄りの増加や少子高齢化の進行により農山村における集落機能が低下している今、道路の除雪や家屋の雪おろしは大変な負担となっており、同時に事故の危険と常に隣り合わせています。

 本日は、今申し上げました問題意識をもとに、関係大臣及び関係省庁に質問をさせていただきたいと思います。

 さて、最近の国の災害対策と申しますと、東海地震対策や三宅島噴火災害などがその議論の中心となっているようです。もちろん、これらの大規模地震や火山噴火の対策は、国民の生命と財産を守る上で極めて重要な国政課題であると思います。関係地域にお住まいの皆様にとりましても、実に深刻な自然災害の問題です。

 片や、雪の問題、雪害や豪雪の問題は、毎年毎年当たり前のように災害をもたらしておりますが、半ば当然のように見られ、豪雪地帯の人々も、言ってみればあきらめに近いような感覚にとらわれがちではないでしょうか。

 そこで、内閣府にお伺いいたします。政府の中央防災会議におきましては、この雪害対策についてどのような取り組みがなされておりますでしょうか。

尾見政府参考人 お答えを申し上げます。

 中央防災会議におきましては、防災対策の基本となる防災基本計画がございますが、この中で雪害対策編というものを定めてございます。それに基づきまして、指定行政機関、指定公共機関は防災業務計画を定め、地方公共団体は地域防災計画を定めるというふうな仕組みになっております。このような防災計画に基づきまして、関係省庁、関係機関が連携して、総合的な雪害対策を推進しているというふうになっております。

 以上でございます。

佐藤(剛)副大臣 村井委員、非常に雪害問題に積極的に取り組んでいただきまして、ありがとうございます。

 私は、実は他日、北海道の北見、オホーツク海のところですね、これが百年ぶりの大雪だということで、従来三十センチぐらい、富山の場合は七十センチぐらいの感じですが、これが百年ぶりで百七十センチぐらいなんです。ちょっと行きますと、二メーターぐらいのもありまして、私は、団をつくりまして、団長として行ってまいりました。

 ことしは非常に雪が、今までなかったような地域に豪雪が起きている。そして、御指摘のように、交通とか除雪とか、そのときに、除雪作業というのはまた大変だ。今までは雪が降っていないところ、国道から、あるいは団地みたいなところでやっていますと、除雪中にお年寄りの人が心臓麻痺を起こしたり、あるいは屋根から落ちたり、そんなことがあるんですね。

 そんなことで、内閣府としましては、私、非常にその問題について関心を持っておりますし、大臣初め、そういう体制で臨んでおりまして、今も、その後の、例えば北海道の北見を中心とするオホーツク海においてどういうふうな状況にあるかということを逐次、毎日状況を把握いたしまして、そしてそれに対して、大体、対応というのは金の面になりますから、地方交付税、特別交付税等々を中心にしまして、万全を期したい。市町村長の声が非常に強うございました。私、じかに行って、じかに見て、そして東京から現地の遺憾なきを期しているわけでございまして、十分御理解を賜りたいと思います。

村井(宗)分科員 副大臣からも御答弁いただき、本当にうれしく思います。現場の方まで足を運んでいただき、熱心な思いで対応してくださること、一緒にこの大雪の問題について取り組ませていただければと思います。

 では、内閣府からは今このように答弁をいただきましたが、同じように、国土交通省ではどのように取り組んでおられますでしょうか。国土審議会での議論をお伺いさせていただきます。

平田政府参考人 国土審議会におきます豪雪地帯対策についての議論の内容についてのお尋ねでございます。

 国土審議会では、豪雪地帯対策分科会を設置しておりまして、豪雪地帯対策について調査審議をしております。具体的な審議事項は、豪雪地帯及び特別豪雪地帯の指定に関すること、基本計画の作成及びその実施の推進に関することでございます。

 委員御案内のように、平成十四年に現在の豪雪地帯対策特別措置法が一部改正されたところでございます。これは、十三年度の末に期限切れになっておりました豪雪地帯対策特別措置法の第十四条、すなわち、特別豪雪地帯におきます基幹道路の整備の特例と、第十五条、特別豪雪地帯におきます公立の小学校、中学校等の施設に対する国の負担割合の特例の有効期限の延長などに係る改正でございます。

 この法律改正に先立って、国土審議会の豪雪地帯対策分科会が開催されたところでございます。その中で、豪雪地帯対策の推進についての意見書が、主務大臣でございます国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣と関係行政機関の長あてに提出されました。

 このときの分科会におきましては、ポイントは二つでございます。

 まず一つは、特別豪雪地帯に対する施策は着実に推進されてきたものの、恒常的な積雪等によりまして、産業などの基礎条件でありますとか生活環境の整備改善がなお必要な状況にある、こういう認識のもと、特例法の、ただいま申し上げました十四条、十五条の有効期限を十年間延長する必要があるとの意見集約がなされております。これが第一点でございます。

 第二点といたしましては、雪に対するとらまえ方でございます。

 これは、雪を、産業の発展を停滞させる、住民の生活水準の向上を阻害するもの、すなわち不利性としてだけとらまえるのではなくて、雪を有効に活用するという視点から、近年の技術開発の進展でございますとか、雪国の特性に対応した利雪、雪を利用するという利雪対策の推進などの豪雪地帯対策の推進を図る必要があるとの意見もあわせて具申されております。これが第二点でございます。

 こうした国土審議会の意見を受けまして、政府といたしましては、先ほど申し上げました法律に基づく特例措置や利雪対策なども含めました総合的な豪雪地帯対策を着実に進めているところでございます。

村井(宗)分科員 ありがとうございます。

 豪雪の被害というものは、一回一回はそれほどの大災害とはいえないかもしれません。しかし、毎年毎年必ずやってきます。程度の差はありますが、雪は毎年必ず降ります。地域社会に与える損害を、地震と雪で比較は難しいですが、豪雪地帯で暮らす国民とそうでない地域の国民とでは、その生活に明らかに地域格差が存在すると思います。その点を御理解いただいたこと、うれしく思います。

 当然、雪による不便を少しでも解消するために、各地方自治体でもさまざまな工夫、アイデアを出して除雪や融雪や防雪に取り組んでいます。さらに、今回の質問に当たり調べてみましたら、豪雪地帯にある国土交通省の事務所でもいろいろな取り組みをしているということがわかりました。

 例えば、東北地方整備局の青森河川国道事務所では、太陽熱や地中熱や空気熱といった自然エネルギーを活用した消融雪システムを導入したり、遠赤外線や発熱繊維を利用したヒーティングを採用したりして、青森市内の道路の冬期バリアフリーを実施されているそうです。エネルギーコストの問題にも取り組まれており、そういった国土交通省などの取り組みに期待をしたいと思っております。

 そこで、国土交通省における豪雪地帯対策事業についてお伺いしたいと思います。

 まず、個性と活力に満ちた雪国創造事業とはどういった内容でしょうか。さっきの答弁でお答えいただきました利雪、親雪、そして克雪などの部分、そして高齢者支援施設の整備に関する具体的な事例などもあわせてお答えいただければと思います。

平田政府参考人 個性と活力に満ちた雪国創造事業でございますが、これは、地域の実情に即して創意工夫がなされました豪雪地帯対策を推進するために、道府県が策定することになっております豪雪地帯対策基本計画に基づきまして、先ほど委員がおっしゃいました、雪と親しみ、雪を資源として活用する利雪・親雪活動、冬期の健康増進及び世代間の交流促進、雪国の地域特性を生かした地域間交流促進、高齢化社会への対応などに必要な施設の整備を行うものでございます。

 次に、事業の対象になっております各種施設について具体例を御説明申し上げます。

 まず、克雪施設につきましては、地域住民が共同で運用をいたします流雪溝や先導的技術を活用した消雪施設などを対象事業としております。山形県の米沢市では、流雪溝を整備しておりまして、流雪用水として河川からの水を使用しておりますが、流雪用水を流雪溝の下流側からポンプアップいたしまして再利用する仕組みで水量の確保を図っているところでございます。

 また、雪に親しむ親雪施設につきましては、冬期の地域住民の健康増進を図るための施設整備を対象としております。富山県の庄川町におきましては、冬のイベント広場として活用されている公園に屋外スロープつきの土間式体育館を整備いたしまして、公園で行われる雪像づくりなどとともに、地域住民や子供たちの冬の屋外活動の場として活用されているところでございます。

 また、利雪施設といたしましては、農産物でありますとか加工品などの貯蔵、熟成に雪を有効活用する雪室でございますとか、雪冷房設備などを対象事業としております。岩手県の沢内村では、雪を有効活用する雪冷房設備を備えた交流施設を整備しておるところでございまして、年間を通じて地域住民に活用されているところでございます。

 最後になりますが、高齢者支援施設につきましては、積雪期におきます生活が困難な高齢者世帯のための冬期共同住宅などの整備実績がございます。具体例といたしましては、新潟県の高柳町では、積雪によりまして孤立されるような高齢者世帯などを対象といたしました高齢者用冬期共同住宅の整備を行っているところでございます。

村井(宗)分科員 わざわざ私の地元の富山の例まで具体例に出していただいて、ありがとうございます。

 今おっしゃられたような雪冷房など、こういった雪を有効に活用する、マイナスだけじゃなくてプラスにするように活用するという方向に一生懸命取り組んでいただければ、さらに、そういった形で取り組んだ内容が採算の合う事業になるように、どんどんと国土交通省として研究を進めていただければと思っております。

 それでは、同じく国土交通省における豪雪地帯対策事業であります特別豪雪地帯産官学連携プロジェクト推進事業というものがございますが、この内容の御説明をお願いいたします。特に具体例を交えて教えていただければと思います。

平田政府参考人 特別豪雪地帯におきます産官学連携プロジェクト推進事業でございますが、特に積雪が多い特別豪雪地帯におきまして、地域の実情に応じて、民間企業、地方公共団体、研究機関などが連携を図りながら、先導的な克雪・利雪技術を導入した施設の整備、技術の開発を行うものでございます。

 具体的な事例といたしましては、平成十三年度に実施されました山形県金山町の森林交流センターについて御説明させていただきます。

 森林交流センターは、金山町の総合レクリエーションエリア内に位置しておりまして、雪を活用した雪冷房を行っております。冷房設備といたしまして、六百立方メートルの雪を蓄えることができる貯雪庫を備えておりまして、空気を貯雪庫の雪に直接当てて冷やして、室内を循環させる方式を採用しております。従来の建物型の貯雪庫ではなく、貯雪作業などの効率性と景観性に配慮いたしました半地下方式の貯雪庫を地元の企業が提案いたしまして、設計に対する指導を大学の研究者が行うといった、産官学の連携により整備された施設となっております。

 いずれにいたしましても、雪冷房施設は年々普及拡大しておりますが、今後とも、こうした地元企業の創意工夫と利雪技術の専門家によります適切な指導によりまして、実用性の高い施設整備と地元企業の技術力向上を図ることによりまして、特別豪雪地帯の活性化につなげていきたいと考えております。

村井(宗)分科員 今おっしゃられたように、さらに技術開発を進めて、日本海側、特に雪がエネルギーとして有効活用できるように進めていただければと思っております。

 私の地元の北陸地方整備局の金沢河川国道事務所では、冬期における歩道の除雪にボランティアサポートプログラムなどという取り組みをしておられます。これは、なかなか行き届かない歩道の除雪に対しては、さまざまな機械器具を貸し出し、その受け皿となる住民のボランティアチームに機械の講習会なども実施するというものだそうです。これは地元からも非常に評判がいいそうです。そういった形でNPOなどの支援にも取り組んでいただければと思います。

 今おっしゃられたように、さまざまな研究や実験がされています。それでは、特に実際の豪雪地帯における幹線道路の冬期の道路交通の確保についての取り組みを教えていただければと思います。

榊政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもの方では、積雪寒冷特別地域における産業の振興と民生の安定を図るために、積雪寒冷特別地域における道路交通の確保に関する特別措置法というのを持っております。実は、除雪、防雪というのは道路の維持管理になりますので、補助制度がないということでございまして、この法律によりまして初めて除雪、防雪に関しまして補助ができる、こういう形になっております。

 この法律に基づきまして、昨年、社会資本整備重点計画というのが閣議決定されておりまして、その中で、重要交通網等の雪害からの保全と冬期の歩行の障害になります積雪や凍結の解消といったようなことを重点的に推進するということが決められておりますとともに、この雪寒事業に対する補助率のかさ上げの特例措置を雪寒地域におきます道路交通の確保という形で実施いたしておりまして、同じく閣議決定されております。

 この計画に基づきまして、全国で申し上げますと六万五千キロメートルを対象としました除雪事業の推進というような形で、冬期の安全な幹線ネットワークの確保等をやっておりますほかに、歩道におけるロードヒーティングとか流雪溝の整備を行いまして冬期のバリアフリー対策の推進をするとか、インターネットとか携帯電話を通じました路面状況などの情報提供、それから、先ほど委員御指摘のボランティアサポートプログラムといったような形で、地域住民と協働いたしまして雪対策を推進している、こういうふうな状況でございます。

村井(宗)分科員 ありがとうございました。

 これまで道路についてお聞きしましたが、交通部門では鉄道と航空を抜きには語れません。やはり国土交通省の管轄になりますが、鉄道についてお伺いいたします。

 地元富山県は、ことし一月、JR西日本に、降積雪時の運行について、実に二十年ぶりの要請書を提出させていただきました。降積雪時における列車の定時性の確保及び情報提供の充実について、鉄道事業者に対する指導に努めていただきたい、そのように思っております。いかがでしょうか。

杉山政府参考人 今先生御指摘ございましたように、本年の一月二十二日から二十四日にかけまして、強風雪の影響によりまして、北陸線や七尾線などで計三百五十三本の列車が運休いたしまして、約九万人のお客様に影響が出たわけでございます。

 そこで、JR西日本といたしましては、降雪対策といたしまして、雪害対策本部を金沢支社に設置いたしまして、二十一日の夕方から、気象情報の収集、それから除雪車両の優先運行による除排雪及び除雪要員をふやしまして融雪器の点検やポイントの警戒を行うなど、除排雪体制の強化を行っていたところでございます。

 しかしながら、今回の降雪は予想を上回る状況でございまして、また、吹雪による視界不良のための徐行に加えまして、付近の踏切道内での自動車の脱輪による立ち往生などがございまして列車の進路がふさがれたため、速やかな除雪が阻害されたものというぐあいに聞いておる次第でございます。

 また、先生御指摘ございました列車の運行の情報提供の件でございますが、マスコミ等への運行情報の提供、それから駅構内及び車内における案内放送によりまして、必要な情報を提供していくということが大変重要なことだと私どもは認識をしております。特に、降積雪時におきまして、きめ細かく、かつ適時適切な情報を提供していくということが大変必要なことだと考えております。

 今後とも、御指摘の点を踏まえながら、安全・安定輸送の確保、利用者に対する質の高い情報提供等がなされるように万全を期すよう指導してまいりたいというぐあいに考えております。

村井(宗)分科員 ありがとうございます。

 鉄道の除雪、融雪の技術に関しては、JR北海道が世界の最先端だとお聞きしております。分割・民営化されている他のJR各社へも技術の普及に関しては、遅滞なく御指導されるようお願いしておきます。

 同じように空港についても、昨年十二月一日からことしの一月二十七日までに雪によって欠航した便数は、北海道地方で何と六百三十便、北陸、東北地域で九十二便、合計七百二十二便です。豪雪地帯の空港は除雪が問題だと思いますが、国の管理している空港におきましても今後も取り組んでいただきたいとお願いを申し上げます。

 新千歳空港では、八十台を超える除雪車両が稼働しているそうです。この車両の改良も年々進んでいるそうですが、今後も、さらなる改良と普及を引き続きお願いしたいと思います。

 それでは最後に、政府の大雪対策、雪害対策に対する取り組み、今後の方針その他を含めて、防災担当大臣に、今までの話を含めてまとめて御答弁いただければと思います。井上担当大臣の地元は雪は余り降らないかもしれませんが、どうか、私ども豪雪地帯の国民に対してお話しいただくつもりで、よろしくお願いします。

井上国務大臣 お答え申し上げます。

 私は農村の出身でありまして、子供のときには雪は結構降っていたんですね。それでスキーなんかも経験がありますけれども、最近、こういう温暖化の影響なんでしょうか、全く雪が降らなくなってしまいました。

 今お話を聞いておりまして、雪は雪として、いいところもあるけれども、大変不便なところ、あるいは不利益をこうむるようなところも大変多くあるというようなことを痛感いたしました。

 お話にありましたように、この雪害というのを災害の一つとして認識するのは大変おくれたんですね。どうも、雪は毎年降るものだというようなことで、地震でありますとか風水害なんかとはちょっと違って見られてきたと思うのでありますけれども、今や、立派なといいますか、災害の一つとしまして、中央防災会議におきましても、あるいは地方におきましても、そういうものとして位置づけられておりますし、いろいろな対策が講じられてきている、こんなふうに思います。

 たびたびお話が出ましたけれども、豪雪地帯対策特別措置法という法律によりまして、豪雪地帯対策基本計画というのを策定いたしております。

 基本的には、やはり雪害を除去していくとか、あるいは、その地域に住む人の生活の不便をなくしていくとか、あるいは不利益をできるだけ小さくしていく、こういうような考えのもとに計画をつくって、いろいろな対策を講じているところでございまして、交通、通信の確保とか、あるいは農林漁業におきます対策、生活環境施設等の整備、るる政府の方からも答弁いたしましたけれども、そういう対策を講じているところでございまして、政府としましては、これからも、こういった地域の生活が少しでもよくなるような方向で努力をしてまいりたい、こんなふうに考えます。

村井(宗)分科員 ありがとうございました。

 それでは、時間が参りましたのでこれで打ち切らせていただきますが、今答弁していただいたように、雪を、例えば、マイナスだけじゃなくてエネルギーにかえていくとか、いろいろな産業の不便がないよう、そして高齢者の問題に対しても、より雪がマイナスにならないように、一生懸命取り組んでいただくことをお願いし、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

松岡主査 これにて村井宗明君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉房穂君。

泉(房)分科員 民主党の泉房穂です。よろしくお願いいたします。

 先週の木曜日、二月二十六日の質問に続きまして、本日も被災者生活再建支援制度の拡充につきまして質問をさせていただきます。

 この制度につきまして、先週もお話しさせていただきましたが、全焼の場合に果たして解体撤去費はどの程度出るのか、また、中古購入またローンを組めない方の場合に本当に実質的な支援になるのかという問題を提起させていただきましたが、この問題を考えるに当たりましては、どのような運用がなされるのか、これも非常に重要だと思いますので、本日は、運用面を中心に質問をさせていただきます。

 まず、大臣にお伺いいたします。

 今回の決定事項によりますと、運用面におきましてこのように書かれております。「支援金の支給にあたって、被災世帯が円滑に支給を受けられるよう、運用上十分配慮するものとする。」と記載されております。

 先ほど、伊藤信太郎議員の質問に対する答弁でもありましたが、大臣としては、この面につきまして、この言葉どおり、運用上十分な配慮をするという趣旨だと思いますが、具体的に、まず金額において、被災者に、満額が受け取れるよう、また支給時期において、より早期に支給がなされるよう、また手続において、煩雑な手続ではなくより簡易な手続で支給がなされるよう配慮なされると考えておりますが、この点、大臣としてのお考えをまず確認しておきたいと思います。よろしくお願いいたします。

尾見政府参考人 円滑に支給を受けられるよう運用上十分配慮するということについての具体的な考え方いかんということだと思います。

 被災者のニーズに応じまして、迅速に支給を行う必要があるというふうに認識をしております。したがいまして、運用に当たりましては、被災者が円滑に支援金支給を受けられるよう適切な配慮を行うことが必要である、こういうふうに考えております。例えば、二分の一までは概算払いを認めることや、申請時における書類の簡素化や事務手続を簡素化することが考えられます。これらについて、知事会及び実際に支給事務を行う市町村等と調整を行っているところでございます。

 以上でございます。

泉(房)分科員 今の答弁で概算払いの話が出ましたが、では、まずその点から再度確認いたします。

 今の答弁で、二分の一、二百万ですから百万は概算払いとのお答えと思いますが、今の百万円分につきましては、七十万円が通常経費、三十万が特別経費、実質的に百万円のうち八十五万円、八五%が事実上、被災者の手元に早期に支給されております。しかるに、今の答弁ですと、二百万のうちの半額の百万にすぎないということになりますが、この点、さらに上積みを図るというお考えはあるのかないのか、御答弁をお願いいたします。

尾見政府参考人 今回の改正によりまして、従来の支援金百万円、これに加えまして二百万円ということで、計三百万円が支給されることになります。

 従来の支援金の百万円のうち、七十万円はいわゆる通常経費ということでありますので、したがってそのままお支払いになる。特別経費について、二分の一という金額を概算払いできますので、支援金について言えば、八十五万円、概算払い等ですぐにお金が渡るということになります。

 今回、さらに二分の一で百万円ですので、トータル百八十五万円、二百万弱のお金が概算払いという形で被災者の手元に渡る、こういうふうに考えておりますので、そういうことをベースに物を考えていきたいと思っております。

泉(房)分科員 今回のそもそもの金額につきましては、当初、多くの被災者団体、災害議連含めまして、五百万という数字でありました。ところが、しかるに今回、上積み二百万ということですから、今の答弁ですと、トータル、合わせて百八十五万だからいいのではないかというような御趣旨にとれますが、そうではなく、より被災者の支援になるような運用をぜひともしていくべきであると私は考えております。

 百万円についてでありますが、この間の生活支援部分の百万円につきまして、統計を見ますと、全半壊のうち、合計一万五千八百二十七世帯のうち、実際に支給を受けられたのは二千七百十四世帯、二割に達しておりません。

 今回、全壊のみならず大規模半壊を含むということでありますが、その大規模半壊とは、果たして半壊世帯のうちどの程度を網羅する趣旨なのか。私といたしましては、すべからく、全半壊問わず支給されるべきと考えております。大規模半壊の解釈におきましても、できる限り半壊世帯の多くに支給が受けられるような解釈がなされるべきと考えておりますが、この大規模半壊の基準、そしてその結果、半壊世帯の何割程度に支給がなされるのか、明確な御答弁をお願いいたします。

尾見政府参考人 大規模半壊についてのお尋ねでございます。

 大規模半壊につきましては、半壊家屋のうち、倒壊等の危険性によりそのままでは当該家屋に居住することが困難な程度に損壊または損害が発生した場合を想定しております。

 具体的な損壊割合としましては、半壊が今二〇%から七〇%とされておりますが、例えば五〇%以上というものが一つの考え方としてあるんじゃないかというふうにとりあえず考えております。

 それで、今後発生する災害で大規模半壊世帯がどの程度発生するかというお尋ねでございますが、地震や風水害等の災害の発生原因や災害規模、また被災地域や住宅の状況等により異なるので、推計することは困難である、こういうふうに考えております。

泉(房)分科員 今の答弁でも明らかなように、大規模半壊では、半壊世帯の大半が網羅されず、実質的に、半壊のうち、大規模半壊に当たらない方につきましては支給を受けられない結果になります。この点、厳しく指摘しておきたいと思います。

 具体的に、支給対象項目ごとに改めて質問させていただきますが、まず、今回の場合、住宅本体でなく周辺経費に限るがゆえに、多くの不都合性が生じると私は考えております。

 個別に質問していきますが、まず、解体撤去・整地費であります。この点につきましては、果たして解体撤去・整地費がいつの時点で被災者の手元に渡るのかというのは極めて重要な問題であります。少なくとも、私といたしましては、解体撤去がなされて速やかに支給されるべきと考えておりますが、この点、支給時期につき、まず明確にされたい。答弁、よろしくお願いいたします。

尾見政府参考人 解体撤去・整地費についての支給時期でありますけれども、支給額の確定は、支出実績が確認された時点になるわけでございます。

泉(房)分科員 具体的には、解体撤去・整地費についての領収証が提出された時点で支給されるという理解でいいのでしょうか。明確な答弁をお願いします。

尾見政府参考人 支出実績の確認ということでございますので、通常は領収証ということになると思いますが、その他証明する方法については、これからいろいろなケースに即して具体的に考えていく面もあるのではないかと思っております。

泉(房)分科員 続いて、ローン利子についてでありますが、ローン利子につきましては、三年間という要件がかかっているようでありますけれども、このローン利子につきましても、ローン契約締結時にまとめて、一括して三年分支給するのが、手続の煩雑さを避ける意味でも、また被災者支援の見地からも望ましいと考えますが、ローン利子につきましての支給時期、そしてその手続につきまして、明確な答弁をお願いいたします。

尾見政府参考人 この支給の考え方でありますが、具体的なローンの支払いが証明されて、それで支給が確定する、こういうことになります。したがいまして、一部概算払いにすることは可能でございますけれども、支出実績が確認されないで支給額の確定を行うことはできない、こういうふうに考えております。

泉(房)分科員 今の答弁だと、実際にローンの利子を払ってから支給ということでありますから、三年といいますと三年後までかかってしまうという答弁だと思いますので、極めて不十分な答弁だと理解いたします。

 また、この点につきましては、災害が発生してから三年間というような要件がかかっているようでありますが、これを厳格に解しますと、被災に遭った方がすぐにローンを組めば三年間、一年後に組めば二年間ということになって、極めて不公平な結果を招きます。この点、解釈におきまして柔軟に解釈し、起算日につきましては、災害発生時ではなくて、実質的に、ローン締結時から三年間の利子補給を受けられるというふうに解すべきだと私は考えますが、この点、答弁をお願いいたします。

尾見政府参考人 支援対象経費につきましては、発災後三年以内ということに整理をしております。ですから、ローン利子につきましては発災後三年ということでございますが、実際の問題として、例えば区画整理に長期間を要するなど、やむを得ない事情により住宅の再建に着手する時期がおくれた場合には例外的な取り扱いをする、こういうことも考えられるのではないかと思っております。

 やむを得ない事情は考慮いたしますが、この被災者支援の制度は、被災後できるだけ早期に被災者の方に自立をしていただく、それで生活を開始ができるように支援するものであるということでございますので、一律に契約後三年支給する、支援するという考え方は必ずしも適切ではないと考えております。

泉(房)分科員 再度問題点を指摘いたします。

 やむを得ない事情を厳格に解しますと、三年間ということは、被災に遭った方が早く住宅ローンを組んだ方がたくさん支給を受けられる。そうではなくて、一年後、二年後、ひいては二年半後にローンを組んだ方は半年分の利子しか支給されないという極めて不公平な結果になりますし、被災者の実態からしましても、被災に遭った直後にすぐに住宅ローンを組むなんということは考えられません。としますと、三年間の利子補給を受けることは実質的に困難であります。

 この点、どのようなお考えなのか。不公平が生じることをやむを得ないと考えておるのか、不公平が生じないように弾力的、柔軟な運用をしていくのか、再度明確な答弁をよろしくお願いいたします。

尾見政府参考人 阪神大震災の例によりますと、再建された住宅の八割が三年以内に再建されているということでございますので、それを踏まえまして、原則として発災後三年以内に発生した経費を対象とするということでございます。

 その前に申し上げましたように、ただし、現行の生活再建支援制度でも、今十三カ月という期間がありますが、それを延長するということができるようになっております。したがいまして、それと同じような考え方で、区画整理等で再建したくても再建が困難な場合等やむを得ない事情があるものにつきましては延長することも可能だ、こういうふうに申し上げております。

泉(房)分科員 今の答弁は、質問に対する答えにはなっていないと理解せざるを得ません。

 三年以内に再建をすることが多いとしても、実質的に、ローン利子の支給期間について三年で区切ると、早く再建に取りかかる方、少し時間を置いてから何とか頑張って再建する方において支給期間がずれます。私が問題にしているのは、その支給期間がずれることであります。であるからして、三年以内に住宅再建をする方につき、すべからく三年間の利子補給というのであれば整合性はとれます。そうではなくて、三年の年限でローン利子補給の期間を区切ってしまったのでは不公平であります。

 この点を厳しく指摘した上で、次の家賃についても同様の問題がありますので、この点、あわせて質問いたします。

 家賃につきましても、二年間と期間を区切られております。

松岡主査 今の点で答弁があるそうです。

尾見政府参考人 繰り返し申し上げますが、被災者の方に対して早期に支援金を支給するということでございます。例えば概算払いを考えてみましても、そこで支給対象期間に入っているからこそ概算払いがあり得るわけであります。契約がずれますと、その間で概算払いをするということは考え方としてはできなくなってくると思います。

 それから、実際にそこの場で住宅再建する以外に、例えばマンションを買うとか直ちにローンを組むというケースもあるわけでございますので、原則としては、この被災者支援の考え方に基づいて発災後三年という考え方を立てて、実態として延長する必要が出てくればそこで物を考えていこう、こういうことで柔軟に対処できるのではないかと思っておるわけです。

泉(房)分科員 今の答弁でも極めて不十分であり、私の質問に対する答えにはなっていないと言わざるを得ません。

 この点、では重ねて質問いたします。

 この制度の枠組みでいった場合、ローンの利子ですので、多額のローンを組んだ方についてはそれだけ多くの利子補給がなされる、少額の方については少額の利子補給がなされるという関係に立ちます。期間の問題のみならず、今度は金額の問題であります。

 具体的に考えますと、今回の支給要件、年齢要件、そして収入要件、五百万以下の世帯を考えた場合、なかなか実質的にその五百万以下で多額のローンを組むことは困難であります。年金生活のある程度高齢の方が自己資金を元手に、今回の支援を受けながら住宅再建する場合が多かろうと思いますが、具体的に考えました場合、そういった方はある程度の自己資金を有しているわけであります。

 例えば、一千万なり二千万なりの自己資金を有している方が住宅再建をしようとした場合、自己資金をまず出して、そして住宅ローンを組むのが通常であります。しかるに、この制度の場合、自己資金を例えば一千万、二千万出して住宅ローンを一千万、一千五百万組むよりも、自己資金を出さずに住宅ローンを二千五百万、三千万組んだ方がより多くの支給が受けられる関係に立ってしまいます。

 ということは、自己資金のある方が自己資金を拠出せずにより多額のローンを組むことを事実上強要する結果にならないか、このことを危惧いたしますが、この点、どのようにお考えでしょうか。

尾見政府参考人 具体的に、被災者の方が住宅を再建するに当たってどのような形で自己資金を充当するかということは、ひとえに被災者と金融機関の間の問題だと思います。したがって、どういう契約の仕方をされるかは、被災者と金融機関との間で御自由に決めていただくことになります。それに基づいて具体的にローンというものの支払い額が決まっていけば、そこでそれが支援対象になる、こういう仕組みにこの制度はなっております。

泉(房)分科員 質問と答えがなかなか合っていないようですが、再度明確な答弁を求めます。

 今回のローン利子につきましては、より早期に組んだ方が多額の支給を受ける、より多額のローンを組んだ方が多額の支給を受けることからしまして、事実上、被災者に対しまして、より早くローンを組むこと、より多額のローンを組むことを強要といいますか強制し得るような制度になってしまっている問題点につきまして、それは制度上やむを得ないとお考えなのか、運用上、弾力的な運用によって可能だと考えるのか、そのあたり、明確にお答えください。

尾見政府参考人 運用上、被災者の方々の間でできるだけ公平が確保されるように、そういう気持ちは当然持っておりますが、今先生御指摘の問題については、ローン利子補給という制度を組む以上、それに出てくる問題だというふうに考えております。

泉(房)分科員 事実上、今回の制度の枠組みでは私の指摘した点は認めるというように私は理解いたしますが、同様の問題は家賃においても発生します。

 家賃につきましては、三年ではなく二年、一年短く限定している点も指摘した上で、その点の答弁も求めますが、あわせて、住宅ローンと同様の問題、二万円以上の家賃の差額部分を支給するという制度であれば、より多額の賃貸をした方がより多額の補助が得られる、より早く民間の賃貸に入った方はより多額の支給を得られる関係に立ちます。

 しかるに、実質的な被災者の現状を見ますと、やはり被災直後は親族なりのところに身を寄せて、ある程度落ちついてから移動する、居を移す場合が多いのでありまして、今回も同様に、この家賃につきましても、より早く親族の身元から賃貸を借りろ、借りるときはより多額を借りた方が得だという関係に立ってしまいます。

 そんなことをせずに、家賃につきましても、一定金額の支給という形ですればそういった問題は生じないわけでありまして、今回の制度の枠組み自体問題を抱えている点、今のローンの場合と同様と思いますが、この点、家賃につきましてもお答えください。

 また、あわせて、三年でなく二年に、一年短くしている理由も明確な答弁をよろしくお願いいたします。

尾見政府参考人 先生とこういうふうに議論をさせていただいていて、この制度は見舞金という形で構成はしておりません。被災者の方がどのような事情にあろうが一定金額を支援するというスキームではございません。したがって、被災者の方のそれぞれの、例えば住宅再建に当たっては、それぞれの環境の中で、そういう枠組みの中でもできるだけのことで手助けをさせていただくというのがこの考え方であるということはぜひ御理解いただきたいと思います。

 今の家賃の点でございますが、行政が提供する応急仮設住宅に入居せずに、みずからの努力によって賃貸住宅に入居し、早期に生活再建を図ろうとする被災者に対しても、応急仮設住宅入居者が受けている支援等との均衡という観点から公の支援が必要だ、こういう頭の整理をしております。

 災害救助法に基づく応急仮設住宅の最長設置期間は原則として二年間でございますので、家賃の支援対象期間も同様としたいと考えております。

 それから、対象家賃の下限でありますけれども、支援対象とならない公営住宅の全国平均家賃が二万円弱であることを踏まえ、二万円とする、こういう考え方で整理させていただいております。

泉(房)分科員 答弁はいただいておりますが、私の問題点の指摘についての解決の答弁になっていない。今回の制度の枠組み自体が、ある意味、被災者に対してより無理強いをする、より早期のローン締結、より早期の民間への移転、そしてより多額のローン契約、より多額の家賃のところへの移転というものを事実上強要するような関係に立ってしまうという問題点は、再度厳しく指摘させていただきます。

 そんなことをしなくても、住宅本体に対する支給を認めれば、実質的には、金額的な面におきましても、支給時期につきましても、もっと早期に、しかも実効性ある満額がほとんどの方に支給できるわけでありますから、改めて住宅本体への支給の必要性が今の答弁を通じまして明らかになったと私は理解しますが、もう一点、諸経費につきましてもあわせて質問をいたします。

 諸経費につきましても、領収書の添付の煩雑さからして、一定の標準額を定めて一括支給という運用も考えられ得ると思いますが、そうではなく、一々領収書の添付を要求しますと、事務の煩雑さのみならず、事実上、その領収書につきまして、より多額の領収書をつくるというような不正行為の助長にもつながりかねないことを危惧いたしますが、この点、どのようにお考えなのか、答弁お願いいたします。

尾見政府参考人 諸経費についてのお尋ねでございますが、ローン利子補給とか家賃とかということと全く基本的には同じ考え方でございまして、一部を概算払いするということは可能でございますが、支出実績が確認されませんと支給額を確定できないというのは同じ事情だと思っております。

泉(房)分科員 何度も申し上げます。

 今回のポイントにつきましては、まず支援対象について住宅本体でなく周辺経費に限ってしまったがゆえに、本日質問させていただいております問題が浮き彫りになってしまうわけであります。そうではなく、繰り返し申し上げますが、住宅本体への支給を認めるべきというのは、私個人のみならず、この母体となりました超党派の災害議連、被災者団体、そして今回の制度の基金を拠出する全国知事会の声であります。

 であるならば、本日の質疑で明らかになりましたように、多くの運用面の問題点も抱えている以上、住宅本体を支給対象にすべきだと考えますが、この点、大臣におかれましては、前回も指摘しましたが、記者会見におきまして、この制度がある意味の個人資産に対する助成であることは間違いないと二月三日の記者会見で述べておきながら、先週の木曜日の答弁は、今回の制度につきまして、個人資産に対する支援はできない、そういう中で何か方法があるんじゃないかということで考え出されてきたものが今回の制度というふうに答弁されております。

 今回の、住宅本体を含むかどうかは、個人資産の形成の論点とまさに密接にかかわるわけでありますが、大臣はこの二つの記者会見の答弁で矛盾したことを言っているように理解できます。果たして大臣の真意はどちらなのか。今回の制度は個人資産の形成なのか否か、明確な答弁をよろしくお願いいたします。

井上国務大臣 きっちりと読んでいただきたいと思うんです。私も記者会見で言っておりますけれども、全体を読めば何の疑いもない、一点の曇りもない、おわかりだと思うんですよ。それがわからないというのが私は本当にわからない。

 住宅本体に対しては、皆さん方、それは住宅本体に助成せいという意見もありますよ。反対の意見もあるんですよ。なかなか意見が収れんしない、それが今までの経緯なんですよ。それはもう今までの経緯だし、今回もそうなんですよ。

 しかし、住宅を建てたいという人がいるんだから、何らかの形で支援をしないといけないんじゃないか、こういうことで支援としてどういう方法があるのかということを考えてつくったのがこの制度なんですよ。だから、それは本体に対して助成をしろと言う人からは不満かもわからないけれども、しかし、二百万円の助成をするんですよ。それが間接的に住宅をつくっていく助けになることは間違いないわけでありまして、その点を理解してもらわぬといかぬと思いますよ。

 全く問題がなければいいんです。個人資産に対する助成というのは問題があるというんですよ。これは新聞の論説を見られてもおわかりだと思いますよ。

 ですから、我々としては、そういう意見もあることはよく承知していますよ。また、これがずっと長い間の議論ということもよく知っていますよ。知っているけれども、しかし、全体の意見をそういう形でまとめるということは非常に難しい、こういうことで、今言ったような周辺経費に対する助成の制度というふうにしたということであります。

 私がどういう意味で言っているか。確かに周辺経費に対する助成も、これは私有財産の住宅を持つということを支援する、それの支援の一助になることは間違いないのでありまして、そういう趣旨で私は記者会見で言っているでしょう。それはよく読んで質問をしていただかないとちょっと誤解すると思いますので、その点、私からも申し上げておきます。

泉(房)分科員 再度明確な答弁を求めますが、今回の制度が、個人資産の形成はできないからこの制度なのか、個人資産の形成ではあるけれども住宅本体を含まないのか、ここをまず明確にしていただきたいと思います。

井上国務大臣 自治体と国は違いますから。それは自治体は自治体です。我々、自治体のことは否定しませんよ。しかし、国は国としてのきちっとした議論の上に予算措置をするんですよ。私は、だからこういう周辺経費に対する助成は家を持ちやすくすることは間違いないですよ、けれども、建設費に対する助成とは違うということを言っているわけですよ。本体に対するそれとは違うということをはっきりと申し上げておるわけです。

泉(房)分科員 繰り返しますが、住宅本体がだめで周辺経費だといいという理由を明確にされたいと思います。個人資産の形成であるということを大臣みずから認めておきながら、住宅本体はだめだという理由がないと私は考えます。

 先週、そして今回の質疑でも明らかなように、周辺経費に限っても実効性あるものであればまだましですが、周辺経費に限ったがゆえに不公平感が生じる、満額受け取れない方がふえてしまう、また運用面においてもさまざまな問題があると私は理解します。

 大臣として、繰り返しですが、住宅本体がだめで周辺経費がいい、そこの理由をはっきりと述べてください。

井上国務大臣 私有財産の最たるものであります住宅に対する支援はできないということなんですよ。それはもうそれに尽きるんですよ。もう長い間の議論でそれはやってきたんです、そういう議論は。だけれども、本当の私有財産中の私有財産、これに対して、建設費については助成できない、こういうことなんですよ。それは意見の相違で反対の人もありますよ。わかりますよ。わかるけれども、そういう支援をしようということでは意見がまとまれない、そういうことなんですね。

 そういう点で理解いただきたいし、それはあなた、今いろいろな議論をやっておりましたけれども、これはやはり二百万円という限度の中での助成なんですよ。無制限にやろうと言っているんじゃないんですよ。そういう中の制度として仕組んでいる、そういうことを御理解いただきたいと思います。

泉(房)分科員 大臣、前回の答弁でも、今回の制度でもおおむね二百万の金額は支給されると答弁されておりますが、この間、全焼の場合、住宅ローンを組めない方の場合と指摘させていただきましたが、実質的に満額受け取れない方が多数出るという私の指摘に対して、大臣は、この制度の周辺経費に限っても、なお実質的な満額支給が得られるというふうに考えておられるのか。

 これは大臣みずからの前回の答弁でありますから、大臣みずから答弁願いたい。今回の制度でもおおむね二百万が支給されるというのが前回の、先週木曜日の大臣の答弁であります。この考えに変わりがあるのかないのか、大臣の答弁を求めます。これは大臣の言葉ですから、大臣の答弁をお願いいたします。

尾見政府参考人 委員これまでの御質問で、二百万というものが回らない例がいろいろあるんじゃないか、こういう御指摘をされました。

 私どもは、通常のケース、一般的なケースで二百万というものが積み上げられるんじゃないか。いろいろなケースの中に、例えば全焼というようなものについては試算をしておりません。これはなぜかというと、例えば阪神大震災のときにも全焼というのは全体の六%でございました。それから、この後、被災者支援法ができまして、五年間の災害でも全焼というようなケースは出ておりません。したがって、代表的なケースからはそこをちょっと外して考えておるわけです。

 なぜかというと、例えば阪神大震災後、ガスについてのガスマイコンメーターとかそういうものが普及しまして、火事が非常に減少しました。それから準防、防火ですね、耐火とか簡易耐火とか、そういうこととか都市計画上の防災町づくり、こういうものが大変進みましたので、そういう実態に即して、代表的なものでいけば通常は大丈夫ではないか、こういうふうに申し上げてきたわけでありまして、そういう意味ではお金は回っていくというふうに認識をしております。

井上国務大臣 今の政策統括官の答弁のとおりであります。

泉(房)分科員 全く納得できません。

 質疑時間が終了いたしました。住宅本体への支給を求めて、引き続き訴えてまいりますので、また次回答弁よろしくお願いいたします。これにて終了いたします。

松岡主査 これにて泉房穂君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から本分科会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

松岡主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中川治君。

中川(治)分科員 民主党の中川治でございます。よろしくお願いを申し上げます。

 私は、三期十二年間、大阪府で府議会議員を務めておりました。御存じのように、大阪府は、この十二年間、特にこの七、八年間、大変厳しい財政難、全国に先駆けて突入をいたしまして、ある意味では、財政縮小ということも含めて大変な苦労をしてまいりました。その中で、かつて全国最高水準と言われた大阪府の福祉の水準も、大体世間並みという形で削減をしてまいりました。

 他方で、社会保障の構造改革をやるんだということで、いろんな議論がなされてまいりました。大阪府の方でも、施設福祉を在宅福祉にかえていこう、あるいは現金給付ではなくてサービス提供に方向転換をしよう、保護ではなくて自立ということをキーワードにしてやっていこう、さまざまな改革をしてまいりました。

 財政が厳しいからお金がなかなかない、そんな中で自立支援というものを本当にできるんだろうかと。私は、自立支援ということをよく私たちも言いますし、最近はやりでありますけれども、本当に自立支援をしようと思ったら大変な努力を行政はしなければならない、そんなふうに思っております。

 そういう点で、大阪で進めてまいりましたそういういろんな苦労の中で一定の結論という形で到達しましたのが、行政の福祉化という考え方でございます。

 きょうは、行政の福祉化ということについて、大阪で進めているさまざまな取り組みに御理解いただきますと同時に、今後、国政改革の中でもぜひ生かしていくべき重要な視点ではないのかな、そういうことも含めまして、あえて第一分科会で福田官房長官に、ぜひ最後に御感想を聞かせていただきたい、そんなことでお願いを申し上げました。ぜひひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 ここに、障害者基本計画という、平成十四年十二月にまとめられた計画がございます。障害者基本計画の初年度がことしということになるわけであります。この中でも、さまざま書かれております。

 やはり自立支援ということを考えましたら、特に障害者の仕事、雇用あるいは就労ということについて行政は何ができるか、本当の意味での自立支援ということについて何ができるだろうかということを我々もいろいろ議論をしました。そして、障害者の中でも就労が特に困難と言われているのが知的障害者ということで、知的障害者の皆さんの問題を、就労を中心に据えて取り組みを始めていこうということで、議会でもさまざまな議論をいたしまして、始めたのが六年前でございます。

 最初に、五年前でしたか、大阪府に府立の大型児童館ビッグバンという大きな児童館ができました。この大きなやかたの清掃を障害者の皆さんに、障害者の人たちの仕事の場として提供しようじゃないかということを考えました。ただ、多分、予定価格は二千万円を超えますから、常識的には競争入札に付さなければならないというのが、一応国の決まりといいますか、地方自治法でもそうなっているということでありました。

 ただ、そういうふうにしますと障害者雇用ということには結びつかないということで、我々、これは地方の知恵、何とか抜け穴を探そうということで、方法はないのかということをいろいろ議論をいたしました。そして、行き着いた結論が、これは清掃委託ではなくて、障害者の就労訓練の場を大阪府が提供するという手法はどうだろうか。要するに、授産施設と同じでありまして、普通は授産施設で仕事をするということを、そうではなくて、本物の公的な場所で仕事の訓練をする、その場所を借りて訓練をするということで、就労訓練事業という形で始めました。

 そして、その就労訓練事業を支えていく事業団体ということで、大阪府の知的障害者の育英会、育成会、大阪市の育成会、あるいは、ずっと歴史的にそういうことに取り組んでまいりました団体も含めて事業協同組合をつくりました。エルチャレンジ、労働にチャレンジするという意味でエルチャレンジ、働かせてよというふうに私は呼んでいるんですけれども、エルチャレンジという団体に就労訓練事業として委託をするということを始めました。

 そして、この大型児童館から、今度は土木部がつくった博物館あるいは職業訓練校、さまざまな大阪府の施設、これを就労訓練の場所として提供するということをずっとやってまいりました。多分、去年で、大阪府で総額二億円ぐらいの清掃の実際上の委託事業を、就労訓練の場という形で提供するということをやってまいりました。

 ここで就労訓練を受けた知的障害者が、ざっと百五十人から二百人近くおります。そして、その就労訓練を終わって正規にビルメンテナンス会社に採用された人たちも、もう七十人ぐらいいるというのが今の現状であります。

 ただ、どんどん就労訓練というものはできるわけでありますけれども、今度は本格的に民間に採用してもらうためにはどうしたらいいか、いろいろ議論をいたしました。御存じのように、こういう厳しい不況の時代でありますから、民間に普通に啓蒙啓発をしているだけでは、なかなか採用してもらえない。そういうことの中で行き着いた一つの結論が、大阪府で昨年五月に初めてやりました総合評価入札制度を導入しようということであります。

 この総合評価競争入札というのは何かといいますと、価格の点数で七十点、それから社会的な評価で三十点。三十点の中でも特に、十二点は技術の評価点、残りの十八点は公共性の評価ということで、例えば、この仕事を落札したら知的障害者を何人雇えるか、一人から九人以上、九人以上になると七点満点というふうな形で点数を加算していく。あるいは、障害者雇用率を守っているかどうか、母子家庭の母親を雇用するというふうな体制があるかどうか、そういうことをやるかどうか、あるいは環境面でのいろんな配慮をしているかどうか、そういうことも含めて、総合評価制度を導入いたしまして、昨年の五月にやりました。

 大阪府庁の本館、かなり大きな物件であります。それから、自動車試験所、これも非常に大きな物件であります。これをやりまして、最終的に、知的障害者をたくさん採用するという業者が、価格では二番くじだったんですけれども、総合点としてトップということで落札をして、今、十数名の知的障害者の人たちが大阪府庁の清掃をやっております。

 先日、二度目の当選を果たしました太田知事、この間お会いしましたら、こういうふうに言っていました。あの子たちは毎日元気におはようございますとあいさつをしてくれる、府庁の雰囲気が明るくなってきた、今回の試み、ひょっとしたら一番の成果は、あのおはようございますというあいさつかもしれない、これは非常によかったというふうに知事も言っておりました。

 こういう一連の、本当の意味での自立支援をするために、就労訓練事業から始まって、さまざまな取り組みをやってまいりました。こういう知的障害者の就労訓練あるいは雇用確保ということについてどのようにお考えか、御見解を聞かせていただきたいと思います。

山本政府参考人 お答えいたします。

 今、議員の方から、大阪府が今進めております行政の福祉化というお話をるる聞かせていただきました。非常に、経済状況、財政状況、大阪は厳しいわけでございますけれども、そういった中で、行政的な支援を可能な限り、障害者福祉ですとかあるいは地域福祉といったものに生かしていくという試みであるというぐあいに理解をさせていただきました。

 今、お話しいただきました行政の福祉化ということでございますけれども、単に福祉の分野に限定をしないで、府政全体のいろいろな分野にそれを生かしていく、そういういろいろな分野との連携のもとに、障害者等の雇用、就業機会をつくっていく、自立支援に取り組んでいくという試みでやっておられる、種々工夫を凝らしながらの取り組みであるというぐあいに承ったところでございます。

 このような、それぞれの地域の実情に応じました主体的な取り組みが行われることは、障害者の社会参加を進める上でも望ましいことと考えております。

中川(治)分科員 前向きに評価をいただきまして、どうもありがとうございます。

 今、大阪では、ビルメンテナンス業界、大いに揺れているといいますか、意欲的になっているというのか、大変な状況になっております。

 といいますのは、先ほどの大阪府の二つの物件に続きまして、大阪府は新年度から、大阪府立の五つの病院がございますが、これを総合評価入札へ転換をしていく、障害者雇用の方向へ思い切って踏み込んでいこうということを発表いたしました。

 それから、これは数日前にどうも入札は終わったようでありますが、大阪市も動き出しまして、大阪市の本館、大阪市立大学、大阪市立大学の病院、それから大阪市立の総合医療センター、あるいは交通局の社屋、こういう最も大きな物件のところで同じように福祉雇用に配慮した総合評価入札制度の導入に踏み切りました。特に、大阪市の場合には、先ほど言いました公共性評価の中に、ホームレスの雇用をするかどうかということも加味をしてどうも入札をしたようであります。

 そういう意味では、新年度になりますと、多分、大阪府、大阪市関係だけでも百五十名、ひょっとしたら、それ以上の知的障害者の皆さんがあらゆる公共の建物で元気に働くということになりますし、今までの就労訓練事業としてやってきた、そういう場では、また新しい、養護学校を卒業した人たちが今度また就労訓練の準備をする、そんなふうになっていくのではないのかな、そういうふうに思っております。

 そういうふうに考えますと、この政府の障害者基本計画でありますけれども、読ませていただきました。私は、各省庁ごとにこういうことをすべきだということがたくさん書いてあるんですけれども、実は、先ほど申し上げましたような、まず、みずからの各省庁の足元の例えば施設、そういうところで障害者の雇用や就労の機会を拡大していく、そういうふうな努力であるとかそういう目標、あるいはそういう視点というのが非常に弱いのではないか、弱過ぎるのではないか、そんなふうに思っておりますけれども、こういうところについてはどうでしょうか。

山本政府参考人 今、議員御指摘をいただきましたように、一昨年の十二月につくりました障害者基本計画、この中では、障害者の自立、社会参加というためには雇用、就業が大事だという考え方に立ちまして、一つの大きな柱にしておりまして、種々の施策を盛り込んでおるところでございます。

 一方、今先生御指摘の、特に官公需におきまして、障害者雇用企業へ配慮をするということで、障害者雇用を進めていくということは、これは一つの有効な手段であるというぐあいに考えておるところでございます。そういう意味で、この基本計画の中に、「官公需における障害者多数雇用事業所等及び障害者雇用率達成状況への配慮の方法について検討する。」こういった旨を盛り込んでおるところでございます。

 具体的に、どのような工夫や配慮が可能か、どのように実施していくのかというようなことにつきましては、国の契約上の競争性との確保に留意しながら検討していく必要があるというぐあいに考えておるところでございます。

中川(治)分科員 今御答弁いただいたところにも、こう書いてあるんですね。「障害者雇用等の社会的意義を踏まえ、国の行う契約の原則である競争性、経済性、公平性等の確保に留意しつつ、」。この「留意しつつ、」ということで、よそに、値段の競争以外のところに余計な条件をつけたらいかぬ、こういうことなんですね。そういうことに一応なっております。私も、果たしてそれでいいのか、いろいろ議論をいたしました。

 例えば、考えていただきたいんですが、今、既に就労訓練あるいは民間企業に雇用されて大阪府庁の本館で働いている知的障害の人たちは、多分、一日四時間ぐらいの労働で最低賃金はしっかりもらっていますから、月六万円ぐらいの収入になります。この人たちが、お父さん、お母さんが亡くなりますと、大体生活保護になるわけでありまして、生活保護になりますと、大体十七、八万円ぐらいの生活保護費をもらうということになります。

 六万円を自分で自力で稼ぎますと、本人に六万円ふえるんではなくて、六万円助かるのは、国三万円、市町村三万円、こういうことになるわけでありまして、私、いつも大阪府の皆さんにもこういう話をしながら、何とかやってみようということになったんですが、結局は、生活保護費だとか福祉の費用は低くなるという形で、行政全体のコストとしてはひょっとしたらプラスになるんじゃないか。完全な価格だけの競争で、例えば、極端な話、一割ぐらい高い値段で落札したとしても、人件費という形で、生活保護の費用の削減という形で返ってくる、そういうふうなことも含めて考えたらどうか。

 ただ、この点については、地方自治法等の所管がありますので、また、そういうところで、今後ともどうあるべきかという議論を進めていきたいということだけ申し上げておきたいと思います。

 さらに、大阪府でやっております行政の福祉化でありますけれども、全庁挙げて始まったのが五年前であります。そして、行政の福祉化の柱は二本あります。

 一本は、今まで申し上げましたような公務労働、委託事業を総点検して、障害者雇用や高齢者の生きがい就労、母子家庭の母の自立支援、最近ではホームレスの仕事保障などに徹底的に振り向けていく、あるいは、そちらの方へ行かせていくということを検討しようというのが一つであります。お金がない大阪府の知恵だというふうに御理解いただきたい。

 ただ、実は清掃だけではございません。ここで少し公団の方にお伺いしたいんですが、例えば、国でいえば公団賃貸住宅、今全国では何万軒あるでしょうか。そして、その団地内で清掃管理あるいは樹木の剪定作業を委託事業として出しておられると思いますが、幾らぐらいありますでしょうか。

古屋参考人 お尋ねの件でございますが、私どもの公団住宅として管理しております戸数は、平成十四年度末現在で約七十六万戸でございます。また、これらの団地におきまして、日常的な清掃業務あるいは植物の剪定業務といったような業務の委託をしておりますけれども、これは、平成十四年実績で申し上げますと、日常的な清掃業務では約百三十五億円余、それから植物の剪定、芝刈り作業といったような業務におきましては約五十三億円弱でございます。

中川(治)分科員 今お答えいただきましたように、百三十億円あるいは五十億円、非常に大きなお金が外部委託をされております。こういう作業の中にも、私は、障害者の皆さんができる仕事はたくさんある、そんな思いがしております。

 例えば大阪府でも、都市公園、府営公園の管理あるいは花壇の管理、花の栽培、さらに遺跡の発掘作業はどうやろかというふうな議論もしておりますし、公営住宅、府営住宅の畳の表がえの作業はできるんじゃないか。ふすま、障子の張りかえ、これは授産施設でもいろいろやっています。ただ、ずっと授産施設で訓練をしているだけで、実際のところ、どこでもつくれない。そしたら、住宅管理センターかどこかでそれこそ特例子会社でもつくったらどうか、そんな話もしたりしております。

 こういうことも含めて、福祉関係の部局だけではなくて、すべての分野の関係の事業を福祉にどういうふうに役立てるかということを真剣に一遍総点検をしてみるということをぜひやってみたらどうか。これが、私たちの目指してきた行政の福祉化、あるいは本格的な自立支援の一つの方法でございます。ぜひこういう方向についてこれからも取り組んでいきたいというふうに思いますし、福田官房長官の御見解、後でまたお聞かせをいただければありがたい、そんなふうに思います。

 雇用の問題ということだけが行政の福祉化の目標ではございません。もう一つは、施設全体、例えば府営住宅、公営住宅というのがございますが、公営住宅というものをどのようにして福祉に活用するかというふうなことも一つの大きなテーマ、あるいは空き教室を福祉にどう活用していくかということもテーマであります。

 そういうことの中で、例えば、大きな施設といいますか、特別養護老人ホーム、一床当たり、国の基準でいきますと九百万円ぐらいの施設整備補助金が必要になります。国は四百五十万円出さないけません、都道府県は二百二十五万円を出さないかぬわけであります。

 ところが、公営住宅を例えばグループホームに活用することができれば、大体一人頭五、六十万円の改修費があれば十分できる。そういう意味で、公営住宅を逆にグループホームにどう活用するか、活用しやすいようなやり方にどう条件を整備するか、そんなことがこれから必要なのではないのかな。

 例えば、公営住宅でいいましたら、壁を切ってはいけない、こういうふうになっておりまして、少し壁を破らせていただいたら、非常に小ぢんまりとしたアットホームなグループホームが地域の中にでき上がる。ところが、そうではなくて、もっと広いところへ、少し離れたへんぴなところに大きな施設をつくれ、こういうふうになってくるわけであります。

 そういう点で、公共施設の福祉活用ということについても私たちは取り組んでまいりました。そういうことも含めて、障害者の雇用と、それから福祉活動の場を、福祉関係の部局だけではなくて、全部局が総力を挙げて、どういうふうに保障していくかという観点で進めてきたのが行政の福祉化ということでございます。

 私は、これは一石二鳥、三鳥、非常に大事な、ある意味では、今日の行政改革の視点、あるいは、これからの目指すべき公共事業の一つのあり方の外してはならない視点ではないのかな、そんな思いもございまして、きょうはぜひ福田長官に、行政の福祉化について御見解をお伺いしたいと思いますし、行政の福祉化という言葉をひとつしっかりこれからも頭の中で大事に考えていただいて、旗振り役になっていただければありがたいかな、そんな思いできょうは質問をさせていただきました。

 大変長々お待たせいたしましたけれども、最後に御意見をお伺い申し上げたいと思います。

福田国務大臣 行政の福祉化という御提案でございますけれども、福祉もいろいろな部門がございます。きょうは委員は障害者を中心にお話をされたというように思います。

 障害者につきましては、基本計画にございますように、障害の有無にかかわらず国民だれもが相互に人格と個性を尊重し合う共生社会、これを目標にしているという、これは基本的な考え方でございます。その共生社会を実現するために、社会のさまざまな構成員が、障害者の社会参加の必要性を認識して、そしてまた主体的に取り組んでいく、こういう必要性があるんだということでございます。

 政府も、そういう考え方に基づきまして、この障害者に対する施策を進めております。障害者の欠格条項の見直し、これは六十三項目ございましたけれども、今、六十二項目を改正、修正いたしまして、あと一項目、これもこの三月には法案を国会に提出させていただく、こういう段階になりまして、これが通過すれば全部欠格条項については見直しができた、こういうふうなことになります。

 また、バリアフリー社会を実現するということにつきまして、これは小泉内閣の大きなテーマでございまして、公共事業の分野においてもそうでございますし、また、各地方団体や公共団体等がそういうような視点から取り組んでいただけるということについて、政府としてもできる限りの協力をする、こういう考え方をしておるところでございまして、これもかなり考え方、思想は行き渡りつつあるんではなかろうかなというふうに思っています。

 ただ、この問題はどこまでしたらいいのかという、そういう切りがある話ではないんだろうというように思いまして、まだまだ不十分である、私から見ましてもまだ不十分だというようなことで、地方公共団体に対しましても、また、当然のことながら中央政府におきましても、この面の施策を進めるためのいろいろな手だてを尽くしておる、こういう段階でございます。

 それからもう一つ、これは、政府や地方公共団体だけでなくて、民間の取り組みというのは、これは極めて大事だと思うのですね。まず、そういう気持ちに民間の方々がなっていただくということが大事なんだろうというふうに思いまして、そういう意味における啓発活動もしていかなければいけないだろう、こう思っております。

 ささやかでございますけれども、私どもは、私どもが中心になりまして、障害者のいろいろな機器とか施設とか、そういうものの開発とか設置について、なかなかいい考え方だなというような事例がございますと、それを表彰しようという制度もつくっております。年一回だったと思いますけれども、この表彰式も行い、そしてまたそういう機材、施設の紹介もしていただく、そういう機会も設けておる、こういうふうなことでございます。

 例えばJRの東京駅、これも、私がこの仕事を始めたときには、六つ出入り口があるんですが、そのうちの一カ所しかエレベーターがない。車いすで新幹線を使うためには、ぐるっと回ってその一カ所に行くしかない。八重洲口と丸の内口、これは遠いですよ。だけれども、それでは、一カ所ではこんな不便なことはないだろうということで、今、JRもそういう必要性を感じて、全部の出入り口にエレベーターを設ける、こういうような取り組みもしてくださっているわけでございますので、やはり民間の協力というのはどうしても必要だというように思っております。官民あわせてこのバリアフリーというものは取り組んでいくということで、委員の御指摘になられました対応というものは十分できていくんだろうというふうに思います。

 大阪府のことも、これもなかなかいいアイデアでやっていらっしゃるんだろうというふうに思っておりますので、ぜひさらに進めていただきたいと思っております。

中川(治)分科員 どうもありがとうございます。

 もう時間も参りましたので。新年度からは、多分大阪では、ほとんどの公的な施設の清掃は障害者の皆さんがやっている、こういう事態になりまして、ただ、やっていない公的な施設は、例えばハローワークであるとか、国関係のところはそうではない。これもどうも変な雰囲気だな。国だけがおくれているというふうに言われぬように、私たちも、何とか協力してくれと、地元へ帰ったらまたお願いに行くわけであります。国としても、そういう姿勢をまた示していただければと、今後ともまた検討いただきますようにお願い申し上げまして、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

松岡主査 これにて中川治君の質疑は終了いたしました。

 次に、西川京子君。

西川(京)分科員 自由民主党の西川京子でございます。

 きょうは、官房長官、小野大臣、本当にお忙しいところ、ずっとおつき合いいただきましてありがとうございます。

 きょうは、私は、平成十一年に成立いたしました男女共同参画社会基本法、この問題について、この法律が成立いたしまして、私たちは本当にお互いに日本の国内で、男として、女として、お互いが尊重し合って、本当に機会が平等な社会を目指そう、そういう理念のもとにこの法律ができたと思っておりました。

 ところが、これが現在、各県の条例、今、四十四都道府県、あるいは百七十六市町村、こういうところでそれぞれの地方の条例ができておりますが、この条例ができる段階において、この男女共同参画社会基本法の本来求めていた理念とはちょっと違ってきた、そういう状況の中でさまざまな弊害が出ているという状況に関して私は大変危機感を持ちまして、今回、この問題について質問させていただきたいと思います。

 実は、二月の二十六日に内閣委員会で、民主党の中山義活さんがこの同じ問題を質問されて、官房長官の方からある程度のお答えが出ているということを、うかつにもきょう私は知りまして、まあ大体同じような質問が重なることがあるかもしれませんが、お許しいただいて、もう一回確認という意味で御質問させていただきたいと思います。

 去る二月の十七日に読売新聞紙上で、これは国民的にも国内的にも大変大きな議論を呼んだと思います。日本青少年研究所が主催いたしました四カ国の千人余りの高校生に対するアンケート調査の結果。これによると、女は女らしくすべきだという設問に対して、肯定した人は、米国五八%、中国七一・六%、韓国四七・七%に対して、日本の高校生はわずか二八・四%だ。あるいは、男は男らしくというのも似たり寄ったりの、非常に日本だけ突出して少ない。そして、結婚前は純潔を守るべきだという設問に対して、日本は三人に一人しか肯定していない。アメリカでさえ五二%、中国、韓国は七五、六%台を維持している。

 こういうアンケート結果が新聞紙上をにぎわせまして、みんな、ここまで来たのか、あるいはさもありなんと思ったのかわかりませんが、本当に一つの危機感を持ったと思うのですが、これは明らかに、男女共同参画社会基本法の本来の精神ではない精神にのっとって教育がかなり行き届いてきた結果ではないかな、そういう思いをそれぞれが持ったと思います。

 そこで、今回一番問題になります、本来、お互いに、男として、女として、その性差を確認し合いながら尊重し合っていく社会、そして機会が平等だという精神のはずであったのが、実はジェンダーフリーという思想が日本で造語としてつくられた。

 本来、ジェンダーという言葉は、男女とか性差、それだけの意味であって、別にジェンダーというのが、内閣府のいろいろな文言にも書いてあるのですが、社会的、文化的に後天的につくられた性差という言い方をされるのですが、決してそうではない。単に男女とか性差という意味だということですね、ジェンダーという言葉自体が。ところがそれを、バリアフリーということから造語のジェンダーフリーという言葉をつくったわけですが、このことが各県条例に非常に蔓延して、深く浸透していったという経緯があります。

 そこで、改めて、このジェンダーという言葉に関して官房長官の御見解をお聞きしたいと思います。

福田国務大臣 ジェンダーフリーという言葉について大分誤解されている向きがあります。

 平成十年十一月四日の男女共同参画審議会答申でもって「男女共同参画社会基本法について」というのがあるのですけれども、ここではジェンダーという言葉は盛り込まれていない。すなわち、ジェンダーという言葉は一般に十分理解されていない、こういうことでもって盛り込まれず、また、男女共同参画社会基本法にも使われていない言葉なんですね。

 基本法に基づく男女共同参画基本計画におきましては、生物学的な性別を示すセックスに対して、社会的、文化的に形成されてきた性別を示す概念として定義した上で、ジェンダーに敏感な視点などの形で使用している、こういうようなことであります。

 このことについて、その後いろいろと誤解を受けて、そしてそれが誤って使われるとかいうような場面も随分あるように聞いております。そして、実際にそういうことで批判もあったわけでございますけれども、そのことについての正確な理解を進めるように、もし間違った使用をしているということがわかりますと、それはそれで対応している、よく説明をしている、こういうことをしておるところでございます。

西川(京)分科員 実は、このジェンダーという言葉自体も、欧米でもまだ確定したきちんとした説明ができていないという状況が本当だそうでございまして、できればこのジェンダーという言葉自体を使ってほしくないという思いがあります。単に性差を超えてという程度の文言にできれば指導していただけたら私はありがたいなと思いますが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 そもそも日本の政府の出すものでわざわざ英語を使わなきゃいけないのかどうか、こういう議論も一方にあるわけでございますので、小泉内閣ではなるべく片仮名は使わないようにしよう、こういうような考え方もしております。ですから、誤解を招くようなことがあれば、それはそれで対応を考えていくべきであろうというふうに考えております。

西川(京)分科員 ありがとうございます。

 実は、この基本法をよく読みますと、その矛盾点も多々あるはあるのですが、本来この基本法はそういう目的ではなかったということは、官房長官も多々以前の会議でもおっしゃっていらっしゃいますし、当時の坂東男女共同参画局長もはっきりおっしゃっています。ところが、各地方の条例の中には、大変急進的な思想、これが織り込まれているという現実があります。

 そういう中で、官房長官は、地方は地方に任せるというお答えもちょっとおありになったような気もいたしますが、しかし、これは国全体の一つの社会秩序を壊したり、あるいは行き過ぎた性教育がはんらんしたり、大変社会問題となっている現実がございます。

 例えば、例として、千葉県の我孫子市あたりでは、このパンフレットには現実にジェンダーフリーという言葉を使って、「混合名簿の導入によって、学校は、ジェンダーフリーの方向に変わってきたでしょうか。混合名簿の導入が整列の仕方や座席などを変えるだけにとどまっていては、ジェンダーフリーの正しい理解にはつながりません。」「ジェンダーフリーな学校づくりをめざすように教師の意識改革をしていくことが必要です。」ここまで書いているのですね。

 特に、武生のパンフレットをいただいたのですが、あらゆる市の行事におけるパンフレット、行政で出すパンフレットに対して一つ一つ細かく、女性に対して男性が大きく写っているとか、あるいは男の子と女の子が、いやに女っぽくスカートをはいている、その以前の冊子では男の子も女の子もズボンをはいていたとか、本当にびっくりするくらい細かく全部チェックしてあるのですね。

 これが現実に、こういう一種の言葉狩りというのでしょうか、そして、そのパンフレットからどういうものを想像するか、想像するところまで踏み込んで指導しているガイドラインというのが各県でできているんですね。私も正直申し上げて、今回この勉強をして初めて知りまして、びっくりいたしました。もうこれは明らかに言葉狩り、あるいは憲法で保障されている表現の自由を超えている、侵す、抵触するんではないか、そういう思いもあります。

 それで、このことに関して、ぜひ官房長官の今の御認識をちょっと一言お聞きしたいと思います。

福田国務大臣 一般論として申し上げれば、地方公共団体の条例とか計画でどういうような用語を使うか、こういうことはそれぞれの地方公共団体が判断すべき問題でありまして、これをとめるというような、そういう強制はできないんだろうというふうに思います。

 ですけれども、ジェンダーフリーというこの言葉につきましては、これは最近誤解、混乱があるということもありますので、今後新たに地方公共団体において条例などを制定する場合には、あえてこの言葉を使用しない方がよいというように考えております。

 こういうような混乱、例えば今のような男女共同参画社会に関連する言葉の誤解とか、そういったようなものは適当ではございません。ですから、今後あらゆる機会をとらえて、正確な理解のための広報啓発、それから個別に助言をする、また指導をするということを適宜適切に行っていくべきであるというふうに考えておりますし、また、それをやっておるところでございます。

西川(京)分科員 ありがとうございます。

 もう一度、済みません、ちょっとその前に確認させていただきたいんですが。

 要するに、各自治体あるいは教育委員会に対して通達を出すということはお考えではないでしょうか。ぜひ書面で通達を出していただきたいと思います、その思いを。このジェンダーフリーという言葉を使わないように、そういうことを。

名取政府参考人 今、教育委員会の方へ通達ということでございましたが、実は所管が教育委員会は文部科学省の方になっておりますので、ちょっと内閣府としては、申しわけございません。(西川(京)分科員「各自治体には」と呼ぶ)自治体には、私どもは助言ということはできるのでございますが、じかに何々をしろと言うことはできないのでございます。御理解いただきたいと思います。よろしくお願いします。

福田国務大臣 ただいまの件は文部科学省に伝えておきます、委員からそういう御質問があったということを。

西川(京)分科員 ありがとうございます。よろしくお願いしたいと思います。

 一つは、こういうことが全国に津々浦々に広まっている背景として、実は、男女共同参画社会基本法、これを推進するに当たって国の大きな税金が使われているわけですが、この問題に関しての税金の使い方、わかるようでしたら少しお知らせいただきたい。

名取政府参考人 男女共同参画推進関係予算につきまして、男女共同参画基本計画に沿いまして、施策・事業ごとに予算額を積み上げましたところ、平成十六年度政府案では、一般会計分が約二兆七千四百八十億円、特別会計分が約七兆一千七百五十億円、財政投融資分が約二億円で、合計約九兆九千二百二十億円となっております。

 その内訳は、基本計画の重点目標の六、高齢者等が安心して暮らせる条件の整備が、約九兆九千億円のうち約八兆三千億円を占めております。この内訳は、介護保険の国庫負担分が約一兆七千九百二十億円、国民年金及び厚生年金保険の国庫負担分が約五兆八千二百五十億円で大宗を占めております。

 次に、重点目標の五、男女の職業生活と家庭・地域生活の両立の支援で約一兆四千億円を占めております。この主な内訳は、一般会計では、保育所運営費の約二千六百七十億円、母子家庭等対策費の約三千百億円、特別会計では、出産育児一時金等の給付の約一千二百四十億円、児童手当の給付の約四千七十億円、育児休業給付の約一千四十億円、介護休業給付の約二百十億円となっております。

 以上でございます。

西川(京)分科員 ありがとうございました。

 もちろん、その十兆円近いお金、要するに、福祉、あらゆる分野に入っているわけで、それが全部男女共同参画のお金だと言うつもりは私も毛頭ありませんので、冷静に分析いたしまして、その中で、基本法が成立した以後に使われている予算というのが大体二兆円近くになるのかなと思うんですが、どんなでしょうか、年に。

名取政府参考人 基本法は平成十一年にできまして、その後基本計画ができまして、そして取りまとめておりますけれども、今御報告いたしましたような形で基本計画に基づきます予算につきまして取りまとめましたのは、実は平成十五年からしかできておりませんで、平成十五年のときは九兆五千億円程度だったと思います。ですから、平成十六年になって伸びておりますが、それはほとんど、介護保険ですとか、それから高齢者年金等によるものでございます。

    〔主査退席、倉田主査代理着席〕

西川(京)分科員 大体一兆円ぐらいが男女共同参画推進に使われているのではないのかなと私は思うんですが、実は、国立女性教育会館というのが国の施設としてあるんですが、ここで結局、各地域から、地方から、全国から教師や看護師、助産師などの方々が男女の性差否定の研修を受けて全国に散っていく。そういう中で、例の千葉県の「ふりーせる保育」というんでしょうか、行き過ぎた性教育を教えたり、国立のこの施設が実は子育て支援、ジェンダーフリーということを研修の一番の目標にしているという現実があるんですね。

 このことは、ヌエックといいますけれども、このヌエックの中にはっきりと、「要旨」として、「学校教育での男女共同参画社会に向けた学習のためには、まずなによりも教師自身が男女の「特性論」を脱却して、ジェンダー・フリーな教育について学ぶ必要がある。」こういうところでこういうことをきちんと文書として出している、勉強しているわけですね。

 全国の、全員とは言いませんが、多くの方々がここで研修して、それが全国に、それぞれの地域に帰ってこのジェンダーフリーの思想にのっとった過激な性教育とか、ほとんど学校の中で昔話を全部男と女を入れかえて読ませてみたりとか、そういうことがあちこちで目立つわけですね。

 ですから、実際、この国の秩序を言うなれば崩壊するような、家族社会を崩壊に持っていくようなこのジェンダーフリー思想というのを国の税金を使ってやっているという現実があるんですが、官房長官、御認識はいかがでしょうか。

福田国務大臣 ジェンダーフリーという言葉はそもそも使っていないわけですけれども、そういう考え方、ジェンダーフリーを誤解しているような考え方を広めるために国が予算を使う、これはあり得ないことなんですね。先ほど、十兆近くのお金、こういうことでございますけれども、そういう間違った考え方を広めるために、そういう金が、国の金が、税金が使われるということは、これは私はあってはならないことではないかと思います。

 現実に国立の施設において行われる行事において、それがどういうふうな趣旨のものであるかということにももしかしたらよるのかもしれませんけれども、どこまでそういう考え方を強制できるかといったようなことも克明にチェックできるかどうかということもありますけれども、国の考え方と違う考え方をそういうところで広めているということが、私はないとは思うんだけれども、もしあるとすれば、それはこちらとしても十分対応しなければいけないというふうに思っております。

西川(京)分科員 ぜひ御精査いただいて、きちんとした指導をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 では、続きまして、少子化社会の問題について、ちょっと御質問させていただきたいと思います。

 今、年金問題を含めて、日本の福祉政策は大変な岐路に立っていると思います。この福祉政策という分野は、ある意味では大変厳しい対応を迫られるわけで、福祉というのが、どうしても、一度どんどん広めていった政策というのはなかなか縮められない、どんどんどんどん広がっていく。それは整備しなきゃいけないという思いもあるんですが、また後から見直すということがなかなか難しいという性格を持っていると思うんですね。

 そういう中で、年金あるいは医療問題、介護問題、こういうものの社会の要請が今一番強いわけですが、ややもすると、日本のマスコミが福祉のパラダイスとしてスウェーデンの福祉政策をよくモデルとして出すわけですが、先日、私はある本を読んでおりまして、このスウェーデンという国は世界一老人の自殺率が多い、そしてまた青少年の犯罪が日本の十七倍もある。

 そういう中で、スウェーデンの百歳以上生きていらっしゃるお年寄りが今二千人ぐらいいらっしゃるそうですが、大変人口の少ない国ですから、日本に比べてそのくらいなんでしょうが、その人たちに高校生がアンケートをとられたそうです。百年間生きて一番印象に残ったことは何ですかと。それで、そのお年寄りたちが、まあ大体事前に想定していて、第一次世界大戦とか宇宙時代の到来とかいろいろなことが出てくるのかなと思っておりましたら、一番多かった答えが、家族の崩壊だという言葉が返ってきたというんですね。

 私は、本当に人間の幸せとは、結局、福祉政策が全部行き届いて、そしてその福祉政策をやるために、高額な消費税、税額を払って、恐らく年収の七割近くを税金で持っていかれる国、だけれども、経済的には絶対心配ない、最後まで、介護まで国が見てくれる国、そこに百年間住んでいた方々が、本当に家族の崩壊ということを嘆いたというのは、何か人類の一つの未来に進むべき方向を目指しているのではないかなと私は思っています。

 結局、どこに人間の幸せを本当に政府として置くんだと。結局、今の少子化対策においても、保育園の整備とか、育児の環境整備にどうしてもいくわけですね。特に都市部では、働くお母さんにとって本当に保育施設が足らないという要求にどうしてもこたえざるを得ない。そういう中で、それが整備されればされるほど、母親は子育てから離れていくわけですね。育児の社会化あるいは介護の社会化。そして、それが本当に整備された国がスウェーデンである。そこでは、本当に心の幸せをみんなが得ているのかというと、どうもノーという答えが返ってくる。

 では、日本はどういう方向を目指すべきなのか。今回、少子化対策で次世代育成法案などができておりますが、その中で、働くお母さんのために企業に育児施設をつくれとか、もちろん整備をするということもありますが、翻って、家庭で一生懸命子供を育てている母親たちは、ある意味では、保育施設を使わないということは税金の恩恵を受けていないわけですね。東京都の場合は、国税から十万、都から十万、二十万近くの税金が一人の保育園児に入っているということで、そういう中で、そういうのを利用しないで家で頑張っている人もいるわけですね。

 ですから、この少子化対策に対する育児支援とかそういうもののスタンスというのを、もうちょっと本当に包括的に、大きな国の将来ということを考えて、基本は課税なんだ、そのスタンスでやはりすべてを整備していってほしいと私は思うんですが、ぜひ小野大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

小野国務大臣 これまでの議論をいろいろと伺わせていただきまして、思いを新たにしておりますけれども、今おっしゃったように、やはり少子化の要因としては、結婚あるいは夫婦についての考え方が違ってしまったという点が、まず第一点、挙げられると思います。

 第二点としては、出産や育児のときに、親族あるいは周辺の手助け、心の支えをしてくれる周辺がまずいなくなって、支援の希薄化という問題が第二点。

 それから三番目は、一九八六年に男女雇用機会均等法で、女性も男性もともに、能力のある、力のある者はどんな職業にもつけるようになったということで、女性が非常に仕事に生きがいを持つようになった。ところが、今度は、結婚、出産になれば、どうしてもそこに、育児と仕事との両立が非常に難しくなった。そうしますと、子供は産めない、産まないというふうな形の中で、大まかに三点に今絞りましたけれども、少子化という問題の要因が挙げられるのではないかと思います。

 急速な少子化の進行というのは将来の日本社会に非常に大きな深刻な影響を及ぼすということは、労働者の問題やら、あるいは年金をだれが面倒を見るのだというと、次代がいなければ、当然、年金を見てもらうこともできなくなる。さまざまな社会の変革と対応してくるわけで、少子化対策というのは、やはり、そのために子供を産むというよりは、家庭というもの、そして子育てというものの意義というものを一人一人が真剣に考えて、その喜びを共有する中で、社会全体が本当の意味での幸せ感の中に浸ることが、少子化対策のまたもう一つ別の柱になるのではないかと私は思います。

 政府といたしましては、西川議員も御提案の一人として御努力いただきまして昨年成立をいたしました少子化社会対策基本法、これに基づきます施策の大綱を、ことしの五月を目標に今現在策定することになっておりまして、この大綱ができましたら、それに沿って施策の進行に一層の力を注いでまいりたい、そのように考えております。

西川(京)分科員 ありがとうございます。

 私は、家庭で子供を育てるという家族という概念は、決して最近、近代になって出てきたわけではなくて、人類が生まれて、大勢がまとまって、原始時代から自然な形で出てきた形だと思うんですね。それを今さまざまな、男女共同参画のこういういろいろなパンフレットにもありますが、さまざまな家族の形態ということで、もちろん、夫婦がいて子供が二人ぐらいいてという理想的な家庭ばかりではない、それはさまざまな事情の方々があるわけですが、そういう中で、母子家庭だったり父子家庭だったり、あるいはおじいちゃんとおばあちゃんと子供だけだったり、そういう中に、男性同士の結婚もサンフランシスコでは認めたというような状況もあるわけですね。そこまでを包含して家族だよという考え方が蔓延しているわけです。

 しかし、もちろんそれは、個別に、個人としてそれを選ぶことを私たちは決して禁止したりあれしてはいけないかもしれませんが、国の姿勢として、態度として、やはり基本的な家族の姿は本当に大事にしていかなきゃいけないと思うんですね。そういうものを基本に置いた政策をするのがやはり保守政治の本流だと私は思いますので、ぜひそういう方向で、政府の皆さん、大臣たちも頑張っていただきたいなと思います。

 これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

倉田主査代理 これにて西川京子君の質疑は終了いたしました。

 次に、西村智奈美君。

西村(智)分科員 民主党の西村智奈美でございます。

 予算委員会の第一分科会、初めて質問させていただきますけれども、よろしくお願いをいたします。

 先ほど西川分科員が議論されました男女共同参画社会基本法、これにまつわる課題から少しお話をさせていただきたいと思っております。

 新人議員ですので教えていただきたいんですけれども、先ほどジェンダーフリーですとかいう言葉が出てまいりました。まず、ジェンダーという言葉はどういうふうに理解したらよろしいんでしょうか。

名取政府参考人 ジェンダーという言葉は国連文書で登場しておるものでございまして、それがそもそも、議員御案内のとおり、一九九五年に北京で第四回世界女性会議がございましたが、そこで採択されました行動綱領にジェンダーという用語が出てまいりました。

 その使われ方といたしましては、生物的な男女の違いというものをセックスといたしますれば、後で、男らしさ、女らしさという、社会的、文化的につくられてしまった、そういうものがあるのではないかという議論がございまして、それがジェンダーということでございまして、そこで言われましたのは、そのような視点というのはなかなか埋もれてしまって見えにくいところなので、そういうふうな社会的、文化的につくられた性別というものにつきましては、性差につきましては、もうちょっと敏感に考えていこうというようなことがしきりと議論されたものでございます。

西村(智)分科員 社会的、文化的につくられたものがジェンダーである、それがジェンダーであるという理解をさせていただきましたけれども、やはり私は、男女共同参画社会基本法が目指したところは、そういった今までの性別役割分担意識にとらわれない、一人一人の多様な生き方が保障される社会を目指していこう、こういう精神だったというふうに理解をしております。ですから、ジェンダーにとらわれないというのは、国際社会の中で、北京会議の中で出されたのと同様に、日本社会の中でも一定の意味を持つものである、こういうふうに理解をしております。

 さて、ジェンダーにとらわれないという意味をジェンダーフリーという言葉で言いかえておられることが多く見受けられます。それは、私が理解しますに、そういった文化的、社会的な性差をなくすということですから、セックスの違いを無視するということとは全く異なるというふうに思います。

 例えば、男性も子供を産まなければいけないとか、最終的にはトイレを一緒に使うんだというような発想ではなくて、画一的なものにとらわれずに生きる、いわゆる一人一人の多様な生き方を保障するという意味から考えますと、ジェンダーにとらわれないという考え方が行き過ぎるということもまたないように思いますけれども、この辺についての御見解はどうでしょうか。

名取政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、ジェンダーは社会的、文化的に形成された性別ということを指すというふうなお話で、国際的にも議論されたというふうなことで申しました。

 これにつきましては、その反映といたしまして、やはり過度に固定的な性別役割分担ということの背景に社会的、文化的に形成された性別があるのだという御意見もございまして、そして、このような過度に固定的な性別役割分担ということにつきまして、それが余りにも固定されておりますと、個人の能力発揮にさまざまな障害を与えるということがございまして、それにつきましては、やはりその辺は正していこうというようなことで、その意味では、固定的性別役割分担についてはとらわれないように、それぞれの個人が持っている能力を最大限発揮していこうということが男女共同参画社会の目的の一つでございます。

西村(智)分科員 学校現場における男女共同参画状況、あるいは男女平等教育の現状についてお伺いをしたいと思います。

 なかなか子供をめぐる問題、多うございます。そしてまた、非常に深刻になってまいりました。子供をめぐるさまざまな、例えば援助交際ですとか、非常にどぎつい話をして恐縮ですけれども、人工妊娠中絶、これの低年齢化ということも言われております。

 一方、学校の教職員の方の現場はどうかといいますと、まだまだやはり校長先生、教頭先生、男性が非常に多い。もう既に小学校の教諭は半数以上が女性であるというふうに思いますけれども、まだまだそうした状況がございます。

 学校現場におけるこうした状況、男女共同参画社会基本法の精神に照らして十分であるというふうにお考えでしょうか。短くお答えをいただきます。

福田国務大臣 我が国は、男女共同参画社会とはいうものの、欧米先進国に比べても大分差がある、要するにおくれている、こういうふうに一般的に言われております。そういうのは、GEM指数だとかそういったようなものでもってあらわされておりますけれども、かなり頑張らなければいけないと思います。

 国会でも、女性の議員、多くないでしょう。それから、政府もそうですけれども、各会社もそう。政府は割合進んでいる方だと思います。例えば、審議会とかそういうものについては三〇%という目標を掲げて、もうかなり、二七%、八%ぐらいになりましたけれども、しかし、ほかの分野ではかなりおくれているということでありまして、何とかそれを引き上げたいということがあります。

 そういうことで、二〇二〇年にはあらゆる分野において女性の管理職もしくはリーダー的な立場にある人の比率を三〇%まで引き上げたい、こういうふうな目標も掲げてみたんですけれども、そういう方向に向かって、これは政府だけでない、やはり国民というか、民間もそういうふうな考え方で、女性の進出というものを妨げる要素がないかどうか常にチェックをしていただきたい、こういうふうに思います。

 ただ、一つ申し上げますのは、女性は今でも大学進学率が低い、こういうことがあるんですね。大学を出ると優秀なんだそうですよ。だけれども、男性に比べて進学率が低いというようなこともあるということでありますので、それは、女性もやはりそういう意識を持って、社会の中で活躍するという場を求めて頑張らなければいけない、そういう部分もあるんだろうというふうに思っております。社会全体で考えるべき問題だと思っております。

西村(智)分科員 なかなか女性の政治参画あるいは社会参画というのは、ここのところようやく注目をされるようになりましたけれども、私たちの世代にとりましても、まだまだ女性で活躍をしてこられたという先輩方はそんなに多くはございません。先輩のお背中を見て後輩が育つということもございます。そういう意味で、これから、政府を初め関係機関で積極的な女性の登用というものをお願いしたいと思います。

 私が先ほどお伺いをしたのは、学校現場において男女共同参画あるいは男女平等教育の現状はどうかということでしたけれども、全般的なことについての御答弁をいただきました。まだまだおくれているということでございます。

 先ほど、西川分科員に対する御答弁の中で、ジェンダーフリーという言葉を使わないように指導したらどうかということで、文部科学省の方に伝えるというようなお言葉がございました。

 私は、ジェンダーフリーという言葉が多少誤解を与えるということであれば、その使い方については多少工夫をしなければいけないというふうには思っております。しかし、まだまだ社会の現状は、女性に対してなかなか風当たりは冷たい。すべての人が暮らしやすい社会を目指して頑張っている状況で、そうした政府の通達なりがその流れに水を差すことになりはしないかということに懸念を持っているものでございますが、ぜひともその点を踏まえていただいて、その点は慎重にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 先ほども答弁しましたが、ジェンダーフリーという言葉が間違ってひとり歩きをしているという現状を心配して、そういう言葉は使わないようにしようということで、もう平成十年から政府の言葉として使っていないということなんです。ジェンダーフリーの正確な意味さえわかっていれば、こういうふうにおっしゃるけれども、現実に誤解をしているところがあるということになれば、やはりそういうように簡単には考えられない。

 委員も、これからジェンダーフリーという言葉のその正確な意味をしっかりといろいろな方々にお伝え願いたいというふうに思っています。

西村(智)分科員 ぜひとも私の先ほど申し上げた点について、御答弁はいただけなかったんですけれども、慎重にお取り扱いをいただくということで理解をさせていただきたいと思っております。

 それでは、申しわけありません、通告をいたしておりました質問について移らせていただきます。

 青少年育成施策大綱、これは昨年の十二月に青少年育成推進本部の方から取りまとめをされました。昨年の九月から、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律、これが施行されているというふうに承知をしております。この法律が制定されるときに、根本的な問題があいまいだという議論があったやに伺っておりますけれども、まずその関連から伺いたいと思っております。

 実は、昨日ですけれども、女子生徒が出会い系サイト、一般的に通称で出会い系サイト規制法というふうに言われておりますけれども、これで検挙をされたということでございますけれども、その概要についてお伺いをしたいというふうに思っております。規制法の何条に違反したのか、それから、その女子生徒はこの後どういうふうに法的な手続を踏むことになるのか、お聞かせください。

関政府参考人 御質問の事件は、警視庁におきまして、三月一日に、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律の第六条第二号、不正誘引違反の被疑者として中学三年生の女子児童を家庭裁判所に書類送致したものでございます。

 本件におきまして、女子児童であります被疑者は、平成十六年一月、本年の一月十六日、自宅のパソコンから出会い系サイトの電子掲示板に援助交際を求める書き込みをいたしまして、人を児童との性交等の相手方となるように誘引したものでございます。

 この法律、出会い系サイト法によりますと、法の十六条で、「六条の規定に違反した者は、百万円以下の罰金」ということになっております。法定刑が罰金以下の刑に当たる犯罪を犯しました女子児童は、少年法に基づきまして家庭裁判所の方に送致されます。そうしますと、刑事罰を受けることがなく、家庭裁判所において保護のための適切な措置がとられるものと承知しております。

西村(智)分科員 出会い系サイト規制法については、制定のときにいろいろな問題点が指摘されておったというふうに思います。

 先ほど審議官の御答弁ですと、家庭裁判所に書類が送られて保護の対象になるであろうということですけれども、第十六条においては、これはいわゆる児童も適用の対象になっておるわけでございますね。あるいは、インターネット事業者と申しますか出会い系サイトの提供者は、児童には利用させないというふうに規定をされておりましたけれども、それはいわゆる努力規定になっておりまして、責任、責務、これの所在が非常にあいまいであるということも指摘をされておりました。

 一方、児童かどうかを確認する方法でございますけれども、これも非常に甘い。なおかつ、加えて、家庭裁判所に当該児童が送られて以降の、いわゆるその後の指導体制、子供の育成を支える仕組みが見えないというようなことがさまざま問題視をされていたかというふうに思います。

 私は、その議論は今回のケースを通してみても明らかになったというふうに思っておりまして、根本的には法改正が必要であろうというふうに考えております。しかし、現状におきましては、違法行為をした後の児童に対する指導体制、これが必要であることは間違いございませんで、一定のそのためのプログラム、これをつくっていかなければいけないというふうに考えております。

 そこでお伺いでございますけれども、女子高生、女子生徒ですね、売買春を防止するためには、出会い系サイト規制法に規定をされております責務、これは、事業者は守ることはもちろんでございますけれども、児童自身に対する教育などの指導、そして出会い系サイト事業者やプロバイダーなどによる自主的な取り組みも必要であろうというふうに認識をしております。昨年十二月の青少年育成施策大綱、ここにおきまして若干の関心が払われているというふうに思いますけれども、これにどのように今後取り組んでいかれるおつもりか、今後どういう対策を講じられる予定か、それをお聞かせください。

小野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 近年のインターネット等の大変著しい普及と利用者の拡大、これに伴いまして、年少者がいわゆる出会い系サイトの利用を通じまして被害を受ける事案が多発をいたしております。まことに極めて憂慮すべき状況にあると私ども認識しておりますし、平成十四年は千七百三十一件でございますし、平成十五年は千七百四十六件、こういう件数がございます。

 政府といたしましても、今議員の方からお話ありましたように、青少年育成施策大綱に「インターネット上の違法・有害情報への対応」というものが述べてございまして、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律に基づきます積極的な取り締まりの推進、それから国民への広報啓発や事業者への働きかけなどを、児童によるインターネット異性紹介事業の利用を防止するための施策の推進といたしております。

 これは、広報啓発ということは、いわゆるフィルタリングサービスがあるということを広報していかなければ、そのことを知らないということもあるという意味でございますし、それから事業者への働きかけというのは、やはり開発普及されていますこのフィルタリングサービスというものに関しまして、親から、うちの子にはこの番組、この内容に関してはここまでは見せてもここからは見せてほしくないというふうなことをきちんと登録していかなきゃならない。そういう事業者の立場と、それからそれを知る広報的な立場と、両方が相まって進んでいかなければならない。そうしたものを盛り込んでいるところでもございまして、今後とも、関係行政機関相互の連携協力、こういったものを、関係施策を推進しながら、社会が一体となった取り組みを進めていく必要があろうかと思います。

 これは、青少年育成施策大綱の三十一ページに、六番、支援のための環境整備施策の基本方針、(四)の「情報・消費環境の変化への対応」2の中に、「青少年を取り巻く有害環境への対応」、「インターネット上の違法・有害情報への対応」ということで述べてございます。

    〔倉田主査代理退席、主査着席〕

西村(智)分科員 本当にインターネットは世界を大きく変えたというふうに思います。だれもが容易にアクセスできる状況に、いわゆる有害情報ははんらんをしている。私が懸念しておりますのは、そういった有害情報に接して大きくなった子供たちが、その偏った情報を得たままそのとおりに実践をしてしまう、そして、それによって子供たち自身の心と体を傷つけるということを懸念するものでございます。

 民主党は、こういった有害情報から子供たちを守るための環境整備を今回の総選挙でもマニフェストとして訴えさせていただきました。書類の区分陳列や放送時間帯の配慮、これはもう一部でもなされておりますけれども、それをさらに進めて、普通に暮らす子供たちが有害情報に触れないで済む環境をつくる。また、子供の有害情報について、第三者機関を設置して、事業者が自主的に取り組みができることといたす。と同時に、大人社会のモラルと保護者の関心を高めて子供の権利を擁護するなどなどでございますけれども、政府は、こういった子供を取り巻く有害情報について一体どういうふうに取り組んでいかれるおつもりなのでしょうか。当然、子供のメディアリテラシー、大人のメディアリテラシーの向上ということも重要になってくるでしょう。そのことを踏まえて、これからどういう方向で施策を進められるのかお伺いをいたします。

山本政府参考人 お答えいたします。

 青少年の健全育成のために、おっしゃいます取り巻く情報環境、これは非常に大きな、大事な要因だと思います。

 一つは、今議員がおっしゃいましたように、子供自身がしっかりと情報を取捨選択できる、そういったようなメディアリテラシーを身につけてもらうということで、これは学校教育その他の中でしっかりとやっていく必要があると思います。もちろん、そのことは子供の保護者についても同様でございます。先ほどの出会い系サイトでございますと、子供も親も、一体その被害の実態というのはどういうことになるんだということをしっかりと把握をして、みずから注意をしていただく必要があると思います。

 それから、大人社会の方の問題といたしましては、これは、大人全体につきまして、そういった子供の環境をきれいにしていくということに取り組む必要がございますし、また、さまざまなメディア等につきましても、そういう観点から、今議員も御指摘になりましたように、いろいろな第三者機関なり社内外の目も十分取り入れて、自主的に環境の浄化というものに取り組んでいただく、そういうことを強く呼びかけていくというぐあいに取り組んでいきたいと思います。

西村(智)分科員 ぜひ、強力な取り組みを要望しておきたいと思います。

 続きまして、男女共同参画社会基本法の問題に立ち戻りたいと思いますけれども、ここの七条で、国際的協調のもとにこの法、政策は行われなければいけないというような規定がございました。

 まず、一点お伺いをいたしたいのは、北京行動綱領、女性二〇〇〇年会議成果文書、この実施状況に対する質問状への回答について、ことしの四月三十日を期日に国連に送付することになっておりますけれども、現在の検討状況について簡単にお答えをいただきます。

中島副大臣 お答えをいたします。

 北京行動綱領、女性二〇〇〇年会議成果文書の実施状況に関する国連からの質問状に対する回答については、それぞれの質問項目ごとに担当府省庁において原案を作成し、内閣府男女共同参画局において取りまとめて、四月三十日の期日までに国連に提出すべく作業を今いたしているところでございます。

 その作業の過程で、昨年十二月から本年一月にかけて、ホームページにおける意見募集や、えがりて聞く会を活用して、回答に盛り込むべき事項について広く御意見をお伺いいたしてまいりました。実際に寄せられた意見につきましては速やかに担当府省庁に送付しており、現在、当該府省庁においてこれらの意見を参考として回答案を作成しているところでございます。

西村(智)分科員 二〇〇三年の七月、昨年の七月ですけれども、国連女性差別撤廃委員会、略称してCEDAW、ここから日本政府に対して最終コメントにおける勧告、これが出されております。七月の八日、それに先立ちまして、日本のレポートに関する口頭の審議が行われて、この審議は大変に白熱をして五時間半にも及んだというふうに聞いておりますけれども、日本政府側は、女子差別撤廃条約の批准から十八年、少しずつこの方面での政策が進んでいるということについて自信を示されたという一方で、国連のCEDAWの委員からは、前回の審議から九年たっているのに変わっていない、あるいは、女性が直面している昇進や賃金についての間接差別についての対応が遅過ぎるなどという苦言が相次いだというふうに伺っております。

 この勧告をどういうふうに受けとめておられますか。

福田国務大臣 政府は、委員会からの最終コメントを真摯に受けとめておりまして、個々のコメントへの対応については、現在、関係各府省庁におきまして、その内容を十分吟味しながら検討している、こういう状況でございます。

 また、男女共同参画会議の苦情処理・監視専門調査会におきまして、最終コメントの勧告に対する取り組みの方向性に関する関係各府省庁からの説明聴取も行っておるところでございます。

 政府としては、最終コメントを踏まえつつ、引き続き男女共同参画社会の実現のために関係各府省庁一体となって努力をしてまいる所存でございます。

西村(智)分科員 そこで、新年度なんですけれども、政府全体として、この分野の総合企画調整、これはどのように行われるのか、それを伺いたいというふうに思っています。

 今、年金制度改革が議論されておりますけれども、第三号被保険者の問題を含め、まだまだすべての人のライフスタイルに中立的な制度ができているとはとても言えない状況がございます。男女共同参画会議の長である福田担当大臣にお伺いをいたしたいのですけれども、今年度、どのようにして政府全体としての調整を行っていかれるおつもりでしょうか。内閣府に男女共同参画局があるという利点を生かして、もう少し大胆に、もう少しスピードアップをして進めていただきたいという点からのお伺いですが、いかがでしょうか。

福田国務大臣 政府全体の男女共同参画施策に関する企画立案、それから総合調整に必要な経費、こういう経費として、男女共同参画会議、男女共同参画推進本部の運営経費等を計上してきております。平成十六年度予算案においては、これらに加えて、チャレンジ支援推進事業経費とか男女共同参画基本計画改定準備経費というようなものを新たに計上いたしております。

 こういうような新規の施策等によりまして、政府全体の男女共同参画施策が一層効果的に実施されるよう、必要な企画立案及び総合調整を強力に行ってまいりたいと思っております。

西村(智)分科員 本当はもう少しにこやかに質問したかったんですが、時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

松岡主査 これにて西村智奈美君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣府本府についての質疑は終了いたしました。

    ―――――――――――――

松岡主査 次に、内閣所管について審査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。高山智司君。

高山分科員 民主党の高山智司です。

 きょうは、まず、公務員制度改革について伺いたいと思います。

 といいますのも、私は、福田官房長官の後輩でもありまして、東京学芸大学附属の小中を出まして、その後、紆余曲折を経て、サラリーマンも経験して、その後、政策秘書試験というのがありまして、その試験に受かってこの業界に入ってきたという経歴があります。それも、私は国に何かコネがあるわけでもなく、知り合いがいたわけでもなかったんですけれども、こういう試験があったがためにこういう業界に入ってこれてよかったなというふうに思っておりますので、その観点から、現在の公務員制度について伺います。

 実際、今日本は、国民主権の国でもありますし、公務就任権というのが憲法の十五条とか十四条とかからも認められているということもありまして、国のため、社会のために働くのは非常におもしろいことであり、この仕事はもっといろいろな人に開かれるべきだというふうに私は考えております。

 にもかかわらず、今公務員試験というのは試験制度をとっていて、結構難しい、それで、なかなか多くの人が受験しているわけでもない、こういう現状がありますので、まず、現在の公務員試験というのは資格試験なのか、それとも就職試験として行われているのか、その点について伺いたいと思います。これは担当の人事院総裁の方にお願いします。

中島政府特別補佐人 採用試験でございます。

 なぜ採用試験になっているかといいますと、よく司法試験と比較して言われるわけですけれども、公務員の場合は、司法試験の予定している職業よりも、その能力とか知識とかそういうものがもう少し時代の変化に対応して柔軟でなければならないということで、採用試験ということにしております。

 なお、資格試験にいたしますと、一つはやはり、有資格者がどんどんふえていって、その中から採用される人が少数出てくるということになりますと、公務員試験の方に応募してくる方が徐々に減っていくだろうという懸念を持つ人が非常に多うございます。したがいまして、私たちは、採用予定数というものをにらみながら合格者数を決めていくということで、採用試験という位置づけをしております。

高山分科員 今、人事院総裁の方から、時代の変化に柔軟に対応しなければいけないということと、応募する人が減ってくるんじゃないかというお話がありましたけれども、私は、時代の変化に対応するということであれば、二十二、三歳のときに、マークシートとか論文とかで、ただどんどんどんどん合格者を決めてしまうだけではなくて、もっともっと、例えば、これが就職試験だということであれば、受験資格を大幅に引き上げるべきだと思うんですけれども、現在、受験資格はどのように制限されているでしょうか。これも人事院総裁に伺います。

中島政府特別補佐人 公務員試験は、1種試験、2種試験、3種試験とございますけれども、1種試験、2種試験については大学卒業程度ということ、3種試験については高校卒業程度ということで、受験資格を決めております。

高山分科員 受験資格の中には年齢制限もあると思うんですけれども、年齢制限はそれぞれ何歳ぐらいになっているか教えてください。これも総裁にお願いします。

中島政府特別補佐人 おくれまして申しわけございません。

 1種試験の場合で申し上げますと、昭和四十六年四月二日から昭和五十八年四月一日までに生まれた者というふうになっております。

 2種、3種についても、それぞれ生年月日によって資格を決めております。

高山分科員 ということは、年齢によって受けられなくなってしまうということだと思うんですけれども、しかも、それが大体三十三歳とか三十二歳だとか、比較的若い年齢で切られてしまうというふうに思います。

 私の例えば友人だったり、あるいは少しいろいろ話していると、いや、おれも結構、国のために働いてみたいとか、あるいはそういう社会的なことをしてみたいという人は非常にふえていますし、そういった方にこれは門戸を閉ざすことになっているんだと思います。

 そこで、この年齢制限に関しまして、これを撤廃して、公務員試験は、もうだれでも受けていいんだ、年齢にかかわらず受けていいんだというふうに、これは官房長官に伺いたいと思うんですけれども、公務員試験の年齢制限を撤廃して、もうだれでも受験できるんだというふうに改めるようなおつもりはありませんでしょうか。

中島政府特別補佐人 その議論は、私たちの組織の中でも何回かいたしてきたことがございます。

 それぞれの組織の中核を支える人材につきましては、一般的に年齢制限を設けている。例えて言いますと、この問題について非常に先進的な理論を展開されます大新聞におきましても、すべて年齢制限をつけておられます。大企業においてもそういうところが多いかと思います。

 しかし、先生がおっしゃるように、いろいろな経験を持っている方、いろいろな知識を持っている方というのは公務組織において必要でございますので、中途採用とかあるいはまた官民交流とかいろいろな道がございますので、そういうところで能力を判定して採用していただく、それで公務の中でいろいろな知識経験を発揮していただくということは公務組織にとっても非常にプラスでございますので、それぞれの任命権者に、中途採用とか官民交流とかそういうことを進めていただくように、私たちの方から指導しておるところでございます。

福田国務大臣 今、人事院総裁からも答弁ございましたけれども、政府としても、官民交流、これを進めようと思っているんです。

 ただ、その民は、それなりの知見を持っている方、そして、政府の中でお仕事をしていただいて行政組織が活性化するような、また、よりよい政策を打ち出すために役に立つような、そういう方を積極的に取り入れたいというように思って、考えておるところなんですけれども、現実にはなかなか難しいところもありますけれども、また、民の方でもそういうような人はどういうところにいるのか、その辺も我々としては非常に関心があり、かつ、いろいろ探しておる、こういうことがございます。

高山分科員 ありがとうございます。

 今、年齢制限を引き上げるというよりは、中途採用や官民交流ということをお話しになりましたけれども、それでは、中途採用でどれだけの人が採用されているのか、最近の実績だけで構わないので教えてください。人事院総裁にお願いします。

中島政府特別補佐人 途中に公務員の世界で働いていただく方法が三つございます。

 最初につくりましたのが、人事院規則でその道を開いた中途採用でございますけれども、これで現在公務員の世界で働いている方が五百四十二人でございます。

 それから、法律を制定していただきまして、任期づきの採用法がございますけれども、これで働いているのが二百十四名、そして、官民交流法で働いている方が百十名ということでございます。

高山分科員 そうしますと、今伺った人数を足すと約八百人ぐらいなんですけれども、現在国家公務員というのが大体五十万人ぐらいいる。それで、国立大学や国立病院が独法化したとしても三十万人はいると思うんですけれども、その三十万人という数字に比べて、明らかにこの八百人というのは少ないと思うんです。

 今、民間の方でも、終身雇用時代がもう終わって大転職時代で、新卒で大学を卒業して就職する人数よりも転職していく人数の方が年間の中で上回ったというのがたしか九七年ぐらいからだと思うんですけれども、そういうふうになっている中で、公務員だけ非常に門戸が閉ざされているという印象をまた強く持ったんです。これは、年齢制限に関しまして撤廃して、例えばリタイアした方、民間企業を定年された方だとか、そういう方でもどんどんどんどん再雇用の道も開くと思いますし、再度になりますけれども、年齢制限の撤廃をお願いしたいと思います。

 これは、行革担当の大臣にも伺いたいと思いますけれども、金子大臣にも御所見を伺いたいと思います。

春田政府参考人 お答え申し上げます。

 採用試験の受験年齢制限の撤廃についてでございます。

 採用試験の受験資格として設けられております年齢制限につきましては、総合規制改革会議におきましても、特に存続すべきものを除きまして撤廃をする方向で検討を行うべきであるというふうにされておるわけでございます。

 現在、人事院におかれまして、3種試験など、先ほどもちょっと総裁の方からお話ございましたように、高卒程度の方を対象とした試験ということでございますが、高卒者の方の雇用機会の確保というような観点も踏まえまして検討されているというように承知をしておるところでございます。

佐藤(剛)副大臣 委員の御指摘は、広く国民にそういう機会を与えるということと理解いたします。

 そういう形で、先ほど人事院総裁からお話がありましたが、幾つかの形を既に実現いたしておる。民間からの人材採用、あるいは、そこまでは委員おっしゃっていないんですが、官から民へもするということで、例えば、民間の中で、いろいろな能力を持っている、大学を出ましたからといって何もしないというわけじゃなくて、それぞれすばらしい専門の分野でやっている方々がおられます。それは、税理士一つとってもそうですし、公認会計士もそうですし、あるいは民間シンクタンクで働いている人もいる、あるいはいろいろな学校の先生をやっている人もいる。

 そういうような方々を、民間からの人材採用という、総裁のおっしゃられました方式が一つ。それから、任期つきで採用する。期間を限りましてのやり方ですね。それから、中途採用ということになります。

 そういうふうなことで、総計、いろいろな形で、先ほど答弁しましたが、中途採用で五百四十名になるわけですね。それから、任期つき採用で二百十四名になる。それから、交流の採用ということで八十九名であります。

 そんな形を合わせますと、年々の動向を見ていきますと、その法律、最近つくっていますから、平成十二年に施行して、近時、動向を見ていますと、ふえてやっていく形でございまして、高山議員の言う形で、私は、それぞれの特性ある、能力を持っている人、また、技術革新が非常に激しいけれども、それは一定の期間を限ってやるとか、いろいろな方式で既に進めているというふうに御理解いただきたいと思います。

高山分科員 御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 ただ、私の印象としては、全体の五十万人の中でたった八百人ぐらいしか来ていないというのは、やはり少ないと思いますし、終身雇用も崩れていることですし、とにかく、国のため、社会のために仕事をするというのは、非常におもしろいことであり、皆に開かれるべきだという観点からも、どんどんどんどん公務員試験に関する規制は撤廃していただいて、より開かれたものにしていただければと思います。

 ということが、例えば天上がりとか天下りとかを特殊なものではなくて、みんなが公務員の仕事ができるんだということになれば、よりそういう癒着もなくなるという観点から話しました。

 ちょっと話が変わりまして、政治任用というもの、ポリティカルアポインティーの可能性について伺いたいんですけれども、今の日本の政府で、そういう政治任用といいますか、公務員試験を受かってというのではなくて、政治的に任用されるポストというのは大体幾つぐらいあるものなんでしょうか。これは人事院総裁に、お教えください。

中島政府特別補佐人 政治任用というのはアメリカ的な言い方でございまして、ヨーロッパ諸国では自由任用とか言っております。結局、国会議員の資格を持たない方が行政組織の中で働くということでございます。

 今、日本では、特にそのための制度というものは用意されておりませんけれども、特別職という形で任用されている、私なんかもその一人でございますけれども、そういうのを政治任用と言うのかどうかということになりますと、一般的にはそれは政治任用と言っていないということだと思います。

 なお、この問題については、最近非常に議論が盛んでございますので、私たちは、先進諸国の政治任用の状況、自由任用ですか、そういうものを調べてみたいというふうに考えております。

 いずれにしても、機会を見て、どういう状況になっておるか、どういう条件が満たされればそういうものが本当に議論できるのかということを、ぼちぼち資料的に提供いたしたいというふうに考えております。

佐藤(剛)副大臣 総裁がおっしゃられましたように、委員おっしゃるポリティカルアポインティーというのは、いろいろ解釈が違うんだろうと思うんですね。いわゆる直接、アメリカのような大統領選挙制度の方式をとっておる国と、我が国のような議院内閣制の中における位置づけ。それをどういうふうなものでやっていくかという観点は、例えば事務次官とか局長等そういう幹部職員について、これは政策立案面で大臣を補佐するだけじゃなくて、いわゆる課長その他、職務公務員と一体で行う、そういう仕事もやっております。

 そういう面で、いろいろな職員の政治任用化については、アメリカ方式と違うわけでありますから、それを一概に、一律に導入するということは、これは慎重にならなきゃいかぬという面を私は指摘いたしたいと思っております。

 いずれにしましても、この分野は、いろいろ人によって考え方も違いますし、また、いろいろな議論をオープンにして、そして深めていく課題ではないかと思っております。

高山分科員 ありがとうございました。

 最後に、福田官房長官にも伺いたいんです。

 今、官邸で非常にいろいろ毎日御苦労されていると思うんですけれども、ポリティカルアポインティーというか政治任用、つまり首相なり与党なりがどんどんどんどん幹部職員、例えば局長級の職員なんかも任命できるという制度を導入した方が、実際、政府運営が議院内閣制の中でもうまくいくとお考えか、それとも現状のままの方が、大臣、副大臣がもう入られているということで、それで十分だというふうにお考えなのか。福田官房長官の率直な御意見を賜りたいと思います。

福田国務大臣 現実に、平成十三年の一月から省庁を再編しまして、そしてまた官邸機能を強化するというような方策をとられました。そういう上で、今、小泉総理初め、いろいろと政策を進めるということでやっております。

 基本は、これは議院内閣制であるということで、アメリカとはちょっと違う。ちょっとというか、大分違うということ。アメリカの場合には、大統領がかわると数千人がかわってしまうというようなことでありますけれども、日本の場合には、そこまでいっていないんですね。そこまでいっていないどころじゃなくて、それをちょっとまねしたぐらいな感じかなというような感じがします。

 省庁再編の一つの目的は、政治主導ということが言われたわけですね。政治主導というのは何かといったら、総理主導ということなんだと思います。総理主導ということになれば、総理がリーダーシップを発揮して、そして官邸からいろいろメッセージを発信する、そしてまた政策も打ち出していく、こういう形なんですね。

 しかし、それは、今の議院内閣制で仕組みがそうなっていないということもあるんだろうと思います。しかし、そういう中でも、小泉総理、頑張って今やっていますよ。頑張って、頑張り過ぎだと言われるくらいに頑張ってやっているというように思いまして、私、今、そういう決められた制度の中では、それをよく活用してやっているというふうに思っております。

 政治主導を進めるためには、政治家が官邸に入るとかいうことも今よりもっと必要なのかということもあるかもしれませんし、また、ポリティカルアポイントメントをもっとふやすということも必要なのかもしれぬ。そういう制度もございます。例えば総理補佐官なんという制度もありまして、五人まで採用できるんですよ。では、現実に、総理補佐官をふやしたらいいじゃないかといってそのとおりやって、うまくいくかどうかということもやはり考えなきゃいけないんですね。

 我が国は、総理大臣がリーダーシップを発揮するけれども、しかし、やはり各省の官僚はしっかり対応していく、そういう面において成功してきたのが我が国の今までのあり方だったと思うんです。そういう中で、いろいろ問題はあったわけですよ、あったわけだけれども、非常に少ない中央官庁のお役人でもってこれだけのことをやってきたという、その功績というものは非常に大きかったんじゃないかと思います。少ない人数で効率的に政策を進めていく、行政を進めるという意味において、私は、立派にやってきたと。

 ただ、制度がずっと変わっていないということによる弊害も今表面化してきているということでありますので、総理が中心になって各省を、縦断じゃなくて、横に並べて調整機能を発揮するということにおいて政治主導という形を今実施している、こういうことであります。

 今の日本のこの制度の中で、では政治任用をふやせばよしというように私は単純には考えておりません。それよりも、今ある組織をいかにうまく活用するかということを考えた方がより効率的なのかなというように思っております。

 ただ、申しましたように、古いものもある、古いやり方もある、それは直していかなければいけない。それから、これから世の中が随分変わっていくだろうと思います。経済の問題もそうですし、社会構造も変わっていく、いろいろなところで変わっていきますから、従来と同じ発想でできるはずがないんです。ですから、それは政治主導で、改革ということで今やっておりますけれども、その改革をしながら効率的な行政も進めていくという、両面にらみながらやっておるところでございます。

高山分科員 ありがとうございました。

 今はまず、高校生のなりたい職業ナンバーワンの公務員について伺いましたけれども、次に、全然話題が変わりまして、今度、小中学生のなりたい職業ナンバーワンを聞きますと、ゲームデザイナーとか漫画家とか、そういう、結構クリエーティブな人材になりたいという小中学生が多いというふうに、この調査に出ています。

 そこで、日本の知的財産関連の取り組み方について、まず伺いたいと思います。

 今、いろいろ調べましたら、ちょっと時間もないのでいろいろ言いますけれども、日本のコンテンツ産業の売上高が大体十一兆円規模である、どんどん今、年々増加傾向にあるんだということですけれども、コンテンツ産業といいましても、大きく二種類に分かれると思います。

 それは、テレビとか映画会社みたいな、商品、コンテンツ産業をマーチャンダイズする側の人間と、実際にクリエートする、作家だったり、画家とか漫画家とかですよね、こういう二つに大きく分かれていると思うんですけれども、この点、私は、クリエーターの方をもっとひいき目に保護していくべきだというふうに考えております。

 実際、政府の御努力もありまして、海賊版の取り締まりですとか、そういう映画会社ですとか、コンテンツ、いわゆる産業と言われる部分に関しましての保護は随分進んでいると思いますけれども、私が見たところ、いまいち、クリエーター本人、作家ですとかゲームデザイナーとか音楽家、そういった個人に対する保護がまだ不十分ではないかというふうに考えております。

 この点に関しまして、まず、日本として、作家個人をすごくひいき目に保護していくんだと、例えば韓国なんかでは、ゲームデザイナーは兵役免除になっているそうです。だから、そのくらい、もう明らかにこの人は才能のある人だから保護していくんだというような姿勢を見せるべきだと思います。

 そんな中で、例えば、今、弁護士なんかに頼んだりするにしても、権利保護をするには弁護士に頼まなきゃいけないわけですけれども、作家の人で、どの人に頼んでいいか、なかなかわからないだろうしというのがありますので、政府とか文化庁とか、そういったところに、作家が相談できるような、著作権侵害されているから助けてほしいというような窓口を設置する、あるいは、公設代理人といいましょうか、そういう弁護士さんなどを備えて積極的に紹介していこう、そういうふうに、政府一丸となってクリエーター、作家を守るというような施策を今現在なされているかどうか、お聞かせください。

森口政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、いわゆる著作権といいますか、それについて、特に個人の保護ということも非常に重要な課題というふうに認識しております。特に、著作物等につきまして、創作手段、利用手段が普及、多様化する、こういう中で、いろいろな紛争ということも予想されるわけですので、そういう解決手段ということは非常に重要だというふうに認識しております。

 ただ、このいわゆる著作権につきましては、私権でございまして、当事者というのが必ず両者ございます。その当事者間での話し合い、あるいは訴訟というのが、基本的にはそれによって解決すべきものというのが原則というふうに思っております。そういう観点からしますと、先生今お話ございましたけれども、公設代理人、そういうような制度を新たに創設するというのはなかなか難しいのかなというふうには、正直なところ考えております。

 ただ、しかしながら、現行の著作権法におきましても、権利者みずからによる権利の保護に資するための制度がございます。これは著作権法にございまして、いわゆるあっせんの制度というのがございます。このあっせんの制度ということを活用して、それぞれについて、個人の方の保護といいますか、そういうことも図られていくのではないかと思っております。

 また、個別具体的な話としましては、文化庁におきまして、随時、いろいろな相談というのは当然受けてございますので、そういう中では国としても協力をしていきたいというふうに思っております。

 また、具体的に、財団等の公益法人がございます。例えば、音楽著作権協会でございますとか、コンピューターソフトウエアの著作権協会、その他、いろいろな関係の団体もございますので、そういうところでも随時相談を受け付けておりますので、こういうことを通しまして、国といたしましても、権利が適切に守られるように、我々としても努めていきたいというふうに思っているところでございます。

高山分科員 今、文化庁の方からの話だと、例えば権利の侵害をするのも、例えば漫画喫茶だとかレンタルビデオ店だとか、あるいは第三者だって、そういう民間同士で権利侵害あるいは権利保護の問題が出てくるので、弁護士がやった方がいいのであろう、そういうことだと思うんですけれども、この点、漫画喫茶ですとかレンタルビデオ店でしたらいざ知らず、公共図書館で現在、例えばビデオだとか、もう最近の図書館というのは充実していますから、DVD、こういったものの貸し出しもなされています。

 また、図書館というのは本来、例えば、だれも買わないと言うと語弊がありますけれども、辞書とか法律の本だとか、なかなか一般の人が買わないような高い本なんかを買って閲覧に供するというならいざ知らず、最近では、「ハリー・ポッター」だとか「海辺のカフカ」とか、そういうベストセラーもどんどんどんどん、要望があって、公共図書館で入れている。そうしますと、貸し出せば貸し出すほどその本が売れなくなってしまうということで、これはある意味、公共機関が作家の人たちの権利侵害をしていることとなるというふうに私は思います。

 この観点からも、今、漫画喫茶とかレンタルビデオ店に関しましては、作家、その著作権者から貸与権ということで貸し出しを認めているという仕切りになっていると思いますけれども、この点、図書館に関しましては、そういう公共の貸出権というのは今どういうような法整備になっているか、お答えください。

森口政府参考人 図書館におきまして、今先生御指摘の、いわゆる売れ行きのよい本ですね、こういったものが大量に購入され、貸し出しされている、こういうことについては、いろいろな方面で指摘されているというふうに思っております。

 現行の著作権法におきましては、既に、ビデオ等につきましては、図書館からの貸し出しにつきまして著作者が補償金を受け取ることができる権利、いわゆる公共貸与権でございますが、これがございます。

 これを、今先生の御指摘のように書籍等に拡大するかということでございますけれども、これにつきましては、平成十四年度の文化審議会というのがございますが、文化審議会の著作権分科会で検討が行われてございます。その結論といたしましては、著作権制度以外の対応も含めまして、何らかの補償金制度を導入することということにつきましては、反対の意見はなく、一応理解が示されたというふうにその報告書にはなってございます。

 ただ、これにつきましても、先ほど申し上げましたように当事者がございまして、権利者側あるいは図書館側双方で具体的に補償金制度のあり方について検討したい、そういう意向がございましたので、その結論を見て、その結論を得られた段階で必要な財源等も含めまして具体的な検討を行うということが必要というふうになってございます。

 文部科学省といたしましても、このような審議会における議論の動向を踏まえまして、権利者側あるいは図書館側双方の検討がまとまり次第、適切に対応してまいりたいと思っております。

高山分科員 ありがとうございました。

 それでは最後に、官房長官にも、この知的財産本部の本部長ということで伺いたいんですけれども、日本は、やはりこれからそういうクリエーターの方、そういう個人をもうひいきするぐらいにどんどんしていかないと、そういう才能が集まってこない。だから、例えば美術品だったらみんなニューヨークに行って活動してしまうのは、そこにいいオークションハウスがあるからだし、ファッションデザイナーがみんなパリに行くのは、やはりあそこにいいバイヤーも来ていて、東京でいろいろファッションショーをやっても余り買ってくれる人がいないから、みんな有名な人もパリの方に行ってしまう。

 このようなことを考えてみると、日本にどんどんそういうクリエーティブな人を呼び込むために、日本というのはもうそういう芸術家天国だというぐらい、税制あるいはそういうお金が、どんどん利益が還元できるようにひいきをしていいと思うんですけれども、日本のこの国家戦略として、そういう作家個人に対しても手厚い保護をしていくというようなお考えがあるかどうかだけ、最後に官房長官に伺います。

福田国務大臣 政府も、その重要性というものは十分認識しております。ですから、知的財産戦略本部というところでもってコンテンツ専門調査会というものを、これは昨年の十二月に中間報告をまとめてもらったんです。コンテンツビジネス振興政策ということなんですけれども、そういう中でも、おっしゃったような才能のある作家個人とか、あわせてその個人の能力を遺憾なく発揮できるようなコンテンツ制作、流通の近代化の支援といったような、そういう政策を進める、こういう考え方をいたしております。

 知的財産戦略のこれを構築していくということに当たりまして、今月の中旬にまとめられる予定のこの専門調査会の最終報告も踏まえまして、作家またクリエーターという個人、個人をも重視する、こういうふうな姿勢で強力に取り組んでまいりたいと思っております。

高山分科員 いろいろと生意気な質問をしていたにもかかわらず、どうもありがとうございました。終わります。

倉田主査代理 これにて高山智司君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして内閣所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を滞りなく終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後三時二分散会


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