衆議院

メインへスキップ



第2号 平成18年3月1日(水曜日)

会議録本文へ
平成十八年三月一日(水曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 田中 和徳君

      浮島 敏男君    臼井日出男君

      河村 建夫君    土屋 正忠君

      荒井  聰君    泉  健太君

      小川 淳也君    逢坂 誠二君

      寺田  学君    松野 頼久君

   兼務 土井  亨君 兼務 岡本 充功君

   兼務 黄川田 徹君 兼務 近藤 昭一君

   兼務 笹木 竜三君 兼務 田端 正広君

   兼務 穀田 恵二君 兼務 阿部 知子君

   兼務 滝   実君

    …………………………………

   総務大臣         竹中 平蔵君

   政府参考人

   (人事官)        谷  公士君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           荒木 慶司君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  藤井 昭夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  高部 正男君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          小笠原倫明君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久保 信保君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  小室 裕一君

   政府参考人

   (総務省情報通信政策局長)            竹田 義行君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            須田 和博君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   清水 英雄君

   政府参考人

   (消防庁長官)      板倉 敏和君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房総括審議官)         干場 静夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           白石 順一君

   政府参考人

   (社会保険庁運営部長)  青柳 親房君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院審議官)   照井 恵光君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   佐々木英治君

   総務委員会専門員     太田 和宏君

   予算委員会専門員     清土 恒雄君

    ―――――――――――――

分科員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  臼井日出男君     浮島 敏男君

  小川 淳也君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     土屋 正忠君

  泉  健太君     寺田  学君

同日

 辞任         補欠選任

  土屋 正忠君     臼井日出男君

  寺田  学君     逢坂 誠二君

同日

 辞任         補欠選任

  逢坂 誠二君     荒井  聰君

同日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     田名部匡代君

同日

 辞任         補欠選任

  田名部匡代君     小川 淳也君

同日

 第一分科員近藤昭一君、第四分科員岡本充功君、穀田恵二君、第五分科員田端正広君、第六分科員笹木竜三君、阿部知子君、第七分科員土井亨君、黄川田徹君及び滝実君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十八年度一般会計予算

 平成十八年度特別会計予算

 平成十八年度政府関係機関予算

 (総務省所管)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

田中主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。

 平成十八年度一般会計予算、平成十八年度特別会計予算及び平成十八年度政府関係機関予算中総務省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。土井亨君。

土井(亨)分科員 おはようございます。自由民主党の土井亨でございます。

 きょうは、質問の機会を与えていただきましてありがとうございます。

 私も地方議会、県議会議員出身でございまして、ある意味、地方の議会におりますと、やはり地方分権、地方分権何ぞやというそもそも論があるんですけれども、権限また税財源の移譲、もっと地域が地域の自主性、またいろいろな地域の事情を踏まえながら地域なりの地方自治体経営をしたい。そのためには、やはり分権というものは、地方から見ると大きな期待を持っていろいろ議論をさせていただいておりました。

 地方分権というか、国の形を変えるという意味では、私が県議会におりましたときに首都機能移転というものがございまして、あのときには、首都機能移転の候補地、全国的に手を挙げまして、過熱するほどの誘致合戦といいますか、そういう行動、要望等々で一生懸命頑張ったという思いがございます。最終的には候補地が二候補、関東以北ですと那須がありましたでしょうか、二候補が決まりまして、いよいよ東京一極集中の是正、首都機能移転をすることによって分散をされて、地域の時代が来るのではないかと大変期待をいたしておりましたけれども、いつの間にか、首都機能移転という国会決議までなされた問題が、地方からするとうやむやになって、下世話な表現をするとお蔵入りになってしまったのかなというような思いがございました。

 もう一方で、地方分権一括法、これで自治事務、法廷受託事務、地方の役割、国の役割というものが選別されて、これもまた地方分権というものに対しての一歩前進だというような期待がございました。いろいろそういう中で今日まで来ているわけでありますけれども、地方の側からすると、なかなか進まないなというような思いもございます。

 後ほど一括法というようなものもちょっと質問させていただきたいと思いますけれども、やはりこの地方分権、地方制度調査会の答申が昨日出されましたけれども、道州制というものが大きくクローズアップされまして、この国の形を変える、この国の将来、十年後、二十年後、どういう日本の姿が一番ベストなのかということで、道州制というものの答申をされました。

 大変恐縮でございますが、けさの新聞で私もちょっと目にしたものでありますから、昨日の委員会でも大臣は道州制についていろいろお話しいただいていると記事にも拝見をいたしましたけれども、改めて、地方制度調査会が、日本の新しい形、日本の新しい姿は、大変だろうけれども道州制というものに移行することがいいのではないかということで正式に答申をされておりますので、そのことに対してぜひお聞かせをいただきたいというふうに思います。

竹中国務大臣 今土井委員から話がございました、昨日、第二十八次地方制度調査会におきまして「道州制のあり方に関する答申」が決定され、総理に提出されたところでございます。

 私はこういうふうに考えているわけでございます。小泉改革というのは、いろいろな御批判も御意見もあろうかと思いますが、基本的には、現場を信じて現場に任せる、そうすることによって自立、活力というのがもたらされる、それが私は小泉改革の本質なんだと思っております。だから民間でできることは民間でやるし、だから地方でできることは地方でやる。現場を信じて現場に任せる。そのときの地方という現場において、もちろん今もう皆さん大変努力しておられるわけですが、やはりある程度の財産的な、財務的な基盤が必要である。だからこそ、基礎自治体にはある程度の基盤を持ってもらいたいということで、合併も促進をさせていただいている。

 そうしますと、合併が進んで、今千八百ぐらいの数になるわけでございますけれども、今後さらにこれを進めていった場合に、どうしてもやはり広域自治体の役割というのが、私の出身の和歌山県で申し上げると、人口百万ぐらいでありますから、和歌山市が四十万ぐらいですから、あと十万とか二十万の都市がふえると、市が幾つかできると県になってしまうわけで、そうすると、県という広域自治体がそのままでよいのかというのは必然的に私は出てくるんだと思います。

 そういう意味で、昨日の答申におきましても、広域自治体改革を通じて国と地方双方の政府のあり方を再構築して、我が国の新しい政府像を確立する見地に立つならば、具体策として道州制の導入が適当と考えられるというふうにしているわけでございます。その意味では非常に意義深い御答申をいただいたと思っています。

 同時に、きのうの答申では、こういう道州制の導入に関する判断は国民的な議論の動向を踏まえて行われる必要がある、もう一つのやはり重要な点も御指摘いただいておりますので、こうした点を踏まえながら、我々も適切に対処してまいりたいというふうに思っております。

土井(亨)分科員 ありがとうございます。

 私自身、地方分権というのは何なんだろうと考えた場合、権限を、また税財源を国から地方へ移譲することだけなんだろうというふうに私は思っているんです。地方分権推進をするというときには、その推進をする先に、やはり目指す日本の形、あり方、そういうものをしっかりとビジョンとして、また制度設計として地方や国民の皆さんに明示していただかないと、そういう議論さえも私は高揚しないというふうに思っております。

 ですから、まず何のために地方分権を推進するのか、そして推進することによって目指すものは何なのか、日本という国がどう変わるのか、こういうものがはっきりしていないというのが今の地方分権の推進の姿だろうというふうに私は思います。

 道州制という具体的な形で答申がなされたわけでありますから、私は、日本のあるべき姿は道州制だ、制度上いろいろな形の道州制があると思いますが、しかし、それを目指すことによって今国は地方分権というものをしっかりと推進していくんだというようなぜひメッセージを、私は強い気持ちで大臣に御期待をさせていただきたいと思います。

 それで、郵政民営化、大臣もサンドバッグのようになれと総理から言われて、省庁、ある意味党内からもいろいろたたかれ、言われた。振り返りますと、金融担当大臣のときも、不良債権処理、金融機関の再生等々で大分地方からたたかれたのではないかというふうに私は思います。

 不良債権を処理するために、金融検査マニュアルですか、これはグローバルスタンダードという形でつくられて、大分厳しくやられた。そのことが、地方の信金やら小さな銀行にまでその影響が及びまして、いや、グローバルスタンダードでは地域の経済を破綻させる、何でグローバルスタンダードだけなんだ、ダブルスタンダードでいいんじゃないか、後に方向を変えられて、今、ある意味それは間違いではなかったというふうに思っておりますけれども、そういう意味では、いろいろな批判を浴びながら、この国がしっかりと解決しなければならない、また改革のために前進をさせなきゃいけないことに、傷だらけになって大臣は取り組んでこられた。

 私は、これ以上に地方分権推進というのはサンドバッグ状態になるんだろうというふうに思っております。しかし、ぜひ私は、大臣に、サンドバッグになりながら、今まで以上傷つきながら、たたかれてもたたかれても、かたい意思で地方分権を推進していただきたいというふうに考えておりますし、御期待をいたしているところでございます。

 そこで、大変抽象的な御質問で恐縮でありますけれども、この地方分権推進にかける大臣としての思い、また理念、何としてもやり遂げるんだという決意、そういう強い意思をぜひお聞かせいただければ幸いだというふうに思っております。

竹中国務大臣 今委員から、たたかれて、サンドバッグになってという総理からの言葉も御紹介ありましたが、正確に申し上げますと、郵政民営化のときは、サンドバッグではなくて、滝に打たれる修行僧になれというふうに言われたのを記憶しております。

 もう一点、ちょっと細かいことで恐縮でございますが、金融改革において、中小、地方の金融機関に関しては、いわゆる主要銀行向けの検査マニュアルとは違う形に、中小企業向けのマニュアルになっておりますので、その意味では、そういういわゆるグローバルスタンダードをすべて当てはめたという形にはなっておりません。ダブルスタンダードと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、中小、地方の実情に応じた、当時、私はリレーションシップバンキングと申し上げましたけれども、そういう形で現実的に対応したつもりでございます。

 ただ、いずれにしましても、土井委員のお尋ねでございます、本当に、不良債権、郵政民営化以上の決意と熱意を持って取り組まなければ、この地方分権というのは実現しないと思います。これまで、御紹介ありましたように、分権一括法とかいろいろな議論がなされてきて努力もされてきたわけですけれども、それでも本当に越えなければいけない大きな山がまだこの地方分権にはたくさんある、これは非常に厳しい改革であると思っております。であるからこそ、そもそも論を一度ここでぜひさせていただきたいということで、二十一世紀分権ビジョンの懇談会もつくらせていただいているわけでございます。

 現場を信じて現場に任せる、地方分権においてそれを実現しないと小泉構造改革の趣旨は貫かれないわけで、そこは私自身、従来以上の決意と熱意を持ってやらせていただいているつもりでございます。

土井(亨)分科員 私の表現が至らなかったと思うのでありますけれども、金融検査マニュアル、これは私も、その当時いろいろ県会議員として信金の関係の皆さんとかお話ししましたときに、確かに大臣の言うとおりでございました。しかし、実態は、これは議論しませんけれども、都市銀行の検査マニュアルを当てはめていた。これに倣えというような表現で、厳しい検査をされていたというのも実態なんですね。自己資本率、あの当時、都市銀行は八%だったでしょうか、信金は四%。四%の信金に対しても、検査に来ると、いや、八%に近づけろ、こういう強い検査をされて、大変四苦八苦した。ですから、貸し渋り、貸しはがしというのは地方でも物すごかったということだけはぜひ御認識をいただきたいというふうに思います。まあ、今、別な議論でありますから。

 それで、今回、三位一体、私も初めて議論に参加をさせていただきました。三位一体改革の目指すものは何なんだろうというふうに私は感じながら、議論に参画させていただいたところでございます。

 本来は、地方の税源の自由度を高め得る、また、ある意味、地方に対して課税自主権というものをどういうふうに機能させていくか、地方の財政裁量をどう高めるか、ここが私は、三位一体の目指すもの、制度のポイントだというふうに思っておりましたが、議論を聞かせていただいていますと、やはり、国庫負担率を引き下げるという手法で目標の税財源移譲に近づける、これに終始したのではないかな。だから、国と地方の綱引きのような形になってしまったのではないか。

 私は、しっかりと推進するためには、三位一体というものは評価をいたしております。ですから、物事を何もかも一〇〇%すぐに達成できるわけでありませんから、一歩一歩前進をしていく、そのための三位一体ということでの評価はありますが、やはり目指すものはしっかりと、そのことを打ち出しながら三位一体改革というものを進めていただきたいなというふうに思うんです。

 今回の国庫負担率の引き下げ等々、これは地方分権を進める上で効果が薄いというふうに私自身も思っておりますし、地方の首長さんなんかもそういう思いでいらっしゃるということも承知をいたしておりますけれども、この三位一体改革の目指すもの、また、私が今言った、課税自主権を含めて財政裁量を高める、そういうものからして、今回の三位一体についての大臣の所感をお聞かせいただきたいというふうに思います。

竹中国務大臣 今、二点、御指摘とお尋ねがあったわけでございますが、目指すものは何なのかということと、自由度を高めるという観点から本当に評価できるのか、この二点であろうかと思います。

 言うまでもなく、三位一体の改革、地方にできることは地方でやっていただくんだという理念のもとで、地方の権限、責任を拡大する、同時に、行政のスリム化を国、地方を通じて行っていくんだ、それがまさに目指すものなわけでございます。結果として、三兆円の税源移譲が実現した、四兆七千億円の補助金改革が行われたというのは、それなりのやはり前進であろうかと思います。

 ところが、本当にこれは委員はよく御承知だと思いますが、我々としては、補助率の引き下げではなくて、完全に権限、自由度が地方に移るような形での改革というのを強く主張して、地方六団体と連携しながらそのことを強く強く主張してきたわけですが、現実問題として、補助金を持っているそれぞれの役所からの抵抗というのはもう大変なものがございました。そういう中で、補助率の引き下げというものも含む形になったというのは事実でございます。そして、その限りにおいては、地方の自由度は十分高まっていないのではないかという御批判も、確かにそういう面もあるということは申し上げなければいけないと思います。

 同時に、しかしその一方で、例えば公立保育所の運営費でございますとか、学校そして社会福祉施設の施設整備費等、施設費については今回初めて一般財源化できたわけでございます。これらによって、地方みずからの創意工夫と責任で政策を決められる幅というのは、これはやはり間違いなく拡大したんではないだろうかというふうにも思っております。

 三兆円の税源移譲が実現したという意味では、地方の自主財源は間違いなく強化されているわけでございます。補助金改革による地方の自由度拡大ともあわせまして、全体として地方分権の進展に資するものにはなっているというふうに思うわけでございます。

 今後、我々は、さらにこの成果を踏まえて、どのように地方でできることは地方にということを実現できるかということをさらに検討して深めていきたいと思っているところでございます。

土井(亨)分科員 今、三位一体を進める中で省庁の抵抗が厳しかったというようなお話もいただきました。まさに私もそうだというふうに思います。

 もう一点。大臣は、三位一体の第二次改革というもの、私からすると抽象的だなというふうに思っているんですけれども、数値目標等々は掲げないでやりたいと新聞記事にも書いてございました。しかし、地方からしますと、もう第二次の要望ということで、九兆円ですか、税財源移譲してくれというような、最終的な形で具体的な数値目標まで掲げて要望している。

 私が思うには、やはり地方分権、三位一体改革というものの目指すもの、それが、国と地方の乖離があるのではないかな。ここがやはり同じベクトル、同じ方向性を向いておりませんと、省庁の抵抗に遭って腰砕けというふうになりかねない。とかく国と地方の綱引きということでそういうことだけがクローズアップされるんですが、大臣からすると、省庁とのいろいろな駆け引き、そういうことでいわゆる力をそがれるんだろうというふうに思っております。

 そういう意味では、平成七年だったでしょうか、推進法ができまして、また推進委員会も設けられて、そのときに私は、地方分権の推進、地方分権の目指すもののあり方というものがきっと具体的になるんだろうというふうに思っておりましたし、そのことによって、抵抗する省庁というものをしっかりとコントロールしながら、地方と国が一枚岩になってこの国の地方分権のあり方というものをしっかりと取り進めていかれるんだろうと思っておりましたが、なかなかそうはいかないというのが実態だというふうに思います。だから、政治のリーダーシップということが叫ばれるんだろうというふうに思います。

 ぜひ私は、本当に大変な、難しい質問かもわかりませんけれども、国が一枚岩になってこの国の形を変えるんだ、そのために地方分権をやるんだ、そのためにはやはりまず各省庁が同じベクトル、同じ決意を持って進めなければならない。同時に、地方もやはり同じベクトルで地方分権というものをしっかり進める、国とともに頑張ってこの国を変えていくんだという具体的な例示を持って進めていかなきゃいけない。そこが納得しませんと議論が空回りするんだと思っております。

 ぜひその点についての大臣のお考え方をお聞かせいただきたいと思います。

竹中国務大臣 今委員は本当に重要なことを御指摘されたと思います。

 まず、国がやはり一枚岩でなければいけない、そのとおりだと思います。地方は地方でしっかりと方向を定めなければいけない、そして国と地方の乖離があってはいけない、そのとおりだと思うんですね。

 ところが、国の中にもいろいろな省庁があって、よく縦割りの弊害というふうに言われますけれども、残念だけれども、それが現実問題としては確かに残っている。そして、地方はある意味で国以上に多様だという面があろうかと思います。その中で、国と地方がさらに同じベクトル、同じ方向を向くというのは大変難しいことであるというふうになっている。

 国の一致結束に関しては、これは総理が再三、とにかく地方の意見を尊重してやるんだということを何度も発言されて、そして嫌がる省庁も含めて何とか引っ張っていって、今回の三位一体改革という一つの成果を出しているんだと思います。

 私は、そういう意味では、今後も決して、補助金の改革と税源の移譲とそして交付税の改革、この重要性というのは全く変わらない、これは第一期も今後も全く変わらないと思っております。

 私が申し上げているのは、ただ、例えば三年の間にこれを五兆円、これを四兆円というような、そういう改革を今後続けることには限界があるのではないのか。その意味では、もう少し幅広い土俵に、土俵をこのような形で限定しない、もっと別の要素も入ってくるんだと私は思っているんですけれども、しかし、それでも最終的には何をやるかというのははっきり固めなきゃいけないと思っています。そういうことをぜひ今の段階で議論させていただいて、目標ははっきり定めなきゃいけないんだと私は思います。

 同時に、国と地方のベクトルが同じになるように、このようなそもそも論を地方六団体でもやっていただきたい、だから検討してくださいということをお願いしているわけでございます。

 今、それぞれに検討を進めているところでありますので、ぜひ、委員おっしゃるように、国としては一枚岩になって、そして国と地方が同じ方向を向いて、改革がさらに進められるように努力をしたいと思っております。

土井(亨)分科員 私も大臣のおっしゃることはよくわかります。ですから、冒頭で申し上げましたとおり、地方分権というのは単なる国から地方への権限、税財源の移譲ということであって、決してその先に、国の形を変える、行政システムを変える、そういうものがイメージされないものだというふうに私も理解をいたしております。

 ただ、地方はやはり、そのことによって国がどう変わるという議論まではまだ行っていない、地方が行っていないんですね。それは道州制がうっすらとあるのではないかという議論もありますけれども、やはり今、地方も、税財源をとにかくとってくるんだ、地方が自立できるぐらいの税財源をしっかり確保するんだということだけに終始をしていて、確かにそういう先のあるべき姿という議論というものも、またしっかりとしたビジョンというか制度設計も提示されていないというのが私は現実だと思います。

 そういうものをしっかり調整しながら、地方分権を推進しながら、何度も申し上げますが、この国の行政システムのあり方、国の形というものをまずしっかり明示することからスタートをしないと、いつまでたっても国と地方の綱引きだけで終わってしまうというような危険性、私は、そのうちにまた首都機能移転というようなものでお蔵入りというか、ちょっとしりすぼみをしていきそうな気もしますので、その辺で、ぜひ同じ思いで取り組んでいただきたい、そして同じ思いをしていただくようにしっかりと地方にも説明をしていただきたいというふうに思います。

 時間がありませんので最後の質問になるんだと思いますが、よく地方分権を語るときに言われるのが、国と地方の役割分担をしっかり明示すべきだと。確かにそうだというふうに私は思います。国がやるもの、地方が担うもの、こういうものがはっきりしないと税財源移譲というものも中途半端になるんだろうと私は思いますし、そういう議論がなかなかされていないというか、国から全く明示されていない。

 そういう中で、けさの記事の、先ほどの地方制度調査会で、基本的な国と地方の役割分担、こういう形がいいんではないかというのが明示されておりました。平成八年の推進委員会の第一次答申にも、国と地方の役割分担という形で、基本的な形で、こういうものは国、こういうものは地方が担うべきだという役割分担というものが答申をされた経緯もございます。

 そういうものも踏まえて、大臣が今頭の中で思っておられる国と地方の役割分担、それをちょっとお聞きしたいというふうに思いますし、そのことも私は大変重要なことだというふうに思っております。むしろそのことなくして地方分権の推進とか税財源移譲の推進というのはないんだろうというふうに思っておりますので、抽象的になって申しわけありませんが、国と地方の役割分担をしっかりと明示するということから考えて、そのことについての御所見というものをお聞かせいただければと思います。

竹中国務大臣 国と地方の役割分担、まさにそこが根幹だと思います。同時に、それをなかなか、言葉で短時間で説明させていただくには、これは大変難しい問題でもあろうかと思います。

 今御指摘になられたように、地方分権一括法によって、十一年の制定によって、国と地方公共団体を法制面で上下主従の関係に立たせてきた機関委任事務制度が廃止されたということで、それはそれで、またそのときの自治事務とか法定事務とかでそれなりの役割分担の議論がなされてきたのだというふうに思います。

 同時に、まさに国と地方の、地方から見るとより大きな自由度をやはり持っていただく、おっしゃったとおりです。自由の裏側には当然責任というものがあるわけですから、責任の議論をして初めて自由の議論があるし、自由の議論をして初めて責任の議論がある、そういうことをより明確にしていかなければいけない、それが三位一体改革の次の段階につながっていく、そういう立場で二十一世紀のビジョン懇談会で議論をしていただいているところでございます。

 その意味では、自由度を地方として持っていただくために、例えば、法律と条例の関係、法律で定めた一定範囲で条例は決めていいというようなシステムがあってもよいのではないかというふうに私は思っておりますし、課税自主権の問題についても、より自由にやっていただく余地はあるだろう。しかし、自由にやるということは当然責任が伴います。そういう議論を通して、国と地方のまさに役割分担の議論を明確にしていきたいというふうに思っているのが現状でございます。

 ぜひ、ここでの議論を踏まえて、同じことを地方六団体でも議論していただいていますので、ある時点でのすり合わせも含めまして、しっかりと対応していきたいと思っております。

土井(亨)分科員 私は、平成八年に推進委員会の、役割、国の仕事、地方の仕事というものの答申がなされておりますので、基本はそこにあるんだろうというふうに思っております。時間がありませんから詳しくお話ししませんが、私が拝見をしても、よく仕分けできているなと。仕分けという言葉が適当かわかりませんが、ぜひ、そういうものも含めて、具体的にたたき台というかそういうものを示していただいて、地方と議論をさせていただきたいというふうに思います。

 最後、短く一点だけ。

 私、県会議員をやっているときに、地方の自治体の財政が、なぜ宮城県はこんなに悪いんだ、なぜこんなに借金がふえたんだと知事に質問しますと、必ず、いや、国の経済対策に呼応したそのツケが今の宮城県の財政を厳しくしているんだと。これはまさしく知事の責任逃れだというふうに思っております。経済対策に呼応したことが、そのことが地方の自治体の経済、財政を危機におとしめているというのは、まさしく地方の責任逃れだというふうにしかとらえられない。

 そういう責任逃れ、責任を国に押しつけられないためにも、しっかりとやはり私は国と地方の役割分担というのを具体的に明示していただきたい、そのことをお願いさせていただいて、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

田中主査 これにて土井亨君の質疑は終了いたしました。

 次に、穀田恵二君。

穀田分科員 きょうは、地方における産科医の不足の問題について、竹中大臣と議論したいと考えています。

 「生み場所探し妊婦さん走る これも少子化の一因?」ということで、日経新聞のことしの二月二十一日付で、分娩を取りやめる医療機関が各地でふえている実態を報道しています。

 閣議決定された少子化社会対策大綱では、妊娠、出産の支援ということで、妊娠、出産に関する総合的な支援体制の充実、周産期医療のためのネットワークの整備など、周産期医療体制を充実すると決められています。産科医師不足の解決へ地方自治体もさまざまな努力をしているが、国の重要課題として、総務省も関係省庁と協力し取り組むべきだと思いますが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 産科医の不足という非常に重要な問題について、委員がお取り上げでございます。

 詳細の政策の中身につきましては、きょうは厚生労働省もいらっしゃっておられますので、いろいろお答えがあるかと思いますが、当然これは、内閣は連帯してこの政策を推進するという立場で、総務省がどのようにかかわっているかということを御説明させていただきます。

 厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査というのがございますけれども、それによりますと、平成六年度から平成十六年度までの十年間で、医師総数は約四万人増加しているわけでございます。しかし、それにもかかわらず、全体として四万人増加する中で、産婦人科医師数は逆に約九百人減少しているというふうに承知をしています。不規則な勤務体制、医療過誤訴訟の多さなどを背景にしまして、全国的に産科の医師不足が生じて、周産期医療提供体制は極めて深刻な状況であるというふうに我々も承知をしております。

 こうしたことから、平成十五年十一月に設置した厚生労働省、文部科学省、そして総務省から成ります関係省庁連絡会議のもとに、関係学会、医師、そして有識者等を構成員としたワーキンググループを設置しております。昨年十二月に、医師不足が深刻である小児、産科医師の確保対策として、当面の対策をどうするかという報告書を取りまとめております。その報告では、広域の医療圏を単位とした、自治体病院を中心に、地域の実情に応じて公的な病院も対象とした集約化が必要であって、既存の仕組み等を活用した国の財政支援について努力をするというふうにしているところでございます。

 あわせて、この三省庁から同月に、小児科、産科における医療資源の集約化、重点化の推進について積極に取り組まれるようにということで、都道府県に通知をしたところでございます。

 今後も、関係省庁と連絡の上、このような問題に適切に我々としても対処をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

穀田分科員 今お話あった集約化、そして重点化ということなんですけれども、これは、今お話あった、〇五年十二月に出されたそういう通知では、その重点化、さらには集約化という問題についても、各地域における、一律的に強制的に実施するものではなくて、医師確保が困難地域における緊急避難的な措置であると。つまり、重点化、集約化するというのは緊急避難的な措置なんだということを言っているんですね。だから、事態の深刻さは、それではやはり大変なんだということを実は最後の方に指摘しているわけですよね。

 そこで、私は、その問題の深刻さについて、どれほど深刻かという問題について、若干実例を示したいと思って持ってきました。(地図を示す)

 これが私の地元における近畿の一つの、例えば高島市というところなんですけれども、ここに高島市があるんですが、これは琵琶湖ですね。非常に長い市で、今まで六つの町村が合併して誕生したものです。

 大体、この市全体で、年間四百人から四百二十人の出産があります。このうち、約半分の二百人を担っていた高島総合病院で分娩の受け付け休止という問題が起きて、あふれた妊婦さんが大津市まで行かなければならない。移動距離で約四十キロなんですね。旧高島町、それから旧マキノ町、この辺へ行きますと大体六十キロメートル以上になって、妊婦さんにとっては大変負担が重い。

 どんな負担が重くなるかということなんですが、これは、通院時間が長くなるだとか、交通費がかかる、それもあるんだが、もっと大変なのは緊急事態。例えば、胎盤早期剥離が起こった場合など、救命できるかどうかのかぎとなるのは、何よりも治療開始までの時間。その時間がこういう場合だと長くなるということで、これは利便性の問題でなくて、命の問題につながるということなんですね。

 次に、これは私が住んでいます京都なんですけれども、京都も、これは京都市なんですが、こっちは北部なんですけれども、一番北の京丹後市、これは六つの町が合併によって一つの市になりました。

 この京丹後市の弥栄病院、ここにあるんですけれども、ここでも分娩受け付けの休止が起きている。ここでは年間五百人の出産があるけれども、この休止によって、やはり約半分の二百五十人が舞鶴へ行く。半分は兵庫県の豊岡に行かなくちゃならぬ。ところが、豊岡は既に産科の病院があふれていて、二〇〇四年で三十三・二件の月平均の出産件数があり、二〇〇五年では五十一・七件と約一・六倍になって、患者があふれているという実態があるわけです。

 このように、産科の病院が少なくなることによって、遠くの産科まで行かなくてはいけないという事態、妊婦さんにとって過酷な状況が生み出されている状況と、今お話しした周産期ネットワークの網の目が崩れかかっている、崩れている、こういう状況について、厚労省としてはどういう対策を行っているのか、明らかにされたい。

白石政府参考人 今お話ありましたように、妊産婦等に対しまして適切な周産期医療の提供というのは、安心して子供を産み育てるという基盤として大変重要だということで、高次の医療機関であります総合周産期母子医療センターを中核として、地域周産期医療センターを含む周産期医療ネットワークの整備ということを計画的に進めなければならないというふうに考えております。

 一昨年十二月の子ども・子育て応援プランにおきまして、平成十九年度までにこの周産期医療ネットワークを全都道府県で整備するということを目標としておりまして、現在のところ、三十八の都道府県でその整備が行われておるところでございます。引き続き頑張っていきたいと思っております。

 国におきましては、厳しい財政状況でございますけれども、NICU、いわゆる新生児の集中治療室、あるいはMFICU、母体、胎児の集中治療室の整備の補助でありますとか、あるいはこういうネットワークの整備、運営というものに関する補助を行っておりまして、今後ともその充実に努めてまいりたいと考えております。

穀田分科員 補助をやっている、それで全国につくるつもりだ、そんなことはわかっているんですよ。問題は、具体的に言っているわけじゃないですか、こういうふうに事態は深刻じゃないのかと。その深刻さをどう受けとめて、どういう体制をとっているのかと聞いているわけで、周産期ネットワークなんて、それは聞いていますよ。それから、そういうものについて予算を一定つけているだとか、それから、三十八都道府県しかなくて、全国に広げようなんとしている、それは知っていますよ。

 問題は、こういう事態について、個別に起きているところの、そういうネットワーク自身が崩れかかっている、崩れているという問題について、どうして救えずしてネットワークを維持できるのかということを言っているんじゃないですか。

 では、もう一つ、医療圏についてもう一度聞きたいと思うんです、国の責任にかかわるから。

 これは、先ほど言ったように、舞鶴の地域なんですね。そこで、今言った周産期ネットワークのかなめである、白石さんがお話あった、ネットワークのかなめである舞鶴医療センターが、産科医の退職によって産婦人科が休止の状態になっている。

 舞鶴医療センターというのは、京都府にとっては京都北部唯一の地域周産期母子医療センターなわけですね。大体いつも言う、ハイリスクの妊婦の分娩を行う比較的高度の、あなた方にもらった資料によればですよ、医療を提供する施設、これが北部からなくなってしまうわけですよね。

 結局、一番最初に大臣も言われた、少子化大綱でうたわれているいいお産、それから安心、安全な出産を進めるための担保として周産期医療ネットワークを掲げていながら、そのかなめとなるそういう地域周産期母子医療センター自体が舞鶴の場合は受けられないという事態になる、大変お寒い状況だと思うんですね。

 舞鶴医療センターというのは、地元に行ったらわかりますけれども、国立舞鶴病院とみんな思っているんですよ、事実そういう経過だったから。そうすると、国の責任があるんだ、こういう事態を放置していいのかということを、では具体的に問いたいと思います。

岡島政府参考人 独立行政法人国立病院機構舞鶴医療センターの産婦人科の問題でございます。

 当センターは、京都府北部における周産期医療を担っておりまして、産婦人科医三名の体制によりまして、一カ月間に二十から三十件の分娩を取り扱ってきたところでございます。

 しかしながら、平成十七年八月末に一名、平成十八年一月末にもう一名の医師が退職いたしまして、さらに残る一名も平成十八年三月末までに退職するという意思表示がございました。病院としましては、その後任者の補充のために、大学等関連機関へ医師の派遣を要請してきたところでございますが、大学からは、医局における産婦人科医の減少等を理由に、いまだ確保の見込みが立っていない状況でございます。

 以上の状況から、十八年一月以降の分娩予定者につきましては、入院受け入れを休止せざるを得ないという状況になっておりまして、現在は近隣の医療機関における分娩を紹介しているところでございます。なお、舞鶴市内にはほかに三カ所の医療機関がございまして、そこでの対応を行っているところでございます。

 今後の対応につきましては、産婦人科医師の確保が可能になれば速やかに入院受け入れを再開するということで、助産師も確保し、体制を整えているところでございまして、今後とも、医師確保に向けまして、関係機関への要請を行うなど、引き続き努力してまいりたいと思っております。

穀田分科員 可能になれば、当たり前の話なんです、そんなことは。だれだって、可能になったら送るのは当たり前なんですよ。どうしたら可能にするかという話を問うているわけで、知っていますよ、大体、近隣の京都府立大学だとか福井大学とかいろいろありますわな、そういうところへ行って頼んでみる、なかなかしんどいということが起こっているわけですよね。

 問題は、もともと国が担うべき、そういう政策の一環としてやっているはずだろう、おたく。だから、その意味では、可能になればなんという話をせぬと、大体、独立行政法人にするときも、そういう点でいうと、成育医療など政策医療を担うと約束していたわけだから、国も責任を持ってきちんと取り組むべきだ。何か、自治体やそのところがこうなっているなんという話をるるされてもらったって困る。その点では、もちろん自治体としても努力していることについては我々知っていますよ。だから、きちんと国も努力をしなさいということを言っているわけですね。

 そこで、周産期医療ネットワークの中で、総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センターの中で、先ほど三十八とありましたけれども、舞鶴の例のように、事実上分娩受け付けができない状況になっている例はほかにないんですか。

白石政府参考人 私どもの承知している範囲で申し上げますと、今御指摘ありましたように、総合周産期母子医療センターは三十八都道府県で五十六カ所、それから地域周産期母子医療センターは二十六都道府県で百八十八カ所。これ以外に、県、地域がこれに準じるような体制をしているところもございますけれども、こうした医療機関につきまして、日本産科婦人科学会が昨年九月に調査を行いましたところ、こういう地域周産期母子医療センタークラスの医療機関のうち、過去一年の間に産婦人科の分娩取り扱いを休止した施設は、全国で六カ所あったというふうに聞いております。

穀田分科員 ほかのところの話じゃなくて、厚生労働省が、先ほど言ったように、自分のところで総合センター、地域センターと決めているわけだから、実際はそれ以上多いというのが現実なんですよね。だから、そういうものを、人の資料を頼りにこうなっているなんという話をしているところに、私はどうも、本気かいなというふうに思うということを言っておきたいと思うんです。

 だから、さっきから言っているわけですよ。具体事例を示せば、自治体も努力しています、可能になったら、そんな当たり前の話を幾ら聞いたかて、だれもそんなの信用せえへん。ましてや、どないなっていると聞いたら、いや、学会の資料ではこうやと。おたくのところでどないして調べたかわかっているのかと聞くと、そういう話をしない。そして、現実はというと、もっと多いんじゃないかというのはだれもが知っている。こういう事態にあるからこそ問題提起しているということを言っておきたいと思うんです。

 では、そこで、総合周産期センターのところでいいますと、いつも一体どんな援助、支援を財政的を含めてしているんですか。短く。

白石政府参考人 お答えいたします。

 周産期医療ネットワークの整備、あるいは総合周産期母子医療センターの運営という点に着目いたしました、施設整備以外のものでございますと、トータルで三十六億円の内数でございます。それから、施設整備に関しますもの、医療供給体制の整備交付金、それから医療提供体制の設備整備も含めた推進事業補助金を合計いたしますと、二百四十億の規模でございます。

穀田分科員 大きい方の数字ばかり話をしているんだけれども、実際には、総合センターの運営補助金というのは六、七億円なんですよね、おたくの方からいただいた資料によると。問題は、さらに私が言っているのは、地域のサブセンターにまで予算措置をすべきだと。つまり、地域のそういう周産期センターにまで拡大をするとしないと、なかなか下はもたへんということだけ言っておきたいと思うんです。

 そこで、産婦人科のある病院の全体数、そのうち、国立、都道府県立、市町村立の病院の数はそれぞれ幾らであるのか、直近の数字と十年前の数字を述べてください。

白石政府参考人 直近とそれからちょっと前の数字ということで、例えば、平成八年と平成十六年を比較させていただきますと、平成十八年、医療施設調査をもとにしたデータでございますが、産婦人科を有する病院の総数は千九百九十六カ所、そのうち、国立が百六十カ所、都道府県立が百三十六カ所、市町村立が四百五十五カ所でございます。

 それから、平成十六年の箇所数でございますが、一千四百六十九カ所、そのうち、国立が百七カ所、国立の中には独法化した国立病院・療養所も含みます。それから、都道府県立が百十五カ所、市町村立が三百八十一カ所でございます。

穀田分科員 平成十八年じゃなくて平成八年ね。まあいい、わかっているから。

 全体で五百二十七件減っているんですよ。それで、二六・四%も減っているんですが、国は実は、国立の関係でいくと三三・二%も減らしているんですね。子供さんの数というのは、大臣、この間、減っているといったら八%ぐらいなんですよ。だから、ぐっと減っているということがおわかりいただけると思うんです。だから、国と地方自治体が大きく減らしている、ここから大臣に行くわけですけれども、そういう点がある。

 そこで、総務省にお聞きしたいのは自治体病院の支援についてです。

 今、自治体が、今お話ししたように、地域医療というのを守る役割を果たすことは非常に大事だ。ところが、総務省は、地方公営企業の経営総点検の号令をかけて、自治体病院の民間移譲や民間的経営手法の導入促進の計画を今年度中につくるように各市町村に指示しています。

 それに基づいて、例えば京都府は、京都府市町村経営改革支援シートなんというものをつくりまして、赤字の市民病院を合理化するように迫っています。その中で、ひどいんですけれども、「収支計画は適正か。見込みが甘くないか。」それは、赤字になっているんだからどこか一定の困難があるということは確かなんですけれども、そういうふうに言っている。それから、「投資に見合う利益を上げているか。」それから「統廃合や経営移譲について検討しているか。また、その場合のシミュレーション等を行っているか。」こういうことまで言っているわけなんですね。

 産科医不足の問題というのは、厚生省や総務省など三省庁のいわゆる議論の中で、いわば、地域の偏在、診療科の偏在という二重苦があるということを随分言っています。だけれども、それだけじゃなくて、プラスして、自治体におけるリストラや地方切り捨てによる三重苦になっているんじゃないかと私は認識しているんですね。

 一方で、赤字になりやすい救急、小児それから産科などを政策医療と位置づけて守らなきゃいけないと言いながら、一方で、こういうチェック項目を示して病院の統廃合を進めさせる、これでは全く矛盾しているんじゃないか。このチェックリストなどに基づく統廃合を進めるということについては、これは総務省の方針ですか。

瀧野政府参考人 地方公営企業につきましては、病院事業も含めまして、非常に厳しい状況にあることはもう御案内のとおりでございます。

 そういった中で、全体として、地方財政の健全化を図るという文脈の中で、公営企業につきましても、ただいまお示しされたようなことで取り組んでいただくようにお願いをしているわけでございます。

 ただ、病院につきましては、地域医療の確保というのが非常に重要であるということも我々も十分認識しておりまして、特に救急医療、それから今御指摘の周産期医療、そういったものについては、なかなか診療報酬だけでは採算がとれない場合もあるということは我々十分認識をしております。

 そういった中におきまして、できるだけ病院経営について合理化をしていただくということは当然のことであるわけでございますけれども、その上で、なかなか診療報酬だけでは不十分という場合については、きちんと繰り出し基準を設けまして、一般会計でこういう範囲内で負担していただきたいということも示しておるわけでございます。

 そういった中で、地方財政計画におきましても、十七年度は六千億を超えるような病院事業に対する需要を見ておるわけでございますが、十八年度、ただいま法案の審議をいただいておりますけれども、非常に厳しい中でも、こういった病院に対します財政措置については若干なりともふやすような方向で対応し、周産期医療につきましても、特別交付税の中で、取り組んでいるところに財政支援をするというような対応をとっているところでございます。

穀田分科員 一般論でいくと、そういうふうになるんですよね。

 ただ、問題は、こういうチェックリストまで来て、今お話あったような、例えば、地域医療は大事だ、救急は大事だ、そして周産期医療というのはとても大切だ、単なる採算だけではいけない、こう言って、一方ではこういう話で、投資に見合う利益を上げているかと。そんなこと、上がるんだったら民間がやっているわけで、上がらへんからこれはやっているわけなんだよね。それをこんな形でやっているなんというのは言語道断だと、はっきり言って私は思うんですよ。だって、周産期医療というのは大事だと言っていて、それを一方で言いながら、一方では採算に合うかどうかと。合わないからやっている話であって、そういう点が全く私は問題だと思うんですね。

 そこで、産科医不足との関係で、医師の充足、それから大学医学部の定員問題について聞きたいと思うんですね。

 まず、医師の充足状況についてですけれども、外国との比較で、人口千人当たりの医者の数はどうなっているのか、それからOECDの中での順位を示していただきたいと思います。

岡島政府参考人 平成元年にOECDが発表した人口千人当たりの国際比較によりますと、日本では千人当たり二・〇人の医師数となっております。これは、OECD加盟三十カ国のうちの二十七位となっております。

穀田分科員 相当低いということですな。下から数えた方がはるかに早いということになるわけですね。

 そこで、一九九七年の閣議決定で、大学医学部の定員を規制することが決まっています。九八年、医師の需給に関する検討会報告書では、医師の需給については将来過剰になるという見通しだったけれども、今でも過剰だと思っているんですか。簡単に。

岡島政府参考人 今の御質問にお答えする前に、先ほどの私の答弁、間違えまして、修正させていただきます。平成元年と申しましたが、平成十七年でございます。大変失礼いたしました。

 それから、医師の過剰についての問題でございますが、平成十年の医師の需給に関する検討会報告書によりますと、遅くとも平成二十九年ごろから供給医師数が必要医師数を上回り、その後過剰が拡大するという認識がされております。

 現在の医師の養成でございますが、現状では、毎年七千名から八千名が新たに医師となりまして、全体では毎年三千五百人から四千名程度が増加しているという状況にございます。

 以上でございます。

穀田分科員 その後の方で、要するに、今お話あったように、医師の需給に関する検討会中間報告書によると、「年間四千人程度増加しているにもかかわらず、現状では充足感がなく、むしろ、患者及び医師の双方から見て、医師は不足していると感じられる場面が多い」、こういうふうに述べて、要するに、これは大変だ、実際には、数はあるんだけれども、そういう問題も大変だということを言い出し始めているんですよね。

 産婦人科病院の四一%が実は自治体病院で、他の診療科に比べても比率が高いんです。だから、総務大臣に一生懸命私は聞いてほしいということを言っているわけですよね。

 そこで、深刻な事態というのは、患者も医師の側も両方から不足しているという実感があるということで、しかも、事実として、先ほど述べたように、産科医のところで深刻な事態が起きているということの根本のところに、一九九七年の閣議決定を見直す考えはないかということについて、閣僚の一員である竹中大臣にお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 人口が減少する中でいろいろな問題が本当に起こってくる、その意味では、穀田委員最初におっしゃったように、緊急措置ではなくて構造的な問題としてとらえなければいけない、その問題意識はしっかりと我々も持ちたいと思います。

 定員の問題等に関しては、担当部署でいろいろもう御議論をされておられる問題であろうと思います。この問題に関して、私は直接担当ではありませんので、こうすべきだということを申し上げる立場にはございませんが、厚生労働省においては、医師の需給に関する検討会を設けて、需給の見直しについて検討を行っているというふうに聞いております。また、文部科学省の医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議においても、医学部の今後の入学定員のあり方について検討を行っているというふうに聞いております。

 我々総務省としましては、これらの検討の結果を踏まえて、地域医療の確保のために総務省として必要な支援があるのかどうか、これは担当省庁とよく御相談をして、また地域の声もよく聞いて、総務省としてできることが何なのかということに関しては、問題意識を持って真剣に考えてまいります。

穀田分科員 大臣、三省でやっているんですよ。それで、私は、おひざ元の自治体がどう言っているかということとの関係だと思うんですね。

 この間、全国自治体病院協議会の決議を見ますと、緊急対策の第一番に、実は「医師数の確保」「大学入学定員削減方針の見直し」と言っているんですよ。だから、今、単に所管の厚生労働省というだけじゃなくて、いわば足元の方で支えているところで実際にそういう要求が上がっているということをぜひ私は見ていただきたい。だから、これをやったんですね。

 先ほど言ったように、医師需給検討会の中間報告では、医療の高度化それから専門化、単に少子化だから産むということに対する体制を強化するというだけじゃなくて、そういう新しいニーズと新しい状況の中でふやす必要があるんじゃないかということまで言い出し始めているわけですね。

 したがって、私は、今お話あった、必要な地域、分野で医師確保がされるように、条件整備も含めて、国のそういう抜本的な予算増も含めて、きちんと総務省が努力されるよう求めて、終わります。

田中主査 これにて穀田恵二君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、河村(建)主査代理着席〕

河村(建)主査代理 次に、田端正広君。

田端分科員 公明党の田端でございます。

 きょうは、まず、携帯電話の番号ポータビリティー制度についてお尋ねしたいと思います。

 自分の携帯の番号をそのまま、そして携帯電話の会社をかえてもそのまま持ち運べるというこの制度は、長年言われていたことでもあり、非常に希望する人が多いわけでありますが、いよいよこの番号ポータビリティー制度が十一月一日から導入されるという、これは大変よかったと思っております。価格とかあるいは端末のサービスとか、いろいろなものを比較しながら消費者が自由に携帯電話会社、事業者を選んでいく、こういう意味では非常にいい仕組みができ上がった、こう思います。

 実は、この問題については、私ども公明党の青年局のメンバーが早くから希望しておりまして、二〇〇三年に署名運動をやりまして、全国で一千万以上の署名が集まりました。それで一気にこの話が盛り上がりまして、当時、片山総務大臣でございましたが、あるいは小泉首相、総務大臣あてにこの要望書をお願いしたわけでございます。

 それで、実はその後、私がちょうど副大臣にさせていただいたのが平成十五年十月でございました。そのときに、この問題について、その後どうなっているのか、できたら、できるだけ早く一回検討会を立ち上げていただいて、ぜひ進めていただきたいということを省内でお願いいたしました。

 そして早速、平成十五年十一月から問題の検討が始まりました。携帯電話の番号ポータビリティーのあり方に関する検討会を立ち上げていただきまして、その後、半年で約七回でしたか、ずっと月一回のペースで検討をしていただきまして、平成十六年、翌年の四月末、最終報告がまとめられました。その間、携帯電話事業者の方もいろいろと議論をしていただきまして、大変費用もかかることでありますが、ことし十一月からやろうという方向がこのときに決まったわけであります。

 そういう意味で、私は、この問題は今後、導入ということがこれで決まったわけでありまして、今月の六日でしたか、その省令も公示されたと思いますけれども、ここから先は、国民にどこまで周知徹底していくか。やはりいい制度ができたわけですから広く活用していただいて、それがまたさらに発展していくようにしていくということが総務省として大事な役割ではないかと思いますが、今後、この問題に対しての総務省の周知徹底といいますか広報活動、どういうふうなことをお考えになっているのか、まずよろしくお願いしたいと思います。

須田政府参考人 ただいまの、委員御指摘ございました携帯電話の番号ポータビリティーでございますけれども、ある程度の期間をかけましてずっと検討を進めてきた結果、御指摘のように、この十一月の一日からの導入ということになったわけでございます。

 この間の検討過程につきましては、基本的に、常にホームページに載せるなり、あるいはパブリックコメントをかけるなり、あるいは、省令の制定に当たりましては当然のことながら官報に掲示するなり、この検討過程につきましては常に周知、広報に努めてきたところでございます。そういったこともございまして、世の中の皆様方の関心も非常に高くございまして、新聞あるいはテレビ等に関しましても、これらの状況につきましてはかなり詳しい形で報道していただけたと思っております。

 ただ、委員御指摘のように、今後の具体的な導入に向けましては、もう少しきめの細かい形、特に、実際の利用方法につきまして利用者の方に十分御理解いただくということが大変重要だと思っております。そういったことから、我々としましては、今後、総務省のホームページを初めとしまして、各種のポスターやパンフレットなどにより、より詳しいきめの細かい形で利用者の皆さんに理解していただけるように努めていきたいと思っております。

 そうした観点から、現在、携帯電話事業者の方々とも、具体的にどのような形で周知をしたらいいか、どのような形の周知ができるかというようなことの検討を進めているところでございまして、例えば、携帯電話の利用者の方の請求書の中に、ポータビリティーに関する情報をきちっと入れておくとか、そういうことがどういう形でできるかとか、こんなことを現在話し合っているところでございます。

田端分科員 正直言って、あの当時、私も事業者の携帯電話の会社の幹部の方といろいろと意見交換しましたが、やはりあのときは、大変経費がかかるということで非常に強い反対もございました。しかし、そこを乗り越えてこの仕組みをつくることによって、今度はサービス合戦ということになれば、さらにまた大きく業界全体が逆に発展していくのではないか。だから、そこをぜひお考えいただいて、利用者の利便性というものを、そしてさらに需要が高まるようにやっていただくようにということで、何回か議論をさせていただいたわけであります。

 そういう流れの中で、実際問題、料金とかサービスとかコンテンツとかという意味では非常に競争を、いろいろな形で今各社やっているようでありまして、きょうの新聞にも、十一月を控えて非常に各社がサービス合戦、料金引き下げ等をやっているというふうなことはニュースに出ておりましたが、例えば、NTTドコモとかKDDI、auが契約者の料金引き下げということを行っているほか、ボーダフォンにおいても今月からまた基本料金を引き下げるとか、こういうふうなことも実際なってきたわけであります。

 そしてまた、いろいろなサービスにおいても、音楽配信が、特にauなんかは一生懸命やっておられるとか、あるいは一件だけ通話とメールを使い放題にするとか、あるいは半径十メートル以内の通信は無料とか、こういうようなこともいろいろお考えになっているようでありまして、サービスが多様な形で広がっているというふうに思っております。それで、携帯電話の事業者も今回また新たに二社ほど新規参入されたようでありまして、そういう意味では、より一層多様なサービス競争が活発に行われるという意味においては、消費者としては非常にいいことだな、こう思っております。

 NTTドコモなんかは、光ファイバー並みの超高速の、第三・五世代というんですか、そしてまた二十二年には第四世代を目指す、こういう流れで今やっているようでありまして、そういう意味ではこれからが非常に楽しみな分野だなというふうに思っております。

 その中で、ちょっと大臣にお伺いしたいんですが、こういうふうになってきますと、通信と放送の融合とか、総務省が進められているユビキタス社会の実現とかいうことと、この携帯電話とが、非常に大きなかかわりを持ってくるだろう。そして、それがむしろ、これからの日本の通信情報産業における大きな基本としてのユビキタス社会の実現に向けての流れに、ここから大きく発展していくんではないかなということを私は期待しているんですが、その辺のところ、どういうビジョンを大臣はお持ちなのか、お伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 田端委員の問題意識で御指摘になられたように、本当に今、IP網が予想を上回るような速度できっちりと整備されている中で、通信と放送の融合というのが、技術上、もうその境がなくなってきた。それにふさわしいどのような制度をつくっていくかというのは、我々にとって非常に大きな課題であると思っております。

 今の日本のIT戦略、通信戦略全体は、二〇〇〇年のIT戦略会議からこういう戦略としては始まったわけだと思いますが、まだその時点ではユビキタスという言葉は、もちろん一部の専門家ではあったのかもしれませんが、ほとんど議論されていなかったわけでございます。その後、ユビキタスという概念も新しく入ってきて、その中で、まさに田端委員が総務副大臣として御活躍のときに、そのようなことで非常に先導的な役割を果たされたというふうに私も承知をしております。

 いつでも、どこでも、何でも、だれでも。だれでも容易に、ICTを意識することなく利用できるような形になっていくというのは、本当にもう目の前に来ている、もうその中に私たちはいると思っております。これによっていろいろな創意工夫が新たに生み出されていく。創発という言葉がありますけれども、あるネットワークのところでぱっと生まれたのが一つの革命的な力を持って広がって、一つの価値といいますか基準をつくっていく、そういう状況にもなってくるだろうし、実際我々が直面しております人口減少社会であるとか、安心、安全とか、そういう問題すべてにこのICTの利用、活用というのがかかわってくるというふうに考えております。

 総務省は、ユビキタスネット社会実現のために、関係省庁と連携をしましてu―Japan政策を推進していくわけでありますけれども、大きく、まずネットワークを整備するということ、そして利活用を高度化するということ、そしてセキュリティー等々の利用環境を整備するということ、それらをしっかりと推進していかなければいけない、ぜひそれを実現したいと思っているところでございます。

 また、本年一月から、通信・放送の在り方に関する懇談会で議論を進めているところでございます。この中には、日本におけるユビキタスの概念の導入と定着に大変先導的な役割を果たされた野村総研の村上理事長もこのメンバーに入っていただいておりまして、そういう問題意識もしっかりと踏まえた議論をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

田端分科員 今は総務省における次元でのユビキタス社会実現という、このものを、政府全体のユビキタス社会の実現という方に、ぜひ格上げといいますか、この流れが全体に反映するような、そういう方に持っていっていただきたいな、こういうことを要望しておきたいと思います。

 それで、その前にちょっと、このポータビリティー制度が施行されるわけですが、その場合に、もし事業者の中で、途中で嫌だとか、あるいは一抜けたみたいな感じになった場合とか、そういうことは起こらないとは限らないんだろうと思いますが、そういうトラブルとかいうふうなことが起こった場合の対応はお考えになっているんでしょうか。

須田政府参考人 携帯電話の番号ポータビリティーでございますけれども、これは基本的には事業者の方々が一斉に導入していただかなければやはり本来の目的を達し得ないものだと思っておりますので、そういった意味で、この番号ポータビリティーにつきましては、電気通信事業法に基づく電気通信番号規則におきましてすべての携帯電話事業者に導入を義務づけるものでございますので、基本的にはすべての携帯電話事業者が導入していくものと考えております。

 したがいまして、仮に、先生御指摘のような形で、携帯電話事業者がこの規定に違反しまして番号ポータビリティーを導入しなかったとか、あるいは途中でやめてしまうとか、こういった場合には、電気通信事業法第五十一条の適合命令の対象となり得るものでございますので、我々といたしましては、このようなことが生じないように適切に対応していきたいと思っております。

田端分科員 私は、携帯電話というのはこれからの日本の我々の国民生活に大変大きな影響を持っていくんではないかと思っておりますが、伺ったところ、既に九千万台、携帯電話が出ているということであります。九千万台ということになれば、これは大変な数でありまして、大人はもちろん、もう子供もほとんど、小学校のお子さんまで持っているぐらいの数だろうと思いますが、ここまで普及しているというわけでありますから、ユビキタス社会の中核に携帯電話が位置づけられるんだろうと思うわけです。通信、情報、そういうネットワーク社会の軸が携帯電話とテレビじゃないかと私は思っておりますが、中でも、持ち運びができる、自分の身につけて移動できる携帯電話というものが今後大きく発展していくということでは、非常にユビキタス社会における中核的なものになっていくのではないかと思います。

 特に、もう既に国土交通省の方でもいろいろな実証実験をしていただいて、障害者の移動自律支援のプロジェクトとか、あるいは、浅草とかいろいろなところで外国人に対する観光案内とか、こういうことも行われているようでありますし、それから、例えば尾道なんかの、ああいう文化と伝統のある町は、いろいろなところにICチップを配置しておいて、携帯電話をかざすことによって、この道は、この坂は、この家はこういう歴史がある、こういう文化がある、こういう小説の中に出てきた場面だとかということが、今のユビキタス社会の流れの一環として、町の博物館として導入されているというふうにも伺っておりますし、日比谷の町でもそういうことが実際に今なりつつあるというふうにも聞いております。そういうふうに、いろいろな意味で活用が広がれば広がるほど、携帯電話の存在というものが大変大きな役割を果たすのではないかと思いますし、既にもうキャッシュレスといいますか、携帯電話で品物が買えるような仕組みも今でき上がっておりますし、今後そういう意味ではまだまだいろいろな形で多様化されていくのだろう、こう思います。

 そういう意味で、多機能、高性能の日本の携帯電話がまだまだ発展して、私たちの国民生活をさらに便利に向上させていく、そういう中核になっていくんだろうと思っておりますが、ぜひそういう意味で、この番号ポータビリティー制度がそれをまた大きく発展させる一つのきっかけになっていただけるようお願いしたいと思いますが、その辺についてはいかがでございましょうか。

竹中国務大臣 私も、携帯の役割というのは、これはもう改めて言うまでもありませんけれども、本当に重要であろうと思います。今はもういろいろなことが、なるほどこんなこともできるのかというようなことがどんどん起こってくるわけですけれども、その物事の本質というのは、考えてみれば、やはりデジタルな情報を非常に簡単にやりとりできる、そのデジタルな情報のやりとりができるということに尽きるんだと思います。

 そのデジタルな情報をやりとりする場合のプラットホームは、では一体何なのか。これは通常、これまでやはりプラットホームとして一番みんなが親しめるものはパソコンだったんだと思うんです。デジタル情報のネットワークの入り口のまさにプラットホームにパソコンがあった。パソコンはパソコンで大変便利で、これからも重要なわけですけれども、でも、それだけではないということが物すごくはっきりしてきた。これは携帯がそのいい例ですけれども、ある時期は、実はソニーのプレイステーションだってそれになり得るのではないかと言われて、その評価がわっと上がった時期もあったし、先生おっしゃったように、実はテレビというのがそういうものになり得るのではないかということも議論はなされている。そういうデジタル情報をやりとりする場合のOSとしての、例えばトロンのような技術も日本から発信されている。そういうことも含めまして、私は、利用者が九千万人を超える、これは大変重要なプラットホームとしての地位を確立しつつあるということだと思います。

 今回の番号ポータビリティーの話は、利用者の利便性を高めるわけでありますけれども、同時に携帯電話事業者間の競争を促進するということになりますので、その競争の促進を通して、さらなる機能の強化、プラットホームとしての役割の定着というのが私は進んでいくのではないかと思います。

 そういういわばきっかけとして今回の番号ポータビリティーの導入が極めて重要だと思っておりますので、その円滑な導入に向けまして、総務省として最大の努力をしたいと思っております。

田端分科員 それで、今大臣からお話ございましたが、デジタル化という意味では、テレビも地上デジタル放送が二〇〇三年末から始まりました。そして、ことし十二月には全国の県庁所在地においてはすべて放送開始予定、こう伺っておりますが、二〇一一年にはアナログ放送は終了する、こういうことも聞いております。

 そういうふうな流れになってきますと、例えば、私は東京タワーの上まであのときに視察させていただきましたが、東京タワーの高さは三百だったと思いますけれども、三百メートルだと、関東一円に電波が届くかどうかという点では非常に心配があるのではないかと思います。

 特に、関東平野は非常に広いのと、それから二百メートルクラスのビルがいろいろな形で林立しておりますから、デジタル波は直進するという性格が非常に強いだけに、もっと高いところからの発信ということが必要ではないかというふうに思っておりますが、そういう意味では、新東京タワーといいますか、新しいそういうものの建設が必要ではないのかなと思っております。

 現在、在京の放送事業者によって新タワー推進プロジェクトというのが立ち上げられて、第一候補が墨田・台東エリア、第二候補がさいたま新都心というふうに去年発表されたようでありますけれども、ここが今後どういうふうになっていくのか、そして、結論として新タワーをつくるのかつくらないのか。二〇一一年にアナログが終わるわけですから、そうしますと、やはりそれだけのインフラをきちっと整備しなきゃならないという意味では、新東京タワーをつくるかつくらないかというのはこれから大変大事な時期になるのではないかと思っておりますが、その辺について確認させていただきたいと思います。

清水政府参考人 先生御指摘のとおりに、関東広域圏の地上デジタルテレビ放送が二〇〇三年の十二月から始まりまして、これはおかげさまで順調に運用されてきておりますが、先ほど御指摘の東京タワー、これがやはり、今、関東エリアで二百メートル級のビルが建ちまして、三百三十三メートルのところですが、高さはそれなんですが、発信地点はもう少し下になりますので、その高さで、やはり電波の届かないところが生じ得るという心配。

 デジタル放送を始めますと、その中で、ワンセグ放送という形で、テレビ画面を実際上携帯で受信できるような形のサービスがございます。これは非常に受信の感度が低いもので、なるべく高いところからサービスを提供するとより広く広がります。そういう意味での安定した携帯受信サービスの実現のため。

 それから、昭和三十三年にこの東京タワーが建っておりますので、その後いろいろと補修はやっておりますけれども、いわば長期的な耐震性の確保というところでは今の東京タワーでよいのかどうかということになっておりまして、現在、NHK及び民放キー局五社が共同で新タワー推進プロジェクトというのを発足させまして、新しいタワーの可能性について検討しております。

 御指摘のございましたような形で、昨年三月に、大体十五の地域から提案を受けました。その中で、墨田・台東エリア、これは立地条件と技術面がすぐれているということ、これも高さは六百メートルぐらいなんですが、それがすぐれているということから、また、さいたま新都心については、東京が仮に震災に遭った場合を想定しても放送のバックアップ機能が可能というようなところから、候補地をこの二つに絞りました。このほか、やはり経費の問題がございますので、移転の可否も含めて、今の東京タワーで、もう少しこれも高くするという案がありますので、高くするというのはアンテナの位置を高くするわけですが、そういう点もありますので、可否も含めて結論を出すという必要がございます。

 昨年末までに結論を出すということで関係の候補地の自治体との協議を進めていたと伺っておりますけれども、やはり防災面の措置ですとか、それから、タワーが事業性があるのかどうかという点がございますので、引き続き本年三月まで延期して鋭意検討を進めていると聞いております。

 いずれにいたしましても、タワーの建設場所等については、基本的に放送事業者が事業経営の観点から決定すべき事項でございますので、総務省としても状況を注視しているところでございます。

田端分科員 いずれにしても、二〇一一年、完全なデジタル化に向けての準備として、ぜひ検討をよろしくひとつお願いしたいと思います。

 もう一点お伺いしたいんですが、実は、地方議員の年金制度でありますが、平成十四年に、四年に一度の財政再計算ということで改正をされました。そして、それから四年たったこの平成十八年が改正の時期に当たっているんだろうというふうに私聞いておりますが、実は、市町村合併が今総務省主導において行われていまして、大変順調に進んでおります。今、千八百幾つかと思いますが、当時から比べると、三千ぐらいあったんだろうと思いますが、大変大幅に進んだことと思います。

 したがって、逆に言いますと、議員の数が減ってくるわけでありますから、そういう意味では、単なる財政的な再計算という今までの要素にプラス、市町村合併によって、議員数の変更によっての、それを加味した地方議員の年金制度というもののあり方が検討される必要があるのではないかなと思っておりますし、また、今総務省ではそういう法案も予定されているというふうにも聞いておりますけれども、先日来、その中身が一部ニュースで出まして、給付金額が一二・五%ぐらい引き下げになるというニュースが出たものですから、いろいろな意味で、全国的に、地方議員の方々から、どういうふうになるんだというふうなことが私どもの方にも問い合わせが来ているわけであります。

 特に、国会議員の年金が廃止になったものですから、その議論とごっちゃになりまして、やがては地方議員の方もなくなるのではないか、そういう不安感もお持ちのようでありまして、今総務省が考えていることと、そういう年金制度がどうなるかということ、ここの話をしっかりと区分しておかないと逆にいろいろな意味の影響があるのではないか、こういうふうにまた心配しているところでございますので、その辺について、まあ法案がこれからだと思いますが、今時点におけるお考えをお尋ねしたいと思います。

小笠原政府参考人 地方議員の年金につきましては、今先生お話しのような御事情がございます。

 したがいまして、私ども総務省では、昨年七月から、学識経験者あるいは各議員共済会の代表者等で構成されます年金の検討会というものを開催いたしまして、対応策を取りまとめていただきました。先般まとまったところでございます。

 中身はちょっと、きょうは略させていただきますが、いずれにしましても、その検討会の報告書によりましても、地方議会議員年金制度を将来にわたって安定した制度とするために講ずべき施策について検討を行っていただいたものでございまして、報告書におきましても、述べられた措置を講ずることによりまして、おおむね二十年後においても安定した給付が可能となるものとされているところでございます。

 総務省としても、この検討会でお取りまとめいただきました対応策を踏まえまして、現在、今国会に所要の法案を提出する準備を進めているところでございます。

田端分科員 時間が来ました。ありがとうございました。

河村(建)主査代理 これにて田端正広君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉健太君。

泉分科員 民主党衆議院の泉健太でございます。

 きょうは、予算の分科会ということで、竹中大臣、そして河村主査、また自民党からは臼井委員、また民主党から小川委員、それぞれ、大変長時間お時間をいただきまして、本当にありがとうございます。

 そして、私からは、こうして大臣に質問させていただく機会でございますので、ちょうどことし四月から行政手続法がまた前に進んで実際に改正がスタートするということで、国会審議も昨年来ずっと続いて、そして昨年の六月にこの法案が成立をしたわけですけれども、そういったことと多少重なる部分もあるかもしれませんが、実際この四月スタートを前にして改めて確認と、また、できれば前向きなお答えもいただければということで、きょう立たせていただきました。

 まず、この行政手続法が変わっていくという中で、その前段階として、きょうはパブリックコメントについてぜひお伺いをしたいと思うわけですけれども、やはり、パブリックコメントというのは、多くの国民にとっても非常にいい意味で波及をした制度じゃないのかなというふうに思っておりまして、この手続によって国民と政府の距離、国民と政策決定の距離というのは格段に縮まったものだというふうに私は思っておりまして、大変評価のできる制度だというふうに思っております。そういう中で、しかし、いろいろと総務省の方でも各省庁に対して協力を呼びかけているという状況であると思うんですが、その中で幾つか問題点が浮上しているかと思います。このことについてまずお伺いをしたいというふうに思っております。

 といいますのも、実際に、今、総務省の方からは、パブリックコメントのいわゆるモデル的な形として、幾つかの、例えば意見を募集する期間ですとか、あるいはそれを公表するということを書き込んでいったりですとか、それぞれ取り決めをしているわけですが、それがなかなか守られていないんじゃないのかという声は以前から上がっているわけなんです。そういうことについて、きょうは幾つか質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、昨年、総務省が平成十六年度の各省庁でのパブリックコメントの実施状況というものの結果を出されております。その中で、まず閣議決定対象案件ということでの調査結果を出されているわけですが、パブリックコメントに付すもので、本来は政府の閣議決定の中で三十日を一定の目安として意見募集を行うということになっているわけですが、実際上は、十五日未満の意見募集が百三件、二一・二%、十五日以上二十五日未満が百十二件、二三%、二十五日以上三十日未満が五十九件、一二・一%、合計五六・三%がいわゆる政府の言う三十日という期間を短くしてしまっている現状があるわけなんです。

 そこには恐らくいろいろ理由がある。予算の拘束であったり、あるいは緊急性を要するものであったりというような理由があるというふうに私は聞いているわけですが、理由があるにせよ、政府が一定三十日という基準を出しながら、ここまで、半数以上が三十日を下回っているという現状からすると、これは検討会の中でもいろいろと議論があったというふうにも思うんですが、この三十日という数字について、今後どのように考えられているのか、まずこれを大臣にお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 きょうは、パブリックコメントという大変重要な問題をお取り上げをいただいております。

 言うまでもありませんけれども、民主主義社会ですから民意を反映する、その民意の反映の一つの重要な手段としてパブコメは極めて重要でありますし、この制度の前向きな活用というのを政府も国民も考えていかなきゃいけないということだと思います。しかしながら、この制度が始まって余り長くないということもあって、まだその定着の途上である、政府にも国民にもまだまだ努力が求められているということであるというふうに思っております。

 基本的に、今の御質問は、その三十日というのがよいのか悪いのかという直接のお尋ねでございますけれども、これはいろいろな経緯を経て今の制度を動かし始めているところでございます。長期的には、三十日がよいか悪いかという問題もあろうかと思いますし、現実に私も幾つか担当しましたものの中では、なかなかパブコメにかけるまでのプロセスに時間がかかって、いろいろな枠組みをつくるのに、合意形成をするのに時間がかかって、そこでなかなか三十日の時間がとれなかったとかいうような例もございますので、そういうような実情も今後はしっかりと検討していく必要があろうかと思います。

 ただ、やはりせっかくつくった制度でございますので、我々としては、まず今の制度の中でこれをしっかりと運用する、定着させるということに当面の努力をするべきであろうかというふうに思っているところでございます。

 総務省としても、そのための周知を行う、そして運用のチェックを行うということを当面しっかりやっていきたいというふうに考えております。

泉分科員 これは、さらに言うと、三十日を下回る意見募集の場合には、これは平成十六年三月十九日の閣議決定の中でも、理由を公表しなければならないということになっているわけなんですね。制度は非常によくできている。しかし、その理由を公表しなければならないという閣議決定に対して、それを守らず公表していない例が八九・八%だ。簡単に言うと、閣議決定で決められていることを守っていない。

 今、ちょうどBSEの問題で随分と閣議決定違反のことが話題になっていて、閣議決定を守らないというのはそれだけ大きいことだという議論がされている中で、パブリックコメント全体の中で三十日未満の意見募集については理由を付する、にもかかわらずそれが守られていない数が何と八九・八%。これはやはり余りにも閣議決定が軽い、形骸化しているということになってしまうのではないのかなというふうに思うわけです。

 それに対して、大臣、閣議決定の重みというものも含めて、私は、正直、これだったら閣議決定なんかやらない方がいいというふうに思うわけなんですが、閣議決定をやらなかった方がよかったのか。それとも、やはり、やったということであれば、これは何年間か放置されている状態が続いているわけです、それから考えると、やってきましたということは理由にならないわけでして、何が問題であったのか、この理由をお聞かせいただきたいというふうに思います。

竹中国務大臣 確かに、実は、もう委員が数字を挙げてくださいましたけれども、そのとおりでございまして、平成十六年三月十九日以降に意見、情報の募集を行った閣議決定対象案件のうち、募集期間が三十日を下回るものについてその理由を公表していない例というのが、実は二百二十八件ございます。その意味では八九・八%ある。ちょっと正直言いまして、私もこの数字を聞いて、こんなにあるのかというふうに、これは担当大臣としては申しわけありませんが、この数字を聞いて驚いております。

 その理由について、先ほど申し上げましたように、やはり根回しに、そこにいくまでに時間がかかっているということもあろうかと思いますが、しかし、これはルールですから、しかも閣議決定という極めて重要なルールでありますから、これはしっかりと守っていただかなければいけないと思います。事務方としても確かにこれまでいろいろなフォローアップはしてきたわけでありますけれども、ここまで守られていない比率が高いということになると、やはり何らか今までとは違う次のステップを考えなければいけないという気が私もしております。

 当面は、担当大臣に私の方からよろしくぜひ守っていただきたいということを要請するというのが第一ステップでございますが、そういう、大臣としてまずやるべきことをした上で、同時に、委員御指摘のように、もう少し精査してというか精緻に、なぜこういう事情になっているのかということに対して我々としてももう少し踏み込んだ検討が必要だな、この数字を見て私もそのように思っているところでございます。

 きょうの時点で、こうこうするということを、ちょっとお約束できる素材はないのでございますけれども、やはり、このまま今までのことを続けていてよいというふうには思いません。ですから、そこは大臣としてできることを、省としてできることを考えてみたいと思います。

泉分科員 ぜひそれはやはりお考えをいただきたいというふうに思います。

 私も総務省から分厚いパブリックコメントの報告書をいただいて一枚一枚めくって見ていったんですが、理由を付さないという項目のところも一、二と選択できるようになっていて、ほとんど二という理由なしというところのチェックボックスに印がついていたという状況がありますし、その上に、一応理由が書いてあるんですが、理由が出されていなかったけれども、理由が書いてある項目がありまして、それは総務省が幾つかの選択肢から選ばせるようにして、緊急性があったからとか、そういうふうにしているということで、かなり各省庁に対する徹底が緩いんじゃないのかなということを私も感じます。

 実はきょう、また午後に私は経産の分科会で質問をするんですが、そこでは経産省に対してもこれは厳しく言うつもりですので、私が言うよりも大臣から、総務省から言っていただくのが一番だ、これは間違いなくそうでございますので、ぜひ来年はそういうことがないように、来年いただく結果では、十七年のパブリックコメントの結果ということでいただくわけですから、もう遅いのかもしれませんけれども、ぜひやはりこの数字を大きく改善していただきたいということをまずお願いさせていただきたいというふうに思います。

 それで、一方で周知と意見募集に関してです。

 平成十六年一月からe―Govにこのパブリックコメントを載せるということが義務というふうに私は解釈をしているんですが、これが連絡会議決定ということで平成十五年の七月十七日になされているわけですね。ぜひこのe―Govというものを活用して、各省庁ばらばらにホームページに載せるんじゃなくして、すべて一つのページにパブリックコメントをずらっと載せようじゃないかということを決められているわけなんです。

 では、こちらはどうかというと、閣議決定案件でいいますと、載せておりますのが五三・五%という数字が出ております。これに載せられていない理由、これも教えていただけますでしょうか。

藤井政府参考人 一言で申し上げますなら、やはり各省庁になかなか現場まで徹底されていなかったということかと思って反省はしております。

泉分科員 閣議決定外の案件であれば、私はまだそれは許されると思うんです。しかし、パブリックコメントというこの手続ができて、国民の皆さんは何かがあれば国民に聞いてくれる政府なんだなというふうに思ってこの制度がスタートしているし、パブリックコメントという言葉そのものはそれぐらいにブランド化している言葉だというふうに私は思うんです。ただ単なる意見募集という使い方をされているところもありますけれども、パブリックコメントというその単語を使う以上は、国民の皆さんに一定のイメージを間違いなく与えているわけですね。私は、そこの重み、このブランドというもののイメージは壊していただきたくないというふうに思うんです。

 もし可能であれば、意見募集なら意見募集、パブリックコメントならパブリックコメント、実はこの間私もいろいろ省庁にお伺いしたら、今ちょっとあいまいに使われていると言うんですね、パブリックコメントとも言えるし意見募集とも言えますという言い方で。ちょっとあいまいなので、これはどこかでしっかり線引きをしていただいて、かわりにパブリックコメントはきっちりかっちりこのe―Govにもちゃんと載せる。そして、意見募集の期日はこうだ、そして上がってきた意見は必ず公表する、それ以外の意見募集、パブリックコメントには至らないけれども前段階のものとしてはこういうものがある、そういう使い分けを、しっかりまずしていただくことが大切じゃないのかなというふうに私は思っております。

 今あいまいになっているその言葉の使い方をぜひ明確に分けていただきたいという提案を大臣に私はさせていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

藤井政府参考人 まず、e―Govに一元的なパブコメの窓口を設けることにした理由とか経緯について御説明させていただきたいんですが、もともとパブコメというのは、従来、紙であったり郵送であったり、あるいは直接出てこられるとか、そういう非常に国民にとってアクセスのしやすいようなやり方でやられていたんですが、それが第二段階として各省のホームページにそういうアクセスポイントを設けるというような形でやろうということでやっていたんですが、これも各省ばらばらにやっていたら国民にとって非常にわかりにくいというようなことがありまして、そこで今電子政府を進めているところなんですが、やはり国民と政府とのいわば一番大事なアクセスポイントを一元化しよう、情報の提供と意見の受領のポイントを一元化するということによって、より国民からアクセスしやすい、そういうような仕組みにしようとしたということでございます。

 ただ、これは閣議決定もそうですが、いろいろなものがございます。法律の権利義務の制限に係るような、政省令のようないわば法規範としてのものもありますし、もう一つは、やはり政策として閣議決定するとか、あるいは政策としてCIO連絡会議で申し合わせするとかいうものがございます。

 こういう政策に係るものといっても、それは当然内閣としての最高の意思決定でもありますし、それから、CIO連絡会議も、これは各省の情報化のいわば統括責任者の申し合わせでございますので、政策決定に関するものとしても重いことは重いんですが、ただ、政策ですので、予算とかシステムの整備とかそういうようなもろもろのことを準備した上で、政府全体として統一的にこういうことをやっていこうという方針を定めた性格のものでございます。したがいまして、やはり法律とはちょっと違って、いろいろ各省の御都合があって、なかなかすぐにはその方針にのっとられないという場合もあっても、そこは法律論的にどうのこうのということにはならないかと思っております。

 ただ、これも委員御承知だと思いますが、まさにこの点を踏まえまして、四月からは行政手続法による明確な義務づけにしたわけでございます。その際には、我々も、改めてこの三月までの準備段階の中で各省に対しては積極的に徹底していきたい、こういうふうに考えているところでございます。

竹中国務大臣 今局長から答弁があったとおりなのでございますけれども、今回、法律もしっかりとした枠組みを与えて、規範的なものをしっかりと示すようになってまいります。

 これまでの経験からいっても、このパブコメはやったことがあるんですけれども、これはやらなきゃいけないんだなと聞いたら、いや、やってもやらなくてもいいんですというパブコメも、確かに、それをパブコメと呼んでいるんですよね、今までも。確かに、意見聴取、委員御指摘のとおりなんです。これは閣議決定で決めてやらなければならないものと、念のためにといいますか、まさに民意を聞いてみたいということ、ないしは念には念を入れてやるものというのがちょっと混在していたというのが、各省庁の意識を少し低いものにしていた一つの要因であったというふうに私も思っております。

 ただ、やはり民意の尊重、その意味でのパブリックコメントの手続というのは本当に私は重いものだと思いますから、そういう観点で、今回、仕組みが変わるというこの契機にしっかりとこれを周知徹底させる、その努力を総務大臣としてぜひやりたいと思っております。

泉分科員 ありがたい御答弁だと思いますが、何もなかったころから平成十一年にパブリックコメントを始めて、平成十三年ですとか幾度の改正を経て、その都度、私は強化をしてきたはずの歴史だと思っているんですね、その都度、次からは次からはというときだったわけですので、今回も、法律は変わったけれどもやはり諸般の事情でということにはしていただきたくないと思うんです。

 今、よかったら大臣にちょっとこれを見ていただきたいと思うんですが、連絡会決定。そこの上を読んでいただきたいわけですが、しなければならない、掲載しなければならないということはちゃんと書いてあるわけですね。閣議決定もあり、各省庁の連絡会議の決定もあり、法律に書く書かないではなくて、同じようにもう既に私は義務化されているものじゃないのかなという認識なんです。

 これが法律になったから必ず変わるのかというと、今の段階では正直余り信頼できないというのが過去の例から導き出す結論になってしまうものですから、ぜひ私の今の前提を覆していただいて、四月からは間違いなく、少なくともですよ、いろいろな法令、パブリックコメントに必ず付すべきものもあります、その必ず付すべきものの中に諸般の事情があって要件を満たしにくいものもあります、あるいは付さなくてもいいものについてまで皆さんは行政サービスの一環として努力を、まさに自分で努力をされているものもあります、そういうものについても、パブリックコメントあるいは意見募集、結果公表というものをやる以上は、やったら、あとはe―Govに載せるか載せないかの話ですよね。やっているのにe―Govに載せていないというのは、これはある意味e―Gov側の怠慢なのか、やったことについて情報を上げない各省庁の怠慢なのかという問題になるわけですね。

 やっているのに載っていないというのは、これはおかしな話なんです。やらなかったんだったら、それはしようがないけれども、やっているのにe―Govに載っていないということは、申しわけありませんが、厳しい質問ですが、これは総務省の責任なんですか、それともe―Govに載っていないということについては各省庁の責任なんですか。

藤井政府参考人 お答えします。

 法律の具体的な条文の遵守は、基本的に行政機関の長、すなわち、各府省の大臣の義務とされているところでございます。ですから、第一義的にはやはり各府省の大臣が義務を負うということになります。

 ただ、私どももそれでいいかと申しますと、やはり、この法律、制度全体が円滑に運営されていくと、ある程度問題点があれば必要に応じて見直していくという立場にございます。そういう意味で、私どもは年一回ぐらい必ず調査をすることにしておりまして、そういう調査結果をして問題があればいろいろ御指導申し上げますし、当面はそういうことはないと思いますけれども、制度の根幹にかかわるような話があれば、やはりそれは制度の見直しまで持っていかなきゃいかぬ、そういう責務はあるというふうに認識しております。

泉分科員 大臣、私は政府に入ったことがありませんので、ある意味教えていただきたいんですが、閣議決定違反、あるいはこういった連絡会議決定違反というふうに私はあえて呼ばせていただきますけれども、私はそういうものは重たいものだと思うんですね。その場合に組織の中で明確な処分というものがなされるのかということでいえば、それは特に官庁の中では例はないんだというふうに私は思います。しかし一方で、戒告だの厳重注意だの、そういう処分以外にどういうような責任のとり方をしているのか。

 例えば、ちゃんときょうの審議の後に大臣からそれぞれの担当部署に対して必ず改善をするべきだということがなされるものなのか、それともなかなか現状は変えられないものなのか。私は麻生大臣にしても大変有能な方だというふうに思っておりますので、なぜこのような状態が、いつも実施状況という報告書だけは毎年上がってくるが、報告書をつくるのが仕事じゃなくて、本来改善をするのが仕事なわけですから、ここをどうすれば職員を動かして中身を改善することができるのか、ちょっと大臣にそのことをお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 これは私の認識、印象でありますけれども、政府の中で仕事をさせていただいて、政府というのは本当に大きな組織ですね、それで、つかさつかさで非常に大変な仕事を抱えて、日々過ごしていっているという状況なんだと思います。その中で、どうしてもそれぞれの仕事の中で埋没してしまって、全体としてこういう仕組みになっているということについては、皆さん大変リーガルマインドを持っておられるんですけれども、ともすれば見落とされるような問題も出てくるんだと思います。

 同時に、これも私の霞が関観でございますけれども、役所というのはその意味では非常に厳格な命令系統を持っておりますので、しっかりと命令系統に乗っかって指示を出した場合は、それがかなり徹底されるというのも、私は一つの経験で申し上げてよいことではないかと思います。

 その意味では、これまでもいろいろ努力はあったんだと思いますが、今回もう一度そういう命令系統でしっかりとやってもらわなければ困るということを発しまして、情報を発して、これは一種の仕組みの問題というよりは規律、運用の問題でありますので、そういう形で霞が関という大きな組織を、この命令系統を活用してしっかりとこれを徹底させるということを私としては試みたいというふうに思っております。

泉分科員 大きな組織かつ歴史のある組織ですから、なかなか、組織を動かすことは一般的には難しいとよく言われているわけですけれども、一方でやはり緊張感を常に持っていただきたい。こういう状態を何年も続けるのではなくして、例えばこの解決を導き出せればもちろん評価にもつながるし、あるいは、これを放置しておくことは、あなたにとってもその部署部署の担当の方々にとっても決してプラスではないことなんだよということを、それはどういった形で伝えるかはいろいろあると思いますけれども、そういう緊張感を持って仕事をしていただいて、課題の設定とその解決をやはり各部署部署でやっていただく必要があるんじゃないのかなということを、本当にお釈迦様に説法するようなお話ではございますけれども、ぜひ改めてお願いをしたいというふうに思います。

 それで、周知の方法についてはいろいろな手段があるわけです。確かに、今、インターネットが普及をしてくる中ではそれが一番であろうし、また、実際上もすべて記者会見ですることもできなければ、すべて文書で告知をすることもできなければ、官報に載せてそれでいいということにもならないというふうにも思うわけです。そういう中で、国の方は、パブリックコメントについての公表方法ということについては、例えば昨年度の実績でいいますと、報道発表しているものは三二・三%ということになっています。約三割が報道発表、報道発表していないものが七割。もちろん、細かいものもたくさんありますから、これは仕方がないというふうに思うわけですが、何をもってして発表をした、周知をしたというふうにお考えになられているのかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

 というのは、これは総務省の実施状況の調査結果でも、官報に載せているという項目が一件もないんですね。そもそも公表方法の項目にも官報というものがないわけでして、一番最初にパブリックコメントの手続を定めたときには、方法としては官報掲載というのも載っているんですが、一切これはやられていないということなのか、その理由も含めてお聞かせいただきたいと思います。

藤井政府参考人 お答えいたします。

 今やっているのは、閣議決定に基づく、いわば、先ほどちょっと申し上げましたが、政策の一つとしてやっているということであって、特段、いわば法令手続のような要式行為というものを余り求めておりません。

 ただ、そこは今回法律化したことになるわけです。ですから、法律化したのであれば、やはり法律上の手続として、国民にまず知っていただいて、意見をいただいて、それを踏まえて検討して、検討した結果、採択するものは採択するし、採択しなかったものはその理由をやる、こういう行為をそれぞれ法律上の義務としてやっています。

 ですから、今できるのは、法律によりますと、まず最初の政省令の案は公示しろ、そういう義務づけになっております。その公示の一環として、官報ももちろんあると思いますが、インターネットも公示の方法としていいよということにしたのが今回の手続法の特色なんでございます。

 ですから、そこはなかなか委員の御質問にお答えしにくいところがあるんですが、いわば政策の一つとしてやっているような閣議決定というのは、余りそういう形式的なところをぎりぎりやっていない。できれば政府全体としてこういうことでやっていこうじゃないかというような、ちょっと大ざっぱと言ったら語弊があると思いますけれども、むしろ、そういう政策を重点的に実施していこうという中でやっていることと、あと、正式の法律に基づいて、これはやはり国民の権利義務にかかわる政省令なんかを定めるときには必要な法律上の手続なんだという位置づけでやっていくということでの意味合いの違いは大きいと思っております。

泉分科員 その意味合いの違いというものをうやむやにせず、ぜひ徹底をしていただきたいと思います。

 きょうの私の質問で、これは最後の質問になりますけれども、大臣、改めて確認をさせていただきたいのは、重複になりますが、念押しという意味で、これまでのパブリックコメントの意見募集の期間が三十日に満たなかった場合は理由を付さなければならないとなっていた閣議決定があり、その閣議決定を守っていなかったものが八九・八%あり、それは、今後、行政手続法が四月一日からやっていく中で大きく改善をしていくものだというふうに思いますし、また、e―Govに掲載をするという省庁の連絡会議における決定も、これまでは半分ぐらいしか守られていなかったけれども、それもしっかりと守っていくということを、最後に改めて御決意としてお言葉を直接いただいて、私は質問を終わらせていただきたいと思います。

竹中国務大臣 きょう御指摘のありました八九・八%という数字は、やはり私自身にとりましても、大変、余りに印象的な数字でございます。そうしたことを踏まえて、総務大臣としてしっかり責任を果たしていくように全力を挙げるつもりでおります。

泉分科員 ありがとうございました。

河村(建)主査代理 これにて泉健太君の質疑は終了いたしました。

    〔河村(建)主査代理退席、主査着席〕

田中主査 次に、黄川田徹君。

黄川田分科員 民主党の黄川田徹であります。

 通告しておりますけれども、ちょっと順序を変えて質問したいと思います。最初は市町村合併、そして自治体の破綻法、そして時間があれば地方交付税に関連した質問をしていきたいと思います。

 まず最初に、基礎的自治体について大臣の所見をお伺いいたしたいと思っております。

 私は、ヨーロッパに行ったことはありませんけれども、市町村職員の経験はあります。ヨーロッパでも新しい市町村の合併というような動きはありますけれども、特にフランスなんでありますけれども、住民にとっての近接性といいますか、身近なところが地方自治の基本原則とされておりまして、平均人口がたしか千五百人程度の基礎自治体、コミューンが今でも維持されている、こう思っております。そしてまた、ドイツなどもそれぞれ基礎的自治体としてうまく機能している、こう思っております。

 一方、我が国では明治の大合併、昭和の大合併、そして今日の平成の大合併ということで、どうしても民からというよりも官からされた合併というふうな感じでありまして、しかしながら、身近な部分ということで、市町村合併の特例法、そしてまた合併新法ですか、この中で地域自治区とか設けながら頑張ろうということでありますけれども、合併になって動き出しておりますけれども、どこまでこの地域住民が参加できるかどうかという部分もあると思っております。

 もちろん、国の成り立ちですね、例えばヨーロッパであれば教会が中心となっていろいろ地域ができているとかいろいろなことがありますけれども、日本の基礎的自治体、そしてまたフランス、ドイツ等の基礎的自治体の根本的な違い等々を大臣の御所見があればお伺いいたしたいと思います。

竹中国務大臣 黄川田委員から、冒頭から大変難しい御質問をいただいたと思っております。私も実はヨーロッパの実態を余り存じ上げませんので、的確なお答えができるかどうかあれなんですけれども。

 いずれにしても、我々が今直面している問題というのは、基礎的自治体として地方でできることは地方でということを見直したいとして、一定の経営規模といいますか財務の基盤をしっかり持っていただきたい、しかし一方で、これは、まさに重要なのはコミュニティーでありますから、非常にきめ細かくそのコミュニティーの需要を充足するような機能もしっかりと持っていっていただきたい、その二つの要請をいかに両立させるかということだと思っております。そういう観点で、委員御指摘のように、いろいろな形、いろいろな国の比較を行いながら我々の位置づけをしていくということは大変重要であるというふうに思います。

 恐らく、フランスのコミューンと日本の市町村との一番大きな相違点というのは、それが総合的行政主体であるかどうかということなのであろうと思います。つまり、日本の市町村が、福祉、教育、まちづくりなど住民に身近な行政を総合的に処理する。総合的にというのは、一つの完結したというようなイメージで申し上げてもいいのかもしれませんが。そういうものであるのに対して、フランスのコミューンは、例えば教育に関しては小学校及び幼稚園のみを担って、中学校は担っていないということなんだそうでございます。必ずしも事務を総合的に担うものとはなっていない。広域自治体であるデパルトマンやコミューンの共同体等で担うことが一般的であるというふうに承知をしております。

 このため、日本の市町村は担うべき事務の量的、質的変化に応じまして、市町村合併によりまして、明治の大合併、昭和の大合併、その区域の見直しを順次行ってきたわけでございます。コミューンの区域はフランス革命以来大きな変更が行われていないものというふうに認識をしておりまして、独立した総合的なものであるのか、その機能を部分的に担う存在であるのか、そういうところの相違はあるのかなというふうに思っております。

黄川田分科員 きのう、地方制度調査会から道州制の導入ということで答申がありました。

 市町村合併が進んでいきますと、合併できなかった市町村、したくてもできなかった町村等々あるわけでありまして、であれば県がそういうできなくなった仕事を肩がわりするのかとか、あるいはまた、大きくなった自治体からすればもう県の仕事はないんじゃないのかとか、中二階みたいな形の中ではだめだとか、いろいろな議論があると思いますが、やはり議論の根底は、国民、住民に身近なところの基礎的自治体がしっかりするのかどうなんだということだと思います。もちろん財政的な足腰の強さ、これは大事でありますけれども、ただ、やはり歴代首長さんたちが、自分たちの町といいますか、顔が見えるためにみんな頑張ってきたわけですよね。財政状況一つのためにみんな顔がなくなってしまうというのは寂しい面がしますので、よろしくお願いしたいと思います。

 平成の大合併でありますけれども、九九年三月末で三千二百三十二あった市町村のうち、六割を超す千九百九十二団体が合併にかかわりまして、ことし三月末で千八百二十市町村に減少するということであります。市町村合併も先が見えてきたのかなと。もちろん、最初の政府の方針は三千を千というふうな形もありますけれども、大体見えてきたのかなと思っております。

 ただ、一昔前でありますけれども、合併に関して議論華やかだったころ、地元の首長あるいは議員の皆さんがやってきた。いろいろ勉強したいということなのでありますけれども。首長からすれば、将来計画、特に首長になれば議会に対して基本構想をつくり、提出し、そして、前期の五年の基本計画とか後期の基本計画とか、単年度ごとの実施計画等々あるのでありますけれども、やはり財政がきちっと見えてこなきゃいけないということがあると思うんですよ。地方交付税の将来の予見性がなかなか見えてこない。中長期の地方財政計画などいろいろ見えてこないというところがあって、さまざまな課題があると思っております。

 そこで、昨年十二月ですか、地方財政審議会でありますけれども、交付税改革の一環として、中期地方財政ビジョンの作成を指摘していたと思っております。この話は新しいことではなくて、大臣そのものでありますけれども、一昨年八月、竹中大臣が主宰する経済財政諮問会議でも取り上げられたと聞いております。その後、この中期計画といいますか総務省の検討状況はどうなっておるのでしょうか。

竹中国務大臣 委員御指摘のとおり、地方の運営を預かる皆さん方から、やはり交付税を中心に一種の予見可能性がないと安定的なビジョンに基づく運営ができない、そういうお声をずっと聞いてまいりました。全くそこはそのとおりであろうかと思います。特に、二年前ですか、十六年ですね、交付税が減ったことによって……(黄川田分科員「十六年度です」と呼ぶ)十六年度ですね、大変いろいろな問題が出てきたということも踏まえて、その予見可能性というのがいろいろな形で議論されるようになったと承知をしております。

 そういう観点から、経済財政諮問会議でも中期の地方財政ビジョンの策定を行うということを議論してまいりまして、今、我々としては十八年度中に策定する方向で議論を進めているところでございます。

 その際に重要なのは、実は今、同時に二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支の黒字化に向けて国と地方が歩調を合わせて歳出歳入一体改革を進めるということにしているわけでございます。こうした中では、ともすれば、国の財政の担当者から見ると、地方交付税を減らせ減らせというような形にどうしてもなるわけでございますけれども、それはやはり改革の本質とは違うわけでございます。

 そういう観点から、我々としては、国も地方もスリム化に当然努力をしなければいけない。そういう中で、総合的な観点から、国と地方のあり方も議論をしながら、そして中期地方財政ビジョンにそういう姿を盛り込んでいきたいというふうに考えているところでございます。歳出歳入一体改革の議論と合わせるような形で、我々もこの中期地方財政ビジョンを策定してまいりたい。その中で、今までもいろいろ議論されております、地方の自由度を高める、そういう構造的な問題もぜひ織り込むような形で議論を進めたいというふうに思っております。

黄川田分科員 計画を立てるときはいつも財務省とのいろいろな闘いがあると思いますけれども、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それで、現実の自治体の財政状況といいますか、ちょっと確認したいと思います。

 市町村合併は峠を越えたわけなのでありますけれども、平成十六年度の全国の自治体の決算状況でありますけれども、どういう形になっていますか。特に、赤字決算に陥った団体はどの程度あるのか、そしてその特徴、どういう形なのか、お尋ねいたします。

瀧野政府参考人 十六年度の決算状況でございますけれども、歳入につきましては前年度比一・五%の減、約九十三兆四千億、歳出につきましても同じように一・四%の減で約九十一兆二千億、こういう状況で、いずれも五年連続で前年度決算額を下回るというような状況でございます。

 また、実質収支が赤字の団体数でございますけれども、全地方団体の約〇・六%を占めます二十六団体が赤字団体というような状況でございますし、そのうち十五団体が平成十五年度から引き続き赤字、そういう状況になっているところでございます。

黄川田分科員 十年、二十年前であれば、赤字の団体が出ること自体、ほとんど全くないというふうな時代があったんですが、一たん赤字になると継続して赤字になる団体も現実出てきているという状況、この五年間の財政削減の現実だと思っております。

 それで、今、国会をやっておりますけれども、地方議会も、始まったところ、これから始まるところがありますけれども、この予算編成で首長さんたちは本当に大変な苦労をしているところでありまして、そしてまた、私の丸ごと中山間地の岩手みたいなところでは、本当にどの首長さんも財政破綻を回避すべく総力戦でやっておるわけなんでありますけれども。また、一方、市民、住民に公表される予算というのが一般会計を主としておりまして、本当に自分たちの町の予算がどういうものかということが、意外と一人一人には知られておらないところがあるわけであります。例えば土地開発公社であるとか、あるいはまた市町村立病院とか、巨額の隠れ債務対策で綱渡りしている団体もあるやに聞いております。

 そういう危機的状況を、国家もそうなのでありますけれども、もっと国民、住民一人一人がしっかりと認識しなきゃいけないということだと思っておるのでありますけれども。もちろん、これは市町村の仕事であります。当然、市町村の仕事でありますけれども、国の財政状況も踏まえていろいろ市民に情報開示できるようないろいろな仕組みがあればと思っているんですが、総務大臣は国の大臣でありますけれども、仮に一万人未満の市町村の首長となったという形の中で、今日の一万人未満の町村財政ということを住民に理解してもらうにはどんな形をとったらいいのか、何か御所見があればお尋ねいたします。

竹中国務大臣 まさに、私は前から申し上げているんですが、民主主義社会において、国にしても地方にしても、やはり公の部門というのはわかりやすくなければいけないと思います。この制度が複雑であればあるほど住民のチェックというのがきかない、それは結局住民にはね返ってくるということなんだと思うんです。その意味で、民主主義制度においてよい制度の一つの要件は、わかりやすい制度であるということだと私は思っております。

 その意味では、わかりやすくその中身を開示できるような仕組みというのをどうしてもつくっていただきたいし、それに関して総務省ができることはしっかりとやっていかなければいけないというふうに思っております。

 これは、今、総務省は、各地方団体の詳細な財政状況が一覧できますように決算状況書などの各種調査、統計データをホームページに記載するなどの開示に我々も努めているところでございます。また、今年度から、類似団体間で主要な財政指標の比較を行ってもらって、住民にわかりやすく開示する方法が重要だと考えまして、その一つとして、財政比較分析表というのを各地方公共団体の協力を得て作成、公表することとしております。本年の三月末までに、すべての都道府県、市町村の財政比較分析表を総務省のホームページを通じて閲覧可能とする、そういうつもりでおります。

 もう一つは、やはり普通会計と公営企業会計を連結した地方公共団体全体のバランスシートのようなものを、これはわかりやすくという以前に、そういう情報そのものをしっかりつくっていくということが重要だと思っておりまして、ことし三月には全都道府県と政令市でこの試案を公表する予定にしております。

 こうしたことも含めて、近々発足させることを予定しているんですけれども、公会計の整備に関する検討体制をさらにしっかりつくろうと思っておりまして、その中でも財政情報の開示の視点から御議論をいただきまして、情報開示に一層努めたいというふうに考えております。このスタンスはぜひ貫きたいと思っております。

黄川田分科員 丁寧な御答弁でありますので、時間が短くなってきました。

 住民、特に職員の意識改革が一番大事だと思っておりますし、そういう改革はこういう合併とか大きな時代の変革の中でしっかりと身につくと思っておりますので、さまざまな対策に取り組んでいただきたいと思います。

 残り、ちょっと合併関連があるのでありますけれども、自治体の破綻法関連の方に移っていきたいと思っております。

 御案内のとおり、交付税の財源調整と財源保障があるわけなんでありますけれども、この財源保障範囲を狭める形でどんどん改革していきますと、地方債の債務不履行のリスクが顕在化して、財政力が弱い市町村が資金調達等々に窮する危険性が高まるのではないかと自分は思っておるわけであります。また、竹中大臣の懇談会でありますか、地方分権二十一世紀ビジョン懇談会で、財政規律を高めるべく、自治体の破綻法制の整備が進められていると聞いております。民間企業の場合と違って、破綻させればいいというわけではないですので、そこには一人一人の生身の人間がおりますので、あくまで自治体の再建というものが前提であると思っておりますが、そこで質問であります。

 その前段として、現在の財政再建法でありますが、これまでどのような役割を果たしてきたか、そしてまた、今後厳しい予算が続くと思います、ことしの予算を編成した中でも決算は赤字になるというようなところがあるかもしれません、そういう中で、我が岩手も下手すると平成十九年度には適用されそうだなというふうなところもあるんでありますけれども、今後、見込まれる団体があるのか等々もあわせてお尋ねいたします。

瀧野政府参考人 まず、地方財政再建促進特別措置法の役割についての御質問がございました。

 この再建制度は、実質収支の赤字を生じた団体が総務大臣に財政再建の申し出を行いまして、再建計画を作成して、計画に基づいて赤字の解消を図る、こういう仕組みでございます。

 再建団体は、昭和三十年の法制定以来、現在まで八百八十四団体という数に上っておりますが、昭和五十年代以降は十六団体ということで、直近では福岡県の赤池町が指定されましたけれども、既に平成十二年度に再建は完了している、こういう状況でございまして、地方団体全体としての財政再建をこの法律におきまして促進し、全体としての健全性を確保する役割を果たしてきたというふうに考えております。

 今後、再建団体となりそうな団体はどうかというお尋ねもございましたけれども、そこのところはなかなか我々も正確には把握できないわけでございますけれども、十六年度決算において実質収支赤字という団体が候補ということであるとすればでございますけれども、そういう団体は、現在、都道府県で一団体、市町村で二十四団体という状況でございます。

黄川田分科員 市町村レベルでいえば、合併したくてもできなかった団体とか、さまざま出てくるのかな、こう思っております。そしてまた、たしか標準財政規模の赤字が五%を超すと都道府県ですか、それから、二〇%を超すと市町村ですかね。どうも地方交付税にメスを入れると、何か出てきそうな気もするわけでありますけれども。

 それで、大臣が今回想定されておりますこの破綻法でありますけれども、従来の財政再建法とどのように異なるのか、お尋ねいたします。そしてまた、民間企業なら社長は責任をとって退職して、別の役員が昇格してやれなんという話もあるのかもしれませんけれども、公選の首長の立場等々もありまして、地方自治の本旨を踏まえて首長なんかやっているわけでありますけれども、それやこれや首長の思いも含めていろいろな所感があると思いますので、お尋ねいたします。

竹中国務大臣 破綻法制についてのお尋ねでございますが、これはもう何度か答弁させていただいているんですが、我々は破綻法制だけを議論しているわけでは全くなくて、従来以上に大いなる自由度を持っていただきたいというふうに思っているんです。その自由度を高めるための方策というのは、これはこれで非常にいろいろな角度から議論をしております。その自由と責任という、そこの責任の一端として破綻法制も検討しておく必要があるかという観点からの議論でございます。どういう形のものになっていくかというのは、議論が始まったばかりでありますので、これからの議論だということになります。

 ただ、私の問題意識としてお伝えしているのは、これは企業の破綻とはやはり違う。企業の場合は清算型の倒産もあれば再建型の倒産もある。しかし、自治体の場合、清算というのはあり得ないわけで、これは再建型でなければ困るわけでございます。同時に、再建というふうに申し上げましても、より重要なのは、しっかりと自由度を持っていただくわけでありますから、むしろそうならないようにしっかりと予防のメカニズムが働く、そういう予防まで含めた一貫したそのあり方をぜひ議論しておきたいというふうに思っているところでございます。

 あえてもう一点つけ加えるならば、今も局長答弁ありましたように、これまでの制度も日本の財政、地方財政の歴史の中で重要な役割を果たしてきたわけでありますが、ストックに関しての概念といいますか仕組みが今のままでは現実にはないと申し上げてよいのだと思います。フローの赤字について着目したシステムになっているわけですが、ストックそのものについての議論もやはりしていかないと、本当の意味での再生がむしろ難しくなるのではないのか。そういう意味では、今までに余り議論されていなかったストックの議論はぜひしていただきたいというふうに思っております。

 直接のお尋ねのありました首長の責任等々、住民の責任等々、そういう問題についてはまだ議論が始まったばかりでありますけれども、これは当然、毎日、この瞬間も行政のサービスは必要でありますし、そこに暮らしておられる人々はいらっしゃるわけでありますから、そういう方々の生活に、そして行政に支障がないように、当然のことながら現実的な議論を進めていきたいというふうに思っております。

黄川田分科員 私も総務委員会で質問していれば、こんなの何度も質問されたよということでしょうけれども、分科会で来ておりますので、たびたびの質問になるかもしれませんが、財政再建法では地方債の貸し倒れみたいなものはないということなんでしょうけれども、破綻法では例えば貸し倒れもありますよと。だから、逆に言うと、貸し付けるときにもさまざま選んで貸し付けなさいみたいな話になるんでしょうかね。

 今でも、例えば自治体であれば、多分東京都が縁故債とか借りれば一番利率が安いんですかね。そして、都道府県とかあるいはまた政令市とかさまざまあるんでしょうけれども、現実をわかって今しゃべっているわけじゃないのでありますけれども、ただ、小さな団体はそういう形の中で利子は高く借りなきゃいけない、なおかつ、償還部分でも貸し倒れもあるんだよというような形の仕組みになると、それに対して財政の組み方をどうしたらいいかとか、いろいろなことが出てくると思われるわけなんであります。

 もちろん、そういうことをすることによって、財政規律といいますか、やはり首長も民間経営感覚が研ぎ澄まされるということはよくわかるのでありますけれども、その辺、もうちょっと加えてお尋ねいたします。

竹中国務大臣 今まさに、黄川田委員が非常に適切にいろいろな側面があるということを御指摘くださったと思います。

 確かに、いろいろ、そういう形で貸し手からのチェック、市場からのチェックを受けることによって、その時点でしっかりと、本当に必要な借入金なのかというようなことのチェックも含めてしっかりとした予防のメカニズムが働いていくだろう、これはこれで大変重要なことだと思います。今、いわゆるモラルハザードがあるとは思いませんけれども、万が一にもモラルハザードが生じるようなことを、そういう中で防いでいけるということが大変重要な役割になってくるんだと思います。

 ただ同時に、非常に極端な例で、非常に弱小の、非常に小さくて財政基盤の弱い自治体等々が本当にそれで資金調達ができるのかという問題は、重ねて申し上げているように、現実的に解決していかなければいけないと思います。そこに暮らしておられる方がいて、そこに行政サービスを必要としておられるわけでありますので、そこはそのメカニズムをつくるだけではやはり問題は解決しません。現実にこの瞬間もそこで暮らしておられる方々に大きな問題が生じないような形で、先ほど申し上げました予防のメカニズムとかを入れていかなければいけないわけで、そこはやはり行政の責任を担っている者として、しっかりと現実的な対応をしていきたいというふうに思っております。

黄川田分科員 残り少ないのでありますけれども。

 大臣、先ほど財政再建団体になるかもしれないというふうな形の中で、大臣がもし首長をされていたとしたら、例えば一万人未満ということで、今度の合併の関係でも知事の勧告権とかあるいはまた改めて広域の枠組みづくりとか提案される等々あるのでありますけれども、一万人未満で、赤字で立ち行かなくなった、ぞうきんを絞っても財源は出てこないと、歳出であれば人件費なんというのは大きな金額で出てくるけれども、さあどうする、あるいはまた、諸収入、手数料とか、木を売ったって二束三文だと、売る土地も、赤坂とか青山みたいに土地を持っていれば金額として出てきますけれども、ほとんどない。そういう中で、残りの選択はやはり合併しかないんでしょうかね。

竹中国務大臣 私は現実に地域の経営をしているわけではございませんので、こういうふうにしたらうまくいくというようなものは、今の時点で何か申し上げられることがあるわけではございません。

 しかし、これは本当に、すべての自治体で大変皆さん努力をしておられると思います。そういう意味では、残念だけれども、打ち出の小づちのようなものがどこかにあったらいいんですけれども、そういうものがない中で、ありとあらゆる手段を組み合わせて考えていっていただくしか方法はないんだと思います。

 委員おっしゃったように、合併というのも一つの方法ですけれども、これはあくまで一つの手段である。いろいろな地域振興のための枠組み等々ありますけれども、そういうものを踏まえて、私は既に今の時点でも皆さんは最大限の努力をしておられると思います、その先に、さらにいろいろな創意工夫をして地域を活性化させながら財政の基盤を強化していく、その中の一つとしてもちろん合併という手段も御検討いただく、そういうことの総合的な努力の積み重ねが必要であるというふうに思います。

黄川田分科員 あと地方交付税でありますけれども、時間でありますのでやめます。もし何かあったら、質問主意書でも出したいと思います。終わります。

田中主査 これにて黄川田徹君の質疑は終了いたしました。

 次に、浮島敏男君。

浮島分科員 よろしくお願いいたします。

 自由民主党の浮島でございます。

 昨年の衆議院選挙南関東ブロックの比例代表として名前を登載されまして、マスコミ流に言うと、思わぬ当選を果たしてしまった一人であります。

 二十数年間、県連の職員として仕事をしてきたわけですが、ほとんどの仕事が裏方でございました。急に何か表舞台にほっぽり出された感じで、大変面食らっているんですが、五カ月を経過した今でもまだそんなような状況が続いております。

 ただ、私の役目としては、今まで長い間地方県連にいたということで、果たして今、国と地方の風通しがいいかどうかということで、決して私はそういう状況にないと思っております。ですから、その風通しをよくするのが私の仕事だと思っておりますので、任期中精いっぱい務めてまいりますので、ぜひよろしく御指導のほど、お願いしたいと思います。

 それでは質問に入りますが、まず、小泉総理の進めている官から民へ、それから国から地方への改革の取り組みについてお尋ねをさせていただきます。

 本予算委員会では、国庫補助金の整理統合化と税源の移譲、それに伴う権限の移譲、いわゆる三位一体改革についていろいろ議論がされております。

 本日は、今後の望ましい地方自治制度という視点から、地方の首長とともに地方行政を担う地方議会の問題、それに、昨日地方制度調査会から答申の出された道州制の問題、そして、全国的に進められている市町村合併について質問をしていきたいと思いますので、よろしく御答弁のほどをお願い申し上げます。

 第一に、地方議会制度についてお伺いいたします。

 昨年の十二月九日に、総理の諮問機関であります第二十八次地方制度調査会から、「地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申」が出されていると思いますが、時間の関係もありますので、この中で地方議会制度についてだけお伺いしたいと思います。どういう内容が盛り込まれているのか、まずお伺いをしたいと思います。

高部政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘のございました二十八次の地方制度調査会でございますが、昨年の十二月の九日の総会におきまして、「地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申」が取りまとめられまして、同日、総理に提出されたところでございます。

 地方議会制度につきましては、地方公共団体の責任領域の拡大に伴いまして、住民自治に根差した地方分権の進展を図る上で議会の活性化はなお残された課題であるという観点から、議会の組織、権能、運営等のあり方について検討された上、答申が出されたものでございます。

 答申におきましては、一つは、議会の政策形成機能等の機能の充実が図られるよう、その見直しを行うということ。それから二つに、議会の自主性、自律性の拡大の観点から、組織及び運営に関する事項について、できるだけ議会の自主性、自律性にゆだねる方向で見直すこととされたものでございまして、制度改正を伴うものといたしましては、議長への臨時会の招集請求権の付与でございますとか、専決処分の要件の明確化でございますとか、委員会に関する事項といたしましては、議員の複数常任委員会への所属制限の廃止、議長による閉会中における委員会の委員の選任、委員会の議案提出権、それから四つ目に、学識経験者等の知見の活用を通じた政策立案機能の強化などが答申されたところでございます。

浮島分科員 答申の中で触れられておりますが、地方議会が現行の制度を利用して工夫をするようにと。ここに「女性や勤労者が議員として活動する上での便宜に資するよう休日、夜間等に議会を開催するなど」というところもありますけれども、小規模の自治体においてはこれは可能なことだと思うんですが、もし教えていただければ、全国的にこのような、休日に議会を開催しているようなところがありましたら、事例があったら、教えていただきたいんです。

高部政府参考人 夜間でございますとか、休日に議会を開催する等、運用上の工夫をいたすことによりまして、通常の時間では傍聴できない住民の方々が傍聴することが可能になって、住民の議会に関する関心が高まり、ひいては、地方行政についての関心が高まるといったようなことがこういう取り組みに期待されるところでございます。

 具体的な事例として数字的なことを申し上げたいと思うんですが、市議会におきまして、平成十五年の数字を持っておるわけでございますが、休日議会は十六の市、夜間議会は七つの市で開催されているところでございます。また、町村議会におきましては、休日議会は百四町村、夜間議会は三十町村で開催されているところでございます。

 それから、このほかに、ケーブルテレビでございますとかインターネット中継などを通じまして、積極的に議会の審議の公開でございますとか、住民との意思疎通を図る取り組みも多くの都道府県の議会等で見られるところでございまして、新しい時代の議会に期待される機能を積極的に発揮させるための取り組みがなされているところでございます。

 ただ、いろいろ課題もございまして、例でいいますと、最近ですと、合併なんかを契機にこういう取り組みをして、平日ですとなかなか傍聴できない方に参加していただくとかというような取り組みをしているといったようなこともあるわけでございますが、やはり議会審議の中身の充実というものも一つ課題でありまして、こういう取り組みも当初は何か盛り上がるんですが、なかなか傍聴の方が続いていかないといったようなこともあるものですから、こういう新しい取り組みとともに、議会審議の充実といったことも課題になってくるのではないかなと考えているところでございます。

浮島分科員 今お話がありましたように、地方議会として現行制度でやれることは努力しなければならないことはわかっているんですが、地方議会の活性化のために必要な制度改正はぜひお願いしたいと考えております。

 そこで、全国の都道府県議会議長会から総務省に要望が出ていると思うんですが、このうち、とりわけ重要な五項目、これについては私の所属する神奈川県の県議会からも同様な要望が出されていると思います。

 具体的には、議長への議会招集権の付与、議会の内部機関の設置の自由化、三番目に議決権の拡大、四として専決処分要件の見直し、五として地方議会議員の位置づけの明確化が挙げられているわけですが、この五項目について答申はどういう形で答申されたのか、まずお伺いをしたいと思います。

 それと、今後、その項目について検討課題となっているところが幾つかあるんですが、それについて、今後の見通しがわかりましたら教えていただきたいと思います。

高部政府参考人 五項目について御指摘がございました。

 答申の取り扱いでございますけれども、まず、議長の議会の招集権の問題につきましては、地方制度調査会の中で種々論議がございましたけれども、その結果、議長へ臨時会の招集請求権を付与するという形で位置づけがなされているところでございます。

 それから、議会の内部機関の設置の自由化ということにつきましては、この答申では直接的には触れられていないというような状況になってございます。

 それから、議会の議決事件の拡大については、この答申の中では、「法定受託事務に関する関与の特性等にかんがみ、法定受託事務と議会の議決との関係の整理について引き続き検討する必要がある。」というような位置づけがなされているところでございます。

 それから、専決処分につきましては、専決処分の要件の明確化等について答申に位置づけられているところでございます。

 それから最後に、議員の位置づけについてでございますが、特に、公選職という新しい概念を位置づけるべきではないかというような御意見をいただいたところでございますが、この点につきましては、「「公選職」にどのような法的効果を持たせるのか、政治活動と公務の関係をどのように考えるのか、などの論点があり、引き続き検討する必要がある。」というふうに位置づけられているところでございます。

 地方制度調査会は、実は昨日、道州制の答申がございまして、昨日までの任期で二十八次の地方制度調査会でございました。今後地方制度調査会がどういうふうな対応をするかにつきましては、次の調査会が発足し、諮問を受けて、その中の議論になってこようかと思いますが、このように検討事項として位置づけられたものについては、私どもとしても受けとめて、しっかり検討しなきゃいけない課題だろうというふうに認識しているところでございます。

浮島分科員 二十九次の調査会は大体いつごろというのは、これは総理の諮問機関ですから総理が諮問しなきゃいけないんですが、総理の任期の九月までに諮問されるのかどうかというのはまだおわかりになりませんか。

高部政府参考人 何分、昨日答申がまとまったところでございますので、次の調査会をどのようにしていくのか、今の時点ではまだ大臣とも全く相談しておりませんので、今後引き続き検討させていただきたいと考えておるところでございます。

浮島分科員 これは要望になるんですが、御回答は要らないんですが、今後検討すべきという地方議会制度の改正、特に地方議員の位置づけの問題について、議会関係者、私の所属する神奈川県議会の関係者からも強い要望が出ております。ぜひとも次の、開かれると思いますが、二十九次地方制度調査会でも最重要課題として取り上げていただきたいということをお願いしておきます。

 それと、これは総務省の管轄か内閣府かわからないんですが、二十九次の制度調査会が設置されて、当然その委員が選任されると思います。二十八次制度調査会の委員名簿を私は持っておりますが、その際には、地方議会の現状についてよく承知している方をぜひ御選任いただきたい。人数の割に、前回は三十三名ということでやっているみたいですが、私がちょっと見たところで、果たして地方議会のことがよくわかる方がこの専門の委員にいらっしゃるのかなというところで疑問符がついておりますので、ぜひそれをよろしくお願いしたいと思います。

 次に、道州制について伺います。

 同じく二十八次地方制度調査会で、先ほどもありましたとおり答申がきのう出されたわけですが、市町村合併が進み、また都道府県域を超える行政課題がふえている中で、都道府県制度はどうあるべきかということは大変重要な課題であると考えております。現行の都道府県制度はどういう点で問題があるのか、道州制導入はどういう目的で行うのか、住民生活にはどういう影響があるのかなど、国民も大変関心を持って見ておると思います。

 そこで、道州制の導入について、地方制度を所管される竹中総務大臣の基本的な考えをお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 委員から御指摘がありましたように、昨日、第二十八次地方制度調査会におきまして、道州制のあり方に関する答申が決定をされました。そして、総理に提出をされたと聞いております。

 この答申では、いわゆる広域自治体改革を通じて国と地方の双方の政府のあり方を再構築し、そして、我が国の新しい政府像を確立するという見地に立つならば、具体策として道州制の導入が適当と考えられるという明快な内容の答申をいただいております。その上で、同時に、道州制の導入に関する判断は、国民的な議論の動向を踏まえて行われる必要があるというふうにしております。政府には、引き続き幅広い見地からの検討を進めるとともに、国民的な議論の深まりに資するような適切な役割を果たすということが要請されているところでございます。

 市町村合併が進んで、基礎自治体の規模が大きくなっていく中で、都道府県という規模で、都道府県という単位で物事をなかなか考えられなくなってくるというのは事実だと思います。そういう意味で、広域自治体のあり方として道州制の導入が適当と考えられるという大変重要な答申をいただきました。同時に、やはりこれは本当に国民の議論の深まりが必要だと思います。それが深まっていくように我々としてはしっかりと対応しなければいけないというふうに思っております。

 方向として明確な方向をいただいた、一方で、そのプロセスにおいて御注文をいただいたということだと思っておりますので、その方向でしっかりと検討を進めたいと思います。

浮島分科員 今、大臣がおっしゃったように、国民的な議論が大変必要だと思います。それは国と地方のあり方そのものにかかわる問題ですから、ぜひ、国会の議論はもちろんですが、地方議会での議論が重要であると考えております。政府としても、こうした議論が行われるための資料の提供、そして議論の場をつくっていただくなど、丁寧かつ積極的な取り組みをお願いしたいと思います。これは答弁は必要ございません。

 第三に、市町村合併について伺います。

 私の地元の神奈川県では、相模原市と隣接する城山、相模湖、藤野、津久井の四町の合併問題でありますが、城山町で、そこの町長さんが合併に反対しておりました、二月十九日、その町長のリコールが成立して、先週の日曜日、合併の是非に関する住民投票が行われまして、圧倒的多数で合併賛成という結果が出てまいりました。これで、城山町を飛び越して津久井と相模湖とで合併が決まっているんですが、飛び地という不自然な状態が何とか解消されるんじゃないかと思っています。

 そこで、市町村合併について何点か質問をさせていただきます。

 市町村合併については、本年度からは、いわゆる合併新法に基づいて支援策が実施されているわけですが、新法に基づく合併の進捗状況がわかりましたら教えていただきたいと思います。

荒木政府参考人 合併新法のもとでの市町村合併の状況でございますが、本年一月十日に香川県高松市と牟礼町が合併いたしましたほか、この四月一日には、愛知県弥富町と十四山村が合併しまして弥富市となることが確定しております。

 また、本年一月一日現在の全国の進捗状況を申し上げますと、二十七市町村が十一の法定協議会に参加しており、任意協議会、研究会などまで含めますと、百二十八市町村が二十七の協議会等に参加し、新法下で合併協議を行っているところでございます。

 市町村合併につきましては、平成十一年三月三十一日に三千二百三十二ありました市町村数が、新法による合併を含めまして、この四月一日には千八百二十となる見込みでありまして、相当の成果を上げてきておるところでございますが、一方で、地域ごとの進捗状況には差異が見られるところでありまして、今後も、合併新法に基づきまして市町村合併を積極的に推進してまいりたいと考えております。

浮島分科員 全国的にはそのように市町村合併が進んでいると思いますが、逆に、進んでいない地域もあると思います。既に合併したけれども、さらに合併を進めようとする市町村もあると聞いております。先ほど申し上げた神奈川県の相模原市のように飛び地となったり、また、過疎地同士で合併しても展望が開けない市町村などもあるのではないかと考えております。

 そこで、今後、主にどのような市町村について合併を進めようと考えておられるのか、竹中大臣の基本的なお考えを伺いたいと思います。

竹中国務大臣 これまでの進捗については、今総括審議官のお話があったとおりでございますが、委員も御指摘のように、地域ごとに進捗状況に差異が見られるというのが現状でございます。

 今、法律についての御指摘もございましたけれども、同法では、総務大臣が定める基本指針に基づきまして、都道府県が市町村合併の設置に関する構想を作成する、そしてその構想に基づいてあっせんや勧告等の措置を講ずることができるというふうにしております。

 この基本指針において、構想の対象とすべき市町村の組み合わせとしてお示ししているものとしては、まず、生活圏域を踏まえた行政区域の形成を図ることが望ましい市町村、そして次に、さらに充実した行政機能等を有する指定都市、中核市、特例市等を目指す市町村、そして、おおむね人口一万人未満を目安とする小規模な市町村、そうした基準をお示ししております。さらに、旧法によって合併をした地域につきましても、それぞれの置かれた状況によってさらに合併を進めるのが望ましい場合も、これは当然あり得るというふうに思っております。

 そうした観点から、国としては、今後も、合併新法に基づきまして、引き続き自主的な市町村合併を積極的に推進していく必要があるというふうに思っております。

浮島分科員 市町村の合併に当たっては、地域にはその地域に根づいた伝統や文化、豊かな自然環境もあると思います。そういうものを損ねることのないようにぜひお願いをしたいと思っております。

 本日は、地方自治制度について何点か質問させていただきましたけれども、私の地元の神奈川県のような都市部と都市部以外のところでは、地方議会制度、道州制、市町村合併についての住民の考え方もそれぞれ違っているのではないかと思います。ぜひとも、実態を十分踏まえて、しっかりとした長期ビジョンに基づいた制度設計に取り組んでいただきたいと思います。このことをお願いして、時間前ではありますが、質問を終わらせていただきます。

 どうも本日はありがとうございました。

田中主査 これにて浮島敏男君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

田中主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笹木竜三君。

笹木分科員 民主党の笹木竜三です。

 幾つかの点について質問をさせていただきますので、よろしくお願いします。

 まず最初に、在日本朝鮮人総聯合会の関連施設に対する固定資産税の課税状況についてということで、新聞等でも話題になっておりますが、今減免をしている実態についてどのように把握をされているのか、担当の方にお伺いしたいと思います。

小室政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問いただきました在日本朝鮮人総聯合会関連施設に対する固定資産税の課税状況、減免状況ということでお話がございました。

 私どもが調査いたしましたのは、在日本朝鮮人総聯合会地方本部所在市及び政令市として把握できました四十九団体、これにつきまして、平成十七年度の課税について減免の実施状況ということで調査をいたしました。

 申し上げますと、税額のすべてを減免している団体が十九団体、税額の一部を減免している団体が十三団体、減免を実施していない団体が五団体、回答を差し控えるといたしましたところが十二団体でございます。このうち、前回の調査との対比で申し上げますと、一部を減免している団体というのが二団体ふえてございます。一方、回答を差し控えるとした団体が二団体減少している、こういう数値になってございます。

笹木分科員 固定資産税の減免については、今、十七年度の実態についてはということでお話があったわけですが、いろいろ高裁の判決も出て話題になっているわけですが、減免の理由、これは各自治体においていろいろな判断をして減免しているわけですが、減免の理由についてどういうふうに説明を受けておられるのか。

小室政府参考人 各団体が減免をしているということで、そのベースとなるものなり実態をということでございます。

 御案内のとおり、固定資産税の減免自体は、お話がありましたように、地方税法三百六十七条の規定により、各地方公共団体が公益上などにより必要がある場合、まさに委員御指摘のように、各自治体の方で条例の定めるところによって減免を行うことができる、法律上こうなっておりますので、実際に減免を行う必要性について、各地方公共団体が自主的な判断、具体的に条例という形ですが、これによって減免しているという形になります。

 それで、実際の主な減免理由としてどのようになっているかということですが、これも先ほど申し上げました調査対象の中で減免を実施している三十二団体について分類しましたところ、三つに分類しておりますが、一つは、公民館、集会施設に準じた施設として減免している団体が二十九団体、公共公益的な施設として減免しているのが一団体、旅券、査証発給業務、そういった理由で減免しているところが二団体、合わせて三十二団体でございます。

笹木分科員 ということですが、今、高裁でも判決が出て、これはどうなんだろう、おかしいだろうという判決が出たわけですが、そういう中で、この減免理由。公民館、集会施設に準じた施設であるとか、公共公益的な施設であるとか、旅券、査証の発給の業務をやっているとか、こういった理由で各自治体が実態としては減免をしているわけですが、それについて裁判でも問題になって、これはおかしいだろうと。また最高裁でこの後判決が出るんだと思いますが、こういった状況の中で、この減免の理由についてどういうふうに今判断をされているか、あるいは実態の調査等をして、この減免の理由、それを満たすものになっているのかどうか、そういった実態把握についてはされておりますか。

小室政府参考人 先ほど法の体系なりということでお話申し上げましたが、まさに委員御指摘のように、実際にそうした減免の理由に対してそれが該当するかどうか、そういった点について裁判の上でも争われておるわけでございます。もちろん、委員からお話がありましたように、高裁の判決に対して、地裁はちょっと別な判決であって、なお最高裁へ上告される、あるいはほかの地域でいろいろな訴訟も起きているところは承知しております。

 ただ、いずれにしましても、朝鮮総連関連施設の課税の取り扱いということでは、今お話がありましたように、当該施設の使用実態や他の施設との均衡等、地域の実情に応じて、各地方公共団体において判断されるものであると思います。その細かい実態について、すべてを私どもが把握するということはなかなかできませんが、減免を行う必要性について、地域の実情に応じて的確に判断していただく、こういうことであろうかと思います。

笹木分科員 最高裁の判決が出ても、今お答えになったような態度は変わらないということですか。

小室政府参考人 最高裁の判決がいつ出るかということはちょっとわかりませんし、また、その判断が、最高裁の判断としての範囲、どういうことについてどういうことが述べられるか、その辺、よく見ないと判断できないところがあるかと思います。

 ただ、いずれにしても、訴訟で争われているということですから、その行方については私どもも注視していきたいと思っております。

笹木分科員 訴訟中だからということはほかのいろいろな問題にしてもよく言われるわけですが、実際にこういう問題が起こっている。実態について、それは一つ一つすべての実態をというのは不可能だと思います。しかし、今言った公共的な施設だとか公民館的な使用をしているとか、こういったことについて実態がどうなのか、そういうことについては全く調査もしていないし、把握もしていないということですか。

小室政府参考人 今回、朝鮮総連に対する調査というのも、これは、私ども、各団体、三千団体の減免の状況というものを把握するというのはとてもマンパワーでできませんし、そういう意味で、あえて今回聞き取り調査を関連団体についてやったという意味では、ある意味でどういう理由でやっているのかというところまで調べたというものでございます。

 そういう意味で、個別の話のケースを全部入ってということはなかなかできないかと思いますが、ただ、委員からお話のありましたように、適正かつ公平な取り扱い、これが重要なところですから、そういう意味で、各地方団体が条例で定めるところできちっとそういったことをやっているかという点については、非常に大切なことだと思っております。

笹木分科員 では、ちょっと別の方からですが、固定資産税の減免によってどのぐらいの額になっているかというのも、一つ一つの自治体でのことだから公表はできないとしても、把握もされていないということですかね。

小室政府参考人 すべての案件がという意味でなくて、オープンになっている情報というものについては一部集めておりますけれども、こちらから、幾ら、どうなっているんだということについては照会してございません。

笹木分科員 そうしますと、そもそもこういった固定資産税の減免というのがいつごろからされているか、もちろん各自治体においてですが、そういったことについても全く把握をされていないということでしょうか。

小室政府参考人 私どもの課税状況調査とか、税収としてどうだという、そういうふうな数値の統計はございますけれども、個々の減免がいつから始まってという調査については行っておりません。ただ、この問題といいますか、朝鮮総連の関係について言えば、昨年、十六年度の調査をし、十七年度の対比をいたしました。

 なお、その際にあわせて、近年その取り扱いを変えたところはないかという意味で、十五年、十六年に変えたところという意味では把握をしてございます。ただ、それ以上さかのぼってというお話については、私ども手元にございません。

笹木分科員 それぞれ市町村において条例によって減免を始めたということだと思いますが、市町村の条例だけで、例えば旧自治省がこの件に関して何らかの市町村とのやりとりとか、あるいは通達ですとか、そういったものは過去に全くされていませんか。

小室政府参考人 税の執行について、いろいろな形で留意事項等お話をしている場合はあるかと思います。ただ、この件について具体的にどうだという意味での通知等については、私の知る限りございません。

笹木分科員 幾つかの自治体にあるこういった朝鮮総連の関連施設についてですが、実際に調べたりしてみますと、三十年代に個人名義で建てた建物、建てた当時からずっと減免という状態であるとか、四十年代に建てた、これも個人名義で建てた、ずっと最初からだ、そういうお答えが多いわけですが、大事なことだと思うのでもう一度確認しますが、全く、政府の方からそういったことについて、減免の始まったそもそもの経緯、私も詳細まで調べておりませんが、そこでのやりとりとかは一切ないということですね、通達等も含めて。

小室政府参考人 今委員がお話しになりましたように、実態というのはかなり複雑な点があって、特に、朝鮮総連自体に法人格がないわけですので、今委員がお話しになったように、個人の名義であるとかあるいは会社の名義であるとか、その辺、所有者のところは難しい点がございますですね。それと同時に、時期的に言っても、昭和三十年前後とおっしゃいましたけれども、かなり昔の時点からいろいろな意味でつながってきたという点もあろうかと思います。

 そういう意味で、いつまでさかのぼって、どうこうと調べる、今ちょっと突然のお尋ねなんであれですけれども、私になってから、個々具体の話としてそういった通知はしておりません。

笹木分科員 把握はされていないということですね。

小室政府参考人 先ほど申し上げました調査、この範囲での把握に限られているという意味合いでございます。

笹木分科員 こういった朝鮮総連の施設以外で個人の名義で建てた、建設当初から減免になっているような、そういう施設はありますか。外国人関係の施設でですが。

小室政府参考人 いろいろ法人格の議論等があって、そういうケースがあるのかもしれません。ただ、今どこであるとかないとかはっきり申し上げられるだけのものを今持ち合わせてございません。

笹木分科員 民団とか華僑関係のそういう施設なんかはどうですか。同じように、ずっと昔からそういうことがあるのかどうかということです。

小室政府参考人 今お話がありました民団とか華僑は、そういう可能性があろうかと思います。ただ、実際の所有の形態とか、その辺について、私どもは今はっきりしたものとしての把握はございません。

笹木分科員 この点について、最後に大臣に、基本的な御意見で結構なんですが、裁判でも非常に今問題になっている、おかしいだろうという判決も高裁で出た、この後、最高裁でまたいろいろ、どれぐらいの時期かはわかりませんが、審理されて結論が出るんだと思いますが、こういう状態の中で、今ほとんど把握をされていない、あるいは使用状況についても全く把握をしていない、調べてもいないという状態ですが、こういう状態のままでいいとお考えになっているかどうか。あるいは、何らかの形でその正当性というか、妥当性について、これは直接じゃなくてもいいです、各自治体に連絡をとって、そういう必要があるとお考えかどうか。そのことを、御意見を伺いたいと思います。

竹中国務大臣 我々は、総務省としての全うしなければいけない使命があって、その範囲で権限を与えられております。

 固定資産税の話については、先ほど局長から既に答弁がありましたように、減免の実施をするかどうかというのは各地方団体が条例で定めるということになっているわけでございます。そして、その場合、当然、他の施設との公平性を踏まえて、そして施設の使用状況等を勘案するということですから、主体である自治体が個別の認定をするという仕組みでございます。そういう意味からいいますと、個別の減免の適否というのは、すぐれて事実認定の問題でございまして、各地方公共団体の自主的な判断にゆだねられているわけでございます。

 もちろん、今回の事例、判決に限らず、一般的に、地方税の減免に当たっては、課税を行う地方公共団体において、まさに施設の公益性でありますとか使用状況を的確に把握して、適正かつ公平に、これは課税でありますから、まさに適切かつ公平に行っていただかなければいけないというふうに思います。

 したがいまして、我々としましては、こうした点について地方公共団体にやはりしっかり注意喚起を行っていくというのが我々の当面の重要な役割であろうかと思っております。そうした観点から、既に地方公共団体に注意喚起を、今回の件に関しても行っておるのでございますけれども、また今後も機会をとらえて適切に行ってまいりたいというふうに思っております。

笹木分科員 ぜひ、しっかりやっていただきたいと思います。

 二つ目の、別の点について、これもまた確認をさせていただきたいんですが、指定管理者制度についてお伺いをしたいと思うんです。

 この指定管理者制度、例えば国レベルで似たような、PFIとかこういった事業もなかなかうまくいっていない例もある。まあ、うまくいっている例もあるのかもしれませんが、それに対して評価をするという話もありますが、各自治体におけるこの指定管理者制度、これについて、今どういった問題が出ているとか、そういった現状認識について、これは担当の方で結構ですが、お伺いをさせていただけたらありがたいと思います。

高部政府参考人 この指定管理者の制度でございますけれども、平成十五年に制度が入ったわけでございます。それまでは、公共団体、公共的団体あるいは地方団体の出資する法人だけが管理委託を受けられるという仕組みを、もう少し広げて、民間のノウハウなんかも活用できるようにということで制度化されたもの、委員御案内のことかと思います。

 現時点の状況でいいますと、当時、管理委託をしていたものにつきまして三年間の猶予期間が経過措置として置かれたものですから、ことしの九月がその期限、このような状況になっております。ですから、しばらく前の時点から、各地方団体において、従前の制度から指定管理者への移行についていろいろな取り組みがなされている状況だというふうに承知しております。この過程の中で、実は、こういう新しい仕組みなものですから、もともとこの指定管理者制度というのは、公の施設を効果的に、効率的に管理できると認められるときはするという仕組みになっておりまして、もともと、みんなやりなさいよというような仕組みにはなっていないわけでありまして、地方団体がそういう制度の中で現実的にいろいろな取り組みをしている状況だというふうに思っております。

 そういうことの中で、私たちも体系的に把握しているわけではございませんけれども、新聞報道とか個別の御相談とかいろいろな事例の中で、制度そのものというよりも、むしろ制度を運用していくに当たってのいろいろな課題が出てきて、それに地方団体がいろいろな工夫をしながら、なおかつまた、ある面では苦しみながら取り組んでおられる団体もあるのではないかというふうに思っております。

 どんな点か。各団体の事情でいろいろなパターンがあるというふうに承知しております。例えば、私どもの方で、できるだけ複数の事業者から申請を得て選ぶのが望ましいよというような形でやっておりますけれども、そういうやり方自身も、こういう公の施設の管理という面では必ずしも蓄積がたくさんあるわけではございませんので、そういうものをどういうふうなやり方でやっていったらいいのかとか、あるいは、もう一つ現実的な悩みとして、これも制度直接の問題ではないんですが、例えば関係団体に管理委託していたような場合に、委託元、公共団体側がかなりの部分で面倒を見てといいますか、財政的にも措置していたような団体について見ると、全く公募ということになって委託を受けられなくなると団体の存続にもかかわるというような問題もあり得るわけでございます。

 そういういろいろな問題について、現実の運用の中でいろいろな課題に直面している、すこぶるスムーズにうまくやっているところもあるわけでございますけれども、私ども、課題として聞こえてくる問題としては、今申し上げた面でいろいろなものがあって、いろいろな努力をしている状況にあるんではないかというふうに認識しているところでございます。

笹木分科員 最後に挙げられた今までの団体の云々、そういう問題も現実にはあるんでしょうが、きょう、そういったことをお聞きしたいんじゃないんです。

 いろいろ、民間でもやれることは民間になるべく開放する、今市場化テストも、もちろんさらに具体的になっていくんだと思いますが、これは私も大賛成なんですが、例えば下世話な話でいいますと、民間に、しかもなるべく安い価格でサービスもよく、こういうねらいがあったはずです。しかし、現実にいろいろなところで聞く話題は、先ほど新聞報道でもいろいろ把握はされているということですが、例えばこれは埼玉の場合ですか、長く議長も務められた、そういった地方議員の方が実際に選定をされていると。これはほとんど独占的に選定をされた、養護老人ホームですが、運営管理を選定された。そういう政治的なコネであったり、あるいはその地域の政治家の有力な後援者であったり。

 あるいはこういう例もありますね。これも新聞報道でもかなり何度も取り上げられていますが、それまで何の活動もしていなかった方々がNPOを急遽立ち上げる、非常に大きい施設、これは東北のある地方でですが、四十億円を超える大型施設、この運営を、全く何の実績もないNPOがその直前に立ち上げをされて、調べてみたらその役員とか責任者というふうな方がかつて刑事罰を受けた方であったとか、破産をされた方とか、そういった方々で構成をされていた、これが何にも、その後軌道修正もされていない、こういう報道もあったりします。こういったこともある。

 あるいは、よく聞くのは、少し条件がよ過ぎるんじゃないか、民間に開放していくに当たって運営費を行政が補助する、これがし過ぎじゃないかとか、あるいは破綻したときに対してもちょっと結果的に甘くなっているんじゃないかとか、いろいろな報道もされていますが、今、国レベルのPFIでも評価を本格的にやろうという動きがあるようです。

 こういったことについて大臣にお聞きをしたいわけですが、そもそも、こういった公共的なサービスとか公共活動の民間開放というねらいは何だったか。今、事例を二つほど挙げましたが、こういった現状もあるわけです。あるいは、これは国レベルのものでも起こらないという保証はないと思いますが、そういったことに対するチェックといいますか、防止といいますか、市場化テストについてもつきまとってくる問題かと思うんですが、そういったことに対しての認識と、今後どういうふうに取り組んでいかれようとするか、基本的なお考えを聞かせていただきたいと思います。

竹中国務大臣 今笹木委員が御紹介くださった報道等々も通じて、改めてですけれども、この制度をうまく活用していくということの重要性というのを私も実感しております。改めて言うまでもありませんけれども、こういう制度を導入するのは民間の活力、さらには民間同士の競争の活力ですから、そこで公正な競争が行われているのかどうかということが本当にキーポイントになってくるんだと思います。市場化テストもしかり、そのような問題意識を私も持っております。

 したがいまして、そこでの競争がきちっと行われているかどうかということをさまざまな観点からチェックしていかなければいけないと思うんですね。例えば、そこの入札で不正があればまさに刑事的な問題が伴いますし、民間の競争でありますと、公取がどのように絡むかというのは今すぐに私にはわかりませんけれども、そういう観点からのチェックも必要になってこようかと思います。

 市場化テストに関しましては、個々の取引の認定に加えて、制度そのものをしっかりとチェックしていくための第三者の組織をつくるということも検討されているというふうに伺っておりますので、そういう仕組みをそれぞれが活用していくことが重要なんだと思います。

 今回の制度に関しましては、施設管理者の制度、これは条例にゆだねられて、そこの運用そのものを自治体がしっかりと責任を持って、まさにこれは住民に対する責任でありますから、その中で果たしていかれるということが重要だと思いますし、私どもとしては、そういうものがいろいろ定着していく中で、やはりうまくいくところとうまくいかないところ、いろいろある、おっしゃるとおりだと思います。そこはベストプラクティスをどのようにお互いが学び合っていくかということだと思います。これは、自治体経営も競争でありますから、そういう話というのはむしろ、我々が心配する以上に、自治体の首長さんが日本じゅうに目を光らせていいものを採用しようと。そういうメカニズムも当然働いてくるんだと思います。

 こういう趣旨を徹底させて、しっかりとベストプラクティスが行き渡るように我々としては必要な助言を行ってまいりますけれども、当面は、九月一日までが移行期間でありますので、そこへの移行をぜひ速やかに行っていただきたいというふうに思っております。

笹木分科員 ぜひ、評価の体制をしっかりとしたものにするべきだと思いますし、それをお願いしたいと思います。

 それと、国レベルでの市場化テスト、これは担当はまた違いますが、あるいはPFIでも総務省関係でのPFIがもしあるとしたらですが、その評価の、いってみればモデル的な評価ケースを幾つかつくっていく、それがまた自治体の一つの参考例になるということもあるのかなと考えたりもします。よろしくお願いします。

 それと、もう時間がないんですが、確認だけ。

 雪害対策ですが、特別交付税、二月九日に一部繰り上げの交付を雪害対策費としてされたわけですが、三月分についてです。非常な豪雪だったわけですが、今どういうふうな調査をされていて、その被害状況にふさわしいようにしっかりと重点化ですとか傾斜化がされていくのかどうか、その調査とかその状況を踏まえて、今後どうなるのか、その見通しについて確認をさせていただきたいと思います。

竹中国務大臣 記録的な豪雪によって、多くの市町村、自治体で排雪、除雪の経費が多額に上っている、大変我々も重視をしております。委員が御紹介くださいましたように、二月の頭に、災害救助法が適用されている団体など八十五の市町村を対象に三月に交付すべき特別交付税を一部繰り上げております。雪害のためにこういうことをするのは初めてでございます。

 そこで、三月分の特別交付税がさらに重要になってまいりますけれども、現在算定作業中でありますけれども、各地方公共団体の除雪、排雪対策の実態をできるだけ正確に反映できるように二月の下旬に追加調査を行ったところでございます。この追加調査の結果、さらには各地方団体からお聞きをした実情を踏まえまして、自治体の財政運営に支障が生じないようにぜひ適切な算定に努めてまいりたいと思っております。

笹木分科員 例えば道路関係、これだと国土交通省になるわけですが、ぜひ雪害対策について、自治体においてはもちろん横断的にいろいろやっているわけですが、融雪の技術もいろいろ新しいものが開発もされておりますし、何よりも道路状況、幹線道とか、高速道とか、あるいは普通の市町村道でも非常に車が通りにくい状況になったりして、そんな中で例えば携帯のiモードでそういった状況をすぐ見られるようにするとか、あるいは融雪の技術ももう少し省の枠を越えて総合的にやるとか、いろいろな課題があると思いますが、雪害に対する対応というのはもう少し省庁横断的に、頻繁に対策を練られる場があっていいのか、そんな気持ちもします。よろしくお願いしたいと思います。

 時間が来ましたので、終わらせていただきます。

田中主査 これにて笹木竜三君の質疑は終了いたしました。

 次に、土屋正忠君。

土屋(正)分科員 きょうは、分科会で、身近に大臣を初め省庁の皆様に質問できることを大変光栄に思います。

 私は、竹中大臣は、小泉総理とともに歩まれて、民間の不良債権の償却など、ハードランディングという手法をとりながら、今日の経済の活性化に結びついた大変な手腕の方だと認識をいたしております。同時に、さらにまた今後も内閣で大変な御活躍をされるんじゃないか、こういうことを前提にしまして、期待を込めて、少し辛口になるかもわかりませんが、日本国家のありようとか地域社会のありようを念頭に置きながら、質問をさせていただきたいと存じます。

 まず最初に、具体の質問として、防災・災害対策と書きましたが、その後ちょっと一部変更して割愛いたしましたので、きょう、消防庁長官からお答えいただければと思います。

 このところ耐震診断やあるいは地震対策が大変進みまして、今国会でも新しく取り組みがされているわけでありますので、そのことは非常に多とするわけでありますが、実は、地方自治体でも耐震改修の促進をやっているわけでございますが、なかなか進みません。

 武蔵野市の場合などは、耐震診断を六十五歳以上の人は無料にしまして、その後で耐震診断して危険と判定されたものについては、最初は三十万、今は五十万近い補助金を出す。こういうやり方をやっていても、年間三十件とか四十件とか、その程度しかないわけであります。おおむね危険建物に住んでいる方は高齢者が多いせいもあって、最低でも、木造でも百数十万から二百万近くかかりますから、こういう投資をしても果たして見合うんだろうか、あるいは全面改修したらどうなんだ、さりとて全面改修するほどの資産はないし、また後継ぎや何かの展望を考えるとなかなかそうもいかない、実はこういうことはたくさんあります。そういうことでちゅうちょして、年間四十件から五十件しかないんですね、これだけ優遇しても。横浜などは非常に先行しておりますけれども、横浜でさえ、百件とかそういう単位であります。

 つまり、何を申し上げたいかというと、横浜は武蔵野の三十倍以上人口があるわけですから、極めて微々たるものであって、これじゃ百年やったって全世帯には行き渡らない、こういう実態であります。

 そこで、我々は考えて、考え抜いて、とりわけ中越地震があったので、何とか即効性のあるものはないか、こう考えたのが、実は、家具の倒壊防止、これを徹底してやろう、こういうことになったわけであります。現に、新潟県の中越地震では、救急搬送された負傷者の四割が家具の倒壊や下敷きになった。これは阪神・淡路も同様な数字が出ているわけであります。

 そこで、武蔵野市は現在、六十五歳以上の世帯、身障二級または愛の手帳二度以上というふうに限定をして、徹底して家具の倒壊防止を無料でやっております。人件費をどのぐらい見るかによりますが、シルバー人材センターなどに託して、おおむね、器具等を入れて、単価は一万数千円でやってもらっているんですけれども、これを徹底してやろうと。一万一千世帯に呼びかけて、たった一年間で、現在は三千七百世帯が取りつけている。だから、耐震が何十件ということを考えると、三十件とか四十件とかということは、百倍の力があるわけです。

 ですから、私は、こういうことを制度としてきちっと、どういう制度になるか、補助制度になるか何になるかは別にして、徹底してこれを、とりわけ地震強化地域などについてはそういうふうな指導をやって、そこに、大した予算じゃありませんから、こういうことを積極的にやることによって実効性のある当面の地震対策ができるんじゃないか、このように考えているところでございます。

 消防庁長官のお考えをお聞きしたい。

板倉政府参考人 全く委員御指摘のとおり私どもも考えておるわけでございますけれども、ちなみに、平成十五年に発生しました十勝沖地震、宮城県北部の地震ですとか、十六年十月に発生しました新潟県の中越地震、これらで、家具類の転倒、落下物による負傷者の数というのが負傷者全体の三〇%から四〇%であったというふうにされているところでございます。そういうことで、家具類の転倒防止が実施をされておれば相当被害が軽減されたのではないかということが容易に想像されるわけであります。

 こういうことでございますので、背の高い家具類ですとか、冷蔵庫やテレビ、これらの転倒防止を実施するということは非常に重要なことであるというふうに我々も考えております。

 中央防災会議でも、そういう知識の普及に努めるというふうにされているわけでございまして、私ども消防庁といたしましても、家具類の転倒防止方策などを記しましたパンフレットを作成して、地方団体を通じて住民啓発に努めているところでございますし、また、ホームページに掲載するとか、あと各種講演会、あとやはりテレビ、ラジオ等で防災番組をやっていただくというのが非常に効果があると思いますので、そういうところにも働きかけをしまして、あらゆる機会を通じてPRに努めているところでございますが、何分にも、一軒一軒がどうやっていただくかという問題でございまして、おっしゃいましたように、やる気になっても自分じゃできないという方もまた大勢いらっしゃるわけでございます。

 そういうことで、市町村でも自発的に、今、武蔵野市を初め市や区でいろいろな助成措置もやっていただいておりますので、この辺をできるだけ我々の方も後押ししてやっていくように努力をしてまいりたいと思っております。

土屋(正)分科員 時間がないので、要望いたしておきます。

 なかなか一般論でPRしても、器具はどこで売っているんだとか、実際にやるとなると結構腕力が要ったりテクニックが要ったりして時間がかかったり、結局、考えるけれどもやらずじまいというのが多いんですね。ですから、ここは消防庁が旗を振っていただいて、各都道府県単位で、場合によっては幾ばくかの補助などを出したり、それは消防庁の補助になるのか、あるいは他の交付税に頼ったり、いろいろなことはあるかと思いますが、私はぜひ、アクションプランで、三年ぐらいで、少なくとも予想されるところの七割、八割はいく、このぐらい思い切ってやらないと、ほかのところで幾らお金をかけてもなかなか即効性のあるものにならないんじゃないかということを要望として申し上げておきたいと存じます。

 二点目に、地方交付税についてお尋ねを申し上げたいわけでありますが、まず第一点目として、簡単な質問ですが、瀧野自治財政局長に御質問申し上げます。

 平成十二年から法人税の交付税割合は三五・八%だったわけであります。これは、例の最高税率を下げたりとか、あるいは小渕内閣における景気対策に関連した措置だったと思っておりますが、しかし、平成十九年度から三四%に引き下げられました。これは、定率減税の廃止だとかいろいろなことがあるんでしょうけれども、私が申し上げたいのは、なぜ三五・八%ではいけないのか。まだ地方財政計画からすれば法定交付税が足らないわけですから、法定交付税の引き上げも含めて、ここで頑張って下げなくたってよかったんじゃないか。どうですか。

瀧野政府参考人 恒久的減税に係ります財源補てん措置の見直しについての御質問でございます。

 御指摘のように、平成十一年度に恒久的減税が実施されまして、それに対してスキームが決められたわけでございますけれども、今回、個人住民税の定率減税が廃止される、こういうことの中で、このスキームについても、恒久化ということで見直しをするということになったわけでございます。

 その際に、補てん措置としては、たばこ税の増税と、それから御指摘の交付税に係ります法人税の税率という二つがあるわけでございます。これらにつきましては、結局、最初恒久的減税を決めたときの減税総額に対しますたばこ税なり交付税率の引き上げというものについて、一定のウエートというものを見ながらやったわけでございます。

 今回、全体の恒久的減税であった部分が、定率減税が廃止になりまして、縮小される。それに伴いまして恒久化もされるわけでございますけれども、全体の規模が縮小されるものでございますので、恒久化されるに当たって、我々としてはもちろん三五%のままが地方財政のためにも一番いいという気持ちもございましたけれども、全体の減税規模が縮小される、それに伴いまして全体の見直しもせざるを得ない。その中で、たばこ税についてはやはり国、地方、一対一を守りたい。いろいろな制約の中で、やむを得ず三四%というところで従来のシェアは確保できるのかなという形で見直しをしたいというものでございます。

土屋(正)分科員 というような局長の御説明は、私も部会やその他でそのようなお話を聞いております。まさに、過去の経過やその他からいったらそういうことなんだろうと思うわけであります。

 しかし、いわゆる都道府県、市町村の地方財政を今後考えた場合には、結局、全体の流れとしては、法定交付税の中に、基準財政需要額の算定を厳しくしていくという流れになるんじゃないかということを危惧しているわけであります。

 ですから、私は、法定交付税の割合をふやす、こういう努力を、それは国家財政との絡みはあるわけですけれども、地方自治体がこれからの中心だというのなら、そういう努力を、今のお話は、過去の経過でこうなっているという、これはつじつまが合うのですけれども、そうじゃなくて、もっとダイナミックに、戦略的に、少なくとも今の基準財政需要額を法定交付税は満たしていないわけですから、そういうことも含めて、ぜひひとつお取り組みのほどをお願いいたしたい。これは要望いたしておきます。

 これに関連して、大臣にお尋ねを申し上げたいわけでありますが、さきの予算委員会等での他の委員の質問を私も傍聴いたしておりまして、地方自治体のあり方として、地方分権二十一世紀ビジョン懇談会等でさまざまな改革を進めていく、こういうお考えをお聞きいたしました。

 その中で、大規模な税源移譲をすれば、地方交付税の財源保障機能は調整機能だけになるということも論理的に考えられるというような御趣旨の答弁があったやに記憶いたしております。委員部には速記録をお願いしたんですが、まだ速記録ができていないというので、私の記憶違いの要素もあるかもわかりませんが、大幅な税源移譲をすればいわゆる地方交付税の財源保障機能はないと想定したような場合には、そういったような税制は考えられるのかどうか、お尋ねを申し上げたいと存じます、大臣の頭の中にイメージしているもので。

竹中国務大臣 非常に重要な御質問をいただいて、ありがとうございます。

 まず、私は土屋委員にぜひ申し上げたいと思っていたんですけれども、別の委員会で御答弁させていただいたときに聞いていただいていると思いますけれども、国と地方のあり方については、いろいろな批判があるんだけれども、まとまったパッケージとしての考えというのがなかなか専門家の間でも示されていない、それをやはりしっかりと示さなきゃいけないと思っているというふうに申し上げました。

 私は、土屋委員のようにまさに首長さんとして最前線におられた委員に、パッケージとしての具体的な案をいろいろな形で、ぜひ今後いろいろな場で御提示いただきたいというふうに期待をしております。これは、新しい議員さんで、例えば萩原さんのような方もいらっしゃるし、民主党にも逢坂さんのような方もいらっしゃるし、私は、ぜひそういう建設的な、前向きな議論をいただいて、本当によい制度を私なりにつくっていきたいというふうに思っております。

 これは、先ほどの局長に対する御質問、そして局長の答弁とも絡むのですが、今までの制度というのは、やはり合意、話し合いの積み重ねでありますから、ある一つの変化があって、特別減税を行うといって特別減税があって、それに対する必要な措置をする、今度それがなくなれば、その分さらに必要な変化をするという、予算で増分主義というのがありますけれども、変化分だけを積み重ねていって今日の制度ができている。これはこれで重要な積み重ねではあるんですが、やはりどこかで根こそぎ論というか、そもそも論をしっかりやらなきゃいけないということなんだと思います。そういう中で取り組んでいる中で、先般の答弁もさせていただいたわけであります。

 私は、そもそも今の中で、財源保障機能と財政調整機能というのをそんなに明確に峻別できるわけではないんだということを前提に申し上げていたわけでございますけれども、極端な仮定の話として、例えばですけれども、大規模な税源移譲をすれば、その意味では財源保障というようなものを、別に財源を確保するということを交付税で行わなくても税源で行うこともできるのではないのかと。もちろんその場合でも、課税客体のあるなしの問題はありますから、自治体間の調整のようなものはしっかり行わなければいけないわけですけれども、そういう考え方だってあるんだ、だから根こそぎ論をやりたいんだという趣旨で申し上げたわけでございます。

 現状、どのようなものがいいとイメージしているかというふうに聞かれましたら、これがよいというふうに自信を持って申し上げられるものはありません。そのためにも専門家で御議論いただいているわけであります。そういう中に、先ほど言いましたように、土屋委員のような御経験のある方のお考えをぜひインプットしたいと思いますので、ぜひそういった観点からの御発言もいただきたいというふうに思います。

 いずれにしましても、単に交付税だけを取り上げて議論するのではなくて、国、地方を通じた行政、税制、財政そのものを根こそぎ議論したい、そのように思っております。

土屋(正)分科員 そもそも論や根こそぎ論については大変結構だと思いますが、後にこれに関連して、あわせて質問させていただきます。

 次に、バランスシートと破綻法制についてでございます。

 お手元に参考に武蔵野市のバランスシートを差し上げた次第でございますが、市町村におけるバランスシートの導入状況というのは、連結で全体の二・三%ということを聞いております。武蔵野市は、一般会計、特別会計、公営企業会計並びに財政出資団体並びに五〇%以上の補助交付団体、全組織を連結して決算をいたしております。それも、さまざまな試行の積み重ねから、今総務省方式は決算カードによる積み上げ方式をやっているわけでございますけれども、例えば、資産なんかの場合、取得時にさかのぼって、それを例えば三十年なら三十年の定額法によってやる、こういう民間に近いようなやり方をやっているわけであります。また後で御参考になっていただければと思っております。

 なお、武蔵野市のバランスシートは、日本公認会計士協会の公会計のテキストに採用されているわけであります。

 しかし、こういうことでやっているわけでありますけれども、やっているうちにいろいろな問題が起こって、私も報告を聞くたびに、これは民間と違うな、改めて公共というものは一体何なのかということを考えさせられるわけであります。

 例えば、武蔵野市の資産というのは二千数百億ある、こういうことになっております。金融資産などを引いた残りの固定資産というものが二千二百億、八〇%以上あるわけでございますけれども、そのうちの、固定資産の中の大多数は土地と道路と建物であります、九〇%近く、八七・六%。

 ところが、大臣、民間的手法でやってはみたんですが、資産計上はそういうことなんですけれども、まさか学校を売り払うわけにはいかない、道路を売り払っても買う人がいない。通行料を取るという考え方もあるかもわかりませんが、これまた、今はそもそも論につながる話でございますけれども、実は自治体の大部分というのは、公共財として、あるいは行政目的的に使われているもので、幾ら資産勘定をしてみても、それをいわゆるストックを処分するというような形で清算できないというものが多いんですね。ですから、バランスシートの限界みたいなものがあるわけでございます。

 こういうことについて、さきの予算委員会等では、民間の会計とは違うんだ、しかしバランスシートをつくるという意味があるんだ、こういうことなんですが、今のような資産の実態からして、処分できるのは、金融資産とか、あるいは土地公社がまだ目的を定めていない土地だとか、その程度でありまして、微々たるもの、全体からすれば一〇%も行かないぐらいの話であって、武蔵野市のように土地の高いところでもまだそうですから、全国、土地が余っているようなところなんかは、資産はつくっても処分できない、こういう話が出てくるわけであります。

 こういうことについて、再度、お考えがあれば簡単にお願いいたします。

竹中国務大臣 まず、二点、ぜひ申し上げなければいけないと思うんです。

 企業のバランスシートと公的な主体のバランスシートは、その性格も、そして作成の手続も違う、これはいわば当然の前提であるというふうに思います。

 実は、民間のものというのはマーケットプライスがありますけれども、公的なものというのはマーケットプライスがないわけです。マーケットでプライスがつかないからこそ公的部門がやっているわけでございます。

 実は、GDPの統計の中にもそういう限界はもちろんあるわけで、例えば、消防が行っているサービスというのは国民に対するサービスなわけですけれども、消防のサービスというのははかれませんから、GDPの統計の中でもどうはかっているかというと、実際にかかったコストではかっている。だから、これはマーケットでの取引価格とは全く違うものがGDPの中にも実はまざっているわけで、それはある種踏まえなければいけない重要な前提であるというふうに思います。

 しかし、私は、それでもやはりバランスシートはつくる必要があるんだと思います。国のバランスシート、中央政府のバランスシート、アメリカの連邦政府のバランスシートの五倍の金額があるということを我々は今一つ問題にしているわけでありますけれども、同じものを比べた場合に、こんなに大きい、こんなに小さいというのはなぜだろうか。これはこれで、やはり非常に重要な情報を提供してくれていると思います。

 国のバランスシートを議論する際も、もちろんこれは、国のバランスシートの中にはいろいろな重要な、外国為替があり、年金のための資産があり、これは売れないじゃないか、道路は売れないじゃないか、これは当然のことだと思います。しかし、それでも、例えばほかの類似の団体と比べてどうであるのかというようなことに関しては情報を提供するであろうし、そういう意味での有用なものがある。

 そして、何よりも、バランスシートの中にはやはりマーケットと直結しているものもあります。借入金というのはそうです。公的な部門だから返さなくていいということはないわけで、やはりそういうものを把握するためにも、バランスシートはしっかりとある前提を置いて制約を踏まえながらもつくらなければいけないということだと私は思います。

 第二点は、委員は処分のことをおっしゃいましたけれども、処分のためにだけこのバランスシートをつくるものでは当然ないわけでございます。資産を圧縮していかなきゃいけないということにおいてバランスシートは有用でありますけれども、先ほど言いましたように、マーケットでは簡単に売れないものがいっぱいあるわけでございますし、処分のためだけにつくっているわけではありません。

 しかし、フローとストックのバランスとか、やはり多元的な利用をしなければいけないわけでありますので、そういう制約を踏まえた上でつくって、そして制約を踏まえた上で利用していくというのがやはり当然の前提かと思います。

 そのためにも公会計のあり方についてさらに深める必要があると思っておりまして、総務省にそういうような研究会を立ち上げる予定でございます。

土屋(正)分科員 先ほどの交付税論議とあわせて申し上げておきたいと存じますが、大臣が根こそぎ論、そもそも論をやろうじゃないかと。こういうことについては私も大変結構なことだと思っております。

 ただ、そもそも論と、今民間と公共の話が出たわけでありますが、例えば今のお話の中でも、年金の資産のようなものは、現に金融資産としてあるわけですから、二百兆とかそういう数値を、例えばそれを何十年分じゃなくて、もっと年金の例えば二年分とか三年分に圧縮しようじゃないかというのは、これは一つの政策選択としてあるんだろうと思います。しかし、例えば道路とか固定資産でのっぴきならないものがあるわけで、実はそういうものの方が地方自治体には多いわけですから、地方自治体は年金資金なんか持っているわけじゃありませんから、だから、そこのところを、ぜひ正確に大臣に地方自治体の実態をごらんいただきたいと思っております。

 そもそも論や根こそぎ論でいえば、例えば財源保障機能を、仮に税源を移したとしても、例えば北海道のある市などは、炭鉱町として栄えた市でありますけれども、昭和二十三年ごろ人口のピークが来た、四万数千人、現在五千三百人、そして財政力指数が〇・一です。こういうところに幾ら税源を移して、税源というのは、所得にかけるか、消費にかけるか、資産にかけるかしかないわけですが、所得もない、資産もない、資産だって資産価値ゼロに近いような、北海道の市長とよく話すと、私が住民登録してくれれば家を建ててやると言われましたよ、私の友人の市長から。だから、事ほどさように、資産もない、消費も少ない、そういうところに税源を移すということ自体が、仮に権限を移しても税源がないわけですね。

 こういう実態が実は日本じゅう至るところにあって、そういうことに対する、しかし、そんな効率の悪いところだったらやめちゃえばいいじゃないか、これはやめられないです。なぜかといえば、共同体ですから、地域社会は共同体ですから。大臣が先ほどお話ししましたようなさまざまな相談業務やいろいろなことも含めて、私は、市場で通用する財の処分のようなわけにはいかない。地域の共同体をつくるにはどういうことなのかということが、そもそも論のそこがないと、これからの改革について私はなかなかうまくいかないんじゃないかと。

 そして、竹中大臣がこれからますます内閣で重要な役割を果たしていかれると思いますから、そういうそもそもの共同体のようなものをこれからどう構築していくか。これはここだけじゃ到底議論できないんですけれども、いろいろな事例があります。そこのところについて、私は、現場についてどんなふうなお感じ方を持っていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。

竹中国務大臣 これはもうまさに委員がおっしゃるとおりでして、今委員が御指摘のような、税源を移しても課税客体がない、そういうところをどうするかというのがそもそも論、根こそぎ論の基本であるというふうに思います。

 だから、交付税的な、交付税と呼ぶかどうかはいろいろな国によっていろいろなあれがあると思いますけれども、そういった形でのまさに調整を行う財政の機能というのは極めて重要なわけです。これは、どんな社会でもその機能は重要なものであるし、財政調整と財源保障というのを厳密には区分できないけれども、あえて言えば、財政調整として非常に重要な役割を果たすということになるんだと思います。

 物すごく簡単に考えれば、分布がどのようになっているかわかりませんけれども、やはり半分以上が、平均の上の人が半分いれば、平均の下の人が半分いるわけで、そういうところについて、その地域についてもそういうことの調整というのは当然行っていかなければいけません。しかし、それをどういう形で調整したらいいのかということについては、本当にここはそもそも論のコアの部分であろうかというふうに思います。

 私は、そういう点に関してできるだけわかりやすい制度である必要があると思いますし、非常に予見可能な制度であるべきだというふうに思いますし、そこに一種の裁量性とかが余り入らないで、できるだけわかりやすくそういう配分がなされるような制度の方がいい制度だというふうに原則論としては思います。

 しかし、繰り返し言いますけれども、今この瞬間そこに暮らしていらっしゃる方がおられて、行政サービスが行われていて、それが途絶えないようにして、現実的なやり方を、移行のプロセスも含めて考えていかなければならないわけですので、その意味で、やはり制度設計は本当に難しいというふうに思っております。

 いずれにしても、土屋委員が言われているようなことをそもそも論として私は考えたいというふうに申し上げたいと思います。

土屋(正)分科員 いろいろな御理解をいただいてうれしく思っております。

 最後の質問なんですが、これも今の話に帰着するんですが、個人情報保護法と地域社会への影響ということで、実は、個人情報保護法が施行されて非常にいろいろな戸惑いがあります。

 二つのアナウンスがあります。

 一つは、個人情報取扱事業者として指定されたものに対する過剰反応、これは最近話題になっているわけでありますが、問題になっております。

 しかも、この中には除外規定が五つの要件としてあるわけで、マスコミとか学術研究とか、それから宗教とか政治とか、もう一つ要件がありますが、そういうものが、除外要件なんか全然忘れられてしまって、ともかく保護、保護、保護、こういうふうな状況になってきております。

 さらに問題なのは、地域のひとり暮らしのお年寄りに対するサービスなんかは、基本的にはその情報がなければサービスできないわけですけれども、これらが、マスコミの影響などもあって、例えば必要な情報が、民生委員さんに提供する場合に十分なことが行われていない。あるいは、消防署がひとり暮らしのお年寄りを把握しようとすると、これは出せないと言う。また、学校の連絡網等、こういう現象がたくさん起こっております。

 最終的に何を言いたいかと申しますと、実は、共同体がさまざまな意味で、よく言うと個人の権利、一方で情報公開、裏腹な関係なんですけれども、こういう非常にアメリカ的な、よく言えば権利の主体がきちっとしている、悪く言えば地域の共同体がそれによって緩んでいる、こういう現象が至るところにあります。家庭生活や地域社会のアウトソーシング化みたいなのが進んでいるわけです。

 これは、竹中大臣が大臣として活躍されるこの舞台は、地方自治体というまさに地域社会や共同体をどう構築するかという話ですから、今までの手腕プラスそういう点での、ぜひ現場に行っていただいて、市町村やそういった福祉の現場を見てきて、その上で腕を振るっていただきたいな、こんなふうに思っております。

 何かお言葉があれば拝聴させていただきたいと思います。

田中主査 時間が来ております。竹中総務大臣。

竹中国務大臣 現場を踏まえて重視しろという御指摘は、本当に肝に銘じて努力をしたいと思います。

 個人情報は、実は私、一番最初の個人情報保護法が国会に提出されたときの担当大臣でありまして、当時は、メディア規制法ということで、物すごい逆の議論があったんですね。

 言うまでもなく、これは、個人情報は有用であるからしっかりと活用したいという意味、しかし、やはりそこは個人の権利を保護しなきゃいけない、このバランス論の上に立たなきゃいけないわけですけれども、ともすれば、物すごくメディア規制だと言ってみたり、今度は逆に行き過ぎたことになりがちな、やはり微妙なバランスの上に立っていると思います。

 そういった実態を踏まえて、我々もしっかりと対応をしていきたいというふうに思っております。

田中主査 これにて土屋正忠君の質疑は終了いたしました。

 次に、寺田学君。

寺田(学)分科員 民主党の寺田と申します。

 大臣におかれましては、先日の地方分権に引き続き、きょうは公選法のことについて少し議論させていただきたいと思います。

 質問をする前に、数々いろいろ質問して思うんですが、質問の種類ですけれども、二つぐらいの種類があると思います。一つは、何か価値観をぶつけ合って一つの価値観をつくり上げていくという質問もあるでしょうし、もう一方では、大臣もお忙しい立場でありますし、役所の方々もさまざまなこと、広範にいろいろお仕事をされている以上、気づかない点もあると思うんですね、その気づかない点を委員会において指摘するという種類もあると思っています。

 きょうの質問に関しては、全くもって、価値観をぶつけ合うというよりは、いろいろ調べていくうちに、ちょっとここは手落ちがあるんじゃないかなという部分がありまして、後者の、できれば気づいていただいて直していただきたいという部分でありますので、よろしくおつき合いください。

 きょうは、公選法の中でも、政見放送に字幕、手話をつけるということに関して質問をさせていただきます。

 大臣も、教授をやられてから選挙に出られて、参議院議員として大臣の職につかれていると思うんですが、選挙の意味というものを、非常に大きなものを感じられたと思います。それは、立候補する側にとっても、そしてまた投票する側にとっても非常に大きな問題で、でき得る限り有権者の方にはしっかりとした情報を提示し、公平公正な選挙を提供するような努力というものが公選法のもとにも必要だと思っています。

 そういう意味でいうと、今回取り上げます、政見放送という制度において、後でるる説明いたしますけれども、手話と字幕がついていない。ということは、聴覚に障害を持たれた方にとってみれば、細かい部分は後で言いますけれども、やはりそれは、情報を保障する、受け取るべき情報を担保するという意味でいま一歩瑕疵がある問題だと思いますし、もっと言えば、参政権というものに関しても十分な措置がとられていないんじゃないかというところに発展すると思うんです。

 現状、今、政見放送は、知事選と衆院の小選挙区、衆院の比例区、参院の選挙区と参議院の比例区。この五個に関していうと、政見放送の中で手話をつけてもいい、正確な表現ではないと思いますが、そのような形で言われているのが参院の比例区。衆院の小選挙区に関しては、自分でつくったビデオを持っていっていいですよということがあるので、善意のある方及び何かしらの意思がある方は、そこに手話及び字幕をつけて政見放送として流すことができるということになっているんだと思います。

 その中で、聴覚に障害を持たれる方からさまざま聞いたんですが、手話があればいい、ないしは字幕があればいいということではなくて、生まれたときから聴覚に障害を持たれている方は、やはり手話がなければいけない。途中で聴覚に障害を持たれた方は、すぐには手話が覚えられないから字幕がなければいけない。だから、つまるところ、手話と字幕が両方なければ、聴覚に障害を持たれたさまざまな方に対して、しっかりとした情報を訴えていく、政見を訴えるということはままならない。逆から見ると、政見放送で訴えられていることを十二分に情報受け取りができないということになっていると思うんです。

 それで、いろいろ資料を探してみるんですけれども、平成六年に、自治省内に政見放送研究会というものがあって、取りまとめた報告書の中に、政見放送は候補者、政党等の政見を伝える重要な機会である、基本的にはできるだけ多くの方にその内容が伝わるようにしなければならぬと片方で言っていて、されど、すべての候補者及び政党に対し公平な取り扱いができる、そのような環境でなければならないと。

 これを字幕と手話ということに関して言うと、聴覚に障害を持たれた方は、ここで訴えているとおり、政見放送は重要な機会であるから、そこからちゃんとした情報を受け取ることがしっかりと担保されていなければいけないということがあると思うんです。片や、候補者側にとってみると、手話、字幕をつけるに際しては、しっかりと自分たちでつけられる、そのようなことをしっかりと自分たちの政見放送の中に取り込めるような環境が整ってからじゃないとよくないですねということだと思うんです。

 今の現状を見てみると、さっき申し上げたとおり、手話について、つけなさい、手話、字幕をつけなさいという法はないですし、非常に政党の任意の中で、つけられるんだったらつけてもいいですよとか、参院に関してはそういうふうに言っていますし、持ち込みの中で御自由にどうぞというやり方をしている。

 今の現状を見てみると、さっきのこの自治省内の報告書で言われた二つの概念、できる限り情報は伝えなきゃいけないという一つの概念と、候補者側の立場に立ってみると、環境が整っていなきゃいけませんというような、二つの考え方のどちらに重きを置いているかといえば、候補者の方に重きを置かれている。政府の答弁をさまざま調べてみますと、そういうような形になっている。

 逆から見てみれば、候補者の立場、手話、字幕をしっかりと政見放送に盛り込むような環境を整えるという立場を重視し、聴覚障害の方々が政見放送からしっかりとした情報を受け取る権利というものを、相対的に見ると、やや弱目に見ている現状にあると思います。

 まず、この点に関して、大臣としてどのように思われていますか。

竹中国務大臣 まず、委員冒頭御指摘になられたように、選挙の重みというのは、私も、数少ないですが、一回選挙を経験させていただいて、本当に感じます。

 その中で、委員の問題意識の、今回提示された聴覚障害者の方々への情報提供というのは、非常に重要な問題であろうというふうに私も認識をしております。

 今の制度については、委員も御紹介してくださいましたように、衆議院の小選挙区そして参議院の比例代表区について手話通訳が可、同時にしかし、テロップといいますか、文字について不十分な点もまだ非常に多い。そういう聴覚障害者から見た場合の問題点というのは、私も今委員の御指摘で認識を新たにしているところでございます。

 同時に、選挙の制度というのは、特にこれは選挙運動の一環としての政見放送であろうと思いますので、各党各会派でいろいろ御議論をいただく必要がある問題であろうというふうに思います。我々としては、今委員に御指摘いただいたような問題意識はしっかりと持ちたいと思います。

寺田(学)分科員 重要なことであると。そしてまた、この制度、手話、字幕をつける等、政見放送に関しては各党各派でというのは、議員立法でやってくれという部分にかかっているのかなと思います。その部分に関しては、後段でちょっと議論させていただきたいんです。

 まず、その前に、今の現状の制度において、手話そして字幕をつけるかどうかということは政党に任されているのが現実だと思います。手話及び字幕をつけるかどうかを政党に任せていること自体、あり方として正しいかどうか、大臣の御意見はいかがですか。

久保政府参考人 政党に任せているという御指摘がございましたけれども、委員もう既に御指摘がございますように、衆議院の小選挙区、これは候補者届け出政党、これは政策本位、政党本位だということの平成六年の改正で、衆議院の小選挙区で政見放送ができるのはまさにそういった政党に限るんだということで始まって、そういうことでございますから、政党のむしろ創意工夫を凝らしたような政見放送のあり方、これを大いにやっていただこうというので、この小選挙区の場合に限りまして、候補者届け出政党というのは持ち込みビデオというのが認められたということになっておりまして、その持ち込みビデオの範囲の中で、手話通訳をつけてみたり、あるいは字幕を付してみたりといったことは、その創意工夫の中でなされているというふうに理解しております。

 もう一つの、参議院の全国区といいますか比例代表、これにつきましては、字幕をオーケーということにはしておりませんけれども、手話通訳、これは申し込みがあったときにはそれを認めるという取り扱いを総務省告示で行っております。

 これも委員の御指摘の中にございましたが、手話通訳者という方々、正式に認定を受けた人の数が地域的に偏在している、やはり首都圏に多い、そして、参議院全国比例の場合には、東京で録画いたしますものですから、そういった面では手話通訳ということが確保しやすいといったことで、申し込みがあったときには手話通訳をつけられる、こういうふうになっているものだと理解しております。

 また、これを義務化するかどうか、そういった話になりますと、これは大臣からお話がございましたように、まさに各党各会派で御議論をいただきたい、そういうふうに考えております。

寺田(学)分科員 全く質問した趣旨に答えていただいていなくて、結論から言うと、任せていいということでよろしいんですね。

 こういう問題に関して、政見放送という制度をつくりながら、すべからく、その中には、聴覚に障害を持たれている方にもしっかりと制度として情報を伝えるという使命があるにもかかわらず、それは政党に任せますよ、それが小選挙区かどうかというのはどうでもいいですけれども、そこは任せる、政党に任せるというのが適正であるということでよろしいんですね。イエスかノーだけでいいです。

久保政府参考人 今の参議院の比例代表でいいますと、まさに名簿届け出政党の自由だというふうに考えております。

寺田(学)分科員 久保部長の方がさきの御答弁の中でさまざまなことに触れられておりましたので、僕も質問を進めるんですが、きのうの質問取りの段階で、この間の衆院選挙において政見放送をさまざまつくられたんだと思いますが、その中で手話と字幕が両方あった政見放送の割合はどれぐらいですかという質問をさせていただきました。その中で、省内に帰られてから、そのようなデータがないと言われました。

 そこで、久保部長にもお伺いしたいんですが、何でないのか。恐らく、字幕の統計はあって、手話の統計はあるけれども、どっちもあるという統計をとられていなかったんだと思うんですね。恐らく聴覚に障害を持たれた方からいろいろ陳情等々受け取りになられているはずなんですが、そのような状況において、要望されているものをデータとしてとられない理由はあるんですか。なぜとられていないんですか。

久保政府参考人 私も、調べてみまして、手話と字幕と両方やっているケース、これは調査をしていないということでございまして、どうしてしなかったのかなという気がいたします。

 今後、やはりそういった御指摘のようなデータは有用だろうと考えておりますので、工夫してみたいと考えております。

寺田(学)分科員 してください。いいですね。御答弁だけ。

久保政府参考人 検討させてください。その方向で検討いたします。

寺田(学)分科員 簡単に決定できないお立場なのかどうかわかりませんけれども、別に、片方で手話のアンケートと字幕のアンケートをとられているのであれば、そこにもう一個足せばいいだけの話ですから、やってください。

 それで、先ほど答弁の中に、持ち込み形式と局撮り形式のことまで言及されていました。その中で、衆院の小選挙区においては、政見放送を録画する際には、局で撮るやり方と自分たちで持っていくやり方、両方認められている。その他の、先ほど五個挙げた選挙のうちの衆院の小選挙区以外は局撮りしか認められていないという形になっていると思うんです。

 政見放送に手話、字幕をつけるということの懇談会を政党間の事務局ベースでやったときに、自民党さんの事務局の方から出た発言として、これは伝聞ですので正確とは言えませんが、小泉総理も局撮りの方式を、したがって、局撮りしかできないということで、局に行って政見放送を撮った。そのときに、詳しい制度の御事情は御存じだと思うんですが、撮り直しは一回しかできないんです。かつ、一回撮ったものの上に二回目を録画するので、一回目は保存することもできないということなので、とにかく一発勝負だ。そして、竹中大臣が一番御存じだと思いますけれども、小泉総理はアドリブだけでやっていかれる方なので、手話を同時に並行してやろうにも、何を言われるかわからないし、もともといただいていた原稿とは違うエネルギッシュな演説をされるので、やりにくい。総理自身も、こんな制度けしからぬぞ、何だこれはと非常に疑問に思われていたということも、一応、伝聞ではありますが、つけ加えておきます。

 そういう意味において、衆院の小選挙区においては自分たちで持っていく制度を認めながら、なぜほかの四選挙に関しては認めないのか。

 それで、衆院小選挙区に関して持ち込みが可能とされたときの法改正の議事録を読んでみるんですが、このときは佐藤観樹、今はなき自治大臣ですが、今はなきというか、議員をやめられているということですけれども、その御答弁の中に、創意工夫を凝らした上でやってくださいよ、創意工夫を凝らして有権者にできるだけいいものを見てもらいたいんだよという理由で持ち込みを認められたと。であるならば、他の四選挙に関しても同じことが言えるはずなんですね。それをなぜ認められないのか。

 そこら辺、久保部長でいいです、御答弁ください。

久保政府参考人 前提といたしまして、公職選挙法第百五十条の二というのがございまして、政見放送を行うに当たっては、他人や他の政党等の名誉を傷つけ、善良な風俗を害し、特定の商品の広告をするなど、いやしくも政見放送としての品位を損なうような言動をしてはならない。この規定があるという中で、今、佐藤大臣のお話がございましたように、当時、衆議院の小選挙区に限って持ち込みビデオというのをやろうとしたときに、まず御議論があったのは、政策本位、政党本位の選挙の実現という見地から、衆議院の小選挙区選挙において、候補者届け出政党、これについては、できる限り自由に創意工夫を凝らしてその政策を訴えることができるようにすることが適当である、それが一点。

 それからもう一点は、こうした候補者届け出政党、これは、政党としての一定の要件、五人以上の所属国会議員を有しているか、あるいは直近の国政選挙で得票率が二%以上を満たしている、こうした政党だから、先ほどの公選法の規定も御紹介いたしましたけれども、政見放送の品位を損なうような政見ビデオを持ち込むことは考えにくいだろうといったような御指摘があったように聞いております。

寺田(学)分科員 大臣にお伺いします。

 いかがですか。衆院の小選挙区だけ、今御答弁された内容で決められた部分はあるんですが、他に認めない理由というのはないと思うんです。かつ、局撮りでも持ち込みでも可というのであれば、出られる候補者がその方の能力に応じて選べばいい話なので、認められない理由はないと思います。

 それを認めるような法改正をすることに関して言うと、大臣は先ほど各党各派というお言葉を使われましたけれども、これに関して言うと、一般的な公選法の改正は議員立法ですが、佐藤観樹大臣のころには閣法で決められているんですね。閣法で政見放送に持ち込みは可能だと決められている以上、大臣の御判断でやられることも何ら問題はない部類の法改正に当たると思うんです。これがもし当たらないというのであれば、このときに閣法で出したことがおかしいことになりますので。

 大臣、いかがですか。ほかのところに認めるということをまずやられたらいいと思うんです。いかがですか。

竹中国務大臣 これは選挙運動のあり方に係るものでございます。

 どうしてこういうことになっているのかということは、私も少し勉強させていただきましたが、先ほど部長から非常に丁寧にお答えがあったわけでございますけれども、これは選挙運動ですから、ビデオを持ち込んだとして、不適切な、何が不適切かというのは難しいですが、あった場合に、これはおかしいから変えようとか、放送局が放送禁止が入った場合に変えようとか、そういうことをやるべきではないですね。その意味では、非常にクオリファイドされたものがビデオとして持ち込まれるという要件をやはり確立しておかなければいけないというのが当初の趣旨だったのだと私は思います。

 それでよいかどうか。委員おっしゃるように、これはやってみたわけですから、これでそこそこ制度としてはうまく機能しているのではないか、ほかの選挙についても当てはめることを考えてみてはどうかというような意見が、まさに委員そういう御議論だと思いますけれども、出てこられて、そしていろいろな幅広い議論をしていただくというのは私は当然歓迎いたしますし、政治家としては、私自身も思いというのがございます。

 ただ、それをどのような形で進めていくかということに関しては、そもそもの公職選挙法、これは昭和二十五年に議員立法によって制定されたわけでございますけれども、これまでたびたび改正されておりますけれども、議員立法によるのか閣法によるのか、もちろん統一的な基準というものはあるわけではありません。ここからここは議員立法である、ここからここは閣法というような基準があるわけではありません。ただ、一般的な傾向としては、選挙人名簿とか投票制度などの選挙の管理、執行にかかわる改正については閣法で行っている、選挙運動や定数等に関する改正は議員立法で行われるものが多かったというふうに理解をしております。

 その意味で、各党各会派で、選挙運動のあり方として、さらに議論を深めていただければありがたいというふうに私としては思っております。

寺田(学)分科員 前回、持ち込みを許したときは閣法でやられているんですよ。それを今さら、この手のことに関しては各党各派、端的に言えば議員立法にゆだねるというのはちょっとおかしいと思うんです。

 僕自身、最初に申し上げたとおり、がんがんがんがんやり合いたいわけじゃなくて、どう考えてもちょっとおかしいわけですね。おかしいという言い方は、価値観がおかしいというんじゃなくて、やはり時代の流れの中で、このような状況、今の状況にあったことはやむを得ないと思うんですが、流れの中でこのまま放置しておいていい今の状況ではないと思うんです。

 かつ、持ち込みだ、局撮りだという細かい話に入っているのは、本来であれば、僕自身としての希望ですけれども、僕は義務化してもいいと思うんです。それに当たって、さまざまな財政的な措置とかいろいろ考え得ると思いますが、とりもなおさず、聴覚障害を持たれている方が政見放送からしっかりとした情報を受け取ることができるというのは、政治に携わる身として、必ず保障しなければいけない部分だと思うんです。それをやっていないのは政治の怠慢なのか行政の怠慢なわけです。

 そこを、昔はどうであったかというのはいいですけれども、今直していかなきゃいけないし、かつ、来年、地方統一選がありますし、参議院選挙もあるわけです。そのときまでには、政見放送から、義務化されてなくとも、局撮りではなくて、持ち込みにすることによって、政党の善意が生きるような制度に、前回は閣法でやられているわけですから、閣法で出されてもいいんではないですかというところをお願いしたわけです。

 いろいろ理由があると思いますよ。つい先日、文書で御回答いただいたら、まだ地域に手話通訳者が偏在しておるんですという十何年前と同じような御答弁をいただいているわけです。しかし、十何年前は、全国で六百人しか手話通訳者がいなかった、かつ、そのうち二百人ぐらいは東京都に集まっている、偏在です。記述によると、三人以下の県が十何個あって、手話通訳者が一けた台であるというところも三十何団体あった、全然だめでしたと。それでも、自治省内に設けられた研究会の中では、徐々に整備されつつあると言っているわけです。

 では、平成六年の段階から十数年過ぎた今、六百人しかいなかった手話通訳者、正式にオーソライズされた手話通訳者ですけれども、千四百人以上になっているわけです。少なくとも千四百人はいるというデータがあります。かつ、三人以下の県というものがゼロになり、三人というのが、平成十六年のデータでいけば佐賀県一県。佐賀県は選挙区が三つしかないうちに三人しかいない。手話通訳者が一けたしかいないというような県も十六団体になったということは、十数年前から比べれば半減したわけです。総数として倍以上になり、偏在ということに関して言うと、かなり改善されてきた。

 そういう段階において、いまだ偏在しているからこれは認められない、閣法で出された持ち込みすらも認められない。今の現状にとどまるという理由は、どうも今、手話通訳者がどのようにふえているかということを、やや昔の基準のまま考えられていると思うんです。

 偏在していると御答弁を書面でいただきましたが、久保部長で結構です、偏在しているというのは、何をもって偏在しているといまだに言われるのか、御答弁ください。

久保政府参考人 これも寺田委員のただいま御指摘の中に既にございましたけれども、平成十七年の三月三十一日現在で、手話通訳技能認定試験の合格者数は、全国で千四百四十五名おられます。関東の一都三県で合格者数が全体の四四%の六百三十四名でございます一方で、合格者数がいまだ十名未満の県、これが十四県、約三割に上っているということでございます。

寺田(学)分科員 それが偏在なんですか。御答弁ください。

久保政府参考人 ただいま申し上げましたような状況下で、候補者が多数になったような場合におきましては、手話通訳者が少ない地域で正確な通訳の行える手話通訳士を必要な数だけどうやって確保していったらいいのかという問題とか、収録期間、これは極めて短い中で多数の収録を行わなければならないといったようなことを考慮いたしますと、やはりまだ、そういったところは当然、私どもいろいろなことを考える際も念頭に置かなきゃいけない要素だろうと思っております。

寺田(学)分科員 今、偏在の理由として、数字を挙げて、今こういうような状態だから偏在であると言われたのであれば、逆に、どのような数字になったら偏在が解消されたと考えられるんですか。御答弁ください。

久保政府参考人 私、数字を御紹介いたしましたけれども、必ずしも数値だけで、それがどうなったらどうかといった解消の基準を言えという御質問であったら、それはちょっと、いろいろな意味で、克服するためのどういう方策があるのかといったことも並行して検討していって、総合的に考慮するということだろうとしかちょっと言いようがないというふうに思います。

 私どもといたしましては、聴覚障害者の方々の投票環境の整備、これはもう御指摘にございますように重要な課題だと思っております一方で、やはり公平公正な選挙が行われるということもあわせて見ながら、大臣から御答弁がございましたように、各党各会派で御議論をしていただいて、それをまた見守っていきたい、こういうふうに考えております。

寺田(学)分科員 手話そして字幕をつけるということをどのように達成していくか。義務化するとか、参院の比例でしたか、そのときのように自治省内の公示という形で認めるのか、さまざまあると思いますが、まず一点として、持ち込みを認めない建設的な理由というものが、知事選であるとか、参院の他のものであるとか、もうないと思うんですよ。政見放送のあり方、手話、字幕をつけるか、政党に任せるかどうかという是非は置いておいても、まず持ち込みでやれるようにしましょうと言っても何ら差し支えはないと思うんです。その中で、政党の善意及び政党の意思として手話と字幕をつけるということに最善の努力をするわけですから、そこら辺はまずお認めになっていただきたい。

 各党各派でやるのはそのとおりだと思いますが、以前閣法でやられているんですから、次の臨時国会にでも出していただいて、それで、次の統一地方選挙とそして参院選挙には、障害を持たれた方にもしっかりと情報を与える環境を整えることは大事だと思います。これがまず一点。

 あとは、前向きに努力しますと以前から言っているんです、こういうような状態を是正するために。それで、偏在がなくなったらできるでしょうねと言っているんですが、何になったら偏在が解消されるのかとか、具体的な根拠がないわけですよ、言い続けることができるわけです。そういうふうに言い続ければ、いつまでたっても耳に障害を持たれている方がしっかりと情報を受け取ることができないまま、選挙は数々行われていくわけです。そういう意味でも、私は、早急にやらなきゃいけないものだと思います。

 これは何もけんかをしてやることではなくて、大臣自身、ここは閣法で出しちゃうと言っていただければそれで済むことなんです。どうですか、大臣。

竹中国務大臣 寺田委員のこの問題に関する熱意、改めて伺って、本当に敬意を表します。それと、聴覚障害者への配慮が本当に重要な政治課題であるというのも、まことにごもっともな意見だと私は思います。

 先ほど申し上げたことと少しダブるかもしれないんですけれども、一つおっしゃった、衆議院の小選挙区について候補者届け出政党による政見ビデオの持ち込みを可能とする改正、これは平成六年、閣法でなされたわけですけれども、これは、長期間にわたって各党各会派が政治改革論議を行って、小選挙区比例代表並立制の導入の一環としてなされた、やはりそういう各党各会派での御議論の経緯があったというふうに承知をしております。

 そういう点も含めて、私は、熱意は大変ごもっともだと思うし、おっしゃることはわかります。だから、ぜひそういう議論を深めていただきたいというふうに思います。私も、その際は、一政治家として、そういう議論には積極的に参加をさせていただきたいと思います。

寺田(学)分科員 時間になりましたからあれですけれども、そういうときだけ一政治家にならないで、大臣になってやってくださいよ。

 そういう意味で、この持ち込みに関して言うと、出していただければ、それこそ各党各派でやりますよ。事務局ベースでありますが、どの党も反対はしていません。出していただいても、それでも国会の場で各党各派が議論するわけですから、まず臨時国会の方で御検討ください。もちろん議員としても、議員立法のための努力は、最善の努力はします。

 そこら辺、協力してやっていただけることをお願いして、終わります。ありがとうございました。

田中主査 これにて寺田学君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本充功君。

岡本(充)分科員 きょうは、総務省所管の消防の問題についてと、それから地域の公立病院についての話、近いようで話は全然違うんですけれども、二つ、短い時間ではありますけれども、御議論させていただきたいと思います。

 まず、救急救命士の件ですけれども、制度施行から時間がたつ中で、かなりの救急救命士の方が資格を取られ、そして活動をされています。

 そういった中で、端的にお伺いをしていきたい。救急救命士、大変に現場で頑張ってみえますが、この資格をお持ちの方が、まだまだ、先ほどの寺田委員の発言ではありませんけれども、地域間格差があって、これも偏在をしておるというふうに私は認識を持っています。数としては確保された今、これからどのように地域の偏在を解消していくおつもりなのかを少しまずお伺いしたいと思います。

板倉政府参考人 救急救命士の関係についてのお尋ねでございます。

 消防機関において運用されております救急救命士は、年々増加をいたしまして、平成十七年四月一日現在で約一万五千人程度となっております。

 消防庁といたしましては、かねてから、全国すべての救急隊に少なくとも一人の救急救命士を配置するようにということで推進をしてまいっておりますけれども、御指摘がありましたとおり、なお地域的に非常に跛行性があるといいましょうか、バランスを欠いておりまして、目標を十分に達成できていない地域があるということも事実でございます。

 特に近年、その処置範囲が拡大されるということになりますので、救急救命士に期待されるところは大変大きなものがあるというふうに認識をしておりますので、一日も早く目標が達成されますように、今後とも、各消防本部に対しまして、救急救命士の養成を積極的に行うように求めてまいりたいと思っております。

岡本(充)分科員 それは、これまでにも恐らくやってこられたことなんですね。もう、ほぼこの十数年この取り組みをしてこられた結果として、これまでどおり救急救命士の育成促進を促すだけでは偏在は解消できないということが明らかじゃないか。

 私、いただいた資料を拝見させていただくと、救急隊当たりの救急救命士の運用隊数を調べると、少ない都道府県、例えば鹿児島県は四二・六%の隊にしか救急救命士がいない。また、福島県は四三・四%ですか。ところが、先ほどの鹿児島県のお隣の宮崎県になると一〇〇%救急救命士がいる、こういう状況なんですね。大臣のお手元にも同じ資料があると思いますが、地域間格差という割には、例えば鹿児島と宮崎でこれだけの差があるというのは、なかなか合理的な理屈は、例えば都市部だからとか地方だからというような話だけではないように私には思える。

 でありまして、この救急救命士の数の確保というのは、これまでどおりの、消防隊また消防本部に資格を取るように促していくというだけでは不十分だというふうに考えるわけなんですけれども、さらなる踏み込んだ御答弁をいただけませんでしょうか。

板倉政府参考人 確かに、おっしゃいますように、県単位で見ましても、かなりばらつきが大きいというのも事実でございます。

 私ども、これまでのところは、言ってみればゼロからの出発で、ずっと充実に努めて養成を図ってきたわけでございまして、それなりのそういう養成の実績も出てきた、こういうふうに考えているところでございますが、今後は、かなりおくれているといいましょうか、そういう地域に対しては、よりそういう事実をお知らせすると同時に、積極的にやっていただきたいということを要請は強めてまいりたいというふうに考えております。

岡本(充)分科員 私は、そういった中でも、インセンティブを設けるとか、何らかの、あめとむちではありませんけれども、やはりさらなる踏み込んだ対処をとらないと、これは人の命にかかわることで、後ほどお話をさせていただきますけれども、確かに、救急救命士の方が蘇生をされると、大臣、救命率がいいわけなんですね。そういうときに、宮崎県の人は助かりました、鹿児島県の人は助かりませんでしたという話があっては本当にまずいわけでありまして、これを解消することが極めて重要だというふうに思っております。

 大臣、ぜひちょっと前向きな御答弁をいただけませんでしょうか。

竹中国務大臣 この数字、改めて私も拝見して、確かにばらつきがあるというのは事実なんだと思います。

 同時に、全体の数が、小泉内閣ができた今から五年前に比べると、今一・五倍ぐらいになってきているんだと思うんですね。そういう意味では、急激にふやしてきて、そのふやしている中での跛行性だというふうに理解をしております。

 余り楽観的な見方を持つのもよくないのかもしれませんが、そういう意味では、さらに全体の数をふやす中で、今若干おくれているようなところについてもその手当てがなされていくということは、やはり数年の跛行性の中で実現をしていくのではないかというふうにも私は思っております。

 その意味では、しっかりと実態を見きわめながら、必要な措置はとってまいりたいと思いますが、これまでの努力を緩めないように、私としてはしっかりと指導をしたいと思います。

岡本(充)分科員 そうしましたら、数年後、跛行性についてぜひまた長官にお尋ねをさせていただこうと思っております。

 続いて、救急救命士の再教育の問題です。

 資格を取られた後、講習をしていくわけですけれども、この講習についても、今進んでいる県と進んでいない県がある。また、近年それぞれ運用が開始になっております、例えば医学的手技の気管内挿管の話にしても、気管内挿管ができる人数にばらつきがあったり、また、運用実績についても大きなばらつきが同様にあるわけです。

 これはまた、恐らく大臣の手元にもあるんだろうと思いますが、例えば新潟県は、気管内挿管をすることのできる人数が四十人、そして隊数で二十八隊あるのに、症例数は二例しか気管内挿管をしていない。その一方、例えば大阪府などは、百六十人の隊員で百十五隊、隊があるんですが、五百五十症例の気管内挿管をしているとか。

 これは、ある意味、隊員に対して統一したプロトコールがない中で、それぞれ消防本部の方で決めてみえる話もあるというふうに伺っていますが、都道府県等で決めている話があると聞いておりますが、しかし、これでは、同じ症状の患者さんでも、新潟ではちょっとヘジテートするが大阪では挿管をする、こういう話になっては、これまた、同じ資格をお持ちの方がみえるのに救急救命率が変わってくるという話に私はなると思うんですね。先ほどの話と同じで、大阪では助かったけれども新潟では助からない、これまた、こういう話になると、私は極めてまずいというふうに思うわけです。

 この点についてはどのような改善をとっていかれるのか、御答弁をいただきたい。

板倉政府参考人 気管内挿管でございますけれども、平成十六年の七月から救急救命士による実施が可能となったわけでございますが、その実施率が非常に地域によって違うではないかということは事実でございます。

 救急救命士が気管挿管を初めとする医療行為を行うに当たりまして、事前の実習、活動に当たりましての指示、事後的な検証というような一連の過程を、各地域の医療関係者を中心といたしましたメディカルコントロール体制、そういう体制のもとで行うというふうにされておりまして、その具体的な手順でございますが、それは各地域のそういうメディカルコントロールの協議会にゆだねられている、そういう制度的な仕組みがございます。

 したがいまして、このメディカルコントロール体制が整ったところからこういう実績が上がってきているというのも実態でございますので、この体制が一日も早く全地域において強化されればいいわけでございますけれども、平成十三年ごろから整備され始めまして、まだ日が浅いというようなこともございまして、各地域で特色のある、それぞれいろいろ工夫をされているというのが実態でございます。

 今後、その内容が成熟化をいたしまして、ある程度一つの方向に収れんをしてくるというような方向になりますように、消防庁といたしましても、全国レベルの救急医学会とか救急隊員のシンポジウム、そういう場を通じまして働きかけを強めていきたいというふうに思っています。

岡本(充)分科員 そのように答弁されるんだろうと思いまして、私、さらにちょっと、これをよく見ると、例えば今御指摘をさせていただいた新潟県は、十六年の十月にもう既に運用が開始されている。ところが、ずっと後に開始している例えば香川県、都市部はちょっと症例数も違うでしょうから単純に比較できない、例えば香川県なんかは、開始した時期が実は十七年の六月であり、なおかつ救急隊で挿管の資格を持っている人が新潟県よりも少ないにもかかわらず、実は症例数が多い。

 こういうようなことを見ると、私は、開始時期の問題だとか順次やっておりますという話ではなくて、恐らくは、現場でのきちっとしたプロトコールが統一されていない、それぞれ都道府県によって違う、今メディカルプロトコールと言われましたけれども、ここの部分がばらばらであっては、助かる命と助からない命に地域間で格差が出ることになるということを指摘しているわけですね。

 ですから、例えば、国としてある程度の指針を示すだとか、こういう症例については積極的にやるべきなんだという話をするだとか、そういう何らかの指針を国として示してはどうかという趣旨で私は質問をしています。それについてはいかようにお考えでしょうか。

板倉政府参考人 気管挿管を救急救命士に実施できるようにしようというようなことを決めるに当たって、いろいろな議論があったと思われます。御承知のとおりかと思うんですけれども、恐らくそういう議論の中で、当面は、地域地域のそういうメディカルコントロールの体制の中でいろいろなことをやることによって、いい方法といいましょうか、それぞれのところで考えていただいて、それを全体として収れんしていって一つの方向になればいいなというようなことで始められたのではないかというふうに私は思っております。

 そういう意味では、始まったばかりというにはちょっと時間がたっておりますけれども、まだそれほど時間もたっていないということで、もう少し時間をいただいて、この辺、私どもの方も、それぞれのところでどこがネックになってなかなか進んでいないのかというような分析もやはりやる必要があろうかなとは思いますけれども、基本的には、地域地域で、その協議会で議論を進めていただいてやっていただくというのが基本的な考え方でございますので、なかなか我が方が、ではこれでやれというようなぐあいに直ちにはいかないということを御理解いただきたいと思います。

岡本(充)分科員 重ねて言っておきますと、これでやれと言っているわけじゃない、指針を示すということです。

 大臣、ぜひ総務省の中でも見解を統一していただいて、これでやれといって命令をするわけじゃない、こういうときにはやるべきだという指針があると、メディカルコントロールの協定を決める中でも一つ参考になるわけです。

 こういうものをつくっていっていただかないと、まだ時間がたっていないと言うけれども、もう二年です。それで、今度、エピネフリンの静脈内投与も開始になるという。今度、これも同じようにばらつきが出る。そうすると、後ほどお話をさせていただきますが、救急救命率に地域間での格差が広がる。こういうことに最終的につながっていくわけですから、ぜひ大臣、前向きに、一度省内で検討するという御発言はいただけませんでしょうか。

竹中国務大臣 私は、委員のような医学の用語はよくわかりませんし、気管挿管というのも、どういうレベルのものなのかというのも、ちょっとにわかに判断できないわけでございます。我々としては、どういうような権限があるのか、そういう点も配慮しなければいけないと思います。

 そういう観点から、さっき長官が言いましたように、何かいきなりガイドラインをつくるというようなことにはちょっとなかなかならないのかなというふうに思うんですけれども、機会をとらえて注意喚起をするような機会があるかないかとか、そういうことも含めて、ちょっと私自身考えてみたいと思います。

岡本(充)分科員 続いて、先ほどからお話ししている救命効果については、この制度導入以来、一カ月生存率というような形での、救急救命士が関与した症例と関与しなかった症例についての一カ月後の生存率という数字はいただいているんですが、社会復帰の割合というのはどのようになっているのか、消防庁長官、数字をお持ちでしょうか。

板倉政府参考人 ちょっと今、数字を持ち合わせておりません。

岡本(充)分科員 私がいただいた数字は、一カ月後の生存率という数字でいただいていますが、ぜひここも大臣、一度、多分数字がないんだと思います。

 一カ月後生存をしていても、心臓と呼吸がとまっていて病院に来た、心拍再開した、そして一カ月後生きていた、しかし、その状況はさまざまでありまして、変な話、意識が戻らない人もいれば、もちろん、回復されてリハビリされている方もみえる。もっと言えば、退院して社会復帰できる人もいるかもしれない。

 最終的には、退院して社会復帰ができるような割合がどのぐらいになったのかというようなことで、諸外国はその成績を競っているわけでありまして、我が国は一カ月後の生存数だけで評価をするということではやはり不十分じゃないか。ここは、社会復帰率についても一度ぜひ統計をとっていただけないかというふうに思っているわけですけれども、それについては、大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 大変申しわけありません。質問通告もこの問題はいただいていないこともあって、それがどのような意味があるのか、どのような手続が要るのかということをちょっとにわかに判断できません。しかし、きょう御質問いただいたということを踏まえて、対応させていただきます。

岡本(充)分科員 ぜひ、一度また検討いただきたいと思います。

 時間の関係で次の話題に移らせていただきたいと思いますが、地域の公立病院のあり方です。

 本年、医療制度改革が話題となっておりますけれども、この医療制度改革の中でも、地域の公立病院、特に離島や山間僻地等についてはその必要性について共通の認識があると思いますが、大都市近郊もしくは大都市圏の中にある地域の公立病院のあり方について、私がいろいろな方からお話を伺う、政府内の方々からお話を伺うと、そのあり方、存在意義について温度差があるように認識をしております。

 総務省としては、地域の公立病院、私の指摘しているのは大都市近郊もしくは大都市圏内にある公立、市民病院、県立病院等は採算がなかなか黒字まではいかない、とんとんか、若干赤字か、中には大幅赤字というところもあるかもしれない、こういう病院について、今後どういうふうにあるべきとお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

竹中国務大臣 自治体立の病院の医療でございます。

 委員は特に都市近郊をイメージしておられるということでございますけれども、そうした病院の医療というのは、まず、都道府県内の医療機関の中心として特に高度な医療を行うとか、救命救急医療等を担う病院としての役割があるんだと思います。さらには、地域の一般病院では満たし得ないような地域医療の水準の向上に資する病院ということでもあろうと思います。さらには、成人病センター、がんセンター等、疾病の予防、検診など保健行政的な機能を担う病院ということもあろうと思います。そうした観点で、地域住民の医療を確保するためには重要な役割を担ってきましたし、今も担っているというふうに思います。

 また、都市近郊で民間によります医療提供体制が整っている地域においても、周産期医療や小児医療、そして救急医療等、多くの不採算部門は自治体病院として公的な医療機関が担っているというのが現実でございます。そうしたことを踏まえて、一般会計からの繰り出し金として地方財政計画に計上して、我々も財政措置を行っているところでございます。

 総務省のスタンスはというお尋ねでございますと、総務省としましては、今後とも、自治体病院の効率的な経営について適切な助言を行いながら、必要な支援はしてまいりたいと思っております。

岡本(充)分科員 きょうは分科会ですので、その中でも私の選挙区の病院について少し総務省の方から御評価をいただけるというふうに伺っておりまして、大臣の方からうちの選挙区の病院についてそれぞれ、多分お手元に資料が行っていると思います、それについての御評価をいただきたいと思います。

竹中国務大臣 非常に詳細な経営について精査できる立場にはございませんけれども、稲沢市民病院を初めとする御指摘の四病院につきましては、平成十五年度決算で、患者の早期回復等に努めまして、その結果として平均在院日数が全国平均に比べて短いという一つの点があると思います。こうした点は、経営努力の一つの成果としてやはり認められるところであろうかと私は思います。

 一方で、津島市民病院など三病院においては、純損失が生じているというような報告でございます。地域における医療提供体制の実情を踏まえて、いま一度自治体病院としての役割等を点検して、今後とも、職員数や給与費の見直しを図るなど、一層の経営努力が必要な点もあろうかというふうに思っております。

岡本(充)分科員 まさに今大臣言われたような赤字の自治体病院、こういう病院をどういうふうに存続していくか、どういうふうにあり方を考えていくか。もちろん、地域の住民の皆さんの民意が重要であるのは間違いないわけでありますけれども、その中でも、民間の医療法人に託すべきなのか、それとも今大臣言われた不採算部門を含めてやはり公立が担っていかなければいけないのか、こういう部分については、ぜひ閣内でもお考えを一つにしていただきたいなと。

 なぜかというと、厚生労働省に伺うと、医療法人への移行もやむなし、もしくは、周りに取ってかわれるような医療法人がいれば、そこは取ってかわってもらってもいいんじゃないかという話をする部門があります。私は、地域の病院の中で、残念ながら採算性の合わない部門を請け負っていただかなきゃいけないところがあるというふうに思っておりますので、そういう意味では、今後とも、大臣、しっかりその主張を閣内においても続けていっていただきたいというふうに思うんですが、それについて御決意を一言。

竹中国務大臣 総務大臣としましては、医療そのものについて担当させていただいて、そのための何らかの権限を与えられているわけではございません。これは、厚生労働省において、厚生労働大臣においてしっかりと御検討いただくわけでございますが、我々は同時に、地域の自治体の安定的な運営、結果としての地域の経済社会の発展と安定について責任を負っている立場でございますので、そうした観点から、私はやはり今の制度をしっかり活用していただきたいし、したいというふうな思いがございますので、そういう観点から総務省としての責任を果たしていきたいと思います。

岡本(充)分科員 続いて、先ほど話題には出ませんでしたが、病院における設備投資のあり方について、病院の整備事業についての議論をちょっとさせていただきたいと思います。

 病院が新しく建物を建てる、また医療機器をそろえる場合、多くの場合、もちろん基金をつくっている自治体もあるかもしれません、基金を取り崩してという話はあるかもしれませんが、起債に頼って自治体病院の整備を図るということが往々にしてあると思います。こういったときに、この起債の償還の期限というのは、建物の場合は三十年ですか、医療機器の場合は五年ですか、そういうふうに法で定められているということになっております。そういった中で、その一方で、例えば税法上の減価償却という観点で考えると、この年数と一致しない医療機器などもあると思うんですね。

 ここは局長で結構でございますので、私、質問通告していると思いますが、例えば血管連続撮影システム、透析装置、超音波診断装置、ICU機器等は、それぞれ減価償却は税法上何年になっているんでしょうか。

瀧野政府参考人 それぞれの医療機器につきまして、個別に今ちょっと手元にございませんけれども、器具なり備品につきましては五年から六、七年の間のものが多くなってございまして、それに対応いたしまして、地方債につきましても、五年程度の医療機器につきましての償還期限を設定しているという状況であります。

岡本(充)分科員 実際には、例えば高額の医療機器を買う場合に、しかも設置型のもの、多分、今局長が御答弁されたのは、私も調べてきてくれと通告しているはずなので、それを調べてきていただいていないのは大変残念ですけれども、私は、今言われているのはいわゆる器具であって、設置型の、例えば血管造影システムだとかそれから放射線の治療装置だとか、こういった高額になるものについては、税法上のいわゆる減価償却と償還、今回の起債の問題、五年で償還しなければいけないということのタイムラグがあるのではないかというふうに思ったから、質問させていただいているわけです。

 五年で償還をしなければならないとなると、自治体病院はなかなか高額な医療機器に手を出しづらくなる。今、医療機器はさまざま進歩して、高額なものが出る中で、もう少し弾力的な運用をしていただくということは、今、法律上なかなか難しいという話にはなるんですけれども、政府部内で検討していくという話はなかなか難しいんでしょうか。

瀧野政府参考人 起債の償還期限につきましては、それぞれ、財政融資資金でございますと財務省の理財局の方で所管しておりまして、実は我々も、御指摘のようなことを踏まえながら、耐用年数にできるだけ近づけるように毎年要求はして、折衝はしております。

 しかし、財政融資資金の中のいろいろなバランスの問題等もございまして、なかなか実現しないという状況にございますけれども、我々としては、地方団体の方からもそういう耐用年数に応じたような償還期間の設定という要望は受けておりますので、できるだけ今後とも努力していきたいというふうに考えております。

岡本(充)分科員 大臣も、私は医学の専門家ですけれども、大臣は恐らくこういう分野の専門家なんではないかというふうに私は考えているわけでありまして、ぜひ一度お考えをいただきたいと思うんです。

 先ほどの話で、不採算部門というのは何で不採算部門になるか。例えば、最初の投資が多額に必要であるという話もあるだろうし、それから、それぞれの医療行為に対しての単価が安いという話もあるかもしれない。いろいろ要因はあるかもしれないけれども、一つの要因であるこの減価償却の問題がクリアできると、かなりの自治体病院は経営がある意味楽になってくる。

 そうすると、先ほどのお話にありましたけれども、自治体に存続する病院としての評価が、地域住民の皆様方から見ても変わってくることも予想される。例えば、赤字の病院よりも、黒字になった、減価償却費が減ったことで黒字になったという話になれば、もちろん、そのほかの要因にも切り込まなきゃいけない部分はあります。職員の給与の問題もある、それから職員数の問題も、多いところもあるやに聞いておるし、それから医療の材料費の問題もある、それから医薬品の購入価格の問題もある。それぞれ、ちょっと高目であったり、公共事業であるから建物の整備費が全体が高いとか、こういう問題もあるのは承知をしております。

 まず手をつけられそうな部分についてまずは取り組んでいくという意味で、この御検討をぜひ再度お願いしていきたいと思うんですけれども、大臣からのお言葉をいただきたいと思います。

竹中国務大臣 これは経済の問題でありますので、ちょっと今教えていただいた数字の範囲で考えを申し上げますと、これは、耐用年数と償還の期間で今御判断しておられますが、実は、償還の期間が長くなれば、財政資金といえどもやはり市場からの影響を受けますから、金利負担も大きくなるわけです。それが本当にいいかどうかという判断を私はしなければいけないんだと思います。

 もう一つは、償却の議論をする場合は、一体インフレなのかデフレなのかというのが決定的に重要であろうかと思います。設備は固定設備でありますので、取得原価で償却をしていく。そのときに、いわゆる医療費に当たる単価が上がっていけば、インフレで、デフレじゃなければその分回収はできるわけでありますので、そういう状況を踏まえて、要はやはり実態判断なのだと思います。

 実態としてこれは大変不都合であるということであるならば、これまでもそうでありましたが、財政当局とも相談をしながらいろいろな対応をとってきているわけでありますし、そこは、実態判断を間違いなく、声を聞きながらしっかりやっていくという中で、解決されていくべき問題であろうかと思います。

岡本(充)分科員 最後にもう一点。今度は、耐震化の予算措置について最後に少しお伺いをしたいと思います。

 自治体病院の中では、耐震化の施設整備を早急に求められている病院があります。こういった病院に対して、この耐震化に限って特段の政府の措置、政府の御配慮というものはいただけないものかということを、私はよく自治体の関係者の方から伺うわけなんですね。新たな建てかえまですると数十億というお金を要する。その一方で、喫緊の課題として、例えば私の地元などは、東海地震、東南海地震の危機が叫ばれ、なおかつ、川の河口流域で、地盤的にも大変に不安がある。

 そういった中で、耐震工事だけはまず早急にやりたい、こういう要請があるわけなんですけれども、この耐震工事などは、国としても少し、新たな制度として自治体に対しての耐震工事促進を促していくというお考えはないのか、また、あるのであれば、どういう検討を今後されていくかについてお話をいただきたいと思います。

瀧野政府参考人 自治体病院の耐震化でございますけれども、被災地の医療確保、支援を行います災害拠点病院がございますけれども、これに対します免震装置など耐震化に必要な施設につきましては、その建設改良に要する経費につきまして病院債を認めまして、全体を一般会計から繰り出すという措置をとっておるところでございます。

 こういった災害拠点病院以外の病院につきましては、一般の起債で対応していただく、こういうことになってございまして、今後、そういったものにつきまして、全体の地方財政の状況等を踏まえながら検討する必要があるかというふうに考えますけれども、現在のところは、まず、この災害拠点病院の対応というのもまだ十分できておらない状況にございますので、こういったものに対応していきたいというふうに考えております。

岡本(充)分科員 ぜひ一般病院についても、また地域の実施の事情についても御判断いただいての整備をお願いしたいと思います。

 以上で終わります。

田中主査 これにて岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次に、滝実君。

滝分科員 新党日本の滝実でございます。

 きょうは、主として数字の問題もございますので、その点につきましては瀧野財政局長から御答弁いただいて、全体の話はひとつ竹中大臣にお願い申し上げたいと思います。

 まず最初に、国も地方も財政が大変だ、こういうことで、ことしの新年度予算は財政再建を主体にして展開をされていると思うわけでございますけれども、見ていると、国の財政再建だけが脚光を浴びて、地方の方はどうも財政再建の中ではむしろ置き去りにされているんじゃないだろうかな、こういうような印象を持って私も見ておりますし、地方団体もそういうふうに見ているんじゃないだろうかなというふうに見受けられるわけでございます。

 具体的に申しますと、我が奈良県も、ことしの予算状況を見ると、税金は、県税はほんのちょっとふえました。これは税ですから、十七年度で余計見積もっていれば、十八年度の当初予算に見積もる額は、差し引きすればそんなに出てこないということがわかるんですけれども、問題は交付税、それから臨時財政対策債、こういうところで、相当去年と比べて落ち込んでいるんですよね。だから、実際問題として、奈良県なんかの場合、人口百四十万の県でございますから、いわば中規模県、これが税と差し引きすると三十億ないし四十億円、去年の当初予算ベースで落ち込んでいる、こういう状況でございます。それに国費が落ち込んでいますから、財政規模としては相当な落ち込み、こういうことになるんですけれども。

 それから、長野県の場合は、これは人口が二百万人に近いですから、奈良県よりはやや大きいんですけれども、これが、税収の伸びが大体六十九億円、片や交付税、それから臨特債で大体百三十億円ぐらいの落ち込み、こういうことでございますから、差し引きやはり六十億程度の落ち込み。

 今度の地財計画は、いわば一般財源ベースで昨年と同額を大体確保する、こういうような姿勢で地財折衝に当たっていただいたというふうに承知をしているのでございますけれども、どうもその恩恵に浴していないんじゃないだろうか。どこへ行ったかというと、やはり大都市なんですよね。やはり東京、大阪、愛知、そういうところに、この一般財源ベースでいっても相当の部分が集中している。地方は、まあ長野県も多少日の当たるところかもしれませんけれども、奈良県も、場所としては日の当たる場所ではあるんですけれども、やはり中規模県というか、そういう悲哀をかこっている。そういうようなことではないだろうかな、こういう感じを受けるわけでございます。

 そこで、端的に、ことしのことはもうしようがないものですから、来年に向けての、あるいはこれからの問題として、一つだけお話をさせていただきたいと思うんです。

 交付税に絡んで、何となく損をしたような計算が成り立つんですよね。所得税を住民税に移しかえる、それは確かに画期的なことではあるわけでございます。三兆円を税源移譲しました、こういうことになるわけでございますけれども、三兆円税源移譲しますと、当然それに伴って交付税収入は減ってまいりますよね。三二%減りますから、大体、おおよそ一兆円、それで目減りがいたします。今回、多少の救済措置を三年間にわたって、十九年度から二十一年度までやるということになるんですけれども、大勢としては、税源移譲によって交付税としては一兆円減ってくるということがありますよね。その対策も、何がしかの対策は、三年間で六千億ですか、とられましたね。だけれども、それ以上にございますのが基準財政収入額の算定なんですよね、その三兆円の部分に関して。

 これは、できるだけ格差を抑えるために、基準財政収入額への算入を、住民税のこの三兆円部分については一〇〇%やる、こういうことになるんですけれども、これによって、実際問題として、いわば二五%余計に基準財政収入額、引く方に入れるわけですから、そうすると大体七千五百億円ぐらい減っちゃうんですよね。そういう計算になりませんか。

 いずれにいたしましても、交付税で大体二兆円近い、それだけで、税源移譲の関係で。それに、要するに切り込みというものが一兆円ありますでしょう。それからもう一つ、税源移譲、その本体部分で、国庫補助金を税源移譲に回す際にも一兆円の切り込みがありますから、これだけで何と四兆円、そこでもってへこんじゃう、細かいことを言いますと。しかし、全体として、地財折衝するときには、三位一体が御破算になりまして、御破算で願いまして、要するに、交付税総額それから地方税総額そして臨特債、三本合わせて前年度対比で同じレベルのものを確保するかしないかということに結局はなるわけでございます。だから、最終的に一般財源の決め方は、三位一体もへったくれもないんですよね。

 だから、個々の細かいことを言ってもしようがないのかもしれませんけれども、要するに、せっかく国の関与を抑える、地方の自主財源をふやす、そういうことで地方団体が三位一体を何とか成功させたいと願ってきたことが、最後は、とどのつまりが、御破算で願いましては全部一山幾らだと。バーゲンセールじゃなくて、こういうのをバルクセールというんですかね、そういうことになっておるんでございますけれども、実際、その辺のところについて、財政局長、折衝に当たって大変神経を使われたという姿も私はじかに見ていますので、余り余計なことを言うといけませんけれども、ひとつその辺の感想をお述べいただきたいと思うんです。

瀧野政府参考人 幾つかの点を御指摘いただきました。

 まず、税源移譲をすることによりまして交付税原資が三二%減っているという点の御指摘がございました。我々も、それについては従来から、地方団体の方からも、その補てんというものをどう考えるのかという御指摘を受けてきたわけでございますけれども、我々といたしましては、三位一体改革が行われる前の住民税の税収の水準というものも勘案する中で、一定の経過措置を講ずるということでこの部分は地方団体の納得も得られるのではないかということで、御指摘のように、三年間の経過措置、全体として六千億程度を講じるという考え方に立っておるわけでございます。

 それから、税源移譲する、その結果、交付税の算定で、収入に一〇〇%カウントをすると、収入がその分従来よりも膨れるので、地方団体の方は財政運営が厳しくなるのではないかという御指摘かと思いますけれども、それについては、片方の基準財政需要額の算定につきまして、従来のいろいろな補助金等を一〇〇%、需要にも算入するということで、そこのところは収入と需要がバランスをとるようにいたしまして、地方団体に税源移譲の影響が大きく及ばないように配慮したつもりではございます。

 いずれにいたしましても、そういった結果、御指摘は、全体が、一般財源が同じような額になるようにして、改革の前後でさほど違わないようなことになるということは、結果的に三位一体改革の意味はどういうことなのか、こういうお話かと思います。

 我々としては、やはり、全体、補助金で財源を賄うということではなくて、その内容にはいろいろ指摘される面もありますけれども、税源移譲することによって地方団体の自主財源で賄う、税源移譲することによりまして、地方団体の方はいろいろな、二重行政というふうに指摘される部分があるわけでございますし、また、税であれば、税源涵養という面では、滝先生も税務局長でございますのでこんなことを言うのも申しわけないんでございますけれども、税源の涵養ができるということは当然あるわけでございますので、そういう面ではやはり質的に違ってくるというふうに考えてございまして、我々としては、いろいろ批判される面はありますけれども、一歩前進できたかなというふうに考えているところでございます。

滝分科員 とにかく画期的なことだという評価は、もう地方団体の関係者、異口同音にお認めいただいているということだろうと思うんですけれども、最後のところの、バルクセールのところだけは何となくしっくりいかないところがあるわけでございます。

 それからもう一つ、これは税の話になるわけですけれども、地方税も大分姿が整ってきて、住民税は比例税率になりました。要するに、昔から住民税は緩やかな累進税制ですから、余り景気にそんなに響くような累進構造はとっていなかったんですけれども、今度はもう一歩進めて比例税制、単一税制ですから、景気がよくなってもそんなに伸びない、こういうことになりますよね。それから、これからの議論として消費税の問題が出てくれば、地方消費税の方も余り景気に左右されない。要するに、景気がよくなったって、消費税の方はそんなにふえるわけでもない。

 そうすると、全体として地方税は景気に対して極めて鈍いというか安定した税ですから、これから今までの借金を返すには、自然増収を期待するといったって、なかなか、景気に敏感な税制構造をとっていませんから、そこのところが難しいんですよね。

 そこで問題になるのは、先ほど申しましたけれども、とにかく頼りは交付税、そういうものがどうなるかということでございますので、それがいろいろな名目をつけて切り込まれると地方はたまったものじゃない、こういうことですよね。

 長野県の場合で申しますと、今の田中知事が就任して以来四年間で、長期債務の累積残高を五百億円を超えて切り込んできたわけです。それはよく銀行も認めたと思うんですよね。要するに、多少繰り上げ償還もしたんだろうし、それから新規債務を抑えてきたということもあるでしょうけれども、とにかく累積債務残高を五百億円抑え込んできた。そういうことでも、やはり累積債務残高はいまだにワーストツーなんですよね。たまりにたまった借金を抑え込むのがいかに難しいか、こういうことだろうと思うんですよね。

 ですから、国の方が長期債務残高が多い、十八年度末で五百四十二兆円に対して地方は二百四兆円だ、こういうような数字が出ているわけですけれども、それだけ見ると、同じような財政規模で国の方は三倍もあるのかなと思うんですけれども、実際問題として、国の方は、五百四十二兆円といったって、基本的に借りかえ借りかえでやりますから、大体平均三十年償還のものが多いというふうに見れば、大体、五百四十二を三十で割れば、年間十八兆円ぐらいの元金を返せばいいのかなと。そういう単純なものじゃありませんけれども、全部積み上げしていかないと、こんな数字は出てこない話ですけれども。そうすると、地方の方は、二百四兆は、大体地方債は十年だからというとんでもない数字でもって割ると、大体二十兆だと。

 大体、頭の数字は大きいけれども、毎年毎年の償還額はそんなに地方も国も違うわけじゃないんですよね。だから、頭の数字で、国は大変だ、地方はその三分の一ぐらいの債務残高だというだけで、地方が国に余り同情してはいけないんじゃないだろうかなという感じがありますので、その辺はひとつよろしくお願いを申し上げたいと思うんです。

 次に、三位一体の中の、何の補助金をカットするかということで、この辺のところは右往左往した結果ですから、それについてとやかく言えるような、だれもこれを批判するわけにはいかないと思うんです。

 ところが、昨日の義務教育費国庫負担法の一部改正法案について、竹中総務大臣と小坂文部科学大臣との間で答弁に、当然のことながらニュアンスの差があるんですよね。

 当然、文部科学大臣は、二分の一から三分の一にしたのは、これは最終的な決着だというふうに表現されていますし、竹中大臣は、多少ニュアンスのあるような表現で、まだまだ検討の余地があるような、はっきりとはおっしゃっていませんけれども、そういう含みのある答弁で、これからどうするのかというのは今後の問題だというぐらいのニュアンスというふうに受けとめてまいったのでございます。

 私は、この問題はやはり、長い間かかってでき上がった制度ですけれども、もともとの発想方法は、国が地方に対して余り関与してもしようがないということで、何とかすっきりさせたいと。それが全体としてはすっきりとした無駄のない国の統治機構になるんだという発想方法で地方もやろう、地方も少し痛手をこうむってもそれに協力するというところで出発しているわけですから、そこら辺のところを何とかもうちょっとお考えいただいた方がいいんじゃないだろうかなという感じがいたします。

 新党日本の代表の田中知事は、義務教育費国庫負担金は当然残すべきだということを言っているんですけれども、地方全体とすれば、その辺のところはかなりいろいろな意見があります。国の統治機構そのものをシンプルなものにするという意味ではもっともっと努力の程度がある、あるいは、文部科学省も、義務教育に関するかかわり方はもうちょっと何か別の方法があるんじゃないだろうかなという感じがあるものですから、ここは竹中大臣の御意見を承っておきたいと思います。

竹中国務大臣 確かに、本会議で御答弁をさせていただきました。小坂大臣の御答弁もよく理解できるところではございます。しかし、私は、義務教に限らず、より幅広くいろいろなことを検討していきましょうということでございますので、まさに三位一体の改革についての政府・与党合意にのっとってやっていきたいということを申し上げた次第でございます。

 今後、国と地方の、どのようにそれぞれの役割を果たしていくかということについては、その意味では、聖域を設けず幅広く議論をしていかなければいけないと思います。そういう問題意識から、やはりそもそも論をしっかりとやらせていただきたいということで、総務大臣に就任したときからそういった問題意識で取り組ませていただいております。

 先ほどから、滝委員の質問と瀧野局長の答弁を拝聴しておりまして、こういうことを総務大臣が言うのは不適切かもしれませんけれども、本当にプロフェッショナル同士の御議論として、私も改めて幾つかのポイントで大変勉強になるところがあったというふうに思っております。

 特に、滝委員がおっしゃった地方のストックに対する考え方で、とにかく一般的な議論としては、国の方が財政がしんどくて地方の方が楽なんだというようなニュアンスがありますけれども、私も全くそうは思っておりませんで、今の滝委員からいただいたヒントをさらにしっかりと論理構成をして、地方の財政の健全化、国と地方の健全な関係の構築に結びつけていきたいというふうに考えております。

滝分科員 竹中大臣が、地方は国と比べると、全体で見てそんなにたやすいものじゃないというようなお気持ちを抱いているということについては、大変心強く感じさせていただきました。

 次に、これは地方財政というよりも、細かい話で恐縮なんですけれども、例の耐震強度事件に関連しての公的支援の問題で、これは本来からいえば国土交通省に対して申し上げることなんでございますけれども、私はなかなかそういう機会がないものですから、とりあえず質問主意書という格好で国土交通省の御意見は伺ってまいっているんでございますけれども、どうも私は、地方団体として納得できないところがあるんじゃないだろうかなという感じがございます。

 と申しますのは、この問題は、出発点は確かに、マンションなんかの居住者はまことに気の毒な人ですから、何か国としてお手伝いできれば、あるいは地方団体としてお手伝いできれば、それにこしたことはないと思うんです。しかし、これは、こういうことが出てきますと、阪神大震災までさかのぼる話なんですよ。あそこでもって被害を受けた人たちは、何だ、あの耐震設計だって五十五年以前はおかしかったんだろうと。その時代はそれで通ったかもしらぬけれども、結果的におかしかったから、五十六年度、建築基準法の改正で、国の責任で今までの建築指標を直した。それならば、あの大震災で被害をこうむった人たちにだって何かしてくれと。

 確かに、何かしました。いろいろなあの手この手で何とかしましたけれども、結論的に言うと、結局所得制限をみんな受けているんですよ。所得が大体七百万とか八百万とか、通常の平均的な給与所得者以上の人たちは、実は何にも救済を受けていないんです。受けたとすれば、瓦れきの撤去だけです。これは公共事業としてやったものですから、瓦れきの撤去だけは受けた。あとは何にも受けていない。手をかえ品をかえ、いろいろなことをやったけれども、受けていない。その後の自然災害による生活再建支援法でも、若干、住宅の周辺部分をターゲットにして私どもがいろいろな措置を講じましたけれども、これも見事に所得制限がある。

 ところが、今度のこの耐震強度事件だけは、国土交通省に自分自身の責任感があったのかどうか知りませんけれども、自然災害は人ごとだ、国土交通省の問題は建築主事の問題だから自分の問題だというわけではないんでしょうけれども、そういうことなしに、全く所得制限もなし。

 それから、本来民事上の瑕疵担保責任、これは十年から二十年、住宅の場合はあるわけですけれども、そういうようなことについての、いわば建築主、売り主の資産能力、そういうことも全然調査をせずにこういうことをやって、基本的に最後は何をやったかというと、地方は五五%を見ろ、国は四五%だと言って、国の方が少ないんですよ。要するに、住宅交付金という格好でやりますから、地方が主導権を持って計画を立てて、それに対して支援をするという格好をとっていますから、当然、理屈としては国の方が少ないんでしょうけれども。

 ちょっとその辺のところを、財政局は財政局なりにいろいろこの話はお聞きになっていると思いますけれども、時間がありませんので、ほんのさわりのところだけで結構ですから、その辺が今どういうことになろうとしているのかだけ、お伝えいただきたいと思います。

瀧野政府参考人 今回の耐震偽装問題についての対応についていろいろな御議論があるところでございますし、今御指摘のように、所得制限等の課題もあるところでございます。

 そのときに一番基本になりますのはやはり売り主の責任というものであろうということについては、我々も同じ気持ちであるわけでございますが、今回は、ともかく危険分譲マンションの居住者の安全確保、居住の安定確保ということを優先いたしまして緊急に対応していこうということであろうかというふうに思っておるところでございます。

 その中で、そうはいっても所得制限について、阪神・淡路のときに比べると非常に甘いのではないか、こういう御指摘かというふうに思いますが、我々といたしましては、その点について国交省の方にもいろいろお話を伺っておりますけれども、国交省の方としては、既存の制度の中で、優良建築物等整備事業でありますとかがけ地の近接等危険住宅移転事業とか、こういったものについて所得制限のないシステムもあるということの中で、全体としてバランスを失したものではないのではないか、こういうような考え方であるというふうに聞いているところであり、我々も、事態の緊急性にかんがみまして、地方団体としてこういったスキームを活用できるのであれば利用していただきたいということでお願いをしているところでございます。

滝分科員 これは私も、財務省の国交担当主計官にも直接物申したんですけれども、阪神のときも、それからその後の、現在の自然災害の生活支援法においても、財務省も当時の防災担当の部局もこぞって大反対をしながら、しかも、所得制限というものをかませてようやく現行のそういうささやかな制度をつくっているのに、これは何にも議論なしに、いわば一カ月ぐらいの間でもって認められるのは、何か裏にあるんじゃないかというふうに感じざるを得ないような、そういう話なんですよ。

 しかも、これは瑕疵担保責任ですから、当然、民事でもって訴訟が起こったときに、では、国は、移転費だとかあるいは移転先の住宅家賃は、その段階では不当利得返還請求で返してもらうんだ、そんなややこしいことまで後でもって国がしなきゃならぬのに、何で率先して民事の瑕疵担保責任の問題に首を突っ込むか、こういう問題でございますから、これは私は、総務省も各省協議の中で簡単にイエスを言ってはいけないんじゃないだろうかなと。

 何か、最近聞くところによると、地方団体と国との負担割合をめぐって、まだ決着もつかずに、もう一遍何かごたごたやっているように新聞報道では聞いているものですから、その辺のところをちょっともう少し私は見守りたいと思います。簡単にいくと、すべての問題が出てきたとき、地方団体はこれを拒めないんですよ。拒めないと思いますよ、何でもできちゃうんですから。だから私は、そんなので整理がつくのかなと思います。

 それだけ申し上げて、あと道州制の、地制調の答申がちょうど出ましたから、これから道州制の問題の議論がいよいよ始まるところだと思うんです。これは、今の地制調の答申も、国の機関としてやるのか地方自治体としてやるのかということもまだ煮詰まっていない段階での答申でございますから、今の段階でいろいろなことを言うのは時期尚早だと思いますけれども、新聞報道によりますと、なかなかいいじゃないかと。いいことずくめのような感じもしないわけではありませんけれども。

 私は、今の市町村行政をそのままにしておいて道州制をということになってくると、多少、もちろん県を道州に吸収するのだろうと思うのでございますけれども、それにしても、今の市町村をそのままにしておいて道州制ということになると、国家統治の二重、三重構造は相変わらず変わらない、こういう問題があるということだけを、もう少しやはり総務省もきちんと、その辺の角度から資料を準備して議論をしていただきたいなというふうに思いますので、分科会での質問のテーマではありませんけれども、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 終わります。

田中主査 これにて滝実君の質疑は終了いたしました。

 次に、逢坂誠二君。

逢坂分科員 竹中大臣、またきょうもよろしくお願いいたします。

 きょうは、冒頭に、あらかじめお知らせしていることとは違う話を若干させてもらいます。

 実は、この間、竹中大臣のスケジュールを一日分見せていただきまして、いや、これは大変だな、お昼御飯を食べる間もないじゃないかというような、委員会から委員会へと渡り歩いている姿、その感想を私のホームページに書いたところ、全国の自治体の方、何人かから、ああ、大臣ってこんなに忙しいんだというようなことで、大臣の仕事ぶりがよくわかるというようなことがございまして、本当にお忙しくされている中で、私も国会議員になって本会議での議論あるいは委員会での質疑のやりとりを聞いていて、やはり随分非効率だなという印象は持ちますね。大臣の答弁も、多分、一日に何回も同じ話をされているんだろうというふうに思います。

 これは、質問する我々の側にもきっと問題があるだろう。同じ政党に属していて、矢を、ベクトルをそれぞれがそろえられないというような問題点もあるかもしれない。ただ、政治家としては、発言をした事実であるとか、答えを実際に引き出したという事実みたいなものも必要なので、多少必要な非効率ではあるだろうとは思いつつも、それにしても余りにも非効率だなという印象を私は持っている。

 だから、私も、前の方あるいは午前中の方が発言したのと同じようなことを聞くおそれはあるなと思いつつやるわけでありますけれども、これはもう少し、今、せっかくIT、ICTの時代ですから、何かこう、質問がリアルタイムですぐ音声認識か何かで文字になって、きょうはこのたぐいの質問がされたとかなんとかとくくられるような仕組みみたいなものが、せめて国会と議員会館ぐらいにあれば、もっと効率よく質疑が進むのかななんて思っているんですけれども、大臣、この非効率さについて、どうですか、御感想を含めて。

竹中国務大臣 行政の人間が国会のことを話をするのは、非常に慎重でなければならないというのが大前提でございます。

 今、逢坂委員、あえていろいろ言ってくださいましたですけれども、もちろん、こういうことを通して国の意思が決定されていくという重要なプロセスであるというふうに思っております。ただ、例えば、例えばでございますけれども、今ここで質問をいただいて答弁を持っているわけでありますけれども、そして、それのサポートのためにスタッフも来るわけでございますけれども、そういうのは、実は、ここにディスプレーがあって、本省で担当者が必要な情報をあれすればこういう印刷も要らない、紙も要らない、そのシステムの全体の中では一部ではございますけれども、そういうようなことも考えられてよいのかなというふうには思っております。

 これは質問のやり方とか、むしろそういうこと以前の問題として、eガバメントの一つとして、国会はガバメントでどういう位置づけかという問題はあろうかと思いますが、もうそのような工夫もあってもよろしいのかなというのは日々考えております。

逢坂分科員 済みません、余計な話をしまして。三権分立がどうのこうのという難しい話は置いておいて、率直に、何かこう、国民の目線で見ると、もう少し変わらないのかななんという印象を持っているところであります。

 さて、それはともかくといたしまして、先ほど滝委員からもお話がございましたけれども、昨日、地方制度調査会で道州制のことに関する答申があったわけでございますが、きょう、それについて幾つかの新聞で社説が載ってございました。

 朝日新聞は、「道州制は自治体の再編だけでなく、政府全体の再構築でもある。分権なくして道州制なし、という答申の方向性は間違っていない。」などというようなことが書いてあります。同じ朝日のきょうの社説ですが、「国のあり方をどう考え、政府や各省庁の仕組みや役割を変えるのか。その見取り図と一体でなければ、道州制は実を結ばない。」というようなことも書いてございます。一方、日本経済新聞のきょうの社説によりますと、「現状では国民の関心が高いとはいえない道州制だが、」というようなことも結びの方に書いてあるわけでございますが、今回の地方制度調査会からの答申への評価ですね、それと、今後、この答申を受けてどう具体化していくのかというあたりについて、現時点での考えをお聞かせ願いたい。

 あわせて、北海道の道州制特区というようなものが総理の口からも発言されて、これが今進められようとしていますが、これとの整合性についてもお聞かせ願いたいと思います。

竹中国務大臣 道州制の意義につきましては、改めて申し上げるまでもないと思います。

 基礎自治体がしっかりとした財務基盤を持って、そのために一定の人口基盤等々を持つ中で広域自治体のあり方がやはり見直されなければならない、そのためには、今の都道府県の制度を超えて道州制の導入を、というのは適切な役割を果たすというふうな答申をされているわけでございます。その思いは私も全く同じでございます。

 同時に、昨日の答申でも、やはり国民的な議論が必要だということだと思います。私は、昨日の答申を受けて、国民的な議論をぜひ加速させたいという思いでおります。そのために何をやったらいいのかというのは、これからよく総務省内でも相談をしていきたいと思いますが、きのうの答申はそうした議論を加速させる重要なスタート台の一つになろうというふうに思っております。

 それとの絡みで御質問がありましたですけれども、北海道の道州制特区については、まさに総理が道州制というのは間違いなく一つの方向であるということを御認識の上で、その場合にも、北海道というのはまさに一つの道、一つの単位として必ずやっていくのであろうから、今からできることを少し始めたらどうか、それが一つの特区としていいケースになって道州制全体の議論が進むであろう、そういう御認識で唱えられたものでございます。

 私も、道州制特区の担当大臣を内閣府でしておりましたですけれども、しかし、これは総論賛成、各論反対の典型みたいなところでありまして、各論になりますと本当に難しい問題がいろいろ出てくる。道州制特区でこれなんだから、実際の道州制の話になれば、ますます各論でいろいろな問題が出てくるのだろうというふうに思います。

 しかし、今内閣府でいろいろ議論を詰めているというふうに聞いておりますけれども、道州制に向けた先行的な取り組みになるという期待は私自身も非常に強く持っておりますので、内閣府の取り組みを見守りたいというふうに思います。

逢坂分科員 御丁寧な答弁、どうもありがとうございました。

 実は私も、分権、あるべき国の姿を考えたときに、道州制というのは非常に重要なものだろうという認識を持ってございます。

 そうした中で、今まさに大臣が御指摘されましたように、内閣府で北海道道州制特区推進法案ですか、これはまだ仮称だというふうに聞いておりますが、そういうものの検討もされているということを、きのう内閣府の櫻田副大臣の方から第一分科会の方でいろいろと聞かせていただきました。

 ところが、いろいろ聞かせていただいたんですが、実はまだ内容が固まっていないから全くお示しできないとか、あるいは地元への説明みたいなものも、これから、三月の四日でしたか、道内の四都市でやるようなニュアンスの発言をされておりました。それから、ある地域に限定して適用される法律になる可能性が高いですので、憲法九十五条との関係も、これもどうするか内容が固まっていないからまだ全く言及できるレベルではないという話をされていたわけであります。

 私は、この北海道道州制特区推進法案なるものは、先ほど大臣がおっしゃったように、日本全体の道州制を考える上で先導的役割を果たす重要なものだというふうに思うし、それに加えて、北海道民にとっても非常に重要だと思います。しかし、だけれども、まだ内容が固まっていないというようなこの実態を踏まえると、やはり慎重に議論をすることが大事ではないかなと思うわけでありまして、ぜひ道州制全体を担う総務大臣として、この道州制特区推進法案、現在議論されているものに慎重さがほしいというようなことを私から御要望申し上げたいんですが、この点、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、実は内閣府で担当しておりましたときから、道州制特区という議論をする限りにおいて強力な反対者というのはほとんどいないわけです。では、具体的に何をやるかということになると、どれ一つなかなか動かない。その意味で、結果的には極めて慎重なものになっているのだというふうに思います。

 特に、私は、これは期待の中で以前から申し上げているのは、道州制ですから、国から道への権限の移譲等々の分権は重要ですが、それに負けず劣らず、それ以上に道内分権の考えが極めて重要なんだと思います。道庁から、北海道の場合は支庁があります、そして各市町村への分権、こういうものがワンセットになって初めて非常に意味のある道州制特区になると思うんですね。

 しかし、道内分権の話というのはなかなか表には出てこない。そういうことと抱き合わせで初めて意味があるものでございますので、やはり相当の議論を要するのだろうというふうに思います。

 それと、北海道に関しましては、いろいろな措置がとられています。その措置との関係についてどうしても話がいきますので、そこでまた話がどうしても前に進まなくなってしまう。それがここ一年、二年の現状でございます。

 しかし、そういうものを突破して、やはりよいことは、できるんであればやってもらいたい。しかし、委員御指摘のように、その中身については、当然のことながら、本当にしっかりとした制度の議論をしなければいけないというふうに思っております。

逢坂分科員 どうも答弁ありがとうございました。ぜひとも慎重に、しかも大事なことでありますので、しっかりとやれればなと私自身も思っております。

 さて、次にですけれども、国の施策を決める上でよく地方の意見を聞いてというような言い回しをすることがございます。本会議場の総理の演説の中にも、地方の意見をよく聞いてというような話をされることがあって、私も何度か地方の意見を聞いてないなんてやじを飛ばしたりなんかすることもあるわけでありますけれども。だけれども、国で政策を決めていく上で、これほど多様化している社会ですから、やはり全国の市区町村、自治体の意向、意見というものを踏まえていろいろなことを立案していくというのは重要だというふうに思いますが、国の意見を聞くというやり方について、その重要さはもちろん大臣も御認識されていると思いますけれども、どのような手法で具体的に意見を聞いていくのか、このあたりについて、現在総務省の内部で議論されているようなことがあればお知らせをいただきたいというふうに思います。

竹中国務大臣 まさに、今、まだいろいろ議論をしているところなのでございます。

 現行制度におきましては、さまざまな法令に地方公共団体の意見を聞く制度がございます。そして、これらの制度が、手順にのっとって非常に適切に活用されていくということがまず重要であろうと思います。

 また、現在、地方六団体は内閣に対して意見を申し出、また、国会に意見書を提出することができるというふうにされているわけでございますけれども、昨年十二月の第二十八次の地方制度調査会の答申においては、この制度を踏まえて次のように示されています。各大臣は、地方自治に影響を及ぼす施策の企画または立案を行おうとするときは、その内容を地方六団体に通知することを制度化すべきである、そういう指摘がなされているわけでございます。これは地制調の答申として大変重要な答申であると思っておりますので、各大臣はそうすべきであるというふうに示されておりますので、現在、その具体策を検討して、この答申をぜひ踏まえた形でやっていきたいというふうに思っております。

逢坂分科員 一般論としてそういうことがいろいろ言われているわけですが、だがしかし、現実には、例えば先ほど滝委員からも話のあったアスベストの対策、あるいはその他法令が決まっていくときに、法令の中で地方の意見を聞く前にある種の財政負担割合が決まっていくなどというものがあるのも事実でございますので、地方の側にしてみると、我々の声が届いていない、我々の声がどうも聞こえていないのではないかという気がするわけでありますね。

 ですから、私としては、ある種の何か政策を決定するときに、デュープロセスという言い方がありますけれども、必ず経るべき手続というものを考える必要があるのかなと思っていますが、このあたり、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 実際は、いろいろな検討はもちろん政府で一生懸命やります。しかし、地方の意向に反して何か先に物事が決まっているということでは、現実は決してそうではないと思います。議論をしなければいけないわけで、必要な議論は私はしているというふうに思います。

 ただ一方で、委員御指摘のように、地方の方が、特に地方六団体の方等々、場合によっては自分たちの声が届いていないというような御不満や御不信があるということも否定できない面があるというふうに思います。しかし、これは信頼感なくして国、地方一体となった改革というのはできないわけでありますので、そこは、これはケースによっていろいろ違うんだろうと思いますが、我々としてはしっかりと意を配して、意思疎通を図っていきたいと思います。

 そういう意味では、国と地方がある程度頻繁に顔を合わせて協議をするということは、基本条件として私はやはり不可欠であろうと思います。国と地方の協議の場が、重要問題については開かれます。それ以外に、総務大臣と六団体の協議の場、いろいろな意見交換の場がありますので、そういうものを、これは私ができる範囲でありますので、しっかりと活用をして、まずその信頼感をしっかりと高めていきたいというふうに思っております。

逢坂分科員 よくわかりました。

 そこで、今の大臣の言葉の中に出てまいりましたが、地方六団体の位置づけというのが、やはり地方の意見を聞く場合に非常に重要になるわけです。それで、地方六団体の中身をどうするかは、これはまさに全国の市区町村、都道府県の問題ではありますが、大臣として、六団体、今後こうあるべきというようなことが、もしこの地方の意見を聞くという観点から何かお考えがあれば、お聞かせ願いたいと思います。

竹中国務大臣 昨年度の三位一体改革のいろいろな交渉に当たって、地方の意見を聞くということでいろいろな補助金の改革リスト等々を出していただきました。実は、その時点で、私は正直言いまして、本当にこういうことを地方でまとめることができるのかなというふうに思ったわけです。国の中以上に地方はさまざまでありますから、これは本当にどういうことになるのかなというふうに思ったわけであります。

 しかし、あのとき、一番最初に取りまとめられた梶原知事、当時の知事会長ですね、そして、その後麻生会長等々に伺っても、本当に大変な努力をなされたということだと思います。その意味では、大変難しい意見集約のプロセスだと思いますが、本当にしっかりと努力をしておられると思います。

 もちろん、その中で、多様性がありますから、自分たちの声が届いているのかというような御指摘もあるんだと思います。それに対して、私はそのメンバーでもありませんからいろいろ申し上げる立場ではございませんけれども、大変御努力、御苦労なさっているというふうに私は見ておりますし、今後とも、いろいろな声を踏まえてその体制について適切に運営なさっていかれると思います。また、そうしていただきたいというふうに期待をしております。

逢坂分科員 政策決定プロセスの中でどうやって意見を取り入れるかというのは、政策決定のレジティマシーというんでしょうか、いわゆる正統性をもある種左右する大きな問題だと思いますので、今後とも、これは大事な問題だと思いますので、私も一緒に考えてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

 次に、市町村合併の問題についてお伺いをしたいんですが、今回、市町村合併が随分進みましたけれども、市町村合併をする目的が、総務省としては総務省なりにお考えになっているものがあろうかと思います。その目的をまず簡単にお聞かせ願いたいのと同時に、その目的を達成する手法というのは、合併以外の手法というのがなかったのかというあたりについて大臣のお考えをお聞きしたい。

 世界の自治の例を見ると、いろいろなあり方があるわけでございますので、今回合併を進める目的と、それを実現する手法は合併以外はなかったのかという点、よろしくお願いします。

竹中国務大臣 これは恐らく逢坂委員の方がお詳しいんだと思いますけれども、先ほど言いましたように、やはりしっかりとした自立、そして、自由と責任を果たす主体としてそれなりに必要な財務基盤を持っていただく必要がある、財政基盤を持っていただく必要がある、そのための一つの有効な方法として合併があるということだと思います。それによって、人口においても税収においてもある程度の基盤を持てるということは間違いないと思います。

 同時に、それ以外の方法はないのかということに関しては、さまざまな形での、一種のアライアンスということになると思いますけれども、連合のような考え方というのは当然に私はあろうかと思います。現に、そうしたものが制度として存在しているわけでございます、広域連合のようなイメージでありますけれども。

 そういうようなものも当然今でも活用していただけるわけでありますし、そういう事例で、私は全部が全部合併する必要はもちろんないと思いますし、そういった広域連合を活用して頑張ってくださるところが出てきて、むしろ、合併とそういう連合がいい意味で競争していただくということは大変好ましいことであるというふうに思っております。地域の実情に合わせて、まさに住民の意思に基づいて適切に御判断をいただきたい問題だと思います。

逢坂分科員 合併がいろいろ進みまして、合併は確かにスケールメリットを得るという点でよい部分もある、これは私も十分認めているところでありますが、その一方で、合併によって財政難が生まれたとか地域の声が反映されないとか、あるいは地域への愛着が薄れてきたという影の部分も生まれているのではないかという印象を持つわけであります。

 これは紹介しようかどうしようか、ちょっとはばかったんですけれども、実は、先般、三重県伊勢市の市長さんがお亡くなりになりました。御自身で命を絶たれたということがございました。私も同じ首長を務めていた者として、心から冥福を祈りたいというふうに思うんですが、新聞報道を読みましたところ、二月二十七日の日本経済新聞の報道では、「厳しい財政などで苦労していたようだった」というようなことが紹介されている。それから、同じく二月二十八日の日本経済新聞でございますけれども、市長の死因について、「「市町村合併で財政が厳しくなり、予算が組めない」などと心労を訴え、」というようなことも、これは日本経済新聞の名古屋で発行されている朝刊に載っていたようでございます。

 したがいまして、随分合併合併というふうには進めてきたけれども、影も相当出てきているぞというようなのが実態ではないか。「もともと過疎だった地域からは「合併で住民の声が届きにくくなった」」というような声がある、これは昨年の十月二日の朝日新聞ですね、「本来の過疎地域はますます存在感が薄まるというジレンマに直面している。」などということもあるわけでありますね。

 したがいまして、合併は、確かにある一定の効果はあるのではありますけれども、こういった影の部分について、やはりこれから対応、対処していくということも大変必要なことではないかと思うわけですが、このあたりのお考えをお知らせいただきたいと思います。

竹中国務大臣 本当に合併は大変な作業だと思います。住民にとっても大変ですけれども、それを推進される主体的な役割を担われる首長さんを初め議会の方々、本当に物すごいエネルギーが要るお話だろうというふうに思います。

 そもそも合併というのは、先ほど申し上げましたように、一種のスケールメリットを発揮してしっかりとした財務基盤をつくるということに一つの目的がございますけれども、一方で、これは行政サービスの主体でありますから、きめ細かいサービスをやっていかなければ意味がない。そこは、やはりきめ細かさとスケールメリットという難しい問題を両立させなければいけないんだと思います。

 財政面だけに限っても、短期的には物すごくいろいろなコストがかかります。短期的にはコストがかかる。そして、多分、中長期的にはスケールメリットを発揮してコストを減らせることができるだろう。その短期と長期のジレンマといいますか、そのトレードオフをうまく解決していかなければいけない、そういうトレードオフを解決していく難しさというものに、関係者は皆さん直面しておられるというふうに思っております。

 その意味では、光と影というお言葉を使われましたけれども、これは本当に難しい問題ではあろうと思いますけれども、短所をうまく克服して、長所をぜひ伸ばしていっていただきたい。そのための工夫は、それぞれ皆さんしておられますけれども、中長期的にそういうメリットの部分がしっかりと出てくるということを私は期待しております。

逢坂分科員 私は、基礎的自治体の財政基盤を強化するとか、いわゆる自治の能力を高めていくというやり方、その方向を目指すということには大賛成であります。

 しかしながら、合併ということを考えてみますと、全国のそれぞれの地域は、地政学的にも経済的にもあるいは歴史的にも産業的にも、人的にもと言うべきでしょうか、いろいろな差異があるわけでありまして、合併のみの手法では、基礎自治体の多様さを背景にした能力の向上というのはなかなかできないのではないかというふうに思うわけですね。

 現に、特にこの点で議論されるのが、散在している小規模な自治体はうまくいかないという話も出るわけですし、また逆に、仮に人口規模が大きくなったところは、大きくなればなったで実は市民の声が行政に届かないというようなことも生まれるわけですね。それから、現在市町村と言われるものの中の市が、実は政令市と特例市と中核市とそれ以外の市というふうに分かれている。同じ市といっても、かつてと随分違う構造になってきて、実は市の中にも、ある種分類、多様性が生まれているということだと思うわけですね。だから、合併という手法と合併以外の手法というものも合わせわざにしていかないと、これからの基礎自治体の能力向上を図っていくということは簡単ではないのではないかというふうに私は思っています。

 お手元に、その意味でちょっと資料を用意させていただきましたが、北海道においては、実は、残念ながらいろいろな要因で余り合併が進んでいない。だけれども、基礎自治体の能力向上はぜひ重要なんだということを多くの人が考えておりまして、幾つか例示を示させていただきます。

 一つは、北海道町村会が、いわゆる広域的な手法によって地域の能力を高めていこう、しかも、財政面でも少しでも削減できるようなことを考えようというようなことをやっております。

 それから、私がかつて住んでおりました後志という地区には十九の町村がありますが、ここも後志のグランドデザインということで広域的な手法によって、もちろんこれは合併を否定するものではありません、十九の町村の中で二つ、三つ、四つと合併してもいいけれども、十九の地域全体としてさらに大きく連携の手を結んでいこうというような取り組みをされている。

 それから、ニセコ町広域行政体制検討プロジェクトというのがあって、交付税のサイドからもいろいろ試算をして、広域的な手法を考えようと。それから、十勝地区でも同じようにそういう検討が今されているということであります。

 既に広域連合でありますとか一部事務組合の手法というものはあるわけでありますけれども、それは必ずしも十分に機能し得なかったところもあるわけでありまして、現在の広域的な制度のある種の弱点を克服して、新たな合併と合わせわざにする新たなことについても考える必要があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、地域はまさに多様です。その中で、地政学的な問題、歴史的な問題、そしてもう一つ重要な問題としては、やはり文化の問題というのがあると思います。そういう個性を発揮していただけるような形で地域が強化されていくということが、私はやはりベストの方法だと思います。その意味で、合併が唯一の方法であるとは私は思っておりません。

 先ほど申し上げましたように、それに対して、合併して頑張るところもある、同時に広域連合制度でしっかりと個性を発揮していくところもある、そういうふうになってくるのがむしろ地方自治としては正常な姿であろうというふうに思います。私は個人的には、むしろそういうところが頑張って、成果を上げて評価をされるところが出てきてほしいなという思いもございます。

 特に、外洋離島などは地理的な条件などで合併による効果はむしろ難しいのではないのかな、別のやり方があるのではないかなというところは、明確にやはりあるんだと私は思います。

 その意味で、これまでも地制調でもそういった議論が御承知のようになされてまいりました。最終的に、これからも合併新法を我々運営していきますけれども、最終的に合併に至ることが客観的に困難な市町村については、当然のことながら、そうしたものも含めてさまざまな観点から検討すべき課題であるというふうに考えております。

逢坂分科員 最後のくだりのところは原稿をお読みになられましたが、それ以外は御自身の言葉でいろいろと答弁されている誠実さに、私もいつもいつも非常にありがたく思っているところであります。

 実は、私は、自治の問題にこだわるのは、国家全体の民主主義を考える上で、自治がその要素になっているんだというふうに思うわけですね。トクヴィルやブライスの例を出すまでもなく、やはり自治というのは非常に重要だ。

 そして、これは自分で勝手に思っているんですが、憲法には自治の本旨というのがありますけれども、私が勝手に自治の三要素というふうに思っているんですが、それは、住民自治と団体自治、これがいわゆる自治の本旨でありますけれども、地域への愛着というんでしょうかね、実はこれが自治を動かしていく非常に大きな原動力になっているんだというふうに思うわけですね。

 なぜ私が高校野球で駒大苫小牧高が勝つとうれしいのか、なぜ大臣は、きっとそうだと思いますが、和歌山県の高校が勝つとうれしいのかということでありますが、実は、この愛着というのが、非論理的なもののように思われる、定性的、定量的に数字ではあらわせないけれども、自治を動かしていく大きな原動力だというふうに私は思っています。

 したがいまして、団体自治も重要、住民自治も重要、そして愛着や地域への誇りみたいなものも、やはりきちっと保っていけるような地域のあり方というのをこれからも国民の目線で考えてまいりたいと思っておりますので、ぜひ大臣からもそのことに対して御所見を伺って、質問を終わりたいと思います。

竹中国務大臣 当たり前の話ですけれども、経済というのは大事であります、しかし、経済的価値よりも、より大事なものが世の中にはある。その点は、これはいろいろな問題を考えていく上で極めて重要な問題であろうと思いますし、政治にはその点が特に重要だと思います。それは、愛情であったり思いやりであったり、今愛着とおっしゃいました。そういうものが、私たちの、ある種人生の、一人一人見ると、人生の基盤を築くし、社会全体の大きなコモンズ、価値になっていくのだと思っております。

逢坂分科員 以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

田中主査 これにて逢坂誠二君の質疑は終了いたしました。

    〔主査退席、臼井主査代理着席〕

臼井主査代理 次に、近藤昭一君。

近藤(昭)分科員 民主党の近藤昭一でございます。

 きょうは、個人情報保護法の取り扱いに関連して、幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 二〇〇五年四月の個人情報保護法の全面施行以来、私のところにもいろいろな相談というか戸惑いというか、そういう声が来ております。学校、病院あるいは自治体などでも、保護法をどういうふうに解釈して、それに基づいてどう運用していったらいいのか。

 例えば、よく新聞なんかでも報道されますけれども、学校の現場で先生方が、あるいはPTAの皆さんが、緊急連絡網をつくるについても個人情報の保護法があってなかなかうまくできない。これはある意味で理解が不十分であるのか、あるいは誤解があるのか、そういうことがあるんだろうとは思いますが、そういう戸惑いがある。

 あるいはもう一つ、最近こんな相談というか質問も受けました。

 奨学金制度、親を病気あるいは交通事故で失った生徒たちを支援する奨学金制度がある。今までですと、それぞれの学校に協力を依頼すると、すべての学校が、うちの学校にはこういう遺児の人がいますよということで名前と住所、そういう関連のデータをもとになる団体に提供してくれる。そういう中で、その団体が、遺児であるお子さんたちに、こういう奨学金制度がありますよ、学校に行くなら、進学するならどうぞ利用してください、こういうことのようであります。

 ただ、この個人情報保護法が施行されて以来、学校からのそういう情報提供が半分ぐらいになってしまった。そういう情報が半分ですから、子供たちにそういう情報提供をするのが今までのに対して半分であった。半分というよりも、結局、情報提供を受けなかった子供さんたちに対してはこういう奨学金制度がありますよと、もちろん御自身でお調べになって申し込んでみえる方も多いと思うんですが、結果的にその団体の集計でいうと例年よりも半分ぐらい少ない。やはり半分の案内に対しては半分ぐらいしか申し込みがなかった、こういうことのようであります。

 そうしますと、最近親を亡くした、または非常に経済状況が厳しい中で、子供たちの進学する機会が失われてしまうというのは、日本にとっての、国にとっての人材を育成できないという、大変に人材と財産の損失になると思うんですね。そういう戸惑いがあるようであります。

 そういう中で、どういうふうに対応されているのかなということでお聞きをしたいわけでありますが、まず、公立ではない私立の中学校については、こういった個人情報の取り扱いは何に基づいて行うことになっているのか、このことについてお聞きをしたいと思います。

干場政府参考人 ただいまの御質問は、個人情報保護法の運用につきまして、私立の学校につきましてはどのように扱っているか、周知等をどのようにしているかという御質問かと存じます。

 文部科学省におきましては、平成十七年の法律の施行に伴いまして、個人情報保護法の適用対象となります私立学校向けの指針を策定いたしまして、また、その当該指針の解説を設けまして、例えば、奨学団体等への個人情報を第三者提供する場合などにつきまして、具体的な例を、例えば奨学団体のケースというようなことで、具体的な例を示して解説をしているということでございます。

 これは、そのような指針と解説をつくったということでございますが、それらにつきまして、各都道府県の、私立の学校ですと知事部局の担当のところに資料をお送りし、また、機会を見て御説明するといったようなことをしてきているということでございます。

 もちろん、仕組みといたしましては、あらかじめ御本人あるいはその保護者から適切な同意を得るという手続をとることによりまして奨学金に関しまして個人情報の提供ができるということは、申し上げるまでもないところでございます。

近藤(昭)分科員 そうすると、それぞれの学校に対してガイドライン等の資料が提供されている、こういうことですね。

干場政府参考人 私ども、学校の数、非常に多うございますので、各県のしかるべき知事部局の御担当のところにお送りし、それから、年に何回かお集まりいただく機会がございますので、その節に注意を喚起する等のことをしております。

近藤(昭)分科員 わかりました。

 知事部局におりているということで、そうすると、知事部局からそれぞれの学校にどの程度浸透しているかというようなことはどうでしょうか。その点についての確認。

干場政府参考人 その辺につきましての調査は、例えばどの程度行き渡っているかといったことにつきましては、改めて県に確認をしてございません。しかしながら、私どものお願いの文書の中には、これらの資料につきまして周知徹底するようにというふうに明記してございますので、当然ながら、写し、あるいは私どもも部数をお送りしますので、それらが配付されているものというふうに認識しております。

近藤(昭)分科員 ありがとうございます。

 それでは、私立の中学校についてはそういうことということで、公立の中学校についてはいかがでありましょうか。

干場政府参考人 個人情報の保護法制上は、公立の学校につきましては地方公共団体の条例によって行われるということになってございます。

 したがいまして、公立の学校につきましては、その条例のもとで適切な御指導等があろうかと思いますけれども、私どもといたしまして、つまり文部科学省といたしましては、私立学校に対する指導を行う際の指針を都道府県あるいは指定都市の教育委員会にお送りいたしまして、この指針及びその解説をお送りしまして、それを参考としていただくようにという要請をしておるところでございます。

近藤(昭)分科員 それぞれガイドラインを文科省の方でおつくりになって、私立の中学校あるいは公立中学校についても、各自治体にそれぞれ個人情報保護条例があるわけでありますが、そういう中で文科省のガイドラインをお伝えになっている、こういうことだと思うんです。

 ただ、大臣、いかがでありましょうか、現実的に今各学校にどういうふうに浸透しているのかという調査は、今のところまだ十分になされていないと思うんですね。そういう中で、現実的に、申し込みになってきた生徒が、ある団体では半分ぐらいだった、こういうことでありますが、これは基本的には一人一人に確認するという作業が必要なんでしょうけれども、そういう作業をする労を各学校がとる余裕がないのか、それとも個人情報保護法というものが過剰に現場では運用されているのか、そのところが難しいのかなとは思うんですが、現実的にそういう子供たちが学校へ行く機会が失われているのにつながっているんだと思うんですね。その辺は、大臣としては、例えば各自治体に対してどういうふうにしたらいいとか、そういうことについてはいかがでありましょうか。

竹中国務大臣 今、個人情報保護法そのものは所管しておりませんので、それについて何か断定的に物を申し上げるのは難しいのでございますけれども、そもそも、この個人情報保護法というのは、情報というのは大切であるから、それを有用に活用しようではないか、活用が必要になってくるからこそ、そのときに個人の権利をしっかり守ろうではないか、そういうバランスをとろうというところで出発をしていたんだと思います。

 したがって、法律の中身そのものも、どちらかというと、いわゆる個人情報取扱事業者に対して一定の制約を課すという内容になっておりますので、その本来の趣旨からいって、そこに対して有効な活用をしていただけるような運用、仕組みをしっかりと守っていくということはやはり基本であろうと思います。

 今、学校の問題について一つお尋ねでございますけれども、当然のことながら、いわゆる過剰反応と言われるような問題が生じないように、自治体等々も適切な役割を果たしていかなければいけないと思います。

 実は、政府では、昨日、個人情報保護の関係省庁連絡会議を開催しておりまして、関係省庁が、法制度の周知徹底や各主務大臣が定める事業分野ごとのガイドラインの見直し等の取り組みを連携して推進しよう、そして、過剰反応と言われるような事案に適切に対応しようではないかというふうに申し合わせをしたところでございます。

 地方公共団体の役割は大きいですから、総務省としては、地方公共団体に対しまして法の趣旨の徹底を要請して、さらに必要な情報提供を行っていきたいというふうに思っております。

近藤(昭)分科員 今大臣に御答弁をいただいたように、情報は有用に活用する、ただ、その中でいろいろ問題が発生してきた現実があるので、きちっと活用するための法だ、こういうことだと思います。

 そういう意味では、これから理解が深まっていく、あるいはそのやり方ですね、多分、学校の方でもそれぞれの生徒さんに確認をしておいて、こういう情報を、遺児である情報を提供していいかと。こういうことが基本なんだと思いますが、そういったものが今のところまだ十分に理解されていない学校があるのかな、あるいは、そういうことをまだ十分に自治体も御努力をいただいているところが欠けるのかなというようなことだと思います。

 そういう意味で、私もきょう新聞で、今の関係省庁連絡会議ですか、その件につきましては読ませていただきまして、現場での混乱があるということで、もちろん、もともと法については総務省ではないわけでありますけれども、それぞれの自治体を通じてぜひ有用な活用ができるような連絡をしていただければというふうに思うわけであります。

 続きまして、これも個人情報保護法についての関連なんですけれども、二〇〇四年の十二月だったと思いますが、日韓の首脳会談で小泉総理と盧武鉉大統領が、朝鮮半島から強制動員で労働をされて亡くなられた方、あるいは、そういった強制労働ではなく、旧軍人軍属の方、いわゆる朝鮮半島出身ということでありますが、そういった方々の遺骨の収集について、遺骨の問題について協力をして解決していこう、こういう話し合いがなされた。それに基づいて、二〇〇五年の六月の二十日だったと思いますけれども、政府が各自治体に対して遺骨情報の提供を依頼した、こういうことであります。

 ただ、そういう中で、各自治体から提供されてきた情報は十分ではなかった、特に福岡県にそういった方が多かったということで。市民団体の皆さんが、福岡県内の各自治体にそういった情報の提供を依頼した。そういう中で、九つの市だと聞いておりますが、九つの市から、埋葬火葬許可願書というんでしょうか、そういうものがある、つまり、朝鮮半島から見えて亡くなった人たちの埋葬あるいは火葬の許可証があった、こういうものが出てきた、こういうことらしいんですね。

 ただ、これも個人情報保護法のために、その埋葬された方、火葬された方の死因あるいは届け出人がだれだったか、こういうことが黒塗りであったということであります。ですから、例えばある方は自分の親族がどうやって亡くなったのか等々のことをなかなか知ることができない、こういうことだった。

 そういう中で、政府が、一月二十三日には改めてこういった埋葬火葬許可証及び徴用者の死亡報告の情報提供を求められた、こういうふうに聞いております。そういうようなことを政府がされたと。

 ところで、先ほど九つの市で情報提供があったというふうにお話をさせていただきましたが、そういう中で、実は、死因、届け出人の欄が黒塗りであったところと、一町だけだと聞いておりますけれども、一つの町については黒塗りのところが全くなかった、こういうことだったということであります。

 そこでちょっとお聞きをしたいんですが、政府が各自治体に遺骨調査に関する情報提供を依頼した、そのときの公開する判断の基準は何に基づいて行われているのか、それをお聞きしたいと思います。

大槻政府参考人 御指摘の朝鮮半島出身の旧民間徴用者の遺骨に関しまして、昨年六月二十日に、すべての地方公共団体に対しまして情報提供依頼を行ったところでございます。私どもの今受け取っております情報につきましては、一部不開示のものはございませんという状況がございます。

近藤(昭)分科員 そうすると、市民グループの皆さんに対しての情報提供は例えば各自治体は御自身たちの条例に基づいて黒塗りにされた、厚生労働省に提供した情報についてはすべて全面公開だった、こういうようなことでしょうか。それは、そういう対応というかその違いはどこから来るのか、御説明いただけないでしょうか。

大槻政府参考人 先ほど申し上げましたのは、私どもに情報提供をしていただいた回答、その中には一部不開示、黒塗りといいますか、そういったものはなかったという事実関係だけを申し上げたところでございます。

 各自治体におかれまして、そういった情報についてどのような取り扱いをされるかにつきまして、私どもが申し上げる立場にはないということだと考えております。

近藤(昭)分科員 では、そうしますと、総務省の方にお伺いをしたいんですが、そういった情報公開については、各自治体はどのような基準でやられていらっしゃるんでしょうか。

高部政府参考人 個別の事案について、ちょっと把握をしておりませんから、確定的なことを申し上げられませんが、先ほど来話がございますように、地方公共団体の対応につきましては、それぞれの団体の定めた個人情報保護条例に基づいているところでございます。

 これも所管ではございませんので、確定的に申し上げられないとは思いますが、国の場合の個人情報保護法について、亡くなった方とかなんかの情報については直接的には対象になっていないやにも聞いておりますが、地方団体について国の法制についてはこうなっているということを私ども周知しているところでございますが、地方団体はそれぞれの判断で定めておられるところでございますので、それぞれの条例の内容に則して対処されているのではないかというふうに推測されるところでございます。

近藤(昭)分科員 それぞれの自治体でお決めになっている条例に基づいて公開がなされた、こういうことだと理解するんですが、ただ、どうでありましょうか。

 先ほど質問の前にちょっと触れさせていただいたように、そういった遺族の方が、御自身の親族の方がどのように亡くなられたか、こういうことを知りたいというようなこと、あるいは社会保険庁もお越しいただいているのかもしれませんけれども、例えば韓国側で、代弁者の方が、ある遺族から私の親族が日本のどこかで亡くなっている、どこかに埋葬されているかもしれない、そういうような情報を提供されても一つ一つ当たっていかなくてはいけないのか、あるいは、年金台帳が社会保険庁にあって、その中で、これも一人一人当たってということになるのかもしれませんが、どうなんでしょうか、そういった情報の提供について、それぞれの遺族から個別に情報提供の依頼があればおこたえになっていくのか。

 あるいは、例えば韓国の市民グループか、あるいは韓国には真相究明委員会という国立の委員会もあるというように聞いておりますが、そういうところからまとまって情報提供の依頼があれば、先ほど竹中大臣もお答えになったように情報を有用に活用しようと思うと、相手が信頼できるところであれば何らかのデータみたいなものをつくって提供をするということが有用なデータの使い方ではないのかなと思うわけですが、いかがでありましょうか。

青柳政府参考人 ただいま私どもの管理しております社会保険関係のデータについてのお尋ねがございました。

 まず、社会保険庁におきましては、膨大な年金の個人情報というのを扱わせていただいておるわけでございます。これにつきまして、個々人の方から御照会がありました場合には、その方の申し出た氏名、生年月日、それから当時勤めていた事業所の名称、こういった情報に基づきまして調査を行い、個別に記録の有無、それから内容をお示ししているところでありまして、例えば強制動員労働者の方々についても同様の対応が可能であるというふうには考えております。

 しかし、ちょっと今のお尋ねの中でもお触れになりましたように、厚生年金名簿という形で、例えば事業所単位に一連の名簿という形でこれを管理しているものがあるわけでありまして、こういったものを提供できないかというお尋ねもあるわけでございますが、この名簿の中には同じ事業所で働いておられる方、強制動員の労働者以外の方々についてもすべて記載があるということになりますので、こういったものを御提供するということは、まさに個人情報の保護の観点からなかなか難しいんではないかなというふうに思っております。

 この点を含めて、私どもの社会保険の名簿管理の実態につきまして、先日、韓国側の関係者の方々にも現場の社会保険事務所の管理状況を御視察いただきまして、私どもの方から、従来から説明をいたしておりました名簿による情報提供がいかに困難であるかというようなところについても、改めて御認識をいただいたところでございます。

近藤(昭)分科員 今、青柳運営部長からお答えいただいたわけですけれども、そうすると、韓国の方々も現場を見られて、個人情報の観点からいうと、半島から強制連行されてきた人たちだけを分けることはなかなか現場では難しいと。これは、個人情報をきちっと守っていくという観点を大前提にして、運用は有効にという観点から考えると、それは例えば相手が信頼できる国立の真相究明委員会だったらそういうものもオープンにして一緒に判断するとか、そういうようなことはやはり難しいんでしょうか。

青柳政府参考人 ちょっと情報の持ち方について補足をさせていただきたいと思います。

 当時、戦争の前後の時期ということになりますと、厚生年金保険法は昭和十七年から実施をされておりましたが、当時は当然のことながらそのデータというのは紙の台帳で管理をするという形での保管でございました。したがいまして、現時点で私ども、この台帳の保管の仕方は、その紙の台帳をマイクロフィルムに写した形での保管の仕方をしておりますので、例えば最近の方であれば、いわばデータベースの中にその方の必要な情報が入っておりますので、基礎年金番号を初めとする幾つかの情報さえ御提示をいただければ、一定の時間いただければ、その方々についてこれをリストアップして一つの形にするということは、物理的にもそう困難なことではないと考えております。しかしながら、マイクロフィルムで台帳化されているものを、しかも、いわば不十分な情報の中で探し出すという物理的な意味での困難さというものについても、あわせて御理解をいただいたというふうに承知をしております。

近藤(昭)分科員 なかなか困難だという状況は、お話を伺ってある程度理解をさせていただいたわけでありますが、やはり遺族の方のことを考えると、もちろん、それぞれの方から依頼があればそれぞれについて調べて情報開示をしていくということだと思うんですが、これもある意味で、先方の現実的な難しさでいうと、すべての方にそういうことをやるというのはなかなかできない中で、例えばそういう真相究明委員会がまとめてというか代表してやるということも一つのやり方ではないかなというふうに思っております。そういう意味では、何かいい方法がないかなと、またぜひ今後御研究いただければと思うんですが。

 最後に、住民基本台帳の閲覧のことについてお聞きをしたいと思います。

 住民基本台帳の閲覧、これによって母子家庭を特定して、いわゆる男性がいないというところをねらった事件が多発をいたしまして、本当に大変に残念なことなのでありますけれども、この住民基本台帳の閲覧の際、御本人かどうか、本人確認をどうしているのかという問題、あるいは部外者の閲覧をどういうふうに定めているのか、ちょっとお聞きしたいのであります。あるいは、そういった問題が起きたことに対して、今後どのように対応されていくつもりなのか、お願いいたします。

竹中国務大臣 まず、住民基本台帳の閲覧でございますけれども、現行制度におきましては、何人でも住民基本台帳の閲覧を請求することができるわけでございます。市町村長は、閲覧により知り得た事項を不当な目的に使用されるおそれがある場合等、請求を拒むに足りる正当な理由があるときはこれを拒むことができる、そういう仕組みでございます。御承知のとおりでございます。

 その際の本人確認につきましては、請求の審査に当たって、個人については官公署の発行した写真つきの身分証明書によって、加えて、法人については法人の実在性について法人登記等によって確認することが適当である旨の助言を我々としては行っているところでございます。

 先ほどの、今後どのようにいろいろな問題が生じていることを踏まえて見直すつもりかということでございますけれども、この閲覧制度のあり方については、昨年、住民基本台帳の閲覧制度等に関する検討会を設けて、検討会で御議論いただきまして、十月には報告をいただいているところでございます。

 その主な内容としましては、住民基本台帳の閲覧制度について、何人でも閲覧できる現行制度を廃止した上で、国、地方公共団体や公益性の高い場合のみ閲覧できる制度に再構築をする、そして、審査手続の厳格化、不正閲覧等への制裁の強化というようなこともそこで報告をいただいております。

 こうした報告を踏まえまして、現在、今国会で住民基本台帳法の改正案の提出に向けた準備を我々としては進めているところでございます。個人情報保護法に十分配慮した制度となるように取り組んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

近藤(昭)分科員 そうすると、いろいろと問題が発生したということに対応して、今国会中に制限をする法律が成立するというふうに理解してよろしいでしょうか。

竹中国務大臣 我々としては、今国会で提出させていただけるように準備を進めているところでございます。

近藤(昭)分科員 本当に、そういった事件が私の地元でも発生をし、ぜひ個人情報保護という観点で、情報が、竹中大臣もおっしゃったように有用に活用されなくてはならない、ところが、今のような住民基本台帳の問題が一方で出てきてしまった。もちろん、それに対応していただくということでありますが。

 一方で、先ほど、それぞれ現場の困難性とか課題はあるんでしょうけれども、学校で、お父さんあるいはお母さんを亡くした子供の情報、これもきちっとやっていくということなんだと思いますけれども、そういう情報がうまく活用されていない部分が今のところまだある。

 また、強制連行されて日本で亡くなって、火葬、埋葬された方たちの情報。遺族からすると、日本に連れていかれて、そこで亡くなった、どういうふうに亡くなったかということを知りたい、あるいは、どういうふうに埋葬されて、どこに埋葬されているかということもなかなかわからないという現実があるようであります。そういう中で、非常にこれは事務的過ぎるのかもしれませんけれども、基本的には、それぞれの遺族の方が申し出をして、それに対して対応していくということなのかもしれませんが、やはりそういった過去の負の遺産は私は早く解決すべきだと。

 そういう中では、ぜひいろいろと政府の方でも有用な情報の活用の仕方をしていただきたいということをお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

臼井主査代理 これにて近藤昭一君の質疑は終了いたしました。

 次に、荒井聰君。

荒井分科員 荒井聰でございます。

 きょうは、大臣と、それから人事院の人事官が来ておられると思うんですけれども、公務員制度の問題、それから地方財政の問題について御議論を重ねていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、小泉改革の中核の中にずっとおられた竹中さんですから、小泉改革の大きな理念というのは、大きな政府から小さな政府へ、そういう理念があるのだろうというふうに思います。

 しかし、十六年度の経済白書だったでしょうか、日本は決して大きな政府ではない、むしろ小さな政府だ、そういう分析もしているところでありますし、本当に日本は大きな政府なのか。国民は、政府の宣伝が効いているのかどうかよくわかりませんけれども、どうも日本というのは大きな政府だというふうに誤解をしているところが多々あるような気がするんですね。これらについて竹中大臣はどのようなお考えをお持ちなのか、お聞かせください。

竹中国務大臣 大きな政府、小さな政府、大きいか小さいかというのは基本的には相対的な問題でございますので、いろいろな尺度でいろいろな議論ができるのだと思います。

 例えば、公務員の数に関して言うならば、これはもう先進諸国の中で日本は圧倒的に少ない、小さな政府だというふうに私も思います。ただ一方で、例えばでありますけれども、政府が持っている資産、負債、バランスシートの大きさで比べますと、何と日本の中央政府のバランスシートはアメリカの五倍の大きさがある。GDP比で十倍近い大きさになるんだと思いますので、決して小さいとは言えない面がやはりあるんだと思います。

 私が懸念するのは、高齢化して人口が減る中で、今の制度のままでいくと、いろいろな意味で、より大きくなる傾向を持っている、懸念があるということではないかと思います。

 そうした中で、国民の負担を大きくしないためにも、実は小泉改革の本質というのは現場を信じて現場に任せていくということだと思っております。現場を信じて現場に任せる、その一つが、やはり民間でできることは民間でということでありますし、地方でできることは地方でということであろうかと思います。そうすることによって、どうしても国でなければできないこと、どうしても政府でなければできないことというのは間違いなくあるわけで、そういうことに資源を、選択と集中でそこに資源を投下していく、私はそういうことが必要ではないかというふうに考えております。

荒井分科員 バランスシートが大きいというのは、国債の発行をどんどんどんどんやっていったわけですからね。それは、政府が今までそういう政策をとってきたわけで、公務員制度、あるいは働いているそういうところとほとんど直接関係ないですよね。そこの問題というのは政治の場でしっかり議論をして、あるいは解決していく、そこと公務員制度の問題というのは、私は切り離して考えるべきだというふうに思いますね。

 ところで、どうしてこんなに公務員バッシングというのが生ずるのか。この原因について、人事院はどうお考えですか。

谷政府参考人 お答え申し上げます。

 公務員は国民全体の奉仕者でございまして、その職責を自覚いたしまして、職務に専念し、国民の信頼にこたえることが期待されているわけでございますけれども、近年、公務員に対してさまざまな御批判等があることは御指摘のとおりでございます。

 その要因につきましては、さまざまあろうかと存じますけれども、例えて申し上げますと、一つには、一部省庁の幹部公務員による不祥事が続きましたこと、それから、対応のおくれなどにより行政の不手際が幾つもございましたこと、また、バブル崩壊によりまして民間企業の皆様が大変御苦労をなさっていらっしゃる中で、いわゆる天下りを初めとして、公務員が恵まれ過ぎているのではないかと考えられましたこと、さらに、公益よりも特定グループの利益を優先しているのではないかという不信を招いたことなどがあるのではないかというふうに考えております。

荒井分科員 総務大臣はいかがですか。同じ質問です。

竹中国務大臣 理由は幾つもあるんだと思います。

 先ほど申し上げましたように、本当に、国民一人当たりの公務員の数を見ると、驚くほど日本は少ないわけですよね。

 しかし、現実の問題として我々受けとめなければいけないのは、タウンミーティングをもう百何回小泉内閣でやらせていただきますけれども、その中でよく参加者の中から、公務員の数をもっと減らせ、公務員の給料も下げろ、そういう意見というのは出るんですけれども、必ずと言っていいほど、そのときに会場は物すごい拍手が起きるんです。もう一つ拍手が起きるのは、政治家の数を減らせと言ったときも、もちろん実は拍手が起きるんですが。公務員の数からいうと私が今申し上げたとおりなんですが、にもかかわらず国民はそのように見ているという現実は、やはり厳しく受けとめなければいけないんだと思います。

 その理由は、幾つかおっしゃいましたけれども、やはり国民から見て多分非常に象徴的なのは、私は公務員の方は本当に一生懸命やっておられると思うんですけれども、一部にこれはいかがなものかという事例がある。そういう事例がありますと、全体がまるでそうであるかのような印象をやはりどうしても持たれてしまいます。そういう中で、先ほどの不祥事の問題等々が絡んで、また一部の非常に目立つ天下り等々が絡んで、今日のような状況が出現していると思います。

 公務員の数が少ないというようなことは、これからも我々はしっかりと広報していきたいと思いますし、同時に、やはり国民の声を真摯に受けとめて、改革すべきは改革するという姿勢も必要だと思っております。

荒井分科員 地方自治体も含めて、政府というのは公務員の集まりのことを言うんだと思うんですね。その公務員に、今のようなバッシングの状況で、いい人材が来るはずないんですよ。いい人材が来なくなれば、いい政府でなくなるということそのものなわけですね。だから、政府の信頼というか公務員の信頼を取り戻すということは人材確保の上でも物すごく大事なんですけれども、私はその努力がいま一つ足りないんじゃないかという感じがしています。

 現在、公務員の人材確保について人事院はどういう対策を練っておられるのか、それから、公務員の質というと、質の分析なりというのは大変難しいのかもしれませんけれども、そのあたりをどうとらえておられるのか、人事院の方、お聞かせください。

谷政府参考人 公務員を取り巻く環境という意味で、少し一般論的なところから申し上げさせていただきますと、我が国の社会全体における変化といたしまして、経済のグローバル化等を反映しました金融や国際経済の世界などにおきます新しいビジネスの登場等によりまして、優秀な若者が活躍できる場が広がり、また、若者の意識も変化、多様化しておりまして、これらに伴って若い方々の職業、進路選択にも変化が生じているという状況があるのではないかと一つ考えております。

 また、その中で、公務に関しましても、社会経済情勢、国際環境等の変化を反映いたしまして、政府と民間の関係、政治と行政の関係等も変化してきておりまして、それに応じて、公務員の果たすべき役割、公務員への期待も変化してきている可能性があると存じます。これは、必ずしも公務の役割が小さくなるということではないわけでございますけれども、公務の果たすべき役割につきましてさまざまな御意見、御議論がある中で、若い方々が進路を選択するに当たって、何らかの影響があるということも考えられるところでございます。

 さらにまた、先ほど申し上げましたように、公務における不祥事等が与えている、結果といたしまして公務に対する国民の信頼の低下ということがあります影響といたしまして、若者の公務志望にも影響があるという可能性もうかがえます。

 そういったことで、1種の法律系についての例で申し上げますと、さらに加えまして、近年の司法制度の改革でございますとか法科大学院等の設置などで、公務周辺の人材の供給構造にも大きな変化が生じてございます。

 そういう中で、これらのことが人材確保に影響を及ぼしているのか、あるいは人材の質を低下させているのかということにつきましては、印象論を超える検証というのは非常に難しいわけでございますけれども、現実に幾つかの省の人事担当者からは、1種試験について志望者層に変化が見られるという指摘もあるわけでございまして、この点については私ども人事院としても非常に問題意識を持っているところでございます。

 それでは、それについてどのように対応していくかということでございますが、公務の部門におきましても、行政は複雑化、高度化を続けておりますし、また、国民の行政に対するニーズも多様化しております中で、公務員はこれまで以上に高度な知識とか広い視野を持つ人材が求められております。さらに、いわゆる世界のグローバル化でございますとかボーダーレス化に伴いまして、各国ともいろいろな形で折衝、協力していかなきゃならないという能力も求められているわけでございます。

 人事院といたしましては、そういう認識に立ちまして、現行の試験は環境変化に十分対応しているのであるかという試験制度の問題、それから経験者の採用、いろいろ行政需要も変わりますので、そういった経験者の採用に柔軟に対応できているのか、それから、せっかく採用した職員の職務に対する従事の仕方でございますけれども、これも十分生かして使えているのかということ、こういうことに常に問題意識を持って取り組んでいかなきゃならぬと考えております。

 そこで、この十八年度におきましても、1種試験の改革、経験者採用のための新たな仕組みについて検討しているところでございます。このような試験制度あるいは採用方法を検討いたしますとともに、募集活動も積極的に行って、公務についての御理解をいただく必要があるだろうと思います。

 さらに申し上げますと、公務員の仕事のやりがいということ、公務員の仕事をどのように魅力的にするかということは、実は現在の公務員の仕事ぶりにも大きくかかわっているところでございまして、そういう意味で、公務員自身、特に幹部公務員は、こういった点について十分認識し、肝に銘じて仕事に取り組んでいく必要があるのではないかというふうに考えております。

荒井分科員 優秀な人材を集めてくるというのは、組織にとって最大の仕事だと思うんですね。今どこも、優秀な企業、伸び盛りの企業というのは、人事、採用のところに最も優秀な人材を充てて、物すごい活動をしながら、かねや太鼓で人材を集めている、そういう状況にあると思うんです。

 最近の公務員、一時は日本の公務員というのは世界の中でも人材的に最もすぐれた公務員だと言われていたんですけれども、それがどんどんレベルが下がってきているのではないかということについては、とても心配をしている一人であります。

 ところで、どうしてそういう状況になったのかというと、今人事官がおっしゃったように、働いても、生きがいというかやりがいというか、昔は省庁の課長あるいは課長補佐が、日本全体に影響を及ぼすような政策づくりに直接タッチしていったんですね。ところが、そういうことがほとんどなくなったのかな、そういうやりがいがなくなったんだろうかということが一つ。それから、昔は公務員になると、周りの人たちからある種の尊敬を集めたんですよ。ところが、最近はむしろ、公務員というと、モラルが低いんじゃないかとか、そういう尊敬さえ得られなくなってきた。そういう状況の中では、優秀な人間はなかなか集まってこないですよね。僕は、そこのあたりについて抜本的な対策を講じる必要があるんじゃないかと。

 特に、モラルの失墜という意味では、政府のお金でわざわざ優秀な人材をアメリカの大学院なりなんなりに行かせて、そこでしっかりと教育をつけてきて、高い知識を持ってきて、日本に戻ってきて数年でぽっとやめちゃって、どこかの民間企業、あるいは自分で会社を起こして、株投機に走ったり大もうけをしている、そういう人たちを、むしろはやし立てているというか、むしろよいしょしている社会というのは、あるいは公務員制度というのは、僕は物すごくおかしいと思うんですよね。

 そして、これは大臣にお聞きしたいんですけれども、今の公務員バッシングというのが、公務員の話をすると、人件費削減します、定員削減しますというとばたばたと手をたたくというのは、どこか私、国民の不満みたいなものが、あるいは抑うつされているようなものが、一番たたきやすいところ、たたいても文句を言わないところ、そういうところに集中しているという感じさえするんですよ。これは、何か社会的な一種の病理現象というと大きいんですけれども、何かしらそういうようなものさえ感じるんですけれども、そこのところについては、人事官とそれから大臣について、それぞれお答えいただけますか。

谷政府参考人 先ほどもちょっとお答えをさせていただきましたけれども、社会全体が非常に大きな変化に直面しているといいますか、際会しているという状況があると思います。

 そういった中で、そういうことが公務員にどういう影響を及ぼしていくかということにつきまして、私どもまだ実は、その社会のあり方そのものについて、もちろん私は、何か見解を述べるというだけの見識を持ち合わせておりませんし、立場でもございませんけれども、そのことが公務にどのように影響していくかということについては、我々の立場として広くよく深く検証して見ていかなければならないというふうに、抽象論でございますけれども、考えております。

竹中国務大臣 荒井委員が、御自身公務員としての御経験も踏まえて、非常に危機意識を持っておられるというのは大変よく伝わってまいります。

 本当にこれは難しい問題でありますけれども、確かに、人の給料が高いとか、人がいい思いをしているというようなことで、それをやゆする議論が横行するというのは、非常に不健全な状況であると思います。

 現実は、残念ながら、今までのむしろ反動の面があって、どちらかというとこれまでは、特に国家公務員というのはいわゆる普通の国民から見るとやはり特権階級ではないかというような意識があった。それに対して、いろいろな不祥事が出てきて、そら見たことかということで、今そういうバッシングの振り子が振れている。バッシングがあるものですから、今度は、御懸念のように、本当によい人材が集まらなくなる、ないしは役人の方がやる気をなくしていく。これはもう悪循環ですから、役人にとっても国民にとってもいいことは何もないわけです。

 そういう意味では、しっかりとした健全な社会というものと、この悪循環を食いとめるような仕組みというのを、同時に我々は考えていかなければいけないというふうに思っております。

荒井分科員 私は、これはある意味では、どこかで格差社会というのと深く結びついている感じがするんですね。残念ながら、小泉改革五年間で所得の格差というのは広がっていった、あるいは、雇用の形態の格差というものも、常勤の方から、そうではない、アルバイトとかフリーターとかそういう形のものがふえてきたことによって、そういうものと対極にある公務員制度というものに対して不満というものが、そこが根底にあるような気がしてならないんですね。それはまた、時間があったら大臣と少し議論をしたいと思います。

 次に、もう一つ、これはどうしても聞きたいと思っていましたのは、公務員制度の一番の根本は天下り問題だろうと僕は思うんです。今、防衛庁の談合問題で刑事事件になって捜査を受けていますけれども、これなんかも一番、公務員の特権だとか、あるいは公務員がやめても何かうまいことをやっているといったような風潮を世の中に与えている典型的なものだと思うんですけれども、これの根本にあるのは天下りなんですね。

 天下りをどうやってやめさせるのかというところ、これは、昇進制度とか昇格制度とかあるいは退職の制度とか、制度設計として非常に難しいことはよくわかります。今の日本の公務員制度というのが、五十五歳とか五十六歳とか、あるいは事務次官に同期がなったら全員やめるとか、そういうことによって成り立っているという制度だから、天下りというのは必然的に発生するんですけれども、しかし、そこを制度上許していたのでは、必ずこの事件というのは何度も起きるということですね。何度も起きれば、公務員制度そのものに対する信頼感を欠いていくというふうに思うんですね。

 せっかくだから、竹中総務大臣に、この天下り問題についてどう考えるのか、あるいは改善策について何かアイデアをお持ちなのかどうか、御見解がありましたら、ぜひ。

竹中国務大臣 天下りが最大の問題であるという認識は、私は実は全く同じでございます。さっき、国民から見るとやはり特権階級に見えると申し上げましたけれども、何でそう思うかというと、最大のポイントはここなわけです。もちろん、公務員三十何万人全員がそういうことをしているわけじゃないわけですけれども、非常に目立つ人がいるんです。特にこれまでそうだった。そこがやはり最大のポイントになっていると私は思います。

 したがいまして、天下りについては、今回の行革の法案等々の審議の過程でも、我々は本当に厳しくやろうじゃないかということを議論して、今行革法案の最終的な詰めをその線にのっとって行っております。

 具体的にどうしたらよいかということは、公務員制度改革の中で、中馬大臣とも御相談をして引き続き議論をしていかなきゃいけない問題でございますが、私自身の考えというのはもちろん若干ないわけではないんですが、内閣としては引き続きしっかりと議論していただきたいと思います。

 私は、最大の問題は、官庁があっせんする、そこにあるのだと思っております。官庁があっせんするというような仕組みをなくして、しかし、今平均寿命は延びていますから、第二、第三の職場というのは必要なわけだし、個人にとっても必要だし、社会にとってもそれは有用なことでございますから、職場が、役所があっせんするという仕組みをなくして淘汰していくということが、私は天下り問題の一つの重要なポイントになると思っております。

荒井分科員 うちのある議員が団塊党というのを企画いたしまして、六十歳、定年になった人たちのそういうノウハウを社会のために何か活用しようというような社会運動を起こそうということをやっていますけれども、これなんかも一つの方向性なのかなという感じがいたします。社会全体として、退職した人たちに対する、その人たちの能力をどういうふうに活用していくのかということは、大きな問題として、これから大きな政策の一つとして考えていくべきなんではないかなというふうに思います。

 ところで、通告をしておりました地方財政について、時間がなくなってきたんですけれども、大臣、今の地方財政の状況は、極めてどんどんどんどん悪くなっています。特に、平成十六年度の交付税改革、約一兆円ぐらい減額したんじゃなかったかと思いましたけれども、あれによって非常に各地方自治体が深刻な状況に立ち至っているのではないかというふうに思います。

 したがって、大臣も、御自分の諮問機関をつくられて、これからの地方財政の改革の方向について研究をされているというふうに聞いております。この地方財政の現状をどのようにとらえておられるのか。特に、十六年度の交付税改革によって地方は非常に疲弊してきているという状況をどのようにとらえているのか、大臣の御見解がございましたら、どうぞ。

竹中国務大臣 十六年のあの議論のときは、私は経済財政政策担当大臣としておりましたので、そのときの状況を覚えております。当時の麻生総務大臣が大変御苦労をされて、そのときの対応に当たっていたというふうに記憶をしております。

 現状をどのように認識するかということでありますが、財政の状況というのと経済の状況というのはやはり切り離せないところがございます。経済も、非常に厳しいどん底の状況からはよくなりつつある。財政についても、国全体としてのプライマリーバランスが、実はこの四年ぐらいでかなり改善いたしました。二〇〇二年に二十八兆円あった国、地方のプライマリー赤字が、今その約半分になってきているわけでありますので、その意味では、四年ぐらいの変化で見る限りは、少なくとも収支は改善しているということは事実だと思います。

 ただ、その過程で財政は、国も地方も、特に地方は身を切る思いで、その意味では大変つらい、苦しい状況にあるという認識を持っております。プライマリーバランスの改善に当たって、地方が歳出を削減したというのが非常に大きな貢献を実はしているわけでございます。

 今後、国、地方のプライマリーバランスを、しかし、それでもさらに改善していかなければいけません。これはまだ今でも十四兆の赤字ですから、プライマリーバランスが赤字というのはひどい状況なわけですから、これを何とか二〇一〇年代の初頭にゼロまで戻さなきゃいけない。そのための努力はどうしても続けなければいけません。

 国と地方を合わせた歳出と歳入の一体改革を進めていく上での議論、十八年度は大変重要な議論の年になるということでございますので、その中で、単に交付税を減らすというような矮小化された議論にならないように、国、地方のそもそも論まで含めたしっかりとした議論を、総務省としてはしていきたいというふうに思っております。

荒井分科員 地方の方は、地方交付税改革というと、すぐ地方交付税が減額になるんだ、減額されるんだという方向で受け取っていますね。ますます地方財政は悪くなる、そういう感じを持っております。

 今、北海道の道庁の財政も非常に逼迫をしておりまして、三位一体改革が実施された途端に、北海道が財政再建団体、地方自治体の倒産法をつくろうという動きがあるといって、その第一号が北海道ではないかというようなやゆも北海道の中では飛んでいるほど、厳しい状況にあるわけです。

 地方交付税改革というのは、私も必要だと思っています。これは、やらなきゃならないんだろうと思うんです。しかし、それは、減額の方向ということではなくて、もっとわかりやすく、透明性が高くて、そして地方自治体が頑張ったところにはそれなりの額が交付されるような、そういうシステムでないと、今のシステムでいけば、幾ら頑張っても、自主財源を上げれば上げるほど地方交付税が減っていく、そういう原理原則みたいなことは改正していかないとおかしいのではないかというふうに思うんですね。

 このあたり、地方交付税改正の方向性というのは、大臣、まだ議論中ですからなかなか見解ができないかもしれませんけれども、何かございましたら、ぜひお教えください。

竹中国務大臣 二十一世紀ビジョン懇談会でまさに議論していただいているわけでございますが、その結論というのはもちろんこれからなんですけれども、実は、方向性については私なりにお示しをさせていただいております。

 どういう方向でこの問題を考えていくか。最大のポイントは、地方の自由度を増していただくこと、その裏側としての責任をしっかり負っていただく、つまり、自由と責任をしっかりと高めて、自立のシステムをつくるというのが最大のポイントだと思います。

 二番目は、国と地方を合わせてしっかりと、赤字なわけですから、スリム化していくということは、必要な問題として入ってくると思います。

 そして同時に、これは委員言われたことですけれども、地方行革に結びつくような制度でなければいけないというふうに思います。それは、やはり頑張ったところがしっかりとよい結果が出るようにする、頑張っても頑張らなくても結果的に余り変わらないで補てんされるというような制度では困る。インセンティブが伴って、結果的に地方行革に結びつくようなシステムでなければいけないというふうに思います。

 そして、最後には、やはりこれは非常にわかりやすくて透明なものでなければいけないと思います。

 方向性としては、そういう方向でぜひ議論をしてくださいということは専門家にお願いをしておりますので、専門家の議論を私自身も大変期待しております。

荒井分科員 行政改革だけではなくて、自主財源をふやすような、その地域としての新しい産業を起こしていくとか、新しい試みをつくっていくとか、そういうことに対してもぜひインセンティブが与えられるような、そういう制度にしていくべきだというふうに思います。

 ところで、時間がなくなりましたので最後の質問になるんですけれども、こういう地方の行政改革あるいは地方税財源の効率化という観点もあって、市町村の合併ということを総務省が中心になってずっとやってきたわけでありますね。

 私は、それは時代の流れだというふうに思っております。そういう基礎自治体というものをもう少しスケールメリットを出していくという方向性は、私はある意味では当然なのかなというふうに思うんです。

 しかし、そこに一律の同じような市町村ばかりつくるのか。今のやり方でいくと、明日香村はなくなってしまう。今のやり方でいくと、歴史のある、文化の高い、そういう地域というものがなくなっていくということに対して、私は、単なる地方自治体の合併という問題とまた違う側面があるんだと思うんです。

 フランスは、コミュニティーという形で、いろいろな形の市町村を認めているんです。この市町村は警察や学校は要らない、つくらない、しかし市町村としての基本的なこの部分だけは市町村として認めるとか、そういう市町村としての多様性というものをもっと認めてもよかったのではないか。どうも一律の市町村合併を強硬に推し進めた嫌いがあるのではないだろうかなというふうに私は思うんですけれども、この市町村合併の今後の進め方について、そしてそれによる地方税財源の改革の方向というものについて、大臣はどのようにお考えなのか、お聞かせください。

臼井主査代理 竹中総務大臣、時間が来ておりますので。

竹中国務大臣 基本的には、私は、委員おっしゃるように、合併というのは一律なものであってはいけないと思います。多様性こそ、やはり地方自治の原点であると思います。その意味では、広域連合のようなものも視野に入れていただいたらいいと私は思いますし、そのような仕組みをつくっているつもりでございます。

 税源の話ですけれども、先ほど私はインセンティブと申しましたが、むしろ私が言いたいのは、自由の中に課税の自主権も含めて、自主的な財源を持つような自由、そういうことも含めて、ぜひ幅広い議論をしたいというつもりでおります。

荒井分科員 では、終わります。

臼井主査代理 これにて荒井聰君の質疑は終了いたしました。

    〔臼井主査代理退席、主査着席〕

田中主査 次に、阿部知子君。

阿部(知)分科員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 本日は、私にいただきました三十分という、私にとっては破格に長い時間なのですが、この中で、少しゆっくり、じっくり、竹中総務大臣と、電磁界と健康リスク問題について、大臣、首をひねられましたが、ふだん、郵政民営化のように大臣が最も得意として率先してやっておられる部分とちょっと違うかと思いますが、しかし、逆に大臣のリーダーシップを見込んで、私があえて総務省、総務大臣をお願いした次第でありますので、ちょっときょうは私はゆっくり目の審議をさせていただきたいと思います。

 きょうここにお集まりの皆さんの中にも、電磁界というと、電気の起きるところには必ず磁場が起こると小学校のころ習ったことがあるかもしれませんが、その程度で遠く忘れているかもしれませんが、大体全員が携帯電話をお持ちだと思います。これからもごく微量の低周波の電磁界が発生しておりますし、また、特にこの国会周辺、御自身のお部屋の窓から外を見渡していただけると、この携帯電話の基地局となります高いタワーがあっちこっち、あっちこっち、首相官邸の周りにもいっぱい見えるわけです。

 また、日常生活の中では、最近、オール電化住宅、これもこの中においででしょうか、何から何まで電気でオーケーだという住宅にお住まいの方もおいでかもしれませんし、特に最近もてはやされているのが電磁調理器といって、ガスじゃなくて、御高齢者でガスを使うと危ないから、電磁なら電気だし危なくないよというので、最近すごく売れ出しているんですけれども、これもまた健康障害という点ではどうかなと懸念される点もあるものでございます。

 そうしたこと、私たちの生活に身近な、しかし電磁波というのは見えませんから、なかなか対策できないことでありますが、実は、政府の方でも、平成八年度から電磁界関係省庁連絡会議というのを設けてございまして、総務省や環境省、厚生労働省、国土交通省、経済産業省、文部科学省、各省庁横断的にこの電磁界の問題をきっちりとフォローしていきましょうという体制にはなっております。

 ただしかし、この中でも、縦割りと申しては変ですが、携帯電話等は少し高周波で、これは竹中大臣の総務省、そして、例えば送電線とかあるいは変電所から生じるようなごく低周波のものは経済産業省、学校の子供たちに及ぼす影響は文部科学省、環境全般は環境省となって、なかなか実は統一した取り組みがなされていないやに私には見受けられます。

 一方、国際的には、WHOのさまざまな取り組みで、一九九六年から電磁界の国際プロジェクト、この電磁界の及ぼす影響がどんなものであるのかということで国際プロジェクトがつくられて、その中でさまざま打ち出される、あるいは各国が対応している政策と、我が国の迎え撃ち方に、すごく大きな差があると私には映ります。

 きょう冒頭の質問の一問目、実はこの件に関して、二日にわたって総務省や環境省やあるいは経済産業省の若手の官僚の皆さん、実はとてもよく勉強しているし、この公務員バッシングの中、本当に遅くまでよく仕事をしていて、何とかこの方たちの能力も生かしたいものだと思いましたが、そのためにも、やはり私は、この問題は政治がどのような向きに構えをつくるかということがすごく重要なことだと思いますので、何度も申しますが、竹中大臣のリーダーシップでやってほしいことがあります。

 実は、日本では、毎年千人くらいの子供の白血病が発生いたします。この白血病になった子供たちとならなかった子供たちがどのような電磁界環境に置かれていたか、これを、一九九九年から二〇〇一年にかけて、文部科学省が約七億のお金を投下し、環境省の統括のもとに疫学調査というのをいたしました。結果は、白血病になった子供、特に急性の小児白血病、一番多いんですけれども、この子供たちの環境中の寝室の電磁界の強さは四ミリガウスと言われまして、これは、ならなかった子供よりも有意に高いんだと。とにかく、この疫学調査はそういう結果を出しました。

 竹中大臣の御担当はさっき申しましたように携帯電話関係ですので、実は超低周波の方の電磁界とはちょっと違うのですが、たくさんできる携帯電話の基地局の電源は超低周波を発生しますから、縁なしとはいたしません。例えばマンションの上にこういう鉄塔が建ったら、その一番上の階はやはり超低周波の電磁波の影響があります。そうしたことからして、まず大臣は、きのう聞かれたかもしれません、この文部科学省が環境省と協賛でやられた研究についてはお聞きになったことがおありでありましょうか。

竹中国務大臣 今回の阿部委員の御質問の関連でレクを受けたというのが正直なところでございます。

阿部(知)分科員 ふだんお忙しいし、本当にそのようだと思うのですね。

 私は実は小児科の医者で、特に臨床疫学ということを勉強するために、公務員として、国のお金で、一九九三年から四年にかけてアメリカに留学し、疫学調査、例えば子供のがんが発症したとき、何が他の子と違うのかなどの研究をやってまいりました。アメリカのミネソタというところにあるメイヨークリニックというところにいたのですが、そのときそこで問題になっていたのは、携帯電話を当てる耳の側に脳腫瘍が多くできるのではないかという疫学調査をやっておりました。

 日本は、残念なことに、動物実験とかは一生懸命やるのですけれども、患者さんがある地域に発生して、病気になった人とならなかった人を比較調査する、これを疫学調査というのですが、これはまだまだ、なかなか日本の我が国に定着しておりません。ちなみに水俣病、あれだけ騒がれた水俣病でも、水俣エリア全体の方々の生活様式と水俣病になったかならなかったかの調査は、残念ながら、まだないのです。一方で、動物実験をやって、これだけ水銀を暴露した、そしてこういう症状は出なかったということで多くの患者さんを切り捨てたのですが、ところが、その認定方式に問題があったということも出ているように、動物に起こることと人間に起こることは違ってまいります。

 日本の数少ない疫学研究であるこの小児白血病のリスクをめぐる分析では、小児の白血病にかかわる多くの機関、例えば国立小児病院もそうですし、各大学病院の医師たちも多くかかわり、やはりこれは何がリスクになるか明らかにしなきゃいけないということで、熱心に私どもも仲間も参加しておる研究ですが、なかなか他の研究がないために、ここで出た小児白血病の子供の電磁界がそうでない子に比べて少し有意に高かったという報告は、我が国の中で活用されていません。

 その一つが、例えば、きょう私が大臣と皆様のお手元に配らせていただいた二つの資料でございます。片っ方は「電磁界と健康」。これは経済産業省の皆さんがおつくりになって、財団法人電気安全環境研究所というところに委託してつくったパンフレット。こっちは総務省がつくったパンフレットなのですが、大変に残念なことに、総務省のパンフレットの方には、私から見れば、少しやはりとらえ方にバイアスがかかって、本当に国民に本当のことを伝えているのかなと思う部分で、不安な部分があります。

 と申しますのは、例えば、携帯電話の基地局は、現在日本二百カ所で住民の反対運動が起こり、健康が心配だ、いろいろな訴えが出されています。もちろん、その中には、風説の流布ではありませんが、いろいろな問題がないわけではありませんが、しかし、現状、それだけの国民が不安を抱く。中には、六十カ所は建設中止になっております。そこで恐らく総務省もあるいは経済産業省もこのようなものをつくられるんだと思うのですが、私は、今の時代、情報公開が一番大事で、そこから選び取る、何がベストかという時代だと思うのですが、例えば、総務省がおつくりになった資料のうち、八ページをあけていただきたいと思います。

 ここには、先ほど私がWHOの紹介をしましたが、「WHOを中心に、世界中で電波と健康についての研究が行われています。」と上段に書いています。これは事実です。ところが、下段の方にぐっと下がってくると「予防の枠組み」という大き目の見出しがあって、その中で、真ん中の方です、「「予防原則」は、科学的不確実性が大きな場合のリスクに対処するために適用される政策ですが、それ自体まだ明確な定義がありません。」というようなことが書いてあります。

 これはどういうことかというと、結局、電磁波問題は、影響があるとするデータとないとするデータが同じくらい出てしまうのです。白とも黒とも言いがたいものがいっぱい出る。そのときに、自分のスタンスをどっち側に置いて、とりあえず結論は出ないけれども予防的に対処しましょうというふうに出るか、何か大きな被害が起こってから事に対処しようとするかによる差だと思いますが、現実には、ヨーロッパ諸国はほとんどが予防政策をとっております。

 これはもう紹介できないくらい数が多くございますが、例えば、ロシアでは二〇〇二年の九月から予防的アプローチとして携帯電話の使用年齢、特に子供等は制限するとか、あるいはドイツではフライブルクの提言というのがございまして、これは医師たちも含めてヨーロッパの首長たち、医師も政治家もです、一緒に三万五千人署名して、やはり携帯電話の使用等のリスクを、もちろん証明はされないんです、でも危険があり得る、だから子供たちには、例えば遠く離して使うためにイヤホンジャックみたいなものを用いて使えとか、そういう提言もあります。

 フランスでは、今度は、さっき申しました携帯電話の基地局、その基地局から出るのはマイクロ波といって携帯電話と一緒なのですが、これが乱反射することによるさまざまな影響で基地局周辺の住民に影響が及び、特に第三世代、画像が今私たちはぱっと出ますね、ああいうものについて影響が大きいんじゃないかという研究があり、その周辺とかには小学校や病院や幼稚園はやめましょうと。

 大体、簡単に言うと、オランダでもそうですし、ヨーロッパでの取り組みはそのようになっています。

 大臣、私が一人でしゃべっていて済みませんが、こうした予防原則ということに、我が国が、とりわけこの総務省の書き方というのは、ちょっとこれはいかがなものか、国際的にもおくれをとるのではないかと私は懸念するわけです。比較して経済産業省の方がいいというわけではありませんが、より事実に近いと思います。

 例えば、経産省がつくられた十ページをごらんいただきたいと思います。ここの一番下の方で、これは超低周波の規制の問題ですが、一番下の注二、スイスでは本規制値以外に、規制値がヨーロッパではありますが、それ以外に、病院、学校、住宅等々の防護が必要な場所についてはさらに低く設定して予防原則をとっているとか。

 私は、せめて一番大もとの総務省としては、この書き方は市民、住民にやはりいかがなものかと思うのです。大臣、すぐには、私はきょう大臣に言ったばかりですから、ああそうですかということだとは思います。でも、書き方も検討していただきたい。

 と申しますのは、ことしの秋に、WHOの十年がかりのプロジェクトの超低周波の電磁界問題のいろいろなリサーチも含めた結果が出ます。そのときに、余りにもそれまでと落差が大きければ、当然混乱もいたします。総務省として、この点は、予防的アプローチがどうかという点はよろしく検討していただきたいが、いかがでしょうか。

須田政府参考人 このパンフレットの点につきましての御質問ということで、私の方から答えさせていただきたいと思いますけれども、まず最初に、委員御指摘の疫学調査でございます。

 私ども、防護指針をつくるときに、医学的なあるいは細胞学的な、こういった観点からやることが通常でございますけれども、疫学的調査ということも大変重要だと認識しております。

 そういった意味で、この疫学的調査に関しましては、現在、国際がん研究機関等が行っておりますけれども、それに参加する形で、疫学的調査についても我々としても取り組んでいるところでございます。

 どうしても、こういった疫学的調査のサンプルの多さということも非常に大切だと思いますので、こういった意味では、我々としましては、こうした国際の流れの中で一生懸命取り組んでいきたいと思っております。

 それから、ただいま御指摘いただきましたパンフレットでございますけれども、予防原則につきましても、私どももある程度勉強してきております。

 ただ、私どもがここの中で書いてございます電波防護指針等につきましては、基本的には国際的な大きな環境、大きな議論の中で取りまとめているところでございますけれども、そのようなことを考えた場合、例えば、同じくパンフレットで御説明させていただきまして恐縮でございますけれども、十ページのQ2、二つ目の質問がございます。ここでは、人体への影響がまだ完全には解明されていない現状では非常に不安ですから、もっと厳しい規制をということがございます。

 ここで答えのAのところに書いているわけでございますけれども、現在、我が国の電波防護指針で定めているものにつきましては、いわゆる閾値として定めた基準にさらに約五十倍の安全率を掛けてございます。この安全率を掛けることによりまして、ここに書いてございますような、高齢者の方とか虚弱者の方とかあるいは子供さんとか、こういうふうな方たちへの安全も配慮した形ということになっているわけでございます。

 これは、こういうふうな状況の中で、先生ただいま御指摘のように、今後環境基準もいずれ定まることとなろうと思いますけれども、そうしたものがWHOの方で固まるまでの間は、現在のこのような形での科学的根拠に基づいた形で行うのが最も好ましいのではないだろうか、特に行政として対応する場合にはこうした対応が適切なのではないかと考えているところでございます。

阿部(知)分科員 大臣のお答えをいただく前に、私、やはり今お取り上げの十ページの書き方もおかしいと思うんですよ。今お読みになった中で、QアンドAの「予防的対策を推奨すべきではないが、」という書き方ですよ。

 予防的対策というのは、事実はとにかくわからないということは共通認識なんです。WHOの言っているのは、だから基準を変えなさいということじゃないんです。基準は基準として、幾ら決めても、これはなかなか正直言って切りがないんです。

 今、日本は決めていないですけれども、百マイクロテスラがヨーロッパ基準。だけれども、四マイクロテスラでも、子供の学校や病院では、一マイクロテスラでももっと下にしなさい、そういうものだと思うから、今WHOの言っているのは、規制基準を強化しようというんじゃなくて、それはそれとして、予防アプローチをとりましょうということなんですよ。

 ここが非常に誤解されやすいのと、もう一つあえて言わせていただければ、同じ九ページを見ていただくと、九ページに、発がん性の評価の例という、下に三つの枠がありますでしょう、これは大臣も見ていただきたいんですけれども。

 私ども、医者をやっていると、発がん性の評価は五段階でやるんですよ。どういうことかというと、これも、別にきょう私は経済産業省の方の資料を褒めたくて言っているんじゃないんですけれども、経済産業省のおつくりになった九ページ、真ん中ほどです。ここには、発がん性のリスクで、グループ一、二A、二B、三、四と五段階に分かれるんです。発がん性は、グループ三、四は、「発がん性を分類できない」、「おそらく発がん性はない」。この電磁波問題はグループ二Bなんですね。要するにグレーゾーンなんですよ。

 ここにあるものを、皆さんの資料だと、戻りまして総務省の九ページ、一番上、「WHOの主な見解」として、「がんが誘発されたり、促進されたりすることは考えにくい。」という表現と、そして真ん中ごろ、「三つの分類のうち最も弱いものです。」これはやはり、よく読めば総務省の真意はわかるかもしれません。でも、普通、医学的には五段階に分け、そのどこに位置するかなんです。

 こういう書き方一つ、やはり住民には不信をあおります。発がん性はないないと言っている。一方、ヨーロッパでは予防対策がとられている。私は、せめてこの経産省のレベルまで、私はこれ自身も言いたいことがありますが、きょう経済産業大臣はおいでじゃありませんし、まず今一番乖離が大きいのは総務省の認識だと思いますから、ここをせめて、やはり国際的な流れ、そしてその中で弱い者を守る。子供、妊婦、おなかの中に赤ちゃんがいるからですよ。そういう目で製作していただきたいというのがきょうの私の主眼なんです。

 大臣、ここまでのところで何か御意見があればお願いします。

竹中国務大臣 私は、以前から阿部先生はお医者さんだということを存じ上げておりましたが、どういう御専門かなと思っていたんですけれども、きょうよくわかりました。大変勉強になります。私も実はオール電化マンションに住んでおりまして、よく聞かないかぬなと思って先ほどから聞いておりました。

 幾つかの点を本当に専門家として御指摘をいただきました。これは非常に高いレベルの議論ですので、私としては、どういうことなのかという、ちょっと今判定できる能力は私持っておりません。

 恐らく、総務省は総務省で、これを書くに当たっては、やはりそれなりの根拠を持って当然書いていると思います。決して、そんなに問題を無視して書いているとも思いません。間違いなくしっかりとした根拠に基づいて書いているんだと思っております。

 しかし、念のために、きょうこれだけの御指摘をいただいておりますから、もう一度事務方に、これでいいのか、いいんだねということは私の方から確認をしたいと思います。確認の結果、いや、これでいいんですということになるかもしれませんけれども、きょうの委員の御専門家としての御指摘はしっかりと受けとめさせていただきたいと思います。

阿部(知)分科員 何度も申しますが、私が懸念いたしますのは、この電磁界問題は二十一世紀の公害だという指摘もあるくらいなもので、我が国が、とりわけ住民との対応とかのそうした防衛的な反応に出ることによって、本来なすべき予防なり対策を怠ることがないようにという願いであります。

 ちなみに、経済産業省の方のパンフレットの五ページには、「疫学研究の結果はどうですか?」ということを、これは現在わかったまでのことをありのままに書いてあります。

 私は、今や住民は賢いんだと思います。やたら一つの結論を押しつけるのではなく、ありのままに伝える。そして、これができたのが平成十三年でございますから、今やそこからさらに四年たち、事態はさらにさらに予防原則にのっとる向きに国際的にはなっていますので、くれぐれも総務省としておくれをとることのなきようにお願いいたします。

 もう一点、私はきょう、いわゆる郵政民営化問題でお伺いをしたいと思いますが、この間、四千七百の集配局が、約千局、合理化ないし再編されるようなことを、どなたも何回か御質問であります。私は、この郵政民営化問題の中で取り上げさせていただきましたことの中で、とりわけ現場で働く職員への負担がどうあろうかという観点からきょうはお伺いをしたいです。

 ちょうど郵政公社になりましてから、それ以前と違いまして、ゆうメイトという非正規職員が約十六万人、八時間換算すると十一万千三百七十人おられると言われます。今回、公社が民営化され、おのおのの仕事が分割されるという中ですが、この非正規と言われる方たちの雇用は果たしてどうなるのか。

 そして、もう一点。済みません、時間がないので駆け足で。

 今度、集配に伴う再編が行われた場合に、当然距離が遠くなり、そして、今、三事業をやっている方がおのおの任務分担していけば、果たして人数的に、分けられた中で正規の職員でやれるのかとなると、また非正規の方をふやさざるを得ないのではないか。実は、集配業務は労働災害が一番多い分野です。事故も多うございます。そこでの労働条件の問題とかけてあわせて懸念がございますので、一点目と二点目、あわせてお願いいたします。

佐々木参考人 今先生御指摘のゆうメイトに関しましては、承継計画によりまして承継会社の職員となるものではございません。新会社が改めて雇用契約を締結して採用することとなっております。

 法律の仕組みといたしましては、郵政民営化法では、公社解散の際に現に公社の職員である者は承継会社のいずれかの職員となるという規定になっておりまして、これは常勤、非常勤をいずれも含み得るということなんですが、従来から、私ども、他の国家公務員の非常勤と同様に、任期一日で、それから予定雇用期間を定めて採用しておりまして、予定雇用期間の満了により当然に退職という扱い、そういう運用にしております。私ども、会計年度を半期に区切りまして、勤務実績を評価した上で給与とか処遇を決定する関係上、九月末とそれから三月末に当然退職をしていただくという扱いにしておりますので、そういうことから、冒頭申し上げましたように、当然にして承継会社の職員となるものではなくて、新会社が改めて雇用契約を締結するということになるわけであります。

 ただ、新しい会社というのは、民営化の前日まで公社が行っていた業務を承継するものでございまして、今先生も御指摘ありましたけれども、私ども、業務運行の上でゆうメイトの方々の労働というのは非常に重要だと考えておりまして、このゆうメイトの方々のサポートが必要不可欠だと思っておりますので、ゆうメイトの皆様が安心して働き続けられるように私どもとしても最善の努力を尽くしていきたいというのが、最初の質問に対するお答えでございます。

 それから二点目、さらにふえていくことについての問題ということでありますが、私どもは、常勤職員と非常勤職員を適宜組み合わせて仕事をしていくというのは今の社会でもかなり一般化してきている雇用状態だというふうに考えておりまして、従来からも、常勤職員の指導のもとで、例えば郵便物の区分作業とか、あるいは今先生の御指摘のあったような配達などにも非常勤の職員の方を活用しているところでありまして、今後とも、質のよいサービスを提供して、かつ効率的に運営をしていくというために、非常勤の職員は欠かせない貴重な戦力というふうに認識をしているところでございます。

 以上でございます。

阿部(知)分科員 この国会で問題になりました格差の中においても、働き方の格差というのは非常に重要と思います。大臣にあっては、今後もその認識を持って、やはり労働環境をよりよいものにしてくださるようにお願い申し上げます。

 終わらせていただきます。

田中主査 これにて阿部知子君の質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして総務省所管についての質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後五時三十五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.