衆議院

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第2号 平成25年4月15日(月曜日)

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平成二十五年四月十五日(月曜日)

    午前九時開議

 出席分科員

   主査 奥野 信亮君

      秋元  司君    井上 貴博君

      うえの賢一郎君    黄川田仁志君

      中根 一幸君    宮澤 博行君

      後藤  斎君    原口 一博君

      若井 康彦君    井坂 信彦君

      佐藤 正夫君

   兼務 小田原 潔君 兼務 小林 史明君

   兼務 中川 俊直君 兼務 長坂 康正君

   兼務 武藤 貴也君 兼務 小熊 慎司君

   兼務 馬場 伸幸君 兼務 丸山 穂高君

   兼務 輿水 恵一君 兼務 遠山 清彦君

   兼務 濱村  進君 兼務 畠中 光成君

   兼務 佐々木憲昭君

    …………………………………

   総務大臣         新藤 義孝君

   厚生労働副大臣      桝屋 敬悟君

   総務大臣政務官      橘 慶一郎君

   内閣府大臣政務官     北村 茂男君

   防衛大臣政務官      左藤  章君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  向井 治紀君

   政府参考人

   (国家公務員制度改革推進本部事務局審議官)    岡田 則之君

   政府参考人

   (人事院事務総局総括審議官)           永長 正士君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 佐々木克樹君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   井上 源三君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        野口 文雄君

   政府参考人

   (復興庁統括官)     岡本 全勝君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           久保田誠之君

   政府参考人

   (総務省大臣官房地域力創造審議官)        関  博之君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 諸橋 省明君

   政府参考人

   (総務省人事・恩給局長) 笹島 誉行君

   政府参考人

   (総務省行政管理局長)  戸塚  誠君

   政府参考人

   (総務省自治行政局長)  望月 達史君

   政府参考人

   (総務省自治行政局公務員部長)          三輪 和夫君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           米田耕一郎君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  佐藤 文俊君

   政府参考人

   (総務省自治税務局長)  株丹 達也君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局長)            吉崎 正弘君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     安藤 友裕君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電波部長)         武井 俊幸君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   阪本 泰男君

   政府参考人

   (総務省政策統括官)   平山  眞君

   政府参考人

   (消防庁次長)      市橋 保彦君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    伊原 純一君

   政府参考人

   (国税庁徴収部長)    岡南 啓司君

   政府参考人

   (文化庁文化財部長)   石野 利和君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  矢島 鉄也君

   政府参考人

   (国土交通省水管理・国土保全局下水道部長)    岡久 宏史君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房長)   鎌田 昭良君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 豊田  硬君

   参考人

   (日本郵政株式会社専務執行役)          谷垣 邦夫君

   参考人

   (日本郵政株式会社常務執行役)          南方 敏尚君

   参考人

   (日本郵政株式会社常務執行役)          田中  進君

   参考人

   (日本郵政株式会社常務執行役)          諌山  親君

   総務委員会専門員     阿部  進君

   予算委員会専門員     石崎 貴俊君

    ―――――――――――――

分科員の異動

四月十五日

 辞任         補欠選任

  秋元  司君     井上 貴博君

  原口 一博君     黄川田 徹君

  佐藤 正夫君     小池 政就君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     黄川田仁志君

  黄川田 徹君     後藤  斎君

  小池 政就君     大熊 利昭君

同日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     宮澤 博行君

  後藤  斎君     武正 公一君

  大熊 利昭君     柏倉 祐司君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     中根 一幸君

  武正 公一君     山井 和則君

  柏倉 祐司君     佐藤 正夫君

同日

 辞任         補欠選任

  中根 一幸君     秋元  司君

  山井 和則君     若井 康彦君

  佐藤 正夫君     中島 克仁君

同日

 辞任         補欠選任

  若井 康彦君     原口 一博君

  中島 克仁君     青柳陽一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  青柳陽一郎君     井坂 信彦君

同日

 辞任         補欠選任

  井坂 信彦君     佐藤 正夫君

同日

 第一分科員小田原潔君、中川俊直君、長坂康正君、武藤貴也君、佐々木憲昭君、第三分科員小林史明君、第四分科員馬場伸幸君、遠山清彦君、濱村進君、第六分科員小熊慎司君、輿水恵一君、第七分科員丸山穂高君及び第八分科員畠中光成君が本分科兼務となった。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成二十五年度一般会計予算

 平成二十五年度特別会計予算

 平成二十五年度政府関係機関予算

 (総務省所管)


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     ――――◇―――――

奥野主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。

 平成二十五年度一般会計予算、平成二十五年度特別会計予算及び平成二十五年度政府関係機関予算中総務省所管について、前回に引き続き質疑を行います。

 この際、分科員各位に申し上げます。

 質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 なお、政府当局におかれましては、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上貴博君。

井上(貴)分科員 皆さん、おはようございます。二日目のトップバッターを務めさせていただきます、自民党の井上貴博でございます。

 私は、世襲議員でございます。福岡県議会議員を、父、祖父、そして私と三代続けてまいりました。そして、父も祖父も日本消防協会の筆頭副会長を経験し、日本の三大祇園祭りであります博多祇園山笠の会長を親子二代務めさせていただきました。そして、父も、自由民主党の結党以来、私もそうですけれども、三代続けさせていただき、地方の自由民主党を支えてまいりました。

 戦後の消防団の形を祖父はつくってきたと言ってもおかしくありません。当時、まだまだお金もない、そして、焼け野原の状況下の中から、消防団というものを立ち上げるために、くしくも、同期であります笹川君の御祖父を消防協会の会長にし、そして、あのときに戸締まり用心、火の用心のコマーシャルまでつくって、日本に消防団という形のものを確立し、財源を確保し、そして消防団を全国につくってまいりました。

 そして父も、日本消防協会の筆頭副会長のときに、小泉政権のときに消防審議委員を務めさせていただきまして、女性消防団員を提案させていただきました。今では全国二千二百四十三の消防団がありますけれども、その中で千百五十五の消防団で女性消防団員を輩出、そして設置していただいております。

 国家の形や、そして国家を憂う気持ちを持って、今、新藤総務大臣がやられていることに心から敬意を払いたいと思いますし、今の国家を憂う気持ちは人一倍なものではないかというふうに思っています。

 私も、ローカルではありますけれども、その地域を守るために、親子三代、ローカルに徹するということ、そして、困難に立ち向かうことを喜びと思えということがうちの家訓でもございました。

 消防団員は、一時百三十万人を超える方々がいらっしゃいました。ですけれども、今人員はどんどん減って、いろいろな環境状況があります。そういう中から、八十七万人程度の人員に減ってきております。

 ですけれども、消防団を除いて行政だけでやったときに、どれだけのコストがかかって、どれだけの労力がかかるか。そして、そこに郷土愛というものを持った人間がいなければ、地域を守ることは本当にできないと私は肌で感じています。

 そういう中で、まず一番最初に、消防団というのは、この行政システムの中で、また今の社会の中で本当に必要なのかということを新藤大臣に率直な御意見をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

新藤国務大臣 まず、今、井上家において、そういった地域への奉仕活動、これを家訓とし、また家の目標としてお務めになられてきた。また、今いろいろなこれまでの取り組みを御紹介いただきました。まことに意義ある活動をされている、このことに敬意を表したいというふうに思います。

 また、お父様、おじい様のことをそのように誇りに思う、そして自分たちの祖先がやってきたことをしっかりと受け継いでいく、これが人間の務めだ、このように思いますから、その意味において、井上委員がすばらしい活動をされていることをこれまた大いに評価したいと思いますし、何よりも、御先祖様が喜んでいるのではないか、このように思うわけであります。

 その上で、今お話しされたことは、まさに自民党の立党の精神につながることであり、それは、自民党を超えて、日本人の心のアイデンティティーにつながることではないかと思います。みずからの大切なものを守る、そのためには、周りにいる人たちのために働く、誰かのために働くことが結局自分のところに戻ってくる。地域を守り、地域を元気にさせることが国をよくすることである。それは世界にもつながっていく。私たちは、そういう中で、みずからの役割をそれぞれ果たしていけばいいんだ。私も、それは政治の原点に置いているわけであります。

 その意味において、今の消防団については、私も、これは大きな評価をしておりますし、また、何よりも、そういった先人の御努力が歴史となって、伝統となって今に引き継がれている、このように思うわけであります。

 そして、何よりも消防団、これは、消防自体が徳川吉宗のころですよね。そして、大岡越前守によって町火消しというのができて、それが明治になって制度化されて、さらに常備消防と消防団に分かれていったこと。こういう歴史の中で、我々はそれを大きな受け継ぐべき誇りだ、このように思っているわけであります。

 そして、何よりも災害や火事の現場で献身的な活動をしております。そのための訓練も、自分の仕事を持ちながら消防団はその活動を行うわけでありますから、そういったとうとい活動を行っているわけでありますし、この間の東日本大震災での活躍と、また、その中で公務中に多くの方が命を落としたこと、こういったことも含めて、我々はしっかりと守っていかなくてはいけない、このように思っているわけであります。

 特にことしは、消防制度、明治二十七年から消防が始まったわけでありますが、百二十年を迎えるということで、秋にはそういった節目の大会も予定をしております。

 消防を所管する総務省としても、しっかりと受け継いで、そしてまた次の人たちに渡せるように取り組んでまいりたい、このように考えています。

井上(貴)分科員 ありがとうございます。

 消防ができて百二十年、そして消防協会六十五周年という節目の年であります。十年前のちょうど五十五周年のときに、私の父が筆頭副会長をさせていただいて東京ドームで開会の辞を述べさせていただきました。

 この消防、先ほども少し触れましたけれども、本当に人員がどんどん減ってまいりました。さまざまな要因があると思いますが、今の状況、それから消防団の数、その推移をまず教えていただければというふうに思います。

市橋政府参考人 お答えいたします。

 消防団員数でございますけれども、かつては二百万人を超えておりましたが、平成二年には百万人を割り込みまして、平成二十四年四月現在で約八十七万人と減少が続いているところでございます。

 これらの背景には、昭和五十年ごろまでは常備消防化が進んだということが背景にございましたけれども、近年は、産業、就業構造が変化した、サラリーマン化が進んだ、あるいは過疎化、少子化といった社会環境の変化、さらにはコミュニティー意識の希薄化などが背景にあるのではないかと考えております。

井上(貴)分科員 私も全く同意見だというふうに思います。

 消防団の数は減っておりますけれども、私の地域では何人たりとも、一人も減っておりません。それは、福岡市博多区という大都市の都心部でありながら、消防団員になる予備軍がまだたくさんいて、そして、今度一つの分団で定年制まで設けなければならないような状況になっています。

 私はそれは一つの事例だというふうに思っていますし、なぜそういうことが起こるのかというのがあります。それは、自分の地域を愛し、郷土を愛し、そして、自分たちが自分の町は守らなければいけないというのが、心からそう思っている人たちの集団がそこにいるからだというふうに思っています。

 その一つが博多祇園山笠であります。

 博多祇園山笠は、国の重要無形民俗文化財に指定をしていただきました。昭和四十八年の出来事でありました。私の父も祖父も、国の重要無形文化財である博多祇園山笠の会長を務めさせていただきましたけれども、そのために、自分を律して、そして、人からお金ももらうことなく、サポートしていただくこともなく、県議会議員としてサポートしてまいりました。

 祖父も父も私も警察委員長経験者であります。そして、それは、国の重要無形民俗文化財を守り、暴力団を排除し、地域の方々が本当に心から出られるお祭りにしていくために、相当な、防弾チョッキを着てまでやったこともございました。父のときには、入れ墨を入れた人は出てはいけない、明確に言いました。そして、私のときに、警察委員長のときに暴力団排除条例を全国でつくらせていただきました。これは大変なことでありましたけれども、命をかけて県民を守っていくことというのがどうしても不可欠な状況になっておりました。北部九州暴力団抗争は大変な状況でありましたので、その面では命をかけた行動だったと自分でも今でも思います。

 そういう中で、国の重要無形民俗文化財であります山笠、福岡は平和な地域ではありますけれども、今、山笠に出る人たちが一万人いますが、全員名簿を提出し、そして県警にスクリーニングをかけて山笠に参加しております。一人一人が自分たちの地域を守り、そして地域を愛する気持ちというものを植えつけてまいりました。山笠に出ない人間は消防をさせない、消防をするためには山笠に出ろ、そういうような地域であります。

 そういった生きがいややりがいを持った地域をつくることが、二百万人を超えていた消防団員が今八十数万人まで下がってきているということを防げる大きな要因になるのではないかというふうに思っています。

 そのためには、消防職員のプライドや生きがい、やりがい、そこについの住みかがあるという状況をつくらなければいけないというふうに思っています。

 新藤大臣が野党のときに、東日本大震災で亡くなられた二百五十三名の消防団員の方々に対してのサポートをしていただきました。私は、一消防団員として心から敬意を払いますし、本当に心から感謝しております。東日本大震災は人ごとではありませんでした。私が、地方、ローカルに徹するということを私どもの家の家訓でもあったのにもかかわらず国会に出てきたのも、このことが大きな要因になったことも事実であります。

 私は、国会議員にならせていただいて、本当にすばらしい先輩たちにお会いすることができました。そして、国家を憂い、国家のために自分の身を投じる先輩たちに本当に崇高の念を抱いています。

 そういう中で、私は、その足場である地元、地域というものに目を向けていただきたいと思っています。

 伝統文化と言われているものがございます。それは、先ほどの博多祇園山笠というのは国の重要無形民俗文化財というふうに指定をされておりますけれども、消防団のまといや、はしご乗り、木やりは国の無形文化財には指定されておりません。私は、消防団の活動の中で、そういった自分たちが誇りに思うようなものを、伝統を継承しているものを何かの形で評価してあげられるシステムを組み入れることができないかというふうに思っています。

 その中で、消防団が行っている日本古来の伝統技術の必要性について、総務省、文科省の方々から回答をいただきたいと思います。

石野政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員より御指摘がございましたように、現在、我が国の各地の消防団には、木やり歌、まとい持ち及びはしご乗りといった伝統的なわざが継承され、出初め行事等で披露されていることについては文化庁としても承知をしております。

 また、木やり歌等につきましては、戦国時代以降、築城や社寺仏閣の造営に用いる木材の運搬作業中に歌われるとともに、江戸時代のとび職人を中心に組織された町火消し等によって生み出された伝統的なわざでございますことから、今後とも、各地の消防団によって次世代に継承されるべき大事な文化であるというふうに認識しているところでございます。

市橋政府参考人 消防の出初め式を初めといたしまして、地域のお祭りや行事等で披露されますはしご乗りや、木やり、まといなどの伝統技能は、消防の歴史、伝統を引き継ぐものでございまして、地域の防災、防火意識の普及啓発等に大きく寄与しているというふうに認識しているところでございます。

井上(貴)分科員 その伝統技術の中で、重要無形文化財になっているものは何かございますか。

石野政府参考人 お答え申し上げます。

 国指定ではございませんが、例えば、江戸のとび職人で構成される町火消したちが伝承してまいりました江戸のとび木やり及び江戸火消しのはしご乗りの二件につきましては、東京都の無形民俗文化財に指定されているというふうに承知しているところでございます。

井上(貴)分科員 そうなんですね。木やりは都の無形文化財に指定されております。そのことによって、歌舞伎役者さんが襲名披露をしたり、そして落語家の方々が襲名披露をされたときに、横で木やりを歌って町を練り歩かれています。それだけのステータス、そしてそれだけのものを与えてあげることが、我々一人一人が、ああ、消防団、自分たちはこの町を守っている、この町の人間なんだという自負心を持ってやれている証拠になっているんだと僕は思っています。

 その木やりや、はしご乗りが指定されたのはなぜだというふうに思いますか。

石野政府参考人 お答え申し上げます。

 東京都によりますと、江戸のとび木やりにつきましては、江戸町火消しの組頭制が確立して以来伝わる木やり歌で、郷土芸能のうち民謡に属し、芸能上特色を有するものとして指定されたということでございます。

 また、江戸火消しのはしご乗りにつきましては、江戸町火消しに始まる伝統的なわざであり、江戸、東京に根づいた文化として重要であるとして無形民俗文化財に指定されたというふうに承知しているところでございます。

井上(貴)分科員 それでは、そもそも重要無形民俗文化財と言われているものは、どういうものなんでしょうか。

石野政府参考人 お答えいたします。

 国におきましては、文化財保護法に基づきまして、各地に継承されております山車や屋台を引き回す祭り、行事等の風俗慣習及び神楽、田楽といった民俗芸能等の無形の民俗文化財のうち特に重要なものにつきまして、文化審議会におけます審議を経まして重要無形民俗文化財に指定し、その保存、継承を図っているところでございます。

 具体例では、先ほど井上議員より御指摘ございました、風俗慣習の例といたしまして博多祇園山笠行事がございますし、また、民俗芸能として八女福島の灯籠人形、こういうものが重要無形民俗文化財に国指定されているという状況でございます。

井上(貴)分科員 国の重要無形民俗文化財に指定されるためには、その地域の風土や風習、慣習、そういったものがなければならない、それが継承されていなければならないということがベースにあります。ですけれども、この消防のまといや、木やり、はしご乗りと言われているものは、今、日本全土で行っている伝統芸能になってまいりました。

 そして、今の国の重要無形民俗文化財の規定の中では、その地域が根差した風俗慣習でなければ国の重要無形民俗文化財にはなり得ません。国家を挙げて伝統を継承しているものが重要無形民俗文化財になり得ないという問題点も秘めております。そういうものが今まで余りなかったからなのかもしれません。

 ですけれども、この消防の木やりや、まとい、はしご乗りと言われているものは、国家全体、北海道から沖縄までにわたって伝統が継承されております。それを一つの日本の伝統技術、伝統文化として次の世代に継承するために、国の重要無形民俗文化財の規定を見直してでも、国家全体で伝統を継承しているものも国の重要無形民俗文化財に指定されるべきだというふうに思いますが、それについての御意見をいただきたいと思います。

石野政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員より御指摘ございましたように、国の重要無形民俗文化財の指定基準におきましては、お祭り等の風俗慣習につきましては、由来、内容等が我が国民の基盤的な生活文化の特色を示すもので典型的なものと規定しております。また、神楽や田楽などの民俗芸能につきましては、芸能の発生または成立を示すもの、あるいは地域的特色を示すものを規定しているところでございます。

 現在、消防団が行っておられます木やり歌、はしご乗り等につきましては、私どもの方の認識といたしまして、各地の消防団によって全国的に継承されており、わざの特徴に大きな差異が地域的にはないということ、あるいは、本来江戸の町火消したちによって継承されてきた技術でございますが、現在では出初め行事等のイベントとして披露されているという状況を踏まえますと、先ほど申しました指定基準に照らし合わせますと、現時点では地域的特色や生活文化の特色を示す典型例として価値づけを行うということについてはなかなか難しいのではないかというふうに認識しておりますが、文化庁といたしましては、引き続き我が国の貴重な無形民俗文化財の保存、継承について努めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

井上(貴)分科員 御回答いただいたとおりでありまして、現実問題としては難しい。今の規定では難しいんですけれども、消防団と言われている人たちがなぜプライドを持てるか、消防職員とどこが違うのか。消防職員は防災のプロであります。ですけれども、消防団は地域のプロであり、伝統文化の継承者のプロであります。ですからこそ、その地域を守るという意識を持って行動することができ、郷土愛を持つことができるんだというふうに僕は思っています。消防職員は人事異動があります。その地域に必ずしもいるとは限りません。

 ですから、消防職員の人たちが汗を流して毎日消火活動を行っていることには本当に敬意を払いたいと思います。ですけれども、そこの中で消防団員がどれだけの地域の人たちを知って、そして郷土というものを守っているかということも御理解いただきたいと思います。

 新藤総務大臣は年頭から、消防団の数をふやすということを明言されました。その中で、こういう一つの形かもしれませんけれども、ぜひ消防団のあり方というものも検討いただき、そしてこういう文化という形から、一人一人の人たちに、毎日、消火活動のほかに、まといの練習や木やりの練習、はしご乗りで落ちてけがをしてというようなことを繰り返しながらも伝統を継承している人たちにスポットライトを当てていただければありがたいというふうに思っています。

 最後に、今のやりとりに対して総務大臣のコメントをいただきたいと思いますし、それと、東日本大震災で亡くなられた方々に対する退職金や手当を、満額、最高額まで出していただきました。そのことは、全国の消防団員は知りません。これだけ多くの金額を出していただいているんだということというのもあわせて総務大臣からお話をいただいて、終わりたいと思います。

新藤国務大臣 大変貴重な御意見だと思います。それから、地域のために奉仕する、そういった方々の誇りとまた士気を維持する、こういうことが重要であります。我々行政は、そういう町の中において頑張っていただいている皆さんに光を当てることは重要なことだと思っておりますから、今のいろいろな御指摘を踏まえて、我々も研究をしなければいけない、このように思っているんです。

 まずは実態把握に努めなければいけないという意味において、消防団がこうやってやっていただいているところもあります。それから、うちの地元などは、とび消防というのがありまして、とびの皆さんがそういった伝統を継承している、そういうところもあるんです。それをまた町の自治体が、それぞれに光を当てている。こういうふうないろいろなケースがあると思いますから、いずれにしても、貴重な、そして大切な仕事、それから受け継ぐべき文化、伝統、こういったものにしっかりとした形がとれるように我々も心がけてまいりたい、このように思うんです。

 それから、消防団の、災害で、殉職といいますか、そういった中で、公務中で命を落とした方、これはもう本当に心が痛みます。そして何よりも、そういう人たちの最大の思いは、自分がその現場で他人のため、自分を捨ててでも頑張らなきゃいけないときがある。そういうときが来れば、誰でも決断しなきゃいけないときがあるのかもしれません。そのときに思うのは、では、自分がいなくなった後、残された家族や、そういったことをどうするのかということが一番の心残りだと思うんです。ですから、それに対して、我々とすれば、最大限のいろいろな配慮をしなくてはいけないということだと思いますし、国だけではありません、自治体においても、消防団の、今回の災害で命を落とされたその方の子供さんへの育英の助成制度をつくった自治体もあります。

 ですから、いろいろなことを、我々も、いいことは皆さんにお伝えしていただきたいと思いますし、消防団だけではありませんね、町の中で一生懸命に汗をかく、人のために汗をかく、そして、昔の言葉で言えば、村のために何とかやらなきゃしようがないじゃないか、こういう人たちがいるわけですから、そういう行為がとうといことで、すごいことなんだというのを、子供たちや若い人たちにきちんと伝えることが必要だと思います。それはどうやって伝えるかといえば、率直に、地域や大人たちが評価することですよね。すごいな、この人たちはと。そういうことを聞いている子供たちは、そのことが自分の心の中に根づいていくのではないかと思います。

 ことしはちょうど百二十年の節目を迎えるときでもありますので、何としてもふやそうじゃないか、消防団大増員キャンペーンをやろうじゃないかと。総務省としては、坂本副大臣を担当といたしまして、いろいろなことを考えてほしいということで、私、年の初めにお願いをいたしました。

 いろいろな工夫をしながら、少しでも消防団員がふえていく、また、それには、意義を感じてもらう人をふやしていく、このことが重要ではないかなと、取り組んでまいりたいと思います。

井上(貴)分科員 どうもありがとうございました。

奥野主査 これにて井上貴博君の質疑は終了いたしました。

 次に、長坂康正君。

長坂分科員 おはようございます。長坂康正でございます。

 私も愛知県議会の議員を六期、二十年近く務めさせていただいて、地方の声を国政に伝えたい、そういう思いで今回の選挙に臨ませていただきました。

 私は、国会議員の秘書として最初は国から地方を眺め、そして県会議員として地方から国を、そして今、衆議院に当選をさせていただいて、また国から地方、そういう思いで立たせていただいておりますけれども、そんな中で自民党は、何しろ、我が国の歴史や文化に誇りを持ち、子供たちの未来にも責任を持つ、本当に国民政党としてきょうまでも頑張ってきたし、これからもしっかりと責任を負っていかなければいけない、そんな中で地方の悩みというものを総務大臣にお尋ねしていきたい、そんな思いできょうは立たせていただいております。

 きょうまでも、通常国会に入りましてから、総務委員会そして倫理選挙特別委員会の委員として審議に参加をさせていただいて、その都度、新藤大臣の見識の高さといいますか、そしてまた、どなたに対しても本当に誠実にしっかり丁寧に答弁をされる姿に敬意を表しております。

 ただ、きょう私が通告させていただいた質問の前に、昨日、大変短い報道でありましたけれども、私自身大変感銘を受けたといいますか、熱い思いを受けた報道がございました。それは、安倍総理が、大臣も御一緒であったと思いますけれども、硫黄島へ、遺骨収集の現場の視察といいますか、慰霊にも行かれた、そういった短い報道でございました。

 私も、かねてから硫黄島の課題、そして、平成十九年ですか、県議団の団長を務めておりましたときに、当時、ジャーナリストの青山さんの講演を受けまして、硫黄島の遺骨収集の課題がまだまだ大変大きな課題として残っているという問題意識を持っておりましただけに、また、新藤大臣は遺族としても大変御縁の深い、そういった思いがおありだったと思います。

 きょうは新聞も朝刊がございませんでしたし、本当に短い報道でございましたので、私は本当に自民党政権として当然の姿だと思いますけれども、何かお触れいただけること、御披瀝いただくことがありましたらお願いしたいと思って、最初に伺いたいと思います。

新藤国務大臣 まず、私の活動にエールを送っていただいてありがたい、このように思います。

 また、委員も長い地方議会での経験がございます。政治の原点をよく御承知の方だと思いますから、ぜひすばらしい活動を国会で展開されるように期待をさせていただきたいと思います。

 そして、御質問いただきました硫黄島につきましては、昨日安倍総理大臣が訪問をいただきました。そして、総務大臣である私、それから、政府の方からは丸川厚生労働政務官が参加をされました。また、山口公明党代表にも御同行いただき、さらには自民党の有志議員が一緒にお邪魔をさせていただいたわけであります。

 硫黄島の遺骨収集の問題、これは東京都であります、東京都小笠原村でありながら、いまだに遺骨の収集が五割に満たないということであります。二万一千九百人の方が亡くなって、一万人余りの方の御遺骨収集が行われましたが、いまだに一万一千を超える方々がふるさとに帰れずに、また、ごうの中でとどまり続けているということでございます。

 そして、私どももこれを、最初は、遺骨のある、戦友たちの記憶に基づいて収集作業を行いました。その次は、今度は、ブロックに分けて集中的な収集作業をやってきたわけでありますが、それでもいまだに五三%の方がふるさとに帰れずにいる、こういう状態。ですから、まずその状況を目の前で総理大臣に見ていただくということが極めて大きな意義があり、英霊の方々はとても喜んでいただいたのではないかというふうに思います。

 そして、最大の懸案は、滑走路の下の遺骨収集作業が行われていない。昭和二十年の戦闘中に日本の飛行場をアメリカが占領し、それを、戦闘が継続中でもありながら飛行場を拡張しました。以来、小笠原返還がなされても、一日も休まず自衛隊が運用しておりますので、滑走路の下の遺骨収集が行われていないわけであります。これをやるということが関係者の悲願であります。その実情を総理にじかに現場で説明をさせていただいたということであります。

 また、これについては総理も大変な御理解をいただいて、我々は、とにかく、六十八年たちましたけれども、全員の方がふるさとにお帰りいただくまでこの遺骨収集はやめてはならないし、また硫黄島での戦いは終わっていないんだ、こういう思いで取り組ませていただいているというところでございます。

長坂分科員 ありがとうございます。

 本当に大切なことだと思いますし、今おっしゃったように山口代表も同行された、大変意義があると感謝を申し上げる次第であります。

 ただ、私、残念だなと思いましたのは、その報道、きのう本当に一分か二分の報道でございました。朝五時に起きまして、NHKのニュースを五時に見ましたし、六時に見ましたし、六時半に見ました、七時に見ました。先般私の同僚議員がNHKの報道に対する質疑をこの分科会でもされておりましたけれども、そうかなと思いましたが、私、きょう実体験として、民放では朝、日テレとフジテレビが、私があちこち見る限り報道しておりましたけれども、NHKだけは一切触れておりません。どうしてかなと。やはりこういったことはしっかりと検証していかなきゃいけないんじゃないかなと提起をさせていただきます。

 通告の本題に触れさせていただきます。

 先ほど申しましたように、私は、県議会、自民党の県議団として活動してまいりました。そして、ときには、国の、親である自民党政府に対する、いや、これはどうかなということもいろいろございましたけれども、そんな中で、私は前回の総選挙で大敗を喫すに至るその前の平成十九年に県議団長を務めておりましたが、そのときに、これでは、自民党も制度疲労がここまで来たかな、上から目線かな、役人目線じゃないかなと思った課題がございます。それが、今もまだ続いている法人事業税の一部国税化の課題でございます。

 平成二十年の税制改正において、都市と地方の財政力格差を是正するという大義名分で、東京や、当時非常に景気がよかった愛知などの都市部から税収を取り上げて地方に再配分をする、それは当面の暫定措置という説明でございましたけれども、法人事業税の一部が国税化され、地方法人特別税及び地方法人譲与税が創設された。私は大変衝撃がありました。

 そして、当時は、東京は一兆円に上るような基金があったという大変うらやましい状況もございましたけれども、そんなことを背景に、地域間の税収の差が広がったという理由で、財政力の格差を是正する、税源の偏在を是正し、その格差の縮小を目指すことが課題となって講じられたということであります。

 偏在是正とはいえ、この措置は、地方税の一部を国税として徴収するという、地方税の充実を図るという地方分権の基本的な考え方にも逆行するものであると思っております。大臣、いかがでございましょうか。

新藤国務大臣 できるだけ短くしますが、まず硫黄島の問題でございますけれども、報道がされるかされないかは報道側の自由でありますので。しかし、我々とすれば、官邸のホームページにいろいろなこれが出ます。それから、私どもも動画を撮っておりますから、そういった動画をきちんとネットで流そう、このように思っております。

 それから、その後で小笠原の父島に参りました。日本の総理大臣そして総務大臣が小笠原の父島に参りましたのは初めてのことなんでございます。国土交通大臣がお邪魔したことはありますが、今まで機会がなかったことであります。大変な歓迎をいただきましたが、まずは地域を元気にしよう。

 それから、あの小笠原の離島、これは国境離島でもあります。この小笠原、もちろん南鳥島、沖ノ鳥島も含まれるわけですが、それによって我が国の排他的経済水域の三割をそこで維持していただくわけであります。ですから、離島の振興、また国境離島、こういったものも含めてここに活性化を御支援しなくちゃいけない、こういう思いでやっているわけでありまして、その意義というのは我々もしっかり伝えていかなくてはいけない、こういうことだと思います。

 それから、今のお尋ねでございますが、委員の問題意識を受けとめなければいけないと思います。

 しかし、国税化するというのは手続上の問題でありまして、全ての財源は地方に、地方財源であります。全ての税収は地方へ、税源偏在の是正の措置として行うわけでありまして、精神としては、地方の財源、税源の偏在を是正する、こういう機能のために便宜的に、しかも緊急的に行った。それは、今後の抜本改革の中で、今後の消費税のことも含める税制全体の体系を整える中で整理していきたい、このように考えているわけであります。

長坂分科員 硫黄島の課題、小笠原の課題は本当にしっかりとやっていただきたいと思います。全面賛成でございます。

 今の偏在是正のこと、結局は地方に配るんだというお話でございますけれども、そもそも法人事業税は、法人が受ける行政サービスの対価として法人に負担を求めるものでありますし、各都道府県内にある法人に対して、その自治体が提供する行政サービスとの受益関係に着目して課税する地方税でございます。

 地方法人特別税や地方法人特別譲与税が実質的には地方税であるというのであれば、法人事業税の一部を各都道府県から一旦集めて人口などの基準で配分し直すということは、受益と負担という税の原則に反するものになると私は思うのであります。

 この話が話題となった平成十九年、私ども愛知県議会はもちろん、これは大変なことだといって党本部にも乗り込んで、当時は谷垣先生が政調会長でございました。いっときは八百億円じゃないかといううわさもございましたけれども、御努力をしていただいて四百億ぐらいにおさまったということでありますが、当時、東京、神奈川、愛知、大阪の四知事名で緊急アピールも出されたり、地方分権の基本的な考え方にそぐわない、強く反対するという全国知事会の声明も発表されました。

 また、地方分権改革推進委員会の第四次勧告で、みずからの歳出はみずからの財源で賄い、受益と負担の明確化の観点からというような、そういう勧告も出されたわけでございますけれども、これについてはどんな御認識でいらっしゃいますでしょうか。

新藤国務大臣 その趣旨は尊重されなければならないし、尊重されていると思います。先ほども申しましたが、あくまで緊急対応的な税源偏在の是正措置ということであります。

 そして、それは、今後の見直しの中で、二十六年の四月までに方向性を出すということになっているわけでありまして、消費税の問題を含める税の一体改革の中でこれは取り組まなければいけないことでありますし、そういったことが与党の税調においても行われる、このように思っております。

 この地方の貴重な財源を、固有の財源であります、これは地方に使っていただく、しかし一方で地方の税源を安定的に、偏在を是正する、こういう両方の面から緊急対応させていただいたわけでありますが、これは今の御指摘も踏まえて総合的な検討をしなければいけない。いつまでもこのままでいいとは私も思っておりませんので、しっかりとした検討が与党においてもなされていくと思いますし、我々もしっかりとこの辺を対応していきたい、このように考えます。

長坂分科員 総務大臣も地方のこともよくおわかりの方でございますけれども、愛知県から出てきたということで、愛知県の例を出させていただいてもう一度御理解を深めていただきたいと思うんです。

 愛知県の税収は平成十九年が一番ピークでございました。一兆四千百三十五億円。トヨタも非常に景気がよくて、法人二税が上がった。でも、平成二十年にリーマン・ショックがございましたので、その後はもうどんどん下降の一途でありまして、平成二十一年以降は約五千億円下回る水準で推移をしているというのが実態なんですね。例えば平成二十四年には、平成十九年の水準の三分の一を下回るというような現実がございます。

 例を挙げますと、二十三年度でありますと、地方法人特別税として徴収された額が一千五十五億円、そして再配分ということでいただいた譲与税が九百三十三億円でありますから、百二十一億円の減収であります。

 この減収を含めいろいろな赤字を補填するために、国は、臨時財政対策債、あと減収補填債など調整債の発行を認めていただいたわけでありますけれども、特例的な県債の発行が毎年拡大をいたしまして、平成二十五年度には二兆五千億に上る規模になっております。

 愛知県ですと、大体毎年五万人から六万人、六十五歳以上の方がふえてまいりますので、扶助費もふえる、そして公債費といった義務的経費の増加が続いておりますから、地方債の発行を余儀なくさせて都道府県間の税源の偏在調整を行うということはいかがなものか、どうかなと思いますが、どんなふうにお考えでしょうか。

株丹政府参考人 ただいま愛知県の御事情、税収が大きく低下をしておる、また他方で義務的経費の増嵩、こういう大変厳しい財政状況にあるという御指摘、そのとおりだと思います。

 この状況は、愛知県だけではなくて、地方財政全般に通ずることでございます。平成二十五年度で計算が出てございますけれども、地方全体の財源不足は十三・三兆円に上ります。ここ数年、十三兆円を超える額の財源不足が続いてございます。したがいまして、交付税等の特例での増額だけでは賄い切れなくて、臨時財政対策債等の発行も余儀なくされてございます。地方全体として大変大きな課題というふうに思ってございます。

 他方で、ただいま大臣が答弁申し上げましたように、地方法人特別税・譲与税は地域間の税源偏在を是正するために設けられたということがございます。現状、一部に相当規模の財源超過額を有する不交付団体も存在いたします。それから、今後のことを考えましたときに、経済状況の好転、さらには地方消費税率の引き上げに伴いまして税収増ということも考えられるわけでございまして、そういたしますと、財源超過額がさらに拡大をするということも見込まれるわけでございます。

 そういたしましたときには、税源偏在の是正それ自体は引き続き検討すべき課題ではないかというふうに考えてございます。

長坂分科員 その後は自民党から民主党政権になったわけでありますけれども、民主党政権の中でも、この課題については繰り返し、暫定措置であるという説明を受けてまいりました。しかし、これまでなかなか見直しが検討されてこなかったという事実もございます。

 平成二十四年八月の社会保障・税一体改革関連法、ここでは今副大臣をやっていらっしゃる坂本先生も質問をされておりますけれども、ようやく九月に総務省の地方財政審議会に検討会が設置され、議論が開始されたというふうに伺っております。

 この検討会、地方法人課税のあり方等に関する検討会では、地方法人特別税の抜本的見直しに向けて検討を行うとともに、地域間の税源偏在の是正に向け、地方法人課税のあり方について幅広く検討を進めるとされておりますけれども、これまでどのような議論が出されたのかお尋ねをしたいと存じますし、また、大臣として地方税の偏在是正に対し具体的な方策をどのようにお考えか、お示しいただきたいと存じます。

株丹政府参考人 まず、地方法人課税のあり方等に関する検討会でございます。今委員御指摘されましたように、昨年の九月に地方財政審議会に設置をされてございます。これまで六回御議論をされておるところでございます。

 検討会では、地方法人特別税・譲与税の見直し、税源偏在の是正策、それから財政調整制度のあり方、外形標準課税等の地方法人の課税のあり方などの論点について、委員の間の御議論もございますし、それから、有識者の方々から専門的な御議論も頂戴をしております。また、これまでに経済団体あるいは労働団体からの御意見なども頂戴をしておりまして、さまざまな観点から議論を行っているところでございます。

新藤国務大臣 実務的な作業がどのように行われているかは、今の局長の話のとおりなんです。この議論を尊重しつつ、また、これから全体の見直しも行われますから、その作業が必要です。

 しかし、根本の原因は、結局、地域経済が偏在している、それによって地方の財政力にばらつきが出て、したがって税の格差が出ている、こういうことが基本的な問題にあります。

 ですから、私は、今形だけ整えて、実態に合わせて入れかえをしたところで、基本の問題は解決にならないではないか。したがって、これからやるべきは、地方分権、それから地域活性化、そして国の全体の統治をどのようにすればそれぞれの地域が自立して自治が行われていくか、こういうものも追求しながら、その中で望ましい制度というものをつくっていかなくてはいけないのではないか。

 まずは目の前のことで、その検討会などいろいろなそういった議論は尊重し、それに速やかに対処していく必要がありますが、あわせて、このような税源の偏在がないような形の国土、そしてまた国家の運営というものをなされるような努力をしていくべきだ、それが我々の務めではないか、このように考えています。

長坂分科員 地方税の偏在は、人口一人当たりの税収という基準で評価されておりますけれども、今のお話じゃありませんが、税収の少ない団体には地方交付税が配分される。また、税収が地域に偏っているとしても、例えば大都市を抱え人口が多い団体もあれば、また面積が広大な団体もあるわけであります。それぞれの地域団体における財政需要もおのずと異なると考えるわけであります。

 加えて、地方交付税制度においても、地方税の二五%相当を留保財源とするというような一定の偏在は前提とされているんじゃないのかなと考えております。

 本来、偏在是正は地方交付税の役割ではないのかな、地方税だけの偏在を問題にするのではなく、例えば地方交付税なども含めた地方の財源の充実強化などを行っていかないと、地域間の財政力の格差の是正にならないのではないかと考えております。

 もとより、地域間の財政力の格差については、地方税制上の措置のみでは対応できない。地方税だけでは標準的な行政サービス水準を確保することができない地方公共団体に対しては、地方交付税の財政調整機能や財源保障機能が適切に発揮されることが重要であると考えます。

 地域の格差を縮小するには、地方交付税の原資となる国税の法定率を引き上げたり、地方交付税総額を増額して充実強化を図っていくことこそが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 おっしゃるとおりだと思いますし、総務省はそれを目指しているわけであります。

 そして、法定率の引き上げにつきましては、いろいろな委員の先生方から御指摘をいただいておりまして、我々もそれが必要だ、このように思って、予算要求の時点ではそういった要求を出しております。しかし、今地方に加えて国全体が極めて厳しい財政状況の中で、現実にはなかなか具体的な要求にまでいかない、事項要求でとどまっているという現状があります。

 我々は、地方を所管する、また地方の元気を支援する役所として今のお話は引き続き粘り強く取り組んでまいりたいというふうに思いますし、それに加えて何よりも大切なのは、国全体の経済を上向かせること、経済を再生していく中でいろいろな問題が改善されていくのではないか、それを今達成しようじゃないかというのが安倍内閣と自由民主党の我々に与えられたミッションだ、このように思っています。

長坂分科員 時間が限られておりますので最後にさせていただきますけれども、本当にそのとおりだと思いますから、今の景気を回復して、またそれが地方にも行き及ぶように頑張っていただきたいと思います。

 そういう中で、今首長を中心とした、道州制とかいろいろな話が出る。私は、それだけが正しいのかなというのはいろいろ思いがございますが、やはり国と地方の信頼関係が損なわれるというのは大変なことなんじゃないかなと思うんです。そういう中で、国による地方に関する制度の一方的な変更が行われますと、国と地方の信頼関係が壊れてしまう。それはやはり自民党政府には厳に慎んでいただきたいという思いがございます。

 政権公約でも、道州制の基本法を導入するとかいろいろなことがございました。地域の再生、国から地方への権限や財源の移譲というお話も出ているわけでございます。その中には、やはりしっかりと信頼関係のもとでやっていっていただく。

 新藤大臣、また坂本副大臣、北村政務官、橘政務官も、地方自治に精通した方ばかりが今そろっていらっしゃるわけであります。

 相手の財源に手をつけるなどという振る舞いは、地方自治体を地方政府と見ていないと言われても仕方がないことだと私は考えております。真っ当な道州制の議論、地方分権を進める意味で、地方法人特別税の問題については、ぜひ、地方税の独立性の堅持、国から地方への税源移譲、交付税制度の強化など、地方分権と地方自治を強化する立場でしっかりとした対応を一日も早く行っていただきたいということをお願い申し上げ、お言葉をいただければありがたいと思います。

新藤国務大臣 私も同じ意識を共有しています。

 また、残念なことは、一部に、国と地方が対立の概念で語られる。そのように語られるのにはそれなりの理由や経緯があったことも承知をします。しかし、少なくとも私や自分の周りで仕事をしている人間で、国と地方を上下だったり対立だったりと見ている人はいないわけです。

 残念ながら、地方にとっては、自分たちのやりたいことを国が認めてくれない、こういうじくじたる思いがたくさんあると思います。ですから、そういうものの間を埋めることこそが国会議員の役割であり、町の現状を知っている人間が国会へ出てきて、役人というのは霞が関にいるんですから、やはり基本的に国民の声を伝えるのは議員の役目であるし、また政党から政府に行っている我々政務の役割であります。

 そういったものを含めて、皆さんが堂々と、国民でない県民はいないし、県民でない国民はいないわけでありまして、それが当たり前のように、そういう立場でお互いが、よりよくするにはどうしたらいいんだ、そしてそれは地域の特性と地域の独自性が必要ですね、こういう観点で行政や政治が進んでいくように心がけてまいりたい、御指摘の点は十分に踏まえていきたいと思います。

長坂分科員 ありがとうございました。

奥野主査 これにて長坂康正君の質疑は終了いたしました。

 次に、丸山穂高君。

丸山分科員 おはようございます。日本維新の会の丸山穂高でございます。

 新藤総務大臣におかれましては、実は私、大阪の出身なんですが、上京してきた折に川口市に住んでおりまして、新藤大臣のポスターをいつも拝見させていただいておりまして、今回、質問させていただくのは感無量でございます。よろしくお願いします。

 ただ、本日も十時間にも及ぶ審議ということで、新藤大臣もかなり体力等もお疲れになると思いますので、私の質問はかなり細部のテクニカルな質問も多うございます。少し休憩いただく中で、お耳はきちんと聞いていただいて、最後に大臣の御所見を伺いたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 私、先ほど申し上げましたように、大阪十九区という関西国際空港がある地域の大阪の出身でございます。選挙区が関空を抱えているということもあって、オペレーター、航空会社さんの御意見を伺う機会がかなり多うございます。

 その中で、基本的に航空関係は国交省さんが所管している航空法で見られているんですけれども、一方で、電波法の関係で一部総務省さんがごらんになっているところ、所管されているところがございまして、本日、その点に関しまして、総務省さん関係ということで御質問させていただきたく存じます。

 まず、電波法に関しまして、航空機に無線機を搭載する際に電波法での規制がかかっているんです。その中で、現状では、電波法に基づいて、まず、無線局をつけるときに、新しくつける新設検査、変更するときに変更検査、そしてなおかつ定期検査という形で、三段階にわたって検査を実施することが義務づけられているんですが、特に、新設検査と、また機器を変更する場合に行われる変更検査についてお伺いしたいと思います。

 その二点の検査におきまして、少し詳しく調べてまいりますと、航空業者さんにとってかなり負担になっている点があるのではないかなというお声を伺いまして、調べると、かなり細かいところまで書かなければならないということでございます。

 特に、新設検査と変更検査に当たっては、そもそも航空機を製造する段階で製造国で検査をしておりまして、さらに、輸入する段階でこちらで、日本国でも検査しております。それは、無線機だけではなくあらゆるもの、航空機についているものなんです。

 さらに、無線局の検査を国交省さんでなく総務省さんに提出しなければならないんですけれども、また、そこの検査が一連の工程が幾つかございます。

 具体的に述べさせていただきますと、工事設計書を作成する、申請書を提出する、そして、ベンチテストと申しまして、電気的にきちんと飛ぶかどうかの特性の技術的な検査をするためのシートを作成して、次に、検査をする能力が航空会社にはないものでございますから、それを委託するための委託先に対して能力審査という形を、実は、少しややこしいんですが、国外、国内の委託業者さんがその能力があるかどうかのチェックをするための審査が必要で、そして先ほど申し上げたベンチテスト、電気的特性点検が必要で、さらにフライトテスト、実際に積んでみて、それを一回外して、またそれを飛行機に積んで、そのテストもしなきゃいけない、最後に報告書を提出する。かなり複雑な手続になっております。

 確かに、電波というのは大事なもので、それに何かあってはいけないということでございますけれども、一方で、ほかの国の国際標準を見ますと、要は、もう少し技術がしっかり進歩しておりまして、このように複雑な工程をしなくても、先ほど申し上げた一個目、二個目の、工事設計書と申請書の提出という形で済んでいる国がほとんどだというふうに伺っております。

 まず、一点目お伺いしたいんですけれども、こういった残りのベンチシートの作成から最後の報告書、フライトテストやベンチテストも含めて、日本だけかなり特別に、他国では課されないような検査項目や海外より手間のかかる項目があるというふうに聞いているんですが、それが事実かどうか、お伺いしたいと思います。

    〔主査退席、うえの主査代理着席〕

武井政府参考人 先生お尋ねの航空機の無線局の件でございますけれども、先生御案内のように、パイロットと管制官の間の無線電話ですとか気象レーダーですとか電波高度計とか、航空機の安全な運航を支える極めて重要な無線局という扱いでございます。

 我が国におきましては、航空機に搭載する無線局につきまして、消防の無線ですとか携帯電話などのほかの無線局との混信がないように、また継続的かつ良好に重要な無線局が運用されるように、無線局の新設をする場合、あるいは変更する場合に無線設備の検査を実施しております。ベンチデータシートの作成の手続も必要ということにしておるところでございます。

 なお、外国についてなんですが、韓国におきましては、先方の電波法が日本の電波法と同等の仕組みになっておりますものですから、航空機に搭載する無線局の管理を行っておりますが、欧米各国の状況については、国によってもかなりいろいろな制度の違いがあるものですから、現時点では詳細は十分に把握できていないということでございます。

 我が国では、ベンチテストやフライトテスト等の検査を実施していることにつきまして、航空事業者の中からは手間がかかるといったお声があることも事実ではございます。

丸山分科員 今のお答えであれば、日本の電波事情に合わせてきちんと見る必要があるということでございますけれども、ただ一方で、他国籍の航空機さんが日本に到着した場合、かなり無線を飛ばすという状況が日常茶飯事で起きていると思うんですけれども、これに関しては、現状、国内法のそうした余分な検査がないのにきちんと回っている。ただ、日本の航空機だけそういうふうになるということなんですけれども、日本国籍の航空機だけこの検査を課す必要があるというのは、なぜ日本独自の検査が必要だとお考えでしょうか。

武井政府参考人 我が国におきましては、都市部など特定の地域で無線の利用が非常に集中しておりまして、電波の利用環境が複雑であり、この電波環境を良好に維持することが必要でございます。

 このために、航空機に搭載する無線局が他の無線局への混信を引き起こすことなく良好な通信を確保できるように、新設、変更検査に当たりまして、電波法に基づく免許を必要としておるところでございます。

 この免許手続の一環といたしまして、無線局の設備が電波法の技術基準に適合していることを確認するために、無線局の免許人とかあるいは整備事業者の方々が無線装置ごとの性能を測定した結果を記入したベンチデータシートですとかフライトテストの結果を検査報告書として総務省に提出していただいているわけでございます。

 ちなみに、ほとんどの航空機が今米国製ということになっておりますけれども、米国でいえば、航空機の製造段階から、メーカーによりまして、無線機器の性能点検ということが行われておりますけれども、我が国でそのような仕組みがございません。したがいまして、無線局の新設、変更の際には、電波法に基づく検査といったものを改めて実施するという形に今の制度がなっております。

 では、全く違った検査をしているかということなんですけれども、我が国で検査しております内容は、例えば周波数の許容偏差とか空中線電力とかスプリアス発射の許容値とか、国際的な標準に合致した項目について検査をしているわけでございますが、改めて中身については確認をさせていただいているということでございます。

 具体的に、例えばアメリカで新しくつくられた航空機ないしこれまで運航された中古の航空機を欧米などから購入して、日本国内のエアラインで使用する場合に、その航空機に搭載されております無線設備については、日本の電波法の技術基準に適合しているということを改めて確認させていただいている。

 これは、冒頭申し上げましたように、航空の無線といったものが、航空機の安全な運航、ひいては人命の保護といったことに非常に重要な役割を果たしていることで、ある意味慎重を期しているということでございますけれども、ただ、その測定データなどの扱いについては、外国で既に測定されているデータであれば、それが適切な能力を有する方によって測定された、要するに、どこの誰がはかったかわからないようなデータではなくて、信頼できる人が信頼できる方法で測定されたデータということであれば、これは国内のいろいろなデータを出していただく上で、外国のデータをそのまま活用していただくということを可能とさせていただいております。

 いずれにいたしましても、今後、海外の動向もいろいろ調査した上で、国際的な整合性を踏まえながら、検査等のあり方について検討を進めていきたいと考えております。

丸山分科員 ありがとうございます。

 かなりややこしい論点ではあるんですけれども、二点あると思います。

 一点が、先ほども、海外でやられている検査も同じようにやられているのでこちらもということなんですけれども、実は、製造時に、TC、タイプサーティフィケートというのと、また輸入するときに、AWCという国交省さんがやられている検査もあるんですけれども、そこで、既に無線に関しても、ある程度、海外でもやられているものをさらに電波法の観点からやっているという二重性に関して一つ疑問があるということ。

 もう一つは、これは先ほどの繰り返しになるんですけれども、海外籍の航空機に関して課されないということで、例えば、海外籍の方が来たときに何か事故があるのかどうか、日本国籍の飛行機だから事故があるのかどうかという点に関しましては、今の総務省の担当の方の御回答では、そこの整合性に関しましては、かなり矛盾があるんじゃないかなと感じております。

 そういった意味で、先ほど少し、最後に述べていただきましたけれども、国際基準をきちんと見ていった上で、現状の制度に関しまして、かなり航空業者さんに負担がかかっている。特に今、国際情勢を見ると、航空業界というのはかなり熾烈な競争になっております。安全をきちんと確保するという点は大事なんですが、ただ、安全を重視する余り、二重、三重にも検査が必要というのはちょっとやり過ぎじゃないかなと私は思っておりますので、この点、先ほども述べていただきましたけれども、国際基準に合わせていただきますようお願い申し上げます。

 次に、二点目に関しても述べさせていただきます。

 これも同じ観点に近くはなってくるんですが、先ほどは新設検査と変更検査のお話をさせていただいたんですけれども、定期検査のお話を述べさせていただきます。

 定期検査も同じように、先ほど述べさせていただいたような形で、かなり日本独自の、申請書の提出だとか、電気的特性検査、ベンチテストのやり方、総合試験、フライトテストもそうですし、報告書を出すのも独自の制度なんですけれども、これもやはり今申し上げた理由で必要じゃないんじゃないか。つまり、定期検査によって、航空業者さん、オペレーターの方々のお話を聞いていると、かなりの負担がかかっているということでございます。検査するために予備品をわざわざ用意しなければならなくて、その予備品を用意するための調達費用、また、それをふだんは管理、維持する必要がありますので、管理する費用が発生する。

 また、このベンチテスト、先ほどから申し上げているテストも、独自にできる企業さんが少のうございます。例えば大手企業さんのような、JALさん、ANAさんとかだと可能だということですけれども、わざわざANAさんに依頼して、さらにANAさんの方でも機器の関係で検査できない項目があって、それをわざわざ海外に出さなきゃいけないものもあるというふうに伺っています。そういった費用がかなりかかってしまう。

 その費用には、もちろん人件費という形で、人をつけて、その分一緒に行かなければいけないとか、今ローコストキャリアだとかいう形でアジア各国でもかなり航空がしのぎを削っておりますけれども、そういった意味で、人件費や委託費用、管理費用といった形で、他国の航空会社さんに比べて何千万、何億というお金が負担で全然違ってくるというふうなことだそうでございます。

 その点に関しまして、航空行政を所管されているのは国交省さんですけれども、電波法関係でも多くの費用が発生しているということでございまして、行政当局はどのようにこの点をお考えなのかということに関しまして、お伺いできればと思います。

武井政府参考人 今度は定期検査の件について御質問いただきました。

 航空機に搭載する無線設備につきましては、先ほど来述べておりますように、航空機の航行の安全と円滑な運用、こういうために、すぐにきちっと良好に動作するということとともに、ほかの無線局へ混信、妨害を与えないといったために適正な性能を維持する、そういう無線局としての設備の、免許した後も安定的に性能を維持していただくということが大事なわけでございます。

 このために、現在の制度におきましては、年に一回定期検査というものを行いまして、無線設備を機体から取り外して設備の電気的な特性を計測いたしますベンチテスト、あるいは航空機を実際に飛ばしていただいて実際の運用状態での通信性能を確認するフライトテストというものを行っていただいております。

 各国におきましても、航空の無線局を良好に維持するために航空機に搭載される無線設備の検査とか点検といったものは実施されておりますが、それぞれの国の電波監理の仕組み、制度が違うものですから、主として欧米では運航者による自主管理ということがやられておりますけれども、日本あるいは韓国では行政による検査といったように実施方法が異なっているというのが現状でございます。

 この定期検査にかかる手間とかコストとかいったものの負担が大きいといったことは、国内の航空事業者の方々からも御要望いただきまして、総務省では、そうした大手の航空事業者の団体の方とか、あるいは実際の新規事業を営んでいる新しい会社の方々、それから、そのほかにも学識経験者あるいは消費者団体、さまざまな方々に御参加をいただきまして、航空機に搭載する無線局の検査の在り方に関する検討会というものを昨年八月から開催させていただきまして、この三月に報告書をまとめさせていただいたところでございます。

 この検討会におきましては、航空事業者の国際競争力の強化が必要であるという声を主に航空業界の方々からいただいていると同時に、一方で、重要な無線機、重要な無線だ、この前の787の事故だとか、いろいろありましたけれども、やはり規制緩和によって航空機の安全性に何か影響が出るんではないか、大丈夫かといった御懸念も寄せられたところでございまして、この規律を確保しながら国際競争力の強化も視野に入れた検討を行っていただいたわけでございます。

 そうした議論の結果、この三月にまとめられました報告書では、今一年ということになっておりますが、定期検査の検査周期、あるいは検査の項目とか、そうしたことにつきまして見直しを行うということが基本的な方針としてまとめられました。ただ、具体的にどのぐらい延ばせばいいのかといったような点につきましては、まだそれを裏づける科学的データが十分にないということで、今後、その具体化を進めていきたいということにしておるところでございます。

 いずれにいたしましても、こうした取り組みによりまして、航空運送事業者の方々の検査時の負担も軽減されていく方向になっているのではないのかなというふうに期待をしております。

丸山分科員 ありがとうございます。

 私もその検討会の報告書案を読ませていただきますと、検討事項に、実は規制改革会議の方で検討議題に上がっていまして、この案件はたしか六年か何かを検討期間に入れてみたいなことが書かれていたと思うんですけれども、後ろ向きとまでは言えないんですけれども少しゆっくり目過ぎるかなという気がしますので、きちんと見ていただきたいというのが一つです。

 先ほども事故の御懸念というお話もありましたように、国民が一番気にしているのはそこだと思いますけれども、無線機に関しましては、今はかなり技術が進んでおりまして、電波法がつくられたときに予定している状況とは少し変わってきておりまして、少しテクニカルなあれなんですけれども、実は三基ぐらい無線機を必ず航空機に積んでおりまして、一つが潰れてもほかの無線機で対応できるようになっているだとか、また、今は、電源を全部入れたときに無線装置が自動判断して、これは使えなくなっていますのでという形でエラーが出たり、かなり技術が進んでいるということもあって、各国、法改正も含めて、なるべく無駄を減らしていこうということで減らしたのがこの無線の観点でございます。

 何分、私も役所出身でございますので、何かを変えていくということの難しさは存じておりますし、その中で、やはり役所の方は継続性を維持するということも大事でございますので、ここは少し政治的決断を新藤大臣に、後ほど御見解を伺いたいと思いますけれども、お願いしたいと思います。

 もう一つその件に関しましてつけ加えさせていただきますと、事故の観点のお話を先ほどおっしゃいましたけれども、何が事故の原因なのかというところが恐らく一番大事で、原因究明を進めていくということでございます。

 例えば、先ほどおっしゃった検討会の報告書に関しまして、パブリックコメントを拝見すると、報告書の方にトルコ航空の事故の事例が出ているということでございまして、私も読ませていただくと書かれていたんですけれども、このトルコ航空の事故も、この書きぶりだと、航空法ではなく電波法の規制の方の緩和に基づいて関係する事故だというふうに、電波法の無線機の事故だというふうにとられるような書きぶりを、誤解を受けかねないような書きぶりをされているんです。

 実は、よくよくトルコ航空のを調べてみると、電波高度計が異常な値を示したということで、警報が鳴っているのにもかかわらず、人為的にそのまま降下を続けたという航空機の運用上の話だとか、この二十五時間以内に、事故が発生する前にトラブルが二度も発生しているのにというような、電波法の規制の、機器の検査によるものではなく、どちらかというと人為的なものだったりするところでございますので、御懸念は十分わかりますし、きちんと見ていく必要はあるんですけれども、やはりそこはきちんと原因と結果を分けていただいて御判断いただけるようにお願いいたします。

 最後の、三点目の御質問をさせていただきたく存じます。三点目に関しましては、製造登録番号制度、製造登録番号の件でございます。

 この無線機器に関しましても、現在、各航空機ごとに無線機の登録をしなければなりませんで、航空機にも固有の番号がついておりますし、無線機にも固有の番号がついているんですけれども、その登録した番号しか使用できないという、ほかの国には余りない制度になっております。

 この登録番号制度も、まず、かなり登録の手間がかかるということで、最近少し緩和されて、手続が楽になるということだそうですけれども、そこの中でもさらに、実は同じ法人内でしか登録できない。例えば、関空から仁川国際空港、韓国に飛びました。途中で無線機器が何個かある中の一個目にエラーが出て、でも、ほかがエラーが出なかったので到着しました。ただし、何か無線関係のをかえたいときに、向こうにもオペレーター、航空会社さんの無線機器がなければ、今の現状の制度だと日本国籍の航空機は取りかえることができません。例えば、ほかの会社さんのものだとかをお借りして取りかえるということになると、その分、この規制があってできない。

 でも、ほかの会社さんで融通し合って持っておくことで、コストにしても緊急性の対応にしてもかなり対応できるというのが普通の民間業者さんとしてやりたいということだと思いますけれども、技術的に、なぜ同一法人、同一人でしか共通予備登録が認められないかという点に関しまして、技術的根拠についてお伺いしたいと思います。

武井政府参考人 先ほどの報告書の中のいろいろな事故の件については、設備そのものもございますし、あるいは設備の使い方の問題もあります。さまざまな要因がありますが、そうしたあたりは今後十分に分析、検討を進めていきたいと思っております。

 逆に、国内でも、マイクのコードが断線をしていて電波が出っ放しになって飛行機が飛べなかったとか、まさに無線機そのもののトラブルも実際に私どもも把握しておりますし、国交省さんのホームページでも、過去十年で百件ほどの事例もあるということなものですから、いろいろとその要因がどこにあるかといったことも分析しながら検討していきたいと思っております。

 今お尋ねの無線機の予備装置の件でございますけれども、航空機の無線設備が故障した際に取りかえるための設備を複数の航空機間で共通に使用できるようにする仕組みということで、私ども、これは電波法では共通予備装置というふうに称しております。

 この共通予備装置につきましては、現在の電波法におきましても、同一免許人、同じ航空会社の中だけでなくて、航空会社をまたがった形、異なる免許人間の場合であっても、どちらにつきましても同じように事前に総務大臣の許可を得ることで相互利用が可能となっておるところでございます。ちなみに、この許可は、共通予備装置につきましても電波法の技術基準に適合していることを確認するために行っているものでございます。

丸山分科員 製造登録番号制度にございます。まあ、これもほかの国にはないということで、他国籍の航空機ではかからないようなコストがかかってしまっているのと同じような状況になっております。

 どうしてこの制度が必要なのかという同じ質問になってしまうのであれなんですけれども、また今回、規制改革を進められると思います、安倍内閣の第三の矢で成長戦略ということで、やはり民間の努力を阻害する形というのはどんどん改めていくという方針だと思いますけれども、その方向で、まず事務方としてこれを廃止していくという方向性にはならないのかという点を少しお伺いしたいと思います。

武井政府参考人 今のその制度自身をなくせないかということでございますけれども、先ほど申し上げましたように、複数の航空機で共通に使用する予備装置につきましても、電波法の技術基準に適合しているといったことを事前に確認するということとともに必要であるということが一点ございます。

 また、電波法自身がまず無線設備を特定して無線局の免許あるいは変更を許可していくという仕組みになっているものですから、この共通予備装置につきましても、機器の製造番号の管理、把握といったことが必要な状況になっているということでございます。

 ただ、本件につきましても、航空事業者も参加いただきました先ほどの検討会、この中で議論を頂戴いたしまして、この共通予備装置を追加する際の手続に要する時間を短縮するということが大事ではないかということになりまして、その中で、今行われています変更検査、ここでも検査があるんですが、それを不要にすべきというようなまとめをいただきました。

 現在、総務省では、この報告を受けまして、電波法関係省令の改正をしようということで既にパブリックコメントを実施中でございまして、このパブコメの結果を踏まえて、できるだけ早く省令の改正を措置したいと考えております。

丸山分科員 ありがとうございます。

 そのパブコメの件も、省令改正の検討の件も伺っております。

 という意味で、前進していないとは申し上げておりませんで、ただ少し過ぎるかなと。できれば、民間会社のスピード感でいえば、そんなことを言っていればもうどんどん負けていってしまって撤退せざるを得ないというスピード感でございますので、さらに、安倍内閣が発足したということで、よりスピード感のある対応を事務方の方にもお願いしたいと思います。

 最後に、大臣に二点お伺いしたいと思います。

 まず、一点目の御質問をさせていただきます。

 今まで少し御質問させていただいたように、国交省さんの所管だと思いがちな飛行機の件に関しましても、やはり電波を使っているということで、総務省さんの所管でございますところもかなり大きゅうございます。

 そうした中で、今申し上げた三点の、特に無線機の検査の件で、オペレーターさん、航空会社さんの話を聞いているとかなり負担が大きいということを、私の方、地元の関空の件もありまして、いろいろな会社さんから伺っているんですけれども、この規制に関しまして、まずは、今の三点、特に電波法の関係で、さらに、新設検査、変更検査、定期検査の話、そして製造登録番号制度の件に関しまして、大臣の御見解を伺いたいと思います。

新藤国務大臣 先ほどから質問を聞いていまして、とても建設的なよい御質問をいただいていると思います。また、よく調べていただいて、改善すべきこと、規制が緩和できるところがあるならば、それこそ今我々日本国がやっていかなくてはいけないことだと思いますから、とてもよい御意見と御質問をいただいた、このように、まずお礼を申し上げたいと思います。

 その上で、委員もおっしゃいましたけれども、何といっても、航空機に搭載される無線局、これは安全航行の基盤となるものでありますから、ここは重要に、慎重に、安全性を確保するということは第一であります。

 しかし一方で、民間事業者の負担軽減、そして国際競争力、そういった観点から、やはりこの両者のバランスが必要だ、こういう点において、これはまだまだ取り組まなきゃいけないことがあるんだろう、このように思っております。

 そして、その意味で、昨年の八月に、航空機に搭載する無線局の検査の在り方に関する検討会を立ち上げて、三月に報告書を取りまとめた。そして四月、今月に学識経験者から成る評価会を立ち上げて、その中で、今の御指摘の点も含め、検討していくということであります。

 少なくとも一年ごとに実施している定期検査については、周期を延長するという形で方向が検討できるのではないか、このように思います。それから、共通予備装置の製造番号を登録する際の検査については、省略するなどの規制緩和ができるのではないかという方向で検討していくということでございまして、前向きに取り組んでいきたい、このように思います。

丸山分科員 大臣、ありがとうございます。

 私も役所にいたことがございまして、検討するという言葉のマジックも存じておりますので、きちんと前を見据えて、具体的項目を言っていただきましたが、航空会社さんの話を聞いていると、この点は評価できるので国に頑張ってほしいと言っているんですが、ただ、これも足らないということを何度もおっしゃっているんですね。より一層、その先を見据えて精力的にやっていただければと思います。

 最後に、大臣には全体のお話を伺いたいんですけれども、先ほど来申し上げているように、日本に向けて外資系のエアラインがかなり参入しております。そうした中で、やはり外国に比べてコストがかかっている現状を考えて、先ほどから、国際競争力を高めていかなければならないということ、不必要なコストを一層削減していく、政府が無駄に足を引っ張らないようにしていくことが大事だと思います。

 電波行政の観点から、航空業者さん、航空業界に対する支援策や規制制度改革を含めて大臣の御所見を伺えればと思います。

新藤国務大臣 私が検討すると言っているのは、役所言葉ではなくて、委員も役所におられたからわかっていると思いますが、やはりこういうものは、有識者それからいろいろな専門的な見識からきちっとした作業をしていただいて、それを受けて、我々とすれば行政的な措置をしていくということにおいて、今現時点で、我々が決める以前に、まだチェックしなければいけないことがある。したがって、方向性は今私が申し上げたとおりのことでありますが、最終的なお答えというのは作業してからでなければいけない、これが検討という意味だということであります。

 それから、まさに委員がきょう指摘されたようなことも含めて、我が国のいろいろな規制や産業形態が果たして国際競争力を維持し、また国際競争力で打ちかつための最先端のものになっているかということをチェックすべきだ。これは安倍内閣、また我々自民党の公約の中の一つでもあります。

 ですから、この項目が今具体的にどうなるかということはまだなんです。でも、世界の中で、我々が安全性を維持した上ででありますが、規制が変えられるところがあるならば、それは世界の最先端を行っているかどうか、こういう観点から、ぜひ我々は、安倍内閣はこの問題を取り上げていきたい。それが、経済の成長と、新しい、今までとは違う次元の我々の成長につながっていくものではないかというふうに思うんです。

 もう一つは、委員が冒頭おっしゃった、原産国で検査して、チェックして、また使用国で同じことをやると。例えば、これは、経済連携協定の中でお互いの技術基準や検査基準を統合できないか、こういうような検討も始めています。

 私がかつて取り組んだ、EUとの間では、そういう、制度も含めて、また基準も含めて統合できないかというような、これはまだ協議が緒についたばかりですけれども、そういう試みがあるというのも事実。だから、それは技術的なものだけじゃありませんね、年金だとか社会保障も含めて、いろいろな制度をあわせることでもっと経済を有効に連携できないか、こういう工夫も必要だと思うんですね。

 そういう中で、技術基準とか検査とか、そういったものも検討をしていくべきだと思いますし、我々も、今私は総務省の中におりますから、我々がお預かりしている行政の中でできることは取り組みたいな、このように考えます。

丸山分科員 新藤総務大臣の政治的な強いリーダーシップを御期待申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

うえの主査代理 これにて丸山穂高君の質疑は終了いたしました。

 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)分科員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょうは税の徴収方法についてお聞きをしたいと思います。

 国民健康保険料、税の収納率が年々悪化しておりまして、あるいは個人住民税の滞納残高も増加をしている、国民年金保険料の納付率の低下も起こっている、こういう状況であります。

 国民健康保険についていいますと、過去十五年で、保険料の徴収率は、九三%だったのが八九%、それから国民年金保険料の納付率は、九六年度に八二・九%、これが二〇一三年度には五八・六%に低下しております。

 主な要因として、税や保険料の支払い額が大きくなった、それから景気の悪化による収入の減少、企業のリストラによる失業の増加、こういうことが納税、納付を困難にさせていると考えられます。つまり、払えなくなった方々がふえているのではないか。これが滞納問題の背後にあると思うんですが、総務大臣の認識をまずお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 さまざまな要因があると思いますが、大きな要素として、今委員が取り上げられたこと、それも要素の中にあるのではないか、このように思います。

佐々木(憲)分科員 経済的な事情で滞納が増加した背景を考えますと、徴収する場合、やはり親切な態度で相談に応ずるということ、それから納税者の個別具体的な実情を把握して、納税者の生活の維持または事業の継続に与える影響、こういうものを勘案して行わなければならないと思いますけれども、総務大臣、どのようにお考えでしょうか。

新藤国務大臣 それはまさに行政として、また窓口である公務員が心がけなければいけないことだ、このように思います。

佐々木(憲)分科員 ところが、実際には、被保険者、納税者の生活実態を考慮しない機械的な取り立てがあちこちで起こっているんです。

 例えば、三重県伊賀市で、子供の高校入学時に出る学資保険のお祝い金三十万円が国民健康保険料を滞納したということで差し押さえられている、こういう事案が起こっております。

 母親である、仮にA子さんとしますと、そのA子さんは、十年ほど前に離婚したシングルマザーで、二人の子供を育てております。長男がことし四月から高校進学となり、制服など入学準備として学資保険を利用しようということで手続に行きましたら、離婚した前の夫の国民健康保険料が滞納していたということで差し押さえられていたということなんですね。

 びっくりして、この方は市役所に連絡をして、なぜ離婚した前の夫が滞納したという理由で自分が支払ってきた学資保険が差し押さえられなければならないのかというふうに聞いたそうです。しかし、まともに相手にしてもらえなかったというんですね。

 この人は、子供が生まれたときに将来のことを思って学資保険に入り、離婚してからも、ずっと生活費を切り詰めて、少ない収入から毎月一万円学資保険料を支払ってきたそうです。

 問題なのは、市役所が学資保険の原資が前の夫のものでないということを把握していたにもかかわらず、この学資保険の保険料がA子さんの銀行口座にあると知って引き落としているわけですね。重大なのは、保険契約者の名義が前の夫であるため、市役所は、滞納の事実や差し押さえの事実をA子さんに知らせていなかったということなんです。つまり、A子さんは、市役所が学資保険を差し押さえていたことすら知らずに保険料を支払い続けていたという可能性があります。

 このケースで一番大事な問題は、学資保険の帰属認定なんですね。学資保険の保険料がA子さんの収入から支払われていたということが明確であれば、学資保険のお祝い金は実質的にA子さんに帰属するわけです。学資保険がA子さんに帰属するものであるならば、市役所は差し押さえができないはずなんですね。

 そこで、国税庁にあらかじめ確認をしておきたいと思います。

 税の徴収判断についてですが、名義がどうあろうが、実際に支払っている者にその財産が帰属するというのは当然のことではないかと思うんです。徴収に当たって、それを、あらかじめそのことを調査するのは原則だと思いますが、いかがでしょうか。

岡南政府参考人 国税庁でございます。お答えいたします。

 国税徴収法では、督促状を発した日から十日間を経過しても督促した国税が完納されない場合などにおいて、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならないとされており、御指摘のとおり、対象者に帰属する財産が差し押さえの対象となります。

 そこで、国税当局でございますけれども、財産の差し押さえに当たっては、滞納者に帰属するものであることを調査、確認した上で、適切に対応することとしております。

佐々木(憲)分科員 今お聞きのように、これが徴収の場合の大原則でありまして、国税も地方税も同じです。

 差し押さえのための財産調査において、あらかじめ差し押さえ対象債権の帰属認定を行う、これは当然なんです。仮に差し押さえ後に、滞納者、すなわちこの場合は離婚した前の夫に帰属しない財産であるということが判明すれば、これは差し押さえが解除されるということになると思います。これは原理的にそういうことになりますね。

岡南政府参考人 国税の場合で申し上げますと、基本的に、個別のケースにつきまして、また、地方税の事案につきまして、私どもは答える立場にはないと思いますけれども、ただ、具体的な実務につきましては、先ほど申し上げましたとおりに、財産の差し押さえに当たっては、滞納者に帰属するものであることを調査、確認した上で対応することとしております。

佐々木(憲)分科員 そもそも、滞納処分として差し押さえを行うときには、銀行などの預貯金を差し押さえるときに残高があれば何でも全て差し押さえていいというものではないんです。個別的、具体的な実情を踏まえて、その預金債権の差し押さえが適切かどうか、この判断が求められるわけであります。

 生活の困窮が認められ、学資保険のお祝い金差し押さえで高校進学の準備ができないという事態になると判断されれば、そもそも差し押さえ処分はしてはならないわけであります。

 A子さんは市役所にこう言ったそうなんです。子供が高校に行けないということになる、滞納者の子供は普通の生活すらできないということなのかと訴えたら、職員は、それは仕方がないですね、こう言われたというんですね。本当にこれは血も涙もない対応だと思うんですよ。総務大臣、この対応は適切だと思いますか。

株丹政府参考人 地方税につきましては、国税の滞納処分とひとしくといいましょうか、基本的に法律でそのように適切に対処されるものと考えてございますが、今、委員が御指摘されましたのは、国民保険料ということでございましょうか。国民保険料という御指摘であったようにお聞き取りをしたのでございますが、税でございましょうか、地方税ということでございましょうか。(佐々木(憲)分科員「地方税。この場合は、国民健康保険税」と呼ぶ)税でございますか。

 いずれにいたしましても、それぞれの地方団体で適切に法にのっとって処理されるべきものというふうに考えてございます。

佐々木(憲)分科員 要するに、差し押さえ財産を確認して、本人のものであるということを確認しない限りは差し押さえてはならない、これは当たり前ですよ、誰が考えたって。

 これはやはりそういう原則でやらなきゃならぬと思いますけれども、総務大臣、どうですか。

新藤国務大臣 まさに個別具体のケースなので、今お示しされた範囲でお答えするのはなかなか難しいというふうに思いますね。

 法の趣旨にのっとって、これは適切に執行されるべき事業でありますし、ましてや、今、お子さんのことや御家庭のことがかかっておりますから、重大なことだと思います。

 しかし、それは個別のケースとしてどのように取り扱うべきかは、これはまず自治体においてしっかりと取り組んでもらいたい、このように思いますし、現時点で我々がコメントをするほどのものは、まだ私が材料を持ち合わせておりませんので、感想としてそのように申し上げたいと思います。

佐々木(憲)分科員 個別事案について判断を聞いているわけではなくて、考え方の原則を聞いているわけです。

 つまり、財産を差し押さえるという場合は、その財産が本人に帰属するかどうか、これを確認して差し押さえるのが当たり前で、国税当局もそういうふうにやっている、この原則は地方税の場合も同じです、こういうわけですから、そういうことでよろしいんですねという確認です。

新藤国務大臣 それは法の精神はそのとおりでありますし、そのようにしっかりと運用してもらいたい、このように思います。

佐々木(憲)分科員 地方自治体による滞納処分が余りにも乱暴だということで、私は今までも国会で取り上げてきたことが幾つかあります。

 例えば、その一つが、個人事業税等の滞納処分として、これは鳥取県の例ですけれども、児童手当十三万円が入金された直後に銀行口座をばっと県当局が差し押さえたという事件なんですが、この事件では、納税者の方が鳥取県を訴えて、三月二十九日に鳥取地裁で判決がありました。その判決の内容を簡潔に説明していただけますか。

株丹政府参考人 三月二十九日に、今委員御指摘がございました、鳥取地方裁判所で判決がございました。

 鳥取県から聞き取り等をいたしましたところでございますけれども、鳥取市に在住をいたします男性が、鳥取県、具体的には東部総合事務所長の名前でございますけれども、鳥取県が県税の滞納処分として執行いたしました預金債権の差し押さえ、それから取り立て処分、滞納県税への充当処分の無効確認または取り消しを求めた事案でございます。

 三月二十九日に鳥取地方裁判所が出しました内容でございますけれども、被告である鳥取県が原告の滞納に対して行いました十三万七十三円の配当処分を取り消し、被告である鳥取県は原告である男性に対しまして同額を返還するよう命じたものというふうに承知をしてございます。

 なお、鳥取県は四月の十二日に控訴をされたものと承知してございます。

佐々木(憲)分科員 この問題は、私、二〇〇九年に財務金融委員会で質問をいたしました。当時、与謝野馨財務大臣は、児童手当は、子供の養育に使うという目的に達せられるべきものだということで、禁止されている権利の差し押さえは、受給者が差し押さえによって実際に児童手当を使用できなくするということも禁止するように解釈するのが正しい、こういうふうに明言をしているわけです。国税当局は血も涙もあるので、誤解してほしくない、こういうことまで言われたわけですね。

 現在の国税当局も同じ立場かどうか、確認しておきたいと思います。

岡南政府参考人 お答えいたします。

 児童手当につきましては、法律上、その受給権は差し押さえが禁止されておりますけれども、児童手当が振り込まれた預金につきましては、差し押さえは禁止されておりません。

 もっとも、国税の滞納整理に当たりましては、滞納者個々の実情に即しまして、法令の規定に基づき適切に対応をしておりまして、財産の差し押さえに当たりましても、滞納処分に関する法令を一律、形式的に適用するのではなく、適切に判断することとしております。

 したがいまして、御指摘の件につきまして、国税当局としましては、例えば、残高のない預金口座への児童手当の振り込みを待って、これを狙い撃ち的に差し押さえて、具体的に支給されたものが実際に使用できなくなるような状況にすることは差し控えるべきであると考えておりまして、この考え方に変わりはございません。

佐々木(憲)分科員 この点は大事なことなんです。

 今回の判決も同じ立場で出されていると私は思いますが、法律で差し押さえが禁止されている児童手当が預金口座に入金されると預金債権に転化するというふうに判断されますが、その銀行口座が児童手当の入金以外に長期間利用されていないこと、鳥取県税職員がその日に児童手当が振り込まれる可能性が高いことを認識していた、そういうことから、実質的に児童手当を差し押さえるということをやってはならないという判断を裁判所は下したわけです。

 判決文にはこう書かれておりまして、差し押さえ対象財産を選択するに当たって、実質的には、本件預金口座に振り込まれる本件児童手当を原資として租税の徴収をすることを意図し、その意図を実現したものと評価せざるを得ない。実質的には、差し押さえ禁止債権である児童手当受給権の差し押さえがあったのと同様の効果が生ずるものと評価するのが相当であると。

 児童手当が入金される日に、手当相当額しか残金のない銀行口座を差し押さえる、つまり、差し押さえ禁止債権の入金を狙い撃ちするような差し押さえ処分はすべきではないというのが財務大臣の見解でもあり、これは総務大臣の見解と同じだと思いますが、総務大臣に確認をしておきたいと思います。

新藤国務大臣 まず、鳥取の事案については係争中であります。したがって、我々総務省は係争当事者ではありませんし、具体のコメントは差し控えたい、このように思うんです。

 そして、その上で、委員がかつて御質問された、また、与謝野金融大臣が当時、二〇〇九年に財金委員会で御答弁されたこと、それは、今、国税の方からありましたように、差し押さえ禁止債権としての属性の問題、それについて、法律上は差し押さえが禁じられていない、こういう法律の解釈がございます。これは私は同じ考えであります。

 また、一方で、滞納者の個別具体的な実情を踏まえ、滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときなどは執行を判断しなくてはならない。地方公共団体が適切に行う必要がある、このようにおっしゃった与謝野大臣の考えについては、私も同じように考えております。

佐々木(憲)分科員 簡単に言いますと、預金口座に十円ぐらいしかお金がないときに児童手当がぼんと入った、それを滞納処分だと言ってごっそり差し押さえてしまうのはやってはなりませんよというのが、総務大臣のお答えであり、また財務大臣のお答えでもあったということであります。

 つまり、今回の判決もそういう点では大変重要でございまして、本件差し押さえ処分を取り消さなければ、児童を養育する家庭の生活の安定、児童の健全育成及び資質の向上に資することを目的とする児童手当の趣旨に反する事態を解消できず、正義に反するものと言わざるを得ない、こういうふうに判決では言及しております。

 そういう点で、今回のこのやり方というのは大変乱暴でございまして、鳥取県の例ですけれども、この方は五人の子供を養育しているわけですね。そして、財産調査からは、収入が少なく、それ以外に適切な差し押さえ財産がないということを知っていた。児童手当を事実上狙い撃ちするようなこういう差し押さえは、受給権の差し押さえになる、こういうことはやってはならないということでございます。

 その差し押さえは違法ということで鳥取地裁では判断をされました。精神的苦痛をこうむったと慰謝料等も認めております。それは、差し押さえられた原告が五人の子供を持ち生活に困窮していた、それから、給食費や学費など子供の教育費に充てる予定であったにもかかわらず、児童手当が差し押さえられたためにできなかった、そのことが子供の生活の安定や育成に大きな影響を与えたからであります。

 差し押さえの結果、子供が栄養がとれなくなったり、修学旅行にも行けなくなったりということ、こういうことは決してやってはならないと私は思います。総務大臣、どういう感想をお持ちでしょうか。

新藤国務大臣 まず、これは整理しなきゃいけないと思うんです。

 まず第一に、鳥取の事案については、今委員のお話を聞く中のことにつきましては同情すべき点がある、このように思います。しかし、私は、個別また詳細のことを全て承知しているわけではありません。そして何よりも、総務省は訴訟の当事者ではありませんから、その個別のケースについてのコメントというのは、これは私は言うべきではないし、できないということであります。

 一方で、与謝野大臣の発言は、国税を所管し、かつ課税徴収を執行する、そういう機関として、これは国務大臣、財務大臣の御発言であるというふうに理解しています。

 しかし一方で、地方税においては、これは課税徴収に当たる当局というのは地方公共団体になります。ですから、私どもとすれば、地方税法に基づいて適切な対応がされることを期待しておりますし、そういったことを見ているということであります。

 その上で、さらに、委員がおっしゃったようなことで確認をしなきゃならないんですけれども、差し押さえ禁止財産である児童手当が銀行口座に振り込まれた後においては、その性格は預金に転化するものであるので、法律上、差し押さえは禁じられていないものと解される、これは平成十年二月の最高裁の判例であります。一方で、地方税法は、先ほども申しましたが、滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがある場合は、滞納処分の執行を停止できることもあります。

 ですから、そういったもの、中には、生活困窮している者がいる一方で、これもケースでありますが、日々の生活資金が不足はしているものの、土地や自動車などの売却可能な資産を有しているような方もいらっしゃるというような例も聞いております。

 ですから、個々の滞納者の実態を踏まえて、まず地方公共団体、徴収団体、当事者として適切な措置をとられるように私としては期待をしたい、このように考えるわけであります。

佐々木(憲)分科員 国税法も地方税法も、徴収の原理は同じでございます。徴収の主体が自治体なのか、それとも国であるか、こういう違いがあるだけなんですね。

 したがって、原理原則は同じなのでありまして、預金口座の中に、例えば百万円ある、そこに三十万円振り込まれる、全体として百三十万円になった、そこを押さえるということについては、今回の判決でもそれは否定していないんです。問題は、今回の事案というのは、ほとんどお金がないところに三十万円入った、その三十万円を狙い撃ちして、全部差し押さえて、預金の残高をゼロにしてしまう、これはだめですよと。これは与謝野大臣もそういう発言をされて、そして、これは徴税の基本原則であるというふうに言っているわけです。

 ですから、今、総務大臣がおっしゃったのは、具体例については、それは判断しなきゃなりません。しかし、この基本原則というものは国も地方も同じなんです。この点は確認しておきたいと思うんです。

新藤国務大臣 まさにそこからのことになりますと、今、地裁での判決が出た、それで高裁に控訴されたわけでありますね。ですから、そういった司法の場での今争いがあって、それはそれで、主張をされていらっしゃる方はきちんとした自分の思いを訴えていただけばいいと思いますし、これは司法の場で判断をされるものだ、このように思います。

佐々木(憲)分科員 これは、総務大臣としては、自治体の側の肩を持ったと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、国の大臣として、与謝野大臣とまた違う見解をお持ちなんでしょうか。原理原則を私は確認したんですけれども、そこは違う、そういうことなんでしょうか。

新藤国務大臣 先ほども申し上げましたが、与謝野大臣は、国税の担当をされている方としてのコメントであります。私たちは、この課税は地方公共団体に権限があるということでありまして、その差があるということを申し上げているのであります。ただ、精神として、適切な運用をなされること、これは大いに期待をしているところでございます。

佐々木(憲)分科員 これは、あちこちの県税当局、地方税の当局のやり方は、地域によってまた随分違うんですね。

 私、びっくりしましたのは、千葉県の長生村というところがあります、ここでは、老齢年金の入金直後に差し押さえを二回実施されて滞納者が餓死したという事件があります。それから、大分県宇佐市では、子ども手当の入金日に一斉に差し押さえを実施しているわけですよ、どんと。大阪市では、国民健康保険の滞納相談に行ったら、特別児童扶養手当でも入金されれば差し押さえができるんだと、滞納額の半額を一括して納付するように迫られた、こういう訴えもあります。

 特別児童扶養手当というのは、精神または身体に障害を有する児童について手当を支給することにより、これらの児童の福祉の増進を図ることを目的にして、障害を有する児童の家庭に支給するものであります。当然、これは法律で差し押さえが禁止されている差し押さえ禁止財産ですね。差し押さえ禁止財産でも預金口座に振り込まれれば差し押さえができる、こういうことが現場に浸透しているということになると、これはちょっと問題が生じてくるわけであります。

 児童手当などの差し押さえ禁止の法令上の規定が実質的に無効になってしまうということになりますから、原理原則はこういうことなんですよという、そこをやはり総務省あるいは総務大臣としても地方自治体の当局に徹底することが非常に大事ではないかというふうに思いますので、大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。

新藤国務大臣 その点は、私は委員と問題意識を共有したいと思います。

 そして、我々も、そういったことで、全国の税務担当の課長会議ですとか、いろいろなレベルで幾つかの会議があります、その中で、きちんとそのことは発言を明確にしております。

 滞納者に対する厳正な対処をすべきであることと、あわせて、滞納処分をすることによって生活を著しく窮迫させるおそれがあるとき、それはその執行を停止することができることとされており、各団体においてはその趣旨を踏まえて対応する必要がある。個別具体的な実情を十分に把握した上で、そうした点を踏まえ、税務当局において適切に判断していただきたい。これはきちんとした形でお伝えもしておりますし、我々の法律における立場と現場の実態とが合うように、これは徹底するように働きかけて、また心がけていきたい、このように思います。

佐々木(憲)分科員 最後にそういうふうに決意をお聞かせいただきました。

 やはり、差し押さえによって相手が餓死するというような、そんなことはこの日本であってはならない。私は、本当にその事案を聞いてびっくりしました。年金しか生活の糧のないお年寄りに、それを差し押さえて、食べることもできず、電気も切られ、そんな状況に追い込んでいくようなやり方は絶対に許してはならないというふうに思うわけです。そういう意味で、きょうは基本原理をお聞きさせていただきました。

 どうもありがとうございました。

うえの主査代理 これにて佐々木憲昭君の質疑は終了いたしました。

 次に、濱村進君。

濱村分科員 公明党の新人議員、濱村進でございます。

 私は、比例近畿ブロックの選出でございまして、兵庫県を中心に活動しております。議員になる前は野村総合研究所で勤めておりまして、企業や官公庁を相手に、ITを利活用してどのように業務効率を上げるのかというお手伝いをさせていただいておりました。

 本日は、予算委員会の分科会で質問させていただく機会を与えていただきまして、私にこのような機会を与えてくださった全ての方々に感謝申し上げたいと思います。

 本日は、今後の日本における電子行政のあり方について質問をさせていただきたいと思いますので、三十分間、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、行政サービスにおけるICTの利活用について、現在、どのような目標や目指すべき全体像を設定しておられるのか。また、現状での進捗状況を確認させていただきたいと思います。

    〔うえの主査代理退席、主査着席〕

戸塚政府参考人 お答えいたします。

 現在、政府におきましては、国民本位の電子行政を実現するため、国民や法人との行政手続、これは約七千五百がオンライン可能になってございますが、利用頻度の高い重点手続ごとに利用率や利用者満足度などの指標を設定いたしまして、全体として利便性の向上に取り組んでいるというところでございます。

 オンラインの利用率でございますが、手続全体で、平成二十三年度では、手続の総件数は四億四千万件でございますが、このうち一億七千万件、約四割、三八・五%がオンライン利用ということになってございまして、着実に向上してきてはおりますが、まだ国民に十分に浸透しているとは言えず、さらなる改善に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

濱村分科員 ありがとうございます。

 具体的に件数等を御提示いただきまして、ありがとうございます。

 続いて、利用者視点に立った電子政府を推進するという点についてお伺いしたいんですけれども、行政サービスの実施者であります地方自治体に、どのように業務を行うかを提示する必要があるかと思うわけでございます。

 当然のことながら、法定事務については、全ての地方自治体において同じ業務を行えばいいということになりますけれども、そういった観点からしますと、法定事務のための業務、この業務を支える業務システムというものは本来同じ仕組みであってもよいはずであるわけでございます。しかしながら、今現在、現時点におきましては、地方自治体がそれぞれで仕組みを構えているというような状況でございます。

 ここに無駄があるのではないかというふうに思うわけでございますけれども、自治体クラウドという構想も含めて、ぜひ大臣の御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

新藤国務大臣 まさにそこが課題なわけですね。そこのところを改善することによって大きな効果が見込まれるのではないか。それから、今後、電子行政を推進していくという意味においては、自治体間の連携、そしてそれが全国ネットになっていって、それは、国と地方のサービスが、また行政が共有できる、相互利用できる、こういう形を整えるのが必要だと思います。

 ですから、その意味で、自治体のクラウド化というものも我々は支援していきたいと思いますし、またそういうことができる時代になってきたんだろうと思います。

 ただ、委員もこれは共有認識されていると思いますが、同じ作業を、同じメーカーで、同じソフトでやればいいということではなくて、同じ作業をやるにしても、それぞれのやり方は自治体に委ねなければいけない部分があります。しかし、問題は、そのことが相互活用できるような体制にしておく、そういうシステムというかプログラムにしておく、そこの部分がこれからの必要な課題ではないかな、このように考えます。

濱村分科員 ありがとうございます。

 課題認識、全く同じ、共有をしていらっしゃるということでございますけれども、自治体間の連携、これが非常に大事である、そのとおりでございます。相互利用がこれからの課題である、これは本当に大臣の問題意識、そのとおりだなというふうに思うわけでございますけれども、それをどんどんどんどん解決するための方法論について、きょうはお話をさせていただきたいと思っております。

 具体的に、ちょっと現状のお話をさせていただきますが、二十五年度予算では、政府情報システムの改革や国民ニーズを踏まえた行政情報の提供、こういった電子政府の推進に九十五億円計上されていらっしゃいます。こうした取り組みが将来的に住民生活にどう影響をし、どのように改善されていくのか。具体的なイメージをお持ちか、お伺いしたいと思います。

戸塚政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、電子政府の推進に係る予算、二十五年度、九十五億円計上してございますが、この中には、政府情報システムの改革と国民ニーズを踏まえた行政情報の提供の推進に関する経費を計上してございます。

 まず、政府情報システムの改革につきましては、政府に共通的な情報システムの整備や、政府情報システムをクラウド化する政府共通プラットホームの整備等を行っているところでございますが、これによりまして、国民に対し、より効率的で安心できる行政サービスの提供の基盤をつくっていきたいというふうに考えております。

 また、国民ニーズを踏まえた行政情報の提供の推進では、政府のポータルサイトといたしまして、電子政府の総合窓口システム、これはe―Govと呼んでございますけれども、この整備改善を行っているところでございます。これによりまして、二十四時間三百六十五日、自宅や会社にいながら行政情報の入手や申請、届け出などの手続をできる限り一元的に行うことができるよう、利用者本位の行政サービスを実現してまいりたいというふうに考えているところでございます。

濱村分科員 ありがとうございます。

 e―Gov、私も拝見いたしまして、実は、議員になるまでその存在を余り認識しておりませんでした。大変申しわけないなという思いもあるんですけれども、要は、それぐらいなかなか周知徹底されていないという部分もございますので、ぜひ情報発信していただければなというふうに思います。

 続きまして、これまでも行政サービスにおける電子化というのはe―Govも含めて進められてきているわけでございます。しかしながら、これまでの電子化というのは、人でやっていた業務をそのまま電算化しただけ、置きかえただけ、機械に置きかえただけ、こういったものにすぎないというふうに感じるわけですね。

 本来行うべき電子化というのは、情報化というものであると思うわけでございます。どういうことかというと、今後、政府が推進する電子政府、情報化というところで、既存の仕組みをゼロベースで見直して、仕組みからして新たに考え直すということが必要になってくるかというふうに思うわけでございますけれども、こうした背景を踏まえて、行政サービスの向上について、大臣の御意見を、御決意をお伺いしたいなというふうに思います。

新藤国務大臣 私も全く同じことを考えています。

 これまでの取り組みというのはこれまでの意義があったというふうに思うんですね。これをやる約十年ぐらい前には、とにかくインターネットの利用が一千万人ぐらいということでありまして、当時私は、いろいろと、有志というか私的案でありますが、インターネット七千万人計画というのをつくって、どこの分野でどれだけ、どんな作業をすればネット利用者がふえるかとか、そんなようなことをやった記憶があります。

 それから、そもそも、電子化でオンラインを可能にするためには、たしか万を超える、そういう法律があったんですね。これは、通常のやり方でいえば、一つ一つの法律改正をしなきゃいけないんです。しかし、これをネガティブリストにして、これを除いたものは全部オーケーよという一括法にいたしまして、それでこれまでの政府の電子化というのは進んできたことは事実なんです。

 でも、御指摘のように、まさに電算化したんですね。自分の業務でコンピューターを使うようになっただけで、それは紙をなくしたわけでもないし、それから、お互いにその作業を電子的に共有したわけでもないということ。これは、政府内もそうだったし、それから地方自治体もそうで、地方自治体においては、イントラネットなどというものが、要するに、その地域だけの限定のネットワークをつくりなさいということを政府としてもやってきた。それをやらなければできないほどに何もなかった、こういうことだと思うんです。

 ですから、今後、これを次のステージ、しかも飛躍的な改善をもたらすステージに持っていかなくてはいけない。それはまさに全政府的な取り組みが必要で、私は、今委員が御指摘されたようなことも含めて、IT戦略本部において、電子行政を進めるべきだ、徹底的な電子行政を進めようということを提案して、これを安倍内閣の戦略方針の中の一つに入れてもらおうという作業を今しているところなんです。

 それは、徹底的な効率化、そして国民の暮らしを便利にする、そのためにあらゆる手段を考えようではないかということ。一方で、これによってどれだけのコストがカットできるのか。それを、改革の成果が実感できるような、そのための目標を設定しようじゃないかと。

 今まで、なぜこれが進まなかったのかといえば、まさにe―Govなどというのは結構画期的なもので大々的にやったんですが知られていないのは、そんなのは役所間でやっているだけだからですよ。国民サービスが、それにとって恩恵をこうむっていないから、という部分が少なかったから。

 ですから、これから電子政府を進めることが、どんなに国民にとって便利で、しかも、これは我々の国全体としてのコストカットにつながっていくのか。そして、その削った分が別の部分に使っていけるんだ、こういうシナリオをきちんと国民に提示をし、そしてまた、共感を得て国全体の目標とできるように、そういう運動をしていかなければいけないのではないか。また、それだけのものができるほどの技術や基盤を我々は整えつつあるのではないか、このように考えているわけです。

濱村分科員 大変にありがとうございます。

 安倍内閣の戦略方針に入れていこうという取り組みをされていらっしゃるということで、本当に心強いなと思いますし、私も、そのために全ての力を結集していきたいなというふうに思っております。

 大臣がおっしゃったとおりで、法制度さまざま、一括法で切りかえてきた。そうでありつつも、申請書はなくならないですし、対面サービスというのが基本的な前提となっているというのが現状でございます。これを変えていくために、我々も、政府と我々議員、一体となって改革に取り組んでいかなければいけないのかなというふうに思うわけですけれども、そういう意味では、行政サービスの業務プロセスの改革こそが必要であるというふうに考えております。

 ぜひ、この点についても大臣の御認識をお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 まさに、行政手続オンライン化法、こういったものでオンラインをできるようにしたという意味においては、できることはほとんどやったんです。

 当初、九六%までオンライン化しました。しかし、その中には、年間に申請件数がゼロだとかほとんど使われていない、こういったものまで入っていましたので、そういうのは除外しました。結果としては、今政府は一万三千手続ありますが、七千五百手続がオンライン可能になっているんですけれども、実態は、できることは全部やっているんです。でも、オンライン可能になったがそれが使われていない、それはなぜなのかということをやはり追求しなくてはいけない、分析しなくてはいけないということだと思うんです。

 まさにおっしゃるように、プロセスをカットできる、それからプロセスを共有できるということが重要だと思いますね。自分でやった作業が、また誰かに伝えるために、郵便で持っていったり、それからメールや添付ファイルで渡したとしても、それをまたプリントアウトする。ですから、こういうプロセスを、思い切ってここは省こうじゃないか、ここは共有しようじゃないかと。それをルール化しない限りは、なかなか進まないというふうに思いますし、また、それをできない人たちをどうやってサポートしたらいいのかという問題も出てくると思います。

 その意味では、今回のマイナンバー法案が、今御審議をいただいているわけでありますが、これをきちんと成立させた中で、我々が求める、また我々が受けられる電子行政社会というのは何なんだということをきちんと示していく。一度にはできませんが、まずは、大枠のシナリオをつくった上で、実現可能なところからステップ・バイ・ステップで実施していく、こういう取り組みを、今まさにその実施段階に来ている、このように思います。

 委員も、そういうことを専門に、しかも民間で、しかもすばらしい会社でおやりになっていたわけですから、きょうは委員会の場ですから余り細かいことは言えませんし、実務的な話で、どこまでどうなっているかは、ぜひ我々と打ち合わせをしていただきたいと思いますし、いい知恵があれば出していただきたい、このように思っています。

濱村分科員 ありがとうございます。

 プロセスの部分でカットしていく、あるいは共有していく、大臣のおっしゃるとおりの視点、これが非常に大事であるというふうに思いますし、また、こういったものを活用できない人たちへのサポートも一方で考えていかなければいけないという、両面でやっていく必要があるというふうに私も思います。

 一方で、電子政府という意味ではさまざま見習うべき点がある国の事例について少しお話をさせていただきたいんですけれども、韓国という国は、お隣韓国ですけれども、電子政府世界一なんですね。なぜ世界一になっているのかというところを少し共有させていただきたいと思います。

 私自身、横浜から西宮に引っ越しをいたしました。横浜で住民票の移動のための転出届を出しました。西宮では転入届を提出する。これが、韓国においてはどういうことをやればいいかというと、役所に行くことなしに、インターネットで申請したら、そのまま受理される。インターネット上で申請したら、横浜にも転出がされて、西宮にも転入として届くというようになっているわけでございます。

 そういった意味におきまして、現在審議もされているマイナンバー法案についても、こういった個人番号を導入するというような考え方が韓国では既に行われていて、それが礎になって初めてできるような業務フローになるというわけでございますけれども、この業務プロセスを実現するためにシステムがまたありますし、その業務プロセスの根拠となる法律も整備して進めていく必要があるわけでございます。

 韓国におきましては、お役所仕事の延長線上ではなくて、住民に対するサービスの向上ということを政策目標として掲げているようでございます。そういった意味では、本当に電算化ではなくて情報化ということに取り組んでいるいい例なのかなというふうに私自身は捉えております。

 韓国の電子政府の取り組みについて、政府としてどのように捉えていらっしゃるのか、お聞かせください。

新藤国務大臣 これは委員も御案内のように、電子政府が最も進んだ国の一つ、このように言われております。一九六八年に住民登録番号制度、こういったものが広く普及をして、この番号をもとに、行政機関、金融機関等において個人情報が広く利用されてきていることなんだと思います。ほぼ全ての商取引で住民登録番号の提示が必要で、クレジットカードの決済情報も税務当局に一元的に蓄積されて、これをもとに簡便な税申告が実施されている、こういうことがあります。

 一方で、韓国は、大量の個人情報の流出事件が頻発しているわけですね。二〇一一年には、大手ポータルサイトとSNSの会員で、三千五百万人分の個人情報、たしか韓国は人口四千万ちょっとだと思いますから、三千五百万人分の個人情報が流出している、こういうことが発生しているわけであります。

 それぞれの国のやり方とか国民意識という差もあると思います。ですから、韓国の仕組みをそのまま我が国に入れればいいとは思っておりませんが、しかし、少なくとも、韓国だけではありません、スウェーデンですとか北欧も含めて、先進国がございます。ですから、そういうところのよい点、そして改善すべき点、こういったものも踏まえて、我々は我々のやり方を、最適な、最善のものを構築していくべきだと思います。

 それから、先ほど委員が引っ越しのときのお話をされましたが、これはマイナンバーではなくて、その前、今の住基ネットにおいて、転入のときに一回届け出をすれば、それで双方の役所が共有できるということになっている、このように承知していますけれども、住基ネットも、今まで、全国基盤として既に安定的な稼働になっておりますから、そういったものをもとに展開していくことになるだろう。マイナンバーも、住基のネットがあることを前提にしての展開になっているわけであります。

濱村分科員 ありがとうございます。

 今、最後におっしゃっていただいた住基ネットの件は、実は私もずっと使っていなかったんですね。今回、引っ越しをしたときに初めて、西宮市は住基カードでコンビニでも住民票の発行ができるというサービスをしておりますので、それは便利だということで住基カードを申し込んだ次第でございます。

 ただ、これもなかなか使われていないという現状もありますし、もっともっと本当に便利にして、そして、住民の皆様に行き渡るような取り組みをしていく必要もあるのかなと思いつつ、ちょっと過渡期でもありますので、どのように手を打っていくかというのはしっかりと見きわめていかなければいけないのかなというふうに考えております。

 さまざまございましたけれども、仕組みをそのまま入れればいいということではないというのは、もう大臣がおっしゃるとおりだと思います。日本においては、やはり人口の規模も違いますし地域性も違いますので、そのまま入れればいいというものではないです。日本独自のしっかりとした電子政府、これをぜひつくっていきたいと思いますし、なかなか日本と同じような人口規模の国というのはないのかもしれないですけれども、探せばあるわけでございますし、そういった国々に輸出できるようなぐらいにもしていきたいというふうに私自身は考えております。

 そういった意味でも、電子行政の推進の目的というのはさまざまあるわけでございますが、まず第一義にあるのは、住民サービスの向上であるというふうに思うわけでございます。そのためには、役所の業務プロセスを変革することが一番重要というふうに思うわけでございますけれども、この改革を進めるためには持続性のある政治的なリーダーシップが非常に重要になってくるわけでございます。この改革を行っていくためにも、ぜひ、法定事務など行政サービスに関するもろもろの法制度の見直しも含めて推進していく必要があると思いますけれども、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 まさにその局面に来ているわけですね。今までのやり方というのは、できることを探していって、それをそれぞれの場所で、自治体においても各省庁間においてもやってきたということで、それなりの進展があったと思います。でも、全く物足りないし、もっと日本はできるんじゃないかと。

 そして、それを国の経済の活性化と、そして国民生活の利便性と、さらには行政の効率、また予算のカットといいますか予算をきちんと見直して、必要なところにより最適な分配ができるようにする、こういう幾つもの効用がもたらされるんじゃないかと期待しているのが電子政府、電子行政だと思いますね。

 そうすると、私が今一番大事だなと思っているのは、目的設定とそれに対する国民の共有、理解だと思います。

 その目的を達成するためにどういう手段が必要か、どういうルールが必要かというものを決めて、では、そのシナリオの中でできるものは何なんですか、そして、それぞれがお持ちになっているいろいろな事務事業のあり方をそれに沿って見直せますか、そのために基盤をつくりましょうと。基盤を活用するためにはどういうルールが必要ですか、ここにオープンデータだとかそういう問題が出てくるわけですけれども。

 そういうふうに、まず目標設定して、その中から達成手段を考え、それを戦略的に実施する。そして個別の見直しを、考えてみれば今までと逆だと思いませんか。今までは目の前の個別のものをそれぞれの縦割りなりなんなりでやってきたわけですから、その結果として今それなりのものになっているものを整理して、我々は国家戦略としてこういったものを進めていこうではないか、私はそのように考えているわけであります。

濱村分科員 ありがとうございます。

 目標設定をして、それを実現していくために一つ一つひもといていって、それをどういうシナリオで達成していくのか、これを行っていく必要がある。これは大臣のおっしゃるとおりだと思います。

 実は、民間でもどのように業務プロセス改革などを行うのかというと、一番最初にやるのは、その目的を明確にしましょうというところなんですね。ただ、残念ながら、これまではそういったことが行われてこなかったのかなというふうにも思いますので、ぜひ大臣の強力なリーダーシップを発揮していただきまして推進していただきたいなというふうに思っておるわけでございます。

 最後の質問をさせていただきたいと思いますけれども、さまざまな、業務効率の向上とか、国民の利便性が上がるわけでございますけれども、こういったことがどう国民に還元されるのかということが非常に大事になってくるかと思います。先ほど大臣もおっしゃったとおり、シナリオあるいは明確なストーリーというのが大事になってくるかと思うわけでございます。

 このストーリーについて、シナリオでもいいんですけれども、現時点で、基本方針あるいは基本計画がまとめられてきましたけれども、全体像をぜひ国民に御提示いただきたいというふうに思うんですけれども、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 それを国民全体が共有できるようにするためには、国家の方針にしなくてはいけないわけで、私はそれを今提案しているわけであります。一総務省がやろうというだけでは、これは進みません。総務省がやらなければこれまた進みませんが、総務省だけで進むものではありません。

 今、私が申し上げている根幹にあるのは、政策評価法です。それはもう平成十三年につくりました。それから、ちょうど電子行政の一括法もそのころから準備をして進めてきたんです。ですから、今までの取り組みがあって、今日を迎える。そして、それを発展的に大きく膨らます、こういうタイミングに来ているということを御理解ください。

 その上で、今私が提案していること。

 まず、便利な暮らしをつくる。国、地方を通じた国民本位の電子行政を推進しよう。これがミッションです。

 そして、そのためのビジョン。これは、より便利で利用者負担の少ない行政サービス。それから、徹底したコストカットと効率的な行政運営。さらに、今まで申し上げませんでしたが、災害やセキュリティーに強い行政基盤。まずビジョンとしてこういうものを打ち立てようじゃないかと。

 それに向かって何を取り組むかというと、番号制度を導入することによって、オンライン申請、ペーパーレス化、これを徹底しようと。

 さらには、実は役所の中だけでも、霞が関の省庁の中だけでも、給与やいろいろなシステムが千五百あります。これを見直して、半分にできると思っています。そのための基盤も、ここのところでさらに強化をしました。政府間の情報基盤も強化するんです。それから、自治体のクラウド化も進めていきます。こういったことをやっていく。そして、全国の基幹ネットワークを構築する。これももう予算化を、準備作業ですけれども、入れていきます。そういうもので、クラウド化とセキュリティー対策、それからプライバシーの問題、これも整理しなきゃいけないということだと思います。

 そして、まず、これをやるための司令塔組織をつくらなければいけません。ガバナンスを徹底させるという意味において、政府内でこれを国家の目標として進めていく、そういう形をつくらなければいけないと思うんですね。その意味においては、政府のCIO、これは大いに活用できるのではないか、このように思っています。

 それから、プロジェクトを進めていく上では、やはり社会の共通ルールをつくらなきゃいけないんです。オープンデータ、誰かがデータを提供したら、そのデータを別の人が使えるようにしなければいけません。秘匿性も必要ですし、セキュリティーも必要です。でも、基本的に、個人の情報に係るところも、ここまでは使っていいと。それはオープンデータとしてほかの人が使えるようにする、こういうルールづくりが必要だと思います。

 さらには、政府や行政の中に人材を育成しなくてはならない。したがって、人材育成を、我々とすれば、政府の中だけでも、年間一万人、研修制度を設けて、そういった意識を共有させながら、まずは自分の役所の中でそういった作業をしてくれ、こういうことを進めて、これを電子行政の推進として行っていったらどうかという御提案を、今、経済財政諮問会議だとかいろいろなところで、きょうもそうでございますが、私も機会あるたびに申し上げているというところでございます。

濱村分科員 ありがとうございます。

 本当に電子政府を推進するためにも、これまでの延長線上ではなくて、ゼロベースで、行政サービスはどうあるべきか検討していただきまして、そのために必要な手当て、措置を行っていただきたいと思います。もちろん、私自身もお役に立てるように全力で取り組むことをお誓い申し上げて、質問とさせていただきます。

 大変にありがとうございました。

奥野主査 これにて濱村進君の質疑は終了いたしました。

 次に、輿水恵一君。

輿水分科員 公明党の輿水恵一でございます。

 私は、地域の防災力の強化、そういった視点で、総務省関連の予算について質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 初めに、消防防災体制の強化について、大規模災害発生時の救急消防援助隊の災害対応力を強化するための消防救急デジタル無線の整備について伺います。

 消防救急無線は、消防救急活動の高度化及び電波の有効利用の観点から、平成二十八年の五月までにアナログ方式からデジタル方式に移行するとされております。この消防救急無線のデジタル化は、音声の情報の伝達だけではなく、データ、文字情報や位置情報など、さまざまなデータの活用を可能にし、確実かつ効率的な消防救急活動の実現につながるものと思われます。

 例えば、消防救急車両の位置情報を活用することにより、迅速、確実に現場に車両を手配することができます。また、現場近くの受け入れ可能な医療機関情報を活用することで、迅速かつ適切に救急活動が進められるようになると思います。さらに、この消防救急無線のデジタル化により、利用可能なチャンネルをふやすことができるようになります。事案別のチャンネルの設定により、活動内容に応じて、必要な情報を必要な部門に、迅速かつ的確に伝達することができるようになります。現在懸念されている大規模な災害が発生したときの多角的な活動や広域連携を可能にするためには、この消防救急無線のデジタル化がまさに必要であると思います。

 そこで、まず、消防救急無線のデジタル化の重要性、また大規模災害発生時の整備の効果についてどのように考えているのか伺います。また、あわせてデジタル化について、全国の自治体消防における進捗状況についてもお聞かせ願えますでしょうか。よろしくお願いいたします。

新藤国務大臣 まさに御指摘のとおり、大規模災害ですとか通常の業務においてデジタル化をする、しかも、それを消防救急という極めて緊急かつ重要な場面で、人の命がかかる部分であります、そういったときに、そこに展開するというのは、最も取り組まなければいけない、最重要課題の一つだ、このように思います。

 そして、消防救急無線のデジタル化によりまして、まず、チャンネル数を増加すると御指摘いただきました。チャンネル数を増加するということは、結局、複数事案への対処が可能になるということです。

 東日本大震災のときに、大規模災害時、全国からの緊急消防援助隊が参集した場合でも、やはり通信の混雑とかふくそう、こういったものが発生してしまったんです。ですから、これをデジタル化することによって、緊急消防援助の運用の混乱が回避できるようになるのではないかというふうに思います。

 もう一つは、この通信機能の強化が、広域に及ぶ被災地に展開できる、広域展開です。そして、そのことによって効率的な部隊の展開が可能となる、こういうことだと思います。

 この導入の取り組み状況については、事務方からちょっとお話しさせます。

市橋政府参考人 消防救急無線のデジタル化の進捗状況でございますが、委員御指摘のとおり、消防救急無線は平成二十八年五月末までにデジタル化するということになっておりまして、整備に着手または整備済みの割合は、平成二十五年四月一日現在で四〇・六%となっているところでございます。

輿水分科員 ありがとうございます。

 ここで、デジタル化を進めている自治体において、システムの設計や整備から運用に至るまで、数年を要している実態もあるように伺っています。

 このような実態を踏まえ、やはり、災害というのはいつ来るかわからない、緊急性がありますので、導入してから運用までの期間もしっかり短縮をして、もしもの災害にしっかりと備えていくことは重要だと思いますけれども、その辺の、運用までの期間短縮への支援についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。

市橋政府参考人 消防救急無線をデジタル化するに当たりましては、私ども、消防本部の取り組みを支援するために、無線に関する技術的知見を有する技術者でございますとか、あるいはデジタル化の整備を先行的に進めている消防本部、これらの職員をアドバイザーとして派遣するというふうな事業を展開しているところでございます。

 何せ、委員御指摘のように、災害はいつ来るかわからないという問題もございますし、また、期限が限られているということもございますので、これらの事業を活用しながら、円滑に消防本部での整備が進むように取り組んでまいりたいというふうに考えております。

輿水分科員 ありがとうございます。

 ぜひ、円滑なデジタル化の推進をよろしくお願い申し上げます。

 それでは、次に移らせていただきます。

 消防防災体制を強化するための高機能消防指令センター、また耐震性貯水槽等の消防防災施設の整備促進について伺います。

 大規模災害が発生した際に被害を最小限に食いとめるためには、情報の迅速な収集と的確な支援活動が必要であると思います。そのためには、先ほどの消防救急無線のデジタル化と同時に、十分な機能を備えた指令センターの整備は不可欠であると思います。

 そこで、どのような整備方針を持って、また、どのような役割、効果を期待し、この高機能消防指令センターの整備を進めようとしているかについて伺います。あわせて、全国における高機能消防指令センターの整備状況についてもお聞かせください。よろしくお願いいたします。

市橋政府参考人 高機能消防指令センターにつきましては、出動指令を自動的に行う機能も備えてございまして、災害通報に迅速、的確に対応できるとともに、全国からの応援部隊であります緊急消防援助隊に的確に指示を与えるためにも非常に効果があるものというふうに考えているところでございます。

 高機能消防指令センターの整備につきましては、その促進を図るために、従来より、補助金や地方財政措置により財政支援措置を講じているところでございます。

 今後の高機能指令センターの整備につきましては、費用負担の低減の観点やより広域での運用による住民サービス向上の観点から、消防の広域化や指令業務の共同化とあわせて整備することが望ましいと考えておりまして、そのような整備につきましては、補助金の優先採択なども行うというふうにしているところでございます。

 各消防本部におかれましては、これらの財政支援措置も活用し、効率的な高機能消防指令センターの整備に努めていただきたいというふうに考えているところでございます。

 なお、高機能消防指令センターがどのような整備状況になっているかということでございますが、実は、これは単独で整備しているところも多うございまして、私ども、全体像というふうな把握はまだ行っていない状況にございますけれども、例えば、先生御出身の埼玉県におきましても、二つの消防本部を除いて高機能指令センターの整備が進んでいますように、単独での整備もかなり進んでいるものというふうに考えております。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 まさに、消防の高機能指令センターの整備、場合によっては各自治体でそれを担っていくというのは難しい場合もあるかと思います。今言われたように、広域的に共同でそういったものを整備しながら迅速な対応がとれる、そんなことも必要なのかなと感じております。

 今発生が懸念されている首都直下型あるいは南海トラフの地震に対して、やはり国民の命と財産を守るために、本当に一日も早い、先ほどの消防救急無線のデジタル化とともに、高機能消防指令センターの整備、しっかり掌握をしながら、地域にアドバイスをしながら進めていただけたらと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、あわせまして、大規模災害の発災後、住民の命と財産を守るために、やはり大規模火災の発生をいかに防ぐか、こういったことが重要になると思います。

 そこで、地震が発生してしまいますと、水道管の破損により消火栓等からの水が得られなくなってしまう、そんな場合に備えているのが、今回予算にも挙げられております耐震性貯水槽、そういった整備があると思います。

 この耐震性の貯水槽についても、その整備方針と進捗状況を確認させていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

市橋政府参考人 お答えいたします。

 耐震性貯水槽につきましては、断水により消火栓が使用不能になった場合の消防水利として利用できます。また、それのみならず、生活用水としても重要な役割を担うものでございまして、私ども、この整備につきましては、補助金を確保しながら、鋭意整備を推進してきたところでございます。

 現時点で私どもが把握しております耐震性貯水槽の全国での整備状況でございますけれども、九万四千基余りというような状況になっているところでございます。

輿水分科員 ありがとうございました。

 次に、救急体制の強化における消防と医療機関の連携の推進についてお伺いします。

 先日、埼玉においても、輸送先の確保に時間を要してしまい、その患者が死亡してしまう、そんな事例も起きてしまいました。非常に残念なことであると思います。

 救急医療体制の整備は、救急医や救急病床の不足から思うように進まない、そんな現状もあるかと思いますが、救急の機関の受け入れ情報を消防の救急搬送とできるだけ連動させて、その情報を的確につかむことにより時間を短縮していく、こんなこともできるのではないでしょうか。

 実際、佐賀県では、救急医療情報システムを構築し、その運用を開始しています。救急搬送において受け入れ病院の確保が課題となっている中で、現場を見える化することで救急患者を一刻も早く病院に搬送する。一人でも多くの人の救命につなげていくために、佐賀では全ての救急車に端末を配備している。そして、救急車の中から、どの病院が受け入れ可能なのか、あるいはどの病院に搬送が集中しているのか、そういった情報を瞬時に捉え、救急隊が判断をし、共有をし、そして各行動をしていく、そんなシステムと伺っております。

 まさに、消防の中でやるべきこと、できることをしっかり進めながら、こういった救急への対応も図っておく、このことは大変に重要かと思いますが、見解をお聞かせ願えますでしょうか。

市橋政府参考人 議員御指摘のとおり、消防機関と医療機関の連携による傷病者の円滑な受け入れ体制の整備が必要でございまして、消防庁では、平成二十一年に消防法を改正いたしまして、都道府県に、傷病者の搬送及び傷病者の受け入れの実施に関する基準というものの策定を義務づけたところでございます。

 この実施基準を運用するに当たりまして、佐賀県におかれましては、救急隊員がタブレット端末に医療機関の受け入れ情報を入力し、その情報を県内の消防機関や医療機関がリアルタイムで共有するという、さがネットを構築いたしまして、傷病者の搬送と受け入れの円滑化を図っているというふうに伺っているところでございます。

 このような取り組みにつきましては、全国でも広がりを見せ始めてきておりまして、私どもといたしましても、それらの取り組みの効果ですとか、あるいは導入に当たってのノウハウなどにつきまして調査分析をし、都道府県や市町村、医療関係機関等に周知することで、消防機関と医療機関の連携の推進というものを図ってまいりたいというふうに考えております。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 ぜひ積極的な取り組みをよろしくお願い申し上げます。

 それでは、続きまして、防災、減災のための地域の体制強化について伺いたいと思います。

 初めに、自治体の技術系職員不足について伺います。

 東日本大震災の被災地の復興を加速するために、また防災、減災の視点から、あの笹子トンネルのような事故を未然に防ぐために、やるべきことを迅速に進めることが重要であると思います。ここで、そういった工事のための予算が確保されたとしても、発注業務が滞っていては具体的な工事は進まない、そういった状況があります。現実問題として、地方自治体では、技術系職員、特に土木技術者が不足しており、迅速かつ適切な発注ができない状況にあります。

 そこで、地方自治体の技術系職員の配置状況についてどのように把握されているのか、また技術系職員の不足に対してどのような対策を打とうとしているのか、見解をお聞かせ願いますでしょうか。よろしくお願いいたします。

新藤国務大臣 これは頭の痛いところであります。そして、技術系の職員が年々下がってきているその最大原因は、我が国において公共事業を減らしてきた、それに尽きると思います。自治体とすれば、仕事がなくなって、そして需要がなくなったところをやはり削減していったんだろう、こういう大きな流れがあると思います。

 一方で、今委員が御案内のように、東北の被災地では通常の十倍以上の予算、今までの一般会計の十倍以上の予算を組み、そして事業量が、町によってさまざまでございますが、五倍から十五倍、こういうふうになっているわけであります。そこで最も必要なのは技術系の職員なんですが、最も少なくなっているのが技術系の職員だということであります。

 かつ、公務から、日本再生のために、全国的にも、もう一度、命を守る国土づくりをやろうではないか。それから、いろいろ大規模な修繕や補修が必要になってきます。高度経済成長時代に大量に整備された社会資本は、同じ時期に大量に老朽化するわけですね。

 ですから、笹子トンネル、ああいう事故ではありませんが、またそういったことが起きないようにするためには、今の社会資本をどのように長寿命化し、そしていつリニューアルしていくのか、その計画をつくらないと、ある試算によれば、あと十五年か二十年するともう我が国の予算は修繕だけで終わる、こういったことも想定されているわけであります。

 したがって、こういう部分を改善するためにも、やはりどうしても技術系の職員が必要だということだと思います。

 土木技師の職員数だけ見ても、ピーク時の一万七千人の減少ということでありまして、二割近くの減少になっているということであります。ですから、今後、我々とすれば、逆に言えば今が一番厳しいときで、仕事がふえれば、当然そこに必要な人間はまた充足させていくことになると思いますから、ここをいかに工夫するかというのは、自治体の声も、また御相談に応じながら我々も取り組まなければいけないと思います。

 特に、被災地の職員不足については、これはもう私も本当に心を痛めておりまして、今おかげさまで、千五百人欲しいんだというものに対して千人ちょっとまでは確保できるようになったんですが、それでもまだ足りないわけです。したがって、そういったことをいろいろとお手伝いさせていただきたい、このように考えています。

輿水分科員 どうもありがとうございました。

 まさに、変化の中に、急激に今回、震災あるいは国土の強靱化、また高度経済成長期に建設されたものが一気に老朽化を迎えるということでその需要が高まっている。いかに対応していくか、前向きな御答弁をありがとうございます。

 ただ、人の確保と同時に、地方自治体の発注の仕方とか仕事の出し方の形態を簡略化、簡素化して技術者不足を補う、そういった取り組みも必要なのかなと思うんですけれども、その点についての見解はございますでしょうか。

新藤国務大臣 まさにおっしゃるとおりで、やるべきことは、工夫をすればいいことはぜひやりたいと思いますし、また、自治体においてそれぞれ工夫をしていただいて、我々とすれば、いい事例があれば、そういったものを全国に紹介する。先進自治体の取り組みを全国の自治体に御紹介させていただいて、そして、全体としてより効率よくしていく、こういうことが重要だと思いますね。

 あわせて、やはり考え方を変えなきゃいけないと思います。それは、例えばビッグデータです。それからICTです。

 要するに、今までと同じやり方ではお金がかかるだけなんです。だから、お金をかけずに、しかも上手に長寿命化するとともに、今すぐやらなきゃいけないものは何なのか、それをデータでチェックするということです。それは、センサーをたくさん埋め込んで、それでもって、今危険度が高いのはどこだとか、そういったものをICTで管理して、そこに最適な対策を打つとか、そういう工夫が必要だと思います。

 これからつくるものは、つくったことによって町を活性化させなければ意味がありません。新しい公共事業のあり方というものも考えていかなくてはならないだろう。そのときに、誰が担ってくれるのか、そういう観点での人材育成も必要だ、このように考えます。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 まさに、あらゆる視点で、またあらゆる技術を使って、国家の予算が効率的に、効果的に使えるような取り組み、ぜひ推進もしていただけると思いますので、よろしくお願いいたします。

 続きまして、今地方自治体では、財政の健全化に向けて人員の削減などが積極的に進められている状況でございます。その一方で、地域再生への取り組みや高齢化への対応など仕事量も増加する、そんな現状があります。

 このように、人員削減を進めながら多様化する住民の安全と安心を守るためには、自治会などの地域の共助の組織の活用というか活躍が期待されるところであると思います。

 現在、大規模な災害の発生が懸念されている中、各地方自治体では、地域ごとに自主防災組織の構築に取り組んでいます。地域の防災においては、まさに自助、共助そして公助のバランスのとれた、そういった制度の整備が必要であります。

 そこで、各地域の自主防災組織の整備の実態と、また整備を促進するための支援、こういったものも、もう自治体だけでは行き詰まっているところも多いと伺っておりますので、その辺に対しての考え方、見解をお聞かせ願えますでしょうか。よろしくお願いいたします。

市橋政府参考人 自主防災組織は、自分たちの地域は自分たちで守るという自覚、連帯感に基づきまして自主的に結成された組織でございまして、災害による被害を予防し、軽減するために活動を行っているところでございます。

 この自主防災組織の結成状況でございますけれども、平成二十四年の四月一日現在で、全国で十五万五百十二組織、活動のカバー率で申しますと七七・四%というふうになっているところでございます。

 これまで、消防庁におきましては、自主防災組織活動を進めるための指針であります自主防災組織の手引の作成ですとか、あるいは活動事例集の作成、配布、さらには自主防災組織連絡協議会の結成促進に向けた出前講座の実施などを行っておりまして、自主防災組織活動の普及啓発に努めてきたところでございます。

輿水分科員 どうもありがとうございます。

 まさに、自主防災組織、しっかりと今推進をしていただいている、よくわかります。

 そこで、一つだけ、現場の問題といたしまして、自主防災組織というのは、大体、自治会がそのまま立ち上げている、そういった現状がございます。そして、その自治会なんですけれども、役員が高齢化してしまって、また、若手の、そういった自治会を担っていく人材がなかなか輩出できない、そんな現実があります。

 自治会には、総務省関連のこういった事業だけではなく、厚労省の見守りだとかいろいろな仕事、これは、地方自治体の職員の負担を軽減するというか、自助と共助のバランスをとっていくという視点で、どんどんそういったところに、新たな視点での自治会等への取り組みは必要かと思いますけれども、まさに自治会等の人材の育成あるいは人材の確保、こういったものに具体的にしっかりと手を打っていかないと、今構築された自主防災組織等も、やがて高齢化をして、いざというときに機能しなくなってしまう、そんな点が懸念されるわけでございます。

 やはり、地域の防災力をしっかりと整えるということは国の防災力に即つながる、そういった視点での地域の人材の育成また人材の確保についての見解をお聞かせ願えればと思います。

新藤国務大臣 私は、まず、地域のきずなを高めること、これが重要だと思うんです。そして、あの阪神・淡路の大震災、それから今回の東日本大震災、それによって、随分多くの日本人が、防災というものをさらに真剣に考えなきゃいけないと。そして、いつ自分たちの暮らしにこういったことが起きるかもしれないということも、かなりの人間が意識を高めているんじゃないか、このように思うんですね。

 そして、私も地元の活動をよく承知していますけれども、うちの町は、自主防災組織率は一〇〇%です。今どうなっているかというと、自治会単位、全市でやります。それから、二十のブロックの会合をやります、訓練をやります。それから、一自治会単位でもやり、場合によってはその中の分区というか、そういう単位でもやるようになりました。そして、泊まり込みでの、やはり夜をどういうふうに過ごすか、こういったこともやっているし、では、避難場所である学校を使うためには、実際に使ってみなければわからないと。そういう意味で、とても私は充実しつつあると思うんですね。

 あの阪神のときもそうでした。今回もそうですけれども、自治会、また自主防災の地域のきずなの中に入っている人たちは早く見つかるんです。この時間だったら、あのおばあちゃんはあそこにいるに違いない、ここの場所にはおじいさんがいるはずだと。地域のコミュニティーの中に入っている人たちは見つかるんです。でも、そこから外れていってしまっている人は、そもそも存在が気がつかれていないならば、その人を捜しに行く人もなかなかいない。だから、やはり日ごろの暮らしが最大の防災につながるわけで、表裏一体ですよね。ですから、そういう国民意識というものを我々は粘り強く広報していかなくてはいけないというふうに思うんです。

 私がいつも言うことは、これは訓練だからと言って、皆さん来ます、でも、訓練でできないことは実戦では絶対にできない、訓練でできないことは実際に起きたときに対応できない、これが自衛隊の鉄則です、ですから、どんな組織も、どんな活動も、今の訓練ができなければ現場でできないんですよ、命を争う瞬間に、そのときに役に立つかどうかは今なんです、こういう話をさせていただいております。隊列一つとっても、隊列がだらだらしている組織は全くうまく機能しません、そういうところから皆さんやろうじゃないですか、こういうことを申し上げるんですけれども、それは自治体がかなり取り組んでいただいていると思います。

 高齢化が進むけれども、そこの活動が強化されていれば、必ずそこに新しい人が、意義を感じている人が入ってくるわけなので、支援措置をすることも重要ですが、やはり国民意識をきちんと啓発していくこと、これを心がけなければいけないのではないかな。我々がそれに、行政としてしっかりバックアップをさせていただきたい、このように考えます。

輿水分科員 ありがとうございます。

 まさに、何でもお金をかければとか、支援をすればいいというよりも、国民意識をしっかりと醸成しながら、自分たちの命は自分たちで守る、地域は自分たちで守っていく、そういったまちづくり、国づくり、これから大きなキーワードになる、その新藤大臣の御決意、私も同じ思いで、地域の繁栄と発展のために、また全力で働いてまいりたいと思います。

 本日は、大変にありがとうございました。

奥野主査 これにて輿水恵一君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

奥野主査 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。黄川田仁志君。

黄川田(仁)分科員 よろしくお願いします。

 新藤大臣、日ごろから大変お世話になっております。埼玉県連の衆議院候補者の公募審査のときからの御縁ですが、新藤先生が大臣として、そして私が衆議院議員として、このように相対して委員会で質問できることをうれしく思っております。

 さて、時間も限られておりますので、早速質問に入りたいと思います。

 私は、自立と誇りある日本をつくるということを訴えております。その一つの手段として、地方分権改革を進めていくことが重要だと考えております。地域のことは地域で考える、地域が自主性を持ち、自分たちの地域をよくするために創意工夫をしていく、上からの押しつけでない手づくりのまちづくりを行っていく、それが地域の元気を生んでいくことと思っております。そして、元気な地域の集合体が元気な日本をつくっていく、日本の活性化につながるのだと考えております。

 しかしながら、二十年以上も地方分権や道州制などの議論がされているところでございますが、いまだ満足のいく地方分権制度が確立されておりません。いつになったらできるのか。政治のリーダーシップで、できるところからやっていくということが必要でありますが、大臣の地方分権改革に関する認識をお聞かせいただきたいと思います。

新藤国務大臣 まず、記念すべきこの予算委員会の分科会での最初の質問、黄川田委員からこのように質問を受けることを私もうれしく思っています。御縁があって、我々の小選挙区の支部長公募に応募していただいて、あなたが埼玉県の第一号の公募で選ばれた方です。とても期待をして、また、国会に新しい風をもたらしてくれるのではないか、こういう思いから、選考させてもらった一人として、大いに活躍をいただきたいし、また、専門知識を生かして、いろいろと提案をいただくことを期待しております。

 その上で、今とても大事な御質問をいただきました。私たち日本は、あらゆる意味で、もう一度この国の力を取り戻さなくてはいけない、日本再生をするんだ、それが安倍内閣であり、そして、与党としての自民党が国民の皆さんに訴えたことであります。

 しかし、それは自民党の問題ではありません。日本国が、今この状態で、長い間の閉塞状況を打ち破って、どのようにして、もう一度新しい力を、そして、次なるみんなの希望をつくることができるか。それは、今我々、与野党問わず全政治家に求められている責務だと思います。

 その上において、この国に今必要なことは、第一で、経済の活性化、金融緩和と財政出動を行いました。しかし、そのカンフル剤は、その先の持続可能な成長をつくっていかない限り、これはカンフルで終わってしまうわけであります。そして、その中で、持続可能な成長軌道に乗せるための大切な一つが地域の活性化だと私は思っています。

 どんなにお金を投下して、そして何かをつくっても、それを使う人がいなければ、また、それを使って次の展開ができなければ、これはいっときの投資で終わってしまいます。ですから、私は、地方の行政を預かる総務省の大臣を拝命してから、まず、この国の元気をつくるんだ、それは地域の元気の塊が日本の元気になるではないかと。

 しかも、その地域の元気は、それぞれのやり方がある。過疎地には過疎地のやり方が、高齢化が進んだ町には高齢化が進んだやり方がある、そして、若い人が集まって人口流動の激しい、そういった都市部は都市部の元気のつくり方があるんだと私は思っています。

 その意味で、地域の元気創造本部というものを立ち上げて、どうすれば日本の国が元気になれるのか、そのパターンというかモデルをつくってみようじゃないかということであります。

 それは一つは、地域の仕事を回していく、それぞれの地域で独自の工夫を持って、自分たちで自立経済を回していける、そういう仕組みをつくろう。これはイノベーションサイクルと呼んでいますけれども、自治体、企業、市民、そして金融機関、そういった方々が入って、地域の産学金官民ラウンドテーブル、こういったものをつくってやってみようじゃないか、これが一つ。もう一つは、例えばエネルギーですとかそういった新しいインフラ、公共事業のパッケージでもって地域を元気にさせる、そういう仕事ができないか。これが地域の元気創造本部の二つのプロジェクトであります。

 そして、一つ目のイノベーションサイクル、地域経済のイノベーションサイクルにつきましては、予算も必要な予算をとらせていただきました。六十事業で約二十億を見込んだ予算要求をしたんです。それに対して、これは二十四年度の補正でありますが、何と二百四十事業、九十四億円に上る応募が来ました。その中から実施可能なものを厳選して、とりあえず今十八事業はもう仕事を起こしました。そういうふうに具体的な成功事例をつくりながら、国の元気をつくれるような、そして地域の活性化を図れるような、そういう仕組みをつくっていってみようということであります。

 そして、地域の元気創造本部のミッション、何のためにやるか。それは町の元気で日本を幸せにする、こういう目標を掲げていまして、それに具体的なアイデアや仕組みをつくってみよう、こういうことで始めているわけであります。

黄川田(仁)分科員 ありがとうございます。地域の元気創造本部の事業、期待しております。

 ただ、私、今お話を聞いて、国、地域、そして地域の人たち、また産学官連携、そういうものが必要であるということは全くそのとおりですが、私の問題意識としては、分権を妨げる省庁間の縦割りというものがやはりまだまだあるというふうに思っております。財政が逼迫する中で、各省庁で縦割りを排し、事業の重複を避け、協力できるところは協力していくことが大切であると考えております。

 そのためには、政治のリーダーシップ、特に大臣のリーダーシップが大切であります。新藤大臣、行政の効率性の向上と省庁間の縦割りの弊害の是正に対して、その調整に進んで協力していただけますでしょうか。大臣、よろしくお願いいたします。

新藤国務大臣 まさにそこがポイントになると思うんですね。

 それで、地域経済のイノベーションサイクルの展開においては、自治体が仕事を進めてもらいます。でも、そこには、地域には資源があるんですね。これは経済産業省が所管するものが多くあります。それから、地域には資金があるんです。地域の金融機関の預貸率は五割程度なんです。お金を預かっているけれども投資先が見つからずに、どこに投資していいか決めかねている、そういうお金が半分残っているんです。それを所管するのは金融庁です。そして、そういうまちづくりの取り組みを全体的にサポートし、バックアップするのが総務省です。

 この仕事は、総務省が根っこにいますけれども、経済産業省と金融庁に参加してもらって、そして、それぞれの知見を、アイデアを出していただきながら、主体的に、町が自主性を持ってやっていただく。

 今現状で、国がお金を用意しますが、それと同額を地域金融機関が準備してくれています。ですから、投資効果は二倍ということになるわけなんですね。そういう形で、まさに横串を刺してお互いがそれぞれ、これは農水省も環境省も国土交通省も、いろいろな仕事をやっています。それぞれが連携できるものは一つのテーブルに入ってやろうじゃないか、こういう仕組みを、地域が主体的に動くときに、そこに国がいろいろ絡んでいけるように、そういう形をつくろうとしているのが一つ。

 それから、行政の効率化を行うためには、これは工夫を超えた、次元の違う取り組みが必要だと思います。それが行政の電子化。新しいICTやイノベーションを使って、今までとは違う形で事務処理をする。それから、一つの事務はほかの自治体も共有できる、ほかの地域にも連携できる、国も一緒にやれる。そして、そこに省力化だとか予算のコストカット、こういったものができるようにする。

 この二つを組み合わせてできないかという思いがあって取り組んでいる。

 さっき言ったように、地域のエネルギーを生かす。この地域は風力エネルギーだ、この地域は地熱エネルギーだ、何のエネルギーを使うにしても、そこにはコンピューターの処理がないと、ICTをもって効率的に、しかもスマートグリッドで、必要なところに必要な電気を割り振るような、そういう中から余剰電力を売り、余剰電力をほかのもので使う、そういう中で町の自立が生まれてくるのではないか。こういう取り組みをこの中ではやっている、こういうことなんです。

黄川田(仁)分科員 ありがとうございます。大臣のリーダーシップを期待しております。省庁の連携、そして電子化による効率化、期待しております。

 地方分権について、大臣の姿勢をお答えしていただきました。

 今度は、地方分権について、個別具体的な行政の事業の改善をお願いしたいと思っております。

 地域が地域のことを考えるためには、考えるための材料、すなわち情報が必要です。そこで、国が持っている統計調査データなどの情報を地方公共団体がより使い勝手のよくなるようにしていただきたい。

 例えば、現在、国が実施する統計調査のデータは、地方公共団体から統計局などへ申請があった場合、目的などの明確な提示があれば、申請部分のみに限りデータの提供がなされます。しかし、目的のあるなしにかかわらず、地方公共団体は調査データへ自由にアクセス、そしていつでも使えるようにするべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

平山政府参考人 お答えいたします。

 統計調査におきましては、本来予定している統計の作成以外には用いないという国民との約束のもとに国民から正確な情報を御提供いただいておりまして、この信頼の確保が我が国の高精度の統計を成り立たせる大前提となっていることがあります。御指摘の手続も、その文脈の中で理解、運用されるべきものであると考えております。

 他方、委員御指摘の点につきましては、行政の持つ情報の有効活用に当たると考えられ、多くの場合、この有効活用は積極的に推奨すべきものであり、個々の統計調査における地方公共団体の役割、協力をしておるということでございまして、また、その統計情報の保有状況を踏まえつつ、調査票情報につきましても、手続が何かそこら辺の妨げになるようなことにならないように運用をすべきであると我々も考えております。

 ただ、一般的に、個々の調査票情報の自由アクセスとか、調査実施者以外への無限定な提供、分析まで認めることはなかなか難しいものと考えておりまして、調査票情報につきましては、先ほど申し上げた信頼を確保できる範囲内で、アクセス、分析をより柔軟にするという考え方で今後とも考えていきたいと思っております。

黄川田(仁)分科員 実施者が国ということで、それを集めたデータを国が使うことに対しては国の信頼が得られるということなんでしょうが、地方公共団体、地方自治体というのは、データを使うに当たりまして、信頼を置けないということなのでしょうか。

平山政府参考人 お答えします。

 信頼を置けないというわけではございませんが、それぞれの統計調査を実施する際には、こういう目的であるということで国民に周知をして調査に協力していただいているという実情にありますので、やはり使うときには、それぞれで、今もやっていますが、各省庁で承認ということで、そこについては最低限必要かなと。

 ただ、そのガイドラインもつくって、各省ごとに承認をしておりますので、そこら辺の実態がばらばらにならないように、もう少し運用を柔軟にするようなことも考えつつ、先生の御指摘についてお応えしたいかなと思っております。

黄川田(仁)分科員 運用を柔軟にするというところで、具体的に何かアイデアみたいなものはございますでしょうか。

平山政府参考人 済みません。個々に統計調査、各省それぞれやっておりますが、どこにどういうというのは具体的にまだございませんが、どこの範囲まで報告事項を求めるとか、その点をある程度ガイドラインで決めておりますが、若干厳しくやっているところと、ある程度、公共団体につきまして、少し柔軟にやっているところもございますと聞いておりますので、そこら辺は、ちょっと実態もお聞きしつつ、改善をすべきところはしていきたいと思っております。

黄川田(仁)分科員 これ以上突っ込んでいってもあれなので、柔軟な運用を心がけていただきたいと思います。

 私が申し上げたいのは、これから地方分権を進めていく上で、地域が地域のことを、より詳しく情報を得るために、せっかく国で実施している統計データがあるということで、それで、委託によってやっておりますが、実際に手足となって集めているのは地域なんですね。国は、委託費を払っているといいますが、それ以上の労力がかかっているわけですから、お金だけではなく情報で返してあげて、国だけが情報を握っているのではなく、地方も柔軟に情報にアクセスして、地域の政策の立案とかに役立ててほしいというふうに考えておりますので、柔軟な、そんなに厳しくなく、求められたらすぐ出してあげるというようなことをしていただきたいと思いますし、また、先ほど新藤大臣も、IT化ということがありますから、例えば、誰か、コード番号とかがあって、データベースにしてアクセスできるようにとか、せめて自治体が集めたそのデータだけはCD―ROMとか電子媒体で上げたりとか、そういうようなものを今後考えていただきたいなというふうに思っております。

新藤国務大臣 これは、少し意見の食い違いというか認識の違いがあると思うんですね。

 今統括官が言っているのは、統計法に基づく統計原票についての公開の話なんです。これは、それぞれの国の責任において集めた統計の、一事業所の、例えば本当のその中身がどうかと、これはなかなか出せません。でも、その集計した結果として、こういう統計ができ上がりました、それの活用は、これは、やっていただけるものはしていこうとしておりますし、既にそれは、基本的に公開しているということなんですね。

 今委員が言ってくれているのは、そういうデータも共有して、そして加工できるようにしたらどうだと。電子上で使えるようにしておくという工夫が必要なわけですよ。今現状では、紙ベースで出しているだけですから、データとしての応用運用ができないわけですね。我々のIT化でやらなきゃいけないのは、それはオープンデータといって、どなたかから出していただいたデータ、それを別の人が使うことができるということは、同じ技術標準にしておかないと使えないわけです。そういう工夫をして、国の、統計だけではありません、いろいろなデータがあるのをお互いに国民が共有できるようにしようじゃないか、こういう工夫はしていっているんです。

 でも、今こちらが言っているのは、完全なその手前の、まさに統計の原票の部分でありまして、これは法律に基づいた処理が必要だ、こういうふうなことで、向かう方向は同じ方を向いていて、黄川田委員がやるべきだと思っていることは我々も取り組んでいる、こういうふうに御理解いただければいいと思います。

黄川田(仁)分科員 ありがとうございます。

 私が言っているのも、生の原票を出せと言っていることではなくて、それにしても、結構細かく、こういう目的で、こういうことに使用するからデータを出してくださいということで出てくるのは承知しているんですけれども、目的をつくるために、ちょっとこれを見てみたいとか、そんなに目的が明確じゃなくても、ちょっとそろえてやってみたいというような場合に、もうちょっと簡単に出てくるように、運用を柔軟にしていただきたいなというところでございます。

 次の質問に移ります。

 各地方公共団体が、新たに自主的な政策等を立案するときに、他の団体がどのような取り組みをしているかを参考にする場合が多いことは、既に御承知のことと思います。しかし、国が有する地域活性化に関するさまざまな先進事例のまとまったものが提供されていません。例えば、総務省ホームページに地域創造データバンクがありますが、掲載情報が古く、掲載事例も少ないということでございまして、全国の地域が、必要な際、いつでも各種先進事例にアクセスできるような仕組みをつくっていただきたいのですが、いかがでしょうか。

関政府参考人 お答えいたします。

 今のお話に出ました地域力創造データバンクでございますが、これは昭和二十一年の四月に運用を開始しております。基本的に、当時、我々の情報をお伝えするということで記者発表資料などを提示しておったわけですが、今先生から御指摘いただいたように、正直申し上げて、胸を張れる状況になっていないということは否定できないと思っておりまして、先ほど大臣がお話しさせていただきましたが、地域の元気創造本部というものを立ち上げて今取り組みを始めましたので、私どもも、これを機会に抜本的に見直しをして、地域の元気創造のいわばプラットホームみたいなものとして再構築して出したいということで、作業を今始めているところでございます。

 具体的には、やはり地域が今欲しがっているのは、先ほどお話ございましたが、地域経済イノベーションサイクルで、よそがこんなことをやっているというような事例とか、あるいは過疎地域でも、今回の補正予算で大変な応募がありましたけれども、地域のNPOの方々と一緒にこんな取り組みをしているとか、そういうまさに新しいいろいろな事例をしっかり私どももお伝えする。それから、一方通行だけではなくて、まちづくりの担当者なり団体の方々もこちらにいろいろな注文、アクセスできるようにしたり、あるいはお互いに意見交換できるような、そういういわばポータルサイトみたいな形でできないかということで今作業を進めております。

 できるだけ早くシステムの調整やデータの整理、入力を行いまして、一遍にぴっちりとしたものではなくて、できるところから稼働させていきたいと思っております。

 二十一年というのは、平成二十一年です。失礼しました。

黄川田(仁)分科員 その新しいポータルサイトというものができることを期待しております。

 他方で、地域活性化に関しては、総務省のほかに、内閣官房の地域活性化統合本部が行っています地域活性化統合情報サイトというものがありますが、それはどのようなものでしょうか。

北村大臣政務官 お答えをいたします。

 確かに、御指摘のように、省庁横断の先進的な取り組み事例等にアクセス可能なポータルサイトの構築は極めて重要な課題であるというふうに認識をいたしております。

 内閣官房においても、幅広い地域活性化情報へのニーズに応えるためのサイトを既に運営し、一つには、各府省の地域活性化の施策を掲載すること、いま一つは、地域活性化に関する計画の認定状況等を掲載、かつ、その検索機能も付加するなどの取り組みを行っているところでございます。

 さらに、ホームページの運営にとどまらず、積極的な情報発信の観点から、毎月一回のメールマガジンを配信し、制度の創設、改正、さらには各自治体取り組み事例など、自治体等に役立つような情報発信を実施しているところでございます。

 今後とも、情報サイトにおける各府省の地域活性化施策の掲載を充実させるとともに、各府省の地域活性化施策サイトをわかりやすくリンクさせるなど、より一覧性の高い地域活性化情報サイトの構築に努めていきたいと考えているところであります。

黄川田(仁)分科員 この地域活性化情報サイトなんですが、見てみると、総務省のやろうとしているところとかぶる部分が出てきそうな気もするんですね。効率性の観点から、やはり本来はワンストップでここを見れば全てがわかるという形が望ましいのですが、せめて両サイトの情報がかぶらないように、また、リンクを張るなどして、そちらの地域活性化統合情報サイトと、これから総務省がつくるプラットホームの間で簡単に行き来できるように工夫していただきたいというふうに考えております。

 時間がもう迫っておりますので、次の質問に行きたいと思います。

 次に、マイナンバー制度導入に係るシステム改修の補助についてお伺いします。

 個人番号利用法案の成立の見込みに当たり、国の基幹システム構築に係る経費は二〇一三年度で予算化されていますが、各地方公共団体が実施する改修費用に係る経費についてどのようになっているかお伺いしたいと思います。国からの補助割合等、具体的な対応が決まっていたら教えていただきたいと思っております。

向井政府参考人 お答えいたします。

 番号法案におきまして、地方公共団体は、個人番号の利用だけではなくて、情報提供ネットワークシステムを通じた情報提供等が義務づけられております。そのための関係システムの整備が必要となるところでございます。

 これらの地方公共団体のシステム整備は、番号制度の導入、それから運用に当たりまして不可欠なものでございますので、地方公共団体の理解と協力を得ながら取り組むことが必要でございまして、私どもも、もう既に何度も地方公共団体に説明会と意見を照会することを行っております。

 こうした観点を踏まえまして、予算そのものは次の予算編成、ことしの秋から冬にかけての予算編成で決まっていくものでございますけれども、今後、財政当局とも相談しながら検討してまいりますが、できるだけ地方の御負担にならないような形で行えるように努力してまいりたいと考えております。

黄川田(仁)分科員 ありがとうございます。まだ具体的なところはこれからというところでございますが、強調しますが、マイナンバー制度は国がイニシアチブを持ってやっている事業であります。よって、地方自治体の費用負担が少なくなる方向で御検討いただくようお願い申し上げます。

 まだ質問したいところがあったんですが、時間もないので結びに入らせていただきたいと思います。

 新藤大臣も地域の元気創造本部長でありますし、地域の元気のために地方分権改革の速度をより一層進めていただきたいということをお願いいたしたいと思います。

 最後に、新藤大臣の政治のリーダーシップによって、省庁の縦割りを排して、地域の主体性を促す政策や、より国と地域の協力体制をつくっていただくことを御期待いたしております。

 以上をもちまして、本日の私の質問を終了いたします。ありがとうございました。

奥野主査 これにて黄川田仁志君の質疑は終了いたしました。

 次に、後藤斎君。

後藤(斎)分科員 民主党の後藤でございます。

 新藤大臣におかれましては、公私とも御指導いただきまして、本当にありがとうございます。また、激務の中で分科会、きょうは夜遅くまでというお話を聞いていますが、御健康に御留意され、お励みいただきますように重ねてお願い申し上げます。

 まず、おとといの土曜日に淡路島で大きな地震が起こりました。三・一一から二年強、そして阪神・淡路大地震から十八年という形の、いろいろな教訓が生かされている部分と生かされていない部分があるのではないかなと、昨日のいろいろな新聞を含めた報道を見てつくづく痛感した次第でもございます。

 大阪府の岬町では、非常に小さな町のようでありますけれども、町長さんは地震の警報が出て十分後に登庁され、百十人近く職員がいらっしゃるそうですけれども、九十人の方々が一時間以内に参集をしたということであります。

 そういう意味で冒頭お尋ねをしたいんですが、なかなか業務継続計画が地方自治体で進んでいない、特に市町村では進んでいないという部分があるというふうに思っていますけれども、まず、簡単で結構ですから、現在のBCPの地方自治体の実施状況についてお尋ねを申し上げたいというふうに思います。

佐々木政府参考人 総務省の調査でございますが、平成二十三年四月現在、BCPを作成している地方公共団体は、都道府県では、四十七都道府県中十八、約四割でございます。市町村につきましては、約四%の策定という状況でございます。

後藤(斎)分科員 大臣、今、内閣府の方から概括的な策定状況の話があったんですが、今お答えをいただいたように二年前の数字なんですね。

 ですから、消防庁の方にお尋ねをしても、二年前しかありませんというような御趣旨でありましたから、ぜひ、今どこまで進んでいるのかというのは、総務省の方できちっと地方公共団体に要請をして、やはり最新のデータを収集していただきたいと思います。その点について、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 それは御指摘のとおりだと思います。やはり、いざというときに備えるためには、まず体制がどうできているか。その意味において、行き届かない点、また、まだ不足している点があればきちんと取り組みたい。まずは実態把握をしつつ、改善すべきものについては取り組んでまいりたい、このように思います。

後藤(斎)分科員 そういう中で、四割近くの都道府県はBCPを策定しているという中で、市町村は一方で四%。ただし、大阪府の岬町のように、阪神・淡路以降、基本的には、震度五強の地震ですか、になったら全員ができるだけ早く参集するようにというルールを決めながらやっている自治体も当然あると思います。

 そういう中で、実際、市町村というのは、ある意味では、職員の方も市町村長の皆さん方も多分、役場や市役所に近いところにお住まいだというふうに思います。一方で、都道府県になると、公舎があれば別でしょうけれども、都道府県知事の皆さんや末端の職員の皆さん方は、市町村に比べればかなり広域だと思います。

 そういう意味で、実は金曜日にも財務大臣とお話をしたんですが、中央省庁のBCPについて、やはり参集範囲が非常に限られているし、国家公務員住宅のあり方を、枠を変える必要はないんですが、やはり二十三区内というよりも山手線内にきちっとした公務員宿舎というものを残すべきは残すんだということで、きちっと検討するという形で財務大臣から御答弁いただきました。

 やはり都道府県も、特に広域になりますと、当然、市町村を超えた災害になります。そういうときに、市町村の職員は集まったけれども、県庁の職員が一部の危機管理の方々を除いて集まらないということだと、フレームだけがあって、連携も、例えば警察とも、自衛隊ともできない、国ともできないということでは絶対いけないと思うんです。

 そういう意味では、特に大規模災害時の自治体職員、特に都道府県について今実態がどうなっているのか、そして、その実態を踏まえてどういうふうに総務省として、内閣府も多分連携をしながらだと思いますけれども、要請をしているのか、その点については、大臣、どういうふうにお考えになっていますか。

新藤国務大臣 まず、今委員が御指摘の政府における緊急参集要員、これについては、まさに私が行政監視委員長をやっておりましたときの行政監視事項であります。

 基準はあるんですが、率直なところ、自分がその要員になっているか否かを認識していない、そういう場合もあり得るということもわかりました。ですから、やはりどこかにそういう穴があってはいけませんので、まずきちんと体制をつくり、かつ、その意識をきちんと定着させるということが重要だというふうに思います。

 今お尋ねの、大規模災害時における被災市町村の職員の参集基準、これは、災害対策法に基づきまして消防庁がまず防災業務計画をつくります。そして、その中で、地域防災計画に盛り込むべき事項としての職員の参集体制というものを定めるわけであります。それを今度は、地方公共団体が自治事務として、それぞれの町の地域防災計画において職員の参集基準の動員配備体制を規定している。

 この策定の割合とすれば、指定都市、中核市で一〇〇%、特例市、一般市で九八%、町が九五、村が八九ということで、おおむねの制定はされていると思いますが、今委員が問題意識を持つように、それが本当にきちんと稼働している状態なのかということは重要だと思います。ですから、引き続き、我々とすれば、そういった観点からの助言、また実態把握、こういったものには努めてまいりたい、このように思います。

後藤(斎)分科員 大臣が最後に実態把握をしてくれるということで、ぜひ早急にお願いしたいんです。

 実は、災害というのは、せんだっての土曜日の地震もそうですけれども、朝、未明ということで、土日も当然大規模災害は起こりますし、夜間にも起こるということで、ぜひまた大臣にごらんになっていただきたいんですが、平成二十四年、昨年の五月二十九日に、首都直下地震対策局長級申し合わせというのがあります。

 中央省庁業務継続計画の充実・強化に向けた当面の取組方針という中で、職員の確保というのが二番目にあります。発災時、三時間から十二時間に参集できる人数は極めて限られているという指摘と、四十八時間、要するに発災後二日たっても全職員のうち三割しか参集できないというのが、実は霞が関の実態なんです。

 ですから、市町村は、ある意味では一時間、二時間という時間差を発災時から置けば、きちっと職員の方も、よっぽど遠くにお出かけになっている以外は集まれると思うんですが、やはり都道府県になると広域ですし、私の地元の山梨でも、甲府市に県庁がありますけれども、富士吉田とか何々郡という町、徒歩だと多分、普通の足でも二、三時間か五、六時間かかるところ、多分大臣の御地元もそうだと思うんですけれども、そういうところから都道府県の職員の方は集まっているという現状なんです。

 今のような基準はあるものの、多分、普通に考えると、総務部の総務課の危機管理監、並びにその周りの方がまずそばにいる。でも、そうではない部長さんや課長さんというのは、やはり自分のうちに当然帰って、土日にはお百姓もしながら、また家族ともどこかに出かけているということになると、何か十分に本当にいけるかなと心配なので、ぜひ実態把握をしていただきたいと思います。

 ちょっとまた戻りますと、一昨日の地震の際にも、いわゆる情報伝達の仕組みで幾つかのトラブルがあったというふうに報道されています。特に大阪府では、防災情報メールが全く送信をされなかった。そして、スマホに速報が来ないという苦情もたくさんの方からあったというふうに指摘をされています。

 昨年の十二月二十五日、クリスマスの日に、総務省の方で、電波有効利用の促進に関する検討会というのの二十一ページの、電波の具体的な活用、利活用というところでも幾つかの御指摘、後でちょっと触れますが、そういうのがあるんです。

 この検討会の資料でも、デジタル化という形での今移行が進められていますが、平成二十三年度末時点でデジタル化の比率が、防災行政無線が三割、消防救急無線が一一・六%と非常に低い比率で、なおかつ、先ほど自治事務でということも当然ある中で、市町村ごとにばらばらの、変な話、いろいろな機種とかメーカーを使いながらやっているのが多分現状だと思うんですね。

 別に、一〇〇%統一しろと言うつもりは全くないんですが、ぜひそういう視点で現状と課題というものをきちっと整理をして、この中でも指摘をされているように、やはり自治体の財政力が非常に弱いのでなかなか進まないというのが一つの大きな壁なので、それについて今後総務省としてどのような取り組みをしていくのか、ちょっとお尋ねをしたいというふうに思います。

市橋政府参考人 委員御指摘の、消防救急無線のデジタル化、そして、防災行政無線のデジタル化、それぞれ、消防救急無線の方は期限がございまして、それに向けて各消防本部で取り組んでいるところでございますし、また、防災行政無線につきましても、先ほど御指摘のとおり、デジタル化の整備率は防災行政無線を整備している中で三四・二%というふうな形になっております。

 この整備に当たりましては、おっしゃるように、広域化、共同化をすることによりまして、経費の面でも節減効果になりますし、また、運用の面でも災害対策等の効果が大きいというふうなことでございますので、従来から、整備に当たっては広域化、共同化を検討するようにと指導してきているところでございまして、今後ともそのような形で対応していきたいというふうに考えております。

後藤(斎)分科員 大臣、その整備をするときに、やはりコストだと思うんですね。電波も種類によっていろいろなプラスマイナスがあるようです、目に見えないのでどうなっているかよくわかりませんけれども。

 例えば、コストが全部の整備に十億かかって、要するに、出す側と受け取る側の整備に一つの町で十億かかるというときに、では、その七割は国の方で支援しますよ、でも三割、というと三億になるわけですよね。ですから、トータルの総事業額ができるだけ低い機種というか、性能を持ったものも含めて、いろいろな資料を消防庁からいただいたんですが、何か細か過ぎて、データの、電波の云々という切り分けを見てもよくわからないんですが、やはり、そのときには全体のコストをどれだけ縮減するかということ。

 そして、先ほどもお話をしたように、防災情報メールが全く送信されない、スマホでもだめだという指摘もあるんですね。やはり、情報機器というのは複雑になっていますから、受け取る側も非常に簡単に受け取れるという視点というのが多分一番大切な部分ではないかな。

 要するに、コストができるだけ少なく一〇〇に近く普及ができるということと、大規模災害のときに受け手になった場合、非常に安易な方法。

 ですから、例えば、今ラジオというのは余り使いませんけれども、何らかの受信でメッセージが、今携帯も地震速報が鳴る場合と鳴らない場合があったりというのが、さっきスマホのお話でお話ししたとおりなんです。

 やはりそういう視点に立って、コストのことも考えて、受け取りやすさという利便性、簡易性みたいなものを考えて、先ほどお話をいただいたように研究開発をしていかないと、ハードの受信施設や送信施設を幾ら膨大につくって、頑強につくっても、実際受け取る側に全然その情報が伝達できないということであれば、全く有効ではないということですから、ぜひそういう視点での研究開発、そして支援のあり方というものをきちっとこれからやってほしいと思うんですけれども、大臣、その点についていかがでしょうか。

新藤国務大臣 先ほどからとてもいい意見をいただいていると思います。そういう建設的な、国民最大の関心事です、そして、国家行政組織がイの一番に取り組まなければいけないのが防災、減災、災害対策だというふうに思いますから、委員の意見はとても傾聴に値する、できることはまずしっかりと取り組んでいきたい、このように思います。

 まず、コストの面につきましては、自治体の負担をできるだけ軽減するという意味においては、少なくとも、防災対策事業は地方債の充当が九〇%でありましたが、二十三年度から、緊急防災・減災として一〇〇%の充当率で、そっちの方にも使えるようにしたということであります。

 それから、特に、今年度は地方公務員の皆さんに給与の削減の協力をお願いしております。これにはいろいろとお叱りもいただいておりますが、しかし、それによって生み出していただいた財源において、緊急防災・減災事業の対象ということで、これは地方財政措置に含めているわけであります。

 そのほかにも、いろいろ自由に使える、地域の元気づくり事業費も自由に使えますから、そういう中で、自治体がしっかりと取り組んでいただけるように我々も広報いたしますし、また支援をさせていただきたい、このように思います。

 そして、あわせて、今委員がおっしゃったように、日常の生活に防災の側面が入っていないと、いざというときに役に立たないわけでありますね。ですから、まず、本当に動くようになっているか、これを徹底的に見直ししていただくというのは極めて重要で、いつ起こるか、今起こるかもしれない状態のことでありますから、それをやらなきゃいけない。

 それから、あわせてもう一つは、今の、これからの新しい技術を使った防災システム、例えば衛星からの情報通信によって、地上局が壊れても携帯で受け取れるとか、そういうような仕組みを考えなきゃいけない。私はそれにもかかわっておりますが、そういうイノベーションも含めて防災については取り組んでいきたい、このように考えています。

後藤(斎)分科員 話をちょっとかえてみます。

 平成二十四年度までに、いわゆるふるさと農道・林道整備事業と地方特定道路整備事業というのが終わりになるということをお伺いしています。

 大臣のところは都会もかなり入っているところだとお聞きをしていますけれども、私の地元は、そういう意味で、実は、いわゆるふるさと農道やふるさと林道の整備というのに非常にウエートが高く依存をしながら今まで農道や林道を整備させてもらっています。

 いろいろな時代の中で変化をするのはやむを得ないと思うんですが、急にブレーキをかけられても困るなという思いも、地元で普通にお仕事をされたり、そこに住んでいる方は当然思って、これは自治体、都道府県や市町村も多分同じ思いだと思っています。

 これも平成四年とか平成五年に創設された制度ですから、ちょうど二十年続いたので、そういう意味では一つの節目かなという思いもあるものの、やはりそれぞれの自治体にとっては、ふるさと農道や林道の整備というのは当然、一般道路と同じように計画的にしていると思うんです。

 そういう意味で、まだ整備が未完了であるとか、これからも必要だというところについては、全く内容が同一であるとは言いませんけれども、やはり同程度の国の支援のあり方をベースにしながら、ぜひこれからも国として支援をしていただきたいと思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。

新藤国務大臣 御指摘のふるさと農道・林道緊急整備事業、地方単独事業分に係る事業費補正は、まさに地方分権改革推進委員会の第四次勧告を踏まえて平成二十二年度に行われた事業費補正の抜本的な見直し、そしてそれを事業の実施期限である二十四年度限りで廃止するということで、これはもう既に地方公共団体にお知らせをさせていただきました。

 しかし一方で、今委員がおっしゃるように、必要なものというのはあると思います。それにつきましては、まさに国土保全、それから地球環境の保全、こういった観点も含めまして、必要とされるものについては、農道、林道整備、私たちの総務省の中で地域活性化事業債のメニューの一つであります国土保全対策事業が対象としているところであります。こういったものがございますよということは、ことしの一月に改めて地方公共団体に周知をさせていただきました。

 こういう地域の取り組みとして必要なものについては我々もお手伝いをさせていただきたい、このように考えております。

後藤(斎)分科員 大臣、二十五年度予算も、あす以降衆議院では一定の集約がされていくというふうに思いますし、ぜひ、必要な分については、地方という部分での思いもありますので、積極的に対応していただきたいと思います。

 きょう、桝屋副大臣にもちょっとおいでになっていただいていますので、桝屋先生の方に移らせていただきます。

 いわゆる医師不足というのが言われています。一方で、私も文科の政務官をさせてもらったときに、お医者さんの数は年々四千人ふえているんだよ、ですから、ちゃんとバランスをとればいいんだよという声と、私の地元でもそうですが、やはり地方、特にいわゆる僻地医療的なエリアのところにはお医者さんは来ないし、医師の診察科、いわゆる産婦人科、小児科、救急等については不足している。

 一昨年ですか、厚労省が医師不足という形で二万四千人、特に基幹病院では一万八千人という数字も出して、医師不足というふうに言われています。

 これについて、やはり、東京を中心とした地方よりも、田舎というか、山梨も含めていわゆる都市周辺、首都圏周辺部みたいなところの方がそういう医師不足に、結構現実として困難な状況になっていますけれども、まずその辺について現状と、そして不足に対するどのような対策を講じているのか、あわせてで結構ですから、副大臣、よろしくお願いします。

桝屋副大臣 お答えいたします。

 医師不足というテーマがいいかどうかですが、恐らく委員は、地域偏在、診療科ごとに相当地域によって格差があるのではないか、こういう御指摘かと思います。

 御指摘のとおりでありまして、医師の場合は、都道府県別に見ますと、人口十万人当たり最大二百八十六・二人のところから最小百四十二・六人。最大、最小で二倍の差がある。看護師、准看護師については、人口十万人当たり最大千六百六十三人から最小が六百九十一人。これも二・四倍ぐらいの差があるということで、委員御指摘のとおり相当の格差があるということでございます。

 地域の医師、看護師の人材を確保するためにどういう対策をやっているか、こういうお尋ねでございますが、医師不足対策としては、これは大きな課題でありますから、昨今、地域枠を活用した医学部入学定員の増加、あるいは医師不足病院の医師確保の支援を行う地域医療支援センター、この運営費に対する補助、あるいは地域の医療課題の解消を図る地域医療再生基金、これは非常に使いやすい基金でありますが、この設置等を行っているところでございます。二十五年度においても、これらの取り組みをさらに継続、拡充していきたい。

 一方、看護職員については、子育て中の看護師等の離職を防止するための病院内保育所への支援などの定着促進、あるいはナースバンクでの求人求職情報の提供、就職あっせんなどの再就業支援、さらには看護師等養成所の運営費補助などの養成促進など、さまざまな施策に取り組んでいるという状況でございます。

後藤(斎)分科員 桝屋副大臣、そういう中で、医師、看護師の皆さん方の国家試験を大体今は春にやって、ただ、私がちょうど昭和五十五年に役所に入ったころは年二回方式でやっていました。一回が正しいか、二回が正しいかというのは諸説分かれるところなんですが。

 非常に気になったのは、昭和五十六年六月二十九日に、「医師国家試験の改善について」という意見書が、医療関係者審議会の医師部会から当時の厚生大臣である村山達雄先生の方に、改善についてということで、二回から一回にしろと。要するに質が大切なんだというふうなことを強く言われ、あわせて、その翌年に閣議決定で、医師については全体で過剰を招かないように配慮ということで、ここで医学部の定員というのが一旦急速にブレーキがかかりました。この当時だったら、三十年前はよかったんでしょうけれども。そして、六十年からお医者さんの国家試験も年一回方式になったということです。

 今、お医者様だと、八千人受けて合格率が大体九割。ですから、七千人強がお医者さんになる。要するに、千人は春に落ちる。

 先ほど、地域枠でお医者さんを地方にきちっと置くようにということですが、二十八年に卒業見込みの方でも三百人、平成三十年に卒業見込みの地域医師枠でも四百三十人ということですから、仮に千人、春に国家試験に受からなかった方が例えば秋にやって、半年早くお医者様になれた、国家試験に受かって医療の分野に入るということになる。

 例えば、昔は半分の合格率だったらしいですけれども、四、五〇%。でも、少なくとも五百人の方が秋から医師として研修が受けられて、二年間の最終盤に入る、第二ステージに入るということであれば、私は、規制緩和というか、二回やって、たしかに設問数も多くなったり三日間かけてやっているということは一つの理屈なんですけれども、秋にやって受験機会を多くする。

 要するに落とす試験ではないわけですよね、お医者様とかナースとか歯科医師の先生方の部分は。これだけ困っているとさっき桝屋副大臣はおっしゃいましたよね。

 やはり、地方では偏在があって科目にも偏在がある、困るんだということであれば、僕は、年二回国家試験をやることであって、秋に四、五百人の新しいお医者様の卵が生まれて、ひなかもしれません、そこから二年間の研修がスタートできるということであれば、それはそれとして非常に私、今何月に受験するみたいなことをいろいろな大学で言っていますけれども、それは入学をするとき、大学に入るとき。でも、それ以上に、大学を卒業して国家試験という一つの資格がなければできないということであれば、そういうことをしていくべきだと思うんですけれども、副大臣、いかがですか。

桝屋副大臣 医師問題に絡めて試験の話、医師国家試験について、以前二回やっていたんだからもう一回二回に戻したらどうか、こういうことであります。

 今委員から御指摘ありましたように、昭和五十六年の医師部会の意見書でございますが、まさに質の確保ということが言われたわけでありまして、年二回を一回にした方がいい、妥当である、こういう御意見をいただいて以来、年二回の実施を一回にしたわけであります。

 今委員からも言われましたけれども、相当、中身については、試験問題等も倍になった、問題作成にかかわる試験委員も大変に数が必要だ、こういう状況でありますから、もう言いませんけれども、やはり私は、質の問題と数の問題を、ここはせっかくの委員の御指摘でありますから私も研究しなきゃならぬと思いますが、これをさらにもとへ戻すということは、今の状況でいきますと、今日までの経緯でいきますと現実的ではないのではないか、こう思っている。これは看護師も同じ思いでございまして、引き続き研究をしてまいりたいと思います。

後藤(斎)分科員 桝屋副大臣、一方で不足で大変だ。特に僻地医療なんというのは、新藤大臣、やはり大変なんですよ。そういう思いと、志ある人が半年早く行けるということは、それはそれで僕は合理性があると思うんですよ。試験科目も、落とす試験じゃなくて、一定程度の能力があるかどうかを見る試験ですから、役所の前の三十年間のあれじゃなくて、桝屋副大臣、ぜひ副大臣が先頭でちょっと検討してください。ぜひそれはお約束してください。

 それと、同じような、ちょっと不思議な仕組みです。あと二分ですから、これは提案だけしておきたいんですが、後で運転手さんに聞いてもらいたいんですけれども、実は、役所の公用車は自賠責だけで、任意保険に加入していないんです、霞が関は。自治体がどうなっているのか、後でぜひ事務方に指示をして。例えば知事さんとかいろいろな部長さん、よく近隣だと車で来ますよね。任意保険に加入していなくて、自賠責だけなんですね。

 霞が関の庁舎が火災保険に加入していないというのは何となくわかるんです。昔のロケットも同じような形で、保険料を払うよりも受け取り保険の受ける利益が少なくて財政支出云々ということはわかるんですが、BCPを考えるときとか人材確保を考えるときには、そのベースの身の回りがどうなっているかということをきちっと確認しておいていただかないと、例えば大臣の公用車が人を傷つけたとか、けがをさせたとなると、車が自賠責だけしか入っていないということは相手にとっては大きな部分です。

 国がやればいいということじゃなくて、運転手さんの気持ちの問題も含めて僕はあると思うので、そういうことはちょっと問題提起だけきょうはさせていただきますが、大臣、ぜひ検討しておいていただきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

奥野主査 これにて後藤斎君の質疑は終了いたしました。

 次に、宮澤博行君。

宮澤(博)分科員 改めまして、こんにちは。自民党の宮澤博行と申します。静岡三区選出でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私は静岡県の磐田市の市議会議員の出身です。三期九年務めさせていただきました。その九年の間に、地方から国政というものをつぶさに拝見させてもらっておったんですけれども、どうも地方を重視しているようにはとても見えない、そういうような感じがしてきてしまったんです。私たちが生きるのに必要な水もお米も空気もやはり田舎でつくられているものですから、地方を大切にしないと日本そのものが崩れていってしまうのではないか、そういう危機感をすごく持っています。ですので、そういう点からきょうは何点か質問をさせていただきたいと思います。

 まず、市町村合併、これがふるさとに与えた影響と内政制度の今後について少し伺いたいと思います。

 先ほど申し上げましたとおり、私は市会議員です。平成十五年に初当選させてもらいましたが、それは合併協議の真っただ中だったわけなんです。合併の目的というのは、行財政の効率化、行政サービスの向上、そういうふうにうたい文句があったんですけれども、でも結果を見てみると、どうもそういうふうに見えないというのが実感なんです。

 いろいろな市町村が集まって一つになるので、都市を経営する意思が一本化されたというのも確かですし、広域的に地域資源を活用するというのも確かに達成できました。ですけれども、やはり、財政の効率化が本当に図られたかどうか、行政のサービスが向上されたかどうか、それらについてどのように総務省さんが評価されているか。さらに、この市町村合併が地域振興にどのように寄与したのか、それをどう評価されているのか。まずは、その点の評価をお聞きしたいと思います。お願いします。

望月政府参考人 お答えいたします。

 平成の合併によりまして、市町村の数でございますが、平成十一年三月三十一日の三千二百三十二団体から一千七百十九団体、これはことしの一月一日の数字でございますが、このように、市町村合併によりまして、市町村の数は相当程度減りました。

 この結果、平均人口、平均面積ともに約二倍になるなど、市町村の規模は総じて一定の拡大を見たというふうに考えます。政令市に移行する例も多く見られるなど、地方分権の受け皿としての前進が見られたと考えます。

 また、議会の議員数や首長、市町村長の数が約半分になるなど人件費の削減あるいは公共施設の統廃合によります固定費の削減など、行財政の効率化も着実にあらわれつつあるものというふうに理解をしております。

 一方、行政サービスの向上といった、今委員からの御指摘もございましたが、こちらの点につきましては、住民サービスの高度化、専門化のための組織、機構の充実を図ったり、また、合併の中心市が合併前の近隣市町村の地域における行政サービスを充実させるなど、それぞれの団体におきましてさまざまな努力が重ねられていると考えます。

 また、栄養士、保健師または技術系職員などの専門職員の充実を図ったり、あるいは、旧町村地域におきまして子育て支援センターを整備するなど、合併の効果が地域全体に及ぼすような努力を各団体が行っていると考えております。

 一方で、住民の声が届きにくくなった、あるいは周辺部の旧市町村の活力がなくなっているのではないか、そういった指摘や課題があることも承知をいたしております。

宮澤(博)分科員 ありがとうございます。

 確かにそうかもしれませんけれども、では、本当に財政の効率化が数字の上でなされているのかというところは、やはり疑問なんです。

 私の地元の磐田市の財政の数字を取り寄せさせていただきました。合併前の平成十二年、この合併する前の市町村の合計、これを一〇〇とさせていただくと、平成二十一年がどのようになっているかというと、歳入は一一九・七、歳出は一一九・八、二割増しになっていますね。義務的経費は一三九・四というふうに上がっているんです。確かに、一部事務組合を包含してしまった合併だったのでこういう結果にはなっているんですけれども、財政の効率化そのものは、決して地元では図られているように数字では出てきておりません。

 全国的な傾向として、そういうふうに財政の効率化が図られている数字があらわれているのかどうか、その点はいかがでしょうか。

望月政府参考人 一つの数字を申し上げますと、これは平成二十二年に総務省で調べたものでございますが、おおむね合併後十年経過以降におきましては、人件費等の削減により、年間一・八兆円の効率化が図られる、推計の数字でございます。そういった数字が手元にはございます。

 ただ一方で、今委員御指摘の平成の合併は、平成十五年、十六年あたりに本格化して、議論が集約化されていったわけでございますが、その時期はちょうど三位一体改革の始まった時期でございまして、交付税あるいは補助金等におきましては大きな改革が一方でなされた時期でもございます。

 そういったこともありまして、合併の効果を数字的に把握していくのはもう少し、さまざま、時間もかかるものかなというふうに考えております。

宮澤(博)分科員 今、くしくも三位一体の改革、交付税の話が出てきました。実は私も、疑問を持っているのはこの交付税のあり方なんです。

 ちょっと事例を紹介させていただきますけれども、地方交付税の推移が、やはり平成十七年、さっきおっしゃった十六年、十七年がピークなんです、そのとおりなんですが、ここを区切りとして、それを挟んでの十年間で大きく変わってきている。さっき言ったように、平成十二年を仮に一〇〇とさせていただくと、この十年間で一番底を打っているのは平成十九年なんです。平成十二年を一〇〇とすると、およそ七〇。三割減なんですね、交付税が。これは、確かに国という視点からしたら財政の効率化は図られているかもしれませんけれども、その分、地方は、自治体は、地元は苦しい思いをしてきているわけであります。

 さらに、私の地元、静岡県の森町というところは合併しませんでした。では、平成十九年、どうだったかというと、平成十二年に比べて四八%。交付税が半分以下になっている。和歌山県の北山村も十九年には六二になっている。合併しなかったところはお金上げませんよというようでは、いかにもこれは都市重視の政治になっているのではないかと思えてならないんです。

 この交付税の今後、三位一体というよりも、市町村合併を絡めての交付税の今後、そして平成二十五年度の交付税のあり方、さらには今後の交付税のあり方、どのように見ていらっしゃるのか。そこのところをお話しいただければ幸いです。

新藤国務大臣 この交付税は、必要な額を市町村が独自に確保できているか、足りない分を補填するという意味であります。

 確かに、平成十九年は交付税が少なくなっている、こういうこと、それは一方で、税収が上がっているということもあるわけです。ですから、地方の全体の財政とすれば、これは国が無理に削って少なくしたということではなくて、要因とすれば、その年は要するに赤字の部分も、対策債も出さずに済んだということで、うまくいったとは言いませんよ、しかし、地方財政とすれば、景気の動向、それから税収の確保、そういったことがまず第一にあるということだと思います。

 委員が先ほどから言っているのは、私もこれはある部分では共有します。何が何でもこっちの方がよかったんだと。これはもちろん成果は出ているんですよ。

 それから、やはり、かつて、明治時代に七万から始まっているわけですね。今回、三千から千七百まで落としていきました。それは時代の変遷とともに、やはり必要な声があってやってきた。

 しかし、特に合併をされた方ですよね。一緒になったときに、大きな方と小さい方があれば、当然、小さい方が大きな方に入っていくわけなんですけれども、そういった中で、コミュニティーだとか、混乱があるのは事実ですし、それは簡単には、今までの考えがありますから、そういったことで苦労するのは事実だと思います。しかし、結果的には、それは時間をかけてよりよい効果を出していく。そして我々は、結局、地方の財政を健全化させる。それは、削れるところは削っていこうじゃないか。

 例えば、かつてであれば、その町に一つ公会堂をつくると隣の町にも公会堂があり、片や音楽ホールをつくればやはり同じものをつくるとか、そういうふうに、経済が成長していたときには、そんなような横並びの投資というものがたくさんできていた。それから、例えばごみの焼却場なんかも、物すごい数が日本にはあるわけですね。ですから、そういうものを合併して、広域的に集約化することによっての財政削減の効果だとか、そういうものは出てくる。

 だから、いいところもあるけれども、もちろんそういう、人の心だとか地域のコミュニティーだとか歴史だとか、そういったものについての問題が出てくるのは事実だと思います。それは、やはりその現場の人たちが努力をして乗り越えていかなくてはならないと思いますし、結果としてよいものが、よい結果が残るようにするのは我々の努力にかかっている、こういうことではないかと思います。

 それから、先ほどの臨対債は、平成十九年、物すごく減ったという意味なんです。ゼロではありませんが。そのときの財政動向によって変化していくものだ、このように御理解いただければいいと思います。

宮澤(博)分科員 ありがとうございました。

 問題意識を共有してくださるということで、非常に光栄であります。

 私も市町村合併そのものに対して反対をしているわけではありません。その負の部分に対して非常に危機感を持っている。特に、その根底に流れている都市重視のあり方というものが、日本の基礎となっている田んぼだとか山林だとか、それを荒廃させる観念的な原因になっているのではないかというのが一番怖いところなんです。

 なぜ私がこれにこだわるかというと、私の小学校も中学校ももう廃校で、ないんですよ。そんな新人議員、多分いないと思います。そういう寂しさ。小学校がなくなるというのは、コミュニティーの背骨がなくなるということなんです。

 実は、もう一つ挙げさせていただきたい事例が、この小中学校の減少の加速なんですね。合併の前の、十六年を起点とさせてもらいます。その前五年間ですと、年平均で小学校は百五十三・六校減っていました。合併後は二百三十二・四校というふうに、合併を機にしてがっと減っているんです。中学校も、前半は二十三・六校年平均、後半は四十七・六校。

 やはり、財政の効率だけではなく、コミュニティーを大切にしなければならないということを為政者が持っているかどうか。目に見えない政治の流れをこれから促進していく必要があると思いますが、その点はどうでしょうか。

新藤国務大臣 それは二つの側面があると思いますね。一つは、やはり行政の投資の効率、設備の効率化、こういったものが、図られるべきところは図られるべきであります。一方で、なぜそんな問題が起きるかというと、人口移動が都市に集中し、地域の過疎化、そして地域の自立性がどんどん下がっていくということが原因となって、対象となる子供がいない限り、学校はつくることができなくなるということです。

 そうすると、子供がそこにいるためには、若い人たちが夫婦となって家庭をつくり、子育てをできる、そういう環境がその地域に失われてしまえば、これまた、その地域から人が出ていく。

 今私たちがやるべきは、都市は都市で問題が起きているわけです。都市に集中、都市に住めば全てがうまくいくかというと、都市は都市問題が起きているじゃないですか。ですから、日本をどういうふうにこれから、国全体を運営していくべきかという、過渡期に来ていることは事実だと思うんですね。したがって、財政の効率性だけでは語られない。

 一方で、今私も担当して、いろいろなところへ行っておりますけれども、地域でいろいろな工夫をしながら、その町に人口をもう一度呼び戻す、もしくは新しい人が住み始める、そういう事例も出てきています。

 例えば、私がきのう参りました父島は、東京から千キロ離れて、六日に一度しか船が行きません。だけれども、何と社会増なんですね。世界遺産に、自然遺産に指定されて、そしてその地域で何とか暮らしていける。都会とは違う暮らし方ですけれども、暮らしていける。そういう中で、そこに魅力を感じ、農業や漁業に参加をしたい、こういう人たちがふえて、若い人たちがそこに家庭を持って住んでいるんです。ですから、僕らが行ったら子供がたくさん出てきてくれました。やはり、そこの地域に若い人がいるというのは、これは活性化の源じゃないですか。

 ですから、今後は、単なる財政効率だけを求めるのではなくて、そこの町で住めるような、そういう経済やそういう地域経営をきちっと考えていくこと、それによって今の問題というのは改善できるのではないか。

 無駄なものというよりも、人がいないのに幾つもつくることはできないわけです。一方で、人がいれば、そこには必ずつくらなければいけない。こういうものをうまく、そこのベストミックスというか、折り合いをつけるところが、今、我々政治の責任であるのではないかな、このように思います。

宮澤(博)分科員 御答弁ありがとうございました。

 そういった地方の振興、それに対しては私自身も努力をしてまいりたいと思います。

 実はこの市町村合併、傾向の中で、どうしても都市部が大きく山村部を合併してしまったという事例もたくさんあるわけですね。その結果として、財政の効率化、行政の効率化、確かにそうなんですが、これもまた感性の問題でして、どうしても、市長さんというのは都市部から選ばれます。その市長さんが山間部のことも十分理解しているかというと、それはかなりはてなマークがつく。

 今は合併の方向だったですが、今後、遠い将来、やはり基礎自治体は小さい方がいいのではないかという価値観になったときに、制度がそういうものがあるかどうか。つまり、市町村の分立というものが、今後、制度としてあらわれてくるのかどうなのか。そこの点についてはどのようにお考えでしょうか。

新藤国務大臣 これは、手続としてはあるわけです。合併するときと同様に、市長が市議会の議決を経て都道府県知事に申請を行い、知事が総務大臣の同意を得た上で、都道府県議会の議決を経て、これは逆に、市の分割というのは手続としてはあるんですよ。

 ですから、それは手続上の問題ではなくて、やはり、自分たちはこういう地域で暮らしたい、暮らすときに、それでもう生活していける、自治が行っていける、そういう計画をつくることが重要だと思います。

 今、私は、地域の元気づくり創造本部というものをつくって、そこで研究しているのは、今まさに委員がおっしゃったようなことなんです。それは、基礎自治体がどうあるべきなのか、それから、それは市町村という自治体の中だけで考えられるか。

 例えばドイツなどは、そういうのを、地政学的に一つのエリアを、州でもないし市でもないんですけれども、都市計画のエリアとして定めて、その中でみんなが代表で出てきて、その地域の経営をどうしていこうかというようなことを始めている、そういう事例もあります。

 今、私たちは、日本において、この地域はここと一緒に暮らしていけるじゃないか、エネルギーは、町とか村じゃなくて、この例えば川沿いだとか山渓において、山ですね、その地域においてここで一緒になるとうまく地域が回っていく、木材からエネルギーもとれるしとか、何かそういうふうにだんだん変わってくるのではないか。一律に何人だとか、それから、全部形でとどめるのではなくて、どうやっていけば自立、暮らしていけるか、そういう観点からのまちづくりの計画をつくって、それの成功事例をつくってみようではないか、こういう検討もやっているんです。

 いずれにしても、今までの枠の中だけで考えて、将来もその延長にあるとは考えなくても、まだいろいろな方法もあるのではないか、模索してみたい。軽々にはできますとは言わないし、目の前に今ある現実の状況がありますよ。でも、先に考えていくのは、そういう思想も加味してもいいのではないかなと私は考えています。

宮澤(博)分科員 大臣から非常に興味深い発言をいただきました。地方が食べていけるにはどうするか、食べていく自信があるんだったらやっていこう、そういうような世論が今後出てくるかもしれませんし、ぜひ、そのときには私も尽力をさせていただきたいと思います。

 この市町村合併に関連して、実は、県議会議員さんの定数も問題になっております。市町村の議員さんは減らされました。国会議員の定数も、今削減の方向が出ています。では、県会議員さん、どうなんだという話はよく出るんですね。

 それで、政令市がたくさんできました。県からの業務や権限が政令市に移管されている。その政令市にも県会議員さんがいらっしゃる。県会議員の数を減らすと、今はどこが減らされるかというと、田舎の県会議員さんを減らす順番になってきてしまっているんです。そうすると、これは私、地元を歩いてもよく言われるんです、政令市の県会議員さんを減らせばいいじゃないか。

 そのときに問題になってくるのが、公職選挙法第十五条第八項、「各選挙区において選挙すべき地方公共団体の議会の議員の数は、人口に比例して、条例で定めなければならない。」

 「人口に比例して、」と書いてあるんですけれども、そうすると、政令指定都市の県会議員さんのみ削減することが可能なのか、そういう事例はあるのか、この点についてはいかがでしょうか。

新藤国務大臣 これはまさにおっしゃるとおり、公選法の十五条第八項において、今御指摘のような、「人口に比例して、条例で定めなければならない。ただし、特別の事情があるときは、おおむね人口を基準とし、地域間の均衡を考慮して定めることができる。」このようになっているわけですね。

 そして、地方公共団体の議会の定数配分のあり方、これについては、地方自治の根幹にかかわるところでもあります。ですから、いろいろな問題も含めて、これは政治の場での議論、国会において、どういうことが必要かというのは、まず各党間の議論が必要だというふうに思います。

 あわせて、都道府県が条例で定めるわけですから、そういう条例で定めるときには、選挙人の投票価値の平等、こういう観念を十分に生かした中で、各議会で条例で定められるもの、このように考えるということでございます。

宮澤(博)分科員 この点については政治マターだという基本的なお考えだと思いますけれども、各党間、それから県の条例、さらには、これは司法の壁もあると思うんです。これは、政治の場で政令市の議員さんを削減することが可能になるような制度をつくっても、司法にどのように判断されるかというのがなかなか微妙な問題になってくると思うんですが、その点については、どのように越えられそうなんでしょうか。

新藤国務大臣 平成七年三月二十四日の最高裁判決、これにおいて、公選法の十五条八項については、憲法の要請を受け、都道府県議会の議員の定数配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準として、そして、各選挙人の投票価値が平等であるべきことを強く要求しているものと解されるということであります。

 ですから、人口比例というのをまず基準にするが、いろいろな事情を考えて、そしてまた、投票価値が平等だという観念を反映した中で、地方自治体で決めるのではないか、このように言われているのではないかと思います。

宮澤(博)分科員 わかりました。

 まだはっきりした方針というか結果は出せないということで、これからちょっと議論を待ちたいなというふうに思います。

 では、もう一点質問させていただきます。

 消防団の充実強化、安全対策の推進についてであります。

 実は、私は現役の消防団員です。選挙の直前も、河原の河川敷が燃えましたので夜中に出動いたしましたし、きのうも、近くで火事がありまして、急いで行ったんです、鎮火していて活躍の場面はなかったんですけれども。ですから、消防団の充実というのは人ごとではないんです。

 今回、二億円がここに予算づけされていますけれども、具体的にどういう内容の充実強化策、安全対策なんでしょうか。まずは御説明をお願いします。

市橋政府参考人 お答えいたします。

 現在御審議いただいております平成二十五年度の当初予算案では、消防団の充実強化に要する経費といたしまして約二億円を計上いたしまして、毎年一月から三月までの期間に集中的に実施する入団促進キャンペーン等の各種広報ですとか、消防団、自主防災組織の理解促進のためのシンポジウムの開催、さらには、消防団に協力的な事業所を顕彰する事業等を実施することといたしております。

 また、東日本大震災の体験、教訓を伝承するため、被災地の消防団員等を語り部として全国に派遣する事業なども行うこととしているところでございます。

 これらの事業を推進することによりまして、消防団の充実強化に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

宮澤(博)分科員 確かに、一月から三月にかけて入団促進活動はあります。私も勧誘に歩いたことがあります。地元にもポスターは張られております。ただ、シンポジウムをやっても、集まるのは現役の消防団員なんですね。新しい人たちが来るかというと、そうではない。来るんだったら消防団に入っているような状況なんですね。

 私は、前々から思っていたんですけれども、消防団員の確保、歩いてみるとやはりわかるんです。まず若い衆がいない、地元に。いるんだったら大体入っているんです。いても、その方に消防団に入りましょうよと言っても、そんなものは知らぬというわけなんです。つまり、消防団員を確保するというのは、地元に若い衆がいる、つまりそこに、先ほどおっしゃったとおり仕事があるということです。仕事があって、帰ってこられる。農業も商業もちゃんとしている。そこなんですね。

 火事が起こると出動するのは、商店と農家と市役所、この三人なんです。この三人で昼間の消防をやるわけなんですよね。ですから、経済問題、さらには、誘われても知らぬよではなくて、ふるさとのため頑張っていこう、愛郷心があるかどうか。つまり、小さいときからの教育なんですね。教育と経済なくして消防団員の確保はできないと言っても過言ではないと思います。

 ですので、これから先、本気になって消防団員を確保するなら、もう省庁横断的にプロジェクトを組んでいくしかない。それについては、政治の方向として、どのようにお考えでしょうか。

新藤国務大臣 今、八十七万人ということで、最盛期の半分以下になっているわけでありますから、これを何とかふやそうではないか。それから、消防団員が、大変奉仕の心をもって、また地域に大活躍をいただいていること、これはもう私は大いに承知をしております。

 また、今委員がおっしゃったように、結局、教育、親のしつけ、また親の背中を見る、こういうものが大きく影響すると思います。それは、自分でできることで、人から頼まれたらやはり手伝わなきゃいけないとか、自分のことだけじゃなくて、地域のために何かやらなきゃいけないな、それが当たり前だと思うような、そういう家庭内でのしつけ、教育、こういうものも重要だと思います。学校における公の活動、こういったものも今やっているけれども、いずれにしても、そういう積み重ねがあるんだろうと思います。

 しかし、それは長い時間がかかります。私たちとすれば、今これだけの活躍をしている、また、大きな使命感を持ってすばらしい活動をしていただいているこの団体のよさというものをきちんと知ってもらおうではないか。東日本の大震災を機に、あえて自分はふるさとに戻って消防団として活動したい、こういう人もいらっしゃるわけですから、そういったことも全国の皆さんにより広く届けるような、そういう努力も必要だろうと思っています。

 ことしは、折しも、消防が組織化されてからちょうど百二十年の節目を迎えるようなんです。年明けに実際百二十年なんですが、この秋には百二十周年の式典も予定しております。ですから、それに向けて、これは何とか、ことし消防団をもう少し盛り上げていこう。

 これは、坂本副大臣に、私の方からも特命だということで、いろいろ考えようじゃないかと。ポスターを張ってシンポジウムをやる、それはそれで大事なことでありますが、さらに有効な策がないのかということも研究してくださいということで、今いろいろと知恵を絞っているところでありますから、いい御意見があればぜひ寄せてもらいたい、このように思います。

宮澤(博)分科員 ありがとうございました。

奥野主査 これにて宮澤博行君の質疑は終了いたしました。

 次に、小熊慎司君。

小熊分科員 日本維新の会の小熊慎司です。

 今、消防の話、いい話だったなというふうに思います。私も地元で消防に入っていますし、震災のときは、さまざまな国会議員が被災地に入っていましたけれども、党の服を着たり院の服を着たりしていましたけれども、私は消防団の服を着て入っていて、自分の身分というよりも消防団の一員として被災地を見回っていましたが、さまざま、消防団の服を着ていると声をかけていただいたりしていました。

 私は福島県議会議員の出身でありますけれども、福島県議会には全党が入って消防協力議員連盟というのがあって、これはやはり国会にもつくらなきゃいけないなと思って、我が党には、ある意味消防の親分みたいな片山先生もいるので、ことしじゅうに国会の中に消防協力議員連盟をつくりますので、そのときは、大臣、ぜひとも御協力をお願いしたいというふうに思います。

 この自治消防というものがしっかりと根づいているというのは、常備消防と自治消防がうまく連携をとっているのは、世界各国を見ても我が国だけであるすばらしい制度であります。こうした観点からも、自治というものを考えたときに、やはり中央集権であってはならない、地方がいかに主役になっていくかということがこれからの日本の発展にとっては必要なことであります。

 そこは、党が違ったとしても、よりよい、まあ、小さな政府という言い方がいいのかどうかは議論しなければなりませんけれども、やはり、小さな政府で効率よく税金を使っていく、そして、地域のことは地域で決めていかなきゃいけないというのがこれから日本が目指すべきあり方ですし、民主主義の原則としても、補完性の原則やそういったことを考えても、自治をどのように捉えていくのか、発展させるのかというのは非常に重要な観点だというふうに私は思っています。

 私も二十のときにこの世界に入ってさまざま陳情を処理したり、今度は地方議員になってからも、自分が陳情でこの東京に来るということがまさに中央集権、お上志向、国民にとっても、何かあれば国が、仕事が欲しければ国がというところが甘えの構造を生んだり、また、税金の効率化ではない、現場に即さない、そういうものが多々見受けられたので、私は、地方議員出身としても、地方分権をしっかり確立していくということが真の日本の発展につながってくるものだというふうに思っています。

 また、分権という言葉自体も、この後議論を少しさせていただきますけれども、これも上から目線で、国から分け渡すということですから、そうではない、もともと地方自治というのは、国があろうとなかろうとそこに存在していた権利であったり役割であったりするものですから。

 そういった観点から、まず初めに、憲法九十二条の地方自治の本旨というのは、はっきり言えば、いろいろな学説の中でも議論されていますし、大臣御承知のとおり、曖昧な規定であるがゆえに、そういった意味では、さまざま日本の地方自治の制度にそごを来している部分もあるというふうに思います。

 冒頭、初めに、この九十二条の地方自治の本旨について改めて御所見を、見解をお伺いいたします。

    〔主査退席、うえの主査代理着席〕

新藤国務大臣 憲法において、地方自治の話、しかし、詳しく書かれていないんですね。実態は、その法律を解説した逐条解説の中に出てまいります。結局のところ、それは住民自治と団体自治をあらわしているんだということであります。

 何よりもまさに地域をみずから治めるということで、それぞれの地域の特性、歴史、伝統、そしてそこに住む人たち、そうした思いを取り込んでその地域が運営されていくということだと思います。

 ただ、私は今委員が冒頭おっしゃった中で一つ共感できることとすれば、消防団を初めとする、みんなのために頑張るという気持ちです。

 私はうろ覚えなので正確ではありませんが、たしか、雲仙の普賢岳のあの火砕流で消防団員がのまれて犠牲になったんです。その人は何をしていたかというと、入っちゃいけないという区域に入ろうとする人たちがいたんです。それをとめるためにそこの区域の制限をして、みんなの安全を守るためにいた人が火砕流にのまれて亡くなりました。そして、そこで子供が残されたわけです。その子供が、その後、標語コンクールというのがあって、金賞をとったんですね。それは、我慢には自分を磨くチャンスあり。

 小学校五年生か六年生の子供だと思います。新聞記事で読んで、何てすごい子なんだと。また、そういうお父さんの活動を見て、そうやって気持ちを、寂しいに違いない、悲しいに違いない、悔しいに違いない、でもそういう気持ちを受け継いでいる子供がいて、この子は立派だなと。また、そういうことがわかるような、それを少しずつでも自分の周りでふやしていかなくてはいけない、こういう思いがあります。

 ですから、消防だけではありません。それは、経済だって、経済活動を通して社会に貢献すればいいんです。政治はその最たるものでありますから、その気持ちをぜひ大事にしていきたいと思うんです。

 一点だけ言わせていただくと、地方の現場にいて、中央集権で、国に行かないとだめだとか、いろいろな思いがあるのは事実であって、それに対する御意見があってもいいと思います。うまく全てが完璧にいっているわけがないんですから。

 でも、私はあえて言うけれども、国がどうなろうと地方は地方だというのはあり得ないです。どんなに地方が何をやろうと思ったって、国がしっかりしていなければ成り立ちません。一方で、国だけしっかりしていればいいんだといったって、これもあり得ません。国の中に住むそれぞれの人たちが、それぞれの地方でもって地域の暮らしをしていなければうまくいかないんです。ですから、これは密接不可分なものにしなくちゃいけないんだ。

 その意味において、足りないところがあるならば、また、まだうまくいっていないところがあるならば直そうじゃないか、こういう思いでいかないと、どちらかがよくてどちらかが悪い、一方づいたもので解決していけば、結果はまた次の問題を生むだけのことになりませんかということをあえて私は申し上げる。

 今、議員はいろいろな苦労をされて、いろいろな経験をしたと思います、その上で国会議員となって国会で働いて、また、自分がいろいろなところで触れ合った中で、自分の既得権だとか、かつてステレオタイプで言われている、利得のために表裏があって、そんなことで本当にこの国が動いているかどうか、そういう人がいるかいないかわからないけれども、私はそういう人たちと仕事をしたことはありません。

 ですから、本当によくするためにはどうしたらいいんだということを問題点を指摘しながら、自分は国家の一員であり、地域の一員である、家族を守るためには場合によったら世の中のために頑張らなきゃいけないときもある、世の中のために頑張ったことで自分の目の前の一人を救うことができる、これは密接不可分だ、これはぜひ申し上げたい、このように思います。

小熊分科員 いい答弁だったと思いますが、実態的には、今大臣言われたとおり、お互いの役割がきちっと整理されているのかというと、やはり中央に偏り過ぎているというものがあります。

 今雲仙の話もありましたけれども、私の地元の福島県でも、これは津波だけじゃなくて原発災害がありましたから、当時、二十キロ、三十キロ圏内に制限がかけられていました。

 私は、当時、参議院の外防にいましたので、自衛隊が何とか家族捜索に入れないか、地元の浪江町の町長さんが県会議員の同期だったので、何とか家族を捜索してほしい、まだごろごろ残っていると。

 四月の二十一日までは、規制がかかっているといっても厳しい規制じゃなかったので、結構入っていたんですね、住民の方が。消防の方も自主的に入って、棒一つで瓦れきの中を捜索していたり。あとは、これは福島県警でしたけれども、装備が十分でないのにもかかわらず、それがいいかどうかは、署員の安全ということを考えればそれはまた議論は別ですが、当時の県警本部長の英断で入っていったんですね、捜索に。

 でも、自衛隊は装備がないということで、入っていったのは五月の連休ぐらいですよ、結局。

 でも、やはり地元の人たちは、今雲仙の話も出されたような気持ちで、とにかく捜索に行かなきゃいけないといって入っていった。あの原発災害というのは国でしっかり対応しなければいけないことが国で対応できなかったから、地域の人たちが万全の態勢でなくても入っていったということがあります。

 これ一つ見ても、国が地方に対してやる役割と、今国が口を出している役割、御承知のとおり、側溝整備一つとっても、国の予算がどうだ、補助金がどうだとメニューが決まっていて、フリーハンドで何もできないというのがほとんどですよ。A、B、C、D、Eと定食があるからどれを選ぶというぐらいのことで首長が、議会が頭を悩ませて、では、これでやっていきましょうというところで、ある意味では思考停止していますよ、地方の人たちも。私もそうだったかもしれない。

 それを考えると、全く比べようもないんですが、江戸時代は逆に、国からお金をもらうのじゃなくて、私も会津藩でしたから、会津藩は大国でしたから、江戸幕府に言われて、北方警備に行け、三浦半島に警備に行け、京都守護職をやれといって、自分で金をつくって負担してやっていた。江戸幕府にお金を出したことはあったとしても、そこからもらったなんということはない。今より、封建社会ですけれども、ある側面から見るとまさに地方自治だったということが言えると思います。

 そこで、結局、どう捉えるかということは、学説もいろいろありますけれども、地方自治というものが、いわゆる固有説、伝来説、制度保障説、日本は制度保障説をとっていると思いますけれども、また新たな概念として新固有説というものが最近出てきています。もともと自治というものは存在をしていて、国が制度的に保障するとかしないとかでもないし、国の権利を委託して地方自治があるということではない、伝来説ではないんだ。

 やはり、それぞれの説というのは一長一短あるというふうに思いますが、わかりやすく、補完性の原則、目の前のことは目の前で決めていって、目の前でできないことはもうちょっと広域でやっていこうか、国でやるべきはどうだと、まさに現場から何をやるかというのを積み上げていった方が制度というのは構築しやすい。そういう意味では、いわゆる固有説や新固有説に地方自治というものを捉えた方が、素直に制度構築ができるというふうに思います。

 そこについての見解を大臣にお伺いします。

新藤国務大臣 とてもシンプルに言うと、さじかげんということだと思います。

 私も、国というのは、本来、国家機能を強化するために、外交や安全保障、そしてマクロ経済、それから最低の、でも一貫した教育、そういったものを治めて、その上で、対外的な交渉も含めて国家としての全体を考える。それに対して、それぞれの個別の地域は地域なりの自治を行っていって、役割分担をしていく。これが望ましいと思います。

 ですから、その意味では、小さな政府という考えがあります。しかし一方で、人が住まないところに、小さな政府の思想で全国一律にやれば、暮らしていけなくなります。その人たちが暮らしていけなくなると、例えば国境離島が維持できなければ、国家の大計は維持できません。ですから、同じような取り組みにはできないけれども、必要があるものについては、そこはまた小さな政府とは違う考えがあったっていい、このさじかげんだと思うんですね。

 今のように側溝一つとってもというのは、当初はそうではなかったわけです。そして、何よりも、そんなこと以前に、電気がない、水道がまだ来ない、井戸だ、ランプだというところから戦後、始まったんですから。そういうところからとにかくやるためには、みんなで一生懸命働いて、国力を上げた中で経済を成長させて、それを地方に、それぞれの町で使ってもらえるように、その仕組みが有効だったこと、だからこそ経済成長したんだと思いますよ。

 しかし、そのやり方が飽和状態を迎えて、そして人口動態が変わり、社会が変わったのに今までの仕組みと同じところだから、そうすると、もうある程度全部できたところで、あと次に何をするかというときに、なぜ自由にできないのかという問題が出る。ならばそこはやりやすいような形をつくればいいじゃないか。この繰り返しだと思います。

 先ほどの冒頭に、災害のときも、それは本当に御苦労があって、何でなんだ、こういう思いがたくさんあったと思います。地方に任せればよかったのにという思いもあると思うんです。

 でも、私は、同じ時期に、なぜあのときに国家が国として災害上の緊急事態を宣言できなかったのか。あの状態なのに法令はいつものままで、ばらばらに各地方が権限を持っちゃっていました。統一で道路の通行制限だとか、それから人の移動だとか物流、トータルでやらなきゃいけなかったときに、各市町村、県、道路管理者、警察、全部別々のものになっちゃいました。

 本来であれば、あの地域には、ああいった非常事態のときには緊急事態宣言をして、そういったものを統一すべきだったんです。それがなぜできなかったのかといえば、国に、基幹となる憲法にそういう体制がなかったからなんです。

 これは国家統治機能の弱点ではないんですか。地方分権があったならばうまくいったかというと、そのときこそ今度は逆に国家としての統治が必要だったときもあるわけです。

 ですから、さじかげんであり、ケース・バイ・ケースであり、どっちがではなくて、必要なものをうまくブレンドして最適なものにつくっていけばいいではないか。

 それは、地方の現場を知っている者と国政の全般を知っている者、それを両方知っている者が必要なんですね。それは我々でなければいけないんです。そういう思いで委員にはぜひ活躍をしていただきたいな、このように思います。

小熊分科員 今大臣が言ったとおりです。その役割がどこにあるべきかということと、肝心なときに国が出ていかなきゃいけないのに、出ていく仕組みがない。あと、逆に国が出ていかなくてもいいのに口を出す。

 今言われたとおり、全国一律じゃだめなんですね。そうすると、今の地方自治制度というのは大体金太郎あめみたいになっているわけですよ。同じ人口の一万人の町といったって、密度の高い一万人と低い一万人、大都市に近い一万人の町と山間部の一万人では全然違うわけですよ。では、そこの自治とは何だといったら、それはやはりそこの人がどうやればいいかというのは一番わかっているわけですよ。

 そういう意味でいうと、これは逆に総務省に聞いてみたいんですけれども、総務省としては、固有説とか伝来説という意味では、私は今日本の官僚というのは伝来説に寄りかかっているな、精神構造というか、視点がどうしても固有説っぽい視点に立っていないというふうに思うんですが、総務省は、地方自治というのは、正式な見解で言えば制度保障説に立っているということになるんですか。

望月政府参考人 憲法の地方自治の本旨が、地方自治制度がどういった学説によっているかということについては諸説があることは私どもも承知をしているつもりなんですが、具体的にこの説によってこういうふうなことという、一定の説に全面的にといいますか、私どもがそれによってということではないというふうに思います。

 いずれにいたしましても、通説は制度的保障説だということは承知をいたしておりますが、先ほど委員もお話しになりましたが、具体的に地方自治の本旨をどういうふうに法令に生かしていくかということがポイントではないか、そのような認識で仕事に当たっております。

小熊分科員 私は市会議員が出だしだったんですけれども、その前に、歴史は浅いけれども民主主義の国家としては先輩であるアメリカをずっと放浪してきたんです。地方自治の制度も見ると、世界のあらゆる制度が入っていて、シティーマネジャーなんといったって、議員同士の互選もあれば任命制もあれば公選制もあったり、本当に世界の民主主義国家のありとあらゆる自治制度があったなというふうに思っています。あれはあの国の成り立ちで、そういう形で国ができ上がりましたから。

 あそこの国を見ていると、今言われたとおり一つの説によることはできないんですが、大ざっぱに言うと、やはり固有説みたいな視点に立って地方制度というのをこれから考えていくことがよりよい形ではないかなというふうに思います。

 そういう観点から道州制の質問にかわりますけれども、先週末の報道でも、与党の方で道州制推進基本法案というのを今国会に提出していくんだという報道がなされていました。道州制も、単なる都道府県合併みたいな道州制もあれば、今言ったアメリカみたいな連邦制に近い道州制、これは中身をどうするかによって変わってきます。これを議論していくときには、まさに、国からの視点ではなくて、本来この社会がどうあるべきかという点でやっていかなきゃいけないんです。

 この基本法というのは、道州制を推進する法案じゃなくて、一部の議員の見解によれば、まず議論するための基本法案なんだというコメントも与党の一部の議員からあったんですが、与党から出されようとしている推進基本法案といったものに対する大臣の見解をお聞きしたいと思います。

新藤国務大臣 私は、道州制担当大臣でもあるわけですね。しかし、この道州制についての検討というのは、国家の基本についての議論になります。また、場合によれば憲法の改正も必要になってくるかもしれない、そういう大きな議論だと思います。したがって、それは国家の、国民の代表たる議員が、まずそれぞれの、各党間の議論をしていただく、その前提としての、それぞれの政党内の議論があるということだと思います。

 今自民党の中で精力的に活動がなされておりますし、我々も政権の公約として、選挙時の政党の公約として、そういったものの推進というのは掲げてまいりましたし、もともと具体的に進めてきたのも我が党の中の組織であります。

 ですから、それは議論が深まっていることは事実でありますが、その先どうなっていくかということについては、今行政の方におります、大臣を仰せつかっている者とすれば、推移を見守っていく、注視していく、こういうことに尽きるということでございます。

小熊分科員 これは自民党さんだけじゃなくて各党やっていましたし、私も地方議員時代から狂ったようにやっていたぐらいです。

 あれも、我が党に今一緒になっている松浪議員が自民党時代に大分積み上げたものがベースになっているということですから、これは真の地方自治を確立して国の発展を求めていかなきゃいけない政策でありますから、その点では日本維新の会も道州制は推進している立場でありますので、しっかりと、もっと時計の針を進められるようにこれから熟議をしていきたいというふうに思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 次に、いわゆる仮の町についてお伺いします。

 仮の町も、町外コミュニティーとかいろいろな単語がありますけれども、福島県内においては仮の町というのがもう一般化しているので、仮の町という言葉を使わせていただきます。

 今、仮の町構想になっていて、自民党政権にかわってから少し進んでいるところではありますけれども、実際、私の住んでいる会津若松市も大熊町さんが避難をされていて、五年後ぐらいをめどにいわきに仮の町をつくる、ただ会津若松市やほかのところにも分散して置くという、大熊町は分散型を目指していたり。ほかの町によっては、やはり集中したい。いわきに行きたいけれども、いわき市も土地がない。市長さんも悩んで、いわき市内で分散させてくれと言ったら、それではコミュニティーが形成されないから一カ所に集中させてほしい。

 同じ双葉郡内でも、分散型でよしとする町もあれば、集中型じゃないとだめだと言っている町もあったり。

 あともう一つは、それは被災者を受け入れる自治体、また地域住民の広い心もあるわけですけれども、さはさりながら、やはり制度としてしっかりないと、受け入れている市が、町が、多少、制度として交付金という形で入れてもらっていたりもしますが、納税のあり方として、税金がどこに使われるかという意味ではなかなか整理されていないし、今の法整備では足りていないわけですよね。もちろん、新しい概念でやっていこうという対応ですから。

 これは法整備がしっかり必要になってくると思いますけれども、その法整備に対する取り組みについてお伺いいたします。

岡本政府参考人 御指摘のとおり、仮の町あるいは町外コミュニティーというので、長期避難を余儀なくされておられます市町村について、どのような形で快適な生活をしていただくかということについて、避難元の市町村の御要望を聞いておるところでございます。

 現在は、復興庁と県、そして避難元市町村と受け入れ側市町村、この四者での協議会をつくりまして、個別の議論をさせていただいております。

 実態となりますと、制度論とともに、実は先行しておりまして、議員御承知のとおり、五百戸を二十四年度予算で先行着手して、会津若松市でも九十戸、既に事業を着手してございます。

 一方、制度論でございますが、サービスの基本については、発災直後に総務省のお骨折りで、原発避難者特例法、仮称でございますが、この法律がございますので、町外にお住みになっておられる住民の方々のサービスについては、制度的にはできておりますし、それに基づきまして、受け入れ側市町村が必要となります財源につきましても、総務省の方で手当てをしていただいております。ただし、しっかり見えないところが御注文をつけられていることも事実でございます。

 今度、二十五年度予算に復興庁の方で、コミュニティ復活交付金、長期避難者の生活拠点、簡単に言いますと、仮の町をつくる際の受け入れ側市町村、あるいはまた送り出し市町村に必要な経費について、明示的に財政措置を講じようとしております。

 もう一つの課題でございましたのは、住民票が、もとの町にいることによる不便さがございましたが、これはまた総務省の方で避難場所にいることの証明書の制度を統一化してございまして、現時点では、サービス、財源、それから住民票については法律的には対応しているところであります。

 ただ、この後さらに事業を進めるに当たって市町村にどのような問題点があるのか、そこは聞いて、必要ならば手当てをしたいと思っておりますが、現時点では、制度的には、今申し上げました三つの点について解決しているところでございます。

小熊分科員 これはなかなか完璧にはいかないんですけれども、今、県内でも、避難者も含め、受け入れ側も含め一番懸念されることが、仮の町というのはいつまで続くのということなんですね。恒久化しちゃうんじゃないか。

 二十年、三十年という単位でいえば、人一人の一生で考えれば、私ぐらいの年から上の人は一生と同じですよ。三十年、四十年、仮の町を続けていいのかどうかという議論も、出だしから議論しておかないと、三十年、四十年たって、やはりあそこは帰れないから、仮の町じゃなくてそれぞれ新しい土地の住民になってくださいと言ったのでは、当該住民の人生選択はできないんですね。

 我々今県内でも、本当に苦しい中、断腸の思いで議論していることは、帰らないという選択肢が、御承知のとおり住民アンケートで多くなっているわけです。帰しますという言葉に、信じたい、寄りかかりたいんですけれども、それが五年なのか十年なのかと明示しないことによって、人生選択を踏みとどまっている人がいる。当てどのない時間を待っていることで、生活が再建をされない。

 でも、いろいろな補償をもらっていますから、生活そのものは成り立っているけれども、これは子供の教育にもよくないですよ。お父さん、お母さんは働いていない。補償金だけで暮らしている。まさにさっきの地方分権論じゃないですけれども、我々福島県民も、自分の力で生きていく、そういう能力も人材もそろっているわけですよ、避難者の人たちも。その力を発揮させることが本当の復興ですから。

 仮の町に何年という区切りを入れるかどうか。ただ、あそこの警戒区域内、帰宅困難区域がどうなるかということが裏返しでありますけれども、時系列を入れておかないと全て先延ばしですよ。この時間といったものを意識しているかどうか、お伺いします。

岡本政府参考人 正直申し上げまして、町外コミュニティー、公営住宅をつくる時点において、出口というのでしょうか、いつそれが解消できるかというのをお示しできるところとできないところがあると思います。

 今議員御指摘のように、十二市町村の区域の見直しがほぼ終わりまして、あと二町村を残すだけでございますが、発災から六年以上帰れない帰宅困難区域、その手前に居住制限区域、さらに避難解除準備区域と三種類で地域をお示しいたしました。

 一方で、この後の五年後、十年後、二十年後の放射能の減衰地図というのもお示ししてございます。それによって、いつ帰れるかというのはなかなか難しゅうございますが、いつまで帰れないかというのが逆の方向で出ております。

 すると次は、私どもといたしましては、除染を進め、そしてインフラ復旧を進めながら帰れる準備を進めさせていただきますが、他方で、お待ちいただいている方々に、市町村と一緒に、今、住民意向調査というのを行っておりますので、そのアンケートの結果で、いつまで待っていただくのか、あるいは、中には既に、補償金をもらった後、新しい生活を始めたいという方もおられます。この後、幾度か住民意向調査をしながら、個別の方々とともに、いつまで住宅、町外コミュニティーを何戸つくらなきゃならないかというのを市町村と一緒に議論して、確定していかなきゃならないと思っております。

小熊分科員 最後に申し伝えておきますけれども、今言っていた、放射線量がどうこうというのはあるんですが、廃炉まで三十年、四十かかると言われているんですよ。そこの地域が除染して空間線量オーケーといっても、廃炉が終わっていない、くすぶっている原発のそばに帰ってくださいということ、森林も除染が決まっていない、そこに帰ってくださいということ。

 帰るとしたって、今、川内村が人口半分ぐらいしか帰っていない。そういうところにコミュニティー再生といってもなかなかうまくいかないということも含めて、帰らない、帰せない、安全基準は満たしているけれども安心基準が満たせていない状況の中でどうやっていくかというのでは、通り一遍の、表紙だけ取り繕うということじゃなくて、やはりこれは全ての選択肢を入れて、厳しい判断もしなきゃいけない。

 幻想を抱かせて人の人生を先延ばし、問題の先延ばしをしちゃいけないという観点も、大臣、ぜひそこを持っていただいて、この避難者の自治体のあり方というのは真剣に議論していただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。

うえの主査代理 これにて小熊慎司君の質疑は終了いたしました。

 次に、中根一幸君。

中根(一)分科員 自由民主党の中根一幸です。

 本日は、新藤大臣に小選挙区の区割りについて一点御質問させていただこうと思っておりますが、よろしくお願い申し上げます。

 その前に、インターネットを見ていましたら、昨日、新藤大臣、安倍総理大臣とともに硫黄島の方に視察に行かれたというような話が載っておりました。ある面、総理以上にいろいろな思いが新藤大臣にはあったのかなと思っておりますので、通告にはありませんが、まず、実際行ってみての御感想、またこれからに対する決意とか思いをお話しいただければと思います。よろしくお願いいたします。

新藤国務大臣 我が埼玉県の仲間であります中根さんから質問いただいて、うれしく思っています。

 また、私の、きのう安倍総理と御一緒させていただいた件について御質問いただきました。

 まさに硫黄島は、戦争中の最大激戦地です。そして、東京都小笠原村、東京都にありながら、いまだ遺骨が半分もふるさとに帰っていない、こういう状態であります。

 二万一千九百人の方があの地で亡くなられ、そのうちの一万人少しの方が遺骨収集という形で行われました。しかし、いまだ一万一千を超える方々が、ごうの中で、またいろいろなところでいまだに潜んでいる、そういう状態なんですね。ですから、一国の総理大臣が現地にお出かけいただいて、追悼慰霊祭を行ってくれたこと、これは島に眠る英霊の皆さんにはとても朗報だったというふうに思います。

 また、この遺骨収集が簡単ではないんです。お金をかけて、一気にやってしまえば済むという問題ではないんですね。やりたくても、なかなか現実が許してくれません。それが、今、六十八年たっても五三%の遺骨がいまだ島に残ったままだ、こういう状況なのでありまして、その遺骨収集の現場を総理にごらんいただいて、そして懸案であります滑走路下の遺骨収集について、いよいよ計画を立てて具体的実施の準備に入っていかなくてはいけない、こういうことを現場で御説明させていただいたわけでありますけれども、その意義は大きかったというふうに思います。

 私自身は、いろいろな関係があって、通常、年に二度ほどは行っておりますから、もう国会に来て十七年目になりますか、その中で年に一回か二回はお邪魔していますので、何度も訪れる土地でありますが、しかし、自民党を中心として超党派で硫黄島問題懇話会という、国会議員の皆さんによってそういった会もつくっていただいております。硫黄島問題に対していろいろな取り組みをしていただいているわけでありまして、その上で、きのうはとても有意義だったと。

 ちなみに、総理大臣として行っていただくことがありがたいことだし、私も今総務大臣という任にあります、そういう閣僚が二人現地に行ったということはこれまでになかったと思いますから、そういった意味でも非常に有意義で、ありがたかった、このように考えています。

中根(一)分科員 ありがとうございます。

 あの硫黄島の激戦というのはいろいろな映画ができておりますね。最近では、クリント・イーストウッドさんが映画をやって、渡辺謙さんが主人公で、大変ヒットしております。うちにもDVDがございます。その渡辺謙さんが演じた日本軍の当時の総指揮官であります栗林大将のお孫さんが新藤大臣に当たるわけで、私も、今回の視察というのは、毎年行かれたというお話でしたが、大変意義のあるものだと思いますし、意味深いものがあるのかなと感じたわけです。

 たしか、栗林大将が戦死されるのが、同じぐらいのお年、少し若いぐらいですかね、大体同じぐらいのお年だったと思いますので、栗林先生からしてみれば、大変悔しい思いや無念もあったかもしれませんが、お孫さんが時の大臣にまでなって、総理大臣を連れてこうやってやっていただくというのは、恐らく、天国からうれしく思っていることだと思います。

 もとより、先ほどもお話ししたように、埼玉県で久しぶりに大臣になっていただいて、日ごろから埼玉県連会長としても、大所高所から御指導いただいておりますし、また、特に私たち若手衆議院議員に対して、いろいろと本当に、時には兄貴分のように御指導いただいております。私たちみんな喜んでおりますので、これからも、御自愛していただいて、ますます御活躍を御期待しておりますし、また私たちもしっかりと大臣をサポートし、世のため人のため頑張っていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 それでは、本題に入っていきたいと思います。

 先ほどお話ししましたが、きょうは衆議院の小選挙区の区割りについての質問をさせていただきます。

 去る三月の二十八日に、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定案についての勧告というのが衆議院議員選挙区画定審議会というところから出ました。それを受けて、政府の方では、四月十二日、先週の金曜日、いわゆる区割り改定法案が提出されたところでございます。

 まず、今回のこの区割り勧告の内容について、大臣の率直な感想をお聞かせください。

新藤国務大臣 まさに、三月二十八日に、衆議院の選挙区の画定審議会から内閣総理大臣に対して、選挙区の改定案についての勧告を受けたところであります。

 そして、その選挙区の画定審議会においては、平成二十三年の最高裁大法廷判決、これは、違憲状態であり、合理的期間が未経過だ、こういう判決が出て、それを踏まえて、各党会派の御議論をいただいて制定された〇増五減による緊急是正法が昨年の十一月二十六日に公布、施行されて、それに基づいて区割り審で精力的に審議をいただいたということであります。

 そして、その緊急是正法にのっとって、平成二十二年の国勢調査人口に基づき、選挙区間の人口格差を二倍未満とする、あわせて、行政区画、地勢、交通その他の自然的社会的条件も考慮の上、最大限の努力を行い、今回の改定案を取りまとめて勧告いただいたということであります。

 これは、まず裁判があって、それの要請を受けた形で法律ができて、そして法律の中で区割りの審議会が設けられて、その審議会が法律に基づいて勧告を出していただいた、それをもとに今回の区割り改定法案という公職選挙法の改正を我々は出したということであります。

 これは憲法上の要請がございます。法律に基づいて、このような、しかも精力的な議論を重ねていただいた中で出させていただいた。もとにあるのは、国会の主要政党が賛成をして成立した、その法律に基づいてのことでありますから、行政といたしましては、これを可及的速やかに手続、また速やかな成立に向けた努力をしてまいりたい、このように考えています。

中根(一)分科員 ありがとうございます。

 今回の区割り改定の基準として、平成二十五年二月二十六日付で、先ほどもお話ししました、衆議院議員の画定審議会が作成しました緊急是正法に基づく区割りの改定案の作成方針というのがありますが、ここのところに改定対象選挙区の区割り基準ということが書かれています。どう書かれているかというと、「選挙区の改定に当たっては、市区町村の区域は、分割しないことを原則とする。」とされているんですね。

 これは、今回の緊急是正法に基づく区割り基準ということは承知いたしておりますが、なぜ選挙区の改定に当たっては市区町村の区域は分割しないことを原則とするとしたのでしょうか。お伺いします。

米田政府参考人 今回の区割り改定案の作成の基準でございますが、これは、緊急是正法にベースがございます。その附則第三条第二項では、「行政区画、地勢、交通等の事情を総合的に考慮して合理的に行うこと。」とされております。

 審議会は、この緊急是正法の規定に基づきまして、具体の区割り基準を作成していただいたところでありますけれども、前回、平成十三年の区割り改定案作成時の区割り基準の内容のうち、今回の改定案の作成に際しましても適用可能と考えられるものは引き続き踏襲するというふうにされたところでございます。

 御指摘の市区町村の分割につきましては、これは踏襲ができるということで、引き続き、原則として地域のまとまりを分割することは行わず、市区町村という基礎的な自治体、市区の人口が格差二倍未満の人口基準の上限を超える場合など、一定の要件に該当する場合に限って分割するというふうにされたところでございます。

中根(一)分科員 ありがとうございます。

 小選挙区では、人口の移動による影響というのを非常に受けやすいですね。小選挙区の画定は非常に難しいこと、対応に苦慮されていることというのがうかがえます。しかし、地域には、当然ですが、おのおのの歴史があります。そして、人々の暮らし、人々のつながりというものがございます。

 そこで、選挙区においては、地域、特に地方自治体の行政区域を基準にして設定されるべきものであると私は思っているんですね。大臣、御認識をお聞かせください。

新藤国務大臣 これは、選挙区を考える際に、地域的なまとまりは極めて重要な要素だと思います。したがって、基礎的自治体である市町村の行政区画、これはまさにその地域的なまとまりの原点だ、このように考えられるわけでありまして、審議会において、市区町村の区域は分割しないことを原則とする、こういう基準は合理的なものであると私も考えています。

中根(一)分科員 ありがとうございます。

 ところで、一票の格差の問題を解消するために、先ほどお話ししました〇増五減の区割り改定法案が先日提出されました。この改正法案による一票の格差の最大値は幾つになっているんでしょうか、お尋ねいたします。

米田政府参考人 昨年の十一月に成立いたしました緊急是正法におきましては、平成二十二年国勢調査人口による選挙区間の最大人口格差を二倍未満とするというふうにしております。

 この緊急是正法に基づきました今回の区割り改定案におきましては、人口最大の選挙区が東京都の第十六区で、五十八万一千六百七十七人、人口最小の選挙区が鳥取県第二区で、二十九万一千百三人となっております。格差は一・九九八倍となっております。

中根(一)分科員 ありがとうございます。

 今回の区割り改定の根拠となる緊急是正法では、人口の最大格差を二倍未満とすることとされております。先ほどお話があった最大格差が一・九九八倍ということで、平成二十三年三月の最高裁判所の大法廷の判決、判示された違憲状態というのは解消されたものと私は思うんですが、大臣のお考えはいかがでしょうか。

新藤国務大臣 これは重要なポイントなので、少しかいつまんでというわけにいきませんので、これはお許しをいただきたいと思うんです。

 現在の区割りは、平成二十三年三月の最高裁大法廷判決において、違憲状態、このように判示をされております。

 そして、この緊急是正法は、区割りの、その違憲状態を解消するために、各党各会派の議論を経て、立法府において議員立法で制定されたというものであります。各都道府県内の選挙区数を〇増五減により定めた上で、今次の選挙区の改定案の作成については、直近の平成二十二年国勢調査人口によること、それから選挙区間の人口最大格差は二倍未満とすることと定めているというところなのでございます。

 そして、これに関連して、同じく二十三年三月の最高裁大法廷判決において、区画の画定審の設置法が、直近の国勢調査人口に基づき、選挙区間の人口の最大格差は二倍未満を基本とする、そのことは、投票価値の平等に配慮した合理的な基準であると判示をされておりまして、それを緊急是正法にも適用したというところなのであります。

 そして、選挙区の画定審議会から勧告された区割りの改定案は、緊急是正法に沿ったものであって、今回の区割り改定法案というのは勧告どおりのものを法案化したということになります。

 したがって、この法案を速やかに成立させていただければ、平成二十三年三月に最高裁大法廷判決で示された違憲状態は解消される、このように考えております。その意味で、この法案の成立は憲法上の要請である、このように考えられるわけであります。

 そして、さらなる格差是正等、衆議院の選挙制度のあり方については、これはもとより選挙制度の根幹をなすものであります。そういったものについては、国会において各党各会派で御議論をしっかりと行っていただきたい、このように考えています。

中根(一)分科員 詳細な説明をありがとうございます。

 一つ気になるのが、一部報道で、〇増五減をしても、先ほど言った、最大格差がいわゆる二倍というものを超えているとの指摘もございます。これがひとり歩きしているような状況が続いておりますので、これらの報道に対する大臣の御見解をお聞かせください。

新藤国務大臣 そういう報道が出ていることは私も承知をしております。これは、直近の推計人口による改定後の選挙区間の格差についての報道であります。

 しかし、その推計人口と言われるものは、今回の区割りの改定とは直接関係がないわけであります。それから、調査、推計の方法の詳細についても、私ども総務省としては承知をしておりません。総務省が試算したのではなくて、報道側でもっておやりになっていただいているというところでございます。

 そして、緊急是正法は、各都道府県内の選挙区数を〇増五減により定めた上で、今回の選挙区の改定案の作成では、もう一度言います、直近の平成二十二年国勢調査人口に基づき、そして選挙区間の人口の最大格差は二倍未満とすることを定めている。それが、平成二十三年三月の最高裁大法廷判決に応えるものとして、各党各会派の議論を経て、議員立法で立法府において制定されたものだということであります。そして、これに関連して、画定審が、合理的な基準を定めて、そしてそれを緊急是正法にも反映させました。

 したがって、改定案の作成に用いた国勢調査人口以外のその後の推計人口などが、二倍を若干上回ることになっても、それが直ちに憲法上の問題になるとは言えないと私どもは考えているわけであります。

 今回の法案は緊急是正法に沿ったものであって、この法案を速やかに成立していただくことは憲法上の要請ではないか、このように考えているところでございます。

中根(一)分科員 ありがとうございました。

 つまり、二十二年度の国勢調査の人口に基づいての区割りの改定案であって、最近の直近の推計人口というのを、報道ではその部分を取り上げられておりますが、これは問題が違って、実際は、その時点で法律的にいわゆる二倍の格差未満であれば、この人口格差は許容されるものだということが理解されたかと思います。私も理解させていただきました。

 そうしますと、私の選挙区である埼玉六区の中に鴻巣市があります。選挙中は、自分の場を離れて私の選挙区の鴻巣市まで来ていただいて、この場で御礼するのも変な話ですが、大臣も御存じの鴻巣市でございますが、鴻巣市は、旧鴻巣市、旧吹上町、そして旧川里町が合併したものでございます。このうち、私は埼玉六区なんですが、旧川里町の部分だけ埼玉十二区になってしまっているんですね。

 先ほどお話しした平成二十二年の国勢調査によると、埼玉六区の人口は五十二万一千百二十一人です。これは、旧川里町の人口八千五百三十七人を加えても、五十二万九千六百五十八人となります。鳥取二区との格差は一・八一九倍となり、先ほど言っている二倍未満、人口基準を満たすことになるわけです。

 選挙区に当たっては、市区町村の区域は分割しないことを原則とするとの今回の方針であれば、鴻巣市を埼玉六区で一体化することも可能であったと思いますが、なぜ改定されなかったのでしょうか。

米田政府参考人 昨年十一月に成立いたしました緊急是正法におきましては、平成二十三年の最高裁大法廷判決を踏まえて、各選挙区間の格差をとにかく緊急に是正するということのために、法律上、改定の対象選挙区を限定しているところであります。

 今回、区割り改定の対象となります選挙区は十七都県の四十二選挙区にわたりましたけれども、これは、緊急是正法で定めた区分によりますと、三つの区分がございます。

 一つ、人口の最も少ない鳥取県の二選挙区。それから、県内の選挙区の数が三から二に減少する、いわゆる五減の福井県、山梨県、徳島県、高知県、佐賀県、この五県の十五選挙区。それから三つ目に、格差二倍未満の人口基準に適合しない選挙区ということで、少ない方で申し上げますと、人口最小選挙区である鳥取新二区の人口二十九万一千百三人を下回る選挙区、それとその隣接する選挙区、これが八県の十七選挙区あります。それから、多い方で、鳥取新二区の人口の二倍、五十八万二千二百六人以上となる選挙区、それとその隣接の選挙区、これが三都県の八選挙区ございます。いずれにいたしましても、この十七都県の四十二選挙区以外は区割りの改定は行ってはいけないというのがこの緊急是正法でございます。

 したがいまして、今回、区割りの改定では、今申し上げました改定対象選挙区に該当しない場合には、市町村合併の影響を調整するための選挙区の改定、すなわち複数の選挙区に分割されている市区町村の分割解消は行わないというふうにされていたところでございます。

 したがいまして、お尋ねの埼玉六区、埼玉十二区については、今回改定の対象選挙区に該当しないため、今御質問のありました鴻巣市の分割を解消するための改定は行わないというふうにされたものでございます。

中根(一)分科員 わかりました。

 それでは、そのような市町村については、今問題となっている一票の格差の問題がクリアできるのであれば、今回はそのようなことでございますけれども、次の区割り改定でいずれかの選挙区で一体化するという改定が行われるのでしょうか。いかがでしょうか。

米田政府参考人 今申し上げましたとおり、緊急是正法は、各選挙区間の格差を緊急に是正するという趣旨から、改定の対象選挙区を限定しておりまして、今回、区割りの改定では、その要件に該当しない場合には、区割りそのものを新たに改定するということは行っておりませんでした。

 今後、衆議院選挙制度のあり方が検討される中で、御指摘の市町村合併によって複数の選挙区に分割されている市区町村の分割解消についても検討されることとなるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、過去二回、区割りは行ってまいりましたけれども、いずれも市区町村は原則として分割しない原則であったということだけは申し上げておきたいと存じます。

中根(一)分科員 私たちの地域以外にもそういうところがあると思うんですね。いわゆる昭和の大合併から、今度は平成の大合併に移って、もう久しくなるわけでございますが、その間も、確かに、言われてみるとそのとおりで、市長選挙や市議会議員選挙は同じ市でやっていて、県会議員選挙は違うところで、それで、今度は国会議員選挙になるとまた違うところでやっている。どうしたって、そこに住んでいる人たち、住民の疎外感といいますか、直接伝わらないという気持ちが私にも非常に伝わってきております。

 きょうも傍聴で、多分、鴻巣市議会の副議長さんも来られていると思いますが、近いうちに、その気持ちを伝えるべく、大臣に直接お話を、意見書を提出させていただこうと思っておりますが、私たちの地域だけではなく、そういうような地域がたくさんあるとも聞いております。

 もちろん、これから選挙制度自体が変わる可能性もあるし、定数削減も含めた選挙制度、どういうふうになっているかによってもいろいろ変わってくるところもあるんだと思いますが、いずれにせよ、やはり、先ほど来お話ししているように、一つの町、区域というところが分割されないような形、これが原則、一番必要だと大臣もおっしゃっていただいているわけですから、今後の改定の中で、どうか私たち鴻巣市を含めた、そういう地域においての、一つの地域にするようなことをしっかりとやっていただきたく御要望をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。

 本日はありがとうございました。

うえの主査代理 これにて中根一幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、武藤貴也君。

武藤(貴)分科員 自由民主党の武藤貴也でございます。滋賀四区選出でございます。

 本日、初めての質疑でございます。質問の機会を与えてくださいまして、まことにありがとうございます。冒頭、感謝を申し上げます。与えられた時間を大切にして、一つ一つの質疑を、まさしく国家国民のためという観点からさせていただきたいと思っています。

 きょうは、そうした意味で、沖縄に関する問題について質疑をさせていただきたいと思います。

 大臣あるいは政務官も御存じのとおり、沖縄の問題は根が深いと思います。

 私は、実は北海道の出身でございます。私の祖父が昭和二年生まれの戦争体験者で、幼少のときから戦争の話を聞かされて育ってきて、大学時代、大学院と、戦争に対する興味から外交、安全保障の勉強をしてみようと思いまして、大学院まで外交あるいは安全保障の研究を重ねてまいりました。その中で、沖縄が日本の安全保障あるいは外交において非常に重要な地理的要件や政治的背景を持っている地域だということを身にしみて思ってきた次第であります。

 きょうは、そういう沖縄について御質問させていただきたいんですが、予算委員会の分科会ということでございますので、まず予算のことからお話をさせていただきたいんです。

 これは、衆議院の第一特別調査室というところから「沖縄・北方のキーワード」という資料をいただきました。

 歴史的経緯なんですけれども、沖縄は二十七年間、日本の主権の及ばない、我が国の施政権の外にあった、アメリカの統治下にあったということから、昭和四十六年に沖縄振興開発特別措置法というのが策定をされています。大臣も、あるいは政務官も御存じのとおりでございますが、当法は、当時は十年の時限立法であって、昭和四十七年五月十五日から施行されたわけでありますが、その後、実は二度、期限の延長がなされています。しかし、二度の期限延長がなされた後、さらに、平成十四年四月一日から、また十年間の時限立法で沖縄振興特別措置法というのが、引き継ぐ形で新法が制定されました。

 また、実は、平成二十三年までこうした特別振興の法律に基づいて予算の投入がなされたんですが、評価した結果、社会資本整備はおおむね本土並みに整備されるなど一定の効果が上がったが、依然、所得水準が国民所得の約七七%にとどまり、失業率も全国を大幅に上回る水準で推移する等、その特殊事情等を背景としたさまざまな課題を解決するには至らなかったというふうな結論づけがなされています。

 それまで沖縄振興開発特別措置法に基づいて開発の予算が投入されてきたにもかかわらず、課題がなかなか解決できない。しかし、路線を変更することなく、沖縄振興の基本方向についてまた新たな、法律の期限を十年として、自由度の高い一括交付金の創設や経済特区の新設及び拡充等の振興策を盛り込んだ法案を、民主党政権のときですが、二十四年度の通常国会に提出して、それが制定されたということは御存じのとおりだと思います。

 しかし、先ほど述べたように、幾らこういう公共投資を行ってきても、なかなか沖縄の振興が果たされないという現状が明らかになってきています。

 そういう中で、先日、沖縄出身ジャーナリストの惠隆之介さんという方にお会いをさせていただきました。惠隆之介さんは、沖縄県のコザ市の生まれで、昭和五十三年に防衛大学校を卒業して、五十七年まで自衛官をやっておりまして、その後、幾つかの変遷を経て、現在は拓殖大学の客員教授、防衛の専門家として教壇に立たれておられます。

 実は、その惠先生が「誰も語れなかった沖縄の真実」という本を書かれています。それともう一つ、これは非常に過激な題名なんですけれども、「沖縄が中国になる日」という本を書かれています。

 そのほかにもいろいろ本を書かれているんですけれども、この「誰も語れなかった沖縄の真実」という本の中で、驚くべき内容がたくさん語られています。

 まず、かつて琉球王国がありましたけれども、沖縄あるいは日本全国で、琉球王国が非常に発展して平和の地だったというように語られていますが、実は非常に貧しくて、原始共産主義のような体制をとっている国だったということ。あるいは、日本統治時代、その後日本に編入されて統治されたとき、どういう発展を遂げたのか。そして、暗い歴史と言われますが、アメリカの統治下であった約二十六年、二十七年の実態とはどうであったのか。実は経済もすごく発展したとか、あるいは病気が、感染症が撲滅されたとか、GDPがふえたとか、そういう数値に基づいたことがこの本の中では書かれています。それと、まさに今沖縄がどういう状況にあるのかということをこの本の中で語っておられます。

 先ほど申し上げましたが、きょうは予算についてまず確認させていただきたいんです。

 まず、総務省の予算の中で、沖縄に交付されている税、複数あると思いますが、基地関連交付金も含めて、幾らで、どのような名目で支払われているか、その種類と額を教えていただけますでしょうか。

株丹政府参考人 総務省で所管をしておりますものは、いわゆる基地交付金と調整交付金というものの二つございます。

 まず、基地交付金でございますけれども、二十四年度総体の予算といたしましては二百六十七億四千万円でございます。そのうち沖縄の関係という御質問でございますけれども、これは、個別には市町村に対して交付をされるものでございますけれども、総体として、沖縄県全体市町村に対して、金額的には二十五億六千八百万余となってございます。

 それから、調整交付金の方につきましては、全体といたしまして六十八億円でございますけれども、そのうち沖縄県の市町村に対して配られておりますのが四十二億七千八百万余でございます。

武藤(貴)分科員 今は、基地交付金と調整交付金と二種類でございますよね。あと、総務省から交付されている予算はまだありますよね。全体像を知りたいのです。

株丹政府参考人 私、自治税務局でございます。自治税務局で交付をしてございますのは、この二種類のものでございます。私の所管では、そのほかは地方税ということになります。

武藤(貴)分科員 わかりました。

 地方交付税ということで、普通交付税と特別交付税、震災復興特別交付税、それと、基地交付金と調整交付金、これが全ての項目になると思いますが、それでよろしいですかね。総務省所管で交付されている沖縄に関する交付税、種類は以上で合っていますか。

株丹政府参考人 交付税の種類については、今おっしゃっていただいたようなものだと思います。

武藤(貴)分科員 ありがとうございます。

 まず、そのうち特別交付税についてちょっとお伺いしたかったんですけれども、わかる方はいらっしゃいますか。

 特別交付税が、今現在、沖縄が幾らで、他府県に比べてどういう状況にあるかというのを、概要を説明していただきたいんです。

佐藤政府参考人 沖縄県に対する特別交付税ですが、これは、沖縄県に対して交付される金額が、二十四年度で七十五億円になっております。(武藤(貴)分科員「約ですよね、ぴったりですか」と呼ぶ)正確に申し上げますと、沖縄県に対して七十四億七千五百万円となっております。

武藤(貴)分科員 他府県との比較についてもお伺いしたいんですけれども、他府県に比べてその金額がどういうものであるか、それと、その算定基準についてお伺いしたいんです。

佐藤政府参考人 四十七都道府県全て申し上げるわけにはまいりませんが、大体人口規模が同程度の滋賀県を見ますと、二十億二千七百万円というような数字になっております。そういう意味では、比較をいたしますと沖縄県の額が大変多くなっております。

 この特別交付税といいますものは、普通交付税の基準財政需要額の算定方法によっては捕捉し切れなかった特別の財政需要があるというようなことですとか、普通交付税の算定日以降に生じた事情、例えば典型的には災害ですけれども、こういったことによって特別の財政需要が生じている、こういったことをつかまえて交付するものでございます。

 二十四年度の特別交付税を見ますと、今申しましたように、沖縄県分が約七十五億円、滋賀県分が約二十億円、こういうふうになっております。沖縄が特に多くなっておるわけでございますが、この中身を見ていきますと、二十四年度に創設されました沖縄振興特別推進交付金に係る地方負担額が三十八億円ございます。これは沖縄以外には財政需要はありませんから、滋賀県もゼロということになります。それから、沖縄においては、特に公立病院の運営に要する経費が多いということで、この算定額が約十五億円に上っておりまして、一方、滋賀県を見ますと、これが二億円であるというふうなことがあります。

 こうした事情から、結果的に先ほど申し上げましたような総額になっているというふうに御理解いただきたいと思います。

武藤(貴)分科員 今お答えいただいたんですが、沖縄が多い特別な事情というのを具体的に教えていただきたいんです。

 例えば、震災とか何とかがあったというのを今御説明いただきましたよね。今私の選挙区の滋賀県との比較をいただきましたが、人口規模が大体百四十万で同程度にあるにもかかわらず、滋賀県が二十億、沖縄が七十五億ということで、三倍以上だと思うんですが、沖縄がなぜ他府県から比べて三倍以上に及んでいるのか。

 具体的な、特別な事情というんですか、その算定の基準は各都道府県全部一緒だと思うんですけれども、沖縄がどういう特別な事情があって多くなっているのかということを教えていただきたいんです。

佐藤政府参考人 特別交付税の場合には、普通交付税とちょっと違いますのは、客観的な基準で配るというものよりは、実際に生じている財政需要に着目して配るというのが大変多くなっているわけです。

 今申しましたように、沖縄が、例えば県の人口ですとか財政規模に比べて非常に多くの額、七十五億円になっているという主な理由は、沖縄振興特別推進交付金の裏負担分をこの特別交付税で見ているということによるものであります。

 そのほかに、これは絶対的に沖縄だけが多いということではないんですけれども、例えば滋賀県と比較しますと、先ほど申しましたような、公立病院に係る経費が多いですとか、あるいは、離島をたくさん抱えていますので行政経費が割高になりますですとか、それから沖縄独特のものとすれば、不発弾の処理に関する費用が毎年多額に上っているだとか、こういう事情がございます。

武藤(貴)分科員 わかりました。

 沖縄振興特別措置法、法律に基づいてということだと思いますが、その法律の背景には四つの特殊事情と言われているものがあると思います。

 米軍の施政下にあったという歴史的事情、それと、今おっしゃられた、広大な海域に多数の離島が存在した、本土から遠隔地にあるという地理的事情、それから、亜熱帯地域にあるという自然的事情、それと、米軍施設・区域が集中している等の社会的事情というものがあって、沖縄振興予算というのが特別に配分されているんだということだと思います。

 次に、ちょっと防衛省についてお伺いしたいんです。

 防衛省も、基地関連予算で幾らかの額の交付金を出していると思うんですが、その項目と予算額についてお伺いしたいと思います。

豊田政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども防衛省におきましては、特定防衛施設周辺整備調整交付金という交付金を所管しているところでございます。

 これは、防衛施設の設置、運用がその周辺地域の生活環境または開発に及ぼす影響の程度でございますとか範囲等を考慮いたしまして、関係する周辺市町村に対して、政令で定める公共用の施設の整備またはその他の生活環境の改善もしくは開発の円滑な実施に寄与する事業を行うために交付するものでございます。

 全体額としましては、平成二十四年度で百九十四億六千万円でございまして、このうち、沖縄県内の市町村に対する交付額は三十二億九千七百万円、約一七%というふうになっております。

 この調整交付金の用途につきましては政令で定められておりますけれども、具体的には、当該市町村が行う道路、公園など公共用の施設の整備でございますとか、あるいは医療費の助成、コミュニティーバスの運行費の助成、こういった事業に充てられることとされているところであります。

武藤(貴)分科員 ありがとうございます。

 防衛省で割いている予算、二十五年度SACO関連経費の中で、基地の借り上げとか、あるいは漁業補償とか、住宅防音整備とか、今のはこういうのを含められた額でしょうか。

豊田政府参考人 ただいま先生に御説明をさせていただきましたのは、いわゆる総務省絡みの基地交付金でございまして、漁業補償でございますとか、それから地主の方から土地を借り上げるといった経費は別途計上させていただいているところであります。

武藤(貴)分科員 ありがとうございます。わかりました。

 今私が申し上げさせていただいた土地の借り上げ料とか、漁業補償のお金とか、防音等々の額というのは幾らになっているのか、全体像でわかりますか。

 わからなければ、ちょっと待っていていただいて。次を聞いておくので、調べておいてもらえますか。

 次に、内閣府について少しお伺いしたいんです。

 内閣府は、一括交付金という形で、予算を千六百十三億円支出していただいていると思います。これは、ソフトとハード事業があるというふうにお伺いしていますが、ソフトが八百三億円、ハードが八百十億円、合わせて一千六百十三億円に及んでいると思うんです。

 これが平成二十四年にかなり増額されたと思うんですが、新設に伴うのかな、そのときの経緯を教えていただきたいんですけれども、よろしいですか。

井上政府参考人 お答えをいたします。

 今御質問の沖縄振興交付金でございますけれども、二十四年度に創設されたところでございます。

 二十四年度は、先ほど来御議論がございますけれども、沖縄振興特別措置法がこれまで四十年間にわたって施行されてきたわけでありますけれども、期限が参りましたので、新たな十年間の法律をつくっていくという観点に立って、沖縄振興を一層推進するということで、法律に基づいてこの振興交付金が創設をされたということでございます。

 沖縄の振興は、これまで国の責務として行っておるわけでございますけれども、新たな法のスキームとして、地域の自主性、沖縄県の自主性を尊重していくという視点に立って、この沖縄振興交付金は、沖縄の実情に即してより的確かつ効果的に施策を展開するために、沖縄振興に資する事業を県が自主的な選択に基づいて実施するという観点に立って設けられているというものでございます。

 金額的には、二十四年度は、いわゆるソフトの方、沖縄振興特別推進交付金、これが八百三億円、そしてハードの方、沖縄振興公共投資交付金、こっちの方は七百七十一億円であったというところでございます。

武藤(貴)分科員 沖縄をさらに振興させるということで額をどんどんふやしているということでございますが、先ほど、冒頭も申し上げたように、他府県から比べてなかなかその効果があらわれていないんじゃないか。例えば失業率とか、あるいは、沖縄の事情を見ますと、自主財源が全国平均の六割程度というふうになっていて、財源の余裕のない、極めて脆弱な財政構造であるというふうに伺っているんです。

 いずれにせよ、民主党政権のときに新設されたこの一括交付金、そもそも、平成二十一年の衆議院選挙の民主党のマニフェストで、地域主権を確立するために、ひもつき補助金を廃止して、地方が自由に使える一括交付金を創設するといって、各都道府県に送られる制度として設けられたわけであります。自民党が政権を奪還させていただいて、各都道府県全部、一括交付金は廃止になったと思います。しかし、沖縄だけがそれを残しているわけですね。

 まだこれは民主党政権下ですけれども、平成二十二年十月二十六日に開かれた沖縄政策協議会の沖縄振興部会において、沖縄県は、さらなる沖縄振興のためには一括交付金以上の自由度の高い財源措置が必要であるとし、全国的制度に基づく予算配分方法とは区別した、沖縄独自の沖縄振興一括交付金を創設するよう政府に要望していると思います。

 この意見を踏まえて、当時、民主党政権が、沖縄振興の重要性に鑑みて、平成二十三年度予算において、地域自主戦略交付金とは区分した、沖縄振興自主戦略交付金三百二十一億円を創設したというふうになっています。

 しかし、民主党政権になって、沖縄振興のためにかなり多額な予算を割いて新設を行って、別に沖縄県の歳入に対して自主財源の割合が変わったわけではありませんし、格段に沖縄の財政状況がよくなったということではないと私は思います。つまり、この予算がどれだけの効果をあらわしているのかということに非常に疑問があると思います。

 民主党政権のときに、最初の鳩山総理大臣が、政権交代前に、最低でも県外と言って、沖縄の世論が非常に基地移設に対して反対になってしまったということを抑えるためにこの予算を創設して、あるいは予算を増額して対応するという考え方があったのではないかというふうに思いますが、しかし、実は自民党政権になってもこれが維持されて、さらに増額されているという状況があります。

 民主党政権のときにふやしたものが、どうして自民党政権でも維持さらに増額されたのか。もちろん、必要だと言ってしまえば、どの自治体も、どんな予算でも必要だと思うんですね。道路でも治水でも、何でも必要だ。ところが、沖縄に関してだけ、どうしてどんどんと増額されるのか。

 今回の二十五年度予算案を見ますと、今おっしゃられた内閣府の一括交付金の中のハード事業の方、三十九億増の五%増、増額になっているわけですね。なぜ増額になっているのか。それは、欲しいというのは、どこの地方自治体もたくさん欲しいと思うんですけれども、沖縄だけなぜどんどんとふえるのかということを教えていただけますか。

井上政府参考人 先ほど委員の方からお話があったところでございますけれども、これまで四十年かけて沖縄振興を図ってきたところでございます。

 もともと沖縄は、二十七年間アメリカの施政権下にあったということでございまして、いわば、本土でいえば高度成長期において必ずしも十分な公共投資がなされていたわけではないという実情があるわけでございます。したがって、社会資本の整備は極めて低い状況にあった。そして、現実として、一人当たりの県民所得は低い状態にある。そして、離島という状況を抱えているわけでございますけれども、製造業の割合が本土に比べて極端に低いというような状況があるというわけでございます。なおかつ、これまでの沖縄戦があった歴史、そして基地の占有面積が極めて高いというようなことで、まちづくりが十分できない状況にあるという観点に立って沖縄振興特別措置法が講じられて、沖縄振興を図ってきたところでございます。

 その評価、それぞれ行っているわけでありますけれども、社会的資本の整備は一定程度されてはいるわけでございますけれども、まだ足りないところがある。そして、県民所得は最低水準にある。失業率は極めて高い状態にある。

 そういうような中で、さらに沖縄振興を図っていくことが、国の責務が必要であるというように整理をされたところでございまして、この改正沖縄振興特別措置法、昨年の三月末に成立をしております。いろいろ御議論はございましたけれども、自民党も含めて全会一致でこの法律が成立をし、沖縄振興を図っていこうとされたところでございます。

 そして、そういう中で、先ほど来御議論がございます沖縄振興交付金、この制度が創設されて、予算の計上がされているわけでございます。

 二十五年度予算、自民党政権になったわけでございますけれども、当然ながら、予算編成過程の中で御議論されたわけでございます。そうした沖縄振興を図っていくことが政府としても必要である、そして、沖縄県から強い要望があった、これは事実でございます。ハードの交付金については増額をぜひ図ってほしい、ソフトの交付金については前年並みをぜひお願いしたいという強い要望があったわけでございまして、そういうことも含めて予算編成過程の中で検討されて、今委員がおっしゃったような予算になったという状況にあるということでございます。

武藤(貴)分科員 御答弁ありがとうございます。

 私は、冒頭申し上げたように、失業率とかあるいは沖縄の財政状況に鑑みて、それはハードは整うと思いますけれども、沖縄の自立が図られていないんじゃないか、活性化が本当の意味でできてきていないんじゃないかということを申し上げたいわけです。

 私も新人なもので、時間配分が下手くそですね。時間がどんどんなくなっちゃって、聞きたいことの半分も聞けない状況なんですけれども。

 これまで四十年間、沖縄振興のために予算を割いてきた。ところが、今の現状があるわけです。その背景になっているのは、二十六年余りに及ぶ歴史的事情あるいは地理的事情と自然的事情と社会的事情があるというふうにおっしゃっていただきました。

 しかし、私が冒頭に紹介した惠隆之介さんの本の中で、沖縄は、米軍による二十六年統治の中で、非常にいい効果もあったんだと。それは、インフラ整備ですとか、あるいは病原菌の撲滅とか、学校をつくったり、病院をつくったり、あるいはGDP、年二〇%の経済成長率だと書いています。

 そういう明るい効果もあったんだということを考えれば、歴史的事情が、沖縄に日本の統治が及んでいなかったから、本土が申しわけなかったと思って四十年やってきた、これからもまだやっていくという方向を転換していかなきゃいけないんじゃないかと私は思っているわけです。別に予算に反対しようということでもありません。これから沖縄の問題をきちんとみんなで本音で議論する機会が必要なんじゃないかと思うんですね。

 もう一つ、四つの特殊事情とありますけれども、米軍施設・区域が集中しているというふうになって、どの公式見解も約七五%の防衛施設が沖縄に集中しているということを言われていますけれども、実はこれはからくりがあるんじゃないかという指摘もあります。

 つまり、自衛隊との共用施設である佐世保とか横須賀とか、幾つかいろいろあるわけですけれども、そういうところは分母に反映されていない。実は、これを反映すると二二・六%になると書いているんです。

 例えば、青森県三沢の米軍基地は、自衛隊の使用部分は全体のわずか三%ですけれども、これは自衛隊との共用施設となっており、今言った七五%の分母から排除されている。つまり、米軍だけが使っているもの、米軍専用施設から考えると七五%ですよと言っているわけです。

 つまり、ここにある四つの特殊事情についても根底から議論をしていかなければいけないんじゃないかというふうに思います。

 時間が来ましたので、最後にちょっと大臣と政務官の御所見をお伺いしたいんです。

 私が今申し上げました、これまでの沖縄への支援、振興策を通じて、沖縄が全然改善されていない状況があるわけです。

 安倍総理は、自助、共助、公助ということを言っています。これは、哀れな、かわいそうな人たちに、ただただお金を投入するのではない、こういうことを言っているわけです。

 沖縄の自助自立を促すためにも、こういう沖縄の現状をしっかり理解して対応していく、路線転換の必要があるのではないかと思いますが、大臣と政務官のお答えをお聞きしたいと思います。

うえの主査代理 質疑時間が終了しておりますので、簡潔な答弁をお願いしたいと思います。

豊田政府参考人 まず、先ほどの防衛省の沖縄関係経費についてでございますけれども、平成二十四年度で一千六百六十八億でございます。このほか、SACOそれから米軍再編の関係で、両方合わせまして百億ほどの経費を計上しているところでございます。

 それから、ただいま先生がお触れになりました在日米軍の基地集中率の関係の問題でございます。

 確かに、自衛隊施設を共同使用している部分等々を含めれば、平成二十五年の一月現在で約二二・六%が沖縄県にある施設・区域の割合ということになるかと思いますが、他方で、そのような共同使用をしている施設・区域というのは、本土では矢臼別の演習場でございますとか北富士、東富士の演習場といった自衛隊の大規模な演習場がかなりの割合を占めているという実態もございます。

 このため、沖縄県における施設・区域につきましては、日常的に航空機騒音等の障害や土地利用上の制約といった負担をおかけしている現状を踏まえますれば、約二二・六%という数値を使用することはこういった実態を適切にあらわしたものではないというふうに私ども認識しているところであります。

左藤大臣政務官 今、先生のいろいろなお話を聞きながら、我が省としては、とりあえず、先生のおっしゃったように、七三・八%の在日米軍の基地施設が集中しております。騒音等の障害や土地利用上の制約といった負担をかけておりますので、このような沖縄の基地負担をできるだけ早期に軽減することが最優先であると我々は認識して、頑張っているところでございます。

 今後とも、総合計画の着実な実施を初め、沖縄の基地負担の軽減に全力で取り組みたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

新藤国務大臣 いろいろ勉強していただいて、いいと思います。

 ただ、やはり沖縄問題は、これは、沖縄の痛みは日本の痛みだ、このようにずっとこれまで日本政府として解決に取り組んできたわけであります。ですから、必要なものを、そして沖縄の声を聞きながら、政府として判断した結果が現状であって、取り組みを変える変えないということではなくて、とにかく我々とすれば、この問題に取り組み続けていかなくてはいけない。

 また、戦争であるとか他国に占領される、そういったことというのは、長い間のボディーブローできいてくる。こういうことを我々は大きく戒めとして、続けなければいけないのではないか、このように考えております。

武藤(貴)分科員 ありがとうございました。

 以上で終わります。

うえの主査代理 これにて武藤貴也君の質疑は終了いたしました。

 次に、馬場伸幸君。

馬場分科員 皆さんお疲れさまです。日本維新の会、馬場伸幸でございます。

 新藤大臣、終日、大変御苦労さまでございます。きょうはちょっと、川柳は用意してきておりませんので、質問のみとさせていただきたいと思います。

 私は、先週、九日の日に、集中審議の方で、国家公務員の改革についてという観点で質問をさせていただきました。今の安倍内閣、大変よくやっている、マスコミでも世論でもそういう評価が出ております。しかしながら、私は、安倍内閣が手の届いていない、また気づいていないところがあるんじゃないかな、そういう観点で、我々日本維新の会、議会活動、また質問においても議論をさせていただいております。

 特に、国家公務員制度の改革については、なかなか遅々として進んでいない、また方向性もはっきり見えていないんじゃないかなと大変に危惧をいたしておりまして、きょうも、前回はちょっと時間が足りなくなりましたので、その部分を深掘りして議論させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、前回も議論をさせていただきました、確認をさせていただきましたが、平成二十一年に成立をいたしております国家公務員制度改革基本法についてお尋ねをいたします。この主なポイントについてまず御答弁いただきたいと思います。

    〔うえの主査代理退席、主査着席〕

岡田政府参考人 お答えをいたします。

 国家公務員制度改革基本法は、平成二十年の六月の六日に成立をいたしております。

 主な内容といたしまして、法制上の措置あるいは法制上以外の措置も含めて多々規定されておりますけれども、法制上のところで重立ったものを申し上げますと、幹部人事の一元管理、幹部候補育成課程の整備、それから自律的労使関係制度の措置、それから官民人材交流の推進、国家戦略スタッフ、政務スタッフの整備等でございます。

馬場分科員 国家公務員制度改革基本法については、今おっしゃっていただいたところが主なポイントだと思います。

 続いてお伺いをいたします。この基本法では、成立をしてから、内閣人事局設置のため、またその他の法制上の措置について、また改革全体の実施についてという項目が、具体的に時限を切られて決まっております。基本法の第四条及び第十一条でございますが、この中身についてお聞かせいただきたいと思います。

岡田政府参考人 お答えをいたします。

 今先生おっしゃったように、国家公務員制度改革基本法には期限が三つ定めてございます。一年目の期限、それから三年目の期限、五年目の期限という形でございます。

 一年目の期限は二十一年の六月に来ておりますけれども、この際には、内閣人事局の設置に必要な法制上の措置等を行いなさいというのが一年目の期限で、政府に課せられた措置でございます。それから、三年目の期限は二十三年の六月に参っておりますけれども、これにつきましては、内閣人事局以外のものも含めた全体の法制上の措置を政府の方でとりなさいという期限でございます。五年目の期限はことしの六月に参りますけれども、法制上以外の部分も含めて、その他必要な措置をとりなさいということで、都合三つの期限がございます。

 以上でございます。

馬場分科員 それぞれ既に整備がされておられますでしょうか。

岡田政府参考人 政府の対応といたしましては、まず、一年目の期限、内閣人事局の設置に必要な法制上の措置のために、二十一年の三月に国家公務員法等改正法案を提出いたしております。この中身は、内閣による幹部人事の一元管理、それから内閣人事局の設置等でございますけれども、残念ながら、これは平成二十一年に廃案になっております。

 そうこうしているうちに二十一年六月の期限が参ったわけですけれども、期限が徒過した後になりますけれども、政権がかわった後、民主党政権におきまして、平成二十二年の二月に、また改めて国家公務員法等の改正法案を提出いたしておりまして、このときにも、中身については、内閣による幹部人事の一元管理、内閣人事局の設置を中心にしたものでございました。これにつきましても、残念ながら、平成二十二年の六月に廃案になっております。

 三回目は、内閣人事局以外の法制上の措置全てをとりなさいというふうに規定されている、平成二十三年の六月でございますけれども、このときに、国家公務員法等改正案、これは俗に国家公務員制度改革四法案というふうに言われておりますけれども、このときには、内閣人事局以外も含めてということでございますので、内閣による幹部人事の一元管理以外にも、自律的労使関係まで含めた横断的な中身を手当てしました。しかし、これについても、平成二十四年の十一月に廃案になったということで、政府としては法案は提出してまいりましたけれども、残念ながら三法案とも廃案になった、こういう経緯でございます。

馬場分科員 基本法が通っているのに全く手当てがされていない。誰に責任があるのかわかりませんが、国会の方も不作為だというふうに言われてもいたし方ないんじゃないかなと思います。

 この点について、きょうは、政治家の方は大臣しかいらっしゃらないんですが、御担当ではないですよね。これは、もちろん国会の方にも責任がある話ですので、公務員の方が全てお答えになれるというわけではないと思います。

 そういったことも含めて、私は、この基本法、先般の予算委員会でも稲田大臣にお尋ねをいたしました。見直しであるとかブラッシュアップが必要だと思いますが、その点についてはどうでしょうか。

岡田政府参考人 お答えいたします。

 大臣の方からもお答えをしていると思いますけれども、国家公務員制度改革の内容につきましては、幹部人事の一元管理、内閣人事局の設置、それから自律的労使関係の制度の措置、かなり広範な改革事項がございまして、過去三度、法案を提出して国会で議論等をされたときに、いろいろな問題点、議論が指摘されております。

 既に三回廃案になっておりますので、次にどういうふうにするかにつきましては、政府として、さまざまの論点につきまして、総合的な総括、検証を行った上で改革を進めたいというふうに考えておりまして、現在、稲田大臣のもとで、有識者を集めた意見交換会をして、論点の整理、議論等についていろいろ検証しているという段階でございまして、これにつきまして一生懸命やって、法案の提出に結びつけたいというふうに考えております。

馬場分科員 今国会で大丈夫ですか。

岡田政府参考人 現在、議論の途上でございますので、いつの時点でということはなかなか申し上げられませんけれども、なるべく早く議論を進めていきたいというふうに考えてございます。

馬場分科員 国会の力関係というのもありますが、やはりこれはなかなか難しい問題をはらんでいて、いろいろ資料も見せていただきますと、今改革に反対する政治家はいないんですね。ところが、いろいろな差異があって、細かな法制度の議論ばかりになって、基本的な方向性についての議論が余りされていないので、力関係もあってなかなか難しいという根幹的な指摘もなされています。

 したがいまして、この基本法についても、もう一度見直すということが私は必要だというふうに思っておりまして、新藤大臣も、御担当ではありませんけれども、関連する省庁ですし、ぜひ安倍総理にもこういったことをお伝えいただきたいというふうに思います。

 そして、この基本法に基づいて、先ほど御答弁の中にもございましたが、過去に三度、平成二十一年、二十二年、二十三年と、基本法を推進するための法律というのが出されております。一番直近の平成二十三年に提案をされております国家公務員制度改革関連四法案、国家公務員四法案について、主要なポイントを、もう一度ちょっとレビューしていただけたらと思います。

岡田政府参考人 お答えいたします。

 国家公務員制度改革四法案でございますけれども、これは四つの法案の組み合わせになっております。一つは、国家公務員法等の一部を改正する法案、それから、あとの二つ、新法として、国家公務員の労働関係に関する法律案と公務員庁設置法案というのがございまして、四つ目に、これらの法改正のために、ほかの法律に関して、関係の法律の整備をするための法律、この四つがございます。

 中身は多岐にわたっている部分がございますけれども、柱となる部分は三本ございます。

 一本目は、幹部人事の一元管理、その他人事制度の改革ということでございまして、内閣人事局の設置に加えまして、このときには自律的労使関係を措置することになっておりましたので、基本法にはございませんけれども、公務員庁等の組織を新たにつくるというようなことを考えておりました。

 それから二番目は、基本法の中には項目としてもともと入っておりませんけれども、このときに、公務員制度の改革をやるということで、退職管理の一層の適正化というのをやっております。これは、現在の国家公務員の再就職に関する規制につきまして、再就職等監視委員会という機関が違反がないかどうかをチェックするということになっています。これにつきまして機能を強化するという中身が盛り込まれております。

 三番目につきましては、自律的労使関係制度の措置ということで、前の二本の法案と違いまして、このときには、自律的労使関係を措置して、国家公務員に関しても協約締結権を与えて、基本的な労働条件について交渉を行って決めるというような形の手当てをしております。

 以上でございます。

馬場分科員 ありがとうございます。

 直近の法律が国会で議論をされておるその途中の段階で、平成二十四年に、この間、予算委員会でも少し御紹介をさせていただきました、人事院から平成二十四年の人事院勧告に伴う国家公務員制度改革等に関する報告というのが出されています。この中で四法案の論点についていろいろと提言なりがなされておりますが、きょうは人事院にお越しいただいておると思います。

 出していただきました人事院の国家公務員制度改革等に関する報告、ここに載せていただいておられる主要なポイントを御報告いただきたいと思います。

永長政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘の二十四年の勧告の際の報告でございますが、公務員制度改革に関する論点ということで、一つが、人事行政の公正の確保に関する論点ということで、試験の問題でありますとか、それから幹部職員人事の公正確保、こういったことについての指摘をしております。

 さらに、自律的労使関係につきましては、これまで累々の報告等でも言ってきておることでございますけれども、そもそも論といたしまして、公務の労使交渉においては給与決定に市場の抑制力が働かない、こういった点。さらに、国会の民主的コントロールというのが行われております、そのもとでの使用者側の当事者能力には限界があるであろう。また、仮に協約締結権を付与した場合の実務的な論点といたしまして、労働組合の代表性をいかに確保するか、こういったことについて整理が必要である、このような点を申しております。

馬場分科員 ただいま人事院の方から御報告がございました。私も、この報告書をずっと見せていただきますと、この四法案の論点という項目の中の協約締結権付与に関する論点というのが、すごいスペースもとっていただいて、人事院さんが力を入れてやられているなということがよくわかるんですけれども、この協約締結権付与に関して、今おっしゃっていただきました、給与を決定する際に市場の抑制力が働かない、また国会の民主的コントロールの中で、大臣が具体的に自分の省の公務員さんの給料を決められない、また、労働組合の代表性が今担保されているのかというようなことが主な項目として書いていただいております。

 それぞれ、私が読ませていただくと、大変ごもっともでございまして、これを受け取られた国家公務員制度改革推進本部ではどういう御感想をお持ちでしょうか。

岡田政府参考人 お答えをいたします。

 この自律的労使関係の措置に関しましては、今先生がおっしゃいました人事院からだけではなくて、マスコミ等も含めて、いろいろなところからさまざまな意見が出されたということでございます。

 もともと、民間と違いまして、国家公務員の場合には、おっしゃるように、国会のコントロールのもとで給与、つまり予算を決めておりますので、民間のような形での労使交渉というわけにはいかないという点であるとか、あるいは、おっしゃるとおり、会社の場合には、最終的には潰れるかもしれないというような問題がございますので、いつまでも、ずっと労使交渉を続けて、何も決まらないまま行くというようなことはなかなか難しいという点、こういう国家公務員を含む公務員特有の環境があるというのは事実かと思います。

 ただ、そういう環境があるという前提でも、もともとの国家公務員制度改革基本法の十二条というところで自律的労使関係については措置がされているんですが、そういう中にあっても、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示して、その理解のもとに、国民に開かれた自律関係制度を措置するという形で書いてございますので、受け取りました政府といたしましては、これに沿って、今のような制約条件も含めて、どういう問題点があり、それは克服できるのかどうなのか、どういう制度設計があり得るのかについて、また引き続きいろいろ考えていかなきゃいけないというふうに考えております。

馬場分科員 改革推進本部の方ではそういう受けとめ方をされておられますが、この人事院さんの報告書の中では、今おっしゃっていただいた基本法で、協約締結権を付与する際に、国民等に中身を提示して、その理解のもとで国民とともに議論をして措置するというようなことが書いてありますが、人事院は、この文言をもって協約締結権を必ず付与しなければいけないというふうには捉まえていない、そういう文章が書いてあるんですが、人事院さん、それで間違いないですか。

永長政府参考人 基本法に書いてありますように、国民の理解というところがございます。自動的に協約締結権を付与する、こういう条項にはなっていないというふうに理解しております。

馬場分科員 それでは、期限はわからない、時限はわからない、時期はわからないということでしたが、前回のような基本法を推進していくための法律は、いつかは国会の方に出されるわけですね。今度出されるその法案の中に、私が今問題にしております協約締結権の件、どういう方向で位置づけられようと考えておられるか、ちょっとお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。

岡田政府参考人 大変難しい質問でございます。

 政府として、どんな条件下においても必ず絶対に措置をしなきゃいけないということを申し上げたつもりはちょっとございませんで、あくまでも、改革基本法の十二条で言う、費用と便益を含む全体像を示し、国民の理解を得るという前提条件がついているというふうに私どもは考えております。

 したがいまして、今までのさまざまな議論の中で、果たしてそういった前提条件というのがクリアできるような案がつくれるのかどうなのかという点から鋭意検討を進めていきたいというふうに考えております。

馬場分科員 私の周りの一般の方々は、この間も申し上げましたが、公務員さんは悪だという捉まえ方をされておられる方がたくさんいらっしゃいます。何でですかと私から聞きますと、やはり、働かへんとか、もちろん権利としてあるんですけれども、何か平日に休んでいるとか帰ってくるのが早いとか、国家公務員の方は違うと思いますが、ほっておいても給料が上がっていくとか、そういうような思いを持っておられますし、労働組合のいろいろな協約締結権の話を申し上げると、それはちょっとおかしいですねと言う方がほとんどでございます。

 ぜひ、法律の原案をお考えになられるお立場だと思いますので、私は、これはちょっと、もう一度よく考えていただいて、平成二十三年の反省も踏まえて次の法律に生かしていただきたいと思いますし、できればそういう観点で基本法の見直しについてもお考えをいただきたいということを要望しておきたいと思います。

 それでは、時間が迫ってまいりましたので、次の質問に行かせていただきます。

 この間、予算委員会でも質問をさせていただきました、国家公務員の改革をしていく中で非常に重要なファクターは私は人事評価だというふうに思っておりますし、人事院さんの出されておられる報告書の中にもそれがはっきりと書かれています。

 人事評価の件については、「結果を給与に的確に反映させるとともに、」「勤務実績不良の者については、その改善が図られるよう適切な指導等を行った上で、必要に応じ降任、免職を含め厳正に対応することが必要である。」ということが書かれていますが、大臣、これについてどのような感想をお持ちでしょうか。

新藤国務大臣 職員の働きぶりを適切に把握する、そして成果の上がらない者に対しては厳正に評価する、これは極めて重要なことであり、真っ当なことだと思っております。

馬場分科員 平成二十一年から国家公務員さんの人事評価システムというのが始まっています。評価シート等も見せていただきましたが、このやり方については、先般大臣からも御説明を聞いております。

 私がこの間御提示申し上げました資料をきょうもお手元に配らせていただいておりますが、堺市においても絶対評価で人事評価を行っておりますので、こういうバランスになっています。いろいろな細かい部分のやり方の違いというのはあると思うんですけれども、国家公務員さんにおいても、このS、A、B、C、Dという五ランクでまずは絶対評価をしておられると思いますが、なぜその数字が出てこないのか私にはよくわからないんですが、大臣、どうですか。

新藤国務大臣 前回も御答弁申し上げましたけれども、二十一年から始め、そして、各地方機関も含めての本格実施が二十四年の一月から、こういう状態であって、まずは制度を始めて状況を見る、それから評価者に対する教育、こういったものをやらなければならない、こういうことがあったわけであります。

 この間も申し上げましたが、これは把握するのは当然だと思っておりますから、そして、把握するだけではなくて、その状態を把握した上でどうしたらいいのか、こういうことを検討しなくてはいけない。それが新しく制度を入れた後のことだと思います。

 ですので、私もそういった指示はもうしておりまして、きちんと把握しつつ、それを踏まえてどのようにしていくのか、現状分析とそれから将来、その次の方向性、こういったものはチェックしようではないか、こういうことで進めております。

馬場分科員 それでは、このS、A、B、C、Dの分布の表というのは、私にもいただけるんでしょうね。この一番上とか二番目とか。

新藤国務大臣 ですから、それを取りまとめた時点で、委員が大変御関心を持っていただいておりますし、当然そのことについては御説明をさせていただきたいと思います。

 ただ、それは、全体的な、全省についての取り組みでありますから、少しお時間は頂戴したい、このように思っています。

馬場分科員 今、国の方においても、評価の仕方というのは絶対評価でされておられまして、私はその結果を楽しみに待ちたいというふうに思います。

 そこで、大臣、国家公務員さんの評価、人事評価についてはいろいろな改革をどんどん進めていくことになるんだろうと思いますが、その中でぜひ取り組んでいただきたいのは、絶対評価から相対評価に変えていただきたいと思うんですね。

 これは、大阪では、大阪府、大阪市、堺市、三つの自治体で、もう長時間にわたっていろいろな議論がなされました。相対評価にするといろいろなデメリットがあるということを役所の方はいろいろ理由をつけて説明をしてくれるんですが、この人事院の報告書の中にあるように、人事評価の結果が給与に的確に反映されないと、やはり頑張る人というのは減っていくと思うんですね。この間、アリの法則という話を申し上げましたが、私は、真ん中の四割のアリが三割にできるだけ行くように常に努力をし続けないと、働く意欲、そういうものが低下をしていくというふうに考えております。

 したがいまして、相対評価にして、一番下の評価であれば研修等を行って、一向に直らない。私の地元の恥を申し上げるのもなんですが、この間、終わりがけに言いましたけれども、三年間で数日出勤しただけで、いろいろな制度を組み合わせて、三年間給料をもらい続けていたという職員も過去にはおりました。

 国の場合は優秀な方が多いので、余りそういう方はいらっしゃらないと思うんですけれども、やはり信賞必罰でないと、公務員さんだけではなしに、なかなか人間は頑張ろうという気が湧き起こってきません。

 また、国家公務員さんの中には、恐らく、管理職の方が異動になって、あいつが来たら嫌やなというような職員さんも必ずいらっしゃると私は思います。管理職の皆さん方の、人事管理をしていくという部分でも、今のこの絶対評価のやり方では、なかなかDなんかつけられぬのですね。Dをつけると、覚えとけ、おまえの言うことなんか絶対聞かへんからなというのが人間の本音でありまして、そういうことがやはり心理的な負担になりますので、管理職の皆さん方も、こいつはどないしようもないけれども、まあCにしとこかとか、大臣、実態は実はそうなんですよ。

 ですから、ぜひ評価の仕方というものを絶対評価から相対評価に変えていただきたいというふうに思いますが、大臣、どうでしょうか。

新藤国務大臣 大分そういう赤裸々な厳しい組織の実態、またそういう組織が委員の身近にあるんだなということがわかるわけでありまして、その問題意識は、そういったことはあってはならないことでありますから、きちんと評価をした上で、また、そもそも公務員は、公務の中立性それから公平性、安定性、こういったものを前提として、そして全体の奉仕者として入ってくるわけであります。したがって、能力を上げて、ノルマが課せられるわけでもありませんが、ノルマによって昇給するわけでもなければ、成績が悪いからといってスピンアウトされるわけでもない。全体の奉仕者としてきちんと勤めてくれ、こういうことが基本にあるというふうに思っています。

 ですから、今、組織の中で大きな実態の問題がある、それは漏れ伝わり、関西の方でそういう非常に厳しい状況があるというのは私も承知しております。しかし、それは組織の中で、本来自助努力が発揮されるべきものではないかなと思うんです。

 できるだけ、いつでも、厳しく監視しながら、一生懸命仕事をするようにしておこうじゃないか、こういう論理はわかります。しかし一方で、相対評価を行おうとした場合には、役所の場合は組織の規模、特性があります。ですから、成果の上がらない職員であってもある組織によっては、要するに、相対評価にしてしまうとほかの組織では評価されないけれどもここでは相対的に上がってしまう、こういうふうなことが起きたり、それから、どんなに成果を上げてもその組織形態の中では評価されない、こういうふうなこと。それから、下位評価に対する持ち回りとか、あってはならないと思いますけれども、下級若年層職員へのしわ寄せ、こういったものが出ないとも限らない。やはり組織運営の安定性ということを考えると、よく検討しなきゃいけないことだというふうに思うんです。

 ちなみに、私の方も少し調べておりますけれども、民間シンクタンク、労務行政研究所というのがございます。そういったところの調査によると、一次評価を絶対評価で行う企業は民間においても七割、そして昇給や賞与に反映される最終評価において必要に応じた相対化、これはまさに国家公務員のシステムと同じような仕組みになっているということであります。ですから、組織はそれぞれ千差万別だと思うんですが、民間においてもそういった給与体系があるということであります。

 私とすれば、働きやすい、そして努力や成果が評価されるそういう仕組みを、公務員は公務員のやり方をきちんと確立しなければいけない、このように思いますし、しかし、いろいろなこういう問題が出ているじゃないか、こういうことも踏まえての検討はしていきたい、このように思います。

馬場分科員 地方の時代と言われておりますが、国家公務員さんの制度の改革というものが、国家公務員さん二十七万人いらっしゃいます。地方公務員二百七十万人です。この二十七万人さんに決めたルールが二百七十万人の地方公務員にも適合されていくということで、いろいろレベルの差とかもありますので、国家公務員の改革だけじゃなしに、これが日本全国に全部広がっていくという観点でこの改革を進めていただきたいということを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

奥野主査 これにて馬場伸幸君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川俊直君。

中川(俊)分科員 自由民主党の中川俊直でございます。

 きょうは、予算委員会第二分科会ということで、新藤大臣を初め皆様方、朝から十一時間にわたる質疑、本当にお疲れさまでございます。

 きょうは、私の方から、やはりアベノミクスにのっとって、いよいよ成長戦略、三本目の矢が放たれていくということで、本当に建設的な、前向きな議論を皆様とさせていただければというふうに思っております。

 おおむね三つのことを中心に質問させていただければと思います。

 まず第一に、日本が世界に誇る資源でもある水制度のあり方、とりわけ上下水道の民営化のあり方について。さらには、いよいよ進んでいく議論であろうと思います道州制の方向について。さらに三つ目は、日本のコンテンツの海外展開に対する支援と次世代スーパーハイビジョンである4K、8Kのあり方について。さまざまな観点から質問させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いをいたします。

 まず最初に、水制度についていろいろとお話をさせていただければと思っております。

 鉄の女と称されました英国のサッチャー元首相が、四月の八日に逝去されました。安倍総理大臣は、国家国民のために全てをささげた尊敬すべき政治家でしたとその死を悼まれています。私も全く同じような気持ちであります。

 その上で、サッチャー政権下のイギリスというものの功績についてちょっと振り返っていきたいというふうに思っておるんですけれども、サッチャー政権下、本当にイギリス病という形で苦しんでおりました。こういった中で治療を委ねられたサッチャー元首相は、金融部門の規制緩和であったりとか、また国有企業の民営化という荒療治を実施して英国を救ったというふうに言われております。

 私には、今の我が国の現状というものが、まさに日本病を患って久しいのではないかというふうに思えてなりません。アベノミクスをこのような視点から考えると、その成果が期待できると思い、私も注視をしているわけであります。

 そこで、新藤大臣にお伺いをさせていただきたいんです。

 いよいよ三本目の矢である成長戦略というものが政府によって示される時期が近づいてきておりますけれども、新藤大臣御自身、そういった中で、どういうふうにこの三本目の矢を放っていくべきであろうか、その御見解をお聞かせいただければと思います。

新藤国務大臣 まず、中川委員のお父さんには、私も長年にわたって御指導いただきましたし、お世話になっております。また、その息子さんがしっかりと志を継いですばらしいお仕事をされることを期待したい、このように思います。

 その上で、これから何が必要か。それはまさに、日本をもう一度再生させるんだ、そして強い日本や優しい日本、こういったものを取り戻そうではないか。

 我々は、長い間の伝統を持っていて、そしてみんなで頑張ってきた、そういう資産があるわけであります。しかし、国家の運営システムが時代にそぐわなくなっている。それから、我々日本の、日本人そのものが、人口構成からして変わってきた。

 それに対しての必要な改革を行わなければいけないと、ずっとその問題点を指摘しながら、しかし、あがき、もがき、我々自民党も一度政権からおりる、そういうところまで来ました。政権交代が行われ、また次なる政権交代が起きて、今私たちがいるわけです。

 したがって、今度の、今の我々がやるべきチャレンジというのは絶対に失敗させてはならない、必ず成功させなきゃいけない、そういう思いの中で、私たちは、自民党のための政治をやるわけでもありません、支えていただく自民党を原点にしますが、我々は、国家国民、そして世界の中の日本を考えてやっていこうじゃないか。

 そういうふうに考えると、では、日本がどういう部分でこれから成長できるのか、言いかえれば貢献できるのかということになっていくと思います。そして、そのためのいろいろな戦略を立てなければいけないと思っているわけであります。

 私が所管するところといたしましては、まず、経済を活性化させる、そのためには、国全体の経済活動もさることながら、それぞれの地域が自立性を高めて、その中から、地域の活性化を通じて経済活動、持続可能な経済というものをつくれないだろうか。そういう意味において、地方の分権や活性化、もろもろ含めて、地方の元気をつくるための活動が必要だ。その具体的なプロジェクトを示していく必要がある。

 また、全国の千七百強の自治体がございますが、それぞれの地域に合ったやり方でいろいろなことをやっていただければいいんですが、どうすれば成功するのか、そういうパターンといいますか成功モデルを示して、そして、中身はそれぞれの地域でもって考えていただこうじゃないか、それを、国も地方も民間も、そしてそこに住む市民も、いろいろな団体も含めてみんなで参加できるようにしようじゃないか、こういうことが一つございます。

 それから、私たち総務省は通信基盤を持っています。ICTと言われるコンピューター処理で生活に革新を起こす。このイノベーションを、私たちの持っている技術と、他の省庁を含めて、また地方団体が行おうとする仕事、それに応用して、飛躍的な、革新的な効果をもたらすことができないか、こういうことにも挑戦したいと思っています。

 それは、ICT成長戦略会議というものをつくりまして、例えば、農業の活性化のために、コンピューターを使って最適な生産コントロールをしたり、それから、技術の伴わない新しい農業の担い手に対して、ベテランの農業者のノウハウをソフト化して、それを現地で対応することによって農業の競争力を高めることもできないだろうか。そして、資源のない国が、実は、海洋も含めて新しい資源を獲得できる、そういうチャンスもあるわけであります。では、その資源開発に対して、我々の持つ高度なコンピューター処理とネットワーク、こういうICTを組み合わせて、そしてそれをさらに後押しできないだろうか。iPS細胞もしかりであります。全てコンピューター処理が必要なんです。

 これは、交通も福祉も教育も、そして医療、あらゆる分野、いろいろな分野に使うことができます。ICTを使って新しいサービスと暮らしをつくっていこう、それに結果的に新たな産業や製造業の需要が発生してくる、こういう連関をつくりたい、このように思っています。

 また、映像や放送を我々は持っています。我が国のコンテンツ市場は、世界で第二位の市場があります。しかし、一位のアメリカに比べて三分の一以下の海外輸出比率です。

 言いかえれば、我々は日本の中で巨大な市場をつくっていますが、我々の潜在能力としては、それを世界に展開できる余地がまだあるんだということであります。それにおいては、コンテンツをどのように国際展開していくのか、こういうこともあります。

 そして、今お触れいただきました4K、8Kという新しい技術、これは、見るだけではありません。産業用にも使えるし、例えば、医療用に使うならば、遠隔地の医療や手術、そういったものに、今までとは違うことができるようになると思います。こういった8Kの技術と高速のブロードバンド網を使えば、医療不足それから地域医療の充実、こういうものもできるかもしれない。そのためにも、高精度の画像を世界に先駆けてつくっていこうではないか。後で御質問はいただくと思いますから、8Kのことはもうこれ以上言いません。

 そういう新しい可能性を追求して、暮らしのいろいろな分野に総務省がかかわっているところがございます。そういったものにもう一度光を当てて、今までとは違うやり方でこの国の成長を促すための仕組みができないだろうか。電子政府も同じことであります。

 そういったもろもろを含めて、持続可能な、民間の投資を喚起する、そういう成長戦略のきっかけをつくっていきたい、このように考えているわけでございます。

中川(俊)分科員 新藤大臣、ありがとうございます。

 もう本当にすばらしい御所見をお伺いさせていただいて、私も、自民党、三年四カ月野党という反省を踏まえて、日本再生、また強い日本、優しい日本をつくっていく一員にしていただければと思っておりますので、引き続きどうぞ御指導賜りますようにお願いをいたします。

 そこで、ちょっと水制度に戻って、何点か御確認をさせていただきたいこと、伺わせていただきたいことがございますので、質問をさせていただきます。

 先ほどイギリスのサッチャー元首相の事例を出させていただきましたけれども、サッチャー元首相が推進した政策では、水制度改革、とりわけ上下水道の事業の民営化政策ということを忘れることができないんです。そこで、民営化問題に絞って幾つか御質問をさせていただければと思っております。

 きょうは、資料として四月三日の日本経済新聞朝刊等々も用意をさせていただいたんです。

 この一面の下の方にもいろいろと記述をされているんですけれども、上下水道事業に関係する部分を要約して読ませていただきますと、上下水道の運営権を民間に売却して、その収益で老朽インフラの整備を進める、そして、施設の所有権は自治体が持って、運営権のみを民間に売却する、官製インフラの資産規模はおよそ百八十五兆円、運営権売却でおよそ百兆円の財源を確保できると書かれています。

 この内容は、サッチャー元首相の水道事業民営化政策をほうふつとさせているわけですけれども、ただ、ここで一つ御指摘をさせていただきたいのは、施設の所有権と運営権とを切り離し、運営権のみを売却するという点は、私はちょっと問題ではないかと思うんです。運営権は施設に付随したものですから、所有権をあわせて売却するべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

 イギリスでは、当然、所有権をあわせて売却しています。私にはどうしてもこの競争力会議の議論が中途半端に思えてならないんですけれども、その辺についての御見解をお聞かせいただければと思います。

矢島政府参考人 水道事業についての御質問でございます。

 民間によります水道事業運営につきましては、水道法によりまして法的枠組みが用意をされておりますが、現状における我が国の水道事業におきましては、民間のノウハウ、資金を活用する観点で制定をされました民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律、いわゆるPFI法に基づきまして、エネルギーや浄水発生土の有効利用等におけるPFI事業を現在は十一件実施しているにとどまっているというふうに承知をしております。

 厚生労働省では、平成二十二年度より、経済産業省と連携をいたしまして、水道分野における官民連携推進協議会を各地で開催しまして、まずは多様な連携形態に関する情報交換等を行うことにより、水道事業者等と民間事業者の連携推進を図っているところでございます。

 需要者でございます国民に対しまして、今後とも清浄で豊富で低廉な水の供給を継続していくため、産業競争力会議での御議論等も踏まえまして、水道事業者が民間のノウハウや資金活用についても積極的に取り組めるよう支援をしていきたいというふうに考えております。

岡久政府参考人 下水道事業につきましてお答えをいたします。

 我が国の下水道事業における民間開放につきましては、民間の創意工夫を生かし、効率的な管理を行うという観点から、水道事業と同様でございますが、いわゆるPFI法に基づきまして、これまで四自治体において、下水の処理過程で発生する下水汚泥の消化ガス等の未利用資源の有効利用におけるPFI事業を七件実施しております。民間のノウハウ、資金の活用を積極的に進めていきたいというふうに思っているところであります。

 また、国土交通省では、昨年の十二月から、下水道事業における民間活用をさらに推進していくため、有識者検討会を設置しておりまして、事業主体である自治体、また民間企業から、PFIやコンセッションに対する意見も聴取しながら、その活用のあり方について検討しているところでございます。

 今後、産業競争力会議での御議論や当省で行っている有識者検討会での結論を踏まえまして、意欲のある自治体が、民間活用についてさらに積極的に取り組めるよう支援をしてまいりたいというふうに考えてございます。

中川(俊)分科員 ありがとうございます。

 今厚生労働省の方に上水道のお立場から、また国交省の方に下水道のお立場から発言をいただきました。

 これもちょっと、後ほど触れさせていただければと思っているんですけれども、本当に日本は、水行政をめぐって所管官庁がそれぞれ分かれているという現状があり、今超党派で、こういったものを一元化してしっかりと、世界に誇る水資源のあり方、水循環基本法をつくっていこうということで、水制度改革議員連盟等々でも議論を進めております。この点につきましても、本当に世界に誇る物すごい水資源でありますので、ぜひ、そういったところも御検討賜れればというふうに思っております。

 今御案内のような、我が国の上下水道の整備状況というのは、私は、ほぼ国民皆水道、また国民皆下水道という形で、おおむねいい状態で整ってきているのではないかと思うんです。これは皆さんの御努力の中でそういったものを培っていただいたんだろうと思って、本当に敬意を表するんです。今はまだ低いと言われている現状でも八〇%近くになっていますし、また、浄化槽を含めるともっと高い比率ということであります。

 ただ一方で、この社会的ストックは、上水道がおよそ五十兆円余り、また下水道がおよそ八十兆円ということで、合計百三十兆円という膨大な額になってきています。これらの施設が刻々と老朽化しつつあって、したがって、向こう四十年余りの間に、膨大な施設更新投資というのも必要になってくると考えられます。

 我が国は、これから人口減少時代にも突入をしますし、また、地球温暖化の進行や東日本大震災のような大規模災害の勃発が懸念される中で、やはりこのような新規投資資金を民営化という手段抜きに確保できるとは私には思えないんです。

 地方財政を所管される総務省としても、ぜひ施設更新に対応する資金需要というものを考えていただきたいというふうに思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。

佐藤政府参考人 御指摘のとおり、公営企業は国民生活に身近なサービスをさまざま提供しておりまして、これからインフラが大量更新時期を迎えます。

 そこで、この更新には多額の費用を要しますものですから、適切なインフラの更新を行いつつ、財政の健全性を確保するということに一層意を用いていかなければならないというふうに認識しております。

 そのために、まず、単純にあるものを新しくするというのではだめだと思っておりまして、施設を計画的、効率的に管理するためのストックマネジメントに取り組む必要があるというふうに思っております。将来的な人口ですとか利用者の動向を適切に見通す、それに応じて施設の規模や配置等を見直す、その上で、更新の優先順位づけや、あるいは長寿命化による平準化といったことを考えていく、これらをトータルとしてやるということが必要だと考えております。

 さらに、その上で、更新に当たっては、事業手法ということも再考する必要があると思います。指定管理者制度ですとか、民間の資金を活用するPFI事業、それから民間委託の導入など、こうした民間的な経営手法の活用ということもあわせて考えていくことが必要だと思っております。

 こうしたことは、一部先進的な自治体においては既に取り組まれていると承知しておりますが、私たちは、できるだけ多くの自治体に取り組んでもらいたいと思っております。

 そのために、二十五年度においては、今申し上げましたようなことをガイドラインとして取りまとめをして、自治体にそうした取り組みを促していきたい、このように考えております。

中川(俊)分科員 ありがとうございます。

 先ほどと重なるんですけれども、水行政は各省庁にまたがっていまして、下水道法は国土交通省、浄化槽は浄化槽法で環境省といったぐあいに多岐にわたるんです。こういった中で、下水道は公共財であって浄化槽は経済財であったり、本当にいろいろなことに分かれているわけであります。これでは、民営化といってもその対応は本当に容易ではないというふうに私は思っております。

 サッチャー元首相が水道事業民営化をやっていくに当たって、水道事業の公的所有は手放しましたけれども、その責任は放棄しなかったという点が高く評価をされているんです。上下水道事業は地域独占事業ですから、この点はある意味で当然のことだと考えます。したがって、民営化は、公的な責任は堅持しつつも民間活力を導入するという難問でもあります。これは大変なことですが、サッチャー政権は成功したわけであります。

 総務大臣もぜひ、このような点をどのように評価されるでしょうか。

 また、民営化政策のあり方について先ほど述べさせていただいたので、時間が限られていますので、ちょっと飛ばさせていただければと思っております。

 水行政の中で本当にさまざまな法律というのが、多岐にわたっていまして、地方自治体というのはそういったものに条例で対応してきている側面もあります。こういった観点から、先ほど申し述べさせていただいたように、今超党派によって、水の制度そのものの入り口でもある水循環基本法を制定して、内閣総理大臣直属の機関をしっかりつくっていこうという議論がなされています。

 その辺につきまして、ぜひとも御協力を賜りますように、また、総務省として、国民の安心、安全、安定した生活の維持向上の観点からも、的確に民営化推進を図っていただきますように、ぜひリーダーシップを発揮していただければ、このように思っておるところであります。

 次に、道州制について質問をさせていただければと思います。(新藤国務大臣「答弁しなくていいの」と呼ぶ)よろしいですか。では、大臣、お願いします。

新藤国務大臣 大事なポイントを言っていただいたので、これはぜひ問題点を共有したいと思って発言しました。

 水問題は、CO2の削減と並ぶ地球の問題だと思っています。我々が、いつでも日本は水を自由に使われていると思っていますが、実は、降った雨は、結局、使われずに川に流れてまた海に行き、また海から蒸発して雲となってと、この地球の壮大な循環の中で、我々が使っている水というのはごくわずかだということですね。そして、これから世界は人口爆発、そして温暖化を迎えて水が足りなくなるという状態の中で、いかに循環をさせて有効に活用していくかということは極めて重要だと思います。

 ですから、まず、経営の仕組みを工夫して、合理的な運営をするというのは第一です。これに合わせて、ビッグデータの活用。

 今我々は、ICTとこの水問題を絡めて解決策がつくれないかという研究を始めています。それは、効率的に流量を計算し、その使い方を制御する、要するに、スマートな水の資源管理、こういったものをICTを使ってできるではないか、こういうことをやりたいと思っています。

 それから、委員、ぜひ御承知いただきたいんですが、今、日本の取り組みとして、南の島で、海洋深層水を電気ゼロ、サイホン方式でくみ上げて、その温度差によって空港の冷熱事業をやろう。そして、その熱をとられた後のものを日本の浸透膜の技術を使って淡水化して、中水道になりますが、それを空港の上下水道の水で使おう。使い終わったものは、今度は漁業の、冷却用の氷の素材に使おうじゃないか。そして、その解けた氷はまた流す。海の水をどんどん吸い上げながら、CO2ゼロです。こういう仕組みをやろうとしています。一つのポンプがあるだけ。そのポンプをつくるのは、日本の製造業の、中小企業の人たちなんです。

 そういう取り組みが成功すれば世界じゅうに何百カ所もできる、適地があります。CO2を出さずにエネルギーをとり、かつ冷房に使える、そういう循環施設、こういったものもやろうとしているんです。

 ぜひ、一緒に勉強していただいて、これも我々の成長戦略、日本の技術を使って世界に貢献できる、こういうことではないかと。

 ですから、その基本となる法律を、中身も含めてよくもんでいただいて、よいものをつくっていただきたい、このように期待をしております。

中川(俊)分科員 大臣、ありがとうございます。

 本当に水というのは成長戦略の大事なかなめでもありますので、ぜひこれからも御指導賜れればと思っております。

 次に、道州制についての御質問を伺わせていただければと思っております。

 いよいよ道州制も、自民党の推進本部等々が今国会中に道州制基本法案を提出したいというような現状になってきておりますけれども、大臣みずから、道州制のメリット、デメリットを含めて、また今後、どのような決意でお進めになりたいか、その決意についてお伺いをさせていただければと思います。

新藤国務大臣 私は、道州制担当大臣を拝命しておりますから、これを推進していかなくてはいけない。その根本は、国と地方の対立があってはならない。

 これは、まずは国民の暮らし、地域の暮らしを向上させて、そして地域の独自性と個性を生かした自立、地方自治をつくる、そして、その中で住民サービス、行政サービスを向上させるとともに、それが最終的には国家機能の、統治機能の強化につながっていく、そういう壮大な取り組みが必要だ。そのための手段の一つとして有効だと思われているのが道州制だ、私はそのように思っています。

 そして、今与党の中で精力的な作業が行われています。また、他党においてもいろいろな御意見があるわけであります。

 メリット、デメリットは、第一次安倍内閣のときにつくりました道州制ビジョン懇談会にまとめていただきました。時間の関係がありますからきょうは割愛いたしますが、メリットもあればデメリットもある。それから、解決しなければいけない問題と、これに対して心配している人たちもたくさんいる。そういったものをきちんと整理していくことが重要でございます。

 それにはまず、国民の代表たる議員が、各党においてしっかりとした議論をしながらそれを深めていくということが必要だと思いますし、我々もそれを注視しながら、適切に対応していきたい。

 道州制の法案がいつ出てくるのか、国会の御議論次第だというふうに思っていますが、これはしっかりと取り組まなければいけない。憲法改正に至るかもしれない、そういう問題を議論しているんだ、そういうことを私も認識して、取り組んでまいりたい、このように思います。

中川(俊)分科員 ありがとうございます。

 私も道州制には積極賛成の立場から発言をさせていただいておるんですけれども、その上で、大臣に一点。

 ちょっと資料の方でもお示しをさせていただいて、私は広島選出ということで、きょうは中国地方全体の道路網の地図についてお持ちをさせていただきました。

 やはり今、地方自治体などもさまざまな意見等々がある中で、どうも一般の世論からすると、一般社団法人の経済広報センターというのが昨年十一月にやった調査では、道州制導入に向けて、賛成が三九%、反対が七%、どちらとも言えないが四〇%という意味で、いまだに、どうしても地方の方では道州制というものがまだ浸透してきていないという状況があります。

 そういった中で、こちらの地図をごらんいただければと思うんです。

 これは中国地方全体の道路整備網の地図なんですけれども、やはりほとんど進んでいない規格なんですね、道路網も。地方の立場からして、それぞれの地方の首長さんたちの御意見等々を伺わさせていただくと、こういった道路網が整備をされていない現状の中で、道州制が突然来ても、やはりなかなかできないよという議論もあるわけであります。

 そういった中では、こういったものの整備をしっかり国が担っていった上での道州制、移行期間の間に集中的にインフラを整えるですとか、また、やはり道州制導入というものは、そもそも本当に多くの権限を地方にお返しするというものであろうというふうに私は思うんですけれども、道州制導入に先駆けて、地方都市における国際便の便数の拡大を目指したりとか、LCCの地方拠点をふやしていくべく空港施設料を下げていったりとか、また、東南アジアの訪日外国人をふやすための査証のルールの緩和であったりとか、そういったもので地方が独自の地域戦略を担っていく周知期間、こういったものをしっかりと地域に権限を譲ってやっていただけるように、ぜひともリーダーシップを発揮していただければと思っております。

 時間が限られてきましたので、最後に一つだけお伺いをさせていただきたいと思っております。

 コンテンツの輸出促進のための補助金支給等々があります。これも日本の成長戦略の一環だと私は思うんです。

 日本にはアニメとかJポップとか、本当にすばらしいものがありますし、また、こういったものがそれぞれのテレビ局にも、財産もあります。

 また経済産業省とも連携をしていただいて、ぜひとも骨太の方針等々でも、4K、8Kの普及も含めて絶大なるリーダーシップを発揮していただき、成長戦略の一環として加えていただければと思うんですけれども、その点についての大臣の御決意を最後にお伺いをさせていただけますでしょうか。

新藤国務大臣 コンテンツの海外展開が、単に今ある日本のコンテンツを海外用に翻訳をして、それで済むとは思っていません。まずはそれから始めなければいけないのは事実でありますが、やはり戦略とすれば、著作権処理の問題があります。それから、海外に展開するためにはどのような取り組みが必要か。出演者の問題もございます。問題というよりも、ワールドワイドに対応させるための言葉の問題もあると思います。それから、それぞれの地域向けの番組制作、こういったものもあると思います。

 いろいろもろもろ、戦略としてやるためには、我々の産業の柱にするんだ、こういう志が必要で、それをきちんと打ち立てた上で必要な取り組みを進めていくべきだ。そして、そのコンテンツを海外に展開する中で、それの放映、それも今までと次元の違う画像を提供できる、こういう意味において、4K、8K、これはあわせて国際展開をしていきたい、このように考えております。

中川(俊)分科員 ありがとうございました。

 ブルーレイとか3Dというのも、これまで失敗という事例もありますので、こういったコンテンツを売り込むにも、政府がやるべきこと、また民間がやるべきことを明確に線引きしていただきながら、本当にこの誇るすばらしい財産でありますので、これからもそういったところで強烈なリーダーシップを発揮していただければと思っております。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

奥野主査 これにて中川俊直君の質疑は終了いたしました。

 次に、若井康彦君。

若井分科員 民主党の若井康彦でございます。

 きょうは、この予算委員会第二分科会で三十分の質問時間を賜りました。貴重な機会でございますので、総務大臣の御所見をぜひ伺わせていただきたいと思います。

 第一番目に、先ほど来、道州制の話も出ていたようですけれども、その一方で、先般、平成の大合併、大変に大きな再編成があったわけですが、その中で、平成二十二年時点で四百五十九の小規模自治体、人口が一万人以下という自治体が残ったというか、新しくできたと言ってもいいかと思うんですが、これを今後積極的に評価をすべきなのか、あるいは再編の対象としてお考えになっておられるのか。まず、大臣のその辺の御感想を伺いたいと思います。

新藤国務大臣 この小規模自治体が、財政力が弱く、また対象人口がどんどん減っていく、そういう状態で維持していく、これについては大変厳しい状況がある、このように思っています。

 一方で、私は、これからの都市計画とかまちづくりは、自立可能な地域で、また自立可能な方法を生み出したものは、それはそれなりの暮らしがあるではないかと。

 所得は均一になりません。例えば、農家の皆さんは、プロの農業で、すばらしい活動をしている人で、年収が三百万あればすばらしいと言われるんですね。そして、大きな家でゆったりと、仕事は大変ですが、暮らしていらっしゃいます。これは、都市部においてその所得で豊かな暮らしができるとはとても思えませんが、それぞれの地域のやり方があります。

 お年寄りばかりの町でも、逆に、その人たちが協力し合って、元気をつくって、また、一人一人の売り上げを上げているあの葉っぱビジネスで有名な上勝などは、九十歳のおばあちゃんが現役で働いておりますし、一人の方で一千万円の、葉っぱを集めてきて売るだけでもって所得を得ている。そういう町は、結局、社会増になっているんですね。

 ですから、私は、これからのまちづくりの考え方というのは、規模の大きい小さいではなくて、自立できるかどうか、そういったことをキーワードに考えてみてもいいのではないか。地域の元気づくり創造本部の中では、過疎地を元気にする公共事業というのはできないのかとか、そういうような研究をしてみようじゃないかということを今始めております、まだ成案は得ておりませんが。

 規模にこだわって整理統合すればそれで解決するとは思いませんが、一方で、それをしなければ維持できない場合には、そういった手段もある。両方、必要なものに対応していけばいいのではないか、このように考えます。

若井分科員 平成十一年以来、大変に市町村の合併が進んだわけですけれども、平成五年の地方制度調査会では、この合併につきまして、十分な権限と財政基盤を有し、高度化する行政事務に的確に対処できる専門的な職種を含む職員集団を有する、そうした基礎自治体を形成するということを目標に、この十数年間の合併の運動を促進したというふうに考えられるわけでございますが、その十数年間に進みましたこの平成の合併というものを、それではどのように評価をしていくべきなのか。

 今、大臣のお話ですと、小規模自治体は小規模自治体なりにこれからの安定した成長発展の道筋が考えられるのではないかというお話もございましたが、それでは、この間の、この合併の過程で何がメリットとして得られたのか、そして何が問題として残ったのか。その辺についてお答えいただければと思います。

新藤国務大臣 平成の合併を行おうということで、特別な財政支援措置も含めて行いました。そして、この平成合併の前、平成十一年の三月、それから平成二十五年の一月、これを比較いたしますと、市町村の数が三千二百三十二から千七百十九に減少した、人口が約倍、それからエリアも倍になったというふうに思っています。先ほどの小規模市町村が、人口一万人未満の市町村も四百八十団体は存在しているということであります。

 その合併は二十二年の三月で一つの区切りを迎えたのではないか、こういうことで、今後は、合併の円滑化に必要な特例、これは用意いたしますが、自主的な合併を選択する市町村を支援する、こういうふうに行政としては切りかえております。

 そして、その間に、やはり合併することによって、人件費、議員の数、職員の数、それから、いわば幾つかの町のバックオフィス部門は統合されたわけでありますし、それから公共施設も統合、そして整理することができた、こういうメリットがあると思います。

 一方で、やはり合併に伴うコミュニティーが、中で混乱が起きたり、それから特に、なかなか時間がかかると思います、一つの町として一体感を持つためには。そのための御苦労が、それぞれの首長さんを初め、町の関係者の方々、今でもそれはある、このように思います。

 いずれにしても、所期の目的は、設定した当初、この合併を機に、やはり事務の効率化、そして財政の合理化、こういったものをやろうという一定の成果は得られたのではないかというふうに思っております。

若井分科員 平成二十年に、全国の町村会がこの間の合併についての評価をまとめておられるわけですが、この中では、財政支出が削減をされて、住民のサービスが低下をしたとか、あるいは行政と住民相互の連帯が弱まったとか、財政計画との乖離が大きくなった、周辺地域の衰退など、さまざまな弊害が顕在化した、そういう評価もあるわけです。

 一方、先ほど大臣も触れられたわけですが、逆に、合併しなかった自治体では、行政と住民が地域について愛着と責任を共有し、手ざわり感のある範囲で身の丈に合った地域経営を推進しているというような、そういう意見もあるわけです。

 それでは、今後の自治体経営の流れとして、こうした非合併自治体といいますか小さい自治体をよりクローズアップして、これを磨き上げていくというんですか、そうした地方自治、そうした自治体の経営というものにもう一度取り組む必要があるのではないかと私は思いますけれども、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 そのように、規模を問わず、自分たちで自立する、そういう方策を取り組んでいるところ、これには、私どもは全面的に御支援をさせていただこう。大きい小さいではありません。その町が自分たちの手で自立し、自治を行いたい、そのための工夫をするならば、それに対する支援は、我々はそれこそが仕事だ、このように思っております。

 ですから、国全体としてのそういう合併に対する取り組みというのは一段落した。あとは、今の状態での地方自治体をどうやって元気にしていくか、活性化していくかだと思います。ですから、我々は、地域の経済を連関させるための制度、そういった取り組みを行うための支援の予算もここのところで、補正予算でありましたが、つくらせていただきまして、大きな効果が今上がっています。我々が用意した予算に、それを超える数倍もの、数倍できかない、十倍ぐらいになるのかな、そういうものがあるんです。

 それから、過疎集落というような厳しい状態に置かれている、そういうところの自立するための事業、これも実はつくったんです。これが、またさらに御要望がたくさん来ました。

 ですから、それぞれの町で、自分たちは自分たちの力で頑張ろうじゃないかと。お年寄りしかいない町でも、逆に我々で頑張ろう、こういうところもあるし、お年寄りの住んでいる町に自分たちが一緒に住んで、そこを便利な町にして、さらにお年寄りがそこに移ってきたい町をつくろう、こういう人たちもおりますし、いろいろな動きが今出てきていると思います。

 私は、鍵は、地域の活性化、これをなし遂げるために、都市は都市の問題、対策がありますけれども、それぞれに応じて我々総務省は御支援をさせていただきたい、このように考えております。

若井分科員 現在、我が国には一億二千六百万人からの人口があるわけですが、その半分が今大都市圏に住んでいる。残りの半分が地方圏で、そのうちの半分がいわゆる地方拠点都市とかそういったところにおられるわけで、ほぼ四分の一ぐらいの人口がその周辺の中小都市あるいは農山漁村に暮らしておられるわけで、私は、この部分というものは、今後も我が国を構成する欠くことのできない地域として、大いにその発展を図っていくべきだと、今、大臣がおっしゃられたのと私も全く同感でございます。

 今回、この合併の経緯を見ておりますと、例えば北海道のように、大変に広大な面積の中に非常に人口分布が薄く広がっているようなところはやはり合併になじまないという地域だと思いますし、私は、また、そういう地域特性を持っている地域が日本の国内のかなりの部分を占めているというのはすばらしいことだと思っております。

 ちなみに、先ほど、大都市圏で六千百万住んでいると言いましたけれども、面積にすると恐らく一割とかそんなものだと思いますので、自治体の再編成を考える上では、人口の規模だけではなくて、そうした地域特性、あるいは、いわゆる面積といいますか、国土の広がりというものを欠くことはできない、そのように確信をしております。

 この間、大変クローズアップされておりますが、国境周辺の離島等、外海孤立型の小規模離島だと離島振興法ではおっしゃっておりますけれども、これらは合併によっては、種々、支援をすることは決してできないと思いますし、また、平成二十二年以来、新たな合併特例の改正法、この中でおっしゃっている水平連携でもなかなか維持をすることはできない、そうした地域が結構広く広がっているんじゃないかと思います。そうしたことを考えながら、次の時代の自治体のあり方というものを考えていかなきゃいけないと思います。

 そこで、先ほど来、道州制の議論もあるわけですが、道州制がもし実現をいたしますと、全国にある一都一道二府四十三県、これらの県は当然解消されるわけだと思いますし、そのうちのある事務は道州に当然移管をしなければならない。一方で、道州が受け持つ以外の部分については、いわゆる基礎自治体に委ねざるを得ないと思います。

 そうした状況の中で、例えば人口が三十万ぐらいで、今回の合併等によって所期の目的を達成できたような自治体は別ですが、確固として小規模自治体の道を選んだそうした地域の皆さんにおかれては、この道州制の中で、どうしてももう一度、基礎自治体としてどういう役割を果たすべきかということが問われることになるのではないかというふうに、半分危惧をし、半分常々疑問に思っているというか、質問したいなという気持ちでおりました。

 そういったところについて何かしらイメージをお持ちでいらっしゃるんでしたら、お聞かせいただきたいと思います。

新藤国務大臣 道州制をどのように設計していくのかということについては、いろいろなお考えがあると思います。心配もあれば希望もあるわけであります。そして、今現在、私の立場で道州のイメージを語るということは、まだこれは早い、また私の今の役目として、それは逆に、皆様方の国会の議論をしっかりと注視していく、そういう中でございます。ですから、個別具体のことについては申し上げられません。

 要するに、形を変えたところで、中身が伴わなければ意味がない。どういう統治機構をつくるにしても、今と同じ現状で、人口が都市に移動し、地域に過疎や弱体化が進んでいて、かつ、税源の偏在があり、そして国全体の経済が伸びていかない、この状態で、それを変えずして、中身を、形をどう変えようが、それは結局、次の問題を生み出すだけになってしまうわけであります。ですから、形を整えることを検討しつつ、では、日本の国で一体どんな可能性があるのか、そういうことをやはり追求していく必要があるなと私は思っているんです。

 今、総務省は、全国の自治体に対してのお手伝いをできる、また、させていただく、そういう仕事であります。ですから、私の今自分で思っていることは、町だとか村にこだわらなくてもいいではないか、ある生活圏域というのをつくって、その中で共同に一つの圏域をつくれるならば、それは一つの町になるかもしれないし、県をまたいだエリアになるかもしれないし、とにかく、そこで自立可能な何か活性化の施策ができないだろうかと。

 それは、そこで経済が回るということです。それから、そこの町に住む人がふえるということです。そこの町で仕事をできる人がふえるということですね。そういうものを政策として地域が考え、国がお手伝いをし、民間が参加をし、市民団体が一緒になって、そういう成功事例をつくっていく中で、まずは自治体の自力をつける。

 その中から、今度は、道州というのは、日本を地域特性に応じてある程度に分割して、そして、地方でできることはそこに権限を強化させながら、国の負担を少なくして、そして住民の、より身近なサービスが効率よく、望むものができるようにしよう。そして一方で、国はトータルの、全体の国家を統治して、外交や安全保障や、そちらによりこれまで以上に専念できるような、そういう形をつくるということであります。

 でも、一方で、ナショナルミニマムは維持しなくてはなりません。ですから、あらゆる意味で国民的議論が必要だと思いますし、そういった設計を続けていかなくてはならない。今、その前段階として、中身が、議論が深まりつつある、こういうことではないかと思っています。

若井分科員 今回の合併の中で、大都市圏の小規模な自治体で合併が進まなかったという、ある意味での課題があるわけで、今大臣がおっしゃられたことは特にその問題にかかわっているのではないかと思いますが、また道州制の議論が進んでいく中で、さらに引き続き議論させていただければと思います。

 次に、こうした小規模の自治体の中で、臨時職員、非常勤の職員が大変に急増しております。これについて、幾つか政府の見解を問いたいと思います。

 まず一番目に、昨年の三月二十九日に、総務省が「臨時・非常勤職員に関する調査結果について」という調査結果を公表されたわけですが、この調査結果に基づき、地方公務員の臨時、非常勤職員に係る任用と処遇のあり方について、どんな検討をされているのか、いつまでに結論を得る見通しなのか。その点について、見解を伺いたいと思います。

三輪政府参考人 お答え申し上げます。

 平成二十四年の四月一日現在における調査をしたものでございます。この調査の結果、臨時、非常勤職員の総数約六十万四千人、これは平成二十年調査から約十万人増加をしているという状況でございます。都道府県が十二万七千人、政令市が六万六千人、市町村が四十一万一千人となっております。主な職種別に見てみますと、一般事務職員が約十五万人、保育士等約十万三千人、教員、講師が約七万九千人、このような大まかな状況でございます。

 こういったかなり数字が伸びているという状況の中で、基本的にはそれぞれの団体が、正規職員のほかに、事務の種類あるいは性質に応じて、いろいろな任用、勤務の形態を活用されているというふうに私ども理解をいたしております。

 そういった中で、いろいろな問題点、課題等も指摘をされておるという状況でございます。

 総務省といたしましては、制度の趣旨に沿った任用や処遇について改めて地方公共団体に検証していただくように促してまいりたい、このように考えておるところでございます。

若井分科員 この間、この臨時、非常勤職員の問題はいろいろなところで議論されているわけですが、その一つに、任用と任用の間に、一日なり一週間なり、あるいは一カ月空白期間を置くという慣行が行われている、そうした自治体が二割から四割程度存在すると聞いております。

 空白期間が生じると、働く側からすると、大変にさまざまな、年金や社会保険等も含めて不利益が生じるわけでございますが、国の非常勤職員については、人事院が、こうしたことはしないようにという、人事院規則に基づく指導が行われていると聞いております。

 一方で、自治体におけるこの空白期間の問題、社会通念上これは一体どういうことなのかとクエスチョンマークをつけざるを得ないようなこうした慣行について、本当に法的な根拠があるのかないのか。そして、もしそれがないのであれば、この実態改善のために、文書をもって総務省が助言をするべきではないかと思いますけれども、その点、いかがでしょうか。

三輪政府参考人 臨時、非常勤職員の再度の任用につきまして、御指摘のような空白期間を設けなければならないというような法的な根拠はないというふうに考えております。

 臨時、非常勤職員の任用につきましては、基本的にはそれぞれの地方公共団体において判断をされるものでございまして、組織において最適と考える任用、勤務形態の人員構成というものを実現して、そのことによって最も効果的な行政サービスの提供を行うことが重要である、このように考えております。

 御指摘の再度任用の際の取り扱いにつきましては、地方公共団体に実態をお聞きしてみたい、このように考えております。

若井分科員 次に、今般のいわゆる地方公務員の給与削減の要請でございますが、いわゆる正規職員の給与削減をした場合に、今議論してまいりました臨時、非常勤職員の皆さんの賃金等に影響が出るのではないかという、そうした危惧が広まっております。

 先ほどの調査にもございましたとおり、この方々の報酬というのは正規の職員に比べてかなり低い水準にありますが、今般の要請によりまして、こうした方々の賃金はどのように扱われるべきだとお考えになっていらっしゃるでしょうか。

三輪政府参考人 国家公務員の給与の減額支給措置におきましては、期間業務職員等の非常勤職員については、常勤職員より相当程度給与水準が低い場合には、減額を行わないことを基本とする運用を行う、このような方針が閣議決定をされているところでございます。

 今回の地方公務員の給与に関する要請におきましても、常勤職員とは異なる勤務形態となっております地方の臨時、非常勤職員につきましては、国の非常勤職員の取り扱いを参考として、それぞれの勤務形態や報酬等の水準を踏まえて、各地方公共団体において適切に御判断をいただきたい、このように考えております。

若井分科員 自治体の判断に委ねるというお話ですが、この給与削減の要請については国からの要請ということもございますし、ある程度しっかり国から考え方を示すべきではないかと思いますけれども、お答えは結構でございます。

 それから、雇いどめの問題なんですけれども、例えば消費者庁は、二〇一二年の八月、そしてことし三月に、消費生活相談に対する雇いどめの見直しについてということで、総務省と相談の上、再度の任用を妨げられない、こう明記をしているわけでございますが、最近の民間の労働法制等においてもこうした同じようなシナリオが一般化をしている中で、自治体における現在行われております画一的な雇いどめ、この見直しをやはり行政運用として通知すべきだと思いますけれども、いかがでございますか。

三輪政府参考人 消費者委員会から建議が以前ございまして、その中で、一律に任用回数の制限を設けることが適切でない等々、こういった問題点の指摘等がなされているところでございます。

 この問題につきましては、私どもといたしましても、実態として非常勤職員が行う業務の中にも恒常的な業務があるということ、あるいは、任期ごとに客観的な実証を行ったその結果として、同じ者を再度任用することは排除されない、このような消費者庁と共通の認識を持っているという、まず前提でございます。

 そういう前提で、総務省が開催をいたしますいろいろな会議等々で、臨時、非常勤職員に関する対応を説明する際に、消費者行政担当大臣のメッセージに留意するというようなことをあわせて呼びかけをしている、このような状況でございます。

 なお、柔軟な専門職任用制度のあり方についての指摘もあわせてその建議の中でなされておりまして、こういった問題につきましては、私どもも実態を踏まえつつ、また、民間の方の実態あるいは労働法制、こういったものの状況を十分踏まえながら議論をしてまいりたい、このように考えております。

若井分科員 どうもありがとうございました。

奥野主査 これにて若井康彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、畠中光成君。

畠中分科員 みんなの党の畠中光成です。

 本日は、前半に災害時の通信インフラ、そして後半に選挙制度についてお伺いしたいと思います。

 私の地元は兵庫七区、西宮、芦屋でありまして、おとといの土曜日に、同じ兵庫県淡路島を震源とする地震がございまして、私が住んでいる西宮も震度四程度の揺れがありました。JR、阪急、阪神などの鉄道や、高速道路も一時停止するなど、影響がありました。淡路島にも知り合いが多いので、携帯電話やメールで大丈夫か連絡をとりました。

 私が大学を卒業する平成七年でしたが、阪神大震災にて家が全壊した経験もあるのですが、あのときのことがフラッシュバックのようによみがえりました。

 当時は、携帯電話というのは限られた人しか持っていない。ポケベルというのもありましたけれども、一番の情報源というのは、震災後、ラジオでありました。今現在におきまして、スマートフォン、PDA、ノートパソコン、データを扱う通信端末が普及しております。

 先日、安全保障委員会において、災害時の通信インフラについて質問をさせていただきました。その際、総務省から、通常時の五十倍程度の音声通信需要が発生した場合にも対応可能となる技術の研究開発に取り組んでいる旨の答弁をいただきました。

 東日本大震災の際には、通常の五十倍から六十倍の通信需要が発生したと見込まれています。仮に、首都圏を巨大地震が襲った場合、中央省庁や報道メディア等が集中していることから、通信需要は東日本大震災のものを上回ることが容易に想像できます。南海トラフも同じかと思います。

 現在の五十倍の通信需要に対応可能な技術では足りないことが想定されていますが、ほかにも研究開発は行われているのでしょうか。お答えください。

    〔主査退席、うえの主査代理着席〕

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 通信インフラは、委員御指摘のとおり、国民生活や経済社会活動を支える重要な基盤でございまして、ふくそう対策初めその防災対策にしっかりと多角的に取り組んでいくことは大変重要であると認識しておるところでございます。

 このため、総務省では、災害発生時に通常ベースの五十倍程度の音声通信需要が発生した場合にも、その疎通を可能とする、そのふくそう対策の研究開発を進めておるところでございますが、それに加えまして、例えば災害時に輸送、搬入すればすぐに使用できる小型の通信処理設備の研究開発、この研究開発では、複数のそうした装置を導入し、その相互の連携を図ることによって通信処理機能を増強することが実現できる、そういう側面の研究も含まれておるわけでございますが、そういった取り組みも行っております。また、持ち込んですぐに衛星通信の確立が可能となるような小型地球局の研究開発なども進めておるところでございます。

 こうした取り組みによりまして、通常時の数十倍以上のふくそう、通信が発生した場合にも必要な通信が確保されるような環境づくりに、鋭意、今取り組んでおるところでございます。

 いずれにいたしましても、総務省といたしましては、引き続き、電気通信事業者と連携しながら、通信サービスの耐災害性の強化に向けた取り組みを多角的にしっかりと進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。

畠中分科員 災害時において、携帯電話による緊急通報のため、携帯事業者間のローミングは有益だと思います。

 また、緊急通報以外においてもローミングを行うことができましたら、さらに災害時の安心ということが伴うと思うわけでございますけれども、このローミングについて、緊急通報あるいは緊急通報以外のことをあわせてお答えください。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 災害時において、被災された方々による警察や消防などへの緊急通報が確保されるということは、公益的観点から極めて重要な課題であるというふうに認識しておるところでございます。

 このため、その一つの方策といたしまして、携帯電話の緊急通報ローミングに関しまして、平成二十四年三月から十一月までの間、事業者団体であります電気通信事業者協会に携帯緊急通報ローミング検討会を設置いたしまして、各携帯電話事業者などの参加を得て、技術的な検討などを実施してきたところであります。

 そうした中で、現状、事業者によって通信方式が異なることや使用する周波数も異なるといったようなところの課題が挙げられたところでございます。

 私どもといたしましても、こうした状況や携帯電話ネットワークの耐災害性の強化に関する各種の取り組み状況を踏まえながら、引き続き、災害時における有効な通信手段確保のための方策について検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

 なお、緊急通報以外の通常の、災害時における通話のローミング、これに関しましては、今申し上げましたような、事業者によって通信方式が異なること、あるいは周波数が異なることに加えまして、特定の携帯電話事業者の網に通信が集中することによって、不測の事態が発生することも考え得るということで、そういった点もちょっと課題としては指摘されておるところでございます。

 いずれにしましても、私どもといたしましては、そうした課題も踏まえながら、あるいは、今後の携帯電話事業者の通信ネットワークの耐災害性強化に向けた取り組みなども総合的に勘案しながら必要な取り組みを検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

畠中分科員 現代においては、電話による音声通信のみならず、携帯電話のメールのやりとりや情報収集に用いられるパケット通信も重要です。東日本大震災の際の通信需要は通常の何倍程度でしたでしょうか。また、パケット通信への通信規制はどのように行われましたでしょうか。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、パケット通信、非常にこれも重要な役割を担っておるところでございます。

 東日本大震災時における、携帯電話事業者における、メールを含む携帯電話のパケット通信の需要の動向でございますけれども、携帯電話事業者によれば、東北地域における携帯電話のパケットトラフィック量は、地震発生直前の約三倍から四倍ということでございまして、それに対応して、最大で三〇%の通信規制を実施したと承知しているところでございます。

畠中分科員 少し話題をかえまして、東日本大震災被災地におけるスマートグリッド通信インターフェースの導入についてお伺いします。

 スマートコミュニティー、スマートビレッジの導入に向けた施策はどうなっていますでしょうか。

久保田政府参考人 お答え申し上げます。

 スマートグリッドでございますけれども、電力の需要と供給を、家庭に設けられました太陽光発電装置などを含めまして、情報通信技術を用いまして高度に最適化する、そういう仕組みでございます。

 私ども、二つの取り組みを実施しておりますけれども、一つはスマートグリッドそのものの導入支援でございます。

 スマートグリッドにつきましては、全国的な普及、展開が望まれているところではございますけれども、先行的に、東日本大震災の被災地域を対象としまして、復興の一環といたしまして、被災地域の地方公共団体に対しまして実施をしているところでございます。

 具体的には、スマートグリッドの導入に必要となる通信設備などを整備する費用を補助するものでございまして、現在、会津若松市、足利市、久慈市及び仙台市の一部において事業を実施しております。平成二十五年度予算案におきましても、これら四市以外の被災地域の地方公共団体におけますスマートグリッドの導入を支援するための費用を盛り込んでいるところでございます。

 二つ目ですが、やや細かくなりますけれども、今後スマートグリッドが普及するに当たりまして、通信ネットワークに流れ込む大量の情報を最適にさばく技術開発が必要になります。

 具体的には、数多くの機器がスマートグリッドに接続された場合でも既存の通信に影響を与えないようにするための、いわばネットワークの負担軽減などを図るための技術の確立に取り組んでおります。今年度末にも一定の成果が得られる見通しでございまして、順次、電気通信事業者がこの技術を採用する予定と聞いております。

 総務省といたしましては、今後とも、スマートグリッドの導入に向けた取り組みを進めてまいりたいと考えております。

畠中分科員 ありがとうございます。

 その成果が上がれば、ぜひ、ほかの地域にもその展開をお願いできたらと思います。このスマートグリッドというのは経済的な観点からも非常に日本を牽引する要素かと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 もう一つ、話題をかえまして、首相官邸初め、政府機関の発信するツイッターやフェイスブックがありますけれども、これが今、各省ごと縦割りで存在しております。政府全体で緊急時や災害時専用のツイッターやフェイスブックをつくり発信することにより、その普及を高めるお考えはないでしょうか。

佐々木政府参考人 御指摘のように、災害情報につきましては、各省がそれぞれ行っているという側面がございます。

 私どもといたしましては、内閣府防災担当として、全体の情報を取りまとめ、被害報としてホームページ等にアップをさせていただいているところでございます。また、これについても、内閣府独自のツイッターで、このホームページにアクセスできるような促しもさせていただいているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、総合的な防災情報の提供、さらには民間からの防災情報、災害情報に関する情報も収集して、それを共有しながら、全体として国民の方々により総合的かつ具体的な情報が提供できるよう努力していくことが必要だというふうに考えております。

畠中分科員 ありがとうございます。

 やはり災害対策において通信というのは極めて重要だと思います。

 私、冒頭に申し上げましたが、阪神の震災のときは、今のような通信機器の発達というのはない状態のときでありましたけれども、今後、日進月歩で通信機器というのは進化していくことだろうと思います。携帯電話一つとっても、3GからLTE、4G、いろいろな進化が速い世界でありますし、通信機器そのものもふえておりますから、ぜひとも対策をお願いしたい。

 あわせまして、今申し上げましたフェイスブックやツイッター、国民にとって、あらかじめ登録する習慣というのはなかなかないと思いますから、政府全体として、こういったところに登録しましょうとか、そういう推進をぜひお願いできたらと思います。

 さて、後半の、選挙制度についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 ネット選挙解禁法案が、先日、倫選特で可決をいたしまして、七月の参議院の選挙からネット選挙が初めて始まる見通しでございます。

 総務省、選挙管理委員会において新しい対応策も求められると思います。各候補者陣営や有権者からの問い合わせ等がふえることが予測されまして、それに対応できる体制を整えていただければと思うのですが、御準備の状況はいかがでしょうか。

米田政府参考人 お答えいたします。

 インターネットを利用した選挙運動を解禁する法律、今御質問がございましたとおり、四月十一日に衆議院の倫選特委で採決がなされました。その際、附帯決議もいただきまして、これは、総務省において、都道府県選管等とも協力をして、一般の有権者、候補者、政党等に制度改正の内容を十分に理解していただけるよう、きめ細かな普及活動を行うようにという趣旨でございます。私ども、この趣旨に沿って、きめ細かな普及啓発活動を行ってまいりたいと存じます。

 また、御指摘のとおり、幾ら普及啓発を行いましても、政党等それから候補者、さらには今回は一般の有権者からも、この法律の解釈等につきまして個別の問い合わせがふえることも想定されております。私ども、これまでの公選法の改正時の問い合わせへの体制等々も参考にしながら、適切に対応ができるような体制等についても現在検討中でございます。

畠中分科員 ぜひこれは周知徹底をお願いしたいと思います。

 選挙制度というのは、国民の参政権にかかわる極めて重要なところでありますから、そのことを国民が理解しているということは極めて重要であります。これは、候補者陣営のみならず、有権者にとってもわかりやすいという体制を整えていただければと思います。

 さて、まさに今、我々立法府の人間は、一票の格差問題における違憲判決を突きつけられております。

 一票の格差が最大二・四三倍だった昨年十二月の総選挙について、二件の違憲状態、十二件の違憲、そして広島高裁、広島高裁岡山支部の二件においては選挙無効の判決を下しました。

 選挙制度について最高裁が違憲状態であると判断したことは過去に何度もありますが、違憲状態と最高裁が判断し、その後、改正できる時間が十分にあったにもかかわらず、同じ制度のもとで次の選挙を行ったことは過去に例はなく、立法府による司法府軽視は甚だしかったと言わざるを得ません。

 政府の衆議院議員選挙区画定審議会が勧告したいわゆる〇増五減案による区割り見直し案では、一票の格差は最大で一・九九八倍で、二倍を下回ります。

 前提として、この〇増五減案で違憲状態を解消できるとお考えでしょうか。

米田政府参考人 この一票の格差の問題でございますけれども、まず、一人別枠方式を定めました画定審議会設置法第三条第二項と現在の区割り規定については、今御指摘ございましたとおり、平成二十三年三月の最高裁大法廷判決におきまして、違憲状態と判示されたところであります。

 こうした違憲状態を解消するために、その後、各党各会派におきまして御議論があり、そのような御議論を経て、立法府において制定されましたのが、いわゆる〇増五減の緊急是正法であるというふうに承知しております。

 この緊急是正法では、まず、一人別枠方式の規定を廃止いたしまして、それにかえまして〇増五減による新たな配分方法を定めているわけであります。

 これに関しましては、現行の都道府県別の選挙区数は、平成十二年の国勢調査人口に基づいておりますが、一人別枠方式で配分されたものでございます。平成二十二年の国勢調査人口に基づきまして、この一人別枠方式は存続されたものとして仮に配分をいたしますと、四増四減という結果となります。したがいまして、これは、いわゆる〇増五減とは異なるものでございます。

 また、緊急是正法は、今回の区割りの改定につきまして二つの事柄を定めております。一つは、直近の平成二十二年国勢調査人口によることということで、人口をどれにするかということ、二つ目といたしまして、選挙区間の人口の最大格差は二倍未満とするということを定めております。

 これに関しましては、先ほどの平成二十三年の最高裁判決におきまして、選挙区の改定案の作成につきまして、画定審設置法第三条第一項でございますが、このように定めております、一つが直近の国勢調査人口に基づくということ、二つ目が選挙区間の人口の最大格差は二倍未満を基本とするということでありますが、この二つについては投票価値の平等に配慮した合理的な基準であると判示されているところであります。今お聞きいただきましたこの二点については、緊急是正法にも通じているところであります。

 今般、画定審議会から勧告されました区割りの改定案は、この緊急是正法にのっとったものであります。今回の区割り改定法案は、この勧告どおりに法案化したものでございまして、この法案を速やかに成立させていただければ、違憲状態は解消されるというふうに考えております。

畠中分科員 直近のということと二倍未満ということでおっしゃっていただきましたけれども、この〇増五減案は二〇一〇年の国勢調査を基準にしているということで、ただ、その後の人口流動によって既に二倍を超していることも明らかになっております。

 例えば、鳥取二区と東京十六区の格差は、実際には二・〇〇四倍となっています。これでは、仮に今すぐに総選挙を行ったとしても、違憲状態で行われる選挙であることは明白ではないでしょうか。

 このような小手先の改正でよいのか。議員定数削減なども含めた根本的な解決も必要かと考えますが、御見解をお聞かせください。

新藤国務大臣 これは、私は何度もこれから御説明しなきゃいけないと思うんですが、まず、今回の〇増五減は、最高裁の大法廷判決に基づいて、その示された判決において、国会が、主要会派が御議論いただいた上で、まさに立法府が決めていただいた、その枠組みに沿って今度は区割り審ができて、そして区割り審でこのような提案がなされ、勧告がなされ、それに基づいて今回の〇増五減になったわけであります。

 したがって、まずは、憲法上の要請として、今、違憲状態とされたものを解消しなくてはいけないということがあるわけであります。

 そして、今、ここのところで盛んにいろいろと報道等がなされておりますのは、それでは一・九九八倍がすぐにまた超えてしまうではないか、それから抜本的な制度改革が必要ではないか、こういったことを今委員もお話をされました。ですから、そういうことについては、これまた立法府における議論が必要なんだと思います。これは民主主義の根幹をなす問題であります。ですから、その問題は各党各会派においてぜひ御議論をいただきたい。

 私ども、行政府とすれば、まず憲法上の要請において、法律に沿ってつくられた勧告、その勧告に基づいてつくった今回の法案、これを可及的速やかにまず成立させる、それが私どもの務めであって、その後につきましては、いろいろな議論はぜひ国会の場においてやっていただきたい。また、それを私も期待をしているというところでございます。

畠中分科員 この〇増五減案、今現在、違憲だと思っている人が国会の外にたくさんいたとしても、具体的な争訟にすることができない。すなわち、選挙をもう一度やって具体的な事案になってからまた裁判に訴えられるということです。そういうことでありましたら、選挙をやって裁判、選挙をやってまた裁判、そういうイタチごっこになるわけでございます。そういったことを避けるためにも、しっかりと立法府が答えを出さないといけないと思います。

 そもそも、一人〇・六票がよくて、一人〇・五票が悪いというのは本筋ではない議論かと思います。あくまで一人一票が原則。

 したがって、みんなの党は、どこに住んでいても一人一票という民主主義の当たり前の価値を実現できる全国集計比例代表制を提示しております。これで選挙を行えば一人一票を実現できると考えますけれども、御見解をお聞かせください。

新藤国務大臣 まず、総務大臣として、御党、各党の案について評価することは差し控えなければいけないというふうに私は思いますし、まさに委員が先ほどから何度もおっしゃっているように、立法府で議論しなくてはいけない問題なわけでありまして、それを私どもも大いに期待をしておりますし、注視をしておりますし、方針が示されたならば、それは可及的速やかに対処しなくてはならない、このように思っているところであります。

 そして、一人一票といった投票価値の平等の問題、それと選挙制度のあり方、これはもう極めてさまざまでありますし、大変難しい問題だ。

 そして、最高裁は、平成二十三年の三月二十三日の判決の中では、投票価値の平等は、選挙制度の仕組みを決定する絶対の基準ではなく、他の政策的目的ないし理由との関連において調和的に実現されるべきもの、このようにした上で、現行の区割り審設置法第三条が最大格差が二倍未満になるように区割りをすることを基本としていることを、投票価値の平等に配慮した合理的な基準を定めたものと判示しているということでございます。

畠中分科員 時間もありませんので、次に移らせていただきます。

 最高裁判所判事の国民審査制度の形骸化が言われていますが、審査公報はいずれも同様の形式で、裁判官に関する情報がわかりやすく提供されているとは言えないと考えます。そのあり方を検討し直すお考えはございませんでしょうか。

米田政府参考人 最高裁判所の裁判官国民審査につきましては、根拠が、御承知のとおり、憲法、それから最高裁判所裁判官国民審査法というところで決まっているわけでございます。

 この最高裁判所裁判官国民審査法第五十三条におきましては、審査に付される裁判官の氏名、経歴その他審査に関して参考となるべき事項を掲載した審査公報を発行するとされておりますし、さらに、その二十七条等におきますと、これらの事項を記載した掲載文の写しを審査に付される裁判官が提出していただいた原文のまま掲載する、こういうことになっているわけでございます。

 したがいまして、私どもも、この審査公報がもうちょっと国民にわかりやすくという観点から、審査公報の掲載文の字数制限、従来一千文字でございましたけれども、こういうものを廃止したり、図表等の制限がございましたけれども、これを撤廃したり、さらに、現在裁判官の写真の掲載というのをやっておりますけれども、そういうような形で充実を図ってまいりました。

 今後とも、どのような工夫ができるか、関係当局にも意見を伺って検討してまいりたいというふうに考えております。

畠中分科員 申請しておりませんのでお見せできませんが、今私の手元に昨年末の最高裁判事の国民審査公報と平成二十一年の審査公報があるわけなんですけれども、これを見ますと、どの判事も同じように書かれております。

 特に、気づきましたのが、この写真、今おっしゃられましたけれども、昨年末の最高裁判事の公報の写真、判事の写真の背景が、皆さん、白なんですよね。平成二十一年の判事の写真は全部後ろが黒なんですよ。

 最高裁の判事がみずから原文を出して写真を提出しているのに、なぜ同じなんでしょうか。先ほどおっしゃられたのは、裁判官の原文をそのまま載せるということでおっしゃられましたけれども、どうして同じなのかということは私は極めて疑問に感じますので、ぜひとも改善、国民にとってわかりやすい公報のあり方をもう一度ぜひ考えていただければと思います。

 さて、この最高裁判事なんですけれども、前回の投票で無効票が三・二%あったと聞きます。これは、マルを書いて無効票となるといった理由も考えられることでしょう。現在の、罷免することを可とする票にバツをつける以外の方法を検討するお考えはありませんでしょうか。

米田政府参考人 現在の方法は、御承知のとおり、審査に付される裁判官の氏名を投票用紙にまず印刷いたしまして、罷免を可とする裁判官に対して、その記載欄にバツの記号を記載するということになっております。

 この規定は、有権者に裁判官全員の氏名を知らせる必要がある、それから、なるべく簡易な方法で投票できるようにすべきということで、記号式投票を採用する一方で、全ての有権者が審査対象裁判官の全員について十分認識しているとは言えないことから、罷免を可としないという意思表示を求めることは無理を強いるという配慮から定められたものというふうに承知しておりまして、この点、最高裁の判決が昭和二十七年に出ておりますけれども、現行の仕組みについて、むしろ有権者の意思に合う効果を生じさせるというふうに判示をしております。

 このような立法の経緯、それから判例等も踏まえながら、これは解職制度でございますので、その趣旨に合致するよう慎重な検討が必要と考えております。

畠中分科員 この国民審査制度が衆議院総選挙と同じタイミングであるというのは憲法の規定によっています。そうすると、どうしても衆議院の総選挙に報道が偏らざるを得なくなるというのは皆さん想像もつくかと思いますし、実際そうかと思います。これは、放送法などの観点から、果たしてこれでいいのかということ、御所見をお伺いしたいと思います。

米田政府参考人 選挙、それから国民審査の具体的な報道を行うのは放送事業者でございますけれども、放送事業者は、放送法の番組準則やみずから定める番組基準に基づき、自律的に番組編集を行うこととされております。御指摘の最高裁判所裁判官の国民審査の情報につきましても、自律的に放送が行われ、国民にしっかりと伝えられるということを私どもとしては期待しているところでございます。

 私どもといたしましては、この国民審査、憲法にも明記されている重要な制度でございます。総務省として、常時啓発、それから臨時啓発におきまして、国民審査の情報がより伝わるよう引き続き尽力してまいりたいというふうに考えております。

畠中分科員 司法、立法、行政、三権分立というのは本当に民主主義の根っこのところでありますから、ぜひ国民審査制度についてもしっかりとしたわかりやすい取り組みをお願い申し上げ、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

うえの主査代理 これにて畠中光成君の質疑は終了いたしました。

 次に、遠山清彦君。

遠山分科員 公明党の遠山清彦でございます。

 新藤大臣、本日は、大変お疲れさまでございます。私の後にもまだ何名かいらっしゃるようでございますので、大臣よく御承知のとおり、私よくしゃべりますので、たくさんしゃべらせていただきます。

 まず最初の質問でございます。

 新藤大臣が、野党時代、決算行政監視委員会の委員長として、私も理事として支えさせていただきまして、一緒にお仕事をさせていただきました。特に一番思い出深いのは、国会版事業仕分けという行政監視にかかわる審議を自由討議形式でやらせていただいたということでございまして、当時の新藤委員長のリーダーシップに改めて敬意を表させていただきたいと思います。本当にすばらしい成果だったと思っております。

 その後、昨年の総選挙を経まして、政権がかわりました。

 私がきょう最初にお伺いしたいのは、安倍政権では、前政権が行ってきた事業仕分けというものをどう評価して、そしてその上で、安倍政権としての行政改革の取り組みについて、どのような姿勢で臨むのかということをお伺いしたいと思っております。

 特に、総務省につきましては、大臣重々御承知のとおり、行政評価の仕事をしております、行政評価局という局を持っているわけでございまして、毎年さまざまなレポートを出しているわけでございますが、そのような立場も勘案して、総務省としてどのような役割を政府全体の行革の中で果たされようとしているのか、お伺いをできればと思います。よろしくお願いします。

新藤国務大臣 まさに、ただいま触れていただきました、行政監視委員会の委員長とまた理事、しかも筆頭理事という形でコンビを組ませていただいて、大変に意義ある仕事をさせていただいた。また、遠山委員にいろいろなアイデアを出していただいた。その結果、あの委員会がとても、憲政史上初となるいろいろな取り組みも行いました。そして、与野党を超えて極めて建設的な、有意義な議論をできたと思っています。

 それは、まさにある与党の委員さんが、これまで国会に出てきて数多くの質問をしたが、こんな充実した質疑は初めてだ、野党の委員長の委員会で与党の理事がそのように言っていただいたことは、私の内なる誇りでありますし、喜びであります。

 また、その中で我々がやろうとしたことは、立法府が行政をチェックして、そして無駄を削減し、また効率のよい行政を進めていくこと、これは立法府の責務なんですね。それが、議会の審議の中でさらにきちんと機能させようではないか、こういう工夫だったと思います。

 一方で、今私どもがやらなければいけないのは、行政改革が待ったなしだからです。それは、財政再建を行うためには、経済をてこ入れして成長させ、パイを大きくすることとともに、歳出をいかに効率よく、そして必然性をもって削るかということになると思います。単に組織を削り人を削るのはもう限界に来ています。

 それから、どこかをやり玉に上げて削るといっても、それは、前政権における、法律の裏づけのない、不思議な仕組みでありました、あの行政刷新委員会というのは。ですから、それは廃止となったわけでありますが、もっと実効性のある仕組みをつくらなければいけないと思っています。

 ただ、私は、いわゆる仕分けと言っておりますが、それは行政事業レビューとなって残っているわけでありますが、取り組もうとした姿勢については我々は共有しているわけでありまして、仕組みを工夫すればいい、こういうことだと思います。

 今、行革推進会議で、稲田大臣の方が事業レビューを受け継いで、そしてそれを発展的にさらに改善させて、しっかりとした制度として進めていくことを決めました。そこに、遠山委員がおっしゃるように、行政事業レビューと私どもがやっている政策評価、これをいかに組み合わせるか。そして、それによって大胆なコストカットをしつつ、政策目的の必然性を上げていく、こういうことができるのではないか。むしろ、先にこういう効果を出そうということを決めた上で、それにとっては必要な予算はつけるし、逆に言えば、スクラップ・アンド・ビルドで、ここは少し優先度を下げられるよね、こういう仕組みをつくろうとしているわけです。

 それは、こういうふうになっています。

 まず、行政事業レビューは、政府の事務事業を単独の事務事業として五千をチェックして、それを自分のところで削れるものを削っていくという形になるわけであります。

 その作業と同じ時期に、政策評価は、その五千の事業を五百の政策目的にぶら下げるんです。五百目的の中には、その目的を達成するための事業が幾つかツリーで入ってくるわけです。それは、五千の中の個別の事業が五百の政策目的に集約される。そして、制度は別々ですが、これに事業名を統一させる。それから、番号を共通化して、連携が、リンクがどこに行くかということがわかるようにする。

 そういう中で、大切なのは、何のために政策をやるのか。そして、その目的のために必要な事業、何と何をやれば成果が上げられるのかということをはっきりさせなければいけません。

 ですから、一つ一つの事務事業をチェックしたところでその目的は限定的になってしまうわけで、例えば、安全な暮らしをつくるといったならば、国交省の道路の交差点改良から、厚生労働省の病院の整備率、そして医師の数、看護婦の数、救急車の到達状況、いろいろなものが加味されて、いろいろな役所の仕事が一つの政策目的に組み合って本来形成されなければいけないわけですね。

 ですから、まだそこはできておりませんが、それに向かって、我が国が達成すべき政策目標をきちんと立てて、それに伴って構成される目的事業は幾つあるのか、それの中に今度は個別の事業が展開されて、それをあちこちから引っ張ってきて、そして効果を上げる、そういう仕組みをつくろうじゃないかということが一つ。

 もう一つは、これらのさらに効果を上げるためにはICTによる電子政府の実現が徹底的に必要だ。これも誰かがというよりも全政府的に決めて、電子政府を実現するためには、ある部分においては紙を捨てる。そして、共有化したり、バックオフィスの部分は徹底的に一緒にする。今役所は各省庁別々の給料計算ソフトを使っているんですね。それから、それぞれの役所が千五百のシステムを持っていますが、統合すれば半分になります。

 今そういった調査をいろいろしながら、片や政策評価と行政レビューを使って効率を上げていこう、そして電子政府を進めることによってコストカットを図ろうじゃないか、この二つをもって体質改善を図りたい、このように考えているわけでございます。

遠山分科員 総務大臣、大変ありがとうございます。

 私も大変勉強になりましたし、また、今の二点、ぜひ推し進めていただきたいと思います。私ども公明党も、与党として、そういった行革の努力を全面的にバックアップさせていただきたい、このように申し上げます。

 その上で、一点、少し個別のお話でございますが、独立行政法人の評価も総務省の行政評価局は柱の事業としてやっているわけでございます。

 現在百四まで集約された独立行政法人でございますが、私は、独立行政法人の存在を最初から全否定する姿勢ではございません。総務省のホームページにも書かれておりますとおり、この法人は、「国が直接実施する必要はないものの、民間では実施されないおそれのある公共的な事業を実施させるため」と。つまり、一般国民の皆さんにわかりやすく申し上げれば、営利企業が収益率を高めるためにやる事業としてはふさわしくないけれども、しかし、誰かがやらなければ国民生活に影響がある、そういったことをやる団体として独立行政法人があるんだという理解はできると思います。

 ただ一方で、大臣よく御承知のとおり、これまでマスコミ等でも繰り返し取り上げられてきましたとおり、独立行政法人は、国家公務員の天下り先、あるいは税金の無駄遣いの温床になってきたという過去の経緯があることも事実でございます。

 そういう意味で、実は公明党は、ここ数年、マニフェストで独立行政法人抜本改革法案という、議員立法で法案を参議院の方で提出をしてまいりました。

 中身につきましては、もう大臣が容易に想像できるたてつけになっておりまして、独立行政法人をチェックする第三者機関をつくって、そこが独立行政法人の事業内容を見て、これはもう時代の流れとともに廃止していいんではないか、あるいは民営化した方がいいんではないか、あるいは国の直轄に戻して、移管をした方がいいのではないか、あるいは別の形態の特別法人にした方がいいのではないか、こういう仕分けをやっていくというような思想が背景にある議員立法でございます。

 与野党でさまざまな意見がある中で国会で審議、採決に至っていない法案でございますけれども、公明党の取り組みを紹介させていただいた上で、総務省としての独立行政法人に対する改革姿勢、この点について大臣から率直に御意見をいただければと思います。

新藤国務大臣 まず、御党、公明党が独法改革については積極的におやりになってきたこと、これは敬意を表したいと思いますし、また、そこの中で中心的に遠山委員が御活躍いただいていることはよく承知をしておりますから、ぜひこれは取り組んでいかなければいけない。

 まさに今お話がありましたように、独法のよいところを引き出すことが必要だと思います。これは民間ではないが行政がやることでもない、しかし、工夫をしながらよりよい柔軟な運営ができる、そういう部分でもあっていいというふうに思います。また、公益性というか、公の仕事の意識をきちんと持った上で進めていく、こういう利点もあるわけでありまして、要は運営内容が国民に対して透明性と説明責任を果たせる、そういう内容にしておくことが重要だ、このように思うわけであります。

 そして、これは今、稲田大臣のところの行革推進本部、そしてそこに置かれた行政改革推進会議、ここでテーマとして取り上げて、かなりのしっかりとした運営方針が出てくる、このように思います。

 総務省としては、我々は独立行政法人の評価を行う政策評価・独立行政法人評価委員会、この事務局を担当させていただいているわけでありまして、こういったところから、独法の改革に向けて行革本部と連携しながらしっかりと取り組んでまいりたい、このように考えます。

遠山分科員 ありがとうございます。

 また、今の政権の中でどういう改革の方向性が出るか、しっかり留意をした上で我が党としても対応を決めていきたいと思います。

 次に、大臣は道州制も担当されておりますので、道州制について伺いたいと思います。

 私、今、自公でつい最近できましたワーキングチームの公明党側の座長をさせていただいております。また、公明党では、昨年までは道州制PTがありまして私が座長でございましたが、ことしに入ってもう少し大きな組織を自民党に倣って公明党もつくりまして、道州制推進本部というのが設置されまして、私はそこの事務局長という立場でございます。

 大臣、報道等でも御承知のとおり、道州制については他党の委員からも予算委員会でたびたび取り上げられておりまして、自公で野党時代、昨年に大筋合意をした道州制基本法案、これは今名前を少し変えまして、道州制推進基本法案、道州制そのものの制度設計はこの法律に入っていないわけでございますので、どういう体制で、また手続で道州制の議論を進めていくかということを決める法案として、一応推進という言葉を公明党から提案して、名前を少し変えさせていただいて、今、自公で協議をしているところでございます。

 今後は野党の皆さんにもお声がけをして、できれば今国会中にも国会提出までは議員立法としてこぎつけたいという状況の中でございます。

 道州制の制度設計の中身については、一応自公案でもちょっとしたイメージは出しております。国と都道府県にかわる道州という広域地方公共団体を設置して都道府県を基本的に廃止する、そしてそのもとに基礎自治体というものを置くという三層構造にいたしまして、国の機能といたしましては外交、防衛、司法などの国でしかできないものに集約をしていく、その他の権限については財源つきで、税源つきでなるべく道州や基礎自治体におろしていくということを想定して、これから国民全体で議論すべきだと私たちは考えているんです。

 実は先日、私も公明党の兵庫県議団に呼び出されまして、兵庫県議団としては道州制について多くの疑義があるということで、説明せよということで二時間ばかりやりとりをしてまいったところでございます。

 地方から、道州制を推進したいという知事あるいは政令市長の連合会というものも任意団体でできておりますけれども、他方で、市町村、基礎自治体を中心に反発の声も大きくございます。

 反発をしている理由というのはさまざまですが、きょう、大臣、限られた時間で二つだけなるほどなというのを御紹介すると、一つは、今我々がイメージしている道州制のもとでは、都道府県が今やっている事務を基礎自治体に大幅に移譲するというイメージを持っております。

 ところが、今の市町村、千七百余りの市町村というのは、人口が二百四十万人の横浜もあれば、私がたまに参ります離島の自治体、人口百人とか、そういう村もあるわけですね。今の状態の、二百四十万の政令市と百人の村に都道府県の事務をおろすというのは、一律にやりますと、これは誰が考えてもなかなかうまくいかないねと。そうすると、例えば三十万から四十万ぐらいの単位で基礎自治体を再編成した方がいいんじゃないかという説を言っている学者もいるんですが、そうなると、小さな市町村は強制合併の憂き目に遭いかねないという問題が一つございます。

 逆に、横浜市あたりは、二百四十万じゃ大き過ぎる。四国を一つの道州にしたときに、人口が四百万、五百万ですか、その半分ぐらいの人口が一つの市であって、道州の中にあるとなると都合が悪いので、では横浜は四分割しましょう、第一横浜市から第四横浜市まで四分割するとちょうど他の市町村と並びがいいね、こういう議論も起きかねない状況の中で、地方議員から反発がある、これが一つです。

 それから、もう一つは、私がなるほどなと思ったのは、遠山さん、道州制をやるメリットは何ですかと聞かれたときに、幾つか挙げる主な理由の一つは、東京一極集中、中央集権制の打破なんですね。明治以来ずっと中央集権で日本はやってきた、東京一極集中でやってきた、大学生の六割が東京にいる、こういうのはおかしい。やはり地方を活性化させるためには、道州制にして分権化するべきだということを言っているんです。

 ところが、反対している人の中に、大臣、こういうことを言う人がいるんですよ。いや、遠山さん、東京一極集中は打破できるかもしれないけれども、今度それぞれに分かれた道州の中で中央集権化するよと言うわけです。例えば、私の地元の九州でいえば、東京一極集中はいかぬといって道州制にして九州を一つの自治体にしたら、福岡に全部中央集中して、中央集権体制が地方に移譲されるだけで、だから例えば、宮崎とか鹿児島の人から見たら、そういうのはとんでもない、だったら今の東京集中の方がまだ平等だ、こういう意見なんかもあるんです。

 その他、いろいろありますよ。サブカルチャー的に言うと、道州制になったら甲子園大会はどうするんだと。四十七都道府県から代表が出ているのに、道州が十二しかなかったら、十二代表しか出なかったら盛り上がらないとか、いろいろあるんです。

 ですから、私も、そういう意見を虚心坦懐に聞きながら、今どう思っているかというと、私は、個人的に道州制推進の立場でいろいろ政策議論をしているわけですけれども、一方で、今多少紹介させていただいたような、聞けば、なるほど筋が通っているという御批判も多数あるんです。

 ですから、私は、道州制を進めていく過程の中で、こういった地方の御意見というものをきちんと聞くプロセスで丁寧にやっていくことが大事だなと思っておりますが、大臣、道州制担当大臣としてコメントをいただきたいと思います。

新藤国務大臣 私もまさに同感であります。

 そして今、公明党の実務責任者の遠山先生のお言葉というのは極めて重いものがある、このように思っています。不安を抱えたまま、そういった議論もないままに進むのはなかなか難しいだろう、このように思っておりますし、やはりきちんとしたプロセスとステップを踏むべきだ、これは全員がわかっていることでございます。

 今、私は総務省の、行政府の大臣という役を仰せつかっておる立場からすれば、そういうことも踏まえて、まず国会の中できちんとした議論をしなくてはならないです。しかし、自民党も道州制については推進しようと。前政権下においては、道州制担当大臣が置かれておりませんでした。それから、ビジョン懇という政府の組織も廃止になっているわけであります。

 ですから、私とすれば、まず今ここで各党の御議論というのをしっかりとしていただいて、それを注視しながら、政府としても、それに対応して物事が進めば、それに対しての適切な対応を我々もしていこう、このように思いますが、今のようなお話はたくさんあると思いますね。ですから、まずはいろいろな人の声を聞くという作業は、これから恐らく各党間においても行われるのではないかな、このように考えております。

遠山分科員 ありがとうございます。

 次に、ネット選挙、これも私、実務担当をやっておりまして、倫選特で、先週まで四回答弁をしてきた立場でございます。本来、私が答弁すべき質問をあえて総務大臣にするのも筋違いかもしれませんが、たまには質問させていただきたいなと思って、質問させていただきます。

 これは何かというと、ネット上に誹謗中傷的な書き込みをされた候補者、政治家、政党が、権利を侵害された、あるいは名誉を毀損されたということで、その削除をプロバイダーに要請した場合の特例が今回、私も法案提出者ですけれども、改正案の中に入っております。

 特例の中身は大臣も御承知だと思いますが、変な書き込みがされて、被害に遭ったと思っている方が削除してくださいと要請して、その書き込みをした人にプロバイダーが連絡をとって、二日以内に返答がなければ削除できる。

 それからもう一つは、私たちの今回のネット選挙解禁改正法案は表示義務というのがあるんですね。つまり、選挙運動をネット上でしていいんですけれども、メールアドレスとかあるいはツイッターのハンドルネームでもいいんですが、後でトラブルになったときに、インターネットを経由して連絡ができる先を表示した上で選挙運動用の書き込みをしなきゃいけないんです。その表示義務は罰則はないんです。表現の自由を尊重して罰則はないんですが、違法行為になりますので、違法行為になった書き込みは書いた人の同意がなくてもプロバイダーは削除できる、そして損害賠償の免責があるということなんです。

 ただ、大臣、いろいろ深く考えると二つだけ問題がまだありまして、一つは、海外のサーバーとプロバイダーを経由して日本語で書かれた書き込みは、これは、日本のプロバイダー責任制限法というのは日本国内のプロバイダーに基本的に適用されていますので、削除要請をしたり実際に削除するということが海外のプロバイダーですからなかなか難しい。

 大臣、残念ながら、今サイバーの世界で起こっている犯罪の中には、日本人がやっているかもしれません、日本語で行われている書き込みなんだけれども、海外のサーバーとプロバイダーを利用してインターネットに上げる。インターネットというのは国境がありませんので、日本語で書かれると検索でひっかかって見えちゃうわけですね。それをどうするかというところが一つ課題であります。

 それからもう一つは、これは日本のプロバイダーで起こり得るんですが、例えば、新藤大臣がある書き込みについて不満を持って、プロバイダーに削除をしてくださいと言いますね。プロバイダーは、書き込んだ人に、そういう削除要請が来ていますけれどもどうですかと聞くわけです。ところが、その書き込んだ人が二日間沈黙すれば削除すればいいんですが、返答してきて、いや、私が新藤さんについて書いた書き込みは根拠がある、よって、おまえ、消すなと言ってきた場合は、今度、プロバイダー会社というのは民間会社ですから、司法じゃありませんから、裁判所じゃありませんから、どっちの言い分が正しいかという判断ができなくなるので、そうすると何が起こるかというと、大臣、選挙期間中に置かれっ放しになる可能性があります。

 こういった二つの限界がありまして、総務省はIT、プロバイダー責任制限法の所管省庁でもございますので、この辺の対策の限界、これはあえて、法案提出者ですけれども、こういうところを認識しておかないと正確に国民に周知できませんので、大臣としてこの辺、確認答弁というか、こういう問題があるやに思いますけれども、所管の総務省としてどう考えるかですね。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の二点についてでございます。

 まず一点目の、海外のプロバイダーの掲示板などに名誉侵害情報が書き込まれた場合でございます。これは、その侵害情報による被害が国内で発生した場合には、通則法に基づきまして、プロバイダー責任法を適用することは可能ではありますが、委員御指摘のとおり、当該情報の削除に係る手続でございますとか、使用言語が日本のプロバイダーとは異なるときもあり、対応が進みにくい場合があり得るところではないかというふうに思っておるところでございます。

 また、御指摘のように、同意照会に対しまして、発信者から同意しない旨の申し出があった場合には、当該プロバイダーは、同意照会期間を二日に短縮する本特例による賠償責任の免責を受けることができないところでございまして、その結果、委員御指摘のとおり、二日を経過した時点においても削除がされない場合もあり得るところであるかと考えられるところであります。

 他方、現行プロバイダー責任制限法におきましても、同様に不同意の申し出があった場合にも、被害を受けたと思われる方の削除申し出の理由と、発信者側から反論があった場合の反論内容などから、申し出人の名誉が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があると判断したときには、プロバイダーがみずから削除したり、発信者に対して自主的な削除を促すなどにより、削除が適正に行われるよう取り組んでいるものと承知しておるところでございます。

遠山分科員 安藤部長、ありがとうございます。

 今の最後のところは、私の答弁でこれから参議院審議で使えるので、大変ありがとうございます。

 最後に、大臣、もう時間が短いので簡潔に申し上げます。

 残念ながら、日本で未婚の、非婚の母子家庭世帯がふえております。私の手元に数字があるんですが、一九九〇年には一万七千八百八世帯、十年後の二〇〇〇年には三万八千二百七十七世帯、倍増しています。さらに、二〇一〇年は七万六千五百九十四世帯、これはまた倍増なんですね。このまま倍増していきますと、相当な非婚母子家庭、つまり結婚はしていない、法律婚をした御主人、あるいは、奥様の場合は余り少ないんですけれども、法律婚はしていないけれども子供がいる母子家庭というのがふえております。

 私、地元沖縄でこの問題をいろいろ聞いておりまして、結論から言うと、税制における寡婦控除が適用されないんですね、非婚母子家庭には。法律婚を経ていないもので、寡婦じゃないと。そうすると、控除がない分、課税所得が上がってしまいますので、この上がってしまった課税所得に基づいて保育料の算定とかなんとか全部されてしまうわけですね。

 そこで、私は、非婚母子家庭が、倫理的にいいかどうかというのはおいておいて、今、沖縄の那覇市とか宜野湾市とか浦添市は、保育料の算定の所得にはみなし適用をしてあげているわけですね。これはいいことなので、子供さんたちの立場に立てば、全国展開してもいいんじゃないかなというふうに私は思いますが、総務省の御見解はいかがでしょうか。

新藤国務大臣 これは、子供のことを考えて適切な対応をしてあげたい、こういう思いはあるし、みんなそういう思いだと思うんです。しかし一方で、まずは制度としての公平、そして制度の中でのきちんとした運用というのが必要だと思いますから、例えば保育料の算定などについては、厚労省に適切にこの運用実態を踏まえた対応をしていただかなければならないと思います。

 寡婦控除の問題につきましては、所得税の見直しとあわせて、個人住民税における寡婦の範囲も所得税と一致しているわけですから、これは、税調での議論、税制改正の場において議論というものがあるというふうに思います。我々とすれば、そういった方針のもとで適切に対応していくつもりでございます。

遠山分科員 大臣、ありがとうございます。

 個人的に、所得税法を変えないと抜本的に変わらないということでございますので、ただ、非婚、未婚母子家庭世帯がどんどん倍々で十年ごとにふえているという中で、そこの家庭で暮らしている子供たちが経済的に大変不利な状況に置かれているというのは何らかの手を打たなきゃいけないと思っていますので、引き続き、厚生労働省、また税法は財務省と議論しながら解決策を見つけてまいりたいという決意を表明して、私の質疑を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

うえの主査代理 これにて遠山清彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、小田原潔君。

小田原分科員 自民党の、東京都二十一区、立川市、昭島市、日野市から出てまいりました小田原潔と申します。

 初当選組でございます。本日は、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。ふなれなところもありますが、よろしくお願いいたしたいと思います。

 私は、前職で実は、ほぼ八年間、日本郵政の民営化の仕事に携わってまいりました。私は、民営化というのは、大きな観点からすれば、国内外の余資のある方々のお金で我が国の借金を返していく、そういう壮大なプロジェクトだと思っております。

 三年前、あともう一息で株式の売却手続が始まるというそのときに、当時は、自民党政権のときもありましたが、キジで焼き鳥とか、一度決めてあったプロセスを多少スタンドプレーでぎくしゃくさせてしまった。そういう様子を見るにつけ、胸を痛めていた記憶がございます。

 どうか、新しい政権になり、いろいろなことをスピード感を持って決めていく我が政権では、前向きな解決とプロジェクトの推進を賜りたいと存じます。

 早速質問に移りたいと思います。

 日本郵政株式会社が上場に向けて魅力のある会社になるように、持ち株会社の下にある三社の事業会社、これをそれぞれどういう会社にしようとしていらっしゃるのか、まずは総務省としてのお考えを教えていただきたいと思います。

橘大臣政務官 小田原議員におかれましては、これまで日本郵政にいろいろな形でかかわっていただいて、ありがとうございました。

 さまざまなことがございましたけれども、今、しっかりとした形で、また、株式価値を高めて、日本郵政グループとしての上場に向かって企業価値を高めていく、進んでいくという状況にあるわけであります。

 その中で、郵便事業会社、これは郵便局会社と郵便事業会社が一緒になった日本郵便、それにゆうちょ銀行、そしてまたかんぽ生命、この三つがそれぞれ、郵便事業、そしてまた貯金事業、あるいは簡易保険事業と大変大事な事業を国民の皆様方にユニバーサルサービスということで提供していくということも含めて、今取り組んでいるわけであります。

 今それぞれに新しい体制をつくりましたので、その中で、郵便局会社、郵便事業会社の統合効果を出していくということもありますし、全国に張りめぐらされているネットワークというものをしっかりと生かしていくということもございます。

 その中で、それぞれ物流であったり金融であったり、多少業界の分野というのは違うわけでありますけれども、しかし、それぞれの分野において、今までの歴史も踏まえながら、しっかりと国民の皆さんに喜んでいただけるサービスを提供しながら企業価値を伸ばしていく、こういうことでそれぞれ頑張っていただいております。

 そういった各JPグループそれぞれの取り組みについて、総務省としてもしっかりと応援をしていきたいと思いますし、企業価値の向上、そしてユニバーサルサービスの実現、そういう民営化法の趣旨に基づいた適切な監督あるいは支援を行ってまいりたいと思っております。

小田原分科員 ありがとうございます。

 それでは、個別の会社についてお伺いをしたいと思います。

 まず、ユニバーサルサービスを守ることが大事だという橘大臣政務官のお話でありました。私もまさにそのとおりだというふうに思います。その根幹であるところの郵便事業でございますが、収益の柱であるところの年賀状の取扱高でございますが、これは年々減少しております。恐らく今後も減少していくであろうという前提を立てるのが現実的だというふうにお見受けをいたします。

 この郵便事業に関する今後の収益についてはどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

諌山参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおりでございまして、郵便事業につきましては、インターネットの普及に加えまして、特に企業差し出しの各種請求書等のウエブ化の進展が進んでおりますなど、郵便物数の減少傾向が加速していくおそれがございまして、収益につきましても、今後とも厳しい状況にあるというふうに認識をしております。

 このため、徹底的な費用削減などに取り組んでおりますけれども、さらに、郵便のユニバーサルサービスの下支えとなりますゆうパック、ゆうメール事業におきまして、特に通販、それからオークション等の成長分野でございますけれども、こういった物流を取り込むというようなこと、それからもう一つ、営業体制の強化に取り組みまして、特に収益率が高い中小口のお客様のシェアを高めるといったような取り組みを行っているところでございます。

 そこで、利益でございますけれども、こうした取り組みによりまして、平成二十四年度は当初の事業計画を上回る利益を上げられる見込みが立っておりますけれども、また、二十五年度につきましても、五十億円程度の営業黒字を計上することができるだろうというふうに見込んでいるところでございます。

 今後も引き続き、お客様の利便性を高めるとともに、オペレーションの効率化などを図りまして、さらなる生産性の向上、それから収益の増加に取り組みたいと思っております。

 こういうことによりまして黒字体質の定着を図りまして、郵便のユニバーサルサービスを確実かつ円滑に提供していきたいというふうに考えておるところでございます。

小田原分科員 諌山常務、ありがとうございました。

 諌山常務におかれましては、私が業者で出入りしているころからいろいろと手とり足とり御指導いただいた大先輩に質問するのは大変心苦しいところであります。

 私も、この郵政民営化に当たり、どうしても守らなければいけない郵政の価値というのはユニバーサルサービスそのもの、例えば、離島にお住まいの方が非常に少なかったとしても、何が何でも同胞にお便りを届けるのである、こういう心意気を必ず残していく、こういうことだというふうに理解をしております。

 それでは、現在ドル箱になっているゆうちょ銀行についてお伺いをしたいと思います。

 このバランスシートの構成を一見しますと、ゆうちょ銀行というのは、あたかも大規模な国債保有勘定と、これから挑んでいく割と小規模な銀行業務の二本立てのものがくっついているようにも見えるんですけれども、実態はいかがなのか、また、今後の業務運営も含めて教えていただきたいと思います。

田中参考人 お答え申し上げます。

 ゆうちょ銀行の資産サイドの状況につきましてお尋ねを頂戴いたしました。

 御案内のとおり、平成十九年の十月に、日本郵政公社の郵便貯金事業の部分を私どもゆうちょ銀行として承継をいたしまして以降、資金運用につきましては、いわゆる多様化というのを進めてまいったところでございます。

 若干計数的に申し上げますと、民営化当初の六カ月後の状況で見ますと、国債と預託金を足した合計でございますけれども、約九割弱を占めておりましたが、平成二十四年三月末の時点ではこの数字が七割強というところまで徐々に低減をしてきているところでございます。

 さはさりながら、このように多様化には努めてきておりますけれども、現時点では七割強でございますので、いまだ国債がポートフォリオの大宗を占めておるという状況にございまして、かかる観点において、今ほど先生の方から御指摘をいただいたものというふうに認識をしてございます。

 今後につきましても、今ほど申し上げましたように、ポートフォリオの多様化を進めてまいるという方針は非常に大事だと思っておりまして、こういう観点に立ちまして、昨年の九月には、新規の業務として住宅ローン等を本体でやろうということで、政府の方にも認可申請をさせていただいたところでございまして、こういう方向で引き続き努力をしてまいりたいというふうに考えております。

小田原分科員 ありがとうございます。

 今、田中常務から運用の多様化というお話がございました。

 田中常務におかれましても、私が業者のころからいろいろとかわいがっていただきまして、御指導をいただきましたので、質問をするのは大変心苦しいところがございます。

 今回は、運用の多様化ということの中でも、大企業向けの貸し出しと住宅ローンについてはできるようになったようでございますが、中小企業というところまではまわしに手がかかっていないようにお見受けをします。

 私自身は、せっかくアベノミクスの二本目の矢まで鮮やかに放たれ、また、その施策に対する国際的な市場の評価も上々であることを考えても、まさに三本目の矢というのは、我が国からすくすくと新しい起業の芽が芽吹く、そのリスクマネーが我が国のどこかから供給されるというところにあると思います。

 一足飛びにということまでにはいかないかもしれませんけれども、いつかはゆうちょ銀行、もっと焦点を当てますと、定額預金の残高のうちの〇・五%でも、またそれ未満でもいいからベンチャー企業やベンチャーキャピタルにお金が注ぎ込まれ、我が国の起業やイノベーションに寄与していただきたいというふうに思っておりますが、どうかお考えをお聞かせいただきたいと思います。

田中参考人 先ほども御答弁申し上げましたように、私どもとしては、適切なリスク管理をしながら運用の多様化に取り組んでいくということは大方針でございます。

 かかる観点から、現在は、新規業務ということで、今先生御指摘の件について鋭意取り組んでおる最中でございまして、まずは、この実現に最大限の努力を払ってまいりたいというふうに考えております。

 また、その後の運用の多様化につきましても、これも引き続き努力をしていかなきゃいけない課題でございまして、今ほど先生から御指摘のございましたような分野も含めまして、私ども、いろいろな意味で幅広く考究をしてまいりたい、検討を進めてまいりたいというふうに思ってございますので、引き続き御指導のほどお願いしたいと思います。

小田原分科員 ありがとうございました。

 それでは、かんぽ生命についてお伺いしたいと思います。

 かんぽ生命につきましては、資産そのものが減少しているようにお見受けをいたしますけれども、今後売り込んでいく営業の方針、それからそれを回す運用の方針、さらには商品の品ぞろえについて、今後の方針について教えていただきたいと思います。

南方参考人 かんぽ生命の総資産でございますが、先生御指摘のとおり、当社の保有契約の減少に伴いまして減少が続いております。そういった中で、二十四年十二月末現在で約九十兆円というのが当社の資産規模でございます。

 そういった中で、今後の経営方針に関するお尋ねでございますが、営業商品につきましては、やはりお客様のライフスタイルに即した商品、サービスの提供、それからフロントの渉外社員等に対する研修等の充実による営業力の強化等々、そういった施策を講じていく必要があるというふうに存じておりますが、商品の関係につきましては、当面は、今お願いをしております学資保険の改定など、既存商品の見直しから取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 それから、次の資産運用の関係でございますが、保険の場合、負債が非常に長期にわたるということで、そういった長期性を踏まえまして、御案内のように、ALMの考え方に基づき金利のリスクを適切にコントロールするといったことを基本に運用いたしてございますが、これを基本としながら、当社のリスクバッファーなり、あるいは適切なリスク管理のもとで段階的に運用手段の多様化なり収益源の多様化を図る、こういう方向で検討してまいりたいということでございます。

 最後に、かんぽ生命といたしましては、繰り返しになりますが、保有契約の減少傾向というのはまだ続いてございますが、実は、民営化以降、新契約の実績というのは、毎年徐々に、緩やかではございますが回復基調にございまして、こういった基調を大事にしながら事業規模の縮小に早期に歯どめをかけたい。そういった中で日本郵政の上場に向けて当社の企業価値も高める、こういう努力を精いっぱい行ってまいりたいというふうに考えてございます。

小田原分科員 ありがとうございました。

 南方常務におかれましても、私が業者のころ、ふだんは実務の方に御指導をいただいていましたので、折に触れてお目通りをいただいておりました。このようにしたり顔で質問させていただくのは、むしろ私の方が気恥ずかしく思います。

 事前のお話に加えて、ちょっとだけ、もしお答えいただけるのであれば本音のところをお聞かせいただければと思うんですが、ゆうちょ銀行、かんぽ生命におかれましては、今後の商品開発、品ぞろえ、もっともっと大胆に、国民の期待する商品の品ぞろえというのが本当は潜在的に多いのではないかというふうに私は期待をしております。

 これを、例えば委員会さんですとか、委員会さんというよりは金融庁さんが、不条理に締めつけてやりたいことをやらせてもらえていないという実感はありやしないか、ぜひともお声を聞かせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田中参考人 私どもは、先ほども申し上げましたように、昨年の九月に認可申請をさせていただいている立場でございますので、まさに今行政で審査を受けさせていただいている立場ということでございますので、私どもの方から行政の方に、お考えになるよう申し上げるというのはちょっと僣越でございますので、恐縮でございますが、今私ども鋭意努力中ということでお許しをいただければなというふうに思います。

小田原分科員 田中常務、無理なことをお伺いしまして、大変申しわけありませんでした。

 それでは、テーマとしては最後の質問になりますが、日本郵政株式会社を上場し、新しい株主が株式を買うことになる。この株主にとって、日本郵政株式会社の株式につく価値というのはどういう価値で構成されているというふうにお考えなのか、まずは教えていただきたいと思います。

谷垣参考人 委員御指摘のとおり、上場のためには、私どもは、やはり企業価値を高めて、魅力ある会社になるように価値を高めていかなければならないと思っております。

 私ども、昨年、郵政民営化法の一部改正を受けまして、十月に、先ほど御指摘のありました郵便事業会社、郵便局会社の統合を行うとともに、郵政グループビジョン二〇二一というものを公表いたしました。これは、たまさか、明治四年に郵便事業を創業して以来、二〇二一年に創業百五十周年を迎えますので、主に社員向けに、どういう姿でこれからやっていこうかというものを示したものでございます。

 その中では、郵便局におきまして、郵便、銀行、保険の三つのサービスを軸として、郵便局をハブとして、それだけではなくて、先ほど一部出ましたけれども、お客様のさまざまなライフスタイルそれからライフサイクルに応じた商品、サービスを余すところなく提供していきたい、私ども、総合生活支援企業グループ、そういう展開の姿を目指したいということを書いてございます。

 同時に、ユニバーサルサービスを着実に提供して、それから、地域性、公共性をきちんと発揮できるよう、先ほど説明のありました郵便、銀行、保険の三つの事業を、きっちりと経営基盤をつくりたいということを考えております。

 それから、それに加えまして、いわゆる私ども郵政グループの価値としましては、郵便局ネットワークを活用した物販の事業であるとか、それから、先般丸の内にJPタワーというのがオープンしましたけれども、ああいう不動産事業といった新規事業の展開を図りまして、郵政グループが有する潜在能力を最大限に引き出しまして、収益源の多様化を図って、投資家の皆様に訴えてまいりたいと考えているところでございます。

小田原分科員 ありがとうございました。

 もう少し具体的にお伺いをしたいと思います。

 日本郵政株式会社の株式が売却された瞬間は、確かに、日本郵政株式会社の価値というのは、その下にある三社の事業会社が今後生み出すキャッシュフローの現在価値で値段がつくんだと思います。

 ただ、理屈の上では、持ち株会社の株式は三分の二まで可及的速やかに売却することになっています。そうすると、将来の株主が三分の二を保有した場合、その後、その下にぶら下がる特に金融二社、ゆうちょ銀行、かんぽ生命につきましては、全株を売却しろという株主の圧力をかけることもできるというふうに思います。

 そうすると、日本郵政株式会社の将来像というのは、持ち株会社の下に三つ事業会社があり続けてキャッシュフローを生み出す会社なのか、それとも、金融二社は全額売却してしまって、その売却に伴う現金と郵便事業が一社だけくっついている、言ってみれば持ち株会社構造にする必要が必ずしもないかもしれない、まさにネットワークだけの会社として存続するのか、その選択を将来の株主にお預けするのか、そこについてのお考えをお聞かせください。

谷垣参考人 持ち株会社の株式を売却するのは、私どもではなくて政府、財務省の御判断だと思っておりますが、いずれにしましても、仮に持ち株会社の、私どもまだ検討の途上でございまして、確たることは申し上げられません。

 と申しますのは、今、震災復興財源のお手伝いをするということも期待されてございますので、私どもとしては、当面、持ち株会社の株式を最優先に売却するということを考えているわけでございますけれども、ゆうちょ、かんぽの株式を仮に売却するとしましても、持ち株会社の、あるいはグループ全体の企業価値を損ねないようないろいろなことを方法論として考えなきゃいけないと思ってございまして、そこはトータルで見ていただきたいというふうに考えているところでございます。

 まだ検討の途中でございまして、確たることは申し上げにくいので、大変申しわけございません。よろしくお願いいたします。

小田原分科員 ありがとうございます。

 思いは全く同じであります。

 私は、二年前、東日本大震災が起きたその日、選挙に負けて浪人中で、永田町の路上を歩いておりました。そのときは恐怖で顔が引きつりましたが、テレビを見ているうちに、五体満足な成人男性がこの国難とも言えるときにテレビを見ているだけでいいのかという思いにとらわれまして、東北自動車道が開通した翌日、三月の二十五日に単身で被災地の宮城県七ケ浜町というところに乗り込みました。そこでテント生活を一年以上続けまして、町民の皆様とともに、スコップでヘドロをかき出し、だめになった家財道具を運び出し、そういう生活をしてまいりました。

 自分がこういう立場になって言うのもなんですけれども、そのときにつくづく思ったことがありました。

 それは、政治家の皆さんがきれいな背広を着て、バッジをつけて被災地を訪れることがどれだけ現地の人の心を傷つけたか。体裁程度に着た新品の作業服、刺しゅうもまばゆいものを着て避難所を訪れることがどれだけ避難所の皆さんの神経を逆なでしたか。できれば、一泊でもいいからあの冷たい体育館の床に毛布一枚で寝てみてほしい。一時間でもいいからスコップで、あのにおいがして、重くて、危険で、大変な作業をやってみてほしい。そうすれば、ここまでほったらかしにしなかっただろう、こういう思いがありました。

 今回、日本郵政株式会社の売却代金が被災地の復興に使われるということは、大変な御縁も感じますし、何が何でも株式価値を高め、それを国内外の投資家の皆さんに認めてもらって、満足して買っていただき、買っていただいた後、さらに収益を伸ばしていただく、そういうプロジェクトにしていただきたいと思います。

 一つだけ、総務省としての思いをお聞かせいただきたいことがあります。

 僕は、持ち株会社の三分の二を売ってしまい、したがって、先ほど申し上げたこととダブりますが、その後のコーポレートストラクチャーと申しますか、日本郵政グループがどういう姿になるかを新しい株主が差配できるようにした本当の理由というのは、ゆうちょ銀行、かんぽ生命、確かに、株式価値を高め、すばらしい会社にするべきだし、そうしてほしいと思います。

 しかしながら、本当に守らなければいけないのは、前島密さん、渋沢栄一さんがヨーロッパに行っている間に、一年ちょっとで一生懸命全国に張りめぐらせたネットワークと、それを維持している今のユニバーサルサービスそのものであって、突き詰めて申せば、かんぽ生命もゆうちょ銀行も、そのたな子としてのネットワークの魅力を増すためのサービスの選択肢であって、本当にもっとすばらしいサービスがあるのであれば、郵便事業会社があらゆる選択ができるようにしてあげているということではないかというふうに考えております。

 どうか、今の私の認識について御見識をいただければと思います。これが最後であります。

橘大臣政務官 小田原議員からは、御自身の経験も含めて、また今までのいろいろなJPグループとのかかわりを含めて、大変温かいエールを送っていただきながらの御質問であろうかと思います。

 確かに、きょう現在全ての将来のことが見通せないというところはあるわけですけれども、まず、きょう現在わかっていることで基本的なことで申し上げると、先ほどJPグループの方から答弁がございましたように、前島密卿によって郵便事業が始まって百五十周年を迎える二〇二一年に向けての郵政グループビジョン二〇二一によって、総合生活支援企業グループということで展開をしていくということになるわけですけれども、その中で、高い市場価値を上げていけるように努力をしていくということになるわけです。

 実は、こういう民営化というものは、この国においては以前に幾つか先行事例がありまして、私どもの総務省の関係でいいますと、例えば日本電信電話公社というのを今NTTという形に民営化していったわけであります。

 民営化をした当時には、実は、日本には電話というのは固定電話しかなかったわけであります。しかし、これが、その後、いろいろな事業をしていくうちに携帯電話というものが出てまいりまして、現在のNTTグループというのは、言ってみれば、最初の日本電信電話公社を民営化したときとは全く違う形のポートフォリオということで、ある意味で株主の皆さんに大変評価をいただく。つまり、NTTドコモあるいはNTTデータ、あるいはさまざまな会社が今一つの通信ということの中でつながりを見せている。そういう形に実は変わってきたわけであります。

 日本郵政グループの一番大事な力というのは、やはり全国に二万四千局余ある郵便局のネットワーク。そして、先ほど小田原議員からもお話がありましたように、いつでも必ず配達をしてくれる。それは、小笠原諸島にでも配達をしていくし、この東京都でいえば檜原村にでも配達をしていく、宅配便とは違った形で確実に郵便というものを配達していく。あるいは、山間地域、そういう過疎地であっても確実に小口の現金の受け払いができるとか、日々の生活の糧である簡易生命保険というものを提供できる。言ってみれば、こういう時代の中で地域のための公の一番最後まで確実に残るとりで、そういう形で今このユニバーサルサービスというものも提供していくんだと思っております。

 そういったものの中で、今例えば郵便をやっています、あるいはゆうメールというものもあります、ゆうパックもありますけれども、これからそういったところにまた新しい事業の芽が出てくるかもしれない。

 それは、今こういう時代で、通信販売とかカタログ販売、いろいろなことがある中で、例えば、ゆうメールでそういうカタログをお送りして、そしてまた品物を今度はゆうパックで送っていくようなこともできるかもしれない。これからどこにそういう宝が出てくるかわからないという状況にあるんだろうと思っております。

 ですから、今申し上げたNTTのお話は、民営化してからもう既に三十年近くたっているきょうだからこそ言えるお話ですが、別に、民営化当初、昭和六十年にそういうことがわかったわけでもございません。今こういう時代の中で、とりあえずはまずしっかりと足元を固めながら、総合生活支援企業グループということで固めながら、しかし、その中でいろいろな可能性を探っていく。

 特に、最近感じますのは、いろいろな問題があって、しかし、安定化してきてから、JPブランドというものについての国民の皆様の支持が広がってきているようにも思っております。JPタワーも、やはり一つのそういうブランドイメージというものにもなってくる。あるいは、最近は郵便事業のテレビ広告もまた始めているわけであります。

 そういったことの中で、やはりブランドイメージなり、職員、社員の方々が頑張ることによって国民の皆様の支持を集めていく。そういう中において、これから、今まで提供している三事業の中でさらにいろいろなサービスの可能性を探っていく。

 もちろん、銀行さんとかあるいはいろいろな生命保険会社さんとのそういった垣根の問題もあるわけですけれども、そこはそこでまたしっかり議論をさせていただきながら、しかし、国民が残してくれた、百五十年になんなんとするノウハウ、資産というものをしっかりと将来に向けて花開いていくように私どもも努めていきたいですし、JPグループの皆さんと総務省が一体となって、また時には監督する分は監督をしながら、しっかりと企業価値が広がって喜んでいただけるように頑張ってまいりたいと思っております。

 どうか、これからもまた御指導、御支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

小田原分科員 橘政務官、どうもありがとうございました。

 私もJRの民営化をお手伝いした経験があり、今のJRのみずみずしく羽ばたいている様子を見ると、日本郵政グループさんにおかれましても、必ずや国民の期待に応えるすばらしいプロジェクトをしていただけると思います。

 沖縄の基地問題と同列に論じるのが不謹慎かどうかは別として、この三年ちょっとの間、随分迷走したものをすごいスピードでもとに戻し、前進していく、そういう期待感でいっぱいであります。

 どうか皆様の御努力が身を結ぶことのできるよう、私、小田原潔も精いっぱい応援させていただきたい、その気持ちを表明しまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

うえの主査代理 これにて小田原潔君の質疑は終了いたしました。

 次に、小林史明君。

小林(史)分科員 このたびは、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 私自身、広島七区の選出の新人でございまして、ちょうど一年前までは、この近くのNTTドコモという民間の通信会社に勤務をしておりました。最初の三年間は法人営業でシステムの営業をしておりまして、まさに自治体や行政に対してシステムの営業をし、提案をするような仕事をしてまいりました。その後、人事の採用の仕事をしまして、日本の現状と若者の現状、ここに危機感を持って立候補した次第でございます。

 このように初めての質問の機会をいただきましたこと、改めて感謝申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。

 早速質問に移らせていただきたいと思います。

 このたび新藤大臣の方でつくられた予算の方で、電子行政の実現と番号制度の導入といった分野がございます。

 この分野について、地元で話をしていてもなかなか理解が得られないという分野がございます。有権者の方、特に年配の方にとっては、この電子化というのはどうしても縁遠いものでございまして、どれほどの意味合いがあるのか、価値があるのかというのをわかっていただけない部分があります。

 一方で、私自身、そういった分野を担当していた者としては、これからの日本にとっては本当に大きな重要な政策であるというふうに考えております。これから日本が大きく成長していく、そのためには、やはり行政の部分を効率化していかなければいけない、もしくは、国で持っているデータを民間で活用し、そしてそれをまたさらなる発展につなげていかなければいけないというふうに思っております。

 そういった中で、私自身も営業活動をしながら、その当時、行政の分野で非常に大きな課題を多く感じました。それは、まずもって、それぞれの省庁や、もしくは自治体というのが全く個別のシステムをそれぞれで運用している。これは大変もったいないことであり、我々として提案をするにしても、もちろんチャンスは多くあるわけでございますけれども、通常運用を考えれば、一本化した方がいいんではないかというふうに常々思っておりました。

 そういった中で、新藤大臣のもと、こういった政策が掲げられた。これに対する大臣の思いと、そしてどのような課題があるというふうに認識されているのか、お考えを伺わせてください。

    〔うえの主査代理退席、主査着席〕

新藤国務大臣 このシステムの分野で大変専門的知識を持っている方が自民党の中でふえてくれたということは、喜ばしいことだと思います。ぜひいろいろいいアイデアを出してもらいたい、このように思うんです。

 私は、とにかく大事なことは、何を達成するのか、そこをきちんと打ち立てることが重要だと思っているんですね。例えば、少し前に、我が国はIT化を進めましょう、こういう話が出ました。でも、IT化というのは手段ですね。本当は、IT化を進めることで何をもたらすのか、何を目的にするのかというのが抜けてしまうんです。特に行政の場合にはそういう傾向が強いです。

 手段を、あれをやります、これをやります、その結果何をもたらすのかがわからないまま、いろいろな仕事をする。一つ一つの個別の制度は、予算上これは必要ですと言うけれども、その予算を使った結果何が達成されるのか、ここの部分が弱いのではないかというふうに思っているんです。その最たる分野が電子行政、行政の電子化、いろいろな言い方があると思いますが、いずれにしても、この分野です。

 私はそれを少し、みんなの目標設定をしてみないかという提案をしています。私が考えるところの電子行政は、便利な暮らしをつくる、こういう目標を掲げました。それは私どもの総務省の達成すべき目標の一つでもある、こういうふうに思うんです。

 これから日本がやっていくのは、まず経済を成長させ、経済を立て直した上で歳入をふやしていくということですね。それと同じように大事なのは、いかに効率よくコストをカットして必要な効果を上げていくか。この二つがあるわけじゃないですか。そのために、我々の今やろうとしている電子行政、便利な暮らしをつくりつつ、結果として効率のよい仕事ができる、それから、それは側面においてはコストもカットできるんだ、それがこのICTによってできるんじゃないんですか。

 これまで、みんながそれぞれ電子機器を持ちましょう、パソコンを使えるようになりましょう、そういったことがIT化のまず第一歩でありました。インターネットの利用が十年ちょっと前はまだ一千万そこそこですから、それが今や七千万、八千万、九千万になる、こういうところまで来ているわけであります。今までの基盤をつくった中で、私たちがこれから新しくつくる日本というものの中でICTや電子行政の果たす役割はとてつもなく大きいんではないかと思います。

 大事なのは、そういったことが大きい効果が出るんだということを国民に知らせなければいけないと思うんですね。なぜIT化が進まなかったか、しかも、どうしていっとき世界最先端を目指すと言いながら、いつの間にかほかの国に抜かれ、IT度というのがどんどんと落ちている。それは何かというと、最大の原因は国民がその必要性を理解していない、また、私たち政府は国民に対してこうすればもっと便利になりますよ、こうすればお金を削ることができるんですという具体的なイメージを出すことができなかったんではないか、そういうふうに思っているんです。

 それから、政府内の取り組みに対しての評価体制というものがうまくいっていないんではないか。そもそも、PDCAサイクルといいますけれども、それは結果をチェックするだけじゃないんですよね。どういうことをプランとして立てるかもチェックしなきゃいけない。そういう意味において、政府内のPDCAサイクルをきちんと機能させるようにしなくてはいけないと思います。

 それから、オンライン申請はできるようにしました。大半のものはできるんです。できるんだけれども、使われない。なぜならば、便利を実感していないし、しかも、そうしなくてもほかの道がいろいろあるから。だから、効果が出ない。であるならば、徹底的に導入できるところは導入しようじゃないか、こういうリーダーシップが必要だ、このように思うんです。

 もろもろございますけれども、何よりも今回チャンスなのは、電子行政を推進するための基盤となる番号制度というものがこれから入れられようとしているわけであります。

 住基のネットの場合は、住民票の認証を電子の世界でできるという意味においては有効でしたが、その番号を使って自分がいろいろなサービスを受けられるかというと、そこはまた限定された利用になったわけですから、住基ネットを基盤としながら国民の情報基盤の土台となる番号制を入れる、このタイミングで我々は効率のよい便利な暮らしとともにコストをカットできる、そしてそこにまた新たなビジネスチャンスをつくることができる、こういういろいろな要素を含めた電子行政というのを推進していこうじゃないか。私はそれを今みんなで勉強しながら、やはり目標をきちっと打ち立てようと思っています。

 それから、どのぐらいの枠で効果が見出せるのか、本気になって計算してみようじゃないか。これは算出するのはなかなか難しいんですね。ましてや、役所が出す数字というのは追及を前提とされる数字ですから、きちんとした積み上げが必要です。ですので、実際にはなかなかできていなかったんです。

 私とすれば、まずそういった数値的なものも含めて今回シナリオをつくってみたい、このように思って、今役所の中でみんなと相談しているところでございます。

小林(史)分科員 ありがとうございます。

 もうまさにおっしゃるとおりだというふうに思います。やはり、一般の方々からすると、ゴールイメージが湧いてこないんだというふうに思います。この電子化が進んだときに、自分たちの生活にどんなメリットがあり、便利さがあるのかということだと思います。実際に進めれば本当に手続が簡単になり、そしてスピーディーに自分たちの生活が進んでいくようになるということをやはりお伝えしなければいけないんだと思います。

 そしてもう一つは、やはりコストカットの部分というのは大きなものになるのであろうと思います。

 どうしても、国のコストカット、もしくは地方行政のコストカットというふうになると、これは、必ず公務員を減らせだとか、もしくは給与をカットしろというお話になります。

 私、実際に国会議員になってみて思うんですが、本当に優秀な方が一生懸命働いていらっしゃる。ただ一方で、紙で全てやっているであったりとか、もしくは縦割りで情報が共有されていない、こういったことによって、どうしても労働時間が延びたり、そういったことも起きているのであろうと思います。

 そういった意味では、先ほど新藤大臣がおっしゃられたように、まずはコストをカットする可能性が大きいということ、そしてさらに、それを共有することによって効率化をし、ビジネスをより前に進めることであったり、我々が生活を便利にすることができる。これは、まさにデメリットのない、大変夢のある政策なのではないかというふうに考えております。

 こういったことをやはり国民の皆さんにしっかりと御理解をいただいて、賛同いただいて、そして使っていただくということが大切なんだろうというふうに思いますけれども、その具体的なメリットを感じていただくために、少しお伺いしたいというふうに思います。

 実際に今、国の省庁レベルでどのようなシステムが別々で運用をされているのか、そしてそれにどれぐらいコストがかかっているのか、もしおわかりになればお答えください。

新藤国務大臣 これは、金額がなかなか算定できないんです。ただ、私どもで見直しというか積み上げた結果、政府のシステムで千五百ぐらいあります。それは、バックオフィスである給与ですとかいろいろな福利厚生のシステムを各省庁がそれぞれに入れています。また、いろいろな統計だとか、いろいろな仕組みがあります。千五百システムがあるということになっているんです。これは半分に削れる。こういうことをやろうと思っています。

 それから、政府の電子化というのは、省庁間の連絡は電子的にできるようになったんですけれども、国民が手続として省庁に対する、それの電子化というのは余り進んでいないんですね。というのは、紙でもオーケーにしちゃっているから。

 それから、役所の方も、まさに自分たちの仕事を電算化しました。自分のパソコンに入れました、でも、入れたパソコンにあるデータは紙で出して送るとか、もしくは、メールで送ったとしても、相手はその受け取ったデータを紙に打ち出してまたチェックする、こういうことですね。

 ですから、そういった部分を、ここはオンライン化するとか、ペーパーレスにするとか、そういうようなルールというものを決めていかなければいけないんじゃないか。それには、それによってどれだけのメリットが出るかというものを目に見えたものにしなければいけない。だから、先ほどの話になりますが、これは一度数値化も含めた研究をしよう、こういうことで今作業を始めているところでございます。

小林(史)分科員 ありがとうございます。

 恐らく、やはり国民の皆さんは、数値化されると非常に納得がいき、わかりやすくなるのであろうと思います。

 数字を積み上げるというのは現時点で非常に難しいんだと思いますけれども、千五百のシステムがばらばらで動いているというのは、少しシステムのことがわかっている方からすると、もうそれぞれに運用費がかかり、そして保守の費用がかかりということで、毎年莫大な金額がかかっているんだろうと思います。それが半分に削れるのではないかというのは、これは大幅なメリットがあるんだろうと思います。

 これは、各省庁でもそうなんですけれども、自治体に関してもそのような問題があるのではないかというふうに思っております。

 私自身は群馬で法人営業をやっておりました。群馬県内にも多くの自治体があり、市町村ごとにさまざまな提案を行っていましたけれども、先日あったような地震、こういった災害が起こったときに緊急連絡網を回すというメールのシステムがございます。一件数十万円から数百万円するものですけれども、これも基本的には、県で一つ導入してしまえば、あとは個別でIDを発行するだけで運用できるはずだと思うんです。でも、これも県内で各市が導入をし、物によっては村だけで運用するというような形ですね。また、地方自治体でも多くの問題があるんではないかというふうに認識をしております。

 実際、地方自治体に関しても、こういった取り組みを進める予定があるんでしょうか。

新藤国務大臣 これは、全く御指摘のとおりなんです。何か仕事をしようとすると、市町村単位でやりますね。そうすると、コンピューターのシステムを入れるとなると、基本設計をやって、実施設計をやって、そして導入していく。ですから、それぞれに、例えば千七百の自治体があれば掛ける千七百倍の予算を使うなんというのは、全くもったいないことだと思います。

 ですから、今後できるだけ共通事務については共有化できるようにしようじゃないか。それから、場合によっては、これはまだ私の考えですけれども、国として基本ソフトみたいなものをつくって、それを応用展開できるような、そういう仕組みをやってもいいのではないか。それから、ある程度広域の自治体で共有してもいいということをやらなければいけないと思います。

 私は、この情報通信の基盤を、全国のネットワークというのをつくらなければいけないと。そこには共有のソフトが、また、翻訳ソフトというか、別々のシステムを動かすための、そのインターフェースするためのソフトを入れる、これも重要なわけでしょう。そういったことをやって、そもそもの導入経費も節減ができるんではないかと思いますし、また、ビジネスチャンスとしては、そういうもののより便利な仕組みをつくったときに、そこと連携、リンクができるようなソフトをつくってもらうというのも、これも民間のビジネスチャンスにつながるんじゃないか、このように思っています。

小林(史)分科員 ありがとうございます。

 国民の皆様にそのあたりをよく理解していただくために、具体的な事例をいただけると非常にわかりやすいんではないかと思います。そういった自治体の関係で、その広域の連携をやられた事例で、もしコストカットの事例があればぜひお教えください。

諸橋政府参考人 ただいま御指摘の点につきましては、総務省といたしましては、自治体クラウドという視点が一つ有用かというふうに考えておるところでございます。

 自治体クラウドにつきましては、最近徐々に地方公共団体の方でも導入をされてきておりますけれども、先進的なものといたしましては、三割程度コストを削減できたというふうな話も聞いておるところでございます。

小林(史)分科員 ありがとうございます。

 地方自治体、三割のコストカットというのはかなり大きなものになるんであろうと思います。ぜひ各地方自治体に広めていただきたいというふうに思うんですけれども、これは、恐らくメリットが出るか出ないか、特に地方自治体においてはどれぐらいの範囲で共通化をしていくのかというのが大きなポイントになるんであろうと思います。今回、どれぐらいの範囲でやろうとされているのか、もしお考えがあればお教えください。

新藤国務大臣 まさに、そこが鍵を握るだろうと思っています。

 私は、それを一総務省の仕事ではとどめられない、また、総務省が音頭をとるだけでは、これはより大きな効果を求めるという意味においてはまだ足りないだろうと思っています。

 ですから、こういった私たちの考え、電子行政を進めよう、これは経済財政諮問会議、産業競争力会議、それからIT戦略会議、あらゆる場面で私が機会を得られる限りのところでそういった提案をしております。また、これは安倍総理も非常に関心を示して、極めて重要なポイントだということで進めてほしいということで、会議の場でそういった御指示もいただいております。

 これから、六月以降の安倍内閣としての日本の成長戦略、骨太の方針、こういう中に国家的事業としてこの電子行政の推進というものを取り入れていただいて、また、そういった御指示を得て、この国家的な取り組みに持っていきたい、そのように思いますし、それには、方針を決めれば、あとはいろんな英知が必要です。国も、地方団体も、そして民間も、あらゆるいろいろな人たちが入ってきて、それぞれの工夫をしながら国全体としての電子化を進めていこうじゃないか、こういう取り組みに持っていきたい、このように願っているところでございます。

小林(史)分科員 ありがとうございます。

 やはり総務省だけではいけないのではないかというお話でしたけれども、まさにそのとおりではないかなというふうに思っております。

 これは、少し踏み込んだお話になって、地方分権の話もあるかと思いますけれども、地方行政でやる手続というのは基本的には同じルールのはずでありますから、理想を言えば、全国同じシステムで動かせるはずだと思います。

 個人的には、これはもう地方分権ではなくて、国家事業として統一のクラウドを国家で用意し、そしてそれを各地方自治体が活用する。これは非常に大きなコストカットになり、そして稼働の削減になり、また新たな知恵を生むことができるのではないかなというふうに思いますので、ぜひとも新藤大臣により推し進めていただきたいというお願いでございます。

 では、少し話を移らせていただいて、もうこれで最後の質問にさせていただきたいと思いますが、先ほど大臣のお言葉からもありました、産業競争力会議や規制改革会議、IT推進本部、こういった中で、今度はこのICTでいかに成長戦略を描いていくかというお話がされているところかと思います。

 まさに、今までのコストカットの部分から移って、今度は日本をいかに成長させていくかという分野でありますけれども、それに当たって、今キーワードとして日本じゅうで叫ばれているのは、やはりビッグデータの活用だというふうに思います。

 我々通信会社も多くの方の情報を持っております。ただ、それがやはり個人情報保護という観点でなかなか活用できない。そして、少しグレーゾーンを歩めばこれは一般の方から批判を受ける可能性がある。こういったところで民間企業の参入をとめてしまっている部分があるのではないかと思います。

 今回、予算の方でネットワーク基盤技術をこのビッグデータに合わせて確立していくんだというお話はありますけれども、一方で、技術だけではやはりこの利活用というのは進まないのではないかというふうに私自身危惧をしております。

 そういった意味で、プライバシーの保護とデータの活用、これは非常に難しい問題だと思うんですが、これを両立するルールづくりが必要なのではないかと思いますが、新藤大臣のお考えをお伺いさせてください。

新藤国務大臣 まさに、とにかく、何をしなきゃいけないか皆さんわかっているんですよね。だから、それを全員の共有目標にできるかどうか、そして、国が指針を示して、それにみんなが参加してもらえるかどうか、こういうことだと思います。

 私は今、総務省において、ICT成長戦略会議というものを設けました。それは、このICTを使って、いろいろな分野でどんな成長のプロジェクトをつくることができるか、それを追求してみようということであります。

 その中の一つとして、このビッグデータの活用というのがあります。そのビッグデータの活用をするためには、今度は電波の利用の問題が出てきます。結局、たくさんのセンサーをつけるとなれば、それをやはり無線でもって飛ばさなければなりません。それを管理する仕組みが必要になってくるというふうに思いますし、セキュリティーやプライバシー、こういったもののルール化も必要だと思います。

 だから、ビッグデータを進めましょうというのではなくて、ビッグデータを活用することによって、例えば、新しい農業の産業化ができるとか、それによって新しい安全な交通体系ができるとか、それから新しい資源開発ができるとか、そういう目標をきちんと打ち立てて、そこにこの技術やこの制度が必要なんだ、こういうブレークダウンをしていくことが重要なのではないかな、このように考えて、いろいろな機会をつくって、今それに向けて準備を進めているというところであります。

阪本政府参考人 大臣の御説明を少し補足させていただきます。

 先生御指摘のとおり、やはり保護と利用をどうバランスさせていくかというのが大変重要だというふうに思っておりまして、パーソナルデータを使った新しいビジネスを創出するためには、パーソナルデータの利活用のルールの明確化を図っていくというのが大変重要だというふうに思っています。

 今までの議論はどちらかというと総論的に議論をされている部分があるんですけれども、やはりそれを各論ベースにどう落とし込んでいくかというのが非常に大切なことだというふうに思っております。

 実は、総務省の方では、昨年の十一月から、パーソナルデータの利用・流通に関する研究会というのを開催させていただいておりまして、そこでいろいろ御検討いただいています。

 今月の八日に論点整理を公表させていただいて、パブリックコメントなども募集させていただいているんですけれども、その中で、一つ基本的な方向性として、そのルールのつくり方について、国とかあるいは企業それから消費者、そういう関係者がオープンに参加するマルチステークホルダープロセスによってルールをつくっていったらいいんじゃないかとか、あるいは、先生御指摘の暗号とか匿名化技術を最大限活用していったらいいのではないかとか、さらには、国際的な制度的な調和というのもやはり図っていく必要があるんだろうというような基本的な考え方を示していただいております。

 研究会の最終報告は七月になるわけでございますけれども、総務省といたしましては、そういった検討会の結論なども踏まえまして、適正な利用、流通を促進する環境を整備するように努力をしてまいりたいというふうに思っております。

小林(史)分科員 ありがとうございます。

 本当にこのビッグデータの活用、まさに手段でありまして、目的をやはり大々的に掲げていただいてやっていただくということが重要なんだろうと思います。

 本当に身近なところでいえば、進んでいけば、会員証を多く持つ必要はない、スーパーでも自由に買い物ができる、そして、もっと進んでいけば、今度は、人の動きというものも今はモバイルデータで確認をすることができますから、どんな人がどこを歩いているのか統計データをとり、まちづくりをし、そして災害対策をする、こういったことも既にできるようになっているはずであります。これをやはりとめてしまってはいけない、これがまた新たな日本の大きな成長につながるものだというふうに信じております。

 そういった意味で、情報システムの分野というのは、もちろん総務省が担当している部分でありますけれども、横断的に、多分国家レベルでやっていかなければいけないところだというふうに思います。

 そういった意味では、やはり新藤大臣のリーダーシップをぜひ発揮していただいて、もう省庁の壁を越えて、自治体の壁を越えて、日本全体をいかに前に進めていくんだ、そして、効率的にし、今の一般の国民の皆様の生活を便利にしていくかということを、大きなビジョンを掲げていただいて、ぜひ推進していただきたいというように思います。

 そういったお願いをさせていただきまして、私の質問を終了させていただきます。本日はありがとうございました。

奥野主査 これにて小林史明君の質疑は終了いたしました。

 次に、井坂信彦君。

井坂分科員 こんばんは。みんなの党の井坂信彦です。

 本日、ラストバッターとなります。本当に、大臣、遅い時間までお疲れさまでございます。私も、先週まではネット選挙法案の法案提出者をさせていただいておりまして、他党の議員さんの質問に答える側だったので、答弁の準備、また当日の苦労、冷や冷やというのも少しだけ体験をさせていただきました。しかし、本日は、国民の代理として預けられた質疑時間ですので、最後までしっかり質問させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。

 本日は、まず、地方の自立という観点から地方分権について二問伺います。続いて、既得権の打破と自由な経済社会という観点から、電波法と放送法に関連して四問伺いたいと思います。

 まず、地方分権、国と地方の間の税源配分の是正についてお伺いをいたします。

 地方財政審議会などでは、将来的に、国と地方の間の税の配分、税源の配分を五対五にすることを目標とするということであります。総務省も、国対地方が六対四とも言われる現在の税源を五対五にすべきという考え方だと思いますが、以前の三位一体改革のように、今まさに具体的なここに至る工程を示すべきではないかと考えます。

 この点について、まずお伺いをいたします。

新藤国務大臣 国と地方の歳出比率が四対六であるのに対して税源配分が六対四だ、こういったことに配慮して、国、地方の財源配分を五対五にする、この目標はこれまでもずっと掲げてまいりました。そして、それに向けて地方税の充実というものに我々は取り組んできたわけであります。

 そして、今、現状、直近でどうなっているかというと、確かに、平成十八年度、これは三位一体の改革前ですね、この時点では約六対四だったんです。しかし、現状においては五五・四%対四四・六%、五五対四五、こういうところまで来ているということであります。

 そして、地方税の比重を今後さらに高めていくためには、地域間の税源偏在の小さい、そういう地方税の体系の構築が必要だということであります。今度は、地方税の中での税源の偏在が出てくる。これをやはりきちんと、それぞれの地域に必要な税源が偏在しないように、こういう工夫をしなければいけないということであります。

 それにつきましては、平成二十六年の四月に地方消費税の税率変更の時期が来るわけでありますが、そのときまでに具体的な見直しをしっかりとしようではないか、こういう作業を行っております。

 また、国、地方を通じて今財政赤字の状態で、地方税を充実させてくれ、国税から地方に持ってきてくれといえば、パイが同じであれば、移動しても、結局苦しい状態には変わりありません。ですから、望ましい税体系を、しかも一体的な、全体の体系を考え直すこととあわせて、何よりも大切なのは、国家経済の改善なんですね。そして、地域の活性化。

 こういったものを踏まえる中で、財政の健全化を進めつつ経済を成長させていく。そして、その中で地域が自立できるような元気をそれぞれの地域で持ってもらう。そのことが税源の偏在の解消にもつながっていく。このように思って、いろいろな観点からこれは取り組むべき基本中の基本である、このように考えます。

井坂分科員 平成十八年、六〇%対四〇%のところから、現状でも五五対四五ぐらいまで、五%進んできているんだという御答弁でありました。

 ただし、これは待っていれば、また先ほど消費税の分配、もちろん、消費税増税に関してはその是非について見解が異なるところはあるわけですが、そうやって逐次やっていけばいずれは五対五になるんだということであろうかと思いますが、私は、これは、いつまでにという期限、あるいは幾らを持ってくるんだという総額、枠、あるいは税金のどのあたりを今後ターゲットとしていくんだというような、やはり税源配分を五対五にするためのより具体的な計画を立てるべきだというふうに考えております。

 また、そもそも、国も地方も借金を抱えているではないかというトータルのお話もいただきましたので、ちょうど次にその質問をしようと思っておりますので、移らせていただきます。

 私は、もともと三期神戸市議をしておりました。仮に国の補助金が二分の一出る公共事業を市がやった場合、残り半分は市が借金をしていたわけであります。私が、当時、こんなに借金して大丈夫ですかと担当者の方に尋ねると、この市の借金は後で交付税として国からもらえるので、市の実質の借金ではないんですというような説明をよく受けてまいりました。いわゆる後年度裏負担というようなものかと思います。

 本当に翌年以降の交付税に市の過去の借金分が上乗せされていたのかも当時大変疑問に思っておりましたが、加えて、先ほどまさに大臣がおっしゃったように、何よりも、国の地方財政計画を見れば、地方に配分するお金が足りずに、臨時財政対策債というような形で、まさに国が借金を重ねているわけであります。国が後で肩がわりをしてくれるというので、地方は安心して借金しながら公共事業をしていたら、国の方が借金まみれで、結局、最後は国の借金を全地方で肩がわりする羽目になるかもしれない状況ではないかと考えています。

 そこで、お伺いをいたしますが、後年度裏負担という仕組みは、地方に、自分たちの借金ではないんだというある種の錯覚を与えて、そして地方の財政規律を緩ませるマイナス面もあるというふうに考えますが、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 それは、まず意識が重要だ。今のように、後で国から補填してもらえるんだからいいのだ、こういうような御発言、私は、正式な話としてそういったことを国に対して地方が言ったことは聞いたことがありません。ただ、そういった会話の中で出てきていること自体に、ややそういった体質があるのかなと危惧するところであります。

 しかし、地方交付税の算定は、今どんどん、人口だとか面積などの客観的指標を基本にする、こういうことで、もちろん、現実の事業量に応じた、今あなたがおっしゃったような事業費補正と言われるもの、そういったことも算定をいたしますけれども、やはりそれは、できるだけ自主的、主体的な財政運営を図る観点から、廃止、縮減の方向に向けているということであります。

 一方で、財源不足の対策だとか、それから災害復旧、こういったものも含めて地域、年度で偏在がある地方債の元利償還、こういったものはやはり交付税措置が必要なんだと思います。

 では、裏負担、事業費補正があるから、それが財政規律を緩めているのかという御心配がありますが、でも、委員が御自身で今お話しされたように、これは元利償還金の一定割合なんです。ですから、それは自分たちの負担も必ずあるんですね。したがって、それがすぐに財政規律を緩めるというようなことにはならないと思います。

 それよりも何よりも、今地方は、厳しい状況の中で、やはり住民の要望、そして地域のニーズ、そして行政需要に応えた事業を行わなければならない。それに財源が不足する、地方税収が足りない、こういう厳しい状況の中でいろいろな工夫をされているんではないかな、このように私は考えています。

井坂分科員 まさに今地方が厳しいからこそ、市単費でやる事業よりは、より補助率の高い、あるいは裏負担の率の高いもの、そういうインセンティブがやはり実際に現場ではあるように私は感じてまいりましたので、問題提起をさせていただきました。

 続きまして、電波の自由化ということについて伺います。

 日本は今、電波のどの周波数をどの事業者が何に使うか、免許制で割り当てております。しかし、ある周波数を割り当てた事業者が電波を特定の地域でしか使わなかった場合、それ以外の地域ではその電波が使われていないという形にもなろうかと思います。このような、特定の周波数が特定の地域で使われていない空白地帯をホワイトスペースと呼び、総務省でも有効活用を進めているところというふうに聞いております。

 本日お伺いをいたしますのは、アメリカの例でありますが、二〇〇八年にホワイトスペースを免許の要らない免許不要帯として開放することを決めたというふうに聞いております。日本でもこのホワイトスペースを一部免許不要帯として開放する、こういう流れや可能性はあるのかについて、ちょっと技術的なことですので、お伺いをいたします。

武井政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生から御指摘がありましたように、ホワイトスペースというものは、放送などある目的に割り当てられているけれども、地理的条件などによりましてほかの目的にも利用可能な周波数というものでございまして、電波の逼迫の対策に有用であるというふうに思っております。

 現在の地上テレビジョン放送帯のホワイトスペースにつきまして、エリア放送あるいは特定ラジオマイクといったものにつきまして技術基準を策定済みでございまして、エリア放送につきましては、既に九十三局に免許しているという状況にございます。

 お尋ねのホワイトスペースに免許不要局制度を導入する場合、これについてメリット、デメリットをどう考えるかということになろうかと思いますが、メリットとしては、免許手続なしで一般の方々も自由にその周波数帯を簡単に利用できるという点があろうかと思います。

 その裏返しと申しましょうか、デメリットということで考えますと、免許制がないものですから、この無線局はこの場所でしか使えないとか、そういう制約がございませんものですから、不特定多数の一般の方々、周波数の事情も余りよくわからない方がどこでも自由に電波を発射することになります。そうしますと、テレビの周波数に妨害が入るというリスクが出てまいりますので、混信が起こらないようにするための相当の仕組みとかシステム、先生から今御紹介いただきましたようなアメリカのデータベース、こうしたものの確立が必要になるという点が挙げられるかと思っております。

 そういう意味で、ホワイトスペースにおいて免許の不要局制度を導入するに当たりましては、我が国の電波環境、特にやはりテレビの放送局も米国に比べてかなり稠密に打たれておりますので、そうした中で、他の無線局に混信を与えないような仕組みの確立を図ることが必要であるかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、免許不要局制度を導入するか、あるいはそうでないかも含めて、電波の逼迫の解消に資するホワイトスペースの有効利用、これについて一層必要な検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

井坂分科員 電波オークションも今取りやめの方向なので、ちょっとなかなか進展を期待しにくい部分があるのかなというふうに思っているわけですが、ぜひ免許不要帯としての開放ということも検討の中に入れていただきたいというふうに思います。

 続きまして、ちょっと時間があれなんですけれども、地デジを見るのに必要なB―CASカードについてお伺いをいたします。

 現在、各家庭のテレビにこのカードをつけないと地デジは見ることができない、少なくともできなかったという非常におかしな仕組みが続いてまいりました。

 さすがに今後は順次カードがなくてもテレビが見られるようになるというふうには聞いておりますが、そもそも、無料放送なのに何かプロテクトがかかって、カードを差し込まないと見られない、このような日本のB―CASのような仕組みは世界でもほかに例がなかったのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

吉崎政府参考人 デジタルの特徴と申しますのは、コンテンツのコピーが簡単に、きれいに、そして大量にとれるということでございます。そのコピーがネットを介して、地球規模で、瞬間的に大量に流れるというのが特徴でございます。この結果、情報の共有化というのが地球規模でできるという極めて立派なメリットがあります。

 しかしながら、言葉を返して言いますと、違法なコピーが非常にふえるということでありまして、違法なコピーがふえますと、これから次の知的生産をしていこうというインセンティブが薄れ、その結果、せっかくのデジタルのメリットが生かせないということにもなります。

 このように、情報の地球規模での共有と著作権の保護、これを同時にバランスをとるというのが非常に重要なことになってまいります。(井坂分科員「それをこういう形式でやっているような国があるのかということ」と呼ぶ)それはほかの国でもいろいろなやり方でやっておりますが、まずは地上放送についてデジタル化をやるということで、コンテンツ保護の仕組みを確実に担保するということで、放送事業者や受信機メーカーなどでB―CASカードをまずは導入したということでございます。

 委員御指摘のように、B―CASカードではなくてダウンロード型の新たなものに進めていこうという試みも出てきておりますが、いずれにいたしましても、バランスをとりながらコストをかけないでやっていくということが主眼であるということでございます。

井坂分科員 今のような御説明がありましたが、私はちょっと違う認識を持っておりまして、そういうコピーガードというのは後づけの理由ではないかなというふうにも考えているわけです。もともとそのためにつくられた仕組みではないというふうに考えております。

 このB―CASの仕組み、一部では独禁法上問題があるんじゃないかというような指摘もいただいているところでありますが、今回、この場で公取に個別判断を求めてもお答えいただけないということなので、あくまで一般論として、独占的地位にある事業者が、取引先に対して地位利用により競争事業者と取引を行わせないようにするということによって競争事業者を排除するようなことがもしあれば、これはやはり独禁法に違反するということでいいのか、お伺いをいたします。

野口政府参考人 お答えいたします。

 一般論といたしましては、先生御指摘のような場合には、独占禁止法上問題となり得るというふうに考えております。

井坂分科員 ちょっと時間があれなんですけれども、もともとの素朴な疑問としては、なぜ無料のテレビを見るのにカードが要るんだろうというところから始まった問題でありますが、やはり、二つの社団法人、それからNHKの出身の方が社長を務める一社が、この一つの仕組みを全部のテレビにつけているというあたりに疑問を抱いたという趣旨でございますので、またこのあたりも引き続きさせていただきたいと思います。

 次に、県域放送の経営統合について伺います。

 現在は、各都道府県ごとに放送局が分かれております。一つの会社が多くのテレビ局を持つと、情報の多様性、多元性が守られないんだというマスメディアの集中排除原則という考え方に基づいて事業主体を分けていると聞きますが、都道府県ごとに放送局を分けると事業規模が小さくなり過ぎるデメリットもあるというふうに考えます。御見解をお伺いいたします。

吉崎政府参考人 御指摘のように、マスメディア集中排除原則と申しますのは、放送が限られた資源である電波を使うということ、それから社会的に非常に影響の高い言論機関であるということを踏まえまして、できるだけ多くの方に放送する機会を持っていただこうということで、具体的には、一つの会社が保有することができる放送局を限定しようということでございます。おっしゃいました多元性、多様性、地域性ということがキーワードになっております。そのような観点から現行制度はできておりますが、それによりまして弊害が発生しているという認識はございません。

 しかしながら、近年、経済活動は非常に広域化しておりまして、そういった事情を勘案しつつ、適時適切にこの集中排除原則につきましては見直しをしてきているというのが実態でございます。

井坂分科員 問題ないけれども適時適切に見直しとおっしゃって、事実上、いろいろな集中排除原則が徐々に緩和をされてきているのではないかというふうに事前には伺っておりましたが、とにかく、もともとは地域ごとにコンテンツを分けるということに一つの大きな眼目があったのではないかなというふうに思うわけですが、実態は、東京のキー局がつくった番組をそのまま流すという地方局が大半になっているのではないかと思います。

 この問題は、結局、建前と実態の乖離というような状況になっているのかなというふうに感じるわけですが、本日、最後にもう一つ、この建前と実態の乖離ということで、放送法の求める政治的公平についてというところでお伺いをいたします。

 二〇〇四年の七月に、自民党総務会にて、放送法第四条第一項第二号の政治的公平性の規定を削除しようという動きがあったと聞いております。実際に、八月には放送法改正案をまとめて臨時国会に提出する動きがあったというような記録も見ておりますが、自民党の政権の総務大臣とされまして、今後、この放送法第四条第一項第二号の政治的中立性ということについて削除を検討するお考えはあるかどうか、伺います。

新藤国務大臣 かつてそのような動きがあったということは、報道の記録がありますから承知をしておりますが、その後の放送法の政治的公平の規定の削除、その結果にはなっていないわけであります。

 そして、この放送法の第四条第一項第二号の規定である、政治的に公平である、この番組準則はもう放送法の基本原則の一つであります。

 したがって、今与党内で具体的な議論があるとは承知をしておりませんし、私ども総務省においてもそういった作業はしておりません。

井坂分科員 日本においては放送局は政治的公平であるというのは、私も、もう日本にずっと住んでいましたので、ある種、そんなものだ、それは当然だという感覚でおったわけでありますが、アメリカでは八七年に、連邦通信委員会、FCCというところが、メディアの政治的中立性の規則を削除したというふうに聞いています。

 そのきっかけが、八四年のアメリカの連邦最高裁で、公平原則の基礎をなす電波の希少性は拡大する通信技術の中において適合しなくなった、むしろ公共の活発な意見交換を妨げているという判決を出したのがきっかけだと伺っております。

 このアメリカの政治的中立を削除した動きを、大臣としてどのように見ておられるのか、伺います。

新藤国務大臣 これは、米国の連邦通信委員会、FCCが、対立する見解には放送の機会を与えることを放送事業者に義務づけることを定めた、いわゆる公正原則、フェアネスドクトリンを、一九八七年に、メディアの多様化を背景として廃止した、こういうことで、これはアメリカの判断だと思います。

 しかし、米国以外の主要国においては、現在においても政治的公平に相当する義務というのは規定をされております。

 また、かつて自民党に動きがあったというようなことを前提でのお尋ねだと思いますが、それ以降、私もずっと自民党におりますが、そういったことの検討がなされたことは記憶にありませんし、現状においても、与党内での議論がないのは先ほど申しました。また、総務省においても、そういった作業というものは今行っておりません。

井坂分科員 事前に当局の方からいろいろこの件について説明をいただいたときに、そもそも、役所として放送局を、たとえ法律があるとはいえ、そこで厳しく縛ることはやはりいろいろ問題があるので、その辺は、放送法にはこういう四原則を書いた上で、それを具体的にどう守るかというのは業界の中でルールをつくって、それの監視体制も業界の中でやっていくんだというような説明を受けました。その御説明を伺ったときは、四原則はあるものの、実態、それに基づいてそこまで厳しく取り締まられているような感じはないのかなというふうに感覚を持ったわけです。

 しかし、実は、過去の議事録を見ておりましたら、ちょうど五年前の国会の議事録なんですけれども、そのときまでの五年間、要は十年前から五年前までの間の五年間で、放送局に対しての行政指導は何件ありましたかということで、二十三件ありましたと。その中身も、どういう行政指導をやったのかというと、実は、二十三件のうち、このいわゆる四つの番組準則、四原則に違反したという意味で指導を行ったものが、そのうち半分以上、十二件がそれに当たるんだというような議事録もあったわけですね。

 真実報道かどうかとかいう項目ももちろん中には多いわけですけれども、しかし、一件一件見ていると、実際に、政治的中立上問題なんじゃないかという意味で、放送局に対して政府が行政指導をしているということが多々あるわけであります。

 現在の放送法は、中身を見てみますと、民間放送全てに適用される法律の部分と、それからNHKに関する部分というものが混在をしているような形で見受けられます。恐らく、法律をつくったときは、そもそも放送法というのは公共放送としてのNHKに対する法律という趣旨が強かったのではないか。しかし、その後民放ができて、今や、いわゆる一般の民放以外にも、BS、CS、さまざまな放送局が出てきているわけで、こうしたNHKをそもそもの対象として立ち上がった放送法の、特に一番根っこの部分の四原則というのが、このまま未来永劫、全チャンネルに適用されていくのがふさわしいのかなというような疑問を持っております。

 お伺いをいたしますが、多メディア・多チャンネル化時代を迎えた現代におきまして、全ての放送局に政治的公平性ということを求めるのは現実に即していかなくなるのではないか。逆に、表現の自由とか報道の自由とか、あるいは国民が多様な意見を放送を通して知る権利というものに対して、マイナスの面も今後出てくるのではないかというふうにも思うわけでありますが、大臣の御見解を伺います。

新藤国務大臣 これは放送法の根幹をなすところであって、また、国民の放送に対する信頼というものもそこから来ているものだというふうに思います。

 ですから、いろいろな意見が仮にあるとするならば、それこそはまさに国民生活の根幹にかかわることでありますから、それは、行政側の判断というよりは、国会での国民の代表たる議員の議論というものがまずあってしかるべきだというふうに思いますし、そういった議論が今のところあるとは私は聞いておりませんけれども、今議員がそういった問題意識を持つならば、それは国会の中でそういったものをしっかりと注視していただきたいと思いますし、私も、政治にいる者として、そういったものは極めて慎重に取り扱うべきものだ、このように考えております。

井坂分科員 かつては、放送局の数も少なかった、また電波も本当に物理的に希少な資源だったという時代がありました。当然、国が免許制で厳格に電波の割り当てを行っていくというやり方には合理性があったというふうに私も考えております。

 また、放送局が少ないからこそ、一局一局がきちんと、まさに局単位で政治的な公平性を保っているということが、公共性が強く求められるというのも当然でありましたでしょうし、また、国も放送局に対してそういった観点から行政指導を行う必要があったんだろうというふうに思います。

 ただ、前段で議論させていただいたような、電波の有効利用の技術が今後ますます進んでくる、それからまた放送局の数もどんどんふえていく、こういった状況で、私は、電波が免許制から本当に大きな流れの方向性としては自由化といった方向にやがて進んでいくのではないかなというふうにも考えているものであります。

 ネット選挙の解禁法案も担当させていただいて感じたんですけれども、まさにいろいろな懸念が上がってくるんですね。しかし、インターネットなので、実はそれを法律とかでは制御し切れなかったというのが実態であります。その場のほぼ共通理解として、これは与党の提案者の方がそうおっしゃっていました、いろいろな問題は起こるだろうけれども、でも、それも含めてネットなので、いろいろな意見が出て、受け取りの側がリテラシーを高めて、その中から各自が真実を見出していく時代になるのだろうというのが少なくとも今のネットにおける共通の理解ではないかというふうに思います。

 放送も、放送内容を法とそれから業界のガイドラインというところで縛るやり方、もちろん機能してきたわけでありますが、今後は、多チャンネル、いろいろなチャンネルがあるということの全体のバランスと、そして、受け手の国民のリテラシーといった形に変わってくるのではないかなというふうに思っておりますので、本当に、おっしゃるように、政治的な、大変慎重に考えなければいけない議論でありますから、引き続き私も勉強してまいりたいと思います。

 本日は、大臣、本当に遅くまでお疲れさまでございました。

 私の質問を終わります。ありがとうございました。

奥野主査 これにて井坂信彦君の質疑は終了いたしました。

 これにて本分科会の審査は全て終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。

 これにて散会いたします。

    午後八時二分散会


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